仮面ライダーレオン (堕天使 かよ)
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プロローグ

初めまして!堕天使かよと言います!長い間イメージだけ膨らませてきていた自分のオリジナル仮面ライダーを小説に書いて投稿してみようと思います!

お気に入り登録や高評価、感想などもいただけると飛んで喜びますm(_ _)m

他にも誤字・脱字、言い回しのミスなども指摘していただけると幸いです。拙い文ではありますが、1人でも多くの人に面白いと言って貰えたら嬉しいです!

では、どうぞ!

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

数多の生物が生まれ、進化を続けてきたことで発展してきた星「地球」。そんな中で数々の生物のデータを内蔵した「アームドチップ」が世の中にたくさん生まれてきた。12の星座の鎧に選ばれた戦士達は人知れず戦い続けてきた…。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「本当にこんなところに連続殺人犯の小原がいるんですか?」

「間違いないわ。小原がこの廃工場を出入りしてる、っていうたくさんの目撃情報が寄せられたもの。」

 

私、早乙女麗奈(さおとめ れな)は刑事だ。今も4人の人を手にかけた殺人犯の小原と言う男を逮捕するために廃工場の周りに包囲網を敷いている。あと5分もしないうちに突入命令が出るだろう。

 

「しっかし、先輩はすごいっすね〜。これも含めれば1ヶ月で3人目の逮捕じゃないすか。」

「別に褒められることでもないわ。本当なら私たちが逮捕する人数は少ないほどいいんだもの。」

「それもそうっすね。」

 

なんて、緊張をほぐすために話をしていたら突入まであと30秒もない。相手がかなり危険な人物とはいえ、先に警官隊が突入するし今回もすぐに逮捕をして終わるだろう。

 

「突入だ‼️」

 

そんな声が聞こえて警官隊を先頭にしてたくさんの刑事が廃工場の中へなだれ込んで行く。中央に男が1人座っていた。小原だ。

 

「んー?ここも警察にばれちゃったのかー。」

「小原!ここは完璧に包囲されている!潔く諦めるんだ!」

「え、やだよ。それにさ、俺にはまだ奥の手があんの。」

 

そう言うと小原はズボンのポケットから手のひらサイズのICチップの様なものを取り出した。

 

《Spider!》

 

手に持っていたデバイスから音が流れる。

 

「これで俺は人間を超える…!」

 

そう言って小原は首に突き刺す。すると、一瞬で姿が蜘蛛型の怪人になっていた。

 

「………!?」

「これはいい…力が溢れ出てくる…!今の俺は最強だーー‼️」

 

警察達には動揺が生まれ、怪人となった小原は自身の姿と感触を確かめている。一瞬場が静まり返ったが、警官隊の中から声がする。

 

「怯むな!取り囲んで抑えろ!場合によっては発砲も許可する!」

 

どこからかそんな声が聞こえてきて、警官隊は怪人になった小原を取り囲みながら銃口を向ける。

 

「いい加減大人しくしろ!」

「バーカ。そう言われて大人しくするやつがいるわけないじゃん。」

「……!?…やむを得ん、打て!」

 

警官隊は怪人に向けて間髪を入れず発砲をし続ける。煙のせいで一瞬姿が見えなくなる。

 

「やったのか…?」

「んっ…んあーぁ…もう終わったのか〜?」

「…!?効いていない!そんなバカな!?」

 

ケムリが晴れるとそこには無傷の怪人が変わらぬ姿で立っていた。警察達に動揺が走る。

 

「ずっと待ってるのも飽きたし、そろそろこっちからいくぞ…?」

「!?下がるな!そのまま打ち続けるんだ!」

 

少しずつ後退しながらも発砲を続けるが怪人となった小原の体には少しの傷もつかない。

 

「ずっと待ってるのも飽きたし、今度はこっちから行くぞ…?」

「グッ…うわぁぁぁ!!」

 

1人の警察の胸ぐらを掴んで投げ飛ばしてから、怪物の一方的な蹂躙が始まった。同じように捕まって投げ飛ばされる者。恐怖を肌で感じながらも発砲するが近づかれ殴られたり、蹴られたりする者。遂には武装していない警察にまで手が伸びてきた。

 

「ぐわぁぁぁ!!」

「ハハハハ…!こいつはいい…これでもう怖いものなんて何もねぇ!」

「グッ…早乙女!お前だけでも一旦引け!応援を呼んでこい!」

「嫌です!私だって刑事です!最後まで戦います!」

「わがままを言うな!このままだと一方的にやられるだけだ!人数が増えれば少しは勝機があるやもしれん!」

「っ…!わかりました…応援をよ「行かせねえよ…」キャっ!」

「てめぇ、俺の後をつけてた女だろ?長い間後ろをウロウロされて腹がたってたんだよ…見せしめにまずはお前から息の根を止めてやるよ…!」

 

そう言って怪人は首を掴んで身体を持ち上げる。

 

「うっ…ぐっ…!」

「さぁ〜て…どう料理してやろうか…」

「が…かはっ…!(いや、助けて…!)」

「めんどくせぇ…その首を飛ばしてやんよ!」

 

怪人は拳をあげる。麗奈は恐怖のあまり目を瞑る。

 

「終わりだ!……あ?」

 

音のした方へ振り返るとバイクに乗った紅い鎧を身にまとった戦士?が突っ込んでくる。

 

「うわっ!」

 

勢いのまま怪人へとぶつかった。麗奈の身体は怪人の手から解放される。

 

「うっ!ゴホゴホっ!」

 

紅い戦士はバイクを停めて降り、怪人を一瞥する。

 

「てめぇ!なにもんだ!」

「俺の名は『レオン』獅子座の戦士だ…」

「レオンだァ?人のことをおちょくるのもいい加減に…っ!!」

「ふっ、はっ!」

 

怪人が打ち込もうとした拳を片手で難無く受け止め、カウンターで回し蹴りを食らわせる。レオンと名乗った鎧の戦士は怪人の攻撃を全て受け止めカウンターで攻撃し返す。

 

「はっ!」

「う…ぐわぁ…!」

「大人しく倒されろ…」

「ふざけんな!」

 

怪人が地面に手を着くと、たくさんのドクロの見た目をした怪人が出てきた。

 

「行け!」

 

鎧の戦士はどこからか剣を取り出し、次々と襲いかかる怪人を一撃で切り捨てる。

 

「はぁっ!」

 

切られた怪人たちは爆発四散する。

 

「ん?逃げられたか…」

 

鎧の戦士は一言そう言い捨ててすぐにバイクに乗って去っていってしまった。一瞬のできごとに麗奈は思わず腰が抜けてしまう。

 

「はぁ…助かった…の?でも、もう一体のあれは…何?」

 

この日…星の戦士の1人である『レオン』と出会ったことで「早乙女麗奈」の運命は大きく動き出すこととなる…

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

次回の仮面ライダーレオンは?

「何か知っているなら素直に吐いた方があなたのためですよ?」

 

「俺は正義の味方になるつもりは無い。この前助けてやったのはついでだ。」

 

「お願い…!人々の安全を守るためにはあなたのその力が必要なの!」

 

「ったく…しゃあないな…」

 

 

つづく



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第一話

かよです!テストも終わったんで、続き書きます!

良かったらお気に入り登録、高評価、感想くださると嬉しいです!第一話どうぞ!

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「はぁ…暇ね」

「いや、先輩前はそっちの方がいいって言ってたじゃないすか」

「そうだったかしら?」

 

思わず口にしてしまった本音に後輩の「橘零士(たちばな れいじ)」がツッコミを入れてきた。前に暇な方が良いと言ったような気もするが、今はそんな小さなことを気にしている余裕なんて麗奈にはなかった。

 

「しっかし、今回の情報も空振りでしたねぇ…」

「そうね…ここまで何も掴めないと流石にヘコむわ…」

 

2人が追っているのは、先日怪人になった小原とそれを圧倒していた『レオン』と名乗った鎧の戦士の2つである。両方とも写真が手に入ったので大々的に情報を募集しているのだが、これまでに寄せられた物の全てがガセか時間が経ちすぎた物なのだ。1週間の間寄せられた情報を頼りに色々な所へ足を箱を運んだのだが、毎回何も掴めずに帰っていたので流石にメンタルがやられてきていたのだ。

 

「小原の奴はともかく、鎧の奴は派手だしバイクにも乗ってたからもうちょいいい情報あってもいい気がするんすけどね」

「もしかしたらだけど、鎧の方も普段は普通に人として生活してるのかもしれないわ。そうでもなきゃここまで目撃されないのは不自然すぎるもの。」

「鎧の奴も人間なんだとしたら、なんで小原みたいに街を襲ったりしないんすかね?小原は何回か暴れたりしてるのに。」

「それは…本人に聞かなきゃ分からないでしょうね…」

 

そんな話をしながら角を曲がると、大きいという一言では言い表せない程の豪邸が目に入った。見渡す限りの大きな屋敷。2人はそんな豪邸に目を奪われていた。

 

「ひゃ〜、でかいっすね〜。こんな豪邸絶対前世で悪いことしてなきゃ住めませんって」

「そうね、なんか、私たちが平和のために働いているのにここに住んでいる人はそんなことも知らずに暮らしているのだと思うとイライラしてきたわ…」

「いやいや、それはめちゃくちゃすぎますって…」

「冗談よ…行きましょ」

「ハイハイ、わかりま…ん…?」

 

橘は屋敷の門の中の出入口付近に停められていた1台のバイクに気がつく。

 

「どうかしたの?」

「いや、あのバイク、めちゃくちゃ真っ赤だしライオンの顔みたいなのもついてて、鎧の奴が乗ってたのによく似てるな〜って「聞いてみましょう」いや、多分俺の勘違いですって!」

「この豪邸の主に聞けば何かわかる気がする…」

「いつもの勘ですか?」

「えぇ、そうよ?」

「聞いてみますか、先輩の勘は当たりますしね」

\ブーーーーー/

 

2人は大きな門の隅に付いていたインターホンを押す。しばらくすると執事の方な格好をしたガタイのいい青年が2人の方まで歩いてきた。

 

「この屋敷に何か御用ですか?」

「警察の者です。最近起きている重要指名手配犯についてお話を聞いて回っていたでして、こちらにも伺わせて貰いました。」

「そうでしたか。立ち話もなんですから、どうぞお入りください。」

「ありがとうございます。(よし!)」

 

執事の青年が2人を屋敷の中へと案内する。2人は目配せをしてとりあえず屋敷の中に入れたことに安堵する。執事に案内されて着いたのは広い応接間の様なところだった。ソファに腰掛けた2人にお茶が出される。

 

「あ、ありがとうございます」

「いえ、お気になさらずに。主がこちらまで来ますので少々お待ちください。」

 

そう言って執事の青年は一旦部屋から出ていく。2人はどういった手筈で話を聞くか思案していた。

 

「とりあえず入れたは良いっすけど、どうやって聞き出すんすか?ストレートに聞いちゃう感じ?」

「最初は普通に事件のことを聞いてみて、一区切り着いたら本題を聞いてみましょ。追い返すようなら何かやましいことが有るって言ってるようなものだし。」

「それがいいっすね。」

 

そんな話をしていると、先程の執事の青年よりも少し若そうな青年が部屋に入ってきた。

 

「事件について聞きたいってのはあんたらか?」

「は、はい。何か情報をお持ちではないかと思いまして…」

「(先輩イラついてるな…)」

 

麗奈は初対面にも関わらずタメ口で話しかけてきた青年に対して怒りを感じていた。見えないところで拳を力強く握っていたが、橘にはバレバレだった。

 

「まずはお名前を伺ってもいいですか?」

「獅子崎煌(ししざき こう)だ。」

「………獅子崎さん、ですね。早速お伺いしたいんですけど、最近起こっている事件の犯人であるこの男について何か見たり聞いたりしていませんか?」

「知らないな。」

 

煌は写真を見たか見ていないかも分からないような一瞬でぶっきらぼうに答えた。麗奈は顔を引きつらせながら質問を続ける。

「そ…そうですか…。で…では、こちらの2つについてはどちらかだけでもいいので何か知っていることはありませんか?」

「っ……!いや、こっちの2つも何も知らないが、これはなんだ?どう見ても人には見えないが?」

 

煌が一瞬動揺していたのを見逃さなかったが、麗奈は質問を続ける。

 

「こちらの2つは、先程の聞いた小原が小さな板の方なものを使って怪人になったものと、襲われていた私たちを助けてくれた鎧の戦士です。この2つは明らかに並外れた力を持っていましたので、警察の中でも特に危険視されているんです。」

「へぇー、知らないですね」

 

2人は今だ、と思い橘から煌に対して本題をぶつけていく。

 

「そういえばここに案内される時にふと気がついたんすけど、玄関の近くにあったあのバイク、こっちの鎧の奴が乗ってたのにそっくりだったんですけど、何か知りません?」

「さぁ、たまたま似てただけじゃないのか?」

「それにしては似すぎているんです。色が紅いだけならともかく、ハンドルの辺りに付いているライオンの顔なんてそうそうそっくりなものなんてありませんよね?何か知っているなら素直に吐いた方があなたのためですよ?なんなら多少強引な方法を使うこ「ちょ、ちょっと!先輩やりすぎですって!」うるさいわよ!」

「はぁ…わかった。話してやるから少し静かにしろ。」

「「…!?本当に…!?」」

「そんなことで嘘ついてどうする。いいから静かにしろ。」

 

煌があっさり折れたことに驚く2人。煌は胸元から箱型に近い形をしたバックルと先日小原が使用したものと同じような板を取り出しテーブルの上に乗せる。2人はそれに目を奪われ、更には驚きの声を上げる。

 

「…!?これって!小原が使ってたのとそっくりじゃないすか!なんでこれを!」

「どうしてあなたがこれを持ってるのよ!」

 

2人は動揺を隠すことが出来ずに次々と質問をぶつける。そんな2人に煌はうんざりする。

 

「1つずつ答えるから騒ぐな。」

 

そうして始まった長い説明を2人は聞くが目を白黒させる。あまり、理解出来ていないようだ。

 

「「……どゆこと?」」

「はぁ…簡単にまとめるとだな、バックルが『クロスドライバー』こっちの板は『アームドチップ』この2つで変身するのが星座の戦士だ。小原ってやつがなったのは同じアームドチップを使ってるが、そいつがなったのは『エビルグラム』っていう怪人だ。それだけだ。」

「同じアームドチップ…?を使っているのに、あなたが小原を攻撃したのはなぜなの?」

「なんでも何もそれが俺達、星座の戦士の使命だからだ。」

「なるほど…?ていうか、俺達ってどういうこと?」

「星座の戦士は俺1人じ「ピー!ピー!ピー!ピー!」ん?」

「あ、ごめんなさい。はい、早乙女です。えっ!?わかりました!直ぐに向かいます!」

「どうしたんすか?」

「小原が現れて、また暴れてるわ!直ぐに応援にかけつけないと!……そうだ!あなた、手伝ってよ!あなたなら小原をなんとかできるんでしょう?」

「……断る」

「なんでよ!?大勢の命がかかってるのよ!?なんとかっていう怪人をやっつけるのが使命なら手伝いなさいよ!それに、前は私たちを助けてくれたじゃない!」

「あまり大勢の前で変身したくないし、今行ったところでまた逃げられるだけだ。それに、俺は正義の味方になるつもりはない。この前助けてやったのはついでだ。」

「そんな事言わないで、お願い!人々の安全を守るためにはあなたのその力が必要なの!どうしてもって言うなら私がこれをつかう…」

「いや、先輩流石にそれはむ「ったく、しゃあないな…」え?」

 

言葉を遮ってきた煌の方を向く。煌からは(やれやれ、仕方ないな)といった雰囲気が溢れ出ていた。

 

「ちゃちゃっと倒してやるからさっさと案内しろ…」

「…!?本当に!?ありがとう!」

「礼はいいから行くぞ」

 

そう言って3人は外へ出る。門の前にはリムジンが停まっていた。運転席のガラスが降りると先程案内をしてくれた執事が乗っていて、2人に声をかけていた。

 

「御二方、お送り致します!乗ってください!」

「「(乗っけてくれるのはいいけど、なんでリムジン…?)」」

「いいからさっさと乗れ。急いでいくぞ。」

 

2人は駆け込んでリムジンに乗り込む。煌手袋をはめ、ヘルメットを被りバイクにまたがる。そうして1台のバイクとリムジンが走り去っていった…。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

次回の仮面ライダーレオンは?

「全部壊れちまえ!」

 

「どんなに辛い境遇だったとしても、1度道を踏み外した以上罪を償え!」

 

「お前に星の裁きを下す…変身…!」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

すみません!次回には変身させるので…

面白いって言って貰えるように少しずつ執筆の勉強もしていきます!

