孫悟飯は五つ子姉妹の家庭教師をするそうです【本編完結】 (Miurand)
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第1巻
第1話 悟飯は家庭教師になる


⚠︎注意⚠︎

『クロスオーバーが苦手な人』
『台本形式が苦手な人』
『細かいことが少しでも気になる人』
『原作のカップリングが崩されるのが嫌な人(特に飯ビー)』
上記に当てはまる方はブラウザバックを『強く』推奨します。

通常公開、クロスオーバー、原作ヒロインという時点である程度の批判は覚悟しているつもりですが、注意書きを読まないで批判するのはダメですよ。説明書を読まずに操作方法が分からんって文句を言ってるようなものですよ。

注意書きの内容は話ごとに変わる可能性もあります。ご了承下さい。

台本形式ではない通常形式版をご希望の方はこちらから閲覧してください。
https://syosetu.org/novel/276163

あと文章あまり上手くないので、そこもご注意を。



孫悟飯がセルを倒して数年が経った。

 

世界はすっかりセルの危機を忘れていた。まあそんなものだ。

実際、セルを倒した孫悟飯自身も、今は修行は殆どせずに勉強ばかりしている。偶に弟の悟天と遊ぶくらいである。

そんな彼、孫悟飯は今までは家庭教師に教えてもらうか、独学でしか勉強していなかったが、最近になって高校に通うようになった。

 

その高校の名は、オレンジスターハイスクール…。

ではなく、旭高校である。

 

彼は自宅から筋斗雲を利用して通っているため、部活などには入っていない。そもそも家が近かったとしても、悟飯は勉強するつもりで学校に通っているので、どちらにしろってところだ。

 

そんな悟飯には友人が少なからず存在する。だが決して多いわけではない。あと、肉食系女子からは『可愛い系男子』としてモテていて、その手の女子の間ではファンクラブが結成されるくらいに人気だったりする。だが悟飯は恋愛に関しては疎いせいなのか、ただ鈍感なせいなのかは不明だが、全く気付かないし、気付く気配もない。

 

話は変わるが、孫家の家計はピンチなのである。悟飯の母方の祖父にあたる牛魔王の貯金がなくなって来ていること、悟飯と悟天が相当な大喰らいであることもあってピンチになっている。

 

今は亡き父親の孫悟空も生前に働いていたということもないため、収入がないのだ。そんな中でも『学校に通った方がいい』と母親であるチチに勧められたため、旭高校に通っているわけである。

 

悟飯は母親に恩返しするべく、定期テストでは必ず学年1位になるように努力している。その努力は今のところ全ての回において報われており、見事に全ての教科満点で堂々の学年1位だ。

 

しかし、学年1位はもう1人存在する。

 

その名は上杉風太郎。風太郎は積極的に他人に関わるようなことはしないが、自分と同じように満点を取る悟飯には興味が湧いたようだ。彼を拒否する理由が悟飯にはないため、友達として付き合い始めたのだが、今では親友と呼べるくらいの間柄にはなっている。

 

定期的に一緒に勉強、お互いに分からないところを教え合うなんて光景はしょっちゅう見かける。

 

そして今、孫悟飯は上杉風太郎と共に学食にて昼食を取ろうとしているところである。

 

 

 

 

風太郎「焼肉定食焼肉抜きで」

 

上杉君はいつもこんな注文をしている。上杉君の家は貧乏だから食費も抑えるようにしているらしい。

 

上杉君によれば、200円のライス単品よりも焼肉定食焼肉抜きにすると、通常400円のところ、焼肉分の200円引かれてライス単品と同じ値段で味噌汁とお新香も付くそうだ。

 

僕の家もそろそろピンチだとお母さんが言っていたので、僕も見習った方がいいのだろうか…。まあ、そもそも僕はお弁当なんだけどね。

パオズ山ではお肉や魚は狩りや釣りをすれば殆ど困らないけど、野菜に関してはどうしようもないので買っているみたい。

 

悟飯「上杉君、もうちょっと食べた方がいいんじゃない?」

 

風太郎「足りなければお前が分けてくれるだろ?」

 

確かに、上杉くんのこの様子を見かねて少しだけ上杉くんにあげている。

(なお量は悟飯基準であるため、風太郎からしたら結構多い)

 

「上杉また孫と食ってるのか」

 

「孫以外友達いないんじゃね?」

 

「孫も上杉もガリ勉だもんなぁ…」

 

「ねーね、孫君誘ってみてよ」

 

「いや〜…。恥ずかしくてできないよ…」

 

っと、こんな感じで孫悟飯は一部から人気があったりする。

 

 

 

僕と上杉君はいつも使っている席に向かった。そして上杉君がトレーをテーブルに置いた時…。

 

ガシャン!

 

「……」

 

風太郎「……」

 

女の子が同時にトレーを置いた…。

 

「あの!私の方が先でした!隣の席が空いているので移ってください!」

 

風太郎「隣は悟飯の席だ。それに俺は毎日ここの席に座っている。だからあんたが移れ」

 

「関係ありません!」

 

悟飯「ま、まあまぁ…。ここは譲ってあげようよ、上杉君…」

 

「ほら!彼もこう言っているではありませんか!!」

 

ガシャン!

 

うわぁ…。上杉君大人気ない…。先に座って食べ始める気だ…。

 

風太郎「はい、俺の方が早かった!ここ俺の席な」

 

ストッ

 

風太郎「はっ?」

 

女の子は構わず上杉君の向かい側の椅子に座った。

 

風太郎「ここ、俺の席…」

 

「椅子は空いてました。午前中にこの学校を見て回ったので足が限界なんです」

 

「おい、上杉が女子と食ってるぜ?」

 

「やべぇ…」

 

「……///」

 

上杉くんの目の前に座る女の子は顔を赤くしていた。風邪でも引いているのかな…?ちょっと辛そう…。

でも普通にご飯を食べ始めたから気のせいかな…?

 

 

 

「…!食事中に勉強とは…、行儀が悪いですよ」

 

風太郎「……なに?ながら見してた二宮金次郎は称えられているのに俺は怒られるの?」

 

悟飯「二宮金次郎は歩きながらの勉強だから……」

 

「そうです!状況が違います!」

 

風太郎「ほっといてくれ。テストの復習中なんだ」

 

風太郎くんは構わず勉強を続ける。

 

「食事中に勉強なんて…、相当追い込まれてるみたいですね?何点だったんですか?見せて下さい!」

 

風太郎「ちょ!」

 

女の子は上杉くんの答案を取り上げ、点数を見るが……。

 

「なっ!?」

 

風太郎「あー!やめて!点数言わないでー!?」

 

「100点…?!」

 

風太郎「あーっ!!めっちゃ恥ずかしいわッ!!」

 

恐らく上杉君は恥ずかしくも何ともないと思う…。

 

「わ、ワザと見せましたね!?」

 

風太郎「さて、なんのことやら」

 

「うう…。悔しいですが勉強はできるようですね…。私はできない方なので羨ましいです…」

 

「そうです!私、いいこと思い付きました!せっかく相席になったんです!勉強、教えて下さいよ」

 

風太郎「ご馳走様。悟飯、今日は腹いっぱいだから飯はいいぞ」

 

悟飯「えっ?う、うん……」

 

「ええっ!?食べるの早っ!!?昼ご飯それっぽっちでいいんですか!?私の分を少し分けましょうか?」

 

風太郎「さっきも言ったが満腹だね。つーかお前が食べ過ぎなんだよ。太るぞ?」

 

「…!?ッ」

 

悟飯「そうかな…?そんなことないと思うけど」ガツガツ

 

テーブルには埋まり切らないほどの量を掃除機のように取り込む悟飯がそう言う。

 

風太郎「お前基準だとそれはそうなるだろうよッ!!!?」

 

「ふ、ふと…!?あなたみたいな無神経な人は初めてです!!もう何もあげませんッ!!」

 

風太郎「そうだ、勉強なら悟飯に教えてもらうといい。そいつは優しいし、俺と同じく100点を取ったやつだからな」

 

悟飯「えっ?上杉くん!?」

 

風太郎「またな悟飯。俺は愛しの『らいは』から電話が来てるから出なくてはならん!」

 

真顔でそう言い放った風太郎は学食を後にした…。

ちなみに、『らいは』というのは、上杉君の妹だ。

 

「全く…。なんなんですか!あの無神経な人は!!」

 

悟飯「ま、まあまあ…」

 

「ところで、あなたも100点を取ったそうですが…?」

 

悟飯「ま、まあ……」

 

「もういいです!彼には教えを乞いません!あなたに教えてもらいます!!」

 

悟飯「いや、僕はまだ教えるなんて一言も言ってないけど……」

 

「ダメなんですか?」

 

悟飯「いや、別にいいけど…」

 

「なら問題ないですね!」

 

こうして僕は初対面の女の子に勉強を教えることになった。彼女は熱心に僕の説明を聞いてくれるので、教えがいがあるかもしれない。

 

ちなみに途中で名前を聞いたけど、彼女の名前は『中野五月』さんだそうだ。この学校には転校してきたばかりだとのこと。

 

五月「彼と違ってお優しいですね、孫君は…」

 

悟飯「上杉くんは他の人にあまり興味がないみたいだから…。(本当は上杉君も優しいんだけどな……)」

 

五月「それにあなたの教えは分かりやすいです!」

 

悟飯「じゃあさっき教えた部分の問題を解いてみようよ」

 

しかし…。

 

悟飯「あ、あれ?10問中2問正解…?」

 

五月「……」

 

五月さんは頬を膨らませて何かを訴えようとしているけど、何が言いたいのか僕には分からない…。

 

五月「だから言ったじゃないですか…、私は勉強ができない方だって……」

 

悟飯「まあ仕方ないよ。さっきの時間だけじゃ覚えきれないだろうからね。毎日やればそのうち覚えられるよ!」

 

五月「えっ?毎日見てくれるんですか…?」

 

悟飯「えっ?」

 

あれ?僕はそんなつもりで言ったわけじゃないんだよなぁ…。そもそも僕も自分の勉強をしたいし…。

でも、教えることによって学べることもあるし、彼女も僕のことを頼りにしてくれてるから悪い気はしないかな?

 

悟飯「うん。僕でよければ」

 

五月「ありがとうございます!」

 

 

 

悟飯「…?」

 

おや?僕の携帯電話が鳴っている?お母さんかな?それともブルマさんからだろうか…?

 

『やあ。君が、孫悟飯君かな?』

 

悟飯「えっ?はい。そうですけど…、どちら様でしょうか?」

 

『私は中野マルオという者だ。君に頼みたいことがあるから電話させてもらったよ』

 

僕に頼み事?なんだろう?というか、名字が五月さんと同じだ。ただの偶然かな…?

 

『実は僕には娘がいるのだが、いかんせん、学業に少々問題があるんだ。そこで君に頼みたいことというのは、学年1位の成績を誇る君に家庭教師をしてもらいたい?』

 

悟飯「へっ?僕が…?」

 

五月さんはこの人の娘さん…。ということは、この人は五月さんのお父さんなのだろう。

 

『なに、無論タダでとは言わない。報酬はキチンと払おう。アットホームで楽しい職場、給料は相場の5倍だ。どうだね?』

 

……待てよ?このバイトをやれば、少なからずお母さんが喜ぶんじゃないかな?お金がないって最近よく言ってたから…。だけどお母さんのことだから勉強しろって言いそうだなぁ…。

 

悟飯「大変ありがたいお話なんですけど、僕の母に聞いてみないとなんとも…」

 

『そこは心配無用だ。君のお母さんには既に話してある。君が承諾するなら問題ないそうだ』

 

えっ?そうなの…?じゃあ引き受けちゃおうかな…?

 

悟飯「じゃあ、やらせて下さい!」

 

『ありがとう。君達には期待しているよ。目標は娘達が無事卒業できることだ。それさえ達成してくれれば問題ない』

 

悟飯「……へっ?そんな条件でいいんですか?」

 

家庭教師なんて言うから、てっきり高成績を出してこいと言われるのかと思ってたけど…。

 

『それでいい。可能ならば娘達の成績をもっと伸ばしてもらって構わない』

 

悟飯「あの、引き受けさせて下さいと言ってなんなんですけど、質問よろしいでしょうか?」

 

『なんだね?』

 

悟飯「先程は『君達に期待している』とおっしゃってましたよね?ということは、僕以外にも家庭教師がいると?」

 

『そうだったね。君の他にも上杉風太郎君に頼んでいる。君と同じく学年1位だ』

 

なるほど…。上杉君と一緒ならやりやすいかもしれない。

 

悟飯「分かりました。ありがとうございます。それで、いつからでしょうか?」

 

『明日からお願いするよ』

 

あ、明日からッ!?随分急だな…。

 

悟飯「了解しました」

 

こうして僕は家庭教師を引き受けることになった。

 

 

ちなみに、帰宅するとお母さんからは頑張れって言われた。勉強しろと言われると思ったので、何故僕がバイトすることを承諾してくれたのかを質問したところ、

『定期テストで全部満点取れるなら問題ねえだろ!』

とのことだ。

 

悟天は僕の帰りが遅くなることに少し文句を言っていたけど、お母さんが注意したことによってすぐに静かになった。

 

寝る時も同じ部屋なんだし、悟天には少しは我慢してほしいと思いつつも、できるだけ早く帰ろうかなと思った。

 

僕は上杉君に対して、妹さんに対して過保護じゃないかと何度か指摘したけど、あまり人のことは言えないかもしれない…。

 

 

翌日。いつも通り筋斗雲で学校に通う。そしていつものように朝のホームルームを受けるが…。

 

五月「中野五月です。よろしくお願いします」

 

えっ?このクラスに転校してくるの!?

 

突然の転校生にクラスは騒然。殆どは可愛いとか、あそこの制服は頭いいところじゃないっけ?とかそんな感じだった。

 

風太郎「ど、どーも!」

 

五月「あっ!孫君と同じクラスとは幸運です!これからよろしくお願いしますね!」

 

悟飯「う、うん!よろしく…」

 

風太郎「……………」

 

上杉君にも声をかけられてたけど、五月さんには聞こえてなかったのかな…?

 

なんか男子から殺気に近い視線を感じるし、女子は何故か五月さんに対して殺気に近い視線を向けている…。

 

僕と五月さんってみんなに恨まれるようなことしたっけ?少なくとも僕は何もしてないよ…?

 

 

 

 

 

昼休み…。

 

五月「すみません。今日は用事があるので勉強はまた別の日にお願いします!」

 

悟飯「うん、分かった!」

 

 

僕はいつも通り上杉君と昼食を取ろうとしているのだが…。

 

悟飯「どうしたの?いつもの席に行かないの?」

 

風太郎「今日は用事があるからな」

 

用事?何のことだろう?

 

五月「お待たせしました…」

 

五月さんが座った場所には、他にも4人の女の子がいた。

 

………うん?なんか、他の4人と五月さんの気……。微妙に違うけど凄く似ている気がする…?

もしかして、姉妹なのかな?

 

でもそれにしても似すぎだ。どういうことだろう?

 

風太郎「と、友達と食べてる!!」

 

五月「ごめんなさい。席は埋まってますよ?」

 

風太郎「昨日の仕返しか…」

 

五月「ってあれ?孫君は何故ここに?」

 

悟飯「いや、僕はただ上杉君と食べようかと…」

 

五月「友達は選んだ方がいいですよ!そんな無神経な人をわざわざ選ばなくても、孫君には素敵な友達ができると思います!」

 

風太郎「何気に俺をディスってないかこいつ……」

 

悟飯「あ、あはは……」

 

少し歩くと、五月さんと一緒にいた女の子の1人が声をかけてきた。

 

「あれ?君達行っちゃうの?」

 

風太郎「ま、まあ……」

 

「席探してたんでしょ?一緒に食べていけばいいよ」

 

風太郎「食えるかッ!!」

 

「なんでー?美少女に囲まれてご飯食べたくないの?」

 

風太郎「……」

 

「彼女いないのに?」

 

風太郎「決めつけんなッ!!」

 

「あっ!そっちの君は可愛いね!」

 

悟飯「か、可愛い…??」

 

「その手の女子にモテてるんじゃないの?」

 

悟飯「そんなことはないと思うけど…」

 

実際はモテているが、本人は気付いてないのでセーフ。

 

風太郎「なんだ、この扱いの差は…」

 

「ごめんごめん!でも君は五月ちゃん狙いでしょ?」

 

風太郎「そ、そういうわけじゃ」

 

「なんだ!やっぱり狙ってんじゃん!今のところ状況は最悪みたいだけどね?隣の子に取られそうじゃん」

 

悟飯「へっ?」

 

風太郎「何言ってるんだこいつ…」

 

「ま、せっかくだし五月ちゃんに声をかけてあげるよ」

 

風太郎「余計なお世話だ。自分のことは自分でなんとかする」

 

「へえ!ガリ勉くんのくせに男らしいこと言うじゃん!」ベシッ

 

風太郎「痛ッ!?」

 

「困ったらこの一花お姉さんに相談するんだぞ!なんか面白そうだし!」

 

風太郎「お姉さんって…、同学年だろ。多分…」

 

……五月さんと物凄く顔が似ていたな…。もしかして、双子…?

 

風太郎「……すまん悟飯。今日は作戦を練りたいから一人で食わせてくれ」

 

悟飯「えっ?う、うん….」

 

上杉君がそんなことを言うなんて珍しいな…。

 

「上杉が離れた!?」

 

「「「チャーンス!!」」」

 

「ね、ねえ孫君!私達と食べない!?」

 

「私、教えてほしいことがあるんだけど…」

 

「あ、ずるーい!私も勉強教えてもらうんだから〜!」

 

悟飯「えっ?ちょ、ちょっと〜!?」

 

半ば強引に女子と一緒に昼食を取ることになった…。

 

一花「……あの子マジでモテてんじゃん…。あの様子だと自覚なさそうだけど…」

 

 

 

なんか今日は疲れたな…。昼休みに一気に勉強を教えてほしいって頼まれるもんだから疲れちゃった…。

 

さて、マルオさんによると、住所はここらしいけど…。うわぁ…。これは高級マンションってやつかな?金持ちなんだなぁ…。

 

「なに君?ストーカー?」

 

風太郎「げっ、お前…」

 

「五月には言ってない」

 

…ん?なんか聞き覚えのある声だと思ったら、上杉君じゃないか…?

 

「五月は帰ったよ。用があるならアタシが聞くけど?」

 

風太郎「お前じゃ話にならん。どいてくれ」

 

「しつこい。君、モテないっしょ?」

 

な、なんか凄い険悪な感じなんだけど…。

 

風太郎「帰るも何もここ僕の家ですけど?」

 

「えっ?嘘、ごめん…」

 

風太郎「全く失礼な人達だ…」

 

よく咄嗟にそんな嘘をつけるね…。

 

「焼肉定食焼肉抜き……ダイエット中?」

 

風太郎「……」

 

ダッ!!

 

「あ!お前やっぱここの住人じゃないでしょ!?警備員さーん!!」

 

……なんというか、上杉君必死だなぁ…。僕も向かうとしようか…。

 

「ん?なに?君もストーカー?」

 

悟飯「えっ?」

 

なんだろうこの子…。初対面でいきなりそんなこと言われたの初めてだよ…。

 

悟飯「いや、そうじゃないよ」

 

「じゃあなんなのよ?」

 

悟飯「僕はここに住んでる人の家庭教師をやることになってるんだけど…」

 

「はっ?君が?」

 

悟飯「えっ?う、うん…」

 

「ふーん…。ぶっちゃけ家庭教師はいらないんだけど。さあ帰った帰った!」

 

いや、ちょっと!?それは困るんだけど!?

ってあれ?この子も五月さんに顔がそっくりだな…。よく見ると昼休みに五月さんと一緒にいた人だ。もしかして、三つ子…?

 

悟飯「いや、そうはいかないよ。君のお父さんから頼まれたんだから…。取り敢えず、名前を聞かせてくれると…」

 

「余計なお世話だっての!しつこい!君もモテないっしょ!!」

 

「……二乃。この人、昼休みに大量の女子に連行された人」

 

「へっ?マジ!?ご、ごめん」

 

悟飯「い、いや別に…」

 

「それに、五月と仲良さそうだった」

 

「五月と?」

 

悟飯「君達は…、五月さんのお姉さんか何か?」

 

「別にあんたに教えてあげる義理なんて「そう。私達は五つ子」ちょっと三玖!?」

 

えっ?今、なんて…??

 

「だから、五つ子なの。私達」

 

悟飯「い、五つ子ぉおおッ!?!?」

 

世界的に見ても三つ子は珍しいって言われるくらいなのに、五つ子ッ!?

 

「なによ、そんくらいでうるさいわね」

 

悟飯「いや、そんくらいって……」

 

「でも、五月の友達なら邪険には扱えない」

 

「チッ、分かったわよ。今日だけ特別よ」

 

……僕ってあまり歓迎されてないのかな?

 

ちなみに、五月さんの部屋に向かう途中に2人の名前を聞いた。左右に蝶々のような髪飾りをつけている子が『二乃』。中野家の次女らしい。

 

そして、首にヘッドホンを掛けている物静かな子は『三玖』。この子は三女らしい。

 

エレベーター内で五月さんを除く残り2人とも合流した。

 

昼食時にも声を掛けてきた髪の短い子が『一花』。

頭にリボンをつけている子は『四葉』というらしい。

 

……なるほど、数字順なのかな?多分そうだろう。

 

そして、五月さん達の部屋がある30階に辿り着くと…。えっ?上杉君…?五月さんが床に座り込んでいるけど、何してるの…?

 

一花「あれ?優等生くんじゃん?五月ちゃんと2人で何してるの?」

 

二乃「いたー!!こいつストーカーよッ!!」

 

三玖「二乃、早とちりしすぎ」

 

四葉「ええ!?上杉さんってストーカーだったんですか!?」

 

風太郎「はっ?何でお前らがここにいるんだ…?てか悟飯!お前も!?」

 

五月「孫君はともかく、私達5人がここに住んでるからに決まってるじゃないですか」

 

風太郎「へ、へえ…。友達と5人でシェアハウスか…。仲が良いんだな…」

 

五月「違います。私達、五つ子の姉妹です」

 

風太郎「………はっ??」

 

上杉君の反応は仕方ないと思うな…。僕も驚いたしね……。

 

 

この時、僕はあんなにも苦労するとは思いもしなかった。でもこの出会いは同時に、僕と上杉君を大きく変えるものになるとも思いもしなかった。

 

 

 




こんな感じで書いていこうかと思っております。
駄文&不定期亀更新でもよろしければ、これからもよろしくお願いします。

戦闘はやっぱあります(手のひら返し)。割合としては少ないですが…。


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第2話 五つ子は全員赤点候補生

界王様の、前回のあらすじコーナー!
CV:(既に亡くなった)北の界王様


人造人間セルを倒した孫悟飯は、数年後に旭高校に通うことになった。

悟飯は自分と同じく学年1位の成績を誇る上杉風太郎と友人関係になり、学業を含めて学生生活は充実していた。

だが、悟飯は中野マルオという人物に相場の5倍の給料で家庭教師をしてくれないかと頼まれた。

悟飯はそれを了承し、早速家庭教師をしに生徒の家へと向かうのだが…。


界王「って、何で界王のワシがこんなことしなきゃいけないんだ!」

悟空「いいじゃねえか?いつもやってんだしよ?」

界王「こら悟空!メタ発言は自重しろ〜ッ!!」

悟空「いつも言ってるみてえに、飯ビー以外は認めない人と、台本形式、クロス系が苦手なやつはブラウザバックをしてくれよな!」

悟空「…ところで、飯ビー?台本形式?クロス?ぶらうざばっく?どういう意味なんだこれ?」

界王「話が進まんからスルーさせてもらうぞ」



チチ「今頃悟飯ちゃんは家庭教師のお仕事を頑張ってるだな〜…。」

 

そう呟きながらチチは卵を割った。

 

チチ「おっ?珍しいこともあるもんだべな…」

 

なんと、黄身が五つもある卵だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

悟飯「五つ子…?」

 

『そうだ。娘達は正真正銘の一卵性の五つ子だ』

 

悟飯「凄い珍しいこともあるんですね…」

 

『そうだね。三つ子でさえも世界的に珍しいと言われるくらいだからね。ちゃんと5人分は払う。5人の娘達を卒業に導いてほしい』

 

ハッキリ言って僕1人だったら断念していたかもしれない。でも、上杉くんもいるから5人を卒業させることが条件なら、なんとかなりそうだな…。

 

悟飯「分かりました。任せて下さい!」

 

『期待してるよ。ところで、娘達はそこにいるのかい?』

 

シーン…

 

い、いないんだけど…。少なくとも五月さんはやる気があるように見えたんだけど…。

 

悟飯「え、ええ!今ちょっといいところなので、そろそろ失礼させてもらってもよろしいでしょうか?」

 

『そうだったかい。では、引き続きよろしく頼むよ』

 

悟飯「は、はーい…」

 

咄嗟に嘘をついてしまった…。

 

風太郎「てか、アイツらどこに行ったんだ…?」

 

悟飯「さ、さあ…」

 

「みんなは自分の部屋に戻りましたよ」

 

2人にそう話しかけてきたのは、頭のリボンがトレードマークの四葉だった。

 

風太郎「お前は…。四葉だっけ?0点の」

 

四葉「えへへ…」

 

れ、0点!?逆に凄いな…。それって選択肢の問題も全部外したってことだよね…?ちゃんと回答してるとしたらある意味奇跡じゃないか…?

 

四葉「お父さんとは話せましたか?」

 

風太郎「ああ。お前らが本当に…。眉間にシワを寄せてみてくれ」

 

四葉「へっ?こ、こうですか?」ムーッ

 

おお…。こうして見ると五月さんに似ている…。僕の場合は『気』で判別できるから、誰が誰だかは気と名前が結びつくようになれば分かるようになるだろう。

 

風太郎「てか、何でお前は逃げないの?」

 

四葉「心外です!お二人の授業を受けるために決まってるじゃないですか!怖い先生が来るかと思ってドキドキしてましたけど、同級生の上杉さんと孫さんで良かったです!」

 

四葉さんも真面目でいい子なのかな?少なくとも僕達を歓迎しているように見える。

 

風太郎「四葉、抱きしめていいか?」

 

悟飯「上杉くん、それセクハラ…」

 

風太郎「流石に冗談だ」

 

四葉「さ、さあ!他のみんなも呼びに行きましょう!!」

 

「遅くなりました〜!」

 

そう駆け足気味でリビングに来たのは五月さんだ。

 

五月「ただ今用意が終わりました!これからよろしくお願いしますね!孫くん!」

 

悟飯「うん。よろしく!」

 

風太郎「おお!五月も来てくれたか!これであと3人だな!」

 

五月「勘違いしないで下さい。私はあくまで『孫くんの授業』を受けに来たんです。あなたのではありません!」

 

風太郎(まだ怒ってるよ……)

 

風太郎「ま、まあどっちのにしろ授業を受けてくれるならそれでいいさ」

 

四葉「じゃあみんなを呼びに行きましょう!」

 

風太郎「……いや、待て。悟飯が行ってくれないか?」

 

悟飯「へっ?」

 

風太郎「お前の方が愛想がいいから、お前が呼びに行った方が授業を受けにくる確率が上がると思うんだ」

 

五月「自覚はあったんですね。じゃあ私と孫くんで行きましょう」

 

四葉「えっ?いいよ五月!私が案内するから!」

 

五月「いえ、上杉くんの授業は受けるつもりはないので。四葉が先に始めてて下さい」

 

上杉くん…。この前の一件で相当嫌われちゃったみたいだなぁ…。あはは……。

できれば仲良くしてほしいんだけど…。

 

五月「えっとですね…。手前から順に、私、四葉、三玖、二乃、一花の順です」

 

なるほど。部屋は手前から見て降順と覚えれば分かりやすいかな?

 

五月「私と四葉はいるので、まずは三玖からですね!」

 

悟飯「そうだね!」

 

それで三玖さんの部屋に行ったんだけど…。

 

三玖「嫌。そもそも何で家庭教師が同級生なの?この町にはマトモな家庭教師はいないの?」

 

清々しいくらいに歓迎されてないみたいでちょっと傷付くかも…。

 

五月「そ、そう言わずに!孫くんの授業は分かりやすいですよ!一回受けてみれば三玖も分かるはずです!」

 

三玖「とにかく嫌」

 

 

 

 

悟飯「僕、嫌われてるのかなぁ…」

 

五月「ま、まあ5人いれば1人はああなりますよ!次は二乃ですね。二乃は人付き合いが上手ですし、すぐに仲良くなれるかと!」

 

悟飯「……」

 

悟飯「部屋にすらいないんだけど?」

 

五月「あ、あれ〜…?じゃ、じゃあ次は一花ですね!一花は……………」

 

・・・・・・・・

 

悟飯「えっ?なにその間は…?」

 

五月「お、驚かないで下さいね?」

 

五月さんは扉を開けると…。

 

悟飯「な、なんだこれ…」

 

なんというか、服とかバックとかそういう物によって床が覆い隠されていた。ここって人が寝泊まりする部屋なんだよね…??

 

一花「ふぁぁ……人の部屋を未開の地扱いしてほしくないなぁ…」

 

悟飯「いや、こんな状態じゃそう思われても仕方ないと思うけど….」

 

一花「君、意外とグサッと来ること言うね………」

 

五月「事実です!この前四葉に片付けてもらったばかりなのにどういうことですか!!」

 

一花「うーん…。気がつくとそうなっちゃうんだよね〜…。困ったなぁ…」

 

悟飯「と、とにかく、そろそろ授業を始めるから……」

 

一花「えー?お姉さんまだ服着てないから時間かかるよー?」

 

悟飯「……何で服着ないの…?」

 

一花「寝る時の癖で脱いじゃうんだよ」

 

そんな癖なんてあるんだ…。

 

一花「ねえ、同級生の女の子の部屋に来て勉強勉強って…。それでいいの?」

 

悟飯「………??」

 

それでいいって、僕は家庭教師としてこの家に来ているわけだから、それ以外にやることなんてなくない…?

 

一花「えっ?他に何かある?って顔してるけど、流石に嘘でしょ…?」

 

悟飯「言ってる意味がよく分からないけど、家庭教師として来てる以上は勉強を教える以外にやることはないと思うけど……」

 

一花「マジかぁ…。君は世界1安全な男の子かもね。道理で男の子なのに五月ちゃんが警戒しないわけだ……

 

それどういう意味?まさか、僕がセルを倒せるくらいの実力があることを知っていて、僕の近くにいれば大丈夫って意味…??

 

って、流石にそんなわけないよな…。

 

五月「はわっ!」

 

一花「んー?どうしたの五月ちゃん?」

 

五月「い、一花ってこんなものを着てるんですね…」

 

一花「五月ちゃんも同じ顔なんだし、似合うんじゃない?五月は四葉みたいなお子様下着じゃないけど、もうちょっと攻めてもいいと思うなぁ」

 

それ、遠回しに自分を褒めてるんじゃ…?

 

五月「あ、あの…。孫くんがすぐそこにいるんですけど……///」

 

悟飯「……とにかく、出来るだけ早めに降りてきてね〜」

 

五月「あの、ちょっと待ってください!」

 

悟飯「うん?」

 

五月「……これ、似合いますでしょうか?」

 

そう言うと五月さんは制服の上から一花さんの黒い下着をつけるような感じで持って僕に見せてきた。

 

悟飯「……あの、僕に聞くよりも一花さんに聞いた方がいいと思う…。それじゃまた後で!」

 

五月「あっ!ちょっと!」

 

一花「良かったね五月ちゃん。あれは照れてるよ。脈ありじゃない?」

 

五月「別にそういうのじゃないですから!!」

 

 

 

…っと、魔境(一花さんの部屋)を出たところに三玖さんがいた。

 

悟飯「どうしたの?」

 

三玖「悟飯に聞きたいことがあるの。私の体操服がなくなったの。赤のジャージ」

 

悟飯「あっ、そうなの…。僕は見てないよ?」

 

三玖「さっきまではあったの。悟飯が来るまでは。まさか、盗った?」

 

悟飯「……?何で僕が三玖さんのジャージを盗るの?」

 

三玖「それは、……なんでだろうね?」

 

悟飯「えぇ………」

 

三玖さんはちょっと不思議な子かもしれない…。

 

五月「えっ、孫君はそんな人じゃないと思ってたのに……」

 

悟飯「いや、盗ってないって…」

 

三玖「だとすると、まさかフータロー…?」

 

悟飯「いや、上杉くんはずっと下にいるし…」

 

三玖「じゃあやっぱり悟飯だ」

 

悟飯「だから盗ってないよ!」

 

一花「んー?前の学校のジャージでいいんじゃない?」

 

悟飯「あっ!そうか!それでもいいじゃん?」

 

三玖「前の学校のジャージは捨てた」

 

悟飯「えっ…?捨てちゃったの?ちょっと勿体無いなぁ…」

 

三玖「うん。前の学校であんなことがあったから…………」

 

一花「あ、あ〜…。確かに……」

 

……あれ?なんか触れちゃいけないところに触れちゃったかな…?

 

悟飯「と、とにかく…」

 

「ちょっとー!そこで何やってんのよ」

 

悟飯「…あれ?二乃さんいつの間に…」

 

二乃「クッキー作りすぎちゃったんだけど、食べる?」

 

五月「食べます食べます〜!!」

 

…ん?あの赤いジャージ、よく見ると、『中野三』って書いてあるけど…。

 

三玖「……見つけた」

 

 

 

とにかく問題は解決したので、ようやく授業を始められる。

 

風太郎「よーし、これで全員集まったな!まずは実力を把握する為にテストを実施する!!」

 

「「「「「「いただきまーす!!」」」」」」

 

風太郎「……おい家庭教師。お前も何ちゃっかり食ってんだ?」

 

悟飯「いや、食べていいよって言われちゃったからつい……」

 

風太郎「やる気あんのかお前!?」

 

四葉「大丈夫ですよ上杉さん!私はもう始めてます!」

 

風太郎「うん!!名前しか書けてないけどなッ!!」

 

一花「ふぁ〜…。食べたら眠たくなってきちゃった…」

 

悟飯「さっきまで寝てたでしょ…。三玖さんもジャージが見つかったことだし…」

 

三玖「勉強するなんて一言も言ってない」

 

た、確かに…。

 

二乃「ねー?折角の土曜日なんだし、どこか遊びに行かない?」

 

風太郎「ダメ絶対ッ!!」

 

悟飯「…………」

 

二乃「……クッキー嫌い?」

 

風太郎「いや、そういう気分じゃ…」

 

二乃さんって実は優しい子なのかな?こうしてクッキーをご馳走してくれてるし…。

 

二乃「警戒しなくても、クッキーに毒なんて盛ってないから。食べてくれたら勉強してもいいよ?」

 

風太郎「……よし、食うか!」

 

乗り気じゃなかった風太郎くんも流石に食べることにしたそうだ。

 

でも、わざわざ毒なんて盛らないなんて言うだろうか…?普通はそんなこと言わないと思うけどなぁ…。

 

二乃「わっ!モリモリ減ってる!嬉しいなぁ!あ、そだ。パパとどんな約束したの?」

 

風太郎「!……特に何も」

 

二乃「うっそ〜!君ってそんなことするキャラじゃないでしょ?あっちの子はともかく」

 

あっちの子って僕のことか…?

 

二乃「ぶっちゃけ家庭教師なんていらないんだけどね〜……」

 

風太郎「…!!」

 

…あれ?やっぱり歓迎されてない…?

 

二乃「なんてね、はいお水」

 

風太郎「お、おう。サンキュー…」

 

二乃「ほら、あんたも水飲みなさい」

 

悟飯「あっ。ありがとう」

 

優しいのか優しくないのかよく分からないなぁ…。

 

風太郎「……」

 

……あれ?上杉くんなんかフラフラしてないか…?

 

二乃「ばいばーい」ニヤッ

 

ガタッ

 

悟飯「えっ?上杉くん!?」

 

風太郎「……」

 

悟飯「あの〜……ちょっとー?」

 

風太郎「……zzz」

 

寝てるッ!?上杉くんやる気あるのッ!?

 

二乃「………」ジーッ

 

悟飯「……?」

 

な、なんか二乃さんから思いっきり見られてるんだけど…。

 

二乃「ねえ、アンタも眠くならない?クッキー結構食べたでしょ?」

 

悟飯「いや、全然」

 

僕は夜更かしなんてしないで基本的に早寝早起きをするタイプだから、寝るということは殆どない。

 

二乃「ふーん…。あっ、もうお水なくなってんじゃない。今度はお茶を淹れてあげる」

 

悟飯「うん?ありがとう…」

 

別にいいんだけど…、もう行っちゃったからいいか…。

 

五月「孫くん、ここが分からないんですけど…」

 

悟飯「あーここね。ここはこうして…」

 

二乃「……もうなくなってるじゃない?今度は紅茶を淹れてあげる」

 

悟飯「いや、もう…」

 

二乃「飲んでくれたら勉強してもいいわよ」

 

悟飯「わ、分かったよ…」

 

紅茶を買いすぎたのかな…?賞味期限が切れる前に使い切りたいのかも…?

 

四葉「上杉さん起きませんね…。あ、孫さん!この単語の意味はなんですか!」

 

悟飯「これは『ご飯』だね。ほら、カレーライスって言うでしょ?カレーライスとセットで覚えると覚えやすいよ?」

 

四葉「なるほど!」

 

五月「もう覚えました!こうですね!」

 

悟飯「いや、lじゃなくてrから始まるんだけど……」

 

二乃「おいッ!?何でアンタ寝ないのよッ!?!?」

 

悟飯「えっ…?僕は早寝早起きするタイプだし、そもそも人の家で、それも生徒の家で寝るなんて失礼だよ?」

 

二乃「確かに……。って!!私が言いたいのはそういうことじゃないわよ!?睡眠薬全部使ったんだけど!?それなのに何で寝ないのよッ!?」

 

悟飯「…………えっ??」

 

五月「ちょ!何してるんですか二乃!?」

 

もしかして、あんなに飲み物を淹れてくれたのって……。

 

というか、睡眠薬って使い過ぎると死ぬこともあるんだけど…。勉強できないとその辺の知識もないのか…。これは危険だ!二乃さんに睡眠薬の危険性を教えないと!

 

※孫悟飯は純粋で人を疑うことをあまりしません。

 

悟飯「二乃さん!睡眠薬は使い過ぎると死んじゃうこともあるんだよ!気をつけないとダメだよ!」

 

四葉「えー!?そうなんですかッ!?使うことないと思いますけど気をつけます!!」

 

二乃「いや、それは流石に知ってる」

 

四葉「知ってたんだッ!?」

 

へっ?知ってるの?

 

二乃「そうじゃなくて、何でアンタは眠気すらも催さないのよ!?」

 

ど、どうしよう…。サイヤ人の血が混じってるからなのか、修行したからなのか、超サイヤ人になれるからなのかは分からないけど、全然薬を飲んでることに気付かなかったなぁ…。

 

悟飯「……や、やっぱり眠くなって来ちゃったかな〜…?」

 

二乃「胡散くさッ!?」

 

悟飯「あ、上杉くんは僕が送るよ」

 

四葉「えー!?眠いのにそれは危険ですよ!!私が行きます!!」

 

悟飯「そ、それもそうだね…。よろしく…」

 

こ、困ったなぁ…。下手すると二乃さんに僕がセルゲームに参加していたメンバーのうちの1人だとバレかねない…。

 

普通はそんなことないと思うけど、睡眠薬が効かない→常人じゃない→あれ?顔なんかテレビで見た人に似てる→もしかして、髪を黒く染めた金髪のあの人じゃッ!?

 

……なんてことになる可能性はないと言い切れないので、今日は睡眠薬が効いてきたフリをして帰ろう…。そうしないと嘘を吐くのが苦手な僕はどんどんヘマをしてしまうだろう…。

 

悟飯「あ!明日も来るからみんなを集めておいてね〜…」

 

ばたん…。

 

二乃「……なんなのアイツ…?睡眠薬を飲まされてたのに怒らないの…?」

 

一花「ふぁぁ…。あれ?2人とも帰ったの?」

 

二乃「ええ。帰ったわよ」

 

一花「そっか〜…」

 

二乃(てかアイツ、私が追い出したくて睡眠薬を飲まされたって考えてないでしょ…)

 

※実際、悟飯的にとっては悟天の悪戯と同じような認識です。

 

 

 

さて、今日はあるものを作ってきた。それはテストだ。学校の定期テストを元に作り出したものだ。

 

五月さんと四葉さんはともかく、他の3人は極度に勉強が嫌いだと感じた。でも目標は5人の卒業。なら、卒業できるだけの成績を取れるなら、わざわざ嫌がっている人に無理矢理勉強を教える必要がなくなるのだ。

 

風太郎「よーし!今日は集まってくれてありがとう!!」

 

四葉「まあ、私達の家ですし…」

 

三玖「まだ諦めてなかったんだ…」

 

二乃「友達と遊ぶ予定だったんだけど?」

 

と言いつつ来れてるから、なんだかんだ言って二乃さんもいい人なのかな?

 

二乃「というか、家庭教師なんていらないって言わなかった?」

 

風太郎「だったらそれを証明してくれ。ここに学校の定期試験を元に作られたテストがある。合格ラインを超えた者には今後一切近付かないことを約束しよう!」

 

意外だったのか、4人ともこの提案に驚いている様子だ。もう1人は寝てるけど…。なんか寝るの大好きだね…。

 

風太郎「合格ラインを超えた者は勝手に卒業して行ってくれ」

 

二乃「なんでそんな面倒なことをしなきゃいけないのよ」

 

五月「……いいでしょう」

 

二乃「ちょ、五月!?」

 

五月「合格すればいいんですよ。これであなたの顔を見なくて済みます」

 

一花「そういうことならやりますかぁ…」

 

四葉「みんな頑張ろう!」

 

三玖「合格ラインは?」

 

風太郎「60…いや、50あればいい」

 

悟飯「いや、40点で十分だと思う」

 

風太郎「えっ?それは流石に低すぎないか?」

 

悟飯「このテストは定期試験を元に作ったテストだから。定期テストの赤点回避ラインは30点以上…。だから少し余裕をもったとしても40点で十分だと思う」

 

風太郎「……ということだ」

 

二乃「……本当は受ける義理なんてないけど、私達をあまり侮らないでもらえる?」

 

おや?二乃さんって実は勉強できるのかな?睡眠薬の危険性についても知っていたし…。

 

※それは関係ありません(多分)

 

一花さんと三玖さんも実は勉強できたりして……。

 

 

 

テスト終了。

 

風太郎「凄えな!100点だ!!」

 

うん。みんなよく頑張ったと思う。時間ギリギリまで粘ってたもんね。

 

風太郎「全部合わせてなッ!!」

 

……みんな頑張っていたとは思うよ…?

 

風太郎「お前ら、まさか…」

 

二乃「逃げろ!!」

 

その声に反応して5人は一斉に逃げる。

 

悟飯「なんで四葉さんと五月さんも逃げてるのッ!?」

 

四葉「あはは…。前の学校を思い出すね…」

 

一花「厳しいとこだったもんねー」

 

三玖「思い出したくもない」

 

五月「おかしい…。孫くんに教えてもらったはずなのに……。自分で勉強もしたのに……」

 

二乃「あいつら知ってんのかな?私達5人が落第しかけて転校したってこと…」

 

……………

 

どうやら、僕の生徒は全員赤点候補生だったようです……。

 




中野一花:12点 途中寝てたでしょ…
中野二乃:20点 もう少し頑張りましょう
中野三玖:32点 惜しい!あと一歩!
中野よつば:8点 名前は漢字で書こう
中野五月:28点 惜しい!赤点回避まであと2点!


よくよく考えると、二乃とビーデルって共通点あるよね。途中髪切ったり、最初はツンツンしてて後からデレるようになるとことか。気の強いところとか…。

もし超の設定の『サイヤ人は気の強い女に惹かれやすい』という設定をこの作品でも採用すると、間違いなく二乃が有利だよね。


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第3話 落ちこぼれ=伸びしろの塊

⚠︎注意⚠︎

pixivの方でほんのちょっとしたトラブルがあったので…。

『クロスオーバーが苦手な人』
『台本形式が苦手な人』
『細かいことが少しでも気になる人』
上記の内容で少しでも気になる場合はブラウザバックを『強く』推奨します。

細かいことというのは、この作品で言うと…。

「なんでこの子が悟飯のヒロインになってるんだ」

とか…

「ドラゴンボールの世界観と五等分の花嫁の世界観違すぎでしょ。ないわ」

「風太郎と五つ子の組み合わせじゃなきゃ嫌だ」

とかとか…。

このようなことを指します。

なので上記の例も含めて気になって気分を害す可能性があるようでしたらブラウザバックして下さいね。

批判自体は別に悪いことではありませんけど、注意書きを読まずに批判するのはダメです。ちゃんと注意書きは読んでください。

通常公開、クロスオーバー、原作ヒロインという時点である程度の批判は覚悟しているつもりですが、注意書きを読まないで批判するのはダメっすよ。説明書を読まずに操作方法が分からんって文句を言ってるようなもんですぜ。

今後は前書き部分にこの注意書きを毎回載せる予定です。その注意書きの内容は話ごとに変わる可能性もあります。ご了承下さい。



まさか全員が赤点候補生だとは思わなかった…。これはしっかり向き合う必要がありそうだ…。

 

今日もいつも通り筋斗雲で通う。学校付近の人が少ないところにこっそり着地して徒歩で登校するのが日課だ。

 

ただ、今日はいつもの登校とは一味違った。

 

悟飯「……ん?」

 

あれ?あの車…。周りに人がいるけどどうしたんだろう?ちょっと様子を見に行こう…。

 

二乃「ちょっとどうすんのよ江端さん!」

 

「申し訳ございません…。この辺の道はまだ慣れてないものでして……」

 

三玖「困った。このままじゃ遅刻しちゃう」

 

一花「かと言って歩いても間に合うかどうか…」

 

五月「多分無理ですね…」

 

四葉「だったら答えは簡単!みんなで走ろう!」

 

「「「「いや(だ)(よ)」」」」

 

四葉「あ、ははは・・・」

 

あれ、五月さん達じゃん…。土塀に車がハマっちゃったのかな…?

僕の力なら車を持ち上げるくらい余裕だけど、正体を隠して学校に通う以上はそんな真似はできない。

 

かといって放っておくのも…。

 

悟飯「……よし!はぁッ!!」

 

ボッッ!!!!

 

悟飯の髪が突然金髪になった。

 

超悟飯「よし、これなら大丈夫なはず!」

 

実を言うと、悟飯が超サイヤ人になることは珍しくない。とはいえ、用途は戦闘力の上昇ではなく、単なる変装のためだ。

 

髪色と目の色が変わるだけでも印象は相当変わるらしく、超サイヤ人は変装に打って付けなのだ。

 

超悟飯「あの!大丈夫ですかー?」

 

五月「あっ!その…。車がこのような状態に……」

 

超悟飯「僕に任せて下さい!」ガシッ

 

一花「いや、流石に一人で車を持ち上げるなんて……」

 

ひょいっと悟飯は軽々と車を持ち上げた。

 

「「「「「「!?!?」」」」」」

 

ドシッ…

 

超悟飯「はい。これでもう大丈夫!」

 

「これは…なんとお礼を言ったらよろしいか…」

 

超悟飯「じゃあ、僕はこれで」

 

二乃「ちょっと待ちなさい!」

 

超悟飯「えっ?」

 

まさか、勝手に持ち上げたから怒ってる…?

 

二乃「……あんた、すっごく私のタイプなんだけど」

 

超悟飯「………へっ??」

 

一花「えっ?いきなり?」

 

三玖「やっぱり二乃は面食い」

 

四葉「わーっ!二乃大胆!」

 

五月「というかお腹すきました…」

 

なんか1人だけ関係ないことを言ってた気がするけど…。

 

二乃「あなた、名前は?私は中野二乃って言うの!」

 

超悟飯「えーっと…。僕は………」

 

な、名前…。ど、どうしよう…。

 

一花「んー?そういえば君、どこかで見たことあるような…?というかその制服って……」

 

まずい…。長居はしないようにしないと…。

 

超悟飯「あ!用事を思い出した!僕はこれで!」

 

二乃「あっ!ちょっと!!…もう!邪魔しないでよ一花!!」

 

一花「えー?私のせい…?まあ、ごめんごめん」

 

三玖「……あの人、派手だったね」

 

四葉「車を一人で持ち上げるとは……。一体どんな鍛え方を……」

 

五月「やっぱり肉まんは美味しいです♪」

 

※どんな時でもブレない五月さん。

 

 

 

……周りに人がいないことを確認して超化を解除した。

 

悟飯「二乃さんって超サイヤ人の姿が好きなんだなぁ…。お母さんとは正反対だ…」

 

っとそこに、急いできたのであろう上杉くんが到着した。

 

風太郎「よ、よう!こんな時間に会うのは初めてだな…!」

 

悟飯「随分息切れしてるけど大丈夫?」

 

風太郎「遅刻しそうだったからな…」

 

悟飯「お疲れ様」

 

キュー

 

上杉くんと雑談をしていると、さっきの車が到着した。

 

悟飯「ってあの車……」

 

風太郎「おお!高そうな車だな!これは100万くらいはするな!」

 

悟飯「上杉くん。今時のクルマは100万円じゃそうそう買えないよ?」

 

風太郎「マジで!?車って高ッ!」

 

ガチャ…

 

三玖「あっ、フータロー…」

 

四葉「おはようございます!」

 

五月「なんですか?ジロジロと不躾な…」

 

風太郎「お前ら昨日はよくも逃げ…ってああ!?」

 

上杉くんが声をかけようとすると、5人揃って逃げるように足を速める。

 

風太郎「よく見ろ!!俺は手ぶらだ!!害はない!!」

 

二乃「騙されねーぞ」

 

一花「悟飯くんが持ってるってオチじゃないの?」

 

三玖「油断して教えてくるかも」

 

ほ、本当に勉強が嫌いなんだなぁ……。どうしたらここまで勉強が嫌いになるんだろう…。

 

風太郎「それでその、四葉…。ウチのことだが…」

 

四葉「大丈夫ですよ。口外はしてません」

 

風太郎「な、ならいいんだ…」

 

ん?四葉さんと上杉くんが何かを話しているな?この距離だと聞き取れないや…。

 

五月「私達が力不足なのは認めましょう。ですが自分の力でなんとかします」

 

悟飯「あ、あれ?僕は…?」

 

三玖「勉強は1人でもできる」

 

二乃「そうそう。要するに余計なお世話ってことよ」

 

風太郎「そ、そうか…。じゃあ昨日のテストの復習は当然したんだよな?」

 

・・・・・

 

えっ?何この間…。デジャヴ…?

 

風太郎「問一、厳島の戦いで毛利元就が破った武将を答えよ」

 

あっ、この問題は昨日のテストの第一問目だ…。確か誰か1人正解してたと思うんだけど…。誰だっけ?

 

五月「……」フッ

 

五月さんが、『そんなの簡単です』と言わんばかりの顔をして振り返った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………と思いきや…。

 

五月「んんんんん〜…!!」プルプル

 

僕は五月さんに出会って日は浅いけど、ある癖があることが分かった。

 

それは、分からない時は頬を膨らませて睨んでくることだ。

 

つまり、この顔は『分かりません!』と訴えているわけだ…。

 

結局、朝のホームルームの時間が迫っていたので、みんなバラバラになってしまった。

 

風太郎「……俺、家庭教師やめようかな…」

 

悟飯「僕も協力するから頑張ろ?」

 

風太郎「……そうだな」

 

流石に上杉くんが可哀想になってきた…。

 

悟飯「そういえばさ、さっきの問題なんだけど….」

 

風太郎「ん?お前は当然分かるだろ?」

 

悟飯「いや、そうじゃなくて、確か1人だけ正解してたはずなんだよ。誰だか忘れちゃったけど」

 

風太郎「それ本当か?………あっ、三玖は正解してる」

 

三玖さんだったか…。確か3人の中で1番点数が高かった子だ。

 

悟飯「じゃあ僕が…」

 

風太郎「いや、俺に行かせてくれ。俺もアイツらと真正面から向き合わないといつまで経っても本格的な授業を始められない」

 

悟飯「た、確かに……」

 

風太郎「だから三玖のことは俺に任せてくれ!」

 

悟飯「うん。分かった!」

 

上杉くんは三玖さんに、さっきの問題のことについて聞こうとするけど…。

 

〜学食にて〜

 

風太郎「よ、よう三玖!偶然だな!350円のサンドイッチに……ま、抹茶ソーダ…?なんだそれ…?逆に気になる!」

 

悟飯「た、確かに………」

 

三玖「意地悪するフータローと悟飯にはあげない」

 

悟飯「えっ?意地悪って…?」

 

三玖「私達に勉強を教えようとすること」

 

風太郎「その理屈でいくと、先生達が全員お前に意地悪してることになるんだが…………」

 

風太郎「じゃなくて!一つ聞いていいか?今朝の問題の件なんだが……」

 

四葉「上杉さーん!!お昼を一緒に食べませんか!?」

 

風太郎「うおっ!?四葉か!?ビックリした!?」

 

四葉「はい!リボンがトレンドマークの四葉です!!朝は逃げちゃってすみませんでした!!」

 

数日見て分かったことがもう一つある。四葉さんは上杉くんと話す時は地味にテンションが上がっているように見える…。

 

もしかして、上杉くんのことが好きなのかな…?

 

風太郎「それで三玖…「これ見てください!英語の問題です!!」」

 

風太郎「さっきの話…「全部間違えてました!!あははは!!」」

 

ベシッ

四葉「あいたッ!?!?」

 

一花「ごめんね?邪魔しちゃって」

 

四葉「一花も見てもらおうよ!」

 

一花「うーん…。私はパスかな…?だってはほら、私達は馬鹿だし?」

 

悟飯「いや、だからと言って勉強を疎かにしちゃダメだよ…」

 

一花「ええ?高校生活勉強だけってどうなの?もっと青春をエンジョイしようよ?」

 

悟飯「青春?」

 

一花「そうそう!例えば恋とか!」

 

風太郎「……恋?」

 

あっ、なんか変なスイッチ入っちゃった…。

 

風太郎「アレは学業から最も離れた愚かな行為…。したい奴は勝手にすればいいさ。そいつの人生のピークは学生時代となるだろう………」

 

な、なんかこんなに怒ってる上杉くんは初めて見たかも……。

 

一花「この拗らせ方は手遅れだわ…」

 

四葉「あはは…。恋をしたくても相手がいないんですけどね〜…」

 

一花「そーだ!悟飯くんはどうなの?好きな人とかいる?」

 

風太郎「お前はそんな愚かな行為はしないよな!?」

 

な、なんだろう…。このサンドイッチ状態は…?

 

悟飯「僕も好きな人とかはいないかな…?そもそも恋がどういうものなのかよく分からないし……」

 

一花「ふむふむ…。別に拗らせているわけではないと……」

 

四葉「そうだ!三玖はどう?好きな人はいる?」

 

三玖「…えっ?…い、いないよ…!」

 

あれ?三玖さん、ちょっと慌ててたような…。

 

四葉「あの表情は…!姉妹の私なら分かります!!ズバリ、三玖は恋をしています!!」

 

一花「間違いないね!」

 

 

 

お昼休みが終わり…。

 

風太郎「非常にまずいぞ、悟飯」

 

悟飯「なにが?」

 

風太郎「ただでさえ勉強が嫌いなのに、勉強できないのに、恋愛なんかしたら卒業できないに決まってるだろ!!」

 

悟飯「あ、あ〜……」

 

それは言えてるかもしれない…。

 

風太郎「どうにかして恋愛をやめさせられないか…」

 

悟飯「それは無理だと思う」

 

風太郎「なんで言い切れる?」

 

悟飯「それは……」

 

 

お母さんはお父さんが死んでからというもの、お母さんとお父さんの出会いやら新婚時代の話をよくするようになった。

 

似たようなエピソードを延々と聞かされることがたまにある。

 

それでお母さんの話を何度も聞いて分かったことがある。

 

お母さんが言いたいことは、『恋した女は止められない』

 

なので、三玖さんが本当に恋をしたのだとしたら、無理矢理止めたらそれこそ嫌われちゃうだろう…。

 

 

風太郎「……お前の顔を見て分かった。ソースは自身の経験だな?」

 

悟飯「ま、まあ…。似たようなもの…。とにかく、三玖さんが本気で恋をしたのだとしたら、それを僕達が邪魔したら間違いなく嫌われちゃうよ」

 

風太郎「……八方塞がりじゃないかこれ!?無理ゲーってやつじゃねッ!?」

 

悟飯「ま、まあまあ…。三玖さんが本当に恋したって決まったわけじゃ…」

 

風太郎「ん?何か机に入ってるぞ?」

 

悟飯「えっ?」

 

風太郎「なんだこれ?手紙?三玖からだな…?…………いや、まさかな」

 

上杉くん宛ての手紙の内容は…。

 

 

屋上に来て

フータローに伝えたいことがあるの

どうしてもこの気持ちが

抑えられないの

 

 

風太郎「………」

 

悟飯「………」

 

風太郎「俺かよッ!?!?」

 

世間は狭いね…。

 

五月「孫くん、この問題を…。ってなんですか上杉さん。気持ち悪い笑い方ですね」

 

風太郎「わ、笑ってねーし!喜んでねーし!!」

 

悟飯「……そうだ。僕、いい作戦を思いついたんだけど…」

 

風太郎「なんだ?」

 

悟飯「上杉くんが告白されたとするね?そしたら上杉くんはこう言うんだよ。」

 

風太郎『俺は勉強のできるできないに関わらず、ちゃんと勉強するやつがタイプなんだよなー』

 

悟飯「って」

 

風太郎「えっ?!そんなんで上手く行くか!?」

 

悟飯「人の気持ちを利用するようでちょっと心苦しいけど、このままじゃ卒業自体が危ういから……」

 

風太郎「背に腹は変えられんか…。仕方ない、行ってくるか!」

 

放課後、上杉くんは心なしか少し嬉しそうにしながら教室を出て行った…。

 

上杉くん、実は恋愛が嫌いじゃないんじゃ…?

 

五月「なんなんですか上杉くん…。昼休みが終わってからずっとニヤついてましたけど」

 

悟飯「何かいいことがあったんじゃない…?」

 

五月「そうですか…。あっ、勉強の前に食堂行きません?」

 

悟飯「あっ、そういえば、小腹が空いてきたな…」

 

五月「で、ですよね!実は私もなんです!折角ですから行きましょうよ!」

 

悟飯「えっ?う、うん…」

 

なんだかわからないけど、五月さん、嬉しそうだったな…。

 

 

そして再び食堂へ…。

 

五月「じゃあ私はあっちでメロンパンを買ってきますので」

 

悟飯「うん。分かった!……おや?」

 

自動販売機を見ると、抹茶ソーダがあった。

 

悟飯「……飲んでみようかな?」

 

興味本位で抹茶ソーダを買ってみた。

 

 

 

 

 

 

三玖side

 

なんだ。戦国武将について詳しそうなことを言っておいて、やっぱり大したことなんてなかったな…。

 

フータローの授業、受けてもいいかなって思ったのになんか残念…。

 

どうせ五月がまた食堂にいるだろうし、食堂に行って五月と合流しよう。

 

悟飯「…あれ?三玖さん?」

 

あっ、悟飯だ。手に持っている物は…。

 

三玖「……それ…」

 

悟飯「あっ、これ?味が気になったから買ってみたんだ」

 

……そういえば、悟飯もフータローと同じく学年1位なんだっけ?悟飯なら知ってるかな…?

 

三玖「そのお茶に鼻水入ってた?」

 

悟飯「へっ?鼻水?」

 

三玖「うん」

 

悟飯「え、えっと…。??」

 

やっぱりダメか…。つまらないな。

 

悟飯「待って…、お茶に鼻水?どこかで聞いたことがあるような…」

 

…!いや、多分テキトーに言ってるだけ。そうに違いない。

 

悟飯「あっ!思い出した!石田三成が大谷吉継の鼻水が入ったお茶を飲んだエピソードのことを言ってる?」

 

三玖「……驚いた…!知ってたんだ…!」

 

悟飯「まあ…。中学校まで学校に行ったことなかった分、沢山勉強してきたからね」

 

三玖「……そうなんだ」

 

それってどういうこと?まさか、不登校…?にしては成績が良すぎる…。

 

悟飯「なんでそんなことを突然聞いてきたの?」

 

三玖「そ、それは……」

 

言えない…。恥ずかしくて言えない…。

 

悟飯「そういえば、昨日のテストだけど、日本史、特に戦国時代に関する問題はよく出来ていたよね…」

 

三玖「ま、まあ……」

 

悟飯「もしかして、好きなの?」

 

三玖「……だとしたらどう思う?」

 

悟飯「えっ?」

 

三玖「私が戦国武将好きだったら、どう思う?」

 

悟飯「?別にいいんじゃない?好きなものなんて人それぞれなんだし」

 

三玖「……意外。変って思わないんだ」

 

悟飯「なんで?」

 

三玖「周りの子はみんなアイドルグループとかの美男子が好きなのに、私は髭の生えたおじさん……変だよ」

 

悟飯「じゃあ、普通ってなんなのかな?」

 

三玖「えっ?」

 

悟飯「女の子は普通はどんな男の人が好きなの?」

 

三玖「そ、それは……」

 

そういえば、可愛い系が好きな人もいれば、カッコイイ系が好きな人もいたし、ダメダメ系が好きな人もいたし、肉食系が、草食系が好きな人もいたし、ハンサムな人が好きな人も……。

 

あれ…?普通ってなんなんだろう…?

 

悟飯「普通か変かっていうのは周りの影響を受けて相対的に決まるんだよ。じゃあ逆に聞くけど、武将好きの人の集まりの中で武将好きな人って変かな?」

 

三玖「変じゃないと思う…」

 

悟飯「でしょ?だからそんなに気にする必要はないと思うよ?」

 

 

一見、フータローとは全然違うことを言ってるように聞こえる。けど、伝えたいことは恐らく2人とも同じ…。

 

 

三玖「……変な人」

 

悟飯「ええ!?僕って変なの!?」

 

三玖「うん。大抵の人は私の趣味を変って言うもん。なのに悟飯もフータローも変じゃないって言った。だから悟飯もフータローも変な人」

 

悟飯「あ、あはは……」

 

三玖「…でも、他の子には言わないでね?特に姉妹には…」

 

悟飯「えっ?姉妹なのに三玖さんの趣味を知らないの?」

 

三玖「うん。姉妹だからこそ逆に気軽に言えないんだ…」

 

悟飯「そ、そうなのかな…?他人や友達よりは家族の方が秘密を共有するハードルは低いと思うけど……」

 

三玖「ううん。5人の中で私が1番の落ちこぼれだから、言えない」

 

悟飯「落ちこぼれ…?なんで?少なくとも昨日のテストは三玖さんが1番できていたよ?」

 

三玖「うん。でもね、私程度にできるなら、他の4人にもできるに決まっている」

 

悟飯「……なんでそう思うの?」

 

三玖「だって、五つ子だもん。だから悟飯も私のことなんて諦めて…」

 

ここまで言えば諦めてくれるだろうな。これでも諦めなかったら、相当なお馬鹿さんか、或いは……。

 

悟飯「……じゃあ、仮に三玖さんが落ちこぼれだとしよう」

 

…?何を突然話し出すんだろう?

 

悟飯「落ちこぼれということは、できないことが多いってことだよ。これは分かるよね?」

 

三玖「う、うん…」

 

なんでそんな当たり前のことを聞いてくるの?

 

悟飯「でもそれは逆に、伸びしろばかりだってことだよ」

 

……!!

 

三玖「…えっ?」

 

悟飯「三玖さんの言うように、三玖さんが1番の落ちこぼれなら、それは同時に1番伸び代があるとも言えるんだよ。だから今は落ちこぼれでも、これから1番優秀になる可能性があるってことだよ!」

 

悟飯「だから、これから成長するって分かってる人を放っておくのはできない。勿体ない気もするし、一度家庭教師を引き受けたんだもん。中途半端なところで脱落なんかしないで、最後まで責任を持って面倒を見るよ」

 

分かった。この人は大馬鹿だ。

 

悟飯「三玖さんは自分を卑下しすぎだよ。もうちょっと自分に自信を持ってもいいと思うよ」

 

三玖「……悟飯って、馬鹿だってよく言われない?」

 

悟飯「ええ!?そんなことないと思うけど……」

 

そう、彼は『馬鹿』が付くほど優しい…。

 

三玖「……じゃあ、私を姉妹の中で1番優秀にしてくれる?」

 

悟飯「……全力を尽くすよ」

 

三玖「そこは絶対にしてみせるって言うんだよ。かっこ悪い」

 

悟飯「ええっ!?」

 

三玖「ふふっ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

風太郎「………ん?たった今損した気分になったんだが……。なんでだ?」

 




今話は悟飯が三玖を説得するお話でした。

原作の風太郎とはちょっと違う感じの説得にしてみました。

ちなみに三玖の心情的には、悟飯にもフータローにも心を開き始めた感じです。
風太郎ゴメンなさい!!君には既に運命の人がいるし、今作の主人公は悟飯だから……許して下さい!!(迫真)


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第4話 誤解とは恐ろしいもの

⚠︎注意⚠︎

『クロスオーバーが苦手な人』
『台本形式が苦手な人』
『細かいことが少しでも気になる人』
『原作のカップリングが崩されるのが嫌な人(特に飯ビー)』
上記に当てはまる場合はブラウザバックを『強く』推奨します。

細かいことというのは、この作品で言うと…。

「なんでこの子が悟飯のヒロインになってるんだ」

とか…

「ドラゴンボールの世界観と五等分の花嫁の世界観違すぎでしょ。ないわ」

「風太郎と五つ子の組み合わせじゃなきゃ嫌だ」

とかとか…。

このようなことを指します。

なので上記の例も含めて気になって気分を害す可能性があるようでしたらブラウザバックして下さいね。

批判自体は別に悪いことではありませんけど、注意書きを読まずに批判するのはダメです。ちゃんと注意書きは読んでください。

通常公開、クロスオーバー、原作ヒロインという時点である程度の批判は覚悟しているつもりですが、注意書きを読まないで批判するのはダメっすよ。説明書を読まずに操作方法が分からんって文句を言ってるようなものですよ。

注意書きの内容は話ごとに変わる可能性もあります。ご了承下さい。



三玖さんの説得に成功した僕は、勉強をする為に図書室に入った。

 

すると、そこには上杉くんと…。

 

悟飯「うわッ!?どれだけ読むつもりなの!?」

 

凄い大量の本が…。しかも全部戦国時代のものだ…。

 

風太郎「なんとしても三玖を説得してみせる…!あのまま引き下がるわけには行かん…!!」

 

もしかして、さっき説得するの失敗しちゃったのかな…?既に僕が説得したから、それを伝えてもいいんだけど、みんなが僕にだけ心を開いても意味がない。上杉君に対しても心を開いてもらう必要があるし、僕だけじゃなくて上杉君も真剣だということを理解してもらわないとね。

 

悟飯「うん。頑張ってね?」

 

風太郎「おう!ようやく三玖を授業に引き込める手立てを見つけたんだ!諦めるわけには行かない!」

 

面倒見の良さという観点で見れば、僕よりも上杉くんの方が向いてるんじゃないかな…?だって三玖さんに授業に興味を持ってもらう為だけにこんなに戦国時代についての知識を得ようとしているわけだ。

 

それを踏まえると、僕よりも上杉くんの方が家庭教師に向いてるような…。

 

まあ、家庭教師はあくまで2人だ。2人で頑張っていこう。

 

 

 

翌日…。

 

放課後、上杉くんは『決闘』をしに行った。

ファイト!上杉くん!

 

 

※原作と全く同じ展開になる場合は誠に勝手ながらカットさせて頂きます。ご了承くださいませ…。

 

 

ちなみに今日は家庭教師の日ではない。だけど、五月さんに教えてほしいところがあるとのことで、今は五月さんと図書室にいる。

 

五月「上杉くんと一緒じゃないとは珍しいですね」

 

悟飯「あー…。確かにそうかも…。家庭教師がない日は基本的に上杉くんと勉強してるからね」

 

五月「何故一緒に勉強してるんです?それも上杉くんと…」

 

悟飯「単純に学力が一番近いからかな…?あっ、でもそれは友達になったきっかけだし…」

 

悟飯「分からないことを自分で考えるより、他の人と一緒に考えると早く解決することもあるからかな?」

 

五月「そういうことではありません。彼は無神経で失礼な人です。何故わざわざ上杉くんなんですか?」

 

悟飯「あはは…。確かに上杉くんは思ったことをすぐに口に出すタイプかもしれないけど、上杉くんは優しいよ?」

 

五月「それはどうでしょうか…」

 

悟飯「最近の上杉くんは常に5人のことを考えてるよ?この問題は授業に使えそうとか、こう説明すれば分かりやすそうだとか…」

 

五月「上杉くんが…?」

 

悟飯「うん。だから上杉くんのことは許してほしいかな…。いつまでも険悪な関係でいるよりも、僕としては仲良くしてほしいからね」

 

五月「……上杉くんがあの時のことを謝ってくれたら考えます」

 

悟飯「……ありがとう」

 

五月「ま、まだ許すとは言ってませんよ!」

 

と言いつつ多分許してくれる。上杉くんも謝ろうとしていたし、そのタイミングを失っちゃった感じだから、無理矢理にでもそのタイミングを作りたかった。

 

あとは上杉くんにそれとなく謝るように促せばいいだろう。上杉くんも本当は謝りたいだろうしね…。

 

グゥゥゥ

五月「お、お腹が空いちゃいました…///」

 

悟飯「あはは…。これ食べる?」

 

五月「それは…肉まん!?いいんですか!?」

 

悟飯「うん。僕はお腹減ってないから」

 

五月「ありがとうございます♪」

 

五月さんは嬉しそうに肉まんを受け取った。しかし、肉まんを口に運ぶ前にこう語り始める…。

 

五月「…私、実は気にしてるんです…」

 

悟飯「ん?なんのこと?」

 

五月「その…。私、食べすぎなんじゃないかと……」

 

悟飯「……?そうかな…?」

 

五月「ですから、そのことを指摘されてしまって怒ってしまったのかもしれません……」

 

悟飯「ま、まあ…。突然太るぞなんて言われちゃったら仕方ないと思うよ?」

 

というか、悟天が『お母さんちょっと太った?』って言った時は本当に大変だったからなぁ……。女の人は体型を気にするのかもしれない…。

 

五月「……孫くんは、どう思います?」

 

悟飯「えっ?僕?うーん……」

 

五月「……」

 

五月さんはどうやら真剣に質問をしているらしい。ならばこちらも真剣に回答するべきだろう。

 

悟飯「別に食べ過ぎちゃったとしても、運動とかの身体を動かす行為をするか、勉強とかの頭を使う行為をする分には問題ないんじゃないかな?」

 

悟飯「それに、高校生は成長期って言われる時期の人が多いわけだし、多少は大丈夫だと思うよ?特に五月さんはこうしていつも勉強してるわけだし…」

 

五月「そ、そうなんでしょうか…?」

 

悟飯「うん。あっ、でも夜食や食べてすぐ寝るとかそういうのは避けた方がいいって聞いたことはあるね。だからそれさえ気をつければいいんじゃないかな?」

 

五月「そ、そうですよね!ちょっとくらいは大丈夫ですよね!頭のモヤモヤがスッキリしました!ありがとうございます!!」

 

悟飯「どういたしまして」

 

やっぱり女の子は体型を気にするものなのかな…?

 

悟飯「…あっ、飲み物切れちゃった…。ちょっと買ってくるね」

 

五月「分かりました〜♪」

 

あ、あれ?肉まんの他にメロンパンも持ってる…?ま、まあ僕も沢山食べる方だからあまり人のことは言えないから…まあいいか…。

 

っと、図書室を出たところで上杉くんと合流した。

 

風太郎「おう悟飯。調子はどうだ?」

 

悟飯「うん。特に問題はないよ?ところで……どうだった…?」

 

風太郎「……」ニヤリ

 

この表情は…。間違いない。少なくとも悪い結果ではないことだけは分かる。

 

風太郎「手応えはあった。早速明日から来てくれるかどうかは分からないけどな……」

 

悟飯「それは良かった…」

 

風太郎「あっ、そうだ。五月はいるか?」

 

悟飯「五月さん?今図書室にいるよ?」

 

風太郎「そうか…。色々あって謝るタイミングを逃しちまったからな…。今がチャンスだな…」

 

悟飯「…そうだね。できればみんな仲がいい方がいいもんね」

 

風太郎「だな…。じゃあ行ってくる!」

 

悟飯「うん!」

 

 

…わざわざ言う必要なんてなかったね。

 

 

〜風太郎side〜

 

風太郎「よ、よう五月!奇遇だな!」

 

五月「なんだ、上杉くんですか。何の用ですか?」

 

な、なんだよその反応は…。っていかんいかん!俺は五月に謝りに来たんだ!余計なことは考えるな!

 

風太郎「いや、あのな…。今更になっちまって本当に申し訳ないんだが…。この前は流石に言いすぎた…。すまん……」

 

五月「………」

 

やっべぇ…!やっぱり許してくれないのかッ!?

 

五月「……わざわざそれを言うためだけにここに来たんですか…?」

 

風太郎「そ、そうだ…」

 

五月「………」

 

えっ?これはどっちなんだ?怒ってるのか…?いや、そうは見えん…。でも、許してるようにも……。

 

どっちなんだ!?

 

五月「…私も少々ムキになってしまったところはありますからお互い様です。ですが、これからは言動には気をつけるべきです!」

 

風太郎「ああ…。善処する…」

 

…………これは、どうなんだ…?

 

 

 

〜再び悟飯side〜

 

風太郎「……となったんだが、どう思う?」

 

悟飯「うーん…。その調子なら大丈夫じゃないかな?」

 

風太郎「そ、そうか?」

 

悟飯「うん。五月さんも言いすぎたかなってちょっと気にしてたみたいだしね。これからは少し考えてから発言した方がいいかもしれないね」

 

風太郎「そうだな…。また変なことを言って五月を怒らせちまったらたまったもんじゃないからな……」

 

これで上杉くんに心を開いてくれたであろう人は、五月さん、三玖さん、そして四葉さんだ。

 

あとは一花さんと二乃さんだけど…。

 

一花さんはなんだかんだでやんわりと断られそうだし…。

 

二乃さんは……どうしよう…。いい策が思いつかない…。

 

でも、姉妹のうちの3人が僕達の授業を受けてる様子を見て、受けてみようかなって気持ちになるかもしれないし…。変に行動して嫌われてしまうよりは様子見をした方が的策かもしれない…。

 

 

翌日…。

 

風太郎「だから何度言ったら分かるんだ…。ライスはLじゃなくてRから始まるんだッ!!お前はシラミを食うつもりかッ!?」

 

四葉「あわわわッ!?」

 

五月「また間違えたんですか四葉?」

 

悟飯「……五月さんも間違えてるけどね…」

 

五月「…………///」

 

あっ、なんかやっちゃったかも……。

 

風太郎「……?四葉、何で叱られてるのにニコニコしてるんだ…?」

 

四葉「えへへ…。家庭教師の日でもないのに、上杉さんが……、お二人が宿題を見てくれるのが嬉しくて……」

 

風太郎「残りの3人もお前みたいに物分かりが良ければいいんだけどなぁ…」

 

四葉「声はかけたんですけどね…」

 

五月「また上杉くんが何か失礼なことを言ったんじゃないんですか?」

 

風太郎「失敬なッ!言ってない!!……多分…」

 

四葉「あっ、どうやら残り3人じゃなくて2人みたいですよ?」

 

風太郎「えっ?」

 

あっ、あの子は………。

 

四葉「ね?三玖?」

 

風太郎「三玖…!来てくれたのか!」

 

三玖「……」スタスタ…

 

風太郎「…?」

 

三玖さんは上杉くんの横を通り過ぎると、何かの本を取り出す。でも読むわけでもなく、持ち出すわけでもなく、あるページを開いて、少ししたらすぐに本を閉じた…。

 

三玖「……フータローのせいで考えちゃった。私にもできるんじゃないかって…」

 

三玖「それに、悟飯のせいで考えちゃった。悟飯なら私をできるようにしてくれるんじゃないかって……」

 

三玖「だから、責任、取ってよね?」

 

風太郎「任せろ」

悟飯「勿論!」

 

四葉「………」

 

五月「………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

四葉「まさか、この前隠してた三玖の好きな人は、この2人…!?三玖って意外と肉食系…!?」

 

三玖「いや、流石にそれはないかな…」

 

五月「流石に2人同時はないと思います。不埒ですよ四葉」

 

四葉「じゃあどっちが好きなの?」

 

三玖「そ、それは……教えない」

 

四葉「否定しないということは、上杉さんか孫さんのどちらか…」

 

五月「えっ?そうなんですか三玖…!?」

 

三玖「し、知らない…!」

 

 

 

悟飯「何の話をしてるのかな?」

 

風太郎「さあ……」

 

 

 

 

 

翌日の家庭教師の日…。

 

風太郎「ど、どういうことだ!?扉が開かないだと!?お前まで俺の邪魔をするというのか……」

 

風太郎「あそこにカメラ…。そういうことか!あ、あのー!30階の中野さんの家庭教師をしてる上杉と申します!そこの扉壊れてますよ?」

 

「なにしてるの?フータロー?」

 

風太郎「あっ!み、三玖!」

 

三玖「もしかして、オートロックを知らないの…?」

 

風太郎「い、いや!知ってるし!」

 

(ちくしょう…。スタートの時点で躓いてしまった……)

 

三玖「何してるのフータロー?家庭教師、するんでしょ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

悟飯「えーっと…。確か部屋番号をここに入力すればいいんだよな…?…あれ?部屋番号っていくつだっけ……?」

 

電話でしか部屋番号を聞いてなかったため、オートロックのシステムを知っていてもマンション内に立ち入ることができない悟飯であった…。

 

悟飯「…何で部屋番号をメモしなかったんだろう。というかどうやって入ればいいんだこれ…?」

 

五月「おや?そこで何してるんです?」

 

悟飯「あ!五月さん!いいところに!いや、五月さんの部屋番号を控えるのを忘れちゃって…」

 

五月「しっかりして下さいよ…」

 

良かった…。五月さんがいなかったら、舞空術を使って屋上まで上がってから入るところだった……。

 

 

四葉「あっ、おはようございまーす!」

 

風太郎「遅かったな」

 

おっ、今日は一花さんもいる…。これであとは最難関の二乃さんだけになったわけだ…。二乃さんは本当にどうすれば授業を受けてくれるんだろう…。

 

四葉「私は準備万端ですよー!」

 

一花「私もまあ見てよっかな」

 

あ、あ〜…。まだ授業に参加するわけじゃないのね…。

 

風太郎「まあ、いてくれるだけでもまだマシさ」

 

二乃「あ、まーた懲りずに来たのー?この前みたいに寝ちゃわなきゃいいけど?」

 

風太郎「……」イラッ

 

ちょ、ちょっと落ち着いてー!?

 

風太郎「てめぇが薬を……、ゴホンッ」

 

よし!頑張った!!

 

風太郎「どうだい二乃!お前も一緒に…「死んでもお断りよ」……」

 

風太郎「なら今日は俺らだけでやるか!」

 

二乃「そうだ四葉。バスケ部の知り合いが大会の臨時メンバーを探してるみたいだけど、あんた運動ができるし、今から行ってあげたら?」

 

四葉「い、今から!?でも…」

 

二乃「なんでも5人しかいなかったみたいで、そのうちの1人が骨折しちゃったんだって。このままだと大会に出れないってさ。頑張って練習してきただろうに、可哀想に……」

 

風太郎「そうなのやるわけないだろ」

 

四葉「すみません!困ってる人を放っておけません!!失礼します!!」

 

悟飯「ええ!?」

 

風太郎「嘘だろ…」

 

三玖「あの子、断れない性格だから」

 

二乃「そういえば、一花も2時からバイトって言ってなかったっけ?」

 

一花「あっ!忘れてた…!」

 

風太郎「お、おい…!」

 

悟飯「バイト入れちゃったならしょうがないかな…?」

 

二乃「五月、こんなうるさいところよりも図書室に行った方がいいんじゃない?」

 

五月「ハムハム……。うーん!孫くんのお母様に一度でもいいから会ってみたいです!この唐揚げ美味しいです!」

 

悟飯「それは良かったよ」

 

二乃(餌付けされてるぅぅッ!?)

 

※餌付け関係なく当作品の五月は残りますけどね。

 

二乃(食べ物が絡むと五月の鋼の意思はどうにもできないわ…。五月は仕方ないとして……)

 

風太郎「………よ、よーしお前ら、授業を始めるぞ〜!」

 

三玖「現実を見ようよフータロー」

 

まさかここまでしてくるとは…。二乃さんはどうしてここまで妨害をしてくるのだろうか…?

 

二乃「あれ?三玖、まだいたの?あんたが間違えて飲んだアタシのジュース買ってきなさいよ」

 

三玖「それならもう買ってきた」

 

二乃「えっ?ってなにこれ…?」

 

二乃さんも抹茶ソーダ好きなのかな…?

 

三玖「そんなことより授業を始めよう」

 

風太郎「仕方ない、切り替えるか…」

 

二乃「ちょっと待って、あんたらいつからそんなに仲良くなったのよ?え?え?まさかこういう冴えない顔がタイプなわけ?」

 

風太郎「今こいつ酷いこと言わなかった?」

 

五月「上杉くんも以前私に酷いこと言ったじゃないですか」

 

風太郎「その件は昨日許してくれたはずだろッ!?」

 

三玖「二乃は面食いだから」

 

風太郎「お前も中々に酷いこと言うな…」

 

二乃「はあ?面食いで何が悪いのよ?イケメンに越したことはないでしょ?なーるほど、外見を気にしないからそんなダサい服を着れるんだ」

 

あ、あれ?なんか喧嘩になりそうじゃない…?大丈夫…?

 

三玖「その尖った爪がオシャレなの?」

 

二乃「あんたには分かんないかなー」

 

三玖「分かりたくもない」

 

悟飯「ま、まあまあ!2人とも落ち着いて…」

 

五月「この2人はよく喧嘩をするんですよ。放っておけばそのうち収まりますよ」

 

二乃「子供の喧嘩みたいに言わないでちょうだい」

三玖「五月は黙ってて」

 

お、おぉ…。中々に怖い顔をするね…。

 

五月「なんで私にだけ当たりが強いんですかー!?」

 

風太郎「おいお前ら、姉妹なんだから仲良くしろよ。外見やら中身やら、今はそんなのどうでもいいだろ」

 

三玖「…そうだね。もう邪魔しないで」

 

ようやく授業を始められそうだ…。

 

二乃「君達、お昼は食べてきた?」

 

悟飯「僕は食べてきたよ」

 

風太郎「俺は……」グゥゥゥ

 

二乃「ふーん。じゃあ三玖の言う通り中身で勝負しようじゃないの。どちらがより家庭的かでね。アタシが勝ったら今日は勉強なし」

 

風太郎「そ、そんなのやるわけ…」

 

三玖「フータロー、悟飯、すぐ終わらせるから座ってて」

 

風太郎「お前が座ってろッ!?」

 

悟飯「上杉くん、ここはひとまず様子を見ようよ」

 

五月「そうです!静かに待てば美味しいものが…!!」

 

二乃「えっ?五月にはあげないわよ?あんた基本的に何でも美味しいって言うから審査の意味ないし」

 

三玖「というか、五月は大人しく勉強してて」

 

風太郎「いや、お前が勉強しろ!?」

 

五月「うわーん!どうして私への当たりが強いんですか〜!!」

 

二乃「というか、少しくらい食事の量を制限しなさい。太るわよ?」

 

風太郎「あっ、おい、それは…」

 

三玖「さっき唐揚げも食べたんだから、流石に自制するべき」

 

五月「」

 

スタスタ…バタン

 

悟飯「五月さん!?」

 

五月さんが部屋に戻ってしまった…。

 

風太郎「……姉妹にも心配されてるのかよ…」

 

悟飯「いや、そこじゃなくて授業に参加してくれる人が一人になっちゃったんだけど……」

 

風太郎「……嘘だろ…」

 

五月さんは後で呼び戻すとして、取り敢えず二人の勝負の行方を見届けるか…。

 

 

数分後…

 

二乃「じゃーん!旬の野菜と生ハムのダッチベイビー!」

 

悟飯「だ、ダチ…?ベビー?」

 

二乃「えっ?あんたダッチベイビー知らないの?簡潔に言うとパンケーキよ」

 

悟飯「初めて知った……」

 

風太郎(俺も初めて知ったわ…)

 

三玖「お、オムライス…」

 

あ、あ〜…。三玖さんのオムライスは失敗しちゃったのかな…?まあ、人間なら失敗することはあり得るから仕方ないね…。

 

三玖「や、やっぱ自分で食べる…」

 

二乃「えー?折角作ったんだし食べてもらいなよー?」

 

風太郎「……三玖が料理苦手なの知っててあの勝負を持ち出したんじゃ…?」

 

悟飯「……あり得るね…」

 

見た目だけで見たら圧倒的に二乃さんのダチ?ベビー?だっけ?こっちの方が美味しそうだけど、食べてみないと分からない。

 

悟飯「いただきます」

風太郎「いただきます」

 

三玖「あっ……」

 

まずは、二乃さんの方から…。

 

悟飯「…!お、美味しい…!」

 

二乃「でしょー?」

 

この料理を僕と同い年の子が作ってるなんて…。

じゃあ、次は三玖さんの方を…。

 

……確かに二乃さんの方が美味しいけど、三玖さんのオムライスも見た目のような味ではなく、しっかりとオムライスの味に仕上がってはいる。普通に食べられるくらいには美味しい。

 

でも、どっちの方が美味しいと言えばそれは……。

 

風太郎「うん、どっちも普通に美味い」

 

悟飯「えっ?」

 

二乃「はっ?」

 

三玖「…!」

 

二乃「はぁ!?そんなわけ…!?」

 

三玖「……ふふっ…」

 

三玖さん、凄く嬉しそうな顔をしてる…。

 

二乃「何それ、つまんない!」

 

悟飯「えっ?」

 

二乃さんは部屋に戻って行ってしまった…。

 

悟飯「というか、僕まだ何も感想言ってないんだけど……」

 

三玖「ご、悟飯はどうだった?」

 

悟飯「うーん…。正直に言うと二乃さんの方が美味しかったかな…」

 

三玖「……」ショボン

 

悟飯「でも、三玖さんのオムライスも美味しかったよ?」

 

三玖「…!」パァァ

 

これは僕の正直な感想だ。何一つ偽りのない正直な評価だ。

 

風太郎「あー…。遅くなっちまったな。今日は出直すとするわ…。まんまと二乃の策にハマっちまったわけだ…」

 

三玖「ごめん…」

 

風太郎「あいつと分かり合える日が来るとは思えん。というか、愛想がいい悟飯でも無理なんじゃないか…?」

 

悟飯「僕もそう思い始めてる…」

 

三玖「ううん。ちゃんと誠実に向き合えば分かってくれるよ」

 

風太郎「誠実にってどうすれば……」

 

三玖「私に言われても分からない。それを考えるのが、家庭教師の仕事でしょ?」

 

悟飯「……確かにそうだね。二乃さんも根っからの悪い人ではないはずだし、きっと分かってくれるよね…」

 

三玖「うん、そのいきだよ」

 

風太郎「誠実に向き合う……ねぇ……」

 

 

 

あっ、五月さんを呼び戻してなかった…。でも今日は遅いし帰らないと…。

 

ってあれ?あー!!お財布忘れちゃったよ…。

 

風太郎「ん?どうした?」

 

悟飯「財布を忘れちゃった…」

 

風太郎「大惨事じゃねえか…!早く取りに戻れよ!」

 

悟飯「そ、そうだね…!」

 

しかし、マンションのロビーへと繋がる扉は閉じてしまった。しかもこの扉はオートロック式なわけで…。

 

風太郎「……オートロックって面倒だな…」

 

悟飯「うん……」

 

風太郎「そういや、今日はもうらいはが夕食作っちまってるだろうから、先に帰るわ」

 

悟飯「うん、分かった!」

 

さて、部屋番号を入力っと…。

 

『忘れ物?シャワー浴びてるから勝手に取っていいよ』

 

悟飯「いや、それは流石にまずいんじゃ…」

 

とはいえ、三玖さん本人がいいって言ってるんだし、行くか…。速やかに忘れ物を回収して帰ろう。

 

……と忘れ物を取りに戻ったのはいいものの…。

 

「……」ブォオオオオオ

 

……タオル1枚で髪を乾かしている人がいるんだけど…。あれ、三玖さんじゃ…?

 

悟飯「み、三玖さん!?もう上がったの!?」

 

「……」ブォオオオオオ

 

ドライヤーを動かしているせいなのか、聞こえてないらしい…。

 

って待てよ?この気は三玖さんのものとは微妙に違うぞ…?こ、この気は…!?

 

「誰?三玖?」

 

悟飯「……!」ピクッ

 

「お風呂に入ってるんじゃなかったっけ?空いてるけど」

 

蝶々型の髪飾りをつけてるということは、やっぱり二乃さんだ〜ッ!?!?

 

二乃「いつもの棚にコンタクトが入ってるから取ってくんない?」

 

ど、どうしよう…。ここは正直に悟飯ですって言った方が……………………。

 

だめだ。それは絶対にダメな気がする。

 

ちょっと申し訳ないけど、財布を回収…って財布どこ…?

 

二乃「お昼にしたことまだ怒ってるの?」

 

というか、二乃さんって目が悪いんだ…。そのお陰で騒ぎになってないから助かるけど…。

 

二乃「あれは勢いで……悪いとは思ってるわよ」

 

……やっぱり二乃さんは根は優しいんだな…。

というか、コンタクトが入った棚ってどれのこと…?

 

二乃「何してんの?そこじゃないって」

 

ちょっと待って。声が突然大きくなったような…。いや、これ近付いてきてるッ!?

 

二乃「場所変えてないわよ?」

 

な、何か背中に柔らかいものが当たっている気がするけど、これってなんだ…?いや、考えればすぐに分かるでしょこれ!?

 

悟飯「………」スタタタタ…

 

二乃「……やっぱり怒ってんじゃん」

 

取り敢えず後で三玖さんに謝ろう…。

 

二乃「全部アイツらのせいだ…!パパに命令されたからって好き勝手にうちに入ってきて…!!」

 

二乃「私達5人の家にアイツらの入る余地なんてないんだから…」

 

……そうか…。二乃さんは家族思いなんだね…。それで突然家に来るようになった上杉くんと僕を嫌がっていたのか…。

 

二乃「決めた!上杉と孫は今後出入り禁止ッ!!」

 

ごめん…、出るのだけは許して…!

 

ドンッ!

 

二乃「痛た!」

 

あっ…!ぶつかった衝撃で棚の中の本が落ちてきそうだ…!しかもかなり分厚い本で、落ちたら間違いなく二乃さんのアタマに直撃する…!

 

 

シュン‼︎

 

二乃「痛いわね〜…!次から気をつけないと…」

 

悟飯「せ、セーフ…」

 

一般人には見えないくらいの速さで素早く落ちてくる本を回収して棚に戻した。あとは財布を回収するだけだ。

 

五月「あれ?孫くん?何故まだいるんです?」

 

悟飯「………あっ」

 

二乃さんに見つからずに助けることに集中してたせいで五月さんの接近に気付けなかった…!?

 

二乃「えっ?孫って……えっ??じゃ、じゃあさっきのって…!!!!」

 

あっ、これはまずい…。

 

五月「ま、まさか!二乃の風呂上がりを狙って待機していたんですか!?そんなことやる人だとは思っていませんでしたッ!!」

 

悟飯「ち、違うって!!ただ、僕は忘れ物を取りにきただけで!」

 

二乃「と、撮るッ!?ふ、不法侵入よ不法侵入〜ッ!!!!」

 

悟飯「なんでそこだけ切り取るのッ!?」

 

お父さん、お母さん、ごめんなさい。僕、警察に捕まるかもしれません…。

 




今回もちょっといじってみました。展開が原作と全く同じだとつまらないですし、悟飯の場合は風太郎とは微妙に違う行動を取るだろうなということで少々いじってます。

pixivの方で四葉以外の四人を悟飯のヒロインにしてもいいかと聞いたところ、いいという人やどちらでもいいと言う人の方が多いのですが、流石にやり過ぎたと答える方も一定数おります。私自身も流石にやり過ぎなのではないかと懸念したので聞いたわけですが…。

ということで、流石に4人も悟飯のヒロインにはしない方針にしました。ただ今の予定で行くと、悟飯が3人、風太郎が2人になるかな…?あくまでも今の予定ですけれども。


追記

アンケートを新設させて頂きました。内容は『この作品を台本形式から普通の形式に変えてもいいか?』です。
私もそろそろ台本形式をやめて普通の小説を書くようにしようかと考えております。
最近の作品は台本形式でなくても、誰が話してるのか分かるように意識しているつもりです。

ただpixivと同時掲載をするのではなく、台本形式はpixivに、普通の形式はハーメルンにと、役割分担をした上で同時掲載をしようかと考えております。
pixivに掲載する台本形式版のURLはこちらに毎回載せる予定です。それを踏まえた上でご回答いただけると幸いです。


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第2巻
第5話 裁判の翌日は花火大会


⚠︎注意⚠︎

『クロスオーバーが苦手な人』
『台本形式が苦手な人』
『細かいことが少しでも気になる人』
『原作のカップリングが崩されるのが嫌な人(特に飯ビー)』
上記に当てはまる方はブラウザバックを『強く』推奨します。

通常公開、クロスオーバー、原作ヒロインという時点である程度の批判は覚悟しているつもりですが、注意書きを読まないで批判するのはダメっすよ。説明書を読まずに操作方法が分からんって文句を言ってるようなものですよ。

注意書きの内容は話ごとに変わる可能性もあります。ご了承下さい。


あと、今回はまたアンケートを設置したので、ご回答頂けると大変助かります…。



五月「裁判長、これをご覧ください」

 

そう言って五月さんが裁判長(一花さん)に見せたのは、タオル一枚の原告(二乃さん)と、忘れ物を取りに来た被告()が同時に写っている写真だった。

ちなみに四葉さんはまだバスケ部の助っ人から帰ってきてない。

 

五月「被告は家庭教師という立場にありながら、ピチピチの女子高生を目の前に欲望を爆発させてしまった…。この写真は孫被告で間違いありませんね?」

 

忘れ物を取りに戻ってきただけなのにどうしてこうなっているんだろう…。

 

二乃「裁判長」

 

一花「はい、原告の二乃くん」

 

二乃「この男は一度マンションを出たと見せかけて私の風呂上がりを待っていました。悪質極まりない犯行に、我々はこいつの今後の出入り禁止を要求します!」

 

ええ!?そんなことされたら家庭教師が続けられないよ!?でも、万が一禁止されちゃったら、影ながら上杉くんをサポートするしかないな……。

 

一花「それは大変けしからんですなぁ…」

 

悟飯「あの、一花さん…。僕は忘れ物を取りに戻っただけで……」

 

一花「……」プイッ

 

…………どうしよう…。

 

三玖「異議あり」

 

突然、そう切り出したのは三玖さんだった。そういえば、オートロックを解除してくれたのは三玖さんだった…。

 

三玖「悟飯は真面目だからそんなことしない。これは無罪。私が通したし、録音もある。だからこれは不運な事故」

 

悟飯「三玖さん……」

 

三玖さんがいなかったら間違いなく追い出されていただろう…。三玖さんには後で何かお礼をしないと…。

 

二乃「あんた、そいつの味方でもあるわけね…?こいつはハッキリと『撮りに来た』って言ってたのよ!!」

 

三玖「忘れ物を『取りに来た』でしょ?自分の都合のいいように改変しないで」

 

二乃「へえ?それをあんたが言う?裁判長ー!三玖は被告への個人的な感情で庇ってま〜す!」

 

三玖「ち、違っ…!」

 

五月「…三玖が孫くんを通したのは本当なのでしょう。ですからそれを踏まえると、確かに不運な事故と捉えるのが自然かもしれません」

 

一花「まあ確かに…。押し倒したとかなら怪しさ全開だったんだけどね…。というか真面目な悟飯くんがそんなことするかと言われるとねぇ…」

 

二乃「ちょ!?何勝手に納得してんのよ!?勝手なこと言わないで!」

 

一花「まあまあ、そうカッカしないで…。『昔は』私達、仲良し姉妹だったじゃん?」

 

二乃「昔はって…。私は……!」ダッ‼︎

 

二乃さんは足早に家を後にしてしまった…。

 

悟飯「あの…、二乃さん出て行っちゃったけど…?」

 

三玖「放っておけばいいよ」

 

悟飯「で、でも……」

 

五月「大丈夫です。お腹が空いたら戻ってきますよ」

 

一花「それは五月ちゃんだけかなぁ…」

三玖「それは五月だけ」

 

五月「ちょっと!?それどういう意味ですかっ!?」

 

悟飯「……」

 

いや、でもこんな時間に女の子一人で出ていって放っておけって言われても…。

 

 

 

二乃「……んで、何であんたがここに居座ってるのよ。もうあんたの顔を見たくもないんだけど?」

 

悟飯「ま、まあ…そう言わずに…」

 

二乃さんは僕がエントランスの扉を開けた時に戻ろうとしたけど、扉は目の前で閉まってしまって結局入れなかったのだ。その時に『使えないわね』って言われたけど……。

恐らく鍵を持たないまま出て行ったんだろうな…。

 

二乃「なんでいんのよ?やっぱり本当に私目当て?」

 

悟飯「いや、こんな時間に外に一人で放っておくのは流石にね…」

 

二乃「そうやって好感度上げようとしても無駄よ」

 

悟飯「いや、僕はそんなつもりは……」

 

二乃「ほんと、みんな何であんたみたいな得体の知れない男を家にいれるのか分かんない。みんな馬鹿ばかりで嫌いよ」

 

悟飯「みんなって……姉妹のことも?」

 

二乃「ええ、そうよ!悪い?」

 

悟飯「……それは嘘じゃないかな?」

 

二乃「はぁ!?何を根拠に…」

 

悟飯「『私達5人の家にあいつらが入る余地はない』って言ってたよね?それも僕を三玖さんと勘違いした上で…」

 

二乃「……」

 

悟飯「本当は、僕と上杉くんのことはともかく、姉妹の4人は好きなんじゃないかな?それで、知り合ってまだ間もない赤の他人である僕達を入れるのに抵抗がある…。違うかな?」

 

二乃「何それ、見当違いも甚だしいわ。人のことを分かった気になっちゃって。そんなのあり得ないわ。キモ。…………何よ、悪い?」

 

悟飯「いや、別に悪いってわけじゃ…」

 

二乃「そうよ!私悪くないよね。馬鹿みたい…。何で私が落ち込まなきゃならないのよ!」

 

悟飯「あ、あれ?」

 

二乃「やっぱ決めた。私はあんた……。いや、あんた達を認めない。例えあの子達に嫌われようとも…」

 

悟飯「……やっぱり4人のことが好きなんだね…」

 

二乃「そうよ!!それのどこが悪いの?」

 

そんな会話をしていると、エントランスの自動扉が開いた。

そこから出てきたのは、三玖さんだった…。

 

三玖「二乃、いつまでそこにいるの?早くおいで…。あっ、悟飯もいたんだ。丁度よかった。明日なんだけど…」

 

二乃「三玖!帰るわよ!」

 

三玖「でもまだ話が……」

 

あはは…。むしろ厳しくなってしまったかもしれない…。やはり二乃さんは手強いな…。

 

 

 

翌日…。

 

今日は特に何もない日曜日。ある程度勉強をしたら久々に修行をしよう。偶には修行しないと、体が鈍って取り返しがつかなくなるからね…。

 

…って言っても、既にあの頃よりも弱体化してそうだけど……。

 

……そのつもりだったんだけど。

 

チチ「悟飯ちゃーん!生徒さんから電話が来てるだよー!」

 

悟飯「あっ、うん!」

 

生徒さん…?5人の中の誰かかな?

 

『どうも孫さん。休日にすみません』

 

五月さんみたいだ。

 

悟飯「いや、大丈夫だよ。それでどうしたの?」

 

『家庭教師の件でお給料を渡そうと思って住所をお父さんに聞いたんですけど…その……』

 

…?ああ…。そういうことか…。確かに家庭教師するとお給料がもらえるって話だったっけ…?たった数回で色々あったから忘れかけてた…。

 

『あの、学校へはどこから通ってるんです?』

 

悟飯「自宅からだけど…?」

 

『孫くん、毎日海を渡って登校してきてるんですかッ!?』

 

悟飯「あ、あー…」

 

ど、どうしよう…。筋斗雲を使ってるって言っても何のことだか分からないよね…?どうやって返答すればいいんだろう…。

 

悟天「お母さーん!トランクスくんの家にある飛行機がほしいよ!」

 

チチ「そんなもんウチにはいらんべ!」

 

……それだ!!

 

悟飯「実は、僕の家にジェットフライヤーがあって、それを使って通ってるんだ!」

 

『ジェ、ジェットフライヤー…?』

 

悟飯「うん。カプセルコーポレーションが作ってる飛行機でね…」

 

『ええ!?!?あそこの商品って宮地域以外で買う場合は相当高額なはずですよ!?!?どうやって入手したんですか!?』

 

悟飯「僕の知り合いにその会社の結構偉い人がいてね…。その人から貰っちゃった……」

 

嘘はついてない。ブルマさんは会社の中で1番偉い社長さんだからね…。

 

『……何者なんですかあなた…?』

 

悟飯「孫悟飯です…」

 

『それは知ってます!!』

 

悟飯「って話が脱線しちゃった…。お給料がどうしたの?」

 

『あっ!そのことなんですけど、私からはそちらに向かえそうにないので、お手数なんですが、私が指定した場所に来てもらえないでしょうか…?』

 

悟飯「うん。分かった!じゃあまた後でね!」

 

なんとか誤魔化せた…。後で実物を見せてって頼まれたらどうしよう…。

 

チチ「んで悟飯ちゃん。その子とどんな関係なんだべ?」

 

悟飯「えっ?いや、普通に友達というか、生徒と教師というか……」

 

チチ「5人分も同時に、それも二人の家庭教師を雇えちまうくらいだ。結構な金持ちなんでねえか?」

 

悟飯「ま、まあ……。高級タワーマンションに住んでるから、少なくとも貧乏ではないだろうね…」

 

チチ「悟飯ちゃん。その5人の中の誰をお嫁さんにしちまってもオラは文句は言わねえだぞ!」

 

悟飯「お母さん……」

 

流石に話が飛躍し過ぎてて困惑する…。

 

 

さて、いつも通り筋斗雲で向かうとしよう。

 

「待ってよ兄ちゃん」

 

悟飯「ん?どうしたんだ悟天?」

 

悟天「僕も行きたい」

 

悟飯「ええ!?だめだよ。僕は仕事で行くんだから……」

 

悟天「いいじゃーん!」

 

悟飯「いや、……分かったよ。ただし、条件がある」

 

悟天「なになに?」

 

悟飯「僕はこれから人に会いに行くんだ。その人達の前では絶対に『気』を使っちゃだめだぞ?それができるなら付いてきてもいいけど」

 

悟天「わーい!やったー!」

 

急遽悟天が付いてくることになったけど、大丈夫かな…?

 

 

 

……指定された場所というのが…。

 

悟飯「……ファミリーレストラン…?」

 

悟天「ファミレスかぁ…。なんでおうちじゃないんだろ?」

 

悟飯「さ、さあ……」

 

五月「すみません!お待たせしました!」

 

悟飯「いや、僕も来たばかりだったから大丈夫だよ」

 

五月「それなら良かったです…。ところで、そちらの子は?」

 

悟飯「あ〜…。一応付いてきちゃダメだって注意はしたんだけど……」

 

悟天「僕、弟の孫悟天です。兄ちゃんがいつもお世話になってます」

 

悟飯「どこで覚えたのそんな言葉…」

 

あの教育熱心なお母さんのことだから、挨拶の仕方というのも教え込まれた可能性もあるけど、僕がお世話になってるっていうのはちょっと違うぞ…?

 

五月「礼儀正しい子ですね…!お世話になってるのは私達の方なんですけど…。何歳なんですか?」

 

悟天「7歳です」

 

五月「随分離れてるんですね?」

 

悟飯「まあね……」

 

五月「それじゃ、外で立ち話もあれなので、こちらで……」

 

……もしかして、この看板に書いてある『新発売!トリプルアイスパフェ』が目当てなんじゃ…?

 

悟天「兄ちゃん、僕あれ食べたい」

 

悟飯「遊びに来たわけじゃないって言ったんだけど……」

 

まあ、1個くらいならいいか……。

 

そのまま店内に入ったわけだけど…。

 

五月「トリプルアイスパフェのジャンボサイズをください!」

 

悟天「じゃあ僕もそれで」

 

悟飯「……カフェオレ1つで…」

 

「かしこまりました」

 

思いっきり新作スイーツを食べに来てるだけなんじゃ…?

 

五月「それでは、本題に入ります。これを…」

 

そう言って五月さんは封筒を渡してきた。

 

五月「こちらにお給料が入ってますので、どうぞ」

 

……一応中身を確認してみた。

 

5万円!?まだ2回くらいしかお仕事はしてないはず…!?

