遊戯王 ARC-if(アーカイブ) (小鳥 戯遊)
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IF=1:出会い

いろんな次元がごっちゃになってしまった遊戯王世界を翔けるスパロボみたいな感じにしたい。オリキャラもいますし、レジェンドデュエリストも原作ままで出ることもあれば、if設定のレジェンドもぐちゃぐちゃになって登場するので苦手な方はおすすめしません。
オリカの解説はpixivであげてます。


「じゃあ、俺は青眼(ブルーアイズ)白龍(ホワイトドラゴン)で直接攻撃!」

 

「うわあああああああ!」

 

あっさりと友人の「ブルーアイズデッキ」に敗れ去ってしまった。どうして俺はカードに見放されちまってるんだ。中盤まではなんとか持ちこたえていた。シンクロ召喚もした。何がダメだったんだ......。

 

「ていうか、遊介。おまえ、遊星みたいに適当なカード入れて勝とうとしてるだろ。そんなんで勝てるブルーアイズじゃないよ。キャラデッキだったとしても選定するカードってもんがあるだろ」

 

遊戯王デュエルモンスターズ......。俺たちをカードゲームという熱狂に陥れる恐ろしくも楽しいゲーム。今日もカードショップのデュエルコーナーで友人の友崎克広とともにキャラデッキで遊んでいた。

 

「新しいカード欲しいけど、金欠だし、遊星が使ってたカードもないし帰ろうぜ。カッツン」

 

「おい、見ろよ遊介! 知らないシンクロモンスターが飾ってるぜ?」

 

カッツンこと、克広が指さした先には白いカードの上に黒い文字で【紫眼(パープルアイズ)聖装竜(スコールドラゴン)】とかかれたモンスターカードがレジカウンターに飾ってあった。

 

「ああ、これね。新作なのかな? よくわからないけど、店の奥にあった掘り出しもんさ。君たち、買わない?」

 

値段は一枚2500円と書かれている。高い。高すぎる。正直パック剝いたほうがまだマシかもしれない。

 

「レベル7で効果持ち。効果は手札デッキから装備魔法1枚を発動か。簡単に打点があげられるけど、微妙な効果だな。パワーツールちょっと強くした感じだな」

 

「いや、でもよぉ遊介。こいつメインで、装備カード任意枚数破壊したらその枚数分相手のフィールドのカード手札にバウンスできるぜ? まあまあ強くね? 元々の攻撃力も2500で申し分なし。お前のよくわからんシンクロデッキにはもってこいだろ」

 

よくわからんとはなんだよと思いつつも汎用シンクロの一つとしては悪くないかな......。

 

「いや、でもそれじゃキャラデッキ構築した意味ないじゃん!」

 

「お前のデッキ作るってのも面白いんじゃね? それこそお前の信じるデッキとの絆ってやつw」

 

「鼻で笑うなよ」

 

実際、カッツンの言葉には思うところがあった。自分の考えた最高のデッキとエースを持つっていいなぁ。この間、誕生日でもらったお金もあるし買ってみるか?

 

「自分への誕生日として買ってみてもいいかな」

 

「お、兄ちゃん気前いいねぇ! でも、俺正直カードの価値とかわかんないままつけた値段だからさ。やっぱ高い?」

 

「そうだったのかよ! それだったら高いわ! キラキラしたカードとかならわかるけど、ノーマルそうだし、カードテキストの強さも微妙で環境にも食い込まないぞ? 美品でも2、300円くらいじゃね?」

 

「そっか、じゃあ500円」

 

おいおいおいおいおいおいおい、この店員話聞いてたか? 聞いたうえで値段釣ろうってのか?ふざけんなよ......。

 

「100円」

 

「490円」

 

「120円」

 

「450!」

 

「うーん、200」

 

「くっ、350......」

 

「いいやダメだ。210」

 

「おいおい......。 わかったじゃあ」

 

「「250円!!」」

 

「うわっ、君もしかして初めからその値段を? いやあ、もういいよそれで」

 

よし、1/10にまで値下げに成功したぞ! ちゅーか、この店員値段決めガバガバすぎんだろ......。

 

「よかったな遊介! すげえ儲けじゃん」

 

「まあな。俺の値切り交渉あってのことだよな」

 

紫の瞳からこれまで持っているカードと違うなにか力のようなものを感じる。こいつが、こいつとスターダストをうまく使って俺のオリジナルデッキを作るんだ。

 

「じゃあ、また明日学校で」

 

「おう、じゃあな! 今度は俺に勝てるデッキ組んで来いよ、遊介」

 

 

カッツンと別れを告げてカードショップから自転車をこいで自宅へと戻ろうとすると一人の女の子が俺の行く手を阻んでいた。

 

「あー、ごめん。どいてくんない?」

 

「あなたは光、それとも闇?」

 

「何? 中二病?」

 

「すべてを照らす紫の瞳をどう使うの?」

 

「えっ? もしかしてこのカード持ち主? でもごめんね、もう俺が買ったから。なんに使うなんて決闘者なんだからわかるだろ。勝って、負けてエンジョイするだけだよ」

 

「そう、ならあなたにこれを......」

 

そういうと彼女は1枚のカードを渡した。

 

「いや、悪いよ......。ってあれ? いない」

 

なんだったんだあの子......。変わった子だったな。ていうかナニコレ?「シン・クリボー」!? ははは、また流行りに乗っかったカードだな。

 

「光属性チューナーモンスターなら悪くないか。ま、もらっていくよ」

 

どこにもいない彼女にお礼を言って家に戻った。相変わらず家族は元気だ。

 

「ただいま!」

 

「ゆうちゃんおかえり」

 

「母さん、いい加減その呼び名やめろって」

 

「別にいいじゃない。友達と遊びに行ってたんでしょ、先に風呂入ったら?」

 

 

「おう」

 

母さんに言われて駆け足で風呂場へと向かう。

 

「ふぅ、生き返るぅ~!」

 

一人、湯船につかって言葉を放つ。

あの子、クリボーをくれた女の子可愛かったなあ......。イタイ感じだったけど。それにしても、今日はカード2枚もゲットしちゃった。

 

【紫眼の聖装竜】、さてどうやって使おうか......。楽しみだな。

 

デッキを考えているうちに寝落ちしてしまったのだろうか、気づけば朝になっていた。

次の日、街の様子が少し変わっていた。なんというか、ちょっとずれている感じがした。

家のインターホンがなった。きっとかっつんだろう。ドアを開けると

 

 

「おう! 遊介。ちゃんと起きてんじゃん」

 

「そら、学校いくからな。ていうか、なにその恰好」

 

彼はびっくりするくらい派手な赤色の服を着こんでワクワクしたような目つきで俺を急がせる。

 

「何って制服だよ! 制服。オシリスレッドの」

 

「はぁ? オシリスレッドだぁ? デュエルアカデミアでも行くつもりか? GXの世界じゃあるまいし」

 

「え? 俺らアカデミアの生徒じゃん。ほら、さっさと行こう」

 

こいつ頭おかしいのか? ちょっと、簡単なテストをしてやろう

 

「いや待ってくれ。お前、記憶おかしいぞ! 俺の名前、言えるか?」

 

「もちろん。阿久津遊介、へっぽこスターダスト使いだろ」

 

へっぽこは余計だがスターダストデッキを使うのはあってる。

 

「じゃあお前は?」

 

「友崎克広、社長さんにはまけるけど青眼使いだ。早くお前もレッドの制服着て来いよ。遅れるぞ。またクロノス校長先生に怒られんぞ」

 

 

「え? あ、ああ」

 

こいつ、アニメの見すぎだろ。今時GXネタなんて流行んねえよ。まあとりあえず、今はこいつの口車に乗るしかないか。

 

「あ、ゆうちゃん。おはよう。制服、洗っておいたわよ」

 

丁度いい所に母さんが来た。さすがに俺の制服はいつものブレザーだろと思っていたが、俺の認識が甘かった。

 

「うそやろ。オシリスレッドの制服......」

 

「そらそうでしょ。あんた、実技で明日香先生にボコられたって泣いて帰ってきたじゃない」

 

 

ああ、もうツッコむ気失せた。俺、どうやら夢見てるみたいだわ......。




まさかのデュエルアカデミアでの生活が始まった遊介。
そこにいたのはエンタメデュエリスト榊遊矢と赤馬零児だった。


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IF=2:異次元の決闘者

阿久津遊介は、ある朝目覚めると遊戯王世界に紛れ込んでいた。
だが、彼の知っている世界とはどこか歪になっていた。
多くの作品が入り乱れて混沌となるこの世界になにがあるのか?


困惑しながらも唐突に表れたアカデミアの制服の袖を通してカッツンとともにそのアカデミアとやらへと向かう。

 

「なあ、カッツン。急にアカデミアとか意味わからんのだけど」

 

「遊介、お前の方が意味わからんぞ。いままで俺たち凸凹オシリスでやってきた仲だろ」

 

「ええ? 何それ、だっさ」

 

カッツンの走る方向についていくと町の中に大きな校舎が立っていた。

たしかGXのデュエルアカデミアって孤島にあったイメージだったけど......。

夢の中だからちぐはぐなのかもな。

 

「あなたたち! また遅刻?」

 

「げ、天上院先生」

 

カッツンが呼んだその先には青を基調としたスーツに赤系のネクタイを締めた女性が立っていた。天上院というと明日香ってことだよな......。アニメだと卒業してからの話とかないはずだからこんなのおかしいんだよなあ。

 

 

「遊介くん、ちゃんと授業受けないと次のデュエル試験で留年するかもしれないのよ? その辺わかってる?」

 

 

「え? ああ、はい......」

 

 

「ドロップアウトボーイズはやっぱり繰り返すノーネ」

 

 

ゆっくりと歩いてきた柔和そうな顔つきの外国人が俺たちの肩に手を置く。

 

「クロノス校長先生」

 

ああ、もう完全にGXのアフターストーリーじゃん。どうなってんの?

 

 

「明日香くん、生徒のため鬼になるのも教師の役目ナノーネ。しかし、鬼の姿ばかりでは生徒はついてこないノーネ。だからこそ、天使族のようなやわかーい微笑みで......。ってあれ、誰もいないノーネ!! マンマ・ミーヤ! せっかくの私のいいセリフが!」

 

 

あのクロノスって人、たしかにクロノス先生っぽいけどやっぱ年くってるよな。妙にリアルだし。ホントに俺の知ってる世界が遊戯王の世界みたいになっちまったのか?

 

 

教室に入るとめちゃくちゃ騒がしいやつとさっそくデュエルをしている人間がいた。

 

「レディース・アーンド・ジェントルメーン! これから榊遊矢によるペンデュラムショーをお見せしましょう! まずは手札より、時読みの魔術師と星読みの魔術師でペンデュラムスケールをセッティング! これによりレベル2~7のモンスターを同時に召喚可能! 出でよ、俺のモンスターたち! まずは手札のEM(エンタメイト)ウィップヴァイパー、EMカレイドスコーピオン。そしてEXデッキにいったオッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン!」

 

 

「一気に三体もモンスターが並んだって罠カードがあるから大丈夫だってんの。俺のグレンザウルスが返り討ちにしてやる!」

 

男の場にはグレンザウルス一体とトラップ一枚のみ......。いや、どう考えても詰みだろ。っていうか、黄色のラーイエローの制服着た榊遊矢っておかしいだろ!! 作品違うし。

 

 

「EMウィップヴァイパーの効果でグレンザウルスの攻撃力と守備力を入れ替える! バトル! オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンでグレンザウルスに攻撃! 螺旋のストライクバースト!」

 

 

「馬鹿め! 罠カード魔法の筒ってあれ発動しない?」

 

「時読みの魔術師のペンデュラム効果は、ペンデュラムモンスターが攻撃するときダメージステップまで罠を発動できない! そしてオッドアイズの攻撃はモンスターのバトルでは倍になる! 1200の戦闘ダメージを食らえ!」

 

「うわああああ!」

 

相手していた方のライフはゼロになった。つまり、榊遊矢の勝利というわけだ。だけど、エンタメイトの使い方といい、ペンデュラムの使い方といい、完全に遊矢だ。

 

 

「榊君、もうデュエルは終わった? そろそろ授業初めていい?」

 

「あ、はい! 明日香......先生」

 

ん? なんかいいにくそうに話したな。ARC-Vでは明日香も出てたらしいけど、それと関係が?

 

「じゃあ授業始めるわね。今日は、実戦を交えながら召喚方法について復習していくわね。じゃあ、赤馬くん。あなたなら、大体の召喚はできるわね?」

 

「儀式以外ならデッキ構築済みです......」

 

青い制服に見合わない赤いマフラーと、赤い眼鏡をかけた銀髪の男が階段を下りて教壇に立つ。間違いない、彼は......

 

 

「げぇっ!? 赤馬零児(あかばれいじ)!?」

 

 

「なにか、私に用が?」

 

「あ、いえ......。すんません」

 

 

ひいぃ......。怖えよ! DD使いの赤馬零児ってまじかよ。この夢何でもありかよ。

 

 

「対戦相手、誰にする? あなたに見合う相手、中々いないと思うけど......」

 

 

「......。では、先ほど私を呼び捨てにした彼を選択します」

 

「え、俺ぇ!?」

 

眼鏡をカチャッとかけなおしながら俺を指さす。いきなり強敵に目を付けられたよ。俺まだこの世界に慣れてもないし、前に買ったカードも出せるように調整したばっかりなのによぉ......。まあ、いいや。勝っても負けても次の糧になるならやらないわけがない!

 

「どうした、怖気づいたのか?」

 

「やってやる! このデュエル、受けて立つ!」

 

 

「じゃあ、デュエルディスクとDゲイザーをセットして」

 

 

ん??? 俺、どっちも持ってないし......。ていうか、デュエルディスクとかの設定はゼアル式なんだ。

 

「どうした。もっていないのか?」

 

赤馬は眼鏡に指で触れた後、デュエルディスクをセットした。もしかして、あの眼鏡Dゲイザー対応してんの? 

 

「遊介、机に忘れているぞ!」

 

カッツンが俺にディスクとDゲイザーを投げ渡してきた。これが俺のデュエルディスク?

なんかモチベ上がってきた!

 

「よし、俺のシンクロデッキ試させてもらう!」

 

「ほう、シンクロ召喚か。私を幻滅させるなよ。先攻は私がもらう」

 

「「デュエル!」」

 

赤馬零児:LP4000 手札5枚

 

「私は永続魔法、地獄門の契約書を発動。この効果により私は【DD】モンスターを手札に加える。私はDDD死偉王ヘル・アーマゲドンを手札に加える。DD魔導賢者ガリレイ、ニュートンでペンデュラムスケールをセッティング! 我が魂を揺らす大いなる力よ!この身に宿りて闇を引き裂く光となれ! ペンデュラム召喚! 地獄の重鎮、DDD死偉王(しいおう)ヘル・アーマゲドン」

 

 

「え? 一体だけ? あと2枚は? もしかして事故ですかぁ?」

 

「そうやって軽口を叩いているのも今のうちだ。DDスワラル・スライムの効果により【DD】融合モンスターは融合魔法カードなしで手札の【DD】モンスターを素材として融合召喚できる。手札のスワラル・スライムとDDバフォメットを使用し、融合! 現れよ、DDD神託王ダルク。先攻は攻撃できない。ターンエンド」

 

 

うわぁ......。いきなりダルクとヘル・アーマゲドンかよ。いやでもバックに罠も魔法もないということはワンチャン狙えるか? 出すとしたら攻撃力3000以上のモンスターか、あいつらを返り討ちにできる魔法、罠カード......。

 

阿久津遊介:LP4000

「俺のターン、ドロー!!」

 

手札:6枚

ジャンク・ブレーダー

ジャンク・フォア―ド

スターダスト・シンクロン

調律

ファイティング・スピリッツ

シン・クリボー

 

なるほど......。ここは普通、調律でクイック・シンクロン呼び込んでフォア―ドを使ってジャンク・デストロイヤーだけど......。

 

「自分フィールド上にモンスターが存在しないとき、ジャンクフォア―ドは特殊召喚できる! 出でよ、ジャンク・フォア―ド! そしてジャンク・ブレーダーを通常召喚。そしてジャンク・ブレーダーをリリースして手札よりスターダスト・シンクロンを召喚! この時、召喚・特殊召喚されたスターダスト・シンクロンの効果発動! デッキから【スターダスト】と記されたカードを手札に加える。俺は星墜つる地に立つ閃珖(スターダスト・リ・スパーク)を手札に加える。 俺は、レベル3ジャンクフォア―ドにレベル4スターダスト・シンクロンをチューニング! 聖者の衣をまといし竜よ、その紫の瞳で悪を照らせ! シンクロ召喚! 現れよ、紫眼の聖装竜!!」

 

 

「初めてみるシンクロモンスターだな。やはり、君もこの次元の人間ではなさそうだな」

 

「え? どういうこと?」

 

「なんでもない。続けてくれ」

 

意味わからん......。俺が違う次元から来た? 確かに違和感あるけど、もしかしてこの違和感の原因を知ってる? このデュエルでそれがわかるかもしれない! 

 

「スコールドラゴンが召喚に成功した時、装備魔法1枚をデッキから発動し、スコールドラゴンに装備。パワーゲイン! 俺は団結の力をスコールドラゴンに装備! そしてさらに、手札のファイティング・スピリッツをスコールドラゴンに装備! よし、これで俺はスコールドラゴンの効果を発動する。1ターンに1度、このカードに装備された装備カードを任意の枚数破壊して発動! 俺は2枚破壊して相手フィールドの神託王ダルクとヘル・アーマゲドンを手札に戻す! バトルだ! 紫眼の聖装竜で直接攻撃! セイント・ストリーム!!」

 

「くっ」

 

赤馬:LP1500

 

遊介:LP4000

 

「ターンエンド!」

 

「ヘル・アーマゲドンは次のターン、私のフィールドに戻るが、メインフェイズに1000ポイントのダメージが発生する。そう思っているのだろう? 残り500ポイントで勝ち目はないと」

 

あの言い方、何か策があるのか......? いや、もう1ターンさえあればあいつの契約書の効果で自滅するはずなんだ。DDデッキの弱点はそこだ。そこさえ堪え切れれば......。

 

「カードを1枚セットしてターンエンド」

 

次のターン以降に何とかつなげれた......。さて、どう出る? 赤馬零児。

 

 

 

 




赤馬零児に目を付けられ、デュエルを挑まれた遊介。
零児は彼に何を教えるのか......。

次回、遊戯王ARC‐if「試される絆 どうする遊介!?」


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IF=3:試される絆 どうする、遊介!?

多くのアカデミア生徒の前で赤馬零児とデュエルする羽目になった遊介。
デッキは彼に答えてくれるのか!?

そして、新たな敵が襲来?


赤馬零児:LP1500 手札0枚

 

「私のターン、ドロー。メインフェイズに私は地獄門の契約書の効果により1000ポイントのダメージ......。くっ......。」

 

赤馬零児:LP500 手札1枚

 

「私は手札を1枚セットする。そして地獄門の契約書の効果でDDナイト・ハウリングを手札に加える。手札に加えたDDナイト・ハウリングを攻撃表示で召喚。そしてナイト・ハウリングの効果により墓地のDDバフォメットを特殊召喚! そして、バフォメットの効果を発動。ナイト・ハウリングのレベルを6にする。私はレベル4DDバフォメットにレベル6となったDDナイト・ハウリングをチューニング。シンクロ召喚、レベル10 DDD疾風大王エグゼクティブ・アレクサンダー」

 

攻撃力3000のシンクロモンスター、DDD疾風大王エグゼクティブ・アレクサンダーがモンスターカード2枚で出てくるとかお得だよなぁ......。マジ強すぎ......。

 

「私は、DDD疾風大王エグゼクティブ・アレクサンダーで君の紫眼の聖装竜に攻撃」

 

もちろん、通すしかないね。スターダスト・リ・スパークは直接攻撃でしか使えないから破壊されるのを見るしかない......。

 

「ああああ。俺の準エースが......」

 

阿久津遊介:LP3500

 

「やはり、狙いはスターダストか。だが、私の前には攻撃力3000のエグゼクティブ・アレクサンダーがある。さあどう出る」

 

 

どうでるも何も......。

相手の伏せカードはおそらく契約書を破壊するカード。次のターン涼しい顔で攻撃してくるだろう。だったら、なにも出さなくてもいいような気がするがここは念には念をくず鉄のかかしか強制終了、あとはおろかな埋葬でシンクロ召喚を狙っていくかだな。

 

「俺のターン、ドロー!」

 

阿久津遊介:手札3枚

 

調律

シン・クリボー

ジャンク・コンバーター

 

「なるほどねぇ......。俺は手札からジャンク・コンバーターの効果発動! 手札にあるこのカードとチューナーモンスター、シン・クリボーを手札から捨てて【シンクロン】モンスター一体を手札に加える。ジャンク・シンクロンを手札に加える。さらに俺は、手札より魔法カード、調律を発動。もう一体【シンクロン】モンスターを手札に加える。俺は、クイックシンクロンを手札に加える。そして、デッキをシャッフルしてデッキの上から一枚墓地に送る」

 

墓地に落ちたのはなんとボルト・ヘッジホッグ。今日はなんだかデッキがうまく回ってるな......。まあいいや。じゃあ、

 

「ジャンク・シンクロンを召喚。そしてジャンク・シンクロンの効果でジャンク・コンバーターを墓地より特殊召喚。俺は、レベル2のジャンク・コンバーターにレベル3ジャンク・シンクロンをチューニング! 集いし星が新たな力を呼び起こす! 光差す道となれ! シンクロ召喚! 出でよ、ジャンク・ウォリアー! シンクロ素材となったジャンク・コンバーターの効果発動! 墓地よりチューナー一体を守備表示で特殊召喚できる。戻ってこい、ジャンク・シンクロン。そして、レベル5ジャンク・ウォリアーにレベル3ジャンク・シンクロンをチューニング! 集いし闘志が、怒号の魔人を呼び覚ます!光差す道となれ!シンクロ召喚!粉砕せよ! ジャンク・デストロイヤー! そして、ジャンク・デストロイヤーのモンスター効果発動! チューナー以外のシンクロ素材となったモンスターの数だけカードを破壊する! 俺はヘル・アーマゲドンを破壊!」

 

伏せカードは赤馬なら契約書を破壊する『契約洗浄』の可能性が高い。もし次のターンこの攻撃を凌ぐ罠だったとしても次のターン、自身の効果で敗北してしまう。きっと相手の手札が事故を起こす前提で動いているはずだ。多分大丈夫。

 

「バトル! 俺は、ジャンク・デストロイヤーで直接攻撃!!」

 

トラップカードは伏せられたまま、赤馬のライフはゼロになった。え、俺勝ったの? ライフ4000スタートっていうのもあるけど、なんか釈然としないなぁ

 

「おめでとう、阿久津くん。君はデッキの絆とやらを信じて私を打ち破った」

 

「うーん、なんかモヤるな。伏せカード見せてくれません?」

 

そのカードはドレインシールドだった。発動させておけばもう1ターン凌げたんじゃ......。

 

「どうして......」

 

「それは後で話すとしよう」

 

というと、自分の机に戻っていった。呆然と立ち尽くしていると明日香が俺の手を握ってきた。おう、近くで見るとやっぱ綺麗な人だな......。

 

「遊介くん、まさか君が零児くんを打ち破るなんて思ってもみなかったわ。いつの間にか成長していたようね。ていうか、一番初めに出てたあのシンクロモンスターはなに? 私も知らないんだけど」

 

やっぱり誰も知らないカードなんだ。まぁ俺も知らないんだけど......。

 

「普通にカードショップで売られてたものですよ?」

 

「そう? まぁ、開発科の子たちに聞けばだいたいのカードのことがわかるし後で案内するわ」

 

開発科ぁ? そうか、遊戯王カードも誰かが作ったものだからそういう作り手側になりたいって人もいるのか。

 

「先生、少し彼を借りても?」

 

「え? ええ。エクシーズと儀式を見せたかったけど白熱しすぎて授業終わっちゃったし大丈夫よ」

 

赤馬零児は先生に深々と礼をすると、俺についてこいと言わんばかりに目線を送る。

俺は渋々彼について行くことにした。

 

「阿久津遊介とかいったな。君は、もしかして我々と同じように別の次元から来たのではないのか?」

 

「え? あなたも?」

 

「やはりか......。私と榊遊矢はデュエル中、ソリッドヴィジョンシステムがなんらかの障害を起こして光を放った後、ここにたどり着いた。ここでは私たちが出会った別の次元のデュエリストもそうでないものも混在しているようだ。なにか、心当たりはないか? 特に、君の持っていたその2枚のカード......とか」

 

俺が持つ2枚のカード......。【紫眼の聖装竜】と【シン・クリボー】のことか?

 

「これのこと? さっき明日香さんに話したけど、ほんとに紫眼の聖装竜はカードショップに売ってたんだ。その後、クリボーの方は女の人からもらって......」

 

「もらった? どんな顔つきだった?」

 

「いや、あんま覚えてないっていうか......。すいません、曖昧で」

 

「......。この件についてはもう少し私ももう少し調べてみよう。君も元の世界に戻りたいと言うなら協力してほしい」

 

「も、もちろん! 遊戯王の世界にいられなくなるのは寂しいけど、俺は元の世界に戻りたい! なにより、赤馬零児に頼られて一緒になにかできるなんて光栄だよ」

 

「君は一つ勘違いをしている。私は君を頼っているわけではない。君が必要なカードかどうか見極めている段階だ。要は利用しているにすぎない。なにも用がないならこれで失礼する」

 

「あっ、ドレインシールド使わなかった理由は?」

 

「あのデュエル、私には不要なものだ。さらに手っ取り早く済ませてしまえば、君が伏せカードについて話を持ち掛けてくれると踏んでいたからだ」

 

「ねえねえ、さっき授業でデュエルしてた二人だよね? 何話してるの?」

 

振り向くとそこには見知らぬ女性が立っていた。どのシリーズにもいない。けど、どこかで見たことのあるような顔だった。

 

「えっと、君は?」

 

「うち? うちは、南禅寺るこ! 君と同じ、オシリスレッド。ねえ、君強いんだね! だってオベリスクブルーの赤馬くん倒しちゃったんだもん!」

 

「いや、あれは彼が......。ってもういなくなってる」

 

「ねえねえ強さの秘訣は? あのシンクロモンスター見せて見せて、ねえいいでしょ?」

 

ずいぶんとグイグイくる子だなぁ。顔もかわいいから好きになりそう......いやいやいかんいかん!童貞の悲しい性を抑えるんだ。

 

「るこ、ここでなにしてんだ! また、男困らせて......お前は距離感近すぎなんだよ」

 

「ねえ、レンジ! この子さっきの『紫の瞳のドラゴン』の子だよ!」

 

「レンジ、じゃなくて廉次郎な。......そうか、君か。開発科の許可なしにオリジナルをつくったのは」

 

「へ? いやいや、これは買ったんだって」

 

「嘘をつくな! お前のカード2枚ともカードアーカイブで検索してもヒットしなかったぞ! 開発科としてそんなこと許せるわけがない! 僕と勝負しろ、阿久津遊介!!」

 

えええ、なんか変なのに絡まれちゃったよ。これも遊戯王世界あるあるなのか?

 




遊介の前に、いちゃもんを付けてきたデュエルアカデミア開発科1年生
円谷廉次郎......。彼自身が開発したデッキ「ミニチュアル」の猛攻が遊介を襲う!

次回 遊戯王 ARC-if 「VS廉次郎! 脅威のミニチュアル」


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IF=4:VS廉次郎! 脅威のミニチュアル

遊介の持つ「紫眼の聖装竜」が、開発科の許可なしに作られたカードであるとイチャモンをつけてきた遊介と同じ1年生の円谷(えんたに)廉次郎。

彼は自分の学科の誇りにかけて自分が編み出した【ミニチュアル】というデッキを披露するのであった。


どうしてこうも遊戯王のキャラって文句つけてはデュエルをしたがるんだろうな。まあ、面白いからいいんだけど、自分のことになったら全然楽しくない。

 

「どうした? はやくデッキをディスクにセットしろよ」

 

「お前さぁ、ちゃんと人の話聞こうよ」

 

「お前じゃない! 僕の名前は円谷廉次郎。アカデミア開発科1年だ。カラーはラーイエロー。僕は僕の考えた最高戦力で挑む。君はその微妙な違法創作オリカで頑張るんだな」

 

「だから、違法でも創作でもねえって! わかんねえ奴だな。もう、デュエルすればいいんでしょ? デュエルすれば」

 

南禅寺るこが見守る中、円谷とのデュエルが始まった。

 

「「デュエル!!」」

 

円谷廉次郎:LP4000

 

「先攻、後攻はコイントスで決めよう。その方が平等だろ?」

 

意外と冷静で真面目な奴だな。てっきり勝手に決めるもんだと思ってた。

 

「わかった。じゃあ、俺は表で」

 

彼の主導の元、コイントスが行われた。結果は裏。

 

「僕は後攻をもらう。さ、どうぞ」

 

先攻・阿久津遊介:LP4000

・手札

スチーム・シンクロン

ロード・ランナー

くず鉄のかかし

スターライト・ロード

ボルト・ヘッジホッグ

 

うーん......。ボルト・ヘッジホッグ手札にある時点でちょい詰んでんなぁ。とりあえず......。

 

「俺はモンスターをセット、カードを2枚伏せてターンエンド」

 

とりあえず、相手が1900打点以上で殴ってきてもロードランナーが守ってくれるし、くず鉄あるしなんとかなるだろ。

 

後攻・円谷廉次郎:LP4000

手札5枚→6枚

 

「フン、事故ったか。僕のターン、ドロー! 僕は、ミニチュアル・タンクを召喚!」

 

いきなりオリカかよ。っていうか、レベル1で攻守100? クソよわじゃん。

 

「おいおい、そんなんで大丈夫か?」

 

「ミニチュアルは特撮がテーマ、小さなものも大きく映す。ミニチュアル・タンクはフィールドにミニチュアルモンスターが存在すれば自身の攻撃力は1000になる。もちろん、自身も対象になるため、タンクの攻撃力は1000だ」

 

Dゲイザーを通してミニチュアル・タンクの大きさが少し大きくなった気がする。アニメでこういうの見たことあるけど、めっちゃテンションあがるな。

 

「さらに、僕はミニチュアル・ジェットを特殊召喚! このカードはフィールドに【ミニチュアル】モンスターが存在するとき特殊召喚できる。さらに、召喚・特殊召喚したこのカードは【ミニチュアル】と名のついた魔法・罠カードをデッキからサーチできる! 僕は永続魔法ミニチュアル・セットを手札に加える。僕は、永続魔法ミニチュアル・セットを発動。これにより、自分フィールド上のレベル1の【ミニチュアル】と名のついたモンスターはレベル10になる!」

 

ええ? いきなりレベル10が二体並んだんだが?? これはもしや『来るぞ、遊馬!』案件か?

 

「僕は、レベル10となったミニチュアル・ジェットとタンクでオーバーレイ! 二体のミニチュアル・モンスターでオーバーレイネットワークを構築、エクシーズ召喚! すべてを焼き尽くせ、ランク10! ミニチュアル・破滅獣ヴァイスベ―ゼ!」

 

ドラゴンというより怪獣? のようなそれは大きく、瓦礫のようなものを巻き込み地上より現れた。でも、攻守2000のモンスターか......。なら、守り切れる!

 

「手札より、フィールド魔法『ミニチュアルハウス』発動!これにより、自分フィールド上の【ミニチュアル】モンスターの数×1000相手フィールドのモンスターの攻撃力を下げる! さらに、ヴァイスベーゼの効果発動! オーバーレイユニットをすべて取り除き、相手フィールド上すべてのカードを破壊する! 破滅の光!」

 

「なんだって!? 俺は、罠カードスターライト・ロード発動! カードを2枚以上破壊する効果を無効にして破壊する! そして、EXデッキから『スターダスト・ドラゴン』を特殊召喚する! 飛翔せよ、スターダスト・ドラゴン!」

 

「くそっ......。カードを1枚伏せてターンエンド」

 

なんて厄介なカードなんだ......。スターライト・ロード伏せてなかったら大打撃だったんじゃないか?

 

「俺の、ターン!!」

 

阿久津遊介:LP4000

・手札

ボルト・ヘッジホッグ

スチーム・シンクロン

調律

・フィールド

スターダスト・ドラゴン

紫眼の聖装竜

ロード・ランナー

くず鉄のかかし

 

よし、来た。調律でクイック・シンクロンを呼んでジャンク・バーサーカーだな。いや、ここは紫眼でバックのカードを戻しておくか?

 

「どうした、呼ばないのか? 『紫眼の聖装竜』をw」

 

「うるさいな。じゃあ希望に答えて呼んでやる! 手札より、調律を

発動! 俺は、スターダスト・シンクロンを手札に加える。ボルト・ヘッジホッグを召喚。そして、そのボルト・ヘッジホッグをリリースしてスターダスト・シンクロンを特殊召喚! この時、【スターダスト】と記された魔法・罠カードを手札に加える。俺は、『シューティング・スター』を手札に加える。そして墓地に行ったボルト・ヘッジホッグはフィールド上にチューナーが存在するとき、墓地から特殊召喚できる! 反転召喚、ロードランナー! レベル1ロード・ランナー、レベル2ボルト・ヘッジホッグにスターダスト・シンクロンをチューニング! 聖者の衣をまといし竜よ、その紫の瞳で悪を照らせ! シンクロ召喚! 現れよ、紫眼の聖装竜!」

 

 

「来たな、オリカドラゴン。来いよ、どうせそのちんけな効果を発動するんだろ?」

 

「当たり前だ。俺は装備魔法、ファイティング・スピリッツをデッキからこのカードに装備! そして、装備されたカードを破壊し、その枚数分手札に戻す! 俺が選択するのはその伏せカードだ!」

 

「かかったな、馬鹿め! 永続罠『デモンズ・チェーン』! 紫眼の聖装竜の効果を無効にし、攻撃もさせない!」

 

こいつ誘っていたのか。まあ、そらそうか。あれだけ煽り散らしてたら警戒するよな、普通。まあでも相手フィールドはがら空き。

 

「バトル! 俺はスターダスト・ドラゴンで直接攻撃! シューティング・ソニック!」

 

 

「うわぁああ! くっ」

 

「俺はカードを一枚伏せてターンエンド。さ、お前のターンだぞ?」

 

円谷廉次郎:LP1500

手札2→3枚

 

「僕のターン、ドロー! よくも僕のモンスターを......。だが、僕はすでに勝利を確信している。僕は二体目のミニチュアル・タンクを召喚! そして儀式魔法、『ミニリチュアール』発動! ミニチュアル・セットの効果によってレベル10になったミニチュアル・タンクをリリースして手札から、ミニリチュアル・グレートシャインを儀式召喚する!」

 

「儀式召喚だと!?」

 

「小さな大地を照らす、偉大な光! ミニリチュアル・グレートシャイン!! このカードは『ミニチュアル』モンスターとしても扱う。そして1ターンに1度、『ミニチュアル』カードを1枚破壊して発動する。このカードは直接攻撃できる。バトル! 僕は、ミニリチュアル・グレートシャインで直接攻撃! ギガンティウム光線!」

 

 

「攻撃力3000で直接攻撃!? なら、罠カード『くず鉄のかかし』! モンスター1体の攻撃を無効にする!」

 

「無駄だ! グレートシャインは自身の効果で直接攻撃するとき、効果の対象にならない!」

 

「う、うわぁあああ!」

 

 

阿久津遊介:LP1000

 

「まじかよ!? インチキ効果も大概にしろよ......」

 

「僕はこれでターンエンド! どうだ、僕の【ミニチュアル】デッキは!」

 

なんて強さだ......。 でも、効果の対象にならないのは相手のターン終了時までだ。次のターン、シューティング・スターの効果であいつを破壊できれば!

 

 

 

 

 

 

 




遊介の前に立ち塞がる、ミニチュアル最強カード『ミニリチュアル・グレートシャイン』。彼らのデュエルは続く......!?

