中身入りロボット、魔法少女の騎士になる。 (トーリスリッターをすこれ)
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それぞれのはじまり

注意:掲示板要素アリだよ。


 "俺"が目覚めたのは"彼女"と初めて出会った日の事だった。

 

 真っ暗な視界の中、幾つものウィンドウが瞬く様に開閉を繰り返す。

 

 幾つもの白いデジタルな文字列が空虚な暗闇の世界を駆け巡る。

 

 それが暫く続いた後、OKの二文字が脳裏を駆けた。

 

 その瞬間、視界は突然開かれた。

 

「起動したか」

 

 目覚めてまず目にしたのは、グレーのスーツを着た白髪混じりの壮年男性の姿。その胸にはタオルに包まれたまだ幼い一人の赤子が抱かれていた。

 

 周りを見回すと気品あるワインレッドの絨毯と白と金のボーダーの壁紙、後は頭上にシャンデリアと壁際に並べられた高そうな暗い木目の家具があるだけで、他のヒトは一人も居ない。

 

 訳の分からない光景だった。まず思ったのはこうで、次に思ったのはここが天国じゃないかって事だった。()()()()()()()()()()筈だったから。

 

「……誰ですか」

「私の名はオハラだ。姓は雑賀」

「ここは何処ですか」

「ここは私の別荘だ。これから君にはこの子の世話を頼みたい」

 

 そう言ってオハラと名乗る男は俺に今まで抱えていた赤子をこちらの胸元に差し出して来た。俺は今までの話は置いておいて、とりあえず手を伸ばし受け取ろうとした。

 

 その時、俺は気付いた。

 

()()()()()()()()()()()()()()

 

 それは、真っ白に塗装された金属だった。節々には黒いビニールの様な物が張られている。俺が知る俺の手よりはやや細く見えたが、硬度は間違いなく此方が上だろう。

 

 ふと、見下ろす。そこに居たのは俺の腕の中で泣きもせずじっとこちらを見る赤子。

 

 気付けば俺は、赤子の頬に触れていた。まだ心の何処かでこの事実を疑っていたのだろう。だが、節々が黒く、真っ白なこの指で赤子の頬を撫でても、温もり一つ感じられなかった。

 

 この時俺は直感で理解した。

 

 ここは天国じゃない。そして俺は、ヒトでなくなったんだ、と。

 

 それに気付いてもなお平静な心が俺の答えを肯定していた。黙りこくっている内に心臓の音もしない事に気付いて、更にその確信は深くなった。

 

 オハラにはその様子が質問を終え、話を催促している様に見えたのだろう。彼は話の続きを始めた。

 

「その子は女の子だから色々と出費も嵩むだろうけど、育てるのに必要な資金はこのクレジットカードから自由に使って貰って構わない。君の中にはパスワードと電子署名も記録されているからね。紛失したり盗難された場合は君の方でクレジットカードを止められる様に手配しておくから手続きはそっちで……」

「お……。私は、何ですか」

「ん? 決まってるじゃないか。君は汎用ヒト型ロボット『イータ』だろう」

「そう、ですか」

 

 自身の腕を見た瞬間薄々気付いてはいたが、実際に聞かされると納得するしかない。俺はイータなるロボットになってしまったらしい。外見が気になるが、腕に抱いている赤子が泣かずじっとこちらを見ていると言う事は、少なくとも怖そうな見た目ではないのだろうと一人納得する。

 

 それでも気になった事は他にもある。

 

 オハラは俺一人に子育てを任せようとしているのか、とか。

 

 クレジットカードの話や別荘の話と言い金持ちである事に疑いは無いが、ならばなぜ他にヒトを雇ったりしないのか、とか。

 

 そして最後に──

 

「なぜ……」

「ん? どうしたんだい」

「オハラさん、なぜ貴方は()()()()()のですか」

 

 俺は感情の無い淡々とした中性的な声(合成音声)で問いかける。自分でも驚く程に、それには感情を感じなかった。

 

 だがそれ以上にオハラの態度は冷え切った物に思えた。彼の目には何の色もない。それはこの子に対する物なのか。

 

「う〜ん。それは何と言うか肩の荷が降りたって感じかな。生まれつきで脚が不自由らしいし、介助するのとか大変でしょ? それにこの子を一眼見てしまったら妻の子じゃないとバレちゃうからね」

 

 すると、当たり前の様にニコニコとしてオハラはそう言った。それはつまり、この赤子が彼の不義の子である事を意味していた。

 

 ああ、なるほど。俺はどうやら勘違いをしていたらしい。

 

 そう言えば、目の前の男はこの赤子を一言たりとも()()()とは言っていなかった。つまり、我が子などと思っていないのだ。俺はてっきり親と子に近しい間柄なのだと夢想してしまっていた。

 

 だが違った……どうやら、この男はこの子の"親"じゃなかったらしい。強いて言えば、()()()()()()()()だ。

 

 きっと、俺がヒトであったのならこの手は怒りで震えていただろう。感情を無くしていなかった事が救いに感じる暇も無い程、その時の俺は怒っていた。

 

 だが手は出せなかった。赤子に差し出したままの右手の指が、小さな両手で握られていたから。

 

 金色の産毛、つぶらな青い瞳、白い肌。目の前の男とは似ても似つかない。思えばこの時初めてこの子の目をしっかりと見た気がする。

 

 振り払おうと思えば振り払えた、だがそんな気は起きなかった。

 

 何を考えていたのか、その時この子は俺を見て目を細めたのだ。途端に、先程まで感じていた怒りは消えた。代わりに感じたのは、この子を守り育てようと言う使命、あるいは決意の様な物だった。

 

 うっすらだが話の筋は見えた──目の前の男は不義の子を厄介払いする為、ロボットを購入し別荘で育てさせようとしている。

 

 話を整理すればこんな物だ。こんなつまらない一文に収まる男を気にかけている暇は無い。

 

 俺だって死んだと思ったら次の瞬間ロボットになっていただけの存在で、そこを深く考えていてもしょうがないし、この子の世話を出来るのは今俺しかいない以上、この役から降りたくもない。それにこの身体がロボットだって言うのなら、生まれ変わりでよくある話の元の人格云々で悩まなくて良い分、得だとも言える。

 

 今はとにかく、この子の事を考える。俺はそう決めた。

 

「分かりました。私が必ずこの子を育て上げます」

「うん、じゃあ頼んだよ」

 

 男は手をフラフラと振りながら部屋を出ようとする。が、途中で何かに気付いた様子で振り返った。

 

「あ、そう言えば苗字だけどその子は雑賀じゃなくて平井だから、そこん所、よろしくね」

 

 何故か男は苗字だけを言って部屋を出ようとする。苗字が違うのは薄々分かってはいたが、名前はどうしたのか。嫌な予感を振り払って聞いてみれば、男は「ごめん、そっちで考えておいて」と、言ってそそくさと部屋を出て行った。

 

 呆れて物も言えないとはこの事だろう。俺は暫くの間、誰もいない部屋で固まっていた。

 

 すると視界の端で小さな手が振られる。この子の名前を決めなければならない、と俺は今更ながらに気付いた。

 

 だが、良いのだろうか。名前を付けるのが無関係の俺で。そう勢いのまま動こうとした時、妙に冷静な俺の頭がブレーキを掛ける。

 

 この子が成長していった時、親から名前すら与えられなかった事にショックを受けるのではないだろうか。今すぐにでもあの男を追いかけて名前を……いや、それじゃあ余計にショックが大きくなるかもしれない。あの男ならその場で雑に考えた名前を付けるかもしれないからな。なら結局は俺が付けるしかない。もしこの時の事をこの子から聞かれたのなら、その時はその時だ。

 

 掛けたブレーキを壊し、決意で竦む意思を進める。ロボット一機に子育てが務まるか、俺の旧い常識じゃ測れない。だが俺と言う個人が合わされば、どうとにでもなる筈だ。

 

 この子は俺の子も同然と思って接する。不審がられない様ロボットとしてある程度の線引きをする必要はあるのかもしれないが、許される限り俺はこの子の側に居続けてやる。誰が何と言おうと。

 

「貴女は誰が何と言おうときっと望まれて生まれて来た筈です。少なくとも私は、いや俺は、今君をこの手に抱いて、生まれてくれて良かったと思ってる。

 

 だから、君の名前は──ノゾミだ」

 

 

 

 ──✳︎──

 

 

 

【人生】我、金髪碧眼色白美少女に転生せり。part1【勝ち組?】

 

1:異世界の美少女イッチ

 釣りじゃないぞ。

 

2:異世界の名無し

 は? 俺なんか銀髪紫眼褐色美少女に転生してるんだが? 

 

3:異世界の名無し

 速攻転生マウントやめてもろて。

 

4:異世界の名無し

 本当にござるか〜? 

 

5:異世界の名無し

 転生者掲示板でも最近フェイクとかあるしな。画像pls。

 

6:異世界の美少女イッチ

 ほい

『ダブルピースする金髪碧眼色白美少女の画像』

 

7:異世界の名無し

 こマ? 

 

8:異世界の名無し

 ガタッ! 

 

9:異世界の名無し

 全裸待機してて良かったぜ

 

10:異世界の美少女イッチ

 >>9

 服着ろ淫獣。

 

11:異世界の名無し

 で、最近はファンタジー世界に転生するのが流行りみたいだけどイッチはどんな世界に転生したんだ? 

 

12:異世界の美少女イッチ

 >>11

 近未来世界。一家に一台ロボットとかそんな感じの世界。僕の家にもリッターって名前のメイドさんみたいな役割のロボットが居たりする。

 

13:異世界の名無し

 近未来って聞くとファンタジー世界よりロクでもない世界とかありそうやな。

 

14:異世界の名無し

 カレ◯デバイス、エン◯ェルユニット……うっ、頭が……。

 

15:異世界の美少女イッチ

 勝手に不穏な空気にすんのやめーや。我美少女ぞ。

 

16:異世界の名無し

 美少女が一体何の威厳になるんですかねぇ……。

 

17:異世界の名無し

 てかこれイッチは初めてスレ立てたんだよな。これまで何やってたんだ? 

 

18:異世界の名無し

 一人遊びでお楽しみしてたんでしょ。

 

19:異世界の名無し

 ワイ世界見通せる千里眼持ち、イッチは同居してるロボットにビビって一人遊び出来てない模様。

 

20:異世界の美少女イッチ

 >>19

 お前ふざけんなよ。

 

21:異世界の名無し

 草

 

22:異世界の名無し

 草

 

23:異世界の名無し

 イッチガチギレで草。

 

24:異世界の名無し

 いややったんワイやけどワイでもバチ切れるわ。

 

25:異世界の名無し

 >>21

 >>22

 >>23

 梯子外されてて草。

 

26:異世界の美少女イッチ

 真面目に話をすると僕は今16歳なんだけど、何故かこの歳になるまで掲示板を使えなかったんだよね。

 

27:異世界の名無し

 あっ……。

 

28:異世界の名無し

 あっちゃあ、またそのパターンか。

 

29:異世界の美少女イッチ

 え、何? 

 

30:異世界の名無し

 今度は何が起きるかな。

 

31:異世界の名無し

 一応聞くけどイッチは物心付いても掲示板が使えなかったんやな? 

 

32:異世界の美少女イッチ

 せやで。

 

33:異世界の名無し

 ならそのパターンやと高確率で一年以内に何らかの事件に巻き込まれるで。

 

34:異世界の美少女イッチ

 え? マジで言ってんの? 

 

35:異世界の名無し

 >>34

 これまで色んな転生者のスレ見てきたけどマジやで。もっとイッチの詳しいスペックとか聞けたら何かヒントが見つかるかもしれん。

 

36:異世界の美少女イッチ

 分かった、以下スペック。

 前世

 享年:20

 見た目:フツメンの男

 持ち物:特に無し

 

 今世

 歳:16

 見た目:金髪碧眼色白の美少女

 持ち物:脚の障害

 

 因みに友達は居ない。僕は金持ちの父親の不義の子らしいからあんまり学校とか外に行かせたくないらしくて、義務教育とかリッターに教えてもらってた。メイドさんとかも居なくて家事とか僕の介助もリッターにしてもらったりしてた。

 

37:異世界の名無し

 ……

 

38:異世界の名無し

 えぇ……(困惑)

 

39:異世界の名無し

 僕っ子TS転生者って確定したのに誰も盛り上がらないとかマ? 空気冷え過ぎだろ……。

 

40:異世界の名無し

 それってつまり……ネグレクトってこと!? 

 

41:異世界の美少女イッチ

 そうなるかな。この世界でも完全にロボットに育児丸投げは虐待では、みたいな感じらしいし。

 

42:異世界の名無し

 クォレハプラマイゼロで無罪ですね……。

 

43:異世界の名無し

 何の罪なんですかね……? 

 

44:異世界の名無し

 美少女誕生罪? 

 

45:異世界の名無し

 誘い受けショタ勇者の性◯隷に充てがわれてる長身筋肉質美女奴隷のワイはトントンで無罪やな。まあショタ揶揄うのは楽しいけど。

 

46:異世界の名無し

 唐突な性癖の開示、本気だね。

 

47:異世界の名無し

 ここには色んな転生者が居るけど結構アレな方の環境だな。ロボットと二人きりで16年間過ごすって自分なら気が狂いそうだわ。

 

48:異世界の美少女イッチ

 いや、案外ロボットは人間味があって退屈しないよ。寧ろ足が不自由な僕でも大丈夫な様に24時間体制で面倒見てくれてるし、話し相手としてもAIによくある会話の破綻とか無かったし、結構エンジョイしてる。

 

49:異世界の名無し

 へえ、未来のロボットって凄いんやな。

 

50:異世界の美少女イッチ

 でも気になる事があるんだよね。

 

51:異世界の名無し

 気になる事って、こっちはもうすでに山ほどあるんやが。

 これからイッチに何が起きるのかとか、親子関係とかロボットの扱いとか。後々話すんやろうけど。

 

52:異世界の美少女イッチ

 僕の世話役のリッターは汎用タイプで量産品の『イータ』って商品名のロボットなんだ。で、AIが自己学習で進化するのがウリらしいんだけど、リッターは僕が物心付いた時から人間と同じに見えるくらい感情を感じるんだよね。

 

53:異世界の名無し

 ロボットに感情って良くある話やな。そう言う系やと初期搭載されてるロボットとかもおるけど。

 

54:異世界の名無し

 例えば? 

