日本代表に選ばれる予定だったのに、なんで俺は小学生なんだ… (とうふ)
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1話 天馬くん入団だってさ
なんか続けて欲しい人とかいたら続くかも。設定とかも全然だから、続くなら深く考えてくかなぁ。
『イナズマイレブン』
それは超次元サッカーの物語であり、熱く少年心をくすぐる最高の作品だ。アニメの第1シリーズが始まったのは2008年とかなり前にもかかわらず未だファンの熱は冷めない。
で、俺は正直に言ってもろイナズマイレブン世代であって。豪炎寺きゅんとかまじ大好きだし。吹雪きゅんとかまじ大好きだし。ヒロトきゅんとかまじ大好きだし。あ、円堂きゅんは殿堂入り。
そして何より、ストーリーで一番心を打たれたのは初代イナズマイレブンだとはいうまでもないが、キャラクターなどを総合して一番好きなのは『イナズマイレブンGo』からなのだ。
太陽きゅんはめっちゃ大好きだし、霧野きゅんとか、神童きゅんとかはもう尊い。何より、黄菜子ちゃんは天使!!!!異論は認めない!
これで俺の愛が伝わっただろうか。
語り足りないがここは自制する。言いたいのはイナズマイレブンが最高ということではない。なぜならイナズマイレブンが最高なのは全人類の共通認識だからだ。ネット民、俺は知ってるぞ。五条きゅんをおもちゃにしたのも愛故にだろ?三国きゅんや信介きゅんだってネット民は愛しているんだ。
おっと、また話が逸れてしまった。俺が言いたいのは俺が転生者だってことだ。
高校生にもなって3DSをしながら歩いてたら、あら不思議。気づいたら赤ちゃんになっていた。赤ちゃんだぜ?喋れないんだ。すぐ眠たくなるし尿意には逆らえないしで大変だった。
でもまぁ両親には愛されて幸せ。ただ思うところがあれば、なぜ俺は生まれ変わったのかということだ。ここはどう見ても日本で現代。親は日本語で喋ってるし、テレビやラジオだって日本語だ。
でも俺はあるとき気がついた。あ、ここイナズマイレブンの世界やん。
親が買ってきたであろう雑誌には『円堂守、海外のプロリーグからスカウトか⁉︎』みたいな感じで円堂くんについての話が取り上げられていた。同姓同名の別人じゃねーのって思うじゃん?まさかの写真付きよ。まんま円堂くん。
でも俺、頭弱いから円堂くんとかがいつ海外のプロリーグで活躍してたとか知らないし、いつから天馬くん達の話が始まるとか分からないわけ。
でもさぁ、転生してるんだからそんなの気にしなくても天馬くんとかと関わり持てるでしょ!なんとかなるでしょ!って思って、新生イナズマジャパンに選ばれるくらいまではサッカー上手になろうという計画を立てました。
まぁ、正直そこそこ才能あったよね。サッカーは親も好きでやりたいって言ったらすぐやらせてくれたよ。
稲妻町に住んでたし、稲妻KFCの入団試験やって入ってめちゃめちゃ上達して、まこちゃんや半田くんの教えもあってオリジナルの技もできるようになったよ。
言ってしまえば、不安定だけど化身も出せるよ。
そこで思いました。あ、これ余裕で新生イナズマジャパンに選ばれるわ。早く雷門中に入りたいなぁ〜って思ったよ。
はい、ざんねーん。俺見ちゃいました。
『全中学校一を決めるホーリーロード開催‼︎』
ねぇ知ってる?俺まだ小学生だよ?小学四年生だよ?なにホーリーロード編始まっちゃってるの?ふざけんなよオラ。間に合わないじゃん!!
過去回想終了。これが現段階だよ。俺は終わったんだよ。
「雷門中に行くか?」
「え?」
俺が部屋で地団駄を踏んでいるのが聞こえたのだろうか。父さんが部屋をノックしてから入るとそんなことを言ってきた。
マイファザーマイファーザーと魔王の歌詞の様に俺の頭の中で流れる。本当かいマイファーザー。行かせてもらえるのかい?
「本当!?行きたい!!」
「じゃあ進級して、落ち着いてから行こうか」
そんときゃ小学5年生。もしかしたら新生イナズマジャパンに選ばれるかもしれないな。いや、あれはホーリーロードで活躍した選手を中心に集めてるんだっけ?まぁそんなことはどうでもいいか。
「楽しみにしてるっ!」
「そうだね」
俺の父さんは神か何かかな?うん、素晴らしい。嬉しいねぇ。
「響木さん、お久しぶりです」
「言っても半年ほど前に会いませんでしたっけ?」
「いえ、二ヶ月前です」
父さんと雷門サッカー部の久遠監督が挨拶をしている。
どうにも2人は知り合いらしい。ちなみに俺はレジェンドイナズマジャパンのメンバーや旧雷門中のメンバーと何度か会ったことがある。みんなが言うには、おじいちゃんにお世話になっているらしい。その時はサインをもらったよ。幸せだったなぁ。また会いたい。
「今年の入部希望者は例年に比べて少ないですね」
「そうですね」
俺はグラウンドのベンチに座らせてもらった。なるほど、今日は入団テストの様だね。天馬くん達が並んでいる。
神童くん達も居て俺のことを見ているが特に気にしてなさそうだ。多分父さんと会ったことがあるのかな?
