流浪人の帰り着く先 (ゆごりー)
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プロローグ

ゆごりーです!原神の新作、書いていこうと思います!他作品もぼちぼち復活させていく予定ですのでよろしくお願いいたします!


「いつか、雷帝に相対する者が現れる。」

 

彼のその言葉を聞いたのはどれほど前だっただろうか。少し前だったか、いや、随分時が流れたよう気もする。稲妻で目狩り令が発され親友が死して以来、友の神の目を握りしめ逃走を図り流浪していた。お尋ね者として時に追われ、九条家の者らから神の目を渡すように迫られ、戦う逃げるを繰り返す内稲妻の海賊に拾われ稲妻を立ったこと。そしてもう1人の親友は船に残り自分は船を下り再び流浪し最終的にモンドという風神の街にたどり着いたこと。もちろんその中でも出来事は沢山あったのだが、上げればキリが無くなるほどにたくさんのことが起こった。そして・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

霜明「うむ、任務完了でござるな。それにしても最近、ヒルチャールがモンド城周辺に増えた気がする。用心せねばなるまいな。」

 

流れ着いた土地、モンドで彼、桜坂霜明(さくらざかそうめい)はこの土地に似合わない黒と紺色が基調となる和服と呼ばれる着物を着て青く迸り光る神の目をぶら下げてヒルチャールの群れを片付けていた。それも

 

騎士A「霜明様。こちらも討伐、及び根城の解体が終了しました。」

 

その後ろには5名あまりの騎士を連れている。

 

霜明「ふむ、ご苦労であった。敵襲に気をつけながら帰るとしよう。」

 

この男、モンドにたどり着く前に食料や調味料がほぼほぼ底を尽きてどうするかと途方に暮れていたところ数名の騎士がアビスとヒルチャールに襲われているのを救助しモンド城内まで送り届けたところ現在西風騎士団を管理、運営している代理団長の計らいにより寝床や春風騎士の名を貰った。モンドは自由の国と呼ばれているが稲妻から来た流浪人を訝しみ、時に避難する声もあったが肩書きと働きによりそれも次第になくなって言った。

 

霜明「しかしお主ら、拙者はいわばこのモンドに居候しているようなものなのだぞ?騎士の名は頂いたが、そこまで畏まらなくても良いのではないか?」

 

騎士A「いえ、霜明様の働きや戦術、行動には我々も大いに助けられておりますし代理団長からの指示も高くあります。そのような方を気安くなどと、我々には恐れ多く存じます。」

 

霜明「ふむ、そういうものなのか・・・騎士とは難しいのでござるな・・・」

 

実際霜明は代理団長にもこの口調で話しているしモンド人からも普通に受け入れられていた。霜明は人当たりも良く様々な手伝いや人助けもよくしていた。1度お礼をしようと言うと『拙者、当然のことをしたまで故、それではまた縁があれば。』とその場を去ってしまう。この仕草に惚れ込んでしまう女性も多くいたが霜明自信誰にでもこうなため本人の知らないところで撃沈する女性ばかりだった。

 

霜明「よし、欠落者は無しでよいな?では拙者は団長殿に報告してくる故、皆はゆっくり休むのでござるよ?」

 

騎士B「し、しかしおひとりで行かせてしまうのは・・・我々も報告に・・・!」

 

霜明「そなたらが拙者を上司と慕ってくれるなら、部下を労るのも拙者の役目でござるよ。早く帰って家族に元気な姿を見せてくるといい。さぞ喜ぶであろう。」

 

騎士達「は、はい!お気遣い感謝致します!」

 

そういうと格式ばった敬礼をして背を向けて各々歩き出した。

 

霜明「さて、と。」

 

そう言うと自分も歩を進め始めた。行き着いたのはモンドの中でも一際大きく目立つ建物。象徴するような旗がなびく。迷いなくその大きな扉を開きお目当ての部屋まで行く。扉の前でコンコンと心地よいリズムでノックすると『入れ』と簡単な返事が返ってくる。

 

霜明「失礼する。ジン殿、討伐依頼完了したでござるよ?」

 

ジン「ふむ、ご苦労だった。」

 

霜明に向かい合うように座るのは西風騎士団代理団長にして霜明を騎士団に迎え入れた張本人、蒲公英騎士ジン・グンヒルド。現在は2割ほどしかいない西風騎士団をまとめあげ魔物退治からモンド城内の改善などを一人で行っている人物だ。

 

霜明「時にジン殿。やはりココ最近になりヒルチャールの頭数や拠点の数の増量だけでなくモンド場周辺に基地を作る軍隊も増えたように思える。裏で何者かが手を引いていること、本格的には考え始めた方が良いやもしれぬ。」

 

ジン「そうか・・・済まないな。毎度周辺捜査ばかりさせてしまい。」

 

霜明「そういうでない。むしろ拙者は感謝しておる。衣食住を安定させてくれたばかりかこのような立派な2つ名に仕事まで与えてもらったのだ。感謝してもしきれんよ。」

 

ジン「うむ、そういって貰えるとこちらとしても気が楽になるよ。ところで霜明、本当に騎士団に本格的に入るつもりはないのか?君ほどの逸材は本当に勿体ない。」

 

霜明「気持ちはありがたいがそれはやはり辞退させて頂くでござるよ。拙者は流浪人。モンドに受けた恩をすべて返し終えた時はまた流浪人として旅をしたいと思っておる。」

 

ジン「そう言われるとは分かっていたが、やはり惜しいな。気が変わればいつでも言ってくれ。」

 

霜明「ふむ、そうさせてもらおう。それでは拙者はこれで。」

 

ジン「ああ、改めてご苦労だった。」

 

そう挨拶を済ませると霜明は部屋を出ていく。霜明は仕事もできて人当たりもよく剣の腕もかなりあるため時折ジンや他団員に本入団するつもりは無いかと誘われることが多い。しかし霜明自身はこのモンドに恩を返し終えたら出ていくと一点張りなのでみんなはそんな未来が寂しいと思いつつ共に仕事をしているのだ。霜明自信その恩がいつ返せるかは分かっていないが今の仕事に一区切りつきモンドに今以上の平和が訪れたら、と果てしないようなことを考えていた。

 

霜明「ん・・・今日は少し風が強いでござるな・・・」

 

頬を撫でるその風に煽られながら空を見上げると雲ひとつなく太陽が空に輝いていた。

 

霜明「この空の下、万葉は今何をしてるのであろうか・・・元気にしてるのであろうか・・・。」

 

そう囁く声は誰にも聞こえることなく風にかき消された。しかしこの風が新たな出会いと運命を運んでくることを彼はまだ知らない




桜坂霜明

性別、男

神の目、水

所属、西風騎士団(仮)

稲妻の流浪人。稲妻から逃亡しモンドに西風騎士団として引き取られた。爽やかな雰囲気や声色が老若男女問わずに人気となり春風騎士の2つ名を持っている。髪は肩にかかる程の明るい白にも見えるような銀髪で癖ひとつない。結って胸にかけるように前に下ろしている。

元素スキル、芽吹
効果後述

元素爆発、桜吹雪舞
効果後述


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旅人と流浪人

霜明「この小説の挨拶を任されることになった桜坂霜明でござる。どうやら主曰く、拙者に喋らせる形式の挨拶の方がやりやすいとのことで今後は拙者と、余裕があれば誰かを混じえて挨拶させてもらうことになったのでござる。それではご覧あれ。」


霜明「はぁぁああ!!」

 

バシン、バシンと木剣同士が重く、早くぶつかり合う音が騎士団の修練室に響き渡る。1人は隙を伺うように、形にハマらない独自の流れるような剣術を、片方は正確にいなしつつ確実な一手一手を叩く固く冷ややかな剣術を。

 

霜明「流石にやるでござるな、ガイア。」

 

ガイア「いやいや、お前さんには俺も驚かされてばかりだ。返しても返しても決めきれないんだからな。」

 

飄々と答えたのは西風騎士団の騎兵隊長のガイア。褐色肌に黒い眼帯をしている彼は青白い神の目をぶら下げて霜明と剣を交えている。

 

ガイア「・・・シッ!!!」

 

ここだ、と言わんばかりにガイアが元素スキルを放つ。ガイアが放った扇状の氷が霜明に迫る、が

 

霜明「フフ・・・!!!」

 

待ってましたと言わんばかりに跳躍する。ガイアのスキルは剣先から氷や冷気を飛ばすシンプルなものだが前や後に隙が少ない。跳躍した霜明はガイアにとって次の一手で決める恰好の的であったが・・・

 

霜明「この勝負、貰ったでござる!」

 

空中で身を翻し一回転して一瞬ではあるが硬直したガイアの剣を狙いフルスイングする。予見していなかったガイアの剣は吹っ飛ばされてしまった。

 

ガイア「・・・これは予想外。」

 

霜明「うまく策にハマってくれて良かったでござるよ。今夜の酒はガイアの奢りでござるな?」

 

ガイア「まあそれは構わんが・・・お前さん戦う度強くなってるよなぁ。」

 

霜明「当然。負けるのは好まぬしここの騎士団の連中は戦えば戦うほど様々な戦術を見えてもらえる故、拙者にもいい刺激になるのでござるよ。」

 

ガイア「ホント、お前さんは暇さえあれば剣を振るってるよな。他に趣味でも作らんと女ができんぞ?」

 

霜明「女は寄ってくる者より拙者が惹かれる者の方がいいでござる。それに趣味なら川柳や詩歌、刀以外にも幾分ある。ガイアに心配されることはない。」

 

ガイア「む、まあお前さんがそう言うなら俺は構わんが・・・」

 

ガイア、この人物は霜明の飲み仲間であり良き友である。騎兵隊長である彼は剣の腕も達者であり負けた方が奢り、という名目で霜明がよく勝負をふっかけていたがガイアも割とノリノリで手合わせをしているのだ。

 

霜明「店はまかせるでござるよ。それでは拙者はこれで・・・ん?」

 

リサ「あら、やっぱりここにいたのね?」

 

霜明「リサ殿?珍しいでござるな?見物したかったのなら申し訳ない、先程終わってしまったのでござる」

 

今修練室に入ってきた女性はリサ。西風騎士団内にある図書館の司書をしている。あまり深い関わりのある人物で無いがその妖艶さや妖しさはある意味恐ろしさを醸し出しており霜明は勝手におそらくそこらの騎士に負けない程の実力者だと思っている

 

リサ「私は貴方達の掛け合いには微塵も興味はないわ。それより外を見ていてご覧なさい?騎士団様のお仕事日和になっていると思うわ。」

 

霜明「む?仕事日和?」

 

