嘘と希望のセカイ (RUru:狩人)
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設定集

中島 海羅(なかじま かいら)

 

神高2年生。

表では成績はそこそこ、運動は上の下で、人当たりもいい、『接しやすくて優しい先輩』として人気。

外見は身長が176cm近くあり、髪の色は白と黒のメッシュのようになっているが、地毛。

 

しかし本性は過去に親から虐待を受け、唯一信頼していた肉親の妹を通り魔に殺害されてしまうという壮絶な過去を持っている。

そのせいで人間不信に陥り、精神状態も悪い。

何もかもを『どうでもいい』と思っている。

過去のトラウマのせいで記憶が混濁しており、「中島海羅」が自分の本名かもわからない。

そのため、自分の中で新しい「中島海羅」を作り出そうとしている。

現在は一人暮らし。

 

そんな海羅は、動画投稿サイトで「Kai」として音楽活動をしている。

その歌声が反響を呼び、活動開始から2週間で投稿した動画が一律10万回再生を超えた。

きっかけはクラスメイトに歌が上手い、と言われてから。

 

 

主に関わりのある登場人物から見た海羅

 

 

東雲彰人→いい先輩。歌が上手いのも知ってるから今度自分たちの歌を聴いて欲しい。

 

青柳冬弥→話しやすい。勉強面でもお世話になっている。

 

白石杏→とにかくいい人。彰人から歌が上手いことを聞き気になっている。

 

小豆沢こはね→まだ会ったことないけど、皆がいい人と言ってるから気になる。

 

天馬司→親友。1度だけでいいから一緒にショーをしたい。

 

神代類→数少ない友達。ショーの演出を試してみたい。

 

草薙寧々→いい人。人見知りしないで話せる。

 

鳳えむ→きっとわんだほい☆な人(?)

 

宵崎奏→誰?でも瑞希が言うくらいだからいい人なんだろうな。

 

朝比奈まふゆ→知らない。誰?

 

東雲絵名→少しだけ話したことあるけど、何あれ優しすぎない?

 

暁山瑞希→いい先輩。たまーに授業サボりに加担してくれる面白い人。でもなんか違和感あるなぁ…

 

 

普段はクラスメイトや司と行動しており、なにかと頼りにされている。

類とも接点があり、神高の変人ワンツーフィニッシュと渡り合える唯一の生徒として、一部の生徒からは勇者やら、新手の神やらと、大げさな呼ばれ方をすることがある。

 

噂などの類は全く気にしない。

瑞希に対しても、平等に話したりする。なんならたまに一緒にサボる。

歌がうまいことは自覚しておらず、文化祭で歌った時は、音楽の先生が本気で歌手にしようと裏で動いてた、という逸話(?)も出回っている。尚真実かはわからない。

運動と勉強は、普通より少しできるレベルのため、そこまで先生に目を付けられてるわけでもない。




誤字脱字の報告、お待ちしています。


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プロローグ

ずっと、幸せでいたいと願った。

妹と、父さんと、母さんと、ずっとこのまま、幸せに生きていくんだと、そう思っていた。

でも、そんな願いは、叶うことは無かった。



教室のドアを開ける。

 

海羅「おはよ!」

 

モブ1「お、海羅!おはよ!」

 

モブ2「今日も遅いなぁ、また寝坊かぁ?」

 

海羅「うっせ!それは言うなって!」

 

モブ2「おぉっと、すまんすまん!」

 

クラスメイトとの他愛ない会話をして、席に着く。

 

 

(今日の1限目はなんの授業があったんだったか…)

 

先生「はーい席につけー、今日は数学の小テストだぞー」

 

海羅(げっ、小テストだったのかよ…)

 

「「「えぇーーー!」」」

 

クラスメイト全員の声が一致する。

 

先生「えー!じゃないぞ!俺は言っただろう!?」

 

「きいてませぇーん!」

 

先生「とりあえず、問題用紙配るぞー」

 

悲痛な叫びをこれでもかとスルーする先生。なんだこのシュールな絵は。

 

「「「無慈悲ー!!」」」

 

海羅(賑やかだなこいつらも…)

 

 

ー昼休みー

 

 

海羅「はぁぁ〜…」

 

(疲れた…午前中からテストありすぎだろ…)

 

そう、午前中から数学の小テスト、物理の中テストが行われ、これまでに無いほど疲労が溜まっていた。

 

司「お!海羅ではないか!」

 

海羅「あ、司か、どした?」

 

司「一緒にランチでもどうかと思ってな!中庭で食べないか?」

 

海羅「お、そういうことなら行こうぜ!」

 

そう言って司と海羅は中庭に向かう。

 

 

司「そういえば、海羅は『Kai』という歌い手を知っているか?」

 

海羅「…あぁ、最近話題になってるよな?」

 

司「その通りだ!あの人の歌い方は参考になるものがあるからな!最近は彼の歌を聴きながらショーの歌の練習をしているのだ!」

 

海羅「へぇ〜、司がお手本にするあたり、かなり上手いんだろうな、帰ったら聴いて見るか!」

 

司「そうするといいぞ!それにしても、上手い人の技術を会得し自らの力にする…!これすらもスターとしての第いっp「よし、中庭ついたし、飯にしようぜ!」話を最後まで聞けぇ!」

 

 

 

 

ー放課後ー

 

海羅「ふぅ、疲れたぁ〜」

 

ようやく、一日の授業が終わった。

 

これといった用事もないし、帰ろうとした矢先、

 

彰人「あ!先輩!」

 

海羅「お!彰人に冬弥か!どうした?」

 

冬弥「この後って時間ありますか?」

 

海羅「特に用事はないから大丈夫だが?」

 

彰人「だったら俺らの歌、聴いてってくださいよ!」

 

あぁ、こないだ聴いてくれって言ってたやつか。

 

海羅「そういうことならいいぞ!なんなら一緒に歌おうか?」

 

冬弥「いいんですか?」

 

海羅「ああ!丁度ストレスも発散したかったしな!」

 

彰人「マジすか!あざっす!」

 

 

 

 

海羅「ふぅ、こんなところか?」

 

(けっこう歌ったな…疲れた…)

 

彰人「ホント先輩歌上手いっすね…」

 

冬弥「あぁ…聴き入ってしまった…」

 

海羅「へへ、ありがとな!…っと、もうこんな時間か!俺は帰るが、お前らも気をつけて帰れよ〜!」

 

彰・冬「お疲れ様っす/でした」

 

そうして、彰人と冬弥とは別れた。

 

 

 

彰人達と歌ったあと、ようやく自宅に着く。

 

 

「…ただいま。」

 

「………はぁ。」

 

そして彼は嘆く。

 

 

 

「…ダメだったな。」



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第1話 “自分”と“ジブン”

彼には、わからない。


 

 

自宅に戻って初めて、肩の力を抜く。

 

その目には、光は無い。

 

(やっぱり…上手くいかない。)

 

(今日も、できなかった。)

 

自分を、確立できなかった。

 

“後輩”と歌っていても、

 

“クラスメイト”と話していても、

 

自分は、定まらなかった。

 

「……あそこに行こう。」

 

そうして、“彼”は歩き出した。

 

 

 

ー宮益坂ー

 

朝比奈まふゆは暗くなった塾の帰り道で、一人の男性に目を引かれた。

 

まふゆ「…?」

(何…あの人…?)