つづく



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第二話

かよです。
待っていた方がいたとしたらすみません。
今回やっと変身します。


屋敷を出てからしばらくして、小原が暴れているという現場に着いた。麗奈と零士はその惨状に絶句する。

 

「見たところ、けが人は少なそうすけど、建物の方がかなりやられちゃってますね。さっき説明された、エビルグラム?でしたっけ。こんなにエグいこともできちゃうんすね…」

「そうね…でも、ビビってちゃいられないわよ!小原は煌くんに任せるとして私たちはやれることをやりましょ!」

「了解っす!」

「煌くんも、お願いできる?」

「ああ、引き受けた以上はきっちりこなすさ。」

 

話を済ませた3人はそれぞれのやるべきことに取り掛かる。麗奈と零士の2人は怪我人の救助をしたり、逃げ遅れ人の避難を手伝ったりし始める。一方煌は、小原の方に歩み寄り、声をかける。

 

「おい。」

「あぁ…?」

「大人しく人間に戻って身体に刺したチップをよこせ。使い続ければ理性を失うぞ!」

「うるせえよ!俺はこの力を使って社会に復讐してやるんだよ!」

「復讐…?」

「ああそうさ、上司に濡れ衣を着せられて会社をクビなったと思ったら不良に脅されて、有り金やらなんやらを巻き上げられて!ここまで堕ちた俺の気持ちがお前に分かるのかよ!?」

 

小原が怒鳴り口調で過去の話をしていたのを少し離れていたところで2人も聞いていた。辛い過去の話に2人は思わず息を飲む。

 

「確かに、小原がやったと思われる事件の被害者って結構上の立場のサラリーマンだったり不良ばっかりだったっすね…」

「そうね…」

 

2人は思わず本音を口からこぼしていた。同じように話を聞いていた煌が口を開く。

 

「確かに、本人しか理解できない屈辱や苦しみを味わったのかもしれない。でも、どんなに辛い境遇だったとしても、1度道を踏み外した以上、罪を償え!」

 

煌は胸元から真ん中に何かを入れるスロット、右側には押し込むタイプのレバーがついたバックルを取り出し、それを腹部にあてると、そこからベルトの帯が伸びて腰に巻き付く。

《クロスドライバー》

更に取り出したアームドチップの起動スイッチを押す。

《LEO…!》

ベルトの真ん中のスロットに起動したアームドチップをセットするとベルトから音楽が流れ出す。煌はポーズをとると、己の姿を変えるために必要な覚悟の言葉を大きく叫ぶ。

 

「変身!」

 

左手でレバーを押し込むと、ベルトから新たに音声が流れる。セットしたアームドチップの一部が開かれ、描かれていた獅子座のあらわになる。

《CROSS UP!》

《Crimson head LEO〜!》

音声がなり終わり、煌の姿を確認すると、そこには獅子がイメージされた真紅の甲冑を身にまとった1人の戦士が佇んでいた。

 

「んなっ…!この前のやつか…!」

「お前は俺がここで止めてやる。」

「舐めんじゃねぇぞ!」

 

2人は戦いを始める。小原(スパイダーエビル)は怒りで我を忘れかけているのか、大振りかつ単調な動きでレオンに襲いかかる。対して、レオンは繰り出された拳を持っている剣の刃や腹を使って攻撃を防いでいる。また、攻撃を防ぎながらも少しの隙を見つけては剣で少しずつダメージを与えている。

 

「ぐ…!うらっ!おらっ!」

「ふっ!はっ!やぁ!」

「うっ!ぐあぁ!」

 

倒れ、地面を転がるスパイダーエビル。何度も剣激を受けたためか、弱っているのが見て取れる。必殺技を放つためにレオンはもう一度ベルトのレバーを押し込む。

 

「お前に星の裁きを下す…!」

 

《LEO STAR Break!》

レオンは構えの姿勢をとると空へと跳び上がる。そこから右足を前へと突き出し蹴りの体勢になる。そのままスパイダーエビルへと向かっていく。

 

「はぁぁぁぁ!」

「ゔっ…ぐ…ぐあぁぁぁぁ!!!」

 

両腕で一応の防御をするが意味をなすはずもなく。直撃をもらったスパイダーエビルは叫びながら爆発する。レオンは静かに地面へと着地し、爆発したスパイダーエビルの方に目を向ける。その視線は仮面に隠れていて分からないが、どこか憐れみや悲しみを含んでいるようにも感じれた。爆発の中から人間の姿に戻った小原と粉々に砕けたスパイダーアームドチップが姿を現す。小原は掠れた声で怒りを呟く。

 

「くそっ!なんでだ!こいつさえあれば、無敵になれるんじゃなかったのかよっ…!どいつもこいつも俺の事をバカにしやがって…!ふざけ「おい」あ"ぁ"?」

「あんたの味わった苦しみはわかる、なんて偉そうなことを言うつもりはないが、お前は1番最初の罪を犯した時からずっとあんたはただの恩人にまでも復讐をしようとしてたんだぞ。あんたにだって味方になってくれる人の1人や2人はいるんじゃないのか?」

「んなもん…!っ……!「先輩!おつかれさまです!」「自分の試験を顧みずにご老人を助けた君はとても素晴らしい!是非とも我が社で働いてくれないか!?」あ…」

 

冷静さを取り戻した小原は煌に言われて、自分にも味方をしてくれていた人達がいた事を思い出した。素直に自分のことを慕ってくれていた直属の部下達。大切な採用試験の日に重そうな荷物を抱えて辛そうにしていた老人を見過ごせず、助けたために試験に遅れてしまい受験すらさせてもらえず、落ち込みながら帰ろうとしたところに、自ら走って駆けつけてきてくれ褒めて採用までしてくれた社長。今思えば、自分が会社で追い詰められていた時も部下や社長だけは最後まで味方でいてくれていた。そのことよりも一瞬で多くの人が自分を罪人扱いしてきたことへの怒りで我を忘れてしまっていたのだ。

 

「そうだ…あいつらや、社長さんは…最期まで…俺の事、見ててくれてたんだ…なのに俺、そんな人達にまで酷いことしちまった…。う…うわぁぁぁぁ!」

「どんなに絶望的な状況になったとしても自分のことを心配して手を差し伸べてくれる人は絶対にいる。あんたはそれに気づけなかっただけさ。おい、優男。逮捕するんだろ?」

「え?優男って俺の事すか!?ったく…ハイハイ、さっさと逮捕すればいいんでしょー。15時37分、連続殺人及びその他の罪で現行犯逮捕。」

 

大人しくなった小原は手錠をはめられ、 駆けつけたパトカーに橘と共に乗って警察署へと向かっていった。その場には煌と麗奈だけが残っていた。麗奈は2度目も助けてくれたことについて煌にお礼を言う。

 

「助けてくれてありがとうね。あなたのおかげでより多くの犠牲者が出ることは無かったし、小原も自分の誤ちに気づけたみたいだし。何から何まで助けられてばっかりね…。」

「俺はただ頼まれたことをやっただけだ。別に礼を言われることじゃあない。前の時に逃がしてなければ今日の惨状は起きなかっただろうしな。」

「何よ!?人がせっかく下に出てお礼言ってるんだから、素直に受け取ったらいいでしょ!?このツンデレ!」

「はぁ!?なんで今のでツンデレになるんだよ!俺がいつお前の前でデレたんだよ!?訳の分からないこと言うな?この男勝り女!」

「なんですって…!素直に折れてやっつけてくれたんだから十分デレてるじゃないのよ!あとお前ってなによ、お前って!私にはちゃんと「麗奈」って言う名前があるの!わかったなら名前で呼びなさい!あと、男勝りは一言余計よ!」

「それのどこがデレてるんだよ!?それに、お前みたいに偉そうなやつは「お前」で十分なんだよ!それに、さっきの優男の使いかただったり今のキレ方的に男勝り以外の何物でもないだろうが!」

 

せっかくひと段落したというのに子供のような口喧嘩を始める2人。口論して疲れたのか2人とも肩で息をしている。

 

「「ハァ…ハァ…」」

「はぁ、わかったよ…素直に受けとりゃ良いんだろ?」

「そうよ!最初からそうしなさいよ…。もう…あ・り・が・と・う!」

「ハイハイ…どーいたしまして。もう帰る。お前といると無駄に疲れるしな。」

「ふん!さっさと帰んなさいよ。」

 

煌は現場へ向かう時の同じように手袋をはめ、ヘルメットを被ってバイクに乗り込む。エンジンをかけ、来た道をもどるように帰っていく。そんな後ろ姿を見えなくなるまで麗奈は見送っていた。

 

「獅子崎煌…か。素直じゃないけど、面白い人ね。」

 

そう一言呟くと、新たに迎えに来ていたパトカーに乗り込み警察署へと帰って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あの男じゃあ、大したことはできなかったか…。最初から期待はしてなかったが想像以下だったな。まぁ、獅子座の戦士の戦いが見れただけでもよしとするか。」

 

その戦いを遠いビルの屋上から見ていた1人の男がいたが、誰も気付くことは無かった。




次回の仮面ライダーレオンは?
「獅子崎って、あの超有名な資産家の!?」

「あなたのおかげで色んな悩みが解決出来て助かってるのよ!」

「俺はお前のせいで悩みが増えまくりだよ…」

「随分と手こずってるようだし、手を貸してやろうか?」

「変身!」

2人目の仮面ライダー登場!?

つづく


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第三話

かよです。
今回は少しだけ2人目のライダーを出すつもりです。
あと、話数の名前を変えました。色々手探りでやってるので、気になることがあったら遠慮なく指摘して貰えるとありがたいです。
どうぞ!


深夜の街中でレオンとヘッジホッグエビルは戦っていた。少し離れたところでは麗奈が戦いの行方を見守っていた。ヘッジホッグエビルの飛ばしてくる針のせいで煌は近づくことが出来ず、苦戦していた。

 

「ヒャッハー!串刺しにしてやるぜぇ!!」

「ふっ!チッ…くそ…!めんどくさいやつだな!」

 

最初は得物の剣で針を受け流しながら近づくことも考え実行してみたが、予想より攻撃の密度が濃く、失敗に終わってしまった。今のレオンは誰が見ても防戦一方と答えるような状態だった。

 

「ちょっと!何やられそうになってるの?さっさと倒しなさいよ?」

「お前がなにかするわけじゃないんだからちょっと黙っててくれ!」

「オラオラっ!」

「!くそっ!」

「何よ!心配して声掛けてあげたのに!黙ってろ、なんて言うことないじゃない!」

「今のどこが心配してるのか全くわかんないが…まぁいい。こいつを使ってみるか。」

 

《LUPUS》

煌はそう言って新たに「おおかみ座」のアームドチップを起動する。獅子座のチップとおおかみ座のチップを交換しレバーを押し込む。すると、レオンに鎧が追加で装着されていく。

《CROSS UP》

《Addition of Armor》《LUPUS!》

レオンの他の姿、レオン・ルーパス。両腕に付いた鉤爪と素早い動きを使ったヒットアンドアウェイを得意としたフォームである。素早い動きでヘッジホッグエビルを翻弄しながらも確実に攻撃を重ねていく。

 

「はっ!おりゃっ!」

「ぐおっ!がっ!」

「たく、手間取らせやがって…よっ!」

「ぎゃあ!」

 

地面を転がるヘッジホッグエビル。いきなり逆転されたことにキレたのか、針を地面へと撃ち始める。謎の行動に思わず煌は困惑するが、着弾すると地面が爆発し、目の前が煙で覆われる。

 

「うわっ!………くそっ!逃げたのか。」

 

煙が晴れて辺りを見回すがそこにはもうヘッジホッグエビルの姿はなかった。煌は変身を解除し、使っていたおおかみ座のアームドチップを見つめる。

 

「やっぱり、こいつじゃ決め手にかける「ちょっと!」痛てぇ!」

「何やってるの!姿まで変えといてなんで逃げられてるのよ!?また探すところからになっちゃうじゃない」

「逃がしたことは素直に謝るけどよ、何も引っぱたくことはないだろうが!そもそも、今俺が持ってるアームドチップとあいつの能力は相性が悪いんだよ。あいつに強いやつ呼んだからこの街に来るまで待ってろ。」

「はぁ、わかったわ。その代わりその人が来たら私にも連絡ちょうだい。」

「わかったからもう帰っていいか?」

「いいわよ。ありがとう。お疲れ様。」

「あぁ」

 

煌は少し気だるそうにしながらもバイクに乗り帰っていく。麗奈は橘が迎えに来るまでの少しの間1人だ。ふと、人の気配を感じ後ろに振り向くが、そこには誰もいなかった。怪人を追いすぎているせいで余計に気を張っていたのだろう。

 

「先輩〜!おまたせっす。」

 

あまり気にすることなく、麗奈も残りの仕事を片付けるために警察署へと帰って行った。

 

 

翌日

麗奈は零士と共に居た。麗奈がどこかに行くための用意をしていたので、零士はふと首を傾げる。

 

「あれ、先輩?今日外へ出る日でしたっけ?」

「いや、違うけど…」

「なら片付け手伝ってくださいよ〜。少ない人数で部署異動させられて人手が足りないんすから。」

「あ、あなたも行きましょ!ね?」

「え?ち、ちょっと…!」

 

麗奈は零士を半ば強引に連れて出かけて行ってしまった。麗奈は零士と一緒に表札に獅子崎と書かれた以前にも訪れた豪邸の目の前に居た。ここに連れてこられたことに零士は純粋に疑問が浮かぶ。

 

「なんでここに来たんすか?それに道にも迷うことなくすんなり来たし。」

「まぁ、いいからいいから!」

 

そういうと麗奈はいつもよりも少し明るい声でインターホンを押す。少しすると、インターホンから前と同じ執事の人の声が聞こえてきた。

 

「はい、獅子崎ですが。」

「こんにちは迅さん、早乙女です。」

「早乙女様でしたか。どうぞお入りください。」

 

零士はいつからこんなに親しくなったんだろう?と思いながらも案内されるがまま屋敷の中へと入っていく。てか、あの執事の人の名前迅って言うんだな、なんても思っていた。案内されたのは前に訪問した時と同じ部屋。自分たちが来ることを知っていたかのように紅茶が2つ用意してあった。

 

「煌様を呼んできますので、少々お待ちください。」

「はい、わかりました。」

 

そう言って迅と呼ばれた執事の人は部屋から出ていく。空いた時間で零士は麗奈に質問をする。

 

「なんか、いつの間にか執事の人と仲良くなってません?何かあったんすか?」

「ん?えぇ、まぁそうね。もう少ししたら理由がわかるから待ってて。」

「はあ…?」

 

質問をしたのに曖昧な答えしか返されなかった零士はモヤモヤしていると、煌が部屋へと入ってくる。が、その顔はあからさまに嫌なものを見た時の顔だった。

 

「お前…今日も来たのか…」

「いいじゃない。あなたのおかげで色んな悩みが解決出来て助かってるのよ。」

「こっちはお前のせいで悩みが増えまくりだよ…」

 

いつの間にくだらない話をする間柄になったのか。「今日も」とはどういうことなのか。零士の中に更なる疑問が浮かんできた。

 

「あの〜、色々と聞きたいんすけど…」

「お前は、優男か。なんだ?」

「また優男って…そんなことより、2人はいつの間に仲良くなったんすか?それに、今日もってどういう…?」

 

零士にとっては素朴な疑問だったのだが、煌にとっては聞かれたくない事だったのか、あからさまに嫌そうな顔をする。どういうことだ?と思案していると煌が口を開く。

 

「お前、こいつの部下なんだろ?ちゃんと上司が何してるのかくらい知っとけ。」

「え?」

「こいつはな、あの日以来スターエビルがやったであろうな事件が起きる度に家に来るんだよ。今も一体追っててな。それで昨日も家に来た。」

「なるほど…って、えぇぇぇぇ!!」

「ちょっと橘、静かにしなさいよ。」

「いやいや、先輩あの日からずっと来てたんすか!?どうりで意味わかんない時間帯に迎えに呼ばれることが増えたと思ったら…」

 

麗奈があの日以降頻繁にこの家に来ていたことを初めて知り、零士は本気で驚く。色んな時間にいなくなっては迎えに呼ばれることが増えていた理由がやっと理解出来た。相変わらずこの人は無茶苦茶やるな、と思っていたら麗奈の携帯がなり始める。

 

「はい、早乙女です。っ…わかりました。一緒に向かいます。」

 

電話に出る時も失礼も言わなくなるくらい本当に馴染んでるんだな〜と思っていたら、麗奈が2人に声をかける。

 

「煌くん、橘、エビルグラムが現れたわ。行きましょう。」

「あいつか?」

「えぇ、そうよ。」

「わかった、すぐに向かう。」

「ほら、私達も行くわよ?」

「あ、はい」

 

前と同じように煌はバイク「ソニックレオン」に乗り、2人は乗ってたパトカーで現場へ向かう。

 

 

 

 

 

***

 

現場へ着くと、ヘッジホッグエビルが暴れていた。前に見た小原と違い、闇雲に暴れている印象を受ける。

 