次回、遊戯王 ARC-if「新たな脅威! チーム5D's」


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IF=5:新たな脅威! チーム5D's

開発科の威信をかけて遊介に戦いを挑む円谷廉次郎。
そのデュエルは唐突に終わりを遂げる......。


次の俺のターン、シューティング・スターで「ミニリチュアル・グレートシャイン」破壊してやる。

 

「僕はターンエンド。さあ、お前のターンだ」

 

「俺のターン、ドロー!! まずは罠カード『シューティング・スター』発動!フィールドにスターダストがいるとき発動できる。フィールドのカード1枚を破壊する! 俺は『ミニリチュアル・グレートシャインを選択!」

 

「させるか! 墓地の儀式魔法『ミニチュアール』を除外して発動する! このターン、『ミニリチュアル』儀式モンスターは効果では破壊されない! これは明日香先生から習った儀式コンボを参考にさせてもらった」

 

何だって!? そんな効果どこにも書いていなかった気がするけど......。まさか、デュエル中に書き換えたのか?

 

「お前、儀式魔法に細工したろ! そんな効果どこにも書いてなかったぞ!」

 

「知らんな。僕はこのデッキの創造主だぞ? 発動と言ったらそれは有効なんだよ!」

 

なんて、アニオリ脳なんだよこいつ......! 彼の言う通りミニリチュアル・グレートシャインはシューティング・スターの効果を免れてしまった。俺の罠カードはくず鉄のかかしのみ。次のターン、またあいつの効果で直接攻撃されたらやられてしまう!

 

「大変だ! レンジくん!」

 

唐突に榊遊矢が現れた。なんだか慌てているようだけど......。あれ、っていうか俺に近づいてきた女の子、さっきまで俺たちのデュエル見てたんじゃ......。

 

「どうしたんだ? 榊。というか、僕の名前はしっかりと廉次郎と呼んでもらいたいね」

 

「そんなことより、るこちゃんがバイクに乗った男たちに!」

 

「なに、るこが? くそ、チーム5D'sめ......。アカデミアの面汚しDホイーラー、今度という今度は許さん! おい、阿久津! このデュエルお前に預ける。榊、僕を現場へ」

 

「え? ああ」

 

榊遊矢は円谷とともにチーム5D'sの元へと向かって行ってしまった。はぁ? 彼らがアカデミアの面汚し? 一体なにがどうなってんだ......。それより、あの子が心配だ。俺も一緒に

 

「待て、俺も彼女を」

 

「君こそ待つんだ、阿久津遊介」

 

俺の肩を掴んでとどめたのは赤馬零児だった。どうしてこうも周りは冷静なんだ。ココは一体本当にどうなってるんだ

 

「なんだよ!」

 

「状況が読めない今、動いてどうする? 君の知らない次元で無駄に動いてそれで被害が大きくなったらどうするつもりだ? 今は彼らに任せるべきだ」

 

「たしかに榊遊矢がいればどうにかなるかもな。そうだったとしても、動かなくちゃ。デュエルで誰かを助けられるこの世界なら俺は輝けるかもしれないんだ」

 

そう、いままで弱くて何もできなかった俺でもデュエルの愛と知識ならこの中でも誰にも負けてない。だから、俺はここで活躍して......。

 

「私は、そうやって独りよがりになって破滅の道をたどった決闘者を知っている。君もそれを知っているはずだ」

 

「榊遊矢......か? でも、どうして俺がそのことを知っていると?」

 

「多くの次元を渡り歩くデュエリストから聞いた。我々が『アニメのキャラクター』で、そのアニメでデュエルをしていた様子を見たと。おかしな話だが、私はそういう世界もあり得るということに対して妙に納得してしまった。なぜなら、君の言動や行動がその裏付けと言えると思ったからだ。私の推測は間違っているか?」

 

彼の憶測は間違いじゃない。それにしても、自分がアニメのキャラだって言われても動揺しないんだなこの人は......。俺はここに来てから動揺してばかりだ。

 

「間違って......ないです。けど、こんな世界ありえない! デュエルアカデミアに榊遊矢や赤馬零児がいたり、天上院明日香が先生してたり、なによりチーム5D'sが、俺の大好きな遊星さんが作り上げたチームをあんな悪く言われるなんて見過ごせない!」

 

「待てっ うかつに動くなと......」

 

そんなこと言ってられるか! 俺はどんなカードにも希望を紡ぎだす彼のデュエルに惚れたんだ。救われたんだ! そんな不動遊星の作り上げたチーム5D'sが面汚しだなんて、信じたくない。

 

 俺は階段を飛ばし飛ばしに降りていき、榊遊矢と円谷廉次郎の後を追っていった。学校を出ると5台のバイクが女の子を囲んでいるのが見えた。あいつらが彼らの名前を借りパクしてるやつらか!

 

「ジャック、ジャック・アトラスなのか?」

 

「知り合いなのか? 僕はそいつには興味がない。僕は神代凌牙、貴様に用がある!」

 

遊矢と円谷が5人のDホイーラーに向かってすごい剣幕で言い放っている......。って、うん? ジャックは分かるけど、なんでシャークがここに? いや、もうツッコまない方がいいのか?

 

「榊くん、円谷! さっきの南禅寺るこって子は?」

 

「そこにいるだろ! 協力する気で来たならさっさとデュエルディスクをセットしろ! やらないなら僕の邪魔はするな」

 

円谷の様子がさっきよりだいぶいら立ってるみたいだ。関係の感じからして幼馴染っぽいけど、あいつとシャークの因縁ってなんだ? IVとの因縁なら聞いたことあるけど......。それにしてもライディングデュエルしそうなやつらにスタンディングで挑むのか?

 

「でも、Dホイーラーにスタンディングって......」

 

 

「満足しねえなぁ! それじゃあよぉ!」

 

その声ってまさか、この世界のチーム5D'sのリーダーって......。

 

「鬼柳さん、どうしてこんな女なんか拉致ったんです?」

 

シャークがマーカーの付いた銀髪の男を「鬼柳」さんと呼んでいた。間違いない。彼は、かつて遊星さんの仲間だった鬼柳京介だ!

 

「そしたらよぉ、ちょっとは面白いデュエリストが出てくるだろって思ったけど、こんな半端そうな連中ばかりで気分ダダ下がりだぜ。なあ、みんな」

 

「私を放り出したアカデミアが潰れればなんでもいいわ」

 

黒と赤のライダースーツを着た女がヘルメットを脱いだ。そこには、鬼柳と同じようなマーカーを付けたアキがいた。まじか、十六夜アキまでいるのかよ......。

 

「なんで、なんでみんなすさんでしまっているんだ! 鬼柳さんはクラッシュタウンに残って満足してたし、アキさんもジャックもそれぞれの道を歩んでいたはずなのにどうして!」

 

「なんの話だ? 俺たちは『黒き竜』に選ばれた5人のダークシグナー。だから俺たちのことを恐れて童実野市民はチーム5D'sと呼んでいる。俺たちはここにいると知らしめるためのデュエル、俺たちが俺たち自身を満足させるまで走り続けるぜ? ヒャッハッハッハッハーー」

 

 

 

 

 

 

 

 

 




なぜか南禅寺るこをつけ狙うチーム5D's。

彼女は一体何者なのか? 彼女の持つペンダント光るとき、運命が開かれる!

次回、遊戯王ARC-if「セキュリティの不動遊星」


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if=6:セキュリティの不動遊星

遊星の前に現れたのは鬼柳率いる「チーム5D's」だった!

円谷は以外にも、冷静で機転が利いていたことを良い事にセキュリティが現場へ急行する。

彼らは南禅寺るこを救うことができるのか?



ライディング・デュエルに命を懸け、赤き竜のアザを持つ人達、チーム5D's......。ダークシグナーやイリアステルから街を救った英雄だったはずのデュエリストが、メンバーも大きく変わり暴走族やヤンキーのような人間に成り下がっていることが信じられない。

 

「その子を放せ! その子を囮にしても強いデュエリストなんて来ないとわかってるはずだ。本当の目的はなんだ、鬼柳!」

 

円谷は唾を飛ばして相手にがなり立てる。

 

「こいつには力を感じる。俺たちに黒き竜の力を与えたあの人のような力がよぉ......。俺は力に飢えてんだ。なんだかわからねえがずっと渇いているんだ。満足しねえ。デュエルの腕も、今の地位も......。だから、だれでもいい! 俺とデュエルしやがれ!!」

 

渇きの正体はわからないけど、なんだか寂しそうだ。往年の親友も復讐の相手もいない空虚感が彼の目から伝わってくる。やっぱり、彼には不動遊星が必要なんだ。

 

「円谷くん、セキュリティは?」

 

「呼んでないほど馬鹿じゃない。だけど、僕は独りでも彼らに挑む! まずは、神代凌牙、お前からだ!」

 

「いちいち、フルネームで呼ぶんじゃねえ! イラっとくるぜ! ていうか、お前誰だよ」

 

 

え? どういうこと?

 

「なあ、円谷。お前シャークとなんの因縁があるんだ?」

 

俺が問いただしてみると

 

「あいつ、るこが元々好きだった相手だったんだ。だけど、あいつ『女はウザくてイラっとする』って言ってあいつのラブレター捨てやがったんだ! だから僕はあいつを倒さなければ気が済まない。彼女の名誉のために......」

 

はぁ、またこいつ勝手に言いがかりつけてんのかよ。しかも、自分の片思いの相手とられたからってよぉ......。

 

「お前なぁ」

 

そうこうしているうちに、サイレン音が近づいてきた。セキュリティが来たのか?

 

「チーム5D's! 今日という今日はお縄を頂戴する!」

 

「不動遊星......。アキ!」

 

なに、不動遊星だって? ヘルメットをかぶったままバイクを降りたセキュリティの男は、そのまま鬼柳の方に向かうも、十六夜アキの謎の力「サイコパワー」によって吹き飛ばされてしまった。その拍子でヘルメットも飛んでいく。起き上がるとあの特徴的なカニヘアーがあらわになった。

 

「ふ、不動遊星だ......。マーカーなかったから一瞬気づかなかったけど」

 

「おーい、遊介! 急に飛び出してどうしたんだ? 授業始まるって......ゲゲェ、5D'sじゃん」

 

授業の知らせを届けに来たカッツンでさえも彼らが悪い連中だと言う認識ということなら、この世界としての常識かもしれないな。でも、俺は......!

 

 

「君たちは早く校舎に戻りなさい。人質は俺たちセキュリティーが引き受ける! 早く!」

 

騒動を聞きつけた先生たちに引きつられて、校舎へと戻らされる俺たち......。ここは、デュエルで英雄にも悪役にもなる世界。主人公補正も、デュエルの腕もない俺に何ができるって言うんだ。でも、それでも......。

 

 

「セキュリティってどんなデュエルするんだろ」

 

セキュリティとのデュエルはなんとなく見たことある。でも少なすぎてわからない。だからこそ、セキュリティの不動遊星がなにを仕掛けるのか知りたい。

 

「ワッパー・ドラゴンとか【ゴヨウ】みたいな相手モンスターを捕縛するモンスターだな」

 

カッツンがドヤ顔で説明していると、チョークがヒュンっという音で投げつけられる。

 

「あなた達、そんなにセキュリティのデュエルが信じられないの? まあ、課外授業にちょうどいいわ。あなた達にライディングデュエルについて教えてあげる。ついてきて頂戴」

 

そういうと、彼女は生徒たちに観戦室へと連れて行った。名前と部屋にあるソリッドビジョン投影用カメラがある感じだと、視聴覚室みたいなもんか?

 

「ここは、生徒たち学園でのデュエルの様子や、街のライディングデュエルの様子が見ることができるの。ここであのセキュリティの人たちのデュエルが映るといいんだけど......」

 

そういうとカメラを操作していると、遊星と鬼柳がデュエルしている様子が写され始めた。

 

「先生、多分それ!」

 

『俺は、レベル2ジュッテ・ナイトにレベル4アサルトガン・ドッグをチューニング! 集いしホシを打ち砕き、新たな未来を創出せよ! シンクロ召喚! 出合え! レベル6、ゴヨウ・。ガーディアン!』

 

不動遊星は、ゴヨウ・ガーディアンをシンクロ召喚していた。だが、相手フィールドにはワンハンドレッド・アイ・ドラゴンが存在する。どうするんだ?

 

『おいおい、そんなやつ俺のモンスターの攻撃力じゃあ通用しねえぜ?』

 

『それはどうかな? 魔法カード、攻撃封じ発動! ワンハンドレッド・アイ・ドラゴンを守備表示に!』

 

うわ、懐かしいカードすぎんだろ! 

 

『バトルだ! ゴヨウ・ガーディアンでワンハンドレッド・アイ・ドラゴンに攻撃! ゴヨウ・ラリアット!』

 

手札零(ハンドレス)コンボをなめるなよ、罠カード、インフェルニティブレイク! 墓地より【インフェルニティ】カードを除外して相手フィールド上のカード1枚を破壊する! 俺はインフェルニティ・ミラージュを除外してゴヨウ・ガーディアンを破壊!』

 

そんな......。遊星の手札はもうない、伏せカードもなし......。もしかしなくても、あの不動遊星が負ける? 

 

『ターンエンド......』

 

「エンドじゃあねえだろ! あのセキュリティ、任せろって言ったくせにダメじゃねえか!」

 

円谷が立ち上がり、怒りをあらわにすると

 

「相手にシンクロ召喚されてもなお、アサルト・ガンドッグとジュッテ・ナイトを守り切ったところから見ると、セキュリティのデュエルタクティクスは十分にあると思うわ。相手はその上を行っていた。それだけよ」

 

明日香先生の冷静で神妙な言葉に円谷は、座り込み自分の膝を拳で痛めつける。結局、遊星のデュエルは敗北に終わった。これじゃ何の意味もないじゃんか!

 

「こうなったら、俺たちだけで取り返すしかないよ」

 

「取り返すたって、相手はチーム5D'sだ! 遊介、お前じゃ無理だぜ」

 

俺とカッツンは小声で言い合いをしていると円谷がこちらに向かってくる。

 

「お前ら、さっき取り返すとか言っていた気がするが? お前に何ができるんだ」

 

「少なくとも、腕の立つデュエリストなら知っている! 彼らに頼めば」

 

「お前はそれを見ているだけというわけか。さすがは卑怯にもオリジナルを使ったデュエリストだな」

 

ドンっと教壇を叩く音が教室中に響き渡る。

 

「あなた達が出ていけるほど甘くはないのよ! そこのところ分かってるの?」

 

「分かってます。でも、るこは僕の幼馴染でかけがえのない存在なんです! だから」

 

円谷が必死な目で明日香を説得していると遊矢が立ち上がり、

 

 

「先生、彼らを行かせてあげることに俺は賛成です。彼らはデュエリストの端くれですし、止めても無駄だと思います。お願いします!」

 

 

明日香はため息まじりに

 

「わかったわ。ただし、絶対に勝ってくるのよ! でないと単位あげてやらないんだから」

 

 

「鬼かよ......」

 

ボソッと俺が話すと明日香は秒速でこちらを振り向く。いやいやいや、なんでもありませんよぉ......。

 

「レンジ、遊介! 俺も一緒に行く! 一緒にるこちゃんを助けよう!」

 

「遊矢......」

 

「フン、せいぜい僕の足は引っ張らないでくれよ」

 

カッツンじゃなくてなぜか俺も巻き込んで廉次郎と遊矢の3人で南禅寺るこ救出作戦へと乗り込むのだった。

 

 




セキュリティ不動遊星の言葉通り、アカデミアへと戻る遊介たち。
だが、セキュリティのデュエルはずさんなものだった。
遊介、廉次郎、遊矢は結託し、るこ救出へと向かう。

次回 遊戯王 ARC‐if「救出作戦」


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if=7 救出作戦開始

捕らわれた南禅寺るこを救うため、阿久津遊介、円谷廉次郎、榊遊矢の三人は不動遊星の元へと急ぐのだった。


俺、円谷、榊遊矢の3人で捕らわれたままの南禅寺るこを救出するため、アカデミアを後にした。

 

「で、当てはあんの?」

 

俺が二人に問いただしてみると円谷は拳を自分の手の平に合わせて

 

「Dホイーラー全員潰して聞き出す」

 

「いや、脳筋か! そんなことやってたら日が暮れちまうだろ!」

 

「なんだと? 情報がない今、これしか方法ないだろ! 他に方法あんのか!」

 

あるはずだ。何か一つの道筋が

 

「不動遊星! セキュリティの彼ならなにか知っているはずだ」

 

「あ? あんな負け犬に聞く必要ねえだろ」

 

「遊星さんを負け犬呼ばわりすんのか?」

 

言い合いをしていると遊矢が間に入る。

 

「まあまあ、二人とも落ち着いて! 情報がない今、遊介の言う通りチーム5D'sと戦っていたセキュリティと話をするべきだと思う」

 

円谷は小さく舌打ちをしてから

 

「はぁ、わかったよ。さっさと行こう、るこが心配だ」

 

とりあえず、円谷の怒りを抑えられたところで、俺たちはスケートボード型Dホイールで遊星のいるセキュリティ本部へと向かうことにした。セキュリティの使うDホイール駐輪スペースに着くと一人バイクのメンテナンスをしている人影がいた。そのひたむきにバイクに向き合う背中を俺は知っている。

 

「遊星さん!」

 

バイクのメンテナンスをしていた遊星がこちらを向くと、開口早々俺たちに謝罪した。

 

「みんな、すまない。期待に応えられなかった」

 

「知ってる、見てたしな。で、相手の居所くらいわかってんだろうな?」

 

円谷が喧嘩腰に聞くと

 

「それは心配ない。鬼柳のDホイールに発信機を付けておいた」

 

「お、おう。デュエルの腕はないくせにやるじゃん」

 

「俺にはこれしかない。デュエリストの腕がない以上こういう地味なことしかできない」

 

そんなこと、あなたの口から聞きたくないと思いつつ唇をかみしめた。今は、この情報を頼りに5D'sのもとに行かなくちゃ......。

 

「あの、その地図もらえませんか? 俺たち、彼女を助けたいんです!」

 

「君たちが出る必要はない......。俺一人で十分だ」

 

どうして、そこまでして一人で行きたいんだ? 負けたのに......。

 

「ふざけんな。お前が一人で行ってもまたやられるだけだろ! 仲間とか応援呼べばいいだろ」

 

円谷の言葉はちょっとイラっとするけどこの状況では正しいと思ってしまう。

 

「俺にそんな頼れる仲間はいない。それにこれは俺自身のミスだ。俺一人の問題だ」

 

「お前、状況わかってんのか!? てめえのせいでるこが!」

 

遊星の胸倉を掴む円谷に、俺は円谷の腕に手を置いた。

 

「お前の怒りは分かる。でも、もっとやり方ってもんがあるだろ! 遊星さんも遊星さんだ。あなたはいつもそうやって重要なときは誰にも頼らず、一人で背負おうする。もっとみんなを、今は俺たちを信じてもらえませんか?」

 

 

少しの間、静寂がこの場を包んだ。 その後、遊星は苦笑いを浮かべて

 

「......わかった。だが、君たちだけでは危険だ。俺も同伴させてくれ、デュエリストでもセキュリティでもなく、この街を守る一人の人間として」

 

「もちろんです! みんな、行こう!」

 

憧れていた人物とは違う次元の遊星だけど、彼と同じ時間と場所にいられるだけでうれしい。

4人で発信機を追っていくと港にある倉庫にたどり着いた。

 

「ここなのか?」

 

「発信機が正しいなら、ここでいいはずだ」

 

円谷が遊星の持つ発信機をたどるための機械を覗いていると、フードを被った男が目の前に現れた。

 

「誰だ? チーム5D'sか?」

 

円谷が疑問を投げかけるもフードの男はなにも答えようとしなかった。

するとフードの男はデュエルディスクを取り出してこちらを阻もうとしていた。

 

 

「なるほど、ここを通るなら勝負しろってことね。じゃあ、俺がこいつ引き付けておくから3人は南禅寺さんの元に行ってきて」

 

俺はデュエルディスクを装着しながら言うと遊矢が

 

「遊介、無茶するなよ! レンジ、遊星さん! 行こう、るこちゃんが待ってる」

 

「阿久津......‼」

 

遊矢に連れられそうになった円谷はふと、こちらに振り向いてサイドデッキからカードを投げ渡してきた。

 

「そのカード、お前に預ける。意味くらい、デュエリストならわかるだろう」

 

それを見るとヴァイロン・キューブだった。なるほど、紫眼で使えってことか......。

 

「使わせてもらうよ! 健闘を祈ってるよ、ナイト様」

 

円谷はこちらを見向きもせずに南禅寺るこのいる方へと向かった。

 

 

「先攻後攻はどうします? フードの人。ていうか、名前は?」

 

そういうも彼は一向に無視してカード五枚を取り出してゲームを始めだす。まじかよ、俺まだ用意してないぞ? デッキをディスクにセットして5枚を手札に......。

 

「俺の先攻、俺はヒーローアライブを発動。ライフを半分にしてレベル4以下の『E・HERO(エレメンタルヒーロー)』を特殊召喚する。俺は、E・HEROシャドー・ミストを召喚。シャドーミストの効果により、『マスク・チェンジ』を手札に加える。さらに俺は魔法カード『E エマージェンシーコール』を発動! デッキからE・HEROエアーマンを手札に加える。エアーマンを召喚! このカードの効果で俺は【A‐HERO(アサルトヒーロー) アイアン・メーデー】を手札に加える」

 

謎の男:LP2000

 

いきなりHEROデッキぶん回してきてるな......。ていうか突っ込み損ねたけど、しれっと知らない『HERO』カードあったぞ? アサルト・ヒーローなんて聞いたことないぞ?

 

 

「自分フィールド上に『HERO』モンスターが2体以上いるとき、手札のA‐HERO アイアン・メーデーは特殊召喚できる! さらに、このカードがフィールドにあり、このカード以外の『HERO』モンスターが存在するとき、融合魔法カードなしでEXデッキから『HERO』と名の付く融合モンスターを特殊召喚できる!」

 

「なんだって!?」

 

「俺は、シャドウ・ミストとアイアン・メーデーで融合! いでよ、E-HEROエクスダリオ! さらに、シャドー・ミストが墓地に送られたことにより効果発動! デッキから『HERO』モンスターを手札に加える。俺はE-HERO(イービルヒーロー)マリシャス・エッジを手札に加える。俺はカードを3枚を伏せてターンエンド」

 

いきなり、モンスター2体でしかも伏せカードの1枚にはマスク・チェンジ......。先攻1ターン目でダーク・ロウ出せただろうに、完全になめられてるな。俺の手札は......。正直、良いとも悪いとも言えない。

 

遊介:LP4000

手札

ヴァイロン・キューブ

スター・ブライト・ドラゴン

二重召喚

シン・クリボー

シンクロ・ヒーロー

速攻のかかし

 

「俺は、魔法カード『二重召喚(デュアルサモン)』を発動! これによりこのターン、二度召喚を行える。俺は、ヴァイロン・キューブとスター・ブライト・ドラゴンを召喚! スター・ブライト・ドラゴンにヴァイロン・キューブをチューニング! 聖者の衣をまといし竜よ、その紫の瞳で悪を照らせ! シンクロ召喚! 現れよ、紫眼の聖装竜! ヴァイロン・キューブの効果発動!このカードでシンクロ召喚に成功した時、デッキから装備魔法を手札に加える。俺はファイティング・スピリッツを手札に加える。さらに、スコールドラゴンの効果で団結の力をデッキから装備する! さらに俺は手札から、ファイティング・スピリッツとシンクロ・ヒーローをスコールドラゴンに装備! スコールドラゴンの効果発動! このカードに装備された装備魔法を任意の枚数破壊し、その枚数分、相手の手札に戻す! ウルトラヴァイオレットストーム!」

 

 

俺は3枚の装備魔法カードをリリースしてエクスダリオ、そして伏せカード2枚を手札に戻そうとした。だが、分かっていたことだけどそううまくはいかない。

 

「速攻魔法、マスクチェンジ。 対象にとられたエクスダリオを選択して『M・HERO(マスクドヒーロー)』と名の付くモンスターを融合召喚する! フュージョン・チェンジ! M・HEROダーク・ロウ!!」

 

現れたな闇野郎......。こいつの除外効果厄介すぎるんだよなぁ......。だけど、素の攻撃力ならこちらが上だ! 先にダーク・ロウを叩く!

 

 

「バトルだ! 紫眼の聖装竜でM‐HEROダーク・ロウに攻撃! セイント・ストリーム!!」

 

謎の男:LP1900

 

「罠カード、出幻を発動......。『HERO』が破壊されたときに発動する。デッキから『V‐HERO(ヴィジョンヒーロー)』を特殊召喚する。俺はV-HEROヴァイオンを特殊召喚! さらに、俺は出幻の効果で貴様のフィールドにある紫眼の聖装竜の攻撃力・守備力を半分にする!」」

 

 

クソ、罠か......! いや、ここはシン・クリボーの真価が発揮されるときだ!

 

「手札から【シン・クリボー】の効果発動! 手札のこのカードを墓地に捨てて、シンクロモンスターを対象とするモンスター効果、魔法、罠の効果を無効にする! よって、出幻の効果は無効だ!」

 

「やるな。だが、俺にはまだ秘策がある。とびきりの秘策がな......」

 

秘策ってなんなんだ? こいつ、なにを考えているんだ?

 

 

 

 




巧みに融合と「HERO」を使いこなす謎のデュエリスト......。
彼は一体何者なのか? そして、円谷たちの救出作戦はうまくいったのか?

次回遊戯王 ARC-if(エピソード7.5)「円谷と遊矢 奇跡のタッグデュエル!」


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if=7.5:廉次郎&遊矢! 奇跡のタッグデュエル!

遊介が謎のデュエリストと戦っている最中、円谷廉次郎と榊遊矢は捕らわれた南禅寺るこを救うべく、倉庫の中を探索していた。

そこで二人が出会った人物とは!?


遊介が謎のデュエリストとデュエルをしている頃、円谷・遊星・遊矢の三人は発信機をたどって南禅寺るこを探していた。

 

「るこー! るこ!」

 

「落ち着けって、レンジ」

 

明らかに青ざめた顔で焦っている廉次郎に対して遊矢は必死でなだめるも、彼の顔は一層剣幕になる。

 

「るこがいるかもしれないのに落ち着いてられるかよ!」

 

遊星は二人を無視して倉庫を探る。すると遠くから遊星が何かをみつける。

 

「二人とも、こっちだ!」

 

「るこ! 大丈夫か?」

 

そこには柱に縄で縛り付けられていた南禅寺るこがいた。廉次郎はポケットに持っていた十徳ナイフを取り出し、縄を切る。

 

「怖かったぁ......。ま、でもシャーク様に捕らえられてしまったのは悪い気はしなかったけど」

 

「お前なぁ、人が心配してきて一言目がそれかよ」

 

二人が談笑していると倉庫の暗がりから二人ほど現れた。

 

「あなた達は、私を楽しませてくれるのかしら?」

 

一人は赤と黒の少し露出の高い服を着た女性、そしてもう一人は紺と黒のコートのような服を着た男だった。

 

「神代凌牙......。そして、十六夜アキだったな」

 

廉次郎はチーム5D'sの二人をにらみつけてデュエルディスクを装着する。

 

「この女がバカで助かったぜ。円谷、デュエルしたいんだろ?俺と! そこのポンコツもろとも相手になってやるぜ!」

 

シャークの言葉に廉次郎は、はっきりとした怒りを覚えた。そこに追い打ちをかけるように十六夜アキは

 

「凌牙、ここは二人であの子を潰してあげましょう?」

 

「......勝手にしろ。だが、俺の邪魔をするならてめえでも容赦はしねえ」

 

 

正直、廉次郎は2対1でも戦えると自分のタクティクスを信じ込んでいた。自分の作ったオリジナルテーマ「ミニチュアル」の絶対的な自信があった。だが、彼の自信を不安視する人間もいた。

 

「レンジ、ここはタッグデュエルだ。俺もやるよ」

 

遊矢は自由となったるこを遊星に預けて、彼自身のデュエルディスクを腕に装着した。

 

「お前が? まあ、セキュリティのあいつよりかはマシだとは思ってるが......」

 

 

「どうした? それとも負けて女を奪い返されるのが怖いのか?」

 

シャークの煽りに廉次郎はDゲイザーを装着してデッキをデュエルディスクに装着した。

 

「お前らこそ、後悔すんなよ?」

 

 

   TAG DUEL!!

 

(先)遊矢、廉次郎vsアキ、シャーク(後)

 

二人で一つのライフ6000を掛けたデュエルが始まる。先攻は遊矢からスタートされた。彼は手札の時読みの魔術師と星読みの魔術師でペンデュラムスケールをセッティングし、いきなりのペンデュラム召喚を決める。

 

「揺れろ、魂のペンデュラム! 天空に描け、光のアーク! 手札より出でよ、俺のモンスターたち! EMシルバー・クロウ! EMマンモスプラッシュ! ......カードを1枚伏せてターンエンド」

 

廉次郎も負けじと自分のミニチュアルモンスターを展開させていく。

 

「自分フィールド上にカードが存在しないとき、ミニチュアル・バトルシップは特殊召喚できる! 特殊召喚されたバトルシップの効果発動! このカードが特殊召喚されたときデッキから同じレベルで違う属性の【ミニチュアル】モンスターを特殊召喚する! 来い! ミニチュアル・トレイン! レベル5、ミニチュアル・バトルシップとミニチュアルトレインでオーバーレイ! 2体のモンスターでオーバレイネットワークを構築! エクシーズ召喚! ランク5 亡骸(ぼうがい)龍 ホロロボス! 僕は、カードを4枚伏せてターンエンド」

 

 

二人のターンを見終わった後、十六夜アキは一枚ドローしてから自分のフェイズに入った。タッグデュエルはこのターンから攻撃することもできるが、彼女は険しい表情で自分のカードを見つめていた。

 

「夜薔薇の騎士を召喚。召喚成功時、手札よりレベル4以下の植物族モンスターを特殊召喚。『返り咲く薔薇の大輪』を特殊召喚。私は、リバイバル・ローズにナイトローズナイトをチューニング......。冷たい炎が世界の全てを包み込む!漆黒の花よ…開け!シンクロ召喚!現れよ!ブラック・ローズ・ドラゴン! ブラック・ローズの効果であなた達のフィールドを更地にしてあげるわ! ブラック・ローズ・ガイル!」

 

ブラック・ローズ・ドラゴンの効果によってフィールド上のカードすべてを破壊されようとした時、廉次郎は亡骸龍 ホロロボスの効果を発動し始めた。

 

「ホロロボスの効果発動! オーバーレイユニットを一つ取り除き、カードを破壊する効果を無効にしてその発動したカードをデッキに戻す! ブラック・ローズ・ドラゴンをデッキに戻す! どうやら、阿久津対策で作ったこのカードが役に立ったみたいだな」

 

この反逆になすすべもなく、十六夜アキはカードを二枚伏せてターンエンドした。シャークにターンが回ってきて彼は、カッター・シャークを召喚し、その効果でデッキからシャクトパスを特殊召喚した。そして手札のサイレント・アングラ―を特殊召喚した。レベル4のモンスターを3体並べたのならやることは一つだろう。

 

「俺は、レベル4のカッター・シャーク、シャクトパス、サイレント・アングラ―でオーバーレイ! 3体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築! 現れろ、No.32 海咬龍 シャーク・ドレイク! 俺は、シャーク・ドレイクで榊遊矢のEMシルバークロウに攻撃! デプス・バイト!!」

 

シャーク・ドレイクの牙はシルバークロウの首元にさっくりと傷跡を残して破壊した。さらに、シャーク・ドレイクの効果によってシルバークロウは蘇生されて攻撃力800としてもう一度戦闘を強いらそうになったのであった。だが、廉次郎は舌打ちをしながら罠カードを展開する。

 

「罠カード、ハーフ・アンブレク! シルバークロウは破壊されず、ダメージを半減させる!」

 

発動したとしても合計2000のダメージは免れなかった。

 

遊矢&廉次郎:LP4000

 

凌牙&アキ:LP6000

 

「こざかしい罠使いやがって、イラっとくるぜ! カードを1枚セットしてターンエンド!」

 

「だけど、私たちはまだライフは6000。そうそう越えられることはないわ」

 

廉次郎と遊矢はそれぞれに笑顔をこぼし、同時に同じ言葉を放つ。

 

「「それはどうかな?」」

 

「被ってんじゃねえよ、榊!」

 

「いやいや、君が私に被せてきたのでしょう? ゴホン、それでは気を取り直して私のターンに移りましょう! 私のターン、ドロー!! 来た! レディースアンドジェントルメーーーン! 今回は私、榊遊矢と円谷廉次郎くんのエンタメタッグをお見せしましょう! まず私はアクションフィールド、天空の光彩を発動! 天空の光彩の効果により一度EMシルバークロウにはご退場願います。そしてデッキより私のエースカードであります『オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン』を手札に加えます。そして、私はペンデュラム召喚! まずは雄々しくも美しく輝く二色の眼! オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン! そしてEXデッキにいったEMシルバークロウを召喚! そして、私はEMマンモスプラッシュの効果で融合!  二色の眼の竜よ! 巨獣の飛沫をその身に浴びて、新たな力を産み出さん! 出でよ、野獣の眼光りし獰猛なる龍! レベル8! ビーストアイズ・ペンデュラム・ドラゴン!」

 

 

そして円谷は彼のビーストアイズの召喚成功時に呼応するように罠カードを発動した。

 

「罠カード! 『ミニチュアル・パニック』発動! フィールド上にミニチュアル以外のモンスターが特殊召喚されたとき発動する。フィールドに存在する魔法・罠をすべて手札に戻す! これで心置きなく戦えるな?」

 

「心遣い感謝します!」

 

今の二人は双子か兄弟のように以心伝心をしているように見える。相手のフィールドには神代凌牙のシャーク・ドレイクのみ。

 

「バトル! ビーストアイズで、海咬龍 シャーク・ドレイクに攻撃!ヘルダイブバースト!!」

 

「シャーク・ドレイクが負けるだと!?」

 

凌牙&アキ:LP6000→5800

 

「さらにビーストアイズの効果で融合素材となった獣族モンスターの攻撃力の半分効果ダメージを与える!」

 

「なんですって!?」

 

凌牙&アキ:LP5800→4850

 

「私はもう一度カードをセットしてターン終了。ですが、次はもっとエンタメってくれるでしょう! 廉次郎くん、お願いします!」

 

「僕のターン、ドロー!!」

 

彼は即座にミニチュアル・ジェットを召喚した。

 

「ミニチュアル・ジェットが召喚・特殊召喚に成功した時、デッキからミニチュアルと名のついた魔法・罠を手札に加える! 僕は永続魔法ミニチュアル・スパークフラッシュを手札に加える。そして手札に加えたミニチュアル・スパークフラッシュを発動! 起動時に『ミニリチュアル』と記されたカードを手札に加える。僕はミニリチュアル・グレートシャインを手札に加える。さらに伏せていたミニチュアル・セットを発動。ミニチュアルジェットのレベルを10にする! そしてミニチュアル・スパークフラッシュのもう一つの効果! 1ターンに1度このカードと儀式の素材となるモンスターを墓地に送って、『ミニリチュアル』と名の付く儀式モンスターを儀式召喚扱いとして召喚する! 小さな大地を照らす偉大な光! レベル10 ミニリチュアル・グレートシャイン!!」

 

彼のエースモンスターであり、攻撃力3000の儀式モンスター「ミニチュアル・グレートシャイン」が彼の撮影所という名のフィールドにゆっくりと現れた。彼はそのまま、バトルフェイズへと移行した。

 

「ミニリチュアル・グレートシャイン、神代凌牙に直接攻撃! ギガンティウム光線! さらに、亡骸龍 ホロロボスでとどめだ!! リ・ボーン・クラッシャー!」

 

たった数ターンの出来事。だが、遊矢と廉次郎の絆の力が勝利へとつながったのである。

 

「これで済むと思わないで!」

 

「ふん、やるじゃねえか。今日はこれで勘弁しておいてやる。じゃあな、廉次郎」

 

凌牙とアキは何らかの力で闇へとうっすらと消えていった。彼らがどこから来たのか、遊介の知っているアニメの世界とは別の人物なのか、それはまだだれにもわからない。

 

 

「二人ともいいデュエルだった。じゃあ、遊介の元に戻ろう」

 

 

遊星の言葉に二人はただ頷き、倉庫を後にした。

 

 

 

 

 

 




円谷と遊矢が遊介の元へと急ぐ中、遊介は謎のデュエリストの洗礼を受ける。そして彼は新たな力を手にする!