「
「あ、春奈ちゃん。久しぶり!」
俺の座ってたベンチの横に腰を下ろした春菜ちゃんこと音無さんに声をかけられた。もちろん彼女は交流のある人物の1人で俺のことを覚えてくれていた様だ。
「音無先生、知り合いですか?」
「えぇ、彼は響木成結くん。かつて雷門中で日本一になった時に監督を務めていてくれた人のお孫さんよ。あそこにいる男の人は何度か見たことがあるでしょ?」
「なるほど!すごいおじいちゃんなんだね」
「————あっ……あ、あ、あぁ。ぼ、僕のおじいちゃん…す、すごいでしょ……」
めちゃめちゃ動揺してしまった。
えぇ?知らないんだけど。おじいちゃん響木監督だったの?確かに雷雷軒にはよう行くけど、えぇ?嘘ーん。俺にベタ甘なおじいちゃんが、あの威厳の溢れる響木監督ぅ?
確かにおじいちゃんがなんで円堂くん達と関わりあるのかなって思ってたけど、嘘ーん。だって響木って苗字、そこまで珍しくないよねぇ?えぇ?
「あ……にゅ、入団テスト始まるね!」
「天馬たち、合格するといいな」
そして始まる入団試験。実践形式で行われて雷門メンバーに新入生ら5人がどんな方法でも攻め込むと言うもの。
「どこ蹴ってんだよ」
「お前のトラップが下手なんだよ!」
「ほらっ」
「てめぇ、強さ考えろ!」
見てたら、まぁ下手くそだった。まだ俺の小2くらいの方が上手いだろってレベル。アニメでも観てたときはあまりわからなかったが、実際に見てみると団結力が全くない。相手のことを考えてないプレーだから上手く連携ができていない。
「僕の方が上手いかなぁ」
「へぇ、お前サッカーできるのか!」
俺が独り言を呟くと水鳥さんが答えてくれた。ここで俺めちゃめちゃ上手いですよ、と答えるのは簡単だが果たしてかっこいいのだろうか。
やはり、原作キャラにはかっこいいと思われたい。
ナルシストの様になるのはごめんだ。ここは少し謙遜をして応えることにしよう。
「サッカーは楽しいから」
笑いながら答えると春菜ちゃんが頭を撫でてくれた、優しい。
そんで気づいたらフィールドでは神童くん無双が始まってた。なんでこうなったん。
えっとー、「本当に入団できると思っているのか」だったっけ?新入生5人をボコボコ中。てか、めちゃめちゃ神童くんサッカー上手。かっけぇよ。
————かれこれ一時間。
なんか新入生で参加してるのはほぼ天馬くんと信介くんだけになって、手を抜かない雷門メンバーとバチバチにやり合ってる。
天馬くん達は何度も転んで、その度に立ち上がって。その諦めない心に神童くんは心がだんだんと動かされている様だった。
「そこまで、入団テストを終了する」
全員が整列して久遠監督の言葉を待つ。俺が正直に言えば現段階の実力的に全員不合格。天馬くんや信介くんは頑張っていたけど今の実力では2軍にですら足手まといなレベル。
「合格者は、松風天馬。西園信介。以上だ」
2人はお互いほっぺをつねり合い夢じゃないかを確認している様だった。
「おめでとう!天馬っ!信介!」
「「うんっ!!」」
うん、めでたいめでたい。いやぁー面白かったねえ。思ってたより天馬くんたちはサッカーが下手くそだったけど、ここからの成長が楽しみだなぁ。
「成結。帰ろうか」
「うん!」
そして、家に帰る。これからも定期的に原作を見ていきたいから父さんにまたお願いをしよう。俺は現実でアニメを観ているんだ。
それに、俺は小学生で原作には関わりようがないから原作崩壊もない。初めて原作に参加できないのを知った時はショックだったけどポジティブに捉えれば、超リアルなアニメを目の前で見れるようなものだ。
「これが今の雷門サッカー部だよ。どうだった?」
「ここから何か変わるだろうね!」
「それは面白い意見だねー」
原作に参加できない。この時の俺は自分で立てたフラグは全く気がついていなかった。
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2話 vs栄都学園①
とりあえず、目標10話で頑張ります!
家でゴロゴロしてる時。そいやー栄都学園と練習試合があったようなと思い出した俺。
やっぱアニメのストーリーは一つ一つ見てかないとね。大事じゃん!
「父さん!俺、雷門の試合見てみたい」
父さんは雷門にツテがあるからきっと見えるだろう。だって俺のおじいちゃん響木監督だよ?あの響木監督。やべぇよ。サイン貰わないと。
「うーん。別にいいと思うけど、成結はガッカリしちゃうかもなぁ」
確かにフィフスセクターによって勝敗が決まってるなら、あんな強い雷門がガリ勉に負けるのは許さないよね。あ、でも栄都の生徒が嫌いなわけじゃないよ?本当本当。俺あのキャプテンとかゲームでゲットしてたもん。
「あれだよ父さん。落とされてから上げられたら、喜びはもっと大きくなるでしょ?」
「不思議なことを言うねー」
わざと負けるような雷門を見た後にこそ、だんだん変わっていく雷門がよりかっこ良く見えるものだ。飴と鞭も同じだよね。
「じゃあ父さんが許可を取っておくよ。早ければ今週の日曜日かな」
「ありがとう!父さん!」
イナズマキャラバンに乗って天馬達と一緒に移動したかったが、俺はあくまでも一般人。そこは断念して、車で栄都学園までやってきた。
「悪い、成結。父さん今日用事があるんだ。久遠さんには伝えてあるから、久遠さんや他の人の言うことはちゃんと聞くんだよ」
「うん、ありがとう!」
車で送ってくれた父さんはすぐどこかへ向かった。少し心細いが知り合いもいるし大丈夫だろう。
すぐ近くに止まっていたイナズマキャラバンのところへ行く。
「成結くん、こっちだ」
「あ、はいっ!」
久遠さんに手招きされてそっちに行く。視線が一気に集まって意外と怖い。もうっ、成結くんは集まる視線は苦手なのっ!