その言葉に少し不審なものを感じたがすぐさま刀を帯刀しガイアと共に修練室を飛び出した。窓を見ると凄まじい風と共に葉や紙など様々なものが飛び交っているのが見える。

 

霜明「・・・これは」

 

ガイア「おいでなすったみたいだな。」

 

風魔竜トワリン。かつてモンドの守護竜出会ったと言うが霜明がモンドに来た頃には既にモンドの守護をやめ暴走を始めていたという。霜明がこの地に腰を下ろしてから初めての襲来であったため顔には出さないがかなり度肝を抜かされていた。

 

霜明「なるほど、これが例の・・・」

 

ガイア「怖気付いたか?」

 

霜明「まさか。だが本当に度肝を抜いてしまう者も少なくないであろう。急いでことに当たらねば・・・」

 

2人からは先程の飄々とした雰囲気は感じられなかった。この異常事態、やれることが少ない中必死にやれる事を模索する。

 

霜明「む・・・ガイア。あの竜を追うように飛んでいる?人影が見えぬか?」

 

ガイア「何・・・?んん、確かにそれらしき姿が見えるが・・・ここからだとよくみえないな。」

 

霜明「なに、拙者ならよく見える。しかしあの格好、モンドのものでは無いな・・・それに飛翔しているのは、風の翼か?一体どのような原理で・・・?」

 

ガイア「少なくとも要注意人物なのは間違いなさそうだがな。」

 

???「あ、おーい!ガイアさん!霜明!」

 

話している2人に気が付き駆け寄ってきた少女が呼びかけてくる。うさ耳のような真っ赤なリボンをトレードマークに黒い髪を強い風になびかせているのは偵察騎士のアンバー。霜明が普段行っている偵察、討伐業はアンバーに教わったものでありプライベートでも中が良かった。

 

霜明「む、アンバー。あれはどういう状況でござるか?」

 

アンバー「えっと、なんと言えばいいのか・・・」

 

そうアンバーが言い淀んでいると空中の形成に変化があった。

 

霜明「あれは、風魔竜が撤退を始めているのであろうか・・・?」

 

ガイア「そのようだな・・・お、人影の方こっちに降りてきてるようだぜ?」

 

風の翼を広げた人影は教会前の巨大な神像の辺りに着地していた。

 

霜明「む、地味に遠いところに降りたでござるな。」

 

アンバー「・・・あ!そうだ、西風騎士団につれて行かないと!」

 

霜明「そういう事なら拙者に任せて欲しいでござる。」

 

ガイア「それがいいだろうな。アンバー。俺たちは先に戻ってジンに報告に行こうぜ。」

 

霜明「ふむ、では時間が惜しい故、拙者はもう行くぞ?」

 

そう言うと霜明の周りにふわりと水色のオーラとともに桜の花びらの模様がふわりと現れる。

 

霜明「・・・では、ふっ!!」

 

そう言い跳躍をするとあっという間に神像の手の上まで飛んでいってしまった。

 

ガイア「・・・相変わらずの元素量と精密さだな。」

 

アンバー「そ、そうだね。とにかく私達も行こう?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

霜明「さて、それらしき人物は・・・」

 

???「うわぁ!?」

 

霜明(む、そちらからわかりやすい声を出してくれるとは、ありがたい。しかしあれはなんだ?1人は男のようだが脇に浮かんでいるあれは・・・?)

 

彼の目に入ったのは見慣れない格好の金髪で長髪を後ろに三つ編みにした少年と少年の顔を上あたりをうろちょろと飛んでいる?白髪の白い小人。

 

霜明「驚かせてすまない。拙者、西風騎士団の春風騎士。桜坂霜明という者でござる。御二方の名を尋ねても?」

 

パイモン「おう!オイラはパイモン!こっちは空!2人で旅をしてるんだ!」

 

霜明「ふむ、そうか。見慣れぬ格好だがどこから来たのだ?」

 

パイモン「それを言うならお前も変わった格好をしてるけど・・・」

 

空「パイモン、その言い方は・・・」

 

霜明「はは、なに気にするな。拙者は出身がモンドではないのでござるよ。ところで2人はどこから来たのでござるか?」

 

空「えっと、遠い所、かな。」

 

霜明「なるほど、事情は話せぬ、と。まあ構わぬ。拙者達もあの竜から守ってもらった恩もある。騎士団の者たちもお主らを邪険に扱うことはないであろう。報告や先程のことで騎士団に同行願うが、構わぬな?」

 

空「ああ、もちろん。行こうパイモン。」

 

パイモン「おう!」

 

霜明(敵意や殺意は感じられぬ・・・この者たちがこの地に悪事を働くことは無いであろう。ならば何をもたらすのか、実に楽しみでござる。)

 

霜明は先ほどの出来事からこの少年がモンドを救うために大きく物事を動かすのではないか。と予見していた。そしてこの少年がモンドだけでなく彼の人生を大きく動かすことを霜明はまだ知らない。




桜坂霜明

武器、天目影打

元素爆発、桜吹雪舞
彼の周辺に水元素の影絵(オーラ)と芽吹花(桜の花びら)を纏う。この状態の時通常攻撃は水属性になり影絵の恩恵で移動速度、会心ダメージが上昇し芽吹花の恩恵で通常攻撃が会心になる度追加ダメージ、多段跳躍が可能。<霜明が神像まで飛んだのは元素爆発で何度も空中で跳躍したからできた技である。>必要元素80。


「水を原型に咲いた桜はなぜあそこまで美しく儚く、一瞬で散りゆくのだろうか。永遠に咲き誇り、人々の目に触れればいいのに」


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作戦開始

霜明「御機嫌よう。桜坂霜明でござる。最近風も強くなり冬という感じになってきたでござるな・・・。皆も体調管理等々怠らずにな?風とモンドは毎度このような風災に見舞われて大丈夫なのだろうか?まあ拙者が来た時からずっと賑わっておったし大丈夫なのだろうが・・・モンドの建物は丈夫なのでござるな・・・」


騎士団に行くまでの道中空と名乗った旅人から出る話は喋り好きの霜明にとってはとても面白いものだった。そして現在隣で相槌を打ちながら浮遊している生物、パイモンを釣り上げ溺れている所を救出したことに始まりそこからに及ぶ1ヶ月に及ぶ野宿生活。大きな町が見え向かったところにアンバーに見つかり保護されるような形でモンドに来たこと。何より驚いたのがここに来る前に風魔竜の姿を見たというのだ。お主は厄介事を運び込むツキが回ってるのかもしれぬな。とパイモンと空に文句を言われながらくすくす笑いながらその話を霜明は聞いていた。

 

霜明「お、あそこに大きな城のようなものが見えるであろう?あれが騎士団の本部でござる。あと数分ほどで着くが、入る前になにか聞いておくことはないでござるか?」

 

パイモン「んー、なぁ!さっき下の方からビューンって光ながら飛んできただろ?あれは何なんだ?」

 

空「パイモン、多分そういうことを聞いてるんじゃ・・・」

 

霜明「はは、なに構わぬよ。あれは拙者の水元素を使った技でござる。体に水元素を纏わせた後足元に僅かな原素粒子の爆発をさせるのでござるよ。その瞬間跳躍することで驚異的な跳躍力になるのでござる。あとは空中でも同じことをするとこで空中にいる最中でも跳躍が可能なのでござる。ちなみに刀にも纏わせて攻撃の強化も可能でござるし機動力も上がる故、かなり使い勝手はいいのでござるよ?」

 

パイモン「な、なんか簡単なような難しいような・・・」

 

霜明「そう考えなくとも良い。早く強くなってどこでもぴょんぴょん跳べる、という認識程度で構わぬでござるよ。」

 

パイモン「おう!それなら覚えられるぞ!」

 

空「パイモンが聞いたのに・・・ごめんね?」

 

霜明「構わぬよ。正直で良いではないか。お、着いたぞ?」

 

パイモン「わぁ、近くで見るとおっきぃなぁ。」

 

霜明「拙者も最初に見た時は驚いたでござる。では参ろうか?」

 

そう言うとその重く方そうな扉をガコンと思い音を響かせて開ける。こっちでござる。と霜明ご案内する方に2人は着いていく。そして一室の部屋の扉の前に着くと霜明は足を止めた。

 

霜明「この先に現在西風騎士団の指揮を取り、蒲公英騎士と呼ばれるほどの腕前のジン殿がおるが、覚悟はしておくと良いぞ?下手な問答をすると首が飛ばされる故。」

 

パイモン「ひぃ!?く、クビを・・・!?」

 

霜明がそう言うとパイモンは首を抱えるように身震いをし始めた。その様子を空はジトーっと言う目で見ている。

 

霜明「パイモン殿は余計な事を言いそうであるから、余計に用心した方が良いやもしれぬな?」

 

パイモン「い、いや、オイラそんなことはしない・・・しないよな!」

 

空「さぁ?保証は出来ないな。何も喋らなければいいんじゃない?」

 

パイモン「そ、そんな、2人揃って横暴だぞ!」

 

霜明「あはは、すまぬすまぬ。しかし空殿は冗談も通じる口であるか。」

 

空「口がにやにやしてたから、すぐ分かったよ。パイモンは真に受けすぎかな。」

 

パイモン「な、なんだよ。2人してオイラで遊んで!」

 

霜明「まあまあパイモン殿。首の話は流石に冗談であるが一応現在モンドにいる人物の中では最も実力者で権力者でござる。それなりの心持ちはしておいた方が良いぞ?」

 

パイモン「お、おう。わかった。」

 

今度は真剣な目で、しかし優しく2人に言うとコンコンと部屋をノックした。

 

霜明「例の旅人を連れてきたでござる。入れても構わぬか?」

 

ジン「ああ、ありがとう。入ってくれ。」

 

霜明「うむ、失礼するでござる。」

 

中に入るとジンの他にガイア、リサ、アンバーが既に室内に待機していた。

 

ジン「アンバー達から大体の事情は聞いている。モンドへようこそ。私は代理団長のジン・グンヒルドだ。モンドの民を代表して例を言わせてくれ。」

 

パイモン「にひひ!当然のことをしたまでだ!」

 

霜明「む?拙者から見たらパイモン殿は何もしていなかったように見えるが?」

 

パイモン「んな!そ、そんなことないぞ!!」

 

霜明「あはは、冗談でござる。それでは僭越ながら拙者から今ここにいる者の紹介をさせてもらうでござる。そちらは西風騎士団図書館司書のリサ殿でござる。」

 

リサ「初めまして。ふふ、わざわざ図書館の手伝いに来た可愛い子ちゃんかしら?ただ今はあんまり状況が良くないわ。色々解決したら頼もうかしらね?ふふ。」

 

空「と、図書館、遠慮しておく・・・」

 