 

その男性は、背が少し高く、灰色のパーカーにジーパンと、至って普通の服装に、髪が白と黒が混じっている。

そして、目には光が宿っていない。

 

(あの人……私と…同じ?……でも、どこが?)

 

(…わからない)

 

帰ったら、ナイトコードでK達にこの話をしてみようと思った。

 

 

ー???ー

 

誰もいない展望台のような場所に一人の男が佇んでいる。

 

海羅「……はぁ。」

 

(いつになったら、俺が俺として確立するんだろうな。)

 

海羅には、高校入学するまでの記憶が無い。

「記憶が無い中島海羅」が嫌になり、新しい「中島海羅」になりたいと切に願っている。

 

しかし、そう簡単に出来るものでは無い。

 

(……このままいたら、楽になれるのかな)

 

 

…時刻は24時50分。

 

 

 

ー同時刻、ナイトコードー

 

K「みんな、いる?」

Amia「いるよー!」

えななん「Amiaうるさい、もうちょっと静かに出来ないの?」

Amia「いいじゃん別に〜!それより雪もいるー?」

雪「…うん」

K「うん、じゃあ始めようか。」

 

彼女らは、『25時、ナイトコードで。』通称ニーゴ。

サークル名の通り、およそ25時から活動を始めている。

 

そして話題は、彼の話題になる。

 

雪「…そういえば」

K「どうしたの、雪?」

雪「今日、塾の帰りに、私と同じような人がいた」

えななん「雪と同じような人?それって…」

Amia「苦しんでいる人…ってこと?」

雪「多分、そう。あの人の目、何も映して無かったから」

K「その人、どんな人だったの?」

雪「背が高くて、髪が白と黒が混じってるような人だった」

えななん・Amia「…え?」

K「…?Amia、えななん?」

Amia「…ねぇ、雪、もう1回、その人の特徴言ってくれる?」

雪「…背が高くて、髪が白と黒が混じってた」

えななん「それって、まさか…」

K「知ってる人なの?」

Amia「…もしかしたら、ボク達の先輩かもしれない」

 

その時。

 

ミク『…みんな』

K「!!ミク?」

Amia「どうしたの?ミク?」

ミク『ここから近いところで、まふゆのセカイと似たようなセカイが生まれようとしてる』

えななん「セカイが!?」

雪「それって、さっき話にでてた、えななん達の先輩のもの?」

ミク『…わからない、でも、あのセカイの持ち主も、苦しんでる』

K「その人も、もしかしたら…消えたいって思ってるかもしれないのかな…?」

えななん「どうにかしないと…でもどうしよう…?」

Amia「明日、ボクから思い当たる人に話を聞いてみるよ!」

ミク『…お願い』



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第2話 セカイ

今回暴力表現あります、苦手な方はブラウザバック推奨です。


海羅「…はぁ」

海羅は今、宛もなく夕方の町をふらついている。

ところどころ神高の生徒がいるようだけど、気づかれていないようだ。

海羅「やることも無いし、早く帰ろうか」

そう言って踵を返した、その時。

 

「おい、お前一人かぁ?」

いかにもガラの悪いヤンキーが複数人で取り囲んできた。

海羅「すみません、急いでるので」

外付けの仮面をすぐさま被り、対処して切り抜けようとしたが、

「逃げんじゃねぇよ!」バキッ!!

突然、ヤンキーの1人に殴られた。

予想外の出来事に、対処しきれず地面に倒れ込む。

海羅「ぐぅっ…」

「ったく…手間かけさせんじゃねぇよ」

「なぁ、金くれよ?」

俗に言うカツアゲ、というやつだろうか、初めてだ、と痛みを無視してその場の雰囲気に似合わないことを考えながら逃げようとするが、

「おらよ!!」ドスッ!!

海羅「がはっ!」

脇腹を蹴られ、動けなくなる。

どうしようもできずに蹲っていると、

??「おいお前ら!!何してんだ!!」

海羅(彰人と…冬弥…?)

「あぁ!?誰だテメェら!…ってこいつら!ビビバスの東雲彰人と青柳冬弥じゃねぇか!」

彰人「そうだよ!俺がここで全力で叫べば、どうなるかわかってんのか?」

冬弥「それでも退かないというのなら…覚悟を決めてもらおう。」

「「「……!!」」」

「っち!ずらかるぞ!!」

 

ヤンキー達は逃げていった。

 

彰人「大丈夫か…って海羅センパイ!?」

冬弥「大丈夫なんですか!?その傷は、さっきの…?」

海羅「…あぁ、大丈夫だ、慣れてる」

冬弥「…!」

彰人「…慣れてる?」

海羅(しまった!口を滑らせた!)「あぁ悪い!心配かけたな!じゃあな!」

彰人「あっちょ!」

冬弥「…行ってしまったな」

彰人「あぁ、大丈夫だとは思えねぇが…」

冬弥「それより、さっきの先輩の目を見たか?」

彰人「目?」

冬弥「あぁ。あの時の先輩の目は…

 

 

何も映していなかったんだ」

 

 

 

海羅(やってしまったな…怪我に気を取られて“いつもの俺”じゃなく“俺”で返事をしてしまった…気づかれてないといいが…)

海羅はあの時、咄嗟に繕うこともできず、家での海羅で彰人に返事をしてしまったことを後悔していた。

海羅(音楽でも聴くか…)

音楽アプリのライブラリを開く。

(25時、ナイトコードで。…ねぇ。)

よく聴いているアーティストの音楽を少し聴いて、ライブラリをスクロールする。

そのままライブラリを見ていくと、ひとつの楽曲に目を引かれた。

海羅「ん…?Untitled…?なんだこれ…」

  (無題…か…こんな曲昨日まではなかったが…まぁいいか。再生してみよう。)ポチ

 

