見える子ちゃんと呪術最強の子 (狼ルプス)
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見える子と五条暁

どうもはじめまして、長くなるので簡潔に説明すると事故に遭いそうな親子を庇い死んで、転生特典を貰って転生した者です

 

どっかのスラ転や二次創作の話かと思っていたが、俺自身が体験するなんて夢にも思わなかった。

その死後の世界で神様に会い、くじを引かされ、呪術廻戦に登場する五条悟の能力を貰った。

 

くじの内容を見た時はマジで引いたよ……それとどうやら転生先は生前とそんな変わらない世界らしいが、俺が転生する世界は呪霊とは違うナニかがいると言われ、呪力を使った力でも祓えるらしい、その為俺は五条悟の姿で転生した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

改めて、自己紹介するが、俺の名前は五条暁、現在はちょっと普通じゃない高校生だ。名前は一緒だがさとる違いだ。

 

覚えているのは俺が一度死んで転生した事と、転生特典の力のみで物心がついた頃から普通じゃないナニかが見えていた。ただいるだけの霊とかがいれば、タチの悪い化け物のような霊もいたりする。

 

襲い掛かったり取り憑こうとしたやつは呪力を使いワンパンマンで祓っている。と言うか俺に触れることすらも無理な話だ。……一応今の所はだが。

 

そして中には善い霊もいないわけじゃない。見た目はちょっと悪そうでヤクザっぽい感じの人を見かけたが、2匹の猫の守護霊が彼に取り憑いていた。その姿を見て心が温かくなる感覚がした。人は見かけによらないとはまさにこの事だよ。

 

 

 

それと、今の俺の見た目は五条悟だが、中身は違う。俺はどう足掻いても五条悟にはなれないので、俺の好きなように過ごしている。

 

 

ただこの見た目だから仕方がない事なのだが、街中を歩いていると女性からの視線が多いから結構キツイ。芸能関係者からのスカウトもあって鬱陶しい…

 

そして現在、今日の学行を終わらせ帰宅しているところだが、途中で雨が降りはじめた為持参していた折りたたみ傘をさした。

 

「はぁ、今日に限って雨かよ。折りたたみ傘は持ってくるものだね」

 

今これ見たやつ……無下限呪術があるから傘はいらないんじゃね?って思っただろ?暗くて人目がない場所ならまだしも、人通りが多い場所は目立つからんな事はしねぇよ。

 

俺が帰る為にバス停に向かうと、ナニかがいた。

 

「(いるな、ガッツリ。しかもタチの悪いタイプか……)」

 

『ミエル?……ネェミエテルヨナァ……』

 

化け物がいた。しかしそれは、普通の人には認識すらできない様な存在だ。

人が幽霊やゴーストなどと呼ぶものは実在する。目の前にいるのは、見れば誰もが怖がる様なグロテスクな見た目の化け物だった。

 

そしてその化物型の霊の前には、バスが来ないか俺の後ろを眺めている女子学生がいた。

 

「(アイツは大した事なさそうだが、見た目グロいな。そして俺と同い年くらいの他校の子か……しかも相当しつこく憑かれているようだ。それにこの感じ……あの子、もしかして)」

 

俺は六眼で観察し、バス停に着いたら彼女に気づかれないように祓おう決めて向かうと、化け物がこっちに視線を向けた。

 

 

『!!……コッチヲミタナ……オマエ、ミエテイルナ!』

 

「げっ……」

 

こっそり祓おうと近づいたが、目が合ってしまい声をこぼす俺。その霊は異常な速度で俺に向かって走ってくる。普通なら逃げてもおかしくない状況だが、生憎と俺は普通じゃない。

 

俺は折りたたみ傘をさしたまま、ポケットに手を突っ込んだままで、脚に呪力を纏わせる。

 

『ミエルテル……!ミテルナ、オマエ……!』

 

そして俺の眼前に迫り、今にも襲いかかって何かをしようとしたその時――

 

「お前、臭いんだよ……」

 

そう言い放ち、俺は化け物幽霊に目に見えない速さで踵落としを喰らわせた。

 

直後、幽霊は顔面から地面に激突し、呻き声を漏らす。

 

『ギャアア……!』

 

「はい、お終い」

 

俺はバス停に向かいながら幽霊を踏み潰し消滅させた。

 

何もなかった様にバス停に着くと、帰りのバスを待ちながらポケットからスマホを取り出し、アプリを開こうとする。

 

「あ、あのっ!!」

 

「な、なに?」

 

所々制服が濡れてる女生徒に話しかけられた。そのあまりに大きい声に、俺は肩をビクッとしながらも返事をする。すると女の子は緊張しているのか暫く黙っていたが、勇気を振り絞る様に声を出す

 

「その……えっと、あなたもさっきの、見えて……いましたか……?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……」

 

私、四谷みこは最近、見えてはいけないものが見えるようになった。

最初は気のせいだと思ったけど、家や外でも見る様になり、気のせいではないことを自覚した。

 

そのせいで毎日が怖い。1日怖い思いせずに済みますようにって、祈ったり、見えないふりをなんとか貫いたり、盛り塩をおいても効果はなく、家でも気を抜けない。私の願いが叶う事はなかった。

 

そして、当たり前のように今日も……

 

  

「雨やば……」

 

『ミエル?……ネェミエテルヨナァ……』

 

「……バス早く来ないかなぁ(は、早く何処か行って……)」

 

『ネェ……ミエテル……?ミエテル……ミエテル』

 

「今日のニュースは(なんで今日はこんなにしつこいの……?だれか、助けて)」

 

少女はアプリを見ながら見えないふりを貫いているが、内心では恐怖で泣きそうになっている。

 

この霊は今日学校で遭遇した霊で、帰りまで憑いてきたやばい霊だ。そして放課後まで真横にピッタリ付いて離れない。一人でいる分恐怖心も更に増す一方だ。

 

少女はこの霊はやばい類の物だと肌で感じていた。だが、対処法は持たないため見えないフリを貫くしかなく、少女は冷や汗が止まらなかった。

 

すると傘を差した他校生と思われる男子がこちらに歩いてくるのが目に付いた。

 

 

『!!……コッチヲミタナ……オマエ、ミエテイルナ!』

 

「(え、私見てない……。まさか、あの他校生の人?やばい!こいつに殺される!)」

 

霊が異常な速度で他校生の男子生徒に向かって走る。私はそれを止めることも、あいつの意識を逸らすことも出来ずにただ立つことしか出来ない。

 

「(だめ、このままじゃ……!)」

 

『ミエルテル……!ミテルナ、オマエ……!』

 

そして男子生徒の眼前に迫り、今にも襲いかかって何かをしようとしたその時――

 

「お前、臭いんだよ……」

 

 

「え?」

 

私は衝撃の光景を見てしまった。脚に何かオーラの様なものを纏わせた男子生徒が綺麗な踵落をかまし、霊を地面に叩きつけるところを。霊が呻き声を漏らした。

 

 

『ギャアア……!』

 

 

「(え?今蹴った?あいつを蹴りで地面に叩きつけたの?)」

 

髪は綺麗な白銀のような髪で、見た目は日本人離れをしている男子だった。誰が見てもイケメンと思えるような見た目だが、私は彼のやった事で頭がいっぱいで、その容姿まで気にする余裕はなかった。

 

「はい、お終い」

 

男子はそう呟きながら、道を通るようにやばい霊を踏み潰した。彼が胴体を貫きながら歩くと、霊は消滅した。

 

日々、霊の対処で異常事態に慣れた私は、必死に頭を回転させる。すると彼は、私の近くまで来てそのまま少し離れた場所で立ち止まった。

 

もしかして同じバスに乗るのかな……?この人なら、私の悩みを聞いてくれるかもしれない。解決してくれるかもしれない。もう怖い思いせずに済むかもしれない。

 

これはチャンスなのでは? 

 

 

「あ、あのっ!!」

 

「な、なに?」

 

霊を消滅させ、隣で同じバスを待っている他校生の男子生徒に必死で声をかける。

今を逃せばもう二度とこんなチャンスはないかもしれない。そう思うと思ったより大きな声が出てしまい、彼は少しびっくりしたのか肩をビクッとさせながら私に顔を向けた。

 

綺麗な目……じゃなくて!私はもう怖い思いしたくないという思いが私を動かした。

 

霊がどうこう言う前に、念の為彼にまず確認する。

 

 

 

「その……えっと、あなたもさっきの、見えて……いましたか……?」

 

 




見た目は五条悟ですが中身は違う為性格は全の別人です


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理解者

「その……えっと、あなたもさっきの、見えて…いましたか…?」

 

どうも…五条暁です。なんとかサマンサー!とか言うと思ったか?俺は五条悟じゃないから言わねぇよ絶対、よくわからんが精神的にムカつくから!まぁ五条悟に影響されている部分はあるがそれはのちに話すとして

 

と言うかこの子今なんて言った、見えていましたか?もしかして俺が祓ってる姿もバッチリ見てたわけ?と、とにかく返答しないとこの子に悪い

 

「えーと、もしかして…俺が祓ってるの、見えてたの?」

 

 

「はい……」

 

「えっと、こっちも確認するけど…これ見える?」

 

俺は呪力を身体に纏わせる。すると目の前の少女は驚く表情になった。

 

「は、はい…青い何かが」

「マジで見えてるみたいだな」

 

目の前の子がマジで見えている事を確認し、呪力を解く。

 

「(それに、呪力を纏わせた時のこの子の反応…もしかして)君さ…もしかしてああいうの見るようになったのは最近だったりする?」

 

 

「え、は、はい!最近急に見えるようになって、ど、どうして私が最近見えるようになったってわかったんですか?」

 

「簡単に言えば反応、俺は物心つく頃から見えてたから慣れてるけど…君は違う、そんな泣いてる顔されたらね……」

「え?あ……」

少女は今まで我慢していたのか無意識に涙を流していたようだ。俺は取り敢えず鞄から未使用のタオルを取り出す

 

「使いなよ、それにお前びしょ濡れだろ?風邪ひくぞ」

 

「え、えっと……」

 

「遠慮すんな、このタオルはまだ未使用。その様子だと、こう言った相談事もできなかったんだろう?多分君の家族も見えてるわけじゃないんだろ?」

 

「……はい」

「まっ、普通に話して信じられる内容でもないしな…」

 

「ありがとうございます」

 

少女はタオルを受け取り濡れた箇所を拭き始める。

 

 

「それで……どう言ったことに困ってるんだ?あっ、自己紹介するけど…五条暁、君は?」

 

「四谷みこです。相談とは、さっき五条さんの言う通り、最近急に見えるようになって、周りも私以外見えてないし盛り塩しても全然効果なくて、見えないフリをしてほっとくとどっかいく奴もいましたけど……」

 

「さっき俺が祓った奴みたいにしつこいやつもいたってところか?見える者からしたらウゼェわな」

 

「はい。さっき五条さんが祓った奴みたいにしつこいやつもいて、中にはさっきみたいに危害加えようとしてくるやつもいました。友達につきそうになったりするやつもいて、このままだといつか家族や友達、知り合いに何か起こったりするんじゃないのかって、このままだといつか反応して殺されちゃうんじゃないかと思うとほんとに怖くて……」

 

「…………」

 

「こんな事、初対面で同じ学生に頼むのはどうかしているのは自覚しています。けど、さっきの五条さんの姿を見てもしかしてって思って、だからお願いします。助けてください。お願いします…お願い、します」

 

瞳に涙を溜め、俺に頭を下げながら頼んでくる。

 

正直言って、凄い子だよ、霊が見えてそんなに経ってもないはずなのに肝が据わってる。この様子だと結構過激なものも見てる様子だが、誰にも悟られず、霊にも見えない子と思わせられるポテンシャル、ずっと…怖い思いをしたんだろうな

 

「頭を上げてくれ…四谷さん」

取り敢えず四谷さんに頭をあげるよう声をかけると頭を上げる。案の定、涙を流していたようだ。俺はそっと四谷さんの頭の上に手を乗せる

 

「五条さん?」

 

「大したものだよ、最近見えはじめたってのに、普通なら精神的にも辛いよな」

 

俺は安心させるように頭を撫でる。ああいう奴は俺の専売特許だ。

 

「四谷さんの頼みは、引き受けるよ。ああいう類は専売特許だからね。それとその、頑張ったな」

 

俺は四谷さんを安心させるように頼みを引き受ける。

 

「ありがとう……ございます!」

 

「……っ⁉︎」

 

微笑む四谷の笑顔にドキリと心臓が脈打ち、その少女はお礼を言ってきた。

 

 

「……………ど、どういたしまして」

 

 

そう言うしかなかった。俺は取り敢えず心拍が落ち着くのを待っているとバスが来た

 

「バスが来たな…取り敢えず乗ろうか」

 

「はい」

 

取り敢えずバスに乗り席は一番後ろの席に座る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………」

 

「(気不味い)」

 

私たち二人は無言の状態がつづく、私の抱いた彼の印象は優しい人だった。

私の悩みや相談を聞いてくれた五条さん、それにあらためて見ると本当に綺麗な髪色だ。白一色で雪みたいな髪色、そして空のような色をした青色の瞳…正直言って物語に出てきそうな王子様を体現した見た目だ。

 

私の知っている身の回りの男性は性格も怪しい感じでグイグイくる人が多いけど…この人は違った

私と同じ…しかも幼い頃から霊が見えていて私以上に苦労していた。それに霊を倒せる能力的なものもある。正直言って心強い。

 

「ねぇ…」

 

「あっ、はい」

 

「明日なんか予定ある?」

 

「え?い、いえ…特には」

 

「じゃあさ…○✖️駅前にあるス茶葉マックスで話さないか?霊関係の物で渡したい物もあるし、詳しい話はそこでいいか?」

 

「は、はい…大丈夫です」

 

どうやら詳しい話をする為にそこで話をしようと言う事らしい。

 

「あっ、だったら連絡先交換しませんか?」

 

「そうだな、念の為一応していた方がいいか…」

 

私達は連絡先を交換し、いつでも連絡できるようにする。思わず頬が緩む感覚がしそうだったがなんとか抑える

 

これで日々の悩みを隠さず相談できる相手が出来た上理解者も出来た!

 

「(可愛いな……って、俺は一体何を)」

 

暁には筒抜けだったようで…なんとか言葉に出さずに済んだが、なぜその言葉が浮かんだのかわからない様子だ

 

「あ、あの、実は…私の家にも霊がいて」

 

「え、君の家にもいるの?」

 

「はい、3体の霊がいて…その、家でも気を抜けなくて……」

 

 

「三体も、そうか…それも踏まえ明日話そう。すまないが今日だけは我慢してくれるか?」

 

「………はい」

 

流石に今祓ってもらいたかったけど、いきなり男子を家に連れてきたら家族にも変に思われる。だけど今日我慢すれば明日には…

 

「安心しなよ、俺、ああいう類の相手には最強だから…」

 

「…… ふふっ、なんですかそれ?」

 

自分で最強って、けどどうしてだろ、五条さんがそう言うと…なんだかとても安心する

 

 

【次は○○、○○です。お降りのお客さまはボタンを押してください】

 

「あっ、私次で降ります。その、タオル、洗って明日返しますね」

「わかった。だったらこの折りたたみ傘、使いなよ。四谷さん、傘持ってきていないんだろ?」

 

「え?で、でも…それだと五条さんが」

 

「俺は平気、と言うか傘は俺には意味はないんだけどね。まぁ、余り見られると困るからさしていたんだけど」

 

「え?意味がないってどう言う……」

 

「流石に今言葉で言ってもわからないからな、だから直接体験してもらうよ。ほら、手…出してみて」

 

「え、えっと…失礼します」

 

疑問だらけだったが、私は五条さんに手を出し、その手に触ろうとする。

 

すると信じられないことが起きた、その手は五条さんの手に一向に届くことなく停滞していた

 

「え?触れ、られない、な、なんで……」

 

「これについても明日説明するよ…傘、使ってくれるか?」

 

 

私は驚きが隠せない中頷くことしかできなかった。私は折りたたみ傘を受け取ると、目的地のバス停に着いた。

 

「あの、傘とタオル、ありがとうございます。また明日」

 

「うん、また明日」

 

そう言い、私はバスから降り、貸してもらった折りたたみ傘をさし、家に向かう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数分後、暁も自身の降りるバス停にたどり着き、人気のない中の雨の中を傘をささず歩く。しかしその雨粒は彼を避けるかのように当たることはなかった。

 

 

 

「さてと…帰ったら一仕事と行きますか…」

 

 

彼のやるべきことはこれからだった。

 



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出発

たった2話しか投稿していないのにお気に入り登録者と評価が凄いことになっていることに動揺をかくせない作者です。




ーーーチュンチュン

 

朝日が昇り、スズメの囀りを目覚ましに、彼はゆっくりと瞼を開けた。

 

 

「うー…」

 

普通の朝。寝ぼけながら手を伸ばし、手に掴んだスマホの画面を開き、ぼんやりする視界で画面を見つめると午前八時を過ぎていた。上半身を起こし、カーテンを開け晴れている時は日の光を浴びる。朝の日課だ。

 

『あ"ええ』

 

「………気分最悪」

 

おはようございます五条暁です。今日は休みの為、昨日少しやる事を深夜までして、ベッドでぐっすり眠り今日は八時に目覚めて、日の光を浴びようとカーテンを開けたらソレはいた。

 

 

『ミエテル?オ、オマエ、ミ、ミエテル?ミエテルゥゥ?』

 

「ああ、見えてるよ…朝からご苦労、お陰でいい目覚ましになったよ」

 

『アァィァアあ゛!!』 

 

「うるさいよ、近所迷惑だろうが」

 

『ギャ……!』

 

取り敢えず危ない奴だったので呪力を纏わせた拳で一発殴り飛ばすとバチバチと呪力が黒く光った。すると霊は体の半分を失いその後消滅する

 

「黒閃出たが、まいっか。て言うか霊に近所迷惑って言っても意味ねぇか」

 

今は黒閃は気にせずに取り敢えず顔を洗う為部屋から出る。さっきの霊、見た感じ呪霊の等級で例えると準一級、あるいは一級相当のものだったな。もし黒閃が出なかったら一撃じゃ終わらなかったな。

 

 

黒閃は、打撃・呪力2つの到達誤差を0.000001秒以内におさめ、うまく呪力が打撃に衝突した際にのみ発動できる。

知覚できない条件があることから狙って出せる物じゃないが、いつかは狙って出せるようにはしたいところだ。

 

因みに俺の最高記録は過去にかなり危険と言われた心霊スポットに足を運んで特級並の霊を数体相手にした時、五条暁としての最高記録は5連続となっている。

 

「おはよう」

 

「おはよう、休みにしては今日は早いわね」

 

俺を出迎えたのは台所で朝食を作ってる長い白髪を束ねている女性の姿。俺の母親……五条静江だ。

 

 

「うん。ちょっと用事があって十一時までにはいかねぇと」

 

「あらあらぁ、もしかして女の子?」

「………そんな所」

 

「うふふ、まぁ暁の性格ならそうじゃな……暁、今なんて言ったの?」

 

「…まぁ、昨日色々あったんだよ。アレ関係で相談された」

 

「……!その子も…見える子なの?」

 

「ああ、だから昨日御札と呪具を作って、相談と同時に渡すつもり」

 

 

母さんも俺と四谷さんと同じで霊も見えている。どうやら母さんや俺の先祖は呪術師だったそうで俺も遺伝して見えるようだ。まぁ、呪力を持った俺が存在してるから母さんも持っていてもおかしくないと納得している。

そして母さんも呪力を宿してた。術式は持っていないが母さんはアクセサリー関係の仕事をしており、有名な企業に勤めている。

 

 

「そう、わかったわ。それじゃあ早くご飯食べちゃいなさい、待ち合わせ場所には男性が早く着くのが常でしょ」

 

「わーたよ」

テーブルに設置された椅子に座り、テーブルの上にあるのは鮭の塩焼き、味噌汁、ご飯、納豆などのシンプルな食事だ

 

 

 

 

「いただきます」

 

手を合わせ一礼すると俺は味噌汁から手をつける。うん……今日も母さんの作るご飯は美味しい

 

家柄は最悪だったらしいが、実際の五条悟の両親がどうかはわからないけど、俺の両親は愛情を注いで育ててくれている。しかも母さんは若くみえる。

40代とは思えないスタイルしてるし、過去に姉弟と間違われる事もよくあった。

取り敢えず食事を終え、顔を洗い歯磨きをして着替え、時間がある為テレビを見て暇を潰し、頃合いの時間で部屋から退室する

 

 

 

 

「あっ、暁!」

 

「ん、なに?」

 

「今日もし寄ることがあったらおしり大福買ってきてくれないかしら?」

 

「いいよ、それだけ?」

 

「うんそれだけ、それじゃあデート楽しんでいらっしゃい」

 

「デートじゃねぇよ…ったく、んじゃいってくるわ」

 

「いってらっしゃい」

余計な事を言われ取り敢えず俺はあるケースから黒いレンズの特徴的な眼鏡をかけ、外出する。

 

「アナタ、女の子に興味を示さなかった暁にも、春が訪れるかもしれないわ…」

 

静江はある遺影に向かい、報告するのだった。

 

 

 

 

 

 

「さてと…行きますか、しかし、やっぱこれがあった方が落ち着くわ」

 

俺は真っ黒のレンズが特徴のサングラスを身につけている。流石に学校にはかけられないので裸眼でいるが、プライベートの時は常に身につけている物だ。因みに度はなくレンズは真っ黒で普通なら何も見えないが、俺は六眼がある為普通に見える。

 

因みにこれをかけると怪しい人と思われるから好都合だ。仮に外した時の反応が凄まじいが…

 

一先ず俺はバス停に向かう。ここに来るまで小物の霊を何体か見かけるが、別に害はない為スルーしている。中にはしっかりした人の霊ともすれ違うのもよくある事だ。物心がつく時から見えていたからもう慣れている。

 

「御札はともかく、これ…効くといいけど」

 

昨日作った物の事を考えながら歩いていると、バス停にたどり着いていた。

数分待っていると○✕駅に向かうバスが来て、Sui○aをかざし俺は乗り込む。

 

 

「一応四谷さんにも連絡しとくか」

 

俺は昨日連絡先を交換した四谷さんに連絡する

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ(やっぱり見えるか……)」

 

私は四谷みこ、最近霊が見えるようになった普通の女子高生だ。朝一にカーテンを開け周囲を確認すると、朝一にゴミ捨で霊がいるのを見てしまうのが日課となってしまった。偶に弟の恭介が起こしに来る事もあるけど、人か霊か見分けがつかない時もあり……、感覚もおかしくなってきている。

 

「(そろそろ行ったほうがいいよね……)」

 

 

「姉ちゃんどっか行くの?」

 

私は時計を見て玄関に向かうと、少し歳の離れた弟、四谷恭介に話しかけられた

 

「…う、うん、ハナと買い物に」

 

「一緒にゲームするって言ってたじゃん、別にいいけどさ」

 

「あ、ごめん恭介」

 

「いいってば…一人でも充分楽しめるし」

 

そう言って恭介は背を向けリビングに戻っていった。正直今から男子に悩み事を相談しに行くなんて言えない。

私は昨日貸してもらったタオルと折りたたみ傘も持参し、靴を履いて外に出てバス停に向かう

 

 

トゥルリン♪〜

 

バス停に向かう途中スマホから着信音が鳴った。スマホの画面を開くと五条さんからのものだった。

 

「(五条さんから…)」

 

アプリを開き内容を見ると、『今バスに乗って向かっているけど、もう着いてる?』と書かれていた。

 

「(これ、いまの時間だと多分同じバスで…)」

 

私は取り敢えず『今バス停に向かっています。多分私も同じバスに乗ると思います』と返信し、直ぐに既読マークがつくと『OK』と返事が返ってきた。

 

「(一体どんなこと話すんだろう。昨日の五条さんのアレも気になるし…)」

 

私は昨日の五条さんが起こした不思議な現象が頭から離れなかった。昨日、私は五条さんに言われ、手に触れようとしたけど、その手は一向に届くことなく停滞していた。と言うか触れることすらできなかった。

 

正直言って今でも信じられない。考えついたのは超能力の類と推測している。正直信じない方だけど…五条さんが見せたオーラみたいなものも見てるから信じるしかなかった。今日の相談で能力について話してくれるらしいし。

 

そう考えていたらバス停につき、五分近く待つとバスが来て、私は乗車する。

 

 