「見た感じチップに呑まれたか…」

「え?」

「精神的に弱ってたりすると、アームドチップに理性を奪われて、内蔵されたデータのままに本能で暴れるようになるんだ。ま、止めることに変わりはないけどな。」

 

そう言うと、煌はベルトを取り出し腹部に当てる。

《クロスドライバー》

アームドチップをセットして、ポーズをとり、レバーを押し込む。更に、姿を変える覚悟の言葉を叫ぶ。

《LEO》

 

「変身!」

 

《CROSS UP》

《Crimson head》《LEO〜!》

煌は仮面ライダーレオンへと変身する。

 

「行くか…はぁ!」

 

レオンはヘッジホッグエビルの方に向かうが前と同じように飛ばしてくる針のせいで攻めあぐねる。

 

「グギャァァア!」

「ぐっ!うわぁ!」

 

流石のレオンでも立て続けに撃たれる針を防ぎきれずに食らってしまい、大きく吹き飛ばされる。遠くから新たにバイクのエンジン音が聞こえてくる。音のするほうを見ると青年が1人こちらへやってきた。そのままヘッジホッグエビルへとぶつかり、レオンを援護するような形になる。

 

「やっと来たのか。遅せぇよ。」

「もう少しゆっくりでもいいかと思ったんだが、誰かさんがかなり苦戦してたみたいなんでな。」

「うるせぇよ、魁。」

 

魁と呼ばれた青年はバイクから降り、レオンとヘッジホッグエビルの間に立つ。

 

「ちょっとあなた!そこは危ないわよ!」

「刑事さん!心配しなくても大丈夫だぜ。俺もこいつと同じだからな。それに、俺にはちゃんと牡牛間魁(おうしま かい)って名前がある。」

 

そう言って魁が取り出したのは、煌が使用しているものと同じクロスドライバーだった。

 

「え、嘘!?」

「マジ?2人目?」

「そう、俺も煌と同じ、星の戦士「仮面ライダー」ってわけよ。ま、みてな。」

 

《クロスドライバー》

 

魁は手に取ったおうし座のアームドチップを自分の前に突き出し、起動する。

《TAURUS》

ベルトにセットしてポーズをとり、姿を変える覚悟の言葉を叫び、左手でレバーを押し込む。

 

「変身…!」

 

《CROSS UP》

《Deep blue giant horn》《TAURUS!》

変身が完了し、そこに立っていたのは1本の槍を携えた牛がモチーフの蒼い鎧の戦士である。今2人目の星座の戦士『仮面ライダータウレス』の正体が明らかになった瞬間であった。

 

「さぁ、やるか。」

つづく

 




2人目の仮面ライダー、タウレスが出てきました。名前の通り、牡牛座の戦士です。次回はタウレスの活躍を書きます。
Twitterのアカウントを新しく作りました。色々とツイートしていくつもりなのでフォローしてくださるとありがたいですm(_ _)m
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第四話

かよです
今回はタウレスメインになります。


「さぁ、やるか。」

 

一言呟くとタウレスはヘッジホッグエビルへと向かっていく。ヘッジホッグエビルは針を放って攻撃を仕掛けるが、タウレスは豪快ながらも確実に槍を振り回して針を防いでいた。そうしてヘッジホッグエビルに近づくことが出来た。

 

「おらぁ!」

「ギャアァァァ!」

「ふっ。まだまだ行くぞ!」

「ギヤッ!グギャア!」

「凄い…」

「圧倒してるっすね…」

 

タウレスはヘッジホッグエビルに反撃の隙を与えぬように攻撃し続ける。レオンとタウレスには2つ違いがある。1つ目は得物だ。レオンが片手剣なのに対し、タウレスは先が2つに分かれた大型の槍。リーチが長いことで近接戦闘の手段が素手しかないヘッジホッグエビルは一方的に攻撃を食らうしかなかった。もう1つは戦闘スタイル。レオンの戦闘スタイルを一言で表すなら「華麗」、タウレスの戦闘スタイルを一言で表すなら「豪快」が1番しっくりくるだろう。レオンが片手剣を用いての相手の隙を着いたりカウンターをしながら戦うのに対し、タウレスは大きな槍を振り回して攻撃することでそもそも相手に攻撃の隙を与えない、といったスタイルなのだ。針を放っての攻撃がメインなヘッジホッグエビルにはタウレスの方が相性がいい。前の戦闘でそれに気づいた煌は魁に連絡をしていたのだ。

 

「ふっ…!おらよっ!」

「ギャアァァ!」

「こいつで終いにしてやる。」

 

《TAURUS STAR Destroy》

タウレスはベルトのレバーを2回押し込む。すると、持っている槍にエネルギーが溜まっていく。タウレスは2度大きく槍を振り回して攻撃をし、その後ヘッジホッグエビルに槍を突き刺す。

 

「ふん!ふんっ!おらぁっ!!」

「ギャアァァァ!!!」

 

攻撃を喰らいまくって既に満身創痍だったヘッジホッグエビルは、必殺技を諸に喰らい爆散する。

 

「よし。終わりだな。」

 

そう言ってタウレスは変身を解除する。そこへ煌、麗奈、零士が近づいていく。

 

「よう、魁。その豪快さは相変わらずみたいだな。」

「煌こそ、相変わらずチマチマした攻撃ばっかだな。」

「うるせぇよ。ま、今回は素直に助かった。おまえが戻ってきてくれたおかげでよりエビルグラムの討伐がやりやすくなるな。」

「ま、そのつもりできたしな。これからまたよろしくな。」

「えっと…盛り上がってるところ悪いんだけど、あなたの名前を聞かせてくれる?」

「お、悪いな姉ちゃん。さっきもチラッと言ったが、俺の名前は牡牛間魁。煌と同じ星座の戦士、仮面ライダーさ。」

 

麗奈と零士の2人は新しく出てきた「仮面ライダー」という単語に困惑する。

 

「「仮面ライダー?」」

「おう。人々の自由の為に戦う戦士のことを仮面ライダーって言うらしいぜ。自分のこと通りすがりだって名乗るやつが言ってたな。」

「へぇー。それより、その、あなた達仮面ライダーってこれで全員なの?」

「いや、ライダーは他にもたくさんいる。が、そのことを話そうとすると結構長くなるからな。煌の家にでも行ってゆっくり話そうぜ。」

「は?おい勝手に…「よし、そうと決まったからにはさっさと行くぞ〜!」……はぁ…」

「煌さん、ドンマイっす。俺も先輩で同じ気持ち味わってるっすから…。」

 

ライダーの2人はそれぞれバイクで、麗奈と零士はパトカーで再び煌の屋敷へと向かった。

 

 

 

***

 

 

 

「「「お邪魔しまーす。(!)」」」

「ただいま。」

「「「「「「「煌様!おかえりなさいませ!!」」」」」」」

「「!?……たくさんのメイド!?」」

 

玄関へ入ると、綺麗に並んだたくさんのメイドが4人を出迎えた。初めて見た光景に麗奈と零士の2人は驚いてしまう。

 

「相変わらずでっかい家だな!」

「まぁな。それより、紗奈。迅はどうしたんだ?」

「迅さんは料理長の村田さんと買い物に出かけております。」

「そうか。出迎えありがとさん。」

「いえ、この家に使えるメイドの長として当然のことです。」

 

紗奈と呼ばれた女性は、煌の労いの言葉にも表情を変えることもなく淡々と言葉を発する。

 

「少しは笑ってくれてもいいんだぞ?」

「従者である私には笑顔など不要です。」

「まぁ、紗奈がそう言うなら無理強いはしないけどさ。それより、例の部屋にこの4人で行くから誰も近づけないようにしてくれ。」

「かしこまりました。後でお茶をお持ちします。」

「あぁ。よろしくな。じゃ、行くか。」

 

紗奈と煌は会話を交えると、紗奈は去っていく。煌は3人に声をかけ、前とは違う屋敷の奥の方の部屋へと案内する。その途中零士が煌に質問する。

 

「あの〜、ふと気になったんすけど、煌さんってあの資産家さんだったりします?」

「そうだが、どうかしたのか?」

「いや、仮面ライダーって方に気取られてましたけど、獅子崎って苗字どっかで聞いたことあるな〜って思って。」

「何よ橘、煌くんってそんなに有名なの?」

「先輩知らないんすか?資産家の獅子崎って言ったら国でも有数の金持ちっすよ。色んな事業もやってるしで経済学ぶ時は1回は名前聞きますしね。」

「ふ〜ん…。こんな毒舌ツンデレ男がそんなに有名なのね。」

「男勝り女刑事に言われたくねぇよ。」

「なんです…「着いたぞ」え?」

 

そう言って着いたのは行き止まりだった。魁が壁の1部分にアームドチップをかざすと地下への階段が出てくる。4人は出てきた階段を降りていく。奥にはなんと、ラボがあった。一見すればただのラボに見えるが、よく見るといくつかアームドチップが置いてあったりする。

 

「ここは?」

「まぁ研究室兼秘密基地みたいな感じだな。ここなら話も聞かれないし、色々と物も揃ってるからな。」

「さっき俺たち戦士について聞いてきだろ?それに答えるためには星の鎧がどうやって作られて、受け継がれてきたのかも説明しなきゃと思ってな。」

 

そう言うと、煌と魁の2人はベルトとアームドチップをテーブルの上に置く。今、現代を生きる星座の戦士からその生い立ちが語られようとしていた…。

 

 

 

***

 

 

 

「まず俺たちが使ってるこの鎧がいつ作られたかって話なんだが…」

「正確な時期はわかってない。ただ、紀元より前に作られた可能性が高いな。」

「そんなに古いもんなんすね、これ。」

「古いものなのはわかったとして、誰が何のために作ったのよ?」

「誰なのかもはっきりとはわかっちゃいねぇんだが、当時の権力者達が錬金術師に作らせたとしか言えねぇな。」

「おそらくだが理由は、星が神聖視されてたからだろう。」

「「神聖視?」」

「あぁ。星座ってのは結構古い歴史があってな。ほとんどの星座は大昔に作られたと言ってもいい。その中でも特に当時の空に街を囲むように作られたのが代表的な12星座って訳だ。」

 

麗奈と零士の2人は話のスケールの大きさに少し困惑する。煌と魁は気にすることなく話を続ける。

 

「んで、めちゃくちゃ拝まれてた星座を鎧として身に纏うことで自分の権力を高めようとしてた、ってわけだな。」

「本当に権力者なんて12人も居たの?」

「いや、権力者は6人だけだ。だから、権力者が纏っていた鎧は6つだな。」

 

麗奈は先程と話が違うことに首を傾げる。煌と魁はそれに気が付き、説明を続ける。

 

「残りの6つはな、錬金術師達自身が纏ったんだよ。」

「錬金術師が?自分たちも偉くなりたかったんすか?」

「いや、違う。錬金術師達が追加で鎧を作ったのは権力者達の争いを止めるためだな。」

「「争いを…止める?」」

「そういうこった。推測にはなるが、権力者達の争いでかなり国が傾いたんだろ。んで、目には目をって感じで自分たちも鎧を作って戦ったんだろ。」

「結局、6人のうち4人の権力者は改心して残った2人の権力者と戦ったらしいしな。」

「へぇ〜。なかなか物騒なものなのね。」

 

生い立ちは理解出来たが、すると次の疑問が浮かんでくる。

 

「そのあとはどうなったんすか?」

「その鎧が今はどうなってるのかも知りたいわ。」

 

話を続けようとすると、コンコン、とノックの音が聞こえてくる。中にトレーを持った紗奈が入ってきた。

 

「煌様。お茶をお持ちしました。」

「ありがとな。話して喉が乾いてたとこだ。」

「ちょっと!この子はこの部屋のこと知ってるの!?」

「あぁ。紗奈は他のメイドと違って代々家に使えてきた家の人間だからな。お前らより色々と知ってるぞ。あとは、迅くらいか。」

「あの執事さんまで…世間は狭いっすね…」

 

紗奈は皆にお茶を出したらすぐにいなくなってしまった。煌は出されたお茶を1口飲むと話を続ける。

 

「んで、鎧のその後についてだが…その後は世界各地に封印された状態でばらまかれたな。」

 

適当な扱いに驚き、麗奈と零士は思わずお茶を吹く。

 

「ゲホッ…。そんなに適当なの?」

「とは言っても封印自体はかなり強力だからな。」

「明確かつ強い意志とかがないと持ち帰ることはできても使うことはできねぇしな。」

「だから、そこは安心していいと思うけどな。」

「なるほどね。とりあえず納得したわ。」

「とは言っても気になることはまだありますけどね。」

「それについてもちゃんと話してやるよ。」

「あぁ、姉ちゃん達を巻き込んじまったからな!」

 

星座の鎧について、戦士たちの説明は続く……。

 

 




この作品の仮面ライダーの生い立ち的なものが分かる回です。多少ガバガバなところもありますが…おいおい辻褄が合うように出来ればいいかな、と思っています。
次話も説明がメインになると思います。


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第五話

かよです。
ほとんど前回の続きになると思います。


麗奈と零士は、星座の戦士「仮面ライダー」が使用している星の鎧が作られた経緯を知ったところだった。次はそのその鎧がどのようにして今まで受け継がれてきたのかについて話が始まるところだった。

 

「次に鎧がどんな風に伝わってきたかだけど、過去にも色んな思想や立場の人間が鎧を手にしては地球を守ったり、戦士同士で争ったりしてきてたな!」

「大抵の場合、力に溺れるのは1人か2人くらいで、残りの奴らが数の差でササッと終わらせるんだが、過去には戦士達が半分ずつに分かれてかなり大きな戦いになったこともあるらしくてな。」

「ま、今の俺たちがやってんのは、エビルグラムの討伐と道を踏み外したやつを他の奴らと一緒に止めることくらいだな。」

「なるほどね…」

「いや、色々と知れて良かったっす。」

 

一区切りついたところで、4人はそれぞれ一息つく。零士はもうひとつ質問をぶつけた。

 

「そーいや、エビルグラムってそもそもなんなんすか?あと、ソイツらが使ってるよくわかんないアームドチップも。」

「エビルグラムってのは、簡単に言えばアームドチップを直接人体に作用させた奴らの総称だな。直接やっちまうと、少しずつだけど挿し込んだアームドチップのデータに体が蝕まれちまうんだよ。」

「そんなに怖いもんだったんすね…」

「あぁ。それに、使ったやつの精神状態によってはチップのデータに体をのっとられて、人としての人格を失うこともある。」

 

麗奈と零士は少ないとはいえ、エビルグラムを見てきたが、あの怪人がそこまでリスキーなものであることに衝撃を受けていた。

 

「奴らが使っていたアームドチップは、鎧じゃなくて、追加装甲に近い感じだな。」

「実際のところ、昔の状態のまま受け継がれているのは俺たちが知ってる限りだと、12星座の鎧しか知らなくてな。他のはだいたい出力抑えて作られた模造品てところか。それに、模造品の方は、生物、非生物問わず作ることができる。」

「人体に直接作用させればエビルグラムになって、俺たちが使えば装甲や武装が増えるって感じだな。」

「ちなみに、俺たちのは別の仲間が各地を回ってデータ集めから作成までやってくれてる。」

 

そこまで聞いた上で、麗奈にひとつ疑問が生まれる。

 

「小原がアームドチップを持ってたけど、あれも小原がが作り出した、ってこと?」

「………いや、あれは誰かから譲り受けた可能性が高い。」

「実は、ごく稀にアームドチップが自然に生まれることはあったんだが、1年に1、2回くらいだったんだ。それがココ最近は1月に何回かのペースになってんだよ。」

「だから俺たちは、何者かがアームドチップをたくさん作り出し、それを一般人に売りさばいている可能性が高いとみててな。」

「今はさっきのやることにプラスアルファでその売人探しもやってる感じだな!」

「ま、そっちに関しては収穫はゼロなんだけどな。」

 

そう言うと、麗奈の携帯がなる。

 

「はい、早乙女です。」

『馬鹿者!長い時間も仕事を放ったらかしてどこで油を売っとる!早く署まで戻ってこんか!』

「すみません…!全力で戻ります…!……橘!帰るわよ!」

「あ、はい。んじゃあ、煌さんに魁さん。色々とお話ありがとうございました。」

「おう、気にすんな!」

「お礼と言っちゃなんですけど、俺と先輩新しく出来た『未確認生命体対策課』に異動になったんすけど、署まで来てくれるか、連絡くれればこれまでの元エビルグラムとかからの情報とかお話できると思うんで気軽に使ってく「橘!早く来なさい!!」……じゃ。今日はこれで。」

「これから世話になる。」

「今までの恩返しってことで。そんなに気にしないでください。」

 

2人は慌ただしく走りながら警察署まで帰って行った。

 

2人だけが残ったラボに静寂が訪れる。そこへ迅と紗奈がやってきた。

 

