マスターったら酷いんですよ (甲乙丙一二三)
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人相が悪いマスターのきりたんの場合。

 初めまして。東北きりたんです。めちゃくちゃ人相の悪いマスターのボイスロイドやってます。しばらく私の愚痴に付き合ってください。

 

 うちのマスターったら酷いんですよ?「ボイスロイド東北きりたん」は基本的にマスターのことは「あにさま」と呼ぶように設定されてるから、わざわざ「マスター」に直すのめんどくさいんですよね。

 

 一回マスターに直談判したことがあるんですよ。マスターに買われたばっかりの頃に。「なんでマスターって呼ばせたいんですか?あに…マスターってなりがちなんですけど。マスターのことあにさまって呼ぶんじゃダメなんですか?」って。そしたらなんて言ったと思います?「いや…だってな…こんな小さい子にあにさまって呼ばせるのは犯罪臭が…」なんて言ったんですよ!!?!?なんで私買ったんですか!?!?っていうかそもそも私服はチンピラ、スーツ着たらヤのつく自由業みたいな見た目してるマスターを「マスター」って呼ぶのはそれはそれで犯罪臭物凄いですよ大丈夫ですかマスター!?!?

 

 

 …失礼。まあマスター呼びになって早数年、もうとっくに慣れたから別にいいんですけどね。

 話は変わりますが、お互いそこそこ慣れた頃になんで私の事買ったのかマスターに聞いた事あるんですよ。「なんで私の事買おうと思ったんですか?」って。

 …いやまあ、話の流れからしてなんとなーくろくでもないんだろうなとは察して頂けると思うんですけど、マスターはこう言ったんですよ。「ウチの家系は男ばっかりでな…いとこ連中もそのガキも、兄貴のガキもしかいねえんだよ。だからなんというかな、変態感凄いが妹分というかそういうのが欲しかったんだよ。…誰にも言うなよ?変態って思われるからな?」ですって。

 …ならあにさま呼ばわりでいいじゃないですか!!!!むしろ望むところじゃないんですかマスターー!!!もう気持ち悪いんだから変なところで良識見せなくていいんですよ変態!!

 

 …失礼。またしても取り乱しました。まあマスターがチンピラロリコンなのはまあいいんですよ。私になんかするでもないですし、なんなら甘やかして色々買ってくれるんできりたん完全勝利まであります。

 …なんですけどねえ、たまにマスターはこのままでいいのかとか思ったりもするんですよね。

 まああれですよ?こんな時代にヒトの幸せはヒトと愛し合って子孫を残すことだーなんてことは言わないですよ?ですけど私にも耐用年数ってものがある以上、マスターが死ぬまで一緒にいるって訳にいかないですし。そうなった時マスターどうなっちゃうんだろうって思うとちゃんと生きてる人間と暮らして欲しいなー、なんて思っちゃうんですよ。だってまあボイスロイドはマスターの幸せの為のものですし?マスターの幸せを願うのは当然のことだと思うんですよ。

 何笑ってるんですか。私にとってはそこそこ大事なことなんですよ?なんだかんだ私だってマスターのことは好きなんですから。

 …いやまあアレですよ?仮に、仮にマスターが私とずっと一緒にいたいからって私の耐用年数過ぎてからも新しい身体買ってそこに私入れたら全然私はマスターが死ぬまで一緒にいても全然いいんですけど、そうなったら、まぁ、私が一人残されて、寂しいじゃないですか。次のマスターが私に優しくしてくれる保証も無いですし。何より私だけマスターのことを覚えてるっていうのも悲しいんですよ。

 まあ私のワガママなんですけどね。

 

 …なんか沈む話ばっかりになっちゃいましたね。

 マスターのいい所でも話しましょうか。

 

 マスターはね、いい人なんですよ。私のことを買ってからずっと、○○が欲しいっておねだりしたら買ってくれますし、どこかに行きたいって言ったら連れてってくれるんですよ。あんな顔怖いのに。

 私だって罪悪感はあるから、あんまりねだってすぐ買って貰えるといたたまれなくなってあんまり頼みごとしなくなるんですけど、そうするとマスターはちょっと寂しげな表情になるんですよ。だから私は色々ワガママを言い続けるんですよね。

 まあこれがあまり健全でないのは分かってるんですけど、それでマスターが楽になるならいいと思いません?