 

55:異世界の美少女イッチ

 僕がこの世界で初めて風邪引いて寝付けなかった時とか、何も言わなくても自室で充電してたリッターがコードを持って僕の部屋で充電しながら子守唄とか歌ってくれたり、氷嚢を変える度に『大丈夫ですよ。必ず治りますから』って声掛けてくれたりしてさ。『甘い物を食べれば気が紛れます』ってすり下ろしリンゴとか作ってくれたりした。

 

56:異世界の名無し

 ……ママ? 

 

57:異世界の名無し

 ママァ……。

 

58:異世界の名無し

 ロボットやのにバブみを感じる。何やこれ。

 

59:異世界の名無し

 確かにただのAIにしては出来過ぎな気もするな。何というか文字だけで見ても思いやりみたいなの感じるし。

 

60:異世界の名無し

 なんかイッチに何が起きるか分かった気がする。

 

61:異世界の名無し

 お? 

 

62:異世界の名無し

 名探偵ニキか? 迷探偵ニキか? 

 

63:異世界の名無し

 多分、そのリッターって言うロボットがどっかの闇組織とかに狙われるパターンちゃうか? 

 

64:異世界の名無し

 なるへそ。

 

65:異世界の美少女イッチ

 え? リッターが狙われるの? 

 

66:異世界の名無し

 だってイッチには確かに親子関係のトラブルとか美少女故のトラブルとかありそうやけど、今の段階ならその親代わりのロボットが一番クサいやろ。

 

67:異世界の名無し

 確蟹。

 

68:異世界の名無し

 感情のあるロボットとか研究対象になりそうだしな。

 

69:異世界の美少女イッチ

 じゃあどうすれば良いの? 

 

70:異世界の名無し

 腕力を鍛える。

 

71:異世界の名無し

 美少女らしく相手を魅了していけ。

 

72:異世界の美少女イッチ

 いやマジでお願い助けて。リッターは家族みたいな感じだし、守れなかったら絶対後悔する。

 

73:異世界の名無し

 マジって言われてもまだ確定じゃないからなあ。でもイッチも本気でその親代わりのロボット守りたいって感じだから下手な事も言えないし。

 

74:異世界の名無し

 もしかしたら別方向から問題が来る可能性もあるし、今は選択肢を狭める様な事はしない方が良いと思う。

 

75:異世界の名無し

 用は現状維持って事やな。

 

76:異世界の美少女イッチ

 現状維持ってちょっと不安だなあ。それって毎日ビクビクしながら過ごす事になるよね。

 

77:異世界の名無し

 でも何の心構えも出来てない状態から問題に巻き込まれるよりは百倍マシだと思う。俺なんかドラゴンに転生して早々魔王に殺され掛けたりしたし。

 

78:異世界の美少女イッチ

 じゃあ分かった、とりあえず普段通りに暮らしながら様子を見てみる。その間一旦掲示板にレスするのもやめとく。これ結構集中力使うし。じゃあね。

 

79:異世界の名無し

 おう。

 

80:異世界の名無し

 その後、イッチの姿を見たものは居なかった……完。

 

81:異世界の名無し

 いてらー。

 

82:異世界の美少女イッチ

>>80

 勝手に終わらせるな。

 

 

 ……

 

 

 …………

 

 

 ………………

 

 

150:異世界の美少女イッチ

【速報】我、魔法少女にならないかとスカウトされる。

 

151:異世界の名無し

 は? 

 

152:異世界の名無し

 は? 

 

153:異世界の名無し

 はぁ? 

 

154:異世界の名無し

 /人◕ ‿‿ ◕人\ <僕と契約して、魔法少女になってよ! 

 




因みに中身入りロボットの見た目はファ◯アボールのドロッ◯ルお嬢様を大人っぽくしたイメージです。

誤字修正ありがたや。


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それぞれの変身アイテム

※今回も掲示板要素あるよ。


 転生者である僕、平井ノゾミが生まれた世界は科学技術の発達した近未来の世界だった。

 

 街並みはと言うと、サイバーパンク世界ほど騒々しい輝きは無く、僕の居た現代の延長線上にある様な平凡な物。しかし道行く車は皆電気自動車であちらこちらに充電スポットが存在する。生まれつき足の悪い僕も短い移動は電気車椅子頼りだから何かと便利だ。

 

 歩道には人と服を着た人型ロボットが当たり前の様に行き交い、空を見上げてみれば、配達ドローンやエアバイクが空を駆けている。間違いなくこの世界は前世代の人間が夢想する様な近しい未来の世界だった。

 

 ただ、その割を喰っているのが僕みたいな天然モノの美少女だ。科学技術が進歩したおかげで生まれる前から遺伝子を調整したり整形したりでこの世界には人工の美人が多い。だから外見の割にチヤホヤされないのが少し悲しい。前世ではまるで興味無かったスキンケア商品に手を出したりもして自分磨きしたりもしてるけど、なんだかなあ。

 

 釈然としない気持ちに更に追い打ちをかけたのは、この前の出来事だ。

 

 僕の頭の中に突然開かれた掲示板へのリンク。

 

 その中の掲示板の住人が言うには近々何かの事件が起こるらしい。それにはリッター……僕の家族が巻き込まれるかもしれないって。だから余計に辛い気持ちになる。やむ。

 

 僕は今の世界でも現役なスマホを手に取り、ネットの海に潜ってリッターについて調べてみる。

 

「イータ、で検索すれば出るのかな」

 

 リッター、本来の名前は汎用型の人型ロボットのイータって名前で鈴木カンパニーって所が売り出してるヒット商品。詳しい事は分からないけど人型ロボット業界で記録的なセールスを叩き出した伝説的商品で年々バージョンアップを繰り返しながら販売しているらしい。今のイータはVer16、一年間隔で新バージョンを出すらしいから……僕が物心着く前から世話してくれたリッターは初期バージョンに近い、のかな? 

 

 イータのプロモーションビデオなどを見てみるが、どう見てもリッターの方が情緒豊かに見える。比べてみればそれこそロボットと人間位の差異を感じる。

 

 ロボットと言う画一の物に対し、脳裏には噛み合わない特別と言う二文字。掲示板を見る前の僕だったらワクワクしていたかもしれないけど、今の僕にはそれが重く感じた。

 

 ため息を吐きながらスマホの画面を切った時。部屋の窓に影が差した。

 

「邪魔するぜ」

 

 それは突然だった。僕の世話をしてくれるロボット・リッターが一人で買い出しに出ている最中の事。僕は家で車椅子に座り留守番していた時に、窓から馴染みの居酒屋の暖簾を潜るような手軽さで女の子が入って来た。

 

 一房の赤いポニーテールを肩越しに垂らした目付きの悪い少女。両耳には音符の形をした銀のピアスを付け、虎と竜の刺繍が施されたスカジャンにパツパツの太ももが眩しく見えるハーフパンツを着込んでいる。厳つさとエッチさの競合か? でも僕の方が可愛いけどね。

 

「……オイ、どこ見てんだ。そんなにアタシの下半身が気になんのか?」

 

 故に失敗した。ただでさえ足が悪くて車椅子生活なのに見知らぬ人間を近くに寄せてしまった。おまけに座った姿勢だから余計に下半身に目が……卑劣な術だ。

 

「ふっと……」

 

 思わず口に出てしまった。失礼極まりないがこんな今にも溢れ出しそうな太ももを眼前に見せびらかされてこう言わないのはむしろ失礼かもしれない。僕は混乱気味だった。

 

「っ、太くねぇから!」

「あっ、ごめん」

 

 すると彼女は顔を赤くして叫んだ。くそっ、可愛い。僕が男のままだったらやられていたかもしれない。

 

「ってか話させろ!」

「……いや不法侵入者とする話があるんですかね」

「うぐっ!」

 

 ただ、現時点でこの女の子は屋敷に忍び込んで来た不審者だ。リッターも今は居ない、車椅子じゃ自衛のしようもない。せめてスタンドみたいな力があれば……それか車椅子を魔改造したりとかさあ。

 

「すまねえ、悪かったな。この屋敷、一本道以外は林に囲まれてたからよ。アンタんとこのロボットと鉢合わせないように裏から失礼させて貰ったぜ」

 

 と思っていると彼女は素直に頭を下げて来た。綺麗なつむじだ。

 

 ……さて、何から聞こうか。

 

「はは、僕のこの美貌を一目見に来たのかな?」

「確かにびっくりするくらい美人だけどよぉ、別にそう言うんじゃなくってだな」

「──じゃあ、父の刺客かな?」

「は?」

 

 不意打ち気味に聞いてみたが……彼女は心当たりなさそうにキョトンとしていた。うーん、分からない。

 

「アンタの親父さんの事はよく分かんねえがそんな繋がりは無えよ、多分」

「あ〜男の人だったら僕のテクニックで骨抜きにしてたんだけど」

「は、はぁ!? アンタまだ未成年だろーが!!」

「ふーん、その程度は調べて来てるんだ」

 

 彼女は苦々しく顔を歪めていた。内心はこの悪ガキ、とでも思っているのだろうか。嘘や(はかりごと)は苦手そう、見た目よりは真面目っぽい感じ、かな。

 

「嘘だよ。僕は自分を安売りする気は無いからね」

「チッ、調子狂うぜ」

「さ、早くお話しよう。生憎この脚だからお客様を持て成す事は出来ないけど」

「分かってたのならサッサとしてくれよ……」

 

 まあ、目的は大体分かったから良しとしよう。僕の身代が目当てならとっくに行動してるだろうし。

 

 僕達は部屋の中央に向かう。ここは僕の部屋だ、中央には幅広なソファーが一脚とテーブルがある。彼女にはソファーに座ってもらい、僕は何もない反対側で車椅子に座ったまま向かい合う。そう言えばいざと言う時の為に一人で誰かと話す時はどんな時もテーブルか何かを挟んで間合いを取れってリッターがよく言ってたなあ。

 

 どすんと座った彼女は、一呼吸置き、話し始めた。いかにも重要そうな事言いますよって感じだ。

 

「アタシの名前は辰寅(たつとら)リュウコ。平井ノゾミ、アンタに単刀直入に聞く。アンタは人類の存亡を賭けた戦いに参加する気はあるか」

「人類の存亡?」

「この世界には別次元からの侵略者の魔の手が迫ってる、つったらアンタ信じるか?」

 

 ……もしかして、()()? もしかして事件って、()()の事? 

 

「……なーんだ。そう言う事か」

「なーんだ、って何だよ、真面目だぞこっちは?」

「いや、むしろ待ってましたと言うか、人類の存亡だけならバッチコイと言うか……」

「お前邪教徒か何かかよ!? 何だよその悪の親玉みてえなセリフは!!」

 

 心から安堵したせいか、やたらと口が回る。嬉しい、リッターは大丈夫なんだ。そう思うと重く澱んだ気持ちも晴れていく。

 

 あれ、何か顔から垂れてる? 

 

「って、何泣いてんだよ!?」

「えっ?」

「あ、アタシの所為か? もしかしてアンタカトリックとかだったのか!? なら邪教徒とか言ったのは謝るからよ、ほら涙拭けって!」

「あ、あれ? 何で」

「おいおいおい!?」

 

 ──その後、僕が泣き止むまで暫くして。

 

「お騒がせしてすいません。僕は君を信じたいと思います」

「はぁ……いいぜ」

 

 泣き止んだ僕はげっそりとしている彼女を前に、漸く話の続きをお願いした。

 

「えっとどこからだっけな。人類の存亡は言ったよな。なら次は別次元の侵略者、魔王についてだ」

「魔王?」

「ああ、この世界がある次元とは別次元の世界、所謂ファンタジーみたいな世界なんだが、そこに居る魔王って奴が()()()()の為に色んな次元に対して侵略戦争を開始した。それが事の始まり──」

 

 そこから先は、近未来の世界で聞けるとは思えないファンタジーの物語だった。

 

 魔王は特殊な技『魔法』によって次々に別次元の世界を侵略し、多くの世界を滅ぼし領地としたそうだ。手始めは自分達の世界より古い時代の世界、次に同じ時代の世界、そしていよいよ未来の世界にも魔王は手に入れようとしている段階らしい。

 

 しかし、魔王に対抗するには同じ魔法の力が必要だと言う。魔法とは局所的な現実改変能力、世界を塗り替える技らしく、例え魔王に万の銃弾を撃ち込もうとも魔法の力がなければ魔王に届く前に世界を塗り替えられ消えてしまうとも。更にこの力は魔王だけでなく魔王が率いる軍の面々も使用出来る為、尚の事厄介だ。

 

「──って事になってる訳だ」

「待って下さい、ある目的って何ですか?」

「それはだな、『魔力』だ。

 魔力──それはあらゆる次元に存在する生命体の思念に感応する目には見えない超エネルギーだ。これは普段は世界に満ちていて生命体の中に自然に溜まっていく、だからアタシの中にもあるし、アンタの中にもある。

 魔王は何かしらの目的の為にこの魔力をコソコソと集めてるらしい。あらゆる次元に存在するっつーから、そこのもかき集めてるんだろうな。ついでにリソースを最大限に確保する為、それを消費しかねない現地の生命体も滅ぼしたんだろうよ。で、魔力は魔法のリソースにもなる。魔法を使う為には身体に溜まった魔力を使う訳だな。これを言うと世界に満ちている魔力から魔法を使えないのかって聞かれるんだが、アタシはいつもこう答える──手で掬った水と口に含んだ水、どっちが狙いをつけ易いか、ってな。出来るにゃ出来るが、魔法を使った時の精度は段違いだ。下手すりゃあ暴走する」

「って事は使った事あるんですね、魔法」

 

 彼女は黙って肯首する。なるほど魔力に魔法ね。さっきまでターミネーションしたりとか電脳世界とか近未来特有の事件にでも巻き込まれるのかと思ってたけど、まさか別次元もとい別世界からの侵略とは。

 

 ……あれ? じゃあ別世界に居る転生者が集まってる掲示板にも知ってる人居るんじゃない? てか下手したら魔王側の転生者が掲示板に居る可能性なくない? うう、厄介さではこっちの方が上かも。

 

 思わぬ落とし穴に頭を抱えたくなった僕だったが、取り敢えず話を最後まで聞く事にした、まあ何となく流れでわかるけどさ。どうせこれ勧誘でしょ? 

