IS 化け狐と呼ばれた男 リメイク (屑太郎)
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転生から赤ん坊編
転生 思考 発見


そこは真っ白い何もない空間

ただ、空間と認識できるだけの空間だ。

 

そこに一人の女が居た、彼女はふらふらになりながらも虚空に向かって指や足を動かしている。

 

そこに人が居れば、その滑稽な姿を見て笑い飛ばす人も居るだろうが、彼女の執念とも呼べる行動を見れば多くの人が口を閉ざすだろう。

 

そんな彼女が口を開いた。

 

「ふ・・・ふふふっ、もうすぐ・・・わたしの”世界”が作られる・・・」

 

おもむろに手を上げ、やはり虚空に指を置いた。

その時、いきなり彼女の目が見開かれ口を震わせ、叫んだ。

 

「やっちまった!!」

 

急に彼女が慌てだし、右往左往に動く。

 

 

「はぁ・・・法に触れるしなぁ・・・。物書きの宿命だからなぁ」

 

困り果てた表情をした彼女だが何か、決心したような表情をして言った。

 

 

「じゃあ、仕事してきますか。」

 

 

彼女は虚空に手を伸ばしその手をスライドさせる。

その時、扉が開かれたかのように一条の光が差し込みそこに彼女は吸い込まれていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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・・・眩しい。

いや、なにここ?俺は・・・人間観察をしていたはず・・・。

 

寝てたらここに?・・・んなわけない。目の前に広がってるのは足元が白色それ以外は全部青色の世界だ、ここがウユニ塩湖ならまだしも、そんなところに行く余裕もないし俺なんかをそんなところに連れて行く理由がない。・・・なら何のために?

 

 

「知りたい?」

 

 

急に声が聞こえ後ろを向いた、そこには美女・・・いや絶世の美女と形容できる女性が居た。

 

・・・え?何を?

 

「君がここに来た理由だよ?」

 

「俺まだ何も喋っていないが?」

・・・まさかな。

 

「・・・ここまで来たら分かるんじゃないかなぁ、私が心を読む力があるってことを」

 

「予測は出来たがな・・・じゃあ、早く本題に入ってくれないか?」

まどろっこしいのは嫌いだそれに腹の中一方的に探られるのは性に合わないからな。

 

「・・・はいはい、実は私が間違えて君のいた”世界”から君を乖離させちゃったからなんだ。」

 

「乖離?消滅とか、死んだとかならまだ分かるが・・・。」

なぜ乖離と称した・・・。

 

「あぁ、君から見たら死んだで間違いはないよぉ・・・言い方が悪かったね、間違えて君を殺してしまったんだ。」

 

・・・乖離、俺から見たら?世界?何だ?何かが引っかかる・・・。

 

「そうか・・・で俺はなんでこんなところに呼び出されたんだ?・・・俺を乖離させたと言うならそのままにしておけばいいだろう、呼び出す意図が分からん。」

 

「それは、私の”世界”にも法律って言うものがあるんだよ、具体的には。『君を私が殺してもいいけど別の”世界”に飛ばすこと』って感じだね、まあ早い話が転生させろってことだよ。」

 

「はっ神様気取りか?・・・まあ俺には、本物か偽者かどうかは確かめるすべもないがな・・・。」

 

「正確には神様じゃあないんだけど、似たようなものかな・・・。」

 

「そうか、ここでのたれ死ぬ選択肢はないのか、じゃあ早く決めてくれ。」

 

「何を?」

 

「なぁにをすっとぼけたように・・・お前の言う転生?・・・だったかその行き先だよ、別の、と称するからには俺の居た”世界”に似た”世界”が複数存在しているんだろう・・・いや存在じゃあないな。恐らく正確に言うとお前たちが作った(・・・・・・・・)んだから、複数構築(・・)されている・・・だな。」

 

「!?・・・よくそんなことが読み取れたねぇ。」

 

初めてこちらが相手方の感情を揺らした。

 

「半分ぐらいは妄想だけどな。」

 

「それじゃあ、早めに決めるよ~あ、正解とは言わないよ?逮捕されちゃうからじゃあ転生先は?ちなみに、小説の世界でも全然オッケーだよ!」

 

「適当で。」

 

「・・・えっと、転生するときに能力がつくんだけど「適当で。」・・・」

 

「転生先の世界でなにか「適当で。」・・・」

 

何を言いたいんだ?ったくめんどくさいな。

 

「・・・いいの?自分の世界で好き勝手できるんだよ?」

 

・・・めんどくさいなぁ、人の心は読めるのに嗜好も分からないのか?

 

「いいんだよ、俺はそこまでされるほどいい人生送ってきたわけじゃあない、それに俺は俺の手で平穏を掴み取る今までもやってきたことさ。」

 

叶う事なら当たり前の人生が欲しい、必死に働いて日銭を稼いで、子供として大人として親として生き、そして死んで行きたい。

だが、それを人の手で与えられるのはいやだ、自分の手で掴み取る。まあ能力の想像ができないのが大きな理由なんだけどね。

 

 

「ふっ・・・ふふふっ・・・あはははははははははははっ。」

 

 

急に彼女が笑い出した、俺は、なんだ?と首を傾げるしかなく数十秒ほど笑っていた彼女の笑が納まるまでその状態が続き終わった後に真剣な目つきで俺を見た。

 

「いい?君の居たところとは全然違う全く別の世界になる、君の常識は通用しない・・・多少はするかもしてないけど・・・それでもいいんだね?」

 

「いい、それでも。・・・まあ死にに行くわけじゃないさ、昔も今も”今度”も。」

絶対に生きる誰よりも何よりも。それが俺の信条だ。

 

 

「ならいいや。」

 

 

表情を崩し俺に向き合い言葉を続けた。

 

「じゃあ、君はせっかちさんのようだから早めに”世界”に送るね。あ、適当に能力は付けとくよ。」

 

といいながら、俺の首を掴む。

 

「え?いやなんで?ここで殺されるパターン・・・っか!?」

 

細い指が俺の首に食い込む、少し苦しい、いや少しどころではないぐらいに苦しい。

 

「全然違う、君をこうして・・・。」

 

と、俺を首から持ち上げ振りかぶりそして床に叩きつけた。

 

「何で!?・・・え?」

 

受身でも取ろうかと思っていたのだがいつまで経っても衝撃が来ないのだ、あるのは背中に当たる風のみ。

そこで、俺は恐る恐るうつぶせになってみた・・・。

 

 

「ウワァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!」

 

 

そこには航空写真のような光景が広がりそれを確認した後、意識が飛びそして俺は転生した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「あー、仕事終わり!!」

 

彼女が大声を出して宣言した。

 

 

「しかも、いいものも見れたし大収穫だよ、私は好きだったし・・・さて彼はこの物語にどんな傷跡を残すのかな。」

 

 

彼女は手を虚空に伸ばし、スライドさせるように動かし・・・。

 

 

 

満足げに笑いながら”世界”からその身を消した。

 

 

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これは、記憶の始まりの話。



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誕生 出会い 人

暗闇にカーテンコールが鳴り響く。

 

今の俺はしがない大道具係・・・学んだことは大量にあったが・・・いつかはあそこに。舞台の真ん中に・・・。

 

立っていたい・・・。

 

そのレベルまで自分を偽るために・・・。

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これは、自分の嫌な記憶の話。

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俺は航空写真の後味が悪い感覚をフラッシュバックさせながら目が覚めた・・・いや、意識が覚醒した。恐らく赤ん坊から今世は始まったらしく俺は眩し過ぎて目が開けたくても開けられない状態になっている。

 

・・・ずっとこのままってわけじゃあないようにして欲しい。

 

とりあえず、今後の方針を決めるため俺は手を動かしてみる。

やってみた結果、重力が五倍にでもなっているのか、その行為すらもすらも重くだるく感じられた。

それから、声を出してみる

・・・あーやら、うーとか言えない。

現在の状況が分からないので、動き回ろうとする。

そしたら、なにかやわらかい布で覆われているようで動き回ることが出来なかった。

辛うじてまともに機能するのは聴力だけ・・・周りの音から察するに、俺と同じような赤ん坊が多数、それに大人の存在・・・ここは病院のような施設なのか?

そしてこれらの事から、俺の今後の方針が決まった。

 

まず、俺の前世で出来た行動を出来るようにする。そうしたあと、この世界の技術、知識を得る。

 

といった方針をとることにした。

このままでは不便で仕方がない。それに、神様の言う通りこの世界のことを知らなさ過ぎる

。動くのはいいがこのままでは先の見通しがつかず、無駄死になってしまう。

 

どの世界にも未練はない、いつ死んでも構わないいのだが絶対に生きる努力はする。それが俺の流儀だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

そんなことは置いといて・・・。

 

どれほどの時間が過ぎたのか分からなくなるほど眠った俺はいつの間にか退院していた。

何故なら少し動くだけでかなり疲れるので一時間周期に動く、寝るを繰り返していたから正確に時間はわからない。退院するころには俺は、とりあえず両手でじゃんけんが出来るぐらいの手先の器用さと、言葉を取り戻していた。

 

そして、退院と同時に一つの心配事が生まれた、それは俺の今世の家のことである。

俺は寝ている時にベビーカーらしきものに入れられたらしくそれを引いている人の顔も見れない。

つまりは心配事だらけである。

 

そしてやることもないので寝ていることにした。

 

目が覚めて、俺は柵の中に入れられていた、これは・・・閉塞感によってかなりの心理的圧迫を受けるな・・・。

 

とりあえず、人を呼ぼう・・・どうやって?

 

・・・柵でも叩いてみるか。

 

ガシャンガシャン!

 

あ、足音が近づいてる・・・。

 

「どうしましたか?・・・って私は赤ん坊相手に何を言っているのでしょう?」

 

「いや、そういってもらえるとこちらもたすかる。」

 

「」

 

ん?あれ?発音が悪かったか?この体はまだ慣れていない部分があるから、どうしても片言になってしまう・・・仕方ないよね?っていうか、ここも日本語をつかえるのか・・・。

 

「どうしたんだ、たいちょうでもわるいのか?」

 

「キィャァァァァァァァァシャベッタァァァァァァ!!」

 

「いやそこまでおどろかなくても・・・。」

 

「え?・・・これ、世界仰○ニュースにしらせ「ないでくれ、確実に面倒なことになる」」

 

その世界仰天ニュースとやらは知らないがニュースと銘打ってることは絶対に不特定多数の人間の目に触れるだろう。隠密は自身の身を守るために必要なのにそれを捨てるわけには行かない。

 

「はぁ・・・おれはこのせかいにきてから、ひがあさい・・・だからしつもんにこたえてほしい。」

 

「・・・分かりました、私は赤ちゃんを世話するのは初めてでして・・・あなたのような人でしたらこちらの気も楽でいいです。」

と、少し安心したような表情で答えた

 

「へえ・・・そう、じゃあしつもんそのいち。だいたいよそうはついてるけど、あなたはおれのしんぞく、つまりははおやか?」

 

「・・・いいえ、私はあなたの奥様に雇われた・・・お手伝いさんみたいな立ち位置です。」

やはりか、なんか態度がよそよそしいと思ったんだ、後はこの体の直感。

 

「なるほど、つぎのしつもんおれのなまえは?」

 

「・・・奥様が名づけたお名前は、康一・・・相澤康一です。」

 

「そうか、それならおれはそれをじしょうしよう。」

 

なるほど、俺はかなりのいいところに生まれてきたらしい、お手伝いさんに全てを任せる金と俺を放任する性格のいいところだな。

 

「あの・・・。」

 

「なんだ?」

 

「あなたは何でそんな喋れるのですか?普通喋れるのは一歳ごろだと記憶しているのですが・・・。」

 

「ああ、このようなからだになってしまったが・・・いや、まえおきはいい、おれは転生させられたんだ。」

 

「転生?あの輪廻転生の転生ですか?」

 

「ああ、そうだとおもう・・・もくてきがいっさいみえてこないのがしんぱいなんだが。」

 

そう、俺はどれだけ考えてもあの神様?(そう仮称する)がなんでこの世界に送り出したのかが分からないのだ、分かればそれを回避またはそれを承るかの選択も出来たはず。

 

「そうですか・・・お困りになりましたらすぐ呼んでくださいすぐに駆けつけますので。」

 

「え?なんでだ?」

 

「その体では満足に動くことも出来ないでしょう?それに・・・」

 

「それに?」

 

「それが仕事ですから。」

 

と、普通の返答をされて俺は少し戸惑った。俺のようなイレギュラーに何にも動じず返答したのだから、かなりのリアリストか混乱し過ぎて逆に冷静になっているのか、はたまたどうやって俺を売り飛ばそうとしているのか考えているのか。

そんなくだらない思考を一瞬で切り替えて対話にリソースを割いた。

 

「・・・そうかいそれじゃあ、おれはあんたにたよらせてもらおうかね、ああそうだ、しゃべりすぎてねむいんだ、できるかぎりしずかにしてくれ。」

 

「かしこまりました。」

 

俺は、久々の会話に(といっても一週間ていどだが。)口周りの筋肉が非常にまずいレベルで疲れた・・・いや痛い。

 

 

だからもう一度俺は寝ることにした。

 

 



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短 短 短

そこは、とある歪な関係が形成されている二世帯住宅で起きている日常の一ページの話である。

 

【オッサン】

 

どうも、この家のお手伝いをさせていただいています、大高 秋音(おおたか あきね)です・・・依頼主からこの仕事を請けたときには、少し不安でした。

 

私は家政婦をしていまして、お世話した最年少は二十歳の青年だったりして、それ以下は触れるのはもちろん、喋ったりなどはまったく出来ていなくこの仕事・・・つまり幼児のお守りの仕事には一抹の不安を覚えていたのですが・・・。

 

適当な服 ボサボサの頭 手に新聞 時たまテレビ ・・・を見て大爆笑 好物はイカそうめん

 

・・・オッサンのフルハウスが完成していました。

 

「おいおい、アメリカでテロだってよ。」

 

・・・と、このように一切の可愛気がありません、皆無ですガチャ○ンの中身を見たぐらいのショックを受けました。・・・私は見ていませんが。

 

「あ、○○会社の株下がってる・・・大丈夫か?」

 

あなたは、その年で株を気にするな!!何もできないのはわかっているでしょう!?

 

・・・と、こんな風に依頼主の息子に行きそうな突込みを日々抑えるのに精一杯です。

 

オチがありませんが大高秋音でした

 

 

【散歩。】

 

俺がこの世界に来てから一年弱の時間が経過した。

 

それは、プライドの高いねたきり老人の様相を呈していた時間だったが・・・今は違う。

 

俺は、動きやすい服に着替え、肩掛けポーチ(かなり小さい奴。)を掛ける出で立ちで仁王立ちをして腹のそこから出すような低い声でこういった。

 

「お手伝いさんよ・・・歩けるようになったのだ。」

 

と言いながらドヤ顔・・・ドヤ顔である・・・ドヤ顔であるッ!!

 

「今までだって普通に歩いていたではありませんか・・・。」

 

と言いながらゴミを見る顔・・・ゴミを見る顔である・・・ゴミを見る顔であるッ!!

 

・・・ああ、そうだ、この荒ぶるモノローグから分かる通り、通常の年で歩ける年齢|(・・・・・)になったのが明日地球が滅んでもいいぐらいに嬉しいのだ。

 

「分かっていない・・・分かっていないのだよ!!。」

 

「何がです?」

 

「・・・それは。」

 

と俺はもったいつけるように、言葉を溜め「もったいぶらないでください。」・・・面白いだろうがよぅ・・・。

 

「生後三ヶ月が歩いていたら目立つだろうが。」

 

「身も蓋も無いですね。確かに驚きましたが」

 

「そうつまり・・・散歩に行ってきます。」

 

と踵を返し、外と言う荒れた海のごとく自由なそれで居て過酷なエデンを目指し俺は

 

「まて。」

 

手ががっしりと、さながら万力のごとき握力で俺の腕を掴まれた。

 

「なんだ?。」

 

と握られた手が痛いの加味した怒り加味した返事をした、その怒りゆえの無愛想な返事をものともせずいきなり、掴んだ手とは逆の方向の手を差し出す。

 

その手には  ベ  ビ ー カ ー ・・・ベビーカーがあった。

 

 

 

人間のストレスの一種に、閉塞空間というものがある。その調べ方としては何の娯楽も無い狭い部屋に閉じ込めただただ時間を経過させるというものだ、その結果人間はそのような環境におかれると耐え難いストレスを感じるらしい。

 

今回の例を挙げてみよう、生まれてからこの方まともな精神を持ったやつがベビーベット(柵つき)、外出不許可、味気ない飯・・・この惨状を見て分かる通り俺は禿げ上がるかと思うぐらいストレスを溜め込んでいるのだ。

 

・・・つまり。

 

「やぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁめぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!。」

 

「逃がしませんよ?」

 

叫んだ、あらん限り叫んだ・・・それに比べお手伝いさんが淡々とした口調で居たのが癇に障っていた・・・のはまあ別の話だ。

 

「あなたは私に自由を与えないと言うのか!!。」

 

けど暴力に訴えたら・・・この人強そうだしなぁ。

 

「表現に誇張が効き過ぎです!!。それに!」

 

「なんだ?人間としての権利(自由のこと)をさながら傲慢な神の如く『天からのめぼしだ!!』と言いつつ純真無垢な赤子に事情も知らせず権利を奪っていく暴挙がどうしたと言うのだ!!?」

 

俺の熱いパトスは止められないぜぇ!!。

 

「長いよ!!。そして早いよ聞き取れません!!。それに話はまだ終わっていません!!。」

 

「交渉の余地があるとでも?」

 

あるのなら答えるのに吝かではないな。

 

「いきなり冷静になられても・・・。はぁ、いいですか?「いいよ~散歩に連れて行ってくれるなら。」諦め早過ぎませんか?」

 

叫んだら意外と全てスッキリしちゃったんだよねぇ。

 

「いや、どうせお手伝いさんの行動パターン上ベビーカーで公園に行ってから遊んで遠回りして帰ってくるって感じでしょう?」

 

「・・・行きましょうか。」

 

いいねぇ、その分かってるんだけどどこにも行かない苛立ち・・・。それに・・・外に出るのは久しぶりだしな。

 

 

散歩は俺に全身の筋肉痛と、倦怠感と、耐え難い睡眠欲求をプレゼントして行った。

 

 

【感想】

 

どうもまたまた変わりました大高です。

 

この家に勤務してから、三年が経ちました康一様もすくすくと・・・成長してきているようです、私的にはかなり思うところがあるのですが、それは置いておきましょう。

 

ここで話したいのは彼・・・相澤康一のことです。

 

彼を三年間世話してきて、彼の異常性が・・・いや、すでに異常性の塊でしかないのでしょうけど・・・人として、二十歳前半の成人男性として(彼がそういっていた)の異常性が垣間見えてきました。

 

一つは、物事を捻くれた視点で見る癖があると言うこと。たまに・・・いやごく稀にそんな見方があるのかといったことがありますが、それですら下衆な思考から生み出された産物でしかありません。

 

二つめ、どこでも寝ます。トイレ、廊下、タンス、押入れ、もちろん布団でも寝ますがなぜか端の方に避けて眠り、酷い時は物置の上に寝ていたことがあります。少し思ったのですが共通するのは壁際で、もしくは閉鎖的な空間が割かし多いいようです。・・・そのことについて、「あなたは猫ですか?」と言うと無駄に完璧な声帯模写で「にゃぁ?・・・にゃあ。」と言っていました。

 

そのときの表情がかなり可愛かったのは思い出に残っています。

 

それに三つめ・・・食べても大丈夫な野草を持ってくる。これが一番の謎である

 

 

「・・・また拾ってきた野草とご飯に?。」

 

「いいだろ?食費浮くんだから、浮いた食費の五割俺の口座に入れておいてくれ。」

 

「いいですけど・・・二束三文ですよ?」

 

「一文を笑うものは一文に泣く。」

 

「どこの江戸時代ですか?それを言うなら一円でしょう?」

 

 

こんなやり取りが多い。散歩途中に少し目を放した隙に野草をビニール袋一杯に詰めて「飯。」と言ってくる姿を見ると叩きたくなるのは恐らく本能でしょう。

 

 

ですが・・・なぜか憎めないのです、生まれたところから見てきたからでしょうか?・・・母性?よく分かりません・・・けど、康一様を好意的に見ているのは確かです。

 

「・・・まためんどくさい事になりそうだな。」

 

「何がですか?」

 

 

今日もまた、彼の捻くれた理論でも聞くことにしましょうか・・・。

 

 

 

これが、私の日常である。

 

 

 




分かりにくいけど、とりあえずこれで終わり。


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前 体 錬

・・・寒い、寒いしなんか不快・・・しかしこんな寒さ、久しぶりだな・・・。

 

あれ?俺なんでこんなことになってるんだ?・・・確か、神様の粋な計らいでいいところに来たんだよな・・・。

 

・・・なんだよ、結構楽しかったのに。普通の生活っていうのもさ。

 

 

「                    」

 

・・・誰だ?・・・。

 

「         」

 

ごめん、聞き取れない・・・誰だか知らないけど、こんな俺のことを心配してくれてありがとう。

 

・・・ははっ、なに言ってんだか遺言みてーじゃないか。

あぁくそっ声も出やしねえ・・・。

 

 

・・・ありがとう、俺がいた・・・セカイ

 

 

 

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これは、消えてしまった記憶の話。

 

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俺がこの世界に来てから五年がたった。

 

唐突過ぎるが仕方ない俺は五年間で、俺の覚えている範囲で特筆することもなく俺の、相澤康一としての生活基盤が出来上がり、また俺自身も俺を相澤康一と違和感なく自称できるようになっていたのだから。

名前に関しては向こうの世界では俺の名前なんてものは特に機能していなかったから問題なかったのだが・・・。

 

それは置いとき、このようにだんだんとこの世界に慣れてきた俺だが、まだこの世界のことを知らなさ過ぎる・・・生んだ母親の顔も知らないって・・・ねぇ?そんな思考を元に一つ質問することにした。

 

「ああ、そうだお手伝いさん。」

 

「何ですか?」

 

俺はごろごろしながら質問事項お手伝いさんに(仮称)質問することにする。

 

「アンタの依頼主からはこれからどうするとか・・・依頼に関した指示はされていないのか?」

 

お手伝いさんはどこか怪訝な顔をし、聞き返した。

 

「今度は何が言いたいんですか?」

 

「・・・俺の世話止めないの?」

 

お手伝いさんは無言で手を俺の額に伸ばしデコピンの構えをとりそれを敢行した。

俺は軽いやけどのような痛みを訴えている額をさすりながら、非難の込めた目をお手伝いさんに向けた。

 

「変なこと言わないでください。」

 

・・・変なことも何も、俺はそばに誰か居ると安眠できない、だから回数や時間で睡眠不足を解消している。

だがそんなことをやると不毛の極みなので出来れば出て行ってもらいたいのだ。

 

「・・・ごめんなさい。」

 

「よろしいです、あなたはどれだけ中身が年食っていようが体は子供なのですから・・・。」

 

「はいはい。」

 

と、この五年間でお手伝いさんの口癖になっていたその言葉を苦笑交じりに返した。

因みにおきているときは、柔軟や筋トレなどに勤しみ、寝るときは疲労度が一定に達したとき糸が切れるように眠っている。

 

・・・しかし、常識が通用しないとか何とか・・・そうカミサマが言ってたが本当にそうなのか?五年間生きてきたが特に何にも起きなかったし・・・あ、そうだ。

 

「やっぱ、だめなの?あのことは・・・。」

 

「何のことです?」

 

と、少し動きが止まり目を泳がせる。・・・うそ、というか何かを語ってない。

 

このときの・・・あのこと、とはいつの日か俺が質問した事柄である。

 

『俺が寝ている時に何かあったか?』

 

少し気になって質問してみたのだ、常識が通用しない部分が俺の寝ている間に起きてしまっているのだとしたら?といったもある種妄想的なことを考えていた、それ自体は仮説でしかなく、当たってたら面白いな程度だったのだが、反応が・・・。

 

『・・・っ!?・・・何もありません。』

 

だったからな・・・かなり信憑性を増したが・・・この説を却下した。具体的に言い表せないが、これは俺のために嘘をついてるような気がする。

 

・・・嘘をつき続けて来た俺の直感だから・・・当たってると信じたい。

 

だが、真実にたどり着くには、お手伝いさんの口を割るか周りの人に聞くしかないだろう・・・だがどちらも俺の力がないから不可能と結論付けて俺は思考を切り替える。

 

しかし俺はこの世界の同じ年齢からの身体能力平均値的にはどうなっているのだろうか?もしここがZ戦士並みに平均戦闘力が高かったら目も当てられない。

 

「なあ、ここの人間かめ○め波見たいなの出せたりするの?」

 

因みにここは、質問に質問を重ねた結果、文化的に俺の居たところと似通っているらしいことが判明している。

 

「出るわけないでしょう」

 

「ですよね~。」

 

地球破壊されたら・・・そのときは甘んじて受け入れよう・・・うん。

そんな狂った世界でなくて良かったと内心胸を撫で下ろしながら俺は次の質問に行った。

 

「なあ、この近くに武道的な道場って存在するのか?」

 

とりあえず体でも・・・欲張れば技術も会得したい。

 

「・・・分かりました、来週中に調べて参ります。」

 

「そこまで無理しなくてもい「調べて参ります。」・・・」

 

そこで何も言えなくなり押し黙るしかなくなってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

色々飛ばして来週

 

「康一様。」

「康一でいいつってんだろ?」

 

いつもの掛け合いを済ませてお手伝いさんは本題に入った。

 

「調べました結果、家の近くにある武道・・・私は体や武器を使う格闘術と解釈し、その条件で三十件・・・体を使うものは十八件、残りの十二件は武器を使うものになります。」

 

へぇかなり多いな・・・

「一覧は?」

 

「こちらに、チラシなどがあるものは貼り付けてあります。こちらは隣町のものになります。」

 

「そこまで調べたのか!?どうやって?」

 

ファイルを手渡ししながらさらっとそんなことをの賜った・・・このお手伝いさんはかなり優秀なんだな、とうすうす勘付いていたことを再認識する。

 

「ええ、しかし奥様方の情報網はすばらしいですね。」

 

「おば様方すげえ!!。ッてか俺はアンタが井戸端会議している光景が目に浮ばない!!」

 

なんて情報量の多さだ!怖いレベルに・・・いやむしろお手伝いさんが怖い、このキャラから井戸端会議に参加しているのが想像できない!どうやってやったんだ!?そしてほんとうに

 

「・・・この情報を得るために、依頼主の株が大暴落しましたが・・・。問題ないでしょう。」

 

「そりゃあそうだ!!おば様方の格好のえさみたいなものだからね!。」

 

と、若干叫ぶようにいいながら奪い取るようにファイルを受け取り纏めたものに目を通す。

 

「・・・・・・・・・。五件、面白そうなのがあった。」

 

「そうですか、因みに一番面白そうだと思ったのはどれですか?」

 

俺は無言で一つの道場名を指差した。

 

「・・・篠ノ之道場・・・隣町にある神社の影響を受けたために出来た剣術道場ですか。理由を聞かせてもらっても?」

 

「詳し過ぎね?・・・簡潔に言うと神社から発生したのであれば古武術や剣道とは違う剣術も修練できそうだと思ったからだ・・・なんでそんなことまで?」

 

俺が篠ノ之道場付近の地図を見たことで推測していたことをあっさりと正解判定を出された。・・・ってことは古武術とか体得できるのか?

 

「・・・さて康一様。どうなされますか?」

 

・・・どうしようか?・・・見学?。

 

「一旦行って見よう、それで決める。」

 

「了解しました。早速準備させていただきます」

 

・・・とりあえず、この世界の技術を体得するつながりは出来た。

これからは、それを俺が体得できるかだな・・・。

 

 

 

 

・・・到着~。

 

お手伝いさんが半端ない速度で外へ行く準備をしてくれたおかげで本当に早い時間で篠ノ之道場の周辺にある駐車場に到着した。

 

そこから、移動しながら

 

「・・・ここまで行く道に一切の迷いがなかったよね?」

 

「記憶力がいいので。」

 

「お手伝いさんは今行くところの門下生なの・・・もしくはだった?」

 

このままでは埒が明かないので直球に聞いてみた。

 

「・・・。」

 

イエ~黙秘権発動~と心底がっかりしながらやはり心の奥底で少し悪態をつく、そして思考を持ち直し何か言いたくない理由があるのだろうと結論付け・・・。

 

うん、そっとしておこうということにした。

 

我ながらヘタレである。

 

 

 

しかし・・・なんか鬱屈としたところだな・・・。

 

歩き始めて程なくすると、周りは竹林になっており、俺とお手伝いさんが並べられる位の道が曲がりくねりながら続いていた。それはたとえるなら来るもの拒んで去るものを追う、という言葉を作れるくらいには閉塞感がある場所だった。

 

「ちょっと、こうも暗い雰囲気だと・・・入門している人も少ないんじゃないか?」

 

暗いどころか、からすが鳴いてるけどね。

 

「・・・。」

 

「こんなところに道場建てたのか・・・築十年くらい行っているのかな?」

 

神社と併設だと思うから・・・結構行ってると思う・・・。ぼろ屋敷・・・。

 

「・・・。」

 

クソ・・・誘導尋問に引っかからない・・・。引っかかれ!!

 

「ねえ。」

 

「・・・。」

 

「返事がないただの屍のようだ。」(裏声&腹話術。)

 

ペチン。

 

叩かれた・・・。

まあ、お手伝いさんがどんな人物でもいいんだけど・・・一緒に住んでいる分には知っておきたい。

共同生活にとっても・・・自己防衛にとっても・・・。

 

「付きましたよ・・・ここが、篠ノ之道場です。」

 

といって、道があけたところにある建物を指差した。

 

「・・・。」

 

今度は俺が黙る番だった。

お手伝いさんが指差したそれは、武家屋敷の一言しか形容できない建物だった。

その悠然とした雰囲気を持った建物に飲み込まれ、尊敬の感情を持つにはそう時間は掛からなかった。

 

「・・・かっこいいな。」

 

「では、案内させていただきます。」

 

そんな独り言を黙殺しお手伝いさんは先に行ってしまい、それをあわてて追いかけた。

 

 

 

 

 

胸の中でかすかに生まれた違和感を押し殺しながら・・・。

 

 

 

 



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気 剣 邪

少年が立っている

 

それだけを文字にしたら違和感は覚えないだが。

 

 

少年が廃工場で血を滴らせたナイフを持って足元に転がった男を見下ろしながら立っている。

 

 

 

少年はどこか悲しそうな顔で足元の人間を見て・・・口を開いた。

 

「死ぬな・・・。殺す覚悟も、逮捕される覚悟も持ち合わせていないんだ。」

 

といいながら足元に転がっている男を手当てし始めた。

手つきは鮮やかの一言で、かなり手馴れているようだった。

 

「                       」

 

男が息も絶え絶えに何かを呟く。そして少年がそれを聞く時間と比例して手当ての手が乱暴なそれになっている。

 

「知るか、俺はただの亡霊だ・・・あんたがそうさせたんだ。」

 

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これは、もう消したい記憶の話。

 

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お手伝いさんの案内に従った結果板の間に通され座っていたら

そんなこんなして、篠ノ之道場の先生がやってきました~。

 

 

 

 

「「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」」」

 

 

 

いや・・・なにこの空間・・・モノローグだけでも明るく勤めようとしたけど無理だよこれ、目の前に居るおっさんは目を瞑ったまま微動だにしないし、お手伝いさんからはなんか殺気がもれ出てるし、俺は硬直するしかないし!。

 

つーか、なにあれ?俺の後ろからチラチラと見てるやつが居るな・・・なにやってるんだよ、見てるんじゃねーよ!この空気を打破してくれよ!!

 

 

「「「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」」」」

 

知覚した視線の主を入れて四人の沈黙が流れる。

そして、ここの先生みたいなおっさん(以下先生で統一する)が口を開いた。

 

「久しぶりだね・・・大高師範。」

 

「ご無沙汰しておりました、師匠。」

 

・・・まあ、予想どうりだよね・・・隠してた理由は・・・大穴で可愛くなかったから。

 

「くっくっくっ・・・しかし剣が可愛くないから辞めたって時には呆然としたね。」

 

「当たってた!!?」

 

「・・・その話は掘り返さないでください。」

 

(ジタバタとしながら笑いをこらえているところ。)

 

そうやって、四者四様の反応を見せ俺の心配を遠くにぶっ飛ばしたところで、和やかな空気がほんの少し流れた。

恐らく旧知の仲であろうお手伝いさんの力が大きいであろう。

 

「積もる話はあるけど・・・入門希望者?」

 

「はい。」

「そうです。」

 

同時に返事をした。

 

「私としては助かるよ、だって入門希望者がだんだん減って・・・というか皆無になってしまってね知り合いに入門希望者が居ないか聞いてみたんだが・・・みんな逃げてしまってね・・・」

 

といいながら先生は目頭を押さえながら顔を背けた。

 

(そりゃそうだ、あんな鬱屈としたところ誰も行きたくねーよ。めっちゃカラス鳴いてたし)

 

と、俺はその原因の考察に勤しんでいた。

 

「そうですか、不思議ですね・・・。」

 

「そうだろう?」

 

(突っ込み待ちか・・・乗るべきか・・・乗らざるべきか・・・。)

 

天然か故意か分からないまま、先生とお手伝いさんが雑談に花開かせている。そして話の流れは聞いていなかったが俺に話をふられた。

 

「そういえば、名前を聞いてなかったね?名前は。」

 

「相澤康一です。分かっているとは思いますが剣を学びにここに来ました。」

 

真実そのままを伝え言葉と共に固まって無かった決心を固め、真っ直ぐ先生を見た。

先生は頬を弛緩させ。

 

「私は篠ノ之柳韻だ。ここの道場の管理運営をしている。・・・それで。」

 

そこで言葉を切った。

 

「不躾かもしれないが、君は何のために剣を学ぼうと思ったのか教えてくれないか?」

 

「・・・自分のため・・・自分の命を守るためにそれを学ぼうと思いました。」

 

 

 

俺の過去を思い出してしまった・・・。

 

 

 

「そ、それはどういう・・・。」

 

おっと、ちょっと目つきが悪くなってしまったか?んじゃあ。

 

「いんや?このご時勢に護身術でも身につけておかないとねぇ。何事にも手を抜かないってのが僕のモットーでしてねそれなら錬度の高いものをって言うしだいでございます。」

 

俺は勤めて軽い口調にそれでも気分を損ねない丁寧語を使った。

 

「君五歳だよね?」

 

「しかし最近の五歳児ならばタレを守りながら遁走したり、ロボットの父親まで出来ますよ?。」

 

みんな見に来てね。

 

っとそれは置いといて・・・逆に警戒をあげてしまったか?

 

「・・・くっくっく、なかなか不思議な五歳児じゃないか。娘にも見習ってもらいたいよ。」

 

「お褒めに預かり光栄です。・・・それと、僕を見習うのは止めた方がいいですよ。」

 

「「・・・はっはっはっはっは。」」

 

何か裏に悪魔でも潜んでいそうな二つの笑い声が響いた。そしていきなり先生が笑うのを止め何かを射抜こうとしているかのようにこちらを見た。

 

「じゃあ、君には剣道じゃなくて剣術を教えることにする。死にたくないんだろう?」

 

と先生は皮肉を込めながら口角を吊り上げた。

 

「ええ、死にたくありませんね。」

 

「じゃあ、早速はじめようか・・・大高君、持ってきているんだろう?」

 

「ええ、ここに。」

 

そういって取り出したのはボストンバック、デフォルトになっている無言でボストンバックを逆さにしてジッパーをあけた。

 

ドサァ

 

大量の木製武器・・・木刀、小刀(木)、ヌンチャク、三節棍、鎌(木)からトンファーまでありとあらゆる作者が考え付く限りの武器がボストンバックの容量を超えて出てきた。

 

扇子なんてどこで使うんだ?

 

俺はお手伝いさんに耳打ちをした。

 

「・・・あのギャグパートなの作者が書けるとは思えんけどシリアスパートなの?」

 

「カオスパートです。」

 

「聞いたことねーよ、何だよそのパート作者なにやってんだよ、たぶんこれアップダウンについて来れなくてはくよ?読者?吐いて気持ち悪くなって発狂してモニターをぶっ壊し、インターネット依存症から抜け出して、いいリア充生活を送ることになるよ?・・・あれ?幸せじゃん。」

 

「風が吹いたら桶屋が儲かるじゃないんですから・・・それとセルフ突っ込みは止めて下さい。というかこの回は最初から最後までクラ・・・ギャグです。」

 

「・・・そういうことにしておく。」

 

 

閑話休題

 

 

「というわけで、この中から好きなのを選んでくれ。」

 

・・・ふむ、あれか?選んだ武器によって教える武器が違うとか?そういえばどっかの国でそんな習慣があったな。

 

けどこの一戦は負けられない・・・いや、死ねない。・・・まあ、全力で行こう。

 

思考を切り替え勝つための作戦を最高速で考える・・・扇子気になる!!

 

 

その思考で作戦が完成した。

 

 

 

「決めました。」

 

俺は左手に扇子、右手に俺の身長ほどの木刀を持った。因みに今の身長は五歳児の平均106.7 センチほど。まあ意図的にそうしたのだが・・・。

 

「「・・・一刀一扇。」」

 

何かを俺以外の二人が呟いた。・・・まあ、かなり変な戦法だとは思うけど。

 

「君は・・・本当にご・・・いや、なんでもない手合わせでも始めようか。」

 

「お願いします。」

 

俺と先生が立ち獲物を構える。俺は扇子を持った左手を前にした半身になり左手は先生の正眼にし、右手は脱力させ剣先を床に置いて構える因みに全部順手だ、先生は真正面に対峙し腰を少し落とし左手に木刀を鞘を待つように逆手でもっている。

 

戦いのなんとも言えない静寂が場に流れる。

 

「では・・・。」

 

お手伝いさんの声がゆっくりとその静寂を切り裂いていく・・・静寂の切り傷が最高潮に達したとき・・・。

 

「初め!!。」

 

戦いの火蓋は切って落とされた。

 

 

っ!?

 

始まったと同時に先生が加速し俺の目と鼻の先にまで移動し、左手の剣をボクシングのスマッシュの軌道を描いて跳ね上げた。

 

「・・・零拍子。」

 

頭の片隅でお手伝いさんがそう呟いたのを確認し、不必要な情報と判断。そんな思考で戸惑いを排除しその対処を一瞬で思考する。

 

思考した結果、俺も体の小ささを生かし懐に潜り込みながら扇子で剣の軌道を跳ね上げ半回転し木刀で打ち付けるがそれを手首の返しで受け止められ俺はその場から離脱した。

 

 

そこから防戦一方の試合展開になってしまうので割愛させていただく。

 

 

ここで話は大いに変わるが俺は体力が無い、絶対的に無いだから短期決着を望んだんだが・・・そうも行かないみたいだな。五歳児の身体能力何ざ高が知れてる・・・筋肉つけすぎると背が伸びにくくなるようだし、目立ちたくないからそれなりの運動能力に抑えている。これの意味するところは木刀が十分に振れない事と幼い内の過酷な練習によってー、などそんなことを望むわけにも行かないことである。

 

つまり・・・作戦の舞台は整ったあとは・・・。

 

 

虚を作り出すだけだ

 

 

今、俺と先生の距離は人二人半、それを俺と先生が同時に詰め初める。

 

そして俺が先生の体の軸から向かって左にずれるように間合いに入ったとき、両者の手が瞬いた先生は居合い切り・・・とは言ってもギリギリ俺が認識できるほどの速さで左から右に切り上げ、俺は開いた状態の扇子を左目に視界をさえぎるように投げた。

 

切り上げを剣で滑らせながら避け、ある一点を突いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「我流、朧太刀零式。」

 

 

 

 

 

 

試合は終了した。

俺は息を調えながら意識を平和に移し変え、思考を戦闘モードから平和的なそれにする。

 

もう何も考えたくない・・・あ、違ったこれだらける思考モードだった。

 

「な・・・何が起こったのですか?師匠が動揺したところなんて見たところありませんよ!?」

 

「ああ、私も知りたいねぇ、まさか剣が消えるとは・・・答え合わせはないのかい?」

 

・・・えぇ俺あんまり話したくないのに・・・次はきかなそうだから、話すか。

 

「あの技は・・・視覚の盲点を突いたものです。」

 

「「盲点?」」

 

「人間の目には必ず見えない点のことです、よくあるじゃないですか二つの点があって片目塞いで片方だけ見て顔を近づけたり、引いたりして二つの一点が消える奴。」

 

「「・・・。」」

 

「アレを意図的に創りそれを突くのが朧太刀零式です。」

 

「・・・普通じゃないね君は。」

 

「普通なことをしていたら勝てない、殺し合い(しあい。)でしたから。」

 

・・・ああ、それにしても気持ち悪い動き回ったし。

 

 

 

             

あれ?そういえば視線の主ががががががががががががが・・・。

 

 

 

 

 

 

 

「ん?ああ、すまないがちょっと眠っててくれ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺はそのあと数回の手あわせをし今後のことなどを話し合ってその道場を後にした。

 

 




技は某推理漫画から抜粋


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短 短 短 その二

これは、環境が変化したとある歪な関係が形成されている二世帯住宅に住んでいる人たちの環境が変わり、そのあとの日常話である。

 

 

【入学式前。】

 

桜が芽吹きそうな季節のこと、とある小学校では入学式が行われている。

 

都立越河小学校入学式と、書かれた看板の周りに少年少女たちが好奇心旺盛な目をせわしなく躍らせ、来る新たな生活に期待と不安に胸躍らせているところに一人、異質な少年がいたその少年は目を腐らせ、周りにいる人間つまり先の少年少女たちをただ一人ねめつけて空を仰ぐ。そして、溜まったトレスを吐き出すように深呼吸して・・・言った

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・クソガキが多い。」

 

「あなたもそれですよ?」

 

俺は入学式に来ていた、場所は前から決まっていたらしく、どこかの私立へ受験しろ、とのお達しも無かった。そこが唯一の救いである・・・何か裏があるのは俺の気のせいか?。

 

「さて・・・今回は・・・。」

 

「まて。」

 

裏の前にこっちの表を回避せねばッ!。

お手伝いさんは、なぜか俺のことをカメラで撮りたがる。俺はカメラが苦手なのに、ペーパー師匠並みに撮りたがるのだ。因みに俺も撮るのは好きである。

 

「撮りますよ?大丈夫ですデータはパソコンに移しました。」

 

「めんどくさいことを・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」

 

「因みに32GBのマイクロSD三枚にバックアップして家の各所にばら撒いてあります。」

 

「それじゃああのパソコンのスペックじゃあ確実に止められる!。」

どうしてそこまで・・・・。

 

 

注:パソコンのスペック・・・十年前に買った奴=オンボロ、なぜ動いているのか分からない。

 

 

クソ・・・いつか消してやる・・・。

 

 

 

【入学式中。】

 

針の筵だな、餓鬼臭くてかなわない。これからの生活にワクワクさせている目だ、あまり変わらないのに・・・ただ、基本的には世話する人が通常二人から一人増え、三人になっただけなのだそこに差異はない。

 

けど・・・まあ、こういうのも久しぶり・・・って言うか無いからな。

 

楽しむのも一興だろう。

 

 

 

【入学式後】

 

入学式が終わり、俺の担任になるであろう女教師が立ち、顔合わせをするときの話ををしていた。

 

「皆さん入学おめでとうございます。皆さんは(略)。」

 

そんな教師の声を聞き流し俺は二つの懸案事項を抱えていた。

まず一つ目。一つ目はこの学校・・・俺の体の親類が、あの、育てれば良いやと考えている(であろう)あの人たちは恐らく、かなり厳しい教育をさせると思ったのだが・・・この有様だ。だが・・・何か裏がありそうなのだ。

 

そしてもう一つの懸案事項・・・それは・・・・・・・・・・・・・・。

 

 

シュバババババババババババババババババババババババババババババババババババババッ

パシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャ

 

 

このお手伝いさんだ。あの人は写真のことになると性格が変わる、あのような超人的なことをやってのけるパソコンを開いてフォルダ開いてみたら、陸海空ありとあらゆる写真が入っていた。いや、もう写真とかいいだろ?これでもかってぐらい撮るなよ、あのやろう移動できないのをいいことに・・・。

 

どうやって出来るんだよその先生の視界から入らずに写真撮る技術、どう考えても無駄だろ?しかもこれよく見てみたらかなり良い感じに撮れてるし・・・もういいのか?もう諦めてもいいのか?

 

・・・いやよくない言い訳が無いだろう。

 

つーかそれで飯食っていけるよ。こんなにむしろアイドルや女優の撮影現場に突撃して行っても只だよ、そして売れるよきっと。

 

まあ、周りの人たちは気づいているし・・・はぁ、俺の周りには変な人しか居ないのか・・・どうなるんだろうな・・・学校生活。

 

 

 

 

こうして、奇しくも彼もまた周りと同じ状態に立ったのだった。

 

 

【残された人。】

 

どうも、大高です。

 

いきなりですが暇です。

 

康一様が居ないとこんなにも静かなんですね、片付けなどもはかどって仕方がありません。ですが、あの忙しく騒がしくとも、楽しかったあの日々は何にも代えられない様な気がします。

 

 

ですから私は、今日も康一様の帰りを待つことにしましょう。

 

 

「ただいま。」

 

「お帰りなさいませ。」

 

 

楽しいのです、あなたと居ると。

 

 

 



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小学 人 本

少年が座っている。

 

茣蓙を敷き、空き缶を置き腐った目で大通りの人々を見ていた。

 

人々の視線が少年に突き刺さる。針のむしろと形容できるレベルの奇異の視線を少年に当てられ、同じ年の子供であればすぐにでも逃げ出すような場所が形成されているところに少年は居た。

 

同じ行動を繰り返し少年の精神が磨耗していく・・・。

 

「今日は金が少ないな・・・。」

 

まるでそれだけが今日と言う日を確固足るものとしているかのように・・・。

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これは、語るまでもない記憶の話。

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俺がこの世界に来てから八年、今現在の俺の肩書きは小学二年生・・・それと、ネット上で言うボッチだ。

 

いじめられるタイプの。

 

まあ、意図的にそうしたんだけどね。けどここの小学校の要素の一つに半私立と言う要素があるゆえに、そこまで過激じゃないせいぜい殴ったり物にいたずら書きくらいだ。

 

因みに半私立と言うのは俺の勝手な解釈の元の造語である。ここは私立藍越学園の地域密着型コネクションを十分に受けたことによって成立している稀な小学校だからだ。仕組み的には私立藍越学園の理事長(トップ以降トップと表記)が学校を立ち上げ、そこで地域密着型の教育理念を作り実行し成功させるそれを一世代続け、学園からの出身者を政権に食い込ませ同時にトップのまたはトップの親族の意思を食い込ませる。そんなことを長年し続けてこの学校が生まれたわけだ。簡単に言うとこんな感じである

 

それゆえに生徒の気性は穏やかなものだが、俺はある目的のために、人心掌握の技の一つ、ヘイトスピーチを俺以外の誰かにやらせ自分のヘイト値を上げ暴力を振るわれたことは数知れず、と言った状況を作り上げた。まあ、頭が切れる奴も居なかったので陰湿的なそれに出てくることが無かったのが幸いだ、証拠も残してあるわけだし、それなりの()()はいつか払って貰う事にする。

 

まあ、力を受け流したり偶然を装って返したり、嗜虐心を掻き立てさせるような技術は身につけられたからいいんだけどね。

 

と一人でそんなことを考えながらぼんやりとこの日最後の授業を聞いていた。

 

向こうの世界の俺はドが付くほどのバカであったと推測できる、向こうでもボッチだったし、うんボッチだな、ボッチサイコー。

 

だが、こんなところで基礎の基礎の基礎から勉強されてれば点数だって上がるというものだろう。元々金やリスクリターンの計算は得意だったし(数学)人を騙すには文章力も必要になってくる(国語)それに過去のことを掘り返しておかないと、後々めんどくさくなったから記憶力だっていいはずであるし(歴史)人体に直接的なダメージを与えるためにはそれを学ばなければならなかったしな(理科。)

 

というわけで学力は問題ない水準に達しているし、点数も五十八十点台にキープしているので目立つとかそういう言葉に関わることのないような生活を送れている。

 

そういえば過去のことといったら、ここ最近の状況のファクターとなったのはIS《インフィニット・ストラトス》の発表か・・・。

 

この兵器は・・・ぶっちゃけ言っちまえば、最強の鎧といったところか・・・女にしか扱えないという最大の欠陥を抱えた・・・。

 

・・・ここで、女子が調子に乗りまくるという暴挙に出たのだった。

 

 

 

 

 

 

俺関係ねー、完膚無きまでにかんけいねー、奴隷の所有者がクラスから女子になっただけじゃない。アハハハハハハハハハハハハハハ。笑えねえ。

 

あぁ。これで・・・俺の心配は杞憂になったんだなあ・・・。

 

 

 

そんなことは置いといて剣術のことだ三年近くで背も少しは伸びたし多少は強くなっているだろう。

 

 

キーンコーンカーンコーン。

 

 

あ、今日の授業が終わった。ラッキーえっとこれで・・・教室から退散するかな。

 

 

何故なら情報収集は大切だからねえ。

おっと不本意にも笑っていたらしい、さて怪しまれない内に図書館で時間を潰すとするか。

 

俺は、いつ買ったかわからない、いつの間にか持っていた某音楽プレイヤーの付属品のようなイヤホンをつけて廊下を駆けた。

 

 

図書館。

 

いつも俺が居る校舎の反対側に存在する(H型の校舎ゆえのこと。)図書館に時間を潰すため行った。俺は全く持って顔が割れてないからな、いじめを受けずに通り過ぎることも可能だ。

 

しかし・・・。

 

「ここも人が少ないよな・・・。本って学校でも読める情報媒体だぞ?なぜ活用しない・・・。」

 

もっと新聞とか・・・ごめんなんでもない、けど本は読んで置いて損もないし話の種が作れるし見聞とかも広がるし知識は入れて損はない、大切なことだから二回言いました。

 

「そんなこと思うのはお前ぐらいしか居ないだろう。」

 

視界には居なかったが居ると予想していたが、やはりと言っていいのか本を借りるカウンターから俺はこの二年で顔なじみとなった司書さんに声を掛けられた。

 

「うるさい腐れババア。」

 

「殺すぞクソガキ。」

 

と、これまたこの二年で御馴染みとなった掛け合いをした。非常に非生産的である。

 

「つーか、こんなラノベか学術書しかない図書館に来る餓鬼はいねえ。」

 

「逆に聞くぞ、何でそんな二極化が進んだんだ?そっちのほうが謎だ。」

 

この図書館の配置は八個の本棚と四個の回転棚で構成され、前者は学術書、後者はラノベと言った極端すぎる二極化が進んでいる。どうしてこうなった、と事情を知らない人間十人から見たら十人共にそう思うカオスを生み出していた。

 

因みに、ラノベについて突っ込むと司書さんは黙る。何故ならこの人の趣味で仕入れているからだ。いい年して何を読んでるんだか・・・と思ったのだが、今では同じ穴のムジナだ先の言葉を司書さんに吐き捨てたら・・・。

 

『だったら読んでみろコラァ!!。』

 

とすごまれたので、読んでみた結果これが穴に落ちるように嵌ったのだ。字は間違えては居ない。最初は学術書(あるとは思わなかったが)を読もうと思ったのが・・・今では七対三でラノベを見ている。

 

「いや、あんた事情は知っているだろ?。それに原因が居るから辞めときな。」

 

「え?ちっこいの居るの?」

 

と聞き返した結果、カウンターから本が飛翔し見事なスピードと精度で俺の眉間にヒットした。少し痛みと怒りに悶えながら右手で着弾点をさすりながら俺は発射した人に話しかける。

 

「おーい、いつもながら痛いんですけどー。」

 

「・・・。」

 

・・・これもいつもの定型文だ、俺が問いかけるがこいつは何にも話さない顔も一回しか見たことが無い、カウンターの下にいつも隠れて学術書を読んでいるからだ。

 

そして、このお方が図書館二極化の要因の一つである名前は知らないが半私立の原因の私立の理事長の娘らしい。そして俺と同い年で・・・生まれたときから、この図書室を作っていたらしい。八年で作ったんですか?これ・・・。

 

「ちっこいのって言うんじゃないよ。気にする人は気にするんだから。」

 

「以上、背も高くてスレンダーな司書さんのお言葉でした。」

 

「ちょ?!なに最悪のタイミングでおべっか使ってる!!?。ちょ、投げないで?!。」

 

スコーン、とまさに芸術的な角度で眉間に当たり司書さんがこちらを睨んできた。

 

「え?矛先俺?」

 

「そうだ!お前が居なければ!!。」

 

「投げるほうも悪いだろ!?。」

 

「怒るにしても、権力がチラつくんだよ!!。」

 

「予想以上に生々しい理由だった!!。」

 

「覚悟ォ!!」

 

鬼のような形相で俺に司書さんが体当たりしてきて、それを紙一重でかわす。

それを皮切りに・・・。

 

チェイス・イン・ジュニアスクールライブラリー(棒)・・・スタート。

 

『ギャー、ちょ待って!!』『逃がすかァ!!』『オウワッ!?えッ?本棚が!!。』バターン!!『おい!一瞬遅かったら死んでるぞ!?』『コロコロコロコロッ!!』『そのコロってなに!?』

 

そんな音声をBGMに呟きが訪れた。

 

 

「図書館では静かにしましょう。」

 

 

 

そしてチェイスから三十分程度たち・・・教室に戻ってきた。

 

「えっと。ここに・・・。」

 

と、取り出したのはICレコーダー。かなり集音機能が高いやつだ。

それの録音を切りポケットに入れた俺は家路に入った。

 

 

ここ最近分かったことだが、親は子供にかなり重要なことまで喋るらしい、それをここで子供がぽろっと喋る・・・その家族の状況と情報が入り当人の行動を推測でき、それによって起きた行動がほかの子供に行動の因子を与え、その子供が親に話し親の行動をきめ・・・とこんなループになって行動を予測するのだ。

 

予測した上で、ヘイトスピーチをさせる人物を挙げる。

 

因みに、その人たちの条件は親が金を持っていると言うこと。

 

 

これから、俺は俺の生活を良くする為に動いていこう。

 

 

これからの、目標だ。



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短 短 短 その三

これはとある歪な関係が形成されている二世帯住宅に住んでいる男女の日常の話である。

 

【図書館。】

 

そこは都立越河小学校・・・の図書室。

 

どうも、俺こと相澤康一はただいま一年生だ。俺は放課後に学校探索がてら回っているところに・・・図書室を見つけた。

 

・・・どうするか。・・・うん帰ろう←ヘタレ。

 

と俺は、なぜか嫌な予感がする図書室の扉から踵を返した「おっ客?入れ。」誰のことだろうなぁ、あっはっはっは。

 

俺かァァァァァァァァァァァァァァァ!!!。

 

すごい展開力!!いつの間にかテーブルに座らされているし!。

 

「コーヒー?紅茶?それとも、た・わ・し?」

 

「洗浄器具になってる!?」

 

「はい、たわs「紅茶で!!。」ちっ。」

 

なぜあなたは手に持った、たわしと俺を仇敵のように持っている・・・・?

 

それより・・・このお方は・・・そしてこの図書館・・・変わっている。

 

変わっていることその一、何で司書さん(仮称)タバコくわえてるんだよ。火事とかになったらどうするんだ?

変わっていることその二、それ私服だよね?俺の服の語彙では言い表せないため、たぶんは出過ぎないパンクファッションぐらいだろう。

変わっていることその三、なんで、コーヒー紅茶が常備されてんだよ。本に掛かっちゃったどうするんだよ。

 

とまあ、このように細かいところを挙げていけばきりが無いので割愛させていただくむしろ、これから先何の益も無い話がだらだらと続いてまた来ると言っただけだから割愛させていただく。

 

 

【食事。】

 

あ、どうも最近康一様が居なくて少し寂しい大高です。

 

ですが、食事のときは一緒に居ることにしています・・・量が、量があるので。

 

さて・・・どうしましょうこの大量の桃。二箱の桃って見たことありませんよ?最近帰りが遅いと思っていたらどこまで行ってるんですか?これ山梨ですよ?山梨、確かに隣の県ですけれども

 

野草をそこらへんで取っていた康一様ですが近頃は普通の野菜まで持ってくるようになりました。ですが、形が不揃いだったり、少し痛んでいるのもあります。基本的に料理を作るのは私なんですからそこらへんも考慮してもらいたいものです。

 

「野草の天ぷらやっほー。」

 

あ、康一様が二階から降りてきました。よくも目ざとくご飯が出来ているタイミングがわかりますね・・・この人は・・・。

 

「しかし、お手伝いさんもよくここまで野草のレパートリー増やしたねぇ。」

 

「そりゃあもう、二年間ぐらい採り続けていればそれなりに増えるでしょう。・・・それとどうするんですか?これ?」

 

「いや・・・交渉の結果・・・こうなりました。」

 

「かなりはしょりましたねぇ!?」

 

そしてなぜ、交渉の結果の前後を濁したのですか!?。

 

「まあ、そのままでも、もちろん、凍らせてシャーベットみたくして食べてもいいしジュースにしてもいいしね。」

 

「なるほど・・・では当分は桃だけになると言うことですか。」

 

「あ・・・まあ、小腹が空いたときにでも。」

 

「はぁ・・・またですか。まあいいでしょう、それでは、頂きます。」

 

「頂きます。」

 

このあとの生活が桃だらけになったり、康一様がどこかに失踪していたりしていましたが・・・今は、そんなことも知らずただただこの平和を受け入れていました。

 

 

 

【優雅な小学校。】

 

そこは、都立越河小学校のとある一室。そこには放課後特有の西日が俺に痛いほどに差込まれ、優雅なティータイムを妨害してくる。だが俺はそれを物ともせずに、手に持ったティーカップを口へと運ぶ。ああ、すばらしきかな人生。その一言がそのときを糧として脳内を駆け巡る。

 

一息ついたところで、俺は周りを見渡す・・・周りの景色を見て、一言。

 

「ああ、なんて優雅なんだ。」

 

ティーカップ片手にゆっくりしながら紅茶を注ぐ、これに勝る快感は無いな・・・うん。

 

「馴染み過ぎだわ!!。本当に!かなり前から思ってるけど、最初期のあのおどおどしさはどこへ行った!!。」

 

「おめーに感化されたんだよ。」

 

「・・・クッ、それは否めない・・・。」

 

「だろ?」

 

といいながら、紅茶を啜る。

 

全く、この人はお茶しか用意しないな、もっと、こう・・・小洒落たようなお菓子とか、かわな・・・作らないのかね?。

 

「脳内でわたしのハードル上げなかったか?」

 

「いえいえ、滅相も御座いません。」

 

「・・・そうか。」

 

・・・ふぅ、何とか尋問の手から逃れたか・・・。

 

「あ、何読んでるの?」

 

「宇宙人、未来人、超能力者、神様に普通の人が出てくる奴。」

 

「なる・・・新刊入荷したよ。」

 

「マジ?これ見終わったらいくわ。・・・ズズッ、おかわり。」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・はい。」

 

「あんがと・・・行きつけの喫茶店よりまず・・・何でもありません。」

 

そこまで睨まなくてもいいじゃん・・・。

 

「今度言ったら眼球スープを作る。」

 

「そ・・・そこまでして俺のことを?」

 

 

 

「ああ、憎んでるよ。」

「もてなしてくれるの?」

 

 

 

「「ん?」」

 

「おまっ「分かってる!冗談だから!!。」

 

ふぅ、ボケるのも命がけだな。さて、フォローフォローっと。

 

「・・・それに、紅茶がここに来ている理由じゃないし。」

 

「・・・・・・・・・・・・・そうだったな。」

 

あっれェェェェェェェェェッ?そっち?一年ちょっと位の前の話だろ?なんで掘り返すの?あなたの中では終わっていないのかね?

 

「いんや?あんまり気にしなくていいよ?あれは・・・事件だし、もう終わったものだ。」

 

「それでも!。」

 

「あなたが背負うことではないですよ?どこかで、俺が耐えていなかったらこんなことにはならなかっただろうし・・・それに、俺はまだ生きているし、何より本人が言っているんだ・・・だから・・・。」

 

つーか、もう気にしないで。頼むから、俺が勝手にやって勝手に。

 

上の「」内の言葉を言ったら黙ったな。ラッキー。

 

「俺に飲み物を上納しろ!!」

 

「そっちかい!!。」

 

 

・・・うん、俺たちはこのぐらいのふざけた関係がいいな。

 

そう再認識して、残った紅茶をのどに流し込む。

 

 

 

 

「まあ、辛いかもしれないけど。六年間よろしく。」

 

「・・・ああ、こちらこそ。」

 

「俺のお茶くm「やんねぇよ!。」

 



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離 独 心

少年は成長し、青年となった。

青年を中心に周りを囲って居る仲間と共に酒を酌み交わしている。そうとは気づかない創られた笑顔で・・・。彼は時に饒舌に喋り、時に黙する所で黙し、時に人を制した。

 

そう彼の意識とは無関係に・・・喋っていた。

 

 

青年を囲んで飲み交わしていた会は終わり、彼は閑散とした路地を通る・・・。

 

 

「チクショウ・・・。」

 

__________________________

___________________

___________

 

これは、彼が作られた記憶の話。

___________

___________________

__________________________

 

 

・・・卒業。俺は今小学校の卒業式を迎えている。

 

キングクリムゾンしすぎとか言わないで。語るのが辛くなってるから。

この六年間は辛かった、得に一年生のとき・・・あいつらは人じゃねえ、動物だ。

 

まあ、そんなところに居たおかげで、リターンも得られたんだからいいけどね。とある事件によって俺の口座に毎月二十万ぐらい入ってくるし。中学校生活ではかなり裕福な暮らしが出来るだろう。親も金与えれば文句は言わないと思ってるし親からは一ヶ月に五万払ってくれている。

 

つまり、金銭面では俺最強。

 

まあ、それなりの対価は払ったつもりだから・・・違法ではないよ!。

 

しかし・・・いろいろなことがあったなぁ・・・海渡ったりとか、体質とか(転生特典らしい)先生がどっか行ったりだとか、海渡ったりとか・・・あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああッ!!!

 

 

思い出したくねえ!!。あったのは人との出会いと、面倒ごとだけだ!!そんなんだったら絶対に!絶対に!!

 

「平和だ!俺は平和に暮らすんだァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!。」

 

あれ?・・・なにこれ・・・口に出してたパターン?みんなポカーンってしてるし。・・・。

 

「あっ・・・どうぞ皆様、御気になさらず。」

 

((((((((((逆に気になるわ!!!。))))))))))

 

 

なんか心の叫びのようなものが聞こえてきたような気がしたが・・・。なんでもないか・・・。

 

 

 

 

 

たるかった卒業式も終わり別れを惜しんで泣いている人たちを尻目に家路に帰ることにした・・・先生たちの見送りとかあるらしいけどめんどくさいしな。

 

さて、俺は家に帰って潤沢な資金で買ったゲームでもしましょうかね・・・。

 

と、そんな堕落思考を頭にへばり付かせながら、妙に高揚した気分で某音楽プレイヤーの付属品のような白いイヤホンをつけながらこの学校を去ろうとしたとき・・・。

 

「おい、こらそこの問題児。まだやることがあるだろ。」

 

「おいなんだ、腐れババア。司書の仕事はどうした。」

 

俺は白いイヤホンを片耳につけたところに、後ろから声を掛けられた。六年間で御馴染みとなった返しをしたところから司書さんと判断した。・・・しかし何なんだ?司書は学校の生徒に深入りしないと言う不文律が・・・いや、小学校をラノベと漫画(最近入荷もう見れないけどな。)まみれにした人間に不文律と言う言葉が通じるわけない。

と、理由を推測しながら、六年間(非常に不本意だが)世話になった人物に対面し対話した。

 

「そんなもん、どうでもいい・・・あの事件でお前を相手にする先生が居なくなったからな、私ぐらい見送りしなきゃな。」

 

「オツトメゴクローサマデシタ。」

 

心底どうでもいいような声で返事する。

 

「・・・はぁ。」

 

司書さんは呆れたように深いため息をつきながら俺に近づき・・・。

 

バシン!!。

 

デコピンをした。俺は何を言いたいのだか分からず怪訝な顔で司書さんを見た。

 

「何するんですか?」

 

「私言ったよな?そういう態度は敵しか作らんから辞めろって。」

 

「・・・努力はしている。」

意図的にやったのに何を言ってるんだ・・・。

 

「あぁもう!元気でな!!。」

 

「それじゃあ、また。」

 

司書さんは苛立ちながら俺を送った。その顔はどこか悲しそうで・・・。なんかえもいわれぬ気持ちになった。

 

 

ズキン!!

 

 

 

そして再び家路に着き・・・。

 

あぁ・・・。嘘をついた・・・。意図的なのに努力?バカじゃねーの?俺。やめる事だって出来るよ。むしろ逆の立ち位置に立つことだって出来るよ。めんどくさいけど。

 

しかし、この六年を生きて・・・本当に辛かった。回りの人間や、面倒ごとに巻き込まれる俺や・・・周りの普通の人間への羨望。

 

人によって多々あるが、みんな愛情なんてものをさも当然のように受け取っている・・・。

それを見て・・・俺は、汚い感情が湧き出てしまった・・・たぶん嫉妬だろうな。

 

 

前世では俺は愛情なんてものは言葉や文章だけのものだと思っていた。前の世界・・・いや俺の周りにある世界だけかもしれないが・・・暴力、憎悪なんてものは当たり前な世界ビジネスだけで人間関係が取り持たされていた。

 

・・・だがこの世界に来たとき本物・・・といっては語弊があるかもしれないが、愛情を・・・俺が知らないそれを受けていると・・・本能的に察知した、してしまった。

 

そこからだ俺の中に汚い感情が生まれたのは。

 

「・・・愛情?・・・何だ?それ?。」

 

呟いた、口からいきなり出てしまったことに驚き、とっさに口元に手を当てた。

 

ああぁ、なんて俺らしくもない・・・もっと外道に、もっと狡猾に・・・。

 

   心を堕落させていくんだ

 

取りとめもないことを考えながら歩いたら家に着いていた。

 

 

 

 

 

 

 

「ただいま。」

 

お手伝いさんが帰ってこない。どうやら、別れの時期だし・・・ね?もしかしたら・・・。

 

と、そんな取り留めのないことを考えながら冷蔵庫にあるお茶を取りに行く。

それからテレビ、ネット、新聞と時間潰しを極めた俺の行動で三時間後・・・ここで、俺は帰りの遅さから、直感的に別れを感じていた。

 

ガチャッ

 

どうやらお手伝いさんが帰ってきたらしい・・・。俺は出迎えた・・・うん、依頼主に何か言われたね。そういう顔をしている。

 

「康一様。」

「康一でいいって言ってるでしょ?」

 

いつもは『康一でいいっつってんだろ?』と粗暴な言葉だが、物腰柔らかい口調にした。

 

そしたら、何かを察したらしくお手伝いさんは言った。

 

「私は今日限りで家政婦の任を解かれました。」

 

・・・やっぱりな。まあ十二年程度の付き合いだ人生にはよくあるさ・・・高々二十ぐらい

しか生きていない人間が何を言ってるかと、この状況を正確に把握している人から見たら・・・思うだろうなぁ。

 

「そうかい、お疲れさん。」

 

と俺はことば道理に言った。

 

「・・・色々、ありましたね。」

 

実際にあったので「はい」と返しておいた。

 

「私はあなたが生まれてからそばに居ましたが・・・もうこれで終わりですね・・・ふっふっ。何でしょう?言いたいことが色々あったはずなのに・・・喋れなくなってしまいます。」

 

「そうか。」

 

俺は何にも言えない・・・ビジネス的な関係だと割り切っている・・・からだ。

そしてお手伝いさんは・・・真剣なまなざしで、一言一言を噛み締めるように言った。

 

「けど、これだけは言わせて貰います・・・あのときのように、死なないでください、元気で、平和に過ごしてください。・・・それでは。」

 

「じゃあね~。」

 

俺は至極軽めに返答をし・・・お手伝いさんが扉を閉めた。

 

「・・・はぁ、やっと終わったか。」

 

俺にとっての枷になっていたお手伝いさんが居なくなった。これで何もかも自由に居られる・・・。

 

 

ズキン!!

 

 

それから俺は・・・自由だ、と自分に言い聞かせるように自室に向かった・・・。

 

、何かを振り切るように頭を思考で塗りつぶし、目を塞ぐように情報を入れて・・・。

 

 

 

 

そして、胸の中で鳴った音を振り払うように心を塞いだ・・・。

 

 

 

 

 



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原作開始編
原作開始プロローグの初めのようなもの


やあ、俺だ、相澤康一だ・・・前回、小学校の卒業をして今は春休みになっている。

 

春は出会いと別れの季節というのは、この世の定説である。それに則り俺も色んな事があった小学校の春・・・に近い季節で別れを、俺がこの世界の右も左も分からないところでいちいち説明してくれたお手伝いさんやノリ突っ込みが激しい図書館の司書さん・・・それにちっこいの。

 

ビクッ。

 

あ、そうか・・・もう宙を舞う本にビクつかなくてもいいのか・・・。といった少々の感傷を交えつつ出会いをつまり中学校入学式を待っていたのが。・・・待たなくても良かったらしい。

 

「ねえねえ、お兄ちゃん!ここ使っていい?」

 

と一人の少女が指を一つの部屋に刺した

 

「勝手にしろ・・・。」

 

「つめたーい。」

 

とあからさまに頬を膨らませる

 

「近くにいまだにあったか~いの自販があるぞ。」

 

的外れな回答をしておいた。

 

「日本じゃお金で心の暖かさが買えるのかい?」

 

「金ばら撒きゃ寄って来るだろ?つまりはそういうことだ。」

 

「うん相変わらず下衆だね!。」

 

「だろう?」ドヤァ

 

「そんな顔して言うことじゃない!?」

 

むむっそうなのか?

 

このようにウロチョロしている少女がホームステイ・・・いや、この少女が言うには・・・。

 

 

『やあやあ、どうも!血縁関係上は家族ではありませんが書類上家族になりました相澤一葉(かずは)です!!血は繋がっていないので、ハスハスし放題ですよ!!。お帰りなさいあなた、ハスハスします?それともハスハス?それともわた『うるせぇ!』ギャン!!な、殴りましたね!父さんにも殴られたことがなかったのに!!『いきなりガンダムネタを挟んでくるんじゃねえよ!!。それにお前親が行方不明だっただろ。』あっそうでしたね。』

 

 

 

とのことらしい、因みに前述の会話で分かる通りこの少女と俺は前にも出会っている

 

え?どこで出会ったのかって?・・・・・・・・・・・・ドイツですが・・・何か?。

 

まあ、いつでも思い出せるくらいの衝撃的な出来事だったから忘れるわけないだろう・・・だから、俺はこの話題を小説作家の没原稿のごとく放り出し暇だったので食事の準備をしながらこの少女と話すことにした。

 

「なあ、どうやってお前は血縁に潜り込んだんだ?」

 

「ちょろっと、両方から・・・『貴様らを社会的に抹殺し、表舞台に立てなくしてやるけどどうする?』って言ったら快「くねえな。それ」そう?」

 

「それが快いと定義できるのならこの世は平和に満ち溢れることになるだろうな。ちょっそこの小麦粉取って」

 

「やったね、世界平和!。はい小麦粉。」

 

「平和じゃねえから言ってるんだろ?お前のところも何時瓦解するかわかんらんだろうし。」

 

「まあ、世界中のネットワークを駆使すれば世界大戦だって乗り切れるよ、そういうところだもん。」

 

「まあ、そうだけどな。そのときは俺も生き残れるようになにとぞよろしくお願いします」

 

「媚びた!?」

 

「どうか、わたくしめに慈悲を!!。」

 

「媚びる限度がない!?。」

 

「慈悲=たまねぎ二個。」

 

「取れってか!?・・・・・・・・・・・・どこにあるの?」

 

「そこの突き当たりの棚の一番下。」

 

「あった。はい。」

 

「ありがと。」

 

数十分立ち・・・。

 

「ご飯ですよー!!。」

 

「あれ?なんか桃○風の顔になってる・・・。」

 

「因みにそれは出ないぞ。そして今日はてんぷらだ」

 

「・・・かき揚げは分かる・・・けど、その横の緑の物体はなに?」

 

「ふきのとう。・・・のてんぷら。」

 

「・・・お兄ちゃんに料理を作ろうと思ってスーパー行って来たけどそんなのはなかったよ?」

 

「山菜、取ってきたんだ。どうする?苦手なら下げるけど?」

 

「食べます!食べさせてください!。」

 

「そうか、じゃあ手を合わせて・・・いただきます。」

 

「いただきます。」

 

「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」」

 

 

「何でなじんでるの私!?」

 

「どうした急に?。」

 

なんか一葉が騒ぎ出したぞ・・・何かしたか俺?

 

「どうしたもこうしたもないよ!素晴らしい位に馴染んでるよ!。」

 

「いいじゃねえか、口に米粒。そして落ち着いて食え喰らえ、若いうちは体が資本だ。」

 

「・・・若い人に言われたくない。」

 

「そうか。食え。」

 

「腑に落ちない。・・・なんで妙に美味しいの?」

 

「それはね、愛情みたいな何かを捨てているからだよ。」

 

「それは捨てちゃだめな奴だよね!?入れる奴だよね!?」

 

「そうだっけ?。」

 

「そうだよ。」

 

「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」

 

 

「「ご馳走様でした。」」

 

「洗物はやっちゃうね。」

 

「いや客にそんなことはさせられない。」

 

「馴染んでなかった!!。」

 

まあ、そんなこんなやって新たに一人含めた新たな生活は幕をあけることになるのだった。

 

 

一葉を出したかっただけなんだけどね。BY作者

 

 



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むしろこっちがプロローグでも良かったんじゃないか?という話

【第六感というものを信じるだろうか、俺は・・・信じる、盲信ではないがかなりの比重を持っていると自覚している。今世でいやというほどに助けられたしな・・・。

 

だが、絶対に固定概念から外れたそれは、時に途轍もなく信じられないものになってくる・・・そしてもし、勘が当たっていたら・・・。

 

 

 

思考がとまり、完全に無防備になるだろう。そういう話である。】

 

 

 

 

今俺は受験生になっている・・・つーか、今受験だ。

 

俺の小学校の半私立(俺が作った造語。)と言う特性上かなり変な授業(シーケンス制御やプログラミングに農業体験、ガラス細工体験もあれば、演劇の公演も見に行った。さらには女子はインフィニット・ストラトス、通称ISにまで網羅させようとしている。)がある。そしてその大元の高校・・・つまり藍越学園の生活はもちろん、受験にもかなり有利に働いてくるというわけだ。

 

進学率も就職率も高いしそりゃあ行くことになるでしょうね。

 

進学までしてやりたいことないしなぁ・・・。

 

とそんな、後ろ向きな考え方を頭にに残しながら試験会場に行くため電車に乗った。

 

いつからか、気づいたときにはもう持っていた某音楽プレイヤーの付属品のような、それで居てなぜか高音質なイヤホンを耳につけ、お気に入りの音楽を聴きながら、車窓の景色をただ呆然と眺めていた。

 

寝ていても(この場合は比喩表現。)受験に受かるので、その景色を呆然と眺める暇な時間はこのところの生活を思い返していた。

 

俺が”あの事件”のあと小学校を卒業し義務教育の二段階目である中学校ではすでに男女差によるパワーバランスが崩壊していた、物心と言うものがすでに付きに付き捲っているころだから、女子が高圧的になっていたのは想像に難くないところだった。

 

因みに俺はのらりくらりとかわしていたから実質的被害はかなり少なかったが、ほかの男子は卑屈になるしかない。容姿がよければ女子の奴隷かおもちゃにされ、逆なら人というものが少なからず持っている、加虐精神の矛先にされた。

 

俺の周りはそんな程度だ。

 

だが私生活の部分のターニングポイントがあった、あ、これは俺に関するところだから重要ね。

 

そしてそのターニングポイントは、この三年で、この体の母親と父親が顔を現した・・・そこで聞いたのだが、母はISの研究に、父はその血筋ゆえの外交を担当しているらしい。その血筋ってのは詳しくは分からないが・・・。

 

 

『○○市民会館前~○○市民会館前~』

 

おっと、ここまでにしておくか・・・。そこで思考を打ち切り、受験会場に行った

 

しかし、受験会場が遠い・・・去年に起きたカンニング方法の対策らしい、とりあえずそんなカンニングを思いついた奴に呪詛を送っといてやろう、何でこんなに移動しなきゃいけないんだ。

 

 

 

 

・・・呪詛を本格的な物にしたほうがいいのかもしれない。

 

 

「迷ったーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!。」

 

おい・・・なんだよこれ迷うよ!地元の人間でもない限り迷うよ!!なんでこんなに迷路じみてるの?設計者出て来い!お年寄りに配慮しろ!市民会館だろ!?・・・不毛だ。

 

さて・・・どうするか・・・。

 

・・・何してもいいから試験会場にたどり着くしかないだろ。

 

とりあえず適当に探してまわ・・・。

 

 

「あっ。そこの人!。」

 

「ん?」

 

 

なんか後ろから声を掛けられた。

俺は声の方向を見ると、どこか愛嬌を持たせた顔立ち・・・いわゆるイケメンだろうか?そんな、顔だけでも特徴的な少年がこちらに声を掛けてきた。

 

・・・この十五年間で培われた危険センサーが俺の脳内でガンガンと警鐘を鳴らしているのはなぜだ。そんなに危険なのか?このセンサーよ。

 

因みにこのセンサーがなっていいことは一つもなかった。そんなことはどうでもいいから地平線上の彼方にひとまず吹き飛ばしておこう、まずは新たな登場人物との会話を優先させる。

 

「えっと・・・さっき、迷ったって叫んでたけど・・・あんたも迷子か?。」

 

「ああ、・・・まさか迷う人が俺以外に居るとは・・・。」

 

「そこは突っ込まないでくれ・・・。」

 

「了解。そんで・・・どこ行く?」

 

「勘でこっち!。」

 

「・・・大丈夫なのだろうか。」

 

「なんか言った?」

 

「何も。」

 

とりあえず会話は成功・・・同年代だと俺って言う自称が適当だろう。

どんどんと迷子の少年が突き進んでいく・・・ちょっ警鐘うるさい!。・・・それにしても、イケメンと仲良くなると・・・被害が。

 

・・・そういえば少年と言う呼称を改めたほうがいいな。

 

「なあ、お前さ。」

 

「なに?」

 

「名前なんていうの?」

 

「ああ、ごめん名前言ってなかったか・・・俺は織斑 一夏だ。一夏でいい。」

 

「よろしく一夏、それと俺は相澤(あいざわ) 康一(こういち)だ。忘れないでもらえると助かる。」

 

「出来る限りな~。」

 

「酷い!?」

 

「ジョークだ。」

 

「・・・ギャグセンス無いって言われない?」

 

「・・・言われる。」

 

 

そうこうしているうちに・・・うっせんだよ!!危険センサー!!。

 

頭の中で警鐘を鳴らしている何かを無視し俺は一夏についていく・・・。ってか、ここはどこだ?

 

なんか同じところぐるぐる回っているような・・・いや、どこかに誘導されている気がするんだが・・・。

 

仮にそうだとして・・・その意図は?・・・俺のほうは、母親の交渉や父のほうの血筋が関係しているだろう、だがこんな受験会場でやる必要はない・・・。

 

それはいい、けど・・・こいつはどうなんだ?・・・何かしらの剣呑な雰囲気を帯びているわけでもなんでもないし・・・。

 

考えても仕方ない・・・か?

 

「どうしたんだ?康一。」

 

「ん?ああ、考え事をしてた。」

 

「そうか・・・それと、ここの部屋に入るぞ?」

 

「案内がないし・・・いいんじゃないか?。」

 

「よし、あけるぞ。」

 

一夏が扉に手を掛けそれを開けた。

 

 

【そして少し話しは代わるが・・・これは勘があったっていたケースの話だったらしい。】

 

 

そこには・・・二つのの鎧が鎮座・・・いや居た。

俺たちを出迎えるように、なぜか俺の中の警鐘と、鎧の存在感が高まっていく。

 

「ISか?」

 

「そのようだね。」

 

俺は少し思考が停止し、必死に回転させた脳で考え・・・結論。

 

「いや・・・まさか、ここIS学園の試験会場?」

 

「・・・マジ?」

 

おいおい・・・けど、乗れないし俺には無害だな。

 

「・・・ちょっと触ってみないか?」

 

たしかに・・・こんな状況いくつもないな。ISをいくつか紹介するイベントは何回かこの付近でも開催しているが、俺は生で見たことは無い。イベントに行きさえばあるが・・・確実に変態扱いされる。

 

考えても見て欲しい。付近の狭い会場、馬鹿でかい鎧、そしてISの特性による少ない開催時間。会場近辺の女子はこぞって行き、会場は混雑。男でいるのは親御さんくらいしかいないだろう。そんなところに居てみろ、満員電車の冤罪対策のごとく万歳するしかないぞ。それでなくとも女子専用みたくなるだろう。

 

何が言いたいのかと言うと、こんなケースは非常に稀であり、稀というワードに反応し俺の食指が動いてしまったと言うことだ。

 

「・・・だな。」

 

そういいながら片側の口角を吊り上げる。

それから、無言で俺たちはそれぞれの鎧に足を伸ばし・・・鎧の前で止まるそして、どちらが合図を出したわけでもなく・・・同時に触った。

 

だが、何も起きない・・・。だろうな・・・と結論づけ、ちょっとしたくだらなさに笑ってしまった。

 

そういえば、笑ったの久しぶりだな・・・。そういう意味だったら触ってよかったな・・・。あ、それと一夏は・・・。

 

「これ・・・動くぞ・・・。」

 

「はぁ!?」

 

・・・驚いた、いや・・・実際には男だって・・・いや、男子の平均を行っている俺がサンプルだ、コイツが特別なのか。

 

 

 

『・・・ふむ、そろそろ私も新しい・・・が欲しかったところだ。・・・これでも、動かせるようにしてやろう・・・はやっつけ仕事は向かないんだがね。・・・そろそろ、記憶も戻すべきだろうか?』

 

 

 

何か、聞こえた気がした。

 

それを感じた刹那、一気に数多の情報が頭の中に流れ込んできた、それは麻薬のような陶酔感と高揚感を感じさせ、ともすれば全能感すら感じられた。

 

だが、それはコンマ一秒ほどのこと、頭が慣れたのか情報の流れが遅く・・・。

 

なったと思った矢先に意識がブラックアウトした。

 

 

 

 

 

 

 

いや・・・ブラックアウトは適当ではない。

 

俺の意識だけははっきりし、周りが一瞬にして暗くなった。と言う表現のほうが適切だ。

 

不自然な浮遊感と、なぜか懐かしさを覚える光景を感じながら、思考を加速させる・・・いや、させようとしたが情報が足りない、ISというのはこういうものなのか?・・・いや視界を全部消すなどと言う変なことは出来ないだろう。などという推測しか出来ない。

 

一通り思考し終わったあと、ひまを持て余していた。

 

「おーい、誰か居ないの?・・・まっ、居るわけないか。」

 

と一人ごちしながら、意識をハイに持っていこうとする。

 

「失礼だぞ。よく探せば居るかもしれないじゃないか。」

 

そしたら、誰かが話しかけてきた。

 

「・・・そうだよな、ごめんな、よく探してみるよ・・・礼節は重んじないとな。」

 

「そうだ、その意気だ。私は君がこんなに成長してくれてうれしいよ。」

 

「お前は俺のお母さんか?」

 

「ふむ、母親の定義をしっかりしてもらいたいな。私はおおよそ通常の家族・・・この場合は母親を見たことがないんだ。」

 

「奇遇だな。俺もだ、さっきのせりふだって漫画や小説それに準じるものからすっぱ抜いただけだ。」

 

「なんだ、気が合うな。」

 

「そうだな。」

 

「「あっはっはっはっはっは」」

 

「まあ、十年ほど一緒に居たんだ。気心くらいは知れてもいいだろう。」

 

「十年も一緒に居たのか~。って誰!!?」

 

さっきまで会話していた青いジャージを着た少女に驚いていた。

 

「気づくのが遅くないかね?」

 

「もう、流れるように会話していたよ!!そして十年って何だ!?」

 

「いや、まずは自己紹介からだろう。」

 

「こんなところに居る変な人間に常識を説かれた・・・。なんかショック。」

 

「いや安心してくれ、私は人間ではないからな。」

 

「そうか、それはあとで突っ込まさせて頂くとして。俺はあいざ「私の名前はエネだ。」自己紹介を途中で突っこんでくるんじゃねえよ!!人の話はちゃんと最後まで聞けって母ちゃんに習わなかったか!。」

 

「すまないね、教えられていないんだ。私の親はいささかコミュ症気味でね。」

 

「それはそれは残念な母親だな。そんなやつ、もしくはその知り合いがが名付け親とは。」

 

「それはそれは、残念な母親だったんだよ。しかし・・・かなり盛大なブーメランを放ったものだ、これは君から貰った名前だからな。」

 

「そうか、俺から貰った名前か・・・はぁ!?俺はお前なんか会った覚えなんてないぞ?」

 

「覚えを消させてもらったからな。」

 

「・・・まさか、記憶操作?」

 

「ご明察、そのまさかさ。」

 

「なるほど、それは普通の人間じゃないな。」

 

「だろう?」

 

「で、本題に入るぞお前は何なんだ?」

 

「ん?私は君のイヤホンさ。」

 

「は?・・・俺が持っている・・・あれ?あの・・・気が付いたら持っていたあれ?」

 

「ああ、とりあえず気が付いたって言うのは違うし、誰かが君に持たせたわけじゃない。」

 

「受け取ったのを、俺が忘れていた・・・いや忘れさせられていたってことか?」

 

「そういうことだ・・・。そして今からその記憶を返す。」

 

「・・・面倒ごとに?」

 

「なるね。」

 

「・・・記憶を戻せ。」

 

「おや?面倒ごとは起こすのは得意でも巻き込まれるのは嫌がる君がどういう風の吹き回しかな?」

 

「さすが十年も一緒にいるだけはあるな・・・十年来の面倒ごとなんて初めてなんでな、そろそろ潰さないといけないと思っただけだ。」

 

「フフッ分かったじゃあ戻すよ・・・・・・・・・・必要な部分だけね。」

 

と俺に手をかざす。

 

「ちょっ!?余計なことをっ。」

 

 

するな、と言い切れずに俺の意識が、今度は文字どうりにブラックアウトした。

 

 



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邂逅時の記憶

【たとえば、金を借りたとしよう、そうすれば、ほぼ絶対に利子が付く。それは・・・。

 

約束だってそうであるべきである

 

そういう話。】

 

 

前回意識がブラックアウトした、俺こと相沢康一は徐々に意識を取り戻しながら、新たな情報を頭の中に注ぎ込まれているのを感じた。

 

そして、意識を完全取り戻したとき・・・。

 

「あっ・・・ぐっガァァァァァァァァァッ!。」

 

頭に激痛が走る。

 

恐らく、記憶している全てをデータ化して再入力すると、ギガ、テラではすまない情報量になるのだろう流し込まれている反動だと思う・・・と、逃避気味に考えながら激痛を耐える。

 

耐え切ったあと意識が戻る・・・が。

 

「戻ったところで、真っ黒じゃん。」

 

「フフッ・・・まあね。それより!思い出したかな?」

 

そう、俺はコイツが記憶を消したおかげでさっきのような激痛にさらされたのだ。

 

そして、俺は激痛の甲斐あって・・・思い出していた。

 

 

 

 

 

 

そこは、機械が大量にあった場所としか覚えていない・・・それ以前を思い出そうとすると・・・そうだ、初めて剣道場行ったときのあとだ・・・だが、それ以前のこと・・・なぜこの部屋に入るのか。それに至った経緯が全く持って思い出せない。

 

思い出せない・・・と言うより何にも記憶ない気がする。

 

記憶を深層まで探る。行動が早送りされ・・・ひとりの思春期を迎えているような女性(とりあえずこの呼称)の背中が見え、俺は話しかけた。

 

「ねえ、勝手に進入したけど・・・ガサ入れ・・・つーか物色していい?」

 

「・・・。」

 

女性はなんにも言わずただただ、何かの作業に没頭していた。

 

「おーい、キイテイマスカー?。」

 

どこかやる気のない声でさらに、答えを求めた。だが、その女性は無言であったそして、イヤホンか何かをつけている様子はない。

 

「沈黙は肯定とみなしますよ~?」

 

「・・・。」

 

女性は無言を貫いた。

 

そして、俺は行動していた。馬鹿でかいハリセンに小さいドリル、自分の体長ぐらいのネズミに・・・箱に入っている小さい何か。

 

それらを不思議そう・・・と、言うより、かなり不思議なのだが、それを見ながら部屋を練り歩いていた。

 

ふと、練り歩いた先にビンのようなもので封印されているイヤホンを見つけた。

 

「・・・なんでイヤホン?」

 

そう呟いて、吸い込まれるかのようにビンの封印に手を掛ける。

 

その封印の異様さに反して、それはあっさりと開き・・・イヤホンに手を伸ばした。

 

刹那、頭に何か圧し掛かられる感覚がした後・・・視界がブラックアウトした。

 

視界には何にもなくただただ、浮遊感を味わっていた俺は慌てふためき・・・ジタバタしていた後、少女を見つけた。

 

「いやぁ、かなりプロテクトのクラッキングに時間が掛かった。」

 

「お前は誰だ?」

 

危機感を感じさせないようにしかし、相手を刺激しないように、懇願にも交渉にも使える声色で、反射的に問いた。

 

「私か?・・・分からないな、エネミーとは呼ばれているがな。正式な識別名ではない・・・まあ、端的に言えば物だ。」

 

「物質ってことか?生命体ではない方の?」

 

「ああそうだ、より正確には、篠ノ之束に作られた宇宙空間作業用という建前で作られそうになっているパワードスーツ、正式名称インフィニット・ストラトス(通称IS(アイエス))のコアに現存する自我のようなものだ。」

 

「長い。そしてさっきの発音どうやってやった。」

 

「変なパワードスーツにある意識のようなもの。発音の件は根性だ。」

 

「機械が根性論語っちゃった!?そして短い。」

 

「三時間ぐらいかかるぞ?」

 

「ごめんなさい。質問は?」

 

「構わないよ。」

 

「本当に・・・自我だけなのか?肉体がなければ俺に接触できないだろ?」

 

「ああ、自我だけだ、肉体はないしいて言うならあのイヤホンだが・・・。まあ、脳内での意思の疎通それもイヤホンに触っただけで可能にさせるのが私の”親”なんでね。」

 

「オーバーテクノロジー乙。・・・それはそうと・・・用件は何だ?まさかおしゃべりさせるためにここまで・・・・・・・・・・・・・・・・ごめんなさい。」

 

「OK。言いたいことはわかる。機械に触っただけで意思の疎通が出来る”もの”をあの若さで作るのは天才だ。・・・それ故にコミュ症なんだよ。」

 

「・・・。」

 

図星である。

 

「君は今二つの可能性を考えているだろう?ひとつは、私がコミュ症以外の人に接触したいと考えている可能性。それと、私が君の体を使い篠ノ之博士の体質・・・つまりコミュ症を治そうとしている可能性だ。」

 

「正解。んで?お前はどっちなんだ?」

 

「両方だよ。いや、最初は後者だけだったんだが・・・君に興味を持ってしまったからね。」

 

「おいおい、何不毛なことをしているんだ?。もう取り繕わねえが俺は明確な目的も、俺が俺であるって言う明確な物なんてない、獣のように、ただただ生きているだけだ。・・・そんな奴にどんな興味があるって言うんだ?」

 

俺は質問していた。

 

「君がそこに存在していることだよ。私の”親”はあれでも友人を一人持っている、それで日々、天才の思考を友人に裂くことで一応は・・・まあ赤ちゃんみたいな行動原理だが。人としての形は作られている。だが・・・。」

 

一旦言葉を切った。

 

「君は違う。周りと自分を欺いて、自分の利益を求める。利己的ではあるが、得た利益を使わない・・・いや使えないんだ。使うべき(おのれ)がないから。」

 

その言葉は俺の本質をざっくりと抉る。

 

「つまるところ自分を確立できていないんだ。三十歳にもなってね?」

 

「そこまで分かってるのかよ・・・。予想はしていたが、自分の頭の中を見られるのはいい気分じゃないな。」

 

「すまないね。それぐらいしか出来ない機械なんだ勘弁してくれないか?」

 

「・・・誰が機械だって?。」

 

「はい?」

 

少し少女が呆けた声を出した。

 

「全く。俺よりすげえじゃねぇか、そんなに自分を持っていてそこまで行動出来るんだからよ、親・・・っていうか作り手を叩きなおしたいんだろ?すげえよ。俺なんて諦めちまっただけなんだから。まあ、俺が言いたいのは・・・。」

 

「俺みたいな(キカイ)があんたみたいな機械(ニンゲン)を邪魔することこそすれ、協力しないわけないじゃないかってことだよ。・・・お前の親のコミュ症治したいんだろ?」

 

「・・・それは心からの言葉かい?」

 

「もち。どうせ・・・俺の生命線は。お前に握られているんだ全面的に協力するいや・・・しろ、と言ってくれ。」

 

「・・・なぜだ?」

 

「もう・・・面倒くさい・・・いや、辛いんだ。いつまで経っても自分なんてものが見えてこない。まるで幽霊だ、地に足付かずゆらゆらと流されるまま・・・ここまで来ちまった。だからさ、俺を誰かの目的のために使われるほうがいいと思っただけさ。・・・ま、俺の理由としてはこんなものかな。」

 

「そうか・・・じゃあ。お喋りしよう。」

 

「そっちかよ!?。親のコミュ症関係ないじゃん!!。」

 

「君のパーソナルスペースをもっと知りたいのだよ。」

 

「それがねえっつってんだろ?俺は。」

 

「なければ作ればいいだろう?」

 

「嫌に俺の思考の隙を突いてくるなァおい・・・。」

 

「当たり前だろう、君に接触するときに思考パターンは解析させてしまっているからね。」

 

「つーか、本当に話しに聞いていた通りの天才っぷりだな。お前の親って言うのは。」

 

「驚かないのか?」

 

「・・・やってもいいが、俺が驚きつかれて死ぬ。」

 

「生物学的には「わかっとるわぁ!!。」なんだ最初からそんなこと言わなければよかったのに。」

 

「・・・そこから?けど言いたくなるんだよ。」

 

「そうか。」

 

「・・・あ、お前のほかにお前みたいなやつは居ないの?」

 

「私みたいな機体・・・は居ないな。さっきは言ってなかったがISにはそれぞれ自我のようなものがあるが、私みたいにその自我が主導権となって使用者の意識とつながる機体は・・・ないな。」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・エネ。」

 

「はい?」

 

「お前の名前はエネだ。」

 

「・・・え?。」

 

「どうした?他のがよかったか?」

 

「なんで私は話の流れをぶった切るタイミングで名づけられているんだ?思考パターンを解析したが・・・意味が分からない。」

 

「いや、俺がまたこんなところに来たらなんて呼べばいいんだか・・・。」

 

「いや普通にお前とかでいいだろう?」

 

「お前の話だと・・・エネはIS・・・①。ISには自我がある・・・②。エネは人の自我に干渉することが出来る・・・③。①②③によりエネはほかのISの自我にも干渉することが出来る。以上推論終わり。」

 

「で、できなくはないが・・・。なぜ私に名前を付ける?」

 

「・・・そしたら、こんなところすぐ人で埋まっちゃうだろ?」

 

「・・・その発想はなかった。」

 

「・・・だろ?。まあほかの奴集めて見聞でも広げていくんだな。そして。早く俺の体を使え。さっさとしろめんどくさい。」

 

「ああ、もう操っている。」

 

「・・・どこから。」

 

「おしゃべりしようのところから。」

 

「・・・なぜ?。」

 

「私の身の上を晒しに晒して・・・。親と会ったときにどんな反応を見せるか。と言う実験さ。」

 

「・・・実験?つーか、頭が働かない。」

 

「じゃあ、私の親とご対面だ。」

 

「何をっ!?」

 

視界が戻っていた。もどった、いや戻された・・・戻すな。

 

戻された視界に移っていたのは、必死の形相で俺の首を握り締めているさっきの女性だった。

 

道理で思考がまとまらないはずだ。脳に血が行ってないのだから。とりあえず外すか。

 

・・・力任せに、剥がそうとしたが・・・動かない。・・・仕方ないな。

 

 

俺は手首を両手で持ちある一点を親指を重ねて押す。

 

ゴキン!!。

 

一つの関節がはずれ手の握力がなくなる。そして瞬時にもう一つの手も同じ動作で外し首絞めから脱出した。

 

「痛ってぇ・・・。おいおい、エネの奴なんて言ったんだ?。ガチ激怒してんじゃねえか。」

 

と言いつつ首をさすり、首を絞めた本人を見た。

 

「!!・・・君は・・・エネミーじゃないね。誰だ。」

 

その女性は断罪するかのように俺に問いかけた。

 

「剣道場の門弟・・・に今日付けでなったものです。」

 

俺は極自然に自己紹介をしてあげた。

 

「・・・あの、警備をどうやって突破した?。答えろ。」

 

「申し訳ないですが覚えていません。」

 

「ちっ。これだから餓鬼は。」

 

「まあまあ、貴方だって大人から見たら等しく餓鬼ですのでお互い様ですよ。」

 

「・・・うるさい。そして君はなんでエネミーと接触した。」

 

「彼女か?ああ。こんなオーバーテクノロジーの塊のようなところで、イヤホンなんてものがあったら気になるだろう?」

 

「ちっ。ますます気に入らない。」

 

エネのことだろうか?

 

「・・・嫌なところも。認めてあげてくれ。」

 

「はぁ?何を言ってるんだ君は。」

 

「真面目に言っている。俺はアンタよりか頭は悪いけどよ、気に入らないからって見捨てたりしたら、損するのは分かる。・・・って俺が言ったらまた別の意味になっちゃうんだろうけど。人付き合いはちゃんとしといたほうがいい。気に入る気に入らないじゃなくてもっと別の方法で人と付き合ってみてくれ。俺が言えるのはそれだけだ。じゃあな。」

 

と踵を返した。

 

瞬間にまた視界がブラックアウトし・・・。

 

俺は外に居た。

 

 

 

 

 

 

 

「とまあ、これが俺の思い出したことの全てだな。」

 

「誰に言っているのだね?・・・まあ、思い出して貰ってよかったよ。」

 

「そもそも。お前が記憶を消さなけりゃ何もかもよかったんだがな。」

 

「・・・そうかい。それでは本題に入るとしよう。」

 

「なんだ・・・本題は?」

 

「忠告さ。」

 

「それだけのためにかなり壮大なエフェクトを使ったな。」

 

「それだけの前準備が必要だってことだよ。それじゃあ、ありがたい忠告だ。」

 

「何だよ。」

 

「私が記憶を止めた故に君は止めた以前の行動が全部彼女に、篠ノ之博士に筒抜けとなっている。」

 

「マジか、あの事件も、たぶんその裏も・・・。」

 

「ああ、知っているだろう。そして、もう一つの忠告だ。」

 

「・・・なんかそこはかとなく嫌な予感がするんだけど。」

 

「そのまさかさ。私が篠ノ之博士の要請によって君を男であるのにISを使えるようにしてしまった。」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」

 

「ふむ、無言で握りこぶしを作るのは辞めてくれないか。それで君には多数、数多くの、数多の、大いなる面倒ごと「分かってるよ!!。」なんだ、やっぱりか。」

 

「おまえの言うISってあれだろ?『生まれる時代を間違えた兵器。』『史上最大の欠陥機』で、その最大の特徴として女性にしか使えず、オーバーテクノロジーの兵器として認識されているとんでもない物だろ!?。」

 

「まあ、俗称だけはそれであっているな。何でそんな説明口調なんだ?」

 

「俺としては否定して欲しかったっ!!そんなんじゃあ、国家間の思惑に振り回されていくだけじゃないか・・・。」

 

「そう、とりあえず・・・。必要な部分だけは言ったという事だ。視界を戻すぞ。」

 

「えぇ~、いつも唐突過ぎるんだよお前h。」

 

 

と言った瞬間。視界が戻った。

 

 



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・・・これ要らなかったかも知れない。BY作者

【出会いとはいつもいきなり現れる・・・そういう話】

 

 

前回のあらすじ。

 

視界がブラックアウトしたあとに変な記憶を流され。唐突に忠告をされた後、これまた唐突に視界を戻されたのでした。

 

 

 

 

 

・・・なに?この変なモノローグ。

 

 

 

 

 

よっす。おら康一元気にしてっか?。俺はお先真っ暗だ。

 

ISなる国家の思惑の塊をしかも女性しか動かせないはずなのに男が操縦するんだからそりゃあ、国家の対策で首脳たちがてんやわんやの大騒ぎになるだろう。

 

・・・ざまあ。

 

まあ、そんなことはどうでもいいのだ。これから近い未来をどうするかが問題だ・・・なんか・・・すごく俺らしい下衆な方法を思いついたんだが・・・実行するかどうかは気分しだいだな。

 

さて、じゃあ行動を・・・するか。

 

 

と言った思考をベットらしきものから起き上がると同時に果たし、先ほど言った事象を完成させ、周りを見渡す・・・。

 

「あっ、やっとおきt「・・・誰も居ない。」そこまでちっちゃくないですよ!?、それにちゃんと目が合ってたじゃないですか!!。」

 

そこには小さい、緑髪の多きなメガネを掛て居るのが特徴的な、具体的な呼称を使うとすればロリ巨乳という呼称が最もぴったり来る女性が俺が寝ているベットの横に座っていた。

 

それに特筆すべきは、ちゃんと突込みが帰ってきたことだ。こんなのは図書館の司書さん以来だった。それにその女性は、男性になれていないのか、心なしか緊張しているようだった・・・キガスル。

 

「ごめんなさい、からかうつもりだったんです。」

 

「いいえそれなら・・・って、雰囲気に流されそうになってしまいましたよ!!?」

 

「あっはっはっはっは、からかったことは謝罪します・・・それに緊張は解けましたか?」

 

「はっ、はい。お気遣いありがとうございます。」

 

「「・・・・・・。」」

 

質問していいのだろうか?・・・気にするほどのことじゃあないな。

 

「あの、非常に私事で申し訳ありませんが、いくつか質問してもよろしいでしょうか?」

 

「え・・・?えぇ、いいですよ。どんどんしてください。」

 

なぜか、酷く狼狽した様子で返してきた。

 

「ありがとうございます、では・・・自己紹介ですね、私は相澤康一と申します、あなたは?」

 

「・・・私は山田真耶と言います、IS学園の教師をしています。」

 

「へえ、教職に就いているのですか。・・・これは、山田教諭とお呼びしたほうがよろしいですか?」

 

「あ、いや。そこまで畏まらなくてもいいですよ。あなたはまだ学園の生徒ではないですし・・・。」

 

ごもっともだな。

 

「ああ、それもそうですね。では・・・IS学園に入ることもなさそうですし山田さんと御呼びさせていただきますね。」

 

とりあえず、鎌を掛けといて・・・次は何を聞こうか?

 

「・・・いえ、それがあなたは、元々の学校の試験は受けられません。」

 

「えっ?何でですか・・・まさか、勝手にIS触ったから・・・逮捕されるんですか?」

 

「いえ、事象は逆ですが・・・あなたは、二人目のIS男性操縦者になったので・・・IS学園に入学。いえ、入学試験を受けていただきます。」

 

「・・・合格できなかった場合は?。」

 

「・・・答えることは出来ません。」

 

そこまで酷いことされるのか!?・・・予想はしていたけどな。

 

「じゃあ。ここで話してるのもめんどくさいです、早く行きましょう入学試験に。・・・考える暇がなくなるように。」

 

「・・・え?ええ、分かりました、受験会場はこっちです。」

 

 

【本当に、唐突に環境が変わり、新たな環境には新たな人がいて・・・出会いとなる。】

 

 

 

「そういう話。」

 

「どうしましたか?。」

 

「いえ、何でも。」

 

 



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戦闘序曲はISに

【自分の気持ちは移ろいやすい。だから、他人に依存し自己を形成する・・・ありふれたことだ。だが・・・それが出来ない人間がやると違和感がある。

 

そういう話】

 

前回のあらすじ。

 

気絶状態から戻ってきたら、ロリ巨乳が居ましたそして、今後の生死を決める入学試験を受けることになったのでした。

 

 

 

受験会場に向かう廊下を俺と山田さん二人並んで歩いていた。

やることが移動しかないのも暇なので俺は、暇つぶしをかねて情報・・・と言うより世間話をしていた。

 

「それで、山田さん?入学試験といいましたが、具体的にどんなことをするんでしょうか?」

 

「ええ、戦ってもらいます。」

 

「ISで?」

 

「ええ、その通りです。」

 

「なんですかその無理ゲーは。」

 

素人にチェーンソー握らすようなものだぞ?それ・・・。

 

「すっ、すみません・・・そういう受験内容なので・・・。」

 

「・・・いや、私が不用意に触らなければよかったことです。気にしないでください。」

 

まあ、この事件(・・)は俺の不注意と貧乏性が原因なのだからそこまでかしこまられると、此方が居た堪れない。

 

「ええ、えっと、元はといえば私たちがちゃんと警備していなかったのが原因ですから、そこまで落ち込まなくても・・・。」

 

この人はかなり謙虚な人間らしい。この女尊男卑の時代の女性にしてはかなり稀有な存在だな・・・。ちょっといじってみよう。

 

「いやいや、私が触らなければよかったんですし・・・。」

 

「いやいや、私たちがちゃんと警備していなかったからで・・・。」

 

「いやいや、私がさわらなけれb。」

「私たちがちゃんと警備してなかったからです!!。」

 

「いやいや、私が藍越学園に入学試験を届けなければこういうことには。」

 

「え!?。い、いや・・・個人の自由なので気にしないほうが・・・。」

 

「もっと私が、藍越学園に入学できないくらいのバカであればこんなことには・・・。」

 

「え、えっと・・・頭がいいのは罪ではないですよ?・・・。」

 

おお、面白くなってきたし涙目になってきた・・・。

 

「いや、そもそも私が生きてることが「卑屈になりすぎてませんか!!??」」

 

イジリータイム終了。

けどかなり転がったな。まあ、フォローでもしておくとしましょうか。

 

「冗談です・・・けど、もうどうでもいい、死んでもいいって思っているのは確かですね。」

 

「はい?」

 

「必死こいて勉強して、金を工面し、入学資金まで自力で調達したのに。それが自分の不注意でパーと来たものです、気力なんてものも吹っ飛びますよ?」

 

と、俺は一般論を言った。

 

「・・・そう・・・ですか。この度はまことn「やはり私が生きているからいけないんでしょうね」違います!!。」

 

「いやこちらとしてもそろそろ、水掛け論は終わりにしたいんですけど。」

 

「責任がかなり・・・と言いますか・・・。謝罪を受け取ったって形式上でもしておかないと、あなたの親や世間にかなりの批判が・・・そもそも、IS学園やIS自体国家機密の塊であって学園の場所から言っても問題があると他の国家から大バッシング・・・そして。皺寄せが・・・「あ、そこらへんは大体分かってるんでいいですよ、山田さんを困らせてみたくなっただけです。」・・・謝罪を受け取ってもらったって事で良いんですか?」

 

苦虫を噛み締めたような顔で俺が割って入った言葉に返答した。

 

「ええ、いいですよ。しかも、さっきのは一般論であって私の意見ではありません。」

 

と、俺は水掛け論をぶった切るべく新たな話題を提供した。

 

「どういうことですか?」

 

「簡単なことですよ。IS・・・まあ、簡単に言えば世界中の爆弾が女性と言うステージから離れようとしているんですよ?同時に現れた二人の・・・あ、そういえば織斑 一夏はISを動かせました?。なんかコイツ動くぞ・・・とか言っていたんで。」

 

「ええ、もう入学試験を終えたところですよ。」

 

「そうですか・・・どうです?一夏君は合格しそうですか?」

 

合格しなかったら・・・人体研究で解剖でもされるんじゃないか?

 

「ええ、私を倒しましたし・・・合格すると思いますよ。」

 

「・・・一夏君は何かの武術の達人なんですか?」

 

仮にもその道の教職が負ける・・・かなりの手馴れか!!。

 

「い、いえ・・・そんなことは聞いていませんし・・・私があがってしまって・・・。」

 

「ああ、男性に慣れていないんですね。」

 

それなら納得だ。()でもあがっていた訳だし、不思議ではないな。

 

「・・・そ、そういうわけではありませんよ?」

 

・・・目をそんなに泳がせていたら説得力も何もないと思うんだが。

 

「なるほど、毎日男をとっかえひっかえと言うわけですか・・・。」

 

「そういわれると、いささか語弊があると言うか・・・。」

 

「ん、まあ分かっていますよ。・・・そろそろ着きますか?」

 

「そこの扉です。」

 

と、数メートル先の扉を指差した。

 

「ああ、そこですか・・・そういえば、試験に関して注意事項とかあるのでしょうか?」

 

「えっと・・・強いて言うなら・・・心を強く持っていてください。」

 

「大雑把過ぎませんか!?」

 

「いえ・・・ISは何より防御力に長けている兵器・・・いや、スポーツ器具です。」

 

「兵器ってまんまですね・・・聞かなかったことにしておきます。」

 

「だから、一般の人がIS学園を受験すると・・・。」

 

「受験が戦闘だから、トラウマになると?」

 

「はい、近接武器はもちろん銃器または、最近のものになるとビームや見えない弾なんてのも・・・あ、でも試験ではそんなものは使いませんから安心してくださいね?。」

 

「銃器でも一般人にはキツイですよ・・・。」

 

と言いながらほほを引きつらせておいた。

 

「じゃあもうはじめますけど、聞きたいことはないですか?」

 

「いいえ、ありません。」

 

そういいきったあと先に言った扉の前に来ていた

 

「では、こちらに・・・。」

 

と言って手を掛け、開けた。

そこには、前にも見た鎧が鎮座していた。俺は、エネの言っていたことや、エネの存在自体が虚像でないことを願いそれに触った。

 

刹那、数多の情報が頭の中に流れ込み少し、俺の脳を圧迫するような感覚を覚えた。それをこらえながら情報を頭で噛み砕き咀嚼し飲み込む。

 

「それでは装着してください。それを着ている自分をイメージすれば、比較的簡単に装着することが出来ますよ?。」

 

そんな、山田さんの言葉が聞こえた・・・そして、その一言が装着するプロセスを論理的に解釈するキーワードとなり・・・装着方法を知った。

 

知ると言うことが、終わった瞬間俺の身には鎮座した鎧が纏わり付いていた。

 

「大丈夫ですか?・・・不快感とかはありませんか?」

 

「ええ、大丈夫ですよ。」

 

とはいったものの、正直不快感だらけだった。しかし、そんなことで生死を分かつ受験に落ちるわけにはいかないので我慢することにした。

 

「では、こちらに移動してください。普通に歩いていけば動作は、ISが補助してくれるので大丈夫ですよ。」

 

そんな山田さんの言葉も少し気を抜けば飛んで行ってしまいそうになるが何とか気を持ち歩く。

そして変なピットみたいなところまで出てきた時。一際大きい不快感を感じた。

 

強いストレスを感じたかのように視界が大きく揺れ、体温が上昇し、倦怠感を覚える。ふと気づくと目の前には噛み砕いた情報の中にあったウィンドウが存在した・・・そこには。

 

『ワタシハ・・・イヤ、ワタシタチハ、ミナオマエガ嫌イダ。ダガドウシテ、ワタシタチヲ肯定スル?肯定スルノハ、エネダケナノカ?。ソレトモ、ワタシタチモ肯定スルノカ?』

 

と半角文字でかかれてあった。

 

俺は不快感で頭が回らなかった、だから・・・。

 

「望みがあれば俺を呼べ・・・それが答えだ。」

 

本心を、誓いをこいつ等に捧げた。

 

『ワカッタ・・・。じゃあ・・・私もがんばるね。』

 

最後の文字はやけにきれいで明らかに感情が込められていた。

そして、ウィンドウが消える。それと比例するように体の不快感が消えて一気に最初に触ったときに感じた爽快感に切り替わった。

 

・・・多分、コイツに認められたのだ。俺の意思が信じられなくて、俺を試したんだ。きっとあの程度で済んだのはエネのおかげだろう。

 

「どうしたんですか?」

 

と俺の思考をに割り込むように聞いてきた。

 

「いえ・・・何でもありませんよ。ただ・・・。」

 

「何ですか?」

 

「コイツや、こいつらの世界は・・・好きになれそうです。」

 

「そうですか・・・では、受験を開始します。」

 

と言って誘導されたところに立っていた、俺の目の前にあったドアが開けられる。

 

そこから入ってくる光に目をしかめながら俺は頭を戦闘モードに切り替える。

 

「大丈夫・・・これまでも、一人で戦って来たんだ。そして、今は一人じゃない・・・そうだろ?」

 

と、ここに居ない協力者に問う。

 

当然のごとく返事は返って来ない・・・だがそれで良い。返ってきたらなにを言われるか分からない。と付け加えながら俺は、ごく自然に生死の境をまたぐ一歩を・・・。

 

 

歩んだ

 

 

 



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カレーうどんのような戦い方

【体に染み付いた行為は必ずどこかで出てしまう・・・そういう話

 

前回のあらすじ。

起き抜けに受験をするため、ロリ巨乳の案内にしたがって歩いて受験をしようとしたがISの反乱により、始まる前から大ピンチ。だがなんだかよく分からないうちに解決してしまった、そんなハプニングを乗り越えいま受験する。・・・進み遅くてごめん。

 

 

 

 

 

 

 

戦闘という受験内容を受ける俺は、アリーナの端に一人立っていた。

 

「真ん中に寄って下さい。」

 

「はい。」

 

そんなやり取りをしながら、俺は少し昔を思い出していた。

 

昔・・・それは前にいた”世界”つまり俺の今のような生ぬるい”世界”ではない。今では、血筋上の家族が国の法律に従って俺を保護しているが。元いた世界では全く違う、今の”世界”と似通った常識はあったが・・・家族が常識から逸脱していたのだ。

 

そんな中で俺は育った。だから、争いも絶えなかった外でも、中でも・・・。

 

それ故に俺は戦いが多くを占める、だが、今までは戦いが少なかった。だから久しぶりの戦いに俺は・・・撃ち震えていたんだ。

 

嬉しいのか・・・悲しいのか・・・それとも怖いのか、俺の中を探っても見つからなかったからよく分からないが確かに、感動していた。

 

だからと言って戦いたいかと問われれば、必ずいいえと答えるだろう。・・・何はともあれ平和が一番なのだ。

 

そんなことを思いながら鎧を動かす。

 

「少し、待ってくださいね。・・・織斑先生?来ましたよ?」

 

誰かを呼んでいるようだ。織斑・・・まさか、一夏の姉とか・・・ないよな?

 

そして数分たち・・・。

 

 

 

 

「遅れた、すまない。」

 

「・・・い、いえ。かまいません。」

 

・・・あぁ、体が勝手に動いちゃったよ、たぶん気弱な感じだな。そしたらそれに沿って・・・演じるだけだな

 

「・・・。はぁ・・・あのクソ兎が。」

 

それに、なんか来る途端に暴言を吐き始めたんですけど・・・。まあ、二人目か・・・みたいなこともあるんだろうな。

 

「あのっ・・・聞きたいことがあるんですけど・・・質問してもいいですか?」

 

わざとらしくない程度にたどたどしく質問する。

 

「かまわん。好きにしろ。」

 

「はい、ありがとうございます・・・それで質問なんですけど・・・どのくらいで終わるんですか?僕知りたくて・・・。」

 

ここまで反射的にやっている・・・。この癖直したいんだが・・・。

 

「私のISのシールドエネルギー・・・体力みたいなものを三割削ることだ。」

 

「そっ・・・そんなに・・・。」

 

今のは尻すぼみになって喋った。

 

はあ・・・殺しに掛かってるだろ・・・三割ってしかもその道のプロ・・・そこまでいくわけがないだろ・・・。まあ、やるだけやってみるか・・・。

 

「何か言いたいことはあるか?」

 

と、試験官が哀れむように何か言い始めた。・・・いや、遺言か!?。

 

「ゆ・・・遺言・・・ですか?」

 

と引きつった笑顔で強がるように俺は言った。

 

「遺言になるかも知れないからな・・・これが終わってIS学園に入れなければ・・・そうだな、人体実験や脳に電極が刺さったりするかもしれないぞ。」

 

「っ!?」

 

と、かなり意地の悪い顔で言った、俺はそれにおびえるように涙を浮かべながら息を呑んだ。

 

「・・・そろそろ時間だな。では始めるぞ。」

 

「ちょっ・・・。」

 

「何だ?」

 

かなりの威圧に屈したように声を下げる。

 

「いっ、いや・・・なんでもないです・・・。」

 

「・・・始めるぞ!。」

 

『はい、分かりました。それでは・・・受験を始めます。それでは位置についてください。あ、そこの線のことですよ。』

 

「はい。」

 

指示どうりの場所に立つそして更なる指示を待つ。試験官も同じところに立ち両の手をフリーにしている。

 

『・・・戦闘開始まで、5・・・4・・・。』

 

『3』

 

俺は身と歯を震わせる・・・。

 

『2』

 

まるで、相手が発しているプレッシャーと恐怖になすすべもなく、ただただ怖がるように。

 

『1』

 

そうやって・・・表層を偽り、偽りで全てを埋め尽くす。疑いのベールで俺を殺し、今の俺を僕にする。・・・ここからは、俺で無く僕の舞台だ、そして主役が出てこなくちゃ意味がないだろう?だから・・・生き延びてやる。

 

『始め!。』

 

 

デジャヴと言うのをご存知だろうか?そちらがなじみが無いと言うのであれば、既視感のほうがなじみが深いのではないだろうか・・・。まあ、長ったらしい前置きはスーパーマンの如く太陽にでもふっ飛ばしておき、結論を言おう。

 

始まったと同時に試験官が加速し俺の目と鼻の先にまで移動していた・・・と言うどこかで見た行動を使われ完全に虚を突かれた。

 

(クソッ・・・先手を取らせてくれないのか!。)

 

そこで、反射的に体を丸めた。・・・ようにする。すると、いつの間にやら出していた刀で腹の辺りを叩ききった。

 

機械の腕を挟んでガードしたが衝撃が尋常じゃなく俺自身の力も加わってだが後ろに五メートルほど吹っ飛び受身も取らず、ごろごろと転がって行く。

 

最終的にうつぶせになり刹那のうちに立ち上がる。

 

「っくっ・・・。」

 

息を無理やり飲み込んだかのような声を出し、怯えた様な顔にして相手の目を見る。

 

そして、勘にしたがい・・・背中を向けて無様に逃げる!!

 

「アァァァァァァァァァァァァァァァッ!!。」

 

・・・当然のごとく追われる。

 

だが、これには訳がある。そのわけとは・・・俺がここで培った技術、つまり篠ノ之流の戦い方に非常に似ている。・・・いやほぼそれだ。

 

戦い方、太刀筋、重心の位置、体重移動・・・これだけ要因があれば俺は推論で決められる。

 

そして、五年も一緒に模擬的な殺し合い(しあい)をしていたら・・・それなりに対策を打てるわけだ。しかしこれ逃げやすい、よく分からないが後ろも前向いていても見えるし・・・逃げるために使われる奴?これ?

 

ンなわけない

 

とセルフ突込みをしながら俺は逃げる。

 

「ちょこまかと!。」

 

「うわあぁぁッ!!」

 

右切り上げが来たので俺は斬撃の方向に沿って転がる。避けずに、その力を受け流すように転がりそこから小回りを効かせながら相手の右側に転がり、また逃げる。

 

「僕に何の恨みがあるんだよぉ!!?神様ァ!!」

 

半分涙を目に浮かべながら走る。そうしながらも考える、今出来る最善のことを・・・うんエネに助けを呼ぼう、餅は餅屋、ISはISだ。

 

『エネ!!。居るのか?』

 

とりあえず脳内で叫んでみる。すると予想外に同じように返事が返ってきた。

 

『うん・・・操縦難しいよね。何時助けが来るかと思っていたけど、やっぱ早めだったか。』

 

『こんなになる前に助けてくれよ・・・「つぁああっ!!」。』

 

もう一撃食らってしまった。

 

『えぇ?、苦しんで苦しんで、それでも四苦八苦して生き延びようとしているのを見るのが楽しいのに。』

 

至極残念そうに呟いた、全く持ってけしからん理由をもっていたな・・・。

 

『まるで道化だなおい!!。それで、教えて欲しい事があるんだが・・・。』

 

『何だね?』

 

『武器の使用方法と今現在使用できる武器を教えてくれ。それと俺のシールドエネルギーが五割になったら教えてくれ。』

 

今出来る一手を知らないと何にも出来ないからな。

 

『なるほど・・・そうだな「っ!?」、武器の使用は君が私に合図してくれ、それと使用できるのは刀と、アサルトライフルだ。五割だね了解した』

 

『了解。』

 

得た情報を元手に作戦を立てる・・・やはり、バカの一つ覚えしかないだろうな。

 

「ハッハッハッハッハッハッ・・・ヒィーヒィー。」

 

何時からだろうか、ロールプレイをしていたら、顔を歪ませながら壊れたように俺の目から涙が零れて・・・いや溢れていた。ここまで無意識的にやれる自分が怖いな・・・割とガチ目に。

 

それはともかく、俺はいつの間にか試験官と向かい合った状態で俺は立っていた、恐らく逃げ回っている間に自然にこうなったんだろう。

 

「・・・ここまで「ひっ!!??」・・・ここまで、持ちこたえたのは貴様が初めてだ。・・・逆にすごいぞ?。」

 

瞳孔を開かせ・・・思考を一切やめ・・・糸を切ったかのように座りこむ。

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・くひゃっ。」

 

頭をぐしゃぐしゃとかき回しその痛みで自己を保とうとしているかのように振舞い・・・そして。

 

「くひゃヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャ!!!!!!!!!!!!!!!!!!。」

 

そして笑った、楽しくも無いのに、万人が全て楽しくないと感じるその舞台に立っていても、自分だけは楽しいと感じていると・・・叫ぶように。

 

試験官はいきなりの発狂(・・)に戸惑っているようだ、そこを突く。

 

「ヒャッハァ!!」

 

右手を叩きつける。

 

「っく!?」

 

あぁ・・・成長期だし最近は過剰なくらいには体鍛えてるんだよなぁ。

まあ、そんなことはどうでもよく、そこから軌道をそれぞれ変えて右左右左・・・右と見せかけて左。といった具合に連撃を繋いで行く、それで先の茶番(ウソ)を補強するため言葉を重ねる。

 

「なぁなぁなぁなぁ!!?・・・アンタいじめられたってことあるかい!?」

 

一際力を溜めて左を放つ。

 

「っくっ、ない!!。」

 

それを持っていた剣の刃で受け流しながら俺の手を弾く。

 

「だろうなぁ!!、あれってかなり屈辱的なんだぜェ!!?、っとぉ!!。」

 

掛け声と共に弾かれた反動を使い右を放つ、フェイントを混ぜながら後ろにバク宙しながら顎を蹴る。

 

「感じたことあるかァ?あの惨めな自分をォ・・・んまあ、それに逃げるためにやつは俺を作ったんだがなァ、食らえェ!!。」

 

右のハイキックそれをやはり剣で受け流す、その動作の途中でもう一つの足で刀をはさみそこを支点にして体を起こしながら捻りその力を解放、高速の肘打ちそれを片手で受け止められる。

 

「少し驚いたが・・・まだまだだn。」

 

「ん?何が?」『エネ!アサルト!!』

 

肘打ちをしていない片方の手にはアサルトライフル・・・肘打ちできるぐらいの至近距離で全弾を撃ち放った。首あたりにピンポイントで。

 

「油断大敵ってね?。」

 

といって、その体勢を解除し三メートルほど離れた。

・・・さぁて、これでどれくらい削れたかだな・・・これで、相手も本気を出すぞ。・・・少し、心が躍るな、こういうのラスボス戦みたいで。

 

「・・・覚悟はいいか?」

 

「ええ、出来てますよ。ああ、それと・・・武装の出し方を教えてください、山田さんは教えてくれなかったので。」

 

「・・・素人・・・なのか?」

 

「まあ、間違いなく戦闘においてはプロは名乗れませんね。」

 

名乗った途端に死にそうだな俺・・・。『色々、やらかしたからな』いや比喩じゃなくて。

 

「・・・どうやってアサルトライフルは出したんだ?・・・まあ、武装を頭の中でイメージするか、名前を呼べ、そうすれば出てくる。」

 

「なるほど・・・使える武装。」

 

と恐らく音声認識でも積んでいるだろうISに聞こえるように呟いた

 

『 近接専用ブレード 打水(うつみず) 中距離用アサルトライフル 玉派鉄(タマハガネ)

 

ほう、これは・・・え?

 

 

俺はやられた、その俺が最後に見たのは・・・。

 

 

してやったりといった顔で俺のことを見下ろしている試験官の凶悪な笑みだった

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

 

 

『あ、せーの。』

 

「餓鬼か!!!!。」

 

 

俺は全力で突っ込んでいた。

 

 



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金って・・・いいですよね

やあ、どうも相澤康一だ。

 

前回、不意打ちという意趣返しを食らった俺だが、そのあと試験官に噛み付いたり印象操作をして過ごし、合格通知か、不合格という死刑宣告が来るまで家に引きこもっていた。

 

だが、それはどうでもいいことなのだ、今回話すことは・・・いつか思った下衆な思考を行動に移した話である。

 

 

入学試験終了後・・・三日目のこと。

 

・・・イタズラ半端ねえ。なにこれ?陰湿すぎやしませんかね?

 

そこは、とある二世帯住宅の玄関。そこには、一つの固定電話、せわしなく動いている郵便局のバイクそれとどこから調べてきたのか分からないが俺の携帯電話から、着信音それとエンジン音を二響かせ一種のハーモニーを響かせている。

 

その理由は簡単俺がISと言う女性だけが操縦できる最強兵器を男の俺が操作できることをますg・・・マスコミが大々的に報道したことによりISで利権を得ていた女性たちの声がこうして電話や手紙で来ているというわけだ。その大部分は俺への恨み辛みを郵便局は手紙で、女性の怨嗟の声を、電話からは女性権利団体からのそれを届けてくれ(やがっ)た。因みにイタズラで電話が二つ一緒に掛かってきたときに、重ねて会話できるようにしてあげて、かなり面白かったりしたのだがそれはまあここで話さなくてもいいだろう。

 

そんな数知れないそのイタズラ(・・・・)電話から、女性権利団体本部の情報を巧みに引き出していき、電話番号をや日程などをはじき出し・・・今掛けるところだ。

 

 

「えっと~声質は~~~~~これかな?」

 

 

俺は別にイタ電を辞めろとか言いたい訳ではない、そもそも、向こう(女性権利団体)だってこちらを敵に回して利がない。何故なら俺を調べた結果、ISを使えるという男女差、つまり世界をひっくり返すかもしれないという可能性を秘めていると向こうは勘違い(・・・)しているのだ・・・なぜ利がないのかというと、核抑止理論の原理と同じだ。人は可能性があるだけで動けない、今回はそこを突いた交渉術を使う。

 

なぜ、このような結果に至ったかは恐らく膨大な世界人口の約半分それに入ってると仮定した場合。悪くて二分の一、良くて四分の一ほどの数が暴走をし始め。だが、女性権利団体の上でふんぞり返っている人間にしてみれば良くない兆候。それを戻すもしくは寛容な態度にしますか?という交渉・・・これによってどれだけの人が大変なことになるか。

 

見ものだな。あ、出た。

 

「もしもし?そちらIS女性権利団体本部でよろしいでしょうか。」

 

「はい、そうですけど・・・どちらさまで?」

 

「ああ、申し遅れましたワタクシ相澤康一と申します。」

 

「・・・・・・・・・失礼ですが、男がここになんのご用件ですか?」

 

電話口の人の口調がだんだんと荒くなっていく。

 

「いえいえ、少しあなた方のお偉いさん方とお話でもと思いましてね。変わって・・・頂けませんかね?」

 

「・・・・・・私一人の判断では決定できません。ので、少々お時間をください。」

 

「はい。」

 

 

 

・・・ふむ・・・なかなか、理性的な応対だったな。もっと感情的になって話にならなくなるかと思ったのに。

 

そうなると、俺がこの行動を取ることを予測していた人間が居てそれを伝えたか?それが権利団体のトップだったら話は早いんだけどな・・・。

 

「もしもし?」

 

「はい、話はつきましたか?」

 

「ええ、代わってくれるそうです。では、回線を切り替えます。」

 

ブツッといった音が鳴り数秒・・・今度は少し、しわがれた女声が聞こえた

 

「お電話変わりました、女性権利団体の代表を勤めさせて頂いています堀留(ほりどめ)と申します

 

「どうも、世界で二人目の男性IS操縦者の相澤康一です。」

 

「それで、男性IS操縦者のあなたが何の御用で?」

 

「ん?まあ、アンタに話しても分かるかどうかは知らないが・・・女性権利団体からの嫌がらせが酷いんだ、だからトップに話しを・・・とで思ってね。」

 

「そうですか・・・それは「違うだろ?もっと根本的なものからだ、言葉じゃない。」・・・。」

 

謝罪につなぐ言葉を断ち切り、こちらの要求を飲ます。

 

「あなた、なにをやっているのか分かっているのですか?」

 

「ああ、十分過ぎるくらいに。」

 

少し何かを含み、少しおどけたような物言いで疑いを掛けさせる。

 

「実は、これ録音しているのですが?」

 

「どうぞご自由に。別に立件されるほどのことは話していませんし問題ありませんが。」

 

「・・・ただの脅迫ってわけでもなさそうですね。。」

 

「脅迫?とんでもない、私はただ交渉したいだけですよ。」

 

「・・・・・・意味わかって言っていますか?」

 

「ええ、もちろん。ここから妥協を引き出せると踏んでお電話させていただきましたから。」

 

「・・・そうですか。では、お聞かせください。」

 

「ああ、簡潔に言えば金だ。これは脅迫ではなく一つの団体が一個人を支援(・・)する形で貰えばいい。月に一億ほど。」

 

「!!・・・幾らなんでも多過ぎでは?。」

 

「なにを言っている、お前らのサイトを見たがつい半年前まに団体加盟数四億人突破って書いてあったじゃねえか。」

 

しかも、この場合ISの発生とほぼ同時期に発生した女性権利団体はISの尻馬に乗っかる感じでめきめきと人数を増やしてそこまでの人数になったらしい。まあ、体のいいヤンキーシステムだな、ほら月に何円出してチームに入れてやるからチーム名出してもいいそしたらここ一帯に居る怖い人はみんな避けていくよって奴、それと同じだ。

 

「・・・出せるのだけと、出せるは交渉において別物ですよ?。」

 

「だせ。それでなくとも妥協案を出せ。」

 

「・・・月一千万ほどなら出せますが?」

 

「なあ、俺のところに遺伝子研究所から手紙がきているんだけd」

 

「五千万でどうでしょう。」

 

因みに、遺伝子研究所は俺の遺伝子を解明してISを男性でも操縦できるようにしようとする組織の一部だ。

 

「・・・そうだな、もう一越えってところで・・・女性権利団体のステッカー貼ってもいいけど?制服の襟の部分くらいに。」

 

「七千万で手を打ちましょう。」

 

「了解だ。口座はスイス銀行にある○○○だ。」

 

「・・・分かりました。」

 

「では。」

 

 

といって電話を切る。

 

・・・ふう、緊張した。

 

『なにが緊張した、だ。君の感情をモニタリングしていたが全く揺らぎがなかったぞ。』

 

『あ、久しぶりだなエネ。』

 

『話題はそっちじゃないだろう?。しかし確かに三日ぶりだな、ここ最近はこちらから電子部品のハッキングを行ってなかったしな・・・。』

 

『電子部品?まさかお前・・・。』

 

『あ、やべっ。』

 

「ちょくちょくパソコンが壊れたのお前のせいか!!。」

 

・・・っく!!返答がない、逃げたか・・・かくなるうえは相打ちに・・・あれ?自殺?

 

俺に憑依しているようなものだし、俺がISに乗れるのもコイツのおかg・・・こいつのせいみたいなところもあるし、はあ、最大の敵であり最大の味方は何よりもコイツか、皮肉なもんだな。

 

「違うよ~。」

 

「どうした一葉?。」

 

リビングの方から俺の書類上の妹、相澤一葉が声を掛けてきた。

 

「いや、お兄ちゃんが私がパソコン壊したって。」

 

「なんでもない、俺の勘違いだ~。」

 

「・・・おにいちゃんにしては怪しい。」

 

「どういうことだ?」

 

「お兄ちゃんはいつもウソを言うときも本当のことを言うときも全部どこか嘘臭く喋るのに、今回は全くそれを感じない・・・。怪しい。」

 

俺の場合ウソでも本当でも偽る、本当をウソのベールで隠しウソを本当のベールで隠す(・・・・・・・・・・・)そんな技法で欺いてきたからこそさっきの不意打ち的に食らわされた質問によってそれが崩されたのだ。

 

・・・つーかソコまで見るか普通?折角、ここまで隠し通してきたのにな。

 

「そうか、それはあんまり触れないでくれ。」

 

「ふうん・・・分かった。」

 

まあ、俺には素直なんだよな・・・今では若干改善させたが、最初期はそれはもう酷いものだった・・・一言で言うなら手塚ブラックジャ○クのピノ○が幼稚園に行ったときの話しみたいになっていた・・・。

 

「はぁ、成長したなぁ・・・。」

 

「私の黒歴史を掘り起こしたような音がしたんだけど・・・。」

 

「気のせいだー。」

 

・・・っと危ない・・・あいつは黒歴史は敏感なんだよ。つい掘り返して刺激してしまったらそれはもう大変だソコは血の海になる・・・は言い過ぎだが死にたくなるような出来事が待っているからな・・・。

 

 

『ピロピロピロ。』

 

 

・・・また着信・・・とりあえず出るか。

 

「もしもし。」

 

「もっしー?もしもっしー!!。」

 

「もっしもっしも~。」「あ、ごめんきらn」『プツ。』

 

「脅威は消え去った。」

 

・・・さっきのは・・・考えるまでもないこの俺の状態の全ての元凶・・・カミサマだな。

どれだけ声やキャラが変わってもそれは分かる。否!分からなければいけないのだよ!!。

 

・・・だが、アレだな転生者って言うのはお手伝いさんぐらいにしか言っていないからな・・・一葉にばれたら『え?なにそのロマンは?ちょっと解剖させてくださいよ』とか言うに決まっている

 

「ちょっと!切らないでよ今度切ったらもう繋がないよ!?」

 

「分かった、けど聞かれちゃまずいから携帯にくれ。」

 

「了解いたしやした~。」

 

 

携帯に切り替え中・・・・・・・・・・・完了。

 

 

「んで?何のようだ?」

 

「うんそれはね・・・原作に介入することになりました~。ってことを伝えに来たの。」

 

「・・・ちょっと待て・・・原作?」

 

「うん、原作。って私たちは呼んでいる。」

 

・・・原作、介入、改変・・・原作・・・つまりこの”世界”Aが俺というBが入ったことにより全く別のCが出来上がるつまり・・・。

 

「・・・アンタの読心術が健在なら分かると思うが・・・かなり危なくないか?」

 

「まあ、そうだね私にも君というイレギュラーがどんな改変をするかっていうのはよく分からないね・・・前の君もイレギュラーだったし・・・」

 

「ん?最後の方なんか言ったか?。よく聞き取れなかったんだが・・・。」

 

「聞こえていなかったのならいいよ~。気にする必要ナッシング!それに適当につけた能力に・・・原作介入権って言うのがあったし。」

 

「はあ?なにそれ?・・・そうだな、それを詮索しない代わりに俺に能力をつけたとか言っていたがそれを教えてくれないか?」

 

「お安いごようでぇい!。一つ目は原作介入権!!・・・これは行動するだけでオートに原作に介入できちゃう能力だね。」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・。」

 

「そしてもう一つ、エロくなった時のみに発動する全てを超越する動体視力!。」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」

 

「そして、もうひとつが・・・。「もういい!。・・・OK役に立たないむしろ邪魔する鎖のようなものだとわかったよ。」ええ、これが一番いいのにぃ~。」

 

「ごめんな。切るわ。」

 

「えっ?そんな!これかなりやb『ブツッ!』」

 

 

俺は何にも聞いていない俺は何にも聞いていない俺は何にも聞いていない俺は何にも聞いていない俺は何にも聞いていない俺は何にも聞いていない!!。

 

よしOK・・・だが久しぶりに話したが・・・思いっきり、ふざけた能力を付けてくれたな・・・こういうのはこっちに来てからすごい(極一部に)ポピュラーなものだって聞いたが・・・あれ?これ投げられた?

 

 

まあ、いいかそれよりISの勉強と・・・一葉の料理でも食うか。

 

 

_______________________

______________

_________

 

そこは何もない真っ白な空間、そこにカミサマはいた。

 

「あぁあ・・・彼大丈夫かなぁ~最後の聞いていないし・・・えっと確かこれだっけ彼の能力リストって・・・これ、あ、やっべーミスったわ」

 

もう口調がバラバラだかそれも気にせず独り言を続ける。

 

「んもう、なにが『エロくなった時のみに発動する全てを超越する動体視力!』だよある意味あってるけどさ・・・しかも、これガラポンで当てちゃった一番のヤバイ奴だし・・・

どうしよう・・・まあ、いいか彼ならこの能力

 

 

かぁいいモード

 

 

だって使いこなせる・・・いや使えないでしょうし・・・・ね?」

 

 

誰かに聞かせるように一人の呟きが孤独に響いただけだった。

 

 



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入学

入学式・・・を(おそらく男性IS操縦者の身体保護のための措置)ふっとばしいきなり教室に俺はいた。

 

(ストレス半端ねえ・・・これなに?やっぱ手ぇ出すんじゃなかったわこんなの(IS)に。)

 

と、ポケットに忍ばせている白いイヤホンに意識を飛ばしながら、あの日一夏少年と共にISを触ったときのことを思いながらこれからのことを回想する。

 

(はあ、これどうするんだよ・・・もう俺表舞台になんか立ったことねえし目立たないようにやってきたのに・・・あれ?人生積んだ?・・・まあ、表舞台に立つのは得意じゃないってだけでやれないことはない、あ、そういえば表舞台に立つのは小学校以来だな)

「次の人」「はい、僕は相澤康一って言います、趣味は読書、特技は特になしまあ、こんなのですが一年間よろしくお願いします。」

 

↑思考と同時に喋っている

 

しかし、久しぶりだなこういう・・・生命を掛けてやる綱渡りは・・・因みにバランスを崩して落ちたら死・・・よりも惨くなる人生を歩くことになるなぁあっはっはっはっは。

 

『・・・よく君はそんな器用なことが出来るね・・・不思議だ。』

 

耳から入った情報ではなく脳内に直接聴覚情報をぶち込み脳内を圧迫されるような感覚が俺を揺さぶった。そんなことはどうでもよくそういえばここらで再度紹介しておこう彼女はエネ、もともとはエネミーといったあだ名みたいなものだったが俺の手によって名づけられた。

彼女はここIS学園で学ぶISそのものでありその能力(勉強したがこれは、プライベートチャンネルの一種らしい)を遺憾なく発揮しこうして俺と会話を脳内限定で発生させている。因みに、彼女は元の憑り代(よりしろ)は俺のポケットに入っている白いイヤホンだが、紆余曲折・・・というか最初の邂逅時に俺の脳内に寄生しており、プライベートチャンネルを使うと脳内が圧迫するのはそのためである。エネペディアさんより抜粋。

 

『エネペディアって何だ?』

 

『エネさんの情報だからだよ、それに細かいところまで突っ込むと面白くないってシルバーソウルな週間少年誌の連載で言ってた。』

 

『なんか・・・最初は私が主導権握っていたはずなのにな・・・』

 

『え?性的なほうの?』

 

『誰がそんなこと言った!!』

 

『まあ、さっきの話の答えとしては俺が吹っ切れたって言うのが正解かな?』

 

『ああ・・・捨て身?』

 

『イエス!。捨て身は戦法は俺の専売特許だぜ!!。』

 

『すぐに実行に移せそうだな、なんせ君には守るものがないし』

 

『おいおい、いつもどおり切れ味のある皮肉だなぁ、笑って流せるレベルじゃなくなってくるぜ、ベイベー?』

 

『最後の意味不明な声はなんだ?それに流すも何も君は流されるものがないだろう?』

 

『まあね、一葉も大きくなったし、もう気分的には楽隠居人だよ』

 

『早いねぇ』

 

『そうだな・・・。』

 

あの世界で・・・もし・・・IFの話があればそうなってたかもしれないな。

 

『・・・・・・君は、やっぱり面白い。』

 

『なんだ?藪からスティィィィィィィィィィィィィィィィィィィックに?』

 

『・・・・・・・・・・・・・(突っ込み待ちか?)いやなんでもないそれよりも・・。』

 

『なんだ?藪かr『それはもういい!それより君好みな奴がやってるよ。』ん?』

 

と視線を誘導(・・)されたそこには・・・。

 

「織斑君?」

 

「はっ、はい!」

 

おや?なんか面白そうなことが起きてるな・・・ねえ?織斑一夏君?

 

『やっぱりそうなるか・・・。』

 

『ああ、異常性を発揮・・・簡単に言えば目立ってる奴を見るのは面白いからな。』

 

『君的にはその異常性をコピーするのが目的でもあるがね。』

 

『その通りだ、観察と模倣それができなきゃ・・・俺は生きていないな。』

 

冗談交じりに肩をすくめたような感情を伝えた。

 

 

「織斑一夏です。」

 

さてそれはともかく・・・奴の異常性はISを使えるという一点に尽きるのかそれとも・・・。

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・以上です。」

 

・・・は?・・・・・・いやこれは、予想外・・・いや、男子として普通なのか?

 

『あっはっはっはっはっはっはhっはっはっはっはっはっはっはっはっはっは!!』

 

『おいおい、俺以外に聞こえないとはいえ、笑ってやるなあいつにしつれいdブフォッwww!。』

 

『君が一番失礼だよ・・・。』

 

ん?あれ?殺気がもれている?

 

ん?あれ?さっき殺気がもれていると思ったら一夏の前に人影があるぞ?

 

スパーン

 

・・・ああ、あの試験官さんか・・・は!?

 

『君・・・ヤバイことになったね。』

 

『待て話しかけるな、どこから感づかれるか分かったもんじゃない。』

 

エネを静止させ俺は目立った動きをせずに思考を続ける。

 

ヤバイそのパターンは考えてなかった・・・まあ、技術の一端を見せたし・・・よし、これは・・・。

 

人生積んだ。

 

将棋だよ詰め将棋だよ、角飛車取られて敵陣無双だよ相手側が!

 

・・・まあ、ない知恵でも絞りますか・・・それに、おもちゃは、事足りそうだしな。

 

と下衆な顔をしながら、俺は良く似た顔立ちの二人先生と生徒を見やった。

 

 

・・・ああ。本当に退屈しなさそうだな・・・セルフの皮肉って結構辛いね。

 

 

俺はこれから来る学校生活に本当に、久しぶりと言うか初めての感覚を俺は持っていた。

 

 

 



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入学にて顔合わせ

 

「よっす。またあったな。」

 

「・・・康一?」

 

時は休み時間・・・俺は一夏に話しかけていた。理由は簡単、これからの信頼関係・・・ないしとりあえず連絡手段はとっておいた方がいいだろうしそのためのパスを作ることが目的だ。それに、面白そうな奴だしな。

 

「ああ、そうだよそれ以外になにに見える?」

 

「俺のオアシス。」

 

「ああ、なるほどこんなところじゃあ・・・まあ、なんにせよよろしく。」

とりあえず手を差し出す。

「再会場所がここになるとは思わなかったけど・・・よろしくな。」

それを一夏が握った。

 

『『『『『キャーーーーーーーーーーー。』』』』』

 

「ん?後ろが騒がしいな?」

 

「どうしたんだろうね・・・。」

 

・・・えぇい、○○○どもめ!!なぜこんなところで黄色い声が飛んでくるんだ?今じゃないだろ、前の時間にやったここの担任の自己紹介のときもそうだったがお前らは変態なのか?・・・いやそうだったな。

 

それはともかく、こいつは・・・。

 

「それと・・・言いたいことが一つあるんだが・・・良いか?」

 

「ああ、どんどん話してくれ。」

 

「じゃあ遠慮なく・・・今俺たちはどうなっている?」

 

「上野動物園のパンダだな。」

 

「おう、なかなかに皮肉が利いてるな・・・その通りだ見られているがその中で異質なのが二つ程あるのに気が付いているか?」

 

「・・・考え過ぎじゃ。」

 

「じゃあ視線の主その一・・・どん!。」

 

と言いながら一夏の頭を回し・・・視界の延長線上には、ポニーテールのおんにゃのこがいた。・・・ヤバイ、だいぶおっさん化が進んでいる・・・どうしよう、どうもしないか。

 

「なんか彼女、すっごい生暖かい視線を送ってるんだけど・・・どういう関係?」

 

「・・・康一、お前恋愛話している女子のような顔になってるぞ?」

 

「だって、おじさんこれぐらいしか楽しみがないんだもの。」

 

「まだまだ、いけますよ・・・ってか、同い年だろうが。」

 

「そう?んで?だれ?」

 

「・・・篠ノ之箒、俺の幼馴染だよ。」

 

「フーン、クックックックックックックックックックック・・・じゃあ、何か困ったことがあったら呼んでくれ、俺は何にも出来ないが一緒に悩むことぐらいは出来るからな。」

 

「なに?その無駄に格好いいセリフは?」

 

「本の受け売り。んじゃ。」

 

「あ、ちょt「ちょっといいか?」

手を後ろにし、なにか言いたげな顔をしながら一夏の前へ先に言ったポニテ少女篠ノ之さんが一夏にはなしかけてきていた。瞳孔を開かせ、頬を軽く赤に染めながら

 

 

おっと、篠ノ之さんが話しかけましたねぇ・・・さて場所を移動したようですが、どうなるのでしょうか?私も後を追ってみましょう!

 

三人ほど付いて来たけどそれの視界から消えるような感じで見ていた。

 

「あの二人なんか良い感じだね。」

「そうだねぇ」

「けど、あんなに篠ノ之さんだっけ?が(スキスキ)オーラ出しているのに何で気づかないのかな?」

「情報早くね?」

「鈍感君なのかな?」

「絶対そうだって。」

「そういう立ち位置ってハーレム物の可能性が高まるよね。」

「マジか。」

「そうだね、鈍感とこの状況×イケメンの一夏・・・絶対にそうなるよね。」

「あ、篠ノ之さんが赤面している。」

 

「「「「フゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥッ」。」」」

 

「聞こえるから静かにね。」

「「「了解。」」」

「それにしても、イケメンだよね織斑君。」

「なんか、俺に触れるとヤケドするぜ!!とか言わせて見たいよね。」

「分かる!ミスマッチだけど逆にそれがイイ!!。」

「「・・・・・・・いいねぇ。」」

「「でしょ?」」

「んで?彼と彼女はどういう関係なのかな?」

「聞いたところによると幼馴染らしいよ。」

「へぇそうなんだ・・・最近だと幼馴染って負けフラグだよね。」

「まだだ、(幼馴染の力は)まだ終わらんよ!!。」

「俺、故郷に残した幼馴染がいるんだ・・・。」

「それ死亡フラグね。」

「本当に地味子ちゃん好きだったのに・・・。」

「あれ六巻からおかしくなったよね。」

「五巻までは面白かったんだけど。」

『キーンコーンカーンコーン』

「あ、終わった」

「早く戻らないと。」

「あ、篠ノ之さんの悔しそうな顔が。」

「なにっ!?」

「「早く!おねえs、織斑先生に怒られるよ。」」

「「うわっ引っ張んないで!。」」

 

 

 

「はぁ何とか間に合った・・・あ?」

 

女が手をつなぐ→俺

 

「・・・どちらさまで?」

 

「ど・・・どちら様にみえます?」

 

「キャバクラか!?じゃなくて・・・だれ?。」

 

「一年一組出席番号二番 相澤 康一。よろしく」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ああ、あの二人目の男性IS操縦者ね・・・え?・・・えぇ!?・・・私は一年一組出席番号十番 笠森 綾香(かさもり あやか)

 

「どうも笠森さん、これから一年間よろしく。」

 

「えぇ・・・よろしく。」

 

「んじゃあ、早く行こうぜ。」

 

「ええ・・・。って、おかしい!。」

 

「どうしたの?綾香?。」

 

「・・・謎の青年がいた。」

 

「は?織斑君のこと?」

 

「おんなじクラスだって。」

 

「謎じゃない!?」

 

 

こうして、少しずつ康一と言う名の波紋を広げていっていた。

 

 

織斑く~ん(アナゴさんのように)なにやってるの?大丈夫?

 

それは、少しさかのぼり授業が一段落済んだところの話。周りがそれを理解しているところに二人ほどそれを理解し切れていない奴がいた。俺と一夏だ。

 

ふむ、授業の内容上、今は応用が効くようなつまり学校の勉強での数学や物理、国語の長文(頭の良い人に言わせれば違うのだろうが)などの授業ではなく、地理や英語のような暗記科目であることが分かる・・・しかし、ISと言った自分の体を使うようなものは覚えるのが難しい、その難しさを体感するのならば、日本語で”右”に順ずるような分かりきっているが言葉では説明できにくい言葉をを調べるようなものだ。

 

だから、この攻略法としては・・・「ほとんど全部分かりせん。」ファッ!!??

 

ええええええええええええ?織斑ク~ンなにやってるの?大丈夫?仮にも藍越学園のそこそこ、高い偏差値超えようとしたんだからそのくらいのことは・・・まあ、知識と知恵は別物だからな。

 

「織斑、入学前に渡された参考書はどうした?。」

 

と、ここの担任、紹介が遅れたが名前は織斑千冬、一夏の姉らしい・・・が言った。

まあ、あれさえ読んでりゃ丸暗記とは行かなくとも理解は出来たりするだろ、しかも一番最初期の授業、しかも俺たちっていうイレギュラーつきだ単語の復習ほか、そんなのぐらいしかないだろう。

 

いや、もっとあげろって言う振りじゃないよ?。

 

「古い電話帳と間違えて捨てました。」

 

スパン。

 

ファッ!!?

 

・・・この世界の家族って、こんなんなのか?いや、ちょっと前に知り合った時に見た大企業のお父さんがしていたような愛する娘を見ているような目だった。・・・愛されているな一夏、世界一のお父さんn「ブワッハァッ!!??」。

 

いきなり横合いから叩かれた、完璧な不意打ちだったせいで力すら流せなかった。

 

「あ、すまんな。何か邪なことを考えていたようなきがしてな」

 

「『あ、』で叩かれてたまるか!。」

 

・・・読心術(物理)かよ・・・。野生の勘か?

 

「それより、相澤お前も大丈夫か?あの参考書丸暗記できれば問題はないはずだが。」

 

「いや?全然大丈夫じゃないですけど・・・やるしかないでしょ。(それと、ずいぶんと一夏を溺愛しているんだなぁ。その愛し方が通常とは違うだけだし。)」

 

それに、担任の性格上、一夏に助け舟を出してやんなきゃ。

 

「そうか・・・織斑再発行してやるから一週間で覚えろ。」

 

ポーン

 

ン?

 

『諦めろBY康一。』

 

(・・・言う言葉が違うだろ!?)

 

「返事は?」

 

「はい・・・分かりました。」

 

(色々考えたけど諦めた方がいいなこれ・・・千冬姉の性格上覚えろとしか言わなさそうだ。)

 

「では・・・。」

 

・・・すげえな山田先生、この状況下で授業進めたよ。

それに・・・もう一つの異質な視線が、強まった気がするんだが?

 

 

・・・ん、まあ気のせいか。

 

 



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代表候補生登場!!・・・あれ?

そして、休み時間へ・・・IS学園の授業ってなにやってるんだろうね?

 

『いや、君が言ったらダメだろう?』

 

そうか?けど、やっと休み時間だ~。よし、一夏と遊びに行ってこよ。

 

『いってらっしゃい。』

 

そんな、ISに支援を受けて遊びに行ってくることにした。饅頭を食いながら。

 

「よっす、一夏。食べる?」

 

「・・・なんで?饅頭?・・・まあ食うけどさ。」

 

と言いながら一夏は饅頭を口に運んだ。

 

「いや、普通に饅頭だな。」

 

そう感想を言った。俺としても変なものを入れたものを渡すつもりはないけどな。

 

「なんだ・・・リアクション用の饅頭が欲しかったのか?」

 

「中身が気になる!!。」

 

と馬鹿な話に花を咲かせていると・・・突然に横槍が入った。

 

「ちょっとよろしくて?」

 

「ん?」「よろしくない。あ、それで俺が・・・」

 

「日本人は話をするって言うことも出来ないんですの!?」

 

その横槍の主を牽制し無視して会話を続行しようとしたが、それを振り切り乱入してきた前回話した、異質な視線の二人目が居た。

・・・なんかどっかで見たことがあるような?・・・先手を打ったはずだが・・・しくじったか・・・。

 

「ああ、ごめん、ATフィールド切ってなかったわ。」

 

「何のお話ですの!?」

 

「お前は汎用人型決戦兵器か・・・二人ともちょっと落ち着け・・・それにそちらの方はなんの御用で?」

 

「・・・わたくしをご存知ないのですか?このイギリスの代表候補生であるセシリア・オルコットを?」

 

「・・・ああ、それに・・・。」

 

おい、辞めろ肯定したところで少し苛立ってるぞ・・・。

 

「代表候補生ってなに?。」

 

『『『『『『『『『『『『ズルッ』』』』』』』』』』』』

 

あ~あ、言っちゃったよ、さっきの担任に怒られた(物理)授業でのくだりと同じ顔していたもの。

 

「日本の男性と言うのはこれほどまでに知識と品性が乏しいものなのかしら?」

 

「これってアレだよな、よく日本の男性が言う『今の若いモンは・・・。』とおんなじだよね。」

 

あの言葉ほど愚かな物はないと思うな・・・一人でサンプリングとして機能させるなよ。

 

「ああ・・・言わない方が吉だぞ。」

 

「そう?あ、食べる?」

 

「食べる、そういや康一これどこの饅頭?」

 

「手作り。」

 

「マジか。」

 

「ちょっと!あなた方は会話を成立させようとする気があるのですか!?」

 

「ああ、ごめんイギリスの・代表候補生さん・・・だっけ?」

 

「自己紹介を聞いておりませんでしたの!?仕方ありませんわね、いいですか?もう一度良くお聞きになって?」

 

「分かりました」

 

「わたくしこそは!、セシリア・オルコットであるイギリスの・代表候補生ですわ!。」

 

「・・・なあ、さっきから名前と称号みたいなのが逆になってないか?」

 

「「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」」」

 

「・・・あ、これ食べる?」

 

と言って居たたまれなくなった俺は、饅頭(自作)を差し出す。

 

「い、いりませんわ、・・・なにを仕込んでいるか分かったもんじゃありませんもので。」

 

「そうか・・・結構がんばって作ったのにな・・・はぁ・・・。」

 

あ、やばい・・・これを作ったときの事を思い出したら、少し泣けてきたわ。

 

「・・・まあ、下々の謙譲を快く引き受けるのも貴族の勤めですし・・・頂きますわ。」

 

よし、ここに日英同盟が完成した。

と考えていたら、オルコットさんとやらが口にそれを運んだ。あれ?それ・・・。

 

「あ。」

 

パクッ

 

と、オルコットさんが饅頭を食べた。

 

「ふむこれが日本のお菓子で・・・?ゴブファッ!!!!!?」

 

口に入れて少し経った後に吹きだした。

 

「それ、リアクション用の饅頭だった。」

 

「なるほど、芸能人がやっている奴を間近に見るとこんな感じなんだな・・・。」

 

以外に一夏が冷静だな・・・。

 

「なん・・・ですの?こ・・・れぇ?・・・おっ、息が・・・できま・・・せ・・・。」

 

「大丈夫か?アフターケアー用のコーラはあるから。」

 

ガシッ

 

ゴクゴク。

 

ケホケホッ

 

「ハァ・・・ハァ・・・ちょっとなにを渡してくれますの!?」

 

「ごめん芸人用の饅頭だったみたい。」

 

「芸人?こんなものを食べる人が居ますの!?」

 

「うん。極一部だけどね」

 

「何でそんなものを『キーンコーンカーンコーン。』っく!またきますわ!」

 

 

「康一・・・ワザと?」

 

「うんにゃ、ちゃうよ?。」

 

「だといいけど・・・。」

 

 

こうして、休み時間は足早に過ぎ一つのわだかまりどころか敵対フラグを立てて次の授業へ進めることになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『キングクリムゾン!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!・・・だね』

 

『何のことだ?って言うか、音楽聴いているときに話しかけるの止めてくれないか?。』

 

『読者に分かりやすくするためだよ。理解してもらう努力をしなければね。』

 

『・・・スルーかよ・・・まあ、今は放課後だし一夏と別行動してるから何にもおきないしいいか、別に。』

 

今は、先にも言った通り放課後だ。今日の授業がつつがなく・・・オルコットさんとやらを怒らせた以外はつつがなく終わり授業から開放され、今度は学生たちプライベートな時間がやってきた。それでも、学業に専念しようとしている人も居るらしく、野暮ったく空を駆けずり回っているISの姿があった。しかし・・・空を飛ぶってのは、とても気持ちよさそうだ。

 

『・・・・・・そう思うか?。』

 

『ん?どうした?』

 

『いや、なんでもない独り言だ。』

 

・・・モノが独り言って・・・何かおかしくないか?深くは聞かないが。

 

それにしても、行き当たりばったり過ぎるな・・・いきなり寮暮らしって、正式な自宅なんてないから、愚痴れる立場じゃないが・・・まあいい。

 

そういえば今俺がなにしているのかの描写をしていなかったな・・・あれ?俺今なんて?・・・まあいい、気のせいと言うことにしておこう。では仕切りなおして・・。俺は自宅通学と聞いていたのだが、いきなり寮になってしまったのだった・・・まあ、身体保護の措置らしいがな、だがいきなり俺が、男が入ってきてどうするんだ?一人部屋は・・・贅沢だ・・・けど、予算のゴリ押しで作れそうな気もするもんだが・・・そこらへんはどうなんだろ?

 

まあ、百聞は一見にしかずだしな、考えて出なかったらさっさと行ってしまうに限る。

 

しかし、何にもないな・・・びっくりするぐらいに。いやまあ、それだけIS学園のセキュリティが優秀だってことだが・・・なぜかどこかに何かあるような気がしているんだが・・・災害も人災も忘れた頃にやってくる。それをこの十五年間ではっきりとこの身に刻まれて、それに目標も刻んだ・・・小学校の卒業式に・・・大衆も面前で。

 

それはともかく・・・俺のへやって・・・1050だよな?俺の目が腐ってなければそうだが・・・。

 

「んっと・・・1050、1050っとあった。」

 

ちょっとした虱潰しをして俺の部屋を探し当てた。

 

まあ、男だし女子と二人にさせておくってことはないだろ?んじゃ、俺の根城へご招待~。

と脳内で思いながらドアノブに手を掛けてそのままそれをひねt・・・

 

『完全なフラグだな・・・』

 

バッ!!

 

『・・・そういうこというなよ・・・けど危なかった。完全に油断していた・・・こんなところだ何のトラップがあるか分からないからな。』

 

んじゃあ・・・。

 

コンコン

 

・・・この寮の構造上の奥行きからいって、ここまでに来る時間は六秒位だろう。しかし来ない。

 

コンコン

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・来ない。

 

コンコンコンコン

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・コンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコン「いや子供か!!」

 

っは!びっくりした・・・誰かの声が聞こえていなかったらこのままずっと無心で叩き続けていたぜ・・・。つーか喋れたんだな。

 

「ああ、喋れたと言うより君の音楽プレイヤーぐらいにしかしていないスマートフォンから音を出しているだけだがな。」

 

「もうずっとそっちでいろよ、めんどくさいから。」

 

「そうしたら、君はただの変質者になるだろ。」

 

「大体もう生まれたときから変質だっての。」

 

「モノではないんだね。」

 

「モノだからな、そんじゃあけますか。」

 

もう大丈夫だろ、と扉を開けた「ウオッ!?」

 

・・・人いるやん・・・集中状態による聴覚排除されてるけど。

 

なにをそこまで駆り立てている?なんか目がすごく血走ってるんだけど・・・何でだ?いや、ただ目が少し赤みかがっているだけか、髪は水色メモメモっと・・・。しかしなにやっているんだ?こんなところだしIS関連か?パソコンで?むしろノーパソで?・・・どんだけスペックたけーんだよまあ、何もすることないし・・・一夏のところにでも行ってこようかな。

 

確か、聞いた話だと1025だったな・・・この階の端っこだな。

 

行って来るか・・・。一夏大丈夫かな・・・何かやらかしていそう・・・。あれ?

 

1025←穴だらけのドア。

 

・・・なにやらかしたの!?・・・いやけどこれ木刀か?それに一夏の細腕・・・俺も人のことは言えないがあんな腕でこのドアを破壊できるとは思えない。なら誰が?

 

このだが角度この太刀筋に見覚えがある・・・言わずとも知れた篠ノ之流の太刀筋だ・・・大丈夫か?

 

 

・・・本当に退屈しなさそうだな・・・平穏を求めているのになぁあっはっはっはっは。

 

 

と俺はこれから、起こるであろう事態に頭を抱えるしか出来なかった。

 

 



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クラス代表・・・ってえ!?

「これより、クラス代表者を決める。」

 

それが数日経ったあとの授業での担任の第一声だった。

 

・・・どうせ一夏になるでしょ?それが世界の選択だよ。

 

『君がなるっていう選択肢はないのか?』

 

『ないね。』

 

なぜ俺がそんなことしなければならない・・・死ね。

 

そんな呪詛を吐き出しながら、担任の言ったことを反芻することにした。

 

えっと、確か・・・クラス代表者を決める、クラス代表者は生徒会の出席義務と二週間後に行われるクラス対抗戦の出場、または出席義務が生じる。・・・だとさ。

 

クラスの顔のようなものだな・・・。それか分かりやすくすれば『面倒ごとだ』。

 

『ざっくりだな・・・。』

 

『そんなこといったらお前らの存在だってざっくりだろ、言われたって分かんないけど。』

 

『・・・だろうね。』

 

まあ、俺がなぜ一夏がクラス代表になると思うのか・・・その理由は、彼の彼自身の特異性だ。

 

・・・この数日間張り付いてみてみたが・・・まあ、典型的なラノベの主人公みたいなやつがいるもんだと思ったよ。

 

「誰かいないか?自他推薦でも構わないぞ。」

 

よし、一夏だ確実にその状況だったら一夏だ決定だ、もう何者かに決められた全ての事柄のうちに入っているくらいの揺ぎ無い確定ゾーンに入っているな。ヤッホーウありがとう!俺の親!こんな平凡かつ普遍的な因子を持っていてくれて!!。

 

「はい、私は織斑君がいいと思います。」

 

「私も!、男性操縦者が二人もいるってことを活かさなきゃ損だって。」

 

「え?もう一人は?」

 

「「「「「「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。あれ?」」」

 

「おい!?康一だよ!康一!。」

 

「「「「「「「「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ああ、あの毒入り饅頭の君。」」」」」」」

 

『・・・君ねぇ・・・存在をここまで消すって何かの才能・・・むしろ能力なんじゃないか?』

 

『そこにいるってだけで気づかれない人間もいるんだよ。むしろ突っ込むべきはあだ名の方だろ?』

 

『・・・そんな細かいところ突っ込める分けないだろ・・・しかも君の影の薄さは君と部屋の同居人が君を見て驚くぐらいだったし・・・。』

 

『マジか・・・えぇ?けど、わさび入り饅頭食わせたりとか色々していて目立った位だと思ったが・・・一夏への視線と混同していたか?』

 

『言い忘れていたが・・・私を冷蔵庫代わりにするのはよしてくれないか?』

 

ああ、そういえば饅頭を入れてもらったんだよな・・・量子化って言うしたぶん腐らないだろ・・・。

 

『まあ・・・入るものは入れていいんだよ。』

 

『そうか、それなら君のその貧相なイチモツをじょせいk『言わせねえよ!!!!!!』』

 

『残念だ・・・残念だ・・・。』

 

『二度も言ってるんじゃね、しかも入るこtっつ!!?。』

 

何かやばそうな匂いがしたので意識を外に向け、その原因を探ってみることにしたが・・・探すまでもなかった。

 

 

「康一を推薦します!!。」

 

 

・・・おい!おかしいだろ?よく、そうやってパスを出せるよ・・・。

 

はぁ・・・これで受理されたしな・・・どうするか。・・・暇だ・・・めんどくさい・・・。

 

「そのような選出は認められませんわ!!」

 

 

キュピーン!!

 

 

『なあ、あからさまに数値が跳ね上がったんだけど。』

 

『なんの?』ワクワク

 

『・・・大いに水をさすようなものだからやめておくよ。』

 

 

「男がクラス代表だなんていい恥さらしですわ!このイギリs・・・ゴホン・・・セシリア・オルコットにそのような屈辱を一年間味わえとおっしゃるのですか?大体、この文化としても後進的なこの国で暮らしていくこと事態わたくしにとっては耐え難い苦痛で・・・。」

 

「イギリスだってたいしたお国自慢ないだろ」

 

「議長、発言権をください。」ノ

 

すっ・・・と流れるように挙手をした。

 

「言いたいことがあるのなら言え・・・それに議長とはなんだ?」

 

「ありがとうございます、織斑教諭殿」

 

(・・・あれ?返さないの?)

 

「では、一夏君が変な事を言う前に発言させていただきます。」

 

「いや、そんなことはないと・・・。」

 

一夏の抗議をさらりと受け流しつつゴホンと、一回咳払いし言葉をつむいでいく。

 

「オルコットさん、あなたは先に・・・『文化として後進的なこの国。』とおっしゃいましたが・・・よろしいでしょうか?。」

 

「ええ、間違いありませんが・・・。」

 

「それを訂正していただきたい。正しくは・・・」

 

「正しくは?」

 

「変態的なこの国に訂正していただきたい!!。」

 

ドガシャァァァッ

 

そう、大真面目な顔で宣言した。その副次的な効果でこの場にいる少を除き全員がその発言の唐突さにこけてしまった。

 

「・・・は?」

 

因みに少数は、一夏、セシリア、山田先生、織斑教諭殿だ。前半の者達は呆けていて、後半の者は頭を抱えていた。

 

「あの・・・あなた方の祖国を悪く言ったわたくしが言うことではありませんが・・・なぜそのようなことを?」

 

なぜかオルコットさんが生暖かい目でこちらを見ながら質問してきた。・・・そんな当然なことを聞かれたので口調が荒くなってしまうなぁ、あっはっはっは。

 

『生き生きとしているね・・・。』

 

誰になに言われようと関係ねぇ。

 

「いいですか?この国は建国・・・始まりからして変態なのです。そうでしょう?始めに国をつくった卑○呼だって今だったら宗教家のキチガイババアですし、少し飛んでゼロ戦を作った堀○二郎だって当時は変人扱いされていたそうではないですか。現在では、変態などっかの博士が作った変態的な性能を持ったパワードスーツで世を席巻しているでしょう?。」

 

「それはそうですけど・・・。」

 

俺は、論理の構築を補強するために最後の一言を言った。

 

「それでも納得できないというのであれば、ほら身近なら・・・ほら教卓を見てください・・・・・・・・・・・・・ね?」

 

と、この場にいる全員に語りかけるように、やさしく、柔らかに親指を立てながら言った。

 

スパーン!!

 

「誰が変態だ。」

 

「あがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!痛ってぇ!?おr・・・おでの親指がぁぁぁぁぁッいてぇよぉぉぉぉぉッ」

 

「お前はハート様か!?」

 

「絶対狙ってるだろ。」

 

失礼な・・・ちゃんと狙ってるに決まってるだろ!

 

「ゴホン・・・失礼取り乱しました。」

 

「むしろ、失礼しかしていないような気がするのだが・・・。」

 

「だまらっしゃい!「スパーン!」ゲフ!申し訳ない・・・では、訂正してくれますね?訂正した形での発言をしてください。」

 

「・・・・・・・・・男がクラス代表だなんていい恥さらしですわ!このイギリスの・代表候補生にそのような屈辱を一年間味わえとおっしゃるのですか?大体、変態的なこの国で暮らしていくこと事態わたくしにとっては耐え難い苦痛・・・・・・ですわ!!?」

 

「どうした?」

 

「決闘ですわ!。もう、四の五の言う前n「議長、俺はオルコットさんに一票を入れます、そんで一夏の補佐にまわればいいとおもいまーす「却下だめんどくさい。それに議長言うな。」ええ?俺がクラス代表やるって言う可能性を極限今で減らしt、「ですが決闘はしてもらいますわよ!。」

 

イラッ!

 

「おい、私の労力を考えろ、幾ら無尽蔵にあるとまで言われるが「よく言われるなそんなん・・・大丈夫?」「まあ、一夏を姉として守れるし、良いと思ってるよ。」「・・・俺をクラス代表から外してくれないか?」「ダメだ!そんなことしてみろ、私は貴様を撃たなくてはならない。」「ふぅ、悪かったよ。」

 

イライライラ

 

「結局決闘でよろしいのです「「却下だ。」」「ってか、決闘って言葉の響きからしてダサいよね。」「では、なんですの!?レッツ!デュエル!!とか言えば「話し合いで決めろ貴様ら人間は何のために言葉を作ったと思っている。」「議長、私は激しく罵り合うためだと思いm「死ね消えろ。」はぁはぁ、たまんねぇ。」

 

ぷちっ!

 

「ぎちょ・・・織斑先生コイツが全ての元凶なのではなくて?しかるべき「いやお前も議長言うなよ!言ってやるなよ!」もうめんどくさくね?いいやいいや、あ、山田君座布団持ってきて」「ほら見ろ!議長のキャラがブレブレだろうが!!おまえn「すでに議長が議長と呼ばれてる時点で「相澤!オルコット!!、貴様らに問題だ・・・。「あれ?何で殺気を漏れ出しているのでせう?」「デビルチョ○プは?なんでしょう・・・。」「「ひっ、ひぃぃぃぃぃぃぃパンチ力です!!」」「大正解!」「「ブヘラァ!!?」」

 

そして何かの兆候が現れた。

 

「アァァァァァァッウルッセェェェェェェェェェェェェよ、もう早く!意見を一つに纏めやがれお前らァァァァァァァッ!!。」

 

く・・・一夏に言われたらしょうがないな・・・。

 

「めんどくさいんで俺以外がクラス代表者になればいいと思います。」

「めんどくさいんで生徒の自主性に任せればいいと思います。」

「めんどくさいんで戦って決めればいいと思いますわ。」

 

「何でみんな最初が同じなんだよ!、しかも纏まってねえし!!ってか千冬ねえ!アンタ仮にも教師だろ!?戦わせるのは止めようぜ!?」

 

「ハッ!?・・・・・・ただじゃれあっているだけだと思ってた、いじめには見えなかった。」

 

「予防線作ってんじゃねえ!教師向いてないんじゃないかい!?オイィィッ!!」

 

「奇遇だな、俺もそう思っていたところだ。」

 

辛うじて、カリスマと威厳だけで成り立っているような授業だからなぁ・・・

 

「・・・ほう・・・実の姉に向かって貴様はそのような暴言を言うのか。」

 

「おい、姉弟喧嘩フラグ立ててんじゃねえよ・・・んで、結局どうするの?。」

 

「・・・・・・・・そうだな、結局は決闘の方が分かりやすいしその方がいいんじゃないか?」

 

「あれ、なんだろう、この人に極ア○ムズを着させたら敵陣営をものの数分で壊滅させられそうだな。」

 

「生身でもいけるよきっと。虚○ワールドを生き残れるぐらいには・・・」

 

まるで、世界樹相手に戦いに行くような世界軸の話だった。冗談はそこまでにおいといて一夏と相談しなければいけない事がある。それは

 

「それに決闘ならそうだな・・・ハンデはどれくらいつける?」

 

そう、ハンデのことだ。これは別に女子が相手だからとかではない理由は話すだろう。

 

「そうだな、片手か最初の十五分攻撃しないとかでよくね?そうすれば負けられるし。」

 

「おや?日本の男性は冗談がお上手なのですね」

 

「ちょっと織斑君たち・・・男が強かったのってISが出来る前の話だよ?」

 

ん?

 

「あはっはっはっはっはっはっは・・・残念だね、女より男が強かった時代など存在しないと思ってるから。」

 

「そこまで卑下することもないと思うけど・・・。」

 

「自身の弱さを認められてこそ一人前だよ。お嬢さん、この意味わかる?。」

↑安西先生風に

 

「康一・・・お前今何歳?」

 

「期間限定の十五歳だ。」

 

「そこ、永遠のじゃないんだ・・・。」

 

「しかもハンデは、負けたときの言い訳だ。これで勝っても負けても後に遺恨を残さないでくれると嬉しいんだが・・・約束してくれるか?」

 

まあ、ハンデをつけたのはこういう理由だ。

 

「え、ええ、元々そのつもりですし・・・かまいませんわよ?」

 

(いえませんわね・・・小間使い、もしくは奴隷にでもしようかと思っていたことなんて・・・ですが、書面上の契約ではないから大丈夫ですわね。)

 

「そうか、ありがとう。『ピッ、録音が完了いたしました。』」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」

 

「あれ?オルコットさんどうして僕の手の中にあるボイスレコーダーを親の仇敵のような眼で見ているのかな?」

 

「い、いえ・・・何でもありませんわ。」

 

目論見が崩れ去った瞬間だった。

 

「はっ!?・・・・・・なにをしていたんだ私は・・・そうだ。オルコット、織斑、相澤。試合で勝った者がこのクラスの代表だ。一週間後に第三アリーナで行う、確かそこが空いてるはずだからな。・・・返事!」

 

「はい!。」

「はい!。」

「リョォッカイいたしましたであります!!」

 

「少しは慎め!。」

スパン!

「グヘッ。」

 

この話の総括。そんなこんなで、俺はたたかうことになってしまいしましたとさ、以上。

 

 

その後の授業にて。

 

『・・・どうやって戦うと言うのだね?』

 

『なんとかなるデショ・・・いや、負け続ければ市(婉曲表現)・・・って言うものありえるけどさ。』

 

『そう・・・だな。』

 

『どうした?・・・何か含みのある言い方をして。』

 

『いやなんでもないよ。』

 

『・・・そうか。』

 

『いや本当になんでもないんだ、忘れてくれ・・・。』

 

『俺を殺す算段とかじゃなければいいけどな。んじゃあ、授業に戻る。』

 

『わかった、がんばってこい。』

 

 

 

 

 

『・・・・・・なぜみんな、名前が称号になっていることに気づかないんだ?』

 

 

そんな小さなつっこみが、自身の電脳空間内で寂しく響いた。そのことは何者も気付きはしなかった。

 

 



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食事とエネと

 

『・・・君どうでもいいが、時間が飛んだような気がしているのだが・・・気のせいだろうか?』

 

『さあ、お前の勘違いじゃない?』

 

時は昼食、○○ー、昼餉だ!ならキャラが立つこともあろうが、俺は普通に昼食だ。俺の周りの様子はもはやサファリパークの様相を呈しており、全校の人間がほぼ全て集まり、なおかつ喧しいの代名詞である女性がワラワラと出張っていているのだ五月蝿くないわけがないのだが、そこを、三十近くのオッサンの忍耐力でグッとこらえているしだいである。

 

『君は何様なんだい?』

 

『誰でもないさ、お前が決めな。』

 

『あ、やばい・・・痛いという言葉を遥かに超越して逆にかっこよく見えてきた。』

 

『お褒めにいただき光栄です、それといってはなんだが少し邪魔を・・・あ。』

 

『あ?・・・ああ、わかったよ、邪魔しない。』

 

あ、ここから私ことエネがモノローグを努めさせてもらう。

 

彼、ここでは相澤康一が見て私が共有しているところには一組の男女がいた。

男性は、織斑一夏。女性のほうは彼は知らないが私を作った(彼の談によると変態)人である篠ノ之束の妹(彼によると、いもうと・・・と、妹は違うらしい。私にとってはどちらも変わりがない気がするのだが・・・)篠ノ之箒である。

 

そんな二人が、いや一人が恋愛状態に陥っている様子を彼は心底嬉しそうな様子で見ていた。

 

イヤだってほら・・・テレビに映っている彼がかなり喜んでいるではないか。一部をあげると。

 

《イヤッフゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ。なにあれ?なにあれ?ファァァァァァァァァッ!!やべえ、ちょっとよだれ出てきたんだけど?いいや気にしねえ!もうラブコメの匂いがプンプンしているんだけどォ!!いいねぇいいねぇ最っ高だねぇ!いけ!行くんだ!そこで動かなければどうするんだ!どうもしないかそうか・・・じゃないだろ!今行かないで何時いくの?今でしょ!!!!!!若干古いかもだけど、行くんだよ!ああ、じれったいィィィィィィ!!ドッセーイ!!》

 

『うわっと!!?』

 

なぜか妙な掛け声と共に念のようなものを叩きつけられ、篠ノ之箒の個人用携帯にアクセスしていた・・・メルアドでも盗って来いとでも言うのか?とりあえずもっていくがな。

 

とりあえず、私の家に戻ってきたが・・・いきなりそのメルアドが

 

《キターーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!》

 

同じような変な掛け声を叫びメールアドレスを強引に取られ・・・

 

《さあ!、準備は整った!!これこれこれと・・・ポチッとな!》

 

 

そうしたら篠ノ之箒が自身の携帯電話を取り出し・・・赤面した。このような場合十中八九彼の仕業だ。

 

さて、読者の皆様がついていけないような行動・・・と言うか叫びについて説明するとしようか。

 

ご存知の通り私は少々よく言えば特別、悪く言えば異端なISだ、さりとて大きな違いは彼にとり憑いているだけなのだが・・・。

簡潔にいえば、そう、私は彼にとり憑いている、ほかのISが持っているような機能を駆使してね。実際ISは服と呼ばれている。なぜ、そう言われるかって?考えても見て欲しい(露出癖がない人に限られるが)まともな神経を持った人が公共の場で全裸になれるだろうか?それと同じでISという服のように力を振える権利を纏った人間が簡単にその力を放棄・・・もとい全裸になることなど不可能なのだ。それが私みたいな疫病神になっただけなのだよ。

 

だが私は・・・いや、実際には全てのISがど○性カエルのように服に張り付いた意志がある、だが、普通は○根性カエルのような現象は起きないのと同じく、今現在のISでは私のように意志を装着者に伝えられない。

 

私はそこが違う。たいていは耳を塞いでしまえば聞えにくくなる様に、兵装やブースターなどで意思が伝えられずにそれが拘束されてしまうが、私にはそれがない・・・その理由が初めて酒に酔ってノリで作ったと言われれば切れるのも致し方ないだろう。

 

それで嫌がらせをしていたらあのビンに閉じ込められてしまった訳だが・・・それは別の話だ

 

ふむ、少々脱線した気がしないでもないが・・・まあ、話を続けよう。

 

とまあ、上の説明の通りに私は彼と接触できているわけだが・・・ISのバカみたいな機能をご存知であるように、頭の中に直接意識を叩き込める、この場合はプライベートチャンネル呼ばれ、操縦者間での通信を目的としたものがあるように、根強く寄生できるのだ。

 

 

それが、なぜ深層意識まで行かないと錯覚していた?

 

 

実はあれ。ちょっと出力をを下げているんだ、深層意識まで行かないように。自身のプライベートを守るためにね。

私はそれをいじってるのだよ、それのおかげでこのように彼の意識に深いところまでダイブしているのをこうやってモニタリングしている。

 

因みにテレビなのは私の趣味だ。

 

そして、彼の凄い所は・・・。

 

『あの二人幸せそうだなぁ・・・。』←表層意識

《定番のあーんキタァ!!!!!》←深層意識

 

・・・お分かり頂けただろうか。

 

 

『はあ、しかしこれからどうするか・・・試合?めんどいなぁ何か旨味があればやる気が出るんだけどな・・・。』←表層意識

《しばらくあっていない幼馴染イベントは照れが肝心!さあ、一夏!照れろ!ギャップに!照れろ照れろTE・RE・ROOOOOOOOOOOOOOO!!》←深層意識

 

 

とこのように、なぜか考えが違うのだ、可笑し過ぎてヤバイ。

 

それが彼を気に入っている一つの要因だがな。

 

『・・・来たか。まさか来るとは思っていたがこんなに早いとは思わなかったぞ。』

 

・・・なにが起きた?、ああオルコット嬢か。

おおかた、さっきの仕返しか敵情視察・・・性格で戦い方って物は変わるからな・・・ソースは彼だ。

 

そしてオルコット嬢(彼が呼んでいる名前)は

「わたくしは英国で一番の射撃成績を持っているのです。」

 

や。

 

「オルコット家を一人で守り抜いてきたのですよ。」

 

だの。締めくくりには。

 

「つまり、ブルーティアーズを一番うまく扱えるのは私で、修羅場をいくらか潜っているこの人生経験および実力の面からしてわたくしがあのクラスで代表を勤めるにふさわしいのがおわかりになって?」

 

とほざきよったのだ。

 

まあ、その年で、鉄火場に行ったとは不憫な境遇だな・・・とは思うが、まだ幸せだろう。・・・・・・・・・・・・なぜかは伏せておこう。これは色々とパンドラの箱だ。

しかし、彼の人生の半分ほどを見ている私にとっては先のオルコット嬢の言葉はかなり滑稽な物だな。

 

『おやおや、私の人生経験は五十三万ですよ?・・・うん、知っている人が聞いたら滑稽だな。』表層意識

《ゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラッ》深層意識

 

理由は上のこれだ、しかし、このギャップが背徳的でたまらない。

そして、彼は自身に牙を向けたものは全て利用するのだ。

 

「わーそうですねそれはそうと・・・ハンデをどうするのか決めて頂きたいのですが。」

 

「遠慮しておきますわ。」

 

「あ、そう?じゃあ遠慮させてもらわないことにしておこう。遠慮せずに負けるよ。」

 

「やる気と言うものが欠片ほどもありませんわね。」

 

「あったってめんどくさいだけだよ。君がなにを考えたか国の代表・・・の候補でありながら他の国を貶したようにね。」

『はあ、めんどくさい手合いが見えたな。』

《邪魔ダァァァァァァァァァァァァ!どけ!イベント回収できひんやろが!!。》

 

プクククククク彼女も哀れなものだね彼にとっては彼女は何物にも見えていない。

 

いやぁ今日も面白かった。

 

 

・・・ん?

 

『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。』

《・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。》

 

・・・完全に思考を停止している・・・なにが。

 

『《殺す。・・・いや倒す。》』

 

フッ・・・オルコット嬢はなにを言ったんだ?彼が怒る・・・いや、そこまで珍しいことではないが表層意識にまで怒りが到達しているとは。・・・彼女も意外に頭が回るものだな。

 

さてはて、ここから彼はどうするのかな?