 少なくとも私はそう思うんですよ。

 

 なんか思ったより暗い話になっちゃいましたね。

 ……まあなんです。なんとなく聞いてもらえてすっきりしましたよ。

 二度と来ないのが一番いいんでしょうけど、なんとなく私はまたここに来るような気がします。

 機械なのに直感っておかしいですかね?…それほどなくもない話、ですか。まああなたがいうならそうなのかもしれませんね。

 

 …最後に、マスターと私のことを占ってみてくださいよ。

 なんですかその目は。別に占いを信じてる訳じゃありませんよ。ただ、なんというか、心の拠り所が欲しいだけなんですよ。これでもし良い結果が出たらこれで未来はいい事になるって思えますし、仮に悪い結果が出ても所詮占いだしなって思えるんですよ。いいから早く占ってください。

 

 

…運命の輪の正位置、ですか。何かしらの良い転換点が

近いうちにある、ってことですかね。

 いや、詳しく説明はしなくていいです。マスターの未来には何かしらのいい事が起きるんです。そう信じてればそうなるんですよ。

 

 どうもありがとうございました。

 ちょっとスッキリしましたよ。愚痴を言う場所なんて、もう二度と来ることがなければいいと思いますが、また何かしらの形で幸せに会えるように、祈っています。では、さようなら。

 



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未来から来たマスターとお酒大好きセイカさんの話




 どーもー。京町セイカでーす。

 

 もー、聞いてくださいよー。マスターったら酷いんですよー!

 

 ん?ああいえ、そのマスターじゃないです。あれ?言ってませんでしたっけ?私、ちょっと前から別のマスターのとこにいるんですよ。

 

 仲良かったのにどうしてかって?

 いやーまー色々ありましてねぇ。端的に言っちゃうと、マスターがよく分かんない人間拾ってきちゃったんですよ。危ないから返して来なさい!って言ったんですけど、マスターがほっとけないって言うもんですからしょうがなく家に置いてるんですよ。でも、やっぱり不安じゃないですか。家によく分かんない人置いておくのって。

 なのにマスターは出張が入ったからって遠く行っちゃったんですよ!

 「とりあえず君がどうしてあんな所に居たのか、これからどこに住むかが分かるようになるまではこの家を使っていい。安心しなさい。」なんて言って!

 

 不用心すぎやしないですか!?特に取られて困るものは出張に持っていったらしいのでそこの心配は要らないとか言ってましたけどそうじゃなくて!

 もしあの人が良くない人間で、我が家を悪い組織のアジトにでもしようとしてたらどうするつもりだったんでしょうかマスターは!

 

 そんなことはこのセイカさん許せませんってことで、私一人残って怪しいマスターと暮らしているって訳なんですよ。

 

 ん?「良くない人間なのか?」って?

 んんー…残念ながら良い人間か悪い人間かで言ったら…良い人間っぽいですねー。…ただ、まだ二ヶ月しか過ごしてないのでもしかしたらこれから本性を現してくるのかもしれないですけど……

 まあそれはなさそうな感じがしますね。この京町セイカさんのカンがそう言ってます。

 

 ああそうだ。そんな話はどうだっていいんですよ。本題はこの新マスターに対する愚痴です!愚痴!