「今日は経験として成結くんが見ることになった。みんな一度は面識があるな」
「響木成結です。ファンです!後で握手とサインください」
切実にお願いをする。みんなの顔を見るとあら不思議。表情から何を考えているか透けているかのようにわかるよ。
あれだろあれ。「なんで、負け試合なのに……」とか「こいつにはなんの権限があるんだよ」とか。それでも口に出さないのはきっと父さんのおかげかな?
「成結くん、よろしくね!俺は松風天馬!」
「僕は西園信介!よろしく」
「よろしくっ!!」
ちなみに、俺はみんなにタメ口だ。なぜなら俺はみんなより長生きだから。前世で17歳まで生きて今年で11歳。俺は28年生きてるだろ?じゃあ俺が人生の先輩だ。もちろん敬語を使う人もいるけどね。
もうすぐ試合が始まる。栄都との試合結果は何対何で負けるんだっけ。覚えてないけど、確かなことは神童くんが最後に一点を決めてしまうこと。それは確か不本意で代償として久遠さんが監督を辞めてしまう。
「成結くん、少し聞いて欲しい」
「どうしたんですか?」
ベンチに座る俺の横に腰を下ろす久遠さんが俺に声をかけた。なんせ俺はイレギュラーな存在だから、何を言われるかわからない。
「今の少年サッカー界はフィフスセクターに勝敗までもが支配されている。まだ小学生の君には知り得ないことだが、事実だ」
「なるほど」
いや、突然どうしたんですかい。小学生の俺に教えちゃっていいんですかい。
「君にはこのチームを導いて欲しい」
「はい、—————はいっ!?」
俺が目を大きく見開いて久遠さんの方を見るが目を合わせてくれない。いやいや、どういうことですか。ほんと、まじで。俺、小学生だよ?なんも権限ないよ?ナイヨ、ナイヨ。ホントドウシヨ。
「この試合、よく見るんだ」
「は、はいぃ」
いつの間にか試合が始まっている。いやぁ、確かアニメで栄都がフィフスの指示のおかげで勝ててるのに調子に乗っててうざいのは覚えてるよ。あれはちょっとなぁ。雷門の気持ちになれて、すごい共感して見てた記憶がある。
「《栄都学園早くも先制点!!!》」
盛り上がる観客席。まぁ、栄都学園で試合が行われてるし納得だけどね。
「剣城くんはこの試合見てどう思う?」
「あぁ?なんだお前」
ベンチの屋根の右手前の柱、いや説明わかりにくいな。まぁアレね。アレにもたれかかってる剣城くんに話しかけた。いや、是非とも仲良くさせていただきたいなと思うんですよね。
「あ、後でサインもらってもいい?色紙は持ってきてないから……サッカーボールに書く?それともカバンがいい?」
「俺に聞くなよ。俺なんかのサインはなんの価値もねぇぞ」
まさか、剣城くんは自分の価値を知らないなんて。こんなにもかっこいいのに。あれかな、まだ知名度はないとか?だってフィフスセクターから送られてきたんでしょ?まだ知名度はないよねぇ。
「じゃあ、やっぱり俺のほっぺに書いてよ。僕のほっぺはもちもちだから書きづらいかもしれないけど、我慢してね」
「ほっぺだと消えるだろ」
「え!?もしかして剣城くんは自分のサインは大切にしてて欲しい系だった!?いや、まぁ当然だよね。そりゃあ剣城くん強いし、いずれは爆発的な人気になるよ。でも、自分からそこまでアピールされても……さっきは自分でサインに価値はないって言ってたのにい」
「ちげぇ!なんで俺が!お前がサイン欲しそうにしてたから……消えるのはやだかなって……チッ//」
「えっ!剣城くん優しい!僕のことを思ってのことだったんだね!いや、でもやっぱりボールとかカバンってもっとプロとかさ……。剣城くんまだ無名でしょ?ね?だから僕のほっぺで我慢しよ」
「お前がサイン欲しがってただろ!」
「そうだっけ?剣城くんがサイン書きたそうにしてたからじゃないの?」
「ちげぇ!」
いいことがわかった。剣城くんは弄り甲斐がある。だって剣城くん素直なんだもん!元々優しい子だし。お兄ちゃんの手術代のためにフィフスセクターに入ったんだよね。いやぁ泣ける。
「《前半終了のホイッスル!2-0で栄都学園のリードで前半終了!》」
気づいたら試合が終わっていた。2-0ってことは、今回の勝敗指示は3-0か。あのガリ勉チームに強豪雷門が3-0で負けるとか普通にあり得ないでしょ。フィフスセクターは頭がちょっと残念なのかな?
「成結くん。これに着替えてくるんだ」
「いや、え?これって。いいんですか?」
「いい」
みんながドリンクで水分補給をしてる最中に久遠さんが紙袋を渡してきた。中には明らかに俺が着ちゃダメな服が入ってて。いやぁ、これはぁ。
—————ま、着替えますけど。全然着ますけど。
着替えてきたらなんか空気が気まずかった。あれだ。神童くんが「俺たちだって好きなサッカーしたいもん!」って言うやつ。
「神童!」
スタスタ歩いて行く神童を心配するように霧野くんが声をかける。
「何があったの?」
確認のためにベンチに座って春菜ちゃんに聞いてみる。原作ではここでフィフスセクターの勝敗指示について天馬が知るんだよね。うろ覚えだけど。
「大丈夫よ」
俺の頭をポンポンと叩いて春菜ちゃんは笑った。
あ、わかった。多分「彼はまだ小学生。フィフスセクターについてはまだ知らなくていいわ」的なことを思ってるんでしょ。俺、久遠さんに聞いたんだけどお!?さっき教えられましたよ!?