「あっ…五、条さん?」

 

「四谷さん、どうしたの?」

 

乗車して直ぐに周りを見渡したら特徴的な白髪の男性がいた。しかし、その目には黒いレンズのサングラスを身につけており胡散臭い雰囲気を漂わせていた

 

「ああ、もしかしてサングラス?」

 

私の気持ちを察したのかサングラスを下に下げると綺麗な青い瞳が露わになる。

 

「取り敢えず座りなよ、後ろも控えてるし」

 

「あっ、す、すみません」

 

一緒に乗車してきた人に謝罪しながら、私は五条さんの隣に座る。バスに乗ってる時も霊が乗ってくる事もあるから、油断はできない。

 

私達を乗せたバスは○✕駅に向け発進した。




暁は五条悟能力をもらい転生していますが、能力は呪力の核心を掴んだ状態、六眼、術式順転と術式反転、虚式、領域展開もつかえる状態で転生しています。

ただし本人は使いこなすのに時間をかけました。力の匙加減がうまくできていなかったからです。

ワンチャン領域展開は使う可能性はありますが、周りの被害が出る赫、蒼、茈は難しい所です


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悩み相談

「………」

 

「………」

 

乗っているバスの窓からは街並み景色がひろがっている。今回は隣に座っている四谷さんの相談を聞くことになり、○✕駅前に向かっている途中だ。

 

 

「マジ?ありえないよね?ウケる!」

 

「(ウルセェ、マナーくらい守るか声量落とせよ。まぁ、それだけじゃねぇが……)」

 

「……」

 

電話に出ている一人の学生にイラつきながら内心で愚痴る。だが俺たちが無言でいる理由はもう一つ…

 

 

『キャハハハハハ!!』

 

『アリエナイヨネ?』

 

『ドウオモウ?』

 

『マジウケル!』

 

真後ろの席に四つ首の霊がいるからだ。その為無闇に会話もできない状況だ。

 

「(この声、私と五条さんにしか聞こえてないよね。それにしても五条さん…すごく自然体…本当に後ろにいる霊が見えない人みたい)」

 

「(この状況じゃ祓うのは難しいな……かと言って四谷さんもそんな長くはもたない、負担もかけさせるわけにもいかねぇ)」

 

隣にいる四谷さんはなんとか冷静で聞こえないフリをしているがいつまで持つか時間の問題。すると俺たちの席の間に首を通してきた。

 

 

「(怖い、怖い怖い怖い怖い……五条さん)」

 

みこは見えないフリを継続するが、やはり怖いものは怖い。すると一つ首がみこの眼前に迫る。

 

『アリエナイヨネ、ドウオモウ?ネェ?』

 

「四谷さん、目、閉じてて」

 

俺は四谷さんに目を瞑るよう促すと目を瞑り、俺は腕に呪力を纏わせ、四谷さんの眼前に迫った四つ首霊の一つ頭を掴み、そのまま頭を力を入れ握る。もちろん周りからは不自然に思われないようにやっている。

 

そして霊に向け呪力の圧を仕掛けると霊はまるで金縛りに合うかのように動かなくなった

 

俺は「これ以上居座るなら祓うぞ?」と無言で圧にのせ伝える。すると四つ首の霊はガタガタと震え出した。

 

そして俺はこの霊にしか聞こえない声量でいい放つ。

 

「悪いけど、見逃す代わりに乗車料もらおうか」

 

俺はそのままつかんでいた一つ首を握りつぶし、繋がっていた一つ首が消滅する

 

『ギッ』

 

『ギャァァァ!』

 

『ヒィィィ!!』

 

四つ首霊は三つ首となり、その場から逃げるように車体を透け、バスから飛び降りた。

 

「(ふぅ、なんとか目立たず追い払えたか…)」

 

「ありえなくね⁉︎それマジ⁉︎」

 

まだ通話してたのかよ、それに四谷さんを見ると震えており、閉じている目には涙を溜めていた。無意識なのか俺の手を握って離さないし、多分この声も目を瞑ってるから霊の物と勘違いしているのか。

 

改めて思うと本当に誰にも相談できず、一人で耐えてきたんだな、相当怖かったよな………仕方ない

 

「うんっ、あははは!なにそれマジウケるー」

 

「ねぇ、君…」

 

「はぁ…なに、こっちはあんたの相手してるひ……」

 

暇はない、そう言おうとしたのだろうけど、サングラスを外した俺の顔を見た途端言葉が詰まってしまった

 

俺はすこし笑みを浮かべながら静かにと、口元に指を立て静かにとジェスチャーで伝えると、女子学生はすぐに頬を赤くし…

 

「は、はい……ご、ごめん、一旦切るわ(サングラスしてて怪しい人と思ってたけど、白髪の超イケメンなんですけど⁉︎俳優さんか何かかな?どうしよう、後で声かけようかなぁ。けど、隣にいる人…彼女さんかな?手、握ってるし)」

 

女子学生は直ぐに通話をやめ、スマホの画面を見つめ始める。

 

「(はぁ、精神的にキツいな……コレ)」

 

乗車マナーは大事、しっかり伝わったようで良かったがさっきの注意の仕方は精神的にキツい。案の定俺の顔見て顔真っ赤にしたが……まぁ、これで四谷さんの負担も減ったと思えば良しとしよう

 

「四谷さん、目…開けていいよ」

 

「………」

 

「大丈夫?」

 

「な、なんとか……その」

 

「場所が悪いから祓わなかったけど…一応追い払った。しばらくは大丈夫なはずだ」

 

「あ、ありがとうございます」

 

「礼はいいって……それより」

 

「?」

 

四谷さんは俺が向ける視線につられ、視線を向けると、俺の手をがっちり掴んでいたのに気づくと、徐々に頬を赤くし、ばっと手を離した。

 

「ご、ごめんなさい……!私、なにを」

 

「気にしなくていい、かなり耐えていたのも見てわかっていたからな」

 

「す、すみません(私、無意識に異性の手を握ってたってこと?やば、めちゃ恥ずかしい)」

 

「だから謝るなって(四谷さん、意外と握力強かったな…何かやってたのか?)」

 

見た目に反して握力が強いことに少し驚いた暁は少し痛む腕を密かにさする。

 

 

【次は〜○✕駅前〜】

 

「あっ次」

 

「やっと着いたか」

 

その後は目的地のバス停に着き、俺たちはス茶葉マックスに足を運ぶ。

 

 

予定より早くス茶葉マックスに着き、相変わらず俺の姿は人の目を集めてしまう。まぁ目立つ見た目もしてるから慣れてはいるが…

 

俺たちは抹茶ラテを頼み空いている席に座る。周りにも話している人がいるので、俺たちが今から話す内容を不自然には思われないだろう。

 

 

「ふぅ、これで落ち着きながら話せる。取り敢えず四谷さんが質問する形でいいよ」

 

「は、はい。あっ、その前にこれを」

 

四谷さんは袋を俺に渡す。中身は昨日俺が貸した折りたたみ傘とタオルが入っていた。

 

「タオルもちゃんと洗ってあります。昨日は本当にありがとうございました」

 

「どういたしまして。さてと、取り敢えずそっちから話していいよ」

 

俺は傘とタオルの入った袋を受け取り、抹茶ラテを一口飲む。うん、ほんのり甘いこの味が癖になる味だ。

 

「はい、まずは……」

 

四谷さんは、俺と会うまでの事を話し始める。最初に会った時も言っていたように、彼女は本当に急に見えるようになったらしい。

ただ呪力も見えるのも気になるところだ。呪力に関しては普通なら突然見えることはない。俺も質問して何か自身に異変やおかしなことがあったのか聞くが、心当たりも何もなかったらしい。

 

「なるほどね、異変も違和感もなく突然見えるようになったことについては追々調べるとして、四谷さんの家にいる三体の霊についてだけど…」

 

「あっ、それなら昨日撮った写真があります」

 

「写真?マジで?大丈夫だったのかよ?」

 

「はい、なんとか霊を誤魔化せました」

 

よく撮ったな…怖かったはずだろうに。どう撮ったかは聞くのはやめておく。俺達が見る霊は呪霊と違い、写真や映像越しにもよく映るのだ。テレビを見る時だってガッツリ写るから見る気も失せてしまうのだ。

 

俺は四谷さんからスマホを貸してもらい撮った写真を見ると確かにソレは写っていた。

 

「(……これは、四谷さん…よく無事でいられたな)」

 

見た感じ呪霊の等級で表すと二級、準一級相当の物が写っていた。しかもこういったものは不幸をもたらすタチの悪い霊だ。普通なら四谷一家に何かしら起こってもおかしくないはずだが、そんな事を考えながら画面をスライドすると、ある姿が目につく

 

「四谷さん、この霊は……」

 

「……私の、父です」

 

「……そうか」

 

どうやら写真に写っていたちゃんとした人の霊は四谷さんの父親だったようだ。彼女からしたら…複雑な気持ちだろうな。

もしかしたら、この人が四谷家の守護霊の立場になってる可能性もなくはない

 

「うん、これなら御札も役に立ちそうだ」

 

俺はバッグから御札の入った封筒を取り出し、四谷さんの前に置く。

 

「これは…?」

 

「俺の呪力込みの御札だよ。壁に貼り付ければ守護霊を除いた霊避けにもなるし、ある程度のやつなら祓うことも出来る優れものだけど、祓う行為は四谷さんにはリスクが高すぎるからテキトーな場所に貼り付けるだけにしてくれ」

 

「わかりました」

 

「後は、はいこれ」

 

俺は四谷さんに、ある物をもう一つ手渡す。

 

「これ、ブレスレット?」

 

「手作りだけど、俺の呪力込みの呪具だよ。これを身につければある程度の奴なら寄ってくることはないはず」

 

「えっ⁉︎て、手作りなんですかこれ?い、いいんですか?こんなに貰ってしまって…実は昨日数珠を買おうと考えていたんですけど…」

 

四谷さんも驚いてる、まさかここまでしてくれるとは思わなかったのだろう

 

「ただ、俺もブレスレットに関しては自信がないから…効果検証がてら適当に歩いてみないか?四谷さんが大丈夫だったらだけど」

 

正直俺が身につけたところで意味はないのはわかっているため、四谷さんの協力も必要不可欠だった。

 

「……わかりました。協力します」

 

「本当に大丈夫か?断っても全然大丈夫なんだぞ」

 

「五条さんが一緒にいてくれるんですよね?五条さんがいてくれるだけでとても心強いですし、安心します。それに昨日言っていましたよね?《ああいう類の相手には最強だから》って」

 

「………言ってたわ。今更ながらすげー恥ずいな」

 

言ってたよそんな事、遠回しに五条悟の台詞言ってたよ。指摘されるとメチャクチャ恥ずかしい。穴があったら入りたいところだ。

 

「ふふっ!今更ですか」

 

「……やっと笑ってくれた」

 

「え……?」

 

「ここに来るまでずっとはりつめてると思ったからさ」

 

「そ、そうですか……?」

 

「最近見えるようになって慣れないのもあるけど、心配だったんだ」

 

「そ、そうですか……(気を、遣ってくれたのかな……でも、ハナと同じ、五条さんといると気も紛れてくる)」

 

「(よかった。大分肩の力も抜けてきたみたいだ)」

 

その後は四谷さんのその他悩みを聞き、俺の呪式に関しては歩きながら話すことになった。四谷さんは俺の作ったブレスレットを直ぐに身につける。

 

うん、見た目完璧…学校に身につけても多分問題はないはずだが。

 

 

「あの、何処から周ります?」

 

「そうだな、お昼も近いし…テキトーにぶらつきながら効果を確かめるつもりかな」

 

「わかりました。五条さんにお任せします」

 

「了解。しっかりエスコートさせてもらうよ…」

 

その後、二人は一旦霊の事は忘れて、抹茶ラテを飲みながら会話に花を咲かせる。周りから見ればカップルに見えたらしいが、二人はまだ付き合っていない。

 

そして抹茶ラテを飲み終え、ス茶葉マックスから出ようとするとある光景が目に入ってしまった。

 

 

 

『ユウグンハワ"ダジダゲノ"オオ!!』

 

『スキ』

 

『スキダ』

 

『イッショニイコ…』

 

『キミシカイナイノダ…』

 

『ミステナイデ……』

 

異形の女性の霊と、数人の男性霊に憑かれたカップル?に目がついた。お互い男女関係に一体何があった?

 

見た目はいいのに中身は残念とはこのことだよ。少しはあの猫好きの強面さんを見習えよ。守護霊に憑かれるほど優しい人だぞ

 

 

 

そしてあのカップル?に対して多分俺と四谷さんは同じ事を思っているはずだ

 

 

 

 

 

 

 

「「(似た者同士)」」

 

 

 

 

俺達は気にすることなく、街中を周りはじめるのだった。

 




一応暁はみこ達の同い年の設定です。

ちなみにみこは学級は何年ですか?調べても詳しい情報がないのでもし知っている方がいれば教えてもらえると嬉しいです



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心強い

「無限?」

 

「そ、昨日君が触れたのは俺との間にあった無限。あの時止まってるように見えてるけど、俺に近づくほど遅くなってるの」

 

「えっと、つまり触れた間にアキレスと亀のような事が起こってるってことですか?」

 

「そんなとこかな、理解がはやくて助かるよ」

 

現在俺と四谷さんは街を適当に周りながら俺の持つ呪力や術式である無下限呪術の説明をしている。

 

「呪力は己の負の感情から生み出す。だ、大丈夫なんですか?」

 

「まぁ、あまりいい良い感じのものではないからね。因みに俺の母さんも呪力もあるし、霊は見えてるよ」

 

「え⁉︎五条さんのお母さんもですか?」

 

「うん、と言うかうちの家系、母さん側の先祖が呪術師だったみたいでさ…そういった奴を祓う事をやっていたらしいんだ」

 

「へぇー」

 

「因みにこの目少し特殊で…六眼って言うんだけど」

 

「え?その目も何か能力が?」

 

「そ、高解像度のサーモグラフィーのように霊の禍々しいオーラや呪力の流れが容易く見える。逆に裸眼でいると視え過ぎて疲れやすくてね」

 

「た、大変なんですね。その、五条さんみたいな凄い力を持っても苦労してるんですね…」

 

「まぁね、その為にこれを身につけてるわけ」

 

俺はわかりやすくサングラスをクイっと指で軽く動かし、四谷さんはサングラスをじっと見つめる

 

「そのサングラスには一体どんな効果が?」

 

「何もないよ?まぁ、強いて言えば普通の人には真っ暗で何も見えない」

 

「え?真っ暗?」

 

「付けてみる?」

 

俺はサングラスを外し四谷さんに手渡す。俺がサングラスを外した瞬間女性からの視線が一気に強くなってきた。

 

「ね、ねぇ…あの人すごくイケメンじゃない?」

 

「うん、俳優さんか何かかな?」

 

「どうしよう、話しかけてみようかな…」

 

「ても、隣にいる子…彼女さんじゃない?」

 

近くにいる女性がこそこそ何か言っているが、俺には丸聞こえだよ。と言うか四谷さんは彼女でもねぇよ。周りの事に気づかぬ四谷さんは俺のサングラスをかける。

 

「うわ、な、何も見えない…」

 

「やばいでしょ?けど俺には普通に見えるんだよね」

 

四谷さんはすぐにサングラスを外し俺に返し、すぐにまた目にかける。

 

「大丈夫なんですか?その、学校とかに行ってる間とかは」

 

「学校でかけるわけにもいかないしね。苦労して今は裸眼でいるのも慣れてるけど…」

 

そう、流石にサングラスは学校でかけるわけにもいかず裸眼で過ごしているが、その甲斐もあって裸眼で一日過ごすのも慣れている。

 

まぁ、プライベートじゃ基本身につけているけど

 

「あのさ四谷さん」

 

「なんですか?」

 

「いつ言おうかタイミングがなかったんだけど…なんで俺に対して敬語なの?」

 

そう、四谷さんは俺に対して敬語であることが気になって仕方なかった。もしかしたら先輩の可能性もあるし、同じ学生の身、少し距離感を感じて仕方なかったのだ。

 

「え?だって私より年上ですよね?」

 

「因みに聞くけど…高校何年生?」

 

「一年生です」

 

「俺も高一…」

 

「え……」

 

なんでそんな驚くの?俺ってそんな老けて見えるのか?まぁ、元々五条悟も平均身長を超えていたらしいから仕方ないことだが

 

「もう一回言うけど、高校一年生。四谷さんも一年なら同い年なの、俺」

 

「え⁉︎私と同い年だったんですか⁉︎てっきり先輩かと」

 

すごく驚いてるよ…しかもこの話を聞いていた近くにいる女性も驚いてるし…

 

「まぁ、名前はいいとして、口調も崩しても全然平気、タメ口でも問題ないよ」

 

「け、けど…」

 

「お互い見える者どうし遠慮はなし…多分だけど、これから四谷さんと関わる事も多くなりそうだし、今のうちに親睦は深めてた方がいいでしょ?」

 

そう言って四谷さんは腕を組み考え始めた。不覚にもちょっと可愛いと思ってしまった自分がいるが、それは口に出さずに心にしまった。

 

「わかり……わかった。これで、いいのかな?」

 

「うん、大丈夫」

四谷さんは口調を崩し、敬語はやめて会話をするようになった。

 

 

 

「あっ、そうだ…これも言っておかないといけないんだった」

 

「?」

 

「忠告なんだけど、心霊スポットとかいわく付きの建物には絶対に近づかない方がいい。中にはとんでもなくやばい奴もいるからね」

 

「わ、わかった。ちなみにやばいってどのくらい…」

 

「そうだな…ゲームでいうモンスターの階級を表すなら上位以上くらいのものかな…確実に何か人に影響を及ぼす類がいるからね」

 

「絶対に近づかないようにする」

 

「そうしてくれ。まっ、俺からしたらいい運動にはなるんだけどね」

 

「そ、そうなんだ(心霊スポットの霊がいい運動って…ちょっと霊には同情しちゃうな)」

 

しかし彼女は知らなかった。近いうち望まない形で心霊スポットに訪れる事になるのを

 

「あっ、そうだ…母さんからおしり大福買ってこいって言われてたわ」

 

「おしり大福?なにそれ」

 

「母さん曰く、モチモチふわふわで超美味しいらしい。俺も一度は食べてみたいと思ってさ」

 

母さんから頼まれた大福を思い出し、四谷さんははてなを浮かべる。俺も影響なのか、甘い物は好きな方だから一度は食べてみたい。

 

 

「ちょうど近くに売ってる店がある。あそこの道を抜けたらすぐに着くけど……」

 

「?どうしたの」

 

俺が動きを止めると四谷さんも足を止めて俺の方を見つめる。

 

「……あそこの道、いるね」

 

「えっ?」

 

「三、いや、四体か…」

 

「い、いるの?」

 

「うん、いるよ…そのうち一体は三体よりも気配が強い」

 

そう、俺が感じた気配は霊の気配、少しばかりタチの悪いタイプだ。俺もこう言った事に気配は敏感だ。俺が霊がいる事を告げた途端四谷さんは顔色を悪くする。

 

「正直ブレスレットの効果を試す絶好の機会だけど…どうする?」

 

そう、ここまで四谷さんと歩いて回ったが、珍しく未だに霊と遭遇することがなく、効果もわからずじまいだ。

 

「………」

 

「無理はしなくてもいい、いやだったら遠回りして」

 

「……行く」

 

「……一応聞くけど、本当に大丈夫?」

 

「正直今でも怖い。けど、今は五条さんもいるから、そんなに不安はないかな、怖い事には変わりないけど」

 

「…そっか、それじゃあ…覚悟はいいかな?」

 

四谷さんは俺の言葉に静かに頷く。それを確認して、近道を通る。

 

四谷さんは俺の隣に立ち歩いているが、服の袖を掴んで離さない、するとまず、暗い道の中、三体の霊が目の前に現れる。

 

 

「っ……」

 

「大丈夫、俺の側から離れないで…」

 

俺は反対の手で優しく四谷さんに安心させるように頭に触る。すると霊の三体は呻き声を上げながらこちらに迫ってくる。

 

「(やばいやばいやばい!こっちに来てる!)」

 

見えないふりをつらぬくが、迫ってきたかと思った霊が突如として動きを止めた。

 

「(あれ、なんで?)」

 

俺たちは気にせず道を通ると、霊は俺たちを避けるような動きを取った。

 

「(あ、あれ?離れて…いや、私達を避けてる?)」

 

「(うん、効果は有りだ)」

 

霊は四谷さんの身につけているブレスレットに気づいた途端即座に距離をとった。

 

「(もしかして、五条さんのブレスレットの効果?)」

 

「(効果有り、しかしわかりやすい霊の反応。この感じはブレスレットに込めた俺の呪力に怖がってるのか?)」

 

「(すごい、全然寄ってこない…!)」

 

取り敢えず効果有りとわかったが、あと一体、三体よりも強力な霊に効果があるかわからない。俺たちは歩いていると、シャッターの中から一体の霊が現れた。

 

『カユイ、カユイ』

 

「(なんかやばそうなのいるんですけど!)」

 

「(この感じは準、あるいは二級相当か?さぁて、こいつにも効果はあるかな…)」

 

俺は分析しながら霊を見据えるが…霊は俺たちを見る、いや、正確には四谷さんの方に視線を向けた

 

『カユイ、カユイ』

 

「(こ、こっち見てる。ご、五条さん…)」

 

『カユイ、カユ……』

 

カユイと呟きながら左手を開いたり閉じたりと繰り返していたが、突如として動きを止めた。

 

「大丈夫、四谷さん?」

 

「だ、大丈夫…平気」

 

「ならいいけど…このまま行ける?」

 

「……うん、大丈夫」

 

俺達は霊に見える事を悟られない様に会話し、四谷さんが覚悟が出来たのを確認してそのまま歩行を再開する。このままいけば目の前の霊に当たるが、普通なら霊を透けるが、気持ちとしても嫌だしぞっとする。

 

『カユイィィー!』

 

すると近づくと霊は慌てた様子でシャッターの中に戻っていった。

 

「(に、逃げた?)」

 

「(二級相当でも大丈夫そうだ)」

 

と言うかなんだカユイー!て。まぁ、霊は限られた言葉しか喋らないから仕方ないが今の逃げ方は可笑しかったぞ。そのまま俺達は出口へと向かう

 

「ふぅ、なんとか切り抜けたみたいだね」

 

「………」

 

「四谷さん、大丈夫?」

 

俺は四谷さんが無言でいる為心配するが、身体をプルプルさせながら

 

「ん……大丈夫」

 

「全然大丈夫じゃないよね⁉︎」

 

体震わせながら泣いてるし!やばい、これどうしたらいいんだ。女の子が泣いた時の対処法なんてしらねぇぞ俺!!

 

 

「ご、ごめん、安心したら急に…」

 

「えっと、その…」

 

どうしたら良いか分からず、俺は取り敢えず頭の上に手を乗せ、優しく撫でる。

 

すると不思議そうに俺を見つめる四谷さん。

 

「ご、ごめん…その、四谷さんに無理をさせて…」

 

「平気…五条さんがいたから、とても心強かった」

 

頭を撫でられているみこは安心したのか表情は安堵していた。それを見た暁も頭から手を離す

 

 

近道の通路から出たのち、お店に立ち寄り、おしり大福をイチゴも一緒に買う。暁がスマホの画面を見ると十二時間近だった。

 

「そろそろお昼だけどどうする?」

 

「え、もうそんな時…」ク〜

 

安心したのか、四谷さんのお腹から可愛らしい音が鳴った……。

 

「………」

 

「あうぅ………」

 

恥ずかしいのか、お腹を押さえ顔を赤くするみこを見た暁は

 

「はは、近くにあるファミレスで何か食べよっか…」

 

「う、うん」

 

その様子に笑みを浮かべて、暁は優しく諭す。二人は近くにあるファミレスへと向かうのだった。



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強か

お気に入り登録者が過去最速で千人を超えたのと、評価者が過去最高の記録が出ました。

呼んでくれた読者の皆様、本当にありがとうございます!