霜明「ん、くくく、言われてしまったでござるなリサ殿?空殿も、大丈夫でござるよ。恐らくリサ殿なりの冗談であろう?ふむ、アンバーの紹介は必要ないであろう?」

 

空「そうだね。さっき自己紹介もすませた。」

 

アンバー「空の飛び方も教えた仲だもんねー♪」

 

霜明「うむ、2人がそう言うのなら大丈夫であろうな。では次に、こちらは騎士団騎兵隊長のガイアでござる。」

 

ガイア「モンドへようこそ。お前さんがこのモンドに何をもたらすか、しかと見せてもらうぜ?」

 

全員の自己紹介が終わり全員を見渡しコホン、と一呼吸を置いて霜明が口を開く。

 

霜明「さぁ、本来であればこのまま机を囲み茶でも飲みたいところでござるが文字通りお天道様がそれを許してくれそうにないでござる。」

 

ジン「ああ、その通りだ。だが悪いニュースばかりでもない。」

 

そう言うとジンは丸めてあったテイワットの地図を広げた。見ると3箇所に赤くバツが記されていた。

 

ジン「この3つの秘境を抑えればこのモンドを襲う暴風も収まるだろう。リサ、ガイア、アンバー、空、君たちが各々出向いて抑えてきてくれないか?」

 

4人は分かったと首を縦に振るが呼ばれなかった1名はムッとほんの少しだけ顔を顰めた。

 

霜明「ジン殿?まさか拙者には昼寝でも興じていろという訳ではあるまい?」

 

ジン「そういうな。君には別の任務がある。この4人を出してしまうと明らかに場内の警備及び戦力が薄くなってしまう。冒険者教会にも数名の助けは寄越してもらうが君はモンドの警備に当たってもらう。不振な人物及び魔物はすぐさま切り捨てて構わない。」

 

その言葉を聞くとうむ、と納得したように頷いた。

 

霜明「であれば神の目を持つ者・・・出来れば炎か雷か氷がりそうでござるが・・・1名拙者のそばに置いておいて欲しいでござる。構わぬな?」

 

ジン「ああ、もちろんだ。では作戦を開始しよう。」

 

そう言うと4人はモンドの大橋を駆け抜けて行き霜明は協会本部まで忍者のごとく跳んで行った。




桜坂霜明

固有天賦1、花咲の恵。

雨や水地であるところにいると5秒毎に3ずつ元素エネルギーを回復する。


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迫るは人か怪物か

霜明「拙者はハブられたのであろうか・・・」

ジン「君には君に向いた任務を支持したんだ。そう落ち込まないでくれ。と言うか私、ここに呼ばれたのは初めてなんだがこんな感じでいいのか?そもそも初ゲストでこんなにしょぼくれてていいのか。」

霜明「もういいでござる。どうせ拙者は二次創作でこの作品にしか登場できぬ故、どうせ無理矢理ああいう風にねじ込むしかないのであろう・・・?」

ジン「そんなキャラでもないことを言わないでくれ!さぁ、本編始めるぞ!」


暴風が吹き荒れる中、多くの住民は雨戸を閉め自分の家の中に立てこもっていた。そんな人々を守るためにモンドの出入り可能な所は兵士が全て閉鎖して警備を固めていた。そしてさらにその外。正確には橋を渡りきりそのままモンド城周辺をグルグルと軽く駆け足出回っている人影が2人居た。

 

霜明「さて、ではやる事と万が一敵を発見した場合の戦術の確認をしておくぞ?」

 

ベネット「ああ!」

 

霜明の隣を歩くは冒険者教会所属の自称ベニー冒険団団長(団員1人)のベネット。彼はある意味でモンドの有名人だった。彼と共に冒険する時は彼が行う行動と逆を取れ、と呼ばれるほどにベネットと共に行動すると不幸が伴うのだ。しかし同時に彼の炎元素の扱いや爆発力もまた有名であり毎度不幸に見舞われながらもしっかり帰還して来ることを考えると相当の実力者なのでは?とも噂されているのだ。ベネットが使う技は霜明と相性がいい事もありジンからの推薦でベネットと共に行動することになった。

 

霜明「まず、敵が少数である場合は拙者が敵を巻き上げる、その後にベネット殿がトドメを叩き込むでござる。できれば一撃が好ましいでござるな。」

 

ベネット「まかせろ!フルパワーの一撃を叩き込むぜ!」

 

霜明「ふむ、次に多数の場合、これは出来るだけ拙者達が離れないようにしつつ隙の少ない攻撃を短い感覚で叩き込むでござる。何か予想外のことが起こっても決して取り乱さず距離を取らないように、拙者も助太刀ができなくなってしまう故。」

 

ベネット「トラブルは慣れっこだし大丈夫だ!でも敵が全く出てこない場合もあるんだよな?」

 

霜明「本当であればそれが一番望ましいが、警備が手薄になっているモンドに何もしないアビスではなかろうな。・・・言ってる間に来たでござるよ?」

 

指を指した方向に燃えた棍棒を持つヒルチャールが4体出現していた。こちらを視認するなり棒を振り回しながらこちらに駆け寄ってくる。

 

霜明「では、手筈通りに。」

 

ベネット「おう!」

 

そう言うとベネットは剣を構え炎を纏わせた。しかしすぐに放つのではなく今はじっとその場に留まり元素を貯めているようだ。

 

霜明「・・・フッ!」

 

霜明は一瞬でヒルチャールの元に駆け寄ると剣を斜めに振り下ろす。すると水の上昇流域が霜明の周りに発生してヒルチャール4体を一気に浮かせた。

 

ベネット「・・・ここだ!」

 

その掛け声を聞いて霜明はすぐさま横に退避する。その瞬間に十二分に炎元素を纏った剣を真上からベネットが思い切り振り下ろした。地面に叩きつけられた瞬間に爆発が起こりヒルチャールがそれに巻き込まれた。息もつかさぬ連撃にヒルチャール達は為す術なく消滅させられた。

 

霜明「うむ、悪くない連撃であったな。この調子でよろしく頼むぞ?」

 

ベネット「勿論だ!っと、また次が来たみたいだ。」

 

この調子で2人は出てくるヒルチャールをバッタバッタとなぎ倒して言った。しかし、

 

霜明「妙でござるな・・・」

 

ベネット「妙?」

 

霜明「ああ、このヒルチャール共は明らかにモンドを襲う意思を持った個体であった。しかしその割には少なすぎるでござる。拙者達が相手にしたのは多くても6体程の集団であっただろう?野生でも多ければ暴徒を含め15体ほどの集団もあるとあるというのに・・・」

 

ベネット「それはそうだけど・・・なんで?」

 

霜明(ふむ、拙者達がいるのは大橋の真反対、最も濃い線は囮であるがたかだか2人をおびき出したところで何になる?・・・いや、まて?)

 

そこで霜明は大橋前の警備の事を思い出した。

 

霜明(確かに大橋前の警備は最も濃かったがそれ故に神の目を持つ者は配置していなかった・・・つまり神の目を持つ者を遠くに隔離し頭数が警備より多い数で大橋を攻めてしまえば・・・)

 

はっと息を飲んだ。嵌められた、と思った頃にはもう遅く反対側で微かな、しかし激しい戦闘音が聞こえ始めてしまった。

 

ベネット「お、おい、これって・・・!」

 

霜明「しまった、遅かった・・・ベネット殿、失礼するでござる!舌を噛まぬように食いしばっておれ!」

 

そう言うとベネットを小脇に抱えて全力で跳躍した。

 

ベネット「うわ、これが噂に聞いた・・・」

 

霜明「感動しているところ申し訳ないがベネット殿、飛んでいる最中に元素エネルギーを貯めることは可能か?」

 

ベネット「え、お、おう!勿論できr、痛!?」

 

霜明「・・・すまぬ、では全力のやつを貯めておいてくれ。」

 

喋らせたせいでベネットが舌を噛んでしまったが不幸がこの程度で良かった、と2人は心の中で息を吐き移動していた。大橋が見えてくるとそこには異様な光景が広がっていた。大橋の6割程を陣取るヒルチャールとその上で指示を出しつつ魔法攻撃をする水と氷のアビスの魔術師。どう見てもこちら側が押されていた。

 

霜明「これは、本当にしてやられた。ベネット殿。あの群集の真上に下ろすぞ?剣の準備を。」

 

ベネット「もうできてる!」

 

そして大橋にいるヒルチャールの中心の真上に到達するとベネットを下に投げた。凄まじい咆哮と共にベネットが剣を振り下ろした。すると地面にサムズアップを象ったような魔法陣が現れその圏内にいるヒルチャールが吹っ飛ばされた。そして影響を受けなかったヒルチャールが次々ベネットに襲いかかるが熱気を帯びたベネットの剣が次々とヒルチャールを薙ぎ倒していく。

 

霜明(先程の作戦、必要なかったやもしれぬな。)

 

ベネットを見ながらふっと笑った。霜明は安心したのかもしれない。この場は任せても大丈夫だと自分は防衛線に近いところまで飛び一気に落下する。振り下ろされた剣は先程よりも大きい水流を巻き起こしその場のヒルチャールを一網打尽にした。

 

霜明「負傷した兵はすぐさま撤退!まだ動ける者は防衛線をまた後ろに貼り直せ!2人でできるだけ数を減らす故漏れたのを仕留めるでござる!」

 

おお!と騎士達の叫び声が響き渡る。そしてすぐさま正面に向き直るとさらに強く体から光を発信、激しく桜が舞った。

 

霜明「ここまでやってくれたのだ。覚悟は出来ておろうな。」

 

聡明のいつもの優しい雰囲気は完全に消え去っており猛獣が獲物を仕留める目になっていた。目にも止まらぬ早さでヒルチャール数十体を切り刻みベネットと合流する。いつの間にやら魔法陣のようなものは消えており少し苦戦を強いられていた。

 

霜明「すまぬ、結局少し1人にさせてしまったな?寂しくはなかったか?」

 

ベネット「こんなに騒がしいんだぜ?寂しいわけないだろ?」

 

軽口を叩き合うと互いに背を向けてヒルチャール軍団に対峙する。

 

霜明「たかがヒルチャール、されどヒルチャールでござる。子奴らも立派な魔物でこの数。決して死ぬでないぞ?」

 

ベネット「上等だ!」

 

そう言うと再びベネットは地面に剣を叩きつけ赤く光る円形の模様を展開した。その瞬間霜明は体が軽くなるのを感じた。

 

霜明(なるほど、先程1人で戦ってたのはこれか・・・ならば!)