 

「じゃあ聞いて欲しそうなんで聞きますけど、何故君は魔法を使えるんですか?」

「それを聞いたら、もう後戻りは出来ないぜ?」

「どっち道人類の存亡でしょう? 守りたい物を守れる力があるなら、あるに越した事はありませんよ。ビビって死ぬくらいなら、胸張って死んだ方がマシです」

「はっ、変な奴だが気骨がある奴は嫌いじゃねえ。いいぜ話してやるよ」

 

 話の概要はこうだ。

 

 魔王に滅ぼされた世界の中には実用に足る魔法と言う物が存在していた世界もある。そう言った世界から他の世界へ逃げ延びた者達は、魔王に対抗する為の組織を作り、それぞれの世界で魔法を行使する存在、『魔法使い』を集めているらしい。その為のシステムもあるんだとか。

 

「それがこれだ」

 

 そう言って彼女が取り出したのは……ただのスマホだ。どう見てもスマホだ。

 

「まあ見てな」

 

 彼女はスマホの電源を入れ、僕に見えないようパスワードを打ち込むと、改めて画面を見せて来た。

 

 そこにあったのは──照れながら笑ってるミニスカサンタクロースの姿をした彼女の姿だった。ミニスカでも太ももが眩しい。僕も今年はサンタクロースのコスプレとかしてみよっかな。リッターは何て言うだろう。バニーガールの服買ってって言ったら「何処の色欲魔に唆されたんですか」って目を赤く輝かせて言ってたからダメかな。

 

「あの、この可愛いしか感想が出てこない画像が魔法なんですか? 思考を縛る魔法的な……」

「ちちち違うぞ! これはアタシの趣味とかじゃなく去年のクリスマスで無理矢理……ハッ、違う! この画像だ!!」

 

 と言ってスクロールした先にあったのは、黒背景に白い円が描かれた画像だ。これだけじゃ何を意味するのかまるで分からない。

 

「このスマホには魔法が掛けられている。そのスマホでこの画像を開き、魔力を流し込めば──」

 

 ──すると、白い円は見る見る内に赤く染まり、完全に赤一色となると円の内側へと新たな線が生まれた。やがて線は五角や五芒星、円や見た事の無い文様などを描き、一つの魔法陣を作り上げた。10秒にも満たない内の出来事だった。

 

「こうして個々の魔力に合った魔法陣……まあ魔法を使う為の道具みたいな物だな、でそれを介して魔法が使える様になる。アタシは赤だから炎の魔法って所だな」

「でも、それスマホですよね。電池が切れたら──」

「だからアタシは同じ魔法陣を刻んだカードを持ってる」

「じゃあ何の為に……」

「これはだな、魔力さえ有ればどんなヤツも自分に最適化した魔法陣を作れるって道具だ。つまり誰でもすぐ『魔法使い』に出来る代物って事だな。

 

 ──だから平井ノゾミ、アンタは今から魔法使いになれ」

 

 いきなりか、いや十分前置きはしてたか? 予測の範疇だったが、まさか今から魔法使い、いや魔法少女になれと誘われるとは。

 

「理由は、何となく分かります。僕の魔力量が多かった、って事ですよね」

「そんな所だな。魔王達が欲しいのは魔力だ。魔力を多く持っている生命体が居れば当たり前の様に害してくる。殺されるか誘拐されるか、ロクな目には合わないだろうな。幸いにもアンタは元々露出を避ける生き方をしていた様だし、まだ魔王達には捕捉されていないだろうよ。幾ら魔王でも世界に魔力が満ちている状態で魔力を頼りに個人は探せねえ」

「なら何故君は僕を見つけられたんですか?」

「アタシ達の仲間はあちこちに居るからな、道を歩いていて強烈な魔力とすれ違ったから偶々追いかけたらここに辿り着いたんだよ」

「……思ったより原始的ですね」

「一番冴えた手なんだな、これが」

 

 僕は彼女からスマホを受け取り、画面を覗く。画面には先程の黒背景に真っ白な円が映っている。どうやら他人に渡すと初期化されるらしい。

 

 僕には魔力があると言うらしいが、どうやって魔力を流せば良いのだろうかと思っていると、白い円は勝手に黄色に染まり出した。プラモの墨入れの様に、一瞬で円は黄色に変わり、内側へと伸びる線は先程の比にならない速度で模様を描いていく。よく見れば、先程の彼女の魔法陣よりも三角や四角、ダビデの星などの装飾が増えていた。僅か数秒の出来事だった。

 

「そいつは本人の魔力量によって魔法陣や描かれるスピードも変わる。アタシ達にとっては測定装置みたいなモンだ。見てみればやっぱりアンタの魔力は規格外レベルってヤツだな」

「喜ぶべきか否か、悩みどころですね」

「だがまだ終わりじゃねえぜ」

「まだあるんですか?」

「魔法ってのは世界を塗り替える能力だって話したよな」

「……はい、そうですね」

「なら、魔法によって自分を塗り替えて最強の形にすればどうなる?」

「っ! まさか!」

 

 ──()()()()()()()()、あるいは()()

 

 彼女は言った。「それこそが魔法使いの切り札(ロマン)だろ?」と。

 

 

 

 ──✳︎──

 

 

 

【孤独は】無機物に転生しちゃった民のスレpart20【友達】

 

1:冷たくなった名無し

 ここは無機物に転生してしまった冷血の民達が集まる

 転生者掲示板です。雑談、質問、SS何でも可です。

 

 前スレ:✳︎✳︎✳︎〜

 

 ……

 

 …………

 

 ………………

 

334:冷たくなった名無し

 な阪関無。

 

335:冷たくなった名無し

 何だここは。

 

336:冷たくなった名無し

 >>335

 あれ、新規さん? 

 

337:冷たくなった名無し

 新規と言えば新規になるのだと思う。

 

338:冷たくなった名無し

 >>335

 おお! 新しい人来た! これで勝つる!! 

 

339:冷たくなった名無し

 >>335

 この荒野にもまた新芽が……。

 

340:冷たくなった名無し

 すまない、俺にはこの場所がよく分からないのだが。

 

341:冷たくなった名無し

 >>340

 ここは異世界に生まれ変わった転生者の内、無機物に生まれ変わった人達が来る掲示板。

 

342:冷たくなった名無し

 >>340

 石ころとか木とか地球とかに転生した奴が居るスレッド。

 

343:冷たくなった名無し

 最近暑くてアイスノン足りなくなってんだよなあ。

 

344:冷たくなった名無し

 >>343

 北極の事アイスノンって言うのやめーや。ワイ北極の中で凍りついたマンモスの骨やけどいつ海にばら撒かれるかヒヤヒヤしてるんやからな。

 

345:冷たくなった名無し

 因みに335が転生したのって? 

 

346:冷たくなった名無し

 ロボットだ。

 

347:冷たくなった名無し

 >>346

 はえ〜珍し。この前美少女タイプのゴーレムに転生したヤツとかおったけどロボットは初めて見たわ。

 

348:冷たくなった名無し

 で、アームロボット? それともルンバ? 

 

349:冷たくなった名無し

 >>348

 石ころに転生して尊厳破壊されたヤツのレス。

 

350:冷たくなった名無し

 すまない、ヒト型ロボットだ。

 

351:冷たくなった名無し

 SSRやん。

 

352:冷たくなった名無し

 ヒト型って巨大なヤツかな。

 

353:冷たくなった名無し

 >>352

 こうすれば返したい相手に返答出来るのか? 

 人間のスケールと似た感じのロボットだ。

 

354:冷たくなった名無し

 335さんガチの掲示板初心者か。ならスレ民全員でサポートせんとな。

 

355:冷たくなった名無し

 >>353

 合ってるで(ニッコリ)

 

356:冷たくなった名無し

 >>355

 ありがとう。

 

357:冷たくなった名無し

 335のスペックおせーて。

 

358:冷たくなった名無し

 ヒト型ロボットって何やるんやろな。

 

359:冷たくなった名無し

 スペックは詳細な方が良いのか? 一応使用されているCPUの名前から言えるのだが。

 

360:冷たくなった名無し

 ガチロボットで草。

 

361:冷たくなった名無し

 >>359

 スペックはそっちのスペックじゃなくて大まかな身の上とか外見とか言ってくれたらええんやで。

 

362:冷たくなった名無し

 分かった。

 

 身の上:前世では2015年に勃発した第三次世界大戦に従軍し戦死、以後は現在2079年の世界にて汎用ヒト型ロボットとして転生し一人の娘を育てている。

 外見:前世については特筆点無し、男。現在の見た目については説明が難しい為、画像の添付を行う。

 

『線が細く女性型に近い真っ白なロボットの画像』

『青く輝く横倒しの涙型のカメラアイを搭載した頭部をアップした画像』

 

 

363:冷たくなった名無し

 >>362

 エッッッッ!! 

 

364:冷たくなった名無し

 >>362

 勃ッ! 

 

365:冷たくなった名無し

 >>363

 >>364

 どう言う意味なんだ? 

 

366:冷たくなった名無し

 >>365

 猿の鳴き声のモノマネやな。

 

367:冷たくなった名無し

 うーんこれは無知シチュ。

 

368:冷たくなった名無し

 美少女なゴーレムとかじゃなくてこう言うロボッ娘を待ってた。

 

369:冷たくなった名無し

 >>368

 中身は俺の様な男だが、良いのか? 

 

370:冷たくなった名無し

 寧ろそれが良いんだよなあ……。

 

371:冷たくなった名無し

 しれっととんでもない事言ってんのにエッッッな事にしか目が行かないここのスレ民ほんと尊厳破壊者の末路って感じがしてすこ。

 

372:冷たくなった名無し

 >>371

 お前も仲間に入れてやるよ〜。

 

373:冷たくなった名無し

 てか2015年にWW3が起きた世界とかあるんやな。おまけに子育てしてる軍人TSママロボッ娘とか堪らんで。

 

374:冷たくなった名無し

 盛り上がっている所悪いが話をしたい。

 俺はついさっき娘の為に買い出しに出ている時ここへ繋がるリンクが載ったウィンドウが開かれてここにやって来たんだが、ここに居る者は皆同じ様にして来たのか? 

 

375:冷たくなった名無し

 あっ……。

 

376:冷たくなった名無し

 例のパターンやな。

 

377:冷たくなった名無し

 てかこのまま335の話が続くならコテハン付けた方が良さそう。

 

378:335

 コテハンとはこれの事か。

 >>376

 で、例のパターンとは一体。何か分かっているのなら教えて貰いたい。

 

379:冷たくなった名無し

 >>378

 転生して先天的にここに来れるヤツと後天的にここに来るヤツがおるんやけど、後者はここに来て一年以内にデカい事件に巻き込まれてる。

 

380:冷たくなった名無し

 この前の美少女ゴーレムもこのパターンでどっかの世界に次元跳躍させられてたな。

 

381:335

 一年以内か。誰かその事件に心当たりがある者は居ないだろうか。出来るなら先手を打ちたいのだが。

 

382:冷たくなった名無し

 あるとすれば、335本人かその周り、例えば娘さんとかが巻き込まれるとかか? 

 

383:335

 >>382

 それは本当か? なら俺は念の為急いで家に帰る必要がある。そして処理能力の分割を避ける為、普段は掲示板からは離れようと思う。情報感謝する。また状況に進展があれば追って連絡を入れる。

 

384:冷たくなった名無し

 >>383

 おk、でもあんまり無理しちゃダメだぞ。

 

385:冷たくなった名無し

 行ってらっしゃい。

 

386:冷たくなった名無し

 まだ確定した訳じゃないだろうからあんまり気負い過ぎんなよー。

 

 ……

 

 …………

 

 ………………

 

523:335

 帰り道で行き倒れていた緑の髪の少女を助けたら、禍々しい模様の入った杖を貰ったのだが。

 

524:冷たくなった名無し

 何そのお土産に買ってきたトーテムポールばりに要らないプレゼント。

 

525:冷たくなった名無し

 やっぱ緑の髪の女にロクなヤツ居らんな。

 

526:冷たくなった名無し

 まずどうして行き倒れてたんですかねぇ……(ごく普通の疑問)

 



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嵐の先触れ

一万字超えてるのにまだ魔法少女の変身まで行かないとかウッソだろお前? プロットガバガバじゃん。

今回は掲示板要素無しです。


 燦々と照り付ける日差し、絶え間のない蝉時雨。

 

 急いでいた、俺はこの上なく急いでいた。

 

 こんもりと膨らんだエコバッグを二つ抱えてクラシックなメイド服を着ながら街を行くロボットは屋敷のあるこの街、真昼街(しんちゅうがい)ではもはや見慣れた光景となっている。他ならぬ俺な訳だが。

 ただ今日は珍しく急ぎ足と言う事もあり、普段なら通り過ぎる見慣れた人々も奇妙な物を見る様に目で追ってくる。

 

 急ぎの理由は先程の掲示板とやらで得た情報が理由だ。それは近々俺の身の回りで事件が起きると言うもの。もしそれがノゾミに降り掛かると言うのなら気が気ではなかった。

 

 しかし急いでいる時程足を止めたくなる出来事に出会ってしまうと言う物。急いでいる所為か、前を見ている所為かは分からないが。

 

「……何故、こんな場所に」

 

 俺は人通りの少ない市街地で、道端に倒れた緑の髪の少女を見付けたのだ。今は初夏の季節だと言うのに厚手のコートを着たその姿に面食らったが

 

 これが戦時中ならブービートラップの一つではと考えるが、ここは今の所平和な世界、あり得ないと思考の外に追い出した。

 

「大丈夫ですか?」

 