  

「なに食べる?」

 

「私は…」

 

俺と四谷さんは近くのファミレスにより、メニュー表を見ながら雑談でもする。四谷さんは唐揚げ定食、俺はハンバーグ定食を注文する。

 

「五条さん……」

 

「ん、なに?」

 

「その……」

 

「もしかして霊が全くいないのが気になる?」

 

「う、うん」

 

「…御札を一枚、テーブルの裏に貼らせてもらってるからね」

 

「御札を?」

 

「一応効果も確かめた方がいいし、霊なんて気にせず食事もしたいだろ?」

 

そう、俺達が座っている席のテーブルの裏には御札を貼り付けている。もちろん出る時には剥がすが、中に入ってくる様子がないのを見るとしっかり効果はある様だ。

 

「……そう、だね。ありがとう、五条さん」

 

自然とみこは息を吐き。身体の強張りが幾分解ける。注文した料理が届き、箸を進ませるとみこは口を開く

 

 

 

「今日、改めて思いましたが、五条さんは見慣れていますよね……アレを」

 

「物心つく頃から見えてたからね。幼い時は苦労したさ……この見た目のせいか、いじめられてた時期もあったしね」

 

「……っ、ご、ごめんなさい」

 

それを聞いて四谷さんは謝ってくる。実際俺の見た目は五条悟で日本人離れをしている見た目のせいか、気味悪がられいじめられていた。

 

「別にこの見た目が嫌いなわけじゃないし、四谷さんが気にする事ないよ。それより今は食事を楽しもう……」

 

俺達は会話をやめ箸を進める。たまに食べる外食のごはんも美味しいものだ。因みに食事の際はサングラスは外している。

 

 

食べ終えた俺達は飲み物を飲み、ゆっくり寛ぐ

 

「五条さん…今日はありがとう」

 

「どしたの急に…?」

 

「……私、見えるようになって今までこういう話ができる人いなかったから……しかも、色々としてもらって申し訳ないと言うか…」

 

「仕方ないさ、ああいったものは普通に話せる様な事でもない…はっきり言って俺も家族以外でこうやって話すのも四谷さんが初めてさ…」

 

「そうなの?」

 

「うん、探せばやつらも見える人もいるかもしれないけど…こうやって遠慮なしに話すのは初めてだよ…」

 

「……私、ふと思ってしまうの。あいつらが何かして家族や、友達に何かあったんじゃないかって。ずっと元気でいて欲しい。私が見えることがバレてそのせいで友達や家族に何かあったらと思うと、それは、私のせいじゃないのかって……」

 

 

「……強いんだな」

 

「え?」

 

「君は強いよ。強くて、友達や家族を大切に思う優しい女の子だよ。だからさ、もう、苦しいならば苦しいと、助けて欲しいなら、助けてって言って良いんだ。俺の力の限り四谷さんの助けになるよ。だって俺……最強だから」

 

俺は四谷さんの頭を撫でる。撫でられている四谷さんは何だかいろんなモノが込み上げてきている様子だった

 

 

「……ありがとう、五条さん」

 

四谷さんの言葉が少し震えていた。こんなことを言ってもらえるとは想像もしていなかったのだろう

 

俺は呼び出しボタンを押し、チョコレートパフェを注文した。

 

「あの、五条さん?」

 

「甘いものは好きか? 頑張ったご褒美だよ。頑張ったな四谷さん、見えてまだそんなに経っていないのに、あいつら相手によく頑張った」

 

「…………」

 

「それに俺、四谷さんみたいな女の子……結構好きだよ」

 

「ッ⁉︎」

 

暁の言葉にみこは突如として顔を真っ赤にした。

 

どうしたんだろう突然…そう思いながら暁はみこの額に手を当てる

 

 

「?大丈夫四谷さん?顔真っ赤だけど」 

 

「へ、平気!な、なんでもないから(その顔でそれはずるい……)」

 

「?、ならいいけど……」

 

 

その後、暁とみこは今後について話すようになった。

 

「今後俺が四谷さんの頼みを引き受けるとして、結局のところ四谷さんには無視を続けてもらうしかないね。一応ブレスレットと霊避けの御札があるとはいえ、ブレスレットも何処まで通用するかもわからない。もしやばいやつがいたら俺に助けを求めてもらえば駆けつけて対処するって事でいいかな?」

 

「そうなるかな、その時は頼りにしてるよ、五条さん」

 

「任せとけ…」

 

「あの……それと」

 

「何?」

 

「……うちにいる霊はどうしたら」

 

「……それについては御札を使えばなんとかなる。基本害のある霊は嫌がるから…貼るだけでも効果はある」

 

「その、父とかに影響は……」

 

「それはないかな、君の父親はどっちかと言うと守護霊の立場を担ってる。本当なら四谷さん達に何があってもおかしくはないんだけど、君の父親が…家族を守っていたみたいだ」

 

 

「……お父さん」

 

四谷さんは目尻に涙を溜めてうつ伏せる。彼女の事情に無闇に干渉はしないさ。

 

 

「お待たせしました。こちらチョコレートパフェ二つです」

 

「ありがとうございます」

 

「わぁ、美味しそう」

 

店員から渡されたチョコレートパフェが来たので手をつけようとした時。

 

「あれ、みこじゃん!」

 

「え……」

 

「ん?」

 

声をした方を向くと、 幼く可愛らしい顔立ち、それでいて肉感的で豊麗な身体つきの少女がいた

 

 

「ハナ⁉︎なんでここに…」

 

 

「(見た感じ四谷さんの知り合いみたいだが、ていうかそれどころじゃねぇ!なんだこの子から溢れ出てるオーラは⁉︎)」

 

俺は彼女から溢れ出ているオーラに驚くしかなかった。こんなオーラは見たことがない…

 

「(呪力…じゃねぇな、これは…生命力なのか?にしてもすごい量だな…)」

 

六眼で観察していると、生命オーラと理解する。しかしその半端ない量に俺は驚くしかなかった。

 

「(だが、この子、色々とまずいな…蛾みたいに霊を惹きつけやすい体質みたいだな)」

 

「ねぇみこ、その人は誰?てかメチャクチャイケメンじゃん!」

 

「えっと、その…彼は」

 

「昨日雨に濡れてる四谷さんとバス停で会ってね。傘とタオルを貸してお礼がしたいってことでここで話をしてたんだ」

 

「そうなのみこ?」

 

「う、うん…そう、そうなの(ナイス五条さん)」

 

「そうなんだ。私てっきりみこの彼氏かと思ったよ」

 

「ち、違うよ」

 

「生憎、俺達はそう言う関係じゃないかな」

 

実際そう言う関係でもないのは事実だ。今の関係性は昨日会ったばかりなので話し相手と言う程度の相手だ。

 

「あ!このお店限定のチョコレートパフェだ!」

 

するとハナと呼ばれた子は、四谷さんの隣に座り込みパフェを見つめる。

 

「もうお腹ペコペコだったんだよぉ、どうしよう、食事の前にデザート頼もうかなぁ…」

 

「は、ハナ…」

 

「あはは、元気がいいんだね」

 

「あっ、自己紹介がまだでしたよね。私みこの同級生で親友の百合川ハナです!ハナって呼んでください!」

 

「ご丁寧にどうも、俺は五条暁…年は君らと同じ、高校生だよ」

 

「え⁉︎私達と同い年だったんだ!」

 

「驚くよね?学生証もあるし見せようか?」

 

取り敢えず俺は学生証をハナさんに見せる。ハナさんは明るく賑やかしい性格が現れている。四谷さんと仲がいいのもわかる気がする。

 

「(それに四谷さん、ハナさんのオーラは見えていないのか?)」

 

これだけ溢れ出ているオーラを認知していない事が気になるが、今は後回しにしよう。

 

ハナさんはとんでもない量を食べ更にはデザートも平らげた。見た目によらず食欲も旺盛だった。だが更にオーラの量が増したのを見て更に驚くことになってしまったが、彼女のオーラは食事がエネルギーの元となっているのか?

 

俺は奢ることで会計を済ませファミレスから出る。

 

 

「はぁ、食べた食べたぁー、暁さん、ありがとうございます!」

 

「いいよ、と言うかあれだけの量をよく一人で食べられたね」

 

「あはは、初めて見る人は驚くよ」

 

あれだけの量を食べる女の子は初めて見た。下手するとデカ盛りのある飲食店も制覇出来るんじゃないかと思うほどの食欲だった。

 

 

「さて、俺はそろそろ失礼するよ…」

 

「え?もう行っちゃうんですか?」

 

「うん、四谷さんの用件も済んだし、邪魔者はお暇させてもらうよ」

 

「五条さん、今日はありがとう…」

 

「どういたしまして…それじゃあまたね、二人とも」

 

俺は二人から背を向け後はその場から離れる。

 

 

「ねぇみこ、実際はどうなの?」

 

「?どうって何が?」

 

「暁さんだよ!みこが男子にあれだけ心を許してるの珍しかったから!」

 

「別に五条さんは……」

 

 

—————それに俺、四谷さんみたいな女の子……結構好きだよ

 

「〜〜ッ!」

 

みこは暁の言葉を思い出したのか、頬を真っ赤にしていく。

 

「おやおやぁ、これは脈ありですなぁ?」

 

 

ハナは初めて見せる反応にニヤニヤしながらみこを見つめるのだった



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それぞれの日常

どうも、俺は五条暁。四谷さんと会ってからも変わらない毎日を過ごしている。メールのやり取りをする程度や最近帰りのバスでよく会うようになったりでその他は何もない。まぁ、唯一家族以外で初めて隠し事をせずに話せる人物でもある。

 

俺は一度死んで五条悟の能力をもらい転生した事は覚えているが、生前の事は全く覚えていない。

 

幸い、家族やご近所を始めとした優しい人々に恵まれていたけど。ただ、父さんは俺が12の時に病気で亡くなった。俺と母さんは霊が見えるから、父さんの霊は認知出来ていて、最後は笑顔で成仏して行ったのは頭の中に今でも焼き付いている。

 

そして俺は呪術の鍛錬は幼い頃からやっていた。ただ、『術式順転・蒼』『術式反転・赫』『虚式・茈』の扱いには悩まされた物だ。周りに被害が出かねない術式で力の加減も難しい。その為特訓のために場所も選ぶのも大変だった。

けど、その他応用技は難なく出来た。特に瞬間移動なんて便利だよ…以前、危険とされた心霊スポットに赴いた時、特級並の霊を相手にした際に赫を使ったことがあったが、建物ごと崩壊してしまった。

 

無限をオートにしていた為無傷で済んだが、使い所は慎重に選ばなければならない、ましてや茈は地を更地にしてしまうほどの威力のため、絶対に身近に人がいる場所では使わないと誓っている。

その反面領域展開は支障も無く使えるから使い道は多い、けど滅多に使う事はない。

 

ただ、術式の鍛錬楽しかったし、出来たら出来たで達成感で充実していた。

 

基本俺は人に害を及ぼす霊を祓っている。ただ人に視認されないように祓うのも簡単だが、結構大変なのだ。

 

 

そして変わらず学校に行くが

 

 

「見て!五条君よ!!」

 

「相変わらず王子様みたいで素敵だわ!」

 

「迎えにきたよ、なんて言ってくれないかな〜」

 

「今日誘ってみようかな…」

 

「ちょっと!何抜け駆けしようとしてるのよ!」

 

 

 

「イケメンは死ね!」

 

 

 

このように毎日のように女子からの視線や声が聞こえるが、そして最後のやつ、俺の苦労を知らないだろ、呪ってやろうか?

 

 

 

 

 

 

「おはよう」

 

「おはよう」

 

「おはよう暁君」

 

教室に入りクラスメイトに声を掛けられ、俺の挨拶を返す二人。

 

 

「暁、珍しく眠たそうだね」

 

「そう見えるか?」

 

「うん、僕はそう見えるかな」

 

挨拶を返した二人は乙骨憂太、そして憂太の彼女である祈本里香だ。この学校の唯一友人であり、気安く話せる仲だ。

 

「また勉強?」

 

「そんなところ、やる事なんてそれしかないしね」

 

「あまり夜更かししちゃダメだよ、憂太も心配するんだからね」

 

「わかってるって…それで、お前ら最近どうなんだ?」

 

「うん!私と憂太はラブラブだよ!」

 

「里香…嬉しいけど…ちょっと恥ずかしいかな」

 

頬を赤くし惚気ている二人、実際憂太は非力そうな見た目をしているが合気道をやっており、やり始めてたった数ヶ月で達人レベルになるほどだ。

憂太曰く「里香を守るために始めた」だそうだ、男前の理由だよ。二人は幼い頃、大人になったら結婚する約束をしているらしい。

この調子だと、将来は間違いなく結婚するだろう。

 

『オハヨ』

 

『オオオオ』

 

『シュッセキヲカクニンスルゾオオ』

 

「(変わらずいるねぇ、この地は昔何かあったのか?)」

 

そう、見える者からしたら霊も普通にいるのだ。二人はみえてはいないが、危害を加える気配があるなら即祓う。

 

 

ピロン♪〜

 

「(ん?誰からだ?)」

 

スマホを見ると、メールの当て主は四谷さんからだった。

 

 

「(四谷さん…)」

 

『朝早くごめんね。五条さんからもらった御札とブレスレット、すごい効果だった。家には父を除いた霊を見ることが無くなった』

 

「(よかった。問題なく効果はあったみたいだ)」

 

どうやら御札効果についての事だった。この様子だとブレスレットも問題なく効果を発揮しているようだ。ただ一級と特級並の霊相手に通用するかわからないから油断は禁物、俺は取り敢えず『いくら霊が避けるとはいえ、どの相手まで通用するか分からないから油断は禁物だよ』と返信するとすぐに既読マークがつき『了解』と返事が返ってきた。

 

 

「誰からだったの?もしかして女の子?」

 

「ん?教えなーい」

 

「えー、教えてくれたっていいじゃん!」

 

「こら里香、ダメだよあまり他人の事情につけ込んじゃ…」

 

「ムゥー」

 

 

ちょうど会話が一区切りしたときに担任がやってきたので、席に座り直した。

 

 

ごく普通の授業風景が広がるが、霊がいるせいで俺にとっては普通の授業ではなくなっている。まっ、その時は霊にだけ殺気を飛ばし失せてもらっている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん、うう…はぁ、ん…むり…だめ…だめ…助けて、五条さん……」

 

「………」

 

「ん……」

 

少女はゆっくり目を開け、目の前に誰かいるが暗い為顔が見えずカーテンを開ける。

 

「おはよう姉ちゃん」

 

「変な起こし方しないでよ恭介…心臓止まるかと思った…」

 

「寝言言ってたけどやらしい夢でも見てたの?てか五条さんってだれ?」

 

「っ!」

 

みこはクッションを投げる構えを取ったが既に恭介は部屋から退室していた。

 

「………はぁ(寝言…ヤバい夢見てた気がする…て言うか私、五条さんのこと呟いてたの?)」

 

私、四谷ミコの日常は今年に入って大きく変わった。霊が見えるようになり、毎日神経をすり減らしながら気付かないふりをする。もし目を合わせて見えることがバレたらヤバい。当然のように見た目も怖いし、超怖い。ただ中にはしっかりした霊や猫の霊も見たこともある。私の父がいい例だ。

 

誰にも、家族にすら相談できない悩みだったのだが、つい最近悩みを話せる人と会うことが出来た。

 

名前は五条暁さん。

 

白一色の髪に、空色のような青い瞳、背は男性の平均身長を超えており、私と同じ高校一年生だった。

誰もが見てもイケメンと思える見た目だが、私はそう言った人は女性に対してグイグイして性格も怪しい感じなイメージが強かったけど、五条さんは違った。

 

優しくて、私の悩みの相談を真剣に聞いてくれた。どうやら彼の御先祖は呪術師という昔霊を祓うことをしていたらしく、お母さんも見えているらしい。

 

そして私にとっても常識が覆る事にもなった。五条さんは特殊な能力を持っており、呪力という己の負の感情から生み出す力を持っているらしい。

その呪力を纏えば霊に触れることも可能なようで、最初に会った時は脚に纏わせ霊に目に見えない踵落としを喰らわせていたのだから。

 

そして五条さん固有の能力、正式には呪術と呼び、五条さんは『無下限呪術』と言う術式を持っているらしい。

 

能力は収束する無限級数を現実にする能力で、五条さんの周りには術式によって現実化させた「無限」があり、打撃や霊、呪力による攻撃、瓦礫なども近づくほど無限に遅くなっていき、距離は決して0にならず、透明の壁に遮られているかのように届かなくなるらしい。実際私も経験したが今でも驚きを隠せない。

 

 

 

「家に霊がいないとはいえ、夢じゃどうにもならないか…」

 

私はベッドから立ち上がり学校に行く準備を始める。五条さんからもらったブレスレットを身につけ、いつも通り階段を降りる。

 

「おはようみこ、朝ごはん出来てるわよ」

 

「うん、わかった」

 

前までは霊が目の前で食事に舐める行為をしていたせいで食欲が出なかったが、今では霊なんて気にせず食事が出来る。恭介の姿がなかったが、もう先に学校に行っている様だ。

 

「いただきます」

 

 

私は朝ごはんをしっかり食べ終え、学校へ向かう。外では気を抜く事が出来ないが、貰った霊避けの御札とブレスレットのおかげで霊は逃げる様に避けてくれる。

 

 

「(避けてる。今日も五条さんのブレスレットが効いてる)」

 

私には五条さんの様に霊に対抗できる力はない。見えるだけで何かできる訳では無い。だって怖いから。

 

「(五条さんには本当に感謝しかない…)」

 

前に学校帰りにあった際に霊を祓っている所を見たが、殴る蹴るでお祓いするパターンが多かったのだが、軽い仕草をしただけで突然霊が祓われたりという事もあった。五条さん曰く、術式の応用らしい。

 

けど、最初に会った時の衝撃的な光景は、一生忘れないと思う。バス停につき、学校に向かうバスに乗り込む。

 

「そうだ、五条さんに報告しておこうかな」

 

私は五条さんにメールを送り、数分してから返信音が鳴り内容をみると、『いくら霊が避けるとはいえ、どの相手まで通用するか分からないから油断は禁物だよ』と帰ってきて、私は『了解』と返事を返す。

 

 

「あー……霊を気にしない日常、最高…」

 

五条さんとの相談で御札とブレスレットをもらい、帰ってすぐに御札を部屋に貼り付けるとすぐに効果が出た。父を除いた霊は叫びを上げながら家から出ていき家の中には一体もいなくなった。

 

家では貰った霊避けの御札のおかげで気を抜く事ができる。これが精神的にとても助かる。少し前まではそれすら出来なかったから。前は洗面所で待ち構えてる霊、布団に入ってくる霊、リビングに四足型の霊がいたのだから。

 

だから、五条さんにはとても感謝してる。

 

私に…苦しいならば苦しいと、助けが欲しいなら、助けてって言って良いんだって言ってくれた。本当にあの時は嬉しかったし、心強かった。

 

 

——それに俺、四谷さんみたいな女の子……結構好きだよ

 

 

「………なんで、五条さんの姿が浮かんでくるの?」

 

 

 

みこは知らぬうちに頬を赤くしていき、まだ知らぬ淡い心に…気づかずにいた。

 

 

 

 




この世界の乙骨憂太と祈本里香は呪霊が存在しない世界の二人で、今作主人公と同級生であり友人です。

祈本里香の家庭の事情は原作通り悪く、交通事故にはあっておらず無事憂太と付き合っております。今作このままいけば確実にゴールインする仲です


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気付かぬ気持ちと最強の実力

「姉ちゃんが変?」

 

「うん」

 

 

初めましての人は紹介するけど、オレは四谷恭介…普通の小学生高学年だ。最近姉ちゃんの様子が変で、突然顔色を悪くするときもよくあり、最近じゃ上の空があったりと絶対何かあったのかと思い、学校の友達に相談している。

 

「変ってどんな風に?」

 

「ため息が多くなったりぼーっとしてる時があったり…あと寝言でだめだめ…ってうなされてたり…」

 

「なるほど!さっぱりだな!」

 

「お前に聞いたオレがバカだった」

 

聞いておいて即答かよ。こいつに話したオレが間違いだった。

 

「カレシね」

 

「は?」

 

恭介に話しかけたのは同じクラスの女子だ。その発言に恭介は目を見開く。

 

「ウチの姉ちゃんもカレシできた時そんな感じだったもん。乙女って好きな人に身も心も捧げちゃうんだから!わかる?」

 

カレシ……あのねえちゃんにカレシ?そういえば前起こしに行った時五条さんとか寝言で言ってたけど関係してるのか?

 

「(学校帰り、姉ちゃんの後をつけよう)」

 

今の恭介には女子の話は聞こえておらず、尾行を決行する事を考えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うーん、あんまり役に立たなそう。やっぱり五条さんに聞いた方が良かったかな…」

 

姉のみこは書店により『超常現象怪異UMA』という本を手に取り立ち読みしていた。霊の事について少しでも知識に入れておこうと寄ったが、役には立つ内容はなかった。

 

「(五条さんからは相談、呪術について、心霊スポットやいわくつきの建物には近づくなって聞いたくらいだったから…霊の一定の行動パターンとか聞いておけば良かった。あの人いると本当に敵なしだったから…)」

 

みこは暁といる事で安心感を持つ様になったが、霊についてや、行動パターンも聞いていないので知識はなかったのだ。

 

その一方で、本棚端には一人の少年がみこを見守っていた。

 

「(姉ちゃんにカレシが…なんでオレに隠してるんだ?まさか、悪い男に騙されて……野郎ォ…許さねぇ!!姉ちゃんはオレが守る…!!)」

 

彼の中に勘違いが起こってしまい、恭介は姉を守ると誓うが、既に国宝級イケメンの最強の呪術師に守られている事はまだ知らなかった。

 

「今日五条さんに聞いてみるか…」

 

「四谷さん?」

 

みこは本を本棚に戻した途端覚えのある声に振り向くと彼がいた。

 

「五条さん!どうしてここに?」

 

片手に本を持っている暁がいたのだ。制服姿でサングラスを身につけていない為、本屋にいる女性からは視線が集まってしまう。

 

「どうしてって…新作の漫画が今日発売日だったから買いに来たんだけど……そしたら偶々君がいただけだよ」

 

「そ、そうなんだ……」

 

「なんだよ、その意外そうっていう顔は?」

 

「えっと、ごめん…本当に意外だったから」

 

「俺をなんだと思ってるの?」

 

「えっと、完璧超人?」

 

「なんで疑問系?俺だってゲームもするし、漫画だって読むわ」

 

みこは暁がそう言った娯楽にも興味があるのは意外だったらしく、知らない一面もあるとわかると、みこは笑う。

 

「ふふっ、五条さんもそういうところもあるんだ」

 

「そういったものに手は出してないと思った?」

 

「うん」

 

「まぁ、学校の友人を除いて、実際周りのやつも同じこと思ってんだろうな」

 

「五条さん、友達いたんだ」

 

「俺がボッチとでも思ったの?地味に傷つくんだけど」

 

「ご、ごめん」

 

実際俺の事をわかっているのは友人である憂太と里香だけだ。まぁ女子からしつこく何か誘われたりこそこそ何か言われたりされるから毎日が大変だ。実際過去にストーカーをされた事もあるからちょっとした事件にもなった事もある。

 

「それで、なんで四谷さんは心霊関係の本を読んでたわけ?」

 

「えっと、私最近見えるようになって悩みと五条さんの呪術しか聞いていないと思って、霊の知識がなかったから…それで本を探していたんだけど、役には立ちそうなのはなくって五条さんに今日聞こうと思ったら…」

 

「俺が丁度来たってわけか…」

 

「うん」

 

「なるほどね、ちょうど近くにカフェもあるしそこで話をしようか」

 

「わかった」

 

暁は取り敢えず漫画を購入し、外で待っていたみこと一緒に近くにあるカフェへと向かった。

しかしそれを見守っていた人物は空いた口が塞がらずただ黙って見守るしかなかったが。

 

 

「(だ、誰だあの超イケメンな兄ちゃんはぁぁーー!!)」

 

内心でかなりテンパっており、動揺していた。まさかあれだけのイケメンが姉のカレシとは思ってもいなかったのだ。

 

「(って!それどころじゃねぇ、話し声は聞こえなかったけど、なんの本読んでたんだ?)」

 

 

取り敢えずこれ以上尾行を続ければバレると判断し、恭介は尾行を諦めたが、先程みこがいた場所の本棚の前に立ち、姉が読んでいたらしき本を手に取る、内容は『恋人を喜ばせる99の方法』と書いてあり、その本を読むと、ワナワナと体を震わせた。

 

 

 

  

 

 

 

 

 

その夜、みこは暁とのカフェで話を済ませ、家に帰宅し、夕食を済ませお風呂で湯船に浸かっていた。

 