次回 遊戯王ARC-if「新たな力! 神秘眼(シークレットアイズ)の聖装刃竜(スコール・スラッシュドラゴン)」


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if=8:新たな力 神秘眼の聖装竜(シークレットアイズ・スコール・スラッシュドラゴン)

るこの救出を終えたとも知らずに阿久津遊介は謎の男とデュエルを続けていた。彼の正体は一体何者なのか?


あの二人、うまく南禅寺さんを救えただろうか......。今は彼らを信じてこの場を凌ぐしかない!

 

遊介:LP4000

 

「ターン、エンド......」

 

この場面、どう切り返す? どう覆す? 相手フィールドにはエアーマンとヴァイオン。さて、相手はどう出る......。

 

「俺のターン、ドロー!」

 

謎の男:LP1900

 

その瞬間、彼の顔は見えなかったが笑ったように感じた。

 

「俺は、ヴァイオンの効果で墓地のダーク・ロウを除外し『融合』を手札に加える。エアーマンとヴァイオンをリリースして、A‐HEROレイジバットをアドバンス召喚! レイジバットが召喚に成功した時発動する。デッキから【A‐HERO】と記された魔法・罠を手札に加える。そして、手札に加えた罠カード『アサルト・ショット』を発動!」

 

手札から罠カードが発動されることにいちいち驚いてたら正直持たないよね。この世界では。ていうかOCGでもたまにみるけどね。

 

「アサルト・ショットはデッキから【A・HERO】と名の付くモンスター一体を墓地に送る。そして、相手ライフにそのモンスターのレベル×100のダメージを与える! 俺はA・HEROネクロムスカルを墓地に送る。ネクロムスカルのレベルは5! よって、500ポイントのダメージを相手に与える!」

 

「くっ......」

 

遊介:LP3500

 

「そして、俺は融合を発動! 俺は手札のマリシャスエッジとレイジバットで融合! 闇夜に舞い降りし正義の鉄槌! A・HERO パニッシュメンター! パニッシュメンターのモンスター効果発動......。墓地の【A・HERO】と名の付くモンスターをこのカードの装備魔法扱いとして装備する。このとき、このカードの攻撃力は装備したモンスターの攻撃力の半分アップする! 俺は先ほど墓地に送ったネクロムスカルを選択。ネクロムスカルは攻撃力2000。よって攻撃力1000アップだ!」

 

元々の攻撃力2400に加えて1000上がって攻撃力は3400......。でもレイジバットを装備すればもっと攻撃力が上がるんじゃ?

 

「墓地に送られたレイジバットのさらなる効果発動! このカードを除外して自分フィールド上の【A・HERO】を選択する。俺は当然、パニッシュメンターを選択。そのカードは二回攻撃ができる!」

 

「まじかよ......。確実に殺りにきてるな。でも本当にいいのか? 俺が直接攻撃をまともに食らうと思うのか?」

 

俺の揺さぶりも全く意味もなさず彼は淡々とバトルフェイズに移行する。

 

「バトルだ。これで貴様もZ様の餌食にしてやる! パニッシュメンターで紫眼の聖装竜に攻撃! 制裁のガトリングクラッシュ!」

 

いともたやすくスコールドラゴンは墓地に送られてしまった。まずい、この直接攻撃をくらってしまっては負けてしまう。早く、帰ってこいやあいつら!

 

遊介:LP2600

 

「もう一度攻撃しろ! パニッシュメンター!」

 

「手札より、速攻のかかしを発動! 相手モンスターの直接攻撃を無効にしバトルフェイズを終了する!」

 

「無駄だ! パニッシュメンターのモンスター効果発動! このカードの攻撃宣言時、相手がモンスター、魔法、罠を発動した時、このカードに装備されたカードをリリースして発動する。その効果を無効にする! 断罪される者に介錯なし! くらえ、制裁のガトリングクラッシュ!!」

 

「ぐわああああああ!!」

 

遊介:LP200

 

これで俺は手札もなければライフもわずか。次になにか逆転のカードを引かなければ負けてしまう。くそっ......。どうすれば!

 

「手も足もでまい。勝利のために、戦うためには悪に染まるしかないのだ! かつての俺がそうであったように」

 

「あんた、一体何者なんだ!」

 

「俺の名は、ジュウダイ。さあ、お前が泣いても喚いてもヒーローはやってこないぞ! 己のドローに命運を賭けてみろ! 俺はこれでターンエンド!」

 

十代......!? 本当にこの男は遊城十代だというのか? ありえない。V-HERO、E・HERO、E-HEROを使いこなしすぎている。どちらかというと大会よりなデッキ構築だ。

 

「おまえが本当に遊城十代だって言うなら、このデュエルまったく楽しくもなんともないね! 十代はこんなにつまんねえデュエルはしない。逆転のカードを引いて笑顔を取り戻して俺たちにゲームの楽しさを教えてくれたんだ! だから、俺もこのドローを信じる! ド、ロォーーーーーーー!!!」

 

ドローした瞬間、ドローしたカードそしてEXデッキが光だした。え、なにこのエフェクト......。びっくりして周りを見渡すとすでに遊星たちが倉庫前まで戻ってきていた。

 

「遊介! そのカードで決着をつけろ!」

 

遊矢が笑顔になってそのカードを指さしている。このカードは俺がデッキに入れたこともないし、OCGにもないカード。『シンカを促すクリボー』墓地のシン・クリボーを素材にして墓地からシンクロ召喚ができるらしい。

 

「俺は、魔法カード、【シンカを促すクリボー】を発動! このカードは自分のモンスターゾーンにモンスターが存在せず、墓地に『シン・クリボー』が存在するときのみ発動できる!『シン・クリボー』1体とチューナー以外のモンスター2体までを墓地から選んで除外し、除外したモンスターのレベルの合計と同じレベルを持つ光属性シンクロモンスターをシンクロ召喚扱いで特殊召喚する! 神秘の眼輝かせし龍よ! 悪を捌く刃とともに降誕せよ! シンクロ召喚! レベル8 |神秘眼の聖装刃竜《シークレットアイズ・スコール・スラッシュドラゴン》!」

 

 

ドラゴンでありながら後頭部から背後にかけて大きな天使の輪のようなものを引っ提げて光と共に竜が降誕した。見知らぬモンスターだが、そこにある。カードもイラストもそこにあるんだ。俺はなんでこんなカードを出せるんだ?

 

「あいつ、また僕の知らないカードを作りやがって......!」

 

「いいじゃん、レンジ! ファイトォ! 遊介くん!」

 

円谷は俺に嫉妬のような眼差しで睨みつける。そして南禅寺さんは好機の眼差しで応援してくれている。期待に応えなくちゃ......。

 

「シークレットアイズのモンスター効果発動! このカードがシンクロモンスターをシンクロ素材として召喚に成功した時、相手フィールド上の裏側表示のカードを無効にして表側表示にする。そしてこのカードの攻撃力はその表側にしたカード数×300アップする! スコールシャワー!」

 

相手のフィールドの伏せカードは1枚......。ヒーロー逆襲だ。たしかにこのカードは強力なカードだがエレメンタルヒーローでないと意味がない。

 

「攻撃力3300だと!? だが、お前のモンスターがいくら攻撃力が高くても、このターンで俺を倒すことはできない!」

 

 

「それはどうかな? バトルだ! 神秘眼の聖装竜でA・HEROパニッシュメンターを攻撃! この瞬間、シークレットアイズのもう一つの効果発動! 攻撃宣言時に墓地から装備魔法1枚をこのカードに装備する! そしてこのとき、相手の攻撃力はこのカードが装備した装備カード×300下がる! 俺は墓地から団結の力を発動する! これでお前の負けだ。静寂のバーニングスラッシュ」

 

攻撃力4100となったシークレットアイズが攻撃力2100となったA・HEROパニッシュメンターを攻撃し、見事フィニッシャーとなって勝利を収めた。はぁ、よかった......。何とか勝てた。

 

 

「やったな、遊介。るこちゃんも戻ったことだし、帰ろっか」

 

遊矢が俺の肩に手を回し、引っ張っていく。南禅寺もそれに乗って3人一緒にアカデミアに戻っていく。結局、あいつは本当に十代だったのか? それに、『Z様』って言ってた気がするが一体何者なんだ......。

 

 




『ジュウダイ』と名乗った男との勝負に新たな力で勝利した遊介。
彼を待ち伏せていたのはライディングデュエルの課外授業だった。

次回 遊戯王ARC-if「課外講師 ブルーノ」


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if=9:課外講師 ブルーノ

南禅寺るこの救出に成功した遊介たち。
彼らを待ち受けていたのは新たな課題「ライディングデュエル」だった!
そしてその教師の名はブルーノ!


俺たちは見事、南禅寺るこをこの世界のチーム5D'sから取り戻すことができた。

アカデミアに戻ると俺たちを待っていたかのように明日香先生が校門前に立っていた。

 

「やっと帰ってきたわね。その様子だとるこちゃんを取り戻せたようね。ま、あなた達ならできると信じていたけど......。さて、みんな休んでる暇なんてないわよ! 今からライディングの授業なんだから」

 

ライディングデュエル......。Dホイールを利用したレーシングとデュエルを組み合わせた新たなデュエルスタイルだ。バイクに乗ってカードゲームするなんて、始まった当初は意味が分からなかったけど、最後の方になるとバイクに乗ることがかっこいいんだって思えた。その中でも不動遊星というキャラは俺の一番のお気に入りだ。

どんなカードでも使えない場所なんてない。どんなにクズカードと言われてもカードの力を信じて戦う姿はレベルの低いモンスターをも救うことになってゲームに汎用性が生まれた気がする。

 

「ライディングなんて、僕たち免許もってないんじゃないか?」

 

「そこはデュエルアカデミアを創始した海馬コーポレーションの技術力よ。免許不要のDホイールくらい用意できているわ。みんなついてきて。クラスのみんなも待ってるわ」

 

 そういうと明日香は俺たちをデュエル闘技場(スタジアム)のひとつへと連れてきた。そこは、どのスタジアムよりも広く、バイクのようなものがガレージに並んでいた。Dホイールが走りやすいようにトラックが舗装されていて競輪のスタジアムみたいだった。

 

「すげえ! 俺の知ってるアカデミアとやっぱ全然違うなぁ......」

 

キラキラした眼差しで榊遊矢が闘技場を駆け巡る。確かにそうだよな。彼らにとってはアカデミアは敵でしかなかったんだ。純粋な学び舎としてこんなに優秀なところはない。

 

「俺もセキュリティに入る前にこんな場所で勉強しておきたかったよ」

 

「え!? 不動遊星?」

 

そこにいたのはセキュリティの服を脱ぎすてて、いつもの青いライダースジャケットを着こんだ遊星がいた。セキュリティの彼が一体なぜここに......。

 

「なんでここにいるんです?」

 

「ああ、セキュリティのライディングデュエルのタクティクス底上げのため授業を受けることになったんだ。それに俺のことは遊星で構わない。遊介」

 

「は、はい。遊星......」

 

隣にいる遊星を焼き付けていると、奥の方からバイクの音が聞こえてきた。そしてトラックから俺たちの前にまでDホイールを走らせてブレーキを止めた。この人が今日の先生か?

 

「私はライディングのことは教えてあげられないから、代わりとして外部講師に来てもらったわ。紹介するわね......。えーっと」

 

「ブルーノ......。私の名前はブルーノだ。君たち、よろしく! 君たちにライディングデュエルの新たな可能性と希望を教えに来た!」

 

ブルーノ......。5D'sの中で絶望の未来から来たものの、遊星にアクセルシンクロを教え希望を見出した人。この人からライディングデュエルを教えてもらえるなんて嬉しい限りだ。

 

 拍手と共に明日香が進行を始める。

 

「ここでは皆さんにまずDホイールを選んでもらいます。いろいろあるけど、初めは勘に頼ってくれて構わないわ。その後にエンジンだったりデュエルディスクの細かい設定を覚えて決めたらいいから」

 

俺たちは何の情報もなくDホイールを選ぶことになった。もちろん、遊星も。俺はもちろんリスペクトを込めて赤いDホイールを選ぼうとしたが、それはもう赤馬零児によって選ばれていた。

相変わらずの仏頂面だなぁ......。次々と選ばれて行き、最後に白いバイクと黒いバイクが並んだ。そしてバイク争奪戦に負けたのも二人、俺と友崎だった。

 

「遊介、どっちがいいんだ?」

 

「こうなったらどっちでもいいな」

 

「じゃあ、俺黒もらうけど恨みっこなしだよな」

 

「ああ」

 

意外だな。友崎が黒を選ぶだなんて......。ジャック・アトラスが好きって言ってたからてっきり白を選ぶと思っていたけど。まぁ、人の趣味って変わるし......。俺は白いバイクにまたがった。

 

「それではまず、体感としてこのフィールドを走ってもらう。そうだな、遊星ともう一人......。そうだな、君。最後に白いバイクを選んだ君だ!」

 

 え、俺? 俺が遊星とライディング?

 

「お、俺ですか?」

 

「ああ、彼とライディングデュエルしてみてくれ。みんなにライディングデュエルがどんなものか見てもらうためのものだから気負わなくていい」

 

 そう言われても、遊星とデュエルって時点でだいぶ気負ってしまうんだが......。そう思っていると遊星が手を差し伸べてきた。

 

「セキュリティとして君には恩がある。だが、今は模擬戦とはいえ勝負事だ。全力でぶつかってきてくれ。俺もそれに答えられるようにする」

 

「わ、わかりました。俺も俺なりの全力でやります!」

 

ライディングデュエルでは、まずはじめにフィールド魔法「スピードワールド2」を発動させることが基礎だ。そのあとはレースでコーナーを先に取ったほうが先攻という流れになっている。

 

「さあ、二人とも準備はいい?」

 

 

 

 

「「ライディングデュエル! アクセラレーション!」」

 

ピーーーーーーーー!!!

 

 

Dホイールは走り出していくも俺は遊星の後をついて行くだけにした。デッキパワーが低いなら無理に先攻を取るより後攻で確実に1ドローした方が動きやすい。それはどんなデュエルでも同じだと思う。

 

「ライディングデュエルはスピードワールドの特性上、先攻もドローができる。攻撃できないのも変わりない! それでもなお、遊介! 君は後攻を取ると言うのか」

 

「俺には俺の戦略があるんですよ!」

 

「ならば、先攻はいただく!」

 

さっきまでのDホイール同士の接戦はどこへ行ったのやら。遊星は性能をフルに活用して俺を追い抜いて行った。さすが、チーム5D'sの要で、バイクのことを知りつくしている人物だ。

 

「俺のターン! ドロー!」

 

遊星:LP4000 spc1

 

「俺は魔法カード調律を発動! 俺はジャンク・シンクロンを手札に加える! 俺はジャンク・シンクロンを召喚! そして俺はジャンク・シンクロンの効果によりシールド・ウィングを特殊召喚! 俺はレベル2シールドウィングにレベル3ジャンク・シンクロンをチューニング! 集いし星が新たな力を呼び起こす! 光差す道となれ! シンクロ召喚! 出でよ、ジャンク・ウォリアー!」

 

遊星を最後まで支えたモンスター、ジャンク・ウォリアーが彼のフィールドに現れた。セキュリティのカードと違う。彼自身のデッキな気がする。

 

「遊星、セキュリティのカードはどうしたんすか?」

 

「あのカードはセキュリティからもらい受けたカード。これは俺が昔使っていたカードだ。俺はこれで、昔信じていたデッキの絆を、集いし星が大きな力になることを証明したい! カードを2枚伏せて ターンエンド!」

 

やっぱりどこまで切り取っても遊星さんは遊星さんだった。この世界で何が起きて自分のカードを信じられなったのかは知らない。だけど、彼はこの街を信じて、守ろうとしてセキュリティになったのだと思う。

 

「なら、俺もその気持ちに応えます! ドロー!」

 

遊介:LP4000 spc:2

 

「俺は、モノ・シンクロンを捨ててクイック・シンクロンを特殊召喚! ジャンク・コンバーターを通常召喚! 俺はレベル2ジャンクコンバーターにレベル5クイックシンクロンをチューニング! 集いし叫びが、木霊の矢となり空を裂く!光差す道となれ!シンクロ召喚!出でよ、ジャンク・アーチャー!」

 

 

「なに、ジャンク・アーチャーだと?」

 

「あなただけが、【ジャンク】を使えるだなんて思わないでくださいよ。俺はジャンク・アーチャーの効果発動! ディメンション・シュート! ジャンク・ウォリアーを除外する!」

 

まずは、ここで攻める!

 

「ジャンクウォリアーで攻撃! スクラップアロー!」

 

「罠カード、くず鉄のかかし!」

 

やはり伏せていたのはくず鉄のかかしだったか......。でもあのカードがあることが分かっただけでも対処はいくらでもできる。

 

「カードを3枚セットしてターンエンド」

 

これで俺の手札はゼロとなってしまった。だけどこれでいい。さあ、俺の憧れた不動遊星はどう切り抜けてくれるんだ?

 

 

 

 

 

 




ブルーノの指名により遊星とデュエルすることになった遊介。
彼らのデュエルで新たな次元へと旅立つ!

次回、遊戯王ARC-if「決めろ、アクセルシンクロ!」


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if=10:決めろ、アクセルシンクロ!

ブルーノの指名により不動遊星とライディングデュエルをすることになった阿久津遊介。遊星は自身のデッキとの絆を再度信じるため、遊介は自分の可能性を信じて憧れを倒すため勝負を白熱させるのだった。


いきなりのダイレクトアタックに対して遊星はくず鉄のかかしで回避したものの、彼の手札は知りえないからどういう風にこの盤面を返すつもりなのかわからない。だからこそ、デュエルは楽しい。

 

「俺は昔、このデッキである人物に挑んだ。だが、結果はギリギリのところで負けてしまった。それから何度もその人を打ち負かそうと頑張ったが駄目だった。だが、その諦めの悪さを買われてセキュリティに入ることができた。デッキの絆より性格に効率的な構築。そして相手への妨害と拘束。それがセキュリティのデッキ構築だった」

 

「それが、その時のあなたにとって都合のいい逃げ道だったのかもしれない。それでも、諦めずにデッキとの絆を信じるのがあなたのいいところだ。あなたの全力が見たいんだ! 遊星!」

 

「俺は……俺のターン! ドロー!」

 

遊星:LP4000 spc:3

 

「俺は魔法カード『シンクロ・キャンセル』を発動! ジャンク・ウォリアーをEXデッキに戻してジャンク・シンクロンとシールド・ウィングをフィールドに戻す! そして、手札からボルト・ヘッジホッグを召喚! レベル2のシールド・ウィングとボルトヘッジホッグにレベル3ジャンク・シンクロンをチューニング! 集いし怒りが、忘我の戦士に鬼神を宿す! 光射す道となれ! シンクロ召喚! 吼えろ、ジャンク・バーサーカー!」

 

シンクロキャンセルを活かして、新たなシンクロモンスターに繋げていくの俺でもできた試しがないぞ?

やっぱり遊星はすごい! 彼と本気のデュエルをしているというだけで俺の心がたぎる!

 

「来てみろ! 遊星! 俺はそんなモンスターじゃあやられないぞ!」

 

 

「ジャンク・バーサーカーの効果発動! ジャンク・シンクロンを除外してその攻撃力分、相手のモンスターの攻撃力を下げる! バーサーカーソウルクラッシュ!」

 

攻撃力2300のジャンク・アーチャーが一気に1000まで攻撃力が下がってしまった。

 

え、原作にはない効果名じゃね? これめっちゃレアじゃん。 確かにだいたいの「ジャンク」系列のモンスターには効果名や攻撃名があてがわれてるわりにはないやつもあるんだよなあ。初めて(?)知った。

 

 

「ジャンク・バーサーカーでジャンク・アーチャーに攻撃! スクラップ・アックス!」

 

 

「ぐわっ......! それでも俺は繋げてみせる! 罠カード、奇跡の残照を発動! 戻ってこい、ジャンク・アーチャー!」

 

ライフは削られたものの、盤面についてはそこまで変わっていない。

ここで、俺がレベル1のチューナーを素引きすればスターダストを出せるんだが......。

 

遊介:LP2300 spc:4

 

「俺のターン、ドロー!!」

 

俺が引いたカードは『sp エンジェルバトン』だった。このカードライディングデュエルで何度も見たことある。なんども遊星が使ってたから印象に残っている。だが、2枚ドローしても確実に1枚は落ちるからここは俺のディスティニードローを信じるしかない!

 

「俺は、sp エンジェルバトンを発動! デッキから2枚ドローし、そしてその後、一枚を墓地に送る」

 

俺が引いたカードはシン・クリボーとスピードウォリアー......。いける! アクセルシンクロ!

 

 

「俺は、エンジェルバトンの効果により、スピード・ウォリアーを墓地に送る。 そして、手札に加えたシン・クリボーを召喚! レベル1チューナーのシン・クリボーにレベル7ジャンク・アーチャーをチューニング! 集いし願いが、新たに輝く星となる! 光差す道となれ! シンクロ召喚! 出でよ、俺のスターダスト・ドラゴン!」

 

そうすると遊星は俺のフィールドに出たスターダストに驚いたようで

 

「スターダストが遊介のフィールドに!? 君は一体何者なんだ!」

 

「俺は、あなたにあこがれて、あなたと同じデッキ構築を組んだ異次元からきたデュエリスト! ここであなたに新たなシンクロの進化系を見せてあげます! 俺は二枚の伏せカードを使う! 永続罠 エンジェルリフト、そしてリビングデッドの呼び声! これらの効果により、モノ・シンクロンとスピードウォリアーを特殊召喚する! モノ・シンクロンは戦士族・機械族とシンクロ召喚する際、そのモンスターをレベル1として扱う! レベル1、モノ・シンクロンとレベル1扱いとなったスピードウォリアーでチューニング! 出でよ、シンクロチューナー! レベル2 フォーミュラ・シンクロン!」

 

 

 

 

俺はそのシンクロに呼応するように自分のバイクを遊星のバイクに近づけた。そしてフォーミュラ・シンクロンの効果によりデッキから1枚ドローして見せた。

 

「フォーミュラ・シンクロンの効果で1ドロー! 俺はそのカードを伏せる」

 

「一体なにをするつもりだ! シンクロチューナーとはなんだ?」

 

やっぱりこの次元の遊星は知らないのか......。なら、見せるしかない!

 

 

 

「実際に体感するといいさ! これが新たなシンクロ召喚、アクセルシンクロ召喚を! 俺は、スターダスト・ドラゴンにフォーミュラ・シンクロンをチューニング! 集いし夢の結晶が、新たな進化の扉を開く! 光射す道となれ! アァクセルシンクローーーーーー! 生来せよ! シューティング・スター・ドラゴン!!」

 

 

白く輝くドラゴンが俺のフィールドに現れ出る。シンクロをことごとく吸収する「機皇」モンスターに対して絶望しかけた彼に現れた一筋の希望。それがこのカードだ。

 

「シューティング・スター・ドラゴン......。うっ......」

 

彼の手に赤いあざが見え始める。あれって、もしかして赤き竜のあざ? この次元の彼もシグナーとして覚醒しようとしてる? それとも、別のなにかなのか? だが、俺はこの攻撃をやめるわけにはいかない!

 

「俺はシューティング・スターの効果を使う! デッキから5枚めくってめくったカードの中にあるチューナーの数だけ攻撃できる!」

 

1枚目:ジャンク・シンクロン

2枚目:団結の力

3枚目:エフェクト・ヴェーラー

4枚目:くず鉄のかかし

5枚目:スターダスト・シンクロン

 

合計3回攻撃! 今まで友達とやってた中で一番攻撃回数が多いぞ! よし、これなら遊星のくず鉄のかかしを打たれたとしても残り2回で攻撃できる!

 

「バトルだ! シューティング・スタードラゴン、ジャンク・バーサーカーに攻撃! スターダスト・ミラージュ!」

 

「ここは耐える! ぐっ......」

 

遊星:LP3400

 

「追加攻撃! スターダスト・ミラージュ!」

 

 

「ここはくず鉄のかかしを使う!」

 

 

「無効にしても無駄だ! もう一回攻撃が残っている! 3連打ァッ!」

 

遊星:LP100

 

 

「ぐわぁっ......! なんというパワーだ。これがアクセルシンクロ召喚で召喚されたシンクロモンスターというのか。だが、俺はまだ希望を信じる! 罠カード運命の発掘! 自分が戦闘ダメージを受けたとき発動する。自分はデッキから1枚ドローする!」

 

ここでもなお、ドローしてくるとはなかなかすごい人だ。それにしても運命の発掘だなんて彼のデッキに入ってたっけ?

 

「俺はこれでターンエンド。いいカードは引けました? 遊星」

 

「ああ、これは遊戯さんにお礼をいっておかないとな......」

 

「遊戯さん!?」

 

その時、彼の背中には赤き竜の痣が集約して一つの竜となった模様が浮かび上がった。その時の彼はまさしく不動遊星だったというしかない。彼は微笑んでデッキからドローした。

 

 

「俺のターン!」

 

 

覚醒した不動遊星:LP100 spc5

 

「俺は、デブリ・ドラゴンを召喚! このモンスターは召喚成功時、墓地から攻撃力500以下のモンスターを特殊召喚できる! 俺はシールド・ウィングを選択! さらにフィールドにチューナーがいるとき墓地にあるボルト・ヘッジホッグを特殊召喚できる! 戻ってこいボルト・ヘッジホッグ! 俺はレベル4デブリ・ドラゴンにレベル2シールドウィング、ボルト・ヘッジホッグをチューニング! 集いし願いが、新たに輝く星となる! 光差す道となれ! 飛翔せよ! スターダスト・ドラゴン!」

 

 

「こんな状況にスタダだしても意味ないじゃないですか! 死ぬ気ですか!」

 

 

「俺は死ぬためにスターダストを出したんじゃない! 俺は速攻魔法シューティングソニックを発動! このターンのバトル開始時、攻撃した相手モンスターをデッキに戻す! これなら、シューティングスターの効果も発動されない! バトルだ! 俺は、スターダスト・ドラゴンでシューティング・スターに攻撃! シューティング・ソニック ブースト!!」

 

 

ま、まじか俺のシューティング・スターがデッキに......。しかも相手はノーダメかよ......。今度は俺がピンチになったってわけか。

 

 

「俺はカードを伏せてターンエンド! さあ、来い! 遊介」

 

俺の伏せカードは万が一のための罠カード星墜つる地に立つ閃珖だ。今の状況だと使える状況ではない。ということはこのドローにすべてがかかっているということか......。

 

 

「俺のターン、ドロー!」

 

 

俺の引いたカードは......シンカを促すクリボー! これはいける!

 

 

「俺は、魔法カード『シンカを促すクリボー』を発動! フィールドにモンスターが存在せず、墓地に『シン・クリボー』が存在する場合このカードを発動できる! 墓地のシン・クリボーとシン・クリボー以外のチューナー以外のモンスターを除外し、その除外したモンスターのレベルの合計と同じ光属性のシンクロモンスターを召喚できる! 神秘の瞳、輝かせし龍よ! 悪を捌く刃とともに降誕せよ! シンクロ召喚! レベル8 |神秘眼の聖装刃竜《シークレットアイズ・スコール・スラッシュドラゴン》!」 

 

 

このカードなら相手の伏せカードに関係なく殴り勝てる!

 

 

「さあ、どうするつもりだ。俺の伏せカードにはくず鉄のかかしがあるのはわかっているはずだ!」

 

「そうですね。だけど、それはどうかな? 俺はシークレットアイズのモンスター効果発動! このカードがシンクロモンスターを素材として召喚に成功したとき、相手魔法・罠ゾーンにある伏せカードを無効にして表側表示にする! そしてこの時、シークレットアイズの攻撃力は表側表示になったカードの数×300ポイント上がる! スコールシャワー! バトル! これで終わりだ。静寂のバーニングスラッシュ」

 

 

遊星:LP0

 

 

これ、夢じゃないよな......。ほっぺをつねると痛みが走る。俺は、彼に勝ったんだ。

 

とんでもねえな。

 

 




遊星とのデュエルに勝利してしまった遊介。
複雑ながらも笑みを浮かべるのだった。
その後、次々とデュエルが開始される。
というより、レースみたいな雰囲気に?

新たなライディングデュエルの可能性「レーシングデュエル」が幕を開ける!

次回 遊戯王ARC-if「レーシングデュエルの罠」


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if=11:レーシングデュエルの罠

遊星とのバトルが終わり、ブルーノの講評を聞くこととなった遊介。
アクセルシンクロを使いこなしながらライディングをしていたので少し疲れていたが、授業はまだ続いている。

今度は、ライディングデュエルにバトルロワイヤルを足した「レーシングデュエル」が開始される。だが、その後ろには謎の影が暗躍していたのだった。


デュエルが終了し、バイクを制止するとブルーノが拍手を送った。

すると、他のデュエルアカデミアの生徒も続いて拍手を送ってきた。

 

これはこれで悪くない。

 

「なかなかいいデュエルだった。遊介くん、君はシンクロ召喚だけでなくアクセルシンクロを見せてくれた。驚いたよ、まあそうでないと困るというのも本音だがね」

 

「え、それはどういう」

 

そういっても彼は答えてくれず、遊星の方に向き直った。

 

「ブルーノなのか......!? 一体どうなっているんだ」

 

ブルーノは他の生徒にバレないように俺たちだけに小声で話し始めた。

 

 

「遊星、君は今別の次元にいる。正確には君の赤き竜の記憶を呼び起こしたんだ。遊介くんとのデュエルで覚醒するかどうかはほどんど賭けだったが、君の熱いデュエルがよみがえってきてくれてうれしいよ。とにかく、今は僕の歩調に合わせてくれ」

 

遊星は今、別次元の遊星さんの体を借りているような状態なのか? 赤き竜の、シグナーの記憶というものが俺たちの知っている不動遊星としての記憶が別次元の遊星に宿ったってことか?

 

意味が分からない。とにかく、今ここにいるのは俺たちが知ってる不動遊星だってことは言える。

親指を立てるブルーノに少し困惑しながらも遊星は相槌を打つ。

 

 

「まあ、構わないが......」

 

 

「それでは不動遊星! 君のライディングについて講評する! 序盤から中盤にかけて無難といえる。終盤、スターダストを使用し、相手のモンスターをデッキに戻したのはなかなか光るものがあった。アクセルシンクロを習得していないとはいえ、よく戦った。みんな、二人にもう一度拍手だ」

 

 

そういうと、生徒たちは俺たちに拍手を送った。

ブルーノの講評が終わったところで、明日香が新たな課題を俺たちに突きつける。

 

「それじゃあ、彼らのデュエルでライディングを実感したところで、実践的にやっていこうと思います。でも、普通に一人一人やるライディングなんて面白くもなんともない。だからレースをしようと思うの」

 

 

レースぅ? ライディングでってこと? 一体どうやって......。

 

 

 

「ルールは簡単、みんなで一斉にスタートするの。それでライフが削られたらその分スピードは落ちて、0になったらその時点で失格。回復していけばどんどん加速するし、こうゆうバトルロワイヤル形式なら戦いやすいかもね」

 

 

「なるほど、ただ速さを競うだけじゃなくデュエルタクティクスも問うレース。いわば、レーシングデュエルといったところか」

 

いや、納得してるんだよブルーノ。俺たちは説明聞いても全く頭に入らなかったけど? あれか? ゼアルのジェットコースターデュエルみたいなもんか? いやあれより人数が多いから普通に2対1とかありえるぞ。デュエルの途中で乱入とかありそうだし。 いろいろデッキもそれ用に組みなおした方がいいかな......。いや、今はこのデッキで行こう。というかそもそも、サイドデッキみたいな替えを持ってない。このデッキを信じて戦うしかない。

 

 

「それじゃ、お楽しみといきますか!」

 

 

「ちょっと、俺のセリフみたいなこと言わないでよ遊介!」

 

遊矢が俺の言葉に反応してツッコミを入れるとみんなちょっと噴き出していた。こういうおちゃらけキャラっていう感じも遊矢らしいといえば遊矢らしいな。彼はずっとこうやって笑顔でいてほしい。

 

 

「それじゃあ、みんなバイクに乗ってスタートについてくれる?」

 

明日香先生の指示で生徒全員がスタート位置につく。ブルーノと遊星はどうやらこのレースには参加しないようだ。二人で話し込んでいる。積もる話もあるのだろう。

 

 

「位置につけたかしら?」

 

生徒全員が息を合わせて「はい!」と声を上げる。もちろん、俺も大きな声を出した。レーシングデュエル、どういう風になるかわからないし、先攻後攻なんて概念ないしどうやって戦うかわからないけど楽しみだ。

 

 

「みんな、頑張ってね」

 

 

 

 

 

 

『ライディングデュエル、アクセラレーション!』

 

 

何もわかっていないまま謎のレーシングデュエルが始まった。一斉にバイクが先頭向けて走りだす。

ここは下の方でデュエルでどんどん相手のライフを削って先に進めていく方がいいだろう。

 

 

ゆっくりとバイクを走らせながら手札を確認する。これはどうやって戦えばいいんだ?

そう思っていると、遊矢がこちらに近づいてきた。

 

「肩慣らしに俺とデュエルしないか? 遊介」

 

「遊矢か......。まあ、いいけど。このデュエルの方式あまり理解できてないから遊矢の先攻でいいよ」

 

 

「いいのか? じゃあ、いくぞ! 俺のターンドロー! 俺は、EMギタートルとEMラクダウンでペンデュラムスケールをセッティング! ギタートルのペンデュラム効果で俺は一枚ドローする! さあ、これでレベル3から5のモンスターを同時に召喚可能! 揺れろ、魂のペンデュラム! 天空に描け、光のアーク! ペンデュラム召喚! 来い、俺のモンスターたち! EMヘイタイガー! EMウィップバイパー! 俺はレベル4のEMヘイタイガーとウィップバイパーでオーバーレイ! 二体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築! エクシーズ召喚! 漆黒の闇より愚鈍なる力に抗う反逆の牙! 今、降臨せよ! ランク4、ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン!」

 

 

まさかのここでダークリベリオン!? 

 

 

「まじかよ!?」

 

 

「驚いている暇があるのかな? 俺はカードを一枚伏せてターンエンド。さあ、遊介の番だよ」

 

 

「俺の、ターン! ドロー! なんてこった。こちとらシンクロ一筋なのにエクシーズとかバンバン使って......。まあいい、俺はシン・クリボーを守備表示で特殊召喚! このカードは自分フィールドにモンスターがいないとき守備表示で特殊召喚できる。 そして、俺はスターブライト・ドラゴンを通常召喚!このとき、シン・クリボーは自分以外の光属性が存在するとレベルは3として扱う! 行くぞ、遊矢! 俺はレベル4スターブライトドラゴンにレベル3となったシン・クリボーでチューニング! 聖者の衣纏いし竜よ! その紫の瞳で悪を照らせ! シンクロ召喚! 出でよ、紫眼の聖装竜!」

 

 

「出たな、パープルアイズ......。あの効果を使われたらひとたまりもないな」

 

 

「だろうな。だから、惜しみなく使っていく! 俺はパープルアイズのモンスター効果発動! シンクロ召喚に成功したとき、デッキから装備魔法一枚をこのカードに装備する! 俺は団結の力をデッキから発動する! さらに、俺はパープルアイズのもう一つの効果発動! このカードに装備された装備カード1枚を破壊して発動する。相手フィールド上のカードを破壊した装備魔法の枚数分手札に戻す! 俺は団結の力をリリースして、ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴンを手札に戻す! だが、EXモンスターは手札に戻ることはないためデッキに戻る!」

 

 

「速攻魔法発動! 『アクション・マジック!』 自分フィールドのモンスター一体を対象として5つの効果から選択して効果を発動する! 俺は『このターン自分フィールド上のモンスターは相手のモンスター・魔法・罠の対象にならない』を選択する!」

 

 

まじかよ、アクションデュエルでもないのにアクションカードと似たような効果を使える速攻魔法かよ!? しかも地味に強化されてる!? リリースする効果はすでに発動してしまったから攻撃力はダーク・リベリオンと同じ、2500。ここはターンエンドするしかない。

 

「カードを2枚伏せて、ターンエンド......。やりおるのぉ」

 

 

「君ほどでもないさ。違う次元に来てもデュエルを楽しんでる。ほんと、すごいよ......」

 

 

二つの竜が並び立ちにらみ合っているところに、間を縫うように一つのバイクが颯爽と駆け抜ける。

 

 

「なんだ? ロボット?」

 

 

それはバイクと合体したチームニューワールドのような出で立ちでロボットの上半身がバイクと合体している。それは俺たちを標的にして向かっている。

 

『デュエルモード。最下位ノデュエリストハ強制デュエルヲ執行! コノデュエルデライフヲゼロニシタ者ハ評価ナシ! 評価ナシ!』

 

 

なんだって? じゃあ、俺たちいつの間にか最下位になってたのか?