「それにしても、それ〝雷門のユニフォーム〟よね?どうして成結くんが?」
「あぁ、なんか。久遠さんが着替えてって」
「へぇ、そうなの?」
そう、久遠さんに渡された服は雷門のファーストユニフォームで背番号は77番。多分俺の名前が
いや、ユニフォームで俺が言いたいのはそこじゃない!77が俺。じゃあ78は?はい、黄名子ちゃんでーす!はい並んでるー。最高。
「ねえ剣城くん?どうこれ、似合ってる?」
「似合ってるぞ」
件のアレにもたれかかってる剣城くんにユニフォーム姿を見せると軽く頭を叩いてから似合ってると言ってくれた。ふぅ〜、優しいねぇ!
やっぱりほっぺに書いてある剣城くんのサインがいい効果をもたらしてるのかもしれない。まあ、しっかり考察してくなら俺が小学生でまだ管理サッカーの対象になっていない事かな。
俺は落ち込んでる天馬くんの様子を見るために葵ちゃんの近くに座った。落ち込んでる天馬くんは俺の存在に気がついていないようだったが信介くんは気づいてくれた。
「お前、そのユニフォーム似合ってるぞ!」
「成結くんもユニフォームをもらったの?」
「かわいい」
と、俺のユニフォーム姿はマネージャー3人に大好評。茜ちゃんがカメラで写真を撮ってくれるので俺はその度にポージング。ちなみに信介くんはちょっとびっくりしてる。ほらほら、俺に身長が負けているからって落ち込むな。
こうして、天馬くんは放心状態のまま後半に突入した。
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3話 vs栄都学園②
今回の話だけど、無理あるかもしれない。怒らず読んでいただきてぇっす。
「《後半開始のホイッスル!雷門は逆転することができるのか!》」
前半が始まるが、天馬くんは動かなかった。ただ、フィールドで立っているだけ。心ここに在らず。そんな言葉がぴったりだった。
「天馬くん!楽しくサッカーだよ!」
「!?」
俺は大きな声で天馬くんを応援する。そのセリフはきっと天馬くんからしたら気持ちを思い出させるものになり、信介くんを省く雷門メンバーからしたら神経を逆撫でするような言葉だろう。
「なんで楽しそうにプレーしないの!楽しく楽しく!」
「まだ逆転できるよー!」
「こんなチームに負けんのかー?」
そして、とことん煽っていく。そしてブチギレる雷門メンバー。うぉ怖い怖い。
でも知らねー、だって俺はフィフスセクターの勝敗指示なんて知らない小学生なんだもーん。どうしてみんな怒ってるんだろぉ?
フィフスセクターのこと、久遠さんが教えてたでしょって?あんなのは空耳だよ。
「あ、あのね、成結くん。実は今の少年サッカーは……」
「しっー、内緒内緒。オレ、ゼンゼンシラナイ」
春奈ちゃんに教えられそうになったが、この作戦を実行するためには俺はフィフスセクターの勝敗指示を知ってはならない。俺は顔の前で1を作って春奈ちゃんの話を区切った。
「イケイケ!おーい、ドンマイドンマイ」
「まだまだ後半始まったばっかりだよー」
そして、俺が声掛けを始めて5分が経った頃。
「パーフェクトコース‼︎」
「バーニングキャッチ!」
「《ゴール!栄都学園3ゴール目!雷門また離されてしまった!》」
とうとう、勝敗指示通りの3-0になる。そして、ちょうどこのタイミング。ここで俺の応援のおかげか、天馬くんが動き出した。
「こんなの間違ってるよ……!うぉー!!」
ホイッスルが鳴ってすぐ天馬くんはボールを取りに行く。やっぱりすぐには上達しないから、転んで、痛そうで、でもまた立ち上がってボールを取りに行く。そんな姿に、みんなのプレーも引っ張られてるのかキレが出てきた。
「成結くん。準備運動をしておくんだ」
「か、監督!?」
それは、「成結くん。この後試合に出すから準備運動をしておくんだ」という意味ですか?
それとも、「成結くん。写真撮影の準備運動をしておくんだ」ですか?……後者だな、しっくりくる。
「はい。でも、僕が持ってきたカメラはスマホだからなんの準備運動すればいいですか?」
「体操をすればいい」
撮影するための体操ということは、どんな体操がいいだろうか。
まず、写真を撮るときの動作として①スマホをかざす。②シャッターを押す。
じゃあスマホをかざすときに腕を曲げるから、体側と背伸びの運動。シャッターを押すから手首足首の手を重点的に。
と、気づいたらフィールドでは天馬くんがボールをとって神童くんへのパスを繰り返していた。おぉ、すごい。頑張ってるね。うぅっ。泣けてくるよ。
「天馬くーん!足の向きに注意してみてー!」
「わかったー!ありがとう!」
是非とも、すぐパスが通って欲しいからアドバイスをバンバン送る。天馬くんも素直に答えてくれてこっちも嬉しくなる。
「神童くんー!応援してるよ!」
「—————ッ」
そして俺のアドバイスのおかげか、天馬くんのパスは神童くんに届く。原作は天馬くんのパスが届いてゴールを決める。時間は確か試合終了間際だったから、原作より早い段階でパスが届いたことになる。
「神童くん!いけ!」
俺のその声は神童くんに届いたかわからない。俺は少し警戒していた。この試合からフィフスセクターの指示を無視して勝てればいいなって思ったから雷門メンバーを煽って、それに対する怒りでゴール決めてくれないかなという希望で。
でもそれが原因で冷静になった神童くんがゴールを決めるのをやめてしまう。そんなの困っちゃうよね。
だけど、そんな心配はいらなかったみたいで、神童くんはシュートを打った。
「ムーンサルトスタンプ‼︎————!?」
「《ゴール!雷門中キャプテン神童、決めたー!》」
「「「————!?」」」
神童くんのそのシュートは全力という言葉がふさわしく、ノーマルシュートにも関わらずゴールネットを揺らした。
その一点は神童くんにとっても、雷門メンバーにとっても衝撃の一点だった。
「おい!神童、どうしたんだよ!」
「なんでシュートをうった!」
チームメイトの言葉に神童くんは自分に問いかけるように答えた。
「あいつのボールが、そして成結くんの応援が。シュートをうてと言ったんだ」
うんうん、天馬くんのパスは何度も諦めずに繋げたボールだからね。
で、俺の応援?っしゃぁー!おらおら!俺の作戦は成功してたってわけだなぁ!さすが俺、知将なんだから!
