千雨魔改造ネタ集 (千雨魔改造応援団員)
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〇千雨×Re:CREATORS 第1話

 ハーメルンの千雨魔改造作品が、更新されることを願って…。


 それは、突然の出来事だった…。

 

 

 

 私は、長谷川千雨、非常識が日常を侵食している麻帆良学園都市で寮生活を送っているものの、ごく普通の中学2年生だ。

 

 貴重な夏休みに自室へと籠り、周囲には隠している趣味に没頭していた最中、不意に現れたのだ…彼女が…。

 

 

 

 彼女は、一見して人間とは思えなかった。

 

 精緻な装飾が施された軍服調の衣装に剣と銃らしきものを携えていることだけでも現実感を減らしていたが、時折、画像が乱れるように揺らぐ姿が、日常との乖離を際立たせていた。

 

 彼女は私と同年代か、若干幼いかのように見えた。

 

 長く美しい銀髪ときれいに整った容姿は、数多のアニメ作品に登場するヒロイン達に引けを取らないと思えたが、苦悶しつつ語りかけてきた内容を聞き進めるにつれ、驚愕と混乱が増す思考の片隅で、当然かと深く納得した。

 

 

 

 創作上の登場人物「被造物」…彼女は、アルタイルと名乗った。

 

 

 

 アルタイルは、とても辛く悲しい道行を経て、私の下に辿り着いていた。

 

 何より、彼女は死別した創造主シマザキセツナと奇跡的な再会を果たし、共に歩むべく新たな世界へと旅立ったはずなのに、思い叶わず消滅の瀬戸際に立たされていた。

 

 あまりにも理不尽な事態の原因は、単なる思い違い…全ての創作物を生み出した現実世界と認識していた場所もまた、いずこかで生み出された創作上の世界だった。

 

 そして、無限の可能性を内包する事象の渦にとって、己の存在基盤から飛び出した被造物を容赦なく飲み込み、打ち砕くなど容易いことだった。

 

 アルタイルは、再び大切な存在を失い…ただ一つの願いを果たすために全力を振り絞り、必滅の牙から逃れた。

 

 被造物を構成するエネルギー「承認力」に満ち溢れ、比較的に揺らぎが大きく、ありえぬ者が潜り込める世界に望みを託すことによって…。

 

 

 

 ”ふざけるな…”

 

 

 

 私自身と、その生きる世界が、創造主(さくしゃ)と支持者(ファン)によって構築されているなどと容易に認められるはずもない。

 

 だが、そんな私の心情を酌む余裕もないアルタイルは、一心不乱に頼み込んできたのだ…。

 

 

 

 「お願いだ…私を取り込んでくれ…」

 

 「冗談じゃねえ…こういった非常識に喜んで手を貸す知人を紹介するから、あと少しがんばれ!」

 

 「いや、君でなければ無理なのだ」

 

 

 

 アルタイル曰く、この世界を形作る物語を紡ぐ人物「主人公」、私は膨大な二次創作作品によって、ある意味それさえ凌ぐ承認力を内包しており、唯一世界から不合理や矛盾を打ち消す修正力を凌駕できると…。

 

 正直に言って嫌だった…主体となる私の記憶や意思は変わらないと言われても、他者の未練を背負うなんて、まっぴらごめんだった。

 

 でもそれ以上に、こんな悲しい存在(アルタイル)が、このまま消え去ることを見過ごせなかった。

 

 だから、私は…。

 

 

 

 

 

 月日は流れ、中学2年生としての生活も、2か月弱を残すばかりとなっていた。

 

 あの日、私は本来知る術がない設定(ひみつ)や在り得ざる能力(おもに)など多くを自覚したけれど、変わらぬ日常を過ごしていた。

 

 この世界は、成り立ちからして揺らぎが大きく、修正力に抗うこともできなくはない…しかし、未来の可能性を読み解くことや、無理な干渉には、その規模に応じた負荷(ペナルティ)が付いて回り、おいそれと手は出せない。

 

 

 

 それでいいと、私は常々思っている。

 

 

 

 だけど、その瞬間、我を忘れた。

 