驚きもさながらあのロボットはすでにフィールドにモンスターを展開している。ということは何人かはもうやられているのか?

 

 『ワタシノターン! フィールドニ存在スルSRベイゴマックスにSR赤目のダイスヲチューニング! 機械の僕タチヨ我がフィールドニ集エ! シンクロ召喚! レベル7 ダーク・ダイブ・ボンバー! ワタシはダークダイブボンバーの効果発動! フィールド上のバンブーホースをリリースシ、ソノレベル分×100、ツマリ400ポイントノダメージヲ与エル!』

 

「ぐわっ!」

 

「うああああ!」

 

遊介LP3600

 

遊矢LP3600

 

 

 

「遊介! ここはお互いに協力しよう! このままじゃ、単位がとれないぞ!」

 

 

俺の伏せカードは強制終了とガードブロック......。このターン、強制終了を使えば攻撃は免れる。だが、その効果を使うとガードブロックを破壊することになる。どうする? たった100のダメージに使うか? それとも温存するか?

 

 

 

 




最下位のデュエリストをふるいにかけるデュエルボットが動き出した。

いつの間にか最下位となってしまった遊介と遊矢は一時休戦し、デュエルボットとのデュエルを開始する。

そのころ一方、円谷廉次郎は赤馬零児と勝負を挑んでいた。だが、そのデュエルに乱入者が現れる。


次回、遊戯王ARC-V「舞い降りる不死鳥」


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if=11.5:舞い降りる不死鳥

遊矢と遊介がデュエルボットとの死闘を繰り広げようとしている中、廉次郎と赤馬が戦っていた。廉次郎は自分のデッキがどこまで通じるか赤馬で試そうとしていたその時、一人の男がさっそうと現れた。彼は「D」を冠したカードの持ち主、エド・フェニックスだった。


遊介が遊矢とともにデュエルボットと戦っているころ、中間の集団には円谷廉次郎が「ミニチュアル」デッキを用いて多くの生徒を引き離していた。

 

「ミニチュアル破滅獣 ヴァイス・ベーゼの効果発動! オーバーレイユニットを一つ取り除き、相手フィールドのモンスターの攻撃力を自分フィールドの『ミニチュアル』モンスターの数×1000下げる! 僕のフィールドにはヴァイス・ベーゼとミニチュアル・タンクの二体! よって2000攻撃力を下げる! 破滅のギガントフォース! バトル! 破滅獣 ヴァイス・ベーゼで剣闘獣ドミティアノスに攻撃! すべてを焼き尽くし滅ぼせ! 破滅の牙!」

 

 

 

「うわぁああああ!」

 

 

相手のモンスターを寄せ付けず、レベルを上げつつエクシーズや儀式を行うミニチュアルデッキは以外にもどんなデッキにも頼りがいのあるモンスターがあるため廉次郎の日ごろの研究の成果がうかがえる。

 

 

「ったく、遊介の野郎! どこで油を売ってやがる。こちとら中間位置で待ち構えてやってるのに」

 

 

「ならば、私と暇つぶしをするか?」

 

中間集団の中でも先頭を譲っていなかった赤馬零児が廉次郎のところまで下がってきて勝負を挑んできた。廉次郎のライフは5000に対して赤馬は8000となっていた。自分には不利だと思っていても相手は学園一のデュエリストとなると勝負を受けないわけにはいかない。

 

 

「ほお、オベリスクブルーの力見せてもらおうじゃないか! 来いよ、ペンデュラム召喚!」

 

彼の場のペンデュラムゾーンにはDDオルトロスとDD魔導賢者ニュートンがセッティングされており、永続魔法魔神王の契約、地獄門の契約書、戦乙女の契約書が場に並べられている。 そしてモンスターゾーンにはDDD神託王ダルクとDDD疾風大王アレキサンダーの二体がすでに並んでいる。

 

彼の手札は一枚、EXデッキには表側表示のヘル・アーマゲドンが廉次郎を虎視眈々と狙いをつけていた。

 

 

「ならば、見せて差し上げよう! これが大いなるペンデュラム召喚だ! 現れよ、私のモンスターたちよ! DDD極智王カオス・アポカリプス! そして、EXデッキより現れよDDD死偉王 ヘル・アーマゲドン!」

 

「だが、俺にはフィールド魔法『ミニチュアルハウス』がある! このカードが存在する限り、相手のモンスターの攻撃力は自分の『ミニチュアル』モンスターの数×1000下がる。どんなに強いモンスターでも抗うことはできない!」

 

 

アレキサンダーの自身の効果によって攻撃力を3000アップさせたものの、ミニチュアルハウスの効果により、4000止まりとなっていた。だが依然として彼は余裕の表情だった。廉次郎は眉をひそめて赤馬のモンスターを見つめる。

 

「果たしてそれはどうかな? 私は、地獄門の契約書を発動! 私はDDバフォメットを手札に加える。私はDDバフォメットを通常召喚! そしてDDバフォメットの効果により カオス・アポカリプスのレベルを8にする!」

 

 

「レベル8のモンスターを二体並べただと? まさか......」

 

 

「私は、レベル8死偉王 ヘル・アーマゲドンとレベル8となったカオス・アポカリプスでオーバーレイ! 二体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築、エクシーズ召喚! 2つの太陽が昇るとき、新たな世界の地平が開かれる! ランク8、DDD双暁王カリ・ユガ!! さらに私は墓地のDDリリスとフィールドのDDバフォメットで融合! 闇夜に誘う妖婦よ! 異形の神を包み込み、今ひとつとなりて新たな王を生み出さん! 融合召喚! 生誕せよ、DDD烈火王テムジン!」

 

 

「エクシーズ、ペンデュラム、融合......。さすがはオベリスクの首席候補なだけはあるな」

 

 

「DDD双暁王カリ・ユガは、エクシーズ召喚に成功したターンはこのカード以外のカードの効果を受けない。つまり、君の創られた世界も元の通りちっぽけな存在となったのだ。さあバトルだ! DDD双暁王カリ・ユガでミニチュアル・タンクに攻撃! ツインブレイクショット!」

 

 

大きなダメージほど、スピードを落として順位を落とす原因になりかねないこのレーシングデュエルは少しのライフさえも命取りといえる。だが、相手のカードの効果を受けないカリ・ユガの前には機械族が存在する場合、相手フィールド上のモンスターを守備表示にするパルスボムも無意味になってしまう。

 

廉次郎LP:2500

 

「ぐわあああああ!!!! だが、戦闘ダメージを受けたことにより、手札からミニチュアル・ハイパーエージェントの効果を発動する! 自分フィールド上に『ミニチュアル』モンスターが存在するとき、このカードを捨てて発動できる! 自分フィールドに『ミニチュアルトークン』2体を守備表示で特殊召喚し、バトルフェイズを終了する!」

 

 

ミニチュアルトークンは地属性、レベル1、機械族の攻守0モンスターとして廉次郎のフィールドに残った。ただ、彼の永続魔法、「ミニチュアルセット」のおかげでレベルは10となっている。だが、ここでなにか打開できるカードを引かなければ次のターン、相手のDDモンスターの餌食となってしまう。

 

 

「ターンエンド......。君の番だ。さあ、この盤面をどう切り返す!」

 

 

廉次郎が悩んでいたその時、一台のバイクが空を一瞬駆け抜けて、廉次郎と赤馬の前を通り過ぎる。しかもなぜか無駄にテンションの高い男のような声だった。

 

 

「イヤッッホォォォオオォオウ!!!」

 

 

「な? なんだ?」

 

 

「君は......」

 

「ナンセンスだ。とてもじゃないがアカデミアの生徒とは思えないザルデュエルだ。プロのタクティクスをボクが見せてやる!」

 

 

銀色のスーツとバイクを乗りこなし二人の間を行ったり来たりしている。彼は何を隠そう、プロデュエリスト、エド・フェニックス。著書「それはどうかなと言えるデュエル哲学」を発行するほどの腕前でありながら十代のいるデュエルアカデミアへと入学してきた人物だ。赤馬は彼と一応の面識はあるが並行世界の住人であるため当人かどうかはわからない。

 

「あいつ、だれだ?」

 

廉次郎が眉をひそめて首をかしげるが赤馬が少し冷静に話した。

 

「彼の名は、エド・フェニックス。元、アカデミア生徒でプロデュエリストだ。D-HEROというデッキを使っている。ことくらいしか知らんな」

 

 

「メガネの君はよくボクを分析できているようだが、目つきの悪い君はどうやら勉強不足のようだな。仕方あるまい、君のデュエルはあまりにも粗暴で独りよがりだからな。ボクが真のデュエルを教えてやろう! ボクのターン! ボクは魔法カード『二重融合』を発動させる! ボクはライフを500払うかわりにこのターン、ボクは2回融合できる! まずはじめにボクは手札のE・HEROフェザーマンとバーストレディで融合! カモン! E・HERO フェニックスガイ!」

 

 

「赤馬! 言ってたことと違えじゃねえか!」

 

 

「そんなはずは......」

 

 

「ボクのデッキはD-HEROだけってわけじゃないさ。そしてさらに! ボクは、フィールドのE・HEROフェニックスガイと手札のD-HERO ダイヤモンドガイで融合! 漆黒の闇を復讐の炎で照らし、悪を粉砕する新たな『D』! カモン! D-HERO デストロイフェニックスガイ! デストロイフェニックスガイはセメタリーに存在するヒーローの怨念を引き継いで相手のモンスターの数×200ポイント攻撃力を下げる! ヒーローデステニーカース!」

 

 

紅蓮の炎がメラメラと燃えた先に羽の生えた男がエド・フェニックスのフィールドに現れる。廉次郎にはミニチュアルトークンと伏せカード二枚。 そして赤馬零児のフィールドにはDDD双暁王カリ・ユガと神託王ダルクがある。魔法カードについては先ほどと変わっていない。手札はすでに使われてゼロ。戦乙女の契約書の効果は使用できない。

 

 

「ボクは、D-HERO デストロイフェニックスガイのモンスターエフェクト発動! ボクはフュージョンゲートと、メガネの方のきみ、確か赤馬零児だったね。君のDDD双暁王カリ・ユガを破壊させてもらう! デストロイフレイム!」

 

 

「くっ...... カリ・ユガの効果発動! オーバーレイユニットを一つ使い、フィールドの魔法・罠を破壊する! さすがは融合の使い手、1ターンに2回も融合するとはな」

 

「おい! 僕まで巻き込むな!」

 

「君のフィールド魔法が面倒なのでな。私はここで倒れる訳にはいかない」

 

 

「それは僕も同じだ!」

 

 

「喧嘩はすんだか? バトルだ! ボクはまずライフが少ない目つきの悪いきみに攻撃する! デストロイフェニックスガイでミニチュアル破滅獣 ヴァイス・ベーゼに攻撃! フェニックス・デス・シュート!」

 

廉次郎:LP1200

 

 

「ぐわっ、ああああ!  プロのあんたが、プロでもねえ僕たちをいたぶって何がしたいんだ!」

 

 

「十代をあぶりだすためだ! あいつはなぜかチーム5D'sなんていういけ好かない暴走族に加担しドミノシティを荒らしてるからだ! 君たちもバイクに乗っているのだからその一端なのだろう! アカデミアの風上にも置けないものたちよ、さあ吐け! 十代はどこにいる! ボクがお灸を据えてやる!」

 

 

もちろん、廉次郎も赤馬も彼の居所など知る由もない。

 

 

「知ってるわけないだろう! 誤解だ! 僕たちは授業でライディングデュエルしているだけだ!」

 

 

廉次郎のバイクがどんどん後方へと落ちていく。それに合わせて赤馬零児とエドはじりじりと下がっていく。それが彼にとってはとても屈辱的だった。

 

 

「こっちくんな! 赤馬零児、それにエド・フェニックスだったな? 後ろで挽回してやる待ってろ......。それと、お前の言う十代ってやつ後ろにいる『阿久津遊介』なら知っているかもな」

 

 

「なに? 早くつれてこい!」

 

 

「条件がある。おまえもこの授業に参加しろ! レーシングデュエルの上位で待ってろ。すぐにそいつをつれてきてやる」

 

 

「アカデミアのOBとして、楽勝としかいいようがないな。こっちはプロだぞ? なめるなよ、小僧が」

 

 

「交渉成立だな。じゃあな」

 

 

そういうと廉次郎は集団に抜かれていき、後方へと落ちていった。彼が待ち受けるのは遊介たちと戦っているデュエルボット......。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




不死鳥が舞い降りてレーシングデュエルが混戦となっている一方で遊介たちは相変わらずロボットの脅威から逃れられていない。彼らは自分たちの手で前へ進むことができるのか!?

次回、遊戯王ARV-if「前へ」


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if=12:前へ

最下位に制裁を下すロボットに追われる遊介と遊矢。
彼らはそのロボットの応酬を返すことができるのか?


遊介:LP3600

 

モンスターゾーン

紫眼の聖装竜(シンクロ/効果/Lv7)

 

魔法・罠ゾーン

伏せカード2枚(未発動)

強制終了

ガードブロック

 

手札1枚

 

 

遊矢:LP3600

モンスターゾーン

ダークリベリオン・エクシーズ・ドラゴン

 

魔法・罠ゾーンなし

 

手札2枚

 

最下位になると強制的にロボットとデュエルをさせられる。ライフを守ろうとしてデュエルをせずに走り回っているやつらをあぶりだす策略か?

よくわからないロボットが乱入したせいであいつのターンになっちまったしどうすればいいんだ。

 

 

『ワタシハ、ダーク・ダイブ・ボンバーデ【紫眼の聖装竜】ニ攻撃! マックス・ダイブ・ボム!』

 

 

ここは仕方ない。伏せカードは取っておこう。悪い、パープルアイズ......。

 

 

「ぐっ......」

 

 

遊介:LP3500

 

「よかったのか? 遊介」

 

 

「大丈夫、あてはある。なんとかしてみせるさ」

 

 

『カードを1枚伏セテ、ターンエンド!』

 

 

とはいえ、俺の伏せカードは強制終了とガードブロック......。数ターンはしのげるかもしれないが、どうする!?

 

 

「とにかく、ここは俺がなんとかしてみせる! 俺ターン、ドロー! 俺は手札より、フィールド魔法天空の虹彩を発動! フィールドのEMギタートルを破壊して俺は、EMオッドアイズ・ユニコーンを手札に加える。そして空いたペンデュラムゾーンにオッドアイズ・ユニコーンをセッティング! これで、レベル3から7までのモンスターが同時に召喚可能! 再び揺れろ、魂のペンデュラム! 天空に描け、光のアーク! ペンデュラム召喚! 手札より現れよ! EMゴールド・ファング! そして、オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン!」

 

 

「よし、2体のドラゴンがそろった! 行け! 遊矢!」

 

 

「ああ! 俺はダークリベリオン・エクシーズ・ドラゴンのモンスター効果発動! オーバーレイユニット二つ取り除き、ダーク・ダイブ・ボンバーの攻撃力を半分にしてその数値分ダークリベリオンの攻撃力をアップする! トリーズン・ディスチャージ! これでダークリベリオンの攻撃力は3800! バトルだ! オッドアイズでダーク・ダイブ・ボンバーに攻撃! 螺旋のストライクバースト! この時、オッドアイズの戦闘ダメージは倍になる! リアクションフォース!」

 

 

 

デュエルボット:LP300

 

 

「これで終わりだ! ダークリベリオンで」

 

 

「手札ヨリ、デスペラード・リボルバー・ドラゴンのモンスター効果発動! フィールドの機械族・闇属性が戦闘、効果で破壊された場合にこのカードを手札カラ特殊召喚スル!」

 

 

「なに? だけど、攻撃力は俺のダークリベリオンの方が上だ! ダークリベリオンでデスペラード・リボルバー・ドラゴンに攻撃! 反逆のライトニング・ディスオベイ!」

 

 

「デスペラード・リボルバー・ドラゴンの効果発動! ロシアンリボルバー! コイントス3回を行い、表が出た数だけ表側表示モンスターを破壊スル!」

 

 

コイン

 

表・表・裏

 

 

「ワタシハ、榊遊矢のEMゴールド・ファングとダークリベリオン・エクシーズ・ドラゴンを破壊スル!」

 

 

遊矢の盤面にはオッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンのみ。相手ターンさえしのげば次の遊矢のターンにオッドアイズが戻ってくる。それまで俺が繋ぎ止めないと!

 

 

「くっ......。ターンエンド! 遊介、任せた!」

 

 

「わかった! 俺のターン、ドロー!! よし来た! 俺は手札のジャンク・コンバーターの効果を発動! 手札のチューナー1体とこのカードを捨てて、デッキから「シンクロン」チューナーを手札に加える! 俺はジャンク・シンクロンを手札に加える! ジャンク・シンクロンを召喚! ジャンク・シンクロンの効果! ジャンク・コンバーターを特殊召喚! ジャンク・コンバーターにジャンク・シンクロンをチューニング! 出でよ、ジャンク・ウォリアー! さらに、ジャンク・コンバーターの効果でジャンク・シンクロンを墓地から特殊召喚! さらに俺は、ジャンク・ウォリアーにジャンク・シンクロンをチューニング! 集いし闘志が怒号の魔神を呼び覚ます!光さす道となれ!シンクロ召喚!粉砕せよ、ジャンク・デストロイヤー! ジャンク・デストロイヤーの効果発動! シンクロ素材としたチューナ以外のモンスターの数だけ敵を粉砕する! タイダル・エナジー! デスペラード・リボルバー・ドラゴンを破壊する!」

 

 

『デスペラード・リボルバー・ドラゴンが破壊されたとき、コイントスを行うモンスターを手札に加える効果を持つが、ワタシニハもうそのような効果を持つモンスターは存在シナイ......』

 

 

「ならば、臆せず攻める! ジャンク・デストロイヤーで直接攻撃! デストロイ・ナックル!」

 

 

ロボットは何もすることなく、直接攻撃を受けてしまった。あっけなくデュエルが終了してしまったと思ったその時だった。

 

 

『ワタシハ、罠カード【不運の爆弾】を発動サセテオイタ! 相手のモンスターの攻撃力半分のダメージをコチラモ受けるガ、相手にも同じダメージを受けてモラウ! 阿久津遊介に1300のダメージ!』

 

 

「痛ってぇ! 最後の最後に置き土産すんな! 後、発動するときはちゃんとタイミング見て言え!

 

 

ロボットが後ろの方に下がっていく。いや、俺たちのDホイールの速度が若干上がっている?

 

「遊介! 俺たちのライフポイントが増えているぞ! 自分が攻撃した戦闘ダメージもしくは効果ダメージ分なのかな? 遊介が1300ポイント回復してるみたいだし」

 

 

遊介:LP4800

 

遊矢:LP7300

 

 

「ほんとだ。ええ、でもなんか損した気分......」

 

 

とはいえ、ライフポイントが増えたおかげで俺たちは前に進むことができた。これでより前に進むことができる!

 

 

「お、いたいた。 阿久津、それに榊!」

 

 

「お、円谷! なんか久しぶりだな。 あれ、もしかして迎えにきてくれたの?」

 

 

「ふざけるな! だが、たしかにそうだ。エド・フェニックスとかいうデュエリストに言われて貴様を迎えに来た。阿久津」

 

「俺?」

 

エド・フェニックスが俺に用? どういう風の吹き回しだ? というかどっから来たんだよエドは......。ここってアカデミア生徒専用レーンじゃなかったっけ? とにかく、前に行ってこの課題をクリアするのも目的の一つだし。いくか!

 

 

「どうした。早くしろ」

 

 

「分かった。行くよ! じゃあ、遊矢また後で」

 

 

「うん! きっと君もすぐ追いつくからまたさっきの続きをしよう!」

 

 

俺はうなずいたあと、円谷廉次郎の後ろについてアカデミア生徒たちを潜り抜けていく。

雑魚は任せろといわんばかりに彼のミニリチュアル・シャイニング・グレートが多くの生徒のライフを削っていく。俺もライフを回復するために負けじと戦闘に参加する。

 

「どおおおけええええええええ! ギガンティウムこうせーーーーーーーん!!」

 

 

「デストロイ・ナックル!!」

 

 

100、200とライフを稼いでいく。俺たちのライフは最終的に俺がLP5000、円谷がLP5500となっていた。

彼が後ろを向いて若干ニヤついていたのは癪に障ったけど、今では頼りになる仲間と呼んでもいいかもしれない。

 

 

「なぁ、お前のこと『廉次郎』って呼んでもいいか? それなら別にいいだろ?」

 

 

「は? 何をいまさら言ってるんだ? 呼び方なんてなんでもいいだろう! ......まぁ、勝手にしろ」

 

 

「改めてよろしく! 廉次郎!」

 

 

「俺はお前と馴れ合う気はない。さっさとエド・フェニックスの元へ急ぐぞ! ......遊介」

 

 

うっすらとなにか最後に言ったような気がするがよく聞こえなかった。まあなんか変なこと言ってたんだろうな。今はとにかく前に進むことだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




廉次郎とともにエド・フェニックスのいる集団へと追いついた遊介。
だが、そこにはまたチーム5D'sの魔の手が襲い掛かる!

次回、遊戯王ARC-if「紅蓮の魔の手! 地縛神スカーレッド・ノヴァ!」


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if=13:紅蓮の魔の手! 地縛神スカーレッド・ノヴァ!

廉次郎とともにレースの前方集団へと向かう遊介。
彼らの前に立ちふさがるは、黒き竜を従う王者ジャック・アトラスだった。


俺のフィールドにはジャンク・デストロイヤーと伏せカード2枚。

なんだかんだでこの布陣を守り切れている。

 

円谷もミニリチュアル・グレートシャインの強力な効果で盤面はほとんど変わっていない。

ただ少しだけ疲れているようにも見える。

 

「大丈夫か? 連戦続きで疲れてんじゃないのか?」

 

 

「うるさい。僕の心配をするより自分の心配をしろ! お前もそんなに手札があるならシンクロ召喚するなりなんなりしたらどうだ」

 

 

「俺には俺なりの段取りがあるの!」

 

今の手札なら確かにスタダはだせないことはない。でも、そこからがつながらない。アクセルシンクロにつなげられるのか?

 

 

「レーシングデュエルはデュエルしていなかったとしても召喚はできる。スピードカウンターは消費するがな」

 

 

そうなのか。だからあいつ人と人のいない間にモンスター出してたのか。

 

 

「じゃあ、俺はスピードカウンターを一つ取り除いてスターダストシャオロンを召喚! スターダスト・シャオロンをリリースしてスターダスト・シンクロンを特殊召喚! スターダスト・シンクロンの効果発動! 「スターダスト・ドラゴン」と記された魔法・罠を手札に加える。俺は『光来する奇跡』を手札に加える。そのままそれを発動! 効果処理として俺は救世竜セイヴァー・ドラゴンをデッキトップに置く」

 

 

これで一応、セイヴァースタードラゴンを出す布陣にはできた。後は、相手と戦うことを想定するだけ。

デュエリストが見えたら即シンクロにつなげるしかない。

 

「そんな布陣で大丈夫か?」

 

 

「大丈夫だって。問題な......」

 

 

 

すると前の方から赤いバイクが煙をあげてこちらに向かってくる。あれって、赤馬零児の選んだDホイールじゃないのか?

 

 

「赤馬零児!?」

 

 

「君たちか......。すまない、私としたことが奇襲をうけるとは」

 

 

「何があったんだよ」

 

円谷が不躾に聞くと、彼はうつむきながら

 

「黒いDホイーラー。おそらく、君たちの戦っていたチーム5D'sのジャック・アトラスだ」

 

 

「おそらく? あなたって確か、ジャックを知ってますよね?」

 

 

「ああ。だが、私の持っているデータと違うモンスターを召喚していったため、未確定となった」

 

 

なるほど、赤馬零児のデータにないカード......。オリジナルのレッドデーモンズ・ドラゴンとかか? いや、少し名前が違うだけで未確定になるか?

 

 

「一体なんのカードだったんです?」

 

 

「確か、地縛神......という名のカードだった」

 

 

「地縛神? まさか、スカーレッド・ノヴァじゃ」

 

 

ジャック・アトラスは遊星のクリアマインドと並ぶ「バーニングソウル」を取得した。その礎となったといえるモンスター。彼がダークシグナーとなった今、地縛神をだすならそれしか考えられない。でも、この世界にも地縛神の魔の手が? いや、もっと違うものなのか?

 

 

「キミの方が私より情報源は豊富にありそうだ。このデュエル、キミに預ける。阿久津遊介」

 

 

「わかった。急ごう! 廉次郎」

 

 

「指図するな、わかっている!」

 

 

赤馬零児を背に俺たちはさらに前へ進んでいく。

するとそこには灰に近い銀のDホイールが、大きな円を描いたタイヤを履いたDホイールと戦っているのが見えた。

 

 

「ジャック・アトラスとエド・フェニックスがライディングデュエルを!?」

 

 

「エド・フェニックス、遊介をつれてきた。と言っても、今はそれどころじゃないな」

 

 

 

そこにはエド・フェニックスとジャック・アトラスがお互いのライフをかけて命がけの死闘を繰り広げていた。でもエドのライフだけは風前の灯火......。

 

 

「君たち、やっとボクの前に現れたか。キミから十代のことを聞くのは後だ。まずはこいつをどうにかする! 身を挺して教えてやろう。これが、彼の。ジャック・アトラスの地縛神の力というものだ!」

 

そういうと、エドはデッキからカードをドローした。

 

 

「ボクのターン! 僕は、魔法カード融合を使う! 手札のD-HERO ドグマガイとD-HERO Bloo-Dで融合! 父さんが遺してくれた最後のD! やはりこのカードがボクにとってのマイフェイバリットだ! カモン! DragoonD-END!」

 

 

エドのフィールドにはすでにデストロイフェニックスガイがいる。二体のエースが彼の目の前に並び立ち、地縛神を見つめる。やはりあの紅蓮の炎、スカーレッド・ノヴァに似てる。

 

 

「無駄なあがきを! スカーレッド・ノヴァが攻撃表示でいる限り、相手フィールドに特殊召喚されたモンスターを守備表示にし、効果も発動できない! 地縛神の前にひざまずくがいい!」

 

 

「デストロイフェニックスガイのモンスターエフェクト発動! 自分フィールドのカード1枚と相手カード1枚を破壊する! ボクはDragoonD-ENDと地縛神スカーレッド・ノヴァを破壊する! バトルだ。デストロイフェニックスガイでジャック・アトラスに直接攻撃!」

 

 

 

その瞬間、ジャックは不気味な笑みを浮かべた。なにか手だてがあるというのか?

 

 

「墓地の地縛神スカーレッド・ノヴァの効果発動! このカードの効果以外で破壊され墓地に行ったターンのバトルフェイズに発動する! このカードを墓地から特殊召喚する! 墓地より蘇れ、魂の叫びが! 我が震える魂の鼓動が贄となり、紅蓮の炎となり、今悪魔に宿らん! 復活せよ、地縛神 スカーレッドノヴァ!」

 

 

悪魔の笑いがレーン上に響き渡る。そして炎がジャック・アトラスを包み込む。その炎は彼の胸の中にしまわれる。

 

「そして、忘れるな。スカーレッドノヴァは自身の効果で蘇生したとき、相手に1000ポイントの効果ダメージを与える! 紅蓮の魔人の業火に焼かれて灰になるがいい! アブソリュート・バーニング!」

 

エドのライフは完全にスカーレッド・ノヴァの効果ダメージ圏内! これじゃ、負けるじゃないか!

 

「うわぁあああああああああ!」

 

 

「エド!!」

 

 

「確か、ユースケとか言ったな? ボクが負け戦をすると思っていたのか? ボクは効果ダメージを受けた瞬間! 地獄の扉越し銃を発動させてもらった! お前にも効果ダメージを与える!」

 

 

 

「フィールド魔法『地縛神殿』の効果発動! 自分フィールドに『地縛神』が存在する限り、相手が与える効果ダメージはすべて回復する効果とする! 神の前に小細工は通用しない! 力こそが絶対であり正義なのだ! 敗者は散れ!」

 

「相手にはライフポイントのダメージを小細工といいながら、自分だって使って勝ってるじゃないか」

 

 

「神の怒りに触れた貴様らが悪い。さあ、次はだれが犠牲の舞台に立つ!」

 

 

「くそっ、何もできなかったのか......。阿久津遊介! こうなったらおまえしかいない! お前がこいつを倒すんだ! ボクの敵を取るんだ!」

 

なんで俺ばっかり目を付けられるんだ? 今はただのアカデミア生徒だろ? 何が彼らの心を動かしているんだ? だがそれは廉次郎も同じように思っているらしい。

 

 

「どいつもこいつも僕を無視するな! 僕だってデュエリストだ! 地縛神といえど、モンスターカード。 なにか、弱点はあるはずだ! それを僕が証明してみせる! ジャック・アトラス、あんたにはターンは渡さない! 僕が先にドローする」

 

乱入ペナルティがないだけいいものの、普通こういうのって向こうのターンじゃない? でも結局ドローしちゃってるし......。

 

 

「僕は、手札から永続魔法『ミニチュアル・サンセット』を発動! このカードの発動処理として『ミニチュアル』魔法・罠カード1枚をデッキから選択し裏側表示でセットする。僕がセットするのはミニチュアルパニック! バトルだ! ミニチュアル・サンセットを破壊し、グレートシャインの効果発動! このターンこのカードはプレイヤーにダイレクトアタックできる! さらに、『ミニチュアル・サンセット』の効果発動! このカードがカードの効果で破壊されたとき、自分フィールドのモンスターはそのレベル×100攻撃力アップする! 攻撃力4000で直接攻撃ッ! ギガンティウム光線!」

 

よし、ミニリチュアル・グレートシャインは自身の効果で直接攻撃するときは相手の効果の対象にならない。いかなる効果だったとしても相手に大ダメージを与えられる!

 

「無駄なあがきを! 地縛神殿の効果により地縛神がある限り直接攻撃による戦闘ダメージは発生されない! 神を愚弄するような攻撃は神殿の加護により守られる! 貴様が攻撃できるモンスターはその1体のみのようだな」

 

 

「くっ、ターンエンド......」

 

 

まじかよ......。このターンで地縛神殿と地縛神をどうにかしないといけないのかよ。いやでも、待てよ。効果破壊したらアウトなら普通に戦闘で殴ればいいのか。神殿の効果は基本ダメージ回避だからモンスターは破壊できる。なら、俺のターンであのカードをやれるかもしれない! 

 

 

 

 

 

 

 




ジャック・アトラスと戦うことになった遊介。
彼の希望は「セイヴァースター・ドラゴン」で地縛神を倒すこと。
だが、さらなる脅威が二人を襲う!

次回、遊戯王ARC-if「廉次郎散る」

デュエルスタンバイ!


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if=14:廉次郎散る

廉次郎と遊介でジャックを追い込むという変則デュエル。
彼らはジャック・アトラスという決闘者に風穴を開けることができるのか?


次は俺のターンなのか、ジャックのターンなのか。変則デュエルはまじでわからん。

 

「臆しているならオレからのターンになるぞ!」

 

 

「うっせえな! 俺はこういう意味不明な変則デュエルやったことねえんだよ! 俺のターンでいいんだな?」

 

そういうと、ジャックは黙り始めた。そのあと、不敵な笑みを浮かべてこちらを向いた。

 

「ならば、次のターンあのトンネルを先に抜けたものが先に制するというのはどうだ? 地縛神は無敵のカード。こちらのターンだろうが貴様のターンだろうが、どうでもいい。レースでも圧倒的力の差というものを見せつけてやろう!」

 

そういうと、なんの同意を得ずにジャックはDホイールと共に走り出した。

 

「まじかよ! 逃がすか!」

 

 

「遊介! スリップストリームで僕も追いかけていく! さっさと行け!」

 

 

俺が先頭かよ。俺はハンドルを握り、スピードを上げるためにハンドルを内側に回した。

スピードがどんどんと上がっていく。トンネルに先に入ったのはジャックだった。そこはどうでもいい。問題は、どう追い抜くか。後方部が見えた。すると、ジャックはバイクを少し外にやった後、俺のDホイールの前輪にアタックしてきた。

俺は少しよろけながらも食らいつく。

 

「まだまだぁあああ!」

 

 

「レースにおいてもこのオレを置いて他に並ぶものなし! 見ろ! もうすぐ出口だ! もっと食らいついてみろ! 少年!」

 

 

「うおおおおお!」

 

 

じりじりと自分のバイクを前へと進める。ギリギリまで粘り続けるも最終的に鼻の先の差でジャックがこのターンを取った。

 

 

「くそっ! 取られた!」

 

 

「まあ、いい。切り替えて相手の挙動を見切ればいいだろ」

 

 

廉次郎はそこまで落ち込んではおらず、いつになく冷静に相手を見極めようとしていた。俺も今は俺が変に動くよりも、相手の動きを見たい。

 

 

「まあ、そうだな」

 

 

「ならば、オレのターン! ドロー! オレはチューナーモンスター『レッド・リゾネーター』を召喚! このモンスターの召喚に成功したとき、手札のレベル4モンスターを特殊召喚する。俺はレッド・スプリンターを特殊召喚する! オレは、レッド・スプリンターにレッド・リゾネーターをチューニング! 紅き竜よ! 炎魔を呼び起こす道を照らし出せ! シンクロ召喚! 地獄の業火と共に舞い降りろ! レッド・ライジング・ドラゴン! レッド・ライジング・ドラゴンのモンスター効果発動! 墓地より、「リゾネーター」チューナーモンスターを特殊召喚する! ライジング・ロード!」

 

 

このパターンはこのままレッドデーモンズドラゴンにシンクロ召喚で繋げていくのか?

 

 

「そして、レッド・ライジング・ドラゴンにレッド・リゾネーターをチューニング! 漆黒の闇を裂き天地を焼き尽くす孤高の絶対なる王者よ!!万物を睥睨へいげいしその猛威を振るえ!!シンクロ召喚!! 現れろ、琰魔竜 レッドデーモン!」

 

「この瞬間! 僕は、罠カード『ミニチュアル・パニック』を発動! 自分フィールドに『ミニチュアル』モンスターが存在し、相手がモンスターを特殊召喚したときに発動できる! すべての魔法・罠を手札に戻す!」

 

おいおい、それって俺の魔法・罠もかよ!