「御二方、少し早いですが、お食事の用意が出来ました。」

「煌様、少し疲れていらっしゃるのがお顔に出ております。今日は早めにお休みになってください。」

「なぁ、お前らはどう思った?」

「私は、面白いと思いますよ?」

「紗奈は?」

「別に面白い事など何もありません。むしろ何も起こって欲しくないです。」

「俺も面白そうだと思ったけどなぁ…。煌は?」

「その時になったら、としか言えないな。」

 

そう4人が会話していた部屋の中にあった1つの桃色のアームドチップが淡い光を放っていた…。

 

 

 

***

 

 

 

「くそ!なんでみぽりんは僕の告白をOKしてくれなかったんだ…!」

 

アイドルオタクの根木猛(ねぎ たけし)は苛立ってた。その理由は単純。自分が長年推してきたアイドルに一世一代の気持ちで告白をしたが、バッサリと切り捨てられてしまったのだ。周りにいたオタク仲間からも嘲笑されてしまい、恥ずかしさのあまり逃げ出してきたのだ。今は薄暗い路地に居て、ゴミ箱を蹴って八つ当たりをしている。するとそこへ、声が聞こえてくる。

 

「ねぇねぇ、おにーさん!なんでそんなにおこってるの〜?」

「ん…?小さな女の子?君、こんなとこにいたら危ないよ。お家に帰った方がいいよ。」

「そんなことはどうでもいいの〜!なんでおにーさんはおこってるの?」

 

猛は困惑した。こんな人が寄り付かないような場所に小学校高学年くらいの少女が一人でいて、更には自分に声をかけてきたのだから。明らかに普通ではない。しかし、失恋により弱っていた猛は藁にもすがる思いでその少女に愚痴を言い始めた。

 

「実はお兄さん、ずっと好きだった女の人がいてね、告白したんだけど、振られちゃったんだよね…。」

「そうなんだ!おにーさんかわいそう…。そんなおにーさんにはこれをあげる!」

 

そう言って少女が取り出したのは手のひらサイズの電子版のようなものだった。

 

「これ、なに?」

「おにーさんのやりたいことができるようになる『力』だよ…?」

「え…?」

「これがあれば、好きな人と一緒になることだってできるし、一緒になったあとも幸せにナレルンダヨ!」

 

猛は魅せられたかの様に電子版を手にして去っていく。

 

少女の元に1人の青年が近づき声をかける。

 

「あんな男にアームドチップを使ってもいいのか?」

「人の好きだ、って気持ちはね、案外バカにできないもんだよ〜?」

「ま、人選に関しては俺はお前に文句は言わんさ、メーア。」

「まぁ、今回はあたしに任せてよ!ギル。」

 

そう言って2人は暗い闇の中へ消えていった……。




少し短いですが、説明に関しては連続で見れた方が頭に入りやすいかと思ったので、連続で投稿させてもらいます。
新たなアームドチップが光ってたり、最後に出てきた2人はなんなんでしょうね?(白目)
感想、お気に入り登録等よろしければお願いしますm(_ _)m


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第六話

かよです。
少しずつではありますが、UAが増えているのを見て色んな人が見てくれているんだな、と嬉しく思いました。
今回はレオン・タウレスコンビによる初戦闘があります。
では、どうぞ。


「こっちは異常ないわよ!」

「こっちも大丈夫っすね」

「こっちもなんにもないぞ!」

「……異常なし…はぁ…」

 

煌、魁、麗奈、零士の4人はスーツ姿でテレビ局に居た。更に煌はメガネをかけて本人には見えないように変装までしている。4人がこうしている理由は昨日にまで遡る…。

 

 

 

***

 

 

 

煌と魁は警察署による来ていた。とは言っても何か法を犯した訳ではない。先日零士に言われた「未確認生命体対策課」から連絡があって来たのだ。その内容とは『国民的アイドル「高坂美穂」の殺害予告』である。彼女の所属する事務所に匿名で一通のメールがきたのだ。そこで事務所は警察に相談をし、エビルグラムの可能性も視野に入れて、未確認対策課にも護衛をする、といった話が来たのだ。その話を受けた煌と魁は当日の流れを聞きにやってきたのだった。

 

「煌さん!魁さん!こっちっす!」

「入口まで来てもらって悪いな。」

「いえいえ、エビルグラムが犯人だとしたらお二人の力が必要不可欠っすから、これくらいは全然っすよ。あ、ここです。」

 

3人はとある部屋に入る。そこには、麗奈を含め数人の刑事が1組の男女の対応をしていた。

 

「一応ではありますが、最近頻出している未確認の可能性の加味した上で護衛させていただきます。」

「本当によろしくお願いします…!その日はうちの美穂の今後が決まる日なんです!」

「よろしくお願いします…」

「任せてください!私たち対策課には強力な助っ人もいますし、大舟に乗ったつもりでいてください!」

「ありがとうございます!本当によろしくお願いします…!ほら美穂、帰ろう?」

「あ、はい…。お願いします…」

 

そう言って男女はすれ違う形で部屋から出ていった。煌と魁は近くにいた麗奈に声をかける。

 

「よう。来たぞ。」

「今居た女の子が今回の護衛対象なのか?」

「ええ、そうよ。今日本中で人気な『高坂美穂』ちゃん。エビルグラムの可能性も考えて、2人にも護衛をお願いしたいの。」

「おう、いいぞ!頑張ってる人の夢を守るのも俺たちの役目だしな!」

「ところで、一緒に居た男は誰だ?」

「彼は彼女のマネージャーの速水俊介さんよ。護衛してくれるからってわざわざ挨拶にきてくださったのよ。」

「そうか…」

 

2人は近くにあった椅子に座って麗奈から当日の自分の動きの説明はを聞き始める。が、途中で煌が大声をあげる。

 

「おい!なんで俺の役目が『マネージャー見習い』なんだよ!」

「えっと…1人くらいは仮面ライダーが近くにいた方が安心かと思って…えへ?」

「ま、対象を見失うリスクを考えれば、まだ納得できるか。」

「と、とりあえず!今日はこれで終わるけど、何か確認したいこととかある?」

「いや、ないな」

「俺もない」

「それじゃあ、当日にまた会いましょう。」

「あぁ。」

「おう。」

 

 

 

***

 

 

 

と、言ったことがあり、煌と魁はスーツ、更に煌はメガネまでかけて変装していたのだ。煌のストレスは既に限界に達しつつあった。

 

「こら!田中!水を渡す時はすぐに飲めるように蓋を緩めて渡すんだよ!」

「はい…すみません!(くそ、この男…俺の素性を知らないとはいえ、散々偉そうに説教してきやがって…。それにあいつ、何だこの『田中守』って偽名は!俺が怒鳴られる度に近くにいる田中さんまでビビってんだよ!もう少し洒落た偽名付けられなかったのかよ…!)」

「何ボーッとしているんだ!次の場所に早く行くぞ!」

「はい…!わかりました!(くそ、あいつ覚えてろよ…)」

 

と言うふうに煌は既にブチ切れていた。そんな様子を麗奈、零士、魁の3人は少し離れたところから物珍しそうに見ていた。

 

「煌くんが怒られてるところ見るのスカッとするわ〜!普段私にきつく当たってる罰よ、罰!」

「なんか、あの光景に既視感があるんすけど…」

「おい、3人が行っちゃうぞ?追わなくていいのか?」

 

魁に声をかけられて2人は慌てて後を追う。同じ時、煌は速水俊介と高坂美穂と3人で控え室に居た。速水は携帯に電話がかかってきて、話しながら部屋から出ていった。少しの間残された二人の間に静寂が訪れるが、美穂の方から煌に声をかける。

 

「あの…」

「ん?なんだ…ですか?」

「あ、無理にかしこまらなくて大丈夫ですよ。先日、警察署にいらっしゃった方ですよね?」

「そっちがいいなら素でいくぞ。あぁ、確かにいたな。それがどうかしたのか?」

「改めてちゃんと護衛をしてくださってるお礼がしたかったんです。今日は私のワガママのために多くの人が動いてくれていますから…」

「なんで今日にこだわるんだ?あんたほど人気なら今回のイベントに出なかったくらいでも人気が落ちるとは思えないけどな。」

「今日のイベントは父に見てもらうためのものなんです。」

「どういうことだ?」

「えっと、実は両親は私が小さい頃に離婚してて…。父とはその時から1度も会ってないんです。でも、先日ファンの方から頂いたお手紙の中に『小さい頃、迷惑かけてすまなかった…。芸能界に入る夢、叶ってよかったな』とだけ書いてた手紙があって、その夢を知ってるのは父と母だけなんです。それに、デビューしたての頃からいつも手紙と一緒にたくさんのお花をくれてた方との字ともそっくりで…。父が好きだった、このイベントだけの衣装着てパフォーマンスをして恩返しをしたくて…!今日のこのせっかくつかみ取れたチャンスだけは無くしたくないんです!」

 

警察署にいた時も最初話しかけてきた時もどこか自信なさげなイメージを持っていた煌だったが、夢のために信念を曲げないところに関心していた。

 

「そこまで言われちゃあ、叶わないな。」

「え…?」

「あんたのその強い気持ち、気に入った。俺たちが責任もって最後まで守り抜いてやるよ。」

「…っ!ありがとうございます…!」

 

そんな会話をしていると速水が戻ってくる。

 

「美穂、時間だ。今君ができる最大のパフォーマンスをするんだよ。」

「はい!」

「田中、君も付いてこい。」

「……はい。」

 

3人は控え室を後にし、会場へ向かう。その後を麗奈、零士、魁も追う。

 

「狙ってくるとしたらここよね」

「でしょうね。撮影のあとの歌の披露。そこなら人も沢山いて目立たないでしょうからね。」

「んじゃ、気ぃ引き締めていくか!」

 

 

 

***

 

 

 

高坂美穂の撮影が始まった。イベントに出られた喜びなのか、煌が背中を押したからなのかは分からないが、いつもよりも表情が生き生きしていて良い!と速水は絶賛していた。次は抽選によって集められたファンの前でのライブがある。煌達4人を含め、護衛をしていた刑事達はより一層の警戒をしていた。

ついにライブが始まった。1曲目が終わり、盛り上がり始めてきたその時、ステージ脇にて異変が起きた。

 

「おい、ここは立ち入り禁止だぞ!」

「うるさい!僕のみぽりんに会うんだよ!どけ!」

「ぐあっ!」

 

ライブのスタッフを突き飛ばしてステージの上にやってきた1人の男。その光景を見た煌と魁は急いでステージの上まで向かう。その間、男は高坂美穂に話しかけていた。

 

「ねぇ、みぽりん。今日の衣装も可愛いね…。その姿はこんな奴らには見せるものじゃない。僕だけのものだ…。僕と一緒に駆け落ちしようよ…!」

「えっと…どなたですか?」

「…!?酷い!告白までしたのに、僕の想いはまだみぽりんに届いてなかったのか…?ならこれで無理やりにでも…!」

 

男が取り出したのは1枚のアームドチップ。

《Octopus》

それを起動し、右手の平へと突き刺す。姿が変わると、現れたのはタコ型の怪人『オクトパスエビル』だった。

 

「ひっ…!」

「「「「うわぁ!化け物だァ!」」」」

 

ステージに居た美穂は腰を抜かし、客席に居た大勢のファンは各々が慌てながら逃げ始める。その光景を気に欠けることなくオクトパスエビルは美穂の方へ近づいていく。

 

「さぁ、僕と一緒に遠くに行こう…?そして2人だけの愛を育もう…?」

「い、いや!来ないで!」

「そんなこと言わず「「はぁっ!」」ぐわぁっ!」

 

ステージに煌と魁が駆けつけ、オクトパスエビルに蹴りを入れる。オクトパスエビルは飛ばされ、起き上がってキレ始める。

 

「おい!邪魔すんな!」

「ファンだからってここまでやっちゃいかんだろ。」

「彼女のためにも、指1本触れさせないぞ!」

 

2人はドライバーを取り出し、腹部に当てる。ベルトが巻かれ、装着が完了する。2人はそれぞれのアームドチップを起動する。

《LEO》《TAURUS》

2人はアームドチップをドライバーにセットし、掛け声を叫ぶ。

 

「「変身!」」

 

《CROSS UP》

《Crimson head LEO!》

《Deep blue giant horn TAURUS!》

2人の仮面ライダーの変身が完了する。オクトパスエビルは初めて見た仮面ライダーに困惑する。

 

「お、お前らには用なんかないんだよ!どけ!」

「お前にはなくても、こっちは大ありだよ!オラァ!」

「ぐわぁ!」

 

タウレスがオクトパスエビルの相手をしている間にレオンが美穂の方に駆け寄る。

 

「大丈夫か…?」

「あ、はい!怪我は無いです!」

「?どうした、そんなに大きな声出して」

「えっと…憧れの仮面ライダーさんに会えるとは夢にも思ってなかったので!しかも2人も!」

「そ、そうか…。とりあえず、近くの物陰に隠れてろ。」

「はい…!わかりました!」

 

美穂はステージの脇の方に駆けて行き、レオンはタウレス達の方へと戻る。オクトパスエビルはタウレスに圧倒されていた。

 

「ぐっ…くそ…ならこれだ!」

 

オクトパスエビルが叫ぶと姿が周りの風景に溶け込んでいく。レオンとタウレスは姿を捉えられずに、一方的に攻撃を受けてしまう。

 

「ぐあっ…!」

「ぐっ…!おい煌、どうすんだ。」

「魁、あれを使え。俺はこいつを使う。」

「あれか。それなら確かにいけそうだな。」

 

短い言葉を交わすと、2人はそれぞれアームドチップを取り出す。レオンはおおかみ座、タウレスはくじら座のチップだった。2人は起動し、スロットにセットする。

《LUPUS》《CETUS》

2人はそれぞれベルトのレバーを押し込み、追加装甲を纏う。

《CROSS UP》

《Addition of Armor》

《LUPUS!》《CETUS!》

レオン・ルーパスとタウレス・スィータスが生まれる。タウレスは超音波を用いてオクトパスエビルの場所を探す。

 

「そこだ!」

 

場所がわかったオクトパスエビルに対してレオンは素早い攻撃を繰り返す。形勢が逆転し、オクトパスエビルはボロボロになる。レオン、タウレスはそれぞれレバーを3回押し込む。

《LUPUS》《CETUS》

《STAR Destruction》

 

「ぬんっ!」

「はあっ!」

 

タウレスが強力な超音波でオクトパスエビルの身動きを封じ動けなくなったところに、レオンが両手の鉤爪から斬撃を飛ばし攻撃する。オクトパスエビルに必殺技があたり爆発する。しかし、オクトパスエビルは倒せていなかった。長身の青年と小柄な少女がオクトパスエビルを庇っていたのだ。

 

「ん?てめぇら、何もんだ!」

「ただの人間、って訳じゃなさそうだがな…。」

 

長身の青年から順に口を開く。

 

「悪いが、この男をここで倒される訳にはいかなくてな。」

「だからね!あたし達がわざわざ助けに来てあげたの!」

 

そういうと青年はスロットの付いた剣を、少女はスロットの付いた銃を取り出す。そして、2人がそれぞれもう片方の手に持っていたのはアームドチップだった。

 

「…っ!」

「お前らもエビルグラムってわけかよ!」

「下等な怪物と一緒にするな。」

「あたし達の方がずっと強いの〜!」

 

2人はアームドチップを起動し、スロットにセットする。

《BAT》《TIGER》

 

「「着装」」

 

2人はおどろおどろしい音と共に暗闇に包まれ姿を変える。そこに居たのはエビルグラムとは違うかなり星座の戦士達に近い姿をしたコウモリと虎の怪人だった。

 

「俺たちはエビルマスター。」

「エビルグラムを束ねる者たちってわ・け♪」

 

2人の仮面ライダーとエビルマスターの戦いが始まろうとしていた…




タウレスの新フォームが出たかと思ったら、なんか別の奴らも出てきちゃいましたね。一体どんな力を持つのか。その謎は次回明かされます。


では、次のお話で…。


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第七話

かよです。
前回の続きになります。


「「着装」」

 

 

「俺たちはエビルマスター。」

「エビルグラムを束ねる者たちってわけ♪」

 

煌と魁は動揺を隠せないでいた。それもそのはず、自分たちの知り得ない存在が目の前に現れたのだから。自分たちの様にベルトを介してアームドチップの力を扱う「星座の戦士『仮面ライダー』」、もしくは、身体に直接アームドチップを作用させる「エビルグラム」。そのどちらでもない存在が目の前に現れたことで混乱していた。

 

「お前たちはエビルグラムとは何が違うってんだよ!?」

「一言で言えばリスクの有無…か?」

「エビルグラムの様に身体が侵される心配がないってことか…!?」

「そ・う・い・う・こ・と。自分の欲のためにリスキーなことに手を出すおバカさん達とは違うってこ・と♪」

 

少女の方の言葉を煌は聞き逃さなかった。

 