その時、突然スマホの画面が激しく光を放ち始める。

 

海羅「なっ…!?」

 

 

 

 

目を開けるとそこは、先程の自宅ではなかった。

見渡す限りの白い空間。そこにはただ教室にあるような机と椅子があり、その上に何も植えられていない花瓶が置かれている。

海羅「…は?」

 

机と椅子と花瓶以外、何も無い。

 

海羅「なんだここは…」

 

すると

 

??「ここは、セカイだよ。」

海羅「!!」

 

振り返ると、白と黒で綺麗に分けられたツインテールの、制服に近い服装をした女の子がいた。

 

海羅「セカイ…?なんだそれは?」

??「セカイは、貴方の想いからできた。貴方の『本当の想い』を見つけるために。」

海羅「俺の…想い…?それよりも聞きたいのは、お前は何者なんだ?」

??「私は、ミク。」

海羅「ミク…初音ミクか?」

そこにいたのは、あの「初音ミク」らしい。海羅達が知っているようなものとは違ったが…

ミク「そう。…ここは、『嘘と希望のセカイ』。貴方の『本当の想い』を見つける手伝いをする為にここにいる。想いを見つけられたら、そこから歌が生まれるから。」

海羅「…すぐに受け入れることは出来ないが、大体は理解した。」

海羅「…なぁ、ミク」

ミク「どうしたの?」

海羅「俺…




はい、今回でセカイ登場です!
次回からは他キャラも出します!


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第3話 接触

会話文多くなりがち…


彰人「…はぁ」

冬弥「どうした?元気がないように見えるが…」

彰人「…センパイがもうかれこれ2週間も学校来てないんだぜ?」

冬弥「確かに心配だな…」

 

彰人はいつもより学校にいる気分ではなかった。

海羅があのヤンキーに絡まれた日から学校に来ていないのだ。

それがどうにも気になって仕方がない。なぜなら、

 

彰人「あの怪我で2週間も入院するか?普通」

冬弥「おそらくはしないだろう。それに、入院したなら連絡が学校にいくはずだ。それが無い。」

彰人「そうだよな…」

冬弥(それに、あの時の『慣れてる』という発言も気になるな…)

 

冬弥は海羅のあの発言を聞き逃さず、しっかりと記憶しているため、そこに原因があるのではないか、と踏んでいる。

 

冬弥「…なぁ、彰人」

彰人「どうした?」

冬弥「海羅先輩の、『慣れてる』という言葉、覚えてるか?」

彰人「…あぁ。それも気になってたんだ」

冬弥「これは俺の憶測なんだが…家庭状況などが関連しているんじゃないか?」

彰人「だとしたら俺らに何ができるんだよ」

冬弥「せめて、話を聞くくらいはしたいと思っている」

それを実行に移すべく、彰人と2人で海羅の住所を先生に聞き出し、向かおうとしたところ、冬弥が変なものを見つけた。

冬弥「…なぁ、彰人」

彰人「ん?」

冬弥「これは…」

そこには、Ready Steadyと共通しているものがあった。

彰人「…!Untitled…!?」

冬弥「これはまさかセカイの…?」

彰人「間違いねぇ。だとしたら誰のセカイへのものなんだ?」

そう、彰人と冬弥、他には白石杏と小豆沢こはねの4人は「ストリートのセカイ」へ行ける。そのためセカイについて知っていた。

彰人「まさか、俺のスマホにも…あった!」

彰人のスマホにも、同じようにUntitledがあった。

冬弥「ひとまず、人気のないところで再生してみよう。」

彰人「あぁ!」

 

そして、放課後の体育倉庫でUntitledを再生する。

見慣れた眩い光が放たれる。

 

彰・冬「…っ!」

 

そして、セカイに到着した2人は、目を疑った。

そこには、真っ白なセカイがあった。

真ん中?と思われる場所に机と椅子と何も植えられていない花瓶が置かれている。

 

彰人「どうやらセカイみたいだな…」

冬弥「なら、ミクもいるんじゃないか?」

ミク「…うん、いるよ」

 

そして、このセカイのミクを見た2人はまた自らの目を疑った。

彰人「…お前がミクか…?」

ミク「うん、そうだよ。彰人、冬弥、待ってた」

冬弥「待ってた、というのは?」

ミク「…2人と、もうあと4人で、『彼』を救って欲しい」

冬弥「…彼?」

 

ミク「彰人達の先輩…『中島海羅』だよ」

 

彰・冬「っ!!」

この言葉に、2人は衝撃を受け、更に混乱した。

あの先輩を、「救う?」

彰人「救うってったって、どうやって?」

ミク「…私にはわからない。」

冬弥「それに、ほかの4人って…?」

ミク「それは……!…もうすぐ来る」

彰人「は?」

 

そして、彰人達がいる位置から少し離れた場所に光が集まる。

 

そこに現れたのは…

 

奏「ぅ…」

まふゆ「…」

絵名「着いたみたいね…」

瑞希「相変わらず眩しいね〜!」

 

絵名「え?」

彰人「は?」

 

絵・彰「「絵名ぁぁぁ!?/彰人ぉぉぉ!?」」

 

冬弥「暁山…?」

瑞希「冬弥くんも!なんでここに?」

 

 

 

 

 

 

《奏たちが嘘と希望のセカイに入る10分前》

 

K「みんな、今日は早いね」

Amia「まぁね〜!暇だったから作業したくて!」

えななん「私はすぐ学校だけどね」

雪「私も予備校あるから少ししたら抜けるよ」

『25時、ナイトコードで。』の4人は、夕方前に皆が少しの時間揃ったため、作業を開始していた。

 

そうして少しの時間を空けて、

K「そういえばAmia、例の先輩とは連絡取れた?」

Amia「それが…まだ連絡取れてないんだよね…」

えななん「もう2週間になるじゃない!大丈夫かな…」

雪「…えななんが人の心配するなんて、珍しいね」

えななん「ちょっと雪!それどういう意味よ!」

Amia「まぁまぁ…」

そんなこんなで作業を進めていたら、

 

Amia「…ねぇちょっと!」

えななん「何よAmia、うるさいわね!」

K「どうしたの?」

Amia「ボクのスマホにUntitledがあったんだよ!K達も一応確認してみてよ!」

K・え「!!」

雪「…私のにも入ってる」

K「本当だ…私の携帯にもある」

えななん「確かにあるわね…」

みんなが突然のUntitledの出現に戸惑っていると、

 