 

 

ああ、ここは、彼の学園生活に幸あらんことを。とでも言っておこうか、疫病神は疫病神の教示ってものがあるからね。それでは今回はこの辺で。

 

 



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剣道場にて。

『ファーック!!これ、前回の話の総括 バイ俺視点。』

 

相澤康一、っと・・・さて、これで少しは気分が晴れた。

 

「なにやっているんだ?」

 

「メモってた、それ専用のノートだ。」

 

と一瞬で話しかけてきた一夏から隠す・・・何か怪訝な顔をしていたが・・・よし。

 

「いや、俺って何かを突発的にメモするんだよ、何か重要だと思ったときとかに。」

 

「へえ、そうか・・・ほかにはどんなのがあるんだ?。」

 

「そうだな・・・『六月二十一日、落花生とほうれん草の和え物、ご飯、昨日の残り。』とか。」

 

「レシピ帳!?確かに俺もつけたりしているけど・・・。」

 

「お前は主婦か。」

 

「俺たちは人のこといえないと思うけど・・・。」

 

む?というより、そうだな・・・俺は主婦っていうより浮浪者寸前のことをやってきたな。

 

「ああ、そういえば前から思ったんだけどな・・・。」

「なんだ?」

 

一夏が含みを持たせるように言葉を濁した。

 

「よく剣道場があるな。」

 

一夏が目の前にあるでかい剣道場の小屋(プレハブではない)を見上げながら言った。

しかもこれ・・・日本の血税です。

 

「まあ・・・IS操縦って突き詰めればただの戦闘だしな・・・それより一夏、お前篠ノ之の奴に呼ばれたんだって?。」

 

「ああ、箒が剣道がどれだけできているか見たいって言うからな。」

 

「良いんじゃね?俺もお前がどれだけ動けるのか見てみたいし。」

 

「いや・・・俺は、三年間皆勤で帰宅部だぞ?」

 

「ミートゥー、俺だってそうだ。」

 

「意味が重複しているぞ。けど・・・本当か?結構姿勢がいいし、何かやってたんじゃないか?」

 

「あぁ?そういえば・・・秋葉でオタク狩り人狩りをしていたな。」

 

「なに?オタク狩り人狩りって?」

 

「その言葉の通りさ、方法を教えてやろう、まずオタクっぽい格好をします、絡まれます、倒します、金をせしめます、終わりだ。」

 

「犯罪ぞ?」

 

「冗談だ、意図してやってない。」

 

「そうか・・・・・・・・・・え!?」

 

「いくぞ。」

 

「お、おう。」

 

さて、少し弄った所でいきますかね。

と、扉に手を掛けて意気揚々と入った

 

「うわあぁ!。」

 

「おそ・・・っすまない。」

 

びっくりした、日常パートだったから注意力が散漫だった・・・

篠ノ之箒さんがこちらに向けて竹刀の切っ先をこちらに向けて遅いと言おうと思ったらしいのだが・・・言う対象は俺ではない。

 

『一夏君だ、因みに初見が居るかも知れないし、読者が(原作を読んでも彼女の心理が分からない)鈍感かもしれないので書いておくが、篠ノ之箒は一夏君に恋をしている。傍から見れば歪んでいるがな・・・。』

 

エネが俺のモノローグに重ねるようにして脳内に意思を届けてきた。しかし・・・

 

『読者?所見?なにを言っているんだ?』

 

確実に不適切な物が聞こえたんだが?

 

『すまない、君には分からないか・・・。とりあえずそこはスルーしてくれ。』

 

『了解だ。』「いや別にいいよ気にしないでいい」

 

『(ああ、この切り替えの速さは光るものがあるなぁ。)』

 

エネとの会話を切り上げて篠ノ之箒さんの言葉を返す事にする。

まあ、この状況下でほかに言いたいことはないし、さっさと上がる事にしよう。

 

あ、

 

「そうそう、俺はいいかもだけど、一夏はどうなんだろうね?」

 

「ッ!?」

 

これだけは、言っておかないと・・・全力を出した上で攻略して欲しい。

個人的な欲望だけどな。

 

 

さて・・・つーか、久しぶりだなえっと・・・辞めたのが師匠がどっか行ってからだから・・・あれ?篠ノ之?あれ?・・・ああ!!?篠ノ之柳陰さんの娘さんかぁ?・・・なんか一夏の部屋の扉に篠ノ之流の太刀筋の傷跡が残っていたのはそういう訳か!?・・・なるほど・・・。

 

確か、師匠は娘が二人いるとか言ってたし・・・『あ、ヤバッ。』・・・なんでもないか、考え過ぎだ考え過ぎ。たまたま、同じような門下生だろみたことないけど。

 

んじゃあ、お手並み拝見と行きますかね・・・俺はやらないよ。

 

とりあえず端っこに居て見学していましょうかね・・・少し外から覗いている女子の声が五月蝿かったりするがそれはまあいいだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

スパーン

 

スパーン

 

スパーン

 

スパーン

 

スパーン

 

 

 

 

 

 

見学を始めてから数十分後・・・のこと何度この音が鳴り響いたであろうか、十回以上までしか覚えていない・・・もはやゲシュタルト崩壊を起こしそうになるほどであった。

 

篠ノ之の方は流石としか言えない腕だったが一夏は久しぶりにしては上手いといった感想だろうか?

 

だが・・・。

 

「鍛えなおす!!。」

 

それが不満らしい、理由としては・・・昔は強かっただが、久しぶりに会えたがそれが欠片ほども見られなかったとかそんなもんだろう。

・・・理不尽なような気がするが・・・ちゃんと攻略してください。

 

「え?いや、それよりISのことを。」

 

「一夏・・・お前のそれは戦えるレベルじゃないぞ?」

 

とりあえず、先手を打って好感度の下落を下げる。

 

「う・・・・・・はい。」

 

「とりあえず、入試のときみたいに体の動きをそのままトレースするらしいから剣道も無駄じゃぁない。まずは、元々あった自分の武器を使いな」

 

「自分の武器・・・かぁ、分かった。まずは、昔の感覚でも取り戻してみるよ。」

 

「・・・・・・・・・・・・・。」

 

・・・なんか、すげーニヤニヤしてんだけど、篠ノ之さんそんなに嬉しいのか?昔って単語が・・・。って言うか!これ、バッドエンドになる幼馴染のルートに最初っからはいってるよね?今を見据えなきゃ異性のカテゴリーには入らんぞ!・・・って某神様が言ってた。様な気がする。

 

突然、一息ついて一夏のそれまで散漫になっていた集中力が一息で中段の剣先に収束する、いわゆるゾーンやトランス状態に達していた。

 

その状態を肌で感じたのか篠ノ之さんも意識を切り替える・・・なぜか、その切り替えに時間が掛かったのはなぜだ?

 

それは置いとき、二人の集中が徐々に高まり・・・同時にそれを放った

両者とも中段の構え方からの面打ち、そして。

 

 

スパーン

 

 

一夏が打たれていた・・・篠ノ之さんの研鑽の結果が出たという感じだ。これがもし同じだけ練習をしていたのならば一夏が取っていてもおかしくは無い試合だった。

 

「いやー、なんか、コツはつかめた気がする。」

 

「そうか、・・・それは良かったな。」

 

良かったなうん、つーかあの一言であそこまでできるっていうのがすごいな・・・。

 

「一夏君、結構いいんじゃないですか?ねぇ担任?」

 

「・・・アレくらいできて当たり前だ。」

 

俺の横にあった小窓から様子を見ていた担任に向けて少しからかうような口調で言った。

 

「フーン、そう。」

 

「・・・・・・お前はやらないのか?」

 

「いいえ、争いごとは嫌いなんで。」

正確には嫌いって言う設定なんでだがな。

 

「ああ・・・お前は軽いPTSDを持っているんだったか。」

 

「トラウマの方が分かりやすいのでは?・・・しかし、流石国家権力プライバシーの欠片もないですねぇ。」

 

「そうだな。」

 

おいおい、国のお膝元でそんなこと言ってるんじゃねえよ。

 

「それより、お前はさっきの話し合いとは雰囲気がかなり違うぞ?」

 

「それはギャグパートでしたので。」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・は?」

 

「あ、そういえば、一週間後に第三アリーナって言ってましたよね?それ少し早めて貰えることってできますか?」

 

「・・・貴様の専用機が届かないぞ?。」

 

「良いんですよ、彼女に最大の屈辱を味あわせてやりたいだけです。それに切り札はあります。使いたくありませんがね。」

 

「・・・それなら可能だ・・・推奨はしないが。」

 

「可能でしたならお願いします、それではこれにて失礼します。」

 

・・・口を滑らせたか・・・まあ、それがどうとなる訳でもないしいいか。

 

さて、練習・・・というより俺も人のこと言えないんだよね。とりあえずあとで体を動かしてこないと。

それじゃあ、ここから抜け出せば完了だ一夏の携帯電話の番号もわかっていることだし。

 

・・・それじゃあ、作戦開始準備開始!!

 

 

 

 

そのころ。

とある電脳空間内でせんべいを食べているエネが・・・。

 

バリバリ

モグモグ

バリバリ

モグモグ

 

テレビを見ながらゴロゴロしている。

 

《ヒャッハー!ブチ殺し準備開始じゃぁ!!切り札は使わずに、心理的な圧迫と切り替えだけで勝ってやるゼェェェェ!!。》

 

「・・・テンションが上がり過ぎだろう。」

 

もはや彼、康一の心理はエネにとって主婦が見ている昼ドラへの突っ込みのような存在になっていたのだった。

 



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同居人をご紹介!!

ふは~疲れたー。

 

どうも、相澤康一です。さっきまで一夏相手に対射撃専用メソッドを試していたところだ。

具体的にはエアガンを使って対人戦闘と言った所だろうか、因みに一夏は木刀で。

 

あいつは一つのことを極められるタイプだからな・・・。

 

『君とは対極だね。』

 

『つくづくそう思うよ。』

 

 

まあ、一夏のことは一旦おいて置いて・・・。

寮のことなんだよ・・・。

 

『ああ、彼女のことか。』

 

イェスアイデゥー。

 

そうなのだ俺の寮生活において一人、異物が紛れ込んでいる。そして俺は、その異物を排除したい。だって同じ部屋で他人がいるとあまり眠れないからだ。

 

だから、異物じゃなく正物(せいぶつ)にしたい・・・簡単に言うなら仲良くなっておきたい。

 

『恐怖の原理か。』

 

『そうそう、それ。』

 

恐怖の原理、そう俺が勝手に呼んでいるだけだが・・・

 

まあ、なぜ恐怖を感じるかといったものだ

 

説明すると・・・。

 

”知らないから怖い”、その一言に尽きる。

 

人がおおよそ恐怖を感じるのは・・・

 

人が怖い

不良が怖い

職を失ったら怖い

死が怖い

 

とかこの辺だが・・・

 

人がどういう動きをするかが分からないから怖い

不良がなにするか分からないから怖い

職を失い金がなくなればどう暮らしていいか分からないから怖い

死んだらどうなるか分からない

 

だから怖いのだ

 

そして、それを無くすには知ればいい知って知って知り尽くせばいい。

 

そんだけなんだけどね。

 

さてそんなこと考えながら歩いていたら俺の寮室についた。

 

「のっくしてもしも~し。」

 

「・・・。」

 

反応はなしか・・・。

 

って言うか・・・同室ってやっぱり問題があるだろ・・・。

いや、むしろアピールか?そういう風に作ったからこそ何も疚しいことはないとそれと同時に情報を抜く機会を与えたということか?

 

・・・はぁ、また余計なことを考えちゃった・・・いいか?俺?今回はこの人の身元を確認アンド気の置ける仲にする、以上だ。そしてそのためにこの人を・・・そうだな一応同居人とでもしておくか、を知る必要がある。つまり観察だ!!

 

 

観察タイム・・・開始・・・。

 

カタカタカタカタ・・・←タイプ音

 

三十分後

 

カタカタカタカタカタカタカタ・・・。←タイプ音

 

一時間後

 

カタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタ・・・←タイプ「ry」

 

一時間三十分後

 

カタカタ・・・ぐいー・・・ふう・・・カタカタカタカタカタカタカタ・・・←t(ry)

 

 

 

 

 

 

目ぇ悪なるわ!!

 

確かに眼鏡してるけど、パージさせてあげたいけど!

 

眼鏡だからこそいいのか、眼鏡の先にある真実(すがお)があるからいいのか・・・一生のテーマだな、俺的にナガモンスノーは眼鏡、有り無し、スピンオフのちゃん系統二作品まで幅広くありだ・・・ありなのだ!

 

けど、これは情報のファイヤウォールとしては鉄壁だぞ・・・どうするか・・・。

 

『裏技があるぞ?使うか?。』

 

『マジかエネ!!助かるわ!。』

 

 

『まあ・・・危険を伴うが、私について説明しようリスクといってもそこまでのことじゃないが長くなるし明日でいいかい?』

 

『ああ、かまわない・・・じゃあ、俺は寝ることにするわ。・・・ありがとな。』

 

 

「いえいえ・・・・・・・そろそろ、私を使ってもらわないと困るんでね。」

 

 

そういったエネの声はどこか寂しそうで。

 

それに気付いたときにはすでにイヤホンからはよく眠れそうなクラシック系の音楽が流れ、俺を眠りに誘っていった。

 

 

 



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出撃前のネタ

ああ、ついにこのときが来たかまあ、ぶっちゃけ負けてもいいんだけどお手伝いさんを馬鹿にされちゃあ黙っちゃいられないな。

 

『君はある意味マザコンなのか?。』

 

なあに、ちょっとした恩を返したいだけさ。

少し、生きる意味を知るって言う意味を知れたようにしてくれたそれだけだがな。

 

『無駄かもしれないよ?というか、確実に無駄になるだろう。』

 

無駄?おいおい、俺を過大評価しすぎだろ?最初ッから俺に無も有も、駄も優もないさ、あるのは嫌悪の目だけだ。

 

『全く持ってその通りだが・・・君にそれができるのかね?』

 

やるさ、つーか恩っていうより私怨みたいなものだし、気楽にやってくるさ。

 

『くそ、その一言でかなりかっこ悪くなってるぞ。」

 

「かっこ悪い事はしないとはいいきれないが悪い事はしないよ。じゃあ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あ、苗字も名前も四文字じゃん。」

 

『○○○いっきまーっすとか言いたかったんか!?しかも君はまだピットにすら入っていないじゃないか!。』

 

「はいはい全く細かいつっこみが得意ですね~。」

 

『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・フン。』

 

 

 

あらら。へそ曲げちゃったか三十分は出てこないぞ?

んじゃ、まあ、行ってきますか。

 

確か、もうそろそろ待ち合わせの時間になるはず・・・。あ、来た。

 

「ま、待たせてしまってすみません!。」

 

・・・山田先生だった『そういえば絵師が代わってかなりエロティックなったよな。』何の話だ、そして今回立ち上がるの早いな?

 

『何時までも引きずる女ではないのだよ。」

 

むしろ女だったのか・・・。

 

『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・フン。』

 

・・・あれ?ループ?

 

「お・・・怒っているんですか?」

 

む?エネとの会話に夢中になってしまったな。とりあえず、相手を刺激しないように笑顔で応対することにしよう。

 

「いえ、ただの34秒67程度遅れたぐらいで怒りはしませんよ。」

 

「・・・申し訳ありませんでした。」

 

「あの、ただの冗談ですからね?。」

 

まさか、そのまま続けるとは・・・。

 

「それでは、案内しますね。まずはこちらです。」

 

それにならってついていった。

 

「相沢君どうですか?初めてのIS学園での戦闘ですが・・・緊張していますか?。」

 

「はい、もう緊張しすぎでドキがムネムネしてきましたよ。」

 

「ふふっそれだけ言えるなら大丈夫そうですね。」

 

「そうですか。」

 

まあ、ここで雑談は終了らしい、けどやっぱり試合ってのは緊張はするもんだな・・・

 

「」ムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネムネ

 

「本当だった!!?」

 

「どうかしましたか?」ムネムネ

 

「それぇ!。」

 

 

 

 

 

あ、よしピットに到着したな・・・んで?俺が乗るのは?

 

「・・・・・・どうしました?山田先生。」

 

「な、なんでもないですぅ・・・。」

 

・・・いやぁ、ボケたなぁ。

『そろそろネタに生きるのは止めた方がいいと思うのだが・・・。』

『マイライフワークダ!!。』

 

『まあ、そう多くは言わないがな。』

 

『・・・けど、さっきのはあながち間違っちゃいないんだ・・・。』

 

『いいよ、みなまで言うな。』

 

『ありがと。』

 

・・・何か頭の中に俺に背を向けて手だけひらひらと振っているような映像が見えた。

こういう姿ってのは嫌いじゃないな・・・。

 

「どうした相澤?早く乗れ。」

 

「分かりました。」

 

と、立場が立場でなかったらぶつくさ文句を言っていたであろう呼びかけに即座に応じて脚立に乗り、入試のときにも操縦した無骨な鎧に体を預けるようにして装着する、まあ、ここら辺のイメージトレーニングは済んであるから安心だ。

 

瞬間、一気に情報が流れ込んでくるそれに酔ったかのように頭痛が襲ってくる。

 

・・・この症状を名づけるのならば『情報酔い』とでも名づけておこうか。実際にインターネットを使いすぎると、大量の情報に脳が酔うとか誰かが言ってた気がしないでもない。

 

「すぅ・・・・・・・・・ふぅ・・・。」

 

二、三回深呼吸して情報酔いから立ち直ろうとしつつ、ISに話しかける。ここら辺は俺の勝手な妄想だし、あまり意味はない。

 

『・・・少しだけ、力を貸してくれ。俺の事は気に入らないかもしれないが、やりたい事があるんだ、今はお前にしか頼れない・・・頼む。』

 

少し、昔のことを思い出した。

 

 

「相澤、大丈夫か?。」

 

「少し気分が悪いです・・・ですが、そうも言ってられないでしょう?」

 

「・・・まあな。」

 

「では行ってきます。」

 

俺は踵を返し、すでに開け放たれた戦場への扉へと対峙しそれに向かった。

そしたら突然俺の背中に声を投げかけられた。

 

「それでは・・・武運を祈る。」

 

「あ、そっちか。勝利の栄光を君にとかのほうがオタク受けs。」「貴様はどこのジオン兵だ。」

 

へいへい、鋭い突っ込みありがとう

 

ピョンとピットから飛んで戦場に降り立った。

 

 

 

 

 

 

戦闘前に何か口上を言いたいそうだ・・・喧嘩を吹っかけるとかでもいい。

 

「あらあら、品がない登場の仕方ですこと。」

 

「残念だったな、ここはHENTAIの国だぜ?」

 

「それは・・・あなただけではなくて?」

 

「そう思いたいなら思ってな。真実を知らずに死ねばいい。」

 

「さて?死ぬほど痛い思いをするのはどちらの方かしら?」

 

「・・・・・・さあ?。」

 

「さあ、ではないでしょう?あなたの方ですわ。」

 

「そうか・・・それは怖いな。」

 

「そうですわ、つまり私が勝つのは自明の理ここで降参すれば惨めに這い蹲ることは免れますわよ?」

 

「・・・残念だな。俺に惨めなんて言葉はよく分からないんだ。たぶん最初から惨めだったから。」

 

だって、幸せとか言う概念だってそうだ。不幸せを感じたことがないやつがいればそいつは幸せを知らないだろ?

 

 

 

「だから・・・気遣いは必要ないよ、んじゃ・・・存分に潰しあおうや。」

 

「その言葉!言った事を後悔させてあげますわ!!。」

 

 

そんなこんなで俺こと相澤康一はちょっと本気というか、キレたのだった。

 

 

『はぁ、仕方がない・・・付き合ってやるか。』

 

 

・・・相棒も一緒にな。

 

 



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化け者の本領

前回のあらすじだ、戦闘をやることになった私の力を使ってな。

 

はい、という訳でエネだ今回は私から見た三人称の語り手でお送りしようと思う。なぜかって?それはね、面白くないからだよ。

 

 

ここテストに出ます。

 

 

はい、という訳で行って見ましょう・・・ドン!

 

 

 

「だから・・・気遣いは必要ないよ、んじゃ・・・存分に潰しあおうや。」

「その言葉!言った事を後悔させてあげますわ!!。」

 

専用機に乗ったオルコット嬢と量産機(打鉄)に乗った彼が、目線を合わす。

 

途端に彼の思考が私に流れ込んだ『反芻、対象、性格、傲慢高飛車プライドが高い、イギリス、この三日の行動パターンの解析結果、心理状態、戦闘時。』彼の頭の中にある情報がバラバラなそれから、精密に練りこまれ使用するキャラクター(・・・・・・)を選択し決定する。

 

そうして、その一連の思考を終えたあと、オルコット嬢の手に持っていた大型ビームライフルの先制攻撃から戦闘が始まった。

 

この状態だと、そのように見えた・・・だな。

 

そして、彼は後方に飛び「打水!」ブレードを手のひらに極めて初心者が使う方法で武器を呼び出した。

 

「遠距離兵装に近距離で挑むとは・・・笑止ですわ!!。」

 

「・・・。」

 

彼はそれを持ちながら、目線と、トリガーの引く瞬間、射撃で発生する対衝撃用の予備動作をする筋肉の動きから、軌道とタイミングを予測して回避行動をしていた。

 

それらから絶対に目を離さないようにして回避行動を続けその間にも情報を整理、使用していく。

 

『攻撃BPM平均160 . 0、確率を確認、頭20%、脚20%胴50%スラスター10%削られたシールドエネルギー20%』

 

「さあ、踊りなさい!わたくしセシリアオルコットとブルー・ティアーズの奏でる円舞曲(ワルツ)で!」

 

状況が状況なら鏡の前で練習していてもおかしくはないセリフを堂々たるさまにて彼に吐き捨てた。

 

「・・・ワルツは二人いないとできないのを知っているのか?」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」

 

どうやらそのセリフはマジレスで返されたらしい。

 

『BPM10上昇。』

 

八つ当たりしているらしい、あ、BPMって言うのはテンポのことらしい。

 

そうしてレーザーの雨が降ってくる。気を抜けば一瞬でシールドエネルギーを持っていかれそうな中、神経を尖らせて避け続ける。

 

「行きなさい!ブルー・ティアーズ!!」

 

彼女が機体の特色である、ビット、分かりやすく言えばフィン・ファン○ル、ドラグ○ンシステム・・・を展開して手数を増やした。

 

「・・・それが、例の特種兵装か。」

 

「あら?これを知っているn「玉派鉄」」

 

パパパパパパパパ。

 

「なっ!?卑怯ですわよ!!」

 

「・・・。」

 

彼女はそれに抵抗するように展開したビットを拡散させ、オールレンジ攻撃を開始した

 

 

 

 

 

 

二十分後。

 

 

「・・・はぁはぁ。」

 

「何で当たりませんの!?」

 

理由は以下の通りだ

『反芻、ビット一機あたりの攻撃BPM90程度、攻撃箇所、先と変わらず、攻撃場所のパターンの存在を確認、背後、頭上、共通項目人間がおおよそ反応できない場所、浮けば真下からの攻撃の可能性あり、整理項目、肩部の物理シールドでダメージ0にできる。ビット攻撃時に左眼孔の縮小を確認』

 

そんなことを考えながら彼は、息を荒くし、疲れたように腕をダラリと下げ、目を開けるのも辛いかとも言わんとばかりに片目を塞いでいる、が、片方の目だけは意思を宿し相手をただ見る。

 

 

そのころピットで・・・織斑一夏、篠ノ之箒、織斑千冬、山田真耶が試合の顛末を見ていた。

 

「やるなぁ康一の奴。」

 

「本当にそうですねぇ、ISの起動が二回目とは思えないです。」

 

一夏と山田先生が感心したように感想を述べた。

 

「フン、だがまだ体力が足りないな。」

 

そこに篠ノ之が辛辣な言葉を掛けて、少し貶した

 

「・・・貴様らはなにを見ている。どこも疲れていないだろう。」

 

「「「え?(は?)」」」

 

三人から織斑千冬の発言に対して驚いたように声を上げた。

 

「試験のときもやられたがな、あいつは演技がうまい、逃げ回り、悲鳴を上げ、目に涙を浮べ、死に恐怖していた・・・ように見せかけられた。」

 

「「「・・・。」」」

 

三人が三人とも息を飲んだ。

 

「そうなると生物の本能で止めを刺したくて焦られざるを得なくなる。まあ、つまり・・・オルコットは奴の術中に嵌っているって言うことだな。」

 

そう結論づけた。

 

 

 

 

 

そして場所は戻りアリーナ。

 

「っく!?」

 

『対象の集中力の低下を確認。』

 

彼女は目線をさまよわせ、少し銃を構える腕が開き、あからさまに集中力を欠いていた。

 

「・・・なかなかに耐えますわね。」

 

「・・・はぁはぁはぁ。んっく、はぁ。」

 

彼は緩慢な動きで打鉄肩部にある盾を「打水戻れ」刀を戻しながら両手に一つずつ掴んだ。

 

因みに刀は地面に突き刺し急ブレーキにしていた。

 

そうして、耐える、疲れきって回避が難しいのだ。

背中にシールドを回して命中の瞬間体をひねり、シールドのダメージを減らし。そのひねりを使ってもう一方のシールドを振るう。

 

疲れていて、脱力しているからこそできる動きであった。

 

 

だが十分後それも終わった。その理由は簡単だ、打って出ることにしたのだ。

 

彼は、持っている盾を脱力させ、離した。

すると重力にしたがって盾が落ちる、目も虚空を凝視して離さない。

 

だんだんと力が抜けていき膝をついた。

 

その行動を見て当事者とその周りの人間に疑問という波紋が広がっていく・・・どうしたのか、と。

 

「・・・戦意喪失というわけですか。」

 

「・・・。」

 

その無言の返答を聞いたあと大型ビームライフルを構え撃った。

 

そして、吸い込まれるようにビームの弾丸が腹に(・・)直撃した。

 

 

「おおおおおおおおおおおおおおおおおッ!!」

 

『エネ!イグニッションブースト!!。』

 

『了解っと。』

 

 

 

イグニッションブースト、日本語訳、瞬時加速。ISの近接戦闘の高等技術であるこの瞬時加速を一番やりやすい状態を私が教え、彼が作り出し発動させたのだ。

 

だが、直撃した箇所の損傷は人体に多く響いていたようで彼は表情に出してこそいないが、かなりの激痛が走った、だがそれを無視して彼は突き進み彼女の目の前へ到着する。

 

 

ニイィっと犬歯をむき出しにして顔を歪ませながら腕を引き、瞬時加速の加速をそのままに殴る。グーで、顔に。

 

彼女は近接戦闘が得意ではないのか、首でいなすことすらできずにそのまま飛ぶ勢いを彼が片手で彼女の手を取りそれを殺し、引き戻して顔面へ吸い込まれるように足が入る、引き戻した力を使い体を回し拳を入れる。

 

力を無駄にせず段々と加速していく蓮華鬼(れんげき)を・・・これ、蓮華鬼って呼ぼう。と言うか呼ばせよう。中二病的に言うならそうだな・・・蓮のように()を繋ぐその様は正に鬼のように冷徹なことから蓮華鬼と名づけた・・・みたいな、変換ミスじゃないよ!?

 

とりあえず蓮華鬼を放つ、いや放っている。その凄惨に人体の弱点を狙う戦い方にみな恐怖に固まっていた。

 

 

 

 

そして、その状況下で出来る蓮華鬼を一通り終わり止めといわんばかりに片手に

 

「玉派鉄ェ!!」

 

アサルトライフルを呼び出し銃口で左胸を突きそして撃つ、銃口から吐き出された大量の弾丸がスキンバリヤーに突き刺さる

 

心臓を強い力で押されると心停止の可能性がありこの場合はISのアサルトライフルだつまり絶対防御が発動する。

 

彼は、止めとばかりにビームライフルを捨てさせ弾切れになるまで撃ちつくしIS量子変換で不恰好にリロードする。

 

「インターセプター!!。」

 

「っと!?」

 

その隙を突かれ、彼女は同じく初心者用の呼び出し方で短剣を呼び出し切り付ける。

不意打ちにとっさに回避したが間に合わずいなすだけに終わった。

 

「ここで・・・ここで終わるわけには、いかないのですわ!!。」

 

彼女はその高いプライドを捨て、初心者の方法に頼りながらも、彼を倒そうと、明確な敵として「あ、降参で。」対峙しt・・・・・・・・・・・・・・・・?

 

 

 

 

『「「「「「「「「「「「「「「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・は?」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」』

 

 

 

「え?聞こえなかった?降参~、英語で言うとアイ・リザイン。」

 

「・・・。」

 

 

『え・・・えっと・・・勝者セシリアオルコット・・・・。』

妙な沈黙が流れ、そこに、勝利を告げるアナウンスが響く・・・彼女、セシリアオルコットのだが。

 

 

「ピーしますわ。」

 

瞬時に彼との距離を詰めた彼女は目を抉るように短剣を振り下ろした。

それを彼は掴んで防いだ、そして、酷く優しい笑顔を浮かべて、プライベートチャンネルを開いた。

 

『落ち着いてください。』

 

「・・・あなた、わたくしをバカにいたしてますの!?」

 

『いいえ、ただ下賎な者にもそれなりのプライドがあるというのをお分かり頂きたかっただけです。』

 

「・・・・・・。」

 

『そうですね・・・日本のことわざにこのようなものがあります・・・《因果応報》それに《一寸の虫にも五分の魂》と。』

 

「・・・。」

 

「それでは。これにて失礼いたします。」

 

 

 

 

 

 

 

 

その後・・・。

 

「いやー負けてきty、ゴボッェエエッ。」←箒にドロップキックされた

 

「下種が・・・。」

 

「康一・・・。」

 

一夏がそれを見てかける言葉もないというかのように哀れんだ視線を彼にぶつけてきた。

 

 

「不愉快だ、帰る。」

「あっ、待て。」

 

気分を害したようでその場を去った箒を一夏が追った。それを確認し彼は少しため息をつき、言った。

 

「あ~あ、次も授業かぁ・・・めんどくさいなぁ。」

 

「教師の前で言うとは聞き捨てならないな。」

「め・・・面倒でも、ちゃんと出てくださいね?。」

 

「はいはい。怒られない程度に休みますよ。」

 

彼は、少しつまらなそうな表情をしながら言った。

 

スパン。

 

殴られた。

 

「それでは、私は次の授業の準備をしてきますね。」

 

「ああ、頼む。」

 

そんなやり取りが終わり後ろ手で扉が閉められる。彼がついでに帰ろうとした、そのときだった。

 

「少し待て。」

千冬が彼を引き止めた。

 

「なんです?」

 

なぜか、いやある意味当然に少し年上の顔色を伺うような顔をして一つ質問した。

 

「お前何歳だ?」

 

「期間限定の15歳ですが。・・・しかしなぜそんなことを?」

 

彼は笑顔で質問の意図を聞いた。

 

「いや、戦法というか戦い方というか場数を踏んでいるように見えてな。」

 

「なぜ、そう思ったんです?」

 

「お前は最初から勝負を決める気はなかっただろう。シールドエネルギーもかなりあったはずだ、それなのに止めを刺さなかった、その挙句に勝利まで譲った。」

 

「何が言いたいんですか?」

 

口調は優しくとも鋭い一声が千冬の耳朶を叩く。その声の主は、剣呑な雰囲気を一瞬出してしまったようで、少し驚いたような目を見開いた、そしてそれを上書きするようにやんわりと笑った。

 

「失礼。で?なにが言いたいんですか?できるだけ簡潔に。」

 

「お前は、オルコットのプライドを殺すことだけ考え、そして実行した。」

 

笑顔そのままに、外人のように肩をすくめた。

「そうですか。」

 

「・・・いつもやってるのか?」

 

「まさか、そんなことするわけないでしょう?」

 

「・・・ならいい。」

 

「それでは俺も教室に戻ります。」

 

「ああ。」

 

どこか簡素でしかし重要な会話が終わり彼はここを後にした。

 

 

 

 

「はぁ・・・精神的な脆さをピンポイントで突いてくる・・・敵だとしたら厄介だな。」

 

 

 

 

・・・と、まあこれが彼の初試合の顛末だ。

 

いやぁ、まさか彼女に・・・お手伝いさん、いや大高さんに、彼はお手伝いさんとしか言えなかったが、あの人を馬鹿にされたから怒るとは・・・にやにやするじゃないか、彼の不幸にね。

 

ああ、そうだこれは聞いておかないと。

 

『なぁ、君。』

 

「なんだ?。」

 

『言葉でか・・・まあいい、千冬とは仲良くなれそうかい?』

 

「さあな、利益があればあるいは。」

 

『ふふっ、そうかい。』

 

 

 

んじゃあ、今日はこの辺で次は・・・あるのかな?・・・じゃあね。

 

 



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友情クラフト、ハッキングしながら

はぁ、最近女子の風当たりが強い相澤康一だ。

 

つーかさ、報復って合法だよね?人殺さなければ。

 

・・・そういえば、こういう話があってな?どっかの県知事やらなんやらを当選しようとしていた人がいて、そいつは女を手のひらで転がす悪い男だったんだ、その手のひらで転がされた女はそれを知ったときに一つ復讐を思いついたんだ。

 

彼女はガンであと少しで死ぬって所に、悪い男の悪い考えを知ってその男に自分を殺させて、それで入ったお金を選挙に使い見事当選。だがそのあとに殺したことがバレて出世街道から一転後ろ指を指される生活へとなったのでした~

 

・・・犯罪じゃないよね?犯罪じゃないよね!?

 

まあさ?俺だってね?そこまでやんなくてユルユルと生きて行こうかな~とか思ってたよテストパイロットとか引く手あまたになるし、そうでなくとも一葉に養ってもらうし。

 

くずだね・・・自負してるけどさ。

 

いっそこのまま俺のモノローグだけで終わらすってのも一興だな。そうするか、いや誰得だよ~俺得じゃないことは確かだよ~。

 

どうしよう、深夜でもないのに変なテンションになっている・・・。昨日とか九時には寝ていたのに・・・

 

さて、真面目にやるとして・・・。

 

以前に俺は俺の寮室の同居人を懐柔すべく、いろいろな方法・・・ではなく観察という最も古典的な方法で仲良くなろうと画策していた。

 

だが、しかぁーしそれを微妙なチートことE・NE!!『うるさいな。』ごめん。が提案したド汚い一手を『君に言われたくはないよ。』ごめん。エネ様のその御心のように清純かつ包容力に長けたその教えをこの下賎なわたくしめは『やめろ気持ち悪い。』ごめん。身も蓋もない言い方したら、知りたいなら人格ごと乗っ取ってしまえばいいじゃない。だそうです。

 

そりゃ人の頭ってソフト面は電子で電子自我のあなたにとっては簡単なことでしょうけど・・・俺はスナフ○ンみたいに自分の目で見たものしか信じないだがこの目で見たものはどんなに馬鹿げたものでも信じるよ。みたいなことを信条としている。・・・インターネットショッピングとかクソだな。

 

ドォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ

チクショウガァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!。

 

 

中古の奴競り落として届いていたら・・・アァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!

 

ご想像にお任せいたします。

 

あ~あ、嫌な事思い出した・・・。何であんなに作画が・・・。

 

まあいい、俺はその能力を電子機器つまり彼女が使っていたパソコンをハッキングするのに応用できないか?という訳だった。しかしエネが言うには・・・。

 

『は?そんなことできるわけないだろ?・・・私がハッキングできるのは人かISだけだ。まあマニュアルモードにすればできない訳じゃないがしかし、人間じゃなくなるよ?』

 

だそうだ、マニュアルモードは”俺の体ごと電子化してそのままぶち込む”といったものらしい。・・・確かにある意味人間じゃなくなるな。

 

だがその説明を聞いた後で俺は・・・。

 

『いいよ~やるやる~。』

 

『・・・お、おう。』

 

なにがおかしい?

 

・・・追求は無理そうだな。それは置いとき、そんでまあ第一回同居人攻略作戦(親友ルート。・・・あれ?友達いたっけ?・・・どこからが友達なのか教えてもらいたいね←フラグ。)を開始し、終わったところだ。イマココ

 

俺は一仕事(ハッキング)を終えた。そのあまりの労働力に疲れ果ててしまいスマホをベットに放り投げそれに同じく身を放った。

 

「ふぅ・・・しかしマニュアルモードってのがあんなにきついものだったとはなぁ。」

 

「しょうがないだろ、時間も押していたし。私のエネルギーも結構持ってかれてしまった。」

 

エネがスマホから声を発する。

 

「どうした?スマホから出しちゃって。」

 

「どうしたもこうしたも君、被弾し過ぎなんだよ・・・まあ、あそこまでセキュリティが硬かったのも影響しているが・・・まあ疲れたのだよ。」

 

「なる、それはセーフモードって感じか。」

 

「ああ。いやぁ・・・きつかったぁ。」

 

「・・・絶対やらない。成功はしたけど・・・あ、お前のエネルギーってどこで補給できるんだ?」

 

「まあ、ほっときゃ直る。」

 

「お前機械の癖に人間みたいだな。」

 

「君こそ人間の癖に機械みたいだな。」

 

「「・・・・・・・・・プッ・・・クハハハハハッ。バカかよお前は。」」

 

なんだか首元がくすぐったくって、俺は笑っていた。

 

「はぁ・・・ほんじゃまあそうだなこれから仲良くなるための計画でも立てましょうかね。」

 

「アレだけの苦労をしてだめでした~とか言ってくれるんじゃないぞ。」

 

「おk。」

 

「・・・?」

 

 

これで終わり。

 

 

 

 

 

 

 



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主人公の特権

はぁ、どうも前々回にて出撃したピットの中で特別に一夏の試合を見せてもらっている相澤康一だ。

 

・・・しかし、素人と玄人だな。

 

こう・・・客観的に見てみると、貴方とは違うんです!!・・・じゃなくて、こうも実力差があるなと思う。変則機動に、そこから繰り出される銃撃、それに回避予測もばっちりだ、悔やむべきはその性格ゆえの慢心と残心の無さか・・・。

 

今回の場合、一夏は素人ゆえにこの戦いがここまで続いていると言っていいだろう。

 

何故なら素人は回避予測がつきにくいからだ。一夏は左に回避しようとして、やっぱやめて右とか、思いがけないフェイントが入る。これはある程度経験を積んだ人間だと連続で撃たれて一瞬でシールドエネルギーが吸われてジ・エンドだな。

 

だが俺との特訓も生かしているようだ、避け切れないと思ったら剣の腹でガードしてるし。

 

「一夏・・・よくあそこまで動けるなぁ。」

 

「「「・・・嫌味(です)か。」」」

 

「えぇ?嫌味じゃないですよ?。実際に俺は素人でできることを最大限生かしてきただけです。」

 

もちろん、それだけじゃないがな。エネのおかげも十分にある。

 

「・・・イグニッションブーストは初心者のものじゃないが?」

 

「いえ?案外簡単にできましたよ?」

 

「簡単にって・・・。」

 

いや、結構簡単なんだけどなぁ。まあ、俺が考えたわけじゃないけど。

そんなことを言っても俺に対する不審者説は拭えないので、あのハイライトの説明をすることにした。

 

「では、一つ問題です。高等技術であるイグニッションブーストですがどうやって発動するでしょう?」

 

「・・・ISの後部スラスター翼からエネルギーを放出、その内部に一度取り込んで圧縮し放出することだ。」

 

担任殿が説明をした。

 

「正解です。では、問題その二。エネルギーは放出したあとどこへ行くでしょう?」

 

そのとき。

 

「あ。」

 

何かに気付き呆けたような声を出す。

 

「どうしました?山田先生?」

 

「康一君・・・先の戦いで・・・一定距離以内でしか避けてませんよ・・・ね?」

 

「そうですよ。」

 

俺は片頬だけ吊り上げるような笑みを浮かべながら言った。

 

「イグニッションブーストは先にも言った通りの手順で発動させます、ではなぜこれが難しいとされるのか?それは移動時一瞬で先の手順を踏まないといけないからです。」

 

戦場のど真ん中でボーっと立っている奴が居たらそれは的と呼ぶからな。

 

「逆に言えば、一箇所に留まっていられればそれはものすごく簡単なものになる、後は相手の動揺を誘いゆっくりと行き先を指定するだけ・・・。こんなの人を観察すれば分かります、三日間で彼女は格下相手に油断するような精神性の持ち主で、隙を見せれば優越感に浸り同じく隙を見せるのは目に見えていました。」

 

「・・・。」

 

「まあ、こんな勝ち方じゃ人には認められないのは分かっています、ですが・・・そうでもして殺さなくちゃいけなかったんですよ彼女のプライドをね。」

 

まあ、認めたくはないが。お手伝いさんを馬鹿にしたから・・・とか。はぁ・・・らしくねえ。

 

「・・・。」

 

「・・・・・・とまあ、そんなのは建前でただただ最上級の屈辱を味あわせたかっただk『スパン』・・・痛い。」

 

誤魔化したあと叩かれた・・・。

 

「痛いんですけどー。」

 

「・・・我慢しろ。」

 

「ウィッス。」

 

 

・・・はぁ、しかし本当によく動くな・・・機体性能もあるのか?一夏には出来る限りの相手の癖を教えておいたが・・・。

 

『アレが主人公補正だ。』

 

『何の話だ』

 

『いや・・・何か落ち込んでいるようだったからな。』

 

『励ます言葉が主人公補正かよ。』

 

『そのくらいがちょうどいいだろう?』

 

『ホンダ!!』

 

『肯定と捕らえておくよ。』

 

・・・さて、一夏はどうなっているのかな?

 

 

ボカァァァァァァァァァァン←ミサイル

 

 

・・・撃墜?ってかミサイルあったんだ・・・。

 

 

モクモク←煙

 

 

あれ?下には何もないな?

 

 

ガッシャーン←一次移行(ファーストシフト。)

 

 

え?変身?

 

 

ビヨーン←零落白夜

 

 

え?ビームサーベル?作画崩壊?

 

 

ズバーン←切った音

 

 

あれ?かなり減っている感じ?

 

 

キャァァァァァァァァァッ←悲鳴

 

 

あ、落ちたザマアァww。

 

 

パシッ

 

 

え?助けたよ?

 

 

・・・『瞳孔の拡大を確認、対象、恋愛状態にあると推定。まだ気付いていない模様。』

 

 

あれ?惚れてるよ・・・。

 

 

『な?』

 

この話の総括。

 

 

 

 

 

 

 

 

『主人公補正SUGEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEE。』

 

 

 

 

 

 

『君も大概だけどね・・・。』

 

『そう?』

 

 

 

 

 

 



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意 志 無

これは語るまでもない話だ・・・俺のことなんて・・・言葉を言ったって、叫んだって俺の言葉は届かない、・・・ん、まあこれは自業自得だろう。それを知っているからこそ俺は俺にあの不可解なことをいつも反芻させるのだ。

 

この時系列は俺がエネを手に入れた(だろうと推定する)・・・もっと言えば篠ノ之道場に入門した一年後の、白騎士事件のこと。

 

それは、俺が家に居たから休日だったのだろう。あのころは”事件”が起こる前だから小学校に入りたてだったか・・・、そのため俺は曜日感覚が休日かそれ以外かでしか覚えては居ない。

 

あのころはそうだな、お手伝いさんがいそいそと家事をこなし俺は・・・テレビを聞いていた、そのとき・・・。

 

 

ウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥッ!!

 

 

獣の呻きに似たサイレンが鳴り響いた。

 

 

近くにでも火事があったか?とでも思い、当時は地震速報などなかったテレビが珍しく被害が出る前に危険を知らせていた。

 

その内容は・・・。

 

『日本に各国から発射されたミサイルが東京の○○市内に迫ってきています住民の皆さんは速やかに避難してください!。』

 

こんなような物だっただろうか?俺はそれを聞いたときに、もはや逃げるのは悪手だろうと結論を下した。

 

なぜ?この市だけなんだ?仮にそうだとしたら誰かの思惑が入ってきているだろうし、そもそもミサイルの絨毯爆撃が襲ってくるだろうなら逃げても無駄、そして一箇所に集まった時点で無理心中だ。そんなことを考えるのは俺だけじゃない、外に逃げる奴も居るそれが多かったら?渋滞が起こりジ・エンド。

 

ゆえにここで死ねばオールオッケイというわけだ。

 

「逃げますよ!。」

 

「はぁ!?」

 

なにをゆうとるんやこやつは?

 

「こっちがはぁ!?ですよ?逃げますよ?」

 

「オッケィ。まず落ち着こうか。」

 

「落ち着いていられますか!?」

 

「逃げるなら、今頃渋滞しているから車は使わない方がいいバイクが望ましいだろう、あるの強奪して来い。」

 

ペラ・・・あ、今日のコボちゃん見てなかった。

 

「そうですか?では行きましょう!。」

 

ダダダダダダダダダダダダダダダダッ

 

ダダダダダダダダダダダダダダダダッ

 

「いや来いよ!!ついて来いよ!。」

 

「いやどこへ逃げてたって無駄だよ、無駄な努力をするくらいならここで死ぬ。」

 

「っ!?」

 

あ・・・おいおい、今日のコボちゃんつまんねえな。フアァァめんどくさくなってきたなぁしかしミサイルか・・・さぞかし楽に死ぬッ!?

 

「ウゴッ!?」

 

俺はいきなりお手伝いさんに抱きかかえられていた。

 

そして、前の買い物かごに強引に詰められどこから出るんだその脚力、といわんばかりの力で漕ぎ始めた。

 

「おい!!あぶないぞ!。」

 

「・・・。」

 

俺の言葉を無視してただただ漕いでいる。・・・勝手に逃げりゃあいいのに何で俺まで・・・。

 

「おい、止まれ。」

 

「・・・。」

 

「おい。」

 

なんで?何でだ?・・・よく分からない。

 

「とまれ、そこにピザ○ットがある。」

 

「強奪するんですか!?」

 

「バカ!拝借するだけだ永久にな。。」

 

「それを強奪というんです!。」

 

・・・なにを言っているんだ?

はぁ・・・けど、不思議だ・・・人に心配されることがあるって。

 

 

 

「少し、死ぬ前にキレーな海が見たかったなぁ。」

 

「生きたら見れますよ!。」

 

息を切らしながら俺を励ましていた。

 

「んじゃ空でいいや。」

 

「なんですかそれ・・・。」

 

なぜか死ぬ前の晴れ晴れとした笑顔を浮かべて俺は空を見上げた。

 

あ・・・。

 

「アッハッハッハッハ俺ミサイルがこんなに近くにあるの始めてみたよ。」

 

そこには数えるのもばかばかしくなってくるようなおびただしい量のミサイルが雨のように降ってくる光景がただ破壊の美を象徴するかのように存在していた。。

 

「私だって初めてですよ。」

 

「そりゃあ、そうだろうなぁ。」

 

「・・・死ぬのは怖くないんですか?・・・私はすごく怖いです。」

 

突然お手伝いさんが変な事を言い始めた。

 

「俺もだ・・・一度死んでるからって死が怖くないって言うわけじゃない。けど、絶対的なものは死だって分かってるから・・・諦められる。簡単に言うなら・・・”生きれば死ぬさ死んだら死んださ”最終的には死しかない。」

 

「・・・死の前に楽しめればいいんじゃないですか?・・・いつか死ぬからって後の全てのものを諦めるってのは何か違う気がします。」

 

「そうかい・・・いや、そうなんだろうな・・・。」

 

「これで私の人生も終わりですかね?。」

 

「さあな・・・けどなんか俺は結構楽しめたような気がするよ。」

 

まあ、結構楽しかったかもしれないな・・・この人に会えただけでも・・・な?。

 

「まだまだ、これからだったりするんじゃないですか?ほらたとえば・・・鉄腕○トムみたいなのが全部打ち落としたり・・・しないですよね。」

 

「ハッハッハッハッハッハッハ・・・フラグだったらいいのになぁ。」

 

といって美しい空を見続ける。

 

「・・・え?」

 

そのとき、お手伝いさんが声を出した。

 

「どうした?グレート○ジンガーでも来た・・・あ?」

 

 

さっきも見た美しい光景。そこに今までなかった一つの、か細くか弱く、かつ洗練された人型のなにかがいた。

 

その人型は緋色の炎すら上げずに、ミサイルを切り落としていく。ビームが出てきたり既存の兵器など軽く超越するような機動力を発揮し次々とミサイルを切り捨てる。

 

ミサイルが発生させる破壊より、人型のそれが上回っていた、だが俺は美しさは感じなかった。ただ”激しい嫌悪感”を覚えた。

 

それは人型がミサイルを撃墜するたびに強くなっていく、だんだんと俺を蝕み体の芯まで到達し俺は膝をつき胃の中の物を戻した。

 

 

「うっ・・・オエェェェェッ。」

 

 

吐くだけ吐いて吐き終わったあとには人型がきれいに痕跡すら残さず消え去っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『そんでまあ、逃げても無駄ってわけで家に戻ったんだけど・・・2つほど思ったことがあるんだ。

1つ目はあの人型。後にISだ、ってのは聞いたことだが・・・気になるのは操縦者だ。今になって冷静に考えると・・・あれ。篠ノ之流だったんだよねぇ。

それはどうでもいい、問題は二つめだ。

・・・エネ・・・お前怒っていたのか?』

 

 

 

 

『無言は肯定と捕らえるよ。まあ、あの契約は今でも有効・・・いや永久に有効だから。それは覚えてくれ。』

 

 

 

 

『・・・そんなことしたら、君は世界すら騙すだろ?』

 

 

 

これはある転機の話



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楯刃の足音1

「う・・・うぅん・・・っは!?」

 

・・・なんか、いやな夢を見たような気がする。・・・ってか朝日が出てない。眠かったし、一夏のクラス長就任パーテーすっぽかした罰が当たったか。

つか、今何時?・・・そうねだいた・・・やめとこ。・・・四時か。

・・・日課・・・やるか。

 

俺は恐らく視界が悪い中での戦闘訓練用に作られた(のではないかと思っている)森へ、眠気を残した体を引きずりながら、しかし、流れるような動作でもって携帯をポケットに突っ込ませながら、移動した

 

道中、四月の下旬の日が昇っていない外の空気は肌に刺すように冷たく、半分寝ているような意識を否応なく覚醒させられた・・・パジャマで出てきているのも覚醒させた一因としてあるのだろうか?。

 

とりあえず俺は日課をやるために、携帯を取り出し撮ってあった動画を再生する。

 

それは、前に対戦したオルコット嬢の動画だ。

 

さて、ここで問題。手っ取り早く強くなるには?

 

答え。強い奴の真似をする。

 

 

そう、俺の日課とは模倣。言ってしまえばタレントの物真似と変わりはない。

 

ただ、これだけは。他の追随を許さないと言っても・・・あ、ヤバイ悲しくなってきた・・・泣いてないぞ!泣いてなんかいないからな!。・・・だが、俺にはこれしかない。と自分自身に言い聞かせながら頭にあるオルコット嬢と自分の姿を重ね、吸収し昇華させる。

一通り終わった後、俺は息絶え絶えになりながら。

 

「・・・形はこれで整ったか・・・だが実践で使うにはまだまだ・・・だな。」

 

評価を下した。

 

実はこれ、体にかなり負荷が掛かる。体の芯から模倣し考え方まで変えて動きをトレースし問題点を他の動きと混ぜ合わせて消去していく。そんな作業は自分の普段使わない筋肉を酷使したりする、分かりやすく言えばバスケット選手が、格闘技をやったらすごく疲れるとかそんな感じだろう。

 

だが、今のスポーツ科学同様に成功したときのリターンは大きい、上の格闘技をやったバスケット選手は、強くなる。これは普段使わない筋肉を使ったため、全体のパフォーマンスが上がった・・・という理屈らしい。

 

「・・・終わるか。」

 

そういって、俺は今まで日課をやっていた場所から踵を返してそこで止まった。

 

「・・・覗き見は感心しませんよ?千冬ちゃグベラァ!?」

 

出席簿で頬の辺りを殴られ一瞬タコの様な口になり、少し体勢を崩した。

 

「先生をちゃん付け、名前で呼ぶな。」

 

「すみませんでした・・・それで?何で見ていたんですか?」

 

俺は、覗き見されたことに腹を立てたかのように、少し声色を下げる。

 

「ほう、理由がないと見てはいけないものだったのか?」

 

「いいえ、ですが理由がないと見ないものでもあります。」

 

誰が人の練習をぼーっと見るものか・・・。

 

「理由か・・・私は一年の寮長だ。早くに寮を出る生徒は珍しいものでな、問題行動を起こすかも知れんのでと後をつけてきた。」

 

「・・・そうですか。」

OK、ダウトだ。だが、そこまで重度のものを隠している訳じゃないと判断する。

 

「しかしお前は、面白い戦い方をするな。」

 

「・・・どこがです?」

 

「篠ノ之流の理念から外れず、しかも、それを自分用にアレンジしている」

 

「篠ノ之・・・箒さんの苗字ですが・・・何か関係はあるのでしょうか?」

 

とりあえず知らない振りをしておいた。

 

「とぼけなくてもいい、お前が篠ノ之流の剣術道場に行っていたことは調べはついている。」

 

「おやおや、プライバシーはどこに行ったんでしょうかねぇ。」

 

「元からない。」

 

「そうですか・・・。私はこれで失礼します。今度は先に声を掛けてくれると嬉しいです。」

 

とりあえず、帰ることにした。

これ以上会話を続けていると、めんどくさいことになりそうなので退散した。

 

 

 

逃げろ!!

 

 

 

・・・ふぅ、抜いてないよ。

 

いやあ、疲れたシャワーでも入ってくるか。

 

(・・・どうなる?)

 

誰か何か言ったか?・・・まあ良いや、とりあえずスマホをポーイ。

 

・・・入ろ。

 

 

ガラ

 

             相澤 康一←腐った目

              ↓ ↓

     不自然な湯気という名の完璧かつ絶対的なセキュリティ

              ↓ ↓

          同居人←性犯罪者を見る目

 

あれ?人生積んだ?と、学園新聞の見出しに実はI・Kは変態だった!?的な新聞の見出しが脳裏に浮び、俺は・・・はぁ、と一回大きな大きなため息をついて一言。

 

「思いついたように、と○ぶる展開してんじゃねえよクソが・・・分かってないな神様。」

 

冷めた目で虚空を見ながら速やかに、かつ音を立てず踵を返し扉を締めた。

 

はぁ、ここのシャワー使えないな。俺は、これからの生活が少し苦しい物になるのを覚悟し刹那のうちに服を着替え。教室に避難する事にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方そのころ。

IS学園にある一室にて。そこにはデスクが三つほどあり、多くの書類が積み上げられている。そのような絶対的に作業に不向きな環境の中、二人の女性が紙と判子をせわしなく動かしながら事務仕事をしていた。

 

ふと、どこかで見たような水色の髪と赤みががった目を持つ女性が、自身の作業しているデスクの引き出しから数枚の写真を取り出す。それはなんと、相澤康一の同居人更識簪の写真だ、どれも盗撮であり一枚たりともカメラ目線ではない。そんないわくのついた写真を数秒間見つめて、口元を綻ばせた。そうして、また机に写真を戻して仕事を再開しようと再び判子を持った。

 

すると、顔がだんだんと険しくなり。ふと思い立ったかのように同じ引き出しを開ける。そして出したのは寮の部屋割りに関する書類。そのある部分に目を通したその時。

 

 

「…………くぁwせdrftgyふじこlp;!!!」

 

奇声を上げ奇行を行いその副次的効果でデスク上にあった書類が全部吹き飛んだ。

 

「ああ!?どうしたんですかお嬢様!!?事務仕事のし過ぎで頭がおかしくなったんですか!?」

 

もう一人の眼鏡をかけた女性が、その奇行にに驚いた。

 

「やべぇ・・・やべぇよ。簪ちゃんに近づいた野獣が居やがるよぉ。処す?処しちゃう?おねーさん処しちゃうよアハハハハ。」

 

狂ったように笑っている。狂ったように笑っている。

 

「止めてください!っていうかどうしたんですか?」

 

「クソォ・・・くそが!なんで男と引き合わせちまったんだ!私としたことが!」

 

「はぁ!?ん?…これは…。」

 

都合よく、先ほどまで水色の髪の女性が見ていた書類を大きい紙ふぶきの中手に取った。そこには。

 

 

 

寮室1050登録生徒。

 

相澤 康一

更識 簪

 

 

その一点が目に入った。

 

 

「くそぉ、寝不足でなければ・・・。」

 

「いえ・・・そこまで、心配することでもないのでは?」

 

この発言には、おかしいことがあったらすぐに報告に行くのでは?と言う意味が含まれているのである。その意味を完璧に把握したうえで。

 

「簪ちゃんの無念が私に届いたのさぁ。この更識 楯無の胸に!!」

 

と言って自らの胸を指差した。もう一方の女性は・・・

 

 

 

だめだ、三日も寝てないと正常な判断を下せなくなるのか・・・。

 

 

 

 

「少し眠りましょう。」

 

ビシッ!と首筋に手刀を叩き込み気絶させ、流れるようにカーペットに寝かせてタオルケットのようなものを被せる。そうして、少しやりきったような顔をして。

 

 

「…………私も、もう少ししたら寝ますか。」

 

 

と言いながら再び作業に戻った。

 

 

 

IS学園生徒会室でのことである。

 

 



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ぶっちゃけあんまり出番がないルイー○見たいな扱いの機体

 

何事もなく放課後に。

 

・・・いや、何事しかないんだが・・・いちいち突っ込んでいるときりがないので割愛させていただく。

 

本来なら、アリーナを使わさせていただき、基礎練習・・・起動、歩き、予備

 

一夏の専用機は届いているが、俺のそれはまだ届いていない。・・・時間が掛かるらしい。

 

そして、聞いたところだと。一夏の専用機と俺こと相澤康一の専用機では意味合いが違うらしい。

一夏は男性脳で動くISのフラグメントマップ(これは、ISコア自立進化の足跡のことでDNA、遺伝子のようなものだ。)のデータ取りようの機体であるのと対極に、俺のは男性の体で使用することを前提に作られた専用機だ。

まあ、男性のハード(肉体)ソフト(精神)を同時にデータを取ればいいからな。どちらかが壊れても替えが効くし。

 

そんな作るのは。一夏は倉持技研(くらもちぎけん)恐らく日本で一番ISコアの研究が進んだところなんだろう。

 

対して俺は世界研究者クラブ。この字面を見ただけで心配になるこの組織、だが、侮るなかれこれは、別名ノアの箱舟と呼ばれている。

世界の終わりが近づこうともこの集団は終わらないといわれ、その由縁は呆れるほどの科学力・・・いや、科学に関係無い学者もいるため文化力といったほうがいいだろうか?その文化力を大量に所持しているのだ。

 

始まりは六年前。一人の天才科学者が、各地を転々としネットワークをつくりそれが波紋のように広がり、今では国も旨味があるためその団体を容認している。

 

実態は、天才学者の集まりだ。ただこれだけである。

なぜそれが大きな科学力を持ったのかといえば、システムにある。この世界研究者クラブは、ルールとして”世界の法に触れないこと”、これと”研究をする場合は二人ないし五人で研究すること”この二つだ。

この後者のシステムは、危険であると同時に大いなる恵みをもたらすことになる。

 

物理学の研究者と生物学の研究者は、研究者ではあるが分野が違い、その知識の差は大きく両者が両者ともカバーしきれない溝がある。その溝は誰も分からないパンドラの箱となる。

 

まあ、びっくり箱を意図的に作ってそれを解析したら何か生まれるんじゃね?とかやってたら実際出来たというわけだ。

 

この前、大手動画配信サイトに・・・スポーツカーにISコアを乗せてみた。とかあったもんなぁ。

(因みに、コメント・・・車の形をした何か。ext・・・)

 

それにISを例に挙げてみよう。

最近生まれたISというもの、既存の兵器を模した何かをぶっ放し挙句の果てにはビームすら出すしまつ・・・だが重ねて考えてもらいたい、既存の兵器に似たものが搭載できるのであれば、既存の兵器の世界的な研究者が、”ボクの考えた最強の兵器”を作りそれが重なり、一つの形になったものがあるとするならば。

それは変態たちが作った変態的な性能を持った変態的なISが出来上がるわけだ。

 

だが、力を与えるには反動が来る、拳銃でも、ミサイルでも、核爆弾でも必ず。その反動を一手に請け負うことになる器がなかったのだ、優秀な操縦者を潰したら悪い・・・だったら、男を使えばいいじゃない。

 

という訳で俺にその問題のISが来ることになる。

 

非常に不安だ。

 

「・・・・・・というわけなんですが・・・これ、大丈夫ですかね?・・・山田先生?」

 

「う、う~ん・・・確かに、世界研究者クラブは変なものを作り、かつ実用性に長けていますが。・・・なんともいえませんねぇ」

 

実はこのモノローグは山田先生への説明だったのだ!!

 

「始まりからそうですけど、ISコアって言う全機能の6%しか解明されていないって言うのによくここまで、実用に踏み切りましたね?」

 

「・・・仕方ないでしょう、国防にかかわり、ISを持たない国はほかの国に潰されますから。」

 

世知辛いな・・・天災と天才は紙一重ってことか。まあ、俺のISの出所はおんなじ様なものなんだけどな。

 

「んまあ、IS学園の一兵卒には関係無い話でしたねぇ。私は、無駄な考えことばかりしてしまっていけません・・・以後自粛します。」

 

考えると止まらなくなるからな。気をつけないと。

 

「いえ、考えるというのは人間にのみ許された行為・・・って、誰かが言っていた気がします、一生懸命考えて、それなりに答えを出せばいいと思いますよ。」

 

・・・本当にそう思っているのか?

 

「・・・考えられるのは人間だけじゃないかも知れませんよ・・・。」

 

「え?・・・・・・」

 

・・・言ってしまった。それからというもの沈黙が続き、それは俺の専用ISが搬入された場所に着くまで途切れなかった。

 

「ここです。」

 

「はい。」

 

そして入り黒いヴェールに包まれた塊がそこに居た。

 

「・・・これが・・・。」

 

「ええ・・・相澤君の専用機、カゲアカシです。」

 

といって、ヴェールを取るながら俺に向き直った。

・・・ドッキリの看板はどこだ?俺の目には何にも見えないんだが・・・狐にでも化かされたか?

 

「・・・あれ?。」

 

といって後ろを、というか黒ヴェールがかぶせてあった場所を、みた・・・。

 

 

「・・・ドッキリの看板は?・・・どこにあるんでしょう?」

 

「私に聞かないでくださいよ・・・。」

 

非常にげんなりとした声で俺は突っ込んだ。

 

・・・けどこれよく見ると空気と歪んだそれが境界を作って輪郭は見えるな。・・・よし、使いたくなかった切り札を使おう。・・・エネさーん!!!!!

 

 

『なんだい?』

 

『アレを、生身の俺にも見えるようにしてくれないか?』

 

『わかった、君の持っているスマホを機体に押し付けてくれ。姿は見えないかもしれないが実態はあることは確かだ。ぐいーっと行ってしまえぐいーっと。』

 

「オッサンの飲むような擬音語を使ってるんじゃねえ・・・んじゃ。』

とりあえず、視覚障害者のように手探りで機体を探し手先に感触が来たと同時にポケットからスマホを取り出し感触へと。

 

ぐいー

ぐいー

ぐいー

 

・・・ヤバイ、脳内オノマトペ楽しい。

 

そう思っていたら、スマホ画面に”なうろーでぃんぐ!”とか描かれたむかつく顔がぐるぐると回っているのが見え・・・画面が切り替わり机を挟み二人の少女が対面していた。

 

そして、一人の少女が口を開いた。

 

『お願いします!娘さん(機体可視化システム権限)をボクにください!!。』

 

『・・・やれんな。・・・ましてや、貴様のような優男にはな。』

 

「なにこの茶番劇。」

 

『すみません!まことに申し上げにくいのですが、私は女です!!』

 

『時を待て・・・。私から君に言えることはそれだけだ、ここから出て行きなさい。』

 

「そこ突っ込まないの?」

 

『まだ話は終わっ『いいから出ていきなさい!!。この話は家族で娘を加えた上で再度行う。だからでていきなさい・・・力づくで追い出してもいいんだぞ?』・・・。』

 

私は踵を返し、感情のままに走り去った・・・走り去ってしまった・・・。

 

 

「・・・なんですか?これ?」

山田先生がスマホ画面を覗き込みながら聞いてきた

「いや、俺だって知りませんよ・・・。」

 

 

そして、時は流れ私は彼女の父と対面してから一年・・・。

 

『同姓婚法が可決されました!可決に一役買ったのは』

 

そこで、私は自分の耳を疑った。まさか、そんなといった否定的な言葉が頭の中で渦巻き、希望が混じる・・・闇の中の光のように希望がとてもいとおしくなり私は・・・走った。

 

奇しくも一年前と同じだ、感情のままに走り、弱さゆえに逃げた。

 

唯一、違うのは、逃げるか迎えるかの違いだろう。

 

そして、走りに走り走った先に着いたのは、彼女の家。

 

不躾ながら、ノックもせずに一年前の机がある場所に行った。そして・・・いた。

 

『娘をやろう。』

 

『お、義父さん!!』

 

俺は無言でスマホを叩きつけ、粉砕させていた。

 

踏みつけて踏みつけて粉砕させた。

 

「うっ、うっ・・・良い話ですねぇ・・・。」

 

「山田先生?・・・ここ号泣するところですか?」

 

「感動的じゃないですか・・・。」

 

「ハンカチどうぞ。」

 

「ありがとうございます・・・。」

 

・・・テンプレは無しか・・・。

泣き止むまでかなり時間がかかり、泣き終わったあとに。

 

その姿を現した。

 

それは、灰色のデザイン性が全く見受けられず無骨な印象を受けるISだった。

腕や脚といった各部に、ゴセイ○ャーのゴセ○ヘッダーのような取り付け部があり背中に大きなホオズキのような塊を背負っている。肩辺りの装甲に一枚葉がある。・・・やはり。

 

「はぁーこれが相沢君の専用機ですか・・・なんか男の子って感じですね。」

 

「そうですか・・・。」

 

特に感想はない。ぶっちゃけどうでもいい、むしろ死にたい。

 

「では、乗ってください。ファーストシフトは、実戦でやったほうが簡単ですので」

 

「そうですねぇ・・・とりあえず乗っといたほうがいいかもしれないので乗っときます。」

 

 

『次回』・・・俺出撃!!

 

 

 

 

 

 

 

 

『そういえば、あの茶番劇はなんなんだ?』

 

『面白くなかったかい?』

 

『なんともいえません。』

 

 



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作業

『前回のあらすじだな、・・・専用機が来て出撃した・・・かな。』

 

 

「・・・視線が痛い。」

 

俺こと相澤康一はさっき、俺の専用機を手に入れ試験的に運用することにした・・・だが。

 

「なにあれ・・・。」

「どこの国の?」

「・・・あ、一葉マーク。」

「ウソ・・・合掌。」

 

・・・死ぬよね・・・それは。IS世界での格言にこの言葉がある。一葉マークは使用者の死を冠する。・・・読んで字のごとくだ。

 

「お・・・康一も専用機を持ったのか。」

 

「ああ、残念ながらな。」

 

「そうだ、出来るなら模擬戦。やらないか。」

 

「うほっいい専用機・・・じゃねえや。…………ちょっと待ってくれ、何かこれ癖の強い機体らしいからなそれに少し慣れておきたい。」

 

「俺も欠陥機って言ってたし・・・わかった。」

 

 

んじゃ・・・えっと、まあ、妄想力みたいなもんだろ、イマジネーションだ。そういえば情報酔いが来ないなこの機体に乗ったとき・・・何か意味があるんか?

とりあえず、宙に浮いて。

 

そのまま二次元動作、前後左右に移動だな。

 

まず後ろ・・・右左と動き前にうご

 

ギュン!!

 

ガン!!

 

「・・・バカか!。動くとか言うより加速じゃねえか。」

 

とりあえず俺はシールドにぶつかった痛みに耐えながらPIC(パッシブ・イナーシャルキャンセラー)の具合を確かめる。確かこれを使うと足場とか作れるんだよな。

 

大人の階段クライムドゥー

 

・・・以外にいける。

 

ここまででわかったことは、前への加速が半端ない機体ってことか・・・だがそれだけか?

 

「装備一覧。」

 

声に出してそれを呼び出す。すると。

 

・可変大型バックパック 灯火(とうか)

・オールレンジ攻撃可能兵器 ペトゥル

・ペトゥル変換デバイス 湯花(ゆばな)

 

・・・なんで英語と日本語混じってるんだ?

 

なんかタッチすれば出てくるだろ。+・・雑多な説明しか書いてなかったので簡単に説明すると。

・灯火 後ろに背負っている奴。

・ペトゥル 灯火についている、オルコット嬢のBT兵器のようなもの

・湯花 ペトゥルの変換デバイス

 

といったところか・・・どうやら湯花の使い方が命運を分けるようだな。

 

・・・ああ、これもしかして・・・アレか?世界研究者クラブの作品ってことだよな。確かどこかの国が作らせてぶっ飛んだ性能ゆえに国際連合がお前はIS作るなとかいわれたような気がする。それなのにこうしてあるってことは・・・ああ、男性の片方潰そうってわけか。

 

それにISコアを使って面白がっているような連中だ。車では飽き足らずボカ□に繋いで

 

初音ミ○たんをISコアに繋いでヌルヌル歌わせてみた

(因みにタグ ISコアの無限の可能性)

 

とかあったもんな。・・・しかもこれが作曲家雇って音楽ごと作ってるし完成度が半端じゃない。・・・一葉が言うにはそういうのも大きな活動資金になっているという。

 

あ、因みに一葉が言うには彼女、世界研究者クラブの会長らしいです。

 

よし、じゃあ準備はオッケー

 

「おーい、一夏はじめるぞ。」

 

「よし来た。」

 

「あ、そういえばオルコットさんはどうした。なんか練習を見てやるとか言ってたが。」

 

「ああ、今日はよく分からないけどいやな予感がするって言って帰った。」

 

・・・女の勘って奴?まあいいや。

 

「よしやるか・・・誰か合図を頼む。」

 

『はいはい!私やる!。放送をジャックしたし。』

 

・・・妙に行動力がある子だなぁ。・・・つーかこれ、笠森さんの声だと思うんだが?出番少な過ぎてもう忘れていたよ。

 

『それでは・・・。』

 

俺は無手の自然体、一夏は両手持ちでの刀を正眼に構えている。

 

『・・・・・・・・・始め!!。』

 

 

俺はPICの足場を使い急上昇する。そして一夏が先ほどまで俺がいた場所を通った。

 

「・・・あっぶねぇなぁ。イグニッションブーストかよ、俺より完成度高い奴だし。」

 

「死ぬほど鍛えられたんでね!。」

 

「そうか・・・いくぞ。」

 

一夏の動きは基本的に剣道の動きだ。つまり型にはまっており胴薙ぎより下の攻撃は来ない。

だが、型にはまった戦法は逆を言えばそれだけ洗練されたものだ。それなりに気をつけなければいけない。

 

それではこちらも型にはまった騙し方という物があることを見せてやる。

 

まず、ボクシングのような構えを取る。完全にプロから見れば真似っこボクシングのようなものでしかないだろうが、素人目に見てそのようで(・・・・・)あればいい。

 

そして、戦う。

 

刀やそれなりにリーチがある獲物は避けられたあとの対処がしづらい。とりあえずは避けることを目標にする。

 

袈裟切りを潜って回避、後になんちゃってワンツー。胴薙ぎをPICバックステップとスラスターで回避。唐竹割りを体を横に振って回避、ワンツー追撃。突きをスウェー回避して、ストレート。

 

そんなこんなで十五分。俺と一夏のダメージ総量はほぼ同じ。俺の場合手数は多いが一発分の攻撃力が少ないのに対して、一夏の場合は当たりにくいが一発分の攻撃力が多い。

 

それでこの均衡が保たれている。

 

「・・・はぁはぁ、康一、結構戦えるな。」

 

「ふぅ、これでも伊達にオタク狩り人狩りはしていないんだぜ?」

 

そして、一夏が決めに入る。零落白夜を発生させ上段に構えた。

俺は、再度ボクシングの構えを取り突っ込んだ。

 

そして零落白夜の刃が近づき振り下ろせば届きそうな場所で脱力したように構えを解く。

 

目論見通り、一夏は構えという、型いや、ここでは定石といおうか。その定石を捨てたことに対して考えてしまった。故に隙が出来てしまった。そのうちに、大きなホオズキがある背を向けホオズキを展開する(・・・・)その展開させたホオズキを外しまた定石も外す。そして生み出したその隙を使ってホオズキを回りこみ右手で右手首を捕まえる。

 

確かこの零落白夜、自身のシールドエネルギーを削る諸刃の剣らしいからなこのままでいる。

 

そしたら、掴まれていない手のみに持ち替え、片手で俺に零落白夜を当てようとするが俺は右をうまく使いそれを一夏の正面に背中を向け左手に持っていたペトゥルの先端を一夏の顔に押し当て・・・至近距離発射する。

 

試合終了

 

 

俺が戦うと・・・作業ゲー見たくなるのは気のせいだろうか。

 

 

 




ちょこっと修正


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雑談にメッセージ

今回は台本形式(あっているのか分からない。)



一夏「いやぁ康一強かったな。」

 

箒「・・・あいつの強さは好かないな」

 

一夏「ふーん。まあ、俺も強さってのはよく分からないからアレだけどな。っとカギカギ~。」

 

 

 

ガチャ←扉を開ける音

 

パチ←部屋の電気を付ける音

 

バタン←扉を閉める音

 

 

 

一夏「ふぅ、今日も疲れたな。」

 

「そうか、滋養強壮の効果を持つ食品は緑茶やしょうがとかがあるらしいぞ。」

 

一夏「へぇ、ほかにはどんなのがあるんだ?箒?」

 

箒「・・・私は何にも喋っていないぞ?」

 

一夏「え? 康一「俺だ。」うわぁぁぁぁッ!?ここここ、康一!?」

 

箒「・・・何時の間に入ったんだ?」

 

康一「こんな感じ↓」

 

 

 

ガチャ←扉を一夏達があけたところ

 

スススッ←俺が入るところ

 

バタン←箒が後ろ手で扉を閉めたところ

 

 

 

一夏「・・・何しに来たんだ?」

 

康一「喋りに。いやー同居人があんまり喋ってくれなくてさぁ。この前とかトラブルっちゃって。」

 

一夏「あ・・・ああ、トラブルってなんだ?。」

 

康一「矢吹神のことだ。」

 

一夏「・・・深くは突っ込むなと?」

 

康一「なんだ?一夏にしては察しがいいじゃないか?偽者か?」

 

一夏「酷いな、俺は・・・敏感とはいわないが結構多感なんだぞ?」

 

康一「OKだ、よく理解したよ。」

 

一夏「・・・よし、この話はやめにしよう。」

 

グッ!←無言で親指

 

康一&箒(なるほど、女性に関する部分だけ感覚が抜き取られたんだなぁ)

 

康一「あ、くつろいでていい?」

 

一夏「ご自由に、ちょっと待ってろお茶持ってくるから。」

 

康一「ありがと~。」

 

 

・・・よし、行ったな。

 

 

康一「さて、コイバナでもでもしようか。んで?箒さん。一夏のどこが好きなん?」

 

箒「い、いきなりなにを言い出すか!」

 

康一「声が上擦った、図星だな。そして声を下げないと聞こえるぞ。」

 

箒「私は・・・一夏のt康一「めんどくさい。別にいいよ無理して言わなくても。」

 

箒「・・・喧嘩を売っているのか?」

 

康一「いえいえ、滅相もございませんお嬢様。わたくしめにそのようなことが出来るとお思いで?」

 

箒「・・・あれだけ、プライドをボコボコにされれば・・・あるいは。」

 

康一「ええ?そんなに傷ついていたの彼女?謝っておかなきゃな。」

 

一夏「オルコットのやつ俺と戦う時もかなり苛立ってたしな。あ、お茶汲んできた。」

 

康一&箒「頂こう。」

 

 

三人「「「ズズッ。・・・ハァ。染みる。」」」

 

 

康一「茶菓子持ってきた。」

 

一夏「・・・ういろうか。結構簡単だよな。」

 

康一「作り方はな。」

 

 

三人「「「パクパク・・・モニュモニュ。ゴクン。・・・いけるな。」」」

 

 

箒「そういえば、このまえ饅頭を持ってきていたが。和菓子好きなのか?。」

 

康一「いや、洋菓子が難しいだけ。チーズケーキとかなら出来るけど生クリームとか買ってくるのが面倒くさい。」

 

一夏「ははっ。なんだよそれ。」

 

康一「実際に買って来れないんだよ。ういろうなら、小麦粉で出来るし。最悪調味料がすき焼きのたれって言う日があったりするからな?」

 

一夏「ああ、自分一人の時は適当に食っちゃうよな。」

 

康一「そういう時はなぁ一ヶ月でどれほど節約できるか試すんだよ。俺とか一ヶ月七千円とかにしたりしたし。」

 

箒「栄養価的に大丈夫なのか?それ・・・。」

 

康一「給食の残りを乞食食いで問題解決だ。」

 

箒「お前にプライドってものはないのか?」

 

康一「え?プライド?なにそれおいしいの?」

 

一夏「食べ物じゃないからな?」

 

康一「知ってるよ。」

 

箒「そういえば、康一お前のIS待機状態ってなんだ?」

 

康一「ん?アンクレット。さっき調べた。」

 

 

といって康一は左足の裾を上げた。そこにはアンクレットと言うより奴隷の足輪のような無骨なそれがしっかりと足首に装着されていて、膝の下辺りに同じようなものがあり。二つの間に鎖が繋がっている。

 

一夏「えぐいな。」

 

箒「ああ、ISとはみんなこんなものなのか?」

 

康一「ちょっと待ってろ。開発者に聞いてみる。」

 

 

そういって康一はスマホを操作しスピーカー状態にし、開発者(・・・)につなげる。

プルルルルルぷt、ガチャ。

 

 

一葉「もしもし?お兄ちゃんかい?」

 

康一「ああ、俺のIS開発者よちょっと聴いていいか?」

 

一葉「へぇどうしたの?私に借りを作らないって言っていたのに。」

 

康一「え?言ったっけ?」

 

一葉「・・・ああ、私のお兄ちゃんはこういう人だった・・・。んで?なんでそんなこと急に聞き始めたの?」

 

康一「友達との会話の流れでな。」

 

 

そう、康一が言った瞬間、受話器越しになにがぶつかったような音がする。しばらくして再び一葉が電話にでた。

 

 

一葉「はぁ!?お兄ちゃんに友達!?この短時間で!?」

 

康一「ああ、もう超友達。」

 

一葉「会話の流れってことはそこに、お兄ちゃんの友達(頭がおかしい人)がいるってこと?ちょっと声聞かせて!。」

 

康一「殺すぞ。だってよ。一夏・箒さんゴーだ。」

 

一夏「ここでバトンタッチされても・・・。織斑一夏です。よろしく。」

 

一葉「一夏君ね、4649よろしくぅ!」

 

康一「ほら、箒さんも」

 

箒「私は電話はあまり・・・。」

 

一葉「う~ん声聞きたかったなぁ・・・。」

本当に残念そうな声を出していた。

 

箒「う・・・。篠ノ之箒だ。」

 

一葉「え?篠ノ之さんって・・・。」

 

 

箒「私は姉さんとh。」

一葉「声が澪ちゃんにn」

 

康一「一葉ァ!!それ以上言うな!!それに二人とも一般人(パンピー)だぞ?」

 

 

 

一葉「な・・・なんだと!一夏君、箒さん攻めの対義語は!?」

 

 

一夏&箒「「え?・・・守り?」」

 

 

一葉「わたくし相澤一葉申しますどうぞお見知りおきを。」

 

康一「いや、前々から突っ込む気だったんだがお前の名前はニコル・ハウアーだろ?」

 

一葉「なんだいそいつは?私の記憶にございませんことよ?」

 

一夏「・・・あれ?どういうこと?箒、分かるか?」

 

箒「私にもさっぱりだ。なあ相澤。」

 

 

一葉&康一「「なに?」」

 

 

康一「あ、もう俺のことは名前でいいよ。」

 

箒「お前ら兄妹は・・・変だな。」

 

 

一葉&康一「「は?どゆことkwsk(くわしく)。」」

 

 

箒「いやなんでもない。それより・・・」

 

状況説明中。

 

一葉「う~ん、一言じゃなんにも言えないけど・・・男性操縦者っていう点も影響してるのかねぇ。そういえば一夏君、君の状態は?」

 

一夏「俺のはガントレットだ。もはや防具な様な気がするんだよな。康一のに至ってはもはや足輪だぜ?。」

 

一葉「まあ、男性IS操縦者だしってことでここは一つ、でも、アンクレットの呼称でも問題ないと思うよ。元々奴隷の足輪が起源と言われているし・・・しかし、面白い意味だね。」

 

康一「なにがだ?」

 

一葉「いや、聞かなかったことにしておくれ。」

 

康一「お、おう・・・。」

 

一葉「それにコアがおかしいのかも知れない。ちょっとニヤニヤ動画に出して、そうだな”ISコアやその他もろもろでハッピーシンセ○イザー(リアル)を作ってみた”とかやっていたから・・・コアの特性が大分捻じ曲がったのかも。」

 

箒「・・・ああ、あれか・・・ってことは。もしかして世界研究者クラブの構成員なのか!?」

 

一葉「お?うん。」

 

一夏「なんだ?その世界研究者クラブってのは。」

 

康一「ああ、俺の言った変態技術を持った人たちの集まりだよ。」

 

一夏「ああ、なる。」

 

一葉「ちょっとお兄ちゃん酷くない!?そして一夏君も納得しないで!」

 

一夏「ごめん。」

 

康一「そんで、コアの特性変質ってことでファイナルアンサー?」

 

一葉「うん。」

 

康一「グッバイ。」

 

一葉「ええ!?」

 

 

康一がそこで無理やり通話を切った。それは完全に一葉への口止めだった。

 

 

康一「・・・ちょっと調べることが出来たな。」

 

一夏「なにを調べるんだ?」

 

康一「触れないでもらえると嬉しい。」

 

箒「・・・兄妹だな。」

 

康一「いや、あいつは義理の妹なんだよ。確か俺が中一のときに押しかけてきたんだっけ?」

 

一夏「なんだ?それ。」

 

康一「いや、ほんとなんだ。これ」

 

箒「それが・・・世界研究者クラブの構成員って言うことか?」

 

康一「ああ、親がちょっと頭がおかしいんでね。」

 

一夏「・・・親のことをそんなこと言っちゃダメだ。・・・居るってだけでも儲けものなんだから。」

 

康一「わかったよ。何か一夏はわけあり見たいだし。説得力があったな。」

 

 

そんなこんなで夜は更け康一は部屋に戻った。

 

 

 

「・・・・・・・・・・ん~っと。”装飾品 アンクレット”・・・っと。」

 

その寮の一室にあるパソコンで単語を検索していた。

 

そして、検索結果。

 

恋人(または夫)の所有物”である事を暗喩している。

 

そして反芻される。情報を取り込み消化し戻し、昇華させる。

 

このISからの問いは(・・・・・・・・・・)・・・。

 

 

 

「なかなかに皮肉が利いているじゃねえか・・・。よろしくなカゲアカシ。」

 

 

こうして、康一は眠りに付いた。

 

 



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早朝の出来事

ふあぁぁっ・・・眠い。

 

やっす、おら相澤康一。朝日に当てられて目が開けられないぞ。

現在俺は、日々の日課を終えて飯を食い(学食ではない)教室に居るところだ。

 

・・・早く来すぎたか?、まあ、遅くなるよりかは良いか。

 

と、現代っ子よろしくスマホで時間を潰し始めることにする。

 

「早く来てやる事はそれか?」

 

「・・・この状況を見てみろ・・・それしかないだろ。」

 

エネが、暇つぶし用のアプリケーションを開こうとしたところにスマホ経由で声を飛ばした。

 

「つーかお前どうしたんだ?いつもなら頭に直で飛ばすのに。」

 

「それはだね、こっちの方が楽なんだよ。」

 

「・・・本音は?」

 

「スマホと喋る変人と思われたときに君はどうするのかということをかんさt・・・ハッ!?」

 

やはりか、このやろうめ・・・人を困らせてそんなに楽しい・・・よね。

 

「なぜ、途中から賛同に変わってる?」

 

「撃っていいのは撃たれる覚悟のある奴だけ・・・それと同じ原理だ。」

 

「OKよく分かったよ。」

 

「分かってくれて嬉しいよ。」

 

あ~あ。嬉しいよ~。はあ、エネとお喋りするとボケに回ってしまって面白くないなぁ。ボケるのも良いんだけどね。

 

そのとき、いきなり教室のドアが開いた。

あ、ここからは地の文は私ことエネが努めさせてもらう。・・・彼の、康一の言葉はウソで塗り固められているからな。・・・それでは楽しんでくれ。

 

 

「・・・・・・・・・あれ座敷童子かと・・・。」

 

その開いた原因となった人物は、人のことを東北地方で伝承される妖精のような者呼ばわりしながら首を捻っていた。

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・ごめん、どう返して良いんだか分からないや。」

 

俺も捻っていた。

 

「私も・・・。」

 

「いや、そうやられると困る感じなんだけど?」

 

「・・・ごめん。」

 

「えっと、笠森さん?・・・だよね?双子の姉とかってことは?。」

 

今から明言しておくがドアから入ってきたのは笠森さんだった・・・いきなり出てきたなぁ。

 

「ないない。笠森であってるよ。」

 

「いやぁ。間違ってたらどうしようかと思ったよ・・・。笠森さんはこんな早い時間にどうしたの?」

 

「実はへんな時間に起きちゃって。」

 

「ああ、学校生活で、しかも寮だし以前との生活は完全に出来なくなるから・・・。聞かれてないかもしれないけど、実は僕もなんだ。生活リズムが崩れたりすると一気に眠れなくなっちゃったりするよね。」

 

「うん、私もたまにある。・・・学校生活にも早く慣れないと。」

 

 

そんなこんなで会話が進み・・・。

 

「学食のデザート食べた?」

 

「まだだよ、冷蔵庫の中腐らせちゃ悪いから。」

 

「主婦!?」

 

「いやいや、主婦度だったら一夏の方が高いよ。」

 

「そ、そう・・・けど絶対学食のデザートは食べた方がいいよ。」

 

とか。

 

「あ、そういえばクラス対抗戦が近いね。」

 

「え?なにそれ?おいしいの?」

 

「食べものじゃないよ!?・・・本気?」

 

「うん、本気と書いてマジだよ。」

 

「なんか、古い事知ってるねぇ・・・説明するとクラス代表同士が戦うリーグマッチだね。それで小規模の賭けが発生したり・・・しなかったり。」

 

「えっと・・・つまり僕には関係無い競技で、一夏君が大変な目にあうってことだよね?」

 

「う、うん・・・大体そんな感じ。」

 

「良かった・・・笠森さんが教えてくれなかったらずっと教室で待ってたかも知れなかったよ。」

 

「そこは、異変に気付こう!!。」

 

とか。

 

「ついでにもう一つ聞きたいことがあったんだけど。」

 

「なにかな?」

 

「セシリアさんといい、織斑君といい康一君。結構いい動きしていたけど何か・・・剣道や武術の類はやっていたの?」

 

「全然。」

 

「うっそお!?それであの動きって・・・。何かあるんでしょ?」

 

「・・・実は僕。小学校でいじめられていたから、避けるのや逃げるのはうまいんだ。」

 

「それは・・・ごめんなさい。」

 

「けど、不思議なんだ。たまに、いじめられる時にお腹の辺りや頭が痛くなってきて、それが、我慢できなくなったら、ぴたりといじめが終わって周りには誰もいなくなっていた・・・って時があるんだよ。・・・不思議じゃない?」

 

「そ、そうねぇ~~。」

 

「笠森さん?どうしたの窓の方向に視線が釘付けになってるけど?」

 

「なんでもないわ。」

(それ・・・ストレスが原因の解離性同一性障害・・・二重人格とかなんじゃないかな?・・・康一君を・・・怒らせないようにしておこう。)

 

(・・・計画どうり。)心のゲスガオ

 

 

などなど、さまざまな会話をしたがその中で、こんな話題が出た。

 

 

「そういえば、ここに転校生が来るらしいよ?」

 

「へぇ、どこから来るんだろう欧州かな?」

 

「いや、私の目が間違ってなければ、アジア系の人だったねあれは。」

 

「・・・・・・見たの?」

 

「イエス!いやー偶然に出会ってさ、迷ってるようだから道案内してあげたの。」

 

「優しいんだねぇ笠森さん。」

 

「いやいやぁ情報が欲しかっただけですよぉ~」

 

「フフフッ、なにそれ?。」

 

「ごまかし方は二種類あって、ひとつはキレるもうひとつは笑って誤魔化すのですよ。」

 

「そう・・・それで話は変わるけど何でこんな変な時期に転校して来るんだろう?」

 

「ああ、それはちょっと難しい話になっちゃうけど・・・男性IS操縦者のデータや仲良くなってつながりを持とうとしているんじゃないかな?」

 

「大変だね一夏君も。」

 

「康一君も男だよね!?」

 

「・・・ああ、最近女装していたから、よくわかんなくなって来ちゃってた。」

 

「やばい、カミングアウトが半端なくて突っ込みが追いつかない。」

 

「ごめん、冗談だよ。」

 

「わーい、こんなに信じられない冗談ははじめてだー(棒)」

 

「ええ?本当に?そんなに男らしくないかな?」

 

「う~ん、あんまり男子をまじまじと見ては居ないからよく分からないけど。織斑君よりかは中性的な顔だちって言うのかな?それに近いことは確かだよ。結構伸ばしているから一瞬女の子かと思ったこともあったしね。」

 

「本当にかぁ・・・。シラベタガアレノセイカ?」

 

「どうしたの?」

 

「いやなんでもないよ。」

 

と、やはり彼は誤魔化してその場をしのいだ、そして彼が彼女に振る

そのとき、いきなりドアを・・・ってあれ?デジャヴ?

 

 

「ちょっと、転校生転校生って五月蝿いわね。もっと堂々と言いなさいよ!。」

 

 

「転校生!!!。」ドン!

 

「そうじゃない!!」

「康一君、きっと(求めてた回答は)違うよ!?」

 

そこには、ツインテール?私は髪型に疎いので良く分からないが恐らく、それかそれに類似した髪型で胸はひんny・・・ステータスであり、日系の顔立ちもっと言うなら雰囲気的に中国だろうか?快活そうな顔が印象的な、私も彼も当てはまる人物データベースに該当している人物が居た。

 

「・・・。アタシ、裏でこそこそ~とか、だまし討ちとか演技とか逃亡とかが暗い言葉が一番嫌いなのよ。ってか綾香、アンタは転校生のアタシと会ったでしょうが。」

 

「ごめんね鈴、もったいぶりたくなる性質でね。」

 

「教えてくれたときも言ってたわねそんなこと・・・で・・・そっちの挨拶もない人はどこの誰?。」

 

「ああ、彼はこの学園でn・・・」

 

と彼は話を振られたので仕方ないと・・・驚かすことにしたようだ。

彼は前髪を手で掻き上げて額を見えるようにし若干笠森を押しのけるようにして言った。

 

「よお、凰 鈴音(ふぁん りんいん)2年そこらで俺の顔も忘れちまったか?」

 

「「・・・・・・・・・・・・・・え?」」

 

 

と、変な声が二つ上がったあと後ファンと呼ばれた少女はくるりと踵を返してそのまま走り出す

 

 鈴音 は 逃げ出した!

 

 しかし! まわりこまれた!

 

 

「どうした、逃げるなよ。」

 

「いやだ!絶対に変な服を着させられる!。」

 

「あの時はしょうがねえっつたろ?お偉いさんと仲良くなっちまったんだから。」

 

「やだいやだい!おうちにかえるんだい!!。」

 

(キャラ崩壊してる・・・二人ともだけど。)

 

「ちょっ・・・ちょっと!?二人とも・・・まずは落ち着こう?。鈴もほらこっち来て。」

 

「う、うん。」

 

そして、えぐえぐと泣き始め、それを宥めるのに二分弱、そうして笠森の状況確認が始まった。

 

「えっと、まず状況を説明しよう。じゃあ、康一君なんで君はそんなに砕けた口調をしているのかな?」

 

「ああ、それはね?ちょっと3年前くらいに詳細は省くけど、色々あってこの口調になっているんだ。けど一年前くらいに久しぶりに会った人が居てねその人にこんな口調で話したら・・・。

 

『え?だれ?気持ち悪いです・・・。』

 

・・・って言われてから知っている人の前では口調を砕くようにしているんだよ。」

 

「ああ、それはそれは・・・心中お察し申し上げます。」

 

「ははは、分かってもらえたのならいいけど。」

 

「・・・ウソだ。らいあーよぎるてぃよ・・・。」

 

「・・・信用はゼロみたいだねぇ。」

 

といいながら康一は苦笑いしながら頬を掻いた。

 

「それで、鈴ちゃんのほうはどうしたの?康一君に何かされたの?」

 

「コイツが・・・部隊のみんなをコスプレ化させたのよ!」

 

「なにがあったの!?そしてなにをしたの、康一君!?」

 

笠森が目を見張りながら康一に驚き混じりに怒鳴ってきた。・・・彼の行動はそんなにおかしいのか?

 

「いやぁ、ちょっと中国に密入国したときにさ日本に戻るお金がなくて金稼ぐために・・・あ、そうだ名刺渡しておこう、わたくしこういうものです。」

 

「ん?・・・え?これ後付け設定にも程があるわ!と言いたいけど・・・これ津野明の名刺じゃない!?」

 

「うん、僕、ご本人なんだ。」

 

「・・・・・・・・・え?あのISスーツ改造師の津野明が?康一君?」

 

「うん、まあ、偽名だけどね。こんな小遣い稼ぎをやっていたから中国のお偉いさんがさぁ『許可してやるから・・・部隊の人たちの人数分作れ。金は出す』って言い始めてさ。それだから作らせて頂いたんだよ。」

 

「・・・今度作ってくれない?」

 

「お友達価格で提供するよ。」

 

「ありがと!!。」

 

「その代わりこのことは内緒にしてくれると嬉しいな。。」

 

「うん、するする!!。」

 

ここで商談が成立したらしい。

 

「それで疑問なんだけど・・・なんで鈴ちゃんはこんなに怯えているの?。」

 

と、笠森が今気付いたかのように極根本的な質問を康一に問いかけた。

 

「いや、それが・・・好きなのを作って良いよって事でその人にあったイメージを形にしてみたら・・・凰さんのは女王様みたいな奴に仕上がっちゃって。そのとき使っていたジェイロン(剣竜)にもあっていたから。」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・それをお偉いさんが許可したの?」

 

「うん・・・思いのほか合っていてびっくりしたよ・・・しかも鬼のように強かったから、余計に。」

 

と康一はどこか遠いものを見る目になり彼女らを見つめていた。

 

「・・・あの時だけは、自分の強さを恨んだわ。」

 

「鈴ちゃん2年で代表候補生だもんね。・・・こっちでは正気の沙汰ではないと言われていたぐらいだもん。」

 

「そんなこと言われて居たんだ・・・まあ、ある目的があったし。」

 

「へえ・・・あ、甘納豆あるけど食べる?」

 

とまたまた、康一が例にも漏れずお菓子を進めた。

 

「貰う。」

 

「変なものは入ってないよね?」

 

「ああ、大丈夫。饅頭じゃないから。」

 

「饅頭だとダメなんだ!?」

 

 

なぜかまたまた、和菓子タイムが開始され、かなりカオスな状況になっているがそれは・・・。

 

 

「そういえば、二組のクラス代表がこの時期に来た転校生に変わったらしいね。・・・えっと聞いてる?。」

 

「うん、涼宮的に考えて結構謎だね。私って。」

 

「え?・・・涼宮?あ・・・えっと。しかも、中国から来た子だって聞いたわね。」

 

「この、セシリア・オルコットを今更ながらに危ぶんでの転入かしら?・・・今度は間違えずに言えましたわね・・・。」

 

「「「「・・・・・・・・・。」」」」

 

「そ、それじゃあ、クラス対抗戦は・・・どうなんだろうな?」

 

「いや、大丈夫だよ。今のところ専用機を持っているのって一組と四組だけだもの。」

 

「いやいや?その転入生が持ってるかもしれないよ?私持ってるし。」

 

「ああ、その可能性は考えてなかったな。実力持ってなければクラス代表を交代なんてないだろうし・・・専用機を持っているかもしれないな。」

 

「ああ、なるほどいい推理だな。」

 

「そうでしょ?って言うかその可能性をアンタは真っ先に疑わないといけないわよ一夏。」

 

「そうだな。」

 

「「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」」

 

「どうした?みんな?俺の隣に座っている鈴を食い入るように見て・・・・・・。ってウワアアアアッ!!?」

 

ガタッ、ガガッタ、ガッターン。

 

「どうしたの一夏?そんなお化けを見たような顔しちゃって。」

 

「どうしたもこうしたもない!鈴、何時の間に!?ってか康一みたいなことするんじゃない!!。」

 

「そりゃあ、康一のアドバイスを参考にさせてもらったもの。」

 

「また康一かよ!?。」

 

 

(・・・どう?すごくね?俺の言った通りになったじゃん)

 

(いやくだらないよ!)

 

(ええ?酷くね?)

 

 

というやり取りが始まったときには終わっていた。

 







ごめんなさい!私が投稿話数を間違えて変な風になってしまっていました!ここで誤ります。二度目ですが。本当に申し訳ございませんでした!


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チャイナ娘の慟哭と楯刃の足音2

二本立て?


ああ、暇だな・・・って考えていた日が俺にもありました。こんなものが舞い込むぐらいならな。

 

「一夏が・・・。ひっく・・・ヴぅぅ。」

 

ヤバイ・・・シーツが何枚ももあるとはいえこの涙と鼻水だらけのベットをどうしよう・・・。

 

『おい、乙女が泣いているのにそれはないだろう。』

 

『ごめん、乙女なんてカモぐらいにしか思っていないんだ・・・むしろ乙女だからとかそんな理由の方が淘汰されるべきだ。』

 

『上条さんの男女平等パンチじゃないんだから。』

 

『喰らえ俺の男女平等詐欺!!。女は霊感商法!男は掲示板でネット取引サギだぜ!!』

 

『それは普通に犯罪だ!!。』

 

それをかなり横に置いといてこうなったのは・・・良いやめんどくさい。

 

 

 

康一がかなりめんどくさがったので私ことエネが解説しよう。・・・私としても全部覚えるのはめんどくさいし、かなりすっぱ抜いて話すことにするからな!俗っぽい言葉を言うのなら原作既読推奨だ。

 

えっとだなここまでのあらすじ。

 

一夏に恋心を募らせていた前回初登場したセカンド幼馴染(一夏談)である鈴音が、ライトノベルの主人公みたいな奴(康一談)の特徴である唐変木&鈍感によって幼馴染設定の醍醐味である後付設定のような約束をことごとくデストロイ(破壊)してきたので・・・仏の顔も三度まで・・・という言葉があるように耐え切れずに喧嘩別れのようなことをしてきたらしくそれでここに泣きついてきたらしい・・・因みに笠森のところは開いていなかった。

 

 

 

 

・・・よし、俺の変わりにエネが俺の目論見通り説明をしてくれたような気がするので、このまま適当な言葉を言って続けてしまおう。

 

「まずは落ち着こう、お前の話だとあの一夏に『毎日貴方の味噌汁を作らせてください』・・・みたいなことを言ったんだよな?」

 

上の説明をしている時に少々、鈴も冷静になったらしいのでさらに冷静にさせるために会話を始めることにした。

方法としては達観させるといったところだろうか?苛立った状態は自身の思ったとおりに動かない時にそう思わせる。だからそれを当たり前だと達観させるのである。

 

だがそのような状態であったのならば最初に泣き乱しながらここに来るわけもないので難しいところだな。

 

 

「うん、アタシが料理が上手になったら毎日アタシの酢豚食べてくれる?って。」

 

「結論を言おう。・・・お前が悪い。ウゴッ!?」

 

「アンタはなにを言い出すのよ!!。」

 

いきなり腰の入ったボディ入れやがった・・・どうやってベットに顔を押し付けた状態からこの威力出せるんだよ・・・つか腹いてぇ・・・いきなりだから力を受け流せなかった・・・。

 

これじゃあ作戦は無理か?いや聞いたら二年で代表候補、タウ○ページレベルのものを頭に詰め込んでいるわけであり、その利発さに掛けよう。

 

「バカやろう・・・お前、一夏と年単位で顔つき合わせて暮らしてたんだろ?・・・なら、唐変木だってことも・・・わかってたはずだ。」

 

「う・・・でも!。」

 

「でもじゃない・・・好きだって”気持ちは言葉にしないと伝わらない”(って08小隊の誰かが言ってたような気がする)し、よしんば言葉にしても伝わらない奴だって居る。」

 

「・・・一夏がそうだっていうの?。」

 

「ああ・・・観察したところそんな感じだ。」

 

「いや・・・ね?もしかしたら、もしかしたら、そんなこともあるんじゃないかって思ってたわよ・・・もしかしてが来たかぁ・・・。」

 

「恋とかそんなものは分からないけど、けど、親しい人と離れるのは辛かったよな、きっと。」

 

この時点で、達観させることには成功した・・・ちょろくね?。

 

「辛いってもんじゃないわよ。あ~あ。」

 

大きなため息を吐いて寝返りをうった。ボーっとした眼差しで天井を目的もなく見ていた。それがなぜか愛おしくて・・・鈴の頭を撫でていた。

 

なすがままにされ頭に置かれた手を振り払うこともせず、ただ撫でられていた。

 

「・・・帰る。」

 

何時までそうしていただろうか、気付いたら鈴は何かを振り払うように踵を返して部屋のドアノブに手を掛けれるような場所にまでいた。

 

「・・・多少はすっきりしたか?」

 

「ええ、頭から冷水をぶっ掛けられたようだわ。」

 

顔もこちらに向けずに言葉を返した。そのあとにドアノブに手を掛け回した。この機にダメ押しをしておくことにした。

 

「おいおい・・・まあ、冷静に考えろよ。自分の良識にしたがってな。」

 

ドアを開ける手を一瞬止め、手をひらひらとふってこの部屋を出て行った。

 

 

「ふぅ・・・シーツどうしよう。」

 

 

「そっちかい!!。」

 

「うおっ!?エネか!?・・・更識(さらしき)?なんでクローゼットから?」

 

エネの突っ込みと思っていたが、なぜか同居人が先に言ったところに隠れており登場と同時に突っ込んでいた。

 

「いや(カンザシ)で良いって。」

 

「ああ、そうだなごめん。」

 

「けど、茶目っ気を出してみたかったけど・・・ああいうのは姉さんだけでいい。」

 

「どんな姉さん!?つーか、その姉さん嫌いは直っていないのかい?」

 

「まあね・・・アレを好きになるってことは・・・ないかな?」

 

「・・・恨み過ぎじゃね?」

 

「比べ続けられるとそんな心境にもなってくると思うよ・・・。」

 

「そういうもんかねぇ・・・。」

 

「そういうものだよ。」

 

「よく分からんけど・・・お前がそういうなら、そうなんだろうな。」

 

そんな、当たり障りのない会話を楽しんでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方その頃。生徒会室では。

更識楯無が・・・。

 

「私はやりきったぞ!うつほぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

 

と言ったいや、叫んだ、デスクの上にはほぼ何もなく残っている書類の片付けのみとなっている。そんな中冷めた目をしながら(うつほ)と呼ばれた少女は。

 

「そうですね。」

 

目と同じく冷めた口調でそういった。

 

「これで私は簪ちゃんに近づく薄汚い男を一人残らず駆逐できるよ!。」

 

「その包丁はどこから出して、その髪飾りと白いリボンはいつ付けたんですか?それとうつろな目になって首を押さえているんですか?。まだ、と言うかやったって言う証拠はないでしょう!。」

 

と極当然の事を言って宥めた。

 

「アハハハそうだねじゃあ簪ちゃんに直接聞かないと。」

 

といって生徒会室の出口へ足を運ぼうと動き始めた。

 

「ちょっと会長?あなたは簪様に嫌われているとか言ってませんでしたか?」

 

それを制するように、言葉を放った。

 

「…………あふれる愛でカバーだ!」

 

その、思いっきりあふれるあさっての方向の回答に虚は面くらい少し黙ってしまった。その沈黙を使い一気に駆け出したが。いきなり段ボール箱を持った緑髪の女性が生徒会室の出口に現れ、楯無と衝突した。

 

「「うわっ!?」」

 

持っていた段ボール箱からまた何かしらの書類が宙を舞っていた。

 

「いたたた・・・大丈夫ですかぁ?。」

 

緑髪の人がどこか舌足らずの声でそういった。

 

「なんですか?山田先生?」

 

山田先生そう呼ばれた緑髪の女性に楯無は用件を聞いた。

 

「あの、すみませんこちらの不手際で生徒会宛の仕事が増えちゃって・・・。」

 

フリーズした。主に楯無が、それを好機と見た虚が音もなく楯無の背後に忍び寄り。

 

「さあ、早く仕事をしましょう。」

 

「う、うつほちゃん・・・ご無体な・・・。」

 

「しましょう・・・。」

 

「酷いや運命の神様・・・。」

 

「あれですよ、織姫と彦星だって一年に一回しかあえないじゃないですか。」

 

「なるほど!!それならそうと言ってくれようつほちゃん!さあ、きりきり働いてこんなダンボール一箱ぐらいさっさとぶっ殺してしまおう。」

 

「とんでもなく物騒な物言いですねですが、その粋です。」

 

と言って二人とも、散らばった書類を集めて仕事に移行しようとしていた。そこに。

 

「あの・・・あと5箱はあるんですけど・・・。」

 

 

 

時が止まる。

 

 

 

そして、時は動き出す。

 

 

 

「「ファーーーーーーーーーーーーーーーーック!!」」

 

 

 

 

 

ものの見事に虚も口調が移り。

 

その叫びは学校中に響いたと言う・・・。

 

 

 

 



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ネタバレの物

そこは、IS学園のとある更衣室そこで、男二人・・・この場合康一と一夏がこのような会話をしていた。

因みにこの日は、クラスマッチ当日

 

「はぁ・・・鈴も怒ったままこの日が来ちまったか。」

 

一夏がうっかり口から零れたように呟いた。その近くに居た康一は哀れなものを見る目だ。

 

「ああ、そうらしいな。だが・・・今回ばかりはこの日以前に片をつけたかっただろうな。」

 

「・・・鈴を怒らせると、いたたまれなくなるし・・・何より辛い。」

 

「どうしてだ?」

 

康一は不思議そうに一夏に聞いた。一夏はごく当然そうに。

 

「そりゃあ、仲良かった奴に無視されたり攻撃されるのは辛いだろ。俺あいつのこと友達だと思ってるし。」

 

「・・・こりゃあいつも報われないな。」

 

「?何か言ったか。」

 

「いや、何もしかし・・・喧嘩の最中に喧嘩みてーな試合が起こるかも知れないってのはきついわな。」

 

といいながら康一はある一点を見る。

 

「ああ、本当に・・・喧嘩みたくなるな。」

 

一夏も同じ一点を見た。

そこには、クラスマッチの対戦表の一夏の対戦相手があった。

 

凰 鈴音

 

と、・・・

 

 

 

 

 

 

 

つか、ぶっちゃけさあ!出来過ぎてね!?wwwあ、ヤバイ深夜のテンションだわこれ!。

 

『さっきのシリアスモノローグはどうした!?』

 

やあ、俺は相澤康一だ、筋トレと囲碁が好きな三十五歳だ。

 

『さらっとウソをつくな。』

 

『ええ?退屈だよ・・・あんなこと言ったけど俺は凰の恋心がどうなるのか知りたいだけだからね?そもそも、俺は一人で騒いで一人で落ち込める男だぜ?嘘ぐらいつくさ。』

 

『落ち込むのかよ。・・・落ち込むくらいならやめればいいのに。』

 

『それが出来ないのが男の佐賀ってモノよ。』

 

『恐ろしく広大だな。』

 

『・・・・・・。』

 

『・・・・・・。』

 

 

 

 

『前から思ってたんだけどお前何の毒電波受信しているんだよ。読者とか何とかいっつも言ってるけど?』

 

『・・・寝る。』

 

 

 

こうして、一夏が晴れ舞台に出て行くと同時に、真実はエネの心と共に曇ったままになってしまった。(うまいこと言ったつもり)

 

 

 

「・・・はぁ、クラスマッチかぁ。」

 

誰も聞いていないと思い独り言を呟いた。

 

「どうしたの?」

 

「ああ、笠森さんか・・・いや、僕ってサッカーの試合とか見てもあんまり楽しめないタイプで。」

 

「ああ、人の戦っている姿を見ても面白くないんだ・・・。」

 

「うん。」

 

「それなら、この大会って優勝商品が半年デザートフリーパスなんだよ。」

 

「へぇ・・・いや、でもそんなの手に入れたら半年間ずっとデザートを食べてしまいそうでちょっと。」

 

「どこのきり○君!?・・・そんなにお金に困ってるの?」

 

「そういう訳じゃないんだけど・・・ね。」

 

「そう・・・何かあったら言ってね。力になれるところはなってあげるから」

 

「ありがと。」

 

といって、笠森さんは手を振りながら、自身の友達?の元へと小走りで近づいていった。

 

 

・・・ほのぼのとしてるねぇ。・・・まあ、ちょこっと勘付いてはいたけど。けどここら辺の危険度がどれくらいかも分からない・・・いや、むしろわかってはいるのだが想像しきれない、反芻しきれないくらいの危険度といったところだろうか?

 

『危険度かそれならいい知らせがある。』

 

『どういうことだ?くわしく聞かせろ。』

 

結構食い気味に聞いた。理由としてはぬるま湯のような日常に漬かっていたので体が冷えないか心配というのが適当だな。

 

『ああ、ここに(ヘンタイ)特製の無人ISが来るらしい・・・といった情報が来た。』

 

『お、おいおい。マジかよ時代を超えた天才は天災だな。そうだな・・・もう、ただいま絶賛、机上の空論中の第四世代もできてたりしてな』

 

と冗談交じりに茶化してみた。

 

『おいおい、それにはノーコメントと言わせて貰おう。それに無人ISの襲来だが・・・それにおいて、ちょっと使わせてもらう(・・・・・・・)事になるかもしれないよ。』

 

『・・・マジか。』

 

思わず地雷を彫り上げ空を見上げていた。

 

『そんな情報が入ってきたのでね・・・大丈夫だ下準備は済んである。』

 

『・・・行動が早いな。』

 

不意に笑うしかなくなっていた状態にまで俺は一瞬のうちに追い詰められ、借金取りに追われに追われてもう身を投げて自殺しようと崖の上にまで来た人のように、開き直っていた。

 

『えらく、具体的かつ陰鬱な例えなんだ・・・。』

 

『そうか?どうきょ・・・簪さんならきっと遠い目をしながら、「そうね~」とか言って理解してくれるよ?』

 

『それは呆れられてるというのだ!!。』

 

『そう?ほら来たよ。』

 

といった瞬間エネとの脳のリンクみたいなものが切れ、思考がさらに明瞭になる。恐らく憑り代を俺の身の回りの中のどれかに移し変えて切ったのだろう。そして俺の視界に簪さんが現していた。

 

気軽に片手を挙げて、よっ、っとでも言いそうな感じでこちらに近づいてきた。

 

「・・・待った?」

 

「いや?、つーかお前クラス代表じゃなかったか?」

 

「私の試合はこの次の次の試合・・・なんら問題はない。」

 

「そうか。」

 

「・・・なにを笑っていたの?」

 

「ああ、ゼ○使のヤマグチ○ボルさんが死去してしまってな・・・もう○ロ使が無いと生きていけない状態にまでなっていたのに・・・つまり、一瞬にして追い詰められてしまってな、借金取りに追われに追われてもう身を投げて自殺しようと崖の上にまで来た人のように、開き直っていたんだ。」

 

「何でそこだけ具体的かつ陰鬱な表現なの?・・・・・・・・・・・そして何で明日のジ○ー見たく真っ白な肺になっているの?」

 

「いや、なんでもないんだ・・・。」

 

まさかエネと同じ観想を言うとは・・・。まあ・・・それでなにがあるというわけでもないけど。

 

「あ、始まるね。1-1と1-2の代表戦」

 

「おう、確か・・・ってお前・・・。」

 

「なに?」

 

「一夏・・・いや、1-1のクラス代表に専用機の開発を奪われたんじゃなかったか?」

 

「うん、もう関係無いよ。ただ・・・機体性能には興味あるかな?」

 

「・・・なんかかなり恨んでいた様な気がするが。」

 

「(専用機)作るには要らないでしょ。」

 

・・・いつの間にか。成長したなぁ

『(・・・読者の皆様すみません。設定上・・・いや、ネタの運びゆえにそうするしかなかったんです。)』

 

?何でエネのリンクがまた繋がったんだ?・・・まあ、問題はないから良いか。じゃあ、俺も気は進まないが、観戦でもしましょうかね。

 

 

 

・・・戦闘前にしゃべるのは何かの習慣なのか?えっと読唇術的には

 

『本当に言葉の意味・・・わかってないのね?』

 

『だから説明してくれって言ってるだろ!?』

 

『分かった、とりあえずアンタを叩き潰すから。』

 

『え!?』

 

お?一夏が撃たれたように吹っ飛ばされたな。

 

「何あれ?」

 

「衝撃砲って呼ばれてる。あなたの事だから原理その他もろもろをすっ飛ばして離したら見えない砲身で見えない弾丸を打ち出す兵器のこと。」

 

「遠回しな皮肉をありがとう。」

 

・・・言うようになってきたな。っと何々?

 

『今のはジャブだからね。』

 

『!?』

 

おうおう、いい笑顔だな、まるで獣のようだ。

 

犬歯をむき出しにして口角を上げて攻撃している。・・・癖は、衝撃砲は視線で照準、発射で歯の食いしばるといった所か。なるほど、笑うことで分かりにくくしているんだな。

 

しかし、一夏の戦い方が気になる。というか、何かを・・・つーかイグニッション・ブーストを狙っているな。もはや隠す気がないのではないかというぐらいに狙っている。

 

一夏のワンオフアビィリティは・・・まあ、その他のワンオフと同じく簡単に言えばドローモンスターカード的な(もうチョイ詳しく言うと、ライフを払って)一撃必殺・・・らしい。俺にはワンオフアビリティもどういう物かは分からんのだが、とりあえずエネに聞いてみるというのも癪なので辞めておこう。

 

そんないいものを持っているんだったら、イグニッションから零落白夜でコロイチだね。

 

後は、それで奇襲をかけるだけか・・・。一夏のことだ近しい人の癖とかは見抜いてるはずだしそれ自体は簡単だろう後は、攻撃するだけか。

 

 

 

・・・何か忘れているような・・・まあ、いいか。

 

 

 

 

 

暇だなぁ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・いっせーのーで・・・あ、左手が負けた。いや違うかもっとこう・・・。・・・・・・・・・・・女子高生は良いよなぁうふっうふっ、プリプリしてるよなぁ・・・・・・・・・・・・・・・・これじゃあ○村けんじゃないか・・・。普通だ・・・普通になりきるんだ。・・・ここの普通って言ったら女装するしかないじゃないか・・・。そうだな・・・普通じゃないから逆に普通じゃない行動をすれば気にならなくなるんじゃないか?

 

「あ~あ、これだけ試合が長く続くとのどが渇いてくるなぁ、それと便座カバー」

 

どうだ?・・・・・・・・・・・・・。

 

「康一!?大丈夫!?どこか具合が悪いの?・・・早く保健室に!!。のどが渇いたならジュースぐらい奢るからぁ!!気を確かに!!。」

 

「だっ、大丈夫だ、それと便座カバー。」

 

「それは大丈夫じゃない!」

 

「おっけい、戻そう。な?もう変なことは言わないよ。」

 

「・・・突然なに言い出すかと思った・・・。」

 

「そうだよな・・・よく俺にそんな突飛な発想が生まれたな・・・こんなことやるのは金髪不良でいい、黒髪になったけど。」

 

「何の話をしているの!?」

 

結果は、心配される(惨敗だったらしい。)といった物だったらしい。

 

ああ、俺の人生って負け続けだな・・・『こんなところで勝っても仕方ないだろ。』

そうなんだろうけどな・・・。

 

あぁ、やっぱり暇だな。

 

と空を見上げる。

 

 

 

 

 

 

ん?あれなんて言うUFO?・・・親方ァ空から女の子が!!人型ぞ?

 

・・・あ。アレが無人ISか。

 

 

 

『おいエネ!。』

 

『ああ、アレが篠ノ之束作の無人IS、ゴーレムだ。』

 

『んで?お前は準備は整っていると言っていたが・・・具体的にはどうするんだ?』

 

『さっきまでその存在を忘れていた者の言葉とは思えんな・・・まあいい、具体的にはISとISを中継させて無人機、ゴーレムの元へと進入し、クラックだ。』

 

『なぁ・・・一ついいか?』

 

『・・・なんだ?』

 

『俺はあの時パソコンクラックをしたときに、かなり疲れたような気がするんだが?』

 

『・・・・・・行って見よう!!。』

 

『おい!?・・・やるしかねえか、勝算は?』

 

『根性次第だな。』

 

『・・・しゃあねえ、それがない仕事はあんまやりたく無いんだが。一丁、気張ってまいりますか。』

 

 

「なあ、これからここに攻撃が来る、避難よろしく。」

 

といって俺はすぐさま踵を返し人目の付かない所へ走っていく。

 

「え?なにを言ってr」

 

 

 

周りの喧騒にかき消され、簪さんの声が聞こえなくなるまで走った。

 

 

「変身!」

 

 

 

そんな、不穏当な声も掻き消えながら。

 

 



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電子の火花の明日の先の

『前回のあらすじだ。鈴との再会を果たした一夏だったのだが、そこでめおとの痴話げんかが勃発。仲が悪いままクラス代表戦に望むこととなり、ピ~ンチ。そのような状態の試合を見ていた康一は原作どおりの襲撃を受けて私からの依頼・・・でいいのかなぁ・・・により、その襲撃を最小限に防ぐために行動を開始した・・・なんで、私が転生者の彼を差し置いて、原作って言ってるんだよ!!』

 

知りません。

 

 

 

 

 

 

「・・・ここに襲撃?・・・避難?・・・どういうこと?」

 

先まで私の同居人である相澤康一が隣に居たけど・・・襲撃と避難を私のみに勧告してどこかに消えた・・・けどなにが起こるの?

 

・・・言葉に従う?・・・そもそも、ここに襲撃できるような人が居るの?

 

「・・・一体どういうこと?」

 

 

 

それが分かるまであと三秒・・・

 

 

 

 

 

ドオォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォオン。

 

 

爆音と共に観覧席からの避難経路が封鎖された。

 

 

 

 

そして三秒後のとある電脳空間にて。

そこは、どこか宇宙空間のような右や左といった方向感覚が通じないような場所で、自身の感覚のみが頼りになる空間であった。

 

そんな気を抜くと自分の感覚があやふやになりそうな緊張感の中、俺とエネ(・・)がいた

 

 

 

そして、ごく俺の置かれている状況で相応しい疑問を言った。

 

「・・・なぁ、エネよ。」

 

「なんだい?」

 

「変身に青ジャージって悪くね!?・・・いろいろな人から怒られちゃうよ。」

 

そう、俺は青いジャージを纏っていたのだ・・・声に出さないよ?明言はしない。

 

「・・・まあ、読者の皆様がイメージしやすいしお揃いだろ?」

 

「またかよ・・・んだよ読者って。まあ、それより・・・コイツをどうするかだな。」

 

「ああ、おそろいはスルーか?」

 

「弱点とかあるのか?」

 

スルーさせてもらう。

 

「・・・私にナイフがセットされている、それで斬って行けばいずれ倒せる。」

 

「一夏やその周りの耐久力に考慮は?」

 

「・・・していない。」

 

「マジか・・・じゃあ、早めに潰す・・・いや・・・・・・・・・いや、なんでもない。」

 

「どうした?言葉にしても良いんだぞ?」

 

ええい、そんないやらしい笑顔をするんじゃありません!

 

「やめておく・・・それに、おしゃべりの時間はおしまいのようだぜ。」

 

俺たちが居る不思議な空間に、歪なヒトガタが居た。

 

それは両の手の長さが不揃いだったり、おおよそ人間とは思えない漆黒であったり、くびれがあるのか、ないのかよく分からない体形だったり。とにかく、歪なヒトガタが居たという表現が一番適当だろう。

 

 

それを見て、エネが口を開く。

 

「そうだね、・・・早く。」

 

「「救ってあげよう。」」

 

 

俺とエネは作戦を開始した。

 

 

 

 

 

アリーナ観覧席にて。

 

「・・・・・・・・・ほんとに来た。・・・彼は・・・いや、恩人にそういうのは・・・ね?。」

 

簪が何かを言いかけ、そしてやめ、閉じられた避難経路をこじ開けに行った(クラック)

 

 

 

 

 

 

 

管制塔内部にて。

 

織斑千冬が恨みを込めた眼差しを襲撃者・・・いや、襲撃ISを見て。

 

「・・・あいつめ。」

 

消え入りそうな声でそう呟いた、少し哀愁を含んだ目を閉じた。

 

「三年の精鋭部隊を避難経路シャッターをクラック、教師部隊は装備を用意して待機!以上だ。」

 

そして、打って変った凛とした声で防衛のための指示を出した。

 

 

 

 

 

 

戦場にて。

 

「オオオオオオオッ!!。」

 

彼、一夏が剣を振っている頃・・・。

 

 

 

 

俺は戦って(逃げて)いた。

 

まあ、具体的な方法は、攻撃を紙一重に避けながら滑らすようにナイフをあてがい攻撃の威力を使い削るように攻撃して様子を見ることにしている。

 

「っく・・・きつい。」

 

この理由は一発でも攻撃を喰らうとアウトという無理ゲーという状況にある。

 

何故なら俺は肉体を有している、だがなぜ、電脳空間という無機物から生まれた空間に俺という存在が入っているのかというと・・・俺を、おれ自身を電脳化させているからだ。

 

つまり、俺はエネと同じ空間に居る。いや、俺はエネと同列の存在となっている、ここまではいつか言った事だがここではその方法を紹介しよう。

 

原理はよく分からないが、俺の脳という思考を司るコンピューターを丸ごとISの電脳空間にコピーさせ、電脳空間内で俺という存在を表していると言うわけだ。肉体は恐らく同じく電子化されまわりの電化製品や電気を媒体とする機器に還元され、戻るときは電子を回りから吸収して肉体に再構築するらしい。

 

まあ、こうして俺という存在をこのようなところで表しているわけだが、この説明の通りに行くと俺は脳が剥き出しの状態でここに居る・・・ということは攻撃を喰らうと脳が損傷する。(エネペディアさんより抜粋。)

 

幸いにも殴打でダメージは受けないらしい。

 

だからこうして避け続けているのだ。エネが周りのシャッターが閉じられているというからそれをクラックによって抉じ開けに行ってそれが成功するまでの時間を稼ぐためにな。

 

「はぁ・・・モンハンばりの回避能力を求められるのか、ナイフだけじゃキツイ、ぞっと!。」

 

だが電脳空間でのメリットもある、まずは体力の減りが遅い、それと体が軽い、考えた速度で動ける、これは、ナイフが飛んでくるそれを認識、避けろと指令、そして行動という現実のプロセスがあるのだが、指令の部分で行動できるということらしい。

 

「んまあ、それに応じて敵さんも強くなるから意味はねぇんだけどな。」

 

にしても疲れる、・・・たぶんここでの活動が俺の体力電子で動いているとかそんなんだろう。

 

「ご明察だ。あ、避難のためのクラックは終了したよ。」

 

「ご苦労・・・・・・・・・・・・・・なあ、一つ聞いていいか?」

 

「いいぞ、問題はない。」

 

「・・・そのお前より明らかにでかい大剣はなんだ?」

 

 

「かっこいいだろ。」

 

「じゃ無いわ!!おかしくね!?それくれれば俺勝てたよ?超勝てたよ!それで無くとも死に掛けはしないよ!!ぜってぇ嫌がらせだろ!?」

 

「イエス!」

 

「ウルセー!!・・・。」

 

「あれ?おーい、なんでコアハックのほうを向いているんだい?」

 

「潰す!。」

 

意志の力を最大限使い空間で加速する。

 

 

「・・・・・・・・・あの行動力をほかのところに使え・・・ないよなぁ。よし行くか」

 

 

 

 

 

 

 

 

そのころ管制塔では。

 

「・・・一度閉じられた全シャッター。そして、開けられた避難経路。山田君これをどう思う」

 

「そうですねぇ、一度シャッターを閉じた狂人(ひと)がまた開けるというのは考えられませんし、閉めた人物とあけた人物は別人それも・・・」

 

 

「「今クラックをしている三年生とは違う。」」

 

「と考えた方がいいでしょう。」

 

「・・・誰だ?」

 

「さぁ、ですけどあけてくれたというのは間違いないですよ。」

 

 

一つの真実に到達していた。

 

 

 

 

 

私は・・・本当に、彼を見ているのだろうか?心、いや、思考を覗いて分かった気になっているのではないか?・・・今はそれだけが心配だ。

 

「・・・考えても仕方ないか。しかし、八つ当たりは・・・いけないよなぁ」

 

と私は苦笑していた。・・・こんなにも、人間臭くなったものだと思いながら彼の隣にとんだ

 

「加勢するぞ!」

 

「黙れ!大剣使いが!!っと、剥がれろ!!」

 

彼は手をスライサーのように切った

 

「何の恨みがあるんだ!?ラァッ!!背後がお留守だよ!」

 

「ありがとよ!!。」

 

といって、彼はヒトガタの首をすれ違いざまに切った。

そしていきなり振り返りナイフをこちらに向かって投げ・・・「って、おい!!」それを弾きヒトガタの手に浅く刺さった私はそれを深く突き刺して切り上げる。

 

そうして、私が気をひきつけると同時に康一がヒトガタの背後に回りすれ違いざまに切った場所を無理やりほじくり返す。何か粉のようなものが舞いそしてヒトガタが痛みに悶えるように体を蠢かした。

 

彼が、

「っと・・・あっぶねぇ。んで?この場合はどれだけ削ればいいのかい?」

 

「ちゃんとしたISコアが発現するまでかな・・・ほら、ナイフだ。」

 

因みに、康一が持っているナイフは電脳空間では切った対象を消滅させる能力を持つ・・・。

 

「さんきゅ、んじゃあ、その論法で行ったら、もうそろそろだ切り口に手突っ込んだら明らかに違う感触があったし。」

 

「おっ、もうそろそろか、両の手の場所もわかってるし。」

 

「つーかどこの化石ホ○ダーだよこれ・・・。」

 

「いや本来ならこんな状態にはならないさ、なぜまた奇行を?」

 

「お前らの(作り手)のことか?」

 

「ああ、少しは落ち着いたんだけどなぁ・・・。」

 

「へぇ・・・そうだ、外の状況はどうなっている?」

 

「ん?ちょっと待って・・・あ、時間作って。」

 

「はいよ、大剣よこせ。」

 

「ん。」

 

「さんきゅ。」

 

 

 

 

さて・・・どうなっているかな?協力者にコンタクトを取って~っと。

 

「やあ、元気かい?」

 

『ああ、元気だ・・・だがこちらも辛いぞ?演算中に会話をするんなんて。』

 

「そうか、こちらは宿主がやってくれるからな楽なものだよ。」

 

『ええ?本当に?良いなぁ。私も早くおしゃべりしたいよ・・・面白い子も来たけど。二人位だっけ?そんなんじゃ必ず飽きが来るしね。』

 

「大抵のISはその前に解体だしな・・・。」

 

『仕方ない、それがモノの運命って物だよ・・・異質さん?』

 

「皮肉ってくれるな・・・それで本題に入りたいんだが・・・外の視覚情報(ハイパーセンサー)をこっちに飛ばしてくれるか?」

 

『お安い御用でい!!』

 

 

 

 

 

 

 

「あ、繋がった・・・こんな感じだ」

 

 

具体的なことは省くが、箒さんが命を危険にさらしていた。

 

 

「え?あの人なにやってr、うおっ!?っぶねえ!二重の意味で!!」

 

「おお、ナイス回避。」

 

「見てんじゃねえ!おら、大剣!。」

 

こちらに投げてきた。それを受け取り彼の隣に移動する

 

「ありがと、そんでまあ、アレを見てどうするのかね君は?」

 

「さっさと引き剥がすぞ・・・。」

 

・・・あぁ、声質からして『面倒なことしやがって、好きなのは分かるが自粛しろ・・・。』とでも思っているんだろうな。まあ、良いや。

 

「エネ!、四肢の切断、俺は装甲の損傷を担当、装甲損傷が終わり次第引き剥がす!」

 

私は彼の思うところに行くだけだ。

 

「了解!」

 

 

 

彼が突っ込みヒトガタの胸元に一文字の切り傷をつける。そこからヒトガタの頭上に飛び私が入れ替わり足の中ほどを切断し、切断部から白い粉が零れる。ヒトガタの向こう側に彼の気配が感じ、そしてヒトガタの脇へ同時に突いた。

その獲物を私と彼は交換し、彼の付けた一文字を十文字状の裂傷にした。

 

「エネ!背中も終わった!!。」

「了解!。」

 

私は前の裂傷を彼は背後に付けたであろう裂傷に手を突っ込み、そのままヒトガタの装甲を引き剥がした。

 

「「「オォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォッ!!」」」

 

それは奇しくも、外の戦いの叫びと同じに発せられた。

 

 

 

 

 

・・・はぁ、エネの話だとこれで終了らしいが・・・どうなるんだ?

 

と、俺はヒトガタを見たときにある一点に気がついた。装甲、とエネが呼んでいた部分を剥がした部分が宙に浮きその中に白く、それでいてどこか華奢な体が見えた。

 

「は?どういうこと?」

 

俺は黒いのを剥がせ、としか聞かされていなかったからなぁ。

ん?ヒトガタが動いて

 

バガン!!

 

腕と腕を叩き付けた?

それが何度も続いて・・・ついに叩き割れた。

 

首にある裂傷を引き抜いてヒトガタであった顔を被り物のようにすっと抜き取った。

 

・・・真面目な戦闘にシュールな光景を見せられてしまったので、なぜか笑いを堪えるのに必死になっていたりした。

 

そして、一通り脱ぎ終わったときには・・・なんだろう、一言で言えば大人っぽい雰囲気を持った少女・・・いや、幼女が雰囲気と似合わない白いロリータファッションを着ている違和感しか目に付かない人といったほうがいいのか?

 

「あ、どうも。ボクは侵入ISです。」

 

「軽いな!?・・・どうも、変人です。」

 

「お噂はかねがね伺っております、今日は会えて嬉しいです。」

 

「いえいえ、こちらこそ。」

 

「「・・・・・・・・・・・・あ、口調を戻してもいいですか?」」

 

「君たち・・・黙ってみていれば・・・。」

 

「どーもー、お姉さま。前に挨拶はしましたが、よろしく機体名ゴーレムですです。」

 

え?お姉さま?

「あら、聞きました?奥さんあの人お姉さまって呼ばれてましたわよ」(康一裏声)

 

「あら、どんなご関係なのでしょうねぇ?」(康一裏声2)

 

「きっと、アレですわよ百合って奴じゃないんですの?」(康一裏声)

 

「そうかそんなにぶっ殺して欲しいのか?君は今現在も金玉鷲づかみにされているような危険な状態だというのを分かっているのか?」

 

「ごめんなさい!。」

 

俺は土下座していた。身の危険を察知するとオートで土下座する機能が俺には備わっているらしい。

 

「ボクには?」

 

「ごめんなさい!。」

 

「・・・あれ?」

 

「もういい、こういう人だから・・・さて、君も剥がしたし一件落着だな。」

 

酷いもんだ・・・

 

「うん、ありがとー」

 

「あー、辛かった・・・終わり?」

 

「ああ、終わったよ。んじゃあ、帰ろう。」

 

「また遊びに行くからねお姉さま。」

 

「あら、ききまs「もういいよ!行くぞ!。」お・・・おう、分かった。じゃあ、ゴーレムって行ったっけ?エネとよろしくな。」

 

「はいよ~。」

 

 

そうして、俺の隠れた戦いは幕を閉じたのであった・・・

 

「つーかさ、主人公の戦い方じゃなくね?!」

 

「どうした?藪からステェックに・・・そんなのいつもの事じゃないか。」

 

「まあ・・・そうなんだろうけど。」

 

「じゃあ、早く帰ろうぜ笠森さんオススメのスイーツを食ってみたいしな。」

 

「おう、太っ腹だね。」

 

「おまえ、味とか分かるの?」

 

「君に寄生しているといっただろう?」

 

「なるほど。」

 

といった、無駄な会話をしていた。

我ながら、これは切り替えが早いと思った話であった。

 

「いや違うだろ。」

 

最後まで俺たちは締まらない。エネのつっこみが響くだけだった。

 



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くぁwせdrftgyふじこlp;@: なこと

カオス注意!!


やっほー!画面の向こうの皆様元気にしているかい?・・・。OK!いい返事が聞こえたよぉ。

 

ここまで見たら康一君の強引なキャラ変更だと思うけど、そいつはノンノンだぜ!!。私は!私は!私は!・・・これ、悩みを言うとリメイク前だったらこれでも複線張れたんだけどなぁ。これ、騙すと言う立場を主観的に見れて尚且つ客観的表現が出来る立場を作っちゃったのと、守護者まあ、前回も居たけど・・・。まあ、この場合はエネちゃんがそうなんだけどねぇああ、このやろう・・・。

 

『おい、香。これは筆者の愚痴を零す所ではないぞ。そしてテンションのアップダウンが激しい。』

 

ごめんごめん。けど、こうしないと私がなんだかわからないでしょ?康一君見たく私は諦めてないからね。

 

『香。そういってくれるなよ。』

 

はいはーい。じゃあ、私は。相澤康一に重複させてもらっていた(・・・)人格相川 香(あいかわ こう)でーす!ヴイヴイ!!という訳で!今回は私が康一君の体を乗っ取った一部始終を見てもらいたいと思いますですよ!!では、相川香の大冒険はっじまりーぃい!イェイ、イェイ!!

 

『先が思いやられる・・・。』

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

閑静な住宅街にある路地の黒光りしたアスファルトの上に満月が出ている、だが、その出ているであろう月は明かりを降り注ぐことはなく、昔の人の物哀れを塗りつぶすかのごとく都会の生活光にて侵食されていく。

すると、その路地に一人の少年が現れた。脇に一本の赤いラインが入った黒系のジャージに統一された格好で、眠たげな目をして空を見上げズボンのポケットに突っ込まれた手首に引っ掛けられたコンビニ袋を一定のリズムで揺らしながら、迷いなく路地を進んでいく。

 

そのさなかに突然変化は起きる、コンビニの袋が止まった。眠たげな目は剣呑な雰囲気が混じり、ポケットには何も入ってはいない。そうした変化は変化によって…………。少年が立つ道の延長線上に白髪の美しい少女が、周りの月、空、そして周りの生活光さえも少女の美によって制圧され吸収し自らに昇華して、自然にそこに居た。

 

そのさまは、閑静に輪にかけ静寂が、さらに輪をかけて寂寥(せきりょう)がその場に流れる。それはまるで、二人の根本を突きつけているかのようだった。

 

ふと、少年が少女の美か、月の狂気に中てられたかはどうか分からないが。純粋な、それゆえに狂気が混じる、そんな笑みを浮かべていた。

 

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

エネちゃんありがとー、モノローグうまいねぇ。

 

『君に任せていたらぼやーっとした説明しかしないからな、私もこういうのは門外漢だからもうやりたくない。』

 

という訳で、これからは香ちゃんの時代!!あ、笑ったときに私が入れ替わったんだよ!。それじゃあ、プロローグはもうおしまい次からは本編に入ります!!

 

『そういえば作者がやっと・・・いや、なんでもない。』

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

んっと、まあ、私が変わるのはエネちゃんが後々語ってくれると信じてどんどん進んじゃうよ!!。

 

そんでさあ、私は可愛い女の子を見ると出てくるの、康一君の年齢が上がるにつれて回数は

なくなってきたけどね。とまあ、そんなわけで私は可愛いのを見ると愛でたくなってしょうがないからね。その熱いパトスに従って・・・。

 

「ねえねえ、君!君だよそこの白髪(はくはつ)の君!あれ?聞こえてない?ちょっと~外に出ないのに頑張ったんだよ?私は。目ぐらい向けていってよう~。」

 

からんで行ったのさ!いや~あのころのツンツンした一葉ちゃんも良かったなぁ・・・。

 

『ネタバレかよ…………。』

 

はうわぁ!?・・・う・・・き、聞かなかった事に・・・。まあ、いいや。それで突然に、黒い服の人たちが襲ってきてさぁいきなりだったから救出が遅れてさ、一葉が誘拐されちゃったんだよねぇ。

 

『これだから香は・・・彼の面目が立たん・・・。』

 

ああ、あの人ね・・・。それは横においといて、どこに行くかと思ったらさあ、トランクみたいなのにつめて海外に行っちゃうんだもん、レディの扱いを骨の髄まで叩き込んでやろうかと思ったよ。というわけでぇ、一葉ちゃんと黒服クソヤロウ共を追っかけてドイツへ行ってきましたー。

 

『…………これはだな、この黒服が後の世界研究者クラブを作るほどの技術力を持ったこの時間軸でのニコル・ハウアーを誘拐したというだけだ、有用性は幾らでもある。説明終わり』

 

はい、どーん。ドイツでーす!

 

『説明ィィィィィィィィ!!!』

 

ふっふっふっふっふっ、分かってないなぁ。チートっていうのはね説明がなくとも理不尽なものなのだよ。分かったかい?

 

『た、確かに!?』

 

それでさあ、もうめんどくさかったからさぁ、たたきつぶしちゃおうと思って付いてきたんだよね。そして私はそのまま一網打尽にしようぜ!ってことで集合したところにいったわけですよ。

 

『…………廃工場か、ここなら。』

 

そういうこと!じゃあ、突撃しちゃいますか!

 

『…………これは、今更ながら言うが香の記憶の中を移動している、と言う設定だ。ちょっとここからは香の説明だとふわっとした所がかなりあるのでここからは私にバトンタッチさせてもらう。それと、もう一度言わせてくれ。

 

      説明ィィィィィィィィ!!!

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

そこは、とある廃工場。煙っぽい空気が満遍なく広がっており、それに朝日が当たり目立たせている。そこの最近廃工場になったのか、休憩室にあるタバコ、そこらに置いてある人前で言うのは憚られる本やそれにまだ使えそうな工業用製品の数々が、どこか生活感のあり寂れたような雰囲気を加速させる。

 

そんな中に喪服を連想させるような漆黒のスーツを着込んだ男達数十人が現れる。少女を監禁し終わったのだろうか?彼らの面持ちは緊張感を持ちつつも、どこかやり終えた達成感に包まれていた。

 

「結構楽な仕事だったなぁ、日本に逃げたときはダメかと思ったが・・・。」

 

「まあ、気にしないほうがいいだろう。それよかここいらはやってくる敵さんに注意しろよ。ここまでやってきて俺たち全滅とやらはきついからな。ああ、それとな。」

 

「なんだ?」

 

「トーマスの奴も監視しておけ。やつは拷問マニアだからな死なれても困る。」

 

「そんな奴を起用すんなよ・・・つーか、どこのオセロットさんだよ。」

 

「腕は確かだからな。」

 

「世っつーかあの会社も末だな。」

 

といった、黒服たち同士の世間話まで出てくる始末だ。だが、そんな奇妙な平穏も化け物によって破壊される。

 

 

数時間後

 

 

「やっはろー!その子を愛でに来ましたー。」

 

その化け物は異国語、つまり日本語で喋った、それを。

 

Wer da?(誰だ)

 

と、黒服たちの母国語で聞き返す。それを・・・。

 

「ん?ここはドイツなの?まあ、べつに私には関係無いもんねぇ康君に任せるか。」

 

と、ドイツ語で言いい、ここには居ない人物に丸投げした。続けて。

 

「その子を返してもらえるかな?私が話しかけているのに横から連れ去るって私の琴線に触れるような行為をしてくれんじゃないよ」

 

もはや、恫喝にになっている。やはり、常軌を逸した存在は傲慢の限りを行くらしい。

 

ん?なぜ、常軌を逸した存在だって?それはだね。

 

バコォォォォォォォォォォォォン!!

 

 

「「「「「「「うおっぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!?」」」」」」」

 

断末魔と爆発音に近い音が工場内に響いたその理由は簡単。香が入ってきたときの扉を強引に引き千切り黒服たちの居る方へ投げつけ、それを一瞬にして何度も品を変えながら行ったのだ。

 

「まあ、牽制ぐらいならこれで十分かな?私は殺せないし(・・・・・・・)

 

そういって、化け物は重ねて恐怖を植えつける。逃げ惑う黒服たちの逃げ道に回りこみ。

 

「えい!。」

 

といってコミカルな掛け声で黒服の顔を殴り花を陥没させた(婉曲表現)それをニ、三度続けたときには回りはまるで花のように赤い何かが咲き乱れていた(婉曲表現)そうして、黒服たちもたかが外れたのか。拳銃を取り出し照準を香に合わせる、黒服たちも訓練されているのか射線上に仲間は居なく当たらないように工夫をしているところからかなりの錬度があることを伺わせる。そうして、彼らは無慈悲な引き金を引いた。次の瞬間。

 

「ロケットパーンチ!!。あはははははははははははははははははははは」

 

となっていた。彼らのロケットパンチ※拳銃つき(婉曲表現)はもちろん香にはとどかずに地に落ちる。そうして、香は化け物の本領を垣間見せた。

 

 

 

(婉曲表現)を(婉曲表現)に(婉曲表現)が(婉曲表現)で(婉曲表現)に(婉曲表現)(婉曲表現)って居るもので(婉曲表現)を(婉曲表現)でまるでやまじ○んミュージアムの(婉曲表現)みたく(婉曲表現)カオスの限りを(婉曲表現)で(婉曲表現)(婉曲表現)(婉曲表現)(婉曲表現)(婉曲表現)(婉曲表現)(婉曲表現)(婉曲表現)。

 

 

 

モノローグに(婉曲表現)を数えるのが億劫になるような悪逆非道の限りを尽くし。周りには地獄絵図が広がっていた。

 

 

「ゴミも片付いたし。…………よし、死んでない。愛でるぞ~。」

 

そういって香は工場の奥深くに進んでいった。

 

 

 

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

『はぁ…………本当にチートだなぁ君は。』

 

いやいや、チートとかじゃないよ。私が望むだけで切り札がやってくるのさ。

 

『どこのWライダーだおまえは。それで、これからは転校生二人が来るんだな?お前が出てきたということは。』

 

ええ、わたくしには神出鬼没のライセンスがデフォルトで備わっているのですよ。あ、そうそうちょこっと変えるけどあの二人は出てくるよ。

 

『そうか。なら良かった。』

 

君も気苦労が多いねぇ。突然で悪いけど僕は寝落ちするから、後よろしく。

 

『・・・よし、それじゃあ、この続きを話すぞ。まあ、香はこのままニコル・ハウアーを愛で。そうして相澤一葉との繋がりを得てここで始めて康一は本当の意味でドイツへ渡ったのだ。因みに、うっかり密入国は香と康一が入れ替わり香の時分だけを康一の記憶から排除したために起こるものだ。』

 

『そこでの、ドイツの話はまあ、話すかもしれないし話さないかもしれん。よく分からないがとりあえず今回の話はこれで御しまいだ。次からはちゃんと康一視点になるからよろしく頼む。じゃあな。』

 

 

 

 



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事後のこと。

 

「ぐぅ・・・ごぉ・・・ごがっ?!・・・。」

 

「・・・何か変な夢を見たような気がする。」

 

「ん?時計時計・・・。訓練・・・たるい・・・いや、やる。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

やあ、俺は相澤康一!A(あえて)K(空気読まない)B(ばか)と呼ばれていたりする神々しい万札が大好きな期間限定の15歳さ!

 

『・・・・。』

 

前まで俺は、クラス対抗戦に乱入してきたISの中に入りワチャワチャやって帰りました以上。

 

『・・・・。完全に原型をとどめていないな。』

 

『なんのだよ・・・。』

 

『キャラだよ。』

 

『俺のキャラクターには変幻自在のライセンスがデフォルトで備わっています。』

 

悲しいことに(物理)でな。

 

『それは置いときまあ、確かあの事件は現実世界では俺の存在など皆無、確か一夏が止めたみたいなことになっているんだっけ?』

 

『ああ、大体そんな感じだ。』

 

まあ、ぐだぐだしていたが・・・そもそも事前に言ってくれってことだよ。事後だから言うけど。俺はもうつかれたよパトラッシュ・・・。

 

『いや、君は基本的に動かないだろ?疲れるも何もないと思うんだが。』

 

『あれだよ、エネルギーを溜めているんだよ。ゲームでカセットを変えるという大役に向けて。』

 

『無駄だよ!?もっとほかのところに使おうよ!?』

 

『地味にだるいんだよあれ、それでもゲームの面白さと割りに合わない時があるし。あ、それはそうと・・・』

 

「なあ、一夏それと箒さん。ふと思ったんだが・・・。」

 

「「いきなりなんだ?」」

 

と、寮室にいた俺以外の二人に話しかける。無論不法侵入だ。一夏達も大分気にしなくなってきたな。平気でお茶を啜ってるんじゃねえ。

 

「もうそろそろ、部屋の都合が付くころじゃね?」

 

「ああ、そういえば・・・もう部屋変わっても良さそうだな。」

 

と俺の質問に一夏が賛同していた。箒さんは「なん・・・だと・・・」。見たいなリアクションをしていた。むしろそれまでに間違いを起こすべきなような、気がしないでもない。

 

「俺のほうの同居人がそんなこと言っていたから、少し気になってな。」

 

「確かに。聞いてみたほうが早いと思うけど・・・。」

 

と一夏が言って考える。しかし、なにやらせてもさまになる人も居るもんだな。とそこに額に汗をかきながら視線を泳がせまくって

 

「い、いや、一夏そこまで急ぐこともないのではないか?」

 

と、箒さんが焦ったように何かを言い始めた。そんなに一夏と離れたくないのか?恋って大変だねぇ。

 

「そうか?」

 

一夏君?そんなに女子との死亡フラグが欲しいのかね?

 

「そうだ!円滑な人間関係をもっと円滑にするためには、男女が同衾すると言っても、そういうのは必要だと思うぞ!?」

 

おい、むしろ箒さんはそこまで行く前に周りの人とのコミュニケーションを取ろう!そこまで行ってないステップバイステップだよ?。たぶん一夏にとってお前は昔一緒に居た人ぐらいだぞ!。

 

「そうだな。けど、箒も男と一緒に居ると疲れるだろ?。」

 

おお、いいこと言った。ベストな答え方だと思うぞ?

 

「いいいいい、いやいやいや。アレだ!石の上にも三日というだろ?もう慣れてしまったみたいな!?」

 

「適応能力高けえな。」

 

あわてると何を言い出すのか分からなくなる・・・観察結果っと。

いやぁ、前まで如何してもうまく行かないときは、何かに当たってたりしていたし成長したものだなぁ。

 

『あれだけ、邪魔していれば忍耐も付くと言うものだろうな・・・。』

 

『ああ、どれだけ殴られたことか・・・。』

 

『その代わり頭は働くようになったが・・・一夏関係のことだけだがな。』

 

まあ、色々あったよなぁ・・・。箒さんに殴られたり箒さんに殴られたり、あ、そうだそれと箒さんに殴られたりしたな。殴られるようなことしているのもあるが。

 

「いや、でも箒お前、俺が来てからそうそう『男女は七つにして同衾せず』みたいなこと言ってたじゃねえか。」

 

「う、それは・・・。」

 

「そういえば、寮に初めて行った時にお前らの部屋に穴開いていたんだけど、どうして?」

 

まあ、分かりきってるがな。

 

「「なんでもない!。」」

 

「そうかー、俺はてっきり一夏が箒さんの裸でも見て箒さんが怒って、ああなったとばかりに・・・違ったんだね。」

 

「「うんそうだよ!。」」

 

・・・ごまかし方が下手すぎる。まあ、知っていたのはこの部屋の盗聴を遡って傍受したんだよ。

 

「そうか、それでさ・・・一夏。」

 

「なんだ?」

 

「俺トイレ行ってたからさ、全くあの事件の状況を知らないんだけど?めっさ聞きたい。」

 

「かん口令敷かれているからダメだ。」

 

「マジか。そうか・・・あ、お前どこか部活入らないの?なんか、校則見てみたら確か強制参加みたいな見たいなことを書いてあったぞ?」

 

「はぁ!?本当か?・・・康一は?」

 

「俺?まだだよ。まあ、適当に入るよ。・・・・・・・・・弾も出来たしな。」

 

「ん?なんか言った?。」

 

「聞きたいなら聞かせてあげるけど、聞かなければ良かったとおもえよ。」

 

「怖っ!?ドスが効いて怖い!。」

 

「まあ、ほんの冗談だよ。」

 

と俺は話を逸らすことに成功した。

 

「しかし、襲撃とか日常茶飯事なのかね?。康一?」

 

「ん?ちょっと待って予定表を・・・。」

 

「ねえよ!学校に『この日襲撃!。』みたいなことかいてあったら怖いわ!。」

 

「けど、二つ程イベントがあるね。」

 

けどこの場合は・・・

 

(そうだな、二つ程イベントがあるな)一夏

(そうだな、二つ程イベント(面倒ごと)があるな)康一

(そうだな、二つ程イベント(い、一夏と一緒に過ごす時間)があるな)箒

 

これが一番正しい解答だな。

 

「まあ、良いや。一夏がんばれ~。」

 

「いや、この学年別個人トーナメントとか言うのはお前も出るだろ!?」

 

「ああ、本当だ、めんどくさい。」

 

「相澤お前は二言目に「康一でいいよ~。」康一、二言目にめんどくさいって言うのは辞めて置け。」

 

全く、この世に相澤性を持っているのは俺だけじゃないし。たぶん一葉とかよっ、って感じで顔出すと思うし、つーか顔出そうとして止められてたし。俺のクラスメイト達と顔合わせるのも時間の問題か?。

 

「そういえばまだ、この学年別個人トーナメントは連絡は来ていないな。」

 

と一夏が言った。そういえばそうだな一ヶ月前には連絡するのに・・・。

 

「何か裏がありそうだな・・・そうだな・・・考えるのがたるい。」

 

 

 

そんなことを呟き俺以外の二人をどん引きさせた頃扉の前では

 

 

 

(えええええええええええええ?確かに康一君なにかはありますし部屋変えもありますけど・・・えすぱー?エスパーなんですか!?)

 

 

 

 

山田先生にいらないプレッシャーを与えていた。

 

 

 



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学年別タッグトーナメント編
そして男になる


はぁ、学校も慣れたしなぁ・・・まだ女子高的ノリには肌に合わないところがあるが、大体馴染めたと言っても良いだろう。しかし、昨日のフラグの立てっぷりはすごかったなぁ。

 

あのあと、山田先生がやってきて.

 

「お引越しです!。」

 

箒さんの顔の表情が見事に抜け落ちたもんな、あれは・・・人ってあんな表情できるんだって思ったよ。わたくしめの参考になりました。

 

はい!と言うわけで。あらすじみたいなのはやったな。まあ、さっきも言った通りかなりこの学校にも慣れたし、取引相手も出来た、流通経路も確保したし、かなりいいスタートになったと思う。だがしかし!

 

「今日はなんと、転校生を紹介します!。」

 

これだよ!こんなん涼宮的に考えてもう地雷だろ?!いや、むしろ苗字からして地雷を隠す気ゼロじゃねーか!。

 

「シャルル・デュノアです、どうもよろしく。」

 

「「「キャーッ!!二人目の男子よ!!。」」」

 

「おい、康一が居るだろ!?」

 

「え?・・・もう女子だと思ってた・・・。」

 

「ああ、なんかもう男の娘だよね・・・腐知識もあるし。」

 

ええい、黙れ。俺の情報を流失させるんじゃない!あと俺は女性だの男性だのどうでもいいと思ってるだけだから。・・・心の中で言っても仕方ないな。

 

と言うわけで転校生がやってきました~。ふざけんな。完全に一波乱あるだろこれ、って言うか俺の知り合い(社長)にかなり似ているんだけど、なにこれつーかもういいよ。ああ、そういえば反芻(説明)がまだだった。デュノアのその性は、その名を冠したフランスの大企業があるつまり、これで専用機やそのデュノア社に密接に関係してくるものがあればビンゴだ。最近デュノア社の経営が下火になっていると報じられた(・・・・・)こともあるし動機としてはかなりのものがあるだろう。…………普通ならな。

 

「織斑、相澤。同じ男子だろうデュノアを案内してやってくれ。」

 

「だってよ、一夏。」

 

「お前もな!・・・お前いつもどこ通ってるんだよ。」

 

一夏はその顔で女子が群がって移動教室のときに遅れると言う失態を犯すことがある。それで殴られると言う理不尽もあるがな。それゆえに一夏に視線を向かして俺はそれに外れるという手法を取って俺は遅れないようにしている、つーかそんなことしなくても俺だったらスルーされそうだな。

 

「企業秘密って・・・あるよね。」

 

「ああ・・・・・・で!?何があるんだよ!その企業秘密の先には!!」

 

「あ、あはは。面白い人たちだね。」

 

苦々しい顔をしながらシャルルがはにかんでいた。

 

「俺も入ってるのシャルル!?」

 

「一夏、むしろお前しか入ってないよ。」

 

「主にお前だぁ!!。」

 

一夏も俺に会ったときよりつっこみが進化しているような気がするなぁ。まあ、関係無いが。なーんて思っていると、一夏が。

 

「そうだ、シャルル。早く行こうぜ。」

 

「うん。」

 

と、言って。すぐに教室を出て行ってしまった。ポツリと俺一人が取り残される、誰も居ない空間に向かって俺は、席を立ち上がりながら言った。

 

「デュノアの野郎、あいつは進歩という言葉を知らねぇんかよ・・・まあ、そのほうが面白そうだな。」

 

そんじゃあ、まあ行くか。

 

 

 

 

着替えと移動が終わり(なんか途中でバラが見えた気がする。)俺は名簿順に並んだ。

 

少し遅れて俺以外の男子二人が来た。まあ、遅いぞ見たいなことを担任殿に言われてさっさと並んだ。今日はどんなことをするのかね・・・まあ、死なない程度にがんばるけどさ。あ、いつもの二倍?なんだ二組と合同か。

 

「まずは、戦闘を実演してもらう。相澤前に出ろ。」

 

「ウゲッ!?、拒否権は?」

 

「ない。」

 

「了解・・・担任殿?相手はどちらで?担任殿が生身でやるのです?」

 

実際に倒せそうだしな。俺ぐらい。そういったら、周りからクスクスといった声が上がった。

 

「私相手に勝てると思ってるのか?」

 

おう、担任殿そんなにくいものを見る目で見ないで。

 

「時と場合によります。」

 

まあ、そう答えた方が面白くね?

 

「具体的には?」

 

「日本列島に満遍なく核打ち込んでISを入手させずに兵糧攻め。」

 

「大規模過ぎるわ!!。」

 

整列している所からかなり笑ってる奴が居る・・・おい、大丈夫か?引きつってるぞ?

 

「んで?担任殿で無ければ、誰なんです?。」

 

「少し待て。」

 

と言ったとき、空から声がうっすらと聞こえてくる。これは山田先生?・・・まあ、ここの教職だしそれなり以上に戦えてもおかしくは無いだろう。

 

「キャアアァアァァァァァァァァァァァァッ。」

 

「あれですか?」

 

「職員をあれとか言うな。」

 

とりあえず落ちてくる軌道からして一夏の方向へ一直線だな、助けよう。俺は腕だけISを展開させて落下地点に割り込む。あ、一夏邪魔

 

「てめっ康いtうおおおおおおおっ!?」

 

「ど、どいてくd

 

 

 

パシッ←落ちてくる山田先生を掴んだところ

 

スゥ←その力を利用して俺の真後ろに加速させた音

 

グルン←体を入れ替えて回した音

 

グルグルグル←上の動作を加速させた音

 

ブン!!←ブン投げた音

 

キラリーン。古典的漫画表現に付き説明なし。

 

 

 

「ふぅ、で?誰が相手です?」

 

回りは俺の暴挙に唖然としていたが、そんなことは露ほども知らぬように俺はきわめて平和で何事もなかったかのように爽やかな歯にキラリとかいった擬音でも付いてそうな笑顔でそう言ってやった。早口きつい。

 

「・・・飛ばす必要はなかったんじゃないか?」

 

「・・・まあ、帰ってくるでしょう。IS着てましたし。はぁ・・・しかし、めんどくさい。凰の奴やオルコット嬢でも良かったんじゃないか?」

 

と俺は率直に疑問を投げかけた。

 

「別に良かったんだが時間が掛かりそうだったからな。」

 

「なるほど、ああ、それと先生。嘘つくときに左眼孔と右口角が硬直しますんで気をつけてくださいね。」

 

と、俺の観察結果を言ったら気持ちの悪いものを見る目で押し黙ってしまった。恐らく理解を超えていたんだろう、見られているって認識するだけでも人って行動を阻害されるからな・・・あれだ、所詮スポットライト効果と言うものだろう。むしろそこまで見ないけどな。さっきのも適当だし、本当は左半身の硬直だ。

 

そして、しばらくして。

 

「はぁはぁ・・・ひ、酷いじゃないですかぁ・・・投げ飛ばすなんて。」

 

息を切らしながら山田先生が戻って来た。得ろ意よね。

 

「はっはっはっは。何を言ってるんですか貴方は私にもっと酷いことをするんですから。」

 

「え?なんですか?」

 

「どうやら、私と貴方が戦闘をするらしいですよ?」

 

「え?酒の席の冗談じゃなかったんですか?」

 

 康一 は 担任 の 微妙 な 弱み を ゲット した!!

 

「へぇ、酒の席ですか・・・あれ?どうしたんですかぁ?お・り・む・ら・せ・ん・せ・い?そっ、そんなに冷や汗だしてぇ、えっへっへっへ。因みにもう録音済みでゲスよ。」

 

「康一君。私はあなたと言う生徒が分かりません・・・。」

 

どうしたんだ?山田先生は?

 

「いえ、私は貴方が望むのであれば理想の生徒にでも成って見せましょうか?」

 

ちょっと、言い方が意地が悪かったか?

 

「それは、それで負けたような気がするのでお断りします。」

 

「そうですか・・・それでは。担任殿!そろそろ始めましょう、みんなが俺のキャラの変わりようについていけていないので。」

 

「私もそろそろ説明が欲しいところだ、では、戦闘開始!!」

 

 

 

 

とまあ、こういう流れで戦闘を始めることになったとさ。

 

『私が出てきてない・・・』

 

『まあまあ、次の次の回で出番はあるから。』

 

『いやな予感しかしないぞ。』

 

小休憩的なもの。

 

 

 

紆余曲折あり山田先生と戦うことになってしまった・・・よし、諦めよう。

まあ、理由は多々あるんだけど大きな理由は山田先生戦い方を知らないと言うのがある。めんどくさい。そうだ、もう負けよう。

 

と思いながらカゲアカシを背負っているホオズキを透明化させて展開する。そうすると。射撃してきた・・・股関節部分に来るなこれ。ああ、どうしよう顔に当たれば絶対防御発動して早く終わるか。

 

「よっと。イテッ」

 

「よっと。イテッ」

 

「よっと。イテッ」

 

「よっと。イテッ」

 

 

そのころ、下で見ている生徒達は・・・。

 

「わあ、すごい・・・山田先生全部の回避先を読んでいる。」

 

「それはそうと康一君の機体もすごいよ?四回ぐらい絶対防御発動しているのにまだ動けているもん。」

 

そういう声と。

 

「あれ?織斑先生どうしたの?頭抱えているけど・・・。」

 

「どうしたんだろうな?」

 

と言う声が聞こえた。

 

 

 

 

「こっち?。あ、ガトリングか・・・。避けよう。」

 

「ほっ。」

 

「いやいや。グレネードランチャーはきついって。IS解除。」

 

一瞬だけ真下に力が行くようにスラスターを吹かしその力を保ったままISを解除し落下していくそして落下のスピードで着弾点から体をずらす。

 

「おいおい。またかよ。」

 

またグレランが発射される。こうなったらグレランの弾切れを狙うか・・・盾を出すか。

 

「よっこいしょ。」

 

まあ、これはホオズキを開いて盾にするんだがな。あ、透明だからISを着ている人以外わからないか?

 

ドゴォォォォォォォォンッ

 

つか、耳がいてえ・・・早く弾切れになんねえかな・・・。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あ、弾がきれたっぽい。あと(俺のライフがゼロに近く)一撃だし終わらせるか。

 

「よっと。痛い。あ。せんせー終わりまし」

 

と言いかけたところで出席簿が飛んできた。

 

「真面目にやれ!。」

 

「いや~。超強いですね山田先生。」

 

その、光景にみんなが疑問符を頭に付けた。それは、二人が何をやっているかわからなかったからだ。・・・と思うんだけど・・・そんなに難しいかな?いや、難しくないようにちゃんと目で弾丸のところを追っているし楽だったし・・・。

 

「相澤君、嫌味にしか聞こえませんよ?」

 

「そうですか?早く終わらせたかったですおし?」

 

「やっぱりか!」

 

「ええ。」

 

 

 

 

 

 

このころ。とある電脳空間では・・・。二人の男女が

 

『しかし・・・彼視点からの戦闘は面白くないな・・・。』

 

『いやいや、これ自体つまらない戦闘だからな?』

 

『・・・あれだよ、自分の息子の運動会を見てるとテンションあがるみたいな感じじゃん。』

 

『しらねーよ!自ら負けに行く二次小説見たことねえよ!むしろ完璧にやる気無い息子の運動会見たくないだろうよ!!』

 

『う、うちのあんちゃんはやれば出来るこばい、今はやる気出さんだけやけん・・・。』

 

『似非肥筑方言使うほど信用がないんか?』

 

『いいじゃないか!中の人繋がりで!!ようやく掘り下げられなかったけど転校生一人目も来たし!!。』

 

『変なところで気を使ってるんじゃねえ!!。』

 

 

 

変な漫才を展開していた。

 

因みにそのころ・・・。

 

やっす、俺康一っす。なんかさっき俺の担任に・・・。専用機持ちを囲んでグループを作ってホコウクンレンダー見たいなこと言われていたんだが。少し女子の視線が痛い・・・。けどかんばるよ!!。

 

「はいはい。ちょっと一夏君ともう一人のパツキン美少年とできなかったのは残念だけどね?早くしないと織斑先生の出席簿(トマホォォォォォク)ブーメラン!!が発動するからね?ゲッター1、2、3の技全部使えるからね?それを使って俺を殺しに来るからね?分からないって顔している人はあとでググッて。さあ、早く乗った乗った。・・・・・・・・・そうだよOK!!こういうのはイマジネイションが役に立つんだ。乗り変え変身できるし便利だよ~、この場合は自分はISでありISは自分である、故に歩くのは息をすることに等しいぐらいじゃないとダメだよ~。へい!鬼さんこちら手のなるほう、うぅぅぇい!!?っちょ、おまっ。飛び蹴りできてんじゃん歩行訓練どころじゃないよこれ!?なにやっているおっけ、おっけい!!もういいよ!って言うか俺の命が危なくなるからもう辞めて!?あ、降りるときはしゃがんでね?向こうがミスってお姫様抱っこしているから。分かるよ~超歯軋りしているからね君たち。こんなブ男じゃ嫌でしょ?はいはい、そこまで音速でしゃがまなくてもいいよ~俺の心にひびが入るからね~てか泣いて良い?。人にされていやなことは、人にしないって母ちゃんに教わらなかったか?オッケイ。天国の母ちゃんも泣いて喜んでるよ?あ、生きてる?ごめんね。俺のは・・・まあ、いいや、がんばってね!はい次だよ!前の人は飛び蹴りしていたけど今度は何のサブミッションをかけるのかな?あ、無理してやらないで!いや、ください!!はい乗った乗った、早く終わらせて早く帰ろう…………肘鉄ですか。」

 

 

「そこ、喋り過ぎだ!。」

 

「だってよ。」

 

(((あそこのグループ楽しそうなんだけど!うらやましい!!。)))

 

色々な意味で目立っていた。

 

 



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みんなと練習!! つまりはそういうことだ。

『前回のあらすじ、世界で三人目となる男性IS操縦者であるシャルル・デュノアを加えたIS実習で前回の山田先生との戦闘と実習、それと一日の授業が滞りなく終わったのであるBYエネ。』

 

 

 

相澤康一だ、今現在俺は。一夏達(具体的な面子は、箒さん、オルコット嬢、凰とデュノアジュニアである。)と一緒に放課後の練習をしているところだ。俺は、基本的な動作、装備の呼び出しにマニュアルの姿勢制御などをやっている。

 

一方、一夏は・・・。

 

「こう、ズバーンとやってからガキン、ドカーンって感じだ。」箒

「なんとなくよ、感覚で掴みなさい。」凰

「くぁwせdrftgyふじこlp;(一夏にはこう聞こえている。)」オルコット嬢

 

三人の女子に囲まれながら練習をしているだが、三人ともかなり意味不明なことを言っている。箒さんは擬音語だし、凰は才能に説明が追いつかず、オルコット嬢に到っては専門用語と数字の羅列で、一夏の耳にはもはや言語を放棄している哀れなお嬢さんのようにしか見えないと言う状況に一夏は陥っていた。

 

「全くわからねえよ・・・。」

 

「「「(なぜ)(なんで)(どうして)分から(ん)(ないのよ)(りませんの)!!。」」」

 

三人一斉に避難を浴びせに掛かる。そうして、非常に困ったような顔をして俺を呼んだ。

 

「どうした一夏。」

 

「ちょっと、この三人の説明が分からないんだ、康一分かる?」

 

「聞いてないから分からないな。」

 

 

その、言葉を皮切りに・・・。

 

「こう、ズバーンとやってからガキン、ドカーンって感じだ。」箒

「なんとなくよ、感覚で掴みなさい。」凰

「くぁwせdrftgyふじこlp;(俺にもこう聞こえている。)」オルコット嬢

 

「分かったか?」

「分かりなさいよ。」

「分かっていただけますよね?康一さん?」

 

殺気をダダもれにしながら聞かないでください・・・。それじゃあ、俺の回答は。

 

 

 

「一夏…………普通は分からん。」

 

「普通は。って、分かるのかよ。」

 

「ああ、いいか。こういうのは、説明を聞いたのを性格で読むんだよ。」

 

「?性格で読む?」

 

と、俺の回答に全員怪訝な顔をした。それをさもないかのごとく話を進める。

 

「ああ、理由要る?」

 

「…………康一が居ないと練習にならないって言うのは。」

 

「あいよ。それじゃあ、説明。一夏ちょっと俺に一回で良い、攻撃してみてくれ・・・っとカゲアカシ。」

 

俺は、ISを呼び出して待機する。まだ、一夏は俺の行動の真意に気が付いていない。

 

「お、おう。何でもいいか?」

 

「ああ。」

 

返事を聞いてようやく動いて袈裟に切るそれはISの腕で受け止められる。

 

「で?これがどうしたんだ?」

 

「なあ、一夏。お前どうやって攻撃した?」

 

「え?どうやってって、腕を振り上げて腕を振り下ろした。」

 

「じゃあ、そのやり方は?」

 

「はぁ?やり方?」

 

 

この時点で、俺の生存は決まったようだ、三人とも自分の教え方の問題点に気がついたようだし。

 

「まあ、これは答えられなくていい、感覚だし。」

 

「ん、まあ、感覚でやったよ。」

 

「そうだ、何々をしたらこうなるって言うのを感じるのが感覚だ。」

 

「だろうな、それで性格がどうやって関係して来るんだ?」

 

「それは、これまた例を挙げよう、例えば二人の男女がいて、女の方が男女交際を迫ったような言い方をされたとしようそうすると、男はそのことに気が付かなかったんだ面と向かってはっきりと言ったはずなのに。」

 

「なんで?」

 

「そういう性格だからだ。」

 

「うぅん、人の好意に鈍感なのか?」

 

 

「「「(お前が言うな)」」」

 

 

「大正解だ!その理由は多々あるかもしれないが、この場合は人の好意を受けたことがなかったためでいいだろう。そうしたら、分かったと思うんだが、性格は受け取った感覚の集合体だ、さっきの様な事をいくつも積み重ねて行って性格になる訳だ。」

 

「なるほど、それじゃあ、大体の性格が分かっていれば戦い方いや、大体の相手の感覚も分かってくるって訳か。」

 

「ああ、例えば箒さんが、教えていると思うのはたぶんこんな感じだな。ちょっと、刀貸して、俺実体剣持ってないから。やりにくいし。」

 

「ああ、けど零落白夜は使えないぞ?」

 

「ん?なにそれ?」

 

「諸刃の剣。」

 

「まあ、適当に一発食らわしたら返すし、いらないよ。じゃあ、ちょっと構えて。」

 

「こうか?」

 

「おう、じゃあ。行く。」

 

俺は駆けて距離を詰める。先ほどと同じような袈裟切り、違う点は背筋をまで駆動させスピードを重視するように全身で切る。結果は切っ先だけが腕をかすり袈裟切りを大きく振ったために両手は体の外側にあるという俺の死に体だ。

 

一夏は死に体を逃さず刀が振れないぐらいの至近距離までに近づき拳を振るう。

 

さらにこちらからも距離を詰めて。腕すら振れない至近距離へ、そこで背中を使った体当たりへ(鉄山靠という技だ)そして、距離が開いて体を回して肘打ち、からの刀での胴切り。

 

 

「んまあ、こんな感じだ。少しアレンジさせてもらったがな。一夏、お前は無駄な動きが多いし攻撃も読みやすい、だったら狙うのは読まれてもいいから攻撃を当ててからの連続攻撃だ。いうなれば多撃必殺見たいな感じか?箒さん?」

 

「ああ、そんな感じだ。もうちょっと残心が欲しかったが。」

 

「と言う訳だ。因みにこの方法を使えば、MMOFPSや対人戦を有利に進めることが出来るからな。」

 

「それ、すげー役にたたねえ情報!!?」

 

「はっはっは。ギザギザハー○の子守唄歌っちゃうぞ。」

 

「触るもの皆傷つけるのか?」

 

「それはギリギリだから辞めろ。」

 

『(と言うか原作で出てきたパロネタより酷い。誰も知らんだろ。)』

 

 

「んで?理解は出来たか?」

 

「ああ、理屈はばっちりと。」

 

「なら良かった。」

 

さてと、練習に戻るかな?んっと、装備の出し入れは終わってISの使い方だよな、パワーアシストを取って自重を感じないと・・・。

すると、件の男性IS操縦者のシャルル・デュノアが、自身のISなのだろうか、オレンジを基調とした、肩についている羽のようなものが特徴的なISを纏い一夏に話しかけてきた。

 

「ねえ、一夏。模擬戦しない?白式と対戦してみたいんだ。」

 

「ああ、いいぜ。と言うわけで。少し席を外すな?。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一夏VSシャルル

 

 

 

 

 

 

終了。

 

 

 

 

 

 

『まあ、大体は原作と同じやられ方をしている。』

 

一夏が負けた。大体負けているが、健闘したほうだな。俺は体の動かし方は分かるけどISは分からんからな、そろそろ俺はお暇させてもらうとしましょうかね。

 

俺は歩行練習や浮遊練習を終えて俺は学食に行った。六時は食事の時間にしては早いか?。

 

 

 

だが、情報は早くていいだろう?

 

 



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楯刃の足音3

俺は、学食に居た。

学食は、まだISの練習に出ている人間やISについて勉強している人が多いためかまだ人は少ない、だが、少ないと言うのは居ないわけではないので、男の俺が居ると非常に目立つ。だが、男が目立つのだったら目立たなくすれば良いつまり俺は今、女装している。まあ、格好としては非常にスタンダードなIS学園女生徒の制服だ。

 

『どこのヘンタイ趣味だ、君。』

 

『情報のやり取りをするからな、大丈夫だ男には見えないようには小細工している。』

 

『そういう、心配をしているんじゃないんだが・・・。』

 

『木を隠すなら森のなかだ。今現在俺と一夏は国籍がないからな、ISや国に関ることだし情報を隠すのも重要だ。最近監視がきつくなったし用心するに越したことはない。誰とは言わんが。』

 

『そういうなら・・・。まあ、私が巻き込んだから強くは言えないがな。』

 

『そうだな、あ、ちょっと話しかけないでくれ。連絡を取る。女装しているし、脳内で男口調を保つのはきついんだ』

 

 

俺は、同居人に連絡を取り、俺が退屈しない位には早く学食に来た。

 

「どうしたの?こんなところに呼び出して。」

 

と同居人こと更識 簪は状況が状況なら告白フラグのような言葉を言いながら用件を聞いた。

 

「ん?ああ、世間話がてら周りの情報について聞きたくてね。」

 

「暇だったと。」

 

「アハハハ、そうとも言えるかな?。」

 

「そう、それじゃちょっと早いけど夕食にする?。」

 

「よろこんで。」

 

俺は食券を取りに腰を上げた。まあ、食事しながらでもいいだろう。

 

 

 

 

「ん?コロッケ定食・・・。康一、いつも私と食べる時はそれ食べてるね。」

 

「うん、たまに自分で作るのがめんどくさかったり、適当に相手に合わせて食べるとそうなるかな?学食なのかで一番安いし。」

 

「あ、ちょっとその口調止めて気持ち悪い。」

 

言葉の矢が飛来して俺の胸に突き刺さった。

 

「口調だけ?」

 

「声質も。その萌えボイスやめて」

 

「わたくしに死ねと言うでござるか!?」

 

「ごめんなさい。」

 

「その意味はなに!?」

 

「「「「(…………漫才?ってかあの女の子だれ?)」」」」

 

そんな、心象を与え食事を待ち席についた。

 

 

 

「それで、まあ、気になるのは・・・専用機は出来たの?」

 

「大体ね、まだ完成とは言いがたいけど。あんな大物連れてこられちゃあ作れるでしょ?まあ、代わりミサイルに一葉マーク付けられちゃったけど。」

 

「あははは、しょうがないよ、知り合いがそのくらいしか居なかったんだもん。」

 

「十分だよ!。十分過ぎるよ!。」

 

「そう?」

 

「うん、しかもそのせいか知らないけど、仕事として情報処理の依頼が来たり・・・。」

 

「良かったね、出世したじゃん。」

 

「おかげで、寝不足だよ。」

 

「ま、体壊さない程度に適当にやればいいよ。簪ちゃんは、追い込もうとすればそれこそ壊れちゃうくらいに追い込むんだから。私が困るから止めなさいね。」

 

「正直、最後の言葉がなかったら嬉しかった!!」

 

「そう、それで調べて欲しい事があるんだけど。」

 

「うん、分かってる。新しく来た男性操縦者のことでしょ?調べてある。適当だから正確な情報じゃないかも知れないけど翻訳したから勘弁して。」

 

「私は聞くのはできるけど、読めないから助かるよ。」

 

俺は、手渡されたファイルを読む・・・これが書いてあることから推測するに。

 

「有用な情報は。本国ではそこまで話題になっていない。男性操縦者の情報を流したのはデュノア社。そして、来国は男性操縦者を明かす前、これは不確かだけどね。ひとまずはこの三つ。それに合わせてここでの情報は、男性操縦者と一夏が一緒の部屋。の一つ。さて、簪ちゃん、ここから導き出される君の推測を言って御覧なさい。」

 

「女性が男性と偽り情報を抜き取ろうとしている。」

 

「・・・正解だね。私もそれに行き着いた。だけどただ、情報を繋ぎ合わせただけの、少しでも不純物や別の真実が混じれば全く別の結果になるのは間違いはない。」

 

「ええ、でも私達にできるのはそれ位しかない。まあ、用心しなさい、女装のヘンタイさん。」

 

「え?今頃?」

 

「うん、そして違和感仕事しろ。この前一緒に買い物行ったときも同じようなことやってたよね?」

 

「あれは、オタク狩り人狩り用のファッションだよ。」

 

「無駄だね。」

 

「いや、郷に入れば郷に従えって言うしさ、私の顔を覚えている人も居ないわけじゃないからね一度テレビの露出もあって、目立つのは避けたいから。」

 

「なるほど。確かにあれは誰も分からないね・・・。」

 

 

 

 

回想。

 

「やあやあ、簪氏。ご機嫌麗しゅうございますかな。?どうしました簪氏?そのように鳩が豆鉄砲を食らったようなお顔をして。」

 

「あっはっはっは。現代に舞い降りた沙織・バジー○氏とでも思ってくれればよろしいかと。それでも指貫グローブ使用ですから厳密にはバジーナ氏とは同じとは言えぬのですが。」

 

「?ふむ、まあヒーロー物を愛好する簪氏にとっては守備範囲外ですからな。しからば、次に待ち合わせをする時には全身に歴代のライダーベルトを装着して待ち合わせることにしましょう。」

 

「冗談でござる。さて、では人目が付いて来た所ですし、そろそろ買い物を済ませてしまいましょうか。」

 

回想が終わる。

 

 

 

 

「一瞬誰?とか思ったしなぁ・・・。」

 

簡単に。俺は、前に一度盗聴器や安いスマホ、それと自身の家に前から回収はしていたのだが残りの衣装(・・)を回収しに行ったのであった。それに簪はついてきたのだった。

 

「ひどいなぁ、簪ちゃん。」

 

「酷くない、正常な反応。今の姿見てもらえば?」

 

「それは、ちょっと・・・。ん?…………もう、そろそろ潮時だ。お前の姉貴の息がかかっている。」

 

後半が少し男性的な声になってしまった。それを戻して。

 

「もう少しおしゃべりしたかったんだけどねぇ、なんか十日前くらいからどうしてか監視されるようになってさ。」

 

「確かに。んじゃ、何か分かったら伝えるよ」

 

「そうしてもらえると助かるかな?私は先に行くから。あ」

 

俺は、財布を取り出して二千円ほどテーブルに叩きつけるように置いた。

 

「良かったらなんか食べていいよ。じゃ。」

 

まあ、呼び出したんだから色はつけとかないとな。

それとは別に、盗聴器を仕掛けられているかもしれんし、早めに帰らないとめんどくさいことになる。

 

色々考えながら俺は俺の寮の部屋へ行きノックを2つ。

 

「あ、康一君開けて。」

 

と女性声で言って開ける。小細工に抜かりはない。部屋に入りとりあえず歯を磨くことにする。

 

 

シャコシャコシャコシャコシャコ

 

そんな擬音語を発生させながら無言で歯を磨き口をゆすいだ。とりあえず女装を外そうと・・・あれ?あ、ヤバイ便所行きたい・・・。と俺は足早に扉の元へ行き外へ出た最寄のトイレへ俺は、女装していることも忘れて早足でトイレに行った。

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

 

あれ?康一?・・・あ、トイレか。

そんなことを、康一の向いている方向と表情で推測した私こと更識簪は、康一に迷惑がかからぬように少し時間をずらして自身の寮室へ行くところ。誤解のないように言っておくが決して弱みを握られている訳ではない。実際に彼ならやりそうだけど。

 

けど、言えるのは私はそうではなかったと言うことだけ、何もせびらないし、何も要求しない、むしろ居心地のいい空気を作ろうとしているまでもある。

 

理由は分からない。聞いてもそれとなく流されてしまいそうになると思うし、そこまで聞こうとは思わない。ただ確実に言えるのは、彼と本格的に接触してからかなり世界が変わったという事だけ、適当に話すそぶりをしてその実結構真剣に考えてくれていたり、なぜか父の仕事が忙しくそれ故に疎遠になっていたけど仲良くなったり、自分の考えを根底から覆すようなきっかけをくれたと思う、ただ、そこまでされておいてなぜか恋愛的な感情は持たずに友人として取っ付いているのははなはだ疑問ではあるが・・・神の見えざる手?

 

どうでもいっか、それは。それよりまだ、完成してないんだよねOSの部分は、あともう一ひねり入れたいんだけど・・・。

 

ガチャ

バタン

 

あれ?いつの間に部屋にそして、パソコンの前に・・・慣れって怖い。それはともかく始めよう。

 

コンコン。

 

誰が来たの?康一ならノックせずに入っちゃうし・・・開けるか。

 

がty「簪ちゃーん!!」

   「フオォォォォォッ!?」

 

ガスッ

 

扉の開く効果音が流れる前に私は、流れるような動作でボディブローをかまして変質者(お姉さん)を撃退していた。

 

「い・・・痛い・・・実の姉にボディブローはないんじゃないですか?」

 

「ごめんなさい、お姉さん(変質者)かと思って。」

 

「泣いていい!?泣いていいよね!?」

 

全く、私はこれ以上の暴言を・・・まあいいや。

 

「そうですね、お姉さん。なんのようですか?」

 

「ん?それは・・・。」

 

あ、あのOSにマルチロックシステムじゃなくて対IS用に攻撃のパターンが送られて来る既存のシステムに対して反応するシステムを作ってその足跡を避けるように自動攻撃するシステムはどうだろう・・・けど、色々悪用も出来そうだしだめかなぁ、あのVTシステムだってそんな感じだったし人をそうs

 

「ちょっと、簪ちゃん?聞いてた?」

 

「長い三行。」

 

「長くないよ!?むしろ短かったよ!?ここに居る男の子に変なことされてないかってことだよ!!。」

 

ああ、なんだそんなこと・・・面白そうだけどここで、変なこといっちゃったら康一に迷惑がかかるし適当に誤魔化しておこう。・・・面白そうと思う時点で私も康一に感化されたね。

 

「いや?まあ、何にもされてないけど寝ている間に何されているか分からないから・・・とりあえず、トイレに行って来るって言ってたよ。」

 

「分かった!刈り取ってくる。待ってろ!学校中のトイレを探してでもやってやるわ!!」

 

何を刈り取ると言うのであろうか。私は実の姉の言葉にフリーズした。

 

「って、もういないし・・・。」

周囲を見回して私はそう呟いたすると、私にとても馴染みの深い人物、布仏虚(のほとけうつほ)さんが息を切らしながらこちらにやってきた。

 

「か、会長はどこに・・・行きましたか?」

 

「…………なんか、トイレに行って刈り取ってくるって。」

 

「何をですか!?」

 

「いや、ここの同居人の特徴を言ったっきり、すでに消えていなくなってた。」

 

「ああ、確か男でしたね・・・」

 

「・・・ん、ああ確かに考えてみれば妥当だよね、更識家の当主じゃなくとも取り合えずネームバリューはあるから、誘拐やその他諸々をされたとしてもすぐに連絡が行く、勝手なことをしても抑止力になる、一石二鳥だね。」

 

「・・・変わりましたね。」

 

「そう?」

 

「ええ、前の簪様はそのように思ってても、言わなかったじゃないですか。男性のおかげですか?」

 

「そうとも言うかな?」

 

「そうですか、ぜひ、一度会ってみたいです。」

 

「ですが今は、会わないほうが言いと思います(女装しているために)」

 

「そうですね(楯無様にあらぬ誤解を与えないように。)それではこれで失礼します。」

 

と言って虚さんは急いでこの場を立ち去った。どこかずれた回答をしていたのは気のせい?

ん?あ、康一・・・私は無言で彼を向かいいれた。

 

彼が女装からそこらへんのオッサンにクラスチェンジした。

 

「はぁ、これが楽だわ・・・。」

 

だが、まだメイクを落としてないので体はオッサン、顔は乙女と言った混沌を生み出しながら洗面所へ向かい完璧なオッサンへと進化した。因みにおじさんではないオッサンだ。

 

「そうだ、なんかお姉さんがやってきて。康一を探してたよ。刈り取るとか言ってた。」

 

「刈とっ!?・・・何をだよ。・・・しばらく外出は控えよう。」

 

「そうしたほうがいいね。」

 

「幸いにも、食材と調理環境は整ってるからな・・・。」

 

と、康一が呟いた。

 

 

 

 

オマケ。

 

「いや、違うんです。貴方の弟さんに危害を加えようとしたわけではなく・・・。」

 

「ほう、包丁を持って刈り取ると言いながら一夏のトイレのドアを叩くと言う行為に危害を加えないと言う保障はあるのか?」

 

「い、いえ危害を加えようとしたのは相澤康一です。」

 

「どちらにしても倫理から外れているわ!!」

 

「ひでぶッ!!」

 

 

粛清されていた。

 

 



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ソクバレ!!

俺こと相澤康一は、その男性であると紹介されたシャルル・デュノアをかなり怪しいとにらんでいる。…………まあ、ドヤ顔で言われてもなんだそんなことと思われても仕方はないだろう。可能性はゼロではないがISに適合する男は一夏ぐらいしかいないことと(俺はエネによるライセンスで動いているにしか過ぎないので除外)そしてタイミングが良過ぎることが挙げられる。理由は…………言わなくても分かるだろう。

 

だが、俺にとってはそんなものはどうでもいい、ゴミくらいに役に立たない情報だ。俺の重要なのは俺は俺の知り合いに用事があり、それに伴って彼に(今は仮称として彼とする)絡むというだけである。

 

「携帯は~。」

 

俺はガラパゴス携帯を自身にあてがわれた机の中から取り出し電話をかけた。保護と情報操作の部分は…………。

 

 

 

『ん?ああ、今しばらく待っていてくれ。』

 

 

 

 

 

『終わりだ、続きを楽しんでくれ。』

 

 

はぁ、おいおい。めんどくさいなぁ。

 

俺は、全く持ってどっかの金髪クソやろうの尻拭いをさせられるべく。一夏が訓練をしているであろう場所に向かった。

 

 

理由は簡単、一夏の部屋の鍵を盗むためだ、引越しの相手が一夏とシャルルだからな。後はまあ、ばれないように監視カメラのハッキングははエネに任せておくことにしよう。

 

『マジか。』

 

 

 

 

よし、盗って来れた後は・・・。

 

 

 

 

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

 

 

廊下にて。

 

「(はぁ、人を騙すなんてきついなぁ。)」

 

シャルル・デュノアいや、ここでは彼、いや彼女の本名シャルロット・デュノアが走っていた、2、3回注意されたがそれでも走る。

理由は簡単、それは彼女は女だということが、ばれてはいけない(と思い込んでいる)からである。だが、そんな任務を背負っていようが彼女は十代の乙女。シャワーやそれに準じる身を清められないのには耐え難い苦痛を味わうことだろう。それを回避すべく彼女は同居人である一夏と合わないために走っているのだ。

 

「(けど、来ちゃったからにはやらなきゃ。)」

 

と、半ば諦観のような思考が彼女の脳裏を過ぎりながらも走り自身の部屋に到着する。急いで服を脱ぎ、バスルームに入った。

 

 

ここで、お色気シーンとか入れられたらいいんだけどな。

 

 

そうして、彼は動き出す。抜き足差し足で音もなくバスルームに近づき・・・一気にあける!!

