私の姉が日本一のスクールアイドルだった件 (裏面が下駄)
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第一話 叶え!私たちの夢

 

 

 

「おねーちゃーん、遅刻するよー?」

「…うーん」

 

また夜更かしでもしていたのだろう、だらけきった返事が部屋の中から聞こえてくる。

 

「雪穂、先に食べてなさい」「はーい」

 

シワひとつない新品の制服を汚さないよう、ゆっくりとトーストを口に運ぶ。

そこに先程とは打って変わり、お姉ちゃんが慌ただしく階段を降りてくる。

 

「やばい!海未ちゃんに怒られちゃう!」

「私がなんですか?ほ・の・か?」

「?!う、海未ちゃん…おはよ〜」

「全く、このような大事な日に寝坊するなんて…」

 

迎えに来ていた海未さんに叱られるお姉ちゃん

いつも通りの光景にホッとしたことで、自分が緊張していることに気付く。

 

「じゃあ雪穂、また後でねー!」

 

準備のため、お姉ちゃんたちは早めに学校に行かないといけないらしい。

あのお姉ちゃんが学校行事の準備…みんなに迷惑をかけまくっているのが目に浮かぶなぁなどと妹として反省しているうちに、玄関から元気な声が聞こえてくる。

 

「ゆーきーほー、おはよー!」

「ありさ、おはよ」

 

声の主は絢瀬亜里沙、私の親友です。

なんというか、こんな普通な私が友達というのはおこがましく感じるくらいの超絶美少女で、なんとあの絢瀬絵里さんの妹でもあります。

ちなみに…

「私は高坂雪穂、今日から高校1年生!」

「雪穂、誰に話しかけてるの…?」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「「わぁ…!」」

学校前の大きな階段を上がると、まるで私たちの新たな生活を祝うかのように、満開の桜並木が両手を広げて出迎える。

「雪穂、いこ!」

「うん!」

先程までの緊張はどこへやら、これから訪れる未来に期待を膨らませている自分がいる。

 

「あ、雪穂ちゃんとありさちゃん!」

 

振り向くと、大きく手を振りながら見知った顔が近づいてくる。

 

「おはよー!…あ、おはようございます、ことり先輩」

「ことりさん、おはようございます!」

「えへへ、2人に先輩って呼ばれるとなんだか照れちゃうね」

かわいい、ことりちゃんがかわいい。

 

ことりちゃんに案内され、私たちは体育館へと向かった。

 

 

 

・・・以上とさせていただきます。続きまして・・・

 

「長いね…」

「そうだね…」

 

退屈な時間が流れていく。

意識が薄れゆく中、急に眠気が覚めるような言葉が聞こえてきた。

 

「続きまして、生徒会長挨拶」

 

「はい!!!!!」

 

ざわつく会場をよそに壇上へと上がる姿は非常に凛々しく、

その場にいる者全ての視線を独り占めにする。

 

「皆さん、こんにちは。本校の生徒会長を勤めさせていただいております、高坂穂乃果です」

 

…普通だ。

まさかあのお姉ちゃんが、こんなにちゃんとした人に見えるなんて…

でも、なんであんなにキョロキョロしてるんだろう

 

その時、なぜか壇上の姉と目が合う。

「あ、ゆきほー!」

 

なんでこっちに手振ってるの?!

ああ、みんなが私のこと見て笑ってる…

式が終わるまで、顔の火照りが収まることはなかった。

 

・・・

 

「お姉ちゃんのばか!!!」

「ご、ごめん…嬉しくってつい、ね?」

 

ひとしきり説教を終えると、横で苦笑いしていた亜里沙が口を開く

「そういえば、さっきアイドル研究部に興味がある人は屋上集合って言ってたけど、穂乃果さんはここにいて大丈夫なの?」

「しまった、忘れてた!」

 

式の時のしっかりした人はどこへ行ってしまったのか。

いつものポンコツなお姉ちゃんと一緒に屋上へと向かう。

 

「人集まってるかなぁ」

「μ'sの8人に憧れて来てくれる人はたくさんいると思うよ」

「雪穂が冷たい〜」

 

ガチャ

 

「みんなごめん、遅くなっ…」

 

 

「 「 「えぇぇぇぇ ! ! !」 」 」

 

 

 

 



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第二話 理想と現実

固まったお姉ちゃんを手で押しのける。

 

・・・屋上が人で埋め尽くされていた。

 

「穂乃果!」

「あ、うみちゃん!いったいどうしたのこれ?!」

「ど、どうしたのじゃありませんよ!貴女が屋上に集めたんでしょう!?」

「そうだけど、、よくて10人いればいいかなぁ~なんて思ってたから、こんなに集まってるなんて、あはは…」

 