ミク(ニーゴ)『みんな』

K「ミク!?」

ミク(ニーゴ)『それ、やっぱりそうみたい』

えななん「Untitledのこと?それがどうしたの?」

ミク(ニーゴ)『前に言ってた、セカイが生まれたから、そこの世界の私に呼ばれた…のかもしれない。』

雪「これを再生すれば、そのセカイに行けるの?」

ミク(ニーゴ)『うん…』

Amia「…そのセカイの持ち主って、男の人だったりする?」

ミク(ニーゴ)『分からない…けど、瑞希や絵名の身近の人だと思う。』

K「まさか、例のAmiaとえななんの先輩?」

Amia「行こうよ!ボク、先輩のことを知りたい!」

K「私も、その人が何かを抱えているなら、救いたいな」

えななん「私も行くことにするわ!」

雪「…みんなが行くなら」

 

そうして、セカイに到着する。

 

 

 

 

彰人「…なるほどな、大体把握した」

絵名「全く…来てみたら彰人いるからビックリしちゃった」

瑞希「それにしても、本当に先輩のセカイだったんだね…」

冬弥「あぁ。俺も驚いた」

そうして6人は軽い自己紹介を済ませ、ミクにこのセカイについて教えてもらう。

話を聞き終わると、

 

まふゆ「そういえば、その海羅って人、見当たらないけど」

奏「確かに、どこにもいないね」

ミク「海羅は、あっちにいる」

 

そう言って、机とは反対の方向に指を指す。

 

そこには、静かに眠っている海羅の姿があった。

 

ミク「ここに最初に来てから、ずっと眠ってる」

彰人「つーことは、もう2週間も寝てるのか!?」

瑞希「ねぇそれ!大丈夫なの!?」

 

2週間も眠り続けていると知り焦る瑞希と彰人をよそに、奏とまふゆはミクと話していた。

 

奏「ミク、海羅さんを起こしてもらえる?」

ミク「わかった、やってみる」

ミクが起こしに向かう。

ミク「海羅、起きて、みんないるよ」

 

海羅「………んぁ…ん…?ミク…?」

 

海羅「彰人と、冬弥に、瑞希と、絵名と、…誰?」

奏「宵崎奏。」

海羅「奏か。覚えた」

まふゆ「はじめまして。奏達のサークルメンバーの、朝比奈まふゆです」

まふゆは初対面の海羅には優等生の仮面をつける。

しかし、海羅は動じなかった。

海羅「まふゆ、ね。にしても、

 

 

気味の悪い笑顔だな、笑えてないぞ」

 

奏・絵・瑞「「「!!!」」」

奏たちは、まふゆが優等生の仮面をつけるのには仕方ないと思っていたが、まさか海羅が一目見て気づくとは思っていなかったため、とても驚いた顔をしている。

 

まふゆ「…気づいてたんだ」

海羅「…どうやらまふゆと俺は同類みたいだな」

 

「「「「「???」」」」」

 

まふゆと海羅とミク以外の人の頭にクエスチョンマークが浮かび上がる。わかっていない様子。

 

海羅「…とりあえず、俺は戻る、じゃあな」

 

彰人「あっ!ちょっとセンパイ!」

 

彰人の引き止めも虚しく、海羅は現実世界へ帰還して行った。

 

 

ミク「行っちゃったね」

冬弥「何も聞き出せなかったな…」

瑞希「だね…それよりミク!」

ミク「?」

瑞希「さっき、海羅が『まふゆとは同類』っていう言葉、意味わかる?」

ミク「わかるよ」

奏「できればでいいから、教えてくれないかな?」

ミク「…わかった、海羅に許可ももらってるから、彼のことも話すね」

彰人「許可?」

ミク「『誰か呼ぶのなら、俺の事を知っておいてもらいたい』って言われたから」

 

ミク「じゃあ話すね、『中島海羅』っていう人間のこと。」




ニーゴの場面は、ご都合主義が否めない…!
次回は過去回想回です!


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第4話 ナカジマカイラ

嘘ミク『これは、彼の記憶からも忘れ去られた、本人も知らないことが多い記憶。』


「中島海羅」は、有名なテニス選手の父親と一般人の母親の間に生まれた。

 

父親は名の通った選手で、参加する大会でことごとく優勝か準優勝をかっさらっていくほどだったと言う。

 

それを見て、当時の海羅は、

「ぼく、おっきくなったらとうさんみたいなテニス選手になる!」

 

と言っていた。

 

「そうかそうか!お父さん楽しみにしてるからな!」

父親も、応援していた。

母親もそれを見て、微笑ましそうに笑っていた。

 

海羅が3歳の頃、妹が生まれた。

妹の名は、中島緋雨と言う。

 

海羅は初めてできた妹を、大事にしようと心に誓った。

「ひさめ!おにいちゃんと遊ぼうな!」

「うん!あそぼあそぼ!」

 

そうして、幸せに暮らしていくのだと、思っていた。

 

そう、思っていたのだ。

 

 

 

海羅が小学6年生、緋雨が3年生の頃だった。

きっかけは、父親だった。

試合や大会で、思うようにプレイできず、優勝は愚か、入賞すら出来なくなって行った。

 

そうしていると、父親はテニスを辞め、酒に入り浸った。

 

「おい海羅!酒持ってこい!」

「父さん…もうないよ」

「ち…なんでねぇんだよクソが!!」バキッ!!

「うぁっ!」

 

父親はテニスのストレスを発散するかのように理不尽な理由で海羅や母親に暴力を振るっていた。

そんな中、緋雨は心配していた。

 

「お兄ちゃん…大丈夫なの?」

「…あぁ!大丈夫だよ!お兄ちゃんは元気だ!」

「そう…?なら良かったよ!」

 

そんな日々が続いたある朝。

 

母親が家からいなくなった。

 

クローゼット、タンス、洗面台、全て確認したが、まるで生活すらしていなかったかのように全て母親のものが無くなっていた。

 

「お…かあ…さん…?」

「あの女…俺を見捨てやがったか…!海羅ぁ!!」

「!!…はい…」

「酒だ、持ってこい」

「…どうぞ」

「…」

 

母親がいなくなって父親はますます酒と暴力に溺れていった。

日に日に海羅の体には痣が増えていく。

しかし、目に見えるところには傷をつけず、

胴体、腹、腕と、毎日父親のサンドバッグのように扱われていた。

 

しかし、悲劇はこれだけでは終わらない。

 

 

 

中学1年生になったとある休日、緋雨と2人で買い物に行っていた。

「お兄ちゃん、最近は体どうなの?」

「少し痛むだけだよ、大丈夫」

相変わらず心配してくれる妹を見ていると、海羅だけでも強くあらねばと思う。

 

「なぁ緋雨、少しトイレに行ってきていいか?」

「わかった、ここで待ってるね!」

 

そして海羅は何の気なしにトイレに向かった。

 

 

 

これが最期の会話になるとも知らずに…

 

 

 

トイレを出ようとすると、外の様子がおかしい事に気づいた。

(外が騒がしいな…?イベントか?)