「ふぅ…(五条さんの話、やっぱり分かりやすかったな。お守りがあるとはいえ、今後も霊には見える事を悟られないようにしないと、それに) あー…家の中で寛げるの、最高!」

 

みこは手足を伸ばしながら存分に湯船で寛いでいた。暁からもらった霊避けの御札のおかげで、家にいる霊は父以外見ることはなくなった。

 

「(霊の共通点、見えるものには襲いかかってくる……か)」

 

みこはカフェでの会話を思い返していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「なにを頼む?」

 

「えっと、私は紅茶とチーズケーキを…」

 

「じゃあ俺もチーズケーキと、飲み物はココアで…」

 

私は紅茶とチーズケーキを頼み、五条さんは同じチーズケーキと、飲み物はココアを注文した。

 

「五条さん、霊についてだけど……何か似たような共通点はなかったりしない?」

 

「共通点?」

 

「うん、例えばお化けは夜に活発に動いたりとか…そんな感じの」

 

私は例えを五条さんに伝えると考える仕草を取る。

 

「共通点…か、霊の特徴は各それぞれだし共通点って言われると……っ!四谷さん、今まで遭遇した霊に、《お前、見えてる?》とか言われたりされなかったか?」

 

「っ!うん、言われてる」

 

「その共通点は…認識したら襲ってくる。認識するまで襲ってこない。つまり、分からないふりをすれば襲ってこない。四谷さん、俺が君と初めて会った時、君に憑いていた霊が俺が見えてる事に気づいた途端、襲ってきたのがいい証拠だ」

 

「た、確かに…も、もし、私が見えることがバレていたら…」

 

「恐らく物理的には問題はないだろうが、何かしら影響が起こる可能性はあるな…ただ、俺もどうなるかわからないからあくまで推測だ。一応ブレスレットもあるとはいえ、見えないふりは継続していた方がいい」

 

「う、うん」

 

「後、小さい霊、小さいおっさんのような霊を見ることがあると思うけど、基本その近くに大きめの霊もいるから注意してて」

 

「わかった」

 

その後は普通に会話をしながらケーキと飲み物を飲み、その日は途中まで一緒に帰り解散した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「(小さい霊の近くに、大きい霊もいる…か)」

私は五条さんから教えてもらったことを頭の中で整理する。改めてどんな存在か共通点も分かっただけでも少しはマシになってきた。

 

「(五条さんのブレスレットのおかげで近づかなくなったとはいえ、それでも怖い事には変わらないけど)」

 

「姉ちゃん!たまには一緒に……」

 

突如風呂場の扉が開きバシャン、と音がなるほどみこは驚き湯船に一瞬沈んだ。

 

「きょ、恭介、ビックリさせないでよ!(心臓に悪い!)」

 

「あ、ごめん(よかった…キスマークは無いっ…ってかオレってついこないだまでいっしょにはいってたのに……あれっ、急にはずくなってきた…)やっぱ…オレあとで…」

 

「いいよ、もう入ってきてしまったんだから…背中くらい流してあげる」

 

 

「え、うん…ありがとう」

 

もう恭介は入ってきてしまったので取り敢えず姉弟水入らずで背中を流す事にする。

 

「…姉ちゃんカレシ出来たの?」

 

「…何?急に…」

突然どうしたんだろう、カレシの事を聞くなんて…

 

「やっぱ出来たんだ…」

 

「いや、いないけど…」

 

「別に隠さないでいいよ」

 

「隠してないよ」

 

「ふーん…(言えないほどの関係までいってるのか?五条ってやつと)」

 

「(彼氏…か)」

 

——それに俺、四谷さんみたいな女の子……結構好きだよ

 

「っ!(まただ、あの言葉と五条さんの姿が、なんで浮かぶの?)」

 

みこは頬を赤くし気を紛らわせるように弟の背中を流すのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハックシュッ!!なんだ?」

 

一方その頃、人のいない何処かで彼はクシャミをしていた。そして目の前には武者のような異形の存在がいた。

 

 

『*#@¥$€%÷!!』

 

「ずず、何言ってるかわからねぇよ……喋るならちゃんと言葉で喋れよ雑魚」

 

霊は凄まじい殺気と黒いオーラを放出し、暁に目掛けて音の速さで武器投げ攻撃をしてくる。

 

しかし、暁に向けて投げた武器が、暁の前で静止した。

 

霊は暁へ突っ込むが、攻撃を当てることは叶わなかった。暁は霊を蹴って吹き飛ばし、

 

「まだまだ!」

 

『$€%÷⁉︎』

 

霊の背後に瞬間移動して、更に蹴り飛ばす。霊はバウンドしながら転がり、勢いが収まると、武者の霊は顔をあげ殺意を剥き出しにして呪詛を唱えるように暁を睨む。

 

「さてと、大した事ないし、そろそろ終わりにさせてもらうよ。最後にいい事を教えてやるよ」

 

そして暁は人差し指を向けると、赤黒いオーラが集まっていた。

 

「無限とは至る所にある。俺の呪術はそれを持ってくるだけ。収束、発散…この虚空に触れたらどうなると思う?」

 

それを見た瞬間霊はその場から逃げ出そうとするが既に遅かった…

 

「術式反転・赫」

 

呟いた途端、人差し指の先に集まっていた小さな赤黒いオーラが強く光を放った瞬間、大きな爆発音と共に武者の霊をのみ込んだ。

 

 

「うーん、加減してもこれか…周りは取り敢えず大丈夫…みたいだな、今回は全く人のいない場所だし。大丈夫だろう」

 

暁は両手を組み、瞬間移動でその場から離れるのだった。



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超ヤバい

評価者がついに100人を超えました。正直驚きを隠せません。

読んでくださった読者の皆様、本当にありがとうございます!


私、四谷みこの最近はいい事ばかりだ。見えるようになった霊も、五条さんからもらった御札で家では見ることはなく、毎日身につけているブレスレットのお陰で寄り付かず、ブレスレットに効果が鈍い相手は五条さんが対処してくれる。

 

最近霊関係で等級を教わり、四級から特級と五条さんは危険度を区別しているらしい。

ブレスレットを身につけて寄り付かないのは二級から下の階級で、一級から特級まではあまり効果はなかった。ブレスレットを見ると逃げるのではなく警戒はされているが近づかれることがあり、直ぐに五条さんに連絡したらすぐに駆け付け、即霊を祓ってくれた。

突然現れたのは流石に驚いたけど…どうやら呪術の応用で瞬間移動も出来るらしい…なにそれ、超羨ましい能力。

 

毎日ビクビクしないで済むようになったし、当たり前の日常を堪能してる。そして今日は…

 

「ハナ遅いな…」

 

休日、私はハナと買い物に行く約束をしており、駅前近くで待っていた。しかし時間になってもなかなか来ず、私はスマホのアプリを開き、最近のニュースなどを見る。

 

 

「(五条さん…普段休日って何してるんだろ)」

 

唯一男性友人は五条さんだけで……頼りになる人、最近は偶に勉強もしてわからないところを聞くことも増えてきた…しかもすごくわかりすい。

最近では一緒にいるハナともよく話すようになり、すぐに二人は仲良くなった。元々ハナは明るく天真爛漫な性格だから五条さんとも直ぐに打ち解けた。二人は甘いものに関しては気が合う。ただ、ハナとも会う時はよく驚く表情を見せているが、それには訳がある。

 

「(って、また五条さんの事を考えてる……どうしたんだろう、私)」

 

最近よく五条さんの事を考える事が多くなった気がする。気がついたら彼の事を考えて……なんだろう、この気持ち。

よくわからない、五条さんがよく女性に逆ナンされている姿を見かけた事がある。あの見た目だから仕方がないんだろうけど…どうも胸がズキっとする感覚がよくある。

 

 

「ハナに相談してみようかな…」

 

既に待ち合わせ場所に着いているので、ハナに相談しよう。

 

「(しかもハナ、霊を引きつけやすい体質だったなんて…前からそんな感じはしていたけど、五条さんには見えて私には見えないオーラが溢れ出てる…か)」

 

 

五条さんによれば、ハナは呪力とは違うオーラ、正確には生命オーラにより霊を寄せやすい体質らしく、たまに小さい霊が憑いているが、その小さい霊は何故か焼け焦げてしまいそのまま燃え尽きてしまう事があった。

 

ハナに憑いたりした際はブレスレットを身につけた私がハナに寄れば霊はどこかに行ってしまう。

 

私が近付けば問題ないとはいえ、ハナに霊がくっついているのは普通に嫌。先週ハナと出かけた際、数珠を買ってみたのだが、少しやばそうな霊の前には呆気なく弾け飛んだ。私のブレスレットは壊れることはなかったのだが、五条さんのブレスレットみたいに強くはなかった。この際私が持っている予備の御札を渡そうかと考えているが、見た目がマジ物だからハナが怖がる。ハナは心霊関係が苦手なため、私が霊が見える事も知らない。

 

今まで遭遇した霊は基本的に気付いてない振りをすれば乗り切れる。けど一級相当の霊に対しては効果は薄いため五条さんに連絡すればもう問題ない。霊は基本瞬殺される。

 

 

「みこーっ!」

 

「あ、ハ…………」

 

そんな事を考えている内にハナがやって来たが、みこはハナの名前を呼べず、言葉が詰まる。正確にはハナの後ろにいるソレに顔色が一瞬にして青くなり、涙目となる。

 

 

 

『*#@¥$€%÷……』

 

 

 

 

 

 

「おくれてごめーん!」

 

「何でなのっ⁉︎」

 

なんか凄いやばいやつに憑かれてきてるんですけど⁉︎これ、五条さんじゃなくても、とてつもなくタチの悪い霊なのがわかる!

 

 

 

「ワンちゃん助けてたらこんな時間に…」

 

「ど、どこでワンちゃんを…」

 

「呪いビル」

 

「何でなの⁉︎(よりによって一番近づいちゃいけない場所に⁉︎これ、絶対特級案件だって、ブレスレットの効果も効いてる気配がない…ご、五条さんに連絡しないと…)」

 

私は異形の霊に悟られないように見えないふりを継続し、直ぐに五条さんに『助けて…見た感じ特級の異形の霊がハナに憑いています』と送るが既読マークは直ぐにはつかなかった。

 

 

『*#@¥$€%÷……』

 

「(ヤバイヤバイ!!こわいこわいこわいこわい、何か喋ってる。て言うかなんでこっちにも近寄るの?)」

 

「みこ、大丈夫?なんか顔色悪いような…」

 

「ううん、なんでもない。気のせいだよ。今日ってどこ行くんだっけ?(全然大丈夫じゃないです)」

 

なんとか気を強く持ちながら行き先を聞きながらハナの方へ振り返る。

 

「えっとねー、まずはこの駅の近くにあるお店かな」

  

「よ、よーし、それじゃれっつごー!」

 

私はハナと招かれざるモノと一緒に歩き出す。

 

 

トゥルリン♪〜

 

歩き出した途端スマホから着信音が鳴った。

 

「(五条さん!)」

 

私は直ぐにスマホの画面を開く、このタイミングで着信相手はすぐに彼とわかった。

五条さんからは『すぐに行く、その間出来るだけ人のいない場所に移動して』との事だ

 

「(人気のない場所…)」

 

私はすぐに『わかりました。辛いけど…ハナと買い物を済ましたら一緒に向かいます』と返信し、五条さんからは『途中で合流するから、それまでは気を付けて……』と返事が来た。

 

「みこ、誰からメール?もしかして暁さん?」

 

「う、うん」

 

「へぇ〜、相変わらず仲いいんだねぇ〜」

 

「な、なにその顔?」

 

「むふふ、なんでもないよ」

 

ニヤニヤしているハナ、彼女との会話で少しだけ気はまぎれたみこだが、異形の霊は小さい霊を串刺しにし、ハナに向けると霊は焼け焦げそのまま捕食する。

 

 

ばき、ぐちゃ、ぐちゃ、ぐちゃ、ごくん

 

 

「(何か食べてる。メッチャ食べてる…)」

 

 明らかに何かを捕食している音が聞こえるが無視する。みこにはもはや見なくてもわかる。いや、恐ろしすぎて見たくない。

 

すぐ横に感じる禍々しい気配が強くなったのを感じながら買い物に向かった。

 

「(お願いです五条さん……早く来て、色々と耐えられない)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇みこから連絡が来る数十分前

 

 

 

「うーん…美味しい〜」

 

どうも、五条暁です。学校のない休日は鍛えてたり、家で勉強やゲームをしたり、本などを読み、普通に寛いだり、甘い物を食べに外出する事が多い。

偶に噂になってる心霊スポットに足を運び人に影響を及ぼす霊を祓っていたりもしてる。最近じゃ取り壊しの度に事故が起きて放置されてる呪いのビルが気になるところだ。今日は下見に行く予定だ。

 

「(やっぱここのスイーツは美味いな…持ち帰りも出来るみたいだし、母さんにも買って帰ろう)」

 

呼び出し鈴を鳴らして店員さんを呼ぶと、対応してきたのは女の子だった。見た感じ学生のバイトの子だろう。

 

明らかな白髪イケメンに整った顔立ちの男を相手にして、バイトの女の子は顔を赤くしながらでオーダーを取ってくれる。

 

因みに俺は食事中はサングラスを外すようにしている。まぁ、母さんから食事中くらいは外せと指摘されたからでもある。

 

「(大丈夫か、この子…緊張でガチガチじゃねぇか)」

 

メロンソーダと追加でイチゴパフェを頼みテイクアウト用のケーキも頼む。飲み物は一分もせずにすぐに来た。俺はパフェがくる間にメロンソーダを一口飲む。

 

 

「(四谷さんには霊の等級とハナさんについて話したけど、ブレスレットは一級と特級には効果は薄いとわかった)」

 

最近ブレスレットがどこまで通用するかわかった。一級と特級には効果が薄いようで、四谷さんによると霊は警戒しているが…距離を保って憑いてくるらしい。

 

その時は連絡をしてもらい、俺が駆けつける形で即祓っている。と言うかその大抵がハナさんがいる時が多い、変わらず凄いオーラを放っていたが、ここまでとは思ってもいなかった。ハナさん自身に霊からの影響はないが…引き寄せやすい体質には変わりはない。近々ハナさんにも呪具を渡そうかなぁなんて考えている。

 

「(四谷さんはハナさんはよくお腹をすかせる事があるって言ってたが…もしかしてオーラが少なくなる事でお腹をすかせるのか?もし、オーラがゼロになって霊に憑かれたら彼女はどうなる?)」

 

俺は最悪の事態を考えたが、彼女は食事をする事でオーラが増えるのは既にわかっていたが、体調を崩した際どうなるかわからない。

 

「はぁ、色々と心配になるな……」

 

顎に手を当てながら思っていた事を口に出し、他の客の目を引いてしまう。暁の事が気になっていた多くの女性客がその仕草に顔を真っ赤にしていた。

メロンソーダを半分飲み終えていると、頼んでいたイチゴパフェが来た。

 

「(最近…どうも二級以上の霊が増えた気がする。中には特級並みの怨霊の気配も感じる)」

 

ピロン♪〜

 

パフェを食べている途中、バッグの中からスマホの着信音がなった。スマホを取り出し画面を開き…見ると、メールの当て主は四谷さんからだった。

 

「(四谷さん…どうしたんだろう)」

 

アプリを開き内容を見ると、暁は目を見開く。『助けて…見た感じ特級の異形の霊がハナに憑いています。』と言う内容だった。

 

「(異形の特級⁉︎よりによってハナさんに……)」

 

俺は冷静に『すぐに行く、その間出来るだけ人のいない場所に移動して』と送ると既読マークはすぐにつき、『わかりました。辛いけど…ハナと買い物を済ましたら一緒に向かいます』と返事が来る。どうやら霊には悟られず返事ができたようだ。『途中で合流するから、それまでは気を付けて……』と送り返すと、既読マークがつきそれ以降はメッセージは来なかった。

 

「(これ片付けたらすぐに向かわねぇと)」

 

暁はパフェを急いで食べ終え、テイクアウト分の会計を済ませ店から出て、人気のいない場所へ移動する。

 

 

そして呪術を使い、みこ達の下へ向かうのだった。



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合流

「(やばい、やばいやばいやばいやばい)」

 

私は今、ヤバイ霊と一緒に買い物をしている。ハナに憑いてきた霊は、その後も見かけた霊を捕食し続け、その禍々しさを増していた。私は買い物をしながらなんとか見えることに気づかれずにいるが、いつバレるか時間の問題だ。

 

捕食し続ける霊は体から顔や目が増え、遂には体積は倍ほどに増え、足は8本くらいに増え、おぞましく恐ろしい姿だ。ここまでの霊は私も見たことが無い。

 

「(五条さん…早くきて)」」

 

五条さんには連絡をしているがまだ来ていない。未だ人が多いから瞬間移動で私達の前に現れるのも問題がある。既に近くにいて私達を探してるのか…確かに今日は休日で人が多いから私達を見つけるのも難しいが、五条さんも見えるからこいつを見たらすぐに気付くはず。

 

この人目がある場所では祓ってもらおうにも場所が悪い。出来るだけ人気のない場所に行きたいが、霊に不自然に思われるわけにもいかない。なので買い物を続けながら移動する。

 

そして近くで異形の霊が他の霊をぐちゃ、ぐちゃ、ぐちゃ、ごくんと捕食している音を発していた。 

 

「(……また、何か食べてる。嫌、聞きたくない……けど、耳を塞いだら見えることがバレる。頑張れ…私!)」

 

なんとか気を強く保つが、しかし霊はお構いなしにどんどん大きくおぞましく進化していき、ハナに近寄ってきた霊を捕食し続けている。どんどん気配も変わっていく。このままだと関係ない人達に憑いたらどうなるかわからない。

 

「(五条さん……)」

 

霊の対処は元から五条さんに頼るしかない。御札も一応霊を祓うこともできるらしいが、彼には私が祓う行為をするとリスクがあるからしないようにと念を押されている。

元々私は見えるだけで五条さんのような力もない、だから今は五条さんに頼る。もうそれ以外思いつかない。

 

「ハナ、せっかくだし、買い物が終わったらパワースポット巡りでもしてみない?」

 

「パワースポット?何か楽しそう!いいよー!みこがそんな事言うなんて珍しいね!」

 

 

まずは人気のない場所に行くパワースポット巡りと称して、ハナを誘導する。買い物を終わらせ、バス停に移動するが、誰も彼も近くに異形の霊が存在するなんて思いもよらないだろう。実際かなりヤバイ見た目をしているのに、私以外は何も見えていない。見える私と五条さんが異様なだけなのだろう。

 

そしてバス停に着き、目的地に向かうバスに乗車した。

 

「さすが休日、混んでるねぇ」

 

「そうだね…」

  

 

『*#@¥$€%÷』

 

「(なんか言ってる、すごい何か言ってる…)」

 

 

後ろから感じる禍々しい気配を、当たり前の雑談をすることによって意識しないよう努めるみこ、霊から発する気配によって張り詰めたような緊張が走り、1分が何十分にも感じられる。

みこは極度の緊張によって時間感覚も麻痺し、関係ない事を考えながらやり過ごす。

 

【次は〜○○〜、○○です】

 

 

「ハナ、ここで降りるよ」

 

「はーい」

 

何時間にも感じられた緊張しっぱなしの道のりは終わりを告げた。ここから歩きだが、まだ油断なんてできない。いつ私が見えることに気づかれるかわからない状態、なんとか見えることに気づかれないようにしないと…

 

 

『*#@¥$€%÷』

 

 

「ハナー、こっちだよ」

 

みこは恐怖を無理矢理に心の奥底に押し込むように息を吸う。まだ道の途中だ。気を緩めてはいけないと自身を鼓舞する。

 

「うん、わかった」

 

晴れた顔の笑顔の親友を見て思う。ハナを傷つける事なんて、絶対にさせない。そう思いながら歩みを始めたその時だった。

 

 

 

「ねぇ、みこ…あそこ、妙に人が集まってない?」

 

「ん……?」

 

 

 

 

 

 

「ねぇお兄さん、よかったら一緒にお出かけしませんか!」

 

「君!今は私がこの子をスカウトしているんだ!邪魔はしないでもらいたい」

 

「おじさんは黙ってて!ねぇねぇ、私達と一緒に楽しい事しない?」

 

「いや、あの……俺、急いでいるんだ(しくった。急いでたからサングラスをかけるの忘れてた)」

 

「そんな事より、君…芸能界に興味は…」

 

「これっぽっちもないです」

 

「即答⁉︎」

 

「あの、私最近上京したばかりで…この辺り全然知らなくて、お兄さん詳しい人だよね?案内してほしいなぁ…」

 

「ナビアプリを使えば簡単にいけますよ…俺もこの辺りは詳しくはなくて」←大嘘

 

どっかのハリウッドスターばりに女子、そして芸能関係者までスカウトされて、囲まれている暁だった。彼はサングラスは身に付けていなかった。

 

 

「五条さん⁉︎」

 

「暁さんだ!ていうか凄いねぇ〜、流石イケメンだよ。モテモテだ〜」

 

「(いや、五条さん、すっごい困ってる顔してる)」

 

みこは暁の表情を見てすぐに心情を察していた。暁がサングラスをかけるのは近づきにくい印象を出す為と、目の疲労を抑える為に身につけていると話されていた為だ。何故サングラスを身につけていなかったのかはみこはだいたい察した。

 

「どうするのみこ?」

 

「どうするって……(五条さんと合流しないとこいつをどうにかすることもできない、…やるしかない!)」

 

「あっ!ちょっとみこー!」

 

 

みこはそのまま人溜りに向かい歩き出し、ハナは慌ててみこの後を追う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

どうも、五条暁だ。スイーツを食べている途中、四谷さんから特級案件の霊がハナさんに憑いていると連絡があり、すぐに食べ終えて、テイクアウト用のケーキを片手に持ち、四谷さんと合流するため霊の痕跡を追いながら探していたが、現在急に女性から話しかけられたり、芸能関係者からスカウトされており鬱陶しい。急いでたからサングラスをつける事を忘れていた。俺の失態だ。

 

 

「ねぇお兄さん、よかったら一緒にお出かけしませんか!」

 

「君!今は私がこの子をスカウトしているんだ!邪魔はしないでもらいたい」

 

「おじさんは黙ってて!ねぇねぇ、私達と一緒に楽しい事しない?」

 

「いや、あの……俺、急いでいるんだ(しくった。急いでたからサングラスをかけるの忘れてた)」

 

今更かけてももう遅い為意味がない。四谷さんとハナさんの気配を近くに感じる。おそらく遠くない場所にいるが、もう一つ禍々しい気配を感じる、間違いなく特級並みの霊だ。それに気配がいくつか混じってる。他の霊を捕食したのか?このまま放っておいたら間違いなく危険だ。

 

 

「そんな事より、君…芸能界に興味は…」

 

「これっぽっちもないです」

 

「即答⁉︎」

 

「あの、私最近上京したばかりで…この辺り全然知らなくて、お兄さん詳しい人だよね?案内してほしいなぁ…」

 

「ナビアプリを使えば簡単にいけますよ…俺もこの辺りは詳しくはなくて」

 

「君、こっちのモデルをやってみないか?あっ、私…こういう者ですが…」

 

名刺なんて誰が受け取るか、まず興味自体ねぇよ……そろそろウザくなってきた…

 

「あんたら、いい加減に…」

 

ドスの効いた声でいい加減にしろ、というはずが突如暁の服の袖を引っ張られる。誰が引っ張っているのか顔を向ける……

 

「………」

 

「よ、四谷さ「さ、暁くん」……へ」

 

「い、いつまで経っても来なかったから…し、心配…したんだよ(は、恥ずかしい)」

 

「………」

 

えっと……どういう状況…情報が完結しないんだけど。急に袖を引っ張られたと思ったら四谷さんだった。は、いいんだけど…今、暁くんって言った?なんで頬真っ赤にしながらそんなこと言ってんの?何か、俺まで恥ずかしくなってきた…

 

 

 

「ご…ごめん」

 

つい謝ってしまう暁であった。

 

「みこー!暁さーん!」

 

「い、行くよ暁くん」

 

「あ、ああ……」

 

 

暁はそのままみこに引っ張られながらその場を後にした。逆ナンしてきた女性と芸能界の関係者の人は、その様子をポカーンとしながら様子を見ることしかできなかった。



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呪術の真髄

 

「それでね、このお店のパフェがまた絶品なんだよ!」

 