「その言い方、……っ!まさかお前達が一般人にアームドチップを売りさばいていたのか!?」

「売りさばいていたとは心外だな。」

「そうそう!あたし達は欲しい?要らない?って聞いただ・け。あとは色んな人達が勝手に持ってっただけだも〜ん…」

 

まるで自分たちは何も悪いことをしていないと言った様な言い方に煌と魁は怒りを隠せなかった。

 

「勝手に持ってった…だと…?」

「ふざけんじゃねぇ!てめぇらのせいでどれだけの人が犠牲になったと思ってやがる!」

「知らんな。渡した物の使い方まではいちいち追ってないのでな。」

「自業自得ってやつじゃな〜い?」

「てめぇ…!!」

 

レオンはバットマスターの方に爪を振りかぶって攻撃を仕掛ける。バットマスターは少しも焦ることなく剣で爪を受け止める。ならば、と思い高速機動に切り替えるが、それも難なく受け流されていた。

 

「…っ!くそっ!」

「どうした?せっかく速く動けてるのに攻撃自体は単調だな。メーア、やれ。」

「おっけ〜。てりゃあ!」

「うっ…!ぐわぁ…!」

 

今まで傍観をしていただけのタイガーマスターに一撃を貰っただけだが、当たりどころが悪かったのか、変身が解除されてしまう。続いてタウレスも基本フォームに戻り、バットマスターに仕掛ける。豪快な槍裁きも簡単に受け流されていた。

 

「なんでだ!?なんで当たんねぇ!」

「どうした牡牛座の戦士?そんな程度か?…ふんっ!」

「ぐあっ…!」

 

身体に大きな一撃を貰ったタウレスも大きく吹き飛ばされ、変身が解除されてしまう。同じ2対2でもエビルマスターの方が実力では圧倒していた。

 

「……つまらんな。帰るぞ。」

「え〜。もうちょっと獅子座のお兄ちゃんと遊びたかったのに〜。」

「今の時点ではやつは我らの目的の物を持っていなかった。これ以上手の内を晒すのは悪手だ。」

「わかったよぉ…バイバイ!獅子座のお兄ちゃん!今度会う時はもう少し強くなっててね!」

「お前もだ。ついてこい。」

「え?僕も!?」

 

2人のエビルマスターはオクトパスエビルを連れて去っていった。敵がいなくなったことを確認すると、麗奈と零士は煌と魁に駆け寄る。

 

「2人とも、大丈夫?」

「「……………」」

「ちょっと、心配してるんだから少しは「お前に何が分かる!!」えっ…?」

「あ、いや……なんでもない。怒鳴って悪いな。」

 

小さい声で謝ると煌はそそくさと立ち去ってしまった。

 

「あいつは今、自分にキレてんのさ…。」

「自分に、すか?」

 

零士の肩を借りながら魁がつぶやく。その表情は、去っていく煌の背中を見つめていたが、酷く悲しいものを見ている顔だった。

 

「今はまだタイミングじゃねぇし、直接本人が踏ん切りついたら言うことだろうから詳しくはいえねぇけど…あいつは昔にアームドチップ関係で大切な人を何人も失ってる。俺や他の奴らよりもアームドチップへの恨みは何倍も強いはずだ。」

 

魁の口から語られたのは、大雑把ではあるにしても限られた人間しか知らない煌の過去。いつもみたいに棘のある言葉が帰ってくると思っていたが、実際帰ってきたのは、怒鳴り声。麗奈は思慮が足りなかった、と心の中で猛省していた。

 

「だからこそあいつはエビルグラムを倒すことに必死になってた。自分と同じような人間を生み出さないためにな。」

「そっか…。後で謝んなきゃね…。」

 

はなしをしていると、美穂が3人の元へ駆け寄ってきた。

 

「あの…!お二人共、お怪我の方、大丈夫なんですか…?その、手当しますので少し動かないでください…!」

「悪ぃな。本当なら護る側の俺たちがこんなザマになっちまってな。」

「いえ…!お2人が身を呈して護ってくださったから私はどこも怪我をしてないんです!あ、終わりました。」

「そう言って貰えると気が楽になるぜ。できることなら煌にも何か言ってやってくれないか?」

「はい…!もちろんです!」

 

美穂は控え室の方に戻って行った。煌がそこにいるという確証でもあるかのような迷いない行動だった。

 

「っと…。俺たちはあのタコ野郎を探しに行くか。」

「それは大切だけど、身体大丈夫なの?」

「エビルマスター相手はしんどいだろうが、タコ野郎一体ならなんてことねぇよ。」

「そう…。じゃあ、行きましょ。」

 

少し沈んでいる麗奈を見かねた魁は背中をバシッと強めに叩いた。

 

「ひゃっ…ちょ、ちょっと…!」

「あいつが戻ってきた時にあんたが沈んでちゃ不味いだろ?」

「……!そうね、ありがと!」

 

3人はオクトパスエビルを探しに街へ出た。

 

 

 

***

 

 

 

「勢いよく来ちゃったけど、どこにいるんだろう…」

 

美穂はどこに行くべきか迷っていた。控え室で自分に決心させてくれた彼を元気づけようとしたのだが、そもそもどこいったかのアテは全くなかったので、困っていた。

 

「ど、どうしよ「お嬢さん」え?」

 

声のする方に振り向いてみると、そこに居たのはメガネをかけていて、髪は肩までかかっている青年。

 

「困ってるようだけど、どうしたの?」

「えっと、人を探してるんですけど、その人がどこにいるかわからなくて…あはは…」

「お嬢さんが探してる人は多分屋上の方にいると思うよ?あ、そうだ。ついでと言っちゃあなんだけど、その人にこれ、渡してくれない?」

「え、これって…?」

 

そう言って青年が美穂に渡したのは1つのアームドチップだった。見知らぬ青年が手渡してきたことに困惑し彼の方に視線を向けると…。

 

「あれ…?いない…?」

先程まで話していたはずのかれの姿はどこにも見当たらなかった。

 

「と、とりあえず…!屋上、行かなくちゃ…!」

 

 

 

***

 

 

 

「………」

 

その場には風が吹く音しかしていなかった。ふと、背後に気配を感じ素早く振り返る。

 

「っ……!君か…」

 

煌は美穂だったことに安堵すると同時に疑問を持った。

 

「どうしてここに?」

「えっと…手当をさせて頂こうと思って…」

「お願い…しようかな」

 

そう言って煌は近くにあったベンチに座る。手当を受けながら、煌は小さな声で呟き始めた。

 

「護るって言いながら、こんなにボロボロになってて情けないな。」

「もう一人の方もそう言ってましたよ?そんなに気にしないでください。」

 

再び二人の間に沈黙が訪れる。今度は美穂の方から口を開く。

 

「私は、あなたがどんな想いなのか、とかそんなことは全然わからないです。でも、ちょっとだけ怖くなって迷ってた私を『護ってやる』って励ましてくれたのは他でもないあなたです。そんなことを言える人が弱いはずがありません!」

「……!はは…ったく、情けないな。」

 

煌からは元気が感じられるようになった気がした。

 

「悪いな、色々とやってもらって。だが、おかげで迷いが晴れた。」

「それなら良かったです…!あ、これ…メガネをかけて人があなたに渡してくれって。」

「あいつ、戻ってきてたのか。悪いな、助かった。じゃ「見つけたよ…!」っ!?」

 

そこに現れたのはオクトパスエビルだった。

 

「下がってろ…。変身…!」

 

《CROSS UP》

《LEO〜!》

すぐさま変身し、オクトパスエビルへと切りかかる。だが、先程戦った時とは違いオクトパスエビルの攻撃に使われる脚が硬質化していることに気づき、戦いながら質問する。

 

「お前、あいつらに何された?」

「強くしてもらっただけだよ…!おりゃっ!」

「ぐあっ…!さっき貰ったこいつ、早速使わせて貰うか。」

 

煌はアームドチップを起動する。

《SCUTUM》

新たに起動したのは『たて座』のアームドチップ。スロットにセットし、レバーを押し込む。

《CROSS UP》

《Addition of Armor》《SCUTUM!》

新たなフォーム、レオン・スキュータム。おおかみ座やくじら座のアームドチップとは違って見た目が変わる訳ではなく、レオンの左半身に分厚い装甲、腕には盾が装備されていた。

 

「ふん。姿が変わったくらいでなんだってんだ!」

 

オクトパスエビルは脚を伸ばして攻撃をを仕掛けるが、かざされた盾に攻撃があたると、ただカキンっ!と金属同士のぶつかる音がしただけだった。

 

「っ!?」

「そんな攻撃が聞くかよ…!」

 

レオンは剣でオクトパスエビルを切り裂く。硬質化したことで強くなれたと勘違いしきっていたのか、オロオロし始める。

 

「お前に星の裁きを下す…!」

 

レオンはレバーを1回押し込む。

《SCUTUM》

《STAR Break》

 

「はあっ…!」

 

盾による殴打と剣による斬撃の連撃。食らったオクトパスエビルは爆発した。

 

「なんで…僕の愛が…」

「恋ってのは、互いが互いを想いあって初めて成り立つもんなんだよ。バーカ…。」

 

煌は変身を解除した途端その場にへたり込む。そこに、美穂が駆け寄り、少しあとに、街へ言っていた3人もやってきた。

 

「煌、その姿って…」

「あぁ…。あいつも戻って来たっぽいな。」

「何が『戻ってきたっぽいな。』よ、このバカ!」

麗奈は煌の背中を叩く。

「痛てぇ!お前な、こっちは怪我人なんだから少しは優しくしろよ!ったく…心配してたのか…?」

「…っ!と、当然、いつも偉そうな態度でササッとエビルグラムを倒してた人が1回負けて落ち込んでんだから、心配位するに決まってるでしょ…!///」

「何ニヤニヤしてんだ。気持ちの悪い。」

「うるさいわよ!このバカ!!」

 

もう一度麗奈は煌の背中を叩く。

 

「痛てぇって言ってんだろうが…!!」

 

煌の悲痛な叫びと他の人の笑い声が屋上に響いていた。

 

 

 

***

 

 

 

「あ〜ぁ、せっかく強くしてあげたのに…最初より簡単にやられちゃってる〜」

 

メーアは頬を膨らませながら言う。

 

「改造に耐えるだけの執念には目を見張るものがあったが…あの程度の低俗な輩では能力を上手く扱いきれんか…」

 

ギルの方は呆れたふうに言う。そんな2人の元に1つの影が近づく。

 

「何者だ?」

「君たちだよね?一般人にアームドチップをばらまいてるのは」

「その姿……お前は天秤座の戦士か。」

「無視は肯定と捉えさせてもらうよ?」

 

天秤座の戦士は2丁の銃を構え、ギルとメーアに対峙する。

 

「ふん。メーア、闘るだけ無駄だ。引くぞ。」

「え〜、わかったよぉ…。えーい!」

 

メーアは銃を地面に撃ち、牽制した。

 

「っ…!逃げられちゃったか。」

 

天秤座の戦士はスロットからアームドチップを抜き取り、変身を解除する。

 

「ま、良いか。当初の目的は果たせたし、新しく、鎧も3つ、見つかったしね…」

 

そう呟いた青年の手に握られていたのは水色と紫色、白銀色のアームドチップだった……。




なんか、グダグダになっちゃったかもしれません。
では、また次の話で((ヾ( •__•。)


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第八話

かよです。
ざっくりしたストーリー構成考えてたら執筆が遅れました。



「ふっ!はっ!」

「ちっ…!おらっ!」

 

煌と魁は鍛錬をしていた。前回、護衛の以来の際に「エビルマスター」を名乗る者達と戦い手も足もでなかったのだ。そのため、初心忘るべからずということで、それぞれ木でできた剣と槍を使って生身で仕合を行っていた。離れたところでは麗奈と零士、迅と紗奈も見守っている。

 

「ふっ!」

「……っ!セヤッ!」

「ぐあっ…!」

 

魁が煌を制した。一区切りついたと思い、4人は2人の方へ駆け寄ろうとするが…

 

「ま…まだだ…まだ終わっちゃいない…!」

「…!無茶よ煌くん!かれこれ3時間近くやってるのよ!?」

「煌様!さすがにお休み下さい!」

「おい煌!闇雲にやりゃあいいわけじゃねえんだぞ!」

 

煌は震える手足を木剣で支えながら立ち上がろうとするが、他の5人から止められる。煌はそんなことなど気にも止めず魁へと木剣を向ける。

 

「身体はまだ動く…だからまだ「はいはい、いいからさっさと休みなさいって」…うっ…!」

 

煌の後ろに1人の男が現れ、首へと一撃を入れ煌を気絶させる。一瞬の出来事に麗奈と零士は驚いていたが、他の3人は胸を撫で下ろしていた。その男は迅に煌を預ける。迅は煌を抱えて去っていく。

 

「久しぶりに会ったと思ったらいきなりエグいことすんなぁ…蓮」

「お久しぶりです。蓮さん」

「久しぶりだね。魁に、紗奈さん。…と、そちらの2人が協力してる警察の方かな?」

「あ、はじめまして。早乙女麗奈って言います。」

「はじめまして。自分は橘零士です。」

「どうもどうも」

 

蓮と言われたその男は煌や魁は違く、すこし軽い印象を受ける。麗奈は蓮に質問をする。

 

「あなたも、仮面ライダーなの?」

「そうだよ。僕は天秤座の戦士『ライブラ』。あとは、一応技術者でもあるのかな?」

「へぇ、すごいっすね…」

 

蓮はあくまでも謙遜しながら自己紹介をする。魁が思い出したかのように蓮に質問する。

 

「どうだった?何か成果はあったのか?」

「売人の方はあんまりいい情報はつかめなかったけど、鎧は3つ手に入ったよ」

「本当か!?」

「うん。ほら、これ」

 

蓮が4人に見せたのは水色、紫色、白銀色の3つのアームドチップ。その量に4人は驚く。

 

「お前のトレジャー力には毎度驚かされるな…」

「普通、10年に1つ見つかるかどうかの12星座の鎧を短期間で3つも探し出すとは…煌様がお頼みになったのにも納得がいきますね」

「改めて見ると圧巻ね…」

「一気に本物が3つも見れるなんてなかなかレアなんじゃないすか、これ?」

「まぁ、見つけたところで、鎧が誰を選ぶかによっては敵にも味方にも成り得るからね。そんなにメリットにはならないと思うよ。」

 

魁や紗奈は感情を出しながら話しているのに対して、あくまで蓮はひょうひょうと話す。そんな中、魁がとあることに気づく。

 

「なあ、これ…まさか見つかったのか?」

「あ、うん。やっと12星座以外にも遺されてたアームドチップが見つかったよ。」

「……っ!?なんでもっと最初に言わないんだよ!?」

「え、聞かれなかったし、気づいてるのかと思ってたし」

「はぁ…相変わらず言葉足らずなやつだなぁ…」

 

古くからの知り合いに久しぶりにあった嬉しさなのか、魁と蓮の会話が弾む。紗奈は一言失礼します、とつぶやくと煌が寝ている部屋に向かっていった。麗奈は蓮に質問する。

 

「これって、12星座の鎧じゃないの?」

「違うよ。昔に作られた12星座以外のアームドチップの中でも現存してる貴重なやつだよ。これを使えば、おそらく現れた『エビルマスター』?って奴らにも互角以上で戦えると思うよ。」

「本物ってだけでそこまですごいんすね…」

「僕はラボに行って調整なり改良なりやってくるよ」

 

蓮はそそくさといなくなってしまう。残された魁、麗奈、零士の3人もそれぞれ帰ることにした。

 

 

 

***

 

 

 

「煌!お前は逃げるんだ!」

「嫌だよ、俺だって選ばれた戦士なんだ!最後まで戦う!」

「煌、あなたには可能性が秘められてるの。そんなあなたをここで失う訳にはいかない。」

「みんなはどうするのさ!」

「私たちは最後の力で封印をかける。だから煌にはそれを守り続けて欲しいの。お願いできる?」

「そんなの、嫌だ!そうすれば全員いなくなっちゃうだろ…?」

「大丈夫。私たちはどんなことがあっても、星の加護によって繋がっている。だから―――」

「みんな!みんなぁぁぁ!!」

 

 

 

「―――っ!またこの夢か…」

 

煌は目を覚まして1人つぶやく。全身汗まみれで着ていた寝間着も肌に張り付いてくる。手をなにかに握られている感触に気づき、その方向を見ると、紗奈が手を握ったまま寝ていた。そんな姿に煌は思わず笑みをこぼしてしまう。

 

「ん……ん…?あ、こ、煌様!お目覚めになられましたか!?お身体の方は悪いところはございませんか?」

「大丈夫だよ。寝たら良くなった。心配かけて悪かったな。」

「い、いえ...///煌様が謝ることではございません...///」

 

紗奈の顔が赤いことに首を傾げるが、まぁ、いいか、と納得し部屋の入口の方に視線を向ける。

 