そう疑いながらトイレを出ると、目に入ったのは予想外なものだった。

 

救急車、

パトカー、

人だかり、

そして…その人だかりの中心で首から血を流して倒れ込む、この世で1番大切な妹。

 

「ひさめ!!!!!!」

 

それを見た途端、海羅は走り出していた。

 

すぐに妹のそばに駆け寄り、涙を流しながら訴えかける。

 

「ひさめ!!ひさめ!!大丈夫か!?返事をしてくれ!!」

 

しかし、緋雨はもう既に事切れていた。

 

その瞬間……海羅の中でナニカが壊れた。

 

 

 

そして、緋雨が通り魔に殺害された、という報わせが父親の耳にも入った、いや…入ってしまった。

 

 

家に着くなり、怒鳴りつけられる。

「お前がいて何で!!緋雨が死んでんだよ!!この役立たず!!」バキッ!!

「…うぅ…」

「お前がいなければ!!緋雨だけでも生きられただろうが!!」

(…あぁそうだ。俺のせいだ。)

(…でももう、妹を失った俺は…生きる意味も無い。)

 

(…モウ、イイカ。)

 

カイラは走り出した。

 

 

 

それから、交番の前を通った際体の痣を見られてしまい、それが原因で父親は逮捕された。

 

 

身寄りの無くなったカイラを、伯父や叔母が引き取る、と言い出すが、彼自身が却下した。

大人に対するトラウマもあるだろうと、簡単に一人暮らしが了承された。

 

(もう俺は…“ナカジマカイラ”じゃない…)

 

(誰も知らない“中島海羅”だ。)

 

それからというもの、学校でも無理に笑うことが多くなり、

 

“ナカジマカイラ”は死んだ。

 

その代わりに、新しい中島海羅を、彼自身が望んでいる。




嘘と希望のセカイの初音ミクを嘘ミクと呼称することにしました!
アンケート…奏とまふゆが割れている…!
次回はあの人をセカイに入れようかなと!


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第5話 “Kai”

書き方を変えてみました


彰「そんなことが…」

 

冬「あの海羅先輩が…」

 

瑞「ひどいね…」

 

海羅の過去を知った6人は、皆が唖然としていた。

 

絵「身体中に痣があるってのも、長袖いつも着てるみたいだし納得いくわね…」

 

奏「…ミク、このセカイに色が無いのも、海羅の過去と想いが関係してるの?」

 

ミク「そうだね。本当の想いは分からないけどそれは間違いないと思う」

 

まふゆ「…消えたいって、想ってるのかな」

 

奏「…!」

 

奏は、まふゆの言葉を聞いた途端、悪寒が走った。

 

何も映していない瞳。

 

表情が抜け落ちた顔。

 

寂しそうな背中。

 

目の下にやつれたようにある隅。

 

彼が消えてしまう、と考えた時、何故かはわからないけど、胸が少し痛くなった。

 

 

 

そして、呪いを抱えた少女は決断する。

 

 

 

奏「…作ろう」

 

絵「奏?」

 

彰「作る?」

 

奏「うん。まふゆを救えたような曲を、作らないと」

 

まふゆ「……奏は」

 

奏「?」

 

まふゆ「誰彼構わず、消えそうな人を救おうとするよね。」

 

奏「うっ…」

 

まふゆ「…でも、これはわかって欲しい。」

 

 

 

「曲を作るのは、1人じゃできないでしょ?」

 

 

 

奏「…!」

 

瑞「そうだよ!奏だけじゃないんだよ!」

 

絵「私達だっているんだから、頼ってよね!」

 

奏「みんな…ありがとう。」

 

ニーゴの皆は、海羅の為に曲を作ることを決意した。

 

すると、

 

 

彰「…俺にも、協力させてくれ」

 

奏「!」

 

彰「あのセンパイは、今のアンタみたいに誰でも助けようとする。でも肝心な自分が救われてねぇんじゃ意味はねぇ。」

 

「だから!俺達もセンパイを助けたいんだ!」

 

冬「俺も、協力させてください。」

 

「海羅先輩は、俺にとって恩人のような人なんです。そんな人が目の前で消えそうになっているだなんて、見過ごせない。」

 

奏「彰人くん…冬弥くん…」

 

「私からも、お願いしたいな」

 

彰・冬「!!」

 

彰「い…いいのか!?」

 

奏「うん、みんなの想いを、彼に届けよう」

 

冬「本当に…ありがとうございます!」

 

 

 

ここに、彼のためだけの音楽サークルが結成された。

言うなれば、

『18時、俺たちのストリートで。』

と言ったところか。

 

 

 

 

 

 

 

 

セカイから戻って、スマホに写っているUntitledを見やる。

 

(これが歌に…ねぇ…)

 

正直、未だに信じられていない。

 

ただ、自分自身がセカイで約2週間もの間眠っていたところ、受け入れるしかないようだ。

 

それにしても、

 

「凄く…快適だったな…」

 

何も考えなくてもいい。

 

何もしなくていい。

 

 

 

誰とも…関わらなくていい。

 

 

 

「…歌うか」

 

海羅は、自分の行きつけのスタジオへ向かう。

 

最近Kaiとしての歌を更新できていなかった為、生存確認の意味でも歌う。

 

そして、歌うことで自分を保つ。

 

 

 

「ー!ーーー!」

 

 

 

歌ったものを録音して、諸々の工程を終わらせ、投稿する。

 

それでも、俺自身は、

 

「…わからない……」

 

何も感じない。

 

俺は…何……?

 

 

 

 

スタジオから出ると、そこには見なれた人物がいた。

 

「やはり、海羅だったか!」

 

「つか…さ…?」

 

そこにいたのは、海羅のクラスメイト、天馬司だった。

 

「まさか…さっきの歌…ここで」

 

「うむ!聴こえていたぞ!まさかお前が『Kai』だったとはな!」

 

「マジか…そこまでバレてたのか…」

 

どうやら司は、偶然ここのスタジオを使っていて、 スタジオの扉の前で海羅の歌を聴いて、そこから海羅とKaiは同一人物では、と考えたらしい。

 

「そうだな!俺からしたらかなりわかりやすかったぞ!」

 

「はは…」

 

苦笑いしかできない。

 

そんな曖昧な態度をとっていると、司が不意打ちでこんな事を聞いてきた。

 

 

 

 

「海羅、お前…何を抱えてるんだ?」

 

 

 

 

「…は?」

 

司に…バレた…!?