 通学の途上で偶然目にした光景…大きな荷物と長い杖を持つ少年が、隣に合うように立っているクラスメイト、神楽坂アスナと近衛木乃香へと未制御の魔法を放つ様に…。

 

 いわゆるファンサービスの一幕であることは判り切っていた。

 

 だからと言って、うら若い乙女が、衆目の最中で衣類を全て消し飛ばされる…そんな恥辱を許すことなどできるはずもない。

 

 だから、消し去った。

 

 

 

 

 「森羅万象(ホロプシコン)」

 

 

 

 

 慌てて座り込んだ街路のベンチで息を整える。

 

 この世界に存在している魔法無効化能力であっても、誰かの二次創作で描かれた私から引き出せば、軽い頭痛と倦怠感に襲われる…むしろ、この程度なら御の字ではあるが…。

 

 少年やクラスメイト達は、何事も無く学校へと向かったようだ。

 

 私は気を取り直し、遅刻せぬようやや足早に、不調を堪えながら通学路を歩み始める。

 

 

 

 

 そんな私の行動が、後々厄ネタを呼び込むことになるとは、思いもせずに…。

 

 

 

 

(続く)




 拙い作品にお付き合いいただき、ありがとうございました。


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〇千雨×Re:CREATORS 第2話

 エッチなのは、許しません!!w


 麻帆良学園、そして日本の東半分において西洋魔法の使い手達を束ねる長(おさ)の部屋から、重い宿命を背負う子供たちが退出すると…禿頭の老爺に傍らで控える精悍な男性は意を決し、瞠目すべき事態を部屋の主に報(しら)せた。

 

 

 

 「学園長、魔法無効化能力でネギくんの暴発した魔力を消し去った者がいます…もちろん、アスナくんではありません」

 

 「なんじゃと!?」

 

 

 

 遥か彼方の天体で滅んだ、小さな王国の末裔に多く発現する危険な異能(ちから)…この地に秘した災厄と交われば、世界の命運を左右しかねない人物を、放置できるはずがなかった。

 

 

 

 

 

 ”結局、3学期の初日から遅刻かよ…”

 

 

 

 幸い体調不良が原因であると、生活指導委員に認められ、イエローカードを免除されたものの記録は残る。

 

 心身へのダメージに耐えながら2年A組の教室へと辿り着くと、まだ担任教師は来ておらず、朝のホームルームは、始まっていなかった。

 

 なお、遅刻に際しては、担任教師に理由を説明してから着席する必要があるため、教卓側の扉から入室したのだが…古典的ないたずらに見舞われ、気合いを入れて整えた身だしなみは、粉と水まみれのひどい有り様に…。

 

 仕掛けた、いたずら者の鳴滝姉妹は、即座に謝り、深く反省しているようだったので許した…と言うか、ひどく怒りまくっている半身かつ守護者の報復を押し止めるためには、穏便に済ませるしかなかった。

 

 

 

 急いで、体操着とジャージに着替え、自席に着くと、指導教員の源先生が、遅刻の原因を伴って入室し、新たな担任であると告げる。

 

 どう見ても年下の子供に、30人の女生徒を任せる学園側の正気を疑うのも束の間…たどたどしい自己紹介が、私の心を一気に冷え込ませた。

 

 

 

 「ええと…あ、あの…ボク…今日から、この学校で、まほ…英語を教えることになりましたネギ・スプリングフィールドです」

 

 

 ”こいつが、主人公か!?”

 

 

 

 この世界は、誰かの創作物(げんさく)を存在の基盤としているものの、何もかもが筋書きどおりに進むわけではなく、未来の有り様(かのうせい)は幾重にも分岐している。それでも、数多の事象を束ねる、因果の結節点とでも言うべき人物だけは変わることがない。

 

 私が、どのような道を辿ろうとも、ほぼ必ず手にする主従契約の証「パクティオーカード」に刻まれている名前の意味を、推察するなど造作もなかった。

 

 

 

 

 

 

 すわ、波乱の幕開けかと身構えたのだが、騒がしく賑やかに日々は過ぎていく…余りにも酷いラッキースケベとトラブルの誘因体質に憤りながら、体調不良を重ねる私を置き去りにして…。