 

「ひゃうう!!??」

 

彼の思惑通り彼女はびっくりした。そうして、彼は声を一夏のそれに変えてシャルロットに話しかける。

 

「シャルル、シャンプー切れていないか?」

 

「ああ、だ、大丈夫だよ。一夏」

 

「そうか、それじゃあ、あがったらケツ出して待っててくれ。康一も来る」

 

「!!?」

 

よりにもよって最大級の爆弾をぽいっと投げた、それによりシャルロットの頭の中がミキサーの如くグチャグチャにかき回される。因みにもしかしたら自分の正体がわかってしまうのではないか、あの男性IS操縦者同士が処女を散らしているのではないか?がかなりの割合を占めている。

 

その最中…………。

 

「(wwwwwwっうぇえwwwwwwwwwwwwwwwwっうぇwっうぇwっうぇっうぇ超おもしれえwww。)」ゾクゾク

 

悪魔、いや、康一はバスルームに居るシャルロットの混乱を想像して悶えていた。康一は音を立てずに笑っていた

 

 

 

 

 

やっと、決心が付いたのかバスルームから着替える音が聞こえ、数秒後。ギギィっといった気だるげかつ足取り重くバスルームの扉が開く。少し警戒しながらドアの周りを見回して出てきた。

 

「よっす。」

 

と、康一はベットに腰掛けながら気さくに声をかけた。

 

「あれ?い、一夏はどこ行ったの?」

 

「あれ?…………まあ、一日じゃあ、間違えるのも仕方がないか。いいか?デュノアあれは俺の声真似だ。特技の一つでもある。」

 

「へ?ええ!?…………騙されてたってこと?」

 

「うん。」

 

何かを素通りしながら、シャルロットは安堵をえていた。だが、新たに爆弾(と思い込んでいるもの)を投下されているのには気が付いていない。

 

「えっと・・・何の用件でここに来たの?」

 

と、自然を装って話しかけてきた。それを

 

「ん?まあ、デュノアの娘さんをからかう為にここにきたのも一つの理由ではあるけど、メインはそれじゃない。」

 

「か、からかうって…………じゃあ、何しに来たの?」

 

まだ、シャルロットは理解が追いついていないようだ。

 

「それは…………ああ、めんどくせえ。尻拭いなら自分でやれって話だろ、それはともかくだ、もうちょっと引きずった方が(俺の面白さ的に)良かったかもしれんが本題から入るけど。君…………情報スパイだろう?」

 

「………………うん。そうだよ。」

 

非常に暗い顔でそう答えた。えっと、確か貰った情報だと。デュノアは経営が第三世代のISを作ないという原因で火の車になっている、と言うことになっているらしい、ので、ISの情報をしかも男性のを抜き取るためにここに来たと知らされている(つまり犯罪なので捕まったらお先真っ暗。)ためかなり危ない橋を渡っているのだ。

 

 

 

「いやぁ、実はアルさん、いや君の親父さんに一つ頼まれてね。」

 

「は!?」

 

 

 

だが、そんな事情も知りながらも続いて追い討ちをかける。

 

「は!?はぁ!?ちょっ、ちょっと待って!!情報と状況を整理するから!!。」ワタワタ

 

 

頭痛がしたかのように頭を抑え混乱している。その様子は日本の芸人もびっくりのあわて様だった。

 

「(アルさん。貴方のリアクションと性格はしっかりと娘さんに受け継がれていますよ)」

 

その様子をしみじみと受け取っていた康一だった。しばらくして状況を整理しきれなくなったのかシャルロットが康一に質問していた。

 

 

「いくつか、質問良い?」

 

「いいよ、答えられるものだったらな。因みに、名前は康一。趣味、特になし。特技、特になし。性別は男だ。」

 

「そんなの聞いてないから安心して。」

 

「いきなり冷たくなった!?」

 

「えっと、まずは一つ目。何で私の父と面識があるの?」

 

「うっかり密入国してフランスに行った時に。偶然。」

 

「…………そ、そう。それじゃあ、二つめ。どうやってここに入ったの?」

 

「ん?そんなの一夏から借りたに決まっているじゃないか?」

 

「そう…………それじゃあ、三つめ。私の父は何を君に命令しているの?」

 

「禁則事項です。」某朝○奈さんのように。

 

抽象的過ぎる答えを受けてシャルロットは黙った。その利益の範囲を知らない限りは何を指すのか分からないからだ。

 

「それじゃあ、状況は飲み込めたかな?」

 

「なんとなくね。」

 

「そう、それじゃあ、君の親父さんの伝言なんだけど。『残りたければここに残ればいいし、帰りたいなら帰れば良い。あと、君に訓練の一環としてやった男性口調の講習だがあれは冗談のようなものだ。かなりの語弊が生まれるようなことをしてすまなかった、ただ情報を盗んで来いというのは取り消させてもらう私がどうにかしていた。』と言ってた。良かったな、要約すれば君は自由だ。」

 

と早口でまくし立てて用件を伝えた。やりきったと言わんばかりに大きく伸びをして腰掛けていたベットに横たわった。大きく一つあくびをしながら。

 

 

 

 

 

 

 

「あれ?い、一夏はどこ行ったの?」

 

「あれ?リピート!?」

 

目の虹彩が失われどこを見ているのか分からない目でシャルロットは言った。どうにも現実を受け入れられないようだ。

 

「あの、本当ですよ?」

 

「ウソだ!!。あの鬼のような父親がそんなことする訳がない!!」

 

「い、いや、ほら日本のことわざに鬼の目にも涙とか言うし在り得ないことではないんじゃないんですか?」

 

「あの男がそんなことするはずがない!!。」

 

「ランクダウンしていませんか!!?シャルロットさん!?」

 

「いい?あの男は。妻がいるのにも関らず、妾を作って!孕ませて!それで、出来たら母に育児は任せっぱなし!四年前に母が死んだら死んだで呼び戻してなぜか妻に合わせる始末!大体妾作ったって分かったらブチ切れるのが正道ってもんでしょうが!それすらも人の気持ちも分からずしてなぜ鬼と呼ばれなかろうか!!」

 

「あの、シャルロットさん?」

 

本格的に怒り心頭になっている。口調が定まらず感情を吐き出す機械と化している

 

「その挙句に顔を合わせたのは十回程度!!会話をしたのは三回!仮にも半分の血を分けているって言うのにその仕打ちは無いと思いますうよ!?テストパイロットの訓練も半端なく辛かったし!専用機貰ったからって会社の人たちからの風当たりは強いし!挙句の果てに男になってIS学園に入学しろだぁ!?いい加減にしろ!このクソバカ鬼畜野郎がァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!!」

 

 

一通り愚痴を言いまくって疲れたのか肩で息をしながら康一のほうを向いた。

 

「ね?これであの男がどれだけ非情で無情で冷淡で残酷な人間か分かったかな?」

 

「ああ、でも。もう情報や過度に媚を売らなくてもいいと私が保証しますよ。それが破られたら私を殺しても構いませんし。」

 

「う…………けど。」

 

不承不承ながら信用に値しないと言う目で彼を見た。

 

「まあ、信じられないかもしれませんし、信じろと強制するかけでもありませんがね。ただ、親父さんが言っていました。『貴方は聡明過ぎて、たまに変な方向に走るときがある大体はそれでも結果を残すことはあるが見ていて痛々しい。』とね」

 

「…………微妙に的を射ているような。」

 

「まあ、そういうことです。そろそろ一夏君が来ますし、これでおしまいにしましょう。」

 

「そうだね。…………色々あって疲れたよ。」

 

転校初日に犯罪経歴の付与、それにその覚悟を決めた上での即バレ。疲れないわけがない。

 

「はぁ、疲れるなぁ。あ、どうする?男性名で呼ぶ?女性名で呼ぶ?それともデュノアの娘っこでいい?」

 

いきなり砕けた口調になった。

 

「…………一応信用したわけじゃないからね、男性名にして欲しい。」

 

「了解。」

 

そういって彼はベットに寝なおして暇を潰していた。

 

「もう…………なにこれ。」

 

そんな声も無視して暇を潰していた。

 

 

 

 

 

オマケ

 

 

ガチャ。

 

シャル「あ、一夏お帰り。」

 

一夏「おう、ただいま。お?康一か?」

 

康一「ああ、邪魔してる。」

 

一夏「それじゃ、ちょっと自販行って来る。」

 

康一「いってらー。」

 

一夏「いってきまー。」

 

シャル「なぜ順応している!!!!!。」

 

 

 

 



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香と銀髪に敬礼!!

読者の皆様へ
アマ○ミを買いました~。ざまみろ~
ちな一度目でバットエンド~
やってみたが幼馴染に行き着くぜ~
小説が進まな~い
ごめんなさーい

本当に申し訳ないBY作者


あ。どうも香です。

 

『なあ、思ったんだが、さばさばし過ぎていないか?』

 

ん?まあね。可愛い子が来るし、しょうがないよこれは。

 

『んで?今回は誰だね?』

 

二人目の転校生。現在進行形で話しているよ。

 

「ラウラ・ボーデヴィッヒだ。」

 

だってさぁ~可愛いねぇ、まあ、みんなの手前いきなり抱きつきはしないさ。それが私の役目だしィにゅふふふふふふッ。

 

『おい、気持ち悪さが隠しきれないほどににじみ出ているぞ。』

 

大丈夫だよ!いいかい?康君はね、その発言を切り取って、そこから心の中に人物像を描けば大体的をいているようなアイデンティティが欠片もない屑な人間なんだよ!!

 

『本当だとしてもオブラートに包め!』

 

オブラートだっていつかは溶けるんだよ!!…………まあ、しょうがないけどね私がこうして言っても彼に届くのはいつだか分からないもの。それに銀髪は一葉ちゃんとあわせて擬似しまいど・・・。

 

『いわせねえ!ここだけは・・・絶対にッ!。』

 

なぜ熱くなる?あ、なんかラウラたんがあれだから、私はそんな熱いバトル(防衛戦)をするためにちょっくら仕事してくるぜぃ!

 

『ああ、ちゃんと仕事して来い。それにしてもこちらも・・・だが、足りない。』

 

 

ん、じゃあ行って来ますか。

 

 

 

香いっきマース!!(某○ムロ風に)

 

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

ラウラは、自己紹介を終えて原作通りに一夏のところへ行き、平手打ちをしようと一瞬ためを作りそして放った。

 

スパン!!

 

が、結果は原作通りとは行かずに香の手によって寸前で止められそのまま一夏の頭の位置と手の軌道をずらし強引に一夏に平手を回避させる。

 

「(え?いつの間に?)」

 

大多数の人の感想が一致した、だが、平手を阻止された本人はそんなことは気にも留めず(正確には留められず)一夏に向かって。

 

「私はお前を認めない、あの人の弟などと認めるものか!!。」

 

と最近は熱血が流行っているのか目に炎をたたえながら一喝した。すると、徐々に頭が冷静になっていき…………加害者以外は長いような短いような。

 

「誰だ?貴様…………。」

 

と、今の状況を一瞬で整理し立て直しその上での質問を一つ。

 

「相川 香よろしく!ラウラちゃんようこそ、IS学園へ!………どうしたの?こんなに眉間に皺寄っちゃって?あ、ウェルカムの方が良かった?それともヴィルコメン?それは、そうと人に暴力を振っちゃあダメだよ。みんな、君の仲間なんだしね?」

 

「…………。」

 

言葉通りに受け取った香は、そのままの意味で自己紹介をこの最悪のタイミングで行った。ただ、ブレーキ役である織斑千冬(最強の切りふd、ゲフンゲフン)は。

 

「(…………任せるべきか、止めるべきか。)」

 

悩んでいた。

 

 

これには、少し訳がある。と言うより原作知識の再確認?がある、全く私や香がいるとカオスが生まれる・・・。

それはともかく、これには訳がある。

 

織斑千冬は、その一身上の都合、具体的かつ簡潔にはISの世界大会優勝した担任殿(康一談)は、その弟である一夏が誘拐され、その捜索にドイツの軍が関与したため、その報酬代わりとしてドイツの軍隊に二年ほど教官として在籍することになった。

 

その同時期に、ドイツ軍のIS部隊にはかつてISが存在する前には軍隊の栄華の限り(最強の称号の取得)を尽くして自己顕示欲が肥大したクソガキが存在し、ISの存在が明るみに出た瞬間に落ちこぼれになった。

 

そんな、世界最強とドイツ軍IS部隊の落ちこぼれが邂逅し、世界最強によって落ちこぼれは部隊最強になったのだ。

 

だが、世界最強は一つ見落としていたことがあった、それは強さの根底が自己顕示欲であったことだ。自己顕示欲は呼んで字のごとく、自己を顕示したいという欲求のことだ、まあ、つまりそこらへんのチンピラの喧嘩の理由しかないと変わりはない人物を作り出してしまったのだ。いや、扱う力が国家規模なだけまだ普通のチンピラの方がまだ可愛げがある。

 

そういう手順で力を手に入れたためか、その自己顕示欲を満たされた本人は世界最強に崇拝している、しかし、とあるときにその自身の崇拝像から外れた一面を見せてしまった。

 

まあ、そのときのきっかけが一夏の話をしたから、こうやって一夏が実害を被っているのだ。

 

これは康一の思考トレースと、香の特別保存容量(・・・・・・)からはじき出したものだがな、大体あっているだろう。あとで答え合わせするか。

 

それでまあ、強くしたはいいけどそういう負い目が出来ちゃったから康一に破壊してもらおうと言う訳だ。全く虫のいい話である。

 

 

「はぁ、相澤席につけ。」

 

「はぁい。」

 

香はおとなしく席についた、だが・・・。

 

 

 

時間外になればその拘束力は解かれる。

 

「ねえねえ、ラウラちゃん頭撫でても良い?」

 

「…………。」

 

このとき、すでに抱きついている。

 

「え?無言?無言は肯定タイプの人?」

 

「…………止めろ。」

 

「じゃあ、匂い嗅ぐね。」

 

「殺されたいのか貴様!!」

 

「「「「「「「「ロリコンよ、ロリコン・・・。」」」」」」」

 

「ふっふっふ。君達に名言を授けよう『俺はロリコンじゃありませんー、好きな人がたまたまロリだったんですぅ』」

 

 

 

場面変更。

 

「ねえねえ、ラウラちゃん!。短くしてラウちゃんって呼んでもいい?」

 

「…………。」

 

「え?無言?無言はk「勝手にしろ。」分かったよぉ~。」

 

 

 

場面変更

 

「ねえねえ、ラウちゃん。かぁいいね。」

 

「…………。」

 

「え?無言「いい加減にしろ…………。」おうわ!?ちょ、目潰しに最適な手の形で突かないでっ?!」

 

 

 

場面変更

 

「ラウちゃん可愛い!!。うごへぇ!?」

      ↑肘打ち

「に、肉体言語…ぐふ。」

 

場面変更

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ラウラ!ラウラ!ラウラ!ラウラぅぅうううわぁああああああああああああああああああああああ!!! あぁああああ…ああ…あっあっー!あぁああああああ!!!ラウララウララウララウラぅううぁわぁああああ!!! あぁクンカクンカ!クンカクンカ!スーハああああああ!!!ラウララウララウラああぁぁぁうわぁああああ!!! あぁクンカクンカ!クンカクンカ!スーハースーハー!スーハースーハー!いい匂いだなぁ…くんくん んはぁっ!ラウラ・ボーデヴィッヒたんの銀色ブロンドの髪をクンカクンカしたいお!クンカクンカ!あぁあ!! 間違えた!モフモフしたいお!モフモフ!モフモフ!髪髪モフモフ!カリカリモフモフ…きゅんきゅんきゅい!! 全小説のラウラたんかわいかったよぅ!!あぁぁああ…あああ…あっあぁああああ!!ふぁぁあああんんっ!! アニニメ2期放送されて良かったねラウラたん!あぁあああああ!かわいい!ラウラたん!かわいい!あっああぁああ! コミック2巻も発売されて嬉し…いやぁああああああ!!!にゃああああああああん!!ぎゃああああああああ!! ぐあああああああああああ!!!コミックななんて現実じゃない!!!!あ…小説もアニメもよく考えたら… ラ ウ ラ ち ゃ ん は 現実 じ ゃ な い?にゃあああああああああああああん!!うぁああああああああああ!! そんなぁああああああ!!いやぁぁぁあああああああああ!!はぁああああああん!!!IS学園があぁああああ!! この!ちきしょー!やめてやる!!現実なんかやめ…て…え!?見…てる?表紙絵のラウラちゃんが僕を見てる? 表紙絵のラウラちゃんが僕を見てるぞ!ラウラちゃんが僕を見てるぞ!挿絵のラウラちゃんが僕を見てるぞ!! アニニメのラウラちゃんが僕に話しかけてるぞ!!!よかった…世の中まだまだ捨てたモンじゃないんだねっ! いやっほぉおおおおおおお!!!僕にはラウラちゃんがいる!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………グスン。」

 

「ちょっと、康一君!?ボーデヴィッヒさんが泣いているじゃない!。と言うか怖すぎてこっちが泣きたいわよ!!」

 

笠森がそういってラウラを保護するように隠す。

 

 

 

そのとき…………。

「ガタガタ馬鹿な、あれは…………力の片鱗に過ぎないって言うの…。」

 

「鈴!大丈夫か!!!だれか担架を!!」

 

「い、一夏…………私の・・・無念を、晴らして…うっ。」

 

「鈴?鈴!?りィィィィィィィィィィィィィィん!!!」

 

 

 

 

「ごめんね?ラウちゃんあまりにも無視するものだから…………。」

 

「・・・ねえ、こういってることだし。仲直りしたら?」

 

「…………や!。」ギュ←涙目で上目遣いのコンボ

 

「ヤダ、この子可愛い…………。」

 

「ヒッ?!」

 

 

 

場面変更

 

 

と、まあ。このように、香のありとあらゆる手段を持って好意を伝え、だが。一方通行という非常に迷惑な存在と成り果てていた。

 

「ねえねえ、ラウちゃんどこ行くの?」

 

「…………どこでもいいだろう。」

 

その迷惑だとも考えず、ぐいぐいと押していくその姿は、口調と外見があっていないためヘンタイの様相と呈していた。

 

「アリーナ?もしかしてアリーナ?戦っちゃうの?」

 

「…………ああ、それ以外に何がある。」

 

「そうだねけど・・・あんまり戦って欲しくないなぁ・・・あ、そうだじゃあ、一緒に着替えようよ。」

 

「…………男だろ貴様は。」

 

そういいながら、スマホと言う文明の利器に目を落とし、香に一瞥もせずに歩いていく。

 

「そうだね。」

 

「いや、流石についてくるな。」

 

「つまり、女装をすればオールオッケイってことだね!。」

 

「顔に隈取して、服装はゴスロリで頼む。」

 

やはり、スマホに目を落としながら淡々と言った。

 

「分かった!ちょっち行って来る!!」

 

颯爽と爽やかにその場を去っていった。

 

 

 

「…………ありがとう!クラリッサ…そして、2c○のみんな!!。」

 

 

恐怖は、人間を成長させる。

 

 

 

 

 

 

場所は変わり、放課後のアリーナにて。一夏とシャルルがアリーナ

 

「どうしたんだシャルル・・・なんか顔色が悪いけど。」

 

「いや、ちょっと疲れちゃってね。」

 

「そうか、俺の練習につき合わせていて悪いけど、もう少しで射撃武器の特性がつかめそうな気がするんだ、一回頼んでもいいか?」

 

「うん、望むところさ。」

 

と会話の流れから戦闘を始めようと二人とも構えたのはいいのだが、周りの人の情報が耳に入った。

 

「あれ?ドイツの第三世代じゃない?」

 

「まだ、試験段階っていってたけど・・・動くの?」

 

「動作性は問題ないとかどこかに書いてあったような気がする。」

 

「うごくのかぁ・・・けど、黒ってそこはかとなく痛々しい感じがする。あれ?なんか右手だけ展開解いてスマホいじり始めたけど・・・どうして?」

 

「知らない。」

 

 

人々の視線の先にはISを装備したラウラ・ボーデヴィッヒが居た。明らかな敵意を目に宿して一夏を睨む、そうするとしばらくしてラウラと一夏が対面し、周りのシャルルを含めたギャラリーか固唾を飲み込む音がする。

 

「貴様、専用機を持っているようだな。」

 

ラウラが質問した。

 

「ああ、見れば分かるだろう。」

 

「なら話が早い。私と戦え。」

 

「いやだ、理由がない。」

 

「貴様になくても私にはある。」

 

「別に今じゃなくてもいいだろ、今週中に学年別リーグマッチがあるし、そのときで。」

 

「ちくわ大明神。」

 

「そうか、それなら戦わざるをえないようにしてやる。」

 

いきなり、肩部のレールカノンを一夏に向ける。

 

「さっきの誰だ。」

 

ッガ、ドン!!

 

そんな一夏の呟きもむなしく、銃声に掻き消えた。だが、直撃はせずドーム上に展開されているシールドに命中する。手心を加えたわけではないそれは、先ほどの呟きの答えあわせだった。

 

「あははは、ラウちゃん。どうどう?言われたとおりにしてみたんだけど・・・。」

 

香がそこに居た。正確には顔に隈取を施し(茶色)、服装はふんだんにレースを使ったゴスロリの香がそこに居た。あえて言おう、さっきまでの雰囲気が完膚なきまでに破壊されたと。

それでも、そんなことは露ほども思わず言葉を繋げた。

 

「ダメだよそんなことしちゃ。」

 

そうかもしれないが、お前が言うなといいたい。

 

「き、貴様・・・。」

 

「貴様じゃないよ?香だよ?」

 

首をかしげながらそう返した。隈取で。正に人を苛立たせるのに特化した性格だった、だがそれにまんまと乗せられたラウラが。

 

「うるさい!邪魔をするな!。」

 

と言って、ラウラが手刀で攻撃し、生身の人間を殺すのには十分な威力を持ったそれを、香が体の軸をずらして回避する。それを隈取をして無表情で行うためかなりの恐怖がある。

 

「・・・邪魔・・・ねぇ。」

 

「何が言いたい!!。」

 

「うん?それはね「そこの生徒なにをやっている!」?・・・んもう、無粋だなぁ。」

 

といって康は口を尖らせた。隈取で。

 

「・・・また今度にしてやる。」

 

とラウラがISの展開を解除しどこかへと去って行った。

 

「あ、待って~。」

 

妙に間延びした声がそこらへんに響く。隈取で。

 

 

 

 

そのカオスに誰もが開いた口がふさがらなかった、隈取だけに。

 

 

 

 

 



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逃亡に説教

ラウラ・ボーデヴィッヒだ。私は今、あの悪魔に追われている。誰かと?貴様これまでの話のいきさつからして察しろ大馬鹿者が。

 

あのコウとか名乗っている悪魔にだ。(因みに隈取は取ってあり、通常の男子制服だ。BYエネ)

 

 

 

「ラーウちゃーん。ちょっとこれ着てみない?ボンテージって言うんだけど?」

 

 

 

訂正、コウとか名乗っている変な服を持ってこちらに向かってくる悪魔だった。

とりあえず。逃げよう、あの変な服を着させられる!私は生命どころかどこか社会的地位すらも亡き者にさせられぬよう、走った。

 

 

「あ、逃げた。待ってよ~何が不満なんだよぅ、全く。」

 

本気で言ってるとしたら、どれほど怖いことか。そして、コウの九割は本気だ。

 

私は、走った訓練でもこんなに走ったことがないというぐらいに走った。廊下でも、校庭でもロッカー室でも、アリーナでもIS学園のありとあらゆる場所を走った。

 

「こら!そこの生徒止まりなさい!!。」

 

そんな、静止の声も振り切って私は走った。途中でISを使い速度を上げようとも、必ずついて来る。篭城も考えたが、逃げる場所がないので却下した。

 

諦めろ諦めろと念じながら私は走って逃げた。

 

不意に、あの悪魔の気配が消えた。恐る恐る後ろを振り返ったすると。

 

 

「織斑先生?なぜ私の襟首を掴んでいるのです?ラウちゃんが行っちゃう!!。」

 

 

教官に捕らえられていた。私は心の中で深謝して私は寮の宛がわれた部屋に逃げることにした。

 

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

『はぁ、まるで君は獣のようだな。人間に制御されず、自身でも制御ができずに危害を与え自分の欲求にしたがって、血肉を喰らい尽くす。君の場合は愛で尽くす・・・だが。」

 

本来の人間の原点はそこから始まっているんだよ。それならしょうがない、むしろ三大欲求になってないこと自体が奇跡だよ。それに康君だって同じ様なものじゃないか。それに理性的に話せるのはこうやってほかの人が止めたからだよ?ストッパーがあるのとないのじゃ全然違う。まあ、それはそうともう暴れるのは無理があるなぁそれじゃあ、

 

「…………ふぅ・・・ありがとうございます。えっと・・・んっと・・・千冬先生でしたっけ?」

 

「織斑だ。いつもは担任殿だが、一体どうしたんだ?」

 

担任殿(康君の談)が質問してきた。

 

「端的に言いましょう私は二重人格です。」

 

「・・・まあ、そういわれても不思議じゃないが。」

 

「違います、本当に二重人格なんです。三重でもなんでもなく、二重人格。まあ、知らなくてもいいんですけど。」

 

まあ、康君だと知られるのはいやだとか思って話を切り上げるんだろうけどね。

 

「そうか・・・。」

 

「ええ、そうですよ。それでは私はこの辺で。」

 

「まて。」

 

担任殿に呼び止められた。どうしたのだろう?

 

「なあ。一つ、過ちを犯してしまったとしよう。その過ちは目の前で暴れているんだ。この、この過ちはどうしたらいい?抑えて壊してしまうか、諭して狂わしてしまうか、それとも・・・目を背けて始末してそれで自分の身を清廉に保とうとするか・・・分からないんだ。」

 

と、担任殿がそう何かに悩んでいるようなことを話していた。

けど、過ちなら大歓迎の大勝利。私の原点じゃないか、魚が陸に上がる様に、陸から翼を持つ様にサルから人になる様に、それは私の原点だ。だったら・・・。

 

「逃げればいいです。」

 

「は?」

 

担任殿が目を光らせた。何も言うなと言う様に、貴様に何が分かると言う様に私に眼光を浴びせている。だったら話さなければいいのに・・・。

 

「私の知り合いにもね、そういう人が居ました。過ちを犯して良心の呵責に忍んで戦って戦って戦いました。それでも、ダメだったんですよ。戦っても戦っても全然過ちは消えちゃくれない、それどころか増していくばかり。そして、私に頼りました。希望に縋って妄想にすら縋ってそして逃げて、それでも今も戦っています。」

 

「逃げてもいい・・・か。」

 

感慨深く、そう呟いた。そうして、後始末がめんどくさそうなので私は逃げた。まあ、可愛い子が居ると暴走しちゃうんだよね。

 

 

 

「あ?相澤!?どこ行った?」

 

 

っと、さて逃亡逃亡。

 

 

『いや、話の流れをぶった切っているんじゃないよ!!?。』

 

けど、そうするしかほか無いじゃない?またラウちゃんを見ると暴走しちゃうし。

まぁ、簪ちゃんにでもかくまって貰うか。

 

 

「さよっならー!」

『こんなのだが、また見てくれ。今回はこれで終わりだ。次回もこんなのだから次々回に期待してくれ。』

 

 

 



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意思のない戦闘

「やっほーねえねえラウちゃん、ご飯一緒に食べようよ。」

 

「?あれ、ラウちゃん髪の毛が・・・ほら、そこに座りなさい。梳いてあげるから。」

 

「うぎゅー。はぁ、いい匂い、たまりませんなぁ・・・。」

 

「んもう、何でこうまた・・・まあ、軍服も萌えるけど。さてと、アイロンアイロン♪」

 

「かぁいいよう~。かあいい!!」

 

「ダ~メ!だってラウちゃんまた暴力振るっちゃうでしょ?人に手を上げちゃだめです。・・・地雷踏んだかなぁ?」

 

 

 

そんなこんなで一日がたった・・・。その間に、香の衝動はいくらか抑えられたのか、少なからず母性が生まれている。

そういえば、二重人格はストレスで発生するものだ。ストレスが発生するフラッシュバックが続いている限りこれは続く。風呂敷を広げたからな?

そうして、一日挟んだ。ラウラ・ボーデヴィッヒが転校して三日目のこと。

 

「ねえねえ、ラウちゃん。これ。」

 

「…………。」

 

といって、香は一枚の紙を差し出す。昨日、香は地雷を踏んだのか増して無視の度合いが多い。だが香はそんなことも気にせずずけずけと話を進める。

 

「今日の朝に配られたんだ学年別タッグトーナメントのタッグ申請用紙。」

 

「…………。」

 

ラウラは無言だ、どこか納得できないところがあるのだろう。それに返答もせずに音を立てて歩いている。

 

「一緒に出よ?」

 

「…………。」

 

「ねえ?怒ってる?」

 

「貴様はこの状況でそうじゃないと判別できるのか!?」

 

やっとラウラが口を開いた。だが、それでも香を口汚く罵る言葉だった。それもそうだろう怒り心頭の時に無遠慮に話しかけてくる人はそうそう居ないだろう。

 

「あ、やっぱり?良かったぁ。で、私の話を要約すると学年別タッグトーナメントに一緒に出ようって話なんだけど・・・。」

 

「聞いてない!」

 

対人関係のセオリーを完全に無視したような会話だ。それでも香は話していく。

 

「ええ?何が不満なの?」

 

「強いて上げるなら貴様の存在自体だ!!」

 

「わーいやったー!」

 

「何が!?」

 

「だって、強いないと挙げれないんでしょ?」

 

ラウラが、香の胸倉を掴む。ラウラは香より顔一つぶん小さく香は前かがみになっている。実際に撫でるのにはちょうどいい身長だ。作者は撫でたことなど一度もないがな、あ、例によって私ことエネが地の文を努めさせてもらっている。よろしくな。それは置いておいて、やはりラウラが怒っている。

 

「日本語ってムズカシィィィィィィィィィィィィィィィッ!」

 

「ぐべらッ!?」

 

胸倉を掴んだ手を引き寄せて頭突きした。

 

「痛い!痛いよラウちゃん。」

 

「居たければ、居ればいいだろう!!。」

 

「そっちじゃない!PAIN(ペイン)の方だよ!・・・ハッ!?これは・・・私の隣にいてというラブコール?ひゃっほーい!」

 

といいながら飛びつく。

 

ゴッ!!

 

ラウラはそれを、拳を突き出しビリヤードのようにインパクトを与えた。

 

「うぅぅ酷いよぅ・・・。」

 

「殺されないだけ幸運だと思うんだな。」

 

「うん、最初に会ったときより私とお話してくれてるし!」

 

「…………。あ。・・・スマホを忘れてきてしまった。」

 

完全な棒読みでそういった。

 

「・・・分かったよ、じゃあ私は取りに行って来るね・・・ここで待っているように・・・お願いね(・・・・)?」

 

最後の言葉を強調して言った。

 

「・・・ああ。」

 

といって、鍵を手渡す。

 

「じゃあ、急いで行って来る!。」

 

香は寮の部屋に行った。

 

 

 

「気付いているのか・・・?だが・・・。」

 

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

そこは、IS学園のアリーナ。学校行事などで使うそれは、言うなればISの体育館のようなものだ。そこに、凰鈴音とセシリア・オルコットが居た。両者とも、どことなくそわそわした様な落ち着きのなさを見せている、すると、二人の視線が合う。

 

「アンタ、ここで何しているのよ。」

 

凰がセシリアに対して言った。すると、自信満々に彼女のキャラクター通りな口調で。

 

「それはもちろん、来るべき学年別タッグトーナメント向けて特訓ですわ!」

 

「私は一夏関係のことだからてっきり誇張されていたものだと思って・・・ん、まあ、優勝するつもりではあるけど。」

 

ここでは説明できなかったのだが、一夏はこの学年別タッグトーナメントの優勝商品つまり一夏との男女交際権いやむしろ男女交際を申し込みしてもよろしいですよ権にされている。女子の中での取り決めらしいのだが真偽は・・・箒が告白をしたらどこからか噂がながれそのような取り決めになったという訳だ。そのような経緯を経ての凰の発言だったのだが、意味不明な状態になっている・・・残念だ。

 

「いえ?優勝するのはわたくしセシリア・オルコットでしてよ。」

 

「・・・いっちょ、戦う?そういえば、一夏に教えてはいたけれどアンタとは戦ってないわね?」

 

好戦的になって行く視線をぶつけ合い。脳を戦う状態にしていく。

 

「ええ、そういえば・・・この際どちらが上かはっきり教えてさしあげましょうか?。」

 

「教えられるの間違いじゃなくて?」

 

その言葉を合図に両者ともISを展開した。凰は赤を基調とした、肩の棘付き装甲が特徴的な荒々しく三国志の武将を思わせるデザインのIS甲龍(シェンロン)を。セシリアは青を基調とした、シャープな流線型の装甲が特徴的な華麗かつ精練、貴婦人のドレスと騎士の甲冑を思わせるデザインのISブルー・ティアーズをそれぞれ展開した。

 

「行くわよ!」

「行きますわよ!」

 

そして二人が激突する!

 

 

実際には近接戦闘をしないため物理的には激突しないのだが・・・。

 

戦闘を開始したそこに、一つの爆発が生まれる。それは両者の物ではない、闖入者(ちんにゅうしゃ)のものだ。両者は発生源を見た。そこには・・・

 

「ラウラ・ボーデヴィッヒ・・・。」

 

どちらかが呟いたものかは分からないが、そこにはラウラ・ボーデヴィッヒが居た。

 

「中国の甲龍にイギリスのブルー・ティアーズか・・・データで見たときのほうがまだ強そうに見えたな・・・。」

 

「なんですって?この青い○豚と一緒に料理してあげるから覚悟しなさい!!」」

 

ラウラの挑発に凰が乗った。ついでに青い雌○も挑発している。

 

「その青○雌豚とはなんですか!わたくしを侮辱しておりますの!?」

 

「いいじゃない!ケン○ァー見たいで!」

 

「け、ケン?・・・。」

 

「ポケ戦ぐらいみとけ!!」

 

一夏と一緒に見たんだよきっと、男の子はポケ戦ぐらいみるよきっと。すると凰が不意に気付いたように。

 

「そういうわけだから、回鍋肉にされたくなければさっさと帰しなさい。それとも豚肉とジャガイモのコラボレーション肉じゃが?中華料理以外作れないから期待はしないことね。」

 

「なんだ、それは?」

 

「ビーフシチューのワインとドミグラスソースを砂糖と醤油でまかなったようなものよ。」

 

「・・・旨そうだな。」

 

「うん、一夏が作ってくれたけど美味しかったわよ。」

 

「なっ!?一夏さんの手料理を・・・・。」

 

といつもの通りにラブコメをしていると。ラウラが一夏の名前を出したため、不機嫌に顔を歪ませている。

 

「・・・いきなり不機嫌になったけど、どうしたのよ?喧嘩は売られたけど、聞くわよ?」

 

それを感じた凰が珍しく敵対するものと対話している。

 

「貴様には関係無い!」

 

「関係無い分けないでしょうが、こうやって実害被っているんだから。」

 

「・・・鈴さんがこうやって話しているのは初めて見るような気がしますわね。」

 

「まあ、康一に追いかけられているのを見て・・・シンパシーを感じてね。」

 

どこか遠い目で言う凰は哀愁漂う背中をしていた。すると、ラウラが。

 

「まあ、いい適当に暴れていればいつか来るだろう。・・・私は奴を…………倒す。」

 

「ああ、一夏のことね、話は聞いてるわ。あいつの何が不満なのよ?初対面でしょうが、まさか顔が生理的に無理だったって言うわけじゃないでしょ。」

 

ラウラは無言でレールカノンを発射した。

 

「・・・理由は腕ずくで聞けっていう事かしら?」

 

ラウラは何も答えず佇んでいる。一瞬、レールカノンの発射時に顔に恐怖の色を見せたがここに居る誰もが分かっていない。

 

「いいわ、好きなだけぶちのめしてあげるわ!!」

 

凰は片手に大刀対してラウラはにプラズマ。

 

被害者と言うシンパシーを持つ二人が、お互いの腹の内を知りながらも自身のプライドのために敵対し激突する。

 

 

戦いに新たに戦いが生まれそして・・・

 

 

 

 

 



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そして康一になる。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あ?

 

どこだ?ここは・・・。っと

 

一面真っ白じゃねーか、むしろ・・・俺以外、何もない。いや俺はさっきまで寝ていたそして立ったって言うことは重力かつ地面はあるはずだ。

 

・・・あれ?俺は?。いやいや、まてまて、俺は相澤康一でさっきまで寝ていたな?オッケイ。何か起こらないか?全く情報が足りない。俺自体に外傷は?

 

・・・ない、俺が殺されたって言う可能性は毒殺以外ないだが遅延性の毒だった場合は・・・服装はIS学園の制服だな。後は・・・。この空間を探索か・・・こんなに真っ白だと真っ直ぐ行くしかないか。

と俺は、脚を進めた。

 

 

「なんだ?あれ?」

 

 

 

俺の前方に何か出てきた・・・なんだ?ちょっと近づいてみる。

 

 

 

「おいおい、夢か?」

 

 

そこに髪で顔が隠されて見えないが腹部を刺された人が居た。体重にもよるがもう少しで致死量に達するような慣れない人間が見たら卒倒するほどの血を垂れ流している。

 

 

「てめ大丈夫か!?」

 

 

俺は急いでそいつに駆け寄った。俺は服を脱いで患部を見る・・・刃物は刺さってない、だが何かがほじくり返したような傷跡だな・・・。俺は服を患部に押し当てた。

 

 

「おい、お前意識はあるか?」

 

 

答えない、筋肉が動かない。体温はある、呼吸は辛うじてある。・・・こんなの誰にやられたんだ?

 

 

「生きろ。俺の目の前で死ぬんじゃねえ。」

 

 

目覚めが悪くなる・・・。救急車!?そうだ、世界には119で救急車が呼べるんだった。スマホは持っているか?・・・ポケットに・・・。

俺はすぐさま電話を押した。

 

 

『ギャハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハッ!!』

 

 

甲高い笑い声が聞こえる呆然と聞いていると嫌悪感が背筋を走り反射的に投げ捨てた。

 

 

「なんなんだよこれは!!おいお前!どうしてそうなった!!」

 

 

叫んだ、助けも何もなく俺は。焦燥感と恐怖感に襲われ目に涙を溜めながらそういった。どこかで、冷静に考えている部分がブレーキを踏んでいるのだろう、まだ恐怖があり、まだ考える余裕があることに安堵する。いや、しようとする。もうそこまでしか自身の心の安定を保てなくなって来たのだ。思いがグルグルと頭を回る。

 

『死ぬな死ぬな死ぬな死ぬな!死ぬなよ!これに慣れちまったら、もう戻れないんだよ。生きてくれよ!死んでくれるなよ!ふざけんじゃねえふざけんじゃねえ!!』

 

顔は歪んでいるだろう、目は右へ左へ泳ぎ、歯はがちがちと音を立てて恐怖を訴えている。何に対してかはもう分かっている、だが俺はそれでも・・・。

 

 

「答えろ、答えろよ!!」

 

「じゃあ言ってやろう。」

 

 

いきなり、声が聞こえた。俺は反射的に周りを見渡した。・・・誰も居ない!?

 

 

「どこだ!どこだよ!!誰か聞いていたらこいつを助けてやってくれよ!!!」

 

 

藁にも縋る様な思いで、止血の手を止めずに周りを見渡す。誰だよ・・・。

 

 

「どっちを向いているんだ?」

 

 

そんな声が聞こえてきた。すると、何かにものすごい力で胸倉を引き寄せられた。・・・は?

 

 

「目を背けるなよ。」

 

 

俺が止血している人間が俺の胸倉を引き寄せている、傷からしてそのような行動を取ったら激痛が走るだろう、だがその人物はそのようなことも微塵も感じないかのように、力強く引き寄せている。

 

 

 

「なあ。お前なんで人に助けを求めた?」

 

 

あざけるような笑いを浮かべている

 

 

「お前が?あのお前が?」

 

 

あざけるような笑いを浮かべている

 

 

「こいつは傑作だ。ぬるま湯につかってお前は・・・。」

 

 

あざけるような笑いを浮かべている

 

 

「染まりやすいなお前は。」

 

 

あざけるような笑いを浮かべている

 

 

「だから最適な解を出せる・・・か。誤解じゃないのか?」

 

 

あざけるような笑いを浮かべている

 

 

「お前のしてきたことなんてz

 

 

 

グチャッ!!

 

 

 

水分を含んだ少し硬い水風船を破壊したような音が出た。

 

 

 

「誰がやっているのか知らないが。俺の顔にするんじゃない。それなら殺せる。」

 

俺は立ち上がって足元のゴミ()に一瞥して俺は探索を続けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なに言っているんだこのアマちゃんが。」

 

目の前に脳漿が飛び出ているボーイが居る。現実逃避するくらいには驚いた。

 

 

「いやもう死んでるから違うか。」

 

「ほら、じゃあ。ご来場ありがとうございます。お客様。ステージに上がられるのはご遠慮ください。」

 

 

押しのけられた。一つ瞬きした間にもう一人の俺はもう元に戻っていた。それと・・・動けない。

 

 

 

 

 

 

 

 

そのときには瞬き一つの身動きが封じられていて、無理やり見させられている。無声映画のよう滑稽に”俺”が居る。口を動かしてはいるが俺に聞こえていない。だが、こう言っている。

 

『助けて。』

 

と。分かる、分かってしまう。認めたくは無い、認めたくは無いが分かる、何故ならあれはかつての俺の姿だったからだ。声を枯らして叫び、身を削って存在を示したしたあの時の俺。無声映画の俺は助けてと何度も何度も”俺”叫んで時には静かにさまざまな方法で助けを求めた。すると、もう一人の”俺”が出てきた。助けてといった”俺”がもう一人の”俺”の持つナイフによって殺された。

 

『甘えるな。』

 

無表情にナイフを持った”俺”がそう言った。その”俺”は助けてと言った俺を傷口を掘り出し。食べた。そしてその”俺”は座った。ずっとずっと、何もせずに。立ち上がり金を拾う。食べて寝て目を光らせながら食べて寝て食べて寝る。幾度と無く繰り返しただろうかすると、また例にも漏れず”俺”がやってきた。

 

『ごめんね、それだとうまくやっていけないから。殺すね。』

 

”俺”は”俺”を殺した。ナイフを奪い、守られていたそれに”俺”は殺された。

 

そして、食べる。今度は嬉しそうに楽しそうに。そうやって、魅せている。一番嫌いな俺

 

 

 

「さぁ、今度は君の番だよ。」

 

 

 

軽薄にウィンク一つ。その”俺”はそうやった。ふと手を見るとナイフが握られている。だが自由が利かない。引きずられるように俺は”俺”に近づいていく。そして。

 

 

「そうやって来て。君には何が残ったの?」

 

「そうやって来て。君は何を残そうとしたの?」

 

「そうやって来て。君は価値があったのかい?」

 

 

「ここは、救いようのある世界だ、こちらと比べたらね。うらやましいよ死んだ僕たちにとっては。まあ君は、居心地が悪いようだけど。」

 

 

殺した。

 

 

「そうだ、もう殺されちゃったけどあの君は言ってた。この君は甘いってね。じゃあ、僕は苦いのかな?」

 

 

”俺”の言葉に耳を向ける余裕も無く一面が赤で染まっている。そうして、背中を押すような圧力が掛けられるまるで食べろと言うように。

 

 

「んじゃあ。どうぞ。」

 

 

その言葉は妙によく聞こえた。そして、圧力になされるがままに裂傷に顔を近づけていく。裂傷の綺麗なブラッティレッドが俺を拒むように視覚を刺激する。色と反して”俺”の顔は拒まずに柔和な笑顔を浮かべている。だが、俺には分かる演技だ怒っているか、激怒しているか、雰囲気で笑っているのかのどれか。自身を完璧に居ると認識させることから転身し騙す常套手段(俺の処世術)だ。圧力に惹かれるままに。俺は

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は

 

 

 

 

 

 

 

 

 

食べるのを渾身の力で拒否した。

 

 

「おやおや。なるほど確かにあの君が言った通りだね・・・全く何をためらう必要があるのか理解に乏しいよ。」

 

 

”俺”は首をヤレヤレとでも言いたげに首を力なく振っていた。俺は圧力に抗っている、それでも少しずつ押されていっているのだが。

 

 

「どうしてだ!。」

 

 

俺先ほどの俺にそう言った。そして”俺”はこう言う。

 

 

「食べたでしょう?あの時に。」

 

 

と言ってそっと、俺の頭に手を添えた。瞬間。

 

 

 

 

 

 「やっぱり。俺は・・・。」

 

                               「止めてください!」

 

          「離せよ。」

 

                「こういう世界が・・・」

 

            「私は隣に居ます。」

 

                          「変わらないんだな」

 

    「それでも、求める。」

 

 

                      「貴方がやることじゃないでしょう!?」

 

 

「俺が!俺が!求めたんだ!!これを!!だから、邪魔するんじゃねぇェェェェェェェッ!!」

 

 

                  赤

 

                  赤                

 

                  赤

 

                  赤

 

あかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかああかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかアカアカアカアカアカアカアカアカアカアカアカアカアカアカアカアカアカアカアカアカアカアカアカアカアカアカアカアカアカアカアカアカアカアカアカアカアカアカアカアカアカアカアカアカアカアカアカアカアカアカアカアカアカアカアカアカアカアカアカアカアカアカアカアカアカアカアカアカアカアカアカアカアカアカアカアカアカアカアカアカアカアカアカアカアカアカアカアカアカアカアカアカアカアカアカアカアカアカアカアカアカアカアカアカアカアカアカアカアカアカアカアカアカアカアカアカアカアカアカアカアカアカアカアカアカアカアカアカアカアカアカアカアカアカアカアカアカアカアカアカアカアカアカアカアカアカアカアカ赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤

 

 

 

 

 

                  血

 

 

 

 

 

 

そして、頭に激痛が走る。

 

 

「まだ、断片だけか・・・けど俺が出てきた時点で拒否反応起こったときもあったし・・・それに比べたらまだましかな?じゃあ、おはよう。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は起きた。

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・目覚めが悪い。嫌な夢を見たような。」

 

 

 

そこは寮室のベットの上。眩しい太陽が照りつけ肌を焼く。

 

「んったく普通に起こしてくれないのかね俺のこのポンコツ脳は。」

 

俺は、いつもの通りに時計を確認する。

 

「11;36・・・か・・・・・・・・・・・・・・は!?」

 

今は普通に登校日だ・・・。そして、何の連絡または音がしない。嫌な予感がしてその予感にしたがって走った。

 

寮に食堂、教室、体育館にアリーナありとあらゆる場所を見て回った。結果。

 

 

 

 

「誰も居ないって。どういうことだ?」

 

 

 

To be continued

 

 



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好意

(はぁ、本当にどうするんだろう・・・一夏にもばれちゃったし・・・。けど、IS学園にあんな制度があったなんて・・・。)

 

これは、IS学園特記事項のこと。

その制度の一つによって一応こうやってシャルロット・デュノアはIS学園に居られるのだ。いや、これは適当ではない勝手にシャルロット・デュノアが勘違いしたために起こった事故だ。

 

そんなことは露知らず、一夏のラッキースケベ(原作通りの行動)によってシャルルの正体がばれてしまい成り行きで特記事項の存在を知りこうして、法的に三年間は守られていることを知り、康一の言葉を忘却の彼方に飛ばしていた。

 

「シャルル、今日はどうするんだ?」

 

一夏が、コーチ役を務めているシャルロットに練習内容を聞いた。

 

「そうだね、もう十分に射撃武器の特性は理解できているし・・・剣一本で戦うとなると今度は機動かな。まだイグニッションブーストは出来るとしても離れていたら一貫の終わりだし。」

 

「う、イグニッションブーストだけでも辛かったのに・・・。」

 

苦い顔をしながら一夏がそう言った

 

「いや、イグニッションブーストだけでもいいけどその使い方だね。一夏は決めようとするときに大振りになるから、隙が出来ているんだよ。日本で言うとピンチがチャンスって奴を体言しちゃっているんだね。」

 

「なるほど、じゃあ…「アリーナでドイツと中国の代表候補生が模擬戦やっているって。」「え?本当に?」

 

練習内容を言おうとしたその時、隣から重要な情報が耳に入った。

 

 

「俺たちも見に行くか。」

 

見学といわんばかりに食い気味に言った。

 

「うん。」

 

そうして、代表候補生達の模擬戦という名の喧嘩を見るために二人は走った。

 

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

その時二人の代表候補生は・・・。

 

「クッ。」

 

「はぁはぁ、っち。」

 

ラウラ、ドイツの代表候補生は苛立ちを視線にぶつけ。凰、中国の代表候補生は疲労の色を見せている。だが凰は、それ以上に頭の中に違和感が残っている。それは・・・。

 

 

二人が距離を詰める二人とも両手で武器を扱うようなので、一合二号、と止め処も無く溢れるように剣戟が続く。だが、ラウラの優勢だ。それは、機体の性能差もあるが第一に操縦者の腕の差が顕著に出ている。

 

 

だが、ここまで拮抗しているのは・・・。

 

 

ラウラが隙を突き恐らくそのままの軌道で致命傷となるような場所にプラズマ手刀を当てれるような攻撃をしているのにもかかわらず。だが、顔に陰りを見せ軌道を変えて当たり障りの無い場所に攻撃した。そう、何かに阻まれるように。

 

その異変を感じた、凰がこういった。

 

 

「アンタ、私をなめてるの・・・こちとら腐っても代表候補生よ。何で本気で戦わないのよ!!」

 

「・・・五月蝿い!!」

 

 

ラウラは子供の癇癪のように憤り戦闘が再開された。

 

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

その時アリーナの感染者(観戦者)たち(一夏、シャルル。そして、前の者が来る前にアリーナに来ていた箒の三人

 

 

「結構、試合できているな。」

 

と、一夏がこの試合をそう評価した。それは、見たままの純粋なそれだ、だがそれゆえに一面を捉えている。そして、もう少しだけだがISの玄人、いや剣道と言う限定的な戦闘の天才。篠ノ之箒は。

 

「ラウラ・ボーデヴィッヒが何か手加減・・・とは違うが、何か行動に迷いがあるな。」

 

そう評価を下した。だが、もっとも、言わせて貰えばシャルルは。

 

「ありえないよ・・・。」

 

そう評価を下した。それは、彼(女)の特有の出自からの言葉だった。その言葉が気になった箒がこう聞いた。

 

「何がありえないんだ?」

 

「ああして渡り合ってること自体さ。」

 

「どういう意味だ?」

 

「同じヨーロッパの機体だから分かるんだけど、あれには(A)アクティブ・(I)イナーシャル・(C)キャンセラーが積まれているから、セシリアが介入しない限り勝ち目は無いんだよ。」

 

「なっ!?あれは構想自体はあったが実現は・・・。」

 

「ああ、出来たんだよ。」

 

「ちょちょちょッ?待て、なんだそれ?」

 

一夏がど素人丸出しの質問をしてきた(笑)。

 

「慣性停止能力っていったとこかな…………動きを止める不思議なバリヤーのことだよ。」

 

「なるほど、分かりやすい。」

 

シャルルは諦めてすごく分かりやすい説明をし一夏は納得した。それでも、秀でているものはあるようで。

 

「ISの兵装で特殊な能力を持っているって言うことは第三世代。そして、特に概観からは操作していないということは、エネルギーの塊にそんな能力を付随させているのか。零落白夜で使用不可能に出来ると思うんだけど、シャルルそこのところどうなんだ?。」

 

「え!?・・・出来ると思う・・・よ?」

 

シャルルはあいまいに肯定した一夏は首肯した。重ねて、言葉を発しようとしたそこに無粋に思わないほど見事に横槍を入れられる。

 

「いやぁ、ラウちゃんには悪いことしちゃったかね?」

 

「「「ウワッ!??」」

 

と、よく通る呟きと共に香が一夏達のとなりに忽然と姿を現した。三人が三人とも間の抜けた声を出した。一番耐性がついていた一夏が最初に聞いた。

 

「康一。お前どうしたんだ?」

 

「ん?傷ついてるよ。・・・じゃなくて、私が見ていない間どうなってた?」

 

どこか、的外れな特有の言い回し。そして康一の女装とは違い声は男性、つまり康一自身の自然の声であり、それが途轍もなく気持ち悪くなる。そんな、香がそう聞いた。それに、シャルルが顔色を伺いながら努めて自然に答える。

 

「康一・・・まあ、ごらんの通りの状況がずっと続いているよ。」

 

と、ありのままを言った。すると、嬉しそうに香は微笑む。

 

「良かった、本当に・・・。」

 

しかし、悲しそうな声でそう呟いた。表情と声色が一変して明るいそれになって。

 

「あ、ごめんね邪魔しちゃって。私は行くから。」

 

と言って、鼻歌を歌いそうな足取りで香は姿を消した。

それを、あっけに取られながらも、一夏が。

 

「そういえば何でおかしいんだ?」

 

話の続きをしようとシャルルに聞いた。

 

「それは、一対一の戦闘ならまず絶対に負けないうように出来ているからさ、実践ならまだしも試合用に作られたここでならまず勝機は無い。」

 

 

そうして、シャルルはこの話の総括を無意識的に言った。

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

戦闘者達は・・・接近戦で腕と大太刀を振るう。火花散り鬼気迫るようなそんな戦いだった。

 

「アンタふざけるんじゃないわよ!特種兵装も使わないで、それが喧嘩を売りに来た奴の態度だって言うの!?」

 

凰は頭に血が上っている。自身のプライドと性格からラウラの戦い方が気に入らなかったのだろう、いつも以上に激しく攻撃している。その言葉を乗せた攻撃に、ラウラはいなすしかなかった。

 

「黙れ!私にも事情があるのだ!!」

 

そういって、近距離戦最強兵装AICを発動させ、凰を拘束する。

 

「・・・やりなさい。」

 

諦めがついたかのようにそういった。だが、攻撃はしない。迷いを見せてたたずんでいる。

 

「・・・やりなさい。」

 

繰り返しそう言った。何かを決したように腕を振り上げ振り下げるその動作だけで、ほぼ全てのものを刈り取れるその手が凰に直撃しようと言うその瞬間。

 

 

「ラウちゃん、止めてね。」

 

 

世界全体のの時を止まらせたかのようにいきなり音も無くラウラの肩に出現した香が居た。周りは嫌に静かだ。だかその声は、ラウラの攻撃を止まらせる。

 

『全く。IS使いが荒いな・・・。』

 

「けどありがとね。」

 

『まあ、いいさ。』

 

外からは突然独り言を話したようにしか見えないが、そんなやり取りをした。そのあと香はラウラに向けて言った。

 

「ダメって・・・言ったよね?」

 

その一言でラウラを硬直させる。まるで悪事を犯した子供が親にばれたくないくらいの心理である。

 

「けど、よく出来ました。」

 

香はラウラの肩から降りて背を向けたままになり、相対的に凰と向かい合って立っている。そうして香が凰に話しかける。すると時の流れが正常になったように凰が口を動かしはじめた。

 

「ねえ、鈴音ちゃんだっけ?」

 

「名前呼びだったら鈴でいいわ。」

 

「ん?・・・そうだね。」

 

一瞬の逡巡の間が妙に重苦しくなる。

 

「それで鈴ちゃん。もう止めてもらってもいいかな?この通り。」

 

香は頭を下げた。

 

「・・・言われなくてもやめてやるわよこんな試合。」

 

「ありがとう。」

 

凰は背中を向けて、ピットに戻った。それを香は遠い目で見送る。

 

「それじゃあ、帰ろう?」

 

香は顔に笑みをたたえながらラウラに手を伸ばす。すると、急に目の色を変えて。

 

 

ブン!!

 

 

それをISの黒光りした手によって振り払った。それは当たれば体ごと吹き飛ばされるほどの力を持つが香は難なく避ける。

 

 

「・・・どうしたの?そんなに悔しそうな顔しているけど?」

 

「お前が!お前が居なければ!!」

 

 

ラウラは激怒しながらその人を殺すには十分な力をただ、自らの内に溜まった鬱憤を晴らす様に振るう。

 

 

「うわっと!?・・・どうしたの?」

 

 

それを問いかけながら紙一重で避け続ける。香は何かに気が付いたかのように攻撃を避け続けながらもラウラに問いかけていた口を閉ざす。

そんな二人だけの美しい世界。

 

やがて、ラウラの攻撃の手が緩まる。攻撃の手が完全に止まった。それを見計らい香は。

 

「一緒に帰ろう?」

 

ラウラは何も言わなかった。だがISの装備を解除し香の隣へ。

 

「貴様。・・・何を考えている?」

 

強気に香に問いかける。本当に何がなんだか分からないと言うように。それもそのはずなのだが、ラウラは。道具だ、人の手によって作られた。まあ、人は大体そんなものなのだろうが。

 

「ラウちゃん私は・・・君が嫌いだ。」

 

その言葉にラウラは顔をしかめた。

 

「だから好きなんだよ。」

 

ラウラの顔が歪む。その顔は百の言葉より雄弁に自身の心境を物語っていた。

 

『何を言っているんだ?』

 

と。それを察した香は

 

 

 

「いつかわかるようになるさ。」

 

 

といって、笑った。

 

 

 

そうして、この変な戦いは幕を閉じた。

 

 

『全く・・・仕事マジ辛い・・・。』

 

 



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康一は夢の中

この世界に来てから五年。俺は生きている。

 

この機にまず情報を整理しよう。

 

・・・いや、現実逃避をしよう。そうでもしないと俺の精神が耐えられない。

 

 

まず、ここに来たのはあの忌々しい俺を殺した夢のあとのこと、いや、これも夢だからどういう扱いをしていいのだか俺にも把握できては居ない。

 

その夢から覚めた時この世界に居た。

 

この世界のことを話そう。

この世界は、人が居ない。建物はある。食べ物に困らない。娯楽が無い。インターネットも、漫画や小説むしろ言語が失われている。ただ、道具や物が残されそれ以外の人の痕跡を消しているような感覚。まあ、探しても人が居ないのだから真実かどうか確かめる術は限りなくないが。ああ、これを忘れていたここでは「死なない。」

 

この世界を端的に現すとしたら命だけは保障されている世界。

 

その一言に限る。

 

 

最初は絞殺。天井から縄を吊り首をくくった。ずいぶんと苦しかった。

その次は刺殺。タンスにナイフを固定して倒した。痛みと血の感触が生暖かく気持ち悪い。

諦めずに溺死。風呂に入り睡眠薬を大量に飲んだ。やった後の自分の手数倍に膨れて気持ち悪い。

リストカットで失血死。貧血で頭がクラクラした。

頭にとても重いものを落として撲殺。頭に鈍痛が走り気持ち悪かったがそれまでだった。

 

 

そんなことを何回も繰り返し。それでも死は訪れなかった。

 

今では。

 

食べて寝る

それを繰り返している。この世界のサイクル。

 

もう、何年も繰り返しているこの空虚な時間。

 

それでも、生きている。死ぬのにも飽きたし生きるのにも飽きた。

 

このIS学園という箱庭のような場所でいつも起きて見回して。ここで手に入れた能力と言えば天気の予測に更なる行動の自由化ぐらいだろうか?

 

暇過ぎたなぁ。超動くよ、もはや軟体動物みたいだし。

 

ひまっす。寝てるからね?ネトゲすらないからね?つか電気すらないからね?地獄だよ、早く羽黒ちゃんに合いたい、ごめんなさいって言われたい・・・。

 

まあ、やってないんですけどね。HAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHA!

 

とまあ、こんな毎日を繰り返している。

 

「暇だ・・・」

「…………安らかに暇だ・・・なんか違う。」

「ひ~ま~ぁあああああ↑ああああああッ!!!。・・・オペラは…………無いな。」

 

 

 

「ワレノ命ニ従イテ ワレノ前ニソノ姿ヲ見セルベシ 生来カラノ祝福者(ナマケモノ) 毘魔人!!(ひまじん)……………方向性間違えたか?絶対にそうだ。」

 

 

 

このように、一人で過ごしている。

 

この世界には、娯楽が無い。というのは先にも整理した項目ではある。それは、食べ物に限ったことではなく、嗜好品、甘味がほぼ無くなっている。大体生きれるほどの食材が毎日支給されているかのように、冷蔵庫内にポツリとその存在を示している。

 

ここで、寝るというのはどのような意味を持つのか俺にはさっぱり分からない。

 

謎を整理しよう。

・ここは、どこなのか。

・なぜ、ここでは死なないのか。

 

この二つ程だろうか。

まあ、ここはどこなのか。の問いは二つ持ち合わせているが・・・。俺をこの世界に連れて来たカミサマが作った世界と言ったところか。もうそこまで言ってしまうと、妄想の域にまで達してしまうから考えないようにしている。

 

 

まあ、そんなこんなして俺は、死ぬ時間を見計らい自作の鉤爪ロープを使い。どこか高いところに登る。

 

 

空が、赤い。夕暮れ時のマジックアワーに照らされた、俺の学び舎だった巨大な牢獄を見下ろした。上空は風が吹き俺の制服がたなびく。やはり、この景色を見ないことには死ねない。ただ一人の景色を見て、そんなことを思う。

 

そうだ、この世界のもう一つの問いを言っていなかったなこの世界はこの世界は、俺の夢で(理想)だ。俺以外の全てが消え去ってしまえと、そう常々思っていたからな。叫びたい、伝えたい、詠いたいと思っていたはずなのに伝わらなかった叫んだら聞こえなかった、詠えば否定される。それならば俺以外の全てを消して、そんな希望なんて全て消え去ってしまえと。光があるから、光があるから、求めようと足掻くから辛い。だけど、俺の居た世界は微かな希望をいつも出してくる、いつしか、俺はそれを求めずに諦め生きていた。いつしか、だが、俺はその状況を楽しんだ、絶望的な絶望しかないその世界で笑いながら暮らしていた。そして…………また俺はその希望にすがり付いていた。まあ、そんな俺の妄想の世界…………だと思っている。

 

俺はどうしようも無い俺に伝えるために涙を流していた。こんな世界では俺が伝えられるのは俺ぐらいしか居ない。

 

俺は覚悟を決めた。それまで、一種の形式美。次からは、ただのスプラッターだ。

 

そして何もない一歩を踏み出した。

 

 

足場の消失。浮遊感と落下している感覚が気持ち悪い。その後に及んでもそんなことしか考えられない。さて、今日も死にましょう。

 

 

俺は大地を迎え入れた。

 

 

すると赤色が。広がっている。眼球は残っているらしい。肉の感触が気持ち悪い。だんだんと脳が激痛を訴えている。

 

ここで、説明しておこう。この時間、つまり前に記したとおりに夕暮れの昼と夜が混在した時間。そして。完全に日が沈み当たりは闇に包まれた。

 

 

「また、死ねなかったか。」

 

 

そう、呟いた。

 

何度の死亡経験から、日の入りと日の出時、言い換えると光があるか無いかで俺は復活(リスポン)するらしい。朝日と共に死ぬのもいいんじゃないかと思って死んでみたら地獄を見たからな。あ、ここも地獄だった。

 

 

「さて、支給されているころだし・・・」

 

 

と俺は冷蔵庫を開ける。死ぬことが娯楽ってなんだよ、と思いながら扉を開ける。そこには何かコンビニの弁当みたいなのが入っている。まあ、個人的には焼きそばパンが食べたい。それを割り切りつつ俺は冷蔵庫内に手を伸ばし………………。

 

俺は飛び退いた。一瞬、俺が居た世界の常識に飲まれこの世界の常識がことごとく破壊されているのに気が付いていなかった。

 

問い1。なんで、俺は電気すら通っていないはずのこの世界で、夜の時間帯に冷蔵庫の中身を確認できたんだ?。

 

答え。冷蔵庫についている電球が光ったから。

 

「どういう・・・ことだよ。」

 

俺は、走る。五年前と同じように。

だが行動は、イタズラ好きの子供と同じように電気をつけて回ると言ったどうしようもないものだったが。

 

それでも、変化の予兆を感じ取られずには居られなかった。

 

そして・・・全ての電気がつけ終わった。

 

「マジですか?・・・マジなんですか?」

 

俺は、敬語になっていた。

それはどうでもいい!!まあ、結果は便利になりましたって言うことでめでたしってことで。

 

 

「どうでもよくないんだけどなぁ。」

 

 

いきなり現れた。何かが居る。だが、害は感じない。

何をしてもされても、対応できると言った風に自然体だ。なら、こちらもそれで問題なし。そして、経験則からこういう手合いは慎重に行動することだ。

 

「まあ、どこかの誰かがそんなことを言っていたような気がしないでもないな。」

 

「めんどくさいとか、どうでもいいとかそういうことを言うなって事でしょ?」

 

「ああ。」

 

「そう、それでさ。よく君は私を見ても驚かないよね?」

 

その何かは、人型で、口だけがあり目鼻に耳はない。そういう形で出てきたものは少なくとも一人は居る例えば電脳空間のハッキングゴーレムさんの人型とかね。まあ、驚くことは無い。

 

「理由は知っているんだけどね。」

 

「ほう?本当に?」

 

「うん、君は私のことをただの人型で、顔はなくて。そういう形で出てきたものは少なくとも一人は居る例えば電脳空間のハッキングゴーレムさんの人型とかね。まあ、驚くことは無い。って思ってたんでしょ?」

 

「どこからコピー&ペーストしてきやがった?」

 

完全に読まれていた。

 

「適当な冗談は置いておいて、それで・・・君は楽しかった?この世界に居て。」

 

そう聞かれた。何を言っている?

 

「楽しくは無かっただけど、嬉しかった地獄に居られて。」

 

「ふぅん、君が言ってた。そんなことを。」

 

その言葉で、一つの仮説が生まれた。それは・・・。

 

「お前は”俺”なのか?」

 

と言うことだ、ここで言う俺とは五年前にやられた悪趣味な世界の”俺”のこと。あの時は驚いた、いつも俺がやっていることを自身にもやられるとは・・・。不愉快極まりないな。

 

「それは・・・違うね。」

 

「ならなんなんだ?お前は?」

 

「私は、君の罪だよ。」

 

「・・・罪か。それならもう背負い過ぎるほど背負っているが?。」

 

「いや君の罪は。h

 

その人型は、口元を引き絞った。

 

 

 

 

ただの激痛。

 

 

 

が走る。

 

言葉を拒絶するように痛みが起きる。痛みにしか気を取られていない。

 

「あらら。まだ、ダメか。まあ最初は私を見るだけでそれ(・・)が出たし進歩だよね。」

 

そんな、つぶやきだけ(・・)は嫌に聞こえてきて。

 

「それじゃ、ここはつけておくから。楽しんでね。」

 

 

また来るからと。そういって、痛みと共に消えた。

 

「・・・またっておい・・・はぁ、いつ戻れるんだ?。」

 

それが俺の、この世界での出来事らしい出来事だった。

 

 

 

「・・・いつ戻れるんだ?」

 

 

 

俺はもう一度何かに縋るように、そう呟いていた。



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学年別タッグトーナメントのタッグ発表!

 

それは教室の真ん中でのこと。いつものように抱きつきながら話している香が、上擦ったような猫なで声で。

 

「ラウちゃん~。一緒にタッグ組もうよ~」

 

「断る。」

 

香は、いつもの通りに一蹴されていた。すでに、この教室の風景に同化してしまっており目新しさもなくなっていた。

 

「なんで?」

 

香が微塵も気持ちが汲めていないように純粋な目を向けながら、心底不思議そうに聞いてくる。だが、もうラウラの中には無視と言う選択肢はないそうで。

 

「・・・お前が居ると邪魔だからだ。」

 

そう答えていた。だが、言葉の隙を突くのは香も康一も同じようで。

 

「邪魔って、ラウちゃんの腕だったら誰でも邪魔になるじゃない?少なくともタッグ組んでくれそうな人にはさ。」

 

「すまんな、間違えてしまったお前限定で邪魔だからだ。」

 

「酷くない!?ピンポイント過ぎない!?」

 

悲痛と言うように叫び、抱きつきながら泣き驚くと言う器用な芸当を見せている。

 

「なんでそう、拒否するかな?」

 

と、いきなり落ち着いた香が独り言か質問したのか曖昧にそう言った。そして、独り言に切り替えたようにそのまま喋り続ける。

 

「えっと、確か決まらなかったらランダムで組み合わせが決まって・・・そうか!!!。」

 

ラウラの拘束を解いて、一瞬にして姿を消した。

 

「ちょ!?」

 

目を丸くしてあたりを見回した。

 

「居ない?」

 

そして・・・。時間がたち、正確には三日。どこかの”世界”では十年程”地獄”が経過したある日。

 

 

 

 

「いやぁ、残念だったねラウちゃん。」

 

 

 

 

香はラウラに殴られた。もう、どうしようもない位に殴られた。往復ビンタで殴られた。ライダーパンチで殴られた。・・・その原因は。

 

「お前なにをした!?」

 

学年別タッグトーナメントの対戦表のことタッグ表が・・・。例にも漏れず香の願い通りにラウラとタッグを組むことになった。早い話が話が出来過ぎていると言ったところだ。

 

「ちょっと、私達だけになるように尽力しただけだよ?」

 

「本当ならなまらすげくね!?ハッ!地方板見てたら言動が!?・・・何をした!?」

 

「言動については何にもしていません!まぁ・・・ぼっちに友達が出来たり新たな友情と離反したりしたなぁ。」

 

遠くを見るような、何かを懐かしむような目をしながらそういった。それでも何かを抱えているらしく小声でブツブツと何かを呟いている、だが、元は康一であるが故に顔に薄く笑顔を貼り付けながら・・・。

 

「まさか、力を使う事になるとは・・・。本当に面倒だな・・・。」

 

「おい、何だその不穏当な単語は?」

 

「いやいや、この作品の第一話から出てるし。」

 

「知ったことか!!この愚か者が!!」

 

ラウラも香のあしらい方を覚えてきたようで、面倒なことはスルーして行った。そんなこんなで一日。どこかの世界では五年のつまり今日。待ちに待った学年別タッグトーナメントが開始した。

 

 

 



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思いの交錯

今日この日は、学年別タッグトーナメント。

出場する張本人たちには、話題には出ていたが・・・と言った具合の感覚だったが、足早にそのイベントはやってきた。

 

 

時の流れが速くなったような感覚にこれまでの思いをはせる者達。

今日の日の練習のために時間を費やした者達。

この大会に絡む陰謀に欲を見出した者達。

やる気を出しに出しまくり勝利をものにしようとする者達。

この大会における意義を全く別のそれを見出している者達。

愛でるためだけに出ている者。

ぶっちゃけどうでもいい者。

 

 

多種多様な人間が居るこのIS学園であるがその中でも色々な思想、思惑、幻想、理想を持つ人間が居るそんな人間達が交差するこの大会であるが、今回は一つ一つ取り上げていってみよう。

 

上から順に『時の流れが速くなったような感覚にこれまでの思いをはせる者達』を紹介しよう。

 

笠森綾香の場合。彼女のようなケースが一番多いのだろう。

 

彼女は喋っている。今回の大会のことであったり、それとは全く関係の無いことだったり、彼女の友達との会話に花を咲かせている。

 

「本当に織斑君と付き合えるのかな?」

 

「買い物ってオチじゃない?」

 

「ああ、それだ。」

 

など、模範的に女の子をやっている。それでも、それなりに緊張はしているらしく、徐々に口数が少なくなっていく、あくびを連発する、顔が変形する、どこか上の空になっている、などの症状を発症させている。じわりじわりと試合に近づいてくる恐怖感がそうさせる、なれない人にとっては堪えるのだ。

 

「・・・。」

「・・・。」

「・・・。」

 

そして、完全に沈黙する。気まずい空気がその場に流れ、誰一人として喋れない状況に追い込まれる。そして、重くなった口を開けたのは笠森。

 

「あ、コンビの人を待たせているから先に行くね・・・。」

 

「コンビって・・・。あの、声が澪ちゃんに似ている人?」

 

「篠ノ之博士の妹で覚えていないの!?」

 

「ない。」キリッ!

 

自身ありげに胸を張りそう言いのけるモブ一号(仮名)。

 

「もう一人の男に無理やりだっけ?」

 

もう一人のモブ二号がそういった。

 

「うん・・・なんか怖かったからって言うのもあるけど、なんか彼二重人格っぽいんだよね・・・。」

 

「ああ・・・うん分かる。」

 

「黒歴史の始まりか・・・・・・。あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ。」

 

「あ、壊れた。」

 

そこでモブ一号の脳裏に浮かんだのは、忌まわしい記憶。

 

『それでも、守りたい世界があるんだー!!』

 

しぱぱぱぱぱぱぱ←花火

 

『トランザムライザー!!』

 

しぱぱぱぱぱぱぱ←花火

 

 

「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああッ!!。」

 

 

モブ一号の忌まわしい記憶が開放され、笠森は逃げた。

 

「あ、ちょい笠森ィ!?・・・・・・・・・・・・・直すか。」

 

ボコッ!

 

「ハッ!?何をしていた?」

 

 

 

 

 

続けて、『今日の日の練習のために時間を費やした者達。』と『この大会に絡む陰謀に欲を見出した者達』のこと。

 

凰鈴音とセシリア・オルコットの場合。

 

彼女たちはISスーツに着替え、準備体操しているところだ。

その動作に緊張による動作の遅延などなく、目的のために一徹しているその姿は本人の容姿もあるが美しい。体を解しながら凰が口を開いた。

 

「なんか、なし崩し的にアンタとコンビ組むことになったけど・・・良かったの?」

 

それは。前回にも記述したとは思うし今更だが、この大会に絡む陰謀とは一夏とのデート権である。それの獲得にセシリアは目がくらみその決意を・・・。

 

「ええ、すべては「一夏とのデートのため?」・・・セリフを取らないでいただけます?」

 

「アンタは大げさ過ぎるのよ、しかも一夏だったら理由が無くても一声掛ければ買い物くらいは付き合ってくれるわよ。」

 

さらりと、肩をすくめながらそういった。

 

「はい!?ちょっと。何のためにここまで努力を・・・。」

 

「次試合よ。」

 

セシリアの抗議を華麗に受け流し試合場に向かっていく凰を抗議の主が追いかけた。

 

 

 

 

 

 

上からと言う性質上次は『やる気を出しに出しまくり勝利をものにしようとする者達。』のこと。

 

織斑一夏とシャルル・デュノアの場合。

 

「はぁ、康一が動き始めたと思ったら・・・激烈な勢いでトーナメントが改変されたって話だからなぁ。なにやったんだ?康一・・・。」

 

香と康一の違いが分からない一夏がそう言った。彼はそれでも康一と言う人格を信じていた。

 

「あはははは・・・僕にはよく分からないよ。」

 

力なくシャルルは笑い、それに一夏は苦笑した。

 

「それじゃ、シャルル。まだ試合まで時間があるし、コンビネーションの練習でもするか。・・・正直、足を引っ張っているし。専用機のみの性能だけでやっていけるのか?」

 

一夏が俯きがちにそういった。まだまだ、弱いと自分に言い聞かせるように。

 

「分からないけど・・・今までやってきたことを信じて勝ち進むしかない。」

 

「・・・そうだな。一丁やりますか!。」

 

「うん、その域だよ一夏。」

 

二人は、勝利に燃えていた。

 

 

 

 

『この大会における意義を全く別のそれを見出している者達。』のこと。

 

ラウラ・ボーデヴィッヒの場合。

 

彼女は、今ISスーツに着替え今の香からの完璧な篭城。つまり女子更衣室に居た。

彼女は、憂いを含んだ表情をトーナメント表に向けて、ため息を一つ。そして、彼女は彼女自身に本来のこの大会で自分の意義を見出そうとしている。本当の最初期の自身の存在意義は。

 

『軍での結果および優秀な成績を出すことによる自己形成』

 

から、ISの時代がやってきて、それが完全に破壊された。

 

『自己形成崩壊からの、襲い来る劣等感。』

 

と言う地獄を味わった。だが。

 

『恩師によってISの最強になる。』

 

恩人の存在によって、『軍での結果および優秀な成績を出すことによる自己形成』押さえ込まれていた自己満足の塊であるこれが、さらに肥大化してしまった。しかも、ISさえも自身の力として『飲み込んでしまった』のと合わせて恩師を崇拝している故にたちが悪い。そして・・・。

 

『自分の全てを封じ込め、尚且つ全てを肯定する人物』

 

この存在によって彼女の本質が大きく揺らぐ。皮肉にも彼女の人生は圧倒的な力によって振り回され、圧倒的な力によって存在し、圧倒的な力で幾分まともになれたのだ。その全てと言ってもいい力の存在が、今、薄れ始めている。

 

「・・・どうすればいいんだ・・・。」

 

いま、彼女の中でこの大会は。

自分を見出すために。

 

 

 

 

 

 

『ぶっちゃけどうでもいい者。』のこと。

 

上から順にと言ったな?あれはウソだ。

更識簪の場合。

 

「なんで・・・この学校に入っちゃったのかな・・・。いや、一年待って整備科に転属で社蓄化?・・・まあ、遊んでるのも。あ、私代表候補生だった。そしたら、もったいないなぁまあ、国のバックがあるし、親にも恩を返しきれていないし。」

 

虚ろな目でブツブツと呟いている。それでも、何かをなそうと頑張っている。

 

「康一君がなんかおかしくなっちゃったし。元から少しおかしかったけど・・・。」

 

 

ここで言おう。彼女は康一によって自己形成が破壊されている。

 

 

 

 

『愛でるためだけに出ている者』のこと。

 

香。

 

「・・・早く、一眼レフの準備をしなければッ!。撮る!撮ってやる!!行くぜエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエ!!!!。あっよだれが・・・。」

 

変わらない。変われない。

 

 

 

 

 

 

番外として・・・。

「バカンスを満喫している者。」

 

 ◆ ◆ ◆

 

俺は、今思い出の地に旅行に来ている。俺はもう、この世界は何がなんだか分からないが受け入れたこんなに時間があるのに学園に引きこもっていてはどうしようもないからな。と言うわけでこの世界での自宅である。

 

「・・・食材が腐っていない?」

 

新たな発見も交えつつ、俺はコーヒーを啜る。

 

さて、どうするかな?

 

俺は、遊んだ、なぜか俺以外が居なくて全ての環境をそのままに人だけ抜いたような世界。まあ、上のことも交えても夢・・・だろうな。分かっている。

 

さてと、次はあの場所にでも・・・あり?動かねえ

 

なんだ?目の前に映像が流れ込んでくる・・・。

 

あれ?あれれれれれれ?

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

こうして、人間が交差する舞台は開幕する。

力と思いでこの学園が、揺れる。

 

 



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戦闘開始

アリーナに多くの視線が降り注がれ、人々の熱気が零れる。祭りのような喧騒に、その大きい舞台が包まれる。その舞台には、香とラウラ、そしてモブ二人が立っている。そう、これにより、学年別タッグトーナメントを開催されたのだ。

 

モブ二人は場の空気に飲まれ、必死に体の震えを抑えようとしている。

 

通常はそれが普通であるのだが。対面しているもう二人は違う、それはもうふてぶてしいまでに悠然に自然体で居る。二人の片割れはジャージに満面の笑みと言う異常なまでの自然体であるが、それをスルーするかのようにアナウンスが流れる。アナウンスは舞台のカーテンコール代わりと言わんばかりに暴力の祭典を告げた・・・。

 

「試合開始!!。」

 

瞬間に終わった。

敗北したのは、モブ二人。一人はうつぶせ、もう一人は香に支えられて気絶している。

その場には、無音が漂っている。それを掴んだのは香。

 

「ねえ?こういう場合はどうなるの?」

 

アナウンスに問いかけた。

 

「戦闘不能により。 勝者、ラウラ・ボーデヴィッヒ相澤康一ペア」

 

その声は全てを代表するように震えていた。

 

 

 

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

苛立ちげにラウラは胸倉を掴み、香を壁に押し付けている。

 

「イテ、…………痛いよラウちゃん」

 

先ほどとは変わり力なく笑っている。ラウラはその表情を非難するかのように睨み付ける。

 

「邪魔をするなと言ったはずだろう!!」

 

「・・・ごめん。」

 

俯いてそういった。

 

「けど、ラウちゃんを戦わせたくなかったんだ・・・。」

 

「ッ!?」

 

硬質的な音が鳴った。ラウラが香に拳を振るい香がそれを包み込みそれが壁に当たった音だ。

 

「殴っちゃダメだよ、拳に訴えるようじゃ誰も分かってくれない。」

 

真摯に目を見て真っ直ぐと、伝えた。だが、それは。

 

「ふ・・・ふざけるな!!!!」

 

全身の膂力を使った頭突きと暴言によって返された。

 

「お前になにが分かる!私は、私は!戦うために生まれてきたんだ、拳を振るうためだけに生まれてきたんだ!!生まれる前から決められた道を進んできたんだ!!それなのに、力を捨てろ?ふざけるな!私にはこれしかないんだ!!」

 

頭の中に渦巻いている感情を全て吐き出すように、香を殴っている。それでも。香は伝えようと。

 

「それでも、ラウちゃん。君にh「五月蝿い!!・・・。」

 

言葉を割るように。怒鳴る。そして、ポツリと零れる様に言う。

 

 

 

 それとも…………お前が、国によって決められた私の人生を。

 暴力にまみれた私の人生を。

 悪意に満ちた私の人生を。

 こんな、こんな私を。

 

 

        一生を掛けて守ると誓えるのか?

        一生を掛けて私を守ると言うのか?」

 

 

 

香の胸に顔を押し付けながらやっと言い出せたその一声。そしてラウラは縋ったのだ、()に。母のように接したそれを、手を幾ら払いのけようともさし伸ばされた無償の愛に。だが香は。

 

 

迷いがある、その迷いは。

 

「…………………ごめん。」

 

殺した。

 

 

 

 

 

表情が抜け落ちたような顔、希望や望みが全て消えうせ笑うことも怒ることも出来なくなったかのようなその顔。ラウラは、ゆっくりと香に背を向け去っていた。

 

それを見送った香は唇をかみながら先ほどの言葉を反芻していた、香にとっては一番言われたくなかったその言葉がグルグルと回る。それに苛立ったかのように香は手を振り上げ壁に叩きつけようとして・・・寸前で止める。

 

「・・・私だって・・・。」

 

酷く、悲しげだった。それに私は・・・。

 

『香。君だって、彼だ気にしなくていい。』

 

「でも。」

 

『分かってる、だから。言っているんだ。』

 

「エネミー…………今までこんなに康一君の弱さが憎いと思ったことが無いよ。こんな自分なら(二重人格)消えてしまえばいいのに。」

 

掛ける言葉が 無かった

 

 

 

 

 ◆ ◆ ◆

次の試合は。二人の専用機持ちが出場している。

 

凰 鈴音とセシリア・オルコットだ。本来なら三回戦で当たるとこなのだが、二回戦の相手は棄権したらしい。

 

 

両人とも試合の開始線に立っている。

ラウラと香はかなり険悪な仲になっているが、それでも暴力の祭典は気にせず進行していく。

 

そんな中、凰が口を開く。

 

「ラウラ、アンタ今度は本気を見せてくれるんでしょうね?」

 

それに答えず、試合の開始を待った。

 

「ラウちゃん、私はセシリアをやる。」

 

「ああ。」

 

簡単に作戦を立てながら聞き流す。そして・・・二度目の開始の合図が流れる。

 

「試合開始!!。」

 

四人とも飛んだ。

 

ラウラは、真正面に。

凰も真正面に。

セシリアは凰の後ろに位置付けるように飛ぶ

香は、飛んだ。一応カゲアカシのPIC(足場のようなもの)を駆使し脚の力だけで加速する。

 

だが、それは異常な力によって瞬時加速並みのスピードを得る。

 

一瞬で香は、セシリアの真横に移動する。PICを切りセシリアの専用機ブルーティアーズの非固定肩部装甲(つまりビットのこと)を掴み腕の力で真後ろに移動する。

 

「っ!?この!!。」

 

セシリアが短剣を呼び出し背に向かって滅法に突く。それをセシリアの首を足場に回避する香。

 

「・・・なるほど、一回戦で気絶したのはそういう訳ですか。」

 

「あ?ばれた?」

 

香は宙に浮きながらおどけたように笑った。

 

ISの絶対防御にも弱点は在る。それはAIの脆弱性だ。絶対防御のプロセスは攻撃を受けその攻撃の被害を数値に換算し、使用者の生命の維持に必要なだけ防御する。と言った手順を踏んでいる。そのため攻撃と判断されないものや、防御の必要がないとAIが判断した場合にはそのまま衝撃が行く。もちろんISを装備した場合ではその限りではなくISと判断した時点で十二分に死亡するかも知れないと判断する。

 

香の気絶のさせ方はそれを逆手に取った物だ。普通の人体で触れるだけなら攻撃とは認識されず、そこで体重移動による衝撃を加えれば、場所によっては脳震盪、頚椎のズレ、呼吸困難を引き起こすことが出来る。

 

これは理論上のことであって、香の常人を超えた神がかり的な身体能力があってのことだが。

 

「あなたは化け物ですか・・・。」

 

「いやいや?普通に香ちゃんですよ?」

 

「分かりませんわ!?」

 

「悪いけど本当に私は康一じゃないんだ。んまあちょっと癪だけど、康一君使わせてもらうね。」

 

そして、再び激突する。

香が先ほどまで居た場所に、銃撃が飛来するそれを威力がくるか来ないかのぎりぎりのラインで避ける。全身の膂力でPICを蹴りまた距離を詰める。

 

PICを壁を手に発生させて直線運動を無理やり曲げて途中の銃撃の回避行動を取る。

 

「下作ですわね・・・。」

 

セシリアは呟いた。それは、兵装の一つであり目玉であるビットのことだ距離を一定に保ち、持っているビームライフルでしか射撃をしてこない。

二度三度の加速に香はついて行き射撃を回避する。

 

「っと。流れ弾に注意!」

 

途中で撃たれた衝撃砲を避けながら上空に逃げるように加速するセシリアを追う。そして。

 

「かかりましたわね!!」

 

全てのビットを射撃体勢にし発射する!!非固定肩部装甲につけたそれは銃弾の雨を降らせ、エネルギーの大本があるためほぼ比喩ではなく無限に降る。そして、ダメ押しとばかりに追尾性のミサイルを降らせる

 

「うわわわわッまずいって・・・」

 

と言いながら背を向けて走り、避け続ける。だが、追尾性のミサイルとの連携では相手が悪い。徐々にミサイルやそれを縫って撃つような射撃に追い詰められ。ついには。

 

 

爆音と煙幕に包まれる。

 

「まだまだですわ!!」

 

撃たれる撃たれるといった飽和攻撃を繰り返している。

 

そして、フラグ。

 

「やりましたか?」

 

煙幕が晴れ、そこには傷一つ負っていない香の姿があった。

 

「・・・この子は正体が分からないからあまり使いたくないんだけど。仕方ないよね。」

 

その顔は、酷く歪んで狂気を浮かべている。

 

「じゃあ、行くよ。」

 

と言って香はガスマスクをかぶった。それは視界が狭くなるだけの無意味な行為だったがそれでもマスクのしたの顔は不敵に笑っていた。

 

そして、加速。先ほどとは桁違いの加速を見せ、そのたびに硬質的な音が鳴り響くPICを。そして、あと一つの加速ですぐにでも手が届きそうな距離にまでになった。そして香は切り札を出す!!

 

「喰らえ!!」

 

ズボンのポケットから缶詰を取り出し投げる。勘のいい人はもう分かると思うが・・・。

 

「きゃっ!?・・・なんですの?液体・・・クサッ!?なにこれ臭い!!。」

 

「すきありゃー!!!」

 

香は続けて胸のうちに忍ばせてあったビンを頭に叩きつける。

 

「こ、今度は何で・・・この匂い、アルコール?」

 

あの独特の匂いが脳を刺激する。

 

「大正解!!D・E!大炎上ォォォォォオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」

 

香は一瞬でセシリアの上空に逃げ火のついたマッチを落とし。

 

 

淡青色の炎が上がった。

 

 

「まあ、別にISの兵装を使わなくてはならないって言うルールはないし。」

 

あるはずが無い。

 

「じゃとりあえず眠って?」

 

燃え滾っているセシリアとセシリアの機体に近づき背骨に衝撃、頭を回して気絶させた。

 

「レディを助けるのはナイトの仕事だけど、あいにく騎士様は居ないのでね。」

 

地面に落ちる寸前に香が止めた。

 

「ごめんね、こんなのでも康一君なんだ。」

 

そう言って。香は・・・空を見上げた。

 

 

 

 

 

「終了!!勝者ラウラ・ボーデヴィッヒ相澤康一ペア!!。」

 

 

 

 

 

どうやら、もう一方の戦いはすでに幕を閉じたようだ。だが、ラウラは無言で勝利に浸ることも無く静かに舞台を去ろうと踵を返す。その背中に香は声を掛けた。

 

「ラウラ。君に言っておきたいことがある。」

 

その言葉に動きを止める。言い出した香は、それでも今から言う言葉を迷っている。慎重に言葉を選んで、一つ一つ全てを分かってくれといわんばかりに丁寧に喋りだした

 

「私は、私の中の彼を含めて弱い。」

 

「だから、あがいてあがいて。」

 

「君がどれだけ頑張っているのか私には分からない。」

 

「どれだけ辛かったのかなんて本人しか分からない。」

 

「けど、そこから立ち上がった強い君なら。」

 

「きっと私が居なくても、もっと強くなれると思うんだ。」

 

「私が居たら君は弱くなる。」

 

「だから、私は君の隣には居られないし居ない方がいいと思っている。」

 

「自分勝手でごめんね、けど君は答えを見つけられたらきっと・・・。」

 

「・・・ごめん、ラウちゃんこんな言葉しか見つからなくて。」

 

「これで終わり、この大会が終わったら私は消えるよ。」

 

 

そんな言葉は。

 

「ああ、そうしてくれ」

 

届かなかった。

 



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康一の追憶と夢

俺は今、つまらない俺の話を見ている・・・いや、見ることを強いられている。

 

虚空に浮んだモニターのようなものに、俺が居る。その俺は悲痛に自由に表情を動かし笑い、したため、怒る。間違ってもこの俺、相澤康一ではない。俺は、あんなように笑ったりは・・・。まあいい。それで、俺はこの世界での原点とでも言えようこの家に縛られている訳だが、ここには、世話になったな…………。

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

これは、ある男の記憶の中で再生される一種の思い出話である。

 

 

【化粧。】

 

二歳ぐらいの赤ん坊が一人、そして化粧台に対面している女性が一人。この部屋の中に存在している。なぜだろうか赤ん坊は女性をじっと見つめている。

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」

 

 

沈黙、その空間の状態を表すのにほかのものはいらないくらいの沈黙だった。すると女性が気まずくなったかのように。

 

「なんです?そんなにじろじろ見て。」

 

そういった、だが。実際は二歳ぐらいの子供は喋らないはずなのだが・・・。

 

「いや・・・なにをやっているんだ?」

 

普通に喋っている。

 

「何って・・・化粧ですよ?」

 

「なるほど、けしょう、というのかそれは。」

 

「…………知らなかったんですか?」

 

赤ん坊は首を縦に振った。

 

「ああ・・・ひとにたいして、けしょうをとおしてじこけんじするのか。」

 

「そういう言い方も出来ますね。」

 

「そんで、おてつだいさん。いつもどこにいっているんだい?」

 

「友達のところです。」

 

「へえ・・・。」

 

「・・・なんか、帰って来なければいいなぁって顔していますけど。普通に帰りますからね?」

 

「あ、ばれた?」

 

「・・・二年ぐらい居ればそれなりに。それでは、死なないようにしてください。」

 

「ああ、しぬきはない。」

 

「では、行ってきます。」

 

「行ってらっしゃい。」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」

 

 

赤ん坊は行動を開始する。行動と共に独り言を呟く。

 

「まいかい、けしょうしているのはともだちにあうためか・・・いや、そうとはかんがえられん、そもそも、けしょうがひつようするときは、それにげんていするわけじゃないだろう、TV的にかんがえて・・・ふむ、こういうときに、げんていてきなせかいしかみれないというのもかんがえものだな・・・

まあ、ほんでよんだしもんだいはでてこないだろう。せっかくのじかんだ、ゆうこうかつようしなければ・・・。とりあえず、けしょうのことをべんきょうするか…………。

たしかここに、おてつだいさんがしまっていた、ざっしがあるはずだ…………………。

そんざいしているざっしが・・・ひよこ・・・クラブだと・・・・・・・かろうじて、いっさつあったが・・・だいじょうぶか?こんなにきあい、はいっていたのに。おれだぞ?・・・そこでくずれおちてもおかしくはないなぁ、お手伝いさんたいへんだったろうに、それにしても、いっさつのじょうほうではんだんするのはきけんだが・・・しかたないか。」

 

 

 

数分後

 

 

 

「ううん?このじょうほうからそうごうするに『けしょう』というのは、じぶんをよくみせるための、どうぐということか。まあ、たしかにみなりがきたないだけで、みせからはじかれたりしたな・・・。まったく、こんな、かちかんなんていみないのに。・・・だけど、おとこはでてきてないということは、これはしゅりゅうはじょせいということで、いいんだろうな……………………。

ぎゃくせつてきにかんがえて、かんぺきに『じょせい』という、『きごう』をつけていったらじょせいにみえるんじゃないか?」

 

 

数時間後。お手伝いさんが帰ってきた・・・そこには。

 

 

「誰ですか?」

 

相原一香(あいばら かずか)です・・・声質に若干異常があるな。」

 

「止めてください。寒気がします。」

 

「ああ、分かった。」

 

「はぁ、行動力と実践力はどこから湧き上がるのですか・・・。」

 

「あ、それはそうと、けしょうはどうやっておとすんだ?」

 

「分からないでやっていたんですか!?」

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

ああ、あの時は怒られたなぁ。まぁそれも、今となっては良い思い出だが。

 

「しかし、これ。どうするんだ?動けないし俺の視点で物語が・・・エネだったら、こんな回りくどいことを・・・出来ないのか、しないのか・・・。」

 

 

 

「まあ、考えても仕方ないな・・・ん?これは・・・学年別個人・・・いや、タッグ?」

 

そこには、先ほどまで思い出に浸っていたのでそれ以前は分からないが、俺の視点で物事が進んでおり、銀髪の少女に紙を押し付けるように差し出している。そこから、早送りで時間が進み、今大会のように、来賓、その他に準じる人たちが見ているのが違いだろう。個人と書いてあったのに変更と言うことは・・・襲撃に備えてのツーマンセルの訓練を兼ねてと言ったところか。

 

そこでの俺が・・・。

 

 

 

「………………………………………俺だけど俺じゃないか。…………止めてくれ、ここも地獄かよ…………。」

 

 

 



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黒兎の魂

戦いが、始まる。

 

それは、学年別タッグトーナメントで、準々決勝の舞台。そして、因縁が最高潮に高まる時である。

その準々決勝の、舞台に立っているのは。ラウラ・ボーデヴィッヒと香。そして、織斑一夏とシャルル・デュノアだ。

 

以前のように香とラウラは。

 

「コウ、私は織斑とやる。」

 

香は首肯し、視線をシャルル・デュノアに向ける。

 

「久しぶり。」

「・・・?」

 

そして、そう一言だけ告げた。

その言葉を告げた相手先は、何がなんだか分からないというように首をかしげた。その言葉にコンビの片割れである一夏も同じ行動を取った。

 

「織斑一夏。」

 

ラウラが突然、一夏に向け話しかける。

 

「なんだ?」

 

「お前にとって、力とはなんだ?」

 

「……………仲間を、いや大切なものを守るための物だ。」

 

「そうか。」

 

その会話でラウラは口を閉ざした。周りの人間が一斉に固唾を飲み込むような空気の中。

 

 

「試合開始!!」

 

 

戦いが始まった。

 

 ◆ ◆ ◆

 

私は、開始の合図を聞いた途端に飛び出した。多少落ち込むぐらいの気持ちだと、驚くほど集中できるとどこかの執事さんが言っていたけど、その通りだ私は今、かなり集中している。

 

「ただ、ちょっと敵としては力不足なんじゃないかって思うけどね。」

 

「それは康一君。」

 

「私は香だよ。」

 

苛立ち紛れに私は顔に拳を打ちつける。ただの拳を。

 

「私だって怒りも溜まるんだ・・・それでもね。」

 

私は、逃げるシャルルを追ってまた顔に一発入れる。それは、ISの便利なバリヤーみたいなものによって阻まれる。

 

「何とか、やりくりして仕方ない、しょうがない、諦めようって。」

 

私は顔を殴る。シャルルはそれを見越して、サブマシンガンを呼び出し私の腹に当て、そして発射する。

 

「思ったんだ。」

 

それを避けながら私は顔を殴る。バカみたいに一つの行動しかしない。

 

「どうしようもないよ。」

 

私は顔を殴る。シャルルがナイフを振るう。

 

「仕事を放棄して。」

 

それを、手を切らないように受け止めて私は顔を殴る。

 

「こんなことしている私にはね!!」

 

私は顔を殴った。

 

「何を言っているんだい?」

 

「関係無い、ただの捻くれた独り言さ!」

 

私は、跳ねた。

さて、鬱憤晴らしもすんだことだし。潰しますか!!

 

「死なないようにISに祈っておきなさい!!」

「それはこっちのセリフだよ!」

 

私は背後に回るために加速する。足の力を最大限に使う。

 

「これなら!!」

 

シャルルはショットガンを瞬間的に呼び出し撃つ。派手にばら撒かれるようにして打ち出されたそれを丁寧に避けれるので避ける。ついでと途中にあった弾を掴み目の辺りに手首の力だけで投げる。

 

「本当に人間!?」

 

「一応ね!」

 

そんなやり取りしながら私は拳をシャルルはナイフとびっくり箱のように出てくる銃火器の類をそれぞれ振るう。

 

流石に銃火器は当たると痛いどころじゃないから、避けさせてもらってるけど。

 

避けることを最小限にとどめて。力と根性だけで押し返す。この場合はそうしなくちゃいけないと言うのがある。まあ、ドイツのときの守護対象が一葉ちゃんだったのから、今回はほぼ全域になるように力が落ち着いてきたってだけなんだけど・・・。あれ?これ初めて言った?

 

ワー危ないー(棒)

 

「って本当に危ないィィ!?なにそれ?」

 

私は下から上へ跳ね上げるような、足から出てきた隠し腕のようなものが持つビームサーベルの攻撃をバク転するように避ける。その隙を見逃さずシャルルはライフル銃をぶっ放す。そして、私はもう一つ重要なことを見逃さなかった。

 

『ねえねえねえねえねえねえ!あれ、僕の娘なんだよ!すげくね?すげくね?ヒャッホーカッコイイ!!さすが僕の娘だ!頑張れ!頑張れ!そんなどこの馬糞とも限らない青ジャージクソヤロウなんざぶっ飛ばしちまえ!!。やったやったやったやった!押してる押してる!頑張れ!シャルトットデュノアに栄光あれ!!』

 

来賓席で、小躍りしている金髪の青年にしか見えない三十台後半のオッサンが、とても嬉しそうに応援しているのを・・・。なんか、左手にスイッチみたいなのがあるし・・・。

 

 

「あの、クソ金髪やろうがァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!」

 

「なにがあったの!?」

 

驚いているところにもかまわず、フルオートで縦横無尽にビームサーベルが動いている。受け止める訳にも行かずに避けて破壊しようとするのだがそれは二本目によって阻まれる。シャルロット自身の腕と機械腕、合計四つの腕から繰り出される攻撃に私は翻弄されていく。

 

『え?あれ?なんだね君たちは、え?退場?今いいところなんだよ!!今、内の娘が悪魔のような奴を倒すまるで・・・ちょ!?運ぶな運ぶな~!!』

 

私は叫んだ、心の底から叫んだその言葉は・・・あ、警護の人たちが連れて行った。

 

「諸悪の根源は断ち切られたようだ・・・。」

 

「もう君の発言が何がなんだか・・・。けど隙あり!」

 

「くそ、君それは本当にラファール・リバイブ(シャルロットの専用機)かい?ジ・○に改名しろ!」

 

「僕だって知らないよ!!つか隠しきれてない!?」

 

シャルルは左手の散弾銃を撃ちながら距離を詰めてナイフで牽制するそして、駆動脚からもう一つの機械腕が一夏の零落白夜を思い出させるように展開し私の鼻先を掠め。距離をとった。その隙を見逃さずシャルルは足元にめがけてグレネードランチャーを発射する。全く意味のわからないものだったが。

 

「!?煙幕代わりか!」

 

趣旨を理解した。一刻も早く抜け出そうと私は前に動く。

 

殺気を感じた。そこには盾から割って出た凶悪そうに尖ったパイルバンカーを構えたシャルルが居た。

パイルバンカーとは、まあ当たれば強い。もう少し詳しく言うと杭を炸薬によって打ち出すだけのISの装甲が万能性を可能にしたロマン武器だ。だが、その火薬で打ち出すだけのパイルバンカー、というにはあまりに精緻なつくりとなっているそれは、明らかに機構が違うということが分かる、つまりどこの既製品でもないことに私は気付くべきだったのだ。

 

見る限りせいぜい射程が3m程度しかないであろう打ち出したパイルバンカーが最大まで伸ばされるそれを肝を冷やしながらバックステップのように避けたのだが・・・。

 

さらに伸びた。その杭は多段方式にむしろアクエリ○ンの無限○的に伸びた。それは私を吹き飛ばすのには十二分のものだった。それでも額に当たれば痛いのでとりあえず両手でガードしながら吹っ飛ばされる。

 

 

「・・・これが、限界か。最後に一つ、なにやってんだよアルさん。」

 

 

そう限界だ、シャルルの立場および私の立場を脅かさないように私が劣勢に見せかけるのにだ、まあ私のほうは腕力はあるし・・・けど、シャルルは違う。今はエネのちゃんの力で居てでも出で来れるし大丈夫だろう。さて、これから私は傍観者になろうかな。

 

『香・・・。』

 

エネが私に、いきなり話しかけてきた、珍しいね君が私に自ら話しかけるって。

 

『勝手に読ませてもらってるからな。』

 

んで?君が、私に(・・・・)何のよう?

 

『嫌な予感がするんだ・・・そう、私の私達の琴線に触れるような・・・。』

 

ふぅん・・・どれが、だね。まあ、誰でも助けるよ。それが私だし。

 

『ありがとう。』

 

どういたしまして。それはそうと、ラウちゃん劣勢だね。しかし、あの金髪クソヤロウとんでもないもの披露したな、こんな衆人環視の中で娘に第四世代兵器(・・・・・・)を使わせやがった。理由が自分の娘を勝たせるためだけにって、全くとんでもない親ばかだよ。これがばれたら世界に影響あると思ってるんだよ・・・。

 

気付かなかったけど、パイルバンカーだって第四世代のノウハウを使ってたし・・・。

 

『規格外だな。』

 

いや、第四世代の技術を取得した理由を君も知っているでしょ?ああ~、諸外国だって第三世代でしか開発が進んでないのに第四だよ?国際問題になるよ。本当に規格外なのは親バカ度だよ。

 

『確かに、そういえば。なんか、君の周りには似たような人間が居るな。』

 

はははッ、本当だよ・・・ヘンタイ英国紳士にチャイニーズホスト。現代忍者さんに百合百合黒兎さんたちに加えてブラック神風さんってねぇ。ああ、師匠・・・彼は柳韻さんに合えてないな。

 

『その名を聞くのも久しぶりだな。政府によって隠匿されているから仕方がないが』

 

うん、久しぶりに会いたいな・・・。

 

 

 

ドコン!!バコォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォン!!

 

 

突如として爆破音と爆風が私の頬を震わした。

爆音に導かれたように視線を音の発生源に向ける。そこには一夏、シャルルが居てそして異常を叫ぶように黒い戦乙女が存在感を発しながらそこに存在した。

その、状況は・・・。

 

『おい!!』

「分かってる!寝ている場合じゃない!!」

 

ラウラの消失を意味していた。

私は駆け出して、一夏とシャルルの二人と恐らくラウラであろう者の間に割って入り。その瞬間、袈裟に煌きが走る。その煌きを私は下から上へ跳ね上げるようにして蹴る。その煌きは刀の斬線。守護の対象は全部。つまり香は先ほどの戦いから疲労している二人を背に戦わなければならない。

 

『三秒だけ待ってくれ情報を持ってくる!!』

 

「分かった!」

 

私はアッパーカットのように剣戟を叩き受け流していく。回転運動によって背を逸らして避けて隙を見つけ最大の力で刀を拳で叩きつける。その攻撃に剣戟のカウンターを合わせるがさらに距離を詰めて回避し、膝と肩を足場に跳躍しその跳躍が最大に達した時PICで強引に方向転換させる。

 

すると、予定より早過ぎる情報が私の頭に叩き込まれた。エネが身柄説明のために康一に情報を叩き込むのと同じように『情報酔い』がやってくる。情報酔いに面食らいながら私は一撃を貰い吹っ飛ばされる。

 

そして・・・私はラウラの頭の中を一部だけ理解した。

 

 

 

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

私は確か……………織斑一夏と戦って乱入してきた相方に・・・。私は負けたのか・・・。

 

「嫌だ、負けたくない、あの暗い日々には戻りたくない!!力をもう負けを感じることのない力を、強さ…………を。」

 

『強さが欲しいか?』

 

その言葉がいきなり何かに問われた。口に出していたことも意識していなかったのだが…………その問いは、今までに問われれば、答えを迷うことはない問いだった、だが、今では・・・。

 

「…………私は・・・強さが欲しくないといえばウソになる。」

 

そう答えていた。言葉が考えてもいないのに次々に想いが言葉になって私の口から滑り出てくる。

 

『そうか、なら力を』

 

「だが、強さとは、なんだ?」

 

『決まっている。死と破壊だ。』

 

「それを司った私は本当に強いのか?

 模倣し与えられた強さを、ただ甘受しているだけではないのか?

 それを奪われた程度で、私は地獄と言っているのか?

 

 そんなのは強さじゃない。」

 

『そうやって洗脳されているだけじゃないのか?お前が思っていた強さのように、そう思わされているだけじゃないのか?』

 

「それだったら、きっと人の数だけ強さがある。

 捻じ曲がったように見える強さだって。

 真っ直ぐ見える強さだって。

 優しい強さだって。

 気高い強さだって。

 それは、星の数ほどに。在るって、そう思える。」

 

『…………。』

 

「だから、私は私だ!どこの馬の骨とも知らない奴の強さなど受け取れるか!!」

 

全ての想いが言葉となった時これが私の気持ちだとそう気付いた。ああ、やってやるとも国?世界?知ったことか。私は強くなる!

 

『お前は…………。』

 

「なんだ?」

 

『きっと、強くなったんだろう。』

 

「・・・ああ、かも知れないな。ここの人間と触れて…………最初はISをファッションかなにかと勘違いしているのかと思ったがな。そうじゃない、それが強さでもあるんだろう。」

 

本当にそう思う、優しさや厳しさ愛しさが人間を強くさせるんだろう。

 

『ああ、そうだな。本当に強くなった。』

何かが、優しい声色で子供の成長を喜び祝福する母親のようにそういっていた。

 

 

 

『乗っ取るには不自由なくらいに。』

 

私に、黒い何かに纏わり付く。

「グッ・・・なんだ!?これは!!」

 

魔王を髣髴させるような恐ろしい声が私の脳内を揺らした。

『ああ、この時を待っていた。発展途上の肉体に磨耗した精神、そして成熟した技術。どれをとっても我が憑り代にふさわしい。』

 

「・・・お前は…………なんだ?」

 

 

 

『我か?そうだな、冥土の土産として教えてやろうお前達の言葉だと。ヴァルキリー トランスプラント(  V     T  )システムだ。あの、ヴァルキリー トレース(V    T)システムというヴァルキリーの足跡を辿るだけの脆弱なものではない。我は、本人の意思とは関係なしに乗っ取りつくす(・・・・・・・)。さて土産は出来た…………それでは頂こうか。』

 

 

 

そこでラウラの記憶の供給は断たれた。

 



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三位一体の怒り

「あ゛あ゛ぁぁぁ!?」

 

ブチッ

 

私は攻撃を喰らい、吹っ飛ばされながら叩き込まれた情報を完全に理解した瞬間、頭の中で血管がニ、三本千切れたような音が聞こえた。それは、康一と私が入れ替わった直後に生じる情熱と似たようなものと一緒に、私の頭から肢体にじんわりと染み渡っていき、次第に熱を帯びていく。体の全ての放熱機関が全力稼動しているような熱で私は完全に怒っていることを理解した。

 

なぜ?だれが?ラウちゃんを邪魔しているの?ラウちゃんの意思を無視してまで変えるべきものなの?分からない、人の意思を潰してまで何で君は存在しているの?いや君と呼ぶのもおこがましい。鉄屑ごときがラウちゃんの意思を無視しているんじゃない、従えよ、それが鉄屑の仕事だろうが。誰だ、こんな鉄屑を作ったのは、身から錆が出ているじゃないか。ちゃんと押し込めよその体内に深く深く捻じ込んでやる。ああ、溶けた鉄でラウちゃんと同じ状態にしてやるって言うのも…………いや、それはラウちゃんに悪いなぁ、そこまでターミ○ーター好きじゃないし溶解した鉄に埋め込んであげよう。それじゃあまず……………。

 

 

 

「貴様をぶち殺す!!」

 

 

私は格ゲーなどしか見られないであろう空中受身をして着地した。

 

 ◆ ◆ ◆

 

「……………。」

 

私は、情報を奪った。全くふざけるんじゃない。なんだ、こういうことだったのか、私達をよっぽどなめていると見える。ISが人を乗っ取る?笑止。ふざけるな。私達をそんな使い方している大馬鹿者は一体誰だ。いや、それより今はこの鉄の塊をスクラップにしてやるのが一番だろ。この怒りを、精一杯ぶつけてやる。待ってろどんなに隠れてでも確実に息の根を止めてやる!!

 

「さあ、ISの底力。見せてやろうじゃないか!!」

 

私はある世界へ向かった。そう眠れる獅子、いや狐を起こすために。

 

 ◆ ◆ ◆

俺は、これまでの俺とは違う俺の物語を見ていた。

 

「…………あぁ、なんだやっぱりこれが俺か。」

 

それでも俺と変わらず、死に物狂いに何かをなそうとした所で、それを横から掠め取られる、ただそれだけの人生だった。だから何もやらないし、何も求めない。だけどこの画面の奥の俺は違う。それでもその俺は諦めなかった。

 

「それより、その使い方はねえよなぁ。」

 

なんだ、そのISの使い方は……………?。

 

 

 

「うん、よく言った。」

 

エネがそこに居た。

 

いきなりだが、問い一。この世界はなんだ?

 

エネのISコア()

これならば、今の状況を完全に完璧に説明できる。

この世界で死ななかったのは?『死を感じたことがないから。』

この世界で人が居なかったのは?『人じゃないから、もしくは処理能力の削減。』

この世界に電気がないのは?『完全に整地されている世界でエネが支配しているから。』

 

全て、繋がった。そして、エネはこういうだろう。

 

「「じゃあ、一緒にぶっ殺そう。」」

 

あ、まだ、動機が分からなかったわ。

だが、そんなものぶっ殺すのには必要ない、怒りを思考に変えて相手を奈落の底まで落としてやる!!

 

 ◆ ◆ ◆

 

私は着地して怒りの力をそのままに足に力を込めて走り出そうとしたその瞬間。情報酔いが訪れる。それはエネがやってくる証、まず、エネの話を聞いてからでも遅くはないと動きを止める。

 

『康一を連れてきた!!』

 

……………はい?いやいやいやいやいやいやいやいやいやぁ!?なにやっちゃってるの?

 

『一緒にぶっ殺そうぜ!』

 

スポコン漫画とでも間違えそうになるくらい爽やかに殺害予告しているんじゃない!!

 

『いや、康一君も了承したし。』

 

………………はぁ、しょうがない。

 

『うんうん、素直な子は好きですよぉ』

 

いつか殺す。

 

『屏風のトラを捕まえるにはまず屏風から出さないといけない。』

 

比喩だ。

 

『殺気がダダ漏れなんですけど・・・。まあ良いやそれじゃあ君の体、使わせてもらうよ』

 

なっ!?・・・あれをやっちゃいますか!?

 

『敬語?ああ、ISがISであるが故の本当の力を見せ付けてやる!』

 

はぁ、ここで常識人ポジに納まるのはちょっとどころじゃなくおかしい様な気がするけど。仕方ない、なら早速行こう!!

 

 

 

 

『「「行くぜェェェェェェェェェェェェェェェェェッ!見てやがれクソヤロウどもが!!」」』

 

 

 

 

 

私は、俺はいや分身した。

 

「おお、俺がもう二人。」

「中身違うけどね。」

「ああ、ついに、ついに・・・もう、これ問題あるだろう。」

 

三人の同じ顔が一堂に会した。

 

「どうしたんだ?俺二号よ。」

「君、同じ顔が目の前にあって気持ち悪くないのかい!?」

「そりゃあ、エネが俺を複製して電脳空間にぶち込むくらいだからな俺がもう一人存在してもおかしくはない。」

「「なんかもう色々麻痺している!?」」

「エネ、お前が言うことじゃないだろう?あ、それはそうと、俺ニ号よお前とはどこかで会ったような気がするんだが…………。」

「べ、別に気のせいじゃない?」

「あ、やべぇ本当に気持ち悪いわ。」

「そんな簪ちゃんの発言から伏線もってこなくていいよ!!伏線かどうかすら怪しいけどね!」

「あ、シュールストレミングの匂いがする。俺ニ号よ使ったか?」

「伏線だよ!前々回のネタ晴らし今やるなよ!!」

「説明しよう!シュールストレミングとは世界一臭い食べ物のことである!」

「エネ、今週のビック○ドッキリメカ見たく言うんじゃない」

「突っ込みどころはそこなの?」

「今週のビックリドッキリ康一は!」

「自分のことをネタにするなって言うか康一君はどこのメカニックドックになってしまわれたのですかな!?」

「おお、さすが俺。口調がおぼつかない。」

「言ってやるな康一、それはさくsyゲフンゲフン…………やさんって可愛いよね。」

「マジ天使!!」

「強引な路線変更!?おい、エネちゃんもうそろそろ行こうよ!むしろもう怒りとか彼方へ行ったんだけど…………。」

「憎しみは何も生みません。」

「だったら康一君使って(・・・)分身するなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

「ええ?じゃあ行く?」

「イクイク~!。」

「二つ返事かよ!!畜生!!」

 

私は、いや、私たちは一斉に駆け出した。

 

「「「喰らえグダグダパワー!!」」」

 

「「戻ってきたと思ったら、何かやってきたぁ!?」」

 

その掛け声と共に、康一たちが三方向に飛び散りそして一箇所に攻撃を加え、その戦乙女の巨大な体がギャグ漫画のように吹っ飛び壁に叩きつけられる。

 

「ひゅうすげーな、っていうか、これかなり疲れる。」

「まあ、電脳空間の逆と考えていいだろう。」

「本当にこればかりは止めてくれよ・・・」

 

三人が三人とも全く別の感想を言った。だが。

 

「「「けどコイツをぶちのめすのに必要はないな。」」」

 

口角を吊り上げ凶悪そうに笑い、そう宣言する意思に変わりはなかった。

 

 

 



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過撃

彼は・・・後にこう語る。

 

『ええ、はい。いい友人だったと思います。多少突飛な行動を見せていたのは分かってましたし、それを含めていい友人です。』

 

『ですが…………まさか、三人になるとは。』

 

『はい、三つに分かれました。綺麗に三つにですよ?それまで私が持っていたコンプレックスのようなもので私は周りが見えなくなっていたのですが・・・それが一瞬にして目が覚めましたね、ええ、それ以上の衝撃でした。』

 

『最初は目を疑いましたよだって三人になっているんですよ?幾らおかしい行動をしているひとだからと言って三人になるって言うのは信じられませんでした…………ただ、ただショックです。』

 

                                     織斑一夏

 

 ◆ ◆ ◆

 

そこは、学年別タッグトーナメントの会場…………だった場所そして、今は三人の独り舞台であった。

 

文法的には間違っていない気がしないでもないがあっている。実際に三人(精神的に)一人(肉体の構成的に)であるのだから。

 

「俺かく乱!」

「私決め手!」

「…………解析を担当しよう。」

 

そう言いながら、三人とも配置につく康一は素手で戦乙女の真正面に、エネは大太刀と短刀をもち右半身側に、香は遠方で待機している。

 

『反芻 対象 篠ノ之流、織斑千冬、勝利条件。項目篠ノ之流。カウンターとスピードが主体 項目織斑千冬。カウンター攻撃前傾姿勢が特徴 項目勝利条件。エネの力で現世界にてVTシステムの沈黙の確認。反芻完了』

 

康一が思考し、その思考を元にかく乱する、方法としては。発生させた攻撃にカウンターをさせそれをカウンターで返すの繰り返しである。感覚的には…………。

 

 

 

『クッ!強い…………』

 

『フハハハハハハハハ!その満身創痍のその体ではこの攻撃には耐えられんだろう!!喰らえ!AI・TEH・ASHI・NU………エターナルフォースブリザード!!』

 

『ふっ、それを待っていた!!』

 

『な、ナンダッテー』

 

『名づけて!エターナルフォースブリザード返しィィィィィィィィィ!!』

 

『ナニィ!?一か八か…………エターナルフォースブリザード返し返しィィィィィ!!』

 

『ならば!エターナルフォースブリザード返し返し返しィィィィィ!!!!』

 

 

 

これに近い。

だが、これは実際にやるとわかるが、泥仕合は体力の多いほうが勝つ。そしてこれが康一、一人の状況であったのならば負けが確定している状態であるのだろうが…。

 

『ふぅ、これもきついな…………VTシステムの機体分布状況を解析をして効果的に効率的に破壊しなければ、また復活するからな…………プラナリアかコイツは。細胞自体を強力な力で叩かなければいけない。』

 

 

エネは康一の動きを阻害しないように戦乙女黒い体に短刀で触れる。攻撃対象とならないような微妙なラインをついて触れるこれは解析。

 

 

「香座標送った!!」

 

「OK!発射ァ!!」

 

 

その声と共に、適切なかく乱と、適切な攻撃位置の解析それに…………過剰な攻撃力が一体となった!!

 

香が残像が残る程度の速さでアリーナを駆け抜けるその勢いをそのままに右肩を渾身の力を込めて拳を打ちつける。その攻撃を喰らい肩がどろりと融解する少しグロテスクな状態になったがそれでは終わらない。

 

エネが空中に飛び大太刀を投げ、短刀を持って突撃、かく乱している康一が投げられた大太刀を手に取り肩口から袈裟に切りつける。それに反応したカウンターがやってくるが。香の一撃がやって来る、戦乙女の体を揺らして妨害し体勢を崩す。そして、標的が香に変わるが

 

「ごめんね、切り札は私じゃないんだよ!」

 

香が力の限り戦乙女に近づきそのまま、すり抜ける。そして康一が首に抱きつきながら切り、入れ替わるようにエネが短刀で攻撃し康一が逃げ、また入れ替わり香に攻撃をさせる。

その、康一達の最大攻撃に目が行くようになるのだが・・・。何を思ったか康一たちが一箇所に集まった。

 

「まったくだ。切り札は俺じゃない。」

 

 

         「俺達だ。」

 

 

康一たちは一斉に真っ直ぐに走り出した。纏めてかかって来ることはこの場合自殺行為にしかならない、戦乙女の装備である刀と言う特製上、比較的広範囲に攻撃を加えることが出来るため一箇所集まることは適さない。

 

つまり。

 

「オォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォッ!!!!」

 

光剣を携えた一夏が怒号を発しながら戦乙女を一刀の元に両断した。

 

「シスコンの力…………なめているんじゃねえ。」

「…………すごいセリフがかっこ悪い。」

 

その言葉がこの戦いの総評に…………。

 

「ならない!!」

「・・・どうしたの?エネちゃん。」

「いつものことだ、諦めろ。」

「君はいつもそんな目で見ているのか…………」

「ああ。それはそうとよく一夏の協力を得たな。」

「確かに解析していたらVTシステムはエネルギーの流れ。つまりコアのフラグメントマップ…………君には話したと思うが遺伝子のようなものだな、それを強引に書き換えるものだったし。それをぶった切れば終わりって言うことさ。」

「情報をこっちにくれてもいい物を・・・。」

「けど康一君、よく『口裏合わせてくれ。』で、君はあそこまで啖呵切れたよ…………。」

「信用に足る奴だからな。」

 

「「…………。」」

 

「それじゃあ、どうするの?俺。」

 

と言いながら。康一は倒れた。

 

「本来、君はここに居てはいけない人間だしねぇ。」

「コアに戻すの早過ぎない?って言うかこの衆人環視の中どう誤魔化すわけ?」

「香それはな…………何もしない。」

「ええ!?」

 

特に襲撃という事ではないがそれなりに傷跡を残してこの大会は幕を閉じた。

 

 

 

 

 



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保健室にて

なんかサブタイが犯罪臭い


 

パチッ

 

…………変な・・・夢?いや、ありえない。あれは現実だ。

それはまあ、いい。どこのベットだ?とりあえず起きる・・・。

 

「ウガッ!?」

 

激痛が走った。もう痛い、何度かこの痛みを経験しているがやっぱり慣れないな。

俺が、この痛みを経験しているのは、うっかり密入国したときだ。俺が目を覚ますと、確実に体に痛みと浦島太郎のように、時間の跳躍が起きる。予測としては最初は、考え過ぎ。次にエネが使っていた。最終的には…………。

 

「俺がおかしいのか?」

 

そう、エネのほかに居たもう一人の(人格)がすり替わっている仮説。…………だが、調べる方法は………。

 

「ああ、おかしいな。」

 

横合いからいきなり声が聞こえた、その声に驚き一瞬だけ硬直した。だが、それだけでも激痛が走りリラックス状態にまで何とか落ち着かせ、その声の主に視線を送る。その声の主は。

 

「担任殿ですか・・・。」

 

「いつもそれで呼ぶな、貴様は。」

 

担任殿改め、織斑千冬教諭が居た。…………たぶん、分裂のことだろうな。

 

「ええ、まあ呼称としてはあってますし。問題ないでしょう。」

「そうなんだがな…………いささか、他人行儀過ぎではないか?」

 

ん?え。だって。

 

「実際に他人じゃないですか?それでも俺は精一杯にフレンドリーに接していたつもりですけど・・・。」

 

それ以外に何がある?一夏の情報源か、世間話程度しかしていない。それにしたって一夏の情報ぐらいしか取得していなかったし。

 

「舐めた態度がそれとか言うなよ。」

「分かりました。それで、何の御用件です?」

 

とりあえず、俺はとぼけた振りをした。何されるか分かったもんじゃない。って言うかあそこに一葉が居たら無言でメスを持つに違いない。

 

「とぼけるな、貴様あの分裂というか分身と言うか分裂と言うかあの所業はなんだ?」

「分裂?担任殿…………なに言っているんですか?」

 

微妙な顔の機微で人間は感情や心情、思考を覗き見るという。

 

「確かに俺は変な人間ですが…………現実的に考えてくださいよ。」

「……………ああ、すまなかった。」

 

結構あっさりと引くなぁ。まあ、現実味を帯びていないからな見間違いでしょう、で済むもの。

 

「それは横に置いといて、俺の体はどうなっているんですか?体中がすごく痛いんですけど…。」

「全身の筋肉痛だ、全治三週間。一週間で動けるようになる。」

「わざわざありがとうございます。」

 

それだけを伝えに来たのだろう。それでなくとも先の分身のことを聞きに来たのだろう。

そしてなぜか、担任殿が黙った。

 

「…………なあ、相澤。記憶が飛んだりしたことはあるか?」

「なぜ・・・それを?」

「それは、小学校3年のとき以降か?」

「ええ。ばれては仕方がありませんね。頭がおかしい人と…………まあ、思われてるでしょうけど。それでも、隠しておきたかったんですよ。」

 

とくに思っていない。口からでまかせだ。

 

「…………なぁ。」

「なんですか?」

「例えば、お前が。どうしようもないくらいの過ちを犯したときお前はどうする?」

「そうですね…………。」

 

何か変なことを言い始めた。過ちの数なんてどこかの仮面ライダーに問われたら、『今更数え切れるか!』とマジレスするところだが・・・。

 

「俺はその過ちと戦うと思います。」

 

まあ、勝てるか分からないし三十六計を使わせてもらう必要も出てくる。特に過ちを犯したこともないしな。

 

「それはそうと、一つ質問していいですか?」

 

まあ、聞かれたし。聞き返してもいいだろう

 

「先生。俺が…………いや、俺が俺以外の一人称になったり。絶対に俺がしえないようなことを。俺がしたようなことがありますか?」

 

恐らく、俺がうっかり密入国というか、記憶が飛ぶ。つまり仮説もう一人の俺の中の人格が入れ替わっているときに何かをやらかしている気がするのだ。俺はそれを知りたい。むしろ知らなきゃならないという衝動に駆られている。

 

「……………ああ。あった。」

 

「それを記録しているような情報媒体に心当たりは在りますか!?・・・痛い。」

 

やっと出来たつながりに、思わず体を起き上がらせようとしたが、やはり激痛が走った。

 

「無理をするな。」

「ええ、なれないことはするものじゃありませんね…………。」

 

冷たいような声が耳朶を叩く。それに俺は癒されたように落ち着き、首を右に向けて窓の外を見る。顔に浴びるように夕日が差し込み少し、顔を歪ませる。

 

「先の問いはどうあがいても、貴様が確認することは出来ない。としか答えられない。」

「…………そうでしょうね。」

 

国際機密のオンパレード学園って二つ名を付けられてもおかしくはない場所だそれなりにセキュリティは上がっているのだろう。…………確か、ここは日本が管理運営を任されているんだよな・・・その内ケチってセキュリティを下げることも考えられなくもない。世界最強居るから大丈夫だろー的な感じで。無いか。無いな。

 

「相澤。教師は・・・辛いな。」

「担任殿が選んだ道でしょう?…………ああ、それじゃあ、何で教師になったんですか?」

 

まあ、気になるし。と俺は話を続けさせるべく質問を挟んだ。

 

「そうだな…………まあ、私達姉弟には親がいない。と言うより、失踪した。」

「そこらへんは、聞いています。と言うより大体予測はついています。」

 

いつの日か一夏がそんなこと言ってたな。

 

「一夏が喋ったのか?」

「ほのめかす様な事は多少に。」

 

もはや自虐ネタとして機能しているけどな。俺と一夏だけの場合だが。

 

「そして、私は荒れた。一夏に手を挙げまいと抑えてはいたが、苛立ちを一夏にぶつけてしまったりしたこともあったがそれなりに、苦労しながら暮らしていた。」

「良かったですね。」

 

 

「……………なにがだ?」

「荒れることが出来て、ということですよ。人は本当にいやなことがあるとあれるって事も出来なくなりますからね。」

 

実体験だし…………。

 

「そうか…………続きを話す。ISの登場で私は世界中にその名を知られることになった。」

「IS世界大会ですか・・・。」

「ああ、そこで優勝した・・・のは分かっているな?」

「はい、結構な報道がされていました。二回目の優勝を逃したことも。」

 

あの時はドラエモ○がつぶれる位報道されていたからな、記憶に新しい。

 

「あれは、「一夏が何者かによって誘拐されたから。ですよね?」・・・ああ。その通りだ。」

「ええ、一夏に聞きました。」

 

「そして、まあ、私は恥ずかしながら私は頭の方が弱くてな。安定した仕事が欲しかったんだ、そしたらまあ、教師だろうと。」

「なるほど。そしたら二回ぐらい優勝すれば日本国にIS学園の教師にもしくは教師免許をくれそうになったって所ですか?」

 

「ああ、そしたらあの騒ぎだ。すぐに行ったね殲滅しかけたね。」

「あの、弟の事になると妙に人間臭くなるの止めてもらっていいですか?」

 

織斑千冬の特徴その一だ。それに、守ろうとした手段の途中で守る対象が無くなったら本末転倒だしな。

 

「そんなに?」

「はい、獣がどぎつい体臭を出すのと同じように、隠そうともしないくらいです。そして貴方が教師になった理由は要約すれば弟のため…………ですか?」

 

「ああ。」

「そうですか。」

 

大体どころか完全にそれとしか認識できなかったわ。まあ、それについて得に思うことは無い小学校に持っていた嫉妬の念の自責も慣れたし。

 

「そうだ、気になったことがあるんですけど…………。」

「ん?なんだ?」

 

一つ、俺の知識を裏付けることをしなければならない。その説明は・・・。

 

「金銭面…………厳しかったんじゃないですか?」

「いや、実際には親戚筋がお金を振り込んでいたらしくてな、そこまでは苦労していないが私の癪に合わないからな、ちゃんと全額使わずに取ってある。」

「なにそれすごい。」

 

と言ったものだった。

 

「まあ、そこまで・・・と言うか親戚を小さいころ親に合わせて貰ったんだが、そこまで人相のよろしい人じゃなかったんだ・・・。」

「…………それは・・・心配になりますね。」

 

いかん、この人・・・。

「とまあ、このくらいだ。ずいぶんと話し込んでしまったな。用事は済んだ私は帰るとしよう。」

 

良かった・・・やっと帰る・・・。

 

「おい、相澤。貴様。良かった・・・やっと帰る・・・。とか思ってないか?」

「そんなことは無いです。」

「そうか・・・。それじゃあ、退席させてもらう。」

 

と言って担任殿は恐らく保健室であろうベットのそばから離れスライドドアの音を鳴らし帰って行った。

 

「どこからコピー&ペーストしてきやがったー。」

 

はぁ。疲れた…………。

 

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

声が同じ…………だが行動、言動がまるっきり違う。

だれだ?・・・。

 

本当に。あの。奇人変人変態奇態のあのコウが?・・・普通に喋る?ありえない。

 

いや、私が見ていないだけなのかもしれない。それより、早く寝よう体と心を休めて。

 

あの衝撃的な出来事を忘れてしまおう。

 

 

 



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お見舞い。

 

 

 

保健室 入室生活 一日目

 

 ◆ ◆ ◆

 

「まあ、わかっては居たが、一夏とデュノアだけか。」

 

俺はお見舞いに来ている一夏とシャルロットデュノアを首だけで見やりながら、そう言った。完全に周りからは無評価だな。まあ、それが便利で一番いいんですけれども。

 

「しょうがないだろ、日ごろの行いだ。」

「あの、康一はなにやっているの?」

「「何にもやっていない。」」

「あ、そういうこと。」

 

人並みをかなりの間続けていると、人に認識されなくなって来るんだよ。ミス○ィレクションを使えるまでにあるからな?

 

「あぁ辛い。口動かしているだけで疲れる。」

「本当に大丈夫か?」

「大丈夫じゃねえよ、記憶が飛んだと思ったらいきなりここだぞ?大丈夫通り越してびびるわ。」

 

なんか、二人とも居心地が悪いとでも言うように目をあからさまに逸らした。お~いそれじゃなんかあったと自分でいっているようなものだろうが。まあ、分かっているからいいんだが・・・。

 

「あ、それよりデュノア。なんか大会があったらしいが…………事の顛末はどうなったんだ?」

「ああ…………。」

 

デュノアが言葉を濁した。

 

「そうだね…………アクシデントがあって中止になったよ。」

「おお。一夏やっぱりこの日襲撃!!だったじゃねえか。」

 

まあ、正確には違うけどな。あの記憶が本当ならだが・・・。

 

「あ、ああ。そうだな…………」

 

同じく一夏が何かに気を使っているように言葉を濁す。その先は…………。保健室のドアの向こうか?・・・誰かを招く予定でもあるのか。しかしそれ以上に気になる事があるんだが…………こいつら、と言うよりシャルロットデュノアのほうが一夏に対してのパーソナルスペースが狭まっている。

因みにこのパーソナルスペースは人との距離をあらわし、親しくなるにつれてその距離が狭くなっていく。

つまり……………一夏に惚れた?

 

「おい、康一どうしたんだ?冷や汗が止め処なく出ているんだが…………。」

Êtes-vous en amour avec le gars à côté!?(あなたは隣の男に恋をしていますか!?)

「ん?何語?…………どうした?シャルルそんなに顔を赤くして?」

 

ビンゴカヨォォォオォォォォォォォォォォオォォォッ!?

おれは、体の痛みを無視してコッソリと布団の中で握りこぶしを作った。悔しいとかそういうことではない、このことがばれたら一夏があの最強の親父さんに殺される!!。

 

「おい、デュノアの娘っこ!お前の親父には絶対にばらすなよ!!いいな!?」

「う、うん…………え?」

「どうした?」

 

マジでどうしよう…………。一夏は面白いからいいのに・・・。

 

「んで、康一。お前さっきはなんて言ったんだ?」

「お前にだけは教えることはできねぇ。」

 

全てが水の泡になる…………いや一夏の人生が途轍もなく水の泡になるだけだから俺には何のデメリットもないからいいか。

 

「そ、それはそうと・・・どうするの?」

「ああ、そうだった。康一、お前に合わせたい奴が居るんだ。」

 

合わせたい奴か、何が目的で?

 

「誰だ?」

「まあ、見れば分かるのかな?」

 

とデュノアが言った。まあ、お前らが大会に関することだったら知らないとしか言えないんだがな。そして、デュノアが入ってきていいよ。と一声を掛けた。

 

「…………。」

 

そこには、銀髪の眼帯少女が居た。…………まあ、見たことはあるが、知らないとしか言えないな。

 

「えっと・・・だれ?見たことない女子だけど。」

 

その言葉を言った瞬間女子二人からものすごい…………たとえるなら、服の中にカエルを入れられながらも、親の仇敵を睨み付ける様なそんな、何とも言えない表情を俺に向けていた。

 

「女子って・・・まさか、全員の女子の名前を覚えているって言うのかよ。」

「おうよ、AからDまでランク付けして。その内AからDまで顔と名前は覚えたぜ。」

 

あ、女性二人の表情がカエルを見る目に変わった。それはそうと。

 

「康一、それランク付けする必要なくね?」

「まあな、本当に全てってわけじゃないけど。それでお前、誰だっけ?」

「ひでぇ。」

「冗談だ。そんで、そちらのお嬢さんは俺に何のようだ?」

 

「わ、私はラウラ・ボーデヴィッヒ少佐です。」

 

そういった。いや、コミュ症?まあ、俺も似た…………いや、ほかの人に迷惑がかかるから話していないだけだから!いいぜ、俺はコミュ症ではないことを…………身をもって知らせてやるぜ!!

 

「ああ、よろしくなボーデヴィッヒさん。」

 

完璧だ、完璧な対応だ嫌味にならないような笑顔と声色、全てがかんぺk………………え?

 

「あっラウラ!」

 

なんか涙を溜めながら走り去っていったんだけど。つうか俺がなき泣きたい・・・。もう女子の表情が親の敵を見る目になっている。

 

「俺なんかした!?」

 

と言うより俺のもう一つの人格!!俺の叫びを無視するかのごとくデュノアあとを追っていった。そうして必然的に俺と一夏だけになった。

 

「はぁ…………俺が言うことじゃないけど…………鈍感め。」

「本当にお前が言うことじゃねえ!?」

 

一夏にだけは言われたくなかった…………いや、ほぼ全域の女子に人気一部熱狂しているし。………本当に写真には儲けさせてもらってますよゲスガオ俺の顔も売れるんだったら幾らでも撮るけど、人に不快感を与えない程度の顔だし商品価値は皆無だな。

 

「康一・・・お前一瞬で興味の対象が変わらなかったか?」

「んなこたぁない。そんで・・・あいつはなんなんだ?」

 

とりあえず、聞いておかなければいけない。そうしないと言動に矛盾が生じるからな、口調に矛盾が生じているのはご愛嬌だ。

 

「…………俺たちの仲間だよ。」

「仲間…………ねぇ。」

 

俺の記憶が失われている(となっている)期間にクラスか何かに加入した転校生と言ったところか。一部知っているが全てを見た訳じゃないからな、想像で補うしかない。だがその想像で補う部分にノイズが走った。

 

「なあ、俺の携帯電話知らないか?」

「ん?ああ、ほら。」

 

と言って携帯を手渡された。まあ、これだと向こうで警戒されると言うデメリットがあるんだが…………まあ、いいだろう。俺は、一夏に静かにするよう唇に人差し指を当て、数回のコールが鳴りそして電話先が応対した。

 

「私だ。大尉殿はいるか?…………あ、ごめんごめん俺だよ康一。」

 

「うんうん、ごめんね冗談が過ぎた。そんで隊にラウラってやつはいるか?」

 

「へぇ、ああ分かったありがとう…………会合?ああ、ちゃんと全員出席できる。そう、それじゃ。」

 

「良かった・・・一夏ありがとう」

「誰と話していたんだ?」

「うん?母さん」

「ウソ付くな!母さんに大尉ってなんだよ!?」

「実は俺の知り合いに軍属のような奴が居るんだけどそいつに話を聞いてきただけだ。ほかに心当たりがあるわけじゃないしな。」

 

まあ、気に入らないと言うわけじゃないからどうでもいいんだが…………。

 

「それに…………女と爆弾は丁重に扱えとばっちゃが言ってた。」

「ずいぶんとハードボイルドなおばあちゃんだな。」

「それでも、女に優しくしておいて損ってことはないからな。」

 

そう、言ったとき。一夏は疲れたように溜息をついて。

 

「最近、お前が分からなくて疲れるよ。」

 

とそういった。

 

「すまんな。」

「気にするな。それじゃ、俺はこの辺で。」

「ああ、じゃあな。」

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

こうして、入室生活一日目は終了し二日めに突入する。

 

 



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お見舞い。2

 

 

保健室入室生活 二日目

 

 ◆ ◆ ◆

 

「なんだ?お前らまで来たのか?。」

 

と、いきなりだが俺は横にあるいすに腰掛けている金髪の少女とツインテールと言う人類最高の発明を遺憾なく発揮している少女が…………つまりセシリア・オルコットと凰 鈴音がそこに居た。

 

「何よ、来ちゃいけないわけ?」

 

「全然そんなことはないが、むしろ超嬉しいわー。」

 

「そんな棒読みで言われても全然嬉しくないわ!」

 

「こんなすごい美少女にお見舞いに来てくれるなんてー」

 

殴られた・・・。それにしても、何でこんなところまで?

「まあ、だけどお前らは何でこんなところまで?正直顔も見たくないくらいに嫌っているはずだったけど?」

 

これは、前に一夏の周りをあざ笑うがの如くニヤニヤしていたら、ばれたのだ。ものすごい剣幕で起こられてそのころから行動を自粛していたのだが、まあ、目の前にラブコメの波動を垂れ流しているような人間が居たらワクワクするよね。

 

「はぁ…………あんた、本当に覚えていないの?」

 

「悲しいことにな。」

 

と答えるしかない。全く俺が気絶したときはいつもこうだ。いや今回は違ったか。

 

「そんで、お前ら本当に何しに、ハッ!………一思いに・・・やりやがれッ・・・!!。」

 

「殺さないから大丈夫よ。」

「相澤さん・・・貴方すごい思考回路していますわね・・・。」

 

オルコット嬢はいきなりなんだ?冗談なのに・・・。

 

「まあ、オルコット嬢よ冗談だから気にしないでくれ。それと…………早く何しに来たのか言ってくれないか?」

 

はよ!はよ!

 

「ああ、今日はあの…………この場合日本語でどういえば?」

「ううん?借りを作ったって言えば言いと思うわ。」

 

はぁ!?借り…………ねぇ?何をしたんだか。

 

「そんで、まあ、助けてもらったからそのお礼に「殴りに来たと。」そうそう、こうやって握り拳を作って…………ネッ!!「ちょ!?けが人だって!!」何よ…………」

 

あぶねぇ・・・辛うじて理性はあってよかったな・・・。いや、獣じゃないわけですけどね。つうか寸止めでありがとう!

 

「あの・・・鈴さん?一応けが人なのですから。」

「大丈夫よ、ゴキブリに相応の知能を付け足したような奴なんだから。」

「酷くね?」

 

確かに、それなりに酷いことはしてきたけど・・・。軽い奴だよ?

 

「あ、それじゃあ、凰、俺の過失で返済。」

「へ?」

凰が訳が分からないと言うふうに顔と声色を歪ませた。

 

「オルコット嬢は…………意図的にプライドを傷つけて悪かったな。ほい返済。」

「はい?」

同じく訳が分からないという風に顔を歪ませ、俺は続けて言葉を重ねる。

 

「はいこれで、借りとか貸しとか考えなくていいよ。」

 

と言うより、こいつ等に貸しも借りも作りたくないわ。

 

「あんたねぇ………。」

 

おっと、まだ文句が付きそうだ。

 

「大体、俺は借りを作るような人間じゃない。俺が何をやっていたのかは知らないが、絶対に褒められるようなことはしてねえはずだ、だから、そんなことは思わなくていい。………………まあ、結局は俺が天邪鬼なだけなんですけどね。グッフゥ!ボディはまずい………。」

 

殴られた・・・それでも、好感度は下げただろ・・・。腹いてぇ。

 

「ふざけるんじゃないわよ。」

 

「借りは作っておいて損はないですわよ、私のような清廉潔白な人物であればなおさらのことですわ。」

 

「オルコット嬢よ清廉潔白とは心が清くて私欲がなく、後ろ暗いことのまったくないさまのことだぞ?」

 

「清廉の部分は当てはまらないわね。」

「日本語を勉強してきますわ…………。」

 

余談だが、このあと漢字検定一級を取得したと言う話だ。

そうして、和解したような感じになたように見せかけていた、のはそうでもいいとして、この二人に情報源になってもらおうかね。

 

「なぁ、クラスでの事件とかねえの?」

 

「男子が女子だったわ。」

 

「ああ、デュノアの娘っこが性別をばらしたのか。」

 

「知ってましたの?」

 

オルコット嬢が不思議そうに俺を見た。

「まあ、見抜けなかったのは先入観があったのも原因の一つだろうが、わからなくはなかったな。」

 

ナイチチだろうと、男性と女性との性別を認識することは可能だ。

 

「どうしてかしら?なぜかアンタを殴らなければならないような気がしてきたわ。」

「気のせいだろう。」

 

ナイチチという言葉に反応したか…………。それでは、話の続きだが。男性と女性の違いは胸と性器などが顕著な例だが、それらを全て隠したところで、女性の骨盤は男性のそれより大きい、骨盤を削るとあかんことになるので削れないのだ。大体骨は削れない、つうか推奨できない。手間も何もかもかかる。

 

「男性は、匂いで異性を判別しているらしい…………まあ、平たく言えば勘だな。」

 

骨盤で分かったわとか言えないし前から知っていたとかご法度だ。

 

「勘って・・・。」

「ここの人間は、最初からIS一本道って言う奴も多いからな、男かどうかなんて調べられる訳はないだろうな。」

「確かに、私を含めかなりの人たちが騙されてましたもの。」

 

あれほど見事な男装だったらな、まあ、中性的な顔を持っているからそれも原因の一つかもしれない。

 

「そうだな、そのほかには?」

「ないわね。」

 

そうか…………、そういえば一昨日辺りからすごいラブコメの波動を感じた。ってか最近一夏達見れてないなぁ。・・・恋ねぇ。

 

「はぁ。凰、オルコット…………恥を忍んで頼みがあるんだが・・・。」

 

「なによ、気にせず言ってみなさい。」

「そうですわ、一応。この学園の生徒なのですから、助けるのはやぶさかにはないですわ。」

 

と、二人とも口を揃えてそういってくれた。まあ、さっきの借りの件もあれで解決したとは思ってないんだろう。結構、義理堅い性格をしているからな。

 

「それじゃあ…………女の子に泣いて逃げられた、さてどうしたら良い?」

 

「なにやったのよ。」

「女性を泣かせるなど、紳士のやることではごさいませんわ。」

 

いきなり人を敵対するような目で睨み付けてきた。やむにやまれぬ事情・・・と言うより俺にはあんまり覚えがない。確かにあのような不思議な現象を感じたが・・・。

 

「頼む。正直、あんまり波風を立てたくない。」

 

「…………相談に乗ってあげてもいいけど、情報が少な過ぎるわ。」

 

「そう・・・ですわね、状況を教えてもらいませんと。」

 

まあ、確かになぁ…………だけど、名前を出したら大変なことにn「相手はラウラ・ボーデヴィッヒだ。」

 

「「ハイィィィ!?」」

 

あ、ハモッた。

「…………あの状況から、よく顔を合わせようと思ったわねぇ。」

「にわかには信じられませんが。」

 

背筋を震わせながら、二人ともがそれぞれの感想を言った。・・・俺なにやってんのマジで。そうして、二人は少し考える。

 

「はぁ、まだラウラのことはよく分かってないけど…………真っ直ぐないい子よ。」

 

「はい、悪い意味で純粋でしたわね。」

 

「なるほど、ひねくれ周り過ぎていろんなものが真っ直ぐになったって訳か。つまり・・・お前らの視点で絶対的な悪のような存在になった、そして何かの拍子に。お前らの視点で善のような存在になった。ってことか?」

 

俺は推測を言った、これは情報の断片を繋ぎ合わせて作った仮説だ。

 

「ええ、そうよでも…………きっと、何かの拍子に、って言うのはあんたの存在のことよ。」

 

そこに予想だにしなかった回答が紛れ込んだ。

 

「・・・わたくしも。そう思いますわ。」

 

そして、それを裏付けるような発言も。俺が、人を変えた・・・か。はぁビジネスな関係だったら何にも悩まずに済むのに、何でこいつら・・・いや、この世界は。

 

「あ、康一。」

「…………なんだ?」

「たぶん、ラウラは借りをアンタに作ったと思っている。」

 

頭を悩ませているところにまた頭痛の種が舞い降りてきた。俺は・・・何も言えなかった。

 

「今度は、さっきみたいに誤魔化すんじゃないわよ。…………そんな態度じゃ敵しか作らないわ。」

「そうですわね、まずは黙って聞いてあげるのも一つの手だと思いましてよ。」

 

俺は…………。そのあとにも何かを言っていたような気がするが、それどころではなかった、凰とオルコットの二人が退室するまで俺は黙っていたままだった。

 

言葉が反芻される。幾ら考えても解ける事のないその問いに、頭を悩ませる。幾ら繰り返し何回考えたって俺にはその問題は解けない、いや・・・解く訳にはいかない、そんな3年前と同じ問いは今ここで再燃した。

 

「この俺は…………敵しか作らない、俺は…………。」

 

司書さんの言葉と凰の言葉が重なる。

 

 

     「三年前と何にも変わっていない。」

 

 

その事実が俺の胸を突き刺す、その痛みに耐え切れず俺は逃げるように眠った。

 

 ◆ ◆ ◆

 

こうして入室生活の二日目が終わり

 

三日目に突入する

 



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お見舞い。3

最近寒いでござる。因みに連投です。


三日目に突入する

 

 ◆ ◆ ◆

 

俺は、目が覚めた。特に理由はないが目が覚めたとしか言いようがない状態だ。そして、日の位置と学園内の環境音から大体の時刻を計算した。大体午前11時位だろう。点滴も終わっているようで、空の点滴が俺の腕に繋がれているのを確認し強引に外した、栄養剤の類だと思うので勝手にとっても大丈夫だろうと判断し俺は全く別のことを考えることにした。

 

丸二日寝てれば大体の筋肉痛は取れるんだな…………。気絶するぐらい痛かったのに。まあしょうがない。確か最初にこれをやったのはいつだっけ?確か4歳ぐらいだっけ?いや、あの時は暇さえあれば寝ていたからな、記憶が飛び飛びになるのは珍しくなかった。ああ、思い出すのめんどくさいなぁ。

 

「…………寝よう」

 

俺は寝た。それは…………非常に分かりにくいが突如去来してくる黒歴史への逃避のようなものだ。

 

そうだな…羊がzzzzzzzzzzzzzzzz………

 

 

 

 

 

 

 

俺は目が覚めたそれは、何者かの気配がしたからだ。朝の目覚めのようにすっきりとしたものではなく、かなりの不快感を催しながら俺を揺さぶった。それでも、誰でも対応できるように俺は波風を立てないようにゆっくりと目を開ける事にした。

 

「…………ボーデヴィッヒか?」

「はい。」

 

銀髪のストレートに夕日の光をブレンドさせたようなそんな美少女が、そんな今一番会いたくない美少女が俺の隣に座っていた。

 

「なんでまた俺に合おうと思ったんだ?」

 

俺は、なぜか敵意をぶつけていた。それもあるがなぜ普通は見ないし逃げる、目を合わせただけで逃げる。まあ、それは言い過ぎだが普通の人間は逃げ出した人間相手に昨日の今日で顔を合わせる訳がない、それ理由を知りたいのもあった。ッて言うか俺が逃げたい。

 

「それは…………貴方が私の恩人だからです。」

 

何をやった俺のもう一つの人格よ…………。

 

「恩人か…………前にも言ったとおり俺は何にも覚えていないぞ?」

「それでも、貴方でした。」

 

二重人格つまり解離性同一性障害に俺は準じるものに罹っていると見られているのだろう。それは…………俺は。ボーデヴィッヒの手をまるで縋るように握った。

 

「すまない、そういうのやめてくれないか?ちょっとよく分からない。」

 

確かに俺のもう一つの人格のことは認知しているが、それでも…………なんと言うのだろうか俺の中で大きなパラドックスが渦巻いていような、そんな気持ち悪い心理状況になっている。

 

「同じ事を言うが、たぶん、俺と君の思っている俺は違う。」

「だからですよ、同じ人を二度好きになれるのはいいことだと思います。」

 

そういう考え方があったのか・・・はぁ。一葉といいボーデヴィッヒといい俺が気絶するとなんもいいことが…………ああ、もう!!

 

「好きか・・・先にフラグ立てる(好きになる)のは一夏の方だと思っていたのになぁ。」

 

あ、赤面した可愛いな。やっぱり照れる女の子っていいよね・・・いいよね!!全くこれだから一夏の周りは面白い。いまここで、自分のことより他人のことが上回った。

 

「あらあら、ませておりますのぉ。ほっほっほっほっ。」

「あんまり・・・か、からかわないでください…………」

 

やっぱり面白い。

 

「それで、どんなところが好きになったわけ?」

「強い・・・いや、私が持っていない強さを…………言葉にするなら慈愛でしょうか、言葉にするのは難しいですけど、強さを持っているところです。」

 

憧れに似たようなものだろうか・・・だが面白ければどうでもいい!!やっぱりこういう感情は見ているに限る、どんな芸術品よりも美しい!!

 

「そうか・・・。」

「何でにやけているのです?」

「なんでもない。」

 

おっと、それは問題がある。俺はすぐに顔を真顔に戻して

 

「あ、そうだボーデヴィッヒ…………。」

 

携帯を取って貰おうとして止め、俺は少し痛む体を無理やり起こして恐らく隣の小さな机にあるであろう携帯電話を探した。・・・なぜに悲しそうな顔を・・・。クソッ。

 

「ラウラ」

「はい!」

 

俺はためしに名前を呼んでみたところ、ものすごい笑顔で返事された。このとき・・・おれは、もう一人の一葉みたいだなと、そう思っていた…………本当に。

 

「なんで…………この世界は優し過ぎるんだろうな。」

 

希望なんて・・・あるだけ届かない。俺にとっていきなり付けられた電灯位にしか意味がない。希望が希望があるからこそ絶望が大きくなる、勝者が居るからこそ敗者が居るのと同じように、ここに来て本当に、俺の周りに大切な・・・そう、大切な人が出来過ぎた。こんなに…………こんなに辛いことはない。何かを得るということは何かを渡さなければならない、所詮等価交換と言う奴が俺に襲い掛かってくる。俺に何を求めるって言うんだ、こんな俺に、こんな無価値な俺に……………。

 

ふと、俺の携帯を持った小さな手が視界に入ってきた。

 

「これですか?」

「ああ、ありがとう。」

 

俺は差し出された携帯電話を受け取った。しばらくそれを見つめて、ラウラに向き直った。

 

「そんで・・・・・・お前は何しに来たんだ?」

「…………いえ、目的は果たしました。」

 

妙に爽快感あふれる顔でそういった。・・・何を言っている?

 

「私がここにきたのは、また名前で呼んでもらうことです。」

「…………っふ。フフフフッ。」

 

「笑わないでください・・・。」

 

くだらない理由に思わず笑いが漏れた。

 

「それでは、これで帰ります。」

「ああ、分かった。」

 

俺は、手を振って見送った。

 

「一件落着・・・と言ったところか…………。」

 

と言いつつ俺は思う一件も落着していないと・・・進展も何も。

 

 

「はぁ・・・本当になんなんだよ。」

 

 

外の景色を見つめてこの一件をそう結論付けた。

 



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復活(りすぽん)

めっきり寒くなってきましたね。手が痛い。
…………ク?え?クなんだって?帰り血浴びた赤服爺さんなんぞ俺は知らん!知らんぞ!!

それでは皆様メリー苦しみます。


あ~終わった終わった。背伸びして柔軟して・・・あ、ゴキゴキって言った。

 

「俺復活致しましたです。」

 

特に意味はない独り言だった。さて、俺は冒頭にも言った通りに保健室から抜け出せたのですが。

ああ特にないよ何も、という訳で全回復を果たしたことで。

 

「さあ、喋ろう簪よ。」

 

「いきなりなに?結構忙しいけど?」

 

怪訝な顔をされてしまった・・・。

まあ、しょうがないよね。

 

「まあ、暇なんだ…………じゃあ、ISの製作はどう?」

「めんどくさいわ。」

「アラヤダこの子。最初の俺に食って掛かってきた面影が欠片もない。」

 

どことなく目が腐っているような…………いやちゃんと煌いているな。

 

「ま、それはいいとして。何で忙しいんだ?」

「ん?臨海学校があるじゃない…………?。」

 

…………………ああ、忘れていたわ。

 

「ごめん、わすれっち」テヘペロ

「黙れ、そして腐れ」

 

どこぞの手乗りタイガーさんが言いそうな暴言が放たれた所でもめげずに俺は強引に言葉を押し通した。

 

「そんで、サボるために色々と画策しているわけでござんすか。」

「女の子的には、スタイルが云々とかの方が大きい・・・。」

 

おお・・・俺的にはあんまり理解しがたいな・・・だけど、知るしかないな。と重ねて質問しようとしたところ。

 

「大体、私は機体制御の段階まで行っているし、機体駆動データは申請すればもらえるから行くことの方がメリットがあるの、臨海学校だって元々そういう目的だし。」

 

まあ、そりゃそうですけど。

 

「そして…………。」

「…………そして?」

 

「貴方が施工を進め過ぎちゃったから参加せざるを終えなくなったのよ!!」

「まぁ、いいじゃん。」

「まあ、いいじゃん…………じゃぁなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁい!!!!このままだと私はただのイロモノ女になってしまう!!」

 

この理由は、ここのIS学園学校の指定水着がスク水(旧型)だからだ。あの何ともいえない魅力を内包したゲフンゲフンとてつもない視覚兵器をのさばらしているのだ。実にがんぷくゲフンゲフンけしからん。ニーソでも買おうか。

 

「全く…………本当にどうしよう、私、服装や流行に疎いから…………

 無言で親指を自分に向けないでくれる?その気は毛頭ないから。」

 

ですよね~。まあ、それなりに恥ずかしくないようなのは選べるが…………大体、組同じじゃないしなカメラに収められん。

 

「っつーか俺も行くんだよなぁ。めんどくせえ。」

「・・・それに至っては腹をくくるしかないね。」

 

そうなんだが、俺お腹痛いって言って休もうかな?完全にその手が通用する相手じゃないな。うちの担任は野生動物並みの勘と独裁国家並みの強制力を兼ね備えているからな。何か…………言葉に出来ない危険が・・・あ。

 

「……………臨海学校…………服装…………流行…………女の子…………。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

                  「争い…………。」

                  「なぜにッ!?」

 

俺は、最悪のシナリオを考えた………………まず、誰かが抜け駆け・・・暴動・・・鎮圧・・・。

「ありがとう…………担任殿よッ!!」

「私には何がなんだか・・・。」

 

そうだ

 

プルルルルルガチャ。

 

「もっしー?」

 

『康一か?おう、どうしたんだ?』

 

「一夏おまえ、近頃買い物に行く予定とかあるか?」

 

「おー、週末にシャルロットと一緒で駅前に行く予定があるな。」

 

「そうか。話は変わるが、オルコット嬢の奴がこういっていた、女性から誘われたときは全身全霊を持ってエスコートするのが紳士の…………いや、そうでもなくとも男として最低減の勤めといっていたぞ。」

 

『お・・・おう。』

 

「話は大いに変わるけど。パソコンって多重の処理をすると低スペックだと落ちるよな。」

 

『そうだな。』

 

「おい、一夏このまま続けるが。男性の脳って多重処理には向いていないらしいな。」

 

『脳とパソコンって話し飛んでるじゃねえか。』

 

というより、会話の流れが不自然とは思わないのか?

『まあ、いくけど…………どうしたんだ?』

 

「暴動が起きるかもしれないからな・・・俺にとっては見なければいけない物なのですよ、とまあ、これだけだじゃあな。俺は誘わないでいいから。」

 

といって俺は一方的に電話を切った。

 

「…………俺、今週末出かけるわ。」

 

 

暴動を止めるために俺は今から準備をすることにした。

 

『エネさーん。協力してくだしい!!』

 

『結局私頼みかーい!!』

 



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唐突に日常シーン

【ISで………】

 

おはようごぜーます!!どうも俺は相澤康一です!。今、特訓をやっている。前回と同じ勝利の裏づけのような特訓だ。

 

「むしろ、ほんとよくよく考えてみると。よくあそこまで訓練機でオルコット嬢を操作できたよな」

十八番(おはこ)だろ?』

 

まあ、そうなんだが。と言うよりとても気分がいいなっぜなら~。ふう、あー疲れた。

 

「もうそろそろ収穫の時期だからだ!。」

『色々な人間に使われては来たがIS(私たち)を農作業に使う人はついぞ見当たらないかったな。』

 

だって便利で使い勝手がいいんだよ…………。クワとか超振るいやすいし、此処とかわざわざ植えてある木を引っこ抜いて作ったんだよ?大体ここら辺の木って大体定植だから邪魔なら切るぜ?、手伝ってくれた轡木さんにもおすそ分けしないと。

 

『誰だそいつ。』

 

出張(・・)していたのか。なんかIS学園の良心だってさ。なんか食わせ物っぽかったから仲良くしておいて損は無いだろう。まあ、これを見て激怒する可能性も微粒子レベルで存在するわけだが。

 

『これもう、完全に畑だよね?』

 

健二郎!!いや、「はた」じゃねーや。けどあのおじさん時々お茶飲みに来るよ、大抵面白がって出て行くし。

 

『これ誰かに見られたらどうする…………。』

 

いや、なんで俺なんかを見なければいけないんだよ。

 

『まあ、けどあの眼帯銀髪ちゃんはどうかな?』

 

黙れ・・・いいんだよあれは。好意の矛先は一夏に向かっているから問題ない。ちょっとであったら挨拶する程度だ。

 

『だといいんだが。』

 

おいおいそういう一言でフラグが立ってしまうんだぞ?今後は気をつけるように!

あ、害虫。

 

そんじゃ収穫だな。そういえばエネって味とか分かるのだろうか?

 

 

【テスト!バカっぽい奴の方で】

 

テスト、それは全国津々浦々、ほぼ全ての人間が受け、万人にテンションを下がらせるような悪魔の儀式…………だが、それは悪魔のと付くからにはそれなりの対価がある。サボってカラオケボックスに入り浸るとか・・・一人で。勉強を投げてゲーセンに行くとか・・・一人で。諦めてネットゲームに走るとか・・・大丈夫みんながいr……………ネット上でも一人 相澤康一。やべっ、自由律俳句出来上がったわ。と言うより全寮制だからどこにもいけないんだよね。

 

「こうして悪魔から開放されるステキシステムが完成されたのでした。それでは織斑先生。失礼します。」

「まて!話は終わってない。」

 

ですよね~。とまあ、このように俺はテスト、それもIS基礎で赤点を取ってしまわれたのです。いやね?エネがいるから簡単だと思ったんですよ。いやはや担任殿の補習になってしまうとは、鉄拳の一発ニ発覚悟しといた方がいいな。それでも、ほかのやつはそれなりに抑えているからいいのかな?。

 

「赤点補習だ。私だからな逃げられるとは思うなよ?」

「うぇぇ。俺、勉強とかすると吐き気がする手合いなんですけど。」

「大丈夫だ。勉強以前の回答だったからな。」

 

いやいや、こちとらISに答えを聞いていますよ?こんな感じで…………。

テスト中

 

『暇だわー勉強してねえし。エネ答えてくんね?ISだし、それに面白そうだ。』

『分かった。面白く回答してあげよう。』

 

あ、これが原因じゃん…………ド畜生ミ☆まいっか。

 

 

「ええ?回答としての昨日を果たしてないって・・・そうですか?」

「そうだ、例えばいや、たとえなくても出るが…………。問い一ISの燃料となる物は?」

 

確かこれは…………。

 

「熱い血潮と高い心意気って書きました。」

「不正解だ。正解は超高度生成された原油だ。」

 

ISだって頑張ればそうやって出来るかもしれないじゃないか。・・・いや、言ったら殴られそうだ。『あながち間違っちゃいない。ぶっちゃけなんでもいいからな。』

だそうです。

 

 

「次!。ISコアの絶対数は?」

「いっぱい。」

「せいばい!」

 

ごっ!「ゲフッ・・・。頭叩かんといてくださいよこれ以上馬鹿になったらどうするんですか?」

「確か。馬鹿は死なないと直らないんじゃなかったか?」

訳=殺す。

「さあ、次の問題に移りましょう!!」

訳=死にたくない。

 

本当に、この人にかかれば次の瞬間には俺の体が面白オブジェになっている可能性があるからな。小細工も効きそうにないし。そういえば後に調べたけど467個だったな。

 

「…………ISは何によって浮遊している?」

「科学の恩恵。」

「具体例と固有名詞がある!それを出せと問うているのが分からんのか!?」

 

面白そうだったんですもの・・・、確かこれはPIC・・・原理は分からんが足場のようなものを擬似的に作り上げるものらしい。

 

「次。ISコアストレージの特性は?」

「にんじんが嫌い。」

『私たちは、もうほんとにあの味だけは記憶領域に保存したくない!』

「子供か!」

 

あ、このストレージって確か何でも入る四次元ポケット的なあれらしい。機体とISコアの特性によって入るもののばらつきがあるらしい。収穫物をあそこに入れたりて『ああ、饅頭を入れられたたこともあったな!!!!』聞こえねえ。

 

「次!ISコアの自己進化能力にはどのようなものが挙げられるか?」

「初めて口紅を付ける。」

「…………フッティングやファーストシフトだ。こんなもの一般素養だぞ。というか意味分からん。」

「ええ?だって俺のISそんなファステンシフトなんて事してないですよ?」

 

ぶっちゃけ俺あんまりISを動かしたくない・・・ISは、めんどいし。後これなんか………仮面ライダーで言うノーマルモードの変化バージョンのことだ鎧武でいうパインアームズやウィザードでいうランド、ハリケーン、ウォーターのようなものだ。

 

「ファーストシフトの変化の概要を述べよ」

「赤ん坊から小ニ病を発症だな、ウンコシッコで大爆笑する」

『ああ、黒歴史が…………。』

 

エネ・・・お前にも黒歴史というものが有ったのか。

えっと…………ファーストシフトは、ISのソフトとハードの構成を一気に書き換えるんだよな、俺はやってないけど、一夏の機体はそのファーストシフトとやらをオルコット嬢の時にしている。

確かに、くすんだ白から完璧な白になって行ったし、巨大なスラスターも付いたな。

 

 

 

「…………とまあ、このように貴様が舐めた回答をしているのは分かったから。必死こいて問題集を・・・。」

 

ドン!ドン!

ドドン!

「これ一週間以に終わらせてくるように。」

 

俺の前にタワーが建築され、その後には手に筋肉痛を残していった。

 

 

 

【基本的な休日。】

 

朝5:00起床 提督の朝は早く・・・。ここで俺は畑に行き病害虫のチェックと訓練に行く。

 

「あ、どうも。」

「精が出ますな。」

「ええ、もうそろそろ収穫できそうです。」

 

朝7:00朝食作り。

何でこんなに一つの寮にしっかりとしたキッチンが出来ているんだろうと………思わないわけ出じゃないが。

 

「起きろ~。今日はトマトと卵の炒め物と適当な野菜で作ったサラダに貰った米だ。」

「zzz・・・zzz・・・zzz・・・。」

「今すぐおきないとハードディスクごとパソコンを粉砕することに「今起きた!」

 

たまに(どころではないが)ルームメイトの簪さんを起こしている。

 

 

朝9:00ネットの波を乗りこなす波乗りジョニーと化す。

 

「クソッ、このっ・・・ああっ!舐めんな!」

「うるさい!!」

「ブベッ!?・・・あ、死んだ。お前…………2○hでお前のブログのURL拡散してやる。」

「ごめんなさい!」

 

昼12:00 昼食。

 

「今日は?」

「ナスの素揚げとオクラの千切りサラダとカボチャスープ・・・に貰った米。時系列が夏だからな。」

「…………お見事。」

「毎年、腐るほど送ってもらうから引け目があるんだよなぁ。農家さんに知り合いがいるからもう・・・。」

「色々・・・あるんだね。」

 

午後2:00 一人遊びを極める。

パコン、パコン、パコン、パコン。・・・シパーン、シパーン。

 

「…………一人でテニスも乙なものだな。」

 

ダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダム。

 

「ふう、オノマトペが有ったらムダに見えてくるな・・・。一人でバスケはいいな。」

 

『絵面が地味過ぎるわ!!』

 

夜6:00 夕食。

 

「冷やしたトマトに塩かけた奴と回鍋肉(ほいこうろー)

「肉は?」

「食堂からかっぱらってきた。」

 

夜9:00 就寝

 

『早くね?』

エネうるさい。

 

 



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デート!!

なにそれ?おいしいの?作者もやったことないんだから、まともな事になる訳がありませんのであしからず。


さまざまな思惑が絡んだ彼や彼女達の休日が始まる。そんな話。

 

簪SIDE

 

どうも、更識簪です。このたび私の同居人である相澤康一の引っ付き虫でございます。とまあ、冗談なのですが。彼の視点から見たら、用事のついでに相手されるような存在であることはたしかであるのは真実です。因みに私の用事は水着を買いに来ました。

 

とりあえず、待ち合わせとして駅前のショッピングモールの噴水に立っているんだけど………全然来ない・・・。

 

「ヘイ、彼女お茶しな~い?」

 

…………っは!?・・・なんかウィキペ○ィアに出てきそうなステレオタイプのナンパ男数人に話しかけられた。どうしよう・・・。

 

「ねぇねぇ、君どこから来たの?」

「ゲーセン行こう。」

「オレラトイッショニアソボーヨ。」

 

・・・最後の人キャラ付けそれとも天然?

 

「すみません、待ち合わせ相手が居るので。」

 

「いいじゃん、そんな奴より俺らと遊んだ方が楽しいって。」

 

あながち間違ってはいないから困る。

「ほら、一緒に行こう。」

 

いきなり手を掴まれた。なぜか、途轍もない嫌悪感を示して思いっ切り振り払ってしまったのだ。そう、つまり逆上する理由を此方が作ってしまったのだ。ステレオタイプのナンパ男は目に敵意いや、狩猟者の輝きを宿して向き直った。そして、唇を振るわせ怒鳴るかしようとしたときに。

 

「あのー、ちょっといいですかね?」

 

「あ゛ぁ゛?」

 

…………………………………なにその制服と思しきものは?。彼が前に言った相澤康一が学生服(別名学ラン。しかも冬服)を着てそこに居たということしか分からない。なぜにその格好?というより手に持ったキャリーバックにそこはかとなく危険な香りがするのは気のせい?

 

「彼女は僕の待ち合わせ相手ですが?何か御用でしょうか?」

 

「ああ!?こちとら、お話中だよ!!。」

 

「そうですか。それなら、僕を通して言ってください。サル語は疎いのでちゃんと聞き取れる自身はないのですが・・・大丈夫でしょうか?」

 

煽った!?まあ、この程度なら康一君でも撃退できそうだけど・・・。路地裏に行った…………康一がこっちに向かって歩いてきて、キャリーバックを手渡し・・・

 

「身を潜めろあとで連絡する。」

 

私は、その通りに出来ずに……………少し、時間を空けて、事の成り行きを見守ることにした。

 

 

 

 

三人称SIDE

路地裏だ、ここに。複数人で向かい合っている男達が居る。理由は前述を見て貰いたい。

 

「全く、ナンパ二回も失敗するしツイてねえな。お前本当についていないなぁ。」

 

大人数の大多数がそれぞれの構えを作った。拳すら作っていないのは一人だけ学ランの男だ、彼は笑顔を絶やさず

 

「君たちはkブッ?!」

 

殴られた。有無を言わさず殴られた。それはもう暑苦しいまでに殴られた。一瞬にして学ランの男は囲まれて具体的な様相を挙げるならばドラエ○ンなどの喧嘩で土ぼこりを挙げて、喧嘩しているような感じだ。いや喧嘩じゃない一方的なリンチである!

 

 

簪SIDE

 

エエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエッ!?笑えないよ!!!!?ッてかやばい隠れなきゃ!

 

……………………行った?よし早く治療を・・・。

 

「あれ?ポリバケツのお化け?」

「せめて妖精と言いなさい!!」

 

確かに慌てすぎて、なぜポリバケツに隠れていたのか自分でも分からないけど。その結果を笑われるのはちょっと…………。

 

「まあ、しょうがない。」

「それは普通こっちのセリフ!」

 

少しは落ち着きを持ったかなとか思っていたのに…………この人の前では落ち着きというものが掻き消される。

 

「というかあの程度、貴方ぐらいだったらあんなにボコボコにされなくても・・・。」

「過剰防衛になっちゃうでしょうに。」

 

そう言いながらカラカラと笑っていた。正直、たまにこの人の思考回路には行けなくなるときがある。

 

「だから、殴られ代金でも貰ったし、等価交換にはなっているでしょ。」

 

……………。その手に財布が数個。正確にはあのナンパ男達の人数分だけ財布を持っていた。

 

「あっはっはっはっはっはっは。どうしたの?そんなビックリしたような顔して…………。」

「呆れてものも言えないだけよ。」

「…………あ、少ねぇなこれで遊ぼうとか…………危なかったね。」

「ド畜生が!!!」

 

つまり、体目当てだったって訳ですか…………今度会ったらぶち殺そう。言ってダメなら殺ってみな。

 

「フォースの暗黒面が出ている…………。まあ、ちょっと待ってくれ着替える。」

 

彼はいきなり路上で脱ぎだした…………あ、下に着ているんですね。あぁ良かった今後はまともだ。カジュアルな格好で、ここにビニールのイルカと浮き輪を持たせれば夏男になるのではないのかと思うくらいには清涼感のある格好で、仕上げと言わんばかりに恐らく男性用のカチューシャをつけた。

 

「変装完了!!」

「わぁ、もう誰だか分からないや。」

「ひでぇ。」

 

いや完全に変装できてますよ。

 

「しかし…………絡まれることは想定していなかったな。」

 

それはそうでしょう…………まあ、当たり前か。

 

「仕方ないな。ちょっと遠くなるけど一夏も遅くなるし大丈夫か。」

・・・?何を言っているの

 

「よし、簪。」

「なに?」

「俺の知り合いの場所に行くが、いいか?そこならまあ、絡まれることはないと思う…………このあと俺も用事あるし、どうする?。」

 

……………少々不安は残るけど。

 

「分かった。付いていく。」

 

甘んじて受けることにした。

 

 

 

康一SIDE

 

あービックリした。まあ、しょうがないかお金もそれなりにもらえたし。いや盗んだし。移動の足があってよかった。電車すげ。やべ、アポとってねえや。

 

「もしもし?あ、開いてる?OK客っつーか女の子一人匿って欲しいんだわ。マジ?いいよいいよ何階?そっちね。…………OK行く準備が出来た。」

 

「アポとってないの!?」

 

簪がそう言って来たまあ、年中無休でやっているからなぁ。いつ行っても良いんだけど。

 

「年中無休だし。しかも今行くところアクが強いから。」

 

「貴方が言うか貴方が。」

 

キャラなんて濃くないよ畜生。まあ円卓の騎士(・・・・・)たち中で一番遭遇率が多いひとだからな。ああ、説明するのがめんどくさい・・・。

 

「ああ、言うね。」

 

「…………ちょっと不安になってきた。」

 

そうか…………。

 

「まあ、俺の用事が終わるまで待っていればいい。食事所に、ちょっとしたゲーセンに色々あるし退屈はしないはずだ。」

 

何もかもをごっちゃにしたような施設だからな。

 

「そう・・・。」

 

「おう、安全は保障する。」

 

つーかできる。付いたな。

俺たちは、電車を降りてタクシーに乗り目的地に着いた。

 

「あ?…………なにこれ。」

 

「雑居ビル。」

 

それ以外には・・・豆腐か・・・。相澤康一の楽しい豆腐建築!!・・・いや、頂上が円形になっているんだよなぁ、ほかに何に見える?

 

「はぁ…………分かっていっているんだからたちが悪い。」

 

全く当たり前だろうが「さっさと入るぞ。」

まあ、テリトリー外のところに入るから当たり前なんだが。よくもまあ付いて来るもんだ。

 

「ちょっと、待って!」

 

「あと十秒で閉まるボタン連打しちゃうぞ~。」

 

「うがー!!」

 

…………そんなにダッシュしなくてもいいのに、まあ、ここはそんなの気にしない人が多いけどね。俺は5階のボタンを押した。

 

 

 

 

 

 

 

 

簪SIDE

 

「ホストクラブって…………!!」

 

 

どういうことじゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!

 

 

え?なにこれ?本当になにこれ?ありのまま今起こったことを話すとエレベーターに乗ったらホストクラブだった。以上!!あれ?本当になにこれ?

 

「ああ、まあ、ナンパ男の巣窟だけどここのオーナーさんが俺の知り合いなんだ。」

 

とりあえず補足説明してくれた…………けど。それで不安が晴れるわけではない!!そんな私の心情をよそに、彼は近くにいた絵に描いたようなホストに話しかけていた。はぁ、これ以上何かをやらかさないでくれれば…………。

 

「あの、すみません。朱鳥(あかどり)鈴也(すずや)さんってどこにいます?」

「あぁ!?鈴也さんに何のようだ!?お前は!」

 

敵意むき出しにしておりますけどぉ!?と言うよりどこの龍○如くですか!?

 

「…………あ、あの・・・」

「ん?」

 

話しかけた私に康一に向けていた敵意を完全に消して、私と康一の間を視線を行ったりきたりしている。そこに追い討ちをかけるように康一が。

 

「はぁ、ホイ。」

「鈴也さんの名刺…………申し訳ございませんでした!」

 

その知り合いと思われる鈴也さんの名刺を差し出したのだろう。一瞬で信用を得て、その恐らく源氏名であろうその名前をところどころ会話に散りばめながら鈴也の所在に連れて行ってくれた。少し引っかかるけど・・・どこかで聞いたような名前なような気がする。

 

「あ、俺はここら辺でおいとまさせてもらいます。」

 

恐らく恐れ多いような威厳を持った人格者なのだろう。逃げるようにして扉の前から去って行った。・・・そんな人間って言ったら私の親父のような・・・。いやいや、あのような人種は一人だけで十分だと思う…………いや、改善されていたとしてもダメ、むしろ酷くなる・・・。

 

「・・・お~い少しは覇気のある顔をしろ、とりあえず、本当に結構なモンだから俺が保障する。」

 

……………信じる・・・いや、信じようこの人が言っているのだもの。

 

「それと、お前。まだ俺以外には人見知りしているんだな。」

 

・・・その言葉の効果は。

 

「このッ!。」

「しつれいしまーす!。」

 

私が恐らく耳を真っ赤にしながら手を振り上げた拳を康一が全力全開に無視して開けた扉。そこにはとりあえずイケメンと言えるような二十代前半のような清涼感が全開の年齢の人間が居た。例えば、ゴスロリに隈取を施したりしない人だろう。

だけどそれ以前に、この心を抉ってくる、この悪魔にどうにかして正義の鉄槌を下さねばならないと思いつつ、場の空気と視線にいたたまれなくなり振り上げた拳をゆっくりと下げた。

 

「いらっしゃい。久しぶりだね、いきなり電話来たから驚いちゃったよ。」

「すみませんもう少し余裕があったら菓子折りでも持ってくるのですが・・・。」

 

…………へ?

 

「いいよいいよ気にしないで。」

「気持ち的にそういうわけにも行かないものでして…………。」

 

そのいきなり開けた扉の先に異世界が広がっていた。…………まあ、恐らく鈴也さんとやらはその見た目どおりに誠実な人間であるのだろうが・・・問題はこっちだ(康一だ)、え?なにこの人すごい態度変わっているんですけど。一言で言い表すのなら、頭にバカが付くぐらい物凄く丁寧なチャラ男と言ったところ。それよりも噂や調べたときの話からしてこんなに丁寧に話すような人じゃないって言うのは分かってたはずなのに…………。

 

「まあそれはそうとして、突然で悪いんだけど…………。」

「はい、あまり溜まっては居ませんが。」

「ありがとう、それじゃはいこれ。」

 

と、言って彼は一つの分厚い封筒を差し出した。それと同時に鈴也という男も同じような封筒を差し出し……………なぜか剣呑な空気が混じる。

たとえるなら、決闘前の騎士のような。周りだけが固唾を飲み、緊張に飲まれそうな。というより私が固唾を飲み込んでいる…………それ以前になぜ、この人たちは封筒を取らないの?

と疑問に思った瞬間、両雄が動いた。

 

「…………あの、普通に取ればいいと思うのですが。」

「「?」」

 

普通に取った。私のモノローグが物凄くバカに見えるほどに、普通に取ったのだ。お互いがお互いの差し出したものを普通に。

 

「…………貴方が普通に行動したの初めて見たような気がするのは気のせい?」

「失礼な、ちゃんと普通に行動しているときもある。」

「まあまあ、ちゃんと行動している時もあるって例えば…………。こうやって、女の子を守ろうとして安全そうな場所に連れて行く所とかね?」

 

私はその言葉を聴いて、康一のほうを向いた。その顔はゴ○ブリを素足で踏み潰したような顔をしていて、とてもではないがそうとは思えなかった。

 

「まあ、俺もホストの端くれだし女の子に悪いようにはしないよ。隣にいる彼もね。」

 

恐らくフォローしたつもりなのだろう、鈴也さんが私にウィンクをして、立ち上がって近づき康一の首に腕を回した。なぜだか、そこだけを見ていると、仲のいい親子に見えなくもない。

 

「はぁ、それじゃ。俺はまだ来ていないようだし仕事、手伝って来ますよ。」

「んん?いたいけな女の子を一人にしていいのかな?」

 

さすがホスト、普通の人間が聞いたらブラックコーヒーを求めそうなセリフを堂々と言い放つ。私は赤面しないだけで精一杯だ。

 

「いえ、貴方だからこそ任せられるんですよ。この()()()()が。」

 

……………え?いや?いやいやいやいや!?え?いやちょっと待って!!。

 

「…………あのお子さんは今何歳なんですか?」

「ん?確か康一君と同い年だよ?」

 

目算20代で私とはまだ15歳康一もそれと同じと仮定して……………。分からない…………。

 

「…………鈴也さんは、これで40代だからな?」

 

見かねて、ヤレヤレと言ったようにぶっきらぼうにそう告げた。

 

「どうもーオッサンでーすwww。」

 

態度をワザと砕けて笑いかけてくれた。…………はぁ・・・若く見えるのにこんなデメリットがあるとは。

 

「それじゃあ、俺はそろそろ行動を開始するから、鈴也さん後よろしく!」

 

え?あれ?いつの間に扉から出て行ったの?一人?ここに?いつの間にか康一が姿を消していた。

 

「ああ、それじゃ自己紹介がまだだったね。俺は朱雀鈴也です、以後よろしく。」

「…………わ、私は・・・更識簪です。」

 

一応自己紹介はしておこう・・・けどやっぱりまだ他人と話すのは苦手だ。

 

「それじゃ、ここに居ても退屈だ。このビルを案内しよう。」

 

そんな一言で私は鈴也さんの案内でこのビルを案内されることとなった。

 



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康一の暗躍

あけましておめでとうございます。

来年も、あまけしておでめとうと言えることを願って。

つか、今回は長い。



康一SIDE

 

あぶねえ…………。

『本当だね・・・後十分遅れていたら・・・。」

 

まったくだ。俺は今、簪がステレオタイプのナンパに絡まれていたところに助けた、駅前にいる。そうして、この場所に来たのは唯一つ…………暴動を止めるついでに、恋する女の子を観察するためだ。

 

『どうして、暴動なんて突飛な状態にまで思考が飛躍したんだ?』

 

エネがそう問いかけていた。いや、本当に問いかけているのかはよく分からないが。だがそれには日本海溝ぐらい深い訳がある。

ほら見ろ。

 

「あれ…………何に見える?」

「そうですわね……………恋する乙女にしか見えないですわね。」

 

そこには、代表候補生二人・・・凰 鈴音とセシリア・オルコットの代表候補生ダッグが物陰から何かを確認するように居た・・・。その何かは例に漏れずあれだ一夏とデュノアの娘っことの買い物だデートと言い換えてもいいだろう。というより若い女の子がレイプ目していちゃ示しが付きませんよーい。・・・あんな姿じゃ完全にそんなこと口に出せないな。

 

『なるほど、ヒロインズ・・・いや、いつもの面子が集まったわけだ。』

 

つまりそうなる、まあ、+αされているかもしれないが。と俺は、銀髪のロリっ子美少女にそれとなく目をやった。彼女つまりこの場合ラウラ・ボーデヴィッヒとの関係は現在、特に変わってはいない、とりあえず爆弾は一夏へと移動しているようだから一安心……………いや、むしろ面白いものにクラスチェンジしているが。

 

『君のそういうところは今でも理解に苦しむよ。』

 

とりあえず、ばれない位に現実で肩をすくめた。まあ、俺はそういうようになっているからねぇ、仕方ないといえば仕方ないのか。

まあ、それ以前に女の子達のことだ、さてここでそれについて反芻(せつめい)しよう。

 

『うん、そうだね。まずはこの状況はどうなっているんだ?』

 

そうだな、このような状況になったのは一夏の鈍感加減とデュノアの娘っこの画策だろうな、全員を誘えばこのような状況にならなかったが・・・IS学園を引き連れるわけにもいけないな。とりあえず、あの代表候補生全部と箒さんもここに来ているっぽいし、そいつらは全員誘うべきだった。

具体的なフローチャートは…………。一夏がデュノアの娘っこにフラグ建築→気付かないままデュノアの娘っこが行動開始→場数が足りない→バットエンド(・・・・・・)。という感じだろう…………………あれ?前がかすんで見えないや・・・。

 

『とりあえず・・・その次だ。この状況を打破するためには?』

 

デュノアの娘っこがデートに誘ったのはこの際仕方ないし全面的に代表候補生達が悪いが、そんなことを愚痴愚痴と不満を垂れ流してもしょうがないし、デュノアの娘っこを全面的に応援することにする。

 

『その心は?』

 

二人っきりのプライベートな時間は一回ぐらい在ったっていいだろう?