 

「いやなに、先程の歌を聴いて、思い詰めたような歌声だと思ったからな!」

 

「ッ…!!」ダッ

 

「あ、おい!海羅!」

 

逃げろ

 

走れ

 

あいつの顔を見るな

 

怖い

 

こわい

 

コワイ…!

 

 

海羅は、自宅まで止まりもせずに走り去った。

 

 

「…行ってしまった」

 

俺があの質問をした時のあの顔…何かを抱えてる事に間違いなさそうだ。

 

どうしたらいい…?

 

とりあえず咲希に帰る旨を伝えようとスマホを開いた時だった。

 

「Untitled…!?これは…!」

 

そう、司の携帯にもUntitledが入っていた。

 

「先程まで無かったのに…?まさか、海羅…?」

 

説明は出来ないが、司はこの先にあるセカイに、海羅のなにかがある、そう確信を持っていた。

 

意を決して、それを再生した。




はい、多少無理矢理感ありますが司もセカイに入れるようにしました!
『18時、俺たちだけのストリートで。』に関しては、ストリートライブが18時から行われてそうという作者の固定概念()です


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第6話 朝焼け

投稿頻度がた落ちしてすみません...
テストが重なってました

そろそろ重い腰上げます


光が止むと、司は一面白い場所にいた。

 

「む…どこだここは…?Untitledから来れた、となるとセカイなのだろうが…

 

何も無いな…」

 

そう、司は自分の携帯にあったUntitledを再生したら、海羅の【嘘と希望のセカイ】に来ていた。

 

「とりあえず、ミクを探そうか」

 

司自身、セカイを持つ身の為、ミクの存在を知っていた。

 

探しに行こうとすると、

 

「司。」

 

後ろから、ミクのものと思わしき声がした。

 

「お前がこのセカイのミクか?」

 

「うん、司を待ってたの。」

 

ミクのその姿は、ワンダーランドのセカイのものとは打って変わってツインテールの片方は黒、白とそれぞれ分かれていて、服装はオリジナルに近いものになっている。まるで制服のような見た目だ。

 

「…このセカイの持ち主は…海羅なのか?」

 

「そうだよ。海羅の想い。」

 

司は、この色すら抜け落ちたこのセカイで、違和感を覚えていた。

 

「この、何も無いこのセカイが、海羅の想いなのか…?」

 

「そうだよ。」

 

司は絶句した。

 

あの楽しそうな海羅の想いが

 

これだって?

 

そう知って言葉が出なくなった。

 

「…驚いてるみたいだな、司」

 

よく聞く声が聞こえた。

 

振り返った。

 

そこに居たのは…

 

 

「海羅…なのか…?」

 

 

目のハイライトは消え失せ、昼間に見た楽しそうな表情も無く、『無』を感じさせるほど冷たい表情の海羅だった。

 

 

「司も、このセカイに来れたんだ。」

 

「海羅…?」

 

「まぁ別に、どうでもいいかな。ミク。」

 

「…本当にいいんだね。」

 

ミクが司に触れようとする。

 

「!ま、待ってくれ!海羅!!」

 

「しばらく、学校には行かない、それだけ先生に伝えておいてくれ。」

 

「なっ!!待て!かい「じゃあね、司。」

 

言い切ることも出来ず!ミクに触れられてしまい、セカイから追い出される。

 

 

 

光と三角のオブジェクトが止み、Untitledを再生した路地裏に戻ってくる。

 

司は、海羅のあの姿を見て、ショックを受けていた。

 

自分は、海羅の事を親友だと思っていたのに、

 

海羅は違ったのか、そう考えてしまう。

 

ただ、天馬司という男は、

 

(なら、本当の意味で親友と思われるまで海羅と関わり続けるだけだ!!)

 

清々しい程のポジティブだった。

 

そして、司はいつもと変わらずその日の日課を終え、朝を迎えた。

 

陽光は、何かを嘲笑うように人々を照らした。

 

 

 

《司を追い出したあとのセカイ》

 

「…はぁ」

 

「海羅、彼のこと、良かったの?」

 

ミクは司を追い出したことについて、心配そうに聞いてくる。

 

「いいんだ。あいつのことだし、1度追い出された程度じゃあいつはめげないからな」

 

それに、と言いかけたところで、ミクにその先を言われる。

 

「…やっぱり、信用できない?」

 

「っ…あぁ、そうだな」

 

海羅自身、まだ彼を信用しきれてない。

 

それもあり、追い出したのだ。

 

「…さっきも言ったけど、暫くここにいる。」

 

「うん。……な………い………ね…」

 

ミクが何か言っていたが、何も考えず眠りについた。

 

 

 

主がいない部屋を、陽光はまるで照らすことが役目かのように照らし続けた。



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第7話 接近

お待たせしました...!


ある日の神高。

 

「おはよ!」

 

「おう!今日の一限テストだけど勉強したか?」

 

「うげぇ、何にもしてないや…」

 

「てかそういえば最近あの先輩見ないよな?」

 

「あー、中島先輩だっけ?」

 

「なんでかは知らないけど、定時制に変更したらしいよ?」

 

「へぇ、なんでだろうな?」

 

その話を耳にした司は海羅がいないことにも納得出来た。

 

(本性があういうものなのだとしたら人と関わりたがらないのは当然と言えるな…)

 

それに司は、海羅が持っていたセカイについても情報を集めていた。

 

(海羅の想い…『嘘と希望のセカイ』か…)

 

司はワンダーランドのセカイに足を運んだ。

 

「あっ!司く〜ん!今日は早いね!」

 

「あぁ!学校も少し早く終わったからな!」

 

いつも通りワンダーランドのセカイのミクを見つける。

 

「早速ショーの練習をしたい!…ところだが、ミクに1つ聞きたいことがある!」

 

「私に?なになに〜?」

 

「世の中にはセカイはどれくらいあるんだ?」

 

「セカイはね〜!想いの数だけあるんだよ〜!」

 

予想していた答えと違って司は困惑した。

 

「想いの数だけある?どういうことだ?」

 

「そのまんまだよ!極端に言っちゃえばみんなセカイを持ってるかもね!」

 

「そうか...ありがとう!ミク!」

 

「えへへ、役に立てたならよかったよ~!」

 

司はこのことは部屋に戻ってからゆっくり考えようと思い、頭の片隅におしこんだ。

 

 

 

 

ー宮益坂女子学園ー

 

「今日は予備校がお休みの日だし、サークルの時間も長く取れそうだな」

 

まふゆは廊下を歩きながらこの後の予定について思案していた。

 

(そういえば、今日はセカイで奏の曲を聴くんだっけ)

 

(...海羅って人、どこが私と同じだったんだろう)

 

思考は海羅の事に移った。

 

(いい子の私を「気味の悪い笑顔」か...あ...)