「いるんだろ?蓮。入ってこいよ。」

「やぁ、久しぶりだね。あいかわらず部下には甘いところは治ってないみたいだね。」

「言ってろ。そんなことより、帰ってきたってことは何かしらの収穫があったんだな。」

「まぁね。鎧も2つ見つけたし、もう1つ、12個以外のも見つけれたよ。」

「そうか。なら、それをよこせ。早速試し打ちだ。」

「悪いけど、却下」

「なんでだ!?」

 

蓮に頼みをバッサリ切られたことで驚く煌。蓮は呆れたように淡々と理由を述べていく。

 

「今の危ない状態の君に使わせられるわけないでしょうよ。試し打ちしてる暇あるなら完全な状態で戦えるようにしっかり休みなさいって。」

「はぁ…。わかったわかった。」

 

そんな中ブザーのような音が部屋に鳴り響く。

 

「っ!煌様、エビルグラムが現れたようです。」

「よし、じゃあ行く「いいから。怪我人は休んでなさいよ。」………」

「ま、チャチャッと倒してくるからゆっくり休んでてね〜。紗奈さんも煌のことでよろしく〜。」

「かしこまりました。」

 

蓮は軽い態度を崩すことなく、部屋から出ていった。

 

 

 

***

 

 

 

「あれ、魁達も来たんだ。」

「あぁ。オレはともかく、2人は使用者を逮捕しなくちゃならねぇからな。」

「あれって、小原がなってた蜘蛛のエビルグラムじゃない!?」

「なるほどね。じゃあ敵さんは量産に成功したってことか…。じゃあ魁、行こっか。」

「おう!」

 

2人はベルトを取り出し、装着する。

《クロスドライバー》

アームドチップを起動し、スロットにセットする。

《TAURUS》《LIBRA》

 

「変身!」 「変身…」

 

《CROSS UP》

《Deep blue giant horn》《TAURUS!》

《Golden scale》 《LIBRA!》

 

「っしゃあ!んじゃ「はいはい、ササッとやっちゃうよ。」あ、おい!」

 

ライブラは得物の二丁拳銃でスパイダーエビルに銃撃を浴びせていく。スパイダーエビルは近づくことも出来ずにボロボロになっていく。

 

「よし。終わらせちゃうか。」

 

ライブラは、二丁拳銃を1つに繋げてライフル型にし、ドライバーのレバーを1回押し込む。

《LIBRA》

《STAR Break》

 

「はっ!」

 

銃口から大きなエネルギー弾が発射され、スパイダーエビルへと直撃、スパイダーエビルは爆散する。

 

「よし。終わったね。」

「んだよ。俺の出番なしかよ…。っ!蓮、下がれ!」

 

魁に言われて、蓮は素早く魁がいるところまで後退する。そこに現れたのは、エビルマスターだった。だが、前回とは違い全員で4人いる。

 

「お前らは…!まだ居たのかよ!」

「ふん。そもそも2人しか居ないとも言ってないんだがな。」

「そうだよ〜。牡牛座の戦士さんはおバカさんなのかな〜?」

「んだと!?」

 

煽られたことでタウレスが苛立つ。

 

「そんなことより、なんの用?闘るなら容赦しないけど?」

「なに、今日は、戦士共に挨拶しようと思ってな?」

 

そんな言葉に魁と蓮は怪訝そうな表情をする。

 

「改めて挨拶させてもらおう。オレはバットマスターの、『ギル』」

「あたしは〜、タイガーマスターの『メーア』よろしくね!」

「ライノスマスター…『スパルタス』…」

「私はワスプマスター、『ネイ』よろしくね、坊やたち。」

 

4人のエビルマスター達のプレッシャーはとてつもないものだった。今まで相手にしていたエビルグラムとは似ても似つかない明確な敵意。魁と蓮は戦士になってからの歴が長いため、尚更その差を感じ取っていた。

 

「ところで、獅子座の戦士が見当たらないが…何かあったのか?」

「煌は今忙しいんだよね。僕たちだけじゃ不満かな?」

「つまりは彼は来られるような状態じゃないってことよね?」

「さあね。」

 

こういった話術は蓮からしたらお手の物ではあるが、今の状態からしてはただの時間稼ぎにしかなっていない。エビルマスター達の気が変われば、戦闘になることも有り得るからだ。

 

「まぁ、いいか。なら伝言をお願いしようか。『そのうちにお前が大切にしているものを奪い取る』とだけ伝えてもらおうか。」

「「……っ!」」

「ではな。次に会う時は容赦はしないぞ。」

 

そう言い捨てて、エビルマスター達は姿を消す。魁と蓮も変身を解除する。駆けつけた麗奈が魁と蓮に質問をする。

 

「ねえ、煌くんの大切なもの、ってなんなの?」

「今は言えない…かな。それに僕たちが軽々しく言えることじゃないしね。煌が覚悟を決めなきゃしれないと思うよ。」

「そっか…待ってるしかないのね。」

「それにしても…僕たちの代に、歴史にはないエビルマスターとの戦いが始まるのか…。余計な犠牲を出さないためにも、早く決着をつけなきゃな…。」

 

蓮はどこか遠くを見つめながら小さな声でつぶやく。その言葉は吹いていた風に流されて消えていった…。

 

 

 

***

 

 

 

「エトワール様、戻りました。」

「御苦労。」

「お身体の方は大丈夫でしょうか?」

「普段よりは調子がいいな。ところで、お前たちに新たに命令を与えよう。」

「新しい命令…ですか?」

「左様。メーア、ネイ。お前たちは今確認できている3人の戦士たちの相手を引き続き頼みたい。そして、ギル、スパルタス。お前たちには資格者の居ない鎧の回収、もしくは奴らと合流していない戦士を見つけた上での資格者の抹殺・鎧の強奪を頼みたい」

 

4人は目を見開く。今までは確認できている戦士を倒し、鎧を奪うことを目的としていたのに、急ぐかのように自分たちも鎧を探すことになったのだから。しかし、4人は異を唱えることなく、命令を了承する。

 

「「「「かしこまりました。」」」」

「うむ。頼んだぞ。」

 

エビルマスター達の陰謀も刻一刻と始まろうとしていた…。

 




エビルマスター実は4人いたんですね。しかも親玉まで。エトワールというのはフランス語で「星」って意味です。安直すぎましたかね?
お気に入り登録、感想気軽にお寄せください。
では、また次回で。


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第九話

こうやって執筆してみると、脚本家の方の偉大さが身にしみますね…。
第九話、どうぞ。


「今回の上からの命令はこれよ!」

 

麗奈はホワイトボードにバン!と紙を貼る。煌、魁、蓮の3人は貼った紙に顔を寄せる。零士や他の刑事はいそいそとなにかに取り掛かっていた。

 

「こいつは?」

「この男は密輸組織の親玉なのよ。元々銃やら薬物やらを売りさばいてて、逮捕したんだけど、押収されたものの中にアームドチップが見つかったの。それで、残ってる組織の構成員もアームドチップを所持している可能性が高いから、逮捕に協力して欲しい、ってことなの。」

「なるほどな。」

 

麗奈の説明に煌と蓮は納得したような顔をするも、魁が疑問を口にする。

 

「別に、警察が無理に関わらなくても俺ら3人でやれば済む話じゃないのか?」

「上で決まった話だと、チップが排出されたあとは普通の人と同じ扱いにするから令状を持った警察しか逮捕できない、って決まったのよ。」

「そういうことか。」

 

麗奈のごもっともな説明に魁は素直に納得した。続けて麗奈が説明をする。

 

「実は残りの構成員が隠れている場所は洗い出すことができたの。だから、明日の9時に隠れ家に突入することになったわ。」

「わかった。」

「3人ともよろしくね。」

 

そのあとはお開きになり、3人は部屋から出ていく。3人は帰り道、少し焦りが見える顔で話をしていた。

 

「奴らとは別の組織が売り始めるまでの時間が短すぎる…。かと言って…突然量産体制が整ったとも考えにくい。なにか…裏がありそうだね。」

「ま、裏があろうとなかろうと、ぶっ潰すだけだろ、煌?」

「あぁ。チップを悪用する以上は俺たち星座の戦士が裁きを下してやる…」

 

そう話終えると、3人はそれぞれ帰路についた。

 

 

 

***

 

 

 

1つの古い発電所の前にたくさんの警察車両が停まっていた。指揮を任された1人の老齢の刑事が拡声器片手に話し始める。

 

「まもなく突入を開始するが、奴らは以前の小原同様に異形の姿になることが考えられる!もしそうなった場合は意地を張らずに撤退しろ!ここで死ぬ事が我々の仕事ではないぞ!では、突入開始!!」

 

入口から警官隊がなだれ込んでいく。開けた場所に着くと、そこには100をゆうに越えた構成員が居た。警官隊に気付くと、全員がアームドチップを取り出し起動。身体へ挿入する。

《ant》

構成員達が使ったのは蟻のアームドチップ。たくさんのエビルグラムが目の前に現れたことで、警官隊は萎縮してしまう。

 

「退却しろー!!」

 

大きく響いた一言で、警官隊は後ろの方へ素早く退く。同じ場所にたっていたのは煌、魁、蓮の3人だけだった。

 

「なるほど…蟻なら納得いくねぇ…。」

「納得してないでとっとと倒すぞ。」

「どんだけ大勢でも倒すだけだ!」

 

3人はバックルを取り出し、腹部へあてがう。

《クロスドライバー》

ベルトが巻かれた後、それぞれアームドチップを起動しスロットにセットする。

《LEO》《TAURUS》《LIBRA》

 

「「「変身!」」」

 

3人はバックルのレバーを押し込む。

《CROSS UP》

《Crimson head》 《LEO!》

《Deep blue giant horn》《TAURUS!》

《Golden Scale》 《LIBRA!》

3人の星座の戦士が同時に変身が完了する。3人は大群の方へ駆け出す。

 

「ふっ!はっ!」

 

レオンは蹴りを交えながらの剣撃でアントエビルを切り捨てていく。

 

「ぬん!オラァ!」

 

タウレスは槍を大きく振り回しながらたくさんのアントエビルを巻き込むような形で倒していく。

 

「よっと。せいっ!」

 

ライブラは銃撃の他にも回し蹴りや、銃で殴ったりの打撃も交えながら制圧していく。

3人はそれぞれレバーを1回押し込む。

 

《LEO》《TAURUS》《LIBRA》

《STAR Break》

 

「はあっ!」

「せいっ!」

「ふっ…!」

 

レオンは剣から衝撃波、タウレスはエネルギーの溜まった槍、ライブラは放たれた波動で攻撃する。

 

「「「「「「「ギャアァァァァァ!!」」」」」」」

 

アントエビル達は爆散する。

一息つこうとしたところに、上の方向から声がする。

 

「やっぱり、このアームドチップだと、できて時間稼ぎってところのようね…」

「お前は…!エビルマスターだな!」

「あら、覚えててくれてたのね。嬉しいわ。私はワスプマスターのネイ。獅子座の坊やははじめましてね。」

「お前もやられにきたってわけか。」

「あそこまでの数のアームドチップをどうやって揃えたの?」

「聞かれて素直に答えるわけないでしょう?」

 

そこに現れたのはワスプマスターの「ネイ」。エビルマスターが現れたことで3人のライダーは一層警戒を強める。そんな様子を見て、ネイはフッ、と鼻で笑う。

 

「エビルマスターとはいえ、1人で僕たち3人を相手取ることが出来ると思ってるとは案外自信家だね?」

「さすがに私も1人で星座の戦士3人と互角に渡り合えるとは思ってないわよ?でも私、1人じゃないもの。」

「何…?っ!」

 

ネイが一言言い終えると、後ろから現れたのはたくさんの蜂のエビルグラム。再び大群が現れたことで3人のライダーは驚愕する。

 

「言ったでしょう?私はワスプマスター。いわば私は群れを統率する女王蜂と同じ。兵隊程度ならなんのリスクもなしに簡単に生み出せるのよ。うふふ…私の可愛い兵隊たち、行きなさい…。」

 

襲いかかってくるたくさんのワスプエビルと戦闘を始める3人のライダー。その様子をみながら、ネイはブレスを左手首に装着し、アームドチップを取り出す。

《WASP》

 

「着装」

 

そこに現れたのはワスプエビルよりもより、人型に近い姿をした『ワスプマスター』。ワスプマスターは、飛び降りて、ライブラへと襲いかかる。

 

「てやっ!」

「…っ!チッ!」

 

不意をつかれたライブラは攻撃をもろに食らう。攻撃を避けようにも、周りにはワスプエビルがいるため、大きな行動も出来ずに、攻撃をくらい続けてしまう。

 

「はっ…!」

「うぅ、ぐわぁぁぁ!」

「「蓮!」」

 

大きく吹き飛ばされたライブラは変身が解除されてしまう。変身が解けた蓮の前方に落ちたのは水色のアームドチップだった。

 

「っ!そ、それは…」

「あら、これは星座の鎧じゃない。これは頂いていくわね。」

「おい蜂女!それを返せ!っ!ぐわぁぁぁ!」

 

立ち去ろうとするワスプマスターを追いかけようとするレオンだったが、大勢のワスプエビルに背中を晒してしまったことで、後ろから不意打ちを食らってしまう。

 

「じゃあね。戦士の坊やたち。」

 

一言つぶやくと、ネイはいなくなってしまう。レオンは立ち上がってネイを追いかけようとするが、魁に止められる。

 

「煌!追いかけるよりも、こいつら倒しきる方が先だ!」

「っ……!わかった。とっとと倒しきるぞ。」

 

《LEO》《TAURUS》

《STAR Destroy》

 

「「はあぁぁ!」」

 

ワスプエビルの大群に向かってレオン、タウレスの2人はライダーキックを放つ。ワスプエビル達はキックをもろに食らい、爆散する。2人は着地した後、変身を解除する。

 

「蓮!大丈夫か!?」

「僕は大丈夫…だよ。それよりも煌、奪われてしまって済まない…。」

「とりあえずお前が無事でよかったさ。それに、アームドチップを取り返すチャンスは必ず来るだろうしな。」

 

3人で話しているところに、アントエビルになっていた構成員を逮捕し終えた麗奈が駆けつける。

 

「3人ともお疲れ様。蓮くん、大丈夫?」

「僕は大丈夫だよ。警官隊の方は被害は大丈夫?」

「えぇ。3人が早い段階で対処してくれたおかけで、小原野ときと違って殉職者は誰も出なかったわ。3人とも…本当にありがとう…!」

 

そう言って麗奈は深々と頭を下げる。顔をあげた麗奈の目元には涙が溜まっていた。

 

「何泣いてんだよ。涙ってのはもっとおしとやかな人が流すからいいんだぞ。」

「なっ…!私だって泣く時くらいあるわよ!それに、わたしのどこがおしとやかじゃないって言うのよ!?」

「全部だろ。」

「なんですってぇ…!!」

「おい、2人ともコントは辞めろって。」

「「コントじゃない!」」

 

喧嘩を始めた煌と麗奈を見て、魁は呆れ、蓮は笑い始める。笑っている蓮に麗奈が文句を言う。

 

「蓮くんまで私を笑うの!?」

「違うよ麗奈さん。煌、口ではこう言ってるけど、感謝されて照れくさいのと、女の人の涙に弱いだけだよ。」

「えっ?そうなの?」

「なっ…!違ぇよ!おい、蓮!余計なこと言ってんじゃねえよ!///」

「なーに?煌くん。照れてるの?意外と可愛いとこあるじゃない。」

「照れてない!///」

 

いじられ始めた煌は不貞腐れて発電所から出てきたので、外で待機していた零士はかなり困惑してしまっていた。ちなみに、煌はこれからも、麗奈からいじられ続けることとなる…。

 

 

 

***

 

 

 

「エトワール様。ただいま戻りました。」

「遅いぞ、ネイ。」

 

ネイが戻ると、既にほかの3人はエトワールの前に膝まづいていた。4人が揃ったところで、ギルが口を開く。

 

「エトワール様。ひとまず、蟹座の鎧を手に入れることが出来ました。」

「そうか…。ギルよ、よくやったな…。」

「はっ。ありがたきしあ「エトワール様。私も星座の鎧を手に入れてきたわ。」何!?」

 

自分以外も鎧を手に入れたことに驚きを隠せないギル。エトワールはほほう、と顎に手を当てて話し始める。

 

「ネイ、それは本当か。どのようにして手に入れた?」

「天秤座の戦士が手にしておりました。他にも12星座の鎧をすでに所有している可能性が高いかもしれないわ。ちなみに、これは水瓶座の鎧ね。」

 

ネイの発言にメーアがただを捏ね始める。

 

「いいな〜!あたしも星座の鎧欲しい〜!」

「あら、じゃあ今度はメーアも一緒に行きましょう?」

「えっ!?いいの?やった〜!」

 