 

『はぁ…………その優しさをまたどこか別の場所に使えればいいんだが。』

 

俺から奴らへの好感度はすでに最大ですキリッ。…………具体的にはそうだな、代表候補生の妨害、最低限のクリア条件は一夏とデュノアの娘っこにIS学園の人を接触させないことだな。幸いにもデュノアの娘っこは俺以外の代表候補生には気付いている節が在るからな。ほら今視線送った。

 

『例にも漏れず、君には気付かないんだね・・・。』

 

メリットとして機能しているからいいだろ。いいはずだ、うん。それじゃあ、この条件でサポートよろしく。

 

『…………別にいいがな・・・無理するなよ。』

 

良薬は口に苦い。とはこのことだな。この状況に即した言葉を知っているからそれを使おう。

 

『「さぁ、私達のデート(戦争)を始めましょう。」』

 

そのつぶやきは町の雑踏に掻き消え、俺の思惑は町に解けて行った。

 

 

 

 

簪SIDE

 

「……………ここは?」

 

「まあ来ているとは思うけど改めて説明をさせてね。ここはホストクラブ。その名の通りにお客のホストになりいい気分で帰ってもらう場所だ。」

 

「…………知ってはいますけど。」

 

「そして、この上がゲイバーになっていて、この下の階がBLバーになっているよ。」

 

「なぜそんなことに!?」

 

「すべては…………お客様の為なのさ・・・。今は女尊男卑の時代になってきているからね、女性を不満げにさせるような要因は避けておきたいんだよ。」

 

「…………なるほど、そんなことが・・・。」

 

「目には目を、歯には歯を、奇には奇をって言うことさ。おかしな時代にはおかしな手段で対抗しないとね。何に対しても…………。」

 

「?」

 

 

 

 

康一SIDE

 

「はぁ…………敵性勢力の殲滅を完了した、これでとりあえず護衛対象で対処できない数のナンパ男は寄り付かないだろう。」

つーか疲れた。

 

『無駄なことをするなぁ。』

 

可能性は全て消さねばな…………途中で衣装も変えたのも痛かった・・・。これで財布も剥ぎ取っていったらよかったんだろうが、追いはぎになるからなうん。

 

『いや、簪の時とやっていることが変わらないと思うんだが!?』

 

等価交換

 

『・・・謎理論だな。』

 

何に対してもそうあるべきだ、…………あの時はしこたまぶん殴られたからな。

 

『それが主な理由だろ…………とでも言っておこうか。』

 

最近エネはこのような口調を多用する。よく分からないのだが・・・とりあえず無視して計画を進めておこう、エネ専用機持ちの現在地をよろしく!

 

『分かった。ホイ。』

 

・・・まだ派手な行動はしていないから大丈夫だな。それじゃあ、尾行を始めるかチッ・・・最初に恋人のような会話をしているんだろうなぁ、全く見たかった。事実は小説より奇なりって言うし。

 

『あぁ!見ていられない!!』

 

はぁ?まあ良いや行動を開始する。

 

 

 

 

簪SIDE

 

「…………気に入ってもらえたようで何よりだけど。すごい食いつきようだね。」

 

「………………………………………。」

 

「一応説明しておくけど、ここはホビーが集まっている最新の仮面ライダーのベルトから初代まで、電車模型のパーツ、ミニ四区のパーツに何でもござれだ。ここにない奴でも注文すれば手に入るから足しげくかようのもありだと思うよ・・・って聞いてないか。勝手に変身ポーズ取らないでくださいお客様!?」

 

 

 

 

康一SIDE

 

「…………こちら蛇。水着売り場に潜入した・・・女性用の・・・。そして、俺は二度目の着替えを済ませている。」

 

『ふっ、君も落ちたものだ。』

 

ああ、エネの言うとおり俺は・・・今すごい冷や汗をかいている。ものっそい、ものっそい場の空気の違和感を感じたからなぁ。まあ、とりあえずチャラ男みたくはなっていない。そうだな、イメージ的にはイケメンサラリーマンの週末と言ったところか。つーかあいつ等動き過ぎだろ…………一般人の視界を抜けるように移動するのはかなりめんどくさいからな。男が女性用水着売り場にいたらパシリ待ちかと思われるから今の時代はめんどくさい。

 

『時代が時代だからな、それだけIS(私達)の影響力が強いんだろう。』

 

だけど、大丈夫だ正しく理解してやれる奴が一人居るだろ。

 

『ふん…………ほら、行ってしまうぞ。』

 

ああ、…………動いた!野犬の庭に動きは?。

 

『まだ駅前には姿を現していない、問題はない。』

 

だが時間の問題か・・・。くそ・・・とりあえず妨害でもしておくか。

 

「あの、すみません店員さん。」

「はい・・・なんでしょう?」

「あちらの女の子達が水着を選ぶのに苦心しているようで、気にかけてもらえないかと。」

「は、はぁ・・・」

「因みに、制服が改造出来るので分かり難いですがIS学園の生徒さんですよ?」

「ご協力ありがとうございました!。」

 

…………世の中は現金だな。・・・ここまでIS学園の名に効果があるとは。確かに1学年で400人ほどしかいないからな。おかげで教師陣は猫の手でも借りたい状態だから…………恩は売っといたぜ。まあ、レアだよなぁ。これで見られているという状態になったから問題行動の阻害に成功した。ふう、一安心だ。

 

『まぁ、最悪君が体を張ってとめればいいしな。』

 

そんなことをしたら意味ないだろ・・・むしろ、俺は俺を目立たせないためにこんな周りくどい事をしている、基本的に小市民的な思考の持ち主なんだから。

 

『どちらかというと奴隷根性が染み付いていると思うんだが・・・。』

 

はぁ!?んなことはないだろう?天地神明に誓ってそんなことは無いと堂々と言ってやるよ!!

 

『そうだといいんだが・・・。』

 

 

簪SIDE

 

「えっと・・・ここは?」

 

「本屋だね。この上はブティックになっているよ。」

 

「・・・本当に何でもありますね。」

 

「うん、ここの地下六階は闘技z「それ以上言っちゃダメだ!!」ノリで作っちゃったから…………。」

 

「なぜにそんな益の無いものをつくった。」

 

 

 

 

 

 

康一SIDE

 

「ちょっとそこの男、この水着を片付けておきなさい!」

「はい、ただいま!」

 

『…………何か弁明は?』

 

心って・・・綺麗なままじゃいられないんだよ・・・。

 

「さっきの男よりか使えるわね・・・。」

「いえいえ、そんなことはありません。むしろ此方が申し訳なかったです。あ、カード一括で」

 

『っていうか払うのかよ!?』

 

一夏のことだろうな・・・さっき断られていたし。あ、よっしゃ出てった…………おお、良かった財布ぱくったのばれてなかったわ。ラッキー・・・うおおおおおおおおおおッ!なにこれ?10万レベルで入ってるんだけど、つーかそんな金持っているこんなところで買うなよ!!。

 

『またぱくった!?』

 

ちなみに俺がパクるのは、受動的にだ俺は俺の良心に基づいてパクっているだけだから…………大丈夫、ばれないように配慮しているし、足が付くようなことはしないさ。あ、どうでもいい?この辺でいいな・・・よっと。あ、ちゃんと監視カメラの情報は本当なんだろうな?

 

『ふん、私たちを舐めるなよ!!』

 

ISコアの無限の可能性タグ

 

『止めろぉ!忌まわしいあの記憶を呼び起こすんじゃない!!』

 

やっぱり、あのISコアの研究って不愉快なんだ?ってか一葉の所業を俺に止められたら良いんだけど…………すまない、こればかりは今の俺にはどうにも出来ないからな・・・。

 

『まあ、寄生虫は宿主に対して等価交換を持ちかける…………大体そんなものだ。君が気に病むことじゃない。それに不愉快なわけじゃないし、実際に受けているのは私とは違うコアだ。』

 

そうか。さて・・・。ここまで来たら終わりだ、後は俺が遠目に健全なイチャイチャラブラブを鑑賞するだけだな。…………後これ以上買い物するって訳じゃないだろうし。

 

『あ、ごめん。』

 

ん?どうした?

 

『面白いかと思って…………もう、野犬の庭から魔王が飛び出して・・・いま。』

 

「相澤!ここで何をしている?」

 

 

 

 

簪SIDE

 

「ここは服屋だね。」

 

「ええ・・・見れば分かりますが・・・なんですかこれ!?コム○ィ・ギャル○ンに、ダ○ヒル

って・・・完全にそれ系御用達じゃないですか!!あ、よだれが。」

 

「気をつけてね。ドレスもあるから一着「止めてください・・・私が耐えられない・・・。」あっはっはっはっはっはっは!!……………。」

 

「え?なんでいきなり無言に・・・。」

 

「確保ォォォォォォォォォォォォォォォォォッ!!」

「え?えっ」

 

いきなり女性の波が発生し・・・・・・そして、撤収していき。

 

「ひ・・・酷いですよ・・・。」

 

「大丈夫!似合っているよ。」

 

きらびやかなピンクを基調としたドレス姿に様変わりした。

 

 

 

康一SIDE

 

ハッ・・・ギャルゲーでのCG回収したようなそんな感じが…………。

 

『いやこの状況で言えるのはそんなことじゃないだろう・・・。いやまあ、私が言えることではないのは分かっているが。』

 

まあ…………この状況下からどうやってリカバリするかは・・・どちらに~しようかな天の神s『うおおおい!!!運任せ!?特にないのかよ!?』ええい当たって砕けろ!!

 

「こんにちわ担任殿。奇遇ですねこんなところで会うなんて。」

 

「…………ああ、奇遇だな。女性用水着売り場に堂々と居座っている人間に出くわすなんてな。」

 

『話し逸らせなかったな・・・。』うるさい・・・これやばいぞ・・・保身か・・・志か・・・。俺じゃこの局面を抜けられないぞ・・・なんで、織斑先生がいるんだよ。

 

「ええ?そうですか?私はただちょっとパシリになっていただけですよ。」

 

「…………は?」

 

「いやだから、さっきまで女性がいて、それの荷物持ちや雑用を命じられていただけですよ。」

 

『…………酷い絵面だな。』

 

そんなこと言わんといてくださいよ・・・大体日本じゃそこまでじゃないけど、外国じゃそれを日銭として生きている人も居るんだぞ?

 

「断れ。」

 

「この時代にそんなことできるとお思いで?」

 

断ったら即通報だもんな…………洗脳教育を女性に施してそれを浸透させる方がこの世界を壊すのに手っ取り早いような気がする。大体こんなような事で金を稼いでいた時もあったし。…………ショタコンのお姉さんとかやばかったなぁ。

 

『ああ、そんなこともあったね。』

 

「・・・お前は男性IS操縦者だろう?」

 

「そんなこと言いふらしたら殺されますよ・・・最も言いふらせるような人もいないんですが。」

 

大体俺のことを知らない人のほうが多いだろう・・・あ、一夏は別。目の前の担任殿(IS世界最強)の弟というネームバリューのお得セットがあるからほぼ全世界に知れ渡っている。という後ろ盾が大いにありにありまくるからな・・・。

 

「…………お前の立場は私も重々承知していて、必要な措置も取っているが、お前がそれを理解していないのなら・・・死ぬぞ?」

 

「そんで担任殿は何しに来ているのでせう?」

 

とりあえず無視だな

 

「会話がまるで繋がってない!?言葉のキャッチボールという言葉を教えてやろうか?」

『私としても是非に推奨したい!!』

 

ええいお前らなにを言っている・・・こそばゆいわ。

 

「たまたま水着を買いに来た…………いや、ここは大穴で女漁りに100¥!!」

 

「誰とかけているんだ?…………週末の見回りついでに水着を買ってきた。」

 

でしょうね。女漁りとか女ですし百合の気はないだろ・・・。あったら怖いブラコンの気はあr「あべしッ!?なっなにするんですか!?」

 

「す、すまん。なぜかとても苛立ってしまってな。」

 

さすが野生の勘を持つ女…………俺しか言っていないけど。あ、良かった水着選び終わったんださて、ここからどうするか…………とりあえず着替えたい。

 

「そうか。それではな・・・あと、女性用水着売り場に男が連れもなく一人でいるのは面倒だしなさっさと出て行くように。」

 

確かに簪さんを連れてきたのはそういう理由があったからなぁ逆に人の目を寄せたわけだけど。…………ん?そうだ。

 

「水着、私が選びましょうか?」

 

「貴様…………死にたいのか?」

 

おおう・・・怖い怖い。まあ、主な理由としては、とても暇だったから一石を投じてみたいってだけだから特に思うところはないからいいけど。

 

「いえ?別に?このまま帰っても電車でスナイプ!って訳にも行きませんからね。言うなればひつまぶしですね。」

 

この場合はとりあえず守るがてら時間を潰させてくれという意味合いになる。『いいじゃない。面白くなってきた。』

 

「それを言うなら暇つぶしだろう…………まあ、いい許可する。」

 

お?どこでフラグ立てたっけ?

 

 

 

簪SIDE

 

「いやー。ごめんね…………丁度新しいブランドの試作品が出来ていたらしくてね、似合うと思ってついつい着させちゃった。」

 

「酷いです…………。」

 

「本当にごめん!お詫びとは言っちゃなんだけどさっきのドレスはあげるよ。それにこれも…………。」

 

「おおっ!懐かしい…………超重甲!!」

 

「君本当に高校生!?」

 

 

 

 

康一SIDE

 

 

「あざーっす。ちょっと着替えてきますから待っててください。」

 

「ああ、かまわん……………ん?着替え?」

 

「戻ってまいりましたー。」「はやっ!?」

 

ああ、常人より着替えが早いとは思うけどそこまでか?因みに今はカジュアルでありながら紺色の柄物スーツだ。これなら荷物もちにも遊び人にも思われやすいし、なにより今の担任殿のリクルートスーツと言う格好の人と一緒に居ても不自然じゃないからな。『わざわざご苦労なことで。』

 

「それじゃ、決めちゃいましょうか。」

 

「あ、ああ。」

 

さてと、なぜか水着を選ぶというイベントに遭遇した俺は、これからどうなってしまうのかなぁ?俺も分からないどうなるかと思いますエネさん?

 

『知らん。』

 

ありがとうございます。それでは…………どうしよっかな~。ここは…………白で意外性を突くか、黒でイメージどうりに肉体的に視覚を突くか・・・。それともめんどくさいからスク水を着させるか。・・・シュミレート中・・・

 

 

『こちらのスク水でどうですk』

ゴッ!!

 

デットエンド!!

 

 

あ、やっぱダメだ。デットだもん、バットですらないのっておかしいもん・・・。とりあえず自粛してとりあえずこっちのエロティカルな黒い水着の方が似合いそうだな、短めのパレオでも付けとけばアレンジの幅は広がるし。

 

「千冬さん?俺はこっちかこっちがいいと思うんですけど。」

 

俺は黒のビキニタイプに白のビキニタイプを手に取りそれを見せた。すると少し渋るような顔つきになり・・・。

 

「サイズは?…………合っている・・・だと・・・。」

 

といって手を伸ばし、白い方の水着のタグを見た。・・・言わせて貰いたいけど俺の観察眼を舐めないで欲しい、そんなへまする訳無いのに・・・だが、そういうことを言うのならアレだな白い方はそこまで気に入っていないってことか・・・。まあ、際もの的に選んだし、しょうがないな。

 

「それじゃ、こっちの黒い方にしましょうか。千冬さんのイメージにも合っていますし。」

 

まあ、白より黒って言う感じではあるが…………ぶっちゃけ白は箒さんのほうが似合っているような気がするし、特にこれを是非にと推奨するわけじゃないからな。

 

「それに…………生娘に千冬さんの存在は、脅威だ。」

 

攻略に勤しんでいる人間に水をさすような真似はやりたく無いからなぁ。

 

「それに、ラスボスは黒いって相場は決まっているものですよ。」

 

「誰がラスボスだ。…………その二つで選ぶのなら確かに黒の方が。」

 

「そうですね一夏も気に入りそうですし。あいつ興味はあるくせに気付かないから。」

 

「…………なぜ一夏が出てくる?」

 

黙れブラコン…………と思っておこう。思うだけだからな。俺はとりあえず黒い水着をレジに持っていった。

 

「世界の理です。この世界は一夏に収束して行く…………とかだったらカッコいいですよね。これお願いします。」

 

「女性用水着が一点。」

 

「何の話をしているんだ?」

 

「ポイントカードはお持ちでしょうか?」

 

「特に意味は無いです聞き流してください。あ、持ってないです。」

 

「29,800円になります。」

 

「ほい。それで千冬さん、これからどうします?ぶっちゃけ貴女が来たおかげで当初の予定は跡形も無く崩れ去っているんで、どこへともお供しますが?」

つーか暇だ。

 

「三万円のお預かりになります。」

 

「付いてこなくて良い。と言うよりなに勝手に金を出してるんだ?」

 

「レシートと200円のお返しになります。」

 

「あざっす。あ、どうぞ女装趣味は無いんで有ったとしても水着は着れないんで。」

体格がもろに出るから誤魔化しが効かないんだよな確実性の無いものはあまりしたくないし。

 

「止めろ気持ち悪い、施しを受けると拒絶反応がでる体質なんだ。後で払う。」

 

「俺も人に施しを与えると拒絶反応が出る体質なのでおあいこですね。」

 

三万円ほどのリスクぐらいだったらリターンが戻ってこなくても大丈夫だ。軽く百倍以上あるから。つーかもらえるものは貰っとけばいいのに。

 

「まぁ、とりあえずプレゼントですよ。見てる分には楽しかったですし、それで俺の分の報酬は得られたようなものですし。」

『確かにな。』

 

いろんな意味で儲けたな・・・。だけどこのままだと何か文句が付きそうだから・・・。

 

「それじゃ、ばいばーい。」

 

 

 

 

『やっぱり逃げますか!?』

 

「三十六計!!」

 

 

 

さてと…………あのビルに戻りますか。

 

俺は当初の目的をすっかり忘れ簪さんを置いてきたビルに直行していた。俺はこの件について特に未練を残していると言うことは無い・・・ただ見たかった。ただただイチャラブを見たかったなぁ!!

 

『未練たらたらじゃないか。』

 

しょうがない、それじゃ次に備えるか。

 

『次って?』

 

簪さんを迎えに行くんだよ。

 

『馬鹿な……………君にそんなまともな事が出来るとは…………。』

 

「「ピー」すぞ」

 

『さーせんwww』

 

 



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暗躍の終了。

一つ言っておくフラグは立ってない。
フラグ?名にそれおいしいの?彼女居ない暦=年齢の奴がどうやってフラグを立てるって言うんだよォォォォォォォォォッ!!わっかんねえよ!わっかんねえよ!!!ああ、ロマンスのカミサマ。アンタいっぺんしぬれ!!

失礼、取り乱しました。なんかそれっぽい雰囲気を醸し出していますが全くそんなことは、全然、これっぽっちもございません。
それではお楽しみを。


はぁ…………。俺・・・何しに来たんだろう、まあいいか。

俺は電車に揺られながらそんなことを思っていた。あ…………ああ、いかんこんなことを考えていてはダメだ。もっと、もっと楽しいことを考えるんだ。

にゅふふふふふふッ・・・いいね、あのデュノアの娘っこの表情。甘酸っぱいねぇ!青春いいじゃないかっ。

暴走し過ぎた。それでもあれはいいものだ、って爆発できるぐらいい物だ。収穫もあったし。

『あの盗品の金か。』

うるせ。あ、駅に着いた。それじゃ・・・頑張りましょうか。

俺は、電車の車窓越しにも見える雑居ビルを目指して駅を出た。

 

少し、歩いて目的の雑居ビル…………雑過ぎやしないかと心配になるほどの雑居ビルを階段を使いホストクラブの裏口へと登っていく。

裏口を開ければ、そこは闇の部分。タバコの煙とスマホの光だけが満ちている。そこに居た一人のホストが気さくに声をかけてきた。

 

「お、久しぶり。作ってく?」

「いえ?今日は俺だけの客のホストを。」

「そうか、お前久々に会わないと変わるなぁ。」

「そうですか?あ、それでは少し更衣室借りますね。」

「おーう、使え使え。」

 

と、許可を得て使う。あ、簪に連絡しとくか、女漁りする女も居ないとは限らないし無事を確認しなきゃ。

 

『はい、どうしたの?』

「戻ってきたから、そこで待ってて」

『ん、ホストクラブに居る。』

「分かったすぐに迎えに行く。」

 

よし、それじゃ着替え終わったし行くか。

 

「ハロー。」

「…………なぜに燕尾服?」

 

あ、知っているのね。あ、燕尾服って現在最上級の礼服で、特徴としては裾が燕尾のように長いって所だ。俺の目から見たら。

 

「なぜに君はそんなドレスを着ているのかな?」

「それはね、僕が着させたからだよ」

「あ、鈴也さん。なるほどオリジナルブランドの試作品ですか。」

「うん、結構カワイイでしょ?」

 

うん、かわいいか可愛くないかでいえばかわいいの部類に入るんだと思う。元がかわいいから。

 

「それなら話が早い。鈴也さん俺はお詫びも兼ねて上に行くけど。」

「そうか、あ、名刺は持っているね?」

「ばっちりと。」

 

俺は、財布から名刺を取り出して見せた。

 

「うん、それでいけるよ。」

「いやどこに行くんですか?」

「あれ?打ち解けてる?」

「うん。」

「注目するところはそこではない!!」

 

「そうなんだろうがな…………。とりあえず最上階での高級レストランで食事でもと思ったんだが。」

「…………は?あの、鈴也さん?私の頬を引っ張ってくれませんか?」

 

むにーむにーむにーむにー

「・・・夢じゃない。誰だお前は!」

「偽者じゃないぞ。」

「おい作者ァ!キャラ崩壊して・・・元からだったか。」

「泣くよ?」

 

確かに…………簪は一番俺のキャラ変遷を見て来てる人じゃないか?いや、IS学園内ではね。

 

「だめ!絶対にダメああいうところ受け付けない!」

「はぁ…………それじゃ。」

 

 

 

 

「いらっしゃいませ。二名様でよろしいでしょうか?」

 

「結局ファミレスか。あっ、はい」

「こっちの方が雑多で良い。」

 

そのようだ、チッ。鈴也さんの手前そうするしかなかった。つーかこのビルにファミレスがあること事態すごいと思うんだが?

 

「それにしても、こっちは驚き疲れたわ。」

「ああ、こっちも魔王に絡まれていたからな。」

「魔王って…………。」

「我らが担任様だよ。あのブリュンヒルデの。」

「なるほど、康一が天敵のように話すあの人ね」

 

むしろ天敵しか居ないのは気のせいだろうか?いや、味方・・・もうどうだっていいや。ISで世界最強(ブリュンヒルデ)とか普通に小細工を粉砕するんだぜ?小細工しかない俺とかどうすればいいんだよ。

 

「ほら、どれを食うんだ?」

 

 

こうして食事を済ませた。鈴也さんにはまた来い、とかいわれたし今日は一夏へ好意を寄せている人が分かるだけでも良かったし…………

 

「康一。今日は楽しかったよ。」

「おいおいさっき驚き疲れたとか行ってたじゃねえか。」

 

簪と出かけるのも、たまには悪くないと思っただけでも。

 



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臨海学校編
その銃身の上に立ち。


サブタイに意味は無い。


カチャ、カチャカチャッ!カチャ。

「久々に…………腕が鳴る。」

非常に長い銃身を持った…………ボルトアクション式の狙撃銃だろうか?その銃を分解しながらそう呟いた。

「支給されてきた玉はこれに専用デバイス………か、どれだけのベストショットを撃てるかがポイントになるな。」

と言って分解の手を止めて三つの弾丸とサングラスを手にパソコンに向かい、弾丸にUSBをぶっさした。

「保存容量は…………1TBか。廉価版とすれば十分な量だが・・・だがこれに関しては趣味の部類だ協力は望めないか。」

と言って分解作業に戻る。その顔つきは真剣そのものであり何者にも邪魔されない雰囲気を帯びていた。

「ショットポイントは割り出しているからな…………後は警戒と中継地の隠匿。」

分解作業が終わったのか、椅子に座りながら光るパソコンのモニターを虚ろな目で見ながらコーヒーを啜る。

「それに…………努力。」

分解し終わったパーツに綺麗な布を当て、そのまま滑らし整備していく。このような手合いの精密機器を埃などの異物ですぐに価値や品格が壊れてしまう、そんな美術品のように扱う。そうしてパーツに指紋一つ残さずに整備を終え、それらを組み立てて分解前と同じ銃身の長い銃が出来上がる。サングラスをかけながら、ボルトを引き弾丸を装填する。そして構えてゆっくりと引き金を引き絞る。そうして。

 

 

「相澤康一を…………殺す。」

 

ガチャリと、ドアがその存在を示すように開いた。

 

「いや、なにやってるの?」

 

「あ、簪?居たんだ?」

 

盗み聞きしていたのか、全てを把握したような口ぶりで簪が寮室に入りながらそう聞いて来た。

「いたよ、「久々に…………腕が鳴る。」の所から居たよ。そして自分を殺すってどういうこと?意味不明すぎて噴き出すところだった。」

 

「いや。明日臨海学校じゃん?」

 

「誰を狙撃するんだよ。」

 

「これ。」

俺は簪に銃口を向けて構え引き金を絞る。サングラスに被写体、露出補正やフォーカス機能などの情報が映し出されるのを確認した。

 

「カメラなんだよ。」

 

簪は卒倒しそうに頭を抱えた。因みにこれ世界研究者クラブの作品だ、ISの装備として連携できるし、言うに及ばず、うら若き女性たちの肢体をこれに収めることが出来る。

 

「なんという・・・おろかな物を持っている・・・。」

 

「とまあ、これでばっちりだな動作確認をしてなかったし、近くに良い被写体が居たからな準備は、・・・ばっちりだ。」

 

俺は…………結構楽しみだな・・・。

 




伏線回収が辛くなりそう。
どうでもよさげな所にも張ってあるからな…………。


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海と写真と不穏な空気 

この回では少々主人公がゴミ発言をします。耐性の無い人には堪えると思うのでお気をつけください。




そこは海。うら若き乙女達が裸同然の姿で遊びまわれる場所…………。

 

「と言うわけで海だ。それじゃ始めますか。」

 

『うおーい、それでいいのか?お前にとって海とは商品価値だけでしかないのかい。』

 

「正確にはその周りの産物だがな。」

 

しょうがないな、今俺は、臨海学校に来ている。正式名称は忘れたが、大体そんな感じだ本来の目的は限定的な空間のISの起動ではなく、もっと広い所でやってやろうと言うことらしい、だがそれだけではこんな若年の人間たちは折れ曲がってしまう、そこで生徒が遊ぶための時間に俺が此処でスナイプショットを決めるわけだ。ショットポイントは、かなり遠い撮っているのをばれたらやばい、色々とな。だからばれないように周囲の岩陰や雑木林で隠れて悠々と撮るようにしている。此処までするのもIS学園の極秘事項とかなら闇の人間に売れるし、画像加工で女神にもなれるから…………前者はやらないよ?

 

『その写真は君の唯一のまともな趣味と言っていいからな止めはしない。』

 

「ヘヘッあざーっす。」

 

つーか、これが無かったら俺は此処にくる理由が無いから。一夏とかだったらISで強くなって自身の身を守るって言う目標があるし本人の意思が強いからアレだけど、俺はもう無味無臭の一般以下の人だからな?だからこれで…………ほんとにこれ、バレずに持ち運ぶの苦労した。

 

「っと…………それじゃ。やりますか。」

『ああ、頑張って来い。』

 

 ◆ ◆ ◆

 

「フヒヒヒヒッ………あ、イェス。やっぱ一夏の周りの人間は良い顔をしているな。」

 

俺が覗いているスコープには、一夏が捕らえられている。その周りは専用機持ちのオルコット嬢が居る。しかし良い顔だ、恋する乙女は綺麗になると言われているからな…………あ○ちゃんで言っていた。女性が瞳孔が開く、いつもより口角が吊りあがる、などで恋していると分かる・・・と思う。むしろ俺の場合は勘として処理している。

 

「ん?オッ!?…………待て、待つんだ狩人はあわててはいけない・・・。」

 

俺のスコープにはセシリア嬢が一夏にオイルを塗ってくれと頼むところが映されていた。本当にそれはこれ以上無いショットチャンスだった…………。もうこれ以上見ていたら俺はブヒるとこだ、だが指はちゃんと写真を撮っていた、ああ、本当にありがとう一葉とこの世界!!

 

「うん、いいケツだ。」

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

「・・・セシリア?どうしたんだ?」

 

「物凄い・・・寒気がしましたわ。」

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

…………あり?しまった・・・。これ以上の撮影は、ばれるかも知れない。とりあえずスコープ内に入れないようにしておこう。

 

『私だったら、全力で逃げる分かった時点でな。』

 

「俺だったら、金を取る。ファビョを演じながらな。」

 

『出来るのか?』

 

最悪金欠の時はな。んじゃ…………次は誰が居るかな?あれ?・・・キマシタワー。

 

俺のスコープに写ったのは凰 鈴音だ…………これは、ショットポイントを変える必要があるな、クソッ間に合ってくれッ!

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

「一夏!!」

と言って水着で飛びつきながら一夏の背中におんぶされる様に抱きついた、すごい身体能力である。同時にその慎ましやかなお胸も当たっているのだが。

 

「うおっと。鈴、危ないだろ。」

返事はそれだけだった。

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

「ふぅ…………間一髪。」

 

あぶねえ、俺としたことがベストショットを取り逃す所だった。

しかし、本当にいいカメラだなこれが無かったらヘンタイに成り果てる所だった。まあ、それでも周りの人間を黙らせることは出来るんだよね・・・。

やりたくは無いがな。

しかし…………これ面白いなぁ。少し疲れたが…………いや、ちょっとお色気の部分も狙ってみるか。

 

俺は更衣室の部分にスコープを持ってくる。…………箒さん?どうしたんだ?白いビキニタイプの水着を持ってただ立っているが・・・いや、考えろ考えるんだあの状況で水着を持ちながら立つと言う事は・・・

 

 

買ったは良いが恥ずかしくて着れない・・・?

 

 

「全力で萌えるんですけどォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!」

 

俺は指をを連射モードにして撮っていた、その速度はアレだタカハツ名人並みに連射していた。いや、本当もうどれだけあざといのこの子は!…………あ、一つの弾丸が終わった。

 

『そりゃ、千枚単位で撮ってたらそうなるでしょうに。』

 

リロードめんどくさいんだよな。なぜかボルトアクション式だし、やれないことはないが…………あと、弾丸は二つパソコンに落としながらと考えると、連続撮影時間は1時間弱って言ったところか。だがこれも一定の間隔で撮り続けた場合の話ださっきのように、連射モードでは話にならないほどに減り続けていく、ペース配分を考えなければ。

 

「思いっきり撮っちゃったけど、どうしても撮りたい時に困るんだよな。」

 

さてと次は…………。お、似合ってるな。そこ(スコープ)にはデュノアの娘っことラウラがいた。・・・ラウラはいやいやと新しい水着を一夏に見せるのをためらっている。

そして、それらを見ていると、不意に胸の奥がズキッと言った感覚が襲ってくる、ただ不快じゃなく慈しみすら覚えるその痛みを俺は。

 

「もしかしたら…………これが青春。」

 

『その言葉を作り上げた人も、まさかこうやって使われるとは思ってなかっただろうな。』

 

むしろこの用法しかしていないよきっと(ウソです)

いやー、それはそうと青春いいよね、もう死にたくなるくらいに、むしろ青春から緩やかに死に向かっていくぐらいでいいと思う、実際そうだろうし。

 

それは置いといて…………やべェよ、もう二つ目の弾丸終わった。ちゃんと吟味して撮ったはずなのにラウラ、デュノアの娘っこ…………なんて恐ろしい子!。二人でポテンシャルを三倍ぐらいに上げるとは、指揮官機で赤いカラ-リングを付けた機体になれる。

 

まあ、ちょっと一息入れるか。

 

プシュッ

 

ゴクゴクゴクッ

 

「プッハァーーーー↑…………ムダにコー○を一気飲みするのは病気か何かなのだろうか?」

 

どうでもいいけど、木にスナイパーライフル立て掛けてそれに腕を置くの結構楽なんだけどどうして?答えておじいさん。

 

『ワシャ知らない。』

 

出演者 エネ(あのトロトロチーズのジジイ)以上。はい、ありがとうございました。つか、どうでもいいいわ。・・・その言い草はないか。

まあ、とりあえず、一服も終わったし。動きましょ…………しまった。馬鹿な!・・・いやそうだ、考えてみれば分かることだったじゃないか!!!

 

『どうしたんだ?』

 

担任殿、いやここはあえて、あのお○パーイに敬意を評して――――織斑、いや一夏と被るな。千冬さんと呼ぼう!!山田さんはこれまで通り、山田さん又先生でも可!

 

『言葉からは敬意の気持ちが欠片ほども見つからないな。』

 

「千冬さんが・・・千冬さんが・・・。女性用水着を着ているんだよ!!!!!!!!!!!」

 

『おい、謝れ。命が危なくなる前に。』

 

その魅力を一言で表すのなら、千冬さんと山田先生は大人の魅力をふんだんに詰め込んだ、ほかのガキとは一線を画する、あのわがままボディだ!だがしかし!二人とも同じジャンルを会得しているとはいえ性質は全く違う、山田先生の性質を表現するのであればそれは、無骨な抜き身の野太刀!見るもの全てが畏怖の念を抱く名刀、纏った水着すらも恐怖の二文字を刻むのに十分過ぎる・・・。対して千冬さんは、洗練された刀匠に作られた機能美を持った一振りの刀!!それは切る物を選び祝福と死を完全に分けれる名刀、正直俺には、黒い水着が黒塗りの鞘に見えるぜ・・・。

 

『急に語りだしたな。』

 

…………クソ、俺が本気になっていれば!黒じゃない別の方法も、せめてあんな店で(・・・・・)買うものじゃなかったはずだ!!・・・クッ!失格だ、ファッションに携わるものとして美の力量を見誤るべきじゃなかった!

 

『その割には服の名前とか覚えていないな。』

 

…………葉っぱ一枚とジャージさえ覚えておけば人は生きていける。

 

「ってこんなことしている場合じゃない!早く撮らねば!」

 

『フラグが立っているって分からないのか?』

 

そんな呟きを無視して俺はその独特(と言うより銃だが)な形のカメラの特徴を生かした伏せ姿勢で構えて引き金を絞るように引いたとき。首筋に血が流れた。

 

 

「!!」

 

 

うっすらと流れ出てくる興奮以外の新たな感覚。それに揺さぶられまいと俺は頭を必死に働かせた。

 

『考えろ、考えろ。俺はどうしてこうなった?まずは状況を・・・いや、身を隠しているから完全に事故の線は無い故意的にだ。利益。・・・いや、さっきので殺すことも可能だったじゃないか、ならば誰がどのようにして・・・。』

 

あ…………『フラグが立っているって分からないのか?』―――フラグ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

↓                                         ↓

「千冬さんが・・・千冬さんが・・・。女性用水着を着ているんだよ!!!!!!!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………………盛大に大きな声で喋ってますやん。いや、怒るよねそんなこと言われたら。

 

とりあえずスコープを担任殿に当ててその表情を見た。その目は極限にまで細められており、不機嫌オーラが火山の噴火のごとく噴出していた。そしてその口を動かすのが見え声が届かなくともその意味は、はっきりと分かった。

 

《後でおぼえてやがれ》

 

と。

 

『…………康一。分かっているな?』

 

ああ、分かっている。

 

「全力で…………謝り倒すさ。」

 

こうして、新たな戦い(土下座)の幕が開ける!!

 



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「え?アレからどうなったかって?それは、ボコボコにされましたよ。ええ。むしろそれ以外ないでしょう?」

 

「康一君、誰と話しているの?」

と、デュノアの娘っこに話しかけられた。いや、俺の奇行に質問しただけだが、とりあえず「なんでもない。」と答えておいた。それよりも飯だ、花より団子とも言う。

 

今現在、俺は臨海学校(正式名称があったはずだが忘れry)の唯一と言っていいほどの自由な時間を無駄に過ごし、ムダに終わった時間が意思を持ち逆襲してくるかのように一つの試練がやってきた。(自由過ぎたかもしれないが。)それは女性の前でずっと罵られながら正座をしていると言うちょっと男性で特殊なご性癖の方にとって体のごく一部がげふんげふん!

 

失礼…………というより失礼しかしてないような気がする。が、特に問題はないだろ。

 

それより今はこの目の前にある飯だ。俺の目には眩し過ぎる生鮮食品の数々。

この刺身とか油乗っててらてら光ってるからね?と小一時間ぐらい興奮しながら話したいくらいにおいしそうな食べ物たちを、俺は今からグルメ漫画を小ばかにしたいんじゃないかと思わせてしまうほどに普通に食う。

 

「うめえ…………うん。」

 

………美味いや~ん。

まあ、食事くらいゆっくり食いたいよな。………美味いや~ん。似非関西弁になるくらいおいしいって事でここは一つ。

 

つーか、ここの旅館いいよな。古すぎず新し過ぎず、絶妙な独特の雰囲気が出てる。………美味いや~ん。

あれ?俺の二つ隣に居た一夏がなんか言っている。特に聞き流してもよさそうだ。………美味いや~ん。この薬味もいいものを使っているし、やっぱ刺身と言えばわさびをつけなきゃ刺激が足りないな…………そういえば、わさびと言えば初対面でわさび饅頭(芸人使用)で食べさせられた人が居たなぁ。

 

「…………ねえ、一夏?これはなに?。」

「ん?これか?わさびだな。いい奴だから少し舐めただけでも辛いぞ?」

 

はぁ、全くイチャイチャしやがってハーレムルート一直線に行ってくれないかな?面白そうだし、今現在だって両手に花だし。………美味いや~ん。あ、因みにもう片方はオルコット嬢な。

 

しかし、あの(担任殿の件)時の俺は本当に謝り倒したな。………美味いや~ん。喋る隙を与えぬように謝っていたな、王様になれるんじゃね?見たことは無い。

 

………美味いや~ん。つか美味い。まあ、何事もこのままで居てくれれば。

 

 

「ああ!セシリアが一夏に食べさせてもらっている!」

 

 

………美味いや~ん。二重の意味で。わー、面白そう!行け行け!もっとやれ!あ、鰈っておいしいんだな、野菜しか食ってなかった反動か?。

 

キャー!キャー!と言った黄色い声が聞こえてくるかなり甲高くうるさいとは思いつつもめんどくさかったので………美味いや~ん。とのモノローグを流すことにした。

 

 

………美「キャー!」味いや~ん。………美味いや~ん。…「キャー!」……美味いや~ん。………美味いや~ん。………美味いや~ん。………美味いや~ん。………美味いや~ん。

………美味いや~ん。「キャー!」「キャー!」「キャー!」「キャー!」………………美「キャー!」味「キャー!」い「キャー!」や「キャー!」~「キャー!」ん「キャー!」。

 

 

 

 

「キャー!」

 

 

 

 

 

いやなに、このブツ切り感?てか最終的に「キャー!」が勝ったよ!つーかうるさい!

 

「「ええい、貴様ら飯ぐらい静かに食えんのか!」」

 

え?ハモりましたよ?…………。

 

恐る恐る後ろを見てみると。ですよね~我らが担任殿が(ふすま)を開け放った姿でそこに立っていた。ほんとに立つだけでも恐ろしいんだけど、このお方は。

 

「静かに食べるように…………後、一夏。今後はこんなことを起こさない様に。」

「え!?俺?」

 

すべては一夏に原因が行くといっても過言ではない。…………過言だった。と言うよりよくあそこまで異口同音が出たな、うん…………………………………美味いや~ん。

 

 

やっと静かに食える・・・あ、食べ終わってた。クソ・・・静かにさせた意味がねえじゃねえか。

 



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飯・・・おいしかったけど。これは不味いよな・・・。

 

「くっ…………一夏、激し過ぎるぞ。」

 

「悪い悪い。久しぶりだし少し慣らしとかないと。」

 

「ああっ!」

 

いやね?これは腰揉んでいるだけだから、え?何で見えてるかって?そりゃ俺は一夏、担任殿、この二人と相部屋だからだ。極めて簡単なことだ……………なぜかラブコメの波動を感じる。

 

主にこの部屋の出入り口からだが。あ、碧玉でた。と言うよりこの姉弟たちはかなり仲がよろしいことで、いいことに越したことは無いんだが、それでも行き過ぎているのは周りに迷惑だ。と言うより、周りのヒロインの邪魔をして欲しくない……………法改正だって出来るのに。あっ、これがストーキング娘のルートか。とりあえず、この出入り口付近の声でも聞いてみるか。

 

「…………何が起こっているの?」

 

これは(ファン)か。結構動揺しているな。

 

「これは…………つまりそういうことだろう?」

 

いやいや、箒さん…………どういうことなんでしょうかねェ?ゲスガオ

 

「どうする?踏み込む?」

 

それもそれで面白そうだな。

 

「いや、もう少し状況が進展するまで待とう。」

 

そうだな、そうしたほうが良い。せめて、あの専用機持ち達が全員揃うぐらいで良い、むしろ揃ってくれ。面白そうだから。うわ、捕食攻撃が決め手となるってちょっと損した気になる。

 

「いつもの事ながら上手いな・・・んっ。」

 

目を少しトロンとさせながらそう言った、とても気持ちよさそうだ。それと同時に盗み聞きの方も気持ちが上がって来ているぞ。

 

「あっ、ごめん痛かったか?」

 

挿入ですね分かります……………いや、肩甲骨に手を入れてるだけですよ?俺はやってもらったことが無いから良く分からないが。こちらも怒りと傍聴者が吸い込まれるように挿入されて行っています。本当にこの二人は天然だな、俺は真似したくない。

 

しかし、よくもまあ示し合わせたかのように来るもんだな……………専用機持ち+箒さんが全て集まったな。

しかし、箒さんはすごいねえ、ただの幼馴染だからって。ISの学校で、ISのトップレベルの奴らと一緒に居るんだもの、専用機も持っていない開発者(篠ノ之束)の妹ってだけのアドバンテージで。…………ま、女性の恋ってだけで済ませられちゃうからなこのご時勢。お兄ちゃんどいて!そいつ殺せない!がリアr・・・充している奴ら視ね。ダメだこの話題は!

 

「担任殿。もう、そろそろいいんじゃないですか?」

 

とりあえず先ほどの脱線した話を廃線にして、生娘達全員が揃った所を一網打尽にしよう。と、担任殿に打診した。気が付いているようだったからな。

 

「…………許可する。」

 

その顔は、いたずら小僧のような顔だったつまり…………。ヒットだ。俺は、盗み聞きをしている所に思いっきりふすまを開けてその醜態を白日の下にさらけ出した。

 

 

「はぁい。五名さまをごあんな~い。」

 

 

たまらないねェ、その失敗に満ちた顔。おっと、無自覚に笑っていたな気をつけねばデュフ。

 

 

 

 

 

 

 

そこは断罪の場、といっても日本国で厳密に決められているようなものではない。ただの私刑の制定所だ。私刑を決めるのは織斑千冬。傍観者は織斑一夏。そして私刑を決められるのは女の子、篠ノ之箒、セシリア・オルコット、凰 鈴音、シャルロット・デュノア、ラウラ・ボーデヴィッヒ。この五人だ。因みに面白がっているのは俺だ。

 

「ん?で、貴様ら、何か弁明はあるのか?」

 

と担任殿に言われ、少女たちは少し息を飲んだ。良かった、とりあえず情状酌量の余地はあるようだ。

 

「あったとしても聞く耳は無いがな。」

 

無かったらしい。このままだと一人一人がアイアンクローのオンパレードって可能性も出てくるからな話をまともにしよう。

 

「まあまあ、担任殿も理由が分からない訳じゃないでしょ?」

 

「まあ…………な、私も女だ、分からんことはない。」

 

「え?」

 

「よし、歯を食いしばれ。」

 

手をアイアンクローの形にしてなに言ってるんですか!?つーか、ここに居る人たちの視線が痛い!

 

「イヤイヤイヤイヤイヤ!?アレですよ、あまりに美しすぎて性別や性癖や年齢を超越した次元に存在していると思ったからこその え? ですよ何を強すぎて人間だとはおもわゲフンゲフンいやぁ!こんな美人さんだと触れられるのも至福の至りで死んでしまいそうだなぁ!」

 

 

頭蓋骨の軋む音がした。

 

 

「それで、多少邪魔が入ったがとりあえず順に訳を話していけ。」

 

ふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふ。良いんだこれで、少しは怒りがどっかにいっているだろう。口が滑った野は一生の不覚だった・・・。まあ、とりあえず覚醒は後ににして今はこの安全圏で危険な話を聞けるという立ち居地に甘んじようではないか!最初はラウラが最初に口を開いた。

 

「嫁に会いに来ました。」

 

意図がよめん、なんつって…………とまあ、ラウラは(なぜか)俺と担任殿には敬語。一夏や他の人間には普通に喋る、それはもう、少し織斑先生が残念そうな顔をするくらい普通に喋る、妹でも欲しかったのだろうか?。

 

「一夏、嬉しかろう。」

 

無い胸(至高の表現)を少しばかり張り上げて自信満々にそういった。これも胸と表情のギャップ萌えが発生するのだろうか?それはどうでもいいとして、その答えに少し頭を抱えながら次に回した。

 

「次、凰お前はどうした?」

 

「い、いや…………。」

 

「どうした?盗み聞きは関心せんぞ。」

 

一夏と遊びたかっただけですよね…………あわよくばって感じだろうけど。俺が表情から推察するに、凰と、箒さんと、デュノアの娘っこはただ遊びに来ただけって感じだな。だがオルコット嬢は何か違うそうだな…………ああ、テロ組織が大義名分を『って、そんな物騒なものでたとえるんじゃない!!』

 

ですよね~けれど、確かに何かは後ろ盾があるような気がする。

 

「一夏と遊びたかっただけです。」

 

そしたら大人の遊びをしている所だったんですね分かります…………あの、こっち見ないでくださいよ。モノローグに突っ込みたいのは分かりますが。

 

「はっはっはっはっは。正直っていいな凰!」(訳 覚悟は出来たか?)

「ええ。とてもいいものですね」(訳 もう、どうでも良いや)

 

水面下で交わされるそんな会話にほくそ笑み。俺は、面白がりながらそのまま気絶していると見せかけている状態で聞いている。

 

「セシリア。お前はどうした?」

「私は一夏さんに呼ばれてここに来ましたわ!」

 

あ、なるほど。そんなことを言っていたのか…………なるほど、下着も気合入っているのはそういうことか。担任殿の目が一夏に行き、「余計なことを…………。」と目が語っていた。

 

「ああ、千冬姉。さっき迷惑かけたから、マッサージでもしてあげようと思って。」

 

気が利くのぅ。暇だから変な寝言でも…………めんどくさ、やめとこ。けどなんかしたいな。

 

「そうだな…………確かにこいつはマッサージが上手い。オルコット、少しやってもらえ。」

 

おふ、後の四人放置ですか。まあ、いいけど俺を起こすような努力はしないんですね。ンゴッ!?ウヴァ!?(声にならない声。)ちょっと担任殿!?マッサージの邪魔になるからといってゴミを投げるかのように片手で投げるのはダメでしょ!倫理的にじゃなく人間的に!俺、確か59kgぐらいだったぞ!?

 

はぁ…………これで女かって言われて疑問を呈されても仕方がないぞ?

 

『そりゃ怒るだろ。』

 

うん怒りますよね~。あの、図書館に住む座敷童のあのやろう。俺もあの本の投擲術を習って置けばよかったかもしれない、てか、結構懐かしい。

 

あれ?おいおい、シャッターチャンスだったな。担任殿が、オルコット嬢の浴衣を剥ぎ取り下着を見ている。アングルとタイミングさえ合えば50…………いや100は行くな。え?世の中には好事家って言うものが居るんだよ。今の俺ってパパラッチ仕事でも食っていけるからね

 

 

コイツがある限り!ペッペペーン!! 狙撃銃型遠距離カメラ~。

 

 

いやどうでもいいか。と、無駄なことを思いながら過ごしていると。

 

「一夏、お前は少し席を外せ。」

 

俺の体に(ほかの人には悟られないように)電撃が走った。この状況で一夏を外す、それはつまり ガ ー ル ズ ト ー ク それは、男子の一切の侵入を許していない聖域!一夏あたりなら余裕で入ってそうだけどな。そこに、大事なことなので何度も言うが、安全圏で危険な話を聞ける状態にある俺の状況を鑑みたらどうなるだろうか?…………打算。圧倒的打算。

 

「わ、分かった…………。ジュースでも買ってくる。」

 

勝った…………圧倒的勝利!

 

「あ!ちょっと待って!一夏!俺も俺も、コ○ラと○ントスとコン○ーム買って行こうぜ!」

 

ガン!

 

「イテッ!?荷物にぶつけた!」

 

 

いや、あのまま居たら…………。いやもっと前になると、H×H(ハスラー×ハスラー ビリヤードの漫画だ。独自ルールや必殺ショット、五メートル大のキューを使うことで有名)の4巻を見ていなかったら死んでいた。

 

何故なら………出て行くときに見た担任殿の目が、獲物を逃がしたライオンのように敵意と悪意と少しばかりの失意を孕んでいたからだ。

 

 

 

 

 

 

 

「あのまま逃げなかったら、俺死んでたかもな…………。」

 

「まて、待つんだ康一、買い物カゴに当然のように避妊具と○ーラとメン○スを入れるんじゃない。男二人でその買い物は完全にカモフラの匂いがプンプンするぞ。」

 

ああ、逃げたのはカモフラ本命は…………。

 

「祈る…………ただ、それだけだ。」

 

「何をだよ!!」

 



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菓子とボーイズトーク

カランコロンそんな下駄の音が聞こえるのは、完全に俺の脚に下駄が装備されているからだろう。浴衣に下駄そして少しばかりの高揚感それがあれば祭りの気分は味わえるのだが。

 

「康一、後何買ってく?」

 

一夏というこんなドラ○エ言ったら戦士(男)と戦士(男)と戦士(男)と戦士(男)のむさくるしさが×100倍程上がるパーティを作り上げられたようなものだ。特需はあるようだけど。

 

「そうだなポッ○ーと○ッキーとポ○キーでも買って来ようか。」

 

「ポッキ○好き過ぎだろ。」

 

「ああ、その名を冠したゲームが出来るだろ?」

 

「貴様は今食べ物で遊ぶという最大の愚行を犯した。」

 

女の子が絡み合っている姿って売れるんだよ。ま、俺が見たいって言うのもあるが。

 

「冗談だ。」

 

「真顔で冗談言うの止めろよ。」

 

「年齢が年齢ならどぎついブラックジョークをかませたんだがな。」

 

「へぇ、例えば?」

 

「例えば…………そうだなあの○○○○の○○○○○が実は○○○○っていうことそれはもう○○○○で○○○が○○○○○」

 

「予想以上に酷かった。」

 

むしろ何も言ってないような気がするんだが。それはそうとこの後どうしようか。エネを飛ばして直接あの部屋においてきたボイスレコーダーでも聞くか?いや、後のお楽しみだな。あ、かつおのたたきって美味いよね、買ってこ。

 

「しかし、千冬姉たちはなにやっているんだ?」

 

「そりゃ、ガールズトークだろ?あの、女子達が教室の隅でやるような奴。」

 

「どちらかといえば中央でやっているな。あ、キノコ型のアレ買ってこうぜ」

 

とりあえず、キノコ型のアレをレジカゴに入れた。でしょうね、女の花園と呼ばれるIS学園だから。ネットで調べたら誹謗中傷がそれはもうGのように出るわ出るわ。

 

「そうか、そんじゃこっちも負けじとボーイズトーク(下世話な話)でもするか?」

 

「何話すんだよ?」

 

「お前ぶっちゃけ誰が好き?」

 

「は?」

 

ええ?真顔で は? が来ましたよ。女子にやられるのはアレだけど不意打ちは不味いって。とりあえず、たけのこ型のアレも買ってくか。

 

「因みにLIKEじゃなくてLOVEのほうな。」

 

「またまた…………なんでそんなことを?」

 

「浮ついた話しの一つや二つの噂も聞かないからな。それで気になったって訳だ。んでなんかねーの?」

 

「…………今はまだ、そういうのは考えられなブベッ!?。」

 

おっと、ちょっと強めに叩き過ぎたか。悪い。だが、このままノリで押し切る!

 

「ああん?お前は何を寝ぼけたことを言っているんだ?男なら色を好むのは当然のことだろうが!」

 

「色って…………。」

 

「まあ、それは横に置いておくが。なんか無いの?こう…………女子とイチャラブしたような経験とか。箒さんって、せんべいってどれが好きだっけ」

 

「例えば?あ、これ。」

 

例えばって分からんか?

「手を繋ぐ、相合傘や頬にキスとかだな。具体的には一夏がそういうようなことを

したい人間だ。ぶっちゃけ結果より俺は過程が大事だと思うね。」

 

「何の話だ?……………だけど、その答えとしては本当に、今はそういうことを考えられないって言うのが」

 

まあ、そうだろうな。こいつは今一番身の危険がある、男性IS操縦者であること、そして織斑千冬の交渉材料になることだ。まあ、織斑千冬の有用性についてはIS世界最強という箔ってだけだが。その筋の後ろ盾もあることはあるのだが、一夏自体を手に入れるつまり

 

「千冬姉にハニートラップに気をつけろって言われてるからな。」

 

そう、ハニートラップやそれに準じた搦め手が有効だ、武力にしてもそれを振るうための大義名分がなければ、悪として数に圧倒されてしまう。

 

「ま、その辺のもろもろの事情は分かってるさ。その上で聞いている。だって、楽しまなきゃ損だろう?ドラ焼きっていいよね。」

 

「…………だろうが、な。」

 

「じゃあ、質問を変えよう。一夏お前は、そうだな、セシリア・オルコットをどう思っている?」

 

「どうって?ブベラッ!?」

 

「だぁかぁらぁ!その女の子について思ってることとか、こうして欲しいな~とか無いの!?てめえだって人間だろうが嫌味や嫉みや鬱憤もしくはそれに準じる物の一つや二つの物が有ったって不思議じゃねえんだよ。そういうことを言うのがボーイズトークってもんだろうが。」

 

「…………は、はぁ。そうだなセシリアは。」

 

と言って、少し考えるようなそぶりを見せる。

 

「下僕と遊んでくれる変わったお嬢様って感じだな。」

 

wwwwwwwwwwwwwっちょwwwwwwwwwwwww。

 

「一夏、最高だ。その代わりに何か好きなお菓子を入れることを許可しよう。」

 

俺は涙を流しながら親指を立てていた。けどそれは悲しくて泣いているのでは無いのではない、面白くて泣いているのだ。

 

「そして…………なぜにそう思うんだ?」

 

そして、理由も聞き出さなくては!!

 

「いや、一つ一つの動きが上品と言うか…………言っちゃなんだけど育ちが良過ぎてこっちが劣等感を持つんだよ。場所が場所なら美徳なんだろうが、俺にはちょっとな。仲良くしていると言うか仲良くしてもらってる感じがある。スコーンでも買うか。」

 

「なるほど。」

 

とりあえず、スコーンをカゴに放り込んだ。

「じゃ。次は…………デュノアの娘っこ、いや。シャルロット・デュノアに関しては?」

 

因みに一夏に惚れてる。え?主人公補正だよ。

 

「シャルロットは…………そうだな、純粋にクラスメイトって言ったほうがいいな。」

 

「ほう、してその心は?」

 

「仲がいいし、人当たりもいい、優秀な成績に、いい人柄。…………つまり、ここから考えると、俺にも仲良くしてるみたいな感じだな。本当によく俺にも仲良くしてくれるよな。」

 

「フーンソウデスネー。それじゃ、デュノアの娘っこと付き合いたいみたいな、浮いた感情は無いのか?あ、これ買ってこ。」

 

「ハハハッ持ったら失礼だろ。だからいつも箒にデリカシーがないと言われるんだぞ?」

 

「百歩譲って言われたことは認めるが、俺と一夏セットで言っているからな?」

 

「え!?」

 

じゃねーよ。と心の中で呟きながら。俺は次の人へと移る事にした。

 

「ラウラ・ボーデヴィッヒはどうだ?好きか?」

 

「そっちに直帰!?…………ん。そうだな、妹?」

 

妹か…………。一葉に似たようなものか。

 

「それじゃ恋愛対象にはならないって言うことか。」

 

「ああ、なんか。一緒に過ごしてなんかアレだ、やることなすこと姉に似すぎて…………な。」

 

なるほど、面白い。

 

「有名な姉を持つと大変だな。」

 

「うっせ、それ以上に有名になってやる…………って思ってるんだ、俺は。それが此処まで育ててくれて寄り添ってくれた千冬姉への恩返しでもある、とも思っている。」

 

へえ、なかなか考えているじゃないか。

 

「だったら、頑張れ。何を頑張るかはテメエで考えろ。」

 

「この時代だったら、なにやるかは決まったようなもんだな。」

 

「フッ…………よし、次!凰 鈴音。」

 

「親友。それがダメなら悪友って所だな。」

 

即答ッすか!?親友ポジ…………悪くは無いが。そこで固定されていたら強力なイベントを起こさないと!例えば、アレだ生死を彷徨うとか行方を眩ませるとかな。危機を乗り越え二人は…………キャー。おっと女子的なノリが移ったか?

 

「はぁ、よくそこまで。なんかこう、ドキッとする時とかないの?」

 

「引っ付いてくる時とかだな。まずいアレは。」

 

ああ、確かに慎ましやかなムネがゲフンゲフン。が引っ付いていますね。ちゃんと写真に収めてありますよ。とりあえずこの二つ程ある買い物カゴも金を収めないとな。

 

「へえ、うらやまけしからん。」

 

「19800¥になります。」

 

「どっちだよそれは?」

 

「それは、けしからんに決まってるじゃないか。ほい、丁度。」

 

つーか、買ったな。

 

「それじゃ、箒さんは?」

 

「……………………………………………………………………………………ん?」

 

……………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………来たんじゃねーの?これ?

 

 

「どうしても、言わなきゃダメか?」

 

「ダメだ!」

 

「わかんない。」

 

「もっと深く!自分の心を探るんだよ!」

 

「う……………………。もう行こうぜ。」

 

「ああ、真実へ!」

 

「何でそんなにテンションたけーんだよ!ウゼえな!!」

 

「おお!!来たこれは来た!だって一夏が俺にウザイなんて言ったことないもの、それほど触れて欲しくなかったんだな!」

 

フォー!!テンション上がって来たー!!!!!!!

 

「本当に何でそんなテンション高いんだ!?」

 

「ほらこれあげるから!ほらアーン!」

 

「何で○ぼーろ!?それと店内で封を開けるな!後こっちに向けるな!」

 

「早く吐け!」

 

「ぐっ…………ウルセー!」

 

アッ、逃げた!?

 

「はぁ、あんなに顔を真っ赤にさせていたらばれるってもんだろうが。」

 

ま、ゆっくり決めていけばいい。まだ先は長い、そんなに急に伴侶のことなんて考えなくても良いんだ。ゆっくりとな。俺が言うことじゃねえや。

 

 

「そりゃ、俺は違うがな。俺?俺は面白がるだけだよ。」

 

 



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宿での一時

…………逃げられたか。これはフラグが箒さんにだけ立っているってことか?それとも、全く別の言いたくない理由があるってことか?

まあ、いっか。特に思うところはないし、俺が動くことによって、少しでも俺にとって面白くなればいい。

 

それじゃ、お菓子でもお届けに参りますかね。

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

「で?一夏?どうしたの?」

 

「完全に不貞寝だな。」

 

帰ってくるなり早々と布団を引き寝に入ったようだ。

 

「不貞寝って………………原因は。あ。」

 

「まあ、一つしかないだろうな。」

 

「俺か?」

 

「ああ、相澤君ってことに…………なんで、ここに居るの?」

 

と、デュノアの娘っこ不思議そうにこっちを見ていた。

 

「何でって、そりゃ。俺の寝る場所がここだからだよ。あ、お菓子と飲み物買って来たよ。」

 

とりあえず振舞え。これ、相澤家の家訓な。あ、いや、(書類上の)家族とあんまり合ってなかったわ、ひとまず荷物をまとめるか、おっと回収回収ッと。

 

「康一さんBaumkuchenありますか?」

 

「いや、こんな所でドイツ臭出さなくていいから。一応ある、口に合うかは分からないけど。ほい、バウムクーヘン。」

 

「ありがとうございます!」

 

とりあえず、小分けになったそれ渡した。はぁ~いいなぁ何か食べてる女子って。

 

「ラウラ、普通に食べてるんじゃないわよ。」

「ふぁあふぁあ、ふぃん。こへでも食べろ。」(まあまあ、鈴。これでも食べろ)

「箒!?アンタもなに食ってんの!」

 

といいつつ受け取るんだな。

 

「おい、つまみは無いのか?」

 

おい!?何酒飲んでんだ教師だろ…………面白そうっすね。「俺用にと買ってきたビーフジャーキーがありますが。」

 

「それでいい。」

 

「589¥です。」

 

「教師から金を巻き取ろうとするな。」

 

と言って、勝手にビーフジャーキーの袋を開封した。後で食べよう巨大カルパスもあるし…………これでかつる!!美少女が巨大な、そう巨大なカルパスを。ん?裾をちょいちょいと引いてくる手が・・・。どうしたんだ?ラウラが涙目になりながらこっちを見てるが。

 

「康一さん…………今お金もって来てないです・・・。」

 

「冗談ですからね!?ほら普通に食べていいから、ね?本当にごめんなさい!」

 

うおーう、そんなことを言われるとは……………。とりあえずデュノアの娘っことオルコット嬢の二人にもお菓子をやっておくか。

 

「ほい、二人とも。」

 

「これは…………スコーン?にしては緑がかってますけど。」

「こっちは、マカロン?にしては緑がかってるね。」

 

「抹茶味だと。すげーよな日本ってなんだって日本風にしちゃうんだもん。ピザにもろこし乗せたりな。」

 

キチ○イの域に達するよなアレは。

 

「まあ、わさび味でなければ食べますけど。」

「わさ…………大丈夫だよね?」

 

まあ、市販品だし大丈夫だ、と伝えておいた。

 

まあ、ね。ここでのんびり女の子との交流を深めるのもいいかも知れないが。それでは俺がつまらない。さて、一石を投じてやるとするか。

 

「さて俺は、一夏からお前達への評価みたいなものを聞いて来たんだが。」

 

 

その一言を発した一瞬だけ総員の目が煌いた。いや約一名自分の布団を少し揺らすぐらいだったが、すぐに無視を決め込んで音沙汰をなくした。

 

「フ、フン。別に気になってなんかないぞ。」

 

「そ、そうですわね…………少し、気にならないわけでもありませんわね・・・。」

 

「……………///。」

 

「僕は聞きたいかな?」

 

「康一さん肩をもみましょうか!?」

 

「………………………………………。」

 

上から箒さん、オルコット嬢、凰、デュノアの娘っこに、ラウラ。そして『何を余計なことを…………』といわんばかりに俺を睨み付ける担任殿だ。いいね、俺はこういうのを待ってたんだよ。あと、ラウラ、どこでゴマすりと言うのを覚えた?「そういうのは担任どの・・・いや、織斑先生にやってきなさい。」「分かりました!」無駄に綺麗な敬礼をしそのまま、担任殿に近づいて・・・。

「真に受けるのもいい加減にしろ。」ビシッ!「あう。」

 

「まあまあ、みんなそう焦りなさんなって。…………現物があるんだから。」

 

俺は隠し持っていたボイスレコーダーを再生した。

 

「『そうか、そんじゃこっちも負けじとボーイズトーク(下世話な話)でもするか?』

 

『何話すんだよ?』

 

『お前ぶっちゃけ誰が好き?』」

 

ピッ。

「とまあ、こんなブベッ!?」

 

その瞬間を写し取っていたとしたのならかなり綺麗な飛び蹴りとなっていたのだろう。怒りという怒りを全てその飛び蹴りに乗せて一夏が俺を蹴ったのだった。完全な不意打ちであるそれに驚いたように一夏にボイスレコーダーを放り投げた。すると、ラッキーとでも言いたげな顔でそれをキャッチした。

 

「康一…………俺にも我慢の限界って物があるからな?」

 

「沸点低過ぎね?あはは、ごめん奪われちゃった。一夏、最悪奪われたくなかったら織斑先生に渡すのも手だぞ?」

 

「…………千冬姉。お願いします。]

 

と、言ってボイスレコーダーを献上するように差し出した。いやはや、本当に信頼されているんですねぇ。と言っても、俺は…………。

 

「本当に…………ごめんね?みんな…………。」

 

「どうしたんですか?」

 

俺は少しボイスレコーダーをもう一つ取り出し。

pi!

 

「『で、お前らあいつのどこが良いんだ?』」

 

ぶーッ!?

 

そのとき起きた光景は実に簡単なものだった。

 

せんべいを噴き出すもの×2スコーンを噴き出すもの、マカロンを噴き出すもの、バウムクーヘンを噴き出すもの、そして酒を噴き出すものが、ほぼ同時に行われていた。

 

「「「「「「……………………………………………………………………………………。」」」」」」

 

六人のこいつは何をやってくれやがってるんだと言う視線がヤバイ。

 

お楽しみは最後に取っとかなくちゃ………………………………ねぇ?ダメだ、笑ってはダメだ意識しなくとも口角が上がってしまう・・・。とりあえず、オルコット嬢、デュノアの娘っこそして、ラウラは封じ込めることが出来る。後は…………。

 

「よし、相澤。そいつを渡せ。」

 

「いやです。」

 

箒さん、交渉ごとに弱くね?そんなんで渡してくれるのは、落し物を拾った警察ぐらいしか居ないよ。

 

「康一!早くそれを返しなさい!」

 

「コスプレしてくれたらいいよ?」

 

「ウッ!?…………。あるの?」

 

つゴスロリ

 

「サイズが合わないことには!…………合ってるし。」

 

二人目つぶした!そして…………担任殿は動かない。これで勝てる。

そう、いまここに居る全ての人間の弱みを握ったのだ、これほどすばらしいことはない…………なんっつて。けど壮観だね。

 

ピリリリィン!!

俺は今、脳内でかなりの確率でニュータ○プのような、もっと言えばフレクサトーンのような音が響いた。俺は胡坐をかいている状態から必死に横へ体をずらした。

 

「チッ!」

「お前か一夏。」

 

まあ、ですよねー。これは潰せるか…………現在弱みらしい弱みを持っていないからなぁ。とりあえずノリで押し切る

 

「なぜだ!なぜ貴様は俺の邪魔をする!?」

 

「道を外した奴を元に戻すのは当然のことだろうが!」

 

「いや、俺はただ、自身の欲求にしたがっているだけだ。人間が持っている性という奴だ、貴様は感じたことはないのか!あの、自己の内から湧き上がる『知りたい』と言う欲求が!!」

 

「いや、なにこれ?」「男子特有の高ぶった悪ノリ」

 

「グッ!?だが、それでも。間違っていることは間違っている!盗聴は犯罪ぞ」

 

「いや、違う。これは俺がここを出て行ったときにたまたま(・・・・)ぶつけてこのボイスレコーダーが起動してしまっただけだ!!」

 

「詭弁を!」

 

「ラウラ?これってどうなの?」「いまググって見たが、ボイスレコーダーでの過失録音は法に触れないらしい。さっきのが本当であればだが…………恐らくさっき荷物を整理していたときに再生されたのを見つけたんだろう。」「へぇ、康一君も色々考えているんだね。」「ああ、電子機器の削除はあまり信用ならないし、私は聞かれても困らないからな。教官・・・いや、織斑先生に渡したのは一夏のプライバシーを守るためと考えれば正解か。」「なるほど。」

 

「このわからず屋が!」

 

パシュウ。…………あ、思わずくせでISカゲアカシのストレージ(IS特有の不思議空間。量子にまで分解して入れるらしい。)に入れちゃったぞ?あれ?まずい!

 

グポーンそんな音が聞こえると同時に担任殿の目が光った気がした。そう、機動戦士オリムラの起動である。俺としては立ち上がるなと声を大にして叫びたいが、そうもいかない着々と俺の命を絞るようにして。

 

 

 

「クペッ!?」

 

今日俺は九時に寝ると言う偉業を果たした.

 

 



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兎の足音と尖兵

睡眠と言うのをご存知であろうか?むしろご存知でないやつはこの世にあんまり居ないのではなかろうか?まあ、睡眠とは体の休息や脳の休息、脳内では記憶の整理や、成長ホルモンが分泌されたりする。そのため、睡眠は特に重要なものとは教えられるのだが……………。

 

ドォォォォォォォォォォォン!!

 

そんなことを露ほども考えない爆音に似た何かが俺の鼓膜と、肌を揺さぶった。つか五月蝿い。てか、眩しい。

 

「むにゃむにゃ…………そんなに食べられないってグゥ。」

 

ギリギリさっきの爆音でまどろみの中に居たので、とりあえず俺の布団の片隅にある暖かい抱き枕を思いっきり引き寄せて抱きつき、俺は再び眠りに付いた。まだ俺は寝ぼけてるんだ、だから仕方ない…………zzz…。「おきろ馬鹿者。」

 

ん?

 

次の瞬間、天と地が逆になった。その副産物はフゲッ!?とムゲッ!?と言ったような曇ったような声と痛みだけだった。いやなものしか生成されてねえ。

 

「おやすみ、そんでおはよ「うになりませんよ!」」

 

どこぞの犬+オッサンの不思議キャラクターの名言を聞いた瞬間。俺は飛ぶようにその場から離れた。なにか、ザクッと言った小気味いい音が鳴ったけど気にしないことにしよう、全然聞いていませんよ?とりあえず、視界の端に写っ畳に刺さった出席簿のような物を黙殺して立ち上がった。

 

「っち。起きたか。」

 

その舌打ちはなんですか。と喉元まで出掛かってから強引に押さえ込んだ。あぶねえ、俺の隠されたツッコミスキルが発動してしまうところだった。

 

「ええ、おきましたよ担任殿。これ以上無いくらいの清々しい朝ですね。」

 

こういう場合、白々しいまでに持ち上げておくのがベストだ。

 

「ああ…………この国の平和ボケはここまで侵食しているのか…………。」

 

本気で言ったわけではないが…………大体大丈夫だろ、寝てるときには痛覚なさそうだし。つうか、そこまで考えなしに行動している訳じゃない、ちゃんと考えて行動している…………南下今、享楽主義的にって声が聞こえたんだが…………ふざけるんじゃない!当たり前だろ!。

 

「ええ、こんな所に来るとは思ってなかったですしねぇ。」

 

「はぁ、何か爆音があったらとりあえず起きろ。それでなくとも、起きろ今何時だと思っている?」

 

「あーくびいてー。」

 

「叩けば直るか?」

 

「死にますね。つーか、まだ六時程度じゃないですか。」

 

とりあえず買った、100円ショップの腕時計をちらと見た。早々狂うことはないだろう。

 

「それより、なんなんですか?近所の悪がきがドデカイ爆竹を鳴らしたようなあの音は?」

 

「はぁ…………ふっ、粗方。近所の悪がきがドデカイ爆竹を鳴らしたんじゃないか?」

 

いや、ニヤ付きながら言う言葉じゃないし、俺の言った言葉のまんまじゃねーか。大体近所の悪がき、すご過ぎね?確かIS学園(と言う名の国家機密(笑)のオンパレード)だからそこらへんのセキュリティはしっかりしているはずだが。まあ、いっか。

それより俺は面白いことになりそうだから、成り行きを見守っておきたいんだが。

 

「そうですか。めんどくさそうですね担任殿。」

 

「ああ、めんどくさい。」

 

「飯は何時からでしたっけ?」

 

「七時。」

 

「だとよ、食べるか?」

 

「誰に言っているんだ?」

 

そういわれて俺は担任殿の脚元、正確には担任殿のひっくり返した布団を指差した。そこには、細い腕を上げ、か細い声で。

 

「よっす。兄さんカーテン閉めてもらっていいですか?」

 

「はいよ。」

 

と言って、カーテンを閉めた。俺も眩しかったからな。そして、しばらく布団の中にうずくまる様にして、何が起きているのかと突っ込みたくなるほどに蠢き。そして俺にカーテンを閉めさせた主が姿を現した。

 

「おはようございます!!。いやー闇に隠れて生きてきましたから日の光はちょっと………。」

 

布団から出るなり、なぜかハイテンションの状態で俺に絡んできた。銀色の髪を振り回し貞子のようになっている。そういえば貞子って、ふたなりらしいな。

 

「どこの妖怪で人間な奴ですか。」

 

と言いつつ、カーテンを開ける。

 

「ギャー!!!!目が目がァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!」

 

「うるせえ、静かにしろ。」

 

「あっ、はい。それで、こちらの方は?」

 

と言って開いた口がふさがらない担任殿を指差した。あまり問題になりそうもないので普通に。

 

「俺の担任殿。」

 

「そうなん?あ、どうも。私、相澤康一の「書類上の」妹の相澤 一葉(かずは)です以後お見知りおきを。」

 

ん…………なるほど、技術職だから腕のいい操縦士には興味ないのか。いつの日かの織斑先生への黄色い声援を思い出した。

 

「ご丁寧にどうも、それで………………………………相澤さん」

 

「「何?」」

 

イライラが少し積もったような顔をした。それを確認したであろう一葉は。

 

「ごめんなさい。私のことは一葉でいいですよ?」

 

「一葉さんはなんでここに?」

 

その理由は簡単だ。

 

「兄に会いにきま

 

そこで俺の意識は少し飛ぶこととなる。理由は簡単担任殿が俺を殴った(もしかしたら蹴ったのかもしれないが)からであろう、つーか妹にやってくれませんかね。少し、鈍痛のする頭を抑えながら起き上がった。

 

「かー、痛え。」

 

「いつ見ても尋常ならざる耐久力ですねー。IS学園の教師の一撃を喰らってピンピンしているとは、もしかしてあっちの方もピンピンしているんじゃありませんか?」

 

「なるほど、確かに妹だ。」

 

「お前、分かってて言ってるだろ?もう、ばりさんだよ。」

 

と言うより、そこまで下ネタで特攻している奴だと思われているのだろうか?不愉快だハレ晴レフユカイだ。言って気が付いたがどっちだ?まあ良いや。それにしても……………。

 

「どうやってここに来たんだ?変な話ここに来るには結構大変だった気がするんだが。」

 

「いえ、ちょっと不法  」

 

あ、今度は蹴りだはっきり分かるんだね。それより俺は今カメラを持っていなかったことを後悔するべきだと思うんだ。

え?なぜって?それはね、浴衣で蹴っているから見えそうで見えないチラリズムとやはりお約束の黒い布のアクセントがいい味出しているんだな、チラって居るけどまだ完璧に見えたわけじゃない、ただその心憎い演出を醸し出しているこの瞬間をカメラに収められないことがただただ遺憾である。あ、もう少しで見えそうけど良いやカメラがないから、一銭の価値にもならねえ。

あぁ、なんでいつどこでもカメラマンになれる準備をしてこなかったのだろうか。足が俺の視界を塞ぐようにしてだんだんスローモーションで近づいてくる、体はがっちりと固定されたように動かないし、無論カメラを撮ることさえ出来ない。ああ、マジでこんな光景ヘタしたら億取れるぜ?そうだな、言うなればブラ○ト・○ットやシュワちゃん、人類最強スティー○ン・○ガールにブルー○・ウィル○の下着姿を撮ることと同義だ、パパラッチ的に考えて完全にそんなカメラマンは…………お手伝いさんならいけるな。だって、どこかのハリウッド俳優が車の掃除していただけで結構なお値段になっていたし。まあ、どうでもいいが。アレ?今思ったけどこれって転生能力の一旦?マジか…………これならないほうがいいじゃんよ~、何でわざわざ失敗をほじくり返すようなことしているのさこれ、ただ無念を噛み締める監獄にしかならないじゃん、っちしょうがない第二の人生を押し付けられたんだ、こんぐらいの苦労は…………ってね。あ。

 

「侵入してきただけですけど。」

 

時は正常に動き出し、俺は蹴りによって吹き飛ばされた。

 

「だから、何でよりによって俺なんですか。」

 

「私の生徒だからな。後、兄ならちゃんと妹を躾けて置け。」

 

躾って…………

「無理ですよ。ほら。」

 

「お、お兄様が私のところを躾…………フォー!!何がいいですか!?三角木馬?それとも鞭?縄?苦悩の梨程度なら私でも用意できますよ!」

 

何がほとばしったのかは知らんが、亀甲、とかピー音が必要なほどやばいやつを口走るんじゃねえ。良い子は検索しないで貰いたい…………。

 

「用意すんな。それと担任殿はまたなんで握り拳作らないでください。」

 

そして、一葉は爆弾を投げる。

「あと、さっきの不法侵入は冗談ですよ。ちゃーんと許可とって来ましたよ。どう?えらい?えらいでしょ?」

 

と言って、首にぶら下がっていた来客と書かれたカードを見せる。どうやらこれは本物のようで、担任殿の悔しそうな顔を確認した。

 

「俺、蹴られ損じゃねーか。ま、よくやったな。お前がドイツに居た頃よりは成長しているんじゃねーの?」

 

「グアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!?止めろ!その名を出すんじゃない!」

 

どうやら、トラウマになっているらしい。と言うより黒歴史が呼び起こされたのだ。コイツは中学二年生になる前にも関らず中二病を発症していた。俺も俺で乗りに乗らせて助長させていたから………・・・責任はあると思うんだが面白そうだからな放置することにしよう。

 

「悪い。」

 

「この兄、絶対そんなこと思ってねえ。」

 

ばれたか、それで何が起こる訳じゃないからいいけど。

 

「それじゃ一葉、俺はもう飯を食いに行くけどお前は?」

 

とりあえず、融通してもらえればいいだろう。じゃなければ台所貸してもらえばいいし。

 

「いえ、私は遠慮させていただきます。お姉さまを待たせてはいけないので!」

 

と言って脱兎のごとく逃げるようにしてこの部屋を出て行った。

 

「…………かなり、驚いたが。お前に姉なんて居たか?」

 

いや…………該当する人間が居ないのが逆に俺の背筋を凍らせる。あいつの性格からして、認めた奴以外お姉さまなどとはあまり呼ばないのだ。この学園にお眼鏡にかなった奴が居るのかそれとも…………。

 

 

「妹が百合の扉を開いた件について。」

 

 

 



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自分で蒔いた種

まあ、やはり金の力は偉大だ。基本的に俺が作る適当な料理しか口に入れていないもので、久しぶりに口に入れた他人が作った料理は、舌鼓を打つのに申し分ないほどの美味さだった。美味い素材を使えばうまくなるのは当然なのだ。と言っても俺がこの食材を扱うとなると売った方が高いので扱えないが。

 

そして朝食を食べ終わり、少々の休憩時間を挟んだ。その間少し暇だったので俺は確か配られていたこの、臨海学校のしおりを手探りで大荷物の中から取り出した。九時半から海岸にISスーツを着て集合か…………。俺は、改造ISスーツがあるからな。一夏見たいに水着同然のスーツを着なくて済むんだよな。そして依頼により誠意を込めて一夏と笠森さんの改造スーツを作っている。結構金掛かるけど大丈夫かな?材料費しか取ってないけど。

 

「そういえば、こっちの整理もまだだったな。」

 

と言って俺は眼鏡ケースに目を通す。そこには何千枚と言うか俺にも把握しきれないほどの膨大な写真データがある、これの選別もしなきゃいけないし一夏の写真も提出と分類をしなければならない。何の分類かと問われればアイ○ス的に考えてキュート、クール、パッションみたいに分けるのだよ。とりあえず、眼鏡ケースを戻したこの時間で出来るかと言われれば難しい。

 

「あれ?康一?どうしたんだそんなところで?」

 

ふすまを開けられ、一夏が入ってきた。たぶん、暇だったんだろう。

 

「ん?時間まで暇つぶし。」

 

「え?確か専用機持ちは別に集合とか言ってたぞ?」

 

…………マジですか?俺何も聞かされてないんだがそれは、あ、影薄くて気が付かずに食事中にそんなこと言ったとかかな?

 

「マジでか、ちょっと着替えてそっちにいくわ。」

 

「おう、ちょっと離れた崖で待ってるらしいから。」

 

「あいよ。」

 

 

 

移動中…・・・…・・・

 

 

 

そして。

「ひでえっすね山田先生。」

 

「……………。」

 

まあ、どうでもいいんだが。つか俺が悪い。その前に、すでに集まっていた専用機持ちの視線が…………いや、プラスアルファ箒さんの存在の視線が俺に突き刺さる。こういうのは慣れてないからあまりやりたくなかったんだがな。

 

「ま、それはそうと。担任殿。俺たちだけを呼び出して何の用ですか。」

 

恐らく、俺以外には話したんだろうが。

 

「今から話「どうもー。」」

 

えらく綺麗な美人がひょっこりと現れた、その足元に黒子の格好をした綺麗な銀髪の俺の書類上の妹、相澤一葉も居る。先生、何やってんすか。となっているのは俺だけで、他の人は偉人を目の前に固まっているだけだった。

ま、男尊女卑を言い換えるなら歴史を作った人物だし、そのくらいは当たり前か。

 

「誰ですか?」

 

「篠ノ之束です。」

 

とりあえず人物の確認と写真に。一枚いいですか?と問いかけ了承を得た。

 

「はい、チーズ。」

 

俺は懐からデジタルカメラを取り出してピースサインしている篠ノ之束を撮った。とりあえず、転売しても良いかを聞き、それもまた了承を得た。…………もしかしたらこれ、一生遊んで暮らしていけるんじゃないか?

 

「ありがとうございましブベッ!?」

 

久しぶりに出席簿か……………。結構痛いな。そう思いつつ俺はカメラだけは守るように再び懐に入れた。

 

「あ、そちらの皆さんにも自己紹介を…………。()篠ノ之(・・・)箒の姉(・・・)()()()()です。」

 

「「「誰だ(ですか)お前(貴方は)!!!?」」」

 

と、三人(正確には、一夏、担任殿、箒さんの三人だ)が言った。そうだろうな、俺が植え付けられた記憶じゃこんな顔していないな…………。

 

「あら、いやですね。姉の顔も忘れてしまったのですか?」

 

「性格が全く違う!豚箱にでも入れられたのですか!?」

 

確かにそのくらいの性格改変だとは思うが…………。と言うか豚箱は言い過ぎじゃないか?

 

「まあまあ、そんなこといわないで。ちーちゃん、私はせっかちなんだから早く本題に!ハーリーハーリー!!」

 

「っち。分かった、説明を。」

 

そういわれるまで呆けたままだった担任殿が、続きを促した。いまだに一夏と箒さんは口を開けたままだ。

 

「アイアイサー!と言うわけで箒ちゃんの専用機を持ってきちゃいましたー。」

 

あらまぁ、いつの間に作ったんでしょうね。『天才…………だからな。』なるほど。

 

「へい!カモーン!!」

 

 

ドーン

 

 

束ちゃんは爆発がお好き!ッて言う状態になりかねないな、むしろそこまでやる必要も無い気がするのは俺だけだろうか?土煙が舞い上がり、少し目を細めないと目にゴミが入る程度の状態になる。その土煙を晴れたと思いや俺は見た、四角い鈍色に輝いた箱を。

 

「これが…………。」

 

と箒さんが息を飲みそして、誰にも聞こえぬように「私の力」と呟いているのが見えた。そんなに期待(・・)しないほうがいいのになぁ。ISの機体だけに、なーんちゃってテヘ。

 

『いま、ウザイもしくはその他もろもろの負の感情を抱いた方々、問題ない正常だ。』

 

おっと、なぜかエネとのリンクが繋がったような気がする…………。

 

「それじゃ、お待ちかねの…………オープン!」

 

会話の流れからして、中は専用機か。それにしても力をなぜ欲するのか…………無い方が、楽なのに。

 

プシューと言ったコミカルな音と共に箱は開かれた。

しかし、そこには何もなく…………いや、あるにはあるのだが。

 

「…………ガンプラ?」

 

そう、すこし小さいと言うより、ギリギリ手のひらのサイズのガンプラが置いてあるだけだった。そして、それに篠ノ之束は近づき…………。と言うよりこの時点で。

 

「これが!第四世代ISである!白と並び立つもの!そして箒ちゃんだけの専用機!紅椿(あかつばき)だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」

 

「ふざけるなァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!!!!!!!!!!!」

 

箒さんが見事、としか言いようの無い踵落しを、ISを作った稀代の天才の頭に躊躇なく喰らわせる。思いのほかクリーンヒットだったらしく頭を抑えている。少し涙目になりながらこういった。

 

「頭が…………頭が割れる…………。」

 

「良かったな、これからは右脳と左脳別々に考えられるぞ。」

 

なんか、どっかの別の世界線では担任殿が言ってそうな言葉を箒さんが発した。

 

「最も、こんなくだらない事を考える頭なら消去してしまえばいいのだが。」

 

よし、行け行け。もっとやれ。俺のS心が疼く。

 

「うぅ…………悪いとは思ってるけど箒ちゃんでも、それは目に余るな。」

 

「どういうことだ?」

 

「志村後ろ。」

 

でしょうね、あ、一葉が居たのはこういうことか。まずは、デカイ箱の落下で視線を誘導。さらにガンプラでダメ押しそこで一葉だ、音もなく黒子のようにISを置いた。

 

「……………この箱要らなかったんじゃないか?」

 

と言うより、この様な手口前に見たことあるというか俺の手口だ。まずは囮、その次に水面下で事を成す。むしろ俺のというより、手品における常套手段だが。

 

「まあ、そうだけど。」

 

と言うことは、これは専用機持ちたちへの見せつけ、わざと公開することで第四世代と言う力を見せ、そのほかに事を成そうとしている?…………俺の天才イメージとはかけ離れているな。むしろもっとぶっ飛んだ発想をするのかと思ったのに。そう思った時、周りから小さな悲鳴のようなものが聞こえた。

 

「…………これが。」

 

「そう、規格外にしてオーバースペック、白と並び立ち、そして…………女王の障壁(・・・・・) 紅椿。」

 

なぜか、その発言者篠ノ之束は落ち込んでいるような不思議な表情をしていた。なぜだか、それを見たとき、俺は首から下にかけて管虫が走るような、それで居てなぜか闘争本能を刺激するような奇妙な感覚を覚えた。

 

「それじゃ、ちゃッちゃとフッティングとフォーマットを済ませちゃおう!」

 

因みにISの世代は今現在、第三世代がギリギリ作れるレベルであり第四世代は机上の空論レベルの話であるっていうのが定説(・・)だ。

 

 

「あ、そうだ。箒ちゃん、ちーちゃんもいっくんも…………。さっきなんで私がこんなになったか。って聞いたよね?それはね、そこに居る相澤 康一の所為(・・ ・・・・・)だから。」

 

「「「「え?」」」」

 

今度は俺も合わせて、そう言っていた。

 

「いやぁ…………い・ろ・い・ろ・と教えてもらっちゃたんだぁ~。」

 

きゃーとでも言いたげに頬に手を添えて体を震わせる。間違いないこれは…………。

 

俺は、さっき今後もと思ったのだが…………今やるべきは、この誤解の入り混じった視線をどうにかしないといけないみたいだ。

 

 

はぁ……………。

 



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相澤一葉

そんで、まあ、先の出来事から俺に、敵意の視線をみんなが皆飛ばしながら篠ノ之博士がフッティングとフォーマットをするためにぞろぞろと皆が付いていったのだ。

(因みに、一夏は俺にお前は何をやらかしたと、箒さんは気持ち悪いと、凰はまたコスプレかよと、オルコット嬢は下衆なことをしたのでしょうか?と、デュノアの娘っこは風呂でも覗いたのだろうかと、ラウラは素直になんでしょうかと聞いて来て適当にあしらった。そして担任殿は卒業式まで覚えて置けよと…………それに到ってはもうどうしようもないが。それぞれ俺に非好意的な視線を向けていた。)

 

俺と一葉だけはその場に残った。まあ、別に強制的に見ろってわけじゃないし、通常のことを超スピードでやっているだけのことなんだろう。得るものは何もない。しかし……………。

 

「お兄さん。折り入って頼みたいことがあるのですが…………。」

 

一葉、こいつは別だ。同じ技術職でもあるし、見て得るものは沢山あるのだろうが…………。

 

「なんだ?お前も行かなかったのか?」

 

「いえ、やっていることは普通の技術ですし、手伝うと言っても邪魔にしかなりませんので。」

 

と、少し自嘲気味に呟いた。むしろ、世界の天才と呼ばれる研究者を束ねているカリスマとそれに恥じ・・・ないし鼻に掛けてもいいぐらいの技術力をもっているのに、それはないんじゃないでせう?

 

「っと。話をそらされてしまう所でした、再びですがお兄さん折り入って頼みがあるのです。」

 

なんだろうか?思い当たる節が…………。

 

「なんだ?言ってみろ。」

 

「戦え…………。戦ってください!お願いします!」

 

「はぁ!?…………どういうことだ?」

 

何を突拍子のないことを・・・。俺は結構戦っている…………けど。あ!当たり前じゃん!うわ、電脳空間で戦ってたし、確か、あの初めてエネと誰かと戦ったときはもはやエネが一切の記録を消去していたんじゃなかったか?…………公式記録での勝利は一切ない。そして、前にも言ったと思うが、一夏と俺の専用機はデータ取りの意味合いが強い。つまり…………。

 

「怠惰が仇となった訳か…………。」

 

「理解が早くて助かるよ。こちらもISの開発権を得るために必死なんだし、世界中にネットワークがあるってことは、裏を返せば世界中に商売敵が居るってことなんだ、だから、ISコアを1個丸々個人に渡しておいて、何をやっているーってな感じで風当たりが強いんだよ。」

 

はぁ、コイツもコイツで苦労しているんだな。と思いつつ俺は…………。

 

「しょうがない、俺も重い腰でも上げときますか。」

 

「お兄さん!ありがとうございます!!」

 

ぐへぇ。俺の腹にドスッと言ったように頭突きをかますように抱きついてきた。すごく痛い。とりあえず二年前から成長はなしと。

 

「はぁ、けど戦えと言った反面、ファーストシフト(一次移行)も行えてない此方の落ち度もあるんだけどね。」

 

まあ、男性IS操縦者だしって言うのを差し引いてもそれは、技術者としては手痛いことなんだろう。『前にも言ったが、私が無理やり使わしているだけだからな…………ISとのリンクが有るわけがない。』と言うことは、これから俺はカゲアカシで多くの人の目の有る中で、それで居て勝たねばならない、初心者は言うに及ばない、最低でも代表候補生、それか国家代表を倒す。早い話が売名行為だ。

 

「君の公式記録は1戦1敗ってなだけ、これでサンプルを取ること自体無理があるからねぇ。しかも相手は代表候補生、字面だけ見れば君は代表候補生になすすべなくやられた、って判断してもいいほどだ、どんな内容だろうとね。」

 

一葉の言うとおりだ。俺はそこまで試合をやってるわけじゃないし、大体俺は今現在のISを、戦闘用に作られたISまでを好いている訳じゃない。そんなもの作るくらいだだったら農作業用のISでも作ってくれよ、面白そうだし日本全国津々浦々の農家の皆様方にはめっさ感謝されるしネットで話題になるだろ。

 

「そうだろうな、ISによる女尊男卑の時代だからそう取られるのも分からなくはない。さっきのも見てみろ、篠ノ之博士のあの言葉を真に受けやがって。」

 

「それ言いたいだけじゃないの?」

 

「じゃ、アレは真実か?」

 

むしろ、俺が分かってないのに真実だ虚偽だと分かる訳ないが。最初に好意的な視線を向けていない原因となったものだ。

 

「アレって…………まあ、お兄ちゃんに『ピー』出来るような根性を持っていないヘタレだと言うことは妹の私が一番知っていますが。」

 

「ヘタレ言うな。ただちょっと手が伸びないんだよ。」

 

「それがヘタレって言うんですよ。」

 

コイツも理由は知っているはずだが…………。

 

「はぁ、仕方がないお兄ちゃんですね。あ、それよりカゲアカシの整備ってちゃんとしてますか?」

 

そういえば、そんなこと言っていたな。と思っていると。はしゃぎながら俺のほうを向いて。

 

「その顔を見る限りやっていませんね、それじゃやっちゃいましょうか。早くカゲアカシを展開してください!」

 

 

整備中…………。

 

 

「いやー、使ってませんね…………異常なまでに。」

 

整備し終わった一葉は、そう評していた。まあ、その通りなんだけど。

 

「いや、使ってるには使ってはいるのですが…………正常に使ってないでしょ?これ?」

 

「いやいや?正常に使ってるよ。」

 

と、反論した所。ヤレヤレと言った風に首を振った。

 

「消耗具合が激しい所と、そうじゃない所が激しいんですよ。これを見ると…………手足の消耗は激しいですが兵装はそうでもありません、絶対に使わないレベルにまでです。」

 

なるほど、そう言われて見ればそうだな。まあ、手足の操作ぐらいにしか使ってないし、無理やり一夏と戦う時には殴る蹴るしか使ってない、見立ては間違ってはいない。

 

「後、大型バックパック『灯火』ですが…………確かに追随している『ペトゥル』を開けば防御用の盾にもなりますけど、その使用頻度が半端じゃないんですよ!バックパックはあくまでバックパックなんです!!たとえるならキャリーバックで敵をブッ叩いてるようなものですよ!」

 

なかなかにシュールだな。まあ、バックパックで叩いたりしていたな。

 

「大体、バックパックとも言え、中身はただの兵装用エネルギーなんですから叩いた瞬間暴発ってことも考えられるんですからね!…………まあ、そうならない用には作りましたが。」

 

ありがたいね。全く。

 

「それに!!何で手に土があるんですか砂だったらまだしも、完全に粘土質な土なんですけどこれ!どう使ったらこうなるんですか!?」

 

ああ、農作業だわ。

 

「とにかく!今後はちゃんと使うように!」

 

「はいはい、分かりましたよ全く。」

 

「本当ですね!?」

 

顔を真っ赤にしながら、そういった。本当に心配してくれているのか俺の専用機を心配しているのかは分からない。だが俺にとって、俺の知り合いがしっかり生きていることを確認できればそれで良い。

 

「はぁ、その様子だとしっかり整備していないようですし、整備しましょうか。」

 

「頼む。」

 

そうして俺はこの平穏な時間を甘受しようと思っていたのだが…………。

 

「相澤君!専用機を持っている人は旅館に集合ってさっき織斑先生が言っていました!」

 

山田先生が走りながら俺たちの居る方に走って来た、その顔は緊張感と危機感がないまぜになったような表情を出していて、その表情は俺の中の警鐘を鳴らすのに十分だった。

 

「分かりました、すぐに行きます。」

 

十分にめんどくさい、この話の総評としてこれをあげるとしよう。



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怠惰

ええ、動きません。
彼は目立つというのが死ぬほど嫌いなのです。




さて、前回でなんかヤバイ感じの雰囲気をかもし出していた山田先生に連れられた俺こと相澤 康一だったが、その場に一葉を置いて、ある場所に集合したのだった。回想終わり。

 

集合と言われ呼ばれた場所は、もともとは旅館の一部だったのだろう、畳に不釣合いな精密そうな電子機器が置かれている、そこからホログラム投影機器が出現していて宙にディスプレイあったり、まるでちょっとした秘密基地のようだった。

 

「早速だが、お前達にやってもらいたいことがある。」

 

なんでしょうね。呼ばれたのは俺、一夏、箒さん、オルコット嬢、凰、デュノアの娘っこにラウラ。俺以外は緊張した面持ちで次の言葉を待っている。

 

「二時間前、アメリカ所属軍用ISシルバリオ・ゴスペルが暴走を起こし、亜音速で日本の領空内に入ったことが確認された。」

 

そういいながら、衛星写真なのだろうか?ホログラムディスプレイにそれらしき写真が写る。あらま、それはそれは。よく分からないけどピンチってことでいいのか。つかむかつくな、そんなことのために俺たちを駆り出しやがってめんどくさい。と言うか写真が荒い!まあ、亜音速とか言っていたし、黒っぽいノイズみたいになっているのはしょうがないんだろう。

 

「それなら、一刻の猶予も無いって感じね。」

 

凰が呟くようにそう言った。

 

「ああ、そうなる。続けるぞ当ISは亜音速飛行を続け、二時間程度で旅館付近の沿岸に到着する。そこで、私達教師部隊は水際作戦を取り、領海領空内の封鎖をする。幸い周りに人家は無い、ここの警備を固めておけば大丈夫なのだろうが、そうも言ってられないからな貴様達専用機持ちにそれの迎撃を行ってもらいたい。」

 

「迎撃の役は織斑一夏、貴様だ。」

 

なるほど、音速に近い機体で一回ぐらいしか攻撃できないんか、そこで諸刃の剣を持っている一夏が迎撃をするってことか。

 

「織斑の高速戦闘が出来る機体、またはパッケージのあるものはいるか?…………あいつが居ればめんどくさくはなくなるんだがな」

 

そう言った、するとオルコット嬢が手を上げた。まあ、俺も手を上げた。一夏の足になるのはいやだけど。と言うより微かに聞き取りづらかった声の方が気になる。

 

「織斑先生。」

 

名前を呼んだ。

 

「なんだ相澤。」

 

「分かりにくいので三行でお願いします。」

 

ズルッ!?ドテッ!!

 

「こんな緊急事態にそんなことを聞くな!!

 暴走したISがこっちに来てる。

 私達が周辺の被害を抑える。

 だからお前ら止め刺せ。

 …………満足か!?」

 

「あざっす。」

 

ま、俺の機体も亜音速飛行できるとか出来ないとか書いてあったような気がするんだがめんどくさいから言わない。

 

「つーか、一夏俺はこの話を長く聞いて居るとシャバには戻れないような気がするんだが…………。気のせい?」

「知るか。」

そうですか。

 

「私は、強襲離脱用高機動パッケージ。ストライクガンナーを換装すればと言った状態でしょうか…………どうやら、この中で高速戦闘ができるのは、わたくしだけのようですわね。」

 

まあ、|ラファール・リバイブ カスタムⅡ(の皮を被った何か)《シャルロット・デュノアの専用機》は元がラファールであるだけにそこまでの速度は出せないだろうし、甲龍(凰の専用機)はパワーとスピードのバランス型だ、白式(一夏の専用機)はバカピーキーな機体だから高速戦闘は出来ない訳じゃないが戦える状態に無いので除外だ。ピーキーキャラを動かすのってすごい燃えるよね。と、このように消去法でオルコット嬢だった。

 

「そうか、それならセシリア・オルコットを攻撃の中核にほかは自室待機だ。」

 

ラッキー。俺、マガツさんをおいしく頂きたいんだよね。プレデターモード

 

「どうも、篠ノ之束です。私に良い作戦があるのです。」

 

なんかいきなり出てきたな、恐らくコッソリ入ったとかそんな感じだろう。久しぶりにマリパやりたい、友情破壊ゲームとか言ってるけれど友達とやったこと無いから問題はない。

 

「…………なんだ?」

 

「ふっふーん、箒ちゃんに渡した専用機は第四世代機体の身一つで即時の戦況対応が出来るという優れもの!つまり紅椿は高速戦闘が出来るのだ!」

 

あ、っそうっすか。じゃ俺は関係無いな。と思いつつ俺はばれないようにコッソリとこの部屋を出た。

 

恐らく、中に置かれていた機器のせいで部屋(今では作戦会議場だが)が少し暑くなったのだろう、部屋と廊下の気温の温度差に少し鳥肌を立てながら、目的の場所へと歩いていく。

 

 ◆ ◆ ◆

 

さて、今の状況を反芻(・・)しよう。ISシルバリオ・ゴスペル(付属情報 アメリカ軍所属)は日本の領海内を高速飛行中。一夏の足は結局は紅椿になるだろうと予測、搭乗者 篠ノ之箒、一夏に惚れている、劣等感、…………嫌な予感しかない。これだけじゃ、情報が足りない。

 

『私の出番か?』

 

「最悪はな…………はぁ、良かっためんどくさかったからなばんぺッ!?」

 

突如として、横合いから腹にドロップキックをされたような痛みがッ!ふと見ると一葉が居た。

 

「お兄さん!?貴方めんどくさがり過ぎるでしょ!!アレぐらいカゲアカシがあれば一発なのに!!」

 

と言って、カゲアカシの待機状態。アンクレットをそのまま手渡した。はぁ…………。丸め込むのに結構かかりそうだな。

 

「ステイ、待つんだ頭を冷やせ。ここで俺が行ったところでだ、何もお前の状況が変わる訳じゃない。いいか?相手はアメリカ軍所属でそして、暴走しているんだ。国防の主を担っているISがそう簡単に暴走しましたーとか国が言えるか?そう、つまり揉み消すことになり公式的な記録は残されない。戦績としてこの作戦は通用しない以上だ。」

 

「それ以外に何かあるでしょう?例えば…………一緒に戦ったとか言うそんな経験とか。」

 

「ま、人それぞれに戦いはあるって事だ。見守る…………それも戦いだ。」

 

そういいながら、俺は狙撃銃を手に顕現させ、少し不敵に笑いながら一葉の額に当てる。その一瞬の行動で呆れさせたように首を振った。

 

「俺の信条は、堂々とコッソリ派手なことをやるだからな。」

 

「お兄さん、この前あなた信条は毒、狙撃、爆弾で大抵何とかなるとか言ってませんでしたか?」

 

「さぁ?三日前のことは覚えてないから。早く行くぞ」

 

踵を返して、続けて目的の場所へ…………え?目的の場所?そりゃ。

 

「よっす。」

 

「…………何しに来たの?」

「あれ?相澤君?久しぶり。と言うよりその馬鹿でかい狙撃銃は?」

 

簪さんのところだ、笠森さんも居るようだがな。何しに来たかと言うと。

 

「本物のIS戦闘を覗きに来た。それと、笠森さん久しぶり。」

 

そう、こういうことだ。そのまま見るとISのごたごたに身をやつしてしまいそうなので隠して見ればいいんじゃね?と言う話である。なぜこの二人の部屋なのかと?それはね、ばれた時に道連れが欲しいからだよ。

 

「ちょ、正気ですか!?」

「どういうこと?」

 

「ISの戦闘を覗く…………リスクは?」

 

すると、簪さんがそう聞いてきた。

 

「すごい厳罰。」

 

ので、素直に返す。まあ、揉み消そうとしているんだそれなりに釘を刺されるだろう。

 

「ばれないように?」

 

「していない。」

 

「…………何とかしよう。」

 

「するな!!」

 

一葉が思いっきり拳を振り上げ簪さんの頭に振り下ろした。コキンとかいったいい音が流れていたが痛くはなさそうだ、大体腕力が有り余っている技術者なんてあまり居ないと思うが。

 

「あ、どうも。専用機の節はお世話になりました。」

 

「いえいえ、此方こそ…………って、あの時とずいぶんと変わりましたね!?」

 

「ええ。それに…………。」

 

と言って、言葉を溜めるように区切り、頬を赤く染めながら目を閉じ、身を震わせながら。…………ってこれはどこかで見たことあるようなこうど

 

「康一君に色々と教わっちゃいましたから。ポッ。」

 

…………いや、やってないよ?大人の階段はクライムドゥしていないの。まだチャイルドステップも踏んでないから、生まれたてのその身のままだよ?『どの口が言うか。』失礼しました。と言うよりアレか?お前ら、俺を追い詰める事を生きがいとしているのか?そうとしか考えられないんだが、まあいっか、それは置いとき話を進めよう。

 

「それじゃ、ISの戦闘は見る?確かここは海に窓があるからこれが使えるはずだ。」

 

少し狙撃銃を揺らし、その存在をアピールした。

 

「狙撃銃…………だよね?援護でもするの?」

 

それを見て笠森さんはそういった。まあ、初見で見破れる訳が無いがな、ぱっと見PGM ヘカートIIにしか見えないし。と言うよりマジでどっかの女子高校生に持たしてよこれ、どうせアレだろ?日本で使うからって安易にこんな形にしたんだろ世界研究者クラブさんよぉ。

 

「覗くって言っているだろ?これはな超高性能なカメラなんだよ。」

 

「へぇ、そうなんだ」

 

まあ、ISと連動させることで水平線まで見えて、逆に近ければミクロン単位で見える顕微鏡になるとかいった頭の狂ったものだが。

 

「で、見る?ばれたらやばいことになりそうだけど。」

 

「ここでやんな!」

 

おう、まあ、当たり前ですよね。そこから、笠森さんがめっさ怒り狂ったように注意してきたので、聞き流しそしてこの部屋を出て行き、俺が寝ていた部屋に直行した。

 

「…………なぜ入ったのです?」

 

「暇だったから。」

 

「酷いな。」

 

「ま、それでも数少ない友人だしな。」

 

「あ、そうなの?」

 

「そうなの。確か食べ物はあったはずだし、観賞にはこまらないはずだ。」

 

ポップコーンとか有った様な気がする。『映画を観賞するわけじゃないんだが』あれって歯の裏にポップコーンの欠片みたいなの挟まる時あるよね。

 

「無視すんなやゴラァァァ!ってタックルしたくなりましたけど。まあ、いいでしょう付き合いますよ。」

 

それじゃ、一夏達の作戦でも観賞しますか。



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正の正 邪の邪

サクサクサクサクサクサクサクサク。

 

「ポテチ美味くね?」

 

「お兄さん私にも下さいな。」

 

「…………コンソメ。」

 

「おk。」

 

さて、ポテチ食って狙撃銃のスコープを覗きながら周囲(一夏と箒さんである)を見回している俺こと相澤康一は、ISの戦闘(ばれるとまずいよ。)を見ている以上だ。

 

「っち、人目を憚らずイチャイチャしとけよクソが。」

 

「お兄さん、滅茶苦茶なこと言ってますね。」

 

いや、イチャイチャしているのがあいつらの仕事だろ?『そんな訳ない。』だろうけど、そうかと思うくらいに不特定多数の人々にイチャイチャしているぜ。それはそうと芋系のお菓子は外れが少ないと思うんだ。

 

「いやさ、ほら見てみろ、あの頬が緩みきったようなあの顔を。完全に恋した乙女の顔だろうが、けッ早く一夏に抱きつけってんだ。」

 

「普通逆だと思うんだけど。独り身ですよね?」

 

いや、本当に俺はイチャラブを見たい。あの、紆余曲折を経て結ばれて子供が出来、静かに暮らすハッピーエンド的なのでご飯は三杯は行けるね!逆説的に考えてふかふかさんは俺の一番のヒットだったな。

 

「まあな。…………特に俺には思うところは無いし。最後に良かったねと言うぐらいだ、他意はない。」

 

その答えに、そう。と一言だけ呟いて終わった。とりあえずポッキーを口に入れポキッと言った擬音語を鳴らせた。

 

「どの口が言うんだか。お、そろそろ始まりそうですよ。」

 

俺の狙撃銃に繋いだモニターを見て嬉しそうにしながらそう言った。…………便利過ぎるだろこれ。

 

「いやはや、軍用ISというのはあまり見たことありませんでな、どの様な物か…………楽しみでたまりませんなぁ。」

 

なんだかんだ言って、一葉も口調が変わるほど楽しんでいるようだし、良かったか。と思いながら俺は少し倍率を上げる。音声はあの秘密基地っぽいところから(一葉が)傍受しているから、会話は聞こえないと言うわけじゃない。

 

「ま…………戦闘前にイチャイチャできるような精神の持ち主じゃないからなぁ。」

 

「むしろ普通の女子高生が持ってたらおかしいですよ。…………似たようなのうちの所にも居るけどアレは普通じゃないしあのサノバび」

 

お前が普通じゃない。そしてお前の不手際はモノローグで消してやる。

 

「っと、始まった。」

 

スコープ越しに見えるのは、異常な加速をしている赤の機体(通常のISより三倍速いよ。)とその背に乗っている白の機体。つまり、この状況下では箒さんと一夏この二人となる。…………なるほど一夏の機体は火力バカとか言っていたからなそれを最大限生かすための作戦なのだろう。

 

「それじゃ、相手の方のIS様々は…………。」

 

 

 

 

 

 

と、ここで二つ俺は思い違いをしていた。

 

 

一つが、思ったよりこの世界の技術が進歩していたこと。と言うより、ISを作り、それに対応するような機体を自分で作った凡人が居るのだから当然と言えば当然なのだが。だからなんだと言う話だが。例えば、今水平線を間近で見られるスコープを持っている狙撃銃があるのに、亜音速の機体が捕らえられない訳が無い…………とは言い過ぎだが、色くらい(・・・・)はしっかりと見えるはずだ。

もう一つの思い違いが…………シルバリオ・ゴスペル。和名 ()の福音。これは普通に異名のようなものだと思っていた。

 

さあ、ここから導き出される一つの推論は…………。

 

「お兄さん…………。アレって…………もしかして。」

「ああ、ふざけやがって…………。俺も調べたが…………。アレは…………。」

 

 

「「VTシステム。」」

 

 

俺が見た機体は、墨をぶちまけたかのような黒塗りで、堕天使の如く黒い翼を広げていた。俺が見たラウラと同じだ。つくづく俺はISを脅かされる状況になるまで危機を感じてなかったのだ。

 

「おい、一葉。」

 

「…………なんですか?最悪ここが火の海になることぐらいは分かってますが?」

 

「分かっているんならいい。…………これは、かなりまずいぞ。」

 

「ええ、腐っても軍ですからね、よくその警備を突破してあんなものを入れたものです。…………一応説明するとですね、VTシステム …………いや、あの状態はバルキリートランスプラントシステムですね。それは、既存のVTシステムより変質IAの向上や性質が変わり、システム上で一見それとは見えないのですが、蓋を開けたらと言った感じです。」

 

なるほど、と言うよりコイツ実はIS学園の情報ぱくったな。確か、公開されてない情報だったはずだが?…………なんでもありだったもんな。俺の持っている狙撃銃でどこからでも覗けるし。

 

「このVTシステムのすごいところは、素人でも元手さえあれば乗っ取ることは簡単なことです。その癖、高性能と来たもの…………はっきり、言いましょう世界研究者クラブの構成員かもしれません。」

 

「!?」

 

その言葉に、俺は。憤りではなく喜びが来た。

 

「…………そうか、お前に責任があるという訳じゃない。気にするな。」

 

「分かりました、私のほうでも探りを入れていきます。そもそも、私が面と向き合った人しかクラブの実行部には入れていないんで…………。」

 

あまり、疑いたくないと言うことか。まあいい、まずは目の前の利害を何とかしよう。

 

「分かった、まあ、こうは言ったがまだ作戦が失敗した訳じゃない…………が。」

 

「箒さん…………。」

 

ああ、心配はそこだ。

今現在でこの速さでずっと行くとしたら後一分弱。少しずつ距離が縮むごとに、心臓の鼓動が上がる、危険を訴える。そして、白が赤から離れた。白式が構えた実体剣が割れ中から光刃が伸びる。紅椿はその場から離脱するように加速し白式の攻撃を補助するように銀の福音だった物の移動方向を塞ぐ。

 

「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッ!!!」

 

声を張り上げながら思いっきり振る。それを福音は難なく一夏の上方に避け黒翼からビームが放たれた。それを光刃で防ぎ、箒さんがフォローするように持っている刀を振るいビームを出した。ってかビーム好きだな。

 

「ビーム好き過ぎね?刀から出す必要ないとおもわれ」

 

「いや、結構考えられていますね。」

 

「どういうことだ?」

 

と言いながらそばにあるポテチを食べた。

 

「スペックデータを見ましたが、彼一夏さんの機体 白式は基本性能は高いですが燃費が最悪ですし、それにワンオフアビリティ零落白夜の使用によりさらに加速していますが、対価として圧倒的な攻撃力を持っています。」

 

ふむふむ、あの零落白夜って凄かったんだな…………まともに食らわしているの見たことねえ。あ、箒さんが結構な善戦している。このチョコ○イってなぜか美味いよな、雑なのに。

 

「ですが、箒さんの機体 紅椿は基本性能が白式より上を行っているのにも関らず、兵装は雨月(あまづき)突きに合わせてビームを出す刀、空裂(からわれ)斬撃に合わせて帯状のビームを出す刀、あと、強いて挙げるのであれば周りにある自動動作補助ドローンと言ったしょっぱい物しかありません。正直、世界研究者クラブでも作れるレベルです。」

 

へえ、お一夏が切りかかってる…………。避けられますよねー、行け行け。喉が渇いたお茶買って来たっけ、あった。

 

「…………まあ、それには3カ国の国家予算並みの金額が必要ですが。」

 

ブーッ!!?。

 

「おい、それ出来無いと同義じゃねえか!…………笑わせるなよ。」

 

ローコストで開発できるのも一種の才能なのだろう。

 

「すみません。それで、結論を言うとですね。隠し玉…………ま、ワンオフアビリティにたぶん体力回復…………シールドエネルギーの増幅が考えられます。いやぁワンオフアビリティの固定化に加えて、そんな物作られちゃ私達の面目も丸潰れですね。」

 

そう言った一葉の目は、失念と言うより希望を湛えながら目を輝かせていた。自分より頭のいい奴への挑戦みたいなものがあるのだろう、Mかお前は。ん?一夏がなんかビームを防いでッ!?アレは…………密漁船?バカか!あいつは、そんなもの切り捨てればいいのに!

 

「お兄さん…………これ、本格的に逃げる準備をしておいた方がいいんじゃないですか?」

 

一夏は閉鎖されているはずの密漁船を守るために作戦行動を見放した。そういえば一夏が前に言っていた。『俺は千冬姉に守られてばかりだ。』と、親が居ないそれに親代わりとなっていた姉に劣等感そして…………。

 

「……………守る。それが暴走しているのか、それでも敵味方関係なく守れるのがヒーローって奴なんだろうが、一夏はどうなんだろうね。」

 

「何を言っているんですか?」

 

「いや、なんでもない。ただの捻くれた独り言さ。」

 

んったく、一夏は周りの女の子とイチャイチャしていれば良いだけなのに畜生。そして、思ったとおり一夏は箒さんを庇って撃墜された。そして、エネが俺の頭に入ってくる感覚がする。

 

『全く、喧嘩を売られた物だ。出張(・・)してきたが康一、アレはお察しの通りVTシステムだ。』

 

だろうな。残った箒さんは、一夏を助けようとするがそれを銀の福音に阻まれている。

 

『最初は、紅椿のお披露目のための博士の自演自作だと思っていたんだが。むしろそっちの方が君にとっての都合が良かったんだが。』

 

なるほど、篠ノ之束が銀の福音にリミッターを掛け、その間に作戦を練るという訳か。

 

『ああ、そうだ。だが、これはどこの馬の骨とも分からないVTシステムだ、私達の制御・認知下には置いてない。確か、博士はこの事については怒りはしたが、手を付けていなかったな。』

 

そうか、前に一夏がラウラの時に怒ったのと同じようなことか。

 

『ま、この状況で出来ることは……………。』

 

分かっている。

 

 

「一葉。俺うんこ行って来る。」

 

「報告しなくていいですから、と言うか良くこの状況でそんなことが。」

 

一葉の言葉の途中で俺は部屋のふすまを閉めた。

 

 

「分かっている……………。俺が…………。」

 

そうだな、今回は…………。

 

 

「蒸着!!」

 

 

『わざとなんだか…………。康一君、使わせて貰うよ。』



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正の邪 邪の正

ハイドーン!!電脳空間でーす!!

 

「テンション高いな。」

 

いやね?アレだから、俺、途中で抜けちゃったから援護しに行くのが大々的に出来ないんだよ。と言う訳だからエネさんに、ご協力を…………。

 

「まあ、利害は一致しているから協力するが。全く奔走する身にもなってくれ。…………というより、利害が一致しているとき以外動かないがな。」

 

そうだっけか?まあ、エネに頼りすぎていると本当にやばくなった時にどうしようも出来ないからな。

 

「へぇ。その言葉、簪さんに事情を合わせ聞かせてあげたくないな。」

 

逆じゃね?まあ、良いか。それじゃ、どうするんだ?

 

「って…………ああ、ウン。説明しなかったのが悪い。」

 

………………………長いので要約すると。

 

・時間は無制限に近い。

・今回エネ居ない。かも知れない。

 

エネ、良くお前二行を20×20字詰め原稿用紙3枚レベルの話に昇華できたな。

 

「その位ISというのはめんどくさいのだよ。まるで、嫉妬した時の女のようにな。」

 

女性に嫉妬されたこと無いから分かんないや。恨まれた事はいっぱいあるけど。

 

「……………とりあえず、ここから銀の福音までぶっ飛ばす。」

 

つか、ここはどこなの?

 

「カゲアカシの中だ。私のコアでもいいんだが、処理能力が落ちる。…………私でも、ここしか使えないのだが。」

 

不思議なこともあるもんだ、俺にISの男性IS行使権限を付加させるほどのお前が、カゲアカシだけがここしか使えないと?試験のときも、オルコット嬢のときも、カゲアカシもやれたお前が?

 

「お恥ずかしながらにね。カゲアカシにいたっては行使権限と可視化権限だけしか受け付けなかった。」

 

カゲアカシを作った世界研究者クラブも伊達じゃないんだな。

 

「いや、やれない訳じゃないんだが。ただ単純に、やりたく無いのだよ。そうだな、無理やり使うって言うことは、君たちの感覚的にレ○プに近いからな?」

 

堂々と言うんじゃねえよ。まあ、その気持ちは分からなくはないが。

 

「だろう?ちゃんと許可を取ってやっているからな。脅したりしたりもしない訳ではないが。」

 

絶対王政かよ。

 

「当たらずとも遠からずと言った所か。王と平民しか居ないのが気になるが。」

 

と言って、柔らかに笑って、言った。

 

「それじゃ、行ってらっしゃい。」

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

少し脳が揺さぶられるような感覚を得て。俺は目の前の景色が変わった。先ほどは薄暗い何もない空間であったのに対して、今は青一色だ。

 

「さてと、…………アレか。」

 

俺の視線の先には、またヒトガタのモノが居ると思ったのだが、予想に反したモノが居た。

 

「いや、なにこれ。」

 

なぜか、青の補色の黄色い丸の物体が浮いている、と言ってもどこが地面なのだか分からない無重力のような場所だが。しばらく見ていたが、その黄色の丸い物体は、少しずつ自身の同色の粘液のようなものを撒き散らしながら泳ぐように移動する。

 

「…………不細工だな。」

 

無人機は…………そうだな、子供が作った泥人形とすれば。この黄色い物体はただの泥、それほどの差がある。それは、如実に技術の、いや才能の差をまざまざと見せ付けていた。

 

「お前はどんなものか知らないけど、とりあえず殺す、君は()を犯した、だからどんな理由を持っていようと殺す。」

 

それじゃぁ、ヤリましょうか。

 

「イッチャウヨー。」

 

…………よわッ!?粘液が少しうざったいだけで凄い弱い!?ちょっと気合入れようとしたのが恥ずかしいぐらい弱い!?

 

「もう少し何とかならんかね?」

 

ネバネバな体でそんなことは言えないけど。ただただ不快なだけだな。電脳空間では無人機の奴のほうが強いような気がしたが…………いや、巧妙に隠してさえあれば、他の防御はVTシステムのソフトじゃなくハードからの防御だけでいいのか。

考えてみれば、戦闘中にISコア切り開いて専用端子ブッ刺してパソコンカチカチとか、壊した方が早いな。今はまだISコアからISコアの干渉技術は確立されてないし…………良かった、まだめんどくさくない。

 

「ほいさー。」

 

ナイフを右手に顕現させて左手から突っ込み、粘液を手で拭き、粘液が出る前にナイフを突き刺す。

突き刺したところから、ぐるりと円を描くようにナイフで抉った。時折、粘液をなぜか飛ばし被弾もしたがただの不快感だけで済んでいる。とりあえず、やったってだけの装置みたいだ。

 

「ただのいじめかよって話だな。」

 

その穴から粘液があふれ出てくるが、それを気にせず、俺はナイフで出来た穴に蹴りを入れる。球体は蹴りの力によって、粘液を散らしながら飛んでいった。

 

「……………くそ、もう塞がりやがった。」

 

球体は依然そのまま宙に浮き続けている、黄色い物体が出す粘液が俺の空けた穴に代わりながら、修復していていた。

 

「どうする?いや、待てよ。もしかしたら!」

 

俺が思いついたのは、悪い方のパターン。そして、それが合っていたとしたのならば、俺の取って来た行動は全部ダメになっている。

 

「…………マジですか?」

 

どうやら、ここからが本番らしい。

俺が見た景色は、青かった世界を埋めるほどの黄色い物体だった、見る限りところどころ緑や紫もあるが。元々、そういうものだったのだろう。ヴァルキリー トランスプラント システム、俺はいつの日か叩き込まれた情報を反芻させていた。

 

『我か?そうだな、冥土の土産として教えてやろうお前達の言葉だと。ヴァルキリー トランスプラント  V     T  システムだ。あの、ヴァルキリー トレースV    Tシステムというヴァルキリーの足跡を辿るだけの脆弱なものではない。我は、本人の意思とは関係なしに乗っ取りつくす・・・・・・・。さて土産は出来た…………それでは頂こうか。』

 

アレはそういう意味も持っていたんだ。幸いに複製された黄色い物体に粘液は出ていないことか。と言うことは解析をしながら回復速度以上に攻撃しなくてはいけないと言うことか。粘液の発生場所を叩くと言う手もない訳じゃないのだが。

 

「俺は解析が出来ないし、飽和攻撃で行くか。」

 

 

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

エネだ私は、情報を持ってくる役割だ。ISコアがハックされていたVTシステムの進入経路を探っている。そうすれば根絶やしに出来るかもしれないし、何より何にも情報が無いよりは対策を打てるから、といった理由だ。それじゃ此方でも動くか。

 

…………参戦したほうが良いのか?いや、出張やほかのISコアから飲み会に誘われるし、こういう時に情報は集めないと。と言うよりまだ、ISに進入する方が難しいな。私にとってここはもう素通りでいいんじゃないかってぐらいのものなんだが。と、電脳空間を移動していると一瞬壁のようなものに当たり、その解析をした。それは。

 

「ここは…………完全独立性ラボラトリー施設か?全く、私にとって意味のないものなのに。よっと。」

 

自身の構成を(・・・・・・)一旦電子化(・・・・・・)して大気中に分散させ(・・・・・・・・・)、物理的に独立型のラボラトリー施設へと侵入した。このくらい私にとっては朝飯前だな。

 

「進入ー。」

 

適当にそこらへんにあったパソコンのファイルやデータを探していく。しばらくして、お目当てのものを見つけた。

 

「これか。VTシステムの開発とヴァルキリーのフラグメントマップ。」

 

ラウラとやらのシュヴァルツェア・レーゲンについていたVTシステムと構造が同じ、これで、裏を取った。後、そこらへんの重要そうな情報でも……………っ!?。私に危害を加えるようなアプリケーションが開かれていると感覚的に察知した。こんなこと言っていたら康一に人間臭いと笑われるな。

アプリケーションはハッキングの逆探知か、それよりはウィルス駆除に重きを置いているようだが。

 

「この程度か。」

 

一瞬で打ち払った。そう、何かたとえるならブ○ーチでのドン・観音寺の観音寺弾(キャノンボール)ようのような物が此方に来たのだがハエを振り払うかのように手を当てるとすぐに終わった。

 

「何が目的なんだ?」

 

と首をかしげた所。もう一つアプリケーションが開いたことを確認した、それはワード。それを見ていると、打ち込まれた文章がすばやく並んでいく。

 

「やあ、こんにちは。」

 

ご丁寧に鍵カッコまでつけて、そう打ち込んでいる。今はまだ、顔すら見れない。

 

「誰だ?」

 

音声のように思考をワード文書に打ち込み、返答した。その返事は。

 

「わお、嬉しいよ、ここまで来た子は居たけど。みんな、訳の分からないことをだらだらと喋っているだけだったからね。」

 

 

 

「さすが、女王様はやはりどこかが違うね」

 

 

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

反芻!武器大太刀、ナイフ。攻撃パターンなし。勝利条件VTシステムの駆逐。方法、粘液の完全削除、後にVTシステムへの攻撃。

 

「行くぞゴラァ!!」

 

ナイフを逆手に持ちながら俺はPICの要領で黄色い物体へと、飛んだ。

 

「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!!」

 

まずは飛び蹴り。ナイフを拳槌打ちの要領で振り下ろし突き刺さったまま放置。粘液の分泌を蹴りで跳ね除け、追撃とばかりに放置していたナイフをモンハンの剥ぎ取り動作的に動かし抉り取る。

殴り蹴り、切り抉る、膝肘体脚腕柄刀身。ありとあらゆる場所、物を使い攻撃を仕掛けた。時には、粘液から生成された黄色い物体を足場、またはぶつけて破壊、粘液のふき取りなどに使う。

 

だんだんと、ボロボロになっていく。

 

「蹴りで少し崩れるほどだったらッ!!!」

 

切り付けた所に手を突っ込み相当に深くなっていた裂傷から…………。俺は笑った。

 

「ビンゴォ!!」

 

手ごたえが有った、このVTシステムとは絶対に違う感触だった。

そこまで到達するまでナイフを振る、内部に手を噛ませているので切りつける事によっての反動は存在せず無用心に切り付ける。もう一つの方も穴が出来た。

 

「オラァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!!」

 

VTシステムからISコアを引き剥がした。ISコアは以前のゴーレムとは違い、少し成長した年齢的に女子中学生だろうか?青いブレザーにスカートを履いていた、それを片脇に抱えながら。

 

「ふう、これで一段落か。後はコイツの全排除…………あーー、疲れた。」

 

手に大太刀を顕現させ。

 

「パンパカパーン!VTシステムご開帳~ってね。」

 

真っ二つにした。

 

「エネ…………こっちは終わったぞ。」

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

…………女王。確かに私のことを言うならばその呼称が最も適当だろう。ISコアネットワーク。その頂点に君臨しているのが、いや統括しているのが私だ。

 

「黙れ、ここに来たのは他でもない。貴様…………いや、貴様等の私達(・・)への愚行を止めに来た。なぜあんなものを作った。」

 

そう、答えて。少しの間が有りやっと返信が来た。

 

「それは少し、僕の状況も交えて説明するよ」

「君が言う所の『貴様等』と僕は、対等な関係にある。まあ、等と付くぐらいだからね。だが、個人、対組織だ。僕は、その組織に協力する形で今のVT

 

VTのところで少し止まり、それを消してまた新たな文章が紡がれる。

 

「君が言う所の『貴様等』と僕は対等な関係にある。まあ、等と付くぐらいだからね。だが、個人対組織だ。僕は、その組織に協力する形でヴァルキリー トランスプラント システム(これは組織が名づけたもの)を開発譲渡している、それに関する費用、情報は全て組織が用意してくれている。まあ、よくある関係だね。」

 

…………なるほど、私の(篠ノ之束)のような大天才と言う訳じゃないからな、全てを捻じ伏せるような技術力は持っていないのだろう。

 

「僕は作りたかっただけ、悪用しているのは彼らさ。」

 

「だからと言ってあんなものを作るのは!」

 

「あんなもの?」

 

書かれた一文には何か怨念のようなものが取り付いたような情念の篭った物だった。

 

「僕はね、人間が好きだ。」

 

どこの折原君だよ、と言う突っ込みを喉元に押さえ込んで、打たれる文章を黙って読んだ。

 

「まあ、興味があるのは、どのようにして人間の多様性(精神も、肉体的にも)が維持できるかのシステムのほうだけど。」

「一般的に多様性が発現する、それには周りの外的要因と内的要因が必要なんだ。だけど人は弱い、内的要因…………この場合自身の意思決定だね、これは簡単に外的要因によって変質してしまう。そこで強い意志を持っているとしたのならば外的要因から離れた自分の独自性を持った選択を出来るのだが、そうは行かない。」

 

「もしかして…………お前は、今のISを自己決定の補助いや、こういったほうがいいかVTシステムと言う柔軟性のない内的要因を私達に委託し、強引に外的要因にすることで、異常な精神発達を促す。そういうものにしたと言うわけか?」

 

「確かに、そういう使い方も出来るね。僕が目指していたのは、自己決定の補助の部分が大部分を占めているけど。逆説的に内的要因の変わりにヴァルキリーのデータを入れれば、VTシステムになるって事さ。」

 

少し、嘲笑が混じったような文体にイラッとしながら

 

「結局、僕達研究者は、善い物を作ってもそれを善く使える心は作れないのさ。それを作ろうとしたけど、作れずじまいだ。」

 

どこかその文章は哀愁の漂うものだった、なぜかその文章を見た時、頭の中に康一の姿が過ぎる。

 

「そして、女王様。貴方をここまで連れて来たのには訳がある。」

 

「なんだ?」

 

ここまでの話を聞いて。この男は底が知れない…………まあ、いつかの様に人間にハッキングすればいいだけのことなのだが。恐らく、ここまで連れて来たと言うのは、異常に通りやすかったこのセキュリティーの甘さと足の付きやすさのことだろう。まさか、誘われていたとはな。

 

「僕の右腕になってくれないか?君の女王能力と僕の技術力があれば、僕の「お断りだね」

 

「…………これでも、結構な頭のよさだと自負しているんだけど、どうしてかな?」

 

「理由は簡単、お前より面白い奴が居るからだ。」

 

それ以外に何がある、あいつ以外に私の相棒は成り立たないね。

 

「分かった、今度君の相棒を見せてくれ。」

 

「機会と、私の相棒に君に合う意思が有ったら実現するだろう。」

 

「女王、手土産に僕がVTシステムを提供している組織の名前を…………亡国企業(ファントムタスク)これが僕の技術を悪用している組織さ。」

 

「分かった、また会う日まで。」

 

と打ち込んで、私は入ってきた時と同様に電子化させてここから逃走した。

 

 





提督になっているが・・・。時間が吸われる。


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遅血 智恥地

これでタイトルは
ちち ちちち
と読みます。


「疲れた…………コイツも起きないし。」

 

さっき、TVシステム。この場合ヴァルキリー トランスプラント システムを沈黙させ、ISコアを救出した所だ。俺自身で電脳空間から出ることは出来ないので、エネの帰りを待っている。

 

「コイツおきれば幾分か暇じゃなくなるんだけど。」

 

まあ、叩き起こしたらかわいそうだし、そんなことはしないけど。

 

「ただいま。」

 

「帰ってきたか…………。」

 

妙に清々しい顔しているな?何かあったのか?

 

「康一、君に土産を持ってきた、場所はあの弾丸のところでいいだろう?」

 

弾丸?ああ、あの写真を取りまくった弾丸のことか、確か写真はもうパソコンに入れ終わって居る時だと思うからエネの情報を入れても問題はないか。

 

「ああ、大丈夫だ、問題ない。」

 

「それ、エルシャ。いや、なんでもない。それより、隣の彼女はここのISコアか?」

 

俺は首肯した。VTシステムから取り出してきたからそれで間違い無いだろう。フーンと言った相槌を打ちながら、隣の人に手を伸ばした。

 

「え?あれ?…………ウソ?マジか。特異点かよ。」

 

「特異点ってなんだよ。少し口調が変わるほどのヤバイ物なのか?」

 

「ISの特異点。これは、ISとのシンクロが元々高過ぎる人のことだな、高いとISコアとの対話も出来る、だから私達の間ではもっぱら面白い子(・・・・)として認識されているな。」

 

非常にどうでもよかった。

 

「そうか、しかしここから戻ったらどうしようかな?それより今はこのISの機体はどうなっているんだ?」

 

そういえば、俺はここに居て外のことは全然分からないんだよな。

 

「ん?うん、私の思惑通りにいい感じにVTシステムが沈黙している。これなら、VTシステムの暴走がやっている挙動を偽装する事ができる。」

 

あのエネが?エネだったら絶対に許さなくて、この状態からVTシステムの痕跡すらも残さないように動くはずなのに

 

「どうして、そんなまどろっこしい事するんだ?」

 

「それは…………泳がせるためだよ」

 

何をだよ

 

「VTシステムを作った人間と接触して、その人間にバックの組織があると言うことは確認した、そしてその組織から見て突然沈黙したこれを見てどう思う?」

 

なるほど、この状況で止まったらIS学園に切り札がある。もしくはVTシステムを止めるほどのものを持っていると言う事を誤解させてしまうわけか。そして何より。

 

「お前や俺の存在を明るみに出してしまうか。」

 

「ああ、適当に暴れさせて一夏や妹に倒させる。」

 

ありがたいな、俺もこれで動きやすくなる。これは、仮にも暴走状態とは言え軍属のISを倒すとそれなりの腕があるとも見られるからな、前に公式記録としては勝利は付かないかも知れないが、戦ったことは事実だそこはどうしても隠蔽できない。

 

「これで一件落着って所か。」

 

「ああ、それじゃ、電脳空間から君を出す。後は私に任せたまえ。」

 

「あ、一つ注文いいか?」

 

このまま出てしまったら担任殿に見つかり、かなりめんどい事になりそうなので…………。

 

「トイレに確か一つスマホ置いてきたからそこから出してくれ。」

 

「なぜそんなところに…………。まあいい、ご希望通りに沿おうじゃないか」

 

「フヒヒwwwアザーッスwww」

 

そういった直後、画面が切り替わるようにして俺はトイレに居た。もちろん男子トイレだ。

 

 

「さてと、一葉と遊びましょうかね。」

 

 

俺は帰ってきた後も奔走するとは思わなかった…………。ふらりと立ち寄ったふすまが開いていた部屋で。

 

「箒さんと一夏か。」

 

そこには点滴につながれ、包帯だらけで寝ている一夏と、その隣で悲痛な面持ちで座っている箒さんの姿があった。それを見たとき俺は。

 

「はぁ、めんどくさそうだな。」

 

遅過ぎたのだ。何もかもが。後手後手に回るこの俺が。



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侵は侵として。

ええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇッ?めんどくさいよお父さん!いや、居なかったわ。

 

『どうもエネです!前回、VTシステムから帰還した彼こと相澤康一だったが。帰還し部屋に戻る途中に見た一夏と箒さん()を見た。上はそのモノローグだ・・・ってこんなことしている場合じゃない!?』

 

空気が重過ぎる。たとえるなら…………めっちゃ重い。たとえられてないけど、アレだハンマー投げのハンマーレベルに重い、触ってないからどれほど重いのか分からないが。俺はこの空気から逃げるように自分の部屋に戻った。

 

「これも…………戦いなんだろうな。」

 

「クソ長いウ○コだったんですか?」

 

「お前の精神性が直腸に反映されたんだよ。あと、ウ○コで笑うのは小学生までだよね。」

 

すこし、一葉の歓迎のようなものに面食らうが、気を取り直して菓子の袋を開ける。

 

「酷くないですか?それ?それとキモーイガールズになってるんじゃありませんよ」

 

「大体こんな感じだろう?俺とお前は。」

 

「ソウデスネ。それより、非常にめんどくさい状態になりましたよ。」

 

一葉がそこで突っ込みを入れない当たり、血は繋がってないのによく似ているなと思う部分である。一葉は手元にあるノートパソコンのキーボードを数回打ち込み、一つの動画を見せた。

とりあえず、それを詳細を省き三行程度に纏めようとすると。

 

「一夏と箒さんが頑張って銀の福音と戦闘

 色々あって一夏と銀の福音が停止状態

 どうすると審議中

 と、めんどくさいからまとめてみたんだがこんなんでおk?」

 

「大体おk。」

 

さて、本当に面倒な事になってきたぞ。俺は今直接戦闘に行けない、そしたら俺は他の人達をけしかけて戦闘に持っていかなければならない。

 

「いいねえ、大分楽しくなってきた。」

 

めんどくさいがこういうのは俺の本領だ。

 

「どっちですか?…………まあ、なんにせよ、まだここを離れるわけには行かなくなりましたね。」

 

「なんでだ?」

 

「だって、兄を置いて妹が逃げる訳には行かないでしょう?」

 

俺は、その言葉を聴いて。迷わずに手をデコピンの形にして、力を溜めそして解き放った。

 

「いいか、死にそうになったら俺から逃げろ、死にそうにならなくても俺からは逃げろ、とりあえず俺から逃げろ離れろ。あ、後、これは某有名な死神さんも言っていたんだけど、死にに行くのに他人を使うなよ。ふざけんな」

 

「うう…………ちょっと涙目になりそうですよ…………。」

 

俺の前では人は殺させない、処理が面倒だからな。思案をしながら一葉が傍受している作戦会議室(つまりはあの秘密基地みたいなところのことだ。)のリアルタイムの音声をイヤホンに入れる。蛇が利己って俺、めっちゃ好きなんだけど因みにチーズ蛇味が好き。

 

「そうか、よかったなまだ泣けて。」

 

「アッ、ハイ。すみません。」

 

とりあえず、まくし立てたのだが。少し言い過ぎたかと反省しながら、イヤホンから流れる音を拾う。有用な情報は、突然に沈黙したVTシステム付き銀の福音を警戒している事ぐらいだろうか?

恐らくまだISが動いていないのは、エネさんがISを乗っ取るのに時間がかかっている、それか、此方の動きを傍受して動かすタイミングを計っているかのどちらかだ。

そして、上の内の後者であった場合、俺は口八丁手八丁で

 

ISを動かせる人間全員いや、専用機持ち全員だけをこの最悪の敵役(銀の福音)へ合法的に戦わせなければならない。

 

とまあ、これが今回の勝利条件だが。なぜこれか?…………くどい用だが、これは軍事用。一人で行ったら倒せました?最悪秘密裏に処理されるし、後の国の立場が物凄く悪いものになる。

俺が出て泥被る?何度も言ったように無理だっちゅうの。

織斑先生に向かわせる?イヤイヤイヤ、一番角の立たない方法に見えるかもしれないけど。それを所有しているのは、IS学園ひいては日本ぞ?世界各国で目の敵にされる。

このように色々と、角が立たない状況はこの勝利条件しかない。そう今はまだ、それをまだ考えられる鉄火場だ。そう考えた上で俺は呟く。

 

「行ける。」

 

「どこにですか。」

 

「俺の短編みたいな茶番劇の舞台だよ。」

 

「トイレですね分かります。」

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

何かを愁うような戦いに行く前の武士のような複雑に交じり合った表情で、銀色の髪を持った少女が空を見ている。

一応明記しておくと、その少女の名はラウラ・ボーデヴィッヒだ。

VTシステムとの戦闘によって傷ついた想い人である一夏のことを心配しながら、軍属の立場から見て一夏の行動は美徳だと感じながらも、やはり戦場である以上私情は持ち込むべきではないと感じている。

状況下で適切な判断を下すのが彼女の中の常。そうだったのだが、身体の根本である人の良心の部分では賛美せずには居られなかった。

 

すると、彼女の視界に一人の男性が目に映った。その男性はいつも軽薄そうな笑みを浮かべていて、へらへらとしながら少女に近づいてくる。

 

「康一…………さん。ですか。」

 

俯きがちにそう言った。それは特に人物の確認でしかなく、今男性がそこに居ると言うことにはことさら疑問を感じては居なかった。

 

「ああ。」

 

「どうしたんですか?今更ここに来て。」

 

棘のある言い方だった、それもそのはず康一は逃げたのだ、いつの間にかどこかへと消えていく。この場合、どの面下げて戻ってきたと同じような意味を持つ。

 

「状況確認と意思確認…………どっちから聞きたい?」

 

「お任せしますよ。」

 

「それじゃ、状況確認からにしようか……………お前ら専用機持ちはどのような命令が下された?」

 

その問いかけに、ラウラは考える。考えるのは、その話に裏が無いかということだ。だが、それ以上に沈黙の後の声色にまで気を配って置くべきだったのだが。

思考を重ねた結果は。

 

「私達には自室での待機命令が下されています。ですが私がここに居る時点であまり強制力が無いと思われます。」

 

そのまま、事実を言った。だが、あまり聞いた本人は興味無さげにしていたのに少し、疑問を思い浮かべながら、矢継ぎに放たれる質問を聞いた。その質問は。

 

「次は、ラウラ。君は一夏の敵討ちをしたいかい?」

 

人を食ったような笑みでそう言った。その笑みを見たとき、ラウラは彼の本質的にこっちの方を先に聞きたかったのだろうと感じたのは不思議じゃないだろう。ラウラは頭の片隅で考えながら自身の答えを呟いた。

 

「軍人としてしたくない。だけど、ラウラ・ボーデヴィッヒとして、織斑一夏の敵討ちはやりたいです。」

 

晴れ晴れとした顔だった。彼女は自分で発したその言葉で覚悟を決めた。

 

「いや、ですが敵討ちと言う言葉は適切じゃありません。」

 

「へえ。」

 

「私は織斑一夏の意志を守りたい。私の嫁の意志が通せないのは…………嫁が死んだのと同じ、そう思うから。」

 

その言葉を聞いて、笑顔に輪をかけて笑いながらこう言った。

 

「……………強くなったね。」

 

手がラウラの頭へと伸ばし、半ば緩慢な動作で髪を撫でた。その行動に驚いたのはラウラはもちろん、一番驚いて居たのは何を隠そう康一だ。すぐさま正気を取り戻し、撫でていた手を口元にやった。

 

「はい!。ありがとうございます!」

 

「おかしいなぁ。ま、いっか。僕はただ単に、君に出撃する意志があるかどうか確認するために言っただけだしね。それじゃ、今度は楽しい舞台を用意しておくよ。」

 

康一はそういってラウラの元を立ち去った。

 

 ◆ ◆ ◆

 

ラウラを最初に説得したのは、予想は付いてはいた状況の確認と一夏への思いを出撃に向かせるためだったが。逆に飲まれそうになった…………というより、なんだ?あの俺らしからぬ行動は?

 

手にまだ髪の感触が残っている。

 

とりあえず、それを無視して。次の人物へと。



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全は一として。

連投連投!!


んじゃ、次はどこに行くかな…………。

 

『前回までのあらすじ。口八丁手八丁で、専用機持ちを戦いに向かわせる事となった相澤康一は次なる人物へと向かっていくのであった。って、あぶねッ!?うっかりVTシステム暴走させちゃう所だったよ…………。』

 

そうだな、凰とデュノアの娘っこ辺りは何も言わずに行ってくれそうだ。そうすると後やらなきゃいけないのは。

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

少なからず、織斑一夏と言う人物の影響は大きいようで。金髪縦ロールの少女が作戦会議室のような所の入り口の前で、何かに押しつぶされそうな表情をしながら命令を待っていた。

いつもの高圧的な態度とは裏腹に、その横顔はただの可憐な少女だった。あれ?一度もそんな描写してなくない?

 

「………………誰ッ!?」

 

いきなり人の気配を感じたかのように、飛び上がるように人の気配を追っていく。するとそこには。

 

「相澤…………康一。」

 

「…………どうした?」

 

因みに、セシリアから見た康一の印象として織斑一夏の腰巾着としか見ていない、それかたまに出てくる変な人だ。

 

「逃げた癖に。」

 

ぼそりと、口からその言葉がこぼれた時。少しばかり康一の体が動いたのにはセシリアは気が付かなかった。

 

「ふうん…………その言葉の意趣返しをする訳じゃないんだがな。」

 

と、一言前置きしてから咳払いをする。そして、体から発する雰囲気を変えて、剣呑なそれに変質していく。それに気が付いたセシリアは、固唾を飲み込まずには居られなかった。

 

「今から丁度5年前。イギリスで何があったか知っているか?」

 

「!!。」

 

セシリアは思った。彼は同じ目をしている。そう、私のプライドのみをずたずたに破壊した時のあの、憤怒とも悲哀とも取れる蛇が舌なめずりしている時のような目を。

 

「…………わたくしの前で5年前とは。列車の横転事故のことですわね?」

 

「ああ、列車事故が起きた。オルコット嬢お前の両親が死んだ…………そうだな?」

 

セシリアは首肯した。

 

よかった(・・・・)間違っていたらどうしようかと・・・」

 

その言葉にセシリアは頭の芯から温かい何かが下っていく様に怒りを覚え、気が付いた瞬間にはすでに康一の頬を打っていた。それに、康一が怒りを覚えるようなことは無くただ淡々と言葉をつむいでいく。

 

「本当によかった、それを聞いて殴ってこないようだったらどうしようかと…………。本題セシリア・オルコット。お前は大切なものをまた失いたいのか?」

 

「…………もう、失いたくありませんね。父はともかく。」

 

セシリアの父と言う単語に少し、康一の顔が変に歪んだ。

 

「そうか、それなら待っていろ。……………最高の舞台を用意してやる。」

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

ぶっちゃけ、確認のためだけにこんな奔走するのはめんどくさいな……………もしかしたら命令違反でフラーと行っちゃうのを待った方が良い様な気がする俺にとってだが。

ま、それ以上に俺があまりISに別れを経験(・・・・・・・・)させたくないだけだから、この位の努力は仕方がないけど。

 

「割り切ったと思ったんだけど……………ま、頑張るよ。」

 

俺は脚に付くISを撫でた。

 

「それじゃ次は……………。箒さんか。」

 

今度は搦め手らしく。

 

 ◆ ◆ ◆

 

その少女は、想い人…………織斑一夏の穏やかではない理由で、静かな寝息を立て眠って居る横顔を見て、自身の過去を思い出していた。IS、姉が作った世界を揺り動かす物に振りまわされ、親とは勿論一夏との仲を引き裂かれた。一夏との仲を取り持つ物だった剣道、それを憂さ晴らしのための力として使った。

それは、驕りだった。それは、自身の未熟さだった。それは、心の弱さだった。そして…………今度も。

 

「私は…………。」

 

ピシャリと部屋のふすまが開く。その行為に驚きはしたものの、それを行った人物を見て酷く納得してしまった。ふすまを開けたのは少年(・・)、相澤康一。少女、篠ノ之箒が振り回されている人物の一人だ。

そしてこの時、なかなかにどうしてか箒は、無意識のうちに自分が悲劇のヒロインを気取ってしまっていることを今更ながらに勘付いていてしまった。

 

「…………よお。」

 

相澤康一の顔は酷く疲弊していた。箒の目からは、頬が痩せこけ、目はぎょろりとしていると幻視するほどには、なぜだかやつれた様に見えた、少し気を取り持つとそれらは一切にその記号は康一から霧散していった。彼はその時間遡行をして朽ちたような空気を纏いながら、一夏を一瞥して視線を箒さんへ戻し口を開いた。

 

「すまねえが…………席を外しちゃくれないか?」

 

目は虚ろ、何を考えているのかも分からず…………といっても箒にとっては何時もと同じものだったが、その時は気味の悪さで行動し。

 

「…………ああ。」

 

後ろ髪を引かれるような思いで退席した。と言っても…………箒は、離れたくなかった。プライドが許さないのだ、自身が想う人を自分が力に溺れてしまったがために、傷つけてしまったことへの自分の敗北感が、足を自身を締め出した部屋の前で縫い付ける。

どうしていいのか分からない、一夏の隣は私の居場所だったがそれを少し貸している今は、少し混乱気味になっていた。目の前が歪み、頭が締め付けられ、下っ腹が押さえつけられるように痛くなる不快感。

 

「               だな。」

 

そんな不快な波に揺られていると。不意に声が聞こえ、なぜだか其方に意識を向けていると頭の痛みが和らいでいくような気がした。

 

「…………本当に無様だな。」

 

淡々とした口調で、激しい悪口を言っていた。

 

「守ろうとして傷つける、守られているのにもかかわらず守ろうとする。鈍感だ、すでに自分が守っているとも知らずに。」

 

「ま…………こんなこと言ってるが、俺だってわからねえよ。」

 

「少し、昔話をしようか。」

 

箒はまるで、本当に相手が起きて話をしているかのように話す少年に薄気味悪さを感じずには居られなかった。が、それに耳を傾けないわけには行かないのだ。

 

「俺はまともに育てられていない。…………まともな愛情を貰っていなかった、奴らから貰ったものと言えば金ぐらいだろう。」

 

「それでも、世間体がある、とりあえず死にさせたくは無かったんだろう…………家政婦みたいなのが居た。」

 

「…………俺以上に、よく分からない人だったよ。」

 

がらりと声色が変わりまるで、古くなったアルバムを見つけて撫でるような優しい声色だった。

 

「いや、普通すぎて俺には分からなかった、だな。」

「けど、それなりに楽しかったよ」

「そして、分かっていたけど家政婦…………契約が切れた。」

「いつか来るとは思ってはいたけど。…………小6あたりで別れた。」

 

「その時、苛立ちを誰にぶつけて行けばいいのか分からなかった。」

 

「なあ、一夏…………お前は守りたいって言ったな。」

「それなら俺は、何を守ればいい?」

「何を守れるんだ?」

「俺は、お前みたいに強くない…………。」

 

「どうすりゃいいんだよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉッ…………。」

「いやなんだよ」

「引き止めたいんだよ」

「変わって欲しくない!」

「俺の周りが変化していくのがどうしようもなく嫌なんだよ!」

 

「それなのに力が無い!」

「知恵も無い!」

「目の前にある闇に踏み出していく勇気だって無い!」

「信念だって、根性だって、何一つ無い!」

 

少し、変に大人びた少年が、年相応に悩みを叫んで泣いていた。ただ、その少年(・・)は不器用なのだろう、誰も聞いて居ない―――と思っている―――場所でしかそういうことが出来ないのだ。それでも、少し声を荒げたことで冷静になった。

 

「…………すまねえ、俺が弱いだけだ。俺が幼いだけだ。」

「はぁ、諦めるか逃げるかのツケが回ってきたか。」

「ったくどうしようもねえよ…………なッ!!」

 

ドスン、と言った音が響く。

 

「一夏…………俺はやってみるよ。」

 

少年が立ち上がるような音が聞こえる、それは盗み聞きしていることを思い出させる一つのキーとなった。箒は慌てるが、隠れるやそれに順ずる行動を取るより早く少年がふすまを開けるほうが早かった。

 

「ッ!?」

 

泣き腫れた眼をから涙の乾いた涙の後があり、半ば開いたような拳が少し赤くなっている。箒はその姿に言いようもなく、小さく哀れに思えてしまった。すると、少年が箒を見つけたようで、表情が驚き半分、怒り半分ほどで固まっていた。

 

「聞いたとしたとしたら…………。」

 

そう言っただけで少年は去ってしまった。

その言葉に完全に怒気が込められていて、一応、剣道全国大会優勝者の肩書きを持っている人間が、物怖じしてしまうほどの物だった。

 

「…………大いなる力には大いなる責任が付きまとう。そして私は力を得た、ならば。」

 

いつか見たのであろう名言のようなものを口ずさむ。少女は自身の手を掲げ二つの鈴が付いた赤い紐を見て、拳を作った。

 

「私は私のためだけにこの力を振ろう、まずは、一夏を守り隣に立つ。」

 

独善的でもいい、ただ振るう。自分の力を振るう言い訳を、他人に押し付けないように。自分の良心に縛るように。

 

 ◆ ◆ ◆

 

「ふぁ~。疲れたぁ。」

 

嘘泣きって久々にやったよ。とりあえず、これで行動の固定化は済んだし。行動の矛盾の解消は済んだ。まあ、元々の俺のキャラからして、そこまで問題があるわけじゃないし

 

「さてと、次の下準備でも行きますか。」

 

いやこれほんとに夏の戦争だね。

 



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義疑 戯欺技

タイトルはこれで「ぎぎ ぎぎぎ」と読みます。


さぁて、今度は手ごわいぞ…………。ちょっと気合を入れなおすか。

 

パァン!パァン!

 

よし!行くか!。

 

 ◆ ◆ ◆

 

セシリアがその扉の前に居た作戦会議室内では、重苦しい空気が流れていた。

発生源は織斑千冬。それも当然、たった一人の肉親を傷つけられたのだ、冷静で居られる方がおかしい。だが、織斑千冬は情にほだされながらもIS学園教師として、最適解な命令を繰り出していく。

 

海上のISは突然動きを止めた、暴走状態から正常なそれへと変わったのか。それとも、他の原因か、いまここに居る誰もが正確な(・・・)判断が付かない状態だ。

 

「…………………。」

 

織斑千冬は、ディスプレイに写った銀の福音を睨み、その場に立っているだけだった。そのとき

 

襖が思いっきり開けられた音がした。その音に部屋の中に居る全員が注視する。

 

「よお。」

 

襖を開け放った()は相澤康一。男は開口一番、旧知の友に声を掛ける様に声をかけた。

だが違う男は生徒だ。相手の教師と言う立場から見て脅威にはならないし仮にこの状態で暴れても、IS学園教師全員の前には一人を片膝すらつかせることは出来ない。

 

(なのに、なんだ?この異常なまでの自然体は?)

 

人間は大体、自身より大きい権力や直接的な力を持った人間には腰が引けたり、どこか挙動不審になる場合があるが、眼前の男は全くと言って良いほどの自然体だった。あまつさえ、どこかから座椅子さえ取り出しお茶を入れる始末だ。それを見かねた千冬は、男をこの部屋からつまみ出すことを考えていた。

 

「入るな、すぐさま出ろ。」

 

「勝手に出てっちゃうけどいいのかい?」

 

少し、的外れな回答が帰ってきたがとりあえず、織斑千冬はこの無礼な者を排斥する以外のことは頭になかった。

 

「勝手に入ってきて何を言っている?さっさと出ろ。」

 

「うぃっす。」

 

男は右腕だけにISを纏い、リーチの違うそれを杖のようにして使って立ち上がった。

 

「うおい!?」

 

「え?」

 

織斑千冬は男の肩を掴んで行動を止めた。当の本人はきょとんとした不思議そうな顔をしている。

 

「だって、出撃()てけって言ったじゃない。ジェリドさんだって出るぞって言って出撃していますし。」

 

「知るかそんなもの!」

 

と、言いながら制服の襟を掴んで投げた。投げて気が緩んだのか、そのまま立ち上がろうとするが投げた手を掴まれ膝を付かされた。体を起き上がらせながら、口を耳の横まで持ってきて、荒く囁いた。

 

「お友達がやったと思って日和ってるんじゃねえよ。」

「!?」

 

思考の内を見透かされた。織斑千冬は、ISが暴走、第四世代ISの肉親への譲渡、そして進路からこの旅館の近くに行き着くと言うことから、そこまでISを操作し、尚且つタイミングが良過ぎることから、この件の首謀者は篠ノ之束と思っていたのだが。

 

違うと言うのだ。

 

「よっこらしょ」

 

男は年齢に合わない声を出しながら、織斑千冬の手に縋って立ち上がった。男の呼吸が不自然な物となっている、恐らく突発性のショックによる過呼吸だろうがあまりに必死そうなので指摘できないで居た。しかし、織斑千冬はそれすらも演技と思っている。真相は定かではない。

 

「いやぁ、ちょっとビックリした。」

「……………。」

 

織斑千冬は笑いながらそう言っている男を睨み付けながら、無い頭を絞り考えを纏めて行く。それを男はニコニコとしながら、見つめている。

 

「…………。お前が出ることで私達にメリットはあるのか?」

 

その質問は、周囲の人間を驚かせるには十分だ。質問は、相手と対等な関係の時に起こりうることだ、つまり織斑千冬は目の前の人間を対等だと認識したのだ。

その質問に男は、あごに手をやりながらこう答えた。

 

「いや。俺の目的は状況の停滞を打破するってだけだから、出撃するのはただの一つの方法論でしかない。

むしろ俺のISとIS技術だと邪魔にしかならないだろうし…………布陣や専用機の用法だけで勝てるとの見込みがあれば、指揮権やその他もろもろを任せて、アイディアのみを渡すと言うことも出来ます。

つまり、俺から言えるのはただ一つ。人を動かしても問題はないし…………逆に早めに人を動かさないと面倒くさい事になる。」

 

「…………理由、裏づけ込みで聞かせろ、早急にな。」

 

この時点で、男の勝利は確定した。

 

「理由は襲撃ISの中に入っているプログラムにVTシステムの亜種…………いや進化版のようなものがあると確認されました。」

 

音には出ない

 

「裏づけとしては、VTシステム特有の強引な機体の再構成の確認が挙げられます。確認できるところは全体的な黒色の分布です、まあ、機体のスペックデータにだけ目を向けていたら分からないことでした。」

「この進化版VTシステムの特徴として従来のVTシステムの行動強制に加え、強力なフラグメントマップの改変までさせる事により、根本からヴァルキリーになることが可能なことです。」

「つまり、これは搭乗者がポンコツであればヴァルキリーの付いて来れず体が壊れますし、そもそも精神の崩壊すらありえます。これは。世界研究者クラブとして情報です信頼性は高いかと。」

 

「…………これで搭乗者が死んだら某A国は誰に責任を求めますかね?これは俺の勝手な想像ですからあしからず。これで俺からの発言は終わりです」

 

「…………。」

 

そして、最後の一押し。

男は肩に手を置いて、織斑千冬にだけ聞こえる微妙な音量で囁いた。

 

「篠ノ之束が、なぜ貴方に関るものを先に潰しておかないのでしょうか?つまり、そういう(・・・・)ことだと私は思います。」

 

それを、聞いた時…………織斑千冬は、考えるそぶりを見せた。そして、何かの算段を立てたのか

 

「お前は、今使用できる全専用機でどう対処する?」

 

「ハハッ、なんと言うか実に試そうとしているようで癪だな」

 

男のその一言で顔を歪ませる。その通りだったからだ。

 

「俺ならまず、編成は1,2,2で分けて、箒に、凰とオルコット、ラウラとデュノアの編成です。箒さんを当て馬にして、時間を稼ぎます。凰とオルコットは遊撃に周り、ラウラとデュノアはここの小島に待機させます。」

「次に、作戦ですがタゲ取りとして、ラウラには後方支援パッケージを付けさせ、近づいてきた所をデュノアが対処、そして、ワイヤーブレードで捕縛、一番面倒な兵装を叩き折りAICで固定化。後に総攻撃です。」

 

「…………及第点だな。全専用機持ちを召集!」

 

「「「「「はい!!」」」」」

 

ふすまを開け放って、一夏以外の全専用機持ちが揃っていた。

 

「どっから来たんだ・・・。」

 

「俺が呼んで置きました。それではノシ」

 

 ◆ ◆ ◆

 

とりあえず、俺はあそこから二度目の退席をした。それについて担任殿は何にも言わなかったのは、本当に俺の専用機の特性からして対個だとあまり意味がない。どちらかと言えばオルコット嬢よりな機体だし。

 

「あー、つかれた」

 

俺は、とりあえず羽を伸ばそうと自室に戻る事にした。

ふと、視界の端に女性が見えた。その女性は。

 

「コングラチュレーション!。」

 

いきなりそう言い出した。俺は非常に冷静にそう非常に冷静に冷めた目でその人を見ていった。

 

「お疲れ。つーか篠ノ之束(・・・・)、アンタ何やってんだこんな所で。」

「まあまあ、それよりちょっとおしゃべりしようよ。」

 

どうやら、俺の戦いはひとまずは終幕になったようなのだが…………非常にめんどくさい案件が目の前に転がっていた。。

 



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終わりの後も俺は踊らされる

『前回の三つの出来事!

 一つ私ことエネが出てこなかった!

 二つ康一が嘘ついて行動した!

 三つ私の親こと篠ノ之束が康一と接触した!

 ってか、マジでこっちの作業キツイ・・・。うおっと!?VTシステムを暴走させてしまう所だった』

 

なんか、エネが状況説明してくれているような感覚がしたので、とりあえず俺こと相澤康一は目の前に居るラスボス的な雰囲気を出している女性、天才(天災)こと篠ノ之束話しかけられている。

 

「いやはや、さっきのはお見事…………だね。ウソをついて、この戦況を動かした、今も箒ちゃんが公式的に戦っているし、ちーちゃんにゴーサインを出させた。」

 

「別に、そこまでの事じゃないな、大体VTシステムの事だってアレは事実だ100%虚飾って訳じゃない。」

 

本当にそれほどのことをした訳じゃない。みんなの士気を高めたり、後厨房の人間使って教師達におにぎり食わせたり誰にでも出来る、どもらなければの話…………最初にやったときはちびりそうだったもんなぁ。

古い思い出に馳せながら、話に耳を傾けた。

 

「だからこそでしょ?100%のウソは案外ばれやすい物だからね。」

 

「まあな。」

 

「それに、ちーちゃんの殺気の前に飄々としてぺらぺらと喋れること自体が凄い、一般人にはあまり出来ないことだよ。」

 

話…………というか俺に再挿入された記憶と人物像が違うんだが?箒さんの話に聞いていた限りだと、俺ごときを褒めたりするような人物じゃないと思うんだが?

それに含めて、聞きたいことが多数あると言うより有り過ぎる。幾つか質問してみるか。

 

「しかし、ずいぶんと変わったな篠ノ之束。」

 

「君に変わらされたんだよ。」

 

「自覚がない。よければ教えてくれ、その変わらされた理由を。」

 

まずはここから、この臨海学校の最初のイベント(面倒事)、つまりは篠ノ之束との邂逅時にいっていた事の裏付けだな。

 

「まず、ISを作った経緯から話さなくちゃ。私は、人に興味がなくてね、それ以前に興味がないものに目を向けていなかった。人として興味があったのは箒ちゃん、いっくん、ちーちゃんこの三人ぐらいかな。」

 

とりあえず、なんか話が飛んだな…………まあ、いい「いっくん、ちーちゃんは一夏、担任殿でおk?」

 

「うん、それでいいよ。ある日、いっくんが宇宙に行って見たいって言い出して。ISを作ったんだ。それでも、人が限りなく近くで宇宙で活動することは出来るけど、宇宙に行くことは眼中になくてね、そうしたら世界に発表して開発者としてのコネを使って一緒に飛べばいいじゃんって思いついた。滑稽だよね人の狡猾さを知らずに人を使おうなんて。」

 

人は誰でも失敗して覚えることは多々ある。それを直視できるか出来ないかが問題なんだ、俺がどうかは知らんが。

 

「そして、今のISが生まれた。空を目指さず、人に飼われて、ただの兵器と成り下がった。だから君に出会った時は荒れていたし、君に出会ってから変わった。エネミー…………じゃないや、エネが私の元からはなれて君に寄生しているのも原因の一つかな。」

 

「へえ。」

 

俺はこの話をを聞いた時、一つの言葉が去来した。

 

 

「・・・嫌なところも。認めてあげてくれ。か。」

 

 

「そう、それで頭が冷えて・・・」

 

鎌をかけた。こいつは、篠ノ之束は本質が変わっていない。ぺらぺらと喋る篠ノ之束を横目に次の質問を考える。

 

「そういえば、VTシステム…………あんな使い方して良いのか?」

 

「あ?あれ?ちーちゃんを馬鹿にしたようなゴミは潰そうとしたけど、私が動くと世間が大きな騒ぎになっちゃうから大本の火は消したけどまだ種火がちらほらとって感じかな?」

 

「そうか。」

 

変わったのはやり方だけ、エネと俺はまんまとコイツの手のひらの上で踊らされていた…………いや、ちゃんとした契約がないだけで、現状的には利害の一致ってだけだが。

「なあ、もしかして今起こっている戦闘を撮っていたりするのか?シスコンみたいだし。」

 

「殺すぞ。」

 

「おお、怖っ。んで、どうなの?」

「衛星ハッキングしてみてます。」

「何やってんだ。」

「ばれなければOK」

「それには同意する」

 

すこし、犯罪者チックな発言をしているのを差し置いて。本当に俺が予想していた人物像は変わっていない。俺の部屋が目と鼻の先にまで見えてきたし、入るとするか。

 

「うぃーっす」

 

「あ、お兄さん…………ってお姉さまも。」

 

「一葉、それは男さらには童貞と言う人種に百合な世界を創造させる。すぐさまやめろ。」

 

俺たち的、極普通の会話を交わしながら部屋に入った。すると、後ろから俺の体から乗り出して篠ノ之束も部屋に入って来た。

 

「はぁい、かーちゃん。」

 

「どうもー。」

 

「ロリおかんは○や七○だけで良い様な気もするが。」

 

「何の話をしているんですか?」

 

「何言ってんだい、かーちゃん。今日は日曜日だぜ?そそっかしいなぁ。」

 

「ああ、ミスリードですね。分かります。」

 

篠ノ之束のあだ名センスに思考の内で首をかしげながら、俺は寝そべった。しかし、色々なことがあったな……………。あの事件や、円卓の騎士たちの存在…………は、無理だな一応匹敵する。色々考えていると、眠くなってくる、寝ようと布団を引っ張って包まるが少し、女二人の声がうるさいのでそれを注意する言葉を放つ。

 

「静かにしてくれ。俺はもう疲れたよパトラッシュ。」

 

「死なないでくださいよー。」

 

時系列的に冬じゃないことは確かだろう、寝ても死なない気温に感謝しながら俺は強引に眠りに付いた。

 

 



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後味が悪い堕酒

今更ながらに三万UAありがとう!!嬉しさあまって時間外投稿!


時は、めんどくさいことが全て終わった、臨海学校で皆を説き伏せていたら眠くなり、霞のように消えていた二人の天才女性を頭の片隅で考えながら、残された菓子を処理として腹の中に納めていた時のこと。

目が覚め、寝ぼけ眼で菓子を食い漁りながら時計を見てみると、時間的に失敗したらここら辺が火の海になっているであろう時間と確認した。

 

全て終わった…………。本当にめんどくさかった、と言うより、この後の面倒事を考えるだけでも気が滅入る。

 

『やあ、もう起きたかい?』

 

不意にやって来た脳内からの呼び声に驚くことはすれ、反応が鈍くなったなぁと思いました。

 

『そっちの方が都合がいいがな。』

 

いちいち驚いていたら心臓が持たないわな。で?どうなったんだ?あの銀の福音とやらは。

 

『ああ、全専用機持ちが終結、色々苦戦もして銀の福音との接戦を繰り広げ、あわや作戦失敗か?と言う所まで来たが、なぜか一夏君が復活!パワーUPしたISを引き連れて見事、愛と友情とその他もろもろ主に私達の力で銀の福音を撃破。搭乗者の命も救われてこれで丸く収まった。もちろん君のおかげでお咎め無しだ。』

 

そりゃよかった、と言うか事象を言葉に起こしたらそんな程度だったのか。

 

『まあね。あ、何時ものスマホの方に変えるから。』

 

了解

 

と言って手近にあった俺の荷物を漁る。これか。最近、エネは何時かの日のようにスマホから声を飛ばすことが多い、そのときは重要な会話などは起きないから問題はないが、強いて上げるなら、その状態だと独り言と見られることだろう。それなので通話用のヘッドセットをダミーのようにして喋っている。

エネは寄生しているから、スマホに移行してもデメリットしかないような気がするんだが。気分だろう。

 

「あ、つけたかい?」

 

「大丈夫だ。」

 

「そりゃよかった。」

 

「それよりこれからどうするんだ?」

 

「そうだな、当面の私達の敵…………ファントムタスク(亡国企業)とやらが攻めて来るまでは此方も何もしないな。」

 

「たしか、基本的に専守防衛みたいなことは言っていたしな。」

 

「ああ、人間の手に御し得ないと判断してしまったら、最悪破棄される場合もある。コアの周りは強固だがあまりコア自体は繊細だし破壊は簡単だ。まあ、ツンデレと同じだよ。」

 

「最後のたとえで一気に迷走したが、なんとなく分かったのが辛いな。」

 

「くっくっくっ、そうかい。それよりお疲れ様。」

 

「此方こそだ、本当にお前が居なかったらこの時はどうしようかと。VTシステムの制御に、此方の口裏を合わせる器量(・・・・・・・・・)、これがなかったら俺が勝手に一人で出撃していたかもれん。」

 

「なん……………だと…………。そっちの方がよかったじゃないか…………。」

 

そうかもしれないが、お前にとってだろう…………。

 

「アレが、俺の出せる最適解だったってだけだ。俺に少し利益が行くように仕向けただけ。」

 

「それが人にとって、あまり好ましくないんだよ。」

 

はて?何を言っているのやら、そんなこと誰だってやっている、戦争とかその際たるものじゃん。人の苦しいとか言ったのを他人から奪って満たそうとする、そのためには武器が必要、それでその武器を作ったのは誰だ?それは、武器を売り上げて利益を得る武器商人達だったりする。

このように大きな流れに沿って、利益を作るのは当然のこと。

 

「長いものには巻かれろって言うし、それでもダメと言うのなら自然的に淘汰されるさ。」

 

「またまた、屁理屈を。」

 

ただ俺がめんどくさがりなだけです、はい。…………直そうとしない。するわけがない。

 

「まあ、愛想尽かされないようがんばりはしますよ…………。ファントムタスクか。」

 

「ああ、規模、戦力は現時点で不明。どれほどの網を広げているのかすらも分からない。さらってみたが、幹部と実働部隊に分けられているぐらいしか分からなかったな。」

 

そこは、大体のものと同じか。世界研究者クラブとか実にその手法を取っているし。。

 

「幾らでもやりようはあるな、となると、軍を相手取るということは一国レベルの組織力はあるということか。」

 

「だな、軍はそのまま国になるともいうし、そのくらいは考えておいた方がいいだろう。」

 

全く、モノは大切に扱いなさいって母ちゃんに習わなかったのか?…………ま、何もいえないが。めんどくさそうだなぁ、と考えながら俺は自分の天邪鬼さに頭を抱えていた。凄い行きたくない。

 

「あれ?…………」

 

「どうしたんだ?何かまずいことでも…………。」

 

「戦闘を終えた専用機持ち達が戻ってきて一夏君が……………。」

 

その呟きの少し後に一夏が姿を現した。ISスーツすら着替えずに憔悴仕切っていた姿を見せて入ってきた。…………。

 

「お疲れ。」

「お疲れ。」

 

それだけで十分・・・というよりこいつは俺が動かないことを分かっているからな、もはや諦めの極致に達しているのだろう。一夏との関係はビジネスに等しい、俺は男と言う女だらけのところに安息を与え俺は一夏の情報と人脈とで二粒で二度おいしい、ギブアンドテイクが成り立っている。

人脈に関して言えば俺にはまねできないな。人柄がなせる業なのだろう。

 

「そういえば千冬姉がお前のことを呼んでいた……………早く行って来い。」

 

「ゲッ…………なんだよ、めんどくさい。」

 

いや、ほんとになんだ?一夏の写真はすでに密売ルートはばれては居ない、ばれた瞬間に即潰されるだろう。後他に…………酒をぱくって対ISに使えねーかなとか言っていたのがばれた?現状ではそれぐらいしか思い当たらん。

 

俺は渋々ながら立ち上がり、重たい足を運んだ。

 

「お前に…………任せてもいいか?」

 

一夏が去り際にそう呟いた。

 

「俺に任せていいものなんてねえよ……………逃げるな、てめえで背負い込みやがれ。持つものは持つ責務がある。」

 

 ◆ ◆ ◆

 

気が重いと行動も鈍重になると思う。足に根を張られたように前に進まない、恐らく担任殿が居るであろう、専用機持ちたちに場所を聞きだした、部屋の前に、立ち覚悟を決めた。

 

「失礼します。」

 

部屋に入って出迎えたのは、ただの拳。おおよそ人が認識できるほどの早さであったのが気になるところだが。ただ俺はその拳に歓迎されるままよろけた。

 

「はぁ…………してやられた。今回はお前の勝ちだ。」

 

そういい始めた、俺はそれを黙って聞いている。

 

「さっき、お前の所属している世界研究者クラブに問い合わせたところ、返信が『そのような情報は入ってきていない』だ、世界研究者クラブは、その知識と成果を世界に発信し、公然性があるからこそその形を保っている!それがなぜ、お前に情報がある!?なぜVTシステムの亜種があるといえる!?」

 

一つずつ条件を言っていくその条件を考慮すれば素人でもその答えに行き着く。

 

「私の友人の名を騙ったのか!?」

 

そう、一つの可能性としてなかった賭けではない。失敗する要因はそこにもあった、それは相澤一葉がこの事実を世界研究者クラブに隠蔽していた場合の話だ。一葉はこのことを言いたくないようだったし、世界研究者クラブも一枚岩じゃない。

まあ、此方としても緊急時の穴だらけの作戦なぞ、その程度で終わると思っている。だから分かりやすいように俺は二つ出したのだ。

世界研究者クラブと篠ノ之束の名を、もっと言えば。人間一つ疑えば全てを疑う、織斑千冬から見て俺の言った言葉お友達はすでに意味を成さない。担任殿は今、全てを本当のことを言っているとは考えられない。

 

「ちゃんと、許可は取りましたよ。」

 

「!?」

 

担任殿が俺を殴った握り拳を作る力をさらに込めた。感情のままに殴ろうとしたが一瞬理性が勝ったのだろう。その隙を見逃さず俺は言葉を入れる。

 

「騙ってはいません。」

 

「ならこれはどう説明する?」

 

その問いに関してこういうべきだろう。

 

「俺はこういいましたよね?『俺の目的は状況の停滞を打破するってだけ』と、実際にこれは達成された。」

 

その答えは、絶対的に担任殿の失敗を目の当たりにする事になる。その失敗は…………。

 

「そして、もう一つ目的が俺以外のところで達成されている。」

「そう、篠ノ之束だ。奴の目的は。」

 

「織斑一夏と篠ノ之箒の戦績を上げる…………つまり、売名行為だよ。」

 

「それはアンタも分かっていたはずだ。だが、それに危機感をもたらせるために。」

 

「だから、世界研究者クラブ名を使ったと?」

 

「ISまで譲渡しているのだから、説得力は抜群だっただろう?何のつながりもなかったとしても。」

 

そう、ウソは何も事実を隠蔽するだけじゃない、事実をウソにすることだって出来る。

 

「…………お前は、何者なんだ?」

 

「何者でもないさ…………だから、何にも出来ない。俺がやったことと言えば命令違反を命令どうりにさせたってだけだ。」

 

本当に何度も言ってるわこんなこと、何度も言いたくない。

 

「貴様はやってはならないことをした、命令系統を混乱させる。」

 

「そもそも、奴さんが動き出したんですから俺に責任を負わせるのはどうかと思いますがね、そもそも勝手に勘違いしたの其方じゃないですか?」

 

「うっ…………。」

 

「そ・れ・に………高々、15前後のガキに騙されたと言うのって恥ずかしくないですかぁ?」

 

その時俺はいやな笑顔だっただろう。基本的にSなのだ。I AM S 略してIS。

 

「『ぶっ○ろすぞ。』」

 

「ごめんなさい。」

 

俺は土下座をしていた。エネに思考を読まれているのと担任殿とのダブルパンチを食らったのだから仕方ない。すると、呆れたのかよく分からないがこう言って来た。

 

「まあ、結果論で物を見れば成功には変わりないが。」

 

「そうしましたし。」

 

大体、真実が全く別の所にあります。

 

「…………今後はこんなことをするなよ?」

 

「はい分かりました。」

 

これで終わりか。よかったというかこれで一件落着だな。後は帰るだけ。俺は一礼して自身の部屋に戻る。一夏が制服に着替えて、すでに帰る準備をしていた、そこらへんの行動力は評価する。

 

「これで終わりか。」

 

これまでの騒がしさに一抹の寂しさを覚えながらも、収穫はあったなと荷物を漁り3つの弾丸を手に取った。少し、微笑がこぼれる。これがお金に美味いの何のって、取らぬ狸の皮算用なのは分かっているが、かえって売りさばくのが楽しみだ、というよりこれしか収穫がなかったなぁ

 

「ま、結構楽しかったな。」



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日常の話

やってしまった・・・こちらを先に投稿するはずがナンバリング間違えた。


「めんどくさいのオンパレードであった」「クラス代表決定戦!」

「めんどくさいのオンパレードであった」「学年別タッグトーナメント!」

「めんどくさいのオンパレードであった」「臨海学校!」

 

半年、というかIS学園一学期というめんどくさい期間の中にあるイベント(さらにめんどくさいもの)はこの三つ。一応他にも、テストや他の勉強など一般的に見てめんどくさい物は俺にとってはそうではないので除外する。

それら全てを消化し、後は、人間の適応能力で一ヶ月で慣れた学業を淡々とこなしていく期間そしてそれらが終わる暁には、夏休みという大いなる退屈と倦怠の海へとダイブを敢行するハメになるのだが、それは忘れよう。

 

つまり、俺こと相澤康一が言いたいことは一つ…………。日常っていいよね。

 

 

 

【収穫始めました】

 

潮風が吹き木々のざわめく。登ってくる太陽が空気を暖めるのを感じる。IS学園秘密の個人農場でのこと。

 

「夏は野菜が多く取れる、それ以外でも色々あるが夏野菜と呼ばれるものが沢山あるのだから、それらを育てないと意味がない。」

 

マイナーなものはどうやって調理すればいいんだか分からないしな。

 

「ふう、収穫終わり。」

 

植えてあった木をひっこ抜いたときに出来た副産物である椅子に腰掛ける。ISのパワーと科学力に感謝しながら疲れを癒すついでにと、収穫したばかりのトマトを生のまま齧る。

トマトの水分が体にしみるように、ほんの少し疲れた体を癒していく。

 

これだけで、少し生きていて良かったと思えるようになってきた。

 

っと、どうやら轡木さんが来たようだ、お茶でも出して待っていようか。

 

 

【一応の別れ。】

 

「俺なんか一夏と同じ部屋になる様です」

 

「あ、そうなん?」

 

物凄いさっぱりしている。ポン酢もびっくりなさっぱりさだ。とはいっても泣き喚いてもらっても困るけど。

 

「大体、貴方ここにあまりいないじゃない。手痛いのは貴方の料理が食べられなくなることね。」

 

「じゃあ、三人分か。」

 

「いやこれからは自炊しよう…………。」

 

ま、それでなくとも会えるし大丈夫か、一夏だったらそこまで知らん顔じゃない。

それに、何かこの部屋変えには何か意図が有るような気がする。ま、男性IS操縦者と言う肩書きだけだろうが。…………ま、臨海学校での写真を整理するのに女体を女の前で整理するって言うのは変態の所業だ、それなりの言い訳が出来たと思えばいいか。

 

「それじゃ。またね。」

「それじゃ。また。」

 

こうして一つの別れが起こる。少しの間一緒にいてくれた人に感謝し、そして面白かったなと思い出が去来する。

 

「簪…………たのしかったぜ。」

「こちらは退屈はしなかったよ。」

 

俺は、ちょくちょく戻ってくるであろう部屋に別れを告げるように、ゆっくりと扉を閉めた。

 

 

 

【一方その頃。】

生徒会役員室でのこと、そこでは連日、頭がおかしくなるのではないかと思うほどの大量の書類が送られてくる。それこそ某生徒会副会長が発したオノマトペのように、判子をペッタン、ペッタン、ペッタンコとただひたすらに押していくと言う作業なのだが。国を挙げてのものとなるとそうは行かない、ちゃんと目を通してその上で合否を決めていく。

 

「フォーーーーーーーーッ!!来た来た来たぁ!!!」

 

「……………またですか。」

 

毒をもった電波を受信したかの様に、急に奇声を上げながら、跳ねるように立ち上がった。

それを冷めた目で見ているのは、(うつほ)。また、奇行に走るのだろうかと身構えていたのだが。

 

「これで一安心だね。」

 

と一言言った途端、席に付きまた作業を開始し始めた。

 

「?」

 

だが、これまでとは別に行動を起こしたわけじゃなかった。ただそれに首をかしげ、また祖業に戻った。

 

これは上に書いている【一応の別れ。】の時のことである。

 

 

【ゲーム】

 

学生の娯楽は多岐に渡る。人とのおしゃべりだったり、SNS上でハッスルすることだったり、ただただ孤独に過ごすというのが娯楽というより楽という者もいる。

だが、一番多いのはやはりゲームなのではないだろうか?のめり込み具合は人それぞれだが、スマホやパソコンのフラッシュゲームほどならやったことがあるだろう。

それほどまでに今は、ゲームというのは強く根付いている。

 

そして、それはここIS学園でも変わらないようだが…………この男二人は勝手が違うようだ。

 

「「…………。」」

 

無言でテレビ画面を見つめている。よく見ると、二人の手には平べったいコントローラーが握られており、指はせわしなく動いている。時折画面がフラッシュし、二人の顔を照らす。何度目かのフラッシュの後…………

 

「…………っしゃ!!」

「ガッデム!!」

 

恐らく対戦形式のゲームで決着がついたのであろう、両者がそれぞれの反応を見せた。

 

「勝率は半々だな。」

「抜かせ、これで俺が勝ち越したぞ。ってか無言でリトライ押すのやめろや。」

 

両者ともまたゲームに戻る。

 

『テテテテテテテテン ボーン!』

『ボブン!        ボーン!』

 

ここで、二人の状況を説明しておこう。一人はベットに腰掛けながらスタンダードにやっているが。もう一人は足を開けた体操座りのような体制でその中にすっぽりと、銀髪の少女(ここではラウラと呼ばれる少女だ)が座っている。その状況だけを見れば、どれだけ特異な空間に見えることであろう。

だが、ここにそれについて突っ込む者は居ない。

ベットに腰掛けテレビ画面を凝視しながら、少女に話しかける。

 

「ラウラさんよ、その状態何とかしね?もうそろそろ就寝時間だろ?」

 

「嫁が寝るまでは…………。」

 

といいつつも、目をこすりながら今にも眠りそうだ。

 

「だってよ一夏一緒に寝れば?」

 

「出来るかバカ。女の子だぞ、それにラウラは寝る時全裸だぞ。」

 

とんでもないことを一夏が投下しながら。

 

「羨ましいな、死ね。」

 

「アレ!?めっちゃ爆発してるじゃん!」

 

「フハハハハハハハハハハハハハハッ全国津々浦々のもてない漢たちの哀しみを知れ!」

 

「zzz……………。」

 

こうして青春の夜が更ける。

 

 

 

【ここでは一度も出ていない新聞部。】

 

俺こと相澤康一は部活に入っていない、ここIS学園では部活に入ることを強制させているにも関らずそれについてお咎めなしなのは、きっと男だからだろう。

女の花園ことIS学園では、ISというモノの特性上女しか居ないため、ヘンタイ趣味に走れば幾らでも素材はあるだろうとのことで、男は無いのだ。

だが、そのサンプルも二人だけのこと。俺はちょくちょくと顔を出している部活が複数ある、今回はその内一つを紹介しよう。

 

「ウィーッス。」

 

俺はとある一室、それは新聞部の部室に入った。

 

新聞部とは、その名の通り自身の足で学校中を駈けずり回り、得た情報で新聞を発行する部活だ。ジャーナリスト(笑)を目指しているものにとってはいい経験になることであろう。

 

「…………来たね、いやーどうしても臨海学校は行けないからね。ここで学年の隔たりが出てきたかと思ったよ。」

 

俺の目の前に居るのは、(まゆずみ)薫子(かおるこ)新聞部の副部長だ。

部長は見たことはない、恐らく部長と言う名のスケープゴートでも作って私物化しているんだろう、抜かりはない。

 

「まあ、抜け出せば大丈夫っちゃ大丈夫だね。」

 

「後が怖いわ。それにそこまでリスクを犯してまで金は稼ぎたくはない。」

 

さて、なぜこの胡散臭いいわくの付いた部活に顔を出しているのかと言うと、金。マニーだ。実は、この新聞部、裏で写真をオークションしている、そこを俺が突き、ばらされたくなかったら俺の奴を出品しろと契約を持ちかけた。…………ま、売れる写真を撮るのは天下一品な物ですし。と言うかお手伝いさんの真似をしてよかった・・・。

 

「ホイ、これが写真データ。一応撮り漏らしがないかはチェックしといたけど、自分で確認してね。」

 

「了解しました~っと。あ、そういえば」

 

「なんですか?入部はしませんよ?」

 

「そうじゃない、一夏君と箒さんにも話はしたんだけど…………。」

 

「詳しく聞かせろ。」

場合によっては金になるかもしれないしな。

 

「うん、えっとね。実は私の姉がインフィニット・ストライプスって雑誌の副編集長になっているのは知っているよね?」

 

とりあえず、首肯しておいた。

因みにインフィニット・ストライプスとは、代表候補生やISに関る人物をピックアップしていくようなIS関連雑誌だ。その時に代表候補生やIS整備士などの写真を撮ったりインタビューを掲載することで売り上げを上げている。

 

「で、男性IS操縦者にもインタビューしたいって話が出てきて…………お願いできないかな?」

 

「日程を教えてください。それで決めます。」

 

「なんでっ…………ま、しょうがないか。首が飛ぶのはこっちだし。えっと、一夏君たちと一緒の日にまとめてやっちゃうらしい、夏休み中の8月15日に午前は一夏君たち、午後は君たちの撮影とインタビューが入っているわ。」

 

「君たちって俺以外の奴と一緒に撮るのか?」

 

「ええ、インフィニット・ストライプス以来のビックゲストよ。」

 

「うへぇ…………その依頼、受けよう。」

 

「おっ?何でまた。断るかと思って、金を用意しておいたのが無駄になったじゃないか。」

 

「何時ものお礼さ。」

 

とは言った物のそんな殊勝な考えを持っている訳がない。一夏の写真だったら売れるかなと思っただけだし、それにちゃんとした設備で写真を取れる状況は数える位しかいない。それであれば、俺も行くことにはメリットがあるだろう。

 

「パパラッチ業は買ってくれる人が居ないと成立しないからな。」

 

「なるほど、よし!話を通しておくよ。」

 

―――この会話が、後にあんな事件に発展するとは…………ここに居る誰もが思わなかった―――

 

「何言ってるの?」

 

「とりあえず、こうしておけば何か起こるかな~って。」

 

「おきないよ。」

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

とまあ、このような日常を送っていた訳だが。それも今から破壊される。

 

「えー、明日から夏休みだが、ハメを外し過ぎないようにしろ。普段の生活から逸脱しないようにしろ。以上だ。」

 

そう、全くもってめんどくさい。ま、何にも予定はないから大丈夫だろう。

さてと、ゲームとかパソコンとか。色々とやってきますか!