 

そう言うと、はぁ!という掛け声とともに体に力を入れる。すると霜明の足元から桜の花びらがぶわっと舞散った。するとその花びらは霜明とベネットの周りをゆらゆらと飛び交う。

 

ベネット「これは・・・凄いな。いつもより力が出てくる!」

 

霜明「拙者自身も驚いておる。これならなんの問題もなくやれるでござるな!」

 

ベネット「へへ、燃えてきた!」

 

そう言い獰猛に笑う2人にヒルチャール暴徒、ヒルチャール、アビスが突っ込んできた。

 

霜明・ベネット「覚悟!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

霜明「はぁ、はぁ」

 

ベネット「ぜぇ、ぜぇ」

 

この光景を見ていた騎士は開いた口が塞がらなかった。今までに見た事もないおびただしい数のヒルチャールとアビスをたった2人でちぎっては投げちぎっては投げと目にも止まらぬ早さでなぎ倒していってしまいに全滅させてしまったのだ。漏れたヒルチャールは頼む、と言われたがそんなヒルチャールは一体も現れなかった。

 

ベネット「お、終わったな・・・」

 

霜明「そうでござるな・・・流石にくたびれたでござる・・・」

 

そう苦笑いを浮かべると遠くからおーいと言う呼び掛けと共に勇ましい4人の姿が見えた。あちらも終わったのだろう。

 

霜明「ふふ、全く、遅いでござるよー!」

 

ニコニコと悪態を着きつつその4人に歩を進めた。




桜坂霜明

元素スキル、芽吹
剣を斜めに振り下ろすと霜明を中心に水の流域が竜巻のように舞い上がる。(万葉の元素スキル2段目のイメージ)

元素爆発補足、桜のバフはパーティメンバーにも重ねがけ可能。


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モンドでの日常

霜明「ベネット殿。先日はご苦労であった。」

ベネット「ああ!お互い大きなけがもなくてよかったな!」

霜明「誠にそうでござるな。ベネット殿はあれからどうでござる?」

ベネット「あれからガンガン仕事が舞い込んで来るようになったんだ!霜明のおかげだよ。」

霜明「それはめでたい。しかしあまり無理はせぬようにするのだぞ?不幸が重なれば命を落とすこともあるのだからな?」

ベネット「っはは、ありがとうな?また何かあったらよろしく頼む!」

霜明「拙者としてもまたお主と共に剣を振るいたいでござる。モンドで何かあって拙者が駆り出されることがあれば相棒として推薦させてもらおう。」

あの件以降、2人の中は親友クラスで近くなったのでした。それではどうぞ


風魔竜の襲来からしばらく、モンドには束の間の平和が訪れた。あれほどのヒルチャールの集団が襲ってきたに関わらず被害がこれほどに済んだのは霜明とベネットの力が大きいだろう。あれから冒険者教会にベネットへの討伐依頼が殺到するようになりモンド城外を走り回るベネットの姿がよう見られるようになった。秘境を抑圧し騎士達(1人は司書)達と共に帰還した空はジンに栄誉騎士の称号を与えられ風魔竜事件に協力をすると言ってくれた。そしてもう1人、霜明はと言うと

 

霜明「うむ、やはりモンドの茶も美味でござるな♪それとも入れる者が良いからであろうか?」

 

ノエル「め、滅相もないです。私なんてまだまだで・・・」

 

現在騎士団の休憩室でテーブルを囲み少女と茶を飲んでいた。少女の名はノエル。西風騎士団唯一のメイドにして騎士の卵でもある。現在2人はノエルの入れた紅茶と中央に置かれたお菓子を程々につまみながら談笑していた。

 

霜明「はは、謙虚になる必要なんてないでござるよ。茶というのは入れようによってどんな高い物でも台無しにしてしまうのだ。ここまでの香りと味を出せるのは一重にお主の入れる腕が高いということでござるよ。」

 

ノエル「勿体ないお言葉、ありがとうございます。しかしそうですね。こうした家事などは淡々とこなせるようになってきたのですが最近剣の腕が伸び悩んでいるのを感じてしまっていて・・・」

 

霜明「うむ、俗に言うスランプと言うやつでござるな?ふむ、そういう事態はなにかの道を極めようとするなら誰しも訪れるであろうし気にしなくても・・・と言っても気になってしまうものであろう?」

 

困ったように笑いかけるとこくり、とノエルが頷いた。事実上ノエルは討伐任務もこなしメイド業により手先も器用なため場外任務にはもってこいの人材である、と霜明は思っているのだが騎士団としての霜明が知りえない何かが足りないのだろうか、と毎回結論付けていた。

 

ノエル「なにかいい方法は無いのでしょうか・・・焦ってもいいことは無いのは理屈ではわかっているのですが、どうしても今の感じが嫌で・・・」

 

ふむ、と顎に手を当てて考えていると2人の人影がこちらに近づいてきた。

 

アンバー「あ!ノエルと霜明!あんた達も休憩?」

 

霜明「む?アンバーと、あぁ、エウルア殿であったか。しばらくでござるな。」

 

エウルア「ええ、そうね。久しぶり。それにしても最近あなたの噂をよく聞くわ。この前の出来事なんか特にね?私たちみたいに神の目を持ってる人に知らせてから行ってくれても良かったのに、この恨み、覚えておくわ。」

 

霜明「はは、手厳しい。」

 

アンバーの隣にいる氷のような美しい水色の髪色をした女性はエウルア・ローレンス。騎士団の遊撃小隊隊長を勤めていて霜明の飲み仲間でもあった。ローレンス、という名はモンドでは忌み嫌われるという噂を霜明はモンドに来て早々に耳に挟んだがエウルアの人柄や仕事ぶりを見てそんなことは全く意に返していなかった。

 

エウルア「それで、2人して唸ってたけどどうかしたのかしら?」

 

2人も同じテーブルを4人で加工用に座った。すぐさまノエルが新しい2つのカップを用意して紅茶を注ぐと2人はありがとう、といい飲みながらノエルの話を聞いた。

 

アンバー「スランプかぁ、ねえ?最近はどんなトレーニングをしてるの?」

 

ノエル「剣の素振りを200本やった後に1人でしたら打ち込み台稽古、騎士見習いの人がいらっしゃれば試合形式の稽古と言った形です。」

 

霜明「ふむ・・・であればノエル殿?最近伸び悩んでおるのは技術、と言うよりも戦術ではないか?」

 

ノエル「戦術、ですか?」

 

エウルア「貴方は見習いの中ではトップクラスの実力があるし同じような人と戦ってると自分の戦い方に限りが出てきてしまうんじゃないかしら?」

 

アンバー「じゃあ見習いだけじゃなくて騎士の人とか協会の人と手合わせしてみたら?きっといい刺激になるよ!」

 

ノエルを覗く3人がこくこくと頷く。ノエルはそんなことでいいのだろうか、と首を傾げていた。

 

エウルア「あら?疑うなんていい度胸ね?この恨み、しかと覚えたわ。ノエル、後で復讐するからこの時間に顔を貸しなさい。」

 

ノエル「ふ、復讐??」

 

霜明「・・・・・・なるほど。はは、エウルア殿は優しいのでござるな。」

 

エウルア「余計なお世話よ。なんなら今でも私はいいのよ?ノエル、どうするの?」

 

ノエル「え、ええっと、」

 

霜明「ノエル殿、是非とも行ってくると良いでござるよ。エウルア殿の戦い方は面白いでござるからな、きっと良いものが手に入るであろう。」

 

そこまで言うとようやく復讐の意味を理解したのかこくこくとノエルが頷いた。

 

ノエル「で、ではこれらを片付けたら直ぐに向かわせていただきます!」

 

霜明「よいよい、そのくらいは拙者がやっておこう。エウルア殿の気が変わらぬうちに稽古をつけてもらうといい。」

 

ノエル「霜明様・・・ありがとうございます!」

 

そしてノエルとエウルアは修練場に向かいこちらに背を向けた。私も行くーとアンバーもカチューシャをぴょこぴょこと弾ませながら掛けて言った。そして直ぐにテーブルを片付け洗い物も終わらせ外に出ると見覚えのある人物が見えた。

 

霜明「・・・あれは、空殿?」

 

空ともう1人、緑の装束にみをつつんだ中性的な印象を受ける少年が騎士団を横切りすぐ後ろにある階段を駆け上がって言った。

 

霜明(あれは確か、詩人をやっている・・・そうだ、ウェンティどのであった。なぜあの2人が?あの先は教会しかないはずであるが?)

 

そして数秒悩み込み、うむと頷くと

 

霜明「少し同行させて貰うとしよう。」

 

そして2人の後を跳びながら追ったが、これが霜明のモンド生活の大きな山場の入口になるとは本人は想像もしていなかった。




桜坂霜明

固有天賦2、武士の心得
自らが受ける上昇効果を10%上昇。弱体化効果をマイナス5%


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酒好きと酒好きは引かれ合う

霜明「空殿・・・一体何を」

ノエル「あ、霜明様・・・」

霜明「む?ノエル殿?ぐったりしておるがどうかしたのか?」

ノエル「エウルア様に御指南頂いたのですが、かなり力の差を見せられました・・・。」

霜明「あはは、それはそうであろう。隊長クラスの騎士だぞ?早々に打ち合えるものでは無いであろう。しかし得られるものもあったであろう?」

ノエル「はい!とても有意義でした!」

霜明「そうかそうか。ならば良かった。今度は拙者とも1つ交えようではないか。」

ノエル「ほ、本当ですか!ぜひ!」




霜明(・・・やはり、来た先は教会か。)

 

詩人と空を追った先で2人が入っていったのはこのモンドで最も大きく、高い施設である西風協会だった。霜明はこの2人が教会に入る、というのは進行方向からある程度の予見はしていた。しかし不可解なことが1つ、吟遊詩人と栄誉騎士が揃ってわざわざ教会に何をしに来たのか、という事だ。

 

霜明(中まで追うべきでござろうか、しかしあの建物内でコソコソするのは限りなく不可能、今のこの胸騒ぎが杞憂であると良いのだが・・・)

 

実際2人の表情や行動から怪しい動きは見られない。いや、そもそもこの組み合わせで教会に来る事が不可解だと思い後をつけたが協会に蓄えになる様なもので悪事を働けるものが置いてあっただろうか。少なくとも霜明はそんなものは知らなかった。

 

霜明(まあこれ以上追っても仕方あるまいか。酒でも飲んて忘れるとしよう。)

 

そう結論づけて2人の尾行をやめて背を向けた。そのまま向かった先はエンジェルズシェアと呼ばれる酒屋、つまりはバーだった。霜明が騎士としてモンドに身を置いた時はガイアにここに連れられて共に飲んだくれていた。それから仲間と共に訪れるのはもちろん1人でも訪れる程この店を気に入っていた。カランコロンと聞き心地のいいリズムを奏でるドアを開け中に入る。