 取り敢えず倒れているヒトが居れば肩を叩く。決して無理に動かしてはならない。

 ついでに首筋に手のひらを当てて体温を測る。俺がこのロボットに搭載された機能を使うには念じるだけで良いと気付いたのはノゾミが初めて風邪を引いた時の事だったな。体温計測機能を使いたいと念じれば俺の視界の片隅でウィンドウが開く。その中にある数字は35.2、思った以上に低い体温だ。熱中症と言う訳でもなさそうだな。

 

「……けほっ、こほっ」

 

 すると突然、見ているこちらが不安になりそうなくらいに咳き込みよろめきながら少女は立ち上がった。季節と相まり、まるで陽炎の様な儚さに見える。だから支えになろうと手を差し出すと、少女は肩を跳ねさせ、俺から距離を取ってしまった。

 

 見ず知らずのロボット故に、警戒されてしまったのだろうか。俺は少女の気持ちを慮れなかった不覚を恥じる。

 

「アナタは、誰? ……くしゅん!」

「私は通りすがりのロボットです。買い出しの帰りで倒れていた貴女を見つけたのです」

 

 ずるずると鼻を啜る少女に対し、俺は違和感を与えないよう、俺はロボットの口調を真似て話す。

『不気味の谷』と言う言葉がある、ヒト型ロボットがヒトそのものではなくヒトに近過ぎる言動を取ると嫌悪を感じると言う話だ。俺はその言葉に倣いあまり人間らしさを出さない様にしている。それはもうかつて上官にしていた様な恭しい態度で、いつもの事だ。

 

 向かい合ってみると、少女はマスクにニット帽にマフラーと防寒着を着込みに着込みまるで季節感の無い格好をしていた。話し合いの最中にも関わらず、赤い顔で絶えることなく咳とくしゃみを繰り返す。これは風邪、なのだろうか。いささか重症に思えるのだが。

 

「どうして……アナタは平気なの?」

 

 少女は声を震わせややゆったりと話す。もしかすればまだ彼女はロボットの概念に疎いのかも知れない、だから俺に風邪が感染ると考えたのだろう。

 ノゾミはこの少女と同じ歳くらいの頃には既にロボットの事を理解して実際に俺のメンテナンスを業者の代わりに出来るレベルだったからか、俺も少し常識離れ"慣れ"してしまった様だ。この世界で暮らすにもまだまだ至らない事だらけだな。

 

「私はロボットですよ。病気には罹りません」

「そう……なんだ」

「だから心配の必要はありません。絶対に大丈夫です」

「けほっ……ありがとう」

 

 マスクをしていた為はっきりとは分からなかったが、それ聞いた少女は笑っていた気がした。次の瞬間には緩慢な動作で俺の身体にもたれ掛かって来たのでよくは分からなかったが。

 

 だが俺もずっとこうしている訳にもいかない。少女が何か困っているのなら早々に解決し帰宅しなければ。

 

「貴女は何故倒れていたのですか」

「今日、少し体調が良かったからお外で遊ぼうと思って……でも無理だった……こほっ」

「となると、今から帰ろうとしていると言う事ですか」

「……うん」

 

 彼女は躊躇う事なく肯首したが……俺は何とも言えない不安感を抱いていた。彼女の足を見ると、生まれたての子鹿の様にプルプルと震えている。炎天下の帰り道を生き残るビジョンがまるで見えないのだ。

 

「貴女の家に、今家族は居るのでしょうか」

「うん、お姉ちゃんが三人」

「大人の方は居ますか」

「一番上のお姉ちゃんは大人だよ……けほっ」

 

 なるほど、なら家に帰ればひとまずは大丈夫だろう。問題は帰る道程なのだが。

 

 少女を見る。真っ直ぐに伸ばされた緑の髪に透き通る翠眼、マスクに隠れていても分かる幼なげではあるが妙に大人びた雰囲気のある顔立ち。それはいつかの昔のノゾミに似ていた。

 

 ……仕方ない。このまま彼女を一人で帰らせる訳にもいかないだろう。

 

「家はどちらですか」

「えっ?」

「貴女を家まで運びます。家はどちらですか」

「いい……の?」

「勿論です」

 

 腰を落とし、少女の方を見る。首をこてんと傾けている彼女の仕草は萌黄色に近い緑の髪もはらりと靡き、目は潤み、どこか色気を感じさせるものだ。どこかこの世とは思えない──生まれ変わった俺が言うのも何だが──得体の知れない何かを見た、そんな不思議な気分だった。

 

「じゃ、じゃあ……いく、よ?」

「はい、どうぞ」

 

 少女は、壊れ物でも扱う様に、慎重に足と手と俺の身体に掛けていく。子供一人、特に重さなども感じない身体である。何の問題も無い。

 

 俺は少女の道案内を頼りに彼女の家へ向かった。

 

 ……

 

 …………

 

 ………………

 

 少女を背中に乗せたロボット──俺は彼女の案内のまま進むと、そこには古びたトタン屋根の一軒家があった。所々錆があり、今にも崩れそうな、そんな有り様だ。未来の世界にあって良い物件なのだろうか。

 

「ここが、貴女の家ですか」

「うん……そうだよ」

 

 背中の彼女は俺の顔に自分の顔を擦り付ける様な距離感で会話する。信頼を得たのか今の彼女は妙に気安くなっていた。俺が男のままなら多少は注意していた所だが、今はただの汎用ヒト型ロボット(女性型)である為敢えて言う必要もないだろう。

 ……だが背負っていた時に胸の膨らみがある部分をやたらに触っていたのはどうだろうか。いくら服越しとは言え、柔らかみのないただの隆起した板金だとしても。

 

「家には家族が居るのですよね」

「くちゅん! ……お姉ちゃんが待ってる」

「ならここで別れましょう。私が貴女の家族の前に出ると色々と説明しなければなりませんから」

「えっ……こほっ」

 

 すると彼女は何か絶望した様な声を出した。そんなにも別れるのが嫌だったのだろうか。

 

「大丈夫ですよ。この街で暮らしていればまた会う事だって出来ます。一生の別れじゃありません」

 

 だからこう言った。これは嘘でも方便でもなく本当の事だ。この家からノゾミと暮らす屋敷のある雑木林まではそう離れた距離ではない。俺も定期的な買い出しで外に出る為いつかはまた出会える筈だ。

 

「……ほんとに? わたしの前から消えない?」

 

 すると彼女は深刻そうな声色で喋りながら、俺の首元をぐっと両手で締め付ける。痛くも痒くも苦しくもないが、音で分かる。

 

 きっと彼女は病気がちの子供なのだろう。そのせいで数え切れない程失われた縁があったのだろう。

 

 なら、俺は切れない縁を結ぼうじゃないか。

 

「なら、約束します、私と貴女は必ずまた会える。そしたらまた約束しましょう、次も必ずまた会える様に。規則正しく動くロボットにとって、予定は決定です。必ず果たします」

 

 俺は腰を静かに落とす。少女は背中から降りて、屈む俺の前に回り込み、小指を差し出した。

 

「約束……だよ?」

「約束を忘れるロボットなんて居ませんよ」

 

『ゆびきりげんまん』──随分と懐かしい所作だ。幸いにも俺の手の指も五本ある、その中から白い小指を伸ばし少女の小さな肌色の小指に絡める。

 

『ゆびきりげんまん、うそついたらはりせんぼんのーます、ゆびきった』

 

 ……そうして少女と俺は約束を交わし、家の前で別れようとした。

 

「けほっ! こほっ! ま、待って!!」

 

 すると突然背中を向けた俺に向かい、何かを思い出した様子で彼女は寄って来た。

 

「これ……お守り。何かあったら、これに祈って……えほっ!」

 

 彼女はコートの中から黒をベースに赤い血管の様な模様の入った手首から肘程の長さのあるどこか禍々しい()を取り出し、俺の腹に押し付けた。俺は彼女がそのまま杖を握る手を解こうとしたので、慌ててその杖を手に取ってしまった。

 

「私は当たり前の事をしただけで何かを貰うなど」

「……わたしの大切なもの、要らない?」

「貴女の大切な物ならば尚更──」

「持ってて、欲しい!」

 

 咄嗟に返そうとしたものの、少女の必死な形相に俺は頷く他なかった。この雰囲気で無理に返そうとしても受け取ってくれそうにない。……後で頃合いを見計らってこの家の家族経由で返すべきだろう。

 

「それでは、また──」

「……鞍馬(くらま)ミドリ、お姉ちゃん達にはペイルって呼ばれてるけど、けほっ……わたしの、名前。その、ミドリって呼んで、欲しいな……えほっ」

「──でしたら私の名前も必要ですね。私の名前はリッター。ドイツ語で騎士と言う意味です」

「じゃあ、()()()……リッター」

「ええ、()()()()()()()()、ミドリ」

 

 こうして、ミドリと言う少女との奇妙な出会いは終わった。

 

 病気がちだが思い遣りのある、可愛らしい普通の少女。

 

 屋敷へと帰る道すがら、彼女とまた会えた時には娘の話でもしようと、俺はそう考えていた。

 

 ──しかし、まさかその再会があの様な形で訪れるなど、この時の俺は予想だにしていなかったのだ。




誤字修正ありがたや。


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吹き荒れる嵐

外が嵐だったので急いで書き上げました。割と急展開。

※今回は少し掲示板要素アリ。

2021/12/01/7:58 文章をざっと見直しておかしな所があったので修正(本筋には影響ありません)


 僕が辰虎(たつとら)リュウコちゃんとの会話を終え、二階にあるこの部屋の窓から外へ出ていくのを見届けたのとリッターが帰って来たのは同時だった。

 

 僕はリュウコちゃんから魔法について、軽く指南を受けた。

 

 ・まず僕の魔法陣は黄色、つまり雷魔法に対応していると言う事。

 ・そして魔法には()()を除き決まった手続きが存在せず、当人の認知と意識を元として発動すると言う事。つまりイメージが大事。

 ・だけどその意識を固定する為のルーティンとして詠唱や図形を用いる人も居るらしいと言う事。

 

 そして魔法使いのルールも教えてもらった。

 

 ・魔法使いは無闇に魔法の存在や魔王の存在などについて非魔法使い、つまりは一般人やロボットには言ってはならない、聞かれてはならないと言う事。

 ・魔法使いは非常時でない場合は結界や人払いなどの魔法を使用し、非魔法使いに見られる可能性を限りなく排除した上で魔法を使用すると言う事。

 ・もしも魔法の存在が知られた場合、人間ならば記憶を消す魔法を、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()と言う事。

 

 あまり外に出る事のない僕にとっては他二つはあまり関係がなかったから、三つ目が一番重要だった。そんなニュースは聞いた事もなかったけど、魔法使いがよほど巧妙に隠れているか、隠蔽されているかのどちらかなのだろう。それと……今までリッターを普通に外出させてたけど、魔法使いに合うリスクを考えると本格的にネット通販暮らしも考えないとなあ。

 

 後、極め付けはこれ──メタモルフォーゼ(変身魔法)

 

 魔法とは世界を塗り替える技、この魔法を自分自身に使用すると強靭な身体と圧倒的な膂力、そして魔法の行使にあらゆる最適化が施された仮想の肉体が手に入る。それに加えて魔力で編まれた服と武器まで貰えると言うのだから至れり尽くせりだ。でもこれは前述の()()の魔法で、それぞれの属性で決まった祈りの言葉、『詠唱』が必要らしい。僕も一応教えて貰ったけど、そんなすぐに使うだろうか。

 

 ただ彼女は「力を手に入れたからって調子乗んじゃねーぞ? 暫くはアタシもこの屋敷の近くに居る。何か起きたらアタシの名前を呼べば良いからな」と言っていた。去り際にはメアド交換と僕の魔法陣のスクリーンショットも自分のスマホに送る形で貰った。口調はどこか荒っぽい感じだったけど優しい子だったなあ。

 

 そう感慨に浸っていると、ノックの音がした。

 

 コンコンコンコンコン。──5回のノック、妙に几帳面な態度は間違いない、リッターだ。

 

「入って良いよ」

「ただいま帰りましたよ、ノゾミ」

 

 リッターはボディの型や声からして(恐らく)女性型ロボットだと思うけど、僕の部屋にはいつもこうしてから入ってくる。でもこれってどちらかって言ったら淑女って言うよりなんか紳士的だよね。

 

「……あれ、リッター、少し濡れてる? 何かあったの?」

 

 部屋に入って来たリッターの顔を見る。いつも通りの横に倒した涙型の瞳、その際の部分に水滴が垂れているのが見えた。ロボットは汗をかかないし、リッターが出ていた時に雨が降っていた訳でもない。と言う事で気になったのである。

 

「外に出ている際に風邪を引いた方とすれ違いまして。念のため身体を水洗いしていました。メイド服も新しいものに着替えていますので問題はありません」

「へえ、夏風邪かな」

 

 ああこれ、また人助けしてたんだろうな。──僕は確信した。

 

 リッターは昔から困ってる人が居たら片っ端から助けようとする性格(?)なのだ。多分風邪を引いた人を家まで運んだ、とかだろうね。

 

 僕はどちらかって言ったら鉄血冷血のロボットより、優しいロボットの方が好きだから全然オーケーなんだけど……まだ掲示板の事が頭に引っかかる。リッター自身が厄介事に巻き込まれたりするならやめさせた方が良いのかな。魔法使いの話もあるし……でもどっちの理由も言えないor言っても信じられない話だから頭が痛い。言えば聞いてくれるだろうけど、それはあくまでロボットで人に従順だから。リッターの意思は関係なくなっちゃうから、出来ればやりたくないよね。

 

「……リッターは」

「はい、何かありましたか」

 

 首を傾げるリッター、この距離感がどこまでももどかしい。

 

 リッターが本当の両親だったなら言いたい事も言えたのに。ロボットは決して人の大事な一線には踏み込めない。人はロボットを自在に弄れるのに、だ。まるで中世ヨーロッパ()の小説で出てくる奴隷みたいな都合の良い人形。昔の僕はそう言うのが苦手で、本当の所を言えば最初は冷めた目でリッターを見ていた。

 

 ……でもリッターは違った。

 

 リッターは僕以外にも平等だった。それは本来誰かに買われて使われるロボットとしては異質なのだろう、公共の物でもないのに購入者以外の利益の為に、時にそちらを優先する事すらあるロボットなんて本来ならおかしな存在だ。()()かもしれない。でも僕はそれで良かった。

 

 だから僕はリッターのメンテナンスをする様になった。リッターが自分自身でバグを見つけてしまわないように、バグを治してしまわないように。勿論適当にやってる訳じゃない、ちゃんとロボットの運用に関連した資格も取ってるし。いざそうなった時に何も知らずに今のリッターと別れるのが嫌だったって理由もある。でも、自分のわがままでリッターを縛るのも嫌だ。

 

 言葉を真っ直ぐに届けるには、人とロボットじゃ遠過ぎる。人からロボットに踏み込もうとすれば何もかも人間本位になってしまう。それはロボットの個性の蹂躙と支配だ。

 

「……なんでもないや」

 

 だから上手く言えない。それがいつも悩ましい。

 

「でしたら、私は夕食の支度に行ってきます」

「うん、今日も美味しいやつ、待ってるよ」

「はい、任されました」

 

 ねえリッター、君は何を考えているのかな。君の言葉で聞いてみたいな。──僕から聞くのは怖くて仕方がないよ。

 

 ……

 

 …………

 

 ………………

 

203:異世界の名無し

 にしても近未来で魔法少女って……。

 

204:異世界の名無し

 ま、ジャンルの掛け合わせは今に始まった事じゃないし多少はね? 