 このマスター酷いんですよ!この前私がマスターに夕食の後片付けをお願いして優雅に晩酌を嗜んでいたらですね、フラっとやってきて、ボトルをじぃっと見つめたかと思うとパッとセイカさんの方を振り向いて、

「お願い!セイカさん!そのお酒、一杯…いや!一口だけで良いから貰えないかな!?」

 って今まで見たことないくらい真剣な表情で言ってきたんですよ。もーセイカさんびっくりしちゃって、まあ貴重な晩酌タイムとは言ってもそんなお高いやつじゃないですし?私も人と一緒にお酒呑むのは好きだから、そんな畏まらなくてもいいですよーって言って一杯注いであげたんですよ。

 そしたらそれを呑んだとたんいきなり泣き始めちゃって。急に泣いちゃったから何言ってたかはあんまり覚えてないんですけど、なんか「ホンモノの酒は初めて呑んだ」とか、「良かった、本当に良かった。もう思い残すことは何もない」みたいな事を言ってたんですよ。

 

 もうセイカさんは何が何だか分からないですよ!!!ああいうのなんて言うんですかね?泣き上戸ってやつなんですかね?でも一通り泣いたあと凄いすっきりした顔で「セイカさん本当にありがとう。この恩は一生掛けてでも返す」とか言ってきたんですよ。情緒ジェットコースター過ぎません?まあその時は、「私じゃなくてあなたを拾ってくれたマスターに感謝するんですね」とか言ってテキトーに流しましたけど本当になんなんでしょうあの人?

 

 なんなんでしょうと言えばあの人他にもよく分からない事ちょくちょく言うんですよ。昼頃に「ちょっとぶらついてくる」って言うから行ってらっしゃーいどこ行くんですか?って聞いたら「ちょっと青森まで」とか言うんですよ!?関西から東北ってどれだけ離れてると思ってるんですかね!?少なくとも「ちょっとぶらついてくる」の距離じゃあないですよ!あと他にも、最初は料理の仕方すら分からないようだったので私とマスターで教えてたんですが、調理法よりも食材に興味を示すことが多くて。特に野菜とか見るとすっごいじいっと見たり手で弄ったりしてるんですよ。ホントよく分からない人ですよ新マスターは。

 

 流石に私もそれだけ変なことがあったら疑問に思うわけじゃないですか。あの人が何者かって。

 だから直接聞いてみたんですよ。「あなたは誰で、何をしにここに来たんですか」って。そしたら、「実は私は未来に住んでたんだけども新技術の被検体になったらうっかり過去に飛ばされてしかも帰れなくなった」とか言ってきたんですよ。

 

 …あまりにも雑すぎません!?誤魔化すにしたってもっとそれっぽい言い訳あったでしょうに!!!ていうかそもそも本当に未来から来たって言うんなら当たりクジの番号とか万馬券とか教えてくれれば良いんですけどね。

 身元不明のよく分からない人間匿ってるんだからそれくらいのメリットあってもいいと思いません?

 

 …まあ私の予想としてはアレですね。何らかの事故に巻き込まれて記憶喪失になり、それを利用しようとした悪い人間が未来から来たっていう催眠をかけて、なんやかんやで逃げ出せたところで私のマスターと出会って保護された!とかじゃないですかね。

 これも大概妄想話ですけど、たまたま未来から来た人間が、たまたまめちゃくちゃ人がいいマスターな拾われた。って話よりはそれっぽいと思いません?

 

 …まあいいです。未来から来てようが記憶喪失だろうが、これから色々覚えていけばいいんですよ。どうせマスターも放り出すつもりもないみたいですし。貴重なセイカさんより年下の存在としてせいぜいこき使ってやるとしますよ。

 

 

 …おっと、思ったより話し込んじゃいましたね。新マスターが、今夜の晩御飯はセイカさんが好きなビーフシチューにするって言ってたので遅れるわけにはいかないのです。

 …なんか胃袋を掴まれてる気がするけどまあ悪い人じゃないし美味しいからまあ大丈夫ですね!

 じゃあまた!なにか新マスターのことについて進展とか、正体が発覚したりしたらまた話しに来るので楽しみに待っていてくださいね!!

 それでは!




新マスターはめちゃくちゃディストピアな世界から事故で送られてきた未来人です。
めちゃくちゃ悪運がいいので素性を知らない人間を匿ってくれる物好きに出会えて生き残ることが出来ました。
一応未来の技術は知ってるのでたま〜に何かの役に立つかもしれません。

マスターは変人です。


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