 

 

 

 

 ”人気取りのためとは言え…少しは自重しろよ神様(げんさくしゃ)…”

 

 

 

 問題児(やくびょうがみ)とクラスメイト全員の携帯端末に、目と手を兼ねる電子の精霊を忍ばせ、緊急事態に備えると、出るわ出るわ…図書委員の事故未遂、正体の露見、女子寮での共同生活、違法な薬物の持ち込み、他校生徒との諍いなど、積み重なる騒動と無思慮な魔法の行使…。

 

 エロネタへの反発もあり、出来る限り被害(ろしゅつ)を抑制したが、比較的に負荷が小さい手段であっても、ダメージは貯まる一方である。

 

 

 

 

 ”まぁ、それも大分、落ち着いてきたか…”

 

 

 

 パソコンでの作業が一段落し、軽く手足を伸ばす。

 

 3学期の期末試験を終え、迎えた春休み最後の夜…私は寮の部屋に籠り、いずれ必ず来る嵐(しゅらば)から平穏を守るために足掻いている。

 

 

 

 ”図書館島の遭難(あれ)からして、学園側(やつら)の目論見は、あいつと私達を結びつけることなんだろうな”

 

 

 

 私の手札には、魔法使いと従者が契約を結ぶことによって得られる魔法のアイテムが、クラスメイト全員分ある…そして、対立する相手を打ち倒す武器としての役割が大きい、この世界の魔法に関わるのなら、向かう先は、鉄火場しか思い浮かばない…。

 

 

 

 ”ふざけるな…”

 

 

 

 裏を知り、覚悟の上で踏み込む馬鹿はいい…だが、巻き込まれるのはご免だし、争いごとに無縁な連中を騙すような手管を見過ごせるものか…。

 

 だから今は、切り抜けるために最善を尽くすしかない。

 

 

 

 「マスター、そろそろ訓練を始めたい」

 

 「おう」

 

 

 

 パソコンモニターの画像が切り替わり、電子空間に潜り込んだアルタイルが、スピーカー越しに呼びかけてくる。

 

 私はアルタイルと同化しつつも機転を効かし、この世界の被造物と化すことによって、延命を成し遂げている…趣味のネットアイドル、「ちう」のコスプレキャラクターとして新作衣装を矢継ぎ早に披露し、承認力を獲得したのだ。

 

 さらに設定を補強するために、一人娘の許しを得て、データ化されていたシマザキセツナさんのイラストと小説を、匿名の故人から託された遺作として掲載に踏み切った。

 

 その反響たるやすさまじく、親娘の悲しき故郷と同様に幅広い創作活動へと繋がり、アルタイルは、現実世界に影響を及ぼさない、外界から隔離した電子空間であれば、全能に等しい力を取り戻しつつある。

 

 

 

 アルタイルは、唯一無二の創造主(マスター)、セツナさんと同じように、私へと接してくれている。

 

 恐らく共有した記憶で見た私の痕(きずあと)と、かつて母親を奪った非道を重ねたのだろう…。

 

 その優しさに応えるためにも、ありったけの想いを込めて押しかけ娘の魅力を世界中にずっと届けていきたい。

 

 

 

 障害物などを配置した訓練用の電子空間へと、アルタイルと共に降り立つ。

 

 制約は大きいものの、不老不死の強靭な肉体、優れた戦闘の技能、強力な武器と魔法を、自在に写し取れる私にとって、使いこなすために必要な実戦の経験や心構えなどの欠落が、目下の課題である。

 

 だが、アルタイルの戦法は、最強無敵の力で対戦相手を封じ込めて完殺の一本槍なので、接戦の切り抜け方や駆け引きの見極めなどは学び難い。

 

 そこで以前、アルタイルが次元の門を開き、召喚した猛者のうち、再度の呼び掛けに応じてくれる方々と毎晩、対戦しているのだ。

 

 

 

 「よろしくおねがいします。ブリッツさん」

 

 「うむ」

 

 

 

 とても大柄でナイスミドルの賞金稼ぎ(バウンティハンター)が、抜く手を見せず撃ち込む弾丸で、本日1度目の死亡が確定した。

 