 

五月「1人につき5000円。そして2日間教えてもらったので、合計5万円です」

 

悟天「………?いまいち分からないんだけど、何ゼニー分なのこれ?」

 

悟飯「……1ゼニーが1円と考えてくれればいいよ」

 

悟天「ということは5万ゼニー?………やっぱりいまいち分からないや」

 

まあそうだよね…。兄ちゃんもお前くらいの歳の時はお金の価値は分からなかったぞ…。

 

※どうやら本当は1ゼニー=1.5円が基本だそうですが、計算が面倒なので同じ数値にしました(オイ)。

 

悟飯「あの、僕はまだ特にこれと言って教えられてないと思うんだけど…」

 

五月「いえ、あなたの存在は5人の中の何かを変え始めています。勿論、上杉くんもです」

 

悟飯「そ、そうかな…?」

 

五月「現にあまり勉強してこなかった三玖が勉強するようになったのがいい証拠です!」

 

悟飯「あれ?じゃあ四葉さんは元から勉強してたの?」

 

五月「四葉も勉強してはいたんですけど、お人好しな性格が祟って思うようにできなかったみたいです…」

 

な、なるほど…。この前もいきなりの助っ人要求に応じたもんね…。

 

悟天「ねえ兄ちゃん。一つ聞いてもいい?」

 

悟飯「うん?なんだ悟天?」

 

悟天「兄ちゃんとお姉ちゃんって、どんな関係なの?」

 

悟飯「どんな関係?それは、家庭教師と生徒の関係……じゃないかな?」

 

五月「あとは友人関係…でしょうか?」

 

悟天「じゃあ付き合ってるわけじゃないんだね」

 

五月「つ、付き合う!?///」

 

悟飯「悟天…なんでまたそんなことを…」

 

悟天「なんかお母さんがいつも言ってるんだもん。5人も女の子いるなら1人くらいもらってけばいいのにって」

 

お母さんは7歳児相手に何を話しているんだろう…。

 

「ジャンボパフェお待たせしました〜」

 

五月「わあ!やっときました♪念願のパフェです♪」

 

悟天「わーい!いただきまーす!」

 

………

 

五月「悟天くん食べるの早くないですか!?」

 

悟天「そう?普通じゃない?」

 

五月「ちゃんと味合わないとダメじゃないですか!?勿体ないです!」

 

なんか地味な言い争いになってるし…。

 

悟天「……ところで、お姉ちゃんの名前なに?」

 

「「今更っ!?!?」」

 

…ちゃんと自己紹介しました。

 

※ちなみに上杉家のお給料は四葉が渡しに行ってます。

 

 

 

 

 

五月「ふぅ〜♪ パフェ美味しかったです♪」

 

悟飯「それは良かったね」

 

悟天「兄ちゃんはパフェ食べなくてよかったの?」

 

悟飯「そういう気分じゃなかったんだよ…」

 

そもそも僕が家庭教師をしている理由の一つとして、生活費の補助をする為であるので、バイト代が入ったからといって贅沢をするわけではない。

 

悟天「…あれ?兄ちゃん兄ちゃん、この街で花火大会やるらしいね?」

 

悟飯「へっ?そうなの?へえ〜、いつやるんだろ….」

 

悟天「今日だって」

 

悟飯「……そ、そうなんだ…」

 

全く気付かなかったな…。花火かぁ…。花火といえば………。

 

 

 

 

 

『汚ねえ花火だぜ…』

 

 

 

 

 

何か聞こえた気がするけど、気のせいだな。うん…。

 

五月「あっ、そういえばそうでしたね。今日は花火大会なんですけど、折角ですしどうです?私達5人も行くつもりですけど…」

 

悟飯「えっ?いや、そんなつもりで来たわけじゃないんだけど……」

 

悟天「お母さんに電話したよ」

 

悟飯「えっ?いつの間に?というか携帯電話なんて持ってたっけ?」

 

悟天「うん。簡易的なやつならね。ちなみに『ぐっとらっく』だって」

 

……お母さんは他意があって家庭教師の件を承諾したんじゃないかって気がしてきたな……。

 

悟飯「でも、家族水入らずでお祭りを楽しみたいんじゃないの?」

 

五月「孫くんなら大丈夫かと思います!嫌がる人はいませんよ!」

 

いや、二乃さんが思いっきり嫌がりそうなんだけどなぁ……。でもまあ、ちょっと花火を見るくらいなら別にいいかな…?ここで帰ったら逆にお母さんに色々言われそうだし……。

 

悟飯「じゃあ、ちょっとだけなら…」

 

「あーっ!孫さんと五月だー!」

 

悟天「……兄ちゃん。あれがドッペルゲンガーってやつ…?」

 

悟飯「違う違う…。よく『探って』みろ」

 

悟天「……!へぇ…、微妙に違うけど顔だけじゃなくて『気』も似てるんだね。面白いね」

 

ってあれ?四葉さんと上杉くんに………もう1人?

 

「あー!あなたがお兄ちゃんの唯一のお友達の孫さんですか!」

 

悟飯「えっ?」

 

五月「プッ…」

 

風太郎「おい五月。何故笑った?」

 

らいは「私は上杉らいはです!兄がいつもお世話になってます!」

 

悟飯「初めまして、らいはちゃん。僕も上杉くんに助けられてるからお互い様だよ」

 

悟天「……」

 

らいは「えっ?な、なに…?」

 

悟天「変な髪型だね」

 

「「「君が言うッ!?」」」

 

四葉さん、五月さん、上杉くんの3人から総ツッコミが入った。確かに一般的に見ると悟天の髪型は変わってるもんな…。

 

悟天「あ、ごめんなさい。僕は孫悟天です。よろしく」

 

らいは「こちらこそ!」

 

風太郎「なんだよ悟飯。お前に弟なんていたのか」

 

悟飯「あまり話す機会がなかったからね…」

 

らいは「お兄ちゃんのことだから、どうせお勉強の話ばかりしてたんでしょ」

 

風太郎「どうせとか言うなよ。合ってるけど」

 

四葉「えー!?孫さんも兄だったんですか!?道理で面倒見がいいと!」

 

悟天「……この人おバカそうだね、兄ちゃん」

 

悟飯「こら、失礼だろ?」

 

四葉「いきなり酷いッ!?」

 

風太郎「いや、大体合ってるぞ」

 

四葉「更に酷いッッ!?!?」

 

 

 

その後は各々の自己紹介は済ませてひと段落した。

 

取り敢えずその間に起きた出来事を簡潔に説明すると………。

 

五月、らいはの可愛さに気づく。

四葉、らいはだけでなく悟天も可愛いことに気づく。

五月もつられて気づく。

 

風太郎と悟飯、兄という新たな共通点が見つかり、更に仲良くなる。

 

らいはと悟天、末っ子同士気が合うのか、仲良くなる。

 

大体こんな感じ。

 

 

そして…。

 

風太郎「結局日曜が潰れちまったじゃないか…。いや、まだ夜がある!お前らも夜は勉強しろよ?」

 

五月「…!わ、私はここで……」

 

風太郎「おい待て、宿題が出てるだろ?終わらせたのか?」

 

五月「わーっ!付いてこないで下さい!!」

 

らいは「お兄ちゃん」

悟天「兄ちゃん…」

 

「「ん?」」

 

らいは「四葉さんが……」

 

悟天「五月さんが……」

 

「「3人もいる…」」

 

 

悟天とらいはちゃんが指さした先には、浴衣姿の一花さん、二乃さん、三玖さんがいた。

 

三玖「集まったし早く行こ」

 

一花「あれ?ダブルデートってやつ?邪魔しちゃったかな…?」

 

二乃「五月!四葉!なんでそいつらと一緒にいるのよ!!」

 

四葉「らいはちゃん!上杉さんも一緒にお祭りに行きましょうよ!」

 

風太郎「いや待て、お前ら宿題は…」

 

らいは「……ダメ…?」

 

風太郎「……もちろんいいさ」

 

らいは「せっかくだから悟天くんも行こうよ!」

 

悟天「わーい!お祭りだー!」

 

悟飯「……まあ、偶には勉強しない日があってもいいかな…?」

 

こうして、いつも通りのメンバーでお祭りに参加することになった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そ の 前 に

 

二乃「もう始まっちゃうわよ…。なんで私達家で宿題してんのよッ!?」

 

風太郎「お前らが週末なのに終わらせてないからだろッ!?片付けるまでは絶対に行かせねえからなッ!?」

 

こういうことに上杉くんは鋭い。僕だと気付けないので、こういう時に上杉くんがいると凄い助かる。

 

というか、まだ宿題をやってなかったとは…。遊びたいならせめて最低限のことはやらないとダメでしょ……。




悟天が本格的に初登場をしたところで…。今作の悟天は少し賢め(というよりちょっと黒い)です(笑)
原作時点の悟天よりは多少マセてるかも…(笑) 多少ですけどね…()


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第6話 花火大会

⚠︎注意⚠︎

『クロスオーバーが苦手な人』
『台本形式が苦手な人』
『細かいことが少しでも気になる人』
『原作のカップリングが崩されるのが嫌な人(特に飯ビー)』
上記に当てはまる方はブラウザバックを『強く』推奨します。

通常公開、クロスオーバー、原作ヒロインという時点である程度の批判は覚悟しているつもりですが、注意書きを読まないで批判するのはダメっすよ。説明書を読まずに操作方法が分からんって文句を言ってるようなものですよ。

注意書きの内容は話ごとに変わる可能性もあります。ご了承下さい。

あと、今話のあとがきがちょっと長いです…。

タイトルはいい感じのが思いつかなかったのでそのまま花火大会です…。



四葉「やっと終わったー!」

 

らいは「みんなお疲れ様〜」

 

悟天「意外と早かったねー?」

 

二乃「花火って何時から?」

 

三玖「確か、19時〜20時」

 

一花「じゃあまだ1時間あるし、屋台行こー!」

 

四葉「上杉さーん!孫さんも早く早く〜!」

 

風太郎「あ、ああ……」

 

お祭りだからなのか、みんないつもよりもテンションが高いように見える。上杉くんだけ何故かいつもよりもテンションが低いように見えるけど……。

 

悟飯「上杉くん。今日は楽しもうよ。お祭りは年に1度しかないわけだし」

 

風太郎「それでいいのか家庭教師」

 

「なんですか?そのお祭りに相応しくない顔は?」

 

風太郎「俺はなんて回り道をしてるんだろうなって思ってな……」

 

五月「……?」

 

あれ?さっきジャンボパフェを食べてたのに、五月さん今度はアメリカンドックを……。

 

五月「あ、あまり見ないで下さい…」

 

風太郎「誰だ?ただでさえ顔が同じでややこしいんだから髪型を変えるんじゃない」

 

悟飯「多分五月さんだよ、上杉くん…」

 

五月「そうです!どんなヘアスタイルにしようと私の勝手でしょう!」

 

一花「女の子が髪型変えたら取り敢えず褒めなきゃ、もっと女子に興味を持ちなよ〜」

 

風太郎「そうなのか……?」

 

一花「ほら、浴衣は本当に下着を着ないのか興味ない?」

 

風太郎「それは昔の話な。知ってる」

 

一花「本当にそうかな〜?なんて冗談でーす♪どう?少しはドキドキした?」

 

上杉くんと一花さんが何か話しているけど、なんの話をしてるんだろ…。

 

二乃「一花いつまでそこにいんのよ?逸れるわよ?」

 

一花「ごめーん。ちょっと電話!」

 

 

風太郎「なんだ?向こうに向かってるのか?」

 

二乃「別にいいでしょ。…ったく。今日は5人で花火を見にきたってのに、なんであんたらもいるのよ」

 

風太郎「俺は妹と来てるだけだ」

 

悟飯「僕も弟の付き添いみたいなものだよ…」

 

風太郎「らいは!あまり離れると迷子になるぞ。ここ掴んでろ」

 

らいは「うん!お兄ちゃんあのねあのね!四葉さんが取ってくれたの!」

 

恐らく金魚掬いだろう…。4袋にぎっしりと金魚が詰められている…。どれだけ取ってるの!?お店の人泣いちゃうよ!?

 

悟飯「って、悟天はどこでそんな食べ物を!?」

 

悟天は、りんご飴、焼きそば、チョコバナナ、綿飴、イカ焼き、たこ焼きetc…

ありとあらゆる食べ物を持って頬張っていた。

 

悟天「五月さんが買ってくれたの!」

 

五月「美味しそうに食べてる姿を見るとつい……」

 

悟飯「五月さん、買ってくれるのは凄くありがたいけど、少しは加減して?」

 

五月「ご、ごめんなさい!」

 

いくらなんでもこれはやり過ぎでしょ…。

 

悟天「ふぅ……食べた食べた…」

 

二乃「……あんたの弟、どういう胃袋してんのよ…?」

 

悟飯「……そこは聞かないで…」

 

らいは「そうそうお兄ちゃん!あとはこれも買ってもらったんだ!」

 

風太郎「それ今日1番いらないやつ!?」

 

なんとらいはちゃんは花火セットを買ってもらったようだ。確かにわざわざ今日買う必要はないな…。

 

らいは「ありがと!四葉さん!」ギュッ

 

っと四葉さんに抱きついたらいはちゃん。それに耐えきれなかったのか…。

 

四葉「あーらいはちゃん可愛すぎです!私の妹にしたいくらいです!待ってくださいよ…。私が上杉さんと結婚すれば合法的に義妹にできるのでは…?」

 

二乃「……あんた、自分で何言ってるか分かってる?…上杉!四葉に変な気起こさないでよ!」

 

風太郎「ねえよッ!?」

 

しかし、人混みが激しい…。これだと少し目を離すだけでも冗談抜きで迷子になりかねない。

 

ドンッ

 

三玖「………!?!?ッ」

 

あっ!?三玖さんとぶつかっちゃった…。

 

悟飯「ごめん!押されちゃって……」

 

三玖「い、いい!」

 

悟飯「でも、結構混んでるね…。こんな状況だと満足に花火を見れないよ?」

 

三玖「それなら大丈夫。二乃がお店の屋上を貸し切ってるから付いていけば大丈夫」

 

悟飯「す、凄いね…」

 

流石お金持ち…。

 

悟飯「それなら早めに行った方が…」

 

二乃「待ちなさい。せっかく祭りに来たのにアレも買わずに行くわけ?」

 

悟飯「あ、あれ…?」

 

三玖「そういえばアレ買ってない」

 

一花「あっ、もしかしてアレの話をしてる?」

 

五月「アレやってる屋台ありましたっけ?」

 

四葉「早くアレ食べたいなー」

 

風太郎「な、なんだよ?アレって…」

 

「「「「「せーの」」」」」

 

「焼きそば」

「かき氷」

「人形焼き」

「チョコバナナ」

「リンゴ飴」

 

悟天「うわぁ……ここまでバラバラだと清々しいね、兄ちゃん…」

 

悟飯「あ、ああ…」

 

四葉「全部買いに行こー!」

 

風太郎「お前らが本当に五つ子なのか疑わしくなってきたぞ…」

 

悟飯「どこかで聞いた話だと、歳の近い兄弟姉妹は他の兄弟姉妹に似ないように成長するとか……」

 

風太郎「そんな話あるのか……」

 

根拠はない話だけどね。

 

 

 

一花「五月ちゃん、機嫌直しなよ〜」

 

五月「思い出しても納得がいきません!あの店主、一花には可愛いからオマケと言って、私には何もなしなんて!!同じ顔なのに!!」

 

三玖「複雑な五つ子心…」

 

悟天「いや、単純に食べ物貰えなかったから怒ってるだけじゃない?」

 

無茶苦茶失礼なことを言うな悟天…。

 

一花「ほら、これ食べて元気出して」

 

四葉「らいはちゃん!輪投げしようか!」

 

らいは「わー!DS欲しい!」

 

二乃「こら!あんた達遅いッ!!」

 

悟飯「……なんか二乃さん、気合入ってるね?どうしたの?」

 

僕はそれとなく三玖さんに聞いてみた。

 

三玖「…花火はお母さんとの思い出なんだ…。お母さんが花火好きだったから、毎年それを見に行ってた。お母さんがいなくなってからも毎年揃って…」

 

そうなんだ…。お母さんの方は既に亡くなってたんだ…。

 

三玖「花火って、私達にとってはそういうものなの…」

 

悟飯「……聞いたちゃいけないことを聞いたかな…?」

 

三玖「ううん。大丈夫だよ…」

 

でもこれでハッキリした。二乃さんはその思い出を大事にしてるんだ…。だからこそ宿題を終わらせてまで、花火を今年も見ようとしたんだな…。

 

二乃「ったく、鬱陶しいわね…。ってあれ?四葉と妹ちゃんは…?」

 

『大変長らくお待たせしました。まもなく開始いたします』

 

 

ああ…。花火がそろそろ始まるからなのか、大分混んできちゃったなぁ…。

 

……あっ、二乃さんが人混みに流されちゃいそうだな…。このままだと二乃さんが迷子になってしまうかもしれない…。

 

悟飯「ほら、掴んでて」

 

二乃「……何よ」

 

悟飯「ここにいつまでもいたら迷子になっちゃいそうだからね。取り敢えず予約したっていうお店まで行こうよ?」

 

二乃「……あんたなんかお呼びじゃないわよ」

 

悟飯「あ、あははは……」

 

いつになったら二乃さんは少しでも心を開いてくれるのだろうか…。

 

悟飯「でも、5人で花火を見るの、譲れないんでしょ?」

 

二乃「………」

 

心なしか、二乃さんが僕の袖口あたりを自ら掴んだような気がしたけど、人が多すぎるためよく分からなかった。

 

 

二乃「やっと抜けたわ!あんたが道間違えちゃったから遅くなったじゃない!」

 

悟飯「この人混みだから仕方ないよ…」

 

二乃「ここの屋上よ!きっとみんな集まってるわ!」

 

 

ドォォオオオン!!

 

 

二乃さんは駆け足で階段を上がっていく。それと同時に花火が打ち上げられた。

 

花火が始まったはいいのだが…。

 

二乃「ど、どうしよう…。よく考えたら、今年のお店の場所…、私しか知らないんだった………」

 

悟飯「………へっ??」

 

二乃「……どうしよ…」

 

悟飯「……取り敢えず電話で聞いてみる?」

 

二乃「そうね…。あんたも手伝いなさい」

 

悟飯「もちろん!」

 

僕は携帯電話を開いた。いつの間にか悟天のアドレスも登録されていたが、この花火大会に来ている人のなかで登録している人は…。

 

 

孫悟天…。

 

上杉風太郎……。

 

 

…あとで五月さん達のアドレスも教えてもらおうかな…。

 

 

悟飯「………取り敢えず悟天にかけよう…。誰かと一緒にいるはずだし….」

 

まずは悟天に電話をかける。

 

『兄ちゃん?なんでそんなところにいるの?』

 

一応補足するが、悟天も気をしっかり認知できるため、悟飯の居場所は分かっている。

 

悟飯「ここが花火を見るために予約したお店なんだよ。他に誰かいないか?」

 

『今五月さんとそっちに向かってるよ。できれば他のみんなも連れてきたいけど……』

 

悟飯「分かった。お前なら気を探れば迷子にはならないだろうから、頼んだぞ」

 

『うん!』

 

悟飯「……よし、悟天は五月さんとこっちに向かってるみたい」

 

二乃「店の場所知らないはずだけど…?」

 

悟飯「そ、それはほら!僕がお店の名前を言ったら、さっき通ったことがあったみたいで!」

 

二乃「えっ?そうだったかしら……」

 

取り敢えず、次は上杉くんにだな…。

 

『どうした悟飯?』

 

悟飯「上杉くん。今そっちに他に誰かいる?」

 

『いや、いない……あっ、一花がいたぞ』

 

悟飯「電話を切ったらお店の場所を送るからさ、一花さんも連れてきてくれない?」

 

『なんでだ?別に無理して集まるよりもそれぞれの場所で花火を見ればいいじゃないか?』

 

悟飯「……ううん。5人で花火を見ることに意味があるみたい….」

 

『……よく分からんが、分かった』

 

悟飯「よろしくね!」

 

…よし、取り敢えず一花さんと五月さんはオーケーだ。あとは四葉さんと三玖さんだけど……。

 

二乃「四葉は妹ちゃんと一緒にいるみたいよ」

 

悟飯「じゃあ行方が分からないのは三玖さんだけか……」

 

三玖さんはどこだ…??

 

人が多いし、同じような大きさの気ばかりだから見つけ辛いな……。

 

……ここか?いや、悟天の気もあるから恐らく五月さんだな…。

 

……ここか?いや、上杉くんの気も近くにあるから恐らく一花さんだな…。

 

……ここは、らいはちゃんの気が近くにあるから四葉さんか……。

 

まずい、五つ子の気が似ている上に、この人混みの中から特定するのは難しいぞ…。でも………….

 

悟飯「……よし、見つけた!」

 

二乃「はっ??」

 

悟飯「じゃあ三玖さんとは連絡取れないから、僕が連れてくるよ〜!」

 

二乃「……見つけたって、あいつ、監視カメラか何かにハッキングでもしたの…?」

 

 

 

よし、この辺にいるはずなんだけど…。

 

「……あれ?悟飯?」

 

悟飯「あっ!三玖さん!ほら、二乃さんが予約したお店に行くよ。5人で花火を見るんでしょ?」

 

三玖「う、うん……。痛た…」

 

えっ?どうしたの…?

 

三玖「足、踏まれちゃって……」

 

そうか…。下駄で靴下を履いてないから殆ど裸足なような状態で踏まれちゃったのか…。これはしばらく痛むぞ…。

 

悟飯「……じゃあ、よいしょ…!」

 

三玖「ひゃ…!?な、なにしてるの…!?」

 

悟飯「その足だと歩くの難しいでしょ?それにまた踏まれちゃったら大変だし」

 

三玖「そ、そうかもしれないけど、その……このまま歩けるの…?重く…ないの?」

 

悟飯「うん?全然。だから心配しないで!」

 

三玖「いや、そうじゃなくて…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

お姫様抱っこは恥ずかしいよ……///

 

 

悟飯「…?何か言った?」

 

三玖「……な、何でもない…///」

 

せめておんぶにしてほしいと思いつつも、全然重くないと言われて少し機嫌のいい三玖であった。

 

 

 

でも流石に足をそのままにしておくと痛みが悪化してしまいそうだったので、途中で湿布と包帯を買って簡易的な治療はした。

 

悟飯「これで少しは痛みがマシになったんじゃないかな?」

 

三玖「……あ、ありがとう…」

 

悟飯「どういたしまして。……ってん?」

 

上杉くんから電話だ。どうしたんだろう?

 

悟飯「ちょっと電話だ…。もしもし?」

 

『悟飯、そっちで一花を見かけなかったか?』

 

悟飯「えっ?いや、見てないけど、一緒じゃないの?」

 

『声をかけたまではいいんだが、変な髭のおっさんに突然話しかけられたら見失っちまった…』

 

悟飯「へ、変な髭のオジサン…?」

 

『そうか…。見てないか…。見つけたら電話してくれ!』

 

悟飯「分かった!」

 

……変なおじさん…?まさか、誘拐とかじゃないよね…?

 

三玖「どうしたの?」

 

悟飯「上杉くんが一花さんを見失っちゃったみたいなんだよ…。三玖さんは見かけてたりしない?」

 

三玖「……見てないけど、前に髭のおじさんの車から一花が出てきたのを見たことある」

 

悟飯「へっ?」

 

三玖「だから、一花とその人は知り合いなのかも…」

 

知り合いなのか…。なら最悪の事態では無さそうだからよかったけど…。

 

悟飯「とにかく、僕達もお店に向かいながら一花さんを探そう!」

 

三玖「…悟飯は優しいね。私達と会ってまだそんなに経ってないのに…」

 

悟飯「あはは…。まあ、さっきの話を聞いちゃったら、出来るだけ5人で集まってほしいって思っちゃってね……」

 

三玖「……そう…」

 

悟飯「ところで歩ける?歩けないならさっきみたいに…「あ、歩けるから!大丈夫だから!」えっ?そ、そう…?」

 

三玖「だから、抱っこは、しなくてもいいよ…?」

 

悟飯「うん。分かった!でも立ち上がるのは辛いだろうから手は貸すよ」

 

三玖「うん…」

 

「すみませーん。花火大会に来られた方にアンケートをしているのですが…、答えて頂いた方には100円分の引換券を差し上げています」

 

あっ、この謳い文句、上杉くんなら引っかかるかも……。

 

悟飯「あの、僕達はちょっと急いでるんで……」

 

「1つだけでもお願いします!お二人はどんな関係なんですか?」

 

悟飯「えっ?関係?」

 

「いや、そこはいいでしょ。どう見たってカップルじゃん」

 

「あー…。確かに…」

 

悟飯「えっ、か、カップル!?」

 

三玖「いや、私達は恋人じゃなくて…」

 

「えっ?どう見ても恋人に見えますけど…?」

 

悟飯「へっ?」

 

自分達の心当たりを探ってみる。どこをどう見れば恋人っぽく見えるのだろうか?年頃の男女が一緒にいるだけでもカップルに見えてしまうのだろうか?

 

悟飯「………あっ」

 

そうか…。手を繋いでるからなのか…。三玖さんもそれに気付いたのか、咄嗟に手を離した。

 

三玖「こ、これは!そんなのじゃなくて…、私達は…、友人ですよ……」

 

「そ、そうでしたか〜…。それでは失礼しました〜……」

 

三玖「………」

 

ドォォオオオン!!

 

花火のせいなのか分からないけど、三玖さんの顔がいつもより赤いような気がした…。

 

 

三玖「…!悟飯、あれ見て。五月と悟天がいる…」

 

悟飯「あっ、ほんとだ」

 

悟天「あれ?兄ちゃん?何でお店にいないの?」

 

悟飯「三玖さんとは連絡がつかなかったら、三玖さんを探してたんだ」

 

五月「そうだったんですか…。もうみんなはお店に集まってるんですか?」

 

悟飯「分からないけど、場所は教えたからいるかもしれないね…」

 

「あっ!いたいた!一花ちゃんどこに行ってたの!!」

 

えっ?一花さんが近くにいるのかな…?

 

「言い訳は後で聞くから、今は走って!」

 

三玖「……えっ?」

 

あれ?髭の生えた人に三玖さんが連れてかれ……髭?もしかして、一花さんと一緒にいたっていう…?

 

悟天「ねえ、勘違いされてない?」

 

悟飯「ちょっと待ってください!」

 

「なんだね!今は急いでるんだよ。それともなんだい?一花ちゃんとはどんな関係なんだい?」

 

悟飯「いや、その人は一花さんじゃありませんよ!!よく見てください!!髪の長さが違うでしょ!」

 

「いーや、この顔はどこからどう見ても一花ちゃんだね!」

 

悟飯「いやだから、顔じゃなくて…!」

 

「もう放っておいてくれ!!うちの若手女優に何の用なんだい!?」

 

悟飯「…………へっ?」

 

悟天「一花さんが…」

 

五月「一花が…?」

 

「「「女優…?」」」

 

「あちゃー…、バレちゃったか…」

 

悟飯「えっ?一花さん?」

 

振り返ると、一花さんと上杉くんもいた…。

 

風太郎「待て、一花が女優だって?」

 

「い、一花ちゃんが、3人…!?!?」

 

 

 

 

 

 

「間違えてしまったのはすまない。でも一花ちゃんはこれから大事なオーディションがあるんだ」

 

風太郎「そんな急な話があるか。行くぞ一花。5人で花火を見るんだろ?」

 

一花「……みんなによろしくね?」

 

「一花ちゃん急ごう。会場は近いからまだ間に合う!」

 

一花さんはそのまま髭のオジサンと足早に去ってしまった。

 

風太郎「あ、あいつ…!悟飯、俺は一花をどうにかして連れてくる。だからお前らは先に行っててくれ!」

 

悟飯「えっ?でも…」

 

風太郎「5人で花火を見るんだろ?」

 

そう言うと上杉くんは一花さんが走って行った方向に走り始めた…。

 

三玖「……どうしてフータローが知ってるの…?」

 

悟飯「電話で、『5人で花火を見ることに意味があるらしい』って伝えただけだよ?」

 

三玖「……そう…」

 

悟飯「……ここは上杉くんに任せて、僕達は先に行こうか…」

 

五月「それにしてもビックリです…!まさか一花が女優だったなんて…」

 

悟天「今のうちに古参アピールしておこうかな…」

 

悟飯「だから悟天はどこでそんな言葉を……」

 

しかし、一花さんが花火を見れない可能性が高くなってしまったな…。どうしたものか……。

 

悟天「兄ちゃん」

 

悟飯「ん?どうした?」

 

悟天「花火なら何でもいいのかな?」

 

悟飯「えっ?何を言ってるんだ?」

 

悟天「別に打ち上げるタイプの花火じゃなくてもいいんじゃないの?ってこと!」

 

「「……??」」

 

2人はよく分からないという顔をしているが、なるほど…。そういうことか…!

 

悟飯「なるほどな。ナイスアイデアだぞ悟天!」

 

悟天「えへへ…」

 

五月「あの、どういうことなんですか…?」

 

悟飯「それは後のお楽しみかな」

 

「「…?」」

 

確かにその方法なら、一花さんが戻ってくるのが遅くなってしまっても問題ないわけだ。

 

 

 

 

取り敢えずは二乃さん達のいるところに戻った。

 

二乃「はぁ!?一花が来れない!?会ったならどうして連れてこなかったのよ!?」

 

悟飯「それは後で本人の口から聞いた方がいいと思うな…」

 

二乃「後でって……、花火終わっちゃうじゃないの!!」

 

悟天「うるさいなぁ…。別に二次会をやれば済む話じゃん」

 

二乃「はっ?に、二次会…??」

 

だから悟天はどうしてそんな知識を…。

 

悟天「単語くらいは知ってるよ」

 

多分意味も分かってるなこれ…。

 

四葉「みなさーん!お待たせしました!ってあれ?一花は?」

 

二乃「……来れないみたいよ」

 

二乃さんは若干不貞腐れてるみたいだ…。まあ当日に突然来れないって言われちゃったら仕方ないのかな…?

 

悟天「あったあった。これだよこれ」

 

らいは「えっ?ちょっと?」

 

悟天はらいはちゃんが持つ花火セットを取り、みんなに見せる。

 

五月「な、なるほど…!」

 

三玖「悟天、頭いい」

 

悟天「えへへ…」

 

五月「……!か、可愛いです〜!!弟に欲しいくらいです!!」

 

四葉「可愛さなららいはちゃんの方が……いや、どっちも捨てがたい……」

 

二乃「なんかあんた達が危ないやつに見えてきたんだけど……」

 

悟天「やめてよ。僕は兄ちゃんの弟なんだから。というかあまりくっ付かれると苦しいんだけど……」

 

三玖「……ねえ」

 

悟飯「ん?」

 

三玖さんが微笑みながら話しかけてきた。

 

三玖「……悟天って、可愛いね?」

 

悟飯「そ、そう?ま、まあ確かに…」

 

五つ子の中で悟天の株が上昇した瞬間であった…。

 

 

 

花火がひと段落した時に上杉くんに(自主開催の)第二次花火大会を開催する趣旨を説明した。上杉くんはその提案に納得し、オーデションが終わり次第一花さんを連れてくるとのことだった。

 

そして、一花さんのオーデションが終わったので、今から向かうと連絡が来た…。

 

四葉「よーし!それじゃあそろそろ始めましょう!!」

 

二乃「待ちなさいよ。一花が来てからにしなさい」

 

三玖「……線香花火は取っておいて」

 

五月「誰かリンゴ飴持ってませんか?」

 

らいは「あっ、丁度持ってるからあげるね!」

 

五月「はわぁ〜…!!らいはちゃんいい子過ぎます!!」

 

みんな早く花火をしたいのか、案外すぐに始めてしまった。5人でやらなきゃ意味がないのでは…?っと思った矢先に…

 

四葉「あっ!一花に上杉さん!」

 

風太郎「ほら一花。打ち上げ花火には見劣りするが、諦めるのはまだ早いんじゃないか?」

 

一花さんは事前に知らされてなかったのか、驚きつつも少し嬉しそうだった。

 

四葉「上杉さん!準備万端です!我慢できずにおっ始めちゃいました!」

 

風太郎「……お前が買った花火のお陰だよ。助かった」

 

四葉「ししし!」

 

その四葉さんの笑い方はなんなんだろう…。

 

二乃「はぁ……あんたには一言言わなきゃ気が済まないわ!」

 

風太郎「えっ?な、なんだ?」

 

二乃「お!つ!か!れ!!」

 

風太郎「紛らわしいッ!!」

 

五月「ほら!一花も花火をしましょうよ!」

 

一花「五月ちゃん……」

 

五月「三玖、そこにある花火を取ってください」

 

三玖「……うん」

 

良かった…。これで一応はみんなで花火を見るという目的は達成できたのかな…?そう思っている時に、一花さんが4人に対して謝罪を始めた…。

 

一花「みんな!ごめん!私の勝手でこんなことになっちゃって………。本当にごめんね…」

 

五月「そ、そんなに謝らなくても…」

 

風太郎「まあ一花も反省してるんだし…」

 

二乃「全くよ。何で連絡をくれなかったのよ?今回の原因の一端はあんたにあるわ」

 

悟飯「に、二乃さん…。そこまで言わなくても……」

 

二乃「……あと、目的地を伝え忘れた私も悪い……」

 

五月「私も自分の方向音痴さに嫌気がさしました…」

 

悟天「僕がいなかったら今頃餓死してただろうね」

 

五月「それは流石にないです!!」

 

悟天…。ここは空気を読もうよ……。

 

二乃さんと五月さんに続き、三玖さんと四葉さんも一花さんに謝る。

 

三玖「私も今回は失敗ばかり……」

 

四葉「よ、よく分かりませんが、私も悪かったということで……。屋台ばかり見てしまったので……」

 

一花「みんな……」

 

二乃「はい。あんたの分」

 

……ひょっとしたら喧嘩になっちゃうかなって思ったけど、普通に円満に終わりそうなので一安心…。

 

五月「お母さんが昔こう言ってましたね…」

 

 

 

誰かの失敗は、五人で乗り越えること。

 

誰かの幸せは、五人で分かち合うこと。

 

喜びも…

 

悲しみも…

 

怒りも…

 

慈しみも…

 

 

 

五月「私達全員で、五等分ですから…」

 

五月さんがそう言い終えたと同時に、一斉に花火に火をつけた。

 

その5人の姿は、紛れもなく、仲のいい家族そのものであった。

 

悟飯「……あれ?いつの間にらいはちゃん寝ちゃったんだ……」

 

風太郎「きっと満足して疲れちまったんだろう…。そういえば、悟天は眠くないのか?」

 

悟天「……そう言われれば眠いかも…。ふぁぁ〜……」

 

悟飯「しょうがないな…。ほれ…」

 

悟天「ん……」

 

僕は悟天をおんぶする。外出時に悟天が眠くなった時は、お母さんか僕が大体おんぶする。じゃないと悟天が駄々をこねるので……、甘やかしすぎるのも良くないとは思いつつも、まあいいかと結局やってしまう……。

 

悟天「……すぅ…」

 

風太郎「寝るの早いな……」

 

悟飯「悟天もきっと遊び疲れたんだよ」

 

ブー…。

 

悟飯「……ん?お母さんから…?あっ!帰宅時間伝えるの忘れてた!?」

 

風太郎「なんだ?門限でもあるのか?」

 

悟飯「僕じゃなくて悟天の方だけど…、ちょっと電話してくる!」

 

風太郎「おう!

……らいはが寝てる姿を見たら俺も眠くなってきたな…」

 

 

 

一花「……フータローくん。まだお礼言ってなかったね?応援してもらった分、君に協力しなきゃ…」

 

一花「私達、パートナーだもんね?私は一筋縄じゃいかないから覚悟しててよ?」

 

風太郎「………」スピー

 

一花「目を開けながら寝てる…。もう!」

 

一花は風太郎の隣に座ると、目を開けながら寝ている風太郎を自らの膝を枕にして横に寝かした。

 

一花「頑張ったね…。ありがとう。今日はお休み……」

 

 

 

悟天「あっ、風太郎さん膝枕されてる」

 

悟飯「いつの間に起きたんだ悟天…?」

 




第二回アンケートのことに関してですが、今のところは通常形式にしてほしい人の方が多そうですので、土日辺りにでも一気に修正してしまおうかと考えています…。

でもpixivに台本形式版があってもハーメルンで台本形式で読みたい方も一定数いそうなので…?まだ確定事項ではないです。(もしかしたら私の書き方では台本形式じゃないと誰が喋ってるのか分からんって人もいるかも…?)

どうしてもハーメルンで台本形式じゃないと嫌だという方は感想欄以外の何かしらの方法でそれとなく伝えてくださいませ。
もしもそれなりにいるようでしたら、ハーメルン内でも台本形式版(当作品)とリメイク版(という名の通常形式版)てな感じで投稿するかも…?
これ規約違反にならないかな…?もしも違反になるようでしたら何かしらで伝えてくださると助かります。違反にならないようでしたらわざわざ伝えて下さらなくても大丈夫です。


はい、一花は風太郎がフラグを立てました。今話を投稿する時点では、第一回アンケート(悟飯のヒロイン誰ならあり?)では三玖より一花の方が票数が多かったのですが…。

その理由は……これを読みに来てる人はネタバレとか大丈夫な方々ですよね?大丈夫ですよね?念のため数行空けますね…。原作のネタバレ嫌な人はブラウザバック(もしくは次話が投稿されてたら即座にそちらへ…)


















はい、原作のネタバレが平気な方々しか残ってませんね…?

一花を風太郎側にフラグを立たせた理由としましては、過去に風太郎と会った……というか、風太郎と話したことがあるのが、四葉以外だと一花だったからです。

なんとなくではありますが、戦う姿がない悟飯に対して一花が惚れるイメージがあまり湧かなかったというのもありますが、風太郎に惹かれる(まだフラグが立っただけだけど)理由としましては自然なのではないかと勝手に思ったり……。

まあ後で悟飯がフラグを立ててしまう可能性も微レ存なわけですが…()。なのでまだどちらのヒロインかと決めつけるのは早計……かな?

今のまま進むと一花と三玖は別の人を好きになることになるので、一花のあの闇堕ちシーンはないかも…?あ、でも四葉がちょっとでも攻めると一花が闇堕ちする可能性なくもないか…。原作だと四葉あまり攻めてなかったもんね。
まあまだどうなるか確定してませんけどね。


随分後書きが長くなってしまいましたが、これにて失礼致します…。


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第7話 もうすぐ中間試験

⚠︎注意⚠︎

『クロスオーバーが苦手な人』
『台本形式が苦手な人』
『細かいことが少しでも気になる人』
『原作のカップリングが崩されるのが嫌な人(特に飯ビー)』
上記に当てはまる方はブラウザバックを『強く』推奨します。

通常公開、クロスオーバー、原作ヒロインという時点である程度の批判は覚悟しているつもりですが、注意書きを読まないで批判するのはダメっすよ。説明書を読まずに操作方法が分からんって文句を言ってるようなものですよ。

注意書きの内容は話ごとに変わる可能性もあります。ご了承下さい。



昨日は無事に五人で花火を見ることに成功した。後で聞いた話だと、一花さんは他の4人にも自分の仕事について打ち明けたそうだ。特に反対とかはなく、スッキリしたそうだ。

 

ちなみに僕は一花さんの仕事に関しては賛成だ。僕も学者になるために勉強をしている。人の夢にとやかく言う権利は僕にはない。せめてちゃんと高校を卒業できる程度に勉強してくれれば僕としては問題ない。

 

ちなみに、アドレス交換をしようと言われたので、僕は特に反対する理由もないので交換した。

 

 

 

放課後…。

 

上杉くんがメールアドレスを交換しようとのことだった。僕もこの前の花火大会の件で考えていたところだ。

 

四葉「アドレス交換!大賛成です!!でもその前にこれは終わらせちゃいますね」

 

風太郎「……一応聞くが、何をやってるんだ…?」

 

四葉「千羽鶴です!友達の友達が入院したらしくて!!」

 

風太郎「勉強しろ!」

 

悟飯「それは最早他人なんじゃ………」

 

四葉さんって優しすぎではないだろうか…?友達の友達って、多分会ったことないよね…?

 

風太郎「はぁ……ちょっと寄越せ。俺も手伝うから、とっとと終わらせるぞ」

 

結局やってあげる上杉くんも上杉くんなんだけれども…。

 

悟飯「僕も手伝うよ…」

 

四葉「ありがとうございます!」

 

「おっ、中野いいところに。このノートをみんなの机に配っておいてくれ」

 

四葉「はーい」

 

……本当に優しいんだな…。

 

あっ、上杉くんがイライラしている…。

 

風太郎「四葉のやつ、勉強を避ける為に時間を稼いでるんじゃ…?」

 

悟飯「だとしたら最初から非協力的だと思うよ…?」

 

風太郎「……確かに。最初に協力する意味がないな……ん?」

 

上杉くんが携帯電話を取り出す。らいはちゃんだろうか…?

 

風太郎「……みんなのアドレスが知りたいな〜…!!ほら、悟飯もこの際だ。交換しろよ!」

 

悟飯「えっ?う、うん…」

 

突然どうしたんだろう…?さっきまでは提案はしたけど乗り気じゃない感じだったのに……。

 

三玖「はい。協力してあげる」

 

悟飯「あ、ありがとう…」

 

その台詞で何で僕に渡してきたんだろう…。普通は上杉くんに渡すところだと思うけど……。まあいいか。

 

これで1人目。

 

悟飯「あっ、足はもう平気なの?」

 

三玖「も、もう痛くない…」

 

悟飯「それは良かった…」

 

風太郎「これで一花と三玖のアドレスはゲットだ。二乃と五月はまた今度でいいだろ」

 

四葉「2人なら食堂にいましたよ?今のうちに行きましょうよ!」

 

風太郎「何でお前も行くんだよ!?というか、お前のアドレスは!?」

 

四葉「早くしないと帰っちゃいますよ〜!!」

 

風太郎「お前勉強やる気ないだろ!?」

 

悟飯「あっ、僕はここで2人を見ているよ」

 

風太郎「頼んだ!」

 

 

悟飯「さて、じゃあ今日は何の教科から……うん?」

 

上杉くんからメールだ?なんだろう…。

 

内容を要約すると…。

五月さんのアドレスを手に入れる為に交渉したところ、らいはちゃんと悟天のアドレスもセットなら交換するとのことだから教えてくれ…。

 

悟飯「……それは本人に許可を取らないと分からないんだけどなぁ……」

 

という内容の返信をした。

 

 

一応悟天に聞いてみたところ、いいよとのことだったので、上杉くんに送信を……。あっ、電源が切れちゃった…!充電するの忘れてた……。

 

悟飯「ご、ごめん!ちょっと自習してて!!」

 

 

「よかったね、三玖!」

 

「うん…!」

 

アドレス交換ができて嬉しそうな方が約1名……。いや、2名いた。

 

 

悟飯「……ここに五月さんと二乃さんの気があるんだけど……」

 

五月「あっ、孫くん?」

 

悟飯「五月さん。上杉くんは?」

 

五月「上杉くんなら四葉を追ってどこかに行きましたよ?」

 

四葉さんを追って…?他に行くところなんてあるのかな…?

 

まあ、それはいいや。

 

悟飯「はい。悟天からは許可はもらったから。これは悟天のアドレス」

 

一応生徒手帳にも連絡先をメモしている癖があるので本当によかった…。

 

五月「……仕方ありませんね!はい、私のアドレスです!」

 

悟飯「どうも!」

 

さて、後は二乃さんかな?

 

二乃「言っとくけど私は渡さないわよ?」

 

うん。なんとなく予想できた…。

 

悟飯「いや、でも既に他の4人とアドレスは交換したし……」

 

二乃「そんなの関係ないわ」

 

悟飯「うぅ……。分かったよ…。じゃあ仕方ないからメールは4人でなんとかするよ……」

 

二乃「……!」

 

五月「それだと二乃が仲間外れみたいじゃないですか?」

 

二乃「……!!」

 

悟飯「でも、二乃さんがアドレスを教えたくないって言う以上は仕方ないよ…。強引に聞くわけにもいかないし…」

 

二乃「〜ッ…、書くものをよこしなさい…!」

 

悟飯「へっ…?」

 

二乃「アドレス!特別に教えてあげるって言ってんのよっ!!」

 

悟飯「えっ?う、うん…?じゃあ生徒手帳にお願い…」

 

さっきまであんなに嫌がってたのに、一体どういう風の吹き回しだろう…?

まあ、これで5人とアドレスを交換できたわけだから良しとしよう…。このアドレスを上杉くんにも後で教えてあげれば問題ないかな…?

 

二乃「…!?ちょっと待って、この写真は!?」

 

悟飯「えっ?写真?」

 

二乃「ほら!これよこれ!」

 

悟飯「……あっ…」

 

それは、僕がセルゲームに行く前に家族全員で撮った写真だった。

あの時のお父さんは、どういうわけかいつもと様子が違かった。

 

僕にはちゃんと勉強しておけって言うし、買い物に行こうって言うし、みんなで写真を撮ろうと言い出したのもお父さんだった。

 

とはいえ、超サイヤ人状態のまま撮ったわけなので、本当の家族写真なのかと言われると少し微妙ではあるけど、僕達家族が全員写っている写真はこれくらいしかない。

 

あとは僕が赤ん坊の頃の写真でもないと家族みんなで揃ってる写真はないのだ。

 

今にして思えば、お父さんは心のどこかで死ぬことが分かっていたのかもしれない…。だからこそ、今までできなかった父親らしいことをしようとしていたのかもしれない…。

 

でも、そんなお父さんが死んだのは僕が……………。

 

……いや、お父さんならこう言うだろう。

 

『細けえこったぁ気にすんな!!これからはオメェらで地球を守ってくれよな!!』

 

……って言うんだろうな…。

 

ってあれ?ちょっと待って?今は二乃さんに写真を…………ハッ!?

 

二乃「ちょっとあんた!この写真はいつ頃のやつ!?」

 

悟飯「えーっと……数年前?だったと思うけど……」

 

二乃「この子誰よ!!めっちゃ私のタイプ………ま、まさか!?間違いないわ!!」

 

悟飯「へっ?」

 

二乃「この子、セルゲームに参加してたあの人に違いないわッ!!」

 

悟飯「……………………えっ!?」

 

五月「あっ、よく見ると髪型も顔も似ています!」

 

二乃「なんであんたがこの子の写真を持ってるのよ!?」

 

悟飯「えーっと……」

 

幸い僕自身だってことには気付いてないみたいだ……。助かった……。

 

悟飯「実は、僕の知り合いなんだ…。ちょっとしたことで助けてもらったことがあって……。その写真は僕が撮ったんだ!」

 

親戚って言ってしまうと、僕も一般人じゃないのではないかと疑いがかけられてしまうから、これが最適解のはず…。

 

二乃「ふーん?その子の連絡先とか知ってんの?」

 

悟飯「へっ?まあそりゃあ(僕のだし……)」

 

って危なっ!?危うく自爆するところだった……。

 

二乃「教えなさい!!私のアドレスも教えたんだから教えなさい!!!!」

 

悟飯「だ、ダメだよ!!会ったこともない人に勝手にアドレスを教えちゃうなんて!!」

 

二乃「……それもそうね」

 

良かった…。納得してくれた……。

 

五月「二乃、どうしてそんなに必死なんですか?」

 

二乃「そりゃあ私の初恋だもん」

 

五月「ええ!?そうなんですか!?」

 

………つまり、二乃さんは超サイヤ人の姿の僕に初恋をしていたと………。

 

……嘘でしょ…?確か前にも超サイヤ人になって二乃さんの前に現れたことがあったような……。あっ…!

 

二乃「……待って、その人ってセルゲームに参加してたから……、力持ちだったりしない?」

 

悟飯「えっ?ま、まあ……車くらいなら軽く持ち上げ………あっ…!!」

 

ど、どうして僕は自分から墓穴を掘り下げるようなことを言ってしまうんだろうか……。

 

二乃「やっぱり!!じゃああの時に現れた彼はこの写真の子が成長した姿だったのね!!道理でめっちゃタイプだと思ったわッ!!」

 

……まずいな…。繋がってしまった…。幸い、僕自身だと思われてないだけまだマシか……。

 

二乃「まあ、私の初恋の彼があんたの知り合いだったなんて運がいいわ。はい、返してあげる」

 

悟飯「あ、ありがとう……」

 

……間違っても二乃さんの前で超サイヤ人にはならないようにしよう…。

 

 

ちなみにその日の夜…。

 

『上杉風太郎

 

ようお前ら!勉強は順調か?これ全部宿題な!サボらずちゃんとやるんだぞ!!』

 

っと、大量の問題を受信したと同時に5人の断末魔のような叫び声が聞こえたとか聞こえてないとか……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方でバスケ部の勧誘を断った四葉と心配してこっそり付いてきた風太郎…。

 

風太郎「よし、あとは五月と二乃のアドレスさえ手に入れれば良い訳だな…」

 

四葉「そうですね!これで一花、二乃、三玖、五月の4人が揃いましたね!」

 

風太郎「……ん?4人?」

 

四葉「あーっ!!私のアドレス伝え忘れてました!!」

 

風太郎(やっぱこいつただのアホだな…)

 

ちなみにその後はお互いに持ってないアドレスを教え合い、なんとか家庭教師2人は、5人の生徒のアドレスを手に入れることに成功した。

 

 

 

翌日…。

 

「来週から中間試験が始まります。念のために言っておきますが、今回も30点以下の方は赤点とします。各自復習を怠らないように!」

 

ついに来た中間試験。僕と上杉くんの成果が現れるであろうイベントだ。無論、僕達自身の成績ではなく、僕達が受け持つ五つ子(生徒達)の成績のことだ。

 

風太郎「五月!頑張ってるな!休み時間なのに予習してるなんて偉い!!」

 

おや?上杉くんが五月さんをベタ褒めしている……。いつもの上杉くんなら、そんなことは滅多に言わないんだけど…。

 

風太郎「家でも自習をしていると聞いてるぞ?無遅刻無欠席で忘れ物もしたことがない。同じクラスだから分かるが、お前は五人の中で1番真面目だ!」  

 

五月「そ、そうでしょうか…?」

 

確かに、五月さんは一番真面目だと思う。授業を1番真剣に聞いてくれるのも五月さんだし、よく質問してくれるのも五月さんだ。

勉強は苦手なんだろうけど、苦手だからと割り切らずに克服しようとしているところは本当にすごいと思う。

 

風太郎「ああ!ただお前は馬鹿なだけなんだ!!」

 

………あっ。

 

風太郎「だからもっと俺を頼ってくれてもいいんだぞ!!」

 

五月「……そうですね。ここの問題教えて下さい」

 

風太郎「もちろん!!」

 

 

「わかりました…。後で職員室に来なさい」

 

風太郎「・・・・・」

 

良かった。いつもの上杉くんだった…。

 

またしても仲悪くなるのだけは避けて欲しいんだけどなぁ……。また五月さんが不貞腐れちゃったよ…。不貞腐れちゃうと僕の授業も受けてくれなくなっちゃうから困るんだよね…。

 

 

 

その後、上杉くんは二乃さんも連れてくるとのことで、先に図書室に言って勉強会をしてくれとのことなので、僕は先に図書室に行って、一花さん、三玖さん、四葉さんに教えていたのだが……。

 

悟飯「……上杉くん?顔が腫れてるけど…?」

 

風太郎「気にするな…」

 

四葉「上杉さん!問題です!今日の私はいつもとどこが違うでしょうか!?」

 

風太郎「お前ら、もうすぐ何があるか知ってるか?」

 

四葉「無視っ!?」

 

上杉くん…。そういうことをするから未だに勉強会に来てくれない子がいるんじゃ………。いや、二乃さんはそもそもそういう子ではなかったかも…?

 

にしても、流石に無視は酷いと思うんだけど…。でも僕に対しての質問ではないようだし、僕が答えるのもなんか違うと思うんだよな…。

 

一花「あ〜…。林間学校か」

 

三玖「楽しみ」

 

四葉「ヒントは首から上でーす!」

 

そういえば、もうすぐ林間学校か……。スキーをやるのと同時に何故かキャンプファイヤーもするんだよね…。

 

というか、流石に何かしら反応してあげようよ上杉くん…。

 

風太郎「へえ?試験は眼中にないってわけか…。頼もしいな」

 

口では笑っているけど目は全然笑っていない……。

 

一花「あはは…。わかってるよ〜」

 

風太郎「本当かよ…?」

 

四葉「上杉さんには難しかったかなー?孫さんは分かります?」

 

えっ?僕?

 

…………………おや?ちょっと気が小さいような…?

 

……いや、ヒントは首から上って言ってるし…。………ちょっと眠そう…?

 

悟飯「もしかして、ちょっと眠い?」

 

四葉「何故分かったんですかッ!?!答えはそれじゃありませんけどッ!」

 

その反応で違うんだ…。

 

四葉「正解はリボンです!!今はチェックがトレンドだと教えてもらいまいました!!」

 

ガッ!

と、上杉くんが四葉さんのリボンを掴んだ。……なんか大根を引き抜こうとしているようにも見えて少し笑いそうになっちゃった……。

 

風太郎「ほう?良かったな。お前の答案用紙もチェックが流行中のようだ」

 

四葉「うわぁ…!最先端〜…」

 

一花「あははは!」

 

風太郎「こら!お前らも笑ってる場合じゃないぞ!四葉がやる気があるだけまだマシだ!

とてもじゃないがこのままでは試験は乗り切れない!!その先の林間学校なんて夢のまた夢だ!!

中間試験は国数英理社の五科目!!!これから1週間徹底的に対策していくぞ!!」

 

一花「えー?」

 

風太郎「だから三玖も日本史以外の勉強を………!?」

 

残念ながら三玖さんは英語の勉強をしている。ちなみに僕が勧めたのでもなく、自分から始めたのだ。

 

風太郎「お前、熱でもあるのか?」

 

だからそれは失礼だって…。

 

三玖「平気。少し頑張ろうと思って…」

 

今日は順調に勉強会が進んだ。五月さんがいなかったけど…。

 

 

 

一花「ふぅ〜…」

 

風太郎「ぶわっ!?な、なにをする!?」

 

一花「そんなに根詰めなくてもいいんじゃない?別に中間試験で退学になるわけじゃないんだし…。私たちも頑張るからさ!じっくり付き合ってよ」

 

風太郎「……」

 

一花「まあご褒美があればもっと頑張れるんだけどね…」

 

四葉「あー!私は駅前のフルーツパフェがいいです!」

 

三玖「私は抹茶パフェ」

 

一花「なんか聞いてたら私も食べたくなっちゃったな〜」

 

風太郎「一刻も早く帰りたいんじゃなかったのか……」

 

悟飯「……僕も食べたくなってきたかも……」

 

一花「おっ?じゃあ行く?」

 

四葉「孫さん!私達にご褒美くださいよー!」

 

悟飯「えっ、えー?」

 

三玖「……わ、私も!ご褒美ほしい…」

 

悟飯「いや、そんなつもりで言ったんじゃ……」

 

いや、待てよ?一回奢ってやる気を出してくれるなら……。

 

悟飯「じゃ、じゃあ一個だけだからね?」

 

四葉「わーい!」

 

一花「フータロー君も行こうよ」

 

四葉「上杉さん!早くしないと置いてっちゃいますよ〜!!」

 

と言われて、上杉くんも着いてきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

と思われたのだが、全然そんなことはなかった。

 

四葉「なんであの状況で来ないんですかッ!?」

 

一花「フータロー君はマイペースだからねぇ…」

 

三玖「……ねぇ、悟飯は何食べたい…?私のおすすめは抹茶パフェ」

 

悟飯「えっ?うーん…。よく分からないから取り敢えずそれにしようかな…?」

 

結局4人でパフェを食べに行くことになった。パフェなんて普段は食べないから偶にはいいのかもしれない…。

 

 

一花「はいはーい、三玖はそっちに座ってね〜」

 

三玖「えっ?い、一花…!?」

 

四葉「すみませーん!フルーツパフェをお願いしまーす!」

 

 

 

「そ、孫くんが噂の五つ子のうちの3人とパフェを食べにきてるッ!?」

 

「こ、これは夢よ…!新人に孫くんが取られるわけは…!!」

 

「隣にヘッドホンの子…。はっ!孫くんはヘッドホンをかけてる子が好み!?」

 

「……私も生徒になろうかな…」

 

「「「そこッ!?」」」

 

 

悟飯は初めてのパフェに感動を覚え、一花と四葉は普通にパフェを味わい、三玖はパフェだけでなく誰かさんの横顔も味わったとか…。

(注:横顔を見てただけです)

 

 

ちなみに、とんでもない条件が課せられたことも知らずにパフェを呑気に食べている家庭教師は悟飯以外いないだろう……。

 

 

 

 

 

 

パフェってあんなに美味しかったんだ…。人気があるものには必ずそれだけの理由があるんだな…。

 

ブー…。

 

悟飯「……ん?電話…?誰からだろう………もしもし?」

 

『やあ。娘達が世話になっているね』

 

娘達…。そしてこの声は…!

 

悟飯「中野さん…!どうも…」

 

『なかなか其方に顔を出せなくてすまないね。どうだい?家庭教師はうまくやっているかい?』

 

悟飯「ええ。途中ハプニングはあったものの、今のところは問題ありません」

 

『……やはりそうだったか…。今までも数多くの家庭教師を雇ってきたが、娘達が全然授業を受けてくれなかったようでね…。思い切って同級生である君達に頼んで正解だったよ』

 

なるほど…。だから僕と上杉くんに家庭教師をしないかと提案したのか…。

 

『近々中間試験があると聞いたが、順調そうで何よりだ。少々酷だが、君達の成果をここで見せてもらいたい…』

 

なるほど…。卒業に導いてほしいという考えから察するに、最低条件は恐らく赤点の回避…。

 

『1週間後の中間試験、5人のうち1人でも赤点を取ったら、君……いや、君達には家庭教師をやめてもらう…』

 

……やはりそうきたか…。でもこれは妥当な条件だろう。無事卒業に導くことが条件で募集(?)をしていたなら、その分かりやすい目印とも言える赤点回避をノルマとして出すのはごく自然な流れだろう。

 

悟飯「……一度引き受けたんです。5人とも赤点回避をさせてみせます」

 

『期待しているよ…』

 

……とは言ったものの、二乃さんが参加してくれそうにないからどうしたものか……。

 

考え事をしていたところに、上杉くんからメールが来た。

 

悟飯「……緊急会議…?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

From:中野一花

 

To:上杉風太郎

 

 

かわいい寝顔♡

 

広められたくなければ、残り4人のアドレスをGETすべし!

ちなみに悟飯くんにも交換させないとばら撒いちゃうぞ〜?

 

 

※という内容のメールが風太郎の寝顔と共に一花から風太郎に送られたとか……。

 




ハーメルン上で台本形式を望む方が意外といそうですので、こちらの作品は現行通りの台本形式、新たにリメイク作品という名の通常形式版を新たに作り出す方式にするかもしれません。

台本形式で先に投稿し、後から追加したいと思った描写等を加えた上での作品が、リメイク版(という名の通常形式版)という形になるかと思います(?)
まだ決まってはおりませんが…。

ですので、もしそういう方式になった場合は、ストーリーが先に進むのは台本形式版であるこちらになりますので、台本形式でもいい場合はこちらで読むことをおすすめします。

多少遅れてもいいから通常形式版で読みたいという方はもう少々お待ちください。
まだ確定じゃないですけど(2回目)

今話を投稿した後のアンケートの結果を見て決めようかと考えております。


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第3巻
第8話 お泊まり会は唐突に


⚠︎注意⚠︎

『クロスオーバーが苦手な人』
『台本形式が苦手な人』
『細かいことが少しでも気になる人』
『原作のカップリングが崩されるのが嫌な人(特に飯ビー)』
上記に当てはまる方はブラウザバックを『強く』推奨します。

通常公開、クロスオーバー、原作ヒロインという時点である程度の批判は覚悟しているつもりですが、注意書きを読まないで批判するのはダメですよ。説明書を読まずに操作方法が分からんって文句を言ってるようなものですよ。

注意書きの内容は話ごとに変わる可能性もあります。ご了承下さい。




前回のあらすじ…。

孫悟飯は、五人の生徒のアドレスを無事に手に入れて、状況が良くなりつつあるのはいいのだが、雇い主の中野マルオから、中間試験で赤点が一人でも出たらクビにするとのこと。

あと1週間しかない上に、二乃はまだ殆ど勉強会に参加していないし、風太郎はどうやら五月と喧嘩してしまったようだ。

残り1週間もない中でどうする悟飯!?

悟空「うひゃ〜…!こりゃ大変だな…!ところで界王様、赤点ってなんだ?」

界王「あとで教えてやるからここを去れ!」

悟空「……ちょっと待て、悟天のやつ筋斗雲に乗れんのかなぁ…」

界王「えっ?どういう意味じゃ…?」





悟飯「……えっ?もう一度お願い」

 

『だから、五月ともめちまった…』

 

悟飯「………………」

 

上杉君から『緊急会議』などというメールが送られてきたから何事かと思えば、五月さんと喧嘩したらしい。

 

それ自体はいつものことなのだが、問題は、中間テスト前に発生したということ。

 

悟飯「……なんでこんな時に…?」

 

『本当に申し訳ない!自分でもしょうもないことで怒っちまったと反省している!!』

 

悟飯「……まあ、過ぎたことに色々言っても意味ないからこれからのことを考えないと……」

 

更に課題が増えた…。どうしよう…。

 

悟飯「取り敢えず和解するしか手はないよ。そうしないと、僕はともかく、上杉君の場合はクビになったら相当まずいでしょ?」

 

『そうなんだよ……』

 

悟飯「……取り敢えず、どうしても五月さんが授業を受けてくれないようだったら、僕が個別で授業しておくから…」

 

『本当にすいません…』

 

上杉君も相当反省しているみたいだな…。でも何をどう言われたらそんなに怒るんだろうか…?

 

考えても仕方がない。取り敢えず僕は個別にテスト対策問題集でも作り上げよう…。って僕の家に印刷機とパソコンがないな…。パソコンの操作方法は前にブルマさんに教えてもらったからいいけど…。

 

仕方ない。これからのことを考えて、パソコンとプリンターはあった方がいいだろう。それを買ってから家で作業することにしよう。

 

 

 

悟天「わあ!?兄ちゃんが色々買ってきてる!?」

 

チチ「何買ってるだ?」

 

悟飯「プリンターとパソコン。家庭教師に使うから」

 

チチ「なら仕方ねえだな!」

 

悟天「兄ちゃん!それパソコンでしょ!僕にも使わせてよ!」

 

悟飯「ダメだ。これは兄ちゃんが仕事で使うために買ったものなの」

 

悟天「ぶぅ〜…」

 

悟飯「分かった分かった…。取り敢えずテストが終わったらおもちゃを買ってあげるから…」

 

悟天「本当!?わーい!!約束だからね!!」

 

悟飯「はいはい」

 

 

 

さてと、今日も勉強会を開くわけだけれども…。

 

四葉「上杉さーん!私結婚しました!ご祝儀ください!」

 

一花「えっ?おめでとー」

 

三玖「次は私の番………スカウトされて女優になるだって」

 

一花「えー?それ私が狙ってたのに〜…」

 

四葉さん、一花さん、三玖さん、上杉君の4人で何故か人生ゲームをやっている…。

 

風太郎「ってエンジョイしている場合かッ!?自分の人生をどうにかしろ〜ッッ!?!?」

 

一花「でも今日はたくさん勉強したし、休憩しようよ」

 

四葉「もう頭がパンクしそうです…」

 

風太郎「確かにそうだが…」

 

さっきまでみっちり勉強してたから、確かに偶には休むことは重要だ。

 

あまり根詰めすぎると覚えられるものも覚えられなくなっちゃうこともあるしね…。

 

一花「フータロー君……ひょっとして、私達って結構ヤバい…?」

 

風太郎「……実は…」

 

ここはどうすればいいのだろうか。事実を話したとして、彼女達にプレッシャーを与えるだけになってしまう可能性もある。

 

一花「もしそうなら私から提案があるんだけど……」

 

「あー!なによ、勉強サボって遊んでんじゃない。ほら、あんた変わりなさい」

 

……二乃さんに知られなくてよかったかも…。知ったら僕たちを追い出すために勉強をしないことに全力を尽くすかもしれない……。

 

そして問題はこれだけじゃない…。

 

二乃「あんたも混ざる?五月」

 

五月「……結構です。私はこれから自習があるので……」

 

悟飯「あっ!ちょっと待ってよ!」

 

二乃「ほら!あんたらカテキョーは終わったんでしょ!さっさと帰りなさいよ!!」

 

風太郎「あ、ああ……」

 

どうやって五月さんと上杉君を仲直りをさせるかだ…。中間テスト前だというのにテスト以外の問題があり過ぎて対処が大変だ……。

 

一花「ちょっと待って二乃。フータロー君と悟飯君、確か今日は泊まり込みで勉強を教えてくれる約束でしょ?」

 

風太郎「はっ?」

悟飯「へっ…?」

 

そんな約束したっけ……?

 

 

 

 

何がともあれ、勉強を教えられる時間が増えただけでもいい方か…。一花さんには感謝しないと…。それよりも……。

 

悟飯「お風呂、随分広いな……」

 

五人一斉に入れるのではないかというくらいには広い…。流石お金持ち…。

 

ちなみにお母さんには連絡済みだ。頑張れってエールを送られたけど、恐らく家庭教師とはまた別のことを指しているんだろうけど気にしないでおく…。

 

「孫君、五月です」

 

へっ?五月さん?

 

「ちょっと相談したいことがありまして……」

 

悟飯「どうしたの?」

 

「実は、上杉君とまた言い合いになってしまいまして…。彼に教えてもらうのは気が引けてしまって………」

 

やっぱり五月さんは本当は授業を受けたいらしい…。

 

「しかし、彼の様子がどうもおかしかったのです。何か知りませんか…?」

 

……五月さんになら話しても問題はないかな…?

 

悟飯「実は、今度の中間テストで五人の誰かが1つでも赤点を取ったらクビにされちゃうんだよ。それを知って上杉君は焦ってるんだと思う…」

 

「……へぇ」

 

ガチャ

 

へっ?ガチャって……。えっ!?

 

悟飯「な、何で入ってきてるの!?」

 

「前に私の裸を見てるんだからこれでおあいこでしょ。にしても……」

 

……しまった。姉妹の気が酷似していること。中間テストで赤点を回避させないとクビになること。五月さんと上杉君を仲直りさせること。

 

これらで悩んでいたせいか、気を確認するのを忘れてた……。

 

二乃「赤点取ればクビね〜…。いいこと聞いちゃった…」

 

ま、まずい…!!

 

ガチャ

 

悟天「兄ちゃーん!お弁当持ってきてあげた………よ…………」

 

悟天!?なんでここに!?

 

悟天「……」スッ

 

あれ?悟天は無言で携帯を取り出して…。

 

パシャ

 

二乃「はっ?あんた何撮ってんのよ?」

 

悟天「こういう時はどう言えばいいんだっけ…?痴漢?違うな…。あっ!思い出した!痴女だ!!」

 

な、なんでそんな言葉を知ってるのかなぁ…??

 

二乃「な、何言ってんのよ!?」

 

悟天「だっておかしいじゃん。兄ちゃんが風呂に入ってるのにどうして二乃さんが突入してるの?」

 

二乃「あんただって誰が入ってるか分からないのに入ってきてるじゃないの!?」

 

悟天「僕は一花さんから今は兄ちゃんが入ってるって聞いたもん」

 

悟天を入れたのは一花さんだったのか…。

 

悟天「みんなに教えちゃお〜」

 

二乃「ちょ、待ちなさい!!今すぐに消しなさい!!」バッ‼︎

 

二乃さんは悟天を捕まえようとするが…。

 

悟天「よっと…」スッ

 

ドテッ!

 

二乃「いたッ!」

 

悟天は難なく避けた。

 

悟天「バラされたくなかったら一生懸命勉強してね〜」

 

二乃「はぁ!?なんで私がそんなことをしなきゃ…!!」

 

悟天「じゃあお母さんに言いつけちゃお。僕のお母さん、昔は天下一武道会の予選を突破したくらいの実力があったらしいよ?今も殆ど腕は衰えてないって」

 

二乃「……な、何が言いたいのよ?」

 

悟天「お母さんってね、ちょっと過保護気味だと思うんだ。だからもし兄ちゃんのお風呂を覗かれたってお母さんに言ったら……」

 

二乃「………」

 

あ、あれ?なんか二乃さんの顔が青くなってるような…?

 

悟天「大丈夫だよ。ちゃんと一生懸命に勉強してくれれば僕は何もしないから」ニコッ

 

……悟天ってこんなにずる賢かったっけ?

 

二乃「………し、仕方ないわね〜!勉強してあげるわよ!感謝しなさい!」

 

悟天「えー?先生にその言葉使いはどうなの?お母さんはちゃんとした言葉遣いで話しなさいって言ってたけど…」

 

二乃「……教えてください。お願いします……」

 

悟飯「えっ?あ、うん……」

 

もう二乃さんが泣きそうだからやめてあげろよ、悟天…。

 

(ニシシ…。兄ちゃんが家庭教師続けてくれないと、新しいおもちゃが増えないから、続けてくれないと困るしね)

 

あくまでも自分の為だったりする。にしてもこの次男、できる男である。

 

 

 

ちなみに、悟天にどうしてそんな方法を思いついたのか聞いたところ…。

 

「最近、お昼にお母さんが見てるコメディドラマを参考にしてみたんだ」

 

変に知識があるのはそういうことか…。

 

 

 

一花「三玖、せっかく悟飯君が来てるんだから、積極的になりなよ〜」

 

三玖「な、なんのことだか分からない…!」

 

四葉「あっ、帰ってきた!お帰りなさーい!」

 

悟飯「あれ?悟天は?」

 

四葉「悟天君なら帰りましたよ?」

 

二乃「………」

 

 

『兄ちゃん。もしも二乃さんがワザと赤点を取ろうとしていたら、僕に遠慮なく言ってね?』

 

 

って言ってたけど、流石に可哀想じゃないか…?悟天の将来が心配だ…。

 

風太郎「なあ悟飯」

 

悟飯「うん…?」

 

 

「さっきから二乃が真面目に勉強してるんだが、お前何をしたんだ!?」

 

「えっ?僕は何もしてないよ…?『僕は』…。あはは…………」

 

「そ、そうか…?まあいい方向に転がっているのは確かだし何でもいいか!」

 

 

風太郎「よし、それじゃあ悟飯も戻ってきたことだし、本格的にテスト対策を再開するとするか!」

 

 

一花「はーい、詰めて詰めて〜」

 

悟飯「おっと…!?」

 

突然一花さんが押してくるものだから三玖さんが驚いちゃってるよ…。

 

一花「三玖が分からないところがあるから教えてほしいって!」

 

悟飯「どこが分からないの?」

 

四葉「上杉さーん!討論って英語でなんて言うんですか?」

 

風太郎「いい質問だ!debate‼︎ これは確実に今回の試験で出てくるぞ!「でばて」と覚えるんだ!」

 

三玖「教えてほしいこと……。好きな女の子のタイプは?」

 

悟飯「…………へっ?」

 

一花「あっ、それ私も知りたいな〜。フータロー君のタイプが特に」

 

風太郎「なんでだよ!?」

 

一花「だってフータロー君ってばこの前拗らせてたじゃん。そんな人がどんな人がお好みなのか気になるじゃん?」

 

四葉「私も知りたいです!!」

 

風太郎「……しょうがないな…。いいだろう!答えてやろう!!好きな女子のタイプトップ3をな!ただし、ノートを1ページ埋めるごとに1つずつ発表するぞ!」

 

悟飯「………それ、僕も発表するの…?」

 

三玖「当然。じゃないとフータローが可哀想」

 

風太郎「別に俺は構わないが…。お前もだ!(そうすればその分コイツらが勉強するしな!)」

 

悟飯「えぇ……」

 

僕の好きな子のタイプ…。

全然考えたことがなかったな…。

 

そして突然文字を書くペースが急上昇した3人…。二乃さんだけは前から変わってないけど…。

 

というか、さっきから顔が真っ青で、さっきの話しも聞いてるからどうか怪しい…。

 

四葉「終わりましたー!」

 

風太郎「なに!?四葉が一番乗りたと!?」

 

四葉「なんか馬鹿にされてる気がします!!」

 

風太郎「まあいい。じゃあ第3位は………デン!!」

 

 

「いつも元気!!!!」

 

 

一花「私も終わったよ〜」

 

風太郎「じゃあ第二位は……デン!!」

 

 

「料理上手!!」

 

 

…………あれ?この流れでいくと……。

 

三玖「終わった」

 

風太郎「よし!じゃあ第一位は……デン!!」

 

 

「お兄ちゃん想い!!」

 

 

二乃「それあんたの妹じゃないのッ!?!?」

 

風太郎「えっ?」

 

ちゃんと話を聞いてたんだ…。

 

四葉「それはずるいですよ上杉さん!!」

 

三玖「……フータローは面白くなかった。次は悟飯」

 

悟飯「へっ?」

 

一花「そういえばまだ1つも聞いてないもんね〜…」

 

四葉「孫さんのタイプですかぁ…。興味あります!!」

 

悟飯「えっ、えぇ……」

 

二乃「はい、埋めたわよ。1つ目教えなさいよ」

 

悟飯「えっ?もう!?」

 

二乃「さっきの腹いせよ」

 

いや、僕じゃなくて悟天のせいじゃ…。

 

悟飯「え、えーっと……」

 

僕のタイプ…?好きな人のタイプかぁ…。

思いつかないかも…?逆に嫌なタイプを考えてみよう…?うーん…………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『見てください!綺麗な花火ですよー!オーッホッホッホ!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…………まずはこれかな…?

 

 

悟飯「無闇に惑星を壊さない人かな…」

 

四葉「普通は壊せませんからッ!?」

 

風太郎「お前……それはズルいぞ…」

 

一花「フータロー君よりもズルいかなぁ…」

 

三玖「悟飯、真面目にやって」

 

二乃「あんた、勉強はできるみたいだけど馬鹿なんじゃないの?」

 

いや、僕は真面目に答えてるんだけど…。何でこんなに怒られなきゃいけないの…?

 

三玖「埋まった。次からは真面目にやってね」

 

悟飯「う、うん……」

 

流石に惑星規模はやり過ぎたかぁ…。考えろ…!考えるんだ…!!

 

………あっ!!そうだ!!!

 

悟飯「人を殺すのが好きじゃない人、かな…?」

 

四葉「どんな人生送ってきたんですか一体ッ!?!?」

 

どんな人生って……。5歳くらいにピッコロさんのところで地獄に行くよりもキツい修行をして……。サイヤ人に殺されかけて……。フリーザ軍に殺されかけて……。お父さんを亡くしてまでセルを倒して…………。

 

……思い返すと、僕って相当壮絶な人生を送ってきたんじゃ……??

 

風太郎「殺し屋でもやってたのか…?」

 

一花「いやぁ…。さっきと対して変わらないと思うんだけど………」

 

三玖「悟飯、次真面目にやらなかったら切腹」

 

悟飯「ええ!?!?」

 

二乃「……言い方を変えれば、命を大切にできる人が好きってことね…」

 

四葉「あーっ!なるほど!!」

 

風太郎「ものは言い様だな……」

 

確かにそうとも言うかな…。16号さんとも約束したしね…。地球の自然を守るって…。

 

三玖「終わった」

 

一花「えっ?三玖早くない!?」

 

悟飯「えーっと………」

 

………………本当にどう答えればいいのか分からないな…。

 

……そうだな…。強いて言うなら…。やはりこれだろうか…?

 

悟飯「…どんな僕でも受け入れてくれる人かな……?」

 

四葉「いきなり真面目回答になったッ!?!?」

 

一花「いいこと言うじゃん」

 

三玖「……私なら大丈夫だよ。どんな悟飯でも拒絶しない」

 

風太郎「え"っ!?(それって最早告白じゃねッ!?)」

 

二乃「はっ?(それって最早告白じゃないッ!?)」

 

一花「わぁ…!三玖ってば、確かに積極的になりなよとは言ったけど…。まさかいきなり出るとは……」

 

四葉「ええええッッ!?!?(三玖が告白?してるッ!?!?)」

 

三玖「い、今のなしッ!!///」

 

悟飯「……?そう…??」

 

悟飯のこの反応を受けて、三玖を除く一同が感じたことは……。

 

((((この人鈍感だわ……))))

 

三玖の苦悩(?)は恐らくまだ続く…。

 

 

 

一花「あっ!三玖、もう課題終わらせたんだ…。悟飯君。頑張った人は褒めてあげないと…ね?三玖?」

 

三玖「えっ?う、うん…」

 

悟飯「もう終わったんだね。最初の頃よりも随分手際がよくなったね」

 

一花「違う違う。そういうことじゃなくて……」

 

突然一花さんが僕の手を持って三玖さんの頭に乗せた……。えっ?

 

一花「はい、頑張りました!よしよし…」

 

三玖「……///」

 

一花「どう悟飯君?ドキドキしない?」

 

悟飯「…………」

 

ドキドキって……。

 

悟飯「いや、これは一花さんがやるべきだと思うんだけど?」

 

一花「えっ?なんで?」

 

悟飯「だって一花さんは長女なわけでしょ?ならこういうことは一花さんがやるべきだと思うんだけど……」

 

一花「いや……そうじゃなくて…」

 

風太郎「分かるぞ。俺もらいはを褒める時はよく頭を撫でてやるからな!」

 

四葉「あー!私も昔よく撫でてもらいましたよ!」

 

一花「……」ゲシッ

 

風太郎「イテッ!?俺なんか怒らせたッ!?つか俺だけ!?」

 

なんで一花さんは上杉君を蹴るの…。

 

 

「……三玖、あんたこんな鈍ちんのどこがいいわけ…?」

 

「二乃には一生分からない…」

 

「分からなくていいわ」

 

 

「全く、騒がしいですよ?勉強会とはもう少し静かなものだと思っていましたが………」

 

五月さんが降りてきたのか…。ここはチャンスだ。上杉くん!今だよ!

 

風太郎「…えっと…………」

 

な、なんで何も言わないの!?

 

悟飯「五月さんも一緒に勉強しない?一人でやるよりは効率がいいはずだよ!」

 

五月「……結構です。三玖、ヘッドホンを貸してください」

 

三玖「いいけど、なんで?」

 

五月「一人で集中したいので……」

 

まずいなぁ…。何があったのかは知らないけど、相当怒ってる?みたいだ…。

 

風太郎「……お前のこと、信頼してもいいんだな?」

 

五月「……足手纏いにはなりたくありません……」

 

風太郎「あっ!待てよ五月!!」

 

しかし、上杉君の呼び止めには応じずに自分の部屋に戻ってしまった…。

 

一花「フータロー君、見て。星が綺麗だよ?ちょっと休憩しようよ」

 

風太郎「はっ?一花、また突飛なことを……まあいい。お前らも休んで……」

 

四葉「家綱、綱吉、家綱」

 

三玖「違う、二人いる」

 

四葉「家綱吉、家宣」

 

三玖「合体してる……」

 

…一花さんは休憩だし、四葉さんと三玖さんは二人で集中してるから…。

 

悟飯「二乃さん、調子はどう?」

 

二乃「……」

 

悟飯「二乃さん…?」

 

二乃「お、お願いだから……、言いつけないでよ…?」

 

あ〜……。悟天の脅しが相当応えてるみたいだな………。

 

悟飯「何か勘違いしてるみたいだけど、僕はわざわざ言いつけたりなんてしないよ…。あれは悟天が勝手に言ってることだから………」

 

二乃「ほ、ホントに…?」

 

悟飯「うん……。お母さんに言ったりしたら、それこそどうなるか分からないから……」

 

二乃「………」サーッ

 

うわっ!?さらに顔が真っ青に!?僕何かまずい事言ったッ!?

 

悟飯「だ、大丈夫!!絶対に言わないから!!安心して!ねっ!!」

 

二乃「……う、うん…」

 

な、なんか少し元気がないだけでまるで別人だな……。

 

二乃「……ここ、分からないから教えなさいよ」

 

悟飯「へっ?う、うん…」

 

いつもの様子に戻ったかな…?まあ変にプレッシャーを感じられても困るしね…。勉強してくれるのはいいけど、プレッシャーのせいで本番に力を出しきれないこともあるから……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんであんたはそんなに優しいのよ…」

 

 

悟飯「…ん?何か言った?」

 

二乃「別に。それより早くここを教えなさいよ」

 

悟飯「あっ、ごめん。ここはね………」

 

…まあ、勉強を始めてくれたきっかけはともかく、これを機に僕達に少しでも心を開いてくれるといいな……。

 

 

 

ちなみにこの後、上杉くんが戻ってきてしばらくすると、一花さんが少し暑そうにして戻ってきた。

 

今日ってどちらかというと寒い日だった気がするんだけど、ひょっとして、一花さんは暑がりなのかな…?

 

 

 

ちなみにその日の夜…。

 

四葉「お客さんをリビングに寝かせるわけには行きません!!上杉さんは私のベットで寝てください!!」

 

三玖「悟飯は私のベット使っていいから…」

 

二乃「ちょっと、あんたらはどこで寝るのよ?」

 

三玖「私は一花のところ」

 

四葉「じゃあ私は二乃のところで!」

 

二乃「いやよ。あんた寝相悪いし」

 

四葉「ええ!?じゃあ五月のところに寝かせてもらいます!」

 

……ということで、三玖さんの部屋で寝かせてもらうことになった。

 

今日はハプニングはあったものの、今まで参加してくれなかった二乃さんも勉強を始めてくれたから、大きな進歩と言えるだろう。ただきっかけがちょっと………。

 

あとは、五月さんと上杉君の仲直り。これを明日までにはなんとかして解決させたいところだ…。もうすぐ中間試験があるわけだし…。

 

 

 

そのまま悟飯は眠りについた。

 




えっ?何が起きたんだ?昨日の朝はお気に入り70件ぐらいだったのに、投稿前に確認したら115件とかになってるんだけど…?マジで何があった(絶賛混乱中)
何がともあれありがとうございます!

ちなみに第二回アンケートのことについてですが、通常形式を希望される方が多い反面、台本形式を希望される方も一定数いそうです。
確かに、この作品には台本形式タグをつけてあります。ですので、台本形式でもいい人か、台本形式がいい人しか残ってないでしょう。
ですので、当作品は現状の台本形式のまま続行します。ですが、リメイク版として、新たに通常形式版をハーメルンにて投稿しようかと考えております。ストーリーは変わりません。地の文の描写が少し豊富になる程度だと思います。
ですので、通常形式版を希望される方にはお手数ですが、通常形式版ができ次第、URLと共にお知らせ致しますので、そちらで閲覧してください。

こんな感じですが、これからもよろしくお願いします。

追記…。
台本形式版ではない通常形式版をご希望の方はこちらから閲覧してください。
https://syosetu.org/novel/276163


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第9話 波乱の予感…

⚠︎注意⚠︎

『クロスオーバーが苦手な人』
『台本形式が苦手な人』
『細かいことが少しでも気になる人』
『原作のカップリングが崩されるのが嫌な人(特に飯ビー)』
上記に当てはまる方はブラウザバックを『強く』推奨します。

通常公開、クロスオーバー、原作ヒロインという時点である程度の批判は覚悟しているつもりですが、注意書きを読まないで批判するのはダメですよ。説明書を読まずに操作方法が分からんって文句を言ってるようなものですよ。

注意書きの内容は話ごとに変わる可能性もあります。ご了承下さい。



台本形式ではない通常形式版をご希望の方はこちらから閲覧してください。
https://syosetu.org/novel/276163


……うーん…。あれ?もう朝か…。今日も悟飯が勉強を見てくれるから、そろそろ起きないと……。

 

「………」パチッ

 

あ、あれ?なんで悟飯が同じベットに…?

……夢、かな…?

 

悟飯「………zzz」

 

そういえば、フータローが寝ているところは何度か見たことがあるけど、悟飯が寝ているところは初めて見たかも…。って夢だから見たカウントに入らないか……。

 

悟飯の寝顔、かわいいな…。

 

悟飯「ふぁぁ……あれ?」

 

……?どうしたのかな?

 

悟飯「な、なんで三玖さんが!?あれ?そもそもここは……、あっ、そうか…。泊まったんだっけ…?」

 

………まさか、夢じゃ……ない!?!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

朝起きて混乱してしまった。

 

いつもの光景じゃなかったからというものもあるが、問題はそこじゃない。

 

何故か三玖さんが隣で寝ていたことだ。

おかしい…。確か三玖さんは一花さんの部屋で寝ることになっていたはず…。

 

三玖「……!!」バッ‼︎

 

悟飯「あっ………」

 

三玖「お、おはよ……///」

 

悟飯「あっ、うん……。おはよう……」

 

って、何で僕は普通に挨拶をしてるんだろう…。

 

三玖「…ね、寝ぼけてここに来ちゃったみたい……」

 

悟飯「あっ!そ、そうなんだ!あはは………」

 

き、気まずい…。非常に気まずい……。

 

コンコン

 

へっ!?こんな時に誰だ!?

三玖さんは……。うん隠れたな。

 

ガチャ

悟飯「…あれ?二乃さん?どうしたの?」

 

二乃「あんた、三玖知らない?」

 

悟飯「み、三玖さん?僕は知らないけど……」

 

二乃「そう……。ホントどこに行ったのかしら…。あっ、そうそう。朝食できてるから、冷めないうちに降りてきなさい」

 

悟飯「……へっ?」

 

てっきり二乃さんは僕の分は作ってこないものだと思っていたんだけど…。少しは心を開いてくれたってことかな…?

 

 

 

 

悟飯「こ、これは…」

 

オムレツにケチャップがかけられ、レタスとウインナーが載った朝食がそこにはあった。なんか、お洒落な朝食だな…。

 

一花「あれ?悟飯君の分も作ってるなんて意外。どうしたの二乃?」

 

二乃「ちょっと多めに作りすぎちゃったのよ」

 

一花「ふーん?」

 

二乃「な、なによ?ニヤニヤして…」

 

一花「フータロー君には作ってあげてないのに悟飯君にはねぇ…?そういえば、昨日から勉強に参加するようになったけど、何かあったの?」

 

二乃「………」

 

ま、またしても顔が青く…。

 

一花「ほ、ホントに何があったの…?」

 

悟飯「二乃さん…。だからアレは悟天が勝手に言ってることで……」

 

二乃「そ、そうだったわね…」

 

一花「なになに?何の話?」

 

悟飯「そういえば、四葉さんと五月さんは?」

 

一花「露骨に話を逸らしたなぁ…。四葉は三玖を探しに走り回ってるよ。五月ちゃんなら、ほら」

 

悟飯「ん?」

 

 

 

風太郎「違う。ここはこう書くんだ」

 

五月「な、なるほど…」

 

 

 

悟飯「あれ?いつの間に仲直りを…?」

 

一花「お姉さんが一言アドバイスをしてあげたら上手く行ったよ」

 

悟飯「そうなんだ。ありがとう」

 

一花「お姉さんとしての役目を果たしただけだよ」

 

良かった…。あとは中間テストに臨むだけだ…。

 

悟飯「じゃあ、今日は図書館に行って勉強しようか。もしかしたら三玖さんはそっちに行ってるかもしれないし」

 

一花「それもそうだね。そうしますか」

 

二乃さんの朝食はおいしかったな…。前から思ってたけど、料理が本当に上手なんだな………。お母さんと普通に勝負できそうなレベルだ。

 

ちなみにその後はまた別にお弁当も食べた。

 

 

 

その日も順序に勉強ができた。みんな勉強尽くしで疲れてしまったのか、リビングで寝始めてしまった。

 

まさか2日連続で泊まり込みで勉強することになるとは思わなかった……。

 

悟飯「……よいしょ」

 

このままじゃ風邪をひきそうなので、みんなに毛布をかけた。

 

悟飯「……って、僕も眠くなってきちゃった…」

 

こんな遅くまで起きていたのはいつぶりだろうか…。とにかく明日に備えて寝ないと…。おやすみ………。

 

 

 

 

 

 

悟飯「………ん?朝か……」

 

よく眠れた気がする。流石にベットで寝た方がいいけどね…。

 

あれ?みんなまだ寝てる。ひょっとして、まだ早い時間だったかな?朝の7時半か…。

 

悟飯「み、みんな〜、起きて〜!」

 

1人ずつ揺すってみた。しかし誰一人として起きる気配がない…。

 

悟飯「しょ、しょうがないなぁ…」

 

先に朝ご飯を食べることにする。昨日も悟天が弁当を届けてくれたのだ。

 

 

 

全て食べ終わり、8:00になった。だがまだ誰一人として起きる気配がない…。

 

悟飯「ちょっと!そろそろ起きないとまずいんじゃないの!?」

 

シーン…。

 

悟飯「ど、どうしよう……」

 

何か大きな音を鳴らせるものがないだろうか…?目覚まし時計か何かを…。

 

悟飯「あっ!」

 

よし、あの方法で行こう…。

 

悟飯「………」スッ

 

気を集中させて……。手に集中して…。

 

悟飯「だぁ!!」

 

パンッッッッッッ!!!!!!!!

 

四葉「どわぁあああああ!!??」

風太郎「な、なんだ!?爆発か!?」

二乃「び、ビックリしたぁ…」

三玖「な、何の音…?!」

五月「あわッッ!?!?」

 

一花「うーん…?おはよう……」

 

一花さんだけ普通に起きてきてる…。

 

風太郎「ってなんだよ悟飯…。驚かせるなよ……」

 

悟飯「いやいや、時間みてよ!」

 

風太郎「時間…?時間……………」

 

五月「なんで起こしてくれなかったんですかぁ!?!?」

 

悟飯「みんなが起きなかったんでしょ!?!?」

 

その後はドタバタ大騒ぎ。遅刻で試験が受けられないなんてたまったものではない。他のみんなは朝ご飯を抜きにしてでも学校へ向かうことになった…。

 

 

四葉「みんなー!遅いよー!上杉さん!先に行きますね〜!」

 

悟飯「僕も!」

 

 

風太郎「あいつら速え!?つかお前ら車で通学してたんじゃなかったのかよ!?」

 

一花「江端さんはお父さんの秘書だから……」

 

 

 

四葉「おお!孫さんって足速いんですね!」

 

悟飯「四葉さんも中々速いと思うよ」

 

本当は本気を出せば今すぐにでも学校に到着できるが…。そんなことをしたら大騒ぎになりかねないのでやらない。

 

四葉「どうせなら私と競争しましょう!先に着いた方が勝ちです!」

 

悟飯「いいよ!」

 

こうして流れで競争することになった…。その間、問題の復習も平行して行ったけど、これの効率が良かった。まあ四葉さんの回答は全部微妙に違かったんだけど…。

 

 

 

四葉「あー!?負けました!!」

 

悟飯「あはは…。取り敢えず僕たちは先に教室に行こうか」

 

四葉「そうですね!」

 

ちなみにその後すぐにメールが来た。どうやら四葉さんにはそのまま校舎内にいてほしいとのことだ。

 

しばらくすると、リボンをつけた三玖さん、二乃さん、一花さん、五月さんが入ってきた。

 

……なるほど。その手があったか。

 

上杉くんは失敗した。それは五人と顔違うからね…。でも、ちゃんと試験には参加できてたから良し……かな?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

中間テストはなんとか終了した。テストが返却され、みんなの点数が判明するのだが……。

 

 

風太郎「よお、集まってもらって悪いな」

 

今日は5人ともしっかり集まっている。

 

一花「どうしたの?改まっちゃって?」

 

四葉「水臭いですよ!」

 

三玖「中間試験の報告…。間違えたところ、また教えてね?」

 

風太郎「ああ。まずはともかく、答案用紙を見せてくれ」

 

五月「見せたくありません。テストの点数なんて他人に教えるものではありません。個人情報です。断固拒否します!」

 

一花「…五月ちゃん…?」

 

風太郎「……ありがとな。だが覚悟はしている。教えてくれ…」

 

ひょっとして、五月さんは今回のノルマを知っているんじゃ…?

 

5人のテストの結果を見てみた。

 

四葉さんは、山勘が当たった34点の国語以外は赤点……。

 

三玖さんは、72点の社会以外は赤点…。

 

一花さんは、43点の数学以外は赤点…。

 

二乃さんは、54点の英語以外赤点…。

 

五月さんは、62点の理科以外赤点…。

 

なんというか、五人合わせて100点を取ったあの日を思い出される結果だな…。

 

しかし、この結果で確定してしまったことがある。それは僕たちが解雇されてしまうということ。

 

僕は経済的にはまだいいけど、上杉くんは……。

 

風太郎「ったく…。短期間とはいえあれだけ勉強したのにたった30点も取れないとは……。お前達の頭の悪さがよーく分かった……」

 

二乃「うるさいわね。まあ合格した科目が全員違うって私達らしいけどね」

 

四葉「あっ、そうかも」

 

三玖「それに五人合わせて100点の時よりも確実に成長してる…」

 

確実に成長しているのは確かだ。

 

風太郎「三玖、今回の難易度で72点は大したものだな。まあ偏りはあるけどな。今後は姉妹に教えられる箇所は自信を持って教えてやってくれ」

 

三玖「えっ?」

 

風太郎「四葉、イージーミスが目立つぞ。勿体ない。焦らず慎重にな」

 

四葉「了解です!」

 

風太郎「一花、お前は一つの問題に拘らなさすぎだ。最後まで諦めんなよ」

 

一花「はーい」

 

風太郎「二乃。最後の最後は言うことを聞いてくれたが、それまでは本当に何も聞いてくれなかったな。きっと他のバイトで今までのように来れなくなる。俺が、俺達がいなくても油断するなよ?」

 

二乃「ふん……」

 

三玖「えっ?フータロー?他のバイトって、来られないってどういうこと…?私は…」

 

五月「三玖、今は聞きましょう」

 

三玖「五月…」

 

風太郎「そして五月。お前は本当に馬鹿不器用だな!!」

 

五月「なっ!?」

 

風太郎「一問に時間をかけすぎて最後まで解けてないじゃねえか!!」

 

五月「反省点ではあります…」

 

風太郎「自覚してるならいい。次から気をつけろよ」

 

五月「はい。でもあなたは……」

 

話の途中で五月さんの携帯に着信が入った。恐らく……。

 

五月「お父さんです…」

 

上杉くんは覚悟を決めたようにして携帯を受け取った。

 

風太郎「どうも、上杉です」

 

『ああ、五月くんと一緒にいたのか。個々に聞いていこうかと思ったが、君の口から結果を聞こうか。嘘は分かるからね』

 

風太郎「つきませんよ。ただ…、次からコイツらにはもっといい家庭教師をつけてやって下さい」

 

『……ということは?』

 

パシッ

 

風太郎「えっ?」

 

突然二乃さんが通話中の上杉くんから携帯電話を取り上げた。

 

二乃「パパ?二乃だけど、1つ聞いていい?どうしてこんな条件を出したの?」

 

『僕にも娘を預ける親としての責任がある。高校生の上杉君と孫君がそれに見合うか計らせてもらっただけだよ。彼らが君達に相応しいかどうか…』

 

二乃「私たちのためってことね。ありがとうパパ。でも、相応しいかなんて数字だけじゃ分からないわ」

 

『それが1番の判断基準だ』

 

二乃「あっそ。じゃあ教えてあげる」

 

「私達五人で五科目全ての赤点を回避したわ」

 

…………ひょっとして…?

 

悟飯「も、もしかして、五人合わせて100点の時と同じ理屈…?」

 

二乃「話が早いわね。そういうことよ」

 

風太郎「そんなのありかよ…」

 

二乃「結果的にパパを騙すことになった。多分二度と通用しない…。次は実現させなさい?」

 

風太郎「……やってやるよ」

 

まさか二乃さんが庇ってくれるとは思わなかった…。

 

一花「ちょっと、何の話ー?」

 

四葉「私、いつの間にか五科目合格したんですか!?」

 

五月「三玖、安心してください。彼らとはもう少し長い付き合いになりそうですよ…」

 

三玖「………うん」

 

取り敢えずこれでなんとかなったみたいだ…。次こそはちゃんと赤点を回避させなければ……。

 

四葉「よし、じゃあこのまま復習しちゃいましょうよ!」

 

二乃「えっ?普通に嫌なんだけど」

 

一花「こーら、逃げないの」

 

風太郎「そうだな。試験が返却された後の勉強が1番大切だ。だが、直後じゃなくてもいいな…」

 

あれ?上杉くんがそんなことを言うのは珍しいな…。

 

風太郎「ご褒美……。だっけか?パフェとか言ってただろ?」

 

「「「「「………」」」」」

 

五月「プッ…」

 

「「「「「あはははははっ!!!!」」」」」

 

風太郎「な、何故笑う!?」

 

一花「フータロー君がパフェって!!」

 

二乃「超絶似合わないわ」

 

五月「では、私は特盛で!」

 

風太郎「そ、そんなのあるの…?」

 

こうして、中間試験はノルマを達成できなかったものの、二乃さんの機転によって、無事家庭教師を続けられることになった。

次の期末試験…。今度こそ赤点を回避できるように頑張ろう…!

 

五月「ちなみにあなた方は何点だったんですか?」

 

風太郎「あー!?見るなー!!」

 

五月「100点っ!?」

 

風太郎「あーっ!めっちゃ恥ずかしいわ!!」

 

五月「その流れ気に入ってるんですか…?」

 

三玖「悟飯は?」

 

悟飯「えっ?ぼく?」

 

勿論、全ての教科で満点を取ったけど、別にそれは自慢する為ではないから言いふらすとかそういうことはしないけど………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……………一方で、地球から程遠いとある場所にて……。

 

「チッ!まずいぜ!アイツらに見つかっちまったせい!!」

 

「どうすんだよ…!俺達まだそんなに強くねえぞ!?」

 

「どうするんだよ、『ターレス』」

 

かつてフリーザによって滅ぼされたサイヤ人。その中には運良く生き残った者がいた。そのうちの1人が『ターレス』。

 

悟空によく似た容姿を持つが、性格は冷酷で残忍。宇宙を征服しようという野望を持っている。

 

そんなターレスは、宇宙のならず者達を寄せ集め、ターレス軍団を結成。

 

ターレスもまた、フリーザ軍に属していた者だが、フリーザの死をきっかけにフリーザ軍を抜けた。

 

しかし、彼は危機に陥っていた。

 

ターレス「……まさかフリーザの兄貴に出くわしちまうとはな…。本当はぶっ潰してやりてえが、状況が最悪だ。おいレズン!ワープ機能を使え!」

 

レズン「行き先はどうするんだ?」

 

そう答えたのは、未知の科学技術を持つとされている、ビーンズ人の『レズン』。ターレスの宇宙船を開発したのがレズンだ。

 

ターレス「ナメック星人のいる場所だ。奴らの新たな居場所を割り出せたぜ」

 

「おいおい、ナメック星に行ってどうするつもりだ?」

 

そうターレスに聞いたのは、ニヒルで冷酷そうな顔をしたターレス軍団の一員である、『ダイーズ』だ。

 

「そうでっせい。ナメック星人になんか会っても何もメリットがないでっせい」

 

ダイーズに続けてターレスに語るのは、語尾が特徴的な『アモンド』。

ターレス軍団のパワー型の戦士である。

 

ターレス「なーに。ちょっと『ドラゴンボール』に用があってな」

 

レズン「あの何でも願いが叶うっていうあれか?」

 

ターレス「正確には、何でも叶うわけじゃないらしい。創造者の力を遥かに超える願いは叶えられないらしい」

 

ダイーズ「それを使ってどうする気だ?」

 

ターレス「少数精鋭ってのもいいが、人数は多いに越したことはないだろ?」

 

アモンド「誰か生き返らせるんでっせか?」

 

ターレス「そういうことだ…」

 

ダイーズ「普通に大量にある神聖樹の実を食べてクウラ軍を殲滅するんじゃダメなのか?」

 

ターレス「今から全部食べるには時間がかかるだろうが。それに、征服したところで手下がいなかったら面白くもなんともないだろ?」

 

「ンダ」

 

そう答えたのは、ターレス軍団のサイボーグ戦士、『カカオ』だ。彼は『ンダ』としか言えない。

 

ダイーズ「なるほどな…。確かにその通りだ」

 

レズン「よし、それじゃあ新星ナメック星に向かうぞ!」

 

 

シュン‼︎

 

 

 

 

 

クウラ「なに?逃げられただと?」

 

「申し訳ございません。クウラ様…」

 

フリーザの兄であるクウラに謝罪しているのは、クウラ機甲戦隊のリーダー、『サウザー』である。小柄であるが、決して馬鹿にできない戦闘力を持つ。

 

クウラ「確か、相手には未知の技術を隠し持っているとされるビーンズ人もいたはずだ。そいつが作ったシステムによって逃げられたのだろう…」

 

サウザー「どうしますか?追跡しますか?」

 

クウラ「……今はいい。征服活動を再開しろ」

 

サウザー「はっ!!」

 

そう言って、クウラのいる部屋からサウザーは退出した。

 

クウラ「……次見つけた時は逃がさんぞ…!猿どもめ…!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

四葉「………なにこれ?」

 

三玖「コロッケ」

 

四葉「石じゃなくて?」

 

僕と上杉くんは今、家庭教師をするために中野家にお邪魔している。だけど……。

 

三玖「味は自信ある。食べてみて」

 

四葉「う、うん……」

 

三玖「ほら、悟飯とフータローも」

 

風太郎「お、おう…」

 

悟飯「分かった」

 

三玖さんのコロッケ(?)を食べてみた。

 

…………………正直に言うと微妙…。

 

風太郎「うん。普通に美味い」

四葉「あまりおいしくない!」

 

風太郎「なんだ四葉?グルメだな?」

 

四葉「上杉さんが味音痴なだけですよ!!」

 

三玖「……悟飯、どう…?」

 

悟飯「………今後に期待かな…」

 

せめてもの配慮だ…。

 

風太郎「じゃあそれでもいいよ。そしたら試験の復習を……」

 

三玖「完璧に美味しくなるまで作るから、食べて…!」

 

あ、あれ?僕何か余計なことをしちゃったかな…?

 

 

 

 

 

 

……一体何個食べたのだろうか…。

 

少しずつ、少しずつではあるが、味が改善されていった。

だけど、食べ過ぎたのか上杉くんがお腹を壊してしまったようだ…。

 

悟飯「だ、大丈夫だよ…。今三玖さんが薬を買いに行ってるから…」

 

風太郎「せ、せっかくの家庭教師の日だったのに……、不覚…。倒れるまで食べさせられるとは思ってなかったぞ…」

 

四葉「私も満腹です!孫さんはどうなんですか?」

 

悟飯「僕はまだまだいけるよ?」

 

四葉「一回孫さんの胃を解剖してみたいですね……」

 

悟飯「怖いこと言わないで……」

 

風太郎「こうなったのも四葉のせいだぞ!俺は本当に美味いと思ったが嘘も方便だろ!」

 

四葉「私の嘘なんてすぐに勘づかれちゃいます!」

 

風太郎「好きな味とでも言えば誤魔化せただろ」

 

四葉「確かに!!」

 

風太郎「あとてめえもだぞ悟飯!今後に期待なんて言うもんだから、三玖が張り切っちまったんじゃないか!」

 

悟飯「あはは…。それについては反省している……」

 

二乃「あれー?人の家で昼寝?薬でも盛られたのかしら?」

 

突然現れた二乃さんが、寝ている上杉くんを見てそう言い放つ。

 

悟飯「……それは二乃さ…」

 

二乃「な に か ?」

 

悟飯「……いや、何も」

 

風太郎「二乃…。五月…。今日は皮肉なことに薬がほしいくらいだ………」

 

二乃「ふーん?どうでもいいけど」

 

少しは心配しようよ二乃さん…。これが姉妹のうちの誰かになると打って変わるんだろうなぁ…。

 

二乃「行くわよ五月。ランチ終わっちゃうわ」

 

五月「えっ?ええ……」

 

風太郎「待て…!2人にもなんとしても勉強させたい…!次の試験まで一日も無駄にしたくないんだ…!!取り敢えず引き止めてくれ…!!」

 

四葉「ええ!?どうしましょう!?」

 

風太郎「嘘でもなんでもつけばいいんだよ!!」

 

四葉「!わかりました!」

 

いや、それはどうなんだろうか…?

 

四葉「2人とも待って!見ての通り上杉さんが重い病に侵されたんだよ!看病してあげて!」

 

「「えっ?」」

 

四葉さんは『これでどうですか!?』と言わんばかりの顔を向けるが、その嘘はすぐにバレると思うけどなぁ……。それに四葉さんから凄い冷や汗が…。

 

しかも、そんな言い方をしたら…。

 

四葉「そ、それはダメだよ!動くと死んじゃう病気らしいよッ!!!!」

 

……………

 

そんな病気が本当にあったら上杉くんは今頃閻魔様のところにいると思う…。

 

二乃「そんな病気聞いたことないけど…」

 

 

風太郎「ゴホッ!!ゴホッ!!」

 

……って、えっ?上杉くんの口から血が………いや、あの色合いは血ではないな……?

 

……近くにケチャップが…。なるほど。ケチャップで血に偽装したと…。

 

五月「何してるんですか!!安静にして下さい!!」

 

あっ…。なんか上手く行っちゃってる…。

 

二乃「…まあ、弱ってるのは本当みたいね。でも五月が付いてれば充分でしょ」

 

四葉「ほ、ほら!二乃!お昼ならコロッケがあるよ!」

 

二乃「えっ?……あれのどこがコロッケよッ!?」

 

これに関しては二乃さんに同意かもしれない…。見た目はともかく、味はコロッケだよ…?うん……。

 

四葉「そうだ!二乃は料理上手でしょ?お粥作ってあげなよ!」

 

いや、四葉さん?なんで上杉くんが寝込んでいるのか忘れてないよね…??

 

二乃「それくらいならわけないわ」

 

了承しちゃったよ…。

 

二乃「卵が入ってるやつでいいわよね?」

 

風太郎「あ、ああ……。助かる…」

 

五月「あなたがそれほど重い病に患っているとは知りませんでした…。四葉、私にできることはありますか?」

 

………これ、嘘だとバレてしまった時はどうなるんだろうなぁ…。

 

四葉「えっと…、手でも繋いであげたらどうかな?ほ、ほら!小さい頃寝込んだ時にお母さんがしてくれたでしょ?良くなるおまじないだって!」

 

五月「い、嫌です!!それとこれとは話が違います!!」

 

風太郎「四葉、お前もう喋ん……うっ…」

 

五月「……それで、よくなるなら…」

 

五月さんって素直なのか、すぐに騙されそうだよね…。大丈夫かな…?

 

五月さんは上杉くんの手を握ろうと、手を近づける…。

 

五月「やっぱり無理ぃ……」

 

風太郎「余程俺のことが嫌いなようだな…」

 

多分嫌いというよりは、異性だから意識してしまうとか、そんな感じなんじゃないだろうか…?

 

四葉「………やっぱり仲良しな方がいいよ!五月も一緒に勉強しよう!!これからは一緒に上杉さん達の授業を受けようよ!五人揃った方が絶対に楽しいよ!!」

 

っと、今回は満面の笑みで五月さんに訴えかける四葉さん…。

 

嘘なんて付かなくても、ただ純粋にお願いする方が四葉さんには向いていたようだ。多分僕もそっちのタイプだと思うけど……。

 

五月「………考えてみます」

 

二乃「はーい!お粥できたわよ〜!」

 

グニっ

 

あっ!あれは上杉くんが偽装に使ったケチャップ!?

あれを踏んでバランスを崩して今にも転びそう…!!

 

二乃「あっ…」

 

ヒョイ…

悟飯「あ、危なかった…。大丈夫…?」

 

二乃「……なっ、何すんのよ変態っ!!」

 

パシッ!!

 

……助けたのに何で僕はビンタされたんだろう…?

 

風太郎「アツアツアツッッ!?!?!何が「危なかった…」だッ!?」バッ‼︎

 

二乃「ごめん…。だいじょう……」

 

って、普通に動いちゃってるじゃん…。

 

風太郎「…………治ったみたい…」

 

 

 

 

 

 

 

「ちょっと待って…。さっきアイツを叩いた手が無茶苦茶痛いんだけど……」

 

「孫くんは全然痛がってませんでしたよね…?」

 

「あいつの顔、鉄でできてるんじゃないの…?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

風太郎「はぁ……。結局3人になっちまったよ。これじゃ何も変わらないな…」

 

四葉「えっ?気付きませんでした?」

 

風太郎「何がだ…?」

 

四葉「上杉さん達がウチにいるのに、二乃が追い出そうとしなかったんです」

 

……確かに。なんか微妙に感じていた違和感の正体はそれだったのか……。

 

風太郎「……たまたまだろう」

 

四葉「二乃だけでなく、一花も、五月も変わってるのが私でも分かりますし、三玖なんてあからさまに変わってますしね!」

 

悟飯「えっ?そうかな…?」

 

四葉「以前、三玖はあまり他人と関わることをしなかったんです。ですがある日をキッカケにそれがなくなったように見えますよ。特に孫さんに対しては積極的です」

 

悟飯「えっ…?そうかな……?」

 

四葉「あれだけあからさまなのに気付かないのも凄いですね……」

 

確かに、勉強をしてくれるようになったし、よく質問してくれるようにもなったね…。積極的ってそういうことかな…?