 

ここでまふゆはある答えを見出した。

 

(自分がないから...?同族嫌悪...かな...?)

 

(でも、あの表情に嫌悪は見えなかった。)

 

(...奏たちと考えよう)

 

一旦考えるのをやめ、帰宅するのだった。

 

 

 

 

 

ー噓と希望のセカイー

 

「~♪~~♪」

 

海羅は一人でセカイにきて、歌っていた。

 

(歌はいいな...少しだけでも楽になってる気がする)

 

「...~♪」

 

そこにミクが来て、海羅の歌声に合わせるように歌い始める。

 

「「~~~♪」」

 

二人の歌声がセカイを駆け巡る。

 

すると、セカイに少しの変化が起きた。

 

「ふぅ、こんなところか、ありがとう。ミク、一緒に歌ってくれて」

 

「いいよ、海羅、楽しそうだったから」

 

「っ!ミク、これは...」

 

海羅が見つけた変化とは

 

 

 

机の上にあった色のない花瓶に、淡い水色が浮かんでいた。

 

 

 

「色がついてる...?」

 

「海羅が少しずつ前に進んでるってことだね」

 

「どういうこと?」

 

ミクにその真意を聞く。

 

「海羅、さっき歌ってて、”楽しかった”でしょ?」

 

「海羅は、歌うのが好きなんじゃない?」

 

「...確かに、そうかもしれない」

 

ここまで来てようやく、”好きなこと”が一つ見つかった。

 

「少し、うれしいかな」

 

「ふふ」

 

二人で静かに笑っていたら、光と三角のオブジェクトは出てきて、奏がやってきた。

 

「あ、海羅。」

 

「奏か。」

 

「今日はどうしたんだ?」

 

「海羅にこの曲を聴いてほしくて。」

 

「わかった。」

 

 

音楽に触れていけば、少しだけ近づけて、明日がちょっと楽しみになった。



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第8話 心の底

ちまちま書いてます


奏と海羅が音楽を聴き始めて、時間にして約2時間近く経過した。

 

「今の曲は、どうだったかな?」

 

「これと言って思うことはなかった、かな」

 

「そっか。」

 

こんなやりとりを繰り返していた。

 

だが、、その時間は海羅の凍てついた心を少しづつ溶かしていた。

 

(すごく、過ごしやすい。こんなことは初めてだな...)

 

(奏と音楽を聴いてると、少し楽...かな...)

 

対する奏も、普段とは違う感覚にとらわれていた。

 

(海羅に曲を聴いてもらった後だけ、どこかもどかしい...?)

 

(まふゆの時はこんなこと、なかったのにな)

 

(...海羅の事、救えてるのかな。)

 

「...ねぇ、海羅」

 

「なんだ?」

 

奏は思い切って聞くことにした。

 

「今、私の曲を聴いて、どんな感じ?」

 

「...ほかの曲とは違う、優しい曲だと思った。」

 

「奏の曲は、聴く人に寄り添っている感じがする。」

 

「それが、聴いてて心地いい」

 

「そっか。よかった。」

 

海羅の返答を聞いて、嬉しそうに奏は言う。

 

それだけでよかった。

 

だけど、海羅は。

 

 

 

(...ごめん。奏。)

 

 

 

 

ーフェニックスワンダーランドー

 

「...んで、司。なんで俺はショーの練習の手伝いをしてるんだ?」

 

海羅は司たち『ワンダーランズ・ショウタイム』の練習の手伝いをしていた。

 

「すまないな!うちの演出家が少々重いものを運んでいて遅れるそうなんだ!」

 

「あぁ、類か」

 

そんなくだらない会話をしながら準備を進める。

 

司は気を使ったのか、セカイで見た素の海羅については言及しなかった。

 

「つかさくーん!!」

 

「えむ、いきなり走らないで...」

 

しばらくしたら、ショーのメンバーと思われる女子が二人現れた。

 

「司...って、海羅先輩?」

 

「お、寧々か、よっ」

 

どうやら一人は後輩の草薙寧々だったようだ。

 

”笑顔”で挨拶しておく。

 

(...なんか隣のピンクの子が俺見たらおびえてるな...)

 

えむはいつも”笑ってるけど笑ってない先輩”と似たものを感じ、「ひっ」と声を出しおびえる。

 

「はじめまして。俺は中島海羅。司の親友だ!」

 

「ひぃっ!おおお鳳えむです...」

 

「よろしく。鳳さん」

 

「よろしくお願いしますぅ...」

 

(この人もなんか笑ってないよぉ...)

 

そんなこんなで類も合流し、ショーの練習が始まった。

 

司とえむの演技、類の演出、寧々の歌声。

 

すべてがかみ合っていた。

 

そんな4人を見て、少しだけ黒い感情が湧いてきたが、押し殺す。

 

「さぁ海羅!今の場面はどうだった!」

 

「あぁ、迫力があっていいと思った。」

 

「そうだろうそうだろう!さすが俺たt「海羅君に褒められるとなんだか照れくさいね、フフフ」類ぃ!!」

 

司はセリフを遮られ怒っていたが完璧にスルーされた。合掌。

 

(この4人にはこの4人でしか成せないものがある、か。)

 

(俺には持ってないものをたくさん持ってる。)

 

少しだが、明確なナニカがわかった気がした。

 

そうやって意見交換をしながら練習をして、終了の時間になった。

 

「海羅!今日はありがとう!海羅の意見、参考になった!」

 

「ならよかった、俺にできることあればまた呼んでくれ。」

 

拭えない不安を残し、フェニックスワンダーランドを後にした。

 

帰り道で、久々に歌おうかとも考えていると、

 

「あ、海羅」「奏?」

 

奏に声をかけられた。珍しい。

 

「奏から声をかけるなんて珍しいな、どうした?」

 

次に紡がれた言葉は、海羅に多少なりとも衝撃を与えた。

 

 

 

「今日、私の家に来てくれない?」

 

 

 

「え?」




誤字報告お待ちしてます!