 

 

 

 

 さんざん打ちのめされ、力尽きて地に伏せる…学ぶべき処は多いのだが、仮想敵(アグレッサー)を務めてくれる教官達は、誰も彼も戦闘狂(バトルジャンキー)気味で容赦がない…。

 

 

 

 「飲み込みは早いし、機転も良い、搦め手も使えるようになってきてはいるが…命のやり取りをする覚悟が持てぬうちは、戦いを避けるべきだろうな」

 

 「は…い…」

 

 

 

 ぬるま湯のような日常に浸ってきた己の甘さを見透かされ、ぐうの音も出ない。

 

 だけどそんな私を、凶事(りふじん)は見逃してくれなかった。

 

 

 

 

 

 電子空間にクラスメイトを見守っている精霊の1体から緊急警報が届き、教官への礼もそこそこに、急遽、現実世界へと戻る。

 

 

 

 「何が起きてる!?」

 

 「市街地の名称、桜通りでクラスメイト、佐々木まき絵が不審者に襲われ、逃げ惑っています」

 

 「偽装を施していますが、後方支援要員にガイノイド、絡繰 茶々丸を配置していますので、襲撃者は吸血鬼エヴァンジェリン・アタナシア・キティ・マクダウェルと推定されます」

 

 「マジか…」

 

 

 

 電子の魔女と呼ばれた、とある私の情報取集能力によって、周囲の注意すべき奴らは、全て調べ上げていたが…その中でも、最も敵に回したくない、殺戮を重ね数百年を生き抜いている吸血鬼の真祖(ハイ・デイライトウォーカー)…。

 

 

 

 ”ちくしょう…”

 

 

 

 こんなあからさまな凶行を、関東最大の霊地を護る精鋭達が見過ごしているからには、ネギ先生(しゅじんこう)への試練と見て間違いない…。

 

 

 

 ”ちくしょう…”

 

 

 

 掴んでいる情報どおりならば、エヴァンジェリンは、女子供を殺さない矜持を守っているから、大事(おおごと)にはならないはず…。

 

 

 

 ”だからって、見捨てられるかよ!!”

 

 

 

 されたばかりの忠告を無視する愚行を内心で詫びつつ、決意を込めて叫ぶ。

 

 

 

 「七部衆(おまえら)手段を選ばず時間を稼げ!!いくぞアルタイル!!」

 

 「「「了解(イエス)、マスター」」」

 

 

 

 正体を隠し、最大戦力で挑むために、アルタイル本来の姿と装備に身を包み、苦痛を押し殺して死地へと転移する。

 

 夜空に浮かぶ、血の色のように赤い満月が、惨劇へと招くように人影が消えた部屋を照らし続けていた。

 

 

 

 

 

(続編未定)




 もし次回を書けたら、本作品の千雨さんが、初陣を飾ります。w


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○千雨×シンデレラガールズ 第1話

 思い付いたままに書きました。


 「失礼ですが、アイドルに興味はありませんか?」

 

 「はぁ?」

 

 

 

 中学2年生の2学期を終えた冬休みのある日…埼玉県の地元を離れ、買い出しに訪れていた都心の路上…。

 

 とても大きな背広姿に行く手を塞がれ、思いも寄らない問いかけと共に差し出された名刺の示すものに驚き、呟きがこぼれる。

 

 

 

 「美城プロダクション…シンデレラプロジェクト…」

 

 

 

 それが私とプロデューサーの出会いだった。

 

 

 

 真偽の確認に幾分、手間を費やしたけれど、正真正銘のスカウトと理解するなり不思議な位、心が波立った。

 

 市外ではあり得ない不可思議な存在や非常識な出来事などが、さも当然のように両親を含めた周囲の人々に受け入れられている、生まれ育った街、麻帆良市…。

 

 それを異常とわかってしまう私は、平静を装いつつ、幼い頃に体験した排斥の痛みに怯え、ずっと認識の隔絶を隠し続けている。

 

 だと言うのにこれまで、なぜか市外受験などの選択が浮かばず、流されるように地元で進学しているけれど、美城プロダクションには女子寮があり、アイドル活動と学業が両立しやすい私立学校への転入も支援してくれる。