「そうなんだ!是非とも行ってみたいね」

 

「へ、へぇー」

 

サングラスをつけた五条暁と四谷みこは無事合流し、みこと一緒にいた百合川ハナと気になるお店があればよったり、買い物をしながら行動している。明るく話題を振るハナに対して暁とみこの間に会話はなかった。

 

理由としては近くには異形の霊がくっつくように憑いている為、緊迫した状態が続いていた。

 

「四谷さん…」

 

「な、なに?」

 

「さっきはありがとう、お陰であのしつこい連中から抜け出す事ができた」

 

「ど、どういたしまして。五条さん困ってる顔してたから、気づいたら体が勝手に動いてた。いつも助けてもらってばかりだったから…力になれてよかった」

 

「そっか(やっぱりあの場から引き離す為の作戦だったのか、よく短時間で行動に移れたな。それにこの霊……昔から存在してる類か…)」

 

近くにいる特級並みの霊の禍々しい気配を間近で感じた暁は、昔からいる類の霊と判別する。

 

「(こういうのは中々面倒だ…何とかしてこいつだけでも二人から引き剥がさねぇとな)」

 

「……うーん」

 

 暁はみこにお礼をいい、異形の霊をどう引き剥がそうかと考えていた一方で二人の会話を聞いていたハナはうーんと唸っていた。

 

 

「ハナさん?」

 

「ハナ?どうかしたの」

 

「それ!それだよ、二人とも!」

 

「えっ、俺と四谷さんが何か?」

 

「どれのことなのハナ?」

 

ハナが何のことを示しているのかが今一理解出来ていない二人は、今一度ハナが何について話しているのかを訊ねた。

 

「それだよそれ!その二人の呼び方!」

 

「呼び方?」

 

「そう呼び方!私はみこほど暁さんとは長くないけど、見た感じ二人って友達としても1、2ヶ月そこそこあるのに、未だ二人は名字呼びでしょ? 私からしたら二人って結構親睦も深めてるはず!そろそろ名前呼びでもいいんじゃないかな?それに名字呼びだと距離感があるみたいでなんだか嫌だし、暁さんに関しては私の事も呼び捨てでも構わないよ?」

 

「名前呼び?」

 

「えっ、その……」

 

「ほらほら、練習がてら暁さんは私の事ハナって呼んでみて!」

 

ハナさんは呼び捨てで呼んで欲しいと頼んできた。俺は初対面の相手にはさん付けで呼ぶが、言っていることに一理ある。実際憂太と里香も呼び捨てで呼ぶ仲だしな。

 

「わかった。じゃあ…ハナ、これでいい?」

 

「うんうん!私は暁くんと呼ばせてもらうよ!なんだかだいぶ距離が近づいた感じがするよ!ほら、みこにも!」

 

「ハナ、私は別に…「みこ」……」

 

下の名前で呼ばれたみこは、呆然と暁を見つめる。

 

「あー、もしかしてあんま男子に名前で呼ばれるの嫌だったか?嫌なら呼び方、戻すけど…」

 

「あ、いや!別にそう言う訳じゃ…!(その顔で急に呼ばれたら…)」

 

「そう?じゃあこれからはみこって呼ばせてもらうよ」

 

「う、うん」

 

みこと暁は名前呼びで呼ぶこととなり、ハナはさんから君付け、みこに関しては呼び捨てで呼ばれた事に少し頬が赤かった。家族以外の男子に名前で呼ばれる事に耐性のないみこは恥ずかしくて仕方なかった。暁が名前呼びに抵抗のない様子にみこは不満を持ち…

 

「……あ、あの」

 

「ん?」

 

「今からパワースポット巡りをしようと思うんだけど…“暁”も一緒にどう?」

 

「………」

 

暁は名前呼び、しかも呼び捨てで呼ばれ、一瞬動揺したものの、すぐに笑みを浮かべる

 

「いいよ、一緒に行こうか。そこの霊の事もあるし、俺が絶対になんとかする

 

「よかった」

 

暁はハナに付いている霊に悟られない様に、最後はみこにしか聞こえない声で伝え、みこも理解し、安心する。

そして暁はくるっと二人に背を向けると、みこはある違和感に気づく

 

「(あれ……耳が)」

 

髪の毛で隠れていたはずの耳が出ており、誰が見てもわかるほど赤くなっていたのだ。

 

「(なんだ、恥ずかしいの…私だけじゃなかったんだ…)」

 

みこは暁にあえて追求はする事はなく、そのままハナと一緒に暁の後を追う、ハナはそれに気づく事はなかった。みこはそのとき霊がいるにも関わらず…気が紛れている事に気づいてはいなかった。

 

「(なんで俺……ドキッとしたんだ?わからねぇ、なんでこんなに顔が熱いんだ?とにかく今はみこの提案にのって人気のない場所に移動してタイミングを見てこいつから二人を引き離す)」

 

耳と顔を真っ赤にさせながら、二人の前を歩きら何か言われる前に気持ちを落ち着かせ、移動を再開する。

 

 

 

 

 

 

 

「ねぇ、暁くんはおしり大福は食べたことある?」

 

「もちろんあるよ。モチモチふわふわで超美味しいよね」

 

「わかる!あのおしりの様な食感が堪らないんだよね〜!」

 

「だよな!みこはどう思う?」

 

「う、うん…私も好きだよ」

 

 

 

『*#@¥$€%÷』

 

「(なんか言ってるな。言葉がわからない奴、いるんだよな。前の武者の霊の時もそうだったが……)」

 

サングラス越しに見えることを悟られない様に異形の霊を見る。

 

「………」

そして隣ではみこが震えていた。ハナはその様子には気づいておらず、顔色はなんとか健康体を保っているが常に異形の霊が憑いてきているため、怖いのだろう。

 

 

「(震えてる、この様子だとここまで禍々しい類は見たことがなさそうだな……)」

 

尋常じゃないほど震えているみこに更に近づき、暁はみこの手を握る。

 

「っ!さ、暁?」

 

「大丈夫?ずっと気を張り詰めてるけど…」

 

「う、うん…大丈夫」

 

俺が手を握っただけで驚くくらい張り詰めていた様だ。一応人気のない場所までは俺の無限もみこに付与させておく。万が一見える事に気づかれて何かされた場合は届かない様にしておく。ハナの場合はあの生命オーラで守られているから問題はないが…少なくなった時は彼女にも付与させておく。

 

「あー!二人とも手繋いでる!私も繋いでいい?」

 

「うん、いいよ」

 

「やった!じゃあ私はみこの手を繋ぐね!」

 

「は、ハナ⁉︎」

 

ハナはみこの空いている手を繋ぐ。最初は驚いていたが、みこの表情はだんだん柔らかくなっていき肩の力が抜けていく。

 

「(なんでだろう、この世とは思えないくらいのヤバい霊がいるのに……とても安心する)」

 

 

 

 

みこは二人の温もりに恐怖心が和らいでいた。3人は会話をしながらみこの提案したパワースポットの目的地に向かう。

 

 

 

 

そして周りには人気はなくなり、暁は表情を変える。

 

 

 

「二人ともごめん… 手洗いに行っていいかな?」

 

「え?暁くんトイレ?」

 

「ごめん、二人は先に行ってて、すぐに戻ってくるから」

 

俺はみこに視線を向けると、彼女は俺のアイコンタクトだけで理解し、頷く。

 

「わかった。ハナ…行こう」

 

「はーい!」

 

「あ!それとこれお願いしてもいいかな…」

 

俺は片手に持っていたテイクアウトで頼んだケーキをハナに手渡す。

 

「わかりました!しっかり預かっておくね!」

 

「一応言っておくけど、食べないでよ?」

 

「ヒドイ⁉︎私は他人の物を食べるほど食いしん坊じゃないもん!!」

 

「ごめんって、それじゃあ行ってくるよ」

 

暁はそのまま二人から離れ、みことハナは暁の姿が見えなくなるとそのまま目的地に向かう。霊もそのまま二人の後ろをついて行こうとすると

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「悪いけど、お前は俺と一緒に来てもらおうか?」

 

瞬間移動で異形の霊の腕を握り、そのまま一緒に異形の霊と暁は消えた。

 

 

「………」

 

「あれ?今真後ろから暁くんの声がした様な…?」

 

「気のせいだよ。それよりも私達は行こ」

 

「はーい」

 

「(暁、気をつけて…)」

 

みこは暁の無事を祈ることしか出来なかったら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『*#@¥$€%÷』

 

 

「ここなら遠慮なくやれるけど…一応保険を掛けておこうか」

 

どこか人の来ない森の広い場所に移動し、霊を投げ飛ばし距離を取った暁は懐から大杭を取り出して地面に刺して踏みつけ、印を結ぶ。

 

 

 

「──闇よりいでて闇より黒く…その穢れを禊ぎ祓え…」

 

詠唱を終えると、空に黒い幕みたいなのが現れ、黒い幕が広い範囲に覆い終わると、景色が夜に変わっていた。

 

 

「さてと、これなら遠慮なくお前を祓える」

 

オマエ、ミエテルノカ……

 

 

「へぇー、喋れるんだ。まぁ別にどうでもいいけど…」

 

ミエテル、ミエテルミエテルミエテルミエテルミエテルミエテルミエテルゥ!!!!……

 

霊の問いを返すと、異形の霊は更に禍々しいオーラを放ち姿を変える。

 

「気配が増したね。それがどうしたのって話だけど」

 

タベタイ、タベタイタベタイィ!!

 

「俺は食われるのは御免だよ。御託はいいからかかって来いよ?お前じゃ俺に触れる事すら出来ないから」

 

人差し指を上に突き上げ、挑発を込めた一言と共に突き上げた人差し指を縦に振った。異形の霊は簡単に挑発に乗り、口から鞭の様な舌を俺に向け放った。

 

しかしその攻撃は俺の前で制止する。

 

「これ、当たるとどうなるわけ?俺何か起こっちゃうの?」

 

気の抜ける様な暁の発言に、異形の霊は暁へと接近しながら直接攻撃を当てようするが…一瞬で暁の視界から霊が消えた。

 

 

 

 

異形の霊がいるのは結界内の空の上だった。そして上空には、ポケットに手を突っ込んで仁王立ちしている暁がいた。

 

「へぇー、宙まで浮けるんだ。まぁ霊だからそれくらいは出来るか」

 

煽り口調でそう言うと霊から殺気とオーラが増した。みこだったら気を失うか倒れてもおかしくない物だ。

 

凄まじい殺気とオーラを冷静に感じていると、異形の霊が飛び出し、口の中から黒い何かを暁に目掛けて吐き出した。

 

暁は吐き出された黒い何かに直撃する。異形の霊は勝ち誇ったかのような反応をするが、すぐにそれはなくなる。

 

「煙たっ…お前さ、学習しろよ。お前じゃ俺に触れる事すらも出来ねぇし、当てる事もできねぇよ」

 

その中から煙を払うように、何事もなかったように暁の姿が現れた。

 

その姿を見た霊は動き出した。

 

 

アアアアアアアアアア!!!

 

 身体から何かを噴き出しながら俺に突っ込むが、攻撃を当てることは当然叶わない。取り敢えず霊を蹴り飛ばし吹き飛ばして、俺が貼った帳にぶつかり跳ね返った。

 

「まだまだぁ!」

 

俺はそのまま霊の手を掴み、連続の張り手を食らわせ、回し蹴りを食らわせ吹き飛ばす。

 

 

アアアアアアアアアア!!!

 

叫びを上げながら吹き飛ぶ霊の背後に移動した俺はそのまま踵落としを食らわせ地面に叩きつける。

 

地面に叩きつけられた霊は、俺に殺意を剥き出しにして睨んでいた。

 

「お前、弱いな。見た目の割に強くないし、そろそろ終わりにしようか」

 

*#@¥$€%÷アアアアアアアアアア!!!』 

 

 

「せっかくだから最後に見せてやるよ、呪術の真髄をな」 

 

俺はサングラスを外し、空色の青い瞳が顕となり、右手の人差し指と中指をクロスさせ、手印を構える。

 

 

「────領域展開」

 

呪術を極めた者が到達するその真髄、その名は

 

 

 

 

 

「無量空処」

 

その瞬間、俺と異形の霊に黒い膜の様なものが包み込んだ。その瞬間即座に霊の動きが止まった。

 

領域内は宇宙のような空間になったと思えば絵の具を溢したかのような白が広がっていく。

 

「ここは無下限の内側、領域展開は領域によるステータスのアップ、領域の付与された術式は……必ず当たる」

 

『………』

 

「そして俺の領域展開は対象に"知覚"、"伝達"、生きるという行為に無限回の作業を…強制する」

 

『…………』 

 

しかしその情報が無限に注がれ続け、情報が完結しない。故に…何も出来ないのである。

 

 

「悪いけど…俺が言うのはこれまで…とっとと祓わせてもらうよ」

 

俺は呪力を込めた腕で異形の霊の頭に触れ、首から少しずつミチミチと音が鳴り、頭から………引き千切った

 

ブシャァァァァッ!!と黒い体液を撒き散らし、それと同時に領域が閉じられ、周囲が元の景色に戻る

 

頭を喪った霊の体は消滅していき、暁が掴んでいた異形の霊の頭も消滅した。

 

「これにて一件落着……かな」

 

 

俺はサングラスを身につけて、帳を解除し、みことハナの元に向かうが…合流したら何故か顔色を悪くしたみこがおり、パワースポット巡りはやめ、スイーツ巡りをする事になった。

 





「みこ、因みに聞くけど、ハナが取り憑かれた理由ってわかる?」

「……呪いビル」

「は?」

「待ち合わせしてた際、ハナが犬を助けるために呪いビルに寄ったらしくて…」

「何故に呪いビルにっ⁉︎(アイツそこにいた霊だったのかよ!)」


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未だ知らぬ気持ち

「は…廃業…⁉︎」

 

突然だけど、ワタシの名前は二暮堂ユリア。ワタシにはこの世に見えざる者の姿が見える。怖いかって?答えはNO、物心つく頃からこれがワタシの世界だったから。そのせいで人との関係には苦労したし、気持ち悪がられていた。

他人にはない特別なチカラ。このチカラを持って生まれたことには意味があるはず。いずれは除霊とかできるようになって人々から羨望の眼差しを向けられるようになるのよ……それまではしっかり学ばないと…最高の霊能者…ゴッドマザーから!

 

と思ってゴッドマザーの経営している商店街の占いの館に足を運んだんだけど…

 

「マザーなら田舎に帰ったよ」

 

「な、なんでっ⁉︎」

 

「『力の限界を思い知った』とかで…」

 

そう、足を運んだらシャッターが閉められており、張り紙には『占いの館は廃業します』とか書かれていた。

 

「そんな…ワタシが出会った中で最高の霊能者だと思ったのにっ…」

 

ワタシが知る限りでは最高の霊能者だった。今までの霊能者は見える者からしてインチキ霊能者ばかりだったが、ゴッドマザーは違った。弟子入りも頼んだのだが…その際すごいパワーがギチギチに詰まった数珠をもらった。

 

「若い女の子二人組が最後の客だったな…あ、あの娘たちだよ」

 

向かい側の靴屋のおじさんが指差した方には二人組の女子がいた。

 

「(!あれは隣のクラスの……)」

 

「あーっ、数珠屋さん潰れてるー」

 

「ホントだ…」

 

「まぁ潰れてもしょうがないよね…あんな脆い数珠だもん」

 

「そうかな?占いは結構当たるって話だったけど…(ハナの防御力を上げるつもりだったけど、あれはただ単にあの数珠の効果が弱かったんだと思う…あのおばあさんに悪いことしたかな)」

 

「(なっ…何ですって⁉︎素人にマザーの数珠のことなんてわかるわけないっ…)」

 

 

ーーマザーなら田舎に帰ったよ『力の限界を思い知った』とかで…

 

さっきのおじさんの言ってたことが気になる。マザーに一体何が…

 

 

「そんなことより早くおしり大福買って帰ろーっ」

 

「ちょっ…まってハナ!」

 

するとハナと呼ばれた娘が走り出し、もう一人の娘も慌てて追おうとするが、その先にはさっきの占いの館に向かう途中に見た霊がいた。特に害はないから問題はなく、そのままいけばすり抜け通るだろう…そう思っていた…

 

「ハナっ、ストップ…背中にゴミがついてる」

 

「えっ、ホント?どこに?」

 

「うん、ジッとしてて、取ってあげるから」

 

そのまま背中についたゴミを取ろうとハナに近づいた途端…

 

『ヒィッ⁉︎アアアアアアッ⁉︎』

 

「(え?逃げた?)」

 

ワタシは今、あり得ない光景を見たかもしれない…

 

「はい、取れたよ」

 

「ありがとうみこ!」

 

そのまま二人は歩き出したが…ワタシは頭をフル回転させる。

 

「(今、何かしたの?アイツが近づいた途端逃げていった。さっきはあの霊に当たらないようあえて止めた?)」

 

ワタシの中に何かが芽生えた。そのままワタシはあの二人の後を追い、出来るところまで観察した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「えぇ〜、ここはじゃあ…五条」

 

「はい」

 

五条暁だ。俺はいつも通り学業に励む高校生だ。今は数学の授業中、数学の先生が俺に問題を解く様に言った。俺はその問題を答える。

 

「正解だ。えぇ、五条が言った通りにだな、この問題は....」

 

担任は俺の答えを聞いて答えを黒板に書いていった。

 

「やっぱり五条くんカッコいい」コソッ

 

「うん、勉強のわからないところ聞いたことあるんだけど、すっごいわかりやすく教えてくれたし…」コソッ

 

「マジ?」

 

「マジマジ…五条君って将来どうするんだろう。芸能界とかも普通にいけそうなんだけど…」

 

「前に別クラスの友達が休日に五条君を見たって聞いたけど、普通にスカウトされてるって話だよ」

 

「やっぱりそうだよね〜、五条君モテモテだし…イケメンで性格もいいし…」

 

「断っていたらしいけど……あと、最近五条君に彼女がいるって噂を聞いたことがあるよ」

 

「え、彼女⁉︎五条君に⁉︎」

 

「そこ!私語は慎みなさい…」

 

「「す、すみません」」

 

小声で話していたクラスの女子は会話をしていたことがばれ注意される。会話の内容は気にしてなかったからわからないが…俺がなんとかって言っていたのはわかる。

 

『ジュギョウチュウハオシズカニィ」

 

 

「(はぁ、特に害はなさそうだし、放っておいても問題はないが、早く終わらないかな)」

 

俺の真横に霊がおり、無視していた。学校内にも普通におり、授業中に霊に何か言われるのも慣れてはいるが…目の前におられたら流石にうざい、見える者からしたら黒板に書かれている文字も見えないしな。そのせいで憂太と里香からノートを借りることもしばしばあった。しっかりノートに書いておかないと成績にもかかわるからな。

 

幸い、もう少ししたら四限目の授業も終わるので、あとは時間を過ぎるのを待つだけだった。

 

 

──♪〜♪

 

噂をすれば……

 

 

「今回はここまで、日直、号令を…」

 

 

「起立、礼」

 

四限目の授業が終わり、今から一時間は休み時間で昼食の時間だ。俺は今回弁当は持参しておらず、気分的にパンが食べたく、学校内の購買でパンとコーヒー牛乳を買って屋上で食べる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「昼パン、久しぶりに食べると美味いな」

 

俺は今クリームパンを食べている。シンプルだけどこれがまた美味しんだよ。いま食べている場所は学校の屋上だ。この場所は基本俺だけしかいないが、偶に俺以外で食事をする者もいる。

 

「ヤッホー暁君!」

 

「やっぱりここにいたんだ」

 

噂をすれば話しかけてくる人が。

 

「憂太に里香か、お前らもここでか?」

 

友達の憂太と里香のカップルだった。二人は弁当を持参しており、俺の横に座りこむ。

 

「珍しいね。暁がお昼にパンだなんて…」

 

「うん、いつもはお弁当なのに」

 

「気分的にパンが食べたいと思ってね。そう言う時ってあるだろ?」

 

「うん、僕も確かにあるよ。朝は基本パンなんだけど、ご飯も食べたくなる時もあるし」

 

「だろ?」

 

そのままクリームパンをもっきゅもっきゅ頬張っていると、隣は弁当を出し、食べ始める。

 

「はい憂太、アーン」

 

里香が憂太におかずを食べさせている。本当におしどり夫婦みたいだ。里香も男子にはモテるみたいだが、憂太以外の男子には全く眼中にはない。

俺の場合は唯一男友達で友好関係を築いている。この光景を見れば男勢は嫉妬する奴がいるだろうが、俺は暖かい目で見ている。

 

「憂太どう?美味しい?」

 

「うん、美味しいよ里香。はい、里香も…」

 

「いいの⁉︎それじゃあ、アーン。んー!おばさんの卵焼き美味しい!」

 

憂太もお返しに里香に卵焼きを食べさせた。憂太も一応家事も出来るみたいだが、基本的に憂太の母が作っているようだ。

 

この光景はもう見慣れてるしな…

 

俺もパンとコーヒー牛乳を飲み終え、壁に背をつけ腕を伸ばす。

 

 

「ところで暁君…」

 

「ん」

 

「暁君に彼女が出来たって本当なの?」

 

「はぁ?」

 

里香の言葉に俺は思わず訳の分からない声を出してしまう。彼女?なんのことだ?

 

「だって最近女子の間じゃ噂になってるよ?他校の女の子とカフェでお茶してるところを見たって子もいたらしいけど…」

 

「僕は里香から聞いて知ったけど…本当なのか暁?」

 

「いや、みことはそんな関係じゃ…」

 

「呼び捨て⁉︎そこまでの関係まで進んでるの⁉︎」

 

里香は俺がみこの名前を言うと驚いている。女子の名前呼びをするのは里香だけだった。

 

「確かに最近暁の雰囲気が少し変わってると思ったけど…そのみこさんと関係してるのかな?」

 

「……ちげぇって」

 

「「(あっ、ちょっと間があった)」」

 

憂太の言う通り、最近よくみこの姿がチラつくことがある。特に、あの子が笑った時の顔が時折浮かぶことがある。俺はあの時、不意にドキッとしたし、可愛いなんて思ってしまう事があった。

 

 

「(本当どうしたんだ俺?心拍が妙に早い気が…)」

 

 

 

 

「ねぇ憂太、これってもしかして……」

 

「うん、自分の気持ちを自覚してないみたいだけど…確かにこれは」

 

 

二人は暁に聞こえない声量で気持ちを察する。暁の表情は二人が見たことのない顔をしていた。

 

 

ーー暁

 

 

「(くそっ、わからねぇ…なんなんだよ、これ)」

 

 

暁はみこに初めて呼び捨てで呼ばれた時の事を思い出し、同時に暁の心臓が大きく脈打つ。ドキンドキンと早鐘の様に脈打つ心臓が、不思議と不快感はなく心地よくさえ感じた。

 

 

 

 

五条暁は確実にある病を患い始めるのだった。



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夜の道中

「……変な感じだな」

 

辺りは暗い夜。俺は現在ある山の入口に立っており、六眼でじっと山を見ていた。以前ハナが異形の霊に憑かれた時にパワースポット巡りで来た場所だが…彼はハナに憑いた霊を祓うために一時二人から霊を引き離し人のいない森の中で祓い、二人の所に戻ったはいいが何故かみこの顔色が悪かった。結局の所俺は山の中には入らないままパワースポット巡りはせずスイーツ巡りをする事になった。

 

俺はその山に違和感を持ち、数日後学校帰りに一人で訪れていた。

 

「(この感じ、結界か?普通の人には入ることのできない仕組みになってるな、生得領域とはまた別物…しかし、霊の気配もすごいな)」

 

この山には多くの霊のオーラが多数あった。みこの顔色が悪かったのも納得だ。

 

「(近づかなければ大丈夫だろうけど……機会が有れば調べてみるか、流石に今の状況での裸眼はキツい)」

 

今は制服をきているためサングラスは身につけていない、俺はそのまま背を向け帰宅する為、瞬間移動でその場から離れる。

 

 

呪術師……

 

 

 

 

暁が消えてすぐ入り口前には鈴を身につけている二体の霊と、巨大な霊が立っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よっと(飛んだ瞬間何か大きな気配がしたが…今は気にしないでおくか)」

 

瞬間移動で人気のいない場所に移動し、歩道を歩き出す。周りは仕事が終わり帰宅している者や、部活帰りの学生が歩いていた。

 

 

「(母さんに買い物頼まれてたからな…さっさと済ませて帰ろう)」

 

俺は近くのスーパーで買い物を始め、サクッと済ませて帰路に着く。きらしている物もあるため、仕事が忙しい母さんの代わりによく買い出しに出ることもある。帰りが遅い時は基本俺がご飯を作っている。必要な物は朝のうちに頼まれ帰りに、寄り道ついでに買う。

 

「八時前、さて…何しようか、家に残ってる物を使うとなれば…野菜炒めと味噌汁だな」

 

今日の献立を考えながら歩いている。瞬間移動で帰るのもありだが、基本俺は普通にバスや歩いて学校を行き来している。俺も学生のうちは学生らしい事もしておきたいしな…プライベートだと多様してるけど。

 

 

「(この街は最近おかしい、霊が頻繁に増えてきてる。一級、特級レベルの類が少なからず多くなってる。呪霊の気配は感じないが…何かが確実に起きてる)」

 

「暁?」

 

考え事をしながら歩いていると聞き覚えのある声に振り向く。左手に袋を持ち、右手にはスマホ持っていた。

 

「みこ!どうしたんだこんなところに?帰り道はこことは違うはずだろ?」

 

「えっと、途中でおばあちゃんを助けてて…」

 

「あー、成る程、けどそれだけじゃないだろ?間違いじゃなかったらハナと買い物に行ってたでしょ?」

 

「せ、正解、よくわかったね」

 

「まだ短い関係だけど、買い物をすると長いってことくらいわかるよ…」

 

「ふふっ、流石だね」

 

「………」

 

みこが笑ってる……すげー可愛い。まただ、この鼓動が早くなる感覚、何故か…不快感が感じないこの鼓動…本当になんなんだ?