 

「俺の魔法・罠もバウンスしてどうすんだよ!」

 

 

「知るか! とにかく今は相手を妨害して勝てばいいんだよ!」

 

「仲違いか、醜い争いだ。地縛神にとってそれは不毛! 速攻魔法『地縛特攻』を発動! フィールドの『地縛神』モンスターを破壊して発動する。その効果を無効にして破壊する! さらにオレは、レッドデーモンの効果発動! 相手フィールド上の表側攻撃表示のモンスターをすべて破壊する! 貴様らのモンスターを破壊する! パワー・クエイク!」

 

 

俺のフィールドには攻撃表示のジャンク・デストロイヤー。そして表側守備表示の「スターダスト・シンクロン」。廉次郎のフィールドは攻撃表示のミニリチュアル・グレートシャインのみ。廉次郎のフィールドはがら空きになってしまった。

 

 

「いくぞ! バトルだ! レッド・デーモンよ、地縛神を愚弄する者たちに業火の裁きを受けさせろ! 円谷廉次郎! まずは貴様に直接攻撃!! 地獄の剛力! クリムゾン・ヘル・フォース!」

 

 

「永続罠『強制終了』を発動! 自分フィールドのカード1枚を破壊し、バトルを終了する!」

 

 

「無駄なあがきよ! 我が地縛神の布陣に不足はなし! カウンター罠『タイム・ラプス』! 相手が永続罠の効果を発動したときに発動する。その効果を発動する前に戻す! 時間よ戻れ! そしてこの時、タイミングを逃した『強制終了』は魔法・罠カードに裏側表示になって戻るのではなくデッキに戻る! さらに時間は逆戻りだ! 貴様らには何もさせん! バトル続行! 円谷廉次郎に直接攻撃!!」

 

「ぐあああああああああああああ!!」

 

「スカーレッド・ノヴァの効果により、貴様らに1000のダメージを与え復活!」

 

 

円谷:LP1500

 

 

「そして、地縛神スカーレッド・ノヴァで阿久津遊介! 貴様に直接攻撃!! バーニング・フィスト!!」

 

 

「くっ!! 俺の強制終了が......」

 

 

 

遊介:1000

 

 

ここでなにか逆転のカードを引かない限り、俺たちに勝利はない。

 

 

「墓地のミニチュアル・パニックの効果発動! 墓地からこのカードを除外して発動する! 相手フィールド上の特殊召喚されたモンスターを破壊する! お前のモンスターの効果は破壊されたターンのバトルフェイズとかだったな。すでにエンドフェイズに入ったお前は地縛神 スカーレッド・ノヴァの効果を発動できない。 つまり、神はもう蘇らねえ」

 

 

「うまいぞ! 廉次郎!」

 

 

「読んでいた。永続罠、『地縛神の呪縛』を発動。墓地の『地縛神』を効果を無効にして特殊召喚する! 復活せよ、スカーレッド・ノヴァ!」

 

 

また、地縛神復活かよ......。どんだけしぶといんだ! だけど、効果は免れている。次のオレのターンか、廉次郎のターンであいつをどうにかしないと攻撃力3000のモンスター2体が俺たちを襲いに来る!

 

 

 

「オレはカードを2枚伏せてターンエンド! さぁ、貴様のターンだ! 阿久津遊介!」

 

 

強制終了の発動をタイムラプスの効果でデッキまで戻されてしまって今はデッキがシャッフルされてしまった状態。手札にはモンスターはいない。レベル4のモンスターならシンクロ召喚してスターダストをだせる。が、頼みの綱であるセイヴァースターは出てこない。ここは2回のドローにかかっている!

 

「俺のターン!!」

 

まず1枚目! 来た、レベル4 マックス・ウォリアー!

 

 

「マックス・ウォリアーを召喚! そして俺は、マックス・ウォリアーにスターダスト・シンクロンをチューニング! 集いし願いが、新たに輝く星となる! 光差す道となれ! シンクロ召喚! 飛翔せよ、スターダスト・ドラゴン!!」

 

 

「スターダスト・ドラゴン。なぜか懐かしい響きだ」

 

 

「そうだ! 知らないかもしれないけど、あなたとこのカードには因縁があるはずだ!」

 

 

「わけのわからないことを......。 そんな雑魚モンスターで我が布陣に勝てるわけがない!」

 

 

「勝ってみせるさ! どれだけ小さな希望でも掴んでみせる! それが不動遊星のデュエルだ! スターダスト・シャオロンを特殊召喚! このカードはスターダスト・ドラゴンが特殊召喚されたときに墓地から特殊召喚できる! さらに、俺は光来する奇跡の効果で1枚カードをドローする!」

 

 

これが運命のドロー......。二枚目!!

 

 

「ドローーーーー!!! 来た! 魔法カード、二重召喚! このターンもう一度召喚ができる! 俺は手札から救世竜セイヴァー・ドラゴンを召喚! 俺はスターダスト・ドラゴン、スターダスト・シャオロン、セイヴァー・ドラゴンでチューニング! 集いし星の輝きが、新たな奇跡を照らし出す。光さす道となれ!シンクロ召喚!光来せよ、セイヴァー・スター・ドラゴン!!」

 

 

「なに!? セイヴァー・スターだと?」

 

 

「地縛神の効果は効果破壊での蘇生のみ。効果で破壊しても戻ってくるのなら戦闘で破壊してやる! セイヴァースター! 地縛神 スカーレッド・ノヴァに攻撃!」

 

 

「永続罠 デモンズ・チェーン! このカードで貴様のセイヴァースターの効果は無効になり攻撃もできない!」

 

 

ここで全破壊したとしてもオレのフィールドはがら空きになってしまう! まだ待つんだ!

それにしても......ジャックはどんだけ相手に何もさせたくないんだよ! おれはこれでターンエンドするしかないのか......。

 

「ターンエンド!」

 

 

「僕のターン、ドロー! 僕は、魔法カード、死者蘇生を発動! 甦れ! ミニリチュアル・グレートシャイン!!」

 

 

「この期に及んでまた直接攻撃目当てか。フィールド魔法『地縛神殿』がある限り、貴様は直接攻撃できない!」

 

 

「学習してねえのはあんただぜ、キング。僕は、儀式魔法『ミニリチュアール』を発動! ミニリチュアル・グレートシャインを生贄にして、僕はミニリチュアル・グレートシュバルツを儀式召喚! 小さな大地を穢す、漆黒の巨人......。ミニリチュアル・グレートシュバルツ! グレートシュバルツのモンスター効果! 1000ポイントライフを払い、相手表側表示のカードをすべて破壊する! シュバルツ・デストラクション!!」

 

 

「カードがほとんど破壊された⁉︎ これならいける!」

 

 

 

「このとき、グレートシュバルツは破壊したカードにつき、800ポイント攻撃力をアップする! シュバルツが破壊したのは4枚! よって3200ポイントアップ!」

 

 

「攻撃力6000か......。一気に仕留めるというわけだな」

 

ジャックのライフは5000。これで終われる!

 

 

「ミニリチュアル・グレートシュバルツで直接攻撃!! ダーク・ギガンティウム光線!!」

 

 

「ふん、大したデュエリストだ。 だが、貴様にオレのライフを減らすことはできない! トラップカード『魔法の筒』! 貴様自身のモンスターの効果で敗北するがいい!!」

 

 

 

なに? マジック・シリンダーだって!? めっちゃ初期の方のカードじゃん! ていうか、廉次郎はまさか6000のダメージ!?

 

 

「ぐぁあああああああああああああああああああ! くっ......罠カード、『バトンタッチ』このカードはタッグデュエルでのみ使用できる。自分が敗北してパートナーがデュエル続行しているときに発動できる! ......自分のモンスターを そのパートナーのフィールドに召喚する......! 行け、グレートシュバルツ! 遊介をま も......」

 

 

ガシャン! という音とともに廉次郎が後ろへ吹き飛んでいく......。

 

 

「廉次郎ぉぉおおおおおー!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




絶望の淵に立たされた遊介。だが、さらに希望が舞い降りる。
榊遊矢が到着し、彼とともにデュエルすることになる。

次回遊戯王ARC-if「笑顔」

お楽しみはこれからだ!


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if=15:笑顔

廉次郎の敗北に驚く暇もなくデュエルは再開されていく。
彼の思いを受け継ぎ、遊介はジャック・アトラスに挑む!


円谷の残してくれたモンスター「ミニリチュアル・グレートシュバルツ」と、俺の「セイヴァースター・ドラゴン」と共にジャックアトラスに挑む俺だったが、彼はそうやすやすと倒れるような人間ではない。

 

そして、ターンはそのジャック・アトラスへと移っていく。

 

「惜しみなくいくぞ! オレのターン!」

 

ジャック・アトラス:LP5000

 

 

「あんたのフィールドにはモンスターも守るための罠カードもない。一体どうするつもりなんだ?」

 

カードとライフがある限り、デュエルは続く。相手はジャックアトラスだ。心してかからないとな。

 

 

「確かに貴様の言う通り、先ほどの奴のおかげでオレのフィールドはガラ空き。だが、オレは新たなる力を手に入れた! オレはチューナーモンスター、ネクロリゾネーターを召喚!」

 

 

「なに? チューナー1体のみの召喚? なにを企んでいるんだ!?」

 

 

「ネクロリゾネーターはフィールドにこのカードがないときに召喚に成功したとき、真価を発揮する。このカードは、墓地に眠る闇属性、ドラゴン族シンクロモンスター1体を特殊召喚する! 甦れ! 琰魔竜 レッドデーモン!」

 

 

そういうと、墓地にあったはずのレッドデーモンがよみがえってきた。ということは新たにシンクロ召喚するというのか?

 

「まさか、新たなシンクロモンスター?」

 

 

「そうだ! オレは、レベル2ネクロリゾネーターにレベル8琰魔竜レッドデーモンをチューニング! 死者の胎動、冥府の門を叩きし紅き竜よ! その身を焦がして敵を粉砕せよ! シンクロ召喚! レッドデーモンズ・ドラゴン -フレア・デス-!」

 

「なんだ、このモンスターは!?」

 

レッド・デーモンズのようでレッド・デーモンズでない......。どこか骸骨のような見た目をしたモンスターだった。攻撃力は......0? これは、なにかあるな......。

 

「フレア・デスの効果発動! 相手のモンスターすべてを破壊する、そしてこのときのこのカードの攻撃力は破壊したモンスターの合計分となる! パワー・オブ・デスフォース!!」

 

 

「俺は! セイヴァー・スター・ドラゴンの効果発動! 相手の魔法、罠、モンスターの効果を発動したときにこのカードをリリースして発動を無効にし、相手フィールドすべてを破壊する! スターダスト・フォース!」

 

 

これで攻撃力6600で直接攻撃されることは防げた。あとはなんとかしてあのカードを引ければ......。

 

 

「俺は、レッド・デーモンズ・ドラゴン ‐フレア・デス‐のもう一つの効果を発動。相手の効果で破壊されたとき、相手モンスターに『フレア・デス・カウンター』を一つ置く。カウンターの置かれたモンスターは、攻撃できずシンクロ召喚の素材にもできない。そして、お前のエンドフェイズにもう一つ置かれる。次のオレのターンにその二つのカウンターを取り除くと貴様は敗北となる! 後2ターンが、貴様の抗える時間だ。 オレはこれでターンエンド! さぁ貴様のターンだ!」

 

 

攻撃力アップに加えて、特殊勝利条件系かよ。ただ、俺のモンスターは廉次郎のミニリチュアル・グレートシュバルツの1体のみ。シンクロなしでこいつを除去する方法は......。

 

「俺のターン!」

 

阿久津遊介:LP1000

 

 

「来た! このカードが!! 俺は魔法カード『ミラクルシンクロフュージョン』を発動! 俺はフィールドのミニリチュアル・グレートシュバルツと墓地に眠るセイヴァー・スター・ドラゴンを除外して融合!! 竜の力を纏う波動の戦士! 波動竜騎士ドラゴエクィテス!」

 

 

「融合、だと!? シンクロに頼っていたお前が?」

 

 

「そうだぜ、残念だったな。そして俺は、ドラゴエクィテスのモンスター効果発動! 墓地のシンクロモンスター1体を除外してその名前と効果を得る! 俺は『紫眼の聖装竜』を選択! そして、パープルアイズとなったドラゴエクィテスの効果! デッキから装備魔法『巨大化』をこのモンスターに装備する!」

 

「なに? 巨大化だと!?」

 

俺もこんなカードがここで役に立つとは思っていなかった。ジャックのフィールドはガラ空き。ライフ差は相手の方が上だ。そして巨大化の効果でドラコエクィテスの攻撃力は倍となる。ドラコエクィテスのヴィジョンが大きくなっていく。俺は臆することなく、ジャックに攻撃する。

 

『紫眼の波動聖装竜騎士ドラコエクィテス!? ああもう、効果のせいで名前がめちゃくちゃだよ! いいや、モンスターで直接攻撃!! これで、終わりだ!」

 

ジャックは特に何もすることはなく、ただフッと笑みを浮かべてダメージを受けた。

 

ジャック・アトラス:LP0

 

「見事だった。敵として不足なし。このジャック・アトラスを打ち倒したこと、誇りにするがいい!」

 

「ありがとう。あんたは地縛神にとらわれたとしても強かったよ......」

 

 

ジャックのDホイールが後ろに下がっていく。それと同時に別のバイクが後ろから這い上がっていく。

あれは、二色のバイク? 遊矢か?

 

「遊介、ジャックに勝ったのか?」

 

 

「おう、やってやったぜ。 ダークシグナーのくせにいい笑顔しやがるぜ」

 

 

「そっか、キミもジャックを笑顔にしたんだ。 じゃあ、今度こそ俺と最高のデュエルをしよう!」

 

 

そういうと、遊矢は両手をバッと広げた。彼の笑顔もまた最高に輝いていた。

ジャックが後ろに下がるのを見計らったかのようなタイミングの良さも驚きだが、やっぱりアニメのイメージとなんか違う気がする。何が引っかかっているんだ? 俺は......。

 

 

「わかった」

 

 

「でも、まずは俺からのプレゼント! 俺は速攻魔法『スマイル・ユニバース』を発動! EXデッキにいったペンデュラムモンスターを特殊召喚! 俺は、EXデッキから雄々しくも美しく輝く二色の眼! オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンを特殊召喚! この効果で召喚された、オッドアイズの効果は無効化されるけど、相手はその数値分回復します!」

 

遊介:LP3500

 

 

「さんきゅー。 でも、いいのか? 相手のライフを回復させちゃって」

 

 

「だって、デュエルは楽しむもんだろ? それに、相手と分かり合うためにはまず話し合う時間を作らないと!」

 

 

「そういうところ、やっぱ変わってるわ」

 

 

だけど、これだけデュエルが連戦しているとデッキがみるみる減っていく。墓地や除外されたモンスターは負けてリセットするまで戻ってこない。これがレーシングデュエルの神髄だと思う。いかにして手札・デッキ消費を抑えて戦うか......。それが今回の課題なのだろうか。

遊矢はそんなことお構いなしにデュエルをやってきたのか、俺よりも残りデッキ枚数が少ない。彼は一体どうするつもりなんだ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




デュエルボットによって邪魔されてしまった二人のデュエルが再開する。
そして、その先に待つものとは......。


次回、遊戯王ARC-if「揺れはじめる心」


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if=16:揺れ始める心

ジャックとのデュエルが終わるも、レースは終わらない。
ゴールを目指して、遊介たちは進む。


ジャックに続き、今度は遊矢が相手か......。俺のデッキはあと6枚くらいか。

相手は、3枚......。 どれだけ展開したとしても、相手は5ターン以内に敗北する。

それまで耐久出来るか?

 

 

「先攻後攻は、俺の方がライフ少し少ないからいいよね」

 

遊矢がこちらを見る。

 

 

「それはいいけど......。大丈夫か?」

 

彼のフィールドのモンスターはスマイルユニバースで召喚されたオッドアイズ・ペンデュラムドラゴンのみ。ペンデュラムカードは残っているものの逆転はできるのか?

 

 

「大丈夫! 俺の華麗なショーでこんな状況ひっくり返してやるさ! 俺のターン、ドロー!!」

 

 

遊矢:LP3000

 

「俺は、まず手札からEMドクロバット・ジョーカーを召喚! このカードが召喚したとき、デッキから『EM』『魔術師』『オッドアイズ』モンスターを手札に加える!」

 

 

「デッキに数が限られているというのにさらに手札補充だって? 正気なのか?」

 

 

「俺だって怖いよ。デッキがもう少ない中手札を加えることなんて。それと同じくらいに、今知らない場所で自分のデュエルをできているか不安なんだ。それでも、俺はこのカードに賭ける! 罠カード『現世と冥界の逆転』!」

 

 

なんだって? あれは、デッキと墓地のカードを入れ替える罠カード!

 

 

「まさか、俺たちのデッキと墓地を?」

 

 

遊矢:LP2000

 

 

「ああ! 1000ポイントライフを失うことになるけど、これで俺たちはデッキ切れで負けたり、勝ったりなんていう興ざめなことはならない。 この世界で、俺はデュエルでみんなを笑顔にしたい! 俺は、セッティング済みの刻剣の魔術師とEM希代の決闘者でペンデュラム召喚! EXデッキより舞い戻れ! EMオッドアイズ・ライトフェニックス! 手札より、EMシルバークロウ! そして、次元の狭間に潜みし二色の眼を持つ竜! オッドアイズ・ペンデュラムグラフドラゴン!」

 

 

「中々、面白いことをしてくれるな。さすが、エンタメデュエリストって感じだ。柚子ちゃんもきっと元の次元で見守ってくれているはずだ。だから、不安にならなくていい! 俺と熱いデュエルしようぜ!」

 

 

輝く笑顔で返してくれると思っていたがその言葉は予想外のものだった。

 

 

「ん? ユズ? ああ、零児が言ってた子かな? ごめん、ここにきてから記憶がぐちゃぐちゃで......。 でも、待っている仲間がいるって心強いなって思うよ」

 

 

 

「え? 記憶がない? でも、ジャックは知ってたろ。彼を笑顔にしたデュエルも忘れてんのか?」

 

 

「ジャックの存在はここで知ったんだ。彼はこの世界の元デュエルキングだったらしいんだけど、なぜか行方不明になって、それでもう一度現れた時にはダークシグナーになっててデュエルを利用してみんなを困らせていた。俺は、それでも分かり合える。彼とのエンタメデュエルで誤解を解きたかっただけだよ。それを君がやってのけた。それだけだよ」

 

 

 

「それだけって......」

 

 

 

思っていた以上に彼の記憶は抜け落ちているようだ。彼の記憶は戻らないのか?戻すとしても、どうやって?

 

 

「おしゃべりはここまで! 俺はこれでターンエンド。 さぁ、遊介! 君のエンタメを見せてくれ!」

 

 

デッキ切れはなくなったけど、ここからはまたドローと今の手札に掛かっている。

遊星の記憶がこれまで通りになったことを考えると、遊矢にもそれができる可能性がある。やってみるしかない!

 

 

「俺のターン! ドロー! 俺は永続魔法シンクロ・チェイスを発動! そして、ジャンク・シンクロンを召喚! 召喚に成功したので、俺は墓地にいったジャンク・コンバーターを特殊召喚! ジャンク・シンクロンとジャンク・コンバーターでシンクロ召喚! 来い! ジャンク・ウォリアー!」

 

 

「オッドアイズ・ペンデュラムグラフ・ドラゴンの効果でEXデッキから特殊召喚する度に300のダメージを与えるの分かってるのか?」

 

 

遊介:LP3200

 

 

「そんなダメージ、大したことじゃない。 俺はさらに! シンクロチェイスとジャンクコンバーターの効果で、ジャンク・シンクロン、そしてジャンク・コンバーターを特殊召喚! さらに俺はジャンク・シンクロン、ジャンク・ウォリアーでシンクロ召喚! 飛翔せよ、スターダストドラゴン!」

 

遊介:LP2900

 

 

「すごい、まるで動じない......。なんて気迫だ」

 

気の抜けたような言葉に少し俺はいら立ちを覚えた。

 

 

「それよりなんでだ。 さっきのターン、遊矢のフィールドにはレベル4のモンスターが2体並んでいた。それでダークリベリオン・エクシーズ・ドラゴンを出せばよかったじゃないか」

 

 

「それは、遊介にもこのデュエルを楽しんでほしくて」

 

 

「楽しませることと、手を抜くことは違うだろ! 俺は全力で遊矢、お前に勝つ! 手抜きはなしだ! だからお前も全力でこい! そうじゃないと何も楽しくないだろ! 俺は、さらにシンクロ・チェイスの効果を使用する! もう一度墓地から甦れ! ジャンク・シンクロン! 俺は、ジャンク・シンクロンにジャンク・コンバーターをチューニング! 集いし紅き絆が、希望の未来へと導く! 光差す道を進め! シンクロチューナー! アクセル・シンクロン! アクセル・シンクロンの効果発動! デッキからチューナーを墓地に送り、そのレベル分このモンスターのレベルを上げるもしくは下げる! シンクロ・ギアチェンジ! 俺はデッキからジャンク・シンクロンを選択し、そのレベル分下げる! アクセル・シンクロンのレベルは2! クリアマインド! レベル8スターダスト・ドラゴンにレベル2となったアクセル・シンクロンをチューニング!  アァァァァクセルシンクロォォーーーーーー! 生来せよ! シューティング・スター・ドラゴン!」

 

 

攻撃力3300のシューティングスターが盤面に並ぶ。意外にも、ドラゴエクィテスとこのカードが並ぶ景色は珍しい気がする。たしか、クリアマインドの境地にたどり着けず迷っていた彼が編み出した苦肉の策がドラゴエクィテスだった気がするし......。

 

 

 

遊介:LP2300

 

 

「一気に攻撃力3000以上のモンスターを2体も並べるなんてすごいよ、遊介! もっとだ、もっと俺にお前のデュエルを見せてくれ!」

 

 

少し彼の目の色が変わったような気がするが、気のせいだろうか。このまま攻撃していいものだろうか?

いや、ここで本気でいかなければさっきの説教が俺に返ってくる!

 

 

「俺はここで墓地にいった魔法カード『Sp-Clear MinD's』を除外して発動する! スピードカウンターすべてを使用して発動する! 自分のデッキから5枚までチューナーを選択し、選んだカードを任意の順番で上に置く! 俺は5枚のチューナーをデッキトップに固定する。そして、シューティング・スター・ドラゴンの効果! デッキを5枚めくり、デッキに戻す。当然俺がめくったカードはすべてチューナーよってシューティング・スタードラゴンは5回攻撃できる!!」

 

 

「な、なんだって!? だめだ、遊介! そんな力任せはデュエルじゃない!」

 

 

「力で相手をねじ伏せる。それも遊戯王の黄金パターンだ。それに、お前が本気でこいっていったんだろ。俺は! シューティング・スターで遊矢、お前のフィールドに並ぶすべてのモンスターに攻撃する! スターダスト・ミラージュ! 5連打ァッ!」

 

 

 

「俺は、EM希代の決闘者のペンデュラム効果! このカードを手札に戻して魔法カードを除外して発動する! このバトルフェイズではモンスターは破壊されず、ダメージは半分になる! アクション・イリュージョン!」

 

遊矢:LP1250

 

 

まずは、EMシルバークロウに攻撃して750ポイント相手ライフにダメージを与えた。そしてEMドクロバット・ジョーカーに攻撃しようとしたときだった。

 

 

「EMオッドアイズ・ライトフェニックスのモンスター効果! このカードをリリースして自分フィールド上の『EM』モンスターの攻撃力を1000あげる! EMドクロバット・ジョーカーの攻撃力は2800!」

 

 

 

「だが、こちらの方が攻撃力は上ぇ!」

 

「ぐっ!!」

 

 

遊矢:LP1000

 

 

「まだだ! 俺のライフは残っている!」

 

だが、相手のライフは風前の灯火だ。このまま押し切るしかない。

 

 

「さらに、俺はオッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンに攻撃!」

 

 

「俺は、罠カード『リアクション・フォース』を発動! オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンが攻撃対象になったとき発動する! このバトルフェイズ中、オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンの攻撃力を元々の数値の倍になる!」

 

 

な、なに!? そんな罠まで仕掛けていたのか!? 

 

 

「だが、オッドアイズ・ペンデュラムグラフ・ドラゴンがガラ空きだぜ?」

 

 

「リアクション・フォース発動中は、相手がバトルするとき、俺のフィールドのオッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンしか戦闘の対象に選べない。それでも戦いたいなら相手になってやる!」

 

 

「......ターンエンド」

 

 

「遊介! どうしてこんなデュエルをしたんだ!? いつものお前らしくないぞ」

 

 

「いつものって、旧知の中じゃないだろ? 俺たち」

 

 

「それでも、分かる。お前がこんなデュエル望んでやっているわけない。 楽しそうにデュエルをしていたお前が!」

 

 

「デュエルは勝ち負けを決めるゲームだ。勝った人間も負けた人間も笑顔になれるもの正しいし、勝ち負けを優先して相手にゲームをさせないのも正しい戦法だ。デュエルに間違いなんてない」

 

 

「間違ってる! 相手になにもさせないなんて、そんなのデュエルだとは認めない! 俺はこのデュエルで......。うっ、頭が......」

 

そういうと、彼は頭を抑えてハンドルに突っ伏した。

一体彼の身に何が起きているんだ?

 

 




遊矢は、自分を見失い始める。
そして、急に人格が変わったようにデュエルスタイルも変わっていく。

次回、遊戯王ARC-if「覇王の再臨」




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if=17:覇王の再臨

遊矢とのデュエルの最中、彼は唐突に気を失った。
そして彼の怒りの化身が胎動を始める......


遊矢から反応がない......。これは本当に気味の悪いことだ。アニメだと、ここからまずい展開が繰り広げられてしまう。

 

「貴様は、()()を怒りへと導いた。ならばその怒りで、お前をねじ伏せる! オレの、ターーーーーン!」

 

 

 

ユーヤ?:LP1000

 

 

「なにをするつもりだ! 遊矢!」

 

 

「オレのフィールドには同じレベルのモンスターが2体並んでいる。オレは! EMドクロバットジョーカーとEMシルバークロウでオーバーレイ! 2体の闇属性Pモンスターでオーバレイネットワークを構築! エクシーズ召喚! 漆黒の闇に住まう反逆の牙よ、(オレ)に屈し、(オレ)に従え! 出でよランク4! 覇王眷竜 ダーク・リベリオン! 見たかったんだろ? オレのエクシーズモンスターを! 本気の、怒りを!」

 

 

あのカードは、ズァークの従えていた四天の龍の一体!?

まさか、本当に彼の中でズァークがよみがえったとでも言うのか?

 

 

「怒り......。どうしてそこまでして力任せのデュエルを憎むんだ?」

 

 

「怒りは自分を強くする。大きな力を得ること、それがデュエルなんだろう? 怒りを力に変えることは間違っていないはずだ! さぁ、バトルだ!」

 

 

「それこそ、間違っているってことがどうしてわからないんだ! 怒りにとらわれるな! 遊矢!」

 

 

「オレの名は、ユート! 怒りの化身、ユートだ! オレは覇王眷竜ダーク・リベリオンでシューティング・スタードラゴンを攻撃! この瞬間! ダークリベリオンのオーバーレイユニット一つを取り除き、相手モンスターの攻撃力を0にして、その元々の数値分をこのモンスターに加える! モンスターたちの怒りがお前を潰す! 反撃のアブソリュート・オブディエンス!」

 

 

「シューティング・スターの効果! 自信を除外して 覇王眷竜 ダークリベリオンの攻撃を無効にする!」

 

 

「まだだ! まだオレのバトルフェイズは終了していないぞ! ドラゴエクィテスの装備しているカード、巨大化はプレイヤーのライフポイントによって攻撃力が変化する。今、お前の方がライフは上。つまり、ドラゴエクィテスの攻撃力は元々の半分となる! そして、オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンでドラゴエクィテスに攻撃! 螺旋のストライクバースト!」

 

 

 

「俺はトラップカード、『ガードブロック』を発動する! この時、自分のダメージは0になる!そして、1枚ドロー!」

 

遊介:LP2300

次の直接攻撃で俺は負けてしまう! だが、手札にあるこのカードさえ使えば!

 

 

「だが、ドラゴエクィテスは破壊される! ドラゴエクィテス、爆殺! お前のフィールドはガラ空き、これでとどめだ! オッドアイズ・ペンデュラムグラフ・ドラゴンで直接攻撃! 螺旋のディメンションバースト!」

 

 

 

「手札より、速攻のかかしを墓地に送り発動! 攻撃を無効にし、バトルフェイズを終了する! ふう、ガードブロックを伏せていて正解だった......。どうした、ターンエンドの宣言をしろよ」

 

 

「くっ......。ターンエンド。命拾いしたな! だが、次はない!」

 

 

「エンドフェイズに、シューティングスターはフィールドに戻る! 再び生来せよ、シューティング・スター・ドラゴン!! いや、次はないのはお前の方だぜ? なぜなら」

 

 

先に見えるはゴールであるデュエルアカデミア正門。長い戦いもこれで終わり、このターンさえ潜り抜ければ俺の勝ちだ!

 

 

「そんな逃げるようなデュエルが許されると思っているのか!」

 

 

「授業だからいいに決まってるだろ! いい加減目を覚ませ! 俺がゴールする前に、お前に引導を渡してやる! 俺のターン!!」

 

 

俺が引いたカードはスピードスペル。このデュエルがDホイールによるライディングデュエル由来なことをすっかり忘れるくらいにはこのカードの役立つところがなかったな......。

 

 

「『Sp-ディメンション・スピリット』を発動する。自分フィールド上にシンクロモンスターのみがいる時このカードはスピードカウンターを消費せずに発動することができる。だが、エンドフェイズ時に対象となったモンスターはゲームから除外される。除外されている自分のモンスター1体の攻撃力を選択したモンスターの攻撃力に加える! 俺は除外されている紫眼の聖装竜の攻撃力2500をシューティングスターの攻撃力に加える! さらに、俺は『Sp-シンクロ・スピリッツ』を発動する! スピードスペルが発動したとき、このカードは墓地からも発動できる。このカードを墓地から除外して発動する。自分フィールド上のモンスターはバトルフェイズ時、攻撃力は2倍になる!」

 

 

よって、俺のモンスターの攻撃力はバトルフェイズ時に......えーっと、いくつになるんだ? ええいままよ!

 

 

「バトルだ! 俺は、シューティング・スター・ドラゴンでオッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンに攻撃!! これが俺の! 思いだ! 目を覚ませぇ! 遊矢!」

 

 

「攻撃力、11600!? フッ......」

 

 

呆れ笑いと共に彼は、攻撃を受け入れた。そして、彼のライフは0となった......。

 

『ライフが0になりました。ホイールを強制停止します』

 

 

「えっ!? どうなってるんだ? 俺が負けてる?」

 

 

「俺が、勝たせてもらったぜ......。後で、いろいろ話そう」

 

 

「よくわからないけど、なんだか清々しい気分だ......。俺の負けだよ、遊介」

 

 

彼は空を見上げてDホイールのハンドルから手を離した。

 

 

「よっしゃあ! ゴールだ!」

 

 

そこには、友崎が先にDホイールから降りて待っていた。

 

「カッツン! お前、ゴール速すぎだろ!?」

 

 

「余裕だね......。お前は逆にボロボロじゃねえか」

 

 

「まぁ、いろいろあってさ」

 

 

話していると、次々とデュエリストが帰ってきた。すると廉次郎がやってきた。

 

 

「廉次郎! お前、ライフ0になっただろ!?」

 

 

「ライフは半分になるが、再戦することができた。それでなんとか持ちこたえたが、この結果だ......。まだまだ僕の開発したデッキは改善の余地がありそうだ」

 

 

 

そして、赤馬零児、そして遊矢とゴールを踏みしめていった。

ゴールする生徒たちに明日香をはじめとして遊星、そしてブルーノが労いの声をかけにやってくる。

 

 

「遊介! いいデュエルだったな」

 

 

「遊星! ありがとう......。あなたに褒められるなんて嬉しいよ」

 

 

「廉次郎くん、キミのデュエル見せてもらったよ。とても豪快な効果を持つテーマだね。でもまだまだ可能性はありそうだ。次なる境地を期待してるよ」

 

 

「当たり前だ。そのために僕は開発課で研究を重ねているんだ。そういえば、なんでジャック・アトラスなんかがこの授業に乱入してきたんだ? それにエド・フェニックスも......」

 

 

「エドが授業に乱入してきたの?」

 

明日香が廉次郎の言葉に疑問を投げかける。まあ、あたりまえだよなぁ。

 

 

「そうだ。ボクは僕自身の目で確かめたかった。遊城十代の愚かな姿を! だが、ここにはいなかったみたいだけどね。やあ、明日香くん、久しぶり」

 

 

久しぶり......か。原作からどれだけ時間がたっているのかは知らないけど、その言い草と明日香が先生になっている年齢っていうのを考えると相当は立っているだろうな。十代、彼は今何をしているんだろう

 

 

「俺がどうかしたんだ?」

 

 

「だから、十代を名乗るデュエリストがこのシティで暴れていると聞いてボクは正義の鉄槌を彼に与えるために新たなDとともに! って、十代! いつの間に?」

 

 

「よ、エド! それに明日香! ちょっと、ふけ......イテェッ! いや、なんでもないです」

 

そこにいたのはお茶らけた雰囲気と大人な雰囲気を混ぜ合わせた不思議なオーラを纏う赤い服を着た青年が立っていた。旅人の恰好よろしく、片手でぶら下げられる荷物しかもっていないのも彼らしい。

 

 

「十代! あなた、一体どこほっつき歩いてたの! 卒業以来、音信不通になって! 私たちがどれだけ心配したと......」

 

明日香の目から一筋の涙が頬を撫でていく。そっか......。そうだよな。

 

「悪い......。でも、今はゆっくり話してる暇はないんだ。この世界に危機がせまってる。協力してくれるよな? ユースケ!」

 

 

そういうと、俺の方を向いた。その目はオッドアイ、黄色と青の覇王の目つきだった。彼の前ではなんでもお見通しということらしい。にしても、世界の危機って俺がこの世界に来たことと関係があるのか?

 

 

 

 

 




しれっと現れた元祖覇王ともいえる「遊城十代」。
彼はこの世界の危機を遊介たちに伝えていく。
遊介も、遊矢に彼の行く末を話し始める。

次回、遊戯王ARC-if「心の闇」


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if=18:心の闇

世界の危機が迫っている。
そういった十代によって集められた決闘者たち。
彼らと共に今後の作戦会議を始める。


 世界に危機が迫っている。その言葉は少し心に重く響いた。この世界がいびつに混じりあっている原因が、世界の危機につながっているのだとしたら世界をもとに戻していかないとな。

 

「とにかく、この話は放課後にしませんか? まだ授業ありますし」

 

 

「おう、いいぜ。じゃあ、放課後までのんびりしてるぜ」

 

「私も、その話聞かせてもらってもいいかしら? 十代」

 

「明日香も? まあ、いいけど」

 

俺は、その後赤馬と遊矢にその話をした。赤馬は前に自分が別の次元から来た人間だということを知っているし、この世界の危機ことを話せば力になってくれるかもしれない。遊矢はさっきのことも含めて話をしないといけない......。

 

こうして、放課後、明日香先生も仲間に入って赤馬零児、遊矢、遊星、エド、俺、そして十代さんが教室の一角で会議を始めた。

 

「で、世界に危機が迫ってるってどういうことです? 十代さん」

 

俺が首をかしげると、彼は机の上に座り始めた。

 

「俺が世界を旅していたとき、一瞬宇宙の波動が歪んだのを感じたんだ。それでいろんな次元の世界を見に行ったがなにもなかった」

 

 

「なにもないなら大丈夫ってことでしょ」

 

「いや、そうじゃなくて! この宇宙にはたくさんの世界があるだろ? ほら、マルチ......なんだっけ?」

 

 

すると、赤馬がメガネを直して答えた。

 

「マルチバース。この世には今の次元や常識とは異なる世界が存在するといういわゆる多次元宇宙論というもののことでしょうか」

 

 

「そうそう! それそれ! それが音もなく消えちまったんだ。そして、この世界が残った。だから俺がここに来たってわけ」

 

 

世界が、一つに? まるで超融合みたいだな。たしかにこの世界には、交わることのない遊戯王シリーズのキャラクターたちがいる。そして、俺や友崎も......。

 

 

「ちょっと待て! いきなりやってきてそんな話が信じられるわけがないだろ! それに十代、キミにはシティを暴れたという容疑がかかっている。それはどう説明するんだ」

 

 

それに関しては俺がデュエルしてるからなんとなくわかる。彼は十代と名乗る偽物だ。

 

 

「それは多分、別人だと思います。マルチバースの観点からするともしかしたらこの世界での十代かもしれませんが、俺は偽物だと思います」

 

 

「なぜそう言い切れる」

 

 

「だって、十代さんにはA・HEROなんてカード持ってませんよね?」

 

 

「なにそれ? 新たなヒーローモンスターってこと!? すげぇ! 久しぶりにワクワクするじゃねえか!」

 

 

十代さんは目を輝かせて俺にそれがどんなモンスターかしつこく聞いてきたが、この感じ昔の十代さんに戻ってる感じがしてうれしいな。

 

 

「ここはやはり、新たな槍を作る必要があるな。己の世界を取り戻すための槍の勇士(ランサーズ)。ここにいるメンバーは確定するとして、後は......」

 

 

 

「ちょっと待て、零児! やるかどうかはみんなの意見で決めることだろ?」

 

 

遊矢が零児を引き留めると、いままで話に入らなかった遊星がボソッと言い始めた。

 

 

「別に俺は構わない。世界の危機ならより一層、俺たちの絆でその危機を乗り越えるべきだと思う」

 

 

「だよな! 遊星! 俺もそのつもりでユースケも誘ったんだしな!」

 

そういうと十代さんは遊星の肩に腕を回し、俺の方を見た。

 

 

「俺も、一番初めに赤馬に協力しますって言っちゃったし。十代さんに言われたらやるしかないかなぁって」

 

 

「生徒が巻き込まれるっていうなら、教師となった私も参加させてもらうわ! それでいいわよね。十代、それに零児くん」

 

 

「強力なデュエリストであれば歓迎します、天上院明日香先生。遊矢、お前はどうする」

 

 

「俺は......。やるよ。遊介がやるって言ってるのに俺だけが逃げるだなんて嫌だ!」

 

 

「あたりまえだ。この話を聞いて逃げる奴は決闘者じゃない。ボクも参加させてもらう! だが、世界の危機にあの偽十代が関わっていたとしたらそれはボクの標的(ターゲット)だ! 邪魔だけはするなよ」

 

 

後はもう少し、ランサーズの人員を増やしたいな。もしかしたらズァークが復活するかもしれないし......。遊矢、絶対お前を二度と悪魔にはさせないからな。そうなったとしてもきっと俺たちが助けて見せる。彼を見つめていると、赤馬がメガネをまたカチャっと直して俺たちをまとめた。

 

「敵が何者なのか、どれほどの規模なのかは不明だ。だからこそ、私たちは慎重に決闘者選びをしなければならない。だが、この世界には我が社はなく、海馬コーポレーションという会社がこの街とアカデミアを管轄しているらしい。私はそこに話をつけてみる。では、失礼」

 

 

「零児くんの話が終わるまでは私たちは待機って感じかしら?」

 

 

明日香は腕を組む。いや、それだけじゃだめだ。

 

 

「俺たちは俺たちでできることをしましょう。俺たちだけじゃなくて、もう少し人員を......」

 

 

「そんなにいるかしら。強力なデュエリスト......。まぁ当たってみるわ」

 

 

「ボクも少しプロデュエリストに当たってみるよ」

 

他の人たちはちらほらと教室を出ていった。そういえば、遊矢に話をしなきゃ......。

 

 

「ところでさお前、何者? さっきからどす黒いものがダダ洩れなんだけど」

 

十代はまた、オッドアイ状態になって遊矢の腕をつかみ出ていこうとしているのを止めた。やっぱり彼にはわかるんだ......。

 

 

『気を付けるんだ、十代。彼はキミと同じ波動を感じる......』

 

突如として、女性の声が聞こえてきた。これはきっと、ユベルだろう。ユベルは精霊だから俺には見えないけど、声はなぜか聞こえてくる。俺だけ?