心の中で安堵と嬉しさのダンスをしていると、久遠さんが俺に聞いてきた。
「成結くん。何点取れる」
ベンチに座っていた俺は冷静に、焦らず、そっと頷く。
さぁ俺、落ち着こう。まず何点取れる?と聞いた。そしてさっき(写真撮影の)準備運動をしろと言った。と、いうことは?写真の評価において何点取れるくらいの実力だ?と聞きたいのだろう。
正直にいうと、俺は写真専門家ではない。何点なんて評価を出されたこともない。でも、どんなものにも才能溢れちゃう俺だからきっと100点だって取れるだろう。結論、何点でも。
「何点でも取れますよ」
俺がそういうと、フッと久遠さんは笑ってベンチから立った。何をするんだろうと視線を追いかける。
「選手交代、松風天馬に代わって響木成結」
「「「「「————!?」」」」」
その一言は、神童くんの一点より大きな衝撃だった。
響木成結。小学五年生。得意なポジションFW。好きなポジションDF。できるポジション全部。
成結はサッカーの才能に溢れていた。ぶっつけ本番で稲妻KFCの入団試験に臨み合格。わずか一年でレギュラー入り。オールラウンドプレイヤーとしてどのポジションとしても機能する万能。
FWをやらせれば、時に単身で突破し得点を取る。MFをやらせれば、フィールド全体を見回して的確な指示とプレイヤーコントロール。DFをやらせれば、柔軟な動きでボールを奪いキーパーは形だけになってしまう。GKをやらせれば、祖父に教わったとゴッドハンドを使い無失点。
「俺、確かにおかしいなって思ったよ!?写真撮影に体操いらないしさ、点数だってなんのことだよって。でもさぁ小学生試合に出すかなぁ!?思わないでしょ!!」
「頑張って、成結くん!」
「天馬くんー!なんでそんなに疲れてるのさあ!」
成結が天馬に変わり場所についた。ぐちぐちと口は減らないがやる気はある。
そして成結は久遠に言われたことを思い出していた。
『逆転だ。宣戦布告は目立って損はない』
それは、逆転させろという久遠からの指示。久遠を排除したがっているフィフスセクターからすれば、この試合で一点取ってしまってる時点で監督解任は確定。久遠はこの際と、ここで勝利することにした。
「成結くん、だっけ?サッカーできるの?」
「浜野くん!大丈夫、僕はみんなの士気を高める役目だから」
意気込む成結の言葉と同時にホイッスルがなった。
久遠「どうせ俺クビだし、成結入れときゃ勝てるっしょ。小学生?いや、練習試合だから誰も気にしないって」
が、私の言い訳です。
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4話 vs栄都学園③
やっぱ面白いね!まだ半分くらいしか観てないから次の投稿も遅れるかもしれない。
申し訳ねぇ!!!!
「いや、上手すぎでしょ……」
そんな誰かの言葉がフィールドで溢れた。その言葉は1人、相手チームを翻弄する成結に向けた言葉である事に間違いない。
「(この試合のノルマを作るなら、2点が俺。最後の逆転の1点が雷門メンバー。だから俺は煽る)」
試合開始早々、成結は相手からボールを奪った。
「倉間くん!ワン・ツー!」
「はぁ?」
「ダメじゃん!パスはもっと相手のことを考えて出すものだよ!このボールは取りにくかった!」
倉間にワンツーをするよう指示とパスを出す。突然のことに困惑する倉間はパスにしては強く、位置の遠い場所にパスを出してしまう。
しかし、こんなのは誤差だと言わんばかりに成結はパスを受け取りダメ出しをした後プレーを続けた。
「《おっと!突然現れた雷門のスーパープレイヤー77番は栄都学園を翻弄している!》」
「誰だよあいつ!バカか!」
相手チームの罵倒に聞く耳を持たず成結はゴール前にやってきた。
まだ小学生である成結の欠点を挙げるなら体力のなさ。小学生の中で見れば体力がある方にしても、中学生と比べるとその差は歴然。
しかし、成結はここで貴重な体力を使ってでも技を出そうと考えていた。
「僕のおじいちゃんが教えてくれたゴッドハンド。それは円堂くんも使っている最強の技だ。そこで僕、考えたんよ」
「な、なんだよ……」
ゴール前に立って会話をするように1人喋り出した。キーパーは先ほど見せたスーパープレーからどんな技を持っているのか恐怖している。
「〝ゴッドランス〟ってどう思う?かっこいい?」
「————な」
そう言った瞬間、成結は高く飛び上がった。その時のボールは、細く光り輝く槍を連想させた。
「ゴッドランス‼︎」
その槍をボレーシュートの様に蹴ると一瞬にしてゴールに突き刺さった。
地面に着地した成結は一息つくと会心の笑顔でベンチに手を振る。その様子にマネージャー達も手を振りかえして笑う。
「《ゴール‼︎雷門77番がゴッドランスを決めた!まさに神の槍!》」
「あいつ!なんでシュート打ってんだよ!これ以上フィフスセクターに逆らうつもりか!」
成結の技に驚愕しながら倉間は不満を漏らした。
ただでさえ神童が一点を取ってしまったのに、部外者の余計な行動のせいでサッカー部が廃部になりサッカーができなくなるなんてと、不満が募るのは当然だった。
全員位置に着く。全員の視線は成結に集まっていた。成結はその視線に気づいて独り言のように、だけど全員に聞こえる様に言った。
「一点取ったなら何点取っても一緒だよ。ここで負けてガリ勉に負けたっていう評価を受けるより、僅差だろうと勝つ方が僕はかっこいいと思うな」