 

…あっ。そういえば、僕によく質問してくる気がする…?上杉くんに質問する時もあるけど、大体は僕に質問してくる気がするな…。何でだろう…?

 

四葉「まあそういうわけで、成長してないのは私くらいですよ!テストの点も悪いままですし…」

 

風太郎「…そんなことないだろ。お前が最初に変わってくれたんだ。真っ直ぐで素直なやつが1人でもいて助かったんだぜ?」

 

四葉「……」

 

風太郎「って少し褒め過ぎか。真っ直ぐすぎて今日は痛い目にあったしな…」

 

四葉「……何故私が『上杉さん』の味方をするか分かりますか?」

 

……?何か引っかかる言い方だ…。

 

風太郎「なんだそれ?それは成績を上げたいからだろ?」

 

四葉「それだったら孫さんの味方でもいいんですよ。何故、あえて上杉さんの味方をするのか、と聞いたんです」

 

……確かに、五月さんは僕には普通に接してくれていたけど、上杉くんには素っ気なかったな…。まああれは上杉くんが『太るぞ』って言ったせいだとは思うけど……。

 

しかし、思い返してみると不思議だ。上杉くんと四葉さんは初対面のはず…。にも関わらず、四葉さんは上杉くんに対しては最初から微塵も警戒していなかったような…。そんな感じがした。

 

あれはなんなんだろう…?単純に性格なのだろうか…?

 

風太郎「……すまん。分からん…」

 

四葉「ししし…。正解はですね……」

 

 

 

「好きだから……」

 

 

 

……??なんて言ったんだろう?僕には聞こえなかったな…。

 

というか、顔が随分近いな…。あのままじゃキスしちゃいそうなくらいに近いけど……。

 

………ん?待てよ…?まさか、そういうことなのか…??

 

 

 

 

 

四葉「……嘘」

 

風太郎「……はっ…?」

 

四葉「やーい引っ掛かりましたね!!私だってやればできるんです!!」

 

悟飯「……一体正解はなんだったの?」

 

風太郎「……もう誰も信じない…」

 

悟飯「何があったのッ!?!?」

 

その答えはいつ判明するのだろうか…。もしかしたら、判明する日は来ないのかもしれないし、案外すぐに来るのかもしれない……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

四葉「……孫さん。さっきのは、その…姉妹のみんなには内緒にしてくれませんか…?///」

 

悟飯「へっ?うん…。別にいいけど…」

 

一体何をしたんだ?上杉くんがあんなことを言うくらいだから、余程酷い事をしたのかな…?

 




はい、ドラゴンボールZの映画に出てきた敵キャラ、ターレスとクウラが出てきました。
単に敵vsZ戦士って展開もいいけど、敵vs敵vsZ戦士vsダークライvsまたしても何も知らない大泉洋って展開も良くない??

……すんません。最後の二つは余計でしたね。やってみたかったんです()

ちなみにこういう映画限定の敵キャラの設定についてですが、戦闘力や設定が多少いじられてる場合がありますのでご了承くださいませ…。
今作におけるクラッシャー軍団には上下関係がありません。本当に志を共にする仲間のようなものです。

喋り方とか違うかもしれませんけど、あまり気にしないでくれると助かります()

あと、今週はちょっと忙しくなりそうなので、いつもの二日に1話ペースの投稿は厳しいかも…。
来週になればペース戻ると思いますけど。ただそれだけです。

ちなみに、前書きにも載せましたが、通常形式版も投稿を開始しました。第一話は無茶苦茶地の文が多かった為、ほぼそのままで、通常形式に変えただけです。

ちなみに検索しても出てこない設定になってます。ですので、URLを踏むか、お気に入りに登録しないと表示されない設定になってます。

何故そうしたかというと、一つは内容がほぼ同じだから。
もう一つ目が、これが主な理由なんですけど、ちょっと色々あったのでそういう設定にしました。

まあそういうことですので、通常形式版がいい方は、こちらの台本形式版よりも進行が遅めですが、こちらで閲覧して下さい。
一応後書きにもURLを載せます。
https://syosetu.org/novel/276163


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第10話 林間学校は七人で

⚠︎注意⚠︎

『クロスオーバーが苦手な人』
『台本形式が苦手な人』
『細かいことが少しでも気になる人』
『原作のカップリングが崩されるのが嫌な人(特に飯ビー)』
上記に当てはまる方はブラウザバックを『強く』推奨します。

通常公開、クロスオーバー、原作ヒロインという時点である程度の批判は覚悟しているつもりですが、注意書きを読まないで批判するのはダメですよ。説明書を読まずに操作方法が分からんって文句を言ってるようなものですよ。

注意書きの内容は話ごとに変わる可能性もあります。ご了承下さい。


台本形式ではない通常形式版をご希望の方はこちらから閲覧してください。
https://syosetu.org/novel/276163



新生ナメック星に行ってドラゴンボールを使用したターレス…。彼は何が目的でドラゴンボールを求めたのだろうか…?

 

ダイーズ「それでターレス。アイツらを生き返らせたはいいが、どうする気だ?」

 

ターレス「今度は地球に向かう」

 

レズン「地球…?どんな星だ?」

 

ターレス「自然に溢れた美しい星とだけ言っておこう。あの星はフリーザ軍にもクウラ軍にも目をつけられてないものだから、相当状態がいいらしいぜ?」

 

アモンド「なるほど…。そこで新たな神聖樹を育てるんでっせな!!」

 

ターレス「確かにそれも視野に入れている」

 

ダイーズ「その言い方だと、他にも目的があるようにも聞こえるが…?」

 

ターレス「ああそうだな…。サイヤ人で生き延びた奴らは俺とベジータ、ナッパ、ラディッツ。フリーザ軍の中ではそう認識されていたが、実はもう1人いる」

 

ダイーズ「なに?」

 

ターレス「ラディッツの弟にカカロットという奴がいたそうだ。そいつの戦闘力が低かったもんだから、運良く地球に飛ばされて生き残ったそうだ」

 

ダイーズ「そいつに用があるのか…?特にメリットは見当たらないと思うんだが…」

 

ターレス「ダイーズ。お前はもう忘れたのか?誰がフリーザを殺したのかを」

 

ダイーズ「…!!そうか…。その例の地球育ちの超サイヤ人っていうのが、そいつだと?」

 

ターレス「恐らくな…」

 

ダイーズ「そいつを仲間に引き入れようってことか?それはどうだろうな…。星が綺麗に保たれているんじゃ、奴は俺らに協力するとは思えん」

 

ターレス「確かにな。だが深読みはするな。単純に興味本位だ」

 

ダイーズ「興味…?」

 

ターレス「ああ。下級戦士とすら認められなかったやつが、サイヤ人の中でも群を抜いてエリートと称えられていたベジータを半殺しにし、超サイヤ人に覚醒してまでフリーザを倒しちまった…。気になるだろ?地球という星が…」

 

ダイーズ「……確かにな。フリーザ軍が目をつけてないということは、本来なら文明も資源も特に惹かれるものがないということになるからな…。そして脅威にもならないと判断されてるから、戦闘力が高い民族もいない…」

 

ターレス「そんな甘い環境で育った奴が超サイヤ人になったんだ。俺は超サイヤ人の覚醒の鍵は地球に答えがあると踏んでいる」

 

レズン「……今まで伝説として語り継がれてきていたのにも関わらず、今まで一人も現れなかったんだろう?ならばそいつにはあって、普通のサイヤ人にはない何かがあるということか…」

 

ターレス「もしくは、その何かを得たか……。いずれにしろ遅かれ早かれ知っておきたい」

 

レズン「どうする?地球に着くまで結構時間がかかっちまうぞ?」

 

ターレス「いいさ。クウラの野郎のせいで最近はあまりのんびりできなかったからな。久々に美味いものを食い、美味い酒に酔おうぜ」

 

ダイーズ「こんな楽しい生活はないぜ……だったな」

 

ターレス「そういうことだ…」

 

アモンド「やっほーい!久々の酒だっせい!!」

 

ダイーズ「しかし、酒と飯もいいが、そろそろ女もほしいな」

 

ターレス「なんだ?それなら今宇宙船に腐るほどいるだろ?」

 

ダイーズ「あんな野蛮な奴らを相手にしろってか?無理があるぜ」

 

ターレス「贅沢なやつめ。流石は王子さまだな…」

 

ダイーズ「やめてくれ。それは昔の話だ。今はもうお前らと共に好き勝手に生きるただの旅仲間だ」

 

ターレス「ふっ…。そうだったな……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カカオ「ンダ…(いや、お前らも十分野蛮だろ…)」

 

カカオは『ンダ』としか発音できないので、誰にもそのツッコミは認識されなかった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今日も勉強をする為に図書室に集まったはず………だったんだけど……。

 

三玖「フータロー…。なにそれ?」

 

風太郎「俺に聞くな…」

 

なんというか、ピエロ?みたいな格好をしている。その理由としては、上杉くんが自習している隙に林間学校の実行委員に抜擢されてしまったからだ。

そして、うちのクラスは肝試しを担当することになったので、こうして怖い(?)格好をしているわけだ。

 

四葉「上杉さーん!もうすぐ林間学校ですねー!」

 

イベント事が近づいてきてるからなのか、四葉さんのテンションが妙に高い。

 

四葉「うわぁああああああ!!!?」

 

物凄く驚いてる…。明るいところでこれなのだから、肝試し当日は今の時点でもうまくいくかも…?

 

風太郎「すまん四葉。俺だ」カポッ

 

四葉「上杉さん!」

 

カポッ

 

四葉「誰ーッ!?!?」

 

カポッ

 

風太郎「俺だ」

 

四葉「よかったぁ…」

 

カポッ

 

四葉「助けて〜!!」

 

………………………

 

えっと……演劇部?それとも漫才なのかな?上杉くんが仮面をつけては外し、つけては外す…。それと同時に四葉さんは驚愕と安堵を繰り返す……。

 

………やっぱり漫才でしょ……。

 

というか、そろそろやめないと…。

 

「図書室では静かに…」

 

「「すみません…」」

 

……ほら、こうなった…。

 

四葉「しかし、その金髪のカツラ絶妙に似合ってますよ?こんなに仮装道具を持ってきてどうしたんですか?」

 

三玖「肝試しの実行委員になったんだって」

 

四葉「えー?!上杉さんが珍しく社交的ですね!」

 

風太郎「やりたくてやってるわけじゃない」

 

四葉「えっ?どういうことですか?」

 

悟飯「えーっと、それはね…」

 

事情を簡潔に説明する。

要約すると、さっきも言ったけど、上杉くんが自習している隙に勝手に決められたのだ。

 

四葉「お気の毒に……」

 

三玖「いや、自業自得…」

 

風太郎「とびっきり怖がらせてこの怨みを晴らしてやる…!忘れられない夜にしてやるぜ…」

 

悟飯「文句を言っている割にはすごくノリノリだね…」

 

三玖「それは私も思った。というか、五月は同じクラスなのに手伝ってくれなかったんだ…」

 

四葉「そうです!1人にやらせるなんて酷いです!ちょっと1組に抗議してきますね!」

 

いや、上杉くんが内職をしなければ良かっただけだと思うけど…。

 

風太郎「やめとけ。三玖の言う通り自業自得だ。そもそも、林間学校自体がどうでもいいしな」

 

そう、上杉くんはこういった行事系に一切興味がない(らしい)。

 

四葉「むぅ…!では林間学校が楽しみになる話をしましょう!クラスの友達に聞いたんですが、この学校の林間学校には伝説があるのを知ってますか?」

 

悟飯「伝説?」

 

四葉「そう!最終日のキャンプファイヤーのダンス。そのフィナーレの瞬間に踊っていたペアは生涯を添い遂げる縁で結ばれるというのです!」

 

悟飯「へぇ…。そんな伝説があったんだ……」

 

風太郎「くだらないな」

 

三玖「非現実的」

 

四葉「冷めてる現代っ子!?興味ありそうなの孫さんくらいしかいない!?」

 

悟飯「いや、僕も興味があるってほどでは……」

 

四葉「あー!これだから最近の現代っ子は!!」

 

風太郎「そういうお前はなんなんだ?おばさんか?」

 

四葉「そういうところが上杉さんですよね。女の子にそれは失礼です!」

 

風太郎「俺の名前を悪口みたいに言うな。学生カップルなんて殆どが別れるんだ。時間の無駄だ」

 

四葉「それでも好きな人とお付き合いしたいじゃないですか!」

 

三玖「……なんで好きな人と付き合うんだろう…?」

 

「「えっ…?」」

 

悟飯「うーん…。一緒にいたいからじゃないかな…?」

 

三玖「一緒にいたい…?」

 

悟飯「うん。多分…」

 

「そうそう。それはその人のことが好きで堪らないからだよ。よく分かってるじゃん、悟飯くん?」

 

悟飯「あっ、一花さん」

 

よく分かってるって言われても、クリリンさんと18号さんとか、最近のベジータさんやブルマさんとか、お母さんとお父さんの様子を見ていたらなんとなくそんな感じがしたから、そのまま言っただけなんだけど…。

 

一花「三玖にも心当たりがあるんじゃない?」

 

三玖「な、ないよ…」

 

風太郎「一花遅い!もう始めるぞ!」

 

一花「えーっと、何が始まるのかな?でも今日も撮影が入ってるから、もう行かなきゃなんだ〜…」

 

悟飯「へぇ…売れてきたんだね?」

 

一花「そういうこと!今は何よりも仕事が優先!寂しい思いをさせてごめんね!」

 

風太郎「別に寂しくなんかねえよ」

 

三玖「頑張って」

 

四葉「ファイトー!」

 

一花「…ってあ、ウチのクラスの子から呼び出されちゃってるんだった…。三玖、いつものお願い」

 

三玖「分かった。フータロー、ウィッグ借りるね」

 

風太郎「いつもの…?」

 

四葉「あっ、上杉さーん!ここが分かりません!」

 

風太郎「おっ?おう!」

 

この時、「三玖の様子を見に行ってくれ。なんか嫌な予感がする」と耳打ちされたので、様子を見にいくことに…。

 

 

 

三玖さんが一度トイレに入って、出てきたのは一花さん……。あれ?

 

あっ、よく気を探ってみると三玖さんなんだ…。顔がほとんど同じなだけあって、髪型まで似せられると本当に見分けがつかないな…。上杉くんが五人を見分けられないわけだ……。僕みたいに気を探れないと無理なのでは…?

 

取り敢えず様子を見てみよう…。

 

 

※紛らわしくなりそうなので一旦台本形式解除。

 

 

「中野さん、来てくれてありがとう…」

 

「あ、あれ?他のみんなは?」

 

「悪い、君に来てもらう為に嘘ついた」

 

「一……私に用って?」

 

「俺と、一緒にキャンプファイヤーを踊ってください!!」

 

「……えっ?なんで私と…?」

 

「それは…、好きだからです……」

 

……これ、変装して行っちゃまずいやつだったのでは…??

 

「ありがとう…。返事はまた今度…」

 

「今答えが聞きたい!!」

 

まずっ…。早くなんとかしないと…!

 

悟飯「あー!こんなところにいたんだ!」

 

「……おい、何勝手に登場してんだコラ。空気読めやコラ。……って待てよコラ。ひょっとして俺の告白聞かれてたのかよ恥ずかしいじゃねえかよコラ」

 

悟飯「ちょっと待って!盗み聞きするつもりはなかったんだけど、この人は一花さんじゃないんだよ!」

 

「……えっ?でも……あっ、よく見るといつもと雰囲気が違う気が……」

 

悟飯「仕方ない……」

 

「えっ?ごは……」

 

バサッ

 

話がややこしくなる前に、三玖さんが付けてるウィッグを取った。

 

三玖「ちょっと悟飯…!何を…!」

 

「……なんでこんなことを…?」

 

悟飯「一花さんは今日はどうしても外せない用があったみたいで、でも自分の都合で物事を決めるのが遅れちゃうのは嫌だったみたいで…。それで…」

 

「……なるほど。事情は大体分かった。つーかお前なに気安く名前で呼んでるんだよコラ」

 

悟飯「えっ…?」

 

「何で中野さんの名前を気安く呼んでるんだって聞いてんだよコラ」

 

この人、コラコラばかり言うな……。

 

悟飯「いや、僕は姉妹全員と関わりがあって、その時に名字で呼ぶとすごくややこしくなっちゃうから……」

 

「……そういえば中野さんのところは五つ子だっけ…」

 

悟飯「そう。だから申し訳ないんだけど、この話はキチンと本人に言わなきゃ意味がないと思うんだ。だから割り込ませてもらったよ。ごめん……」

 

「……いや、いい。寧ろ助かった。せっかくの告白が空振りになるところだった…」

 

悟飯「あはは…。分かってもらえてよかったよ…」

 

「……にしても、変装してるのによく見分けられたな…?俺は最初は一花さんだって信じて疑わなかったぜ?」

 

悟飯「えっ?ま、まあ…」

 

変装するところを見たわけだし、別に変装するところを見なくても、僕の場合はよーく探れば気で判別できない事もないから、そこまで難しいことではないんだけど……。

 

「お前、名前は?」

 

悟飯「僕は孫悟飯だよ」

 

「孫悟飯…!ああ…!いつも学年一位を取ってるっていうあの…。俺は前田だ。ここで会ったのも何かの縁だ。よろしくな」

 

悟飯「あっ、うん。よろしく!」

 

三玖「……ねえ、一つ聞いていい?何で好きな人に告白しようと思ったの?」

 

前田「……それは、相手を独り占めしたい。これに尽きるな」

 

三玖「…!」

 

前田「ったく…。まあいいや。次こそ成功させてみせるぞ!」

 

悟飯「うん。頑張ってね!」

 

前田「おうよ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

こうして何とか事態がややこしくなる前に誤解を解けた…。

 

三玖「……」

 

 

『一緒にいたいからじゃないかな…?』

 

確かに、私は悟飯と一緒にいたいと思ったことがよくある。

 

『独り占めしたい……。これに尽きるな』

 

確かに、独り占めしたいと思った時があったかもしれない……。

 

 

三玖「ねえ……」

 

悟飯「……?」

 

 

『せっかくなんだから積極的になりなよ』

 

 

少し…。少しだけ、積極的になってみようかな…?

 

三玖「……キャンプファイヤー、踊る相手いる?」

 

悟飯「えっ…?いないけど……?」

 

三玖「……だったら、わ、私と、踊らない…?」

 

悟飯「……へっ?僕と?」

 

三玖「そ、そう言ってるの……」

 

悟飯「うん。いいよ」

 

三玖「…!ほんと?」

 

悟飯「うん。特に断る理由もないから」

 

「やった…」

 

悟飯「えっ?何か言った?」

 

三玖「ううん…。何も言ってない」

 

悟飯「そう…?でも……」

 

三玖「あっ…!見て、流れ星だ」

 

悟飯「えっ…?こんな時間に…!?あ、本当だ…。珍しいこともあるもんだね…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一見冷静に見える悟飯だか、少しだけ動揺していた。

 

 

 

(ま、まさか三玖さんからあんな提案をされるとは思ってなかったな…。四葉さんが言ってたあの伝説を信じるわけじゃないけど、三玖さんがそれを踏まえた上で僕を誘ったんだとすると……)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『くだらない』

 

『非現実的』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(そういえばあんなこと言ってたから、特に深い理由はないか……)

 

三玖のやや積極的なアタックの結果…。

 

数分前に言った余計な一言が原因(+悟飯の鈍感力)により失敗……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、林間学校が翌日に迫ってるとのことなので、仕事で不在の一花を除いた6人で買い物に来ていた。

 

四葉「上杉さんが林間学校に着ていく服を見繕いました!地味目なお顔なので派手なのをチョイスしました!」

 

風太郎「多分だけど、お前ふざけてるよな…?」

 

 

というか、派手というよりは子供っぽいっていう表現の方が………。

 

 

三玖「フータローは和服が似合うと思ってたから和のテイストを入れてみた」

 

風太郎「思いっきり和そのものなんですけど!?」

 

 

上杉くんと全く同じことを感じた…。

 

 

五月「私は男の人の服がよく分からないので、男らしい服を選ばせていただきました」

 

風太郎「……お前の中の男のらしいってなんなんだ…?」

 

悟飯「……これは男らしいというよりは不良っぽいって言った方が…」

 

 

風太郎「………」

 

おっ!二乃さんのセンスはいいな…。というよりは他の3人がふざけてたんだろうけど……。

 

三玖「あ、二乃が本気で選んでる」

 

四葉「ガチだね」

 

二乃「あんた達が真面目にやりなさいよ!!」

 

ちなみに僕は私服はちゃんと持っているので買う必要はない。上杉くんは家でも基本的に制服らしいから…。

 

 

四葉「ふー!たくさん買ったね!」

 

五月「3日分となると大量ですね」

 

風太郎「お前ら……服に一万二万って…俺の服40着は買えるぞ…?」

 

二乃「こんなの安い方よ」

 

実際のところはどうなんだろう?服の相場はよく分からないんだよね…。

 

四葉「はい上杉さん!お金は大丈夫なので!」

 

と言って、先程選んだ服が入っているであろう袋を上杉くんに渡す。

 

風太郎「いや、しかし…」

 

五月「いよいよ明日は林間学校ですね!」

 

二乃「まだ買うものがあるわよ」

 

悟飯「ま、まだあるんだ……」

 

かれこれ2時間くらい経ってる気がするんだけど……。そういえば、お母さんが前に女の買い物は長いとかそんなことを言ってたような……。

 

四葉「うーん…、男の人と服を選んだり一緒に買い物をするって……デートって感じですね!」

 

ピタッ

 

……みんなの足が一瞬にして止まる。

 

三玖「(デート…、悟飯と、デート……)」

 

何やら三玖さんは何か考え事をしているらしい。

 

五月「これはただの買い物です。学生の間に交際だなんて不純です」

 

四葉「あ、上杉さんみたいなこと言ってる」

 

五月「一緒にしないで下さい!あくまで上杉くんと孫くんとは教師と生徒!一線を引いて然るべきです!!」

 

風太郎「言われなくても引いとるわッ!!」

 

どうしてこうも…、いや、考えるのはよそう…。

 

二乃「ほら、そんなやつ放っておいて残りのやつ買うわよ」

 

五月「そうですね。あなた達はここで待っていて下さい」

 

風太郎「はっ?なんでだよ?」

 

二乃「いいから待ちなさい!」

 

風太郎「そうは行くか!俺の服を勝手に選んだんだ!お前らの服も選ばせてもらう!!」

 

……二乃さんと五月さんが向かっているあのお店って…………。

 

二乃「下着!!」

 

五月「買うんです!!」

 

風太郎「…………待ってまーす」

 

二乃「ホント、デリカシーのない男はサイテー!!」

 

風太郎「全く…。ハッキリ言われなきゃ分かるものも分からないっての…」

 

悟飯「いや、アレはハッキリ言いづらいと思うけど……」

 

風太郎「……まあいいや。俺はそろそろ帰る」

 

四葉「上杉さん!明日が楽しみでもしっかり寝るんですよ!」

 

風太郎「言われなくても寝るよ」

 

四葉「しおりは一通り読みましたか!?」

 

風太郎「読んでねーよ」

 

四葉「サボらずに来てくださいね!!」

 

四葉さんは、上杉くんが先程言った、どうでもいい発言で思うところがあったのか、上杉くんを少しでも楽しませようとしているのがよく分かる。

 

四葉「うん!偉い!最高の思い出を作りましょうね!!」

 

……さて、僕も明日の用意をあまりしていなかったので、そろそろ帰るとするか…。

 

 

 

さて、朝になった…。

 

悟飯「さてと…。忘れ物はないかな…?」

 

悟天「お泊まりかぁ…。いいなぁ…」

 

チチ「こら悟天ちゃん。悟飯ちゃんは学校の行事で行くんだぞ?遊びじゃないんだべ!」

 

悟飯「それじゃ、行ってきます!」

 

「「いってらっしゃい!」」

 

今日もいつも通り筋斗雲で向かう。ただし、制服ではなく私服でだが…。

 

今日は林間学校といって、雪山に行って色々やるみたいだ。実を言うとしおりはちょっと読んだぐらいで詳しくは読んでいない…。

 

 

 

……よし、この辺で降りれば問題無さそうだ。あそこにバスがあるから、あの辺が集合場所だろう…。

 

……あれ?なんか騒がしいな…?どうしたんだろう?

 

五月「あっ、孫くん!丁度いいところに!」

 

悟飯「えっ?ど、どうしたの?」

 

五月「上杉くんが来られないそうで、肝試しの実行委員を代わってくれと頼まれたんですが、私、怖いのが苦手で…」

 

悟飯「……上杉くんが、来れない…?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「らいは!生きてるか!?」

 

娘のらいはの心配をして大声で安否の確認を取る、上杉勇也。彼は上杉風太郎の父親なのだが、仕事の関係で夜は不在だった。

 

風太郎「……親父、まだらいはが寝てるんだ。静かにしろ」

 

勇也「看病しててくれたのか。って、もう林間学校のバス出てんじゃねえか!?」

 

風太郎「そうだっけ?どうでも良すぎて忘れてたぜ。しかし、これで3日間は思う存分に勉強ができるな」

 

勇也「おい待て、忘れ物だ」

 

そう言いながら勇也はシワシワになり、沢山の付箋が貼られた林間学校のしおりを風太郎に渡した。

 

勇也「早く帰ってやれなくてすまなかったな…。一生に一度のイベントだ。今から行っても遅くないんじゃないか?」

 

風太郎「バスもないし、別に…」

 

らいは「あーっ!お腹空いた!!」

 

風太郎「えっ…?」

 

らいはが突然起床し、二人は驚く。

 

風太郎「えっ?らいは…?熱は…?」

 

らいは「治った!それよりなんでお兄ちゃんがまだいるの?ほら、早く行った!!」

 

風太郎「お前!俺の気遣いを返せ!!」

 

らいは「ありがとう!でももう大丈夫だから!!」

 

風太郎「だからバスが……」

 

「もうバスは出発してしまいましたよ!!」

 

その声が聞こえた方を向くと、そこには、既に出発しているはずの……。

 

風太郎「四葉…!?なんでここに…?」

 

四葉「それはこちらの台詞です!サボっちゃダメだって先日言ったばかりじゃないですか!!」

 

風太郎「いや、俺はサボったわけじゃ…!」

 

四葉「すみませーん!上杉さんをお借りしますね!!」

 

らいは「はーい!」

 

勇也「楽しんでこいよ!」

 

風太郎「はっ?お前、バスは…!?」

 

四葉「見送らせていただきました!!」

 

風太郎「何でウチに来たんだよ!?」

 

四葉「私しか上杉さんの家の場所を知らないからです!」

 

風太郎「いや、そうじゃなくて……」

 

四葉だけでなく、一花、二乃、三玖、五月、そして何故か悟飯までもが目の前にいた。

 

三玖「フータロー」

 

一花「もう、遅いぞフータロー君!」

 

二乃「ったく、何してんのよ」

 

五月「少しは私達のことも考えてください」

 

風太郎「…………」

 

五月「肝試しの実行委員ですが、暗い場所に1人で待機するなんてことは私にはできません。オバケは怖いですから、あなたがやって下さい」

 

悟飯「そうだよ。上杉くんがあんなに頑張ってたんだから、きっと上杉くんがやらないと盛り上がりに欠けちゃうよ」

 

風太郎「……仕方ない。行ってやるとするか……」

 

こうして、江端さんの車で今から7人で宿泊先に向かうことになった。

 

二乃「みんな乗った?」

 

一花「ちょっと詰めてねー」

 

四葉「上杉さん、孫さん!乗り心地は如何ですか?」

 

風太郎「ふわっふわだな!」

 

悟飯「うん。特に問題ないよ」

 

というか、車には滅多に乗らないのでなんか新鮮だ…。セルゲーム前にお父さんの運転する車に乗った時以来かもしれない…。

 

四葉「それでは……」

 

「「「「「「しゅっぱーつッ!!」」」」」」

 

…………何気に上杉くんもテンションが高いな……。本当は行きたかったんだね…。

 

さて、林間学校ではスキーをするんだっけ?実はやったことないから地味に楽しみだったりする。

 




どうも。なんとか忙しいゾーンは抜けたので、元のペースに戻る…かもしれないです。書き溜めがほぼないし、あまり急ぎ過ぎると違和感がモノスゲ〜!!(ビルドジーニアス風)……ってことになるのでご了承下さい。

ちなみに一気読みしましたってご報告して下さる方が何人か出てきて非常に嬉しく思います。特に上手くクロスできていると言われた時は本当に嬉しかったです。これからもこの調子で書ければと思っております。

他の作品の感想欄を拝見したところ、毎回感想書くのは作者に迷惑なのでは…?と考える方もいるそうなのですが、私は迷惑だとは思いませんので、皆さんが感想を送信したい時に送信して下さい。毎回でもいいし、毎回じゃなくてもいいですよ。
ただし、今後の展開を強要する行為は控えて下さい(そもそも運営さんにそういうコメントは消されますし)

ちなみに本日呪術廻戦の映画を観てきました。ネタバレはしませんけど、ちょっと泣きそうになった。感想を五等分の花嫁と絡めると……。
もしも二乃が見たら(いい意味で)泣きそう。

〜追記〜
メリークリスマス……今年もかの……いや何でもないです。


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第4巻
第11話 本当に怖いもの


⚠︎注意⚠︎

『クロスオーバーが苦手な人』
『台本形式が苦手な人』
『細かいことが少しでも気になる人』
『原作のカップリングが崩されるのが嫌な人(特に飯ビー)』
上記に当てはまる方はブラウザバックを『強く』推奨します。

通常公開、クロスオーバー、原作ヒロインという時点である程度の批判は覚悟しているつもりですが、注意書きを読まないで批判するのはダメですよ。説明書を読まずに操作方法が分からんって文句を言ってるようなものですよ。

注意書きの内容は話ごとに変わる可能性もあります。ご了承下さい。


台本形式ではない通常形式版をご希望の方はこちらから閲覧してください。
https://syosetu.org/novel/276163



ターレス率いるターレス軍を発見し、殲滅を目論んだクウラであったが、未知の技術を持つレズンの装置によって逃げられてしまった。

 

そんな彼が、何故か地球に向かっている。

 

クウラ「仕事が終わって早々集まってもらってご苦労だ」

 

サウザー「はっ!クウラ様のお呼び出しとあれば、いつでも駆けつけます!」

 

「ところでクウラ様。この度は何故お呼び出しを…?」

 

そうクウラに問いかけたのは、クウラ機甲戦隊のうちの一人、ドーレ。彼はパワーに特化した戦士だ。

 

クウラ「そうだったな。今回は俺と共にある惑星に向かってもらう」

 

「なっ!?クウラ様自らッ!?」

 

クウラの発言に驚いた様子を見せているのは、同じく機甲戦隊のうちの一人のネイズだ。彼は爬虫類のような顔の長身戦士で、電流を発生させる技を扱える。

 

クウラ「奴らは恐らく地球に向かったはずだ。そこで猿どもを駆逐する」

 

サウザー「な、何故地球にいると…?」

 

クウラ「部下の一人をナメック星にて潜入させることに成功した。そいつの情報によれば、次の目的は地球。目当ては超サイヤ人の手がかりと地球そのものだ」

 

サウザー「地球そのもの…?」

 

クウラ「ああ。地球は自然豊かで生物が住むのに適した環境らしい。そこであの木を育てる気だろう」

 

サウザー「あの木…。神聖樹…でしたっけ?」

 

クウラ「ああ。既に俺が所有する星のいくつかがその木の被害に遭っている。このまま奴らを放っておけば、宇宙に存在する星の大半はゴミと化すだろう」

 

ネイズ「そ、それはまずいのでは…!?」

 

クウラ「そうだ。だから駆逐する。ついでに木の実も手に入れ、軍事力増強にも繋げられれば上出来だ」

 

ドーレ「しかし、超サイヤ人というのは…?」

 

クウラ「超サイヤ人は、フリーザを殺した地球育ちのサイヤ人だと聞いている」

 

ドーレ「なっ!?」

 

サウザー「じゃあ、その超サイヤ人がいる星に向かわれると!?」

 

クウラ「そうだ。そいつも殺して完全にサイヤ人の血を根絶やしにできるのが理想だ。だが、旧ナメック星の爆発によってくたばった可能が高いがな」

 

こうして、クウラ達も地球へ向かうこととなった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

二乃「私はだーれだ?」

 

たった今、僕達は五つ子ゲームというものをやっている。

五つ子ゲームとは、

親指=一花さん

人差し指=二乃さん

中指=三玖さん

薬指=四葉さん

小指=五月さん

 

となっており、そのうちのどれかを当てるというゲームだ。

 

ちなみに僕は三玖さんだと予想。

 

風太郎「うーむ……」

 

二乃「ちょっ!?触るの禁止!」

 

風太郎「くっ…!二乃だ!!」

 

上杉くんがそう答えると、二乃さんはニッコリと笑みを浮かべて……。

 

二乃「残念、三玖でした」

 

っと、何故か手を裏返して答えを開示する。

 

風太郎「くそー!!次俺な!!」

 

五月「やけにハイテンションですね…」

 

五月さんのこの意見には同意する。上杉くんがここまでハイテンションなところを見たことがない気がする…。

 

風太郎「お前達の家を除けば外泊なんて小学生以来だからな…。もう誰も俺を止められないぜ!!」

 

四葉「………まあ、もう1時間以上足止めを食らってるんですけどね…」

 

そう。大雪によって道が渋滞しているため、中々進めずにいるのだ。結局、その日のうちに宿泊先に着きそうになかったため、諦めて近くの旅館に泊まることになった。

 

風太郎「おお!中々いい部屋だな…」

 

五月「でも4人部屋ですよ?」

 

二乃「ねえ、本当にこの旅館に泊まるの?コイツらと同じ部屋なんて絶対に嫌ッ!!」

 

四葉「急に団体の客が入ったとかで一部屋しか空いてなかったんだから仕方ないよ…」

 

二乃「車は!?」

 

三玖「午後仕事があるからって帰っちゃった」

 

二乃「ほら、旅館の前にもう一部屋あったでしょ!!」

 

旅館の前に…?何のことを言ってるんだろう?そんなのあったかな?

 

四葉「明日死んでるよ!?」

 

風太郎「旅館なんて小学校の修学旅行以来だ。確かにあの時の部屋の方が広かったな。……ん?なんだこれ…?」

 

上杉くんが何かを見つけたらしい。

 

風太郎「……うん!良い旅館だ!文句を言ってないで楽しもうぜ!!」

 

二乃「女子集合!!」

 

っと5人は部屋の隅に集まってなにやら内緒話(?)をしている。

 

そんなことはお構いなしに、上杉くんがその5人に近づく。

 

風太郎「やろうぜ!!」

 

「「「「「……!?」」」」」

 

五月「な、何をッ!?」

 

いや、五人は一体なんでそんなに後ろに下がるの…??

 

風太郎「トランプ持ってきた!やろうぜ!!」

 

一花「き、気が効くねぇ…!懐かしいなぁ…」

 

四葉「何やります?」

 

風太郎「七並べっしょ!!」

 

 

遊び倒した後は豪華な夕食が…。

 

 

風太郎「すげえ!!タッパーに入れて持ち帰りたい!!」

 

五月「やめて下さい……」

 

悟飯「それは帰る時には腐るからやめた方が………」

 

四葉「こんなの食べちゃっていいのかなー?明日のカレーが見劣りしそうだよ!」

 

二乃「三玖、あんたの班のカレー、楽しみにしてるわ」

 

三玖「うるさい。この前練習したから」

 

一花「そういえばスケジュール見てなかったかも…」

 

風太郎「2日目の主なイベントは、10時にオリエンテーリング。16時に飯盒炊さん。20時に肝試し。

3日目は10時からの自由参加の登山、スキー。そして夜はキャンプファイヤーだ」

 

す、凄い…。しおりを読まずに全てのスケジュールを………。

 

一花「なんでフータロー君暗記してるの…?」

 

四葉「あと、キャンプファイヤーの伝説の詳細が分かったんですけど…」

 

風太郎「またその話か」

 

一花「伝説…?」

 

二乃「関係ないわよ。そんな話したって仕方ないでしょ。踊る相手いないんだしさ」

 

三玖「…!」ピクッ

 

……そういえば、三玖さんと踊ることになっていたな…。

 

二乃「まっ、伝説なんて下らないことどうでもいいけど…」

 

一花「あっ、ここ温泉があるって書いてあるよ?」

 

三玖「た、多分二乃も誰からも誘われなかったんだと思う」

 

四葉「そっか、拗ねてるんだ!」

 

二乃「あんたたちねぇ……」

 

一花「えーっと…?混浴…!?」

 

「「「「「「!?!?」」」」」」

 

えっ?混浴だって!?

 

二乃「はぁ!?部屋のみならずお風呂も同じってこと!?」

 

五月「言語道断です!!」

 

悟飯「いや、何で一緒に入る前提なの…?時間で区切ればいいじゃん…」

 

一花「あっ、混浴じゃなくて温浴の間違いでした〜……」

 

 

そのあと、数分の間一花さんにヘイトが集まったのは言うまでもない…。

 

 

 

 

「……なるほど、考えたわね」

 

「誰も隣に行きたくないなら全員が隣に行けばいいんだ」

 

「少なくとも二人から見たら……」

 

「さあ、行くわよ!!」ガチャ

 

五人は髪型を統一して、見分けをつけられない状態なら安易に襲ってこないだろうと考えた。

そしてドアを開けたはいいものの…。

 

「……上杉のやつ、既に寝てるじゃないの……」

 

「……私たちも寝ようか…」

 

「……あれ?悟飯は…?」

 

「……そういえばいないですね…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

悟飯「はぁ……」

 

悟飯はただ今、旅館の屋根上にて休憩をしている。

 

悟飯「6枚の布団に7人で入るのは流石に無茶だしなぁ…。どこで寝ようか…」

 

しかし、ただ休憩する為だけではない。

 

『……よし、周りには誰もいないな?』

 

悟飯「…はい。屋根の上に登ってるので誰も来ませんよ」

 

ピッコロとやり取りをするために誰にも聞かれない場所に移動していたのだ。

 

『旅行中すまないな。ただ念の為お前に伝えた方がいいと判断した』

 

悟飯「……何があったんですか?」

 

『宇宙から何者かが侵入した』

 

悟飯「えっ…?僕は何も感じませんでしたけど…?」

 

『だろうな。気は大したことのない奴らだ。だが、服装が気になってな』

 

悟飯「服装…?」

 

『ああ。フリーザ軍の戦闘服に似たものを付けたやつがいる』

 

悟飯「ふ、フリーザ軍!?」

 

『安心しろ。そいつらは俺がなんとかする。万が一の時の為に一応お前にも伝えておいた。不審な気を感じたら、そいつらだと思って警戒しろ』

 

悟飯「……分かりました」

 

まさかフリーザの手先が地球にいるなんて…。今更何の用だ?フリーザは既に死んでるし、父親であるコルドも死んでいるはず…。

 

……とにかく、気を引き締めた方が良さそうだな…。一応身体を動かしておいた方がいいかもしれない…。ここ最近は、ほとんど修行してないからなぁ…。

 

悟飯「よっと…」

 

取り敢えず部屋に戻らないと…。あまり長い間不在だと不審に思われるかもしれないしね…。

 

 

 

 

 

……って、部屋に戻ったはいいけど…。

 

「遅い!どこほっつき歩いてたのよ!あんたのせいで私達が寝れないじゃないの!」

 

悟飯「……へっ?二乃さん、それどういうこと?」

 

「もし私達が寝てる間にあんたに襲われでもしたら……えっ、ちょっと待って?今、なんて言った?」

 

悟飯「えっ?それどういう意味?ってところ?」

 

「違う!私をなんて呼んだ!?」

 

悟飯「……二乃さんって言ったけど…」

 

「……じゃ、じゃあ誰が誰だか分かる?」

 

悟飯「うん…?」

 

えっと…。左から順に…。

 

悟飯「左から四葉さん、二乃さん、一花さん、五月さん、三玖さん」

 

「……嘘でしょ…女子集合!」

 

ササッ

 

またしても五人が部屋の隅に集まる。

 

あ、あれ?何かまずいことをしたかな…?

 

 

二乃「嘘でしょ…!?孫のやつ、1発で見分けたわよ!?」

 

一花「私や四葉なら髪の長さで判別できるだろうけど、あと3人もずばり言い当てたね……」

 

三玖「正直ビックリ」

 

四葉「どどど、どうしましょう!?みんなで隣に行く作戦が孫さんに対しては通用しませんよ!?」

 

五月「というかそもそも布団6つまでしか敷けてませんよ!?あと1人はどうすればいいんです!?」

 

一花「普通に考えたら、誰か2人が1つの布団で寝ることだね…」

 

二乃「あいつを上杉のところに割り込ませればいいじゃない」

 

三玖「でも悟飯は大柄。フータローが寝苦しくなりそう」

 

五月「……確かに、普段は長袖長ズボンだったせいかただ痩せてるだけに見えてましたが、結構鍛えてるみたいですね……」

 

四葉「ムムムッ…」

 

三玖「……ここはジャンケンで決めよう。そしてビリの2人が1つの布団に入る」

 

二乃「しょうがないわね…それじゃあ…」

 

 

 

 

 

悟飯「あの〜…どうしたの…?」

 

なんかさっきからヒソヒソ話していたと思ったら、今度は突然ジャンケンをし始めた。

 

悟飯「……眠いから寝ようっと…」

 

 

 

 

 

二乃「えー?ちょっと最悪なんだけど…。五月と一緒とか狭そうじゃないの」

 

五月「それはどういう意味ですか二乃!?」

 

一花「ま、まあまあ…。それじゃあ次の問題だけど……」

 

三玖「悟飯の隣なら私が寝る」

 

二乃「はっ?三玖正気!?」

 

三玖「悟飯はそんなことしない。そもそも純粋だし」

 

一花「……そういえば、初めて私の部屋に来た時も……あっ、思い出した。悟飯くんは世界一安全な男の子って言った気がする」

 

二乃「……何かされたら絶対に言うのよ」

 

三玖「だから悟飯はそんなことしない」

 

五月「……彼、もう寝てますけど…」

 

「「「「えっ…?」」」」

 

五人は上杉の向かい側を見ると、悟飯がグッスリと寝ていた。

 

一花「………寝よっか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

悟飯「……ん?」

 

あれ?いつもとなんか違う天井が……。あっ、そうか。林間学校に向かう途中で雪に足止めされたから……。

 

……なんかちょっと苦しいな…。悟天がまたくっついてきてるのかな…?

 

……えっ?ここは自宅じゃないよな…?なら悟天はいないはず……。じゃあ一体誰が……。

 

三玖「……」スー

 

あっ、三玖さんが隣で寝てる。寝顔がちょっと可愛いかも…。って僕はなにを考えてるんだろう……。

寝相が悪いのか、僕の布団まで転がってきちゃったのかな…?

 

って、くっついてるというか、同じ布団に入ってきてるッ!?!?

 

悟飯「…!!」バサッ‼︎

 

一花「……!?ッ」

 

悟飯「へっ…?」

 

えっ…?あれ?一花さんの顔が上杉くんの顔に近づいて……。!!!??!?!

 

一花「(えっ!?三玖と悟飯君が同じ布団にッ!?!?)」

 

 

※朝から色々起きすぎていて両者混乱しかけています。

 

 

ガチャ

五月「もう朝ですよー?朝食は食堂で………」

 

 

一花「…………」

 

悟飯「…………」

 

 

バタン‼︎

五月「(えっ?ちょ、待って下さい!?孫くんが三玖と同じ布団で寝ている上に、三玖以外の誰かが上杉くんに…!?!?)」

 

……ガチャ

 

五月は何かを覚悟したようにもう一度ドアを開けてみたが…。

 

………zzz

 

五月「あ、あれ…?みんな寝てる…?」

 

「中野!こんなところで何やってるんだ!」

 

五月「えっ…?先生…?」

 

なんと偶然なのか、先にバスで出発していた学校組も雪による足止めによって同じ旅館に泊まっていたのだ。

 

そして僕達もバスに乗ることになり、一日目の日程は丸々潰れてしまったものの、林間学校は始まるのだった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして宿泊先に到着した僕達は、カレーライスを作ることになったのだが…。

 

悟飯「あっ、薪割りは僕がやっておくよ」

 

「えっ?いいの?」

 

悟飯「うん。実家でもよく薪を割ってるから」

 

「分かった。じゃあ頼んじゃうね!」

 

 

 

さて、誰の目にも付かないところで少しリハビリをした方が良さそうだな…。

 

悟飯「はっ…!」バッ

 

 

悟飯は持っていた全ての薪をワザと高くに投げやった。それもちゃんとバラバラに落ちてくるように。

 

このバラバラに落ちてくる薪を一つずつ正確に割るという修行だ。気を使い熟せる者からしたら大したことのない修行であるが、悟飯は長年修行をしていない。その分、今までの期間を取り返すように勉強をしてきたのだ。

 

悟飯「だぁっ!!」

 

悟飯は一般人の動体視力では認識できないほどの速さで動き、薪を1つ1つ正確に割っていく。そして割った薪は1箇所に落ちるように調整するまでが修行だ。

 

パラパラ…

 

と、割られた薪が見事に綺麗に落とされていく。まるで某パズルゲーム上級者のような積み上がりに仕上がった。

 

悟飯「よし…。流石にこれくらいはできるみたいだな…」

 

さて、この薪を持って帰って来たわけだけど…。

 

「えっ!?孫くん、もう全部割ったの!?!?」

 

悟飯「うん。普段からやってるから、これくらいはね」

 

「えっ、すごいー!」

 

「でも孫くんがやること他にあったっけ?」

 

「……じゃあ、飯盒炊の様子を見てきてくれないかな?」

 

悟飯「うん。分かった!」

 

……さて、ここか…?

ってあれ?あの人は確か…。

 

悟飯「…前田くん?」

 

前田「おう、孫か。調子はどうだ?」

 

悟飯「特に問題は無さそうだよ。そういえば、一花さんを上手く誘えたの?」

 

前田「……それがな、やんわりと断られた……」

 

悟飯「あっ、あ〜…………」

 

前田「中野さんに振られて相手が見つからないままこの日を迎えちまったよ。でもお前はいいよな。中野さんの妹と踊れるからよ」

 

悟飯「えっ?」

 

一花さんの妹だから…。三玖さんのことだよな…?何でそのことを知ってるんだ…?

 

前田「なんか知らんが、女子の間ではちょっとした噂になってるぞ?お前と踊りたいのに既にお相手が決まってるとかで」

 

悟飯「へっ?僕と…?」

 

前田「お前、ひょっとしてモテてる自覚ないのかコラ。お前は見た感じ愛想もいいし、勉強もできるし、運動もできるし、気遣いもできるし、顔もいいしで寧ろモテない方がおかしいだろ?」

 

……今まで全く気づかなかったな…。

 

悟飯「……でも、三玖さんは別にそういった意図はないんじゃないかな…?前に林間学校のキャンプファイヤーの伝説の話題になったとき、非現実的って言ってたし……」

 

前田「………はぁ…。おいコラ!!」

 

悟飯「!?」

 

突然前田くんが怒鳴ってくるもので、少々驚いてしまった。

 

前田「女の事はもうちょっとちゃんと見てやれよコラ。相手が可哀想だろコラ!何とも思ってない奴を誘ったりなんてしねえんだよコラ!」

 

悟飯「………」

 

確かにそうなのかもしれない。非現実的だと言っていたけど、それは照れ隠しの可能性もあるのか…。

でもだからと言って三玖さんが僕のことが好きって証拠にはならないような気がする……。

 

でも、前田くんの言う通り、もう少しちゃんと見てあげた方がいいのかもしれない…。

 

 

「なんで焦がしてるのよ!どーせほったらかしにして遊んでたんでしょ!」

 

「はっ?ちげーよ!少し焦げたけど食えるだろ!」

 

「こっちは最高のカレーを作りたかったのに!!」

 

「二乃、どうする…?」

 

なんか二乃さんの班で揉め事が起きているみたいだな…。

二乃さんのことだから、物凄く罵倒するのかなぁ…。

 

二乃「じゃあ私達だけでやってみるから、カレーの様子を見てて?」

 

あー…。いつもみたいに直接的に怒るわけではないけど、あれは相当怒っているみたいだな…。

 

前田「……あの子も中野さんの妹だよな…?」

 

悟飯「そうだね。次女の二乃さんだね」

 

前田「こうして見ると中野さんにそっくりだな……。はぁ……どうやって彼女を作ればいいんだよ…」

 

……そういえば、前に吊り橋効果というものを聞いたことがある。怖いところに女子と一緒に行くことによって、女の子が一緒にいる人のことが好きになりやすくなるとか……。

 

悟飯「今夜は肝試しがあって、僕の友達がその実行委員かと思ったけど、結構力をいれてるみたいなんだよ。だからそこで誰か誘ってみたらどうかな?」

 

前田「吊り橋効果ってやつか?……やってみるわ…」

 

 

 

四葉「上杉さーん!肝試しの道具運んじゃいますね!」

 

風太郎「四葉…。お前は確かキャンプファイヤーの係だったろ?」

 

四葉「はい!でも……………」

 

 

 

前田「……あの人も中野さんの妹なんだよな…?」

 

悟飯「そうだね。彼女は四女の四葉さんだね」

 

前田「お前、よく分かるな…」

 

悟飯「まあ、家庭教師で何度も会っているから自然とね……」

 

実際、気で見分ける方法の他にも、それぞれが身につけているアイテムや髪の長さでも見分けられる。

 

例えば、一花さんは1番髪が短く、右耳にピアスを付けている。全体的に大人って感じがする。ブルマさんがもう少し上品になるとこんな感じなのかな…?

(※クソ失礼)

 

二乃さんは髪が最も長く、両サイドに蝶型のリボンを付けている。あと服が全体的にオシャレ。

 

三玖さんはいつもヘッドホンを付けているし、服は控えめなものが多い。でもいつも首にヘッドホンを下げてるけど、正しく使っているところを見たことがない……。

 

四葉さんは頭のリボンが目立つ。五つ子の中でも最も元気がある。あと上杉くんに対して懐っこいというかなんというか…。とにかく上杉くんと仲が良さそうだ。そして素直だ。

 

五月さんは五人の中で1番真面目。僕の授業も真剣に聞いてくれるし、質問もたくさんしてくれる。やる気が1番あるのは間違いなく五月さんだろう。

特徴的なアイテムは星型の髪飾りだ。

 

悟飯「っと、まあこんな感じかな」

 

前田「……ちゃんと見てたんだな…。すまん…」

 

悟飯「えっ?う、うん……」

 

何で謝られたんだろう…?

 

そういえば、肝試しどうしようかな…。あー…。せっかくだし………。

 

……!!!

 

……その前に、一仕事あるみたいだな。

 

 

 

 

「脳が震えるぅうううう!!!」

 

「きしゃー!!!!」

 

悟飯「………」

 

あー…。見る人によっては確かに怖いのかもしれないな…。というか僕の場合は気で感知できるから、どの辺に誰がいるのか分かってしまう…。

 

風太郎「ってなんだよ。悟飯かよ」

 

四葉「どーもです!」

 

悟飯「四葉さんもいたんだ。手伝おうかと思ったけど、その必要はないかな…?」

 

風太郎「そうだな。というかお前は何で1人で回ってるんだよ?」

 

悟飯「あはは…。ちょっと頼まれてた事を思い出してね」

 

風太郎「……?そうか。ちなみにここから先は別れ道になってるが、矢印と反対方向には行くなよ?そっちは危険だからな」

 

悟飯「うん。分かった!あっ、それと……無闇にそこから動かないでね?」

 

風太郎「……?お、おう…?」

 

四葉「……??」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だけど、僕が用があるのはそっちだ。肝試しのコースに入った時には既に気を極限まで抑えてある。

何故そんなことをしてるのか?それは昨日ピッコロさんに言われた事を思い出せばすぐに分かる…。

 

 

 

…相手は2人か…。気そのものは大したことはないな…。

 

 

 

「しかしターレスのやつ、こんな所で待機しろだなんて、一体何を考えてやがるんだ……」

 

「俺達に神聖樹の実を植えてこいってわけでもないしな」

 

「あの髪型からしたら下級戦士だったんだろう?俺達でも倒せるんじゃないのか?」

 

「馬鹿野郎!アイツはどれだけ神聖樹を食ったと思ってるんだ!この前スカウターで数値を測った時にスカウターが爆発したのを忘れたのか?」

 

「まさか超サイヤ人なのか…?あの伝説の…」

 

「ご本人様曰くそうではないらしい。むしろ超サイヤ人のなり方を知りたいんだと」

 

「それで地球育ちのサイヤ人を見つけ出せってことか?もしそいつに遭遇したら俺らも死なないか?だってフリーザを倒しちまった奴なんだろ?」

 

「俺だって、あいつが何を考えてるかなんて分からねえよ」

 

……お父さんが目的なのか…?というか、あの尻尾はサイヤ人!?ベジータさんが言うには、サイヤ人の生き残りは僕達しかいなかったはず…。ラディッツはピッコロさんとお父さんが協力して倒したはずだし、ナッパはベジータさんが倒しちゃったはずだ…。

そしてお父さんは死んだから、純粋なサイヤ人はベジータさんしかいないはず……。

地球でドラゴンボールを使われた形跡はないはずだから……。もしサイヤ人を生き返らせたとしたら、ナメック星のドラゴンボール…!

 

……もう少し泳がせた方がいいかもしれない。敵の親玉の正体を知れるかもしれないし……。

 

『ピピピッ!!』

 

「…!スカウターに反応が…!」

 

「戦闘力はたったの5じゃねえか。ただの地球人だろ?」

 

待て、この気は…!!

 

「うう…。ビックリして闇雲に走っていたら、ここはどこなんですか…?」

 

ま、まずい…!五月さんとサイヤ人が鉢合わせになってしまう…!!

 

五月「……って、きゃああああ!?!?」ダダダッ

 

あっ、肝試しの何かの仕掛けと勘違いして逃げ出しちゃった……。

 

「……なあ」

 

「ああ…!」

 

バシューン!

 

悟飯「!?」

 

サイヤ人は突然飛び立った。その行き先は………!!

 

悟飯「ま、まずい…!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おいおい、お嬢ちゃん」

 

五月「ヒッ…!あわわ!!来ないで下さい〜!!!?」

 

「そんなに怯えることはねえだろ」

 

「なあ、やっぱり可愛くねえか?」

 

五月「えっ?そ、そうですか…?」

 

「ああ。いい感じに育ってんじゃねえか?今夜は楽しみだぜ…」

 

五月「………えっ…?」

 

五月はこの時、今更ながら理解してしまった。

相手は肝試しの脅かし役ではなく、『本当の怪しい人』だったのだ。

 

これを理解してしまった途端、五月の全身は恐怖に支配され、身動きが取れなくなってしまった。

 

五月「……ぁ……」

 

しかし、本能のせいなのか、何としてでも逃げ出そうとした。しかし、相手の力は異常なまでに強く、走り出す事すらも叶わなかった。

 

五月「は、離して!!」

 

「そうは行くかよ。上司にあたる野郎に散々こき使われてストレスが溜まってんだよ。その発散に付き合ってくれよ」

 

「おいおい、『突き合う』の間違いじゃねえのか?」

 

「ガハハハハッッ!!!!」

 

男達の下品な笑い声が周囲に響く。五月は周囲の誰かにこの惨状を気付いてもらうことを祈った。

 

しかし、状況が最悪だった。

 

1つは、肝試しのコースから外れてるため、助けが来ないこと。

1つは、仮に来ても、戦闘民族であるサイヤ人に敵う者がいないこと。

 

五月は、今後の人生を諦めるしかないだろう…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「だりゃあああああッ!!!!」

 

 

 

ドゴォォオオオオッ!!!!!

 

 

 

 

「グワァァアア!!!?」

 

 

 

 

 

五月「……………えっ?」

 

 

 

『彼』がいなければ。

 

『彼』が気付いていなければ。

 

『彼』が幼少期に修行をしていなかったら。

 

『彼』が幼少期の時にサイヤ人が来襲していなければ……。

 

 

 

 

 

「な、なんだ!?アイツ!スカウターに反応はなかったはず…!!!!」

 

 

 

 

 

 

悟飯「…………大丈夫…?」

 

 

五月「……そ、孫くん……!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

悟飯「(あっ…。助けることしか考えてなかったから超サイヤ人になるの忘れてた………)」

 

 

 

五月の前に、悟飯(ヒーロー)が現れた。

 

 




肝試しのところでちょっと迷ってました。普通に三玖と組ませようか、それとも単独行動させようかってところでかなりグダリました。まあこの形で自分的に納得の行く展開になったので、なんとか投稿し辿り着いたわけですが……。

本当は悟飯が五月を助けたシーンの台詞、『五月さん、君を助けに来た!』ってやりたかったけど、悟飯がこんな事を言うのも変なので却下しました。
分かる人には分かると思いますが、これはひぐらしで出てきたら勝ち確とまで言われていた、赤坂さんが元ネタです。オリ主転生者なら間違いなくやってたけど、主人公はあくまでも悟飯なので却下しました。

お気に入りが減ったり増えたりしてましたが、やっぱり戦闘を入れたからかな…?最初に戦闘はほぼないって言ってたから多少は仕方ないね()
ただやっぱりちょっとした戦闘がないとドラゴンボールぽくないなって実感しました。でも原作でもオレンジスターハイスクールでの学園モノも見てみたかったな…。


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第12話 優しさ故の冷酷

⚠︎注意⚠︎

『クロスオーバーが苦手な人』
『台本形式が苦手な人』
『細かいことが少しでも気になる人』
『原作のカップリングが崩されるのが嫌な人(特に飯ビー)』
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通常公開、クロスオーバー、原作ヒロインという時点である程度の批判は覚悟しているつもりですが、注意書きを読まないで批判するのはダメですよ。説明書を読まずに操作方法が分からんって文句を言ってるようなものですよ。

注意書きの内容は話ごとに変わる可能性もあります。ご了承下さい。

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悟飯「……大丈夫、五月さん…?」

 

五月「孫くん……」

 

先程まで絶望の渦中にいたであろう五月は、この時の悟飯という存在がどれほどありがたく感じたのであろうか…。

 

絶望という底なし沼から引きずり出したのは間違いなく悟飯である。

 

「ちくしょー!!いい感じの女を見つけたと思ったらよぉお!!」

 

『ピピピッ』

 

「戦闘力5!?そんなわけないだろ!?アイツは戦闘力3000はあるんだぞ!?たかが5ごときに殴り飛ばされるはずがねえ!!」

 

悟飯「……お前らは何の目的でここに来たんだ?」

 

「知るか!!俺だってアイツの真意が分からねえよッ!!」

 

つまり、使い捨ての下っ端というところだろうか?と、悟飯は簡単に推測をして概ね納得する。

 

悟飯「……神精樹の実がどうのこうのって言っていたな…?それについて教えてもらおうか?」

 

「なんでわざわざお前みたいな地球人なんかに教えなきゃいけねえんだよ。お断りだね」

 

悟飯「……そうか」

 

「んなことより、その女寄越せや。今夜のデザートにするんだよ」

 

悟飯「それはできないな」

 

「……さっきのあれはまぐれだろう…。いいか?このスカウターって数値にはな、戦闘力って言って、そいつがどれだけ強いかを計測することができるんだ」

 

悟飯「……それで?」

 

悟飯はスカウターについて基礎知識はあった。だが、説明を促すような返答をする。

 

「俺の戦闘力は3500だ。でもお前の戦闘力は5だ。この意味が分かるか?お前程度じゃ俺には勝てないってことだ」

 

悟飯「……なるほどな…。だが、スカウターに頼っているようじゃまだまだだな」

 

「いちいち気に障る野郎だな。少しは痛みつけてやらねえと分からないみたいだな?」

 

悟飯「……やれるものならやってみろ」

 

五月「ちょ、ちょっと孫くん?!」

 

何故か悟飯が相手を煽っている。そのことに対して五月は心配をしているようだ。五月は先程まで掴まれていたから分かるのだが、相手の力は異常だ。同じ人間ではないのではないかと疑うレベルでだ。そんな相手に悟飯が喧嘩を挑もうとしているのだ。それは心配するに決まっている。

 

………だが、それは五月が悟飯の実力を知らないためである。

 

「泣いて謝っても許してやらねえぞ!!」タンッ

 

相手は悟飯に向かって高速で接近する。五月にとっては最早瞬間移動しているようにしか見えないだろう。

 

「そりゃ!」

 

その速さのまま悟飯に向けて拳を飛ばすサイヤ人。普通の人間ならこの時点で既に敗北が確定している。

 

悟飯「……」パシッ

 

「なっ…!?」

 

しかし相手は悟飯だ。幼少期から数多もの修羅場を潜り抜け、過酷な鍛錬によってその力を増していった悟飯にとって、その拳を受け止めることは、落ち葉を拾うのと同じくらい簡単なことだった。

 

悟飯「はぁ!」

 

ドガッ!!

 

「ぐぁ!!」

 

逆にサイヤ人は悟飯に反撃された。悟飯は攻撃、防御の時だけ一瞬だけ気を増幅させているのだが、あまりにも一瞬すぎる為、スカウターでも感知ができないのだ。その為、常に戦闘力が5と表示されるのだ。

 

「この…!」

 

悟飯「遅い!!」

 

ドゴォッ!!

 

「グォ…!?」

 

悟飯は相手の隙を突いて遠慮なく腹部に拳をぶつける。

 

「おりゃりゃりゃ!!!!!」シュババ‼︎

 

相手は連続で拳を繰り出す。

 

悟飯「……」ピッ

 

しかし、悟飯はそれらの打撃を指一本で全て受け止めた。

 

悟飯「はぁ!!」

 

ドガッ!!

 

それに加えて悟飯は反撃する。相手に防御する姿勢を取ることすら許さない速さで連続で打撃を与える。

 

「ど、どういうことだ…!?本当に戦闘力5なのか…!?」ヒュー

 

相手はスカウターの数値はアテにならないと分かったのか、空中に飛び上がってエネルギー弾のチャージを始める。

 

「そ、そうか…!思い出したぞ!!お前が超サイヤ人の仲間だな!!確かそいつらは器用に戦闘力をコントロールできたはず…!!そうか!!貴様はスカウターで感知できないくらいに一瞬だけ戦闘力を上げているというわけか!」

 

悟飯「……」

 

五月「あ、あの…!あの光は…!?」

 

「貴様の戦闘力は恐らく俺の遥かに上を行っているだろう!だがそれがどうした!!俺は腐っても中級戦士!!!この辺り一体を吹き飛ばすことはワケはない!!しかしお前には擦り傷一つ付かないだろうな。でも……」

 

悟飯「……!!」

 

悟飯は相手の真意に気付いたのか、少々驚いた様子を見せつつ、五月を一目見る。そして視線を再びサイヤ人に戻した。

 

悟飯「考えたな…!」

 

「これでもくらええ!!!」パッ‼︎

 

相手はそこそこ大きくなったエネルギー弾を悟飯達に向けて放った。これが地面に接触すれば、間違いなくここら辺一帯が吹き飛ぶだろう。悟飯は無事だとしても、ここにいる五月を始めとする様々な一般人は………。

 

五月「あわわッ!!に、逃げましょう孫くん!!アレは嫌な予感がします!!」

 

悟飯「………」

 

五月は悟飯に避難するように促すが、悟飯はその場から一歩も動かない。

 

五月「そ、孫くん!?」

 

五月は焦る。得体の知れない光が悟飯のすぐそこまで迫ってきているのだ。先程までの会話を聞くに、あの光にはこの辺を消し飛ばす力があるようだ。

普通の人なら話を聞いただけではそんなことは一切信じないだろうが、五月は先程までの、自分の常識から外れた戦いを見て、相手の言うことに嘘はないだろうと判断したのだ。

 

そんな焦る五月の方に悟飯は振り返り…。

 

悟飯「……大丈夫」

 

それだけ言って…

 

悟飯「…………ハッッ!!!!!!」

 

 

ドンッッッ!!!!!!

 

 

 

「な、なに!?!?」

 

 

先程までこちら側に迫っていた光は突如として反対方向へと進み始めた。そして一瞬で相手の所まで近づく。

だが、相手も常識が外れた超人。その光を難なく避けた。

 

「ま、まさか…!気合だけで俺のエネルギー弾を跳ね返したのか…!?!?」

 

サイヤ人は、ある程度は差があるだろうと予想はしていたが、まさかこれ程までに実力に差があったことは予想外だったようで、度肝を抜かされていた。

 

「……あっ!!アイツ、どこに行った!?」

 

サイヤ人は悟飯を見失ったようで、辺りをキョロキョロと見回す。しかし、悟飯の姿は確認できない。

 

 

悟飯「……こっちだ」

 

「………なっ…!?」

 

悟飯が背後にいると認識できた。しかし、既に遅かった。

 

悟飯「だぁ!!!!」

 

ドゴォッ!!!!

 

(ば、馬鹿な…………)

 

 

ヒューーー

 

ドォオオオオオオオオオン‼︎

 

 

悟飯は、指を組んで両手をハンマーのようにして、相手の脳天に両手を振り下ろして、サイヤ人を空中から地面に叩き落とした。

 

 

ヒュー スタッ

 

悟飯はすぐに地上に降り、先程叩き付けたサイヤ人の様子を伺う。

 

「………ぅ………ぁ……………」

 

どうやら辛うじて生きているようだ。

 

悟飯「……さて、神精樹の実というものについて教えてもらおうか?」

 

「………おしえる……もの……」

 

ドカッ!!

ドゴォッ!!

 

「グハッ…!!」

 

悟飯は相手が情報を渡したがらないことを把握すると、相手の至る所に打撃を加えていく。

 

悟飯「お前を殺すことはわけはない。話すなら見逃してやってもいい」

 

普段の悟飯は温厚で基本的に優しい。その証拠として、二乃に睡眠薬を盛られていたことを知っても特に態度を変えることはなかった。

 

しかし、今の悟飯は別人のように冷酷に見えたような気がした。

でもそれには理由がある。悟飯は大切な物を、人を失うということを知っている。失いたくないからこそ、『敵』に対しては容赦がないのだ。

かつて、自身の力を過信して、自分の大切な人を失ったことがあった。その経験のせいでもあるのだろう。

 

つまり、この冷酷さも、五月達や風太郎達6人に対する優しさ故の行動とも取れる。

 

「し、神精樹の実は、星の生気を吸い取って……、星を枯らしながら、成長するんだ……。星の生気をいっぱい吸った実を食べると、戦闘力が大幅にアップする……!下級戦士だったはずのターレスがあれほど強くなったのも……………、その実のお陰なんだ…………」

 

悟飯「…なるほどな。(つまり、今度はこの地球を花壇にしようと考えているわけだな………)」

 

親玉の真意を何となくではあるが理解できた悟飯は、満身創痍のサイヤ人に次の疑問をぶつける。

 

悟飯「次に聞こう。お前らサイヤ人はフリーザに惑星ベジータを壊されたことによって全滅したはずだ。そのせいで、純粋なサイヤ人は、お父さん、ベジータさん、そしてラディッツ、ナッパだけのはずだ。どういうことか説明してもらおうか?」

 

「それは、ターレスがドラゴンボールを使って俺達を生き返らせたんだ…!!何で生き返らせたかは分からねえ…!」

 

悟飯「………(どうやらこれ以上情報を得るのは難しそうだな……)」

 

悟飯「……分かった。もういい」

 

「お、俺は二度とこんな任務はごめんだね……」ヒュー…

 

サイヤ人はやっと解放されたと判断し、静かに飛び立った。ある程度離れたことを判断した悟飯は……。

 

悟飯「……五月さん、離れて」

 

五月「……えっ?は、はい…!」

 

五月が離れたことを確認して、そっと両手を相手に向けて添えて……。

 

悟飯「……かー、めー、はー、めー…!!」

 

悟飯は両手に気を集中させて、かめはめ波を生成する。悟飯が『敵』を見逃すことなどあり得ないのだ。

 

『ピピピッ!』

 

「せ、戦闘力10000超え…!?!?や、やめろォオオオ!!!俺は俺の知ること全てを話した!!!!見逃してくれてもいいだろ!?!?」

 

悟飯「波ァアアアアアアアア!!!!!!!!!!」

 

ズォオオオオオオオオオ!!!!!

 

相手のそんな情け無い言葉も、悟飯は無視して遠慮なくかめはめ波を放った。

 

「ターレスの野朗ォオオオ!!!俺を捨て駒に使いやがっ……がぁああああああああああああ!!!!!!!!」

 

 

ドグォオオオオオオォオオン!!!!

 

 

相手は恨み言を叫んでいたが、そんなことはお構いなしに悟飯が放ったかめはめ波によって肉片一つ残すことを許さずに消滅した。

 

 

悟飯「……ふぅ…。五月さん、もうだいじょ…………」

 

五月「………た、たすけて……!」

 

「はぁ……はぁ……!さっきはよくもやってくれたなぁ…!この俺の頭にあんな強いパンチをキメやがってよぉおお!!!!」

 

なんと、先程悟飯が殴り飛ばしたもう1人のサイヤ人が息を吹き返し、五月を人質に取るようにして悟飯を威嚇し始めた。

 

相手は恐らく先程の戦いの一部を見ていたのだろう。それを見て判断したのだ。悟飯には正攻法で勝てないと。だからこんな作戦を取ったのだろう。

 

悟飯「……くっ!」

 

一瞬にして戦闘力を上げて相手に攻撃することは可能ではある。しかし、その勢いで五月を巻き込む可能性を危惧して、悟飯は何もできない状況にあった。

 

「てめぇ、ちょっとでも動くとこの女の命はねえぞッッ!!!」

 

相手は先程の仕打ちに相当頭に血が上っているらしく、今にも五月を殺しそうな勢いで悟飯に怒鳴り散らす。

 

悟飯「………五月さん、目を閉じてて」

 

五月「は、はい……!」

 

「どうした!!ダンマリかぁ!?じゃあこの女は俺がもらって行っちまってもいいんだなぁ!?!!」

 

悟飯「……一つ言っておく。お前が五月さんに何かしたら、お前の命がないと思え」

 

「てめぇ状況が分かってんのかぁ!!!?この女の命は俺が握ってんだよォオオオ!!!てめえがいくら戦闘力が高かろうが、てめぇが俺を仕留める前にコイツを殺せるんだよぉおおおおおお!!!!!!」

 

シュン‼︎

 

グシャ…!!

 

……………ドサッ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

悟飯「……五月さん。もう大丈夫だよ」

 

五月「………そ、孫くん………!!」バッ

 

悟飯「うわわッッ!?!?」

 

長かったようで短い戦いがようやく終わった。五月は戦いが終わったと分かって安心したようだが、突然悟飯に抱きついてくる。

 

悟飯「ちょ、ちょっと五月さん!?!?」

 

五月「こ、怖かったです…!孫くんが来てくれなかったら…、私…!私……!!」

 

悟飯「…………」

 

五月は先程まで自分の命の危機に晒されていたのだ。怖がってしまうのは仕方のないことだ。悟飯が現れなければ、五月は殺されることはなくても、どこか分からない場所に連れて行かれ、誰とのか分からない子供を作らされていた可能性だってある。

だから、今自身の目の前にいる悟飯という存在は、五月にとって今までにない程の安心感を与えたのだ。

 

悟飯「………大丈夫。何があっても僕が守る……」

 

 

 

 

もう誰も死なせはしない

 

 

 

 

 

悟飯は心の中でそう力強く呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

プスっ

 

悟飯「痛っ!!」

 

シュン

 

悟飯「くっ…!誰だ!?!?」

 

「……」シュン

 

五月「だ、大丈夫ですか孫くん!?」

 

悟飯「う、うん……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

先程の騒音を聞きつけて、風太郎と四葉は五月と二乃が向かったと思われるコースを走って2人を探していた。

 

風太郎「ったく…!世話の焼ける奴らだぜ…!」

 

四葉「さっきまでの爆発音はなんだったんでしょう…!?」

 

風太郎「分からねえよ!!アイツらが無事かどうか…!!」

 

悟飯「わあ!!」

 

四葉「わお!!孫さん!!って、えええええええ!!!!?!?!?」

 

風太郎「ど、どうした四葉………って、えぇええええええ!?!?!?」

 

悟飯「……あの、五月さん…。そろそろ離れてくれないかな…?ほら、もう上杉くんと四葉さんもいるわけだし、もう1人にはならないからさ……ね?」

 

五月「……いやです…。私を置いていかないで下さい……」

 

五月さんはさっきのが相当怖かったみたいで、一度抱きつかれてから一度も離れてくれない…。今は腕に抱きつかれている状態だから歩けないことはないけど、色々とやり辛い……。

 

風太郎「ドドドドドド、どうしたんだお前!?!?」

 

四葉「い、五月が孫さんに、だ、抱きついている!?!?!?あの真面目な五月がぁあ!?!?」

 

悟飯「そ、それよりも上杉くん!どうしてこんなところに?」

 

風太郎「それはこっちが聞きたいが、丁度いい!お前も二乃を探す手伝いをしてくれ!」

 

悟飯「へっ…?」

 

四葉「さっき私達が二乃と五月のペアを脅かしたら、五月と二乃がこっちに走ってしまって……。五月はこうして見つけられたので良かったんですけど、二乃がまだ見つからなくて……」

 

風太郎「さっきから何度か爆発音らしき音が聞こえたからな。何かあってからじゃ遅いだろ?」

 

…………不審な気はもう見つからない。恐らく二乃さんはただ単純に迷子になっただけだと思うんだけど……。

 

悟飯「……そういえば、さっき二乃さんを見つけた気がするよ。僕が連れてくるよ!」

 

風太郎「えっ?でも……」

 

五月「…………」パッ

 

あっ…。やっと五月さんが離してくれた…。

 

五月「……孫くん。後で大事なお話があります」

 

悟飯「………うん。分かった…」

 

さて、二乃さんの気はあっちだな…。あの方向には崖があったはず…!早く連れ戻した方が良さそうだ…!

 

 

 

四葉「上杉さん……」

 

風太郎「ああ……!」

 

 

「「五月が告白しようとしてる…!?!?」」

 

 

っと、二人で同時に心の中でそう叫んだのはまた別のお話。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、そろそろ二乃さんが見えてくると思うんだけど…。

 

ガラッ…

 

「キャッ…!!」

 

悟飯「……あっ!!」

 

僕は二乃さんを見つけた。しかし、すぐにその姿は消えてしまった。というよりも、落ちていったという表現の方が正しいか……?

 

悟飯「ま、まずい…!!」バシューン‼︎

 

悟飯はすぐさま飛び立ち、落ちて行く二乃を掴もうとするが…。

 

 

このままじゃ間に合わない…!!

 

悟飯「はぁあああ!!!!」ボッ‼︎

 

悟飯は超サイヤ人に変身し、光に負けない速さで二乃を掴み、素早く元の崖の場所まで戻って二乃を下ろした…。

 

二乃「………あ、あれ…?私、確か落ちて……………」

 

超悟飯「……大丈夫…?」

 

二乃「………あっ…!…………ありがとう…///」

 

超悟飯「う、うん……それじゃあ…」

 

二乃「ま、待って!!君の名前を教えて!!」

 

超悟飯「えっ…?」

 

何でそんなことを聞いてくるんだ…?前にも名前を名乗ったはずなのに…。

 

二乃「私のこと覚えてない?二乃よ!あの時、車を持ち上げてくれたのは君なんでしょ!?」

 

超悟飯「…………あっ…」

 

し、しまった〜!?二乃さんは超サイヤ人の姿の僕が初恋だったんだっけ!?

 

今更元に戻るわけにはいかないし、ここは別人としてやり過ごすしかない…!

 

二乃「前にも君に会ってさ、カッコいいなぁって思ってたんだ!ここのコテージ、他の学校の生徒も林間学校に来ているのは知ってたけど、まさかあいつの知り合いに会うなんて思ってなかったわ」

 

超悟飯「ぼ、僕は……」

 

名前………名前…………………

 

いや、このまま逃げちゃった方が…

 

超悟飯「ぼ、僕は用事があるから…」

 

二乃「待って!!妹と逸れちゃったの…!一緒に探してくれないかな…?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ターレス「………よし、ご苦労だったな。ヤードラット星人…」

 

「あ、あの…。これで我々の星は…!」

 

ターレス「……ああ。お前らの星には手を出さないさ。『星』にはな」ピッ‼︎

 

バチン

 

「」ドサッ

 

ターレスは躊躇なくヤードラット星人を殺してしまった。

 

ダイーズ「おっ?それはなんだ?」

 

ターレス「コイツは地球にいたカカロットの息子から採取した血液だ」

 

ダイーズ「……?そんなものを取り寄せてどうする気だ?」

 

ターレス「ある実験…。いや、ちょっと解析をしたいだけだ」

 

ダイーズ「……?どういうことだ?」

 

ターレス「……最近、ラカセイの研究で分かったことがあった。サイヤ人にはある細胞が存在する。それを『S細胞』と仮称しよう。ラカセイが言うには、この細胞が超サイヤ人化に関係があると睨んでいるらしい」

 

ラカセイとは、レズンの双子の弟にあたる戦士だ。普段はレズン一人で行動するが、戦闘時や研究時は二人になって行動することがしばしばある。

 

ダイーズ「ほーう?」

 

ターレス「しかし、そのS細胞はエリート戦士だからといって沢山持っているわけではない。むしろあまり戦闘をしていない雑魚の方が多いんだ」

 

ダイーズ「なに?」

 

ターレス「ラカセイが言うには、このS細胞を増やす特定の条件が存在するそうだ。その条件は大体見当が付いているが、確信を得たいから地球育ちのサイヤ人の細胞が欲しかった」

 

ダイーズ「……その条件とは?」

 

ターレス「……穏やかに過ごすことだ」

 

ダイーズ「……なに?」

 

ターレス「考えてみりゃ簡単だった。サイヤ人でも例を見ない程のエリートのベジータでさえもなれなかったのに、地球でぬくぬくと育ったカカロットが超サイヤ人になれた訳…。そして伝説の存在が長い間現れなかった訳……」

 

ダイーズ「……なるほどな。サイヤ人は基本的に戦闘狂。穏やかとは程遠い性格で穏やかな生活とは無縁な奴が多かったから長い間、超サイヤ人が現れなかったと……」

 

ターレス「そういうことだ…。そしてだ。俺達は長い間美味い酒を飲んで美味い飯を食う生活をしていた…。戦いばかりしていた他のサイヤ人よりは、余程穏やかな生活だとは思わないか?」

 

ダイーズ「……そうか…!」

 

ターレス「俺が超サイヤ人になるのも時間の問題というわけだ……」ニヤッ

 




書き溜めが全くなかったからかなりギリギリでしたな…。オリジナル展開はやはり時間がかかりますね!

さてと…。今作の悟飯はちょっと容赦がない感じになっていますが、私の見解としては、魔人ブウ編での悟飯は、アルティメットになったことによって、絶対に勝てないと思われていたブウを圧倒する力を突然得てしまったからイキっていたのではないかと推測しています。なので、現時点では特にパワーアップしていない悟飯ならイキることはないだろうなと思ってこんな感じにしました。

五月が悟飯のことを追求する話は恐らく次回にやると思います。
ターレスやクウラ達はまだ出てきませんよ。もう少ししてから出てきます()


もしかしたら、この話は後日に微修正をするかもしれません。ちょっとばかり急いで仕上げたんで…。(結局しました。悟飯の拷問シーンをちょっといじりました。)

あとお気に入りが200人に達しましたね。ありがとうございます!!……この作品は本当に思いつきで始めたんで、ここまでになるとは思っていませんでした。何があるか分からないものですな…。





それでは皆さん、良いお年を!

…………笑ってはいけないが放送されない……だと……!?!?
そのようなことがあろうはずがございません!!


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第13話 複雑な恋心

⚠︎注意⚠︎

『クロスオーバーが苦手な人』
『台本形式が苦手な人』
『細かいことが少しでも気になる人』
『原作のカップリングが崩されるのが嫌な人(特に飯ビー)』
上記に当てはまる方はブラウザバックを『強く』推奨します。

通常公開、クロスオーバー、原作ヒロインという時点である程度の批判は覚悟しているつもりですが、注意書きを読まないで批判するのはダメですよ。説明書を読まずに操作方法が分からんって文句を言ってるようなものですよ。

注意書きの内容は話ごとに変わる可能性もあります。ご了承下さい。

〜追記〜
言い忘れてたんで…。あけましておめでとうございます!



………僕は今、超サイヤ人の状態で二乃さんと歩いているわけなんだけど…。

 

二乃「カカロット君って言うんだ…。ちょっと変わってるけど、素敵な名前ね!」

 

……何故かお父さんの(サイヤ人としての)名前を使わせてもらってます…。ごめんなさい、お父さん…。

 

……しかし、さっきから二乃さんが僕の顔を見ては視線を逸らしてを繰り返している。これは……どういうことなんだろう…?

 

………………

 

『君、すっごくタイプなんだけど!』

 

 

 

……って感じのことを言っていたような気がするなぁ…。二乃さんの前では極力超サイヤ人の姿を見せないようにしようと思ったのに………。

かと言って通常状態に戻るわけにもいかないし……。

 

二乃「……カカロット君ってさ、強いの?」

 

超悟飯「……えっ?ど、どういうこと?」

 

二乃「ほら、さっきだって空飛べてたし、それに…。セルゲームにも参加してたでしょ…?」

 

超悟飯「えーっと……。まあ、一応…」

 

二乃「やっぱり!凄く似てると思ってたのよ!」

 

あまり会話し過ぎると、ボロを出しかねないから、極力会話を減らしたいところだ……。

 

二乃「………ぶっちゃけ聞いてもいい?セルを倒したのってさ、カカロット君なんでしょ?」

 

超悟飯「えっ?それは、えーっと…」

 

二乃「ぶっちゃけあのサタンって人さ、セルに吹き飛ばされてたじゃない?色々言い訳してたけど、ただ飛ばされただけなんでしょ?」

 

二乃さんって意外と観察力というか、洞察力というか……。そういうのが凄いのかな…?

いや、Mr.サタンの言い訳がちょっと苦しいものだったせいだと思うけど……。

 

二乃「みんなして馬鹿よね〜。あんなおっさんが、軍隊を全滅させた化け物に勝てるわけないじゃないの。確かに世界チャンピオンだし、普通の人間の中では強い方なんだろうけど」

 

……これは僕もそうだけど、ピッコロさん達もみんな疑問に思っていたことだ。

まあMr.サタンが倒したということにしてくれた方が、僕たちとしては都合がいいから別に問題はないんだけど…。

 

二乃「……あっ、ちょっと顔見せて」

 

!?

 

まずい…!まさかバレちゃったか…?

 

二乃「……はい」

 

ピタッ

 

っと、首あたりに何か貼られたような気がした。

 

超悟飯「……へっ?」

 

ちょっと見えづらいけど、かなり可愛らしい絆創膏が貼られたみたいだ。

……そういえば、さっき怪しい奴に何かで刺されたような気がする…。その時にできた傷口だろうか…?

とにかく、バレたわけじゃなくてよかった…。

 

二乃「これでよし!」

 

…………僕達に対しても普段からこんな感じで接してくれるとやりやすいんだけどなぁ…。

というか、本当に同一人物なのかと思うくらいには態度が違う…。しかし気が一致していることから、本人だという証明ができている…。

 

 

ワァァアアア‼︎

 

……なんか聞こえたような気がする…。

 

二乃「ね、ねえ?何か聞こえなかった…?」

 

超悟飯「気のせいじゃないかな…?」

 

二乃「そ、そうよね…?」

 

ワァァアアアアアア‼︎

 

……この声、聞き覚えがある気がするんだけど……。

 

二乃「や、やっぱり何か聞こえるわよ!?」

 

超悟飯「誰かが叫んでいるみたいだね…」

 

二乃「こ、怖くないの!?」

 

超悟飯「うーん…。まあ……」

 

二乃「……あの、一つお願いしてもいい…?」

 

超悟飯「僕にできることなら」

 

二乃「……あの、怖いから…、手、握って……」

 

あははは……。さっきの悲鳴(?)みたいな声のせいで怖がっちゃってるのか…。なんかこんな二乃さんを見るのも新鮮だ。

 

超悟飯「そういうことなら………」

 

二乃「って、初対面の男の子に何言ってんだろ!今のなし!!」

 

超悟飯「えっ…?そ、そう…?」

 

しばらく歩いていると、五月さんと四葉さん、上杉くんが見えてきた。まあ僕は上杉君達がいる方向に歩いていただけだから、歩いて辿り着くのは必然だ。

 

二乃「……あっ!見つけた!」

 

超悟飯「良かったね…。もう僕は用済みみたいだしこれで!」

 

二乃「待って!カカロット君は明日もここにいるの?」

 

超悟飯「えっ?ま、まあ…」

 

二乃「私達の学校は明日キャンプファイヤーがあるんだ。その時やるフォークダンスに伝説があって、フィナーレの瞬間に手を繋いでいたペアは結ばれるらしいの」

 

超悟飯「あっ…。そ、そうなんだ…」

 

二乃「結構大雑把な伝説だから、人目を気にする生徒達は脇でこっそりやってるみたい」

 

超悟飯「結構雑なんだね……」

 

意外と学生がふざけ半分で作り出した伝説だったりするのかもしれないな…。

 

二乃「ホント、大袈裟で子供じみてるわ。…………………カカロット君…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

二乃「私と、踊ってくれませんか?」

 

超悟飯「……………へっ?」

 

二乃「待ってるから…!」

 

超悟飯「あっ、ちょっと待って!!」

 

僕の呼び止めには応えず、そのまま五月さん達がいる方向へと駆け出してしまった…。

僕が超サイヤ人状態で二乃さんと踊ること自体は問題はない。だけど、僕は既に先約があって………。

 

……高速移動&超化と解除を繰り返せばできないことは……。いや、流石に無理がある……。

 

………………本当に困ったな…。

 

 

 

 

しかし、悩み事はそれだけではない。僕は五月さんに先程のことを話さなければならないのだ…。その説明には僕の正体を説明する必要がある…。

 

五月さんなら、他の人に言いふらすなんてことはないとは思うけど…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜声の正体〜

 

悟飯が二乃を探しに行った後の話…。

 

四葉「ねーねー五月!さっきのはなんだったのッ!?!?」

 

五月「えっ?さっきのとは…?」

 

風太郎「おい四葉。その辺にしてやれよ……」

 

四葉「でも気になるものは気になるじゃないですか!男の子に対して潔癖な五月が孫さんに抱き付いていたんですよ!?」

 

五月「………!?」

 

五月は唐突に思い出し、そして冷静になる。自分が先程まで何をしていたのか、よく思い出してみよう…。

 

確かに、五月は先程までとても怖い思いをしていた。そんな中で助けに来てくれた悟飯は、お腹が空いた時に出てくるご飯以上にありがたい存在であった。

 

そして、戦いが終わった後もまた似たような輩が出てこないとも限らないので、唯一頼りになる悟飯にしがみついてしまっていた。

 

だが、よく考えてみよう。客観的に見てみよう。

 

そんな事情を知らない第三者から見れば、肝試しで怖がって男の人に抱きついている乙女にしか見えない。

実際、四葉と風太郎もそう思っている。

 

五月「……………」

 

四葉「い、五月……?」

 

五月「わぁぁああああああ!!!!」

 

風太郎「うおッ!?ビックリしたぁ…」

 

五月「わ、わわわ、私はなんてことを…!!///」

 

風太郎「いや、本当にすまない!!まさか五月があそこまで怖がるとは思っていなかったもので………」

 

四葉「私も悪ノリしてしまいました!まさか五月が吊り橋効果で孫さんの事を好きになってしまうなんて予想外でした!!」

 

風太郎「お、おい馬鹿!!それ以上…」

 

五月「わぁぁああああああああああ!!!!!!//////」

 

風太郎「うるせえッ!!」

 

 

結論。

声の正体はどちらにしろ五月だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

五月「わ、私が孫くんを…!?そ、そんなことは……ないです!!……ないはずです………………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

四葉「……あちゃー…。私、何かやっちゃいました…?」

 

風太郎「お前はもう黙ってろ…」

 

四葉「辛辣ッ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ターレスノヤロー‼︎オレヲステゴマニシヤガ………

 

 

「ガァアアアアアアアア!!!!」

 

ドグォオオオオオオン!!!!

 

 

 

三玖「き、肝試しなんて大したことないって思ってた……」

 

一花「わ、私も……。も、もー!フータロー君ってば、ちょっと張り切り過ぎなんじゃない…!?」

 

三玖「だ、大丈夫…!多分、何かのアニメのSEの切り取りとかを使ってるんだよ…!多分…!!」

 

一花「そ、そーだよね…?でも、フータロー君ってアニメなんて見るの…?」

 

三玖「四葉は見るよ。四葉も肝試しを手伝ってるからあり得る」

 

一花「四葉がこんな事を思い付くとは思えないけど………」

 

三玖「…………」

 

私、変だ…。悟飯はただの家庭教師。みんなの家庭教師だ。なのに……。

 

三玖「ねえ、一花は悟飯のことをどう思ってる…?」

 

一花「悟飯君…?うーん……。お姉さんとしては、ちょっと今後が心配かなぁ…。鈍ちんなところがあるから、これからアプローチしようとしてる女の子は大変だなぁ……って」

 

三玖「………そうじゃなくて…」

 

一花「三玖、悟飯君をキャンプファイヤーに誘って見たら?そしたら三玖の悩み事も解決すると思うけど…」

 

三玖「もう誘った」

 

一花「早っ!?それで、返事は?」

 

三玖「いいって」

 

一花「へえ!良かったじゃん!!でも相手は鈍ちん悟飯君だから、相当際どくアピールしないと気付かないかもねぇ……」

 

三玖「……よくない」

 

一花「えっ?どうして?」

 

三玖「だって、私達5人は平等じゃないと……」

 

一花「……三玖、確かに平等もいいかもしれないけど、恋を平等にすることなんてできないよ?」

 

三玖「それは………」

 

一花「この関係がいつまで続くか分からないんだし、後悔しないようにした方がいいよ?」

 

そんなの…、いいのかな…?

 

ワァァアアア‼︎

 

三玖「…!?」

 

一花「ね、ねえ…?早く進んだ方がいいんじゃないかな…?」

 

三玖「そ、そうかも…!」

 

ワァァアアアアアア‼︎

 

三玖「い、急ごう…!」

 

一花「そ、そうだね!」

 

 

今年の肝試しは歴代で1位2位を争う程に怖い催しになったとかならなかったとか……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

二乃「ふふふっ…!」ペカー

 

風太郎「なんだ二乃?何かいいことでもあったのか?」

 

二乃「あんたには教えてあげない。明日驚かせてあげるわ」

 

風太郎「……?本当に何かあったんだな…?」

 

しかし面倒なことになってしまった…。今更三玖さんとの約束をすっぽかすわけにはいかない…。せめて二乃さんの方の返事をどうにかしなければ…。

 

風太郎「あっ、悪い三玖。二乃と間違えた…」

 

三玖「………」ムスッ

 

一花「もう…。他の女の子と間違えるなんて、ダメだよフータロー君」

 

風太郎「な、なあ三玖…。二乃知らないか?さっきから妙に機嫌がいいんだが……」

 

三玖「……知らない」プイッ

 

風太郎「あ、あれ…?もしかして、思ってたよりも好感度が低い…?」

 

五月「今更気付いたんですか。忠告します。今より下げたくなければ、これ以上不審な真似はしないことです」

 

風太郎「お、おう……」

 

五月さんにさっきのことをどう説明するか…。いっそのこと全て話してしまった方がいいのだろうか…?

下手に隠そうとするよりはその方がいいかもしれないな…。

 

五月「……孫くん」

 

……悩んでいる時間はないようだ…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

僕と五月さんは、誰にも聞かれないようなひと気のない場所に移動した。倉庫の裏なら、大声を出さない限りは問題ないだろう。

 

五月「さっきは本当にありがとうございました…!」

 

悟飯「お礼なんていいよ。僕としては五月さんが無事ならそれで…」

 

五月「……助けてもらっておいて厚かましいかもしれませんが…、いくつかお伺いしたいことがあります…」

 

やっぱり聞いてきちゃうよなぁ…。一般人からしたら、僕が空を飛んだ時点で質問ラッシュだろう…。

 

五月「孫くんは先程の相手を知っているようでした。あれは何者なんですか…?」

 

…中途半端に教えて模索されるよりは、全て話してしまった方がいいのかもしれないな…。

 

悟飯「……あれはサイヤ人」

 

五月「さ、さいや人…?」

 

悟飯「簡単に言うと宇宙人なんだ。そいつらは野蛮な種族で、今まで沢山の人たちを殺して、星を荒らしてきたんだ」

 

五月「……えっ?あの、何を言っているんですか…?」

 

悟飯「信じられないかもしれないけど、宇宙人は存在するんだ。今までも地球はそんな宇宙人によって何回もピンチに陥った。僕は……僕達は、そんな奴らから地球を守る為に修行して、戦ってきたんだ」

 

五月「えっと……。???」

 

どうやれば上手く説明できるのか……。今までこの類の説明をしてこなかったし、する必要もなかったからなぁ…。

 

五月「……ま、まあ確かに宇宙人は本当にいるのかもしれません…。ですが、孫くんも空を飛べていたのは何故です…?」

 

悟飯「あれは『気』を使っているんだ。気は生き物なら誰でも持っているんだ。それを知覚して、使い熟す事ができれば誰でもできるよ」

 

悟飯「それだけじゃない。ちゃんと修行すれば、普通じゃあり得ない強さを手に入れることができるんだ」

 

五月「………」

 

五月さんは話について行けてないのか、ポカーンとした表情を浮かべている。それはそうだよね…。僕も小さい頃は宇宙人なんて存在しないものだと思っていたし、お父さんもその宇宙人のうちの1人だということにも驚いた記憶がある。

 

五月「……取り敢えず、孫くんが私達の常識では語れない存在だということは分かりました」

 

……取り敢えず、理解してもらえたのかな…?

 

五月「確か、さいや人という種族は宇宙人なんですよね…?孫くんは先程こんな事を言っていませんでしたか?」

 

『純粋なサイヤ人は、お父さん、ベジータさん、そしてラディッツ、ナッパだけのはずだ』

 

五月「……というような感じのことを」

 

……あちゃー…。これはもう本当に全てを話さなきゃいけないかもしれない…。

 

悟飯「……実は、僕もそのサイヤ人の血を引いているんだ。所謂、ハーフってやつだね」

 

五月「孫くんが、半分宇宙人…?」

 

悟飯「あ、あははは……。ちょっと引いちゃった…?」

 

引いたとしても無理はないと思う。人というのは、得体の知れないものは毛嫌いする性質がある。だから、僕が宇宙人の血を引いていることを知って引くのは別におかしなことではないとは思う…。

 

五月「……驚きはしましたが、引いてはいません。半分宇宙人だろうが、普通の人間だろうが、孫くんは孫くんです。私の恩人である事実に揺らぎはありません」

 

悟飯「五月さん……」

 

自分の正体を知っても、全くと言っていいほど拒絶しない五月さんを見て、心なしかホッとした自分がいた気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

孫くんが半分宇宙人だと聞いて、表向きは驚いてないように見えて、実はかなり驚いている。

最初はドッキリか何かと思ったが、いつになく真剣な表情で語る彼が嘘をついているとはとても思えなかった…。

 

彼の正体がどうであれ、彼が私を助けてくれたのは紛れない事実だ。

 

『まさか五月が吊り橋効果で孫さんの事を好きになってしまうなんて予想外でした!!』

 

……ただの恩人……のはず…。

 

『男性は慎重に見極めなければいけません』

 

昔、母にそう教わった。

 

一度助けてもらっただけで好きになるなんてどうかしてます!いくらなんでもチョロ過ぎます!!

 

でも………。

 

 

 

『大丈夫…』

 

『五月さんに何かしたら、お前の命がないと思え』

 

 

 

私を助けようとした時の彼の顔が今でも目に焼き付いている。普段の彼の表情からは、あんな真面目な…、男らしい顔なんて想像できなかった…。

死と隣り合わせだったはずなのに、その顔を見ると何故か安心感が生まれた。私を助けてくれると、心の中のどこかで確信できてしまった。

 

彼の顔を見てしまうとそれを思い出してしまうからだろうか…。未だに彼の顔をまともに見ることができない…。

 

 

………母のあの教えは、私達の実の父親が、母のお腹の中に私達5人がいることを知った途端に行方をくらました故の教えだったのだろう…。

 

しかし、孫くんはそんな事をするような人なのだろうか…?もしそんなことをする人なら、私のことはお構いなしに戦っていたのではないだろうか…?

 

……お母さん。

彼は、男性として、どうなのでしょうか…?

 

悟飯「そういえば聞き忘れていたけど、怪我とかない?どこか痛んだりしてない?」

 

五月「大丈夫です。お陰様で…」

 

悟飯「よかったぁ…。って、顔赤いよ?大丈夫…?」ペタッ

 

五月「…!?!?」

 

彼の手が私のおでこに触れる。これくらいで何故私はこんなにも緊張しているのでしょう……。

 

五月「だ、大丈夫です…!」

 

悟飯「そう…?無理はしないでね?」

 

……私はお腹が空くとすぐに食べ物を欲してしまう…。だから沢山食べてしまう…。それと同じように…。彼には私のそばにいて欲しいと思っている…?そばにいて、私を守って欲しいと思っている…?

 

もう、何がなんだか自分でも分からなくなってきました……。

 

ポンっ

五月「…!?!?」

 

彼が突然私の頭に彼自身の手を乗せた。

 

五月「そ、孫くん…!?何を…!?」

 

悟飯「……さっきは怖かったでしょ…」

 

五月「…………確かに、怖かったです…。でも……」

 

……もうダメだ…。私は我慢するということができない人間らしい…。

お腹が空いたら食べ物をすぐに欲してしまうのと同じように…。

彼を一度でも欲してしまったら、彼が欲しくて堪らなくなってしまう…。

 

お母さん……こんな不純な娘に育ってしまって、ごめんなさい……

 

五月「あなたがそばにいてくれれば、何も怖くありません…」

 

そして彼をギュッと抱きしめる。

先程は恐怖で一杯だったからつい抱きしめてしまったけれど…。今度は違う。

 

悟飯「あ、あの…、五月さん…!?」

 

五月「………」

 

悟飯「ちょ、ちょっと、恥ずかしいんだけど……」

 

五月「………怖かったです。でも、こうしていれば、その怖さも誤魔化せます。だから、もう少し…、このまま……」

 

今度は、彼が欲しいから抱きしめる。恐怖で他人に頼る為の抱擁ではない…。

 

彼と離れたくないから…。彼が欲しいから…。その為の抱擁なのだ。もう自分の感情を理解してしまった私は、歯止めが利かなくなっている…。自分でもそれは分かっている。

 

彼なら拒絶しない…。彼は優しいから…。

 

私は、そんな彼を好きになってしまったんだ…。

チョロいと言われようが知ったことではない…。

これが私の気持ちなのだ。理解してしまったのだ。

もう自分には嘘を付けない…。

 

でも、彼は家庭教師だ。そして私は生徒。一定の距離は置いて然るべきなのに…。

 

自分を抑えられない…!

 

悟飯「……五月さんがそれで安心できるって言うなら………(そうとう怖かったみたいだな…。僕の不注意のせいでもあるし、しばらくはこのままでいよう…。ちょっと恥ずかしいけど…)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

四葉「ねーね三玖!一花と五月を知らない!?」

 

三玖「見てない…。2人ともどこに行ったんだろう…?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所は変わって倉庫の中…。

 

風太郎と一花は、キャンプファイヤーに使う木を運ぼうとしたのだが、倉庫の鍵を持つ四葉にもう誰もいないと勘違いされてしまい、施錠されてしまって外に出られない状況下にあった。

 

一花は風太郎に、自分が仕事の関係で学校を中退する可能性があると話した。風太郎はそれを特に否定はせず、むしろ『何事も挑戦だ!』と励ます言葉を送った。

 

一花「……フータロー君。キャンプファイヤーで、踊る相手いる?」

 

風太郎「いるわけがないだろう。俺は勉強で忙しいんだ」

 

一花「……じゃあさ、今踊らない?」

 

風太郎「はっ?お前とか?なんでだよ?」

 

一花「友達も恋人もいない寂しいフータロー君の相手をお姉さんがしてあげようかなって思ってね」

 

風太郎「友達はいるわ!悟飯だろ?それに………お前ら5人…?」

 

・・・・・・・

 

一花「悟飯君しかいないんじゃん…。というか、何で私達5人は疑問系…?」

 

風太郎「……まあいいさ。誰も見てないし、どうせ他に踊る相手なんていないからな」

 

一花「やった…!というか、恥ずかしいんだ?可愛いところあるじゃん?」

 

風太郎「あ、当たり前だろ…」

 

一花「(……センサーに異常なし…。これなら……)」

 

風太郎「ただでさえ伝説なんてものが流布されてるんだ。その気がなくてもそら見られちまう」

 

一花「………その伝説って、何…?」

 

風太郎「四葉から聞いた下らない話だ。キャンプファイヤーで踊った2人は生涯結ばれるって…」

 

一花「……えっ?!う、嘘…!?フータロー君!私はそんなつもりじゃ…!」

 

ガタッ

 

風太郎「あっ!」

 

一花は慌ててしまったのか、端に立てかけておいた丸太にぶつかってしまい、その衝撃で丸太が一花側に倒れ込んできている。

 

 

 

ガタン!!

 

 

 

風太郎「せ、セーフ…。危なかった…」

 

間一髪で風太郎が一花を助け出した。

 

 

 

風太郎「意外とドジなんだな?

 

 

 

一花「……!!」

 

ビー!ビー!ビー!ビー!

 

先程の衝撃によって、倉庫内の警備システムが作動してしまい、警報が鳴り響いている。

 

しかし、センサーに異常をきたしているのは、警備システムだけではなく、ある1人の少女の何かのセンサーも異常を知らせる警報を鳴らしているのは、また別のお話……。

 




最近になって熱心に誤字脱字の確認をしてくださる方が出てきまして、ほぼ全話に誤字脱字があったそうです(笑)
正直言って無茶苦茶助かってます笑。本当にありがとうございます…。
投稿する前にもうちょっと確認した方がいいかな…。
ですが、人物の名前の呼び方でもご指摘があったのですが、初期の方で呼び方が確定してなくて、5話辺りで確定した趣旨の説明をしてなかったせいか勘違いされているようですので、今更ながら補足で説明させて頂きます。

五つ子の風太郎に対する呼び方は概ね原作通りです。
そして悟飯に対する呼び方なんですが…。

一花→悟飯君(くん)
二乃→孫
三玖→悟飯
四葉→孫さん
五月→孫君(くん)

これは現時点での呼び方です。今後のストーリーの進行状況によっては呼び方が変わる可能性があります。

初期に三玖が悟飯のことを『ゴハン』と呼ぶように表記したせいで誤解を招いているようなので…。
風太郎がフータローになっているのは、伸ばして言っても発音的にはほぼ変わらないからだと思っています(伝われ)。ですので、悟飯をカタカナ表記にするのは違うかなって思いまして…。
例えば、良太郎ならリョータローって感じになると思うんですけど、悟飯は漢字表記です。誤解を招いてしまって申し訳ありません。


一花と風太郎のくだりは入れなければいけない気がしたので入れました(謎の使命感)。
これによって一花は風太郎のヒロインとして確定されたようなものですな。


感想にて、前回のお話の悟飯の拷問シーンで悟飯に違和感があるとのご指摘を受けました。相手の両足の骨を折る感じでしたが、殴りまくる拷問に変更させて頂きました。私はこういう指摘を待っていたのです!!気軽に…されちゃ困るけど、もし違和感を感じたら指摘して下さって全然構いませんので、お待ちしております(違和感ないなら無理して指摘しなくていいですよ)。

あと、五月の恋愛描写はマジで分かりづらい。どうすればいいか迷って無茶苦茶グダりました。
原作では風太郎に対する恋心を自覚するのが遅過ぎたせいもあるのでしょうが、五月が惚れるとどうなるのか分かりづらいところがありまして…。
ちなみにこのままいくと、原作の二乃以上の暴走機関車になるかも…。

後書き長過ぎて草。

これからオリジナル展開が増えそうなので、それに伴って更新ペースが遅くなりそうです…。


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第14話 平等よりも公平に

⚠︎注意⚠︎

『クロスオーバーが苦手な人』
『台本形式が苦手な人』
『細かいことが少しでも気になる人』
『原作のカップリングが崩されるのが嫌な人(特に飯ビー)』
上記に当てはまる方はブラウザバックを『強く』推奨します。

通常公開、クロスオーバー、原作ヒロインという時点である程度の批判は覚悟しているつもりですが、注意書きを読まないで批判するのはダメですよ。説明書を読まずに操作方法が分からんって文句を言ってるようなものですよ。

注意書きの内容は話ごとに変わる可能性もあります。ご了承下さい。



 

あれからどれくらい時が経っただろう…?

 

彼に無理矢理お願いして、こうして私が彼を抱き締めている状態が結構長く続いているような気がした。

私はいつになったら彼を離すことができるのだろうか…?

 

そんな私を現実に引き戻したのは…。

 

ビー!ビー!ビー!ビー!

 

五月「!?ッ」

 

悟飯「うわッ!?なんだッ!?」

 

ある警報の音だった……。

 

 

悟飯「これ…。倉庫の中からかな……?…………………中に誰かいるみたいだな…。鍵はどこにあるんだろう…」

 

五月「わ、私は鍵を探してきます!」

 

悟飯「う、うん!」

 

三玖「その必要はないよ」

 

悟飯「み、三玖さん!」

 

三玖「鍵なら私が持ってる」

 

悟飯「とにかくそれで開けてみよう!中に誰かいるみたいだし!」

 

三玖「うん」

 

 

 

……警報のお陰でなんとか冷静になる事ができた…。できたはずなのに…。

 

 

 

五月「私……」

 

 

 

ダメだ…。まだ孫くんに触れていたいと思ってしまう…。私はなんて欲張りなんだろう…。

 

いやいや!とにかく切り替えないと!いつまでもこのままでは埒があかない!

 

不純です!私!!

 

 

 

 

 

 

 

 

「ひとまずセンサーをなんとかしよう!」

 

「なんとかって、だから鍵がないと…」

 

ガチャ…。

 

五月「鍵ならここにありますよ」

 

そう言いながら、五月と三玖はゆっくりと倉庫の扉を開けた。

 

五月「一花。2人してこんなところで何してたんですか?」

 

キリッとした表情でびしょ濡れの風太郎と一花にそう問いかける。先程まで悟飯に自分から抱き付きに行った五月が何を言っているんだ、という話にはなるが、ここはスルーしてもらいたい…。

 

 

何故か倉庫の中にいた2人は、後でこっ酷く先生に叱られたのは言うまでもない…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌朝…。

 

「三玖ちゃんおはよー!」

 

三玖「おはよう…」

 

昨日、見てしまった。

 

フータローと一花が何故か施錠された倉庫の中に2人きりでいたところを。

一花って、フータローのことが好きなのかな…?