 

霜明「チャールズ殿、いつもの席は・・・お?」

 

???「ん、君は・・・。」

 

しかし中に入ると見慣れたバーテンダーのチャールズと呼びかけた男は一見しても姿が見えなかった。しかしその代わりにカウンターの奥に立っていたのは赤く霜明程の長さの髪を後ろに結わえた高身長の青年だった。霜明にとって全く見覚えのない青年であったが酒場や騎士団などでは多く耳にした人物の特徴と合致した。

 

霜明「お主がディルック殿・・・で間違いなさそうでござるな?お初にお目にかかるでござる。」

 

ディルック「ああ、そう言う君は最近モンドで噂の春風騎士か・・・噂は兼ね兼ね耳にしている。君のような人物が騎士団にいるのは勿体ない。」

 

霜明「くっはは、なるほど、聞いた通りの人物でござるな。」

 

手を抑えながら笑い先程の発言を流すと座り慣れたカウンターの席の真ん中に座る。

 

霜明「さて、ではオーナー殿のお手並、拝見させてもらうとしよう。今出せる最も高いものをだしてくれぬか。」

 

そう言うといかにもビンテージそうなビンを数本取りだしそれをシェイカーの中に入れ見てるものをうっとりさせるような美しい手つきで酒を作っていく。

 

霜明「おお・・・チャールズ殿も中々と思っておったが流石に格が違うでござるな。」

 

ディルック「当然だ。僕は酒に対して自身も誇りも持っている。早々モンドのバーテンには遅れは取らない。しかし、そう言う春風騎士様はどうなんだ?稲妻から来たと聞くがモンドの酒は口に合うのか?」

 

少し怪しむような、睨みつけるような目でこちらを見てくる。モンドに来たばかりで騎士の名を受けたのを気に食わないのか、それとも騎士自体が気に食わないのか、霜明にそれを見抜く術はなかったがあくまで動揺していない、というように、

 

霜明「そんな目で見ないで欲しいでござるよ。拙者、騎士の話をしに飲みに来たのでは無いのだぞ?それに拙者はディルック殿と騎士との話なぞ毛頭聞く気はないでござる。どちらかと言うと酒造りとしてのディルック殿と話をしたいでござるな?」

 

と言った。それを聞くと驚いたように目を開いたあと先程の緊張した顔をとき少し可笑しそうにふっとわらった。

 

ディルック「君は、変わっているんだな。」

 

霜明「なに、ただ酒が好きだだけでござるよ。」

 

ディルック「そうか・・・君のいい噂しか聞かない理由が分かる気がするよ。また是非ここに足を運ぶといい。僕がいる時はとっておきを用意しよう。」

 

そういい終えるとシェイカーの中を優雅にグラスに酒を注ぐと霜明の前にことん、とこ気味いい音と共に出した。ふとディルックの顔を見ると表情こそ変わっていないものの雰囲気が少し柔らかくなったように見える。霜明はこういったように自然な物腰で相手に自分を晒すので空いても霜明に気を許すのが凄く早かった。霜明という人間の不思議である。

 

ディルック「その酒はかなり強い、あまり一気に入れない方がいいぞ。」

 

霜明「ふむ、ではゆっくり味わうとしよう。」

 

そういうとふっと目を瞑りグラスを顔に近づけスーっと匂いを嗅ぐ。甘美な鼻腔をくすぐるその香りは飲んでもいないのに酔ってしまいそうになるほどだった。

 

霜明「では、頂こう。」

 

静かに一口その酒を流し込む。すると芳醇な香りと共に味わい深いフルーツの味が口の中に広がった。

 

霜明「ほう、これは・・・」

 

嬉しそうに穏やかに笑うと一口、また一口とゆっくりと転がすように味わうように酒を飲み始めた。

 

ディルック「・・・君は美味しそうに酒を飲むな。」

 

霜明「む?そうでござるか?」

 

ディルック「ああ。表情も飲み方も。モンド人ではなかなか見られない飲みっぷりだな。」

 

霜明「モンド人は量を一気に入れる者が多すぎるのでござるよ。それもまた一興ではあるが、拙者は少しずつ飲むのが好きでござるよ。まぁ、一気飲みしたとしても悪酔いはせぬが。」

 

ディルック「ああ、君が1番酒を飲んでいたのにほかの騎士の介抱をしていた、という話を聞いたことがある。モンド人より酒が強いってのはなかなかな特異体質だな。」

 

霜明「特異体質とは人聞き悪いでござるな?行儀が良いと言ってもらいたいでござる。」

 

くつくつと2人で笑っているとカランコロンと急ぎ気味の音とともに見知った2人の姿が入ってきた。

 

ディルック「ん、いらっしゃい。」

 

横目で見るとそこには栄誉騎士こと共にモンドの危機を退けた剣士、空と先程も共に行動していた吟遊詩人、ウェンティの姿がそこにあった。

 

ウェンティ「やぁオーナー!今人の少ない席はどこだい?」

 

ディルック「ん?2階には人気がないが、詩人なら人がいる方がいいんじゃないか。」

 

ウェンティ「あっはは、今日は歌わないんだよ。じゃあお邪魔するねー♪」

 

そういうと風のような軽い足取りで階段を上がって言った。

 

空「・・・っ」

 

今バッチリ霜明と目が合っていたが誤魔化すようにウェンティの後を追うように階段を上がった。心做しか額にじんわり汗が滲んでいたようにも見えた。

 

霜明「・・・うん?」

 

不可解そうにグラスを揺らしながら少し垣間見える2階席を眺めていると再び急ぎ気味に扉が開いた。

 

霜明(・・・今日はなんだか忙しいでござるなぁ。)

 

と再び後ろに目を向けると西風騎士の2人が入ってきた。だがどうにも酒を飲みに来た、という感じではなく目つきは鋭く少し殺気立っていた。

 

霜明「なんでござる?少し騒々しいでござるよ?」

 

騎士A「こ、これは霜明様!?失礼しました!」

 

霜明「なに、別に咎めている訳では無い。ただ、その雰囲気を察するからに只事ではない事が起きたのだろう?一体何事だ?」

 

騎士B「はっ!霜明様、それとディルック様も。ここらに緑色服装と金髪の2人の人物を見かけませんでしたか?」

 

騎士「先程、そのもの達が教会から天空のライアーを盗んだという通報が騎士団に入りました。」

 

霜明「天空の、ライアー?」

 

聞けばそれは教会に保管された風神の加護を受ける大事なライアーなのだそうだ。そんなものが盗まれたとあって今ちらっと外に目をやるととこどこに騎士団が駆け回っているのが見えた。

 

ディルック「・・・分からないな。」

 

騎士A「そ、そうですか。それでは、」

 

ディルック「なぜ金にもならない物を危険を犯して盗むのか、僕には全くもって分からないな。」

 

騎士A「ディ、ディルック様、それは・・・」

 

ディルック「ん、すまなかった。その2人なら、さっき向こうにそれらしき人影を見た。」

 

霜明「拙者も赴いた方が良いでござるか?」

 

騎士B「いえ、本日は霜明様は休養なさっていると伺っております。お手を煩わせることはありません!それでは失礼します。」

 

そういうとピシッと敬礼した後にバーを去っていった。

 

霜明(・・・十中八九あの2人であろうな。さて、どうしたものか。)

 

タンタンと足音を響かせながら降りてくる吟遊詩人を横目で見ながら少し頭を抱えた。




桜坂霜明

はじめまして
「拙者、桜坂霜明と申す者でござる。元々稲妻を流浪する武士あったが様々な事情が重なり今はモンドに身を置かせて貰っておる。これから何卒よしなに。」


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協力と信頼

ディルック「・・・・・・」

霜明「む?どうかしたでござるか?ディルック殿?」

ディルック「いや、少し気になることがあったんだが、なんだか物語のセリフや流れが微妙に違う気がするんだが・・・」

霜明「なるほど。作者曰く、拙者の存在でそれらが微妙に変わっているらしいでござるよ?」

ディルック「覚えられていないだけじゃないのか?」

霜明「どうなのであろうな?まあ拙者としては滞りなく進められればいいらしいのだが。」

(覚えられてないですゴメンない)


悩み、それは自我があれば誰しもが抱えるものであろう。試験があるのに勉強していなかった。酒の飲みすぎで怒られてしまった。約束を忘れてしまっていた、などなど人の数だけの悩みというのが存在するのであろう。そんな悩みを抱えるものはここモンドにも、

 

霜明(・・・・・・・・・)

 

彼が何を悩むか、それは当然先程のこと。騎士団から聞かされた天空のライアーなる風神に関連する神器とも呼ばれて差支えのないものが盗まれてそれを行ったのが十中八九数日前にできた異邦人の友、空であるからだ。そしてその共犯者であろう吟遊詩人はそんな霜明は意に返さずカウンター席に置いてあるボトルを吟味していた。

 

ウェンティ「どれにしよっかなー。」

 

ディルック「手に持った酒をおけ。」

 

しかしそれを当然見逃すディルックではなかった。仕方ない、というようにボトルを話すとウェンティは踵を返しディルックと向き合う。霜明は席を立ってゆっくりと入口付近にもたれかかった。

 

ウェンティ「ははっ、逃げる気なんて更々無いよ?」

 

霜明「それを信用するかは、これからの2人の態度次第でござるな?」

 

ウェンティ「うーん、ごもっともだね。」

 

手に顎を添えまぁいっか、時楽そうに言うと再びディルックと顔を合わせる。

 

ディルック「ふむ、まあ先に言わせてもらうと、ライアーを盗む度胸は気に入った。君たちがバカだとしても、かなり珍しいタイプのバカだ。」

 

パイモン「ま、まて!オイラ達は盗んでないぞ!真犯人は他にいる!」

 

ディルックの盗んだ、という言葉に反応するようにパイモンが空の隣に現れた。それに同乗するようにうんうんと空も頷いている。

 

霜明「む?しかし金髪と緑色の2人などモンド中をかけ回れば今現在その2人はお主ら以外にはいないと思うぞ?」

 

パイモン「そ、それはそうなんだけど、うぅ」

 

空「ちゃんと理由があるんだ。」

 

霜明「理由、か。」

 

少し下を向き考える。ディルックの言うことが本当だとすれば金にもならない、しかも警備が厳しかった位置にあるライアーをするなど余程の理由があるものが余程の頭の悪い愉快犯しかやらないだろう。

 

ウェンティ「じゃあ、真実の物語を演奏したら信じてくれるかい?」

 

ディルック「いいだろう。」

 

霜明「・・・拙者は物語しだいでござるな?」

 

ウェンティ「ふふ、2人からはいくら出して貰えるのかな?」

 