 

205:異世界の美少女イッチ

 我を崇めよ。

 

206:異世界の名無し

 >>205

 わからせたい。

 

207:異世界の名無し

 調子に乗ったTSメスガキイッチがわからされるスレはここですか? 

 

208:異世界の名無し

(近未来式ネグレクト喰らってるイッチは既に社会の世知辛さをわからされてる可能性が)濃いすか? 

 

209:異世界の美少女イッチ

 僕の可愛さよりネグレクトの方が食い付き良いの腹立つ。

 

210:異世界の名無し

 ここの掲示板の住人は良くも悪くもピュアで過激な事に敏感だから仕方ないね。

 

211:異世界の名無し

 >>210

 ピュア……? 

 

212:異世界の名無し

 >>211

 邪悪と書いてピュアと読む。

 

213:異世界の名無し

 異世界で奴隷買ったワイ、ピュア過ぎて童貞を捨てられない模様。

 

214:異世界の名無し

 そいやイッチもピュア()過ぎてアッチの経験値0やったな。

 

215:異世界の美少女イッチ

 >>214

 流れ弾やめろ。魔法打つぞ。

 

216:異世界の名無し

 >>215

 これは暴力系ヒロイン。

 

217:異世界の名無し

 てか魔法少女って何するんだよ。

 

218:異世界の名無し

 そりゃもうR-18よ。

 

219:異世界の名無し

 絶対エロい事されるゾ。

 

220:異世界の美少女イッチ

 一般的なイメージとそう変わらないよ。

 

221:異世界の名無し

 >>221

 やっぱR-18じゃん。

 

222:異世界の名無し

 >>221

 エッッッ! 

 

223:異世界の名無し

 >>222

 江戸(えど)は、東京の旧称であり、1603年(慶長8年)から1868年(慶応4年)まで江戸幕府が置かれていた都市である。 現在の東京都区部の中央部に位置し、その前身及び原型に当たる。

(Wikipediaより抜粋)

 

224:異世界の名無し

 江戸博識ニキありがとう。

 

225:異世界の美少女イッチ

 >>223

 エドテン(プレ)やめーや。

 

 真面目に言うと大体は人を害する魔物って奴が居てそれを狩るのがお仕事らしい。

 

226:異世界の名無し

 へー、ファンタジー世界の勇者とか冒険者とかとやってる事変わらへんな。

 

227:異世界の名無し

 舞台は近未来だけど魔法少女もファンタジー枠だから当たり前ちゃ当たり前なのか? 

 

228:異世界の美少女イッチ

「使命!」ってガッチガチの感じじゃなくて見つけたらやる、みたいな努力義務なんだけどね。

 

229:異世界の名無し

 って事は脚が悪くて自宅警備員なイッチはあんまり関係ないんか。

 

230:異世界の美少女イッチ

 >>229

 それはそう。

 

231:異世界の名無し

 自宅警備員系魔法少女とか夢が壊るる^〜! 

 

232:異世界の美少女イッチ

 ん? 

 

233:異世界の名無し

 >>231

 夢を抱けるほどピュアかワイら? 

 

234:異世界の名無し

 俺なんかピュア過ぎて世界の人類の祈り受信して聖龍に覚醒進化したぞ。

 

235:異世界の名無し

 魔王に殺されかけたドラゴンニキおかしな事なっとるやん。

 

236:異世界の名無し

 ワイはピュアやのにショタ勇者を誘惑するサキュバス扱いされて今教会から指名手配されとるで。

 

237:異世界の名無し

 >>236

 ピュアとは? 

 

238:異世界の名無し

 >>232

 と言うかイッチは何があったんや。

 

239:異世界の美少女イッチ

 手元のスマホに避難勧告が入ったんだけど

 

240:異世界の名無し

 ファッ?! 

 

241:異世界の美少女イッチ

 大雨と暴風警報ってさっきまで雲一つ無かったのに。

 

242:異世界の美少女イッチ

 ごめん、一旦スレから離れる。

 

 ……

 

 …………

 

 ………………

 

 夕食の準備をしていたリッターがノックも無く部屋に入って来た。余程慌てて居たのかメイド服の上から身に付けたエプロンも外さずに。

 

 でもまさか避難勧告にインターセプトを喰らうとは……おかげで収穫ゼロだ。魔法少女って聞いて奇妙な反応する人も居なかったし、この前にドラゴンの転生者が言ってた魔王って言うのが僕の聞いた魔王と同一人物か確認する前にこんな事になっちゃったし……掲示板を見てただ疲れただけな気がする。

 

「何もありませんでしたか、ノゾミ」

「うん、でもこれ……」

 

 僕は窓に向けて指を指す。篠突く雨と吹き晒す風がガラスをけたたましく打ち鳴らす。

 

「今先程アクセスフリーの航空ドローンの録画ログを確認しましたが、どうやらこの雨雲は突然発生した物の様です」

「それってゲリラ豪雨って事?」

「恐らくは」

 

 そう言うリッターは窓の外を眺めながら何度か頭を振っている。あれは何か複数のチャンネルを持つ端末にアクセスしている時のリッターの癖の様な物だ。ああやって首を振るのをスイッチにチャンネルを切り替えているらしい。他のロボットはやってないみたいだけど。

 

「屋敷は大丈夫なのかな」

「造りはしっかりとしているので問題はありません、しかし」

「しかし……?」

 

 

 

 ──✳︎──

 

 

 

 ──胸騒ぎがする。

 

 俺はそう言う事は無かった。心臓も無く、曖昧さも無いロボットの言葉としては相応しくなかったからだ。

 

 だがじりじりと強まる雨足と風が、まるで火の付いた導火線を見ている様な錯覚に陥らせる。何かが起きる、そんな予感がする。

 

 幾つかのアクセスフリーの航空ドローンの録画は見たが、風が強くドローンが飛べない今、リアルタイムの様子までは確認出来ない。

 

 避難すべきか否か、俺は考える。

 

 普通ならば既に避難出来る状態ではない、外は大雨と暴風で足の不自由なノゾミを連れて移動する方が遥かに危険だ。屋敷の中でやり過ごすべきだ。

 

 しかしあの掲示板に書かれた事が真実なら? これこそがその事件の前触れなのではないか。ならばノゾミを連れここから逃げるべきだろう。

 

 どっちだ、どっちが正しい。

 

 理屈では前者が、直感では後者が正しいと言う。まるで身体と魂が分離している様だった。

 

「ノゾミ、私達はこれから……」

 

 俺は直感に従いノゾミに話そうとするが──

 

 

 

 ──その時、部屋の電気が消えて、窓の割れる音がした。




後編へ続く。


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嵐の中で瞬いて

前回の続きをあらかじめ用意していた筈なのに気に入らない所を直したら全く別の話になってた件。

※今回は掲示板要素アリ(小)


 人とロボットの狭間に生きる今の俺は意識を絞る事で1秒を120の()()に割って観測する事が出来る。

 

 偶然だった。部屋が停電した拍子に俺の意識は極度の集中状態に入り、スローモーションの様に世界を見ていた。その中で電動車椅子に座るノゾミの背後の窓に、妙に輝く一滴の雨粒が見えていた。

 

 ──それが窓に突き刺さり、貫通する瞬間も。

 

 あまりに突拍子もない光景に俺は困惑した。

 

 それは銀色の雨粒。窓を貫きノゾミの方へ向かっていく。

 

 ──狙撃。

 

 俺のそう多くはない語彙で表現するとすれば、()()は狙撃だった。

 

 しかし幾ら状況を認識しても身体が動かなければ意味がない。ロボットの身体とは言え、僅かなラグが存在する。そして物理的な距離も。

 

 だが、念じれば届く。俺は車椅子に視線を向けた。

 

 俺が動いても届かないのなら、電動車椅子を()()動かす。

 

「うわっ?!」

 

 ノゾミは突然の事に驚いていたが、話す余裕はない。

 

 俺の世代のロボットは身体の制御に無線通信を利用している。多機能なロボットの全てを物理的な接続で制御する事は非効率的だからだ。その恩恵として無線通信に対応する端末はワイヤレスで動かす事も可能だ。

 

 独りでに動いた車椅子は銀の雨粒を見事に回避し、華麗にターンを決めてドアのそばに立つ俺の背後へ回り込む。

 

 だが俺は全く安心出来なかった。

 

 外れた銀の雨粒が落ちた赤い絨毯には、黒い弾痕の様な痕が残っていた。貫通までは行かずとも、かなりの威力があった事に間違いはない。

 

 もしアレがノゾミの頭に当たっていたら……想像するだけでも心が寒くなる。

 

 するとノゾミが痕を見つめぽつりと何かを言った。深慮する様に顎に手を当てて。

 

「……もしかして」

「何か言いましたか、ノゾミ」

「いや、何でもない!」

「そうですか」

 

 ……何か隠している? 俺はノゾミの態度が気になり始めたが、状況がそれを許さなかった。新たな銀の雨粒がこちらへ向かって飛んで来たからだ。

 

 俺は部屋の中央に置かれた幅広のテーブルを持ち上げ、盾にする。

 

 同時に無数の弾丸じみた雨粒がテーブル目掛け、篠突く雨の様に打ち込まれた。

 

「やはり尋常ならざる威力」

「このままじゃ不味いよ。リッター、部屋から出よう」

「了解しました」

 

 即席のチームワークだ。俺が盾になりノゾミが背後のドアを開く。黙って前を向いていても各部に取り付けられた衝突回避用のセンサーによって『気配』としてその動きを理解出来る。

 

「右よし、左よし、行けるよリッター」

「行きましょう」

 

 ノゾミが車椅子を操作し部屋から出て行ったの感知し俺もテーブルを窓へ投げ込み部屋を出る。

 

 俺が部屋から脱出しノゾミがドアを閉じると、屋敷の中を激しい雨と風の音が満たしていく。さっきまでの喧騒が嘘の様に。

 

 ──まだ気を抜くな。

 

 しかし16年前の、戦場に生きた過去の俺がそう言っていた。誰かが言うには「死神は身構えていない時に来る」だったか。

 

 あの雨粒が何か分からないが、少なくともノゾミへの害意を感じる軌道だった。少なくとも窓際に居るべきではない。外に出るのもアレを仕向けたスナイパーが居るのなら得策ではない。

 

「ノゾミ、私が必ず護りますからね」

 

 もしもの時は──

 

「…………リッター、顔貸して」

「どうしましたか、何か」

 

 するとノゾミは突然そんな事を言い出した。俺は妙に神妙な顔をしたノゾミに首を傾げながらも、膝を立て顔を寄せる。

 

「先に言わせて。ごめん、リッター」

「な」

 

 ノゾミは俺の首に手を回し、抱きついてくる。

 

 ──同時に俺の視界は暗闇に落ち、全ての音と感覚が消えた。

 

 

 

 ──✳︎──

 

 

 

 機械のメンテナンスをする時は電源を完全に落とす必要がある。電源を入れたまま内部に触れようとすれば感電のリスクがあるからだ。当たり前だけどそれはロボットも同じ。

 

 僕はそれを利用しリッターをシャットダウンした。

 

 リッターの電源ボタンはうなじのカバーに隠された中にある。メンテナンスする時に必ず触る場所だから、直接見なくても触れられたのはそのおかげだった。

 

 目の前で倒れ伏すリッターを見て一切罪悪を感じないかと言われたら勿論感じる、でもこれしか方法は無かった。僕を襲った正体不明の襲撃は多分、魔の付く誰かの仕業だろうから。そうと断定出来る証拠はないけど、僕にはそれ以上に警戒しないといけない()()()があった。

 

 もしこれが僕の想像通りなら、これは『魔法』の絡む事態になる。となればこれにリッターが深入りするのはリュウコちゃんから聞いた魔法使いのルールに触れてしまう、そしたら例え僕が手を下さなくてもリッターが他の魔法使いの手によって破壊される可能性がある。

 

 そんな可能性を排除しきれない以上、リッターを止める選択肢以外の考えは無かった。それにリッターを止めるチャンスもここしかなかったから僕は行動を起こした。もし脅威となる存在と遭遇してしまえば、リッターは僕を守ろうとして手が届かない距離まで飛び出して行ってしまうだろうから。

 

 ……さあ、気を取り直そう。

 

 館に満ちる環境音の中に、破壊的な音が混じる。玄関口からだ。『コ』の字状になっているこの屋敷で僕の部屋は丁度『コ』の2画目の始まり、2階廊下の突き当たりにある。対して玄関口は1画目の縦線部分の真ん中辺り、1階エントランスホールにあるから、直接何が起きたかを見る術はない。ただ派手な事をしてくれたのは確かだろう。

 

 何やら()()()()が来たらしい。こんな雨の中、まったくご苦労様だよ。

 

「リュウコちゃーん! ……さすがに居ないか」

 