 

 もちろん、不安は大きい…趣味でネットアイドル活動をしているけれど、現実の仕事となれば、求められる努力は比べ物にならず、かつ成果を上げて、いつまで続けられるかの保証もない。

 

 そもそも、人前で歌い踊ることが出来るかさえ怪しい…。

 

 それでも、芸能界屈指の超大手プロダクションに乞われて、あの非常識な街を離れる機会を逃したくなかった。

 

 だから詳しく話を聞いていた、とある喫茶店で声を絞りだしたのだ…。

 

 

 

 「わかりました。よろしくお願いいたします。」

 

 

 

 あれよあれよと月日は流れ、新年早々、都内の女子寮に転居し、3学期からアイドル御用達として知られる某学園へと通うことになった。

 

 プロデューサー自ら麻帆良市へと出向き、両親と学校側への説明や諸手続きなどを、どんどん進めてくれた結果である。

 

 その際、人気のない場所を選び、プロデューサーに恐る恐る聞いてみた…街のどこからでも目にするもの、中心部にそびえ立つ山のような巨木を、どう思うかと…。

 

 

 

「あり得ないと驚いています…ただ、他の人々が、そう捉えていないので、騒ぎ立てるべきではないのでしょう」

 

 

 

 ああ、わたしは正しいんだ…。

 

 物心ついた頃から蓋をしていた、ぐちゃぐちゃな感情と共に涙が溢れた。

 

 そして彼はハンカチを渡し、泣き止むまで大きな身体を壁替わりにして、静かに佇んでくれたのだった。

 

 

 

 急な転校話に、これまでのクラスメイト達は驚き、比較的に親しい連中が、送別会を開いてくれた。

 

 ただ騒ぎたかったのではないかと疑うほど賑やかな時間が、惜別の寂しさを癒したのは確かだった。

 

 出立の日には、クラスメイト達の多くが駅へと見送りに来てくれた。

 

 そこでなぜか、付き合いが薄い留学生の少女から、都内に用事があるからと、途中まで同行の申し入れを受けたのには少し驚いたが…。

 

 

 

 断る理由もないことから、共に電車へと乗り、思い思いに短い旅路を過ごす。

 

 始発駅に近いからか、人影がなく閑散とした車両で隣り合い、携帯端末で某掲示板を眺める私に、彼女は不意に囁いた。

 

 

 

 「本当にいってしまうネ」

 

 「ああ」

 

 

 

 何もかも今更なので、他に答えようがなかった。

 

 

 

 「そう…なら元気で」

 

 

 

 どうしてだろう、永遠の別れのような響きに胸がざわめき、視線が姿を追いかける。

 

 わずかな合間に到着駅で開いた扉からホームに降り立ち、静かにこちらを見据える表情に浮かんでいるのは笑顔…。

 

 だが私には、言い知れぬ不安を押し隠しているように思えた。

 

 

 

 真意を問いただす暇もなく、待ちわびた客を乗せ、電車が動き始める。

 

 

 

 そして同時刻、かつての母校では、私とプロデューサーについて、とある秘密組織による調査報告が行われているなど、夢にも思わなかった。

 

 

 

 「それで、彼女とあの男について、裏はないと言う結論でよいのじゃな」

 

 「はい、だからこそ認識阻害の結界と、事後処理として試みた記憶操作が効かない理由を見出だせないのです」

 

 「もしかしたら、彼は旧き魔法使いの末裔かもしれぬのぉ」

 

 「それは、いったい…」

 

 「古代より世界各地で祈祷師と呼ばれ、人の願いなどを、天地に届け奇跡を起こしてきた者達…神秘が薄れた現代では、さしたることを出来ぬであろうが、背負う想いが強く大きければ、人の術(わざ)程度は退けるじゃろう」

 

 「そんなことが…」

 

 

 

 立つ鳥の跡を濁すような出来事に気を取られる余裕などないほど、新しい生活は慌ただしかった。

 

 シンデレラプロジェクトの始動は、欠員が埋まらず、春まで持ち越されたものの、学業に加え、放課後と休日には、アイドル活動に必要な研修と実践的なトレーニングメニューを懸命にこなしていく…。