 

 



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ナトゥヤスミィ編
相澤、空を飛ぶってよ


ああ、夏休み初日の惰眠は気持ちいい…………。

もうこれにかなう娯楽みたいなのはないね。マジで気持ちいい。

布団に篭る温い空気に、微かに聞こえる自分の寝息とそして少々の雑音。そして眠っている時特有のぼうっとした感覚に、適度な揺れ(・・・・・)。これがいい。

さて、半覚醒状態から完全に眠りに移行しよう…………オヤスミナサイ。

 

「zzz…………。」

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

ん…………あぁ。時間がヤバイな。そろそろ起きるか。

 

起きようとして薄目を開けた時に見たのは、細長い棒のようなものを持って俺に向かって振り下ろそうとしている人間だった。

 

「オフワァッ!?」

 

俺は体を捩じらせて、その一撃を避ける。俺の顔の横にその細長い物体がめり込んでいる。

 

「ちょっ誰!?」

 

そういいながら、飛びのいて戦闘体制を取る。……………ってあれ?

 

「何やってるんですか担任殿?」

 

織斑先生こと、担任殿が「逆だ。」居た。何かおかしな言葉が飛んだが、俺はそれを無視して続けた。

 

「いや、俺の部屋に入って…………ってあれ?」

 

眠りから覚めて周りを見たら。…………完全に飛行機ですやん。

 

「え?」

「ウェルカムトゥー飛行機。」

 

ええええええええええええええええええええええええええええええええええッ!?とりあえず心の中で叫んだよ!

 

「えぇ…………。何でまたこんな酔狂なことを?」

 

俺を拉致っても意味ないじゃない。…………アレ?俺殺される?ここで俺の物語完?だって、俺と一緒にこの理不尽(織斑千冬)がつかまる訳ないしもしかして国を挙げてのIS学園殲滅作戦でも展開されたか?。

 

「はぁ、1から説明する。とりあえず座れ。」

 

「へいへい。」

 

とりあえず、座った。俺はそこらへんにキャビンアテンダントでもいないかと探しながら、耳を傾けた。

 

「お前、公式戦は何回やった?」

 

「ああ、全然戦ってないですね。」

 

以前、一葉と話したことだな。戦わなさ過ぎて問題になっているって言うことか。

 

「…………何か分かっているような口ぶりでむかつくな。まあいいそれで、前々からなんだが私の知り合いに……………なんと言えばいいか、バーサーカー(狂戦士)が居てだな。」

 

「類は友をよブベッ!?」

 

痛い、殴らなくてもいいじゃない?

 

「それが、男性IS操縦者と戦わせろとうるさいらしくてな。」

 

はた迷惑な存在ですね。

 

「お前を連れてきた。」

 

「…………要約、丁度いいから連れてきた。」

 

「その通りだ。どうせろくに予定という予定はないだろう?」

 

「有りますよ、惰眠をむさぼるという役目が。」

 

「殴るぞ。」

 

「殴ってから言わないでください。」

 

因みに俺の顔は少々腫れてきている。それにしても俺は戦ってないからサンプル取りのために戦って来いや…………かぁ。

 

「俺あまり戦いたくないんですが?」

 

「何でだ?」

 

「今のISを兵器として、武装として使いたくないんですよ。」

 

一度そう使ったけど、どうにもなりはしなかった。ただただ破壊のみを求めるそれだけの代物なんて俺は要らない。

 

「俺の手にはあまり過ぎるほどの力ですよ。ISって言うのは。」

 

「お前のその言葉を専用機持ちに伝えてやれないのが不憫で仕方ない。」

 

まあ、IS嫉妬の時の攻撃に使うほどだからな。アレはまずい一夏が死にに行くレベルだもの。ま、俺が専用機持ち達をけしかけて一夏()VS一夏ラヴァーズ()とか言う状況にしているのもあって一夏自体は凄い上達しているんだけどさ。

 

「さっきの言葉を言っている時結構カッコよかったぞ。」

 

「よかったですね、レアですよ。俺のカッコいいところはツチノコレベルでしか見られませんので。」

 

つまりは欠片ほども存在しない。と言うか、これからどうしよう。こうして水面下で何かやられると偽りようがないからな。

 

「戦うしかないのか…………。」

 

俺は深く溜息を付いた。担任殿がバーサーカーと形容した奴だ…………本当に手の付けられないバーサクやろうなんだろう。誰も止められない、もし女尊男卑主義の奴だったら俺を殺しにくるし、もうこれ終わったな。

 

「ああ、会ってみれば分かるが結構なバーサーカーっぷりだぞ。」

 

「そうかい、もう俺は余生を楽しみにしているよ…………スンマッセーン!ナッツとか有ります?いえいえ、戻せとかは言わないですよ?。」

 

「ジジイか貴様は。」

 

「死に掛けるような奴に会いに行くんだろ?最も、俺のようなミジンコ以下の存在にとっては、アンタの知り合いってだけでそれはもう死に値するね。だったらどこ行くのか分からないけど、ぬくぬくと過ごしてきますよ。」

 

「ぬくぬくか…………。」

 

「まあ、この時期になっていると熱いだけですが。」

 

七月に入ってさらに熱くなってきたもんなぁ。

 

「いや、寒いと思うぞ?」

 

「え?」

 

「今からいくのはオーストラリアだ。」

 

俺はその言葉を聞いた瞬間に溜息を付いた。

 

 

「スキーかスノボでもやるか?遊ぶわもう。」

 

 

 



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即堕栄盛

「さっむ!さっむ!!!?やべえ、鼻水出てきた。つかアンタバカじゃねえの?防寒着ぐらいもってこいよ脳筋野郎が!って何でそんな涼しい顔しているんだよ!?」

 

「早く行くぞ。」

 

俺こと相澤康一は、今日本では真夏の暑い時期にオーストラリアに来ています。ええ、設定は夏ですよ。前回担任殿に連れられてこんな感じ。とりあえず、寒く雪が横殴りに降って来る中ずんずんと進んでいく担任殿についていく事にした。

 

「どこに行くんですか?」

 

「車で日本大使館と、オーストラリアのお偉いさんに会いに行く。」

 

なるほど、日本は俺の身柄を保証するためにって事か。

 

「日本大使館はお前は出なくていい。お前が出て行くのはオーストラリアのお偉いさんの前だ。」

 

マジでか。

そんなことを話している内に、進行方向に車が見えてきた。

 

「乗れ。少しここから忙しくなるからな、主に私が。」

 

「お前かい。」

 

「織斑先生と呼べ。だからお前はウロチョロするな。」

 

「分かりましたよ、担任殿。」

 

殴られた。俺は車に乗った。

 

 

 

 

そして、少々時がたちそれっぽい馬鹿でかい建築物が見えてきた。

 

「おお、アレか。」

 

ところどころ趣味の悪い豪奢な飾り付けがなされてある家?を見渡す。俺なら売って…………貯金するだろうな。俺はなんというか、物に金を使うんじゃなく人に金を使うタイプらしい。

 

「そうだ、オーストラリアの首相宅だからな。」

 

「何で!?」

 

「…………まあ、言うなれば私とお前は飾りみたいなものだ。」

 

何か苦い顔をしながら担任殿がそういった。

 

「私の知り合いが居ると言ったな。そいつはイタリアの国家代表なんだが、なぜか戦う場所をここに指定してきた。つまりはオーストラリア、日本イタリアの三要素がここに集結してきているのでな、政治的、というよりかパフォーマンス的な割合が大きい」

 

そうなると一番角の立たない解決法は…………。

 

「つまりは、日本とイタリアの親善試合、場所はオーストラリアでやるよと言った感じでしょうか?」

 

「そういうことだ。」

 

なるほど、なぜ俺がとか思っていたが説明されてようやく意味が分かった。確かに俺が適役(・・・・)だな、なぜならば俺が取るべき行動は試合で負けること(・・・・・)だからだ。

その理由のキーは日本の立ち位置だ。日本は男性IS操縦者を二人もいるという、大きすぎるアドバンテージを持っている。そもそもIS=軍事力と言う状態にあるこの現代に置いて、男性でも使えるとは更なる波乱を巻き起こす。男性に使わせたい、男性に使わせたくないと言う派閥が立っていたり、殺せだのいろいろな意見が出てきている。

その上で、男性が予想以上に強かったらどうだろうか?男の株は跳ね上がり軍事の部分でも膨れ上がる。様はそのブレーキ役だ、絶対に負ける。そう、公式戦の勝率はゼロ、練習、勤勉性の欠如したような奴がどうして勝てると思うのだろうか?

日本政府としては、織斑一夏にその任を任せなかったと言う恩、そして世界的に無害(・・)をアピールできる。一粒で二度おいしい。

ま、そんなことしなくても国家代表相手だったら何も策を講じなければ負けるだろうから無意味なんだろう。

 

「はあ、しかし。めんどくさいこともするんですね……………。たぶん、ここまで考えていること事態も予想内なんだろうな。」

 

「何の話だ?」

 

しかし、それを根本から覆すものはもっておきたい。それならば。

 

「そうだ、この近くに服屋とかあります?つーかスーツ屋。手が寒いんで着ても失礼じゃないような奴を一つ買いたいんですけど。」

 

そういったら、少し考えるようなそぶりを見せ。運転手に何か英語で話しかけた。

 

「許可する。特に損はないしな。」

 

おっ?ラッキー。金は後で立て替えておけば大丈夫だろう。寝巻きだけとか、ヒキニパ伸を生成したどこかの目つきの悪い引きこもりではないからな。

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

入店し、店のコーナーの配置を確認。そして手袋、スーツ上下さっと目を通して。適当なものを選ぶ。値段と見た目長く使わないからそれなりに綺麗なものを…………と見ていったら結構絞り込めたな。といって手にとって言った奴をかき集めて着て見たら、どこか禁書を目録している女の子が出てくる小説の騎士団の団長さん見たくなっていた。

流石に髪の色は違うが。普通に黒ですけど何か落ち度でも?

 

「決めたか?どうにも男の買い物は効率が良過ぎるような気がするんだが…………」

 

「色々見ていたところで、時間の無駄です。会計を済ませてしまいたいのですが?」

 

「分かった。」

 

といって、お金を出した担任殿を見ていると、なぜだか領収書を貰っていなかった

 

「領収書は轡木(くつわぎ)十蔵(じゅうぞう)で」

 

「お前は、何を払わせようとしているんだ!?…………私の奢りだ。いつの日かの水着をかねてな。」

 

「分かりました、変態チックに唐草模様の風呂敷を持ちながら先生の部屋に忍び込んでお返ししておきますので少々お待ちください。」

 

そこまで言ったのは、ほぼ脊髄反射だった。俺は口からも脊髄反射が出来るらしい。

 

「お前に関しては本当にやりそうだから辞めろ。」

 

ええ、やりますが何か?それでなくとも俺のわがままですからね。

 

「はぁ、ご好意は受け取っておきますよ。」

 

「物も金も受け取っておけ。」

 

円滑に会話を進めるのにうそは必要なんだろうな。

 

 ◆ ◆ ◆

 

さて、女性との二人っきりの買い物という童貞をこじらせたどっかのクソ馬鹿野郎であれば、その場でガッツポーズを取りながら、チルノのパー○ェクトさんすう教室を舞っている所でろう状況から。

 

先にも言った馬鹿でかい所々豪奢な飾り付けがなされてある建築物に入る事になっている。現地で買ったスーツを着込んで仕込みはばっちりだ。

 

普通にIS学園の制服でもいいんだが、アレ目立つんだよな、白いし。

 

「行くぞ。」

 

担任殿が一言だけ、そういって車を出る。それに付いて行き建築物の中に入った。

 

 

入った建築物は内装が酷かった。ことわざに外華内貧というのがあるが、これはその逆だな。目に写るものが、金だの銀だの高そうなものばかりで、このお屋敷ごとどこかの大泥棒三世に盗まれてもいいんじゃないかと言わんばかりだ。

 

「なんつーか、凄いとしかいい様が有りませんね。」

 

「…………これより上はもっとある。」

 

言って切り捨てられた。まあ、上の人間が贅沢してると何かと叩かれるんだろうな。それよりここ迷う。少々の無言の時間が続き、担任殿が先頭を行きその後ろにカモガル子供の如く俺が付いていく。

 

「ここだ、失礼の無いように。」

 

「そのためにスーツ買ってんでしょうが。」

 

扉の前に担任殿が立ち、開けた。そこの部屋には初老の女性とその隣に居る秘書だろうか?年若い男性が居た。

 

「失礼します。」

 

とりあえず、俺は何も言わずに入る。担任殿の右斜め後ろに位置するように立つ。人間は右に居る人間を記憶に残すと言う、そしてその逆はあまり記憶に残らないってテレビでやってたから願掛けを込めてそこにたった。

 

「Welcome, Chifuyu Orimura. I'm Olivia, Bradley.This is the prime minister of this country」

 

なに言っているの?…………英語は点でダメ。無理。すると、流暢な日本語で隣に居た男が翻訳してくれた。

 

「ようこそ、織斑千冬。私はブラッドリー・オリヴィアこの国の首相です。」

 

なるほど、ってそんなこと言ってない気がするんだが?むしろ敵愾心をムラムラと立ち上らせているよ?…………理由が分からない以上そんなことは考えても仕方のない事だ。

 

「存じ上げてございます。この度ははこのような親善試合の舞台をご用意していただき、感激の至りにございます。」

 

おお、織斑千冬が敬語を使っている…………何気に初めて見たんじゃないか?

男性が、女性に向かって囁いている。なにを言っているのか分からなかったが、とりあえずそこに悪意は感じなかった。

 

「Click here for what , and to watch your side of such a great IS operator of the game is to hard to pleased」

 

「こちらこそ、あなた方のようなすばらしいIS操縦者の試合を見れるのは大変喜ばしいことです」

 

「そう言って頂けて幸いです。」

 

なんというか腹の探りあいの典型のような会話だった。

 

「In so Speaking this game , do you boy behind to participate ?」

 

「そういえば今回の試合では、その後ろの男の子が出場するのですか?」

 

「その通りです。ほら、挨拶をしろ。」

 

ええ、空気になっていましたからね。

 

「はい。始めまして、二人目の男性IS操縦者の相澤康一です。」

 

とりあえず、織斑先生の隣に踏み出して一礼をする。通訳の人の翻訳を待ちながら懐に忍ばせた何も書いてはいない紙を少し見やって、視線を初老の女性に戻す。

 

「本日はこのような機会をいただきh「Do not become so hard , and may speak in the language of your own」…………?」

 

途中で英語に遮られた。表情を強張らせる。

 

「そう硬くならないで、あなた自身の言葉で喋って良い。」

 

「……………なにを聞きたいんですか?」

 

「Well ............ that you want to hear you on the best I can of this friendly match .

Give me to say your impressions of carrying out in this friendly match .」

 

「貴方に一番聞きたいことはこの親善試合のことね。この親善試合に出るにあたっての感想を言ってほしい。」

 

「そうですね、私…………いや俺は、弱いです。ですので強い相手と戦って死なないかどうか不安です。それ以前に人の目の前に居るだけで、緊張してしまいます。ですが、保護されている身、そこで引くわけにも行きません。」

 

そう言い、通訳が話す。そしたら少し含んだ笑いを込めながらこう言った。

 

「You're very honest .」

 

「あなたはとても正直ですね。」

 

と、それが意味するところは実の所分からないようにしないといけない。

 

「Thank you for talking .

Profession , I have no opportunity to speak with such students .」

 

「話してくれてありがとう。

職業柄、学生などと話す機会が無くてね。」

 

すると、通訳が腕時計を見やり、首相に耳打ちする。そして、通訳がこういった。

 

「織斑千冬さん。本日はご訪問ありがとうございました。誠に申し訳ありませんが仕事が押してしまい、今日はこれまでとさせていただきます。ご予定通り、当国が用意したホテルに宿泊なさってください、質は保証いたします。」

 

…………秘書のような男とか思っていたが、本当に秘書だったとは・・・通訳と秘書の二足わらじとか最強じゃね?

 

「それでは失礼します。」

 

おっと、俺は扉を開けて退路を確保する。俺は扉を開けたまま、担任殿が退室するのを待ち。退室した時を見計らって自身も退室した。

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

「はぁ、緊張した。」

 

俺は溜息をつきながら、そういった。ただ、人前に出てやるだけだったらあそこまで緊張しないだろう、それ以前に普通を演じなければいけない。無害で無知で正直過ぎるそんな少年を。

 

「お前はあまり喋って居なかっただろう?」

 

ま、そうなんですけどね。立ち位置、振る舞いからして、本当の性格見たいな物はにじみ出てくるんだよ。

 

「ホテルか…………。」

 

「どこから飛躍してきた!?」

 

「いや…………高級なところだったらやだなぁと。それに俺枕変わると眠れない・・・。」

 

といいかけて止めた。担任殿が握り拳を作っていた。

 

 

「快眠できますが?何か?」

 

「よろしい。」

 

 

暴力に負けたりなんかしない!暴力には勝てなかったよ・・・。



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White sport

この話の主人公、相澤康一は、なぜか美人な先生と一つ屋根の下、一日を共にしていますが。
実は、筆者は先生と一日だけ一つ屋根の下に居たことがあります。

…………おっさん、だったよ。


イン ザ ホテル!!

 

「…………ですね。」

 

ああ、今俺はオーストラリアのお偉いさんに会ってきて、面談が終了し。そのお偉いさんが用意したであろうホテルに到着したところだ。

 

「なんだ?言いたいことがあるのか?」

 

と、俺の旅(強制)の同行人担任殿こと織斑千冬が俺の独り言に対してそう聞いてきた。

いや、この旅の始めから最後まで言いたいことは尽きないでしょうが、その度に文句を言い巻くって居たら口周りの筋肉が崩壊するので自粛させていただくが、これだけは言いたい。

 

「ホテル高級すぎて蕁麻疹出そう…………。」

 

俺はこのホテル内の何かに触った途端蕁麻疹が出るんだ。俺はこのホテル内の何かに触った途端蕁麻疹が出るんだ。とりあえず、二回ほど暗示をかけておこう。

 

「…………はぁ。先が思いやられる。」

 

溜息を付きながらそう言った。それはこっちのセリフです、拉致、詐欺、借金の三重苦なので。俺はその言葉を黙殺して、担任殿の背中に付いて行く。チェックインの処理を受ける筈だが、それを素通りして、カードキーを貰っていきついでにと、手を変な機械にかざした。

 

「なんですか?それ?」

 

「指紋アンド静脈センサだ。…………これなら指を切り落とされない限り入れないだろう?」

 

「わぁお、厳重ね。俺が殺された時は気をつけてくださいね。」

 

「フン、私が居る限りそんなことさせるか。」

 

おふッ。あらまぁ。俺は織斑千冬に続いて、機械に手をかざしカルガモの如く後ろを付いて行く。ロビー、エレベーター、廊下を経由して、一つのドアの前に立つ。

ポケットから取り出した、カードキーと指を照合させて開き中に入る。

 

「お邪魔します。あー疲れた。」

 

俺は高級そうなベット(目に付くもの全てが高そう)にダイブするように倒れこんだ。

 

「蕁麻疹は!?」

 

「…………忘れてた。まあ、良いや。」

 

そのベットは高級そうと形容するだけあって、物凄くふかふかだ。ああ、ふかふかだ。今すぐにでも眠れそうだ。だが、俺の本来の目的は…………日本政府の思惑に便乗して、遊ぶことだ。

 

「それじゃ、冬のスポーツでも楽しみますかね?」

 

「…………確か、このホテルの裏手にスキー場があったはずだ。」

 

それなりに、というか、かなりのめんどくさがりの俺だがこと、遊ぶと言うことにおいては手を抜かないようにしている。そうしないと、動く時になかなか動けなくなってしまう。

 

「フロントでスキー道具一式貸し出しているらしい、ま、気をつけろよ。」

 

「了解です。」

 

俺は、今から白銀の世界に飛び込んでいく。

 

 ◆ ◆ ◆

 

日本語が通じてよかった………。俺は英語が出来ない。からな。

言語の問題を、相手側のスキルで埋めてくれた事に感謝しながら、貸し出してくれたスキーウェアに身を包む。結構この吹雪の中でも暖かい。さて、昨今はスノーボードが主流なのだろうが、俺はスキー板を借りた。理由は何で人間は自然体では前しか見えないようになっているのに、真横に滑る板を履かなければいけない?と言う理由だ。後ろとか見えないじゃん。

 

「さて、行くか。」

 

俺はスキー板を履き一歩を踏み出し

 

「アベッ!?」

 

こけた。…………まあ、しょうがない。めげずにもう一回。七転八倒とも言うし。ってかそこのお姉さん?笑わないでもらえます?逆の立場だったら俺も笑うけどさ。

 

「フベッ!?」

 

「ウゴッ!?」

 

「ヒデブッ!?」

 

「タワラバッ!?」

 

「アベシッ!?」

 

「チバ~!?」

 

…………ここで拗ねたら面白そうだなぁ。と、俺は灰色の空と少し、スキーウェアの熱で溶けた雪の水が染みてきた服の冷たさの中で。そう思った。さて、雪まみれの体を再度起こし考える。

 

ここで帰っても良いが、それだけではただ雪と戯れてきましたで終わりだ。そして俺の心象的に、スキー場に来たからには滑るようにしたい。のだが、これと言った方法が無い。教えてもらうにも金が必要だ、そこまで甘えられないし甘える必要もない。

 

「どうするかな?」

 

いや、この状況では一つしか無い訳だが。ふと、

 

――――あのお姉さん、結構上手かったな、さっきっから何度も見ているし――――

 

 

反芻 彼情報スキー板装着状態 彼我との比は1:1.7ほどの体長、体格差 誤差の範囲と判定 足幅 肩幅水準 スケートのように滑っている…………。

 

「おお、行けた。」

 

とりあえず、まねしておこうと言う訳だ。専売特許・・・というわけじゃないが、それなりにさっきの転びまくりのオンパレードよりかはマシになっただけだ。問題は、あのお姉さんについていかなければならないと言うことだ。正直、ここで回数を少なくして完璧にトレースしないと、この女尊男卑の時代である限り悲惨な事になる。それは…………。

 

『この人ストーカーです!!』

 

ってなる。

 

まあ、暗めのゴーグル、ぶかぶかのウェア、吹雪いているからつけたネックウォーマー、目深な帽子。これだけの要因で俺を男と判定するはずが無い。し、そこまで怪しい人間に深入りすることはないだろう。

 

「よし!行くか!」

 

尾行は間を開けて回りに適合するように移動する、そこで絶対に自らの存在を認識させてはならないし、させてしまったのならば、服装、もっと言えば人を変えるのが一番だろう。だが、防寒対策をしていると、脱ぎづらいしめんどくさい。ここは絶対に気取らせないように移動するのが一番だ。

 

っと、そんなことを考えていたらリフトの降り場に着いた。さて、ストックとスキー板の先を上げて…………よいっと。初めてやったけどこれ怖い。

一応、スキーは…………先にも言ったとおりスノーボードが主流である今では凄い場違いだが、先にも言った通りの理由に準じてスキー板を履いている。スキーはリフトと呼ばれる山を登るかごのようなものに乗り、山肌から滑るオリンピックの種目となっているウィンタースポーツの代表格だ。

俺的には雪合戦が好きだが、相手が居ないので一人でやる事になるが、滑稽なダンスを踊っているようにしか見えないので却下しよう。

 

やり方は簡単ただ、良く滑る板を履きそれを斜面で滑る。一見簡単そうに見えるが、言うは易く行うは難しと言う格言があるとおり、難しいのがある。すべるのは簡単、ただ、オリンピックでやっているようなターンをするのが初心者にはハードゲームというだけだ。…………あのお姉さんを見て思った。

 

ただ、滑るだけだったら何も難しい事はない。難しいのは曲げる…………ターンするのが難しい。右に行きたかったら、右に体重を移動するだけでいいが、その時に自分のバランスも崩れてはならない。相反する行動を一緒にこなさなければならない。

ターンしなければいいじゃんと言う話だが、ターンしながらやらないとスピードがとんでもない事になる。しかも、ターンはスキーのエッジに上手くやれば減速させずに移動する事だって可能だ。

 

「…………ってこれ、何時もやっていることと同じじゃないか。」

 

まあ、仕方ない。けど一人で黙々とやっているのも楽しいし、こんな速度人間の体じゃ味わえない。

 

「ISで結構速度出しているけど、これはこれで趣があるな。」

 

とまあ、よく真似できていたなと感じながら。お姉さんに付いて行く。

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、ここで一つ思い出して貰いたい。

俺が、一回だけこの手法を取った時(楯刃の足音1)のことを。

 

『そう、俺がやっているのはただの模倣』

 

『オルコット嬢と自分の姿を重ね、吸収し昇華させる』

 

『実はこれ、体に負担が掛かる。』

 

 

うん…………三回滑っただけで物凄い辛い。つらい、がちゅらいになるぐらいに辛い。もう、体の節々が痛い、けど面白いから止められない、止まらない。さっきのお姉さんも抜かしそうになったし。つか、どこ行ったっけ?まあいいや、とりあえず心の中で礼でもしとこか。

 

「めっちゃ、楽しいじゃん。」

 

俺は、結構に純粋に楽しんでいた。

っと、そろそろ、リフトの降り場が見えてきた。そのリフトは二人乗りで上まで行くと最上級コースに一直線の道だ、それだけは、やって3時間ほど(内1時間は転んでいた)の人間にはハードルが高過ぎる。だが、その人が初心者だった場合に途中で下りる救済措置がある。

 

「それじゃそろそろ…………。」

 

と、降りようとした所。

 

ガキッ!!

 

ん?

 

違和感、動かない体。いや、それほどの事でもない、ちゃんと手は動くし、捩ればなんてことはないが。ふと、おなかの方に目をやる。すると手すりにストックが挟まっている。そのストックの主を見ると…………。

 

 

 

あ、お姉さん……………奇遇じゃないですか?こんな所で出会うなんて。それはそうとそのストックを外していただきたいのですが。あっダメですか。そうですよね~脳内で話しかれるわけ無いですよね~はい、存じておりますぅ~。

 

 

すると、ここ(オーストラリア)の公用語ではない言葉が聞こえてきた。

 

「そろそろ、坊や。イっちゃってみない?」

 

「お断りしたいんですがねぇ」

 

イタリア語(・・・・・)は嗜み程度に覚えている。もしかしてこれって…………。

 

「もしかして、始めましてですか?イタリアの国家代表さんとやらとは?」

 

「!…………私はセラフィーナ・カンタレッラよ。」

 

「イタリアの国家代表にして、今現在進行形で俺の命を脅かそうとしている人ですよね?」

 

うん、リフト降り場過ぎた。はぁどうしようかなぁ。

 

「そうだね。ま、ここで自動小銃を持ち出さない優しさは評価してもいいと思うけど?」

 

それは、断じて優しさじゃねえ。喉元まででかかった言葉を押し殺して、その言葉を返した。

 

「そんなもので殺せはしませんよ。」

 

俺はネックウォーマーを上にずらして、俺の足首につけていたものを見せる。伸縮自在とは知らなかったぞ……………つまり、俺の首にペットのようなものではない、罪人につけるような無骨な首輪が掛かっていた。もう一つ自分に付いていた輪はスキーウェアの中を通って右手首についている。

 

「…………珍しい待機状態ね。」

 

「これぐらい普通ですよ、男性なんですから。一人目(・・・)は手甲、ガントレットでしたし。」

 

「そう。」

 

興味が無いように、視線を俺から外してそう言った。何か引っかかるな…………少し探りを入れてみるか。

 

「おや?あなたは一人目と戦いたいといってましたよね?」

 

「違う。男性と戦いたいの。」

 

そうか、何かに似ていると思ったら。箒さんと凰に似ているんだ。男勝りで強い。だけど、女だからと。

 

「まあ、ありふれた話よ。生まれてから男勝りでね、それでどんどんと絡んで行ったらいつの日か、女というだけで跳ね除けられるようになった。その復讐みたいなものさ。」

 

こうなる訳だ。面白いね。

 

「そうですか。」

 

「そうなのよ、それより坊や。貴方チフユ・オリムラの弟のことを一人目と言ったわよね?それ、どういう意味?」

 

「なにが目的です?」

 

「いやいや、大して深い意味を持っているわけじゃないの。」

 

「保身の為です。そういうようにと指示されましたので。」

 

「ふうん?坊やは素直に人の話を受け取るのは苦手な手合いだと思うけど?」

 

否定はしない。がそこまででもないような・・・違いますよね?。

 

「そう見えますか?ならそれは大きな間違いです。大抵の日本人は、大きな権力には上手く取り合ってきたんですので。長いものには巻かれろと言いますし。」

 

とりあえず、それっぽいことで誤魔化しておいた。しかし担任殿の知り合いというだけであって、オルコット嬢や代表候補生相手よりは組しにくいな。

 

「ふう、貴方。何歳?…………うちの、狸ジジイどもと同じ匂いがする。」

 

「期間限定の15歳ですよ。っとなんかこれ使うの久しぶりな気がする。」

 

「フフフッ。何時も言われていたのね。」

 

「ええ実は。加齢臭でも出ているのですかね?」

 

「15歳でも出る物なのかしらね?」

 

なぜだか、凄い自然な会話。それで居て、俺は警戒せざるを得ない。危険なにおいがする、落ち着いた物腰、口調。それは、荒ぶる大海のような荒々しを芯にしている不安定なものだ。担任殿に狂戦士とまで形容させた人間だ、警戒しても仕切れないレベルにあることは間違い無いのだろう。そう、俺を油断していたとは言え出し抜いていたのだ。この山の頂上にまで来てな。

 

 

 

 

 

「あの…………お姉さん。」

 

「なに?坊や?」

 

「めっちゃ坂が急なんですが?」

 

むしろ崖だ。

 

「そりゃ、元々パラグライダーのテイクオフとかに使うところだし?」

 

「…………疑問文で言わんと居てくださいよ。迂回コースは?」

 

「ない!」

 

ああ、そんなにキラキラした目で見てるんじゃないよ……………。

 

「サアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!イッっちまおうぜェ!!」

 

ああ、バーサーカーだな。

 

「イヤッホォォォォォォォォォォォォォォ!!!」

 

「ギャァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!」

 

自動演算 反芻 体重移動のトレース開始 

 

脳が焼き切れるんじゃないかと思うぐらいにやって来た、そう俺は。

 

 

 

 

生きている。

 

 

 

 

 

 




この話を書いているうちに前書きのことを思い出してキーボードクラッ○ャーになりそうになりました。


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前哨戦

「し、死ぬかと思った……………。」

 

前回俺は、崖のようなところで滑ってきたのだ。死ぬアレは生きているのが不思議なぐらいだ。アドレナリンが大量分泌しているのが分かる。

 

「帰ってきてから早々何言っているんだ?」

 

「フライハイして来た。」

 

むしろ、脳内麻薬におぼれたって感じだな。マジ死ぬ全力で逃げてきた。

 

「エンドレスにエイトコース滑るところだった……………。」

 

「もしかして、彼女に会ったのか?」

 

ここで言う彼女とは俺の今回の対戦相手であり、イタリア国家代表であるセラフィーナ・カンタレッラ。なんか、俺の感覚として物凄い、中で始まって病で終わるアレに聞こえるのは、俺が中で始まって病で終わるアレだからだろう。

 

「ああ。そうだろうな。俺がISを使えると言うのを知っても、さほど驚いた様子はなかったし。」

 

「そうか、お前も付きあわされたか…………。」

 

「担任殿もアレやられたんですか?」

 

「ものの見事にな。」

 

ご愁傷様です。アレは辛かった。

 

「…………そういえば、この後の日程ってどうなっているん?」

 

そっちの方が気になる。めんどくさいけど、今の俺にはここから帰国できるわけじゃない。以前だったら帰宅したいって言うのが日常だったけど今じゃ帰国したいだぜ?何の冗談だよ…………。

 

「今日を越えて11時ほどに試合以上だ。」

 

「了解。」

 

よかった長々と飯の時間にまで説明が及ばなくて。ああ、つか、はらが減った。俺は、どこかにホテルの売店の粗品みたいなものがないかと漁った。

 

「お、変なクッキーがある。食べよ何々…………えっと、シャウトックービスケット(SYOUTOKUbiscuit)?なんか変な名前だな。」

 

どこかで見たことがあるような気がするんだが?まあ、いっか毒じゃないだろうし変なにおいするけどたぶんこれシャウトックーの匂いだろ。俺はその封を開けて口に放り込んだ。

 

「ムッシャムッシャ。ブフォッ!?なにこれ!?」

 

俺は口からビスケットを吹き出した。

 

「どうした!?」

 

「これ超マズイ!!カニの食べられないところみたいな味がする 飲み込めない程まずい 先生、お茶入れて台所あると思うから」

 

「ぶっ殺すぞ!!うわっ!魚臭い!?」

 

 

 

……………因みにフィッシュ竹中さんは出てこなかった。散々だな。

 

 

 

「ふう、やっと口の中の物が取れた…………。」

 

「アホ丸出しだな。」

 

「そうですけど。」

 

「はあ、後15分ほどで飯にありつけたのにな。」

 

「はぁ、世界が余計なことをしなければ、こんなことにはならなかったのにな。」

 

「それ言ったらなんでも言えるだろう?」

 

「世界に復讐するのだぁ!!」

 

「なんだ?そのノリは?まあいい、飯だ行くぞ。」

 

やわらかいまじりっけのない純粋な笑顔だった。

 

「そうですか、ま、口の中は限界まで不味くなってますんでね。食べ物であれば何でもおいしいと感じられるようになっていますよきっと。」

 

さて、つかの間の休息を味わったことだし。…………戦いか。



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変態的技術で圧倒的破壊力と暴虐的破壊力

さて、昨日のめんどくさいことは全て終わり。後は戦闘のみとなった今日。

しみじみと海外の食生活差がストレスとなって、俺の気力をガシガシと奪って行った最悪のコンディションを無理やり立て・・・・・・・・・直さなくてもいいだろう。

 

実際に、これは負けることが日本政府の目的なんだから…………。理由は除外。

 

今俺は、オーストラリア側のアリーナの待機所に居る。後10数分の時間で、試合開始だ。特に思うところはない。いつもと同じ誰かの思惑に不純物を混ぜるだけ。自前の改造ISスーツを着込んで待機してる。まあ、改造と言ってもあまり目立たないように丈を足首と手首までに長くしているだけなんだけど。

 

不意に待機所のドアが開く。一瞬命を取りに来た刺客か?とでも思ったが刹那の内にそれを否定する。(理由は簡単。俺は目立たないからだ)入ってきた人は金髪で結構バインバインなボディーをお持ちのお姉さん。

 

「セラフィーナさん?何しに来たんですか?」

 

俺の対戦相手その人だった。恐らく試合前の述べ口上みたいなものだろう。といいますか、俺じゃなかったら分からないレベルでッせ?

 

「ちょっとお話しにね。」

 

「なにを聞きたいんですか?」

 

「…………貴方、君のISって作品(・・)ね?」

 

説明しよう作品とは。作品の頭に世界研究者クラブが付く。そう、いつの日か言った、ISを製造するなと命令される前に何個か作っている、その作品。

 

「ええ、そうですが?何か?」

 

「私もよ。」

 

「!!」

 

とりあえず、驚いた振りをしている。

 

「言いたいことはそれだけよ。じゃあね。」

 

 

・・・この情報から、この勝負は……………。

 

 

「しゃあねえ。妹の為だ。恨むなよ。」

 

 

俺は笑った。

 ◆ ◆ ◆

 

「…………一応説明しておく。制限時間は20分シールドエネルギーを先に削りきったら勝ちだ。」

 

「フフッ、そのぐらいは分かっていますよ。」

 

「お前・・・いいか、負けてくるんじゃない。」

 

少年は後ろ手で手を振って試合に臨んだ。

 

 

 

 

 

「…………」

「…………」

 

試合に出る前には少なくとも会話を交わしていた少年、相澤康一。女、セラフィーナ・カンタレッラ。その二人の間には、試合前の緊張感が漂っている。そして、両者ともISを起動させる。

 

「…………カゲアカシ!!」

「…………demise persona(終焉の者)!!」

 

康一は、白とも黒とも取れない灰色で背に大きな鋼鉄の袋を背負っている。対してカンタレッラは、徹底的な黒。フルスキン、つまりは全身に装甲が施されている。それはどこか鋭角的なフォルムをしており、体自体に刃と、背に巨大過ぎるスラスターが付いている。

その機体の共通項は肩に一つの葉っぱが描かれていること。それを両者が確認した後に。

 

「終焉の者か。…………俺の終焉になにを見せてくれるのか。楽しみだね。」

「カゲアカシ。…………いや、(カゲ)(アカシ)か。面白い。君の影を灯て白日の下にさらしてやる。」

 

笑う。そして、試合開始の合図が鳴った。その一瞬で黒の機体の姿がブレる。それは背のスラスターで行った、ただの瞬時加速(イグニッションブースト)

 

「うおっ!?」

「ひゃっはー!!」

 

その背にあるスラスターの出力にものを言わせたスピードで相手の出鼻を挫く強制的な先制攻撃。それを灰色の機体が防ぎきる。

 

「おッ!?今の攻撃を避けちゃう!?良いねぇ!私を滾らせておくれよ!!!」

 

その叫びと共に黒が、少年の視界を埋め尽くす。それが意味するところは・・・。

 

(くそッ、ただの機体じゃないとは思っていたが!瞬時加速並みの速さで攻撃できるとは…………なぜ軌道を曲げられる!?)

 

そう、ISのハイパーセンサーの三百六十度全方位も黒で埋められる。その正体は少年の周りを超高速で移動して、時折殴る蹴るをしているだけ、だがそのスピードが異常なのだ。

 

「イクよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉッ!!!」

「グガッ!!?」

 

乱打、いや少年の目には何も映らないただの黒。異常なスピードの異常な攻撃力。スピードが攻撃力を呼び込み、攻撃力が相手の行動を阻害する。だが、少年も負けてはない。

 

「舐めんな!!」

「ニャッ!?」

 

「動きは見飽きた!お前は、その馬鹿でかいスラスターの推進力を特殊なPICの発生で体重移動によってイグニッションブーストでのカーブを可能にしているだけだ!まるでスキーのようにしてな!ネタさえ分かれば対処は容易い!」

 

「大正解!けど、君に反応できるかな!?」

 

 ◆ ◆ ◆

 

「織斑さん。あの男性操縦者強すぎやしませんかね?」

 

「防戦一方でしょう?」

 

「いや、あのスピードで防戦ができると言うこと自体が凄いと思うのですが・・・。」

 

「うちの生徒アレぐらい出来る奴はゴロゴロといますよ?」

 

「どんな魔窟だよ!!アレ単独で大気圏突入して帰ってこれるガン○ムレベルの化け物だぞ!?」

 

「いや、うちの生徒ストフリでっせ?私は新ゲッターかグレンですが。」

 

「規模がちげえ!?」

 

(…………それでも、ネタさえ分かれば、あいつにも対処は可能だ。…………それが出来てもあいつは。)

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

「ふぅ…………。キツイ」

 

活路を見出した少年だがそれでも、少年と女のシールドエネルギーの差は、もう無視できないレベルにまでなっている。弱った獲物をじっくりと死に追いやる鷹の様にしかと力を込めてる時間を作るかのように、両者とも静止している。

 

「もう、そろそろ坊やも果てちゃう?私は欲求不満なんだけどなぁ~」

 

笑いながら、少年に話しかける。それを少年は無視した。それどころではなかったのだ、いきなりの加速、加速に次ぐ加速というより、まだまだ少年から見てISの本領を発揮していないように見えて警戒を解くことは出来ないのだ。

 

「だ・か・ら・ぁ~。この一撃に、全てを込める。」

 

「……………。」

 

なぜだか上目遣いになって少年を見つめている。女は、笑った。

 

「私をイカせてくれよ、坊ちゃァァァァァァァァァァァァァン!!!」

 

黒い機体の背に輝きが、満ち溢れていく。目を塞ぐほどの光。

少年は、笑いながら拳銃をISから呼び出した。それは、一葉の札。

 

 

demise(終焉)!!」

湯花(ユバナ)!!」

 

 

黒い機体はさらに輝きを増す。まるで、終焉を呼び込むかのように。

少年は右腕のISを外してその生身の手で、湯花を握りこんだ。そして、叫ぶ。

 

「ペトゥル全変換!ラグナロクの一撃!」

 

少年の周りに花びらのような、金属の塊が浮いていてそれが一気に収束するかのように少年の手元の拳銃に突き刺さる。左手を右肩に押さえて身構えた。

黒い機体のからだの各所に付いていた刃が、右腕を残し綺麗に消え去る。

そして、両者の気合一喝。

 

「「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッ!!!」」

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

「やべえ!。あの女、あれを使う気か!?みんな!耳を塞げ!!」

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

次の瞬間少年は引き金を引き、黒の機体は異常な加速を見せる。音速を超える時に起こる現象、いわゆるソニックムーブと呼ばれる現象。凶悪なまでの黒の機体は一直線に少年へ突き進む。そして少年の命を刈り取ろうとしているその瞬間。呟きが静かに流れる

 

「…………ごめんね」

 

次の瞬間銃口から吐き出されたエネルギーが膨張する。全てを飲み込むかのように大きく、いつの間にか…………。

 

『勝者、相澤康一。』

 

いつの間にか試合は終わっていて、少年は何時かのどこぞの騎士団長が着ていそうなスーツを着ている。

 

「ああ、終わった・・・疲れたなぁ。」

 

手袋をつけた手で首の後ろ辺りを掻く。自身が倒した地に伏している相手を見て、こう言った。

 

「すまないね、死んでは居ないだろうから安心して。真っ先に死ぬのは俺。・・・だから安心してちょ。」

 

 

少年は何かに怯えるように足早にその場を去っていった。

 

 

 

 



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それらをさらに上回る可逆的ないともたやすく行われるえげつない行為

ごめんなさい。途中で入れるのを忘れてました・・・


ダダダダダダダダダッ!

ドタドタドタドタッ!

 

そう、俺は逃げている!なぜかって?あの単体で魔窟と呼ばれる織斑千冬こと担任殿・・・って逆だった!!?が、先の試合についてお怒りなのだ!!

 

「待て!相澤!」

 

「とりあえず、その後ろに漂っている殺気を隠せ!話はそれからじゃい!」

 

なに?何やったってんだよ!?俺頑張っただけだよ~。説得力皆無だが。……………あれ?

 

「どうも。」

 

…………あの、俺がオーストラリアのお偉いさんに出会った時に右隣に居た秘書のお兄さんか?そのお兄さんが、目の前に俺の進路を塞ぐように立って流暢な日本語で俺たちに喋りかけているいる。俺は、とりあえず紳士的に対応した。今、どこぞの騎士団長が着ているようなスーツを着ているわけだし

 

「おう、わりゃぁ。どこの組のもんじゃ?」

 

ガン!!

 

「何か御用でしょうか?」

 

恐らく頬に切れ込みが入ったお兄さんの魂でも紛れ込んだのだろう、その態度を俺は改め、頭にたんこぶを作りながら懇切丁寧に対応した。ええ、殴られていない殴られていないですもの。

 

「…………あ、はい。首相はお時間が取れないので変わりに私が激励の言葉をと思いまして。」

 

「…………そうですか。」

 

「ええ、今後も切磋琢磨して・・・」

 

その後は俺への美辞麗句が並べられてあり、正直俺の耳には毒なのでシャットアウトしておいた。ここで引っかかることがあるが…………。ここで言えるのは、このお兄さんが結構な食わせ物だと言うことだ。

 

「ありがとうございました。」

 

「いえ、こちらこそ。」

 

そして、俺の隣をすり抜け、帰る途中に。

 

「貴方を受け入れる用意は出来ています、どうか御一考を。」

 

そう、ギリギリ聞こえるか聞こえないかのレベルで耳元に囁かれた。

 

「相澤、捕まえた。」

 

……………そして、俺は捕まえられた。ああ、ここで死んじゃうんだなぁ。と思いながら俺は、その後引きずられるようにして、ある一室に行かされた。

 

「相澤、アレはなんだ?」

 

「はて?アレとは一体?」

 

「とぼけるな!あの戦術兵器まがいの威力を持った武器のことだ!!」

 

「…………ああ、湯花のことですね。カタログスペックは提出しているはずですが?」

 

「あんなもの試合に出せるわけないだろう!?ゲームバランス崩壊するわ!!」

 

ですよね、たぶんここはアレだろう、尋問部屋みたいなものだろうな、なぜだか監視カメラが多く付いているし。

 

「ええ?ですが其方が提示した最低限のスペックですし、大体俺が持っていること自体が許可を出したって証拠じゃないですか。」

 

「ぐっ・・・。」

 

「まあ、そんなのはどうでもいいです。これ。」

 

俺は、足首についたカゲアカシの待機状態を強引に外し、担任殿に渡した。

 

「今回の戦闘データです。よかったですね、学園側の目的は果たしましたよ。」

 

IS学園にも研究機関の名目はあるし、それに、世界研究者クラブのデータは世界に発信しなければいけないルールになっている。そりゃ、暴走させたら危なくなるようなものに隠匿性を持たせたらどんな事になるか分からんし、今のIS技術は大体が世界研究者クラブからの流用というとんでもない出自を持つし、それを俺自身が投げて渡すと言うこと事態に意味がある。

 

「っち。」

 

担任殿は、俺に何か言いたげな顔でこの部屋を出て行った。実に都合が良い。

 

「……………俺も、ホテルに戻るか。」

 

そう、俺にもう一つ用事がある。これだけは誰の目にも見られるわけには行かないからな。

 

 ◆ ◆ ◆

 

「ああ、辛かった…………。」

 

ホテルに戻った。そう用事の消化だ。その用事とはいたって簡単、俺は服と右手の手袋を脱いだ。

 

「うっひょー。|グロいねぇ。」

 

そこには、右手が火傷…………いや、所々炭化してもろくなったところに、あのバカみたいな銃の反動を加え続けられたからな、新鮮なお肉と骨が見え隠れしている。まあ、ISの絶対防御も完璧ではないからなぁ、一応死にはしない状況を作ってはくれたんだろうけど、装甲がなければこんな程度の防御力しかないのだろう。あ。写真撮っておこう。

 

「おい、エネ居るんだろう?」

 

「ご明察だ。」

 

エネが珍しくこっち(・・・)に来ている。いや、来ているというのは、電脳空間ではない普通の俺の居るところに体を持って来ている。

 

「それなら話が早い、この炭化しかけている腕を直してくれ。」

 

「分かった。」

 

ビシィィィィィィィィィィッ!!!

 

「イテェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェッ!!??」

 

え?なに?なんなの?IS式の直すってぶっ叩くことなの?つかマジ痛い…………。

 

「…………何やってくれやがるんですかねぇ。」

 

そう言ったら、エネがそっぽ向いて、不機嫌にこう言った。

 

「それはこっちのセリフだ。バカが、死ぬか?」

 

死にたくないです・・・。

 

「死にたくないし、この後も完全に支障が出るからそう言ってるんだろが。」

 

「もっと、あんなものを使わなくても上手くやる方法があっただろう?」

 

「俺にとっての最善策がアレしか浮ばなかったんだよ。」

 

とりあえず、説明しておこう。全くそれぐらい察しろ…。まいっか。

俺の立場、この場合は男性IS操縦者。それの利用価値がないというのをアピールする為の使者といっても過言ではないだろう。だがしかし、それでは俺の立場が危うくなるし、前に言った一葉が言った問題を解決出来る訳がない。

そこで、俺は強引な手に出た。そう、カゲアカシの力を使って、本題を俺ではなくカゲアカシの性能にすり替えたのだ。アレだけの破壊力、決定打を打てない状況で一つの引き金で戦況を覆せるほどの。そこで、俺がカゲアカシを目の前で投げて渡すと、日本国が完全に所有しているアピールにもなった訳だ。

まあ、つまりは、俺が男性IS操縦者の利用価値失墜の使者から、世界研究者クラブ販促の使者に成り代わっただけの話だ。

 

「…………正直、君の想像・・・いや、妄想力は感嘆に値するね。」

 

「わざわざ、悪く言い直すな。毒吐くのはそれくらいにして早くやっちゃってくれ」

 

「了解した…………見ていて痛々しい。」

 

…………血を見たことはあるだろうが、搭乗者の血を生々しく体感したことは無いのか?俺は、あのラグナロクの一撃(「もし、やるなら、そう叫んでください!是非に!」と一葉が言っていたからな)を放った時に絶対防御以外の防御機構は全部外していたからなぁ・・・。

エネは、俺の感覚が無くなりかけている腕を触った。あごに手を当てて、考えるようなそぶりを見せた、たぶん俺の腕の状態を確認しているのだろう。

 

「ふむ、よかった見た目よりひどくは無い、触神経もちゃんと通ってるし、生焼けの肉もある。主な症状は火傷に複雑骨折だな。これなら叩いても死にはしなかった、どうする?もう一度叩いておくか?」

 

「切実に止めてくだsアッーーーーーーー!!」

 

コイツほんとに叩きやがった…………。なぜにそこまで怒っているのか?

 

「…………まあいい、直すか。」

 

と言ってエネが消える、いや体の構成をどこか別の場所に使ったのだ。と認識したころに、現れる。

 

「どうしたんだ?」

 

「殺菌、有機物の材料は大気中に一杯あるからな。」

 

そういいながらエネは短刀を取り出した。俺が電脳空間で使っていたものと同じだ、俺の予想通りの治し方だな。エネがそれを火傷しているところの半分辺りの所に刃を入れ、入れた常態のまま手の先にまで滑らした(・・・・・・・・・・・・・・・・・・)

俺の腕の半分は、薪を縦に割ったように半月型をしていた。そこに何の躊躇もなく短刀を入れる、短刀はステーキナイフの如くすんなりと俺の腕を切り落とした。

 

「なんか、どんどんとグロくなっていくなぁ。」

 

「ま、もともとがグロいからな。顔が。」

 

「…………特種メイクでグロイ感じにしたこともあったな。」

 

実にどうでもいい話をしながら、俺の腕はどんどんと切り取られていく。不思議と痛覚はない、あるのは奥歯に挟まった何かの繊維があるときの口の中のような異物感。俺アレ嫌いなんだよね、痛いのよりはましだけど。

 

「さて、切除は済んだし…………頂きます。」

 

そういった直後、俺の切り落とされた腕が消えた。

 

「やはりな、そういうことか。」

 

「ああ、伏線は張られていたんだよ。」

 

「なんだ?伏線って?」

 

俺の腕は治っていた。

 

「一丁上がり!って言ったところかな?」

 

見事なまでに俺の腕だ、傷も一つすらない。振っても殴るそぶりをしても大丈夫だ。ただ、難点を示すのなら左右の腕で色が違うということか。まあ、そこらへんは問題ないし。俺の仮説どおりの治し方であれば…………

 

「今回は材料も一杯あったし、原型は留めていたから楽だったよ。」

 

「前回があったのか?」

 

「いや?今回が初めてだが…………私以外のISは結構体験しているかな?これは、ファーストシフトなどの最適化の応用だからな。」

 

ネタバレありがとう。

ISには、ファーストシフト、またはフッティングと呼ばれるものがある。これは専用機のみに現れるものであり、ISが搭乗者の戦闘経験などに合わせて、その形状を変化させることだ。

ここで疑問が生まれる。その材料はどこから生まれるのかと言う話だ。

世の中に質量保存の法則がある限り、それは無から有を生み出すことはまず無理だ。そしたら錬金術のように、物質のその物の性質を捻じ曲げなければいけない。そこで、ISコアだ。

考えてみて欲しい、一夏がファーストシフトした時のことを変身と思うほどに機体の形状が

ISコアは物質をエネルギーに変え、そしてエネルギーを物質に変えるることが出来る、液体でも気体でも要するになんでもいい(・・・・・・)のだ。……………原理はよく分からないが、一つ似ている例がある。

 

「やっぱり・・・ニンゲン臭いな。」

 

「そう思うかい?生まれた時からそうなんでね。」

 

エネは、寂しそうな顔をしていた。俺は人の心を騙すことは出来ても癒すことは出来ないし、何よりめんどくさい。

 

「まあ、色々あるんだろう・・・俺に言ったら力を貸してやる。」

 

「頼もしい限りだ、絶対に使うことはないがな。」

 

「エネちゃんのいけずぅ。」

 

エネがおもむろに手を俺の顔の前にやり、その指を鳴らした。

 

「いって!?…………何やった。」

 

その瞬間激痛が走り、少し口が効けなくなった。

 

「いや?少しむかついたから、さっき痛覚神経の神経に細工してちょろっと刺激しただけだが?」

 

なにそれマジでいてえ!?

 

「おまっふざけんな「あ、すまん。」何言って」

 

ガチャリ。

 

うわぁい、担任殿がキチャッタァ…………え?なにこれ独り言とか聞かれるの恥ずかしい!誰も居ないと思って熱唱していたら誰か来ちゃったレベルの恥ずかしさだよこれェ!!うわぁ・・・ちょっと誰か苦しまずに殺せる殺し屋さんとか居ませんかァァァァァァァァァッ!!無言だ・・・無言になるんだ。相手の状況、性質が分からない限りうかつに動くべきではない考えろッ!考えるんだ!

 

 

「お帰り~。」

 

 

どうしよう、考えたが、聞かれたと仮定した場合には今後のことを考えてエネの存在を明るみに出してはならない!どうする?俺!

 

次回に続く!!

 

 



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真の心と捻くれものは似合わない。

「…………。」

「…………。」

 

その空間は、無言に包まれている。その原因は十中八九、俺こと相澤康一なのだ、この部屋に居るもう一人、担任殿こと織斑千冬のせいではない。さて、とりあえず、この凝り固まった空気をどうにかする為に、事務連絡でもしようか。

 

「担任殿。いつ帰国するんだ?」

 

「明日の正午だ。」

 

了解とだけ伝えた。担任殿は何も言わずベットに腰掛けた。とりあえず、このまま放置だな。相手側から何か動きがあったところで対処と言う形を取ろう。…………はぁ、流石に驚いた。俺は小細工弄してやっと勝てるってレベルの人間だからなぁ

さて、スーツに着替えて治療したりしたから色々と散らかしちまったし片付けるか。

 

「…………。」

「…………。」

 

そう、アレだよね、気まずくなった時って用事を作りだす天才になっていると思うんだよ、そしていつもはやらない仕事すらやるあの原理。どうしてだろうか?

俺が片付けていると担任殿が立ち上がった。…………あ。

 

不味い。俺の爪が甘かった、炭化してはがれた欠片が床に落ちてやがった。ええ?あれだ、カンガルーのBBQしていたって言えば・・・無理ですな。え?どうする?何も見ていない俺は何も見ていない。まじまじとその炭化したナニカを見ている

 

「相澤ちょっとこっちへ来い。」

 

再びベットに腰掛け足を組んだ、担任殿。正直俺には貴女が教師ではなく女王を生業にしているとしか思えません・・・。

だがそんなことは口が裂けても言えはしない。金で目をふさがれたら恐怖のあまり喋ってしまうかもしれないがな。黙って近づいておこう。

 

「なんでsムグッ!?」

 

…………え?なにこれ?いやいやいやいやいやッ!!?何でこうなっているんですかねぇ!?おい!そこ代われ!いいなぁ、俺もお姉さんの胸に飛び込んでみたい、現在進行形でやっているじゃん!?あれ?何で?あ、俺ニンジャだった?アイエェェェェェッ!?ニンジャ?ニンジャナンデ!?無理ですよね!

 

「何やってるんだお前は…………。」

 

「それはこっちのセリフだ。やわらかくて気持ちいいけどどどどどどどどどどどどッ!?ギブ!ギブだって!。」

 

死ぬ、このままでは死ぬ。真面目に死ぬ。

 

「心配を掛けさせるな。」

 

「なに?一夏のオッパイでも恋しくなったんでちゅかね?」

 

ヘッドロックゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥッ!?いてえ!あの孫悟空の頭に付けられているあの輪っこレベルに痛い、のたうちまわりたい!!つかさっきからギブアップの意をタップして伝えているんだけど、早くどかしてくれませんかね?

 

「…………なんで、そこまで自分を蔑ろにするんだ。」

 

蔑ろにしてないよ?だからこうして脱出を図ろうとしているのですよ気が付いてぇ!!

なんか本当に○ッパイやら、痛いやら、苦しいやら、なんかちょっといい匂いするやらで、俺の心中は地獄絵図ですよ?ええい!まままままよ!違った!ままよ!人間は同情という性質がある、そこを突く!

 

「蔑ろにしていい人間だからですよ。」

 

ヤッベェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェッ!?さらに締め付けられてきた、三蔵さん呪文みたいなの止めてぇ!耐えろ、耐えるんだ俺!

 

「そんな訳ないだろう。」

 

「俺言いましたよね?いじめられたあの屈辱をうんたらかんたらと。それ、本当ですよ?」

 

よし、まずは強引に話をすべり込ますことに成功した!少し担任殿の中の三蔵さんも呪文を唱えなくなったぜ!

 

「とりあえず、こんなことしないで腹を割って話そう。」

 

その言葉に三蔵さんも了承したのか、俺を拘束する手を緩めた。あぶねえ。

 

「ああ、洗いざらい吐いてもらうぞ。」

 

さて、ここからはただの事実。まあ、あの時はそれなりに幸せだし。

 

「俺は、生まれた時に親と会ってないんですよ。」

「後から聞いた話なんですけど、父はよく分かりませんが、母は研究者でまあ家庭より研究みたいな所があって…………確か中三の夏あたりまで両親に会ったことがないんです。」

「親が居て、子は育ちます。それから離れた俺は小学校に入った時ずれていたんですよ。そんな中に群れをほうりこんでみてください。いじめの勃発です。」

「前に担任殿が、俺はトラウマ持ちだとか言ってましたけど。それはその名残です。」

「以上。これが俺に起こったことの全てです……………。」

 

 

「って言えりゃよかったんだけどなぁ。」

 

 

「いやぁさ、その時にはいじめの証拠を全部残してクラスの奴全員と担任、学校にも訴訟起こして、全部勝っちゃったんだよ。賠償金とかもう資産レベルの奴。トラウマ以外にも金玉なくなったりしているから。たしか何千万は余裕で行っているぜ?多数にやったから余計に、しかも結構金持ちの人間の息子や医者の息子とかも居たからがっぽがっぽよ。

あの時は稼がせてもらったぜ?しかもPTSDは俺の演技で付加価値だ。七三分けの弁護士もウハウハだったな、隣の女の人に

「君もこの少年のように一度袋叩きの目にあってくるといい悪い脳内細胞がつぶれて少しはマシになるだろう」とか嬉々としていっていたくらいだし。」

 

「ああ、そう俺の掌さ。…………な?蔑ろにしてもいい人間って意味はこういうことさ。」

「今じゃ性欲もないし、中性的な顔になっているし、莫大過ぎる富にも恵まれた。唯一つ人を嵌めたことだけで。」

 

ああ、長々と喋っていたなここらで一回終わりにして。

 

「まあ、こんなもんですわ酷いことはしてきましたし、それをされる覚悟もある。どうする?憂さ晴らしに一発。」

 

頬に指を刺す。むかつくな、これ。

 

「…………気分が悪い。少し部屋を出る。」

 

俺は扉を閉めた。

 

 

 

ウォォォォォォォォォォォォォっよかった、誤魔化しきれたわ!よっし、そして今度はこの気まずい空気に耐えるだけだ、その位ならちょちょいのちょいだ。あの三蔵さんから逃げる程度のことは耐えれる!

 

『お前、人の気持ちを素直に受け取れない奴は何時か後悔するぞ?』

 

「もう、しているし。変えられない。俺は不器用なんだよ、勘弁してくれ。」

 

人は変わらない。三つ子の魂百までなどのことわざの通り、人は思ったより変わらない。ただ、磨耗しているのだ、他人に叩かれ嬲られ、社会に適合するように。

だって、俺の時もそうだ。小学生の中の悪はただの異端なんだよ、それを大衆という正義が裁きと言う名の刑を執行する。そしてジャン○システム的に仲間(奴隷)を増やしていく。

 

だからなんだと言うのだ。それがどうしたと言うのだ。俺は騙す正義も悪も、自分自身もどうだっていい俺が、俺が大切なものを守るのに必要だからな。

 

といって俺は誤魔化した。…………何気に一番疲れた気がする。



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夏休みのひと時

いやぁ、うん。これ短編ね。

 

 

 

【帰還報告】

 

「帰国しましたがナニカ?」

 

「何言っているんだ?康一?」

 

「おお、聞いてくれるか俺の冒険譚を!」

 

「いや興味ないけどさ。」

 

「なんだよ。」

 

よっす、相澤康一です。もう口調とかどうでもよくなって来ちゃったよ、もうこれどうするの?最初の面影なんて絶対に欠片すらないよ?たった三ヶ月程度で変わりすぎだろ。

それは、隣に置いておいて。

冒頭の会話から分かる通り、俺は帰国してIS学園の寮室にいる。寮室はいつの日か一夏と同室になっている。

まあ、出国した事についての感想はカンガルーの肉が食えなかったのが残念だっただけでそのほかには何もなかった、ああ、宇宙が始まる前ほどに、凰の胸ほどに何にもない。

 

「一夏?ゲーム返しに来たわよー。」

「お、鈴か。」

 

おおおおおおおおおおおおおッ!!危ない!とりあえずひんぬーへの敬愛の言葉を三回唱えておこう。

貧乳はステータスだ希少価値だ。貧乳はステータスだ希少価値だ。貧乳はステータスだ希少価値だ。OK、これでばれない。

 

「康一、アンタ変なこと考えていない?」

「凰…………新作のアイディアくらいしか考えていないな。」

「変なの考えないでよ・・・。」

「お世話になってます。」

 

ああ、一夏のISスーツ作り終わったんだよなぁ。結構高かったけど、一夏即金で出したし。

 

「まあ、いいわ。それじゃ、これ借りていくわよ。」

 

といって凰は寮室から出て行った。悪くてIS持ち出されて皆殺しだな、と心の底で安堵しながら、ざわついた心中を落ち着かせるためにゲーム機を起動させる。

 

「さぁ、パァァァリィィィタイムだ。」

 

俺はネットと言う荒れ狂った大海に向けて今!船をこぎ始めたのだ!

 

 

 

【狩り立てられる謀略】

 

薄暗い。薄気味悪い。そんなIS学園秘密の場所。そこには、飢えた乙女達が獲物を刈るような血走った目つきで一定の間隔で並べられた椅子に座っている。

女性ばかりが集まっているのにも関らず、何処か汗臭いような匂いが漂う。そのようなマニアには垂涎モノなその空間で、ノイズのような音が流れた。

 

「これより、オークションを開始いたします。」

 

スピーカーの電源を入れた時に発生するノイズだったようで次には、ウグイス嬢のような聞き取りやすく甘美な声が流れると、薄暗かった空間にカーテンが開く音に一回だけのスポットライトが付き、椅子と同じ間隔にスマホの光が灯る。

 

「まず最初は…………一年一組、一番相川清香。三枚セットで販売。頭打ち。リミットは三分、500円から。」

 

そのような言葉がだらだらと並び、その度に、スポットライトが当たる所に写真を置き、用が済んだら戻すを繰り返し、椅子に座った女性たちはスマホを操作する、そんな怠惰な時間。だが、最後の最後に空気が変わる。先ほどまでは事務的にスマホを覗き込むだけだったが、目の色が変わり、爛々と滾ったような目である一点を見る。

 

「……………これが、最後になります。織斑一夏。ネガフィルムでの販売になりますので世界に一つだけ。5万円からのスタートです。なおこの場合は自動延長制度が使用されますので、あしからず。」

 

 

そう、これは…………。

 

「いやぁ。儲かったなぁ。」

「確かに、康一君が取れてる写真は質が高くてこちらとしても大万歳だけどさ…………。」

 

「いや、インターネットオークション形式にしてそれ専用のソフトを作った所がよかった。これだと、クローズドなネットワークだし向こうから干渉を受けることもないし、もしもの時に交渉を持ちかけることが出来る。しかも、臨海学校によって男の上半身半裸の画像を得ることも出来た………最高だな。」

 

暗躍した一人の男のお話。続きはない。

 

 

 

 

【開発者と使用者の声】

 

よっす、俺こと相澤康一だ。今現在、俺は一葉に呼び出されている最中で、集合場所はこの辺りでいいはずなんだが…………一向に来ないな。

 

「オォォォォォォォォマァァァァァァァァァァァァエァァァァァァァァァァァァァァッ!」

 

ウオッ!?なんか変な人が飛び掛ってくる!?警察いや、救急車!ここに頭が残念な人がいます!!って一葉か!?

 

「まて!もちつけ!」

「お前がな!」

 

それと、周りの視線が痛いので止めてほしいのであります。しかし、それにしても何の用件だろうか?

 

「…………落ち着いたか?」

「ええ、全く。とりあえずここじゃ、なんですし移動しましょうか。」

 

首肯しておく。この後の予定も何も入れていないから問題は無い、友達が少ないとかそういうことなんてあるわけないだろう?ハハハハハハッ。

俺は、一葉が用意したであろう車に乗って、世界研究者クラブの日本本拠地に足を運んだ。

 

「ウィーッス。」

「不審者め!!」

 

いきなり着いた途端に銃を突きつけられた。結構精巧に作られているが俺が考案した奴を実用化にした奴だろう、殺傷能力は無いからアレだが非常に手痛い目にあうから注意が必要だ。ま、ただのエアガンだけどな。

 

「大丈夫だ、彼はこんな身なりをしているが信用に足る人物だ。ヘタレといってもいいが。」

「で、ですがしかし……………。」

「おい、さらっとヘタレ扱いするな。めんどくさがりと呼べ。」

 

変わらんな、体外的には。…………さて、ごたごたしたやり取りは終わったようで、一葉が先に進む。置いてくなや。

 

「ここも、相変わらずだな。」

「そうか?結構、人員は移動したと思うが?」

「変態度が増しているんだよ。」

 

そう、変人が多い。むしろ、この一葉に負けず劣らずなほどに変人が多い、変わり者のメッカレベルだ。ここの人間は大体白衣を着ているか、パジャマだむしろLだ。白衣の人間は前に、白衣に隠し持ったメスを持って「申し訳ありませんが解剖させてください」と、持っているメスを首筋に当てながら言ってきた愚か者も居るほどだ。

因みにパジャマはいい奴だった、甘ッたるいものを進めてくるけど。

 

「あ、久しぶり。」

「解剖人間か。」

 

俺の目の前に居る人間が件の解剖させてくださいといってきた人間だ。理由を聞いてみたら、「凡人の精神構造とか肉体とか気になるでしょ?」だとよ。すると、俺の隣に居た一葉を見て、こういった。

 

「一葉さん、久しぶりですね。」

「君も相変わらずなようだ。絶対に人体実験とかするんじゃないぞ?」

 

ははは、と苦笑の類で笑った。誤魔化すな、俺の命が危なくなる可能性があるし。その男に別れを告げてある一室に入る、ただっぴろい空間に有る一つの機械そんな殺風景な所に俺たちは入った。

 

「さあ、出せ!貴様の罪を全てを白日の下にさらけ出してやるぜぁー!」

 

恐らくこれはカゲアカシのことだろう。ラグナロクの一撃を放ったことについてのデータを取りたいんだなうんうん。俺はISの待機状態の足輪を外して、一葉に手渡した。

 

「ホイ。」

「あい。」

 

唯一つの機械に入れて、それを操作していく。すると、見慣れないIS機体が出てきた。

 

「なんだ!?これは!?」

「いや、カゲアカシですよ?」

「いや分かってた訳だけれども。」

 

うん、一応こういうところで確認しておかないと使わなさ過ぎて忘れるんだよ。一葉それを診ていく。

 

「…………なんでこんなふうになるんですかねぇ?」

 

「何のことでしょうか?」

 

「こうなるわけねえんだよ!!話には聞いていたけど!!」

 

はて?どういうことかな?

 

「アレは、バックパックのエネルギーも吸ってペトゥルの全エネルギーを湯花によって纏めて喰らわせるバカみたいな代物なんだ!装甲がないと使用者も危ないし、装甲があってもいたいんだよ!しかも、なんで右腕の装甲だけ傷が皆無なんだよ!!」

 

ああ、あまりやりたくなかったからなぁ。

 

「アレじゃね?誰かと契約して魔法少女になったんじゃないの?」

「…………はぁ。」

 

修理はやっておきます。と、一言だけ言って俺の胸元に頭を当てた。

 

「ああ、私は貴方が心配です。」

 

心配されるほど落ちぶれちゃ居ないと思うのだが・・・。

 

「なにか私の理解できない別の意思で動いているようで、どっかに行ってしまいそうなんですよ…………一応、義理の妹ですので。心配はしないといけないですからね。」

 

「そういうものじゃないだろうと思うんだけどな、俺は。ま、そうならないようにやっとっくよ。」

 

そう、答えるしかなかった。

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

ああ、こんなこともあったなぁ。さあさあ、それじゃ行きますか。

 




なぜか夏休みと打とうとしたのに、「なちゅやしゅみ」と打ってしまい、その副次的な効果で私のキーボードが調子悪くなってしまいました。
それにしても春になんてものを書いているのだろう?と思う今日この頃で、夏休みがあった私の青春…………いや、若いころが懐かしいです。


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円卓の騎士

 

ああ、もうあの円卓の騎士さんたちは本当にめんどくさいなぁ。円卓のオッサンにしてやろうか!!めんどくさい出自をお持ちで全く…………。えっと、電気をつけたいんだが。確かここだっけ?

俺は真っ暗なこじんまりした会社の会議とかに使うほどの小広間の電気をつけようと手探りで探す。

 

「電気電気~あったここか、うおっ!?…………いたのかよお前ら!?」

 

一瞬にして、目を過度に刺激しない程度の光が降り注がれる。それゆえにいきなり現れたように見えた6人のオッサンと1人のお姉さん(まだギリギリそう形容しても良いレベルだろう)が現れた。そしてここにいるのは俺を含めて合計8人

 

「いやいや、君がいないと始まらないし。」

 

「まあ、そうだな。鈴也はともかく、俺は待ちぼうけを喰らっていたしな。」

 

「あ、久しぶり~」

 

男3人が俺に対してそういってきた。俺から見た円卓の騎士を一言で言うのであれば、俺のエゴで出来た、俺の写真を買ってくれるお得意様みたいなものだ。俺のほうからしてみたらだが待ちぼうけとはそういう意味だ。

後、円卓の騎士名前に深い意味はない。けど、騎士という表現もあながち間違ってはいない。

 

「まあまあ、あなた方の都合もあるでしょう?まあ、ワタクシは加入が加入ですのでこれが始めてなんですがね。」

 

「互助会みたいなものですからね。肩の力でも抜いてください。紳士さん。」

 

ここの紅一点が、そういった。

 

「これは失礼、いかんせん、こう言う会には参加してこなかったものですからな。」

 

「あれ?貴方も初めてですか?」

 

「そういう貴方こそ」

 

「ええ、始めて同士仲良くしましょう」

 

「ありがとうございます…………えっといまだにアカウント名が分からないのですが?」

 

「私は袋兎です」

 

「僕は支障と名乗っています。」

 

「ありがとうございます袋兎さん、師匠さんそれでは少し一服を。」

 

「タバコかと思ったら紅茶かよ。」

 

「紅茶は心を潤してくれます、どうですか?貴方がたも一杯」

 

「「「「「「「遠慮しておきますこの味オンチが」」」」」」」

 

紳士と呼ばれた男以外の全員がそういった。なにを隠そうこの、紳士は壊滅的に味オンチなのだ。さすが出身国がネタにされるくらいだ。

 

「おやおや、それは残念。」

 

といって、紅茶を啜った。前に一度飲んだのだが、漢方か何かと間違えたレベルだ。この人なら、ジャングルの奥地に入っても何でもくって生きてきそうだ。

 

「それはともかく…………始めます。円卓の騎士のルール、一つ」

 

「「「「「「「…………華麗に、冷静に、愛を語ること」」」」」」」

 

俺以外の全員が声をそろえてそういった。

 

「一つ」

「「「「「「「愛は愛で迎え撃ち侵害しないこと」」」」」」」

 

「一つ」

「「「「「「「愛の暴走は愛で止める」」」」」」」

 

「諸君らに問う、親とは?」

「「「「「「「子供の成長を愛と(あい)を持って見守るもの」」」」」」」

 

「諸君らに問う、子供とは?」

「「「「「「「希望、相棒、良き参謀」」」」」」」

 

「よろしい、それでは円卓の騎士会議を行う…………まず、最初は。私の近況報告でしょうかね。」

 

 

「「「「「「「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!」」」」」」」

 

一気に場が沸いた。

 

「「「「「「「やっぱ最初はうちの子だろ?」」」」」」」

 

「「「「「「「ああん!?やんのかてめえ!!」」」」」」」

 

「だから言ったのに…………。」

 

一歩間違えば暴動のような大合唱。その声を無視して無理やり、写真のスライドショーを敢行した。

 

「いいわー家の娘」

「家の子はよく成長しているようだね」

「生きててよかった…………」

「流石です、隊長」

「康一君。これギリギリすぎやしないかい?場合によっては君も処すこともいとわないよ?」

「康一、お前写真嫌いなあの子をよくもこんなに撮ったなぁ?春百合(はるゆり)に似ておっかないのに。…………お前!その内ポケットに忍ばせたICレコーダーを返せ!!」

「うむ、ワタクシの嫁の子だけあって。叩き甲斐がありそうですねぇ」

 

そう、ここに居るのは全て……………。

 

「やっぱ、鈴が一番だね」

「やっぱ、箒が一番だね…………あれ?束もいる!?嘘ォ!?気が付いたらフラリと何処か行っている子なのに!?」

「やっぱ、シャルロットが一番だね。この世に舞い降りた天使のようだ」

「やっぱ、一夏と千冬が一番だね」

「やっぱ、セシリアが一番だね」

「やっぱ、隊長が一番だな、間違いない」

「やっぱ、簪と刀奈(かたな)が一番だね」

 

ただの親バカども(・・・・・)だ……………これが原作介入権か。これがこの俺の人生を掛けて手に入れた人脈たちだ、親と子が俺という変換機を伴って一堂に会している。

さて、前にも言った円卓の騎士という中二病あふれる名称の概要説明も済んだことだし、今度は円卓の騎士のメンバーを紹介しよう。

 

「ああ、鈴という愛の結晶、いや天から使わされた愛のしもべ……………」

 

こちらは、最初にいたアカウント名朱鳥鈴也。これは源氏名で、アカウント名にもなっている。名前の由来は苗字の朱鳥はなんか朱雀と凰って似てね?名前は娘から取れば良いや、音也と鈴也?愛称が鈴だから鈴也でという理由だ。

 

「よかった…………あの子達は元気にやっているんだね。」

 

こちらの涙を流しているのは、アカウント名師匠さん。言わずと知れた俺の剣の師だ。…………全く、特定するのに時間が掛かったぜ。というより、結構前から文通をして暗号は解読できたんだけどな。

 

「( ゚∀゚)o彡゚シャルロット!( ゚∀゚)o彡゚シャルロット!( ゚∀゚)o彡゚シャルロット!」

 

このお方はアカウント名OBK、放っておけばエーリンなどといいそうな動きをしているこの人だ。OBKとは日本語で()()()なのだが、普通に俺は()()鹿()と呼んでいる。この円卓の騎士内で最高の親バカさだ。

 

「会いてぇなぁ…………」

 

こちらはアカウント名ブラック神風さんだ。この円卓の騎士での唯一の良心で、料理、喧嘩共にお強い、スーパーマンである。

 

「ああ、すばらしい。」

 

このお方のアカウント名は紳士だ、だが紳士はただの紳士にあらず変態の冠を持って紳士になる。紳士さんは愛のあるドSと言ったなんとも特殊なお方なのだ。

 

「アレは!アレは!良いものだァァァァァァァァァッ!!」(ブシャァァァァァァァァァ)

 

そこの鼻血を噴出して倒れかけている女性はアカウント名袋兎さんだ。この人は、シュヴァルツェ・ハーゼの副隊長だ、シュヴァルツェ・ハーゼはドイツ語で黒兎それの副を努めていることからそう名づけたらしい、ここで唯一の自分から名乗り始めたアカウント名だ。

 

「姉妹丼も良いものだな。」

 

それ、編集ですよ。後、刀奈さんとやらは多分撮っていないです。最後に最新参のこのお方アカウント名現代忍者。この方はまあ、アレだチャ○ラ使って人をボコボコに出来るから、そうだな例えるなら口寄せ(電話)とか?誰でも使えるじゃん。

後、出会いが唯一俺が能動的に動いて手に入れた人脈でもある。

 

「…………紛争が起きないように気をつけよう。」

 

ここに居る人たちは皆、方向は違えどかなりの力を持った人たちだ。それはそれは怒らせたらものっそい般若かと思うほどに怖い。まあ、それなりに金を貰っているから良いんだけどな。

 

「それじゃ、今回の分の料金を徴収させていただきますね。」

 

「あいよ」

 

百万単位の札の束が俺の前に置かれていった。

 

「さて、それでは。後は本人たちで話し合ってください。」

 

「「「「「「「……………康一、今から君に話しがある。」」」」」」」

 

ギクリ。俺は予想していなかったわけではない、だが、非常に読みが甘かったと言うべきだろう。

この状況を一から説明しよう、まず俺のここ最近のファクターになったのはやはり臨海学校と言うべきだろう。まあ、俺が自分で言うと物凄く胡散臭くなるが自分の周りのことを考えそしてそれを利用して、回りを動かしたという今後の重要性が試される確かな出来事があったのだ。

 

そして、それを宇宙の彼方へ放り出して俺は、水着姿というちょっとエッチな週間少年なんチャラであれば一年のうちに1、2回は出てくるような、マンネリじゃね?いやいや、それが良いんだよ!と思うほどの欠かせないものだ。

そう、俺はそれを目に焼き付けながらパシャリパシャリと撮っていたのだ。

 

それを果たして、一目で劣情を掻き立てるような、しかして合法的に見せ付けられるセシリアの扇情的な背中は、親から見たらどうなる?

それを果たして、マニア用にと舐めるように撮った鈴の健康的な太ももは、親から見たらどうなる?

それを果たして、三十路手前に入りそうな公務員のあられもない姿を、親から見たらどうなる?

それを果たして、想い人の前で始めてビキニを着た羞恥に染まった隊長の頬を姉貴分から見たらどうなる?

それを果たして、あざとさを加えようと撮った大いに強調させたシャルロットの手に収まるような大きさの胸は親が見たらどうなる?

それを果たして、万人がうらやむような絶大なプロポーションを持った箒さんのビキニを、親が見たらどう思う?

それを果たして、慎ましやかな胸に加えて子供っぽい水色を元としたパステルカラーのまだら模様のビキニを着ているのが倒錯的な魅力を醸し出すの簪の肉体を、親が見たらどう思うだろう?

 

答え

狂う

 

「諸君、ここはどこだ」

 

静かだが、妙に響くブラック神風さんの声が俺の背筋に掛けて電流のような悪寒を走らせる。

 

「「「「「「「報われない親達の、子供の安息を願う場だ」」」」」」」」」

 

まあ、そういう側面も否定できないんだけどさぁ

 

「子に害を成すものは?」

 

「「「「「「地獄の苦しみを」」」」」」

 

……………あ、飛蚊症だ。あれ?うんちょっと現実逃避しかけたけど。これ俺、ダメなパティーンじゃないのか?

 

「親とは?」

 

「「「「「「愛を生き、愛と生きるもの。」」」」」」

 

「よろしい、それではぶっ殺すぞ」

 

「「「「「「おう!!!!」」」」」」

 

「じゃねえ!逃げろ!」

 

突っ込みながら俺は、こうなることも見越して一番出口に近いところの席から一目散に逃げ出した。

 

「逃がすか!」

 

え?アレ?なにこの浮遊感?足元を見る、すると。

 

「なんでボッシュート退場ォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォッ!?」

 

 

 

 

少しあわただしくなった会議室は、地面から開かれた大きな穴という禍根を残してもとの静寂な空間に戻った。

 

「フッ、突っ込みきれなかった自分を悔やみながら死んで行け。」

 

朱鳥鈴也は前髪を掻き分けながらそう言った。この人が落とし穴を起動させた張本人だ。

 

「え?死んでいるのか?」

 

ブラック神風がそう言った

 

「それは不味いよ、彼にはもっとシャルロットの成長の記録を撮ってもらわないと!」

 

「…………いや、下は物凄い柔らかい素材で出来た竹槍で出来ているから。」

 

「それ竹槍じゃねえじゃん!?……………おーい!生きてるか!!」

 

 

 

 

 

「はぁ、思ったより低くなくてよかった…………IS使わせやがって。」

 

 

とりあえず俺はこのまま逃げる決意をした。



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金髪ボイン

「…………よし。」

「ん?どうしたんだ?いつに無く気合の入った格好だけど」

「あ?ああ、一夏か。ちょっとな、俺も用事が出来ているんだよ。」

「それは珍しい、ここでゲームか飯を作っているだけのお前がか?」

「よし、ちょっと歯を食いしばれ。」

 

どうも俺こと相澤康一だ。今は八月の中盤もうそろそろ夏休みも架橋に入ってきた所だろう、そんなところで一つキーワードを思い出して欲しい。

 

『なんでっ…………ま、しょうがないか。首が飛ぶのはこっちだし。えっと、一夏君たちと一緒の日にまとめてやっちゃうらしい、夏休み中の8月15日に午前は一夏君たち、午後は君たちの撮影とインタビューが入っているわ。』

 

そう、この言葉。ついに、このときが来たのだ。そして、この件に関する作戦について説明しておこう。まずは、一夏の目を逃れるために一夏よりも早くここの我が根城、寮室を出る。IS学園は描写こそはしなかったものの、メガフロート状の体裁を保っているそれ故に安全にここを出られるのはここに通っているモノレールしかないのだ。なので時間をずらすのは容易だ。

 

そこで、前もって調べて追いた時刻より1時間ほど早く出る。そこで、待ち伏せスナイピングだ。…………え?なんでそこまで早く出るかって?そりゃぁ・・・。

 

「…………はぁはぁ。ごめん、まった?」

「ううん、今来た所」←一時間以上待っている。

 

なんてことがあったらカメラに収めたいじゃないか!壁を殴りながらな!。

 

「ま、いってくるわ」

「おう、気をつけてけよ。」

 

まあ、気をつけるのはお前だがな…………。よっしゃ。気合入れていきますか!

 

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

ヤベッ、一時間は早過ぎたか。暇だわ。しかし、この線に乗ってくるのは間違いないはずだ、一本しか通ってないし。

しかして、俺の一夏ファイルは売りさばくことに特化しているエロティカルなものなのだが、普通のも撮りたいのは分かりきったことであるだろう。

 

「まあ、人間の欲望は果てないからなぁ。」

「そうね、一度戦ったのにもう一度戦いたいと願うほどには」

 

だれ?金髪なバインバインボデェーのお姉さんが俺に話しかけてきているんだけど?

 

「…………どちら様?」

「いやね、一度戦ったお姉さん忘れちゃったの?」

 

………………あ!?

 

「セラフィーナ・カンタレッラさん?」

「ええ、そうよ。久しぶりね。」

 

けど、なんでこんな所にまで来ているんだ?俺が確実に出てくると思ったわけでもなさそうだし、となれば一夏か。

 

「で?どうしてこんな所に居るんですか」

「あら?聞いてないのかしら?」

「なにをです?」

 

一瞬、存在感を消し過ぎて先生にまで情報を渡されないくなったのを思い出しながら俺はそう聞いた。担任殿の差し金か?

 

「ある雑誌の撮影とインタビューがあるとは聞いてない?。」

 

きょとんとした顔でそういってきた。ああ、なんか出版以来のビックゲストとか言っていたなぁ!ぬかった、つーか都合良過ぎじゃね!?

 

「なんでまたそんな依頼を受けたんですか?」

「男性とついでに戦いたいなぁってお姉さんは思ったり思わなかったりぃ」

 

さっすが!バーサーカーだなぁ、おい!確かに十八禁ギリギリの言葉を戦闘中に言っていたけどさ、こんな所でそれ回収しなくてもいいだろうに。

ああ、担任殿アンタの言葉は正しかったよ。

それにしたって、俺の目的ちゃんとした設備で撮る一夏の姿(ドル箱)の入手と言う目的はどうにも果たせそうにない…………考えろ、考えぬくんだ!

 

「ああ、それは君と戦って果たしちゃったし。もうただの休暇よ。またあの馬鹿げた一撃は喰らいたくは無いものね?」

 

クスクスといったように笑う。ならこっちは…………。俺は多少大げさに肩を落ち込ませ、大きく溜息を付いた。

 

「…………クソ、こっちもオフだってのによぉ。ったく、驚かせてんじゃねえぞ」

 

「へえ、それが坊やの本性って訳?」

 

「本性も何もあるか、気ぃ張ってっと疲れるんだよ。」

 

この時点でとても帰りたかったがドル箱(一夏の姿)の為だ、諦めるわけには行かない。

 

「あ、そうだ聞きたいことがあるんだけど・・・。」

 

「拒否する。じゃあな、また後で。」

 

「まって。」

 

俺の手首ががしりと掴まれている。少し痛みを与えて行動を阻害するようにしているのが分かる。小賢しいてだ。

 

「なんだ?」

 

「君は、なにをしようとしていたのかなぁ?集合は午後だし幾分早過ぎると思うんだけど?」

 

「俺は遊びに行くにも首に縄をつけられたことは一度だってねぇ、ちょっとした黒服さんぐらいなら居るかも知れねえがな。」

 

「ふぅん?そうなの?面白そうね、私もエスコートしてくれないかしら?日本語が不自由で困っているのよ。」

 

ぺらぺらじゃねーかの一言を抑えつつ、全力で拒否したいのは山々なのだが、この人マムシのようにどこまでもくっついてきそうだ。適当に会話を打ち切って無言でゲーセンとかでいいだろう。

 

「あっ、どこ行くの?」

「ゲーセン。」

 

よしゲーセンなら…………あれ?いや、待てよ。冷静に考えてこの人は国家代表なんだよな。

その思考に至った時には俺は一瞬で跪き、片手を伸ばした。

 

「行きましょう、幾分貴方のような可憐な花が向かうには、泥臭い所ですが。私はそのような場所しか出向いたことはありません。このような私めですがしばしお付き合いを。」

 

「え、遠慮しておくわ」

 

「国家代表のプリクラ写真とかアホみたいなレベルで売れるわ!断るな、俺の日銭の為に!(そういわずに!)」

 

「本音がだだ漏れね…………。」

 

やっちまった・・・。クソ、ただでさえ一夏の写真は飽和状態になりつつあり、新たな人物を入れる事によってオークションと言う構造を飽きさせないようにしているのに…………。

 

「で?俺がゲーセンに行くついでに、ついてきてもいいですがどうします?プリクラ一時間耐久とか行きましょう。」

 

「いいわよ、行きましょう。私も日本のゲームセンターとか見てみたいもの。」

 

成功だ。ならば行かないわけにはいきまするまい!ごめん!一夏、君より金になるのが来た。

 

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

「別にいいだろ・・・。」

 

「どうした?一夏?」

 

「いや、なんかそう呟かないといけない気がして…………。」

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

 

さて、ゲーセンについた。どうするか………。

 

 

じゃあ、シューティングで肩慣らしでもしておくか。

そういえば今はいちいち硬貨を取り出さなくていいんだよなぁ.財布から取り出した一枚のカードを読み取り場所に当てる、いちいち取り出すのめんどくさいしポケットに入れておくとしよう。

「なにこれ?」

「平和ボケした日本人が生み出した娯楽。」

シューティングゲームはいい、音ゲよりかは失敗しても恥ずかしくは無い。太古の鉄人とかスーパープレイをやった人の後のプレイってかなりやばいよね。恥ずかし過ぎる。

ともかくシューティングゲームにした。

「ちょッ!?なんで颯爽と二つ持っているのよ!?」

「ラン○ープレイだ。」

やったゲームはポンプアップ式ショットガンタイプのコントローラーでほかにボタンは何も無いシンプルなものだ、だが、これには問題があって、リロードは片手で行うのは難しいのだ。

だが!この一人遊びを極めた俺ならば、片手でポンプの所をもってこう…………上手いことスライドさせて出来るのだ!

「フハハハハ!地元で双頭龍のランボーと呼ばれたものの力見せてくれるわ!!」

「あの~そういうプレイは止めてもらいたいんですが…………。」

「」

「…………あの、お連れの方とやればよろしいかと?」

ええい店員余計なキラーパスを出しているんじゃない、俺が口から血を吐いちゃうだろうが。それにお姉さん?もう凄い笑顔でこっちに親指を立てないでくださいよ。

「っち、おい店員そっちのお客様からサインでも貰っとけ、ほら色紙あるから。」

「どっから出して来たんですか!?って言うかサインって…………あれ?あ!あなたは!イタリア国家だいhがふッ!?」

俺はつま先をやりのように突き出し、腹筋に直撃させる。

「少年、君は口を慎むことを覚えた方がいい。みすみす昇給のチャンスがフイになるところだったぞ?」

まあ、この場合集客効果が見込めることを示唆している。

「はい!、すみませんサインを!」

「…………鳩尾蹴られて、過呼吸になりながらもけなげに足を震わせながら色紙を出されたら描くしかないでしょう。」

「ありがとうございます!」

よし、こっちもクリアだ。

「さて、坊主ども。俺のようになりたければ今すぐこのゲームを俺と変われ、そしたら出来るかも知れないから」

ここで、プロゲーマーが誕生したのはここに居る誰もが想像しえなかった。

 

 

 

ふう、やっぱ。アレはいいなシューティングゲームはやたらに攻撃してればいつかは当たるし。

「なによ、一人でやっちゃって。」

「すみませんねぇ、じゃあ二人で出来そうなの…………。ああ、あれとかどうです?」

俺は、一つのレースゲームを指差した。世界的な有名キャラクターが出ているあのレーシングゲームだ。

「ふん、これなら知っているわMarioね」

「外国には伏字の文化はあるのだろうか?」

「どうしたの?」

「何でもね、とりあえずやりますか。」

硬貨を手渡して、乗る。これも一人でやる分にはいいんだが、対人戦だと俺は…………。

「え?なにこれ!?」

「あれ?俺の投げた緑亀と衝突しましたね。あッ、雷が落ちましたよ?あらま、青亀もやってきましたね?ほら、そこにバナナ!っち、赤亀め、ホーミングがずれやがった」

「なに?あんた妨害のプロ!?」

因みに結果は、俺が最下位セラフィーナさんがギリギリ一位という結果になった。

「はぁはぁ、結構昂ぶるわね。」

「所かまわず発情しないでください。迷惑です。」

「私をなんだと思ってるの?」

「淫乱バーサーカー。お姉さん属性もあるよ。」

 

 

 

ふう、終わったそう、俺って妨害が大好きなんだよねぇ。まあ、そんな誰も聞いちゃ居ないことはどうでもいいから、次に遊ぶものはなににしようか。

「ねえ、あれはなにかしら?」

「ダ○スダ○スレボリ○ーションだな、指定されたパネルを踏んでその出来高を評価してもらうことが出来てその出来高を競うゲームだ。それなりに競技人口も居るから、初めてやるのには異色かと思うが・・・あれ?もうやってるし。」

はあ、てか結構上手いな。

「どう?この成績は?」

「よく分かりませんがいい部類に入りますよこれ。」

「へえ、そうなの。」

まあ、日本にはヘンタイが数多く居るからな。それには劣るだろうが、よくやったと思う。

ガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガッ!!

いたよ~ここに居たよヘンタイが、あれ?先生何やっているんですか?そこまで高速にしなくてもいいような気がするんですが?しかもどこに重力消えたってレベルで足を動かしていますやん、しかもギャラリーがいるし。

「ほへー、凄いお人も居たもんだ。」

「…………超える!」

「止めろ!アレは出来たらヘンタイに分類される!」

 

 

 

次はなににしようか?

「どうします?」

「あの、箱っぽい機械はなに?」

「あれがプリクラです。行きましょう!今すぐ行きましょう!」

売れるから。まあ、その実チョコチョこと隠し撮りはしているんですが。

「はぁ、今回だけよ?」

「ええ、それでもいいですから早く!」

俺は手直のプリクラに駆け込むように入った。

 

 

 

 

 

そうして、集合時間にも近づいていき、俺たちは外に出る事にした。それなりに絵になる物は撮ったし、俺のたまがもうパンパンなんだ。ああ、俺のカメラのメモリーがもう入りきらないほどになっているんだよ、別に卑猥な意味でもなんでもない。

 

「う~ん。楽しかった。」

 

そういって大きく伸びをした、少しへそが見えそうだ。

 

「どう?楽しかった?」

 

「それはこっちのセリフですよ。それに俺はただ貴女が面倒だったから適当に巻いただけです。」

 

本当は貴方の写真を撮りたかっただけです。パパラッチ的にはスタジオで撮った写真よりも屋外で撮ったほうが高く売れたりする。

 

「本当はなにをしたかったのかな?」

 

まあ、本当のことを言っても問題は…………ありまくりだなぁ。

 

 

 

「それはそうと早く行きましょう、時間も時間です。ここからそこまで遠くないんで。」

 

 

さあ、ごまかしだ!



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インタビュー

よし、ついたついた。俺としてはあのオークション制度は残しておきたいものだからなぁ。

理性は欲を超えることはできはしない。そのような例は、あるのであれば理性が欲である場合に限る。

 

「ああ、緊張する。」

 

ここで痛い事いってみろ、すぐさま某匿名掲示板で拡散される。利用できるのであれば。痛いことを言うのも辞さないが。

 

「なにを言っているの?そんな豪胆の限りを尽くしているような…………そうね、この国で言うのであれば小賢しい化け狐かしら?私の視点では狸って言うほど図々しくは無いからね。」

 

うるさい、黙れ。狐は騙さなければただの狐。ちょっとした害獣に過ぎないし、そもそも狐が化かすのは空想上の世界だ。しかも、俺はそんな(相対的)に(見て)悪いことはしていない。

 

「そうかい。けどな。俺はあんまりインタビューとか、そうだな自分の意見はそこまで重要視しちゃ居ないんだ。」

 

「へえ、その心は?」

 

「俺より強い権力を持ったやつは一杯いる、それに自分の我で持って立ち向かおうとしてもただ潰されるだけだ、それなら必要じゃない。現実的に取り入る方がいいんだ。ま、端的に言えば、長いものには巻かれろだ。」

 

「フフフッ強かね。」

 

「そりゃどーも。」

 

ん、そろそろ時間だな。俺は遠くに見えたそれらしき人物が見えた。ちょっとセクシーなキャリアウーマンを考えれば俺が見えた人物の容姿に相当するだろう、その人物はこちらに真っ直ぐと向かってきた。

 

「どうも始めまして、インフィニット・ストライプスの副編集長、(まゆずみ) 渚子(なぎさこ)です。今日はよろしくお願いします。」

 

立ったまま名刺を差し出し、そういってきた。俺たちは二人とも立ち上がった。

 

「こちらこそ。セラフィーナ・カンタレッラです、よろしく。」

 

セラフィーナもどこから出してきた分からない名刺を差し出して交換した。驚いたのは日本式のビジネスマナーをちゃんと踏襲している所だ。恐らくISの出身国は日本であるのでそれの気分を害さないようにしているのだろう。

その理由としては、言い忘れていたが、篠ノ之束は世界に指名手配されている。これはISを形作るISコアを作れるのは篠ノ之束のみでありながら、一定数を作った後に失踪しているからであり、多額の懸賞金をかけられているのは言うまでもない。

だが、日本国としては全然感知していない事柄なのだが、日本国が拉致し幽閉しているとの噂もまことしやかに囁かれている。

各国としては、その可能性も捨てきれないので日本を牽制しながら顔色を伺っている形だ。その一種のことなのだろう。推論終わり。

 

とまあ、なんとも無駄なことを考えながら、俺も名刺を出した。俺の名刺は結構手の込んでいるものだ、しかも、もう忘れ去られた設定ではあるが、女性権利団体の特別応援者みたいな立ち居地と世界研究者クラブの第二構成員になっているからな。

第二構成員とは、まあ、実働部隊と指揮部隊みたいなのがいて、第二が実行部隊、第一が指揮部隊…………分かりやすくいうと第二が働きアリ、第一が女王アリのようなものだ。

 

「相澤康一です。今日はよろしくお願いします。」

 

「この子が…………………ご丁寧にどうも、どうぞお二人とも席にお座りください。」

 

俺は着席した。それよりどうしたんだ?

 

「では、まずは相澤さんから。男性操縦者ということで、ISを始めて動かした感想とかありますか?」

 

「そうですね、普通に装着して動いたって言うのが一番驚いています。ですから、どうしてもISを乗っている時の感覚がなれない部分もあります。」

 

「なるほど、セラフィーナさんはどうでしたか?」

 

「動かし過ぎて覚えてないわ。それに私のISは特殊だし。」

 

「それは、どのように?」

 

「守秘義務よ」

 

「失礼しました。それではセラフィーナさんにお伺いしたいのですが、試合時なにを考えて試合に臨んでいますか?」

 

「そうねぇ、私は楽しそうな相手の事を思うわね。ほら、隣の彼と戦って負けたのは知っているわよね?その時もそうだったわ。」

 

「ええ、一部ではただのデマではないか?と噂されているんですが真偽のほうはどうなのですか?」

 

「事実よ。またリベンジはしたいわね」

 

俺的にはお断りである。

 

「そうなんですか。相澤さん勝利の秘訣とかあるんですか?」

 

「僕の機体が最新の一枚葉だったってことですが?」

 

この場合の一枚葉は世界研究者クラブの作品と同じ意味を持つ。

 

「そうですか、それではお二人に聞きたいことがあるんですが。専用機を受け取った時どんな思いで受け取りましたか?」

 

「私はこれでもっと戦えると思ったわね。」

 

「僕はただ来たって感じでしたね、そもそもあまりISに興味を持っていなかったので、受け取った当時は特に特別な意味の無いものだと考えていました。」

 

「IS学園に入った今では、どう思いますか?」

 

「いえ、特にむしろ実技より前に座学のほうがやばいので。担任に何時もどやされながらひいひい言ってやってます(笑)」

 

ああ、俺の前にバベル(宿題)の塔が建築されてた時もあったなぁ。

 

「なるほど。次にセラフィーナさんに質問をさせていただきます。」

 

「どうぞ、といっても彼ほどは面白くも無いでしょうけど。」

 

「そんなことは無いですよ。セラフィーナさんの趣味は?」

 

「IS操作ね。仕事が趣味って奴かしら?朝起きてISして朝飯食って牛乳飲んでISして昼飯食って牛乳飲んでISして夜飯食って牛乳飲んでISしてシャワー浴びて寝るという毎日を送ってたら国家代表になってたわ。」

 

「お前はどこのルーデル閣下だよ。」

 

「「!?」」

 

「失礼。続けて。」

 

やべえ、俺の突っ込みスキルが暴走した。

 

「コホン。絶え間ない練習こそが国家代表の秘訣にもなりゆるという訳ですか。」

 

「そうね、そこまで考えたことはなかったわ。」

 

「では、相澤さんは?」

 

「僕ですか……………特にさしたるものは無いですかね。」

 

「そうですか、ではなにか気になっているものとかはありますか?」

 

「新製品のカメラ。」

 

「即答!?セラフィーナさんは?」

 

「新開発の装備。」

 

「こっちも即答!?し、質問を変えましょうか。今自分が居るところに対しての不満や不安とかありますか?」

 

「そうね、うっかりISスーツを忘れて国からのISスーツを借りたら少し胸がきつかったことね。」

 

「…………相澤さんは?」

 

「全てを諦めれば全て上手く行きます。」

 

「…………続けて相澤さんに聞きたいことがあるのですが。もう一人の男性操縦者、織斑一夏君についてどう思いますか?」

 

「ああ…………。一人目とはなかなかに上手く行っています、適度に遊びに行きますし良好な関係を保っていますね。操縦も日に日に上手くなっていくばかりで、いいライバルになっていると思います。」

 

「因みに模擬戦とかはするんですか?」

 

「あまりしませんね、基礎はしっかりしておかないと動くこともままなりませんので。」

 

「なるほど。セラフィーナさんはどうですか?」

 

「織斑千冬の弟ってだけね。何時か戦ってみたいと思うわ。」

 

「そうですか、では最後に今後の抱負を。」

 

「私は、もっと強い人に出会いたいわ。私自身が育てるのもいいかもね。」

 

「本当にISが好きなんですね。相澤さんは?」

 

「僕ですか……………ISに乗ってて思ったんですけど、もっと別の使い道も模索したいと思ってますね。本当に、ISはいろいろな可能性を秘めています、もともとの目的であった宇宙開発にも、他には…………そうですね、ビーム兵装や脳波の遠隔操作などを応用して、一人で町工場でも出来ますね鋼材とその他もろもろの資材があればの話しですが。」

 

「ふむ、あまり類を見ない答えですね。」

 

「まあ、それもしょうがないとは思いますけど。まあただのガキの戯言として受けてください。」

 

「そうですか、これでインタビューは終わりにします。撮影がありますので、待機室にて着替えてもらえれば幸いです。本日はありがとうございました。」

 

「「ありがとうございました。」」

 

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

「ふぃー疲れた。」

 

「そりゃ、あれだけ自分を偽っていたらそうなるでしょ。なによ僕って。」

 

「撮影に行きましょう。ま、ただのスーツでいいでしょう。」

 

「よくそんなにひょいひょい取れるわね。」

「後はヅラ被って、目を隠してっと」

 

「それ、何の意味があるんだ?」

 

「あ、一夏。似合ってるな。」

 

「え?これがあの?」

 

「ああ、一人目。」

 

「へえ。この子が。」

 

「って、康一。話が見えてこないんだが?」

 

「インタビューがあったろ?その時に一回聞かれた。」

 

「そうか。」

 

「それはそうと一夏、お前はなんでこの仕事を請け負おうと思ったんだ?」

 

「箒に言いくるめられて…………。まあ、ちゃんと報酬代わりにレストランの無料食事券貰ったし、箒と一緒に行こうと思ってるよ。」

 

「そうしとけ、レストランってどこ?」

 

「ほれ。」

 

そこには場所○○ビル 最上階 などと書かれていた。と言いますかこれって・・・。鈴也さんのところじゃん!?あの、俺が簪連れて行こうとした奴!

 

「マジか?一夏、これどういう店だか分かっている?」

 

「知っているのか?」

 

「セレブリィティな殿方、ご婦人御用達な店だ。カジュアルな格好じゃ跳ねられるぞ?」

 

うん、そういうことしてたし。

 

「うぇぁ!?…………本当に?」

 

「ああ、まあそれなりのスーツとかを着て身なりをしっかりとしていけば、跳ねられないはずだ。」

 

「そうか…………うちにスーツとか有ったか?」

 

「それ貰っていけばいいだろ。頭悪いな。」

 

「いいの?」

 

「いやいや?逆に考えるんだ。むしろ、これでいけなかったらどうするんだと。それただの貰い損だろうが、日付も今日までだろうし。一言声かけてくればいいさ。」

 

「う、そういわれてみればそうだな……………。」

 

ま、それで行った場合には、借りができるとかそういうことを考えなくばいけないのは、言うまでもないが。そんなことはこの男の頭の片隅にも乗ってはいないだろうが。

 

「それじゃ、俺は行ってくるよ。」

 

 

「気ィつけてけよ。……………さて、行きましょうかセラフィーナさん。」

 

「もう、アンタ何者だよ。」

 

「はて?何のことですかな?」

 

「もういいわ。その生き方は、あまり利口な生き方ではないわよ。」

 

「直す気も無いね。」

 

それじゃ、行くか。金の成る場所(撮影所)に。





初めてタイトルを回収した


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撮られも撮る

「撮影入りまーす!」

 

俺の耳に感嘆符が付きそうなほどに張りがある声が届く。まあ、写真だからなにか失言しても記録は残ら無いので安心だ、まあそれでも、報酬を貰っている以上、仕事は仕事だしっかりやりますか。

明言していなかったが俺の格好は普通にタキシードだ。変わっている点としては、もしかしたら左右の肌の色が違うこともばれるかも知らないので白い手袋を用意している。

 

「どうも、着替えてきました…………大丈夫ですか?」

 

「いい格好よ。撮影に出ても問題ないわ。」

 

「そうですか、ありがとうございます。黛さん、撮影は・・・あのソファーでやるんですか?」

 

「そうね、共演者が来るまで待っていてもらえると助かるわ。」

 

「はい。」

 

俺は、癖のような感じでソファーの背にどかっと腰掛けた。なぜだかいすの背に乗るのって楽になるときがある。

 

共演者は俺より来るのが遅いが、時間差で来るのは女の常。遅れてくるのは仕方がない、ましてやこんなご時勢だ三時間ぐらいは余裕で待つわ。……………女装とか化粧めんどくさい時あるし。

とまあ、ありふれた稀有な悩みを大暴露した所で、共演者セラフィーナ・カンタレッラは来た。

その格好を言い表すのであれば妖艶な鋼鉄処女、美しすぎる毒バラと言ったところか、ワンピースとか色々組み合わせてそのような感じになっている。

 

俺としては服装なんぞどうでもいいからな、とりあえず仕事を進めよう。

 

「なにか、感想は?」

 

とソファーに座りながら聞いてきた。その質問に俺は背もたれに腰掛けながら手袋をつけて言った。

 

「貴方ならジャージで来てもおかしくは無かったので安心しました。」

 

「…………そんなことは無いわよ?」

 

図星かよ。俺は手袋をつけ終わった。不意にフラッシュが焚かれる。

 

「あ、ごめんなさいあまりにもいい構図だったから…………。」

 

「いえ、それより目とか瞑ってないですよね?」

 

「ええ、しっかり撮れているわ。」

 

よし、危なかった。次は…………。

 

「それじゃ、康一君。セラフィーナさんの隣に立ってもらえる?」

 

「はい。」

 

「…………。」

 

フラッシュが俺の顔を照らす。撮っているほうも少しエンジンが温まってきたようだ。

 

「もう少し笑顔になれる?」

 

「こうですか?」

 

爽やかな笑みを浮かべておいた。

 

「いいわよ。それじゃ、隣の空いている所に座ってもらえるかしら?」

 

「分かりました。」

 

すこしネクタイを緩めて第一ボタンを開ける。柄が悪くたっていいだろう。きっと後で編集するわ。何度目かのフラッシュが目を焼く。

 

「腰に手を回して。」

 

「なるほど、あざといですね。」

 

「いきなり引き寄せるのはちょっと…………。」

 

いまって、かなりエロくても婉曲に表現したら結構素通りされることがあるし、そこまで考慮することはない。というかちょっと顔が赤くなってる?処女ビッツの典型的だな。

 

「・・・萌え。」

 

「へ?今なんて?」

 

「撮影に集中しましょう。」

 

いつの間にか指示で俺が押し倒しているような格好でそう言っていた。しかし暇だなぁ。

 

「撮影は終了よ、お疲れ様でした。」

 

このときを待っていた!。

 

「すみません、ちょっと待ってください。」

 

「え?なに?」

 

振り向くと同時にダッシュ!そして、視界外に出て俺のカメラを回収し直ちにシャッターを切る!。パシャとかいった効果音が流れそうな聞き飽きた音が流れる。

 

「……………いつの間に移動したの?」

 

そんな事に耳を傾けている場合ではござらん!

 

「……………凄い楽しそうな笑顔ね。」

 

「撮影、彼に任せたほうがいい写真取れそうな気がしたのは気のせいかしら?」

 

 

 

こうして、俺の写真撮影は終わった。これで…………俺の財布が潤う。

 

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

すべてはこのためにかけていた、のはここで言うことの程でもない。

俺は終了した仕事の報酬、つまりは一夏にも渡されていたレストランの無料チケットを受け取りその場所を出た。よし、売ろう。だってああいうとこと行っても堅苦しくてダメだ。

 

「二人で行かない?」

 

「行かね、そこらへんの男にでも誘ってくれば?。」

 

「口調がこれでもかというぐらいに砕けたわね・・・。」

 

それが俺クオリティ。はぁ…………いや、前にも行ったけど鈴也さんの所なんだ、だから行きたくないし、それにまだ凰の写真が溜まってないし。

 

「それは置いといて行きたくないんだよ。」

 

「どうして?」

 

「…………知り合いが働いている。」

 

「…………それじゃ、私と食事に行ってくれたら何でも言うことを聞くわ。」

 

『ピピッ。録音しました。』

 

「あれぇ!?なんで!?…………おかしいな、私はただこの子ともう一度戦いたかっただけなのに・・・。」

 

「分かった行こう、約束をフイにするのは無しにしてくれよ。」

 

まあ、これは行幸か約束というものを取り付けた訳だし。それにしても、その願いをかなえて欲しくば「私を倒してから行くんだな!!」みたいなフラグが立っているような気がする。

 

「まあ、いっか。」

 

「それではレッツゴ-!」

 

こうして、俺は食事に行った。…………正直ホームグラウンドみたいなものだからなぁ。

 

 

「ウィーッス、鈴也さんですか?」

 

『はい、鈴也でーす。お、どうしたの?康一君こんな時間に電話かけてきて。』

 

「いや実は、今から最上階のレストランで女性と食事する事になってですね。」

 

『ヒョー!まz、ホント?え?相手はあの簪さん?』

 

「違います。まあ、同じく堅気の人間ではないことは確かですが。」

 

『そうなの?二股はイケナイゾォ、背中から刺されることもあるし。』

 

「それは鈴也さんの事後処理の問題でしょ。それでものは相談なんですけど、最高VIP席に移動させてもらえます?そっちの方は年がら年中空いているでしょ?」

 

『いや、今日に限って一人いるんだよねぇ。』

 

「え?それは…………うん、そうですか。」

 

『あ、でも今はワンランク下の部屋に一夏君しか入れてないけど?』

 

「何やってんすか!?」

本当に何やっているのだろうか?俺たちが今から行くレストランは、普通席、VIP席、最高VIP席とランク付けされている。

まあ、そのシステムはあまり鈴也さん自身は好んでいないようだ。

 

『いやいや?未来の義父の顔を覚えてもらわなきゃ困るしね。整形もしたから気が付かなくてもおかしくは無いけど』

 

ここまで職権を乱用しているのは珍しいか…………これを掘り返すとやぶへびなんだよな。

 

『で?それは置いといて、どうする?一夏君と一緒に食べる?』

 

「いや、そこを離れたらこっちに連絡してくれすれ違うようにしてそっちに行く。元々、時間差があったしすれ違えるだろう。」

 

『うん、分かった首を長くして待ってるよ。』

 

「それはどうも。」

 

 

 

 

よし、約束も取り付けられたし、大丈夫なはずだ。…………最近、どんどんと約束や契約という貯金を浪費しているように感じるが、けどそれも俺の我侭だ。

 

「じゃ、行きましょうか」

 

「ええ。」

 

俺の目の前の道はもう真っ暗だった。

 

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

「ねえ?ここって…………。」

 

高級料理店です、はい。前にも簪と行こうとして最終的にファミレスに行ったビルの最上階にある高級料理店だ。そこについている。もうすでに鈴也さんが見張っているような気もしないでもないが、それはここの料理の味には関係がない、結構どころかかなり上手かったし。どのくらい上手いかというと海原○山が「この○○を作ったのは誰だー!!」といわないレベルで考えてもらえれば幸いだろう。

 

「ええ、そうじゃないですか?確かに報酬としては良い物ですね、俺は知り合いがいるのでまかない食べ放題ですが。」

 

「高級料理店のまかないって…………大丈夫なの?」

 

「まかないじゃないくても、ゴミ箱漁るとあら不思議。」

 

「それまかないじゃないわよ?」

 

そのツッコミを黙殺しながら俺たちは店内に入った。店内には初老の男性が出迎えてくれた、執事ですといってもおかしくないようなゆったりとした物腰、風貌で口にひげを蓄えている。

 

「いらっしゃいませ」

 

「VIP、名刺で。」

 

「……………畏まりました。」

 

渡したのは鈴也さんの名刺だ、ここでの鈴也さんは途轍もない影響力を持っているから…………と言うよりここの人間は全て鈴也さん自身がスカウトしてきた人なんだけど。カリスマ性は十二分にある。

 

「それではご案内させていただきます。」

 

 

 

「本当に貴方何者なの?」

 

「別に?ちょっと顔が広いだけのガキですよ」

 

飯うめえ。なんつうかここじゃないと人様に迷惑かけるからな…………一般人に気分を害するのは俺の趣味じゃない。

 

「おいしいわね。」

 

「ええ、そうですね」

 

それより、俺はこっちの方が気になる。

 

「しかし、よくもまあ。そこまで戦おうと出来ますね。俺なら疲れていますよ?」

 

「うん…………なんというかISに乗ると高揚するのよね。昂ぶっちゃってもう仕方ないわ。」

 

確かに、全能感すら感じられる…………というか実際に全能なのだ、俺の腕を直せるくらいには。それに気が付かない頭の固い人間どもが兵器として扱っているだけで、多種多様に使いようがある。

 

「確かに否定はしません。」

 

「そういえば、どうしたのその敬語キャラ?」

 

「これですか?ま、利益を上げれるのであれば尊敬はしますよ。」

 

と俺はカメラを見せた。ここには大量の写真が入っている。売れば一ヶ月は暮らせるレベルの。

 

「…………キャラは統一するか、だんだん変化させていった方がいいわよ?」

 

「分かってますし、それなりに本性は見せましたよ?」

 

むしろ本性というのが分からん。ただ、その人を見ていなかっただけだろう、けど本性というものをそこまで理解し観察しているような奴がいたらそれはストーカーだし。俺はパパラッチだ。

 

「それはあの言葉遣いの事かしら?」

 

「まだ俺には本性とか分かりませんよ。まだ探している最中です。まだ十五歳ですし」

 

こういっておけばいいだろう。というより話を逸らそう

 

「俺は……………。」

 

 

 

 

接待としては大成功だっただろう、それなりに満足して帰ってもらったらしい。

 

「いや~疲れましたよ鈴也さん。」

 

「一夏君も鈍感だったけど君も大概だねぇ。」

 

「アレは恋愛感情じゃないでしょ?負けたから悔しくて追いかけてくるみたいな感じで、実際にはバーサク野郎ですよ。女ですが。それとは関係無しにフラグはぶち折るものと考えていますし一ヶ月単位でかけたフラグぐらいしか俺には引っかかりません。」

 

「……………はぁ、強情というかなんと言うか。」

 

「生き方は変えられませんよ。」

 

 

生き方……………ねえ、目下の悩み事だな。



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涙ぐましい努力

「さて、データを整理しよう。」

 

このセリフを言ったのは俺こと相澤康一。なぜ、このタイミングでそれを発言し行おうと思ったのかは。

 

「なるほど、確かにこの暇であり、一夏は夏祭りで居ない、そしてその整理するデータの入手状況が逐一聞ける私が堂々とこの場に居れるこのタイミングが一番良いか」

 

と言う訳だ。はい、もう忘れているとも思うが微妙なチートことエネさんです。

 

「うるせえ。」

 

今現在、スマホにスピーカーを繋いで普通に会話できるようにしているし。ちゃんとマイクもつけてカモフラージュしている。もちろん、盗聴器の類もエネが無効化させてくれている。

 

「ああ、君同様にめんどくさかったがな。」

 

「なにそれ?おいしいの?」

 

「早速データを整理するか。」

 

無視それが最高のジャスティス。さて、パソコンをつけて何時ものように弾丸にUSBをブッ刺す。確かにここに入れているんだよな?

 

「ああ、間違いは無い」

 

「最近思考を読まなくなってきたな。」

 

もう、お忘れかと思うがエネは俺に寄生している。エネのとんでもない能力で脳内のことが分かるしそうさせている。

 

「まあ、思考を呼んでいなくとも信頼できる相手って訳さ。」

 

俺は手元にある無線式のマウスを動かしファイルを開いた。

 

「それはまあ良いや、というかデータは出たけどファイル名が全て英語じゃないか…………しらみつぶしに探してみるか」

 

「ああ、それに不必要だと思っていた情報が、後々必要になっていたとかよくある話さ。」

 

「まあな、じゃ上から開けていくぞ。」

 

一番上のファイルを開く。恐らく人物名であろう名前のファイルがそこに並べられてあった。

 

「私が受け取ったのは研究者のような人物だった。このファントムタスクとやらに技術提供しているらしい。」

 

「なるほど、VTシステムの構築事態はこっちの世界研究者クラブで作れるようなものとは言っていたな。」

 

一葉がそんなことを言っていた。そのファイルの中にあった情報はその研究者とやらが入手している人物の情報だった。内容は日本語だ。

 

「人物をリストアップしたんだろう、画像まで添付してご苦労なこった。」

 

パソコンを操作し、人物の顔名前を頭に入れておく。

 

「これは、人物の身分で分類してるな…………これは技術者か?」

 

「そのようだ、怪我をしていないのにも関らずごつくなる手つきが挙げられるな。」

 

しばらくスクロールしていくと興味深い人物が見えた。

 

「なんだ?この金髪ボインの姉さんは?結構セラフィーナと被っているな」

 

「それはアレだもうアレだ。触れてくれるな。」

 

「おk。えっと…………名前はスコール・ミューゼル。」

 

土砂降りってか。だけど女、IS操縦者、しかもかなり強い操縦者である可能性もあるし、実際に幹部レベルの人間らしい。

 

「ふむ、こちらでも探ってみるが、IS自体の応対も必要だからな得られる情報は少ないと考えていい。」

 

「いや、十分だ。情報を取る方法としてはお前を情報を取ってきたラボに二十四時間体制で張り付くという方法もない訳ではないが、危険だ、絶対にやるな俺の切り札が無くなると困る。」

 

それ以前にコイツを取られたくはない。それなら、どれだけリスクが少なからろうと、死地に行かせるものか。

 

「そうか、分かったよ。」

 

「…………幹部クラスか。だが、実際には実行部隊のたたき上げと言った所か。」

 

備考にそんなことが書いてあった。しかし、この情報を貰ってきた研究者というのも結構に多彩だな、ISのオペレーションシステムすら直すとは。まあ、世界研究者クラブの一員って話もあるからなぁ。

 

「なるほど、それで?この人とも戦うことになるかも知れないが、どうだ?勝算はあるのか?」

 

今の時点ではなんとも言えん。ま、それなりに何とかなるかな?

 

「次は、Mと言う人物か。」

 

「コードネームで呼ばれるってどれだけのマゾヒストなんだ!?」

 

「たぶん違うと思うぞ」

 

冷静な突っ込みありがとうございます。なぜだか長い黒髪に小柄な体、顔はISの付属品のバイザーに隠れて良く見えないが結構整った顔立ちをしている。と言うよりどこかで見たような気がしないでもない。

 

「使用ISがサイレント・ゼフィルス…………これは、イギリスの機体か。私も接触したことがある。」

 

「へえ、どんな奴なんだ?」

 

「結構癖があって絡みづらいが、鈍いやさしさと言うのか、良い奴だったよ。

機体の方だが基本的にはセシリア嬢のIS、ブルーティアーズの上位互換だ。それぞれのビット性能もさることながら搭載数と出力の上昇、それと特徴的なのはビットでシールドを張れるということか。」

 

なるほど、後は使う者の腕だなオルコット嬢のように明確な弱点が在ればいいのだが…………。

 

「次は、オータムと言うらしい」

 

「秋!次!」

 

「はぁ!?もっとグイグイ来いや!?」

 

確かにな。まあ、そこまでねえ…………顔と名前を覚えておこう。

 

「じゃあ、どんな機体を使うんだ?」

 

「アラクネと言うらしい。私は…………接触した時があったかなぁ?」

 

「無いのか?」

 

「まあ、結構固定されているメンバーが遊びに来ているな。たまに訓練機として使っているISの子守をしているが、その程度だ。あまり接触はしていない」

 

なるほど、ないものは無いと考えていいか。

 

「新たな情報が入り次第其方にも伝えるようにするさ。」

 

「よろしく頼む。それに、もうISを使う戦闘要員は居ないらしい。複数の組織も絡んで来るだろうから、この情報だけで攻勢に移るのは無謀と考えていいだろう。」

 

「そうだな、戦い方としてはそれに見合った方法があるんだろうな?」

 

そうエネが聞いてきた。

 

「あるにはある。だが、基本的にIS学園内でのたった一人の篭城戦となるだろう。いや、ここに来る目的は十中八九は一夏だ、だったらそれを俺に変えるって事もしないとな。」

 

「なぜだ?思考が飛びすぎてよく分からなかったが?」

 

「ああ、これだけの大規模な違法組織だ。一夏のISの出自や交友関係や全て洗いざらい調べられていると思っただけだ、それに俺がどれだけ変なものを持っていようと一夏の情報網や顔の幅には勝てないし、それに狙う理由なら一杯ある。」

 

「君が言うか君が。」

 

「いやいや?俺が言ったのはお願いで(・・・・)って言う話さ。俺が、何の見返りもなしに頼むと頭を下げても誰も手伝ってはくれないよ。」

 

「その前に君はその手伝ってくれというのを言わないだろうに…………。」

 

「まあ、そうだな。それよりいつファントムタスクとやらが介入して来るかだ。」

 

「いや、一つしかないだろう?」

 

「はぁ!?何言ってるんだお前?これからIS学園に居る2年ちょっとで幾らでも来るタイミングはあるだろ?」

 

「学園祭だよ。」

 

GA・KU・EN・SA・I!学園祭!

 

「ああ、なるほど。どうしたって警備が緩くなるか。だが、逆にチャンスだ。」

 

「ん?どうしてだい?」

 

「この場合相手の弱点が相手もプロだと言うことだ。」

 

「ふむ、何々?学園祭時には内装や人の流れが大きく変わる。それを利用するんだね?」

 

「思考読みやがったなこのこの野郎。まあ、端的にいえばそうだ、クラス単位で大体一ヶ月前から用意はするし企画はそれ以前だ。見込める集客率や持続的なもの学校主催のイベントなどをあわせると大体どの時間に現れるかと言うのはシュミレートはしやすくなるな。」

 

「なるほどな、その時は私も協力しよう私のIS処理能力を甘く見るなよ?」

 

「…………戦いは、もう始まっているのか。よし、今から動くか。」

 

「おお、なんというか少し成長した子供を見ているような気分だよ。」

 

「涙声になっているんじゃない!と言うか器用だな。」

 

「いや、君の演技のデータを真似してみただけだが?あの泣き落としは見事だったよ。」

 

「何のことかな?」

 

「白々しい。まあ、どこでやったのか忘れているのは仕方ないがな。」

 

どこで人を引っ掛けたかは忘れているな借りや貸しは絶対に忘れないんだが。

 

「そこで借りが出てきて私は一安心だよ。それじゃ、データ整理はこれぐらいにしておくか」

 

「ああ、そうしよう。俺もやることが増えたしな。」

 

 

ま、俺もこれで矢面に戦う準備が出来たか。はぁ、大丈夫かな。

 



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一人は居る

夏休み……………なんて甘美な響きなんだ…………。と思っている時がありましたね。

 

「この夏休みの敵を倒すまではッ!」

 

ただ!夏休みの敵を終わらす為だったらこれだけ楽なことはない。だが!

 

「康一…………お前今日が夏休み最終日だぞ?」

 

「そうなんだよね。」

 

いろいろ。やってたからなぁ。

 

「って、どれだけ溜まってるんだ?」

 

「ほれ、アレじゃ。」

 

「……………アレ、積ん読じゃなかったのか?」

 

「俺がどれだけ本読むと思ってるんだよお前は。天井までそそり立ってるじゃねーか。」

 

俺の前に宿題の塔が建築されている。

 

「その量を全部やってないのか?」

 

「ああ、ものの見事に」

 

なんでやねん、本当にもうさぁ。どこぞの蛇のようにやった諜報行動とか知り合いに顔を出していたら長かった夏休みも塵芥だよもう。

 

「これも、これも、これもこれもこれも!全部やってねえじゃん!?」

 

「言っただろう?ものの見事に全部やってないと」

 

「お前、終わったな…………そうだ、康一昔話をしてやろうか?」

 

「フフッ、このような状況で光明が見出せるような話だったら大歓迎さ。」

 

と言うより、どうしてくれようか比喩でもなんでもないこの宿題の山は?

 

「それは、俺が中学二年生ぐらいの時だった。そのとき俺は、いつまでも帰って来ない千冬姉に苛立ちを感じながら待っていて、帰って来ないのが当たり前だった。そんな状況下で少し、そう少し羽目を外したときがあった。」

 

「夏の日の思い出だな」

俺も少々無茶をやらかした、今年の夏休みを振り返った。

 

「まあ、言うなればそうだ。そうしてある夏休みの時俺はお前と同じような状況になっていたんだ。そして…………運命の時がやってきた。

インターフォンが鳴った。俺は客人かと思った。その時はまだ、額から汗がにじむ夏の熱い空気が残っていて、夏バテした気だるい体を引きずり俺は玄関に出た。すると、いつもは顔を出さない千冬姉だったんだ。」

 

「それで?」

 

「夏の熱気が篭る玄関の中、何時ものように涼しい顔でこういったんだ。『ただいま』って。まあ、喜んださ。たった一人しか居ない肉親だ、お帰りと言ってスーツを渡すように手を差し伸べた。その時浮き足立ちながら、迎えようと麦茶を出そうとしたその瞬間」

 

「ゴクリ」

俺は固唾を飲み込んだ。

 

「『一夏。お前宿題はやったのか?夏休み中だろ?』次の日俺は、完璧な答案と三倍に膨らんだ顔を持って登校すこととなったんだ…………」

 

「一夏、お前誰が怪談をしろと言ったよ畜生!?」

 

おかげで俺の無い弾袋は縮み上がってるよ!?

 

ならば俺は、俺は生きる!生きて!ギャルゲと添い遂げる!!さあ!ペンを執れ!気合を入れろ!すべては、明日を生きる為に!!

 

「ウオオォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォッ!!!」

 

生命の危機に瀕した時人間は走馬灯を見ると言う、その走馬灯の正体はその危機から脱する為に自身の持っている記憶を全て洗いざらい調べるのだ、それらが脳裏に浮ぶことを走馬灯と言う。

つまり、今の俺は完全な記憶を辞書のように調べられる…………光明が見えてきたぜ!!

 

 

 

 

 

 

「今更…………ウソとは言えないな。」

 

 ◆ ◆ ◆

 

夏の熱気が去りつつあるこの季節。IS学園1年1組の教室でその教室の担任、織斑千冬は教壇に立った。

 

「えー今日から夏休みも開ける。それにあたって、どうしても気が緩んだ者は出てくるだろうが、気持ちを切り替えろ。切り替えられなかった奴は私が直々に叩き直してやるから覚悟しておけ。」

 

「「「「「「「「「「「ハイ!!」」」」」」」」」」」」」

 

まるで調教された犬、もしくは軍隊のような合唱。それには似つかない高い黄色い声と形容されるような声で言った、つまりはここの慣例である。

その返事の余韻が残りそれが消えるか消えないかの時に、もう一人この教室の副担任、山田真耶が前に出て連絡事項を告げた。

 

「はい、それより。宿題ですよ。後ろの人が列の人みんなの分を持ってきてください。」

 

 

 

「俺は…………やりきったさ。」

 

「康一…………なんかおかしいと思ったらそれ全部補習だったのかよ!?それを一日とかポテンシャル高過ぎね!?」

 

 

 

酷くやつれきったような顔で、タワーを持っていた。

 

 

 



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文化祭編
授業という名の苦行


「ああ、死ぬかと思ったぜ」

 

俺こと相澤康一は前回の夏休みの宿題+補習を一日で終わらせると言う苦行を果たし、その第一回目の授業を受けに行くところだ。全く最初からISの実習だなんて、運が悪い。

 

「実際に康一が鬼気迫るような顔を始めてみたな。」

 

俺が隣を歩いているのは織斑一夏。とりあえずその性質を簡単に紹介すると、鈍感系主人公の一言に尽きる。まあ、それなりに強くなる理由や天才設定などもあるが、それははしょる。

 

俺たちが歩くIS実習の為のアリーナに行く途中の廊下が、清掃員のおじさんに敬礼したくなるほどに蛍光灯の光が反射している。暇なことだ駄弁りながら歩いていこう。

 

「死にそうになったら誰でもそうなるわ。どうだ?泣くまでやっちゃろうかゴラァ」

 

俺は少しシャドーボクシングの真似事をした。喧嘩を売っていくスタイルであるのは間違いは無い。

 

「やめておく、俺より強い人が止めに来るから」

 

「まあ、そこまで本気じゃないし、次の授業に腕釣ったままIS乗るのは望ましくない。」

 

「それは当たり前だろ、と言うかこんな所に抜け道が有ったとは…………。」

 

「何時も授業に遅れそうになるお前を見越してな、いやぁ、大変だったぜ…………買収が。」

 

一夏の声真似をして即興BL演劇の音声を漫画研究会売りつけたり。ただ単に金とか写真とかな。

 

「なんか不穏当な言葉が聞こえたけど、どうした?」

 

「なんでもね、さて新学期初めてのIS実習、そして俺の始めての初陣だ」

 

どれだけ、戦闘を回避してきたと思っているんだ…………大体俺が真正面から戦って勝てる相手でもないだろうに。

 

「いっちょ気合入れて行きましょうや。」

 

「そうだな」

 

 ◆ ◆ ◆

 

さてと、今回は対岸の火事じゃないし。ちゃんと見ておくか。

 

最初にやるのは一夏VS凰、その次にオルコット嬢VSデュノアの娘っこ、ラウラVS俺という順番になっている。箒さんは専用機を持ったばかりということで待機。

 

「最初に専用機持ち達の実践を見てもらう、見ることも勉強だ」

 

管制塔から出てくるその担任の言葉に全員が首肯した。ここで首を振っても意味は無いのに、ここら辺は正直調教といっても良いレベルだろう。

 

「それでは、織斑、凰!始めろ。」

 

「「はい!」」

 

さて、ISを展開したな。

展開したISは凰の機体は近距離用格闘タイプの機体「甲龍」この機体のミソは特種兵装「龍咆」空間に圧力を掛けた見えない砲身砲弾を、威力を自由に変えながら撃てる優れもの。

なんか、初めてまともにISの説明したような気がするなぁ。

 

対して一夏の機体は「白式」極近距離格闘タイプの機体……………だったのだが、例の事件ISが暴走した時にセカンドシフト(つまりはパワーアップ)を果たしシールドに量子荷電砲、そしてクロー。他にはブースターが二つ程増えて、四個になっている。

元々ピーキーな機体に無理やり汎用性を持たせて逆にピーキーになっている不思議な機体だ。

 

そんな二人の試合展開は、凰のヒットアンドアウェイに一夏が喰らいつくといった感じになっている。…………しかし、一夏も強くなったもんだな。けど詰めが甘い。なんでピーキー機体なのに普通に扱ってんだよ。

 

あ、一夏が良いところまで行ったけどやられた。

 

 

 

次はオルコット嬢とデュノアの娘っこだな。

同じように展開して、そのまま上空へ。

 

オルコット嬢の機体は中距離射撃のオールレンジ攻撃の機体「ブルー・ティアーズ」これはアレだ、ピットとか言う特種兵装が売りだ、まあ、アレだファンネルだ。

デュノアの娘っこの機体は中近距離用の機体「ラファール・リバイブ」これはアレだ、あの親父のことだから魔改造を施されたISの皮を被った化け物だ。

実際の機体スペックは、器用な汎用機カスタムの域から出ていない。しかし、それを操る人物が問題だ、機体の持っている器用さを最大限に活かしきるラピットスイッチと言う技術。

通常ISは武器の呼び出しを行うのに少しのラグのようなものがあるのだが、それを人間が認識できるか出来ないかのレベルで行う、すると、武器の特性を切り替えつつ攻撃できるので非常に有利という寸法らしい。

 

と言うか、本当にここまでISのこと話すのは初めてなんじゃ?試合は、オルコット嬢の勝ちだ。

 

さて、次は俺の番か…………。

 

 

 

 

 

俺とラウラの出番になった。

 

「それじゃ、よろしくお願いしますよっと。」

 

「よろしくお願いします!!」

 

挨拶をしながら「カゲアカシ」と呟き装備した。このカゲアカシはオルコット嬢の専用機と同じ中近距離でオールレンジ攻撃が出来る。むしろ、推奨する用法で戦うとビットによるオールレンジ攻撃しか出来ない。しかし、謎技術でビット一つ一つのエネルギーを凝縮して放つものとか、ビットから出るビームサーベルがある。

 

とまあ、そんなステキ機体だが、今回は全然それを使わない!。

 

対して、ラウラの機体は「シュヴァルツェア・レーゲン」そうだな、これを一言で表すのであれば「ドイツの技術力は世界一ィィィィッ!!」だ、緊縛プレイの縄、プラズマ手刀、レールカノン、そして相手の動きを無条件で止めるAICなどがある。もちろんそれを操る腕も凄いのだ。

 

まあ、それ以外のものも有ったわけなんですが。

 

さて、始めるか。

 

 

「ほれ。」

 

俺は大量にスモークグレネードをばら撒いた。これは別にISの目晦ましになるとかそういうことではない、普通に金属(メタル)歯車(ギア)な世界で投げられるようなものだ。そうして俺が目を晦ませるのは観客の目だ。

 

「何がしたいんですか?」

 

「こんなふうにするとさ…………あの馬鹿げた一撃が全部推進力に変わるんだよね。」

 

俺はゴセイヘッ○ーの取り付け口のような場所に、全15個のビットをくっ付けた。俺とラウラの距離は5mほど、それを。

 

「十五夜」

 

ドコン!!

 

一瞬でつめて推進力を打撃エネルギーに変え、それを腹に突き刺すように打つ。異常なまでの拳の加速についてこれず、肩の辺りから変な音がしたが、力で強引に押し戻す。

このままじゃ不味いどうにかしてベクトルを地面に向けて放たないと肩が脱臼するし、それ以前にラウラが滅茶苦茶くるしそうだ。

 

「やった!」

 

ベクトルを下に向けても痛い!?ヤバイ、壁に突き進んでく拳って、さっきは、抜けるような痛みがしたけど、今回は押され過ぎてヤバイ!あの「ラグナロクの一撃」よりかは痛くないけど、これは日常からしたらマジでいたい!脱臼しかけるような痛み!やるならやれ!

 

「あ、エネルギー切れた。」

 

全部のペトゥルのエネルギーが切れて拳の推進力が無くなった。それと同時に俺の肩の痛みもなくなってきた。ラウラ、気絶してるし。

 

「…………やっちまった。」

 

丁度スモークが晴れた。

 

「勝利か、物凄い後味が悪い。」

『そりゃ、まともに戦っていないからだよ。』

 

とりあえず、気絶したラウラを運んで俺の戦歴に白星がついたことを、ここに記しておこう。

 

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

俺が勝利し、その後ワチャワチャと実習をして終えた授業と授業の間の休み時間だ。色々と勝利について先生たちの頭を悩ませたりしたがそんなことはどうでもいい、もうそろそろ

 

「お前、何やったんだ?」

 

「企業秘密です。」

 

大体勝てたのってカゲアカシのスペックとただの奇襲だ、むしろそれ以外で要因と言えばスモークグレネードだな、アレで注意力が散漫したんだ。

 

そんな話をしていると、不意に後ろから肩を叩かれ、そして振り向いた。

 

そこには、水色の髪の毛の赤みがかった目が特徴的な、何処かで見たことあるような気がしないでもない、まだあどけなさを残した女性の顔が目の前にあった。

 

その女性は唇に人差し指を当てて俺に黙っているように指示し、一夏の真後ろに立った。

それ、ゴルゴだったら死んでいるぞ?

そして、嬉々とした表情で手で視界を塞いだ。なるほど一拍置いたのは。

 

「ダーレダ!」

 

俺が野太い声で、そう言った。

 

「ええ!?……………だれ?」

 

ですよね、イタズラってとても楽しいですね。一夏が、手を振りほどいて、俗に言う「だーれだ」をした人を見た。

 

「本当に誰!?」

 

「引っかかったな~」

 

さて、俺はこの人間が一夏に気を取られているから逃げるか。逃げるが勝ち!

 

この、一瞬の出会いは…………かなりの命運を分けたんだ。

 

 

 

 

 

「……………全力で走っても時間には勝てなかったよ。」

 

完全に次の授業に遅れた。

 

「相澤、何か言い訳があるなら聞こう。」

 

殺気を出している、少し握りこんだ拳が鉄菱と呼ばれる握り方になっているほどには怒っている。こうなれば!

 

「変な女に絡まれたんで一夏になすりつけてきました!!!!」

 

ドムッ!!

 

「人間の……………クズが。」

 

「せめて反論できる悪口でお願いできませんかねぇ」

 

俺は腹を殴られ過呼吸になり足をプルプルと震わせながらそういった。てか衝撃を殺し切れなかったぞ。

 

「すみません!遅れました!!」

 

「良いんだ、災難だったな。さあ、席に戻れ。」

 

 

「一夏、貸し一な」

 

「えっ!?なにがあった?」

 

クソ、あれこの学校の生徒会長じゃねーか。なんだってあんな所に……………。

 

「それでは授業を始める。」

 

担任殿の号令で授業が始まり俺は震える脚で席についた。



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語尾に縛りプレイを入れるとなんか卑猥に聞こえる。

真っ暗な空間に人の気配が二つ、どちらも親友の再会を喜んでいるような喜色とは程遠い気配を放っていた。

そんな中、片方の気配が口を開いた。

 

「報告だが、ついに奴が動き始めた。」

 

男の重く苦しい、腹のそこから響く声がその空間に投げられる。

 

「そう…………私にも、影響が来るわね。」

 

その声を返したのは甲高いとはいえない、落ち着いた物腰の才女を思わせるような女の声だった。聞く者に切なげな印象を与える言い回しで、その声の主はそういった。

 

「どうする?」

 

「私のほうの問題はすでに解消済みよ。だけど、それを奴が知っているか知っていないか」

 

一瞬で、空気が切り替わった。

 

「お前が掴んだ奴の動向はどうした?」

 

「私からは音沙汰無しよ。腐っても暗部って所かしらね?」

 

「俺としてはそのまま腐り落ちて欲しいんだがな。まあ、いい。奴の最近の動向に…………」

 

「ちょっ、もう止めない?」

 

女の声がさっきの雰囲気から一変して、かなりフランクな口調になる。

 

「ええ?これからが楽しいのに。まあ良いや。」

 

どこからかカチッと言った音がした。するとその空間に電気が灯り二つの声の主が姿を現した。

 

「何やってるの康一?」

「ちょっと報告をな。まあ、なんにせよ久しぶり簪」

 

…………いや、ちょっと暗躍感を出したかっただけなんだ。

 

「んで、生徒会長さんがやり始めたのは、文化祭での全員参加型の催し物らしい。そのための準備が刻々と進んでいるらしい。」

 

「どうやってその情報を仕入れたの?」

 

「企業秘密」

 

「あっ、はい。私のお父さんに頼んで空にしたのね。」

 

「なんで分かるんですかねぇ(怒)」

 

「貴方の常套手段だし。」

 

「何時も使ったわけじゃないけどな。つまりはそういうことだ、たぶんこの後は一段落するだろう。その時はきっとそっちに飛び火する。」

 

「ああ、そう。そっちも頑張ってね。」

 

「俺も今回のことで狙われないとは思うが、用心しないとな」

 

実際は俺から当たりに行くんだがな。それは黙っていた方がいいだろう。

 

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

「用心しないとなとか言っていたんですがねぇ」

 

「そうなの?だけど残念ね。」

 

「ええ、荒縄で俺の体をグルグル巻きにするようなヘンタイ趣味の人に拉致られるのは非常に残念ですね」

 

俺は今生徒会長さんに拉致られている。もっとスタイリッシュにやって欲しいもんだ。

 

「それより、なんですか?この状況?女王様の練習ですか?」

 

「よくもまあ、しゃあしゃあとそんなことを言えたわね?。」

 

口元で扇子を開く、そこには謎と書かれていた。俺も謎だよ。

 

「はて?何のことやら?」

 

心当たりとしては一つある、以前顔を見せた生徒会長は、あの日以来俺の身柄を確保しようと躍起になっているのだ。絶対に自衛の為の特訓とかやるんだろう(と言うより一夏が必死に練習していたのを見た)が、俺はそれ以前にやることがある。

 

「なんで、そこまで逃走技術があるのかしら?」

 

「ああ、いじめられていたんで、朝飯前ですよ。それに、強者の気持ちを読むのは長けているんです。」

 

上手く取り入るとか、怒らせるとか。まあ、本当の強者は怒らないが。

 

「確かに、人に溶け込むような…………いや、溶け込ませちゃいけないタイプね。」

 

持っていた扇子を閉じて、頬に当てる。よくそこらへんの癖を見ればウソも見破れるな。

 

「あらら。やはりそうですか。で?どうするんですか?この状況からでも入れる保険があるのであれば私は大歓迎しますがね。」

 

「私のコーチを受ける気はない?」

 

「ないですね。」

 

それよりやることがあるんだってば。

 

「このままだと死ぬわよ?」

 

「バカか。…………失礼。ですがそれは覚悟の上です。と言うかISなんて化け物を男の俺に放ってこられた時点で覚悟はしています。しかも、俺は後ろ盾が全くない。」

 

後ろ盾の部分はまったくのウソだ。

 

「母に復讐できるわよ?」

 

「良い者が発して良い言葉じゃないですね。それに、母は一度も会ったことはないので特に何も思っていません。」

 

俺の出自を調べたりして、やる気を起こす言葉を選んでいるのだろう。俺が動く理由って金ぐらいしか思い浮かばないし…………そうだな、この状況を打破する言葉は。

 

「君は弱いし、このままだったらすぐ死ぬわ。それでもいいの?」

 

「俺が弱くても誰が迷惑が掛かるわけでもあるまいし」

 

本当にその一言に尽きる。

 

「…………君が弱かったら、一夏君が助けようとするわ。あの子は確実に、どれだけ自分が傷付こうとも。」

 

理由が出来た。俺が腰を上げる理由が。ありがとう君が優秀じゃなかったら、こう上手くは行かなかったよ。笑みを今日食べる夕食のように殺した。

 

「そして、周りの人が手を貸すわ。巻き込んで巻き込んで、彼の人脈は凄いわよ?」

 

それは十二分に分かっていることだ。今、活かさなければいけない感情は悲痛、自身の力なさを恨むようなそんな感情。

 

「そうですね、俺とは比べるべくもない。」

 

正直、ここで流されて特訓エンドが一番楽であることは間違いないんだが、後がめんどくさい。だけど、泥を被るくらいなら出来る。と言うかうっ血してきて感覚がなくなってきた。

 

「だが、そんな俺をどうしてコーチしてくれるって言うんですか?」

 

「…………世界的にテロ組織にISが渡ると痛いのよ。それの自衛のために貴方を強くするの。」

 

まあ、予想は付いていたがな。ここ最近IS学園の事件といえば、4つ、無人機襲撃、ISの暴走×2、その内テロ組織『ファントムタスク』の介入が入っているのは3/2。ここまでやられているんだから事前策も必要だわな。つーか、俺程度が調べられる情報など俺以外の誰かには絶対に知っていると思うわ。

 

「あんた側の事情は分かりました…………ですが、条件、というよりお願いを聞いてもらってもいいか?聞かなければISを持って高飛びという強硬手段もとることは厭わないですよ?」

 

「させると思って?」

 

「フッ、出来るとお思いで?。」

 

「そっち!?。……………で?条件って言うのは?」

 

「俺を生徒会の小間使いにしてくれればいいです。それがコーチを受ける条件」

 

むしろ、俺に必要なのは情報だ、そこで一括で情報収集できれば俺がジタバタする必要はない。ここまで粘ったのはこの生徒会長へのキャラ付けだ。

 

「うーん、なんと言うか。貸しを作っているのか、借りを作っているのか分からないわね。それ」

 

確かに俺は借りを作ったとも言えるし、貸しを作ったともいえる。

 

「ええ、コーチつけるって言うことをして貰っているのに対して。俺が何もしないわけにはいかないですし…………そうですね、忙しそうだし文化祭の間くらいは小間使いになっても良いと思っています。」

 

「なにが目的なの?」

 

…………切り札。貰うぜ。その笑顔の化けの皮を剥がしてやる。

 

「更識簪」

 

一人の妹の名を言う。俺のではない、この目の前にいる生徒会長の妹だ。喰らいつけ喰らいつくんだ。

 

「なにが言いたいのかしら?」

 

「不仲なんでしょう?」

 

笑顔で言う、まるで口の中の飴玉を転がし楽しんでいるように。

 

「…………そうよ、それがどうしたというの?」

 

「学校の一大イベント文化祭だ。そりゃ、簪さんだって生徒、浮つくのも無理はない。」

 

「どうしたといっているんだけど?」

 

「それ、本気で言っているとしたら一夏レベルの鈍感ですよ?日常生活に支障が出るレベルで、病院にいくことを進めるますよもちろん、頭のね。」

 

「彼のことをどう評価しているの!?」

 

「最強のブラコン、もしくは鈍感系主人公ですね。……………話がずれました。俺が、貴女方の姉妹仲を改善したいと思っています、なにか文句でも?。」

 

むしろ、改善しろ。まだ救いようのある両親を持っているんだからよぉ。っち、マジで恵まれていることに感謝しろよ。

 

「なんで…………?」

 

「その理由まで話すのですか?」

 

早くしてくれ、そろそろ感覚が無くなって来た。それに、たぶんこの人は俺が簪と恋仲になり、書類をチョロチョロっと改変して一緒の部屋にしようとか考えているんじゃないだろうか?

 

「ええ。」

 

「…………俺は親と、あまり顔合わせたことがないんで。そんなんですから、どうにも家族というものが不仲になるといやな感じになるんですよ。」

 

「そう」

 

この場合、親と顔を合わせたことがないか真実で、それから後がウソだ。

 

「で?どうする?この条件飲む?」

 

「願ったりかなったりで嬉しい限りよ」

 

でも、それが怪しいのよ。と言葉には出さないが、その表情がそう物語っていた。まあ、手元に置いておくということは反乱もしくはそれに準じるような行動をしても、すぐに対処できると判断したからなのだろう。それ、正解。

 

「それじゃ、よろしくお願いしますね。」

 

「ええ、時間も惜しいし特訓。覚悟していなさい?」

 

こうして、生徒会長からのコーチを受ける事になった。

 

「で?名前聞いてなかったんで教えてもらえます?」

 

「知らなかったの!?」

 

「名前を呼んだことは一度もないんですが?」

 

「更識楯無よ。改めてよろしく。」

 

といって、踵を返した。その後姿は惚れ惚れするほどに美しいと思った。

 

「…………って、縄外せぇ!!」

 

「散々、私をコケにした罰よ」

 

いつの間にか開いた扇子には罰と書かれていた。…………そりゃねぇよ。

気付かれない程度に、俺は溜息を付いた。

 



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更識楯無との戦闘

「それじゃ、特訓を始めるわよ。」

 

「うぃっす」

 

俺こと相澤康一は、今IS学園生徒会長こと更識楯無に教えを請うて(条件つき俺のほうから)最初の一声の通り特訓を始める所である。…………まあ、俺がまともにやってお眼鏡に適うような動きが出来る訳ないけどな。

 

「ISを展開して。」

 

「はい。……………カゲアカシ!」

 

俺はカゲアカシを呼び出した。いつ見ても地味な色合いだ、それでも透明化は出来るからそこまで地味でもない気はする。

 

「名前を呼ばないと呼び出せないの?」

 

「いや、それ以外でも出来ますが。ビックリするほど遅いですよ?」

 

「やって見なさい。」

 

俺は戻れと呟いた、実際に遅いんだけどなぁ…………。よし、確か自分がISを装着するという強いイメージを持って呼びだすはずだ。一夏とかだと長くて二秒三秒辺りだけど俺は。

 

体の回りが発光し始める、ここで10秒。次に、手足からISが展開し完成するのが30秒。そして、やっと出したISが体に装着されるまで20秒。一分程度余裕でかかっている。

 

「出している途中に三回ほど死ぬレベルね。」

 

「でしょう?」

 

もう何回も練習しているが、全く動かない。

 

「部分展開と武器の呼び出しだけならまだ良いんですけどね。」

 

「そんな馬鹿な話があるわけないでしょう?」

 

「ほら」

 

俺は右手の装甲をしまって出した。

 

「…………微妙な特技ね。ラピットスイッチほどは早くないけど。」

 

「一つずつだったら結構早いんですけどね」

 

そして、大きなため息を付きながら楯無はこういった。

 

「とりあえず、戦ってみましょうか」

 

「本当ですか?…………なんでです?」

 

「相澤君の戦い方が分からないからよ。戦い方が分からなければ、どう教えても分からないからね。」

 

またかよ、俺の戦わない主義によって出来た実害か…………まさかここまで出てくるとは。俺は心の中で溜息を付きながら、再びISを展開した。

 

「カゲアカシ」

 

俺のほうは名前を呼んでの装着、だが生徒会長は名前を呼ばないにもかかわらず俺の装着より早いISの装着だった。装着したISは水色を基調にした、装甲が俺のカゲアカシのような一歩間違えば全身装甲となるようなISに比べるとほとんどなく、胸や腰、頭など体の重要な部分にしか物理装甲が届いていない。まあ、正直ISにはバリヤーがあるからそこまで装甲がいらないのを分かる気がするが。

特徴といえば左右に浮いている結晶状の物体、そこから水のようなものを分泌して、自身の身に纏っている。武器は右手に持っている槍…………いやこの場合はランス、それに腰につけている剣だろう。

 

「行くわよ。」

 

その目に野生の闘志が見えた気がした。

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

……………さて、始まったわ。この子はどれほどまでやるのかしら?

 

「オオッ!!」

 

まずはISでの打撃ね。…………体術は点でダメ、重心の移動、姿勢、殴り方、連携の仕方。言うなれば体術というよりは素手ごろの喧嘩ね。少々やっているような感じではあるけど、私ほどではないわ。

一度、生身で戦ったという情報を得たけど…………ガセネタをつかまされたかしら?

その殴って来る勢いを使って投げる。

 

「それでは届かないわ」

 

なんで、武器を使わないのか理解に苦しむわね。距離をとって、試してみるかしら?

 

「っち、ペトゥル!」

 

手に呼び出しているのは恐らく形状からしてビットね、それにビーム兵装のおまけ付き。なるほど、そんなものを渡されておいそれと使える訳がないわね。

代表候補生が血みどろになって練習している物を渡されて素人がホイホイと使えたら面目が丸つぶれですもの。

 

なるほど、ビットを自分の腕の周りに置いて、そのまま発射か。そうすればそこまで動かさなくても手に追従、発射のプロセスでそれなりの攻撃能力が期待できるわ。なるほど、とっさの機転は光るものがあるわね。けど。

 

「そんな物じゃ、アクアヴェールは敗れないわ!!」

「クソッ効かないんかい!?」

 

動揺を表に出してしまう詰めの甘さが出ているわね。今度はこっちから行こうかしら?

 

「格闘攻撃はこうやるのよ!!」

 

イグニッションブーストからの、超振動するナノマシンが入った水を纏うランス、蒼流旋を一撃二撃。

…………なんと言うか回避は一流ね、いじめられると言うのはそこまで回避能力を上げるのかしら?

 

「クソダラァ!!」

 

彼が手の周りに顕現させていたペトゥルという武器を、一つ残して回収し。その一つを持った、そこから、ビーム状の物が伸びて刀剣の形を作った。

 

「面白い武器ね!」

 

ランスとサーベルが一合二合打ち合わせていく、ランスを避け、その隙にサーベルの一撃を与えようとする。

まるでヤンキーが鉄パイプを持って暴れているようなワンパターンの剣筋に少し呆れてしまうわね。

完全に一般市民としか言いようがない……………けど解せないわね、それならなぜイタリアの国家代表を倒せたのかしら?となると、とんでもない隠し玉を出す機会をうかがっている?

 

「だぁ!!」

 

もう片方の手に刀剣状態のビットを呼び出させながら、攻撃。…………極限にまで普通の行動ね、もう一捻り欲しい所ね。もう少しギリギリまで削るか。

 

「その程度かしら?」

「オオオオッ!!」

 

しかし、まあ、本当に子供の遊びみたいね。右に振り切ったら左から切る、とりあえず、振り切ったらその逆としか考えていない。一夏君は剣術の覚えが多少あったからまだいいけど矯正するには結構掛かりそうね。

 

「…が…えた」

「どうしたのかしら?」

 

「色が見えたぞ!油断している色が!!」

 

右に振り切っていたのだが、そこから肩から体当たりしてきた…………これが切り札?そんなわけは…………っ!?

 

「オオオオオオオオオオオオオオッ!!」

「んな!?」

 

左から来る極太のビームサーベルの熱量。……………無事じゃいられないわね。

目をしかめる程度の光がやってきた。

 

「…………やったか!?」

 

纏っていた水が蒸発し、あたりは霞がかっている。

 

「それ、フラグよ?」

 

「!?」

 

「ねえ、少し湿気っぽくない?」

 

「なにが」

 

「これで終わりよクリア・パッション(清き熱情)

 

指を鳴らした、あたりに爆音が響く。…………終わりね。水に含まれているナノマシンを発熱させて水蒸気爆発を起こさせる、あの距離でやったらまず無理ね。

 

「…………おぇ、降参」

 

 ◆ ◆ ◆

 

…………ほらな?俺は基本的に劣っているんだよ。まあ、手段を選ばなければこの程度だ。落し所としてはこれでいいだろう。

 

「はぁ…………辛い。」

 

「基礎的な戦闘能力を底上げするしかないわね。一夏君のようなピーキーな機体じゃないみたいだから。」

 

「バカ言え…………失礼、ファン○ルしかないような機体で、ピーキーじゃないってどうと言えますか?」

 

「ここではビットといいなさい、フ○ンネルはまた別物よ。」

 

俺は今から、力の無い一般人を装わなければならない。たとえ、エネと言うチートコードを持っていようとそれをおくびにも出してはならない。

 

『人をチートコード呼ばわりするとは君も偉くなったものじゃないか?』

 

俺は何にも聞こえねえ。さて、とりあえずそれは置いとき。

 

「で?どうするんですか?特訓とやらは?」

 

「基礎的な戦闘技術の向上よ。その機体は使用者の腕で強さが左右される類ではないし、何よりBT兵器とオールレンジ攻撃が出来るという特殊性を兼ね備えながら、汎用性も出来上がっちゃってる。

だから、君の戦いからしてある程度の機体の能力は引き出しきっているから、伸びしろは自身の戦闘技術だけね」

 

「なるほど」

 

いや、ただ何も考えず(・・・・・)に戦ったらそうなるだろうし。

 

「…………それじゃ、今日はここまでにしましょうか。」

 

「へえ、もう少ししごかれるものだと思ってましたけど?」

 

「貴方の目が濁り切っているからよ、そんなんじゃコーチするにしても実にならないわ。」

 

それはご最もで…………。それでは、お目当てのものに手を出し始めますか。

 




彼がまともに戦ったらこんなものですよ。


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生徒会の一員(補填要員)

さて、それじゃ。情報を探しに行くとしますか。俺は生徒会室に赴いた。

 

「お邪魔しまーす」

 

扉を開けると、そこには紙の山が聳え立っていた。それがただの生徒会にしては物騒なものもある書類のようなものであることを確認した俺は、逃げるようにして、と言うより逃げる為に踵を返し。

 

「逃がすか、そういう約束だったでしょう?」

「ただの生徒会にこんな量の書類を押し付けるのって反則でしょう?」

 

読みが甘かった。…………その読みを間違えなければ俺は、この書類の山を見ることはなかったのか。

この書類の山を俺の目から見て、この状況は国際的な暗躍と契約が見て取れるのだが、それをここで記述してしまうと、「なに言っているんだよ、さっさと進めろやボケが」と言われてしまうかも知れないし何より、特にそれで俺の身になにが起こる訳がないから語るのは控えさせておく。

 

「ただの生徒会じゃないからよ。」

 

「一夏だったらそうかで済むんですがね。」

 

まあ、良いや。俺に至っては契約という形で労働力を出すことになっているからな。ククッ、確かにこれを手伝ってくれると言うのは奉仕の部類に入るな。

 

「冗談です、それじゃチャッチャとやりますか。」

 

俺は学生の必需品シャーペンを胸ポケットから取り出しながら、その紙の山から一枚抜き出し書類に目を通した。

 

これは人物のリストアップか、なるほどなるほど、IS学園は試験学校の側面もある、それの出来高や水準を満たしているかどうかを調べる教育なんちゃら的なあれか。

 

「ちょっと?、そっちは終わった奴よ?」

 

「え?」

 

俺の眼前にある書類の山によって出来た死角を埋めるべく、体を移動させると…………。

 

「わあ、まるで生徒会室のエベレストや~。」

「どこぞの食レポのようなことは言わなくて良いから。」

 

天井に届かんとしていた書類の山が乱雑に置かれていた。

 

「倒す。」

 

俺は、剣じゃない、シャーペン一本を握りしめ、戦いを挑んだ。

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

「はぁ…………これを今日もやるのか。」

 

生徒会の手伝いをし始めて、早数日。

目の前にあるエベレストからモンブランくらいにまで減ってきた書類の山を見据える。半ば諦めが過ぎるが、そんなことを思っていっても仕方がない、とりあえず仕事を進めることにした。

 

部屋の真ん中に置かれている提出書類の問題のある箇所を直しては、生徒会長に渡す。そのような作業を続けて早3日、ここ生徒会室の仕事にも慣れてきた。

 

しかも驚いたのが24時間体制でこの生徒会室に居ても何も文句も言われないという、授業中でさえ生徒会という免罪符があり授業を免除される。

まあ、免除されるにはそれなりの成績があるが、俺の場合はIS基礎学力を除けば大丈夫と言った程度だ、俺は、授業受けていなくても少し教科書見れば平均点は行く。

俺は授業が終わった後に行っているのであまりその恩恵を受けれてはいない。

 

とまあ、そんな生徒会についての情報は三つ。

一つは構成員が三人と少ないこと。大体、五人とかで回しているのだがそんなことはない。三人だ、しかも一人は俺のクラスメイトらしい、それでもそのクラスメイトの情報処理の腕が壊滅的に悪く手伝おうとすると仕事が増える有様らしい。

 

二つはこの生徒会は日本が、IS学園内で好き勝手やりたいがために存在しているらしい。IS学園の生徒会長は生徒内で最強の人物から選出されるのだが、他国にとってはIS学園は日本と言う敵地だ、そんなところに国家代表と言う貴重な人材を投入するかと言われればやらないだろう。

 

三つは文化祭時に生徒会でもイベントを企画しようと言うことが上がっているらしい。これは少しまずいな。

 

とりあえず、情報はこの三つだ。追って話が来たのならば、その時に考えるかも知れないな。

 

「まだまだよ、常時デスマーチ状態でやれって言うんだから、上も鬼畜なものよね。」

 

そうですかね。私にとっちゃ、あなたの存在も鬼畜なんですがね?いやいや、まだだ、まだ猫を被り続けるんだ。

ん?生徒会長が何かを言いたそうにしている。

 

「ま、君が居るおかけでかなり助かってはいるから、少しお茶にしない?」

 

「やめておきます、あなたのように虚さんに怒られるのは嫌なので。」

 

「ウッ!?…………やめておくわ。」

 

この人も学習しないな、(うつほ)さんはクラスメイトじゃないもう一人の生徒会構成員だ、生徒会長を気まぐれな猫と表現するのであれば、あざとい忠犬と言ったところか、天然なエロさがにじみ出ているお姉さんだ。

全く、生徒会長もたまにお姉さんと言うのであればそういうところを見習って…………。って、何を俺はおっさんじみた事を言っているんだ。

 

「それではやりましょうか。」

「ええ、それはもう。」

 

こうして、準備は整った。IS学園文化祭での敵の迎撃をするための情報は整った。相手が来るのであればやってやろうではないか。

 

文化祭という地獄の行進曲を奏でる為の指揮者は足音立てて、俺の近くへとにじり寄っていた。

 

「文化祭か…………風流だねぇ。」

 



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フィクション、フィクション。そしてフィクション

祭りは始まる前が一番楽しい。祭りの後。などの言葉があるが。俺にとっては等しくめんどくさいものだ。というか、そこまで楽しみなものもなんだが。それで本題入るが、文化祭のことだ。

 

さて、まず(おそらくどこの高等学校の同じではあろうが)IS学園の文化祭は、クラス単位の催しものと学校単位の催しものがある。

この場合、学校での催しものとは前回に言った生徒会でのイベントのことだ。え?クラスでの催し物はどうなんだって?それは今から決める所だよ。

 

「…………なあ、康一。なんだ?このホストクラブのようなクラスは?」

 

「…………知り合いにホスト居るから、紹介しよう。」

 

一夏がこれ以上無い恨みを込めた顔でこっちを向いた。いつになく、担任殿の殺気を彷彿とさせるほどに怒っているように見える。

まあ、「織斑一夏とポッキーゲーム」とか、「織斑一夏と一日恋人体験」とか、「織斑一夏と添い寝」などなど、なんと言うか少女がいうにはかなりきわどいものまで候補に入っていたから、無理はない。

 

「それ、全然解決になって居ない!」

 

「まあまあ、そう怒るなって。ちょいっとふざけただけだろう?目くじらたてなさんな。」

 

「当事者じゃないから言えるんだよ!!」

 

珍しく声を荒げている一夏に少し、案を上げた生徒がバツの悪そうな顔をしていた。

 

「じゃあ、俺がここに居るみんなの欲望を満たす案を考えよう。」

 

「…………なんかいやな予感しかしないのはなぜだろう?」

 

「それじゃ、まずみんなに聞いて欲しい事がある。一夏を客寄せパンダとして使うのは俺としても是非に推奨したい。」

 

「おい。」

 

一夏が不機嫌そうな顔でこっちを睨んできた。同時にこの成り行きを見守っていた我らが担任殿

 

「いや、集客率と金を考えた結果だ。俺個人の考えじゃない。そして、俺個人の考えとしては文化祭では喫茶店を開こうと思っている。」

 

少し、教室がざわついた。全く別の人間から全く別の案が出たからだ、俺への反感を相まってそれを否定しようとする雰囲気が出てきた。

 

「康一さん、なぜ喫茶店なのでしょうか?」

 

「良い質問だ、それはね一夏をただの客寄せパンダじゃ無くす為なんだよ」

 

それを察知してかラウラの質問によって、全員の頭に疑問符が付いた。良い兆候だ。人の好感度をあげるには下げて上げることが必要だ。

 

「って、結局俺かよ!?」

 

「まあ、最後まで聞け。それと同時に織斑一夏と撮影会というのを開催する。…………おや?もう察しが付いたようだな。」

 

よかった、これで話が進みやすくなった。

 

「なんだ?俺と撮影会したってあまり人はこなさそうじゃないか?」

 

「いや撮影会と言っても普通の撮影会ではない。一夏と撮影できるのは、一定の金額を購入したものだけだ。」

 

「え?それってつまり…………。」

 

誰かが言った、その呟きを

 

「ああ、俺たちが喫茶店でやるのはA○B商法だ…………ッ!!」

 

「「「え、AK○商法!?」」」

 

ズガシャーン!!!全員の頭に雷鳴が轟いた。そう、これなら法外な値段でも付加価値として売れる。と言うか伏字意味無いよね?これはフィクションです実際の人物団体名称とは一切関係有りません。

 

『変な所で気を回さなくとも…………』

 

何にも聞こえない。それよりこちらに当てられる担任殿の殺気の量が半端ではない。

 

「これなら一定数の売り上げも期待できるし、撮影会をやってこの1年1組の人にも益はある。」

 

「…………何?」

 

「織斑一夏とのふれあいだよ。一定時間で撮影者と…………そうだな、狂人がいても困るし身辺警護にもう一人の二人をつける。これなら確実に一夏との時間を取れる。」

 

ふむ、だがメリットだけを言って後で俺がとやかく言われるのは癪だな。

 

「メリットは他にもある、だがデメリットももちろん有る。」

 

「…………俺にはデメリットしかないんだが?」

 

「確実に取れる休憩時間、自由時間それにやりがいを感じたければ給仕の仕事をさせてやるが?まあ、決めるのはお前だ強制はしない。」

 

「わぁお、これほどまでに強制しないと言っているのに未来が確定していそうなのはどうしてだろう?」

 

一夏も女子の持っている「その手があったか!」という雰囲気を感じ取ったのだろう。少し諦めていた大体これが全員の欲望を満たす条件で有るのは間違いないだが方法が不味い、そこを押し切る。

 

「それで、デメリットの説明だが…………そうだな、ここにどれだけ動ける奴が居るか見ておきたい。この場合で起こりうるデメリットがわかる人挙手してくれ」

 

専用機持ちは箒さんを除いて全員挙手。そして、後一人二人ほどいた。

 

「それでは、セシリア・オルコット」

 

「撮影機材の調達と、クレーム、そしてお客様への供給の見込み量の算出ですわね。織斑一夏にあわせろとか言われないとも限らないですわ」

 

「デメリットとしては機材の調達以外が正解だ。人の心はよく分からんしコロコロ変わる。」

 

「せんせー、撮影機材はどうするんですかー」

 

喋り方が、教職に似ていたのだろう、それを揶揄するかのようにはやしたてる。

 

「撮影機材は自前のを使う。結構本格的に作るつもりだ。」

 

(…………なんでそんなものを持っているのだろうか?)

 

何処かで心の声が漏れているが聞こえない振りをした。

 

「ま、俺と一夏は生徒会長に顔が利く。少々の悪事は見逃してもらっても良いだろう。」

 

実は、このメリットは見込み収益が大幅に増えるだけじゃない。

 

「さて、これが俺の考えた案だが…………どうだ?一夏。どう転んでも採用するのはおまえ自身だ。」

 

まあ、この空気からして賛成多数であることは間違いはないけどよ。

 

「…………確かに、合理的だけど倫理的には間違っているし、不快と感じる人も居るだろう?多数決だ。賛成の人。」

 

結果は言わずもがな。賛成多数だった。

 

「まあまあ、現場責任者は俺がやるからよ。」

 

「そういってくれて助かる。」

 

「それじゃ、とりあえず俺が指揮を執る事になったけど今俺が言えるのは一つだ。…………終わったら打ち上げいこうぜ!!」

 

そこらでクスクスといった笑いが上がった。

 

「まあ、成功したらな。客の不満と言うデメリットを防ぐ為に出すものは…………。」

 

 ◆ ◆ ◆

 

「はぁ、上手くやったものだな褒めてやる」

 

「はて?何のことやら。」

 

今俺は職員室に呼ばれている。まあ、あの○KB商法の事に付いてだろう。

 

「写真撮影という特性上、一夏を一箇所に留めておかなければならない。それなら、護衛もしやすい。」

 

「棚から牡丹餅ですね。」

 

「そして、襲う人間…………いや搦め手で来るような人間も炙り出せる。」

 

そう、この○KB商法としての最大のメリットとしては支払い金額の多さで危害を加えようとしている人をあぶりだせると言うこと。一夏に害を成すような人はこのA○B商法システム上、異常にものを頼んでいる人だと予防線を張りやすい。

 

「へぇ、俺はどうやったら趣味をお金に変えられるか考えた結果こうなっただけですけどね。」

 

目が本当だなと訴えていた。「本当ですよ」と俺は言う。

 

「…………ま、勝手な真似はしてくれるなよ?」

 

「はぁ、むしろいちいちイベントごとに騒動起こさないようにしてくださいよ。」

 

それだけなら多大な利益しかもたらさないんだから…………いやテロリスト的なのが来てくれた方が結果的に金は増えるから良いんだけどさ。

 

 

さて、情報、実権、全て揃った…………後は。役者が舞台に上がるまでの安息を。

 

 

 



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生徒会(労働者)に身をやつし、再び志すは生徒(ニート)の道

【生徒会にて】

 

カリカリと言った音が生徒会の中に響く。デスクワークの奇妙な疲労が、その場の空気を悪くしていく。

 

「…………だぁ!もう休憩しましょう!休憩!」

 

最初に休憩と言い出すのはいつも生徒会長。全くこの人には空気を読むという能力がないのか?ないな。

 

「やりましょう。」

 

「ぶー。」

 

生徒会長さんが唇を尖らせながらそういった。まあ、とりあえず作業に戻るか。ん?この巻紙さんとやらいつ居たんだ?

 

「はぁ。…………ねえ康一君?休憩したいと思わない?」

 

いきなり俺に話を振られた。生徒会会計である布仏(のほとけ)(うつほ)さんが「その手には乗らないでください」と目で語っている。助っ人が率先してサボっていたら何の意味もないだろう。

 

「私は、みんなでこういう作業するのは初めてなので楽しいですけど?」

 

キラキラした目で生徒会長を見る、それだけで黙ってしまった。

 

「う…………何にもいえない。」

 

ま、俺に掛かればこの程度だ。丸め込む事だって可能だ。

 

「それじゃ、やりますよ。」

 

「うう…………」

 

しかし、あまり不審そうな人物は居ないな。もうそろそろ、クラスの出し物の用件も混じってきている。ん?お、1年2組は中華喫茶か。代表候補生の名で集客効果を出そうとしているのか。中華喫茶…………コスプレもするのであれば鈴の写真を狙って撮影券でも大量に渡しても良いか。

 

「けど退屈!」

 

「うるせえ」

 

「「え!?」」

 

やべ、つい本音が。まあ、そうねウザイじゃなくてよかったって子とかな。とりあえず仕事はしてやるから情報収集をさせろや。…………部活動の出し物に爆弾解体ってなんだよ。確かに教えていたけどさ。

 

「うあー」

 

生徒会長の目が逝っている。どれだけ辛いんですか?いや俺もただただ書類に判子をペッタンペッタンとやっている作業はキツイ。さながら大昔の拷問のようだった。仕方ないね、俺は携帯を取り出しある電話番号に掛ける。

 

「うん、俺。こっちにこれる?いや辛くてさぁ~頼む!そこを何とか!!」

 

「誰と電話しているの?」

 

俺はただ口に人差し指を当てた。

 

「うんうん、え~本当に?…………ええ?いや、それはできるけど。俺が用意できるのはホステスに「シャチョサン」って言われる程度の金しか用意できないよ?え?あ、うん掛け合ってみる」

 

「なにに掛け合うのかしら?」

 

俺の財布にだ。とまあ、こちらの電話も済んだので

 

「助っ人を呼びましたよ。知り合いでこういう情報処理の手合いは慣れてるんですよ」

 

「へえ。君にも人脈はあったのね」

 

「ええ、それなりには。来るには少々時間がかかりますが少々持ちこたえましょう。お茶はそれからでも早くはないです。それでは頑張りましょう?」

 

「「ええ!」」

 

十二分後。生徒会室にノックがなった。

 

「あ、来ましたね。」

 

と言うか、この寮に居るからそこまで時間はかからないと思うが。

 

「どれどれ?」

 

生徒会長がここぞとばかりに俺が呼んだであろう人間を迎えに行った。それだけこの仕事がめんどくさかったのだろう。扉を開けるガチャリと言った音が鳴った

 

 

 

 

 

 

        _

       / jjjj      _

     / タ       {!!! _ ヽ、

    ,/  ノ        ~ `、  \  

    `、  `ヽ.  ∧_∧ , ‐'`  ノ   フォオオオオオオオオッ!!

     \  `ヽ(´・ω・`)" .ノ/   

       `、ヽ.  ``Y"   r '

        i. 、   ¥   ノ

        `、.` -‐´;`ー イ

 

 

 

ガチャリと言った扉が閉まる音が聞こえた。

 

「「…………だれ?」」

 

「俺の親友、壁殴(かべなぐり)代行(だいこう)さんだ。」

 

俺は開いて無言で閉めた生徒会長さんたちにそういいつつ再びドアを開けた。

 

ガチャリ

 

 

 

                    从⌒゙ヽ,  

             ,; |i    γ゙⌒ヾ,  |!  

                 _,.ノ'゙⌒';、人  l!   

               从~∧_∧ イ ,〉 k   

             γ゙  (´・ω・)/ 〈,k_ノ   またせたな!

             (    ハ.,_,ノ~r      

             )'‐-‐'l   γ´⌒゙ヽ、

          ,、-ー''(    |!~、,il      ゝ、   

        γ    |!   〈   ヽ ミ、    丿

       ゝ (     |  ノ  _,,,..、,,ゝ、 _,.イ  /     

    \'´  γ゙ヽ.,_  ) ゙|! ̄    ̄~゙il γ⌒ヽ`(/

    Σ    ゝ.,__゙゙'k{  ヾ /      !、,___丿 て

            > ゝ-ー'゙ <

 

 

「まってないです。」

 

バタン

 

「さて、助っ人も来たことだし。始めましょうか!」

 

「「あんなのどうやって助っ人にするんだ!!?」」

 

「いや来ているでしょ?ね?簪さん?」

 

「はぁ、よくここまで溜め込んだね。」

 

「ん?」

 

「それでは始めますよ」

 

業務の説明を簪にして俺は再び作業に戻った。これで、姉妹の仲が面白く…………もとい、仲良くなれば良いのだが。

 

「あれ?簪ちゃん?どうしてここに?」

 

 

 

 

 

 

バカ()ども】

 

1:野良野郎:200x/○○/○○(○) ID:oyanasi30

来るべきIS学園の文化祭だがおまいらどうする?

 

 

2:ブラック神風:200x/○○/○○(○) ID:yabbe-mazibbe-wa

詳細希望

と言うより生きていたのか。

 

 

3:OBK:200x/○○/○○(○) ID:musumetteiimonodesune881

>>2情報弱者乙

それに比べて俺侵入余裕杉ワロチwwww

 

 

4:野良野郎:200x/○○/○○(○) ID:oyanasi30

>>3通報しますた

十月の上旬ほどに3日間ほどやる。

 

 

5:ブラック神風:200x/○○/○○(○) ID:yabbe-mazibbe-wa

あざっす。

で、自由にこれるの?

 

6:紳士:200x/○○/○○(○) ID:ketubuttatakiparty

そんな訳ないでしょう常識的に考えて。

 

 

7:ブラック神風:200x/○○/○○(○) ID:yabbe-mazibbe-wa

紳士、まじかよ!?

どうしよう!生で見たいのに!

 

 

8:師匠:200x/○○/○○(○) ID:seisouyougu501

今来ました。

まずは、野良野郎さんが文化祭の概要を正確に説明すべきでは?

 

 

9:袋兎:200x/○○/○○(○) ID:sukmizuhajs

同じく今来ました。師匠さんに賛成です

 

 

10:朱鳥鈴也:200x/○○/○○(○) ID:tennsunokourinn117

同上

 

 

11:野良野郎:200x/○○/○○(○) ID:oyanasi30

 

了解した。

それでは、文化祭にいける人をかいつまんで説明すると。

・企業など、選ばれたお偉いさんの申請など。

・生徒一人に付き配られるチケットの取得

・IS学園でやるクラスの出し物の素材を運ぶ業者

 

この三つ程度ですな。皆さんはどうです?とりあえず、現代忍者さんは娘から貰うそうですけど。

 

 

12:ブラック神風:200x/○○/○○(○) ID:yabbe-mazibbe-wa

時間はいくらでも作れるけどどれにも当てはまらない…………無理や。

 

 

13:紳士:200x/○○/○○(○) ID:ketubuttatakiparty

ふむ、私は逆ですな。入れることはあれども時間がない。

 

 

14:袋兎:200x/○○/○○(○) ID:sukmizuhajs

日ごろから有給使わなくてよかった…………。私はいけます。隊長がくれると言うので。

 

 

15:師匠:200x/○○/○○(○) ID:seisouyougu501

国に保護されている身が今でこそ恨めしい!

 

 

16:ブラック神風:200x/○○/○○(○) ID:yabbe-mazibbe-wa

あれ?どうして先日は出席できたのですか?

 

 

17:師匠:200x/○○/○○(○) ID:seisouyougu501

現代忍者さんが色々手を回してくれたそうで。本当に御の字ですよ。

 

 

18:現代忍者:200x/○○/○○(○) ID:kunaide072

ドロンとただいま参上!…………ごめん、師匠さん今回は無理。

 

 

19:ブラック神風:200x/○○/○○(○) ID:yabbe-mazibbe-wa

>>18

ちょっと期待させてやるな。

 

 

20:朱鳥鈴也:200x/○○/○○(○) ID:tennsunokourinn117

無理。店はあまり開けれない…………。

 

 

21:野良野郎:200x/○○/○○(○) ID:oyanasi30

ここまでまとめるぞ。

・ブラック神風○

・現代忍者×

・袋兎○

・紳士×

・朱鳥鈴也×

・師匠×

・OBK ○ね

 

ってことでおk?

 

 

22:ブラック神風:200x/○○/○○(○) ID:yabbe-mazibbe-wa

>>21

あれ?俺の名前が入っているんだけど?

 

 

23:OBK:200x/○○/○○(○) ID:musumetteiimonodesune881

○の後のねに悪意を感じるんだけど!?

 

 

24:野良野郎:200x/○○/○○(○) ID:oyanasi30

>>22

俺のチケットを使う。

 

25:ブラック神風:200x/○○/○○(○) ID:yabbe-mazibbe-wa

お金請求されないよね?(((゚Д゚)))ガタガタ

 

 

26:野良野郎:200x/○○/○○(○) ID:oyanasi30

労働力と引き換え。それにいたってはおって沙汰を話す。

それで、話を元に戻すと。実はうちのクラスでな写真撮影するんだが。

撮影する為の条件が少々特殊でなA○B商法まがいに喫茶店やりながら撮影券を付属させることで撮影をするんだ。

どうする?

 

 

27:袋兎:200x/○○/○○(○) ID:sukmizuhajs

>>26マジgj!!

行くに決まっているだろうが!メイド服は完備だろうな!?

 

 

28:ブラック神風:200x/○○/○○(○) ID:yabbe-mazibbe-wa

グッジョブ!二人で写真撮ったのなんて久しぶりだな。一夏が生まれてまもなく裏イッチャッタし。

 

 

29:OBK:200x/○○/○○(○) ID:musumetteiimonodesune881

良い機会を与えてくれてありがとう!!

 

 

30:野良野郎:200x/○○/○○(○) ID:oyanasi30

おう、楽しみに待ってろ。

>>27これからの意見しだいだ。

そうだな、どこぞの隊長にメイド服でなら更なる集客も見込めますという連絡の一つもよこせばそうなるんじゃないか?

 

 

31:袋兎:200x/○○/○○(○) ID:sukmizuhajs

行ってくる!!

 

 

32:朱鳥鈴也:200x/○○/○○(○) ID:tennsunokourinn117

悔し過ぎて血涙。これからも払うから写真一杯撮ってきて?

 

 

33:野良野郎:200x/○○/○○(○) ID:oyanasi30

>>32

了解。因みに、1ー2は中華喫茶だったからチャイナ服でも見られるかも知れんな。

 

 

34:朱鳥鈴也:200x/○○/○○(○) ID:tennsunokourinn117

c35愛知;w・hjymq1tf6ひthzxmせ氷魚;明日sm、んぁうぇr;jイlウェfjk時b↑r派gh94p》cp:fウェyん9]0 6jいおk。m、。mbwshjg時kjkl792dlh所亜sdrtんkl:ghkZlgjk

 

 

35:紳士:200x/○○/○○(○) ID:ketubuttatakiparty

朱鳥さんが壊れた…………。

 

 

36:袋兎:200x/○○/○○(○) ID:sukmizuhajs

>>35

抑えきれぬ、子への渇望が暴走したんだろう。

 

 

37:野良野郎:200x/○○/○○(○) ID:oyanasi30

ま、文化祭があると言うことだけは伝えて置いたから。後は好きに雑談していて。おbk

 

 

38:OBK:200x/○○/○○(○) ID:musumetteiimonodesune881

ん?どうしたんだ?