無邪気に喜ぶメーア。ネイの話を聞いてから考え込んでいたエトワールが口を開く。

 

「ふむ…。ネイの話を聞く限り、存在を確認できている3人の戦士が他の鎧を持っている可能性が高いかもしれんな。しかし、1つ奪われたことで警戒を強めるとも考えられる。しばらくはこれまで通りに動くとしよう。」

「了解しました。」

「ん…」

「おっけーい!」

「わかったわ」

了承すると、4人は立ち去っていく。1人になったエトワールが呟き始める。

 

「ックク…。我が野望の為にも両者共々せいぜい争いあって潰し合うがいいさ…。フハハハハハ…!!!」

 

そこにはエトワール1人の笑い声だけが響いていた…。




蟹座と水瓶座の鎧が奪われちゃいましたね。蟹座の方は突然出てきたのに敵側に手に入れられる形にしたことでなんの描写もなくてすみません…(;´・ω・)
少し先になるかもしれませんが、12星座全てに出番はありますので、気長に待って貰えると嬉しいです。
お気に入り登録、感想気軽にいただけると嬉しいです。
では、また次回で。


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第十話

かよです。
特に書くこともないので、第十話どうぞ。


レオンの目の前で大きな爆発が起こる。爆発がやんだところに残されていたのは、3つのアームドチップとボロボロになったクロスドライバーだった。レオンは変身が解除され、膝から崩れ落ちた。前かがみになった煌は地面を殴りながら泣き出した。

 

「っ…うっ…うわぁぁぁぁ…!!」

 

静まり返ったその場所に響いていたのは煌の泣き声だけだった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ーーーっ…!また…あの夢か…」

 

煌はベッドから体を起こす。寝巻きは汗で濡れており、肌に張り付いてくる。時計を見れば朝の7時。普段起きるよりも少し早い時間に目が覚めてしまったようだった。起きてすぐのため、アタマが回らずにボーッとしているとコンコンッとドアがノックされ紗奈が部屋に入ってくる。

 

「おはようございます、煌様。いつもより少しお早いお目覚めですね。顔色が優れないご様子ですが、お身体の調子でも悪いのですか?」

「おはよう紗奈。調子が悪い訳じゃあないんだが、最近『あの夢』を見る回数が増えてきちゃってな…。」

「そうでしたか…。やはり…未だにあの過去をぬぐい去ることは出来ずにいらっしゃるのですか?」

 

不安げに挨拶してきた紗奈に心配をかけまいとなるべく明るく振舞おうとするが、バレているのか紗奈は質問を続けてくる。

 

「情けない話だけど…無理っぽいな…。悪いな、心配かけて。」

「いえ!煌様が謝ることではありません!誰にだって弱さはあるものです。そして、其れは恥ずべきことでもありませんよ?」

「そっか…。ありがとう、紗奈。少し気が楽になったよ。」

 

必死に励ましてくれる姿をみて思わず笑みがこぼれる煌。紗奈は顔を赤らめながら、それなら良かったです…、と誰にも聞こえないような小さな声で呟いた。

 

「ま、くよくよしてても仕方ないしな、とりあえず朝食でもとってくるよ。」

「かしこまりました。」

 

 

 

***

 

 

 

「うん。相変わらず上手いな。」

「煌様のお口に合ったようで何よりでございます。」

 

そう言って料理長の村田はペコリ、と頭を下げる。舌鼓を打ちながら朝食を食べていると、バン!と扉が開く。そこに駆け込んできたのは麗奈だった。

 

「煌くん煌くん!エビルグラムが現れたのよ!早く!」

「はぁ…。のんびり飯も食えないのか。わかった、今準備するからちょっと待ってろ。」

 

煌は食べかけの朝食をそのままにして、服を着替え、ベルトと数個のアームドチップを持つ。

 

「悪いな村田。せっかく作ってくれたのに残しちゃって。」

「いえ、お気になさらず。朝食を作り直してお帰りをお待ちしております。お気をつけて。」

「あぁ、行ってくる。」

 

玄関を抜けると、麗奈が待っていた。

 

「ちょっと!遅いわよ!」

「あぁ、悪いな。ほら、後ろに乗れ。」

 

そう言うと煌は麗奈にヘルメットを手渡す。麗奈はいつもならうるさい、などと小言を言ってくる煌が素直に自分の非を認めたことに違和感を覚える。

 

「何つったんでんだ。行くんだろ?」

「え、えぇ…。」

 

考えるのをやめ、麗奈は煌の後ろに乗る。2人はエビルグラムが現れた場所まで向かっていった。

 

 

 

***

 

 

 

2人が現場に着くと、そこには一体のエビルグラムがいた。吸血鬼を模した怪人、『ヴァンパイアエビル』である。ヴァンパイアエビルを見た煌は驚きの顔をしていた。

 

「なんで…奴が…!」

 

暴れていた怪人は煌と麗奈に気付く。

 

「ん?そこのアベックよ。私に血を差し出さないか?」

「ふざけないで!今倒れている人もあなたが血液を奪ったのね!?」

「今の私はヴァンパイアだからねぇ。当然だろう?」

「そんなくだらない理由でたくさんの人を…!許せ「ふざけんなよ…変身!」っ!ちょっと!煌くん!?」

 

麗奈のセリフを遮り煌は変身してヴァンパイアエビルに仕掛ける。麗奈は困惑し、ヴァンパイアエビルは何故か納得したような声をあげる。

 

「ん?君は…いつぞやの獅子座の戦士か!あの時の少年がこうも大きくなるとはねぇ。私は嬉しいよ!」

「ふざけんな!てめぇは…てめぇだけは許さねえ!」

 

攻撃をするレオンだが、怒りによって動きが単調かつ大振りなのか、すべての攻撃が受け流されるか、かわされる。

その隙をつくようにヴァンパイアエビルは攻撃をし返す。

 

「ふん!」

「ぐあぁぁ!」

 

身体に大きな一撃を貰ったレオンは大きく吹き飛ばされ、地面を転がる。滲み寄ってくるヴァンパイアエビルに銃撃が与えられる。

 

「誰かな?」

「煌!大丈夫?っ!お前は…」

「っ!煌、こいつは…」

 

遅れて駆けつけてきたタウレスとライブラはヴァンパイアエビルを見て煌と同じように驚く。一方のヴァンパイアエビルは星座の戦士が3人の揃ったにも関わらず、あまり動揺していないようだ。

 

「ふむ…。ここは引いた方が得策かもしれんねぇ。」

 

そう言って引こうとするヴァンパイアエビルにレオンが再び仕掛ける。

 

「ふざけんな!逃がすか!」

「邪魔だ、よ!」

「っ!ゔっ…ぐ…」

 

ヴァンパイアエビルがレオンの首をつかみ上へと持ち上げる。不意打ちを食らったレオンはなすすべもなく首を絞められる。

 

「「「煌(くん)!」」」

 

ヴァンパイアエビルは首を絞めながらもレオンに対して諭すように話しかける。

 

「君は引き際を覚えたほうがいい…。そんなだから大切な人を失うことになるのだよ?」

「ふ…ざけんな…!」

 

レオンはヴァンパイアエビルの腹を蹴り、首を絞められている状態から解放される。

 

「君は…1度痛い目にあった方がいいね…。」

「…っ!」

「ぬんっ!」

「ぐわあぁぁぁ!!!」

 

血のような色をした刃でレオンは大きく切り裂かれる。レオンは変身こそ解除されなかったものの、胸の装甲には大きな傷が付いている。

 

「う…うぅ…!」

「トドメを刺してあげようか。はっ…!」

 

今度は無数の弾丸がレオンに向けて放たれる。タウレスとライブラはレオンの前に立ち弾丸を捌き始めるが、いくつかは2人の横を通り過ぎてしまう。

 

「っ!しまった…!」

「煌!逃げろー!!」

 

2人はレオンに叫びかけるが、レオンは何かを小さな声で言っていた。

 

「あの時も今も…弱くなくて…もっと力があれば…」

「おい煌!どうしたんだよ!?」

「フハハ…!死ね!獅子座の戦士よ!」

 

レオンへと向かった弾丸が爆発する。その様子を見た魁、蓮、麗奈は叫ぶ。

 

「「「煌(くん)ー!!!」」」

「フハハ…!星座の戦士もあっけないものだなぁ。……うん?」

「「「え…?」」」

 

ヴァンパイアエビルの疑問の声に3人もつられて爆発の方向へと視線を向ける。

 

「む…。これは一体どういうことだ?」

「あれは…!蠍座の鎧…!?」

「なんでここにあんだよ!?」

 

レオンは無事だった。しかし、爆発から防いだのはタウレスでもライブラでも、他の星座の戦士でもない。先日蓮が見つけてきた蠍座のアームドチップがレオンの前に紫色の光を放ちながら浮遊していたのだ。その光景を見ていた4人はただただ困惑していた。それは煌も同じ。既に獅子座の鎧に選ばれている自分がなぜ蠍座の鎧に守られたのか、謎だった。

 

「蠍座の鎧が…なんで?」

 

レオンはゆっくりと立ち上がり、蠍座のアームドチップへと手を伸ばす。そして掴み取ると、アームドチップが紫色の光を強く放ち始めた。

 

ほかの4人は強すぎる光に思わず目を覆う。アームドチップを手にした煌は大きな呻き声を上げ始める。

 

「ぐあ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"!!!」

 

光が収まり、そこに居たのはだらん、と力なく立っている煌だった。しかし、手には蠍座のアームドチップを持っており、顔を上げると、一瞬目が紫色に光った。普通ではない煌の状態に3人は声をかける。

 

「煌…くん?」

「…………」

「おい、何とかいえよ!」

「待つんだ魁!今の煌は普通じゃない!」

 

煌はニヤリと笑い、アームドチップを起動する。

《SCORPION》

チップをスロットにセットし、小さな声で掛け声を言う。

 

「変…身…」

 

ベルトのレバーを押し込む。

《CROSS UP》

《One shot deadly thrust》《SCORPION!》

変身が完了し、佇んでいたのは、大きな鎌を携えた、蠍座の戦士の姿だった…。

 

 

 

***

 

 

 

時は蠍座のアームドチップが現れる少し前に遡る。少し離れたビルの屋上では、ネイとメーアが戦いを見物していた。

 

「獅子座の坊や、終わるわね…。」

「え〜!あたし、まだ戦えてないよぉ…」

 

レオンの辺りが爆発する。

 

「意外と…あっけないものね…」

「あ!ねえねえ!見てよネイ!獅子座のお兄ちゃんまだ無事だよ!?」

 

そこには蠍座のアームドチップを手にした煌の姿。

 

「おかしいわ…」

「?何がおかしいの〜?」

「普通はね、1人の人間につき1つの星座の鎧にしか選ばれることしかないはずなのよ。なのに彼は蠍座のアームドチップを手にしている。これは…彼が2つ目の星座の鎧に選ばれたのと同じことよ…。」

 

ネイはただ不思議そうな顔をしながら煌を見ていた。メーアは目をキラキラさせながらはしゃいでいた。

 

「やっぱり獅子座のお兄ちゃんすごいよ!ネイはもそう思うでしょ!?」

「えぇ…。そうね。(獅子崎煌…。あの男は私たちエビルマスターも知らないような秘密を知っているのかもしれない…)さあメーア。エトワール様に報告に行くわよ?」

「りょうか〜い!」

 

2人はビルの屋上から姿を消した…。




とりあえず煌君が操られちゃいました。詳しいところは次のお話で書くつもりです。
では、また次回で


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第十一話

しばらくの間投稿できてなくてすみません…!(o_ _)o
第十一話、どうぞ


「変…身…」

 

《CROSS UP》

《One shot deadly thrust》《SCORPION!》

煌が蠍座の鎧を用いて変身したことに魁と蓮は戸惑う。それもそのはず。本来の予定では、新たに資格者が現れるまで蠍座の鎧を一時的に保持しておくだけのつもりだったのだ。しかし、其の蠍座の鎧が煌を資格者に認めたのは異例中の異例。過去に1人の人間が2つ以上の鎧に選ばれた記録も無いためただ戸惑うことしかできなかったのだ。

 

「…………」

「…煌…なのか?」

「多分身体はね。でも、精神は乗っ取られてると思ってもいいと思う。あれは間違いなく蠍座の戦士『スコーピオ』だろうね」

 

タウレス、ライブラは警戒を強める。スコーピオはヴァンパイアエビルの方へとゆっくり歩みを進める。

 

「先程よりも少しは楽しませてくれるんだろうねぇ?フッ!………っ!」

 

不意をつく形でスコーピオに拳を繰り出すが、それは片手で難なく受け止められる。下から上へ大きく切り裂く。

 

「ぐおぉぉぉ…!今度こそ撤退した方がいいだろうねぇ。これを使ってみようか」

 

そう言ってヴァンパイアエビルが取り出したのはアントアームドチップ。それを起動しただけでたくさんのアントエビルが現れる。

 

「ここまで技術力が上がってるなんてね…。技術者としてなんか負けた気分だよ…。」

「んな事言ってる場合か!さっさと片付けるぞ!」

「…………」

 

ヴァンパイアエビルはいなくなってしまったが、代わりに多数のアントエビルが現れる。そのままにしておく訳にもいかないため、その場に残った戦士達はアントエビルを倒し始める。

 

3人はアントエビルを倒し終え、タウレス、ライブラの2人は再びスコーピオの方を向く。

 

「…………」

 

煌は言葉を何も発していないが、鎌を振り回し、タウレス、ライブラの2人に襲いかかる。しかし、星座の戦士一人一人は同程度のスペックしか持たないため、スコーピオがタウレス、ライブラの2人を圧倒することは無い。

 

「おい蓮。どうすんだ。」

「魁にはちょっとだけ煌を止めて欲しいかな。そこに僕が攻撃をして隙を作るから、そしたら2人で思いっきり蹴ってやろうか。」

「いいな、それ。やるか!」

 

短い会話を交わすと、タウレスはスコーピオへと近づき、膠着状態へともっていく。

 

「へっ、お前の相手は俺だよ…!」

 

動きが止まったライブラに向かって二丁拳銃による銃撃を浴びせる。銃撃を食らったスコーピオは大きく吹っ飛ぶ。その隙をついて2人はベルトのレバーを2回押し込む。

《TAURUS》《LIBRA》

《STAR Destroy》

 

2人は大きく飛び上がり、蹴りの体制をとる。

 

「でぇやっ!」

「はぁっ!」

 

ゆっくりと立ち上がるスコーピオに向かって2人は『ライダーキック』を放つ。キックをもろに食らったスコーピオは大きく吹き飛ばされ、爆発する。爆発が収まったところに残っていたのは、フラフラになっていた煌だった。

 

「「煌(くん)!」」

 

近くで隠れてみていた麗奈も合流して煌の元へ駆け寄る。

 

「はぁっ…はぁっ…」

「こ、煌くん!大丈夫…なの?」

「あ、あぁ…身体はな。にしてもお前ら、手加減なしかよ…」

「悪ぃ悪ぃ。強めにやった方がいいと思ってな。」

「ま、結果オーライってことでさ。」

 

少し会話を交えると、煌は意識を失ってしまった。

 

「ねぇ…。あのエビルグラムと何かあったの…?」

「とりあえず煌の家に戻るぞ。あいつについても話してやるよ。」

 

4人は煌の家へと向かって行った。

 

 

 

***

 

 

 

「つまりあのエビルグラムは、煌くんの恋人の仇なの?」

「まぁ、そういうこと。前に戦った時にギリギリ勝ったと思ってたけど、あそこまで強くなって生きてるとはね〜」

 

麗奈は魁、蓮の2人からヴァンパイアエビルについての説明をされた。麗奈は先程の煌の怒り方などについても納得している様子だった。

 

「たしかに、それならあれくらい怒っても仕方ないのかもしれないわね…」

「俺たちは手を出すつもりはねぇ。あいつは煌自身が倒さねえと踏ん切りがつかないだろうしな。」

「なんだけど、いまに限ってその煌にイレギュラーが起こるっていうね…」

 

蓮はやれやれ、といった感じで肩を竦めながら言う。

 

「確か、1人の人間に対して1つの星座の鎧しか扱えないって話?」

「そう……なんだけど、たった今目の前で例外を見ちゃったからね〜。あれが蠍座の鎧の気まぐれなのか、それともこれからは煌を資格者とするのか、全く検討もつかないよ。」

 

そう言って蓮、麗奈、魁の3人は煌が寝ている部屋のある方向に目を向けた……。

 

 

 

***

 

 

 

「ここは…?」

 

気づいた煌が居たのは周りに何も無い真っ白な空間。少し離れたところに紅い光を見つけ、その方向へ走っていく。たどり着いたところに居たのは紅いオーラを纏った煌と瓜二つの青年だった。

 

「こうして会うのは初めてだな。獅子崎煌よ。」

「お前、何もんだ?」

 

自分と同じ姿をした青年を警戒する煌。相対する青年はフッと鼻で笑い、話し始める。

 