2人は目を合わせてお互いに異論がない、ということを確認すると頷いてウェンティの方を向いた。

 

ディルック「報酬は、5モラから天空のライアーだ。」

霜明「報酬は、5モラから天空のライアーでござる。」

 

全く同じ回答を2人が同時に返すと可笑しそうにあははっと笑い上機嫌そうにもう一曲追加する、と高らかに宣言しライアーを奏で始めた。そこから語られる物語は想像を絶するものだった。数百年前、モンドを守る戦争の時に風魔竜トワリンが毒血に犯されてしまったこと。数百年の眠りにつき目が覚めた時にアビスの魔術師によって更なる呪いを植え付けられてしまった、そして四風守護を外れてしまったこと。神話の話から照らし合わせても全く持って矛盾のない説明だった。

 

ウェンティ「・・・・・・どうかな?」

 

霜明「・・・・・・」

 

ディルック「・・・これは、重大な秘密だったはずだ。なぜ僕にみせた。」

 

ウェンティ「なぜだろうね?うん、風向きが変わろうとしているからだね。どうかな?ディルック?」

 

そう聞くとディルックは口の端にを微かに上げふっと笑った。

 

ディルック「面白い。少し時間をくれ。僕の方でも情報をまとめよう」

 

ウェンティ「それなら良かった。そこの稲妻人は?」

 

霜明「実に聞き心地が良かったでござるよ。ここまで重大なことを教えてくれたのだ。協力するのが筋というものであろう?」

 

ウェンティ「それは良かったよ!」

 

ディルック「それなら異邦人、吟遊詩人、君らは指名手配が出てるからこの酒場からは出ない方がいいだろう。」

 

霜明「いや、空殿は平気であろう。彼はジン殿から栄養騎士の爵位を賜っておる。金髪だからといってまず疑われることはないであろうな。」

 

ディルック「栄養騎士・・・そうか、君が。流浪した稲妻人と異邦人がこのモンドを助けてくれるなんてな。やはり君たちが騎士にいるのは勿体ない。」

 

空「それって・・・」

 

ディルック「なんでもない。僕の話だ。それじゃあ夜にまたここで会おう。吟遊詩人は酒場から出ないようにな。」

 

ウェンティ「大丈夫!ボクは酒場が大好きだからね!」

 

そういうとウェンティは2階席に戻って行った。

 

ディルック「さて、これから君はどうする?僕はツテで情報を集めて回るが・・・」

 

霜明「ふむ、それよりも、いいのでござるか?拙者やあの2人を信じても。」

 

そうクスッと笑うように問いかけるとウェンティが上った2階席、そしてたった今酒場を出た空を一瞥してからこちらに向き直った。

 

ディルック「奇想天外なことを言う吟遊詩人、どこから来たともしれない異邦人。なんの目的があるかしれない稲妻から来た新人騎士、正直不確定要素が人物像の時点で多すぎるが、あの詩人が言うことの話は通っている。だが君たちがなにか怪しい動きをすれば僕はすぐに君たちを潰さなくては行けない。」

 

霜明「あっはは、そうかそうか。本音が聞けて良かったでござるよ。それでは拙者が何も無く、この件が終わったらまた酒を飲ませてくれるのだな?」

 

そういうとディルックはムッと言うように目を見開いてすぐに無表情に戻った。

 

ディルック「・・・まあそういう事だ。それじゃあまた後でな。」

 

霜明「うむ、またあとで。」

 

そう言うと2人は外に出て各々別方向にいった。

 




桜坂霜明

おはよう
「ふむ、朝の日差しが心地よいでござるな?今日も一日頑張ろうか?」

こんにちは
「そろそろ昼食の時間であるな?ん、拙者か?拙者は自分で弁当を作ってるでござるよ。1口いかがでござるか?」

こんばんは「夜は良いでござるな。全てが幻想的で、綺麗に映るでござるよ。」


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モンドでの日常2

空「ねえ?」

霜明「む、どうしたのだ?」

空「聞いた話なんだけど、霜明は戦いが好きなの?」

霜明「そうでござるよ?拙者は剣術、和歌や川柳に詩歌とともに育って来た故もはや先天的なものと言えような。」

空「そうなんだ?旅をしながらできた趣味とかはないの?」

霜明「ふむ、それであったら拙者は料理が好きでござるよ。機会があれば拙者の腕を披露しても良いぞ?」

空「本当?きっとパイモンも喜ぶと思うよ。」

霜明「む?それはパイモン殿を料理するのでござるか?」

霜明「うーん?そうだね。ゆっくり火を通してくれると助かる。」

パイモン「勝手な話を進めるな!!」


西風騎士団、名の通りモンドを守護するために結成されている。しかしリサのように騎士以外の人物も騎士団本部内で天職を全うしているものもいるのだ。そしてそのうちの一つが錬金術師と呼ばれるものである。様々な物質を合成して違うものを作り出したり元々あるものに改良を施したりと謎の多い専門職だ。そしてその錬金術師のひとりにスクロースという少女がいた。翠玉色に輝く神の目をぶら下げえっさほいさと荷物を運んでいた。そしてその隣。倍近くの量の箱やら実験道具を軽々と運んでいるのはおなじみ春風騎士の霜明だった。

 

霜明「これは・・・ここでよかったか?」

 

スクロース「うん、いつもありがとう。」

 

霜明「なに、いつもこの量を1人で運ぶのは厳しいであろう?拙者がいれば何時でも頼ってもらって構わぬぞ?では拙者はこれで。」

 

スクロース「あ、まって!今日は久しぶりにアルベド先生が雪山から降りてくるの。それで貴方に会ってみたいって・・・」

 

霜明「ふむ、噂に聞く錬金術師の首席殿でござるな。」

 

アルベド、普段はドラゴンスパインと呼ばれる雪山で研究のために籠っている西風騎士団の首席錬金術師だ。スクロース曰く今日はほかの錬金術師との意見交換のために山を降りてくるそうなのだがモンドで噂になっている霜明に興味を示しているようであった。

 

スクロース「アルベド先生のことだから直ぐに飽きちゃうかもしれないし長いこと興味を持つかもしれないし分からないけど貴方さえよければ会ってみない?」

 

霜明「ふむ、構わぬぞ?いつ頃到着する予定になっている?」

 

スクロース「もうそろそろ・・・」

 

そのタイミングでコンコンとノック音が響き渡る。霜明の経験上好き好んで個人的な錬金術の実験室に入ってくる者はいない。となれば今の音を鳴らしたのは噂していた人物以外はほぼほぼありえない。

 

スクロース「ど、どうぞ!」

 

アルベド「ああ、邪魔するよ?」

 

霜明「ほう・・・お主が?」

 

アルベド「お初にお目にかかるね。僕はアルベド。知ってると思うが、西風騎士団の錬金術師だ。」

 

霜明「拙者は流浪武士であり、西風騎士団の春風騎士の桜坂霜明でござる。お見知りおきを。」

 

短い挨拶を交わして軽く、しかししっかりと握手をする。2人の顔には少々不敵な笑みがふっとこぼれていた。

 

スクロース「え、えっと、2人ともなんだか怖いよ・・・?」

 

アルベド「ん、あぁ。話に聞いてたより面白そうだったからね。体を回っている元素粒子、その佇まい。只者じゃないのがわかるよ。それこそ蒲公英騎士に匹敵する実力をもってそうだ。」

 

霜明「む?そうであるか?拙者はただ立っているだけでござるよ?」

 

アルベド「それで分かるくらい君が尋常じゃないんだよ?戦い方や剣術も兼ね兼ねきいているよ。実に興味深いね。」

 

アルベドはつま先から頭まで霜明を一瞥すると何度がこくこく、と頷いてスクロースに向き直った。

 

アルベド「スクロース、意見交換の話だが、できるだけ手短に終わらせよう。思ったよりも彼に興味が出てきたよ。」

 

スクロース「は、はい。分かりました。ティマイオスさんがいつものところで待ってるのでそこに行きましょう。」

 

霜明「ふむ、では拙者は鹿狩りで待つとしよう。何が注文を取っておいた方が良いか?」

 

アルベド「気は使わなくて大丈夫だよ。軽く話を聞きたいだけだからね。」

 

それじゃあ、と踵をかえすと部屋を出ていった。霜明もその部屋のものを極力触らないように気をつけながら部屋を出た。鹿狩りとはモンドで一二を争う人気を誇る食事処だった。霜明も昼や夜、忙しい時はよくお世話になっている。

 

サラ「いらっしゃいませ!ご注文はお決まりですか?」

 

霜明「では満足サラダと・・・主菜は任せるとしよう。」

 

サラ「わかりました。お好きな席でお待ちください!」

 

注文を済ませて数分もすると満足サラダとモラミートが運ばれてきた。そしてリンゴで作ったと思われるサイダーもその場に置かれた。

 

霜明「む?サラ殿?拙者は飲み物までは注文しておらぬぞ?」

 

サラ「いつもご贔屓にして頂いているのでサービスです!ごゆっくりどうぞ?」

 

ニッコニコの笑顔で全ての品を置いてカウンターに戻っていった。霜明はいただきます、と手を合わせ品々をゆっくりと口に入れ味わいながら食していた。全て食べ終わるとちょうどいいタイミングで、やぁという声と共にアルベドとスクロースがこちらに歩いてきた。

 

アルベド「待たせたかい?」

 

霜明「ちょうど食べ終わった頃でござるよ。いい時間でござる。2人もなにか頼むでござるか?奢るでござるよ?」

 

スクロース「そ、そんな、悪いよ。」

 

霜明「奢ると言ってるうちに奢られた方がいいでござるよ?気が変わらぬ内にな?」

 

アルベド「ふむ、そう言うなら僕はご馳走になろうかな。食べながらになるが幾つか質問しても構わないかな?」

 

霜明「もちろん。スクロース殿?頼まないなら勝手に頼んでしまうでござるよ?マッシュルームだらけになってしまうやもしれぬぞ?」

 

スクロース「ま、マッシュルーム!?わ、わかったから、自分で選ぶから!」

 

マッシュルームという苦手な食材の単語を聞くと震え上がっていそいそとサラの所に注文を取りに行って暫くして料理が運ばれてきた。

 

アルベド「そこまで時間は取らせないようには努力するよ。それじゃあ始めてもいいかな?」

 

霜明「まあ別に掛けても構わぬのだが・・・わかった。なんでも聞いてくれて良いぞ?」

 

スクロース「ほ、ほんとにすぐ終わるのかなぁ・・・」

 

スクロースの心配を他所に質問が始まった。

 

アルベド「まず元素と戦い方についてだね。君は体に元素を纏って戦うと聞くよ。かなり珍しいタイプだね?」

 

霜明「ふむ、そうであるか?」

 