 

 そして、桜咲くうららかな春、ついにその日がやってきた。

 

 既に幾度か訪れている、美城プロ本社ビルのシンデレラプロジェクト専用ルームを前に息を整え、髪や衣類などの最終チェックを済ませる。

 

 

 

 いよいよ、プロジェクトメンバー全員の顔合わせか…。

 

 

 

 最初が肝心と、気合いを高める。

 

 扉を開けると既に数ヶ月、苦楽を共にした顔触れに、プロデューサーが、新たに選ばれた初見の3人を紹介している。

 

 そして、私にも声がかかり、新たな仲間、島村卯月、渋谷凛、本田未央へと告げる。

 

 

 

 「長谷川千雨です。よろしくお願いします」

 

 

 

(続編未定)




 少し後悔しています。w


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〇千雨×魔法科高校の劣等生 第1話

 千雨さん異世界転生のテンプレートかもしれません…。


 私「長谷川千雨」は、一度死を迎え…そして、生前とは異なる世界で再び命を得た…。

 

 

 

 かつての私は、とある事情から自分の死を乗り越えようとしていた。

 

 不老不死を求めていたわけではない…もしも、予期せぬ事態などによって途半ばで息絶えても、すべてやり終えたと己が認めるまで歩き続けたかったのだ。

 

 非常識な話だが当時なら、人類社会の枠組みから逸脱する覚悟さえあれば、相応の対価をもって、むしろ簡単に不死者(イモータル)の列に加われたのにだ。

 

 今にして思えば愚かとしか言い様がない…得意とする分野の知識や経験などにより開発した、魂の領域に膨大な情報を圧縮保存する技法を実用化し有事に備えながら、依代となる器を用意する前に命を落としたのだから…。

 

 ただし、非業の終焉を迎えた状況において、後悔は微塵もなかった。

 

 柄にもなく、大切に想う男(ひと)を絶体絶命の窮地から身代わりとなって救い…薄れる意識の片隅で、自分を褒め讃えていたのだから…。

 

 

 

 そして、暗闇から浮かび上がるように目覚めると、身は赤子となり、満面の笑みを浮かべる両親に見守られていたのだ。

 

 

 

 魂に刻んだ前世(おもに)が因果の糸を結びつけたのか、私は生前と同じ氏「長谷川」の家に一人娘として加わり、馴れ親しんだ名「千雨」を再び授かった。しかし、物心つく頃に驚くべき世界の相違を知り、時間の遡行などでは無いことを否応なく理解した。

 

 かつて、古くから秘匿されてきた技術であり、人生最初で最後の体験に大きく関わった要因の一つ「魔法」…この世界では、言葉の意義自体が若干異なるものの、約1世紀前に公然の事象となり、科学の知見や分析などによって、体系化された技術へと成り果てていた。

 

 そして、より強力な魔法を求め、世界中で研鑽が重ねられていくなか…魔法師と呼ばれる超常の担い手には、国防の要、戦略兵器として扱われている者さえ現れているのだ。

 

 

 

 生家は魔法師の家系ではあるものの傍流の大外に位置し、父母は魔法で身を立てず、ごく普通の生活を送っている。

 

 だが、持たざる者達との隔絶は、国際的な反魔法師を掲げる組織を生み…比較的に治安が良い日本でさえも幾度かは、殺人を厭わぬ凶悪犯罪の標的となり犠牲となっているのだ、一般人と変わらぬ魔法師が…。

 

 それゆえに私は、再度の死滅を拒む、本能的な生への欲求に突き動かされ、小学生となり外界との接触が増えて以降、なりふりかまわず自衛の手段を求め続けた。

 

 幸いかつての私は、合法、非合法を問わず入手した全情報の最もセキュリティに優れる保管場所として、己の魂を活用していた。

 

 幼い身で手繰れる少ない手札を慎重に投じ、貴金属を生み出し、姿を偽り、他者の意識を捻じ曲げ、手にした資金で、異界の秘奥を再現していく。

 

 小さな異空間を構築し、時間圧縮を最大値としたダイオラマの魔法球を据え付ける。

 