「俺の名は『レオン』。獅子座の鎧の中に存在する魂のような物だ。」

「レオンだと…!?」

「いかにも。この姿は、実体を保つためにお前の姿を借りている。」

 

獅子座の鎧が自身にコンタクトをとってきたことに驚きながらも、質問をする。

 

「まず、ここはどこだ?んで、なんのために接触してきたんだよ?」

「まぁ、そう焦るな。まず、ここがどこかという質問についてだが、ここはお前の意識の根底にある精神世界のようなものだ。そして、なぜ接触したかについてだが、お前に会わせたい奴がいてな。」

「会わせたい奴?」

 

煌が聞き返すと、その場に紫のオーラを纏った同じく煌と瓜二つの青年が現れた。

 

「お前は…」

「紹介しよう。彼の名は『スコーピオ』。蠍座の鎧だ。」

「左様。我が名はスコーピオ。貴様が現代の獅子座の戦士か。」

 

蠍座の鎧が現れたことに煌は驚く。

 

「何の用だ?」

「貴様の奥底にある弱さを克服させてやろうと思ってな。」

「弱さだと…?」

「いかにも。貴様はいくつもの過去に囚われすぎている。そのままでは貴様はいずれ死ぬぞ。」

「……っ!」

「そうさせない為にも、吾輩が鍛え直してやる。」

 

スコーピオの姿が煌から変身した戦士の姿へと変わり、得物を構える。それに対応するように煌の姿も一瞬でレオンに変化する。

 

「フン…。んなもんさっさと克復してやんよ…!」

「その威勢がどれほど続くのか、見せてみよ!」

 

こうして精神世界の中での煌の特訓が始まった。

 

 

 

***

 

 

 

一方、エビルマスター達は4人とも変化した状態で集まり、ネイの報告を聞いていた。

 

「私としては、獅子崎煌は蠍座の鎧にも選ばれたのではないかと疑っております。」

「そうか…。それならば、獅子崎煌から奪い取る為には、奴の命を奪わねばならぬのか…。」

「…エトワール様。これからはど「待て…」は?」

「どうやら、客人がやってきたようだぞ…」

 

エトワールの一言で4人のエビルマスターは気配のする方へと警戒を強めた。そこに現れたのはヴァンパイアエビルだった。

 

「やぁやぁ、皆様。ごきげんよう。」

「貴様…なんのつもりだ…!」

「争うために来たわけでは無いですよ?ひとつそちらの御方におねがいがあって来たのです。」

「おねがい〜?」

「えぇ。わたくしもこちらの方々と同じように貴方様直属の配下に加えて頂きたいのです。」

 

ヴァンパイアエビルの願いを聞いた4人はとても驚いていた。

 

「よかろう…」

「っ!エトワール様!?」

「ありがたき幸せ…」

「ただし…1つ条件がある…」

「条件…ですか?」

「いかにも。獅子座の戦士、レオンが所持している蠍座の鎧。それを手に入れることができたならば、我が配下に加えてやろう。」

 

条件を聞いたヴァンパイアエビルはフフっと笑い答えはじめる。

 

「その程度の条件でしたら、すぐにこなして参ります。しばしの間お待ちください…。」

 

そういうと、ヴァンパイアエビルは身体がたくさんの小さなコウモリへと変化し、居なくなった。一部始終聞いていたギルは不服の声を上げる。

 

「エトワール様!あの様なものを招き入れるなど私は反対です!」

「わかっておる…そもそも奴を加える気など微塵も無い…。どのみち、奴が鎧を手に入れようと入れられまいと、消すつもりだ…」

 

エトワールの考えを聞いたギルは言葉を詰まらせる。

 

「お前たちは私が選んだ者たちだ…。たかがエビルグラム如きが我に意見できると思っている時点でもう奴に価値などないわ…」

 

そう言って、エトワールは不敵に笑い始めた…




冬休みの課題に追われててほとんど書く時間がありませんでした。冬休みが終わったら前よりは投稿できると思いますので、ゆっくり待っていただけるとありがたいです!


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第十二話

どうも、かよです。
レオンこと煌くんがついに2つ目の鎧で暴れます。



「ふっ!でやっ!」

「……ふん…」

「ちっ…くそっ!」

 

煌の変身するレオンと蠍座の鎧スコーピオによる撃ち合い。いつものような剣さばきをすることができず、煌は責めきれずにいた。

 

「はっ!」

「ぐあぁぁぁ!」

 

懐に大きな一撃を貰い、煌は大きく吹き飛ばされる。

 

「あそこまで言っておきながら、その程度か!」

「ま…まだだ…こんなとこで…諦める訳には…!」

 

フラフラになりながらも立ち上がった煌を見てスコーピオはフッ、と嬉しそうに鼻で笑う。

 

「その心意気だ…」

 

煌とスコーピオは再び撃ち合いを始めた…

 

 

 

***

 

 

 

一方、魁と蓮は街でヴァンパイアエビルが暴れているという知らせを聞き、駆けつけていた。

 

「おい、クソ野郎!いい加減大人しく倒されやがれ!」

「君は紳士的じゃないなぁ…。まぁ、良いか。君たちには獅子座の戦士が来てもらうまでの暇つぶしになってもらおうか…。」

「上等だ!」

 

タウレスの槍による攻撃は躱したり、腕で防ぐ。ライブラによる銃撃は背中にあるマントで防ぐ。

 

「ちっ…オラァ!」

「ふん…はあっ!」

「ぐあぁぁぁ!」

 

タウレスが大きく吹き飛ばされる。入れ替わるようにライブラが戦闘に入る。絶え間なく銃撃を浴びせるが、ヴァンパイアエビルにはあまりダメージを与えられているようには見えなかった。

 

「よっと…。はっ!」

「………ぬん!」

「うわっ!」

 

ライブラも吹き飛ばされる。ヴァンパイアエビルは大きな声で笑い始める。

 

「ハハハハハ!先に君たちからも血を頂いてしまおうか…」

 

ジリジリとヴァンパイアエビルが倒れている2人の方に歩いてくる。すると、遠くの方からバイクの走行音が聞こえてくる。

 

「ん…?」

「あいつ…」

「やっと来たみたいだね」

 

煌がバイクに乗って駆けつけてきた。バイクから降りた煌はヴァンパイアエビルに話しかける。

 

「ここからは俺が相手をしてやるよ、吸血鬼。」

「ずっと君を待っていたよ…!さぁ、やり合おうか!」

「悪いが、こっちはさっさと終わらせたいんでな。」

 

煌はベルトを装着し、紫色のアームドチップを起動する。

《SCORPION》

スロットにセットし、覚悟の言葉を叫ぶ。

 

「変身!」

 

《CROSS UP》

《SCORPION!》

鎌を携え、紫の鎧に身を包んだ戦士『スコーピオ』が再び降臨する。

 

「その力…君を倒して貰い受けよう…!」

「でぇやぁ!」

「ぐぅ…!」

 

煌はヴァンパイアエビルに大きな一撃を食らわせる。これまでと違い、ヴァンパイアエビルが押される形となっていた。

 

「巫山戯るな…!」

 

ヴァンパイアエビルは両手から血液の弾丸を発射する。スコーピオのところで爆発し、ヴァンパイアエビルは不敵に笑う。

 

「ハハハ…何…?」

 

しかし、爆発が止んだとこに立っていたのは無傷のスコーピオだった。攻撃が防がれたことはともかく、無傷なことにヴァンパイアエビルは驚きを隠せずにいた。

 

「な、なぜだ!なぜ無傷でいられる!」

「次はこっちの番、だな」

 

スコーピオは反撃を開始する。鎌による切りつけだけでなく、生えている尾による打撃も繰り出す。

 

「ぐっ…この尾で防いだのか…」

「ふっ!でやっ!」

「がはっ…!」

 

一撃を貰ったヴァンパイアエビルは大きく吹き飛ばされる。吹き飛ばされたヴァンパイアエビルはフラフラになりながら立ち上がる。煌はベルトのレバーを1回押し込む。

《SCORPION》

《STAR Breαk》

尾を長く伸ばし、ヴァンパイアエビルに巻き付ける。そのまま自身の方へと引き付け、鎌で切りつける。そしてがら空きになった背中に尻尾を巻き付けた右足で蹴りを入れる。蹴りを受けたヴァンパイアエビルは吹き飛ばされ、爆発する。

 

「ぐあぁぁぁ!」

 

長い因縁は煌の勝利によって幕を閉じた。たが、ヴァンパイアエビルは未だに姿を戻すことなく、存在していた。

 

「な…!あいつまだエビルグラムのままだぞ!」

「あの一撃を食らっても人間態に戻らないとは…余程の執念だね…」

 

煌は何を言うわけでもなく、無言でヴァンパイアエビルに歩み寄る。しかし、途中で空から何かが降ってきた。それは余程の重量なのか、着地した地面が沈んでいる。砂煙が晴れると、そこに居たのはサイのような見た目の怪人だった。

 

「お前は…」

「ライノスマスター…スパルタス…」

「お前もエビルマスターか…!」

 

そう言って煌は鎌を構える。ヴァンパイアエビルは助けが来たことに驚いていた。

 

「私を助けに来てくださったのか…!?」

「エトワール様が連れ帰れ、と言っただけだ…ぬん!!!」

 

そう言ってスパルタスことライノスマスターは地面を思い切り殴りつける。すると、大量の砂煙が巻き起こり、視界を塞ぐ。再び砂煙が晴れると、そこにはヴァンパイアエビルもライノスマスターも居なかった。煌達3人は仕方ない、といった感じで変身を解除する。2人は煌の元へ駆け寄る。

 

「どーにかなったみたいだな。」

「あぁ。蠍座の鎧も俺を認めてくれた。これでより一層アイツらと互角にやり合えるだろうさ。」

「(やっぱり…。煌は僕たちやこれまでの戦士達とは違う何かがある…。これからの戦いの鍵を握るのは煌なのかもしれないな…)とりあえず煌の屋敷に戻らない?麗奈ちゃんも待ってるよ?」

 

少し嬉しそうな顔をしていた煌だったが、麗奈の名前が出たことで顔をしかめる。

 

「なんでここであいつの名前が出てくるんだよ」

「彼女だって心配してたんだよ?泣きそうなくらいには」

「はぁ…戻ったらまた何か言われるやつか…」

 

口では文句を言いながらも、煌はどこか嬉しそうな顔をする。

 

「にしてもよ、エビルマスターが吸血鬼の野郎を連れてったのはなんでだろうな。」

「俺には渋々助けに来たように見えたけどな。」

「蟻のエビルグラムみたいな軍隊を、上位のエビルグラムで作ろうとしてたりね…」

 

蓮のセリフに魁がツッコミを入れる。

 

「おい!縁起でもないこと言うんじゃねーよ。」

「まぁまぁ。あくまでも可能性の話だし、あったとしても確率はかなり低いだろうからそんなに身構えることもないって。」

「ま、とりあえずは一件落着か…」

 

3人は和気あいあいとしながら帰路についたのだった…。

 

 

 

***

 

 

 

その頃、ヴァンパイアエビルは再びエトワールの元にいた。

 

「申し訳ありません!獅子座の戦士がこの短期間にアソコまで力を伸ばしているとは思っていなかっ「言い訳はよい…」……は…」

 

エトワールはヴァンパイアエビルの言葉を遮った。

 

「ふん。あそこまで偉そうなことを言っておきながら、おめおめと逃げ帰ってくるとはな…」

「かっこわるーい!」

「グッ……」

 

萎縮し俯いたヴァンパイアエビルを見て、ギルやメーアは小馬鹿にしたようなセリフを言った。それを聞いてヴァンパイアエビルは心底悔しそうな顔をする。

 

「もう貴様に用はない…。ここでこやつらに消されたくなければどこへなりと行くがよい。」

「かしこまり…ました…」

 

すっかり覇気の無くなった様子でヴァンパイアエビルはどこかへと立ち去ってしまった。エトワールはエビルマスターの4人に話を始める。

 

「やつが戻ってきた。これからはやつと共に戦士達と争うことだ。」

「なっ…!あいつとですか!?俺にはとても「そんなに毛嫌いしなくてもいいじゃないか…ギルくん?」貴様…!」

 

暗闇から現れたのは白衣を纏った1人の長髪の青年だった。途端にギル、メーア、ネイは嫌そうな顔をする。

 

「来るのが早いな…『シエン』」

「まぁねぇ…あの吸血鬼君には申し訳ないが…面白いものが見れたし、僕は満足だったよ。」

「それより、アレの様子はどうだったのだ…?」

「うーん…なんと言えばいいのか…。まぁ、前から言ってる通りだけど、やっぱり12の鎧をあの場所に集めなきゃ無理なんじゃないのかなぁ?」

 

ヘラヘラとした物言いにギルが耐えきれず怒りを口にする。

 

「おいシエン!先程から話を聞いていれば…エトワール様に向かってその態度はなんだ!」

「あいっかわらず君はうるさいままだねぇ…偉そうなことは僕に1回でも勝ってから言ったらどうだい…?」

「なんだと……!」

 

言い争いが止まったのを見てエトワールが口を開く。

 

「これからは技術者でもあるシエンの指示に従って動け…」

「なっ…」

「え〜」

「はぁ…」

「………」

 

4人とも不快そうな表情をするが、シエンはそんなことは気にもとめずに変わらずヘラヘラと話しかける。

 

「ま、そんなわけだから…よろしく頼むよ、諸君。ハハハハハ!」

 

そこにはシエンの笑い声だけが木霊していた。

 

 

 

***

 

 

 

少し時間が経って、ネイは1人、人気のない路地を歩いていた。突然足を止めて後ろへと振り返る。

 

「いいかげん、コソコソしてないで出てきたらどうかしら?」

「フッ…バレていたようだね…」

 

姿を現したのはヴァンパイアエビルだった。

 

「ずっと人の後ろを付け回してなんのつもり?」

「わたしは血を吸うことで、再生能力を強めることができる。それに…若い女の血が1番美味いのでなぁ…!」

 

そう言ってヴァンパイアエビルはネイへと襲いかかる。が、ネイへとつかみかかろうとした直前に水色の光が辺りを包み始めた。ネイへと伸びていたヴァンパイアエビルの腕は何故か焼け焦げていた。

 

「ぐ…ぐあぁぁぁ…!う、腕がぁぁぁ…!」

「星座の戦士の代わりに、私があなたを消してあげるわ」

 

ネイが取り出したのは、水色のアームドチップと煌達が持っているものと同じ『クロスドライバー』だった。2つを見てヴァンパイアエビルは目を見開く。

 

「な…それは…」

「あら、言ってなかったかしら?私も、鎧に選ばれたのよ」

 

ネイはアームドチップを起動する。

《AQUARIUS》

ネイが起動したのは水瓶座のチップ。ベルトのスロットへとセットし、言葉を叫ぶ。

 

「変身…」

 

《CROSS UP》

《Flowing Current of Water》《AQUARIUS!》

そこに現れたのは鞭を携えた水色の鎧を纏った戦士。水瓶座の戦士、『仮面ライダーアクリス』が誕生した瞬間である。

 

「だからなんだと言うのだ…わたしは戦士をも圧倒していたのだ…!はぁっ!」

「だから何?ふっ…!はっ!」

 

ヴァンパイアエビルは血液の弾丸を放つ。が、全てを鞭によって堕とされてしまう。そして間髪を入れずにアクリスは攻撃を繰り出す。弱っているヴァンパイアエビルは全ての攻撃をもろにくらい続ける。ネイは距離をとり、余裕の態度で言い放つ。

 

「終わりにしましょうか」

「貴様ァ…舐めるなァ!」

 

ネイは1度ベルトのレバーを押し込む。

《AQUARIUS》

《STAR Breαk》

 

「ふっ…!」

 

アクリスは向かって来たヴァンパイアエビルに鞭を伸ばして身体に巻き付ける。すると、水面のような物が2つ、空中へと現れる。アクリスはそのうちのひとつの中に入ると、もうひとつから出てくる。

 

「じゃあね、吸血鬼さん…」

 

アクリスが鞭の長さを短くしていくと、ヴァンパイアエビルが水面に飲み込まれる。

 

「ぐあァァァァァ!!!」

 

爆発の音と、ヴァンパイアエビルの叫び声が聞こえると、飲み込まれた水面からドサッと落ちてくる。ヴァンパイアエビルはそのまま、身体からチップが排出されることなく灰となって風に流されていった。

 

「あら、長い間アームドチップを使ってたからかしら、人間の姿に戻らなかったわね。まぁ、別にいいのだけどね。」

 

そう言って、ネイは変身を解除し、灰に埋もれたヴァンパイアアームドチップを拾うと、再び人気の無い路地を歩き始めた…。




新たに水瓶座の戦士が出てきました。これから煌達とどのように絡んでいくのか、楽しみに待ってて頂けたら嬉しいです
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