 

でも、私にとってはそっちよりも気になることがあった…。

 

あの真面目で、男に対して潔癖な五月が悟飯に抱き付いているのを見てしまった…………。

まさか、五月も悟飯のことを好きになっちゃったのかな…?確かに悟飯は真面目だし、優しいし…。確かに、五月とは相性がいいかもしれない……。

 

一花はああ言っていたけど、私達は平等…。だとしたら、私はどうすればいいの…?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

最終日。今日は自由参加でスキーか登山をする日だ。

せっかくだし、滅多にやらないスキーでもやろうかと思っているところだ。

 

……まあ、まだ誰も起きていない時間帯なんだけどね……。

 

 

悟飯「はっ!やっ!!だりゃ!!」シュババ‼︎

 

昨日の一件もあり、いつまた敵が現れるか分からないので、軽くウォーミングアップくらいはした方がいいだろうということで、みんなが起きるよりも一足先に起きて、簡単な修行をしている。

 

悟飯「……しかし…」

 

昨日のことは既にピッコロさんに伝えてある。神精樹の実というものと、敵の親玉の目的も併せて伝えておいた。

 

木の実を地球で栽培されてしまえば、間違いなく地球は枯れ果ててしまう。それを防ぐためには、敵が地球に入り込んでいないか警戒をして、万が一入ってきた場合は駆除する必要がある。

 

しかしそれだけではない。神精樹の実というドーピングアイテムだけでははく、超サイヤ人に覚醒しようと企んでいるらしい。でもあれは穏やかな心を持ちつつ、激しい怒りを感じることによって初めて変身できるものだ。典型的なサイヤ人がなれるとはとても思えない。

 

悟飯「………考えても仕方ないか…」

 

セルゲーム以来、殆ど修行をしていないけど大丈夫だろうか…?修行を再開した方がいいかもしれない…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

みんなが起きる時間帯に近づいて来たので、そろそろ自分の部屋に戻ることにする。

 

四葉「おや?孫さんじゃないですか!早起きですね!」

 

悟飯「よ、四葉さん!?」

 

四葉さんも早起きだったのか…。僕の修行の光景は見られてないよね……?

 

四葉「もしかして、今日の自由行動が楽しみすぎて早く起きちゃったんですかー?」

 

悟飯「………へっ?」

 

四葉「時間はたっぷりありますから!今日は目一杯楽しみましょー!!」

 

……いい感じで勘違いしてくれたみたいだ……。

 

四葉「上杉さーん!」バンッ‼︎

 

風太郎「うお!?四葉!!」

 

四葉「自由参加だからって逃しはしませんよー!スキー行きましょうよ!!スキー!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

というわけで、僕達はスキーをすることになった。

 

四葉「さあ!滑り倒しますよー!」

 

風太郎「寒いし寝かせてくれ……。というか俺滑れねえし………」

 

四葉「寝るなんて勿体ない!どうしても無理なら私が手を引いて滑ってあげます!!」

 

風太郎「よーし練習するぞー!」

 

悟飯「………そういえば、他の4人はどうしたの?」

 

四葉「一花は体調を崩して五月が看病してくれています」

 

風太郎「……まあ、あんな目に遭ったんだから当然と言えば当然か……」

 

昨日は2人してびしょ濡れになっていたもんね…。あれ?それなら、上杉くんの方は大丈夫なのか…?

 

悟飯「上杉くんは平気なの?確か上杉くんもびしょ濡れになってたはずだけど……」

 

風太郎「あ、ああ…。多分大丈夫だ…」

 

………?本当にそうなのかなぁ…?無理してないよね…?

 

風太郎「確認してから鍵をかけろよ…」

 

四葉「……?」

 

なるほど…。鍵を閉めたのは四葉さんだったのか……。それで昨日はあんなことに………。

 

あんなこと…………………。

 

そういえば、五月さんはもう大丈夫なのかな…?まあ、僕が側にいなくても大丈夫っぽいし、もう怖くないのかな…?

 

四葉「何言ってるんですか?それより二乃はもう滑ってて、私が教えるのは……あっ、来た!」

 

「どーも」

 

四葉さんと全く同じ上着を着ている…。この気は恐らく三玖さんだな…。服装も同じだと流石に分かりづらいなぁ…。

 

風太郎「誰だ!?」

 

「誰だと思う?」

 

悟飯「三玖さん?」

 

三玖「……せ、正解」

 

風太郎「何で分かるんだお前!?」

 

四葉「わお!流石です!」

 

悟飯「ただの勘だよ」

 

風太郎「しかし、顔だけだと本当に分からないな………」

 

四葉「よーし!普段は教わってばかりの私ですが、今日は教えまくりますよー!!」

 

………………

 

四葉さんに滑り方の基礎を教えてもらった。なるほど…。板を八の字にして、力を入れればブレーキできるのか…。

 

まあ、万が一コントロールを失ったら、舞空術で無理矢理止めるしかないかな…。

 

四葉「わあ!本当に初心者なのかってくらいに器用に滑りますね……」

 

風太郎「まだ5分しか経ってないんだが……」

 

四葉「この前の試験で遅刻しそうになった時も競争したんですけど、彼に負けてしまいましたからね……」

 

風太郎「まあ…。アイツは運動も熟せる万能型の天才だからな…」

 

四葉「万能じゃない天才ってなんなんですか……」

 

風太郎「俺みたいに勉強だけできる天才のことを言う」

 

四葉「自分を卑下しているようで褒めてません…?」

 

風太郎「つか、喋りながら練習するのは相当キツイんだが……」

 

 

ズザッ…!

 

悟飯「スキーって中々楽しいね…」

 

四葉「そうでしょう!!」

 

風太郎「もう戻ってきた!?」

 

三玖「…悟飯。私にも滑り方を教えて」

 

悟飯「えっ…?」

 

そう言われても、僕だって始めたばかりだから教えられるかどうか……。

 

四葉「さっきから私が教えてるのに!?」

 

どうやら上杉くんと三玖さんは滑り方がまだイマイチ分かってないらしい。

 

「わあ!ぎこちないなー。しかし寒いね〜」

 

……この気は、五月さんか?一花さんの看病をしているんじゃなかったっけ?

 

風太郎「ホントに誰だ!?」

 

「誰だと思う?」

 

風太郎「またこの流れかよ!?」

 

悟飯「……五月さん?」

 

「……ざ、残念!一花だよ〜!」

 

悟飯「あ、あれ…?」

 

ゴーグルとマスクを取って自分が一花だと主張している。だけど、顔だけだと本当に判別がつかない…。

 

悟飯「一花さんは体調が悪いんじゃなかったの?」

 

一花「ゴホッ…ゴホッ…!まだ万全じゃないけど大丈夫みたい。だから心配しないで」

 

悟飯「そ、それならいいんだけど…」

 

一花「あと、五月ちゃんは顔を合わせづらいから一人で滑るってさ」

 

……………間違えちゃったかな?確かに、5人の気は他人と比べると相当似ている。気をかなり極めている僕でもやっと判別ができるくらいだ。それくらい似ていれば、間違える事があってもおかしくはないのかな……?

 

四葉「一花〜!!この2人が言ったことを全然覚えてくれない!!」

 

風太郎「それは俺がいつもお前らに対して思っていることだ」

 

一花「……じゃあ楽しく覚えようよ。追いかけっこ。上手な四葉が鬼ね!」

 

風太郎「お、おい!?」

 

一花さんは早速滑ってどこかへ行ってしまった…。

 

風太郎「ようやく進めるようになったところなのに無茶な……」

 

悟飯「いや、そもそも本当にやるかどうかは……」

 

四葉「いーち、にーい、さーん…」

 

………あれ?本当にやるのこれ?

 

悟飯「それじゃ、僕も…!」

 

風太郎「あっ、おい!」

 

あっ…。上杉くんに呼び止められたような気がしたけど、滑り出したのに不自然に止めることはできない…。

 

…しかし、こうして滑るだけでも新鮮な感じがする。普段は自分の足を使って移動しているが、特に何もしていないのに勝手に進んでいく感じが面白い…。

 

………ァァァァァア

 

…………ん?何か聞こえるような…?

 

「どうやって止まるんだこれぇええええええ!!!??!!??!」

 

うわっ!?上杉くんが猛スピードで滑ってきている!?まずいぞ!!この先はカーブだったはず!?

 

悟飯「ハッ!!」

 

ドンッッッ!!!!

 

気を使って無理矢理加速させて上杉くんになんとか追いつく。

 

悟飯「上杉くん!足を八の字にして力を入れるんだよ!そうすればブレーキできるよ!!」

 

風太郎「待て待て!!この猛スピードで体制を変えられるかッ!!」

 

僕が下手に掴むと大惨事になりかねないし……。何かいい方法はないか…?

 

……そうだ!!今は平らなコースになったから…!!

 

悟飯「はっ!!」

 

ピッ!!

 

風太郎「うおっ!?急に止まった!?」

 

良かった……これで上杉くんは怪我をせずに済みそうだ…。

 

風太郎「ってお前!?そのまま突っ込んだら…!!」

 

……?お礼を言ってくれているのかな?わざわざ言わなくてもいいのに…。

 

さて、鬼ごっこを再開しよう…………

 

悟飯「うわ〜!!!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

悟飯「…………」

 

とんでもない失態。上杉くんを止めることだけを考えていたら、まさか自分がクラッシュしてしまうとは…。周りに人が集まっちゃってるし…。

 

「大丈夫かー?てか、生きてるかー?」

 

悟飯「だ、大丈夫です!」

 

次から気をつけよう…。まあ、上杉くんが無事なだけでもよしとするか…。

 

あっ、首あたりにも雪が入り込んじゃった…。冷たいなぁ…。

 

ピラッ

 

……ん?何か取れた気がする…?首辺りといえば、昨日二乃さんに貼ってもらった絆創膏だろうか…?傷口はほぼ治っているから特に問題はないかな…?

 

二乃「……この絆創膏…。カカロット君!?」

 

………………なんてタイミングで出てきてくれるんだろう…。

というかまずいな…。この場で超サイヤ人化してしまうと、周囲に強風を発生させちゃうからかなり不自然だ…。

 

悟飯「えっ?誰ですかそれ?人違いじゃないですか?」

 

二乃「嘘!だってこれ君にしかあげてないもん!って何で逃げるの!?」

 

幸い、二乃さんよりも僕の方が足が速い。ある程度離したところで超サイヤ人になってしまえば問題ない。

 

 

 

…………よし、この辺りで…。

 

悟飯「はっ!!!」ボッ‼︎

 

……よし、周りには誰もいなそうだ…。仮に居たとしても、間近にはいないので問題はないだろう…。

 

二乃「カカロット君!!」バッ‼︎

 

超悟飯「や、やあ!昨日ぶりだね…」

 

二乃「もう!何で逃げるのよ!?」

 

超悟飯「ごめんごめん…。ちょっと恥ずかしくて……」

 

二乃「えっ…?それって…………」

 

…?さっきまで逃げていたからてっきり怒っているかと思ったんだけど、意外と機嫌が良さそう……??

 

二乃「ふーん?カカロット君って案外照れ屋さんなのね?」

 

超悟飯「あ、あはは……」

 

二乃「ふふっ…。まあいいわ。それで、今夜のことなんだけど……」

 

そ、そうだ!キャンプファイヤーで踊る約束をしたんだ!(一方的ではあるけど…)

断るチャンスじゃ…………

 

 

 

『だって私の初恋だもの!』

 

 

 

……二乃さんは、真剣な気持ちで誘ってくれたんだろう…。それを断るのはちょっと心苦しいものがある…。でも、僕は既に三玖さんの誘いをOKしたわけだし…。後に約束した方を優先するのは…………。

 

 

 

…………そうだ!!

 

 

 

二乃「昨晩は返事を聞けなかったけど…「ごめん!!」……へっ?」

 

超悟飯「今朝スケジュールを確認したんだけど、どうやら今日にはもう帰らなきゃいけないみたいなんだ…。だから、君とは踊れない……。ごめん………」

 

二乃「………そうなんだ…」

 

これならまだマシなはずだ。スケジュールのせいで踊れないということにしておけば、二乃さんは振られたとは思わないはず……。

 

これなら、三玖さんとの約束を守れるし、二乃さんを傷付けることもない。

 

二乃「……まあいいわ。スケジュールのせいじゃ仕方ないわね……」

 

よし!作戦成功!

 

超悟飯「そういうことだから、僕はこれで…「待って!」えっ?」

 

二乃「……あのさ、連絡先を教えてくれないかしら…?」

 

超悟飯「……………えっ?」

 

そう来るとは思ってなかった〜!?

ど、どうしよう…。二つもアドレスなんて持ってないし……。

 

そ、そうだ!携帯電話を持ってないことにすれば…!!

 

 

 

 

『ふーん?その子の連絡先とか知ってんの?』

 

『へっ?まあそりゃあ』

 

 

 

 

………ダメじゃん…。

 

でももう一つアドレスなんて持ってないぞ!?

 

あっ!携帯電話を壊しちゃったから、今作り直しているところってことにすればいいんじゃないか…?

いや、最近の機種変更は、例え通信契約会社が変わっても電話番号を変えずに済むらしいからなぁ……。

 

八方塞がりってやつ……?

 

 

 

 

超悟飯「……実は、自分の電話番号を覚えてないんだ…。この林間学校には携帯電話を持ってきてないし……」

 

二乃「えっ……?そ、そうなの……?」

 

超悟飯「確か君は悟飯の知り合いなんだよね?僕が許可を出したってそれとなく伝えとくから、後日悟飯に聞いてみてよ!それでどうかな……?」

 

二乃「…………」

 

ちょっと無理矢理感があっただろうか…?今考えられる最善策はこれくらいしかない……。林間学校までになんとか新しい携帯電話を手に入れる必要が出てきてしまった……。

 

二乃「…分かった。また別の日にアイツに聞いてみる」

 

 

やった…!なんとか乗り切った…!!

 

 

超悟飯「ごめんね…」

 

二乃「いいのよ。こっちこそ、私の我儘に答えてくれてありがとう!」

 

……二乃さんってこんな笑顔ができるんだな…。普段の二乃さんとのギャップが凄いから、本当は別人なのではないかと疑ってしまう……。

 

二乃「それじゃあまたね!カカロット君!」

 

超悟飯「うん!それじゃあ…!」

 

…………よし、周りに誰もいなくなったみたいだな…?

 

シュン…

悟飯「はぁ…………危なかった……」

 

周りに誰もいないことを確認して、超化を解いて、通常状態に戻した。

 

 

 

よし、気を取り直して、また滑りに……

 

四葉「あっ!孫さんみっけ!!」

 

………忘れてたぁ〜!?!?逃げろ!!

 

四葉「待ちなさー…って速っ!?」

 

この格好のまま舞空術を使っては目立ってしまう…。高速移動で乗り切る方がいいか…?いやでも、人目が多いし…。

 

……!?何であんな所にかまくらがあるんだ!?いや、細かいことはどうでもいい!!

 

 

 

 

 

 

悟飯「…………まさか三玖さんもいたとは…」

 

三玖「危ない…。捕まるところだった」

 

悟飯「もしかして、これを作ったのって……?」

 

三玖「ううん。元からあった」

 

こんなところに誰が何の目的で作ったんだ…?不思議なこともあるもんだ…。

 

悟飯「雪で作られてるのに、中は結構暖かいんだね…」

 

三玖「ご、悟飯……、狭いから、あまり動いちゃダメ……」

 

あっ…。もしかして迷惑だったかな…?

 

悟飯「ごめん…。じゃあ僕は出て行くよ」

 

三玖「待って…!出るのもダメ……!」

 

悟飯「えっ…?」

 

じゃあどうすればいいのさ………。

 

三玖「もう……よく分からない…」

 

悟飯「み、三玖さん……??」

 

……………もしかして……。

 

四葉さんに捕まるのが怖いからなのかな…?←鈍感

 

とにかく、出ていってほしくなさそうだから、残ることにしよう…。

 

悟飯「……じゃあ、もう少しだけここに隠れることにするよ」

 

三玖「う、うん!それがいいよ…」

 

悟飯「……四葉さんって、運動できるよね…。他の4人はそうでもなさそうなのに」

 

三玖「私はここがなかったら捕まってた。………なんか途中からスキーと関係なくなってたような気がするけど…」

 

それを言ってはいけない気がするのは僕だけだろうか…?

 

悟飯「僕はまだいいけど、まだ初心者の上杉くんと三玖さんには不利じゃないかな……?」

 

三玖「……そうだ。ならハンデを貰えばいいんだよ」

 

悟飯「ハンデ?」

 

三玖「何か荷物を持ってもらって、足の速さを平等にするの!」

 

悟飯「…確かにその方が盛り上がるかもしれないけど、平等じゃなくて、公平にやるべきじゃないかな…?」

 

三玖「こう……へい……?」

 

悟飯「うん。競技とかは基本そうでしょ?自分の強さに応じて使える武器が変わるわけじゃない。同じ武器とルールを与えられて、それをどうやって使い熟すかによって勝敗が決まるんだ」

 

悟飯「今回の場合は、四葉さんに捕まらなければいいんだよ。つまり、足が遅いからといって正攻法で勝負しなきゃいけないわけじゃないんだよ。今みたいに、かまくらに隠れてやり過ごすのも手の内の一つだと思うよ?」

 

三玖「公平……」

 

悟飯「そう。だから、平等じゃなくて公平にいこうよ?」

 

三玖「……」ゴンッ‼︎

 

悟飯「あっ…!?」

 

三玖さんは突然立ち上がる素振りを見せるが、かまくらの高さはそこまで高くないため、頭をぶつけてしまう…。

 

悟飯「だ、大丈夫…!?」

 

三玖「痛い…」

 

悟飯「本当に大丈夫!?!?」

 

三玖「……平等じゃなくて公平にいこうよ…」

 

先程の僕の言葉が気に入ったのか、三玖さんは復唱するように同じ台詞を述べる。

 

三玖「…頭はもう平気…。そんなに心配しなくても大丈夫だよ」

 

悟飯「そ、そう…?ならいいんだけど……。あっ、四葉さんはもういないみたいだね…。じゃあ僕はそろそろ出るね」

 

三玖「………」ピッ

 

三玖は悟飯が出ていった後、携帯電話を操作して、一花に電話をかけた。

 

『もしもし?どうしたの?』

 

三玖「……これから話すことはただの独り言…。だけど、聞いてほしいの…」

 





危ない危ない…。スランプに落ち入りかけた…。
ちなみにこの先も書けていたんですけど、いい感じに区切れなくてグダりました。

次話は明後日投稿を目標にします(その日に絶対に出せるとは言っていない)

一度スランプに陥ってしまうと、半年とか1年とか空く可能性があるので、そこまで長くは続かない(と思われる)この作品は完結させたい…。というか、まだ1つも完結させたことがないので、まずはこの作品を完結まで書き切りたいですな…。勿論打ち切りによる完結は除外します。


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第15話 結び伝説

⚠︎注意⚠︎

『クロスオーバーが苦手な人』
『台本形式が苦手な人』
『細かいことが少しでも気になる人』
『原作のカップリングが崩されるのが嫌な人(特に飯ビー)』
上記に当てはまる方はブラウザバックを『強く』推奨します。

通常公開、クロスオーバー、原作ヒロインという時点である程度の批判は覚悟しているつもりですが、注意書きを読まないで批判するのはダメですよ。説明書を読まずに操作方法が分からんって文句を言ってるようなものですよ。

注意書きの内容は話ごとに変わる可能性もあります。ご了承下さい。



 

悟飯がかまくらから出た少し後に三玖も出てきた。

 

三玖「あれ?まだここにいたんだ?」

 

悟飯「うん。どこに行けば四葉さんに見つからないか考えていたところ」

 

三玖「一花からあるお願いをされた」

 

悟飯「お願い…?」

 

三玖「うん…。1人でいる五月を見つけて欲しいって」

 

悟飯「そういえば、まだ一度も見かけてないね…。ちょっと心配になってきたかも…。一緒に探そう!」

 

三玖「うん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まずやってきたのは食堂。なんとなくではあるが、五月さんならここにいる気がした。

 

三玖「悟飯。無意識にここに来たんだろうけど、五月に失礼」

 

悟飯「でも、コースで一度も見かけてないんだよ?いるとしたら屋内だと思ったんだけど……」

 

三玖「もしかしたら、上級者コースにいるのかも…」

 

仕方ないので、また外に出る。そこに…。

 

四葉「あー!孫さんと三玖も発見!」

 

何故か上杉くんにのしかかっている四葉さんがいた……。

 

悟飯「あっ……」

 

三玖「すっかり忘れてた……」

 

五月さんを探していたせいか、僕もすっかり忘れていた……。

 

悟飯「上杉くん、大丈夫…?」

 

風太郎「あ、ああ……」

 

……?少し鼻声に聞こえるような気がする…。顔がよく見えないからなんとも言えないな……。

 

四葉「これであと五月だけですね!」

 

悟飯「えっ?四葉さんも見つけてないの?」

 

四葉「はい…。五月だけは探しましたけど、見かけもしませんでした…」

 

妙だな…。これだけの人数がそれぞれ別の場所で滑っていたというのに、誰一人として見かけないということがあり得るのだろうか…?

 

………そういえば、一花さんの気だけは見つけられてないような…。でも、一花さんはさっきも滑ってたはずだし…。

 

………待てよ…?コテージの方の気を探ってみよう…。

 

 

…………………

 

 

……!!

 

ど、どういうことだ!?一花さんの気はコテージに…!?ということは、さっき滑っていた一花さんは消去法で…。

 

 

一花「やっほー」

 

二乃「ったく…。いきなりなんなのよ…」

 

 

っと、考え事をしている時に丁度二乃さんと一花さんも来た。

 

……やはり、何度探ってみても五月さんだと思うんだよなぁ…。でも五月さんが一花さんに変装する意味があるのだろうか……?

 

 

二乃「さっき四葉が言ってた通り、私達も見てないわよ」

 

風太郎「……なるほどな。事態は思ったよりも深刻かもしれない…」

 

二乃「………詳しく聞かせなさい」

 

風太郎「これだけみんなで動き回っているのに、誰一人として見かけもしないのは不自然だ」

 

三玖「五月はスキーに行くって言ってたんだよね?」

 

一花「えっ?う、うん…。もしかしたら、上級コースにいるんじゃない?」

 

二乃「そこは私も行ったけどいなかったわ」

 

一花「……丁度入れ違っちゃったのかも…。私、見てくるね」

 

……やはり一花さんだと思われていた人物は五月さんでほぼ確定かな…?誤魔化そうとしている様にも見える…。

 

四葉「あっ!ここ見てないかも!」

 

そう言って四葉さんが指さしたのは…、確か、先生が注意してたコースだ…。

 

悟飯「でもそこは先生が立ち入り禁止って言ってたから、そこにはいやないんじゃないかな…?」

 

四葉「間違えてそこに行っちゃったのかも……」

 

二乃「……!私、本当にコテージにいないか見てくるわ!」

 

四葉「私は先生に言ってくるよ!!」

 

一花「ちょ、ちょっと待って!!もう少し様子を見てみようよ!」

 

二乃「なんでよ!場合によってはレスキューが必要になるかもしれないのよ!!」

 

……本物の一花さんなら、みんなの協力を惜しんででも五月さんを探すはずだ。やはり動機はともかく、五月さんが変装していると仮定した方が色々と辻褄が合う……。

 

一花「えっと…。五月ちゃんは大事にしたくないんじゃないかなって……」

 

二乃「……呆れた…!五月の命がかかってるのよ!?気楽になんていられないわッ!!!!」

 

一花「……ごめんね」

 

風太郎「どこにいる、五月……」

 

三玖「……フータロー。顔が赤いよ?もう休んだ方がいいよ。…聞いてる…?」

 

…やっぱり無理をしていたのか…。一般人の気の大きさだと、僅かな乱れも感じにくい……。

取り敢えず休ませた方が良さそうだな…。

 

……!上杉くんが一花さんの方を見ているな…。……もしかして、気付いたのだろうか…?

 

悟飯「……上杉くんはもう休みなよ」

 

風太郎「…何言ってんだ…。心当たりがあるってのに……」

 

悟飯「僕も心当たりがあるから、上杉くんは休んでて。僕に任せてよ……」

 

風太郎「……お前に任せていいんだな?」

 

僕はゆっくりと頷く。上杉くんも気付いたみたいだ…。

 

二乃「それ、本当?」

 

悟飯「うん。ただ、それには一花さんの協力が必要なんだ」

 

一花「私…?」

 

二乃「……信じていいのね?」

 

悟飯「……任せて」

 

僕は一花さん(と思われる人物)と共にリフトへと向かった……。

 

風太郎「……確かに任せても良さそうだな……」

 

二乃「それどういう意味……よ…?」

 

 

ドサッ…

 

 

四葉「う、上杉さん!?」

三玖「フータロー!?」

 

二乃「ちょ、ちょっとアンタ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一花「まさか探すって……、リフトの上から…?」

 

悟飯「いや、別にリフトに乗る必要はなかったんだけど…、できるだけみんなに見られない方がいいかなって思ってね」

 

一花「それって、どういう意味…?」

 

悟飯「ちょっと失礼」

 

 

バサッ

 

 

フードを捲ると、髪を伸ばした一花さんが………。いや、五月さんがそこにはいた。……僕と(恐らく)上杉くんの予想通りだ。

 

 

悟飯「……こんな大事になっちゃうなら、僕がもっと早く言うべきだったね…」

 

五月「………今日初めて会った時から、気付いてたんですか……?」

 

悟飯「うん。でも僕の勘違いかと思っていたから自信はなかったけど…」

 

五月「……一昨日も1回で5人を言い当てましたよね…?孫くんはどうして私達を見分けられるんですか…?私達は出会ってからそんなに経っていませんよ?」

 

五月さんになら、僕がどうやって5人を区別してるか話しても問題はないだろう。

 

悟飯「昨日、僕は生き物なら『気』は誰でも持っているって言ったよね?」

 

五月「え?えぇ…」

 

悟飯「その気はね、人によって違うんだよ。DNAや指紋みたいに区別することができるんだ。

五つ子の五月さん達は他人に比べれば凄く似た気を持っているけど、性格のせいなのかどうかは分からないけど、微妙に違うんだよ。その微妙な違いから区別しているんだ」

 

五月「……孫くんは私達をよく見ているんですね…」

 

悟飯「僕だけじゃないよ。上杉くんも気付いていたみたい。上杉くんは、僕みたいに気を感知することはできないだろうから、どうやって気付いたのかまでは、本人に聞かないと分からないけどね」

 

五月「………すみませんでした…。私、確かめたくて……」

 

………よく見ているんですね、と呟いていたことから、僕達がちゃんと五人と向き合っていたのかどうかを確認したかったのかな…?

 

悟飯「大丈夫だよ。みんな無事だったわけだし、ちゃんとみんなに謝れば、最終的には笑って許してくれるよ。少しの間は怒られるかもしれないけどね。特に二乃さんに……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

孫くんは私たちのことをちゃんと見てくれていたようだ。一花の言う通り、実のお父さんとは違うみたいですね…。でも上杉くんまで私のことに気付いていたのは驚きだ。……………もしかして、上杉くんがスキーで暴走していた時に『上杉くん』と呼んだだけで気付いたのだとしたら………。

 

…………上杉くんに対する評価も改めなければなりませんね…。

 

 

 

隣の彼と上杉くんは同じ家庭教師であり、同じ男性である。二人とも私達のことをしっかり見てくれている。

 

………しかし、私は孫くんと上杉くんである種の区別をしてしまっている…。

いつ言ったかはもう覚えてないが、私は『家庭教師と生徒は一線を置いて然るべき』と言った。

 

そのはずなのに、何故か孫くんのことは愛おしく感じてしまう…。今更誰にも言われなくたって、この感情が恋というものだということに気付いてしまっている。

 

本当に、私は不純な子です…。

 

 

 

ポフっ…

 

悟飯「……えっと、五月さん?別に前の人みたいに寄りかかる必要は……」

 

五月「……すみません。孫くんがフードを取ってしまったものですから寒くて……」

 

悟飯「いや、自分で被り直せば良くない……?」

 

五月「……そういうことではありません」

 

悟飯「えっ…?ど、どういうこと…?」

 

五月「自分で考えて下さい」

 

悟飯「……(何で僕が怒られているんだろう………)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そしてコテージに戻ると……。

 

 

「よく連れてきてくれたな!上杉は一旦この部屋で安静にさせ、様子を見る。これ以上悪化するようなら、私が病院に送ろう。コイツの荷物を持ってきてくれ」

 

 

上杉くんが先生に担ぎ上げられている…?何があったんだ……?

 

一花「ごめん…。私のせいだ…!」

 

三玖「一花!」

 

 

悟飯「うわっ!?」

 

一花さんは僕のことはお構いなしに、横を通り過ぎて行ってしまった。

 

 

「お前達は着替えて広場に集合だ。じきにキャンプファイヤーが始まる」

 

五月「ま、待って下さい!私も残ります!!」

 

二乃「五月!?あんた今までどこに行ってたのよ!?」

 

風太郎「お前達がいても仕方ないだろ…。一人にしてくれ………」

 

二乃「あんたちょっと冷たいんじゃない?五月はアンタを心配して……」

 

「ということだ。早く行きなさい!」

 

五月「でも……」

 

「安静と言っただろう!これよりこの部屋を立ち入り禁止とする!見つけたら罰則を与えるからな!!」

 

三玖「フータロー…。せっかく林間学校に前向きになってくれたのに…。一人でこんな終わり方なんて……寂しいよ…」

 

そこまで悪化していたとは…。もう少し周りに気を配れればここまで酷くはならなかったんじゃ……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「最後のダンスどうする〜?」

 

「俺、今から誘っちゃおうかな?」

 

二乃「……くだらないわ」

 

「あれ?どうしたの二乃?」

 

「男子と踊るってテンション上がってたじゃん?」

 

二乃「………先約があったみたい………。ちょっとトイレ」

 

「早くしないと始まっちゃうよー!」

 

 

 

 

 

 

 

 

三玖「はい一花。これあげる」

 

一花「……抹茶ソーダ(これ)、ホットもあるんだ……」

 

三玖「……」ピタッ

 

っと三玖は一花のおでこに自身のおでこを当てて、熱の有無を確かめる。結論から言うと、平熱にまで下がっている。

 

三玖「治ってる…」

 

一花「……やっぱり、私がフータロー君に移しちゃったかな…?」

 

三玖「……フータローは最初からおかしかった」

 

一花「えっ…?」

 

三玖「今にして思えば、ずっと具合が悪かったんだと思う。もっとよく見てあげてたら……私も自分のことで必死だったから…………」

 

一花「………ごめんね。せっかく悟飯君と踊れるのに、そんな気持ちにさせちゃって……。私のせいで……」

 

三玖「一花は悪くないよ……」

 

そう言いながら、一花をギュッと抱きしめる。

 

一花「えっ?三玖?」

 

三玖「ずっと気にしていた。みんなが悟飯とどう接しているのか。私だけが特別なんて、平等じゃないと思っていたから……」

 

一花「そんなこと……」

 

三玖「でももうやめた…」

 

 

(独り占めはしたい…。この感情に嘘はつけない…。だけどそれは今じゃない……)

 

 

三玖「私は悟飯が好き

 

 

三玖「だから好き勝手にするよ。その代わり、みんなも、一花も……、好きにしていいんだよ?」

 

一花「好きにって、私は……」

 

三玖「一花はフータローのことが好きなんでしょ?一花は長女だから色々と気にしているのかもしれないけど、そんなの気にしなくていい。一花も好きにしなよ」

 

一花「……」

 

一花は『やれやれ…』と少々呆れつつも嬉しそうな表情を浮かべ、三玖にもらった抹茶ソーダ(ホット)を口にする。

 

一花「うーん……。絶妙にまずい…」

 

三玖「えっ?そ、そうかな…?」

 

一花「でも、効果抜群だよ。ありがとね?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

悟飯「上杉くん大丈夫かなぁ……」

 

五月「先生が付き添ってくれるそうなので、大丈夫だと思います…。多分…」

 

上杉くんの荷物を取り敢えず運ぶことになった。なので、上杉くんの班の部屋に向かっているところだ。

 

……そっちの方向に四葉さんの気があるので既に準備をしているのだろうか?

 

五月「私が一花のふりをしなければ…」

 

悟飯「五月さんのせいじゃないよ…」

 

部屋に入ると、やはり四葉さんもいた。

 

五月「四葉?荷物はまだ…」

 

四葉「……」

 

しかし、荷物を纏めているというわけでもなく、付箋だらけのしおりをただじっと見ているだけだった。

 

五月「四葉……?」

 

四葉「これ、上杉さんのしおり…。付箋やメモが沢山…。こんなに楽しみにしてくれていたのに……。具合の悪い上杉さんを無理矢理連れ回して、台無しにしちゃった…」

 

「「……」」

 

四葉「私が余計なことをしちゃったから……」

 

悟飯「……無駄じゃないよ」

 

四葉「……そうでしょうか」

 

悟飯「…僕と上杉くんはそれなりの付き合いだからなんとなく分かるんだけど、上杉くんは四葉さんに感謝していると思うよ?」

 

四葉「…なんでそんなことが分かるんです…?」

 

悟飯「この林間学校での上杉くんの様子を思い出してごらん?」

 

五月「……柄にもなくテンションが高かったですね…」

 

四葉「いつもの上杉さんとはギャップがあって驚きましたね……」

 

悟飯「元々上杉くんは林間学校はどうでもいいって思っていた。でも本当は楽しいものだということを気付かせてくれたのは、四葉さんなんだよ」

 

四葉「私が……?」

 

悟飯「うん。四葉さんが上杉くんに対して色々とお節介を焼いてくれたお陰で、上杉くんは林間学校を楽しめたんだよ。だから、上杉くんは四葉さんに感謝していると思うよ?」

 

四葉「……だったら嬉しいな…」

 

この時、初めて四葉さんの本心というか…、四葉さんの素を見たような気がしたけど、気のせいだろうか…?

 

四葉「私、上杉さんに聞いてみます!」

 

悟飯「今!?今はやめた方がいいよ!」

 

四葉「こっそり行けば大丈夫ですって!」

 

五月「……ストレート…」

 

悟飯「行っちゃった………」

 

五月「……孫くん。ちょっと付き添ってほしいんですけど……」

 

悟飯「うん?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

五月「…………」

 

どういうわけか、五月さんと一緒に上杉くんのいる部屋に潜入している。

 

悟飯「なんか泥棒みたいだね…」

 

五月「電気が付いていたら先生に気付かれてました……」

 

悟飯「しかし…。先生が寝ている隙に忍び込むなんて、随分大胆なことを考えたね?」

 

五月「……ですが、彼を独りにするわけにはいきません…」

 

悟飯「……そうだね」

 

………なんというか、流石五つ子だなぁと感心する。何故そんなことを僕が思っているのか。それは明かりが付けばみんな分かるだろう。

 

 

カチッ

 

「「「「「えっ…」」」」」

 

四葉「ええっ!?みんな来てたの!?というか孫さんもいる!!??」

 

悟飯「ど、どーも…」

 

五月「しーっ!四葉静かに…!」

 

二乃「なんであんた達がここにいるのよ!?」

 

三玖「二乃こそ意外」

 

二乃「わ、私はただ……」

 

一花「私たちもフータロー君が心配で来たんだよ」

 

四葉「えへへ、なんか嬉しいね!」

 

二乃「わ、私は違うって言ってるでしょ!?」

 

五月「…上杉くん、みんなあなたに元気になってほしいと思っています。上杉くんがどんな人なのか、私にはよく分かりませんが……、目が覚めたら、よければ…、教えて下さい。あなたのことを……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……その日の夜、僕は夢を見ていた。

 

 

 

悟飯「……よし…。こんな感じの服装で大丈夫かな…?」

 

チチ「あー…。今日は風太郎さの結婚式の日だったか…?気をつけて行ってくるだぞ〜!」

 

悟飯「はーい!」

 

……随分と現実的な夢だった。僕が夢で見たものは、上杉くんの結婚式に参加するというものだった。

 

 

 

悟飯「ここ……だよな…?結婚式に参加するのは、今回が初めてだから緊張するなぁ……」

 

「よう!久々だな!」

 

「久々だねー、孫くん」

 

悟飯「あっ!……えっと…」

 

「お、おい!?まさか忘れたわけじゃねえだろうなッ!?」

 

悟飯「いや、もう2人とも前田……でいいんだっけ…?」

 

「そうだよコラ。しかし、しっかり学者をやってるみたいだな。前よりも秀才に見えるぜ」

 

悟飯「まだ教授の補佐だけどね……」

 

「それでも十分すごいでしょ。西の都のあの有名大学の教授補佐ってだけでもさ」

 

悟飯「あ、あはは……」

 

「しかし結婚式か…。俺たちの結婚式を思い出すな」

 

「こんな立派な式であれを思い出す?」

 

「うっ……」

 

「嘘。私の中では立派な式だったよ」

 

「そ、そうか……。しかし、お前には感謝だな」

 

悟飯「えっ…?僕?」

 

「ああ。お前が林間学校のあの日に助言してくれたお陰で、こいつと踊れたんだ」

 

悟飯「あの林間学校か…。懐かしいなぁ…。色々あって結局僕は踊れなかったけど……」

 

「……そういや、あの時ってさ、上杉達も………………」

 

前田くんがそう言いかけた時、新婦。つまり、上杉くんの妻にあたる人が入場してきた。

 

悟飯「わ、わ〜……」

 

「なに緊張してるんだよお前?お前だってあと少ししたら、今上杉がいるところにいるんだろ?」

 

悟飯「そ、そうだけど……」

 

「もっとシャキッとしろよ!お前それでも男か?」

 

「まあまあ、あんたと違って孫くんはやる時はやる男だから」

 

「あっ?う、うっせー!」

 

「嘘。あんたもしっかりしてるよ」

 

「そ、そうか…」

 

悟飯「あ、あはは………」

 

夢の中の僕は、上杉くんの新婦さんも、僕の新婦さんも誰だか理解していたんだろうけど、今の僕自身には誰のことだかよく分からなかった。これが俗に言う、正夢というやつだろうか?

 

 

 

 

 

結び伝説の日。

 

キャンプファイヤーの結びの瞬間、手を繋いでいた二人は………

 

 

 

 

 

生涯を添い遂げる縁で結ばれるという……………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その時、僕は見ていた。

 

 

「あの時もずっと耐えてたんだよね。私も周りが見えてなかったな…」

 

 

一花さんは上杉くんの親指を……

 

 

「らしくないこと言ってないで、早くいつもの調子に戻りなさい」

 

 

二乃さんは人差し指を……

 

 

「私たち五人が付いてるよ」

 

 

三玖さんは中指を……

 

 

「私のパワーで元気になって下さい!!」

 

 

四葉さんは薬指を……

 

 

「この三日間の林間学校。あなたは何を感じましたか?」

 

 

五月さんは小指を掴んでいた。

 

 

 

 

四葉「…って、この流れで何で孫さんはどこも掴まないんですかッッ!?」

 

悟飯「いや、具合が悪い時は安静にさせてあげるのが1番だし……」

 

四葉「冷たいッ!ロマンがない!!」

 

五月「ちょっと四葉…!静かにしないと……」

 

風太郎「……」ムクッ

 

あっ……。やっぱり起きちゃったよ。

 

一花「起きた…!」

 

五月「元気になったんですね」

 

四葉「おまじないパワーすごい!!」

 

風太郎「……るせえ」

 

四葉「えっ?」

 

風太郎「うるせえ!!寝られないだろッ!!!!」

 

っと怒られたせいなのか、五人は慌てて部屋を後にしようとする。

 

風太郎「てか、何でお前までここにいるんだ」

 

悟飯「いや、上杉くんが心配で…」

 

風太郎「安静にしてれば勝手に治る……というか、一人にしてくれ…。寝たい…」

 

悟飯「あはは……分かった……」ポッ

 

風太郎「……ん?」

 

悟飯「はいはい!みんな、先生に見つかる前に出ないと!」

 

二乃「わっ!ちょっと押さないでよ!」

 

死ぬということは恐らくないだろうけど、体調不良に気づけなかったことに対する謝罪も兼ねて、去り際に上杉くんに少しだけ気を分けた。

 

 

 

 

……それにしても、夢の中での僕のお嫁さん…………誰だったんだろう…?

 





宣言通りなんとか今日に投稿できた……。これでまた書き溜めが0になるからどうしましょうかねぇ…()

さてさて、新たな展開を思い付いたのでここにお知らせしておきます。新たな敵が更に一人出てきます。ちょっと後の話になりそうだけど……。
その敵は皆さんがよーく知っているやつだと思います…。あっ、ブウじゃないですよ。ブウはまだ出てきません。
当作品のブウ編は原作とは一味か二味くらい違う展開になる……かもしれないです。

次回の投稿は………今週は忙しくなりそうだから3日後に投稿できるかどうかは分かりませんね…。できたら投稿します。

ようやくアニメ1期に該当する部分は終わった…。ちなみに私はごとよめの原作もちゃんと見ていますよ(今更)。

悟飯の将来のお嫁さん……一体誰でしょうねぇ…?実を言うと作者の私ですら分かりません。要するにみt((殴


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第5巻
第16話 胸に秘めた想い


⚠︎注意⚠︎

『クロスオーバーが苦手な人』
『台本形式が苦手な人』
『細かいことが少しでも気になる人』
『原作のカップリングが崩されるのが嫌な人(特に飯ビー)』
上記に当てはまる方はブラウザバックを『強く』推奨します。

通常公開、クロスオーバー、原作ヒロインという時点である程度の批判は覚悟しているつもりですが、注意書きを読まないで批判するのはダメですよ。説明書を読まずに操作方法が分からんって文句を言ってるようなものですよ。

注意書きの内容は話ごとに変わる可能性もあります。ご了承下さい。

今更かもしれませんが、今話は五等分の原作のネタバレ要注意です。



 

今日は学校帰りに上杉くんのお見舞いに来ている。結局は上杉くんはあの後に体調が悪化してしまい、入院することになったそうだ。

 

『牡羊座の人ごめんなさい!今日の最下位です!友達と会うと運気がアップ!』

 

風太郎「……異論はないな」

 

悟飯「あはは……。これ、学校のプリントね」

 

風太郎「サンキュー。そういや、一花は学校に行ってるか?」

 

悟飯「一花さん?ちゃんと来てるけど、何か用事?」

 

風太郎「………いや、別にそういうわけではない」

 

悟飯「そう?……それにしても、随分豪華な病室だよね?」

 

風太郎「ああ。お陰で看護師の間では院長の隠し子なんじゃないかって噂で持ちきりなんだぞ」

 

悟飯「まあタダで入院できるだけでもいいじゃん?」

 

風太郎「ああ。あいつらの親父さんには感謝しないとな…。しかし、アイツらも冷たいよな?見舞いに来てくれてもいいだろう」

 

悟飯「あー…。今日は用事があるみたいだよ?5人とも…」

 

風太郎「まあいいさ。あいつらが来るとうるさいからな」

 

来てほしいのかほしくないのかどっちなのさ……。

 

っと心の中で上杉くんに対してツッコミを入れると……。

 

 

ガラッ!

 

悟飯「あれ?二乃さん?」

 

二乃「誰もいないわね…?」

 

風太郎「な、なんだ?ここは俺の部屋だぞ?」

 

二乃「誰がお金を払ってると思ってんのよ?」

 

風太郎「だからってこれは大袈裟だろ。お陰で看護師の間では、院長の隠し子なんじゃないかって噂で持ちきりだ」

 

二乃「仕方ないでしょ?あの子達が、あんたが死ぬんじゃないかってくらいに心配してたんだから……」

 

風太郎「入院費を払ってくれたのも、どうせお前の親父さんだろ?」

 

二乃「そうよ!だから私が払ったも同然よ!!」

 

悟飯「いや、その発想はおかしいよ…」

 

二乃「何よ?何かおかしいところある?」

 

風太郎「寧ろおかしいところしかないことに気付け…。しかし、まさかお前が見舞いに来てくれるとは思いもしなかった」

 

二乃「えっ?そ、そうね…。ってこんなことしてる場合じゃなかった!いい?私がここにいることは内緒よ!」

 

っと、二乃さんはカーテンに包まって隠れてしまった。一体どういう意味だろうか…?

 

 

ガラッ!

 

四葉「上杉さん!あっ、孫さんも!!ここに二乃が来ませんでしたか!?」

 

一花「やっほー、林間学校ぶりだね?」

 

三玖「体調はどう?」

 

今度は一花さん、三玖さん、四葉さんが入ってきた。上杉くんの言う通り、確かにうるさいかもしれない……。

 

四葉「よかった!生きてて一安心です!」

 

風太郎「お前らまで……。ったく、誰が来いって言ったよ……」

 

っと、悪態を吐くような言い方をしつつも、笑みが隠し切れていなかった。素直じゃないなぁ。上杉くんは…。

 

四葉「……ん?やはり二乃の匂いがします…!」

 

風太郎「あいつそんなに体臭がキツかったのか……。可哀想に……」

 

 

ドンッ!!

 

 

四葉「……今なにか音がしませんでした?」

 

一花「私も聞こえた」

 

三玖「私も…」

 

悟飯「…そ、それ僕!」

 

四葉「なーんだ!しっかりして下さいよ!」

 

なんか咄嗟に二乃さんを庇っちゃった……。まあいいか。

 

悟飯「上杉くん。二乃さんのは、多分体臭じゃなくて香水…」

 

風太郎「あっ、そっちか!」

 

三玖「一時はどうなるかと思った。真夏の気温ぐらいまで体温が上がってたもん」

 

確かに、38℃ぐらいの発熱だったからねぇ……。

 

一花「寂しかったらお姉さんに言いなよ?いつでも看病してあげるからさ?」

 

風太郎「サンキュー。でも一人の方が楽だ」

 

ゴンッ!!

 

……チョップしただけでそんな音がするかな…??

 

風太郎「痛…。知ってる?俺、病人なんだけど……?」

 

一花「今のはフータロー君が悪いぞ」

 

風太郎「……そういえば、ちゃんと学校に行ってるらしいな?」

 

一花「……うん」

 

風太郎「ふっ…。所詮はその程度の覚悟だったというわけだ」

 

一花「もー、また意地悪言う……」

 

…チョンチョン

 

っとつつかれる感覚がしたと思ったら、三玖さんだった。

 

三玖「……一花と風太郎がなんの話をしてるか分かる?」

 

悟飯「さあ…。僕にも分からない……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

学校なんてつまらないからすぐにやめられるって思ってたけど、もう少しこのままで……。

 

 

未練ができちゃったから……。

 

 

 

無愛想で…

 

気が利かなくて……

 

意地悪で……………

 

 

 

 

『なんで君なんだろうね……』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一花「……あれ?もしかして食欲ないの?」

 

風太郎「ああ…」

 

一花「ほら、ちゃんと食べないとダメだぞ〜?」

 

っと言いながら、一花さんは上杉くんにパンを渡す………わけではなく…。

 

風太郎「…自分で食えるからいい」

 

一花「病人が無理しない!ほら、あーんして!」

 

風太郎「だから…!」

 

一花「隙あり」

 

風太郎「むぐっ!?…………なんだこれ…?」

 

一花「……ふふっ…」

 

 

もしかして………。

 

 

悟飯「……ねえ三玖さん。一花さんって上杉くんのこと………」

 

三玖「……人のことは気付くんだ…」

 

悟飯「えっ?何か言った…?」

 

三玖「別に……」ムスッ

 

あれ?何故かご機嫌斜めだ…?僕、何か機嫌を損ねるようなことしたっけ?

 

四葉「二乃みっけ!」

 

二乃「あんた犬かぁ!?」

 

四葉「ほら行くよ!」

 

二乃「や、やめなさい!!」

 

一花「じゃあ私達も……」

 

三玖「フータローも早く治るといいね?」

 

4人は嵐?のように突然現れて去って行った…。

 

風太郎「………なあ」

 

悟飯「うん?」

 

風太郎「……見舞いされるのは、いいもんだな?」

 

悟飯「……そうだね」

 

ガラッ!

 

四葉「孫さん!五月を探すのを手伝ってほしいんですか!!」

 

悟飯「病院では静かに!!」

 

 

 

 

 

 

 

四葉さんから説明を聞いた。要約すると、予防接種を受けに来たのに、五月さんと二乃さんは注射が怖くて逃げてきたとのこと……。

 

悟飯「注射が怖いって…。二乃さんって可愛いところもあるんだね…」

 

二乃「あんたに言われても全然嬉しくない!!」

 

一花「こら二乃。病院では静かに」

 

四葉「でもよかったね!上杉さんのお見舞いもついでにできたし!」

 

悟飯「えっ?ついで…?」

 

………上杉くんには内緒にしておこう。

 

 

「この裏切り者ッ!!!!」

 

うわっ!?なんだ!!?って、上杉くん!?さっきの聞いてたんだ……。

 

二乃「いいじゃないの。来たんだから」

 

風太郎「ついでだろ!!」

 

一花「も、勿論フータロー君のことも心配してたよね?」

 

四葉「そうです!病院に来てから思い出したなんてことはありません!!」

 

三玖「四葉、バレバレ」

 

 

「君が裏切り者だーッ!!」

 

 

こ、今度はなんだ!?って、お医者さんか……。

 

「ほら!病人は大人しくする!」

 

風太郎「は、はあ……」

 

 

あっ、いけない。五月さんを探さないとだ……。

 

一花「じゃあ私はあっちを探してくるよ」

 

二乃「じゃあアタシはこっち」

 

三玖「じゃあ私はそっち」

 

悟飯「あっ!ちょっと!!」

 

って行っちゃった…。五月さんの気を見つけたから、わざわざ手分けして探す必要はないのに……。

 

四葉「どうしたんです?」

 

悟飯「いや、五月さんの居場所の見当がついたんだけど……」

 

四葉「本当ですか!?それどこです!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

四葉「って、ここは上杉さんの部屋ですよね?さっきも来ましたよ?」

 

悟飯「どうやらタイミング悪く入れ違いになっちゃったみたいで……」

 

四葉「それじゃあ五月を呼びに……」

 

 

 

「教えて下さい。あなたが勉強する理由を………」

 

 

 

四葉「……なんか入りづらい雰囲気ですね……」

 

悟飯「確かに……」

 

四葉「……そういえば、孫さんはなんで勉強をしているんですか?」

 

悟飯「……僕は将来の夢を叶える為かな?」

 

四葉「夢…?」

 

悟飯「うん。僕は小さい頃から学者になることが夢だったんだ。学者になって、多くの人の命を救えるようになりたいと思って……」

 

四葉「……それだと、家庭教師のお仕事をする理由は……?」

 

悟飯「論文とかを発表する時、相手に理解してもらう必要があるからね。相手が理解できるような説明をできる能力を培うのに丁度いいかなって思って……。勿論、生活費のサポートをする為でもあるけど……」

 

四葉「……孫さんは未来のことをちゃんと考えてるんですね」

 

 

 

「……何してるんだお前?」

 

「本当のことを教えてくれるまで睨み続けます!」

 

「そうか…。だったら俺はお前が諦めるまで睨み続けてやる!!」

 

あの2人は一体何をしているんだ…?

 

 

 

四葉「……孫さん、上杉さんが勉強する理由をご存知なんですか?」

 

悟飯「えっ?ま、まあ…。前に一回だけ聞いたことがあるよ?」

 

四葉「……教えてくれませんか?」

 

悟飯「えっ?それなら上杉くんに直接聞いた方が……」

 

四葉「それは、なんというか…。聞きづらいです……」

 

悟飯「うーん……。本当はあまり言いふらしちゃいけないけど…、分かった。でも、話したことは上杉くんには内緒だよ?」

 

四葉「勿論です…!」

 

 

 

 

 

 

 

 

上杉くんは、今でこそちゃんと勉強をしているが、昔は遊び呆けていて、勉強とは無縁の生活を送っていたそうだ。

 

金髪に染めてピアスを付けている時期があったと聞いた時は心底驚いた。

 

そんな上杉くんが勉強するようになったきっかけは、5年前の京都の修学旅行にあるという……。

 

 

上杉くんは新幹線の中で七並べをしていたそうだ。班は上杉くんを含む男子3人に、女子2人だったらしい。その時に、新幹線の中でも勉強している男の子がいて、その子に…。

 

 

『不要な物は捨てていけ』

 

 

っと言ったそうだ。

 

だけど、その男の子と女の子は幼馴染で仲が良かったらしく、もう一組の男女も仲が良かったらしい。

 

そこで、上杉くんは、不要なのは自分だと思ったらしく、腹痛を装って単独行動をしていたらしい。

 

ある場所でカメラをいじっていると、コスプレをしたおばさんに盗撮を疑われたそうだ。そこで困っている時に…。

 

 

『その人は無罪だよ。私見てたもん』

 

 

……と、白い服を着て、髪を腰下まで伸ばした女の子に助けられたらしい。

お互いに逸れ者同士ということで、一緒に色々と見て回ったらしい。

 

その途中でその子が5つも同じお守りを買ったそうで……。

 

 

『私がみんなのお手本になるんだ!』

 

 

っと言ったそうだ。

 

その後、お互いに、人に必要とされる存在になろうと約束したそうだ。それを機に、上杉くんは勉強するようになって、今に至るらしい。今の自分になれたのはその子のお陰だと言っていたっけな……。

 

上杉くんが素直に感謝の気持ちを述べることは中々ないので、この話は印象深かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

悟飯「………とまあ、こんな感じだったかな…?」

 

四葉「……風太郎くんが、そんなことを……?」

 

えっ?今、()()()()()って……?

 

四葉「えっ…?き、気のせいですよ…!空耳です…!!」

 

悟飯「そ、そう…?」

 

確かに『風太郎くん』って言ってた気がするんだけどなぁ……。

 

四葉「そっかぁ…。上杉さんにそんな過去があったなんて…。それに比べて私は……」

 

 

ポロっ…

 

 

っと、四葉さんは涙を…………

 

………?なんでこのタイミングで…?

 

 

 

 

 

……待てよ?もしかして……。

 

 

 

仮に上杉くんの思い出の子が四葉さんだったとしよう。四葉さんは上杉くんと約束をした後、勉強に励んだ。だけど結果は実らず、姉妹揃って落第をして転校することになった…。

 

そこで上杉くんに再会できたはいいが、勉強ができるようになった上杉くんに比べて、自分は約束を果たすことができなかった……。

 

上杉くんがその時のことを大切に思っていた。四葉さんはそれを知ったからこそ、今ここで涙を流したのではないだろうか…?

 

少なくとも、四葉さんもその時の約束を大切にしていたはず……。なんとも思ってなかったら、涙なんて流さないもんね。

 

 

……と、ここまで考察……というよりは妄想に近いけど、こう考えると、四葉さんが最初から上杉くんに対して明るく接していたのはそういうことではないだろうか?

 

 

「昔のお守りを引っ張り出してきました!!」

 

「……それ、どこで買ったんだ…?」

 

「えっ…?買ったかもらったかどうかは覚えてませんが……。確か、5年前の京都で……」

 

 

………妄想じゃなくて立派な考察になるかもしれない…。

 

 

結構前から感じていたことだが、四葉さんが上杉くんに接する時、本当に初対面なのだろうか?と思ったことは何度かある。特に上杉くんにかなり協力的だった上に、上杉くんに対して世話焼きだったから…。

 

でも、それは四葉さんの性格がそうしてるものだと思っていたけど……。

 

 

悟飯「……四葉さん。まだ約束を果たせてないって決めるのは早いんじゃないかな…?」

 

四葉「えっ…?な、何を…?」

 

悟飯「……5年前に上杉くんが会った女の子ってさ………」

 

「あっ!こんなところにいたんだ」

 

……なんとタイミングが悪い。院内のあちこちを探し回ったのであろう、一花さん達3人が戻ってきてしまった。

 

二乃「なによ。私たちは必死になって探してたってのに……」

 

三玖「それで、五月は?」

 

四葉「五月ならここにいるよ?はい!五月みっけ!!」

 

五月「えっ!?よ、四葉!?」

 

三玖「これで5人揃った。今度こそ行くよ」

 

二乃「五月!私は覚悟を決めたわ!あんたも道連れよ!!」

 

五月「い、嫌です!!孫くん!助けてください!!」

 

悟飯「ダメだよ五月さん!予約したならちゃんと行かないと!」

 

一花「だってさ」

 

三玖「往生際が悪い」

二乃「諦めなさい!」

 

五月「わーーん!!嫌です〜!!!」

 

悟飯「病院では静かに!!」

 

 

……四葉さんに聞きそびれちゃったな…。

 

もしも僕の推測が当たっているとしたら、誰よりも成績を上げたいのは四葉さんなのではないだろうか?

 

……本人から答えを聞いてないのに結論を出すのは早計か…。どこかのタイミングで聞ければいいけど……。

 

 

それにしても、5年前に偶々会って、そこで約束した人と高校でまた会うなんて、まるで運命的な出会いだな…。

 

 

……って、うん?四葉さんからメールが来ているな…。内容は要約すると…。

 

 

『注射終わったので2人でお話しませんか?他の4人には寄りたいところがあると言っておいたので』

 

……とのこと。取り敢えず、他の4人が通ることはないところに移動しよう。

 

……と思ったら、地図と一緒に四葉さんの方から場所を指定してきた。

 

悟飯「ここ……公園…?」

 

 

 

 

 

四葉さんに指定されたところに向かうと、既に四葉さんがいた。

 

四葉「さっきぶりですね。あまり女の子を待たせないのは感心ですね!欲を言えば、女の子よりも先に来てる方がいいんですけど…」

 

悟飯「……それで、話って…?」

 

四葉「……孫さんも薄々勘づいているんじゃないですか?」

 

やはり、僕がさっき聞こうとしていたことだろうか…?

 

四葉「もう気付いていると思うので言っちゃいますね。5年前に上杉さんと会ったのは私です」

 

やっぱりそうだったんだ…。

 

悟飯「……どうして上杉くんの前で名乗らないの?」

 

四葉「……言えるわけないじゃないですか…。上杉さんは私との約束を守ったのに、私はこの様ですよ?そんなの………上杉さんにあわせる顔がありません…」

 

 

………僕の妄想に近い推測が見事に当たっているな……。これは驚いた…。

 

 

四葉「……このことは上杉さんには言わないで下さい…。それを伝える為にここに来ました」

 

……どうしても秘密にしてほしいみたいだな…。僕も言いふらすつもりはないから別にいいんだけど…。

 

四葉「……それと、大変身勝手な話なんですけど……。私のお手伝いをしてくれませんか…?」

 

悟飯「へっ?お手伝い…?」

 

四葉「はい…。実は私、約束を果たすのは今からでも遅くはないんじゃないかなって考えてるんです…。今はまだあの時に会った子だとは名乗れませんが…。勉強して、人に見せられる程度の成績になったら、私は…………」

 

悟飯「……なんだ。丁度僕が提案しようと思っていたことと同じだね」

 

四葉「……いいんですか?」

 

悟飯「今更何を言ってるの?僕は四葉さんの家庭教師でもあるんだよ?勉強を教えてほしいって言われて断る家庭教師がどこにいるの?」

 

四葉「……では、よろしくお願いします…!」

 

悟飯「うん!でも、上杉くんに頼まなくて良かったの?四葉さん的には、上杉くんに教えてもらった方が嬉しいんじゃないの?」

 

四葉「えっ?えぇ!?そそそ!そんなことはありませんッ!!決してありませんからッ!!!」

 

悟飯「そうなの?この前だって、上杉くんにキスしそうなくらいに顔を近づけていたのに?」

 

四葉「……えっ?何の話をしてるんですか…?」

 

悟飯「えっ?ほら、この前上杉くんがお腹を壊した時だよ。てっきり、四葉さんは上杉くんのことが好きなのかと…」

 

四葉「……そんなことはありません」

 

悟飯「えっ…?」

 

四葉「それじゃあ、これからよろしくお願いしますねー!」

 

悟飯「あっ!ちょっと!!」

 

……少しは動揺するかと思っていたんだけど、僕の思い違いだったのかな…?

あんなに顔を近付けていたものだから、ひょっとしたら上杉くんのことが好きなんじゃないかなって思ったんだけど………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

二乃「お帰り四葉。夕ご飯はまだだから部屋でゆっくりしてなさい」

 

四葉「分かった!」

 

 

 

…………はぁ…。

 

まさかあの鈍チン孫さんに気づかれてしまうなんて…。この気持ちはまだ表に出すつもりはなかったのに……。

 

他人に向けられる好意には気付くのに、自分に対して向けられる好意に気付かないなんてあるのかな…?それじゃ三玖と五月が可哀想だよ……。

 

 

 

孫さんの言う通り、確かに風太郎くんに教えてもらった方が私も嬉しい。でも、それだと意味がない。私はお互いに必要とされる存在になろうって約束したんだ。なのにその約束を守れなかったから………。そう考えてしまうと、風太郎くんに頼りづらい………。

 

 

………だから、孫さんに勉強を教えてもらって、今度こそちゃんと風太郎くんに向き合える私になれたら、その時は……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ずっとこの胸に秘めていた想いを、風太郎くんに伝えるんだ………

 





はぁ……。一度は完成したのに、データが吹っ飛んで危うく萎えるところでした。その日が偶々暇な日だからよかったけど、暇な日じゃなかったらモチベが萎えてスランプに陥るところだった……。危ない危ない…。

ちなみに、一花が風太郎に惹かれ始めたことを、四葉はまだ知りません。


実は、四葉はあることに対して悟飯に感謝していたりします。

それは恋に関することです。

もしも、家庭教師が風太郎一人だったならば、三玖も五月も風太郎のことが好きになっていたかもしれないからです(というか、原作ではそうなってるし)。
そうなってしまうと、自分のせいで四人を転校させてしまったのに、自分だけが特別になるのは申し訳なく、風太郎に対して積極的になれないからです。

でも、悟飯がいてくれたことにより、三玖と五月の気は悟飯に向きました。これによって、四葉は成績さえ上がれば風太郎にアプローチできると考えております。
ただ、一花が既に風太郎に対して気を持ち始めていて、そのことに四葉は気付いていないのですが……。


個人的には、悟飯と四葉の関係性として、悟飯は四葉の恋を応援する異性の友人。四葉から見た悟飯は、姉妹にも風太郎にも本音は出せないけど、異性としては意識してない&風太郎の親友&今まで特に迷惑をかけてないからこそ、本音を交えて相談できる相手………
みたいな感じにしたいなぁと思ったり…。



五月は悟飯に想いを寄せ…
四葉は風太郎に想いを寄せ…

五月は風太郎のことを友人と認識(異性としては意識しない)
四葉は悟飯のことを友人と認識(異性としては意識しない)


というような感じにしたい。語彙力皆無だけど、伝わるかな………?



これじゃあまるで悟飯の正ヒロインは五月じゃあないか……。まだ誰が悟飯のお嫁さんになるのか決めてないというのに((殴


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第17話 勤労感謝の日はデート

⚠︎注意⚠︎

『クロスオーバーが苦手な人』
『台本形式が苦手な人』
『細かいことが少しでも気になる人』
『原作のカップリングが崩されるのが嫌な人(特に飯ビー)』
上記に当てはまる方はブラウザバックを『強く』推奨します。

通常公開、クロスオーバー、原作ヒロインという時点である程度の批判は覚悟しているつもりですが、注意書きを読まないで批判するのはダメですよ。説明書を読まずに操作方法が分からんって文句を言ってるようなものですよ。

注意書きの内容は話ごとに変わる可能性もあります。ご了承下さい。



上杉くんは無事に退院し、久々に二人体制に戻った。やっぱり一人でよりは二人の方が断然楽だし効率がいい。

 

……それで、今日は上杉くんが復活して初めての仕事なんだけど……。

 

一花「急にどうしたの?同じ髪型にしろって?」

 

二乃「今日は家庭教師の日じゃなかったの?」

 

……何故か5人を同じ髪型にしろと上杉くんが指示した。この指示の意図はよく分からない。

 

風太郎「なんだ二乃。らしくもなく前のめりじゃないか」

 

二乃「二乃は私よ!」

 

上杉くんは三玖さんを二乃さんと間違えた為、本人が訂正する。

 

風太郎「一花!二乃!四葉!三玖!五月!!」

 

上杉くんは左から順に言い当てようとするが…。

 

二乃「一人も合ってないわよ!というか、髪型で分かるでしょ!?」

 

風太郎「……とこのように、何のヒントもないと誰が誰だか分からない。最近のアイドルのようにな」

 

一花「それはフータロー君が無関心なだけでしょ……」

 

……ここまで来ると、上杉くんは何かしらの病気なのではないだろうか…?

 

というか、髪型の他にも服装でも大方判断はできる。四葉さんなんか、428という数字の入ったTシャツを着ていて答えを公開しているようなものだ。

 

風太郎「悟飯。お前はどういうわけか五人を見分けられるらしいな?どうやって見分けてるのか知らんが、顔だけで見分けてみろ?お前もできないぞ」

 

悟飯「か、顔だけで…?」

 

顔だけでって……。相当な難問なんじゃないか……?

 

悟飯「……………」

 

ズルはダメだよな…。普段は気で見分けるようにしていたから、顔だけで見分けられる自信が全くない。

 

……あっ、でも…。あの物静かな感じの顔は三玖さんじゃないか…?左から2人目は三玖さんだな…。

 

……四葉さんは、5人の中で1番気が……って!つい癖で気で見分けようとしてしまう………。

 

……顔だけで…。というのは無理があるな…。そもそも髪の毛の長さとかどうしても目に入ってしまうし…。

 

 

悟飯「……………ご、ごめん…。顔だけは流石に難しい……」

 

風太郎「そ、そうだろう!!」

 

なんか上杉くんが若干安心している気がするのは気のせいだろうか…?

 

四葉「逆にいつもはどうやって見分けているんですか?」

 

悟飯「それは、服装とか髪型とかで…」

 

一花「でも、五月ちゃんの変装を最初から見破ってたんでしょ?それだけじゃ説明できないと思うんだよねぇ」

 

悟飯「それは………なんというか…」

 

四葉「まさか…!?孫さんには既に愛が存在すると!?」

 

三玖「あ、愛ッ…!?」

 

珍しく三玖さんが驚いた表情をしている…。

 

風太郎「愛…?どういう意味だ?」

 

四葉「昔お母さんが言っていました!愛があれば自然に見分けられると!!」

 

風太郎「……道理で無理なわけだ」

 

四葉「無理じゃありませんよー!現に孫さんはできてます!」

 

二乃「えっ?何?私たちに対して愛があるってこと…?なんかキモいんですけど…」

 

僕自身が愛で見極めていると発言したわけではないのに、言われたい放題である……。

 

風太郎「さて、本題に入ろうか」バンッ‼︎

 

上杉くんは五枚の紙を取り出す。ってこれは………

 

悟飯「確か、宿題の小テスト…?」

 

風太郎「そうだ。見事に全部綺麗な丸が描かれている。しかもご丁寧に名前の欄は破られている。バスタオル姿で分からなかったが、犯人はこの中にいる!私が犯人だよーって人!!」

 

悟飯「いや、それで正直に答えてくれるとは思えないけど……」

 

というか、僕でも名乗り出ない…。

 

風太郎「だろうな。四葉!白状しろ!」

 

四葉「当然のように疑われている!」

 

悟飯「いや、上杉くん。決め付けるのはよくないよ……」

 

四葉「そうですよー!いくらなんでも全ての教科で0点は取りません!!」

 

三玖「……なるほど。それでこの髪型だったんだ」

 

風太郎「顔さえ見分けられるようになれば、今回のこともスキーの時みたいな一件も起きないだろうからな」 

 

五月「……反省してます」

 

無意識に五月さんに対して精神的に攻撃をしている…。意図的じゃないよね…?

 

二乃「あの五月はマスクさえなければ私達も分かったんだけど……」

 

風太郎「というかなんでお前らは顔だけで判別がつくんだ?自分を除いたとしても4人いるんだぞ?まさか、愛とかじゃないよな……?」

 

二乃「は?なんでって……」

 

 

二乃「こんな薄い顔三玖しかいないわ」

三玖「こんなうるさい顔二乃しかいない」

 

 

っと、三玖さんと二乃さんは同時に言うけど、うるさい顔と薄い顔って何…??

 

三玖「……薄いって何?」

 

二乃「うるさいこそ何よ!?」

 

あっ、よかった…。同じことを思ってたんだ…。

 

一花「もう元に戻してもいいかなー?なんで今日はそんなに真剣になってるんだろう……」

 

……確かに。スキーや今回の件でここまで真剣に……。なってもおかしくはないな。

 

風太郎「…ん?シャンプーの匂い…?」

 

っと呟き、辺りの匂いを嗅ぎ始める上杉くん…。

 

三玖「えっ?えっ…??」

 

二乃「えっ、なんかキモっ」

 

風太郎「……!!そうだ!」

 

上杉くんは何かを閃いたようで、5人に対してこんなお願いをする…。

 

風太郎「お前達に頼みがある!俺を変態と罵ってくれ!!」

 

「「「「「……………」」」」」

 

………流石に呆れられているようだ。なんというか…。もうちょっとオブラートに包むというか、別の言い方があると思うんだけど……。

 

二乃「あんた、手の施しようのない変態だわ…」

 

風太郎「違う…!そういう心にくる言い方じゃなくて…!」

 

三玖「……ほくろでも見分けられるけど…?」

 

風太郎「それだ!お手軽!見せてくれ!!」

 

三玖「えっ…?えっと……………、悟飯になら、見せてもいいよ…?だからその…私の部屋に……」

 

へっ?なんでそこで僕が出てくるんだ?

 

五月「ダメです!!そもそも、犯人のほくろを見てないと意味がないでしょう!?」

 

風太郎「た、確かに……」

 

それもそうか。しかしほくろで見分けるかぁ…。今度参考にしてみようかな?

 

一花「……フータロー君。もしかしたら、この中にいないのかもしれないよ?」

 

風太郎「どういうことだ…?」

 

一花「落ち着いて聞いてね?」

 

「私達には隠された六人目の姉妹、六海がいるんだよ!」

 

風太郎「……………」

 

上杉くんがあからさまに「バカだなコイツ」って顔をしているよ…。

 

四葉「なんだってー!?それで六海は今どこに!?」

 

一花「ふふふっ…。あの子がいるのは、この家の誰も知らない秘密の部屋…」

 

風太郎「勝手にやってろ」

 

悟飯「……上杉くん。顔じゃなくて筆跡とか紙の状態で判断してみるのはどうかな?」

 

風太郎「……それだ!!」

 

ということで、回答を二人がかりで丁寧に確認する…。

 

風太郎「……五月ではないな。真面目な五月は誤字があったら、消しゴムを使って消すはず……。そして、三玖よりも字は上手くなく……。四葉よりも漢字は書けていて、四つ折りしてるから、丁寧にファイリングしている二乃も除外…。一花ならもっと紙がよれているはず………」

 

こうして見ると、全くと言っていいほど一貫性がない…。………でも、最初のテストの時は、みんな0点ってことはなかったよな…?全ての教科で0点を取るなんてことは………。

 

…………まさか…?

 

悟飯「……ひょっとして、犯人は複数…?」

 

「「「「「ギクっ…」」」」」

 

……ん?今……。

 

風太郎「なに?そんなはずはないぞ?バスタオル姿のやつが持っていた紙袋の中に入っていたんだ。他のやつの回答をなんでそいつが持ってるんだ?」

 

悟飯「でもここまで一貫性がないのは変だよ。いくらなんでも」

 

風太郎「……じゃあ、一枚一枚、別人が書いたものと仮定してもう一度確認してみるか………」

 

確認すること数分……。

 

風太郎「……五月の『そ』の書き方…。四葉の『著じるしい』という送り仮名…。この門構えの書き方は二乃……。三玖の4の書き方…。そしてこの雑な書き方は一花………!」

 

なるほど…。こうして見ると、文字だけでも区別することはできるのか…。上杉くんは本当によく見てるんだな…。僕も見習いたい…。

 

風太郎「お前ら1人ずつ0点の犯人じゃねえかッ!?!?俺がいない間何やったてんだよお前はッ!!」

 

なにって、いつも通り授業をしていただけなんだけど…。

 

一花「あははー…。悟飯くんは私達のことを考えてペースを合わせてくれるから楽だったよ…」

 

四葉「そうですね!その分頭に入ってきやすかったです!!」

 

風太郎「嘘つけ。入ってるなら0点なんて取らないだろ」

 

四葉「辛辣っ!?」

 

風太郎「……やっぱり家庭教師1人じゃダメだな。悟飯は甘い!俺が復活したからには、楽なんてさせないからなッ!!」

 

悟飯「あはは……」

 

 

甘い…。甘い、かぁ…。なんとなくではあるけど、自覚はある。自分に対しては厳しくできるんだけど……。

 

……と言いたいところだけど、自分に対しても甘いかもな…。今の僕がベジータさんに会ったら、間違いなく『腑抜けやがったな…』とか言われる…。というか、この前ブルマさんの家に行った時に実際に言われた……。

 

…ピッコロさんに一回鍛え直してもらうのも視野に入れた方がいいかも…。主に精神面の方で……。

 

 

二乃「何してんのよ一花!コイツらが来る前に隠す約束だったでしょ!!」

 

一花「ごめーん」

 

風太郎「全く………」

 

五月「………上杉くん」

 

何やら上杉くんと五月さんが内緒話をしている。……もしかして、入院中に話していた過去のことかな…?

 

………………もしかして、この五人の中に会ったことがある人がいるんじゃないかと思っているのだろうか?もしそうなら、結論から言うと正解だ。そしてその人物は四葉さんなのだが…。

昨日、四葉さんと約束したばかりだ。四葉さんが人に見せられるくらいにまで成績が上がった時にそのことを告白するから、それまでは秘密だ。

 

風太郎「この中で昔、俺に会ったことがあるよーって人!」

 

「「……??」」

 

三玖さんと二乃さんは何のことだかさっぱりな様子。四葉さんはまあいいとして……。一花さんが四葉さんの方をチラッと見たな…。ひょっとして、四葉さんの過去を知っているのかな?

 

二乃「何よ急に?」

 

三玖「どういうこと?」

 

風太郎「……そりゃそうだ。そんなに都合よく近くにいるわけがねえ。それに………、お前らみたいな馬鹿があの子のはずねえわ」

 

五月「ば、馬鹿とはなんですか!?」

 

………中々に酷いことを言うね…。でもまあ…、お世辞にも頭がいいとは言えない成績ではあるんだけど……。

 

風太郎「間違ってねえだろ五月。よくも0点のテストを隠してたな…!今日はみっちり復習だ…!!」

 

っと、肩に手を置きながら話す上杉君だけど、その人は残念ながら五月さんではない…。

 

悟飯「……違うよ。五月さんじゃなくて三玖さんだよ」

 

風太郎「えっ……?」

 

三玖「……もしかして、わざと間違えてる…?」

 

風太郎「……………」

 

三玖「もうフータローのことなんて知らない」

 

風太郎「す、すまん!!」

 

四葉「あはは!まずは上杉さんが勉強をしないといけませんね!」

 

 

 

……その日は、0点の答案を隠していた罰として、5人の頭がオーバーヒートしている状態にも関わらずに、それに構わずに続けようとしていた風太郎を見かねて、悟飯が止めに入った。

 

五つ子は、悟飯というブレーキ的存在に心底感謝するのであった…。

 

しかしながら、悟飯一人では、様子を伺いながら授業を進めるため、五つ子の出来ではあまり進まないのだ。そこで風太郎が強引に進めることで、ついてこれないことに危機感を覚える者は必死になって覚えようとするのだ。

 

家庭教師として、悟飯と風太郎を一言で言い表すなら……。

 

 

風太郎がアクセル。悟飯がブレーキである。

 

 

それに加えて、悟飯の甘さが意図せず五つ子にとっては飴となり、逆に風太郎の厳しさが鞭となっている。

 

実は2人揃うと効率が最強レベルであることは、7人とも気付いていないのである…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日の夜…。三玖と一花はそれぞれの想い人をデートに誘おうとしていた。

というのも、次の日は勤労感謝の日なのだ。風太郎と悟飯はいつも家庭教師として一生懸命働いている為、その感謝をしようと(いう建前で)誘おうとしている。

 

 

 

三玖「よし、デートっぽい」

 

一花「あれ…?なんかデートっぽいかも…?」

 

 

 

三玖「デートは2人っきりで…!」

 

一花「2人きりじゃない方がいいのかな…?」

 

 

 

一花「送ってもいいよね…?」

 

三玖「だって明日は……」

 

 

 

「「勤労感謝の日だもん…!」」

 

 

ピッ

 

((送っちゃった…!))バタバタ‼︎

 

 

 

 

二乃「!?な、なに?」

 

四葉「なんか騒がしいね?」

 

五月「……やりました!」

 

二乃「なにがやったのよ?」

 

五月「明日は悟天君とらいはちゃんと出かけることになりました!」

 

二乃「……食べるんじゃないわよ?」

 

五月「食べませんよッ!?」

 

 

数分後……。

 

 

二乃「どうしたのよ一花?」

 

一花「……なんでもない」

 

三玖「……」ニコニコ

 

どういう事情があるのか知らないが、珍しいことに、一花のと三玖のテンションが真逆になっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

悟飯「…ん?三玖さんからメールだ…」

 

なになに?「明日休日だけど、一緒に出かけない?」……?

 

うーん…。久々に修行とか勉強とかしようかと思ったんだけど…。

 

チチ「ミクって……ひょっとして五つ子ちゃんのウチの1人か!?」

 

悟飯「えっ?う、うん…」

 

チチ「なんだべ!?一緒に出かけないかって!?そりゃもう行くしかねえべ!!悟飯!!明日は出かけるだ!!家にいることを禁止するだ!!」

 

悟飯「えっ、ええ!!!?なにそれ!?!?」

 

チチ「とにかく、明日はそのミクさのところに行くだ!!くれぐれも失礼のないようにな!!」

 

悟飯「は、はぁ……」

 

……家にいられないとなったら、流石にやることないもんね…。

 

悟天「お母さん、僕も出かけていい?」

 

チチ「ダメだ悟天ちゃん!明日は勉強の日だべ!!」

 

悟天「でも五月さんから誘われてて…」

 

チチ「仕方ねえべ…。行ってくるだ!」

 

悟天「わーい!」

 

本当にお母さんは変わったよな…。前のお母さんなら間違いなく勉強を優先させるはずなのに……。

 

というより、生徒である五人に対して甘い気がする…。なんでだろう…?

 

取り敢えず、明日は行けるよって返信しとくか…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

閑話休題(おまけ)

 

 

ピコン

『僕は大丈夫だよ。明日の何時頃にどこで合流する?僕は早起きな方だから、多少は早くても大丈夫だよ』

 

三玖「ええ!?い、行けるの…!?やった…!えっと…、明日の………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ピコン

『明日は休日だから断る』

 

一花「……なんとなく予想はできてたけど……トホホ………」

 

 

 

 

 

 

 

翌日…。

三玖さんが指定してきた場所に着いた。集合時間は11:00とのことだったが、念の為30分前に着くようにした。なんでも…、

『女の子を待たせるのは論外だべ!!男が先に行って待つもんだ!』

っと、お母さんが言うものなので、余裕を持ってきた。

……それが常識というものなのだろうか…?

 

三玖「あ、あれ…!?もう来てたの…?待たせちゃったかな…?」

 

おや?思ったよりも待たなかったな…。お母さんの言う通り、早めにきて正解だったようだ。ギリギリに来てたら、三玖さんを30分も待たせることになってたんだもんな…。

 

悟飯「いや、僕も来たばかりだったから大丈夫だよ」

 

三玖「そ、そう…?あっ、悟飯はさ、肩とか凝ってたりする?」

 

肩…?…………言われてみれば、ちょっとだけ凝ってるかも…?……分からないな…。

 

悟飯「うーん…。もしかしたらあるかも?」

 

今日も早起きをして修行をしていたからかな…?最近になって修行を再開したせいか、肩凝りが出てきたかもしれない…。

 

三玖「なら丁度よかった。ついてきて」

 

 

 

 

 

 

 

三玖さんの言われた通りに着いてくると…。

 

三玖「悟飯、気持ちいい?あっ、あとこっち見ないでね」

 

悟飯「えっ?う、うん…。いい感じだよ…」

 

……凄いなぁ…。流石お金持ち。ここはマッサージ屋さんと言うのかな?三玖さん曰く、『スパ』というらしい…。

 

そのマッサージ屋さんでマッサージを受けているんだけど……。

 

 

(正直もっと強い力でやってくれないとただくすぐったいだけなんだよね…)

 

 

しかしそんなことを気軽に言えるはずもない。そもそも、悟飯は圧倒的な超人である為、一般人程度の力ではマッサージできないのである。恐らく悟天あたりが丁度いいのではないだろうか?

 

 

 

 

悟飯「……三玖さんはここの会員なんだっけ?」

 

三玖「うん。ここは私のお気に入りなんだ」

 

……今閃いたけど、僕が気を抑えれば、このマッサージも効くんじゃないだろうか…?試してみる価値はある…。

 

スッ…

 

あっ、これはいい…!三玖さんが気に入る理由が分かった気がする…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

悟飯「なんか身体が軽くなった気がするよ!ありがとう!」

 

三玖「良かった、喜んでくれて」

 

しかし、気を抑えてマッサージを受けるという発想はなかったな…。これからはマッサージを受ける時は気を抑えよう。

 

三玖「……あっ、そろそろお昼行く?」

 

悟飯「お昼?」

 

まだ12時…。あっ、もう12時なのか…。じゃあ丁度いいかもしれない…。

 

悟飯「そうだね。そろそろ丁度いい時間かも…」

 

三玖「それじゃあ、次はね……」

 

またしても三玖さんについていく。そして到着したのは……。

 

 

「「「中野様。ようこそいらっしゃいました」」」

 

三玖「お久しぶりです」

 

 

 

…………最早言葉も出ない。こんな高級レストランがあるとは……。

 

席についてから三玖さんにこんな質問をしてみた。

 

悟飯「まさか、三玖さんってここの会員でもあるの……?」

 

三玖「いや、ここは五月がよく行っているレストランってだけ」

 

悟飯「えっ?でもさっきは………」

 

そういえば、側から見たら、この五人って物凄く似ているんだった…。

 

悟飯「………あれ?待って?」

 

ここの値段、全体的に高くないか…?これは流石に僕が出した方がいいのではないだろうか………?

 

三玖「あっ、値段は気にしないで好きなもの頼んでいいよ」

 

悟飯「えっ?いやいや!そんなの悪いよ!」

 

三玖「大丈夫。お金の心配ならいらないから」

 

悟飯「いや、そういう問題じゃなくて……」

 

三玖「……」ムスッ

 

何故か膨れ顔になっている…。なんで不機嫌になるんだろう…?………そんなに食べてほしいってことかな……?

 

悟飯「あはは…。お腹空いてきたから、好きなだけ頼ませてもらおうかな〜?」

 

三玖「…それがいい」

 

三玖さんが若干笑顔になった…。意図はよく分からないけど、ここは頂くとしよう…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

凄い美味しかった。今まで食べたことのないようなものばかりで驚いたなぁ…。世の中って広い……。

 

三玖「……あんなに食べるなんて知らなかった。五月なんか比じゃない…」

 

悟飯「あ、あはは……」

 

美味しかったものでついつい沢山頼みすぎてしまった……。

 

悟飯「流石にあれは僕が払うよ…」

 

三玖「だから大丈夫。お金の心配ならいらない」

 

悟飯「いや、そういうことじゃなくて………。三玖さんがそう言うなら…」

 

三玖さんが、将来ダラシない男の人に貢いでしまうんじゃないかと、他人ながら心配してしまう……。

 

悟飯「いつもあんなところで食べてるの?本当に凄いね……」

 

三玖「流石に特別な時にしか行かないよ。中でもクリスマスは特別かな……?去年は南に冬忘れツアー」

 

クリスマス感があまりないかもしれないが、南半球の人からしたら、クリスマスは夏がデフォルトなんだよな…。

 

三玖「一昨年は北で超ホワイトクリスマス」

 

悟飯「修行してるの…?」

 

ただ寒いところにいるだけってあまり修行にはならないんだよな…。やっぱり戦うか、体を動かすかのどちらかの方が効果的だ。

 

三玖「でも、場所はどこでもいいの。昔お母さんが言っていたことなんだけど、『大切なのはどこにいるかじゃなく、五人でいること』なんだって…」

 

悟飯「……いいお母さんだね」

 

そんな話を聞いたら、次は映画を見ようとのこと。

 

三玖「一花からチケットをもらったんだ。これ、一花が出てるやつだって」

 

……そういえば、一花さんは女優になれたんだっけ…?いや、正確には前からだったと思うけど……。

……女優として、どれくらい演技が上手いのか気になるかも……?

 

悟飯「そうか…。じゃあ行ってみようか!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

映画を見終わった…。

 

三玖「面白い話だったね。一花はすぐに死んじゃったけど……」

 

悟飯「あ、あはは……」

 

やはりまだ主役級の役はもらえないみたいだ…。

 

三玖「そういえば、一花は林間学校のあとから何故かやる気になって、順調に仕事が増えてるみたい。一説では、相当な額の貯金を溜め込んでるとかなんとか………」

 

まあ、女優さんとして働いてはいても、まだ一人暮らしをしてないのだから、お金は溜まっても不思議ではないか……。

 

三玖「あっ…。最後に寄りたいところがあるんだけど、いい?」

 

悟飯「えっ?いいけど、どこに行くの?」

 

三玖「それはね……」

 

まだまだお出かけは続くみたいだ。だけど、映画なんて普段は見ないし、あんなレストランで食事をすることもないし、こうしてのんびりと過ごすのも悪くない気がする。地球は平和だって実感できるからなのだろうか…?

 

……お出かけか…。ちょっと楽しいかも…。

 





今週は無茶苦茶忙しかったんで遅くなりました…。まだ忙しい期間の中ですので、ペースはまだ戻らないかと思いますが、来週になれば戻るかと思います…。

ちなみにですが、デート回は次話まで続きます。四葉&風太郎の方は原作通りですので、カット致します(原作を見てね!)

風太郎と悟飯はなんというか、正反対な気がします。原作を見ても分かる通り、風太郎は絶対に厳しい。その反面、悟飯は他人に対して厳しくするということはしないような気がします。その為、この2人がいい感じに飴と鞭になってるんじゃないかなぁっと思ったり…。

風太郎はアクセル、悟飯はブレーキという表現は、原作ごとよめのリスペクト的なものです。恋した二乃はアクセル全開でブレーキなんてない、とかそんな表現を聞いた気がしたので、敢えてそんな表現にしました。

なんか最近はドラゴンボール要素が薄くなってきてますけど、そろそろまたひと暴れ来るかと思います。


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第18話 宣戦布告

毎話のように載せていた注意書きはもう載せなくてもいいよね…?まああの件はそんな頻繁に起こるもんじゃないし…。



前回のあらすじ。

悟飯は三玖とデートに行っていた。とは言っても、悟飯自身はそれがデートだという自覚はないわけだが…。

前回では、スパでマッサージを受け、高級レストランで食事をし、一花が出演する映画を鑑賞した。そして、2人は次の目的地に着いた。

悟空「いやー、にしても悟飯のやつモテモテじゃねえか!やんなぁ!」

界王「あまりにもモテ過ぎて女の子に刺されて死んだ色男がいるのをワシは知っとるぞ」

悟空「はぇ……大変だなぁ…」

界王「確かな…。メールで改行されまくったところで、最後の行を見ると、「さようなら」って……そこからブスリと…」

悟空「世の中色々なやついんだなぁ…」



悟飯「……服屋さん?」

 

三玖「うん。(デートといえば、ショッピング…!)」

 

うわぁ…。なんというか、全体的に高い服ばかりだなぁ…。流石お金持ち…。ブルマさん一家もこういうところで買い物するのだろうか?

 

「そちらの服お気に召したでしょうか?」

 

三玖「……買っちゃおうかな、悟飯はどう思う?」

 

悟飯「えっ?」

 

三玖さんにしては珍しく、男の人が着ても女の人が着ても似合いそうな服を選んでいる。そういう服は四葉さんが着ているイメージなので、なんか新鮮だ。

 

悟飯「うーん…。三玖さんならなんでも似合うんじゃない?」

 

三玖「……!?あ、ありがと…」

 

おや?ちょっと顔が赤いな?そんなに暖房は効きすぎていないと思うんだけど…。

 

「こちらはメンズの服も用意してあります。彼氏様とペアルックなんて如何でしょうか?」

 

三玖「……!!!?」

 

悟飯「……えっ?ぼ、僕も?うーん…。じゃあ着ようかな…?」

 

三玖「…!?!?」

 

「それではこちらを…。試着室はあちらになります」

 

悟飯「はーい!」

 

三玖「…………」

 

(悟飯、彼氏ってこと、否定してなかったけど…。いや、悟飯のことだもん…。きっと深い意味はない……)

 

 

 

 

 

……実際に服を着てみた。…うん。そろそろ新しい服を買ってもいいかもしれないな。服の種類を増やせば、変装に使えるかもしれない。特に二乃さんに超サイヤ人の姿で会う時は、少しでも僕であるという証拠を残さないようにしないと……。

 

シャー

 

悟飯「あっ!やっぱり似合うね!」

 

三玖「……あ、ありがと…(うわわわ…!悟飯とペアルックになってる…!?)」

 

「お二人ともお似合いですよ!」

 

三玖「……これ、買います…。2つとも買います!」

 

「ありがとうございます!」

 

悟飯「えっ?僕の分は自分で払うよ?」

 

三玖「いい。私に払わせて」

 

悟飯「……そ、そう?うーん…。分かった…」

 

やっぱり三玖さんは貢ぎ癖とかがあるんじゃ…。ますます心配になってくる…。

 

「わーお!ペアルックになるなんて、やるね三玖!」

 

三玖「い、一花!?」

 

一花「ヤッホー2人とも。なになに?もしかして、2人はもう付き合ってるの?」

 

悟飯「いや、そういうことじゃないけど……」

 

一花「……??付き合ってないのにペアルック…?…………あー、でも悟飯君だしなぁ……。あり得る…………」

 

………………なんか呆れられたような気がするのは気のせいだろうか……?

 

三玖「い、一花はどうしてここに?」

 

一花「いやね、私の服を買うついでに二乃が欲しがってた服を試着してあげようかなって思ってさ」

 

三玖「そ、そうなんだ…」

 

一花「せっかくなんだしさ、こんなの着てみたら、三玖?」

 

そう言って一花さんは………。いや、目の前に僕がいることを忘れてない??

 

三玖「こ、こんなの着れない…!」

 

一花「着てみなよ〜。似合うと思うよ?ねっ、悟飯君?」

 

悟飯「えっ?う、うん……。というか、そういったものは、気軽に人に見せるものじゃないと思うんだけど……」

 

一花「違う違う。それは人によるんだよ悟飯君!」

 

悟飯「そ、そうなの…?」

 

つまり、僕のことは信用してくれてるってことかな…?そういうことなら嬉しいんだけど…。

※↑合ってるけどなんか違う。

 

一花「それはまあ冗談として、試着室に……あれ?誰か入ってる?」

 

三玖「あっ、ほんとだ。じゃあ別のところに……」

 

一花「……試着室、1室しかない……」

 

三玖「なにそれ……」

 

………ん?あれ?そこにいる人の気は、なんか……いや、まさか………

 

シャー

「あっ」

 

………あれ?四葉さん?もう1人いたような気がするんだけど……。いや、上杉くんと四葉さんの気を同じ場所から感じる…。??ど、どういうことだ?僕の勘違いかな…??

 

一花「なんだ。四葉も来てたんだ。ご飯に行くとか言ってなかった?」

 

四葉「あらあら、一花と三玖じゃありませんか…。ってあれ?三玖にしては珍しい服装を……。あっ、孫さんもいるんです………うえええええええ!?!?!ペアルック!?!?!いつの間に付き合ってたんですかッ!?!?」

 

三玖「つ、付き合ってない!……まだ

 

ペアルックってそんなにおかしいことなのかな…?

 

一花「四葉。相手はあの悟飯君だよ?」

 

四葉「……あっ、確かに…」

 

……またしても呆れられたような気がする……。なんで……??

 

一花「もう。ここはお姉さんが妹の為にひと押ししてあげよう……。悟飯君!ペアルックっていうのはね、普通は付き合っている男女がやることなんだよ!」

 

悟飯「……えっ?そうだったの…?」

 

四葉「知らなかったんですか!?」

 

悟飯「初めて知ったよ…。ごめん三玖さん。僕はそういうつもりはなくて……」

 

三玖「……いい。他の男ならともかく、悟飯とペアルックなら、寧ろ嬉しい…」

 

悟飯「えっ…?」

 

四葉「!?(わお!三玖が攻めた!)」

 

一花「!(よし。これならあの鈍感悟飯君でも気付くんじゃない…?)」

 

悟飯「そ、そう?ならいいんだけど…」

 

良かったぁ。三玖さん怒っているんじゃないかって思ったけど、そんなことはなかったみたい…。

 

それにしても、僕とのペアルックなら嬉しいって………。

 

 

 

『ペアルックっていうのはね、付き合っている男女がやることなんだよ!』

 

『悟飯とペアルックなら、寧ろ嬉しい…』

 

 

 

……林間学校の時に、前田くんが言っていたな。なんとも思ってない相手をキャンプファイヤーのダンスに誘うはずがないと。あの時、三玖さんは伝説を否定していたけど、それは照れ隠しだったということか………?

 

 

 

 

………いや、まさかね…。三玖さんって五人の中では1番恋愛に興味がなさそうだし……。

 

 

 

 

 

 

 

一花「四葉さん四葉さん。これはどうでしょうか?」

 

四葉「一花さん一花さん。これはひょっとすると気付いたのでは?」

 

三玖「えっ…?えぇ…!?」

 

一花「……まあ、少しだけ進展したっぽいから……。四葉に聞きたいんだけど、フータロー君はどっちが似合うかな?ハットとキャップ」

 

四葉「ちょ、ちょっと待ってね!」シャー

 

………

 

 

シャー

四葉「帽子は基本被らないみたい」

 

一花「何今の間…?」

 

……そこに上杉くんもいるのか…?一体2人で何をしているんだ…。試着室って普通は一人で入るものだと思うけど…。

 

四葉「それより向こうに抱腹絶倒間違いなしの服があって…」

 

一花「うん。それは後で行ってみるね。それよりそこに用があるんだけど…」

 

四葉「へっ?し、試着室で何するの?この中何もないよ?」

 

四葉さん…。言葉の意味を考えてみようよ…。

 

一花「大抵の人が試着だと思うよ…?これ、二乃が欲しがってたウェア。代わりにサイズを測ってみようと思って」

 

四葉「そっか…。でも二乃本人じゃないと……」

 

一花「何言ってんの?」

 

三玖「私達、同じ体」

 

………五つ子って便利だな…。

 

四葉「そ、そうだけど……」

 

「同じ体なら私が着るよ」

 

……今の声って…。

 

四葉「あ、ああ!今の声は私です!」

 

一花「……ならいいけど、じゃあ四葉、よろしくね?」

 

シャー

 

…………本当に上杉くんと四葉さんは何をしているんだ…?

 

三玖「…というか、私達の買い物はもう終わってるんだった。行こう、悟飯」

 

悟飯「えっ?う、うん…」

 

一花「えー?もう行っちゃうの?」

 

三玖「またあとでね、一花」

 

……結局、上杉くんと四葉さんが何故二人して試着室にいるのかは分からずじまいだった。……もしかして、実は既に二人は付き合っていたのか………?

 

………分からないなぁ…。恋愛って……。

 

僕達の会計は既に終わっていたので、お店を後にする。

 

「あー!孫さんお久しぶりです!」

 

……なんと、上杉くんの妹のらいはちゃんがいた。

 

悟飯「こんにちは。一人なの?」

 

らいは「もうすぐ五月さんと悟天君が来るみたいです!」

 

らいはちゃんも五月さんに誘われていたのか…?……五月さんは末っ子だから、弟とか妹とか、そういう存在が珍しいのかな……?

 

らいは「それにしても、孫さんやりますね!」

 

悟飯「えっ…?何が……?」

 

らいは「えっと…三玖さん……で合ってますよね?」

 

三玖「うん…」

 

らいは「二人でペアルックだなんて!もうお付き合いとかしてるんですか!?」

 

目をキラキラさせながらそう尋ねてくるらいはちゃん。なんというか、一花さんと聞かれてることは同じはずなんだけど、なんだろう…。何かが違う…。

 

悟飯「いや、付き合ってるわけじゃないよ…」

 

らいは「ペアルックなのに!?!?」

 

悟飯「あはは…。ペアルックって、付き合ってる人達がするものなんだね…。今さっき初めて知ったよ……」

 

らいは「ええ!?お兄ちゃんですら知ってるのにそれはまずいですよ!?」

 

……何気に自分の兄である上杉くんを貶してないかな……?気のせい………?

 

五月「らいはちゃん、お待たせしました…。って、孫くん!?」

 

悟飯「あっ、五月さん……」

 

五月「み、三玖と何してるんですか!?!?ぺ、ペアルックになって…!?!?ま、まさか、お付き合いを…!?!?」

 

そんなに驚くことなのか…?というか、このやり取りは何回やればいいんだろうか…??

 

ギュッ

悟飯「…!?み、三玖さん…!?」

 

三玖「…そう…!私達、付き合ってるの…!」

 

突然、三玖さんが腕に抱きついてくる。なんで突然そんな嘘をつくんだ…?もしかして、姉妹相手には見栄を張りたいとか……。いや、それだと一花さんの前でも同じことをするはず……。

 

五月「ほ、本当に……そうなんですか…?」

 

五月さんが若干涙目になりながら僕に問いかけてくる。

 

悟飯「いや、だから……」

 

ムギュ

悟飯「!?!?」

 

らいは「わ、わわわっ…!」

 

今度は正面から思いっきり抱きついてきた!?!?

 

悟飯「な、何してるの!!」

 

三玖「ほら、この通り、私達はラブラブ…!」

 

って、三玖さん顔が相当赤いよ…。無理してるんじゃ………?というか、なんでそんなに見栄を張るんだろう………?

 

五月「う、嘘です!孫くんはちゃんと生徒とは一定の距離を置く人です!!悪い冗談はやめて下さい!!」

 

ギュッ

………注意してくれるのはありがたいのだが、何故五月さんも腕に抱きついてくるのだろうか……?

 

三玖「むっ…。五月、悟飯から離れて」

 

五月「三玖こそ離れて下さい!」

 

三玖「お姉ちゃんの言うことは聞いて…!」グイッ

 

五月「姉と言っても大差ないでしょう!?」グイッ

 

悟飯「あの〜…。僕をオモチャか何かと勘違いしていない…?」

 

なんで二人に両腕を引っ張られているのだろうか…?四葉さんなら、『中野サンド!?』とか、『姉妹サンド!?』とか言いそうな状態だ……。

 

らいは「……孫さん、モテモテだなぁ…。お兄ちゃんもこういう日が来るのかなぁ…」

 

「……」パシャ

 

……誰かに写真を撮られたような…。

 

悟天「兄ちゃん、3人で何してるの?」

 

悟飯「あっ、悟天。頼む!この二人をなんとかして!」

 

悟天「いや、だから何を…」

 

らいは「悟天くん!五月さんと三玖さんは、孫さんをかけて勝負しているんだよ!!」

 

悟天「??」

 

らいは「多分、勝った方が孫さんを自分の物にできるってことだよ!!」

 

悟天「えーっと…。あっ!お母さんがよくドラマで見ているやつかな?なんかドロドロとか……」

 

らいは「そう…!今まさにドロドロな展開が目の前で起きているんだよ!!」

 

……二人はなんの話をしているのか理解できない…。

 

三玖「……五月、らいはちゃんが変な人に連れて行かれそうだよ?」

 

五月「それは本当ですか!?」バッ‼︎

 

あっ、五月さんが離してくれた…。

 

三玖「悟飯、今のうち…」

 

悟飯「えっ?」

 

五月「あれ?らいはちゃん普通にいますよ?あー!!騙しましたね三玖!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

三玖「まさか五月に遭遇するとは…」

 

悟飯「ねえ、五月さんの前でなんであんな嘘をついたの?」

 

三玖「……それは…」

 

悟飯「あー…。別に言いたくないなら話さなくてもいいけど……」

 

三玖「……少しでも早く悟飯と二人きりになりたかった」

 

悟飯「えっ…?それって……」

 

悟飯が鈍感なら、私がアピールするしかない。この気持ちに気付いてもらうためには…!

 

悟飯「もしかして、何か勉強で困っていることがあるの?」

 

三玖「違う、そうじゃない」

 

悟飯「あれ?そう…?」

 

……まあいいや。悟飯はこういう人だもん…。

 

三玖「……今日は何の日だか知ってる?」

 

悟飯「えっ?今日…?うーん……。もしかして、三玖さんの誕生日…?」

 

三玖「違う。それは5月5日」

 

悟飯「あっ、そうなんだ……」

 

さりげなく私の誕生日を伝えといた。真面目で律儀な悟飯なら、誕生日プレゼントをくれると思う…。

 

三玖「正解は、勤労感謝の日」

 

悟飯「勤労……?あー!今日のお出かけってもしかして……」

 

三玖「うん。いつも一生懸命働いてくれているからそのお礼」

 

悟飯「別にお給料はちゃんと貰ってるから、わざわざこんなことしてもらわなくてもよかったのに……」

 

三玖「私がやりたかったことだから気にしないで。ところで、今日のお出かけ、どうだった…?」

 

緊張してたせいか、あまり悟飯の意見を聞かずに回ってたから、退屈させていたらどうしよう…。

 

悟飯「うん。普段なら行かないようなレストランで美味しいものを食べられたし、映画もあまり見ないから新鮮だったし、服も自分で選ぶことはあまりないから、どれも新鮮で楽しかったよ!」

 

良かった…。少なくとも、退屈はしてなかったみたい…。

 

悟飯「…うん。定期的にこんなお出かけをするのもいいかもね……」

 

………えっ?

 

三玖「それって……どういう意味…?」

 

もしかして、また、私と出かけたい…?のかな…?……もしもそうなら嬉しいな…。

 

悟飯「こうやってさ、のんびり食べて、のんびり映画を見て、のんびり買い物をしてるとさ、今日も平和なんだなぁって、実感できるからさ……」

 

……確かに。昔はこの国も戦争とかで大変な時期があったみたいだから、こうやってのんびりお出かけできるのは、平和な証と言える。

 

私が好きな武将が沢山いた戦国時代では、こんな風にデートすることなんてできなかったんだろうな…。そう考えると、現代に生まれて良かったと思える。

 

悟飯「…それと同時に、僕はこんな平和な世界を守りたい…。そう思えてくるんだ……」

 

……まるでヒーローみたいなことを言うね…?

 

三玖「……ふふっ…」

 

悟飯「えっ?僕、何かおかしなことを言ったかな……?」

 

三玖「いや、まるで何かのヒーローみたいなことを言うなって思って……」

 

悟飯「………?」

 

…もしも、私がピンチになったら、その時は私の為に駆けつけてくれたりするのかな…?

 

でも、そんなことはあり得ないよね…。悟飯だって私と同じ普通の人間。ただ運動ができて、賢くて、カッコよくて、私のことを考えてくれて、優しくて…。

 

三玖「……悟飯、またどこかに出かける?」

 

……私はそんな悟飯が好き…。

 

悟飯「……うん。いいよ!」

 

……やった…。

 

悟飯「あっ、そうだ」

 

ポンっ

 

……突然、悟飯が私の頭に手を置いて、撫でてきた。

 

悟飯「今日はありがとう」

 

三玖「……な、なにをしてるの…!」

 

悟飯「えっ…?いや、前に一花さんに褒める時はこうした方がいいって……」

 

三玖「……一花は半分くらいは冗談を言うから、間に受けないで…!」

 

悟飯「えっ?そ、そう…?」

 

不意打ち…。悟飯は偶にズルい時がある。油断しているとこっちがもたないよ…。

 

 

……またどこかに行こうね。悟飯(私の初恋の人)…!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

閑話休題(おまけ)

 

らいは「ねえねえ五月さん!!さっき孫さんに抱きついていたのはどういうことですか!?!?」

 

五月「あ、あああ、あれは三玖が不埒なことをしているから…!!」

 

悟天「……抱きつくことは不埒なことに入らないの…?」

 

五月「あ、あれは血迷ってたんですぅぅうう!!!!」

 

らいは「悟天くん。これは黒だよ!!五月さんは孫さんのことが好きなんだよ!!」

 

悟天「えー?そうなの?」

 

らいは「間違いないよ!五月さんみたいに真面目な人が、好きな男の人以外に抱きつくことなんてしないもん!!」

 

悟天「……なんか嫌だな…」

 

らいは「えっ?それは…」

 

五月「な、なな、なんで嫌なんでしょうか!?!?」

 

悟天「だって、もしも2人が付き合い始めたら、間違いなく兄ちゃんが僕と遊んでくれなくなるもん………」

 

五月「はわぁああ!!悟天くん可愛いすぎます!!安心して下さい!!私が代わりにお姉ちゃんになります!!」

 

らいは「大丈夫!万が一そうなったら、このらいはお姉ちゃんのところにいつでも遊びに来てね!!」

 

なんだかんだ言って、同じく末っ子であるらいはも、弟という存在が珍しいので、悟天の前ではついついお姉ちゃんしたかったりするのだ。

 

人は、持っていないものを欲する生き物である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日の夜…。

 

三玖「……五月、二人で話したいことがある。私の部屋に来て」

 

五月「……?え、えぇ…」

 

二乃「えっ?なによ?相談なら私が聞くわよ?」

 

三玖「五月じゃないとダメなの」

 

二乃「なによそれ…」

 

一花「まあまあ、ここはそっとしてあげようよ、二乃」

 

二乃「むぅ……」

 

 

 

 

 

 

五月「……それで、話というのは?」

 

……私はあの時見た。林間学校の時、五月が悟飯に抱きついていた。あれは事故でもなんでもない。一目見たらすぐに分かった。五月から悟飯に抱きついたんだって。

 

三玖「……五月は悟飯のことが好きなの…?」

 

五月「えっ、えええ!!!?な、ななな、何を言っているんですか三玖!?!?た、確かに彼はいい人ですよ!?勉強は丁寧に教えてくれますし、優しいですし!!ですが彼は教師で私は生徒!一定の距離は置いて然るべきなんですよ!?」

 

三玖「だったら、何で抱きついていたの?悟飯に」

 

五月「きょ、今日のは三玖から孫くんを離そうと……」

 

三玖「違う。林間学校で抱きついていたよね?私は見てたんだよ?」

 

五月「えっ…?み、見てたんですか…!?」

 

三玖「うん。だから変な言い訳はしないで」

 

五月「あ、あれは……肝試しで怖い目にあったので、近くにいた孫くんに偶々………」

 

三玖「そう?事故なんだ…。じゃあ、仮に私が悟飯と付き合うことになってもいいんだね?」

 

五月「えっ?な、何を言っているんです?」

 

言うんだ。ここで。五月にもこの気持ちを知ってもらいたい。私が本気で悟飯のことを想っているんだって。

 

三玖「私は悟飯のことが好き」

 

五月「えっ…」

 

三玖「優しいところが好き。カッコいいところが好き。賢いところが好き。悟飯の全てが好き…。だから、仮に五月が悟飯のことが好きだとしても、私は譲らないよ?」

 

五月「私……は…………」

 

三玖「生徒と教師?そんなことは関係ない。それが相手を好きになっちゃいけない理由になるはずがないもん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

五月「私は…………」

 

私だって彼のことが好きだ。林間学校で助けてもらって以来、彼のことを考えない日なんてない…。三玖が孫くんのことが好きなんじゃないかってなんとなく感じてはいたが、まさかここまで本気だったなんて……。

 

…………私、は…………。

 

五月「………私も彼が好きです。彼はあの日、ピンチに陥った私を、絶望の底から引き摺り出してくれました…。もう彼のことを考えない日なんてありません…」

 

三玖「……何があったかは知らないけど、やっぱり五月も悟飯のことが好きだったんだ……。でも安心して。別に諦めろって言いたいわけじゃないの」

 

五月「えっ……?」

 

三玖「私、ある人に言われたんだ。平等よりも公平にって……。だから私は好きにする。その代わり、五月もお好きにどうぞ…!」

 

以前の三玖からは考えられないくらい、強い意志を感じた…。最近の三玖は表情が豊かになり、自信が出てきているような気がしていたけど、まさか、孫くんのお陰で………?