アルベド「人間でその戦い方をしているのはかなり少ないよ。せいぜい武器に纏わせる位だ。なぜその戦い方なんだい?」

 

実際モンドにはそう言うと戦い方をする人は居ない。協会の祈祷牧師も似たようなことはするがあれは治療用で決して強化ではない。実際体に纏わせて己の強化というのは繊細かつ大胆な元素の扱いをしなければならなくかなりの高等テクニックだった。

 

霜明「ふむ、拙者の身体能力では勝てない相手がいるのであるよ。」

 

スクロース「勝てない相手?騎兵隊長にはよく勝ってるって聞くし、噂だけどジン団長と同等かそれ以上って・・・」

 

霜明「拙者が見ているのはそこでは無いのでござるよ・・・もっと大きく、恐ろしい相手でござる。」

 

そう目を閉じながら語るその顔は普段は見ることがないくらい落ち着いていてそれでいて憤っているようだった。

 

霜明「ともかく拙者は倒したい相手がいるのでござる。そうでなくとも元々この戦い方であったが、この戦い方でなければ絶対的に叶わぬ相手がいるのであるよ。」

 

そう言う霜明の脳裏には紫電の刀を振りかざす1人の武人・・・いや、武神の姿とたった2人の親友だったうちの1人の姿が鮮明に思い出されていた。

 

アルベド「そうか、その理想が叶うことを信じているよ。それじゃあ次だね。君はスクロースが好きなのかい?」

 

スクロース「ええ!?!?アルベド先生、何を!?」

 

突然全く違うベクトルの質問にスクロースは顔をリンゴのように真っ赤にしてしまった。

 

霜明「それは何故?」

 

アルベド「スクロースからよく君が手伝いをしてくれるという話を聞くからね。好意からの行動かなと、言ってしまえば僕の興味本位さ。錬金術や実験に何も関係ないよ?」

 

霜明「あぁ、なるほど。確かにスクロース殿は好いておるがそれはガイアやノエル殿に向けるものと同じ・・・要は友としてという意味でござるな。特別な意味はないでござるよ。」

 

特に動揺の仕草が見られないことから嘘は無い、とアルベドは判断づけた。

 

アルベド「ありがとう。それじゃあ、次が1番聞きたかったことだね。霜明、今から僕と戦ってくれないかい?腹ごなし程度のものと思ってくれて構わない。」

 

霜明「む、どうしてまた?」

 

アルベド「君の戦い方に興味があると言っただろう?君の元素の扱い方は言ってしまえばかなり特殊なものだ。それは戦う時に1番発揮されるだろう?」

 

霜明「確かに、では場所を変えるとしよう。修練室でよかったでござるか?」

 

アルベド「あぁ、構わないよ。スクロースも来るかい?」

 

スクロース「は、はい!」

 

代金を払って直ぐに騎士団本部に移動する。首席錬金術師と春風騎士の試合、というのはかなり特殊な組み合わせでありそれなりのギャラリーが出来てしまった。

 

霜明「・・・これは軽く、とは行かなさそうでござるな。」

 

アルベド「ふむ、これは僕も予想外だったよ。キミ、相当の人気者みたいだね?」

 

霜明「お互い様でござるよ・・・ではそろそろ。」

 

そう言うと2人はシャン、という光と共に剣を取った。

 

霜明(アルベド殿は騎士ではない・・・実力はどのようなものなのであろうか。)

 

霜明が相手の様子を伺っているとまだ構えを取ってないアルベドから声がかけられた。

 

アルベド「どうしてこないんだい?いつでも来ていいんだよ?」

 

霜明「そうか、ではお手並み拝見させてもらうでござるよ?」

 

そう言うお互いにジリっと構えを取った。この瞬間に霜明は背中に少し身震いを覚えた。アルベドが只者ではないことを勘が告げていたのだ。

 

霜明「・・・いざ。」

 

そう言うとビュン、と風を切り裂くような勢いで霜明はアルベドに距離を詰めたしかしアルベドは剣を持っている右腕を動かさずに何故か左腕を上にあげた。

 

アルベド「擬似陽華!」

 

そしてその左手を地面に向かって振り下ろした。するとその場所に岩でできた花のようなものが現れる。その衝撃でアルベドに突っ込んでいた霜明はその衝撃波をまともに受けて宙に浮かされてしまう。

 

霜明「なんの!」

 

その瞬間に霜明の体が淡い光に包まれる、そして背後に小さな爆発を起こす、反動でまた吹き飛ばされる向きを逆転させてアルベドに突っ込んで行く。

 

霜明「はぁ!!」

 

アルベド「・・・っ!!」

 

霜明の身体能力、元素力、そしてそれよ扱いは結果からいえばアルベドの想像を遥かに超えるものだった。普段の自分より強い力を使うのはかなりの技術が必要になる。しかしそれを霜明はなんでもないようにやってのける。元素の流れ、体の動かし方、思考、全てが連動している。アルベドは1種の感動すら覚えていた。

 

霜明「ふっ、はぁ!!」

 

アルベド「・・・くっ」

 

実際アルベドは防戦一方だった。先程咲かせた岩の華の効果がアルベドが剣を振るう度花のような衝撃波が霜明の剣を弾くが素の速度が霜明に圧倒的に劣るため徐々に追い詰められていた。

 

アルベド(まさかこれほどとは思わなかったな・・・)

 

霜明「・・・ここでござるな」

 

次の瞬間霜明はアルベドの剣・・・ではなく思い切り袈裟斬りを空中に放った。その瞬間に水の竜巻がアルベドを上に打ち上げて地面に叩きつけた。ハッ、とアルベドが顔を上げると目の前に切っ先が向けられていた。

 

アルベド「・・・参ったよ。」

 

そういいアルベドは剣をヒョイっと投げてしまった。何よりの戦う意思はもうない、という証拠だろう。

 

霜明「・・・なぜ攻めなかったのでござる?機は幾度かあったであろう?」

 

アルベド「君の全力の攻めに徹した姿を見たかったからね。守りよりも攻めの方が当然体も元素も大きく使うだろう?結果的にいいものが見れた。ありがとう」

 

ケロッとそう言われてしまって霜明も言及する気が失せてしまった。なるほど、こういう人なんだなとむしろ少し割り切れてし待ったくらいだ。

 

アルベド「しかし、ギャラリーにとっては少しつまらなかったかな?」

 

霜明「ふむ、まあ気にする事はなかろう。して、アルベド殿?」

 

アルベド「なんだい?」

 

霜明「もう質問とやらはおしまいでござるか?」

 

アルベド「ああ、だがまた興味深いことが出来たよ。今度雪山の僕の拠点に来て欲しい。君の実験のデータが欲しくなったよ。」

 

霜明「ふむ・・・では気が向いたら赴こう。」

 

スクロース(わたし、初登場なのに、出番少なかったなぁ・・・)

 

不敵に笑うふたりとは裏腹に少し凹んでいるスクロースなのであった。




桜坂霜明

桜坂霜明・剣術
「拙者の桜吹雪舞を使った剣術はどちらかと言えば対人戦向きであるな。む?なぜって、それはヒルチャール共には別に強化などなくても倒せるであろう?あれは格上の、そう、神の様な存在にも立ち向かえるように編んだ拙者の技なのであるよ。」


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天空を取り返せ

パイモン「なあなあ!」

霜明「む、なんでござるか?」

パイモン「ここの作者が時々公開してる○○での日常ってのはなんなんだ?急に話が変わったり前回までの雰囲気と変わってたりするだろ?」

霜明「あぁ、あれは文字通り拙者の日常を描いた言わば番外や外伝というのが正しいのであろうか?本編の合間合間にあった戦闘や遊び、茶番などを記したものであるな。」

パイモン「なるほどな!ということはそこそこな頻度で挟まるんだな?」

霜明「それは区切りと気分次第でござるなぁ。」

パイモン「おいおい、ここの作者大丈夫なのかよ・・・」


エンジェルズシェアでの1件から数日、霜明は独自の捜査で天空のライアーを盗んだのがファデュイであること、そしてそれが保管されている場所の特定、更には1度ドラゴンスパインに登りアルベドの少々無茶な実験が良い特訓となりさらに戦闘能力を上げていた。そしてディルックの方も情報を得たという連絡を受け早速その日の夜と霜明は酒場に足を運んでいた。

 

ディルック「・・・来たか。そろそろ君にも招集をかけようと思っていたんだ。」

 

酒場に入るとカウンター席に軽く座ったディルック、それを囲むようにウェンティ、空、パイモンが立っていた。

 

霜明「ふむ、ということはディルック殿はある程度の情報は掴んだのであるな?拙者の方は天空を盗んだ者の正体とその隠し場所まで・・・目的までは探れなかったでござるが・・・。」

 

ディルック「それはこちらでも調べられた。こちらも様々なツテを当たったからな。ここにいる全員には話は通してある。目的に関しては推測の目処はたっているが、それは全員揃ってからにしよう。」

 

パイモン「ん?全員って、ここにいるので全員じゃないのか?」

 

ディルック「ああ。この問題はファデュイとモンドの話したけでは無い、下手をしたら神話の力に関わってくる可能性も風魔竜が絡んでいる以上十分に有り得る。だから助っ人を1人呼んだ。」

 

そう言うとタイミングよくカランコロンと音が鳴る。今はディルックによって貸切状態となっているため助っ人と呼ばれる人が来たのだろう。しかしその助っ人はここにいる全員がよく知る人物だった。

 

ジン「すまない、雑務で少々遅れた・・・しかしまた複雑な面子だな。」

 

空「ジン・・・?」

 

空が怪訝そうな顔でディルックとジンの顔を交互に見る。確かに助っ人がジンと言うなら戦力としては申し分のないものになるだろうが様々な疑問が彼らの頭を飛び交っていた。

 

ディルック「まぁ、ここになぜジンがいるのか疑問に思っていると思うが、ここにいるのはただのジンだ。西風騎士団としてのジンじゃない。」

 

ジン「ああ、そうだ。それにしても意外だ。」

 

そう言うとウェンティと空を一瞥し少し困ったように苦笑いしながら呟いた。

 

ジン「天空のライアーの件は聞いていたがまさかこの2人だったとは・・・団長としての立場で来ていたのならすぐさま連行だったところだが。」

 

やれやれ、と首を振りながら仕方ないというような目で2人を見つめる。しかし空、パイモン、ウェンティ、霜明はなぜジンが呼ばれたか全く想像が及んでいなかった。。

 

霜明「ジン殿なぜここへ?」

 

ジン「簡単な事だ。粗方の出来事はディルックから聞いた。ライアーの事も、数百年前のことも。」

 