 何となくリュウコちゃんを呼んではみたものの、反応は無し。もしこれが僕を狙った暗殺の類いなら、そりゃ周りの魔法使いが来れなくなる様に手は打ってるよねえ。

 

 仕方なく僕は玄関口に面したエントランスホールへ向かう中でスマホの電源を入れる。左上に主張する圏外の二文字にはガックリと来たが、まだやりようはある。

 

 でも僕には転生者だけどチート能力なんて無いし……覚えたての付け焼き刃でどうなるとは思わない。目的は勿論リュウコちゃんが事態に気付くまでの時間稼ぎだ。

 

 ……まさか、僕の魔法少女デビューがこんな所で来るとはね。

 

 彼女が言うには変身魔法は決まった詠唱が各属性に存在するらしい。今日中に使えるなんてタイミング良過ぎない? 運命の悪戯ってレベルじゃないよ。

 

 でもまあ、助かったかな。

 

『──荘厳に、静粛に、敢然に』

 

 頭の中に並べた詠唱の文句を諳んじる。

 

『──遥かの空に響きし号令よ』

 

 すると、温かな黄光が魔法陣を通して僕を包み込んでいく。

 

『──今一度の奇跡を齎せ』

 

 不謹慎だけど、僕は今、ワクワクしてる。

 

『──メタモルフォーゼ(変身)

 

 叫びと同時に、全ての音を消し去る雷鳴が遥か彼方へ轟いた。

 

 

 

「……これで、終わり?」

 

 気付けば、僕の姿は変わっていた。先程まで身に付けていた服は豪奢な黄色と白のインバネスコートに変わり、下は白のハーフパンツに黄色のグラデーションが効いたガーターベルトとハイソックス、靴は白のブーツだ。頭の上には金のラインが入った白の略帽まであるけど、何故か頭は軽い。でもこれじゃあ魔法少女と言うより軍服少女じゃないか。

 

 厨二心はくすぐられるが、ミリオタでもないのに見栄えの良さに心惹かれてドイツの軍服や兵器を調べていた学生時代の黒歴史が形を成している様で思わず地団駄を踏みたくなった。

 

 そしたら……足が上がってた。

 

「足が……動く」

 

 掲げた足を見て目が点になりそうだった。世界を塗り替える力は伊達じゃないらしい。久しぶりに動かす足の感覚は新鮮過ぎてもはや違和感すら覚えた。

 

 それに変身をしてからと言うもの、頭の中は妙に落ち着き冴え渡っている。まだ変身魔法しか使っていないのに、他の魔法も使える様な気がした。ある種の全能感がある。少し怖いくらいに。

 

「じゃあ……『武装召喚(フォァラドゥンク)』」

 

 にやけそうになる顔を抑えて、少し格好を付けて魔法に名前を付けて呼ぶ。ドイツ語の響きの良さに取り憑かれている僕のネーミングは基本的にドイツ語基準だ。

 

「杖、じゃなくて銃かこれ」

 

 出てきたのは杖、に似た白地に稲の様な金の装飾がされたライフル銃。これまたドイツのKar98kに似たやつだ。……もしかしてこれ、僕の中身を反映してるとかじゃないよね。歩く黒歴史みたいじゃんそれ。

 

 はぁ〜やだやだ、僕だって好きでこんな格好になったんじゃ……

 

「──貴様は何者だ」

 

 そうしていると、突然に僕以外の声がエントランスホールの方から響いて来た。例のお客さんだろう。

 

「あれ、もう来たの? あっちゃあ、せっかくエントランスホールの2階からお客さんを見下ろす強キャラムーブやりたかったのに」

「訳の分からない事を……魔法使いとは皆気狂いばかりなのか?」

 

 僕の目の前に立っていたのは、純白のドレスを纏うボーイッシュな短めの青髪をした女だった。背中には大きな弓を背負っている。

 

 今日は綺麗な人によく会う日だ、って言っても二人目だけど。それにただ綺麗なだけなら良かったけど……あれはパンピーの目じゃない。僕のよりもずっと深い蒼を湛えた目は据わっていた。罵倒のキレも凄まじい。僕より狂った奴らなら頭の中(掲示板)に一杯居るんだけどねえ。

 

「でも不法侵入者に言われたら堪んないね。居直り強盗もびっくりだ」

 

 まあ、僕を見て魔法使いと言ってたのとか色々怪しいし、何だったら9割方この人が今回の事件の犯人だろうって思ってるけど……まだ確たる証拠が無い以上、今の僕は不法侵入を咎める以外の事はしない方が良いだろう。

 

「ふん、貴様が何を言おうと勝手だが、一つ聞いておく」

「何? スリーサイズなら教えてあげるけど。パンツの柄はダメだよ」

「……魔法使いとは無駄口を挟まなければならない人種なのだな」

 

 どうやらお相手もこれ以上時間を使ってくれなさそうだ。リュウコちゃん、まだかなあ。

 

「これ以上の戯言は必要無い。貴様、金髪碧眼の女はどこに隠した」

「……うん?」

 

 と思えば目の前の女は毅然とした態度でそんな事を言う。

 

 えっ、それ僕だよね? 新手のボケ? そんな事を思いつつも、自分の髪を手繰り、よく見てみた。

 

 そこにあったのは、濡烏色のさらさらとした短めの髪。通りで頭が軽いと思った……って停電のせいで気付かなかったよ何だこれ。もしかして塗り替えるって身体的特徴まで変わるのこれ?!

 

 なるほど、だから、ね。客観的に見ればショートボブ黒髪だし歩けるし軍服みたいな格好してるし、今の僕を平井ノゾミって認識出来る人、居ないのか。とんだジャンル詐欺だ。

 

 でもこれ、上手く使えないかな。

 

「居場所を教えたら何かくれたりする? メアドとかさ」

「命は助けてやる」

「嘘付いたら?」

「無論殺す」

 

 はい詰み。真顔でそう言ってのける彼女を見て、決定的に話し合いがポシャったのを感じた。もう修正不可能だ。僕がそのお探しの人なんだから、バラしてもバラさなくてもロクな目にあわないだろうし。逃げ道無し、ノーかいいえか無理かで選べって事か、こんなアルゴリズム考えた世界のプログラマーはどこのどいつだよ。

 

 はあ、でもここに来て明確に命を脅かす宣言をして来たらもう躊躇っちゃダメだよね。痛いのは嫌だから先手は僕で! 

 

「じゃあ交渉決裂って事だね、それじゃ失敬」

 

 銃を両手に構えて引き金を引く。

 

 するとコンクリートに鞭打つ様な音と共に雷が銃口から疾る。異様な光景だけどこの姿になってからは何となく分かってた、いや()()()()()。威力は致死って程ではないけど当たれば凄く痛いヤツだ。例えるならテーザーガン。

 

 だけど、それが彼女に届く事はなかった。()に廊下に張られていたシャボン状の膜に雷が散らされてしまったから。

 

 魔法かなアレ? なら完全無詠唱って事だよね。なんてロマンの無い人なんだ。

 

「ふん、愚かな」

 

 膜の向こうに仁王立つ彼女は余裕そうな顔をしていた。……まだその身で受け止められて無傷、とかじゃないだけマシか。

 

「喰らえ」

 

 女が前に手を翳すと膜は弾け、弾けた膜はまるで割れた風船ガムみたいに廊下の天井、壁、床の四方に底の浅い水面となって張り付き広がっていく。まるで浜辺に打ち寄せる波の様に。

 

 でもお話してる時間でやっと足の感覚を思い出して来た。今の僕にはもう車椅子は必要ない。それに加え僕は嫌な予感がしていた。

 

 銃把を逆手に握り変え、杖の様に金色の銃床を波に向ける。

 

 頭の中には波を蹴散らす閃光の姿をイメージする。

 

 そしてそのイメージで今ある世界を()()()()()

 

「打ち砕け、『雷霆(ブリッツ)』ッ!」

 

 その姿は杖を構えるクラシックな魔法使いが如く。銃床の先からぐるりと一筆書きに円を描く様に黄色の魔法陣が浮き上がり、雷が放たれる。

 

 停電し暗闇に閉ざされた廊下を嘶く雷光が照らし出す。稲妻は空中で分かれ四方の壁を這い迫り来る波と互いを打ち消しあった。なるほど、魔法同士が真っ向からぶつかり合うと打ち消すんだ。

 

 これなら行けるかも……は負けフラグだ。即座に銃把を順手に握り直してアイン(1)ツヴァイ(2)ドライ(3)と引き金を引く。変身後に頭の中に勝手に入ってきた知識で知ってはいたけど、ボルトアクションは()()飾りらしい。ロマンがあるやらないのやら。

 

「力だけはある様だな」

 

 銃口から放たれた稲妻は水切りめいて廊下を跳ねながら彼女の元へ殺到する。

 

 しかし今度は防御が間に合わないと判断したのか、飛び退いて後方へと下がり、次は横っ飛びで僕の視界から消えた。エントランスホールへ戻って行ったのだろう。狭い廊下より、広い玄関口って事かな。

 

 僕は勿論追う。まだ彼女の力量を測りかねているけど、さっきみたいに屋敷ごと水で覆われたり沈まされたらたまったものじゃない。それにここには電源を切ったリッターも居る。

 

 最終防衛ラインは僕だ。その事実に気付いてしまうと足が竦みそうになる。あ〜もう、ダメだな。心の中で茶化そうとしても、まだ怖いや。ピリリと肌を刺す彼女の殺意を受けて、僕の中身のどっかが怯えてるんじゃないだろうか。

 

「おいおいしっかりしろよ僕。これでも前世は大人まで生きて来たんだろ?」

 

 思い出せ、僕は今リッターを自分の都合で危機に晒してるんだ。貫き通せない覚悟なんてただの我が儘なんだから。

 

 ──やれる、やれるさ。

 

 頬を叩く。なんとか自分を鼓舞し、意を決してエントランスホールに面する開けた2階廊下へ足を踏み入れる。

 

 するとそこには、壊れた一階の玄関口の前で仁王立つ女の姿があった。

 

 彼女の足元には、けして浅くはない水面が広がっていた。一階はもはや浸水しているのではなかろうか。

 

「他人の家水浸しにしちゃってまあ、悪い人だね」

「これから誰も居なくなる家だ、構う事もないだろう」

「気が早いって、『武装召喚(フォァラドゥンク)』」

 

 2丁目の銃を虚空に開いた魔法陣から呼び出し、空いていた片手に取る。ただ引き金を引くだけで撃てるのなら、2丁あれば二倍の火力だ。

 

「──沈め!」

 

 彼女がドレスを翻しながら手を振るうと、水面が盛り上がり、まるで鞭の様に伸びてこっち目掛けて薙ぎ払って来る。

 

 でも多分これは陽動、本命は──

 

「──窓か!」

 

 水の鞭をしゃがんで避ければエントランスホールに面した玄関口方面の窓から銀の雨粒が迫ってくる。

 

 両手に握る銃を回し、銀の雨粒を叩き落とし受け流す。変身する前の自分なら想像も出来ない凄技だけど、不思議と今の僕なら出来るって自信があった。

 

「多いなぁ、もう!」

 

 絶え間なく降り注ぐ銀の雨粒に足を止めて防御に回らざるを得ない。これが狙いか。視界の奥には、何やら水面から水を巻き上げ、巨大な水の塊を作っている彼女の姿。ならこっちはこっちでやらせて貰おう。

 

「『迅雷(べシュロイニグング)』ッ」

 

 両手両足を黄色の魔法陣がすり抜ける。新たな魔法、その効果は加速だ。任意の電気信号を()()四肢に発生させる事で動作のラグを限りなくゼロに出来る。見てから回避だって出来る。

 

 最低限の回避で避けられる物は避け、出来ない物は銃1()()で捌く。そしたら1丁空きが生まれるからこれで、撃つ! 

 

 雷撃は巨大な水玉に幾度も当たり、その巨体を削り取っていく。

 

 ──行けるかも、そう思った時だった。慢心は敗北の元だと言うのに。

 

「あ、れ?」

 

 がくり、と足から力が抜ける。

 

 見れば、太腿から血が噴き出していた。

 

 ……やらかした。車椅子生活が長かったせいで足元への注意が疎かになってた。めちゃくちゃ痛い、それ以上に不味い。

 

 そこから徐々に彼女の方へ形勢は傾いていく。体勢が崩されたせいで銃を回すのが難しくなって来た。両手に持った銃2丁で防御するスタイルに戻すしかない。ダメ元で魔法を放っても銀の雨は降り止まない。ジリジリと削られていく。

 

「終わりだ」

 

 女は、掲げた手を振り下ろした。まるで処刑人が斧を振り下ろす様に、一切の躊躇なく。その姿は、純白のドレスも相まって妙に様になっていた。ああ、こんな時に何考えてるんだか。

 

『──断絶せし海』

 

 これまで彼女は一切の詠唱を行っていない。その彼女が初めて詠唱をする。ロマンなんて考えはそこに無いだろう、あるとすればそれはある程度の()()()()()()が必要な高位の魔法に違いない。

 

『──剪定せし炎』

 

 エントランスホールにはち切れんばかりに膨らんでいた水玉が、一気に収縮し、暴力的な熱と光を放つ。核融合とか言わないソレ? 