 

五月「……分かりました。私も好きにさせてもらいます。譲りませんからね?」

 

三玖「それはお互い様だよ…」

 

……勢いで宣戦布告言ってしまったものの、これからどうしましょう!?私達は5人仲良くできなくなるのでは…!?

 

三玖「ところでさ、悟飯のどんなところが好き…?」

 

五月「えっ…?えっと……。何か食べている時ですかね?その時の幸せそうな顔が…」

 

三玖「分かる…!悟飯が食べている姿は何時間見ても飽きない…!!」

 

五月「み、三玖もなんですか!?」

 

三玖「五月の気持ちは凄く分かるよ!!」

 

……なんだ。例え、同じ人を好きになったとしても、私達は敵になるわけじゃないんだ……。

 

寧ろ、久しぶりに同じ好きなものについて語り合うことができるんだ…!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なお、その会話をこっそり聞いていた方が数名……。

 

一花「……ほうほう。これから面白くなりそうですな〜…!」

 

二乃「い、五月が孫のことを…!?嘘でしょ…!?三玖はなんとなく分かっていたけど……」

 

四葉「わわっ…!修羅場の予感がします…!!」

 

一花「なんだかんだいってそれはなさそうじゃない?今は悟飯君の好きなところをお互いに話して盛り上がってるよ?」

 

二乃「全く。あいつのどこがいいのか分からないわ」

 

一花「私達は五つ子だからねぇ…。好きな人ももしかしたら同じかもよ〜?」

 

二乃「あり得ないわ。私は優しいけどパワフルで男らしい人が好きなのよ」

 

一花「それって、前に言ってた、セルゲームに参加していた金髪の男の子のこと?」

 

二乃「そうよ!彼に林間学校でも会えたのよ!!色々あって踊れなかったけど…。そうそう!その時にね、私は崖から落ちたんだけど、彼が空を飛んで助けてくれたのよ!!」

 

四葉「ええ!?大丈夫だったの!!」

 

二乃「ええ!カカロット君のお陰でね!」

 

一花「か、カカロット…?変わった名前だね…?」

 

二乃「はぁ……カカロット君、また会いたいなぁ…。あっ、そうだ!孫のやつが連絡先を知っているんだった!!あいつに聞かないと!!」

 

一花「それにしても……」

 

……私は悟飯君じゃなくて、フータロー君のことが好き。一見姉妹の中では私だけに見えるけど…………。油断はできないよ……。ねっ、()()

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

みんなそれぞれ想い人がいるんだなぁ…。五月も本当に孫さんのことが好きなんだ…。三玖も孫さんのことが好きだし、二乃はまた別の人のことが好きみたい…。一花は……どうなんだろう…?

 

みんなが風太郎君の魅力に気づく前に他の人のことを好きになってくれて、ラッキー…かな?ひょっとしたら、私達は五つ子だから、みんな風太郎君のことが好きになるかもって思っていたけど……。

 

風太郎くん。他のみんなが別の人のことを好きでも、私は君のことが好きだよ…。5年前からずっと……。

 

でも、この想いはまだ解放しないよ…。ちゃんと君に向き合える私になるその時までは、この想いは……。

 




今回は筆が乗ったので、すんなりと書き上げられました。次回はいつの更新か…。それは作者の調子やらモチベ次第なのです。というか、継続的に週に2,3話も投稿しているのは、恐らくこの作品が初です。

なんか初めてラブコメっぽくなったような気がするのは気のせいか………?本当ならもっと早く三玖か五月のどちらかが宣戦布告する予定だったんだけどなぁ…。ここから五月要素を増やしていきたいところ。というか、あと少ししたら、次郎系もビックリの五月成分マシマシな展開になるかと思われます。多分………。

ノープランで進めていたら、いつの間にかヒロインの固定化が進んでますな…。ぶっちゃけ、シスターズウォーとかスクランブルエッグとかその辺をしっかり考えないといけませんな……。

そろそろいい加減にクウラやらターレスを召喚しようかと考えておりますが……。クウラ本人とターレスが出てくるのはもうちょっと先かも……?なんなら、そのお二方が地球に来る前に、つい最近申し上げた、『新たな敵』の方が先に出てくる可能性があるんだよなぁ…()

……感想、じゃんじゃん書いてくれてもいいのよ…?無理して書く必要もないけど。


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第19話 帝王と荒くれ者

今更ですが、今作におけるクラッシャー軍団には上下関係は存在しません。本当に志を共にする仲間みたいなものです。(ただし生き返らせたサイヤ人は除く)

忙しい時期は抜けたので、ペースを上げることができるかもしれません。「かも」というのは、作者のモチベ次第という意味です()

ちなみに、皆さんは「未来への咆哮」という曲はご存じですか?私は「弱き者の盾となれ」という歌詞が無茶苦茶好きです。皆さんも機会があれば一度聞いてみることをお薦めします。マジで神曲です。

追記
どうやらDBのBGMではなかったみたいですwww。盛大に勘違いしてました()



……宇宙のとある場所にて…。

 

 

ダイーズ「……クウラの奴らが追って来てるぜ?逃げなくていいのか?」

 

ターレス「ああ。こいつは作戦だからな」

 

ターレス軍団は、サイヤ人を復活させた後、地球に偵察に行かせた数名を除いては、未だにターレス達の乗る大型宇宙船に滞在していた。

 

ターレス「超サイヤ人になるメカニズムがイマイチ分からない…。単にS細胞が増えればいいってわけではないみたいだな……」

 

ダイーズ「確か、大猿に変身する時は、満月を見るんだったよな?それに似たような感じで何かないのか?」

 

ターレス「……」

 

ターレスは、超サイヤ人になろうとしているのだが、どうすれば覚醒できるのか、未だに分からずじまいなのである。そんな中、クウラ軍団が追って来ているわけなのだが……。

 

ターレス「……正確には、目星は付いている。………怒りだ」

 

ダイーズ「怒り…?」

 

ターレス「サイヤ人の中には、怒りによって戦闘力が爆発的に上がるやつがいる。一定以上のS細胞が存在する状態で怒りを感じれば、超サイヤ人になれるのかもしれない……」

 

ダイーズ「なるほどな…。しかし、どうやって怒りを感じるんだ…?」

 

ターレス「問題はそこだ…。如何にして怒りを感じるかだ……」

 

ターレス軍団の宇宙船にジワジワとクウラ軍団が迫っている。その状況下でターレスらがここまで余裕でいられる理由は……。

 

ターレス「……よし、出せ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「く、クウラ様!!向こうから大量の一人用ポッドが飛んできます!!」

 

クウラ「なに?」

 

何故かターレスらが乗っているはずの宇宙船から大量の一人用ポッドが出てくる出てくる……。

 

クウラ「そ、そういうことか…!!小癪な真似を…!!」

 

サウザー「クウラ様、如何なされますか?」

 

クウラ「……お前らは逃げた奴らを追え。俺はここに残る」

 

サウザー「……かしこまりました」

 

そういうと、サウザーは機甲戦隊のメンバー、クウラ軍団を集めて、一人用ポッドの軍団を追いかけて行った…。

 

クウラ「……駒を使って逃亡したように見せかけたのだろうが、このクウラ様の目を欺くことはできんぞ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ピピピッ

 

ダイーズ「……まずいぞ…!この戦闘力は…!クウラの野朗だけが残ってやがる…!!」

 

ターレス「チッ…、バレたか」

 

アモンドとレズン、ラカセイは、不運なことに、酒に酔って眠ってしまっている。こうなっては、今戦える戦士はターレスとダイーズしかいない…。

 

ターレス「……」バリッ

 

ターレスは何かを決心したように、神精樹の実を頬張る。

 

ターレス「……今の俺なら、クウラ一人ならなんとかなると読んでいる」

 

ダイーズ「だが…、クウラはフリーザよりも強いとの噂がある…。俺らは長年神精樹の実を食べ続けて戦闘力を成長させてきた。だが、クウラの実力がどれほどかまでは……」

 

ターレス「……大丈夫だ。まあ見てろ」

 

 

 

 

ターレスは宇宙船を操作し、近くにあった荒れ果てた星に着陸させた。少しすると、クウラが乗っていると思われる宇宙船も到着した。

 

 

ターレス「……」

 

宇宙船から出てきたのは、ターレスのみである。起きているダイーズにも待機しておくように命じたのだ。

 

ターレス「……よう。フリーザの兄貴さんよ」

 

クウラ「……あれで俺を欺くことができるとでも思っていたのか?」

 

ターレス「ああ。簡単に騙されてくれれば、こんな面倒なことにはならなかったんだがな……」

 

クウラ「とうとう俺の前に姿を現したか……。ようやく殺される覚悟ができたのか?」

 

ターレス「へっ!何を言ってやがる。死ぬのは貴様の方だ」

 

クウラ「図に乗るなよ猿如きが…!貴様が神精樹の実とやらをいくら食べたもころで、このクウラ様には敵うものか…!!」

 

ターレス「……じゃあ、試してみるか?」

 

クウラ「余程死にたいようだな…!」ドンッ‼︎

 

ターレス「……」スッ

 

なんの合図もなくクウラが突然飛びかかってくる。しかし、その不意打ち気味の攻撃をターレスは見事に対処する。

 

クウラ「ほう…?大口を叩くだけのことはあるようだな?」

 

ターレス「言ってろ。貴様が余裕をぶっこいていられるのも今のうちだぜ?」

 

クウラ「ほざけ!!!」シュン

 

クウラは高速移動でターレスが目で追えないように移動する。だが……。

 

ターレス「遅えんだよノロマめ!!」

 

 

ドゴォッ!!

 

 

クウラ「ぐはっ…!!」

 

ターレス「それで俺を出し抜けるとでも思ったのか?サイヤ人も随分と舐められたもんだぜ。貴様の弟を殺したのも俺と同じサイヤ人だってことを忘れてるんじゃねえだろうな?」

 

クウラ「はっ!!」ビッ‼︎

 

クウラはターレスと会話する気が全くないようで、無視してデスビームを放った。

 

ターレス「ふっ…!」バシッ

 

しかし、ターレスは笑みを浮かべながら、難なくデスビームを弾いた。

 

クウラ「な、なに…!?」

 

ターレス「その程度か?宇宙の帝王が聞いて呆れる……。無様なもんだ…」

 

クウラ「くっ…!頭に乗るなよ猿がぁあああああ!!!!!」バシューン‼︎

 

クウラはターレスの軽い挑発に乗った。見下していたサイヤ人に一方的に攻撃されているのだ。多少は動揺しても仕方はない。

 

クウラ「うおりゃあ!!」シュババ‼︎

 

ターレス「おいおい…。やる気あんのか?」

 

クウラはものすごい勢いで拳を連打する。しかし、ターレスに対しては擦りすらしない。

 

ターレス「攻撃ってのはな…。こうやるんだよ!!」

 

 

ドゴォッ!!

 

 

クウラ「ぐあっ…!!」

 

 

ターレス「ふっ…!」バシューン‼︎

 

ターレスはパンチでクウラをぶっ飛ばすと、すぐさまクウラの後ろに回り込む。

 

 

ドカッッ!!

 

 

クウラ「がぁ…!!」

 

そして後ろから強い蹴りを決める。だが、それで攻撃を止めるようなことはせず、今度はクウラの上に回り込んだ。ターレスは両手でハンマーのような形を作り、躊躇なくそれを振り下ろした。

 

ターレス「ほらよ!!」

 

 

ドゴォォオオオッッッ!!!!!

 

 

クウラ「ぐわぁぁああああ!!!!」

 

 

ドグォオオオオオオオオオオオンン!

 

 

 

 

スタッ

 

ターレス「へっ。口ほどにもねえな…」

 

本来なら、ターレスがクウラを倒せるはずなどなかった。しかし、神精樹の実を食べ続けたことにより、莫大な戦闘力を得た。その戦闘力は、サイヤ人の天敵とも言えたフリーザやクウラを圧倒的に凌駕していた。

 

ターレス「もう終わりか…?つまらねえな…。久々に俺を楽しませてくれると思って期待していたんだがな…」

 

ドゴォォオオオオン!!!

 

クウラ「はぁ……はぁ………」

 

死んだかと思われていたが、クウラは生きていた。その様子を見て、ターレスは頬が緩んだ。

 

ターレス「はっ、腐っても宇宙の帝王ってわけだ…」

 

クウラ「ふふふっ…!お前の強さは認めてやろう。俺様がここまで苦戦するのは初めてだぞ?弟を含めてもな…」

 

ターレス「そいつは光栄だな。だが、随分と余裕そうじゃねえか?これからお前の言う猿に殺されるってのによ?」

 

クウラ「貴様は何か勘違いしていないか?」

 

ターレス「なに…?」

 

クウラ「俺様もフリーザと同じように変身することができる」

 

ターレス「ああ…。だが、貴様は既に最終形態になっているんだろう?」

 

クウラ「はっはっはっ!!それはフリーザの話だ。いつ誰がこのクウラ様が変身を残してないと言った?」

 

ターレス「………なに?」

 

クウラ「光栄に思うがいい…!俺の最強の変身を見れるのは、貴様が最初で最後だ!!!!」

 

ゴゴゴゴゴゴッ‼︎

 

っと、地面……いや、空気そのものが振動し始めた。それを察知したターレスは只事ではないことに気づく。

 

クウラ「はぁあああああああ!!!!!!!!」

 

 

ブォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!

 

 

ターレス「くっ…!!」

 

クウラを中心として、辺りに強風が吹き荒れる。あまりの強さにターレスは踏ん張ってしまう。

 

 

 

…………

 

数秒すると、その強風も収まった。

 

ターレス「……おいおい、嘘だろ…?」

 

ガシッ、ガシッ、っと、存在感のある足音を立てながら堂々とターレスに向かって歩いてくる影があった…。

 

先程までのシンプルなデザインではない。ツノかどうかは分からないが、頭部から突起のようなものが4本ほど生えている。それに目は完全に赤一色となり、身体は一回りも二回りも大きくなっていた。

 

クウラ「どうだ?一族がまだ誰も辿り着いていない境地だ。実際に見せるのは、身内を含めても貴様が初めてだぞ?」

 

ターレス「……なんてこった…。フリーザより強いって噂は本当だったってことでいいみたいだな…。化け物め…!」

 

二人の本当の戦いは、これから始まる…。

 

クウラ「さあ、始めようか!!!」

 

クウラがそう叫ぶと、口の部分がマスクのようなものに覆われた。

 

それを合図に第二ラウンドが始まった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

明日から期末試験に突入する。五つ子の初めてのテストは、5人の平均は20点。そして中間テストは微妙な差ではあるものの、確実に成長していた。この調子で行けば、次こそは赤点を回避することができるはずなのだ。

 

何もなければの話だが………。

 

 

四葉「すみません!今日は陸上部の皆さんのお手伝いがあるんです!でも安心して下さい!!テスト週間になれば休みになると思いますので!!」

 

二乃「試験勉強は明日からでしょ?今日くらい映画に行かせなさいよ」

 

五月「か、考え直しましょうよ二乃!怖い映画らしいですし……」

 

二乃「尚更一人は嫌よ!!」

 

 

 

 

 

風太郎「……ということがあった…」

 

悟飯「あはは…」

 

だから一花さんと三玖さんしかいなかったのか……。

授業に参加してくれるようになったとはいえ、根幹は変わってなさそうだ…。

 

一花「ま、まあ明日からが本番だからさ、まだノーカンで何事もないって。元気出しなよ!明日は大丈夫だって!」

 

風太郎「だといいが…。仕方ない。今日は各自自習だ」

 

一花「そっか…。じゃあ私はこれで…」

 

風太郎「待て。本当に勉強するのか怪しいな?やっぱり俺が教える!」

 

一花「あ、ありがたいけどごめんね?今日は用事があって…」

 

悟飯「用事…?仕事じゃなくて…?」

 

一花「うん…。実は、事務所の社長の娘さんの面倒を見る約束なんだ」

 

風太郎「あの髭のおっさんの娘だと…?適当なことを言って勉強から逃げようったってそうはいかねえぞ!!そんな娘が本当にいるなら、俺の前に連れてきてみやがれッッ!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……」

 

中野家に来たんだけど、本当に娘さんがいたんだな…。しかも静かにお絵描きをして過ごしている…。

 

三玖「菊ちゃん大人しくしてて偉い…」

 

風太郎「本当にいるんだ…」

 

一花「だから言ったじゃん。急な出張が入って社長の代わりに面倒を見ることになったんだ」

 

風太郎「あのおっさん結婚していたのかよ……」

 

…?母親に任せれば……と思ったけど、片親の可能性もあるのか…。

 

菊「……おい」

 

……?僕かな…?僕のことを呼んでるのかな…?

 

菊「あたしの遊び相手になれ」

 

…??何をすればいいんだろう…。悟天と遊ぶ時はいつもどうしてたっけ…?

 

風太郎「人形なんてどうだ?」

 

それだ!!

 

菊「子供扱いするな!人形遊びなんて時代遅れなんだよ。今のトレンドはおままごとだから」

 

………おままごとも子供の遊びだと思うのは僕だけだろうか…?

 

菊「お前、あたしのパパ役。あたし、あたしの役」

 

三玖「じゃ、じゃあ私がママやる!」

 

あれ?このおままごと、三玖さんも入ってるの?

 

菊「うちにママはいない。ママは浮気相手と家を出て行った」

 

三玖「そこはリアルなんだ…」

 

風太郎「あのおっさんのシリアスな過去なんて知りたくなかったぞ……」

 

なんて生々しい話なんだろうか…。ちょっと可哀想だ…。

 

さてと…。せっかくだし、おままごとに付き合ってあげよう…。お父さんらしさを出さないと…。っと言っても、あの髭のおじさんの喋り方は……特に訛りとかはないよね…?

 

悟飯「菊、幼稚園で友達はできたかい?パパに教えてほしいなぁ」

 

菊「あいつらはガキばっかだ」

 

悟飯「こらこら、そんなこと言っちゃダメでしょ…。そうだ、お勉強の方はどうなんだい?分からないところがあったらパパが教えてあげるよ?」

 

菊「断る。やっても意味がない。どうせすぐに忘れる」

 

悟飯「そんなすぐに諦めちゃだめだよ?諦めずに努力し続ければ、いつか報われる日がくるから…」

 

菊「綺麗事を」

 

この子、相当捻くれてるなぁ…。母親の浮気が原因だろうか…?

 

風太郎「一旦このクソガキを教育した方がいいんじゃないか…?」

 

一花「まあまあ!抑えて抑えて…」

 

三玖「私は…、いいこと言っていたと思うよ!」

 

菊「ガラガラ。へー、ここがパパの会社か」

 

どうやら、今度は会社に来た設定らしい。

 

菊「2人はそこの事務員さん」

 

と、一花さんと三玖さんも指名する。

 

一花「へっ?私達もやるの…?」

 

菊「そしてお前はパパの部下」

 

風太郎「えっ?俺も…?」

 

菊「そしてそこの事務員さん…。髪の長い方はパパに惚れている。短い方はパパの部下と既に付き合っている」

 

一花「ええ!?わ、私と、フータロー君が!!!?」

 

風太郎「なんだその設定…。こいつらは……」

 

三玖「ねえ社長!いつになったらご飯に連れて行ってくれるの?今夜行こう今夜!」

 

……なんか三玖さんはノリノリだな…。

 

一花「ねえフータロー君。今夜はどこに泊まって過ごす?」

 

風太郎「そうだな…。1番安いビジネスホテルで資格の勉強会でもするか」

 

一花「ここでも勉強ッ!?」

 

なんか上杉くんらしいなぁ…。というか一花さんもノリノリだし、1番ノリの悪そうな上杉くんまでもが意外とノリノリ…?

 

三玖「ねえ菊ちゃん。新しいママが欲しくない?」

 

一花「わあ…。攻めるねぇ」

 

菊「じゃあパパのどこが好きなのかを言え」

 

三玖「す、好きなところ…?カッコいいし、頭がいいし、背が高いし、優しい……」

 

菊「パパはそんなに高い方じゃなかったと思うけど」

 

三玖「あっ、社長さんのことだった…。どうかな菊ちゃん?」

 

菊「アタシは…。ママなんていらない」

 

三玖「えっ?どうして?」

 

珍しい…。いやでも、浮気して出て行ったということを考えると、嫌がるのも分かるかも…?

 

菊「だって寂しくないから…。ママのせいでパパはとっても大変だった。パパが入れば寂しくない…」

 

……そうか…。父親の為に無理をしているんだな…。なんていい子なんだろう…。

 

悟飯「無理しなくていいんだよ」

 

僕は悟天を慰める時のように、頭を撫でてあげた。

 

菊「な、何する!?やめろ!!」

 

悟飯「君みたいに小さい子が、母親がいなくなって寂しくないわけがないよ…。僕でも寂しいんだから…。だから、素直になって甘えてもいいんだよ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

三玖「……」

 

ああ…。こういうところだ。自分は普段通りに振る舞っているつもりなんだろうけど、人の気持ちに寄り添える、それを悟飯は普段から何の恥ずかしげもなくできる…。

 

その温かい心に、私は溶かされたんだ…。

 

三玖「悟飯、私と付き合おうよ」

 

 

一花「!?!!?ッッ」

 

あっ、言っちゃった…!ど、どうしよう!!?

 

悟飯「付き合う?何を言ってるの?」

 

三玖「いや、これは……」

 

悟飯「そうじゃないでしょ。ここは、結婚しよう!でしょ!」

 

三玖「えっ、えぇ!!??」

 

一花「!?!!!?!?ッッッ」

 

悟飯「良かったね菊。これで新しいお母さんができたぞ〜!」

 

三玖「………えっ?」

 

一花「な、なんだ…。おままごとの中の話ね…」

 

風太郎「逆に何の話だと思ったんだ?」

 

一花「……そういうところがフータロー君だよね…」

 

風太郎「えっ?な、なんだ…?俺、何かしたか…?」

 

四葉「ただいま〜…ってあー!!可愛い女の子だ!」

 

二乃「なんであんたらまでウチにいるのよ…」

 

五月「何してたんですか?」

 

二乃、四葉、五月が帰ってきたみたい。

 

風太郎「ままごとだ。今悟飯と三玖が結婚したところだ」

 

五月「本当に何やってたんですか……」

 

四葉「いいなー!私も混ぜて下さい!」

 

菊「じゃあウチの犬」

 

四葉「わんちゃん!?ワンワン!!」

 

菊「そしてそこの2人はお婆ちゃん」

 

二乃「あらー、私たちも入れてくれるのー?………で、誰だって?」グイッ

 

菊「お、おば……」

 

二乃「聞こえなーい」

 

 

 

三玖「……不発」

 

一花「いや〜…。ビックリしたよ……」

 

三玖「今回は不発に終わったけど、私は本気だから…!」

 

一花「……みたいだね」

 

 

三玖「……悟飯を独り占めしたいはずなのに、こうして七人でいるのも嫌いじゃないんだ…。変かな……?」

 

一花「……ううん。私も似たようなものだから…。このままみんなで楽しくいられたらいいね…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…………あれは気のせいかな…?菊ちゃんを慰めていた時に悟飯はあの時……。

 

 

 

『僕でも寂しいんだから…』

 

 

 

……とても悲しそうで、何かを後悔しているような顔をしていた。でも、今は笑顔でいっぱいだ…。私の見間違えだったのかな……?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方その頃、荒れ果てた星では…。

 

ドカッ!!

 

ターレス「ぐわぁぁあぁ…!!」

 

クウラ「さっきの威勢はどうした?」

 

ターレスは先程まではクウラを圧倒していたものの、クウラが変身してからは、状況は逆転してしまった。今ではクウラがターレスを圧倒している。神精樹の実を食べようとするが、クウラがそれを許すわけがなかった。

 

クウラ「所詮はこの程度か…。貴様は神精樹の実があったからここまで来れたんだ。それがなかったら、とっくの昔にフリーザのところの雑魚に殺されていただろうな」

 

ターレス「くっ…!化け物め…!!」

 

クウラ「今までよくも俺の星を荒らしてくれたな…!フリーザが一部のサイヤ人を部下として保護した時点で潰しておくべきだったか…!!」

 

ゲシッ!!

 

ターレス「ぐわぁああああッッ!!」

 

ターレスはクウラに思いっきり頭を踏まれているが、ターレスはそれを払い除けるができなかった。今のクウラはターレスよりも遥かに強い。たった一度の変身でここまでパワーアップするとは予想できなかった。

 

それも無理はない。クウラの5回目の変身は、今までのどの変身よりも戦闘力が遥かに増す。フリーザとクウラの仲はいいものとは言えず、コルドが所有していた星をフリーザとクウラで分けていたからこそ、両者の軍団が存在していたが、優秀な方に引き継いでいたら、間違いなくクウラの方に全て渡っていただろう。それくらいにクウラの方が強かった。もっとも、ターレスはフリーザとは戦ったことはないが…。

 

ターレス「畜生…!」

 

クウラ「惨めなものだな。所詮はサイヤ人という下等生物。その中でも最下級戦士の雑魚だ。神精樹の実に出会えなければ、貴様は俺様の最強の変身を拝むことなく死んでいったんだ…」

 

ターレス「ただの、下級戦士で終われねえ…!俺は、全てを跪かせるんだ…!!」

 

クウラ「ああ…。このクウラ様さえいなければ、実現できていたかもしれないな?だがそれは不可能だ。残念だったな」

 

ターレス「畜生…!こんなところで終わってたまるものか…!!」

 

ターレスは、最下級戦士だったが故に、過去に何度も実力が上を行っているものに、何度も跪かされた。フリーザに、フリーザの部下に、同じ民族であるはずのサイヤ人相手にも……。

 

しかし、神精樹の実を得て、同じ志を共にする仲間を得て、ターレスは決心した。

『全宇宙を俺達に跪かせてやる…!!』と…。

しかし、ここでクウラに殺されてしまえば、その夢も叶えられぬまま、無様に殺されてしまう。

 

それを考えると、悔しくて、憎くて、激しい怒りを覚えた……。

 

 

ゴゴゴゴゴゴゴゴッ

 

 

クウラ「……?なんだ…?」

 

 

突然、大地が、空が、空気が揺れ始めた。しかも生態系が破壊し尽くされた荒れ果てた惑星であるにも関わらず、雷雲が突然発生した。流石に只事ではないことにクウラは気付くが…。

 

 

クウラ「……神精樹の実に生気を吸い取られすぎたせいか、この星もそろそろ崩壊の時が近いようだな…」

 

 

ゴゴゴゴゴッッ…!!

 

 

ターレス「こんな奴に、負けてたまるかぁああああ!!!!!」

 

 

ボォオオオオッ!!!!

 

 

クウラ「な、なんだ!?」

 

 

自分の足元にいるターレスの様子が突然変わった。その瞬間にクウラは飛ばされかけるが、なんとか数歩後退するだけにとどめることができた。

 

クウラ「な、なんだ…!?貴様、何をした!?」

 

ターレス「………ん?」

 

ターレスの周りは、金色のオーラによって覆い尽くされ、シュインシュインというオーラの音も聞こえる。サイヤ人の特徴とも言える独特の形の黒髪は逆立ち、ターレスを中心に強風が発生していた。

 

この様子を見て、クウラはスカウターがなくとも、戦闘力が大幅にアップしたのだと瞬時に理解した。

 

ターレス「なんだ…?この溢れ出る力は…?俺は神精樹の実を食ってないはず……。いや、食べた時とはまた違うぞ、この感覚……」

 

クウラ「……ま、まさか…!」

 

ターレス「………試してみるか」

 

シュン‼︎

 

クウラ「…!?どこに行った!?」

 

ドゴォッ!!

 

クウラ「な、なに……ッ!?」

 

最後の変身をしたことによって、先程までとは比べ物にならない程に戦闘力が上がり、それに併せて動体視力も上がったはずなのだが、今のターレスの動きは完全に見えなかった。

 

クウラ「そ、そんなはずは…!!」

 

ターレス「……今の動きは追えなかったようだな…?」

 

クウラ「そ、そんなはずはない!!宇宙最強は、このクウラ様だぁ!!!!」

 

ビッ!!!!

 

クウラはヤケクソ気味になり、ターレスに向けてデスビームを放った。

 

……が…。

 

ターレス「……」シュン

 

クウラ「な…!?避けた…!?」

 

クウラのどの技の中でも、ズバ抜けたスピードを誇るデスビームだが、それさえもターレスに避けられてしまう。

 

クウラ「い、今のはまぐれだッ!!」

 

ビビビッッッ!!!!

 

クウラはまぐれだと自分に言い聞かせ、デスビームをこれでもかと言うほどに繰り出す。だが……。

 

ターレス「ふっ…」シュン

 

クウラ「な……なにぃ……!?」

 

いとも簡単に避けられてしまった。

 

クウラ「ば、バカな…!こんなことが、あり得るはずは……!?くそ…!!当たりさえすれば…!!当たりさえすれば貴様なんか……!!」

 

ターレス「……当ててみろよ?」

 

クウラ「なに……?」

 

ターレス「だから、当ててみろって言ってんだよ。避けてやらねえからよ」

 

クウラ「ふふふっ…!ふははははっ!!!!後悔するなよ!!!!」

 

ビッ!!

 

クウラは、今度こそターレスに命中させるべくデスビームを再び放った。

 

 

バンッッ!!

 

 

クウラ「よし!!当たったぞ!!」

 

ターレスは宣言通りに避けることをせずに、自らの意思で当たりにいったのだ。

 

ターレス「……ほう?」

 

だが、ターレスはなんともなさそうな反応をする。

 

クウラ「な、なん……だと……!?」

 

ターレス「今のは少し効いたぜ…!ハッッ!!!!」

 

 

ドンッッッ!!!!

 

 

クウラ「グオッ!!!」ドンッ‼︎

 

 

ターレスの気合いによって、クウラは地面に叩きつけられた。これだけでもターレスの強さがよく分かるのだが、ターレスの攻撃はこれだけでは終わらない。

 

ターレス「最後にチャンスをやるよ。俺の前で無様に土下座して命乞いをしろ。そうすれば、俺の仲間………いや、部下にしてやるぞ?」

 

クウラ「だ、誰が貴様のような下等生物に…!!」

 

ターレス「……そうか…。ならば死ねぇ!!!!」カァッ‼︎

 

クウラに降参する意思がないことを確認すると、ターレスはメテオバーストをクウラに向けて放った。

 

クウラ「くっ…!」バシューン‼︎

 

しかし、相手は腐っても宇宙の帝王。メテオバーストを利用して、ターレスの目を誤魔化して、高速で遥か上空に移動した。

 

 

ポッ…

クウラ「ふははははッ!!貴様が俺様よりも強いのは認めよう!!まともに戦っても貴様が勝つだろう!!だが、貴様がどれほど立派な戦闘力を得ようが、サイヤ人であることに変わりはない!!」

 

ターレス「……何が言いたい?」

 

クウラ「貴様は宇宙空間では生き延びることはできない!!この『スーパーノヴァ』で、この星ごと貴様を葬ってやる!!!!」ブゥゥゥウウウン…

 

 

クウラの指先に生成された小さな太陽のようなエネルギー弾は、徐々にその大きさを成長させて、やがては小惑星と同等レベルにまで成長した。

 

 

ターレス「……考えやがったな…」

 

クウラ「死ねッ!!猿がぁ!!!!」

 

 

ゴゴゴゴゴッ!!

 

 

クウラは十分に成長させたスーパーノヴァを、ターレスに向けて放った。これが地面に接触すれば、間違いなくこの星は宇宙の塵と化すだろう。

 

ターレス「……俺を甘く見すぎたな…」ポワッ…

 

ターレスは、右手に気弾を生成した。ある必殺技を放つ為である。

 

ターレス「俺に跪かないというのなら、宇宙の塵になって、無様に死ねぇえッッッ!!!!」

 

ドンッッッ!!!!

 

ターレスは、『カラミティブラスター』を放った。

 

 

バチっ!!!!

 

ターレスが放ったカラミティブラスターは、クウラの巨大なスーパーノヴァをジワジワと押していく。

 

クウラ「な、なに…!?こんなことがあるわけが…!!」

 

ターレス「これで貴様も、終わりだッッ!!!」カァッ‼︎

 

ターレスはダメ押しと言わんばかりに、巨大な『キルドライバー』も放った。

 

 

ドンッッッ!!!!

 

 

クウラ「ぐわぁぁぁああああ!!!!!!」

 

 

これが決定打となり、クウラはスーパーノヴァごと宇宙空間に押し出された。

 

 

 

ターレス「はぁぁぁ……、はぁッ!!」カァッ‼︎

 

更にターレスはパワーボールも放った。パワーボールは、本来なら満月を人工的に作るためのものだ。しかし、満月を作る以外にも使い方はあるといえばある。

 

ターレス「弾けろッ!!!!」

 

クウラ「お、おのれぇええええ……」

 

 

 

ドグォォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンンンン!!!!!

 

 

 

スーパーノヴァをパワーボールによって強制的に爆発させたのだ。

 

ターレス「………ふふふふっ、ふははははははははッッッ!!!!クウラを倒したぞ…!!俺は、超サイヤ人になれたぞぉぉおおおおおッッッ!!!!」

 

ターレスは、クウラを倒すことができたのと同時に、伝説で語り継がれてきた超サイヤ人に変身することができて、大喜びするのであった………。

 

 

ただし、金色のオーラが発生し、髪が逆立ったとはいえ、()()()()()()()()()()()…。

 




ターレスが何に覚醒したかについてですが、映画版では、スラッグと戦うときに悟空が変身し、Zのブウ編とセル編の間のアニオリエピソードにて、地獄で特選隊と戦う時に悟空が変身したものです。未完全な超サイヤ人といったところです。正式名所は分からないのですが、私は『超サイヤ人0.5』と呼んでいます。疑似(擬似?)超サイヤ人とも言うのかな?とにかくそんな感じです。

なぜ普通の超サイヤ人にしなかったのか、理由は2つあります。
1つ目は、穏やかな生活をしていたとは言え、穏やかな心は持っていないからです。
2つ目は、メタ的な理由にはなりますが、ターレスを更に強くするためです(笑)。こちらが主な理由になります。


クウラがターレスに倒されるのは違和感を感じたと指摘を受けたので、一応追記をしておきます。今作のターレスは、時間が経過している分、神精樹の実も沢山食べています。しかし、クウラは食べていないわけです。
それだけです。


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第20話 大喧嘩と家出とお泊まり

前回のあらすじ…。

なんと、ターレスはフリーザの兄であるクウラを倒してしまった…!これからどうなるのであろうか…?

悟空「なんか雑すぎねえか、界王様?」

界王「ネタが思い付かんのじゃ…。それくらい勘弁してくれ……」

あとそれと、期末試験まであと1週間である。悟飯と風太郎は、今度こそ五人の姉妹を赤点回避へと導くことはできるのであろうか…?

※ちなみに今話のタイトルは仮面ライダーオーズを意識しています。理由は特にないです(笑)

それと最後に第3回アンケートを取ろうかと思っています。内容は、「悟飯のお相手について」です。ちょっと気が早いですかね…?といっても、誰が悟飯のお嫁さんがいいかとか、そういう聞き方ではなく…。

1:本編で誰と結ばれるか明確にするか?
2:IFルートで悟飯のヒロインそれぞれ1人ずつと結ばれた場合分けて書くか?
3:それともまさかの3人でハーレムにしてしまうか…?(この場合、風太郎のヒロインは対象外)
4:1と2の複合型(本編で悟飯と結ばれなかったヒロインは、番外編として結ばれた場合の話を載せる)

という選択肢にしようかと…。
今回は、DB本来の世界から見ても、五等分の花嫁本来の世界から見てもパラレルワールドという扱いですので…。飯ビーが見たい方は別の作者様に期待してください()
原作カップリングを崩されるのが嫌な方はブラウザバックを推奨と再三載せたので…、でも一応言っておきました。

※あくまでも参考にさせてもらうだけです。結果によって展開を約束するものではありません。



 

ダイーズ「ターレス…!さっきの爆発は…!?」

 

アモンド「俺らが寝てる間に何があったんでっせい!?」

 

ターレス「……喜べお前ら。クウラの野朗は俺が仕留めてやった」

 

レズン「なに!?それは本当か!?」

 

ラカセイ「それが本当なら、俺たちが全宇宙を支配する大きな一歩と言えるな……」

 

ターレス「……しかも超サイヤ人になれたぜ」

 

アモンド「なっ!?それは本当でっせい!?」

 

ターレス「ああ。神精樹の実を食べていないにも関わらず、あの溢れ出るばかりのパワーは間違いない…。あれは桁違いだった……」

 

ダイーズ「……よくやったな。これで俺達のゴールは一気に近づいたと言っても過言ではない」

 

ターレス「……欲を言えば、自由に超サイヤ人になれればいいんだがな…」

 

ダイーズ「もう敵という敵はいないだろう?ゆっくり模索していけばいいさ」

 

ターレス「……そうかもな」

 

ラカセイ「……ところで、サイヤ人達はどうするんだ?あれはクウラ達を撒くために出したんだろ?」

 

ターレス「……確かにそうだが、ついでに超サイヤ人のなり方について知りたかった……」

 

「「「「……??」」」」

 

ターレス「この前も言った通り、地球ではサイヤ人の血を引く者は、少なくともカカロットの息子がいることは判明している。そいつも超サイヤ人になっている可能性はある。そいつを怒らせて、超サイヤ人になったら、俺の推測は正しかった……となるはずだったが、俺はもう超サイヤ人になっちまったからな……」

 

ダイーズ「じゃあどうするんだ?」

 

ターレス「いや、このまま地球でひと暴れしてもらう」

 

実を言うと、ターレス率いるクラッシャー軍団のスカウターは改造されており、音声だけでなく、映像も拾うことができる。そのため、この前のサイヤ人と悟飯の戦いも記録に残っていた。

 

それはつまり、五月を人質にとられた瞬間に悟飯が急に戦闘力を増大させた記録も残っているのだ…。これがなにを意味するのか……。それは後のお楽しみとさせていただこう……。

 

こうして、ターレス達は最大の敵とも言えるクウラを倒したということで、そのお祝いとして打ち上げをすることになった。と言っても、いつものように美味い飯を食べて美味い酒に酔うだけなのだが………。

 

 

……敢えてここで言わせてもらうが、ターレスとクウラが戦った星の近くには、宇宙のゴミが大量に集まってできた惑星があった。その惑星は…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

()()()()()()()()と呼ばれている…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

昨日は突然おままごとをやることになった。今日は普通に家庭教師の日のはずなのだが……。

 

悟飯「上杉くん中々来ないな……」

 

指定の時間を既に過ぎているが、上杉くんが未だに来ないのだ。

 

悟飯「……ちょっと外に出て様子を見てみようかな……」

 

そう呟いた矢先……

 

二乃「あっ、もうこんな時間じゃない。今日はお気に入りの俳優が出るんだった」

 

……勉強中なのになんでテレビを付けるんだろう……??

 

三玖「あっ、今日はドキュメンタリーやるんだった…」

 

二乃「今日は譲らないわよ。私のお気に入り俳優が出てるんだから!!」

 

三玖「私こそ今日は譲れない…!今日は見逃したくない内容なの!」ガシッ

 

二乃「……なによその手?その手を退けなさい!!」

 

三玖「二乃こそ諦めて」

 

悟飯「あの〜……録画すればよくない…?」

 

「「今見たいの!!」」

 

悟飯「えぇ………」

 

「お二人さん、なにやってんの?」

 

あっ、上杉くんが到着したみたいだ。

 

風太郎「よく分からんが、勉強中はテレビを消しまーす」ピッ

 

「「あ〜!?」」

 

風太郎「ったく…、チャンネル争いかよ…。くだらねえ……」

 

そういえば、姉妹で喧嘩をしているところといえば、二乃さんと三玖さんのイメージがある……。というか、その2人が喧嘩をしているところしか見たことない気がする……。

 

風太郎「前々から思ってたんだが、アイツら仲が悪いのか?」

 

一花「うーん…。犬猿の仲ってやつ…?特に二乃はああ見えても姉妹の中で1番繊細だから、衝突も多いんだよ」

 

なるほどな…。流石一花さん。長女なだけあって、他の人のことをよく見ている。

 

一花「はーいみんな、再開するよ〜。それじゃあ、フータロー君に悟飯君。これから1週間、私達のことをよろしくお願いします!」

 

風太郎「ああ!リベンジマッチだ!!」

 

二学期期末テストまであと1週間を切った。今回は特にノルマのようなものはないが、前回は騙すような形になってしまったため、今度こそは赤点を回避させたいところだ。

 

悟飯「うわっ!?それ全部上杉くんが用意したの!?」

 

風太郎「ああ。俺はアイツらに勉強を押し付けているからな。こっちも頑張らなきゃフェアじゃない」

 

いや、確かにそうかもしれないけど、全部手書きだよこれッ!?しかも5人分!?!?

 

悟飯「僕に言ってくれれば、問題を入力して印刷したのに……」

 

風太郎「…………えっ?お前、パソコンと印刷機持ってたの?」

 

悟飯「うん。今後役に立つかなって思って……」

 

風太郎「…………今度から頼むわ」

 

………今言わない方がよかったかもしれない…。先に言っとくべきだったなぁ…。気遣いができなくてごめんね…。

 

 

 

二乃「それ、私の消しゴムよ。返しなさい!」

 

三玖「借りただけ」

 

 

 

三玖「あっ、それ私のジュース…」

 

二乃「借りてるだけよ。ってマズッ…」

 

 

 

どうして些細なことで喧嘩するのだろうか…?ひょっとして、テレビを見ることができなかったからイライラしているのだろうか……?いやいや、子供じゃあるまいし……。

 

 

風太郎「……アイデア募集中」

 

四葉「はいはーい!こんな作戦はどうですか〜!?」

 

四葉さんが提案したのは、「みんな仲良し作戦」。慣れない勉強にイライラしている2人をいい気分にして乗せてあげたら喧嘩も収まるはず……とのことだ。

 

風太郎「はっはっはっ!いや〜、いいねぇ!素晴らしい!2人ともいい感じだね!!なんというか、凄くいい!しっかりしてて、健康的で…、良いね。うーん……偉いッ!!!!」

 

………いくらなんでも下手すぎではないだろうか?あまり人を褒めることをしないのかな…?いや、らいはちゃん相手にはよく褒めるみたいだけど……。

 

四葉「下手くそ!?これなら孫さんに任せれば良かった!!??」

 

どうやら四葉も似たようなことを思ったらしい。

 

三玖「どうしたのフータロー?」

 

二乃「気持ち悪いわね」

 

三玖「……気持ち悪いは言い過ぎ」

 

二乃「本当のことを言っただけよ」

 

三玖「だから言い過ぎだって。取り消して」

 

二乃「あれー?ってことは、あんたも少しは思ったんじゃない?」

 

逆に喧嘩が促進されている…。この2人は喧嘩をする運命にあるのだろうか…?

 

風太郎「……失敗。次」

 

一花「こんなのはどうかな?」

 

一花さんの提案は「第3の勢力作戦」。あえて厳しく当たることで、ヘイトが上杉くんに集まる。共通の敵ができれば、2人の結束力は高まるはず……とのことだ。

 

確かに、敵だったベジータさんがフリーザを相手にする時は味方になったな…。

 

お父さんから聞いた話だと、ピッコロさんも敵だったけど、ラディッツが現れてから味方になったとか……。

 

この作戦はいいかも…!

 

 

一花「……どうしたの?」

 

風太郎「いや、一応それなりに頑張ってるあいつらに強く言うのは心が痛む……」

 

あっ、上杉くんでもそういうこと考えるんだ…。

 

風太郎「取り敢えずやるだけやってみるか……」

 

 

リベンジマッチ。

 

 

風太郎「おいおい!まだそれだけしか課題が終わってないじゃねえか!!と言っても、半人前のお前らは課題を終わらせるだけじゃ足りないけどなッ!!!

……あ!違った!!半人前どころか五分の一人前だったなッ!!!」

 

凄い生き生きしている…。というか、慣れてない…??

 

二乃「言われずとももう終わるところよ。ほら!」

 

と、二乃さんは課題ノートを上杉くんに見せる。

 

風太郎「……ん?それ、テスト範囲じゃないぞ?」

 

二乃「あれッ!?やば……!」

 

三玖「二乃、真面目にやって」

 

二乃「……っ!」

 

あっ、これは不味い…!そろそろ不貞腐れちゃうぞ…!

 

悟飯「ま、まあまあ!二乃さんもワザと間違えたわけじゃないんだし…。範囲外でも今後役に立つし……」

 

二乃「ふん!こんな退屈なところで真面目にやってられないわ!部屋でやってるからほっといて!」

 

……無駄だったみたい…。でも、部屋でやるみたいだし……。いいかな…?

 

風太郎「くそ…。ワンセット無駄になっちまった……」

 

五月「弱気にならないで下さい。お手本になるんでしょう?頼りにしてますから」

 

そういえば、上杉くんが来るまで五月さんがお出迎えをしようとしていたんだっけ?その時にこの問題の束を見たのかな…?

 

風太郎「……待てよ二乃。まだ始まったばかりだ。もう少し残れよ。あいつらと喧嘩するのは本意じゃないんだろ?ただでさえお前は出遅れてるんだ。4人にしっかり追いついていこうぜ?」

 

二乃「……………うるさいわね。何も知らないくせにとやかく言われる筋合いはないわッ!あんたなんかただの雇われ教師!部外者よッ!!」

 

悟飯「ちょ、ちょっと二乃さん……」

 

二乃「言っとくけどあんたもだからね!」

 

三玖「……これ、フータローが私達の為に作ってくれた。受け取って」

 

三玖さんは問題集を二乃さんに差し出しながらそう言った。

 

二乃「……問題集を作ったくらいでなんだっていうのよ…。そんなの、いらないわ!」バサッ‼︎

 

なんと二乃さんが手で三玖さんを追い払おうとしたら、誤って三玖さんの持つ問題集にぶつかってしまい、バラバラに散ってしまった。

 

一花「ね、ねぇ…!2人とも落ち着こう!」

 

風太郎「そうだ、お前ら……」

 

そろそろ些細な喧嘩で済まなくなりそうになってきた…。そのせいか、今まで静観していた一花さんも静止に入る。

 

三玖「二乃、拾って」

 

二乃「こんな紙切れに騙されてんじゃないわよ。今日だって遅刻したじゃない!こんなもの渡して………」

 

 

ビリッ!!

 

 

悟飯「あっ!?」

 

二乃「いい加減なのよ!!それで教えてるつもりなら大間違いだわッ!!」

 

なんと、上杉くんが作った問題集を破ってしまった。不幸中の幸いと言うべきか、1枚だけしか破っていないが…。

 

三玖「二乃…!!」

 

風太郎「三玖!俺はいいから!」

 

悟飯「2人とも!一旦落ち着こう!取り敢えず休憩に入ろうよ!!ね?」

 

 

パシンッッ!!!!

 

 

 

悟飯「…………えっ?」

 

五月「………二乃、謝って下さい」

 

何かを叩くような音が響いたかと思えば、なんと、五月さんが二乃さんの頬を叩いたではないか……。まさか五月さんがそんなことをするとは誰も思わなかったのか、みんな固まっている。

 

しかし…。

 

 

 

パチンッッ!!!

 

 

 

二乃「五月…!急に何を…?」

 

今度は五月さんにやられたように、二乃さんがやり返した。これは今まで見てきた生半可な喧嘩では済まないぞ…!

 

五月「この問題集は上杉君が私達の為に作ってくれたものです。決して粗末に扱っていいものではありませんでした…。彼に謝罪を…!」

 

二乃「あんた…!いつの間にこいつの味方になったのよ…!?まんまとこいつの口車に乗せられたってわけね!そんな紙切れに熱くなっちゃって…!!」

 

悟飯「た、ただの紙切れは流石に酷いよ!!上杉君は…」

 

風太郎「いや、二乃の言う通り俺が甘かったんだ…」

 

五月「あなたは黙ってて下さい。………彼はプリンターもコピー機も持っていません。本当に呆れました……」

 

 

「全部手書きなんです」

 

 

二乃「…!?だ、だから何よ……」

 

五月「私達も真剣に取り組むべきです!!上杉君に負けないように!!」

 

二乃「………私だって…」

 

一花「二乃……」

 

三玖「いい加減受け入れて」

 

悟飯「に、二乃さんも反省しているだろうから、その辺にしようよ!ね?」

 

三玖「でも……」

 

二乃「……分かったわ。あんちたちは私よりこいつを選ぶってわけね…。いいわ。こんな家出てってやる!」

 

風太郎「!?待て二乃!冷静になれ!」

 

五月「そうです!そんなの誰も納得しません!!」

 

……最早僕が口を出すレベルではなくなってきているかもしれない…。でも…!

 

二乃「前から考えてたことよ。この家は私を腐らせる…」

 

五月「に、二乃!」

 

悟飯「ま、待ってよ二乃さん!本当はそんなこと思ってないでしょ!?二乃さんは誰よりも姉妹のことを考えているのは僕は知っているよ!」

 

二乃「うっさいわね!!知ったような口を聞くんじゃないわよ!!」

 

五月「もうやめて下さい!!こんなのお母さんが悲しみます!!」

 

二乃「……未練がましく母親の代わりを演じるのやめなさいよ」

 

五月「……!!!??」

 

悟飯「………えっ?」

 

 

それ、どういう意味…?

 

 

四葉「二乃!早まらないで!」

 

一花「そうそう!話し合おうよ…!」

 

二乃「話し合いですって?先に手を出してきたのはあっちよ?あんなドメスティックバイオレンス肉まんお化けとは一緒に居られないわッ!!」

 

五月「ど、ドメ…!?肉…!!?」

 

悟飯「ああ…。ちょっと…!もういい加減に……」

 

五月「そんなにお邪魔なようなら私が出ていきます!!」

 

二乃「あっそ!勝手にすれば?」

 

一花「もー!なんでそうなるのよー!?」

 

風太郎「ど、どうすれば………」

 

悟飯「………僕達はもう帰ろう。今日はもう勉強できるような状況じゃない」

 

風太郎「だ、だが……」

 

一花「ごめんねフータロー君…。でも、今日は悟飯君の言う通り帰ってもらった方がいいかも…。あのプリントをやって埋め合わせしておくから!」

 

風太郎「…………」

 

その日、僕達は渋々と帰宅した。ここまで来てしまうと家族の問題。僕達が口出すべき問題ではない…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日。熱りが冷めたかと思ったが、2人は本当に家出をしてしまったらしい。家に来たが、在宅しているのは三玖さんのみだった。一花さんと四葉さんは外せない用事があるらしい…。

 

しかも家出に関してはしばらく収まりそうにない。先に帰った方が負けのような空気になっており、意地の張り合いになっているらしい…。

 

風太郎「こんな時に…。試験勉強はどうするつもりだ…!」

 

悟飯「…………昨日まではみんな仲良かったのに……」

 

三玖「……うん。こんなに部屋が広いと感じたのは久しぶり…」

 

風太郎「……こういうことはよくあるのか?」

 

三玖「姉妹だもん。珍しくない。でも、今回は今までとは少し違う気がする…」

 

まだ出会って数ヶ月ではあるが、僕もそんな感じがした。今回の喧嘩は一日や二日で収まるようなものだとは思えない…。

 

三玖「ともかく五月と二乃を捜そう。二乃と仲の良い友達2人なら知ってる。五月は?」

 

風太郎「五月は………誰と連んでるんだろう…?悟飯と喋ってる姿しか見たことないかも……」

 

三玖「……今は嫉妬している場合じゃない…。悟飯、五月の居場所とか聞ける?」

 

悟飯「……一応、チャットアプリで2人に聞いたけど、二乃さんからは返信がないし、五月さんは『お気になさらず』って……」

 

三玖「悟飯でもダメか………」

 

風太郎「とにかく、手当たり次第探すしかねえな……」

 

 

 

 

 

 

数十分が経過したところ、三玖さんが自身の顔を使って捜索することになった。五つ子ってなんて便利なんだろう…。と言いつつも、ほぼ同時に二乃さんの気を見つけたんだけど……。

 

どうやらホテルに泊まっているらしい。流石お金持ち……。って、感心している場合じゃない…。

 

二乃「……えっ?あ、あんた達、なんでここに…!?てか鍵は!?」

 

三玖「部屋に鍵を忘れたって私が言ったら開けてくれた」

 

二乃「ガバガバセキュリティ!」

 

風太郎「……二乃、昨日のことは…」

 

二乃「出てって!私達はもう赤の他人よ!!」

 

『私達』…?それって、三玖さんも含めて言っているのか…!?

 

 

ガッ!

 

 

上杉くんは扉を閉めようとする二乃さんに屈しず、腕を間に入れてなんとか空間を繋ぎ止める。

 

風太郎「せっかく来たんだしお茶でも出してくれよ」

 

二乃「お断りよ!!」

 

風太郎「二乃、どうしたんだ…?お前は誰よりもあいつらが好きなんだろう?そしてあの家も好きって話だろ?」

 

二乃「……あんたも知ったような口を聞くんじゃないわよ。よりにもよってあんたらが…!こうなったのも全部あんたのせいよ!!」

 

 

「あんたなんて来なければ良かったのに!!」

 

 

悟飯「ちょっと!!いくらなんでもそれは…!!」

 

二乃「家庭教師がカカロット君だったら良かったのに…。そうだ孫。彼はどこにいるのよ?会わせなさいよ!」

 

悟飯「それは……」

 

二乃「できないの?なら用はないわ」

 

悟飯「ほ、他のことならいくらでも…」

 

ガチャ

二乃「あのーすみません。部屋にやばい奴がいるんですけど…」

 

…!?……どうやら本気で追い出したいらしい…。

 

三玖「2人とも!一時撤退!」

 

風太郎「くっ…!やむを得ん!」

 

 

 

 

 

結局二乃さんの説得はできなかった…。

 

三玖「二乃の居場所は分かったけど、五月は結局手がかりもなし……」

 

風太郎「仕方ない。今日は諦めよう。どうせ五月もどこか高級ホテルに泊まってるんだろう」

 

三玖「……それが実は、あの子、家に財布を忘れているよ…」

 

悟飯「ええ!?それはまずいよ!」

 

 

 

 

結局日が暮れてしまうので、その日は解散となってしまった。だけど僕は気を頼りに五月さんを捜索し続けた。そして、30分くらいで見つけることができた…。

 

 

 

 

ヒュー…

 

悟飯「………」

 

五月「はっくしょん!」

 

……思ったよりも酷いかも…。

 

悟飯「……五月さん?」

 

五月「へっ?そ、孫くん!?」

 

まさか公園で寝泊まりしてたわけじゃないよね…?

 

悟飯「……なんで公園で…?」

 

五月「だ、だって…。家に帰りたくないし、泊めてもらうほど仲のいい友達もいませんし、上杉くんの家にお邪魔しようにも、場所を知らない上に事情も知っているので…………」

 

悟飯「………家に帰った方がいいよ?」

 

五月「それは嫌です!二乃が折れるまで私は帰りません!!」

 

……困ったな。友人を見殺しにするなんてあまりにも目覚が悪い…。……あまり気は進まないけど…。

 

悟飯「……じゃあ、僕の家に泊まる?」

 

五月「………えっ!?!?い、いえいえ!それは孫くんのご家族にも迷惑がかかりますし!!」

 

グゥゥゥゥ…

 

五月「……………」

 

悟飯「………家に帰った方がいいよ?」

 

五月「嫌です!」

 

悟飯「じゃあどうするの……」

 

五月「…………一日だけ、お世話になります………」

 

悟飯「………じゃあ着いてきて」

 

五月「はい……」

 

ひと気のないところに移動し、そこで筋斗雲を呼んだ。

 

五月「な、なんですかこれ!?雲ですか!?」

 

悟飯「これは『筋斗雲』って言うんだ。お父さんがよく使っていた乗り物らしいんだけど、今は僕が使わせてもらっているんだ」

 

既に僕の素性を知っている五月さんになら、筋斗雲を見せても問題はないだろう。ただ問題は……

 

悟飯「ただ、この雲は純粋な心を持っている人じゃないと乗れないみたいなんだよ…。だから、乗る前にちょっと触ってみてくれない?」

 

五月「は、はい…」

 

ポフっ…

 

…どうやら、五月さんは大丈夫らしい。純粋な心とは、どれくらい純粋でなければならないのかは明確には知らされていない。でも孫家ではみんな乗れた。……恐らく、フリーザやセルみたいな悪人は乗れないだろうけど…。

 

悟飯「じゃあ、しっかり掴まってね?」

 

五月「は、はい…」

 

五月さんがしっかり掴んだことを確認すると、僕は筋斗雲を発進させた。

 

 

 

 

 

五月「こ、怖いですぅぅう!!!!お、降ろして下さ〜い!?!?!?」

 

悟飯「あまり騒がないでッ!!!!」

 

しまった…。五月さんって、怖いものが苦手だったのは知ってたけど、高い所も苦手なの…?

 

五月「飛行機とかなら大丈夫ですけど、雲ですよ!?いつ落ちてもおかしくないですよ!?」

 

悟飯「……大丈夫。万が一落ちたら僕が助ける」

 

五月「………!……は、はい…」

 

良かった…。なんとか落ち着いてくれた…。

 

筋斗雲に乗っている間、五月さんが露骨に僕に体を預けてきた気がするのは多分気のせいだろう…。

 

 

 

 

 

 

なんとか自宅に到着した。

 

五月「こ、ここが孫くんのお家ですか…。周りには自然しかありませんね…」

 

悟飯「でもいいところだよ?都会みたいに煩くなくて静かだし」

 

ガチャ

悟飯「ただいま〜!」

 

悟天「あっ、兄ちゃんお帰り〜!………あれ?なんで…?」

 

悟飯「あっ…。これには……」

 

 

ドタドタドタッ!!!

 

 

「お母さん!!兄ちゃんが女の人を家に連れ込んできた!!!!」

 

五月「な、なっ!?」

 

悟天…。言い方ってものがあるだろ…。

 

 

「なんだって〜!?!?!?!?」

 

 

五月「……元気なご家族ですね…?」

 

悟飯「あ、あははは………」

 

ドタドタ!!

 

チチ「んだとぉ!?どこの馬の骨とも分からねえやつにうちの息子は渡さねえだッ!!!!」

 

悟天「お母さん。この人が五月さん」

 

チチ「…えっ?な、なーんだ!そっだなことなら早く言ってけろ!!五月さ!よくウチに来てくれただ!さあさあ、上がって行くだよ!遠慮はいらねえべ!!」

 

五月「お、お邪魔します…」

 

悟飯「……五月さん。お母さんの言うことはあまり気にしなくていいから」

 

五月「……?は、はぁ…」

 

今日は騒がしくなりそうだなぁ…。

 





もう20話に到達したのか…。
ここまでこんなハイペースで来れたのは、毎回応援してくださる方がいたからですね…。ここまで来たら、多少空く時期があってもエタらずに完結まで頑張ります。「頑張りたい」ではなく「頑張ります」。
前にも言った通り、ここで言う完結は、打ち切りによる完結は除外してます。

最近は時間ができたからなのか、展開がわんさか思いつくわ思いつくわ…。ひょっとしたら、毎日更新ができるようになるかも…?それは多分続いても1週間くらいでしょうが…。毎日更新はあまり期待しないでくだせぇ…。多分見直しとかして結局最多でも一日おきの投稿になるかと…。

次回のお泊まり回ですが、ほぼオリジナル展開です。無論、原作において風太郎でやった件はやると言えばやるのですが、それはほんの一部に留まるかと…。
今作のモットー(?)として、風太郎の行動を悟飯が真似るのではなく、悟飯だからこそのエピソードを作り上げたいので……。その方が読者の皆さん的にも面白いだろうし、新鮮だと思うので…。

まあ単純に自分自身も楽しむ為に書いている作品でもありますしね、この作品は。
時間が経ってから、1話から読み返すと、第三者目線で読めるので結構楽しめます。大筋だけ決めて詳細はその場のノリで書く方式は、そんなメリットがあったりします。ただし、どこかしらで読み返さなければ矛盾が生じてしまうという欠点もありますが…。

もしも読者の方の中に書き手の方がいましたら、そんな書き方をしてみるのもいいかもしれませんね…。あくまで自己流ですが。ちゃんと話を練りたい方にはあまりお勧めはできないかも…?

それと、筋斗雲の基準はあまり気にしていないので悪しからず…。

久々に長い後書きでしたね()

できるだけアンケートに答えて下さると助かります…。

これにて今回は失礼します。


‐追記(独り言)‐
あれ?なんかハーレムを希望する人多すぎない…?私の予想では2番のIFルートが一番多くなるものとばかり…。3番のハーレムはネタ枠のつもりだったんだけど…。そんなにいるなら、IFルートにハーレムルートも追加した方がいいかな…?


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第21話 過去

前回のあらすじ…。

試験1週間前になったため、悟飯達は家庭教師の仕事に本腰を入れることになった。しかも風太郎は手書きの分厚い問題集を5人分も作り上げてきた。

しかし、些細な喧嘩がきっかけになり、五月と二乃が大喧嘩してしまう。そして2人とも家出する展開にまで発展してしまった。

財布を持ち合わせていなかった五月は悟飯の家に泊まることになり、二乃はホテルに泊まることになった…。

残り1週間もない中、こんな状況になってしまったが、悟飯と風太郎は、無事に赤点を回避させることができるのであろうか…?

悟空「チチのやつ、なんであんなにイキイキしてんだ?」

界王「ワシに聞かんでくれ…」



何故僕が五月さんを連れてきたのか事情を話しておいた。これで少しはマシになると思う…。

 

チチ「ウチは悟飯と悟天ちゃんが喧嘩することなんてねえから、どうアドバイスすればいいかよく分からねえだ…」

 

五月「そ、そうなんですか?」

 

悟天「そういえば兄ちゃんと喧嘩したことないかも…」

 

歳が離れてるからかな?衝突というものは中々起きない。

 

チチ「それにしても五つ子ってすげえよなぁ…。世界中探しても中々会えないんでねえか?」

 

悟飯「三つ子の時点で世界的に珍しいって言われているからね……」

 

チチ「そうだ、五月さはどれくらい食べるだ?」

 

今日はカレーだ。前にどこかで五月さんの好物はカレーだと聞いたことがあったような気がする…。

 

五月「わ、私は……」

 

グゥゥゥゥ…

 

……そういえば、一日はお金も持たずに外で過ごしていたんだよな…?それはお腹が減るに決まってる…。

 

チチ「遠慮はいらねえべ。ウチの子二人は沢山食べるから、今更一人増えたところで問題ねえべ!というかむしろ食べてってくれ!」

 

五月「……いただきます…」

 

こうしていつも通り……ではない夕食になったのだが…。

 

五月「待ってください!!?いつもそんなに食べてるんですか!?」

 

悟飯「…?そうだよ?」

 

あー…。僕と悟天のカレーの量に度肝を抜かされているらしい。確かに一般人から見たらとんでもない量だもんね…。

 

五月「………ですが、これで多少は遠慮せずにいただけます」

 

チチ「……五月さは悟飯ちゃんのことをどう思ってるだ?」

 

五月「うっ…!ゴホッ!ごほッ!な、ななな、なんでそんなことを!?」

 

チチ「そんなに動揺することでもねえべ…。なーに、単に興味本意だべ。悟飯はしっかり教師をやれてるのか気になっただ」

 

五月「孫くんの授業はとても分かりやすいです。彼は丁寧に教えてくれますから。厳しい上杉くんとは反対に、孫くんは優しめなので、私達もその優しさがあるからこそ頑張れるというものです」

 

チチ「……それだけ?」

 

五月「へっ?あとは、そうですね。真面目ですし、優しいですし、身長は高いですし、偶に見せるカッコ良さがあって、この前の林間学校の時なんか、変な人に攫われそうになっていたところを孫くんに助けてもらって、その時から私は…………ハッ!?」

 

悟飯「……五月さん…。お母さんがいるからって、無理して僕を褒める必要はないからね…?」

 

僕に配慮してくれているのかな?別にそんなことはしてくれなくてもいいのに…。もしかして、一花さんみたいにふざけているのかな…?

 

チチ「ふーん…?」ニマニマ

 

五月「あっ、えーっと…。孫くんがカッコいいというのは、本当に偶にですからね!!普段からカッコいいだなんて思ってませんからッ!!」

 

チチ「んだ。それで、二人はいつ結婚すんだ?」

 

悟飯「ぶふっ!?」

 

五月「けけけ、結婚ッ!?!?」

 

悟飯「お母さん!!冗談でそういうこと言うのはやめてって!!」

 

チチ「オラは冗談で言ってるつもりはねえだぞ?」

 

五月「わ、わ、私は構いませんけど、孫くんがいいかどうか……///」

 

悟飯「五月さん。無理してお母さんに話を合わせる必要はないからね?」

 

チチ「はぁ……。悟飯ちゃん…。オラはそんな息子に育てた覚えはねえぞ…?」

 

悟飯「えっ?」

 

いや、僕なにかした?何もしてないと思うんだけど……。

 

チチ「まあ五月さの気持ちを聞けただけで良しとするだ。ご馳走様だ」

 

何故だろう。今のご馳走様には二つの意味が含まれていた気がする…。

 

悟天「…………兄ちゃんは渡さないからね?」

 

五月「えっ?」

 

悟飯「何言ってるんだよ悟天?」

 

 

こうして夕食は終了。そういえば、五月さんはどこで寝るんだろう?

 

 

チチ「五月さ?カレーは美味しかっただか?」

 

五月「はい!とても美味しかったので、ついおかわりしてしまいました!!」

 

チチ「それなら良かっただよ…。んじゃ悟天ちゃん!今日は久しぶりにオラと寝るだよ!」

 

悟天「分かった!」

 

悟飯「あの、五月さんはどこで寝ればいいかな?」

 

チチ「それなら気にしなくていいだ。ちゃんと用意してあるだ!」

 

五月「何から何までありがとうございます…」

 

あれ?この家に客間なんてあったっけな…?布団とかをその辺に敷くのかな…?

 

……しかし、せっかく五月さんが泊まりに来てるんだ。普段ではできないことを今のうちにやっておきたい。

 

悟飯「五月さん。僕の部屋にきてよ」

 

五月「えっ、ええ!?そそそ、そんな!?いきなり孫くんのお部屋だなんて!!」

 

悟飯「……?今できることをやっておきたいからさ…」

 

五月「や、ヤる…!?」

 

悟飯「まあ…。どうしても嫌だって言うなら、無理強いはしないけど……」

 

五月「………い、行きます…///」

 

……?五月さん、照れてるのかな?あっ!もしかして、友達の家に泊まるのは初めてなんだな!だから緊張しているのか!それなら納得だ!

 

チチ「二人ともー!頑張るだぞ〜!!」

 

悟飯「はーい!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

五月「………なんだ、勉強でしたか…」

 

悟飯「……?逆になんのことだと思ってたの?」

 

五月「い、言えません!///」

 

悟飯「…???」

 

よく分からないけど、まあいいや。後で四葉さんに今回の範囲の重要ポイントを厳選した問題を送るとして…。せっかく五月さんがいるのだ。赤点をしっかり回避できるように授業をしたい。

 

悟飯「それじゃあ始めるね?ここはね……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あれから結構時間が経った。

 

授業は順調に進んだ。今回はかなり手応えがあった気がする。

 

悟飯「いいね!やっぱり初めて会った時よりも確実にできるようになってきてるよ!」

 

五月「ほ、本当ですか…?」

 

悟飯「うん!このまま続けていけば、今回は赤点を回避することならできるかもしれないね」

 

五月「……そういえば、もう夜の10時になりますけど、孫くんのお父様はまだ帰ってこないんですか?」

 

悟飯「…………あっ、そういえば言ってなかったね」

 

五月「えっ…?」

 

悟飯「僕のお父さんは、7年前に亡くなったんだ………」

 

五月「……!?す、すみません!!無神経な質問をしてしまって!!」

 

悟飯「……いいよ。お父さんのいない生活にはもう慣れたから……」

 

五月「……あの、機会があればでいいんですけど、孫くんのお父さんのことについて、聞かせてくれませんか?」

 

悟飯「えっ…?それくらいなら全然いいけど……」

 

「お風呂空いただぞー!」

 

悟飯「あっ、はーい!……五月さん先に入ってきたら?」

 

五月「えっ…?いいんですか…?」

 

悟飯「うん。僕が思っていたよりも五月さんはできるみたいだから 今日はこの辺で終わりにしよう。やり過ぎても覚えられることに限りはあるしね」

 

五月「分かりました。では先にお風呂をいただきますね」

 

悟飯「……あっ、着替えはどうするの…?」

 

五月「ジャージならあります。ですのでそちらに着替えます」

 

悟飯「分かった」

 

さて、今のうちに今日の問題を四葉さんに送信しよう…。上杉くんにちゃんと向き合えるように協力しないとね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

チャポン…

 

五月「……孫くんの方は特に生活に困っているわけではなさそうですね…」

 

てっきり上杉くんみたいに何か事情があって家庭教師のお仕事をしているのかと思っていましたが…。

 

ですが、夕ご飯だけでもあの膨大な量を3回分も食べてるとなると、生活費は相当大きそうですね…。

 

しかし…。流れでとはいえ、私は孫くんの家に来てしまいました!?孫くんのお母様は何故か結婚に賛成していますし……。これでは結婚前に挨拶に行っているみたいではありませんか!?私はただ家出しているだけなんですよ!?

 

それに…。孫くんと同じ屋根の下で過ごすことになるとは……。以前も何度かそういうことはありましたけど、その時は孫くんのことは優しいお友達程度にしか考えていませんでしたけど、今は…………

 

「五月さー!湯加減はどうだ?」

 

この声は……孫くんのお母様でしょうか…?

 

五月「は、はい!丁度いい湯加減です!」

 

「ならよかっただ…。なあ五月さ、ちょっと女同士の内緒話をしねえか?」

 

五月「えっ?な、内緒話…?私は構いませんが……」

 

一体なにを……?

 

「夕食の時はふざけ半分みたいになっちまったが、五月さは悟飯のことをどう思ってるだ?」

 

五月「えっ!?えーっと…。彼のことは優しいお友達と…」

 

「別に嘘はつかんでええ。オラは別に怒ったりはしねえだ。家に来た時には既に顔が赤かっただぞ?多分、一緒に筋斗雲に乗って緊張してたってとこだろ?」

 

五月「え、えぇ…。高いところをずっと飛んでいたので、確かに緊張はしましたけど……」

 

「そうじゃねえ。悟飯がすぐ側にいてドギマギしてたんでねえか?」

 

五月「ええ!?そそそ、そんなことはありませんよ!?彼とはあくまでもお友達です!!」

 

「……ああ!今はまだ友達ってことだな!」

 

……なるほど。孫くんの『お母さんの言うことは気にしなくていいからね?』という意味がよく分かりました…。

 

「まあそういうことにしておくだよ。ただオラから一言アドバイスさせてもらうだ。悟飯は小さい頃は学校に行けてねえ。学力は問題ねえけど、恋愛面の知識がちょっとなぁ……。そのせいもあって悟飯は鈍感だべ。だから、気持ちに気付いてほしいなら、回りくどいことはしねえで、真っ先に勝負した方がいいだぞ!!」

 

 

…………それはなんとなく分かっていました。でも、少し怖いんです…。孫くんなら拒絶はしないだろうと思っています。でも、私の想いを打ち明けたとして、その後は今までのように接することができるのか……。

 

 

「わあ!ブラがオラのよりデケェだ!?美人な上にデケェなんて、オラ女として負けた気分だべ……」

 

五月「あまり大きな声で言わないで下さいッ!?」

 

「すまねえだ。話を戻すとして、五月さが本当に悟飯のことをなんとも思ってないなら別にいいだよ。でも、何か思うところがあるなら、早めに行動しておいた方がいいだぞ?」

 

五月「………参考にさせてもらいます」

 

「……もう短刀直入に聞いちまうだ。悟飯のことは好きか?あっ、友達として好きってのは無しだぞ!」

 

五月「……好きって言ったら……どう思います…?」

 

「それなら大歓迎だ!悟飯から聞いてる話だと、五月さは真面目でいい子だ。それにお金持ちだし…。変な女に捕まる前にとっととくっついて欲しいだ」

 

まさかの孫くん側の親から公認だなんて…。ますますこの気持ちに歯止めが効かなくなってしまいそうです……。

 

「にしても、相乗り筋斗雲かぁ…。オラも昔は悟空さと筋斗雲に乗ったっけなぁ…。懐かしいだ……」

 

五月「ご、ごくう…?」

 

「ああ。言い忘れていただ。オラの夫で、悟飯と悟天ちゃんのお父さんだ」

 

ごくうさんって言うんですか…。孫悟空…?まるで西遊記みたいですね…。

 

「話が長引き過ぎちゃっただな。のぼせる前に上がるだぞ!」

 

五月「はい」 

 

…………本当にいいんでしょうか…?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

五月さんがお風呂から出てきたので、僕もお風呂に入った。僕がお風呂から出て部屋に戻ると、五月さんは勉強をしていた。今日はもういいよって言ったのに……。やっぱり五月さんは真面目なんだな…。

 

ピロン

 

悟飯「…ん?」

 

四葉さんからメールだ…?

 

『今日も問題と分かりすい解説ありがとうございます!二乃の居場所は三玖から聞いたんですけど、孫さんは五月の居場所はご存知ですか?もしご存知なら教えて下さい!』

 

五月「……四葉からですか?」

 

悟飯「うん。五月さんの居場所を知りたいって」

 

五月「だ、ダメです!!孫くんの家にいることは伏せて下さい!!」

 

悟飯「そ、そう?分かった」

 

五月「適当にお友達の家にいることにしてください!!」

 

メールの返信によると、五月さんは友達の家に泊まらせてもらっているみたいだよ。誰の家かまでは教えてくれなかったけど…。

 

という内容の返信をした。

 

悟飯「さてと…。それで、僕のお父さんの話を聞きたいんだっけ?」

 

五月「は、はい…。差し支えがなければ、孫くん自身のことも……」

 

悟飯「……分かった」

 

 

 

僕が小さい頃から、お父さんは働きもせずに修行ばかりしていたそうだ。

 

五月「なんですかそれッ!?完全にニートじゃないですか!?」

 

悟飯「ま、まあまあ…」

 

僕は小さい時は外でよく遊んでいた。だけど周りは森ばかり。一度迷ってしまうと、なかなか元の場所に戻れない。小さい頃は今みたいに気を扱うということも知らなかった為、僕は迷子になっていた。でもその度に……。

 

『悟飯!見つけたぞ!もう迷子になるんじゃねえぞ?』

 

お父さんはいつも僕を見つけてくれた。僕はそんな優しいお父さんが大好きだった。

 

でもある日、亀仙人さんの家に行った時のことだった……。

 

『ようやく会えたぞ、カカロット』

 

お父さんの兄を名乗るサイヤ人が現れたのだ。その名はラディッツ。そこでお父さんと僕は、サイヤ人という宇宙人であることを知った。僕はそいつに攫われ、お父さんとピッコロさんが僕を助けに来てくれた。お父さんはラディッツを倒すために自分も死んでしまったのだ。

 

その後、ラディッツよりも強いサイヤ人2人が地球に来ることになり、潜在能力のある僕は、ピッコロさんの元できつい修行を1年間した。その後は、仲間の人たちと共にサイヤ人達と戦いに行った。でもその時の僕はまだ幼かった。怖くてマトモに戦えなかった。そんな僕のせいで師匠であるピッコロさんは、僕を庇う形で死んでしまった…。

 

その後にお父さんが生き返ってやってきてくれて、2人のサイヤ人をなんとか倒してくれた。

 

 

五月「えっ、ちょっと待って下さい。生き返ったってなんですか!?」

 

悟飯「ああ。言い忘れていたね。地球にはドラゴンボールっていう、7つの球体があって、全部揃えると願いを何でも1つだけ叶えてくれるんだ。今は3つ叶えられるけど」

 

ただし例外があり、1度に大勢の人を生き返らせる場合に限っては2つに減ってしまう。

 

五月「……取り敢えず、続きをどうぞ…」

 

 

そのあとは、ピッコロさん達を生き返らせる為に、ピッコロさんの故郷であるナメック星に行った。ピッコロさんが死んでしまった為に神様も死んで、ドラゴンボールの創造主である神様も死んでしまったため、地球のドラゴンボールは使えなくなったのだ。

 

そこには、2人のサイヤ人よりも更に強い奴らが沢山いた。特にフリーザという奴が非常に強敵だった。

ピッコロさんはなんとか生き返らせることができたが、今度はお父さんの親友だったクリリンさんも殺されてしまった。

お父さんはそこでフリーザに対して激しい怒りと憎悪を抱き、覚醒してフリーザを倒した……。

 

僕達は地球に帰り、ナメック星のドラゴンボールによって、サイヤ人に殺されてしまった人たちを生き返らせることができた。お父さんも帰ってきて無事に平和が訪れたかと思うと、今度は人造人間という強敵が現れた。

 

しかもその人造人間を吸収することによって完全体となるまた別の人造人間が現れた。そいつは、お父さんやサイヤ人、ピッコロさん、フリーザなどの細胞を合成して作られた特殊な人造人間だった。そいつが………。

 

悟飯「セル……」

 

五月「えっ…?セルって、7年前のあの…!?」

 

悟飯「うん」

 

色々あって完全体となってしまったセルを倒す為に、僕はお父さんと更なる修行に励んだ。そして修行は終了。セルゲームが始まるまでの間、お父さんは買い物やドライブなどに連れて行ってくれた。

 

……そして、セルゲームの日になった。最初にお父さんがセルと戦った。だけどお父さんは降参した。次に指名したのは僕。

………色々あって、僕の中に眠る力を解放することに成功して、僕はセルを上回る強さを手に入れた。だけど、僕はセルを苦しめなきゃいけないと自分に言い聞かせ、セルを痛ぶることを内心楽しんでいた。でもそれが間違いだった…。

 

まさかセルが自爆という手段を持っているとは思わなかった。自爆すれば、地球は宇宙から消えていただろう。でも、瞬間移動のできるお父さんが、自分の命を犠牲にして、どこか遠い星でセルと共に爆発したんだ…。

 

だけど、セルには驚異的な再生能力があり、更にパワーアップして帰ってきたのだ。

とても苦戦したし、諦めかけたけど、今度こそ僕はセルを倒すことに成功した。それと同時に、お父さんの仇を打つことができたんだ…。

 

今思えば、お父さんと一緒に過ごした時間はそんなになかったかもしれない。でも、地球を守る為に必死になって戦う父の姿、仲間の為に必死になるお父さんは、僕は好きだった…。

 

五月「ま、待ってください!では、セルゲームに参加していたあの金髪の男の子って…!!」

 

悟飯「………それが僕」

 

五月「…!?!?!?」

 

悟飯「あはは…。今まで隠していてゴメンね…?」

 

五月「……いえ、仕方のないことだと思います…。その話を公にしてしまっては、間違いなく大騒ぎになります…。孫くんの判断は正しいですよ…」

 

悟飯「ありがとう…」

 

五月「………ん?ということは、セルを倒したのは孫くん?」

 

悟飯「うん…」

 

五月「……でも納得です。林間学校のあの時に、その強さを目の当たりにしましたから…」

 

悟飯「五月さん、このことは…」

 

五月「分かってます。誰にも言いませんよ。例え相手が姉妹であっても」

 

悟飯「ありがとう…」

 

五月「……あれ?確か、ドラゴンボールというもので死者を生き返らせることができるんですよね?でしたら、孫くんのお父さんは生き返られるのでは…?」

 

悟飯「一度生き返らせた人は、二度も生き返らせることができないみたいなんだ…。それに加えて、病気や寿命で死んだ人も生き返らせることができないんだ……」

 

五月「…!?!?……………そ、そうなんですか……」

 

気が緩んで、少々話し過ぎてしまったな…。

 

五月「…孫くんは、今までそんなに辛い人生を歩んでいたんですね…」

 

悟飯「あはは…。人から見たら確かに辛かったかもしれないね…。でも、こうして大切な物を、人を守る力を手に入れることはできた。だから、自分の人生に後悔しているわけじゃないんだ…」

 

五月「……(私も、孫くんがそんな辛い人生を歩んできたからこそ、私はあの時に助けられたんですね……)」

 

悟飯「さて、明日から学校だし、そろそろ寝ようか。五月さんの寝室に案内するよ」

 

五月「ありがとうございます」

 

 

 

 

悟飯「お母さん。五月さんはどこで寝ればいいかな?」

 

チチ「何言ってるだ?さっき悟天ちゃんはオラと寝るって言っただぞ?」

 

悟飯「いや、悟天じゃなくて五月さんのことなんだけど……」

 

僕はいつも悟天と一緒に寝ている。ベットが僕用と悟天用とで2つ用意してある。でも悟天は今日はいないわけだから……。

 

……………まさか…!

 

悟飯「………お母さん…?」

 

チチ「悟飯!学年1位の天才なら分かるだろ?」

 

悟飯「……ここに来てふざけるのはやめてよ…?」

 

チチ「…?五月さは悟天ちゃんのベッドで寝ればええだ」

 

悟飯「お母さん!?」

 

五月「いいんですか?」

 

チチ「んだ。問題ねえだぞ!悟天ちゃんも特に反対はしてなかっただしな!本当ならお客用にお布団でも用意した方が良かったんだろうけど……」

 

五月「ありがとうございます…。では、そちらまで案内してもらえますか?」

 

悟飯「…………うん」

 

それで案内したんだけど…。

 

五月「あれ?なんで孫くんのお部屋に戻ってるんです?」

 

悟飯「……僕と悟天はいつも一緒に寝てるんだよ……」

 

五月「えっ……?えぇ!!?!?」

 

お母さん………。流石に常識を弁えようよ…。

 

悟飯「僕は床で毛布でも敷いて寝るから、五月さんはベット使っていいよ」

 

五月「だ、ダメです!!居候させてもらっている身でそんな失礼な真似はできません!!でしたら私が床で寝ます!!」

 

悟飯「それはだめだよ!!風邪引いちゃうよ!!」

 

五月「それは孫くんもでしょう!?」

 

悟飯「僕は一度も風邪を引いたことはないんだよ!!だから大丈夫!!」

 

五月「えっ!!凄いですねそれ…。でも今まで風邪を引かなかったからと言って、次も引かないとは限りません!!」

 

困ったな…。五月さんはこうなってしまうと絶対に譲らない…。

 

五月「……私は、孫くんと一緒に寝てもいいですよ?」

 

悟飯「えっ?でも……」

 

五月「そ、それとも、孫くんは、私と寝るのは……嫌ですか…?」

 

そ、そんな涙目で問い掛けられると…。

 

悟飯「あはは……分かった…。2人ともベッドで寝よう……」

 

五月「そうです!それがいいです!」

 

……明日お母さんにキツく言った方が良いかな…?

 

結局、僕は僕のベットで、五月さんは悟天のベットで寝ることになった。

 

……何故か眠れない…。五月さんがいるからだろうか…?

 

五月「……孫くん、起きてますか?」

 

悟飯「う、うん……」

 

五月「……今日は月が綺麗に見えます。少し歩きませんか?」

 

悟飯「……?」

 

山に行ったことないのかな…?でも夜のパオズ山の散歩か…。たまにはいいかも…?

 

悟飯「うん。じゃあ行こうか」

 

しかしこの後、悟飯はとんでもない出来事に遭遇することになるのであるが、悟飯はそれを知る由もない…。

 




聞かれそうなことを先に答えるコーナー(新)

Q:月は破壊されたはずですが、なんで存在してるんですか?

A:月がなくなると気候や生態系に支障が出るからワシが生前に直したんじゃよ。先代の地球の神もやっておったはずだぞ?



なんか悟飯が過去を全て曝け出してしまったな…。五月なら真面目で良識があるので、話してしまったところで周りに言いふらしたりはしないだろうといった感じで、悟飯は五月を信頼しています。むしろ近いうちにバレてしまうだろうから、どうせなら全て話してしまおうという考えです。

悟飯の過去話は、多少省いている部分があります。本当に大まかなあらすじ程度です。

これにて悟飯の素性を知る者は、いつも連んでいる6人の中では五月のみとなりました。前にも言いましたが、今回は二郎系もビックリの五月成分マシマシとなっています。もう人によっては五月が悟飯の花嫁なんじゃないかと勘違いする人が出てくるかもな…。特に次回。

実を言うと書き溜めでもう次回分できてるんですよ。ただあまりにも攻めている内容なので、このまま投稿していいのかどうかマジで迷ってます。

そこでお願い?注意?なのですが、本当に寛容な方だけが閲覧することをお勧めします。(とは言え、特殊な要素は一切ありませんけどね。タグを見ていただければ分かると思いますが…)
でもまあ…、今までも前書きで散々『細かいことが気にならない人向け』的なことを毎回言っていた気がしますが、念のため…。
次回は悟飯らしさと五月らしさが保ててるか本当に心配です…。キャラ崩壊はしてない……はず………。

なんかこれ以上載せるとネタバレになりそうなので、次回のことについてはこの辺で…。


第3回アンケートについてですが、凄い結果になってますね…。3番のハーレムはネタ枠のつもりで載せたんですけど、あまりにも多くてビックリしてます。
私個人としては、一人に絞りたいと思っていたんですけどね…。でもここまでいるとなると、やはり本編で結ばれなかった場合のIFルートにハーレムのパターンも追加した方がいいかな…。ここまで多いと書かなきゃいけない気がしてきた…w

それでは、今回はこれにて失礼します。

-追記-
ドラゴンボールの願いの数について・・・

訂正前は、願いの数を2つとしていましたが、どうやら・・・

「皆さん勘違いしているが、セル編で叶えられる願いはデンデがパワーアップさせ3つに増えた。 ただ一度に大勢の人間を生き返らせる場合の叶えられる願いは2つに減る。 だからブウ編では「どんな願いも3つだけ叶えてやろう」と言っていた。」

・・・ということみたいですね。盛大に勘違いしてましたが、読者様からのご指摘をきっかけに私が勘違いしていることに気づけました。ありがとうございます。


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第22話 純情少年、孫悟飯

マジで今回は攻めた内容になってます。それなりに心の準備をして閲覧して下さい。
あとそれから、念の為にもう一度言っておきますが、クロスカップリングが苦手&原作カップリングが崩されるのが嫌な人はブラウザバックして下さい。

キャラ崩壊してないかちょいと心配…。



夜のパオズ山なんて久しぶりだ。とても静かで、虫の鳴き声だけが聞こえる。やっぱり自然っていいな…。

 

五月「少し曇ってしまいましたね…。月が綺麗に見えるのに……」

 

悟飯「ああ…。うん。そうだね」

 

五月「……風情がないですね」

 

悟飯「あ、あはは…。なんというか、満月を見るのは今でもちょっとトラウマみたいなものがあって…」

 

五月「…?それはどういう意味です?」

 

悟飯「サイヤ人は満月を見ると尻尾が反応して大猿化しちゃうんだ。今の僕は尻尾がないから大丈夫だけど、尻尾があった幼少期は何度か大猿になったことがあったみたい…」

 

五月「まるで狼男ですね…」

 

悟飯「その例えは的確だね…」

 

 

※逆に満月を見ると人間になる男狼という特殊な種族(?)もいたりする。

 

 

悟飯「…五月さんは、やっぱり帰る気はないんだよね…?」

 

五月「ええ。二乃が帰るまでは…。ですがこれ以上あなたのご家族にも迷惑はかけられません。明日には出て行きます」

 

悟飯「財布も持ってないのに?」

 

五月「うっ…。も、もう少しだけ居させて下さい!!なんでもしますから!!」

 

悟飯「あはは…。別にそんなに改まらなくても…。そもそも僕の家に招いたのは僕自身だし、お母さんは何故か五月さんを歓迎してるし……」

 

五月「で、ですが……」

 

悟飯「とにかく、細かいことは気にしなくてもいいよ」

 

五月「ありがとうございます……。………外に連れ出したのは、私から話しておきたいことがあったからなんです」

 

悟飯「えっ?そうなの?」

 

五月「はい…。孫くんには、孫くん自身とお父様のことについて教えてもらいました。ですから、今度は私の番かと思いまして……」

 

悟飯「別に無理して話す必要はないよ?僕が話したのは、五月さんだったからであって……」

 

五月「………/// 少し言動に気を付けてください!!でないと勘違いしてしまいそうです…

 

悟飯「えっ?う、うん…」

 

 

 

五月「……今でこそ、あのような高級なタワーマンションの最上階に住めていますが、昔は上杉君に負けず劣らずの生活をしていました」

 

悟飯「えっ?そうだったんだ……」

 

全くと言っていいほどそんなイメージ湧かなかったな…。

 

五月「今の父と再婚するまでの私達は極貧生活でした。当然です。五人の子供を同時に育てていたんですから……」

 

父と再婚…?ということは、マルオさんは義理のお父さんってことか…。実のお父さんとは離婚したってことかな…?あまり深く聞かない方がいいかも…。

 

五月「その頃の私達はまさに五つ子。見た目も性格もほとんど同じだったんですよ?けれども、女手一つで育ててくれた母は体調を崩し、入院してしまって…………。だから私は母の代わりとなってみんなを導くと決めたんです」

 

………そういうことか…。だから……

 

『未練がましく母親を演じるのやめなさいよ』

 

って二乃さんが言ったのか…。

 

じゃあ、五月さんが二乃さんをあんな風に叱ったのも、その母親を真似ての行動だったってこと…?

 

五月「決めたはずなんですけど、上手く行かないんです……」

 

悟飯「そっか…。マルオさんはどうしてるの?家で会ったことは一度もないけど……」

 

五月「……お父さんは、病院の院長を勤めてますので、いつも忙しいんですよ…。だから家に帰ってくることは滅多にありません」

 

そうか…。マルオさんってひょっとすると冷たい人なのかなと思ってたけど、五月さん達の生活状況を見て、母親を亡くしてしまったということも考慮して、五人をできるだけ楽させるために一生懸命働いているのかな…?娘のことを考えてないなら、あんな高額で家庭教師なんて雇うわけないもんね……。

 

悟飯「……じゃあ、五月さんが母親の代わりなら、僕は忙しいマルオさんの代わりに父親になろうかな……」

 

五月「……えっ!?そ、それはどういう意味ですか!?」

 

悟飯「あっ!いや、深い意味はないんだ…。でもね、父親がいない僕だから分かるんだ。母親だけじゃ足りないんだ。子供には父親も必要なんだよ…」

 

五月「孫くん…。……………母もあなたや今のお父さんのような立派な人に出会えていたなら、あれほど苦労はしなかったでしょう…」

 

悟飯「えっ…?」

 

五月「……私達の実の父は、母のお腹の中に五人の子供がいると知ってから、行方が分からなくなったみたいです」

 

それって…?どういう…?

 

五月「事故に遭ってしまったとかそういうことではありません。逃げたんです」

 

そんな酷い人がいるのか……。僕はそうならないようにしよう…。

 

五月「ですから、私は男性が苦手でした。ですが、林間学校の日にあなたが私を助ける為に必死になってくれたあの姿を見て、男性に対する考え方が変わったのです。

男性であろが、女性であろうが、良い人と悪い人がいることは変わらないと……。それに私は、あなたのことが……」

 

悟飯「………?僕のことが……なに?」

 

五月「い、いえ!なんでもありません!!私も将来人生を共にするなら、孫くんのような立派な人と共に過ごしたいと思うようになったと言いたかっただけです!!」

 

五月「……(って、ドサクサに紛れて私は何を言っているんですかッ!?これ冷静に考えれば、愛の告白そのものですよ!?)」

 

悟飯「……そうか。いい人が見つかるといいね!」

 

五月「……!?(ま、眩しい…!?孫くんの純粋さがよく分かります!?)」

 

(……孫くんはこういう人でしたね…。でもこれでいいんです…。この気持ちに気付かれてしまっては、孫くんに迷惑をかけてしまうかもしれませんから…)

 

五月「孫くん、今日は本当に綺麗な満月ですね?」

 

悟飯「……うん。そうだね」

 

純粋と勉強不足が合わさった瞬間、一周回って会話が成り立つことが証明された瞬間であった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

パオズ山で少し散歩した後、私達は部屋に戻ってベッドに入った。

 

……孫くんは、もう寝てるみたいです…。前に聞いた時は、確か早寝早起きするタイプだったと…。

 

………さっきの告白。孫くんには一切理解してもらえないどころか、孫くんの反応を見るに、少なくとも私は恋愛対象外であることがよく分かった。

 

それを理解したら、ほんの少し腹立たしくなってきました…。

 

孫くんにこの気持ちを気付かれてしまったら、孫くんに迷惑をかけてしまうと思いつつも、孫くんにこの気持ちを知ってほしいと思っている自分も確かにいる。母親であるチチさんは流石と言うべきか…。初対面にも関わらず、私のことをよく理解しています…。

 

 

『私は好きにするよ。だから五月もお好きにどうぞ…!』

 

三玖がそう言っていた…。

 

 

『気持ちに気付いてほしいなら、回りくどいことはしねえで、真っ先に勝負した方がいいだぞ!!』

 

『大歓迎だ!悟飯から聞いてる話だと、五月さは真面目でいい子だ。……変な女に捕まる前にとっととくっついてほしいだ』

 

母親であるチチさんもそう言っている。チチさんがこうして夜に孫くんと二人きりになるように仕向けたのも、そういうことなのだろう…。むしろこんな状況を作っておいて、

『うちの息子に手を出した!?そんなの許さない!!』

なんて言えるわけがないだろう…。

 

一回そう考えてしまうと、私の中にあった何かが緩んだような気がした。

それと同時に、解放されていく何かの感情……。解放された瞬間に、溢れ出るこの感情は………。

 

五月「……孫くん、起きてますか?」

 

悟飯「………」

 

ぐっすり眠ってしまっている…。

 

三玖、あなたは私に好きにしていいと言いましたね?そう言ったこと、きっと後悔しますよ…?

 

 

ぎゅっ…。

 

この硬い体…。恐らく、幾つもの修羅場を潜ってきた証なのだろう。孫くんは地球のみんなの為に戦い続けてきたんだ…。しかも、それを知っているのは、五つ子の中では私だけ……。多分三玖も知らない孫くんの秘密…。

 

私は本当にいけない子ですね…。こうして三玖に黙ってお泊まりして、勝手にくっついて、勝手に秘密を知ってしまって……。

 

…あれ…?なんだろう…。意識が遠退くような……??

眠気とはまた違う…。なんだろう?この感覚は……?

身体が熱くなってきて……。もうだめ、何も考えられない……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

モゾモゾ…

悟飯「う、うーん……」

 

あれ?今何時だ…?まだ暗いから夜中か…。こんな時間に起きちゃうなんて…。もう一度寝よう……。

 

………ん?なんか苦しい…。五月さんって寝相悪いのかな…?

……いや、待て?五月さんが腕に思いっきり抱きついてきてるのか…?

……悪いけど、離してもらおう…。

 

そっとそーっと…。

 

ギュッ…。

 

逆に抱きしめる力が強くなってきた。

というか、体全体を使って絡めるようにしてきた。

 

 

バサッ!!

 

 

五月「はぁ………はぁ………」

 

………!?な、何が起きているんだ…!?何故か五月さんの息が荒いし、顔は赤いし……。

もしかして、具合が悪いのか…?

 

でも、それならなんで僕に覆い被さるように起き上がったんだ……?

 

五月「…………孫くん、そんなに引き剥がそうとしなくてもいいじゃないですか……」

 

悟飯「いや、そうしないと寝苦しいし……、五月さんも寝づらいでしょ…?だから……」

 

五月「………私、最近おかしいんです」

 

悟飯「えっ?お、おかしい…!?やっぱりどこか具合が悪いの…!?」

 

五月「いえ…。そういうわけではないんです。ただ、最近はある人を見ると、胸がドキドキしてしまうんです…。そして、自分を制御できそうになくなるんです…。その人と話すだけでも脈が早くなって、冷静を装えるか不安になるんです……」

 

悟飯「そ、そうなんだ……」

 

それって、恋をしているってこと!?相手は誰だろう…?上杉くんかな…?

 

五月「特に、目が合ったり、顔が近くなったり、優しくしてもらった時にはもうどうにかなってしまいそうで…」

 

へぇ…。五月さんはその人のことが相当

好きなんだな……。真面目な五月さんをここまで夢中にさせる人ってどんな人なんだろう…?一度会ってみたいな…。

 

五月「普段話すだけでそんな状態なんですよ…?」

 

話すだけでそうなっちゃうなんて、やっぱりその人のことが相当好きなんだな…!家庭教師としては、このタイミングでその感情を抱くのはやめてほしいところだけど、抱いてしまったものは仕方ない。五月さんの恋が実るように応援しよう!

 

五月「……その人の家に泊まって、同じ部屋で寝て、ましてや隣のベッドにその人がいるんですよ…?もう自分が自分でなくなりそうなくらいに、この気持ちはもう爆発寸前です…!!」

 

そう言って五月さんは顔を段々と近づけてきた。

って、顔が近い近い!?!?そんなに真剣なのは分かったから!!

 

………えっ?ちょっと待って?今、なんて言ったの……………?

 

その人の家に泊まって、同じ部屋で寝て、隣のベッドにその人がいる…?

 

それって…………!

 

悟飯「ね、ねえ…?今、なんて言ったの…?」

 

五月「『その人』とは…………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あなたのことですよ。孫くん……」

 

 

 

悟飯「………えっ?…えっ?………???えっ……?」

 

悟飯は五月の回答に困惑してしまった。悟飯は五月を今までそのような目で見たことがなかったからというのもあるが、まさか自分に対して恋愛感情を持っているとは思っていなかったからだ。

 

そのことを踏まえて、五月に押し倒されているようなこの状況に、悟飯は危機感を覚えた。

 

悟飯「ま、待って五月さん…!冷静になって…!!」

 

五月に静止を促そうにも、あまりにも大声を出してしまうとチチと悟天が起きる可能性があり、この現場を見られては誤解しか生まないだろう。

 

五月「ダメです…。これまで何度も冷静になろうと我慢してきました…。ですが、もう我慢できません…!!あなたのお母様にはあんなことを言われてしまいましたし、あなたは優しくしてくれますし……。それに父親の代わりになるというのは、そういう意味なんでしょう…?」

 

悟飯「いや!あれには深い意味はないんだよ!本当に…!!」

 

今の五月には話し合いが通じないと判断した悟飯は、五月を引き剥がしてソファで寝ることを思いつき、それを実行に移そうとしていた。だが……。

 

 

ギュッ…。

 

五月「逃しません」

 

五月にのしかかられた。これでは無理矢理引き剥がそうとしたら、五月が怪我してしまう恐れもある。それは悟飯は良しとしなかった為、引き剥がせない状態になってしまった。

 

もしもそのことを理解した上で五月がこのような行動に出ている場合、五月はとんでもない策士である。

 

 

 

 

 

 

 

悟飯「(…………へっ?)」

 

どうやってこの拘束から脱出しようか思考を巡らせている時、悟飯の唇に何かが重なった。

 

悟飯「んむっ…!?(ちょ、ちょっと…!?な、なななな、何をして…!?!?)」

 

ただ重なっただけではない。悟飯の口内に何者かが侵入してきた。それは悟飯の口の中を探るように動き回り、やがて離れていく。

 

五月「ぷはぁ…!」

 

先程までの行為によって、悟飯と五月の間に糸のようなものが見える。

 

悟飯「えっ…?ちょ、あの…!?///」

 

五月「ふふふっ…♪ やっと照れてくれた…♪」

 

悟飯は突然キスを……。それもか〜なり深いものをされてしまった為、気が気ではなくなり、冷静さを保てなくなりつつあった。

 

これ以上は何かとんでもない誤ちが起きそうだと判断した悟飯は、なんとしてでもこの五月包囲網から逃れようともがく。ただ逃れるだけではなく、五月を怪我させずに逃げなければならないので、難易度はルナティックでは済まされないレベルだ。

 

五月「……どうして、そんなに私を押し退けようとするんですか…?」

 

悟飯「えっ…?」

 

悟飯がもがくと、五月が涙目になって問いかけてきた。

 

五月「私のこと、そんなに嫌いなんですか…?ひぐっ……」

 

悟飯は五月のことは嫌いではない。むしろ友人として好きである。五月のこの言葉と表情は悟飯の胸に突き刺さり、とんでもない罪悪感を生み出した。

 

悟飯「い、いや!五月さんのことは嫌いじゃないよ!でも、僕はまだ恋がどういうものかが……んむっ…!?」

 

五月はまたしても悟飯の唇を塞ぐ。取り敢えず嫌いではないことが判明して安心したのだろうか?先程よりも激しいものになっていた。

 

五月「ぷはっ…♪ もうダメ!孫くん!好き好き!孫くん!!だーいすき!!」

 

五月の感情はまさに噴火している真っ最中だ。制御なんて言葉は知らない。ブレーキは完全に壊れており、アクセルだけ全開で作動しているような状況だ。

 

悟飯「い、五月さん!!冷静になって!!今はほら!深夜テンションってやつで、変なテンションになってるんだよ!!だから…!!」

 

悟飯は命以外の何かの危機を感じて必死に五月に冷静になるように促す。だが五月が冷静になる気配は微塵もない。

 

五月「そうですね〜♪でも、私の気持ちは本当ですよ?この気持ちをずっと我慢していたのも本当です♪決してテンションのせいなんかではありません!」

 

悟飯「………」

 

五月気持ちに偽りはない。母親の教えもあってその気持ちが一時的なものではないのは恋愛に疎い悟飯でも分かる。

 

しかし、だからといって流れに身を任せてはいけない。

 

スッ…

 

五月「……?」

 

悟飯はもう一度キスしてこようとする五月の唇に人差し指を当てて静止を促した。そして………。

 

悟飯「五月さんの気持ちは分かったよ…。正直今まで全く気付かなかった…。五月さんが本気なのは分かったから、返事に時間をくれないかな?五月さんに失礼のないように、じっくり考えたいんだ……」

 

いつだかにクラスメイトから聞いた方法を実践してみる。しかしこれは静止を促すものではなく、相手を射止める為の策略のうちの一つであった。自分のことを大切に思ってくれているのか…!と、相手を惚れされる言葉であるため、むしろ逆効果でしかないのだが、悟飯はそれを知らずに発言してしまう。

 

五月「私、言いましたよね?もう我慢できないと…!」

 

しかし、今の五月相手にはどんな言葉をかけようとも止まらない。止まるはずがない。何故ならブレーキは完全に壊れ、制御という言葉の意味を忘れているのだから………。

 

五月「………今夜は寝かせてあげませんよ?孫君…?」

 

果たして、悟飯は自分及び五月の貞操を守り抜くことができるのか?それはもう悟飯の理性に頼るしかなかった…。

 

五月「一緒に、気持ちよくなりましょうよ……。ね?」

 

悟飯「や、やめ…!んっ…?!」

 

五月「んっ……、んむっ……♡」

 

悟飯は決して諦めずに静止を促すが、やはり今の五月には効果なし、五月の欲望は収まるどころか、どんどん肥大化しており、ますます止められない状況になっていた。

 

五月「ぷはっ…!また逃げようとしてますね?そんないけない子は……こうだ…!」

 

悟飯「いたっ!(な、何をされたんだ…!?)」

 

五月「ふふっ…。俗に言うキスマークです。初めてやったけど、上手くいきましたね…♪」

 

五月はとうとうマーキングにも手を出す。これはもう誰にも取られたくないという、ライバルに対する宣戦布告とも取れる。今の五月は本気だった。こんな五月を見てしまっては、三玖も気絶しそうだ。

 

悟飯「ね、ねえ五月さん…!本当にどうしちゃったの…?いつもの五月さんは…」

 

五月「ふふっ…♪ 折角の機会です。無理矢理にでも、私を恋愛対象内にさせてあげます…♡」

 

この時から……。いや、もっと前から、五月の目は、狩る側の者のそれだった。瞳にハートマークがあってももう驚かないくらいに……。

 

五月はキスによって欲望を抑えるどころか、その欲望は更にエスカレートしていった。最早不純やら不潔などという言葉は忘れてしまい、今度は悟飯の服を脱がそうとする。

 

だが、悟飯は服を脱がされたらもう取り返しが付かないと思い、なんとしてでもそれだけは阻止した。すると五月は脱ぎ始め、五月は下着一枚だけの状態になった。

 

五月は本気だ。悟飯のアレを食べるつもりだ。本気で味わうつもりだ。もう誰にも止められない。本気で貪り尽くすつもりだ。恐らく彼女の母親が止めにきたとしても止まらないだろう。

 

悟飯「ま、ままま、待って!!ふ、ふふふ、服…!!服がッ!!!」

 

五月「どうです?スタイルには自信があるんですよ?どうです?あなたさえ良ければ、この身体をあなたの物にできるんですよ?我慢しなくてもいいんですよ…?孫君になら、むしろ………、して、ほしいです……!」

 

五月は今度は悟飯の理性を崩す作戦に出た。悟飯の理性という最後の砦さえ壊してしまえば、自分の欲求を全て満たせると思ったのだろう。

 

今の五月は、最早生徒やら学生やら、そんな身分はどうでも良かった。

 

 

恋する乙女。否、発情する雌。

 

 

今の彼女にはそんな言葉がお似合いであった。

 

五月「いつまで頑なになっているんですか?もう難しいことは考えないで、気持ちよくなりましょうよ……?」

 

悟飯「いや、ちょっと、あぁあああああああああああ!!!?」

 

その日の夜、2つの影が1つになったそうな……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結論から言うと、一線は悟飯の手によってなんとか守られた。悟飯は五月を怪我させないように細心の注意を払っていたこともあり、手刀で気絶させることもできなかったのだ…。

 

その為、悟飯は五月が疲れ果てて眠るまでの間、何度も何度も接吻……それもかなり際どいやつをされたそうだ。

 

しかし、悟飯には嫌悪やら拒絶やらの感情はなかった。

 

悟飯の心にあったのは、9割の困惑と、1割の嬉しさだ。

 

五月のような美少女に迫られて嬉しくないわけがない。悟飯とて純粋と言えど、鈍感と言えど年頃の男の子だ。

 

しかし、五月を恋愛対象としては全く見てこなかった上に、真面目な五月がここまでしてくるとは思っていなかった。

 

五月「すぅ……すぅ……」

 

そして今でも五月は悟飯に寄り添いながら眠っていた……。

その顔は、とても幸せそうであった。

 

悟飯「ね、眠れない………。五月さんがまさか、あんなことを…………あんなこと………………!」ボッ‼︎

 

悟飯はこれまでにない程顔を赤くさせていた。その顔で熱湯を作れそうなくらいに真っ赤で熱そうであった。

 

しかも、下着姿で五月が寝ているのだから余計に悟飯の顔は赤くなった。

 

悟飯の純粋な心は、今この瞬間、五月に傾き始めているのかもしれない…?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌朝…。

 

悟飯「…………すぅ…」

 

悟飯は普段ならもう起きている時間帯なのだが、昨夜ことがあり、満足に寝付けなかった為、今ではぐっすり眠っている。

 

五月「………んん…?」

 

そんな中、五月が目を覚ました。

 

五月「………………ッ!?!?」

 

五月は昨夜のことを思い出し、卒倒してしまいそうになった。これではまるで獣ではないか。昨夜の自分に対する感想がそれであった。

 

しかし、なんとか叫ぶのを我慢した。五月は必死に周りの状況を確認し、悟飯が起床していないことを確認した。

 

服を着直そうと、ベッドから起き上がろうとしたその時であった……。

 

 

 

ガチャ

 

チチ「二人ともいつまで寝てるだ?もう朝………」

 

五月「……………………」

 

チチ「……………すまねえ。お邪魔しちまっただ………」

 

バタン…

 

チチは悟飯と共にベッドの中にいる五月の服装を見て、咄嗟にドアを閉めた。

 

五月「ま、待って下さいッ!!!!!誤解です〜ッッ!!!!!」

 

 

その後、悟飯が起きるまでに五月は着替えを済ませた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

五月「ご、ごごご、ごめんなさい!!私、なんてことをしてしまったんでしょう!!??!?」

 

悟飯「い、いや、いいよ…。五月さんが本気なのはよく分かったから……」

 

五月「…………えっ?」

 

悟飯「えっ…?もしかして違かった…?ご、ごめん!!僕、自意識過剰なのかも……」

 

五月「…………はぁ…」

 

 

 

悟飯「………へっ?」

 

五月は、今度は唇にではなく頬にキスをした。

 

五月「いいえ。あの気持ちに嘘偽りは何一つありませんよ……」

 

悟飯「えっ…?」

 

五月「私は、あなたのことが……。孫悟飯くんのことが、大好きです」

 

悟飯「五月さん、僕は……」

 

五月「でも返事はまだいいです。私を恋愛対象として見てなかったのは分かってます。もし、私を恋愛対象として見れるようになったら、その時に返事をお願いします…///」

 

悟飯「……うん(あんなことされちゃったら、もうそういう目で見ちゃいそうだよ……)」

 

五月「……(よかった…。あんなことをしたら嫌われてもおかしくなかったのに、孫くんは私を拒絶しなかった……。本当によかった…………)」

 

 

 

その日の朝食。五月と悟飯の顔はこれでもかと言うほどに顔が赤かった。その顔を悟天に見られていなかっただけまだマシかもしれない……。

 

そんな顔を見て、先程の光景を見て、チチはこう思ったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

チチ(計画通り…!!