 

 

「暁?どうしたの?」

 

「……っ、ごめん、なんでもない。それより何かいいことでもあった?」

 

「うん、そんな所かな…」

 

人助けもそうかもしれないが、それだけではないのはすぐにわかった。みこからごく僅かな霊の残穢が付着していた。しかし害のない普通の霊が何かしらみこに伝えたのだと推測する。

 

「そうだ、暁に話しておくことがあったんだ」

 

「どうしたの?」

 

「歩きながら話す。ちょっと霊関係での話になるけど」

 

「…わかった」

みこの表情からして穏やかな内容ではないのはわかっていた。俺たちは一緒にバス停に向かう。

 

 

「それで…何かあったのか?」

 

「何かって言うと、私の学校の他のクラスの子なんだけど」

 

「みこの学校の他のクラスの子?」

 

「うん、実は…私たち以外にも見える子がいたの」

 

「!本当なのか?」

 

「本当…今日の体育の授業でその子と道具の片付けを手伝った時に…」

 

みこの話によると、体育の授業中に『二暮堂ユリア』と言う子に道具の片付けを手伝った際にみこが見える子だと気づかれたらしく、その子はみこの事をずっと見ていたらしい。しかも場所は体育倉庫でたまたま霊が集まっていたらしく、やばい霊も途中から現れたが、体育着はまだ半袖のためブレスレットはポケットにしまっていたが、なんとか霊を凌ぐことが出来たようだ。まぁみこになんともないからわかるが…無事でよかった。

 

「ただ、ちょっと気になることもあって…」

 

「気になること?」

 

「ユリアちゃん、小さいおじさんは見えてるのに、やばい霊は見えてない様子で…私が見る限りはその霊は二級、準一級相当だったと思う」

 

「は?二級、準一級相当の霊が見えていない?」

 

「すぐ真横にいたのに見えてる様子はなかった。ポケットから数珠を出したんだけどすぐに弾けて…なんかマザーの弟子とかどうとか言ってだけど…」

 

「マザーの弟子ね。もしかして見える者にも個人差があるのか…」

 

「個人差?」

 

「ああ、みこと俺はそのやばい霊は見えてるけどユリアって子は見えていない、例えるとみこはハナから溢れ出てるオーラが見えていないのと同じだよ」

 

「確かに、暁の呪力は見えるけど、ハナから出てる生命オーラは私には見えていない…」

 

「そ、もしかするとみこもひょんなことで見えるようになるかもしれないし…ユリアって子も霊に関わるうちにやばい霊も認知出来るかもしれないな」

 

「私だったらやだな、これ以上怖い思いをするのは…」

 

そうだよな、みこの場合生まれつきでもなければ、なんも前触れなく突然見えない物が見えるようになって当たり前の日常が崩れ去ってしまった。

俺が祓うところを見るまでは誰にも相談出来ずにいた。今では気を張り詰める様子も少なくなっている。

 

「確かにみこからしたら嫌だよな。俺は物心つく頃から見えてるから感覚がイカれてしまってるけど…」

 

「イカれてる、確かに…暁はどんなやばい霊でも冷静だしね。慣れると暁みたいになっちゃうのかな」

 

「流石に時間がかかると思うぞ?まだ数ヶ月そこらしか経ってないならな…」

 

「そう、だよね」

 

「何かあった時はいつでも頼ってくれ、愚痴も含めて聞いてやるさ」

 

「わっ……」

 

俺はみこの頭を撫でる。撫でられているみこは嫌がってる様子はなかった。

 

「(サラサラしてる…この長い髪を毎日手入れしてるんだな)」

 

改めて伝わるこの感触、触ってるだけでもすごく大切に扱っているのもわかる。

 

「ちょっ、暁…く、くすぐったい…」

 

「ああ、ごめん…つい、嫌だったよな」

 

俺は一言謝りみこの頭から手を離す。しかしどこか残念そうな雰囲気出していた。

 

「ううん、嫌じゃないよ。さっきはちょっとくすぐったかっただけだから……」

 

「そうか」

 

「ありがとう暁、色々話したからスッキリした」

 

「どういたしまして」

 

「それに…暁に撫でられるのは落ち着くし」

 

「ん?なんて?」

 

「なんでもない…それよりも行こ、このままだとバスに間に合わないよ」

 

確かにこのままだとバスに間に合わないが…今は八時前、おそらく待ち時間を含め帰り着くのは九時前になるだろ、普通ならな。

 

「みこ、提案がある…俺が送って行こうか?流石にもう遅いだろうし…」

 

「え、送るって…」

 

「俺の呪術、忘れてない?」

 

「暁の呪術……あっ、もしかして瞬間移動?」

 

みこは俺のしようとする事に気づき、目を見開いていた。呪術について話していたが、まさか体験するとは思わなかったのだろう。

 

「そう言うこと…母さん以外の人とは初めてだけど、準備ができたらすぐに飛ぶよ。一瞬だから瞬きする間に景色が変わってるけど…」

 

「わかった。じゃあ…お願いしようかな」

 

「OK、周りに人もいないし、ここで飛ぶよ」

 

 

みこは暁の差し出した手を握ると、二人はその場から姿を消した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はい、到着」

 

「ほ、本当に一瞬だった」

 

俺たちは今、みこがいつも乗り降りしているバス停の近くに移動していた。一応人気のない場所に飛んだが、みこはあまりに一瞬のことで驚きを隠せない様子だ。

 

「一応人のいない場所に飛んだけど…後は大丈夫?」

 

「うん、大丈夫。ありがとう暁…」

 

「平気だよ。流石に女子一人じゃこの時間帯は危ないだろうし」

 

「ふふっ、意外と心配性なんだね」

 

「そうか?」

 

「そうだよ…今日は本当にありがとう。それじゃあ、またね」

 

「ああ、またな」

 

みこは手を振り、俺も振り返すと背を向け自宅に向け歩き出す。

 

「さて、俺も帰るか…」

 

暁もその場で瞬間移動を使い、その場から離れるのだった。



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映えスポットへ

大変お待たせしました!2022年最初の投稿です!


「じゃーん、見てみて!こないだ神社で撮った写真いっぱいイイネ貰っちゃった、」

 

「………」

 

昼休み中にハナがこの間神社で撮った写真を見せてきた。確かにイイネは多い方だが、私にはとんでもない物が一緒に写ってしまっているのが見えてる。一体ではなく三体おり、ブレスレットの効果は薄く、一級者の霊なのはすぐにわかった。ただブレスレットをみた事のないくらい反応しており、すごく警戒している様子はあった。私が見える事はバレてはいないと思うけど、この事は暁には相談していない。一応危害はなかったので多分神社の守り神か何かだと思ってる。

 

 

ーーサンカイ

 

 

気になる事は言っていたけど…とにかく関わる事もないだろうし忘れよう。

 

「あっ大丈夫だよ!ちゃんとスタンプで顔隠してるし!」

 

「いや…別のががっつり…」

 

「別の?」

 

「なんでもない」

 

ハナが撮った写真をじっと見つめながら別の物が写っているのを探す。反応からしてやっぱり見えていなさそう。

 

「(そう言えば暁が言ってたっけ。映像越しや写真にも見える者にははっきり見えるって…)」

 

 

暁に説明された事を思い出しながらフルーツジュースを飲む。そう言えば「テレビにガッツリ映ってた時見る気持ちが失せる」とか言ってたかな、私は怖いけど…

 

 

「こんなイイネされたの初めてで〜、すっごくうれしくなっちゃって、それであたしっ、写真の才能があると思うの!」

 

「えっ」

 

「じゃーん!みてみて!インスタントカメラ!」

 

「……」

 

結構古いタイプの写真を取り出した。なんかわからないけど、嫌な予感がしてきた。

 

「これでいい感じのスポット巡っていい感じの写真撮りまくって映え〜なアルバム作るの!」

 

 

だめだ…ハナが撮ったら【ヤバいの大図鑑】が出来上がる未来しか見えない…暁も言ってたけど、ハナは霊を引き寄せやすい体質で…私には見えなくて、暁には見えてる物がある。暁はハナには生命オーラと言うオーラが溢れ出ており、霊を蛾のように引き寄せやすいって言っていた。

 

 

「(ハナのためにもここは心を鬼にして…)ハナ…あのね…ハナの写真すっごくイイと思うんだけど」

 

ーーパシャ!

 

「なんで今撮ったの…」

 

「イイ表情してたから!」

 

撮れた写真が出てきてハナはそれを振るけど、意味ないって聞いた事がある。

 

「ホラ!」

 

「(なにかが横切ってる…)」

 

「やっぱりあたし才能アリアリ!」

 

ハナの撮った写真は私の背後を横切った霊がはっきりと写っていた。と言うか全然気づかなかった。

 

「写真ってね…日常の一部を切り取ったモノなんだよ…」

 

深そうで浅い!

 

「すっごく素敵な写真!絶対才能あると思う!」

 

二人は声をした方に振り向くと小さな女の子がいた。そう、この子は…

 

「ユリア…ちゃん?」

 

「みこがシメた子?」

 

「言い方っ…」

 

二暮堂ユリアちゃん、体育倉庫で道具の手伝いをした時、私が見える子だと悟られ、たまたまヤバい霊がおり、その霊をやり過ごすためたまたま動画で見たプロレス技を思い出し、ちょっとふざけ合う演技をし、誤魔化した。その隙にブレスレットを霊に見せつけて追い返す事は出来た。

私や暁のように普通には見えないものが見える子だ。ただ私や暁と違ってヤバい霊は見えている様子はない。

 

「あれはちょっとふざけあってただけで…ね?みこちゃん」

 

「!う、うん」

 

「え〜っ、なになに…いつの間に仲良くなったの?」

 

誤魔化してくれた?誤解が解けたからいいけど、更に嫌な予感が…

 

「さっき映えスポットの話してたでしょ?ワタシそういうの詳しいんだぁ」

 

「えっ、そうなの?」

 

「もしよかったら明日おすすめスポット案内してあげよっか?」

 

「えっ、いいの⁉︎行く行くーっ!」

 

「ちょ…ハナ…それは(まずい、そのおすすめスポットが心霊スポットにしか聞こえない。ど、どうにかして断らなきゃ…)」

 

みこはユリアの言っているスポットが心霊スポットにしか聞こえなかった。見えないものが見える者同士故、わかってしまうのだ。

 

「こんな写真が撮れちゃう才能…活かさなきゃ勿体無いわ!」

 

「ユリアちゃん…なんてイイ子!」

 

「ぶげっ」

 

「(あ、諦めさせるつもりが…これ、もう無理なパターンだ。ど、どうしよう…)」

 

ハナがユリアちゃんを抱きしめてるが苦しそうにしてる。というかまずい…その場所が本当に心霊スポットだとしたらなにが起こるかわからない…

 

 

「は、ハナ、よかったら暁も誘ってみない?」

 

「いいね!暁くんに是非ともモデルになってほしいよ!」

 

確かに暁の見た目ならいい絵になるのは確実だ。実際モデルや芸能界の関係者からスカウトされるほどだし…

 

 

 

「…ぐ、ぐるじい…」

 

「あれっ、ユリアちゃん⁉︎」

 

「……」

 

案の定ハナの何処とは言わないが、その育った身体で強く抱きしめられたユリアちゃんは意識を落としてしまい、その後保健室に連れて行った。

 

「(暁、絶対怒るよね)」

 

 

みこは暁怒られる覚悟を持ちながら放課後を迎えたが、今回はバスに一緒になく、夜に連絡して今回の内容を伝えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇翌日の土曜日

 

 

「おー、空気美味しそう!」

 

「そうね」

 

「楽しみだね!」

 

私たちは今バスに乗って山道を登っている。自然が豊かで空気が美味しいのは見てわかる。

 

「………」

 

ただ私の隣にはずっと無言のまま反対側席の端で、窓の外をずっと眺めている人がいる。

 

「暁、その…ほんとにごめんなさい」

 

「別にいいよ、みこも望んで来てるわけじゃないんだろ?止めようとしたけど止められなかったて感じだったし」

 

「うう、ほんとにごめん」

 

そう、隣に座っているのは唯一男友達の五条暁、私やユリアちゃんと同じで霊が見えており、すごい能力者…呪術師の子孫でもある。

 

「(アイツ、サングラスなかったら悔しいくらい顔はいいわね…それにアイツに纏っていたものも気になるけど…)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『遅いねみこちゃん』

 

『多分もうちょっとしたらくると思うよ』

 

時を遡るほど数十分前、ユリアとハナはみこともう一人一緒に来る人を待っていた。ハナとみこはユリアに他校の男友達と話しておりユリアは人数が多い方が楽しいと言い、了承した。そんなハナは待っている間お菓子を食べて時間を潰していた。

 

『ねぇ、二人の男友達ってどんな人なの?』

 

『え?んーとね、背が大きくて、甘いものが好きで、それとすっごいイケメン!あとみこの想い人!』

 

『えっ⁉︎みこちゃん好きな人いたの⁉︎(みこちゃんが好きになる相手、まさかそいつもすごい能力者なんじゃ…!)』

 

あってます。

 

 

『ハナごめん!遅くなった』

 

『あ、みこー!暁くーん!』

 

ユリアは声をした方へ向くと、みこの隣には見上げるほどのサングラスをかけた背の大きい白髪の男がいた。

 

『(でっ…デッカ、180は余裕で超えてるでしょ。てか結構胡散臭い雰囲気ね…本当に同い年なの?)』

 

『えっと、君がみこたちが言ってた二暮堂ユリアちゃん?俺は五条暁、二人から聞いてると思うけど…一応同い年だよ』

 

『(見た目によらずいい人そう)はじめまして、二暮堂ユリアです。今日はよろしっ…⁉︎』

 

ユリアは挨拶をするが突如言葉が詰まる。暁の体に呪力が溢れ出ていたからだ。

 

『(な、何?こいつに纏わりついてるオーラ、変な感覚が…)』

 

『どうしたの?(この感じ、呪力も見えてるみたいだな)』

 

暁は呪力を纏わせユリアが見える事を確認し、自覚していない演技をし誤魔化す。

 

『(自覚していない?と、とりあえず誤魔化さなきゃ)あっ、ごめんなさい!し、身長大きいんですね』

 

『ごめん、もしかして怖がらせたかな?』

 

暁はサングラスを外しユリアを改めて見つめる。素顔を見たユリアは開いた口が塞がらなかった。

 

『(んな、なんじゃこのメチャクチャなイケメンはぁーー!)』

 

サングラスを外した暁の素顔は凄く整った顔をしており、胡散臭い雰囲気が一気に爽やかな人柄の雰囲気を漂わせていた。そして周りにいる女性からは一気に注目を浴びてしまい、暁はすぐにサングラスをかけ直す。

その後はユリアの言っていた映えスポットに向かうためのバスに乗り、今に至る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「(この男は謎だけど、只者じゃないわね。それとみこ…あなたがどれ程の能力者か見極めさせてもらうわ!)」

 

 

 

 

 

 

 

 

「(っ!気配が強いな……くそ、行き先は間違いなく心霊スポットだな)」

 

「(さ、暁の表情が…そ、そんなにヤバいとこに行くの、私たち…)」

 

うち一人は既に、気配をとらえており、表情を変え、みこはその様子を見て冷や汗が止まらず不安を募らせた。



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見える者

「ついたね!けど見渡す限り山道だけど…ホントに映えスポットあるの…?」

 

「もうすぐだよ。ホラ…あのトンネル抜けた先だよ!」

 

ユリアの指差す場所は電気の通っていない真っ暗なトンネルだった。それを見たハナはあまりの暗さに少し怖がっている様子だ。 

 

「えええ……暗っ、これ通るの⁉︎」

 

「この先の景色がすっごい映えスポットなの!」

 

「(……これは)」

 

俺はサングラスを上げ六眼でトンネルを見つめる。

 

「(相当いるな、気配もかなり濃い。この場所は溜まり場になってる…みことハナは問題はないが、二暮堂は不安だな。それに何が目的だ?)」

 

みこはブレスレットと御札。ハナは生命オーラにより守られているが消費したり消失しないように注意はする。二暮堂に関しては不安があるので目はつけておく。

 

「さ、暁、やっぱりこの場所…」

 

サングラスを上に上げ、六眼で見ていたからか小声で不安そうに俺の服の袖を掴み俺を見上げながら聞いてくる。みこは優しい女の子だからおしに弱い子だとわかる。だから断れず俺に怒られる覚悟で相談してきたのだ。

 

 

「うん、いるよ。それにかなり気配が多いし害のある奴が殆ど、下手したら一級以上がいておかしくない場所だ」

 

「……」  

 

みこは一気に顔色を青くする。みこもまだ霊に対しては怖いものは怖い。

 

「みこ、顔色悪いけど大丈夫?」

 

そんなみこを心配したのかハナが声をかける。これだけ顔色が悪ければ当然だろう。

 

「だ、大丈夫。ちょっと乗り物酔いしただけだから…」

 

みこは乗り物酔いで誤魔化す。ハナは見えていないから霊の事は伏せておく。

 

「(このトンネルは界隈じゃ有名な"溜まり場"…見える人なら出来るだけ通りたくない。お手並み拝見させてもらうわ、みこ)」

 

「(トンネルだと限られた呪術しか使えない、場合によってはハナと二暮堂を眠らせてから祓うか、あるいは…)」

 

俺たちはトンネルに入り改めて中を見ると本当に真っ暗だ。一応立ち入り禁止ではないがあまり徒歩で通るような道ではないのだろう。

 

「ちょっと昼間なのに真っ暗じゃん…、これ絶対通んなきゃダメ…?」

 

「(確かに暗い、明かりがないトンネルか、いつ出てもおかしくないぞ…)」

 

「(んっ…これ、クツに小石が…)」

 

みこはしゃがみ込み靴の中をあさりだし小石を取り出す。立ちあがろうとするとバランスを崩し地面に手がつく。

 

「大丈夫かみこ?」

 

「大丈夫…バランス崩しただけだから」

 

「(まさか一瞬で結界を張れるほどのチカラを⁉︎くっ…格の差を見せつけようってそうはいかないわ!)」

 

みこは手についた土汚れを払う。しかし二暮堂はみこのことをじっと見ている。それに反応がなんか…おかしいぞ、小石を取っただけだぞ?

 

「ねぇ…やっぱ暗くてジメッとしてやな感じだよ…も…戻ろうかな…」

 

「!」

 

ハナが戻ろうと言った瞬間、ズズと霊が現れた。それはもはやゾンビに近い見た目をしており、ゆっくりと迫ってきていた。

 

「(ハナも戻りたがってる今なら…)そうだな、無理して撮る必要はないし、ここがそもそもどんな場所かも知らない。あまり立ち入るのもまずいだろう」

 

「そ、そうだね、戻ろっか!」

 

俺とみこはヤツらに見えていることを悟られないようそのまま引き返そうとトンネルの外に向けて歩き出す。これでいい、今回はあまりに危険だ。ハナはオーラで守られているとはいえ消費するし、みこもブレスレットと御札があり対抗手段はあるが、気配が濃い為効果も中和される可能性もある。呪霊がいないだけでも御の字だが、ここの霊は祓っておかないと、後に肝試しをする人とかもいたら間違いなく何か起こる。

 

「まってハナちゃん!」

 

「?ユリアちゃん?」

 

「え?」

 

「(今度はなんだ…)」

 

「それでいいの…?せっかくの才能を…一時の恐怖心で無駄にするなんて…ハナちゃんのレンズの向こう側には"無限の世界“が待ってるんだよ」

 

「(地獄絵図だよ⁉︎というかなんか増えてる…)」

 

「無限の世界⁉︎世界があたしを待ってる…!もう逃げない!」

 

「(くそっ、余計な事を…!危機感がなさすぎだ!よく今まで何もなかったなこの子…)」

 

暁はまさかの事態に悪態つくが、今まで自身に何も無かったことに驚くしか無かった。あまりにも危機感がなさすぎたのだ。

 

今すぐにでも引き返したいが、ハナがこうなってしまった以上簡単にいかなくなってしまった。霊は視認し、見えるとバレてしまうと襲い掛かったり、自分で誰かに取り憑いたりするので無視すれば問題はない。しかし取り憑かれたら取り憑かれたで面倒がおこるし、取り憑かれたら何かが起こる。

 

「(勝ったと思わないで…まだまだ手の内を見せたくないんでしょうけどそうはいかないわ)せっかくだからトンネルでも撮ろうよ。テーマは【暗がりを照らす光】」

 

「わー!なんかカッこいい!」

 

「(ど、どうしよう…)」

 

「………」

 

そんなわけで写真を撮ることになったのだが…

 

「二人ともいっくよーっ!」

 

「な、なんで私と暁の二人なの?」

 

「だって暁くん映るだけでも絵になるし、せっかくだし男女で撮りたいなって!なんかアート感な感じ?」

 

「そうそうアートアート」

 

「………」

 

あー、もうそろそろこのガキ脅した方がいいか?イライラする…

 

「暁…大丈夫?」

 

「ごめんみこ」

 

「えっ、何…をっ⁉︎」

 

俺はみこの肩に触れ自身に寄せる。俺の無限をみこにも付与させる。これならみこにも近づくこともできないし取り憑くことも出来ない。

 

「おおーっ!暁くん大胆だねぇ〜。二人そのままで!」

 

「(さぁ…いつまでシカトで凌ぐつもり…?マザーを退けた霊能力を見せてごらんなさい!!)」

 

パシャリ!ハナがシャッターを切りそのまますぐにみこを離し距離を取らせ、写真の確認をする。俺はそのまま背後を見る。

 

霊が複数体増えている。

 

「お前らに恨みはないけど…そのまま消えろ」

 

俺は小声で霊に告げ祓う。俺はそのままみこ達の元に戻る。

 

「(え…霊が一瞬にして消えた?いや、祓われたの?今のはみこじゃない。もしかして、この人がやったの?)」

 

ユリアは突然の霊の消失に驚いていた。暁の写真を撮り、後ろを見た途端に霊が消えていたのだ。

 

「(もしかして、この人も見える人なの?)」

 

ポケットに手を突っ込みながら戻ってくる暁はそのままハナの隣に立ち写真の出来を待つ。

 

「ハナ、写真はどうだ?」

 

「うん!いい感じのアーティスティックだよ!」

 

ハナから撮った写真を手渡され取れ具合を確認するが、ハッキリと写っている。

 

「(この男、一体何者なの?やっぱりみこと同じすごい能力者なんじゃ!)」

 

「みこと暁くんもいい感じだよ!みこのこの表情だって滅多に見られないし!」

 

「(暁が祓ってくれたけど、ヤバい方にハナの能力が開花してる…でも)」

 

みこは肩を寄せられた事を思い出し頬を赤くしていく。みこは先程のことが恥ずかしくて仕方ないが

 

「(いい匂い、だった…)」

 

初めて異性の香りを間近で感じたみこは…どんどん顔を真っ赤にしていく。

 

「(まだいるか、祓ったせいで俺を怪しんでるな。これ以上長居はしない方が良さそうだ。写真も撮ったし引き返し……)」

 

ージャラ

 

 

 

「(ああくそ!最悪だ)」

 

「(や、ヤバいのきた)」

 

そこには鎖が巻き付いており、じゃらじゃら言わせ、逆さになった切り口のあるドラム缶に顔、数本の手足、異形の霊だ。

 

「もっといい写真撮れる気がする!早くトンネル抜けちゃお!」

 

 

「は、ハナ、ストッ…」

 

俺はハナを止めようと声をかけた瞬間、異形のドラム缶霊が鎖を伸ばし取り込み?捕食し始めた。

 

「(こいつもしかして、前の特級と同じ、他の霊を取り込む事で力が増すタイプか!このままじゃまずい…この様子だとみこの言った通り二暮堂にはこの霊は見えていない、てか何やってんだあいつ⁉︎)」

 

二暮堂は何やら小さい下級霊に向けて手をバッとかざしていた。

 

 

「ねぇ二人とも、早く行こうよ!」

 

まずい、ハナもやる気満々だ。どうする何かいい方法は…

 

「ハナ!そこにクー」

 

みこは誘導しようとしたのかわからないが、その瞬間に異形の霊は次々と霊を取り込み始めた。みこの顔色はどんどん悪くなる一方だ。

 

ん?顔色……これだ!