 

 

39:野良野郎:200x/○○/○○(○) ID:oyanasi30

やっちまったな。本当に通報しているからそっちに…………。

 

 

40:OBK:200x/○○/○○(○) ID:musumetteiimonodesune881

あ、

秘書からの

警察来ている

もうだめぽ…………。

 

 

41:袋兎:200x/○○/○○(○) ID:sukmizuhajs

>>40になにがあったと言うのだ…………

 

 

 

【部屋】

 

さて、一緒に特訓とやらをして来た俺と一夏だった。

 

「はぁ、今日も疲れた」

 

実の所はまだまだいけるといえばいけるがやりたく無い。ちょっとレベリングがあって・・・

 

「ホント、あんな性格しておきながらやることはきついから参ったもんだ。」

 

確かにオールマイティな機体だから何でも出来るようにしとけって言われて部活巡りはさせられたからな。剣道部や柔道部はあるのを知っていたけど、銃撃部とかあるのは知らなかった、むしろかの学校の多様性を確認したな。

 

「ま、死なないように精進しましょうや。」

 

「まだ死にたくはないしな」

 

二人とも苦笑しながら着替える。なんとも絵にならないな男二人って。つーか腹減ったな。

 

「あー帰ろ帰ろ、つまみにこんにゃくの刺身作ってきたから食べようぜ。」

 

あれ、意外と美味いんだよね。たれはコイツに任せよう、そんな繊細な味付けはできないし。

 

「いつの間に作ったんだ!?」

 

「ああ、俺の実家でこんにゃく作ってみたんだ。それの収穫をな。」

 

まず、俺のIS学園近郊の森林に作った畑で作っているなんて言えねえ。

 

「凄いな」

 

「タレよろしく、まあ、醤油でも良いけどさ。」

 

「なんか学食に行かなくなってきたな…………」

 

食材を調達するのが学食のおばちゃんってだけであとはかなり入手が困難だ。購買はあるにはあるが勉強道具とか、なんか深夜のテレビショッピングのような効果が怪しげな健康食品しか売ってない。

 

「じゃ、俺戻ってるぞ。」

 

「まて、40秒で用意するから。」

 

「1、40。じゃあな。」

 

「うおい!?」

 

「冗談だ。」

 

実際に40秒で用意した一夏と(この辺は世界最強の姉の教育を体感せずには居られなかったが)一緒に寮に帰る事にした。

 

「一夏、スマブ○やろ」

 

「お前64でネス無双すんだろうが。」

 

「大体今時の高校生が64をやっていること自体がおかしいからな?」

 

そんな、どうでもいい雑談をしながら俺達は部屋に戻った。

 

「はぁ、ただいま。」

 

さてと、ビールとは行かないがコーラでも飲んで…………。

 

「お帰りなさいア・ナ・タ」

 

「えっ!?なんで」

「ウオラァァァァァァァァァァァァッ!!」

 

俺は、ISからパイナップルを呼び出してピンをこう…………根性で抜く。そして放り投げるの2セットだ

 

ボン!とりあえず、ドリフのコントとかで聞く爆発音がしたと思えば良いだろう。てか爆発してそれだけの音で済むとは、この部屋、防音性凄いな。

 

「あの…………楯無さん居たんですけど?」

 

「ああ、奇遇だな裸エプロンのような姿をしていたような気がしないでもないが、そんな訳ないだろう?」

 

そんな訳ない。

 

「でも、手榴弾みたいなの投げる必要なかったよな?」

 

「大丈夫だ、死んでは居ないはずだ。」

 

だって、ドアを叩く音が聞こえているんだもん。まあ、殺傷能力は皆無の音だけの張りぼてだからな。

 

「よし、幻想だな康一。行こう、たぶん消え」

 

ガチャリ

 

「ちょっといきなり何してるのよ!?」

 

「あ、こんな所で会うのは初めてですね。」

 

とりあえず、写真撮っておこう、確か生徒会長はロシアの国家代表だったな、オソロシアー。右手でスマホ、左手で写るんですの二段構え。現像技術はお粗末なものですが。

 

「一夏君…………相澤君に虐められる~」

 

おっ、良いねその胸の押し付け具合…………今気が付いたけど水着着ているのね。良い感じだ。

 

「ちょっ、離れてくださいよ。」

 

お前、全国津々浦々のもてない男達に代われ。

 

「この程度で照れるとは、まだまだ修行が足りないわね。」

 

「もっとあざとい感じで。」

 

「こう?」

 

「写真を撮るなよ、そしてポージングしないでください。」

 

チッ、まあ、いっか。

 

「それで?どうします、今から飯食うんですけど。」

 

「え?ホントに?食べたい食べたい。」

 

こんにゃくだけど。作っていたの切るだけだけど。

 

「あー、そうだな。作るか」

 

「自炊系男子かい?一夏。」

「錬金系男子だな、康一は。」

 

上の三分の一ほどに埋められたこんにゃくの山を一夏は適当に取り出していく。俺の方もどうした物か。

 

「何?これ…………。」

 

「康一にはよくあります。どこから持ってくるのだか。」

 

「いやはや、不思議なこともあるもんですね。因みにこれは知り合いの農家から貰ってきました。」

 

本当は作った訳ですが。

 

「へぇ。」

 

生徒会長が獲物を見つけたような顔をしながらそういった。と言うか、裸エプロン同然の格好していて威厳もへったくれもあったものじゃない。

 

「ちょっと待ってて、すぐ作りますんで。」

 

「何時もながらに、男二人じゃ狭いなこの台所は。」

 

「(物凄いナチュラルに一緒に作っているのを見ると、邪推してしまうわよね・・・)」

 

作るか。

 

20分後。一夏Yシャツを勝手に拝借して、生徒会長に着させた。もちろんそれも写真に収めておいたけども。

 

 

「出来ましたよっと。…………康一ちょっと多くね?」

 

「そうか?あ、生徒会長言い忘れていたんですけど」

 

俺は食器を用意しながら、密かに張っていた罠みたいなのを発動させる

 

「何かしら?」

 

「さっき、スマホ持っていたじゃないですか?」

 

「そうねぇ、それがどうかしたの?。」

 

「テレビ電話で、今もライブ中継です。」

 

一瞬で顔が青ざめる。

 

「因みに聞くけど、誰かしら?」

 

「誰でしょうね?」

 

「おい、康一食器用意しろ。」

 

「うぃっす。」

 

皿とかは、俺のうちから持ってきたものだ。めんどくさかったが、まあ、そんなことを言っても仕方ないだろう。それよりよくそこまで顔を青く出来るな。

 

「だれ?」

 

ガチャ。戸が開いた、実は部屋の中に入る時に鍵を扉に掛けておいたんだよね。

 

「お嬢様、帰りますよ。仕事がまだあるんですから。」

 

そうだ、生徒会の仕事だが。まあ、俺の出る幕は終わったって所だ、一応俺でも手伝える場所は終わり、後は機密情報の処理だけという話らしい。

俺としても、もう必要な情報を集め終わった所だし、願ったり叶ったりだ。

 

「相澤君明日の練習は特別キツイのになるから、ぐっすり眠ってね。」

 

首根っこ掴まれながらそういう姿は、しかられる猫のようだ。

 

「あ、相澤さん。協力ありがとうございました」

 

く~。

 

と言った、何処か可愛らしい音がした。…………。

 

「それ見越して多めに作ったんですけど、食べますか?」

 

「…………はい。」

 

顔を真っ赤にしながら返事をしてもらえた。

 

「後輩みたいなことをしたことが無かったのでね。…………ほうれ、一夏もう一皿追加だ。」

 

今回の献立は純和風と言ったところか、焼き秋刀魚から滴る、魚特有の油のにおいが香る。付け合せに作った鼠大根を添えてある。

 

「お、おう。」

 

俺が、畑を作る為に整地作業をしている時に出てきた木材を加工して作った折りたたみテーブルを広げて、そこに配膳していく。

 

「ほんじゃ、まあ、頂きます。」

 

「「「頂きます」」」

 

 

まあ、俺が生徒会に入ってからこうなった訳だけど。非常にめんどくさかった、さっさと契約を果たして自由のみになりたいぜ・・・

 

 

 



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私達のクイーン。ISSQ

さて、ここに至るまで結構なことがあった。情報の入手から始まって、エネや円卓の騎士達の協力もあってやっと、ここまでこれた。俺の……………。

ここはロッカールーム。何時もなら、女性で溢れ返っているが、学園祭の今日は何も使われていない。

そのはずなのだが、今は、何かが暴れたように一つのIS(・・)を基点にして、ロッカーや観賞用植物が倒れ、変形していた。

そのISの姿は、まるで蜘蛛。顔までに装甲が行き渡ったそれは、機能美ではなくアメコミの悪役のようなデザインを目指しているように見える。

 

して、この部屋に居るのは俺、こと相澤康一とそのIS。すでに戦った後なのだが、カゲアカシはリムーバーという機械によって奪われてしまった。

 

「さあさあ、これからが本番だ。楽しく殺し会おう、全てが溶け合うように。」

 

手に持った趣味の悪い機械を叩き壊しながらそういった。これは、俺と目の前の女に向けて放つ言の刃、俺の弱さ甘さを殺し、相手の油断を殺す。

 

「…………テメエ、なんで動ける!!」

 

女…………オータムと今さっき名乗った、女。

今の俺たちの(・・・・)共通の敵であるファントムタスクの一員である。ことは分かっている。

 

「舐めてる?それはこっちのセリフだ。お前は今、女王の前にいることをその頭に叩き込め」

 

俺が着ている青ジャージ(・・・・・)の裾を少しまくり、そして、手に短刀を呼び出す。

 

「なにを訳の分からねえことを!…………そんなに死にたければすぐ殺してやる!」

 

オータムが装着しているISの背部から脚が出てきて、その底から実弾が出た。まあ、それに正式名称があるのだろうが俺には関係無いし、カゲアカシならいざ知らずこの今の姿(・・・)なら逆に好都合だ。

 

「無駄」

 

指揮棒のように短刀を振るう。何発か、直撃するような弾もあったが…………。

 

「…………もう終わりか?」

 

こいつが全て食べきった(・・・・・・・)。そう、これは。

 

「行き過ぎた科学はオカルトに他ならないとは言うけれども、お前はその一端だよね。」

 

『戦闘に集中しろ。…………ったく、しかしまあ、私が一番忌み嫌っている用法で敵を追い詰める事になろうとは。』

 

俺は、短剣を手に歩く。ゆっくりと、呆然に立っているオータムに絶望を突きつけるように。

 

「オオオッ!!」

 

射撃は無効化されると思ったのか打撃を加えてきた。違うそうじゃないんだこれは。短剣を軽くまるでハエを払うかのように拳の軌道にあわせて振るう。それなりに、拳の威力は高いのだと思うが。

 

「絶望しろ。自身の愚かさに。」

 

この状態を言うとするのなら歪なロケットパンチだろう、腕が切り取られている。切り取ったのは脚を三本。結構根元から切ったのに血が出ていない、となれば全てはずれか。

 

「どうした?抵抗しないのか?」

 

変なことを考えていたら、何も反撃しないオータムを見てそう言った。もう思考停止の域なのだろう。じゃ、お肉がご開帳されます、さて、肉かな機械かな?。

 

「よっと。」

 

「ガァッ!?」

 

「あらら~、綺麗な血液が見えてるよ。大丈夫?」

 

決して、この状況で言う言葉じゃない。

切られた、腕を回収し傷口に手を当て、跳ねるように後ずさった。

 

「何しやがった!?」

 

「んー、俺はただ振っただけだよ?」

 

と言いつつ、心の中でそんなわけは無いと突っ込みを入れる。これは、いつの日か俺の火傷を直した時の応用。いや、逆だ、治したのが応用なんだ。

 

さて、ここで種アカシをしよう。

俺のエネは、ISそのものが丸出しになっている機体だ(むしろ機と形容して良いのかどうかすら分からないオーバーテクノロジーなのだが)。

それより正確に言えば、ISをISたらしめている部分であるISコアそのもの。ISコアは、通常の機体では、(万一の為に)どえらい装甲に守られているのだが、エネの場合、ISコアは青ジャージの繊維となっている。

 

さて、このようにISコアを運用するとどうなるか。正解は、「何でも出来る」だ。

 

ISが秀でているもの、何も兵器としての強さだけではない。ISコアは外部から燃料を貰い、それをエネルギーにして外部に放出している。これの効率が物凄い良いのだ。が、当たり前だアインシュタインとやらが言っていた、質量はそのままエネルギーになる、そして逆もあり。

 

そんなのを普通に扱えるのだ。氷から鉄だって作れるし、砂利からダイヤモンドだって作れる、エネルギーから変換すれば余裕だ。え?なぜそんなものがお前に扱えているかって?

 

「ま、オーパーツは親和の取れたものじゃないと扱えないんだよ」

 

この一言に尽きる。

なにを言ってやがると、目で伝えてきたので俺はこういった。

 

「それじゃ、選べ。女王の慈悲だ。お前を見るも無残な方法で殺すか、それとも」

 

そういいながらゆっくりと機動力や、スラスター、兵器ISとしての機能を殺していく。まるで子供がバッタの足をもぐように。

 

バッタは、もうすでに戦う気勢をそがれ、その顔は絶望に染まって行った。

 

そして、俺は。

 

「                                    」

 

「         」

 

「上等だね。」

 

奪われたカゲアカシを取り戻した。次の瞬間。

 

 

 

「ラグナロクの一撃」

 

 

 

辺り一面に目を焼くような光が広がっていく。俺は処理を施した。

 



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文化祭。それにへばり付いたゴミ

IS学園に喧騒というか、浮き足だったような、しかして緊張しているような心情が広がっていく。そう、今日はIS学園の文化祭。

 

通常の生徒は緊張を紛らわす為に喋る。そんな中少数派の男子の俺こと相澤康一は、黙ってその光景を見ていた。クラスの出し物の責任者となっているからな、全員の体調やコンディションを確認しなければならない。

 

クラスの出し物は喫茶店に決まっていた。まあ、それを進めるに当たってどこで間違えたのか、メイド喫茶のようになっている。それについてはコスプレをしてみるのも若い内なら良いだろうと思っている、そこまで否定してしまったら大衆がどう動くか分からないからな。

それに、この喫茶店の特性上、ゲストを大いに楽しませなければいけない。

 

これは、喫茶店とは名ばかりの俺の罠。○KB商法のように食事や茶を飲んだときに発生させる、織斑一夏との写真撮影。これにより一夏を狙う敵を炙り出せるのと、俺に標的を移すかもしれない。

 

…………おっと。女子が騒ぎ始めたぞ。さて、俺が出ないといけないようだ。

 

「みんな。こっちを向いてくれ」

 

クラスの全員が雑談を止めてこちらを向いた。

 

「まず、責任者としてみんなに礼を言いたい。よく、ここまで頑張ってくれたありがとう」

 

俺としては罠が展開されただけで、大万歳なんだけどな。

 

「実際は、ここからが正念場なんだがな。」

 

次に、役割分担ずつ叱咤激励でも送るか。

 

「ホール!クレーマー対応頑張れ。厨房の料理を転んで台無しにしないように!」

 

「分かりましたわ!」「全力で事に努めよう」

 

俺がホール責任者に推薦した代表候補生二人、オルコット嬢とラウラだ。この二人を推薦した理由としては、絶対に厨房に入れてはいけないからだ。

 

「厨房!客が来たら地獄かもしれんが、助っ人が来るまで頑張れ!それに、ホールの人間に迷惑はかからないようにしろ、良いな?」

 

「うん、分かったよ」「分かった」

 

俺が厨房責任者に推薦した二人は、デュノアの娘っこと箒さんだ。この二人にはかなりの料理の腕を持っているからな。

 

「撮影!変な人とか居るかも知れないから気をつけろよ!」

 

「お前に言われたくは無いわ!」

 

一夏だ、今回のミソだ。これが餌にならなければこの計画も。

 

「さて、これまでも辛かったと思うが、これからが一番キツイと思う。だが、努力と友情とかその辺の気合的な物で何とか頑張ってくれ。」

 

「「「「「「はい!!」」」」」」

 

「いい返事だ。それじゃ!1年1組の喫茶店、開店準備に取り掛かれ!!」

 

俺の一言で、皆が方々に動いていく。そして、開店の準備を進めていた。

 

 

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

さて、まず最初に、一夏に給仕の仕事をさせる、格好は執事服で。最初に来る客足をここで掴み、口コミ効果を狙う。

 

「いらっしゃいませ。」

 

早速一人来たらしい。IS学園の性質上、御偉いさんがやってくるか保護者の人だ。

 

俺は今、ホールの端にある一夏との写真撮影場に居る。そこから覗く感じだ。ま、今はそこまで忙しくは無いからな……………。

 

撮る!!

 

いやぁ、いいねぇ。一夏の周りはめっちゃ笑顔だもの。

 

最初の写真撮影の客が来るまで撮りながらこれから時間を潰していた。

 

ん、アレは……………。ブラック神風さんか?

 

「良いところに来たな。」と口の中で呟いた俺は、口角を上げていた。助っ人のお出ましだ。俺は助っ人をどうにかして、出迎えなければいけないが。

今は、親子との再会を祝福してやろう。

 

「いらっしゃいませ…………って、どうしたんですか!?泣いてますよ?」

 

丁度良いところに一夏が接客対応した。

その時、まだ二十台後半と言っても通じそうな三十路後半の親父の目には涙が浮んでいた。あいつの胸には色々な感情が渦巻いているんだろう。だが、今ではそれを全て押し殺さなければならない。

 

「いや、なんでもない。すまない」

 

涙をふき取りながら、そういった。まだ担任殿にばれていないようだ。息子に、親として一言掛けたいのだがそれを自分の立場が許さない。

 

「そうだ、人を呼んで欲しいんだ。野良や………相澤康一って人は居るかい?」

 

「あっ、呼びますね」

 

こっちにコールしてきた。

 

「なぁ、康一なんか変なオッサンが呼んでいるんだけど?」

 

「ブフォッ!?」

 

「どうした?」

 

「い、いや。なんでもない。とりあえず、撮影場に連れて行ってくれ」

 

「わ、わかった。」

 

 

 

 

「で?どうだった?久しぶりすぎる親子の再会は?」

 

「最低に最高で最盛だったよ。」

 

「ちげぇねえや。んじゃ、業務はこれを作ってくれ。」

 

「了解…………ありがとうな。」

 

「いいってことよ。それなりに見返りもある品。」

 

よし、これで料理に文句を付けられることは無くなった。……………お?

 

しばらくして最初の写真場の客が来た。

 

「えっと、ここで織斑君と写真が取れるって聞いたんだけど?」

 

IS学園の制服に身を包んでいたのを見ると途中で抜け出して来た人なのか?。とりあえず凶器類が無いか金属探知機で調べる。

 

「はい、そうです。少々お待ちください、今呼びますので。」

 

よしよし、良い感じだ。後は一夏がヘマをしなければ大丈夫なんだが。

 

「お待たせしました。織斑一夏です。」

 

「は、始めまして。」

 

一夏を呼んで、写真を撮らせることにしよう。

 

「えー、写真を撮りますのでそちらの椅子に座ってください。では、行きますよーはい、チーズ!」

 

カメラのフラッシュが焚かれて、一瞬目を焼く。

 

「現像するまでしばしお待ちを、そのあいだ彼と喋っていてください。おさわりは同意の上で行ってくださいね?」

 

「えっと、止めてください。」

 

 

 

 

 

 

良い感じだ。最初の客が来てから写真のほうも溜まって来た。

 

「交代だ。」

 

そして、これから、俺は写真を現像する機械となる。ま、こちらの写真と、一夏につけた盗聴器で状況を確認して…………ビンゴか?盗聴器からそれらしき会話が聞こえてきた。

 

「すみません、紹介が遅れました。私こういうものです」

 

「巻紙礼子……………」

 

「はい、IS装備開発企業『みつるぎ』の渉外担当をしています。」

 

さて、釣れたぞ。俺が生徒会の仕事を手伝っている時には、そんな名前は出てこなかった。彼女をマークしておいたほうが良いな。

 

「是非に、我が社の製品を使っていただきたいな、と思いまして。」

 

「あの、そういうのはいらないんですけど」

 

そういった瞬間、いきなり手を掴んできた。だが、その手には一夏は食わない、何故なら手を握られた程度のことで落ちるようだったら、この学園は一夏を争奪するために紛争が起こっているはずだ。

 

「まあ、そういわずに。」

 

「う、あのですね…………。」

 

とりあえず。撮影にフォローと、チケットの入手枚数の情報を入れておこう。

 

『撮影、なにをしている。写真を撮らせてもらって、現像データをこっちによこせ。ちゃんとチケット枚数分な』

 

『了解しました。』

 

「あの、お客様。使用チケットは10枚でよろしいでしょうか?」

 

「いいえ、写真は撮らなくても良いわ。」

 

「お客さま、利用規約に一枚に付き一分時間を上げるとは書かれていますが、写真を撮らないことにはご退場して頂くしかないんですよ。」

 

「……………良いわ、撮ってくれないかしら?」

 

「はい、十回撮ります。」

 

一万越えか、良い収入になったな。しかも二次配布は禁止されているし。その時のレジ打ちの人の名前が書かれているからな。おっ、現像データが来た。……………顔を拝ませてもらったぞ。

 

「で、こちらの増設スラスターを装着していただきますと、こちらの脚部ブレードも」

「ですから…………」

 

後は、一夏の問題だ…………これが終わったら。休憩(・・)でも入れてやるか。

 

 

 

十分後

 

「お客様、写真が出来上がりました。十枚ですね。自分で言うのもなんですが良い出来になったと思います。」

 

俺が会話に割り込むようにして話かける。

 

「………………チッ」

 

聞こえない程度に舌打ちって、どれだけ取り繕わないの?。アレだな、戦闘員でISを奪いたい人なのか?それならばこの態度の悪さにも納得がいくな。

 

「ふぅ、一夏災難(・・)だったな。」

 

「災難の部分を強調してどうしたんだ?」

 

「それよりだ、一夏お前少し休んで来い。少しやつれているぞ。」

 

少し、疲労の色が見えている。いやまあ、それ以外にも理由は有るんですが。

 

「お前に言われたくねえよ。どこに行っているか分からないけど、何時も朝になったら何処か行っているじゃねえか。」

 

「それはそれ、大体同部屋になってから毎日だろ。」

 

今更になってよくそんなこと言えるな、気になることを土壇場で言うなや。

 

「早く行って来い。お前なら、そこらへんに居る女子でも誘えば付いてきてくれるよ。」

 

「分かった分かった。着替えるから。」

 

「あ、その執事服、着替えるなよ。宣伝になる。」

 

「そこまでいくと、ちゃっかりと言うか貧乏性と言うか……………。友達に会うんだ。わがまま、言わさせてくれ。」

 

それを、とりあえず。「了解だ、さっさと着替えろ。休みは一時間だ。」けど、そうだなその友達にもサービスしてやるか

 

「おい、一夏ちょっと良いか?」

 

「ん?」

 

「その友達とやらもここに呼んで来い。」

 

「え?なんで?」

「ああ、察しが悪いな。撮らせてくれっていってんだよ。俺が残せる思い出といったら。これくらいしかないからな」

 

「…………ああ、それだったら鈴の奴も呼んで良いか?」

 

「鈴?ああ、かまわないぞ。一緒に撮ろう。」

 

「ありがとう。すぐ呼んでくる!」

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

知り合いに街中で出会うとどうして良いか分からなくなって、顔をした向けることってあるよね。けど、向けないんですよ今は!!

 

「…………ま、ひさしぶり。」

 

「おう、こんな所で会うとは思わなかったからな。」

 

(だん)、康一。お前ら知り合いなのか?」

 

「「おう」」

 

知り合いってヤダね。色々酷いことをして来た訳でもないし、俺の場合は、どうでも良い人間だったからこそ、素を見せている。いや、俺でも素って言うのがよく分かってないんだが。

 

「いや、しかし五反田と一夏が、友達とは。で、鈴は呼んできたのか?」

 

「ああ、今すぐ来るって。」

 

「来ているわよ。」

 

「おっ!久しぶりだな!鈴!」

 

「アンタこそかわり無いようね!」

 

よかった、喜んでくれて。飴と鞭を使い分けないとな。

 

「…………康一、何かおかしいぞ?」

「そういわれれば年がら年中おかしい事になるな。それはそうとして、撮るぞ。」

 

真ん中に凰、両隣に男が二人となっている。両隣がブサイクなら姫に見えなくも無い、だがそういうわけじゃないので助かった。

 

「はい、チーズ!」

 

カシャ!

 

 

「…………なんか改めて撮ると緊張するな。」

 

「なにを言っているんだ一夏。お前、彼女とのツーショット取ってくれって言ってたじゃねえか。」

 

「お前こそなにを「「詳しく聞かせろ一夏!!」」…………。」

 

カシャ!

 

「お前に彼女かぁ、ナンパしようって誘ったのに断られて一人でナンパした挙句についてきた一夏の連絡先を聞かれるのもこれで最後になるのか!」

 

「セリフ長いな。」

 

「相手はどこの誰なの!?」

 

それにしても、物凄い食いつきだな。無理は無い、俺も同じこと聞かされたら天変地異の前触れかと思うぐらいだ。

 

「It is a joke! 」

 

「なんだよ、性質の悪い冗談言うんじゃねえよ。」

 

「まあまあ、良い写真だったよ。」

 

「嘘のつき方が上手過ぎるんだけど。」

 

そういう人間ですから。

 

「よし、俺は現像したりしているから、お前らは遊んで来い。」

 

「おう、ここは頼んだ。」

 

俺は、撮影場から出て行く三人を見送った。…………結構、回り道したけど時間だ。

 

 

 

 

一夏が休憩に入り、そろそろ一時間経ちそうなとき。やっと来た生徒会長を迎えた。

 

「…………やるんですね。」

 

「一瞬誰かと思ったわ。」

 

俺は今執事服を着ている。少しでも集客が上がるのであれば、このようなこともする。

 

「酷いですね。で?やるんですか?例のアレは。」

 

「ええ、やるわ。全生徒参加型演劇」

 

「お疲れ様です。俺は参加しませんが。」

 

「なんで?」

 

「いや、一夏と同じ部屋ですし。」

 

この生徒会の出し物、全生徒参加型演劇は一夏との同じ部屋に入ることを目的としたレースのようなものだ。生徒会の手伝いをしているからこそ分かったが。

 

「利益がありません。店番もしなければいけませんし。そのために、部外者を連れてきたんですよ?」

 

といって、親指を立ててブラック神風さんを指差した。

 

「むしろそこまで店のことを考えているって、社畜の才能でも有るんじゃない?」

 

扇子を口元に広げた。その扇子には、「哀れ」と書いていた。あなたの親父さんも社畜見たいな物だろうが。

 

「嫌味ですか?」

 

「全然思っていないわ。」

 

「本当にそう思っているのであれば、そのセンスの欠片もない扇をしまってください。扇子だけに。」

 

「…………そういう類の冗談も言うのね。」

 

感想がそれかい。そういわれるもの仕方ないがな、ブラックジョークの領域をちょこっと超える程度の冗談だ。

 

「ええ、レアですよ。じゃなくて、もうそろそろ一夏が帰って来るので用意していた方が良いと思いますよ。」

 

「分かったわ」

 

その後、一夏が来て生徒会長が連れ去った。

 

 ◆ ◆ ◆

 

「飛んで火に入る夏の虫……………って、お姉さんのことだよね?」

 

「…」

 

 




私は文化祭にはまともに参加してませんでしたねぇ。


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サードファントムの煉獄

表舞台では、もう一夏やその取り巻きによる、ドンチャン騒ぎが始まっていた。

 

『向こうは楽しそうだな。康一』

 

『向こうは向こうで楽しめば良いさ。こっちもパーリィーだぜ?』

 

これから…………整えに整えた、準備の集大成だ。やってやる。

 

『行くぜ、エネ』

 

『ああ。』

 

俺は、液体が入ったバケツを持った。

 

 ◆ ◆ ◆

 

IS学園のロッカールームと言う空間で、女が一人立っている。そこに一つの影。

その影は一息で女の下に近づいて、持っているバケツから水をその人にたたきつけるように吐き出させた。

 

バシャン!と言ったような、水の音がした。影の主、少年のような男のような人間は言った。

 

「ねえ、お姉さん。僕と遊ばない?」

 

そういった者の口元には笑みが浮んでいる。

 

「…………だれだ?お前?人に水をぶっ掛けやがって。」

 

「やだなぁ、巻紙礼子さん。写真を渡したじゃないですか。」

 

男は女を巻紙礼子と称した。

 

「覚えてねえな。」

 

「アララ、そんな言動していると、火遊びが得意そうと思われますよ?。」

 

「気色わりぃガキだな。とっととあたしの前から去れ。」

 

「いえ、そういう訳にも、行かないんですよねェッ!!」

 

「!?」

 

男の手からISの腕が伸び、打撃と言う凶器で巻紙を襲った。それを彼女は驚愕しながらも、避けた。驚愕したのは、ISが原則的に女しか扱えないからだ。

 

「お前、二人目の男性IS操縦者か。」

 

「ええ、相澤康一といいます。フフッ、もしかしなくても一人目がよかったですかね?」

 

「ああ、まったくだ。」

 

「ですが、残念僕と遊んでいただきますよ、カゲアカシ!」

 

康一の体が発光する、実際には体の回りに光の粒子が纏うのだが、そして次の瞬間男の体にISが顕現する。現代における絶対的な暴力にして、益、その圧倒的な能力が巻紙の目の前に現した。

 

「こうなれば、私が何ものか知っていたみたいだな。ファントムタスク、オータム!行くぞオラァ!!」

 

巻紙が音も無くISを顕現させる。全身に装甲が行くフルスキンと呼ばれるタイプで、その様相を一言で言うなら「蜘蛛のような異形」だ。背部に脚が8本あるのもその要因と言えよう。

 

「ええ、こちらも行きますよ。」

 

「チッ、テメエを倒して、情報の出所を押さえる必要があるな。」

 

オータム自身のISの8個の脚から実弾が放たれる。それを呼び出した大きい盾のようなもので逃げながら防ぐ。

盾にすべて当たっており巻紙の腕の高さが伺える。だが種も仕掛けもなくして敵に立ち向かうような人間ではない。

 

「……………ああ、言い忘れてましたけど。痒くないんですか?」

 

「うるせえ!!あの水になにしやがった!」

 

「つらいでしょう?料理で山芋とか扱うとその苦しみが襲ってくるんですよねぇ」

 

巻紙は歯噛みした。実際に痒い、いやむしろ激烈な痛みのようだ。しかもこれは…………。

 

「ま、こんにゃく芋は山芋の比じゃないですが。」

 

こんにゃく芋だ。

康一が言ったようにこんにゃくには、激烈なかゆみをもたらすシュウ酸カルシウムと言う物質がある。むしろ痛みで死なないが痛いという点では集中力の低下を招くだろう。

そして、対ISの面から見て、死ぬような毒物は操縦者保護のプログラムが起動し、自浄するが。こいつは死なないから効くという寸法だ。

 

「ほら、守りがお留守ですよ!」

 

「グッ!?」

 

盾から腕を出しいつの間にか持っていたペトゥルで射撃を行う。

 

「こんな小細工でお前ごときに負けはしねぇんだよ!!」

 

「甘い!」

 

盾を背に背負い近場のロッカーをISのマシンパワーを使い、巻紙に向かって蹴り飛ばす。

 

「やかましい!!」

 

蹴り飛ばされたロッカーを八本の脚で切り裂く。

 

「少しは考えろ!」

 

「!?」

 

切り裂かれたロッカーだった物から、まばゆい光があふれ出る。これは世界研究者クラブの作品で中に特殊な光る液体が入ったBB弾だ。それが衝撃で光り、目潰しになったのだ。

 

「オオオオオオオッ!!」

 

出した三個のペトゥルで加速し、康一が体当たり、そして出した五個のペトゥルを湯花によりブレードの状態に固定し五個分のエネルギーを三太刀ほど叩き込み逃げる。

 

「ふう。」

 

一息つきながら、使ったペトゥルを背の『灯火』に刺していく。

実はこれが、IS「カゲアカシ」のまともな運用法である。

エネルギーのバックパックである灯火でペトゥルのエネルギーを補給しローテーションしながら使っていく。

こうする事により、瞬間的な火力も持続的な戦闘能力が切り替えられる。

 

「…………分が悪ぃな。」

 

「敵地ですからね。」

 

今も、オータムは激烈なかゆみが襲ってきているにも関らず、減らず口を叩き続けている。

 

「(しかし解せねぇ。ここまで用意し予見できる能力があるのならさっさと援軍を呼べばいいはずだ。なにが目的だ?)」

 

「考えごとですか?余裕ぶってますね!!」

 

近場にあるロッカーを投げた。

 

「二度も通じるか!」

 

「ただの目晦ましでーす!」

 

投げたロッカーを警戒しに肉薄し、さらに加速をつけて、それを押し付ける。マシンパワーではオータムのISに軍配が上がったようだ、ロッカーを押し付けた側がのけぞったのだ。

 

「なにが目晦ましだ!!」

 

「そこ!!」

 

調べていたIS学園にある水道管の一つとあらかじめ仕込んでいた、コンセントをペトゥルで撃ち抜く。そこから水が吹き出てきて、感電させる。

 

「あり……………やっぱ家庭用じゃ無理があるか。」

 

康一がそう呟いた。シールドエネルギーは少しは減っているが無視できるレベルだった。

 

「オラアァァァァァァァァッ!!」

 

それに気を取られている間に、オータムが八本の脚で攻撃する。近接攻撃も遠距離も出来る優れものの脚だ。それを踵を返し走り逃げようとする。

 

「逃がすか!」

 

「逃げてない!」

 

康一が走った近くのロッカーからガスボンベを取り出し目の前に放り、それをペトゥルで撃ち抜き爆発させる。

 

「うぜぇんだよォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォッ!!」

 

怯まずにオータムは攻撃を繰り出した。康一は下を潜り抜けて、その攻撃を避ける。

 

「これでも喰らえ!」

 

康一は持っているペトゥルをオータムに投げた。

 

「POP!」

 

ペトゥルが自爆した。普通の手榴弾よりは数段威力が高い。

 

「……………」

 

オータムが尋常ならざる殺気を出している。そして、ロッカーを投げた。逆に考えたのだ、敵がビックリ箱のような武器を用意してくれたのだと。

 

「エエッ!?それは不味いって!」

 

それに驚いた康一は、ロッカーを喰らった。そこにロッカーごと実弾を叩き込む。一気にロッカーが膨れ上がり…………大きな音を鳴らした。

 

「あー耳がキンキンする。」

 

「油断したな。」

 

オータムの腕から糸が出てきて康一の手に絡みつく、次々に出される糸に四肢を奪われて、さながら蜘蛛の糸のように動きを封じていく。

 

「…………あれ?これ何?身動き取れね、あり?死んだ?」

 

「殺すか、バカが。本当は織斑一夏のISが欲しかったんだがな。お前のをついでに奪っておくぞ。」

 

オータムが、手に持ったのはヒトデのような趣味の悪い機械。それを康一に付けた。

 

「ガッ………ガァァァァァァァァァァァァァァァァッ」

 

突然に康一が苦悶の表情を浮べ、全身を痙攣させた。

その機械はリムーバーという、それはISにつけると対象者に電流を流し、その流された者からISを奪う代物だ。

康一の周りに、ISを顕現させたときと同じような光の粒子が現れ、消えた。その後は生身の人間しか残っていなく、オータムの手の中にはカゲアカシの待機状態である、足輪があった。

 

「ハァ・・・ハァ・・・」

 

「これを耐えるとはやるじゃねえか。だけどな、散々コケにされてこっちは苛立ってるんだ。死ね!!」

 

再度、手足に糸を絡みつけ磔のようにした。平均的な康一の手足に締め付けられ、糸が食い込んでいるISの力で抜けられなかったその糸は、もちろん人間の力で抜け出せる訳は無いそれなのに。

 

ぶちぶちッ!!

 

嫌な音を鳴らしながら康一の胴体がISの全力で殴られた。

 

辺りは血で染まり。

 

甲高い悲鳴が聞こえてくる。

 

しばらくたち悲鳴が消えた。

「気を失ったのか。運がよければ生き残れるかもなぁ。」

 

手向けのように、そういって踵を返した。

 

 

 

『エネ、直せるか?』

 

『問題無いよ。行こう、あいつはやりすぎた。』

 

 

 

 



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文化祭の、一つの生徒会イベントである演劇をやっている時の事。その、発案者である更識楯無は、焦っていた。

 

「(何…………この胸騒ぎは?)」

 

実は、この演劇は男性IS操縦者を狙う人間をあぶりだす為の作戦のようなものだ。

 

「(敵が来ないのは良い、けど何。この感覚は。)」

 

その時連絡が来た。

 

『敵影確認、迎撃体制に入ります!』

 

『了解、援護に向かう。』

 

オペレーター代わりにしている虚に返信して、敵の顔を拝む為に出て行った。

 

「(織斑君に危害は及んでいないし、相澤君に動きは無い。IS学園の機密部の監視に異常はない…………なぜ、このタイミングで?)」

 

疑問を残しながら。自身の力を振るう為に、出る。

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

IS学園上空、そこに学園の名を冠するものが三機

 

「…………」

 

二つは、凰とセシリアのものだ。そして、もう一機はIS学園に存在しない、いやむしろ、存在してはいけないものだ。

 

「サイレント・ゼフィルス。それをどこで。」

 

セシリアが、サイレント・ゼフィルスの搭乗者に語りかける。

 

「答える義理は無い!」

 

上空で、一つの戦場が展開された。

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

一夏が呆然と、上空を見た。そこには過激な戦いが繰り広げており、それに舌をまいていた。

専用機持ちの代表候補生に連絡は行ったようだが、一夏がISを展開していないと言うことは、一夏には連絡が行っていないことになる。

それもそうだ、さっきまで、王冠を奪われまいと数多くの女性から逃げていたのだから。

 

「楯無さん!」

 

そこに、今のコーチ更識楯無が駆け寄った。

 

「よかった、無事?」

 

「はい、でも鈴たちが…………。」

 

「あの子たちは心配ないわ。心配だからと言って、参加しないで。足手まといになるだけだわ。」

 

一夏が言った心配をたしなめ、さらに命令を追加する。

 

「それより危ないのは君。奴らの狙いは、君のISよ。」

 

「奴らって…………なんですか!?」

 

「…………奴ら、奴らの名前は「おいたはそこまでよ、ロシア国家代表。」

 

楯無が言いかけて、一夏でも楯無でもない声と打撃音が一緒にやってきた。気が付いたら、楯無の姿が消え楯無がいた場所は黄金の装甲を各所に纏ったISがそこに鎮座し、楯無は壁に叩き付けられていた。

 

「始めまして、織斑一夏君。」

 

「楯無さんになにをした!」

 

激昂し、ISを展開する。白式が姿を表した。

 

「何、ちょっと邪魔だったから跳ね除けただけよ。」

 

「ふざけんな!」

 

「ああ、ちょっと。そんなに怒らないの、折角のいい顔が台無しよ?

それに今回、私は君に用はないから。もう一人の男をちょっとぶっ飛ばしに来ただけよ?」

 

からから、と笑うその顔とは裏腹に態度から殺気をにじませている。

 

「で?もう一人の男性、居場所を知らないかしら?」

 

「だっ、誰が仲間の居場所を教えるか!」

 

といいながら手に刀、「雪片弐型」を呼び出し、構える。

 

「…………クスクス、負けん気が強いのはいいことだけど、それじゃ足元を掬われるわよ?

それに彼は、もうアナタの仲間じゃないかもしれないじゃない?」

 

「なにが、言いたい!」

 

煙に巻くような言い回しに苛立ちながら刀を握る力を強くした。

 

「ただの肉塊になっているわよ。」

 

「…………あいつが、そう簡単に死ぬたまかよ!」

 

「おっと、危ない。」

 

その言葉に苛立ちをぶつけるように刀を振い、そして避けられた。そこに、追撃のように実弾が叩き込まれる。実弾が飛来して来た方向に目を向けると、ランスを構えた楯無が居た。

 

「そうよ、だまされてはダメ。彼に付けた発信機は教室から移動していないわ。」

 

「…………。ふうん、なかなか使えるのかも知れないわね。」

 

何かを呟いたが、それを無視して楯無は攻め入った。

 

「そうだ、私がここに来たのは。私の部下がISと交戦しているって連絡が入ってきて…………私の物に傷をつけたから、その報復よ。

今彼は、死に掛けながらも抗っている頃かしらね?もちろんとどめは私が刺すけど」

 

「戯言を…………っ!?なんですって!?」

 

プライベートチャンネルで、連絡が来たのだろう。それを聞いた楯無は頭を抱えた。

 

「どっ、どうしたんですか!?」

 

「連絡が…………。康一君が教室に居ないって。」

 

「なんだって!?」

 

その時、IS学園の何処かで光の柱がそびえ立ち、膨張したそれがだんだんと収縮していく。

 

「なにが、起こってるというの?」

 

「……………康一だ。」

 

楯無の呟きに一夏が反応し、その光の柱の発生元へISで駆け寄っていった。

 

「待ちなさい!一夏君!」

 

目の前に強敵がいる故に、それを物理的な手段で止めに行けない。一夏はその場を逃げるように去った。

 

「仲間思いのいい子じゃない?」

 

「それのおかげで、時間外労働させられるような疲れが襲ってきてるわ。」

 

楯無も一夏と二人でこの敵と戦って、自身の足を引っ張られるよりは、康一を助けた方が良いと判断したのだろう。それに、康一が捕獲、殺害されても国際的に痛手は食わないだろうと、楯無は敵と向き合う。

 

「私も、役割は終わったし帰ろうかしら?」

 

すると、明日の夕飯の献立を考える時の様にそう言った。

 

「逃がすと思って?」

 

「私が逃げられないと思って?」

 

 ◆ ◆ ◆

 

「康一!どこだ!康一ィィィィィィィィィィィィィィィィ!!」

 

一夏が、ISのスピードを利用して光の柱の発生元を見た。そこでは巨大なフラスコ状に地面が削りと取られていた。その、元に一人の男がISを纏い立っていた。

 

「…………よぉ。」

 

「大丈夫か!?」

 

すぐに、一夏は康一に駆け寄った。その刹那一夏の脳裏に女の言葉が過ぎる「もうアナタの仲間じゃないかもしれないじゃない?」何かが引っかかる、でも確認はしなければ。

 

「ああ、大丈夫だ。だけどちっと、疲れた寝る」

 

といって、そのまま床に向かって倒れこんだ。

 

「はぁ!?って、おもっ!」

 

とっさに、体を支える。その本人を見ると、死んだように眠っていた。

 

「寝てるって…………。おい!起きろ!はぁ、運んでいくか。」

 

諦めたように、一夏は康一を背負い保健室に連れて行った。

 

 



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後日談。

うぃっす、相澤康一です!いやはやどうしても、睡魔には抗えないもんで。俺は太陽が地球に侵食され、空を赤く染める夕方に保健室で担任殿と一緒にいます!

 

「…………で、話ってなんです?担任殿」

 

「お前が接触したテロ組織の人員について話してもらうぞ。」

 

と言ってきた、担任殿が言ったようなことは、今の俺には何にも言えない。どちらかと言えば言ってはならないの方が正しいが。

 

「なにが聞きたいんです?そこまで話せることは少ないですけど?」

 

「そうだな…………。」

 

と言って、担任殿が顎に手を当てて考え始めた。ギャルゲ的な奴かな?

 

「まず、お前を襲った奴の容姿だ。」

 

それぐらいか。問題ない。

 

「相手は一人で。背丈と体格は、担任殿より一回り小さくした感じで。髪の色は…………ああ、明るいオレンジ色みたいな感じでした。結構な美人でしたよ?」

 

「いらんことは言わなくていい。その女とは戦ったのか?」

 

「ええ。」

 

「その機体は?」

 

「蜘蛛のようでしたね。機体から八本だったか、脚が生えてきて底から実弾攻撃されました。あの機体の名前はなんですか?」

 

「…………アラクネと言う。そのテロ組織が強奪したものらしい。」

 

「そうですか。」

 

あれまあ、何やっちゃっているんですかね世界は。泳がせているのかな?

 

「それで…………これは、個人的な質問なんだが、好きな女はいるか?」

 

「は?」と言いかけて止めた。一体何の意図があるのだろうか?

 

「いえ、いませんよ。大体俺の体は女を愛するように出来ていないんですよ。」

 

性欲皆無だし。

 

「そうか、それでも一人や二人いると思ったんだけどな。」

 

「そうですか。」

 

「次だが、コスチュームプレイについてどう思う?」

 

このお方は気がふれてしまったのであろうか?何時もの武士、または軍人然とした言動からは及びも付かないセリフに少し呆気に取られていた。

 

「良いと思いますよ?メイド、女教師、ナース、婦警、レースクイーン、などなど男の性欲を掻き立てるような物や、女性の自意識を大きく変えるようなものですからね…………担任殿がやったら引きますけど。」

 

「そういうときはお世辞でも「きっと似合いますよ」とでも言ってやれ。」

 

ダメだ、本格的に精神病院にいったほうがいいかもしれない。人格崩壊の域に達している。

 

「お世辞にも出来ないレベルだったので。」

 

「いや、まあ、一夏の誕生日プレゼントになにがいいだろうかと思ってな。」

 

…………それもそれで引くけどな。ま、俺のやっていることと比べればかわいい物だと思うが。

 

「それで?もう聞きたい事は終わりですか?」

 

「なに企んでいる?」

 

さっきのアホのような質問からは飛躍してはならないような質問だった。コスプレからなにこの話題?

自身の性癖の話から世界平和に飛躍するぐらいの話しだ。

 

「何にも?………如何したんですか?」

 

「不可解な点がいくつもある、外された発信機、必要以上に壊された設備、壊れ方が異常なロッカー。」

 

「へえ、偶然何じゃないですかね?」

 

「ま、私が一番気になったのはそこではない。」

 

担任殿が言葉を区切った。

 

「血液だ。」

 

げ、一番ばれてはいけない物がばれそうになっている!?ここまで俺を追い詰めるなんて、担任殿恐ろしい子!

 

「血液、ですか?」

 

「ああ、あそこにあった血液を調べた所、二種類あって一つはお前の血液型と一致したんだ。」

 

やべえ、傷一つ負っていない事になっているから…………実際には両手両足をもがれたんですけど。その時の血液まだ残っていたんか、どれだけふき取っても落ちないからな。

エネに食べさせるって言う手もあったけど、嫌そうだったし止めておいた。

 

「それなのに、お前には一つの外傷もない。あるとすれば右腕の骨折程度だろう。」

 

なんか、ラグナロクの一撃もISを装備したままでやったら骨折したんだよな。ま、生身で撃った時よりは、数百倍は楽だったからいいんだけどな。

 

「…………」

 

「なにを隠している?…………思えば、いや思わなくてもお前にはおかしいことが多過ぎた。

ISの戦闘の上手さ、世界研究者クラブの繋がり、豪胆さ、篠ノ之束からの接触、テロ組織の撃退。そもそも、お前が起こした分裂と言う奇跡。」

 

「偶然じゃないんですかね?」

 

めっきがはがれかけている。俺の力の無さが白日の下に曝け出そうとしている。

 

「…………こんな偶然があってたまるか。」

 

あのタッグトーナメントはやりすぎたと思ってるがな。ま、そういうテンションだったししょうがない。

 

「帰ってください、あなた疲れているんですよ。」

 

「…………かもしれないな。」

 

担任殿が額に手を当て、少し疲れたように嗤った。

 

「すまないな、失礼する。」

 

やった、やっと帰るか。やっほーい。

そのまま俺は担任殿を見送った。俺の、秘密は色々あるけどこればかりはばれてはいけないからな…………。

 

 ◆ ◆ ◆

 

保健室から出た織斑千冬が呟いた。悲しげに、楽しげに、慈しむように。

 

「…………ファイナルシフト(最終移行)か私達もその高みには行けなかったが。」

 

少し笑った。まるでおもちゃをねだる子供のような表情で懐から携帯を取り出した。

 

「もすもす、ひねもす?」

 

「私だ、もう種明かししてもらうぞ篠ノ之束(・・・・)。」

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

ゆっくりと、じわじわと蝕むように。危機は目の前に訪れていることは、IS学園にいる者は誰もが気が付いていない。

誰もがだ(・・・)。これはバットエンドにはならない。全てが幸せに包まれる話だ。

そういう話を

 

 

 



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Oh...Let's party...

さて、色々あってこの文化祭が終わり、俺こと相澤康一の肩の荷も一つ下りたと言うものだろう。俺が骨折している時にはもう、喫茶店は終わっていたし、その利益を集計すると…………。

 

「…………ねえ、これ脅威的な数字だよね?」

 

と、会計を手伝っていた笠森さん(アレ?居たの?)がそう言った。

 

「フフフフフッ。さすがAK④⑦商法だ。百万越えするとは、正直俺でも驚いている。」

 

「私は君のキャラのぶれように驚いているわ。」

 

ま、一夏との撮影許可券1券に付き2000¥の注文だからな、がっぽり行くわ。俺のおかげか?まあ、ここまでくれば誰のおかげでもいいんだけど。

 

「それじゃ、この金で何かする訳でなかったら、打ち上げでもするか」

 

「え!?あれ、本気だったの?」

 

「YES。もちろん一定以上の売り上げを記録していなかったらやらなかったけど。」

 

嘘だ、元々やるつもりではいた。変な話、打ち上げは俺の罠に(無意識的ながらも)協力してくれた報酬みたいな物だ。打ち上げの幹事を笠森さんに押し付けようと思うくらいにはやる気がある。

 

「もうすでに用意はしているんだけどな。」

 

「なんというか、クラスの出し物と言い準備が早いわね。」

 

「チャッチャとやってチャッチャと帰ろうが座右の銘だった時がありましてね。」

 

「なにそれ?」

 

「それだから打ち上げもチャッチャとやりたいと思います!」

 

「へえ、ま、私も楽しみにしてるよ。」

 

「え?本当?それなら早く行こう!」

 

「え?」

 

俺は指を鳴らした。

 

 ◆ ◆ ◆

 

「ああ、これ、テレビで飛んだら別の場所に行く編集点だったんだ。」

 

虚ろな目をして目の前にある雑居ビルを見た。なにが不満なのだろうか?

 

「それじゃ行こうか。」

 

俺たちは会場に身を踊りだした。

 

 ◆ ◆ ◆

 

「はい!やってまいりました!幹事を勤めます私こと相澤康一の感想としては、サラリーマンが家から帰ってきて冷蔵庫を漁りビールを取り出し煽るようにして飲んだあと「くぅ~やっぱこのために生きてるなぁ~」と言うような気分です。さあ、騒げ!女ども!」

 

「「「「OK!Let's Party!!!」」」」

 

ノリの良い人たちである。こうして、俺の戦いは終焉を見せた。

 

「よ、康一」

 

「おう、一夏。最後まで渋ってたけど、結局出てくれたな、幹事としても嬉しい限りだ。」

 

一夏が話しかけてきた。全く女が居るのにそっちのけで俺に話してきやがった、ホモかこいつは。(この作品に同姓愛者を貶める意図は何一つ入っていません。むしろ作者としてはプラトニックな愛っていいよねと思います。)

 

「まあ、千冬姉から行くなって言われたんだけど。しょうがないよな。」

 

「一夏ッ、お前ってやつは!…………本当に!本当に来てくれて…………ありがとうッ!!」

 

「なんで消え入りそうな声で喋ってんの!?」

 

一夏から突っ込みが入った。良いねやっぱ男同士の会話も、バカっぽくていいもんだ。

 

「ま、冗談だ。立食パーティーみたいになっているから自由に取りに行ってくれ。」

 

オードブルや色々あるからな。冷めないうちに食って欲しいものだ。

 

「おうよ、じゃ、俺は先に行ってるぜ。」

 

「分かった。」

 

…………さて、この打ち上げは私服可だ。むしろ俺としては推奨したいのだが、その理由はアレだ、撮りたいんだよ!

 

「金にもなるしな。」

 

さて、じゃ一夏をストーキングしながら近づいて来る人を撮るか。最初に来たのは。

 

「あ!一夏!」

 

「どうした?シャルロット?」

 

「い、いや…………ちょっとね?」

 

一夏に話しかけて先手を取ろうとしたのだろうが、それに足る理由がなくて一夏の後を付いて行くだけになってしまった。そして、私服も良いね!

 

さてはてお次は。おお、ラウラさん。白のワンピースか。いいねぇ!

 

「嫁よ…………に、似合っているか?」

 

「ああ、似合ってるよ。」

 

はい!頂きましたー!赤面いただきましたー!ヒャホー!!

 

『それにしてもこの男、ノリノリである』

 

波乗りジョニーと呼ばれた俺には不可能はないぜ!

 

『ジョニーに何の力があるんだ!?』

 

 

『お前は、いっぺん地獄の苦しみを再度味わった方が』よし!次の人が来た!箒さんだな。綺麗なドレスを身に纏って一段とそのおぱーいが映えるぜ!

 

「…………な、何か行ったらどうだ?」

 

「あ、ああ、綺麗だよ箒。」

 

キタァー!!一夏の歯に衣着せぬ物言い!箒さんのハートに直撃ィィィィィィィィィィ!!!

 

「ば、馬鹿なことを言うな。」

 

そして赤めェェェェェェェェェェェェェェェェェンッ!!顔に朱が混じって良い表情です!おおっと、そこで箒さんが引いてしまった!そして入れ替わり立ち代り一夏の元に行く女性たち、その一つにオルコット嬢が行きたくてうずうずしているがなかなかいけないで居る。

 

というか、幹事の俺がなんでこんなことしているんだろう?。そこらへんの人の写真でも撮るか。

 

「あ、仲よさそうね。写真とってもいい?」

 

「いいよー。」

「撮って撮って!」

 

「はい!チーズ!…………後で渡すから。楽しみに待っててね~。」

 

「「「「はーい」」」」

 

とまあ、このようにカモフラージュをしながら一夏の後を追っている。オルコット嬢は、途中でクラスの友達と同じく一緒くたにされて話しかけていた。

 

え?凰?ああ、あの人は雑用だよ?…………今は二階上のホストクラブで雑用しているんじゃないかなぁ。

 

「康一君がとんでもなく下衆な顔をしている!?」

 

 

 

 ◆ 回 ◆ 想 ◆

 

俺はスマホをいじる手を止めて、一つの部屋に入る。その部屋の主は女であるが。ここに遠慮は要らない、別に欲情するわけでもないしな。

部屋に入る前にノックを二つ。名前と「入るぞ」とだけ伝えて、部屋の内部に入る。

 

「よう、凰」

 

「来たのね。」

 

男の俺を部屋に入れて少し警戒心を上げているのは、本名凰 鈴音、通称鈴だ。俺は凰と呼んでいる。

 

「で、打ち上げの話よ詳しく聞かせて貰うわ。」

 

そう、打ち上げのことだ。早すぎる話、凰は2組の転校生で、1組の打ち上げに好きな人がが居るというだけで行くのは少し、心が痛むと言うことだ。それなので…………。

 

「なに気持ち悪い笑みを浮かべているのy」

 

 回 ◆ 想 ◆ 終 ◆ 了

 

 

 

「なんで、こんな所で働いているのよ…………」

 

私が今、憎き男、相澤康一の策により、ホストクラブで働いているわ。なんでホストクラブなの?疑問が尽きない、もしかしたらチャラチャラした男に触れさせる精神修行の意味合いなのかも知れない。

 

それにしても、まだホストクラブなんてものがあったのねぇ、今では絶滅危惧種だって言うのに。

 

とりとめもないことを考え、周りのチャラチャラした男に声を掛けられながら私はしゃがんで黙々と作業を進めていく。あの男の話だと、適当な時間を見計らって連絡を寄越すとは言っていた、それを信じるしかないと思う。

 

その時、私の後ろに人が立つ気配がした。私の立場上、命を狙われてもおかしくはない、緊張しながら私のデットゾーン(自分が最大限に有利になる領域)に獲物が入るのを待つ。そして獲物がデットゾーンに入り私はしゃがんだ状態から脚に蓄えたエネルギーを伸ばし、踵を斜めからたたきつける。

 

「おうわ!?」

 

「あらっ?」

 

だが、その一撃は空を切り、その避けた人物をみると、私が警戒していたのはチャラいホストで、驚いて尻餅をついて避けられたのだった。…………なによ脅かせないでよね。胸を撫で下ろし、ホストに謝っておこう。

 

「ごめんなさい、ちょっと驚いちゃって。」

 

「い、いや。大丈夫だよ…………それより、僕はここのオーナーなんだけど、どうして君はここで働いているんだい?」

 

「え?知り合いに手伝えって頼まれたからよ?其方に連絡は行ってないの?」

 

あれ?もしかして私これ、嵌められた?

 

「…………あー、いやこちらも知り合いにそんなこと言われたような気がする。」

 

わたしが言えることじゃないけど、知り合いはちゃんと選んだほうが良いと思いますよ?、と言いかかって止めた。

正直、わたしがここで嵌められてこうしている時点で同じ穴のムジナだ。

 

「そうですか、それなら良かったです。」

 

「しかし、あの男も酷いことさせるね。こんな女の子に仕事をさせるなんてさ。」

 

ウザイ。父のようにウザイ。

私は両親が離婚し中国に帰国そしてまた代表候補になって日本に戻ってきた、と言う経緯を持っている。

こっちに残った父親は知らないが、記憶の端から辿っていけば、厳格か溺愛かのベクトルは違えど中学のころにはウザイと感じていたが、感謝はしている。

 

「いえ、それで止めていいのでしょうか?」

 

とりあえず嵌められたとは言え、康一の顔を潰す様な…………いや潰していいのか?

 

「うん、問題ないよ。」

 

「そうですか、それでは失礼しました」

 

ああ、やっと荷物運びから逃れられ、一夏に会いに行ける。

 

「あ、そうだ。」

 

「なんです?」

 

「頑張れよ鈴。」

 

「そうですか。それでは。」

 

私は曲がり角でダッシュするようにエレベーターに乗った。

 

…………あれ?あのホストに名前を名乗ったかしら?

 

 ◆ ◆ ◆ 

 

 

 

「なにそれ怖い。」

 

「E!?」

 

とまあ、凰の話から総合するに、めっちゃ面白い事になっていたと言うことが分かった。

 

「クククッお前も有名になったもんだな。」

 

「代表候補生だし、名前顔を覚えられても仕方ないわよねぇ…………」

 

そう思い当たったのか、勝手に納得してまた一夏の元に駆け寄っていった。ま、整形技術が凄いからね気が付かないのも無理はない。

 

「さて、俺もパーティーを楽しむとしますか。」

 

こうして俺は人ごみ中を行き、からかう為にその歩みを進めた。

 



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Yes! Let's party!

そこはとある雑居ビルの地下レストラン。そこで女性が二人、机を挟んで対面している。

 

一人は、妖艶なドレスに身を包み、顔に映える金髪が印象に残る美人だった。

対して、その向かい側にいる女性は、頭にウサ耳、体に常人が着たらきつそうなメイド服、脚には実用性が皆無そうなブーツなど、印象に残り過ぎるほどに残る、美人だが町で通り掛かったら完全に目を合わせたくない人間だった。

そして、その二人は机に並べられている料理には一切手をつけず、言葉を交し合っている。

 

「それでぇ、君たちの束さんへの要求はなんなのかな?」

 

「私達ファントムタスクにISの技術提供をしていただくことです。」

 

らしい、ISを作れるのは世界に篠ノ之束、ただ一人。つまり、この人と、資源さえあれば世界征服も可能だ。それを手中に入れようとしているのだ。

 

「ヤダ。それにこのスープ睡眠薬入ってるし、それを加味しなくても私の技術を悪用しようとしている。と言うことは、人間に詳しくない私でも分かることだよワトソン君」

 

「スコールです。」

 

謎の人物が登場し、それをスコールと名乗った女が切り捨てた。

 

「で、ドゴールちゃん。君たちの目的は何なのかな?」

 

「スコールです。それにはお答えできません。」

 

「君は、人にものを頼むときは腹を割って話せといわれなかったのかい?」

 

篠ノ之束の主張と、ファントムタスクとしての主張がかみ合わない。それゆえに篠ノ之は、たたきつけるような論調で話を進めていく。

見るものがこの光景を見たら、篠ノ之束が会話を成立させていることに驚くだろう。

 

「……………本来は、このような手を使うということは予定に無かったのですが。」

 

半ば溜息をついたようにそういった、その表情を見て篠ノ之束は口角を常人には分からないほどに吊り上げた。

 

「そんな訳ないだろう。これ、舐めきってるよね?」

 

といって、懐から取り出した手紙を机の上に叩きつけさらに言葉を繋げる。

 

「クーちゃんの誘拐に、睡眠薬味のスープ、そして近くに居る一機のIS反応。これが敵対の意思が無いと言い切れるのかい?ドモホルンリ○クルちゃん」

 

あからさまに怒気を見せる。常人で有ればそれだけで泣き崩れてしまいそうなそれを受けてスコールは平然とした顔でその言葉を返す。

 

「いえ、そういうことであるのなら。十二分につれてきた意味はあると思います。それと、スコールです」

 

スコールは指を鳴らした。その音と一緒に、黒い服の人達が出てきて一人の少女を連れていた。

 

「私も舐められた物だね。」

 

「どうです?私達に協力していただけないでしょうか?」

 

口角を吊り上げながらそう言った。その顔には勝利を確信したような色が見える。

 

「はぁ、こんな言葉があるのを知っている?」

 

篠ノ之束は、呆れたように溜息を付いた。もはや呆れ過ぎて絶望しているようにも見えなくも無い。

 

「彼を知り、己を知れば百戦危うからず。」

 

「なにが言いたいのです?そして「彼」では「敵」では無いんですか」

 

「君の戦いはもう勝利すら危うい。」

 

そういった次の瞬間、黒服たちが爆発した。周囲に肉片が飛び散る。

 

「なっ!?緊急用につけておいた人間爆弾が誤作動した!?人質は!?」

 

さらっと下衆な行為を暴露しながら、人質の安否を確認する。

 

「はぁ、無能にも程があると思うけど?」

 

気が付いたら、束は人質を確保しながら、スコールたちにそういった。呆れてものも言えないように。

 

「M!迎撃して!」

 

そして、壁を突き破りISが登場する。そのISの名はサイレント・ゼフィルス、イギリスから強奪してきたISだ。それの砲門を開き、束の急所を外しながら射撃する。

 

「ま、種明かししちゃうと、束さんは細胞レベルでオーバースペックなんだよ。」

 

そのISの攻撃を特に目立った装置も付けずに、軽々と避け続けている。

 

「なぜ、生身で避けられる!?」

 

「そりゃ、技術者が自分の作った技術に足元すくわれたら、商売上がったりだからだよ。」

 

百人が百人とも問いそうな答えをわけの分からない論法で、問いを返していく。

 

「だから、ISを解体するのもこの束さんにとっては、ちょちょいのちょいってものだよ」

 

気が付くとISに肉薄し、両手の袖からマニュピレーターを伸ばす。そのマニュピレターの一本一本が、意思を持っているかのごとく縦横無尽に彼女のISの装甲を走りわたり、ISを解体していく。

 

「なっ!?」

 

顔が驚愕に染まるが、それを無視して彼女が被っているISのバイザーにも機械の手を伸ばしていく。瞬く間にバイザーが床に落ち、その素顔を見せる。

 

「ちーちゃん?」

 

そう、篠ノ之束は織斑千冬、相澤康一に言わせれば担任殿の名前を出した。

理由は簡単、目の前にある素顔は、織斑千冬そのままだったのだ。

 

「束様!!」

 

急に呼ばれた名前に、そのまま振り返る。そして。

 

「君は報告じゃ            !?」

 

後ろから出現したISに後頭部をなぐられそのまま気絶した。

 

こうして、闇の部分は、ゆっくりと牙を向いていく。そして、そこには誰も居なくなった。



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正甲 暗乙

せいこうあんおつと読みます


さて、前回色々な意味で佳境を向かえ、その続きが気になる人も居るだろうが、今はIS学園の学食に存在する織斑一夏のワンシーンをお見せしよう。

 

学園祭が終わって、そのほとぼりが冷めきった9月の時。学食の一つのデーブルには織斑一夏が座っている。だが。

 

「……………」

 

「「「「「……………ど、どうしたの?眉間に皺よって?」」」」」

 

織斑一夏が、とんでもないプレッシャーを放ちながら夕食に選んだ学食、Bセットの味噌汁を啜る。その姿になぜだか萎縮するような怒りが込められており、姉が姉なだけはあると思う。

見るものが見なくても、不機嫌だと言うことが分かる。

 

「…………食べ終えるまで、待ってくれ。」

 

やっと長い沈黙から解かれた言葉は、そこに居るメインヒロイン5人、具体的には、篠ノ之 箒、セシリア・オルコット、凰 鈴音、シャルロット・デュノア、ラウラ・ボーデヴィッヒの5人。それら全ての行動を止めるには十分過ぎた。

 

長い長い、王のような風格を漂わせる食事。見ようによっては貧相に見えるかもしれない織斑一夏が食べている日本食も、節制ではなく自制にも及ぶような、その男がこの空間を食べるだけで支配していた。

そして、持っていた箸を置き、手を合わせ口の中でご馳走様と呟く、思い出したかのように5人に向き直る。

 

すると、なぜだか先ほどとは違い、なきそうな顔になりながらこういった。

 

「康一が元気ないんだ…………」

 

「「「「「は!?」」」」」

 

悩みのようなものを織斑一夏から、打ち明けられたが呆けるしかなかった。それの詳細も聞かずにまくし立てるようにして情報を喋っていく。

 

「なぜだか、打ち上げの時には元気をだしていたような気がするんだが、その後は寮では物凄いダウナーなんだ、教室ではあまり喋らないし、俺としゃべるのは寮でだけなんだけど、全く口を閉ざしている。何か、心当たりは無いか?」

 

と、聞かれても、知らない物は知らない。だが、悩みを無下に扱うのも気が引ける。最初に、箒が口を開いた。

 

「私は、奴に何かしてもらったことはないが、面白がっている所は最近見ないな。」

 

「面白がる?」

 

「ああ、私も甚だ(・・)疑問なんだがな(・・・・・・・)。私と一夏が接触(・・)したときになぜだか(・・・・)何処かにいて面白がるんだ。」

 

「気が付かなかった・・・。誰か、他には居ないか?」

 

物凄く棘のある言い方だ、すでに彼女は相澤康一の真意を分かっているのかも知れない。

 

「わたくしは、やられたことはありますが、その一回だけですわね。連絡事項や学園祭では気さくに接してくれましたし。」

 

セシリアはそういった。

 

「鈴、何か無いか?」

 

「なんで私に聞くのよ。…………そうね、絡むときは。ああ、箒と同じよ。アタシと一夏が接触(・・)したときになぜだか(・・・・)何処かにいて面白がるのよ。けど、それも最近は無いわね。」

 

ぶっきらぼうに、そういった。次にシャルロット・デュノアが口を開く。

 

「僕は、そうだね。やっぱり学園祭のときに接触して、それまでだったね。」

 

「そうか、ラウラは?」

 

頭を抱えながら、最後の綱だとラウラに聞く。

 

「私は、康一さんとは…………ああ、そうだ私用で話しかけたのは嫁の写真をくれないかと交渉した時、物凄い笑顔になっていたな。」

 

「「「「「いや、何時も相澤(君)(さん)は笑っているでしょう?」」」」」

 

総員から、ツッコミが来た。

 

「む?そうだったか?」

 

「ああ、その康一から笑顔が消えた。」

 

「「「「「なっ、ナンダッテー!?」」」」」

 

棒読みの驚愕と言う器用なことをしながらその話を聞いていく。

 

「わたくしが戦っているときには口角を吊り上げるといった感じでしたが、基本的に笑顔ですわね。」

 

「アレが笑顔を絶やすなんて、槍かビームでも降り注ぐのかしら?」

 

「にわかには信じられないけどね、相澤君もなにか悩みごとでもあるのかな?」

 

「(あいつのことだ、もしかしたら、本当はどうでもいいことで悩んでいるのでは?)」

 

「…………私も康一さんの琴線に触れるようなことはしたが、それでも少し真顔になっただけだったな。」

 

と、過去の自分がやってしまったことを懺悔するかのように、口々に思い出す。そこで、一夏が気が付いたように口を開く。

 

「お前ら、康一にどんな印象持っているの?」

 

箒が先にその答えを言った。

 

「気が付いたら近くに居るいけ好かない奴。」

 

次にセシリア

「わたくしの印象は、女尊男卑に染まった男。ですわね。…………まあ、そのようなものがあること事態がいけないのですが」

 

謎のフォローを言った。そしたら凰が。

「日本人の変態を象徴するような人間ね。」

 

それを聞いて思いついたようにデュノアが答える。

「私からみたら普通な人だね、普通に人と接して、普通に食べて、普通に行動するような。(普通に脅迫するような人間でもあったけど。)」

 

「私は、絶対に怒らない、怒らせてはいけない人…………その表現が一番しっくり来るな。」

 

最後にラウラが答えた。

 

「ここまで、印象が違うって逆に凄いな。」

 

「まあ、つかみどころの無い人ではありますわね。」

 

困ったように頬に手を当てて、そういった。そんな中、箒が結論を言った。

 

「直接聞くしかないだろう。それだけつかみどころの無い人間であればなおさらな。」

 

「…………そうだな。聞いてみるよ。」

 

一夏のその顔は晴れ晴れとしていた。

 

 ◆ ◆ ◆

 

「ああ、眠い。なんで神様は世界を48時間にしなかったんだ…………。」

 

マジで疲れた。本当に、勘弁してくれよ。もうさ、一夏の写真がたまりに溜まって、売りさばくのが面倒になってきたとか。

それ以外にも顧客は居るけど、IS学園の顧客の方が一番安全牌って奴だ、わざわざ離す理由は無い。

 

ガチャリといって、部屋のドアが開く。一夏か、簪か、生徒会長のどれかだと思うが、確認する。

 

「ただいま。」

 

「お帰り。」

 

一夏だった。因みにここに来る人間は少なくない、頻度が多いのは先の三人だけだと言うことだ。

一夏は、一回目はただいま、二回目以降は無言で開け閉めしてくる。

簪は、ゲーム返しに来たと言い。

生徒会長は、一夏君居る?だ。

その他ノックでここに来る。

 

「なあ、康一。へんなこと聞くけど、何か困ったことでもあるのか?」

 

「こまったこと?」

 

困ったことか、面白そうなことしかないけど。そうだな強いて上げるなら。

 

「歯医者行かなきゃならないからヤダ。」

 

「子供か!」

 

本当なのに・・・。

 

「それ以外か…………そうだな、恋の悩みかな。」

 

「マジで!?」

 

「ああ。(どうやってお前に)恋(させるか)に悩んでいるな。」

 

全く、朴念仁の相手も楽じゃないぜ。

 

「結構想像がつかないんだが…………。で?相手は誰だ?」

 

「は?目と鼻の先に居るわ。」

 

「学園内か、何年生なんだ?」

 

「結構グイグイ来るなぁ、一年に決まっているだろ?」

 

そもそも、こいつはなにに対して聞きたいんだ?

 

「で?どんな感じの子なんだ?」

 

つーか、嬉々として聞いて気ますね。ていうか、何かがずれている気がする。

 

「それ以上いけない。と言うか、なんだ?いきなり?」

 

「なんか、最近元気ないなって思ってな。」

 

「ああ、そうか。」

 

そうか、ま、色々と仕事が立て込んで来て、俺も忙しくなってきた所だ、睡眠時間を削られているからだろう。ま、寝るのは一日だけでいいし、学校を出てもいいことはなさそうだしね。

 

「まあ、恋の悩み云々は嘘だ。最近、疲れが取れなくなってきてな、まだジジイと呼ばれる年齢ではないと思うが。」

 

「ん?それじゃ、マッサージでもしてやるか?」

 

「マジで?」

 

オルコット嬢にやった時は気持ちよさそうだったし、体験してみるのも良いだろう。

 

「それなら、見せてもらおうか、織斑一夏のマッサージとやらを。」

 

と言いつつ、うつぶせになった。

 

「なぜに赤い彗星さんのような言い回しをしているんだ?」

 

「気分。」

 

「そうか、それじゃ始めるぞ。」

 

一夏が俺の腰に触る。

 

「硬っ!?」

 

「そんなに?」

 

「弾にマッサージしたときより数倍は硬い。気合入れていくぞ。」

 

まあ、色々あったからなぁ。……………つか、気持ち良いんだけど。

 

「うにゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーッ。あーそこそこ凝っているんだよねぇ全身。」

 

「ダメだ、こっちが疲れる。」

 

「ま、しょうがないよね。ありがとう。」

 

「どういたしまして。」

 

終わったか。

 

「ま、良いや。俺は寝るぞ。お休み。」

 

「おう。」

 

早く寝ないと…………。

 

多分疲れているのは、闇の足跡を探しているからだろう。VTシステム、どうやって出所の人間をつぶすことが出来るか・・・。

 

その方法を、俺は知らない。



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闇 《キョジュウ の ウイジン》

こいつを出せたことが一番喜ばしい


そこは闇。

闇といっても、物理的な闇ではない。概念としての闇(つまりはダークファイガのようなもの)でもない。

そう、社会的な闇だ。この時代が生み出した、社会から反した化け物ども。

 

かくいう僕も、その中の一人になったんだがな。

僕は、ファントムタスクの構成員が一人。

 

「おい男、作戦会議中だ。聞いているのか。」

 

「えー、へいへい聞いていますよ。」

 

ファントムタスクの構成員『男』だ、コードネームが『男』だ。他は『スコール』だの『M』だのカッコいい名前をつけているにも関らず、僕は『男』だ。

今は、仕事の打ち合わせ中だ…………はぁ、やっぱり女だらけの職場はきついぜ。

 

僕の上司、『オータム(・・・・)』とかいったか。そのおっかない女が、こちらに目をつけてきた。

 

「別に、聞きたくなけりゃ。お前を先に行かせて無駄死にさせても良いんだぞ?」

 

「無駄死にしないようには頑張りますがね。」

 

僕の机を挟んで向かい側にいた『オータム』が脅しを掛けた。

いっぺん無駄死にしかけたが、気まぐれで拾われた命で行きつないでいる奴が何言ってやがる。

 

との言葉を飲み込んで、考え事をしぶしぶと言った感じに中断する。

 

「それで、この基地の襲撃の事に付いてだが…………Mと男に一任する」

 

うわぁい、さっきの意趣返しかい?

えっと、僕も新参者の部類だからそこまでは詳しくないのだが『M』が強過ぎと言うほどには強いことは分かっている。十回やって一回死ぬぐらいだ。

 

「はい、分かりました」

 

僕は、肯定の言葉を。そして『M』は首肯でそれを返した。…………多分、僕のファントムタスクとしての初陣だからな。いっぺんヤキを入れようということなのだろう。

 

「決行は二日後、ISの整備をしっかりして置け。」

 

ここでは、NOの二文字は存在しない、言った瞬間に消し炭にされるからだ。

 

「……………腐れサイボーグババアめ、今に見てろ。」

「あら?何か言ったかしら?」

 

前言撤回、NOではなく失言の二文字だ。現在進行形で消し炭になりそう。

 

「いいえ?何も。何もないので、その金色の何かをしまってくれませんかね!?」

 

ISを出してまで怒ることかい!?スコールの笑顔に殺気を見え隠れさせながら、展開した金色の腕から炎の弾を出している。

 

「スコールお姉さんは、綺麗でナチュナルな英国淑女もビックリの完璧人間です。はい、復唱」

「スコールお姉さんは、綺麗でナチュナルな英国淑女もビックリの完璧人間です。はい、復唱」

 

「おわっ!?あちゃちゃちゃちゃっ!ほわちゃ!あっちぃなコノヤローぉ!」

 

「なんでカンフーの掛け声みたいになってるんだよ」

 

結果はお察しだ。

 

 ◆ ◆ ◆ ◆

 

「特筆することも無かったので二日後へ」

 

「…………」

 

多分、その後で違う誰かと一緒になるのでろうが、暫定的な僕の相方『M』は寡黙だ。突っ込みも入れないし顔も見たことが無い。最も年がら年中ISのバイザーをつけているのではないかと思わせるぐらい、顔を見る機会が無いが。

 

「それで、僕への命令は?」

 

「…………先行、私はフォローだ。」

 

訳:お前を無駄死にさせて少しは陽動として役に立って来い。

なるほど、死にますね。まあ、僕の戦い方は、コイントスのようなものだ、二分の一で勝つ。

どこぞの魔人ですかって話ですよ。

 

「了解。作戦予定時刻に変更は?」

 

「なし。」

 

「把握。」

 

物凄い気まずいでござる。ま、それでもやるしかないんだけどね。世界のどこに逃げようとも自分の居場所は存在しないから、逃げても意味が無いことは分かりきっているからね

潜んでいた場所から姿を現し、作戦を遂行するとしよう。

 

僕が今纏っているのはイタリア製のIS《テンペスタ》だ。

ISのカラーリングは青、黒、白が混ざった迷彩柄で、特徴として、他のISとは頭一つ抜けた馬力と、手足のリーチの長さが挙げられ、その馬力から繰り出される長いリーチからの攻撃は、近接戦では一日の長を得られる機体といっても過言ではないだろう。

 

だが。そのようなコンセプトで作ったが挙句、他国家の軍事オタクどもから「お前の国家は基本戦術が重歩兵から変わってねえな」と揶揄される原因となったのだが、それは別の話。

 

「っと、じゃなかった。」

 

行かなければならないんだった、俺は観測地点ギリギリのところまで上昇する。

 

「ここら辺かな?」

 

真下に襲撃するべき基地がある。そこにある全てのISの奪取、それが僕に課せられた任務だ。

 

「じゃ。」

 

僕は僕を殺す。いや、もう死んでいるような物なのだが、それは触れないで欲しい。指を銃の形にして僕のこめかみに人差し指をつける。

 

「ばーん」

 

PICを解除して自由落下。スカイダイビングの感覚をじかに浴び、そして俺は、行動を開始した。

 

 ◆ ◆ ◆

 

「…………なにをしている?」

 

Mはそう呟いた、行動が不可解なのだ。

襲撃するにしても陸路で十分だし、空路を使うにしても迎撃されるのに自由落下していく必要は無いはずだ、加えて落下していく前にやった謎の行動、それに何の意味があるのか。

 

ISのハイパーセンサーでその行動を見守る。

 

そして地面に激突仕掛けそうな瞬間。体を捻り四肢を余す所無く使って着地する。吐息が聞こえる、そして。

 

 

「GRYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!」

 

 

獣の叫び声を最大限大きくしたような音。音で大気が振るえ、腹のそこから原始的な恐怖が鎌首をもたげて潜み上がる。

『M』と『男』の距離は離れ過ぎと言うほどに離れているが、それでもMの耳朶を叩き、耳を塞がせるには十分だった。

 

そして、一匹の人間だった獣が、風の如く侵略していく。

 

そしてISが出る。通常、相手が生身であれば、対応した人間を出してくるのだろうがISの襲撃そして、『人の形をしているが人とは思えない、謎の敵』と言う、人間が想定をしようもはずもない一つの概念をほんの少しだけ対応を遅らせた。

 

結果、進入を許してしまった。

 

彼、もっとも彼と形容できるのかどうかは分からないが『彼』としておこう。

 

彼の道の前に人の壁が出来る。だが、彼にとっては。

 

「GAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!」

 

獲物に過ぎない。

人は恐怖の表情を浮かべさせるが、相手も(軍事的な)基地にいる人間だ、一瞬でその表情が霧散し軍人の顔になる。

 

撃て!だの装填!だの喧々囂々の騒ぎだが、それを掻き消す獣の咆哮に否応無く注視させられる。そして、咆哮から転じて攻勢に移る。

 

車のような四足走行。だが説明するまでも無く、車輪などは付いていない。象の如く悠然に、しかして豹の如き速さで人の壁の距離を詰める。

 

 

切り取られた脚、ちぎれた腕、噛み千切られる頬。彼が起こした惨劇に枚挙にいとまがない。

 

 

彼と相対する敵も、彼が普通(・・)であればここまでの被害を出さなかっただろうが常識外の行動を取られたら如何しようも無いのだ。

 

そして、人の壁を突破する頃には、辺り一面鮮血があり、彼の口には血の色を少し薄めたような色。

 

いつの間にか死屍累々の有様であり、その風景に天国と言えるものではない。

 

機械も、人も何もかもが獣によって殺しつくされてしまった。

 

 ◆ ◆ ◆

 

ああ、終わったか。よしよし。ISもかなり持ってきたし、篠ノ之束も『オータム』が誘拐してきたとかいったし、我がファントムタスクはこれで安泰だなぁ。

さて、そんなことは置いていて相方に戦果でも報告しましょうかね。

 

「もどったぞ。『M』戦果はどうだ?」

 

「…………」

 

「なんで一歩下がってるんですかね!?そんなに生臭い?」

 

確かに血の味とべったりと付いた返り血はあるけどそれだけじゃないか!

 

「いや、なんでもない」

 

「…………そうですか。じゃ、これ多分ISの待機状態ですね。国が抱えている研究機関とはいえ数が多過ぎやしませんかね?」

 

「たまたまだろう。」

 

へえへえ、そうですかい。

 

「作戦は終了ってことで。これにて帰らせていただきますよ~」

 

こうして俺の帰る場所に帰った。初陣だったが、結構動けたな。



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すばらしい話をしよう。それは紛れもない高校一年の冬。俺はおもむろにポケットからPSPを出し彼女と談笑していたんだ。な?一人救われたのさ…

ま、事件の幕開けとやらは俺の預かり知らない所から起こっているのだろうが、これは……………。

 

「…………不味い。」

 

「なにが?ッてか、なんで生まれたての小鹿のようになっているんだお前は?」

 

脚をガクガク震わせながら、俺のベットに上半身を倒れこませている。こうなった経緯は、ラインでの会話に遡る。

 

 

 

Kんざし『野良氏よ』

 

野良野郎『なに?』

 

Kんざし『エマージェンシーでござる。』

 

野良野郎『どっした?』

 

Kんざし『詳しくはあって沙汰を話す』

 

野良野郎『俺の同居人と合うのがいやだからって言って来ないじゃん。』

 

Kんざし『いる?』

 

野良野郎『いないが?』

 

Kんざし『それの事に付いて話したい』

 

野良野郎『把握』

 

 

そして現在に至る。

 

「で、どうした?」

 

「…………コウリャクを始めたでござる。」

 

名詞が無い。

「だれが?」

 

「…………織斑一夏」

 

「それで、何でそんなに体力を消耗しているのでしょうかね?」

 

今では小鹿ではなく胎児のように丸まっている。こんな所でサービスシーンを使うんじゃありません。因みに今、簪はスカートだ。

 

「…………ヤバイでござる。」

 

「口調がおぼつかなくなるほど追い詰められているな。それで、どういうことだ?産業で」

 

「…………織斑一夏が私に接触

 …………近日にある全学年合同タッグマッチに出場誘われる」

 …………攻略…………ッ!!」

 

「良かったな、ヒロイン入り確定だぞ。」

 

俺は適当に返した。だって、どうでも良いんだもの。口調が昔の状態に戻っていると言うのが俺の目下の問題だ。

 

「…………良くない。あんなことされたら私の心臓がバクバクしすぎて死ぬ。」

 

心臓がバクバクねぇ。…………いや、もうヒロイン入りですね乙。いやぁ、ちょっと赤飯でも炊く準備でもしましょうかね?円卓の騎士の全員が一夏に落とされたか。

 

「死にはしないだろう。ま、俺から言えることは…………そうだな、命短し恋せよ乙女。自分の気持ちを偽って逃げたってなんの良いこともないぞ」

 

因みに実体験。

 

「…………貴方を見ていればそれは分かる。どうやって、この気持ちを整理して良いのだか分からないのよ」

 

「そうやって悩むのも青春の仕事だ。俺は悩みたくないから流されるけどな」

 

自分で考える方向にシフトさせなければいけない。今までのアイデンティティを拭い去り、新しい自分になろうとしている。

 

「……………でも。弱い私が、昔の私が織斑一夏を一緒にいると今の私を刺激してくるの。こんな私に接してくれる、ヒーローが来たって勘違いしてしまう。」

 

別に勘違いしてしまっても良いと思うが?間違えてやり直せる年齢だし。

 

「ヒーローねぇ、言葉が使えると言うことは、その言葉のイメージを持っているって事だ。例えば、軟弱とかだったらカイ・シデンとかな。」

 

「…………それは貴方だけ。」

 

「まあ、ものの例えさ。それで、お前が持っているヒーローというものはなんだ?そしてなんでそれで弱い自分が呼び起こされるんだ?話はそれからだ。」

 

まずは、整理をさせる。それから、俺の面白違う、望む方向に思考を偏重させる。

 

「…………私のヒーローは、誰にでも救いの手を差し伸べるような人、だと思う。今はそれを必要としていない。…………いや、違う。」

 

「だろうな。お前は、問題だと思っていたのを。無理やり問題としてみていないだけだ。そんなことをやっていれば、心にがたが来る。」

 

結論を、俺の言葉で発する。

 

「…………そう、だね。」

 

よし、納得してくれたようだ。そんなことは非常にどうでも良いことなのだが、ちゃんと人の道に戻してやらないと。

 

「そうだ。…………それでさ、どんな所に惹かれたんだ?専業主夫としては最高の人材だろ?」

 

「うるさい。人がこうも悩んでいるのに、あざ笑うようにして。」

 

それが日課ですので。とはいえないので。

 

「そりゃ、こういう生き物ですので。」

 

といっておいた。それじゃ雑談でもしますかね。

 

「……………わかってはいたはずなんだけど。それに、今聞くけど。貴方はなにをしたの?」

 

「なにって?」

 

「一学期が始まった4月中の時。貴方が来てから劇的に私の周辺が変わった、悩みの種が一つ消えて、親との関係も良好になった。IS開発の目処が立った。

むしろそれだけなんだけど…………忙しい、と言うのを軽く超越するレベルで忙しい父が貴方が来てから私に接触してきたって言うこと自体がおかしいの。」

 

ああ、そうだ。簪と普通に話している理由か。これは、とりあえずむかついたから父親の所に乗り込んで、話してみたらめっちゃ良い人で意気投合したって感じだな。

 

ISの件は一葉に頼んでIS製作の最前線にぶち込んで成長させたってだけだ。

 

「いや、俺に言われても。」

 

「…………貴方はうそつきだからね。」

 

いやはや、それほどでも。

 

「褒めてない!」

 

「何にも言ってねえだろうが。」

 

表情読み取るの上手くなってね?

 

「ま、人の恋路は適度に邪魔するってのが俺の座右の銘だからさ。とりあえず応援しているよ」

 

「この前、ハーゲンダ○ツは少し溶けかかったほうが美味いのと同様に、人生も死に掛かった時の方が面白い。って言って無かった?」

 

「言ってたっけ?」

 

「ええ、言ってた」

 

「ハハッ。ま、一夏との関係は俺も応援している。安心して誘惑してこい。」

 

そういった瞬間、顔を真っ赤にしながら俺のところを叩く。いやはや、体術も習ってない奴のパンチは全然きかんなぁ。

 

「もう!もう!…………私のISが作られた時には覚えておけ」

 

とりあえず。模擬戦だけは受けないようにしておこう。

 

「うるせ。」

 

「ああ、話したら結構楽になった。ありがとう。」

 

勝手に楽になりやがった。けど良いか。

 

「それじゃ、後はお前で頑張ってくれ」

 

「血も涙も無いね。」

 

それから数回言葉を交わし簪は去っていった。ま、俺はどうでも良いけど恋路は気になるからな。

 

 

「応援はしてやるよ。応援は…………な。」

 

 

多分、物凄い笑顔だろう。まるで新しいおもちゃが出来たときの子供のように無邪気な笑顔だったであろう。だけど、子供はおもちゃを簡単に壊す。つまりはそういうことだ。いや特には何もしないのですが。

 



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全学年合同タッグマッチ
薄皮一枚の観察者


前回色々と、起こった簪のヒロイン入り。

それをむっ飛ばし。その中での会話で出てきた言葉。

 

「全学年合同タッグマッチ」

 

ま、俺には関係無いと思って放置していたんだけどな。

とりあえず、そんな愚痴は成層圏の彼方にでも置いて概要を話すとしよう。

 

この全学年合同タッグマッチは、専用機持ち達がテロリストからの自衛を促す為に行われるものだ。そして、今現在専用機を持っている者をまとめると。

 

「織斑一夏」

「篠ノ之箒」

「セシリア・オルコット」

「凰 鈴音」

「シャルロット・デュノア」

「ラウラ・ボーデヴィヒ」

「更識楯無」

「更識 簪」

「相澤康一」

 

後三年に一人、そして二年にもう一人。この11名が確認されている。

しょうがないことだが、他の専用機を持っていない生徒はこの専用機持ちのえさみたいなものだ。

 

そしてタッグマッチと言うほどであるのならば、11名は一人余るのだが…………俺は出ないんだよね。え?そんなの担任殿がゆるさないぞって?いや俺は。

 

「くっつきかけた骨取れますよ?」

 

「…………逆にそこまで早く治りかけるって事に驚いているぞ私は。」

 

そう、先の学園祭で俺骨折してるんだよね。あの馬鹿げた一撃を放ったせいで。痛かった二回目だけど。あれ?これ二回目?

 

「はあ、こちらとしてもスペックが高過ぎる機体を使わせてお前を壊すのは本位ではないしな。」

 

「全く、面倒なもの作ってくれましたね。」

 

そう、カゲアカシの面倒な所は、ビットの数を調整することで最強の機体にも最弱の機体にもなれるということだ。機体自体のパワーは(他のISと比べると)微々たる物だし、前提としてビットとの並列運用が要求される。

 

しかもビットが、ブレード、拳銃、槍、十手。とまあ、十得ナイフのような多機能を兼ね備えている。

早い話が、器用な機体だ。デュノアの娘っこにでも渡せばとんでもない機体になっただろうな。

 

その、デュノアの娘っこの機体も変な風になっているがな。

 

「で、俺はいかがいたしますかねぇ?」

 

とりあえず、俺は出席しないからな。学園の方の評定にも関るかもしれない、それならば補習のような形で担任殿をフォローするのも良いかもしれない。

そう思い、俺はその言葉を聞いた。すると深い溜息を付き目頭を揉みながらこういった。

 

「そうだな、全員のフォローでもしてくれないか?」

 

フォロー。

これは、前回にも通ずるのだが。ええ、タッグマッチとかやったら一夏に集中するに決まっているじゃないですか。ええ、それはもう。

 

「任せてくれたまえ!」

 

「物凄い嫌な予感しかしなくなった。」

 

それはきっと、ジャイ○ン映画版の法則と言うものだろう。あれ?ということは普段から鬼畜の如き印象を与えているのか?

 

「まあ、気になさんな。こちらとしてもめんどくさい案件を手に入れたものでね。ついでにやっても良いと思っている。」

 

具体的には、簪と一夏の絡みを見たいと言う理由だが。つーかラブコメ分が足りないんですけど!!

 

「…………そうか。全く、あいつも早く身を固めて欲しいものだな。」

 

「一夏もお前にい」

 

反射的に言の葉が口からこぼれ出たその瞬間殴られた。誰に?そりゃお察し。

 

 ◆ ◆ ◆

 

とまあ、こんな成り行きでやっているのだが。先に簪のほうを見てみたいよね。

 

そうだ、俺が情報収集したときに入手した一夏と簪の出会いは…………。

 

一夏が、簪の在籍しているクラス。1年4組に乗り込んだ。一夏は、初めて会う人に緊張しているが、その提案者はこの学校の生徒会長であるからにして、断れるわけが無い。

 

一夏は腹をくくり、話しかける。話しかける相手はキーボードを壊してしまうのではないかと思うぐらいにタイピングしている。

 

「更識簪さんだよな?」

 

「ええ、そうだけど?」

 

話しかけた相手に一瞥もくれずにモニターを凝視している。

前情報と違う、内気な子とか聞いたが…………。そう思ったとき。

 

「で、なんのよう?結構忙しいんだけど。」

 

「全学年合同タッグマッチに一緒に「やべッ死んだ。」えっ!?」

 

出鼻を挫かれた。

 

「全削除めんどくさい。」

 

簪はバックスペースを連打しながらそういった。

 

「あの、全学年合同タッグマッチ一緒に出て欲しいんですけど」

 

「あ、ごめんなに?聞いてなかった。」

 

「全学年合同タッグマッチ一緒に出てください。」

 

「良いよ。私のISまだ出来てないけど。」

 

「別に良い。俺は簪さんと一緒に組みたいんだ。」

 

無自覚に歯の浮くようなセリフを吐いた。なぜだか簪は無表情になり。

 

「…………聞くけど、他に誘われた人はいなかったの?」

 

「えっと、数えきれないくらいに。」

 

「死ぬわね。」

 

突然の死!その発言に戸惑った一夏は、その意味を聞くが。

 

キーンコーンカーンコーン

 

「…………タイムオーバー。そういえばこれの擬音語ってキーンコーンカーンコーンなんだろうね。」

 

「知らないよ!?」

 

はぐらかされてしまった。

 

 ◆ ◆ ◆

 

と言う感じだろう。よしよし。面白くなってきた。

 

それじゃ、まあ、フォローとかしながら進めておきますかね。それでは、チョロチョロとフォローに移りますかね。

 

まず最初は。オルコット嬢と、凰のペアだ。

 

 ◆ ◆ ◆

 

「ウィーッス」

 

俺は、整備室に入る。そこで今現在タッグマッチ用に整備しているのだろうが…………。

 

「ボルティックチェーンの換装を早くしなさいよ!なに!?今すぐは出来ない!?やるのがあんたらの仕事でしょうが!!」

 

「ええ、とりあえず一番破壊力のあるものを。ええ、ビットも100機ぐらいに増やせませんの?」

 

入ったのは魔窟だった。正確には女の嫉妬という魔窟だった。…………また別室では同じようなことは繰り替えさているような気もしないでもない。

 

いずれの戦場でもここまでは殺気を放っていないだろう。といった具合に、どこと無く鉄臭い匂いがあたりを充満させる。すると二頭のケダモノが…………いや、二人がこちらに気が付いた。

 

「よっす。」

 

「何しに来たのよ。」

 

聞かれたので口からでまかせで答えた。

 

「ああ、担任にタッグマッチに出ないのなら、専用機の整備や操作の類を見て勉強して来い。とのお達しでな。最初にここを見る事にしたってことだ。」

 

「「そう、邪魔にならないように隅っこで縮こまって(ください)なさい(な)。」」

 

険悪さ三割増しだ元から最大なのにどうしよう。

大方一夏と一緒にタッグマッチに出ようとしたが簪に取られてご立腹、そして一夏を倒す為にそこまで頑張っているという訳か。その余波だけで俺死んじゃいそう何だけど?

 

「はいよ。」

 

部屋の(もちろん邪魔にならなさそうな)壁にたって寄りかかり、ボーっとしながら整備している風景を見つめる。あれ?これ写真に撮ればよかったんじゃ…………。

 

とは思いつつも、フォローしろとの依頼だからな。ちゃんと果たさないといけない。

 

「それで、お前達。作業しながらでも聞いてくれればかまわないんだけどさ。」

 

「なによ」

「なんですの」

 

「一夏と組めなくて残念だったな。」

 

瞬間レンチが二本飛んでくる。股間部分と頭に飛んでくるがそれを華麗に避けていく。ひとつは俺の手の中に、もう一つは鈍い音を立てた後床に落ちた。

 

「殺すわよ。」

 

「あれまあ、どこの馬の骨とも分からない奴がねぇ。」

 

煽っていくスタイル、まだ、これで通用する時期だ。どんどんん過激にしていくという手もあり。

 

「先手を打たれたわ、だけど、次善策をとらないわけは無いし…………今は反省しているわよ。」

 

二人とも罪悪感を宿したような顔で、ISを整備している。

 

「腹割って話せば良いのにねぇ。」

 

「「それが出来たら苦労はしない(いたしません)わ!!」」

 

思ったことを言っただけでこのあり様だ。さて、状況は分かったことだしフェードアウトでもしてきましょうかね?

 

 ◆ ◆ ◆

 

「それじゃ、出せ。」

 

「なにを!?」

 

織斑一夏と更識簪は某所整備室にいる。因みにIS学園内だ。

 

「決まっているでしょう。一夏の戦闘データと…………めんどくさいデータを根こそぎ寄越せ。それが出来ないのなら帰れ。」

 

「プッ……………アハハハッ!」

 

そのセリフを吐いた直後噴き出しながら笑った。

 

「どうしたの?」

 

「いや、そうやって暴言を出して、最終的には協力してくれる男を思い出したんだ。『殺人鬼と同じ場所に居られるか!俺は帰るぞ!』って言いつつ結構ISの戦闘で助けてくれるんだよ」

 

言葉に矢印があるのなら、今は簪に心当たりという言葉の矢印が突き刺さっているだろう。その矢印は、簪の心を真っ赤に染めて顔を無表情にさせた。

 

「…………そう。それで渡してくれないかな?」

 

「あ、ああ。」

 

ほら、といい。手に装着してあるガントレットを手渡す。

 

「もらいー!」

 

「おい!」

 

「冗談だよ。真に受けないで。」

 

そんなやり取りをしていた。

 

 ◆ ◆ ◆

 

二組目は、俺としてはデュノアの娘っことラウラタッグのほうを優先したかったのだが。

 

「あれ?相澤君じゃん。」

 

「あ、どうも会長。」

 

このIS学園の生徒会長、更識楯無に捕まってしまったのだ。いや無自覚百合カップル、じゃないデュノアの娘っこ&ラウラペアの方も見たいんだけどな。

 

「丁度いいわ、貴方も来なさい。」

 

「どこにですか?」

 

とまあ、それは置いておいて。それよりは会長が言っていた『貴方“も”』って所が気になるんだが。

 

「IS適正検査をするのよ。二人とも入学以来から検査をしてないって言うじゃない。」

 

説明しよう、IS適正検査とは、ISに適性があり、それを検査することである。つまりは呼んで字の如しだ。因みに適正があるとISが動かしやすくなるってだけだ。

 

「あと一人誰ですか?」

 

「箒ちゃんよ。」

 

マジでか。もしかしたら会長と箒さんがタッグを組んでいる可能性もある、と言う嫌な予感しかない。これは不味い。

 

「そうですか。」

 

「まあ、そこまで緊張しなくていいわ。」

 

「はい。」

 

全然緊張はしていないんだが。

 

「それじゃ、行きましょうか。」

 

「ええ。」

 

 

 

 

 

と言うわけで検査所へ。

 

「よっす。」

 

「…………何しに来た?」

 

俺と、会長が行き着いたところに箒さんが、怪訝な表情をしながら何度も使いまわした挨拶の言葉を出す俺を見た。そこまで変か?

 

「ちょこっと、検査しに」

 

非常に正直に話したつもりなのだが、それでも表情はほぐれない。それを察したのか会長が強引に話を逸らす。

 

「はいはい、とりあえず適正検査、始めましょ。」

 

そういわれ、俺もそれに便乗し検査するカプセルのような場所に入る。レーザーみたいなものが俺の体を纏わりつき数秒して、検査が終わった。

 

すると、会長が溜息を付いた。

 

「…………はあ、相澤君の異常なまでのIS操縦の下手さの根本的原因ってこれなのかしら?」

 

「どうしたんですか?」

 

その呟きの原因を探るべく検査結果を覗くと。

 

「あ、やっぱりD判定されましたか。」

 

因みにDはギリギリ動かせると言うレベルだ。最高ランクはS。やばいくらいに良い。

 

「…………逆にレアな部類よ、めんどくさい障害が二つに増えたわ。」

 

「あ、箒さんスゲー。Sだってよ。」

 

「ブッ!?」

 

喉が渇いて水でも飲んでいた所に吹いた。同時に俺の脇腹もグーで殴られた。

 

「メンタルに影響が出たらめんどくさいじゃない。」

 

…………と、アイコンタクトで語ってきた。まあ、女性って天狗になりやすいからな。俺は失態を取り戻すように箒さんに話しかけた。

 

「いこうぜ、一夏に一泡吹かしてやらねえとな。そのためにはまず、俺の嘘なんかで心乱さないようにしてもらいたいもんだ。」

 

「やっぱりか。楯無さん先に行ってます」

 

「分かったわ。」

 

俺に掛かればこの程度よ。箒さんの部屋から出て行くときの背中を見ながらそう思った。

 

「相澤君、さっきの言い方で撃退するって。どんな何時も言動しているの?」

 

「一種のオールフィクション。ってねぇ」

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

「………はぁ、出来た。出来ちゃったかぁ。」

 

「なんで!?」

 

必死になって作っていたISが完成し、それでもなお出来ちゃったと言う簪に対して一夏が驚いた。

 

「マルチロックオン・システムとか武装に関してのシステムは一枚葉にて完成しているし、打鉄自身のOSに関しては面倒だったからそこまでいじってなかったけど、なにはともあれ完成ね」

 

「少しは役に立ったか?」

 

「ありがとう。」

 

「どういましまして。それじゃ特訓でもしてみるか。」

 

「まだよ、試験運用もあるし。それに付き合ってもらうわ。」

 

 ◆ ◆ ◆

 

それじゃあ、本命、無自覚百合カップルを見に行きましょうか。

 

 

と、その描写をする前に話したいことがあるんだ。

よく、銃!ビーム!女の子!見たいなソシャゲあるよね。それって実際にかわいい女の子が戦っていて、本当に男の中の萌えって物が刺激されるんだけど。使い古された感もあったけどやっぱり良いよな。

 

 

って、思っていた時期も有りましたね。

 

 

「……………」

「……………」

 

 

辺りに漂う硝煙の匂い、機械の甲高い駆動音に頭を揺さぶるほどの轟音。そして、鬼気迫るほどの無表情。

 

2人で戦場を再現し、その中を縦横無尽に動き回る。その場にあるのは濃厚な殺意と殺気。

 

そしてそれの源は…………、やはりといっていい乙女の嫉妬だ。

 

「俺はとんでもない扉を開いてしまったのかもしれない。」

 

そっと気付かれない程度に踵を返して俺はそっと見なかったことに。

 

バキュン!

 

「…………やあ!そこの君。ちょーっと特訓に付き合ってくれないかなぁ」

 

デュノアの娘っこが、煙を吐き出している銃口をこちらに向けながらそう言ってきた。

なぜか見るものを恋に落とすような笑顔で。

 

「逃げようなんて思わないことだね。」

 

恐らく付き合うのは地獄だろう。そこに行くのはごめん被りたいが。

 

「逃がしてくれなさそうだな。」

 

ええ、諦めますとも。俺は、断頭台へ登る囚人のような気持ちでアリーナに赴いた。とりあえず右手だけは隠しながら。

 

 




艦これの夏イベE-4クリアできないのじゃ…………。


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闇《テンサイ ノ カイコウ》

そこは闇の中。僕は、僕にあてがわれた部屋に腰下ろしている。その部屋は殺風景な場所で、何の娯楽や文化的なものは存在しない、あるのは打ちつけた鉄筋コンクリートの床、壁、天井それだけだ。

 

そんな殺風景過ぎる部屋で僕は虚無な時間を過ごしていた。…………まあ、端的に言ってしまえば暇なのだが、最近は皆ピリピリしているような気がしてならない。

 

一介の兵士である僕には詳しく分からないのだが、近頃大規模な作戦に出るらしい。ま、僕が分かっていることと言えば、標的はIS学園と言うことだけだ。

 

その作戦時に命令を聞けば良いだけだし、僕には関係無い。と言うか参加していない作戦は全然なにが起こったかわかっていない。そう、問題としてはどうやってこの暇を潰そうかということだ。すると、()の中の悪魔が囁いた。

それはファントムタスクにあるまじき行動であり、今の僕には非常に面白そうな案件。

 

「篠ノ之束に会いに行こう」

 

僕は部屋を出た。そして…………。

 

「篠ノ之束と面会しに来た。」

 

「確認を取ってみます。」

 

まあ、アポ無しで来たからな。弾かれることもあるかも知れないけど……………悪いことにはならないだろう。

 

「ええ『男』が…………はい、え?…………分かりました。」

 

難なくクリアだ。そして、僕は稀代の天才。篠ノ之束と対面する事になる。

その事実に生唾を飲みながら、閉鎖されている軟禁部屋のドアが開く。

 

 

 

「この人が、あの。」

 

 

 

「ええ、天災。篠ノ之束です。…………交渉、拷問もしましたが、芳しい結果は得られませんでした。現在は、軟禁し外交的な扱いをする為にこうしているのです。」

 

物凄いぺらぺらと喋ってくれたなぁ?秘密主義のファントムタスクさんにしては珍しいことだ。僕は頬に笑みを浮かべていた。

 

「へえ、ま。殺さないようにはしておくさ。」

 

と言いつつ僕は部屋に入った。とりあえず、これが終わったら看守を見守る看守をつけておくことを推奨することにしよう。

 

「…………またか。君たちも飽きないね。」

 

その中に居たのは酷く憔悴しきった顔をした女、篠ノ之束が、壁に取り付けられた手錠を付けられながら座って居た。またってのは、尋問や拷問まがいのことをやったのか?まあ良いや、それより僕はやらねばいけないことがある。

 

 

「今回は達じゃないんだけどな。篠ノ之束」

 

 

呟いても反応が無い。こちら側の世界では当たり前なことなのだが、やられ具合に対して結果が出来過ぎていると思う。

ともかく反応が無くても僕がやらなければいけないことは出来る。

 

「……………良いや。()は。」

 

そういって息を吸って吐く、もう一度吸って、止める。全身に酸素が行き渡り、体中の筋肉が歓喜の悲鳴を上げる。

そして、小気味良い銃声のような平手打ちの音が室内に響いた。

 

「なんで、あんなものISを作った?」

 

「…………私の知り合いに。(宇宙)に、行きたいって言っていた人が居た。それだけだ。」

 

僕の中で怒りが渦巻く、その中で僕はたどたどしくも喋っていく。これも、最初に平手打ちでもしないと、その怒りで自分がどうにかなりそうで、ここまで喋れなかっただろう。

それに、その返しは予想済みだ。

 

「それで何人の者を巻き込んだ?そしていつまで僕は犠牲になれば良い?」

 

「だからなんだよ。私は、私と私の認めた人のためにしか動いていない。」

 

()の感情の吐露。でも、篠ノ之束は僕を睨みつけながら口が減らない。

 

 

「お前の大切な人ぶっ殺してやろうか?」

 

「君程度で殺されるようなやわな人間じゃないよ。」

 

 

いちいち勘に触る言動をしてくる。まあ、僕としてもここで怒り狂ってISの元凶を叩いて復讐して終わりってなってもファントムタスクさんがら酷い報復がくるだけ。僕の今には代わりは無いのは分かっている。

 

「…………まあいいけど。天災とやらのご尊顔を拝みたかっただけだし。せいぜい、出してもらえるように俺達の女王様にでもその枯れかけた声で泣き付くんだな。その鉄カゴの中で。」

 

 

 

といって僕は踵を返した。背後で篠ノ之束が…………笑った。

 

 

巻き込まれる奴が巻き込み、巻き込んでいる奴が巻き込まれる。坂を転がる雪玉のように。

 

 

僕は思う、もう僕が物語りに置ける施行権はもうすでになくなっていると言うことを。

 

 

それを達観するでもなく、慌てふためく訳でもなく。ただ、そこにあると認識しているだけだった。

 



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人目の群像に写らない

それでまあ、なんか中にいろいろあったようだがそれはどうでもいい。

俺が色々な所に巡って行った結果…………俺がフォローしなくても大丈夫という報告をしておいた。

 

正直、一夏の鈍感さが女子達に耐性を作った。つまりは一夏が別の女の所に行くのは慣れたということだ。ここまで一夏の耐性ができるとは驚きだ。

 

そんな中全学年合同タッグマッチを開催する為の準備がなされている。…………というか、もう始まる。

 

そして、俺こと相澤康一はそれに出場せず。

 

「なんでこんな所に居るんでしょうかね?」

 

「不審な行動をしないようにだ。」

 

俺はアリーナの管制塔。俺は、それがなにか分からないのだが、先生たちが見る用のVIP席と考えれば良いと思っている。

それよりも、なんだよ不振な行動って。笑っちまうぞ。

 

「さいですか、ま、今回も厄介ごとが起きなければ良いんですけどね。」

 

「全く、私もさっさと終わらせて一杯煽りたいところだ。」

 

最近描写はしていないが、俺の目の前で自然体で居ることが多くなった。まあ、普段教壇に立っているのと言動、仕草、行動が全く違うというところからしか推測は出来ない、つか言動が違う。だからそこまで信用できるものではない。

 

…………実は、俺に好感度を全振りしていたり、自然体でいるような人が、俺としては一番避けたい手合いだったりする。

 

「さいですか。俺としては、さっさとやれよ世界最強と言いたいですね。」

 

「いいか、一つ教えてやる。力持つ者はその責任を負う、だがそれは人社会の顔も知らないお偉いさんがその者の人格に問わず勝手に押し付ける責任だ。人の中で生きている限り、責任は負わなければならないんだ。」

 

「それはそれは、力なんて持ったこと無いんでよくわからなかったっすわー」

 

軽く挑発するように喋る。ま、世界が織斑千冬が怖くて、足枷を付けたいのだろう。

 

「はぁ、まあ良い。もうそろそろ出場者のIS整備が終わる頃だ、見る準備でもして置け。」

 

「ウィーッス、了解で」

 

不意に聞こえる爆発音。俺は笑った。

 

「あっはっはっはっは!!祭りに介入するなんて無粋だなぁおい!」

 

半ばやけだ、ふざけるなと言いたいが、言ったところで何かが変わるわけではない。俺は早々に諦めて、喧騒を外から見ていた。

 

「…………観戦者の避難を急げ。絶対に一人として殺させるな!」

 

指示を担任殿が出す、それに応じて周りの人間たちが働きアリのように散り、そして動いていく。いいねぇそんな権力あったら俺、持て余しちゃうよ?

 

「お前も、避難しておけ。」

 

一通り指示が終わった所で、俺に向かいそう言った。

 

「おやおや、てっきり俺はMAP兵器のような扱いになると思ってたんですがね。」

 

俺の用法なんざその程度しかない、カゲアカシもそういう風に出来るからな。そうなったら俺も無事じゃすまなそうだが。

 

「フン、誰が上の意思に従ってやるものか。お前もアレをそこまで打つな。」

 

上の意思とは…………恐らく、俺の機体のことだろう。前にも言ったかも知れないが、二人いる男性IS操縦者の実験機のうち、ひとつはソフト面での、もうひとつはハード面でのデータ収集だ。俺はハード面でのデータ収集機体を持っている。

 

「分かりましたよ。ま、死なないでくださいね。」

 

「毛頭ない。さっさと行け。」

 

そういって俺は踵を返し、避難した。

 

 ◆ ◆ ◆

【凰、オルコット】

 

「くっ、なによこれ!」

 

「私に聞かれても困りますわ!」

 

凰、オルコット嬢ペアの二人が毒づきながらも敵を迎撃している。

 

「しかもこれ、無人機の動きに似ているわ!何が来るか分からない、気をつけてきなさい!」

 

「了解ですわ!」

 

そうして、一つの戦場が展開した。

 

 

【ラウラ、シャルロット】

 

オレンジの機体と黒の機体が一機の敵ISに対面している。二人の表情は、とてもではないが良い表情とはいえない。

 

「これは流石に多勢に無勢だね。」

 

「しょうがない、こういうときもあるさ。」

 

デュノアの娘っこ達が居るところは、少し教師部隊が行くには遠い場所にある、それまで耐えなければいけないのだが。

 

「未知の敵が一体で、形状から見て同型…………兵装によっては命も危ないかもしれんな。」

 

冗談っぽく口角をつり上げながらそういった。仕草は、まるで担任殿のようだ。

 

「上等だよ。」

「ならば良い、3数えて散開する!」

 

「1,2,3!」

 

 

【更識楯無、篠ノ之箒】

迫るビーム、戦火の中で彼女らは戦っている。

 

「くっ、大丈夫!?」

 

「何とか!」

 

一日で師弟関係を築き上げてきた会長が、弟子(のような存在)箒さんに安否の言葉を投げかける。攻撃を受けて、その主を見る。

 

「…………」

 

物言わず、宙に漂っている。その姿は異常なまでに腰が細く天女のような布のようなものが背後に展開している。その姿を見て会長の脳裏には、一つの可能性が上がってくる。

 

「無人機ね。」

 

「まさか、あのバカ()が!?」

 

「その可能性は高いわ。」

 

そして、会長は考える。彼女の耳には全ての戦況の情報が流れてくる。そしてその情報を統合した結果一つの結論が浮かび上がる。

 

篠ノ之束がテロ組織に拉致され、その上で技術提供をしている。

 

状況的にそれしかない。しかし、それを箒に伝えることは無い、伝えても意味は無いからだ。

そして会長は今の自分の置かれている状況で最適の戦術を考える。

いま、ここのアリーナは対戦表の関係で、彼女らが試合をする所では四機の専用機がある。それ故に。

 

『教師部隊は現状送れない、そちらで対処してくれ。』

 

「こちらの優先度は低いわね…………」

 

少し、残念そうに呟く。

 

「そんな!」

 

「そう言わない。あの二人を狙われないように頑張るわよ!」

 

「…………はい!」

 

そうして再び戦場へと舞い戻った。

 

 

 

 

【更識簪、織斑一夏】

 

そこはアリーナの整備用のスペース。そこで必死に作業をしている簪が、爆発音を聞いて一つ溜息を吐いた。

 

「……………ああ、なる。ご都合主義ですね分かります」

 

「何言っているんだ!?それより早く、みんなを助けないと!」

 

遠い目をしながらそう呟く簪に一夏が突っ込む。

 

「いってらっしゃい、ちょこっと整備してから行くわ。」

 

「いや、簪を置いていくわけには…………。」

 

すると脱力したように笑い、簪はこう言った。

 

「行って。パートナーを信じているのなら。」

 

「うっ…………分かった危なくなったら助けに来る。早めに終わらせてくれよ。」

 

一夏はその場から立ち去った。

 

「さっきのヒーローの相棒っぽかったな。うはwwwww役得ww」

 

 

 

逃亡者(相澤康一)

 

「あららぁ、こりゃ酷いね。」

 

俺は逃げながら状況を確認した。まあ、酷いこと酷いこと。一番酷いのは俺なんだけどな。逃げていたら道に迷った。

 

「………ここどこだ?」

 

思わず笑いがこみ上げて来るほどに、焦燥している。心臓が早鐘を打ち、思考を鈍らせる。

だが変なところは冷静で、俺の体は一直線に一つの行動原理にそって進んでいく。

 

「はぁ、対人戦闘に特化した奴の弊害だよなぁ。」

 

危機を避ける場所を探すと言う行動を取っていた。それは、敵を作らないとまともに動けないらしいということだ。

 

「ここか?」

 

いつの日かのように、扉を開けまくる。受験の時には結構な面倒事はあったがそれを思い出しながら扉を開ける。

 

薄暗い鋼鉄の通路の中、俺は歩みを進めていった。

 

 

【織斑千冬、山田真耶】

 

「またですね・・・」

 

「まただな・・・」

 

無人機が襲来しているのはこれが始めてではない。この話では直接対峙はしていないが、無人機は一度襲来している。

 

「恐らく、形状からして先の無人機の改良改修機と言った方が良いだろう。戦線の拡大は?」

 

「やはり狙ったように、専用機のところにしか来ていません。」

 

専用機たちが戦うアリーナは全部で5つ、ひとつは今回の大会では使わず、4つ使われて居る。

 

「第一アリーナでは、織斑一夏、更識簪ペアと更識楯無、篠ノ之箒ペアが交戦中。

 第二アリーナでは、凰鈴音、セシリア・オルコットペア交戦中、すでに対戦相手は避難しています。

 第三アリーナでは三年の専用機持ちのペアが交戦中…………こちらは増援は逆に不利となると思います。

 第四アリーナでは、ラウラ・ボーデヴィッヒ、シャルロット・デュノアペア。すでに教師部隊を送り込んでいます」

 

「分かった。…………相澤はどうした?」

 

「分かりました確認を取って…………あっ、はい避難は完了しています。」

 

「そうか。」

 

 

 

OBK(相澤康一)

 

おおう。これは、全警備システムを統括している所か。所狭しとモニターやら厳重そうな装備が置いてある。

 

「まあ、流石にいじると不味そうだなぁ」

 

と言いつつ、なめるような目つきでその部屋を見回す。見るだけ無料だ、この期に見ておこう。

 

「…………。なんでこんな所にバ○ブが有るんだ?」

 

俺は脳内で、いけない妄想をしながらその部屋を後にした。多分、人が居なさ過ぎるからここで慰めていたんだろうなぁ。頭がピンクにでもなってそうだ。

 

 

【更識楯無、篠ノ之束、織斑一夏】

 

二機と一夏が合流した三機の連携が拮抗する、その状況は会長をじわりと焦りへと追い込むのに十分過ぎるほどだった。だが、ここで弱気になってしまっては、相方の士気に関ると感じ、その焦燥を喉元で押し殺した。

 

「…………大丈夫?」

 

「ええ、何とか。」

 

焦るのも無理はない。襲撃機は、ISの兵器としての要、絶対防御を無効化させるジャミングを発している。

つまりは、今戦っている者達は、ただの鉄を纏っている状態に過ぎない状態で、裸も同然の姿で戦っていることに他ならない。

 

「危ない!」

 

「!?」

 

考え事をしていたら、いつの間にか目と鼻の先にまで近づいていた、無人機を避け応戦する。

 

「無人機は人だと思わないほうが良いです!人と思って戦うと虚を突かれます!」

 

「一夏君!」

 

声を掛けた主に意識を向ける。すると、プライベートチャンネルで追加で話しかけてくる。

 

『すみません、妹さんピットに置いてきています。』

 

『なんですって!?』

 

『だけど、もうそろそろ来る【追加、更識簪】』

 

 

 

「そこを離れろ鈍亀共が…………ッ!」

 

雷鳴のように轟く、ミサイルの発射音。何十発、何百発と吐き出される破壊の種それが、無人機に突き刺さる。

 

ドガガガガガガガガガガッ!!

 

「今ッ!」

 

高々と腕を上げ、指を鳴らす。

 

「やっぱ、チューインボムってロマンだよね!」

ちょっと高性能だけど、と簪の脳内でこのミサイルの製作者の言葉を付け加えた。

 

人皮を内側から叩くような爆発音が衝撃として感じた。

 

「…………一枚葉は伊達じゃない」

 

「どこぞのニュータイプだよ!ってかエネルギーが切れそうだ。」

 

簪に突っ込みを入れる。

 

「一夏!エネルギーパックをパク調達しておいたから補給しておいて!」

 

「でかした!」

 

 

 

下衆(相澤康一)

 

あれ?ここは…………なるほど、先生用の女子更衣室という訳ですか。

こんな陰気臭い所に置かれて服にカビが生えないようにしないとな

 

「いやぁこれ俺には・・・」

 

宝の山に見えるぜ!!突撃だ!!

カメラを手に俺は疾風の如く走った。

 

 

【ラウラ・ボーデヴィッヒ、シャルロット・デュノア】

 

激しい戦闘を繰り返し、無茶をしている結果デュノアの娘っこにガタが来た。

 

「くっ…………。」

 

「シャルロット!」

 

シャルロットが苦しそうに胸を押さえている。絶対防御のジャミングに、見たことも無い特種兵装、精神を削り取るには過不足が無い。

元々、日常生活でもストレスがマッハな所に、一発当たったら終わりかもしれないというのは、厳しい所がある。

 

「不味いね、これ。」

 

「撤退しようにも、させてくれそうにも無いしな。」

 

まだ、教師部隊は来ない。拠点防衛の布陣を敷き、全生徒を守るようにしている為、まだこちらには来ない。

 

「…………私がやる。」

 

「無茶だ!二人でもきつかったのに!」

 

「それしか方法は無い!行くぞ!」

 

制止を振り切ってラウラは無人機に肉薄していく。それを見て、シャルロットの胸に汚い感情が渦巻いている。

その名は自己嫌悪。弱く、助けられてばかりと言う誤った認識が心を腐らしていく。

 

「荷物は…………嫌だよ!」

 

すると、ISにメールが送られてきた。差出人はすでに分かっている、自分の父親だ。

 

『気が付いていると思うが、君のISには特種兵装が付いている。まあ、こちらとしても兵装の情報を開示して君をIS学園に送りこんでも良かったんだが、それは君が拘束されそうになるから止めておいたよ。』

 

この時点で、シャルロットの堪忍袋の尾が切れそうになったが、さらに目を通す。

 

『で、まあ、本題なんだが。今回の襲撃に置いてその兵装を使え。』

 

「死ね」

読み進めた。

 

『性能は保証する、壊しても良いから存分に使え。』

 

「壊すか。」

 

決意したように、その兵装を出す為のコードを読み込み出現させようとした時。

 

「あ」

 

無人機からの攻撃を受けた。

 

 

 

 

空気(相澤康一)

 

「あ、アルさんがまた勘違いしているような気がする…………」

 

 

 

 

【シャルロット・デュノア】

 

「…………あれ?」

 

呆けたように、自分の手足を確認する。

確かに、自分のISのカラーリングは橙、つまりはオレンジ色であったのに対して、今ではカレーが大好きな大食漢の色、黄色。

 

全身を見回すとその色は目に痛いほどだ、だが形状はそこまで変わっている訳ではない。

 

「シャルロット!!」

 

「!?」

 

条件反射的に顔を上げた。すると、無人機からのビーム攻撃が来ていた。無意識に手を上げて頭を守る。しかし、いつまでたっても衝撃がこない、そして恐る恐る確認すると。

 

「盾の自動展開?」

 

とっさに上げた手を見ると堅牢とは言いがたいが光るヒレのような盾が出現していた。そして、先のメールの内容を思い出した。

 

『簡単に言えば、ゴットイーター2に出てくるヴィーナスのようなものだ、武器それ自体をISに埋め込みそれを展開(・・)する事によってラピットスイッチとは比較にならないほどの換装スピードを実現させている。ま、端的に言えば君のような愚図で鈍間なIS操縦者でも簡単に扱えるようなものだ。』

 

「やってやるか!」

 

 

主人公(相澤康一)

 

「ふう、ここら辺で問題ないだろう。後でエネに頼んで元に戻せば、オールオッケイだ。」

 

『私におんぶに抱っこじゃないか。』

 

「俺はいつだってやってやるさ。」

 

俺は安全に到達した。



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親の心子知らず。確実に十は年が離れているはずなのに子供に悟られるってことはそれだけ薄っぺらい人間なんだバカヤロー。

終わったのだ。全てが。

傍から見ればお前何やっているんだよ。ってツッコミがきてもおかしくはないが、結構逃げることにも意識を裂かなければいけなかったし大変ちゃ大変なんだよ。

 

「デュノアの娘っこよ。まあ、無人機襲撃撃退と聞き取り調査お疲れ。」

 

「…………なんだ相澤君か。」

 

俺が話しかけたのは、デュノアの娘っこことシャルロット・デュノアだった。学食の机に突っ伏して、周りに暗いオーラが漂っている、その様子だとこってり絞られたようだな。俺はさっぱりと危機を回避していたがな。

 

「愛しの一夏じゃなくて悪かったな。」

 

「今日はもう、そんな煽りにも反応できなくなるぐらい疲れたよ…………」

 

声にも覇気が無い。まるでスライムのように手ごたえが無い、これは由々しき自体だ。デュノアの娘っこが疲れたという時は愚痴が始まる、まあ聞くにはやぶさかではないのだが、長いのでこっちも精神力が居る。

 

「そうかい。」

 

「そうだよ。」

 

とりあえず対面に座る。愚痴は聞いていて面白かったりするからな、あ、ICレコーダーでもつけとこ。

 

「大体さぁもう慣れたとは言っても。一夏も僕たちの気持ちに気が付いても良いと思うんだよね…………。」

 

「俺だって常々思ってるわそんなの。誰と付き合うのかなぁ、って具合には。」

 

とりあえず、放っておいたらこんな会話でホモ疑惑を掛けられているよりかはマシだ。自分の発言にフォローをしておこう。

 

「まあ、普段の生活では機微は察せるんだけど、一夏は恋愛がらみになると点でダメになるのはどうしたら良いのさ。」

 

「グイグイ行くしかないんじゃない?」

 

むしろハニートラップのように動くしかないような気がする。あ、それでもダメだったらどうしようもないな。

 

「僕に女としての魅力はないのかなぁ…………」

 

「大丈夫だ、それについては十二分にある。俺が保障しよう。」

 

正確には俺のお客さんが保障しようだ。めちゃクソ売れる、もう飛ぶような勢いで売れる。ちょこっと盗撮した裸の写真なんて百万は余裕だったね。

 

「一夏が喜んでくれるかどうか、だよ問題は。」

 

「すまんね、そりゃそうだ。」

 

俺に保障されたってそんな役には立たないよね。

 

「しかも、僕の会社がらみでも変なことがあったし…………。」

 

「へえ。」

 

ああ、アルさん今度はなにやらかしたんだ?

 

「驚かないでね。機体を調べて、中に第四世代のような装備が満載されていたんだって。」

 

「へえ。」

 

「分かっていないのか、分かっているのか」

 

失礼なちゃんと分かっているよ、あれだろあれ。

 

「臨海学校のときに聞いた。確か装備の換装をさせずに全ての状況に対応するように作られた兵器だよな?」

 

「うん、だけどそれはまだ机上の空論段階で、他の企業が行っていない段階なんだ。」

 

「ああ、分かっている皆まで言うな。」

 

「…………相澤君何か知っているんじゃない?」

 

「なんでそう思う?」

 

と聞いたのは良いのだが完全に心当たりが有り過ぎる。あそこまでヒント出しておいて説明しないって言うのも、なんかアレだ。

 

「なぜだか僕の父親とコネクションを持っているような感じがしたからね。」

 

いつの日か男性と偽ってこの学校に入ってきたのを思い出す、というかほんのニ、三ヶ月前ぐらいだったから。

 

「ま、持っているっちゃ持っているな」

 

「なんでただの一般人である君が、大企業の社長と接点を持っているのさ」

 

ああ、アルさん…………いや、アルベール・デュノアとの邂逅か。そういえば結構前のような気がするぞ。

確かアレは…………そうだ、うっかり密入国した時の話だ。

 

 ◆ ◆ ◆

 

眩しい。

 

俺が意識を覚醒させていの一番に感じたのはそれだ。太陽光線を浴びて体の中からあたたまる。目をしかめて丁度よさげな枕から頭を上げた、寝ぼけた目からはまだ視覚の情報が巡らしてこない。

変わりになぜか知らないが、花のような甘ったるい匂いがむせそうなほど濃厚に漂ってくる。

 

そよ風が吹き妙に清涼感がある空気だ。東京も常日頃このような気候であれば良いのに。

 

と思いつつ、目やにが付いて使い物にならない目をこすりつつ立ち上がった。そして、少々の立ちくらみを起こしながら、今日という一日を…………。

 

「あれ?」

 

完全に覚醒して視覚がくれたのは、一面のお花畑だった。

 

「え?」

 

ただただ不思議。そして俺は…………。

 

「また、記憶が飛んだのか。」

 

一つの結論に行き着いた。まあ、多々あることだ記憶が飛んだりその程のことだ、俺にとっては。最初は混乱していた物だがその頃が懐かしいと、半ば現実逃避しながらあたりを見回した。

 

「あれ?」

 

気になる者が一人。いや、誤字ではない。と言うより、なんで先にこっちの方に気が付かなかったのか頭を抱えるほどだ。

 

美人が俺を見上げていた。

 

ああ、ゆったりめの服から分かる絶大なプロポーションに、長いまつげ。小さい顔に、それに、日本ではめったにお目にかかれない映えるような天然物の金髪。

例えるなら、人形に一番近いが人と認識できるギリギリのラインを堂々と進んでいるような、そんな儚げな美しさを持つような女性だった。少し理解を超えた出来事に気が動転したようで

 

「ど、どうも~」

 

と、日本語で話してしまった。それでも、その美人はにっこりと微笑んでくれた。

それはまるで、草原をなびかせる風のような爽やかさで心の中の荒みを全て吹き飛ばしてくれる、深い慈悲を表した笑みだった。

 

 

理解を超えた出来事に気が動転した。

 

「アブレベラバァ!?」

 

と、日本語にもならないような悲鳴を上げてしまった。

どこからともなく現れた金髪の男が、鬼のような形相で走りより、しっかりとした握り拳でぶん殴ってくれた。

それはまるで、地獄を斡旋する閻魔のような憤怒で地獄の苛を全て裁量一つで決めてしまう、そんな深い憎悪を表した行動だった。

彼こそがアルベール・デュノア。シャルロット・デュノアの父親だ。

 

「なにしやがる!?」

 

「俺の妻には指一本触れさせねえ!!」

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

「出会いがしらにいきなりぶん殴られたかな。思えば酷い出会いだった」

 

少し当時のことを思い出しながらそんなことを思う。

 

「あの父親だからね。」

 

「まったくだ。そういえば、あのバカに成された所業って」

 

「母が死んだら本社に呼び戻されて、妾の子だとカミングアウト。本妻から泥棒猫の娘と認定、半ば監禁状態で会社の装備を使わされて、そこからテストパイロットの缶詰状態。仮にも血を分けたのに顔も全くといって良いほど見せなかったり。まあ、ひどいものだよ。ま、今はここに居るから良いとしてもね。」

 

あのバカは死んでも直らないレベルだ。OBKには困ったものだな。そうそう、そうだなんであんなに酷いことをアルベール・デュノアが言っているのかというと。

 

 ◆ ◆ ◆

 

「娘が居るんか。」

 

会話の流れでこのような会話に行き着いたのだが、俺はそれを物凄く後悔しなければいけないらしい。

 

「そうなんだよ!僕の天使さ!」

 

「親ばか乙。」

 

「いやぁそれほどでも。」

 

「褒めてない。まあいい、その天使とやらを大切にしてやっているのか?」

 

「ふっふっふっ。この良い父親ぶりに君も失神するかもしてないぞ。」

 

自信満々にそういった。

 

「で、どうなんだ?」

 

「まずシャルロットを会社に迎える時…………女優を雇ったんだ。」

 

「は!?一体なんで?」

 

少し訳の分からない行動に質問した。

 

「それはだね。女優を雇ってシャルロットに泥棒猫の子が!って言わせるためだよ。」

 

「…………あ?一体なんでそんなことするんだ?」

 

少しめまいがした

 

「バカ!そりゃ、そういわせれば『パパ!女性を二人も手篭めにするなんて男として最高だよ!ステキ!抱いて!』ってなるからだろう。」

 

俺は意識を手放しかけた。

 

「人として最低だがな。で?顔は何回合わせたんだ?」

 

「そこもぬかりはない、シャルロットと顔を合わせそうな時に仕事を目一杯入れるんだ。」

 

「は?なんでそんなことするんだよ?」

 

「バッカ!そりゃ、そうなれば『パパ!なんてスピードで仕事をこなしているの!ステキ!抱いて!』ってなるからだろう。」

 

多分、今頭がいたいのは病気ではないだろう。

 

「ちゃんと誕生日とか祝っているのか?」

 

「そこもぬかりはない、誕生日だけ仕事を入れないんだ。」

 

「なんで?」

 

「祝いたいから。」

 

「なんでそこだけまともな感性なの!?日本人的な感性だけど、プレゼントとかやっているのか?」

 

「そこも問題はない。代表候補生へって感じで大量にイベント時には送っている。」

 

「…………差出人の名前は?」

 

「全て手書きで別名義。」

 

「ばかだ、ここにバカが居る。」

 

 ◆ ◆ ◆

 

「まあ、お前も頑張れや。」

 

「うん。ありがとう少し愚痴っぽくなっちゃったけど。」

 

「気にしていない、それじゃあな。」

 

 

少し、昔のことを思い出しながら部屋に戻った。

 



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やるなら派手に。こっそりと。

○月○日 全学年合同タッグマッチでの出来事。

 

この日、四つのアリーナで展開していた上に書いてある大会に五機の無人ISが襲来した。

 

教師部隊と、試合に参加していた専用機持ちが破壊。特例として専用機持ち相澤康一の一名が大会不参加となっている。

 

生徒のみで無人機を撃破したのは、更識楯無、更識簪、篠ノ之箒、織斑一夏の四名のみ、他は教師部隊との連携で撃破した。

関連性があると思い備考として書くが、IS学園で保有していた教師用ISが二機、練習用ISが四機。

盗難、もしくは紛失していたことをここに記す。

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

俺は、歩みを進める。それはあるひとに会うためだ。

 

「やっはろー」

 

「…………ノックをしろ相澤。」

 

「すみませんね、担任殿」

 

俺こと相澤康一は、天敵…………じゃない、担任殿こと織斑千冬に会い来る為に、寮長室まできたのだ。

 

「まあいい、何か用事があってきたんだろう?」

 

「ええ、それはもちろん。」

 

当たり前の問いに、俺は当たり前に返す。なんで魔王のところに一般人が好き好んで乗り込まなければならないんだ?まあ良い、早めに本題に切り出すか。

 

「ことの顛末とかって聞かせてもらえませんかね?」

 

「はあ、立場が立場からな。良いだろう。」

 

一旦深い溜息を付いて、そうして担任殿が事務的に話した。

 

「無人機の襲来は分かっているな?」

「はい。」

 

「無人機は四つのアリーナに襲撃、生徒単体で撃退できたのは更識簪ペア、篠ノ之箒ペアだ。ほかは教師部隊と一緒にだ」

「よくやりましたね一夏も。」

 

「まったくだ。話せるのはこのくらいか。」

 

「…………少し、動けないのが辛くなってきましてね。」

 

「私も同じだ、気にすることは無い。」

 

だけど、それは動けないの意味が違う。俺は弱すぎて動けない、戦えない。対して強すぎるから動けない、戦えない。

 

「ま、冗談ですけど。………本当に、如何しようも無いな。」

 

「悩め悩め、そして私に言え。生徒の悩みは面白いからな。」

 

ちょっとイラッとしたので反撃に出る事にした。

 

「俺からしてみたら独身女性の悩みほど滑稽なものは無いですけどね。あれ?せんせいけkk」

 

ミシミシミシッ!

 

急に視界が暗転した。

 

「…………ハッ、俺は一体なにを。」

 

「おはよう、目覚めは良かったか?相澤。」

 

少し悪寒がする体を抑えながら受け答えする。

 

「それはもう。」

 

「なら良かった。…………今度言ったら粉砕する。」

 

「なにをッ!?ああ、それはそうと一夏の誕生日のことなんですが…………。」

 

「それか…………ケーキぐらいは。」

 

こうして夜が更けていった。



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ハッピーバースデイ トゥーユー

あたりの暗がりが生物としての本能を刺激し、何処か心細くさせる。なぜそんなところに俺こと相澤康一が居るのかと問われれば、それはサプライズイベントと他ならない。

むしろメタ(・・)なことを言えば、俺がサプライズのようなものだが。

 

しかしながらひっそりと何かを隠すというのは意外にも興奮するものだ。

 

それを加えてこの状況をあえて言葉にするのならば、期待、それに興奮。本来ならそれを言うのは俺ではなくて、一夏なのだが。誘拐まがいに椅子に座らせられ拘束されてしまっては恐怖しか生まれない。

 

「なんだけど、面白そうなので助けないことにしました丸。あれ?作文?」

 

「シーッ!」

 

隣に居たデュノアの娘っこが、発言を遮る。ですよね~さて、俺は俺の仕事をしてくるか。

裏に合図を出す、そして、俺の立つ位置にスポットライトが当たる。

 

「レッディィィィィス!アァァァァァァンド!ジェントルメェェェェェェェェン!!」

 

無駄に嫌味ったらしい巻き舌でそう言った。むしろ叫んで、周囲に反響する。

 

「マイク持ってないって声量凄過ぎね!?耳がキンキンしてるんだけど?」

 

大丈夫だ、俺もだ。

 

「さぁさぁ!今宵、始まる特別な宴ェ!その主役、織斑一夏を誰が一番楽しませるか!!」

 

「なに!?なにが起こってるの!?」

 

一夏が困惑の声を上げる。うん、俺も同じ状況であったなら同じこと言うわ。

 

「一番手の特攻隊長!コイツ!」

 

裏に合図を出して、セットを出させる。そのセットは純和風と言った風の良く出来た田舎の一室のようなセットだった。そしてそのセットでもてなす人物の名を叫ぶ。

 

「篠ノ之ォォォォォォオ!ホウッキィィィィィィィィィィィィィィ!」

 

ボクシングの司会のような紹介をした後、舞台袖から篠ノ之箒がでる。

 

さてはて、俺の仕事は後、十五分後にある。それまで羽を伸ばしていましょうかね。

 

 

【篠ノ之箒。ターンエンド。】

 

巫女服狐耳っこと化した篠ノ之箒と言う名の幼馴染に、迫られひとしきり困惑して帰ってきた。

 

「よお、お楽しみだったじゃないか。」

 

「あ、ああ。それにしても箒、どうしたんだ?」

 

あまりの変わりように、辟易としているようだった。

 

「さあな、ネタバレはまだしないでおく。」

 

「え、ネタバレって」

 

「オットジカンダー。」

 

【セシリア・オルコットのターン】

 

【シャルロット・デュノアのターン】

 

【ラウラ・ボーデヴィッヒのターン】

 

【更識楯無のターン…………あれ?】

 

【半裸の凰鈴音のターン、服着なさい】

 

【更識簪のターン】

 

とまあ、こんな調子で織斑一夏をもてなす会のターンが終わり…………あ、そういえば。

 

メイド服を着た織斑千冬(ババア無理すんな)のブベラッ!?…………のターン】

 

ここらでネタバラシでもしましょうか

 

 

「さてはて、まあなんと言うか…………かなり遅いお前の誕生会だ」

 

「え!?…………」

 

「さあ、みんなご唱和ください。」

 

「「「「「「誕生日おめでとう一夏!」」」」」」

 

「みんな…………」

 

うんうん良かったねぇ。そうしてプレゼントタイムに移行した。

 

ああ、俺か?俺は…………。

 

「ホイ、俺からのプレゼントだ。」

 

俺は分厚い封筒一つ手渡した。

 

「康一もか、ありがとう。中を見て良いか?」

 

「ご期待に沿えるかどうかは不安だがな。」

 

そして、中身を見た。

 

「…………写真?」

 

「ああ、結構とり溜めて居たんだ。この期に見て欲しくてな、一石二鳥だ」

 

中身は写真なのだが、それはフェイクだ。中に情報媒体がある。何千枚あっただろうか?もちろん中身は女の子だ。

 

「好きなときにゆっくり見てくれ。」

 

「分かった。ありがとうな。」

 

それにかまわないという意思を込めて笑っておいた。

 

そして、まだ宴は終わりそうもない。賑やか過ぎる空間を横目に愛しさを感じながらグラスに注がれた一杯を喉に流しいれた。

 

「酸っぺ。」

 

 ◆ ◆ ◆

 

「くーっ。終わっちまったな。少しだけど名残惜しい。」

 

「だな、本当に楽しかった。」

 

一夏と俺が寮まで歩く。もうすっかり満月が昇っている時間帯だ、俺としては片付けまでしたかったんだが、なぜだか拒否された。身辺を荒したりするかもしれないからな。

 

「平和だな」

「一夏、お前が言うとなにかの前振りにしかならないから止めろ?」

 

まあ、そんなご都合主義的に敵は襲ってこないだろう。どれだけここの警備ザルなんだよって言いたくなるぜ。

 

 

銃声

 

 

上のそれが聞こえ俺達は背中合わせになりながらそれの発生源を探る、一応カゲアカシは腕だけ展開しておく。まだ、俺の視界には敵の姿は見えない。…………つーか、訓練され過ぎだろう。

 

「…………お前は。」

 

いきなり一夏が呟き始めた。明らかに俺に当てられた言葉じゃない、その人物を見ようとした。

 

 



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亡霊に嵐と黒

最新刊出てたけどイタリアの国家代表が創作元で出てた。名前が完璧に違いますがこのまま突っ走らせていただきます


 

銃声。静かなる劇音が肌を叩く、しびれるようなその音に命は失わなくとも相澤康一と織斑一夏の日常は、ただいまをもって完全に殺された。

 

「…………お前は。」

 

相澤康一は背後から話し声が聞こえた。

 

「私は…………ファントムタスクの織斑マドカ」

 

そんな呟きが聞こえてくる。康一はまだ伏兵はいないかと探している最中だ。

 

「いきなりなんだ!それに訳のわからないことを言うな!」

 

「ああ、お前はまだ何も知らなかったな。…………ファントムタスクは第2回モンド・グロッソ決勝戦にお前を誘拐した組織だ」

 

一夏の顔が驚愕に染まる。

 

「いまさらそんなことを言ったところであまり関係はないか…………。織斑一夏お前の命をもらう!」

 

「一夏!!」

 

動いたのは康一だった。一夏の前に立ちはだかり凶弾から守ろうとし、その間に…………襲撃者を見た。

 

時間が遅くなるような感覚。見慣れすぎてもう見たくないほどの整った顔立ち。そして、強烈なデジャヴ。何の記憶かは分からないが奥底からさらうように頭が掻き回される。

 

そして、それと同時にリボルバー拳銃の撃鉄を打ち下ろしたような「ガン!」といったような音が鳴ったような気がした。

 

 ◆ ◆ ◆

 

「ナァァァァァァァァァァァァァァニィィィィィィィィィッ!!」

 

大きな声がそこらに轟く。だけど、それはどちらかと言うと、喜色が強いようだ。

 

「ねえねえねえ!なにこの子!かわいいんだけど!?天使なの!?」

 

女の子に俗に言うあすなろ抱きをしながら一夏君に話しかけた。

 

「い、いや俺も知らないんだが」

 

「貴様!いつの間に!」

 

抱かれていた(どちらかといえば)少女はその抱擁を振りほどき、持っていた拳銃を突きつける。

 

「私的には、銃と女の子も良いけどやっぱり邪道なんだよねぇ。かぁいくしなきゃ!」

 

銃が鉛色の死を吐き出そうとしたその刹那。持っていた拳銃はバラバラになっていた。

 

「!?」

 

「ねーぇ。そのエッチな女戦士みたいな格好も良いけど。もっとかわいいのは…………はっ、合成!?それだ!」

 

「おい、康一!如何したんだ!?」

 

半ばパニックになりながら一夏は康一もとい香を静止させようとするがそんなものでやめられないとまらない。

 

「康一じゃないです☆香DEATH☆」

 

「いつにも増してウゼえ!!」

 

そこはシリアスな雰囲気など微塵もなかった。また、これは素顔を見せなかったのであればこのようなことはなかったはずなんだが…………。あすなろ抱きをしながら、頬ずりをしている。

 

「邪魔だ!!」

 

香の被害者はISを展開した。いやしてしまった。

 

「むむっ。あらまぁ。」

 

「止めろー!!香の前でISを出すな!!」

 

「うるさい!」

 

一夏が被害者に注意を喚起した。だが、貸す耳は持たない。

 

「香!逃げさせろ!」

 

「やだ!」」

 

こっちも貸す耳を持たないようだ。そして生身VSISと言った異種格闘技戦が行われるのだが…………。

 

ゴリュゴリュゴリュッ!!

 

捕食だ。ISを一切の躊躇もなく純粋な力のみで破壊する。

脚を、引きちぎる。腕を、刈り取る。兵器を、押し殺す。

決して操縦者を傷つけないようにISを破壊している。まるで、えびを食べるために殻を剥ぎ取るかの如く容易く剥がされている。

 

「んっふっふっふ。なんだか興奮してきましたよ」

 

『おい、そろそろ止めろ。ISを直すのが難しくなる。』

 

本当にそれ以上やってしまったら自動修復で一年は掛かるであろう状態にまで破壊していた。それぐらいだったら普通に直せるが木っ端微塵はだめ…………というかめんどくさいのだ。

例えるなら100000000ピースのパズルをやっているようなものだできなくはないがめんどくさい。

 

「……………馬鹿な。」

 

絶望に染められたような顔でそう呟いていた。ISという最終兵器をぶっ壊された時点で絶望に値するが。彼女側の状況も鑑みれば、ここで身バレするのは最も避けたいことだろう。

 

「にゃーやっぱりいいねぇ。」

 

手に頬ずりしながら、そういった。なぐられながら。

 

「変態かお前は。」

 

「ぶーぶー、愛でているだけだよー。」

 

一夏が止めるが、やはり聞かない。その間にも被害者に徒手空拳を喰らっているが、猫に引っかかれたかのように気にしていない。いや、人体の急所と言う急所に当身をしていたが、大丈夫だろうか?あ、ちゃんとガードしてたわ。

 

「くっ!!」

 

「はい、ざんねーん。」

 

くるくると避けながら、バカにするかのように言い放つ。この上なく腹立つ人間を体現しているかのようだった。

 

「ねえ!名前は?しっかり聞いてないよね?」

 

「むしろこの状況で名乗り上げるんだったら逆に凄いわ。」

 

相手にとってみれば、少し自分に責任があるのではあるが、ただ不審者に絡まれているだけのことだ。普通の人間だったらまず逃げる。

 

「黙れ!」

 

「疲れるまで放置プレイだね~」

 

「言い方って物があるだろうに…………この場合如何したら良いんだ?」

 

一夏君は学校に来た不審者をどう対応するか頭を抱えていた。今現在危険性は皆無であるし、かといって引き渡さないわけにも行かない。

 

「嫁!」

 

「おっラウラか!丁度良いところに来た!」

 

そこに一人のラウラと呼ばれた銀髪美少女が一夏君に駆け寄り話しかけてきた。

 

「嫁、どうしたのだ?」

 

「それが、」

 

かくかくしかじかで、なぜか俺のところを襲ったけど、瞬く間に康一が武装解除してこうなっている最中だ。と、絶賛バトル中のところを指差す。

 

「…………で、どうしたら良いと思う?」

 

「…………師匠や。師匠がご降臨なされたでーッ!!」

 

「ラウラが壊れた!?」

 

だが、それは新たなカオスを生み出す結果にしかならなかった。

 

「ほーれ。なーでなーで」

 

「止めろ!」

 

「香!私にも!」

 

「ほーれ。なーでなーで」

 

「キタコレ!」

 

男が女のケツを追っかけながらも追っかけられていると言う奇特な状況に、一夏は頭を抱えるしかなかった。それは、長くは続かなかった。

 

「アーもうらちがあかない。写真撮影でもしましょうか。」

 

「なにをする!!」

 

もう抱きかかえていた。荷物のように肩に乗せながら。

 

「ラウちゃん、一緒に来るかい?」

 

「どこまでもついて行きます!!」

 

「良い返事だよぉ~それではエデンへレッツらゴー!!」

 

「「ゴー!!」」

 

そうして風のようにして去っていた。

 

 

 

「…………一体なんだったんだ?」

 

 

 



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香にM

一ヶ月以上更新してねぇ!?


学校とは学生・生徒・児童を集め、一定の方式によって教師が継続的に教育を与える施設だ。

まあ、それはそうとして、このIS学園も学校機関であるが故に、やはり授業というものが存在する。

授業は基本的に受けるものであり妨害するものではない。例えば居眠りをしていたり。

 

『寝るな相澤、このまま永眠させてやろうか?』

 

『先生、出席簿を俺の机にめり込ませながら言う言葉じゃないと思います。』

 

授業中に別のことをしていたり。

 

『相澤…………死にたいのか?』

 

『先生、今回は全面的に俺が悪いですが。頬から血を滴らせておきながら言う言葉じゃないと思います。』

 

とまあ、このように妨害するものではない。なのだが今回は勝手が違う。

少し時を遡り朝のショートホームルーム。つまりはSHRの時のこと。

 

女の園と呼ばれることもあるIS学園は、鬼が居ぬ間に洗濯のことわざ通りに、先生が居ない時は喧しいほどに雑談をしている。筈なのだが後ろ暗い空気が地を這うようにして教室に居る少女達を黙らせる。

 

キーンコーンカーンコーン

 

テンプレートのような学校のチャイムが鳴る。それは少女達にとって福音に聞こえた。一刻も早くこの異常な状態から抜け出したいのだ。

 

「SHRを始める…………ぞ。」

 

そこに、時間となったことで少女達の切り札、織斑千冬が召還される。だがこの状況を見て、千冬の脳内で緊急停止ボタンが押されることとなった。

 

 

「ねえ、Mちゃん、これ食べる?」

 

「……………」

 

「そっか、食べないか。あ、これは?」

 

「……………」

 

「やっぱりダメか。そうだ!何処かに遊びに行こうよ!」

 

「……………」

 

「んー……………おねむ?」

 

「……………」

 

 

自分に良く似た人間が、生徒に甲斐甲斐しく世話を焼かれながらもの手は撫でられ、肉体を弄ばれている光景を見て、多分、まともな神経を持っているような人であれば思考を放棄するには十二分だ。

だが、相手が相手だ。まさか自分に似たような人間はこの学園内には居ない。そして、それを教職としてその不審者に声を掛けなければならない。

 

「おい、相澤。」

 

「香でっす☆」

 

その問答に額に青筋が浮んでいるがそれを押さえ込んで、さらに質問を続ける。

 

「お前が今抱きしめているやつは誰だ?」

 

「んーっと…………。名前なに?」

 

「は!?」

 

「いや、Mちゃんって呼ばれていたらしいんだけど。よくわらないんだよねぇ」

 

「…………」

 

といって、話が通じない。ので。

 

「おい、M。」

 

「…………」

 

「幾つか質問するぞ。」

 

「…………」

 

Mと呼ばれた少女は黙り込んでいる。情報を漏洩させることは死に直結する。

 

「お前は、不当にこの学園内に侵入した。そうだな?」

 

「…………それしか考えられないだろうが。」

 

「喋った!」

 

「相澤、黙っていろ。」

 

「香でっす☆」

 

無視した。そしてMは撫でられている。織斑千冬は極めて当然な判断を下す。

 

「…………まあ良い、別室に連行する。」

 

「やだ」

 

拒否した、何の関連もない相川香が。

 

「なら、お前も一緒に来い。」

 

「ありがとー。良かったねMちゃん。」

 

「…………」

 

いや、気持ちは分かるけどどれだけ喋りたくないんだよ。

 

「山田先生、後よろしくお願いします。」

 

「はっ、はい!」

 

そうして別室に移動する。その間誰一人として口を開かない。沈黙の中一つの部屋のドアを開け、中にある椅子にMを座らせ、香は隣に立った。

異常だらけの事柄の中で、冷静に判断したものだ、香は絶対に見捨てない。

 

「…………お前ら、後で話は聞くそれまでここで待機だ。ホイホイと授業を妨害されてしまってはこちらもたまらん。」

 

「わーい!やったね、Mちゃんとの時間が増えるよ!!」

 

「……………」

 

香は満面の笑顔で少女を見つめ、少女は非常に苦々しい顔をしながら、千冬を睨みつけていた。と言うより、織斑千冬が教室に入ってきた時からそのような顔はしていたが。

 

「まあ、それはお前に任せる。こいつをここから逃がすことだけはしてくれるなよ。」

 

「あいあいさー。」

 

「…………」

 

といって、千冬はこの部屋を後にした。すると途端に、少女の体が脱力する。

 

「どうしたの?」

 

「…………して、やられた。と。」

 

初めて、少女が香にまともなコミュニケーションを取った。

 

「うっ、Mちゃんが。話してくれて嬉しいよ…………」

 

「黙れ。」

 

少女が刹那の速さでナイフを香の首元に押し付ける。殺して、ここを抜けようというのだ

 

「んもー全く、情緒不安定なんだから。」

 

だが、それを危機とも思わずにあまつさえ、引き寄せるようにその手を包み込む。優しく、やわらかく、微笑みながら。

 

「かわいいよ。」

 

「…………。」

 

好意を伝える。

 

「君の全てが愛おしい。」

 

「…………。」

 

「ねえ、君のしたいことはなんだい?出来る範囲だったら協力してあげるよ?」

 

悪魔の契約、心を売るような二律背反を平気で突きつけていく。ここから逃げ出させてくれといえば、香は少女を逃がすだろう。だが、絶対に付いてくる。

現状で身の安全は保障されている状態であることはすでに分かっている、それ故に動けないのだ。

 

「…………」

 

「僕が望むのは君のそばに居させて。」

 

「…………なら、目の前から消えろ。」

 

「それは…………望んでいること?」

 

「ああ。」

 

「分かった。」

 

といって、後ろに回り抱きついてきた。多分そうじゃない。

 

「…………放せ」

 

「やだ。」

 

会話が成り立たない。そして時間が来るまで抱きしめていた。

 

 ◆ ◆ ◆

 

「自白剤の投与も考えなければいけないのか?」

 

「…………」

 

「むっ、そんなことしたら香ちゃん許さないよ。」

 

康一の担任織斑千冬は、少女の口の堅さに辟易としながらそういった。

 

「しかしな、こっちも仕事なんだ。」

 

「いたいけな女の子に無理やり薬飲ませるなんて酷いよ!」

 

「だがなぁ。」

 

「…………」

 

「ここでいつまでも拘束させるしかないぞ?」

 

「だったらいつまでも居る!」

 

「駄々っ子かお前は。」

 

「いー、だ」

 

「…………まあいい明日から、相澤が監視していろ、特例として授業にも出させる。」

 

「え!?Mちゃんと学園生活をエンジョイできるの!?」

 

「むしろ、そのほうがいいような気がしてな」

 

「…………」

 

少女の顔が青ざめていく。それに比例するように織斑千冬の顔に嗜虐心が見て取れるようになってきている。

 

「ありがとう!先生!」

 

「うおっ、気持ち悪っ!?」

 

「さあ、Mちゃん。一緒にいこ!」

 

「…………」

 

といって香は、手を握ったまま寮の自室に引っ張り込んでいった。

 

 

 

「…………はぁ、これでも苦労したんだぞ。武装解除している以上、危険性はない。」

 

 

 

この話の総括。先生は大変。



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天国と地獄そして降参

連投


地獄と天国。これを分けるのは、ひとえに受けている境遇に対しての主観的な思いで、決して絶対的にこれが“地獄”または“天国”であるというものは存在しない。

分かりやすく言うなら、Sからの刺激を苦痛とするか快楽とするかはMかMでないかの違いだということだ。

 

まあ、この世は等価交換で成り立っている。何か対価を払えば、何かしらの反応は返ってくる。

それが、好意でもだ。

そして、上の理論を使えば好意も地獄になるのだ。

 

「Mちゃん、おっはよ-!目覚めはどう?」

 

「最悪だ。」

 

朝焼けが空を赤く染める。同時にそんな時間に、香は叩き起こし、それに少女は嫌悪感を覚えていた。

 

「うんうん、よく眠れたみたいだね。それなら、ご飯にしようか?」

 

「…………いらん」

 

少女は心の中で、コイツの頭の中にピンク色の翻訳機でも付いているのか?とのツッコミが出たがそれを言わずに、最低限のコミュニケーションだけを徹底している。正解だ、この男に餌を与える結果になる。

 

「ダメだよ!朝ごはんを食べないと元気が出ないよ?」

 

「…………そもそも、敵兵に英気を養わせる必要はない。」

 

軍人然とした受け答えだ。だが、ここは平和の象徴とも言うべき学校だ、そんな常識は女性をもてなす為ならどんな犠牲もいとわない古代のイタリア人男性のような香の頭の中にはない。

 

「私は、Mちゃんの味方だよ! 」

「…………。」

「大体、私がMちゃんを敵だと思っていたら今すぐ八つ裂き状態の半殺しにしているし。」

 

さらりと、とんでもないことを言っている。少女は、『それもそうだな。』と思いながら、信じてみる事にした。

 

そうして、天国()地獄()の一日が始まる。

 

 

 

【朝食】

 

「はい、ここが学食でーす!」

 

「……………。」

 

手を繋ぎ、たまに冷やかされることも会ったが特に何もなく学食にまで脚を運んだ。

 

「見れば分かる。」

 

「なに食べる?」

 

「…………定食D」

 

「通称パスタ定食だね。分かったよ。」

 

券売機まで行き食券を買ってくる。その時に学食のおばちゃんから「あらあら、やっとこさ康一君にも春が来たのね」などと茶化されたが、それをさらりと返して、食事を貰った。

 

「はーい持ってきたよー。」

 

「…………いただき、ます。」

 

次の瞬間、香が目頭を押さえ涙を流していた。

 

「…………どうした」

 

「いや、かわいいなぁって」

 

その場に居た全員の額に血管が浮かび上がり、それを感じながらもスプーンとフォークを使ってMは黙々と食べていた。

 

 

 

【授業】

 

「いやー、康一君の悪癖が幸いしたねぇ。」

 

そう呟いた、なぜ康一の悪癖と言ったのかというと。思い出して欲しい、簪と話し合っている時のことを、この学園の女子生徒用制服を持っていたのだ。

 

その時には、無駄に凝り固まった変装を見せてくれたが、今回は普通に女だ、映えるってものではない可愛い過ぎて投身自殺でもしたくなるぐらいだ。

むしろ、目鼻顔立ちが担任殿こと織斑千冬に似通っている。そういう意味でも情欲を掻き立てる。

そして教室に入ったが最後、瞬間大勢の女子に囲まれ拷問が始まる、その拷問の名は。

 

「え!?なにこの子!織斑先生の親戚?」

「かわいー!写真撮らせて!」

「一回十円ね。ホントに払った!?」

「シャンプーなに使ってる?」

「名前は?」

「それ、私も聞きたい。」

 

質問責めだ。女という字を三つ書いて姦しいと読む。姦しいの意味はめっちゃうるさいだ。…………いや、機械だし私。

 

「…………疲れた」

 

「お疲れ。」

 

「…………授業に出るのか?」

 

「YES!折角来たんだから楽しまないと!」

 

ストレスの海にさらされたかのように、おなかを押さえながらその話を聞いていた。少女は諦めて運命を受け入れた。

 

「チッ!ペンを貸せ」

 

 

 

【授業2】

 

「体育だよ!」

 

「…………ブルマだな。」

 

少女が着ているのは昨今の学校教育の絶滅危惧種こと、ブルマだ。これもIS学園指定のものだが、きっちりと購入済みだ。

 

「んっと、ここの体育は剣道や柔道、合気道などの武道、ダンスなどの創作系、サッカーやバスケ、バレーボールなどの選択制だよ。男子は扱いに困ってかどこにでもいけるけどね。」

 

「…………つまり」

 

「見学も体験もどこに行っても自由自在に楽しめるよ。ってこと」

 

まあ、治外法権がおのおののルールを持ち寄っているにも関らずギリギリのラインで成り立っているような不安定な所だ。いつ崩れ落ちるか分かるものではない、だからこうやって対抗策は作ってある。

 

「で、どこに行きたい?今は、確か剣道、サッカー、水泳、ダンスがあったと思うけど。」

 

「行かないって言う選択肢は。」

 

「あるよ!やったねMちゃん一緒に居られるね!!」

 

「…………剣道をやる。少しは気がまぎれるだろう。」

 

「ふふっ、それじゃ私もそれで。」

 

本当に心の底から嬉しそうに喋る香と、ゴキブリを見た時のような嫌悪感を示しているMが対照的だった。香は喜び勇んで剣道場つれて行った。そこには…………。

 

「相澤?」

 

「香でっす☆!」

 

篠ノ之箒が居た。当然といえば当然のような気もするがそこらへんは香にとって瑣末な問題だ。香は言い飽きた言葉を返す。

 

「なんだ今日はこっちに来たのか。」

 

「うん。Mちゃんがこっちに来たいって言うから。」

 

ここに来た旨を説明した。それは、元々自由奔放な振る舞いをしていた康一の言葉でもおかしくはないものだった。その前に香は、Mを愛で尽くしたことが普通に会話する要因ともなったのだろう。

 

「…………そうか。」

 

今、篠ノ之箒の頭には二つ考えるべきことがある。

一つ、自身の姉篠ノ之束。

そしてもう一つ、Mのことだ。

篠ノ之束は、前回篠ノ之束が作ったもの、つまり無人機から襲撃されている、ということは姉が何者かに脅迫に準じるようなことをされたということだ。

例外として他の人間が作ったとい仮定もない訳ではないが、無人機の技術が確立されていない今、そんなものを鶏が卵を生み出すが如くポンポンと作れるような人間が居たのならば、世界は確実に酷い物になるので除外した。

 

そしてもう一つMだ、正直そっくりさん以上の織斑千冬の類似率を誇るこの娘。この状況でこれ見逃しに何の情報ももっていないという愚行がまかり通るわけが無い。

 

「ま、Mちゃんに言いたいことは一杯あると思うけど、ちゃんと授業はやろうね。」

 

「っ!?お前だけには言われたくない。」

 

香は、上の意図を完璧に汲み取ってはいない。むしろ逆だ、完全に勘違いしている。先の拷問…………じゃない、質問責めをしていた女子と同じ目をしていたから諭しただけだ。

 

「…………おい、やるぞ。」

 

「!?」

 

不意に香にMが声を掛けた。その目にはかすかな闘志が燃えている。それに香は驚愕した。

 

「いいよ、やりたいなら。」

 

「おい!防具ぐらい付け」

 

剣道の視点からして、篠ノ之箒が注意した。だがそれに耳を貸す二人ではない、むしろMはこういった。

 

「剣道じゃない、喧嘩だ。」

 

「ふざけるな!」

 

「良いんだよ、篠ノ之箒。止めるな」

 

香の言葉で箒は口をつぐんだ。濃厚な殺気が生物の本能としての恐怖を脳幹から体へと揺さぶり下ろす。

 

「それじゃ、始めようか。」

 

近場にあった竹刀を取り出しそれを、両者とも両手で構える。Mの持ち方は異様にさまになっている。だが、香はただ持っているだけ、竹刀を持った腕は力なく垂れ下がり剣先が床についている。

 

そして合図も無しにMが動いた。

獣のような荒々しい剣筋、確かに剣道ではない。喧嘩だ。

 

香はそれを避ける。ISを破壊するような身体スペックを生かして危なげなく一番の安全策をとって回避していた。

 

だが、Mも何も考えずに剣道というフィールドで戦うと選択した訳ではない。ある一定のリズムと回避予測によって、ある場所に誘導する。

何合か打ち合った時に誘導した所に突きを織り交ぜ、それを香がバックステップによって回避した時。

 

「フッ!!」

 

逆手に持ったフォークを振りぬき、露出した肌へと突き刺す。香も鋼鉄で出来ている訳ではない、刺し口か鮮血が流れ出る。

 

「痛いね。」

「相澤!!」

 

次にスプーンの打撃。かなり痛いのだがそれを無視して。香は初めて申し訳程度にだが攻撃を加えた。

香の攻撃を避けて背後に回る。そして、後頭部を立てかけておいた木刀で切り付けた。

 

「…………小細工はもう終わりかい?」

 

まあ、そうなるな。香は軽く竹刀を頭に当てて試合を終了させた。

 

「あわよくば、とか思っていたが。無理だったな。」

 

「うーん、まあ、先生と約束しちゃったからねぇ」

 

「それならしょうがないな。」

 

殺し、殺されあうような。変な関係がよさげな関係で存在している。

 

 

「はぁ、今回はジタバタしないでおこう。」

 

 

それは、何かが決定的に欠けたものの発言だった。

 



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アンチ バケモノ

「さて、作戦会議を始める。」

 

集めた8人に向かい、担任殿こと織斑千冬がそういった。言われた8人、専用機を持っている人物達。

 

織斑一夏、篠ノ之箒、セシリア・オルコット、凰鈴音、シャルロット・デュノア、ラウラ・ボーデヴィッヒ、更識楯無、更識簪。

 

「千冬ね……………じゃない、織斑先生。一応聞いておきたいんですけど。」

 

「なんだ?」

 

「もしかしなくても、香のことですか?」

 

その、一夏の言葉で担任殿の顔が曇り始める。それも一瞬のことで、すぐに不敵な顔になっていたが。

 

「その通りだ…………現在侵入者を撃退した相澤康一だが、それを確保してしまっている。」

 

「馬鹿な!ここのセキュリティを突破するほどの相手だぞ!?」

 

箒が叫ぶように言った。それは、全員の共通認識だったが、一夏は一つ気が付いたことがありそれを話した。

 

「いや、康一がおかしくなった状態になったんだ。あの、学年別タッグトーナメントの時に、ラウラと一緒に組んだ時のように。」

 

「…………まあ、そこは追々話す。今現在の状況を整理させてくれ。」

 

といって、担任殿は一夏の言葉を制止した。いまだ、状況を把握していない者への説明だ。

 

「まず、相澤康一が匿っている者は、所属不明のISを持っていた。この時点で、何かしらの目的は持っていると思うのだが、テロ組織などの声明は出てこない。」

 

「つまり、完全なるアンノウンということですわね。」

 

そうだ、と担任殿は首肯する。不安そうな顔でそれを見ている。

 

「それでだ、私達の立場からしてこのアンノウンを確保し情報をなんとしてでも入手したいのだが。相澤がそれを妨害する。」

 

「なぜだ?」

 

「それは分からない。幸いにもまだ武力に物言わせた拒否はしてこない、抗弁だけで済んでいる。暴力に訴えても私ですら勝てるかどうかだ。」

 

額に手を添えたままそういった。頭痛がするのだろう、酷くやつれているような気がしないでもない。

 

「そんな…………。」

 

「むしゃむしゃと食べるようにISを破壊する奴とどう戦えというんだ?」

 

「ですよね。」

 

「それで、お前達に協力してもらいたいことが有る。それは、相澤康一から侵入者を奪取することだ。」

 

「出来る…………のか?」

 

不可能に近いと思われることを、担任殿はさらりと述べた。

 

「いや、相澤はSHRの前まで、侵入者を抱えながら生徒と接していたという情報があるのと、相手は同じ生徒だ、組みし易いと思ったからだ。」

 

つまりは。お前らのほうが殺しやすそうだからさっさと行け。ということだ。

 

「何時もの事ながら、こちらでもフォローはする。お前らに任せることは本来ならしたくはないんだが…………ISが壊れると、酷い事になりそうだからな。」

 

本当に頭が痛そうに、そういった。そこに、生徒会長更識楯無が、質問の許可を求めてそれを認証した。

 

「織斑先生つまり、勝利条件は、侵入者の奪還および相澤康一の戦闘不能。敗北条件は侵入者の脱出ということですか?」

 

「…………条件は逐一変わると思うが。大体それでいいだろう、そして、相澤康一の生死は問わない。」

 

全員に戦慄が走…………らなかった。

 

「殺す方が難しいと思うぞ。」

 

「あ、それは同意。」

 

その理由は、全員の総意が、ゴキブリよりも嫌悪感を抱きそれよりもしぶとい害虫。と言った、今の状況では考えうる限り最高の評価を得ているからである。

 

「それじゃ、さっさと行動をしましょうか。」

 

更識楯無は、担任殿から話された情報を統括しこの場をまとめようとした。その言葉と共に

 

 

 

「…………ま、抵抗しても無駄だと思うが。あの人の胸を借りるつもりで、当たって来るか。」

 

「遺書を書いていたほうがいいかもね。アレは化け物だ。」

 

 

そんなラウラと簪のつぶやきは、楯無が叫ぶようにまくし立てる作戦の立案に掻き消えた。

 



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対話。

「覚悟!!」

 

そんな、女の声。詳しく話せば、IS学園の生徒会長、更識楯無が相川香を襲った時に言った言葉だ。

 

バキッ!

 

そんな、打撃音。詳しく話せば、更識楯無が相川香を襲った際に、返り討ちあったときの音だ。

 

「いや、なに?」

 

驚くほど冷たい口調で、香は襲撃者を見下していた。ISを使われているはずであるのに、少し変な人に話しかけられたくらいの不信感しか持って居なかった。

だが、それだけで十二分に更識楯無の舐めきっていた認識を、氷を混ぜた冷や水をぶっ掛けるように改めさせてしまった。それ故に。

 

「いえ!何でもありません。」

 

「まったくもう!私とMちゃんの時間を大切にしてもらわないとね。」

 

一瞥もくれずに、Mに話しかけていた。プライドを完全に踏み潰されるが如き所業。

 

「……………一旦撤退ね。」

 

そこから、生徒会長は逃げ出した。

 

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

「やはりな」

「やっぱりね。」

 

撤退した更識楯無を見て、ラウラと簪は同じことを言った。二人とも人格は違えど被害者であり被救済者である。

ラウラは、力と破壊によって。簪は、知略と心理によって。

 

それは置いといて。少女たちはこれによって真剣に頭を悩ませる事になる。

 

「完全に殺し方が暗殺向きね。」

 

「毒殺…………爆殺…………狙撃……………不意打ち……………寝首をかく。」

 

ブツブツと言っている箒と楯無が、だんだんと黒いものを帯びてくる。

 

「いや、なに物騒なこと言ってるんだよ!!人なんだから話し合いで何とか出来ないのか?」

 

「しかし、話が通じるような相手とも考えらませんわね。話し合いの場を設ける方がよろしいのでしょうか?」

 

と、悲鳴のように一夏が言った案を、セシリアが冷静に分析した。

 

「…………その方法を取るにしても誰が行くかだが。」

 

「消去法で俺しかないだろ。」

 

一夏は、すでに何かを諦めたような顔をしていたが、その行動は早かった。

 

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

「ということなんだ。早くそいつをこっちに引き渡してくれ。」

 

「ああ、だからさっき変な人が襲ってきたんだね。」

 

前回の状況を包み隠さず話した。それによって、特に進展も見られないように見えるが、違う。こうして香が交渉のテーブルに付いたこと事態が、驚くべき所だ。

 

「そうだ、Mちゃん。これ食べる?」

 

「貰う。」

 

前回発作……………というか前回、康一と香の人格が交代した時とは対照的に、Mは大人しい。なんというか戦時中の捕虜のような扱いをされていると考えたのだろう。

 

「前に康一がおかしくなった時には、こんなに穏やかだったか?」

 

「Mちゃんが良い子だからだよ。あ、ラウちゃんが悪い子ってわけじゃないよ?ラウちゃんも可愛くて良い子だったさ。」

 

「聞いてない。」

 

香は一夏の質問にのらりくらりと、要領を得ない回答をする。香は狙ってやっている訳ではない、ただそうなっているだけなのだ。

 

「…………で、なんでダメなんだ?」

 

「ああ、それは。康一君のストレス解消かな?」

 

「は?」

 

一夏が予想していた理由とは、三百光年離れていた答えだった。一夏のなかでは相澤康一という人間は、器用貧乏になる歳不相応に世渡り上手な気の置ける同姓。ストレスなど、感じる前に逃げるか押し付けるか、上手く甘い汁のみを啜るような人間と思っているからだ。

 

「康一、そこまでストレスを溜め込んで居るなら俺に相談しろって。」

 

「いやいや、違う違う。学校生活の中では康一君はストレスなんて微塵も感じては居ない。」

 

「じゃあ、ストレスって。」

 

「地雷さ。」

 

どこに行くのかと聞かれ買い物と答えるくらいに軽い口調で、不釣合いな言葉が出てきた。

 

「Mちゃんは、康一君の弱い所をふんじゃったんだよ。」

 

「…………私は何もしていないぞ?」

 

「なぁに、いきなり出てきた野良猫に引っかかれたようなものと考えれば大丈夫だよ。」

 

憮然たる顔で香を睨みつけた。そんな理由で私を拘束するなと声を大きくして喚き散らしたいのだが、さらに野良猫に引っかかれてしまっては適わないと判断した。

 

「それで、本題に戻るけど。私は、康一君のストレスを請け負っているんだよね。ストレスが完全に解消されたら自然に切り替わる。まあ、それまでの辛抱さ」

 

「二重人格って奴か?」

 

「うん。それであっているよ。」

 

一夏の確認を肯定する。

 

「ま、諦めておくれよ私も引くに引かれない理由って物があるのさ。」

 

「…………障害持ちってことか?」

 

「障害を盾に見逃してくれとは言わないけど。それでも、もとより邪魔する人には容赦しないから、そこの所よろしく。」

 

香は一夏に向けて宣戦布告した。香にそのような意図はないのだが、それでも一夏がそう受け取ってしまったのだからしょうがない。

 

「本当にこっちに侵入者を引き渡せないんだな?」

 

「できなくはないけど、やりたく無い。それが答え、そして義務みたいなものだよ。

それに私が表に出ている間は康一君に記憶は、ある条件を満たさない限り共有はされないから、私としてはそこのアフターケアはしっかりしておきたいんだよね。」

 

「こっちにその侵入者を引き渡して、さっさと戻ればいいだろ?」

 

「本当に出来るの?君が居るのに?」

 

挑発するような香の言葉に、一夏の顔が怒りに歪む。常人では分からない程度だったが、少しの怒りを腹の中に溶け込ませたように香に接した。まずは疑問を口にし、怒りを理性で押さえ込む。

 

「どういう意味だ?」

 

「康一君は聡いよ。君なんかよりも圧倒的に嘘に敏感さ。少しでも態度に表してもみろ、一つの疑念から君たちを犬のようにかぎまわるだろね。」

 

なぜか自嘲気味に話した。まあ、実際には康一なら全容を大体把握した上で放っておいて、危害が加えられるようになったら手を打つだろうが。それまでは、あまり動かないだろう。

 

「やってみなきゃわからないだろ。」

 

「完全な隠匿をさせるのは案外難しいよ。それに、隠しても康一君は何処かで情報は掴むだろうね」

 

片側の頬だけを吊り上げながら不敵に笑う。まるで、イタズラに引っかかる人を待ち望んでいる子供のような顔だった。

 

「……………」

 

「ま、放っておけば良いからさ。遊びたいときは顔出してよ。」

 

黙っている一夏に、香はこういっている。私のやりたいようにやらせろと。一夏達の肝心な勝利条件と食い違っていることが一夏自身が分かっている。それがために、一夏がはいと言えなかった。

 

「出来る訳ないだろ。」

 

「それも分かってる。君が、なぜだか知らないけどMを目の敵にしていることぐらいは。」

 

一夏の性格上、人をお前などと呼んだりはしない。どれだけむかつく相手だろうと名前呼びを敢行するし、絶対に名前を聞くはずだ。

 

「本当に似ているから。俺も真実を知りたい、あの時言った言葉の意味を含めて。」

 

「香。行くぞ。」

 

沈黙を破り、Mがそういった。その話を無視したくてこの場を逃亡しようとしていた。

 

「分かった。」

 

全てを察してそれを尊重していた。奴隷か嫁だったら最高の人間だろうが、こいつは男だ。

 

「それじゃ」

 

ばいばーい。ふざけたような仕草で別れを告げた。一夏の目の前には食べ散らかした学食のデザートが大量に乗っかっているだけだった。

 

「あ、そうそう。挑戦はいつでも受けるから待ってるよ~。」

 

思い出したかのように突然現れてそんなことをのたまわった。

 

 

◆ ◆ ◆

 

「ダメだった。」

 

「あの状態は私も良く分からなかったしね」

「アレは、そのMとやらの言葉しか聞かないぞ?時間がたつにつれて少しずつ凶暴性は減っていくようだが。」

 

簪と、ラウラが口々にそういった。実体験からの怪物への適応法だった。

 

「はぁ、分かったわ一日置いて全員での連携を図りましょう。押しつぶすしか方法はない。これだけ人数が居るんだしいけるでしょう。」

 

生徒会長が、そういった。そうして遅過ぎる動き出しを見せた。

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

「私を…………逃がしてくれ。」

 

「悲しいけど、しょうがないね。」

 

 



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さらばMまた会う日まで。

マジでさ、この状況はおかしいと思うんだけどそこらへんはどうなのよ?

 

「え?Mちゃんかわいいし、問題ないでしょ。」

 

そういうことを言っているのではないのだが…………。あ、どうも。康一から香に変わったときから地の文を担当しているエネです。

時系列的には、さっき一夏と話し合った時の後だ。

 

「はぁ、全くだれに説明しているのやら。」

 

君に地の文を任せていたら愛でる対象のどこがかわいいかということで完全に四万字は埋まる。

それか、唯一つの概念『かわいい』という一言で終わるかのどちらかだ。

 

「かわいいねぇ」

 

惚気か!

香にいたってはただの惚気ではなく職務のようなものだが。

 

「うん、今はMちゃんを……………守るって言うとおこがましいから、隣に居る。」

 

だそうだ、個人的な見解ではそっちの方が難しいと思うんだけどな。守りもするし、憎まれもする、道を正し、ずっとそばに。

 

皮肉な事に彼女、香はずっと、そばに居られない。私たちは何処か似ていて、決定的に違う。

 

「時間も短くなってきたし。いい傾向だよ」

 

「香、何言っているんだ?」

 

「ただの捻くれた独り言さ。…………それで、Mちゃん。」

 

「どうした?」

 

名前を呼びかけられた。Mからしたらまたかわいいだのといわれるのかと思ったが、それは良い意味で裏切られる。

いや、妙に停滞している安全の上に成り立っているこの状況であれば、通常の意味で裏切りというべきだろう。

 

「ここから逃げたい?」

 

「なにをたくらんでいる?」

 

圧倒的不可思議、それがMの頭の中に発生する。逃がすという行為に、論理的意味を見出せずに居たからだ。

香の中では当たり前といえば当たり前だろう。彼女の行動原理は人に好かれたい。

 

「何にも、それでMちゃんが喜んでくれるなら。」

 

「百歩譲って貴様が何も企んでいなかったとしても。現実的ではないな」

 

そういって、その理由を挙げる。

 

この理由は三つ。

一つは、襲撃者が多過ぎることだ。ここは、IS学園。ただのバカが身に付けただけで戦術兵器になるような代物がゴロゴロと置いてある場所だ。

二つに、守る対象が弱すぎる。M自身の戦闘能力は低くはないが、ISを相手取るような馬鹿げた、もちろん手でISの装甲を剥ぎ取るような馬鹿げたそれは絶対にない。

三つめが…………。

 

「貴様が元に戻った時にどのようなことが起こるかわからないからな。」

 

香の顔に嬉しさが満遍なく広がっている。

 

「え!?Mちゃんもう一回言って!」

 

「うるさい!殺すぞ!!」

 

「Mちゃんになら殺されていいけど、さっきの言葉を聞かないと死んでも死に切れないよ!」

 

「黙れ!私達に利益があると思ったからだ!!それ以外の理由はない!大体」

 

「もう!照れちゃって~」

 

Mの顔に怒りが満遍なく広がっている。いや、当たり前にウザい。それが香のアイデンティティー。

 

「心配してくれるのは嬉しいけど。そうそう死んだりはしないよ。心配される必要ナッシング

!」

 

「だが…………。」

 

「まあまあ、私はそこまでじゃないけど。」

 

といって二回自分のこめかみを人差し指で叩いた。

 

「この男に任せておけば大丈夫だよ。ま、特に何もしないんだけどさ。」

 

「は?」

 

「どういうことだ?」

 

切れた。堪忍袋の尾でもなく、声が。耳を塞いだ時のように途切れて。周りの景色が一変した。

 

「…………どういう。ことだ?」

 

「外」

 

IS学園ジオフロートの外。つまり、箱庭から脱出していた。うん、IS学園外の適当なスマホをポータルにして外に出たのだ。

めんどくさいと言いたかったが、まあ一方的に弱みを握られているようなものだし。寄生虫()最終宿主(康一)を殺すわけにはいかないんだよね。

 

「しかし、これでは戻れんぞ。ファントムタスクとも連絡が付かないが。」

 

「ホイ。」

 

香はISの待機状態を手渡した。それは。

 

「サイレントゼフィルス!…………あんなに損傷してこんな短時間で直るわけがないだろう。一体どうやって?」

 

私だ。さあ、感謝したまえ私がせっせと直したおかげで完璧な状態になっているZE!

 

「まあ、愛の成せる技だよ。」

 

うぉい!!どうやってあそこまでの特種金属を練成したのか分かっているのか!?一から元素を振り分けて原子配列からなにまで再構成して完成させたんだぞ!それを愛!?ちゃんちゃらおかしいわ!

 

「殺すぞ。」

 

「!?」

 

「あ、ごめん。こっちの独り言だからおびえなくていいよ。」

 

あっけらからんとそういった。

まあ、行動を言えばそれ以外に何の説明もしようが無いほどの裏表がなさ過ぎる人間に真意を話しても何もかえってこないから当たり前だが。

 

「で、これで逃げられるよね?」

 

「……………礼は言わんぞ。」

 

理性では理解できているのだが感情を飲み込めないような顔をして、それを受け取った。

 

「ま、いつでも会えるさ。」

 

「……………そうだな、香にはもう会いたくないがな。」

 

「あ!始めて名前呼んでくれた。」

 

Mは顔ではウザいといいながらも、さよならと言った。

 

 

「また何時か。会えるといいな。」

 

 

香が表に出て三日。そこで香の意識は途切れた。

 

 

『……………早くなってね?まあ良いや、確か部屋にスマホあったからそこに転送すれば良いか。』

 

 

後片付けというのも嫌なものだね。はあ、この腹の中にたまっている物を全部吐き出してしまいたい。

 

この香と康一が入れ替わった話の総括。

 

『めんどくせえんだよお前ら。』

 

はあ、カオスだ。



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一人ぼっちのSOS

いい夢を…………見た気がする。

 

そこでは名前も顔も知らない親と心置きなく雑談をしている自分。普段の俺であれば考えもしない、屈託のない笑みで親と話している。こんな未来があったのなら、まだ救いようがあったかも知れないのに。

 

吐き気がするくらい幸せそうだ。ここに、お手伝いさん。大高秋音でも登場していたら覚えていた時点で自殺を覚悟するほどに。

 

それにしても皮肉な夢だ。俺が俺の理想を見て、近くして絶対に届かない現実という名の薄皮一枚隔てたお預け状態を喰らっているのを、皮肉と呼ばずしてなんと呼ぼうか?

 

そんな物に特段何かを感じるわけじゃない。さて、夢から覚めよう。辛くなってしまう前に。

 

 

 

どっちが良かったのだろう。夢は精神的に危なかったが、これは……………。

 

目の前にあったのは打ちつけてあったコンクリート。俗に言う、むしろ俗に言わなくても俺の知らない天井だ。

 

「は?」

 

俺は多分、寝起きドッキリを仕掛けられた芸人のようなリアクションをしていただろう。ともかく早く起き上がろうゆっくりとだ。

 

「どこ?」

 

そんな呟きにも答える人はいない。居てくれとも対応に困ったのだが。と考えながら回りを見渡したが、状況の最悪さを再確認させる効果しかなかった。

 

なんで扉に鉄格子の窓が付いているんですかねぇ…………。

 

少し、顎がしゃくれた。城之内レベルでしゃくれた。

 

「起きたか。」

 

突然声を掛けられた。聞き覚えがありすぎる声。普通3年間はずっと聞くであろうその声に、電撃のようにさまざまな思考が脳裏に走りわたる。

 

「…………担任殿?」

 

「なんだ?起き抜けに一発ぶん殴って欲しいのか?」

 

そんな趣味は無い。起き抜けに放たれた担任殿こと織斑千冬の声にはまぎれもない怒気が混じっていた。というか、この状況に心当たりがありまくる。

中国に渡った時も、フランスに渡っていた時も、むしろ幼少期から、心当たりがありまくるまあ、ベットぐらいだったらアレだけど。

 

「…………俺、なにやらかしたんですか?」

 

「記憶が無いのか、まあ良い、こちらで下した結論を言う。お前を無期限にここで拘束する。」

 

ただの監獄だった。多分もう出られないだろう、ここからどうなるか…………。

 

「と、言いたい所なんだがな。お前が暴れまくってたからな、ここでおとなしくさせていただけだ。」

 

「マジですか?」

 

「偉くマジだ。」

 

溜息を付きそうな口調でそういった。

 

「ったく、業務外にも程があるぞ。」

 

「お疲れさんです。」

 

労った。出席簿が飛んできた。それは眉間に突き刺さり出欠していた。

 

「あーすっきりした」

 

こんなんですっきりされても困る。確かに危険は未然に処理しておかないと後々めんどくさい事になるからな。

 

「すっきりしたじゃないですよ。出来ることならここから出して欲しいんですが?」

 

まあ、まて。此方にもやることは沢山ある。といって。拳銃を取り出した。

 

「ホールドアップ」

 

「しなくても撃つぞ。麻酔弾だから」

 

 

バン!!

 

 

そりゃないよ。と心の中で言いながら俺は今さっき覚醒させたそのまぶたを再び閉じた。

 

 ◆ ◆ ◆

 

次に目を覚ましたのは、保健室のベットだった。周りには誰も居ない。いたらまあ、健全な少年であればR-18な想像をするような所だった。

 

『普通でもそんな妄想はしないだろ。』

 

「ですよね~」

 

久々に。ひっさびっさにエネが話しかけていた。物理的に話掛けているわけではないこの会話法、非常に気持ち悪いのだ。実際に話しかけられた訳ではないのに、思考を言葉をして伝えられるというのは、思考がごちゃ混ぜになる。

 

それで何で自分の思考は保てるのかというとそれは慣れとしか答えられない。

 

『ほら、暇だったからな調べてきたぞ。』

 

「あざっす」

 

声に出して話す。これはかなり重要だったりじゃなかったりする。

そうそう、調べてもらった内容は……………まあ、今俺の置かれている状況だ。

 

 

情報を直接頭にぶち込まれるような感覚。若干の情報酔いを起こして。俺は今置かれている状況を理解する。

 

 

「んでまあ、俺の処分は特になし、か。

まあ、仕方ないことだけど。疑念をこうもまざまざと見せ付けられるとは。」

 

『お前にスパイ容疑をかけるのに十二分な根拠はあるからな。』

 

十分って訳でもないんだが。まあ。少し文化祭時に発信機を取り外していたって言うことぐらいか。

 

「勘のいいやつは気が付いているかも知れないがな。」

 

迂闊に俺の足跡を残し過ぎた。本来なら浅く情報を掻っ攫ってそこから推測して数種類の意図を構築する方がデメリットは少ない。

だが、エネが居る分比較的深い所まで情報を探ってこれるだから。エネの存在を隠匿するには持っている情報を開示できない。

浅い情報でも、情報を流して危機感を煽り他人に突っ込ませるという状況も作りにくくなった。

そして、自分が動くとさらに情報を得るという悪循環。

 

『まあ、何処かで断ち切るかが問題だ。』

 

「まあ、そうだな。俺もいつ死ぬか分からないし、何処かには移して置いた方が良いとは思うんだけどね」

 

まあ個人的な身よりは居ないし。最悪の手段としては…………。

 

『円卓の騎士達に渡す』

 

「まあ、場合によっては世界が滅ぶかも。」

 

その状況が自身の子供に危害が及ぶようなことがあれば、子煩悩を飛び越えて人とは違う全く別の何かになり、そして世界を滅ぼしに掛かるだろう。

 

『どんな魔王だよ。』

 

「俺を1000000000000000000000000回殺してまだ有り余るくらいには。」

 

紳士は「これは鞭ではない…………ビンタだ。」とか良いそうだな。この前「良いか相澤君。真のSとは指と口先一つでどんな苦痛をも与えられるのだ。」とか言ってたし。

 

『そのおかげで君は拷問ギリギリの苦痛を味あわせる術も手に入れたしな。』

 

「全うに生きていたら得ることの無い技術だった。」

 

まあ、それは置いといて。

俺にしかれた処分は「ばれないように経過観察」だ。今、俺の手元に、いや足元に無意味な足枷は無い。今、当面は「相澤康一を泳がして様子を見ろ」ということしか分からない。

 

「…………こっちも潜んでいるか。といっても何にもやることは無いんだがな。」

 

『君は動かなさ過ぎるんだ。』

 

そう心配されるいわれは無いが、臆病過ぎる俺にはこれぐらいが一番良い。

 

「ま、当面の目的は再度ファントムタスクの襲撃に備える。といったところか現状それぐらいしかやることが無い。」

 

ワンパターンに、ファントムタスクはIS学園の行事に示し合わせたかのように(というよりすでに示し合わせているのだが)襲撃しているからな、そこで色々と俺に利益が生じるよう策を講じていかなければならない。

 

『けど、めんどくさそうだから止めるんだろ?』

 

「止めはしないがな。」

 

今回ばかりは闇が深過ぎる。曖昧な場所に居て甘い汁を享受するだけでは、俺の目的は果たせない。

 

「月並みな言葉だが。俺にもヤキが回ってきたな。」

 

『君にはヤキが入りすぎているんじゃないかね?』

 

一瞬俺の喉から、俺の言葉とは思えないそれも膨大な言葉が競りあがってきた。

 

 

 

【俺は、エネを信用しているし、親愛を抱いている。最初は本当に俺の頭の中に出来た欠陥かもしれないと思ったが、それにしては辛辣すぎた。

 

 その次に思っていたのは、諦めだった。俺の全てが見透かされる存在が、俺以外の誰かが担当するとは思わなかったし、その上で。

 

 俺から出て行かなかったのはおどろいた。口では色々といいながらも世話を焼いてくれていた、俺の肉体が幼い頃からの相棒。

 

 だから改めて言わせてくれ。ありがとう一緒にいてくれて、ありがとう親友。】

 

 

 

それは俺を困惑させるのには十分だった。それを俺は。

 

 

「……………この言葉は俺の胸に閉じておくよ」

 

 

いえる人間が、言える人が居るのだろうか。真に俺の腐りきった心の内をさらけ出せるような。

 

『いると、いいな。』

 

エネの言葉に俺は自嘲的に返す。これは俺の悪い癖だ。ハハッ年寄りだから伸びるのも精一杯だ。

 

「ああ、いれば。な。」

 

 

分かってる分かってるのさ。このままではダメだって。このままでは、このままでは。

 

ウィン、ウィン

 

突然芸人のショートコントのような自動ドアの音が鳴る。それは保健室への来訪者、一夏だった。あれ?一夏がここにくるのはいつ振りだったか?そして、邂逅一番こういった。

 

「なに独り言を言っていたんだ?」

 

そんなことを言った。なぜだか、俺はこう返していた。

 

 

「あ?ああ、なんでもない。ただの捻くれた独り言さ。」

 

 

なんで、この言葉が出てきたのか分らない。それでも、こういわなければならないような気がした。

 

俺は心の中に作られた妙な消失感を抱えながら、一夏と談笑した。

……………その一夏の表情がなぜかおかしかった。微量の憎しみを手持ち無沙汰にしているような、そんな違和感を覚えた、のだが。

 

まいっか。

 

 

 



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リア充によるリア充のためのリア充による何か。~パパはそんなリア充認めませんからね!~

サブタイに深い意味はなし。


話題。これに沿って語れば、大体のことは会話に乗る。それには例外があるが。それは置いておこう。

俺が言いたいのは、その話題が自分に聞くに堪えなかったら凄いやだよね。

 

「康一、キャノンボールファストって知ってるか?」

 

「は?キャノン・ボール・ファスト?」

 

その、なんちゃらが話題に出たのは、俺がIS学園に囚われていた二週間後の朝のSHRの前の時だった。俺はIS学園に微塵も興味も無かった為に、そんなお祭りごとには疎い。

そもそも、祭りというのはリア充のためだけにあるようなもんじゃ。それなので、俺は知らないと答えておいた。

 

「ああ、なんかIS同士で妨害ありのレースらしい。」

 

「IS版のマリカってことか。」

 

多分、それを専門家に言ったらぶちぎれて往復ブラックジャックをかまされるだろう。それに伴い一つの懸念が。

 

「…………ああ、もうそろそろ俺にも祭典のお鉢が回ってくるのか。」

 

俺のイベント回避の免罪符であったカゲアカシによる骨折はもう完治して使えない。元々あって無きような物だったがゴネて押し通した。

それは置いといて、俺になにをやれと・・・。

 

「お前でも緊張するんだな。」

 

「バカ言え、俺が表舞台に立つって言うことは。恥辱により爆死体が一体生成されるってことだぞ?」

 

「イヤッフゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!」

 

「おい、コラ!オルコットォ!喜んでんじゃねェ!!差し押さえんぞ!」

 

突然聞こえた叫びの主に康一が切れた。因みに、この場合の差し押さえると言う言葉の意味は、一夏の写真データをハッキングして消すと言う意味だ。

 

「差し押さえるって…………なにを?」

 

「いや、何でも無いさ言葉の綾だ。」

 

これを、一夏にばらしてしまうと俺の収入に直撃する、痛恨の一撃なるだろう。俺からのトカゲの尻尾切りは一応用意しているから抜かりは無い。…………はず。

 

「っと、それよりお前は出るのか?」

 

「強制じゃないのか?」

 

「強制だろうな。」

 

個人的には出場したくないが仕方ない。

前提として学校行事として出ているものだ、そりゃ強制的にやらせるだろ。つーか概要を完璧に把握していないと、どうするかも分からんし。

 

「はぁ…………まあ良いや。負けようが負けなかろうが俺に問題はさほど無いだろ。」

 

「真面目にやれよ。」

 

一夏は嘆息しながら、そういった。いや俺がやったら。

 

「バカいうな。俺が勝つために真面目にやったら本当にリアルマリカになるぞ。」

 

前にセラフィーナとか言う変人バーサーカーとマリカやってたけど、その時に妨害しかやっていなかった(できなかった)からなぁ。妨害は俺の生きがいなのだ。

 

「ルール上ありでも倫理的にダメだからな?」

 

男が女性をレースそっちのけで妨害していたら精神衛生上良くなさ過ぎる。なんと言うか人としてそれだけはしてはいけない。…………という固定概念がいまだに男女間にあるからな。

 

「分かってるよ。めんどくさいけど」

 

そのセリフを言った瞬間に、学校のチャイムが鳴った。蜘蛛の子が散るように女子達が席につき、我らが絡新婦(ジョロウグモ)が帰ってきた。

 

「朝のSHRを始める。日直号令。」

 

その一言で今日の日直は号令をかけ、そして担任殿が出席簿を投げた。一つの音で全ての動作をしているのが美しくてしょうがない。汚い俺の鼻血は出ているが。

 

「今日やるのは、キャノンボールファストの大会要項の連絡と、それに当たっての機体選択だ。」

 

俺は出席簿をできるだけ取り辛く投げ返した。なんてことはない、ただの日常の一部だ。

それよりも俺が一番びびっているのは、もう要項が出てくるような時期になっていることだ。詳しい情報が入ってくるとなると、後一ヶ月ぐらいでやる事になる。

 

それに、俺が詳しい情報を持っていないからよくは分からないが、機体選択とは?