全員はその言葉に対してさらに不満を募らせた。お前は何も知らないだろう、部外者にはわからない、そもそもフィフスセクターについて知ってんのか?と。成結も当然その気持ちに気がついていた。
「倉間くん。僕、去年のホーリーロードで見たサイドワインダーほんとに好きだよ。あれ、かっこいいよね!」
そして、ちょうどそのタイミングでホイッスルがなる。
またも、一番に動いたのは成結だった。ボールを取るとすぐに速水に回した。
「速水くん!」
「えぇ!?神童くん!」
そしてボールは神童の元へ。後半10分にゴールを決めた神童は、その時から全く動かない。それはまさに後半開始直後の天馬そのものだった。
「神童くん!僕は神童くんの素直なプレー好きだ!気持ちに素直になりなよ!」
「いや、俺は……」
神童がボールを見ている隙に相手がボールを奪う。それでも神童は動かなかった。
「(ダメだ。今の神童くんにはどんな言葉をかけても動かない。やっぱ倉間くんを煽るか)」
ディフェンスラインまで下がった成結がボールを奪った車田にパスを回す。車田も焦りからそのまま成結にボールを返した。
「(時間もないなぁ、とりあえずここでもう一点取らないと)」
ドリブルをしながら成結は考える。このままだと最後の一点を雷門メンバーに取らせる事は不可能。それほどまでにフィフスセクターを恐れている。
そもそもこの練習試合が負けという指示が出ている時点で、雷門メンバーには連携をして一点を取るという考えがない。それは成結の命取りで体力のない成結には全てのフォロー不可能に近い。
「雷門中サッカー部は潰れない!絶対に!無責任なんかじゃない。僕は責任取れるぞ!」
「《ゴール!!雷門77番また決めたー!これで3-3同点だー!》」
次はノーマルシュートで決める。相手が必殺技を出す間も無くゴールは決まる。
この時点で、既に成結は体力がほぼなかった。ディフェンスからオフェンスまで、フィールド全体を走り回ったのが原因だ。
「みんな!あと一点だよ。勝てるよ!ここに来てビビるのか!余裕だろ!僕に出番取られるぞ!雷門中サッカー部はこんなにも落ちぶれたのか!!」
「くそっ」
成結のその言葉に倉間がそっと呟いた。その声は成結には届かない。
後半残り5分。ホイッスルがなった。
そして、やはり一番に動くのは成結。当然のようにボールを奪うが、体力切れが原因でその動きのキレは失われている。
「倉間くん!速水くんは上がって!」
倉間にパスを出した成結は指示を出す。既にボールの動きについていけない成結は今は動かない司令塔の代わりをすることにした。
「浜野くんにパス!浜野くんは速水くんに!」
そして、突然の指示に慌てるせいで全員がその指示に従う。ボールは順調にゴールに近づいてきた。
「あと一点で逆転だ。もう負ける事はないだろう。フィフスセクターの指示に逆らってしまった。ならもう勝ってもいいと思う!いっそ開き直ってこの試合を楽しもうよ!」
そして、ボールは倉間に渡る。倉間は先ほどの成結の言葉を思い出していた。『サイドワインダーほんとうに好きだよ』その言葉はサッカープレイヤーとして本当に嬉しい言葉で無茶苦茶なことをする成結以外に言われたのならその場で喜んでいただろう。
「(もう同点だ。ならこんな雑魚相手に同点で終わらせるより、勝った方がいいか……)」
「シュートだ!倉間くん!」
「———ッ、あぁ!サイドワインダー!!」
倉間はシュートを打つ。蛇を想像させるボールが左右に揺れながらゴールへ向かった。
「《ゴール‼︎倉間が土壇場でゴールを決めたぁ!》」
「「「「倉間!?」」」」
驚く雷門に栄都学園。今まで、シュートを決めたのは天馬のパスと成結の声に背中を押された神童と、経験という定でやってきた部外者の成結。
しかし、そこにフィフスセクターの指示には忠実に従ってきた倉間が逆らうということは、フィフスセクターの支配が成結の影響で崩れ始めたという事だ。
「さすが、倉間くん!!!」
「《ここでホイッスルー!試合終了だ!4-3で雷門の勝利だー!》」
「勝っちゃた……これってかなりやばい事なんじゃ…?」
「そうだねー。倉間もシュート打ったし、廃部かぁ」
「なんで浜野くんはそんな歓楽的なんですか!サッカー部の危機ですよ!?」
速水と浜野の会話を傍目に倉間は成結に声をかけた。
「俺のサイドワインダー、どうだった?」
その質問に成結は一瞬かしこまるが、すぐに明るい笑顔になり応える。
「サイコーだった!やっぱり好きだ!」
その成結の言葉に倉間は「そうか」と呟き、微笑む。
成結も荒い息遣いが収まり体力が回復してきたようだ。そんな成結に倉間は言う。
「サッカー部は潰れない、だっけ?責任取れるんだろ。任せたぞ」
「お、おお」
そして、この試合の1番の活躍を見せた成結には天馬を始めとする数人が集まる。そして質問攻めと称賛の言葉。それが止んだのは久遠が声をかけた5分だった。
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5話 みんな小5を過剰評価しすぎだと思うんだ
いやぁ、びっくりだよね。半年以上経ってるなんてさ。でも仕方ないよね。忙しいんだもん。あー忙しい忙しい。
次もそれくらいか、それ以上投稿しないと思うけど、よろしくお願いします。
「成結、この前の試合はとことんやったらしいな」
父さんが俺の部屋にノックをして入ってきて、一言目にそう言った。
顔は笑顔で、全く怒っていない。むしろ喜んでいるようにも感じる。