 

「『雷霆(ブリッツ)』ッ!」

 

 何とか今も降り続ける銀の雨を防御しつつ、微かな隙の中魔法を打ち込む。……しかし、光は消えてくれない。それだけの()()の強さがあの光にはあった。純粋な力負けだ。

 

『──隠蔽せし地』

 

 次は彼女を狙ってみたが、またあの水の膜が現れ防がれてしまう。攻守共に完璧だ。こっちなんて防御に銃本体を使わなきゃいけないって言うのに。

 

『──忘却せし空』

 

 僕の中には、暗闇の海の様に見えない恐怖が渦を巻いていた。

 

 嗚呼、思い出してしまった。

 

 かつての、死の体験を。

 

 

 

『やがて全ては無に帰すだろう──災禍の嚆矢(ヴォルテックス・アロー)

 

 

 

 僕の心は、恐怖の渦に流されて行く。

 

「助けて、リッター」

 

 どの口が言うのか──僕の意識は、目も眩む光の中に呑み込まれた。

 

 

 

 ──✳︎──

 

 

 

 ……何も見えない、何も聞こえない。

 

 俺は未だに暗闇の中に閉じ込められていた。

 

 体感ではもう30分以上は経っている気がする。

 

 一刻一刻と焦りと不安が積もっていく。ただ今は、ノゾミの安否が不安で仕方なかった。

 

 上下左右も分からない中で彷徨い歩く、いや、歩けているのかすら分からない。ただ俺は何もせずにはいられなかった。

 

 こんな時は、無性に自分自身を回顧したくなってしまう。

 

 ──ノゾミ。

 

 思えば初めてあの子と会った時、俺の魂はまだ戦場から帰っていなかった。世話役を願い出たのも、これまで取りこぼして来た命への償いの様な物だった。それでもあの頃の俺には救いに思えた。

 

 ヘリの音を聞けば身体が反応するし、サイレン音を聞くとありもしない銃を探した。戦場が俺の居場所だったんじゃないか、そんな事を思う日もあった。

 

 そんな俺を見て車椅子に座る幼いノゾミは目も合わせず冷笑気味に独り言ちていた。振り返ればその頃のノゾミの言葉は皆、相手の居ない独り言だった筈だ。

 

『ずっと空を見てさ、何やってるんだか』

 

 そう、最初の頃、俺はあの子の話し相手にもなれていなかった。俺はそれでも良かったんだ。ただ、()()を守れれば良いと、本気でそう思っていた。

 

 でも、あの子にミルクをやったり、寝かしつけたり、一緒に遊んだりする度にその認識は変わっていった。

 

『……僕はか弱い美少女だからね、守ってくれる騎士が必要なんだよ。だから、君の名前はこれからリッターだ。よろしくね、リッター』

 

 悪戯な笑みであの子がそう言ってくれた時、俺は内心でどこまで喜んだか分からない。

 

 あの子が俺の居場所を作ってくれた。戦場に居た俺の魂を日常に連れ戻してくれた。

 

 そしてその言葉はノゾミを贖罪のための道具に見ていた俺の存在にも気付かさせてくれた。涙も出ないのに何かが込み上げていた。謝りたくても謝らない、それが俺のケジメだった。ロボットにしか見られていない俺が勝手に謝って1人満足するのは逃げだと思ったから。

 

 その償いって訳じゃない、でも何もせずにはいられない。あの子の為に出来る事があるのならなんだってやってやるって。俺は改めてノゾミの親になる覚悟を決めたんだ。

 

 俺は()()()を守りたい。ロボットでも兵士としてでもなく、ただ俺と言う個人の思いで。

 

 ──だから、だから何だって良い、神でも悪魔でも構わない。今、この時もノゾミは危機に晒されているかもしれない。誰か力を貸してくれ。

 

 

 

334:冷たくなった名無し

 な阪関無。

 

335:335

 ──掲示板? いつの間にここに? 

 

336:冷たくなった名無し

 >>335

 いつの間に、ってさっきからめちゃくちゃ熱く語ってたやん。

 

337:冷たくなった名無し

 >>336

 付け足すとこっちが恥ずかしくなるレヴェルでな。

 

338:335

 っ! ならば聞いてくれ、俺は娘を助けたい。誰か力を貸してくれないか!? 

 

339:冷たくなった名無し

 ……無理やろなあ。

 

340:冷たくなった名無し

 >>338

 殆ど別世界に居る上に石ころwithマンモスの骨みたいなのが殆どの過疎スレの民に頼む話ちゃうな。

 

341:335

 ……そうか、すまない。無理を言った。

 

342:冷たくなった名無し

 >>341

 でもな、こんな時にどうにかなる方法ならあるで。

 

343:335

 >>342

 本当か? 教えてくれ、頼む、俺はあの子を守りたいんだ。

 

344:冷たくなった名無し

 >>342

 これは不安につけ込む詐欺師の手口

 

345:冷たくなった名無し

 >>343

 念じればええんや。

 

346:335

 念じる? 

 

347:冷たくなった名無し

 >>345

 い つ も の

 

348:冷たくなった名無し

 >>345が石ころになった結果色々悟った結果がこれだよ! 

 

349:冷たくなった名無し

 末路みたいな言い方やめい。

 

 ま、ここの連中は殆どが文字通り手も足も出ない、と言うか無い連中やろ? でもワイらは確かにここに居る。単なる石ころでもどこの馬の骨とも知れん奴らやない。想いだって確かに魂と共に在る。

 

 なら念じられる筈や。何も出来へん時こそ想いの丈も強なって奇跡を起こせるんや。それが人間の魂ってヤツの力や。

 

 過疎スレやけどな、ワイらはそれで何度も"祭り"を起こしたんやで? 

 

350:冷たくなった名無し

 >>345

 どう見ても根性論だけど、実際にそうなってるのがなんか癪に触る。

 

351:冷たくなった名無し

 隕石に偶然火山の噴火ぶち当てて恐竜絶滅ルート回避したif世界大好きな地球ニキとかおるしな。

 

352:冷たくなった名無し

『空を自由に飛びてえなあ』とか言ってた>>349が渡鳥に掴まれて世界一周実況したのとか。

 

353:冷たくなった名無し

 >>351

 あの後の地球ニキ元気玉風に人類の意識結び付けて聖龍召喚に成功したとか言ってたよな。ifと言うか次元狂ってない? 

 

354:冷たくなった名無し

 ともかく、何も出来へんからって考えるのをやめたら身体あってもただの石ころ同然やで? 無機物転生者として落第点やろそんなん。意識一つで奇跡の一つや二つ起こしてみいや。

 

355:冷たくなった名無し

 一理ある? 

 

356:冷たくなった名無し

 >>354

 ノリで言ってるだけやろ

 

357:冷たくなった名無し

 でも分かんなくもない。

 

358:冷たくなった名無し

 >>357

 ら抜き警察だ。手を上げろ! 

 

359:冷たくなった名無し

 >>358

 コイツ絶対『ら』に転生した奴だろ。

 

360:335

 ……そうか。分かった、やってみよう。皆、助言感謝する。

 

361:冷たくなった名無し

 335って思ったより熱血? 後チョロい? 

 

362:冷たくなった名無し

 思ってても言わないお約束。

 

363:賢者の石ころ

 >>360

 精々頑張れや、小僧。傍観者にしかなれんけど、ワイはお前の望みが成就するのを応援しとるで。

 

 

 

 ………………

 

 …………

 

 ……

 

 

 

 ──念じる。

 

 俺には今、奇跡が必要だ。ノゾミを守れるだけの奇跡が。

 

 暗闇の中で、念じ続ける。

 

 涓滴(けんてき)岩を穿つ。どれほどの無理難題だろうと叶うまで努力すれば、いつかは実を結ぶんだ。

 

 俺はただのロボットじゃないだろう。

 

 俺はかつて人間だった魂だ。

 

 掲示板の彼らが言うには動く身体に転生出来たのは奇跡的な事らしい。

 

 もう奇跡が起きたからそれで良いなんて清貧な性格をしてるつもりはない。一度があるのなら次だって起きる筈だ、起こせる筈なんだ。

 

 だから、念じる。

 

「俺に、ノゾミを守れる力を──!」

 

 振り絞る様に吐き出した声に答えたのは──

 

 

 

System Reboot(システム再起動)

 

 

 

 ──他ならぬ機械()の声だった。

 

 

 

 ………………

 

 …………

 

 ……

 

 

 

「ここは」

 

 虚無な視界が開けた時、目の前にあったのは赤い絨毯の上で待ち構える様にこちらを向いていたノゾミの電動車椅子だった。

 

 しかし、その座にノゾミの姿はなく、代わりの様に今日会ったミドリと言う少女がくれた黒と赤の杖が置いてある。無意識の内に俺は車椅子を操っていたのか? 

 

 導かれる様にその杖に触れると、次の瞬間黒と赤が剥がれ落ち、中から光り輝く銀色の地肌と銅色の線が現れた。それはまるで雪原の枯れ木の様な意匠に見える。

 

 すると、頭の中に無数の情報が入ってきた。

 

 魔法、魔法使い、魔王、魔物、別世界……その多くは、まるでファンタジーにでも出てきそうな文言ばかりだ。だが、今までに起きた事象の辻褄を合わせる事は出来た。ノゾミは狙われていたのだ、魔王と言う悉く非現実的な存在に。

 

 そう思い至った時、廊下の奥から無数の窓が割れる音がした。

 

 ──誰かが戦っている。俺の直感はそう言っていた。

 

 すると俺はまるでそうするのが自然だと言う風に握った杖を突き出し、空中に銀色の円を描いていた。握り拳程の大きさのそれは、中に幾何学の紋様を映しながら広がり、やがては俺の身体がすっぽりと収まる程の紋様付きの円、まさに魔法陣の様に姿を変える。

 

「進むしか、ない」

 

 俺は廊下に浮かぶその円の中へ飛び込む様に走り出した。

 

 そしてその円を潜り抜けると──噴き出す暴風と共に俺の姿は変わっていた。

 

 廊下に備えられた鏡に見えた俺の姿は、白いロボットの姿ではなく、赤いサーコートをはためかせる銀色の西洋甲冑を着込んだ騎士の様な姿になっていた。赤い尻尾の様な飾りの付いた兜の様な頭部に開いた覗き穴(スリット)からは微かに青白い光が漏れている。これが辛うじてロボットが中に居る証明となっていた。

 

 そして先程まで握っていた銀色の杖は、2m程はあろうかと言う銀色のソードランス──大剣を十字に組み合わせた馬上槍──の様な姿に変わっていた。

 

「こんな事に気を取られている場合じゃない」

 

 俺はハッと気を取り直し、廊下を進む。

 

 そして曲がり角を抜けた時。その直線上に白と黄色の衣装に身を包み、膝を突き脚から血を流す短い黒髪の少女が見えた。

 

「……っ!」

 

()()()()()()()()()()が、俺は何故かあの少女を救わなければならないと確信していた。

 

「『颶風(シュツルム)』ッ」

 

 俺はランスの切先を背後に向け、咄嗟にそう唱える。

 

 するとランスの先から魔法陣が飛び出し、ジェットの様に激しい風を生む。その反動で俺は前に加速していく。その速さは正に颶風の如く。

 

 だが、向かう先は不気味な白い輝きに満ちていた。それでも俺は少女目掛けて迷わずに飛んでいく。

 

 ──間に合え、間に合え! 間に合え!!

 

 念じれば力になる。俺は片手を精一杯に伸ばした。

 

「──て。──ッター」

 

 

 

 ──目の眩む様な閃光と高まる爆音の中、俺は確かに少女の手を握った。

 

 

 

 ──✳︎──

 

 

 

「ふん。これで終わりか、呆気のないものだな」

 

 降り頻る雨の中、濡れた青い髪を掻き上げる女が1人、爆炎と黒煙に沈む天蓋を失った瓦礫の山──かつてエントランスホールだった場所に佇んでいた。

 

 彼女の名は、鞍馬(くらま)アオ。またの名をホワイト。

 

 水の魔法を使う魔王軍幹部の1人だ。

 

「しかし、ブラックに連れて来てと言われた金髪碧眼車椅子の少女とやらは結局見つからず、か。チッ、折角我ら姉妹の仲を深めるチャンスだと言うのに!」

 

 彼女は全て終わったと確信し、今後の予定を考えていた。既に頭の中には何よりも愛しい存在に埋め尽くされている。

 

「そう言えば生死については聞いていなかったな。『丁重に連れて来て』とは言っていたが……綺麗な死体にして連れて来いと言う意味で間違ってはいないだろう。そうなればブラックもきっと喜ぶ筈だ」

 

 取らぬ狸のなんとやら。彼女は頭の中で妹達から頼られ、愛される展望を描いていた。実際の所は全員に距離を取られているとも知らず。

 

 それは机上の空論と呼べるだろう。そして得てして計画性の無い青写真と言う物はたった一つのズレで瓦解する。

 

 例えば、高く積み上げられた積み木の様に──

 

 

 

「『颶風(シュツルム)』」……業火を吹き飛ばし、ただ1人の為の騎士が乱入を果たす。その銀色は燃え盛る炎を映し取り、まるでその身に憤怒そのものを宿している様だった。

 

 

 

 ──たった一つの存在が全てを崩す事もある、と言う事だ。




やっと変身。

誤字報告ありがたや。


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風の中に光る

今回も戦闘回だったので流れが切れない様になるはやで投稿しときます。
※今回は掲示板要素ありません。


 曇天の下、業火の中、1騎と1人は睨み合う。

 

「誰だ、貴様は」

()にも分からない」

 

 短く言葉を交わすと、機械仕掛けの騎士、リッターは大剣の様にも見えるランスを脇構えに握りそのまま直進する。

 

「無策で突撃など……」

 

 やや緩慢な動きで迫る騎士を青髪の女、ホワイトは鼻で笑い、銀の雨粒を降らせる。この銀の雨は女の魔法の一つだ。天蓋の無い今現在、これを回避するのはかなりの難度だろう。

 

「……『颶風(シュツルム)』」

 

 ──が、その後の展開は彼女が思い描く物とは全く異なっていた。

 

 リッターは跳ねた、否、()()()。地面に向いていたランスの切先から颶風を放ち、飛んだのだ。

 

 だがそれだけならばホワイトにもやり様はあった。空中に足場など無いのだから、むしろ撃ち落とすには好都合と銀の雨を向ける。

 

 しかし──

 

「『颶風(シュツルム)』」

 

 リッターは空中でランスの切先の向きを変えると青と緑の光の軌跡を残して真横へ飛んでいく。まるでUFOの様に不可解な軌道で。彼に向けられた銀の雨は虚しく宙を切る。

 

「なっ?!」

 

 対する彼女の表情には翳りが射した。更に驚くべきはここからだった。

 

 ホワイトは迷わずその移動する先へ銀の雨を降らせようとするが、リッターは切先の向きを空中で素早く変える。

 

「『颶風(シュツルム)』、『颶風(シュツルム)』、『颶風(シュツルム)』」

 