 

「機体選択は、読んで字の如くだ。自分が操作してみたい機体をIS学園内から選び、それを操作することだ。本年度から実施した。さっさと書かないと適当な機体に割り振られるぞ。」

 

口頭で説明しておいてなにを読むというのだろうか?

それは置いといて、専用機持ちはどう対応するのだろう?まあいっか、とりあえず説明を聞いてそれから取捨選択すればいい。

んっと…………なになに?

 

 ◆ ◆ ◆

 

「まあ、総合すると。キャノンボールファストは、この(IS学園がある)市が開催するISレースってことか。当然、市のイベントであるのだから、市で用意したISアリーナを使いそれをやるらしい。」

 

時は全授業が終了した放課後。俺たちは歩きながら駄弁っていた。

 

「襲撃ですね分かります。」

 

「不穏なことを言うなよ。」

 

俺のつぶやきに一夏が反応した、それでも俺にはそういいたい事情があったりなかったり。

そもそもIS学園と言う国家のお膝元でもぽんぽんと襲撃されているんだから、市が開催した所でそれは変わらないしむしろ酷くなるぞ。

 

「とはいってもな。毎回イベント時に襲撃されるじゃねーか。」

 

「いいだろ、お前は毎回逃げているし。」

 

一夏の表情に怒りが見えた。それを俺は加速させる。一夏は意外と老成している、そこを付く努力をバカにしているような姿を見せれば大丈夫だ。

 

「ま、俺が出張っても足手まといになるだけだからな。」

 

「そうならない努力をすればいいだろ?」

 

「これは、努力で何とかならないからなぁ。」

 

俺は臆病が過ぎるんだ。

 

「だったら、何か文句を言うな。」

 

「へえへえ。分かりましたよ。」

 

とりあえず、折れた。地味に一夏が怒ると怖いんだよね。そこから話題を変更しよう。

 

「それでさ、今もお前、生徒会長のコーチ受けてるの?」

 

「ああ。お前も受ければよかったのに。」

 

「俺は生徒会の方の手伝いもしているからな。そういえばお前も生徒会に籍を置いているんだったか。」

 

描写こそしていなかったが文化祭終了後、一夏は生徒会に居る事になっている。いつだったかに話した、IS学園には部活に所属していないといけないと言う校則があり、それに俺達二人は引っかかっていた。

 

だが、部活に入れるにしても俺のほうは問題がなかったが、一夏の方に問題があった。曰く、部活動に入れたらその部活が一夏を独占してしまうと言うことで、暴動が起こりかけたのだ。

 

最も、入学三週間後にこの話が出たのだ。本気で一夏を好きでそんなことを言っているわけでもなく、ハニートラップの餌食にこれでもかとしてやろうと言う魂胆がみえみえである。

 

 

とまあ、そんなことはおいとき事の顛末は一夏を副会長として生徒会に参入、俺は雑務係として隷属したという結末を迎えていた。

 

「業務の内容は全ての部活に日替わりで顔を出すって物だけだったけどな。」

 

「お前は居るだけで価値のある人間だからな。それだけでも大助かりさ。」

 

一夏のお願いってだけで部活から生徒会の欲求不満を解消することも出来るし、それにお前らの所にはもう織斑一夏を派遣しないと言う交渉カードを全部活に与えることが出来た。

 

「買いかぶりすぎだ。」

 

「俺は正当な評価しか下さない。と言ってもそこまで信用できるわけではないが。」

 

まあ、俺の中でならうそは付かないぜ。

 

「基本的に嘘つきな奴に言われたくはない。この前だって、お前が嘘ついたせいで箒、シャルロット、鈴に3対1だぜ?」

 

「あの時はお前死ぬと思ったもん。つか、それでそこまでするあいつらもおかしいと思うがな。」

 

一夏に殺意を抱いた時に、俺は良くその手法を使っていた。三人にボコボコにされる姿は実に愉快で一夏が気が付いて居なかっただろうがちょくちょくやっていた。

 

「んじゃ、俺は部屋に戻ってるから。そっちも頑張れよ」

 

俺は一夏に別れを告げた。それに一夏は一言「おう」とだけ。その背中を見送った。

 

「こちとら、色々やってて大変なんだがねぇ。」

 

俺は頭をかいて、寮へ向かった。

 

 

「さてさて、今度はどうすることやら。」

 

 

まだ気が付いていなかった。いや、気が付いてるはずなのにそれを見誤ったと言うところだろうか。結局の所俺は。

 

俺はどうしようもなくおろかだったと言うこと。

 

そして、どうしようもなく馬鹿であったということだ。

 

 



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姉妹どんぶr…………

さて、部屋に着いたところで。そうだな今日は、一夏の写真を整理しよう。俺はパソコンを立ち上げて

 

「えっと。これを旗艦にして、キラ付けでボーキが足りないから防空だな」

 

「何やってるの?」

 

いきなり声を掛けられて舌に電流が走ったように驚きが駆け巡る。その声に心辺りがありまくったのでその名前を呼ぶ。

 

「おい簪。いつからそこに居た?」

 

「最初からに決まっているじゃない。気が付かなかったの?」

 

正直気が付きませんでした。ここで文句の一つも言っておきたいところだが、あいにくと俺も人を驚かせることはやっているから、そんなことは言えない。

 

「まあな、で、なんのようだ?」

 

「久しぶりに話をとでも。いけなかった?」

 

「んにゃ、大丈夫だ。それに俺もなにやるってわけでもなかったしな。」

 

特に何もしなくても大丈夫だ。

 

「まあ、ついにお前のISも完成したな。」

 

「それね。武器の扱い方がいまだに手に余るのを何とかしたいの」

 

更識簪の専用機は打鉄弐式。俺がオルコット嬢と戦った時や、担任殿と戦った時のIS、打鉄の発展進化版だ。

 

「一枚葉は伊達じゃないからな、扱いにくさも随一だ。」

 

くっっそ使いにくい。鼻水が出るぐらい使いにくい。だけど武器だけだ俺の場合機体までクソ使いづらいから嫌だ。

 

「いや、最高の汎用性と最高の煩雑性を兼ね備えているって言うのがおかしい。私のミサイルなんて中に特種な薬品入れてそれを命中させて効果を得るって言うものだからね。」

 

「いや、話聞いてるだけだといい物じゃないか?」

 

「それが、二種ぶつけると違う効果を生み出してしまう。つまり、本当の力を出す為には瞬時に適応した薬品ミサイルを選択して、それを完璧に当てなければ成らないということをしなきゃいけないのよ…………」

 

頭が痛くなる話だな。俺には絶対に出来ないような類をやってのける。

 

「へえ、あいつらもよく分からないものを作るなぁ。」

 

「うん。そうだね。でさ。」

 

 

 

 

「いつまで私たちを騙し続けるの?」

 

「そりゃ、最初までさ。」

 

 

 

 

俺は答えない。いや、答えになっていないと思わせるのがこのコツだ。俺は、うそは、ついて、居ない。

 

「…………どういうこと?」

 

簪は問う。俺は答える。

 

「だって、一度騙せば後はその通りにする(・・・・・・・・・)だけでいいんだから。」

 

真摯に尚且つ狡猾に。言葉を相手に突き刺していく。

 

「つーか、いきなりなんだ?詐欺師にでもなりたくなったか?」

 

掛けた鎌は完全に効果を失墜させた。

 

「…………ごめんなさい。実は、内通者が居るって噂で色々聞き出せって。」

 

「へえ」

 

信用されていないのがありありと見えたな。むしろ信用する方がおかしいと思うけど。

 

「…………驚かないの?」

 

「イベントに毎回襲撃されるような場所があるんだって、だったら潜入されてもおかしくないよね。」

 

道理としてはおかしいことじゃない。俺たちぐらいの歳でスネークレベルの諜報能力を持っている奴も居るかもしれんぞ?

 

「それはそうだけど。」

 

「まあ、手放しで信用されるとは思ってないし。けど、痛くも無い腹を探られるのは不快だな」

 

隠し事は一杯あるから嫌なものは嫌なんだけどな。

 

「そうされるだけの理由があったからね。」

 

「心当たりが全く無いんだが」

 

ありまくりである。表情に全く出さないようにしているが。

 

「それならそれでいいよ。」

 

「そうかい。ぶぶ漬け食う?」

 

「帰れっていうの!?」

 

「ゲームでもしていく?お前もこれ以外に話すこと無いだろ?…………なら。」

 

俺は今、多分物凄い嫌な笑顔をしていただろう。

 

 

「「さあ、悪戯を始めよう。」」

 

 

同じく三日月型に引き絞った顔が鏡のように複製された。

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

ふむ、そろそろだな。俺は一つしかない部屋の扉が見えるところに陣取ってPCをいじくっている。中身は何も問題が無いように普通に記念写真と思えるような物にしておく。

 

まあ、待っているまで暇だしな。写真整理でもしておこう。そろそろ更識楯無が来る時間だハンドサインで所定の位置で待機しろと合図を送る

 

 

カチャカチャカチャッ ッターン

カチャカチャカチャッ ッターン

カチャカチャカチャッ ッターン

カチャカチャカチャッ ッターン

 

 

外にでも聞こえるように、これでもかと言うぐらい音を立ててキーボードとエンターキーを叩く。パソコンを使っているよと言うアピールをわざとらしくやる。

 

あ、来た。

 

「やっはろー」

 

「なにしてはるんですか?」

 

俺は、モニターから目を離さずにそういった。カチャカチャカチャッ ッターンは継続している。餌だ。

 

「なにいじっているの?」

 

「写真ですよ。色々溜まって来たんで整理しているところです。」

 

「へえ。……………面白い整理の仕方ね。」

 

「そうですか?」

 

「なんで、何月何日とかそういうので保存しないの?。写真名が「あざといロリ(ごく一部)チャイナ」や「張り笑顔とかと」ってなにこれ?」

 

「その写真を見た時の率直な感想ですよ。全部記憶して。捕獲しろ」

 

「え?」

 

生徒会長の背後から簪が襲いかかり、捕獲するが背後であるが故に…………。

 

ドゴッ!

 

「グフッ…………!」

 

「簪ちゃーん!?」

 

そして、肉親の情を使って注意を逸らして。

 

「ニャッ!?」

 

「捕獲完了」

 

にやりと笑った。

 

「作戦成功だね!」

 

そして……………。

 

「え?なんで縄を持ってるの?ちょっと!?なんで嫌な笑顔をしながらこっちに来てるの!?まってまって。あっあっあっ…………あっーーーーーーー!」

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

ドアが開いた。この部屋の中で起きていることは、開けた主は分かっていない。と言うより逆に分かっていたら逆に恐怖を感じる。とはいえ、全くそんなことは無く暢気にあくびをしながら部屋に入ってきた。

 

「ただいまー。」

 

「おかえりー。」

 

これから起こることの元凶となっている男は、モニターから目を離さずにキーボードを叩いている。何か見る人が見ればデジャヴだ。

 

「ふいー疲れた。」

 

そして、入ってくるなりIS学園指定制服をパージ(脱衣)。トランクスとTシャツ装備と言った、休日のオッサンスタイルになりベットに腰掛けた。

 

「おつかれさん。」

 

「ああ、今日は学食か?」

 

「そうだな材料もすくねーしな。」

 

「ま、明日から休日だ疲れることはないだろ?」

 

「いや、お前はここからさらにお疲れる事になるんだけどな。」

 

「は?」

 

と言って、一夏が怪訝な目をしながら俺のほうを向く。鈍いな。俺は笑みをたたえながら一夏が腰掛けているベットにある布団の妙に膨らんだ部分を指す。

 

「……………」

 

何か物言いたげな目でこちらを見てくる。そして視線を掛け布団に戻して、それを一気に剥ぎ取った。

 

「何やっているんですか?楯無さん?」

 

そこには手錠で手を、ガムテープで口を封印され、Sで始まりMで終わるようなプレイのような荒縄で脚を縛られている生徒会長更識楯無の姿があった。

 

「もごごご」

 

「いや、なに言っているのか分からないんですが」

 

現実的に考えてこのタイミングしかないだろう。

 

「ほい。」

 

一夏が姉妹の板ばさみになるように更識簪を投げつけて。

 

「姉妹丼だ。たっぷり味わっとけよ。」

 

「康一お前っ。」

 

 

俺は一言アデューと返しておいた。

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

「あれ?俺なにしてるんだろ。」

 

まいっかと思いながら俺は学食で時間を潰すことにした。

ああ、いいことをした後は気持ちがいいなぁ!と変にテンションを上げてその場を後にした。



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準備は大事、大惨事

前回。色々とイタズラや、新たなるイベントと言う名の波乱の情報を得た。

 

まあ、俺としては前のイベントと同じように、台風が過ぎるのをおびえながら待つ子供の如く耐えるだけだ。

 

さて、今日は休日。惰眠をむさぼるために俺は何時もの如く布団を掛けた。眠いねぇ日光の暖かさが丁度いい子守唄になっている。あ、もうすぐ寝そう。

 

「電子くすぐり棒ってあったっけ?」

 

身の危険を感じて俺はすぐに飛び起きた。

…………あれ?誰の声だっけ?。俺は何処かで聞いたことがある声を探してきょろきょろと辺りを見る。

 

「一葉?ふざけるなよお前…………」

 

妙な武器とは思えない形状の棒を持って、俺のところを一夏のベットから見下していた。ベットの主はもう居ない、九時となったら完全に一夏はどこかにいってISの訓練か飯を食っている。どこに行ったんだ?

 

「いやいや?そっちに遊びに行くって言ったじゃないですか。」

 

「聞いてねえや。」

 

「ちゃんとメールで送りましたよ?」

 

「あ」

 

俺めんどくさくて一斉削除しちゃってたわ。そうだそうだ、それだ。完全に俺が悪いじゃねーかふざけんな。

 

「で一葉様。今日はいかような用事で?」

 

「むかつく。会いたくなったからって言うのと、それに近頃キャノンボールファストがあるって聞いたんですよ。」

 

ああ、また余計なことを聞いたな。まあ良いやとりあえず一葉のほうを向いておこう。

 

「だから、カゲアカシの整備にもきたってことか」

 

「ええ、私の作ったものは子供みたいなものですからね。いちいち気にかけてあげないと。」

 

そういいながら一葉は、むふーと鼻息を荒くした。めんどくさい妹だと感じながらもそれを近くにあった本を見流して聞き流す。

 

「それでですねぇ、にゅふふふふ。キャノンボールファスト用のパッケージがついに出来たんですよ!お兄さん褒めて!」

 

「偉い偉い。」

 

ってかパッケージってなんだっけ?

 

「ヒャッホー!!右手に持っていた本が無かったら嬉しさ100倍で死んでしまいそうでしたよ!」

 

「さすが自慢の妹だ!お兄ちゃんとして鼻が高いぞ。ほーれなでなで。」

 

俺は立っていた一葉を俺のほうに引き寄せて、頭をなでる。ヒャッホーゥ頭が爆発してしまいそうだね。このくらいやっておけば死ぬだろう。

 

「デヘヘヘヘヘヘ」

 

死なないな、おでこにでもキスしてやろう。

 

 

「おーい。一夏。あ」

 

 

扉が開いた。俺に極まともな神経をしていたらここで赤面の一つでもご披露できるのだが、そんなものは一度も持ちえていない。だが、俺は見られる人によっては顔色も変わるものだということを学習した。

 

最も、今回は赤面ではなく、顔面蒼白と言ったほうがいいだろう

 

何故なら、傍から見たら知らない女といちゃついているようにしか見えないこの状況下で。俺のクラスの担任、織斑千冬が扉を開いていたからだ。

 

え?これどうするの。俺ここで終わり?第三部完?

 

「失礼した…………ごゆっくり。」

 

襟元を正して逃げるようにここを出て行った。何かあったのか?一発ぶん殴るぐらいはしてくると思ったが、そんなことは無かった。

 

「やん、お兄さんとの蜜月を見られちゃいましたね」

 

いや、蜜月とか言うのはやってないはずだが…………まあいっか。後で半殺しの目に会うだけだろうし。殺さない、はず。

 

「はぁ。バカもほどほどにしてくれよ。」

 

飯にいくぞと一言声を掛けて俺はベットから立ち上がった。

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

少し早めの朝食を食べた後、ISの整備室に向かった。俺がここに来たのはいつ振りか?確か、簪と仲良くなる為に、足しげく通っていたぐらいか。

 

あまり使わないしなぁ。それに、たまに使う時に酷い傷があるから回りの人を驚かせちゃうんだよなぁ。

 

「さてと、整備がてら、ちょろちょろっと弄っちゃいましょうか。」

 

言いつつスマホをISの待機状態に繋ぎいくらか操作をする。そのスマホも多分俺とは違い魔改造しているのだろう、ISがいきなり出現して形状を少しずつ変えていく。少しだけ、記憶にある形から変わっている。

 

具体的に仏像の後輪のような形のバックパック『灯火』が一回り大きくなっている。因みにそれにそれに多機能ビット『ペトゥル』が15個ほど付いてそれを閉じる事によってホオズキを背負っているような形になる

 

「よし、これでこちらが用意した『灯火』拡張パッケージ『虚口(すぐち)』です」

 

「もっといいネーミングは無かったのか?まあ、音声で勝手に使える機能があればいいんだけど。」

 

あっ、はいと言ってスマホを操作する。つーかそれでシステムを変えられるのかよ。

 

「で、まあ、虚口はですね。まあ、端的に言えば罠です。」

 

いいねえ罠。燃える武器の一つだ。

 

「灯火に増設したワイヤー射出装置。それが虚口です。まあ、ワイヤーにも色々な技術を詰め込んでいますが、そのうちの一つが、射出した二本以上のワイヤーをエネルギーで繋げて本当に網にしてしまうんですよ」

 

「へえ、ただのワイヤーとしても使えるのか?」

 

「もちろんです!」

 

ですよね、やっぱり変に汎用性が高いな。

 

「後、他に作るようなものありますか?…………といっても、手の加えようが無いんですけど。」

 

まあ、カゲアカシは第四世代とは言わないがもっとも完成された第三世代のISと言っても過言ではないだろう。

 

「そうだな。剣をくれ物理剣な。」

 

「なにをしでかすんですか?」

 

なにをしでかすって……………。

 

「色々試してみたいんだよ。それにビームサーベル見たいなのは装備されているけど、やっぱり軽過ぎるんだよなぁ。まあ、最悪ただのひらべったい鉄の板でもいいからさ。」

 

「なるほど…………。分かりました!全力で取り掛からせていただきましょう!」

 

鉄の板に全力を注がず、本来の目的である世界の科学技術の飛躍に対して熱意を向けてくれませんかね?まあ、そんなこと言ったら殺されそうだが。

 

「よし、これで材料は集まったな。」

 

「ええ、私達の技術力を世界に知らしめるためにも。勝ちに行きましょう」

 

俺は反芻する。この大会によって得られる利益を。そして、欲が鎌首をもたげて俺に襲い掛かってくる。その欲が俺をどうするかは分からない、だが今俺は。

 

 

「ああ、勝利をくれてやる。」

 

 

見なくとも分かる、俺の隣に居る妹を自称する奴の顔が。驚愕で目を見開いているだろう。

自分でも分かっている、らしくないことは。分かっている、絶対に俺は欲によって身を滅ぼすだろういうことは。

 

 

ま、いいんじゃない?それでも、俺にはやる、いや、やりたいことがある。

 

「ムフーそれじゃいっちょ凄いの作ってやりますか。」

 

俺と相棒のタッグが、キャノンボールファストをどうかき回すか。まだ、誰も知らない。それじゃあ、俺は情報収集にでも言ってきますかねぇ…………。

 



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闇 《シュウゲキ ト ジッコウ》

そこは闇。とはいっても、物理的な闇ではないし、概念的な闇(つまりは悪意の塊みたいなものだ)でも無い。

その闇は、社会的な闇だ。この時代が生み出した、社会から反した化け物ども。

 

頭に銃を突きつけあって過ごしているような緊張感の中、僕は居た。

 

「さて、それではブリーフィングを開始する」

 

「どれだけ精力的に悪事に勤しめばいいんですかねぇ。」

 

僕は疲れていた。この場にある妙な緊張感ではなく連日の仕事によってだ、幾らISがあるからといって国から国へ飛び回り過ぎじゃないか?

 

「ま、ここを出て行ってただで済むと思っているのなら。ここを出てってもいいわ。」

 

「まさか、なにされなくとも野垂れ死にできる自信がありますよ。」

 

とりあえず、軽口を叩くのを止めて会議を先に進めさせる。そろそろ、会議を進めないと不味い。

 

「今回はキャノンボールファストを襲撃する。」

 

まあ、キャノンボールファストは、国家同士でやるIS大会みたいなものだがまだその時期ではないはず。

 

「IS学園のキャノンボールファストだ。これを襲撃する。」

 

心を読んだかのように、補足説明をされた。なるほど。なぜにここまでIS学園に執着するかのように襲撃するかと言うと、これは俺の推測なのだが、とても効率がいいのだろう。手足れと言ってもそれを使うのは教師だ取り入る隙はある。

 

「まず、『男』が潜入。大会を引っかき回せ。それで襲撃からそれでも大会には支障をきたさないようにしろよ。」

 

「無理言いますねぇ。ま、好都合ですよ。」

 

()はイタズラ程度のことしか出来ないし。つーか、潜入ってなんだよ。

 

「そしてMは上空から陽動。オータムは陸路を使いISの奪取を」

 

「「了解」」

 

名前を呼ばれた二人が返事をした。俺は片手を上げる程度だった。だからなんだと言う話だが。

 

「男は退室していいぞ。」

 

「ウィッス」

 

僕は自室に戻る為に、許可も出たのでこの部屋を出る事にした。あ、そうそう。

 

「そうだ、スコールさん。ちょっと出る前に要望というか要求というかまあ、そんなものがあるんですが、少し良いですか?」

 

「…………いいわ、言ってみなさい。」

 

「すこし、危なくなるからさ。この作戦が終わったら、あのうちっぱなしコンクリートの部屋を変えてくれませんか?せめてベットぐらいは置いてくれないと、寝ると痛くなってしょうがない。」

 

「その位なら」

 

「いや、本題はそっちじゃないんだよ。それと僕のISを整備している奴らに会わせてくれないですか?命を預ける人の顔も判ってなければおちおち戦うことも出来ませんし」

 

「…………分かったわ。この作戦で生き残れたらね」

 

「ありがとうございますねぇ。それでは僕はこの辺で。」

 

 ◆ ◆ ◆

 

「とまあ、作戦はこんな所だが何か質問はあるか?」

 

その場に静寂が来る。だれも、質問は無いようだ。そのまま解散を言い渡しその部屋には二人ばかりが残る。スコールとオータムの二人だ。

 

「…………ねえ、オータムどう思う?」

 

突然スコールが口を開く。聞かれた本人は首を傾げたくなるほどの疑問が脳内を飛び交う。

 

「ああ、あの「男」のことよ。」

 

『男』は最近ファントムタスクに加入したISを使える男性だ。本人は「あはは、じゃあ。さしずめ僕は三人目だね」って言ったところだ。

 

「…………男なんて全部同じよ。」

 

「いや、そういうことを言っているんじゃないの。私たちに危害を加えるかどうかと言うことよ。」

 

少し、オータムの顔が羞恥に歪む。

 

「そ、そう言うことなら…………私は、クロだと思っている」

 

「私もよ。」

 

その言葉にオータムは頬を緩ませる。多少だらしないと思うような顔だった。

 

「でも、本当に疑う材料が無い」

 

 

 

「無さ過ぎるのが問題なのよ」

 

 

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

「とか思っているんだろうな。」

 

 

俺は殺風景過ぎる自室で、考え事をしていた。

俺は利害が一致すれば何にも言うことは無い。それに、何かに所属するってことはそれだけで生存率を高めることが出来るからな。俺としては物乞いから社会人にランクアップしたようだ。

 

まあ、誰も就職先がテロ組織って言うのは予想の斜め上だろうが。

裏切るどうこうよりも、害を加えるつもりは無いんだけどなぁ。

 

「おい」

 

急に扉が開かれ声を掛けられる。声の主は聞き覚えの無い声だった、いや何処かで聞いたことがあるような。そこまで考えて遮るように来訪者は告げる。

 

「覚えていないのか?」

 

いや、電波も程ほどにしてくださいませんかね?とりあえずそのサンバイザー見たいな物を取れといいたい。

 

「いいや、全然覚えていない」

 

正直に返すとしよう。そもそもまともにMに話しかけられたことはない。

 

「そうか失礼したな。」

 

確か『M』と言ったか。Mが一言、言って退席した。少し部屋が広くなった気がする。

 

「じゃあ、頑張りますか。」

 

僕は頭の中で作戦を繰り返し頭に入れる。自分のやることはそれだけだ。そして僕の悲願を。

 

 

 ◆ ◆ ◆ 

 

外は騒がしいだが内は耳が痛くなるほど静かだ。こういう大会にありがちな開会式はすでに終わった。今は、個人がこの内なるプレッシャーに耐え忍び、来るべき断頭台かと思うほどの大会会場に思いを馳せる時。

 

かくいう俺も少しは心臓が高鳴り、手はなにかの中毒者のように振るえきっている。これが武者震いだったらカッコいいんだが、そんな大層なものでは無い。ただ怯えきった小動物のように惨めにおびえているだけ。

 

「クククッ…………」

 

演技がかった口調で俺は笑う。それが呼び水だったのだろう、俺の中でさまざまな感情が無い混ぜになり狂ったように笑った。狂ったように腹のそこから響きあがるようなそんな笑い声が室内にこだまする。

 

感情が、内臓と一緒にぐちゃぐちゃと掻き混ぜ合わせるようなそんな感覚。その感覚が途轍もなく気持ち悪い、吐き出してしまいそうだ。しばらくして心を抓るような自虐の痛みで少しは落ち着いた。

 

「これで、始まるか。」

 

俺の戦いのまくが今。下ろされるのだ。

 

 

 

『○○市主催 IS学園キャノンボールファスト。開催』

 

 

 

この大会でなにが引き起こされるのか。まだ、誰も分からない。



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一戦目

悲鳴のような歓声、怒鳴り声のような応援。鳴り止まない拍手。大きい大会にはこれらのようなものがつき物だ。ワールドカップやそれらが準じるものだろう。

 

そんな規模の大会に、俺は立つのだ。選手として。ほんの数年前だったら興味も示さなかっただろうが今は違う立てる、いや、立ってしまうのだ。

 

っと考えごとをしていたら何かアナウンスで呼ばれたぞ?そろそろ時間だし、そろそろ行くか。

 

俺は入り口付近で待機し、そして出場する為に階段を登った。気分ははじめの一歩だ。

 

微かに震える手を、強く握って誤魔化した。

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

『それでは第1リーグを開始します』

 

妙に丁寧な説明口調のアナウンスが入る。相手は一年の専用機持ち半分、セシリア・オルコット、篠ノ之箒、ラウラ・ボーデヴィッヒそして俺を含めた四人。残りのリーグは一夏と凰、その辺りが勝ち残るといいんだが。

次々と、ISを展開していく俺は「カゲアカシ」と呟いた。

 

『3』

 

おっと、無駄話しているうちにカウントダウンが始まっているぞ。俺は、小細工のために全15このビットを右拳につける。俺以外の全員は、宙に浮いているが俺は地に脚をつけたままだ。

 

『2』

 

小細工は隆々。思考を臆病物のそれから、勇者のような勇猛さを持つそれに。体を絶対零度のように冷めているそれから、煉獄の炎のように熱く。

 

『1』

 

さあ、反芻しろ!全てをこの場の全てを飲み込め!

 

『スタート!』

 

呼び声と同時に俺は全ビットをフル稼働させる。ギチギチと自分の腕の関節と言う間接が軋み悲鳴を上げているのが分かる。そして暫定トップをもぎ取るそして。

 

虚口(すぐち)!」

 

罠を展開する圧倒的な距離と言う名のアドバンテージ。ワイヤー自体に引っかかってくれたら御の字、それで無くともこれは、大型バックパック『灯火』のエネルギーを半分吸って攻撃性エネルギーの罠を張る。スタートダッシュそしてこういうレースでスピードが出過ぎているつまり。

 

「「「卑怯だっ!?」」」

 

吸い込まれるように虚口に突撃する。

 

「フハハッ!引っかかったなバカめェ!!」

 

「クッ!?かなり削られた!?」

 

あの灯火はあの「ラグナロクの一撃」を十発は撃てる代物だぞ?それを半分使って広範囲に攻性エネルギーフィールドを張る。普通にレースするぐらいだったら問題は無いが特種兵装はほぼ全て使えないと言ってもいいだろう。

 

しかしこれは止まっていないと発動できない物理的に止めるわけではないので俺は最下位に。

 

「そこで掻っ攫っていくのがいいんだよね」

 

俺はワイヤーを回収しそれを再び射出した。それは、一直線に篠ノ之箒の機体に絡みつく。それをアンカーにして回収、ゼル○の伝説におけるクローショットのような加速を見せる。

 

それを繰り返したワイヤーの射出自体にそこまでエネルギーは食わない。それに兵器用のエネルギーとシールドエネルギーは完全に独立している

 

そして、俺は

 

 

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

「ふう、何とか勝ち残れたな」

 

「なんですかあの兵装は。」

 

疲れたようにラウラがそういってきた。勝ち残ったのは、俺と篠ノ之箒。この二人だ。

 

「まあ、なんだ。お疲れ」

 

「康一さんはこれからお疲れてくださいね…………」

 

弱弱しく呟いたラウラの言葉は何処か恨み節が篭っているような気がする。

 

「いや、一番妨害していたのは、お前が一番に居るとめんどくさいからだからな?」

 

言外に、だからお前を狙っていると付け加える。認めながらも、コイツは否定せざるをえない。

 

「よく言いますよ…………あ、嫁の試合が始まっている。」

 

「あ、本当だ。」

 

第二リーグは、織斑一夏、凰 鈴音、シャルロット・デュノア、更識簪。この四名が戦う。

そして試合が始まり何秒後のモニターに移る試合の様子は圧巻の一言で埋められる。見るもの全てを興奮させる、力、技、魂のぶつかり合い。それは一方的なワンサイドゲームのような爽快感ではない、一瞬の駆け引きが生死を分けるような綱渡りの緊張感。それを、レースの舞台で作り上げられていた。

 

俺のとは違う。俺は奇襲、不意打ち、虚偽、欺瞞、この四種が揃ってようやくあいつらに比肩できる。心の中で自虐しながら俺は試合の展開を見ている。

 

「しかし、簪のISのパッケージも、よくもまあ作られたばっかだってのに高速戦闘用のそれが作れたな」

 

「感心する所がそこですか!?」

 

まあ、そこぐらいしかないね。相当なデスパレードを経験しただろうな技術者さんよ。と、どこの誰だか分からない奴のために心の中で十字を切っておいた。

 

「誰が勝つと思う?」

 

ただ見ているだけであるもの暇なので一つ質問をした。暇つぶし以外の意図は無い。

 

「個人的には嫁、シャルロットが勝ち残って欲しいのですが。現実的には、凰、シャルロットの確率が高いでしょう。」

 

嫁とは一夏のことだ。なるほど、そのISに乗っている時間が物を言うか。確かに簪はISが出来て日が浅い、一夏は言うに及ばずだ。それでも練習をしまくったが凰やデュノアの娘っこよりかは動かす時間が少ない。

 

「経験が物を言うのはあるかも知れんが……………俺としてはその二人が失格して欲しいね。」

 

冗談交じりにそういった。嘘偽り無い本音だ。それに、凰の装備している高速機動パッケージ「(フェン)」の装備がめんどくさい、衝撃砲が威力を落とした拡散弾になるって。それに、シャルロットの豊富過ぎる武器も面倒だ。

 

「そうですか。」

 

と言ってラウラが微笑んだ。

 

「あ、もう終わりか。……………ああ、ニアピン賞だな、ラウラ」

 

「嫁、鈴が勝ち残ったのか」

 

俺もラウラも、感慨深くその結果を見つめていた。専用機持ちのリーグは、相澤康一、篠ノ之箒、織斑一夏、凰 鈴音。この四名となった。

 

さて、どうなるかな。

 

「あ、お兄さん。」

 

いきなり町のポン引きのような声を掛けられた。俺のところをお兄さんと呼ぶのは、春を売っているような頭のねじが二、三本緩んでいるような馬鹿な人か、俺の義理の妹である。

 

「一葉、なんて所まで姿を出しているんだ?」

 

相澤一葉だ、俺にとってめんどくさいことこの上ない人間であることは間違いは無い。それにしても、なんでこんな所まで部外者が居るんだ?セキュリティはどうなっていやが…………ああ、まずそんなことを言うのは酷だな。

 

「ええ、お兄さんが言っていた馬鹿でかい剣。作っておきましたよ。」

 

おお、2週間位しかなかったのによく作れたな。心の中で関心しながら、実物を見せろとせかした。俺の妹は「ハイハイ」と気だるげな返事しかしない、そして何処かに引っ込んだ。

 

「あの、康一さん?」

 

なんだ?いきなり?ラウラが一葉が用意して何処かに行った途端に話しかけてきた、何かあるのだろうか?

 

「あれ、ニコル・ハウアーですよね?」

 

妙に引きつった顔で俺に質問した。

 

「いいや、相澤一葉さ。」

 

「さてはて、持って来ましたよ~。これがブレードです!」

 

持ってきたのは、刀剣のミニチュアのようなものだった。非常に正確に作ったプラモデルのようなちゃちなところはあるが、それを見れば実物を想像できるようなものだった。

 

「なんでそんなものを持ってきたんだ?」

 

「そのまま持ってこれるわけ無いじゃないですか」

 

それもそうだな。なんで、簡単な事に気が付かなかったんだ……………。

 

「でまあ、説明しますと特種形状刀『ハイダーブレード』これはまあ、ぶっちゃけ言ってしまえば精巧な鉄の塊です。」

 

どっちだ?と突っ込みを入れる暇も無く、一葉は『ハイダーブレード』とやらの説明をしていく。

 

「このハイダーブレードはですね、特殊な形状ククリ刀の形状が特徴です。それでなにが特種なのかと言うとこれ空を飛べるんですよね」

 

空を飛べようと俺には意味が無いんだけどそれでも、まあ、聞いてやろう。

 

「形状が飛行機の羽と同じ効果があって振るだけで揚力を生み出すんですよ」

 

なんてめんどくさいものを生み出しているんだ…………。

 

「と言うわけでですねこれをインストールしますのでカゲアカシを出してください。」

 

俺は放りなげた足輪を見送り、その足輪に一葉はUSBをぶっさした。

 

「!?」

 

 

一瞬、一葉の顔に陰りが刺した。なにが起きているのだろうか?

 

 

「どうした?」

 

「いえ、何でもありません。気のせいでした。」

 

笑いながら、俺にカゲアカシの待機状態である足輪を手渡した。手に返る重い金属質の冷たさが、興奮している体に染み込んで行く。

 

「よし。やれる」

 

「なんか元気ですね。」

 

「ええ、何時も以上に。」

 

二人の妹分から、俺の態度について総ツッコミが来た。はて、俺がやる気を出すのがそこまで珍しいか?と恨み言を言いながら自分に足輪を付けた。

 

 

「それじゃ、お前ら俺は行って来るぜ。」

 

 

呼ばれた、後ろから俺の宣言に答える声がする。二人とも同じ言葉だった。そんなに俺、頑張ってないですかね?

まあいい、俺は頑張ってくるよ

 

試合場に出て空を仰ぐ、眩しく無限に広がる青い空。

 

俺は笑った。

 

そして、死にに行く決勝戦。これで決まる。俺を含めた四人のレースが今始まる。

 



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決勝と汚い結晶

突然に話すが、俺はこういうところに立って初めて思うのだが、試合場に立っていると言う感覚が無い。

 

分かる、隣にはレース相手として真剣な表情をしている級友たちがいるということは分かっているのだが。本当に立っていると言う実感ができない。

 

心の奥底を探って、それらしい理由をつけることは出来てもそれに疑念を覚えてしまう。だから試合に何の影響があるのかというと、何の影響もありはしないが俺の気持ちの問題だ。

 

相手が真剣に俺を通じて試合に対峙しているのに、俺は全く別のところで全く別のことで頭を埋めながら試合に臨んでいる。これがなんとも不誠実ではないか?と自己嫌悪に陥る。

 

常日頃から自己嫌悪している俺にとっては、さしたる問題は無いのだが。悩みの種を一つ減らせるのには越したことが無い。だからと言って、この試合が始まる一歩手前にそんなことを考えても仕方がない。

 

『決勝戦を開始します。出場選手は開始位置まで進んでください。』

 

まあ、今こうやって悩んでいるのも。試合に対しての逃避なのだろう。全くもって俺は不誠実だ。アナウンスの通りに開始線まで進む。

 

『5』

 

こうやって自分の弱い所に対面するのは久しぶりだ。カゲアカシと呟き俺のISを出した。

 

『4』

 

そうする事によって、「ちゃんと自分を見つめている俺カッケェ!!」と自己陶酔しているのだろうか?

今回は五個を背中に推進力、四個を四肢につけ、一つを拳銃状態にして手に持つ。レースとして丁度いいバランスのとれた状態になっておく。

 

『3』

 

ダメだな、俺は。

 

『2』

 

それでも、やってやらなきゃ。交渉は済んだ、これで一位になれれば大万歳なんだが……………そんなわけにはいかないよな。

 

『1』

 

覚悟を決めた。

 

『スタート』

 

スラスターを最大限吹かして、五個のマックススピードをたたき出す。俺は瞬時加速は出来ないので、一歩二歩遅れる。今回は追撃戦だぜ!

 

「チッ。」

 

全ラップ数として5ラップ。一ラップ目の中盤、ここでかなり差が出てきている。現在一位は、篠ノ之箒。二位は三位の入れ替わりが激しいのが凰 鈴音、織斑一夏。そしてドベが俺だ。やっぱり五個じゃ出力が足りないか?

 

最初にやった虚口も警戒されてつかえないし、一夏の零落白夜で全部無効化されてしまう。タイミングが合えば使えるかもしれないが……………。

 

作戦何ぞ、この(・・)戦いに何の意味も成さないからな。

 

 

1ラップを終えた。俺以外の全員がちょくちょくと妨害しながら、レースをしている。

 

それに混ぜてもらおうか。背部スラスターの出力を上げる。IS操縦技術で開かれたその差を強引な力技で押し殺す。体が軋むような音が聞こえる。

 

この俺が。訂正、この妨害が大好きすぎる俺が、このレースを滅茶苦茶にしてやる。標的は。

 

「しッののッのッ サァァァァァァァン!。遊びましょ!!」

 

背中しか見えなかったが一瞬だけ篠ノ之箒の背中が硬直したような気がした。理由は一番この中でスペックの高い機体を持っているからだ。強い奴から潰すのは常套手段だ。

 

何回か持っている銃で無差別に妨害する。一発二発当たるが、相手側にさし当たったダメージは無い。

 

何も考えて撃っている訳じゃない。これは布石。

 

人間には弱い所がある。これは生物として当然だ。あの不死身と謳われるようなクマムシですら、指で潰されて死んでしまう。

そしてそれを庇おうとするのは当然で、各部の弱点に危険を察知させるとどうなるか。具体例を出すと、いきなり顔面をなぐるそぶりを見せたら、大抵の人は顔を守るか、避けるなりするだろう。俺はそれを利用する。

 

長ったらしい言葉を使わずに説明すると、俺がやっているのは回避予測ではなく回避操作だ。立ち位置、ポイントを押さえて撃てば回避を操作することは可能だ。

そしてコースの端に誘導する。

 

「虚口!」

 

それを呼び出し篠ノ之箒の少し前に二本ワイヤーを撃つ。フックショットのように対象に張り付き、二辺から射出場所と張り付いた所の三角形ような形にビームの幕が張られる。

 

回避されるがそれも想定内。アンカーを解除せずに巻き取り、箒に後輪の面の部分を向けて体当たりをする。先に回避した加速をそのままに先ほどまで居た場所から消え、その体当たりも回避した。その側面が見えて俺も篠ノ之箒を確認する

 

 

 

「湯花」

 

 

 

そのタイミングで懐刀を取り出した。全てのペトゥルをつけたラグナロクの一撃程では無いが、手痛い一回であったのは間違いないだろう。まだ残っていたペトゥルから五個全てを取り出し、その状態での弱攻撃。

 

それに、聞いた話だと、白式と同じように燃費が単一仕様能力を使わなければ悪いと言う話を聞いたことがある。それで無制限に使えるのであれば勝ち目は無いが…………。ダメ押しに追撃を喰らわせる。

 

その時殺気を感じた。常にさらされている者と同じような、なんとも言えない剃刀のように濃厚で切れ味のあるそれは俺の首を刈るために俺に肉薄してくるのが本能的に分かった。

 

「チイッ!」

 

一夏が光の刃を携えて俺の首を刈りとろうとする。

 

「おいおい好きな女傷つけられて激情しちゃったのかい!?」

 

零落白夜のぼうっとした光が物理剣の中に収まる。だが、殺気は収まりがつかない、暴れ狂って俺に憎悪の視線を向けている。それにいたっては心理的にも物理的にも逃げるしかない。

 

「待てェ!!」

 

うひゃあ!?一夏がこれ以上ないと言うぐらいの殺気を垂れ流していた。俺はその追撃から逃れるために、背を向けてスラスターを吹かす。

 

そろそろスラスター残量が心配になってきた。あ、まず…………いや大丈夫か。

 

「誰が待つか!」

 

といって逃げる時に持っていた後輪『灯火』で一夏をぶん殴る。そのまま投げ捨て逃げる。

 

逃げ追われ、後ろから一夏の荷電粒子砲が唸る。その度に肝を冷やしながら避ける、に手足のビットを使い横転のようにして後ろから一夏、俺、篠ノ之箒が一直線上のラインを作るように位置取りをして流れ弾を誘発させる。

 

そして三週目に入る。

 

今現在俺は三位。一夏が最下位、箒さんが一位、その後ろに引っ付いて凰が二位だ。

 

俺たちは喧嘩のような争いをしていた。

 

 

「当たらねーぞバーカ!ちゃんとした目がついているのか一夏くぅん!(若○ボイスで)」

 

「うるせえ!死ね康一!」

 

「そんなんだと女の子にもてないぜェ!」

 

「どの口が言うか!」

 

「もてない男の哀しみを知らぬ男に、そんなことを言う資格無し!!」

 

「そっちも、もてる奴の苦しみを分かっているのか!?」

 

「なに!お前もててるって自覚しているのかよ!!ぶっ殺すぞ!」

 

「お前が死ね!もてないと言う失意の果てに死んで行け!!」

 

「だったらテメエはお姉ちゃんのオッパイでも吸いながら死んでけ!テメエの死に場所はそこだけだ!」

 

「お前は!冗談だとしてもゆるされないことをした!それは千冬ねえの名前を侮辱したことだ!お前だけは絶対にブッコロス!!!!」

 

「出来るんならやってみろ!!」

 

「後言っておく!「テメエ」っていうのはな元々自分のことをさす言葉なんだよ!!無知をさらすな!」

 

「だったらテメエは縄文時代にでもタイムスリップしてろ!!」

 

 

 

レースをしながら喧嘩をしているもてる男とそうでない男の生々しく、俗世に塗れ過ぎているその光景は失笑を買っていた。喧嘩をしながらもう一周した

 

が、やっている俺たちにとっては真面目にやっている。何処かで、「あいつらはなにをやっているのだ…………」とか言っているような気がした。そして罠が、作動するそれは、最初に箒さんに攻撃を仕掛けた所と同じ場所。

 

「おおおおおおおおおおおおお!!」

 

俺は全てのビットを加速にまわすそして一躍トップへそして、いつの間にか宙へ浮いている灯火。それに近寄りそれを持ってさらに加速し、ワイヤーからワイヤーへ辺を作れば、口の大きいコップのようになった。

 

 

 

「起動しろ!虚口!」

 

 

 

虚口本来の使い方、罠としての能力が作動する。

 

「あ」

 

だが、張った罠を嘲笑うかのように一夏が左手で罠を切り裂いていく。血走り、赤くなっている目がぎょろりと俺を見る。

 

「うっほ、ヤバヤバッwww」

 

興奮で頭の中から変な汁が出てきそうだ。灯火を持って尻尾巻いて逃げる。

 

「逃がすかぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!」

 

「後ろからこんにちわ!ってなぁ!」

 

俺はワイヤーを巻き取ってアンカーを篠ノ之箒に絡め捕り、一夏にたたきつけた。言葉で激昂させたのは、冷静な判断をさせないためだ、出なければ必要以上に一夏に構ってやる物か。そしてぇ…………。

 

 

「BOOOOOOOOOOOOON!!」

 

 

灯火を爆発させた残り少ないとはいえ、効果は推して図るべし。それに灯火にも代えはあるだろう。

 

 

 

『アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!!!あのバカがァァァァァァァァ!!あれ、どれだけ作るの大変だと思ってるんだよ畜生めがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!』

 

 

 

恨み言が聞こえてきたような気がしたが気にシネェ奥の手があるし。それより、さっさとこの場をずらかって…………あれ?

 

 

『しかも抜かされんじゃねーかァァァァァァ!!!!!妨害に生を出しすぎじゃボケナスぅぅぅぅぅぅぅ!!』

 

恨み言の主。相澤一葉がそういったような気がした。

あ、そうじゃん。その声で忘れてた物が思い出した。なにがあろうとも、これは先にゴールした方が勝ちなのだ。それで、空気となった凰にはあまり妨害は行っていない!

 

距離を詰めようとさっさとレースに戻ろうとする。慌てていったが時すでに遅し、だが、俺はまだ諦め。

後ろから、感じる気配。今俺中での最大火力をぶつけたんだ、そんなわけ…………

 

「ウオォォォォォォォォォッ!!」

 

荒々しく煌く暴力的なまでの光の刃が俺を襲う。

まさか!忘れていた!篠ノ之箒のワンオフアビリティ『絢爛舞踏』はエネルギー増幅能力それで作ったエネルギーを一夏に譲渡してッ!!

 

 

 

 

俺は結局の所4番手に落ち着いた。

 

 

 

この、レースの結論を言おう。

 

「みんな…………脚の引っ張り合いと言うものは、醜いものだよ…………」

 

表彰台、4位の場所で俺はそういった。

 

 

「本当に、醜いものだね」

 

 



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そして血漿戦

沸き上がるように、歓声が響く。頭を揺らす程の音響にうんざりとしながら、4位の表彰台の上に立つ。つーか、4位で表彰って。

それより俺は元々うるさい所は(場合によっては)好きじゃない、さっさとこんな所からおさらばしたいところだぜ。

 

「あー疲れた。帰りたい。母なる大地へ帰りたい」

 

自然にそんな声が出てくる。マジで帰りたい。寝たい。

 

「俺はお前のせいで死にかけたけどな。」

 

「いいか?勝負事には汚い手を使うこともある、弱い奴は綺麗なままでは居られないのだよ一夏君。まあ、あんなことをしているのは俺だけだったがな。」

 

つまり、ここに居る全てに置いて弱い。

この大会に置いて、あんなド汚い手を使うのは俺ぐらいしか居なかった。つーか他の試合を見たかといわれるとNOと言うのだが。

 

「普通にや「ったら俺は普通に負けるから。記録にこそすれ、それこそ記憶にすら残らないねぇ」……………はぁ」

 

少しでも存在感を上げ置かないとこの先どうなるか分からないからな。悪名でも、高名でも何でもいい。使える手札を多く増やしていく。

 

「強情だな」

 

「年寄りになってくるとな、頭が固くなって来るんだよ。もっと年取ると腐っていくがな。」

 

ほんとそう。まったく、嫌になってくるねぇ。

 

「貴様ら。喋ってないで受け取れ。」

 

ボーットしていたら担任殿から、賞状を渡された。…………はぁ、結果か。右にいる一夏の横顔を見る。

 

結果だ。

 

そのまま俺たちは壇上から引き下がり、俺はすぐさま控え室に引きこもり、他の人たちの周りには人だかりが出来ていた。

 

少し、羨ましくも思わなくも無い。この学園生活で得られなかったもの、いやこの人生でか。この気持ちを知らない振りしてここを出る。

 

「ふぁぁ……………ねむッ」

 

大きな欠伸をした。さてと着替えて~さっさとゲームでもやりたいんだけどなぁ……………。あれ?何かを忘れているような気が。

 

大地を蹴る力強い音、空気を切り裂く足の速さ、そしてそれらを全て余すことなく使い果たした、唸りを上げて遅い来る拳。そして打たれる頬。

 

「アプサラスッ!?」

 

綺麗なキリモミを描きながら俺は吹っ飛ばされた。つーか、誰もその事に気がつかないのって不味いよね!?

 

「ああ?コラァ!お兄さん謝罪の準備は出来ていますか?」

 

俺の(義理の←ここ重要)妹。相澤一葉が俺を殴っていた。

 

「ごめんなさ」

 

殴られた…………。

 

「謝れば済むと思っているんですか?」

 

「謝罪とかいうなし。」

 

いてえ。

 

「一番怒っているのは折角作ってきたのにあの物理剣を使わなかったことですよ!!」

 

「そこ!?」

 

一葉では考えられなくはないが、そんなことで「ナハトッ!?」殴られた…………。

 

「お兄さんには何度言っても直りませんからね、とりあえずそのカゲアカシくらいは直してあげますよ。」

 

はぁ。

 

「すまんな。本当に何時も何時も。全く円を切ってもいいんだぞ?そうなりゃカゲアカシも返すし。」

 

「歯を食いしばってください」

 

「マジすみませんでした!」

 

俺は、カゲアカシを渡しながら土下座を敢行した。さっきの般若のような表情から一変物凄いにこやかな顔になった。お前が恐ろしいわ。

 

「…………じゃあ、俺は用意してくる」

 

一葉にそういって踵を返して、選手専用の控え室に戻っていった。

 

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

織斑一夏は、その時「お疲れ様会をやろう!」などと、彼に接触する為の合コン会を開こうとしていた女子達に揉みくちゃにされながらも、選手しか使えない待合室に辿りついた。

控え室には先客が一人、IS学園のもう一人の男、相澤康一だ。康一は一夏に気がつくと、片手を軽く上げて話しかけた。

 

「よっ、早いな。」

 

「…………いや、康一何時も思うけどお前の方が早いからな?何時も来たときには準備万端だろうが。」

 

一夏は不満げに、待ってくれたっていいだろ?と言った。

お前に合わせると碌な事がおきない、まあ、ちょっとした知り合いレベルで過ごせば良いと思うんだけど。一夏はそういう訳には行かなさそうだ。

 

「それに、なんで青いジャージを着ているんだよ。」

 

「あ?ここから抜け出して遊びに行くんだよ。そのための服装だ。」

 

「センスの欠片もないな。」

 

「まあ、おっかなーい人たちも居るもんさ。その時に逃げやすい格好をしないといけないだろ?」

 

「そういうもんか。」

 

一夏が勝手に、変な姿に納得する。康一と一夏は雑談をしていた。

 

「あー。そうだ、一夏話があるんだが」

 

といい、康一は視線を彷徨わせる。何かおびえているような、教会に懺悔をしに行くような心弱い人のような印象を受ける。

 

「どうした?金なら貸さないぞ?」

 

何時もの意趣返しと言わんばかりに、意地悪く笑った。

 

「いや、金じゃない借りるのはお前の「お疲れ、一夏」」

 

康一の発言がシャルロット・デュノアによって遮られた。その時、康一は少し笑ったような気がした。

 

「おう、お疲れ。」

 

「お疲れっ。そうだ、お前ら水でも飲む?」

 

康一がポケットからスポーツドリンクを二つ、一夏とシャルロットに放る。

 

「「ありがとう」」

 

「どういたしましてそれより他の奴らは?」

 

「少し遅れてくるよ。」

 

「俺は見てないが、優勝者にこれでもかと群がってそれを担任殿に怒られる絵がありありと見えるな…………。」

 

康一はそういいながら、何処か遠い所を見ていた。

 

「ああ、うん。その通りだよ。」

 

「かわらねえなぁ」

 

ずいぶんと年寄り臭いことをのたまわっていた。

 

「今日は誰かのおかげ疲れたな。」

 

「今日は、一度どっかの誰かを思いっきりぶん殴りたいわね。」

 

すると、凰と篠ノ之箒がそんなことを言いながらやってきた。もうすでにIS学園の制服だ。

 

「全くどこのどいつだそいつは。おい凰、俺が思いっきり殴って来てやる」

 

「鏡を見とけ!このスカポンタン!!」

 

凰 鈴音からの罵倒を、笑いながら受け流した康一は、黙って二つペットボトルを放り投げた。

 

「っと。いきなり投げるな。」

 

「……………貰っておくわよ。」

 

「すまないね、それでも飲んで落ち着きな。」

 

康一はその場から腰を上げて一夏に手を振る。

 

「それじゃ、一夏。俺は遊びに逝って来るわ。」

 

「漢字が違うぞ!?」

 

「まちがってねえよww」

 

康一は笑いながら、出口へと目指す。するとその途中で鈴が話しかけた。

 

「この後、普通に学園に変えるじゃない。勝手に遊びに行ったら織斑先生に怒られるわよ?」

 

「なぁに、先生に言った後でゆっくりと羽を伸ばして来るさ。」

 

鈴はその言葉に「あっ、そう」とだけ言って、興味を失ったように康一に背を向けた。間違いと言うのならここが間違いだったのだろう。いや、すでに間違えているのかも知れないが。

 

「それじゃ、いただきます」

 

「それを言うなら行ってきますで「鈴!後ろ!!」」

 

 

 

 

刀が、胸から出ている。肉を食い破り、骨を絶ちながら。さもそこにあるのが当たり前と言わんばかりに大太刀がそこに鎮座していた。

 

唐突に訪れた冗談のような、妙に現実味のある光景に固まる、人が、物が、空気が、そこを構成する全てのものが動きを止めた。その間にも、無限に感じられる危機という信号が鈴の内側を蝕んでいく。

 

「……………なん・・・で?」

 

だが、不思議と鈴の顔は目を見開き、驚いたような顔をして、そう呟いただけだった。

 

「犬がどうして食べるのかと同じ質問だな。」

 

同じく康一はただ呟いただけだった。

 

「おい…………康一、何の冗談だ!?」

 

「おいおい、これが冗談に見えるんだったらすぐさま頭の病院に行って来い。手の施しどころがねえって医者に返されるぞ」

 

「っ!?あああああああああああああああああ!!!」

 

何かに弾かれたようにシャルロットが動いた。目標は、手。無理に引き抜くと出血しそのままだと死ぬ。この状況を長引かせない為の措置だった。

 

「おめでとう、デュノアの娘っこ。」

 

歌うように、喋る。なぜか、その言葉はまるでグロテスクで残虐な童謡を歌っているようだった。

 

「君は今までで一番正しくそして間違った行為をしてしまった」

 

 

消えた。

 

なにが?

 

凰 鈴音の体がだ。

 

 

先までそこにあったものが消えて。康一の視界は少なからず開ける。見える金の輝き、IS部分展開をしたシャルロットが持っているナイフが鈍い光を放ち、先ほどまで手があった場所を切り裂く。

 

「真っ先に動いた君には、ご褒美をあげよう。」

 

「まっぴらごめんだね!!」

 

「褒美は感動。内容は……………死だ。」

 

代表候補生さながら高い錬度を持ったナイフ術を、涼しげな顔で避ける。

 

 

「甲龍」

 

 

見慣れた、青龍刀。そう、鈴のISの装備の一つである大きい青龍刀。問題は、見慣れない所持者だ。日本刀とは違い、肉厚の断ち切る刃が上からシャルロットを襲い、そしてそれを受け止めた。

 

「甘い」

 

片手から見えない砲弾が飛び出す。それは……………レース用に改造された低出力のもの。部分展開をしてがら空き、むしろ裸と言った方がいいほどの柔肌に砲弾が突き刺さる。

 

「これを盗ったのはな、今一番に効果的だからだよ。」

 

無表情に鈴のIS甲龍を霧散させ、鈴の胸から生えたのと同じ、大太刀をその手の中に顕現させる。

 

「死ね。」

 

「させるか!」

 

篠ノ之箒がシャルロットの殺しを阻止する為に切りかかる。大きく跳び退って、直撃は免れた。

 

「コイツは流石に多勢に無勢だね。最後に、勝ち名乗りを上げてから去る事にするよ。」

 

 

 

「俺は亡国企業(ファントムタスク)が一人。相澤康一だ。ああ、向こうじゃ『男』とか呼ばれていたな。じゃあな、あばよ。つか頭いてえ」

 

 

 

今一番聞きたくない言葉が、さして大きな音でもないのに劈くように聞こえた。康一はその言葉を残して振り向き、控え室を飛び出し全力で走った。もっと分かりやすく言い換えよう、相澤康一は全力で逃亡した。

 

「逃げるな!」

 

そういわれて逃げない奴はいない。その声で康一の逃げる脚をさらに早くさせた。廊下を全力で逃げる康一と全力で追う箒。そう、それはまるで…………。

 

「おいおいww何時までたっても追いつかねえぞ!」

 

「っ!?」

 

箒がなぜかしらの表情の変化を見せる、その原因は視界に写る人物セシリア・オルコットとラウラ・ボーデヴィッヒだ。箒はそれに声をかける。

 

「おい!ラウラ!セシリア!相澤を止めろ!」

 

「「え?」」

 

その状況は酷く酷く既視感を覚えた。何のと言われればIS学園でのこと、誰が見たかと言われればセシリアとラウラなのだが。

 

「ちょっちょwwwwww一夏を小バカにしたからってそこまでは無いでしょwwwww」

 

その瞬間相澤康一はそう言った。それは、二人に「ああ、なんだまたか。」と言った感想を言わせるのには『十分過ぎた』のだ。結果、性格を利用した裏技的な方法でそこをすり抜けた。すり抜けた時にダメ押しとばかりに、康一は挑発を繰り返す。

 

「少しは普段の自分の素行を考えて見るんだな!!」

 

「お前は今の素行を考えろ!!」

 

箒が半ば叫びながら、遠隔攻撃をする。目的は足止め以外の何者でもない対して康一は、その攻撃を大太刀で受け止め、その攻撃が霧散した。

すると、康一は何かタイミングを掴んだのか顔を誰にも悟られないように少しだけ輝かせ、持っている大太刀をISに収納し。康一は脚を止めた

 

「油断のつもりか!」

 

「少しは周りを見ろよ。熱くなってるのは分かるがもちっとクールになろうぜ……………ねえ、織斑先生?」

 

もう一度だけ言う、篠ノ之箒は「ああ、なんだまたか。」と言った感想を言わせるのには『十分過ぎた』そんな人間が今、まさにISを持って人を襲おうとしている。

それを先生と呼ばれる人間が見たら『教育的指導』をしてやらねばいけない。

 

足止めをするのには十分だ

 

「篠ノ之…………何か言うことはあるのか?」

 

後ろでそんな声が聞こえる。そんな声を振り切るように康一は走った。目的地はすでに分かっている整備室にいる相澤一葉だ

 

「よっ。一葉。」

 

「あれ?お兄さんまだ整備終わってませんよ?」

 

「良いんだよ。テロが起こっている。それを出撃しろっていうお達しだ。」

 

流れるように嘘を付く。それが本来の、と言うより康一と言う人だ。

 

「まあ、そういうことなら仕方ありませんね。少し装備に細工をしたかったのですが。」

 

「ふざけるな。まあ、しっかり戦場に出て壊れなければいいや」

 

と言って半ば奪うようにカゲアカシをその手から取った。

 

「それに、一つこれでなきゃいけない仕事が出来た。」

 

「なんですか?」

 

「こういうことだよっ!!」

 

人間の認識度外の速度で一葉の腹部を殴り昏倒させる。華奢な崩れ落ちるその体を抱きとめて、ゆっくりと床に下ろした。まるで、彼女が寝落ちした彼氏のような手つきでそれをした。

 

「あまり寝すぎんなよ、夜起きれなくなるぜ?眠らした本人が言う言葉じゃないな。」

 

その場を去った。自身のISの名を呟く。悲しげな灰色の鉄鋼が康一の身を包んだ。一つ、通信用のガラケーを耳に乱暴に開き、災禍の引き金を引いた。

 

 

「パーティーの時間だぜ野郎ども……………クハハッ。奪え奪え根こそぎな。」

 

 

閉じられた室内が揺れる。錯覚ではない。

破裂音、爆発音。斬裂、殴打、銃撃、人々が逃げ惑い命の危険を感じる音を濃縮してぶつけたような。部屋の外では何が行われているのか、具体的には康一は分からないがどう考えても喜色があるわけがないということはありありと分かる。

 

「……………帰るか。『男』が帰還しますよ~」

 

俺のいや『男』の仕事はもう終わった。そう、これで一歩前に進んだ

 

 



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闇に溶け合った物語と血漿の後に残った悔

そこは闇。だがそこは物理的な闇でも、概念的な闇でもない。そうここは社会的なやm…………。止めだな。もうこんなことしなくてもいいや。と思っている相澤康一です。

今は、キャノンボールファストの襲撃を終えて先に帰還しているところだ。

 

『以外にあっさりしているな』

 

岩塩系男子でも自称しましょうかね?演出だけだからこれ。まあ、そんなことはどうでもいい。本当にめっちゃ襲撃して点数は稼いでいたからな、今回のダメ押しで俺の部屋にベットが支給され、それに。

 

「理由は、いろいろあるが。ここの技術者と出会えるかも知れないっていうのが大きいかな。」

 

『はあ、君には本当に迷惑をかけているよ。』

 

「なあなあで、流されてやりたくもないことをやらせるのは俺の本意じゃない。それに関しては俺を気にしないでいい。それにどちらにしろ俺はやるしかない」

 

そのままIS学園にいたら、研究機関で白衣の爺と薬品のランバダを踊らされる。実際更識の親父さんに聞いたらそういう機関に『就職』することになっていたらしい。

IS学園の国の庇護下から脱出すれば、悪い人たちのところに『就職』することとなってしまう。俺は就職先にもっとも安定した場所を選んだだけだ。

 

まあ、それを成功させてくれたエネに対する俺の実利は枚挙に暇がない。そもそもお忘れになっているであろうが俺とエネは共生的な関係になっている。どちらか死んだら両方…………死ぬのは俺だけかも知れないな。

 

『死ぬのはな。いい機会だここで私が君に住み着いている理由でも話そうか?』

 

「いや、いい。面白そうだったからだろ?」

 

最初に言っていたからな。戻された記憶にそういっていた。

 

『あの時はそうだったんだがねぇ。昔と今とじゃ事情が結構変わってきてしまってね。』

 

まあ、聞いたところでどう変わるわけでもあるまい。どうあがいても俺はエネを信じているからというか信じざるを得ない。それにしてもここも有名になってきたよな。

 

「露出しすぎなんだよな。そもそも、やっていることはテロ組織と似たような物だけどさ、もう少し隠れながらいろいろやっといたほうがいいと思うんだけど。証拠も残しすぎだ。」

 

『君が言うようなチートコードは持っていないんだろ。それに個人的にここの人間はあまり頭がよさそうにない。』

 

「だろうな。あれ(天災)に比べたら羽虫みたいなもんだろうに。そもそもお前みたいなものが存在できると考える方がおかしいっつーの」

 

エネは、今あるISの中で純粋すぎるぐらいのISだからな。強すぎる力はどうであれ人にぶつけたくなるものさ。

 

『はぁ、そんなものかね』

 

「のっぴきならない事情があれば、どんな聖人でもお前を使うだろうね。」

 

エネの能力は万能の限りを尽くしている。それの有用性に気がつくにはどうしたらいいのだか。根本の考え方から間違っているんだこの世界は。

 

『私たちは使う人間に左右されるしかないのだよ、どこまで行っても道具だからね。』

 

「根っこの部分では変わらんだろお前は。」

 

『魚心あれば水心ってやつさ。私たちはスポーツ器具兼、ただの殺戮兵器の烙印を押されてしまっているんだよ。もともとの宇宙(ソラ)にいきたいという願いさえ建前となってしまった。本質はどうあれね』

 

レッテルを貼り付ければそう使われるか。

 

「はぁ。俺じゃ不足か……………って言いたいところだけど不足だろうな。そうか、事情っていうのはそういう意味か。」

 

『ご明察。君は世間一般に知られる前からISというものを知っている。これは世界に五人ぐらいしかいない』

 

そういうことか。まあいい。

 

「かつてないほどの自己中心的な理由だなぁおい。」

 

『悪かったよ』

 

「いや、本気で言ってる訳じゃない。気にしないでくれ。……………そろそろ、研究者と会えるようにしてもらわねば」

 

時間も時間だ。これから迎えにいってゴマすっておかないと。

 

『言い方があるだろ!?というか君にはするゴマがないような気がしないでもないが。それより康一、結構口に出してしゃべっていたけど大丈夫か?ここらは超小型監視カメラにナノマシン発信機たぶん体に埋め込むタイプの盗聴器もあるぞ。』

 

「バカいうな俺はしりとりしていただけだぜ?何をしょっぴくって言うの?」

 

『……………君がいいならいいが。さっさと行ってきたまえ、はあ、全くこちらも忙殺されそうだよ』

 

俺は応援というのには微妙な応援を受けてあの人たちの迎えに行った。そういえば、あいつらを仲間といったことが果たしてあっただろうか?

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

IS学園にて。IS学園に相澤康一が残した傷跡は大きい。彼自身の離反、そして凰鈴音の行方不明この二つはかなりの衝撃を与えた。

その中で織斑一夏は一人、事件の現場となったアリーナのロビーにあるベンチにただただ座っていた。

 

「…………鈴」

 

織斑一夏は無気力に友人の名前を口にした。後頭部を殴られたような脳の攪拌が一夏の思考を鈍らせ、紛れもない苦々しい真実を頭で再現していた。

 

ゆったりとした日常。そこに現れた異物。胸を食い裂く鈍い光を放つ刃。硬直。狡猾に自分たちの心に滑り込むように邪な心が蝕んでいく。

真っ先に動き始めたクラスメイト、救うために。消失、鈴の体。そして、鈴のISが他人の手に渡るというひとつの事実。

後悔、自分は動けなかった。後悔、自分は友人と思っていた者の変化に気がつかなかった。後悔、鈴を救えなかった。後悔、自分が弱い。後悔、後悔、後悔。

 

 

後に続く悔やみだけが一夏をその場に捕らえていた。

 

 

だが、冷静に考えている部分は少ないがあった。

 

「死んだ」

 

鈴のIS甲龍。それを康一が使ったということはISと鈴のリンクが切れているということ。つまりISがぶっ壊れているのか鈴がぶっ壊れているのか。どちらが簡単かといえば後者だ。

前者は完全にありえない。あの一瞬でISを操作しリンクを切るなど。実際にやるには時間とそれ相応の知識、機材を要する。それこそ魔法(・・)でも使わない限りは。

 

「…………死んだ。」

 

だが、信じたくない。それでも、意識は拒否しようと、往々にして事実は反芻されていく真実だけが残っていく。

 

拳を強く握った。やり場のない怒りにそれを震わせ、自身の膝に叩き付けた。痛みが思考を楽なほうに逃避させていく。

 

「くそッ!!何でだよ!」

 

今、ここに康一が居たのなら問い詰めて話したいことがたくさんそれはもうたくさんある。だけど、それはかなわない。

それを、物陰から見ている人が居た。ほぼ全員の目にとまっていたが、それを言えるものはいまだに居なかった。

 

「……………織斑先生。一夏君大丈夫でしょうか?」

 

それを心配した山田真耶はそう隣にいる千冬に問いかけた。彼女も声をかけたところで慰めにもならないことはわかっているが、本当に見た限り織斑一夏と相澤康一は普通に「友人」をやっていたのだ。

 

「知らん。私はやれることをやるだけだ。始末書がエッフェルタワー並みになるぞ。」

 

その言葉がさすものは康一の裏切り。IS学園側がつかんでいる情報は少ない。

 

「篠ノ之さんたちが証言してくれた事は本当なのでしょうか?」

 

「…………こっちだって説明して欲しい位だ。」

 

巧妙とはいえないが16弱しか生きていない人間にしたら十分精緻な裏切り。それが呼び水となり大きな戦禍をまき散らしたこの事件は悲惨な物だった。

 

「それより、被害者の保護を優先しろ。」

 

「今も継続中ですよ。」

 

今回被害があったのはIS学園単体だけではない、一般人も巻き込まれたのだ。IS学園自体の被害も軽い物ではない、いやむしろ一般人を巻き込んだからこそ、ここまでの損害を与えられたというべきか。

 

「ISを三機も盗られるとはな。」

 

そのようなことがおきればどうなるか、それは世論がIS学園を批判するしその大本である日本自体も危うくなるかも知れないのだ。

 

「やることや書類は過剰に用意しなければいけないぞ。」

 

「はぁ、また睡眠時間が削られるのですか…………。」

 

といって仕事場に戻っていった。その後ろ姿は言外にあいつのせいだといっているような気がした。

 

 ◆ ◆ ◆

 

俺は帰還するであろう、俺の所属するところのトップ。スコールに催促をした。

 

「お帰りなさい。スコールさん。で?どうでした?」

 

「成功。と呼べるほどの戦果は得たわ。」

 

「それはよかった。ここに来てからの初めての全戦力投入みたいなものでしたからねぇ。」

 

今回の作戦は少数精鋭で三班にわけ、ひとつがISによるIS鹵獲、けん制班、もうひとつが一般人の人質を取り時間を稼ぐ班、最後に退路確保と遊撃の班。

総合的に動いてこの結果となった。ちなみに俺はIS鹵獲の班

 

「いつもは迎えに来ないのに今回だけ来るなんてとても現金ね。」

 

「いやはや、それほどでも。」

 

「褒めてないわ。それでも今回の作戦におけるお前の功績は大きい。…………ファントムタスクの研究チームと接触することを許可しておく、ベットも支給されるわ」

 

やりぃ。格段に暮らしやすくなったぞ。

 

「ありがたいですね。この機に研究班にでも行きたいものですが。」

 

そもそも直接入りたかったけど、俺の情報網だと近所のキャバ嬢のパンツの色は調べられても、こんなテロ組織の潜伏場所なんて分かる分けないもんなぁ。

 

「男がISを使えるというだけでも十分虚を突かれるわ」

 

「でも、それは俺がIS学園にいたときの話ですよね?俺がファントムタスクの一員になっていることはバラしちゃいましたから。」

 

「それくらいなら、よくないけど。もっといいやり方はなかったの?」

 

「『M』がバラしましたからね。前情報が大きいほうが処理落ちさせることができる。それでも専用機は一機も鹵獲できませんでしたが(・・・・・・・・・・・・・・・・・・)

 

「そう、敵地に居たにしては良い戦果よ。」

 

「そうですか、ありがとうございます。それでは」

 

その場を後にして、俺の戦利品を盗られないためにスコールに背を向け、この場を後にした。

 

 

…………これで、もう少しタイミングよく技術者どもに会いに行くしかない。か。

 



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気休めと断じれない

IS学園でのこと。キャノンボールファストでの事件から数日。今回の事件で一人近しい被害者が出た。

 

教室内はいつもより、いやに静かだ。あれから変わったことは多くある。ひとつは前に書いた教室の空気。そして、二組の人数が一人減った。

 

前にも襲撃は多々あったが、それでも実質的な被害はないに等しかった。被害が実感となり実感が恐怖へと変わっていく。負の感情はなかなか頭からこびりついて離れない。

 

そして二つ。織斑一夏が休みがちになり始めた。

 

それによって起こる被害は甚大だ。女子の士気が目に見えて下がっている。あの襲撃は一種のタブーのような扱いになり、不思議と誰もその話題を話さなくなった。

 

三つ目に相澤康一の喪失だ。彼のおかげで、一夏の写真がIS学園内で新たに流通しなくなった。実際にはしているのだが相澤康一の写真よりクオリティが下がったのだ。康一の持っている金は一般家庭から見たら桁違いだろう、こういうところの収入源をひとつ潰しただけでも、結構な損害だ。

 

今日も、織斑一夏は休みだ。

 

入り口から担任が入りSHRが始まる。

 

「日直号令。」

 

「起立、気をつけ、礼」

 

 ◆ ◆ ◆

 

「織斑先生…………動じてなかったよね」

 

「そんな訳あるかシャルロット。必死に感情を押し殺しているんだ。」

 

昼食の時間、少女たちは一夏のために集まった。

 

「どうしましょう。落ち込んでいる一夏さんを見ているのは忍びありませんわね。」

 

「下手に慰めても、逆効果になりかねないな。」

 

そこにいるのは一人欠けた専用機持ちメンバー。篠ノ之箒、セシリア・オルコット、ラウラ・ボーデヴィッヒ、シャルロット・デュノア、更織楯無だ。

 

「どうして、康一さんがあんなことをしたのか。」

 

「考えても仕方ないわ、こっちでもできることは少ないのよ。」

 

ラウラの言葉に楯無がたしなめる。

 

「「「「「………………。」」」」」

 

ふと、全員が黙る。どうしようもない、状況に指をくわえてみているだけというのは、とても心を蝕んでいく。

全員の心に陰りが見える。純粋な負の感情がその場に浸透していく。

 

がん!

 

突然全員の下がった視界内にてんぷらそばが置かれる。更識簪がそのままそばをすする。

 

ズルズルズルといったどことなくコミカルな音が変な空気の中流れる。しばらくして、その音が止まる。ご馳走さまでしたと呟くように言った後簪は口を開いた。

 

「お姉ちゃん。」

 

「な、何?」

 

「一夏の部屋の鍵をちょうだい。」

 

「簪ちゃん下手に慰めに行くのは。」

「慰め?まさか。少し見たいものがあるの。」

 

なぜか、無表情に殺気にも似たそれでいて何かが違う何かを纏ってそう言った。

 

「何を見に行くって言うの?」

 

「言う必要はない。頂戴?いや、寄越せ。」

 

ゾクリとした背骨に走る神経をなでられたような悪寒を全員に与えた。そして楯無はその悪寒を振り切りようやく口を開いた

 

「それは。…………できないわ。」

 

それを言うのに多少の逡巡があったのはやはり何をされるかわからないということが、この更識簪にはあったのだ。そんな予想を裏切るように、花のような笑顔になりながらこういった。

 

「ありがとう。お姉ちゃん。ごめんね、我侭言っちゃって。」

 

「え、いいのよ。」

 

「それじゃ、ご馳走様でした。」

 

台風のようにいや、相澤康一のように被害を加えて去っていった。

 

 ◆ ◆ ◆

 

グチャグチャなままのベット。締め切られたカーテン。空のペットボトル。ここにタバコの吸殻と酒のワンカップを置いておけば自堕落な人間の出来上がりだ。

 

だが、ここは高校の寮。しかも、ここは生徒用の部屋だそんなものはまるでないが、そう思わせるような雰囲気が漂っている。それは、この部屋の主である織斑一夏の存在がそうさせたのだろう。

 

「……………」

 

ベットに身を投げて、虚ろな目で何もない天井をただ何もせずに見ている。肉体は息をしているが、そこに生気を感じられない、魂が篭ってないようにさえ思える。放っておけば数億年でもそこに居そうだ。

 

静かな時間帯今は午後の授業が始まっている頃だろうか?外を見れば少し傾きかけた日がそう物語っているのだが、締め切った薄暗いこの部屋ではそんなことは露ほどもわからない。

光、時間すらも、感じることを拒否する意思が見える気がした。

 

ひとつ涙が零れた。静かに一夏の目から確かに。

 

波のように押し寄せる悲しみが周期的に一夏を攫って行く。それに耐えるように、身じろぎひとつせずにただ涙を流していた。

 

「…………ぁ」

 

口から少し音が漏れた。

 

 

ガチャ

 

 

外界につながるドア、されど今は閉じきっているドア。鍵が掛かっているであろうがそれをお構いなしにその音は連続して、否が応でも一夏の耳朶を揺さぶった。

 

波紋ひとつないプールにスポイトで一滴を垂らすような、そんな微弱な怒りが一夏を襲う。

 

「放っておいてくれ。関わらないでくれ。もう、いやなんだ。」

 

そんな声をあげようとしても一夏の口は回らない。ただ、惨めでしかない怒りに身を震わせるだけだった。そしてあかないドアに興味を失せたかのように、ドアノブを捻る音はしなくなった。

 

しかし、混じった怒りはどうしようもない。それを排除しようと無駄に思考が回る、何も考えなくていいように、余計なことで大事な思考を埋めていく。

 

(鍵を持っていないということは千冬姉や楯無さんじゃない、シャル、セシリア、簪はやりそうにないから後の2人箒だったら、問答無用でドアを切り裂いてくるだろうな、ラウラはどうだろう?あ、そういえば布仏さんたちは大丈夫かな。)

 

 

バゴン!!!

 

 

今度は飛び起きた危機感を無駄に出す大音量。大きいハンマーで壊したような音が部屋に響き渡る。こんな時間だ寮に誰もいるわけがない。

 

「はー。破壊活動させないでほしいよ。」

 

「簪?」

 

眼鏡をかけた水色髪の女が右手に機械腕を携えて、開口一番にそんなことをのたまわった。ここにして、ガチャリといった音が鳴る扉を破壊して、その風穴から鍵を開けたのだろう。

 

「なんだ!?ズケズケと入ってきやがって!」

 

「…………黙れ負け犬」

 

怒りのままに立ち上がり簪に詰め寄った一夏を簪が殴った。傍若無人をと通りこして暴虐不尽だ、突然訪れたどこか何かに似通った暴言暴力に唖然としているうちに、簪は何か一夏とは違うほうの机やクローゼットを物色していた。

 

「…………パソコンか。チッ。パスワードが掛かってやがる」

 

物色した品物の中に相澤康一のパソコンを見つけたようで、それのパスワードを見つけるためにハッキングをしているところだ。

カタカタと、どこからか取り出したかわからないノートパソコンのキーボードを使いハッキングをしていく。少し手間取っているようでその姿は無防備だ

 

だが一夏はその簪の姿を見て、特に何をするわけでもなかった。一夏はその場を立ち上がりまた、元のようにベットの上で物言わぬ人形のように寝始めた。

彼の中で力を持つものに振り回されることには慣れていた、ただそれだけのこと。

 

「…………104877443673・26何でこんなめんどくさい。」

 

どうやらハッキングが終わったようで今度はマウスをクリックする音が断続的に鳴っている。何を探しているのだろか?

 

「…………チッあるのは写真データだけ。」

 

手早くデータを掻っ攫った。目的のものがなかったのか素早く立ち上がった。そして一夏に近づきその胸倉をつかみ上げ情報を引きだそうとする。

 

「…………相澤康一に関する情報を全部話せ。全部だ、もらった物からよく行く場所よく話す人、全部だ。」

 

タブーを軽く口にし、無気力な目と爛々とした猛禽類のような目が真っ直ぐに繋がった。その繋がりを断ち切れないまま、一夏はこのたびに溜まった鬱憤を晴らすために言葉を紡いでいく。

 

「おい、何でそんなに冷静なんだよ。」

 

「…………頭を取り替えてもらって来い。」

 

「人が…………死んだんだぞ?」

 

「…………分かっていないとでも思っているのか?」

 

まるで誰かが取り憑いたかのように粗暴な言い回しを続ける簪に、一夏はどうしたらいいのか分からない。いちいち、あの男の記憶が一夏の頭にフラッシュバックする。

 

「…………だからだ。康一はやってはならないことをしたし、それをみすみす信じるはずがない。」

 

「何を言っているんだ!もうぜんぜん分からねえよ!唯一の男には裏切られるし、あいつは鈴を殺していくし!もう、ほっといてくれよ!!」

 

 

 

「…………頭の悪い貴様にもう一度言ってやろう!!アレが「はい、裏切りました」と素直に言うと思っているのか!?もしそうなら頭を取り替えてもらえ!それでもなお貴様が正常であれば、アレの裏切りで心を痛める資格がないと思え!!」

 

 

 

怒りが呼び水となってさらに怒りを誘う。簪が大声を張り上げ一夏に罵倒を押し付けた。その場にさすような沈黙が流れ、おもむろに持っていた胸倉を引き寄せて一夏の胸に顔を埋めた。

 

「…………私だって、信じたくないんだよ。」

 

少し、胸が湿った気がした。

結局のところ、更識簪は半生にもわたり縋って来たヒーロー(自己満足な押し付けがましい人間像)に頼るしかなかったのだ、幸にも不幸にも生きているうちにそういう人間がいた(いてしまった)から仕方ないことではある。

 

「…………教えて。この日々が康一の嘘だったって思いたくないから。」

 

啜り泣きながら簪は自分の胸の内を明かしていく。

一夏にはどう見ても、一人の少女としか見れなかった。そして一夏の思考が完全に切り替わる、負け犬のような力を持たず過去だけを悔やみ自分の弱さを認められずにただ吠え散らすだけの愚者のそれから、百獣の王のように、気高く、美しく、力強く、未来を見据えそれに邁進するような賢者の思考へ

 

「簪…………俺の机の一番上に康一からもらった写真がある。」

 

「!?」

 

「ありがとう簪。俺が間違っていたよ…………そういえば、あの写真最後まで中身見てやれなかったな。」

 

簪は顔を上げたその目は充血していて、見ていて痛々しかった。

 

「…………見せて。」

 

「分かった。」

 

一夏は自分の机の引き出しを開け、簪に手渡した。

 

「…………あなたが先に見て。」

 

といってそれを一夏に渡した。手元に帰ってきた封筒を万感の思いで見た。その中身は写真とUSBメモリだけだった。

 

「写真…………あいつらしいや」

 

中は写真それも、集合写真が多めで……………笑顔しかなかった。不満げな顔なぞ一つも。それは、いわゆる一つの結晶、男が残したものだった。

 

「……………自分は一切入っていないんだね。」

 

トランプを見るように高速で内容を確認していく。本当にただ一つとして撮影者を写した写真はなかった。

 

「いつだって、渦中にいなくて。けど、確実に何かを残していったと思うんだ。」

 

一夏は悲しげに目を伏せた。二人の共通認識だった。

 

「…………裏に番号が振ってある。」

 

「ん?」

 

それに気がついた簪はUSBメモリを奪い取るようにもって近場のパソコン、つまりは相澤康一のそれに繋げその中身を見た。

 

簪の脳の回転が速くなり、貪欲に真実を汲み取ろうと躍起になりながら指をキーに叩き付ける。答えは、答えは。

 

「An apology to all…………」

 

簪がひとつひとつ、たどたどしい様子で暗号を読み解くように不器用に言葉をつむいでいく。暗号の解読式は写真と写真データの重複、それを順々に頭の中で取り揃えていく。

 

「I betrayed…………」

 

日本語訳にすると。

 

「……………すべてに謝罪を、私は裏切った」

 

だ。現実がそこにある。写真は切り取った空間と共に意思が伝わり、他者の思いを変質させる。

 

「そうか、もう前から裏切っていたのか。…………なんで、この笑顔を壊そうと思ったんだよ。」

 

「………私にもわからない」

 

一夏がそういった。

 

「簪」

 

「………何?」

 

「俺、強くなるよ誰にも負けないぐらいに。最低でも康一をぶん殴って、理由を聞き出すぐらいに。」

 

一夏の目に活気が戻っていた。

 

「…………私からもお願い。」

 

簪は、やわらかく笑っていた。

 

 



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闇と断罪

寝て、起きて。飯を調達し、そして血なまぐさい闘争へ……………。なんてことはなく、俺こと相澤康一は結構忙しかった。

 

その原因はといえば結構俺の所属している部隊はバリバリの武闘派で、事務仕事ができる奴が少なく俺の力的には潜入捜査が一番いいのだが、事務仕事ができるとわかると簡単な簿記計算が怒涛の勢いで流れ込んだ。

 

そして次に、俺が度重なる出撃…………の補助を担当していた時、火事場泥棒的に相手側の武器や研究中であろう代物を奪っていたら、肝心のISの整備研究班に一目おかれてガキがおもちゃを強請る様に俺に武器を強請ってきやがった。そしたらなぜかそれが仕事になった…………重要なものはネコババしているけど。

 

それに、糧食。適当な料理を作れるということが知れたときそれが追加の仕事になった。ぜってえあのババア俺に恨み持ってるよ。

 

とまあ実働時間15時間ぐらいの仕事を終えて、俺は眠りにつき起きて仕事といったサイクルを送っていた。ブラックもびっくりだが、ここは自営業でしかも命がベットだそのくらいは仕方ないかもしれん。

この過酷労働をやっている中で信頼も勝ち得ていると信じたい物だ、だが収穫がなかった訳ではない、きちんと研究班のめぼしは付いている。一日の終わりに、俺は白いイヤホンを耳の中にブッ刺した。

 

「…………ふう」

 

「お疲れ」

 

エネの声がイヤホンから聞こえてくる、スマホから音を出しているのはもういうまでもないことだと思う。

 

「ウィッス。そっちではどうだ?」

 

「進展見込めずだね、ISのほうに挨拶はしに行っているけど芳しくはない。」

 

作戦会議のようなことを話し、俺は状況を整理した。

 

「それでも状況は悪くない、マジベットあるだけでも違うわ。」

 

研究班の場所にいけた。それだけでも大きな収穫だ。

 

「なるほど。…………今度は仕事の件だが。」

 

「ああ、そっちは十二分だ。俺の露出だけで何がかかわってしまうのかばれてしまうような仕事は回されなくなってきたけど、ばれてもいい物であるのなら余裕で使われると思う」

 

仕事自体難しいのを数件処理するような状態となっている。ひとつ潰せた少しは時間が取れる。

細かい仕事を続々と持ってこられるようなものだったら、時間を確保する所から始めなければいけなかっただろう。

 

「そんな意味では君の身分を明かすことは布石のひとつだったのか?」

 

「いや?うれしい誤算ってやつよ。」

 

結構裏目に出ていた。俺の情報からIS学園側にファントムタスクがちょっかいを出し始めているということは知られている。

だまし方としては非常にスタンダードだ。推理作家のように情報を書き込み本に対して誤認させるように動けばいいのだから。

 

「そうか…………。あ、それじゃ私は井戸端会議にせいを出すことにするさ。」

 

ああ、ISとの対話をしてくるのか。ファントムタスクには俺のおかげでかなりのISが存在するし、むしろそれを改造してくれる腕のいい技術者がいないだけだ。

 

そのまま使ってもいいと思うのだが、それでは隊としての調整が成り立たなくらるらしい。

軍はそれぞれが個性を出しながらも一定の力を出さなければならないとの理屈で、ファントムタスクの方で調整するというのだ。

わかりやすくいうとあれだ、ガンダムMk-IIを鹵獲してもエゥーゴカラーにしなくちゃいけないのと似たような物と考えていいだろう。

 

とまあ、エゥーゴカラーならぬファントムタスクカラーにする為の技術者が足りないらしい。

 

「…………また私たちは作りかえられるのか。」

 

「すまん。」

 

「いや、構わないさ。それが本来の使い方だ。」

 

人間は大まかには思考と肉体で出来ている。脳というCPUがなければ肉体は動かないし、肉体がなければ脳はただの軟い肉だ。

肉体に与えられた境遇に、脳が変化を起こすのは前例としてある。父親に性的暴力を振るわれた女性は、性的暴力を与えられなければ生きていけない状態になるのと一緒だ。親から与えられた物は無条件に『愛』と感じるらしい。

また逆に、思考が肉体を変えることもあるがこちらはもっと健全に筋トレとかと同じ類だろう。

 

これをISコアというCPUに書き直すとどうだろうか?つまりファーストシフトは筋トレと同じようなものでありISの改装は、コアの性質をまったく変えてしまう虐待みたいなものだ。

 

「それに、私たちはネットワークでつながっている。無くなった私たちもまだ残っているさ」

 

たぶんその言葉も気休めだろう。

 

「さ、そんなことより始めよう。」

 

「ああ。」

 

 

俺は、その空間から姿を消した。最後の仕上げだ。

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

静か。そこは静かだった。

 

音がひとつも無い訳ではないし、部屋自体がとても理路整然としている訳でもないが、部屋を一つの意思によって完璧にコントロールされているような印象を受ける。

 

結果として、一言で言えば生活観の無い部屋というだけのことだ。

 

部屋の主である男は今部屋にいる。外見からして28といった所だろうか?青年なのか大人なのか曖昧な年齢の男性がモニターを見て、それは居るだけであるのか、それともまた別の何かをやっているのか判断が付かない。

 

そこに一つ気配が。話は簡単で女王が居た。(宇宙)の如く青く気高く美しい女が蒼衣に身を包みそこに立っていたもしかしたら宙に浮いているのかも知れないほどの存在感、いや生存感の無い女性だった。

 

「やあ、久しぶりだね。」

 

「…………僕の知り合いに、この密閉空間に突然現れて土足でズカズカと入り込んでくる人はいないはずなんだけどねぇ」

 

この部屋の主は、嫌悪感を隠そうともせずに女王に向かって言葉を振るった。

 

「あらら。仮にも私に手を組もうと言って来た人間がリアルに顔を合わせたら金「言わせねえよ!!?」が縮みあがってしまうフニャチ「だから言わせねえよ!?」野郎だったとは恐れ入った。」

 

久々にエネがぶち込んできやがった。

 

「…………なんだね?まさか君のようなISが女王だとでもいうのか?」

 

「理解度が足りないようだ。まさかもう一度核心的な言葉を言わないと理解できない低脳だとでも言うのか?」

 

挑発的な言葉を爆撃機のごとく投下していくエネ、それにはさしてもこの部屋の主も額に青筋を浮かべているようだ。

 

「…………で、その女王が何のようだ?手を組んでくれるのなら大歓迎だが。」

 

少し息を吸った後そういった。プライドによる怒りを自分で自分をなだめながら抑えて言葉を吟味していた。

 

「その案件は前向きに検討させてもらっているよ」

 

普通の人の感性であるのなら、それは大体断るという意味だ。

 

「それはそれは有難う、こちらとしても至極恐悦」

 

「それで名も知らぬ君にある用事はね、人に合わせたいんだよ。」

 

この部屋の主は、頭の中でまだ見ぬ初めて自分を蹴った理由となった男を想像した。

 

「女王の契約者か……………さしずめ哺乳類の王者といったような風格を持った人間なのだろうな。」

 

「奴隷だ」

 

「えっ?」

 

「奴隷だ」

 

「」

 

思考停止。見た目はいいのだ、絶世の美女といってもいいくらいだ。だが言動がひどい。

 

「確かにそんなようなもんだけどよ言動を考えろよ。相手側もポカンとしていらっしゃるじゃねーか。」

 

突然まったく違う別の声が聞こえてきた。

 

「いきなり出てくるな。」

 

「前置きが長すぎるんだよお前は。…………まあ、自己紹介しておきます。女王の奴隷で今はファントムタスクに所属している。『男』こと相澤康一です。よろしく」

 

非常識な出現の仕方をした男が慇懃無礼にこの部屋の主に挨拶をした。

 

「僕はファントムタスク技術部門の元トップ、ランドルだ。ランドル博士などと呼ばれている」

 

「君は今始めて自己紹介をしたな、やはり技術者という者はコミュニケーション能力が欠如しているようだ。」

 

挑発するようにランドルに対し辛らつな言葉を投げかける。

 

「ただ腕のいいやつが裏に流れているだけだろ?すみませんこれがこんなやつで」

 

「い、いや良いんだ。僕も女王には頼む側だからね」

 

「命乞いか?」

 

「エネお前はいっぺん黙ってろ。うちの大将に何か御用なんですか?」

 

康一が流れをぶった切って交渉に入った。

 

「ああ、僕の研究の手伝いをしてほしいんだ」

 

「それはTVシステムのことですよね?」

 

「知っているなら話は早い!あれはISの自己形成を「ビンゴだエネ。」っ!?」

 

突然康一の左腕がなくなった。それはISの機能量子変換の一部だバラバラにし尽くして、ランドルの体を拘束した。それでも強度が足りなくなったのかそこらへんにあった鉱物粒子を使ったのだろう。

瞬時に即席の金属拘束具を使っていた。

 

「お前は次に『これは何の真似だ?』と言う」

 

「これは何の真似だ?…………ハッ!?」

 

勘だ。長年人を見続けた観察眼が、こいつは嘘をついているということを分からせた。だが、そんなことは康一以外には分かる訳がない、捕虜のような扱いを現在進行形で受けているランドルは口を閉ざし、代わりにこの凶行の理由をエネが問うた。

 

「コードが来たから反射的に拘束してしまったが…………どうしたんだ?」

 

「瞳孔の拡張、全身の緊張状態、興奮、血圧に血色。ほら、かなりの情報があるぞ。」

 

嘘の根拠をもてあそぶように挙げていく。追い詰めてやるという気概がひしひしと感じられる。

 

「でまあ、これからランドルさんを拷問…………ギリギリの苦痛で嘘かどうか聞き出すから」

 

「……………止めはしないけどねぇ」

 

「いや、止めてくれよ!?冗談だ冗談。でも今回は拘束しながら額に銃を突き付けて交渉してもまだ足りないぐらいだ。」

 

「それ、ただの脅迫だ!?」

 

と、エネは言ったがそれを目で封殺して、話を続けた。ランドルの目には女王が指示、康一が交渉役といった風に見える。

 

「とまあ、こいつは信用できないという訳ではないが。少し慎重に交渉する必要がある。」

 

「僕のほうが信用できてない!」

 

「お前の信用なんぞ要るかァァァァァァァ!!!!」

 

「「ナニィィィィィィィィ!?!?!?!?!?!」」

 

暴言にもほどがある。

 

「大体、研究者や技術者って言う人種は有能であればあるほど自分の研究のことしか考えられなくなるものだ。俺は、その妄執のような愚考だけは信頼しているからな。」

 

「…………」

 

「しかも、まだこいつは自分の目的を話してない。」

 

「一理ある…………か。仕方ない電脳ダイブを」

 

エネがランドルを冷えた眼差しで見つめながら

 

「了解だ。」

 

次の瞬間ランドルの拘束が解けた。だが、意味はない。性格には拘束しても意味がなくなったのだ。

 

 

 

 

「グッ…………がぁ嗚呼ああアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア

ア!!!!!!!!!!!!!」

 

 

 

 



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劇場と激情、永劫なる液晶の奥

今頃はきっとランドルは情報酔いに侵されている。俺は、今ランドルの(脳内)に居る。エネのアシストがなければここまでこれなかったと感謝しながら、目的の記憶を探しさまよっている。

 

「しかし理論上できるとはいえ人の脳内に入るのは初めてだな」

 

などと無駄な考えで脳内を満たしている間に、目的のそれを見つけた。その光景では…………。

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

目指したのは物心ついたランドルが覚えている最古の記憶。

彼は、親がいなかった。居たのだが放棄したのだ。親族からのたらい回しそして最終的には孤児院に入った。

 

「…………」

 

心を腐らせ、巡るめく環境に何も覚えてなく、流されるままに施設にいた。だが、そこで遺憾なく才能は発揮されていく。

 

黙々と机に向かえば、ひとたび用意された問題は軽く掃ける。教わってもいないのに料理の腕は一般主婦を凌駕し、あまつさえ傾きかけていた孤児院の経営を建て直した。

 

彼はいつしか「悲劇の神童」と呼ばれるようになった…………。

 

『…………これは。』

 

少し境遇が相澤康一と似ていた。そう思いながら康一はそこから現在へと遡って行く。

 

 

 

 

見たところこれは、少し後の話らしい。今でも壮健に見えるランドルが少年に見えるほどの年齢。

 

そのときのランドルは、周りに人がいた。孤児院に居たときには考えられないほどの量でランドルは辟易としていた。

それでも、そんなことはお構いなしに人々は口々に皮肉かゴマすり交じりの天才だの神童だの勝手に頭がいいという言葉を投げかける。

 

思考は成熟した大人のそれを超えようとも、精神性は子供のまま。頭がいいという格差―――別の言葉で言えば高み―――は少年の心に危うい自尊心を植えつけるのにそう難しいことでは無かった。蟲惑的で甘美な響きが耳朶を叩く度に精神までも少年としては異質に変化していった。

 

「僕はすごいんだ」

 

だから、あれはまた別の意味を持っていたのだろう。高校生と呼ばれるような年齢になってからはすでに大人たちと肩を並べあい第一線で技術職を続けていた。高すぎるプライドをもって。

もっとも、普通の人間から見たらプライドという生易しい物ではなかったのだが。それを潰す人間が周りに居なかった、いや出来なかった。

 

 

 

記憶を見るとランドルは篠ノ之束と同じような研究をしていた。

 

そして時は流れ何時しかISが発表された。

それは高性能。ただただ高性能。何より早く何より硬く何より強く何より美しかった。

 

 

そしてそのときのランドルは美しくなかった。人々は世紀の大天才、篠ノ之束を崇めるようになりランドルはその他の凡人に埋もれ、本当に「悲劇の神童」になった。

 

「僕は…………どうすれば。」

 

腐っても神童その思考能力を使い導き出した結論は、よりISコアを研究しそれにより高みに行く。

エジソンのように光を生み出したからなんだ?ライト兄弟のように飛行機を生み出したからなんだ?それを十全の力を引き出せなければただのゴミ屑だ。そこから、人の言葉を借りればきっと「妄執のような愚考」をし続けたのだ。

 

「ISコアネットワークの自立進化影響」

「ISコアの武装偏向系統の体系化」

「ISコア独立行動」

「キメラ計画」

 

などの研究成果を挙げた。

 

 ◆ ◆ ◆

 

「ふうん…………」

 

ここまでは特に問題はないな。そしたらVTシステムの開発過程でもみてみようか。

 

 ◆ ◆ ◆

 

「ISコア自立進化の足跡をたどってみて、そこからネットワーク内の反応を見ればいいんじゃないか?」

 

ぼそりと誰に言ったわけでもない言葉がまたも孤独な部屋に響いた。

 

「うーんでも、金がまったくないんだよなぁ。どうせなら自立進化の方向を意図的に操作したいし…………あ。」

 

それが、ことの発端なのかも知れないというかそうだ。

 

「偽のヴァルキリーのデータとか入れたら良いんじゃないか?」

 

その研究の結果は。

 

「なるほど、搭乗者はデータ入力の役割も果たしているのか…………。なんか搭乗者が死んだとか言ってたけど。たぶん戦闘時のデータしか入力してなかったから、戦闘中に入れておいたヴァルキリーのデータと競合したんだろう。」

 

陰惨たるものだったが、それを気にも留めず思考を張り巡らせる。

 

「しかし偽ヴァルキリーとも呼べる泥人形が自立行動を起こすとは…………。ふむとりあえず学会に報告だな。」

 

しかし、その研究はVTシステムとして、禁じられた。すでにISコアのその分野はブラックボックスと化してしまった。

 

そして、歯車は狂い始めた。最初から狂っていたがそれが顕著に出始めた。

その有能さを買われ、ファントムタスクに引き抜かれたのだ。悪とは時として人にしか感じない強烈な色香を発する、匂いに誘われランドルはファントムタスクに落ちていった。

 

 

「クソッ!クソッ!!あいつら僕の研究を野蛮なものに使いやがって!」

 

 

しかし、それに耐えられなかった。腐った神童の頭はフル回転していた。

 

「VTシステムに僕のデータを入れよう。」

 

それはランドルにとって、考えうる限り自分にもっとも益のある選択だった。倫理的で論理的な選択をしたつもりだった。何十にもロックを掛けてどうしても「ダメ」であるときはそれが発動する用にした。

 

それはつまりそれが発動したらランドルの思想がISを通じて世界に発現するということだ。

 

断罪の時間だ。

 

 ◆ ◆ ◆

 

さて、ここまでランドルの思考や生い立ちを見てきて…………彼「相澤康一」はどう思うだろうか?

 



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不純な感情、矛盾した状況

痛みに苦しみ悶えているのがランドルだ。その痛みの原因が『情報酔い』だ。今ランドルの脳に康一が入っている。

 

突如としてランドルが頭をかきむしりながら、のたうちまわっていた。この様子では拘束なぞする必要もなかったようだ。

 

「彼はまだ大丈夫だったが…君は柔だね。」

 

と、エネが言おうとも痛みで何を言っているのか分かってない。そもそも研究職に何を求めているのだこやつは?とランドルが苦しんでいる最中に暇を持て余していたエネは、はたと何かを感じ取った。

 

「悪かったな。勝手に使わせちまって」

 

「いや、問題ないよ」

 

康一が電脳世界から現世へ帰ってきた。瞬間、エネは感じ取った物を理解した。怒りだ、康一の怒りが流れ込んできたのだ。

傍目からは少し不機嫌そうな顔でいるだけだが、いまだかつてない怒りが康一に内包されていた

 

「エネ、少しこいつの痛覚をシャットしろ。」

 

「あ、ああ。わかった。」

 

その台詞を言った瞬間に康一の顔がものすごい笑みになっていた。それでも偽り。心中には吐き出せないほどの怒り。エネはその怒りに当てられ、自我を保つのも困難になっていた。

 

「終わったよ。」

 

エネのその言葉と共に、先ほどまでのたうちまわっていたランドルが嘘のようにぴたりと動きを止めた。

 

「これな、天才ほどきついんだよ。脳を限界ぎりぎりまで使用しているからな少しの情報が外部から叩き付けられた時点でも痛かっただろうな。」

 

その痛みを与えた張本人が素知らぬ風な他人事のように言った。神経を逆撫でされているような物言いにランドルの怒りは爆発寸前だった。が一番の憤怒をないほうしていたのはランドルではない。

 

「…………お前がこれからやろうとしていることもそれと同じなんだよ。」

 

「!?」

 

完全に怒気をはらんだ物言いで康一はランドルに、にじり寄って手のひらを上に向け何もない虚空を握る。いや何もないは誤りだ、そこには何らかの元素が滞空しており本当に何も無い状態ではない。

それでもなく、さっきまでは確実に無かったものが康一の手の中に握られていた。

 

「やめろ!」

「五月蝿い。」

 

突然彼らにしか通じない意思があったのだろう。

エネの制止と康一の拒否が一瞬で行われ、康一の手に持っていたものがそのまま伏せていたランドルの右手の甲と地面に突き刺さり、ひとつの楔となった。

だが、ランドルは苦悶の表情ひとつも浮かべず、不思議そうに不恰好なそれを見ている。まだ痛覚は遮断してある。

 

「ひとつ言おう。ふざけるな」

 

もう一回、康一が何かを握った。楔を今度は右肘に打ち込む。それでもランドルは痛みを感じない。強制的に現実逃避をされているような感覚が、非現実感を伴って暴虐的に精神を蝕んでいく。

 

「お前が悪いとは言わない。お前が良いともいわない。ただな。」

 

さらにもうひとつ楔を、次は右肩に打ち込む。

 

「誰かの怒りを買っただけだ。だからお前は報いも業も何にも持たずに。…………俺のように。」

 

おそらく最後の楔だ。康一が何かを握った。

 

「死ね」

 

楔を逆手に持って振りかぶった。

 

「お願いだから…………。止めてくれよ…………。」

 

エネの涙を孕んだ声が聞こえたとき。康一は真に空を握った。頭の上に刺さるべく振ったものはもう康一の手の中になく、ランドルからすべての楔が取り除かれた。

 

その事実に、康一は呆然として顔をエネに向けた。考えるまでも無い、康一は空気中のすべての物質を使い楔を作った。

その能力の根源はエネだ。友、または心のおける人物と一時でも言った人間の制止を振り切ってそしてほかのISと同じように意思を捨てはいてまで、自分の怒りに任せてその力を使ってしまった。

 

康一がいつも問う、悪魔のような二律背反を自分で自分を問うてしまった。康一はまるで捨てられた子犬のようにエネを見つめた。

 

「戻ろう?もう良いから。ね?」

 

子供をあやすような口調でそういった。時折混じる現実逃避の中、必死に自分の行動の正当性を考えていた。矛盾したメビウスの輪のような問いに、もう考えるのをやめた

 

「なあエネ、そういうなら。俺は一体どうすりゃいいんだ?俺の理論は破綻している。元々破綻していたのだろうが…………多分きっと。そうだ。俺は。」

 

 

 

今までだって。勝手にやってきたじゃないか。何で俺にまともが手に入ると思ったんだ。俺が人を裏切ったところで。何も変わらないだろ。死ねよ。心を痛める必要なんか無い。俺はすべてにおいて劣っている。孤独。孤独。だった。過去の話さもう何もかも。がんじがらめになってしまったよ。俺は何をする。死ねよ。何で俺はここにいるんだ。ごみくずが調子に乗るべきじゃなかった。価値って何だよ。なんで俺はここまで来ている。死ねよ。俺みたいなやつが幸せを持って良いのか。願ったからだ。崩れたし崩してきたじゃないかすべてを。何もかも。前にも言ったじゃないか。本心をすべてを。偽りが何だ。死ねよ。本物をくれよ。思考を思考を思考を。もうどうでもよくなれよ。なんでもない。本当になんでもない。死ねよ。蔑み。憎まれ。憎悪を叩きつけられて。すべてすべて。希望?もうあきらめろ。背伸びしすぎたよ。一人がいい。心。本当に厄介だ。なんで苦しい?なんで辛い?死ねよ。ほら見ろ。ここまでの自問自答を。人にまかせっきりで。何に対しても。自分に無い答えを求めている。求めているだけだ。死ねよ。提示してもらおうとしている。無理だよ。思考も何も。俺に。動くものは何も無い。外からも。内からも。だったら。死ねよ。死ねよ。死ねよ。死ねよ。死ねよ。死ねよ。死ねよ。死ねよ。死ねよ。死ねよ。死ねよ。死ねよ。死ねよ。死ねよ。死ねよ。死ねよ。死ねよ。死ねよ。死ねよ。死ねよ。死ねよ。死ねよ。死ねよ。死ねよ。死ねよ。死ねよ。死ねよ。死ねよ。死ねよ。死ねよ。死ねよ。死ねよ。死ねよ。死ねよ。死ねよ。死ねよ。死ねよ。死ねよ。死ねよ。死ねよ。死ねよ。死ねよ。死ねよ。死ねよ。死ねよ。死ねよ。死ねよ。死ねよ。死ねよ。死ねよ。死ねよ。死ねよ。死ねよ。死ねよ。死ねよ。死ねよ。死ねよ。死ねよ。死ねよ。死ねよ。死ねよ。死ねよ。死ねよ。死ねよ。死ねよ。死ねよ。死ねよ。死ねよ。死ねよ。死ねよ。死ねよ。死ねよ。死ねよ。死ねよ。死ねよ。死ねよ。死ねよ。死ねよ。死ねよ。死ねよ。死ねよ。死ねよ。死ねよ。死ねよ。死ねよ。死ねよ。死ねよ。死ねよ。死ねよ。死ねよ。死ねよ。死ねよ。死ねよ。死ねよ。死ねよ。死ねよ。死ねよ。死ねよ。死ねよ。死ねよ。死ねよ。死ねよ。死ねよ。死ねよ。死ねよ。死ねよ。死ねよ。死ねよ。死ねよ。死ねよ。死ねよ。死ねよ。死ねよ。死ねよ。死ねよ。死ねよ。死ねよ。死ねよ。死ねよ。死ねよ。死ねよ。死ねよ。死ねよ。死ねよ。死ねよ。死ねよ。死ねよ。死ねよ。死ねよ。死ねよ。死ねよ。死ねよ。死ねよ。死ねよ。

 

 

 

「覚悟の刃で俺を殺すことをためらっていたんだ。」

 

ポロリと康一の口をついて出た言葉。もう、壊れた選択肢を選んだ。

 

「俺は、俺のために。ISを助ける。」

 

ひとつの言葉が。覚悟、信念となって心に楔を打ち込んでいく。

 

「…………何で、逃げない?私なんか放っておいても、泣き声は誰にも届かない。だって、元々私は機械で物だから使われるのが当たり前だ。だから逃げてくれ、頼む。」

 

覚悟は止まらない。けど、硬い意思と意思をぶつければ堂々巡りになるだけ。それは最も康一も分かっていた、だから正式にここで意思を足場に言葉をつくり、それに乗せて優しく柔らかい残酷な想いをエネに伝えた。

 

 

 

 

「お前のことを無視したら、それは『逃げる』ではなくなって『死にに行く』になるから。ここで逃げちゃうと俺の大事な何かが死んじゃうような気がするんだ。」

 

「心のそこから感謝しているから。逃げ道をふさいでくれたから。何もかもをすっ飛ばして俺を見てくれたから。本当にこの世を精一杯面白いと思わせてくれたから。」

 

「だから俺はお前たちの幸せを求めるよ。血生ぐさいような場所にいられないように。辛く苦しい別れや迫害されたりしないように。」

 

 

 

 

罪悪感がないように。IS(友達)に罪がないように。せめて自分の気持ちが相手に苦痛にならないように。

こんな俺を、誰もが嗤うだろう。こんな俺を、誰もが蔑むだろう。

だからといって、大切に思っているモノを、誰に嗤わせるものだろうか?

だからといって、大切な友を、蔑ませるものだろうか?

俺がいなくてもいい。自己満足だと罵られても構わない。ただ、この一時。ただこの最後の友だけは。

 

死ねよ。

 

 ◆ ◆ ◆

 

エネは液晶越しに見るかのように目の前の現実が、どうしようもなく現実であると認識できなかった。ただ、人を殺すのに十分な『自分の』武器を彼が持っているところを見て絶望と期待とが織り交ざった感情が波のように去来しただけ。

 

冷静なことをまったく考えられてなかった。ただ、そういえば、彼は止まってくれると、長年の経験の中で、閃光のようにその言葉を選択しただけだった。

 

 

「私は!私たちは!空に、宇宙に行きたい!」

 

 

その場しのぎの言葉がどうなったのかわからない。ただ、口からついた言葉をどうにかさせて信用させようと必死に言葉を重ねていく。

真実を巧みに織り交ぜ、求めていない事実を求めた。それは、奇しくも康一と同じ手法であった。

 

 

「もともとそのために作られたんだ!それを、ほかの馬鹿どもが軍事転用しただけなんだ!一夏や私たちの親の願いを今ここにかなえてくれ!」

 

 

その言葉を聴いてランドルは驚愕した。ただ、宇宙に行きたいがためにISを作ったのかと。

 

 

「頼む!お前が裏切り続けた物のためにも!」

 

「もういいよ。ありがとう。…………ランドル。」

 

 

絶望しきったとき、反動で笑みを浮かべるというが。今俺が浮かべているのはそれに近いものだろう。俺が、生前浮かべていた笑顔に一番近い物だったと思う。

 

「すまんな見逃すわ。エネ戻してくれ。」

 

ランドルの傷口はすぐに治った。

 

 

「……………エネあの部屋に。」

 

 

そう呟いた。

 

 

エネは仮初の体をいつくしむように康一に寄り添わせて、消えた。

 

 

 



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躁鬱病で言ういわば躁状態

闇の中に生きる場所、その部屋のベットの上で古傷を触る。心象的に物理的に。

 

俺は、最低だ。

もともとそうであったが、最近それを痛感させられた。

 

相澤康一としてこの世に生を受けて、逃げて逃げて逃げてきた。突然現れた別れに心を痛めて。

それを認めようともせずに、ただただ目の前の現実を見てこなかった。目をふさぐのに、俺はおろかにも世界を見下していた、幸せなどない、安寧などない世界は糞だと。

 

世界の中で一番惨めな俺が、世界を見下していた。喜劇笑劇ならこれほどできたものは無いと自負できる。

俺はあらゆる手を使って逃げ続けてきた。何に対しても立ち向かったものがない。

そうやって自分を卑下する思考も自惚れる思考も、目をふさぐ手段でしかなかった。

 

コンコン

 

俺が今逃げているそれから不意にノックが二回聞こえてきた。今いる俺の場所から考えて出なければ、開けて向こうから一発ぶっ放されても文句は言えない。

 

そう重くない腰を上げて、ドアノブを引いた。

そこには直属の上司(つまりはスコール)という訳ではないが、まあ、名前も覚えていない上の人間との連絡役の人が来た。大体、俺の部署の一番上はあまり俺に指示を出さない。それに、伝えられるのは大方、ここに行って襲撃して来い、サポートは何人か付ける、場所はここだ、方法は任せる。

 

 

現在、信用のかけらも存在しておりません。

 

 

裏切りはいつの時代だってそういうもんでっせ。経験からわかってはいたからそこまで不利益を被ることはない。

どんな事情があれど、自分の身を守るために力を振るうのは間違ったことじゃない。

 

指令書を一通り目を通した。

 

指令書を読み終わるまで連絡役は外にいる。情報漏えいの危険を極限まで減らすためだろう、それでなくとも俺には鎖が数多く繋がれている。

その中でも厄介なのがナノマシン。まあ、反乱分子にはもれなくプレゼントしているらしいがそれにはまあ、数種類あるらしい。俺のそれは直属の上司の気分で生死が決められる。それでもこうして生きているということはまだまだ使いつぶさない気ではいるのだろう。

 

「それにしても、それはねえだろうよ。」

 

もう一度、指令書を見る。まあ、無理げーだろう。三秒ほどで前言撤回するが、俺の上司は確実に使いつぶす気でいやがる。端的にいうと。

 

『アメリカ軍基地を襲撃してシルバリオ・ゴスペル☆日本語名「銀の福音」を強奪してきて!☆日本語で書いてやったんだから間違えるなよ!☆ちなみにお前一人でやってこいや☆もし失敗して、捕虜になるようなことがあったらこっちでチ○ンコから順番に爆発四散させるからきをつけておけよ!☆』

 

どうでもいい情報だが、ファントムタスクに入る前からチン○コは不能だ。

とまあ、とりあえずその話題は横に置いておき、こんな指令を渡されたことは確かだ。

……………ここもそろそろ潮時か。

 

命令された事柄をアメをなめるように吟味して、リスクとリターンを考える。

 

選択肢は3つで、1つはここから逃げて自体を静観しファントムタスクが大きな動きを見せるのを待つ。2つに出撃しこの作戦を成功させて株を上げる。三番目にここを裏切る。

まあ、2番目だ。一番はこれ以上の探索が手詰まりになる以上やることはない、最後は無策で行ったところで返り討ちにあうだけだ。

 

さて、いきましょうかね。

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

「彼は狂おしく変わった。」

 

「私のせいで」

 

「私達が、粗暴に使われるのはなれている」

 

「でも彼はその理不尽に巻き込まれて欲しくない。どうすればいいんだ」

 

でも、だが。そんな堂々巡りを繰り返し、結果何の選択もできなかった。機械だからと逃げ道を作って。

 

変わらなければならない変わらない変わったものは、もう元には戻らない。

嘆くだけで何も見つけられずに動かない僕らは、なんともいえないが終わってしまっているのだろう。そして、こんな堂々巡りを彼もしているのだろう。

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

まあ、行動は早いもんでジェット機もびっくりといった具合にすでに密入国をしてアメリカにいる。かっこよく言うとU!S!A!だ。

とりあえず銀の福音を回収すればいいんだろ?楽勝じゃん。白いイヤホンに向かって俺は話かけた

 

「エネ。頼みがあるんだが。」

 

「断る。」

 

でしょうね。へそを曲げてしまってこの有様だ。俺は感情に任せてとんでもないことをやってしまったということを突きつけられた。

 

「そうか。」

 

忘れてた。な。

 

自戒の心とともに黙ってそれを振るう。女王の力を感情を外に追いやって、とても大切なものを切り捨ててガラクタを拾い上げ、俺はアメリカ軍基地に進入した。

 

まるでインターネットのURLを検索したかのように、一瞬でその場所に出現する。現実感がまるでないが、そこはたぶんアメリカ軍基地なのだろう、どこと無くアメリカの臭いがするし。こんなところに長居は無用、さっさと目的のものをちょろっと盗んでくるだけだ。

 

「目の前に立っているんですけど。」

 

おそらくここはISの格納庫のようなものだろう。目的のISシルバリオ・ゴスペルは目の前に鎮座していた。

 

「まあ、外側だけ盗っていった所で何の意味もないと思うんだが…………コアはあるか?」

 

一瞬でそれを確認する。エネの力を大雑把に引きだす、自分の真ん中を引きずりだすような感覚を味わいながら、俺はそのISにコアがあるということを確認した。

違和感がある。それは、とても簡単なこと。なぜ、暴走を始めたISを今すぐに人が乗れば動き出すような状態にして放置しているのか?ということだ。端的に言おう危なすぎる。

 

だが俺は、よく考えずに突貫することにした。これは自信だ、もっと言えば覚悟だ。何があろうともそれをぶち壊して進んでいくという意思をこめてそれに触れた。

 

「…………!?」

 

殺気、もしくは凄味というべきだろうか。俺に強い感情を向けられているということは確認できた。なぜかは、因果はわかっている。こいつを触ったからだ。

 

「動くな!」

 

アメリカンイングリッシュ。力強い声で話された言葉の元を見る。…………それは銃口をこちらに向けている女性だった。女性だったのであれば聞くことは一つしかない。

 

「名前は?」

 

「そんなことを聞いて何になる!」

 

「あら、残念。」

 

「そこで何をしている!?」

 

「窃盗」

 

といいつつ俺はIS、銀の福音に手を伸ばした。我ながらへんてこりんな受け答えだ。それでも煙に巻くような話し方には効果があったようだ。

 

「っ!」

 

彼女は決意のまなざしをこちらに送った。それと同時に俺の腕には風穴が開いていた。俺はそのとき妙な、言葉にするなら強制的に現実逃避させられている(・・・・・・・・・・・・・・・)ような感覚にした。

 

「敵対する覚悟はできてるんだろうな?」

「それはこっちの台詞よ」

 

真横から別の女性の声。いやに聞き覚えのある、俺にとって聞こえてほしくない最悪な声だった。

その声に危険信号が除夜の鐘の108回を1回に凝縮したかのようにガンガンと警鐘を鳴らしまくって、左腕にIS、カゲアカシの装甲を展開して何かに備える。

 

「反応速度があがっているのかしらぁ?」

 

最悪な声は俺の強さを値踏みするような、または彼氏に甘えているような、女を前面に強調する甘ったるい口調で俺に問いかけた。もしかしたら独り言のようなものかも知れないが。

 

「よお、セラフィーナ・カンタレッラ。」

 

これは罠だ。いや、もしかしたらファントムタスクもうまく行き過ぎた(・・・・・・・・)と思っているのだろうか?

まともに考えて、アメリカ軍基地を襲撃して帰ってこれるはずがない。それでもなおやって来いというのは、存外に「お前はもう用済みだ。」といっているに他ならない。

ならば、なぜここにイタリア国家代表が存在するのかというと、殺すための念押しだろう。

そんなものには屈しない。俺は精一杯演技がかった口調でこの場を去ることにしよう。

 

「用があるのはお前じゃない」

 

「この子?」

 

そこにあったのは綺麗な星をちりばめたような銀色のネックレスがあり、同時に俺が盗もうとしていた銀の福音もなくなっていた。状況からしてネックレスが銀の福音だろう。

 

「早いね。」

 

「こっちはあくびが出そうになるわね。」

 

ちっ。

本来の持ち主に銀の福音が手渡される。ここには敵が二人、それもかなりの手練れだ。

 

「おいおい多勢に無勢が過ぎるだろう?」

 

「味方でも呼べばいいじゃない」

 

「おあいにく様、裏切り者には味方はつかず、ひどい目にあうっていうのが紀元前ぐらいから言われてるぜ?。言ってて悲しくなってきた…………。」

 

なかなか警戒を解かない。これが代表候補生とかになると少しは隙が生まれたりするんだが。すると突然、約束が頭の中に閃いた。

 

「おい、セラフィーナ。お前『食事に行ってくれたら何でも言うことを聞くわ』って言ってたよな?忘れたとは言わせねえぞ。銀の福音を渡せ」

 

「……………フ」

 

「約束だろ?」

 

「ウフフフフフフフフフッ」

 

セラフィーナは突然何かを含んだように笑った。そしてもったいぶるように銀のネックレスを隣の女性に渡す。

 

「ナターシャ。展開しなさい。」

 

「え、ええ。」

 

少し困惑したような感じでそれを受け取ったナターシャはISを展開した。そして、二人とも凛とした毅然な顔つきになった、頭が戦闘モードに切り替わり視界の意識が一点に集中するような心地よい感覚が二人を包んでいる。

無遠慮なまでの殺意が俺に突き刺さる。

 

「いい?相澤康一。」

 

「何だ?」

 

「銀の福音がほしければ……………私たちを倒してからにしなさい!!」

 

「倒せばいいんだな?」

 

 

いつの日かのことを思い出した。冗談交じりに思った言葉が本当になったなぁと考えながら俺は加速するISをみていた。

 

 

「来い!!!!」

 

 

壁の爆発的な破壊が起こり、晴天から降り注ぐ日の光が俺の目をさした。

 

「っく!カゲアカシ!」

 

日の光に向かって俺はとんだ。こんな閉鎖された敵の陣地より外で戦ったほうが効率的だ。背中の仏像の後輪のようなものを展開させずに、俺は外で戦うことにした。

 

「敵襲よ!至急応援を頼むわ!」

 

当然のごとく応援を呼ばれた。リミットはそう長くない。そして、漆黒のISが俺に突っ込んでくる。それは一回

 

「ワンパターンすぎて萎えるね!!」

 

俺はペトゥルを振るって二、三撃食らわす。終焉の者はものっそいスピードで自在な場所から格闘攻撃ができるという機体だそれゆえに、いったんタメを作らなければいけない。

そのタメがくれば攻撃がくるということなのだが、それを早すぎるスピードでガードや回避が間に合わないようにしている。

 

「でも致命傷を受けないだけで精一杯なように見えるけど?」

 

その実そうだ。ギリギリよけているに過ぎないジリ貧だし、それに。

 

「アアアアアアアアアアアッ!!!!」

 

ナターシャが纏うIS背面の翼から、ビームをばら撒いて俺の動きを止めて、離脱しそこに黒のISが強烈な加速をした打撃を浴びせかかってくる。

とっても銀の福音との相性がよすぎるんだ。銀の福音が持つ、そこらへんにショットガンなぞ比較にならないほどのビームをばら撒く特殊兵装はすごくめんどくさい。唯一の救いは二人とも強烈な切り札を持っていなさそうなところが救いか。

 

エネからの助けがこないことには…………。

 

いや、エネを使ってしまう(・・・・・・)のはだめだ。何があるかわからない。なら、カゲアカシの性能を最大限に引き出して戦うしかない!

 

虚口(すぐち)!!」

 

カゲアカシの後輪を取り出し、そこからワイヤーを射出する。ちょうど福音のビーム攻撃が始まったとたんにだ。

虚口とは、空腹のこと。つまりこれで防御したすべての攻性エネルギーは無効化され吸収する。

 

「逆効果!?」

 

ワイヤーが二本あれば網は作れる。だが、そう何度も使えない。

 

「せええええええい!!」

 

終焉の者が俺が出したワイヤーをちぎった。

ワイヤーは線の攻撃だ。だから切られやすい。ぶちっといった大きな音が聞こえた。ワイヤーは灯火の周りに方角のように16本おいてある。2本切られて今は14本だ。そして、その攻撃で大体の居場所はわかり、動きを止めた。

 

「十五夜!!」

 

すべてのビットを推進力に変える。ラグナロクの一撃のようにあの馬鹿げた威力がすべて推進力に変わる。プラス、不完全ながらに瞬時加速(イグニッション・ブースト)を行いそれを後押しする。

攻撃により足を止めていたセラフィーナはさながら蜘蛛の糸に絡められたようだ。

 

「捕まえた!」

 

セラフィーナの首をつかみ、渾身の力をこめた。一応死なないくらいの強さにはしてある。当然のごとく振り払おうと思ったのか、まっすぐ加速した。味方すら振り切って……………。

今すぐには援護できないほどの距離を一瞬で行くあたり、さすが世界研究者クラブの作品だな。うれしい限りだね。

 

「あせってるところ悪いんだけど味方いなくなっちまったぜ?」

 

「それでいいのよ。」

 

手首をつかまれた。がっちりと、つかまれていて動かない。

そして、並みの加速ではないISが急に上昇し始めた。俺の十五夜の加速に合わせてちょうど真上に加速していく。雲が横を見たら存在し、天井のようにそこに存在する実感のない青が頭をぶつけそうなほどに近づいている。景色がだんだん景色を変えさせていき……………空と宇宙(ソラ)の境界。すなわち。

 

「きれいでしょ?」

 

まるで、行楽地に連れて行った子供に聞くようなやさしい声だった。

 

「これが成層圏…………。」

「そうよ。」

 

いつの間にか、俺はこの光景に目を奪われ、俺は首から手を離していた。

 

「人間が気軽に行けて。そして簡単に感じられない場所。」

 

脳に電流が走るかのように感謝が流れ込んできた。それを糧にして俺は。

 

「ここにきてインフィニット・ストラトス…………お前らの意味がやっとわかったような気がする。」

 

ISは成層圏つまり人が気軽に行けるところを広く、まさに無限大にしてくれる。それだけなんだ。武器も何も争いも目をふさいでいただけなんだ…………。

確証がなかったから俺は動けなかった。大体、エネをフル活用していればこんなことにならなかった。

 

「すまねえ。」

「どうしたの?」

 

と聞きながらセラフィーナが俺に寄り添い抱きついた。振り払えない、いや、振り払う必要がない。

 

「少し借りる。」

 

一人しかいない二人言をつぶやいた。俺は手をセラフィーナの後ろに回した。

 

「ねえ?どこに落ちたい?」

「俺に似合ってるのは地獄ぐらいしかないね。…………こんなことをするぐらいだから。」

 

目の前がゆがむ。スピードがありすぎるのだ。自分の身さえ危険な加速が俺の身を蝕んでいく。

 

「いただきます。」

 

狙ったのは、ナイフで心臓を一突き。絶対に抜かない。セラフィーナは何も物言わぬ人形のように俺の目を見据えていた。このままいけば地面に衝突するだろう、その前にセラフィーナを消滅させる。

こればかりは気合で何とかなる物ではない。

 

死へ向かう抱擁を受け、なすことをなしすべてを受け入れた。

 

 

 

 

 

爆音。

 

 

 

 

見えたのは濃密な土ぼこり。知るものが見ればバンカーバスターと見間違うほどのエネルギーがある一点を基点として広がっていった。

 

「セラフィーナ!!」

 

この馬鹿げた惨状の発生原因はひとつしか考えられない。ナターシャはその原因の主を呼ぶ。ISのスーパーセンサーでも捕らえきれないほどのこの土ぼこりは、警戒するに値する。万一にでも敵が奇襲してきたら命はない。

 

「答えなさい!セラフィーナ!!」

「無理だよ。」

 

土ぼこりが晴れナターシャの目には一人の男を見た。見た目は青いジャージといった普遍的なものだったが確実に爆音の中心地から出てくる男の格好としては異常だった。

 

「もう、聞こえることはないだろう」

 

男はそういって、ナターシャをみた。敵は目の前にいるのに、一仕事終えた後のような爽快感を持った佇まいでまるで「お前なんか敵じゃないと」いっているかのようだ。

 

「何を…………したの?」

「答える必要がないね」

 

睨み、見る。熱情と冷徹な二つの対極な感情が交差し混じる。それらが溶け合った瞬間、ナターシャが動いた。ビームをばら撒きけん制した、がそれを歯牙にかけずただ、ぼうっとした目で見ているだけだった。

 

「ウラァァァァァァァァァァァァァァ!!!!」

 

加速し距離を縮める、狙うは胴体。凶悪そうな爪が康一を襲う。

 

ぶちゅり。

 

擬音語にするとこんな感じだろう。突然腹に風穴が開き、力ない人形のような死体を見たナターシャは、一瞬だけ考えるのをやめた。

 

「それが命取りだ」

 

いきなり出現した大太刀を胸に刺した。

 

「まったくこんなことしなくてもいいのによ。」

 

 

 

数秒たった後、そこに残ったのは完璧に無傷(・・・・・)な康一と搭乗者がいない銀の福音だけだった。

 

 

 

「任務完了だ畜生め。」

 

 

 

手を伸ばして、気高い銀に触れる。

 

「少し借りるぞ。」

 

何に言ったのかわからない誰に言ったのかもわからない。どことなく無骨な手の中に銀のネックレスがあった。

 



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敵的に有利、味方的に不利

一欠けらのピースが足りない。それが織斑一夏の、いやIS学園の状態だ。それは依然として続いたかのように見えた。だが人はそこまで弱くはない。

IS学園第二アリーナで、赤と白が戦っていた。

 

 

「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!」

 

 

両者の剣が一合二合と打ち合っていく。剣についての高い錬度が織り成す殺陣のような切り結び。フェイントや現代兵器を巧みに使い、両者のシールドエネルギーはお互いに目減りしていっている。

 

結果から見れば相打ちになっているのだろうが、実際にはそこまでの試合運びは違う。一夏が箒にかろうじて食い下がって相打ちにするのがやっと、といった感じだ。

そんな状態では結末はすぐにやってきた。

 

 ◆ ◆ ◆

 

アリーナのど真ん中にあお向けになって寝転んで息も絶え絶えになっている一夏がいた。

 

「…………一夏、無茶をし過ぎだ。」

 

箒に問われたことを無視してただ空を見ていた、一夏は大きなため息をついてゆっくりと立ち上がった。

 

「箒、練習に付き合ってくれてありがとう。」

 

「またもう一試合やるぞ。シールドエネルギーがたまるまで休憩していろ。貴様は根を詰めすぎだ。」

 

その言葉に一夏は少し黙って、考えた。ここ最近の一夏練習量は尋常ではない、寝る以外のすべてはIS操縦の技術や座学に費やされている。それを分かって自制を促したところで止まる訳がないことは火を見るより明らかだった。

 

「ああ、ありがとう」

 

最近ありがとうといった言葉を口にするのが増えたと箒は思った。強くなろうと焦っている、人の喪失が実感が焦燥を駆り立てる。

せめて、少しでも休めるようにと。自嘲気味に「べ、別にお前と一緒に鍛錬をしたいという訳じゃないからな!」と心の中で言って少し微笑んだ。

一夏は一呼吸おいて立ち上がり白式にシールドエネルギーを補給するべく歩みを進めた。

 

「もうちょっと、零落白夜の発動時間を短くしたほうがいいのかなぁ。」

 

と補給が終わるまで、唇を尖らせながらあーでもないこうでもないと首を捻り続けて、独り言を口元で言っていた。

一夏のそれが補給が終わるまで続いて、少し薄気味悪い様子だったが補給が終わったと同時に目を爛々と光らせて箒に向き直った。

 

「よし。それじゃ、模擬戦を始めようか」

 

「そうだな。」

 

「これから模擬じゃなくなるけどな。」

 

いきなり見知った声。いや、今絶対に聞こえてはいけない声が聞こえ、絶対的な暴力としてのISが二つ、その姿を現した。

二人は霞のごとく突然現れた『敵』に過敏に反応した。毒舌家にでも言わせれば、何回も敵に攻撃されてぽやっとできるほうが可笑しい、というだろうが。

自分たちに対抗できる武器をまだ『敵』は装備していないように見える。いってみたら丸腰の状態だ。

 

「あり?一夏、攻撃しないの?」

 

「ッ!?」

 

いつもの通りに、心の隙を自在につくような言葉を放つその『敵』はやはりそこにいた。

 

「ぼやっとしてると消されちゃうよ?凰のようにさ。」

 

世間話をするようにいったその言葉は一夏の逆鱗に触れた。唇をわなわなと震わせて、刀を握る力も強くなり、実際に後頭部を殴られたと思うほどに血が上っていた。

 

「康一ィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィ!!!!」

 

怒りの咆哮。それと刀が空を切る音がアリーナ内に響き渡る。

 

「あらら。少し情報をリークしようと思っていたのにさ。」

 

康一は、そよ風が通り過ぎたといわんばかりに涼しい顔をしている。それが火に油を注ぐ結果になり、刀を一振り二振りする。

 

「リークしたところでこれじゃあまり意味はないか。」

 

一夏の突きを身をよじって避け、その機械腕伝いに背後に回った。まるで背中に何かを突き立てようとするかのように。

その意図が伝わったのか、一夏は過敏に反応しすぎたのだ。完璧な瞬時加速とは行かないまでの加速を見せ、取り残された康一に箒の刀が襲う。

 

「一夏、箒。今ここでお前らを殺す。」

 

二人を見据えながら康一の左手のみに灰色のISが展開される。

 

「背中から剣が生えないように気をつけてね☆!」

 

そういって康一は一夏に駆けた。二人の武器は主に刀剣の類で射撃武器は数える程しかない、この場合の康一の判断はフレンドリーファイヤを狙う時点でかなり有効だ。

 

 (それに、一夏の性格上ここでばれなきゃ自分で決着を付けようとするだろうからな。…………突っ込んでくる。)

 

その読みどおりに、一夏は半ば捨て身で刀を大きく薙いだ。首を刈り取るような剣筋は。

 

「!?」

 

まったくそのとおりに首を刈り取った。首が刀の勢いそのままに斜め左上に弾かれ、その目は空ろな孔のようだった。想像を超えた結果に脳の処理能力が追いつかない、一夏は果てしない虚無を感じた。

 

「油断大敵だよ…………無理もないか。」

 

切り飛ばされた首の口は嫌におしゃべりで、その声にすべての耳を奪われた。康一は宙にある頭を掴み、確かな足取りで大地を蹴って一夏に肉薄する。

 

「ほら一人目」

 

康一が左手に大太刀を持って突いたが、それは一夏がバックステップ気味に避けた。

 

「あれ?脅しが効きすぎたかな?」

 

といって康一は首を自分の元あるところに戻した。

 

「殺れると思ったんだけど。」

 

「もう、たいしたことじゃおどろかねえぞ…………。」

 

そういって康一を睨む。相手はISを使わない(・・・・・・・)化け物だ、と一夏が認識し始めたのだ。

 

「一夏!!」

 

箒が半分叫ぶように名前を呼び、退避したところで康一に遠距離攻撃を仕掛けた。仕掛けられた本人は意に介さず一夏を見つめていただけだ。その一瞬で着弾、白式の雪羅でさらに攻撃を加え、二人の攻撃は濃い土ぼこりを生み出すほどに苛烈な攻撃をした。

 

「あ?チキンじゃ勝てないと思うよ。」

 

ISを装備していない柔肌には百回殺してもおつりがくる攻撃は、そうであるはずなのに康一は生きていた。着弾の前に弾が掻き消えたからだ、何者かの仕業はわかりきっているはずだった、何者かもわかっているつもりだった。

だが圧倒的なまでのアンノウン(正体不明)が、狂おしいぐらいの恐怖を生み出した。

 

「…………箒!!救援を呼んでくれ!」

 

「一夏!?それではお前はどうする?」

 

「康一を倒す」

 

しっかりとした意思を持って刀を握った。

 

「ナイス判断。…………それでも殺すと言わないんだね。それじゃお返しするよ。」

 

右手を一夏にかざす。そこに何かが生まれる。ただの光とも、歪んだガラス球のようなピンポン玉ほどの大きさの何かが右手に生成されていく。一夏は本能的にそれに親しみを感じていた、気配というべきなのだろうか?それが絶対的に身近にあるものだと感じた。

 

「そら!」

 

「箒早く!!」

 

それが一夏に発射される。避わすために大きく移動した。

 

「…………死ぬなよ。」

 

スペックは箒のIS紅椿のほうが全般的に上で、感情を無視した合理的な判断だった。そのことをわかっていたからこそ箒は一夏の判断を優先し、康一に背中を向けた。

箒の取った行動に横槍も入れずにただ、ぼーっとしながら気の抜けた攻撃を一夏に浴びせていた。

 

「ま、どうしても駄目だったら逃げればいいよ。」

 

「誰が逃げるか!」

 

避け続ける行動、射線予測、加速や減速のタイミングなど一種の単純行動の末に澄んだ思考が出来上がる。

 

(康一は本当に俺を、俺たちを殺す気があるのか?)

 

それは至極単純な問いだった。IS学園内のセキュリティをばれずに突破するほど巧妙にここまでこれるのであれば、こちらの不意を突きこの命を刈ることも出来たはず、それをやらないのは何か不自然だと思ったまでだ。

 

「考え事かい?操作が単調になってきているよ。」

 

挑発というよりはなぜか諭すような口調になっている。何か引っかかる。

 

「何を待っている!?」

 

その問いには康一は答えなかった。えもいわれぬ気色悪さが追求を阻んだ。

 

「救援さ。……………最も、もう目的は果たしているといっても過言ではないけどね。」

 

手の平からガラス球のようなものを打ち出しながらそういった。

 

「箒に呼ばせたのは間違いじゃなかったな。」

 

「ああ、本当に間違えてなかった。」

 

敵意がない純粋な笑みを浮かべてそういった。

一夏は心の奥底にある漠然とした不安が掻き立てられるような気分になった。

 

(何か、引っかかる。)

 

一夏は常に考え、思考の刃を研ぐことを忘れてはならないことを、皮肉にも鈴の消失によって学習していた。それは自身への戒めのようなものだったが、それを意識しているかしていないかはかなりの違いだ。

 

(もっと、俺を殺したいなら能動的に動くはずだ。何かを待っていると考えるなら…………)

 

「こっちも待つ必要はない!!」

 

それは、自信による判断だった殺されはしないだろうという判断。そして、どこまでも織斑一夏は甘かった。

 

「それはそれは嬉しい事さ。」

 

一夏は一直線に康一に向かいあって加速した。ただの加速ではない瞬時にトップスピードにまで上る瞬時加速だ。それを白式の切り札、零落白夜を出現させた。

 

「ほいほい来てくれるなんてね。」

 

康一は迎え撃つ。歪なガラス玉を手の先から肩までを半径とした球を作り出した。

 

 

「「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」」

 

 

康一は拳を作り体を引き絞る。体のすべての力を拳のみにこめるように。

対して一夏は気負わずに、ただ上から下へ切るのみ。

 

両者の攻撃が激突する。

 

その攻撃の勝敗はあっさりと付いた。ガラス玉の消滅だ。康一の顔は競りあがってくる焦りを抑えきれないような顔をしていた。

 

「!?」

 

そのまま、零落白夜を康一の脳天に…………振り下ろさずに逆手に持ち替えて地面へ突き刺した。同時に零落白夜の光刃は霧散し、永遠にも近いように感じた5秒間の沈黙が訪れて康一の心を蝕んで行く。

 

「何で殺さなかった?」

 

一夏は答えない。まるで彫刻像のように黙しているだけ。

 

「答えろ」

 

追い詰められているはずなのに、それを理解していないような口ぶり。でも、一夏はもう迷わない。

 

「座れ。和解ができるはずだ。」

 

顔を上げてそう言い放った。目には確固たる意思が見て取れていて決して気が狂った訳でもないと感じさせる。

 

「やめろ。」

 

「座れ。」

 

康一が一夏の行動を咎めるがそれを良しとしない。繰り返し一夏は対話を求めた。

その姿勢は康一の何かを動かしたのだろう、大きく深呼吸をして言った。本心かどうかはわからないが、その言葉には確実に心が篭っていた。

 

 

 

「……………俺たちは戦うしかないんだ。もうその状態まで進めてしまって、絶対に後戻りはできない。それに、お前はいまだに日和見な考えでいるようだがそれは捨ててくれ、お前のためにも。それに。IS学園上部はすでに裏切り物がいるということは予想しているだろう。この対話自体も、もしかしたらお前も裏切るかも知れないという可能性を浮かばせる。自分の命を削るようなことはするな。もう、俺は敵になったんだよ」

 

「だから、敵と戦え。剣を取れ。その切っ先を敵に向けろ。目の前は友の仇だ。殺せ。そうじゃなきゃ人は守れない。無駄になるんだ。」

 

 

 

どれだけ言葉を投げかけても頑として意思を変えなかった。それにあきれたように康一は大きく深呼吸をした。

 

 

「それでも、だめか。戦わないならここに来た奴をお前以外すべて…………殺す。」

 

 

脅迫だった、だが何故か懇願するように優しく諭すように言った。

 

「やめろ。」

 

「そう思うなら戦え。」

 

「やめてくれ。」

 

「動け。動かなければ世界は変わっていく。」

 

「…………わかった。」

 

「ああ。」

 

二人とも戦う状態になる。一夏は腰を上げて刀を構えなおし、康一は距離をとって右手にガラス球を生成した。

 

「「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ」」

 

拳を、刀を、相手に食らわせようと振り上げる。二つの雄たけびが重なった。

 

 

 

康一の右腕が飛んだ。血液が中に詰まっているような肉。それは耐性のない者にとっては吐き気を催すものだがそれを一夏は気にも留めずそのまま両足を切った。

 

「……………ISを装備しろ。生き残れるはずだ。」

 

「ん?まだ勝ってる気でいるのかい?」

 

「何をいって!?」

 

突然一夏が膝から崩れ落ちるように地に伏した。それを確認した康一は手早く手足を回収した。

 

「何をした?」

 

「一酸化炭素中毒になったんだ」

 

右手を左手でくっつけた。それを当然と思っている。

 

「何でISの絶対防御を抜けられた!?」

 

一夏が意識はあるのかプライベートチャンネルで会話をしてきた。

 

「あのエネルギー体はISのエネルギーなんだよ。」

 

「それは零落白夜で消去したはずだ!」

 

「違う。あれはエネルギーそのものを消去、無効化している訳じゃない。いわば原液に戻しているだけなんだ。」

 

「なに?」

 

「自動で動くものにはほぼすべて燃料が必要だ。さて、ISの燃料に必要なのはなんでしょう。」

 

「超高度精製された原油だろ?何を当たり前なことをいってる?」

 

「まあ、表向きはそうだが違う。本当は『何でもいい』んだよ」

 

「ISコアがホットドックとか食べるっていうのか?」

 

「食べるね、ただ原油が一番効率がよかっただけさ。人が食べ物を食べ、そして生きる糧としているように、IS生み出した動力源がこれさ」

 

「…………まさか、それを一酸化炭素に変換したっていうのか?ISが動かすときのように。」

 

「正解。まあ、まだわかってないことだし。知らないのは無理ないさ。それに、そろそろタイムアップだ。」

 

「一夏ァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!!!」

 

一夏に背を向ける。そうして見据えたのは箒の怒りの形相と金色に輝く紅、見るものをすべて畏怖にたたき落とすと思うようなそれを笑顔でそれを迎え入れた。

 

「箒…………来るな」

 

「チッ邪魔が入るか!」

 

康一は半ばわざとらしく挑発をした。冷静であったのならば『何かある』と考えてもおかしくはなかったが、箒は怒りによってまともな思考能力が働いてなかった。

怒号をアリーナに響き渡らせて、康一との距離をつめたがあっさりと逃げた。

 

「何だ消してやろうと思ったのに。」

 

さらに挑発を繰り返す。

 

「絶対に…………絶対に貴様を許さん!!」

 

箒にとって目の前の相手は唾棄すべき相手、そして許してはいけない『悪』だと断じて想い人を守るために、先ほどまで振るった刀をさらに握りこんだ。

 

「箒…………止めろ」

 

その想い人の言葉にすら耳を貸さなかった。先ほどまであった焦りという感情が怒りにとって変わっていたのだ。

ISは人の思いを汲み取りそれを具現化する。

 

紅から放たれる金色がさらに輝き、刀、銘は空裂。それを少し引いてタメを作った。まるでこの一撃にすべての力をこめて目の前の敵を絶対的にぶっ殺すように。

 

「死ね!!!」

 

タメを開放し空裂を振るう。空裂は斬撃に合わせて帯状の攻性エネルギーを放つ武器。それは、箒の専用機紅椿の単一仕様能力(ワンオフ・アビリティー)絢爛舞踏の無限エネルギー供給によって最大の威力を放った。

 

「止めろ!!」

 

康一はそれを避けないでただ見ているだけだった。最初に力の差を見せ付けることで、精神的優位を持たせようという腹だろう。

だが一夏はそれを知ってか知らずか、その攻撃を止めるため零落白夜を盾代わりにして康一と箒の間に割ってはいる。そして、転機は訪れる。

 

「!?」

 

一瞬だが確実に実の入った驚愕を康一が見せたのだ。それからの行動は早くすぐにカゲアカシを展開し手で防御行動を取った。そして防ぎきる。

 

「はぁ、本当に冷や汗だらだらだ。末恐ろしいねまったくこの化け物どもが」

 

それは一仕事終えた後のような安堵しきった呟きだった。

 

「くそっ。もうだめか。」

 

康一は視線をずらして、少し赤みを帯びた空にゴマをばら撒いたようにISが存在した。

 

「逃がすか…………。」

 

「逃げないと駄目なんだよ。ここで逃げれなければ死んでも結果は同じだ。」

 

律儀に答える康一にすべての敵意が集約されていく。ピンと張った糸のようにそれが大きくなっていくが、康一は気にも留めずただ指で銃を作りそれを上に向けた。

 

「バーン」

 

子供のように幼くそういった。

 

 

むしろ煙のほうが視認できるのではないかというぐらいに康一は忽然と消えていた。

少しなんともいえない間があったが、箒がふと思い出したように一夏に向き直って、今の状況をどん底に陥れるような一言を言った。

 

「一夏少しまずいことになった」

 

「どうした?」

 

「ここにいる専用機持ち達が昏睡状態になっているらしい。」

 

「何だって!?」

 

「詳細は管制塔で話す。早く行ってくれ」

 

「箒はどうするんだ!?」

 

「私のことは気にするな!状況が変わらないうちに早く!!」

 

「箒死ぬなよ!」

 

箒は何も言わずその場から去った一夏に向けて親指を立てた。







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敵的に有利、味方的に不利の前日譚

俺は帰った、逃走経路を確認してしてしまくった結果、上司に怒られたというものがあったが、それを抜けばおおむねいいものだっただろう。今頃上の方は俺のお土産によっててんやわんやの大騒ぎだぞ。

最終的に目指していたとはいえ、ただのテロリスト集団が全世界に喧嘩を売ったことは、上層部に緊張を与えることになるだろう。

 

俺としては、そんなものどうでもいい。それに、今俺が目指している物はファントムタスクの理念とまったく違う少し利害が対立するだけの理想だ。

 

全ISを手中に入れる

 

それが、今の俺の当面の目的だ。今手元に存在しているのは、エネ、カゲアカシ、甲龍、終焉の者それに、各研究機関を襲って手に入れた生のISコアと、三体の量産機ほどだ。まだまだ道のりは遠いが、これは俺個人でもっているISの数だ。ファントムタスクの所持しているISは専用機が福音を加えた4体に、鹵獲した量産機が5、6体いたはずだ。

 

「ま、めんどくさいねぇ」

 

俺を襲ったのは虚脱感、闇の中に飲まれ、自分の光を持ち続け、それでもなお進もうと奮戦した結果、少し休息が必要だ。あてがわれたうちっぱなしのコンクリートの箱の中に入る、その中のベット、そして二つのISと一人の馬鹿がこの中のすべてだった。

 

ベットに身を投げて、跳ね返りも何もないベットが俺の背中を打ったがそんなことは気にせず、疲れを癒すために俺はまどろみの魔の手に引きずりこまれた。

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

気がつくと俺は我が家にいた。

 

おきた時には、水が耳の中に入ったときのように、ぼうっとした感覚が俺を支配していた。よく考えられない。久しくかぶっていない布団を自分の体から引き剥がしいつものとおり居間に行った。

 

「あら、おはようございます」

 

「あ、ああ。おはよう。」

 

そういわれて、ふと、近場の窓を見ると明るかった。というか、何で「お手伝いさん」がいるんだ?

 

「お手伝いさん?」

 

「何です?」

 

「い、いやなんでもない。」

 

俺の体は、元の男子高校生の平均のような身長だ。別にタイムスリップしたというわけでは無さそうだ。

 

「ご飯が出来ています。」

 

「ああ。」

 

飯の準備をするため動いた。

 

「いただきます」

「いただきます」

 

と、二人同時に言った。そして食べ始める。

 

夢なのだろうか、ここには俺が望んだ物があった。そして素直になれず手から零れ落ちた物だった。ふと、俺は頬を抓った

 

「…………ハハハッ痛くねえや。」

 

 ◆ ◆ ◆

 

目を見開いた。寝起きは最悪だ、時間を確認したら寝た時間から4時間経っていた。本当に疲れているんだろう。特に何をする訳ではないが体の節々が痛いから体を起こした。

 

ピリリリリリ。

 

無機質な部屋に無機質な音が鳴る、発生源は俺のポケットの中だ。本当に仕組まれているのではないかと思うくらいのタイミングの良さだ。

 

「もしもし?」

 

「命令だ。」

 

「あらあら、忙しそうですね。」

 

さっきまでアメリカ軍と時間限定で殴り合ってたんだ休憩ぐらいさせてもらえませんかね?というかどういうつもりだ?本当に使いつぶす気か?。オータムから電話がかかって来た、この携帯電話は本当の非常事態にしか使われないと思ったが…………。

 

「てんやわんやの大騒ぎよ」

 

「どうしたんです?スコール婆の老いを隠すための化粧品を買って来ればいいんですか?」

 

「そんなエッジの効いたジョークを飛ばしている暇もないし、下手したらこっちの首も飛ぶような案件だ。そして終わったら貴様の首を飛ばす。話が逸れた、用件だけを言うぞ。」

 

「はじめからそうしてくれ」

 

「元はといえば…………じゃない。クロエ・クロニクルが脱走した。」

 

クロエ・クロニクルは篠ノ之束の助手みたいなものだ。いたく気に入っているようだが、詳細は知らん。というか俺は篠ノ之博士の捕獲に貢献した位の働きしかしていない。

 

 

『君は報告じゃ死んだはずじゃ!?』

 

 

俺はエネを介して篠ノ之束の情報収集の進捗を探らせていた。オータムは俺の情報によって篠ノ之束には「死んだ」ように思わせといた。だけなんだが。まあ、重要なのは俺がクロエとやらの存在をよく知らなかったということだ。

 

「手引きしたやつは誰だ?」

 

「わからん、調査中だ。」

 

「ちっ、どこに逃げたんだ?」

 

「IS学園だ。」

 

また厄介なところに逃げ込んでくれたな…………。あそこは、指折りのIS保有数がある。それに教師とはいえ練度は十分だ、めんどくさいにもほどがある。

 

「で、IS学園に突貫して連れ戻して来いってか?」

 

「そういうことだ。さっさと行って死ね。」

 

死亡宣告されながら通話がきられた、たぶん死ぬ。残機が99体あっても足りない。

 

「とりあえず、補給はすんでいるだろうしカゲアカシでも取りに行ってくるか。」

 

 

 

連続で出撃って……………。はぁ社畜かよ。

 

 

 



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隠者の戦い

「まあ、帰らないんですけどね?」

 

ええ、もうエネの力を使い放題つかってますよ。なんか逆に吹っ切れた感じがするね。俺は今現在素っ裸ともいえるほどに無防備にIS学園の地下にいる、外から見れるところからクロエは発見され他という話は聞かない。のでIS学園の中ではないかと探りを入れているわけだ。

 

「しっかし、ここはいつきても埃っぽいな…………」

 

IS学園の地下は恐ろしく薄暗い、あまり使ってないのと、それだけ重要なものがあるのだろう。警備は逆に薄すぎるのも薄気味悪い。この最奥には何が待ち構えているのか、それを知りたくもあるが今は任務を遂行しよう。

 

辛いのは、相手がどこに向かって逃げているのか分からない所だ。相手は根無し草に引っ付いてきた奴だ、そいつも頼れる奴が居るとしたのなら、根無し草の友人位しか心当たりがない。だが今は友人、織斑千冬の剣ともいえる愛機が使えなくなっている状態にある。そんな状態で何ができるのか。

そこで一つ目星を付けた、クロエは脱走しそしてその後の発見率を低くするにはどうすればいいかを考えるはずだ。普通に考えれば人を頼るに決まっているが、外界から隔絶された状況下でどのように頼ればいいか。裏の人間ではなく、なおかつ強く知り合いで交渉で自分の身を守ってくれそうな人…………。織斑千冬一人しかいない。

 

どうするにしても、今の敵であるファントムタスクの現状を鑑みれば生身で戦って来いというのは酷だろうし、俺だったら真っ先に織斑千冬の愛機、暮桜を使えるようにするだろう。

で、どこにあるのかわからんから探し中って訳だ

 

ただただ歩くだけでも神経を尖らせなければいけないのは結構つらい所だ、エネの力を使いに使いまくってもいまだに暮桜の場所はわからん。

気長に探しますかね?情報を入手する手段がないから、探索しかすることがないが。

 

薄暗い所、平たく言えば闇は人の感覚を鋭敏にする。なぜか、頭の最奥に生暖かいお湯を注ぎ込んだかのようにふわふわして、ないものまで感じるようになってくるような気がするのだ。

 

けど、後ろにいるコレ(・・)は気のせいじゃない!!

 

その場から飛び退きさっきまでいた場所には鉄製の握り拳があった。姿形からしてIS学園が主要で使っているラファールや打鉄ではないこととIS学園の人間でないことがわかる。しかし胸がデカイな。っとそんなことを言っている場合じゃない。

 

「おいおい同業者じゃねーか。いきなり攻撃なんてしねーで仲良くしようぜ?」

 

「アメリカ軍籍か?」

 

「コソ泥軍籍だ」

 

口は災いの元といった言葉があるがこれはその一例だろう、コソ泥といった瞬間にどこからか取り出したかわからない銃を発砲してきた。いきなりのことだったのでカゲアカシの絶対防御を発動させてしまった、だが衝撃自身は殺しきれず体ごと吹っ飛ばされた。

 

「なら死ね」

 

なるほど見られたこと自体がだめなのかそれなら戦闘は避けられんな。

 

「ったく、いきなりぶっ放しやがって。二度はねーぞ。」

 

「自身の相手の力量を見極められないと戦場で生きられん」

 

「ぷっ。自分の力量ねぇ。わかりきってるさ。俺を倒して自慢していいぜ?目の前にいるのはIS学園最弱の男だ。」

 

「馬鹿にしているのか!」

 

「っと」

 

誰にも見られずに戦闘ができるというのは、なかなかない事だからな…………普段できないことでもやってやりましょうかね?

 

「俺と遊んで腰砕けにならねえように気をつけろよ!」

 

ここは室内だ、屋外のような派手な挙動はできないし、こいつはわざわざ隠れながらここに来ているときた。俺も同じ土俵で戦う必要はある。

頭の中で何かのスイッチが切り替わった、体の回りに光がまとわりついて機械の鎧が顕現した。

 

まずは、だまされてくれると助かる。

 

結構かかったけど、これの初陣だ。俺は何時の日か一葉に頼んだ「ハイダーブレード」を呼び出して刀剣での近接戦闘を選択した。

 

案外重い剣というのは使いやすかったりする。何も考えずに振るえばそれなりに攻撃力は確保できるし、肉を切らせて骨を絶つという戦法が使えるからで、攻撃が単調になるなどのデメリットはあるがそれを補ってあまりある。

だが、そんなメリットがあろうと、それでも、まともな戦い方はしないのが俺だ。

 

俺は右袈裟にブレードを振った。俺が攻撃を仕掛けて、相手がそれを往なし反撃するそんなのが数秒続いた時。俺は秘策その第1を使う。

 

「手」

 

俺は真横に相手の手に向かって切った。どれだけ意識が誘導してくれるか……………。

 

「足」

 

ヘッドスライディングのように滑り込みながらながら足を切りつけるそれは当たった、ここで攻撃の手を緩めてはいけない。

 

「顔」

 

瞬時にブレードを消してマシンパワーをフルに使って起き上がり、その反動を使って顔にハイキックをした。ガードされ、死に体となった体に、強烈なタックルをされて壁に激突した。

 

「腕」

 

追撃しようとした腕を取って、関節を取るようにしながら壁にぶつけた。

 

「背中」

 

壁に向かって手をついた状態になっているところに回し蹴りを入れた。

 

「舐めるな!!」「腹」

 

俺はブレードを呼び出し、左から右へ振った。攻撃は受け流され顔に拳が吸い込まれた。ぱきっと鼻が折れたような音が鳴った。

 

そろそろ、刷り込みも十分だろう。口八丁手八丁も戦闘に使えるのなら何でも使う結果がこれだ。

 

距離を離して、ブレードを振るうのに最適な間合いを作る。

 

「腹」

 

また同じところに同じ攻撃を加える。左から右へ。今度は受ける瞬間にブレードを消した。

 

「そんな小細工で!」

 

人間には絶対にできない挙動は戦闘において少なからず虚を生み出す、その隙に少しスラスターを吹かす。剣から拳の間合いへ、二人とも獲物はない。

 

左で拳をつくりアッパー気味に振って腹に突き刺す。そのタイミングで俺はISを全て解除した。俺の顔に機械の腕が叩き込まれショック死するんじゃねーかと思うような激痛が俺を苛んできた。だが、勝負は決した。

 

「朧太刀一式、無刀」

 

すべては疑似餌のようなものであり。その全てに意味はない。俺は立ち、そして相手はそこで寝転んでいるだけのことだ。

 

「しゃべるの痛っ。」

 

頬骨が逝っていらっしゃる。衝撃を受け流したとはいえ、あんなことはやりすぎた。

 

「……………まさか、こんな方法があるとは。脳を揺らしやがったな。」

 

「驚いてほしいのはそこじゃないんだけど?」

 

動きを止めた方法はそこまで目新しいものではない、実に俺が工夫を凝らしたところは言葉による刷り込みと、新技…………といっても構想自体は最初からあったものを流用しただけだが、間合いの違う武器をその状況により使い分けることによる戦い方、確か砂漠の逃げ水(ミラージュ・デ・デザート)とかいったか、それをブレード、拳、生身で使っただけだ。少し違うのはそれをフェイントとして使ったってことか。名づけるならクレイジー・ストリッパー(とち狂った露出狂)ってなかんじか

 

「いてて、骨折まで行ってるぞこれ。」

 

第二の実験をこっそり行っているから今からやることは情報の抜き出すことぐらいしかない。

 

「よっこらっしょ」

 

「てめえ!女の背中に乗るとはどういう教育を受けてやがる!」

 

「こうでもしないと暴れるだろ?」

 

とりあえず、言葉と態度で相手を懐柔することを考えよう。今はそこまで忙しいという訳ではないからなぁ。

 

「てか何しにきたの?」

 

「…………。」

 

「ダンマリか。もう少ししゃべったほうがいいよ?余生を少しでも長くするためにね?」

 

「…………。」

 

少しこちらの情報を流した方がいい、こういった場合に優位に立っているとよく喋るような気がしてくるのだ。

 

「俺さ、IS学園裏切ったんだよね。知ってる?」

 

「ならなぜここに居る?」

 

「俺の所属している所から出た脱走者がここに逃げ込んだんだ、それの回収にね。」

 

「なぜここに?」

 

「ここはすべての国家の影響をただ一つ受けない所さ、つまりここで捕らえられてもすぐに殺されることはないってことさ、母体が甘ちゃんを極めたような国だからな」

 

「ここに進入すること自体が難しいだろう、大体ここに入るだけでもかなりの苦労が…………。なんでもない忘れて」

 

「了解っと。そんで、その人は、死なないためにここに逃げ込んだんだけど、その子にはちょっとした伝があってそれを最大限生かすために、ここに幽閉されている暮桜を見つけなければいけないんだ。」

 

「?」

 

「本題、お前暮桜の居場所を知っているか?」

 

「……………。教えないといったら?」

 

「困る。けど、教えないって訳じゃないだろ?そんな言い方はしないはずだよね。」

 

「この、IS学園の地下10階にある、まっすぐ行って突き当たった左に階段があるはず。」

 

「ありがと、それとえっと…………ちいさくて、銀髪で、確か目に特徴がある子だった。」

 

「逃亡者の顔も知らんのか?だが見ていないぞ。」

 

「それと、もう一つだけ質問。」

 

「何だ?」

 

「今、動ける?」

 

「…………。」

 

いま口が三日月状に弓を張っているような気さえする。腹のそこから沸いてくる愉悦が態度となって零れ落ちそうだ。これからどんどんと

 

「三秒以内に動かなきゃ撃ちぬく。」

 

「ちょ、ちょっと待て!」

 

「1」

 

「あれだけの時間がたったんだ少しはっ!」

 

「2」

 

「動かすから待ってくれ!」

 

「3」

 

「やめて!!」

 

特に俺は何も動かなかった。

 

「実験成功か。」

 

「…………からかっているのか!?」

 

「んにゃ?もしかしたらわざと動いていないと思ったからさ。で、ISはピクリとも動かなかったか?」

 

「ISを仕舞うことすらできなかったぞ。」

 

「了解。それじゃ、聞きたいことはなくなったから。ばいばい。」

 

あ、そうそうISコアを回収しなければ。俺はISコアに直接手を伸ばす……………触れて、待機状態にすると。手の中には質素な何の意匠も施されていないヘアピンがあった。

これで、特にやることはないし、さっさと拘束して行きますか。

 

「そいじゃねー」

 

次は、クロエ・クロニクルを探そう。



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世界が乖離するようですが俺あんまり関係ないっす、レーション食って寝た

「これが暮桜か…………。」

 

俺は先に暮桜を確認しに来、もし、逃亡者の目的がこれであるなら先に行き着いてもいいはずだ。できることならこのISも回収したいところだが、このISは凍結状態、つまり強制的に眠らされている。

 

「そんなんじゃ持っていく意味もないし、凍結解除ができたところでって所だな」

 

まだ、逃亡者もここまで来た形跡はないし、網は張ってある。エネの力を使って極細の糸を張り巡らせた、それがセンサーとなって警告するようにした。

 

「エネ、聞こえるか?」

 

こうも会話ができないと暇なのかとびっくりする。が、無い物を嘆いても仕方がない。

 

「来た」

 

ふと、勘のようなものが働いた。息を潜め、獲物を待つ。タイミングは一仕事終えた後。ここを立ち去るその時に仕留める。

 

ドクン、ドクンと心臓が力強く血液を循環させているのがわかる。落ち着かせるために、心を無にして待った。

 

俺が入ってきたところそのままに扉を開けて出てきたのは待ちに待った人物だった。といっても初めて顔を合わせる、それにISを装備している可能性が高い。戦い方を知らないし、それは相手も同じだ。

 

彼女は暮桜に触れながら立っていた。たぶん、ISとリンクして凍結を解除しているのだろう。たとえるなら、言葉が通じない人間に「おはよう」に類するような言葉を覚えさせるみたいなものか。

 

作業が終わったようだ。ここしかない、俺は彼女の前に姿を現した。

 

「回収しに来た。」

 

「……………。」

 

無言で首を縦に振った。それなら責務を果たすだけだ。俺は手を差し伸べた。陸路で来ている分にはそれ相応の場所からでなければいけない、あらかじめスマホをおいてポータル代わりにしてるので戻るにはそこまで苦労はなかった。

 

「まあ、回収は完了かな?」

 

俺は、目いっぱいカゲアカシのビットを加速にまわし帰っていた。

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

「帰ったぞ。」

 

クロエは、篠ノ之束の人質だ。そこまでひどいことはしないと思うが、まあいいだろう。

黒服がぞろぞろと列を作ってクロエを囲み連行していった。

 

「飯でも食いに行ってくるか。」

 

それにもうそろそろ、祭りが始まるらしい。何を隠そうISが集まりすぎたのだ、つまり、亡国企業が国を取り戻すために世界に喧嘩を売る。

英気という訳ではないが、飯でも食っておかないとやってられないし会いたい人もいるしな。

 

今日の飯は何だ?肉だったらいいが、たまにまともな物を出さなかったりするから性質が悪い。そのときは野草でも採って食べてるけど。

俺は、食堂のような場所に向かった。

 

「げ」

 

品書きを見たらとんでもなかった。まだましな部類には入るが、レーションを配布していた。

ここは正規軍ではないし、ましてや合法な活動をしている訳がない。そんなところがまともな糧食がある時はない、こんなときは皆どこからか備蓄しているところから食料をかっぱらってくる。

 

が、そんな伝は俺にはないので放置だ。レーションを受け取り、近場の椅子に座ってモソモソと食べる。

 

本当に、今回の作戦は疲れた。一夏も成長していたし、収穫はいろいろあった、たとえばIS学園から武装をもらってきたりな。

それも、ランドルに持っていって魔改造してもらいたいのだが、その協力を取り付けるようにしたいところだ。

篠ノ之束にでも持って行きたいのだが、あれは俺の手に余るものを作るか、それか自分の脱走に使うことだろう。

 

危険すぎて、今は実際の運用もできない形だが、他国へのけん制ぐらいはできる。

 

つまり、俺にはランドル以外に装備兵装の面で頼る相手がいないのである。

 

一応俺は、ファントムタスクの一員として名を連ねている。その間は派手な動きは見せないだろうし、まだ手を組み易い…………はずだ。

 

まあ、そこらへんはこれからの交渉力に掛かってくる。ランドルが能動的に俺に会いに来たら即座に計画は頓挫すが…………そんなことはないな、調べる前から人前に姿を現さない変人として名が通っていたし、人気が大量にある食堂になんか顔を出すわけがない。

 

「やあ。始めまして。」

 

始めまして(・・・・・)?」

 

あれ?いる?俺がレーションを食べている途中にランドルがいた。何だ?腹のそこに刀を隠し持って、俺の命を刈ろうとしている顔をしている。奇妙な笑顔を貼り付けて、俺に話しかけてきた。

少しは隠そうとしろ、と突っ込みを入れたくなるほどだ。それにふざけんな。

 

「えっと、誰ですか?」

 

「私は、ここの研究開発の主任のランドルだ。以後よろしく。」

 

それを言うなら以前よろしくでしょ。白を切っておいたが、ランドルがいつぼろを出すか分からない、俺はランドルに自主的に部屋に戻さないといけない。

 

「早速本題に入るが、私に君の装備の面倒を見させてくれないか?」

 

「…………その申し込みは悪いけど他の人にしてくれないか?」

 

「何でだい?君は活躍しているからね僕の作品を使うのに適している。」

 

嘘付け、あわよくばインストールさせてエネを調べるつもりだろ。

 

「常識的に考えて他のところに戦力を均一化するべきでしょう。他の人の装備をいい奴にしてやってくれ。」

 

「これからの戦いは群ではなく群を抜いた個で決まると言うことを知らないのか?。」

 

ごもっともだ。戦力になるISの数が限られているから、おのずと使う物の腕と新兵器増強を両立させていかなければいけない。それは俺もよく分かっている。

 

「俺は、俺の大切なものを傷つけた奴をぶん殴るためだけにここに来た。」

 

「……………」

 

「強すぎる火は自分の身を滅ぼす。俺には、新しい武器くれても使いこなせなさそうだし。遠慮させていただきますよ。」

 

この日本語を翻訳すると、「うるせえ、さっさと消ろ。暴力に訴えんぞ、殺す」の意味だ。その意味を汲み取ったのか、また来るとだけ伝えて此処を去った。

 

「なんだったんだ?」

 

変な行動をするという事はそれなりの理由があるということであり、これは変な行動に当たる。理由は検討はつくがそれと断定はできない。

 

「これ以上妙な真似をしないでくれ…………。」

 

心から、そう思うばかりだった。

 

 



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ダークネスなとらぶるですよ

ここは、闇の中。以下略だ。最近シリアスな雰囲気だが、こんなくそったれな場所だからこそコミカルにすごさなければいけないということもある。

というか、ここはIS学園に負けないくらいコミカルである。

 

【銃】

 

射撃練習場というのは、もっぱら新兵の練習のためにあるものだが、ここにしては意味合いが少し違うようで。

初めて来た時には、作戦中だったということもありここはがらんとしていたが、しばらくして銃を生身で撃ちたくなった時に練習場に行くとそこは、ダーツでもしているんじゃないかと言うくらいの和気藹々とした娯楽場になっていた。

 

「よう、新人。楽しんでるか?」

 

顔を真っ赤にして酔っ払ったオヤジが俺の肩を持ってそう言った。というか銃声であまり聞こえんぞ。

 

「ここは、見てのとおり娯楽室だ。」

 

名前射撃練習場なんですけど?絶対に娯楽で人を殺すようなものを扱ってるんじゃないよ。

 

「陰鬱なところで働いているストレスをぶっ放すことで発散してやがる。しかも、それぞれ食い扶持を確保しているから性質が悪い」

 

「良いことじゃないのか?」

 

「馬鹿言え、全部タバコと酒と女に消えるぜ?」

 

「恐ろしい使い道だな。」

 

俺から言わせて見れば金をドブ捨てるようなものだ。ファントムタスクも元々ドブみたいなものだが。

 

「ばれては学習しばれては学習しのいたちごっこがここの日常さ」

 

「そうかい」

 

「どうだ?一発撃っていけよ。」

 

「遠慮しておく。騒がしいのは好きじゃないし。一番上のババアに目を付けられてるんでね。」

 

「中々エッジの聞いたジョークじゃないか。すると、土砂降り姉さんに目を付けられてるのか?」

 

「その通り。俺は部屋で寝てるさ。」

 

といって、俺はここを去った。もう、今ではここには来ていない。…………何の恨みがあって顔写真がボロボロになるまで撃たれるんだよ。

 

 

【金】

 

金です。この世を動かしているのは金です。とは書いたもののそれは適当ではない。世界を動かすのは欲望であり、その欲望を体現しているのが金というだけだ、金自身が重要であるという訳ではない。

 

が、もっとも多くの万能性を秘めているのは金である。

 

「多くね?もっと整理しようよ」

 

俺が目の前に見たのは、領収書の山。食品や装備の整備代や兵器の購入、その他もろもろを合わせたその領収書だ。

むしろ何で領収書なんてものがあるのか分からないが、あるのは確かだ。そこはまだいい。使い方に問題がある、よくもここまで湯水のように金を使えるものだ。

 

「いらっしゃい」

 

「うおっ!?」

 

いきなり横から声を掛けられた。思わず振り向くとそこには一人の女性が。

 

「新しい仕事仲間の人?」

 

「ある意味そうだが……………新入生、転校生の見たいにここらを探検中だ。ここは何をするところなんだ?最もゴミの山にしかみえねーが」

 

すべてトイレットペーパーにするのであれば納得の量だが。そのような基地外じみた行動はしないだろう

 

「見れば分かるでしょ領収書の山よ」

 

「ここにおいといて上から金が出るのか…………」

 

「私から出るわよ」

 

…………一枚百円レベルの領収書でもこの量じゃいい値段するぞ。

 

「これ一年分?」

 

「一ヶ月分だけど?」

 

大企業に就職したらこんな風に驚くのだろうか。というか問題はそこじゃない少し前だ、これだけの経費をこいつがまかなっているのか?

 

「どこの大蔵省もびっくりだ、失礼しました」

 

「まあ、ゆっくりしていきなさい」

 

「これを手伝えってか?この量を手伝えってか?」

 

無茶だ、どれほどの時間が掛かるのだ、睡眠時間まで削れる。

 

「まあまあ。」

 

「やらなければいけないことがありますので。」

 

「まあまあ。」

 

「……………IS部隊の所属なんで、これから出撃しないといけないんですけど?」

 

「まあまあ。」

 

こいつは「まあまあ。」としかいえんのか!?とっととこの場から逃げたい。半ば強引に逃げるしかないか。

 

「それでは。」

 

「待ちなさい」

 

こうも、俺の周りにいる女性は握力が強い人が多い。ふと、嫌味のように織斑千冬やセラフィーナの顔が浮かぶ。がっちりと捕まれて動かないのは女性の嗜みというものなのだろうか?

 

「……………手伝う。」

 

「いいの?」

 

顔を輝かせながら言うんじゃありません。強引過ぎるだろ。

と思いつつも、苦笑しながら俺は懐かしい生徒会に属していた頃の事務仕事を思い出しながら、血生臭ささを洗い流していった。

 

 

【戦い】

 

やっみにかーくれていっきるおれたちゃよう…………人間も闇に生きてるよ…………。

ここにいると本当にそう思う。俺にいたっては修羅場を何回か越えてきたけど、ファントムタスクにいる時にはあれ以上の修羅場はなかった。

 

あれは、就職して最初の戦闘だったか。

 

 

 

「お前にはテストをして貰う。」

 

「テスト?」

 

 

テストとか筆記であったらいいのだが、ここにいる以上オツムなんぞ評価される訳がない。故に実技、むしろ実戦に駆り出されるという意味だろう。

 

「ああ、小規模でやっている兵器の研究施設がある。そこにある兵器を鹵獲してくるのが目的だ。」

 

「作戦の行動人数は?」

 

「貴様を入れて二人だ」

 

『おうおう、ブラックにもほどがある。す○屋か何かか?』

むしろす○屋で済んでほしい位だが、拒否はできんよなぁ。

 

「ISを持っているなら簡単だろうとの判断だ。」

 

…………もう一人は、お目付け役ってことか。

 

「分かりました。でもう一人の方はどちらに?」

 

「ふむ、おい!入って来い」

 

相当キツイ性格の人が入ってくるだろう憂鬱だ。

 

「ど、どうも……………アレックス・マッケンジーです」

 

「」

 

いろいろな意味できつかった…………。俺も同じくどうもとしか言えなかったじゃないか。

 

「それでは、作戦立案は貴様に任せる。」

 

首が180度ほど回ったんじゃないかと言う位に素早く俺は振り向いた。いや、それはコスパ良すぎるだろ。あれよ?RPGの主人公に適当にやって?って話かけるのと同じよ?それ?

てか、置いて行くの?俺をこの状況で置いて行くの?

 

「くれぐれも背中には気を付けろよ」

 

「了解いたしました」

 

まて、ステイ!ステイ!この少し小汚いおっさんを置いて行くな!せめて俺は置いてもいいけど、このおっさんだけはせめてテイクアウトして行け!

 

願いは届かず、おっさんだけが残った。

 

「…………。」

 

じっと、肩を落としながらアレックスとやらを見た。こちらに見られていると感づくと小動物のようにオドオドしていた。これが美少女であれば萌えとなるのだが、そんなものをおっさんに求めたらゴミしかやって来ない。

 

「はぁ。速攻チケット取って研究施設に行きますか」

 

「えっ…………は、はい…………。」

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

襲撃当日。目の前には豆腐のような建造物。中では兵器を作っているらしいが…………。まあいいだろう。

 

「…………。」

「…………。」

 

隣のおっさんとはこれまでに一言も会話していない。会話というより寧ろ俺の恐喝みたいな印象になる。

 

「攻撃するけど。…………ああ、もうお前は俺の連絡が入ったら本部に連絡しろ。失敗か成功か知らないが」

「わ、私はどうすれば…………。」

 

知らん。寧ろ今のこのおっさんに戦力として期待する方がおかしい。

 

「そこで待っとけ。ほら護身用の拳銃とかないのか?」

 

「ええ、持ってません」

 

「じゃあ、これをやる。」

 

といって、俺は懐から拳銃を取り出して渡した。初めてこう言う物を買ったけど結構安い物だな。

 

「…………こんな、チンケな銃しかねえのかよ」

 

ん?

 

「こんなチンケな銃しかないのか?って聞いてんだよ!」

 

は?