「やったっていうか、まぁ。楽しかったよ」
今日は月曜日で、宿題をやりながら父さんの言葉に返した。
楽しかったのは事実だ。ただちょっと怖いだけ。倉間くんや神童くん、天馬くんや信介くんは大丈夫だとして。他の雷門メンバーの恨みは買ってしまっただろうし。好きなキャラクターだった人から冷たい目線を送られるのは精神的にきつい。
剣城くんにもフィフスセクターに逆らわせたとして排除する対象にでもされたら嫌だ。
「ちょっと父さんと散歩に行くか」
「うわっ、すっげぇ」
俺は、夜の冷たい風に頬を撫でられながら夜景を眺めていた。
父さんと来た場所は鉄塔広場。聖地巡りとして、ここは何度も訪れていたが夜来たのは初めてだった。高い場所にあるだけあって稲妻町が一望できる。
「もうすぐホーリーロードが開催するのは知ってるだろ?」
「うん、俺も毎年楽しみにしてるからね」
まるで、円堂くんと鬼道くんかのように手すりに手をつけながら父さんと話す。もちろん俺は届かないので背伸びだ。
「じゃあホーリーロードがフィフスセクターの新たな聖帝を決める聖帝選挙であることは知ってる?」
「うん、それも知ってる。毎年、管理サッカーしてるからイシドシュウジって人が聖帝になってるやつ」
俺が管理サッカーについて知ってるのに父さんは驚いたかもしれないが、久遠さんに聞かされたんだ。これは原作知識じゃ無い。
イシドシュウジに関してもたまにテレビに出てるし問題ないはず。
「父さんやおじいちゃんは〝革命〟を起こそうとしているんだ。この管理サッカーを変える、ね。その為におじいちゃんを新しい聖帝にする。だから雷門中サッカー部にはホーリーロードで勝ち続けてもらわないといけない」
父さんの話は、アニメで帝国の地下で話した内容だろう。帝国の地下にはおじいちゃんである響木正剛や名前は忘れちゃった雷門中の元理事長&校長。鬼道くんや久遠さんもいた。
—————俺がここでこんな重要な話を聞いていいのだろうか?
「成結には雷門中への出入りが許可されたよ。父さんは雷門中のコーチを務める。成結、君に父さん達から頼みたいのは雷門中サッカー部の強化だ」
「強化……えぇ、うーん」
「この話は他言無用。まずは雷門中にホーリーロードで勝ち進んでもらおう。その為には成結の力は必要不可欠だよ」
なんか俺、すっごい期待されてない?いやいや、どうすればいいんですか。えぇ?俺小5だけど。中身は歳とってるけど小5だよ?
ふぅ、まぁやりますか!アニメなんかとは違う。〝雷門無双〟でも目指そう。俺は原作知識もあるしなんとかなる。
まずは、神童くんを元気にさせないとね。
「お前のせいなんだど。神童は練習に来ないし、倉間だってシュートを決めた。お前が変なことを言ったからだど。それを分かってるのか⁉︎」
「あぁ〜、反逆者が二人増えちまった」
「監督は辞めちゃいましたしね。やっぱり廃部だぁ」
天城くんと南沢くんが俺にそういう。速水くんは独り言のよう呟いた。
俺は、学校が終わってからすぐに雷門中に来た。それは練習に参加するという意味もある。だけどまぁ当然みんなに責められるわけで。
ちなみに、南沢くんのいう反逆者は倉間くんと神童くんだろう。二人ともこの前の試合でそれぞれ一点とっている。
「雷門中は廃部にはならないよ、絶対」
俺が断定的にいうものだからみんな黙ってしまった。だけど廃部には絶対にならない。アニメの展開的にそうだったし、父さんから話された話なら既に革命を起こす為に大人達は動いている。廃部にしようとフィフスセクターが動いても、乗り切れるだろう。
「そうだ、雷門中は廃部にはならない!」
突然大きな声が聞こえた。その声は大好きな声で頼りになる逞しい声だ。
全員が一斉に声のした方を振り向く。
「……あっ、
「成結〜!久しぶりだな!元気だったか?」
グランドのベンチのところまで降りてきた円堂くんは俺の頭を撫でる。俺は「元気だったよ」と答えながら雷門メンバーの方を向いた。
その俺の行動が意味する言葉とは「俺、こいつとダチだぜ」だ。決して口には出さないが、顎を上げ、口角も上げニヤッと。
「え、円堂って……あの…」
「「「「えぇ〜!!!!」」」」
俺の煽り顔は無視され、当然といえば当然のみんなの驚く声。
通称〝伝説のゴールキーパー〟円堂守。廃部寸前だった雷門中をフットボールフロンティアで優勝に導き、フットボールフロンティアインターナショナル、通称FFIでも日本代表のキャプテンとして優勝に導いた。
この精神面で不安定な雷門中の大きな支えになってくれるだろう。なんと頼りになる存在か。
「今日から雷門中サッカー部の監督を務める円堂守だ。みんな、よろしくな!」
幼さも感じられる笑顔で円堂くんはそう挨拶した。なるほど、自己紹介は元気な声ですると若く見えるのか。俺、心は28歳だからさ。やっぱ若く見せたい年頃だよね。
「放課後の予定を伝える。集合場所は河川敷のグランドだ。そこはここでは見えないものが見える」
円堂くんはそう言ってから「待ってるぞ」とただ一言だけいってその場を去った。
俺はそれについていく。俺の今の役目は神童くんをやる気にさせる事だ。
「円堂くん、僕は神童くんのところへ行くよ」
「あぁ、分かった。頼んだ!」
円堂くんは分かってたのか直ぐに許可を出してくれた。俺は大きく頷いて円堂くんと別れる。
そこから俺は、すぐに神童くんの家に向かった。
道は知らないけど神童くんの家はとんでもなく大きい事で有名だ。きっと適当に行ってもたどり着ける。