 その動きはまるで蜻蛉がホバリングしながら平行移動する様に。サーコートに風を孕ませ、自在に空を泳ぐリッターの姿がそこにはあった。

 

颶風(シュツルム)』はただ風を起こす技でしかなく、それはノゾミの『雷霆(ブリッツ)』と立場が類似した魔法である。しかしリッターはこれを外付けのジェットの様に扱っている。

 

 が、それを人がやろうとすれば間違いなく地面に激突するか壁のシミにでもなるのが関の山だろう。リッターの各部センサーによる空間把握と高速の情報処理能力が成せる技だ。

 

「ちょこざいな……ッ!」

 

 絶えず魔法を使用し、彼女を中心に周囲を飛び回るリッター。

 

 痺れを切らし、周囲の雨を寄り集め大技を繰り出そうとするホワイト。

 

 回避ばかりならば、避けられない物を出せば良い。そう考えたホワイトだったが、そのせいで僅かに銀の雨の弾幕が薄まった。

 

 隙と呼ぶには残酷な微かな緩み。しかし機械とは常にして理論上可能を可能にして来た存在なのだから、その前にはあまりにも大きな失点だった。

 

「ッ?!」

 

 ──リッターはその銀の雨を掻い潜り、ホワイトの真っ向へ躍り出る。

 

 勢いを付けるための魔法の行使はたった一度。その直進運動の中でリッターは空中で何度も姿勢を変え、まるでスパイ映画のワンシーンの如く射線の群れをすり抜けたのだ。しかしそれは関節の動きといいスピードといい常人の動きとは程遠く、どこか生理的嫌悪を呼び起こす動きだった。

 

「気色悪いぞ貴様ッ!」

 

 魔王軍の幹部と言えどもこれには苦虫を噛み潰した様な表情をする。

 

 想定外の動きを見せられたホワイトだったが、しかし頭の中は冷静を保っていた。このままではリッターの奇襲も魔法によって生み出される水の膜に防がれてしまうだろう。

 

 退くか攻めるか、コンマ数秒以下の世界に潜り込んだ彼は迷わず答えを選び取る。

 

「『颶風(シュツルム)』」

 

 放つのは先程から多用する風の魔法。リッターは切先を背後に向けている。彼は更に加速し攻撃をねじ込むつもりだろうか。

 

 またもや──否。彼は詠唱すると同時にランスから()()()()()

 

 リッターと言う特大のウェイトを失ったランスは、戦闘機から切り離されたロケットの如くリッター自身の加速も乗せ、先程とは比べ物にならない速度で飛翔する。

 

 ──そこから放たれるのは、まさに弾丸の様な一撃だ。

 

「かはッ……!?」

 

 防御は間に合わない。ランスの柄頭は過たず彼女の腹を打ち抜いていた。

胃の中から全ての空気が吐き出されそうになる彼女は玄関口だった物を砕いてそのまま遥か真後ろ──雑木林の方へ吹き飛んで行く。ランスは反動でリッターの方に返って来た。

 

「……」

 

 訪れる僅かな静寂は雨音と風の音が掻き消していく。

 

 リッターは半壊した屋敷を見ながら考える。彼はある会話の内容を思い出す。

 

 

 

 ──爆発に巻き込まれる直前の黒い髪の少女を掻っ攫う様に助けた直後の事。リッターと黒髪の少女は会話を交わしていた。

 

「助けてくれてありがとうございます。えっと、魔法使い……ですよね?」

「……まあ、そうなるな」

「赤い髪の魔法使いと知り合いだったり?」

「赤い、髪……? レッド……すまない、知り合いではない筈だ。いや、それよりも……()が人伝に聞いた話だと、ここには車椅子の少女が居た筈だ。君は見なかったか?」

「…………あ、はい! 見ましたはい! 今ぼ……()が安全な所に避難させてますから! 大丈夫です!」

「そうか、良かった」

「あの、その少女さんに聞いた話なんですけど、屋敷にヒト型ロボットが居るそうで、そのロボットを置いて来てしまったのを不安に思っていて──」

「……それなら問題は無い。()()()()()()()()俺が安全な場所に運んでいる、事が終わればそちらに送ろう」

「そっかあ……良かった」

「君はその少女と安全な場所に隠れていてくれ。俺が終わらせてくる」

「はい、分かりました」

 

 ──そうして会話を終え、リッターはホワイトの前に飛び出したのだ。

 

 

 

 リッターは後ろ髪を引かれる様な思いに晒されながらも決断する。

 

(彼女達の安全の確保にはやはり……)

 

 リッターは無言でホワイトが吹き飛んで行った方向へ歩みを進める。構えは解かず、一歩一歩と。

 

 ……

 

 …………

 

 ………………

 

 屋敷の敷地の外、ホワイトを追い雑木林に囲まれた林道に足を踏み入れたリッターは周囲を確認する。雨の雑木林を徘徊する姿は青く輝くスリットも相まり、まるで鎧姿の幽鬼にも見えた。

 

 周りには木々がそう遠くない感覚で並んでいる。視界はそれ程良いとは言えない環境だ。

 

「折れた枝……向こうか」

 

 しかし、ホワイトを捜索するのはリッターにとってそう難しい事ではなかった。頭の中に一定のイメージ、つまりは条件を設定すればその条件に合致する対象を自動的に捕捉できる。今回は折れた枝、足跡、土や木に着いた擦過痕、と言った風に。

 

 ノゾミがコレを知ったのならば「もうプレデターじゃん」と言っていた事だろう。

 

 実際、今の趨勢はそれを物語っていた。

 

 屋敷を吹き飛ばしたホワイトが油断せず、もう一度大規模な魔法の準備をしていれば結果も変わったかもしれないが、それこそもはや机上の空論でしかない。

 

 そして驕った者の末路と言えばいつの世も変わらない。

 

「死んではいない、か」

 

 一際大きな木の根本で干された布団の様な体勢をしてホワイトは気を失っていた。

 

「バイタルサインは──各値エラー? まさか」

 

 しかし、彼女に触れて容体を確認した所、生存を表すあらゆる値がエラーを示していた。それはつまり、コレが生命体でない事を意味している。

 

 ならば何か──ブービートラップだ。

 

「『颶風(シュツルム)』!」

 

 嫌な予感を覚えたリッターは咄嗟に魔法を使って退避しようとする。

 

 だが──遅かった。

 

 先程まで彼女の姿を取っていた物が水になり、そうして生まれた水の塊は一気に収縮し破滅的な光へ変貌を遂げる。

 

 更に、リッターが離れる前に半球状の水の膜がリッターと光を閉じ込める。

 

「『やがて全ては無に帰すだろう──災禍の嚆矢(ヴォルテックス・アロー)』」

 

 そして、木の上を伝い現れたホワイトがリッターを見下ろし詠唱を終える。

 

「これで──幕引きだ」

「────!」

 

 

 

 そして──夜の森に眩い閃光が華開いた。

 

 

 

 直前、リッターは何かを詠唱していたが、間に合わなかったのだろう。

 

 その場には焼け野原があるだけだ。もはやチリ一つ残っていない。

 

「……お姉ちゃんのこんな醜態、妹達には見せられんな」

 

 太い枝に腰掛けたホワイトは、冷や汗を流しながら一息つく……が、ここで彼女は違和感に気付いた。

 

 ──高々この程度の熱で跡形もなくあの鎧が焼失するのか、と。

 

 それに思い至る瞬間、周囲を取り囲む環境音の中に異質な音色が混じって聞こえて来た。

 

 ギュィィィン! ──モーター音に似た、甲高く疾走感のある音。それこそ、()の様な。

 

「──()()()!?」

 

 音の真下にある地面が、突如隆起する。

 

「『旋風(ヴィルベルヴィント)』、『颶風(シュツルム)』!」

 

 そして生まれた小山は、緑色の光を発して弾け飛んだ。

 

 ここに騎士──依然健在。やや煤を被ったリッターがその中から飛び出す。スリットから溢れる青光がまるで流星の様な軌跡を描き空へ昇って行く。

 

「魔法の()()()()か……!」

 

 ホワイトはいよいよ余裕を見せる事も出来なくなっていた。その原因は、リッターが握るランスの切先と柄頭にそれぞれ灯った魔法陣の光だ。

 

 ──リッターが突き出すランスの切先では渦を巻くつむじ風が土塊を掻き回している。そして柄頭からは、颶風を噴き出している。

 

 ──イメージを元に殆どの魔法は発動されるが、そのイメージを複数同時に、かつ鮮明に描くとなると途端に難度は上がる。左手と右手で別の事をする様に、脳を二つに分ける様な所業だ。しかしリッターはロボットと言うその特殊な身体故にマルチタスクを行うのに不自由しない。制御端末が複数あればその分だけイメージを描くと言う並行処理が可能になる。

 

 ──彼は爆発が起きる直前、変身直後に記憶エリアの中に勝手に増やされた『mahou.txt』と言うふざけた名前のファイルに刻まれた魔法を新たに行使した。

 

 ──名付けて『旋風(ヴィルベルヴィント)』、つむじ風を生み出す魔法だ。それを地面を掘るドリルとして使い、推進力を得る為に『颶風(シュツルム)』を並行で行使し、地中を掘り進み半球状の水の膜の()を掘り抜いたのだ。

 

「ちぃっ!」

 

 ホワイトは背中に背負った弓に手を掛けようとするが、それよりもリッターが彼女が立つ木の枝に到達する方が速い。

 

 彼女は地面の水溜りを鞭の様な形に仕立て、リッターの脚を止めようとする。だが追いつかない。

 

 ならばと同時に用意した銀の雨を降らせるが、今のリッターには回転運動により全ての障害を蹴散らす風のドリルがある。真っ向から迫る銀の雨は弾かれてしまった。

 

「この世界の魔法使いは化け物か……ッ!」

 

 もはやホワイトに取れる行動は無い。……とはリッターは思っていなかった。

 

 彼の中にある魂が、目の前の相手が諦めた目をしていないと気付いていたからだ。

 

 

 

「これで……」──だからこそ、彼はここで終わらせようとした。

 

 

 

「……撤退せざるを得ないか」──だからこそ、彼女はここで終わらせなかった。

 

 

 

 リッターの間合いに迫る次の瞬間、彼女は水になって弾け飛んだ。

 

「何!?」

 

 リッターの手は虚しく空を切り、そのまま着地する。

 

 暫く周囲を見渡すが動きは……ない。

 

 ランスの切先は向ける先を失い、地面を突いた。

 

「……やられた」

 

 ──降り止まぬ雨の中、水と消えた彼女の痕跡はもはやどこにも無かった。

 

 

 

 ──✳︎──

 

 

 

 ようやく嵐も明け始めた朝方、人の居ない住宅街を歩く1人の姿があった。

 

「く……まさかここまで追い込まれるとは」

 

 リッターから辛くも逃げ延びたホワイトの姿だ。だが、その姿は変わり果てていた。

 

 180cmは超えていた背丈は、100cm程になり、低かった声はより高く、怜悧な顔付きには幼さが過分に添加され、すっかり柔和な顔になっていた。どう言う訳か、背中に背負った弓と純白のドレスはその身のサイズに合わせて小さくなっている。

 

 彼女の身に何が起きたのか。彼女はその身を水に変えたは良いものの、その力と身体の殆どを失ってしまったのだ。

 

 カーブミラーに映る自分の姿を見て、彼女はほぞを噛む。

 

「……力を取り戻すまで暫く時間が必要か」

 

 彼女は先の戦いを振り返る。

 

 軍服の様な格好をした黒髪の少女と、恐るべき力を有した銀の騎士。

 

「小娘はまだ良い。しかしアレは何だ。獣ならまだ良い、だがアレは……兵器そのものではないか。死を恐れぬ騎士、魔法使いとやらはあの様に恐ろしい存在を擁していたのか」

 

 路肩の塀を小さな手で叩き苛立ちをぶつける。それは単に敗走した事に対する事だけではない。

 

「しかも……まさか我らの前に立ちはだかる存在が、他ならぬ騎士とはな」

 

 彼女達姉妹は、魔王軍では死の騎士と呼ばれる特殊な幹部級の存在であった。

 

 今回もまた、魔王から命を受け先兵として姉妹でこの世界に降り立ち、人間社会に溶け込みながら様々な調査を行っていた。しかし、彼女達にとって、初めてとなる未来世界での暮らしは途方もなく困難なものだった。

 

 これまで過去、現在と暮らして来た彼女達は基本的に肉体労働を食い扶持に生きていた。だがこの世界では単純な肉体労働のほぼ全てが機械に置き換わり、働き口は殆ど無い状態にあった。

 働ける年齢にあった年長の姉妹らは見目の美しさで接客業のアルバイトに就き、必死に働いた。少ない金で土地を買ってトタン張りの家も建てた。

 魔法を使えば楽も出来ただろうが、この世界は昼夜を問わずロボットなどのパトロールや潜伏する魔法使いの目があり、気付かれない為にはとにかく普通に暮らす必要があった。彼女達は臥薪嘗胆の日々を過ごした。

 

 そのおかげで調査も遅々として進まず、幾ら働いても普段のズレた言動から妹達には距離を取られ、うだつの上がらない日々が続く中、突如として降りて来た魔王からの陽動命令とそれに託けた妹からのお願いと言う好感度アップ&鬱憤を晴らすチャンスにホワイトは沸いた。「この瞬間を待っていたんだ」と言わんばかりに。

 

「折角ペイルにも協力してもらって嵐を起こしたと言うのに……」

 

 その結果は、この幼女姿(ザマ)だ。

 

 妹の願いを叶える事もなくおめおめと敗走した事、アルバイトに行けなくなってしまった事、そして騎士の二文字を背負う者が他の騎士に負けたと言う事。彼女にとってこの敗北は単純な敗北とは比べ物にならない重さだった。

 

「ぐっ……覚えていろ、銀色の騎士!」

 

 恨み骨髄、今ここに因縁は生まれた。

 

 彼女は声高に叫ぶ、いつか来る再戦の時に備えて。

 

 それまでの食い扶持は──未定だ。




Q、リッターの戦い方どっかで見た事ある気がする。
A、多分色んな奴が混じってます。ジャンル問わず。

誤字報告ありがたや。


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