ディルック「まあ、だがそれで簡単に信じる団長様じゃないだろう。だからまたこの詩人に歌ってもらって・・・」

 

ウェンティ「お、ボクの出番かい?」

 

ヒョイっと演奏に使うライアーを取り出しすがそれを制すようにジンが答えた。

 

ジン「いや、信じるさ。」

 

ディルック「この凝り固まった考えを・・・ん?」

 

ジン「四風守護であった風魔竜が何故敵対したのか全く理解が出来なかった、が聞いた話だと全て説明が着く。しかしこんな事を口走れば私は責務を放棄したと見なされファデュイにどんな対応をされるか分からない。だから今回、私はプライベートという形で同行、そして協力させてもらう。」

 

なるほど、と3人が頷くとそれに少し遅れるようにはぁ、と低い溜め息がディルックの口からこぼれた。

 

ディルック「まったく、だから騎士団は嫌いなんだ。まあいい。場所は先に伝えた通りだ。それから吟遊詩人、わかってると思うが絶対に酒場を出るんじゃないぞ?」

 

ウェンティ「任せておいてよ!ゆっくり皆の帰りを待ってるからさ。」

 

いってらっしゃーいとこれから始まる事と反比例するような軽い見送りを背中に5人はファデュイが潜んでいるアジトへと向かった。その道中のこと霜明は空とほかのメンバーの数歩後で会話しながら進んでいた。

 

霜明「そういえば空殿と共闘するのは初めてでござるな?どうでござる?剣の自身の程は?」

 

空「もちろん、大丈夫だ。ここにいる全員とは初めて組むことになるけど全力を尽くすよ。」

 

霜明「うむ、拙者も噂に聞くお主の剣術を見るのは楽しみでござる。と、言っても拙者もジン殿以外の剣術は全くもって見たことがないのでござるが・・・」

 

苦笑いしながら笑いかけたその顔はまるで子供がイタズラをした時のような顔だった。おかげでかなり緊張感が抜け体に程よい力が入るのを空は感じた。

 

ジン「2人とも、お喋りはその辺だ。そろそろだぞ?」

 

前を向き直すと古い秘境のようなものが見えた。古いとはいえ地盤はしっかりしておりアジトや隠れ家として使うには最適そうに見えた。しかもよく見ると人がいる気配や痕跡がたくさん見受けられる。

 

霜明「ふむ、分かりやすくアジトでござるな。」

 

ディルック「ああ、わかりやすいアジトだな。」

 

片方は軽口を叩くようにして笑いながらゆるりと刀を握りしめてもう片方はふぅ、吐息を着いてどっしりと大きく重そうな剣を構える。

 

ジン「栄養騎士、わざわざここまでの協力感謝するよ。健闘を祈る。」

 

空「そういうのは終わったあとに行ってくれると嬉しいかな。とにかく頑張ろう。」

 

またその少し後ろに立つ人物はキリッと入口を見据えて片手剣を握りしめる。彼女の周りをかすかに渦巻く風が彼女の闘志を表しているようだ。隣の金髪の異邦人は横に浮遊する生物に怪我に気をつけて、と注意を促すといつでも突っ込んで行けるように刀を構えた。

 

ディルック「じゃあ、行くぞ!」

 

ディルックの掛け声がした後、アジトのドアを一気に開け4人同時に突撃する。もちろん見張りをするものは何人かいたのだが霜明が発する水の旋風に、ディルックの容赦のない炎の剣に、ジンの一部の隙もない風圧剣に、空の剣術と元素を合わせたトリッキーな攻撃に、不意をつかれた門番が対応できるはずもなく5秒もせぬうちに一網打尽にされた。その光景を一瞥し霜明は愉快そうに微笑んでいた。

 

霜明「ふむ、意外と何とかなるものでござるな?では参るとしようか。」

 

ジン「はぁ、君の戦闘好きは承知してるがここは敵地だぞ?少々気を引き締めて・・・ん?」

 

振り返ると先程の見張りは姿を消していた。代わりにおきみやげのごとく叫び声が聞こえてきた!

 

見張り「お前たちなぞ、『シニョーラ』様の手にかかれば直ぐに氷漬けにされる事だろう!覚えておけよ!」

 

霜明「・・・シニョーラ?誰でござるかそれは?」

 

ジン「恐らくだが噂に聞くファデュイの十二執行官の1人だろうな・・・とにかくこの話は後にしよう。いくぞ!」

 

さっきの言葉に少しモヤモヤを覚えながらも4人は順調にファデュイを倒しながら進んで行った。特に霜明の芽吹の殲滅力と桜吹雪舞の機動力、そして力の強さによってファデュイたちは行き着くまもなく倒れて言った。

 

ディルック「・・・キミ、噂以上にやるんだな。」

 

驚いた、というように敵の攻撃が止んだところでディルックが話しかけてきた。ジンはその実力を目にする機会があったため知っていたが初めて剣技を目にした空、パイモン、ディルックは噂以上の実力だと関心していた。

 

空「すごい元素の使い方だね。、難しくないの?」

 

霜明「どの技も最初は難しいものでござるよ。拙者にはこの戦い方があっているのでござる。特に今回のようにファデュイのような知能が高いものだとこの戦い方は有効なのであるよ。」

 

なるほど、と空とディルックは納得した。撹乱をしやすい戦い方やゴリ押しもできるために知能や考える時間があるファデュイには確かに有効的な戦い方であった。

 

パイモン「へぇ・・・あ、おい!ここで最後の部屋じゃないか!」

 

パイモンが指を指した先には他の部屋に比べて大きな部屋がひとつ、そしてほかの人物とは違い戦闘慣れしていそうなファデュイがいた。

 

ディルック「・・・デッドエージェントと呼ばれるファデュイだ。ファデュイの戦士の中でもそこそこエリートに部類される。油断するな。」

 

霜明「冗談、ここにいる誰より彼が弱いであろう?」

 

デッド「ほう、行ってくれるな、なら全員まとめて・・・は?」

 

言い終わる前に気がついたらデッドエージェントは宙に浮かされていた。空が起こした小規模の竜巻によるものだ。

 

空「今だ!」

 

3人「ああ!(うむ!)」

 

すると炎、水、風を、各々に纏った件がエージェントを両断した。読んで字のごとく完封したのである。泣き言を言いながら逃げていったエージェントを他所に一行はその部屋に隠してあったライアーを見つけ出し奪還に成功したのだった。




桜坂霜明

ストーリー「この物語について?ふむ、少し雑に感じるところはあるが本番は実は璃月後半辺りになってくるでござるからなぁ。モンドでは拙者の戦闘力、人柄、相性などを知ってもらうためのいわばかなり長い序章でござるよ。だが当然モンドでの日々も、拙者は大切にしておるぞ?」


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絶対逸材なのに

霜明「さて、」

作者「は、はひ」

霜明「これまで何をしておった?」

作者「色々、忙しくてしゃあなくて」

霜明「そうか、ならばしかたあるまい」

作者「へ?て、手打ちにしてくれるんですか?」

霜明「手打ち…いや、打首であるな。二度と忙しくなれぬようにしてくれる!」

作者「へ?ちょ!?ぎゃあああああああああああ」


ライアーの奪還に成功して数日、空、パイモン、ジン、ディルック、ウェンティはライアーの機能を回復するための捜し物をすることとなりその間霜明と言えばジンやディルックがモンド城を開けている間に残って警備強化をしていた。

 

霜明(とはいえ、アビスは斥けたばかり……悠長には考えられぬがすぐにまた攻めてくるとは思えぬし、警戒するなら拙者は外より内でござるな。)

 

ヒルチャールなどの魔物より城内のトラブル警戒をすべきという結論に至り昼時を回ろうとしている時にとある出来事が起こった。

 

エリン「うーん、これじゃダメだ……」

 

霜明「む?エリン殿。いつも性が出るでござるな。」

 

エリン「あ!霜明さん、お疲れ様です!その、こちらを見ていただいてもよろしいですか?」

 

霜明「む?」

 

指された方を見ると訓練用の杭が5つほど、半円を象るような形で並んでいた。

 

エリン「私には神の目がなくて、ジン団長みたいな力が出せないんです……だから力よりも技を磨きたくて。だからこの杭を同時に破壊する術を身につけたいの」

 

霜明「ふむ、しかしこれは……」

 

霜明(そこそこ広い範囲に置かれている、しかも拙者と同じく片手剣による破壊。神の目があるからそれなりにやりようはあるやもだが……)

 

エリン「え、えっと、霜明さん?」

 

霜明「おっと、すまぬ。そうでござるな。エリン殿?」

 

エリン「はい?」

 

霜明「参考になるか分からぬが、拙者で良ければ。ひとまず神の目を使うがやってみても構わぬか?」

 

エリン「本当ですか!!ぜひ見てみたいです!」

 

とりあえずやってみてから神の目を使わない方法を考えよう、ということでまずは神の目を使った力で杭を壊して見ることとなった。

 

 

霜明「では…ふっ!」

 

剣を一振りするとあっという間に全て破壊される。

 

霜明「どうであっ、た、か…は?」

 

エリン「そうやれば良かったんだ!すごい!」

 

そういうとエリンは剣を一振、まるで神の目を使ったかのような、霜明の技であるかのような衝撃波が杭を破壊した。そう、神の目もなしに、先程まで杭を壊せないと悩んでいた少女が、だ。

 

霜明「…も、もう一度今の物を用意してもらっても良いか?」

 

エリン「え?もちろんですけど…」

 

そういうとテキパキと同じ配置に杭を設置し始める。

 

霜明「一応聞くが、先程お主が何をしたか覚えておるか?」

 

エリン「杭を壊しただけですけど、何か良くないことをしましたか?」

 

霜明「いや、そうでは無いのだが…エリン殿。もう一度みててくれぬか?」

 

エリン「え?はい」

 

そういうと今度は元素力を体にまとい高速の速さで杭を全て叩き切る。その速さは先程とは違い全くの同時ではなかったが1人で全て切るには早すぎる間であった。それも元素力あっての

 

エリン「そういう手もあるんだね!」

 

あってのはずだった。エリンは今のと全く同じ動きで悔いの全てを切り刻んだ。

 

霜明「ま、まさかこんな…しかし…」

 

エリン「ありがとうございました!参考にさせて頂きますね!」

 

霜明「あ、ああ…」

 

その後捜し物を終えた一同に霜明は猛烈にエリンをここの人員に入れることを推薦したがディルック、ジンになぜ?と首を傾げられやんわり断られてしまった。お互い解せぬ、となったが結局危険なため同行はしないと結論づけられたのであった。




桜坂霜明

エリンについて
「あんな逸材をなぜ放っておくのか…騎士としての何かが足りないのであろうか?本当に騎士とは難しいのであるな」


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