 

結論。

五月が暴走した原因はチチにあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日の朝は、筋斗雲で学校付近まで飛ぶことにする。

 

今思うと、林間学校の時も、スキーでリフトに乗っていた時も、昨日の帰りの筋斗雲の時も……。

 

僕はなんて鈍感なんだろう…。もっとちゃんと見てあげなきゃ……。

 

五月「……今、私は何故あなたに体を預けているか、分かります?」

 

悟飯「……は、恥ずかしいよ…」

 

五月「ふふっ…。分かってもらえてるようで良かったです…」

 

五月さんも想いを打ち明けたからなのだろうか?なんかネジが外れている気がする…。

 

学生の間の男女交際は不純だっていつだか言ってた気がするけど…。お母さんの言う通り、恋をすると女の人は本当に変わるんだな……。

 

悟飯「そういえばさ、五月さんはいつの間にか制服に着替えていたけど、何も持たずに家を出たんじゃなかったの?」

 

五月「それが…。実を言うと、昨日偶然四葉に会いまして、その時に筆記用具や教科書と一緒にもらいました!」

 

悟飯「……財布ももらえばよかったのに…」

 

五月「そ、それは…。四葉も忙しそうでしたので……」

 

悟飯「えっ?忙しい…?あっ、試験勉強かな…?」

 

五月「い、いえ…。もしかして、孫くんは聞いてないんですか?」

 

悟飯「う、うん…」

 

五月「四葉は陸上部の助っ人に出ているみたいですよ?」

 

悟飯「……へっ?テスト期間なのに?」

 

五月「はい」

 

ええ…。四葉さん…………。

 

 

どうしようか考えていたら、いつも降りる地点に着いたので、筋斗雲を降りて徒歩で学校に向かう。すると…。

 

ギュッ…

 

…………五月さんが手を繋いできた。

 

悟飯「あの〜…?」

 

五月「……手、寒いです」

 

……これは、そういうことだよな…?僕の勘違いじゃ、ないんだよね…?

 

悟飯「あ、あはは……」

 

五月「引き剥がさないってことは、了解したと見なしますね?」

 

引き剥がしたら、五月さん泣きそうじゃん……。昨日だって………。ダメだ。思い出すだけで顔が熱くなりそう…。

 

風太郎「おっ?よう悟飯!それに五月!……………えっ?」

 

悟飯「あっ…」

 

風太郎「お、お前ら…!なんで手を繋いでいるんだ…?」

 

悟飯「あっ…!いや、これは……!」

 

スッ

五月「孫くんが落ち込んであまりにも遅いペースで歩いていたので、私が引っ張ってあげたんです」

 

風太郎「な、なんだ…。そんなことか…。何かあって付き合い始めたのかと……」

 

悟飯「!?…いやいや、そそそ、そんなことはないから!」

 

風太郎「おい。今のは軽い冗談だからな?悟飯ってこんなことで狼狽えるようなやつだったか?」

 

悟飯「い、いや〜?あはは…。そ、そうだ!そういえば、四葉さんがまだ部活の助っ人に行ってるみたいなんだけど!!」

 

このままでは上杉くんに何か勘付かれてしまいそうだ…。話題をすり替えないと…!

 

風太郎「……はっ?」

 

 

 

 

 

 

風太郎「四葉ぁあッ!!試験1週間前になったら部活やめるんじゃなかったのかぁあああッッ!!!!」

 

四葉「すみませ〜ん!!!」

 

上杉くんが四葉さんのリボンを掴みながら説教をする…。

 

風太郎「バスケ部の時みたいに断ることはできなかったのか?」

 

四葉「一度はお断りしました…。でも、このままじゃ駅伝に出られないと……」

 

四葉さんって本当にいい人だなぁ…。悪い人に騙されないか心配だ…。

 

風太郎「お得意の人好しが出たな。今すぐ辞めろ。これ以上問題を増やさないでくれ」

 

あっ、ちゃんとリボンを直してあげるんだ…。

 

四葉「内緒にしてすみません……でも、家では上杉さんの問題集を進めてますのでご心配なく!私、頑張りますから!!」

 

「中野さーん!練習再開するよー!」

 

四葉「はーい!」

 

風太郎「ま、待て!!話は終わってないぞ!!」

 

 

逃した。

 

 

悟飯「大丈夫…?上杉くん…?」

 

風太郎「……なんでお前は追いかけてくれないの?」

 

悟飯「いや、四葉さんと話したんだけど、やっぱり辞められないって…」

 

風太郎「くそ…!俺は諦めねえぞ!」

 

悟飯「……ん?あれは…!」

 

風太郎「二乃!学校に来てたのか!この前のことは気にしないから、帰ろう!な?あいつらとも昔みたいに仲良くできるって!」

 

二乃「……分かったわ」

 

おや?案外あっさり承諾してくれたな…。これで……。

 

悟飯「って、昨日のホテルじゃん!?」

 

風太郎「お、おい待て二乃!!」

 

「お客様以外の立ち入りはご遠慮願います」

 

上杉くんは二乃さんを追いかけようとするが、警備員さんに止められる。

 

風太郎「俺はあいつの家庭教師だ!!二乃!試験はどうするつもりだ!?俺が合格させてやる!!だから入れてくれ!!」

 

二乃「………試験なんて、合格したからなんなの?どうでもいいわ」

 

次の日も、その次の日も、そのまた次の日も、二乃さんに説得を試みるも、ダメだった…。四葉さんも部活を辞めてくれなそうだし、五月さんは帰ってくれそうにない。まあ五月さんに関しては他意があるだろうけど…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

風太郎「はぁ……。試験まで残り4日…。どうしたらあいつらが纏まってくれるんだ…?」

 

(ここで俺が溺れたら、全員心配して集まってきてくれたりして…。あっ、ヤバい考え方してるぞ俺…。……でももしかしたら……)

 

風太郎「いや、あり得ねえ…。そんなわけないない……」

 

(俺のやり方が間違ってたんだ…。信用されて、頼られて、勘違いしていたかもしれない…。他人の家の姉妹の仲を取り持とうなんて、今の俺には過ぎた役割だった……。

 

 

いや、むしろ………)

 

 

『あんたなんて来なければよかったのに!!』

 

 

(……そうだ。最初から間違ってた…。ただ勉強してきただけの俺は何の役にも立てない……)

 

風太郎「あいつらに俺は不要だ………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「また落ち込んでる。やっぱり君は変わらないなぁ…」

 

 

 

風太郎「……えっ?」

 

 

 

「上杉風太郎くん?」

 

 

 

風太郎の前に現れた少女は…。風太郎が大切にしている写真に写っている少女によく似ていた。

 

 

 

「久しぶり」

 




Q:これは五月ルート確定ですか?

A:いいえ(即答)。


Q:チチは何をしたんですか?

A:五月のカレーに媚薬的なものを入れました。チチの計画はこんな感じ。

五月さは真面目?悟飯に恋してる感じだなぁ…。この子も奥手そうだなぁ…。せや!オラが後押ししたろ!カレーに薬(遅効性)を入れて、会話で悟飯を更に意識させて、オラが悟飯と付き合うことを公認する。そしてトドメに悟飯と同じ部屋、それも隣に寝かせちまえば、五月さも何かしらアクションを起こしてくれるはずだべ!!

その結果、大方はチチの目論見通りになった。大方というのは、チチ的には最後まで行ってほしかったらしい。ナニがとは言わないが……。
何故最後まで行ってないのか分かるのかって?女の感だべ!



やっと5巻部分が終わったで…。これにてようやく6巻に進める…。

というわけで、前回の後書きと今回の前書きで警告した意味、ご理解いただけましたかね?タイトルの意味はそのまんま。うん…。「乙女の暴走」ってタイトルでも良かったんですけど、それだとタイトルによるネタバレになりそうだったんで変えました。

五月は食欲を見るに、抑えることができない感じなので、あちらの欲も抑えられないんじゃないかなぁ…。っと勝手に考えてました。でもそれだけだと、まだ想いも伝えてない五月があんな行動をするのも変だなと思い、チチが黒幕ということにしました()

ちなみにですが、このシチュの元ネタは、飯ビー物のある同人誌が参考になっていたり……。

Q&Aにも載せた通り、五月ルートに確定したわけではないので悪しからず…。

しかし、五月が大きくリードしたことには変わりがありませんな。三玖が知ったら、らしくもなく発狂しそう()

この話は書いてて無茶苦茶楽しかったです。

〜追記〜
今話のIFストーリーを書きました。本編では一線を越えませんでしたが、こちらは越えてしまった場合のお話です。R-18になってますのでご注意を。
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=17525005


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第6巻
第23話 過去との決別


前回のあらすじ…。

五月達五人の過去を知った悟飯は、そのまま寝ることになったのだが、なんと五月がまさかの大暴走…!?

悟飯の手によって誤ちは起きなかったとはいえ、こりゃ急展開…!三玖はこんなことが起きたとは知る由もなく…。
翌朝の五月のド直球の告白によって、悟飯は五月の想いに気付いたのであった…。

だが、浮かれている場合ではない。早く五月と二乃を仲直りさせねば、何もできないまま期末試験が来てしまうぞ…!?



僕は上杉くんとは別々に二乃さんの説得に行った。しかし、僕でも上杉くんでも結果は同じ。警備員さんに追い返されるだけであった。

僕なら舞空術で屋上から侵入することもできるが、それはモラル的に如何なものなのだろうか……。

 

そういうわけで、どうやって二乃さんの説得をするか散歩をしながら考えている状況だ。しかし、一向にいい案が浮かばない。

 

………と言っても、1つだけ方法があるといえばある。それは僕が超サイヤ人の姿に変身して、二乃さんに会いに行けばいい。どうやら二乃さんにとって、超サイヤ人の姿の僕は初恋のようで、入れてもらうことは容易いだろう…。

 

だけど、それはあまり気が進まない…。下手したら変装がバレかねない。でも背に腹は変えられないか……?

 

っと、そんなことを考えていたら、池のところまで来ていた…。あそこに上杉くんと……五月さん…?そういえば、少しだけ帰宅を待ってほしいって言われてたけど、あんな格好で何をしているんだろう?それも上杉くんと……?

 

ちょっとあっちに行ってみよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「付き合ってくれてありがと。約束通り、これは返すね」

 

風太郎「あ、ああ……」

 

「でも、これは返してあげない」

 

風太郎「はっ…?どうして…!?」

 

「私はもう君に会えないから……」

 

風太郎「おっ、俺を呼び止めておいてどういうことだッ!?待ってくれ!!頼む!!」

 

ヒュッ

 

風太郎「っとと、なんだこれ…?」

 

「自分を認められるようになったら、それを開けて」

 

風太郎「どういう…?」

 

悟飯「あっ、おーい!そんなところで何をしてるの?」

 

「…!?」

 

風太郎「ご、悟飯…?」

 

悟飯「それに、いつ…」

 

 

ドンッッ!!

 

 

悟飯「………へっ?」

 

僕は『五月さん』と呼びかけようとした時、何故か五月さんが僕を押したのだ。この考えに至るまで、かなりの時間を要した。

 

そのせいで………。

 

 

 

 

 

ザバァァアアン!!

 

 

風太郎「ご、悟飯ッ!!??」

 

「……!」ダッ‼︎

 

風太郎「あっ、おい!!……くっ…!悟飯を見殺しにはできねえ…!掴まれ!!」

 

 

 

 

 

 

悟飯「ありがとう、上杉くん……」

 

風太郎「気にすんな。にしても零奈のやつ、酷いことするな…」

 

悟飯「……れな…?」

 

風太郎「ああ…。さっきのやつだよ。お前を池に落としたやつ」

 

……?どういうことだ?あの人は五月さんのはずだぞ…?

 

でも、確かにいつもの格好ではなかったし、あんな服を着ているのは見たことがない…。

 

四葉「わーっ!?こんなところでどうしたんですか孫さん!?」

 

「中野さーん!止まってないで走るよ〜!」

 

四葉「あの、私は少し休憩を…、というかそろそろ帰って勉強しないと……」

 

「何言ってんの?三年生の先輩も受験がある中で来てくれてるんだよ?」

 

四葉「そ、そうですよね…。で、では私は行きますね!二乃と五月をお願いします!」

 

風太郎「あっ、おい!四葉!!…あいつやっぱり無理矢理……。悟飯、俺は……あれ?悟飯…?おーい?どこに行ったんだ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

はぁ……。なんで五月さんは僕を池に落としたんだろう…?訳が分からないよ…。もしかして、僕のことを嫌いになっちゃったのかな…?

この前は好きって言ってくれたのに…。何故だか、告白もしてもないのに振られた気分だな……。僕は五月さんのことをどう思ってるのかまだ分からないというのに……。

 

………何故か、少し悲しいというか、なんというか……。とにかく複雑な心境だ…。

 

 

 

 

 

「雨降ってたっけ?」

 

「いや……」

 

二乃「げっ、あいつまた来て……!キモっ!いい加減にしてほしいわ…!文句を言ってやる!上杉もそうだけど、何回追い返したら分かるのかしら…。懲りずに何度も何度も……本当に……」

 

 

 

二乃「しつこいんだから……」

 

この時、自身の口角が密かに上がっていたことは、二乃は自覚していない。

 

「何度言ったら分かるんですか?お客様の迷惑ですよ?」

 

悟飯「……分かりました」

 

二乃「……?(あら?意外とすんなり……、……!)」

 

 

バサッ!

 

悟飯「……?」

 

なんだ…?頭の上に何かかけられたみたいだ…?これは……タオル…?一体誰が…

 

二乃「警備員さんの言う通り、あんたみたいなみずぼらしいのがいたら、他の人のお目汚しになるわ。邪魔よ。部屋に入りなさい」

 

二乃さん…?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

どういう風の吹き回しか、僕は二乃さんの部屋に入れてもらえた。少し前の僕なら喜んでいたかもしれない。だけど、今の僕は素直に喜べない…。

 

二乃「はぁ……やだやだ、辛気臭いわ。テレビは見放題、エアコンの温度は自由自在、誰も部屋を散らかさない。1人ってちょー最高なのに……」

 

悟飯「…………」

 

二乃「って聞いてないし……。ってか!辛気臭いだけじゃなくて本当に臭いわ…!」

 

悟飯「あっ、これは色々あって池に落ちちゃったんだ……」

 

二乃「どんな色々よ……。いいからシャワーを浴びてきなさい」

 

悟飯「………そうさせてもらうよ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ジャー

 

……一体僕は何をしに来たんだろう…?確か二乃さんを説得しに来たはずなんだけど………。

 

二乃「いい?シャンプーだけじゃなくてトリートメントもするのよ?」

 

悟飯「うん……」

 

二度も髪を洗うのか………。昔みたいに髪を伸ばしていたら、今洗うのは大変だっただろうなぁ…。

 

悟飯「……二乃さんはよくそんな長い髪でいられるね…」

 

二乃「そ、そうね…。毎日洗ってるわ。あんたにこの量の髪のケアができるかしら?」

 

悟飯「……昔はともかく、今はそんなに伸ばさないかな……」

 

二乃「はっ…?昔はって……あんた今の私くらいまで伸ばしていた時期でもあったの?流石に冗談キツいわよ?」

 

悟飯「本当だよ?なんなら、後日写真を見せようか?」

 

二乃「おぇ〜…。あんたの長髪姿を想像したら気持ち悪くなってきた…」

 

それは二乃さんの髪型で当て嵌めたからでしょ……。

 

でも、二乃さんとこんなに話したのは久々だな…。

 

二乃「……ねぇ、何があったの?」

 

悟飯「……」

 

二乃「ここに来る前に何があったのの?」

 

悟飯「……特に何もなかったよ…」

 

二乃「嘘。あんたがあんなに落ち込んでるというか……。悩んでるというか……とにかくあんな姿は初めて見たわ」

 

悟飯「別に落ち込んでいるわけじゃないよ……」

 

二乃「嘘おっしゃい。いいから聞かせなさいよ。一人は楽だけど話し相手がいなくて暇なのよ」

 

悟飯「………実は、つい先日にある女の子に告白されたんだ…。大好きですって……」

 

二乃「は、はぁ…!?それマジで言ってんのッ!?」

 

悟飯「でも、今日その子に池で会ったんだよ。その時に何故か池に落とされちゃったんだ……」

 

二乃「………!」

 

悟飯「今日何があったかといえば、これくらいだよ……」

 

……さて、体を洗い終えたことだし、そろそろ上がろう。流石に湯船に浸かるわけにはいかないし…。

 

ガチャ…。

 

って………

 

二乃「…………」ポロポロ

 

………えっ?な、なんで泣いてるの…?

 

二乃「だ、だって……。あんたは人生で初めて告白されたんでしょ?それで喜んでいたところで、その子に突き落とされたんでしょ?つまり、あんたは弄ばれたのよ…?そんなの、酷すぎるじゃない……」

 

悟飯「え、えぇ……」

 

も、もしかして、五月さんは僕を弄んでいたというのか……?

 

いや、あの真面目な五月さんに限ってそれはないだろう……。うん…。

 

二乃「でも元気出して。あんたみたいな鈍ちん野朗でも、好きになってくれる人が地球上に一人くらいいるはずだから……」

 

(って言っても、一人どころか二人もあんたのすぐ近くにいるんだけどね…)

 

二乃「…って!なんて格好で出てきてるのよ!?露出魔!!」チラッ

 

悟飯「あっ、ごめん…。でも着替えの服は一度出ないと取れないから……」

 

二乃「そ、そういう問題じゃないでしょー!!」

 

バサッ

 

二乃「あっ」

 

おや?二乃さんが倒したバックの中から、セロハンテープが貼られた紙が……って、これは上杉くんが作った手書きの問題集…!?

 

悟飯「これ………」

 

二乃「………これ、上杉が個別で問題を分けてたんでしょ…?あの時だって、本当は……。い、一応悪いとは思ってるのよ……?」

 

悟飯「………うん。僕もそれは分かってたよ。上杉くんならそのことについて怒ってないよ。あとは五月さんにも…」

 

二乃「それは嫌!」

 

悟飯「えっ…?なんで……?もしかして叩かれたことに対してまだ怒っているの…?」

 

二乃「……昔はあんなことをする子じゃなかった……。なんだか、五月が知らない人になったみたい……」

 

悟飯「………」

 

どうやら少しは心を開いてくれたようで、今日は一旦帰ることにした。無理に責めてまた機嫌を損ねてしまう可能性もあるから……。

 

二乃「……(あいつの体、相当ムキムキだったわね…。案外男らしいじゃないのよ……)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして帰宅しようとしたら…。

 

五月「さ、先程はすみませんでした!!」

 

悟飯「へっ?」

 

五月「あの時は上杉くんに正体を暴かれるわけにはいかなかったので、咄嗟に……」

 

な、なんだ…!ただ変装していただけだったんだ…。あはは……。嫌われたのかと思っちゃった…。

 

悟飯「あ〜……いいよ別に…。それなら…」

 

何故か分からないけど、僕の心は少しだけ軽くなった気がする……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しかしその日の夜……。

 

五月「孫くん……身体が熱いです……。どうにかしてください…!」

 

悟飯「なんでまたそうなるの〜ッ!?」

 

お泊まり初日のような状況に陥っていた。今回の原因ももちろんチチ。

 

 

 

チチ「んだ!なんかちょっと揉め事があったみてえだが、これで万事解決だべ!!」

 

チチさんにはもう少し常識やモラルというものを身に付けてほしいものだ。

 

そして今回も一線は悟飯によって守られたのであった……。

 

 

 

 

 

五月「ご、ごごご、ごめんなさい!!私、またなんてことを…!?」

 

悟飯「あ、あはは…。いい加減に自制はしてほしいかな…?」

 

昨日も前のような状況に陥った…。何度もやられてしまうと本当にどうにかなってしまいそうだから自重してほしい…。

………五月さんが2度も同じ失敗をするのだろうか…?もしかして、原因は他にあるんじゃないか………?

 

って、考えたところで原因が思いつかない……。お酒を飲まされたとか、そういうわけじゃないもんな……。

 

 

 

 

 

 

 

二乃「ルームサービス呼ぶけどあんた何かいる?」

 

悟飯「いや、僕はいいよ」

 

二乃「あっそ。せっかく飲めるのに勿体無いわね…」ガチャ

 

『はい、こちら……』

 

二乃「って、何で当たり前のようにいるのよ!?」

 

『も、申し訳ございません!!』

 

悟飯「あ、あれ?てっきり僕の立ち入りは許可されたのかと……」

 

二乃「そういうことじゃないわよッ!!」

 

悟飯「それよりも、まずは目の前の問題から解決しないと……」

 

二乃「目の前…?ああ…。期末テストのことね」

 

悟飯「………二乃さんは、昨日『五月が知らない人になったみたい』って言ってたよね?」

 

二乃「えっ?ええ……」

 

悟飯「……人ってさ、変わっていくことを避けられないんじゃないかな?いつまでも過去に囚われていたら前に進むことはできない…。

だから、過去を忘れろとまでは言わないけど、過去に囚われていないで、今を受け入れて前に進む…。二乃さんも、五月さんと仲直りをして帰ろうよ?」

 

そうだ。僕だっていつまでもお父さんの死を引きずってはいけないんだ。最後にお父さんと会話した時は、死んだことを後悔していないと言っていた。お父さんが気にしていないと言うんだ。僕を信用してお父さんは安心してあの世に行ったんだ。だから、いつまでも過去に囚われてちゃいけないんだ…。前を向かなきゃいけないんだ…。

 

二乃「……そうね。そんなことは分かってるわ…。でも、そう簡単に割り切れないのよ」

 

それはそうだろう。過去というものが簡単に割り切れるものなら、僕だってとっくの昔から気にしてなんかいないだろう。

 

二乃「……ここは私の部屋だから、独り言……」

 

 

 

 

 

 

 

私達が同じ外見、同じ性格だった頃、まるで全員の思考が共有されているような気でいて、居心地が良かったわ。

 

でも、五年前から変わった……。

 

みんな少しずつ離れていった。一花が女優をしていたなんて知らなかったわ。

まるで五つ子から巣立って行くように私だけを残して……。

 

私だけがあの頃を忘れられないまま、髪の長ささえ変えられていない。

 

 

 

 

 

 

二乃「だから無理にでも巣立たなきゃいけない。一人取り残される前に……」

 

悟飯「……うん。それがいいよ…」

 

二乃「…………でも、1つ心当たりがあるとすれば、カカロット君」

 

悟飯「へっ…?」

 

二乃「しっかりお別れできなかったからかしら……。もう一度会えばケリをつけられると思っていたんだけど…。忘れさせてくれないわ……」

 

悟飯「……そうか…」

 

二乃さんは変わろうとしている。前に進もうとしているんだ。それなら、僕は後押しをしてあげないとね…。

 

悟飯「……そういえば、今日は時間があるって言っていたような気がするな…」

 

二乃「………それ、本当?」

 

悟飯「……会ってみる?」

 

二乃「……」

 

二乃さんは無言で頷いた。

 

悟飯「…じゃあ、僕はもう帰るね。ここに彼を呼んどくから…」

 

二乃「ま、待って…!じゅ、準備をしたいから……。私がメールをしたら、彼をここに呼んでくれる……?」

 

悟飯「………分かった」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

はぁ…。後押しする為とはいえ、やはり緊張してしまう……。でももう後には引けない…!

一応服装は変えておいたし、ちゃんと超サイヤ人にもなった。これで完璧なはず……!

 

コンコンッ

 

「はーい!」

 

ガチャ

 

開いた扉から姿を表した二乃さんは、先程の制服とは打って変わって、普段着ともまた違うお洒落な服装に着替えていた。

 

超悟飯「ど、どうも…!」

 

二乃「さあ、遠慮せずに入って!」

 

超悟飯「お、お邪魔しまーす……」

 

……ここで正体を明かすか…?いやでも、それはできない。僕であると言ってしまえば、二乃さんは僕がセルを倒したことを同時に知ってしまうのだ。五月さんの場合は、既に僕の素性を知られてしまったから敢えて話した。でも二乃さんの場合は違う。

 

二乃「ねぇ、カカロット君。私に何か言うことがあるでしょ?」

 

………まさか僕であるとバレたわけじゃないはず…。うん。恐らく、林間学校でフォークダンスを踊れなかった件だろう。

 

超悟飯「ご、ごめん…。ちゃんと予定を確認しとくべきだったよ……」

 

二乃「……いいよ。その件は水に流してあげます!って言っても、私が一方的に言っただけなんだけど……」

 

超悟飯「あ、あはは……。ありがとう…」

 

二乃「はい!この話はこれでお終い!でも、今日はずっと付き合ってくれる約束でしょ?今度こそ破ったら許さないんだから…」

 

って、前にも約束を破った覚えはないんだけど……。まあいいや…。

 

二乃「ってあれ?ちょっとジッとしててね?」

 

…?なにをするんだ…?

 

ピタッ

 

超悟飯「…?絆創膏?」

 

二乃「うん!なんか虫に刺されてたみたいだから!」

 

そうなのか…?気付かなかったなぁ…。

ここは……首か……。制服だと、丁度襟で隠れる位置にあったから気付かなかったのか…?

 

二乃「そこら辺に座ってて。今お菓子を作ってる途中なの。本当はカカロット君が来るまでに作っておきたかったんだけど、思ったよりも早かったわね」

 

ええ!?わざわざお菓子を作っているの!?流石二乃さん…。お母さんでもあんな料理はしたことないんじゃないかな…?

 

……って、いつか言われた気がする…。女の子のお手伝いはした方がいいとかなんとか……。

 

超悟飯「一人でやるのは大変でしょ?何か僕にできることがあれば手伝うよ?」

 

二乃「………えっ、ちょっと待ってね」

 

超悟飯「へっ?うん……」

 

なんだ…?手伝おうとしたら、二乃さんがベランダに出てしまった…。ベランダに何か材料でも置いているのかな…?

 

ブブー‼︎

 

………メール…?いや電話だ…。二乃さんから…?

 

超悟飯「も、もしもし?」

 

『もしもし孫?カカロット君、ちょー優しいんですけど!?っていうか、緊張して顔がまともに見れないわ!』

 

超悟飯「えーっと、ところで何の用かな…?」

 

『あっ、ごめんごめん…。カカロット君ってシュークリーム嫌いじゃないよね?』

 

ええ!?シュークリームを自作してるの!?

 

超悟飯「好き嫌いはないし、甘い物は大好きだって言ってたから、大丈夫だと思うよ?」

 

『オーケー!』

 

…………ここで通話は終了。携帯電話を隠さないと…。よし、これで大丈夫。

 

二乃「……シュークリーム作ろうと思うんだ…」

 

超悟飯「…自分で作れるんだ?凄いね……」

 

いや、本当に凄いと思う…。

 

 

 

お手伝いをしていたら、焼いて盛り付けをするだけの段階に入ったようだ。するとまたしても二乃さんは電話の為にベランダに出た。

 

『もしもし?会話が続かないんだけど、カカロット君の趣味って何?』

 

超悟飯「それは本人に聞いた方が早いと思うけど……、そうだなぁ…」

 

僕の趣味…?釣りとか読書かな…?

 

超悟飯「前聞いた話だと、釣りと読書だって言ってたよ?」

 

『つ、釣り…!?……わ、分かったわ』

 

 

 

二乃「今度友達と釣りに行く予定なんだけど、誰か詳しい人いないかなー?」

 

超悟飯「………」

 

分かりやすいな…。まあ僕が電話で事前に聞いてたからだとは思うけど…。

 

 

 

釣りの話を少々していたら、生地が焼き上がったようだ。

 

しかし……。

 

二乃「う、嘘…!霧吹き忘れたかも…!いつもはそんなことしないのに…」

 

まさかの失敗。これは意外…。

 

超悟飯「二乃さんが料理を失敗するとは……」

 

二乃「えっ……?」

 

あっ!しまった…!つい…!!

 

超悟飯「あっ!いや!前に悟飯に二乃さんは料理が上手なんだよー!って聞いたから……!」

 

二乃「……そこじゃなくて」

 

えっ?じゃあさっきはどこで反応したの?

 

 

 

『ねえ!彼、私のこと名前で呼んだわ!』

 

超悟飯「あー…。うん…。それは良かったね……」

 

一花さんから聞いた話だと、二乃さんは繊細だって聞いたけど、本当のことなんだなぁ…。一花さんは姉妹のことをよく見ているし、見えている…。流石だなぁ…。

 

 

二乃「よーし!もう一回作るわよ〜!」

 

 

 

そして今度こそ完成した。僕の知っているシュークリームとは一味違うけどとても美味しそう…。しかも果物を挟んでいる贅沢仕様……。

 

………二乃さんの将来は料理人でいいんじゃないかな…?

 

二乃「さあ、召し上がれ!」

 

超悟飯「いただきます…」

 

二乃さんの作ったシュークリーム(豪華版)を口に入れる……。

 

……!?!?

 

な、なんだこれ…!?まず生地がサクサクしている!?それに生クリームが甘過ぎず、控えめな甘さになっていることから、イチゴが酸っぱく感じない…!?

 

これを、僕と同い年の子が作ったのか…!?す、凄いな…。これなら普通にお金を払ってでも食べたいレベルだ…。

 

二乃「……あの、そんなにベタ褒めされると照れる……///」

 

超悟飯「……あれ?声に出てた…?ごめん!あまりにも美味しかったものだからつい!」

 

二乃「ま、まあ……ありがと…。気に入ってくれて嬉しいわ!たくさん作ったからもっと食べて!」

 

って、一体何個作ってるのさ…。ってあれ?よく見たら、果物が1つ1つ違う…?

 

ラズベリーだったり、キウイだったり、オレンジだったり、バナナだったり、そのミックスだったり……。

 

うわぁ…!これ全部僕が食べちゃっていいの…?僕はなんて幸せものなんだろう……。って、今は変装しているんだった…。素直に喜べないな…。あはは…。

 

20個くらい食べさせてもらった。色々な味があった為、食べ続けても飽きない仕上がりにするのにも才能を感じる。

 

二乃「わあ!モリモリ減ってる!そんなに美味しいの?」

 

超悟飯「あっ、ごめん…。食べすぎちゃったかな…?」

 

二乃「い、いいのよ!カカロット君の為に作ったんだし!」

 

正直、これはみんなにも分けてあげたいレベルだな…。他の4人はいつもこんなものを食べているのかな…?ちょっと羨ましいかも…。お母さんの料理も美味しいんだけど、こういったスイーツ系は作らないからね……。

 

超悟飯「でも、これ以上僕だけで独り占めするのは……あっ、そういえば、二乃さんには姉妹がいるんだよね?せっかくだから分けてあげようよ?ここに呼んでさ」

 

二乃「………そんなこと言わないで」

 

あ、あれ……?

 

二乃「せっかく二人きりになれたんだもん…。邪魔されたくないよ……。私は………」

 

 

二乃「カカロット君さえいてくれればいいから………」

 

 

 

………あぁぁああぁ……。そんな顔しないで……。なんだ?僕が普段見てきた二乃さんとはすっかり別人だぞ?実は誰かと入れ替わってたりしないよね…?気を確認したら、二乃さんのものに間違いない……。

 

……五月さんもそうだけど、恋って本当に人を変えるんだなぁ……。

 

超悟飯「……悟飯から聞いたよ?確か姉妹で喧嘩しちゃったんだってね?そんなのダメだよ……姉妹で仲良くしないと…」

 

二乃「……孫も同じこと言ってた。私も中間試験であんなこと言っちゃったし、迷惑かけていると思うけど……」

 

超悟飯「……僕が聞いた話だと、悟飯が迷惑だって文句を言っている時はなかったよ?」

 

二乃「嘘!絶対そうに決まってるわ!だって、勉強ばっかで……」

 

超悟飯「………二乃さん。確かに勉強も大切だよ。でもね、それよりも、家族関係の方が大事なんだよ…。家族は他人とは違うんだよ……。だから、僕は5人で一緒にいてほしいな……。悟飯もきっとそう思ってるよ……」

 

二乃「………あの、ちょっとトイレ行ってきていい?」

 

超悟飯「えっ?う、うん…」

 

二乃さんが部屋を出た。あれ?トイレならこの部屋にもあったはず…。

 

ブブー

 

ん?電話…?今度はなんだ…?

 

『もしもし?あんた、ホテルの近くにいる?』

 

超悟飯「えっ?まあ、一応……」

 

『すぐに一階のカフェに来て』

 

超悟飯「へっ?」

 

 

どういう意図かは分からないが、『悟飯』としての呼び出しを受けた。僕は超化を解除し、カプセルにしまっておいた制服を取り出して着替えた。服装を変えなければバレてしまうからだ…。

 

でも、なんでこのタイミングで……?

 




やばいっすなぁ…。次回分がスランプ状態ですわ…。いや、書けてはいるんですけど、自分的には納得が行ってないというか……。次回の投稿は遅くなるかもしれないですねぇ……。まあ無理せず頑張って下さいと結構言われているので、無理はしないことにしますけど(というか今までも無理してたわけではない)。

つい先日買ったポケモンでもやるかぁ…()
マジでストーリー思い付かない時はいくら考えても無駄なので。他のことに時間を使った方がふと思い付いたりするんですよねこれが…。

そろそろ悟飯が本気を出す戦闘がくる……かな…?ただメインは五等分なので、あまり戦闘を入れすぎないように注意をしないと……。………以前に話が成り立たないぞ的なことを言われましたが、成り立たないとまでは行かなくても、やっぱり難しいですなぁ…。それでもできている他作者様がいるんだから、ジャンルを言い訳になんてできねぇ…()

纏めると、ストーリー思い付かないので投稿頻度が落ちるかもと言いたかっただけです。はい。

あと、お気に入りが300件に達しましたね(もしかしたら減ってるかも…?)。特に大幅にお気に入りが減るということはなかったので、五月が攻めてきても皆さん的にはアリなんですな…。これから五月は素の状態でもグイグイ来るかと思われます。

それでは今回はこれで。


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第24話 非日常は突然に…

前回のあらすじ…。

二乃の過去の決別を手伝うべく、悟飯は二乃の前に再び『カカロット』として現れた。だが、突然『悟飯』として呼び出しがあり………。

そして、今話は『あいつ』が登場する…!!



悟飯「お待たせ〜…!」

 

二乃「遅いわよ」

 

悟飯「これでも早く来た方なんだけど…」

 

さっきの二乃さんはどこに行ったのだろう?実は二重人格だったり…?

 

悟飯「急にどうしたの?わざわざ僕を呼び出すなんて……」

 

二乃「私、彼に告られるかも…」

 

悟飯「こ、告白…?」

 

二乃「だってあんな真剣な顔をして大切な話って何よ?そんなの一つに決まってるわ」

 

いや、そういうことじゃないんだけど…。僕が伝えたかったのは………

 

二乃「あんたはどう思う?」

 

悟飯「えっ?ど、どうかな〜…?」

 

二乃「あっ!カカロット君!」

 

悟飯「…!?」

 

あっ、思わず振り向いてしまった……。いるわけないのに……。

 

二乃「って、いるわけないでしょ」

 

悟飯「そ、そうだよね……」

 

二乃「まああんたの意見なんてどうでもいいわ。ただ人に聞いてもらって、自分の状況を整理したかっただけ」

 

それならわざわざ質問することはなかったんじゃ…。

 

二乃「今日は彼に会わせてくれて感謝しているわ。この先どういう結果になっても、彼との関係に一区切りをつけるわ」

 

悟飯「……二乃さん…。僕は何もしてあげられないけど、頑張ってね!」

 

二乃「……ところで、1つ聞きたいんだけど……」

 

悟飯「……?」

 

二乃「……首に付いているその跡、どうしたのよ?」

 

悟飯「……あっ、これ?」

 

これは…………この位置は……。

 

 

 

『孫くんは私のものです〜!』

 

『これ以上はやめて〜!?』

 

 

 

………五月さんに付けられたやつ!?

 

しかも、変装した時と同じ位置…!?

 

悟飯「い、いや〜…!これは……」

 

二乃「カカロット君も同じ位置に同じような跡があったのよね……」

 

悟飯「あはは……は……」

 

二乃「よくよく見ると、服装は変わってるけど、髪型は全く一緒だし、顔も似ているし、体付きも似ているのよね〜?」

 

これ、バレてるんじゃ…!?

 

二乃「それに声がそっくりだし、おまけに喋り方までそっくり……凄い偶然よね…?」

 

悟飯「そ、そうだねー……」

 

二乃「……カカロット君をここに連れて来てくれない?」

 

悟飯「えっ…?わ、分かった……」

 

一度退出したように見せかけて、高速で部屋に戻る。そしてまた着替えて、絆創膏を貼って1階のカフェに来た。

 

超悟飯「や、やあ!どうしたんだい?」

 

二乃「……惚けるのもいい加減にしなさい」

 

超悟飯「………」

 

二乃「あんたが孫だってことは分かってるのよ」

 

や、やっぱりバレてるぅうう!?

 

二乃「まさかあんたがセルを倒した張本人だとは思わなかったわ……」

 

超悟飯「な、何を言ってるのかな二乃さん?僕は……」

 

二乃「言い訳ができないようにしてあげようか?」

 

グイッ!

 

突然、二乃さんは髪を引っ張ってきた。

 

超悟飯「痛たッ!?な、なにをするの!?」

 

二乃「……えっ!?と、取れない…!?カツラじゃないの…!?」

 

超悟飯「あ、当たり前だよ!!」

 

二乃「う、うそ……?あんな短時間で何度も染め直すことなんてできないし…….えっ?ど、どういうこと……?」

 

…………おや?今ならまだ誤魔化せそうだぞ… ?

 

超悟飯「そ、それじゃあ、僕は用事があるからこれで!」

 

二乃「あっ!ま、待ってよカカロット君!」

 

超悟飯「それじゃ…!」シュン

 

二乃「……き、消えちゃった………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

再び同じ手順で変装を解いた。

 

二乃「………」ズーン

 

悟飯「ど、どうしたの二乃さん!?」

 

二乃「……私、盛大に勘違いしてたわ…。カカロット君があんたの変装だと思って疑わなかった。でも彼はカツラを付けてなかったのよ……。…あんな短時間で髪の色を変えることなんてできないでしょ?ましてや眉毛の色も…」

 

悟飯「そ、そうだろうね〜…。僕は染めたことないから分からないけど……」

 

よ、良かったぁ…!髪の色が変わる特性があって本当によかった……。

 

二乃「しかも、髪を引っ張ったせいか振られちゃったわ……」

 

悟飯「あ、あ〜……」

 

二乃「……これも全部あんたのせいよ!私のストレス発散に付き合いなさい!!」

 

悟飯「えっ!?そんな無茶苦茶な!?」

 

二乃「あんたに拒否権はないから!」

 

こうして、半ば強引に二乃さんに同行することになった。まあ、正体がバレなかっただけ良しとしよう…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…………!?ッ

 

な、なんだ…?!不穏な気が大量に近づいてくる…!?

 

二乃「どうしたのよ…?」

 

 

ガタガタガタガタガタッッ‼︎

 

 

二乃「な、なに…!?地震ッ…!?」

 

突如、謎の振動が発生した。だがその揺れは、地震とはまた違うものであった。しかも、その揺れは収まったかと思いきや、すぐにまた同じような揺れが発生する。そしてまた収まり、また揺れる。その繰り返しであった。

 

二乃「な、なんなのよ一体!?」

 

この気は…!林間学校の時にいたサイヤ人と気が似ている…!もしかして、神精樹の木を育てに来たのか…!?

 

 

『悟飯!聞こえるか!?』

 

 

僕にだけ聞こえるその声の正体は、ピッコロさんだ…!

 

『あの宇宙船はベジータ達が乗ってきた宇宙船に酷似している!しかも中から出てきてる奴らはどいつもこいつも尻尾が生えてやがる!!何故だか分からんが、大量のサイヤ人が地球に攻めてきてるぞッ!!』

 

や、やっぱりサイヤ人なのか!?でも一体どうして…!?

 

『しかも世界中に散らばるように次々と着地している…!!既に他の奴らには声をかけてある!!その辺はお前に任せたぞ!!』

 

悟飯「分かりました!!」

 

急がないと…!!犠牲者を出すわけにはいかない!!

 

僕は迷わずに走り出した。

 

二乃「ちょ!どこに行くのよ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………外に出た。

 

 

…………なんだこれ…?この辺に着陸している宇宙船が1、2、3、4………

 

いや、両手で数えられるような数じゃない…!!

 

二乃「ちょっと…!どうなってんのよこれ!?」

 

悟飯「二乃さん!?なんで出てきたの!?危ないから中に入って!!」

 

二乃「それを言ったらあんたもでしょう!?」

 

くっ…!ここで戦うことになると、犠牲者がどれだけ出るか未知数だ…!しかも僕の正体も…………

 

いや、正体を気にしている場合じゃない…!!そんなちっぽけなことを気にしていたら、一体何人死ぬか…!!

 

 

 

カァァ…

 

幾つもある宇宙船の扉がゆっくりと開き始めた。そこから一人ずつサイヤ人が出てきた。

 

しかも、何人かの顔は見覚えがある…!

 

「………戦闘力たったの5か……。相変わらずこの星の住民は戦闘力が低いな」

 

「お前こそ戦闘力は大したものじゃないだろ?」

 

「くっ…!まあいい。久々に大暴れできるんだ。サイヤ人の血が騒ぐぜ……」

 

「ターレスの野郎の指示に従うのは気に食わねえが、サイヤ人の血が騒ぐって点には同意だ。さて…………地球人に挨拶でもしてやるか……」

 

………!!あいつ、また『あれ』をやるつもりか…!?この街には、上杉くんに、一花さん、二乃さん、三玖さん、四葉さん、五月さんに……

 

「おい待て。あまり地球を荒らすなとターレスに指示されている。神精樹の実の質が落ちるらしいからな」

 

「ちっ…、まあいい。それよりも腹立つぜ…!下級戦士の分際で、カカロットの野郎にあんな目に逢うなんてよ…!!カカロットの野郎が出てきやがったらこのナッパ様がぶちのめしてやる!!」

 

やっぱりか…!!あの顔を忘れるもんか…!!あいつらはナッパとラディッツだ…!!

 

二乃「えっ…?カカロットって……」

 

ナッパ「おっ?いい女がいるじゃねえかよ?ただ殺すのも勿体ねえ。ちょっと楽しませてもらってから殺すとするか…」

 

二乃「えっ…?ちょ、キモいんですけど…!あんな禿げ親父なんかに…!」

 

ラディッツ「……待てナッパ。あの女の顔、見覚えあるぞ?」

 

ナッパ「……何?」

 

ラディッツ「確か、カカロットの息子を名乗るやつが必死になって助けた女だ……」

 

ナッパ「へっ!つーことは、いきなり俺らは当たりを引いたってことか」

 

二乃「えっ?む、息子…?」

 

会話の内容はよく分からないが、アイツらは僕と二乃さん……いや、五月さんを目当てにこの星に来たみたいだ…。

 

ラディッツ「おい、そこの女。カカロットの息子がどこにいるのか教えろ」

 

二乃「はっ?か、カカロット君に子供なんていたの……?」

 

ラディッツ「とぼけても無駄だ。ターレスに渡された顔写真データとお前の顔を照らし合わせると、その一致率は99%……。ほぼ間違いなく、お前がカカロットの息子の大切なものとやらだ」

 

二乃「あ、あんた達!さっきから何言ってんのよ!!」

 

………待てよ?まさか、あの時の戦闘はスカウターを通して記録されていたのか…?だとすると、アイツらは五月さんを人質にして僕を誘き出そうとしているのか…?でも五つ子である二乃さんは五月さんと顔がそっくりだ。こいつらはそれで二乃さんを五月さんと勘違いしているのか?

 

ナッパ「まあ喋らないってんなら無理して喋る必要もねえぜ?じっくり楽しませてもらった後に吐かせてやるからよ!」

 

悟飯「おい!」

 

ラディッツ「ん?なんだ貴様は………。おい、貴様は…!!」

 

ナッパ「………お前、どこかで見たことある顔してんな……」

 

それはそうだ。お前らを倒した張本人の息子……。お前らが探している標的そのものなんだからな……。

 

ラディッツ「こ、こいつ…!スカウターに記録されている映像に写っているやつにそっくりだ…!そうか!貴様がカカロットの息子だな!」

 

ナッパ「コイツがか…!?あのガキが随分と大きくなったもんだな?身体だけだろうがな!」

 

二乃「………えっ…?あんたが、カカロット君の息子………??」

 

悟飯「……二乃さん、下がってて」

 

二乃「えっ…?」

 

ナッパ「丁度いいぜ…!カカロットの前にてめぇからあの世送りにしてやるぜぇえええ!!!!」ダンッ‼︎

 

ナッパはあの時からちっとも成長していないようだ。攻撃パターンは至って単純。特に警戒するべき要素は何一つない。

昔の僕はこんなやつに怯えていたのか……。そう考えると、少し情けない気分になった。

 

 

ドゴォォオオッッ!!!

 

 

ナッパ「がはっ…!!」

 

僕が軽く拳圧による攻撃をしただけですぐこれだ。ナッパは僕の拳圧で遥か遠くに吹き飛ばされ、意識を失った。

 

ラディッツ「な、なに…!?ナッパを、指一本触れず、エネルギー弾を1発も撃たずに…!?」

 

ラディッツは心底驚いているようだった。

 

悟飯「……僕は嬉しいぞ。まさか今更とはいえ、お父さんの仇を打てるなんてな…!」

 

ラディッツ「くっ…!やはりコイツは戦闘力のコントロールをマスターする前に始末するべきだった…!!」

 

悟飯「もう諦めろ。どんな目的で生き返らせられたのかは知らないが、お前らを生きて帰したりはしない!」

 

ラディッツ「頭に乗るなよカカロットの息子よ…!たかがナッパを一人倒したくらいで……」

 

何を言っているんだ?お前はナッパよりもずっと弱いはずだ。気だって大したものじゃない。恐らくあの時から1ミリも強くなっていないんだ。

 

ラディッツ「ふふっ…!こっそり盗み出しておいて正解だったぜ…!」

 

ラディッツはそう言うと、刺々しい木の実を自身の口に含んだ。その実を飲み込んだと同時に、突然気が大きくなった。

 

そ、そうか…!これが神精樹の実…!!食べるだけでここまで強くなるとは…!

 

ラディッツ「この神精樹の実というものは、食べるだけで戦闘力が大幅アップよ!大猿などと比べ物にならんほどにな!!」ダンッ‼︎

 

ラディッツは神精樹の実を食したことによって、自信を取り戻したのか、僕に一直線に向かってきた。

 

………だが無駄だ。

 

 

ドンッッッ!!!

 

 

ラディッツ「な、なに……!?」

 

 

ほら見ろ。気合だけで瀕死の重症だ。今のお前が何をしようが僕に勝ち目はない。だけど、あの実を何個も食べられてしまっては手強い強敵となり得る可能性がある。今のうちに始末しておこう。

 

ラディッツ「ま、待て…!悪かった…!もう悪さはせん…!今の俺はターレスの良いようにこき使われているだけなんだ…!!だから頼む!見逃してくれ!!」

 

悟飯「……いいぞ」

 

ラディッツ「……ふっ」

 

僕はラディッツに背を向ける。それを確認したのか、ラディッツが安心したような声を上げた。

 

 

シュン‼︎

 

悟飯「…なんて言うとでも思ったか?」

 

ラディッツ「……!?ま、待て!話が」

 

悟飯「……はっ!!」カァァ‼︎

 

ラディッツ「ガァァアアアアアア!?!?!?」

 

 

ドグォォオオオオオオオオオン!!!

 

 

僕は無言でラディッツに向けて気弾を放った。お前を見逃すわけがないだろう。どうせお前は僕が隙を見せたところで倒そうと考えていたのだろうが、そうはさせない。

 

悟飯「……これだけじゃない。他の奴らも……」

 

二乃「ね、ねえ!ちょっと…!!」

 

悟飯「…………」

 

二乃「あんた、何者なの…?」

 

二乃さんが不意に質問してくる。もう戦ってしまったし、目の前で気を使うところ、高速移動するところも見せてしまった。もう誤魔化しは効かないだろう。

 

………僕は………

 

悟飯「………僕は孫悟飯。地球の平和を願うただの高校生だよ…」

 

二乃「答えになってない!!それにあんな戦い方しといて只者なわけがないでしょう!?そもそも、あんたがカカロット君の息子ってどういうことよ!?」

 

 

「見ろ!アイツがカカロットの息子だぜ!!」

 

「あいつが超サイヤ人ってやつか?」

 

「いくら伝説の戦士だろうが、この人数相手に勝てるわけがねえ!!」

 

 

悟飯「……」

 

なるほど。1対1では敵わないことが分かりきっているから、人数で押そうというわけか……。

 

「てめえら!!一斉にいくぞ!!」

 

「「「だぁあああ!!!!」」」カァァ‼︎

 

二乃「あっ…!いや…!」

 

両手両足では数え切れないほどの数のサイヤ人が僕に向けて一斉に気弾を放ってきた。回避するのは容易いが、それだとここにいる二乃さんは間違いなく死んでしまうだろう。だから僕がこれらを全て弾くか、相殺する必要がある…。

 

悟飯「ハッッ!!!!!!」

 

 

ドグォオオオオオン!!!!

 

 

勿論、この程度の気弾なら気合だけでも相殺できる。

 

「な、なに…!?」

 

「馬鹿な…!?俺の最強の必殺技だぞ!?」

 

悟飯「はぁぁ………!」

 

手に力を込める。コイツらを一瞬で片付ける…!お前らにこの街を、人を殺させたりはしない…!!

 

悟飯「だりゃあああッ!!!!」

 

僕は手に気を集中させて、それをアイツらに向けて一斉に気弾として放った。この程度の気でも、アイツらを片付けることは容易い。

 

 

「「「「ぐわぁああ!!」」」」

 

 

ドグォォオオオオオオオオオン!!!

 

 

よし…!この調子でサイヤ人を纏めて始末するぞ…!そうすれば、誰一人として犠牲者を出さずに済むかもしれない…!

 

 

「馬鹿め!油断したな!女の命はもら……」

 

 

なるほどな。保険をかけておいたわけか。万が一僕を倒せなかった場合は、せめてもの抵抗として二乃さんを殺そうとしたのか………。

 

こんな戦い方をしているところをベジータさんが見たら、『サイヤ人の面汚しめ』って言いそうだな…。

 

 

「い、いつの間に後ろに…」

 

悟飯「はぁッ!!」カァァッ‼︎

 

 

ドグォォオオオオオオオン!!!

 

 

よし、この辺りは取り敢えず片付いた。次はあっちだ!!

 

悟飯「二乃さん。どこかに隠れてて!絶対にアイツらに見つかっちゃダメだからね!」

 

二乃「ちょっと!あんたには聞きたいことが山ほど……」

 

 

バシューン!!

 

 

二乃「……と、飛んだ…。嘘………」

 

謎の超人と同じように当たり前のように空を飛ぶ悟飯を見て、二乃はしばらく硬直してしまった。しかし、悟飯に言われたことを思い出し、身を隠す場所を探し始めた。

 

二乃「……(にしても……あいつ……)」

 

悟飯の正体は依然分からないままだが、一つだけ分かったことがあった。

 

二乃「……(あいつ、あんなにカッコよかったっけ…?)」

 

二乃は、戦っている悟飯の姿がカッコよく見えたらしい。

 

それもそのはず。なぜなら二乃の初恋である『カカロット』という人物は孫悟飯なのだから。『カカロット』のことをカッコよく思うのであれば、悟飯のことをカッコよく思うのも何もおかしいところはない。

 

二乃「…(でも、あんな人間離れした芸当ができるのはごく一部の人間だけのはず…。ってことは、やっぱりアイツがカカロット君…?でも、髪の色を瞬時に変えることなんて流石に……)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドグォォオオオオオオオオオン!!

 

 

 

 

ドォオオオオン!!

 

 

 

ドカァアアアン!!!

 

 

 

「がははははっ!!怯えろ地球人共ぉおおおッッ!!!己の無力さを嘆くがいい!!そして讃えろ!!サイヤ人の強さを!!素晴らしさを!!」

 

 

三玖「……」

 

何が起きているの…?

 

私はただ二乃のいるホテルに向かおうとしただけ。

 

今さっきまでは、いつもと変わらない光景が広がっていたはず。変わり映えのない日常が……。

 

なのに、今はそこら中に瓦礫が、血が、泣き声が、叫び声が………

 

まるで戦場にされた街のように………。戦の渦中に街が放り込まれたかのような光景が私の目には広がっていた…。

 

 

ピピピッ!

「……!!お前か!カカロットの息子の大切にしている奴というのは!」

 

そう言いながら私に接近してくる怪しい人が1人いた。

 

「よおそこの女。てめえはいい女じゃねえか?俺の質問に正直に答えてくれたら、命は助けてやる。お前がさっきまで見てきたように、俺はこの街を容易く破壊できる。地球人なんて簡単に殺せる。だから変なこと考えない方がてめぇの身の為だぜ…?」

 

この人たちはなんなの…?平然と空を飛んでいるし、ビームを出す。人間の常識を遥かに超えた速さで移動する。

 

でも、そこじゃない……。

 

なんで、そんな楽しそうな顔をしながら、平然とこんなことができるの……?

 

「カカロットの息子はどこだ?テメェがカカロットの息子と仲がいいのは分かってんだ」

 

三玖「……カカロットなんて名前、知らない……」

 

「ああ。すまねえな。そういや、カカロットには地球では別名があるんだっけか?えーっと……なんだったかな…。確か………ソンゴクウ…?だったかな…?」

 

ソン………?そん………。孫……?息子…?

 

まさか、その孫ゴクウって……。悟飯の親…!?

 

三玖「し、知らない…!!」

 

「おや?その反応は間違いねえ。どこにいるんだ?居場所を吐け。吐かないなら今すぐ殺す」

 

だ、ダメだ…!多分、悟飯は二乃が泊まっているホテルにいる…!でもそれを話したら、この人は悟飯を殺しに行く気だ…!

 

そんなこと、私がさせない…!!

 

「おい。いいから何か話せ。何も喋らなくても殺す」

 

ダメ…!話しちゃだめ…!今ここで話してしまえば、悟飯も二乃も殺されちゃう…!

 

ここでなんとかして時間を稼ぐんだ…!正直怖い…。私自身が死ぬのは怖い。でも………

 

 

 

 

 

 

悟飯と二乃が死ぬ方がもっと怖い…!!

 

 

 

ガッ‼︎

 

「何か喋れって言ってんのが分からねえのかッ!?この女ぁあああッ!!」

 

「……おいおい、その辺にしておけ」

 

「あっ!お前か…。別にいいだろうが。地球人がどうなろうが知ったこっちゃねえ」

 

「……やれやれ。久しぶりに戦えるって聞いたから喜んで参加してみれば、ただの弱い者イジメだったとはな……」

 

「お前もサイヤ人なら分かるだろ?人を殺し、街を滅ぼす……。サイヤ人の血が騒がねえか?」

 

「…………てめぇは何か勘違いしているみてえだが、サイヤ人は戦うのが好きなだけだ。虐殺そのものが好きなんじゃねえ」

 

「何言ってんだよ?らしくもねえな?お前の標的がお前の孫だからか?サイヤ人なら子供がどうなろうが知ったこっちゃねえだろ?」

 

「………ああ。そうかもな」

 

 

 

ドゴォォオオッッ!!

 

 

 

「グワァアッッ!!?」ドシャ

 

……!?何が起きたのかよく分からないけど、この人は私を助けてくれたの…?

 

「逃げろ、そこの女。正直に居場所を吐いたところで、そこらの下品な奴らにいいように使われるだけだぞ」

 

三玖「……誰だか分かりませんが、ありがとうございます…!」

 

同じ種族?でも優しい人はいたんだ…。誰だか分からないけど、ありがとう…!

 

 

 

「何をしやがるッ!?お前の敵は俺じゃねえだろッ!?!?」

 

「悪いな。俺はテメェらのやり方が気に食わねえんだ。それによ………。こういうのは俺の女が好まねえんだ」

 

何故かサイヤ人の味方であるはずのもう一人のサイヤ人は、三玖を助け出した。

 

彼の容姿は悟空にも、ターレスにもよく似ていた。しかし、ターレスのような冷酷な様子はなく、かと言って悟空のように甘さがあるわけでもない。

 

顔には傷が有り、赤く染まった鉢巻のようなものを巻いていた。

 

「この野郎…!テメェみたいな出来損ない下級戦士は俺がぶっ殺してやる!!」

 

「……へっ。お前には俺を倒せねえよ」

 

 

かつて、惑星ベジータを救うために、たった一人でフリーザに立ち向かった戦士……。

 

 

「今まで最前線で何度も死にかけながら戦ってきて、地獄でも常に戦ってきた俺にはな」

 

 

カカロットの親であり、孫悟空の実の父親で、孫悟飯の父方の祖父である、そのサイヤ人の名は………。

 

 

「てめぇらとは出来が違うんだよ。出来が……!」

 

 

「だったらここがテメェの墓場だッ!バーダック!!」

 

 

そう呼ばれている………。

 

 

 

 

ドグォォオオオオオオオオオン!!!

 

 

 

 

バーダック「な、なに…!?」

 

バーダックが戦闘態勢に入ろうとしたその瞬間、相手のサイヤ人は突然爆発した。何者かがエネルギー弾によって攻撃をしたのだ。

 

 

 

バーダック「…………お出ましのようだな……」

 

サイヤ人の集団の着陸が終わったかと思いきや、またしても似たような宇宙船が3機ほどこの場所に落ちてきた。似たような宇宙船ではあるものの、サイヤ人ではないことは、バーダックは分かっていた。

 

宇宙船の扉から姿を表したのは、あのクウラ機甲戦隊の3人であった。

 

サウザー「クウラ様からのご命令だ。サイヤ人はここで一人残らずに始末しろとのお達しだ」

 

ネイズ「はいよ!まあ早速一人を始末したわけだが……」

 

ドーレ「纏めて片付けてやるぜ…!」

 

 

 

バーダック「……あれがクウラの野郎が送ってきた刺客とやらか……」

 

クウラ機甲戦隊の戦闘力は、サウザーは170000。ドーレは185000。ネイズは165000と、誰もがギニュー特選隊の隊長であるギニューの戦闘力を遥かに超越していた。

 

並のサイヤ人では到底敵わない。並のサイヤ人ならばの話だが……。

 

ここで敢えて言うが、バーダックは最下級戦士でありながら、常に最前線で戦ってきた為か、生前は戦闘力が10000にまで達しており、そこら辺の中級戦士を凌駕していた。

 

しかし、彼はフリーザの手によって惑星ベジータごと消滅させられた後、何故かサイヤ人に支配される前の惑星ベジータ……。当時の名前で、惑星プラントに漂着していた。

 

何故過去にタイムスリップしたのかは未だに原因不明だが、そこでフリーザの先祖と思われるチルドという者と戦った。

その戦いの末に、彼は超サイヤ人に覚醒をした。その後は、夢から目覚めるかのように目を覚まし、気がついたら地獄にいた。戦い好きなバーダックはそこでも常に戦っていた。

 

そうしているうちに、バーダックは生前と比べ物にならない程に戦闘力が増していた。

 

ドーレ「おい、あそこにもサイヤ人がいるぜ?まずはアイツから片付けるとするか」

 

ネイズ「じゃあ俺はあっちの方に」

 

サウザー「俺はあちらのサイヤ人を片付けてくる。…………そこのサイヤ人。クウラ様のご命令だ。ここで死ね」

 

バーダック「……久々に存分に暴れられそうだぜ…」

 




はい。サイヤ人が一斉に生き返ったということで、既に察していた方はいたと思いますが、バーダックの登場です。バーダックは生き返らない方がカッコいいんじゃね?とも思いましたが、バーダックを活躍させたいから生き返らせちゃいました()

実を言うと、サイヤ人を生き返らせたメタ的な理由は、バタギネ夫婦の救済だったりする。それくらいにバーダックが好き。
今作のバーダックは都合のいい感じでZと超の要素が混ざっているかも(主に性格面)。
もしかしたらバーダックがZ戦士に加わるかもね(エッ?

一応次回も悟飯が本気を出しますけど、悟飯がマジで戦闘するシーンは近いうちにあるかと思います(今の予定通りに進めればの話)

第3回アンケート、ハーレム多すぎわろたww
選択肢を設けといてなんだけど、本編でハーレムエンドにする気はありません。まあIFで作るとは思いますけどね。ここまであると書かないと流石に失礼でしょw

ちなみにスランプはなんとか脱退しました。ですので、ペースがまた2日に1回に戻るかも?
心配されそうなので先に言っておきますが、今は無茶苦茶暇なのでこんな頻繁に更新できるだけです。決して無理してるわけではないので、そこは勘違いしてほしくないなぁ……と。それだけです。

それでは、今回はこれで失礼します。


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第25話 超サイヤ人の祖父と超サイヤ人を超えた孫

前回のあらすじ…。

二乃に変装がバレそうになったが、超サイヤ人の特性である、髪色が金髪に変化する特性のおかげで、なんとかバレずに済んだ。
しかし、その後に大量の宇宙船が世界各地に着陸してきた。しかもそれは皆サイヤ人だと言う…。

ピッコロの話によれば、世界各地でZ戦士達が対処にあたっているとのことだったが、悟飯は日本に来たサイヤ人を担当することに…。

しかし、今度はサイヤ人とはまた別の勢力が来た。

更には、悟空の実の父親であるバーダックまでもが地球の、しかも日本に来ていた。



サウザー「……その姿を見るに、最下級戦士か?サイヤ人の下級戦士はタイプが少ないからすぐに分かったぞ…」

 

バーダック「階級で判断する時代はもう終わってるみたいだぜ?現に赤ん坊の頃に戦闘力が2だったクソガキがフリーザを倒したみたいだしな…」

 

サウザー「そうだったな…。だからこそクウラ様は殲滅しろとご命令された…」

 

バーダック「まあ、手遅れだがな」

 

サウザー「……なに?」

 

バーダック「最近クウラの野郎と連絡取れてるか?応答がねえんじゃねえか?」

 

サウザー「……確かに……いや、まさかそんははずは…!」

 

バーダック「どうやら、ターレスの野郎が超サイヤ人に覚醒したとかで、クウラの野郎を倒しちまったみたいだぜ?」

 

サウザー「そ、そんなはずはないッ!!クウラ様がサイヤ人如きに…!!」

 

バーダック「アイツら兄弟の敗因は、サイヤ人を甘く見ていたところだ」

 

サウザー「偉そうな口を…!まあいい。クウラ様がいようがいなかろうが、私がやることは何も変わらん」

 

サウザーはそう吐き捨てると、指からビームを繰り出す。その速さは軽く音速を超えており、ある程度の戦闘力を持つ者でも回避は困難なものであり、弾くなど言語道断。

 

 

バシンッ!!

 

 

サウザー「な、なに…!?」

 

しかし、バーダックはそれを可能とした。

 

サウザー「ば、馬鹿な…!サイヤ人如きが…!それも最下級戦士が…!!」

 

バーダック「気をつけろよ?フリーザを倒したサイヤ人の親が、実は目の前にいたりするかもしれないからな…」

 

サウザー「な、なに…!?貴様が超サイヤ人の親だというのか…!?」

 

バーダック「本当かどうかは、実際に戦ってみて確かめてみろ…!」

 

実を言うと、バーダックは地獄で戦闘力を自在にコントロールできる人物に会い、その人物にコントロールの仕方を教わった。

 

その為、スカウターがなくとも相手の強さや居場所を知ることができるし、自身の実力を隠すこともできる。

 

 

ピピピッ!

 

サウザー「ば、馬鹿な…!戦闘力がどんどん上昇していく…!」

 

バーダック「それじゃあ、本格的に暴れるとするか…」シュン

 

その言葉が合図となり………

 

 

 

ドカッッ!!!

 

 

 

サウザー「ぐっ…!!」

 

 

本格的な戦いが始まった…………。

 

サウザー「だりゃりゃりゃりゃりゃ!!!!!!」

 

サウザーは、見下していたサイヤ人の戦闘力が、自分に迫っていることを焦ったからか、ただひたすら気弾を連射する。撃ちすぎているせいで、辺りには砂埃が舞い、敵がどこにいるのかもよく分からない状態となってしまった。

 

 

ピピピッ!

 

サウザー「そこかぁ!!」カァッ‼︎

 

スカウターを頼りに相手に攻撃しようと試みたサウザーであったが、バーダックには掠りさえもしないどころか、姿そのものが確認できなかった。

 

サウザー「な、なに…!?」

 

 

ドゴォォオッ!!

 

 

サウザー「ぐおっ…!!」

 

 

バーダック「へっ。いつまでもそんなブツに頼ってるからだ」

 

サウザー「くっ…!サイヤ人がここまで力をつけているとは…!これも、神精樹の実とやらのせいか…!!」

 

バーダック「そいつは違うな。他の奴らはどうか知らんが、俺はそんなものに頼ってねえ」

 

サウザー「くっ…!認めん…!認めんぞぉおおお!!」ビッ‼︎

 

バーダック「ほう?」

 

なんと、サウザーは5本の指から同時にビームを放った。流石にこんな器用な技を持っているとは思っていなかったのか、5本のビームのうちの一つが、バーダックの顔に掠った。

 

バーダック「チッ…、随分器用な技を出しやがる…」

 

サウザー「まだまだぁ!フィンガービーム!!」ビッ‼︎

 

バーダック「チッ…!」バシューン‼︎

 

バーダックは今度こそ避けきるために急上昇したが…

 

サウザー「無駄だ!!俺のフィンガービームは、どこまでもお前を追跡するぞ!!」

 

その言葉通り、フィンガービームもバーダックのように急上昇してバーダックを追跡する。

 

バーダック「ホーミングタイプか…!面倒くせえ…!」

 

バーダックは高速で飛んでフィンガービームを撒こうとするが、フィンガービームのスピードも速く、どこまでも追いかけてくる。

 

バーダック「まずいな……」

 

 

ガシッ!!

 

 

バーダック「なっ…!!」

 

ドーレ「サウザー!サイヤ人如きに何苦戦しているか知らねえが、そんなにダラダラやるなら俺に殺らせてもらうぜ!!」

 

逃げている途中で運悪く、クウラ機甲戦隊のパワー型の戦士、ドーレに確保されてしまう。振り解こうとするが、圧倒的な力によってそれは叶わない。

 

バーダック「ちくしょう…!」

 

しかも、刻々と迫るフィンガービーム。当たったら即死とはいかないだろうが、今のままでは重症を負いかねない。

 

ドーレ「戦闘力が18万…?サイヤ人にしてはなかなかやるな。だが俺は185000だ!!残念だったな!!」

 

バーダック「……仕方ねえな………。はぁぁああああああ…!!」

 

ピピピッ

ドーレ「な、なに…!?19万!20万!?馬鹿な…!?まだ上昇していく…!?」

 

 

ブオン‼︎

 

 

ドーレ「なっ…!?」

 

バーダックはドーレを振り解くことはせず、敢えて180°回転した。

 

 

バチンッ…!!

 

 

ドーレ「ぐわぁああああッ!!!」

 

そうすることによって、半永久的に追跡してくるフィンガービームを打ち消すことができるのだ。

 

バーダック「はぁぁ……!!」ポワッ…

 

バーダックは右手に気を集中させて、『スピリッツキャノン』の準備をする。

 

バーダック「ほらよッ!!」

 

 

ドッッ!!!!

 

 

バーダックは動揺しているドーレに容赦なくスピリッツキャノンを放った。

 

ドーレ「…!!」

 

ドーレはそれに気付き、すぐに守りの体制に入る。

 

 

ドーレ「おりゃああッ!!」ドンッ‼︎

 

バーダック「なに…!?」

 

 

なんと、ドーレはスピリッツキャノンを弾き返したのだ。流石はパワー型の戦士といったところか。

 

 

バーダック「どりゃあ!!」ドンッ‼︎

 

 

だが、バーダックもまた弾き返す。ドーレにではなく、こちらに高速で向かってくるサウザーに対してだが……。

 

サウザー「はぁ…!!」ブオン‼︎

 

しかし、サウザーは冷静に状況を見極め、サウザーの得意とする技、『サウザーブレード』を出す。

 

 

サウザー「はっ!!!」ズバッ‼︎

 

 

ドグォォオオオオオオン!!

 

 

そのサウザーブレードで、スピリッツキャノンを一刀両断した。

 

バーダック「……侮っていたのは俺の方かもしれんな……」

 

ドーレ「当たり前だッ!!例え戦闘力で劣っていようが、テメェら猿に遅れを取るようなクウラ機甲戦隊じゃねえ!!」

 

サウザー「ドーレ。だが奴は油断ならない相手であることには変わりない。心して戦え」

 

 

 

ピタッ

ネイズ「……そのサイヤ人…。戦闘力が20万超えってマジか…!?」

 

サウザー「いいところにきたネイズ。コイツは俺ら3人でかかるぞ」

 

ネイズ「お、おう!」

 

まさかの機甲戦隊が集結…!流石のバーダックもピンチか…!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

悟飯「……おかしい…。この辺にはもうサイヤ人の気は感じない……」

 

一体どういうことだ…?さっきまではあっちの方に沢山いたはずだ…。だけど、謎の気が3人分現れてから、サイヤ人と思われる気は急激に数を減らした。どういうことだ…?サイヤ人は何者かに追われていて、逃げているところに地球に辿り着いたということか…?

 

「悟飯…?悟飯…!!」

 

悟飯「あっ、三玖さん!」

 

ええっ!?こんな中で三玖さんが何で!?

 

悟飯「あ、危ないよ三玖さん!!どうしてこんなところにいるの!?」

 

ドンッ‼︎

 

悟飯「うわっ!?」

 

なんと、三玖さんは走りながら抱き付いてきた。ビックリしたぁ……。

 

三玖「良かった…!悟飯は無事だった…!良かった…!!」

 

悟飯「三玖さん!とにかく安全なところに……」

 

「いたいた!逃げるんじゃないわよッ!!」

 

悟飯「に、二乃さん…!?」

 

三玖「二乃…!無事だったんだ!」

 

二乃「ええ…。不本意にもコイツのお陰でね」

 

三玖「えっ…?悟飯のおかげ…?」

 

悟飯「ちょっと二乃さん!」

 

二乃「なによ?今更隠そうとしたって無駄よ。私はこの目でしっかり見たんだからね」

 

三玖「……?なにを見たの…?」

 

ま、まずい…!あまり話を広めてほしくないんだけど…!!

 

 

「このクソガキィィイイイイ!!!」

 

 

ゴォォオオオオオオオ!!!

 

 

二乃「えっ、なに…!?」

 

三玖「えっ、あれ……」

 

 

 

突如襲来した謎の巨体。その正体は、先程悟飯が倒したはずのナッパであった。

 

ナッパ「下級戦士の分散で生意気なぁあッ!!!そこの女諸共くたばれぇええええ!!!」カパッ

 

ナッパは大きく口を開く。するとすぐに口が光だし……。

 

悟飯「ま、まずい…!!」

 

 

ズォォオオオオオオオオッッ!!!!

 

 

口から吐き出されるかのように放たれた光が二乃と三玖を襲う…。しかし、二人の動体視力では、自分が攻撃されたと認識することもなく消滅していただろう。

 

 

悟飯「波ァァアアアアアアア!!!!!」

 

 

ズォォオオオオオオオオオオオ!!!!

 

 

悟飯は一瞬で二乃と三玖の前に移動し、かめはめ波を碌に溜めずに放って押し返す。

 

 

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ‼︎

 

 

二乃「………えっ?な、なにが起きたの…!?」

 

三玖「…………悟飯が、ビームを……出してる………?」

 

 

悟飯「大人しくあの世に戻れッ!!」

 

 

 

ズォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!

 

 

 

悟飯はそれだけ言うと、かめはめ波で一気に押し返し、ナッパを消し去った。

 

 

ナッパ「ぐはぁぁああああああああああああッッ!!!!!二度も下級戦士に……!!!!」

 

 

ドグォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!!!!!

 

 

「「きゃっ!!」」

 

 

悟飯「…………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ピピピッ!

 

ネイズ「なに…!?戦闘力が20万程のやつがもう一人…!?」

 

サウザー「構うな!今は目の前のアイツに集中しろッ!!」

 

機甲戦隊の3人とバーダックによる戦いは未だに続いていた。3人はすでに疲労困憊の状況だが、バーダックは汗一つ掻いていない始末だった。

 

バーダック「どうした?もう終わりか?」

 

ネイズ「なら、これでどうだーーーッ!!!!」

 

バリッ!!

 

バーダック「ぐわぁああああああッ!!!!」

 

ネイズは少し特殊で、電撃を放つことができる戦士だ。その為、エネルギー弾と組み合わせて攻撃することも可能であったりする。しかし、ネイズの場合は純粋に電撃だけでも充分に効果を発揮する。

 

ネイズ「はははっ!!どうだ!!これで手も足も出まい!!」

 

バーダック「だりゃあ!!」カァッ‼︎

 

ネイズ「わっ!!」スポッ

 

バーダックが苦し紛れに高速の気弾を放ってきたため、ネイズは慌てて首を引っ込めて回避した。

 

ネイズ「危ない危ない…」

 

 

 

バーダック「はっ!!」

 

 

バリッ!!

 

 

ネイズ「がぁあああああああああッッ!!!!!」

 

バーダック「……どうだ?自分の技でやられる感想は?」

 

なんと、バーダックは電撃をそのままネイズに返してしまったではないか。ネイズは自分の得意とする技で黒焦げになってしまった。そのまま落下しているところを見ると、気絶したか、絶命したかのどちらかである。

 

サウザー「ね、ネイズッ!!」

 

ドーレ「この野朗ぉおおッ!!」バシューン‼︎

 

サウザー「馬鹿野郎!!冷静になれ!!」

 

ドーレはネイズが倒されたことが気に食わなかったのか、バーダックに向かって突進する。

 

バーダック「単細胞が」

 

 

シュン‼︎

 

 

ドーレ「なに…!?」

 

ドーレの突進をバーダックは直前で避けた。冷静さを欠いていたためか、ドーレはバーダックを見失ってしまう。

 

ドーレ「馬鹿な…!どこに行った…!」

 

サウザー「上だッ!!ドーレッ!!」

 

バーダック「気付くのが遅えんだよッ!!!」

 

 

ドゴォォオオッッ!!!!

 

 

 

ドグォォオオオオオオオオオン!!!

 

 

 

サウザーが指摘するも、バーダックは即座にドーレを叩き落とした。ドーレは気を失っているのか、絶命したのかは分からないが、ピクリとも動かない。

 

サウザー「馬鹿な…!俺達はクウラ機甲戦隊だぞ…!?サイヤ人なんかに負けるわけが…!!」

 

バーダック「テメェらの時代はもう終わったんだよ。大人しくくたばりな」ポワッ…

 

先程は回避されてしまったが、今度こそ『スピリッツキャノン』を当てようとするバーダック。

 

サウザー「この俺がぁ…!サイヤ人なんかに…!!それも、最下級戦士なんかに負けるものかぁああああッッ!!!」ビリビリビリ

 

相手も諦め切れてないのか、はたまたバーダックの方が強いことを認められないのかは定かではないが、戦意を取り戻したようだ。

 

バーダック「そうこなくっちゃな」

 

バーダックは右手に気を溜め続ける。

 

サウザー「これで終わりだッ!!!死ね!サイヤ人ッ!!!」

 

 

ズォォオオオオオオオオ!!!

 

 

サウザーはエネルギー砲を放ってバーダックの撃破を試みる。

 

 

バーダック「充分楽しませてもらったぜ。死ぬのはテメェの方だッッ!!!」

 

 

パッ!!!

 

 

バーダックは満を辞してスピリッツキャノンを放った。

 

 

 

ドッッ!!!!!

 

 

 

サウザーのエネルギー砲とバーダックのスピリッツキャノンが拮抗する。どちらも互角かと思われたのは、ほんの一瞬だけであった。

 

 

サウザー「な、なに…!?押される…!?ち、ちくしょーーー!!!!!」

 

 

 

 

 

ドグォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオンン!!!!!

 

 

 

 

 

バーダック「ふっ…。意外と手応えのある奴らだったぜ…」

 

バーダックは久しぶりに戦えたからなのか、満足そうな笑みを浮かべた。だが、彼は切り替えて次の場所へと向かう。

 

バーダック「さて、次はアイツに会ってみるか……」バシューン‼︎

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

三玖「ねえ!さっきのはどういうこと!?」

 

二乃「私にもちゃんと説明してもらうからね」

 

……もう誤魔化しは効かないか…。ここは諦めて白状しよう。

 

悟飯「あれは『気』って言って、生き物なら誰でも持っている力を使っているんだ。まあ生命力みたいなものをエネルギー化しているんだよ。それを応用できるようになると、身体能力の強化もできるし、さっきみたいに気功波を撃つこともできる」

 

「「……??」」

 

あっ、この顔…。理解できない時の顔だ…。

 

二乃「……まあ、アンタが私達の常識で語れないことは分かったわ」

 

三玖「うん。正直ビックリ」

 

悟飯「なんというか、ちゃんと五つ子なんだね?」

 

二乃「どういう意味よ…」

 

そのままの意味だよ…。二乃さんの返答なんか、五月さんに対して説明した時と全く同じだったし…。

 

二乃「……カカロット君も、こんな事ができるの?」

 

悟飯「…………」

 

ここまで来てしまったら、もう話してしまった方がいいのかもしれない……。

 

悟飯「二乃さん。二乃さんの言う『カカロット』って言うのは、僕のことなんだよ………」

 

二乃「………はっ?あんたが?」

 

悟飯「うん」

 

三玖「えっ…?じゃあ、悟飯がセルを倒したってこと……?」

 

悟飯「まあ……そうなるね………」

 

二乃「いくらなんでも冗談キツいわよ。確かにさっきはあんたがカカロット君なんじゃないかって疑ってたわ。でもカツラもしてないのよ?地毛よ?あんな短時間で何度も染めることなんて不可能よ」

 

悟飯「それにはわけがあって……」

 

 

 

スタッ

 

僕が二乃さんに説明しようとした時、一人のサイヤ人が僕の目の前に姿を現した。

 

 

「……よう」

 

二乃「な、なによアイツ…?アイツも敵なの…?」

 

三玖「あっ!さっきの人だ…!」

 

悟飯「さっきの人…?」

 

三玖「うん。悪い人に殺されそうになった時に、あの人が助けてくれたんだ」

 

悟飯「あいつが…?」

 

三玖「うん」

 

「俺は別にお前を助けたわけじゃねえんだが……」

 

どういうことだ…?サイヤ人がわざわざ三玖さんを助けるメリットが思い浮かばない…。単なる仲間割れ…?

 

「俺はそこの女共に用はねえ。お前に用がある」

 

悟飯「僕に…?何の用だ…?」

 

「お前、カカロットの息子なんだってな?」

 

悟飯「それがどうしたっていうんだ。言っとくが、お前と同じ一族の血を引いてるからって、お前らの仲間になる気はないぞ!」

 

二乃「えっ?それ、どういう……」

 

「別に仲間になる必要なんてねえよ。それに用事はそんな時間かからねえさ」

 

悟飯「…………一体何の用なんだ?」

 

「サイヤ人同士の用事と言っちゃ、決まってんだろ?」

 

 

 

バーダックがそう言うと、突然悟飯に急接近してきた。

 

バーダック「おりゃ!!」ブン‼︎

 

悟飯「はっ!!」ドコォッ‼︎

 

バーダック「ぐっ…!!」

 

悟飯はその不意打ちを見事に避け、逆に相手に蹴りを入れた。

 

三玖「な、なに…!?」

 

二乃「見えなかったわ……。何が起きたの…?」

 

「やるじゃねえか……。赤ん坊の頃の戦闘力がたった2だったガキのガキがここまでできる奴だとはな……」

 

悟飯「お前……」

 

「そこの女共。巻き添えを喰らいたくなかったら、とっとと失せるんだな」

 

悟飯「……!?」

 

悟飯は心底驚いた。自分の知るサイヤ人というのは、冷酷で残忍で、人を殺すことに躊躇のない種族だとばかり思っていた。

 

だが、目の前のサイヤ人は違う。何故だか二乃達を逃がすように諭しているのだ。それは悟飯が気兼ねなく戦えるようにする為なのか、単なる親切なのかは分からないが……。

 

バーダックの指示通り、2人は悟飯達から離れた。

 

「……これで気兼ねなく戦えるだろう?」

 

悟飯「……意外だな。サイヤ人にもこんな奴がいるなんて……」

 

「へっ。サイヤ人は確かに殺戮するのに抵抗はねえ。だが、戦いという過程を経て殺戮が起こるんだ。今まではフリーザに命令されて数々の民族を滅ぼしてきたが、戦えねぇなら別にわざわざ殺す必要もねえ」

 

ただ純粋に戦いを求める姿は、何故か父親である悟空を連想させた。しかもよく見てみると、容姿も父親である悟空にそっくりであった。

 

悟飯「……お前、名前は?」

 

バーダック「バーダックだ…。お前こそなんていうんだ?」

 

悟飯「……孫悟飯だ…」

 

バーダック「ソンゴハン…?変わった名前だな…」

 

変わってるも何も、サイヤ人の価値基準で決めるなよ…。と内心ツッコむ悟飯。しかしながら、地球人基準で考えても、悟飯という名前は普通ではないのは確かだ。

 

バーダック「それじゃ…、続きを始めるか……。っとそうだ。お前、超サイヤ人になれるか?」

 

悟飯「…………だとしたらなんだ」

 

バーダック「へっ…。そいつを聞いて安心したぜ。俺はお前を殺すつもりで戦うからな。死にたくなかったら、お前も全力でかかってくるんだな…!」

 

 

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ‼︎

 

 

悟飯「……!?ッ」

 

悟飯はこの感覚を知っている。相手がただ気を高めているわけではない。大地が、空気が揺れるようなこの感覚。初めて味わったのはナメック星……。

 

これは、間違いない…。

 

悟飯「まさか……、お前も……!?」

 

バーダック「だぁああああああああッッ!!!!!」

 

 

 

ボォオオオオッ!!!!!

 

 

 

悟飯「くっ…!!」

 

 

 

超バーダック「…………」

 

 

なんということか。相手のバーダックも超サイヤ人になったではないか。これを見て悟飯は心底驚いた。超サイヤ人というものは、穏やかな心を持ちながら激しい怒りによって目覚める戦士。

それは即ち、目の前のサイヤ人もそれに当てはまることを意味していた。

 

 

 

二乃「う、嘘…!!突然金髪に…!?」

 

三玖「……なんかあの人、テレビで見たことある気がする…」

 

二乃「突然金髪に変化するってことは、まさかアイツも……!?」

 

 

 

悟飯「そ、そんな…!!」

 

超バーダック「さあ、お前も変身しろ。さもないと、死ぬぞ…?」

 

悟飯「……あんたがどうしても僕と戦いたいのは分かった……。だったら見せてやるよ…!!ただの超サイヤ人じゃなくて、超サイヤ人を更に超えた超サイヤ人を…!!!!」

 

超バーダック「何…!!超サイヤ人を更に超えた超サイヤ人だと…!?!?」

 

悟飯「はぁぁぁぁ………!!!」

 

 

 

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ‼︎

 

 

 

二乃「きゃ…!!」

 

三玖「さっきよりも揺れが強い…!!」

 

 

 

悟飯はセルを倒した時の姿、超サイヤ人2に変身しようとしている。その為、超サイヤ人の時よりも振動が大きいのは言うまでもない。しかし、修行を長年サボっていた悟飯は変身することはできるのか…?

 

 

悟飯「はぁぁぁぁぁ…!!!」バチバチッ

 

 

普通の超サイヤ人と決定的に違うのは、変身する際に稲妻が発生することだ。気があまりにも膨大であるため、意識せずとも自然と稲妻が発生するのだ。

 

 

悟飯「はぁあああああああああッッ!!!!!!」

 

 

ボォオオオオオオオッッ!!!!!

 

 

超バーダック「ぐっ…!!なんて戦闘力だ…!!?」

 

 

 

二乃「う……そ………!!」

 

三玖「悟飯も、金髪に…!?」

 

 

 

 

超2悟飯「さあ、お望み通り超サイヤ人になってやったぞ?これからどうするんだ?このまま戦えばいいのか?」バチバチッ

 

超バーダック「……ああ。最初からそう言ってるだろ?」

 

超2悟飯「じゃあ遠慮なくやらせてもらうぞ」

 

シュン‼︎

 

超バーダック「っ!!みえ…」

 

 

ドゴォォオオッッ!!!!

 

 

超バーダック「ゲホッ…!!」

 

 

バーダックは突然の攻撃に対応することができず、腹部に強い拳撃を受けたために後退りした。

 

 

超2悟飯「どうした?俺の強さはまだまだこんなものじゃないぞ?」

 

超バーダック「や、やるじゃねえか…!!面白え!!」シュン‼︎

 

バーダックも負けじと全力を出して悟飯に攻撃をする。だが………

 

超2悟飯「……」パシッ

 

超バーダック「ちっ……!ならこれだッ!!!」

 

 

ズォォオオオオオオッッ!!!

 

 

ドグォォオオオオオオオオオン!!!

 

 

バーダックは超サイヤ人になったことによって、威力が強化されたエネルギー砲を至近距離で悟飯に放った。流石にこれだけのものを喰らって無傷なわけないと確信していた。

 

 

超2悟飯「…………」

 

 

だが、悟飯は無傷であった。最初から何もしていないかのように。最早自分が攻撃したかどうかも疑ってしまうほどに…。

 

超バーダック「つ、強え…!!俺でもかなり強くなったと自負していた…。フリーザぐらいは余裕でぶっ殺せるくらいには強くなれたと思っていたのに、まだこんなに強い奴がいるというのか…?」

 

超2悟飯「確かにそれだけの力があればフリーザは余裕で倒せるだろうさ。でも俺を倒すにはまだ早いな……」

 

超バーダック「小僧が…。粋がってるんじゃねぇぞ…!!」ポワッ…

 

 

バーダックは自身の得意技とするスピリッツキャノンの準備をした。超サイヤ人になったことによって、ただでさえ威力が爆発的に上がっているというのに、自分の気を全てスピリッツキャノンにかけるかのように、右手に気を集中させた。

 

超バーダック「そんなにテメェの強さに自信があるなら、コイツを受けてみやがれッッ!!!!!」

 

 

ドッッ!!!!!!

 

 

バーダックは自分の気をほぼ全てを込めて作ったスピリッツキャノンを悟飯に向けて投げた。普通に考えれば、地球を木っ端微塵にできる程の力だ。

 

超2悟飯「……」スッ

 

すると、ようやく悟飯が右手を動かした。ひょっとするといけるかもしれないとバーダックは思ったが、それは甘すぎる考えであった。

 

 

バチッッッッ!!!!

 

 

超2悟飯「はぁぁああああッ!!!」

 

 

バシンッッ!!!

 

 

超バーダック「なに…!?」サッ

 

 

悟飯はバーダックが全力を込めて作り出したスピリッツキャノンを片手で蝿を振り払うかのように手を振っただけでいとも簡単に弾き返してしまった。

あまりの力の差にバーダックは呆然としかけていたが、自分の方に自身の技が飛んでくるのを認識して、なんとかギリギリで避けることができた。

 

超2悟飯「お前と俺の力の差は歴然だ。これでもまだ続けるのか?」

 

バーダック「…チッ。あまり認めたくはねえが、テメェの方が強えみたいだな……」

 

バーダックは悟飯には絶対に勝てないことを確信し、超化を解除して元の黒髪に戻った。

 

悟飯「………」

 

悟飯もまた、それを確認して元に戻った。

 

バーダック「どうした?俺を殺さねえのか?」

 

悟飯「……あんたは何故だか知らないけど、三玖さんを助けてくれた。それに戦う時も三玖さんと二乃さんに気を使っているようだった。お前はそこまで悪いやつじゃないと思ったから、僕はお前を殺さない」

 

バーダック「確かに今回は殺さなかったな。だが俺は生き返る前はフリーザ軍として幾つもの民族を滅ぼしてきたんだぜ?そんな甘い考えでいいのかよ?」

 

悟飯「……僕は、できればどんなに悪いやつでも殺したくはない。でも、悪い奴は僕から大切なものを奪っていくんだ。だから奪われる前に殺すしかないんだ……」

 

バーダック「……」

 

悟飯「お前は他のサイヤ人とは違って無駄な殺しはしないみたいだ。だから僕も無駄な殺しはしない……」

 

バーダック「………いつか後悔するかもしれねえぜ?」

 

悟飯「その時はあんたを全力で倒す」

 

バーダック「へっ。粋がりやがって…。後悔しても知らねえからな……」バシューン‼︎

 

バーダックはそう言い残し、この場を後にして飛び立ってしまった。彼がどこに向かって何の為に飛び立ったのかは、本人以外誰も分からない…。

 

 

 

二乃「………終わったの?」

 

悟飯「えっ?う、うん…」

 

三玖「驚いた…。悟飯って凄い強いんだね」

 

悟飯「あはは…。まあ、小さい頃からキツい修行をしてきたからね……」

 

二乃「……あんたが本当にカカロット君だったのね……」

 

悟飯「……ごめん。騙すつもりは……」

 

二乃「うるさいッ!!私の恋心を弄んで楽しんでいたんでしょ!?」

 

悟飯「い、いや!僕はそんなつもりじゃ…!!」

 

二乃「あんたなんかもう知らない!」

 

悟飯「あっ!」

 

三玖「二乃!そんな言い方はないよ!悟飯だって悪気があったわけじゃない!!」

 

二乃「だから何?結果的には私を騙していたことには変わりないでしょ?」

 

そう吐き捨てるように二乃さんはそう言い、ホテルに戻ってしまった。

 

幸い、サイヤ人達は何故か街や人には殆ど危害を加えていなかった。1人のサイヤ人は物凄く暴れていたみたいだけど…。

だが、不幸中の幸いというべきか、死者はまさかの0人。流石に怪我人はいたが…。奇跡が起きたとしか言いようがなかった。

 

街もそれほど大破しておらず、ドラゴンボールがなくても復旧できる程度であるとのことで、今回はドラゴンボールの使用を見送ることになった……。

 

 

『よくやったぞ悟飯。こっちは一部のサイヤ人に宇宙に逃げられてしまったが、大方片付いた』

 

悟飯「良かった………」

 

『これからもこういった事が起こる可能性がある。ベジータみたいに学校行くのをやめてでも修行しろとは言わんが、鈍らない程度に修行はしてくれ』

 

悟飯「分かりました……」

 

 

こうして、一波乱はなんとか収まった。しかし、悟飯は1人のサイヤ人のことが気になっていた。

彼は一体何者だったのか?何故自分と戦いたかったのか?それが気になってしょうがなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ダイーズ「……サイヤ人のうちの1人が既に超サイヤ人になっていただと…!?」

 

ターレス「……バーダックか…。俺は前にあいつに尋ねたぜ。カカロットの父親だから、超サイヤ人について何か知ってるかと思っていたんだが……。まさか奴自身がなれるとはな…!!」

 

レズン「驚いたな…。しかも、カカロットの息子は超サイヤ人を更に超えた超サイヤ人に変身している」

 

ターレス「ちくしょうッ!!ふざけやがって…!!!!」

 

ターレスは気付いてしまったのだ。スカウターと通してバーダックと悟飯が戦っているところを観察したのだ。

元々バーダックは協力的ではないとは分かっていたが、まさか始めから裏切る気だとは思いもしなかった。

 

しかも、自分がなったのは超サイヤ人ではないことにも…。

 

ターレス「じゃあ俺のアレはなんなんだ…!?金髪にはならなかったが、溢れ出るばかりのパワーは紛れもなく本物のはずだ…!!」

 

ダイーズ「さっき見せてもらったものだと、金色のオーラは出ていた…。不完全とはいえ、超サイヤ人に近付いているのは間違いないはずだ」

 

ラカセイ「間違いない。ターレスのS細胞はクウラと戦う前よりも明らかに数を増やしている」

 

アモンド「そんじゃ、カカロットのガキをぶっ殺す為には、俺達が更に神精樹の実を食べる必要があるみたいでっせな!」

 

カカオ「ンダ」

 

ターレス「バーダックの野朗…!俺を苔にしやがったな…!!絶対に許さねえぞ…!!」

 

バーダックはターレスの怒りを買った…。

 




バーダックと悟飯が共闘してサイヤ人を倒すと思った?違います(無慈悲)
バーダックと悟飯はまだ協力しません。いずれは協力することになるとは思いますけど…。

ここでまさかのバーダックが孫の実力を確かめる行動に出ました。悟空がフリーザを倒したことを知って、サイヤ人として嬉しく思っているのか、はたまた父親として嬉しく思っているのかは不明……。

更には孫である悟飯は伝説の超サイヤ人を更に超える超サイヤ人に変身するという偉業を遂げていることを知る。こりゃもうバーダックとしては嬉しくて堪らないのではないでしょうか?
ただ、自分よりも強いのは若干納得がいかなそう笑

ちなみにバーダックの過去は映画の超ブロリーの方ではなく、Zのたった一人の最終決戦とエピソードオブバーダックの方を採用させてもらってます。だってそっちの方がカッコいいじゃん?

まあ性格に関しては、超と混ざってる部分があるかもしれないけど…。

ちなみにこの話はソリッド・ステート・スカウターを聴きながら書いてました。あれも神曲のうちの一つだ。異論は認めない。


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第26話 仲直りと解決と・・・


 前回のあらすじ…。

クウラ機甲戦隊を軽く片付けてしまったバーダックは、そのまま悟飯の元へと向かう…。

それと同時に、気絶していたナッパが復活し、悟飯を二乃と三玖ごと殺そうと攻撃を仕掛けてきたが、悟飯のかめはめ波によってナッパも始末された。これがきっかけで、二乃だけでなく三玖からも質問攻めに遭うのだが、そこにバーダックが到着する。

悟飯はバーダックが父方の祖父だということは知らずに、超サイヤ人になったバーダックに超サイヤ人2で向かい打った。その結果、悟飯の圧勝となったが、三玖を助けたのがバーダックだった為、悟飯はバーダックを見逃すことにした……。

悟飯は、いつバーダックが悟空の実の父親だということに気付くのであろうか…?



 

あの惨事があったその日の夜のことであった…。

 

二乃「……もしもしパパ?私に何の用なの?」

 

『……どうやら二乃君も無事のようだね…』

 

二乃「だから君付けはやめてちょうだい。それで、一花達も無事だったってこと?」

 

『ああ…。一花く……一花に電話したら、二乃と五月だけが家にいないとのことだったから不安になってね…。怪我とかはないかい?もしあるようなら、今なら手が空いてるが…』

 

今なら手が空いているというのは、マルオの病院に突如として大量の救急患者が搬送されたからである。マルオの病院だけでなく、救急外来に対応している病院は救急患者で殺到しているとのことだ。

 

幸いにも、死者は出ていないのであるが……。

 

二乃「大丈夫よ。不本意にもアイツのお陰で無傷よ」

 

『……あいつとは…?』

 

二乃「パパが雇ってる家庭教師がいるでしょ?あっ、ちなみに孫の方ね」

 

『孫君が二乃を助けてくれたのかい?』

 

二乃「……まあ、そうなるわね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

五月「孫くん、今日は大丈夫だったんですか?街が大変なことになっていたみたいですけど…」

 

悟飯「うん。原因はなんとか潰せたからね。不幸中の幸いと言うべきか、被害が少なくて本当に良かったよ…」

 

悟天「兄ちゃん戦ったんでしょ?僕も戦いたかったなぁ……」

 

悟飯「ダメダメ!悟天はもう少し強くなってからじゃないと!」

 

悟天「僕だって戦えるもん!トランクス君と対決ごっこしてるもん!!」

 

五月「一体どんな遊びなんですかそれ……」

 

悟天「簡単だよ。トランクス君と戦うだけ!」

 

悟飯「そんなことやってたのかッ!?兄ちゃん初耳だぞ!?」

 

まさかトランクスと戦っていたとは…。これはひょっとすると、悟天の方が強かったり……?いやいや…。流石にそれはないでしょ…。超サイヤ人になれるわけでもないのに…。

 

ブー…

 

ん?あっ、中野さんからだ?一体どうしたんだろう…?

 

悟飯「はい、もしもし?」

 

『孫君、二乃君から聞いたよ。君のお陰で二乃君は無傷で済んだと…』

 

悟飯「……えっ?」

 

に、二乃さんッ!?なんでそんな気軽に話しちゃうかな!?

 

『父親としてお礼を言わせてほしい…。娘を助けてくれてありがとう……』

 

悟飯「い、いえいえ!そもそも助けたのは僕じゃないと思うんですけど……」

 

『二乃君が嘘をついているとでも言うのかい?』

 

悟飯「うっ……」

 

『…君の正体について探ったり、広めるようなことはしないから安心してくれ。君が何故正体を隠しているのかは大体検討が付いている。同じ立場なら僕も同じことをしていたと思うしね』

 

悟飯「ど、どうも……」

 

『それに安心してくれ。二乃君には、これ以上孫くんの正体を広めるようなことはしないでくれと頼んでおいた』

 

悟飯「お気遣いありがとうございます…」

 

…………これ、僕の正体が中野さんにもバレてない…?まさか、超サイヤ人になれることも話しちゃったの…?

 

『これからも家庭教師に励んでくれ。そしてまた今日のような事態が発生してしまった場合は、勝手なお願いではあるが、娘達を守ってほしい……』

 

それに関しては、頼まれずともやろうと思っている。もう誰も傷付けたくないし、犠牲を出したくもない…。

 

悟飯「……分かりました…」

 

ここで中野さんとの通話は終了した。

 

 

五月「お父さんからですか?」

 

悟飯「うん…。二乃さんを助けてくれてありがとうって……」

 

五月「ま、まさか…!孫くんの正体を話したんじゃ…!?」

 

悟飯「マルオさんにだけは話したみたいだけど、他の人には言ってないみたいだね…。マルオさんの話を聞く限りだと……」

 

「3人とも〜!ご飯ができただぞー!」

 

取り敢えずこの話は中断することにした。

 

今日も五月さんに勉強を教えて、お風呂に入ったらそのまま就寝するという流れなのだが……。

 

 

 

 

 

眠れない…!

 

僕が眠っている間にまた暴走されたらどうなるか……。最悪の事態が発生しかねない……。

 

五月「……私はなんて大胆なことをしているんでしょうね……」

 

悟飯「……?」

 

五月「お、男の人と同部屋で、しかも隣のベッドで寝るなんて……」

 

今更その段階を恥ずかしがるのもどうかと思う……。先日にやったあれ………いや、思い出すと僕も参りそうだ…。

 

五月「……ですが、同時に嬉しく感じますよ。好きな人と一緒に寝るということが、こんなにも素晴らしいことだったなんて思いませんでした……」

 

悟飯「………」

 

五月「……もしかして、照れてます?」

 

悟飯「あ、あはは…。そんな直球に好きって言われるとね…………」

 

最近の五月さんは本当に遠慮しなくなった。僕に想いを伝えてからというもの、とにかく自分がどれだけ僕のことが好きなのか、さりげなく伝えてくることもあるし、直球に伝えてくることもある。

 

そんな姿を見て、お母さんは何か意味深な笑顔を作るし……。

 

 

 

………まさか、あの日に五月さんが暴走したのはお母さんのせいなんじゃ…?

 

………い、いやいや。流石にそれはないだろう…。あってほしくない……。

 

 

 

………今日は特に何も起きなかった。強いて言うなら、五月さんが僕のベッドの方に侵入してきたくらいだろうか…?

 

流石に夜遅くなると眠気の方が勝った為、寝ることはできた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

朝になった。

 

起きて少し寝苦しい感じがしたのだが、その原因はすぐに分かった……。

 

五月「………」スー

 

五月さんがすぐ横で寝ていたのだ。いや、ベッドが隣だとかそういうことではなく、僕のベッドに侵入してる。

 

なんなら、僕にしがみついている。

 

悟飯「五月さん…。五月さーん?起きてくれないと僕も起きることができないんだけどー?」

 

五月「……あっ…。おはようございます…」

 

五月さんは何事もなかったかのように起床した…。なんというか…、ちょっと前までの五月さんなら間違いなく慌てふためくんだろうけど…。

 

いつも通り朝食を食べ終え、筋斗雲で学校に向かう。付近になったら降りて徒歩で登校する。

そして、僕と五月さんは平然と二人で登校しているわけだけど…。最近、よくこんな噂を耳にする。

 

 

『孫と中野って付き合ってるんじゃね?』

 

『最近二人で登校してるもんね?姉妹がいるはずなのに』

 

『なんかさぁ…。中野さんの髪から孫くんの髪と同じシャンプーの匂いがしたんだけど、どういうこと…?』

 

『なに…!?あの二人、もう既にそんな段階まで…!?』

 

 

なんて会話を聞いた気がする。一部意味が分からない会話もあったが…。

 

五月「そういえば、他のみんなは試験勉強は順調ですか?」

 

悟飯「うん。三玖さんと一花さんは終わったみたいだし、二乃さんも一応はやってくれているみたいなんだけど…」

 

五月「問題は、四葉ですか…?」

 

悟飯「そうなんだよね…。未だに部活が続いているみたいで…」

 

 

 

 

 

そして、二乃さんを尋ねにクラスに行ったんだけど…。

 

「二乃?今日は休むらしいよ」

 

なんということだ…。

 

五月「こうなったら直接二乃のところへ行きましょう」

 

悟飯「それが…。今はどこにいるか分からないんだよ。ホテルを変えちゃってるみたいで……」

 

五月「だとしても、孫くんなら追跡することができるんでしょう?」

 

悟飯「まあ…。でも、一般人の気はそこまで大きいわけじゃないから、なんの目星も付けてない状態で探すのは結構大変なんだよ……」

 

五月「そうなんですか…。それは困りましたね……」

 

悟飯「あとは、取り敢えず……」

 

 

 

1番の問題は四葉さんだ。部活が忙しくなって、勉強が疎かになっていないのか…。一応、僕が送信している問題はなんとかやってくれているみたいだ。

 

 

 

「お前が天才とは世も末だな」

 

「う、上杉さん…!?」

 

僕達が行く前に、既に上杉くんが到着していたみたいだ。

 

「君は?」

 

風太郎「あんたが部長か?期末試験があるのに大会の練習なんてご立派だな」

 

「うん。大切な大会なの。試験なんて気にしていられないよ」

 

いや、試験は下手したら進級の可否を左右するものだから、多少は気にしないとダメだと思う……。

 

風太郎「試験『なんて』…?」

 

悟飯「わーっ!上杉くんストップ!」

 

風太郎「なんだ。お前らもいたのか」

 

四葉「上杉さん。私は大丈夫です!ちゃんとやってますので!」

 

五月「四葉、無理をしていませんか?」

 

四葉「うん!問題なし!」

 

「もういいかな?まだ走っておきたいんだけど」

 

風太郎「まあ、四葉がそう言うなら止めねえよ。俺も一緒に走ろう。それなら問題ないだろ?」

 

悟飯「えっ…?それ、大丈夫なの?」

 

風太郎「俺を侮るなよ悟飯。ちょっと走るくらいなら問題ないぜ」

 

悟飯「えっ?そ、そう…?」

 

 

ここは取り敢えず上杉くんに任せた方がいいのかな…?

 

ちなみに、事後報告ではあるが…。

 

 

風太郎「四葉のやつ、マジで両立させる気らしい…。いや、両立できている…」

 

悟飯「えっ?それ、本当?」

 

風太郎「ああ…。走ってる間に俺が出した問題は大方正解していた」

 

悟飯「……ちなみに、どんな問題を出したの?」

 

風太郎「確か……」

 

上杉くんが出した問題は、

『フランスのルイ14世が造営した宮殿は?』

『走れメロスの著者は?』

『周期表4番目の元素は?』

 

この3つらしい。

……それ以上は体力の限界でギブアップしたらしい。

 

悟飯「上杉くん…。それなら僕がやった方が良かったんじゃ…?」

 

風太郎「すまん…。自分の体力の無さに嫌気がさしている…」

 

しかし、その問題は丁度僕が四葉さんに送った問題であった。昨日ではなかったとは思うけど…。

 

ちゃんと効果は出ているみたいだ。四葉さんは積極的に勉強してくれるからね。理由が理由なだけに…。

 

 

 

だけど、四葉さんは無理をしていないかやはり不安だ。

 

 

 

 

 

その日の夜。家で五月さんと勉強している時のことであった。

 

悟飯「……おや?」

 

一花さんから電話だ?どこか分からないところでもあったのかな?取り敢えず出てみよう。

 

悟飯「もしもし?どうしたの?」

 

『ごめんねこんな時間に。明日、陸上部のところに行こうと思うの』

 

悟飯「陸上部って……四葉さんのこと?」

 

『うん。やっぱり四葉は無理しているみたいだからさ…。本当は当人同士で解決させるのが望ましいんだけど、そうも言ってられないみたいで…』

 

悟飯「……やっぱり無理してたんだね」

 

『そう。そこでそっちに五月ちゃんいるでしょ?だから悟飯君と五月ちゃんにも協力してほしいんだけど……』

 

えっ…?えぇ!!??