 

「みこ、顔色が悪いけど大丈夫か?体調良くないのか?」

 

俺はみこのそばに駆け寄る。そう、今のみこの顔色は誰がどう見ても悪い。この異形の霊がいてもなお見えないふりを継続してはいるが顔色だけはどうにもならなかった。俺はこれを利用して霊から遠ざける

 

 

「え…暁?」

 

「俺に合わせてくれ。これを機にこの霊から遠ざけさせる」

 

「!わかった」

 

みこは俺の意図をすぐに察してくれた。

 

「ハナ!みこの体調が変なんだ。こっちに戻ってきてくれないか?」

 

「え!みこ、大丈夫なの?さっき顔色悪かったけど、やっぱり体調良くなかったの?」

 

「うん、ごめん…ちょっと気分悪くて…」

 

「もしかしてお腹壊したの?」

 

「それハナが言う?(そこにいる霊のせいだなんていえない)」

 

「ハナ、悪いがみこと一緒にトンネルの外で待っててくれるか?俺と二暮堂はもう少ししてから戻る」

 

「うん、わかったー」

 

「ごめん暁、ユリアちゃんも…」

 

「気にすんな」

 

「う、うん。き、気にしないで(くぅ!勝ち逃げするつもりなの⁉︎言葉にできないのは悔しいけど…次は負けないわよ!)」

 

ハナみこに寄り添いながらトンネルの外に向かう。そして外に出たのを確認し、二人きりになった俺は二暮堂に顔を向ける。

 

「二暮堂…」

 

「な、なに?」

 

「お前、あれが見えてるか?」

 

「え?う、うん…って、あなたもあれが見えてるの⁉︎」

 

二暮堂は俺が見える事を明かすとそれはもう驚いていた。

 

「ああ、それと声を抑えて、俺の質問だけに答えろ…いいな?」

 

俺は多少言葉に圧を乗せる。二暮堂はそれにビクッとしながらもゆっくり頷く。

 

「まず一つ目、どうしてこんな場所に俺達を?嘘偽りなく答えろ」

 

「………みこがどれ程の能力者か…見極める為に」

 

「二つ目、お前はここがそう言う場所だと知ってたのか?」

 

「知ってる上で、この場所を選んだわ」

 

「最後に、あれは見えるか?」

 

俺は異形の霊の方を指差す。奴の周りには今霊はいないからな…

 

?オマエ、ミエテルノ?……

 

「?いや、何もないじゃない。ただの暗闇…それならあそこに…」

 

異形の霊は反応し、俺に対して問いかけてくる。二暮堂は低級霊のいる方に顔を向ける。確かに集まっており周囲を徘徊している。

 

あれを使う羽目になるなんてな…

 

「ん、お前、これつけてみなよ」

 

俺はバックから一つのメガネを取り出し二暮堂に手渡す。

 

「?眼鏡?」

 

「騙されたと思ってかけてみろ、かけたらさっき言った場所をもう一度見てみろ」

 

二暮堂は眼鏡を見つめながら渋々とかける。

 

「かけたわよ、あそこに何がいるって言う、の……」

 

!ミタ、オマエ、ミタノカ……

 

「ヒィッ!な、なんなのよあれ⁉︎」

 

二暮堂はあまりの異形の姿に恐怖に陥っていた。反応からして本当にここまでヤバいタイプの霊は見たことがなかったようだ。

 

「あれは俺とみこが見えてるものだ。お前はそこらの霊は見えてるらしいけど、あのヤバいやつは普通じゃ見えていないんだろ?」

 

俺が渡した眼鏡はレンズ越しから呪霊や霊を視認できる眼鏡だ。この眼鏡は母さんが作った呪具の一つだ。

俺の先祖は呪術師だが、母さんはそう言った物を作る呪具師の末裔であり、腕は本物だ。俺も作れはするが母さんには程遠い。

 

今回は持ってきておいてよかった。お陰でこいつには色々と解らせることが出来る。

 

「(こ、こんな化け物をみこは見ていたって言うの?それならすごい能力者なのも頷ける…)」

 

「あと、みこは能力者でもなんでもない、ただ見えるだけの普通の女の子だ」

 

「え?見えてる、だけ…?」

 

「みこは本当は見えない子だった。だけど何も前振りもなく突然奴らが見えるようになった。わかるか?そのせいでみこは毎日怖い思いをしてきて、誰にも…家族にすら相談できずにいたんだぞ」

 

「………」

 

「俺とお前は物心つく頃から見えて周りに変に思われたり、慣れているかもしれない…みこは数ヶ月そこら、俺に相談するまでは毎日霊に見えないふりをやり通してやり過ごして、精神的にもまいってた。家でも気を抜けなかったんだぞ。そして今回はよりによって溜まり場に連れて来られるわ。お前さ…こう言ったことに手を出すなとは言わないけど、危機感ってやつがなさすぎなんだよ!見える者ならそう言う事くらいわかるだろうが!!遊び半分でやってるなら関係のないやつも巻き込んでんじゃねぇぞ糞餓鬼!!」

 

「ッ!ご、ごめん、なさい」

 

「………わかったならいい」

 

涙目になり謝罪する二暮堂はみこがただ見えるだけの子だと知り罪悪感でいっぱいになっている。俺も少し頭に血が上り過ぎてた。

 

「さて、戻る前にアイツをどうにかしないとな…」

 

俺は異形の霊に視線を移す。気配は禍々しくなっており鎖を飛ばしたりする少し厄介な奴だが、俺の敵じゃない。

 

「ねぇ、どうするつもりよ。流石に私でも無理よあれは…」

 

「どうするって?祓う。それだけ…放っておくと確実に人に影響を与えるから…」

 

「ハァッ⁉︎あんな化け物どうやって祓うのよ⁉︎」

 

 

「黙ってみてろ…」

 

俺は霊を見据え、ただただ集中する。

 

ミタ、ミエテル、ミタ!!ミタミタミタミタミタミタ!!オマエミエテル!!

 

ニチャアと歪んだ笑みを浮かべながらこちらに迫る。暁はその場から動かず更に集中する。

 

「ちょ、ちょっと!あいつこっちにきてるわよ⁉︎ねぇ!」

 

 

「…………」

 

 

暁はゆっくり構えを取り、その場から消え、霊の懐に一瞬に入り込み、呪力の込められた拳が、叩き込まれる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「く、黒い…雷?」

 

 

 

 

 

 

黒い雷の閃光を迸らせながら…

 

 

 

 

拳を叩き付けると地面のアスファルトにヒビが広がり、青黒い呪力が黒い雷となる。暁は黒閃を決めたのだ。

 

 

まともに喰らった霊は体の一部を失う。しかし暁は霊の背後に周り回し蹴りを与える。

 

そしてその蹴りは再び黒い閃光の雷を迸らせる。

 

「これで…終わりだ」

 

最後に拳を霊の顔面に向け叩きつけ黒い閃光も迸る。異形の霊は粉々に消し飛び消失した。

 

「(3回か…結構耐久力のある奴だったな)」

 

「…………」

 

 

暁は呪力を解き拳を見つめる。そばで見たユリアはポカーンと暁を見ることしかできなかった。非現実的な光景を見せられた彼女からしたらあり得ない光景だった。

 

「うわっ、アスファルトヒビ入ってるし。まぁ…大丈夫でしょ!多分、まっ、一件落着って事で…戻ろうかって、どうしたの?ポカーンとして」

 

「ごめん、ちょっと色々と追いつけないわよ」

 

「ああ、それもそっか。それと二暮堂…」

 

「な、なによ」

 

「みこと仲良くしてやってくれないか?せっかく同じ体質を持った子が同じ学校にいるんだ。隠し事をしないで話せる相手がいるのは…最高だぞ」

 

二暮堂は疲れた表情してる。取り敢えず眼鏡は返してもらいみこの元に戻る。

 

 

 

 

ハナ達と合流し、そのままバスに乗り山道を降りて行く。何故かみこは何やら考え込んでいたが、取り敢えず気にせずバス外の景色を見る。辺りは自然が広がっており景色は良い。

 

 

「(二暮堂とみこ、ようやく見える者同士が同じ高校にいたんだ。いい友達に、なれると……いいな…)」

 

 

なんか…瞼が重く…

 

 

 

 

 

「あ〜映えスポット行きたかったなぁ。ぜったいイイ写真撮れた筈だよぉ」

 

「(あの神社に助けられた。まさか動物に化けることが出来たなんて。霊が言ってたサンカイ…あれは。これ、やっぱり暁に言った方がいいのかな?)」

 

「(……なんか、悪いことしちゃったかも、本当にみこは見えるだけの子ならとんでもない勘違いをしてしまった。あのイケメンの方がバリバリの能力者だったわ)」

 

「……」

 

暗い雰囲気の中はハナはスマホを取り出す。

 

「もう二人とも!えいっ!はい、チーズ!」

 

みこの肩をユリアを巻き込みながら自身に寄せ、カシャっとシャッター音が鳴りハナはスマホを操作する。

 

「そんなに落ち込まないで、写真ならいつでも撮れるんだから。はい!送ったよ」

 

 

「………」

 

ーー幽霊見えるとか、かまってちゃんかよ。キモッ

 

 

 

ぐぎゅるるる〜

 

「なんかお腹すいちゃったしミセド行こうよ!」

 

「いや音…」

 

 

「(考えてもしょうがない。とりあえず切り替えよう)行こっか。ミセド」

 

 

「行こ行こ~!ユリアちゃんはミセド、何が好き?」

 

「ベ、ベニテングマフィン…」

 

「アハハッ!っぽ~い!暁くんは…って、あらら」

 

「?どうかしたハナー」

 

 

するとみこの方に暁の頭が寄りかかってきた。突然の事にみこは顔を真っ赤にして行く。

 

「さ、暁⁉︎」

 

「すぅ……すぅ」

 

「暁くん、すっかりお眠ちゃんだね」

 

「ううっ、こ、これどうしたら…」

 

「つくまで寝かせてあげよ。それに寝顔も超可愛い〜!」

 

ハナは暁の寝顔にキャッキャしていてみこは暁の方へ視線を向ける。

 

「(本当に寝てる。まぁ、この感じじゃ寝てもおかしくないのかな…)」

 

「スゥ…うみゅ…」

 

「(ふふっ、可愛い…それに髪の毛、サラサラのふわふわ)」

 

みこは暁の頭を撫でた後、スマホを取り出し、そのまま暁の寝顔を撮る。

 

 

ーーみこと仲良くしてやってくれないか?せっかく同じ体質を持った子が同じ学校にいるんだ。隠し事をしないで話せる相手がいるのは…最高だぞ

 

「(別に…)」

 

ユリアはハナが撮った写真をそのまま待ち受けに設定した。

 

 

「(なんだろう、暁にこうされるのは…嫌じゃない)」

 

「ねぇねぇみこ、暁くんが寝てる間に聞くけど、みこは暁くんの事好きなの?」

 

「え?」

 

「だってみこって暁くんといる間笑ってる事多いし!今でそうだけど、私でも見たことのない表情も最近見るから、どうなのかなーって!因みに私はみこが暁くんの事が好きだと思ってる!」

 

「………」

 

みこは眠っている暁を見つめる。異性に対して関心のなかったみこ自身も少なからず何かが変わっているのは感じていたが、ハナの言葉により核心へと変わって行く…

 

 

 

 

 

 

 

 

「(私…暁のことが)」

 

 

 

 



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最強呪術師は自覚する

大変お待たせしました!


「暁、これなんかどうかしら?」

 

「いいんじゃね?似合ってるよ」

 

「もう、反応薄い。もうちょっと何かないの?」

 

「いや、母さん何着せても似合うから仕方ないだろ」

 

「それはあなたも同じでしょ?」

 

今俺は母さんと買い物に来ている。アクセサリーづくりに必要な材料などを買い、今は服を見ている。俺は履いている靴が古くなり新しく買い直した。俺デケェからサイズが合う靴を探すのも一苦労だ。

 

家にも試作を作るための作業部屋もあるため母さんがよく作業している。俺も幼い時からその姿を見ているから作れるが、母さんには程遠い。みこに作ったブレスレットが今のところ最高の出来だ。

 

 

「暁は……これなんてどう?これと合わせたら合うんじゃない?」

 

母さんが見せてきたのはシンプルな白の長袖シャツと黒のロングコートだ。確かにこれから先寒くなるから必要になってくるだろう。

 

 

「いや、俺は別に着れるのならなんでも…」

 

「よかったらご試着されますか?」

 

このお店の店員さんが試着を勧めてきた。なんかすっごいニマニマしてるなこの店員。

 

「暁、折角だし試着してみたら?」

 

「……わかったよ」

 

俺は母さんの言われた通り試着室に入る。母さんも既に気づいているけど、ここに来たのは気配も感じ取ったからな。

 

 

「私ここで待ってるから着たら見せてね」

 

俺は頷き試着室に入りカーテンを閉める。

 

 

『あんなイケメンなお兄さんとお買い物なんて仲がいいんですねー』

 

『うふふ、妹と呼ばれる年齢じゃありませんよ私は。こう見えてあの子の母親なんです』

 

『ええ⁉︎お母様だったんですか⁉︎も、申し訳ありません!』

 

『大丈夫ですよ。周りからも兄妹とよく間違われるので、私ってそんなに若く見えますか?』

 

『は、はい。とても』

 

なんか話に盛り上がってるな。母さん若く見えるからよく兄妹と間違われるんだよな。母さん綺麗だから今でも偶にナンパなんてされる事もある。

 

「(気配は近いが姿を現さないな…何か条件でもあるのか?)」

 

俺は今着込んでいる黒のパーカーを脱ぎ、白の長袖シャツを着込み、鏡を見る。

 

【オニアイガイイデスネイタイ、アワアワセテミマシタ】

 

「(成る程、ここで試着する事で姿を現すタイプの霊か…)」

 

目の前にいるのはスーツ姿の女性の霊だ。頭は凹んでおり首は捻れたような状態。このまま放っておいたらこのお店に何かしら影響を及ぼすだろう。

 

【ッ!オマエ…ミエテルノォ?ミエテルゥ?】

 

鏡から視線あったのか俺に問いかけてくる。しかも気配が増したな…二級あたりか?まっ、問題は無いけど…

 

【ギャッ!!?】

 

「(なんだ?意外と耐久力ねぇな…)」

 

とりあえず左手に呪力を集中させ視認できない速さの裏拳を喰らわせ、霊は吹っ飛び試着室から消えた。気配が消えたところを見ると今の一撃で消滅したのだろう。

 

とりあえず黒のロングコートを羽織る。その間母さんは試着を終えるまで俺が出てくるの待ち続ける。

 

「着替えたぞー」

 

「着替えた?見せてちょうだい」

 

俺は掴んだカーテンを引いて着た衣装を見せる。

 

「どう?」

 

「うん、良いよ! シンプルな色も似合ってるわよ暁!じゃあ次はこれ!!」

 

 

「いつの間にそんなの選んでたんだよ」

 

似合ってるかどうかを訊ねた俺に対し母さんはすごい褒めていたが、いつの間にか今度はグレーのコーチジャケットを手渡され、しばらく俺は母さんの着せ替え人形と化してしまった。ただ母さんが選んできた服は俺の好みにドンピシャな物だった。

 

「こんな感じになった…」

 

「それもいいじゃない!」

 

 今着てる服を着て見せると、他にも手に持っていた服の一式を受け取って再び着替え始める。

 

 

 それから暫くの間は母さんによるファッションショーが続き、それが終わる頃には流石の俺もつかれる。今回試着した服を上と下のセットで4着買うことになった。

 

「ふぅ、疲れた……」

 

「うふふ、久しぶりに楽しんだわ。霊も祓えたし…後は問題はなさそうね」

 

「いい笑顔で言って、こっちは別の意味で疲れたんだぞ」

 

「いいじゃない偶には、後でチョコシェイク買ってあげるから」

 

「そうかい」

 

その後店を後にし、俺はチョコレートシェイク、母さんはストロベリーシェイクを飲むのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「姉ちゃん、母さんのプレゼントなに買うの?」

 

「うん、服を買おうと【ギャァァ!!イタイー!!】……思う」

 

「姉ちゃん?」

 

「あ、あのお店に行こっか(な、なんかヤバいの飛んできた上消えた?すごい拳の跡……)」

 

別の場所ではある姉弟が買い物に来ており、暁が裏拳で吹っ飛ばし、顔面が凹んだ霊が現れたが、しばらく痛みにもがいたのち消滅した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねぇ、暁」

 

「んー?」

 

「今言うけど、あなた最近何かあった?」

 

自宅に向けて車で帰る際、母さんに変なことを聞かれた。最近特になにもないが、突然どうしたんだ?

 

「別に、なにもないけど」

 

「えー、嘘おっしゃい。あなた最近変わったわよ。なんというか…笑うことが多くなったていうかなんて言うか」

 

「俺だって笑うことぐらいあるわ」

 

「そう言った笑いじゃなくて、なんと言うか、偶に今まで見たことないくらい穏やかな笑顔を見るようになったわよ」

 

「そうか?」

自覚はないけど、そんな表情をした事があったのか?いつ…

 

「メールのやり取りをしてるときによくあるわよ。もしかして……みこちゃんが関係してる?」

 

「なんでみこが出てくるんだよ?」

 

「えっ?暁が友達の里香ちゃん以外の女の子を呼び捨てにしてる⁉︎お母さんびっくり!!前までは四谷さんって呼んでたのに…」

 

母さんは里香のことは知ってる。後は憂太も。テストや試験勉強の時に偶に一緒に勉強する際に家に来たことがあるから二人とは顔見知りだ。

 

「いや、みこの友達がなんか距離感感じるっていわれてそうしたんだ」

 

「ふーん?ねぇ…暁はさ、みこちゃんのことどう思ってるの?」

 

「どうって、どういう事だよ」

 

「あなたの変化に気づけないほど落ちぶれていないわよ。女の子に興味を示さないあなたが、少しずつ変わってる。例えばだけど、あなたとみこちゃんが手を繋いでいるところを想像してみなさい」

 

「…………」

 

俺はとりあえず母さんの言葉に言われたとおりに想像してみる。なんでだろう…心拍が速くなってる?

 

「どうかしら?」

 

「……なんか、心拍が速くなってる」

 

母さんは俺の言葉にミラー越しにニヤニヤと笑みを浮かべていた。なんか腹立つ笑み…

 

「じゃあ次にそのみこちゃんの手を繋いでいる相手を暁じゃなく…他の男性を想像してみて」

 

「………?」

 

暁は再び静江の言葉に首を傾げながら言われたとおりに想像してみる。

 

「……どうかしら?」

 

「……なんかイラっとする」

 

 バックミラー越しで青筋を作り、眉を顰めている暁の様子に静江は笑みを浮かべる。

 

「言われてみればこの感じ、みこと一緒にいる時にある感じだ」

 

「暁、それはね、あなたは恋をしてるのよ」

 

「は?」

 

暁は突然の事に素っ頓狂な声を出す。

 

「恋?俺が、みこに?」

 

「ええ、あなたはみこちゃんに恋をしてるのよ。もしかして本当にわからなかった感じ?だとしたらちょっとウケるわ」

 

「………わかるわけねぇだろ」

 

母に言われようやく自分の気持ちに気づいた暁は顔を赤くしていた。

 

「誰かを好きになるなんて、今までなかったんだよ。他の奴らはずっと顔ばかりで近付くやつばっかだったし。ましてや自分が誰かを好きになるなんて思わなかったんだよ」

 

「(うわぁ、まさかここまでとは。暁もそんな顔できたのね…)」

 

静江は初めて見せる息子の表情に少し驚くも少し寂しくも感じた。

 

「暁……」

 

「なんだよ…」

 

「お母さん、応援してるからね。困った事があったら遠慮なく相談しなさい」

 

「………おう、サンキュー」

 

 

暁からいい返事を聞き、静江は笑顔を浮かべる。暁は車に揺られながら外の景色を眺めるのだった。



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更にヤバい予感

◇みこside

 

「わっ、動いた!せんせーのお腹の中でうごめいてるよ!」

 

「あはは!うごめいてるか」

 

「はな、【蠢く】って表現は違くない?」

 

「ウネウネしてるーっ!」

 

「(その表現もなんか違う)…せんせー明日から産休だね…」

 

「あら、寂しいのみこ?」

 

「ちょっとね」

 

「あたしはすっごくさびしいよーっ!」

 

明日から担任の荒井先生が産休で休む事になる。私はハナと一緒に先生のファイルや書類を持ち付き添いをしている。お腹もすっかり大きく、その中に新たな命が宿っている。

 

「元気な赤ちゃん産んで早く帰ってきてね!授業中はあたしが抱っこするから!」

 

「おっ!!たのもしいね。おむつも替えてくれる?」

 

「それは、ちょっと…」

 

「なんでよ〜」

 

「(?…なんだろうあれ…)」

 

先生の腰あたりに何か…人魂サイズの何かが、するとそこから手のようなものが伸び、先生のお腹に触れる。

 

「あっ…」

 

「ん?どした?」

 

「あ…えっと…なんでもない…(先生のお腹に…どうしよう、伝えたほうが…でも…なんて言えばいいの?)」

 

「ありがとうみこ、ここでいいよ」

 

「あ…はい」

 

「私がいないからって一限目から早弁しないでよハナ」

 

「しないよ!三限までは我慢する」

 

「はは!それも早弁と変わりないじゃないか」

 

「…(伝えても不安にさせるだけかも…ブレスレットで追い返した方が)」

 

私は袖をまくりブレスレットが見えるようにして先生に近づく。

 

「せんせーっ!あ…なんていうかその…気をつけて…ね…階段とか…っ(あ、あれ?離れない⁈もしかしてこれ二級以上の⁉︎)」

 

「んん…?どうしたの急に」

 

「重いものももっちゃだめっ…とにかくっ…体…一番に…」

 

ブレスレットを見て離れないとなると手の打ちようがない…ど、どうしよう。

 

「…ありがとう、今度は大丈夫!」

 

「?」

 

「今度は…?」

 

「実は2人目なの」

 

「えっ…」

 

「2人目?」

 

「うん、生まれてこられなかったんだけど…男の子でね。この子はお兄ちゃんの分までめいっぱい可愛がってやるんだ。不思議だけど…大丈夫だって気がするんだぁ」

 

すると霊は小さな手を伸ばし、お腹に手を添えている先生の人差し指に触れる。

 

「……(じゃあ、先生に憑いてるこのれ、いや…この子は、お父さんと同じ)」

 

「ぜんぜー!やっぱりおむつ替え頑張る!」

 

「はっはっは、期待してるぞ」

 

ハナが涙目になりながら先生に抱きつく、もちろんお腹の子に影響を与えないように優しく抱きしめる。

 

その後は先生とあいさつを済ませ下校する。途中までハナと駅まで一緒に帰り、その後は1人、どう中この辺りで事故があったのか花束が添えられていた。

 

『タスケテ…タスケテ…』

 

その電柱にはガラスの破片が刺さっている霊がいた。基本無視すれば何もないのでブレスレットは使わない。

 