 

 

「え、なんなんですか? 急に」

 

 

「えーと遊矢、彼は遊城十代。説明が難しいんだけど、簡単に言うと、彼にはデュエルモンスターの精霊が宿っててその力で色々わかっちゃう感じなんだ」

 

 

 

「デュエルモンスターの精霊? そんなものある......。う、うわぁ!? モンスター? でも、ソリッドヴィジョンなんてどこにもないし......」

 

 

「お前、ユベルが見えてんのかよ! 驚かせるつもりはなかったんだが、すまねえな。ユベルも別に悪気があるわけじゃねえんだけど、ちょっとこいつ過保護でさ」

 

過保護とかいう次元じゃないでしょ......。

 

 

「は、はあ」

 

 

「それで、この遊矢ってのは何者なの? ほんとに味方にして大丈夫なの?」

 

 

これは記憶のない遊矢より、俺が話した方がいいかもしれない。

 

 

「それは、俺から話します。遊矢も、心して聞いてほしい。君は、かつて世界を滅ぼしてしまった決闘者の生まれ変わりなんだ。デュエルモンスターの怒りの声に飲まれ、神の力と同等の力を手に入れてしまった悲しき人。それがズァーク、キミなんだ」

 

あれ、こんな話だっけ? なんか違うような気もするけど......。

 

 

「俺が、世界を......!? そんな、嘘だ。何かの冗談だろ? だって俺はみんなを笑顔にするためにデュエルを」

 

「彼もまた、同じだった。でも、人の刺激欲求とモンスターの怒りによって彼は狂ってしまった。だから遊矢、怒りや悲しみに捕らわれないで君自身の心の闇に打ち勝ってほしいんだ」

 

でも、またなんで彼の中にズァークがいるんだ? いや、でもユートが彼の中にいるから最終回のタイミングとは別のタイミングで来たのか?

 

 

「俺自身の、心の闇?」

 

 

「誰にだって間違いくらいあるさ。俺も間違いばかり起こして友達を、仲間を傷つけてしまった。そして愛した人さえも......。でも、それを乗り越えて受け入れて前に進まなくちゃいけない......。 俺はデュエルを通して、アカデミアを通してそれを学んだんだ」

 

 

たしかに十代の壮絶な人生の歩みから考えると説得力が違う。

 

 

「もしかして、レーシングデュエルのとき記憶を失ったときって俺が怒りに飲み込まれていたから?」

 

 

「まぁ、多分。君のもう一人の人格として現れているのかわからないけど、ユートが君に代わって俺とデュエルしていたんだ」

 

 

「ユート......。なんだか、聞きなじみのある名前だ」

 

 

そらそうだろうよ。彼がどれだけ、キミの中にいたのか......。とにかく、遊矢とは話ができた。きっと、気を付けてはくれるだろう。

 

 

「ま、お前の力がどれだけなのか知らねえけどさ、困ったときは力になるぜ。遊矢」

 

「......。ありがとう、ございます」

 

 

そういったと同時に十代は、遊矢を解放した。遊矢は少し肩を落としながら廊下を歩いて行った。

 

 

「あいつ、大丈夫かぁ?」

 

 

「......」

 

正直、わからない。でも、俺たちがいる限り悪夢は繰り返させたくはない。

十代さんは俺の肩を叩き、教室を出た。考えすぎても仕方ない。俺も廊下にでるとそこには廉次郎が窓にもたれかかっていた。

 




誰の心にも闇はある。遊介たちはその闇を打ち払うことができるのだろうか。
心の闇を払うため、己の憧れを超えるため、遊介は新たなデッキを創ることを決意する。そして、彼の前にまた一人心の闇に取りつかれた人間が現れる......。

次回、遊戯王ARC-if「開発! 新たな力!」


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if=19:開発! 新たな力!

廉次郎の言葉で自分のオリジナルデッキを作成することに決めた遊介。

だが、彼の前にまた変な決闘者が現れる!


 ランサーズ結成会議を終えた後、教室を出るとそこには廉次郎が立っていた。

 

「ちょっと面貸せ」

 

 

いつもの上から目線の言葉は少し、申し訳なさそうに聞こえた。

彼の言うことを聞かないと何言われるかわからないし、俺は何も言わずついていくことにした。

 

 

「どこ行くんだよ」

 

 

「開発研究室。開発課がデュエルモンスターズのカードを開発する授業に使う場所だ」

 

 

開発研究室......。そういえば、この世界のデュエルアカデミアにはデュエリストを輩出する普通科と、デッキやカードを開発、研究する開発課があるんだったな。一体そこに行ってなにをするんだ? まさか、またこいつとデュエルを?

 

 

少し足取りを重くしていると、すぐに開発研究室についた。

 

 

「ここにあるカードアーカイブ、一般的に販売されているカードデータが見れるコンピュータを探してもお前の紫眼は見つからなかった」

 

 

「だから、俺をこの施設で無断でカードを作った不届きものだって思ったんだよな」

 

「ああ、だがそれは勘違いだった。さらに俺はお前のカードの謎を調べるために開発課用のアーカイブリストを見た。そこには、ここで作ったカードのリストが乗っている。もちろん、僕のもある」

 

 

そういって、中に入りコンピュータにアクセスしてみせると彼の創った「ミニチュアル」の他に見知らぬカード群が並んでいた。これが、開発課独自のアーカイブ......。

 

 

「ここで、お前のカードを調べたところここでも検索には引っかからなかった。これが示されることは一つ。お前は開発課に一度も来ていなかったということだ」

 

 

「ほら! 俺の言ったとおりじゃん! でも、ますますわかんなくなったな。俺のこのカードのルーツ......」

 

 

「そうだな......。だから、その......悪かった。執拗にお前を追いかけて犯人呼ばわりして」

 

「いいよ、もう。でも、話はそれだけ? 多分違うよな?」

 

 

彼が詫びを入れるために俺をわざわざここに呼び出したとは思えない。なにか、ある。

 

 

「お前らの話を廊下で聞いていた。お前たちがこの世界のために戦うってことも......。僕もそこに加入したいなんていうおこがましいことは言わない。だが、一言だけ言う。お前は今のままでは足手まといになる」

 

は? 割とガツガツした性格してそうだから「僕も混ぜろ!」とか言ってきそうなのに謙虚だな。でも、一番聞き捨てならないのは俺が他のランサーズのメンバーのお荷物になることってことだ。

 

 

「ふざけんなよ。これまでだって俺はいろんな奴に勝ってきただろ!」

 

 

「お前のそのデッキ。はっきり言って急ごしらえだ。今まであったものにオリジナルを入れただけのごちゃまぜデッキだ。いずれ、何もできずに敗北することも考えられる。もっと紫眼の聖装竜とかのカードを召喚出せるデッキに変えるべきだ」

 

 

「これは俺の魂のデッキなんだよ! それをやすやすと手放せなんて正気か? お前も弱いから変えろって言われたらいやだろ!」

 

 

「当たり前だ! だが、僕の創作意欲がお前に新たな力を与えてやれってうるさいんだよ! お前は、あいつらが完璧な盤面で輝くところを見たくはないのか!?」

 

 

俺は自分のデッキを見た。カードの一番上には紫眼の聖装竜が燦然と輝いて見えた。まるで、もっと俺を使ってくれと言わんばかりに......。

 

たしかに、今のカードプールでは出せるタイミングは限られてくる。紫眼の聖装竜は光属性のチューナーが必要だ。それに聖装刃竜はシンクロモンスターを素材にしないと真価を発揮してくれない。今のままでは正直彼らを最善の能力を活かしきれていない。その指摘はごもっともだ。

 

やっぱり俺は強くなりたい。憧れの遊星を超えたい。だとしたら遊星の真似事じゃなくて、俺自身のデッキで......。

 

 

「ああ、分かった......。こいつらには悪いけど、真似事はもうこれで終わりにするよ。ここからは俺自身の魂でデュエルするよ」

 

 

「そうか。じゃあ、準備しておく。明日、開発の授業があるからそこで考えよう。僕はアイデアを出しておく。お前も家で考えておけ! いいな」

 

 

「当たり前よ! じゃあ、また明日」

 

 

 

そういって俺たちは研究室を後にした。そして、長い一日は終わり家路についた。

母の作る夕飯を元気に平らげ、その日は眠りについた。というより、目をつむりながら自分のデッキについて考える。テーマかカテゴリで考えるなら『聖装』とか『シン』がつくようなカード群にしたい。考えをまとめつつ意識が遠のく。

 

次に起きた時はもう朝だった。友崎からのインターホンが今日も鳴り響く。俺は朝食を軽くすませて学校に行く。

 

「じゃあ母さん、学校行ってくる!」

 

「はい、行ってらっしゃい」

 

 

母親に挨拶をすませて友崎とアカデミアに向かう。

 

 

「今日は開発課の授業行くんだけど、遊介も行くか?」

 

 

「え? ああ、俺もそのつもりだったから......。にしても偶然ってあるんだな」

 

 

「俺たち親友だからな! 被って当然よ」

 

 

そうして俺たちはアカデミアに着いて開発課の授業の教室である開発研究室に向かった。昨日見た場所、でも夕方見た景色とは少し違うものだった。

 

 

 

「よう遊介。案は持ってきたか?」

 

廉次郎が手を挙げて俺を呼び留めた。案ていうほどじゃないけど、大体のことはまとめたノートを取り出して

 

 

「うーん、なんとなく? やっぱりカテゴリ構築がいいかなと思って『聖装』をカテゴリテーマとしていきたいんだけど」

 

 

「お前たち最近仲いいな。俺も混ぜてよ。俺もデッキ作りたいし」

 

 

そういうと、少し廉次郎が眉をひそめてカッツンを見てめんどくさそうに

 

 

「まあ、勝手にすればいいさ。君も興味があるなら僕が教えるよ」

 

 

そう言って彼はある機械の前に立った。これが、カードを生成する装置みたいなもんか?

 

 

「デュエルはただ、制圧することだけがすべてじゃない。バランスが大事なんだ。特殊勝利、ダメージ、デッキ破壊......。勝利条件は多岐にわたる。ここではすべてが叶う。だが同時にゲームをするための制約もある。お前たちは何を創る?」

 

 

 

「すべてが叶う......。よし、やるか! 俺は、『聖装の魔導士』を創作! このカードは召喚・特殊召喚に成功したとき、デッキから『聖装』と名の付くレベル3以下のチューナーモンスターを特殊召喚できる! このカードのレベルは4! 攻撃力1600! 防御力1200!」

 

 

「シンクロの召喚コストパフォーマンスをよくしたテキストだな。まあまあだな」

 

 

 

「じゃあ俺は新たなカードを想像しちゃおうかな? 俺はフィールド魔法『アルカトラズの理想郷』を創作......。発動の効果処理としてデッキから、『アルカデア』もしくは『アルカトラズ』と名の付く通常モンスターを手札に加える。さらに1の効果としてフィールド上のアルカトラズモンスターの守備力は300ポイントアップする」

 

 

「アルカデアとアルカトラズ? その名前、知っているぞ。この研究室で勝手に作られたカード群だろ」

 

 

「なんだって? そうなのか、廉次郎」

 

 

廉次郎とカッツンの両方の顔を交互に見るもカッツンは涼しい顔をしているし、廉次郎は眉をひそめている。

 

 

「どうだ? 廉次郎くん。彼のデッキおもしろそうだろ?」

 

後ろから男が話しかけてきた。一体誰だ?

 

 

「宇陀......」

 

 

「先輩にはさん付けしろって学ばなかったのかな? 君は。まぁ、いい。彼のカードはこの開発課2年の宇陀宙(うだこすも)が許可した。彼の気持ちを聞いた時、私は心を動かされたよ」

 

 

この人、なんかうざいな。廉次郎にあからさまな対抗心を見せている。その顔を廉次郎はあざ笑う。

 

 

「相変わらず、人を使うのがうまいことだ。そうかよ、あんたがうちのルールを破ったんなら僕はあんたを潰さなくちゃならない」

 

 

「そう怒るなよ。ちょうどいい友崎、キミがあの雑魚と相手してやれ」

 

 

「分かりました。だけど、彼に勝ったら次は遊介と戦わせてください」

 

 

「好きにしな」

 

 

突如として始まった友崎と廉次郎のデュエル。彼らは自分のデュエルディスクとDゲイザーをセットした。




突如として始まった友崎と廉次郎のバトル。

廉次郎は自分の誇りでもあるミニチュアルで挑むが、ことごとく手札誘発で止められていく。彼に勝利の算段はあるのか!?

次回、遊戯王ARC-if「開発課の誇りと意地をかけた闘い!」


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if=20:開発課の誇りと意地をかけた決闘!

突如として始まった友崎と廉次郎のオリジナルカードでのデュエル。
遊介はただ、見守るしかなかった。


「「デュエル!」」

 

 

廉次郎と友崎のデュエルが始まった。

 

廉次郎:LP4000

 

友崎:LP4000

 

 

 

「お前、開発課だと落ちこぼれらしいな。宇田先輩から聞いたぞ」

 

 

友崎が嫌な言葉を廉次郎に投げかけてくる。いつもはあんな感じじゃないのに......。

確かに言葉が荒いことはあるけど、ここまでひどいことなんてあったか?

 

 

 

「だったらどうした。その落ちこぼれに負けるような事故手札なのか? なら、僕が先攻だ! 僕のターン!僕は、ミニチュアルハイパーエージェントを召喚! そして、自分フィールドに『ミニチュアル』モンスターが存在するとき、ミニチュアルジェットを特殊召喚!」

 

 

 

「この瞬間! 俺は手札の増殖するGを墓地に送り効果発動! お前が特殊召喚するたび俺はデッキからカードをドローする。そして! 手札から墓地に送って発動する効果を発動したとき、手札から『アルカデアの魔導師』を特殊召喚する!」

 

 

いきなりレベル7のモンスターを相手ターンに特殊召喚? しかも、守備力2500!? 一体、彼のデッキはどういうテーマなんだ?

 

 

「僕のターンを邪魔しやがって......。僕はミニチュアルジェットの効果でデッキから『ミニチュアル』魔法・罠を加える!」

 

 

 

「そんなことさせると思ってんの? 俺は、手札から灰流うららを捨ててその効果を無効にする! お前、手札誘発も持ってないのかよ。遊戯王、なめてる?」

 

 

「くっ......。考えはしていたがやっぱいらつくな、その戦法」

 

 

今のいままで考えてなかったけど、この世界ってカードテキストOCGのテキストだし出現カードもほとんどOCG化されてるものだ。灰流うららや増Gはあってもおかしくはない。でも、こんなことってあるのか?

 

 

 

「友崎! いくらなんでもリアリストすぎだろ!」

 

 

「これがデュエルだろ、遊介ぇ! お前は黙ってろ! さらに俺は、手札からアンデット族が墓地に送られたことで『アルカトラズ・アンデット』を特殊召喚!」

 

 

また、特殊召喚? 今度はレベル5のアンデット族? それに、また守備表示かよ。

 

 

 

「僕は、レベル1ミニチュアルハイパーエージェントとレベル1ミニチュアルジェットでオーバーレイ!

2体のモンスターでオーバレイネットワークを構築! エクシーズ召喚! 人に作られし幼獣よ、その小さな体で敵を翻弄せよ! ランク1! ミニチュアル幼獣 ベーゼJr.!」

 

 

「特殊召喚したことにより、俺は1枚ドロー。ありがとうな、落ちこぼれ」

 

 

廉次郎の場にはランク1のモンスターが1体のみ。それにそのモンスターの攻撃力は1000。それでどうやって戦うんだ?

 

 

「カードを2枚伏せて、ターンエンド! お前の番だぞ」

 

廉次郎は手札を1枚残してターンエンドか。だが、相手の手札は次のドローフェイズ含めて3枚。初手で考えたら少ないが......どうでる。

 

 

「俺のターン、ドロー。 俺は、アルカトラズ・アンデットのモンスター効果発動! 自分の魔法・罠ゾーンにカードが存在しないときに1度、墓地からアンデット族1体を特殊召喚できる。俺は、灰流うららを選択! 俺は、レベル5アルカトラズ・アンデットにレベル3灰流うららをチューニング! 絶望という名の檻から今、魔が解き放たれる! 脱獄せよ! レベル8 アルカトラズ・デストピア・デーモン!」

 

 

「攻撃力3000のモンスターか。中々やるな。だが、妙だな。どうして魔導師は守備表示なんだ?」

 

 

「別に、こいつで殴る必要ないし。俺は手札を1枚捨ててアルカトラズ・デストピア・デーモンの効果発動! 相手の手札1枚をデッキの1番下にする! ただ、お前の手札はその1枚だけだがな! そして、俺は手札から、永続魔法アルカデアの城門を発動! このカードの発動処理として『アルカデア』カード1枚を手札に加える。俺は、アルカデアの甲虫番兵を手札に加える。そしてこいつを召喚! こいつが召喚に成功したとき、自分の墓地の昆虫族1体を特殊召喚できる! 俺は、増殖するGを特殊召喚!」

 

 

「なに? これで、レベル2のモンスターが並んだ!?」

 

思わず、叫んでしまった。だが、ここまで来たらもうわかる。あいつは、エクシーズ召喚をする気だ!

 

 

「俺は、2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築! エクシーズ召喚! ランク2 聖光の宣告者! 俺はこいつのX素材を使って効果発動。 灰流うららを手札に戻す!」

 

 

またこいつ、手札誘発を......。どれだけ相手にゲームをさせたくないんだ!

 

 

「面倒なモンスター手札に戻しやがって......。さあ、どこからでもかかってこい!」

 

 

「一瞬で終わらせてやる! バトルだ! 俺は、アルカトラズ・デストピア・デーモンでミニチュアル幼獣 ベーゼJrに攻撃! この瞬間! アルカデアの魔導師の効果! 自分フィールド上のモンスター1体にこのカードの守備力分の数値を攻撃力に加算する! さらにこいつがいる限り、俺の【アルカデア】【アルカトラズ】モンスターがバトルするときのダメージ計算は倍になる!」

 

 

まずい! これが通ってしまったら廉次郎のライフは一気に0になって負ける!

 

 

「そう簡単に負けてたまるか! 僕は、ミニチュアル幼獣 ベーゼアンJrの効果を発動する! オーバーレイユニットをすべてを使い、ダメージを0に! ベーゼアン・バリア!」

 

 

すんでのところでダメージは回避したが、廉次郎のフィールドはガラ空き......。

 

 

「だが、モンスターは破壊されたな。これで俺はターン......」

 

 

「まだだ! 僕は、ミニチュアル幼獣 ベーゼアンJrが破壊された瞬間、速攻魔法『HRUM ‐ミニチュアル・ビッグ・フォースー』を発動! 戦闘または、効果によって破壊されたランク1の【ミニチュアル】エクシーズモンスター1体を特殊召喚し、それを素材としてランク10以上の【ミニチュアル】エクシーズモンスターをエクシーズ召喚する! 僕はランク1のミニチュアル幼獣 ベーゼアンJrでオーバレイネットワークを再構築! ハイパーランクアップ、エクシーズチェンジ! 出でよ、ランク10! ミニチュアル雷撃獣 ザンダー・ジェノス!」

 

攻撃力3000のモンスターってことは、アルカトラズデーモンと並んだ?

 

 

「なに? ランクアップマジックだと? だが、このターンに召喚しても意味がないのでは?」

 

 

「甘いな。こいつがエクシーズ召喚に成功したとき、相手ライフに2000ポイントのダメージを与える! サンダー・ブレス!」

 

友崎:LP2000

 

いきなりライフを半分に! 廉次郎まだあんなモンスター隠してたのか。あのデッキすごいポテンシャルを持ったデッキだな。

 

 

「いいぞ! 廉次郎! がんばれー」

 

 

「お前に応援されたくねえ」

 

相変わらず手厳しいこったい。とにかく、いまはあいつの目を覚まさせないと......。

 

 

「俺はこれでターンエンド。エンドフェイズ時、『アルカデアの城門』の効果発動。デッキから一枚アルカデアと名の付くモンスターを墓地に送る。俺は、アルカデアの奇術師を墓地へ送る。ターンエンド」

 

カッツンの手札は2枚。また手札誘発からの特殊召喚コンボか?

 

 

「僕の手札はゼロ。フィールドにはエクシーズモンスターのみ。頼みの綱も手札誘発で潰される可能性が高い。だが、僕はここで引くカードで決める! 僕のターン、ドロー! 来たぞ! 僕の切り札!」

 

廉次郎:LP4000

 

 

さすがは廉次郎、引きが強い!

 

 

「なに!? 切り札だと? 自分の力で素引きしたというのか?」

 

 

「そうだ。お前の誘発効果も通り抜ける僕自身のデッキと僕の信じる力が! 僕はまず、ザンダー・ジェノスのオーバレイユニットを使い効果発動! デッキから『ミニリチュアル』儀式モンスターを手札に加える!」

 

 

「往生際の悪い! 灰流うららの効果でその効果を無効にする! どうだ! これで、お前のエースカード、ミニリチュアルグレートシャインは召喚できない! これでこのターン、俺が負けることはない!」

 

 

 

「どうだかな? もしこれが、うららを暴発させるためのブラフだとしたら?」

 

 

「儀式以外でどうやってお前のエースを呼ぶんだよ!」

 

 

「エースカードは1枚だけじゃない。僕の創ったカード、すべてがエースだ! 魔法カード、『ミニチュアル・ライズ・フュージョン』発動! このカードは自分フィールド上に「ミニチュアル」モンスターがいる場合、融合素材はフィールドだけでなく、デッキまたはエクストラデッキの「ミニチュアル」モンスターを素材にできる。 僕は、デッキの『ミニリチュアル・グレートシャイン』と『ミニリチュアル・グレートシュバルツ』で融合! 闇より出でし光の化身! 大地を震わせ出でよ! ミニチュアル・グレートフォース!」

 

 

「攻撃力、4000? 宣告者に攻撃して勝つ気でいるんだろうが、『アルカデアの城門』がある限り、お前はアルカデアモンスターとしかバトルできない」

 

 

 

「4000だと? よく見てみろ。このカードがフィールドにある限り、攻撃力はフィールド・墓地の『ミニチュアル』モンスターの数×500アップする! 俺の墓地には5枚。フィールドには1枚のモンスターがいる。よって攻撃力は7000! これで、アルカトラズの魔導師の効果を使ったとしても僕のフォートレスの方が攻撃力は上だ! バトル、グレートフォースでアルカトラズ・デストピア・デーモンに攻撃!」

 

 

「無駄だ! 墓地に眠る『アルカデアの守護者』の効果! このカードを除外してバトルフェイズを終了する!」

 

一進一退のデュエル。いつのまにか握っていた拳にじんわりと汗がにじみ出てくる。

 

 

 

 

 

 

 




手札誘発の応酬に苦戦するも、新たなモンスター『ミニチュアル・グレートフォートレス』と『雷撃獣 ザンダー・ジェノス』の二体で挑む廉次郎。

だが、新たに待ち受けていたのはまだ誰も知らない友崎のエースカードだった。
果たして、その名前とは......。

次回、遊戯王ARC-if「アーク・トライブ・マジシャン」

デュエルスタンバイ!


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if=21:アーク・トライブ・マジシャン

廉次郎と友崎のバトルは白熱していく。
その中で見えていく、友崎のデュエルスタイルと精神。

彼と友人で会った遊介は何を思うか......。


「くそっ......。ターンエンドだ。しぶといやつめ」

 

 

まだ数ターンしか経っていないのに激しい攻防が続いている。どちらも譲らず、カッツンにターンが回った。

 

 

「俺は正直、キミには用はないんだよ廉次郎。俺は遊介に用があるの。遊介にはこのデュエルの間にカードを作っておいてほしいわけ。だから時間稼ぎになってほしいんだよ。だからもっと頑張ってほしいなぁ」

 

俺のカード? もしかして、紫眼の聖装竜のこと知ってるのか?

 

 

「しゃべってねえでドローしろ」

 

 

「これ以上の茶番はいらない! 俺のターン、ドロー! ふん、魔法カード『テラフォーミング』発動! 俺は、『アルカトラズの理想郷』を手札に加える! 俺はそのままアルカトラズの理想郷を発動! 理想郷は人それぞれだ。俺は効果処理として、通常モンスター『アルカトラズの看守』を手札に加える。この時、アルカトラズの理想郷のもう一つの効果発動! 自分フィールド上にアルカトラズモンスターがいるとき、この発動を特殊召喚にすることにもできる。よって、俺はアルカトラズの看守を守備表示で特殊召喚! そして、俺は手札から『アーク・トライブ・マジシャン』をアドバンス召喚! 俺の最強の僕にして、理想郷へと運ぶ方舟の使者! レベル7、アーク・トライブ・マジシャン!」

 

 

なに? レベル7のモンスターを1体のリリースのみでアドバンス召喚だって?

 

 

「は? レベル7モンスターなら2体のモンスターのリリースが必要だろうが。そっちの方が遊戯王なめてんじゃねえの?」

 

 

廉次郎も俺と同じように思っていたらしい。そういうと、カッツンは廉次郎を指さした。

 

 

「甘いな! このカードはフィールドの通常モンスター1体をリリースしてアドバンス召喚することもできる。アーク・トライブ・マジシャンの効果発動! お前のモンスターすべてを除外する! 薙ぎ払え、ディープスウェイ!」

 

 

廉次郎のモンスターがすべてゲームから除外されていく。彼はなす術もなくフィールドはガラ空きになってしまう。

 

 

「まだ、僕にはわからない。どうしてそこまでしてオリジナルカードにこだわる。開発課なら新たなカードを作ることはゲーム性の発展を願って作っている。ゲームをして勝つカードを作るためじゃない。多くの決闘者に新たな世界をみせるためにカードを作っているはずでは」

 

 

「心底バカだな、あんたは。ゲームは勝つためにするんだよ。公式だって勝つためのオリカみたいなドラグーンオブレッドアイズとかいうカードを刷ってんだし......。俺は力が欲しい。だからこのカードを選んだ。カードも強いデュエリストである俺を選んだ! お前たちではない! 理想郷を創るのは俺だ! バトル! アーク・トライブ・マジシャンで円谷廉次郎、貴様に直接攻撃(ダイレクトアタック)! アーク・グレイブ・フォース!」

 

 

 

魔法の杖のようなものを手に持った魔法使いのようなモンスターが杖を振りかざすと何千もの光の槍が現れ、それが円谷に降り注いでいく。

 

 

「まだだ! リバースカード! カウンターゲート!」

 

 

「アーク・トライブ・マジシャンはそもそも相手のカードの効果を受けない! 2500のダメージをくらえ!」

 

 

廉次郎:LP1500

 

 

「まだまだこれからだ! アルカトラズ・デストピア・デーモンの攻撃が残っているぞ! これで終わりだぁ!」

 

 

「手札より、ミニチュアルハイパーエージェントの効果発動! バトルダメージを受けたときにこのカードを手札から捨ててバトルフェイズを無効にする! イマジナ・リフレクト! ハイパーエージェントの効果によりフィールドにエージェントトークンを2体出す」

 

 

「君もしぶといよ? ターンエンド」

 

 

「僕のターン!」

 

 

フィールドにはトークンが2体。そして、魔法罠はなし。俺から見れば圧倒的に廉次郎は不利な状況だ。どうやってこの状況をひっくり返すんだ?

 

 

「僕は、手札からミニチュアル・ブレイブウォリアーを召喚! このカードは召喚に成功したとき、このカードのレベルは10になる! そして1ターンに1度、自分フィールドのモンスターを2体まで選択して発動する! そのレベルをこのカードのレベルと同じにする! 僕は2体のトークンをレベル10にする!」

 

 

「3体のモンスターが並んだということは、やるのか? エクシーズ召喚を」

 

「僕はミニチュアル・ブレイブウォーリアーとエージェントトークン2体でオーバーレイ! 3体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築! エクシーズ召喚! 出でよ、光を借り受け、悪を討て! ランク10 ミニチュアル・グレートVX! エクシーズ素材となったミニチュアル・ブレイブウォーリアーの効果発動! このカードがエクシーズ素材としたエクシーズモンスターはカードの効果の対象にならず、バトルでは破壊されない!」

 

 

「なに!? ま、まあいいだろう」

 

 

「グレートVXの効果発動! 1ターンに1度、オーバーレイユニットを2つ使用し、自分の墓地の『ミニチュアル』カードを3枚までデッキに戻して発動する! 相手フィールド上のカードをその戻した枚数分デッキに戻す! 僕が戻したのは3枚。よってお前のフィールドのモンスター3体をデッキに戻す!」

 

 

「......これだけ俺が展開したのにまだ巻き返すのか。化け物だろ」

 

 

「決闘者としての実力差が露呈したな。どれだけ策を弄しようとも結局はその策に溺れるのみ。戦いは日々進化し、変化する。その中でデッキを作り出すのが僕たちだ! グレートVXの攻撃力はちょうど2000! バトルだ! ミニチュアル・グレートVXで直接攻撃! ギガンティウムスラッシャー!」

 

「うわああああああ」

 

 

よし、これで勝負ありだ!

 

友崎:LP00000000?

 

「......? なに、デュエルが終わってない? 何かのバグか? それとも......」

 

 

「墓地に眠る、アルカデアの奇術師の効果発動......。このカードが墓地に存在し、自分のライフが0になった瞬間発動する。ライフを100回復してこのカードを特殊召喚する。これで俺はまだ負けていない!」

 

友崎:LP00100

 

 

「往生際が悪いぞ! カッツン!」

 

 

「デュエルは何が起きるかわからない! それがお前の口ぐせだったよなぁ? 遊介ぇ! お前の好きな場面だろ? 応援しろよ」

 

 

「くっ、ちょっと面白いって思っちゃった俺がいるから下手に言えねえ......」

 

 

心の折れそうな俺の心境に対して廉次郎は全く顔色を変えなかった。

 

 

「やりたかったことは、それだけか? 僕は、カードを1枚伏せてターンエンド」

 

 

「こいつ、まだ勝つ気でいるのか? いいだろう。このターンで終わらせてやる! 俺のターンドロー! フン、どうやら勝利の女神は俺に微笑んだようだ......」

 

カッツンは俺たちに手札を見せてきた。それは先ほど廉次郎のカードの効果でデッキに戻したアーク・トライブ・マジシャンだった。

 

 

「だが、お前のフィールドのモンスターはアルカデアの奇術師。どうみても効果モンスターだろ!」

 

 

「アルカデアの奇術師でのアドバンス召喚をするとき、このカードを2体分のリリースとして扱うことができる! アドバンス召喚! 最強の魔術師よ、いま再び目覚めん! アーク・トライブ・マジシャン!」

 

 

「こいつ、またモンスター効果を?」

 

 

「薙ぎ払え......。ディープスウェイ!」

 

 

またも廉次郎のフィールドはガラ空きとなってしまった。伏せカードがあったとしても、アークトライブマジシャンはバトルフェイズでは効果を受けない。

 

 

「くそっ......」

 

 

「バトル! アーク・トライブ・マジシャンの攻撃! これで終わりだ! アーク・グレイブ・フォース!」

 

 

廉次郎:LP0

 

 

デュエルが終了した音が流れ、ソリッドヴィジョンが移していたモンスターたちは消えていった。

 

 

「ははははは! どうだい、どうだい! 廉次郎くぅん! 宇陀流完全制圧テーマデッキ! さらにライフが0になってもバトルが終了しない効果モンスターの実装! キミのバカなデッキより最高なんだよォ! 私は、キミを超えた、はるかァ! 上のォ! デッキビルダーだァ!」

 

 

「......。なら、俺とのデュエルで証明してみせろよ」

 

 

デュエリストにも色々な考えを持つ人間がいる。友崎の勝ちたいという心も理解できる。だが、こいつの宇陀宙という人間の心は理解できない。相手のデュエリストを尊敬せず、デッキにも敬意を表しない。はっきり言って嫌いだ。

 

 

「ハァ!? 私が、キミとデュエルゥ? 意味がわからん」

 

 

「どうした、怖気づいたのか?」

 

 

「チッ......。まあ、Z闘会に選ばれた戦士ですから? 負けるわけないのですけどねぇ!」

 

 

「あ? なんだよその塾みたいな名前の組織」

 

 

「君はどうしても死にたいみたいですね......。阿久津遊介ぇ!」

 

 

宇陀は自分の腕にデュエルディスクをセットしてカッツンを押しのけて現れた。俺のデッキもすでに出来上がっている。今が、『聖装』の力を見せる時だ!

 

 

 

 

 

 




デュエリストのデッキにもデュエリストにもリスペクトを感じない宇陀宙に刃を向ける遊介。だが、彼のデッキは手ごわいカードばかりだった。


次回、遊戯王ARC-if「儀式ペンデュラム!『天紋』の猛襲!」


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if=22:儀式ペンデュラム!『天紋』の猛襲!

廉次郎の創ったデッキを小馬鹿にする態度が気に食わず、宇陀とデュエルすることになった遊介。彼は、新たなモンスターたちと共にこの世界で戦う。


「デュエルディスク、セット!」

 

宇陀は自分のデュエルディスクを腕に巻き付けるとともに、両目を覆い隠す黒いDゲイザーをかけた。

 

俺も片目だけだが、青色の半透明なDゲイザーをはめ込めてソリッドヴィジョンARシステムを起動した。

 

 

 

「Dゲイザー、セット! デュエルターゲット、ロックオン!」

 

 

「「デュエル!」」

 

掛け声とともに相手のライフポイントが見え始める。両者4000でスタートするスタンダードプレイだ。

久しぶりのスタンディングで、しかも新たなカードを手にした今、俺はどう戦っていけばいいんだ。

 

自分で作ったのに妙に緊張する。

 

 

「ここは、開発課のエリートである私が先攻で、作り上げたデッキでプレイングを見せてやろう。創作とは常にトライ&エラー。これが、その最高叡智! 私は、スケール6の『天紋のペガサス』とスケール2の『天紋のスワン』でペンデュラムスケールをセッティング! これで、3~5のモンスターを同時に召喚可能! だが、まずは下準備だ。『天紋のペガサス』のペンデュラム効果発動! このカード以外の『天紋』カードが魔法・罠ゾーンに表側で存在するとき、デッキから『天紋』儀式モンスターを手札に加える。私は、レベル4、儀式ペンデュラムモンスター『天紋のサザンクロス』を手札に加える!」

 

 

儀式召喚できる、ペンデュラム召喚だと!? それってオッドアイズ・ペンデュラムグラフ・ドラゴンと同じタイプってことかよ!