 

悟飯「な、なんで五月さんが僕の家にいることを知ってるの!?」

 

五月「ええ!?バレてたんですか!?」

 

『わあ、五月ちゃんの声も聞こえる。本当にそっちに泊まってたんだ。五月ちゃんやるね〜』

 

………どうやらまんまと罠に嵌められてしまったらしい。

 

『……それで、悟飯君はどうする?』

 

悟飯「……勿論、助けてあげたい」

 

『悟飯君ならそう言ってくれると思ってたよ』

 

ということで、明日は休日だけど、四葉さんを助ける為に学校へ向かうこととなった。いや、正確には学校じゃないか…。

 

五月「私も同行させていただきますよ、孫くん」

 

悟飯「うん。分かった」

 

 

 

 

 

翌日……。

 

一花さんの指定した集合場所に到着したんだけど……。

 

一花「えっ?どうしたの三玖?……助けてほしい…?」

 

えっ…!!

 

悟飯「な、何かあったの…!?」

 

一花「あっ、多分悟飯君が思ってるようなことではないと思う」

 

……確かに、不審な気は感じられないから……。じゃあ、大丈夫…?かな…?

 

風太郎「何やってんだ…。陸上部の奴らがもうすぐ合宿に出発しちまう…。試験前だってのに、勉強を疎かにしやがって……」

 

五月「あなたのことなので、突撃するのかと…」

 

一花「ごめん三玖。こっちも手が離せなくて……」

 

風太郎「待て一花。いい作戦を思いついた。だからそのまま三玖を連れてきてくれ」

 

一花「えっ?わ、分かった」

 

悟飯「作戦って……一体どうするの?」

 

風太郎「簡単だ。四葉が断れないならお前達がやればいい」

 

……えっ?まさか…!

 

悟飯「変装するってこと……?」

 

風太郎「その通り!入れ替わりはお前達の得意技だろ?」

 

五月「……!わ、私は少し苦手です…。前に一花の真似をした時も心臓バクバクで……」

 

風太郎「だから三玖を呼んだ。到着したら、お前の着てるジャージを着てもらおう。そうなると、本物の四葉を……って!アイツらもう出発しやがった!!」

 

 

そういうわけなので、急いで追いかけることに……。

 

 

風太郎「駅に着く前にどうにかしなければ…!貴重な土日をやりたくもない部活で潰されてたまるか…!!」

 

悟飯「だけどどうするの?三玖さんはまだ来れそうにないよ?」

 

僕が上杉くんにそう指摘すると、上杉くんは五月さんの方をジーっと見て……

 

 

 

五月「あ、あはは……」

 

気が付いたら、五月さんが四葉さんが付けているリボンを装着しているのであった。

 

……多分失敗するだろうなぁ…。

 

 

 

 

 

五月「一身上の都合により退部を希望します」

 

風太郎「違う!もっとアホっぽく!」

 

五月「む、無理です!もうこんな役やめたいですぅ〜!!」

 

風太郎「それだそれ!五月、今のお前は四葉だ!誰がどう見ても四葉だ!」

 

五月「上手くいくでしょうか…」

 

悟飯「…………」

 

髪の長さが違う時点でかなり怪しいと思うんだけど、上杉くんはふざけてやってるのかな…?

 

風太郎「取り敢えず作戦はこうだ」

 

どうにかして上杉くんが陸上部から四葉さんを引き剥がし、その隙に五月さんが成り代わって退部をしたいと部長に伝えて万事解決!ということらしい……。

 

悟飯「あの、上杉くん。最終確認いいかな?」

 

風太郎「なんだ?もしかしてこの完璧な作戦に穴があったのか?」

 

悟飯「むしろ配役の時点でアウトだよ…。五月さんの髪の長さを見てよ?どう考えても四葉さんだって名乗ることはできないよ……」

 

風太郎「そうか?少なくとも俺から見たら四葉そのものだがな……」

 

悟飯「えーっと、本気で言ってる?ふざけてないんだよね?」

 

風太郎「四葉を助ける為にやってるのにふざけるわけないだろ」

 

……これは本当に真剣に見て考えているみたいだ……。他人に関心がなさすぎる弊害が出ちゃったな……。

 

とはいえ、これ以外に有効な手段は無さそうだし、三玖さんが来るまでの時間稼ぎとしては有効かもしれない…。

 

悟飯「……まあ、時間稼ぎとしては有効だと思うよ?」

 

風太郎「上手く行くと思うけどなぁ…」

 

どこからその自信が湧いてくるのか聞き出したいところだが、ダラダラしてると陸上部が駅に着いてしまう。実行するなら今がチャンスだ。

 

悟飯「仮に変装が完璧だとして、どうやって四葉さんを誘い出すの?」

 

風太郎「四葉のお人好しな性格を利用すんだ。取り敢えず二人は隠れてろ」

 

……?どういうことだろう?

 

 

 

「痴漢だーーッ!!痴漢が出たぞーーッ!!!!」

 

 

 

……えっ!?!?

 

上杉くんがそう叫んでだと思ったら、階段を登って逃げるように走った。

 

四葉「そこの人止まりなさーい!」

 

「中野さん!?」

 

あっ、本当に追いかけてきた…。入れ替わるなら今しかない…!

 

五月「はぁ……はぁ……逃げられちゃいました……」

 

悟飯「…………」

 

やっぱり無理があると思う…。1番可能性があって一花さんだが、四葉さんよりも髪が短い上にピアスまで付けている。やはり四葉さんの変装をするにはそれなりに準備が必要だと思う…。

 

「もー、いきなり走り出したからビックリしたよ」

 

「早くしないと予定の電車が行っちゃうよ」

 

……あ、あれ?もしかして、バレてないのか…?上手く行っちゃってるのッ!?

 

五月「……すみません。私、合宿には行けません」

 

「えっ?あなた、何やってるの?」

 

……何言ってるの?ではなく、何やってるの?と言っていることから、これは………

 

五月「私、部活をやめたいです」

 

「なんで?」

 

五月「来週は試験ですし……」

 

「違う違う。私が言いたいのは、なんで別人が中野さんのフリをしてるの?」

 

五月「……あれっ?」

 

…………やっぱり。

 

五月「わ、私は四葉ですよー?このリボンを見てくださーい!」

 

「うん。似てるけど違うよ。だって、髪の長さ違うもん」

 

………ほら、だから僕は言ったのに…。

 

しかし、この作戦が時間稼ぎならば、完璧な作戦であっただろう…。時間稼ぎとしてならだけど……。

 

「あんなにやる気のあった中野さんがそんなこと言うはずがないもん。中野さんは五つ子って聞いたよ?あなたは姉妹の誰かなのかな?なんでこんなことをするの?」

 

お、おっと?ちょっと怪しい雰囲気になってきたな…。これは僕もあっちに行った方がいいかな…?

 

「お待たせしましたー!」

 

…!?四葉さん…!?戻ってきちゃったの!?

 

「中野さん……」

 

「今度は本物ですよね…?」

 

「あはは。ちょっとしたドッキリでした。五つ子ジョーク」

 

五月「四葉……」

 

……いや、四葉さんじゃない。そもそも運動するのにサンダルなんておかしい。それに、爪にマニキュアが塗られている。

 

それだけじゃなく、気を確認するだけでも四葉さん本人ではないことは確かだ。本人はまだ上杉くんのところにいる。

 

「なんだ、冗談だったんだね。でも笑えないからやめてよ。中野さんの才能を放っておくなんてできない。私と一緒に高校陸上の頂点を目指そう!」

 

お、おぉ…。あの部長さんは部活に全力を注いでいるみたいだけど、なんだろう…。ちょっと怖いというか、恐怖を感じた……。

 

「……まあ、私がやめたいのは本当ですけど!」

 

…………ああ。僕はあの人が四葉さんを演じていると分かっているので、特に驚いたりはしなかった。

 

「な、中野さん…?なんで…?」

 

「なんでって、調子のいいこと言って私のこと考えてくれないじゃないですか。そもそも前日に合宿を決めるなんてあり得ません」

 

 

…………えっ?前日に決定されたの!?無計画にも程があるよ!?

 

 

そして、四葉さんに変装しているその人は部長さんに近づき……

 

 

 

「マジありえないから」

 

 

 

と、冷たく言い放った……。

 

この時点で誰が変装しているか、上杉くんも分かったんじゃないかな?

 

その間に僕は上に上って、上杉くん達と合流した。

 

四葉「ドッペルゲンガーだぁああッ!!!死にたくありませんッッ!!!」

 

風太郎「ドペゲンってことは、まさか…!」

 

一花「ふぅ…。間に合ったみたいだね」

 

風太郎「一花!間一髪だったぜ!お前が三玖を連れてきてくれたおかげで…」

 

三玖「………」ヒョコ

 

うん。これによって誰が変装しているかは誰でも分かる状況になった。

 

五月「三玖…!間に合ったのですね…」

 

三玖「私は何もしてない」

 

一花「私達はカツラがないと髪型的にねー。詳しくは分からないけど、何か心境の変化があったんじゃない?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「二乃」

 

 

そう、二乃さんである。

 

一花「そんなにサッパリいくなんて、もしかして失恋ですかー?」

 

二乃「……ま、そんなとこ」

 

一花「きゃー!誰と〜?三玖知ってる?」

 

三玖「……一応…。でも言わない」

 

一花「え〜?気になるなぁ?」

 

わぁ……!本当にバッサリいったな…。姉妹で1番髪が長かったのに、四葉さんと同じくらいの長さにまで短くなっている…。

 

髪を切ったということは、二乃さんはもう過去には囚われていないってことか……。

 

 

ズカズカ

 

と、二乃さんは僕に向かって早歩きで近づいてきて……。

 

二乃「言っとくけど、あんたじゃないから!!」

 

悟飯「えっ?う、うん……」

 

もしかして、失恋のことかな…?…………間接的に僕のことだとは思うけど…。

 

二乃「分かったわね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さようなら

 

カカロット君………。

 

 

 

そして…………

 

 

さようなら………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

二乃「四葉、私は言われた通りやったけどこれでいいの?こんな手段取らなくても本音で話し合えば、彼女たちも分かってくれるわ。

あんたも変わりなさい。辛いけど、いいこともいっぱいあるわ…」

 

四葉「……うん。行ってくる!」

 

一花「着いていこうか?」

 

四葉「ありがとう。でも、一人で大丈夫だよ」

 

四葉さんは、自分の口で退部することを伝えに行った………。

 

そして、今度はこっちかな?仲直りしてようやく全てが解決だ。

 

五月「あの…!」

 

風太郎「おい二乃。こいつはな……」

 

一花「ほーら、フータロー君!」

 

風太郎「えっ?」

 

三玖「私達は向こうで期末試験の対策を練ろ?」

 

風太郎「お、おい!」

 

二人は上杉くんを引っ張る。さて、部外者である僕もそっちの作戦会議に参加するとしよう……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

五月「……二乃、先日は……」

 

二乃「待って、謝らないで。あんたは間違ってない。悪いのは私。ごめん…。そうね、悪いとしたら力加減だけだわ。凄く痛かった…」

 

五月「二乃ぉ…!そ、そうです!お詫びを兼ねてこれを渡そうと思ったんです!」

 

五月はそう言うと、ジャージのポケットから二枚のチケットを取り出した。それは……

 

五月「この前二乃が見たがっていた映画の前売り券です。今度一緒に行きましょう!」

 

そう、『恋のサマーバケーション』の前売り券だった。

 

二乃「……なんなのよ全く…。思い通りにいかないんだから……」

 

そう言う二乃も、『生命の起源〜知られざる神秘〜』の前売り券を2枚握っていた……。

 

 

 

 

 

 

 

悟飯「………良かった…」

 

風太郎「ああ…。これで障害は全部取り払った。あとは勉強するだけだ!」

 

三玖「一時はどうなるかと思った…」

 

一花「今回の喧嘩は今までにない規模だったからねぇ……」

 

 

そんな会話をしていると…。

 

 

悟天「兄ちゃん!」

 

悟飯「悟天!?どうしてここに?」

 

悟天「どうせ今日も一日中お仕事するんでしょ?だから弁当を届けにきたよ」

 

そっか…。弁当持って行くの忘れちゃったのか……。

 

悟飯「ありがと、悟天」

 

悟天「……仲直りしたんだね」

 

悟飯「ああ……」

 

風太郎「………?あいつら、何やってんだ?」

 

一花「どうしたのフータロー君?」

 

風太郎「ほら、なんか尻餅ついてるって言うのか?なんか様子がおかしくないか?」

 

………?どういうことだ?

 

 

 

 

………!!!!??!?!!

 

 

な、ななっ…!?ど、どういうことだ…!?!?

 

三玖「ねえ、ちょっと待って…!?あの風貌、どこかで見たことない…?」

 

一花「そ、そんなはずはないでしょ…!」

 

風太郎「おいおいおい…!一難去ってまた一難ってこのことを言うのか…!?」

 

 

悟飯達は一体何を見たのだろうか…?

 





 今話はちょっと手抜きかも…?もしそう感じたらすみません…。

 なんか前回のバーダック回が物凄く反応よくて(当社比)ビックリしました。主にpixivでのことですけど。

 さて、更新が5日空いたわけですが、何故そんなに空いたかというと、2日連続でバイト(肉体的にキツめのやつ)してその疲労で投稿する気力すらなかったからです。やったのはちょっとした見直し程度。今後はちょくちょくこういったことがあるかもしれませんので、何の予告もなしにペースが突然落ちたらそういうことだと思っておいて下さい。まあ失踪はしないのでご安心を。

 悟飯がマルオを呼ぶ時ですが、基本的には『中野さん』ですが、五月達五つ子に説明する時は『マルオさん』という風に使い分けますが、基本的に中野さん呼びです。

 ちなみに四葉の件ですが、悟飯から毎日送られてくる10分くらいで解ける問題集(解説付き)をかなり前からやっていました。四葉の事情を知ってる悟飯が四葉をサポートしているため、四葉の成績が原作よりちゃっかり上がっています。他の4人も悟飯と風太郎の二人体制になってるので上がっているんですが、四葉はその中でも群を抜いて上がっています。と言っても、元々姉妹の中で1番低かったんですけど…(笑)

 さて、今話の最後にちょっとした不穏な空気が流れていましたが、またしてもDB側から敵が出てきました。以前言った新たな(?)敵がここで登場します。皆さんは誰だと思います?強いてヒントを言うなら、映画版限定キャラではありません。それだけお伝えしときます。皆さんもよーく知ってるキャラだと思います。


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第27話 ~魂VS魂~ 再び


 悟飯と戦った時もそうですけど、バーダックが不遇というか、噛ませっぽくなるシーンがありますけど、それは相手が悪すぎる為ですのでご容赦を…。

 今後はバーダックが活躍する話も考えてますので、それまで待ってて下さい…。

 あと、挿絵が欲しいとのご意見をいただきました。悟飯の旭高校の制服姿と二乃のヘアスタイルが変わった時の絵ということなのですが、二乃のヘアスタイルに関しては原作と同じです。悟飯制服姿は……。私は絵を描けないんですよねぇ……。気が向いたら描いてみます。

 イチャイチャを増やしてほしいとのご意見もいただきましたが、ちょっとそれはどうだろう…?ヒロインが一方的に甘えてくる展開なら可能といえば可能ですけど、悟飯からアクションを起こすことは当分ないと思います。強いて言うなら、誰かさんの妄想の中ぐらいです…。




 前回のあらすじ…。

悟飯と五月は、部活で無理をしている四葉を助ける為に風太郎達と合流し、五月が四葉に変装して退部を申し出るも、髪の長さが原因で失敗。その後に四葉本人が来たと思われたら、まさかの髪を切った二乃であった。二乃と五月はその場で仲直りをし、四葉も自分で部長に退部をしたい主旨を伝えた。ところが、そんな時に現れたのが…………。



 

二乃と五月が仲直りをする数分前の出来事……

 

孫である悟飯と戦ったバーダックは、北の山に籠って生活をしていた。ターレス率いるクラッシャー軍団に戻る気はないようだ。

 

バーダック「………まさか超サイヤ人のその先があるとはな……」

 

超サイヤ人は伝説の存在とされていて、それになれただけで自分は宇宙で最強の強さを手に入れたと思っていた。しかし、悟飯が超サイヤ人を超えた超サイヤ人に変身した。超サイヤ人をさらに越えるという発想はバーダックにはなかったので、相当驚いたと同時に更なる高みを目指せる喜びに打ち震えていた。

 

バーダック「……なら俺も越えるまでだ…」

 

バーダックが何かを決心した時…

 

 

シュン!!

 

 

バーダック「……!?ッ」

 

突然、何か巨大な宇宙船?いや、それとはまた違うマシンが突如として姿を現した。と思ったらすぐに着地した。

 

バーダック「な、なんだ…?宇宙船じゃねえな…?突然現れやがった…」

 

そのマシンの扉がゆっくりと開かれた。するとそこには、なんで言い表せばいいのか…。バーダックにはよく分からない存在としか言いようがなかった。

 

バーダック「……地球には変わった生き物がいるんだな……」

 

「……貴様、誰だ?孫悟空か?見た目は似ているが…。微妙に違うな」

 

バーダック「ソンゴクウ?ああ…。カカロットのことか…。残念ながら違うぜ。俺はバーダックってもんだ」

 

「バーダック……?貴様もサイヤ人なのか…?」

 

バーダック「ああ。サイヤ人のことを知ってんなら、見りゃ分かんだろ」

 

「……サイヤ人はフリーザが倒したはずだ。純粋なサイヤ人は孫悟空とベジータしかいないはず……。どういうことだ…?この世界では何が起こっている…?」

 

バーダック「ターレスってやつがナメック星のドラゴンボールを使って俺らを生き返らせたんだよ」

 

「………孫悟空は生きているのか?」

 

バーダック「知らねえよ。その息子なら見かけたがな」

 

「ほう?孫悟飯のことか…」

 

バーダック「なんだお前?知ってんのか?」

 

「まあな…」

 

バーダックの前に現れた謎の生物は飛び立とうとするが…。

 

バーダック「おい待て。お前が相当な実力を持ってんのは分かってんだよ。俺と戦え」

 

「……ほう?この私に挑むとはいい度胸だな?言っておくが、超サイヤ人にすらなれんただのサイヤ人がこの私に勝てると思うなよ?」

 

バーダック「言ってくれるぜ。なんだ?超サイヤ人になることが最低条件なのか?一応伝説の存在ってやつなのにな…」

 

「なれるのか?なれないのか?」

 

バーダック「まあ、見てもらった方が早えか……。はぁぁぁああ…!!」

 

 

大地が震え、空気が揺れ始める。バーダックは気を高めて超サイヤ人に変身しようとしている…。

 

バーダック「だぁあああああッ!!」

 

 

ボォオオオオッ!!

 

 

「ほう?ちゃんとなれるのか……」

 

 

超バーダック「まあな…。お前も力出せよ。そのままじゃ死ぬぜ?」

 

「私を殺せるものならやってみろ」

 

超バーダック「そうかよ。じゃあ遠慮なくやらせてもらうぜ!!」バシューン‼︎

 

バーダックは遠慮なく相手に突撃していく。

 

超バーダック「だりゃあ!!」

 

 

ドコッ!!

 

 

なんと、相手は避けることなく、顔面にバーダックの蹴りがクリーンヒットした。

 

 

超バーダック「おいおい?やる気あんのか?テメェはそんなもんじゃねえだろ?」

 

「そうか…。私も戦うのは久々なのでな…。ウォーミングアップに付き合ってもらおうか?」

 

超バーダック「随分と舐められたもんだぜ」

 

相手はそう言うと……

 

「……」シュン

 

超バーダック「なっ…!?どこ行きやがった…!?」

 

相手はウォーミングアップと言ったのにも関わらず、相手の動きが完全に見えなかった。もしも相手が本当にウォーミングアップ程度にしか力を出していないのだとしたら、バーダックと相手の力の差は歴然だ。つい先日戦った悟飯と同じぐらいの実力はあるだろう。

 

超バーダック「甘いな、後ろにいることは分かってんだよッ!!」カァッ‼︎

 

しかし、バーダックは気をコントロールする術を身に付けているため、相手の居場所も気を通して理解することができる。だが……

 

 

「………」フォン……

 

 

超バーダック「な、なにッ…!?」

 

 

「残念だったな。残像だ」

 

 

ドカッッ!!!!

 

 

超バーダック「ぐはっ…!!」

 

 

相手は軽くバーダックに1発拳を当てただけなのだろうが、バーダックにとってはかなりのダメージになった。

 

超バーダック「ち……くしょう…!」

 

「………貴様はまだまだだ…。しかし、今後は成長するかもしれんな…。もっと強くなって私を楽しませることだな…」

 

超バーダック「テメェ…!この前のカカロットのガキくらいの実力を隠し持ってたのか…!!」

 

「……なに?孫悟飯が私と張り合える程の力を持ってるだと?」

 

超バーダック「ちくしょう…!このまま負けたまんまじゃいられねえ…!くっ…。なんて無様なんだ………」

 

 

バーダックはそのまま意識を落とした。

 

 

「……孫悟飯が今の私と同程度の実力を隠し持ってるだと…?データによれば、孫悟飯は超サイヤ人にはなれても、17号や18号には敵わない程度の強さだったはず……」

 

 

もう皆さんはお気づきだろう。バーダックの目の前に突然現れた怪物の正体を。

 

 

「……長い旅路だった…。ようやく私を楽しませてくれる戦士が存在する世界に辿り着けたのか……」

 

怪物はどこか嬉しそうに呟くと、尻尾から何体か謎の生物を生み出した。数は4体だ。

 

 

「「「「ウキキキ…!!」」」」

 

 

「…ものは試しだ。この世界の孫悟飯が本当に私と互角の力を身につけているなら、コイツらを簡単に倒してくれるはずだ……。さあ行け、ジュニア達よ!孫悟飯を探し出せ!!」

 

 

「「「「ウキキ!」」」」

 

 

バシューン!!!

 

 

怪物の子供と思われる生物は、悟飯を探す為に飛び立ったのであった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、現在に至る。

 

 

 

四葉「わわっ…!なんですかあの生き物…!?セミが巨大化したんですか!?」

 

「な、中野さん!近づいちゃだめだよ!絶対に危ないやつだって!」

 

 

「ウキキキ…!!」

 

「ウキキ〜!!」

 

 

な、なんでアイツらがいるんだ…!??僕は一人残らず倒したはずだ…!

 

 

四葉「えっと……、迷子ですかー?それなら私が一緒に探してあげましょうか?」

 

「中野さん!そいつ人間じゃないって!知らないの!?7年前の!!」

 

四葉「7年前…?7年前といえば…。えっ?まさか………」

 

 

「ウキーッ!!」タンッ

 

 

何かに気付いた四葉だが、時すでに遅し。謎の生物は四葉目掛けて高速で突進してくる。

 

 

 

 

 

 

ドカッッ!!!!

 

 

「ギィイイッ!!??」

 

 

「キエ!?」

 

「キィイイイ!!!」

 

 

 

四葉「そ、孫さん…!?」

 

悟飯「大丈夫?早く逃げて!!」

 

「えっ?あの人、さっきまでいた?」

 

「いや、今日初めて見たよ…?いつからあそこに……」

 

 

 

 

 

風太郎「あ、あれ?悟飯はどこに行ったんだ!?」

 

三玖「悟飯……。まさか…!」

 

悟天「兄ちゃんならあっちにいるよ」

 

一花「あ!本当だ!四葉達のところに!」

 

風太郎「いつの間に!?」

 

 

悟飯の実力を知る数名はともかく、その事を知らない風太郎と一花は少々混乱しているようだった。先程までは、悟飯は風太郎達がいる場所にいた。そこから四葉達のところまで行くには、走っても30秒はかかるくらいの距離だ。

 

そんな距離を瞬きをする間に一瞬で移動したのだから、驚かない方がおかしい。

 

 

五月「そ、孫君…!?」

 

二乃「なに…?まさかまた怪物でも現れたの?」

 

その異常に気付いた五月と二乃も風太郎達の元へと駆け寄る。

 

二乃「……!!あれって…!」

 

五月「TVで見たことあります…!あれは間違いありません…!!あれは……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

悟飯「……セルジュニア。なんでお前らがいるんだ…!!」

 

「キイイイイ!!!」

 

悟飯「……答える気はなさそうだな」

 

「キイイイ!!」カァッ‼︎

 

セルジュニアが悟飯を発見すると、すぐさま戦闘態勢に入った悟飯。しかし、セルジュニアもそれは同じだった。複数いるうちの一体が悟飯に向かって気弾を放ったが……。

 

悟飯「はっ!!」バシン‼︎

 

悟飯はそれを弾き返した。

 

「ギィ!?」

「ウキウキ、キイ!」

「キイ!キイキイ!」

「キキキキッ!!」

 

なにやらセルジュニア達は独自のコミュニケーションを取っているようだ。

 

 

シュン‼︎

 

悟飯「なっ…!?」

 

 

ドコッ!!!

 

 

悟飯「ぎゃ…!!」ヒュー

 

 

ドグォォオオオオオン!!!

 

 

風太郎「ご、悟飯!?」

 

悟天「兄ちゃん?」

 

 

セルジュニアは突然気を増大させて悟飯に攻撃した。超サイヤ人でなかった為、あっさりと後退を許してしまった。

 

一花「ご、悟飯君大丈夫なの!?死んでない!?」

 

四葉「死なないで下さーいッ!!」

 

五月「………大丈夫ですよ。彼なら」

 

一花「五月ちゃん…!何を根拠に…!!」

 

三玖「大丈夫。悟飯なら、子分くらいどうとでもなる」

 

四葉「三玖まで…!?」

 

二乃「ええ。セルキラーならこの程度問題ないでしょ」

 

風太郎「……はっ?セルキラー…?二乃、それはどういう……」

 

 

 

ガラッ…

 

風太郎達がそんな会話をしていると、叩き付けられた地面から悟飯が浮いて出てきた。

 

四葉「そ、空を飛んでるッ!?」

 

一花「えっ…?どういうこと…?」

 

風太郎「いや、あり得ないだろ!?物理学的にあり得ん!!翼で羽ばたいているわけでもないし、ロケットを付けてるわけでもないのに飛ぶなんて…!!」

 

五月「……孫くんにはそういった常識は通用しませんよ」

 

三玖「……五月も気付いてたんだ」

 

五月「ええ。少なくとも三玖よりかは先に……」

 

三玖「むっ…!」

 

こちらはこちらで別の争いが起きそうだが……。

 

二乃「まあ私達は安全なところで見てましょ。丁度いい機会だわ。あいつの正体をその目でじっくり焼き付けなさい」

 

風太郎達からすれば、二乃達が何故そこまで平静を保てているのか不思議でならなかった。人が空を飛んでいる。高速で行動している。それだけでも、一般人にとっては十分に衝撃的だ。

 

 

悟飯「……(もう正体がどうとか言っている場合じゃない…!)はぁぁあああああああ……!!!」

 

 

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ…!!!

 

 

悟飯「はぁぁぁああああ…!!」バチバチッ

 

悟飯が気を高めていくと、周りに稲妻が走るようになった。悟飯はいきなり超サイヤ人2に変身しようとしているのだ。

 

 

悟飯「だぁああああああッッ!!!」

 

 

ボォオオオオッ!!!!

 

 

一花「わっ…!!」

 

風太郎「な、なんだ…!?」

 

 

突然の強風に風太郎達は目を瞑る。五月達は予想できていたのか、特に行動はしなかった。

 

 

超2悟飯「……」バチバチッ

 

 

 

四葉「………えっ…?あれって……」

 

一花「二乃が言ってた、カカロット君って子じゃ……。………えっ…?」

 

「えっ…?嘘、あれって……」

 

「突然金色になる人って……、確かTVで出てたよね…?」

 

「セルゲームに出場してた人……?」

 

陸上部の方々も心底驚いているようだった。

 

 

 

超2悟飯「容赦はしないぞ…!!」

 

「ギィイイ!!!」バシューン‼︎

 

「キエエエ!!」ビィイイッ‼︎

 

「ハーーーッ!!」ズォオオオオッ‼︎

 

1体は悟飯に向かって突撃し、あと2体はそれぞれ魔貫光殺砲とかめはめ波を悟飯に向かって放った。

 

超2悟飯「おりゃあッ!!!」

 

 

ドゴォォオオッッ!!!!

 

 

「ギッ……… 」ドサッ

 

突撃してきた個体は悟飯が本気で蹴りを入れたことによって、身体が上下に裂かれて……

 

超2悟飯「はぁああッ!!!」ボォオオオッ‼︎

 

 

「ギィッ!?」スッ

 

 

「ギャアアアッ!!」

 

 

ドグォォオオオオオン!!

 

 

悟飯の気合によってかめはめ波と魔貫光殺砲は跳ね返された。一体は避けることができたが、もう片方は避け切れずに返り討ちに遭って爆散した。

 

 

「キッ…!キキッ…!?」

 

超2悟飯「………」

 

悟飯はゆっくりと残ったセルジュニアに近づいて行く。

 

「き、キィ…!!」

 

セルジュニアは覚悟を決めたのか、戦闘態勢に入ろうとする。

 

超2悟飯「……おかしいな。前のお前らならもうちょっと手応えがあったはずだ。ここまで弱くないはずだ。なにを考えてやがる…?」

 

「キッ…!!」シュパパパパ‼︎

 

超2悟飯「なに…?」

 

「「「「キキキキキッ…!!」」」」

 

何をしたかと思えば、セルジュニアが四体に増殖したのだ。影分身のような類の見せかけの技ではなく、本当に4体に増えたのだ。

これは天津飯が使う技、『四身の拳』である。

 

超2悟飯「……4人に増えた代わりに気も四等分されたみたいだな……」

 

「「「「キェエエエッッ!!!」」」」

 

セルジュニア達はそれぞれ別々の行動を取る。ある者は気弾を放つ準備を…。ある者は突撃の準備を……。ある者は悟飯の背後に回り込む…。

 

超2悟飯「数を増やしたところで無駄だッ!!!」

 

 

ドゴォォオオッッ!!!

 

 

「」ドシャ

 

無論、悟飯が背後に近づく敵に気付かないはずはなく、躊躇なく始末した。

 

超2悟飯「だりゃああッ!!」カァッ‼︎

 

「ギィイイっ…!?」

 

 

ドグォォオオオオオン!!

 

 

2体目は気弾で始末し…。

 

 

「キエエエ!!」ズォオオオオッ‼︎

 

「ギィイイ!!」タンッ‼︎

 

 

超2悟飯「ふんっ…」ガシッ

 

「キッ…!?」

 

超2悟飯「だりゃあッ!!」ブン‼︎

 

 

「キイイイイ!?!?」

 

「ギャッ…!?」

 

 

ドグォォオオオオオン!!!

 

 

悟飯は突撃してきたセルジュニアを捕らえ、ギャリック砲を放ったセルジュニアに向かって投げ捨て、ギャリック砲を相殺したと同時に……。

 

 

シュン‼︎

 

ドゴっ!!!

 

 

「」ドシャ

 

ギャリック砲を放ったセルジュニアの体に風穴を空けてしっかり始末した。

 

 

超2悟飯「……随分離れちゃったな…。…!まずい…!!」バシューン‼︎

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「キキっ…!」

 

風太郎「うわっ!?もう一体いやがった…!?」

 

四葉「えっ?ピンチじゃないですか!?」

 

一花「と、取り敢えず逃げよう!」

 

「キェエエエ!!」タンッ‼︎

 

四葉「あっ…」

 

風太郎「四葉〜ッ!!」

 

四葉「風太郎くん!?」

 

風太郎は四葉を庇うようにして四葉の前に出てきた。四葉も最早自分を隠すことを忘れて『風太郎くん』と呼んでしまっている。

 

 

 

 

ドカッッ!!!

 

 

 

「キィ!?」スタッ

 

しかし、セルジュニアは何故か後退した。

 

悟天「残念でしたー!僕もいるよー!」

 

「き、キィ…!!」

 

 

一花「ご、悟天君も…!?」

 

まさかの悟天も悟飯のように超人的な動きができることに皆驚いていた。

 

悟天「お前みたいなチビなんかにみんなを傷つけさせないぞ〜!!」

 

「キキッ…!」シュン

 

悟天「うわっ!?どこに行ったの…!?」

 

 

「コッチダヨー!」

 

 

悟天「!?」

 

 

「キキっ!」

 

 

ドゴォオッ!!

 

 

悟天「うわ〜!?」ヒュー

 

 

ドグォォオオオオオン!!!

 

 

四葉「ご、悟天君〜!?!?」

 

 

なんと、悟天は隙を突かれて思いっきり壁に叩き付けられてしまった。その時に……。

 

超2悟飯「悟天〜ッ!!!」

 

向こうで戦っていた悟飯が到着した。

 

 

 

ガラッ…。

 

しかし、瓦礫の中から悟天が出てきた。特に大怪我はないようだ。

 

悟天「ううう…!うわあああああん!!!!痛いよぉおお〜〜!!!」

 

四葉「だ、大丈夫ですかッ!?きゅ、救急車を呼びましょう!?」

 

風太郎「今ここで呼んだらどうなるか考えろ!?」

 

超2悟飯「あっ、良かった…。無事だ…」

 

「キキキキッ!!」

 

セルジュニアは悟天を小馬鹿にするように笑い転げる。どうやら完全に舐めプしているらしい。

 

悟天「……もう怒ったもんね…!」

 

二乃「えっ?泣き止むの早くない…!?」

 

三玖「悟天、偉い…」

 

何故か場に合わず褒めている方もいるが……。

 

悟天「本気出しちゃお!はぁあああああああッッ!!!」

 

 

ボォオオオオッ!!!!

 

 

超2悟飯「いっっ!?!?!?」

 

「「「「「「!?!?」」」」」」

 

 

超悟天「もう泣いて謝ったって許さないぞ〜!!」

 

 

なんと、7歳という幼さでありながら、あっさりと超サイヤ人になってしまった!しかも超サイヤ人であるにも関わらず平常心は保っている様子だった。その様子を見るに、超サイヤ人に成り立てではないことがよく分かる。

 

 

ドカッ!!!

 

「キいっ!!!?」

 

超悟天「どりゃりゃりゃ〜!!!」ドドドドドッ

 

「ギギッ!?ギィ!?」

 

 

悟天の素早い連続の打撃をセルジュニアは受け続ける。悟天は小柄な分、すばしっこさもあるのだろう。

 

 

「キッ!!」バシューン‼︎

 

 

超悟天「わーっ!!あいつ空を飛んで逃げた〜!!ズルいズルーい!!」

 

「ウキキッ…?」

 

どうやらセルジュニアは、超サイヤ人になれるのに空を飛べない悟天を見て若干混乱しているようだ。

 

超悟天「まあいいや!じゃあこれでトドメを刺しちゃおっと!!」

 

そう言うと、悟天は悟飯がよく知る姿勢になり、両手に気を集中させた。

 

超2悟飯「あ、あれは…!」

 

 

 

超悟天「かー!めー!かー!めー!」

 

なんと、悟天は誰かに教わったわけでもないのにかめはめ波を生成した。だが惜しいことに、『かめはめ波』を『かめかめ波』と勘違いしているようだ…。

 

「キッ!?」

 

超悟天「波ァアアアアアアアア!!!!!!」

 

 

ズォォオオオオオオオオッッ!!!

 

 

「ギィィィイイイイ…!!」

 

 

ドグォォオオオオオン!!!!

 

 

 

悟天は悟飯のかめはめ波に引けを取らない威力で放ち、セルジュニアを見事に消滅させた。以前のセルジュニアより弱体化しているとはいえ、7歳でここまでの強さを備えているとなると、流石の悟飯も関心せざるを得ない。

 

超悟天「わーい!勝ったー!!」

 

 

ヒュー スタッ

 

悟飯は超サイヤ人を解除することすら忘れて悟天に次の質問をぶつけた。ただ、流石に2は解除した模様。

 

超悟飯「悟天!?いつから超サイヤ人になれたんだ!?」

 

超悟天「えっ?いつからだっけ?うーん………。忘れちゃった!」

 

超悟飯「えっ?えぇ……。空は飛べないのか?」

 

超悟天「飛べないよ〜」

 

超悟飯「なんだそれ…?順序がデタラメだな……」

 

なんと、忘れるくらい前から超サイヤ人になれたというのか?自分やお父さんの苦労は一体なんだったのかと疑問が浮かんでしまう悟飯であった…。

 

風太郎「……なあ、悟飯。お前……」

 

一花「これは…、どういうことなの…?」

 

超悟飯「……あっ」

 

超悟天「あれ?五月さんは既に知ってたから、てっきりみんな知ってるのかと思ってたけど……」

 

四葉「知ってたって……。五月が…?」

 

五月「ええ…。初めて知ったのは林間学校の時です…」

 

予想できたこととはいえ、悟飯は一花、四葉、そして高校1年生からの友人である風太郎にも自分のことについて話さなければならなくなった。悟飯は意を決して3人に対しても説明しようとした、その時のことであった…。

 

 

シュン‼︎

「……」

 

 

超悟天「わっ!!」

 

超悟飯「……」

 

四葉「あっ…!あれって…!!」

 

二乃「まさか実物を見ることになるとはね……」

 

 

 

超悟飯「……セルジュニアがいる時点で薄々勘づいていたが…。やっぱりお前もいたのか、セル……」

 

セル「……何?この世界の孫悟飯は私を知っているというのか…?この時代はまだ私は誕生してないはずだ…」

 

五月「……孫くんだけではありませんよ。世界中の人々があなたのことを知っています…」

 

セル「……何故そこまで知名度があるのかは分からんが…。そんなことはどうでもいい。それよりも、本当にセルジュニアを倒すとはな。しかも一瞬で……」

 

超悟飯「何を言ってるんだ?前に戦った時も見ただろう?」

 

セル「前に戦った…?私はお前と戦うどころか、会うのはこれが初めてだぞ…?」

 

超悟飯「惚けるな。なんで生きているのか知らないが、お父さんの仇だ……。まだ生きているなら…、もう一度僕が…」

 

 

ボォオオオオッ!!!!!

 

 

超2悟飯「もう一度俺がお前を倒すまでだッッ!!!!」バチバチッ

 

 

二乃「……あれが、あいつなの…?」

 

セルやセルジュニアの出現や、悟飯や悟天の超人的なパワーを目の当たりにして驚いている者が多い中で、二乃は悟飯の表情に気付いた。

 

カカロットとしても、悟飯としても見たことのない怒りの表情…。何故だか分からないが、悟飯はセルに対して何らかの恨みか何かがあるのだろうか…?と簡単に推測した。

 

風太郎「ま、待て!『もう一度お前を倒す』だって…!?それはどういう意味だ…!?」

 

セル「……私を倒すとは随分大きく出たな…。だが、そのパワー……。確かに、完全体である私と同じ領域に達している…。お前ほどの力があれば、確かに私を倒せるかもしれんな…」

 

 

ボォオオオオッ!!!!!

 

 

悟飯が本気を出したことを確認すると、セルも気を解放した。

 

超悟天「わっ…!!これが、過去にお父さんを殺したっていうセルの力…!!」

 

風太郎「……なんだって…?悟飯の親父がコイツに……?だから仇って……」

 

二乃「……(そっか……。だから……)」

 

セル「ほう?孫悟空は私に殺された…?そうか。ようやく状況が飲み込めぞ。孫悟飯、お前は何か勘違いをしているな」

 

超2悟飯「………なに?」

 

セル「私は確かに人造人間セルだ……。だが、お前と戦ったセルは私ではない」

 

超2悟飯「……?どういうことだ…?」

 

セル「私はついさっき、未来…。いや、『並行世界』からこの世界に初めて来た…。だから貴様が戦ったセルは、私とは別個体のやつだろう」

 

超2悟飯「……!!そういうことか…!」

 

三玖「えっ…?なに?どういうこと…?」

 

風太郎「パラレルワールドとは、ある世界から分岐し、それに並行して存在する別の世界を指す。アイツの言っていることが仮に事実だとするなら、アイツは7年前に現れたセルとはまた別の存在ってことだ…!」

 

四葉「……??」

 

風太郎が丁寧にパラレルワールドについて説明するが、若干名理解できてない者もいる。

 

風太郎「要するに、アイツはよく似た別人ってことだ!」

 

四葉「なるほど!」

 

その例えは若干違うような気がするが…。

 

セル「……まあそう解釈してもらっていい。この世界に初めて現れた方の私はお前に倒されたそうだな…?面白い…!長い年月を掛けて私を楽しませてくれる戦士を探していたんだ…!私を楽しませろよ!孫悟飯ッッ!!!」シュン

 

 

超悟天「あっ!見えないッ…!!」

 

 

 

ドゴォォオオッ!!!

 

 

 

四葉「あっ…!!」

 

一花「悟飯君ッ!?」

 

 

悟飯はいきなり頬にセルのパンチをマトモに受けてしまった。だが……

 

 

超2悟飯「………」

 

 

悟飯は何事もなかったかのように姿勢を直した。

 

 

セル「……なに…?」

 

超2悟飯「ここはみんなが危険だ…。場所を変えさせてもらうぞ…。はっ!!!!」

 

 

ドンッッ!!!!!

 

 

セル「ぶあッ…!?!?」

 

 

悟飯は気合でセルを押し、遥か遠くに移動させる。いくつもの県を跨ぎ、海を越え、最終的には何もない荒野に辿り着いた。

 

 

 

 

 

並行世界から来たというセル。7年前に悟飯戦ったセルとは別の存在だというが、果たして、どうなるのであろうか…?

 





 前回の最後に登場した敵はセルジュニアでした。セルだと思った人が大半だったと思いますが、もしそう予想していたら惜しいですね。ただし、新たな敵というのはセルになります。

 はっ?セル?まさか生き返ったの?そういうわけではありません。トランクスのタイムマシンを解析して、自分のサイズでも入れるタイムマシンを作り出しました。しかもワザと並行世界に行くような仕様にしてます。


 ここでこの作品の今後について?というか方針?みたいなものを少々語らせて頂きます。この作品は、五等分×ドラゴンボールのクロスオーバーだけでなく、ドラゴンボールのIFも同時に書いてます。バーダックなんかがいい例だと思います。もしもブウ編にバーダックもいたら?とか、そんな感じでただ原作に五等分キャラを追加するような展開ではなく、色々なキャラ(オリキャラは多分出ない。出るとしてもオリジナル率1割未満)を追加した上でストーリーを進行させる感じですね。

 ちなみに、私が今考えているものだと、五等分キャラも戦うかもしれませんよ…?(えっ…?)
 ちなみに、タイトルは悟飯が初めて超サイヤ人2に覚醒した時のBGMの名前から取ってきてます。曲名のみしか載せてないので、歌詞コードは記載してません。


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第28話 パーフェクトな人造人間

 前回のあらすじ…。

 突然、悟飯達の前に現れたセルジュニア。悟飯と悟天が苦戦することなく倒すことができたが、その後にセル本人が登場。悟飯はみんなを巻き込まない為にセルを何もない荒野に移動させたが……。


超2悟飯「……ここなら存分に戦える…」

 

セル「……ほう?私を楽しませる環境をわざわざ自ら用意したというわけか…。気前がいいではないか…」

 

超2悟飯「勘違いするな。みんなを怪我させないためだ。それに俺は戦いを楽しむ為じゃなく、貴様を殺す為に戦うんだ。そこを履き違えてもらっちゃ困るな」

 

セル「ほう…。その方が私としても自分を追い込めそうだ…。久々に刺激的な戦いができそうで私は嬉しいぞ…!だが、観客がいた方が盛り上がるとは思わんか?」

 

超2悟飯「……?何を言ってるんだ…?」

 

セル「……」ピコッ

 

 

シュンッ!!

 

 

風太郎「うおっ!?ここはどこだッ!?」

 

一花「あれ?ここどこ!?日本に荒野なんてあったっけ!?」

 

 

超2悟飯「なに!?なんで…!?」

 

セル「私の細胞には餃子の細胞も含まれていてね…。気に比べたら微弱な力ではあるが、超能力も使うことができる」

 

 

つまり、セルは超能力を利用して風太郎達をこちらに瞬間移動させたらしい。餃子にそんな能力があるのかは不明だが、オリジナルよりもスペックを上げることのできるセルなら、オリジナルから派生して新たな超能力を生み出しても何らおかしくはなかった。

 

 

超2悟飯「くそっ…!どこに移動しても無駄か…!!」

 

セル「すまないな…。どうやら私は少々目立ちたがり屋のようでね……」

 

超2悟飯「なら、派手に倒してやる!!」シュン

 

 

ドゴォォオオッッ!!!

 

 

セル「ぐはっ…!!な……に…!?」

 

(なんだと…!?こいつ、尋常じゃない速さだ…!!こんな戦士は『奴』を除いたらこいつが初めてだ…!一体何をどうしたらここまで強くなるんだ…!?)

 

超2悟飯「どうした?かかってこないのか?」

 

セル「……お前の強さはよーく分かった。はぁぁああ…!!」

 

 

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴッッ!!!

 

 

セルは徐々に気を高めていく。高めていけば高めて行くほどに地面の揺れが強くなる。なんなら、今は地球全体が揺れに包まれており、世界中の人々が何事かと騒ぎ始める。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんてことだ…!」

 

「そんな…!まさか…!!」

 

 

 

 

 

「て、天さん!この気は…!!」

 

「どういうことだ…?セルは悟飯が倒したはずだ…!俺はその瞬間をこの目で見たんだぞ…!?」

 

 

 

 

 

「ちょっと、何よ!?どうしたのよ!ベジータ!!トランクス!!!」

 

「パパ!!悟飯さんと同じくらいの気を持つ奴は誰なのッ!!?」

 

「悟飯の野朗…!しくじりやがったな…!!親子揃って甘い奴らだぜ…!!」バシューン‼︎

 

「あっ!パパ!!待ってよ!!」バシューン‼︎

 

 

 

 

 

「嘘だろ…!?何でセルが蘇ってるんだ…!?まさか、ドラゴンボール…!?でも、ここ最近使われた形跡はないはず…!!」

 

「……かつて武術の神と言われていたワシに何もできんとは………。なんて情け無い話じゃ……」

 

「大丈夫だぞマーロン…。そのうち揺れは収まるさ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

セル「どうだ?流石の貴様も多少は怖気ついただろう?」

 

超2悟飯「……本当にその程度か…?」

 

セル「なに……?」

 

超2悟飯「そうか…。ここ数年はちっとも修行してなかったから、弱体化して倒すことができないんじゃないかって若干不安になっていたが、どうやらお前もパワーが落ちたみたいだな…。いや、お前は7年前のアイツとはまた別の存在だったな…。つまり、パワーアップする前のセルというわけが……」

 

セル「なに…?」

 

(こいつ、今なんて言った?前よりも弱体化しただと…?ということは、数年前は今よりも更に強い力を持っていたということか…?何者なんだ…?孫悟飯……)

 

超2悟飯「なら遠慮なく行かせてもらうぞ!!!」バシュッ‼︎

 

セル「……!!」

 

超2悟飯「だりゃあッ!!」ブン‼︎

 

 

セル「……」フォン

 

 

超2悟飯「…!!」

 

悟飯はセルに向かってパンチを決めようとするが、セルは残像を使って目を誤魔化したようだ…。

 

超2悟飯「そこかッ!!」

 

 

グシャッッ!!!!

 

 

セル「ごほっ…!!!」

 

 

なんと、セルの腹部を悟飯のパンチが貫いてしまった…!!!

 

 

セル「私の動きが完全に見えているようだな…。流石だぞ、孫悟飯」

 

超2悟飯「だぁあああッ!!!」カァァッ‼︎

 

 

ドグォオオオオオオン!!!

 

 

悟飯はセルの賞賛には耳も傾けずに攻撃を続けた。7年前の同じ誤ちを犯さないために、早々に決着を付けようとしているのだ。

 

 

セル「くっ…!!」

 

 

先程の気弾によってセルの身体は大破してしまった。

 

 

超悟天「よし!!いいぞ兄ちゃん!!やれやれ〜!!!」

 

風太郎「す、すげぇ…!!」

 

一花「まさか、7年前にセルを倒したの、本当に悟飯君……?」

 

 

セル「はああああッ!!!」

 

 

グュオッ!!!!

 

 

四葉「わっ!!」

 

二乃「なにそれ!ズルッ!!」

 

 

しかし、セルにはピッコロの細胞も含まれており、身体が大破しても、核さえ無事ならば再生することができる。

 

 

セル「おのれぇ…!流石の私も少し頭に来たぞ…!!」シュイイ…

 

セルは空中に浮かび上がると、両手を後ろに構えて、手に気を集中させて、青白い光を作り出した。

 

セル「かー…!めー…!はー…!!めー…!!!」

 

セルはかめはめ波を悟飯……いや、地球に向けて放とうとした。7年前にも似たような状況があり、やはり別の時間軸の個体とはいえ、同じセルなんだな、と確認をする悟飯。そんな悟飯も何も準備していないわけではない。

 

超2悟飯「かー…。めー…。はー…!めー…!!」

 

悟飯もかめはめ波の準備をする。

 

セル「波ぁあああああああああッッ!!!」

 

 

 

 

ズォォオオオオオオオオオオオオオンン!!!!!

 

 

 

 

超2悟飯「波ァアアアアアアアアアアアア!!!!!」

 

 

 

 

ズォォオオオオオオオオオオオオオンン!!!!!

 

 

 

 

悟飯とセルとの間の丁度真ん中辺りでお互いのかめはめ波がぶつかるが、拮抗する暇もなく、青白い光はセルに急接近した。

 

セル「なっ…!!」

 

 

ブォオオオオオオオオオオッッ!!!!!!

 

 

そして、その青白い光にセルは包まれた。

 

 

ドグォオオオオオオオオオオオンン!!!!!

 

 

 

 

 

風太郎「…………やったのか…?」

 

一花「嘘……?本当に倒しちゃったの…?」

 

四葉「す、凄い………」

 

二乃「………」

 

三玖「か、カッコいい」

 

五月「………」

 

 

殆どの者が簡単な感想か、もしくは言葉も出ない状況であった。それぐらいに悟飯とセルの戦いは衝撃的なものであった。最早次元が違う。同じ人間なのかと疑ってしまうくらいだった。

 

といっても、風太郎達には、悟飯がセルの胴体を貫いたこと。セルの身体が大破した後に再生したこと。悟飯とセルが青白い光を出したことぐらいしか見ることはできなかった。

 

まともに観戦できていたのか悟天くらいである。

 

 

 

超悟天「わっ…!嘘だ…!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

セル「はぁ……はぁ…………」

 

超2悟飯「チッ…!上手く避けやがったか…!!」

 

なんと、セルは生きていた。

 

セル「これは驚いた…。まさか全てにおいてパーフェクトなこの私が孫悟飯という1人の人間に負けそうになるとは思っていなかった……」

 

超2悟飯「自爆するつもりならさせないぞ…!お前が自爆の準備をする前に一瞬で片付けてやる…!!」

 

セル「ほう?まさか自爆のことも知っているとはな……。この世界の私は相当追い詰められたらしい。だが安心しろ孫悟飯。自爆はせん」

 

超2悟飯「そうか…。大人しく死んでくれるっていうなら大助かりだ…」

 

セル「ふふふふふっ…!」

 

超2悟飯「…?なんだ…?まだ何か隠しているのか…!」

 

 

セルは悟飯に押されながらも、未だに余裕の笑みを浮かべていた。しかも自爆するわけではないと本人が言っている。ならばあの余裕はどこから出てくるのであろうか?

 

 

セル「とうとう私の求める世界を見つけたぞ…!!私はこの世界に留まることにした!!お前のような強い戦士がいる世界をどれほど望んだか…!!」

 

超2悟飯「……残念だな。その世界とももうすぐおさらばだ。俺はお前を生かしておくわけにはいかない…!!」

 

セル「すまんな…。理想の世界をようやく見つけたというのに、颯爽と死にたくはないはない…。それに、私がいつ本気を出したと錯覚していた?」

 

超2悟飯「…!?なに…!?」

 

悟飯はセルがまだ実力を隠していると判断し、フルパワーを出す前に始末しようとかめはめ波を準備した。

 

 

超2悟飯「波ァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!」

 

 

悟飯は先程よりも更に力を込めてかめはめ波を放った。最早自身の限界など忘れてしまったかのように…。そうしてでも以前のような失敗はしたくなかったのだ。

 

この時、誰もが悟飯の勝利を確信した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

セル「はぁああああああッッ!!!」

 

 

 

ボォオオオオオオオッ!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

超2悟飯「なっ……!?」

 

なんと、セルは悟飯のかめはめ波を軽々と避けて、呆然としている悟飯に急接近した。

 

しかも、先程のセルとは様子が違う。ただの金色のオーラが、稲妻を伴う金色のオーラに変化した。

 

 

セル「余所見とは随分余裕そうだな?」

 

 

ドゴォォオオッッ!!!

 

 

超2悟飯「ぐわぁぁッッ!!!」ヒュー

 

 

二乃「……!!!?」

 

風太郎「なっ…!?!」

 

誰もが悟飯の勝利を確信した。しかしその確信は見事に裏切られた。それと同時に辺りには絶望感が漂った。

 

五月「そ、孫くーーーーんッッッ!!!!!」

 

 

 

超2悟飯「ぐっ…!!」ピタッ

 

 

悟飯はなんとか空中に留まることができた。しかし。

 

 

セル「休憩してる暇などあると思っているのかな?」

 

超2悟飯「なっ…!?」

 

悟飯はセルの気を感じた方に視線を向ける。しかし、その方角である後ろにはセルはいなかった。

 

 

セル「こっちだ」

 

超2悟飯「…!!!?」

 

今度は前を向き直した。しかし、先程と同じようにセルの姿は確認できない。

 

 

ドゴォォオオッッ!!!

 

超2悟飯「……!!!!!」

 

 

悟飯の頭部に突然激しい痛みが伴った。セルは悟飯でさえも見ることのできない速さで移動した末に、悟飯の脳天に自身の両手を叩きつけたのだ。

 

 

 

ドォオオオオオオオオンン!!!

 

 

 

三玖「ご、悟飯ッッ!!!!」

 

風太郎「やべぇ…!!大丈夫かッ!?!?」

 

超悟天「だ、大丈夫!!兄ちゃんの気はまだあるから生きている!!」

 

 

バシューン!!

 

 

悟天の言う通り悟飯は生存していた。地面に叩きつけられてもすぐに舞空術で空中に浮かび上がった。そしてセルに再び挑もうとする。

 

 

超2悟飯「だぁあああッ!!」ブン‼︎

 

 

「」

 

 

超2悟飯「…!!!」

 

 

セル「こっちだ。どこを見ている?」

 

 

ドゴォォオオッッ!!!

 

 

超2悟飯「ぐはっ…!!!」

 

 

悟飯の努力は虚しく、またしても地面に叩きつけられた。

 

 

セル「まだまだ…!」バシューン‼︎

 

 

 

ドゴォォオオッッッ!!!!

 

 

超2悟飯「ぐわぁああああああッッ!!!!!」

 

 

セルは高速で移動し、悟飯にダメ押しの一発を与えた。

 

 

超2悟飯「ぐっ…!」

 

 

セルは悟飯の頭部を踏みつける。それも思いっきり……!!

 

 

グシっ!!!

 

 

超2悟飯「ぐわぁあああああッッ!!!!」

 

それによって悟飯は断末魔の叫びをあげる。一瞬にして戦況が180度変わってしまい、最早悟飯が勝利する光景を想像することができなくなった。

 

 

五月「もうやめてぇええええッッ!!!」

 

四葉「い、五月!!」ガシッ

 

 

五月は悟飯の様子を見るに耐えきれず、悟飯がいる場所に駆け出そうとするが、四葉によって止められた。

 

 

五月「離して四葉!!!孫くんが!!孫くんが死んじゃうッッ!!!」

 

四葉「だ、だめだよ!!五月も死んじゃう!!!」

 

 

しかし、五月は今までに出したことのない力でそれを振り解こうとする。

 

 

三玖「や、やだ…!やだよ悟飯…!!死なないで…!!死んじゃいやだ…!!」

 

風太郎「くそ…!何かないのか…!!悟飯を助け出す何かが…!!!」

 

 

 

 

セル「残念だったな。私は既に1度死にかけたことがあってね…。その時に更なるパワーアップを果たした…。流石にフルパワーの私には敵わないようだな?」

 

超2悟飯「な、なんでだ…!!いくら修行をサボったからと言って、ここまで圧倒されるはずは…!!ぐわっ…!」

 

セル「……なるほど。貴様、最近は戦いすらしていなかったな?スタミナが落ちたのだろう。先程までの素晴らしい力は感じられん」

 

超2悟飯「……!」

 

 

 

 

 

 

超悟天「ぐっ…!!兄ちゃんを………!虐めるなぁああああッ!!!」バシューン‼︎

 

 

セル「なっ…!!」

 

 

 

ドゴォォオオッッッ!!!!

 

 

 

セル「ぐっ…!!!」

 

超2悟飯「ご、悟天…!」

 

 

 

風太郎「…!!いいぞ!悟天!!らいはより歳下の子に任せるのは気が進まんが、今悟飯を助けられるのはお前だけだ!!存分にやっちまえ!!!」

 

 

超悟天「僕が兄ちゃんを…?よーし!!」

 

 

悟天は突然動き出し、セルに頭突きを放った。それによって、セルの足は悟飯から離れた。

 

そして、風太郎のエールによって悟天は限界以上の力を引き出し始めた。

 

 

超悟天「だりゃあッ!!!」

 

 

ドカッ!!

 

 

セル「ぐっ…!」

 

 

ドコッ!!!

 

 

セル「この小僧…!」

 

 

超悟天「だりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃ!!!!!!!!!」

 

 

 

ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドッッッ!!!!!!

 

 

 

悟天は自身の力を振り絞ってセルに向けて気弾をこれでもかと言うほどに連射をする。自分の限界など忘れたのか、何発も、何十発も、何百発も撃ち続けた。

 

 

 

超悟天「はぁあああッ!!!」ズォオッ‼︎

 

 

 

ドグォォオオオオオオオオオオオオンン!!!!!!!

 

 

 

最後に悟天は巨大な気弾をセルに向けて放った。これで悟天の攻撃は終了した。

 

 

超悟天「はぁ……はぁ…………」

 

 

風太郎「よ、よし!!よくやったぞ!悟天!!」

 

悟天がここまでの力を引き出せたのは風太郎のお陰である。風太郎が『悟飯を助けられるのはお前だけだ!』と言ったことによって、悟天が悟飯を助けようと限界以上の力を引き出せたのだ。

 

 

超悟天「ははは……。ちょっと力を使いすぎちゃった……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ギャリック砲ッッ!!!!」

 

 

 

ズォォオオオオオオオオッッ!!!

 

 

超悟天「わっ!!!!」

 

超2悟飯「悟天ッッ!!!!」

 

悟天に襲い掛かる光に気付き、悟飯は悟天の前に姿を表した。

 

 

 

 

ドグォォオオオオオオオオンン!!!

 

超2悟飯「ぐわぁああああああッッ!!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

風太郎「なっ…?何が起きた…?」

 

 

突然目の前が光り出して風太郎は状況が把握できなかった。今の状況を確認しようとすると…………

 

 

 

 

 

 

 

 

超悟天「に、兄ちゃん!しっかりして!!兄ちゃんッ!!」

 

 

そこには、弟を守る為に自分の身を投げ出した兄が転がっていた。しかも元の黒髪に戻っていた。

 

服は最早原型をとどめておらず、身体中から出血しており、いつ死んでもおかしくない状況であった。

 

 

 

五月「い、いやぁあああああッッ!!!!!」

 

二乃「う、嘘でしょ……?」

 

風太郎「ご、悟飯!しっかりしろ!!」

 

スタッ

 

 

風太郎「…!!!」

 

セル「………」

 

風太郎は悟飯に向かって叫ぶと、セルが突然現れた…。

 

 

 

 

セル「安心するがいい。殺しはせん」

 

風太郎「ほ、本当だろうな…!」

 

セル「ああ。私はただ戦いを楽しみたいだけだ。楽しみを自ら潰すようなことはしないさ……」

 

 

 

 

 

ドォオオオオオンンッッ!!!

 

 

セル「…!」

 

風太郎「なっ…!」

 

突然、セルの頭が爆発した。その犯人は………。

 

 

 

超悟天「よくも…!よくも兄ちゃんをッ!!」

 

セル「流石だ。お前はデータにはないが、気を探れば分かる。孫悟飯の弟だな?その歳にしては立派な強さだが、私には勝てん。それはお前も分かっているだろう?」

 

超悟天「うっ…!!」

 

しかし、セルはケロッとしていた。

 

 

 

五月「孫くん!しっかりして下さい!孫くんッッ!!!」

 

三玖「悟飯!悟飯ッ!!目を覚まして!!お願いッ!!!」

 

二人の呼びかけに悟飯は応答しない。否、応答できないという言い方の方が正しいだろう。

 

二乃「何してんのよ…!あんた、一度はセルを倒してんでしょうが!!さっさと起きてもう一度倒してきなさいよ!!!」

 

そんな二乃の呼びかけにも応答しない…。

 

四葉「と、取り敢えず止血できる何かを…!!」

 

一花「でも身体中から血が…!」

 

 

 

セル「安心しろ。サイヤ人はその程度で死ぬ程柔ではない。それに私は殺すつもりで攻撃はしていない。仙豆を食べれば、孫悟飯は回復すると同時に大幅にパワーアップするはずだ…」

 

 

五月「よ、よくも…!よくも孫君を…!!!」

 

ガシッ!!

 

四葉「だ、ダメだよ五月ッ!!孫さんでも敵わなかったんだよっ!?五月が勝てるわけないって!!」

 

五月「でも!でもッ!!!」

 

 

 

ボォオオオオオオッ‼︎

 

 

セル「ッ!!なんだッ!?」

 

 

セルは突然過剰に反応した。その様子に殆どの者が理解できなかったが、悟天だけは何が起きたのか理解できた。

 

超悟天「この気は…!!」

 

 

 

 

ドゴォォオオオッッ!!!!

 

 

セル「ぐっ!!!」ヒュー

 

 

ドォォオオオンッ!!!!

 

 

セルは突然何者かに拳を振われ、岩山に叩きつけられた。

 

 

「長年トレーニングをサボるからそんな様になるんだ。平和ボケした野朗は引っ込んでいろ」

 

超悟天「べ、ベジータさん…!!」

 

「よっ!俺もいるぜ悟天!」

 

超悟天「トランクスくんまで!」

 

 

シュン‼︎

 

岩山に叩き付けられたセルは一瞬にして戻ってきた。

 

セル「……ベジータ…。それは……」

 

超2ベジータ「よう、セルさんよ。テメェを殺しにきたぜ」バチバチッ

 

 

ベジータはただ超サイヤ人になっているわけではない。周りに稲妻が発生していた。これは即ち、悟飯と同じく超サイヤ人2に変身しているのだ…!

 

セル「素晴らしいパワーだ…!先程の孫悟飯を圧倒的に凌駕している…!!素晴らしいぞッ!!やはりこの世界は大当たりだッ!!!!」

 

超2ベジータ「相変わらずうぜぇ薄ら笑いをしやがる…。その薄ら笑いもすぐに消し去ってやるぜ…!」

 

 

 

 

 

五月「な、なんですかあの人…?敵なんですか…?」

 

トランクス「パパが敵なわけないだろ!姉ちゃん誰だか知らないけど!」

 

三玖「……君は…?」

 

トランクス「俺はトランクス。悟天の友達だよ」

 

五月「悟天くんの…?」

 

 

 

超2ベジータ「はっ!!!!」

 

 

ドンッッッ!!!!

 

 

セル「!?」

 

ベジータは試しにセルに向かって自身の拳圧を当ててみた。腕試しをしているらしい。

 

セル「……ほう?まずはウォーミングアップを……ということか?」

 

超2ベジータ「この程度でくたばられちゃつまらないんでな…」

 

 

セル「……」シュン

 

超2ベジータ「……」シュン

 

 

 

 

 

ドゴォン‼︎

 

 

        ドゴォン‼︎

 

 

 

 ドゴォン‼︎

 

 

 

         ドゴォン‼︎

 

 

 

 

 

超悟天「み、見えない…!」

 

トランクス「流石パパ…!」

 

 

ベジータとセルは、悟天とトランクスでも見えない程の速さで戦う。戦いの様子を把握できるのは、当事者であるセルとベジータのみだ。

 

 

ドカッッ!!!!

 

 

セル「ぐおっ…!!」

 

超2ベジータ「だぁあッッ!!!」

 

 

パシッ

 

セル「はぁッ!!!!」

 

 

ドゴォォオオッッ!!!

 

超2ベジータ「うおっ…!!」

 

 

ベジータが上手くセルに拳を当てた。続いて蹴りを決めようとするが、これはセルに受け止められ、逆にセルの攻撃を受けてしまう。

 

 

超2ベジータ「ふっ…!」ガシッ

 

セル「…!!」

 

しかし、ベジータはセルの腕を剥がすようなことはせず、逆にセルを捕らえて逃がさないようにした。

 

超2ベジータ「ビックバンアタックッッ!!!!!」

 

セル「なにッ!?!?」

 

 

 

ドグォオオオオオオオオオオオオンン!!!!!!

 

 

 

 

 

風太郎「だ、大丈夫なのか!?悟飯は生きているのか!?」

 

トランクス「大丈夫!気が残っているから死んではいない!」

 

一花「なんでそんなことが分かるの…?」

 

トランクス「俺達は気ってのが分かるんだよ。生きていればそれが残っている。まだ気が残っている悟飯さんは生きているんだよ!」

 

三玖「今は大丈夫でも、早くしないと悟飯がッ!!」

 

トランクス「くそぉ…!!俺の気を使って!!」ポワッ

 

トランクスは瀕死の悟飯に気を分けた。

 

悟飯「……!ご、悟天は…!!」

 

超悟天「兄ちゃんのお陰で無事だよ!それより兄ちゃんが!!」

 

悟飯「あ、あれ…?身体が動かせない…?」

 

三玖「ご、悟飯…!!」

 

五月「孫くん!!」

 

悟飯「あはは…。良かった……。みんなも無事なのかな……?」

 

風太郎「何言ってんだッ!?お前が今にも死にそうだぞッ!?」

 

「落ち着け。それに関しては大丈夫だ」

 

トランクス「…!!」

 

一花「えっ?誰この人…?」

 

四葉「わっ!顔が緑色に!?具合悪いんですか!?」

 

「これは元からだッッ!!!」

 

突然現れたのは、悟飯の師匠であるピッコロであった。

 

 

ピッコロ「お前ら、ちょっと退いてろ」

 

五月「えっ?」

 

三玖「ちょっと…!」

 

悟飯に寄り添う二人をピッコロは退かして、自身の気を悟飯に少し分けて悟飯の目を覚まさせた。

 

悟飯「……ピッコロさん…」

 

ピッコロ「よく頑張ったな…。仙豆だ。食え」

 

悟飯「あ、ありがとうございます……」

 

悟飯はピッコロにもらった仙豆を口にし、何度か噛んでから飲み込んだ。

 

 

悟飯「…!!」ガバッ

 

 

四葉「わっ!!」

 

風太郎「いきなり起きて大丈夫なのかッ!?」

 

悟飯「う、うん…。仙豆のお陰でね…」

 

 

「孫くーん!!」

「悟飯〜ッ!!」

 

 

ドサッ!!

 

悟飯「ぐえっ!!!?」

 

 

三玖「良かった…!無事で良かったよ!!」

 

五月「心配しましたよ!!もう死んでしまうのかとッ!!」

 

悟飯「イタタタッ!!!心配かけてごめん!僕はもう大丈夫だから!!ちょっと退いて〜!!!??」

 

トランクス「………悟飯さん、いつの間にモテるようになったんだ…?」

 

悟天「家庭教師を始めてからかな…?」

 

正確には、高校に入学してから少し経った5月頃からであるが、鈍感な悟飯経由でしか学校生活に関する話は聞いていないので、悟天は知らないだけである。

 

二乃「コラあんたら、孫が困ってるでしょうが。退いてあげなさい」

 

一花「心配なのは分かるけど、それで傷口広がっちゃったら元も子もないでしょー?」

 

三玖「むぅ…」

 

五月「……分かりました」

 

姉2人に言われた三玖と五月は少々不満そうな表情を浮かべながらも、言う通りに悟飯から退いた。

 

一花「しっかし驚いたよ。まさか勉強の虫の悟飯君があの弁当売りの少年だったなんてね〜」

 

四葉「そうですよ!ビックリしました…」

 

風太郎「俺も驚いた…。まさか俺のすぐ近くにこんな凄いやつがいたなんて……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

セル「ぐっ……!なに……!?」

 

超2ベジータ「おいおいどうした?さっきまでの威勢がまるで感じられんぞ?」

 

 

セルはベジータのビックバンアタックをモロに受けたことにより、下半身を失うほどの大ダメージを負った。

 

 

セル「まさか…。ベジータがこれほどとは思わなかった…。油断していた……」

 

超2ベジータ「ほざけ。どうせ再生できるんだろう?まだまだこの俺様を楽しませろ。俺はまだ満足しちゃいねえぜ?」

 

セル「ふふふっ…!はっ!!!」

 

 

グュオッ!!!!

 

 

セルはまたしても身体を再生した。

 

 

セル「流石はサイヤ人の王子だ…。戦闘民族のエリートという肩書きは伊達ではないということか……」

 

超2ベジータ「おいおい、さっきよりもパワーが落ちてやがるぜ?そんな様子で大丈夫か?」

 

セル「私も自分を磨くことに専念した方が良さそうだ…。上には上がいるということは以前『アイツ』と戦って思い知らされたからな…」

 

超2ベジータ「何を言っているのかよく分からんが、貴様を逃すと思うか?貴様はここで始末する。徹底的にな」

 

セル「そうか…。ならば、私もあれを使う必要が出てきたな……」

 

 

シュゥゥ…

 

超2ベジータ「………?」

 

 

なんと、先程までセルの周りを覆っていた稲妻を伴う金色のオーラは、ただの金色のオーラへと変化した。

 

超2ベジータ「何のつもりだ?まさか、降参するってんじゃねえだろうな?」

 

セル「降参か…。ある意味これを使う時点で貴様の方が強いことを認めているようなものかもしれんな」

 

 

セルはベジータに押されつつあるが、セルはまだ何か奥の手を隠しているのであろうか?

 




 ちなみにですが、セルが瞬間移動させた皆の中には陸上部の方々は含まれておりません。五つ子と風太郎と悟天のみです。

 前回の話を投稿しましたところ、pixivの方では『未来悟飯が登場する話がほしい』みたいな要望を結構いただきました。ただ今その話は検討中です。番外編で出すか、本編で出すか迷っているところです。

 そんな要望を聞いて思い付いた話がありまして…。未来悟飯が未来世界で五つ子と関わるスピンオフ的な話を思いついてしまったんですよね…。人造人間が暴れている世界で、未来悟飯と五つ子が出会うみたいな?そんな感じのお話を。その世界でセルが誕生して完全体になるまでの経緯を書くのもありな気がして来たんですよね…。

 まあとにかく今は検討中です。今回はこれにて失礼します。


 てか、最近五等分の花嫁要素薄くね…?

〜修正メモ〜
セルの台詞の一部を微修正しました。


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第29話 奥の手


 前回のあらすじ…。

 セルと戦った悟飯であったが、セルはパワーアップした後の強さを手に入れていた。そのため、一度は死にかけたが、師匠であるピッコロが仙豆を持ってきたことによって一命を取り留めた。

 そして、セルの元に駆けつけたベジータが悟飯を超える超サイヤ人2に変身し、セルを押しつつあったのだが、セルの発言から察するに、自爆以外で何か奥の手があるようだった……。



 

超2ベジータ「自爆する気か?させねえぜ?」

 

セル「お前まで自爆のことまで知っているとは驚きだ…。だが残念だな。外れだ。私のフルパワーは、謂わば超サイヤ人のようなもので、少々身体に負担がかかる。その状態であの技を使ってしまうと、自分の身体が持たないのでな…」

 

超2ベジータ「…何を言っていやがる」

 

ベジータは勘づいたのか、少々焦り始めた。

 

セル「ベジータよ。お前が初めて地球に来た時、何故孫悟空に負けたか分かるか?」

 

超2ベジータ「今更何を言っていやがる…?」

 

セル「分からないとでもいうのか?だったら答え合わせといこうじゃないか」

 

超2ベジータ「チッ…!ファイナルフラッシュッッ!!!!」

 

 

ズォォオオオオオオオオオオオオッッ!!!!!

 

 

セル「いきなり大技とは、相当焦っているみたいだな?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「界王拳ッ!!!」

 

 

ギャウウウウッ!!!!

 

 

なんと、セルは界王拳を使い始めた。セルは悟空の細胞も含まれている。いつ頃の悟空の細胞を採取したのかは不明だが、スパイロボットを介して界王拳の存在は知られていたので、セルが界王拳を使えても何もおかしいことはなかった。

 

 

セル「波ぁあああああッッ!!!」

 

 

バチッッッ!!!!

 

 

超2ベジータ「なにッ!」

 

 

セルは即座にかめはめ波を放ち、ベジータのファイナルフラッシュに対抗し始めた。

 

 

セル「お前は私にこの技を使わせた時点でお前の勝ちだ。だが私はまだ死ぬわけにはいかん。この世界の戦士が育ち、私もまた自分を磨いて、スリルのある戦闘をする…。その為に幾つもの世界を転々としてきたのだ」

 

超2ベジータ「な、なんだと…!?ということは貴様、7年前のセルとは別個体なのか!?」

 

セル「流石はサイヤ人の王子だ。呑み込みが早いッッ!!!」ボォオオオオオオッ‼︎

 

 

ドッッ!!!

 

 

超2ベジータ「ぐっ…!!!」

 

 

セルは更に気を高め、ファイナルフラッシュを押し返そうとする。

 

 

超2ベジータ「2度も貴様に、負けていられるかぁあああッッ!!!」ボォオオオオオオッ‼︎

 

 

ドンッッッ!!!

 

 

セル「ぬおっ!?やるなベジータ!!」

 

 

だが、ベジータもまた気を高めてセルのかめはめ波を押し返す。

 

 

セル「2倍界王拳ッッ!!!」ギャウウッ‼︎

 

 

ググググッ…!!

 

 

超2ベジータ「なに…!?お、押され…!!」

 

 

セルが界王拳を2倍にしたことにより、更に状況が悪化していく。

 

 

 

ピッコロ「まずいッ!!アイツ、界王拳も使えるのかッ!?」

 

悟飯「このままじゃまずいッ!!僕も加勢しないとッ!!」

 

 

しかし、悟飯の加勢の前にセルがダメ押しをしてきた。

 

 

セル「3倍界王拳ッッ!!!!」ギャウウッ‼︎

 

 

ズォォオオオオオオオオオオッッ!!!!

 

 

かめはめ波とファイナルフラッシュの拮抗状態が解かれ、とうとうセルのかめはめ波が本格的に前進し、ベジータを襲う。

 

 

超2ベジータ「ぐぁあああああああああああああああッッ!!!!!!」

 

 

トランクス「パパぁああああああッッ!!!!!」

 

ピッコロ「ま、まずい…!!このままでは爆風でここら一帯が吹き飛ぶぞッ!?」

 

 

「「「「「!?ッッ」」」」」

 

 

ピッコロのその言葉に、皆が絶句してしまう。

 

 

ピッコロ「悟飯ッ!!俺と共に気のバリアを張れッ!!」

 

悟飯「はいッ!!はぁああああッ!!!」ボォオオオオオオッ‼︎

 

 

悟飯は再び超サイヤ人2に覚醒した。それを確認したピッコロは、悟飯とタイミングを合わせて気のバリアを生成した。

 

 

セル「…!!(私の読み通り、一度死にかけたことによって大幅にパワーアップしたようだな…!)」

 

 

 

 

ドグォオオオオオオオオオオオオンン!!!!!!

 

風太郎「お前ら、伏せろッッ!!!」

 

一花「きゃッ!!」

二乃「し、死ぬ死ぬ死ぬッッ!?」

三玖「わわっ…!?助けて…!!」

四葉「わーッッ!!」

五月「そ、孫くんなら私を守ってくれますよね!?」

 

超2悟飯「こんな時に何で五月さんと三玖さんは抱きついてくるのッ!!??」

 

 

 

あまりの大爆発の後、悟飯とピッコロはバリアを解除した。なんとかこの場にいる全員を助けることはできたが、ベジータの安否が不明だ。

 

 

悟飯「ベジータさぁぁぁぁん!!!」

 

トランクス「パパぁああ!!!」

 

 

 

 

砂埃の中、悟飯達の前に姿を現したのは、ベジータを掴んでいたセルだった。

 

セル「安心するがいい。ベジータは殺してはいない」

 

悟飯「そんな言葉が信用できるものか…!!」

 

セル「……私は、初めて完全体になった世界では、地球に残っていた戦士を殺した後、地球を破壊して宇宙を旅した。そこでも様々な戦士と戦ってきたが、どいつもこいつもイマイチだった……」

 

何故かセルが突然語り出した。真意は分からないが、悟飯は取り敢えず聞くことにした。

 

セル「戦士を倒しては星を破壊…。これを繰り返してあることに気付いたのだ。自分が最強であることはつまらないことであるとな。

そして私は思いついたのだ。トランクスが使っていたタイムマシンを参考にし、並行世界に行けるマシンを開発して、私を楽しませてくれる戦士がいる世界でひたすら戦いだけをすることをな……」

 

悟飯「何が言いたいんだ…?」

 

セル「お前達を殺すようなこともないし、星を破壊することもしない。私を楽しませる為に強くなってくれればいい。私もまた強くなり、またお前達の前に姿を現す。その時にまた戦ってくれ……」

 

悟飯「待て!!そんな言葉が信用できるとでも思っているのかッ!?」

 

セル「……そうだ、一つ忠告しておこう。この世界がどういう歴史を辿るのかは未だに不明ではあるが、ある怪物が地球に眠っているだろう」

 

悟飯「怪物…?」

 

ピッコロ「セルが、怪物呼ばわりするやつだと……?」

 

セルが怪物呼ばわりするほどに強い者がいるということに、悟飯とピッコロは驚きを隠せなかった。

 

セル「そいつの名前は『魔人ブウ』。幾つもの世界を巡って、私が初めて敗北し、私を死にかけまで追い詰めた怪物の名前だ」

 

悟飯「な、なに…!?」

 

セル「そいつにだけは気をつけろ。私を含めた全戦士がそいつに挑んでも、勝てる見込みはない……」

 

バシューン!!!

 

セルは意味深な言葉を言い残し、空を飛んでどこかに去ってしまった。

 

悟飯「……一体、どういうことだ…?」

 

ピッコロ「魔人ブウだと…?聞いたことがないぞ……」

 

ベジータ「……チッ」

 

セルが去った直後にベジータも意識を取り戻したようだ。

 

ベジータ「くそ…!くそ…!!」バシューン‼︎

 

トランクス「あっ!待ってよパパ!!」バシューン‼︎

 

ベジータとトランクスは嵐のように去っていった……。

 

 

 

 

しばらくの沈黙の後に……。

 

 

 

 

悟飯「……………なんて様なんだ…!!!ベジータさんの言う通りだった…!!ちゃんと修行しておけばこんなことには…!!」

 

 

その沈黙を解いたのは悟飯であった。

 

 

悟天「兄ちゃん……」

 

悟飯「くそ…!これじゃ誰も守れないじゃないか…!くそ…!!くそ…!!!」

 

三玖「ま、待ってよ!悟飯はちゃんと私達を守れてる!だから自分を責める必要はないんだよ!」

 

悟飯「今回はたまたま結果的に守れたかもしれないよ…。でも、今度セルが君達を殺しに来たらどうなる?今度こそみんなは殺される…!地球も滅茶苦茶にされる…!!」

 

三玖「ま、待って…!」

 

ピッコロ「…悟飯。修行してこなかったことは別に責めることではない。7年前のお前は、学者になる為、世界の平和を取り戻す為戦っていたんだ。そんなお前が平和が戻った世界で修行をしないことは何の罪にもならん」

 

悟飯「で、でも…!!」

 

ピッコロ「それに、お前は守れなかったものしか見ていないだろう?」

 

悟飯「…!!」

 

ピッコロ「確かに、お前は悟空を守ることはできなかったかもしれない。だが、最近サイヤ人が襲来したあの日のことを思い出してみろ。俺はデンデ経由でお前が何をしていたのか知っている」

 

悟飯「………」

 

サイヤ人が襲来した日といえば、林間学校2日目のことだろう。その日に誰を守ったのか……?

 

五月「………そうです。確かにあなたは守りましたよ。私を…」

 

一花「えっ…?五月ちゃんを…?」

 

五月「ええ。私はあの日、二乃と逸れてしまった後、謎の男二人組にどこかに連れて行かれそうになりました。逃げようとしましたが、それも敵わず、誰かに助けを求めようとした時に、彼がやってきてくれました……」

 

悟飯「……そういえば…」

 

一花「……そっか。だから…」

 

五月「ですから孫くん。何も守れなかったなんて言わないで下さい。あなたが守れた人も、中にはいるんですよ?私のように……」

 

悟飯「………五月さん…」

 

二乃「…わ、私も…、崖から落ちかけた時にコイツに助けてもらったわ…」

 

悟飯「二乃さん……」

 

風太郎「てかお前ら、そんなヤバい目に遭ってたのかよ…」

 

 

ピッコロ「………いい友人を持ったな、悟飯……」

 

悟飯「………はい」

 

ピッコロ「……俺は天界に戻る。セルが何かしてないか監視する。何かあった

らテレパシーで連絡する」

 

悟飯「はい…」

 

そう言うと、ピッコロは天界に向けて出発した。

 

風太郎「………そんじゃ、とんでもないハプニングがあったが、一旦戻るとするか」

 

一花「そうしますかー…。なんだか眠くなってきたし…」

 

二乃「そうね…。なんかどっと疲れがきたわ…」

 

三玖「私も……」

 

四葉「私はまだ大丈夫だよ!」

 

五月「お腹が空いてきました…」

 

風太郎「よし、取り敢えず帰るか」

 

悟飯「……あれ?」

 

風太郎「どうした悟飯?さっさと帰るぞ?」

 

悟飯「いや、あの…。みんなは僕のことについて何も聞かないの?」

 

風太郎「……まあ、気にならないと言えば嘘になるが、お前が今までそのことを隠していた理由はなんとなく分かるしな」

 

悟飯「そ、そう…?」

 

一花「そうそう。私だってちょっと変装しないと、『女優の中野一花だ!』って騒がれて大変なことになっちゃうからね。女優でもそうなんだから、セルゲームに参加していた超人ともなれば、スケールは変わるよねぇ…」

 

風太郎「まあその例えは的確だが、お前はそんな売れっ子女優じゃないだろ?」

 

一花「もーっ!また意地悪言う!」

 

二乃「そうよ。今更アンタが強かろうがなんだろうが、アンタはアンタでしょ?」

 

三玖「うん。寧ろ頼りになる要素が増えた」

 

四葉「ですね!孫さんが近くにいれば取り敢えず安心します!」

 

五月「私も…。孫くんが居てくれるだけで幸せですから……」

 

悟飯「あ、あはは……」

 

五月は相変わらず恥じらわずにアタックをしてくる模様。

 

 

一花「えっ…?」

 

二乃「はっ?」

 

三玖「…!?ッ」

 

四葉「なっ!?」

 

風太郎「お、お前…!自分が何言ったか分かってんのかッ!?」

 

五月「ええ。分かってますよ?」

 

一花「わあ…。五月ちゃんやるね〜…!悟飯君の家にお泊まりしている間に何かあった?」

 

 

悟飯「……!」ギクッ

五月「……!」ギクッ

 

 

一花「もしかして、本当に何かあった感じ?」

 

三玖「待って一花。五月が悟飯の家にお泊まりってどういうこと?」

 

五月「み、三玖!これには深い訳が…!!」

 

一花「知らないの?五月ちゃんは財布を忘れちゃって、路頭に迷っている所に悟飯君にお持ち帰りされたんだよ?そこでその日の夜は2人で……」

 

三玖「……はっ?」

 

三玖が普段使わないような口調で驚きの声をあげ、五月を睨み始める。

 

風太郎「……お前、あんな大変な時に何やってんだ……?学生の交際は不純なんじゃなかったのかなぁ…?そういう部分ではお前とは気が合うと思ってたんだけどなぁ??」

 

五月「ち、違います!!特に何もありませんでしたッ!!」

 

四葉「……実際のところどうだったんです?」

 

四葉は悟飯に対して同じ内容の質問をする。

 

悟飯「いや〜…。ただ勉強してただけで特にこれといっては………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

悟天「そういえば、次の日の朝はお母さんが喜んでたよ?」

 

悟飯「えっ?どういうことだ?」

 

しばらく沈黙していた悟天がここに来て口を開いた。

 

悟天「なんかね…。『五月さがとうとう悟飯ちゃんを襲ってくれただ!!オラの計画通りだ!』って」

 

ここにきてとんでもない爆弾を投下。

 

三玖「…おそった?襲った?襲ったって何?ねえ五月?襲ったって何?ねえ?ねえッ!!」

 

五月「ちょちょちょっ!!怖いですよ三玖ッ!!」

 

下手すると先程のセルよりも怖いかもしれない勢いで五月に質問する三玖。

 

風太郎「五月……。お前には失望したぞ…」

 

五月「う、上杉君ッ!?」

 

一花「いや、そこよりも悟飯君のお母さんが五月ちゃんを悟飯君とくっ付けようとしてない?」

 

四葉「どういうこと?」

 

一花「だって、『オラの計画通りだッ!!』って言ってたんでしょ?悟天君?」

 

悟天「うん」

 

悟飯「………計画?何のことだ…?」

 

悟天「あっ、そういえばね、お母さんが『五月さのカレーだけは絶対に食べちゃダメだ。そのカレーは特別だから』って言ってた」

 

悟飯「……どういうことだ悟天?」

 

悟天「うーん…。話を聞いたけど僕にはよく分からなかった」

 

悟飯「…………その話は後でお母さんにゆっくり聞くことにしよう…」

 

一花「ところでさ五月ちゃん。悟飯君を襲ったみたいだけどさ、具体的には何をしたの?お姉さんに教えてほしいな〜?」

 

五月「な、何もしてませんッ!!」

 

三玖「嘘。今の五月は嘘をついてる」

 

 

 

四葉「……孫さん、五月に何されたんですか?」

 

悟飯「いや、何をされたって…」

 

悟飯はその日のことを思い出し……。

 

 

悟飯「………」ボンッ‼︎

 

顔から湯気が出そうなくらいに赤面をした。

 

四葉「…!?四葉チェックの結果、孫さんは間違いなく五月に何かされてます!!それもかなり際どいやつを!!」

 

一花「ほほう?大変けしからんですなぁ…。やっぱりエッチなことかな?」

 

五月「しし、してませんッ!!」

 

三玖「嘘。五月も顔真っ赤。何をしたの?正直に話してくれたら、今なら切腹で許してあげる」

 

五月「死んじゃいますから!?」

 

 

そのような話題になり、悟飯の正体については何も触れられなくなった頃…。

 

 

「あら?悟飯君達、こんなところで何してるの?」

 

悟飯「……あっ」

 

 

悟飯達の前に現れたのは………

 

 

「やっほー!久しぶりね、悟飯君!悟天君は……久しぶりってほどでもないか」

 

悟天「こんにちはー!」

 

悟飯「ぶ、ブルマさん!?なんでここに!?」

 

あのカプセルコーポレーションの社長であり、ベジータの妻でトランクスの母親であるブルマだった。

 

ブルマ「ベジータとトランクスを追っかけてきたんだけど…。ここに来なかった?」

 

悟飯「はい。さっき帰っちゃいましたけど……」

 

ブルマ「あらら…。すれ違いになっちゃったかしら……」

 

二乃「……ねえ、ちょっと待って?この人、どこかで見たことある気がすんのよね〜……」

 

一花「あっ、私も」

 

ブルマ「それはそうよ。だって私、カプセルコーポレーションの社長だもん」

 

二乃「……えっ?カプセルコーポレーションって……、CCのこと?あそこの社長ですってッ!?」

 

一花「CCって世界でトップレベルの規模を誇る大企業だよね…?」

 

三玖「悟飯、凄い人と知り合いなんだ…」

 

四葉「……?なんだか分からないけど、凄い人なんですね!」

 

風太郎「……なるほどな。そこに就職するのも悪くないかもしれない…」

 

五月「上杉くん………」

 

 

ブルマ「ところで、悟飯君はこんなところで何してるのよ?」

 

悟飯「…実は、さっきまでセルと戦っていたもので……」

 

ブルマ「せ、セルですって!?あいつ死んだんじゃなかったのッ!?」

 

悟飯「それが…。並行世界から来たまた別の個体だったようで……」

 

ブルマ「だからベジータが何も言わずに飛び立ったわけね………」

 

 

風太郎「……あっ!!」

 

四葉「どうしました、上杉さん?」

 

風太郎「……ここ、どこなんだ…?」

 

 

「「「「「えっ…?」」」」」

 

 

風太郎が突然そんなことを言い出した。

 

 

ブルマ「ここ?ここは西の都から一番近い荒野よ?それがどうかしたの?」

 

風太郎「西の都だって……?」

 

一花「へーっ…。えっ?ということは…。海を渡ったってこと……?」

 

二乃「……私達、どうやって帰るのよ…?」

 

なんと、舞空術を使えない風太郎達は自分達の家に帰れないことが発覚した。

 

ブルマ「あら、だったら私の飛行機に乗ってく?これから仕事があるから、一旦私の家で待機してもらうことになっちゃうけど……」

 

悟飯「す、すみません…。そうさせてください……」

 

悟天「ねえブルマさん。このままトランクス君と遊んでもいいかな?」

 

ブルマ「いいわよ」

 

悟天「わーい!」

 

こうして、悟飯達は一旦ブルマ達の家に向かうことになった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

風太郎「スゲェ……。こんな形でよく飛べるな、この飛行機……」

 

ブルマ「これくらいで驚いてちゃこの先身が持たないわよ?この飛行機だってカプセルにしてしまうことができるし」

 

風太郎「ど、どういうことだ…?もし仮に小さくできたとしても、質量保存の法則があるから重さは……」

 

ブルマ「大丈夫よ。一般人でも問題なく持ち運べるわよ」

 

風太郎「おかしいッ!?物理法則を無視してやがるッ!?」

 

一花「まあまあフータロー君。今はそんな難しいことは考えないで楽しもうよ……」

 

ブルマ「そういえば聞き忘れていたけど、君達は悟飯君のお友達ってことでいいのかしら…?」

 

風太郎「えっ?はい。上杉風太郎です。悟飯にはよく世話になってます」

 

一花「はい。私は中野一花です。ここにいるフータロー君と悟飯君に家庭教師をやってもらってます」

 

ブルマ「えっ…!?同級生…で合ってるわよね?悟飯君は分かるけど、上杉君も家庭教師やってるの…?凄いわね…」

 

風太郎「一応学年1位ですので…」

 

ブルマ「うわっ!すっご!私なんて学生時代サボりまくってたから流石にトップは取ってなかったかなぁ…。トップ10には入ってたけど」

 

風太郎「サボりまくってトップ10だと…!?」

 

二乃「私は中野二乃です。まあコイツらに教えてもらってます」

 

三玖「中野三玖です」

 

四葉「私は中野四葉です!よろしくお願いします!」

 

五月「中野五月です。どうぞよろしくお願いします」

 

ブルマ「………ん?全員同じ苗字だけど、姉妹か何かなの?」

 

五月「私達、五つ子ですので……」

 

ブルマ「……………えっ?五つ子…?すっっごッ!?初めて見た…。でも確かに顔がそっくりだわ…。へぇ…!凄いわね」

 

ブルマでも五つ子の存在には驚く模様。

 

ちなみに、悟飯と悟天を除く6人は、ブルマの名前に対してツッコミたいところがあるが、自重している模様。

 

ブルマ「いや〜…!こんな美少女に囲まれるなんて、悟飯君達結構モテるタイプ?」

 

悟飯「いや、そんなことは……」

 

ブルマ「そういえば、前にチチさんが言ってたけど、なんか最近悟飯君にお嫁さん候補ができたらしいのよね」

 

 

三玖「!?ッ」

五月「!?ッ」

 

 

悟飯「え、ええ!?僕にッ!?」

 

ブルマ「なんでも、カレーに薬を入れて会話で悟飯君のことを意識させまくったら見事にアクション起こしてくれたとか……。あっ、やばっ…。つい口が滑っちゃった……。今のは聞かなかったことにしてくれる…?」

 

三玖「………五月…?」

 

五月「ヒッ…!!」

 

今の三玖の顔は余程怖いものだったらしく、五月が怯えるような声を上げた。

 

悟飯「………………お母さん……」

 

悟飯は心底呆れるように溜息を吐いてしまう。

これにて、あの日に何故五月が暴走したのか、その原因を突き止めることができた悟飯であった。

 

三玖「それで、その人に悟飯は何されたか聞いてますか?」

 

ブルマ「えーっと…。なんだったかしら…?そこまでは聞いてないわ…」

 

三玖「そ、そうですか……」

 

結局ブルマの飛行機の中では、五月が悟飯に何をしたのか論争で五つ子裁判が開廷された。しかし、2人とも口を滑らせることはなかったので、何をされたのかは分からずじまいであった。

 

ちなみに、何をされたのかはブルマからもしつこく聞かれたのは言うまでもない…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ブルマ「はい、ここが私の家よ!ゆっくりして行って頂戴!」

 

西の都に着いた。そこでは今日も当たり前のように車が宙を浮き、ただの人ではなく、動物のようにも見える人も普通に二足歩行で歩いている光景が広がる。

 

マヤリト王国に住んでいる悟飯達にとっては当たり前の光景なのだが…。

 

四葉「ど、動物が歩いてるッ!?」

 

一花「噂で聞いたことはあるけど、スッゴイ国だなぁ……」

 

風太郎「ほ、本当に同じ時代なのか…?いつの間にか未来に来ちまったりしてないよな…?」

 

こんな感じで、日本に住んでいる風太郎達は新しい世界を見るように興味深々である。

 

風太郎「み、見ろッ!?家が半球型だぞッ!?まるでかまくらみたいだなッ!?」

 

五月「……そんなに凄いんですか?」

 

三玖「……流石五月。一度悟飯の家に泊まっているから見慣れてるんだね…」

 

五月「ひぃぃ…!!そ、孫く〜ん!!」

 

悟飯「い、五月さん…!?」

 

五月は三玖を怖がって悟飯に抱きつく始末。

 

三玖「五月だけズルい。私も…!」

 

悟飯「三玖さんまで!?」

 

ブルマ「あはは!本当にモテモテじゃないの!中途半端にしてると、いつか背中刺されちゃうわよ?悟飯君?っとそうだった……。もう仕事しなきゃだから、また後でね!」

 

そう言ってブルマはオフィスに向かって行った。

 

二乃「にしても凄いわね〜…!流石大都会だわ!せっかくだし色々見て回りたいわね…!!ここにはどんな服が売ってるのかしら?」

 

五月「な、何か目新しい食べ物とかあるんでしょうか…?」

 

悟天「食べたいならここにもレストランがあるよ?僕か兄ちゃんが頼めば、多分無料で食べれるよ?」

 

五月「ほ、本当ですかッ!?なら今すぐ行きましょう!!朝ご飯食べてないのでお腹が空きましたッ!!」

 

一花「まあまあ五月ちゃん。食べ物は逃げないから…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

風太郎「何言ってんだお前ら。今から期末試験に備えて勉強するに決まってるだろ?」

 

 

「「「「「あっ……」」」」」

 

悟飯「あっ…」

 

風太郎「悟飯…?お前まで何忘れてくれちゃってるの!?」

 

悟飯「いや、さっきまでセルと戦ってたから……」

 

風太郎「…………すまん」

 

悟飯「えっ…?えっ?」

 

一花「そうだぞー。今日は命懸けで戦ってくれたんだから、悟飯君を労らないと…」

 

二乃「でも、勉強道具なんて持ってきてないわよ?」

 

風太郎「……そういえばそうだったぁ…」

 

悟飯「あっ、じゃあ僕が取ってきてあげようか?僕なら多分10分もすれば戻って来れるよ?」

 

風太郎「おっ!助かるぜ!」

 

「「「「「えぇ……」」」」」

 

 

結局カードキーを悟飯に貸し出す形で悟飯が五つ子の勉強道具を取ってくることになった…。

 

ちなみに、風太郎のは今回に限っては悟飯のを貸し出すという形で落ち着いている。

 

 

 

 

少しすると悟飯も戻ってきて朝食を取り始めた。CCのレストランの人は、トランクスやベジータという存在を知っているからだろうか、悟飯と悟天の食いっぷりに動じることは特になかった。

 

風太郎「わーっ!!これ全部無料でいいのかッ!?タッパーに入れて持ち帰りたいッ!!」

 

五月「デジャヴですかこれ…?」

 

風太郎がいつもよりもかなりうるさかった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

トランクス「勉強に集中できる場所?それなら丁度いい空き部屋があるからそこ使えば?」

 

ということで、机とフッカフカな椅子が用意されている部屋で勉強することになった。

 

しかし、勉強が始まる前に…。

 

四葉「この度はご迷惑をお掛けしました…。全ては私の不徳の致すところでして…」

 

風太郎「何やってんだ四葉?早く勉強始めるぞ?」

 

四葉「で、でも!」

 

一花「もう!いつまでそんなこと気にしてるの?」

 

風太郎「そうだ。そんなに申し訳ないと思うなら、試験の結果でお詫びをしてくれ」

 

四葉「………はい…!」

 

こうして、久しぶりに7人で勉強をすることができるのであった……。

 

ちなみに、四葉の部活の件だが、テスト期間中は不参加、テスト後に駅伝までは助っ人をするということで話は纏まったようだ。

 

 

 

一花「取り敢えず問題集は全員終わらせてるみたいだけど、私達ってちゃんとレベルアップしているのかな…?」

 

風太郎「元が村人レベルだからな…。今はようやくザコを倒せるようになったくらいか……」

 

五月「それで期末試験を倒せるのでしょうか…?」

 

風太郎「……幸いなことに、この前の宇宙人騒動があっただろ?あれのお陰で試験が数日延長された…。この機会にやり込むしかない……」

 

宇宙人騒動とは、世界中にサイヤ人達が来襲し、バーダックと悟飯が戦ったあの日のことである。

 

幸いなことに、Z戦士の暗躍によって、大した被害は出ずに済んだが…。

 

 

風太郎「それに、秘策がある」

 

三玖「秘策…?」

 

風太郎「ああ、カンニングペーパーだ!」

 

風太郎はそう言うと、ポケットから綺麗に丸められた紙を取り出した。

 

悟飯「か、カンニングって、上杉くん!?」

 

五月「あ、あなたはそんなことはしないって思ってたのに……」

 

四葉「そんなことして点数取っても意味ないですよぉ」

 

風太郎「だったらもっと勉強するんだなッ!!こんなもの使わなくてもいいようにこの土日は徹底的に叩き込むからなッ!!覚悟しろッ!!」

 

風太郎のその言葉を合図に、五人は椅子に座って筆記用具を取り出し、勉強を始める準備をすぐに整えた。

 

思い返せば、最初は衝突が多かった。というより、勉強に参加してくれたのは五月と四葉くらいであった。

 

だが今はどうだろう?1番手強かった二乃も、今では笑顔で勉強会に参加している。

 

 

 

『全部間違えてました!』

 

『頭いいって言ってたけど、こんなもんなんだ』

 

『なんでお節介焼いてくれるの?』

 

『あなたからは絶対に教わりませんッ!!』

 

『あんたなんて来なければ良かったのにッ!!』

 

 

 

風太郎は過去にそんな言葉を投げかけられたなぁ…。と、今の光景と見比べながら、感情に浸っていた。

 

悟飯「……良かったね、上杉くん…」

 

風太郎「他人事みたいに言いやがって…」

 

 

 

しかし、その日の授業中、悟飯だけはただ一人笑顔ではなかった……。一体、どうしたというのだ…?

 





 セルの界王拳について。

 原作でセルが界王拳を使わなかった考察的なのもの?をまず載せます。セルの思想的に、界王拳を使うと自身が最強だという証明ができなくなります。(無理矢理戦闘力を上げる技だから)

 しかし、このセルは原作のセルとは少々違います。このセルは1度圧倒的な敗北を経験しています。その為、界王拳を使うことに少し抵抗がなくなったという感じです。
 まあセルの界王拳はどちらかというとスーパー界王拳って言った方がいいのかもしれない…?

 ゲロが悟空達のデータはナメック星に行く以前のデータまでなら採取しているとのことで、界王拳を使うことも可能だろうと勝手に推測して今回はセルが界王拳を使用しましたが、セルが界王拳を使うことは滅多にないです。本当に奥の手のようなものです。悟空とベジータで言うなら、フュージョンやポタラ合体みたいな感じ。

 まあメタな話をすると、鳥山大先生が界王拳の存在を忘れてた可能性が…((殴

 そういえば、風太郎たちが西の都にくる話を書いてほしい的なこと言われてた気がしますが、恐らく今回限りではないと思います。今回は期末テスト直前だから観光してる余裕はないのです()


 あと、DBのあの国名はよく分かりませんが、どこかの二次創作でマヤリト大陸だとかそんな名前を目にしたので、マヤリト王国という名前にしてます。もしかしたら国名とかあるのかな?ググっても出てこなかったので、もし誰か知ってる人がいたら教えてクレメンス。

 なんか手抜きって言われそうだけど許してください…。(特にピッコロに対する反応とか、セル戦の決着とか…)


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第30話 家庭教師を辞職…?

 前回のあらすじ…。

 ベジータが超サイヤ人2となってセルを相手に優位に立っていたが、なんとセルは界王拳を使用。流石のベジータもそれには敵わなかった。

 ところが、セルは誰も殺すようなことをせず、自分が敗北した相手の名前を悟飯に教える。名前は『魔人ブウ』。セルを含めた全ての戦士と協力をしても倒せないと断言した。

 そのままセルは宇宙に旅立ち、悟飯は自身の無力さを嘆いていたものの、ピッコロ達の励ましによってなんとか立ち直った。その後はベジータ達とすれ違いになったブルマに会い、風太郎達を日本まで送ってもらった……。

 ようやく元の日常が戻ったというにも関わらず、悟飯は難しい顔をしていた…。一体何を考えているのか…?