「はぁ…(たまにわからなくなってくる。暁には憑いてる霊は人に影響を与えたり人の性格を表してるって言ってたけど、それはいい意味でも悪い意味でもある。今回先生が憑いてたのはいい意味だろうけど…私に見えてるものはなに…?なんで見えるようになったんだろう…相談相手はいるけど、私自身もちゃんと一人で向き合うべきなのかな…暁やユリアちゃん、数珠のおばあちゃんみたいに…」

 

暁は呪術師の末裔、ユリアちゃんは前向きに霊と向き合い霊に困っている人を助けようと除霊師を目指しており、最近じゃ隠し事をせずに話せる仲だ。

 

「(私も…二人みたいに向き合って…)」

 

するとみこの目の前に自動販売機に吸盤のように吸い付く異形の霊がいた。下半身にはズボンをはいていて、背中には触手が生えており、口からも触手があり自販機に吸い付いている。

 

「(ちゃんと…向き合う…)」

 

みこは震えながら暁の作ったブレスレットを取り外し、霊に接近する。

 

『あったかーい、つめめたーい』

 

異形の霊はみこの方に振り向き触手からは涎のようなものが垂れ出ていた。一眼見たら誰もが食われると思う状況だがみこは…

 

 

「(うん、無理だ。……どう向き合えばいいのコレ…)」

なんの力もないみこには耐えられず、ブレスレットを身につける。霊はブレスレットを見た途端距離を取りそのまま離れていき。みこはいなくなったのを確認してつめたーいおしるこを買うのだった。

 

 

 

 

 

「みこ!おはよう!」

 

「あ、おはようハナ」

 

翌日いつも通り学校でハナが元気よく挨拶をしてくる。その手に持っているパンは変わらず携帯している。私には見えないけど、生命オーラが低下してるのかな?ハナは引き寄せやすい体質だから色々と心配だけど…霊が憑いていないところを見ると問題はなさそう。

 

 

 

「ねぇ聞いてよみこ!昨日自販機でジュースを買おうとしたら…こんなでっかい蛾がとまってたの!!しかもボタンのとこにだよ!!」

 

「…まさかそのまま押したの?」

 

「押すわけないじゃん!ちょっかい出すと顔に飛んできたりするでしょ?触らぬ蛾に祟りなしだよ!」

 

「…(暁なら無限でなんとかなりそう)」

 

みこは暁なら無限の壁でそんな事態にならないと想像していた。そんなハナはホームルームが間もなく始まるにもかかわらずメロンパンを食べようとしていた。

 

予冷がなり先生が教室に入ってきた。

 

「あ、新しい先生じゃね?」

 

「……っ⁉︎」

 

 

「荒井先生が産休に入られたため、今日から皆さんのクラスの担当になります」

 

そこにいたのは、暁に出会う前…捨てられた子猫を引き取ってくれる人をSNSで募集していた際、子猫を受け取りに来ていた一人、私が見た中で上位に入るくらいヤバい何かを連れていた、男の人……彼の傍からおぞましい何かが憑いているのだ。

 

「遠野善です。みんなよろしくね」

 

「結構いい感じ」

 

「えーマジ?」

 

「さわやかじゃん」

 

「優しそうでよかったー」

 

「アリっちゃアリ」

 

他の同級生は新しい先生に好評だが、私はそんなことを思ってる余裕はない。暁に会うまではわからなかったけど、空気が少し張り付くこの感じ、絶対特級案件だ…ハナが憑いてた時と同じ感覚だ。

 

 

「…(さ、暁に相談しないと)」

 

「あれ?あの人何処かで…」

 

 

ーみこsideend

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇暁side

 

 

「ふぅ…こんなもんか」

 

俺はいつも通り課題を済ませ背伸びする。最近は大きな出来事はなく至って平和だ。最近みこからも問題なく過ごせていると連絡がきたから今のところは大丈夫そうだ。最近じゃ二暮堂と仲良くしてるとのことだ。同じ学校に隠し事をせずに話せる相手がいるだけでもだいぶ違うからな。

 

 

「さて、そろそろ母さんも帰ってくる頃だし…夕食の準備するか」

 

帰宅して時間も経っており、夕食の準備のため立ち上がる。

 

「えーと、ある材料は……よし、今日はオムライスでもするか」

 

そして始まった調理、暁は鶏肉、野菜などを捌き、ライス用のソースを作りその手際に無駄がなく、どんどん出来上がっていく。

 

「ただいまー」

 

後はオムレツを作るだけのところで母の静江が帰宅した。

 

「お帰り母さん、夕食は後ちょっとでできるから少しだけ待ってて」

 

「うん、わかったわ」

 

母さんは荷物を置き、上着をハンガーにかけ、洗面台に向かう。手洗いうがいは大事。

 

「いい匂い、今日はオムライスかしら?」

 

「ああ、今回はオムレツに手を凝ってるから一味違うぞ?」

 

「あら、それは楽しみね」

 

母さんは出来上がるまでテレビをつける時間を潰す。

 

「よし、完成!今回のオムレツは一味違うぞ」

 

「わぁ、凄いじゃない!」

 

出来上がったオムライスは店で出されるような出来映えのものだった。

 

「「いただきます」」

 

オムライスを口にする。

 

「ん〜、このオムレツのトロトロ加減、ライスも卵に合わせて味付け…美味しい〜」

 

「よかった。上手くできてて」

 

静江には好評であり、これには暁も満足そうな顔をしていた。するとテレビの画面を見ているとちょうどCMが流れていた。

 

 

 

ユルサナイ

 

かえして

 

なんでオマエが

 

しね

 

オマエさえいなければ

 

呪ってやる

 

「…………」

 

CMに出ている女優にいくつもの霊が憑いていた。コレの場合は中身の性格が表れてる証拠だ。

 

「この女優さん、一体何をしたのかしらね?」

 

「さぁ、俺にもわかんねぇよ」

 

夕食を終え、食器を洗ってお風呂を済ませ後はゆっくりするだけ。今回はゲームでもしようと思う。

 

 

♪〜♪〜

 

「ん?誰からだ?」

 

メールではなく誰かが直接連絡しているのだ。俺の知る人は限られる為、絞ることは出来る。

 

「みこ?珍しいな…直接電話なんて」

 

相手はみこだった。今までメールのやり取りがほとんどだった為電話をするのは珍しかった。

 

「もしもし?」

 

《あ、暁…今、大丈夫かな?》

 

「ああ、大丈夫だ。それにしても珍しいな、みこが直接電話してくるなんて」

 

《うん、ちょっとね。暁の声も聞きたかったのもあるけど…それより、ちょっと緊急事態》

 

「………詳しく聞かせてくれ」

 

声からしてあまり穏やかなことではないのは確かだった。みこは冗談でそんな事は言わない子だ。緊急事態となると害を及ぼす霊関係だろう。みこによると、前の担任の先生が産休に入り、新しい担任の遠野善先生が来たのだが、その先生に憑いているものに問題があった。みこ曰く、俺と会う前に遭遇していたらしく…その霊は特級レベルとの事。しかし、その霊を祓うにも問題がある。

 

「みこの新しい担任に特級レベルの霊が…しかし、場所がなぁ…」

 

《うん、暁も知ってるだろうけど…私の学校女子校だがら》

 

そう、祓うにも取り憑かれている遠野善さんは女子校の教師だ。俺はその学校には立ち入る事はできないしましてや問題だらけだ。

 

「みこ、ハナは大丈夫なのか?」

 

《今の所問題はないかな…今回はHR以外関わる事はなかったからいつも通り変わらないよ》

 

「そうか、だけど彼女の事も気にしておいてくれ、もしかすると今後ハナの体調に異変が起きる可能性も危惧しておいた方がいい。はっきり言って今回はブレスレットの効果も意味ないかもしれないが…対策はたてる。辛いかもしれないけど…絶対になんとかする」

 

《……わかった、こっちも何かわかったら連絡する。頼りにしてるよ…最強の呪術師さん…》

 

「ああ、任せろ」

 

通話を終えて俺は早速、遠野善さんに憑いている霊の対処法を考える。

 

「(…今回は長引くのはよくなさそうだ。まずは情報が欲しいな…祓うならその人が学校外の場所じゃないとな……それに)」

 

 

ーー暁の声も聞きたかったのもあるけど

 

「………」

 

彼の頬は赤く染め上がっていた。

 

 

「(あらあらぁ……)」

 

ちょうど扉の隙間から見ていた静江がその様子を微笑ましく見守っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……〜〜〜っ!!?」

 

一方四谷家の一室では自身の頬が見る見るうちに赤く染まっておりベッドでジタバタしていた。

 

 

「(わ、私……さらっととんでもない事言ってた気が…)」

 

トンネルの一件で親友に言われたことをキッカケに、自身の気持ちに自覚した彼女は先程の通話の後から自分がさらっととんでもない事を言っていたのを思い出し、頭から蒸気が出るほど顔を真っ赤にしてた。

 

 



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物の怪

現在三巻目にて突入です!


 

「はぁ…」

 

「どうしたの暁、さっきから溜息ばっかりだけど…」

 

「うん、いつも以上に溜息が多いよね?」

 

先日みこから特級の霊に憑かれた新しい担任が来たと相談されたのだが、場所が場所のためどうしようも無く、学校外で探そうにも顔も知らないのでみこから情報がこない限り対処しようがないのだ。

 

今は昼休み、弁当を食べながら俺は無意識に溜息を吐いていたようだ。それを珍しそうに見る憂太と里香、まぁ相談できるような内容じゃないので話さない。二人は見えてるわけじゃないしな。

 

「なんでもない。二人が心配するようなことじゃねぇよ」

 

「そう?ならいいんだけど…何か困り事があったらいつでも聞いてくれ」

 

「うん!いつでも里香と憂太が相談相手になるから!」

 

「相談、か。ならさっそく一つ聞いてくれるか?」

 

「え⁉︎あの暁が私達にマジの相談事⁉︎」

 

「なんでそんなに驚くんだよ?」

 

「いや、珍しいだろ?暁が相談事をするなんて…」

 

「そうだったか?」

 

「うん」

 

そんなに珍しいのか?俺にはよくわからんが…まぁ、せっかくの機会なのでこの二人にしか聞けない相談をしよう。

 

「その、お前ら二人だからこそ聞くが…」

 

「うん?」

 

「なになに?」

 

「えっと、その…実を言うと…好きな人が、できてだな…」

 

「……………」

 

「……………」

 

「「え…??」」

 

突然の事に少し間が空きようやく声にする二人だが、その表情はありえないものを見るような表情だった。

 

「…………」

 

「えっ、と……暁、それ……マジなの?」

 

「マジだよ………」

 

「……ほ、本当の本当の本当にマジなの…暁?」

 

「………二度も言わせんじゃねぇよ」

 

「「…………」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「えええええええええッッ!?!?!?」」

 

二人の声が屋上から響き渡る。その声を聞いた他の生徒が屋上の方を見上げていた。

 

 

 

 

 

「あの暁に好きな人ッッ!?」

 

「嘘でしょ⁉︎」

 

「………驚きすぎだろ。俺が冗談でこんなこと言うと思うか?」

 

「い、いや、思わないけど…」

 

「告白はしたの⁉︎」

 

「してねぇよ!ぶっ飛びすぎだ!!自覚したのだってつい最近なんだぞ?」

 

「ほほう!」

 

「暁の好きな相手って、多分前に言ってたみこって言う子でしょ?」

 

「他に誰がいるんだよ?女友達なんて限られてるぞ…」

 

「確かに…」

 

「暁って見た目の割に友達少ないもんね〜」

 

「うるせぇ、ほっとけ」

 

実際友達が少ないのは事実だ。普通に話す事はあるのだが、他の男からは嫉妬の眼差しで見られ邪険にされる事もあるし、女子からしつこく付き纏われたりで大変なのだ。唯一二人は俺を俺としてみてくれるので本当に助かっている。

 

「それで、暁は四谷さんの何処が好きになったの?」

 

「………そうだな、色々あるけど…芯の強くて、優しい性格…かな、あと、時折見せる笑顔が…」

 

「へぇ!」

 

「暁の口からそんな事を聞くなんて…すごいね、四谷さん」

 

暁は照れながらも好きになった理由を二人に打ち明ける。

 

 

「それで…なんかいいアドバイスはないか?二人は付き合ってるからその辺は詳しいと思ったんだが…」

 

「ウーン、暁も知ってるように、僕達は小学生の頃から両思いだったからアドバイスは難しいかな…里香は何かある?」

 

「私?ウーン、私は憂太と関わって一緒に遊んでいるうちに好きになっちゃったから…簡単に言えば自分の気持ちに素直である事かな?」

 

「自分の気持ちに素直に…か、【大人になったら里香と憂太は結婚するの】ってかんじにか?」

 

「ちょっ⁉︎や、やめてよー…今の歳になって自覚すると私ってとんでもない事を…」

 

「僕は嬉しかったよ里香…今でもその台詞はつい最近のように覚えてるよ」

 

「憂太…」

 

憂太の首にはチェーンに通した指輪がかけられていた。約束の証でもあり、里香にとっては愛の形なのだろう。

 

「……事実お前ら確定事項で結婚しそうだからなぁ…招待状は送れよ?」

 

「うん!もちろんだよ!」

 

「暁にも祝って欲しいしね!」

 

こいつら自分の世界に入って俺の相談事を忘れてるな、まあ…いい感じにアドバイスはもらえたからよしとするか、俺は俺のやり方でゆっくりやっていこう。俺達は食事を終え憂太と里香は屋上から退室する。普段昼休みの屋上は俺と憂太と里香しか使わないので滅多に人は来ない、爽快な天気の中でする読書は最高だ。

 

 

♪〜

 

「(メール?みこからか…)」

 

小説を読んでいるとみこからメールが来た。メールを見ると写真を貼り付けて《この人が遠野善先生》との内容だった。おそらくうまく写真を撮ることができたのだろう。

 

「ッ⁉︎」

 

俺は目を見開く、写真を見ると異形の怪物が憑いていたのだ。流石の六眼でも静止してる写真越しじゃどんな気配の流れをしているかはわからないが、これは怨霊の類だ。平安時代じゃ物の怪なんて呼ばれていたらしいが…

 

「(怨霊とくるか…その周りにいるのは…猫か?1匹だけじゃねぇな…やっぱり静止してる写真じゃ六眼も意味ないか…)」

 

映像や肉眼で見る事には六眼も発揮できるが…流石にみこにはリスクがありすぎる、仮に憑いていた霊に何かされて事故なんて起こったらたまったもんじゃない。

 

「(一先ず顔だけわかっただけでもよしとするか…)」

 

 

俺は《ありがとう、無理だけはするなよ?》と送り返し既読マークはすぐにつきみこから返信がくる。

 

《わかった、なんとか頑張る。それと先生に憑いてたヤバい霊、見つめてたせいなのか私の背後に迫って【みるな】って言ってた》

 

 

「(先生を見つめただけで背後に⁉︎思っていた以上にヤバいかもな……みるな、か…もしかして)」

 

ある推測に辿り着いた暁だが、すぐさまみこから連絡が来た。

 

《今日ミセドでキャンペーンやってるらしいけど…放課後暁も一緒にどう?》

 

「(ミセドか…偶にはいいかもな)」

 

俺は《OK、何処集合?》と送ると《ミセド前に来て、ハナとユリアちゃんも一緒だから私達も放課後向かう》と返信がくる。

 

「ふう、今回は思っている以上に厄介かもな…」

 

暁は空を見上げながら呟き、読書に没頭するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇みこside

 

 

「これ3つください!」

 

「胃に対する暴力だよ」

 

私の通っている女子高は現在昼休み中だ。購買部でハナが『チョコチップメロン練乳焼きそばパンBIG』と言うパンを3つ購入した。胃もたれがすごそうな組み合わせ…ハナなら余裕で食べれると思うけど。

 

「なんか朝からお腹空いちゃって」

 

「HRでメロンパン食べてたじゃん」

 

「あれは食べたうちに入らないもん。食欲の秋ってヤツ!」

 

「ハナは食欲の四季でしょ…」

 

 

食べたいものを買ってハナと教室に向かう。現在新しい先生に憑いてる霊に気を抜けないが、暁には既に相談している。まずは情報…せめて写真を撮ることを目的としている。

暁は先生の顔は知らないから対処しようがない。いまのところハナの体調に変化はなくいつも通り食欲も旺盛だ。

 

 

 

 

「それよりまだ思い出せないんだよねあの新しい先生のこと…絶対にどこかで見たことあると思うんだけど…」

 

「他人の空似じゃない?」

 

「そうかなぁ…うーんだめだ。お腹が減って頭が働かない」

 

「(ハナには見えてないから印象が薄いのかも…ハナの体調に今の所異変はないけど…注意しておかないと)」

 

「あっ!!」

 

「!ど、どうしたの?」

 

「食後のおやつパン買うの忘れてた!!」

 

「正気を疑う発言なんだけど」

 

あんな胃に暴力的なパンを三つ買った上おやつのパンの買い忘れって…その栄養は一体どこに運ばれてるんだろう…

 

「ごめんみこ!先に戻ってて!!すぐに追いつく!」

 

「ちょ…」

 

ハナはすぐさま購買部へ引き返す。戻るまでとりあえずここで待つことにする。

 

「はぁ…(ハナが思い出すと色々厄介なことになりそうだし…気をひく話題を用意しておかなきゃ)」

 

スマホのホーム画面を開き何かしらの話題を探す。ハナは食べ物には目がない為食べ物中心に調べる。

 

「(うーん、特にこれと言って話題のものは無さそう。偶には思い出話しでもいいかな…)」

 

ネットから写真のアプリを開く、アルバムには中学の時の写真や家族と撮った写真、景色など様々だが…見えるようになってからは霊が映り込んでしまっているのも少なからずある。

 

「あ…」

 

画面をスライドしている暁の寝顔の写真が出た。この写真は以前トンネルの時の帰りのバスで私に寄りかかって眠ってしまった時に撮った写真だった。

 

「ふふっ(こうやってみると、年相応な顔してるなぁ…)」

 

暁は背が大きくて大人っぽい雰囲気があるが、私と同い年の高校生だ。見た目は誰もが二度振り向いてしまうほどのイケメンだ。 

 

優しくて頼もしい、そしているだけでもとても安心感を与えてくれる。

そしてすごい力を持ちながらも善行にしかその力を使わない。暁の力は下手をすれば他人の命を奪いかねない力でもあるけど…私はその力で害のある霊から助けてもらっている。

 

「(私も頑張らなきゃ…)」

 

トンネルの一件でハナに言われた事をきっかけに彼女は恋をしている。暁はモテる為難易度は高いと思っている反面、二人は両思いをしていることにはまだ気づいてはおらず、両片思い中だ。

 

 

「あ…(先生、これってチャンスなんじゃ…)」

 

ふと窓の先を見ると、廊下には善が歩いていた。これをチャンスと思いみこはすぐにスマホを構える。すると背後には禍々しい霊が現れ、窓にバンバン!と音を立て、周りには猫らしきものも姿を確認できた。

 

「ッ⁉︎」

 

その光景にゾッとしたみこはすぐさまシャッターをきりそのまま逃げるように女子トイレに入る。

 

 

「はっ…はっ、はぁ…はぁ(と、撮れたよね?)」

 

みこは息を少し荒立ていたがすぐに落ち着かせ写真を確認する。写真は上手く撮れており、異形の霊もしっかり写っていた。

 

「(よかった…撮れてる。後で暁におく…)」

 

………

 

「うわっ(あっ、ヤバっ…声出たっ。しかもデカっ⁉︎)」

 

鏡を見ると首は長くお腹には口のある化け物の霊がおり、みこは思わず声に出してしまう

 

ん?

 

「(と、とりあえず誤魔化して…)」

 

みこはなんとか誤魔化しながら髪を後ろに束ねるようにしてブレスレットを見せる。

 

んっ⁉︎んぃぃぃっ⁉︎

 

ブレスレットを見た瞬間霊は怯えながらトイレから逃げるようにいなくなった。

 

「はぁー(よかった。二級以下だったみたい。気を抜くとこれだからなぁ…)」

 

涙目になりながらなんとか危機を脱したみこは膝をつく。

 

「ちょっ、みこ…どうしたのよ?」

 

「え…」

 

振り向くと弁当箱を持った二暮堂ユリアがいたのだった。口元にはご飯粒が付いているのを見ると、トイレでお弁当を食べていたようだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「このパン、なんか思ってたのとなんかちがう…」

 

「3個目で言うそれ…」

 

「ユリアちゃん食べる?」

 

「…いい」

 

食後のおやつパンを買い終わったハナと合流し、三人は校舎内の広場に設置されたベンチでお昼ご飯を食べていた。ユリアは既に食べ終わったので会話のみである。

 

「(先生に憑いてるだけじゃない、この学校内もヤバいのが多く潜んでる。暁のブレスレットがあるからって気は抜けない…今の所特級はあの先生に憑いてるヤバいのだけ)」

 

みこの学校にも見た目のヤバい霊は多く潜んでいる。大抵は暁のブレスレットのおかげで逃げていったりして難は逃れているが、気を抜くと先程のように、いつのまにか目の前にいるなんてことも何度もあった。

 

「ユリアちゃん、もしかしていつもあそこで食べてるの?」

 

「……別にっ…いいでしょ。どこで食べようと私の勝手でしょ」

 

「だめだよ。もうあんな所で食べないで」

 

「………じゃ…じゃあドコで食べろっていうのよっ」

 

「?そんなのあたしたちと一緒に食べればいいじゃん」

 

ハナはユリアにクリームパンを差し出す。ユリアは黙ったまま、ハナの差し出したクリームパンを受け取る。

 

「(別に…別にっ)」

 

「(よかったね、ユリアちゃん)」

 

みこはユリアが内心で喜んでいるのを感じ取れた。その姿にみこも少し笑みを浮かべた。

 

 

「っ…(まさかあの人が教師でうちのクラスの担任になるなんて…)」

 

2階の廊下に遠野善が歩いていた。今はヤバい霊の姿はなく、みこは善を見据える。

 

「(ユリアちゃんは見えて無さそうだけど、皆が危険な目にあわないように、私にヤバい霊をなんとかする力はないけど…私は私にしかできない事を… 『みるな』っ⁉︎」

 

背後にとてつもないのおぞましい何かがみこに呟き、一言言うとその姿は一瞬にして消えた。

 

 

「んー!やっぱシンプルが一番だね〜…えっ」

 

クリームパンを食べ終えたハナがみこを見ると瞳から涙を流していた。

 

「みこ…どしたのっ」

 

「…目に、カナブンが入った…」

 

「ヤバいじゃん!!」

 

「(……ナニかいたのかしら?私には見えないヤバいヤツが…)」

 

ユリアはみこの反応を見てただ事でない事を察した。みこは涙を抑え気持ちを落ち着かせた。

 

 

「そうだみこ!今日ミセドでキャンペーンやってるらしいの!放課後一緒にいかない?ユリアちゃんも!」

 

「う、うん、行こっか」

 

「わ、私も?」

 

「もちろん!」

 

ハナは二人をミセドに誘い、みこはスマホを開き先程撮った写真を文と一緒に送る。

 

「(とりあえず情報は送れた。後はどんな反応をするか)」

 

一分すると暁からの返信はすぐきた。《ありがとう、無理だけはするなよ?》との事だった。

 

「ふふ…(心配症なんだから)」

 

みこはすぐに先生に憑いてたヤバい霊が背後に迫り、【みるな】と言っていた事を伝える。

 

「みこ、もしかして暁くんと連絡してるの?」

 

「えっ、う、うん…そう」

 

「ヘェ〜、相変わらず仲いいんだね〜。そうだ!折角だし暁くんも誘う?」

 

「暁も?」

 

「うん!人数が多い方が楽しいし!」

 

「…わかった。聞いてみる」

 

みこは暁を誘うとOKと、連絡が来て、ミセド前で放課後に待ち合わせ場所を伝えた。

 

「ハナ、暁も大丈夫だって…」

 

「やった!それで、最近暁くんとはどうなのみこ?何か進展あった?」

 

「ど、どうって…別に変わらないけど」

 

「えーほんとに?」

 

「ほ、ホントだよ」

 

最近ハナはみこの恋愛方面にグイグイ質問してくるようになってしまって、この話になると簡単には引き下がってくれない。

 

「チューはしたの?」

 

「出来るわけないでしょ⁉︎」



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