 1年とかからず人の寿命を喰い尽くす刻(とき)の断裂は、真祖の吸血鬼と化して乗り越えた。

 

 過行く長い日々と共に手にするはずだった大切な何かを引き換えにしてなお、いつ襲い来るかわからない理不尽に抗う道を進む。

 

 数分で数十日の猶予を得られる箱庭で、真っ先に取り組んだのは、最も重要な相棒(パートナー)の再現…。

 

 古龍(ドラゴン)の心臓に匹敵する魔力炉心と、かつての恩師を模した仮想人格を持つ人工魂魄を組み込んだ自己増殖型多機能AIを一体化し、仮契約を結ぶ…試みは成功し、無限に等しい魔力の供給源と、ごく普通の中学生を電脳世界の玉座へと導いた稀有な杖を、我が手にもたらした。

 

 如何なる状況でも、生還(しょうり)を勝ち取るために、戦(いくさ)の才、経験、心構えなど足りぬ全てを修練で補う。

 

 剣闘士、侍、騎士、魔法使いなど、これまでに敵味方として接した強者を記録から複製し、真剣勝負で悉く打ち倒すまで、費やすこと数百年…当然ながら、所詮は虚像であるがゆえに不安は拭えず、難度を引き上げ、今日(こんにち)まで苦痛と不甲斐なさにまみれ続けている。

 

 

 

 そんなとうに人から外れた馬鹿な娘に目を欺かれていると知る由もなく、両親は愛情を注ぎ続けてくれた。

 

 魔力で器を編み、成長を取り繕いながら、せめて誇れる子供でありたいと誓う。

 

 学校生活では、優秀な成績を目指しつつ、もう会えない旧友達を見習って、友誼の輪に溶け込み…家庭に戻ると、父をねぎらい、母と家事をこなして、月日を重ねていく…。

 

 

 

 そして私は魔法師の進学先として最難関と言われている、国立魔法大学付属第一高等学校を受験し、合格を果たした。

 

 

 

 天候に恵まれた入学式の日…真新しい制服に身を包み学び舎の門を抜けると、笑顔を浮かべる近い将来の学友達を数人目にする。

 

 

 

 ”今更、高校生か…。”

 

 

 

 不意に湧き上がる郷愁を打ち消し、式典の会場となる講堂に向かおうとした矢先、脳裏に相棒の警告が響いた。

 

 

 

 ”千雨さん、知覚系魔法による走査を感知しました。対抗魔法で処理済みです”

 

 ”ありがとう、ネギ先生”

 

 

 

 時々いるのだ…生まれ持った貴重な能力を、不埒な感情で悪用する覗き魔が…。

 

 やや離れた場所で、きつく瞳を閉じている大柄な男子生徒に目星を付け足早に立ち去る。

 

 親ばか気味の両親が保護者席で待つ晴れ舞台を、汚されたように思えた。

 

 

 

 

 

 

 男子新入生、司波達也は、遠ざかっていく少女の気配を感じつつ、言い知れぬ危機感に襲われていた。

 

 有力師族の子弟を抑えて2位で合格…計測上の想子(サイオン)保有量では、首席合格の妹、深雪を凌駕し、学科の回答には故意に点数を落とした形跡が認められると師匠、九重八雲から警告を受けた監視対象「長谷川千雨」…。

 

 

 

 

 ”精霊の目(エレメンタル・サイト)を、CADを用いず瞬時に迎撃しただと”

 

 

 

 

 やや離れた死角を選び、特殊な知覚の焦点を合わせようとした段階で、瞳に激痛が走った。

 

 殺傷性はなく、妨害用と考えられるが、術式を察知さえできなかった。

 

 

 

 

 ”成績優秀、品行方正、怪しい経歴など無い、傍系の子女だと…ふざけるな” 

 

 

 

 

 入手できた情報では推し量れない秘密が、彼女にはある。

 

 警護対象である最愛の妹と同じ1科生として入学できなかったことを、俺は今にして悔やんだ。

 

 

 

 

 

(続編未定)




(意訳)死にたくないので自己魔改造に極振りしました。ヾ(≧▽≦)ノ


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