「ま、ラブライブ優勝グループのスーパーアイドル、にこがいるんだしこれくらいはとうぜn…「にこっち、さっきまで人が来なかったらどうしようとか言ってたくせに~」

「うっさいわね!」

「にこも希も皆が見てるんだから落ちつきなさい!」

 

声のする方を見ると今年大学生になった東條先輩、矢澤先輩、綾瀬先輩の姿があった。わざわざこのために駆けつけてくれたのだろうか。

3人とも同じ東京の大学に入り華の大学生活を満喫している。矢澤先輩は志望校の難易度が高すぎたため、μ's解散後から綾瀬先輩に付きっきりで勉強を教えてもらってなんとか入れたのだとか。

 

(綾瀬先輩と東條先輩、大学生になって更に大人っぽくなったな~。矢澤先輩は、、うん。)

そんなことを考えながら、お姉ちゃんに声をかける。

 

「っ!あっ、そうだ!皆さん今日はこんなにも沢山集まってくれてありがとう!」

 

その一言でお姉ちゃんに一斉に注目が集まる。お姉ちゃんはこんなにたくさんの視線を浴びても、怖気ずくことなく話し始める。すごいなぁ…私なら絶対に頭が真っ白になっちゃうよ…。

 

「早速ですが秋葉原でのイベントで話した通り、私達μ'sはあのイベントをもって解散しました。だからこれからスクールアイドルを目指す子の後押しが少しでも出来たらいいなと思って皆さんに集まってもらいました。」

「ん~、といっても何を伝えたらいいかな~。 ……そうだ!まずは私達のパフォーマンスでも見てもらおっかな!」

 

予期せぬサプライズに、新入生たちはどよめく。更にはμ'sの人達でさえどよめいている。

「ハラショー!雪穂、知ってたの?」

知らん。絶対また思い付きだよ。ほら見てみなよ、あの海未ちゃんの間抜け面(笑)

 

思考を読んだかのような海未ちゃんからの熱い視線から目を逸らしつつ、暴走列車こと我が姉の話を聞く。

…お姉ちゃんは、思い付きで振り回される人の身になったことがあるのだろうか。

 

μ'sの面々が生徒の前に集まる。そして既定のポジションに着いたのを確認すると、亜理紗が曲をかける。

 

瞬間。

先程までの和やかな雰囲気は消え去り、会場全体に緊張が走る。

 

なんというか、異様な雰囲気だったのを覚えている。

曲がかかった瞬間、まるで人が変わったかのように感じるくらい、凄まじい集中力だった。

楽しそうに、時に儚げに見える表情。

それを裏付ける、指先まで張り巡らせた繊細な動き。

気が付くと、この瞬間を逃すまいと息を殺して見入っていた。

 

曲が終わると黄色い歓声が鳴り響き、あちこちから「さすがμ's!」「可愛い!」と聞こえてくる。

 

私はただただ圧巻された。普段家でゴロゴロしかしてないお姉ちゃんにこんな一面があったのだと。近くに居すぎたせいで分からなかった。

 

「凄い…」

 

やっと絞り出せた一言で、お姉ちゃんがいる場所の遠さに気付かされる。

 

呆気にとられる私を他所(よそ)に、まだまだ動き足りなさそうなお姉ちゃんは続けた。

 

「次に皆さんと一緒に、普段の練習をしたいと思います!」

 

μ'sのパフォーマンスを見た生徒たちの興奮がいまだ冷めない中、海未ちゃんが考案した柔軟や発声練習、

その後運動場でランニングなど休憩することなく行われた。

 

私も亜理紗も、付いていくのに必死だった。ランニングを終えると息が完全に上がり肩で息をしていた。

 

「では、次に体幹を鍛えまs…」「ちょ、ちょっと待ってください…!」

「はい。どうしましたか?」

 

海未ちゃんの声を遮る新入生。

「ハァハァ…これって、いつまで続くんですか…?」

「そうですね、あと半分と言った所でしょうか」

さも当たり前かのような海未ちゃんの反応に、私たちは絶望する。

 

助けを求めてお姉ちゃんを見ると、そこには息一つ切らさず、あまつさえじゃれ合う余裕まで見せていた。

 

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私は、誰よりもスクールアイドルという存在が身近にあった。だから自然とスクールアイドルに興味を持っていたし、亜里沙に誘われた時はすごく嬉しかった。お姉ちゃん達のライブを見ているうちに、私もこうなりたい、お姉ちゃん達と同じ景色が見たいと、そう思うようになった。

 

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甘かった。

そりゃそうだよ。いきなりステージに立っても、あんな風には絶対に踊れない。

亜里沙も思うところがあるのか、いつもの明るさは見られない。

 

沈み出した陽の元、私たちは屋上を後にした。

 

 

 



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