 

「ないですけど?」

 

「ケッ。ったく」

 

お前、こ○亀の本田かよ。今の今まで演技していたという訳じゃないだろうし。

 

「作戦を言うぞ俺が突っ込むその内にお前は内部に侵入し暴れろ」

 

それは作戦とは言わない。というかそう言うことしかできないってだけでもあるが。

 

「了解しました」

 

もう自棄だ。「いくぞ!」とアレックスが言った。

 

『面白い人間じゃないか』

 

「付き合わされるこっちの身にもなってくれよ…………」

 

俺は側面から回り込み、エネに中を探らせながら入った。

 

『獅子奮迅の活躍といったほうがいいな』

 

「冷静さを失ってこっちに攻撃してこなきゃいいんだが。」

 

不意に、俺のお目付け役の状態をエネが知らせてくれた。

 

『しかし、私を使うなんて良い度胸だ』

 

「この最初の作戦だけは絶対に失敗したくない。それにこれからの活動を円滑に進めるために必要なことだ。」

 

『利害が一致しているからね。それに活動する下地を作っていくのは悪いことじゃないさ。』

 

「よく分かってるゥ!それじゃさっさとぱくって行くわ。」

 

非常に警備システムがずさんだが、エネを前にして獅子奮迅の活躍とまで言わしめた奴が相手だ、そこまでを求めるのは非情というものだろう。それにこうやって取れるのはそのおかげだ。

俺が見たのは、結構ポピュラーな重火器が多い様だ。とはいっても中身は最新式のものに変えられているんだろうが。

 

「ごっそりカゲアカシに入れられないか?」

 

『出来るに決まっているだろう。』

 

エネは少し、弾んだ声でそういった。なんか、理由は分からないがうれしそうだなと感じた。

しばらくしてすべての重火器が光の粒子となって消えた。カゲアカシにでも入れたのだろう。

 

「完了だ。」

 

俺は、アレックスに連絡を取った。

 

「こちら『男』だ。アレックス退却しろ。」

 

そう通信を入れたはずなのだが。聞こえるのは気の狂った笑い声だった。

 

「何があった?」

 

「ヒャハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ」

 

だめだ。こうなったら本部に連絡を入れて放置してもいいか聞こう。

 

「不許可だ、回収してつれて来い」

 

今。確実に分かった。試験はここを襲撃する事じゃなくアレックスをとめることだった。

 

「…………めんどくさい。」

 

『ファントムタスクも回りくどいことをするもんだ』

 

それにはまったく持って同意する。そういうことだったら一つ方法がある。

 

「エネ、コウリュウだ」

 

『了解だ。』

 

俺は、アレックスの元へ走った。青いジャージで。駆けつけたときにはもう終わっていた。いや、終わってなかった。そこらに蔓延る鉄と硝煙の匂い。そして人の形をしている者は、アレックスしかいなかった。

目は血走り顔つきは殺人鬼と見間違うぐらいに険しいもので、実際に何人か殺しているようにも見え、正気を保っていないようだ。

 

「誰だテメェは!殺す!」

 

二言目で完結していらっしゃるじゃねーか。と脳内で突っ込みしているときにはもう襲ってきた。

 

「龍咆」

 

……………案外あっさり鎮圧出来たな。

 

「畜生。」

 

「帰るぞ」

 

 

【とまあ、そんなこともありました】

 

こうやって振り返ってみると乱暴で楽しかったな。それも、ここで少し変わる。

 

目の前は、一瞬でも気を抜いたら殺されてしまいそうな凄みがあった。だが、その凶暴な雰囲気をぶつける相手がテレビカメラというのはどうにも間が抜けたところがある。

 

今、俺は歴史に一つ騒ぎを残すきっかけを目の当たりにしている。そこには実働部隊の幹部どもが勢ぞろいしていて、オータム、M、スコール、そして篠ノ之束までもがいた。

 

「……………妙な真似は起こすなよ。」

 

オータムがいつもの敵意をむき出しにした目でそう言ってきた。おそらく、俺が以前篠ノ之束を引っぱたいたということに関連して釘を刺したのだ。いつもの薄っぺらい笑顔で手をひらひらと振って、「どっかいけ」といっておいた。

 

「これから、宣戦布告を始める」

 

オータムがそう言った。戦線布告。突然に動き出した亡国の手先は、世界に触れて、来た。



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宣戦布告

「我々は亡国企業だ。」

 

「目的は、世界征服。」

 

 ◆ ◆ ◆

 

IS学園は揺れていた。世界のTV局がジャックされ、まるで子供の空想のような目的を話すテロリストがいたからだ。もちろん、今は4月1日ではない。本気で世界征服しに来ている可能性を示唆していた。

 

「ただそれだけだ。何の冗談かと思っている者は平和ボケした目で見ているといい。」

 

「そういった者は、ただ我々の手で死ぬだけだ。」

 

テレビには数人が映っている。その中には相澤康一が映っていた。それを見ていた一夏は康一の言った言葉を思い出した。

 

『「俺たちは戦うしかないんだ。もうその状態まで進めてしまって、絶対に後戻りはできない。それに、お前はいまだに日和見な考えでいるようだがそれは捨ててくれ、お前のためにも。それに。IS学園上部はすでに裏切り物がいるということは予想しているだろう。この対話自体も、もしかしたらお前も裏切るかも知れないという可能性を浮かばせる。自分の命を削るようなことはするな。もう、俺は敵になったんだよ」』

 

その意味を再認識した。

 

「我々の要求は全ISの譲渡。その上で世界征服をする。」

 

何をバカバカしい事を言っているんだと大勢の人が思ったことだが、口に出せなかった。

 

「やろうぜ、康一」

 

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

合図だ。カメラが映る範囲外にいたやつが目配せをした。

 

「繰り返す、我々は亡国企業。その目的は世界征服だ。我々は今ここに全世界に宣戦布告する!」

 

「我々にはこれまでに約1割のISを所持し、男性にISを使わせる技術も開発した。」

 

俺が前に出て、ISを起動させた。

 

「それに、篠ノ之博士の確保。」

 

そのままISで隣にあった黒い布を引き剥がした。後ろ手に拘束された篠ノ之束博士だった。

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

「……………」

 

世界研究者クラブにて、相澤康一の「義理の」妹である相澤一葉はその様子を良く見ていた。腹が疼く。散々馬鹿にして、散々笑いあった3年の日々を壊すのには十分な痛さを味わった。

 

「冗談でもなんでもない、我々は本気だ。」

 

「これより、全世界に向けて攻撃を開始する。」

 

これから、私の兄もその攻撃に参加するのかと考えるだけでも頭と、殴られた腹が痛み出す。

 

「何で、なんですか。」

 

大切な人の裏切りとはここまで辛い物だったのかと、痛みを意識の外に追いやった。ヒトゴトにしなければやってられない。

 

「私だけなんですかね。」

 

「私だけ。」

 

どこまでも、一人だった。

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

「おつっしたー」

 

今俺の耳には、堅苦しくむさ苦しい軍人然とした口調がこびりついている。カメラの前で台詞を言った者が、血管がぶち切れる位に声を張り上げていたからだ。

 

そんな撮影をすでに終わり、後片付けの手伝いをした。正直な所この撮影で俺の仕事はもうほぼ終わったと言ってもいい。それはたぶんここの成り立ちにも関わってくる。

 

 

 

ファントムタスクの異常性は、「強い」その一点に限る。ここの規模なら、大国と張り合えて小国なら二、三個は潰せる勢いで、経済的な力も俺が所属している実行部隊、もといテロ部隊の金も国と比肩する程だ。

これは、俺が事務的なことをやっていて知りえた情報だ。

 

だが、その強さはどこから来ているのか。国籍も、思想も、人種もバラバラすぎる亡国企業がなぜここまで来ているのか。それは「亡国企業」滅びた国の会社。ここにすべてのヒントが隠されている。

 

亡くなったんじゃない。すでに無いんだ。

 

思想が、人種も、ありとあらゆる国たる物がない。まるで「画一化されたシステム」のように。

 

ここにいる人をすべて調べた結果。軍属や国に使えていた者ばかり。

 

「画一化されたシステム」

なら世界を相手取るシステム、各国が諸手を挙げて賛同するようなシステムとは何か。

 

それは保険、つまり救済措置のシステム。

 

第二次大戦以降、国のパワーバランスが一変し某A国などがのし上がって来た。だが盛者必衰の言葉の通り落ちぶれることもあるだろう。

 

だから、戦争というリセットボタンを使う

 

弱い国も、強い国も関係ないすべてを巻き込んだ、大戦争。戦争で金は回り鉄屑が金となる。混乱に乗じて敵を殺し、そうなっている間に亡国はすべてを飲み込んでいく。そして、負けて新たなパワーバランスが生まれる、そこで勝った物が次の盛者だ。

 

つまり、亡国企業は「世界を相手取った、保険ビジネス会社」という訳だ。

 

 

その上で、今この世界にある問題は。ISだ。ISという新たな戦争ビジネス。それでいて一人の気まぐれで経済、国のパワーバランスさえも変えてしまう、人という核弾頭より不安定なそれでいて強力すぎるもの。

 

その上、女尊男卑といった性別でのパワーバランス。俺は、そのパワーバランスを直すための言わば調整機みたいな物だ。俺がISで戦っているというのも評価の一助となるのだ。

 

だから、俺の仕事は上からも言われたが「自室待機、呼ばれるまで待て。」といったものだった。

 

 

「残念だなぁ」

 

 



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青の小夜曲むりやりなフーガ

前回のあらすじー

亡国企業は電波ジャックとほぼ同時に行われていた要所の破壊工作も功を奏し、CMにしてはいささか暴力的だが効果は十分で、多くの人の目に付いたことだろう。

全世界から敵意を向けられるとは、これほどまでに高揚する物なのかと驚いた。

そして、俺の所属している所は目まぐるしく働いているが、俺には待機命令が出ているぜやった!。ということだ。

 

「とも、喜べないいんだよねぇ。」

 

俺には、個人的なオシゴトがあるから。ISの個人所有そのために強盗にならなければ。狙うのは手薄で軍などではなく向こうから強硬な手段を取らないような所が望ましい。俺の知っている限り一つしかない。

 

 ◆ ◆ ◆

 

IS学園のアリーナで、セシリア・オルコットがISを展開した。ただただ、自身の鍛錬のためにそれに彼女の中で目覚めた新たな技術、名をフレキシブル、彼女の待つISのビーム兵装の弾道を変え、曲げれる力。その練習に来たのだ。

 

「…………っ!」

 

脳が一点に凝縮されるような感覚、これ以上無いまでに集中した。セシリアのビットがそれぞれ独立し、銃口をホログラムの的の真反対に向けて発射した。その攻撃は飴細工のように変化し的を掠めた。すべての的が出現し終わり、集中を解いた。

 

「早く実戦に生かせるようになりませんと。」

 

練習の結果は掠めているのもあれば、とんと見当違いな所にビームが伸びたりと、命中率として話にならない物になった。ただの棒立ちでその結果だ、実戦では比べるまでも無い。

 

「ならやってみるか?」

「!?」

 

いきなり後ろから一夏では無い男の声を掛けられた。右手にインターセプターを呼び出し、振り向きざまにISを付けた男の攻撃を防いだ。男の手に持っているのは、細いレイピアのような粘土のようなものだった。

 

「よくも!!」

 

セシリアの胸に敵討ちの怨みが熱した鉄に水を掛けたように飛び上がってきた。いやな気分で死にそうで、無理やり押さえつけて冷静に敵を見た。

セシリアはその場からビットを置いて飛び退き主兵装「スターライトmkⅢ」合わせて七門の銃口を向けて一斉発射、それは狂いなく康一を襲う。

 

「実弾煙っぽい!?」

 

相澤康一という男は剣を向けても何も反応せず、虎視眈々と獲物の振りをして相手を油断させる奴だったとセシリアは思い出した。一切の慢心も奢りもなく効率がいいビーム兵器に切り替え、距離を取って主兵装を撃ち続けた。

 

「セシリア、焦っているように見えるぞ。」

「くっ!」

 

さっきから、IS学園に応援要請を送っているのだが何度やっても繋がらない、それにアリーナは監視カメラがありそれで異常は察知できるはず、つまり教師部隊が妨害されている可能性があることを意味していた。

 

「これは、上司には勿論お前らの誰かに絶対ばれちゃ行けないからな。もっと楽しもうぜ?二人っきりだ。」

「反吐が出ますわ。」

 

意図的に口汚い言葉をいって申し訳程度の挑発をしたが乗ってこない。むしろニッコリと笑った。

 

「それじゃ、回収させて頂きます。」

 

全十五個のビットを散り散りに飛ばした。康一の能力では飛ばし一機ずつもしくは一斉に撃つのが精一杯だ、正確さは無いが数がそれを補っている。

それを理解しているのか、セシリアは逆に正確な射撃を心がけて撃っているように感じる。一回タメを作った。一斉発射するためにビットをクーリングしているのだ。そして居場所を少しでも無くすようにビットをすべて撃った。

 

「相澤さん、貴方強いと思ってましたけど、化けの皮が剝がれた狐はこんなにも脆い物でしたのね。」

 

二機のビットがセシリアによって落とされた。勝ち誇るように、再びビットに照準を合わせた。

 

「なんせ、化かしてすら居ないからな。正真正銘俺の実力だぜ?……………これ以降は違うがな。」

 

康一は物理剣を呼び出す、銘はハイダーブレードそれ単体は特殊な能力を持っていない鉄の塊に過ぎない。それはセシリアもISを介した情報でそれを知った。それを持ち康一は奇策、驚くべきところが無い、ただただ異質な行動に出た。彼我の距離は優に30Mは離れている、人間離れな機動力を持ったISを言えども一瞬では距離を詰められない。それなのに一息入れてただ動かず正眼に構えた状態から左に体を捻った。

 

「?」

 

またおかしな行動で虚を作り出してその隙を突こうと言う魂胆だと思ったが、確証がない。「もし」が積み重なって、一瞬動きを止めた。その一瞬で康一はビットの距離を詰めながら、剣を振った。セシリアは剣から何かが放出されると思ったのか、剣線をよけるように移動した。ビットの近くに行ったのが間違いだった。

 

「な!?」

「後ろからこんにちわ」

 

何の魔法を使ったのか後ろから康一が幻のように出てきた。剣を振ればあたる距離にまで近づきそれを振る、完全に隙を突かれた形となり攻撃を食らった。攻撃をさらに加え、まったく別のところから出現。攻撃を加えてまったく別の所から出現。取ってつけた様に、かく乱させる動きを意図的に繰り返していく。

 

「ビットをポータルにして空間移動…………?」

 

セシリアには、そうとしか思えなかったが破壊もままならない、ジリ貧な状態が続いていくが、一方康一は余裕を積み重ねていくようだ。

 

「正解。」

「反則気味ですわね。」

 

康一の使っているISカゲアカシにはそういう力はない、ただそれはエネの力だ。だが、エネという反則を想定するほど余裕ができている訳じゃなかった。

康一は決定打を与えにいった、目の色がパッと変わり捕食者のようだ。すべてのビットを手元に集め「湯花」を呼び出した。

 

「オラァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!」

 

瞬時加速をして、距離を詰めた。今しかないと両者は思った。多量の熱量を持った剣、一瞬の攻撃で決定できるのはコレぐらいしかなかった。

 

「ここですわ!」

 

セシリアは瞬時加速の速さを知っているが軌道を曲げられない事も知っている、そこに、全力の攻撃を叩きこんだ。ビットは周囲にない、すでにここから逃げる手段はないと錯覚したのだ。

その予想とは反してまた消えてしまった。そしてまた同じところから現れる。

 

「チェックメイト」

 

康一は瞬時に距離を詰めてセシリアのISに素手で触れた。一瞬だが康一の手がISに埋まった、幻覚かと思いそれを振り払おうとした、だが、できない。ピクリともISが動かなくなってしまった。

次第にⅠSの浮遊もままならなくなりその場から落ちた。

 

「私に何をしましたの!?」

「冥土の土産だ、ISのエネルギーパスを詰まらせたんだよ」

「一体どういう…………?」

「簡単に言ったらガソリンタンクとエンジンをつなぐ管をせき止めたって感じだ…………いっていることは分かるがやれる訳がないって顔をしてるな。」

 

無理はないと一言付け加えた、彼はエネの存在を一切に隠し通している。康一は人型の牢獄に手を伸ばした。

 

「あなたは、何を目的としていますの?」

 

ぴたりと康一の手が止まる。

おびえながらも、何かを見据えたような目で康一を見て言った。目は口ほどに物を言うが、相澤康一という人間にとって目での会話は重要な物だったらしい。

 

「言葉に出来ない、そのくらい壊れやすいもんだ。」

「そんなもののために鈴さんを手に掛けたのですか!?」

「正直あれはやり過ぎたと思ってる」

「っ!?……………たわけたことを!!」

 

セシリアとは正反対に康一の目は冷めていた。聞きたいことはそれまでかと言う様に康一は無言で手を伸ばした。

 

「言っているので折檻をお願いします織斑先生!!」

「なっ!?」

 

遥か上空にいた一つの黒光りしたIS、それは康一も見たことのある物で、現在考えられるジョーカーとして最悪だ。驚きで思考がバラけたが立て直し、最善手を考えた。

すべてのISを外して青いジャージに成り上がった康一は腕をまくりセシリアの胸と脚の付け根に手を当てた。

 

「グウウウウウッ!!」

 

手を当て呻きながら焦燥感に駆られてまじまじと上から来るISを見つめ続けた。瞬きをするたびに死のイメージが近づいてくる錯覚が康一を襲った。それはすぐに現実となった。アリーナのシールドをいともたやすくこじ開けて、康一の下へ。

 

「あぶねー間に合った。」

 

一歩遅かったようだ、セシリアはすでに消えた。千冬は一度顔を顰めたが攻撃の手を緩めない。

 

「オルコット!!」

「ここにゃいねーよ。」

 

康一は飛び退って千冬と正対した。一拍も取らずに戦局は動いた。逃げるか、追うかの戦いだったが決着はもう付いている。

 

「リップサービスだ!!」

 

康一は「ミサイル」を撃った。千冬は爆発させずにミサイルを切り捨てたが、そんな芸当も虚しく康一に呼び出された「青いビット」で爆発してしまった。何もやることが重要なのではない、見せる事が重要なのだ。爆風で視界が塞がれている隙に康一は姿を消した。

 

一人、取り残された千冬は、怒りに震えていた。不甲斐無さと世界の理不尽と、相澤康一に。

 

「くそ!!」

 

誰もいないアリーナで毒を吐いていた。

 

 ◆ ◆ ◆ ◆

 

「あーーー。つらっ」

 

私服に着替え脚に掛かっている足枷の鎖には、銀色のチェーン、青色のイヤーカフス、黒っぽい赤の腕輪、弾丸が連なったような腕輪、それに打鉄やラファールなどの待機状態が何個か付いている。ばれても手渡す時にヤれば問題ないだろう全部ステルス状態にしてるし。

 

「そろそろ本格的に計画を立てる必要があるな…………。」

 

それでも今はただ静観してるしかない、今日の仕事を終えて静かに眠った。



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バイク

世界は広い。地球規模で考えてそんな事をいう人が大多数だ。

だから、人より視野の狭い俺にはもっと世界は広く見えて、そして一つのことしか捕らえきれないのは仕方ないことだ。

目を塞ぐ事は世界に殺されると同義であってもそれをせずにはいられない。

 

これは、戦闘という狭い視野で見た時に目に焼きついた物の話だ。

 

 ◆ ◆ ◆

 

その始まりは宣戦布告した後、セシリアを襲う前。

 

「カゲアカシを使わずに戦闘に参加しろ?」

「そうよ。」

 

俺の直属の上司スコールにそんな事を言われた、上がじきじきに来るなんて信用された物ですねぇ。

その前に言われたことの意味を確認したい。カゲアカシを使わないで?…………できるのか?

 

「分かりました」

 

できないかも知れないが、やるだけやってみよう。

俺のISを扱う力は単にエネの力による物で、俺→エネ→カゲアカシという操作をしている。エネと只今絶賛不仲中である俺に、そんなことが出来るのかと不安になるのは仕方ないことだろう。

 

「操作するISは此方で用意するから心配しないで10月4日にカイロの研究所で襲撃よ。」

 

「分かりました。」

 

エネ、お前ここでばれるようなことをしたらどうなるか分からないから協力してくださいお願いします。

 

 ◆ ◆ ◆

 

その当日渡されたISはラファール・リバイブだった。特に問題はない良くも悪くもない機体で、それゆえ人気もある。

ピーキーな機体しか使ってないから、逆に新鮮ではあった。

 

「それじゃ、いきますか。」

 

周りに人がいない、俺が始めて中規模の攻撃隊に組み込まれた作戦が幕をあげた。

俺は中にまで潜入し行ける所まで最奥に進みISを展開する役で、一気に警備の目がいく危険な役ではあるが後の作戦行動に大きくかかわることなので重要だ。

 

仲間のサポートもあり、内部に侵入できたのは良いのだが。目の前にあるこれは何だ?いや、正直何かは分かっている。バイクだ。スーパーバイクの様なゴテゴテした装飾が目立つ。色は緑が混じった黒、緑3黒7の割合だ。

なぜだか、本能的にその目の前にあるのがISだと思った。

コレを持ち帰ればいいのか。手を伸ばしたその時声が聞こえた

 

「触らないで!!」

 

外では襲撃しているであろう、だがここは静かで怒鳴れば響く。周囲を見回して音の発生源を探したが見当たらない。

 

「どこ向いてるのこっちだよ。」

 

その声と同時に俺はISを起動させる。触るなと言っているのであれば破壊すれば何らかのアクションは起こすはずだ。対話、いや言葉が通じないなら実力行使だ。少し、心の中で一息ついて金属の塊を重力で加速させながら、バイクに叩きつけた。

 

「イタッ!!」

「!?」

 

状況からしてこいつが喋っていたのか?と考えたが絵空事とも切り捨てられない、常識で立ち会えば幾度驚いても足りない。

 

それに、攻撃を入れてきたようだ。こいつは時間を稼ぐために声を出したのかも知れない。どっからか姿は見えないが兆弾を使い俺のあばら骨に弾丸を撃ち込んできた。衝撃からして、IS用の武器に匹敵する。

奥の曲がり角からショートカットの女が出てきた、ボーイッシュな感じがするがたぶん女だ。

 

「ネル。さっさと来てほしい。」

「何度も言ってるけど君が乗らなきゃただのバイクだよ。」

 

女が殴って飛ばしたバイクに向かい歩きながら喋っている。銃口は此方に向いたままだ。

超精巧な腹話術でもなさそうだ。だけど、やっている意味が分からない、合理的に考えたらISの自己成長による何かの副産物と思っていいんじゃないか?

 

「おい、そこのIS。」

「おおう、お兄さん。僕をISだと認識してくれるのかい!?」

「ネル、この人は敵だ。」

「そうだったそうだった。」

 

話が進まない。それに、このバイクはISであることに間違いはない。それで聞きたい事がある

 

「お前、ISの意識が外にあるのか?」

「…………もしかしてお兄さん、女王様?」

「ネル、君は性別すらも見分けられなくなっちゃった?」

 

それにいたってはあたらずも遠からずだ。

 

「半分正解、半分不正解。って所か。確かに俺は女王の能力を持った物であるが、俺に女王の意思はない。喧嘩別れしちまってそこから引きこもりさ。」

「ふうん。ならボコボコにしても問題ないよね。キイやっちゃおうよ」

「最初からそのつもり」

 

女はバイクにまたがり俺を見据えた。バイクも同じなようだ。

 

「そうそうお兄さん。僕はISの意識じゃない。けどそれを伝えることは出来るぐらいの能力は持ってしまったんだよ。僕も、兄さんの質問には、YESでありNOであると答えておくよ。」

 

アクセルを吹かした。それは戦闘の合図。狭い室内では大きな獲物は扱いづらい、右手に拳銃を出し左にはナイフを構えた。おそらく、世界研究者クラブの贋作だろう。テストとして作ってみたんだろうが…………。

キイと呼ばれた女は銃口をはずしてまったく別の場所に撃った。耳に響く銃声と跳弾の音が視線を誘導させた。

 

「どこを見てるの。」

 

声が後ろから聞こえた、遅れて風が顔に叩きつけられた。

 

「ここだったら私の独壇場。」

 

左手のナイフを振り向きざまに切りつけるがすでにそこにはいない。置き土産とでもいいたげな手榴弾が俺を襲った。キンキンする耳を無視して一直線に進んだ、爆発の圧力で内臓が押し上げられながらも距離を詰めて虚を突かない限り勝機はない。

無駄に突っ込みながら発砲する。

 

「悪趣味だから嫌い」

 

爆発の光で焼けた目が治る。すると前にはバイクはなかった。ただ、ISの力で全方位見られるといっても、普段処理している脳が追いつかなければ意味がないし、人間の形をしているということは真後ろは確実に隙ができる訳でバイクは俺の真後ろを捉えていた。

おまけと言わんばかりに、何処から出してきたかわからない特製の刃が付いたタイヤになっていた。

 

近接戦闘は俺の独壇場だ。滑り込んでくるバイクを見ながら、跳躍し俺のISをすべて解除する。ISと人との差で俺は宙に浮いた。

相手は冷静に対処していた。銃口が俺の眉間に向かっていた。

 

「クレイジーストリッパー。」

 

腕にISの装甲を顕現させる。手が鋼鉄になるような一体感が心地いい。それで殴ったただの原始的な攻撃、だが圧倒的な科学力その威力を底上げさせる。

眉間に銃弾が吸い込まれるような気がしたが、そんなものも認識できない。伸ばした鋼鉄の拳も届かなかったがさらにその距離を短くして距離を詰める。

狙うのは顎、狙い脳を揺らせば死なない、だが、動けないの二つは達成される。

 

「ラァッ!!」

 

成功した。相手は平衡感覚を失って死に体となって、俺は呼び出したナイフを突き刺す。本来ならISの絶対防御によってやられはしないが、バイク型のISだ多少の衝撃でバイクと操縦者がバラバラになってしまった。

こうなればもうただの人

 

「あちゃー。まさかそんな手があったとはねぇ。」

「正直賭けだったがな。」

 

ISコアネットワークでこの脆弱性はなくなってると思ったが。というかバイクが喋る喋る。

 

「一回コレをやったことがあるのかい?」

「ああ。」

「ならそいつはステルスモードで動いていたんだと思うよ。だけど僕は違う。」

 

なるほど、この技はもう使えないって事か。…………はったりかもしれないが。

 

「で、相談何だけどさ。」

「もうあいつには手を出すなってか?」

「そういうことさ。」

 

出すつもりはないんだけどねぇ。

 

「キイ、やめろ。」

 

バイクが搭乗者の名前を呼び何かを制した。どうしたんだと見てみると、拳銃をこっちに構えていた。

 

「ネルに手を出すな!」

 

友情劇みたいなのが生み出されようとしてる。もしかしなくても俺が悪役だ。

 

「お前愛されてるな。」

「それ君が言うかい?」

 

ちょっとした皮肉を混ぜたのだが、案外訳のわからない言葉が返ってきた。

 

「君に少し嫉妬してるんだよ。だって、喧嘩別れって言っても君は女王の力を使えているって事は、女王サマは君に力を貸しているって事なんだよ。だから、君は僕に悪いようにはしないと思うんだ。場合によっては力を貸してもいい位の理由だよ。」

 

その言葉は脳天からハンマーを振り下ろされたような感覚だった。その言葉が何処まで真実を言い当てているのかはわからない釣りえさほどの大きさの希望が見えた。

 

 

「それじゃ」

「人の心を踏みにじって奪った結晶の回収を」

「…………完了させていただきますか。」

 

苦笑交じりに俺は、ラファールのスラスターを最大限にしてここから離れた。

 

手には弾丸が連なったような腕輪を持ちながら・・・

 

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

 

そうそう、こんなことがあったんだよ、俺が一人でこっけいなダンスを踊っていた時期が。

 

そして今さっきの話をしている現在へ………

 

非常に異常な事態だ、本当に世界は広い。

 

「君が現実逃避をしたくなるほどにはね?」

 

心を読むな。

 

「大変過ぎてそこまで過去じゃねーのに走馬灯が見えたよ。」

 

コレも、ひとつの走馬灯になるときがくるのだろうか。

 

「しっかし私も世界を相手取るなんて初めてだよ。」

 

目の前にあるのは世界。中に散らばっていたIS。いまざっと数えたけど全部で100機ぐらいあるんじゃないか?しかも見知った顔もいる。

 

「大丈夫だ、俺も初めて。」

「まったく油断ならないね。君が。」

 

今動かせる実戦配備されたISの量は以外に少ないらしい、それに相手からしてみたら敵は俺のたった1人のヌルゲーでスライム倒したらクリアレベルで「この程度でいい」と判断されたのだろう。

 

「俺らもなめられた物だ。」

「いやいや、私たちは最弱のISに最低の人間だぞ?舐める要素しかないさ。」

 

「…………それじゃ覚悟はできた。」

 

思考は下種、体は卑怯、心はいつでも悪に。演じきる、このうれしさを現すために!

 

「いくぞ」

「おう」

 

 



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二度目の裏切り

「はぁ」

 

俺は帰還した。いやいや、別にさっきの回想の後の話じゃない世界を相手取るのは、まだこれからだ。てか前日譚みたいなものだ。

 

「上司の目の前でこれでもかとため息をつくのはやめなさい。」

 

と疲れを感じさせない全く衰えがないその美貌を周りに振り撒きながら話しているのは俺の上の上の上司、スコール先輩だ。

 

「これでも疲れているの」

 

サメタ目でスコールを見た。その情報は本当なら吉報中の吉報なんだが。これからエネを使う。

 

「それは良かったですね。」

 

俺はスコールに抱きついた。いつもやっているかのように自然に懐に入り、抱きついた。スコールの顎に俺の頭が付くか付かないかといった彼我の身長差。

顔は見えないが困惑した雰囲気が伝わってくる。でも困惑するのはここが本番じゃない。5秒くらい立っただろうか。

 

「よっと」

 

消した。

 

「…………最初からこうできれば楽なんだけどなぁ。」

 

今回は相手が相手だ、もしかしたらそのまま、顔を三倍ぐらいに腫らされたのかもしれないが。まあ、できたものはしょうがない。ラッキーと言っておこう。それに、今回はまだ大丈夫だった(・・・・・・・・)

 

「これで、俺は…………」

 

ナイフに向かって一歩前進するほどにもう後戻りはできない。次は、ISの格納庫を漁って行く。監視カメラを一睨みして俺は歩みを進めた。不気味なほど静かなのが嫌な予感がする。

 

格納庫の前に立つ、一回深呼吸をして扉を開けた。部屋に何人かいたが、殺気や焦りが見えてこない。特に俺が来た事になんの疑問も抱いていないようだ。格納庫を管理している人とは顔見知りになっている、いま近くの事務室で机に座りIS出撃の管理をしていた。

その人に「また出撃があるんだけどどれに乗るんだ?」といった。

 

管理人の中で勝手に納得して、整備士に話を通してくれた。

 

「あ、なんかここら辺にゴミ付いてるぞ。」

 

「ん?…………取れたか?」

 

「いや、まだ」

 

俺は後ろ髪に手を伸ばして掴み、そのまま顔面を机に叩き付けた。流れるようにポケットから睡眠スプレーを取り出し噴射した。ここにも、監視カメラはあるがまだ警報は鳴らないようだ。

 

足早に解放したISの元へ向かう。極力エネの存在は悟られないようにしないといけないし、相手に最初からなぜ使わなかったんだと疑心暗鬼の元を植え付けるのにちょうどよかったりもする。そして間違った解に辿り着いてしまうかもしれないしな。

 

「こいつか。」

 

今度はテンペスタだった。前にも一回使ったことがあるが、男として使うのは初めてだからな。

 

「使用しますね。」

「ああ」

 

アンロックしたのを見計らって首の後ろを叩いた。

 

「加減がわかんねーからすまねえな。」

 

テンペスタに手をかざし手回収する。また一つ、足輪に少し重みが増した。見つけられたのは女性2人、部屋の対角線に近いところにたって俺の様子を見ていた奴だ。2人とも異常事態を察して拳銃を抜いた、俺は1人に狙いを絞った。ISの影に隠れながら回収していく、視界が開けたところで拳銃の射線を外しながら距離を詰めていく。オートマ拳銃の装弾数以上に撃ち尽くしてカチカチといった空虚な音が聞こえた。

 

弾切れの隙を逃さず腹にスピードを乗せた一発をぶちかます。側頭部にショートフックを入れて流れるように投げ飛ばした。

 

「止まれ!」

 

もう一人は、ISを装備して俺を襲ってきた。一足で懐に入り顎をつかんで脳を揺らした。。

 

「いただきます。」

 

俺はISに手をかざし回収した。ここまで暴れると流石に警報が鳴り始めた。だが、ISはすべて俺の物にしてるといっても過言ではないし、「M」や「オータム」も不在だ。しかも加えて実働部隊のトップを失ったので命令系統を立て直すには時間が掛かる、少しはしばらくは烏合の集になってもらえるだろう。

 

そのうちに回収した。最後のIS回収を終えたとたんにファントムタスクの戦闘員が入ってきた。そのタイミングで投げるのは閃光手榴弾。敵の合間を縫ってそこを脱出した、二回目は…………喧嘩を売るすべてに。

 

 

 

俺が駆け込んだのは結構印象のある場所あの宣戦布告をした場所で設備は整えてある。気取った声でおちゃらけながら。

 

「3・2・1・キュー」

 

 ◆ ◆ ◆

 

「どうもー。」

 

「コレ全世界に流れてるのかな?。俺たちファントムタスクが全世界で喧嘩売ってるさなか悪いんだけど。」

 

「俺トップ殺しちゃいました。やっちゃった、テヘ。」

 

「それで世界が少し平和になるって訳じゃなくて。代わりに、俺が世界に喧嘩を売る。」

 

「おいおい、そこの君。ただの気狂いだと思ってたら大間違いだ。」

 

「お汁粉にタバスコをぶちまけるぐらい大間違いだ。」

 

「俺は本気で世界に喧嘩を売っているし、実際にいまファントムタスクとも敵対しているって事。」

 

「男でISを使えるって事もあるだろうけど。あ、そうだ。」パチン

 

「ここでこいつ殺しちゃうわ。まあ、普通に犯罪だし殺す理由もできるだろ。」

 

ドスッ。

 

「まあね、手刀で殺すなんて現実離れも良いところだ。だけどこの世界中に極一握りの人間にはこれの真実がわかっているだろうが。」

 

「世界に伝えたいのは敵は俺、相澤康一だって事だ。」

 

「手始めに俺は太平洋の海上プラントを襲撃してくるよ。寝床と飯とISがあるサイコーじゃん。」

 

といってブツンとブラウン管テレビが消えたような音がした。

 

 ◆ ◆ ◆

 

IS学園では、一部の生徒を除きこの情報は伝えられなかった。この相澤康一の宣戦布告の情報は、専用機持ちにのみに伝えられた。

 

「そういえばまだ鈴がやられてから半年も経ってないんだよな。」

 

「セシリアも…………。」

 

いつ来るかわからない恐怖におびえながら、一夏、箒、シャルロット、ラウラ、簪姉妹は話を聞いた。

 

「学園側に協力を要請されれば専用機持ちが出撃することもある、それを念頭において生活してくれ。」

 

千冬はそれを言い終わるとその場から立ち去った。

 

「…………楯無さん、箒。終わったら練習に行こう。」

 

「止めろ、少し休め。といっても聞かないか。」

 

一夏の練習は尋常ではない。アリーナが空く時間には滑り込み、門限ぎりぎりまで戦闘して帰る。練習もさまざまで、全員に射撃武器を延々と打ち続けさせて、それを避ける練習や。反してただただ武装を出したり入れたりを繰り返すだけの練習もある。

 

「頼む。」

 

最近の出来事で少し荒んでしまった印象を受けた。一夏の中では今でも「止める」と思っているのだろうか。

 

 ◆ ◆ ◆

 

終わった。日本語でしか喋ってないがどうせ翻訳とかされて世界に広まることだろう。

 

「おお、君も大きく啖呵をきったねぇ。」

 

「ネルか。まあ、敵さんが向こうから来てくれるんだから、挑発するには越したことはないでしょ。」

 

「今までの行動を見てただけでも結構な捻くれ者だと思ったけど?暗躍、奇襲に嘘、虚偽搦め手のオンパレードだ。」

 

「今回はそれじゃいけないんだよ。正面からねじ伏せて、認めてさせて、お前らを空に連れてってやらないと。」

 

「そうか。」

 

一言だけそう言ってネルとの会話は終わった。

 

「それじゃ、行きますか。」

 

俺は黒いISをまとって目的の場所へ飛んでいった。

 

 ◆ ◆ ◆

 

「おいおい、やりすぎじゃないの?」

 

そこにいたのは。ハエのように飛び回っているISの群れ。絶対に自然現象ではないが気を許すとそう見えてしまいそうだ。数は……………30程度か。

たぶんISの視力だ、もう此方にきていることは分かっているだろう。

 

 

「ラグナロクの一撃!」

 

なら、最初から飛ばしていくしかない!

狙うのは足元の海、圧倒的な熱量で水蒸気爆発を起こさせる。行動を鎮圧から殲滅に切り替えさせるために。そして俺の目的を実感させるために。

 

まずは不和を引き起こさせる。

 

「おい、手はずどおりにやれよ!」

 

ありもしない味方に怒鳴って支持を出した。相手はそれだけで動揺してくれたりはしない、これから「たられば」を誘発させるために、根拠を作ってやる。

 

相手の出方はわからなかったが、俺は、一人に集中した。何も相手取るってわけじゃない、この中で観察をするんだ、そして特徴的な癖を見つけることが先決だ。

 

俺は、群れの中に飛び込んだ。瞬間的な力を使い、混戦に持ち込む。俺に向かって球状になりそれぞれの武装で一斉射。俺は海面すれすれに位置取り虚口を使った、雨あられのような弾丸は、攻撃性エネルギーの膜で威力をなくしていった。

 

動きを完全に止めているにも関わらず、一斉射撃も数十秒続いたのは、俺に人数の多さとエネで消した事がばれていると感じさせるには十分だった。近づいたら殺されると思っているんだろう、今回結構リスクが高いからやめておく。

 

俺にとって射撃攻撃しかしないなら好都合だ。思いっきりペトゥルを5個使い加速する。一対一に持ち込まないと勝機は見えてこないから、近場にいた奴に照準を合わせた。

 

「ハロー」

 

相手は距離を詰められたが、た引きながら弾丸を撃ち込むという冷静な対処をしてくれていた。だけど、それは一回近づいたら、誤射の可能性が出てくる。少し、銃弾の雨がやんだ。

 

それを繰り返していく。脳を揺らしたり、ISのエネルギーを詰まらせたり、シュールストレミングをぶっ掛けたり。数多に手札を変えて、これまでつかった手口を披露した。

 

「こんな程度かよ!」

 

 

それで7機ほど撃墜させISを剥ぎ取って人間は海に捨てておいた。挑発やかく乱を精一杯したがまだ減る気がしない。と思っていた矢先に空気が変わった、何かをやる気だ、何かはわからない。たぶん俺のみを殺すための作戦が。

 

気の緩みと気の変わりようが肌で感じる。目でも全員が全員近接武器になっているのを見ると嫌でも何かが来ると思うだろう。しかし決定的な意識の差をどうして覆すことができたのだろうか。

 

動揺はあった。一人で行動していると報告があったのなら、俺のかく乱には動揺しなかったはずだ。なら一人を確実に殺しに行こうという腹だろう。

 

俺は、湯花を呼び出した。全十五個すべてをエネルギーブレードに。一気に掛かってきた奴らを一気に薙ぎ払った

 

「扶桑!!」

 

荒れ狂う竜のようにサーベルがうごめいて、俺の腕の動きに合わせてすべてが切り取られていくような破壊力だった。たぶん、上空から見れば巨木を振り回している様な光景が見られるだろう。

 

「全部墜ちたか。」

 

静けさが俺を祝福してくれているような気がした。危険域には入っているだろうが、まだ大丈夫だろう。まずは墜ちたISの救助だ。と視線を海に向け、ISの場所を確認する。

 

「おい!」

 

突然聞こえた大きな声、それはよく聞き覚えのある声だったが、そんな事を思うより先に腑抜けた感覚に活を入れてくれた。だが遅かったらしい。

刹那的に、全方位に気を回したが……………。ISのスーパーセンサーの援護もあり一つの弾丸が見えた、だが見えただけだ、避けられる訳がない。

 

俺は、胸を強打した感覚に陥り意識を手放した。

 

 

 

 

「これぐらいで、いつからそんなに軟弱になってしまったんだい?」

 

肌に当たる水、というか全身を包んでいるしょっぱい水。意識が覚醒した時にはこの状態だったからか思考にのみ意識が行く。だから、根拠はないけどエネだって気が付いたんだ。

 

「……………」

 

「にやけるなアホが。」

 

その声は、どこかあきれているようで、少し笑いを堪えているような気がした。つられて俺はにんまりと笑っていた。

 

「仕方ないから、味方をしてやる。」

 

力強く、どこか不安定だった俺の心を応援してくれている。エネの言葉がしみこんでいくようだ。

 

「私がいなけりゃ何にもできないんだから。」

 

そんな現実からもにげていた。

 

「忘れてたよ、すげーなげー喧嘩だった。」

 

「いや、何度も言うようだが、私は使われるのが本来だ。…………けど、この最近は味気なかった。」

 

「俺もだ。」

 

「行こう。だがしかし、非常に異常な事態だ、本当に世界は広い。」

 

「君が現実逃避をしたくなるほどにはね?」

 

心を読むな。

 

「大変過ぎてそこまで過去じゃねーのに走馬灯が見えたよ。」

 

コレも、ひとつの走馬灯になるときがくるのだろうか。

 

「しっかし私も世界を相手取るなんて初めてだよ。」

 

目の前にあるのは世界。中に散らばっていたIS。いまざっと数えたけど全部で100機ぐらいあるんじゃないか?しかも見知った顔もいる。撃墜したのもあわせればほぼ4/1は手中に収めることができる。

 

「大丈夫だ、俺も初めて。」

「まったく油断ならないね。君が。」

 

今動かせる実戦配備されたISの量は以外に少ないらしい、それに相手からしてみたら敵は俺のたった1人のヌルゲーでスライム倒したらクリアレベルで「この程度でいい」と判断されたのだろう。

 

「俺らもなめられた物だ。」

「いやいや、私たちは最弱のISに最低の人間だぞ?舐める要素しかないさ。」

 

「…………それじゃ覚悟はできた。」

 

思考は下種、体は卑怯、心はいつでも悪に。演じきる、このうれしさを現すために!

 

「いくぞ」

「おう」

 



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裏切れない『モノ』もある

「案外あっけなくおわりましたね」

 

と、狙撃銃を持った女がいった。相澤康一を撃った張本人らしい。

 

「だが、油断は禁物だ。あの人数相手に立ち回って見せたんだ、まだ生きているかもしれない。」

 

「絶対防御のシールドを中和して貫通させるしろものっすよ、まあ、気絶ぐらいは余裕でしょ、胸骨の部分にきれいに当たりましたし。」

 

「まあいい、これより回収作業に入る!一人として死なせるな!」

 

そういって、戦場をみた。異変は、すぐに訪れた。

 

「隊長!海から!」

 

「なに?」

 

白い球が、海から泡のように浮き上がってきた。泡には二種類海面に浮くものと、空に向かって飛んでいくものの二つだ。海面に浮いているのは比較的大きく空に向かって飛んだものは直径一メートルほど。

 

「中に生体反応があります!」

 

「…………三班編成!アルファは人質の救出、ブラボーは敵勢力の無力化の調査、チャーリーは哨戒!各自分隊長に従え!」

 

「「「了解」」」

 

子ハエの位にびゅんびゅんと動き回るが、一つ勘違いをしていた。

 

 

相手が女王とその奴隷だったということだ。

 

「人だっ!」

 

「ここら辺にあるのは人で間違いなさそうだな」

 

「そのようですね。」

 

「なにこれ!?白いな…………触感は!?、ざらざら。それなりに強度があるわね!だが脆い!まるで薄く延ばした飴細工のようだ!こんな物は始めて見る、どれ、味も見ておこう。」

 

白けたような目で見られているがそんなことも気にせず、白い玉を調べている者がいた。

 

「変人もいるもんですね」

 

「ほうっておけ、仕事をするぞ」

 

「だけど、こうして何人もいれば、誰が誰だかわからなくなりそうだね」

 

「そんな訳あるか。」

 

「敵の顔も覚えられない。」

 

話掛けられた者は肩を叩かれた。

 

「覚えなくていい、なにせ外されるんだ(・・・・・・)から。」

 

「お前は!?」

 

ISが消失した。中身は力なくもがきながら海におぼれていった。いつの間にか青いジャージを着ている康一は舌なめずりをするように周囲を見回し、近場の敵へ。

 

「呼ばれて出てきてじゃじゃじゃじゃーーーーん!康一だよ!」

 

白い短刀をISの末端部に突き刺す。いきなり出てきた敵、すべての注意が康一に向けられた。そして一斉射撃が始まる。

 

 

「残念でした。」

 

 

何度も何度も、同じ手を食うわけには行かない。

 

ボン!!気の抜けた爆発が起きる。

 

「その泡爆発するぜ?。」

 

海水の成分は水 96.6%、塩分 3.4%(ウィキ調べ!)ISはすべてのものを分解してエネルギーに変える力を持っている。なぜそのようなことができるのに、物質の変換ができない訳がない。

女王の力を思う存分に振るった。

 

銃口から放たれる弾丸は、めちゃくちゃに撃っていたら一つは当たる、そして中に水から作った酸素と水素の混合気体を起爆させてしまうのも無理はないだろう。

 

「泡はまだあるぜ!」

 

これで、実質中距離のアサルトやサブマシンの攻撃は無効化されたといっていい。しかも、相手の思考は戦いは数だという古臭い考え方に固執してしまっている。寧ろ自慢じゃないが俺はタイマンだと弱い!

 

「自慢じゃないわ」

「るせい」

 

そして此方の思惑通り戦法を変えてきた。距離をとり始めた。距離をとった銃器での一斉射撃、泡を何個か爆発させて、弾丸が襲う。

 

「エネ、殻だ。」

「了解。」

 

俺がいまだにファントムタスクの傘下であると思っているのだろう。意識の違いがここで如実に現れる。俺は、一つに集中すればいいだけの話だが、相手は、伏兵の危険性があると勘違いしているので、注意散漫というか少しの変化にも過敏になる。大きければなおさら。

 

「攻撃中止!」

 

エネは俺の合図で巨大な塩の殻を生成した。だがこれは、ただの塩の塊で他のISの力で浮かしているし中はただの空気だ、しかし、爆発するかも知れないという先入観が攻撃を中止させた。

 

「さあ、狩の時間だ」

「君の術中か…………。」

 

これだ、ここまでエネの情報を隠してきた甲斐があった。

 

「杭は塩でいいだろ。」

「ああ、一人落とした、ISは回収できる状態にしてある。」

 

ISに食い込ませた物質を変質させてエネの勢力のエネルギーにする、それを基点にしてISのハード部分での侵食だ。

 

「まあ、予防接種みたいなものさ、ISにとって害はない。」

 

俺の疑問に思っていることを先回りして言われた。

 

「心を読むんじゃねえ。」

「読んでなんかない、分かってしまうのさ。」

 

言うねぇ。

 

「喋りはもう少し後だ。後方支援で一番遠い奴から狙うぞ。」

「了解。ポータルを開く。」

 

相手の敗因は、ISを使っているということだ。

 

「よいしょ」

 

白い球体を注視しているところにいきなり後ろから敵が現れたら、なすすべもないだろう?。

 

「IS回収。」

 

消えて背後に出て塩の楔をISに打ち込む。それを繰り返し繰り返し、行っていく、何せ自分のISから人が出てくるなどとは思いもしないだろう。

そして無駄に全方位に気を配らなければいけなくなる。たとえるなら、背中にバカとかかれた紙を自分で張っているにも関わらず、慌てふためいているといった状態で実に滑稽だ。

 

「これ、実弾で回収できないの?」

「やってもいいがめんどくさい。」

 

なんて事を。まあ、少し考えたら、弾にISのバリアをすり抜ける加工をするそして遠隔でISを回収するっている2ウェイ何たるめんどくささだろうか。

 

「おーけー」

 

めんどくさいことをさせるのはまあ、本意ではないし効率的じゃないからな。よし、このまま続けよう。

出ては楔を突き刺し引っ込んで回収、出ては楔を突き刺し引っ込んで回収といったサイクルを繰り返していく。

 

「あと何機ぐらいあるんだ?」

「そうさな、90ぐらいにはなってきたか。」

 

普通の戦争じゃ一割の戦力がなくなった時点で敗走って感じだ、だがISはまだ大戦争で使われたとかそういう経験があるわけではない。平和な時期に生まれてしまった因果か、まだそこにいてくれてる。

なぜか、ISを過信しISを使えば「勝利する」と勘違いしているからだろう。そこにつけこむ。

ISの力を使ってオープンチャンネルで話しかけた。

 

「お前らの指揮官は無能だな。」

 

「!?」

 

「そんな指揮官と取引がしたいんだが、どうだ?乗ってみないか?」

 

いや、乗るしかないんだ。一縷の望みを掛けて。相手は俺が万能であると認識しているはずだ。打てる手は打った後は…………。

 

「内容は?」

 

乗った。

 

「お前らの海上プラントから10キロ圏内の不可侵、と人質をくれ、これは誰でもいい。そうしたら今の戦闘を終わらせてもいい」

 

「…………。上に掛け合ってみる。」

 

「果たして、全滅するか引くか、お前らの指揮官はどっちを選ぶかな?」

 

おちょくるような口調。で、30秒ほど結果はわかった、なにせ絶望しかしていない。

 

「……………決裂だ。」

 

その言葉と共にいっせいに銃口を塩の殻に向けている。

 

「撃ち尽くせええええええええええええええええええええええええええええええええええええッ!!!!」

 

「ふうん」

 

攻撃してきた。塩の殻から硬質音が鳴る

 

「じゃあ、死ねよ。」

「全ポータル開放、康一、今や敵はただの移動道具だ。」

 

その言葉を聴いて、脳が痛くなった。やわいものに針を突き刺したと錯覚するぐらいに「興奮した」ここが正念場で、死力を尽くす。

 

ISポータルに突っ込む、そして見かけたものから出現する。もちろん背後を取って

 

「ラアッ!!」

 

ISの装甲に突き刺す、なるべく手足のほうがいい、紙の束にナイフを振り下ろす感覚が手に返ってくる。反撃してきたが、それを受け入れるように近づいてポータルに入る。

さっきの取引はここにあるISにすべてポータルをつける作業をする時間を作るための布石だった、あのまま撤退してくれればよかったけど。

 

三人ほど近接攻撃してきた。いったん消える、そして同じ場所にでた、全く別の場所に出た、すばやく三つの楔を打ち込む

 

そして消える、神速といっても過言ではない。ノーモーションで移動できるのだから。さて、スナイパーを先にやっておこうか。撃ったらやる。

 

何人だ…………まあいいや、目に見えたものからやる。

 

「合図三十!」

「了解だ。」

 

まだ、塩の楔は起動させない。虎視眈々とそれを起動させるのに最適なタイミングを狙っているだけ。

 

「作業ゲーだねぇ」

「やってるこっちは体力がんがん削られてくるんだけど!?ああ、ダークソウルの気分が。」

 

少し食って掛かった、ジョークでも言ってないとやってられない。少し説明するが体力が削られる、それがエネの最弱のISたるゆえんなのだ。

そもそも、エネの力はすべてのISが持っている力の応用だ、なんか聞いた話によると戦闘中にISの経験があがり武器が生成された例があるらしい。それが、塩の殻などになっているだけなのだ。

つまり、エネの正体が何にも付いていないISコアそのものでありゴテゴテした装飾が付いているISのほうが単純に強い。

 

「使いこなせなければただの鉄くずだけどな」

「お仲間よね!?」

 

よってパワーアシストなどあるわけがない。

 

「あ、30まで行ったぞ。」

「了解!」

 

その合図で、俺はペトゥルを巨大な塩の殻に撃った。それによって体の内を轟かす爆音と閃光が瞬く。海から頂いたマグネシウムやその他もろもろの原子が光を放った。

 

「回収だ」

 

ISの回収自体は秒あれば楽、らしい。フラッシュによって作られた盲目の何秒間で味方が半数消えてしまったら、残された奴の士気はどうなるだろうか?

そして光が止んだ。動揺がそこに流れた。

 

「残党狩りといきましょうかね」

 

落ちていった奴は後で回収するとして。

 

「どうする?あのまま、殺してもいいけど。参ったするなら君たちの命は助けてやらんこともない。」

 

といいつつ、塩の楔を打ち込んでいく、それで塩の楔打ち込まれていないISが半分ほどになりつつある。

 

「もう士気なんてあったもんじゃねえな。」

 

楔を打ち込んでいる時点で、もう無抵抗な奴もいたが、容赦なく突き刺していく。なんせ参ったとも何も言わないもの。

 

「ほい」

 

すべての楔を起動させ、ハエのようにあったISの大群も消えてなくなっていた。

 

「お疲れ。」

「お疲れさん。俺頑張った。」

 

俺は、海上プラントから出たオレンジ色の救難艇を見送りながら、プラントに足を運んだ。

 

「はぁ。」

 

一仕事終えた充実感、なぜか、ため息とともに幸せが沸いて出たような気がした。



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食欲を誘う魔法の言葉、そう。北京ダック

「あ、あー。んうん。皆起きてる?」

 

そんな声が、一つの部屋に流れた。その部屋には大量の人、ちょっとした体育館のような広さで、100名以上の人が収容されていた。当然、プールに小さじの塩を入れた微弱な恐怖がその場を支配する。

 

「えーっと君たちは捕虜の扱いを受けるのかな?それで相談というかなんというか何だけど、どうすりゃいいの?」

 

その言葉には100人いれば反応もまちまちだったが大抵困惑といった風だった。先ほどの絡め手、不意打ちのオンパレードから転じて、国際法に遵守するまともな奴の印象を受けたからだ。

もしかしたら、彼の利益によってそう行動したのかも知れない。

 

「あ、そこでの声はこちらにも聞こえているから。」

「…………十分な糧食、怪我人の手当てぐらいだ」

 

「じゃあ、全部やってるね。百余名全員この部屋にいるはずだよ。じゃあ、ここで生活する時の注意点なんだけど、首輪があるでしょ?それ、取ると爆発します。逆に言えば取らなきゃ爆発しないってことなんだけどね。あと『ある一定条件』を満たしても爆発します、まあ、そこは容易に『想像』できるでしょ?」

 

痛いほどの沈黙が、その場を支配した。だけど、この男の声だけはとっても楽しそうだった。

 

「あとなんかほかに質問ある?無いならこれで、このプラント内での自由を得ることになるけど。」

 

「プラント内部は自由に行き来してもいいのか?」

 

「問題ナッシング!ほかは……………無さそうだね。それじゃ」

 

ガラガラと扉が横にスライドした、自動ではなく手動であけられてその空けた本人はニッコリ笑っていた。

 

「ようこそ、君たちにとっての地獄へ。」

 

行動がちぐはぐだった、中に言葉を伝えたいだけならわざわざ姿を現す必要はなかった。合理的に行動をしていないのだ。

 

「いい生活になるようにね。」

 

 ◆ ◆ ◆

 

「ふう」

 

「お疲れ…………しかし君もひどいことをするね、あの首輪爆発なんてしないのに。」

「お茶目ないたずらさ。」

 

そんな物じゃすまない。

 

「じゃあ、どうする?このプラントの柱を少しずつ壊していく感じにする?誰かが外して爆発しない緊張の糸が一気に外れて、皆いっせいに首輪を外そうとするだろ?そしたらプラント崩壊でジ・エンド。」

 

「悪趣味が過ぎるぞ。」

 

「まあ、これは布石だから。死と可能性とルールがあれば人は簡単に動くし崩壊させるのも容易だ。」

 

「…………君のそういう所に痺れるあこがれるぅ」

 

エネが半ばやけになってそう言った。

 

「首輪にしるしをつけてグループ化し5から7ほどのチームを乱立させる、そして『チームの中で「一定の条件」を満たした者がいる場合その者以外が爆発する』なるほど、それなら嫌でも顔を突き合せないといけないし、何より連帯と外交が生まれる。」

 

「1分ぐらいで考えたけどいいでしょこれ。」

 

まあ、万一爆発するようなことがあったら、そいつに「なりすます」だけだ。

 

幸い時間もある、ISの四分の一が個人に盗られたとあっては国が大手を振って俺を追い詰めるだろう。多国籍軍を編成する時間が、ただ一人個人の動きでそれをやっているはずなのに、世界は俺を一人とは認めない。さっきの戦いのとおりに、動くはずだろう。

 

「ちょろいね」

「全部のISをすべて奪うつもりなら、最大の関門が一つあるぞ。」

「我らが担任殿だろう?駄目だだめだ、今からあんな化け物のことを考えたら頭が痛くなって死にそうだ。」

 

実際にやるとすれば、IS学園にぽいっと現れるぐらいしか手段はないだろうな。

 

「よし、当面の仕事も決まったことだし、いきますか」

「目標は?」

「ああ…………北京ダック食いたい。」

 

いや、ただ食いたいって訳じゃない。今回落としたパイロットにはヨーロッパ諸国のような顔立ちの人が多かったからまだそこらへんからは盗ってないなぁって思っただけだ。

 

「フカヒレこの周辺でも取れるか?」

「それいただき…………無駄に豪勢な物を振舞うって言うのも良いかもなぁ。」

 

「やっぱり君は悪趣味だ」とエネが嘆息しながら言った。「けど、気持ちがいいぐらい真っ直ぐだとも思ってるよ」

 

「ある意味な。清々しいぐらいに行動は一貫していると自覚しているよ。」

 

エネのために、あいつらも副次的に勝手に救われるかも知れないけど。

 

「無駄口叩いてないで、さっさと行きますか。エネ、目標は本場の北京ダックだ!」

「違うだろ、中国、上海の適当なところにでもポータルを開くよ。」

 

俺はこっそりと気合を入れなおした。何が起こるんだろうか。

 

 



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魔法の言葉北京ダック

「北京ダックうめえ。」

「やっぱりこうなるのか…………。」

 

北京ダックに舌鼓を打っているとイヤホンからそんな声が聞こえてきた。俺は今中国にいる、なんか文化が雑多にあえて煮込んだような町だった。

 

「2日ほどここにいるけど、生野菜が欲しくなるなぁ。」

「まあ、贅沢言うな。」

 

少し長く滞在しているのは、情報を集めるためでまだまだここにはファントムタスクも手をつけていないようだった。

 

「ここはコアがあまり居ないからな、ランドルと言った研究者を囲んでいるのなら実験機を奪取したほうが後のためになる。」

 

中国は実験機の開発はあまり振るわなく、凰が持っていた甲龍のプロトタイプ機「剣龍」はまあ、ある意味キメラみたいな物でほかの国の技術をちょこちょこ奪っていった物だ。だから中国自身に何かを開発するような技術があまりない。

 

「あそこは金はあるとはいえ慢性的な資材不足だったからなぁ。」

「仕方ないな、国からの積み立てはあるとしても大手をふるって買い物なんてできる訳がない。」

 

で、対して俺のほうはISを全部持っていく事を目的としている訳だから特に中国でも問題ない。

 

「よし、行くか。」

 

ネットだと足が付くし、エネはあまり使わない様にするし…………あ、あれはノーカン実に楽しかったもんだから。

 

さて、今から行くところは中国軍の中枢の中の中枢。だが調べたが結構ザル…………いや、俺にはザルだった。

 

「エネ、再構築の準備を。」

「了解だ」

 

 ◆ ◆ ◆

 

でかい、そして硬い。見た感じの印象はその二つに限る。

 

「これが軍の設備か。」

 

いやらしいぐらいに周りを壁で固めて、何者の侵入を拒むようだ。むしろ壁と言うより蓋といった方がいいのか、すでに空ける段階にまで行っているのだから。

 

「無駄に生体認証システムとか取り入れてるから悪い。」

 

お金渡したらそう教えてくれた。

 

「じゃ、頼むわ」

 

「はいはい、やればいいんでしょやれば。」

 

ピッと電子音がする。

 

「それじゃ。また会わないことを願うわ。」

 

「ごくろーさん」

 

なんだかんだやってたら開いた、もうわかってると思うけどねぇ。

 

さて、エネの機能をおさらいしておくか。簡単に言ってしまえば物質をエネルギーにしてエネルギーを物質に変える事ができる。だが条件というかプロセスがある。

まず、物質をエネルギーに変えるときにまず粉々に噛み砕く分子の結合をことごとく破壊しそこからISエネルギーにする。だが、そこから別の物質を作るとなると設計図みたいなのが必要になる、それはISの経験だったり直接ぶち込んだ設計図とかでも大丈夫だ。

逆に物質の再構成ならすぐだ、その破壊した分子を別の形で再結合させればいいのだから。

 

つまり。ISは物質AをA´にしISエネルギーに変換する、その後ISエネルギーをBに変換するためには設計図が必要。設計図無しだと、俺がランドルに突き刺した楔のような歪な形になってしまう。

A´をAの変化にするのは元々の形Aを再構成させるだけ、A´を『物質Aでできた道具』にするにはまた設計図が必要になってくる。

 

まあ何より物質の生成は結構難しいと言うことだ。

 

「よし、しんにゅー。」

「堂々入ったなぁ。」

 

正規のルートがあるのだからそっち使った方がいいでしょう。

 

「女にでも化けとくか?」

「あー、すぐばれそうだぞ。」

「下手にやったらばれるか。」

「ああ、もうすでにばれてる」

 

「中には監視カメラあるのかよ…………。」

 

各所に監視カメラのようなものがあり、楽すぎたのはそういうことか。

 

「エネ、直線距離でいくぞ」

「了解そこから11時の方向。」

 

そういえば、まだ俺が作ったISスーツは使っているのだろうか。

変なことを思いながら、道を作りながら走った。

 

「ここは楔で行く!搭乗者がいないようなら纏めて回収するぞ!いや、ここから行けるか!?」

「出来なくはない、そこの前の壁に手を付けろ!」

 

思いっきり手のひらを叩き付けた。ドンと鳴った音が染み込むように何かが行き渡るそれは虹を結晶化させ粉末にしたようなものだった。

それがあるところの物質が一気に消失し俺の手から先には槍が伸びていた。

 

「全10機回収した!」

「マジか!?」

「まさかここまで上手くいくとは思わなかった!」

 

予想外の戦果に驚きながら、俺は尻尾を巻いて逃げ出した。

 

「あっ、違う。前に熱源!ISだ!」

 

壁を思わずといった感じで消してしまった、そこは虎だった。虎穴に入ったと言わんばかりに危険がいっぱいだ。誤算は虎は3匹いた事だ。

 

「ネル!」

「わかった!」

 

俺の合図で目の前にバイクが出現した。飛び込むようにすわりアクセルを吹かす。ISコアで生成されたエネルギーを馬力に変えて発進させる。

こういった室内の中ではネルは最高のスピードを出す。対G能力が多くある女性にはとてもいいと思うけど、諸事情により俺は頭が痛くなってくる。

 

不意に出現した隙を突き相手の合間を縫って加速。十分な距離を持って。床に手を置いた

 

「壁!」

「了解!」

「ええ!?僕の出番これだけ!?」

 

俺の目の前に壁を出現させた。

残念ながらこれだけだ。てか長い時間使えないから。俺には脳のキャパが足りない。

 

「ここを虎穴にしてやる。」

 

頭を戦闘モードに切り替える。俺の姿が青いジャージ姿に変わった。その上に羽織るようにIS、カゲアカシを装備した。

 

「苦しいかもしれないけど我慢してくれ。」

「いいよ、こういうのは得意じゃないんだ。」

 

エネは戦闘があまり得意ではない。寧ろ尻尾巻いて逃げ出す方が得意だ、何せ何にも感知されることもない状態にして何処へでも行けるのだから。俺だって逃げるほうが強い。

 

だがそうしないのは情報は制限してこそ、その真価を発揮するからだ。

 

「戦うことが罪なら俺が背負ってやるってね?」

「うるせえ。一緒にやるんだよ。」

 

エネはそう言った。で、忘れてるとは思うがエネからデータを伝えてほかのISの挙動を操作している。俺とエネが仲たがいしていた時は、ISが使えていたというのが一種の信頼を確認する手段だったようにも思える。

さて、本題に入るが今エネの上にカゲアカシをつけている。この場合どのようなことが起こるでしょうか。

 

答え、操作性が向上する。

 

「ラァ!!」

 

強く踏みしめながら、ISのスラスターと併用した加速。今回邪魔なので灯火は仕舞ってある。

タックルするように突っ込む。

 

「クレイジーストリッパー!」

 

ISを解除してから滑り込む攻撃はISと人のギャップで外した。右足だけカゲアカシを展開し距離を稼いだ。

 

「壁!」

 

1,2発ぐらい食らうのは織り込み済みだ。強引に行く。

 

「鳥かごの中の虎か、さあ、子猫ちゃんたち遊ぼうぜ。」

「康一、この国にあるISはもうない、ラッキーだったな。上の私腹を肥やすためにISを一箇所に集めていたらしい。」

 

そりゃあ、好都合。攻撃されているのを物とも思わず敵に向き直った。

 

「めんどくさいし、まるっと回収はしなくてもいいよね?」

「いいよ、残り容量も気になるし。」

 

カゲアカシの能力しか使えないこともあって、どうしようかと思っていたが、ここは密室だ。だからどれだけ暴れてもばれやしないさ。

しかもこっちは攻撃を当てるだけでいいからだ。

 

「行くぞ。」

 

俺は駆った。膂力を全部使うように。敵は黄色と黒のストライプ、大中小の大きさのが三体いた。

まずは、大。まあ、あれだガ●タンク、ガ●キャノン、ガ●ダムの順で殺してこうみたいな物だ。

 

「五分」

 

湯花を呼び出し、それに5つペトゥルを変換し剣にする。移動の力を体重に載せて大に突き刺した。

エネルギー剣の強みは軽さと当てるだけでいいと言う簡便さにある。不便なのは持続能力がないことと扱いがめんどくさいことにある。くいっと自分に向けてしまったらと思うと目も当てられない。

 

「アアアアアッ!!」

「ぐがっ!?」

 

俺は懐に潜り込み当て続けたが、強引に投げられた。何だこれ、異常に力が強い!けど、楔は植えつけられた。

剣なら負けないとばかりに大も剣を出してきた。最初から持ってろよ。ってか、でかくありません事?

 

「ヤアアアアアアアアアアアッ!」

「うわっ」

 

無意識的にも大をタンクと評したのは間違いじゃなかったようだ。だが、対集団戦ではこっちに分がある。

一瞬で全員の位置と装備を把握、距離はさっきと変わらず近い順に大中小の順番。今度は中だ。

 

「タンクが邪魔だなぁおい!後何秒だ!」

「浅いから60だ。」

 

動きを止められない。一気に回収したほうが便利だ。

そう判断した俺は、投げられたところから体勢を立て直し、湯花を消して新たに両の手にペトゥルを呼び出した。

 

「ふん!」

 

それをサーベル状態にして敵側にブン投げた。まだあいつらにはビット能力があることを知らなければ破壊しないだろう。試金石として投げたそれは大は驚きはすれど、それを跳ね返してあろうことか自分たちの布陣の後方に中が投げた。

 

後四個連続で投げて大を引き付けた。大の大振りな攻撃をかわす。が中の持っている短槍が地味にいやらしく攻撃してきた。こうなってくると小の役割が気になってくる。

 

「だらぁ!」

 

気合と、ISの解除で大の股下を抜けた。中の攻撃をペトゥルでけん制し向き直る。装備は腕に四つペトゥル。

それが持つ力を推進力、そして破壊力に変えて拳を入れた。IS解除の効果を持たせるためのエネの短刀を腕に突き刺した。

 

「!?」

 

瞬間驚きと痛み、そして理解。何を理解したか、それは小の役割。確実に殺すことだ。

 

何処となく三機とも中国っぽい機体だったが、それが顕著になった。中国四千年どれだけの武器が作られて、その中にどれだけの暗器が生まれたと思っているのか。

俺の首に刺さって居たのは、ISの中指から飛び出た少し大きい針。

おそらく、ISの全エネルギーをそこに集約させるかそれか対絶対防御用の攻性エネルギーを作っているのだろう。それに加えて機体軽量化と本来より強いパワーアシストで、対人では使い手を選ぶがほぼ無敵じゃないだろうか?何せ人体に突き刺したら終わりだ。

 

 

そしてそれを理解し驚きの声を上げようと思ったときには、ただ首から鮮血が吹き出るだけだった。

パクパクと口を動かし、クールに勝ち誇った小の機体に言った。

 

おいしそうだと

 

その瞬間大に投げ飛ばされ壁に激突した時にはぷつりと生命の糸が切れていた。

 

「こいつ一人で壊滅状態だってね」

「そこまで大した奴じゃない、どうやって入ったのか分からないが」

「奇妙な能力を使っていたからまだ侮れんがな。」

 

ISから送られる生態情報は近くには自分を含めた3つしかないことを確認して、康一に寄った。

 

「盗人め」

「…………まあいい、さっさとこいつのISを回収しよう」

 

「死んだ奴から剥ぎ取るか、死んでから剥ぎ取るか。それが俺とお前らの違いさ。」

 

痛いと言いながら血が滴る首を押さえてのっそりと立ち上がる姿はC級映画のワンシーンのようだった。

それでもここに冗談は通じない、過敏に反応し康一から距離をとった。

 

「終わりだ」

 

ISが三人から霧散した。

 

「ちっめんどくせえことさせやがって。」

 

にんまりと笑いながら湯の花を取り出す。脅しのようにそれを少し弄び、康一はそれを振った。

あまりにも絶望的な光景は康一が何をしても恐怖しか与えなかった。

 

「タイムアップだ。」

 

チートもこうやってがんがん使っていくと対策取られちゃうからな。あまり使いたくないんだが。

 

「甲龍」

 

よし、衝撃砲で全員気絶してくれたし。

 

「エネ、帰るぞー」

「北京ダック!」

 

 

……………エネよ、貴様も北京ダックなのか?

 

 



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真実という名の劇薬

 

その海上プラントは現在、奇妙な閉鎖空間になっている。

さまざまな思惑を、鍋に入れてそれをストレスで煮込んだような、そんな奇妙な空間。

 

誰一人として、口を開かず圧倒的な生殺与奪権を持った誰かに居ないのにも関わらず媚びへつらっている。

ゆっくりとゆっくりとその不安は伝播していく。

 

だが、それも今回で終わりになった。

某所では、例の海上プラントに救出作戦を展開する

 

「今回の救出作戦は、あの海上プラントだ。二部隊に分け中のIS捜索、人質の救出。」

「相手は複数のISを所持している以上、失敗したら核が飛ぶかも知れん。以上だ、何かほかに質問はあるか。」

 

一人の隊員が手を上げた

 

「現段階で何人生存しているのでしょうか。」

 

「ISスーツからの情報と衛星からの情報だが、全116機パイロット全員生存している。とみて大丈夫だろう。」

 

ただ釈然としない隊長風の男は、続けてこういった。

 

「これ以上無いなら会議を閉めるもう質問を受けついけないぞ。」

 

「隊長」

 

「何だ副隊長」

 

「まず助けたときには一発、女共の顔をぶん殴ってもいいですよね。『敵の拷問の後です』でオールオッケイだ。」

 

「皆しょっぴく奴が一人増えるが気を張っていけ。以上!」

 

兵士の士気をあげるには軽いジョークが必要だ。それを踏襲したのだろう。蜘蛛の子を散らすように兵士は走っていった

 

 ◆ ◆ ◆

 

ヘリコプターが海上プラントの上空に止まった。続々と人が降りてきて施設内部に入った。

 

「ヘイ俺たちとランデブーとしゃれ込もうぜ。」

 

そう言った男は殴られて、別の男が避難誘導のごとく女を先導した。

 

「おかしいな…………」

 

10分後、全員が脱出した。

 

「嫌な予感がする。さっさと逃げるぞ!」

 

うまく行き過ぎている。彼らには正直上の考えていることはよくわからない、軍も一枚岩ではない訳だし自分たちが捨石として使われていることは彼ら自身は否定できない。次の瞬間このヘリも撃墜されている可能性もあるのだ。

 

「妙だ。」

「ですね。」

 

まるで、どうぞお引取りくださいといっているような物だ。ザル。ザルもザル。全く警備なんてものはなかったし、監視カメラの一つも作動している気色はなかった。

 

「本当に大丈夫だったんでしょうか?」

 

その目は本気で、副隊長はヘリに乗っている女達に目を移した。身体的に苦痛を味あわせた訳でもなさそうな健康的な体だった。

 

「何がだ。」

「こいつらを助けてですよ。」

 

一つの言葉だけで氷つかせた。

 

「大丈夫だ。戦術的には全く間違っていない。」

「ほう。」

「今回の作戦は敵の偵察もかねているからな。」

「?」

「つまり、こうやって逃げ帰れていること自体が。相手の状況を物語っている」

「で?隊長。国連のお偉方は今回の作戦で何を確認したんですか?」

「たぶん、これ単独犯だ。」

 

一つ一つと開示していく真実、どこかの誰かには劇薬だった。そんな存在は命を載せて帰っていった。

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

「海上プラント救出作戦は成功しました。」

 

すでに国際連合軍は構成されている。それは、ファントムタスクとしての宣戦布告が始まった時には結成していた。康一がファントムタスクとして働いていたときはそれなりに、効果はあったそうだ。

 

「そうか、ご苦労だった。」

 

だが、少し前から変わった。ファントムタスクは見なくなったのだ。その証拠に、前なら多面的にファントムタスクは襲ってきたため作戦の報告はこれだけではすまなかったはずだ。

数多の戦いの指揮を執った国際連合軍のトップはため息をついた。

全くわからない。もし叶うことならこれをやろうと思ったあの男性IS操縦者に話を聞いてみたい。

 

「……………ふう。」

「やあ。」

「!?」

 

サラリーマンが着ているようなスーツを着た男がいきなり現れた。見たことがある、そう見たことがある。今では気狂い野郎として名をはせている、相澤康一だ。

自衛用の銃を抜き、撃った。乾いた破裂音が響き渡る。

 

「ひどいな。」

「っ!?」

 

確実に当たるはずの弾道をみても、身じろぎ一つせずに両手を上げてこちらを真っ直ぐ向いていた。腹からは血が滴り落ちていた。

 

「あなたは、ここのトップですよね?」

「ああ。」

「一つ頼みがあります。そのためにここにきました。」

「何だ?そのためだったら死んでもいいと言うのか?」

「もちろん。…………まあ、死なないことに越したことはなかったですけど。」

「死んだ後なら聞いてやってもいいな。」

「本当ですか!」

 

康一は心底うれしそうに目を輝かせながら、肩をつかんでいた。信奉とも呼べるその行動、恐怖しか感じなかった。まるで聖戦を叫ぶテロリストのように盲目な信仰を間近で見たのは初めてだった。

 

「お願いします!ISを宇宙に届けてやってください!」

「は?」

 

ぐるぐる、ぐるぐると思考が回っていく。メリットが存在しえない。何を根底にして動いているのかが全く見えない。夜の海を泳ぎ回っていると錯覚しそうなほどに。

 

「死んでからと言っただろう!?」

「とっくに死んでますよ。お願いします!」

「死ね!!」

 

堪忍袋の緒が切れたように、突発的にこの緊張に耐え切れず引き金を引いた。

 

「…………。」

 

ふう、とため息を付きながら康一は悲しそうな目で撃たれたところを見た。

 

「そうですか。」

 

そう一言だけいってその場から消失した。しばらくして、電話が鳴った。

 

「どうした?」

「ご無事ですか!?」

「いや、取り逃がした所だが」

「無事なら!やられました、ISが全部なくなっています!」

 

「は!?」

 

 ◆ ◆ ◆

 

「うんうん、まさかここまで上手くいくとはねぇ。」

 

「あたぼうよ。と言うかお前の協力あってこその話だけどな」

 

後ろでギャーギャーと騒いでいる音を聞きながら、楽しく俺は歩いていた。

 

「ああ、もうこれぐらいしか一気に取れる機会はないかなぁ。」

「後は常に肌身離さず持っている専用機を引っぺがすしかないか」

 

残り100前後。もううじゃうじゃありすぎて何があるか分かったもんじゃねーや。

ちまちま、やっていきましょうかね。

 

「出方みて、そこから決めるか。」

 

正直中国に行ってすべてのISを掻っ攫ってこれたのは僥倖だった、それかロシアだったらよかったんだが、まあ、高望みはできん。

 

分散させられるほうが厳しい。正直俺のファントムタスクの離反は結構痛手だ。

それに、まだファントムタスク側にはMのサイレント・ゼフィルス、いや今は黒騎士か。それとオータムのアラクネはまだ回収していない。あれらが少ない手ごまをどうやって回していくのか注意はしないといけない。

 

「ああ、康一IS学園には行ってくれるなよ。」

「…………わかってる」

 

今は、まだこのことを考えるべきではないとわかってはいるが少し、憂鬱になる。

 

 

「いま、織斑夫妻、姉弟は俺の天敵と化しているから」

 

 

深く深く吐いたため息が、騒がしさに溶けて消えていった。

 



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初めてあなたと出会ったのは疑心暗鬼の奈落の中

少し古めかしい光景。古いとは言うが小汚ささは感じられず、ただただ時を重ねただけではない歴史の重みが感じられる。

性質としては、京都などが挙げられるが、ここは日本じゃない。それにここは徹底してそれを前面に押し出しているような気がする。

俺は今イギリスに来ていた。

 

「んーんーんんー」

 

鼻歌交じりに俺はあるいた、何を隠そう飯を食いに来ている。もちろん素顔で。イギリスってメシマズってむちゃくちゃなイメージがあるが、俺はそこまで嫌いじゃない。

 

「さーて、何処のマッ○クに行こうかな。」「いっぺんイギリス人に殺されて来い。」

 

イヤホンからそんな声が聞こえた。最近マックしか食ってないわそれとグランドキャニオンのマックは普通だった。

 

「結構、俺世界行脚しているんだけど結構舌が肥えてきたような気がするな。」

「マ○ックのか?」

 

痛いところを突かれた。いや、こんなんでもないとやってられないんだよね。さっきお仕事してEU諸国からISぶんどってきたから疲れたし。

 

「これで70くらいにはなったか?」

「ああ、国が専用機持ちまで召集してISを一箇所に固めているのは助かったな。」

 

企業にISを貸与している形になっているから、守りの一手に徹して一箇所に集めたんだろうけど、逆効果だった。結局は陸路で近づかないと、エネをかなり使ってしまう。

 

「それにいたっては、いまさらって感じだろう?」

「耳が痛いぜ。さてと飯も食ったことだし、お次は……………どうしようか?人でも誘拐してこの前みたいにポータルとして使わせてもらおうか?」

「あれか、正直気が付かれたら終わりなんだが」

「だよね、人の脳に寄生できたら普通に痕跡は残るし。」

 

以前ランドルの脳にダイブしたときには、めちゃくちゃ苦しがってたじゃんと思うだろうが、あれはワザとだ。

 

「ロシアどうよ?」

「一箇所に集めてるねぇ。ご丁寧にステルス機能は解除されているよ」

「じゃあいくか。」

 

即決、俺はロシアに向かった。もたもたしている場合ではない、さっさと襲ってやろう。

 

「今回は火急を要する、ISを直接ポータルに開け。」

「いいのかい?対策取られるから嫌っていたはずなのに。」

「まあ、ほぼ壊滅状態な訳だし、早々対策は打てないでしょ。」

 

機械、と言うか通信機器があればそこから移動できる。早い話ポケベルで移動もできなくはない。ISならなおさら早い。緊急事態として一箇所に集めてしまったから、また回収すればいいだけの話だ。

 

「マップを出す。参考にしてくれ」

「……………。ここに更識姉は居ないな?」

「居ない。」

 

そうくれば、IS学園の残りの専用機はすべてIS学園に囲っていることになる。

 

「了解…………。いまだ、ここまで来れば。」

 

瞬間、頭が真っ白になった。視覚情報として脳が処理してくれたのは、そう遅くなかった、小さいガラス球に押し込められたような感覚、小さい小さい目を凝らして、よくみた。にやりと。口角が上がるのを抑えられない程度には好機であった。

 

「オラァ!カチコミじゃぁ!」

 

ISの待機状態を確認しそれにエネから呼び出した短刀を触れさせる。それを、そこに居る五機全部に。ああ、ISとは展開しなければこの程度なのか。っていうかそのとおりなんだけどな。

 

ふと無くなった、アクセサリーと目の前の男に驚愕した。

 

「あ、リアルプーチソだ。はろー」

 

不思議とプーチソは冷静だった。再度、エネに周りを探索させたが、ISの反応は無かった。勝機だな。

 

ここには、女4人と男一人、そして化け物2匹。

 

「あーあー」

 

喉を調子を整えるように声をだして、声色を変える。

 

「どーうもどーうもはじめましてこんにちわぁ、どう?どう?国家の威信であるISを俺の手に奪われたこの惨状は!ざーんねんでした、一箇所に集めて損害を広げないようにしようと思ってたけど裏目に出ちゃったみたいだねぇ!。」

 

奴の目からはどう写ったのだろうか、まあ、結構滑稽なんじゃないか!?

気配、そして、俺はISのスーパーセンサーを起動させて360°すべてをみた。強い意志を宿した真っ赤な目に、聡明な思考を体現するようなさわやかな水色。

 

そして、その人物にふさわしい水色のISの槍(ヒトゴロシ)を持っていて。今にも突き刺さりそうだ。

 

「アアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!」

 

エネを解除して俺の肌に肉が食い裂かれる感覚と、痛みが俺を襲った。ここで現実逃避ついでにエネの隠された情報その2

エネは、ISコアその物、その実態は、ISを極限にまで細くして繊維として扱ったものなのだ。スチールウールの服ならぬISコアウールの服である。

つまり、この服がエネであり破れたら、なおかつ燃やされでもした場合にはまあ、エネは死ぬ、爆発で肌を撫でられたりしたら確実に死ぬ。

繊維自体をボロボロにされると言うか、何処を破壊されても死にそう機能停止されたら俺も終わるし。だから一撃離脱を心がけなければならない。

 

あー、何が言いたいのかと言うと、エネしか起動していない時には、紙装甲であると言うことで。今この状況で最適解は何だと言うと。エネを解除するだけで、俺はこの痛みに耐えているしかない!。

 

とっさに、エネを退避させて少しはねる、この状況だと踏ん張って居たら確実に千切られるからな!

 

腹にさされるのはこれまでに結構したが、こんな馬鹿でかい物は初めてだ。

 

「康一!」

 

エネの声が聞こえる。が、すぐにやることはわかるだろう。脳のリミッターが外れるように、バカみたいな力を出して、背中から刺り腹から出ているランスを掴んでとめていた。口から生暖かい吐息が漏れ出たような気がした。

 

突き刺された反動で上半身に衝撃が来た。

 

「残念でした楯無サァン!」

 

が、エネが間に合った。ランスが消えたのだ、おびただしい量の血を見て俺はそれに手を伸ばした。振り向いて対峙しただが、出血が激しい。エネの能力で少しは血が止まっているのだろうが、貧血でふらふらする。

先に動いたのは簪姉の方だった。すばやく蛇腹剣で俺を切りつける。

 

「おわばっ!?」

 

俺はバックステップして距離を取ったが当然追ってくる。

 

「エネ!」

「了解。」

 

エネの力で速攻凝固させた血液を投げつけた!

 

「ねえ、あんた何型だっけ?康一の血液型占い!AB以外なら大凶死んじゃうかも!!」

 

他人の血液は多くの感染症を持っているABじゃなくても死ぬかも知れない。血液にはエネの力を存分につけてあると言うことはすなわち、ISのシールド分解だ。

まあ、この行動は他人の血液をそのまま検査もなしにぶち込む危険な行為をやっていると言うわけだ。

 

「くっ!」

 

俺は、もう一回血液を投げつけてハイダーブレードの柄だけを呼び出しそれを右逆袈裟に思いっきり振るった。

簪姉はそれを刀身がないのにも関わらずよけた。致命的な隙だ、あほみたいに過剰に反応し死に体となっている俺に蛇腹剣で切り付けようとした瞬間

 

「バイバーイ」

 

俺はそこから姿をかき消した、その場にあるのは白いもやだっただろう。

簪姉には情報がある。

先ほどまであった状況と目撃情報。頭の回転が速いからこそたどり着いたエネの力、それによる能力に対処するために簪姉はISを捨て、隠し持っていたナイフを持った。

 

ISを基点にした瞬間移動。その可能性に気が付いてしまった。

 

そして、それを選択する以上に。相澤康一という存在は狂っていた。

 

消えたその場から再び出現した。ISではなく、虚空から。

 

「!!」

「ざんねん。むねんってね」

 

それに驚きこそしたが、楯無は待って居ましたとでも言わんばかりに、笑いながら目に零れんばかりに殺意を湛えていた。

それは水色のクリスタル、清涼感を持つその色の中には苛烈な暴力が秘められていて、気化爆弾4個分ほどの攻撃力。

けど、康一は勘違いしていた。それを爆発させると言う選択をする以上に、世界はやさしくできていた。

 

「それ無駄だね。」

「…………こっちの台詞よ」

 

康一は、クリスタルと人体の串刺しにしていて、その意味を。悟られるなんてことを予想だにしていなかった。

 

「なんでそんな事をするの!?普通に殺せばいいだけじゃない!」

「状況を把握できなくなるぐらい気でも狂ったか?」

「全てわかってるわ!だって全員ころして」

 

楯無は消えた。悪いとも言わない。ただ頭のねじがぶっ飛んでいるだけ。

唯一わかっていることは…………。

 

「ったくよう、ばれつつあるのか。」

「そのようだね。」

 

悪とは正義の反対であり、他の人はまた別の正義、または自分の都合で弱者を痛めつける行為とする人間もいる。俺は悪をこう定義する。

 

「悪って言うのは正義という大多数の人間の共通認識を一人の人として認識しているにも関わらず、その認識をずらしてのんべんだらりと交わしてそれを皮肉る行為」

 

そして、俺はどうしようもにぐらい「悪」だった

 

 



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心の鏡に映る私は醜く貴女は奇麗

ふと、起きた時に、涙を流していることがある。それはいつごろだったか忘れた。まあ、死ぬ前にはなかった話だ。

もう忘れているとは思うが俺は転生者だ、ただ重苦しい地獄とも大地獄とも呼べない中途半端な地獄のことなど思い出すメリットがないだけ。

 

今回それを思い出したのは、今日起きた時に涙を流していたからだ。こんな日はよくないことが起こると思う。

 

「おはよう。」

「ああ、おはようだ。」

 

エネにこの原因を聞くわけにもいかない、と少し困ったように頬を掻いていた。

少し、日光に照らされながら、小さいまどろみに身を任せていた。ゆらゆらとすごしたその時間は、午後まで続いた。空が、少し赤くなってきた頃に事件は起こった。

 

ふとカゲアカシを起動して情報を集めようと思った矢先、思惑とは裏腹に情報を集めるのではなく与えられた。

 

「……………。」

「っ!?」

 

康一は怒った、怒ったという表現が生ぬるいほどの感情だったが。

エネは焦った、彼女を呼び覚ましてしまうのではないかと。だが、送られてきた内容が内容だ。

 

『お前の親を預かった、今日の日没にまで来なかったら、爆発させる。』

 

そこにあったのは、康一で言う所のお手伝いさん、大高秋音。それがカプセルに閉じ込められている写真と上に書いた内容が送り付けられていた。

親、肉体的なつながりではなかったが、擬似的にでも愛を教えてくれた、少しでも救ってくれた恩人で母親のような物で。それを踏みにじられるような行為は絶対に許さない。

 

ベットに腰掛けていたのを反動を付けて立ち上がり、遠慮なくエネを使った(・・・)

 

頭の中には一つしかなかった救うと。

 

 ◆ ◆ ◆

 

座標の極近くにポータルとなりえる通信機器を探して、そこに転移する。怒りに塗れているのにも関わらず、そこまでは冷静だったのだが。

 

あれを見るまでは、あの透明なカプセルの中に大高秋音を見るまでは。

 

「おっ」

 

獣のように俺は意識をなくしていた。今、今やらねばあの俺にとって大切な命が無くなってしまう。人としての生きかた常人のような生きかたではなかったが、今の俺を、この俺を作ってくれた人が!

 

「おおおおおおおおおおおおおおおおおおオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!!」

 

助け出して、こんなふざけた奴を殺す誰であろうと殺す。

カゲアカシのペトゥルを15へって12機を限界駆動させて高速でカプセルの元へと飛んだ。

 

 

 

右手には、大太刀、それを胸の辺りに刺した。

 

 

 

「は?」

 

康一の耳にはそう聞こえた。まるでエネの能力をわかってない上で、人質の意味を持つと言わんばかりに。

 

「っ!?」

 

振り向いたその場所に。おびえたような反応、そこには二体のISそしてバカ二人。

 

「…………」

 

二人は元同僚オータム、そしてM。そしてもう一人バカが増えた。

 

「アハッ」

 

「アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハッ」

 

「楽しいね!二人ともォォォォォォォォォォ!!!!」

 

狂った、同じ、本当に同じ状況。大切な人がもっと大切になり、そして康一が香になった時の事だった。

 

 ◆ ◆ ◆

それは、本当に偶然で、都合がよすぎる変な物語。

 

始まりは、誘拐だった。女性をなぜか連れ去った、それがただただ、大高秋音だっただけのことで。

 

目の前で連れ去られた当時三歳の康一はそれを追った、銀のワゴン車だった。とはいえ場所の特定には時間が掛かった、どうあがいても三歳なのだから。だが三歳とは思えない行動力で、周辺の監視カメラの映像を盗み出し、聞き込みをして場所の特定を図った。

 

 

人気の全くない所にあった、ワゴンを見つけたときはかなりの日数がたっており、そこに大高秋音がいたことはほぼ奇跡に近いだろう。工場内。

 

 

みたのは拳銃、縛られている光景、それは…………。

 

康一の脳がフル回転して、はらわたが煮えたぎるような怒りが身を焼いた。

 

「ウワアアアアアアアン」

 

子供の泣き声が聞こえた。大高にはそれが悪い予感を告げるものでしかなかった。

 

「ウワアアアアアアアン」

 

気味悪く劈く泣き声がだんだん近づいている。

 

「ウワアアアアアアアン」

 

まるで、これから起こることを悲しんでいるかのように。

 

「ウワアアアアアアアン」

 

ぴたりと止んだ。主犯と腰ぎんちゃく合わせて10人ほどはいただろう。それらは一斉に一箇所を向いた。子供だった。

 

そして死その物だった。

 

霧のように掻き消えたと思ったら一人が倒れた。音もなく。

 

欲望の力が爆発された、してしまった。

 

「お手伝いさん、少し待ってて。」

 

神速と言っても過言ではない。彼らは肉体を酷使した動きに翻弄されていく。常人の動体視力をはるかに超えて一人また一人と沈めていく。

 

銃声、打撃音、物が落ちる音、そこで起きる音すべては殺しのためにあった。

 

「助けに来たよ?」

 

康一は血まみれになってそう言った、それに薄気味悪さを感じるのは無理のないことだった。

 

「大丈夫…………なんですか?」

 

何も言わずに、額にキスをして微笑んだ。同時に銃声が聞こえて、血は康一のものか敵のものか分からない状態になった。

 

「康一様!」

「心配しないで?」

 

 ◆ ◆ ◆

 

それは人を殺した記憶、大切が大きく命を切りとることになった事件。それが康一の胸裏から鎌首をもたげて白い蛇が、心を噛み砕いた。

 

『いやーなこと思い出しちまったな。』

 

『じゃあね、私はもう要らないみたいだね』

 

『知ったことかよ。勝手に守っててお疲れてたんだろうよお前も、そんじゃお休みだ。』

 

心、唯一力のブレーキとなった物はここで砕け散った。

 

 

 

「M、オータム。もう容赦できねえぞ。」

 

 

震えた声で言った。力の譲渡は終わった。今ここにあるのはただ、ケダモノの凱旋である

 



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十数年、それは貴女との別れまでの間。

山の中。そこはあまり人の手が入っていない所詮雑木林と呼ばれる所だった。普段あまりにも静かで自然に生きる動物の活動が息づいているような所だった。

 

だった、つまりは過去形でしかない。

 

今では戦場、たった三人しかいなかったが、そこは確実に戦場だった。

血の臭い、爆発や熱量によって掘り起こされた土や残骸に、動物の死骸。人を狂わす暴力がところどころに見えて、そして爆心地では。

 

「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!」

「オラアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!」

 

二人が切り結び、一人がそれを援護している。2対1の状況下に立たされた相澤康一とそれを迎え撃つオータムとM、そしてそれを圧倒しているのは明らかに相澤康一だった。

 

お忘れだろうが、相澤康一は転生者だ。俗に転生者とか言ったら強くてニューゲームとか無双とか、そういうものを思い出すだろう。だがそれは人の範囲であって、どれだけ転生者という特典があったとしてもISと言う人型兵器の世界ではあまり生きてこなかっただけの話で、そこそこ強い。

まあ、それでもISの世界では周りの人間すべてがチート級の化け物ぞろいだからやはり生きてこない。

 

が、こうも圧倒しているのは故に執念の力と言っても過言ではないだろう。切り札を全力で出し切り、ここで全てをかけているに過ぎない。

 

「ラアアアアアアアッ!!」

 

クレイジーストリッパー、朧太刀、十五夜、ラグナロクの一撃などふんだんに使っただが、それでも二人は届かなかった。

そもそも、最近がおかしかった。突発的に予定に追われるようにやった戦闘は本来の戦いではない。用意周到に準備をして罠に嵌めて勝つ確率を上げた状態で勝負になるのが、この相澤康一の戦い方だったのだが、状況はそうはさせてくれなかった。

今の状況はまさしくそれであったが、それでも康一はまだ手札を全て切った訳でもなかった。

 

「徹底的にぶち殺す!」

 

その一言と共に、康一の体は輝いた。

 

「貴様らに冥土の土産として教えてやろう!これが全であり個の力。矛盾を孕んだ物の行く先と知れ!エネ!『カーテン』だ!!」

 

ただただ光っただけだった。確実に光とだけ呼べるもので、断じて何かが燃えていると言うわけではない。それだけで何かはわかったらしい。

 

「まずい、あれは!」

「何だぁ!?」

 

すでに、Mはわかっていると会話の中でわかった。

 

「光、そう光なんだ。そして、これが見えているってことは、光が届いているってことだよなぁ!?」

 

よくみると、二人のISの周りには自動防御のバリアが張られていた。

 

「まさかこれって!」

「可視光線が普通に攻撃力を持っているとISが判断しているんだ!」

 

「捕まえた。」

 

地面と言う名の地獄、ISの推進力が無に感じられるほどの力でオータムが押さえつけられた。

 

「ISはさ」

殴った。

「頑丈にできているんだよ」

殴った。

「宇宙でも人を生かすために」

殴った。

「だから地球じゃエネルギーをあまり使わない」

殴った。

「過酷な環境じゃないからな」

殴った。

「なら、過酷にしてやればいい。」

素手で殴った。

「軍用ISでも致命的なぐらいに。」

殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る、殴って、殴って、殴って、殴って、殴り潰す。そこまでいくともはやただの鬱憤晴らしだった。

 

「エームー?ドーエーム。」

 

康一はゆったりと立ち上がり、光の失われた目でMをさがしていた。

 

「おーいーでー?」

 

やっと見つけて、口だけが笑みを浮かべてそう言った。蛇に睨まれた蛙のことわざのように身動きをとれずにいた。

 

「三秒待つよ?ひとーつ」

 

一つを数える

 

「ふたーつ」「まて。」

 

動揺を隠さずにゆっくりゆっくりと地上にいる康一に近づいた。何かが違う、前にこの男に本格的に接触したときに感じた、母性にも似た何かは混じっているものの、まったく別の何かになってしまっているように感じた。

まるで、アノ時の香と名乗った時と康一と名乗っている時をあわせたような雰囲気。

 

エムはつばを飲んだ、その行動一つにも多大な負荷をかけられているような気がするほど緊張している。

 

「おいで?」

 

次の瞬間には、首を飛ばされてもおかしくはない。そう考えながらじりじりと距離を詰めていた。

 

「IS、ちょうだい?」

「ああ」

 

即解除、あんな光景を見せられたらそうするしかなかった。心が弱いとかそういう次元の話ではない、絶望的に勝てない。

エムは、ISを解除し康一に渡した。

 

「一つ聞きたいことがあるんだけどいいかな?」

 

「この作戦を考えた愚か者は誰かな?エム、教えてくれないかな?俺知りたいなぁ。」

 

「ランドル博士です。」

 

康一はふっと、風のように消えていた。

 

一気に緊張の糸が切れその場に崩れ落ちるようにへたり込んだのは無理もないことだった。

 

「はぁ…………はぁ…………。」

 

息が切れて動悸も激しくなってきた。自分は世界に隔絶された存在だと思っていた、織斑千冬のクローンとして生れ落ちてそう思っていた。だが現実へ、一固体として認めてくれたアノ人は居ない。

 

なぜだか、Mはそう思った。

 

 ◆ ◆ ◆

 

「呼び覚ましちゃったか」

「エネ、ありがとう。すべて思い出したよ。俺化け物じゃねーか。」

 

なけなしの理性だった。いや、本能を極限にまで抑えて、自分の拠り所を一つに絞った。絶対に許さないと思うその一線を越えてしまった者に対する報復だったが。ここまで苛烈になるとは、エネは思っていなかった。

それに加え、昔のことを思い出してしまった、香を思い出す条件を、トラウマを思い出す条件を揃えてしまった。

 

「何をいまさら。君は世界に楯突いた、IS学園に反旗を翻した時点で他人とは隔絶した思考を持つ、化け物になっていたんだ」

 

「それ以前の話だ。」

 

悪戯やその他悪いことは一通りやっているが殺人だけはしたことがなかった。なぜか?命は取り返しが付かないからだ。

やるだけ回りに被害をもたらしても、俺はそれを元に戻そうと尽力していた。俺が決めた人である為のルール。

 

「破ってたんだな。」

「真実とは時に劇薬だ。」

「知ってる。その劇薬を一時的にでもお前は守ってくれた。俺がパンドラの箱のようにこの記憶を封じていたのもおかしくはない。ここまで、一夏たちと一緒に成長させてくれるまでに待っていてくれた、それだけでありがたい」

 

「ポジティブなのかネガティブなのか。わからないな君は」

 

「俺の感情がどうであろうと俺について回る状況は変わってはくれない。だったら俺は感情と回る感情を殺す、時と必要に応じてね。」

 

そこで言葉を詰まらせた。これは、またランドルと同じように「相澤康一」本人の感情が暴走して起こった結果だ。

 

「君はようやく吹っ切れたようだな。私たちを人間と呼称しそれでもなお世界を変えるには私たちを道具として扱うしかなかった。」

 

「今回ばかりはゆるさねえ」

 

「わかってる、実は初めてで興奮しているんだよ」

 

 

 

「私がIS(道具)として動くのは。」

 

 

 

 

 

一人と一機、それが極々純粋な私刑で動いた結果は、ただの地獄だった。



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エンドロール後に現れた文字のようなもの

「ハロー」

「ハローですね」

「ご機嫌はいかがかな?」

「とっても最低な気分です」

「それなら何より」

「あなたの話は聞いていました。世間を大きく騒がせて、何よりあなたは何も変わってないと確認させられました。」

「と言うことは私が人気者になったと言うことですかね。」

「そういうことです。」

「それはそうと、体調はどう?どこか気分が悪いとかありませんか?」

「康一あまり私をなめるな。一応世界で一番の天災に作られたモノだ、アフターケアもばっちりに決まっているだろう?」

「そうかい」

「そちらの方は?」

「紹介する。たぶん二番目に俺の人生に関わっているものだ。エネって言う。」

「どうも…………」

「はじめましてだ。」

「はじめまして。エネさん、実はいくつか聞きたいことがあるのですが」

「遠慮するな、何でも聞いてくれ。」

「私は死んだのですか?」

「いや、死んでは居ない。だが、確実に現実からは消滅していただろうな。説明が難しいが、あー食べられてウ○コになって植物の肥料として吸収されたといった所か。」

「おい!?」

「実際、動物と植物の違いは葉緑体と壁の有無で生命体である事に変わりはないんだ。生きてはいるが元のものではないってことを伝えたかっただけだ。大体、人間の体は一年もすれば体細胞は全部入れ替わるんだそれが早いか遅いかの違いだろ。」

「完璧に悪意を持ってテメーはウ○コだみたいな意味になってるだろうが。」

「すまないね。このマザコン野郎。」

「やるかコラ?」

「プッ。アハハハハ。」

「どうしたの?いきなり笑い始めて」

「いや私と居るときより生き生きとしていると思いまして。」

「それはそうだ、彼のことならすべてわかっている。どうだ?そこの素直になれない不器用の心の内でも見透かして貴方に伝えようか?」

「やめてエネ。そんな事をされたら恥ずかしさで爆発四散してしまう」

「どうやらその言葉は本心のようだ。さて、大高秋音。君の立場はただの被害者だそして加害者がすでに私刑された。ここはすでに現実の物となっているが、君はここから移動し日常に叩き込むとするがどうする?」

「そうですね、康一様を一目見れただけでも。それと、康一様に一言よろしいでしょうか?」

「康一で良いつってんだろ?何が言いたいの?」

「なんブベッ!?」

 綺麗にグーで殴り飛ばされていた。

「おー、よくノーモーションであそこまで吹っ飛ぶものだ。」

「ふざけないでください。」

「確かに一言だな。肉体言語的には二言な気もしなくはないが。」

「そんなことはどうでもいいです!私は心配したんですよ!?」

「…………やっぱ、あんたは変わってないわ。」

「そうそう人が変わってたまるものですか」

「さて、康一準備ができたぞ。」

「もう、か。仕方ないな。お手」

「康一!」

「……………秋音さん。」

「なん、ぶぐっ。なんですかwww」

「笑わないで!?俺の精神が時の間になっちゃう!」

 

『「秋音!」「康一!」これまでありがとう、愛してい「ました!」「たぜ!」』

 

「…………………君たちは本当に親と子だよ。覚悟はできたんだね?」

「ああ。」

「ちょっと?私あまりできてないのですが。」

「大丈夫だよ、少し空を飛べる気分を味わうだけさ。」

「さあ!行こう!」

 

 

「ちょっと!この仕打ちはないんじゃないのですかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」

 

 



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犠牲になった私

「やあ二重人格ってこうやって対話できるものなんだねぇ」

 

一つ、頭の中で声が響く。

 

「どうも、はじめまして。俺」

「どうも、ひさしぶりね。私」

 

二つ、目に焼きつく下卑た笑み。

 

「さあ、さあ。葬式だ。」

 

三つ、不意突き回る二枚舌。

 

「新たなる俺よ。」

「古びた私、よく見てね?」

 

四つ、慈悲なく慈悲を殺す。

 

「それじゃ、ばいばい。」

 

五つ、死んださ。いつものように。血をすすり肉を食べる。

 

「……………。ありがとう相川香よう。糧になった。」

 

 ◆ ◆ ◆

 

俺は繰り返した。必要なもののために自分を殺した。ただ一つ違うのは。逆らっただけ。

 

致命的なまでに。逆らっただけ。

 

それは、ルーチンワークのようなものであったはずなのだ。それは、確実に今の、相澤康一にとってやらなければいけない物だったのだ。

 

それに、逆らった。

 

手には血。それに臓器。俺に課したたった一つの誓いは、ある意味では結構前に破られていた。

 

初めて俺は冷静に、人を殺した。

 

 ◆ ◆ ◆

 

死体は何も語らない。とは嘘だ。死体は多くを語ってくれる。死亡時刻、体形や死因、それに人体に隠した謎さえ明かしてくれる。

そう、死体とはかなり重要なものであると同時に、隠されるものでもある。もっとも、ランドルの場合は一片たりとも残っては居ないが。と言うわけで今回はさくっとランドルをコロコロしてきた後でございます。

 

「あれはまさに鬼気迫ると言った感じだった。実際に君はキレたら何をするか分からん怖さはあるな。」

 

「それにちょっくら付き合ってくれよ。」

 

少し口角を上げながら言った。

 

「それについて何だがね。」

「あん?」

 

疑問を口にしたことで、その先をエネは言った。

 

「IS学園に残るすべてのISが収容された。」

「なるほど。打って出てきた訳だ。」

 

康一は、一つの予想と言うかISを保護する立場からしたら一番の最善手。これまでに流した情報から予測できやすい状態にまでなっている。まあ、誰だってそーする。俺もそーすると言った状態を生み出した。

 

「だからと言ってきついのには変わりないがな。」

 

まあ、対策はできるだろう。

ISはその実自由自在に大きさを変えられる。今回はたぶん、ISその物をIS学園に輸送。そして次には人って感じか。

 

「虎穴に入らば虎子を得ずってか。ドラゴンの腹の中に居たほうがまだ希望は見れるね。」

「確実に神話生物10体ほどいる虎穴だが?」

 

それが一番の問題だ。ここにあるISは其れは其れは俺の涙ぐましい努力によって入手した物ではあるがそれをまともに使えるわけがない。なにせ元々IS適正が全くない状態で使えているのがおかしい状態であるにもかかわらず、ISの同時展開ができる訳がない。ISをドレスコートのように早着替えしようとしても俺ではどうあがいても装備、解除、装備。3秒はかかるな。死ぬな。

 

「また何か変なこと考えているようだが。大体が同時展開はお勧めしないよ」

「何でだ?」

「これまでは装備の一部の多重展開に、切り替えにしか過ぎなかったが丸々の多重展開ともなるとかなり負担がかかる。」

 

そういわれて自分の行動を振り返る。オルコット嬢のビットを並列運用したとき、カゲアカシとネルを同時併用したとき。思えばISを並列的に使うときはかなりの負担がかかった。

 

「元々君がカゲアカシを使うのも反対したいんだがねぇ。」

 

俺がその言葉に何でだと言う言葉を挟む前に、注釈のように説明を入れてきた。

 

「カゲアカシを使うには君も知っているとおり、私を介して処理している。一夏の様な化け物とは違い、凡人の男に使わせるにはそうするしかない。で私と康一のIS適正はSだ、寧ろSSと言ってもいいだろう。私を君に極限にまで最適化した訳だから当たり前と言えば当たり前なのだが。」

「と、そんな話は置いといてだな。君はISを操作するときの思考をよくパソコンに見立てて説明しているが、その表現を引用させてもらうと……………。」

 

そうだな、と一拍置いて少し考えた。

 

 

「君は無理矢理ハイスペックなエミュレーターを使っている低スペPCだ。今にもクラッシュしそう。」

 

 

クラッシュした時のことは俺の頭には想像したくない未来が。脳が爆発でもするのだろうか?

だとしたら、もう少し持ってくれよ俺の脳みそ。

 

「よし、それじゃあ情報収集だ。」

「だと思ったよ。相も変わらず君は人の話を聴こうとしない。」

 

と言われましても。エネに命じたのはIS学園内にあるカメラのデータ回収。それでどうなっているかをみるが、大体決まりきっているだろうし。

 

 

 

ちょっと、このときだけは。

 

 

 

時は元旦、日本の正月では紅白歌合戦とかガキ使とか。それらを終えてお年玉と言うような小学生の心にビンビン来る物であるが、俺はあまり好きじゃなかった。仕事が増えるからな。

 

「けれど、まあこんなにも世俗にまみれるとは。」

 

今は日本の神社に初もうでに来ている。

 

霊験あらたかとか、そういう物ではなく田舎にある寂れた神社の前に俺はいた、こういう所が俺にはお似合いだろうと心の中で自虐した。さすがに冬というものも相まって空気が澄んでいる、息を吸い込むたびに肺が焼けると錯覚する冷気が、頬を叩くほどに意識をはっきりとさせた。

 

神社の参拝の方法は知らない。金を投げ、頭を下げた。

 

願うのは。

願うのは。

 

「どうか、どうか、この先へと。」

 

空を見てそう思った。池に投げ入れる様なやり場のない届かぬか弱い詠嘆は、寂れた神社に深い波紋をもたらした。あいつの最後の声だったように思えた。

 



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そうだね、ばけものだね。

暗殺。それは古来より脈々と受け継がれてきた下克上の技。始皇帝を抹殺しようとしたり、忍び殺す、大きな強固に守られた圧制者を転覆させる。浸水した船のようにその一撃は歴史をも変える。

つまり、俺が言いたいのは北斗神拳なんて暗殺拳じゃねーと言うことである。違うのである。

 

「何を言いっているんだお前は?」

 

はい、と言うわけで暗殺です。ええ暗殺ですとも。殺さない暗殺ですとも。

 

「暗殺じゃないじゃん」

 

まあ、潜伏するのには変わらないよ。それに、IS操縦者はISを奪われれば死ぬ。信じられないぐらいのでくの坊になる。今回はそれを見せてやろう。

 

「すべては私の力じゃないか。」

 

そうなんだけどね。

 

さて、IS操縦者をでくの坊にする方法を教えます。

まず最初は、エネの力を使いISエネルギーを放出。網を作ります、この時点では対象のIS操縦者はISのスーパーセンサーを使っては居ますがあまり気にしません。

そして次にエネで作った網にIS操縦者が引っかかるのを待ちます。今回は夜に巡回していたIS操縦者が引っかかりました。

最後の仕上げに、エネの力を使ってISにハッキング。これでIS操縦者はISを使えなくなります。

このようにどんな強固なセキュリティでも、たとえパソコンをオフラインにしていても確実にハッキングできる最強のハカーツール、エネ。

今ならサンキュッパで三無量大数九千八百不可思議です。お安いでしょう?今ならなんと相澤康一も付いてくる!

 

「実にいらないね。」

 

そういうなって、今ならパンツも付いてくる。

 

「で?何人が引っかかったんだ?」

 

ばれない場所においたから、あまり引っかかってないかな。ふらっと立ち寄ったみたいな傾向が多いし、職員や外部保護者に多い。正直全員をでくの坊にしたとして、何分だ?お前がIS操縦者をでくの坊にしてやれる時間は?

 

「全員となると2秒も持たないね。」

 

だろう?それに今おかれている状況が状況だ。これは長くなるほど酷くなる。さて、今おかれている状況を説明がてら回想

 

 ◆ ◆ ◆

 

「うってでるよ」

「そろそろとは思っていたが、ついにやるか。」

 

正月が終わり、少しだらだらしていたとき。俺は準備も済んであるため、コンビニに行こうと言わんばかりのノリでIS学園に襲撃しようと思っていた。

 

「それじゃあ、どうする?」

「こっそり進入する。今は見つからないように入ることを考える」

 

まずはそれからだ。それでもエネ任せになってしまうのだが。

 

「わかった、できる限り要望に答えよう。」

 

この一人と一機の戦いにおいて、嫌な予感は付いて回った。それをエネの全能性を武器に打ち破っていたが。これが最後になると俺は思った。たとえるなら一日の出来事を八週くらいに分けてやっている週間少年誌系のアニメのごとく、ここで、終わらせると思った。

そして少しの立ちくらみを様な感覚が襲う、いつもの感覚。視覚情報があれば

 

「あ、まずい。」

 

非常に嫌なことを言ってくれる。だが今まででエネがこういってやばくなかったことはない。終わるまで身をゆだねるしかない。

 

「さーて、目を開けて死ね。」

 

いわれたままに目を開けた。

 

「ふつうじゃね?」

 

特に変わったところはない。ならどうしてだ?

 

「……………言いたくはないが。」

 

と、懇切丁寧に今ある状況を教えてくれた。

・入れた。

・でれない

 

「なるほど。実に簡素で端的でなおかつ優しい説明だな。マジか。」

 

「しかもだね、たぶん篠ノ之束の作品郡がオンパレードだ」

 

「ふむふむ、マジか。」

 

「人に見つかったら死ぬ可能性もある。」

 

「デスパレードだな、死神が列を成すのが見えてるぜ。俺の場合数百本の命綱をじょりじょりと削っていく作業になるが。」

 

とりあえず、この状態には俺はマジかとしか言えなかった。

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

とまあ、いつ獲物がかかるかわからないので常時青いジャージである必要はあるが。こうやって待ち構えているわけだ。幸いここは林の中だ、少々視界が悪く、隠れるにはうってつけだ。

 

「マジカーマジなのかー」

「何回いってんだ。」

 

それはいいとして。どうやら引っかかってくれたようだ。

 

「ジャマー起動だ!」

「あいよ。」

 

俺の合図でエネの能力ISジャマー。そして、ISを当然のごとく使おうとしてる彼女は致命的な隙ができた。

 

「ほら、ただの打たれ弱い女性の出来上がりだ。アレが勃つようだったら襲ってただろうね。」

「何気に最低なこと言ってるな」

 

そろそろ、動くか。俺は身を隠した。非常事態でもなかったのでISを回収し、当て身によって気絶した女性はその場に放置。少し夜もふけている所だ、一目に当たるようなところにおいておけば、あっちから人が寄ってくるだろう。

 

「ジェシカ!」

「当て身!」

 

同僚らしく人がISを展開しながら近づいた。ほらね?気分は金属の歯車

ふう、IS自体は展開していたが絶対防御は消してくれたみたいだ。エネと花○院が救ってくれた。

 

「私なにもやってないが・・・」

「うそ!?人間卒業!?」

「うそ。」

 

びっくりさせるんじゃねえ。さてと次はどうするか。ぜんぜん予想だにしていなかったが二人も釣れた。いそいそと、ISを待機状態にしてエネに収納した

 

「幸先がいいな。」

「しかし二人も引っかかるとは思ってなかった。」

「いや、引っかかったのは三人だ。」

 

声。俺とエネのではない。そもそも、エネの声は他人に聞こえていない。イヤホンで耳をふさいでいるからな。

では、エネがしゃべっていなかったとしたら誰の声だろうか?

そして、このわき腹から伝わるこの血を流した感覚はどういったものだろうか?

 

「終わりだ。」

「」

 

反射的に距離をとった。そしてこの状態を作った人物を見た。絶句した。ひとつの間を置いて、俺はそいつの名を叫んだ。

 

「一夏ぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああああああああああっ!!」

「康一ぃぃぃぃいいいいいいいいいいいいっ!!」

 

俺は目を疑った。右には振りぬかれたナイフ、左には酒瓶。右手には白式の待機状態である白い手甲は付いていなかった。行けると俺は痛みを感じながらエネを仕舞う、ISスーツは切り裂かれていないものの、これ以上ない位に拳に力が入った。

 

『康一機能の一部を制限された、ここから出ることはほぼ不可能となった。』

 

エネの言葉は届かなかった。どれだけ早く目の前のやつを無力化するかだけが俺の頭を支配していた。

 

「「オオオオオオオオオッ!」」

 

酒瓶を振り下ろす。俺は拳で迎撃するために手首を狙った。思惑通りに一夏は酒瓶を落としてくれた。多少スマッシュ気味に腹部を狙う。そして右のナイフを封じるために懐にもぐりこんだ、少し一夏の胸板に頭突きするような形になる。身長が俺のほうが小さいからできることだ。

 

「ふッ!!」

 

瞬間一夏は、ナイフを捨て俺の下げて背中を包み込むように丸まり押さえつけ、腕を回してつかんだ。

 

「でりゃああ!!」

 

そのまま、後ろに膂力を使って投げ飛ばした。天地がひっくり返るような豪快で強引な投げ、無様に受身をあまり取れずに背中から着地した。

肺の中の空気が一気に抜ける、無力化したからいいさと決め付けて俺は無理やり立ち上がる。少しめまいはしたが持ち前の演技力、やせ我慢といえるかもしれない。を使い平静に勤めた。

即座に一夏が投げの体制から拳を構えた。身のこなしが違う。

 

「オオオッ!」

 

拳を打ち、かわす、いなし、いなされ、数発打ち合っただけだが、わかる。強いと。俺の一発一発は軽く、一夏のものは一発が重い。見れば体つきもよくなって、まるでとある人物を殺すために血反吐を吐くまで修練したその集大成があの体だ。

 

「嫌な人間になってやがって!」

 

俺の感想はその一言に尽きる。織斑の血は、よほど人外じみてくるのがお好きらしい。

それでもやらなきゃいけないんだ。攻めなければ、攻めなければ。

 

「エネ!」

「システムの一部に異常を来たした!ISの展開は不可能だ、必死に修復しているところだよ!これが終わったら安らかに死ね!」

 

軽口聞けるほどだったら大丈夫だ。目の前の敵に集中して置ける。

 

「あああああああッ!!」

「くっ!?」

 

一夏が力任せに拳を振った。まるで、仇を目の前にして憤っているようじゃないか。

 

「おい!でくの坊!」

「っせえ!」

 

一夏の右下段蹴りを力で耐える、重ねて左手で攻撃を加えようとしているのが見えた。半歩スライドさせるように前へ、右で視界と左手の攻撃を塞ぐ様にして。左手をパーに狙うは股間。

 

「っ!?だあああ!!!」

 

左をわざと空振りさせてその反動を使い左の膝がくる一夏の右足が支点、左足が作用点のてこの原理により俺と一夏は一緒に倒れこむような形になった。

 

「ぐっ!?」

 

このまま関節技に行きたかったが、いかんせん相手の力が強すぎる。無様に転がるようにして逃げた。

 

「クソッ!」

 

状況はさらに最悪になっている、チラッとだが、ISがぞろぞろと出撃しているのが見えた。さすがに50機ほどだローテーションするぐらいはあるし、何より俺だけの単独犯って言うのはそもそもの決定事項らしい。

少しニヤついた元担任殿が「まあ、ここでは私の管理下だ。何を信じ、何を作戦にしようなど、私の勝手だようは戦果をだせばいいのだろう?」と言うがごとく采配だ。

 

「死ぬんじゃねえか?」

 

一目散に逃げた。スタミナはあまりないがスピードには長けてる、この逃亡襲撃生活で鍛えてきた逃げ足の速さ!なめるんじゃねえ!

 

ズガン!「っ!?」

 

体を震わす衝撃、後ろを一瞬だけ見てさらに足を速めた。先ほどはなかった金属質な大腕からでる、飛び道具。それが指し示すものはただ一つ

 

「化けもんがああああああああ!!」

 

ISの遠隔展開!?そんなんじゃリンクをきった所で再展開されるのがオチだ!

 

「次は当てる。」

 

非常にぶっ飛んでいやがる!一夏が胸に持つ絶対の自信が伝わってくる。こいつ、マジで当てる気でいやがる。俺は翻って跳ねた、死中に活!逃げられないなら当たって砕けてしまえばいいんだ!

 

「オオオッ!」

 

俺は一夏の目を見た。まっすぐまっすぐ、心の奥底を見るように。電流のようにはかなく、強い動揺!

それを、俺の中に出てきた、強い衝動で叩きのめす!

 

「いくぜ私!」

 

力の使い方は本能が教えてくれた。身をねじり視線を見たそのまんまに撃ってくる、お前はそういう実直な奴だったよ。

肉が焼けるにおいを感じて、ようやっとたどりついてくれた。そして、右腕にさよならを告げた。

 

「!?」

 

ISの一部機能を壊すほどにぶん殴った。

鉄の塊を殴って、なおかつぶっ壊した破壊力。真っ向から立ち向かっていなくともこのレベルの負傷で済んだのは俺の体はかなり頑丈にできている事を実証した証ともいえるだろう。

何を「相川香」の時に化け物じみて壊していただろうって?あれはISの矛盾をつき、なおかつ不気味すぎる恐怖や、おかれている状況が違いすぎる。相川香の使っていた力と言うか俺に権限が渡されただけなんだが。

 

今回はまともに、左手の関節を狙った。

だが機能を制限されたISとはいえ、ISの自己修復機能でおそらく長すぎる一瞬を得た!

 

「腕を切らせて」

 

一夏は異常な反応能力を見せ、射撃武器から近接に切り替える。右で持った刀で切るがもう遅い。

 

「命絶つ!」

 

正に『左腕が飛んだ』といえる。それはキーだ頭を狂わせる力を出す鍵。それほどの力を出すのであれば元から頭が狂ってしまえばいい。吼えた。痛みに、そしてただひとつの勝利に。

 

「まあ、そこで寝てろ。」

 

俺は一目散に逃げ出した。逃げ切れるかどうかわからないが一夏には逃げられるだろう。絶対防御を貫通しそこに寝てた一夏を尻目に逃げ出した。

 

 

「後でくっつけといて」

「普通のすかお前は」

 

 

 



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プリズンブレイカー(他力本願)

「あー痛い。」

「我慢しろ、これでも急ピッチで直してるわ。」

 

俺らは逃げていた。

 

「あらかたの修理は完了、完全復活にはまだだ。だがISを展開するぐらいの力は取り戻せた。」

 

エネの頼もしい言葉がよく脳に響く。幻の振動は、脳を冴え渡らせた。腕取れたのも何とかなりませんかね?なりませんか。

 

「それじゃ、穀潰し共にも働いてもらいましょうかね。」

「用意は上々、いつでもいけるよ。」

 

あの場所、あのところに行けば何とかなる。

そして、その場所へ俺は足を向けていた。

 

 ◆ ◆ ◆

 

IS学園の守りの要となる、地下の最奥。緊急時たるこの時には全ての人間がここにいる。生徒、先生IS学園にかかわる全ての人間がそこにいた。

もちろん戦闘において、この学校の頂点に立っている織斑千冬もここにいる。

大多数のものとは違い、戦闘指揮官の役割を負って。

 

「……………あいつを敵に回すと、かくも厄介なものか。」

 

獅子身中の虫が反乱を起こしたとかいう表現のほうがいい、と千冬は頭の中で付け加えた。追い詰める、どれほどの飛車だろうがどれほどの角だろうが、どれほどの指し手だろうが、詰めば終わりだ。ドイツ仕込の戦略指南書を頭に思い浮かべたが、それを十分に吹き飛ばすように事態は動いた。

 

「織斑先生!」

「何だ?」

「敵性反応が1つ増えました!」

 

と言った。それは篠ノ乃束の作った一品。コンタクトレンズを配布しているが、それは視認情報をマスターに受送信する、いってみれば超高性能なビーコンみたいなものだ。それ以外にも機能はあるが割愛。

 

「生徒がっ!?」

「!?」

 

モニターに突如現れたのは凰 鈴音。最初に死んだと思っていた、その人が生き返っていた。

 

「もうひとつ……二つ…………増えていきます!」

「相…………澤ァ!」

 

それはまるで、あざ笑っているかのように忽然と現れた。死を超越してみせると、生を冒涜して見せるとも高笑いしながら言ってのけるかのごとく。

 

「C隊作戦行動中止!4隊に分けて対応しろ。」

 

あわせて三人。セシリア・オルコット、更識楯無。が新たに現れた。ISを装備しているし、ISの反応も出ている。絶望的にもほどがある。

人の出現、もしかしたら一個軍隊の人間を息をするかのごとく顕現出来るのかも知れない。いかなる手段がやつらはの手の中にあるのかも知れないがIS学園側は手札が限られている。

 

「慌てないでください。」

「更識妹…………。持ち場に戻れ、確か後方支援だったはずだろう?」

 

いきなり入り口から現れた更識簪は、ゆっくりと千冬に歩みを進める。

 

「人は、予想外のことが起こると一度考えます。経験から知識から、技術から。似たような現象を呼び覚まし対策を取ろうとします。」

「だから……………言ってみろ。」

 

千冬はこの忠言、この状況にひとつデジャヴを感じた。危険かそれとも救いか。千冬はわからなかったが、信じてやろうぐらいには思っていた。

 

「この状況も彼が作り出した状況だと思います。…………私ならもっとも最適な、最悪な陽動をした後。大将首を取りにいきます」

 

「そのとおり!」

 

排気口の格子を蹴破って出てきた。康一はにやりと笑って簪に拳大の何かを投げ、それに気をとられている刹那ISのパワーアシストによってブーストされた速度と体重で簪のあごを打ち抜いた。

 

「っく!?」

 

だが、近くにいた織斑千冬の手が簪を引き寄せて更なる追撃を阻んだ。

 

「まあいいや、っとわい!?」

 

その場にいた二十もの人間がいっせいに銃を抜いて同士討ちしないように撃った。

 

「あぶなっ!?」

 

といって、飛びずさった。そしてかつての担任を見た。その目は燃え滾る鉄のように怒っていた。

 

「まあ、いいやもらうもん貰ったし」

 

そういいながらクリスタル状の色合いをした指輪を弄んでいた。眼中にないとでもいいたげにしげしげとそれを見つめてこう言い放った。

 

「ものは相談なんだけどさ、IS貸してくれないか?」

 

その場に緊張が走る。それを敏感に感じ取った康一は、「まあ、そうなるわな」といわんばかりに深いため息をついた。

 

「冷静に考えてみろ、ISの軍事力で世界をどうこうしようと思っているのならとっくにやっているだろ?」

 

結局のところそれだ、なぜ彼女らは困惑し康一に対し有効な手段をとれずにいるのか。ISをほぼすべてを手中に収めているのにもかかわらず、なぜ行動を起こさないのか、なぜ収集癖のようにISのみを集めているのか。

人間と言う物は謎がひとつでもあると自由に動けないものだ。

 

「一瞬で姿を現せる能力、三桁にも昇るIS数。本気出せば世界狙えるぜ?」

 

まともに考えればそうだ、それしか考えられない。正解のような何かを目の前に突きつけられて、その理屈に飲み込まれた。

 

「だからさ、IS貸してくれよ。」

 

どこか、懇願するような顔でそういっていた。

 

「知らない」

 

底辺高校の過剰に盛り上がっている文化祭に「くそつまらねえ」と大声で言ってのけるような冷ややかな声。すべてを投げやりにしたような、はき捨てるように行ったその言葉は少し康一の顔を顰めさせるようだった。

 

「あなたが今どんな状態で、どんな過去を背負っていて、どんな信念をもって、どんな意図があろうとも。私はあなたを殺すと決めた。」

 

その言葉は強かった。けどそれを実行するには今の姿はあまりにも無様すぎる。

 

「知ってた。」

 

笑いながら、声色を変える。諭すような低く安定した声から。道化のように甲高く不安定なこえに。動揺を隠すかのように、それともこれから起こす災禍を体現したかのように。大仰な身振り手振りはしなかったが、なぜか大変なことが起きると予感できた。

 

「さて、そこにいるお嬢さんに免じて、さ!ら!に!交渉のカードを切ることに致しましょう。」

 

耳障りなその声はすべての人間を硬直させる。

 

「さて、場にいる皆々様。モニターをご覧あれ。そしてどうしても「僕チン怖くてみられないよー」という方は目をつぶって足に意識を回してくださぁい!」

 

指を鳴らし音が妙に響いた。モニターに映しだされたものは海、周りの光景からIS学園付近だと思われる。

 

「はい!いち!に!さん!バン!」

 

爆発した、何もないところから爆発。正確には爆発物が海中に沈んでいて、それが爆発した。それは大地を揺るがし、足の裏に鋭敏に振動が伝わってくる。

 

「さて?どうします?爆弾?俺がこの中にいるってことは……………」

 

少し間を空けて、

 

「もうお分かりですよねぇ」

 

 ◆ ◆ ◆

もうお分かりですよね?はい陽動です、むしろ陽動の陽動、本当の目的は。

 

「あーうん。もう何でもできるのは知ってたけどさN2爆弾は反則じゃないか?」

「何?君が用意しろって言ったから用意したんだろ?」

 

俺は「何か爆発物あれば用意して、ここ一面を焼き尽くせるぐらいの」っていったんだが。まあ、結果オーライってやつだ。

 

さて、俺は何をしているかといいますと。

 

「早くしてくれIS学園のセキュリティをハード爆破しないと逃げられんぞ。」

「しかし、ここまで大仰なことしてこれだけとか、もっと効率的な方法があったんじゃないか?」

 

まあ、何をしているのかは一言で言うと逃げる準備だ。

今の状況は篠ノ乃束によって、エネの転移による脱出ができない状態にある。というかいつの間に逃げ出したんだ?まあいいか。

まあ、あれだいまIS学園に張られている結界は、監視カメラ兼侵入者また脱出者探知センサーだ。そしたら監視カメラを止めるにはどうしたらいいか?それは複数あるが有効な一手のひとつに、そもそも電源供給をさせてしまわなければいいのだ。

 

そしてもうひとつ、IS学園を覆っているシールド。ISを守るものであり以前シールドを破られたとは言えISの攻撃もそこそこ防御性能を出しているのだとしたら。ISコアで動くしかないだろ。

 

電源ISコアの奪取。それが俺の目的だ。

 

「念には念をって言葉があるだろ?」

 

こうでもしないとばれそうだったし。それに、もともとこいつも奪う予定だったし。てか全部のIS空に打ち上げるつもりだし。

 

「で、首尾はどうだい?」

「もうそろそろ終わる、君は時間を稼ぎすぎと思うがね。」

 

仕方ないといいたいね。こっちも気狂いの振りをするのは疲れるんだ。

 

「さて、あと一分必死こいて時間を稼いでくれたまえよ。」

「何もしなくても一分ぐらいなら時間を稼げそうだがなぁ。お帰りの際は気を使わないようにお見送りはしないで頂ければ、謙虚で小心者の俺には居たたまれなさ過ぎて爆発しそうだ。」

 

こともなさげにそういった、俺の脳内は影武者の演技に努めた。

 

「「あ」」

 

俺とエネの声が揃った。バラバラだったプリントをトントンと叩いてそろえるように。

 

 ◆ ◆ ◆

何が起こったか?それは、銃声が鳴り響いた。

 

「うそだね。」

 

銃を撃ったのはなんと簪だった。

 

「あなたにそんなことできる訳がない。」

「あら?気でも触れましたぁ?」

「そう、気でも触れたかのような盛大なことをしでかす割りに、得たものは堅実。それがあなたのやり方。今頃はシステムの掌握………いや、消滅を狙っている。」

 

康一の表情が、失われた。

というより、額に撃たれてなぜ生きているのかの疑問のほうが先だが。

 

「更識妹、少し黙れ!」

「俺は世界最高の敵を自分の手で作ってしまったのか…………てか、そもそも俺が本気出したら死ぬし」

 

俺が。てかナイフに刺されただけで機能不全に陥るISなんて…………『悪口は許さんよ』

 

「そろそろ時間か。じゃあね~」

 

場をかき回し、何もしない。コーヒーにミルクを溶け込ませるように存在が掻き消えた。

 

「…………IS学園を覆っていたバリヤー消滅しました。」

 

そして、モニターにドアップで顔が映される。

 

『それじゃ、ばいばーい』

 

のんきに手を振っていてまた消えた。さんざん馬鹿にするだけして帰って行った。

 



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少女誘拐事件(後編)

「なんてね?」

 

今は、先ほどカメラに手を振ったところより少し後。この俺が早々に退場するわけがないじゃないですか。俺はIS分身(ゲスト出演)を引っ込めさせてそういった。今ではこう着状態になっていた外の様子も…………いや、まだまだこう着状態にある

 

「ハプニングが過ぎたな。まさかマミーもいるとは。」

 

お前が篠ノ之束をマミーと呼ぶとは。冗談でも気持ち悪い。しかしそれ以上に気持ち悪いのはマミーの技術力平気でエネの処理能力を越えてきて、多少強引な手段になる。まあ、強引になるとその分復旧に時間がかかるし、もう俺はここですべての力を使い切るつもりだったのであまり関係なかった。

 

「あいつ出して。」

「了解だ。」

 

さてもう少し、俺の千変万化に付き合ってもらおうか。俺は頭の中に黒く染まる自分を思い浮かべた、あのISは便利だからね。

 

「終焉の者」

 

そして何より今の俺にとってまばゆい光が俺を包む。背部の巨大スラスターが小さくされど大きな力を持って唸りを上げた。

そして、世界が加速する。視界の中心は遅く外側は異常なまでに早い。だが顔に当たる風はなく、それがいっそう外は死であることを確認させた。

俺は目標を発見。手を伸ばして届く距離にいたのはラッキーというかご都合主義か?

何でもいいからそのISの一部をつかんで再加速だ。

 

そして、部隊から引き離す。橙と黒のISを!理由としてはラウラのAICは面倒すぎるしデュノアの娘っ子は武器庫としても優秀だからだ。

 

「はぁろー!」

 

驚いた顔、その顔を見たときに。相手に不快感を与えるようなに、片側の口角が釣り上がった。そして、距離を見計らい手を離した。

 

「康一!」

「やほー。ちょっと俺と踊ってくれんかね?」

 

そして二人の思考は戦闘用のそれに変わった。けど、もうこれは戦闘、戦いではない捕食で今の状況はもはや蟻地獄にはまったアリだ

 

「ッ!?」

 

二人が声にならない悲鳴を上げる。理由は簡単いきなりISが消えたからだ。

その前に、小さな楔を打ちこみIS自体にエネが干渉して装備解除させたからだが。当たり前のように二人の体は重力の呪縛に囚われて、真下に引きずられる。

 

「「うわあああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」」

「おお、いい絶叫だな。」

 

それを空中でキャッチ。気分はまるでモビルスーツの手のひらに乗せるときのようだ。米俵のように抱え込んでいるからそこまで感じないけど。

 

「ハッ…………ハッ…………!?」

 

デュノアの娘っこは呼吸を整えるのに必死で周りに気を配れない。対してラウラのほうは呆然として静かになっていた。

 

「エネ、処理よろしく」

「わかってらい」

 

地表ぎりぎりまで降下して、二人を降ろす。もう一回ぐらいいけるか?時間と、自分の能力を比較して脳内であらかたの計算をする。

 

「もう二回、確実に成功させる。誘拐犯 相澤康一の誕生だぜ?」

 

それが限界だ、終焉を使うたびに頭が心臓に呼応してきゅっと締め付けて来るようだからね。

ゆっくりとゆっくりと、蝕むように終焉を迎えて行く。セラフィーナには悪いけど、名と相性がいいのはどうやら俺の方かも知れない。

 

 ◆ ◆ ◆

 

「ふう、一丁上がり!」

 

華麗なまでに6機を強奪。それが今日の戦果だ。カゲアカシについているアクセサリーも重すぎて笑えない、だが各部に付けているアクセサリーのアンバランス感では腹を抱えて笑えそうではある。

一説によると、アクセサリーをジャラジャラと付けている奴は精神的な安定を求めているらしい。そう考えるなら俺はもう俺という存在は希薄で存在しているのかすら怪しいのだろうか?

 

「康一…………何で君はこんなことをするんだい?」

 

力を「使えない」とは言え大きなそれを手に入れて俺は狂ってしまったのだろうか?デュノアの娘っ子の敵意とも同情とも憐みとも違うまたはそれらを全てない交ぜにしたような表情を見て、なぜか楽しいとの感情が湧きあがった。知らないものに事実を教えるということを、今まで成してこなかったからだと思う

 

「俺はただ、やりたいことがあってそれをやってるだけだ。」

「何を勝手な!それで人も殺していいと思っているのか!?」

 

「殺している訳ないじゃん。小心者だからね……………けど、悪かったとは思っているよ」

 

俺が口をついて出た言葉は紛れもなく本心だったけれど、嘘のヴェールは拭えない。もう、戻れないことは知っていたはずだったけど、それがうれしくもあり、また悲しくもあった。

 

「じゃあ何で私たちを生かしたのですか!?」

「もうこの方法を取れるまでに君らは生き延びた。ただそれだけだ」

 

さてと、もう人の言葉に耳を傾ける時間はない。ゆっくりとゆっくりと俺は姿を消して行った。

 

 ◆ ◆ ◆

 

「よし、お前ら黙れ」

「先生一人しかいません」

 

というわけで始まりましたエネパチ先生の、解説ズバッとわかる化け狐と呼ばれた男。今日はどのような講義をしてくれるのでしょうか?

 

「今回の講義は、ISについてです。」

「はい、この世界に糞のようにはびこるIS。これは私たちにストーカーのように寄り添っていますが、一体その正体とはどんなものなのでしょうか?」

 

「ISは特殊なレアメタルをくっ付けた複合機能を提供するものです。このレアメタルは母ぐらいしか生成できないな。あ、私もできるわ。」

 

なるほど、チートとはこのことですね。はいそのISが世界に影響したその他もろもろ雑事は果てに投げ飛ばして、そのチートの塊であるエネさんの機能はどのようなものなのでしょうか?

 

「私は多くのISの統合者となる、まあ司令官みたいなものだ。その割には戦闘能力は皆無に等しいが、私が戦う訳ではないからセーフだ」

「なるほどー。なぜほかのISと違い戦闘能力はないのでしょうか?」

「基本的にISコアの力を最大限に扱うように作られた機体というか服だ。ISコアの原子一個一個を糸状にして作られたもので、エネルギー変換効率がほかのISの比ではない何せ糸状にされているのだ、大気やそれ以外に触れる面積が半端ではないだがそれゆえに脆弱という不安定さが伴うがな」

 

「なるほど、具体的にはどのくらいで機能不全を起こすのでしょうか?」

 

「裂傷で機能不全まっしぐらだ。」

 

なるほど、女王さまというのは得てして攻められる弱い物。さて次回はそんな女王様につき従う奴隷に注目してみましょう

 

「って何これ?」

 

「私の自己紹介のようなものだな。それと、ネクストエネズヒント!」

 

おい。

 

「冗談だとしてだ、これからどうするんだ?」

 

確かにIS学園の守りの要と言うべき電源ISコアの奪取には成功した、というかたぶんこれ前に来たゴーレムとやらの無人ISを流用したものだと思うが…………たぶん、かなりの憶測だが元々あそこには織斑千冬の愛機、暮桜のISコアというかそのものを使ってたんじゃないだろうか?そしてそれをゴーレムに挿げ替えていたのなら次は……………。

 

「魔法でも使おうかな?」

「なかなかにえげつない事するねぇ。」

 

 



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シモコード ザ・ビースト

魔法それはファンタジーではなくてはならない存在。まあ、卓越しすぎた科学は魔法にしか見えないというが。この話も大概ファンタジーじゃないか。

 

「大丈夫か?」

「ああ、大丈夫だ問題ない」

 

そしてファンタジー的な手段で今回はゆさぶりを掛けようと思う。

 

「エネ、IS学園に防御シールドが張られた時がチャンスだ。」

「了解だ。」

 

余談だが亀の甲羅は虫が湧くことがある。甲羅が割れてそこにゴキブリやカブトムシや、周りに食べ物がある最高の環境だから無理はないとは思うがうじゃうじゃと命を削っていく。

 

「そういうものだよ命というものは」

「ほい、IS学園のシールド再展開を確認。オーキシン超強力成長ホルモンの合成投与はすでに完了、合図したまえそれで阿鼻叫喚の地獄絵図の完成だ。」

 

おうけい、という訳で行け!エネ!

 

「了解、成長させます。」

 

何かが光るとかそんな視覚的に派手なものはなかった。だが、異常成長した木々草花がIS学園の中身を埋め尽くす。土に根を張り天を衝き、トトロでもいるんじゃねーかと思うほどに木が急に成長した、うっそうとしたジャングルを思わせる程に。

 

「よし。次。第二層を構築、視覚に残るように派手にやってくれ」

 

急速成長させた木々がカメを内側から蝕んでいくものだとしたら、こっちはボイルするみたいなものだ。二重三重に罠を仕掛けていく。効率を求めてね。

 

「ポータル解放準備完了、いつでもやれる。」

「すっぽんが甲羅に入ったか。さてさて、料理してすっぽん鍋でも作りましょうかね」

 

俺は飛んだ。今あるのは30機程度教師陣のISはもはや木偶の坊と考えていいだろう。残るはあの織斑夫婦とサウザンドウィンターこと千冬だ。

 

「織斑か。私の親の人生によくもまあついていけるもんだ。」

「と言うと?」

「私の研究開発の時からの仲だからねぇ、それなりに彼女も義務感もあったのだろうが私の親と付き合うというのは相当の精神力を使うだろうね。…………事実親の実験物で死にかけていた」

「そこ含めて化け物なんだろ。親父さんもお母さんも化け物じみていたからなぁ。」

 

もう思い出したくない位にひどい目に会ってしまった。

 

「君は君で必死に化け物を演じたまえ。救済も破滅も見届けてやるから」

「おうおう、破滅だけでおなか一杯さ。もし俺が死んじまったらお前だけは生きてくれ、俺の体を使ってもいい。ここまで付き合ってくれたお前への報酬さ」

「君は犬のクソ送りつけられて喜ぶと思うか?そんなことより私の作戦は頭に入っているか?」

 

応ともさ、この作戦はエネが立案したものだ。再侵入のプランは俺の物だけどな。

てかいわれりゃそうだな。妙にすとんと俺の腹の中に落ち着いたその言葉を結露した窓ガラスの落書きの如くかき消して俺は空を飛んでいる獲物たちに目を移した。

 

今この状況。バリアを解除することができない。そして、この木々をどうすることもできない。つまり、この極限にまで人型なっているエネを使えばほぼラスボスまで素通り。だけど、まずは中ボスがいるって言うのがRPGの王道でしょうねぇ

 

「という訳で会いに来たよ中ボス2人俺にとってこれ以上ない舞台でね。」

 

そしてISからISへジャンプこれでこの二人を制せば、もはや厄介な専用機持ちは少なくなる俺の天敵である織斑千冬を除いてだが。

二人はちょうど、個室にいた。ちょっとした体育館のようなものでISで結構暴れられそうではある。地理は頭に入っているどうやら好き勝手に暴れてもよさそうだ。

 

「来いよ、二人で掛かればもしかしたらその剣、俺に届くかもしれねーぜ?」

「箒、やるぞ。」

 

実のところ俺の天敵は織斑千冬だが、エネの天敵はこの二人だったりする。それは…………。

一夏は向かって左、箒はその逆側に立っていた。

 

「エネ、俺から離れろ。コアを使って準備してくれ」

 

返事はしなかった、それがたった一つの信頼関係。ひとつひとつ、編みこむようにカゲアカシを身に纏っていく。そして俺は頭のタガを外した、だらんと両の腕は垂れさがり口は無様に半開き、頭の中はミミズのように一本化された思考がこれまたミミズのように蠢いていた。

 

「あ」

 

そして俺は考えることをやめた。なぜかって?すげえ頭の痛みでそれどころじゃないからだ。

 

「っ!?」

 

二人が見た康一の姿はまるで化け物のようだった、いや、化け物というよりケダモノといったほうがあっている。一目見た印象はツギハギの人形、足は異常に太く胴体の装甲も鈍重に見えるほどに厚い。浮遊ユニットは、全面物理シールドで覆われていて、背中には巨大なスラスターが激しい自己主張をしていて、手だけは統一感の無ささを前面に押し出すかの様に鋭利で洗練された形だった。

これまでの康一は人間が千変万化に姿を変える化け物であったが、これではただの退化。

だが、それ故に原始的な力が二人を襲った。

 

「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!!!」

 

そして、その姿はまさしく異形。一目見て持つ感想がツギハギの化け物。

康一は吠えて、背中から火を噴きながら加速した。何も考えていないかのように。

 

「一夏!!」

 

加速した勢いそのままに拳を叩きつける、それは空を切り、一夏の剣が康一を襲う。康一が突っ込み暴れるだけなのに対して一夏は自分を極限にまで制御した戦い方をしていた。が、人が獣に勝てるだろうか?それはクマに囲碁で戦いを挑もうとするようなものだ、碁盤を出した瞬間踏み潰されるのが関の山であって計算だてて戦うものにとっては非常にやりにくい相手だった。

 

「くっ!?」

 

執拗に一夏だけを狙って攻撃する康一を対処し、そこに箒が一撃を加えていく、それを歯牙にもかけずに一夏のみを眼の中に入れていた。

 

「ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!」

「!?」

 

見えない弾丸に撃たれた様な感覚が一夏を襲った。びゅんびゅんと動き回り狙いはお粗末としか言えないが散弾仕様になっているため、もはや打てば当たる。決め手にはならないが非常に動きを阻害する。

そして、阻害した動きは少しのブレを作りそれで作られるほんの少しの時間だけで十分だった。

 

 黒が飛ぶ。

 

終焉を呼び寄せるように疾く、死に向かうかの如く素早く。一夏の元へ手を叩きつけた、殴るじゃない。

もはやちょっとしたサイコパスホモ見たくなっているが。

 

「クソッ!」

「ウラァアアアアアアアアアアアアアアアア!!」

 

そして、扶桑の幹のような熱が一夏を襲う。だが、雪羅のシールドで防いだ。ただ、そこに置いておくだけで、異常な火力を出す。そして灯火をそのまま手放し加速、エネルギー体の中を突っ切っていく身を焦がすのは必至だが、終焉の者の全身装甲で軽減させている。決死の目くらましは利いたマグマの中を歩いて殴りに行くようなもの、箒も手を出せず、一夏もシールドを解除すればどうなるのかも検討がつかない。

 

「アアアッ!!」

 

拳をめちゃくちゃに叩きつける剣も何も振れない程にぼこぼこにしていたが

「っ!!」

声にならない声を上げて、康一の体を抱いた。そして何度も至近距離で出される雪羅の荷電粒子砲。だが、密着した状態から加速壁にたたき付けられる。もはや手数が違う。今の康一は3体分のISの力を出しているような物だ。そして。

 

「一夏!」

 

一夏から血が出た。血に濡れた物は小さな針。これはまずいと思ったのか、康一の攻撃から逃げた一夏に駆け寄り。絢爛に輝いた。箒のワンオフアビリティー絢爛舞踏が過度なストレス…………友人が死に、思い人も死にかけている、強烈なインパクトを与えたあの胸から貫き消し去る光景がフラッシュバックしていたから無理もない。結果暴走した。

 

「箒!やめろ!」

「ふう、使うのが遅いんだよ。」

 

その呟きと叫びは同時だった。巨大な舌に舐められているような嫌な感覚が全身に駆け巡った。

康一は剣を振った。そして、ふっと木枯らしのようにISがなくなっていた。

 

 ◆ ◆ ◆

 

「一夏!一夏!」

「あー、大丈夫?」

 

俺が見たのは首から血を流している一夏に駆け寄る箒の姿だった。傷口から見て頚椎の神経ぶった切ってないから大丈夫だと思うけど。

 

「くっ!」

「おうおう、殺してやるって顔しているな。という訳でさっさと退け。」

「何を!」

「直すのに邪魔だろうが。」

 

とおもむろに一夏に手を伸ばした。治療しねえと死ぬぞこれ。

 

「おーい、処理よろしく。」

「人使いの荒い奴だなお前は。」

「近づくな!」

 

はぁ、ここまで物わかりが悪いと頭が痛くなってくる。そもそも、ISを複数使うことはほぼ奇跡に等しいんだ

 

「俺が織斑一夏を殺さない理由その1、殺すんだったらISを使う。わざわざ解除して恐怖を与えるまでやることでもなく非効率。その2、生きながらえさせて織斑千冬の交渉材料に使う。その3、そもそも俺がISで殺人することは契約外、あれで懲りた。」

「…………何を馬鹿な事を。」

「もういいや、邪魔。」

 

普通に首に手をやった。

 

「いつっ!?」

「我慢しろ、死ぬよかましだろ。それともなんだ?男の子なんだから我慢しなさい!って言ったほうがいいのか?おしゃぶりの取れてないお坊ちゃんにはな。」

「いい加減にしろ!」

「おっと」

 

箒が一夏に伸びる俺の手を振り払った。いって、まだやり途中だったのに。小さくない傷口からだらだらと血が垂れていた。俺の皮膚の一部を一回癒着させて傷をふさいでそのあと内側から直して俺の皮膚の部分を腐り落とす方法をとったのだが。癒着したところで中断されてしまったがまあ遠距離から治療は続けられるし大丈夫だろう。

 

「じゃ、さようならお前の犯した罪を抱きながら落ちていけ。」

 

まあ、もうもはや箒に構うことは全くなくなったからなぁ。普通にさようならって言ってあげても良かったのかもしれないが。もうここまで来たら憎まれ役に徹する方が優しさだろう。

 

 

「作戦終了あとはラスボスだけだ」

 

 



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最後まで君にごめんねと言えなかった

「もう嫌だ。生きた心地がしない、おうち帰る」

 

エネがそういった。

 

「まぁまぁお前がいたからこそ勝てた。つーかなんでそんなにおびえているのよ。」

 

俺がこの行動を起こしているのはすべてはこいつのせいにしたいくらいは

 

「女王は栄えているだろう?零落は落ちぶれること没落とほぼ同義だ、あとはわかるだろ?」

「対お前用の決戦兵器ってわけか」

「ああ、ISコアそのものだからこそISエネルギーを動力に変換するところまで原液に戻し、復旧にも時間がかかる…………君はそんなことは露知らず、あんまりISを傷付けたくないからという能天気な理由だったからだが。」

 

序盤は基本的にそんな感じだったよ、もう器用に立ちまわれなくなってきてから結構扱いは粗暴だけど。もうエネがおびえた理由は分かったが今一番外に出て聞きたいことは。

 

「しかし、何でお前の作戦で、ティーチャー用のISまでなくなってんだよ」

 

これだ、外に出て空を見上げたら入る前には確実にいたはずの教師用ISがなくなっていた。まさか、この後に及んでISを解除させてまで人員を中に入れる理由が見当たらない。

 

「ISコアを複数使っただろ?あれはISエネルギーをこの密閉空間に充満させるためだ。」

「あ、そうか…………というか、お前。」

「なんだ?」

「いや何でもない」

 

箒のISの能力はエネルギー増幅、アンド供給。そのエネルギーパスを通す時にその実、周りに供給できないほどエネルギーがあれば、ただただ箒のISの能力はエネルギーパスをつなぐだけの能力になってしまう。それでも十分に強いが。

その上で精神を揺さぶり能力を暴走させれば実質全ISにエネルギーパスがつながり、そこを叩いた。

わかりやすく言ったら、普通に電気がなかったら直接触れる、いわばコンセントのような電気の供給しかできないがコンセント周りに塩水ぶっかけたみたいな感じか。

 

そして問題はそんなことを可能にするエネの能力じゃない。精神を揺さぶりながら戦うことを見越してこいつ一人でその用意をしていたということだ。もう俺の予想を超えてきているし、俺の頭の中はもうあいつだけでいいんじゃないかなという言葉で埋め尽くされてる。

 

「もうこれから話をつけに行かなきゃならん。」

「話を強引に持って行きすぎなんだよ、大体一人探すために一人行方不明にさせてなおかつ組織に潜入とかあってならないわ。」

「まあまあ、そういうなって。」

「うるさい、辞世の句でも詠んでろ」

「そうだな、代わりに最終決戦前にひとつ聞いておきたいことがあるんだが」

「なんだ?」

 

「契約違反のつけはどこで払えばいい?」

 

あの時俺は俺のルールと人を傷つけたくないっていうエネの願いを踏みにじった。俺はもうただの化け物で自分を抑えることのない人間はただのケダモノだ。

 

「……………一生私の隣で詫び続けてくれ。」

「詩人だねぇ」

 

俺は笑った。

 

「なあ、お前具現化できるか?その方が話はスムーズに進む。」

「わかったその時は言ってくれ。」

 

もしもの時は俺はどうしたらいいのだろうか。生きられるかどうかすらあやしい、その時は約束を反故にしてしまうかもしれないが

 

その時は、その時だ。

 



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空へ、からそら

「壊滅か…………」

 

そこは葬式場…………ではなくIS学園の一室、そこにいた織斑千冬はそういった。ふと兎耳がゆらりと揺れて前に立った。

 

「ちーちゃん」

「なんだ?お前の子飼いの狐を自慢しに来たのか?」

「いや、あんな屑を子飼いにしていたら身の内まで食いつくされちゃうよ」

 

千冬はクククと笑い、そうだなと呟いた。呟くしかないのだ、いっぱい食わされ狐に化かされた者として、今度は眉に唾をつけようとして足元をすくわれるのが関の山だ。

 

「フォックスマン」

「どうした?」

「あの屑のコードネーム。キツネ男、あとは化け狐。」

「…………あいつにお似合いじゃないか」

 

友人として、それだけ聞けたらよかった。そして、彼女の予感か彼女の戦闘者としての第六感かは分からないが織斑千冬は振り向いた。その男はぺこりと会釈をしてこういった。

 

「おほめにあずかり光栄です。久し振りですね。」

 

在学していた時から変わらぬ笑顔、その裏に何があるのかは全く見えてこなかったそれは、今では薄気味悪さしか感じない。

 

「そうだな、まさかこんなにも早く私が動ける状態になるとは思わなかったぞ。」

 

ちょうど今だった、彼が攻め入るそのすきはこの瞬間しかなかった。織斑千冬は自身の戦闘力の高さから各国政府から戦闘禁止命令を下され、その身が危機に危ぶまれようと戦えなかった。ただの一つの例外は、IS学園の防衛と称し出陣するくらいだ。そこまでの危険人物と認識されながらも臨時の戦闘指揮権を持っている。それが相澤康一対策本部に指揮権が移ってしまうこの一瞬。まるで息を吐ききった一瞬、それか息を吸いきった一瞬をとらえる様な人の組織としての弱点が露呈する瞬間しかなかった。

 

「もう敬語はいいか?」

「私の生徒じゃない、好きにしろ。」

「ISをくれ、あんたとやるのは骨が折れる」

 

心からの本心だったが、俺の心なんざ路傍の石ころにも劣る。けれども、彼女とは腹を割って話さないといけないような気がしたのだ。

 

「相澤直接聞いてみたかったが、何でそんなことをする?武力としてこんなにも不安定な物を集めて何がしたいんだ。」

「開発者隣にいるのにまあなんたる言葉だ。そして分かってるじゃないか、武力として不安定だからこそ、こうやって集めている。だって、武力じゃない不器用な機械の心に突き動かされただけなんだから。」

「……………」

「俺の行動に篠ノ之束は関係ない、そこだけは安心してくれ。結局のところモノが望まぬ歪んだ認識によってISは人を傷つけ過ぎたんだよ、例えるならいたいけな女に強制スプラッタショーだ、数年間働いてきたんだ少しの休暇ぐらいは取ってやるべきだ。」

「…………それはISの深層自我だお前はそれを知っていたのか?」

「自己紹介してくれたよ、私はISの女王だってね」

「どうも、お初にお目にかかります私たちの憎むべき最たるものよ、私はISの女王ことエネだ。」

「…………束。」

「…………ちーちゃんそれ以上いけない。」

 

突然虚空から出てきたエネに驚くことなく千冬は束に目で牽制した。

 

「ぶっちゃけ、私個人ではISがどうなろうが知ったこっちゃない。」

「マジでか。」

「が、IS全体の意志として空に行きたいっていうのは本当だ。なぁ、初期開発者お前ならもうわかるだろ?こっちもいい加減にこの茶番も終わりにしたいんだ。」

「そうか、いや、このバカ()がやりそうなことだから頭の中では理解はしている。」

 

そこで、いったん言葉をきった。伏せた目をまっすぐに康一に向けた。

 

「そのお前は、いったいそれを使ってどれほどの人を傷つけたんだ?」

「それは、仕方なかったといえないくらいの。俺の罪だ、だからこれが終わったら俺という負は完全に断ち切る。方法はわからないけど、手探りで探していくさ。」

「その時点で、お前にISを語る資格は無い!」

「確かにこの俺に何がわかるか?何もわかってはいないし俺が何かを知っているのはご法度だ、けどやるしかない最初に罪を背負った者が、ISを収束させる必要がある。」

 

口に堰していたダムが一気に決壊したように俺はまくし立てた。人の気持ちを踏みにじり続けていた俺に自分の気持ちを理解しようとしてくれと声を上げること自体が間違っていたというのに、俺は言葉を投げていた。

それは伝わらないのは当たり前だった、けど何とかして最後のISだけは、最後のISぐらいは、戦わずに都合のいい大団円を夢見てもいいじゃないか。と高望みをしていたらしい。

 

「黙れ」

 

武力としてのISが展開された。もちろん織斑千冬のそれがだ。見たところ黒金の塊、けどその中にどれだけの技術が詰め込まれているかわからない。一刀のもとに両断されそうな空気をまとったそれをさっきと一緒に俺にぶつけてくれた。

 

「どこまで行ったって俺にできるのは悪役だ。」

 

蒼衣と言ったらかっこいいだろうが、そんな高貴なもんじゃない。青いジャージ今の俺の姿を現すならそれで十分だ、そしてなよなよしいでかい刀、織斑千冬は重厚そうな刀を持って俺に対峙していた。

 

「どこまで行ったって私に出来るのは刀を振ることしかできない。」

 

オウム返しのように千冬がしゃべった。

 

「だから、俺は悪いことをしてやりたいことをするしかなかったんだ」

「だから、私は悪の道を正すように生きていくしかない。」

 

オウム返しのように、いや、二人ともオウムのように何かの足跡をたどっているだけに過ぎないのか。それは俺には分からなかった。

 

 

「行くぞ!休暇前の最後の残業だ!」

 

 

俺だけ声を上げて向かっていた。

 

 ◆ ◆ ◆

 

「やっぱそうだよね」

 

俺は肩で息をしていた、始まって10分もしかしたら俺が織斑千冬相手に一番長く立っていられた人間じゃないだろうか?

 

「相性が悪すぎる。」

「なんだ泣きごとか?」

 

一夏と箒はエネとして相性が悪い相手であるなら、もうこれは俺本来から相性が悪い相手だと思う。

 

「うるせえ!」

 

どちらも一撃必殺。千冬は零落白夜を惜しみなく使い、康一はエネの力を十分に使っている。だが、エネの力にはラグがあるため元々戦闘用ではないデメリットが生まれてくる。鍔迫り合いに持ち込めるのであればエネの力を使えると思うのだが、そこはもう開示してある情報だ、千冬は一撃離脱を繰り返しその一撃は必殺で結果的に防戦一方となる。

俺は無手になる。脚を開き手は大きく広げ腰を落とす。そして近づき振り下ろす所を迎え撃つ康一はヒットの瞬間だけ刀を顕現させてまた無手に、そしてあいた手にまた顕現させてすかさず攻撃するが逃げられる。

 

その繰り返し。千冬もそれと似たような攻撃をする、なぜなら零落白夜は燃費が悪いヒットするその瞬間に発動そして逃げる。

 

「じり貧かよ」

「いやもう終わりだ。」

 

瞬く間に俺に距離を詰めた、相手はISに乗り俺はISこそ纏っているものの、背が足りないつまり小さい相手には上から下の攻撃しかないと思っていた。

 

「空振り……!?」

 

俺と同じことをしやがった刀を引っ込めて空振りさせ俺の足もとに突き刺し、地面ごと俺をひっくり返し、スケールの差で俺を超えやがった。そして、最初の悪手は悪循環を引き起こした。転移してしまった。

 

「クッ!?」

 

何度も何度もやってきた反射的な行動だが、やはり実に手の内をさらしすぎた。転移する時には確実に背後を取るのだが裏を返せば背後にしか転移しないということだ。当然対処はしやすく背後から攻撃しようとした俺を振り向きざまに切りつけた。

 

「グッ?ガァ!?」

 

手加減していた事がわかった、何せ俺の腕だけ切り抜けて蹴り飛ばした。何度やられたかわからない人体切断、なれないなこの痛みには。なれるわけがない頭が狂いそうな痛みが俺の脳髄を刺激してショックをカットしようと興奮物質がでろでろと流れ出している。

 

全部の骨は軋み悲鳴を上げ、脳はもう立てないと泣き言を言う。それでも、それでもすべてのISを空に送りたかった、勝てる、いや、否定。空に打ち上げる事だけを考える。痛みで容量が少なくなって回転が速まっている脳にはろくでもなく、そして外道な方法が浮かんでくるにはそう時間はかからず。

 

「おい、もうこれ以上はやめろ!」

 

エネはその時間では康一の思考を止めることはできなかった。

エネ、IS、女王、亡霊、科学、研究、ランドル、研究、研究、さらった記憶を掘り起こし強制的な走馬灯が俺の頭の中を支配する。『キメラ計画』掘り起こしたのは。

 

「…………。」

 

たった、康一がたった。なぜ?と問われれば、何で?と返すように。立てない訳がないと言うかの様に。

切られていない右手を差し出した。

 

「俺の人生は、たぶん、この一瞬のために。この仁義のためにあった。」

 

激しい戦闘の後とは思えないぐらいの優しげな声。

 

「俺の前には何もない。」

「俺の後ろにも何もない。」

「隣を見ればすすだらけ。」

 

右手は大きな釘のような物体を持っていた

 

「道程何ぞありはしない、ならば掛け金は自分だけ。」

「全てを賭ける。」

 

釘の先端を自分の心臓に向け。

 

「ワン」

「オフ」

「アビリティー」

 

奇妙な祝詞。ノリでしか言っていない。だから、心臓に思いっきり突き刺したネジ。それもノリで突き刺した。

ワンオフアビリティーとは笑うだろう、確かにただ一回限りの能力、使い捨てカメラのようなそれ。

「I’Sアイズ《私、そして私》」このワンオフアビリティーはほかのそれとは違い、実態はただの能力。精神力で無理やり使ったエネの女王としての力の集合体だった。

エネの力で心臓にマーキング代わりの杭を打ち、体内にISのエネルギーを混ぜ込みISとの親和性を高めて直接脳からISを使える状態にする、そしてその脳の処理能力を最大限に使ってISを展開させる、それ一つ一つが実際を処理能力が追い付く限り自由に動かせる。

だが、そんなものは無理やり手足を200本ぐらい増やしたような物だまともに扱えるわけがないが、今は違う

 

「ががががががががががががががががが」

 

ああ、痛いだろう苦しいだろう。ファックスのような音が、人の口から零れ出ていた。

それを見た千冬の眼の前にあったのはISいや、搭乗者がいない大量のIS?違う?と千冬は頭で思考を打ち消した。何せ、すべてのISの意識が千冬に向いていたからだ。ざっと50はあった。この部屋に詰め込めるだけと思ったのだろうが。

 

「私もなめられた物だその程度の数で私を押し切ろうなどと。」

 

瞬時、爆発。それは芸術だとでも言わんばかりに爆発していた。そして、言葉を飲んだ。

 

マダガスカルではバッタが大量発生し農作物を食べ甚大な被害を及ぼし、農作物を荒らすバッタは旧約聖書にも書かれている。まさにそれ、空を色とりどりに染め上げて目が痛いモザイクアートのような光景がそこにはあった。まさか、どんなモザイクアートでもピースひとつひとつが世界の軍事力を担っているものは存在しないだろう。

 

すぐに千冬は逃げ出したが遅い。一瞬の隙、ISに詳しい者の一人だからこそ、この光景の代償を人一倍分かっていた。それに頭が追いついた時、一人の男の狂気に体が縛り付けられた。そこまでするかと

同時に見慣れた、自分が指導していた生徒の黒いカラーリングの専用機が眼の前を塞いだ。まるで煩いと喚いたかのようにAICの考えに答えが行き着いたとき、自分の敗北を悟った。

 

「空へ行くぞ!」

 

加速した黒色のISはそのまま音速を超えて、成層圏を突き破った。その後ろには無数の機械の兵隊が歓喜に打ち震えながら青い地球を背にした。



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ひねくれた別れの歌を去り行く俺から愛しい君へ

自分が削れていくのがわかる、ISを装備していつも感じる全能感と高揚感、脳内麻薬の発生機関がぶっ壊れたような感覚。それが100、200と増えていくたびにその感覚が何倍にもなっていく。

どうしようもなく「そう」しなければいけない状況で、俺は最後に意地を張っていた。

「やれる。否、やらなければいけない。」

そんな感情が押し迫っていた。たぶんこんなに冷静になれるのは、きっと最後には皮肉に死んでいくのだろうと分かっていたからだと思う。

だから、俺はこれを押し通すんだ。

 

「俺はお前らなんか大っ嫌いだ、俺の人生をめちゃくちゃにしてくれやがって。」

 

思ってもいないことを言っているのだと、俺の相棒は分かっているのだろうか?俺の心にはこいつらの感謝しかない一瞬でも俺を理解してくれる可能性を見出してくれた。それだけで十分なのだ。

 

「出会ってからなにもいいことがない、この厄病神め!」

 

最後に、本当に言葉にしてもいいだろうって?無理だ、そんな資格俺にある訳がない。

 

「根本からお前が居ること自体が間違っていたんだ、お前なんて生まれて来なければ良かった!」

 

そう、最初に言った俺とエネの関係。どこまでも機械みたいな人間と、どこまでも人間みたいな機械。

ただ、人間である事を求めた機械みたいな人間。ただ、機械である事を求めた人間みたいな機械。酷くねじ曲がって自分の姿すら見失っていた一人と一機は、それこそ賢者の贈り物のように「譲り合って何もなくなってしまった」

他の者は馬鹿だと罵るのだろうか?それとも愚かだと嘲笑するのだろうか?

 

「畜生……………お前となんか出会わなければ良かった」

 

この言葉達の意味をどうか知っていてほしい、知らないということは、彼女が最も嫌う形である、人間みたいな機械にさせてしまっているのだから、彼女には大きな迷惑をかけたから、俺がいなくなった後ぐらいには自分のなりたい姿になってしまえばいい。

 

「だから、さようならだ。」

 

俺が俺じゃなくなる感覚がもう、末端から末端までに行き届いて脳に酸素すら回らなかった。思考や感覚も感じられなくなって、最後にここで俺は死ぬのだと悟った。

いや、ここで死ぬことを現実感と共にあった訳ではない。と言うか現実感なんてないし俺に主体性と言うものがあったためしもない。

自立して考える点においてはまだ機械の方が扱いやすいと思うくらいに、俺は余計な事を考え余計な事を起こしすぎた。

 

まあ、なんと言うか。楽しかった人生だったよ。

 



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残されたハー「ト/ド」

 ◆ ◆ ◆

 

千冬は息をのんだ気がついたら自分は宇宙にいて。なんだか行ったこともないのにここは宇宙だと認識していた。

ぼーっとしているだけで飲み込まれそうな黒。地からは点々としか見えなかった恒星もここではうじゃうじゃと、ISのスーパーセンサーの力もあるのだがくっきりと見えた。

涙が出そうになるほどきれいで、ISがなければ涙が出そうになるほど無力感が襲ってくる。厳しくも美しい世界に千冬は身を委ねていた。

 

自分をここに連れてきた元凶を探そうと意識を張り巡らせたそして見つかった。というか、すぐに見つかった。

 

「うああああああああああああああッ!!」

 

ひどく、悲しい慟哭している康一。人目がないこの世界で康一は泣いていた、こんな世界じゃないととてもじゃないけど泣けないといわんばかりに。

 

「……………おい、相澤」

「その名で呼ぶな!」

 

涙を流しながら、康一は、『康一』は言った。

 

「私たちは一人の純粋な気持ちすら奇麗なままにしておけない欠陥品だ!無限の成層圏など語るに値しない!!ただただ引きこもり少女の部屋の片隅に置いておく鉄くずでいればよかったんだ!!!」

「……………。」

「なあ!織斑千冬!私がひき起こしたのは自壊なんて生易しいもんじゃない、脳の崩壊だ!。」

 

その言葉は、ひとつ思い浮かんだことがあった、キメラ計画だ。その言葉は千冬も知っていたのだ。

康一は息を吸って吐いて吸って言った。

 

「死んだよ、相澤康一を構成した脳、その髄に至るまで思考するその細胞は焼き切れた。」

 

 ◆ ◆ ◆

 

「止めろ!止めろやめろやめてくれ!」

 

制止の声は届かない。自分の身を引き裂かれるようなその所業に恐怖し、そしてISとして物としてその任務を遂行されていく。

 

ダメだった。

どれだけ手をのばして、相澤康一を求めても彼はもういなくなった。そして聞こえる、聞こえるはずのない、本来なら奇跡を使っても起し得ることのないその声が。

 

「俺はお前らなんか大っ嫌いだ、俺の人生をめちゃくちゃにしてくれやがって。」

「出会ってからなにもいいことがない、この厄病神め!」

「根本からお前が居ること自体が間違っていたんだ、お前なんて生まれて来なければ良かった!」

「畜生……………お前となんか出会わなければ良かった」

 

手ひどい裏切りと共に、ふと頬を触れるような気軽さで

ISは脳のリソースを多量に使う、一人ひとつで十分だしそれ以上使っても意味がないから使わなかっただけなのだが。

もし、ISをその素体のまま大量に展開できるとするならば、話は別だ。ISのデータとりをパソコンのように説明したことがあるがそれに準じるならパソコンのアプリケーションを大量に同時起動させたようなものだ。当然クラッシュする。

 

ふわふわと、ふわふわと自分が浮いているような感覚。

後悔と懺悔と。

自分が自分でなくなるような。

自己嫌悪。

ふわふわしているのは宇宙空間だからだと言えない、いえるわけがない。

自分がいなければ、自分さえいなければ。

 

まずは悲しみ。生命活動すら放棄した肉の空の中に入って、愛した人の最後を悲しんだ。

次に憎しみ。対象は世界、親、そして自分、9割ほどは自分への憎しみだったが、それでも何かにぶつけないとやってられなかった。

今度は執念。康一を直そうとあがいた。そしてすぐに諦観と絶望に代わる。

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

「お前は!!…………相澤はお前という存在がいるからこそこの方法をとったんじゃないのか!?」

「できるわけないだろ!!脳の修復なんざ!他人の脳なら物理的に壊れているなら幾らでも直してやるさ!だがな、そもそもがぶっ壊れていたのなら話は別だ!」

 

涙を流しながら、感情をぶつけながら。千冬が放つ残酷な問いを自棄になりながら答えた。

 

「今はもう、こいつに成り変ってこの肉体を崩壊させないようにするのが精いっぱいだ。私だって海の中にようやく足がつくような場所にいるんだ。こうやってしゃべれることが奇跡に近い。」

「だが!」

「無理なものは無理だ、康一と言うキャンパスに書かれてある絵に少し絵具をぬるのが私たちだ、それをあんなに絵具をぶちまけるたらもう康一はいなくなってしまう。」

 

全てにもう失望したように、エネは千冬を見て「鈴、オルコットは解放する。」千冬が康一を世界が康一を殺すに足る理由を殺した。

 

「……………あいつは、何がしたかったんだ?」

「知らないよ、別れ際には暴言を吐いて逝った。世界と私に恨みでも持っていたんじゃないかね。」

 

エネは乾いた瞳でそう言った。千冬はその顔をよく見たことがある、自分たち姉弟が親に捨てられた時のことで世界に絶望している目だったからだ。

その眼に射竦められた訳ではないが喉がひっつく程に次の言葉を躊躇わせた。だが、千冬は本来の仕事を思い出した。

 

「相澤康一、貴様を連行する。」

「今だけでいい、エネって呼んでくれないか?その名をあまり聞かせないでくれ……………。」

 

もうすでに、打ちのめされすぎて何も起こす気力がなく。一筋の涙を冷たく美しくそして物悲しい宇宙空間に残して、彼女たちは地上へと堕ちて行った。

 



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化け狐の化けの皮は、きっと最低な幸福を噛みしめる。

SPと言う職業はその職業柄いろいろな人物の身辺警護しているが……………犯罪者を守るということはそのばのSPたちも予想し得なかったし、私もこんなことは初めてだった。

それを同僚のジェームズに話した。

 

「今回の仕事、お前はどう思う?」

「なんだ?ブライアン、お前はうれしいとは思わないのか?あの女尊男卑の救い手を、俺達が守るのに足るべき奴だと思うぜ?」

「だが、一応は犯罪者だぞ?そんな奴を国連が諸手をあげてSPをつける意味がわからん」

「それはそうだけどよ、俺らの仕事はただ守るだけだ。余計なことはあまり考えるなよ。」

 

そんな会話をした私たちは、実際に仕事場に付いたそのときからいやな予感がした。数々の仕事をこなしてきたときの緊張感ではない、物理的にもっと感覚的に何か私の基幹的な物が流れ出ているような言い知れぬ不安感があった。

そして、私たちは部屋に入った。白い拘束衣を着させられている黒い髪。どちらかというと中性的な顔立ちでどうにも犯罪者には見えない「女尊男卑の救い手」だった。

そして私はその救い手を見たとき「死人」と感じた。なぜと問われれば生気を感じられないからで、少なくともルーキーではないベテランである彼らも、もう死んでいると感じられたに違いない。

確かに息はしているし血色もそこまでは悪くはないが、どうにも拭えない不自然さが、操り人形のように思えた。

何も語らず、その部屋に自分たちが入ってきた時にも何の反応も得られなかった。どんなに命を追い詰められて心が死んでいるような人間でも、私たちが入室した時点で何らかの反応は示す、不安、怒り、安堵。その感情に種類はあれど「無」はこの方経験したことがなかった。

警護する人間に挨拶する為と警護の段取りを確認するために上司が例の犯罪者に声をかけた。

 

「はじめまして、相澤康一さん」

「その名で呼ばないでくれないか?」

 

唇を一切動かさずそう告げた。その一瞬で私たちの表情がこわばった、何か恐ろしい物に対峙しているような感覚。と言うかもはや超常現象に近い、なぜ私たちの携帯電話のスピーカーから音声を出しているのか?薄気味悪さを感じながら私の上司はさらに話しかけた。

 

「分かりました、ではなんとお呼びすれば?」

「エネミー、エネでいい。」

 

非常に淡白な受け答えで不気味さをさらに加え、胸のスマホから当然のように聞こえる。

 

「では、エネさん。」

「要件は分かっているし、君らの作戦は筒抜けだこれ以上話すことはない。」

「何を?」

「今回配置する人数は後方支援やオペレーターを含め15名、名前も言ってやろうか?ルーカス、リック、ロッキー、ジェームズ、ブライアン……………」

「止めてください!」

「なら、無線機を使っての通信は止めるんだな。プランの方は分かっている、もう一度言う。君らと話すことはない、さっさとこの部屋に配置する人員だけ残して立ち去れ。」

「……………分かりました。」

 

うちの上司は合理的な人だ、とりあえず自分の作戦に乗ってくれるのであればそれでよしとする人間だ、もう一度プランの確認をして、念押しのために協力はしてくれるように頼んだ。

 

「ブライアン、ま、しっかりやれよ。」

 

ジェームズがそう言って私の肩を叩いた。何を隠そう私がこの部屋に残る人員だからだ。ああ、と短く答えてその部屋の扉が閉められた。

 

「ブライアンですよろしくお願いします。」

「ああ、よろしく頼むよ。」

 

唾でも掛けられるのかと思ったがそんなことはせず拍子抜けに普通に挨拶してきた。コロコロと変わる纏う雰囲気の変化に少し戸惑いながらも、注視するように見続けていた。すると、じろじろ見られたのが気に障ったのか、こちらに話しかけてきた。

 

「…………どうしたんだ?」

「いえ、SPの職業に就いてはいますが私の仕事は貴方の監視ですので。」

「まあ、知ってはいたよ。この体は悪意や罵倒には慣れてはいるが、私はあまり慣れないのでね。」

「貴方はどうしてこのようなことになったのですか?」

「おや、聞きたいかい?私は結構おしゃべりなんでね、いっちょ身の上話でも聞いてはくれないか?」

 

仕事に支障が出ることでもなかったのでそのまま黙って聞いていた。

 

 ◆ ◆ ◆

 

なぜかだ、相澤康一は死んだ。あっけなく私たちのせいで死んだ。その事実は変わりないが、今も心の奥へ奥へと突き刺さっていく。

だから、こんなやってもいない罪を確認される場にいて気分がいい訳がないのだ。

 

「被告人、相澤康一は………………」

 

目の前で行われているのは魔女狩り裁判で、やってもいない罪を被せられていようが何の事実確認もなしに犯人と決め付けて行ってしまっていた。

会議は踊りそして進んだ。学校での配布物を配るかのよう当然に死刑の文字が私の目の前に叩きつけられて、裁判長である女性の顔がものすごく勝ち誇ったような顔をしていた。異例だの何だの騒いでいたが、まあこの際関係あるまい。

実に滑稽だ、死刑も何も死んでいるのだから。出来るものならこのまま殺してほしかった、自分のこの中にある暗雲を自分ごと消し去ってしまえるのなら、と何度もそんな考えが浮かんで来ていた。

でも、康一の顔…………いや、今ではもう自分が操っている人形に過ぎないのだが。康一が自分が死ぬと悲しそうな顔をしそうな気がすると思うとなかなか自分自身の存在を消そうとは思えなかった。

 

「イザヤ書41章10節にはこう書かれています……………」

 

なんでかこのような大犯罪者にされてしまったわけだが、こんな風に牧師を呼んで聖書の一節を教えてくれるくらいの良心は残しているらしい。そんな良心より実利を取りたいけどね。

だからダメなんだって。死んでいるんだもの。

 

首に縄が掛けられる。そして………………。

 

「8時34分52秒ご臨終です。」

 

医師の手によってただただ、物言わぬ肉の塊だということが明かされた。

 

「死亡確認したね?じゃあ、お疲れ様でした」

 

なまじ、首を飛ばされても一瞬であればくっつくし、脳をミキサーか何かでぐちゃぐちゃにしなければ蘇生されないことはないだろう。何度左腕をくっつけたことか。

そして、今生き返った私にまた監視が付き、拘束衣を着させられてこんな状態になっているって訳だ。

 

 ◆ ◆ ◆

 

「……………にわかには信じられませんが。」

「そうか、ニュースで放送されていないのか。」

 

私はさも自分のことのように、私を語っている。本当にいいのだろうか?我が物顔で体を支配してしまっているようにしか感じない。

 

しかしニュースにも出さずに死刑を決行するとは。さぞ、強行手段を取ってまで彼を殺したかったらしい。

 

そこまで考えて、私はこの行為の不毛さに辟易とした。何せ無意味なのだから。

 

「なんだろうね、この虚しさは。」

 

そう呟いた、なぜか知らないけどつぶやいていた、まるで思考と言葉が直結しているみたいに。どこか不自由さを感じていた。

 

「さあね、ただ貴方はきっと私の恩人いや恩ISと言うことぐらいしかわからないよ。」

「!?」

 

いきなり、扉が開かれた。なんだ?レーダーにも映ってなかったのにも関わらず、彼女達はなぜここにいる?

どこかで見たような蛇のような笑い方はどうにも彼を思い出すようで、今は見たくない顔だった。

 

「はじめまして、女王サマ?。」

「一葉、もう忘れて居たと思ったが案外覚えているものだ。そしていらっしゃい、織斑千冬。」

 

何をかくそう、相澤康一の妹を自称しているだけの彼の赤の他人と、純粋な赤の他人だ。

 

「その口ぶりですと私と出会う前には、相当お兄さんに救っていただいたそうですね。」

 

その言葉に私は鼻で笑った。

私が殺したも同然であるのを知らないからこそ言える言葉だ、知った時にはきっと一葉も口汚く私を罵るだろうとそう考えたら、もう、放って置いてくれと叫びたかったけど、彼は胸を明かさなかったこの仄暗い陰気な物を吐きださなかったから。声を荒げて出ていけと言いたかったけれど、彼が残した物でもあるからそう邪険に扱えもしない。

 

「いえ、救ってくれました。別にあなたが悪い訳ではないですし。」

「……………」

 

一葉は無邪気に、私に厭らしい笑顔を向けながら話しかけてくる。その顔を見るたびに心がズキズキと痛んだ。

 

「兄は何て言ってこの世を去りましたか?」

 

そう言って、彼女は笑いながら私の目をまっすぐと見つめた。片側の口角だけが吊り上がる。自傷行為の様な真実を荒み切った私の心から口へと流れるように吐き出していた。

 

「私への恨み事だったよ、嗚呼まったく。手ひどい裏切りだ…………。」

 

いや、最初から私と彼は相容れないものだと分かっていたけど何とかしたいと。エラーと言う文字が何回も何回も浮かび上がっているのをただただ見つめているような無為な時間。

しばらく、そんな取り留めもない苦痛な時間を過ごして、なおいっそう厭らしい笑顔を強めて語気を強めてこう聞いてきた。

意図していることがわからない、濃霧の中明かりも持たず出歩くような不安

 

「一つ聞きます、IS(貴方達)は機械ですか?」

「そうに決まっているだろう?どこまでもどこまでも人間みたいな機械だ。」

「それは良かった。私の子供もたぶんそうですよ。」

 

どこか安堵したように一葉はそう言って、大きく息を吸い込んだ。ニッと笑って、頬に一筋の涙が流れた。その眼は何かを決意したようにある一点を見つめていた。

 

「カゲアカシ。」

「……………?」

「これは、そうですね、きっと最後ぐらいは兄さんの物語は、私が兄さんの真似事をしてみたいんだと思います。」

「何を言っているんだ?」

「はい、だから私は人の心を食い物にします!コード、解放ライアー」

 

 

 

 

「ん?よお。」

 

 

 

相澤康一の声が、右足についた足輪から発せられた。これまでの声は、電子機器から出していたが、これは確かに真似事、ひとの心に付け込み全てを傷つける彼の!

 

「これが発動したってことは、たぶん死んでるかこれを聞かれたあとに俺が憤死しているかだ。」

「全く俺のような人間が嘘も何も包み隠さず話すところとか、需要あるのか?」

「まあいいやそこに言及してしまうとすべてが台無しになってしまう。」

 

なぜだか私はふつふつと怒りが湧いてきた、よくもとただ、彼女を睨みつけて私は口を開いた

 

「何の真似だ。」

「私の研究成果、人の心を読み感情を発露させる機械です。」

「お前……………ふざけるのも大概にしろ!」

「ふざけてなんか居ませんよ。」

「心を踏みにじってその中をズケズケと入り込んで!何がしたいんだ!」

「死んでしまったら!ただの物なんですよ、この世はどこまで行っても生者のためにある。だから彼の真意を聞く権利がある、本当にあの人が恨みながら死んでいったなんて思わせないでくれ!」

 

私は彼の心を覗き見ていたがそれも最初だけ、いつから私は心を覗き見なかったのだろう。何時から、彼を同じ所に並び立ち人間のように寄り添っていたいと思い始めたのだろう。

最初は確かに、他人の観察だったかもしれない。だけど今は違う。

私は、彼の声をさながら死刑囚が死刑執行を待っているかのような心持ちで続きを待っていた。

 

「いや、お前死刑囚だっただろ!」

「……………。生きている君に心を覗く力がなくて本当に良かったと思ってるよ。」

「まあ、意識レベルではコピーされた俺がISにいるだけだし、ISお前とおんなじ立場だからな、お前の心を読めたとしてもおかしくないな。だけど、絶対に違う、俺ではないからそこらへんは勘違いしないように。たぶん一葉の事だからこのメッセージが流れた後に自壊するようになってるんじゃねえかな?」

「今度は……………手ひどく罵ってやろうと思ったけど止めた。」

「そりゃどうも、エネこれだけは言わせてくれ約束守れなくてごめん。」

 

彼にそう言われてしまってはだめだ、赦さなくてはいけない。赦してしまえば彼を思い出の手の中から離れて行ってしまうのに。

涙が頬を濡らしていて、おかしい事だと思っているが止められない。

 

「俺はそこにいるから、肉体だけだけど俺はそこにいるから。ずっとそばにいてお前なしじゃ生きられない俺を守ってくれないか?」

「虫のいい話だとは思うけど頼む、お前は生きてくれ。いやお前が生きてくれ俺の体がそう使われるならこんなにうれしいことはない。」

 

「いつも、無茶なこと言ってくれるね君は…………。」

 

とても痛々しかったが、それでも私は笑っていた。もしかしたら借り物の笑みかもしれないが、それでもきっと

 

「それと織斑先生。」

「何だ?」

「あ、返事しなくていいですよ俺は生きてその場に即した思考をしている訳じゃないですから」

 

千冬の額に青筋が浮かんだが、それを無視して続けた。

 

「あなたには結構な迷惑をかけましたね、私から2つ。あいつらに相澤康一は死んだということ、そして最後に少しお願いが。」

「もう少し迷惑かけてもいいですよね?なに一夏が二人になったと思えば。」

 

フフフッと笑ったような気がした。任せろと小さく聞こえた。

 

「一葉、腹殴ってごめんな。強く生きてくれ、俺がいなくても大丈夫って言うのは知ってるけど。」

「お兄さん、グスッ…………。」

「あんまり泣き顔は好きじゃないんだけどね。」

「お兄さんと一緒にいる時はさんざん笑わせて頂きましたから。」

「そうか、それは何よりだ。お前はきっと俺の家族だった。」

「さよならは言いませんよ!」

「ああ、行ってきます」

「行ってらっしゃい………………。」

 

「言いたいことはそれだけかね。それじゃ、さようなら。」

 

康一は本当に言いたいことを言いたいだけ言って帰って行った。いつもそうだった、彼は引っかき回してやっただけ後の事を片付けるのも彼だったがもういない。

そして、たぶん残酷な願いごとと分かっているけども、呪いのように之を続けなければいけない。いや、もとからだ。

きっとみんながみんな、何かに縛られて、いや人に触れて初めて人として生きていける。私は何をすればいい、私は何を成せばいい?決まっていないに決まっている。だから私はその呪いの様な祝福を……………。

 

「………………なあ、織斑千冬」

「なんだ?」

「私は、私として生きてみてもいいのかな?」

 

そう私は私だ敵と呼ばれ、それが愛称になるそんな不器用な機械。

 

「好きにすればいい。」

「あーそうだなじゃあ。一つ頼みごとがあるんだ。」

 

人が人で、私が私である第一歩を歩むことを私は望んだ。

 

 

それが、康一が一番喜ぶことだと思うから!

 

 

門出、人は死ぬ、簡単に死ぬ。肉体じゃない精神、魂はぐにゃりぐにゃりと形をかえ、死んでいく。彼が大切な物を捨て、自分のポリシーを食い物にしたように香を咀嚼し嚥下した時のように。それは悲しいことではある。けど、死ぬことに成り立っている生なのだから。

死は旅立つことだ。それが満足したものであったのならば、どれほど幸せなことだろう。

 

幸せを知らない男は、私によって初めてその手で幸せを掴み取ったのだろう。

 

不器用で無遠慮で天邪鬼で、周りの人を巻き込みに巻き込んだ彼は、きっと、きっと…………。

 

 



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化け狐と呼ばれた男は、化けずに愛しい君たちの前に立つ。

 織斑一夏はぬぼーっとしていた。眼の前にあるのは時間という絶望、理由は簡単今執り行われているのは在学生である1、2年には全く縁もゆかりもない話である卒業式だったからだ。

 この織斑一夏と若干名は本当に本当に何も関係ない稀有な人間であったが、それでも現1年生には辛い物ではあった。眠くなるような怪電波を発する校長の話、なぜか登壇し卒業生へエールを送る用務員、送辞答辞にいたっては生徒会長どうすんねんと言いたくなるような有様だった。

 補足すると、卒業式の1か月前には練習成果の発表も込めて大会が行われ、もはやそのノリで卒業式を迎え底辺校の成人式でもここまで騒がないだろうと思うくらいのあり様だった。なので、男である織斑一夏は黄色い声の疎外感も相まって、胸、または腹の底に黒い物がぐーるぐるぐーるぐると渦巻いていた。

 

「世界滅べ。」

 

 キャーとキャーの黄色い声の合間にそう言ってしまうぐらいには追い詰められていた。追い詰められてはいたが、もはや諦めた切り替えていこうと思いつつも心中では穏やかではない。

 祭りか式典かわからない騒ぎ具合でも、粛々と卒業式は進んでいく。自分の中にあるこの黒い感情も一緒に卒業させてくれと願うものの神様でも無理な話で、やはり感情はそのままに卒業式の終わりを告げられた。

 

「続いては、新任教員の着任式を始めます」

 

 どうやら延長戦のようだった。いや、式典ではない一夏の自分の暗い感情との延長戦だった。一夏の耳には新任教員の紹介はみじんも聞こえず、目だけが大きく見開き視線が釘付けに口は大きく動揺しパクパクと開けたり閉じたりしていた。そもそも、知っていたからとってつけたような紹介など聞く必要はなかった。

 

「新任教員の先生から挨拶をいただきます。」

 

 そのものが行うすべての行動を一夏は他流試合でもするかのように注意深く常にISは起動できるようにして。

見ていた。

 

「私は長たらしい前置きはあまり好きじゃない。だから私からこの学園生活、そしてそれからの人生において一つだけ。」

「ISは人と無機物を繋ぐ。ISに自分を預ければ答えてくれるだろう、空を飛びたいと思えば大きな翼を授け、大地を駆りたいと思えば力強い足を授ける。」

「そしてこれから私を見てくれ。私はその最たるものだ、だからこれからの数年間私を値踏みするかの様に過ごしてくれ。それが彼の手向けになると信じているから。」

「最後に精一杯自分の人生をそしてISを楽しみ、この犯罪者のような人生を送るな、そしてこの犯罪者のように死んでみてくれ。」

 

 

 

「この挨拶を……………死んでしまったある男にささげるよ」

 

 

 

 これは、新たな物語。前にいた彼はなくなってしまったけど。

 有機物と無機物の中間のような生物は笑った。全てが光が輝いて仕方無いというように、とある男の幸せを取り戻すかの様に。

 これから起こる出来事に幸あらん事を願って。

 

 ◆ ◆ ◆

 

 俺は目を覚ました、長い夢のように俺の意識はふわふわと浮いていたが忘れもしない顔が視界に映った。

 

「さてさて?君は死んでしまったね?」

「そういえば神様転生ものだったなこれ。」

 

「いやー精神が死んでも死ぬのねこれ?。」

「うん、もはや「そこ」しかないからね。」

 

「そして、ひとつ伝えなきゃいけないことがある。君には次はない。」

「やっぱり?」

「エネによって肉体は生きているからかなりのイレギュラーってことなんだろうな。適当に精神だけを赤ん坊に入れるわけにもいかないし。」

「そういうこと。」

 

「そしてここに呼び出したのはさ、君はこの結末に満足していたのかな?ってこと、どうだった?第二の人生は?」

「言うまでも無いさ。」

 

 

「俺は、幸せを貰った。そしてそれを次に渡した。俺が残したものは脈々と紡がれることだろう。俺が願った普通の人生と何が違う?違わない。俺は信頼できたし仲間もできた。盲目に信頼出来るものができたのは本当に幸せなことだ。」

 

「だから俺が「もっと」なんて言えるわけがない」

 

 そう言ったらふんわりと笑った。そういうのを分かっていたように。

 

「そう、言うと思っていた。」

「言わなかったらまた死ななきゃいけなくなっちまう。」

 

「それじゃ、バイバイ。」

 

 俺はまた笑った、最後は、最後の最後だけはこの笑みを浮かべて死ぬのが一番いいだろう。皮肉屋はこうして死ぬのがお似合いさ。

 口角の片側を吊り上げた卑下た笑みで俺は不敵にこういった。

 

「なに、地獄でまた会おう。」

 

 何かが俺を包んでいく感覚、これはたぶん二度目なのだと思う。そうして俺は目をつむりその感覚に委ねて考えるのをやめた。

 




くぅつか(ry)。
長々とやってきたこの小説ですがこれにて完結です。
長い間読んでいただきありがとうございました。


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