 

「すげー! なんでもありかよ!」

 

 

 

「褒める箇所はここではない! ここからが『天紋』のポイント! 『天紋』儀式ペンデュラムモンスターは手札・EXデッキの表側表示で存在するとき1体だけ儀式魔法なしで儀式召喚できる! さぁ、舞台は整った! 星が集えば標となりて、暗闇の道を照らさん! ペンデュラム召喚! 現れよ、私のモンスターたちよ! 手札から、レベル4『天紋のアンドロメダ』そして、儀式ペンデュラムモンスター『天紋のサザンクロス』!!」

 

 

「共通点は、星座? 面白そうなカードだなぁ」

 

 

「関心してる場合かよ......」

 

 

廉次郎はあきれているが、俺は単純にこのデュエルが楽しくなってきた。新しいカードを見るとワクワクするようなそんな感覚。新しいデッキを手に入れられて、それを早く試したいというワクワク......。これがデュエル!

 

 

「私はカードを1枚伏せてターンエンド。さあ、キミの番だよ。阿久津遊介くん」

 

 

「俺のターン! ドロー! 俺は、聖装の魔導士を召喚! 召喚に成功したターン、デッキから「聖装」と名の付くチューナーモンスターを特殊召喚する! 現れろ! レベル3チューナーモンスター「聖装の翼竜」! 俺は、聖装の魔術師に聖装の翼竜をチューニング! シンクロ召喚! 聖者の衣纏いし竜よ、その紫の瞳で悪を照らせ! 出でよ、紫眼の聖装竜! チューナーモンスター「聖装の翼竜」の効果発動! このカードが『聖装』シンクロモンスターの素材になったとき、デッキから「聖装」装備魔法を手札に加える。俺は「白聖装」を手札に加える。さらに、俺は紫眼の聖装竜の効果! デッキから装備魔法をこのカードに装備する! 俺は「デーモンの斧」を発動! さらに、手札に加えた装備魔法「白聖装」を発動!」

 

 

「攻撃力を高めても、『天紋のアンドロメダ』がフィールドにあるとき、『天紋』モンスターカードは戦闘では破壊されず、戦闘ダメージを受けない! 鉄壁の布陣だ!」

 

 

「それは、どうだろうな。俺は、パープルアイズの効果発動! 1ターンに1度、自分の装備魔法を任意の枚数破壊して発動できる! 破壊した枚数だけ相手のカードを手札に戻す! 俺の場には2枚の装備魔法がある! よって、天紋のアンドロメダと、天紋のサザンクロスを手札に戻す!」

 

 

「ふざけるな! 私の美しいアルゴリズムを崩しよって......。だが、それさえも想定内! 罠カード発動! 『天紋刷新』! 手札の『天紋』モンスターカードを1枚破壊して発動する。デッキからそのカード以外のモンスターを特殊召喚する! 私は天紋のサザンクロスを破壊し、天紋のケンタウロスを特殊召喚! 天紋のサザンクロスのモンスター効果発動! このカードが破壊されたとき、手札からレベル4以下の『天紋』モンスターを特殊召喚する! 私が持っているのは当然、天紋のアンドロメダ!」

 

 

一度手札に戻したのに、盤面は変わらずか......。攻撃力は2000と1800。きついな。だが、俺にはまだやることが残っている!

 

「『白聖装』の効果発動! このカードがカードの効果で破壊されたとき、相手のカード1枚を破壊する! 俺はペンデュラムゾーンの『天紋のペガサス』を選択!」

 

 

「残念だったな。『天紋のスワン』のペンデュラム効果発動! 1ターンに1度、自分フィールド上の『天紋』カードが戦闘・効果で破壊されるとき、EXデッキの表側表示の『天紋』カードをデッキに戻して発動する! その効果を無効にする!」

 

 

「なに? まじで無敵の布陣ということか! バトルしても、天紋のアンドロメダの効果で戦闘では破壊されないし、ダメージを受けない。いや、だがあの効果は『天紋のアンドロメダ」自身は効果の適応外! バトル! 紫眼の聖装竜で天紋のアンドロメダに攻撃! セイントバースト!」

 

 

宇陀宙:LP3300

 

「ク......。そのままエンドの宣言しようと変わらないものを......」

 

 

「カードを2枚伏せてターンエンド」

 

 

さて、またアンドロメダが召喚されてしまうのか? ペンデュラムって本当に厄介だな。

 

 

 

「私のターン、ドロー! 一気に終わらせてやる! 私は、天紋のペガサスの効果をもう一度使う! 私は天紋のキャンサーを手札に加える! 手札より、マンジュゴッドを召喚! マンジュゴッドの効果により儀式魔法『天紋環撮』を手札に加える。 そして発動! フィールドの天紋のケンタウロスとマンジュゴッドを生贄にささげ、儀式召喚! 黄道に光し十二宮がひとつ! 天紋のキャンサー!」

 

 

レベル8の儀式ペンデュラムモンスターか......。攻撃力は2800と中々。カニのような見た目をしているけど、やっぱかに座をモチーフとしたモンスターなのか? 

 

 

「なるほど、儀式テーマでなおかつペンデュラムでのモンスターの大量展開。中々侮れないな」

 

 

 

「ふふふ、そうであろう! やはり我が頭脳に欠点無し! さらに私は、セッティング済みの天紋のスワンと天紋のペガサスで再度ペンデュラム召喚! EXデッキから現れよ! 天紋のサザンクロス!」

 

 

「EXデッキからのペンデュラム召喚は1ターンに1度のみ。それが俺の命綱になっているとはな」

 

 

俺の独り言は完全に無視して宇陀は俺のモンスターにバトルを仕掛ける。

 

 

「バトルだ! 天紋のキャンサーで紫眼の聖装竜に攻撃! ホロスコープシザー!」

 

 

「罠発動! アームズコール! デッキから装備魔法を1枚手札に加え、そのカードをセットする! 俺は『黒聖装』を発動! これにより、パープルアイズの攻撃力は500ポイントアップ! 攻撃力は3000。なら、こちらの方が上だ!」

 

 

 

「まだだ。天紋のキャンサーの効果発動! このカードが戦闘するダメージステップ時に発動する。こいつの攻撃力は自分フィールドの『天紋』カード×100アップする! 今、このフィールドにはこいつを含めて3枚の天紋カードがある。よって、300ポイント天紋のキャンサーの攻撃力に加算される。つまり、攻撃力は」

 

 

「3100!? パープルアイズを上回った!?」

 

 

遊介:LP3900

 

「ふん。これでお前のエースはいなくなっ......ていないだと?」

 

 

「黒聖装の効果は、このカードが装備されているモンスターが破壊される場合にこのカードをリリースすることで破壊を一度無効にできる。さらに、装備されていたモンスターと同じレベル、またはランクのモンスターをデッキまたは墓地から特殊召喚できる! 現れよ、人に作られし偽りの竜よ! その瞳で悪を一掃せよ! 紫眼(パープルアイズ)偽装竜(カモフラージュドラゴン)!!」

 

 

 

機械仕掛けの翼と生物的な筋肉がむき出しとなった竜が俺のフィールドに現れた。それは紫眼とうり二つのようでまるで違う。そして俺は、これから新たなステージへと向かう!

 

 

 

 




倒しても何度でも蘇る「ペンデュラム召喚」。
その猛襲は続く。
遊介はその猛襲をかいくぐり、新たなモンスターを召喚する。

次回、遊戯王ARC-if「顕現せよ! 深紫眼の聖装龍皇!」


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if=23:顕現せよ! 深紫眼の聖装龍皇(ヴァイオレットアイズ・スコール・プライム・ドラゴン)!

儀式ペンデュラムに面白みを感じるも苦戦していく遊介。
彼は勝利の道を切り開くことができるのか。


相手ターンながら、俺はレベル7のモンスターを並べることができた。

これで俺は次のステージに上がれることができる!

 

「次のターン、オレがもっと面白いものをみせてやる!」

 

 

「中々やるな! なら、その神髄見せてみろ! 阿久津遊介! だが、どうせ勝つのはこの私だろうがな! カードを1枚ふせてターンエンド!」

 

 

「俺のターン、ドロー!!! お前の勝つための姿勢も、デッキのテーマもどっちも否定できない。逆に俺にない精神でうらやましいとも思うよ。その嫌味な性格以外はな! 俺は、手札からレベル3聖装の竜騎士を特殊召喚! このカードは『聖装』シンクロモンスターがいるときに特殊召喚ができる。さらに、手札から、聖装のハイエルフを召喚! 俺は、聖装の竜騎士に聖装のハイエルフをチューニング! シンクロ召喚! 降臨せよ! 聖竜の意思受け継ぎし騎士! 竜装騎士ドラグウィバー!」

 

 

「新たなレベル6シンクロモンスターか。だが、私の天紋のキャンサーの攻撃力には到底及ばない!」

 

 

「だが、それがそうでもないんだなぁ。俺はさらに! フィールドのレベル7紫眼の聖装竜と、紫眼の偽装竜でオーバーレイ! 2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築!」

 

 

「なに? お前、シンクロ使いじゃないのか!?」

 

どうやら宇陀にも俺の使うデッキ構築は大体理解していたのだろうが、これからは今までと違う戦術で挑まなくちゃこの世界で生き残れない気がする。なら、俺も進化しなくちゃ。 これが俺の最高戦術!

 

 

「デュエルは常に進化する! だから、俺もデュエリストとして進化するんだ! エクシーズ召喚! 紫緋紋綾(しひもんりょう)まといし、黒き竜皇よ、深淵の闇より光見出せ! 降誕せよ、ランク7 深紫眼の(ヴァイオレットアイズ・)聖装(スコール)竜皇(プライム・ドラゴン)

 

 

 

「エクシーズモンスターか。攻撃力3000であっても私の天紋のキャンサーは相手に攻撃されたときでも効果が発動する」

 

 

「プライムドラゴンが存在するとき、フィールドの「聖装」モンスターの攻撃力は、フィールド・墓地の『聖装』モンスターの数×200アップできる。今、墓地には4体のモンスター、フィールドには2体いる。つまり今のこのモンスターの攻撃力は4200。さらに、エクシーズ素材となったカモフラージュドラゴンの効果! そのエクシーズモンスターの攻撃力は1500アップする!」

 

 

「攻撃力、5700だと!? これはまずいですね」

 

 

「バトルだ! プライム・ドラゴンで天紋のキャンサーに攻撃! 紫炎のヴァイオレット・ストーム!」

 

 

紫色に揺らめく火球が轟音と共に宇陀のモンスターに当たろうとしたその瞬間、その攻撃は消え去ってしまう。まさか、罠カード!?

 

 

 

「読んでいた! トラップカード 聖なるバリア ‐ミラーフォース‐!! 消え去れ、モンスターども!」

 

 

「プライムドラゴンの効果! オーバーレイユニットを1つ使って、自分フィールドのドラゴン族・シンクロモンスターの戦闘・効果の破壊を無効にする! 魂の守護!」

 

「だが、これで攻撃できるモンスターはいなくなった。お前のフィールドのドラグウィバーの攻撃力は2100。到底、天紋のキャンサーには到達できない」

 

 

「プライムドラゴンが戦闘・効果で破壊されたとき、墓地からシンクロモンスター1体を特殊召喚できる! ただし、そのモンスターの効果は無効化される。 復活しろ! パープルアイズ! そのまま天紋のサザンクロスに攻撃! セイント・バースト!!」

 

 

 

黄金の輝きがらせん状に広がっていき、天紋のサザンクロスめがけて放たれていく。少しでもライフを削らなくちゃ。俺のライフが尽きないうちに。

 

 

宇陀:3300→2600

 

 

「天紋のサザンクロスの効果......。戦闘・効果で破壊されたとき、デッキからこのカード以外の『天紋』儀式モンスターを手札に加える。私が加えるのはァ、天紋のリブラ!」

 

 

 

「ドラグウィバーの効果でエンドフェイズに「聖装」魔法・罠をデッキからセットする。カードを1枚伏せてターンエンド......。さぁ、また見せてくれよ。お前のペンデュラム召喚」

 

 

俺が伏せた永続罠「聖装飾(スコール・デコ)」は自分フィールドのモンスター1体を対象に、破壊耐性をもたせることができる。これで次の相手ターンくらいはしのげる。

 

 

 

「私のターン、ドロー! 手札より、魔法カード「天紋流生」発動! ペンデュラムカードを一枚破壊して発動する。相手の魔法・罠を除外する。私が選択するのは天紋のペガサスとその伏せカードだ。面倒くさそうだからな」

 

 

聖装飾は破壊されたときに墓地の装備魔法をリクルートしてくる効果があったのだが、それもパーになってしまった。最悪だ。

 

 

「くそ、除外されたらなんの意味もねえじゃん! ほんと、意地の悪いデッキだな!」

 

 

 

「そして、俺はスケール9の天紋のスコーピオンをペンデュラムスケールにセッティング! これで条件はそろった! 星が集えば標となりて、暗闇の道を照らさん! ペンデュラム召喚! 手札から黄道十二宮が一つ、天紋のリブラ! そして、EXデッキから甦れ! 天紋のキャンサー!」

 

 

 

「一気に上級儀式モンスターが並んだ!? これが、儀式ペンデュラムの神髄か!」

 

 

 

「まだだ! 天紋のリブラのモンスター効果発動! 1ターンに1度、コイントスを1回行い表なら相手、裏なら私のフィールドのカードをすべて墓地に送らなければならない。さあ、審判の時だ」

 

 

破壊ではなく、「墓地に送る」だと? 破壊されたときの効果は適用されないということじゃないか!!

でも、間違えれば自分が被害を被ってしまうんだぞ? どうしてそんなことを......。

 

 

「自滅でもしたいのか?」

 

 

そういう間にもコインは空中でクルクルと回り続けている。

宇陀はコインを見つめながら

 

 

「そうでもないさ。天紋のスコーピオンのペンデュラム効果は「天紋」モンスターはこのカード以外の効果の対象にならない効果を持つ。つまり、裏が出ても被害はゼロ」

 

そして彼の手元にコインは戻る。その瞬間、手の甲に置き、結果をもう片方の手で伏せる。

開いた瞬間、彼はニヤッと嫌な笑みを浮かべた。

 

 

「だが、どうやら勝利の女神は私に微笑んだようだ。コイントスの結果は表だ!!」

 

 

「なんだと!?」

 

その瞬間、俺のフィールドにあるすべてのモンスターは墓地へと消えていった。これはまずい!

攻撃力2800の二回攻撃が来れば俺は負けてしまう! 万策尽きたか?

 

 

 

「まあ、このとき天紋のリブラは攻撃できないのだがな。私が優しくてよかったですねえ! 天紋のキャンサー! ダイレクトアタック!! ホロスコープシザー!!」

 

 

遊介:3900→700

 

くそ、天紋のキャンサーの効果はこっちのモンスターあるないに関係なく適応されるのかよ!

 

でも、これでどうやって戦えばいいんだ!! だが、あのカードさえ手に入れられれば......。

 

そうだ! この手しか逆転の方法はない! 

 

 

「風前の灯火、だな。もうサレンダーした方が身のためじゃないか? あ、でも私はサレンダーなんて認めないけどね。ははは!」

 

 

 

「誰がサレンダーするかよ! こんなに楽しいデュエル、負けたくねえし降りたくもない! 行くぞ! 俺のターン!!」

 

 

このカードは!? きた! これで勝利の方程式はそろった!

 

 

「墓地の聖装のハイエルフの効果発動! このカードを除外してデッキからレベル1チューナーモンスターを手札に加える。俺が手札に加えるのは、聖装のシン・クリボー! このカードがカードの効果でドローしたとき相手にこのカードを見せて特殊召喚できる! 俺の相棒、聖者の衣纏いて姿現せ! シン・クリボー! 聖装のシン・クリボーの効果! デッキ、フィールド、墓地から「シン・クリボー」を除外して発動する。レベルの合計が8になるようにこのカードとデッキの「聖装」モンスター1体以上を墓地に送り、「聖装」と名の付くドラゴン族・光属性シンクロモンスターをEXデッキから特殊召喚する! 俺はフィールドの聖装のシン・クリボーとデッキのもう1体の紫眼の偽装竜を墓地に送り! シンクロ召喚!!」

 

 

「デッキからのシンクロ召喚だと!? バカな! ありえない!」

 

 

「ありえないことを実現させるのがデュエルモンスターズさ! 神秘の眼輝かせし龍よ! 悪を捌く刃とともに降誕せよ! 神秘眼の聖装刃龍! さらに、俺は魔法カード、死者蘇生を発動! 死の淵から這い上がれ! 深紫眼の聖装竜皇!」

 

 

 

「攻撃力4400のモンスター? だが、さっきの方が攻撃力は高かったなぁ。それに、シークレットアイズとやらの攻撃力も私のモンスターの攻撃力には到底及ばんなぁ」

 

 

「魔法カード『聖装布(スコール・ローブ)』発動! 自分フィールドの「聖装」シンクロモンスター1体ともう一体のモンスターを対象にして発動する。そのシンクロモンスターを装備魔法扱いとして装備する。俺は当然、神秘眼を選択! このとき、プライムドラゴンの攻撃力は装備されたモンスターの攻撃力分アップする。よってプライムドラゴンの攻撃力は7400!」

 

 

「な、なにぃ!? 私が、負ける!?」

 

 

「どうやら状況は理解してくれたようだな。バトル! プライム・ドラゴンで天紋のリブラに攻撃!! 紫炎のヴァイオレットストーム!!」

 

 

宇陀:LP0

 

「うわああああああああああ!!!」

 

 

これで、俺の勝ちか......。 あれ、なんか視界がぼやけて...




戦いに疲れてしまったのか、その場に倒れてしまう遊介。

次に気づいたらそこは保健室だった。
そこで待っていたのは南禅寺ること赤馬零児だった。

次回、遊戯王ARC-if「戦いの後で」


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if=24:戦いの後で

宇陀との決着後、阿久津遊介は倒れた。
彼が次に気が付いた時は保健室のベッドの上だった。


 「知らない天井?」

 

気づくとそこはベッドの上だった。横には、南禅寺るこが心配そうに見つめていた。

俺は確か、宇陀とデュエルして、確か勝ったんだよな?

 

 

「気づいた? 遊介くん、大丈夫? 倒れたところ私たちが運んだんだよ? 覚えてる?」

 

 

そういうと、彼女ともう一人が後ろに立っていた。それは、まぎれもなく赤馬零児だった。

 

「赤馬零児が? どうして」

 

 

「君のデュエルを間近で見ていたのだが、そこにいる南禅寺るこも円谷も病人への処置がなっていなかったため私が運び出した」

 

 

「あ、ありがとう。まさかあなたが助けてくれるなんて」

 

 

でも一番近くにいたはずの廉次郎がいない。どこにいったんだろう。

赤馬は赤いマフラーを撫でながら椅子に座った。

 

 

「病明けで悪いが、君には話さなければならないことがある」

 

 

「話さないといけないこと?」

 

 

そう聞くと、赤馬は南禅寺さんの方を向く。

 

 

「すまないが、二人にしてくれないか? 君にこの話は不要だ」

 

 

「なんでそんなこと言うの! オベリスクブルーのエリートだからといって調子に乗らないでよね!」

 

 

「......円谷、そこにいるのだろう? はやく彼女を連れだしてくれ」

 

 

赤馬がドアの方を向くと、廉次郎がゆらりと姿を現したかと思うとズカズカと保健室に入る。

 

「指図するな......。いくぞ、るこ」

 

「でも」と残ろうとする彼女をよそに、ため息交じりに彼女を連れて行った。やけに強引だな。

 

それを見届けた後、赤馬は話始めた。

 

 

「例の世界が融合しかかっているという件だが」

 

 

「ああ、なんか進捗あった?」

 

 

「海馬コーポレーションと交渉し、デュエリストカーニバルを開催することにした。そこで敵組織と戦うため屈強なデュエリストを探す」

 

 

なるほど、赤馬のやりそうなことだ。確かにそれが手っ取り早いだろう。

 

 

「それが、ランサーズ? でも、敵も乱入してくるかもよ?」

 

きっと、これも織り込み済みだろうが聞いておいた方がよさそうだな。

そういう大会こそ、敵がやってくる可能性が高い。

 

 

「敵の正体がわからない限り、参入も考えられるがその時は利用するまでだ。それもランサーズ計画の目的でもある。おそらく、別次元の私もそう考えていたのだろう」

 

「やっぱり、ランサーズの話は自身の記憶じゃなくて誰かから教えてもらったんだね。でも誰から?」

 

「オレだよ」

 

突然、窓の外から黄色のライダースーツを着た男が体を乗り出してきた。

そして彼はサングラスを外し、保健室に乗り込んできた。

 

 

 

「あなたは......」

 

そういうと、おもむろにライダースーツのジッパーを下すと、そこにはデッキか8つも収められていた。この光景どこかで見たことあるような......。デッキが8つ?

 

 

「俺の本当の名は、三沢大地。異世界から帰還した男だ」

 

 

三沢大地! こいつは、たしかユベル戦の後から異世界に残ると言って行方が分からなかった人だ。まさか、Dホイーラーの真似事をしてるなんて思わなかった。

 

 

「十代も危機を察していたが、俺も異世界の守護者として見逃すわけにはいかない。世界は広い。美しい世界を守るため、ようやく完成した8番目のデッキと共にこの異常事態を回避する。君も元の世界に戻るため強力してくれるかい?」

 

 

当然、回答は「YES」と言いたい。だが、俺の今の実力で世界なんて救えるのだろうか。これまで負けることはほとんどなかった。でもそれはマグレかもしれない。

 

 

「はい、と言いたいところですがまだ自信はありません」

 

 

そういうと、赤馬はメガネを直して

 

 

「君のタクティクスは評価に値する。だが、君のフィジカルが問題だ。闇のゲームでもないのにデュエルの負荷やDゲイザー酔いしていたら話にならない」

 

 

「え、俺酔って倒れたの?」

 

 

俺、ださっ......。

 

 

「医者の見解に間違いはない。君は、Dゲイザーシステムの短期間集中の使用によるソリッドヴィジョン酔いだ。その虚弱体質を直さない限り、デュエルは難しいだろうな」

 

 

「はぁ。やっぱりデュエルマッスルってのは、鍛えねえといかんのか」

 

 

「今日はゆっくり休むがいい。 私は計画を進めておく。大会が開かれる前に、鍛えておくんだな」

 

 

赤馬が保健室にいなくなると、三沢は腕を組みながらベッドの横にある椅子に座り始めた。

 

 

「どうやら君、相当見込まれてるみたいだね」

 

 

「俺はどうして、こんなところにきたんでしょうか。何か変えられるのか?」

 

 

「確かに君が体験していることは興味深い。俺も君と同じ世界を旅したことがある。そこでは、俺たちがテレビの前でデュエルをしていた。不思議な感覚だったよ。そこじゃ俺も何もできやしない。画面の中の出来事を変えることなどできない」

 

 

「......」

 

 

「でも、君はここにいる。君がそのモンスターに選ばれたことと、ここにいることそれらが運命ならきっと変えられる力があるはずさ。じゃあね、君の活躍を期待してる」

 

 

そういって、三沢も保健室を出ていった。それと入れ違いに南禅寺るこが入ってきた。

 

 

「なんだか不思議な人たち......。大丈夫? 遊介くん」

 

 

「うん......。ねぇ、Dゲイザーで酔ったことある?」

 

 

 

「え? うーん、あまりないかな。最新のやつだと酔いにくいって聞いたことがるけど......。そういう時は海馬コーポレーション開発のブレインズでの訓練がおすすめだって」

 

 

「ブレインズ? それって、リンクブレインズのこと?」

 

 

「うーん、いや? 海馬ランドで体感できるVR空間なんだけど、行ってみる?」

 

 

ブレインズ、どんな場所なんだろう......。そこで受ける訓練ってどんなんなんだ?

その話を聞いて少し元気になった俺はベッドから起きて次の授業のために歩きはじめる。だけど、まだフラフラする。

 

 

「まだ駄目だよ、起きちゃ」

 

 

「いや、俺もデュエリストである前にこの学校の生徒なんだ。勉強もしないと単位が......」

 

 

「そりゃあ、そうだけどさあ」

 

 

二人で言い合いをしていると、また一人女の子に抱えられてケガだらけの男が保健室にやってきた。

 

 

「もう、しっかりしなさいよね!」

 

 

「大丈夫?」

 

 

南禅寺さんは女の子とともに男の子をベッドに運んだ。

男の子の方の髪型、どこかで見たような気がする......。

 

 

「ええ、体育でボールに当たっちゃって......。もう、男なんだからしっかりしなさい! ユウマ!」

 

 

ゆ、ゆうま? もしかして、九十九遊馬なのか? 

そういえば、抱えてる女の子もどことなく小鳥に似ているような......。

 

 

「君、大丈夫? 意識は?」

 

るこが心配するように近づくとその腕を振るって

 

 

「めだ......。もう、放っておいてくれよ小鳥」

 

 

「ちょっと、心配してる人に失礼じゃない! ごめんなさい......」

 

 

「いや、別にいいんだけど。どうしてそんな落ち込んでるの?」

 

 

「彼、元々はなんにでもチャレンジする活発な子だったんです。でも、自分の大切なものを無くしてからこの調子で......」

 

 

「小鳥、もう皇の鍵の話はいいって。僕はもう諦めたんだ」

 

 

少し起き上がってみてみると、確かに彼の首元には金色に輝く皇の鍵はない。無くしたのか?それとも、誰かに奪われたのか?

 

 

「その落ち込みようは、ただ失くしたってわけじゃなさそうだね。よかったら手伝おうか?」

 

 

「あんたには無理だ! 相手は神代凌牙だぞ!? 街のごろつきデュエリストに勝てるわけがない」

 

 

「そんなのやってみなくちゃわからない。そうやって壁をぶち破ってきた君が好きだったんだけどな。わかった、俺が取り返してくる」

 

俺はベッドから飛び起きて、まだふわつく足を地面に叩き落とした。

 

 

「無茶だよ! 遊介くん! 今の君は安静にしなきゃ」

 

 

「寝ててもデュエルがうまくなるわけでもねえだろ。俺はこの足がこの地にある限り立ち上がってみるよ。ありがとう、遊馬。力をくれて」

 

 

南禅寺るこの心配をよそに俺は、保健室を後にして一人廊下を歩きはじめる。

 

 

 

 

 




唐突な出会いに不思議と力が湧いてきた遊介。
彼はデュエリストとして誰かのために立ち上がる男なのかもしれない。


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if=25:いざ、海馬ランドへ

遊介は単位と取ると同時に自分のソリッドヴィジョン酔いを直すため
謎の講師が主催するデュエルチャレンジカップへと参加することになった。

だが、いきなり南禅寺るこも遊介もすっかり遊園地に遊びに来た気分になってしまっていた。


 ある日俺は突然、遊戯王デュエルモンスターズの世界観がごちゃまぜになったような世界に迷い込んだ。

なんとなく満喫しながらも、元の世界に戻る手伝いをしているのだが、いろんなことに巻き込まれて全く進みやしない。おまけになれないソリッドヴィジョンで酔って倒れる始末。

 

「はぁ、情けねえよ。俺」

 

 

「でも、きっと海馬コーポレーションが建てた海馬ランドに行けば大丈夫だって」

 

小さくガッツポーズをして俺を応援してくれる南禅寺さん。かわいいけど、学校にいる限りはそれなりにいい点数を取っておきたい。たとえこの世界が夢の世界だったとしても......。

 

「学校抜け出して、海馬ランドに行くのはなぁ」

 

 

「授業の一環で行けばいいじゃない! ほら、これ」

 

 

「なんだこれ。デュエルチャレンジカップ?」

 

その悩みについて考えていると、謎の教師、ドゥンケルハイトが海馬ランドでの実地デュエル試験を行うといううわさを聞く。しかもその優勝賞品は鍵のようなシルエットが見えている。

 

「誰だ? この引率講師のドゥンケルハイトってのは」

 

 

「うーん、私もあまりは......」

 

二人して首をかしげていると廉次郎が腕を組んで現れた。

 

 

「この先生、授業めちゃくちゃ暗くて有名だぞ? 知らないのか?」

 

 

「そうなの? でも、それにしては明るそうな授業だけど」

 

 

「授業まともに聞いてくれないからこうやってエサ撒いてんだろ。きっと。で、お前らは参加するのか?」

 

聞かれてもなぁ。まぁ、自分を慣らすためにも行くしかないのかなぁ。

 

 

「面白そうじゃない? やろうよ、遊介くん!」

 

 

「え? うーん。あれ、この優勝賞品の形どこかで」

 

 

よく見なくてもわかる。これは、皇の鍵だ! でも、なんでこんなところに? すると、保健室から戻ってきたのか小鳥と遊馬がこのポスターを見に来ていた。

 

 

「ちょっと、遊馬見てよ! これ、あなたが失くした皇の鍵じゃない?」

 

 

「え? ホントだ! いや、でもこんなデュエル、勝てっこないよ」

 

 

「そんなのわかんないじゃない! だったら私出るもん!」

 

 

「ええ? 小鳥がぁ? お前、デュエルできんのかよ」

 

 

「失礼ね! アタシだってデュエルできるんだから!」

 

 

二人の夫婦漫才は一生聞いていたいが、少し回りに気を遣わなすぎるところが冷や汗をかく。

 

 

「お二人さん、ちょっといい?」

 

 

「あ、さっきの保健室の人!」

 

 

「そういや、名前言ってなかったね。俺は阿久津遊介。なぁ、遊馬。皇の鍵って神代凌牙が持ってたんじゃなかったのか?」

 

 

「奪ったのはそうだけど、そこから行方知れずだよ。きっと、興味を無くして捨てたのかも」

 

 

「ありえない話でもないな。行くか、海馬ランド!」

 

遊馬の肩に手を回して鼓舞するも、まだ彼はいじけている。

ここまで彼が落ち込んでいるのは見たことがない。本当に大切なものなんだな。

 

「僕が足手まといになるかも......」

 

 

「役に立たないカードなんてないように、役に立たない人なんていないと思うよ。君のその優しさが強さになって役に立つときがあるよ」

 

 

「役に立たない人なんていない......。そう、だね。僕、いやオレやるよ! 一緒に来てくれるかい? 遊介」

 

 

「もちろん」

 

 

かくして、俺と遊馬、小鳥、南禅寺さん、廉次郎はドゥンケルハイト主催のデュエルチャレンジカップへ挑むことにした。送迎バスに揺られること小1時間......。

 

 

「みなさん、つきましたよ」

 

 

弱弱しい語り口調でドゥンケルハイトは私たちを案内してくれた。彼は先生というよりコザッキーのようなマッドサイエンティストみを感じる。服装も白衣だし......。

 

彼はみんなを海馬ランド入り口前まで案内すると、さらに続けて

 

 

「これから、みなさんにはこの会場すべてを使いゲームをしてもらいます。勝敗はデュエルでもそれ以外でも......。まぁみなさんデュエルしか興味ないでしょうが」

 

 

言い方は気に食わないが、ここでゲームしてれば単位がもらえるのは本当に楽しい授業だ。座学より全然いい。俺は入り口に向かって走り出す。

 

 

「とりあえずジェットコースター乗ろうぜ!」

 

 

「おい、遊びできてんじゃねえぞ!」

 

 

「廉次郎、固いこというなって」

 

 

「あ、遊介さん!」

 

可愛らしい声に反応すると、そこには小鳥と遊馬だった。彼らはもうすでに楽しんでいたようでポップコーンやらぬいぐるみやらを持っていた。

 

 

「どうしたの、それ」

 

 

「ゲームってなんでもいいわけでしょ? だから、射的とかそういうので景品ゲットしちゃいましたー!」

 

 

「おい、小鳥ー。半分持ってくれよ。重いんだけど」

 

 

「男の子でしょ、それくらい持ちなさいよ。それに、遊馬はここまでなにもしなかったじゃない」

 

「そうだけど」

 

 

「ははは、中々かわいそうなことなってんな」

 

 

呆れていると、ジェットコースターの方から二人くらいが歩いてきた。

 

 

「誰かと思えば、弱虫やろうじゃねえか。俺からあのペンダント奪おうってのか?」

 

 

神代(かみしろ)くん......」

 

 

一人は神代凌牙だ。遊馬のお守りであり、そして彼の相棒アストラルとの絆である皇の鍵を奪った張本人である。彼は、腕を組み遊馬に対峙する。そしてもう一人は十六夜アキだ。彼女の凍てつく眼光が俺たちを捉えていく。

 

 

「奇遇ね。また、あなたたちに出会うなんて......。 今度こそ、私の奴隷にしてあげるわ」

 

アキは、赤色のデュエルディスクを腕にセットし始めた。そうすると、神代凌牙も自分のディスクをセットして彼女に噛みつくような目つきで制止する。

 

 

「手ぇだすな。遊馬は俺の獲物だ。お前もそうだろ、この俺が憎いんだろ?」

 

 

「でも、君はもう持ってないだろ。君とは戦いたくないよ」

 

 

 

「そういう甘ったれた感情が昔っからイラっとくるんだよ! デュエリストならデュエルで決着つけやがれ! 遊馬!」

 

 

あれ、シャークと遊馬ってそんな昔からのライバルみたいだったっけ? これも、融合した世界での影響?

 

「二人は、知り合い?」

 

小鳥の方を向きながら聞いてみると、彼女はうつむきながらうなずいた。

 

 

「うん。というより私たち三人、幼馴染なんです。でも、いつの間にか凌牙くんがシャークって呼ばれるようになってから疎遠になっちゃって......。それからは遊馬を目の敵にするようになっちゃって......どうして、こうなっちゃったんだろう」

 

 

すると、今度は十六夜アキがサイキックを使って小鳥を宙を浮かしていく。

 

「小鳥ちゃん!」

 

 

「キャーーー!! 助けてえ! 遊馬!!」

 

 

「小鳥ぃ!!! お前! くぅ......。僕にも勇気があれば......」

 

 

彼はずっと下を向いていた。下を向いていたってしょうがねえじゃねえか! 俺が、あんたから学んだことを! 教えてやる!!

 

 

「かっとビングだぁ! 俺ぇええええええええ!!」

 

俺は走り出して何もないところからジャンプした。宙に浮く小鳥の手をかすかにとらえかけるが、それを察知したのか、アキが力を使ってもっと上にやってしまった。俺は、何もできずに尻もちをついてしまった。

 

 

「かっとビング......?」

 

 

「そうだ。何度だってくじけない、諦めない。挑戦し続ける心、勇気そのもの......それが、かっとビングだと俺は思ってる。お前のかっとビングはどうだ? そうやっていじけてなにもしないことか?」

 

 

「違う。そうじゃない! オレだって、小鳥を守れる男になる! おいサイコ女!」

 

 

そういうと、アキはとてつもなく鋭い眼光で遊馬をにらみつける。だが、遊馬は立ちすくまずに挑み続ける。

 

 

「こ、小鳥を放しやがれ! そんなにデュエルがしたいなら、やってやる!! デュエルディスクセット!」

 

 

「2対1? やれんのかぁ? お前がぁ! 遊馬ぁ!」

 

 

「2対2、これなら文句ねえだろ! 神代凌牙ぁ!! Dゲイザーセット!」

 

 

俺がデュエルディスクをセットしようとした途端、廉次郎がそれを奪って自分の腕にセットし始めた。

 

 

「おい! それオレのディスク!!」

 

 

「あ!? しまった! つい、やっちまった! お前のディスクが僕のと似ているから悪いんだろうが!」

 

 

「もう遅いわ。Dゲイザーはあなた達デュエリストとそのデッキを認識した瞬間、デュエルで勝敗が付くまではその腕から離れないし、デッキも変えることは許されない」

 

 

そりゃないぜ......。 シャークに因縁があるとはいえ、アクシデントで俺のデッキでタッグデュエルを挑むことになっちまったが、大丈夫か? 廉次郎。

 

 

 




突如として、いや遊介たちの動向を知っていたかのように現れたチーム5D'sの十六夜アキと神代凌牙(シャーク)。二人の目の前に立ちはだかるは、円谷廉次郎と九十九遊馬。二人はチーム5D'sの猛威を避け、勝利を勝ち取ることができるのか

次回、遊戯王ARC-if「謎のタッグ 遊馬&廉次郎VSアキ&シャーク!」


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if=26:謎のタッグデュエル 遊馬&廉次郎VSアキ&シャーク!