そう思って歩いていたら、迷子に……なることもなく無事ついた。いや、俺って頭いいし迷子とかなったことないんだよね。俺ってば欠点ない。
「いや、でっけぇ。タキシードでも着てくるべきだったかな」
たどり着いた神童邸はそこそこの距離で遠近法を使っても両手に収まらないくらい大きかった。
インターホンを押すと、執事らしき人が出てきてすぐに案内された。
神童くんは俺が来たこと分かってて入れてくれたのか……?ぐすん、なんて優しい子。
まあ、そんなことはいい。俺の熱弁で神童くんを円堂くん並みにサッカーバカにしてやるぜ。
「————ピアノ上手だね、神童くん。弾いてる曲はショパンのワルツ……10番かな?忘れちゃった。その曲は、今の神童くんの気持ちを表してるの?」
俺がそう言って声をかけると、ピアノの音が止まって神童くんはこっちを勢いよく見る。
ちなみに俺は文武両道、才色兼備だ。弾いている曲くらい当てられる。ショパンのワルツは全て弾けるくらい好きだから間違えるわけないが、何番がでは自信がないかな。
「成結くん……か。霧野だと思ってたが」
神童くんは、訪れたのが霧野くんだと思ってたらしい。
だからすんなりと入れてもらえたのね。強盗でも直ぐ部屋に入れちゃいそうで、怖いよ神童くん。
「そうだ。僕の自慢できることの一つは、魔王の伴奏が弾けることだよ。最初のタララってところも完璧さ。え?僕の自慢なんて聞いてない?そんなこと言わずにさ」
少々失礼してピアノを弾き始める。ちょうど神童くんの演奏が止まっていたところから俺が演奏を始めた。
この曲は全体的に暗い曲だが、一部は高い。それが神童くんの心の葛藤を表しているようで、神童くんの今の気持ちが目で見えるかのように分かる。
「……紅茶を用意しよう」
「あ、砂糖もよろしくね。僕は砂糖入りの紅茶が好きなんだ。あでも、無理して持ってこなくていいからね?お構いなく」
「砂糖入りだな。わかった」
神童くんが一度退出するので俺もピアノをやめた。
この部屋にはサッカーボールが転がっている。今度はそれを蹴り上げてリフティングを始める。
いや、俺この部屋で自由にしすぎじゃないか?ピアノを弾いてはサッカーを始める。よろしくないな。後で反省の姿勢を見せよう。まぁ、姿勢を見せるだけなのだが。
適当にリフティングしてたら神童くんが紅茶を持って部屋に来た。俺の要望通り角砂糖も持っている。やはり神童くんは優しい。
「試合の時から分かっていたが、サッカーが上手なんだな」
リフティングの様子を少し見ていたのかそう神童くんは言った。
「あんなシュートは見たことない。〝ゴッドランス〟だったか?きっとあのキーパーはボールを捉えていなかった。目で追えない速さ、そして威力。素直に尊敬するよ」
力無く笑ってそう言った。その表情は何かに疲れたような、そんな表情で痛々しく感じる。
「ありがとう。昔ね、練習したんだよ。いずれ雷門イレブンでみんなの力になりたかった。でもこの通り僕は小学生だから」
この言葉に嘘偽りはない。俺は転生したと気がついた時から新生イナズマジャパンに選ばれることを目標にしていた。
しかし、俺は年齢が足りない。初めて気がついた時にはしばらく寝込んだが、今こうやって力になれることがあるなら全力で頑張りたいと思う。
「ってことで、神童くん?サッカーやろうぜ」
足元のボールをふんわりと浮かせる。
身体が覚えているのだろう。神童くんは咄嗟に胸トラップをしてから地面にボールをつけた。
「さっきの話からどうしてサッカーをする事になる」
「サッカー嫌い?」
俺がそう聞けば神童くんはボールを手で持ち上げて黙り込む。
少し間が経てば、ポツリと独り言のように喋り出した。
「嫌いなわけない。好きに決まってる」
「じゃあ部活行こう。円堂くんも待ってるよ」
俺が円堂くんの名前を出すと神童くんはあからさまに顔を顰める。円堂とは誰だと表情が語った。
だから俺は簡単に新しい監督に伝説のゴールキーパー円堂守がなったと伝える。神童くんは首を傾げながらも納得したようだ。
「もし部活に来ないのが責任を感じてる、とかだったらお門違いだよ。責任は俺にあるし、俺の責任を取ってくれるのは久遠監督だから。そもそも神童くんには追う責任がないわけ」
「そんなわけっ……」
神童くんがそう切り出した時、執事の人が「来客です」と言い人を連れてきた。
「霧野……」
「あ、やっほー霧野くん……」
「……成結くん、どうしてここに?」
気まずい沈黙が流れた。
「……河川敷行こうよ」
耐えきれなかった俺はそう切り出した。
「見えただろ?ここには、本気で勝利を目指してる仲間の顔がある!」
俺たちが河川敷に来た時には、既に剣城くんのデスソードがゴールに決まっていた。
俺たちはそれを橋の上から見下ろしていた。円堂くんの声は聞こえているし、何も問題はない。
「ねぇ神童くん。本気で勝ちに行くサッカーがもう出来るんだ。やらない理由はないでしょ」
そう言ってから付け足すように「霧野くんも」と言った。二人は返事をくれなかったが、緊張の解けるようは雰囲気を感じ明日からは練習に来てくれるだろうと思えた。
よしっ。俺の仕事は一つ終わった。明日からは本気の雷門強化だ。今日のはスタートラインに立っただけ。本当の〝雷門無双〟はここからだ。
あー最高に楽しみだな。
内容全然進んでないやんけ!
次から本気で雷門無双しに行く。
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