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第9話 気づき

遅くなってすみません(土下座)

今回ちょっと短いです。


「上がって。」

 

「お、お邪魔します」

 

いきなり奏の家に招かれた。あまりに唐突すぎて多少なりとも戸惑ってしまった。

 

奏の家は埃やゴミなどはあまりないが、奏の部屋がどうにも荒れていた。

 

楽譜は床に散らばり、カーテンは閉め切ってあり、パソコンの前にはエネルギーメイトやカップ麺のゴミが置かれている。

 

「なぁ、奏」

 

「何?」

 

「これ、ほんとに生活できてんのか...?」

 

「うぅ...」

 

どうやら周りからも言われているらしく、気まずそうに目を逸らした。

 

...まぁ、そんなことは置いといて。本題に入ろう。

 

「ところで、なんで今日は俺をここに呼んだんだ?」

 

「私たちが作る曲について、客観的な意見が欲しいから。」

 

あぁ、そういうことか、と考えをまとめる途中に、

 

 

 

「海羅って、『Kai』って名前で歌ってるでしょ」

 

 

 

と言われ、少し驚いた。

 

「どこで気づいた?」

 

「前にセカイで曲を聴いてもらった後、偶然見つけたの。海羅の声と似てたから。」

 

別に隠すことでもないし、肯定で返す。

 

「まぁな。ただ勧められたから歌ってるだけだが。」

 

そうして、二人して作業に入る。

 

 

「奏、ここのメロディを聴いてくれるか?」

 

「海羅、この部分のフレーズを一緒に考えてほしい。」

 

「ここのリズムは三連符にするのが妥当だと思うぞ。」

 

「全体的な曲調はこれでいいはず。」

 

 

時間が過ぎるのも忘れて、俺と奏は作曲に入り浸った。

 

奏は奏の曲を、俺は俺の曲を、作り続けた。

 

 

「...できた。」

 

俺の作曲がようやく終わった。

 

今回の作曲は少しペースを上げて作ったため、さすがに疲れが出てきた。

 

「なんだか、哀しい曲だね。」

 

「そうだな。」

 

そう言って作った曲を再生する。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

きっとみんな生きてた きっとみんな見ていた

 

きっと 乖離する快楽に気付かないで

 

ずっとみんな生きてた ずっとみんな生きてる

 

やっと たどり着いたこれが僕なのかな

 

 

それでよかった きっと満たされてた

 

腹の中で疼く「もったいない」を抱えて

 

考えないでいよう みんなを惑わそう

 

それが虚像でもいい 見えてるなら

 

 

まぁ

 

なんてくだらない嘘を選んで

 

実在でも確かめたいの?

 

まぁ せいぜい捜せよ 本当の嘘は

 

いつか誰かに届くだろう

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

あれから俺たちは1日中作曲をしていたらしく、帰るのが22時になってしまった。

 

「じゃあな、有意義な時間だった。」

 

「私も、海羅の意見を聞けてよかった。夜も遅いから、気を付けて。」

 

「あぁ。またな」

 

俺は奏の家を後にした。

 

 

 

奏がはっとした目で俺を見ていたのを知らずに。



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第10話 恐れていた事態

大変長らくお待たせいたしました。

理由もとい言い訳をすこし


新学期始まるとこで多忙でした...音ゲーもしてましたごめんなさい(((

今回少し鬱や闇要素あるので苦手な方はブラウザバック推奨です


奏の家を後にし、少し思考を巡らせる。

 

”哀しい曲だね。”

 

海羅にはその言葉の真意がいまいちつかめなかった。

 

(生返事で返してしまったし、思い出せない...)

 

どうしても思いつかないようなので、セカイに行くことにした。

 

(ミクなら、何か知っているかもしれない。)

 

 

~噓と希望のセカイ~

 

「海羅、いらっしゃい」

 

「あぁミク、今日は...って」

 

「あ、これ?」

 

そう言ってミクが指さした先には

 

 

 

窓の近くに黒い罅が入っているのが目に入った。

 

「この罅は...何...?」

 

「これは、海羅の心が壊れかけているの」

 

(俺の想いからセカイが生まれたのなら、心も反映される...ってことか。)

 

「だから海羅...

 

 

 あの子たちを頼って。」

 

ミクがそう、願うように海羅に言う。

 

「頼る...。」

 

海羅がそう考えた時だった。

 

「海羅センパイ。」

 

...彰人。

 

「海羅先輩。」

 

...冬弥。

 

「海羅!」

 

...司。

 

「海羅。」

 

...絵名。

 

「海羅センパ~イ」

 

...瑞希。

 

「海羅」

 

...まふゆ。

 

「...海羅。」

 

奏。

 

一人一人の顔が目に浮かぶ。

 

そんな時。

 

 

 

『海羅。』

 

 

「っ!!!」

 

『この役立たず。』

 

(...やめろ)

 

「...海羅?」

 

『そんなこともできないのか』

 

(...やめてくれ)

 

「海羅?大丈夫?」

 

『俺の血を引いているならこれぐらいできて当然だというのに』

 

 

 

『お前は、何のために生まれてきたんだ?』

 

 

 

__がしゃん。

 

 

~奏Side~

 

奏は海羅を見送ってから、作業を再開していた。

 

(あの時の海羅は、今にも消えてしまいそうだった。)

 

(後悔のかけらもない、そんな表情だった。)

 

奏はあの時の海羅の違和感の正体に気づいた。

 

ずっと、我慢していたこと。

 

苦しかったこと。

 

 

 

過去のトラウマを、ずっと”忘れてしまっていた”こと。

 

 

 

みんなの前でそんな弱みを見せるわけにもいかなくて、抱え込んで、引きずって、零して。

 

(まるで、この間までのまふゆみたいだな。)

 

そう、まふゆは奏たちニーゴのみんなに少しずつ救われている。

 

今では感情も理解し始めて時々”本当に”笑うようになっている。

 

(...まふゆなら、何か海羅についてわかるかな)

 

そう言って、まふゆをセカイに呼び出した。

 

 

 

~誰もいないセカイ~

 

「あ、まふゆ」

 

「奏から呼び出すなんて珍しいね、何かあったの?」

 

そんな軽いやり取りの後、事の経緯を話す。

 

「海羅が、そんな曲を...」

 

「まふゆは、何かわかったりする?」

 

そう言うとまふゆは少し考える仕草をして

 

「もしかしたら、もう危ないかもしれない」

 

「え?」

 

「奏、」

 

どういうことだ、と理解する前にミクが来た。

 

「どうしたの?ミク」

 

「__海羅のところへ行ってあげて

 

 

 

  海羅の想いが、壊れてしまう。」




亀更新ですがこれからも何卒...!


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