突如として遊介のデッキで挑むハメになった廉次郎は困惑しつつもそのデッキに魂を込めていく。一方遊馬はいまだ消極的な戦い方をしようとしてしまう。


 勝手に出しゃばって、俺のデッキと出番を奪っていった廉次郎。彼はシンクロ召喚を知っているとは思うが、戦えるのか?他人のデッキで......。

 

 「先攻/後攻はどうする」

 

廉次郎がじゃんけんしたそうに拳をだそうとすると、シャークはデッキからカードをドローして言い放つ。

 

 

「デッキから5枚ドローして一番攻撃力の高いやつを全員言え」

 

 

それぞれがデッキからカードをドローして一番攻撃力の高いモンスターを言っていく。

 

 

「ゴゴゴゴーレム......攻撃力1800」

 

 

「僕は、聖装の獣戦士。攻撃力1700」

 

 

「私は、凛天使 クイーン・オブ・ローズ。 攻撃力2400」

 

 

「俺は、ビッグ・ジョーズ。攻撃力1800だ。攻撃力が高いのは十六夜だな。お前からオレ、遊馬、レンジの順番でいいだろ?」

 

 

そういうと、廉次郎は少し眉をひそめてシャークを窘める。

 

「お前がレンジって呼ぶんじゃねえ。寒気がする。大体、僕の方が君より年上なんだが!?」

 

 

「廉次郎、それは大人げないやつがいうセリフだぞ」

 

 

「遊介、お前は黙って観戦してろ!」

 

 

「はい」

 

 

俺は、キレた廉次郎には口を挟まずにデュエルを見届ける。

 

 

十六夜アキ:LP4000

 

「私のターン! 手札から、『おろかな埋葬』を発動。デッキから『薔薇恋人(バラ・ラヴァー)』を墓地に送る。そのまま墓地の『薔薇恋人』の効果発動! 手札の植物族モンスター1体を特殊召喚。現れろ! 凛天使 クイーン・オブ・ローズ」

 

 

真っ赤なドレスを着た女性が俺たちの目の前に現れたかと思うと、さらに十六夜アキは手札からモンスターを召喚する。

 

 

「レッドローズ・ドラゴンを召喚! そして私は、レベル3レッドローズドラゴンにレベル7凛天使クイーン・オブ・ローズをチューニング! 沸き立つ怒りが、世界を染め上げる。鮮血の花よ、開け! シンクロ召喚! 咲き乱れろ! ブラッド・ローズ・ドラゴン! レッドローズ・ドラゴンの効果発動。デッキからロクスローズ・ドラゴンを特殊召喚!」

 

 

序盤だというのに十六夜アキの展開は止まらない。彼らは現実の俺たちデュエリストや友崎みたいに手札誘発を持ち合わせていないし......。彼らは戸惑いつつもただ見守るしかない。一番戸惑っているのは廉次郎だろうけど。

 

 

「ロクスローズ・ドラゴンの効果により『薫り高き薔薇の芽吹き(ベーサル・ローズ・シュート)』を手札に加える。さらに、手札からホワイトローズ・ドラゴンを特殊召喚する! 私はさらに、ロクスローズ・ドラゴンにホワイトローズ・ドラゴンをチューニング! 清廉なる花園に芽吹き孤高の薔薇よ 蒼き月の雫を得てここに開花せよ! 月華竜 ブラック・ローズ!! カードを2枚伏せて、ターンエンド」

 

続けざまにシャークがドローをはじめて不敵な笑みを浮かべる。

 

シャーク:LP4000

 

「ほう、シンクロモンスター2体か。中々じゃねえか。じゃあ俺のターンだな! 俺は、ビッグジョーズを召喚! 魚族、海竜族、水族が召喚・特殊召喚に成功したときにシャーク・サッカーを特殊召喚する! オレはレベル3ビッグ・ジョーズにレベル3シャーク・サッカーでオーバーレイ! エクシーズ召喚! 出でよ、No.17 リバイス・ドラゴン! 俺はカードを3枚セットしてターンエンド!」

 

 

アキに比べてシャークは少し大人しめの展開となっていた。次は、遊馬だが彼はどう戦いを繰り広げていくんだろう。

 

遊馬:LP4000

 

 

「おれのターン、ドロー。モンスターをセット。カードを3枚セットしてターンエンド」

 

 

「おい! 事故にもほどがあるだろ! 君はなんのためにデュエルしてるんだ!」

 

廉次郎が驚きのあまり、怒りを通り越したかのような口ぶりで話すも彼は一杯一杯になって聞こえていないようだ。そして、問題の廉次郎だ。オレのデッキを雑に扱わないでくれよ?

 

廉次郎:LP4000

 

 

「僕のターン、ドロー!! 手札からレベル4聖装の獣戦士を召喚! こいつは、召喚成功時に手札からレベル4以下の獣族モンスターを特殊召喚できるみたいだな。 なら、僕はレベル4チューナーモンスターの聖装の霊獣を特殊召喚! 効果発動! 霊獣は効果による特殊召喚に成功したときに「聖装」と名の付く魔法・罠カードを手札に加える。なるほど......。これにするか。僕は、「真聖装の儀式」を手札に加える! そしてそのまま発動する! 僕は、フィールドの聖装の獣戦士と霊獣をリリースして儀式召喚! 真聖装の魔導戦士(ハイ・スコール・パラディン)!」

 

 

俺がなんとなくで作った儀式モンスターだ。カオスソルジャーみたいなノリで作ったけどサイドにいれたままだったような......。それさえも使いこなすとはさすが、開発課ってところなのかな。あのモンスターは召喚成功時に「聖装」魔法・罠をセットすることができるが、果たしてどのカードをセットするのか。

 

 

「待ちなさい。私は、月華竜ブラックローズの効果を使うわ。 真聖装の魔導戦士を手札に戻してもらうわ! 退華の叙事歌(ローズ・バラード)

 

 

 

「くっ! だが、そんなことだろうと思っていた。手札より魔法カード『おごそかな聖葬』を発動! 手札を一枚捨てて発動できる。墓地に眠るチューナーを含む1体以上のモンスターをデッキに戻す。その戻したモンスターのレベルの合計の数値と同じシンクロモンスターをシンクロ召喚扱いとして特殊召喚する! 僕が戻すのはレベル4聖装の獣戦士と聖装の霊獣! 聖者の行進に参列せよ! |紫眼の聖装亜竜《パープルアイズ・スコール・オルタナティブ・ドラゴン》!」

 

 

「おい! 勝手に召喚口上考えるなよ! しかもめっちゃ短いし」

 

 

「これくらいでいいんだよ! このカードは『紫眼の聖装竜』として扱う。 効果発動! デッキから3枚装備魔法を相手に見せた後、そのうち1枚を選んでもらう。シャーク、お前が選べ」

 

シャークは選択された3枚のカードから1枚を選択した。そのカードがオルタナティブドラゴンの装備カードとして装備された。

 

 

「さらに、紫眼の聖装亜竜の効果! 自分フィールドの装備魔法1枚を破壊して発動する。相手フィールドの表側表示のモンスターをすべてデッキに戻す! 僕はオルタナティブに装備された『白聖装』を破壊して発動!」

 

 

 

なるほど、月華竜の効果はハイスコール・パラディンの召喚時に使用したから使えないし、ブラッドローズ自体も破壊効果に対する効果だから通る! 中々やるじゃないか! 俺の召喚口上をけなしたこと以外は。

 

 

 

「オレ達のフィールドがガラ空きに!? 厄介なカード作りやがって!」

 

 

 

「作ったのは僕じゃなくて彼だから。文句言うなら彼に言ってくれ」

 

 

 

確かに作ったのは俺だけど、そんなの言う必要なくない? そう思っていると、シャークがとんでもない形相で俺を見つめてきた。ええ......。最悪なんだが。

 

 

「続けるぞ!バトルフェイズだ! 僕は、紫眼の聖装亜竜で十六夜アキに直接攻撃! 亜流の聖装散裂弾(オルタナティブ・スコールバースト)!」

 

 

攻撃力2800のモンスターの力は圧倒的で、十六夜アキをフッとばすほどだった。ダイレクトアタックだから相当のダメージを食らっているはずだ。

 

 

十六夜アキ:LP1200

 

 

 

「ダークシグナーである私が......。神代凌牙! タッグデュエルなんだからもっと私を守ったらどうなの?」

 

 

「フン、自分の身は自分で守りやがれ。俺は5D'sになんて入った覚えはない。ただ、強いやつらと囲まれていればオレも強くなれる。そう思っただけだ。実際、オレは大いなる力を手に入れたがな」

 

 

 

どうやら、この二人は仲間というほどの信頼関係はなさそうだ。そうとはいえ、今のこの二人は強敵だ。しかも遊馬は消極的なデュエルで参加もできていない。

これからどうやって戦っていくんだ?

 

 

 

 

 




戦いはまだ続く。二人とも倒さなければタッグデュエルは終わらない。
そして、戦いの中で遊馬が覚醒していく。

次回遊戯王ARC-if「因縁の二人」


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if=27:因縁の二人

※長いこと期間が開いてしまい申し訳ないです。これからもよろしくお願いします。

遊馬、廉次郎はシャークと何かしらの因縁があるようだ。

彼らのデュエルを見守りながら阿久津遊介は何を学ぶのか。


「僕はこれでターンエンドだ。次は十六夜、君だ」

 

 

十六夜アキ LP:1200

 

 廉次郎でやっと一周が終わったみたいだ。タッグバトルって実装されていないけど、こういうターンの長さがネックだな。二週目の秋のターンから、流れが変わっていく。

 

「私のターンドロー! 私は、手札より強欲なル壺を発動!」

 

強欲な壺のような絵のカードが発動された。効果はやぱりドローカードってこと?

すると、廉次郎もそのカードにツッコミが入った。

 

「強欲なル壺? なんだそりゃ」

 

「このカードは、自分の魔法・罠カード上のカードの数だけドローすることができる!」

 

相手フィールドに存在していたカードは2枚。ということは2枚ドローということか......。

強欲な壺に似たカードと思っていたが、なんかルール上『強欲な壺』として扱うとか書いてるぞ?

なんだ、これは。 さらに十六夜アキは先ほどドローしたカードによって展開をしていく。

 

「手札より、フィールド魔法地縛神殿発動! このカードの発動の効果処理によりデッキから地縛神Ccarayhuaを手札に加える。自分フィールド上にこのカードしかない場合、自分フィールド上に地縛怨霊トークン2体を特殊召喚! そして、そのカード2枚を使用しアドバンス召喚! 地縛霊の魂をすすり、出でよ! 地縛神Ccarayhua(コカライア)!」

 

「地縛神コカライアだと!?」

 

 

アキの腕から紫色の痣が発行した途端、フィールドからはカメレオンのような見た目の巨大なモンスターが現れた。これが、地縛神......。どうして、こんなカードが十六夜に渡ってるんだ?

 

 

「コカライアで、九十九遊馬! 貴方に直接攻撃するわ!」

 

俺のことなど気にせずに彼らは攻防を続けていく。十六夜の強力な力に対して遊馬は必死にもがいていく。

 

「ガガガガードナーの効果発動! 直接攻撃時に自分フィールドに特殊召喚できる!」

 

 

「無駄よ。地縛神はあなたしか見ていない。モンスターには攻撃せず、そのまま攻撃!」

 

 

「うああああああああああああああああああああ!」

 

遊馬LP:1200

 

手札のガガガガードナーがフィールドに佇むが、守りを固めたとしても地縛神には無駄だった。

でも、遊馬はそれを知らない。当然だ。彼の世界には地縛神は存在しないんだから......。

遊馬は豪快に吹き飛ばされ、地面に這いつくばっていた。

 

 

「九十九! やはり、素人ではどうにもならなかったか。僕一人でもなんとかやるしかない!」

 

廉次郎が遊馬を切り捨てようとするが、彼はまだ諦めてはいなかった。彼は立ち上がろうとする。

彼は、まだデュエルを続けようと必死なんだ。

 

 

「いや、まだだ! 遊馬の目を見てみろ、廉次郎。彼の目はまだ死んではいない!」

 

 

遊馬「お、おれだって! いつまでも負けてられっか! 罠カード『命削りの希望道(ホープロード)』を発動! 戦闘ダメージが発生した時に1000ポイントライフを払って発動する。『ガガガ』『ゴゴゴ』『ズババ』『ドドド』と名の付いたカードを2枚まで手札に加える。このとき、自分のライフが1000以下の場合、選択したカードを特殊召喚することもできる! おれはガガガマジシャンとドドドウィッチを特殊召喚!」

 

 

遊馬:LP200

 

 

 

「てめえ、ライフが風前の灯火だってことがわかってんのか?」

 

 

「わかってる。でも、これくらいのことをしないと二人に勝てるとは思えない。だから、これがおれの最後の希望! そう希望......。ホープ......」

 

だが、廉次郎と同じようにシャークのライフは4000で変わらず......。

これで勝ち目なんてあるんだろうか。

 

 

「だが、次はオレのターンで希望を絶望に変えてやるぜ。俺がおまえに終止符を打ってやる! ドロー! オレも『強欲なル壺』を発動! オレは3枚ドロー!だ!」

 

 

「3枚もドローだと? くそっこんなときにドローを封じるようなカードがあれば......」

 

 

廉次郎は頭を悩ませる。当然俺のデッキにはそんな相手のドローを封じるカードなんて入れてない。

ましてや作ってすらいない。眉間を抑える廉次郎にシャークは余裕の笑みを浮かべる。

 

 

「ねえなら続けるぜ。オレはコイツを使わせてもらうぜ! フィールド魔法『カオス・スフィア・フィールド』を発動! 効果発動! 自分フィールドにモンスターが存在しないとき、デッキから『カオス』と名の付く水属性モンスターを特殊召喚する! 現れろ! 2体のカオス・シャーク!」

 

 

「二体のレベル4モンスターが並んだ!? 来るのか?」

 

お約束のエクシーズ召喚のシークエンスであるブラックホールのようなものが吹き荒れる。

その後、シャークのエクストラデッキからモンスターが出現していく。

 

 

「オーバレイネットワークを構築! エクシーズ召喚! 地縛神に仕えし未来の高官 地縛神官ジャーク・カオス! 地縛神官の効果発動! オーバーレイユニットを二つ使い、手札、デッキから『地縛神』と名の付くモンスターを手札に加える。この時、自分フィールドにフィールド魔法が存在するとき特殊召喚することもできる! オレは地縛神Chacu Challhua(チャクチャルア)を特殊召喚!」

 

 

 

「いきなり二体のモンスター!? しかも直接攻撃できる地縛神もいるなんてやばいって!」

 

 

俺が驚くのも束の間、シャークは遊馬をターゲットに定め、攻撃を仕掛ける。

 

 

 

「遊馬! 一瞬で終わらせてやる! チャクチャルアで直接攻撃!」

 

大きなシャチが何もかもを飛び越えて、遊馬にとびかかろうとした瞬間、遊馬はフィールドの罠カードを解放する。

 

 

「まだ......。終わらせない! 罠カード『ワンダーエクシーズ』発動! フィールドのガガガマジシャン、ドドドウィッチ二体でオーバーレイ! オーバーレイネットワークを構築、エクシーズ召喚! 驚異の鉄壁、顕現せよ ランク4 ゴゴゴゴゴーレム!」

 

 

 

「モンスターを出しても無駄だと言ったはずだ!」

 

 

「無駄なんかじゃない! オーバーレイユニットを持つ守備表示のゴゴゴゴゴーレムがいる場合、必ずこのモンスターに攻撃しなければならない! さらに、このカードは戦闘では破壊されない。 おれを守ってくれ! ゴゴゴゴゴーレム!」

 

 

「足掻きやがって、イラっとくるぜ! なら、効果ダメージを食らえ! チャクチャルアの効果発動! 1ターンに1度、このカードの守備力の半分のダメージを相手ライフに与える!」

 

 

「さらに、ゴゴゴゴゴーレムの効果! オーバーレイユニットを一つ使い、効果ダメージをゼロに!」

 

 

 

全然戦えているじゃないか! 彼のこれまでの自信のなさは何だったのかと問いたくなるが、彼の手はまだ震えているのを見ると、やっぱりまだ怖いんだ。デュエルするのが......。

 

 

 

「くっ、ターンエンドだぜ!」

 

 

「神代くん。いや、シャーク! どうしておれをそこまで嫌うんだ! 弱い人間に噛みついて何が楽しいんだよ! 昔の君はもっと優しくて、かっこよくて......そして」

 

 

「っせえんだよ! オレは雑魚狩りしてるからシャークって名前なんじゃねえよ! オレは昔から強いやつと出会い、噛みつき、勝利を収めてきた。なんにでも勝利にどん欲で鼻が利く。だから獰猛なサメ、シャークなんだよ。オレは一度も弱いやつを叩きのめしたことはねえ。それに遊馬、お前を弱いと一度も思ったことはねえ......」

 

 

遊馬は強い。だから、みんなに好かれていた。俺もその心の強さに惹かれた。シャークの言い分は納得できる部分もある。遊馬はハッとしてディスクからカードをドローした。その瞬間、カードと右手が光り輝いた。これってもしかして、シャイニングドロー?

 

 

「これは!? そうか、オレが忘れていたもの! これが今できる『カッとビング』だぁああ! 反転召喚、ゴゴゴゴーレム! そして、ゴゴゴゴーレムとガガガガードナーでオーバーレイ! 2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築! エクシーズ召喚! 進化せよ、ガガガガマジシャン!」

 

 

 

 

あのカードは! 確かに、今はナンバーズ以外のモンスターがそろっているから条件も合う。もしや、彼のエクストラデッキには入っているのか? 未来の皇が! すると、その二体のエクシーズモンスターがブラックホールのような世界に消えていった。

 

 

 




タッグデュエルは早くも佳境へ移る。
遊馬は覚醒し、ホープを呼び出して反撃へ移る。

次回、遊戯王ARC-if「反撃! 反撃! 反撃!」


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if=28:反撃! 反撃! 反撃!

これまでくすぶっていた遊馬のデュエリストの魂が燃え盛る!

それに呼応してか、廉次郎、そして敵であるシャークやアキさえも魂のデュエルを繰り広げる!!


 

「さらにおれは、ランク4ゴゴゴゴゴーレム、ガガガガマジシャンでオーバーレイ! 二体のモンスターエクシーズで、オーバーレイネットワークを構築! 今こそ現れろ、FNo.0! 天馬、今ここに解き放たれ、縦横無尽に未来へ走る。これが俺の、天地開闢! 俺の未来! かっとビングだ、俺! 未来皇ホープ!」

 

 

彼の新たな切り札となったホープは彼を守らんと攻撃力0でありながらも威厳を保っている。

遊馬の反撃が始まるのか!

 

 

「さらにおれは、未来皇ホープ1体でオーバーレイ! フューチャーエクシーズチェンジ! これが新たな希望の力! FNo.0 未来龍皇ホープ!! 手札からFZW(フューチャーゼアルウェポン)我我我流鷲獅子聖剣(カッとビングリフォンセイバー)を装備カードとしてホープに装備する! これにより、ホープの攻撃力は3000アップする!」

 

 

「なに? 攻撃力6000だと!?」

 

 

シャークもそうだが、正直俺も驚いてる。戦う意思のある男だとわかってはいたけど、未来龍皇まで召喚してしまうとは! 遊馬はさらに続けてバトルを仕掛けていく。

 

 

「おれは! 未来龍皇ホープでシャークの地縛神官ジャーク・カオスに攻撃! ホープ剣 フューチャーロードスラッシュ!」

 

相手のジャーク・カオスは攻撃力2000。ということは4000のダメージが相手に与えられ、一気に逆転できる!

 

「させるか! 罠カード『ダメージ・ダイエット』!このターン受けるダメージは半分になる! つまり俺が受けるダメージは2000だ!」

 

シャーク:LP2000

 

 

「まだだ! 我我我流鷲獅子聖剣の効果発動! 装備モンスターが相手モンスターを破壊したとき、攻撃力を1000下げてもう一度モンスターに攻撃できる! シャークの地縛神チャクチャルアに攻撃! ホープ剣 フューチャーロードスラッシュ!」

 

 

「まだよ! 罠カード『地縛神の威嚇』! 自分フィールド上の地縛神モンスターより攻撃力の高いモンスターが攻撃宣言したときに発動できる! 私のフィールドの地縛神と共にそのカードを手札に戻してもらうわ! もっとも、EXデッキから召喚されたモンスターはEXデッキに戻ってもらうけどね」

 

 

「くっ......。カードを1枚伏せてターンエンド」

 

 

 

だが、これで十六夜アキのフィールドはガラ空きになってしまった。だが、おそらくあの伏せカードは速攻魔法、ベーサル・ローズ・シュート......。彼女の深き闇をみるような笑みにはゾッとさせられる。だが、次の廉次郎のターンでなにか打開策になるカードを引くことができれば......。

 

 

「僕のターンだ! 僕は、聖装の魔導士を召喚! 魔導士が召喚されたことで新たなゲートが開かれた、出でよ! レベル3チューナーモンスター 聖装の双剣士! 特殊召喚された双剣士の効果! デッキから2枚まで装備魔法を手札に加える。僕は紫聖装と白聖装を手札に加える」

 

 

「これはくるのか!? シンクロ召喚!」

 

俺の感情のボルテージが最高潮になっていると、それに呼応して廉次郎はEXデッキからシンクロモンスターを召喚した。

 

 

 

「これがお前のデッキだ、遊介! 聖者の衣纏いし竜よ、その紫の瞳で悪を照らせ! シンクロ召喚! いでよ、紫眼の聖装竜!! 紫眼の効果発動! デッキから青聖装を装備する! そして、さっき手札に加えた白聖装、紫聖装を装備! そして効果発動!! 装備カードを3枚破壊! 十六夜アキの伏せカードと、神代凌牙のフィールド魔法『カオス・スフィアフィールド』と真ん中の伏せカードを手札に戻してもらおう!!」

 

 

「フィールドカードがなくなれば、地縛神も自身の効果で消える! これでシャークのフィールドもがら空きだ!」

 

廉次郎の前に並ぶ2体の聖竜は、金を差し色にした薄手の衣をひらつかせて相手を見つめる。

後は直接攻撃していくだけだ!!

 

 

「すぐにやられてなるものですか! 速攻魔法『薫り高き薔薇の芽吹き』墓地からホワイトローズドラゴンを特殊召喚」

 

 

「そうくると思っていた。破壊された青聖装の効果! 自分フィールド上のモンスター1体を選んで発動する。僕は、オルタナティブドラゴンを選択! この時、対象のモンスターは2回攻撃ができる! 白聖装の効果により、シャークのカードを1枚破壊する! そして紫聖装の効果発動! 自分モンスター1体を対象にして発動! 僕は紫眼を選択する。このとき、対象のモンスターはカードの対象にならない。さらに、選んだカードが紫眼の聖装竜だった場合、攻撃力を1000アップする!!」

 

 

効果により、紫眼の聖装竜は3500にパワーアップ!! 神々しさも増していく。

そして、廉次郎はバトルフェイズに移していく。

 

 

「バトルだ!! まずは、紫眼の聖装亜竜でホワイトローズドラゴンに攻撃! 亜流の聖装散裂弾(オルタナティブ・スコールバースト)!」

 

 

「くっ! ダークシグナーの力ってこんなものなの?」

 

 

「もう一度、オルタナティブドラゴンで攻撃! オルタナティブ・スコールバースト!」

 

 

「きゃあああああああああ!!」

 

 

 

十六夜アキ:LP0

 

 

「あとは、神代凌牙! お前だけだ! 行け、紫眼!! セイントバースト!!!」

 

 

「ぐ、あああああああああ!!」

 

 

神代凌牙(シャーク):LP0

 

 

「やったな! 廉次郎!」

 

 

俺がハイタッチをしようと片手をあげるも廉次郎はそれを無視して九十九遊馬に握手を求めようとした。

 

 

「ただの弱虫だと思っていた僕を許してくれ。君は立派なデュエリストだよ」

 

 

 

「いやいや、君こそ遊介のデッキでありながら戦いきったなんて強いよ!」

 

 

こうしてまた一つの友情が俺の前で紡がれた。やっぱりデュエルモンスターズって面白いな......。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




デッキを戻してもらった遊介はまだまだ海馬ランドを散策していく。

次なるステージはリンクモンスターを使役できる新たな境地「VR-D」
通称リンクブレインズ。

そこには、過去より伝わる囚われの青い天使がいた

次回 遊戯王ARC-if「into the rink VR-AIns!」


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if=29:into the rink VR-ains

十六夜アキのサイコパワーを利用し、南禅寺を探そうとする遊介。
彼女の力で向かった先には、VR世界でデュエルができる「リンクブレインズ」の筐体が広がっていた。


 デュエルが終わり、小鳥ちゃんが無事解放された。

 

俺の方も廉次郎からデッキを返してもらえて少しほっとした。

 

 

「ほらよ、遊介。僕でなければこんなロマンデッキまともに扱えないぞ」

 

 

 

「いやいや、そこまでロマンじゃないでしょ」

 

 

俺は腰に巻いていたデッキホルダーに自分のデッキを戻した。

ふと、シャークとアキの二人に目をやるとシャークはすでに帰ろうとしていた。

 

 

「ま、待って! シャーク!」

 

 

「皇の鍵ならオレは持ってねえよ。あれは、ドゥンケルハイトって教師に盗まれた」

 

 

ドゥンケルハイト......。たしか、このチャレンジカップの主催だったっけ。

さらに十六夜アキがシャークの言葉に続けて話した。

 

 

「私たちをここに呼びつけたのも、そのドゥンケルハイトって人だった。私たち5D'sの力が知りたいと言って......。そしたらあなたたちがここに」

 

 

ダークシグナーと言っても俺の知っているような人たちとはまた違ったものを感じる。

死人というわけでもなさそうだし、地縛神も生贄を必要とせずにOCGルールで召喚されていた。

 

 

「そもそも君たちは黒き竜に選ばれたって言ってたけど、なんのために選ばれたの?」

 

 

「知らん。オレはこの痣に呼ばれたような気がした。『力を示せ』と。力に飢えていたオレはそれで多くの過ちを犯した」

 

 

 

「私も同じよ」

 

 

「なんだろう。『力を示せ』って」

 

 

俺は廉次郎に振るも、彼は当たり前だが首をかしげるばかりだ。

俺もそんなことわからんし、考えても仕方ないか......。ふと、周りを見ると、あることに気付く。

 

 

「そういえば、南禅寺さんは?」

 

 

「ほんとだ! いない」

 

 

小鳥ちゃんがキョロキョロと回りを探すも南禅寺さんの姿は見当たらない。

入り口までは一緒にいたような気がするんだけどな......。

 

 

「あいつ、どこかで迷子になってるんじゃ」

 

 

「バスに乗ってた女の人ですよね? おれたち、探してきます! 小鳥、観覧車の方行ってみよう! じゃあ、見つかったらデュエルディスクに連絡します!」

 

 

「え、デュエルディスクって連絡機能あるの?」

 

 

そういうと、廉次郎は俺にデュエルディスクのパネルを見せた。確かに通信履歴が載ってある。

 

 

「ああ。だが、さっきから応答がない。なにかあったのかもしれん。遊馬の言う通り、手分けした方がよさそうだな」

 

 

すると、ダークシグナーである十六夜アキが提案してきた。

 

 

「私も協力させて。私のサイコパワーならきっと、役に立てるはず」

 

 

 

意外なことに、彼女はダークシグナーでありながらも正気のようだ。一体だれが彼らを集めたんだ......。とにかく、今は人手がいる。廉次郎も了承してアキにも手伝ってもらうことにした。

 

 

「シャーク、お前も......。ってもういない」

 

 

遊馬が少し落ち込むも、踏ん張りをきかせて小鳥の手を握り走り出した。

 

 

「僕たちは、リンクブレインズ体験コーナーの方へ行ってみよう。お前のこと気にしてたし、先に向かってるのかもしれん」

 

 

「おっけー。十六夜さん、一緒に行きましょう!」

 

 

「ええ、よろしくおねがいするわ」

 

 

 

こうして、俺と廉次郎、そして十六夜アキが南禅寺捜索隊として加わり、リンクブレインズ体験コーナーへと足を進めた。途中、トロイホースのメリーゴーランドだったり、ゴーストリックお化け屋敷だったり面白そうなアトラクションがあったが全部廉次郎に禁止された。

 

「んでだよ、そこにいるかもしれんだろ?」

 

 

「るこは怖いものが苦手だ。特にお化け屋敷はな」

 

 

そうこうしているうちにリンクブレインズ体験コーナーに着いた。

 

 

「廉次郎、お前南禅寺さんの写真持ってないの?」

 

 

「あ? 持ってるが、何するんだ」

 

 

「いや、十六夜さんに見せないと始まらんでしょうが」

 

 

「こいつを信じていいのか?」

 

 

「いいから、貸す!」

 

 

そういうと、廉次郎はしぶしぶデッキホルダーから1枚の写真を取り出してきた。

 

 

「チェキか? ずいぶんアナログだな」

 

 

「別にいいだろ。好きなんだ、こういう写真が」

 

 

「ふーん、どうだか......。ま、いいや。十六夜さん、この人探してるんだけど」

 

 

俺は、十六夜に写真を渡すとその写真を手で触りながら目をつぶった。何かを感知しているのか?

 

 

「たぶん、この中にいると思うわ」

 

 

「僕の勘は当たっていたようだな。行くぞ」

 

 

 

中には、VRのゴーグルとともに自信をスキャンするための装置のようなものが置かれていた。

装置は青いサークルのようなもので、なんとなく見覚えがあった。

 

 

「これ、デュエルリンクスのデュエルゲートだな。これで、また別の世界にいけるんだな」

 

 

「おい! どうしてお前みたいな一般デュエリストが、デュエルリンクスシステムのことを知ってるんだ?」

 

 

俺の話を聞いていた青年が声をかけてきた。青年はどことなく海馬に似てる気がするが、根の明るさがそれを打ち消している。

 いや、知ってるも何もデュエルリンクスやってるもんなぁ......。でも、ここにはそういうアプリゲームとかなさそうだし、どうやって言ったもんか。まぁ、ありのまま言ってみるか。

 

 

 

「いやぁ、信じてもらえるかわかんないけど俺別の世界から来てるんですよ。で、そこには遊戯王のカードが遊べるアプリがあって......。それがデュエルリンクスっていうのなんだけど」

 

 

 

「じゃあ、お前異世界からきたのか! 赤馬零児から聞いてはいたが、本当だったんだな! オレ、モクバ。海馬モクバ。ここの運営を任されてる。これでも、海馬コーポレーションの社長代理だぜ!」

 

 

あまりの急成長ぶりに気付かなかった。そうか、モクバだから海馬瀬人に似ててもおかしくはない。

にしても、社長代理っていうのはどういう意味なんだ? 海馬の方はどうしてるんだ?

 

 

「代理? そういえば、モクバってお兄さんいたよね? お兄さんは?」

 

 

「にいさまは今、宇宙で新しいゲームの開発中さ。それより、どうしたんだよお前ら浮かない顔して」

 

 

「そうだった! 実は人を探してて、この人なんだけど」

 

 

俺は十六夜から写真をもらい、モクバに渡すと首をかしげていたがすぐに思い出し顔が明るくなった。

 

 

「おお! そういえば、こんな感じの子がヴレインズにログインしていったの見たな」

 

 

「そうか! そういえばさ、デュエルディスクのDゲイザーの酔いもヴレインズで治るって聞いたけど」

 

 

 

「ああ。『はじめてのデュエルコース』だな! ログインすればいろんなコースがあるから見て見るといいぜ!」

 

 

 

「ありがとう! 行こう、廉次郎」

 

 

「わかった」

 

 

3人でヴレインズへログインできる機材の方へ向かうと、十六夜がハッと声を上げた。

 

 

「どうしたの?」

 

 

「さっきの子の影を感じる......。間違いなく、この空間にいるわ」

 

 

「本当だろうな?」

 

 

廉次郎は、十六夜アキに詰め寄りにらみつけるも彼女は目をそらさずに廉次郎に訴えかける。

 

 

「私のことを信用できないかもしれない。でも、私も誰かの役に立ちたいの!」

 

 

「......あんたの力を信頼してみるよ。現状、それしかヒントがねえもんな。行くか」

 

 

 

俺たちは、数少ない足取りを頼りにヴレインズへとログインしていく。青いリング状の筐体に入り込み、デッキをセットする。

 

 

「デッキ、セット! パスワードは、into the VRAINS!」

 

 

音声認識は作動し、目の前がブラックホールのようなものに包まれていく。奇妙な浮遊感とともにログイン待機画面にすぐアクセスできた。そこには初期アバターが見えていた。

 

 

『これは、もう一人のあなた。もっと、あなたを変更しますか?』

 

 

なるほど、顔や服装を変更できるのか。顔は面倒だがまぁ、服装だけでも変えておくか。

 

服装選択の画面を眺めていると、きぐるみのような全身コーデから初期アバターの来ているサイバテックなスーツの色違いまである。ていうか、プレイメーカーの衣装が初期アバターってなんだか気が引けるなぁ......。ちょっと色変えるか。元々かっこいいし

 

 

「よし、選択完了!」

 

 

『接続中......。アバターとあなたをリンクします。デッキをすべてサイバースアーカイブに接続します......。ようこそ、リンクヴレインズへ』

 

 

「ここが、リンクヴレインズ......」

 

 

あたりを見渡すと、デジタルで再現された空想の街が広がっていた。なんとなく童実野町に似ているようにも見えるが、ダイダロスブリッジやハートランドシティに立っていた塔も建っていた。

 

 

「南禅寺さん探すったって、アバターばっかりだから探しようがねえよ。しかも、廉次郎も十六夜もいないし......。みんなどこ行ったんだよ」

 

 

 

「おまえ、遊介か?」

 

 

突然、俺よりも背がでかく筋骨隆々の男が話しかけてきた。ビビッて身を引きつつも名前を聞く。

 

 

「だ、だれ?」

 

 

 

「俺だよ、友崎。友崎克広」

 

 

「かっつんか? いや、全然違うだろ」

 

 

「現実と違う人間にできるのがこのゲームのいいところだろ? 有効活用しなくちゃなあ。ところで、なにしてんだよ」

 

 

「いや、友達探してて......。廉次郎とか南禅寺さん見てない?」

 

 

かっつんに聞いても見てなさそうだが、聞かずして情報は得られない。今は藁をもすがる思いだからな......。

 

 

「......知らねえな。 この辺探せば、見つかるかもな。 それより、久しぶりに俺とデュエルしないか? この間の試合じゃ消化不良でよ。今度はリンク召喚縛りってことで」

 

 

「何言ってんだよ。俺は、リンクモンスターなんて持ってねえぜ?」

 

 

 

「エントリーデッキ使えばいいだろ。ほれ」

 

 

かっつんは、俺にデータを手渡してきた。それは、構築済みのデッキ3種類だった。どれもリンクモンスターを主体とするデザインになっていそうだ。たしかに、これならリンクあまり使ってない俺でも戦えるかもな。

 

 

 

「俺は自分のデッキで挑むけど、遊介はどうする」

 

 

 

「そうだな......。ここは、星杯デッキで行こうかな」

 

 

「よし、デュエルだ! 遊介!」

 

 

かっつんが腕にデュエルディスクを巻いたと同時に俺もディスクにデッキを装填した。自分が選んだ構築済みのエントリーデッキを......。

 

 

「「デュエル!!」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 




遊介の前に現れた友崎。
彼とのデュエルは偶然か、必然か......。


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