チチ「えーッ!?もう帰っちゃうだか!?」

 

五月「お世話になりました…」

 

悟天「兄ちゃん。今日はどうするの?」

 

悟飯「もしかしたら今日も泊まり込みになるかも……」

 

チチ「……まあ、仲直りができたようで良かっただ!またいつでもウチに来るといいだぞ!オラは歓迎するだ!」

 

悟飯「……お母さん、もうやっちゃったことは仕方ないけど、人の食べ物に変なもの入れないでね………?」

 

チチ「な、なんでバレただッ!?」

 

 

 

五月はCCで一通り勉強した後、自身の荷物(殆どないけど)と別れの挨拶をしに孫家に一度立ち寄り、五月達の家であるPentagonに戻るのであった…。

 

 

 

一花「おっ?きたきた」

 

二乃「遅いわよ」

 

五月「お待たせしました〜…」

 

しっかり姉妹五人が揃ったところで、二乃と五月にとっては久しぶりとなる帰宅をする。

 

一花「お帰り、二人とも」

 

「「……ただいま…」」

 

二乃「早く入りなさい」

 

五月「お先にどうぞ…」

 

二乃「じゃあ同時ね。せーの!」

 

 

・・・・・・

 

 

二乃「なんで動かないのよ!?」

 

五月「二乃だって!」

 

三玖「久々に賑やか」

 

一花「うん!よし、このまま」

 

風太郎「試験勉強だな…」

 

一花「ふ、フータロー君…?さっきまで散々やったんじゃ…」

 

風太郎「何を言ってやがる!残りの数日で徹底的に叩き込むって言っただろう!!」

 

その日も、次の日も泊まり込みの勉強会が開催された……。

 

 

 

 

しかし…………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

悟飯「……」

 

良かった。みんな無事だ…。いつも通りの日常が戻ってきた……。

 

セルに負けた時はどうなるかと思っていたけど、あのセルは僕たちを殺す気はないそうだ。……今のところはだが…。

 

ピッコロさんに話を聞く限りでは、今セルは地球にはいないらしい。恐らく宇宙の戦士と戦いに行ってるのだろう。

 

………しかし、考えて分かったことがある。まず、この前サイヤ人が来たのは()()()()だということだ。サイヤ人達は僕を目当てに地球に来たような発言をしていた。つまり、みんなを危険に晒したのは、他でもない僕だった。

 

もう一つは、セルとの戦いの時。セルジュニアを生み出したのは僕の居場所を突き止める為だったらしい。そして近くにいた上杉君達を自分達が戦う場所に連れてきた。恐らく、僕と親しい関係にあると判断したからだろう。

 

つまりみんなが危険に晒されたのは、()()()()なのだ…。みんなを守りたいのなら、僕はみんなの近くにいるべきではない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だから、この期末試験を機に、家庭教師を辞めよう。そして、みんなとは極力関わらないようにしよう…。そうすることで、みんなの命が危険に晒される可能性が低くなるのなら、それがいいんだ………。

 

……場合によっては、()()を視野に入れるべきかもしれない…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、試験当日になった。今度は遅刻するということはなく、しっかり余裕を持って登校することができた。

 

 

試験は無事に終了し、みんなが帰宅している時のこと…………。

 

 

 

 

一花「いや〜…。疲れたぁ……」

 

二乃「ホント…」

 

三玖「でも、前よりも解けた割合が高い気がする」

 

四葉「うん!前よりも確実にレベルアップしたと思う!」

 

五月「とにかく、今は試験の結果を待つばかりですね……」

 

悟飯「………みんな。ちょっと話があるんだけど……」

 

「「「「「……??」」」」」

 

本当は上杉君にも話をしたかった。だけど、上杉君は今日はどうしても外せない用事があるらしかった。だから、不本意だが上杉君抜きで話をすることにしよう……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

悟飯「…………僕は、期末試験を持って家庭教師をやめようと思う」

 

 

 

 

一花「!?」

 

五月「な、なんでですかッ!?!?」

 

三玖「そ、そんな…!?どうして!?」

 

二乃「……まさか赤点の条件が生きてたんじゃないでしょうね?」

 

悟飯「いや、それはないから大丈夫。それとは関係ないんだ……」

 

四葉「だったら何故………」

 

悟飯「………僕はみんなを守りたい…。僕が近くにいることで、みんなは危険な目に遭う可能性が高くなるんだ。だから……」

 

三玖「悟飯…。あの時私に言ってくれたよね?『責任を持って最後まで面倒を見る』って…。あの言葉は嘘だったの…?」

 

悟飯「…………できれば嘘にしたくなかったよ…。でも、みんなは成績と命…。どっちが大事?」

 

三玖「そ、それは………」

 

悟飯「そういうこと…。だからみんなを守るために僕は家庭教師をやめる…。でもいきなり辞めるのも迷惑をかけるだろうから、こうしてみんなに聞いてもらいたかった。本当は上杉君にも話したかったんだけど……。みんなはこれからは上杉君と一緒に頑張って…。上杉君とみんなでなら……きっと卒業まで無事に辿り着けるよ……」

 

一花「……ちょっと待って。悟飯君の話だと、家庭教師をやめただけだと意味がないと思うよ?わざわざ家庭教師をやめる必要もないんじゃない?」

 

悟飯「……そうだね。だから、転校することも考えてる」

 

五月「そ、そんな…。孫君……!!」

 

三玖「いやだよ…!私は悟飯なしじゃ、もう生きていけないよッ…!!悟飯がいなくなることなんて、命がなくなるのと同じようなものなの…!!」

 

一花「三玖……」

 

五月「わ、私も…!!私の告白に返事もせずにいなくなるつもりですか!?」

 

「「「「えっ……?」」」」

 

ここに来て、五月が既に悟飯に対して想いを告げていることが発覚したが、状況が状況であるため、そのことを話題にすることはできなかった……。

 

悟飯「……….五月さん…。ごめんね…。でも僕なんかと一緒にいたら、君はきっとこれから沢山危険な目に遭う。だから、これからは安全に、幸せに暮らしてね……?」

 

五月「そ、そんな…………!!」

 

五月は悟飯の決意が硬いことを理解すると、膝から崩れ落ちていった。

 

二乃「…………はぁ…。下らないわ」

 

悟飯「に、二乃さん…!!僕は真剣に…!!」

 

二乃「真面目に考えてんだとしたら、尚更下らないわ。それに乙女の人生初の告白をそんな下らない理由で棒に振らないでちょうだい」

 

二乃はそう吐き捨て、携帯電話を取り出して誰かと連絡を取り始めた。

 

 

二乃「もしもしパパ?二乃だけど?」

 

『……二乃君かい…。どうしたんだい?そろそろ忙しくなるから手短に頼むよ?』

 

二乃「……孫の雇用形態のことについてなんだけど……」

 

「「「「……!!」」」」

 

悟飯「二乃さん……」

 

(なんだ……。二乃さんはあんなことを言っていたけど、僕の考えを理解してくれているんだ……)

 

五月「ま、待って下さい二乃!!考え直して下さい!!」

 

三玖「そ、そうだよ!!もしここで悟飯を辞めさせたら、私は…!私は…!!」

 

二乃「いいから黙ってなさい。これはあんたらの為にやってんだから」

 

(流石は二乃さん…。姉妹想いなだけあって、みんなの命を最優先させてくれる……)

 

一花「二乃……」

 

四葉「に、二乃…!本当に、孫さんを辞めさせるの…?」

 

二乃「いいから黙ってなさい」

 

『……ほう?それはどういうことかな?』

 

二乃「パパは孫のこと知ってるでしょ?あいつはセルゲームに参加していて、尚且つセルを倒した超人よ」

 

『……それは理解しているが、それがどうかしたのかい?』

 

二乃「…最近、何かと物騒なことがよく起こるでしょ?だから、せっかく身近にいる逸材を野放しにするのはどうかと思うのよ」

 

『……と言うと?』

 

二乃「孫を私達のボディーガードとして雇ってくれない?」

 

「「「「!!??」」」」

 

二乃の意外な提案に、悟飯を含む五人は心底驚いたような表情を浮かべる。

 

『……なるほど。しかしそれだと、家庭教師の方はどうするんだい?』

 

二乃「何言ってんのよ。これまで通り家庭教師の仕事をすればいいじゃないの。そしてその間に私達を護衛すること…。これでどう?」

 

『………一応僕も考えていた。しかし、孫君の方が……』

 

二乃「大丈夫よ。本人の許可は取ったわよ」

 

『……なるほど。前向きに検討してみるよ…』

 

二乃「ありがと、パパ……」

 

ここで二乃の通話は終了した…。

 

 

悟飯「に、二乃さん!!」

 

二乃「あのねあんた。セルみたいな敵から私達を遠ざけるって言うけどね、あんな化け物が出てきたら地球のどこにいても同じなのよ?」

 

悟飯「で、でも!!僕の近くにいれば戦いに巻き込まれる可能性があるんだよ!?」

 

二乃「それはどこに行っても一緒じゃないの。だからあんたが私達の近くにいて私達を守りなさい。地球のどこに行っても同じようなもんなら、近くに超人的な身体能力を持ったボディガードを付けた方が安心するわ」

 

悟飯「に、二乃さん………」

 

三玖「二乃…。悟飯を辞めさせるんじゃ…?」

 

二乃「だから言ったでしょ?『あんたらの為』だって」

 

五月「に、二乃ぉ…!」

 

二乃「言っとくけど、あんたは逃げてるだけよ。あんたのお父さんがセルに殺されたそうじゃない?それで怖がってるんでしょ?これ以上自分の目の前で誰かが死ぬのが」

 

悟飯「………」

 

 

悟飯にとってはほぼ図星だった。悟飯にとって既に風太郎や五月達6人は大切な存在だ。だからこそ、戦いに巻き込みたくなかったし、死ぬ姿も見たくない。

 

 

二乃「そんなに私達が死ぬのが怖いなら、あんたの力で守りなさいよ。男なんだからシャキッとしなさい!!」

 

悟飯「二乃さん……………」

 

二乃「それと、さっきの五月の返事は取り消しなさい。アレは無しよ。普通なら幻滅されてもおかしくないから」

 

悟飯「………ごめん」

 

二乃「謝るのは私じゃないでしょ」

 

そう言われると、悟飯は五月に向き直し…。

 

悟飯「五月さん…。ごめん……」

 

五月「………そ、孫くん…!!」

 

ドサッ!!

 

悟飯「うわっ!?」

 

五月は悟飯に飛びつく。

 

五月「私の前からいなくなるのかと思ってしまいました…!!でも、いなくならなくて良かったよぉ…!!」

 

五月は泣きながらそう叫び、悟飯に密着する。

 

悟飯「………僕が近くにいてもいいの?僕はみんなを絶対に守れる保証なんてないんだよ…?」

 

 

一花「でも、実績があるんでしょ?確か、二乃が崖から落ちそうになった時に助けて……」

 

四葉「五月が変な男二人組に連れて行かれそうになったのを阻止して!」

 

三玖「ハゲのおじさんが口から出したビームを悟飯が跳ね返してくれて…」

 

二乃「さっきの大爆発の時は、私達をバリアで守ってくれたじゃない」

 

 

悟飯「み、みんな………」

 

五月「ぐすん…。ですから、私の前からいなくならないで下さい…!」

 

悟飯「……分かった…。そこまで言われちゃうと、残るしかないみたいだね…。上杉君の言っていたことがよく分かったよ。みんなは馬鹿だよ。大馬鹿だよ…」

 

四葉「むっ…!孫さん酷いです!!せっかく孫さんを励ましたのに!!」

 

悟飯「あはは…」

 

悟飯はようやく笑顔になり、少々泣きそうになりながらも、涙を堪えてみんなの前で笑顔になった。

 

しかし、涙を堪えることはできず、一滴だけ涙を流した。そのことにみんな気付いたのだが、敢えて誰も触れるようなことはしなかった……。

 

この日、悟飯は本格的に修行を再開しようと心に誓うのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日の夜……。

 

『そういえば悟飯。さっき俺に話したいことがあるって聞いたんだが、どうしたんだ?』

 

悟飯「……実は僕、家庭教師の仕事をやめようと思ってたんだ……」

 

『はっ!!?』

 

悟飯「最初はみんなを守るために、僕が離れればみんなが危険に晒されなくなるって思ってた。でもそれは僕が逃げているだけだったんだ。だから、結局はやめないことにしたよ……」

 

『な、なんだ…。ビックリしたぜ……。お前も家庭教師を辞めちまったのかと思って焦ったぜ……』

 

悟飯「あはは…。ごめんごめん………。って、えっ?今、なんて言った?」

 

『……すまん。俺は家庭教師をやめた』

 

悟飯「………………えっ?」

 

 

 

「えぇえええええええええッッッ!?!?!!?」

 

 

 

悟飯「な、なんでッ!?どうしてッ!?」

 

『家庭教師ってのは、ただ教えられるだけじゃダメだったんだ。お前みたいに、あいつらの気持ちを考えてやれる奴がやるべきだったんだ。俺にはそれができなかった……』

 

悟飯「う、上杉君だって!!みんなのことをちゃんと考えてあげてるよ!!だからそんなこと言わないで…!!」

 

『お前がいればあいつらを無事卒業に導けるはずだ…。適材適所ってやつだよ。頑張ってくれ…』

 

悟飯「う、上杉君ッ!!僕は上杉君もいてくれたから今まで上手くやってこれただけで…!!」

 

『そういうことだから、よろしく頼むぜ。あと、あの甘さは捨ててくれよ!もう俺はいないんだからな』

 

悟飯「ま、待って…」

 

ブツッ

 

悟飯「…………ど、どうしよう……」

 

悟飯が家庭教師をやめそうになったが、二乃を始めとする生徒達五人の説得によってなんとかそれは阻止することはできた。

 

しかし悟飯達の知らないところでもう一人の家庭教師が辞めてしまった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

中野一花

 

国語:29

数学:56

理科:47

社会:32

英語:43

 

合計:207

 

 

中野二乃

 

国語:27

数学:32

理科:42

社会:34

英語:51

 

合計:186

 

 

中野三玖

 

国語:40

数学:47

理科:44

社会:76

英語:25

 

合計:232

 

 

中野四葉

 

国語:41

数学:24

理科:30

社会:34

英語:31

 

合計:160

 

 

中野五月

 

国語:47

数学:33

理科:73

社会:29

英語:41

 

合計:223

 

 

 

 

五月「あんなに勉強してこれは酷い…!?」

 

一花「あちゃー…。あんなに勉強したのに赤点取っちゃった…」

 

三玖「改めて私達って馬鹿なんだね」

 

四葉「元気出して、二乃」

 

二乃「あんたは自分の心配を……。ってあら?あんた赤点数学だけじゃないの?」

 

一花「えっ?ホントに?」

 

四葉「えへへ……(これも孫さんが私の為に頑張ってくれたお陰……。この調子なら、風太郎君に………)」

 

一花「まあ今日は丁度家庭教師の日だし、期末試験の反省がメインだろうね」

 

 

ピンポーン!

 

 

一花「おっ?噂をすれば……」

 

三玖「悟飯はともかく、フータローにしこたま怒られそう」

 

四葉「だねー!」

 

二乃「なんで嬉しそうなのよ?」

 

四葉「あはは…。結果は残念だけど、またみんなと一緒に頑張れるのが楽しみなんだ…」

 

三玖「……悟飯が辞めるって言い出した時はビックリした……」

 

二乃「ホントホント……。まあ、理由があいつらしかったけどね」

 

一花「でも、まさか五月ちゃんが告白してるとは思わなかったな〜?三玖、これは大ピンチじゃない?」

 

三玖「……まだ大丈夫…!悟飯は返事をしていない…!」

 

二乃「モタモタしてると取られるわよ?」

 

四葉「……孫さんモテモテだなぁ…」

 

 

 

悟飯「こ、こんにちは〜…」

 

三玖「悟飯…!」

 

二乃「ちゃんと来たのね」

 

悟飯「あはは…。ボディーガードとしても働いてくれないかってマルオさんに提案された時は驚いたよ…。まさか本当にやるなんて……」

 

二乃「そういうことだから、よろしく頼むわよ」

 

五月「あれ?上杉君は…?」

 

 

風太郎の代わりに、マルオの秘書である江端が来ていた。

 

 

江端「失礼いたします」

 

一花「あれ?江端さん?」

 

三玖「今日はお父さんの運転手は休み?」

 

四葉「小さい頃から江端さんにはお世話になってるけど、家に来るのは初だよね?」

 

江端「ホホホ!なにをおっしゃる…。私から見たらまだまだ皆さんは小さなお子様ですよ」

 

一花「フータロー君遅いね…」

 

五月「江端さんはどうしていらっしゃったんですか?」

 

江端「…本日は上杉風太郎様の代わりの臨時家庭教師として参りました」

 

三玖「そ、そうなんだ…」

 

一花「江端さんは元々学校の先生だもんね」

 

四葉「体調崩したのかな…?」

 

二乃「あいつサボりか。まさかとは思うけど、あいつも家庭教師を辞めるつもりじゃないでしょうね?」

 

一花「ま、まさか…!悟飯君じゃあるまいし……」

 

悟飯「…………」

 

一花「ご、悟飯君…?ここは笑うところだよ?」

 

しかし、悟飯は一向に笑う気配がない。

 

四葉「えっ…?まさか、本当にやめたってことはないですよね…?」

 

江端「お嬢様方にはお伝えせねばなりません。上杉風太郎様は家庭教師をお辞めになりました」

 

五月「えっ…?」

 

「「「「…!?」」」」

 

江端「そこで、新しい家庭教師が見つかるか、孫様一人でもお嬢様方の成績に支障が出ないと判断するまで、私が上杉風太郎様の代わりを務めさせていただきます」

 

三玖「……何かの間違いだよね…?」

 

一花「もう!ずれた冗談やめてよ〜」

 

悟飯「……冗談じゃないんだよ…」

 

一花「…………えっ…?」

 

江端「旦那様から連絡がありまして、上杉様は先日の期末試験で契約を解除なされました」

 

四葉「えっ…?つまり……?」

 

 

一花「フータロー君、もう来ないの…?」

 

 

悟飯「………」

 

 

悟飯は無言で頷き、江端は沈黙したままであった。それは一花の質問を肯定するのと同義だった。

 

 

三玖「嘘………?」

 

二乃「……赤点の条件が生きてるなら孫も辞めさせられてるはず…。じゃあなんで……?」

 

悟飯「…上杉君は、自分からやめたそうなんだ……」

 

四葉「自分からって……」

 

三玖「フータロー…。どうして……?」

 

五月「……そんなの納得行きません!彼を呼んで話を直接聞きます!」

 

江端「申し訳ありませんが、それは叶いません…。上杉様のこの家への侵入を一切禁ずる。旦那様よりそう承っております」

 

五月「何故そこまで……」

 

三玖「……分かった。私が行く」

 

三玖が風太郎に訳を聞く為に外に出ようとするが、江端に止められた。

 

三玖「……江端さん、通して」

 

江端「なりません。臨時とはいえ、家庭教師の任を受けております。最低限の教育を受けていただかなければここを通すわけにはいきません」

 

三玖「ぐぐっ…!江端さんの頭でっかち!」

 

江端「ホホホ!なんとでも言いなされ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

五人は上杉君に直接会う為に、江端さんが用意した問題集を解く。

 

二乃「これが終わったら行ってもいいのよね?」

 

江端「ええ。ご自由になさってください」

 

二乃「全くどういうつもりよあいつ…」

 

 

 

悟飯「……江端さん。上杉君が自分から辞職したのはいいとして、どうしてマルオさんは上杉君を出禁にしているんですか…?」

 

江端「申し訳ありませんが、私は存じ上げません…」

 

悟飯「そ、そうですか……」

 

 

しばらく待機していると、五人は何やら思い立ったように同時に立ち上がり、江端さんにある提案をした。

 

江端「おや?どうなされました?」

 

三玖「江端さんもお願い。協力して」

 

みんなが江端さんに提案したのはこうだ。これから上杉君も含めて7人で勉強をするために新しい家に引っ越すというもの。一花さんが女優として働いているから、家賃は問題ないとか?

 

しかし、未成年である為にアパートを借りることもできない。そこで江端さんに協力をしてもらおうという寸法だそうだ。

 

って、いやいやッ!?

 

悟飯「そ、それ本気で言ってるのッ!?」

 

一花「うん。私達は本気だよ?」

 

江端「………大きくなられましたな」

 

悟飯「えっ…?い、いいんですか……?そんなことしちゃって……」

 

江端「ホホホ!人生には刺激も必要ですよ」

 

……どうやら江端さんも賛成のようだし、僕としても上杉君と共に家庭教師ができるなら問題はない。だけど……。中野さんが絶対に怒るぞ〜…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

12月17日。四葉さんが陸上部の駅伝で見事に優秀な成績を収めた。

 

12月19日…。22日……。どんどん日付が過ぎていく。上杉君に事情を聞こうとしても、電話で聞いたような返答が返ってきた。特に核心が付けないまま、24日のクリスマスイブになった……。

 

この頃には既に五人の引っ越しは完了していた。この日の夜は僕にも来て欲しいとのことで、合流した。行き先はとあるケーキ屋だとのこと……。

 

 

 

 

 

風太郎「メリークリスマス!ケーキはいかがですかー?」

 

「すみません。1ホールください」

 

風太郎「はい!ただいま………、!?」

 

 

なんと、そのお店で上杉君がアルバイトをしていたではないか……!

 

 

 

 

 

 

 

 

風太郎「ケーキご注文のお客様…」

 

一花「わー!本当に働いている!クリスマスだってのに偉いね〜!」

 

三玖「というか寂しい」

 

二乃「ケーキも遅いわ」

 

………何故か僕も一緒に席に座って待機している。しかも両隣に五月さんと三玖さんがいる…。ちょっと気まずい…。

 

風太郎「仕方ないだろ。今日は繁盛…」

 

二乃「ちょっと、私達はお客。あんた店員」

 

 

風太郎「さっさと持ってお帰り下さいませ〜……!」

 

二乃「あーら、できるじゃない」

 

いや、その対応はちょっと違うと思うけど……。

 

五月「すみません。ケーキの配達ってできますか?やっぱり家に届けてほしいのですが……」

 

風太郎「はぁ?配達なんてやってないけど?」

 

二乃「か弱い乙女に持たせるつもり?」

 

風太郎「悟飯に持たせろ」

 

五月「すぐそこなので」

 

風太郎「え〜…」

 

三玖「落としちゃうかも…」

 

一花「雪降ってるし」

 

四葉「お願いします!」

 

風太郎「おーい、この五人の保護者の方、どうにかしてくれ!」

 

悟飯「……できれば配達お願いします」

 

風太郎「店長!!ヤバい客がいます!!」

 

「もう店は閉める。こっちはいいから最後に行ってあげなよ」

 

風太郎「はぁ!?店長そんなこと…!!」

 

「上杉君、メリークリスマス……」

 

風太郎「………」

 

俺、このバイトも辞めようかな…。

 

そう考えた風太郎であった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一花「四葉ー!雪の上は危ないよー!」

 

二乃「お子様なんだから。滑っても知らないわよ」

 

風太郎「………!お前らの家はこの道じゃないだろ?」

 

風太郎は違う道を歩いていることに気づいたようだが……。

 

一花「違うよ!こっちこっち!」

 

風太郎「…あのさ、黙って辞めたことは悪かった。だがもう俺は家庭教師には戻れねえ」

 

上杉君がそう言うと、五月さんはこの時の為に用意していた物を取り出して上杉君に見せる。

 

五月「見て下さい。この人が上杉君に代わる新しい家庭教師です」

 

写真付きの履歴書を風太郎に見せる。見た目がチャラそうな人が自分の後任になることを知ったらやる気になってくれるだろうということだが………。

 

風太郎「そうか…。意外と早く決まったんだな。東京出身で元教師…。優秀そうな人じゃねえか。見た目はともかく…。この人と悟飯がいれば、お前らは確実に卒業できるだろ」

 

しかし、風太郎は戻る気のなさそうな返事をする。その返答に対して思うところがあったのか、二乃が口を開いた。

 

二乃「いいの?このまま次の人に任せて私達を見捨てんの?」

 

風太郎「………っ…」

 

風太郎も本当は辞めたくなかったのか、それとも戻りたいのか分からないが、表情が変わる。

 

風太郎「……俺は2度のチャンスで結果を残せなかったんだ…。次の試験だって上手く行くとは限らない…。だったらプロに任せるのが正解だ……。これ以上は俺の身勝手にお前らを巻き込めない」

 

二乃「……そうね。あんたはずっと身勝手だったわ。孫じゃあそこまで強引に勉強をやらせるようなことはしなかったでしょうね。あんたのせいでしたくもない勉強をやらされたわ。でも問題が解けたら嬉しくなっちゃって……」

 

二乃はそう語りながら段々と風太郎に歩み寄っていく。

 

二乃「これは全部あんたのせい。最後まで身勝手でいなさいよッ!!謙虚なあんたなんて気持ち悪いわッ!!謙虚な家庭教師は孫一人で十分なのよ!!」

 

風太郎「………悪い。もう戻れないんだ…。俺は辞めたんだ。お前達の家に入るのさえ禁止されている…」

 

一花「それが理由…?」

 

風太郎「ああ…。早く行こうぜ」

 

一花「もういいよ。ケーキの配達ご苦労様」

 

一花は風太郎が持っていたケーキを手に取った。

 

風太郎「……いや、まだ……」

 

一花「ここだよ。ここが私達の新しい家」

 

……一花は目の前にあるアパートを指差しながらそう言った。風太郎は一瞬何がなんだか分からない様子だった。

 

風太郎「……どういう意味だ…?」

 

一花「借りたの。私だってそれなりに稼いでるんだよ?といっても未成年だから契約したのは別の人だけど。事後報告だけどお父さんにももう言ったから」

 

五月「今日から私達はここで暮らすんです」

 

五人の決意は固かった。これからも7人で勉強をする為に。ただそれだけの為に五人はここに引っ越したのだ。今まで住んでいた居心地の良い家を捨ててまで……。

他人から見たら大した理由じゃないかもしれない。でも、悟飯達からしたらとても大切なこと…。だからここまで大掛かりな準備をしてでも風太郎と勉強できるようにしたわけだ。

 

一花「これで障害はなくなったね」

 

風太郎「嘘だろ…?たったそれだけの為にあの家を手放したのか…!?」

 

悟飯「………それだけ上杉君はみんなに必要とされているってことだよ」

 

風太郎「いや、だとしてもこんなの間違っている!お前らは馬鹿か!?今すぐ前の家に戻れ!このまま新しい家庭教師を雇えば……」

 

四葉「………上杉さん。前に言いましたよね?大切なのはどこにいるかじゃなくて、五人でいることだって!!」

 

そう言うと四葉は、Pentagonのカードキー5枚を近くにあった川に向けて放り投げた。

 

風太郎「マンションのカードキー…!?やりやがった…!!」

 

風太郎はそのカードキーをなんとかキャッチしようとするが……。

 

ツルッ

 

「「「「「「!!!」」」」」」

 

 

どぼんっっ!!!!

 

 

風太郎はこの極寒の中、川に落ちてしまった。

 

悟飯「う、上杉君!?」

 

 

ザバンッ!!

 

 

悟飯は風太郎を引き上げる為に躊躇なく川に飛び込んだ。服は濡れてしまうが、今はそんなことを言っている場合ではない。このままでは、風太郎が溺れてしまう可能性もある。

 

 

 

 

 

 

 

 

ドボンッッ!!!!!

 

 

 

悟飯「…!?!?」

 

なんと、五人も一斉に飛び込んできたのだ。

 

 

 

ザパァッ!!

 

風太郎「プハッ…!!」

 

三玖「フータロー!大丈夫!?」

 

五月「ぜ、全員で飛び込んでどうするんですかッ!?」

 

四葉「って寒ーッッ!!!」

 

風太郎「お前ら……」

 

三玖「たった2回で諦めないでほしい…!!今度こそ私達はできる!みんなでならできるよ!成功は失敗の先にある!そうでしょ!?」

 

風太郎「……三玖」

 

 

一花「二乃っ?二乃、どうしたの!?」

 

二乃「つ、冷たくて身体が…!!」

 

二乃は身体が冷えて思うように動かせず、溺れてかけてしまっている。それに気づいた悟飯は超スピードで二乃を引き上げた。

 

 

 

ザパッ!!

 

 

二乃「…!!」

 

悟飯「大丈夫?無理しちゃダメだよ…。今の時期なんて……」

 

二乃「……あ、ありがと…」

 

 

気がつくと二乃は既に先程の岸辺に連れてこられていた。これで取り敢えずは溺れる心配はない……。

 

 

 

悟飯は舞空術を駆使して全員を引き上げた。

 

風太郎「無茶苦茶だ…。お前ら、後先考えず行動しやがって…。これだから馬鹿は困る。なんだか、お前らに配慮するのも馬鹿らしくなってきた!」

 

 

ビリッッ!!!

 

 

 

 

風太郎「俺もやりたいようにやらせてもらう!!」

 

風太郎は五月に渡された履歴書を破り、高らかに宣言した。

 

風太郎「俺の身勝手に付き合えよ。最後までな!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……….」

 

(違う…。これはカカロット君のことが忘れられないだけ…)

 

密かにドキドキしている者が1名いた…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一花「さっ、そうと決まれば早く家に入ろ!」

 

四葉「このままじゃ風邪引いちゃうよ…」

 

五月「あっ、ケーキは大丈夫ですか?」

 

三玖「大丈夫」

 

 

 

風太郎「………(さよならだ、零奈)」

 

 

 

 

 

三玖「フータロー!早く!」

 

五月「ケーキ食べちゃいますよ」

 

一花「ほらほら、悟飯君も早く。みんなでケーキ食べるよ!」

 

悟飯「……えっ?僕も?」

 

一花「当たり前じゃん!七人(みんな)で食べる為に買ったんだから!」

 

風太郎「……でもいいのか?俺らが入ったら、五等分できないぜ?」

 

 

その一言に、五人は同時に笑顔になった。

 

 

 

 

 

 

その日に食べたケーキの味は、今まで食べた中で1番特別に感じたそうだ…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「江端、今日は遅かったね」

 

「申し訳ございません」

 

「いいさ。しかし、その格好は…?」

 

「ホホホ…」

 

江端は、先程五月が風太郎に見せた履歴書と同じ風貌をしていた。単なる偶然か、はたまた………。

 

「まあいい…。上杉君、よくもやってくれたね。しかし、君のような男に娘はやれないよ……」

 

マルオは険しい顔をしながら、江端の運転する車の中でそう呟いた…。

 




 悟飯が家庭教師を辞めようとする展開はかなり前から考えていました。悟飯ならみんなを巻き込まないために家庭教師をやめてもおかしくないんじゃないかなーと…。でも悟飯のことだから、風太郎のようにいきなりやめるようなことはせず、きちんと一言報告はすると思うんですよね。でもそこで素直にやめさせてくれる五つ子ではありません。二乃の機転によって悟飯は家庭教師を続けることになりました。これを機に悟飯は本格的に修行を再開しました(殆ど描写しないと思うけど)。

 実は悟飯が家庭教師をやめることを事前に風太郎に相談して、風太郎も辞めようとしてることを知って悟飯が風太郎を説得して、風太郎が辞めずに悟飯だけやめるバージョンや、悟飯も風太郎もどちらも辞めるバージョンを考えてはいたのですが、悟飯はやめようとするけど五つ子に止められるパターンが1番しっくり来たのでこのような形にしました。

 ちなみにですが、マルオの悟飯に対する印象はかなりいい方。風太郎もいいと言えば良かったのですが、風太郎に父親らしいことをしろよと叱られた為に風太郎のことは嫌ってます(原作通り)。実はマルオはサイヤ人が街を襲った日以来、娘達にボディガードを付けることを真剣に検討していて、そこに丁度二乃の提案が来て、これ以上の適任者はいないだろうということでマルオは快く二乃の提案を受け入れました。

 お気づきの方も多いと思いますが、四葉がかなり成長しています。裏で相当頑張っていますからね。

 赤点回避?ナニソレおいしいの?

 前回のセルの界王拳3倍では超2ベジータには及ばなくないかという意見をいただきました。マジでその通りだと思います。戦闘力の計算とか全くしてなかった…。許してください…

 というかもう30話行ったんですね。最近ほぼDBZだったせいで五等分基準だとストーリーが全然進んでない。こりゃひでえ!!


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第7巻
第31話 お正月



 前回のあらすじ…。

 悟飯は五つ子と風太郎を守る為に、家庭教師をやめることを決意し、五つ子にその趣旨を説明したところ、猛反対された。しかし、悟飯はそれでも決意を揺らぐことはなかったが、二乃の機転の効く行動と説得によって、悟飯は五人を側で守ることを決意した。

 しかし、悟飯が辞職することは阻止できたのだが、もう1人の家庭教師である風太郎が辞めてしまった。どういうわけかマルオに中野家の侵入を禁じられているようだったが、五つ子が家出して、新しい家に引っ越してまで風太郎を家庭教師として呼び戻そうとした。この努力は実り、風太郎も無給ではあるものの、家庭教師に復職したのであった………。

悟空「なあ界王様。なんとなくなんだけどよ、オラが出てきてくれって滅茶苦茶言われている気がすんだけど…」

界王「お前はもう死んでおるだろ…。この前セルが出てきた時だってそのせいで助っ人に行けなかったんだからのぉ…」

悟空「でもセルが界王拳を使うことには驚いたぞ…!今のオラといい勝負できんじゃねえか?」

界王「言っとくが、あれはあの世だからできる変身じゃぞ?例え生き返ったとしても、多用はできんぞ?」

悟空「それもそっか!」

※悟空の登場はしばしお待ちを。超の方の悟空ではなく、Zの悟空をベースにする予定です。



 

1月1日……。

 

新しい一年が始まる日である。

 

殆どの人にとってはめでたい一日となるだろう。ある者は初詣に行き、ある者は帰省し、ある者は初日の出を拝む。新年の楽しみ方は人それぞれだ。

 

 

牛魔王「悟飯や。あけましておめでとう。これはお年玉たべ」

 

悟飯「ありがとう」

 

牛魔王「ほれ、悟天も明けましておめでとう」

 

悟天「ありがと!お爺ちゃん!」

 

 

そして、子供にとっては一年で最も収入を得る機会でもある。親からいつものお小遣いよりもいい額をもらうだけでなく、祖父母からも、親戚からも、もし兄姉が社会人になってるなら、兄姉からもらう可能性さえある。

 

 

 

 

チチ「大丈夫だか?もう残りの財産は少ないんじゃなかったべか?」

 

牛魔王「でぇじょぶだ。孫達にお年玉をやるくらいの金は残ってるべ」

 

今日は新年。牛魔王のお爺ちゃんがウチに来ています。

 

牛魔王「悟飯は学校はどうだべ?慣れただか?」

 

チチ「それ去年も同じ話をしただよ、お父」

 

牛魔王「あれ?そうだったべか?ところで……、玄関前に置いてあった大量の食材はどうしただ?」

 

悟飯「あー…。ある人に届ける為に取ってきたんだ」

 

牛魔王「ある人…?ブルマさだか…?」

 

チチ「違うだよ。悟飯、最近家庭教師を始めただよ。その生徒さん達が今の生活が厳しいみてえだから助けてやるんだと」

 

牛魔王「相変わらず悟飯は優しいだべなぁ!」

 

悟飯「あ、あはは……」

 

悟天「そうだ。僕達はそろそろ出かけるね」

 

牛魔王「出かける?あー、さっきの生徒さんのとこにだべか?」

 

悟飯「うん。そういうことだから……。夕ご飯までには戻ってくるよ!」

 

チチ「気をつけて行ってくるだぞ〜!!」

 

 

僕と悟天は、2人で舞空術で大量の食材を持ってあの五人の家に向かう。

 

 

悟飯「悟天!どうだ?上手く飛べてるか?」

 

悟天「うん!兄ちゃんに教えてもらったらすぐに飛べるようになったよ!」

 

悟飯「あまり調子に乗るなよ?結構集中する必要があるからな」

 

最近は悟天と一緒に修行することもしばしばある。悟天は7歳という年で既に超サイヤ人に変身することができる天才だ。本気さえ出さなければ、僕にとってもいい修行相手になるのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

悟飯「よっと。ついたついた」

 

悟天「うわ〜…。本当にあの高層タワーマンションから引っ越したんだ……」

 

悟飯「だから今は一花さんのお給料で家賃をどうにかしてるみたいなんだよ」

 

悟天「大変だねぇ……」

 

 

 

「あれ?孫さんに悟天君久しぶり!じゃなかった…。あけましておめでとうございます!」

 

悟飯「あけましておめでとう!ってあれ?らいはちゃん?上杉君も?」

 

風太郎「お前らなんでここにいるんだよ?」

 

悟飯「いや〜……ちょっと…」

 

二乃「……いや、あんたこんなに持ち込まなくても良かったでしょ…?というかいらないって私は言ったはずなんだけど……」

 

悟飯「いや〜……。近頃の五月さんは見てて可哀想だったものだから……」

 

五月「あ、あはは……。最近は満足に食べてませんから……」

 

二乃「五月が食べすぎなだけよ…」

 

四葉「せっかくだし孫さんも家に寄ってきませんか?」

 

悟飯「えっ…?でも……」

 

悟天「行く!」

 

 

ということで、五人の新居にお邪魔しています……。

 

 

そこでは恋愛物のドラマを見ている。どうやら録画したものだそうだ。

 

 

 

『僕も君が好きだ!』

 

『えっ……』

 

 

 

五月「キスしました……」

 

二乃「ロマンチックだわ……」

 

四葉「録画してて良かったね!」

 

風太郎「………何の為に呼んだんだよ。らいは、俺らは帰るぞ」

 

一花「まあまあ、正月なんだからゆっくり過ごそうよ」

 

三玖「悟飯、フータロー、あけましておめでとう」

 

悟飯「あけましておめでとう!」

 

三玖「今年もよろしく。おせち作ったけど食べる?」

 

悟飯「あっ、えーっと……」

 

風太郎「……!?」グルルルル…

 

おや…?上杉君のお腹から不吉な音がしたような……。

 

悟天「わーい!いただきまーす!」

 

悟飯「あっ!悟天…!?」

 

悟天「………まずっ!?」

 

三玖「…………(ガーン…!)」

 

一花「あれ?どうしたの、らいはちゃん?」

 

らいはちゃんは何やらソワソワしている様子だった。

 

らいは「えーっと……、ごめんなさい。私、勘違いしてたみたい…。中野さんのお宅はお金持ちだって聞いたから…」

 

四葉「あはは…。色々ありまして……」

 

一花「何もない部屋でごめんね〜」

 

悟天「……テレビと炬燵以外本当に何もない部屋だね…」

 

悟飯「コラ悟天……」

 

五月「あはは…。事実ですから……」

 

四葉「ひとまず今は必要な物を揃えている段階です…」

 

風太郎「じゃあテレビは後回しでいいだろ」

 

一花「とにかく自分の家だと思って寛いでよ」

 

二乃「ちょっとあんた、いつまでそこに立ってんのよ。寒いでしょ?炬燵に入りなさい」

 

悟飯「……それ、僕に言ってる?」

 

二乃「そうよ」

 

悟飯「……じゃあ悟天が」

 

悟天「僕は寒くないからいい。風太郎さん入れば?」

 

風太郎「じゃあらいはが……」

 

二乃「何押し付け合ってんのよ……」

 

風太郎「少なくとも俺は押し付けてねえ!?」

 

僕も悟天に押し付けた覚えはないんだけど……。

 

一花「ほーら遠慮しない!そうだ、マッサージしてあげようか?お疲れでしょ?」

 

風太郎「……えっ…?別に疲れてないんだが……」

 

四葉「じゃ、じゃあ私は足を揉ませていただきます!」

 

風太郎「お、おい四葉!?」

 

 

三玖「……じゃあ私は悟飯の手」

 

五月「じゃあ、私は孫君の足を……」

 

二乃「ったく、仕方ないわね。戦って凝ってるでしょ?肩揉んであげるわよ」

 

悟飯「えっ?なんで僕…?」

 

 

何故か上杉君は一花さんと四葉さんの二人に……。僕は二乃さん、三玖さん、五月さんの3人にマッサージされている始末……。

 

らいは「孫さんだけじゃなくてお兄ちゃんまでモテだしたッ!?お母さん、お兄ちゃんに一足早い春がやってきました……」

 

らいはちゃんは何故か天に祈るようにそう呟いた。……ん?まさか、そういうことなのか…?そういえば、前に母親はいないって聞いたような…。

 

……というか、何やら悟天が少し不機嫌な様子……。

 

悟天「……どいたー!!」

 

 

「「「わっ!!?」」」

 

らいは「…!?ご、悟天君!?」

 

悟天がマッサージしていた3人を無理矢理退かした…。

 

悟飯「悟天!怪我したらどうするんだ!!」

 

二乃「ちょっと、何すんのよ!」

 

三玖「ちょっと痛い……」

 

五月「な、なんでですかぁ…?」

 

悟天「五月さん達の力じゃ兄ちゃんのマッサージなんてできないよ!僕がやってあげるもん!」

 

 

シュパパパッ‼︎

 

 

らいは「!?は、速いッ!?なんて速いマッサージなの…!?」

 

四葉「わお!流石です!」

 

一花「やるね〜……」

 

 

二乃「まあいいわ。上杉、いつもお疲れ様」

 

五月「上杉君、これ良かったらどうぞ!」

 

風太郎「……(怪しい…。怪しすぎるぞ…!)」

 

四葉「お正月らしく福笑いでもどうですか?五つ子バージョンを作りました!」

 

風太郎「……(難しすぎる!!)」

 

三玖「えっと、フータローに渡したいものがあって……」

 

四葉「み、三玖!それはまだ早いよ!」

 

一花「みんな、隣の部屋行こうか!」

 

何やら上杉君に渡したいものがあったそうだが、みんなは隣の部屋に行った…。

 

風太郎「……何を企んでやがるんだ…?」

 

らいは「ただ日頃の感謝を伝えたいだけじゃない?」

 

風太郎「それはねえ。あいつらがそんなことするとは思えん」

 

悟飯「そんなことはないと思うけど……」

 

 

 

 

 

一方その頃、隣の部屋では……

 

二乃「どうする?あいつ気にしてなさそうよ?」

 

四葉「でもこのままじゃ悪いよ…。上杉さんはクビになってるのに、仕事でもないのに家庭教師を続けてもらってるんだもん……」

 

三玖「何かしてあげたい……」

 

一花「お父さんにはできるだけ頼りたくないしね……」

 

五月「とはいえ、私達が彼にしてあげられることって………」

 

五月がそう呟いた時、四人は先程のドラマで見たキスを、四葉は金メダルを想像していた。

 

五月「ふ、不純です!!」

 

二乃「あんたも同じこと考えてたでしょ……」

 

一花「あはは…。フータロー君がそれで喜ぶとは思えないけど……」

 

二乃「あいつも男だから分からないわよ?女優ならほっぺにキスくらいできるんじゃないの?」

 

一花「じょ、女優をなんだと思ってるの!?そういうことなら、私より三玖の方が……いやでも、悟飯君じゃなくてフータロー君にだからちょっと違うかな…?」

 

三玖「わ、私が…?悟飯に……?」

 

ーー

 

ーーーーーー

 

ーーーーーーーーーー

 

 

『悟飯……』チュッ

 

『三玖さん!!僕をその気にさせたね!もう止まらないよ!!』

 

『えええ!?!?』

 

ーーーーーーーーー

 

ーーーーー

 

ーー

 

三玖「ダメだよ悟飯…。やめて…。やっぱやめないで……」

 

二乃「あんたが止まりなさい!!」

 

五月「……孫君はその程度で襲ってくるような人ではありませんよ」

 

 

一花「……………」

 

二乃「……………」

 

 

「「ん…??」」

 

 

一花と二乃は五月の台詞に何か違和感を覚えたようで……。

 

一花「ねえ五月ちゃん…。まさかとは思うけど、既に悟飯君に対してキスしてたりしないよね……?」

 

五月「し、ししし、してるわけないでしょう!?私をなんだと思ってるんです!?」

 

二乃「……この動揺っぷり……。まさかあんた…………」

 

五月「し、してませんからね!?本当にしてませんからね!?!?」

 

一花「ねえ三玖、どうおも……」

 

三玖「やっ、ちょっと乱暴だよ…。で、でも、そんな悟飯も嫌いじゃない…///」

 

二乃「誰かこの変態を止めなさい…」

 

四葉「みんな何の話をしてるの?」

 

五月「……無難に料理でいいんじゃないでしょうか?ほら!二乃は料理が得意ですし!」

 

二乃「………」

 

二乃は五月にそう言われると、『カカロット』として一緒にいた悟飯とお菓子作りをしている光景を思い出していた。

 

二乃「…………ダメ。せっかく忘れたんだから……」

 

五月「……?」

 

一花「となると、やっぱこれかな?」

 

四葉「そうだね!予定通りこれをあげようよ!」

 

五月「ですね。上杉君も喜ぶと思いますよ」

 

こうして五つ子会議は終了し、一花が扉を開けてリビングに出ると……。

 

風太郎「一花、動くな」

 

一花「……!!」

 

突然、風太郎は一花の前に姿を現し、一花をまじまじと見つめる。

 

一花「ちょ、フータロー君…!?やめ…!!」

 

その顔は段々と近づき……。

 

風太郎「やはり!!これが一花の口だ!!間違いない!!」

 

らいは「えー?こっちだと思うんだけどな〜……」

 

悟天「僕はこっちだと思う」

 

四葉「わー!遊んでくれてるんですね!」

 

一花「……」ヘナァ…

 

緊張から解放された一花は膝から崩れるが、後ろにいた五月と三玖に支えられた。

 

風太郎「四葉、これはどうだ?」

 

四葉「どれどれ〜…。あっ、上杉さん、クリームついてますよ?」

 

四葉はそう言うと、風太郎の頬についているクリームを何の躊躇もなく食べた。

 

「「「「「!!!?」」」」」

 

一花達四人と悟飯はそれはそれは驚いた。まさかあの四葉がそんなことをするとは思いもしなかった。

 

らいは「お、お兄ちゃん!?四葉さん!?」

 

風太郎「!?…?!」

 

らいはも驚いており、顔を赤くしながら二人の名前を呼ぶ。だが風太郎も何がなんだか訳が分からない様子である。

 

四葉「今のほっぺにチューが家庭教師のお礼ということで……」

 

四葉も自分のしたことに気付いたのか、恥ずさしそうにそう言って誤魔化そうとする。

 

悟飯「…(四葉さん、やっぱり上杉君が好きなんじゃ……)」

 

悟天「分かった!!四葉さん、風太郎さんを好きなんだ!!」

 

風太郎「えっ?」

 

四葉「な、ななな、何を言っているんですか!?そ、そんなことはないですよ!?あれは事故です!!魔がさしただけですから!!」

 

悟天がまたしても無意識に爆弾を投下した。

 

五月「………話を戻しますが、今の私達では上杉君に十分な報酬を差し上げられない状況でして……」

 

風太郎「なんだ、そんなことか。俺がやりたくてやってるんだ。給料のことは気にすんな」

 

五月「上杉君……」

 

 

 

 

 

 

 

 

(上杉君の家は借金を抱えているというのに、給与のことは気にしなくていいだなんて……)

 

 

 

 

 

 

「出世払いで結構だ」

 

 

(……台無しだよ)

 

悟天「わあ…。それがなければかっこよかったのに……」

 

風太郎「その代わりちゃんと書いとけよ!!一人1日五千円!!1円たりともまけねえからなッ!!」

 

悟飯「上杉君…………」

 

二乃「こういう奴だったわね……」

 

風太郎「あっ、そういや俺に渡す物があるって………」

 

一花「えっと……。今日渡さなくてもいいか…。出世したらってことで…」

 

風太郎「……?」

 

一花達はタダで家庭教師をしてくれる風太郎に対してお年玉を用意していたのだが、風太郎が出世払いでいいとのことなので、今回は見送ることにした。哀れな風太郎………。

 

 

 

 

 

 

 

 

ちなみにその日の夕方……。

 

 

らいは「ねえねえお兄ちゃん?玄関前に何か置いてあるよ?」

 

風太郎「……ん?これは封筒だな?一体誰が……『ご自由にお使いください』?なんだそりゃ…?」

 

らいは「取り敢えず開けてみようよ!」

 

風太郎「そ、そうだな……」

 

風太郎は封筒を開けた……。すると……

 

 

風太郎「な、なんだこりゃッ!?10万円は入ってるぞ!?」

 

らいは「えっ!?!?」

 

風太郎「誰だか知らんが、ありがてえ!!遠慮なく借金返済に使わせてもらうぜ!!」

 

らいは「その人の名前とか分からないの?」

 

風太郎「名前?………弁当売りの高校生より…?」

 

らいは「べ、弁当売り…?一体誰なんだろ……?」

 

風太郎「さ、さあ……」

 

 

 

 

 

その正体は悟飯である。このお金の出どころは、悟飯のボディガード代である。悟飯自身は特にボディガードをしている感覚がないのと、風太郎がタダ働きしているのに自分だけ給料を貰っていることに負い目を感じて、ボディガード分の給料は風太郎に渡しているのだ。

 

ちなみに、ボディガード代は1日につき基本5万円だが、有事の際に防衛した際には特別ボーナスが出るそうだ。

 

 

 

 

翌日……。

 

さて、今日は家庭教師の日だったはずなので、食材を持って五人の家に行くことにしよう……。

 

それで、家に入ったまでは良しとしよう……。

 

風太郎「………」

 

上杉君が何故か正座していた。

 

悟飯「何をしてるの……?」

 

風太郎「追い出された」

 

追い出されたって…。そこの部屋は寝室なんじゃ……?

 

悟飯「上杉君、まさか寝室に入ってたの?」

 

風太郎「あそこが寝室だとは思わなかったがな。何故か五月の掛け布団が消えてるわ、四葉の寝相の悪いわ、一花は既に汚部屋の片鱗が見えてるわで散々だったな」

 

悟飯「あ、あはは……。そう……」

 

少しすると5人とも身支度を終えたようで、部屋から出てきた。

 

五月「わあ…!!今日もこんなに沢山…!?」

 

一花「いつもいつも悪いね〜……。案外助かってるよ」

 

風太郎「……なあ、お前はその食料はどこから採ってきてるんだ?」

 

悟飯「僕の家は自然豊かな山の中にあるからね。採ろうと思えばいくらでも採れるよ」

 

そういうわけで、勉強を始めようとするんだけど………。

 

一花「………」スゥ~

 

悟飯「あの、一花さんがもう寝てるんだけど…………」

 

四葉「一花」

 

一花「あっ、ごめん…」

 

四葉さんに呼ばれてすぐに起きた。しかしまだ眠そうである。

 

一花「フータロー君も先程は見苦しいものをお見せして申し訳ない…。それともご褒美だったかな?」

 

風太郎「冬くらい服を着て寝ろ……」

 

あっ…。寝てる時に服を脱ぐ癖まだ治ってなかったんだ………。まあそう簡単に治らないから『癖』なんだろうけど…。

 

一花「習慣とは恐ろしいもので、着たつもりなのにいつの間にか脱いじゃってるんだよ……」

 

四葉「えっ?授業中とか大丈夫?」

 

一花「あはは…。家限定だから…」

 

授業中に寝る前提……?

 

五月「授業中に寝る前提で話が進んでる…!」

 

五月さんも全く同じことを感じたそうだ。

 

風太郎「……なんだと?」

 

一花「あはは…。安心して!これからは勉強に集中できるように仕事をセーブさせてもらってるんだ。次こそ赤点回避をして、お父さんにギャフンと言わせたいんだ!」

 

三玖「うん!」

 

二乃「……」

 

四葉「私も今度こそ…!」

 

五月「そうですね」

 

みんなは中野さんに上杉君を認めてもらう為に全力を出すつもりのようだ。僕も全力で協力しよう。

 

五月「全員で合格して、お父さんに上杉君を認めてもらいましょう!」

 

風太郎「……ふん。赤点なんて低いハードルにこれほど苦しめられるとは思わなかった。しかし3学期の期末こそ正真正銘のラストチャンス…!早速始めよう!!まずは俺達と一緒に冬休みの課題を片付けるぞ!!」

 

悟飯「……あれ?そこから?」

 

風太郎「そうだろ?まずは課題を…」

 

五月「えっ?何を言ってるんですか?」

 

風太郎「えっ?」

 

四葉「ふふ…」

 

一花「あはは…」

 

三玖「フータロー」

 

二乃「あんた、私達を舐めすぎ。課題なんてとっくに終わってるわ!」

 

おや?既にみんな課題を終わらせていたようだ。やはり今回の家出は生半可な覚悟でやったものではないらしい。今までとはモチベーションに明らかに差がある。

 

風太郎「……じゃあ通常通りで…」

 

五月「あなたは今まで何をやってたのですか?」

 

風太郎「………」

 

悟飯「あ、あれ…?ひょっとして、上杉君はまだ課題を終わらせてないの…?」

 

四葉「じゃあ私達が手伝ってあげましょうか?」

 

風太郎「う、うっせー!」

 

 

 

 

三玖「……悟飯、ここが分からないんだけど……」

 

悟飯「うん?どれどれ……。これはサイコロが3つだから、奇数になるパターンは2パターンだね。偶数偶数奇数と奇数奇数奇数………」

 

三玖「……(奇数……奇数……きすう………きす………キス……………)」

 

 

二乃「………」ジーッ

 

三玖「………なに?」

 

二乃「いや、なんでもないわ」

 

風太郎「おい一花、起きろ」

 

一花「あっ、ごめん…。寝てない……よぉ…………zzz」

 

いや、思いっきり寝てると思うんだけど…。

 

風太郎「この野郎…。何がギャフンと言わせてやるだ……!」

 

二乃「少しは寝かせてあげなさい」

 

風太郎「はっ?」

 

二乃「一花はさっきはあんな風に言ってたけど、本当は前よりも仕事を増やしてるみたいなの」

 

そっか…。他の四人も養うとなると、それなりに生活費はかかるもんね…。

 

五月「生活費を払ってくれてますもんね……」

 

四葉「貯金があるから気にしなくていいって本人は言ってたけど……」

 

三玖「……こうやってフータローに教えてもらえるのも全て一花のお陰なんだよ?」

 

風太郎「……だからって、無理して勉強に身が入らないんじゃ本末転倒だ」

 

五月「………あの、私達も働きませんか?」

 

「「えっ?」」

 

五月さんが突然そう提案し、二乃さんと三玖さんの二人は少し驚いている様子だ。

 

五月「も、もちろん勉強の邪魔にならないように…。少しでも一花の負担を減らせたらと思いまして……」

 

風太郎「……ほう?今まで働いた経験は?」

 

五月「あ、ありません……」

 

風太郎「勉強と両立できるのか?赤点回避で必死なお前らが?」

 

五月「うっ………。なら!私もあなたのように家庭教師をします!」

 

風太郎「!?ッ」

 

五月「教えながら学ぶ。これなら自身の学力も向上し、一石二鳥です!」

 

風太郎「やめてくれ…。お前に教えられる生徒が可哀想だ……」

 

四葉「ならスーパーの店員はどうでしょう?近所にあるのですぐ出勤できますよ!」

 

風太郎「即クビだな」

 

悟飯「いや、流石にそんなことはないんじゃ……」

 

五月「何故私の時は否定してくれなかったんですか!?」

 

悟飯「……あはは」

 

風太郎「代弁してやろう。赤点回避で必死なうちは教える側に立つなんて100年早いわ!!」

 

五月「うっ…。そう言われると心にくるものが………」

 

三玖「…私、メイド喫茶やってみたい」

 

風太郎「!?ッ」

 

三玖さんが意外な提案をする。うーん…。クラスの人がメイドは云々って話をしてたけど、メイドって人気なのかな?

 

四葉「い、意外と人気出そう…」

 

風太郎「却下却下!!」

 

四葉「二乃はやっぱ女王様?」

 

二乃「やっぱって何よ!?」

 

女王様…?女王様って…………。

 

 

 

 

 

 

『皆さんご機嫌よう…。今日もいいお天気ですね……』

 

そう言って優雅に紅茶を飲みながら……

 

 

こういうやつ?

 

 

 

 

 

悟飯「二乃さんが…?そんなに似合うとは思わないんだけど……」

 

二乃「! そ、そうよね!あんた話が分かるやつだわ!!」

 

四葉「えー!?そんなことありませんよ〜!!」

 

 

 

逆に四葉さんは普段の二乃さんを見て何故似合うと思ってるんだろう…?

 

もしかして、女王様ってこれだけじゃなくてもっと別のがあるのかな?

 

 

四葉「二乃はお料理関係だよね!」

 

二乃「ふん。やるとしたらね」

 

四葉「だって二乃は自分のお店を出すのが夢だもん!」

 

風太郎「へえ、初めて聞いたな」

 

二乃さんの腕なら今からでもできるんじゃない…?お金の話を除けばの話だけど………。

 

二乃「こ、子供の頃の戯言よ。本気にしないで……」

 

五月「私、美味しいケーキ屋さん知ってますよ?」

 

二乃「っ!?いやぁああああッ!!!おぇ〜………」

 

………??二乃さん、突然どうしたんだ…?

 

風太郎「……居酒屋、ファミレス、喫茶店、和食に中華、イタリアン、ラーメンやそば、ピザの配達…。様々なバイトを経験してきたが、どれも生半可な気持ちじゃこなせなかった…」

 

四葉「食べ物系ばっかり……」

 

五月「賄いが出るからでしょう…」

 

風太郎「仕事を舐めんなってことだ!試験を突破し、あの家に帰ることができたら全て解決する!その為にも今は勉強だ!!

……一花が女優を目指したい気持ちは分からんでもないが、今回ばかりは無理のない仕事を選んでほしいものだ」

 

一花「んー……」

 

 

ヌギッ

 

 

悟飯「!?ッ」

 

なんと、一花さんが突然服を脱ぎ始めたではないか…!!本当に寝ている間に服を脱ぐんだ…。って、関心してる場合じゃないッ!?

 

三玖「ご、悟飯!!フータロー!!」

 

五月「上杉君…。一度ならず2度までも…!!」

 

風太郎「お、俺!?」

 

二乃「変態ッ!!」

 

上杉君が脱がしているわけではないのに酷い言われようだ……。

 

二乃「他人事みたいな顔してるけど、あんたも同罪よッ!!」

 

……そう言われると、一旦家を追い出された……。

 

……しかし、一花さんは多少無理をしているみたいだ…。食材は充分なはずだから……。何かいいものはないかな…?

 




 あ〜……。書き溜めなくなっとる…!
 しばらくは日常回にしますが、近々またしてもハプニング(?)が発生する予定です。悟空を出してほしいって望んでいる方が大勢いそうなので、五等分側の原作とほぼ同じになってカットする部分の補完として何かしらオリジナルストーリーを出すかもしれないです。まだ決まってないので詳しいことは何も言えませんがね。
 今更ですが、悟天はお兄ちゃんっ子です。


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第32話 父方の祖父母

 前回のあらすじ…。

 新年になり、悟飯は食材を届ける為に新中野家に初訪問。そしてその翌日には初仕事を果たしたわけだが、五つ子は無報酬で働く風太郎の為にお年玉を上げようとするも、出世払いでいいとのことなので、そのお年玉も出世払いで払うことになった。

 しかし、悟飯がボディガード分の給料を風太郎に全額渡すことにした。理由は自分は報酬を受け取っているのに、風太郎だけ受け取ってないのは何か悪い気がしたからだそうだ。



今日は上杉君がこの前のケーキ屋さんでバイトをしているとのことで、僕だけで家庭教師をする予定だ。

 

二乃「あれ?上杉は?」

 

悟飯「今日はケーキ屋さんでバイトだって」

 

四葉「そうなんですか!一花もケーキ屋さんで撮影があるみたいですよ!もしかして、同じお店だったり?」

 

悟飯「いや、まさか偶然があるとは……」

 

三玖「じゃあ、今日もよろしく」

 

五月「よろしくお願いします。遠慮は要りませんので!」

 

悟飯「えっ?う、うん……」

 

五月さん、やけに気合が入ってるな…。それだけ上杉君をマルオさんに認めさせたいのだろう…。

 

まあ、みんなやる気を出してくれるなら、僕としてもやりやすいので全然構わないのだけど…。

 

悟飯「それじゃ、始めようか!」

 

 

 

 

 

 

 

よし、いい時間になった。そろそろお昼ご飯の時間だ。

 

五月「勉強の後はお腹が減ります……」

 

二乃「あんたも食べる?」

 

悟飯「大丈夫。お弁当作ってもらったから」

 

二乃「相変わらず用意がいいわね…」

 

そう言っても、今の五人の生活状況を知っているのに、僕のような大喰らいの分も作るとなると相当な負担になるだろうから……。

 

 

 

 

ザバァァアアアアンンッッ!!!

 

 

「「「「「!?!?ッ」」」」」

 

 

な、なんだ!?川に何かが落ちた音がしたぞ!?

 

悟飯「ちょっと外の様子を見てくる!!」

 

二乃「あっ!ちょっと!!」

 

四葉「私も行きます!!」

 

 

 

……部屋を出るとすぐに目の前に川があるんだけど、そこに…………。

 

悟飯「あ、あれは……!!!!」

 

一人用の宇宙船ッ!?またサイヤ人が地球に来たのか…!?今度こそ神精樹を……………

 

 

カァァッ

 

 

悟飯「………」スチャ

 

宇宙船の扉が開いたので、僕は迷わず戦闘態勢に入る。みんなのボディガードも努めてるんだ。みんなに危険が及ぶ前に………

 

「…………や、やっと着いた…。なんとか逃げてこれたかな…?」

 

……尻尾が生えているところを見ると、やはりサイヤ人のようだ…。

 

四葉「ま、まさか…!あの時に街に大勢現れたっていう宇宙人ですか!?」

 

僕に追いついた四葉さんがそう質問さしてきたので、僕はそれを肯定する。

 

二乃「マジ…?よく懲りずに来るわね…。セルじゃないからあんたなら楽勝でしょ?ちゃちゃっとやっつけちゃいなさいよ、ボディガードさん?」

 

三玖「……でも、なんか…。前見た人達とは違う…」

 

五月「どういうことですか、三玖?」

 

三玖「なんだろう…。あまり興奮してないというか……」

 

「………カカロット…?」

 

悟飯「……?」

 

サイヤ人はお父さんのサイヤ人としての名前を口にした。しかし、何故だか敵意や殺意は感じない……。

 

「カカロット〜!!!!」

 

 

ドサッ!!

 

 

悟飯「わっ!!」

 

な、なんだ!?

 

二乃「えっ、ちょっ……!!」

 

三玖「な、なにこの人…!悟飯から離れて…!!」

 

何故か僕に抱きついている…!?一体何を考えてるんだ…!?

 

「地球は文明レベルも戦闘力も低い星だって聞いていたけど、無事で良かったよ!本当にぃ〜……」

 

………しかも、泣いている…?ど、どういうことだ…?何がなんだかまるで意味が分からない……。

 

五月「ちょっと!いつまで孫君に抱きついているつもりですかあなた!!!さっさと離れて下さい!!」

 

五月さんは目の前のサイヤ人を引き剥がそうとするが、五月さんの力ではそれは叶わないようだ…。

 

「邪魔しないでくれよ!!やっと私の息子に再会できたんだからさッ!!」

 

悟飯「………息子…?」

 

お父さんが息子…?つまり…………

 

悟飯「あの、一つ質問よろしいでしょうか?」

 

「なんだい?そんなに改まらなくてもいいんだよ?」

 

悟飯「あの…。もしかして、もう一人の息子に、ラディッツって人は…….」

 

「カカロット…?ラディッツに会ったこともないのにどうして…?」

 

………これで確定だ。

 

悟飯「……あの、僕はカカロットじゃないです……」

 

「そんなはずないよ!!この顔、そして体格!バーダックにそっくりだもん!こんなに似てて私の息子じゃないわけないよ!!」

 

悟飯「……カカロットは…。孫悟空は僕のお父さんです……」

 

あれ?ちょっと待って?『バーダック』にそっくりって………。バーダックって確か、この前超サイヤ人に変身した……、三玖さんを助けたあの……?

 

この人の発言から察するに、バーダックって人はこの人の夫……。道理でお父さんに似ているわけだ………。

 

「………カカロットが、お父さん……??ってことは(まご)かぁ!!カカロットも幸せに暮らしてるみたいでよかったよ!!」

 

五月「………えっ?まさか、この人が祖母なんですか?孫君の……」

 

二乃「というか、この前のアイツらとはエラく違うわね……」

 

三玖「なんというか、ちゃんと母親している……」

 

四葉「わーっ!随分若いお婆ちゃんですね!」

 

「お前、名前はなんて言うんだい?」

 

悟飯「僕は孫悟飯です。あの…、あなたは…?」

 

「ゴハンか…。いい名前じゃん!私はギネ!ちょっと訳あって地球に避難してきたんだよ」

 

悟飯「避難……?」

 

ギネ「君たちは…?」

 

五月「どうも…。孫君に家庭教師として教えてもらっている中野五月と言います」

 

三玖「中野三玖です。いつも悟飯のお世話になっています」

 

二乃「中野二乃……です。まあこいつとは……友人です」

 

四葉「中野四葉です!よろしくお願いします!若いお婆さん!!」

 

ギネ「あの……。それ聞いても喜んでいいのか怒ればいいのか………」

 

………なんだ?サイヤ人にもこんな人がいたのか…??なんでこんな母親がいたのに、ラディッツはあんな凶暴になっちゃったんだろ…?

って、それよりも気になっているのは…

 

悟飯「あの、避難って一体…?」

 

ギネ「ああ…。バーダックが超サイヤ人になれることがターレスの癇に障ったみたいでね…。私を人質にしてバーダックを誘き出そうとか言っているのを聞いたから逃げたんだよ」

 

悟飯「なるほど………」

 

サイヤ人同士でも対立はあるようだな。

 

ギネ「もうすぐバーダックがここに来ると思うんだけど…。しっかり信号を発信したはずだから…。お爺ちゃんの顔も見たいだろ?ゴハン?」

 

悟飯「いや〜……。それが、もう既に戦ったことあります……」

 

ギネ「ええっ!?!?なんで!?まさかバーダックが!?」

 

悟飯「ええ、まあ……」

 

ギネ「全くあの男は……。怪我はないかい?」

 

悟飯「ええ。寧ろあちらの方が心配です……」

 

ギネ「えっ?バーダックは超サイヤ人になれるんだよ?まさか……!」

 

悟飯「まあ…はい。僕も一応超サイヤ人を超えた超サイヤ人になれるので……」

 

ギネ「超サイヤ人を……超える…?流石に想像できないね……」

 

なんだか四人が会話に入ってこれてない気がするけど……。まあいいや。

 

 

 

スタッ

 

バーダック「ようギネ。久しぶりだな…」

 

ギネ「バーダック!無事だったんだね!」

 

バーダック「まあな…。そんな簡単にくたばったりしねえよ………。ところで、何してんだ……?」

 

ギネ「あ、あはは…。カカロットと勘違いしちまって……」

 

バーダック「………」

 

ギネ「ば、バーダック…?」

 

あ、あれ?なんかちょっと怒ってるような気がするのは気のせい……?

 

バーダック「おいお前、人の女になにしてくれてんだよ…?」

 

悟飯「えっ…?な、なんの……」

 

 

シュン‼︎

 

 

悟飯「…!!!?」

 

バーダック「だっ!!!!」

 

 

ドゴォォオオッッ!!!!

 

 

悟飯「わっ!!!!」

 

 

ザバァァアアアアンンッ!!!!

 

 

五月「えっ!?」

 

二乃「ちょっ!?」

 

ギネ「ば、バーダックッ!?何してんのさッ!?」

 

バーダック「(まご)だかなんだか知らねえが、調子に乗ってんじゃねえぞ」

 

三玖「ちょ、ちょっと!なんで悟飯を殴ったの!?悟飯は別に何も……」

 

バーダック「黙ってろ。(まご)にちょいとばかし教育を施すだけだ」

 

ギネ「バーダック?なんか勘違いしてないかい?私は……」

 

スタッ……

 

 

 

 

 

 

 

悟飯はバーダックに吹き飛ばされたが、すぐに立ち直って元の位置に着地した。

 

悟飯「いきなり何をするんだ!!」

 

バーダック「教育がなってねえから、カカロットの代わりに俺が教育してやるんだよ」

 

悟飯「だから、一体何を……」

 

 

 

 

「やめないかいッッ!!!!」

 

 

 

悟飯「!?ッ」

 

バーダック「おいギネ、なんで止めるんだ?」

 

ギネ「少しは人の話を聞きなよッ!!初めて(まご)に会ったってのになんで抱きついちゃいけないんだい!?」

 

バーダック「………なんだよ。そういうことは早く言ってくれよ……」

 

ギネ「さっきも言ったけど、あんたが聞いてなかっただけだろう!?」

 

な、なんだ……。ただのお嫁さん想いのいい人(?)だったのか………。

 

ギネ「ほら!ゴハンに謝りな!」

 

バーダック「あの程度の攻撃も避けられない方が悪いだろ」

 

ギネ「あのねぇ…!!」

 

悟飯「ま、まあまあ……。その辺に…」

 

バーダック「そんなことよりいつまでここにいるんだよ?取り敢えず、寝泊まりできるとこは確保しといたからそこに……」

 

ギネ「まあそう焦るなって!せっかく孫に会えたんだから、もうちょっとだけいてもいいだろう?」

 

バーダック「お前なぁ……」

 

ギネ「それで、さっき家庭教師してるって聞いたけど、一体どんな仕事なんだい?私にも見せてよ!」

 

悟飯「えっ?いや……」

 

五月「それは困ります!!私達は今大事な時期なので………」

 

四葉「えー?折角お孫さんに会えたんだから、今日くらいはいいんじゃない?」

 

五月「よ、四葉?」

 

三玖「うん。今日くらいは大目に見てあげようよ?」

 

五月「し、しかし………。いえ、二人の言うことにも一理ありますね……」

 

二乃「はぁ………。あまり部外者は入れたくないけど、片方は三玖の恩人みたいだし、今日だけだからね………」

 

悟飯「えぇ………………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

というわけで、何故か父方のお婆ちゃんとお爺ちゃんが五つ子の家にいる…。

 

ギネ「わぁ…!地球は文明レベルが低いって聞いたけど、そうでもないように見えるけどねぇ?」

 

二乃「……なんというか、こうして見ると私達と変わらない気がするわ…。宇宙人って感じがしないんだけど……」

 

三玖「うん…」

 

五月「確かに……」

 

 

 

バーダック「ったく、なんで俺がこんなところにいなきゃいけねえんだよ…」

 

ギネ「まあまあいいじゃないかい!!偶にはのんびりしなよ!」

 

二乃「……ここ、一応私達の家なんだけど……」

 

五月「……そういえば、お昼ご飯がまだでした……」

 

三玖「確かに……」

 

四葉「言われてみれば…!!」

 

五月さんに言われて僕も初めて気が付いた……。

 

ギネ「あー…。そういえば私も食べてなかったわ…。バーダック、あんたは?」

 

バーダック「まだ食ってねえよ」

 

二乃「……良かったら、あなた達も食べて行きます?」

 

ギネ「えっ!?いいのかい!?助かるよ!」

 

悟飯「えっ…!?二乃さん!?大丈夫なの!?」

 

二乃「食費に関してはあんたのお陰で大分余裕があるからね。これくらいはいいわよ。それに………」

 

悟飯「……それに?」

 

二乃「……やっぱなんでもない」

 

悟飯「………?そう?」

 

 

 

 

 

 

 

バーダック「ほう?地球の食い物は中々美味いじゃねえか?」

 

ギネ「すまないね!こんなにごちそうになっちまって!」

 

二乃「い、いえ…………(いや、少しは遠慮しなさいよ……)」

 

悟飯「そ、それじゃ、勉強の方を始めようか!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

っと、いつも通りではないものの、勉強をすることはできた。みんなのやる気が凄いため、今日は大分勉強することができただろう。

 

ギネ「うーん…?これなんて書いてあるんだい…?」

 

バーダック「地球の文字ってものは、随分複雑なんだな……。それじゃギネ、行くぞ」

 

ギネ「えっ!?私はまだカカロットに会ってないよ!?カカロットのお嫁さんにも会ってないし!!」

 

バーダック「うっせえ。お前の今の立場を忘れたのか?そういうのはせめて事が落ち着いてからにしろ」

 

ギネ「うぅ…。分かったよ…。ゴハン!カカロットによろしく言っておいてくれよ!!」

 

悟飯「は、はーい…」

 

ギネ「じゃあまたね〜!!」

 

バーダック「ふん…」

 

 

二人はそのまま飛び立って行きました。なんというか、本当にサイヤ人なのかと疑いたくなるような人だったな…。

 

……お父さんによろしくって言われても…。あの人のことだから、お父さんが既に死んでいることを知ったら、一体どうなるのだろうか………。

 

五月「…あっ!私、ちょっと用事があるのでこれで失礼しますね!」

 

二乃「えっ?ちょっと五月?」

 

五月「そ、それでは!」

 

二乃「……まあいいわ。ちょっと孫。今日の夕飯の買い出しを手伝いなさいよ」

 

悟飯「えっ?僕が?」

 

二乃「あんたの祖父母のせいで食材がなくなったのよ。車を片手で軽々と持ち上げられるんだから、手伝いなさいよ」

 

悟飯「まあ、それくらいなら全然いいけど……」

 

四葉「じゃあ私も行くよ!」

 

三玖「私は家でお留守番してるね」

 

二乃「よろしく」

 

ということで、近所のスーパーに買い出しに行くことになった。途中で上杉君に会った。

 

風太郎「おうお前ら。勉強の方はどうなんだ?」

 

悟飯「今日は大分進めることができたよ。みんなやる気が今までとは比べ物にならないよ」

 

風太郎「そうか。勉強が捗っているなら結構だ」

 

二乃「そうだ。あんたも夕飯の買い出しに手伝いなさいよ」

 

風太郎「なんだ?食料なら悟飯がいつも持ってきてくれてるんだろう?」

 

四葉「それが、孫さんのお爺ちゃんとお婆ちゃんが全部食べちゃったんです!!」

 

風太郎「祖父母のことか…?よく食うな…。つーかなんで悟飯の祖父母がお前らの家にいるんだ……」

 

悟飯「あはは……。まあ、色々あって……」

 

風太郎「まあいい。そういうことなら手伝ってやろう」

 

二乃「なんで上から目線なのよ……」

 

ということで、四人で夕飯の買い出しに行くことになった………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バーダック「ここだ」

 

ギネ「おや?意外と立派な家じゃないか?どうやって手に入れたんだい?」

 

バーダック「空き家だったみたいだから使わせてもらってるんだよ」

 

ギネとバーダックは、バーダックが見つけた空き家に到着した。バーダックとギネは取り敢えずそこで暮らすことにしているらしい。

 

バーダック「この辺なら食い物には困らねえはずだ。ただ自分で採りに行かなきゃならねえけどな」

 

ギネ「それくらいなら私も手伝うよ」

 

バーダック「……労働するのもアリかもな」

 

ギネ「えっ?働くのかい?」

 

バーダック「まあな………。これからは地球に住み着こうと思っている。その為には、地球人がどうやって暮らしているのかも知りたい」

 

ギネ「なんでそんなに地球に執着するんだよ?」

 

バーダック「………」

 

ギネ「まさか、カカロットかい?」

 

バーダック「…当たらずも遠からずってところだな」

 

ギネ「えー?なんだいその言い方?気になるね〜……」

 

二人はそんな些細な雑談をしている時のことであった………。

 

 

 

スタッ

 

「………さっき妙な気を見つけたと思ったら、その風貌はサイヤ人だな?」

 

バーダック「……!!お前は…!!」

 

ギネ「あ、あんた…!まさか……!!」

 

 

当たり前だが、バーダック達に地球には知り合いなどほとんどいない。だからバーダック達がこのような反応を示す相手はかなり限られてくる……。

 

 

バーダック「……王子様がまさかこんな辺境の星にいるとはな…」

 

ベジータ「何故ここにいる?ピッコロから聞いた話によれば、貴様らはターレスとかいう下級戦士の部下だったはずだが…?」

 

バーダック「お前もサイヤ人ならよく知ってるだろう?誰かに使われることを嫌うことをよ……」

 

ベジータ「はっ!俺もその感覚はよく分かるぜ」

 

バーダック「まずあいつらのやり方が気に食わねえ。そもそも神精樹の実なんて物に頼ってる時点でサイヤ人の誇りのカケラも持ったもんじゃねえ」

 

ベジータ「俺も話は聞いてるぜ。食っただけで戦闘力が大幅にアップするらしいな…」

 

バーダック「そんで、王子様は俺らにただ挨拶をしに来たわけじゃねえだろ?」

 

ベジータ「…………貴様はカカロットの父親だろう?」

 

バーダック「…ほう?お前までその名前を知ってるとはな…。ガキの頃戦闘力がたった2だったガキが随分と出世したもんだぜ……」

 

ベジータ「ああ…。今思い出しても頭にくるぜ…。俺より先に伝説の超サイヤ人になり、俺もなったかと思えば、奴は更にその上を行く…。挙句の果てには、この俺様が奴に勝つ前に死にやがった。本当に頭にくる野郎だぜ……」

 

ギネ「…!?し、死んだって……?カカロットが……!?」

 

ベジータ「ああ。セルって化け物に殺されたぜ」

 

ギネ「うそ……だろ…?カカロットが………」

 

ギネは息子である悟空が死んでいたことを知らされると、膝から崩れ落ちて今にも泣きそうな顔をしていた。

 

バーダック「セル…?……ひょっとして、カエルみたいな模様をしたやつのことか……?」

 

ベジータ「……貴様も知っているようだな」

 

バーダック「あいつか…」

 

バーダックはセルの強さを身を持って持って体感していた。その為、超サイヤ人になった悟空でも敗北してもおかしくないと心の中で呟いた。

 

ベジータ「………」スチャ

 

バーダック「……」スチャ

 

 

二人は何も言葉を発さずとも、これからやることがお互いに分かっていたようだ。

 

サイヤ人は戦闘民族。ただ純粋に戦いを求める種族。

 

片やサイヤ人のエリート中のエリートの王子。片や超サイヤ人になった下級戦士の父親……。

 

この二人が出会ったことにより、二人は好奇心に負けて戦闘を開始するのであった…………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

風太郎「ふっ…!落ち着け…!!力学的に、1番効率的なのは………!!ダメだ……………」

 

四葉「私が持ちますよ!」

 

上杉君が苦戦していたお米を四葉さんは軽々と持ち上げた…。上杉君はもうちょっと筋肉をつけた方がいい…。と思ったけど、家庭の事情的にそれは厳しいか……。

 

二乃「荷物持ち!早くしなさい!!!今日は丁度特売日なの。だからそれくらいは一人で持ってよね」

 

風太郎「だったらお前が持て……」

 

二乃「あっ、そうだ。三玖から頼まれているんだったわ」

 

ドサッと二乃さんは大量のチョコレートをカゴに入れた。

 

風太郎「そんなに食うのかよ…?」

 

悟飯「三玖さんってチョコレート好きだったっけ…?」

 

二乃「あんたら頭がいい癖に察しが悪すぎ」

 

四葉「一月なのにまだ気が早いんだから〜!」

 

一月なのに気が早い…?なら、二月か三月くらいに何かあるということだろうか…?何かあったっけ……?

 

二乃「さっ、とっとと会計しちゃいましょ」

 

四葉「二乃!ごめん、おトイレ!これ持ってて!!」

 

二乃「あっ!また我慢してたでしょ!って重っ!!」

 

二乃さんはお米を持ち慣れていないのか、転倒しそうになるので………。

 

 

ヒョイ

 

悟飯「ちゃんと気をつけて持たないと……。これは僕が持っておくよ」

 

二乃「……!あ、ありがとう……」

 

(最近変だわ……。カカロット君のことを忘れたつもりだったけど、まだ完全に忘れられてないのかしら…?でないとおかしいわ………)

 

 

二乃は密かにドキドキしていた。

 

 

 

二乃「あら?この菓子入れたかしら?」

 

風太郎「ああ。さっき四葉がこっそりと…」

 

人にバレてる時点でこっそりとは言わないんじゃないかな…?

 

二乃「あの子ったら財布の中も怪しいってのに、やっぱり少しくらいのバイトは検討すべきかしら?」

 

風太郎「つーかこれ、お子様向けだろ…」

 

二乃「あら、女はいつまでも少女の気持ちを忘れないものよ?お城で舞踏会とか、白馬に乗った王子様とか未だに憧れてるんだから!」

 

風太郎「へー」

 

(……そうよ。こいつ(悟飯)が私の王子様だなんて、絶対にあり得ないわ…!!)

 

 

 

僕達はお会計を済ませたのだが、未だに四葉さんが戻ってこないままだった。

 

風太郎「四葉のやつ、迷子になってるんじゃねえか?」

 

二乃「あながち否定できないわ……」

 

悟飯「僕が探して来ようか?」

 

二乃「お願いするわ。あんたって確か人の生きるエネルギー…?だっけ?それで居場所が分かるんでしょ?」

 

風太郎「なんだよそれ。便利だな……。その技術を売り出せば相当稼げるんじゃないか?」

 

………その発想はなかった…。でも、気を使い熟すにはある程度の才能が必要だから、万人向けではないんだよね…。

 

風太郎「あそこに四葉が……。いや違うな。あれ五月じゃね?」

 

二乃「あら。本当だわ。っていうか、向かいに座ってるの……。パパ…?」

 

風太郎「あれ…?あの時、病院の……」

 

パパ…?ということは、あの人がマルオさんなのか…?

 

 

 

マルオ「君達のしでかしたことには目を瞑ろう。しかし、満足いく食事も取れていないようだ」

 

五月「そんなことはありませんよ?食事に関しては、孫君が食材を届けてくれているので問題ありません」

 

マルオ「……そ、そうかい…。(満足に食事が取れているのにあんなに食べるのかい……)だが、それ以上は孫君にも迷惑をかけるだろう?すぐさま全員で帰りなさい。そう姉妹全員に伝えておいてくれ」

 

五月「……それは、彼も含まれるのでしょうか?」

 

マルオ「上杉君のことかい?これは僕達家族の話だ。上杉君はあくまで外部の人間ということを忘れないように」

 

五月「でしたら、孫君は…?」

 

マルオ「彼は君達のボディガードとしても雇っている。セルという怪物を倒せる力を持ちながら、今まで世界を平和に導く為だけに力を使ってきた…。正しい力の使い方ができる彼だから信用できる。彼を立ち入り禁止にしてしまっては、君たちのボディガードができないだろう?」

 

五月「確かに……」

 

マルオ「それにはっきり言って、僕は上杉君のことが嫌いだ」

 

五月「……(大人気ないッ!?)」

 

 

………その会話の様子を、僕と上杉君と二乃さんはこっそりと席に座って聞いていた。

 

 

二乃「……上杉、パパに何したのよ?」

 

風太郎「さ、さあ…。心当たりがありませんな……。というか悟飯。ボディガードとしても雇ってもらってるって本当か?」

 

悟飯「ま、まあ……」

 

風太郎「羨ましいな…。ちょっとでいいから俺に給料分けて欲しいぜ」

 

 

実はボディガードの分は全額上杉君に渡しているんだけど、それを言ったら凄い勢いで謝ってきてなんとかして返そうとする光景が容易に想像できる…。

 

 

「お客様、着席前にご注文をお願いしております」

 

悟飯「あっ、じゃあドリップコーヒーのトールを3つ………」

 

五月「まだ帰れません。上杉君を部外者と呼ぶにはもう深く関わりすぎています。せめて次の試験までの間、私達の力だけで暮らして……」

 

マルオ「君達の力とはなんだろう?家賃や生活費を払ってその気になっているようだが、明日から始まる学校の学費は?携帯の契約や保険はどう考えているのかな?それにさっき、食事に関しては孫君に助けてもらってると言っていたね?僕の扶養に入っていて、人の力を借りている時点で何をしても自立とは言えないだろう?」

 

五月「それは…………」

 

マルオ「………ではこうしよう。上杉君の立ち入りを解除し、家庭教師を続けてもらう」

 

風太郎「…!」

 

五月「えっ?」

 

あ、あれ…?案外すぐに認めたのかな…?だったらあの家にいる必要はもうないわけだけど……。

 

マルオ「ただし、僕の友人のプロ家庭教師も加えて三人体制。上杉君と孫君には彼女のサポートに回ってもらう」

 

そ、そう来たか……。でも、五月さん達のことを1番に考えるなら、それが一番いいんじゃないだろうか…?

 

マルオ「君達にとってもメリットしかない話だ。二対五では何かとカバーできない部分もあるだろう」

 

五月「しかし、この状況でみんな頑張って………」

 

マルオ「しかしこのままだと、四葉君は赤点回避ができるのだろうか?」

 

五月「ど、どういうことですか?四葉も私達と同じく赤点を取った教科は一つのみで………」

 

マルオ「確かにそうだ。だが、どれもギリギリの回避だ。今の状況だと、生活費を賄うのにアルバイトなり何なりして収入を得ているはずだ。今まで勉強に集中をしても全科目の赤点を回避できなかったのに、勉強のこと以外にも気を使わなければいけない状況で赤点を回避できると思うのかい?」

 

……それは…。どうなんだろう…。今のところは一花さんの収入だけでどうにかやりくりしているけど……。

 

マルオ「とてもじゃないが、そんな状況では僕にはできるとは思えないね」

 

風太郎「……っ!!」

 

う、上杉君…!?

 

二乃「だめよ。あんたが行っても状況が悪くなるだけよ。それに、パパの言っていることは間違いじゃない……」

 

 

 

五月「……そうですね。3人体制の方が確実でしょうが……」

 

 

「やれます」

 

 

 

 

風太郎「!?」

 

二乃「あ、あれ?」

 

よ、四葉さん!?いつの間に…!?

 

四葉「私達七人ならやれます!」

 

五月「四葉……」

 

四葉「七人で成し遂げたいんです!!だから信じて下さい!もう同じ失敗は繰り返しません!!」

 

マルオ「では失敗したら?東京に僕の知人が理事を務める高校がある」

 

 

………まさか、進級できなかった時の為に転校させようと……?

 

 

マルオ「あまり大きな声では言えないが、無条件で3年生からの転入をできるように話をつけてるんだ」

 

四葉「えっ……」

 

マルオ「もし次の試験で落ちたらその学校に転入する…。プロの家庭教師との3人体制ならそのリスクは限りなく小さくなると保証しよう。それでもやりたいようにやるなら、あとは自己責任だ。分かってくれるね?」

 

五月「………分かりました」

 

……それはそうだよね…。やっぱりプロの人に見てもらった方が……。

 

マルオ「ではこちらで話を進めよう。五月君なら分かってくれると思ってたよ」

 

 

五月「いいえ。もしダメなら、転校という条件で構いません。素直で物分かりが良くて、賢い子じゃなくてすみません……」

 

五月さん…………。

 

マルオ「……そうかい。どうやら子供の我儘を聞くのが親の仕事らしい。そして子供の我儘を叱るのも親の仕事…。次はないよ」

 

四葉「前の学校とは違うから!!」

 

マルオ「……僕も期待してるよ」

 

マルオさんはそう言い残し、お店をあとにした………。

 

 

 

 

風太郎「行ったか」

 

四葉「うわっ!?」

 

五月「見てたのですか?」

 

風太郎「想像通り、手強そうな親父だったな……」

 

二乃「そうね。あの人が言ってることは正しい。だってあんたら二人じゃ不安に決まってるもん。あーあ、プロの家庭教師が居てくれたらなぁ……」

 

 

……いや、それはおかしくない…?二乃さん達は今までその家庭教師の人達を拒んできたから、同級生である僕と上杉君に白羽の矢が立ったんじゃなかったっけ…?少なくとも前にマルオさんと電話で話した時はそう感じたけど…。

 

二乃「私達がここまで成長できたのもパパのおかげ。当然感謝してるわ。けど……、あの人は正しさしか見てないんだわ」

 

風太郎「………」

 

二乃さん…………

 

風太郎「しかし転校の話まで出てくるとは、責任重大じゃねえか」

 

五月「我が家の事情で振り回してしまって申し訳ありません……」

 

四葉「転校したくないね……」

 

風太郎「……だが、どうでもいい。お前らの事情も、家の事情も、前の学校の転校の条件もどうでもいいね……。俺は俺のやりたいようにやる!!お前達をこの手で進級させる!!全員揃って笑顔で卒業ッ!!!それだけしか眼中にねえッ!!!」

 

五月「ふふっ…。頼もしいですね」

 

……………そうか。そうだよね…。僕達はそもそも五人を無事卒業まで導く為に雇われたのだ。それなら、例えどんなノルマが来ようが、やることは何も変わらないのだ。変に緊張する必要はない……。

 

悟飯「……そうだね。例えどんな条件が課されようとも、僕達のやることに変わりはないよ。だから、いつも通りにいつも以上に頑張ろうッ!!」

 

風太郎「…………なんか矛盾してないか…?いや、そう聞こえるだけで矛盾はしてないのか…」

 

確かに、矛盾してるように見えるかもしれない。でも矛盾はしてないよ。赤点を取ってしまったら転校するという条件がなかったとしても、僕と上杉君は五人に教え、五人は赤点を回避する為に勉強する。それは何も変わらない。

でも、今回の試験は上杉君を認めさせるという意味合いもある。だから、いつも通りにいつも以上頑張ろうとは、そういう意味である。

 

 

 

 

 

 

 

………何故かベジータさんとバーダックっていうサイヤ人の気が大きくなっているけど、恐らくサイヤ人同士の用事というやつなのだろう……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

超バーダック「はぁ………はぁ………」

 

超2ベジータ「どうした?それで終わりか?」

 

バーダックとベジータは戦闘を始めた。最初はお互いに互角であったが、超サイヤ人になった時点で差が出始めてきた。ベジータは超サイヤ人でいることに慣れているが、バーダックはベジータ程慣れているわけではなかった。その為、戦闘力を引き上げる時の負担がバーダックとベジータでは大分差が出るのだ。

 

それに加え、ベジータも超サイヤ人2になることによって、この勝負の結果は確定したようなものであった。

 

超バーダック「王子様も超サイヤ人を超えているとはな…。流石、エリートサイヤ人と言ったところか………」

 

超2ベジータ「残念だったな。サイヤ人の王子であるこの俺を超えられる者は、一部の例外を除いて存在せん」

 

 

シュン……

 

ベジータは勝利が確定すると、超サイヤ人化を解除し、元の黒髪に戻った。

 

超バーダック「…………なに?どういうことだ…?」

 

ベジータ「今の貴様を殺したところで何も面白くもない。今回は見逃してやる。次会う時は、せめて超サイヤ人を超えてくるんだな」

 

バシューン!!

 

 

ベジータはそう言い残すと、自身の家に帰る為に高速で飛び去っていった。

 

それに合わせて、バーダックも元の黒髪に戻った。

 

バーダック「信じられねえ…。サイヤ人の中でも冷淡で残酷だって言われていたあのベジータ4世が、敵を殺さずに見逃すだと……………?」

 

ギネ「バーダック、大丈夫かい?」

 

バーダック「ああ……なんとかな」

 




 ここでギネ初登場です。悟飯がケーキ屋に行ってタマコちゃんに会うのはなんか違う気がしましたし、風太郎なら自分が家庭教師として出向かない日は悟飯一人にでも家庭教師をお願いする気がしたので、別行動ということにしました。
 近い将来に悟飯をケーキ屋で働かせようかどうか迷っているんですけど、それはなんか違う気がしてならない……。なんというか、合わない気がする。なんとなくだけど…。どちらかというと、バイトで定期的にというよりは、人が足りない時の臨時要員として出てきた方が悟飯らしいような気がするが……。むしろボランティアの方が悟飯っぽいかな?

 投稿に時間がかかった理由としては、まあバイトもそうなんですけど、新しい展開を考えてたということもありいつもよりローペースになりました。それに伴って、オリキャラ(と言ってもオリジナル率は1割あるか怪しい)を出そうかと考えてるんですけど、皆さんは賛成ですか?反対ですか?アンケートを設置しようと思うので、答えて下さると幸いです。少しは自分で決められないのかって言われそう……。まああくまで参考程度ですので、結果によって今後の展開が確定するわけではないんですけどね……。
〜追記〜
敵キャラにオリキャラを出すという意味です。

 あと、悟飯のあだ名も何かいいのないっすかね……。あの子がそのうち悟飯に対してデレることはもう皆さん殆どの方が察してると思いますが、何かいい名前ないかな…?ゴハンから取って、『ハー君』にしようかと初期段階から考えていたんですけど、ある作品と被るんですよね〜……。別に法則に則らなくてもいい気がするし、誰かいい名前ないですかね…?『ゴー君』はちょっとおかしくない…?別に変じゃないって思う人が多いならこっちでいこうかな…?

 あと、誰か風太郎の母親の名前を知ってる方います?いくら調べても原作読んでも見当たらないんですよね。ファンブックか何かに載ってるのかな?誰か知ってる人いたら教えてクレメンス……。要求多すぎて草、我儘でごめんなさい()


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第33話 最後の試験が三玖&四葉の場合

 前回のあらすじ…。

 風太郎がタマコちゃんと会っている間、悟飯の祖母にあたるギネが地球にやってきた。ギネは、サイヤ人にしては珍しく家族思いであった。これには悟飯も困惑。あとからやってきたバーダックとひと悶着あったものの、比較的に平和な再会となった。


冬休みは終わり、3学期がとうとう始まった。学年末テストは2ヶ月ほど先ではあるけど、今回の目標が目標なだけに、既に試験勉強に本腰を入れている。

 

二乃「あんた達もクラスの進路希望調査もらった?」

 

三玖「何書けばいいか分からない……」

 

四葉「一花はすぐに書けるよね!」

 

一花「うーん…。まだ学校には言ってないんだよね〜……」

 

三玖「悟飯はやっぱり大学?」

 

悟飯「うん。西の都にある大学に通おうと思ってるんだ」

 

一花「わあ…。そもそも日本の大学は眼中にないと………。流石悟飯君……」

 

風太郎「よーしお前ら。今日も授業を始めるぞ〜」

 

五月「やりましょう…。是非やって下さい!!そして確かめて下さい!!試験突破に何が必要なのかをッ!!」

 

風太郎「お、おう……。随分気合いが入ってるな……」

 

今日は上杉君もいるからだろうか……?いつもよりも張り切っている気がする…。

 

風太郎「とにかく授業だ。目指せ30点越え!!赤点回避ッ!!!」

 

三玖「待って、その前に…。悟飯、これ食べて」

 

……何故か、最近三玖さんにやたらとチョコを食べるように要求されるのだ。一体何が狙いなんだろうか…?

 

二乃「あら、丁度甘いものが食べたかったのよ」

 

三玖「二乃にはあげない」

 

二乃「はぁ?独り占めしないでよ!」

 

三玖「……しないよ、まだ」

 

三玖さんは笑顔で二乃さんにそう言うが、『まだ』とはどういう意味だろうか…?

 

三玖「ってことで、全部食べて感想教えて」

 

………まさか、チョコを自作するつもりなのだろうか…?でも、市販のチョコを買って人に食べさせて感想を聞くことに意味を見出せないが…。……ん?僕の感想だけ聞いて何の意味があるんだ?どうせならみんなから聞いた方がいい気がするんだけど………。

 

………分からない。

 

 

悟飯「……ねえ三玖さん。僕の感想だけ聞いてどうするつもりなの?みんなの意見を聞いた方が効率的だと思うんだけど………」

 

三玖「ダメ。悟飯だから意味があるの」

 

悟飯「……?」

 

だめだ……。やっぱり何を考えてるのか分からない……。

 

五月「こんなにあるんだから私も一つくらい……」

 

三玖「ダメ」

 

四葉「もー!みんな、あと2ヶ月なんだから勉強するよ!」

 

一花「……(そっか。バレンタインなんて、今まで意識したことなかったよ…)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バレンタインまでに、悟飯が喜ぶチョコをあげるんだ……。これまでの感想を聞いて、悟飯の好みが取り敢えず分かった。どうやら甘めのチョコが好きらしい。

 

……そして作ろうと奮闘しているけど、またしてもドクロマークが出てきた。でもこれは大丈夫な方……。ダメな方が出てきてた時に比べれば進歩した方だ。

 

一花「……三玖、まだ起きてたんだ?」

 

あっ、起こしちゃったかな…?もう少し静かにした方がよかったかな…?

 

三玖「一花…。起こしてごめん」

 

一花「調子はどう?そろそろ悟飯君の好みも把握してきたんじゃない?」

 

三玖「……気付いてたんだ…。私は甘い物が苦手だからよく分からなくて……。試作品を作ってるんだ」

 

一花「えーっと、髑髏マーク出てるけど……?」

 

三玖「これは大丈夫な方」

 

一花「大丈夫な方とは……?もっとシンプルなレシピでいいんじゃない?溶かして固めるみたいな」

 

三玖「………」

 

それだと意味がない…。ただ市販のチョコを渡すことと何ら変わりない…。

 

一花「ムム…。私も料理の腕はイマイチだからなぁ……。あ、そうだ!私の知り合いに料理上手な人がいるんだ!」

 

三玖「えっ…」

 

一花「その人に教えてもらいなよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

三玖「……」

 

一花の顔が広くて助かった……。今日が約束の日だけど、料理上手な人ってどんな人なんだろう?

 

 

 

ガチャ

 

あっ、ドアが開いた…。料理上手な人が来たのかな…?

 

二乃「あれ?一人で何してんのよ?」

 

あ、あれ…?二乃か……。

 

三玖「二乃、今日は学校で勉強会のはずじゃ……」

 

二乃「一花に呼ばれてきたのよ」

 

……えっ…?いや、確かに二乃も料理が上手だけど、まさか一花の言ってた人って………?

 

 

ドンッ!!

 

 

三玖「!?ッ」

二乃「!?っ」

 

 

な、なんの音…?ビックリした……。外から聞こえたけど………。

 

二乃「何よ今の音…。ビックリした……って、こっちにもビックリだわ。美味しくなさそうだし滅茶苦茶じゃない」

 

二乃は私が作ったチョコを見ながらそう言った。……自覚しているとはいえ、率直に言われるとちょっと傷付くかも……。

 

二乃「こんなのあげて誰が喜ぶのよ?あんたは味音痴と不器用のダブルパンチなんだから、大人しく市販のチョコを買ってればいいのよ!」

 

……そんなことは自分でも分かってる。だけど、私は手作りのチョコをあげたいの……。

 

三玖「……うるさい」

 

二乃「ヒッ………!で、でも料理は真心って言うし!手作りに意味があるのよね!私だって失敗することだってあるわ!それに少し下手っぴの方が愛嬌があるし、これなんて虫っぽくて可愛いわ!」

 

……二乃が珍しくフォローしてくる…。でも二乃。虫っぽいはフォローになってないから……。

 

三玖「……最近、悟飯が私の料理を食べてくれるけど、無理している気がするんだ…。心当たりはある。私が不器用なのも知ってる。だけど作りたい…。思わず食べたくなるようなチョコ…。

 

 

だから、教えて下さい。お願いします…!」

 

私は本気だ。だから例え二乃に馬鹿にされようとも、私は悟飯に心の底から美味しいって言わせるような……チョコを作るんだ…!

 

 

二乃「……油分と分離してるわ。湯煎の温度が高いのね。それに生クリームを冷たいまま使ったでしょ?舌触り最悪…。っていうか、それ以前の問題がありすぎるわ」

 

二乃「全く面倒だわ…。準備しなさい」

 

三玖「……!!うん…!」

 

二乃「……ほんと、面倒な性格だわ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、2月14日…。バレンタイン当日になった……。ちょっと寝過ぎちゃったかも……。悟飯がもう来てたらどうしよう……。

 

五月「あっ、三玖。おはようございます」

 

風太郎「お前も二乃も何時まで寝てるんだ…?」

 

悟飯「わっ…!ふ、服がはだけてるよ!!ちゃんと着ないと!!」

 

三玖「悟飯にフータロー…。来てたんだ…。来るなら言ってほしかった。でも丁度いい……」

 

私は冷蔵庫から昨日作ったチョコを取り出した。…うん。二乃に手伝ってもらったとはいえ、我ながら上手くできたと思う……。

 

三玖「はいこれ、食べてみて」

 

悟飯「……?いつもの市販のチョコじゃないんだね?自分で作ったの?」

 

三玖「う、うん……」

 

悟飯「そっか…。じゃあいただきます」

 

悟飯はいつも通り躊躇なく口に運んだ。ここまではいつもと同じ。大事なのは、この後だ。気遣いとか一切関係なく、悟飯に美味しいって言わせたい…!

 

悟飯「…………美味しい…」

 

三玖「……!」

 

悟飯は独り言を呟くようにそう言った。多分私しか聞こえなかったけど、確かに言った。『美味しい』って……。

 

悟飯「凄いね……。随分上達してるよ!ありがとう!!」

 

三玖「……!う、うん…!」

 

 

 

やった……。

 

 

 

悟飯「……でも、こんな美味しいものをご馳走してもらったんじゃ、来月は僕も頑張らないと………」

 

三玖「……………えっ?」

 

五月「えっ!?そ、孫君!?」

 

風太郎「来月…?何かあったか?………あっ、まさか………」

 

ま、まさか…!?悟飯ってバレンタインのこと知ってたの!?そんなの知らないものだと思ってた………。

 

というか、フータローも知ってたんだ…。なんか意外……。

 

 

待って…!?それじゃあ、まさかこれが本命だって気づかれたんじゃ…!?

 

………それなら、もういっそ…!

 

 

悟飯「あっ、そうそう!やっぱり三玖さんが一番だよ!」

 

三玖「………えっ?い、一番ってそれはどういう意味で…?」

 

風太郎「なんか勘違いしてそうだから言っておくが、先日行った模擬試験の結果のことだからな」

 

三玖「……………えっ?」

 

悟飯「うん。そうだけど……、他に何かある?勘違いするようなことなんてないと思うけど………」

 

五月「孫君………」

 

 

………まあいいや。今度の試験で1位になったら………

 

 

 

 

 

 

 

 

一花「うーさむさむ…」

 

三玖「お仕事お疲れ様、一花」

 

一花「三玖、何してるの?っていうか、今日どうだった?」

 

三玖「おかげさまで大成功だったよ。ありがとう、一花」

 

一花「そっか…。それは良かったよ…!お姉さん嬉しいぞ!」

 

三玖「……一花は、フータローにチョコあげないの?」

 

一花「…!!」

 

そう。一花はフータローのことが好きなはず……。それなら、手作りとまでは行かなくても、何かしらチョコを渡すんじゃないだろうか?

 

一花「ど、どうしたの急に?そ、そりゃ誰もあげなかったら可哀想だし、お姉さんが買ってあげようかなって考えてるけど………」

 

三玖「……一花の方はライバルがいないと思ってる?もしそうだとしたら、いつの間にかフータローを取られるかもよ?」

 

一花「えっ…!?な、なんで…?」

 

三玖「この前見たでしょ?お正月に、四葉がフータローにキスしたこと」

 

一花「あ、あれは事故でしょ!四葉はケーキが食べたくて仕方なかったんだよきっと!」

 

三玖「だとしても、好きでもない男の人にあんなことするかな?私なら好きでもないのにそんなことはしない」

 

一花「………」

 

三玖「……でも積極的になれない気持ちも分かる。だって、悟飯にとっても、フータローにとっても私達はただの生徒。だから私は決めたんだ。今度の試験で赤点を回避して、五人の中で一番の成績で、そうやって自信を持って悟飯の生徒を卒業できたら………」

 

 

 

「今度こそ好きって伝えるんだ」

 

 

一花「三玖…………」

 

 

 

 

そう。あの時決めたんだ。私は誰も待ってあげない。全員公平に……。

 

 

早い者勝ちだから…!!

 

 

 

中野三玖:5教科合計???点

 

合格/たいへんよくできました

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

四葉の場合

 

四葉「もー!みんな勉強するよ!試験まであと2ヶ月なんだから!」

 

風太郎「そうだ!お前ら四葉を見習え!!」

 

 

 

 

 

私はこれ以上みんなの足を引っ張らない為に、今までよりも沢山勉強した。それでもまだ足りない気がする…。これだけだと、またしても赤点を取ってしまう気がする……。

 

そんな中、三玖は孫さんにチョコを渡す為に奮闘している様子だった。多分市販のチョコで孫さんの好みを把握して、孫さんの好みに合わせてチョコを作るのだろう。

 

私も風太郎君に………。でも今はダメ。人に見せられるような成績になってからって決めたんだから……。

 

 

 

四葉「孫さん!」

 

悟飯「…?どうしたの、四葉さん?」

 

四葉「……私、今のままじゃダメな気がするんです…。ですから、私にマンツーマンの授業をしてくれませんか…?」

 

悟飯「えっ…?でも四葉さんもよく勉強しているから………」

 

四葉「…もうみんなの足を引っ張りたくないんです。私はみんなよりもお馬鹿なので、みんなよりも頑張らないとダメなんです!だから、お願いします!!」

 

悟飯「うーん……」

 

風太郎君には約束のこともあるけど、それだけじゃない。家の借金を返す為にバイトもしているし、私達に無報酬でありながら勉強を教えてくれる……。孫さんが決して頑張っていないわけではない。だけど、風太郎君にはこれ以上迷惑をかけたくない……。

 

悟飯「でも、四葉さんは最近頑張り過ぎだって言ってるよ?五月さんも三玖さんも心配してたよ?」

 

四葉「……お願いします」

 

悟飯「……分かった。でもそれならどこで勉強しようか…?他の四人に心配をかけたくないんでしょ?」

 

四葉「……!はい!」

 

悟飯「………僕の家はどうかな?」

 

四葉「……えっ!?そ、孫さんの家ですか!?」

 

悟飯「うん。みんなに心配をかけたくないなら、みんなに会わない方がいいでしょ?」

 

う、うーん……。孫さんは女の子を自分の家に上げる意味を分かってないよね…?まあ、孫さんはそういう人だもんね……。

 

四葉「……分かりました。お願いします!!」

 

悟飯「それじゃ…。筋斗雲よーい!!」

 

孫さんがそう叫ぶと、黄色の雲が飛んできた。この雲は生きているのかな?

 

悟飯「四葉さんは多分乗れると思うけど、一応触って確認してみて?」

 

恐る恐る雲に手を触れてみた。特にすり抜ける様子はなかったので、思い切って乗ってみると……。

 

四葉「おーっ!!雲の上に乗れました!!これすごいですよ!!」

 

悟飯「それは良かったよ。じゃあ筋斗雲は僕が動かすから…………」

 

四葉「わーい!!これ凄いですね!!自分の思い通りに動かせますよ!!」

 

まるで自分の身体の一部かのように、自由自在に動かすことができる。まるで魔法の絨毯のようだ。ただ、スピードが速すぎるけど……。

 

悟飯「………もう乗りこなしてる……」

 

 

 

孫さんに案内される方向に雲を走らせる。というか、この雲でも十分速いのに孫さんはそれを超えるスピードを出せるなんて……。一体どんな鍛え方をしたらそんなことが………。

 

悟飯「四葉さん大丈夫?本当に一人で乗れる?」

 

四葉「今更何を!大丈夫ですよ!手足を動かす感覚で動かせるので!!」

 

特に問題なく孫さんの家に到着した。なるほど…。確かに自然が多い…。というか自然しかない……。

 

チチ「おや?五月さか?また来てくれただな!でも来るなら言ってけろ!」

 

悟飯「いや、この人は四葉さん……」

 

チチ「あ、あれ…?顔が凄くそっくりだから勘違いしてしまっただ…。すまねえだ!」

 

四葉「いえ!慣れてるので大丈夫です!」

 

悟飯「それじゃ、僕の部屋に案内するよ」

 

四葉「いきなりですかッ!?」

 

チチ「わあ…。悟飯、随分肉食系になっただな……」

 

悟飯「………??よく分からないけど、ただ勉強するだけだよ?」

 

チチ「そっかー!そうだ四葉さ!折角だから飯でもどうだ?」

 

四葉「いいんですか!?いただきます!!」

 

悟飯「ダメ」

 

四葉「……そ、孫さん…?」

 

な、なんか凄い怖い顔をしている…!?セルと戦ってた時よりも下手したら怖いよ!?

 

チチ「ご、悟飯…?そ、そんな怖い顔しなくても……」

 

悟飯「誰のせいで五月さんがあんなことになったと思ってるの……?五月さんだから良かったけど、他の人だったらとんでもない大事故になってたよ……?それが分かってるの…?」

 

四葉「い、五月?」

 

五月が何かの被害に遭ったんですか!?何それ!!凄い気になるんだけど!?

 

チチ「あ、あははは……。やだなー悟飯ちゃんってば!もう変な物は入れたりしねえだよ!あははは……」

 

悟飯「……とにかく、勉強するよ、四葉さん」

 

四葉「は、はい…」

 

優しい人ほど怒らせたら怖いって聞くけど、孫さんはまさにそれに当てはまるんだろうな…。絶対に怒らせないようにしよう……。

 

 

 

 

ほう。男の人の部屋は結構散らかってるって聞くけど、孫さんの部屋は綺麗に整理されている……。

 

ところで………

 

四葉「何故ベッドが2つあるんです…?」

 

悟飯「あれは悟天のベッドだよ」

 

なるほど…。悟天君と一緒に寝てるんだ…。てっきりあのベッドに五月を寝かせたのかと……。

 

四葉「そういえば、私以外にも五月を家に上げたんですよね?というか五月と二乃が家出した時に泊めたんですよね?あの時本当に何があったんですか?」

 

悟飯「………………」

 

四葉「そ、孫さん…?」

 

悟飯「あ、あまり話したくないかなー?あははは………」

 

四葉「ま、まさか…!?孫さん見損ないました!!まさか五月を襲ってしまうなんて!!」

 

悟飯「違うよ!?あれは五月さんが……あ"っ………」

 

四葉「五月が、なんです?」

 

悟飯「……四葉さん、黙秘権って知ってる?」

 

四葉「話さないなら姉妹のみんなにメールしますね!『今、孫さんの家でマウストゥーマウスをしてます』って!!」

 

悟飯「やめてッッ!?!?分かったから!!話すから!!」

 

…………なんだか申し訳ない気がしてきました…。まさかこんなあっさり折れるとは………

 

四葉「先程、孫さんのお母様のせいで五月が『あんな事になった』と言っていましたけど、一体どういうことです?」

 

悟飯「そ、それは……。あの、笑ったり引いたりしないでよ?」

 

四葉「内容にもよりますけど、大丈夫です!些細なことで孫さんを軽蔑したりはしませんよ!!」

 

悟飯「………お母さんがね、五月さんのカレーに何か薬を入れたみたいで…。お母さんは寝床を確保してないって名目で悟天をお母さんの部屋に連れて行って、五月さんに悟天のベッドを使わせたんだ……」

 

えっ…?それってつまり……。

 

四葉「そ、孫さんと五月、隣同士で寝てたんですか!?」

 

悟飯「………うん」

 

わ、わあ……。孫さんのお母さん策士過ぎませんか…?というか五月だけ有利になってません?相手側の親に交際を認められてるようなものですよね…?

 

悟飯「それだけならまだ良かったんだよ…。問題はその後………。いや、やっぱりこの話はやめにしよう」

 

四葉「……そういえば、以前私の秘密は話しましたよね?」

 

悟飯「えっ…?あっ、昔上杉君と約束した時の話?」

 

四葉「はい。私の秘密も知っているので、孫さんも私に秘密を打ち明けるべきだと思います!!」

 

悟飯「……うっ…。あまり気は進まないけど………。分かった」

 

孫さんがそこまで躊躇うということは、とんでもない何かが起きたとしか思えない…。一体何が………?まさか、既に一線を超えている関係になってたり…!?

 

……って、五月と孫さんに限ってそれはなさそう……。まあ、五月と孫さんだからね〜…。あっ!そうか!五月が孫さんに想いを打ち明けたことかな?そのことなら姉妹の全員が知ってるから全然引いたりはしませんよ!!

 

…あれ?でも私たちがそのことを知ったのも孫さんは知ってるはず…。

 

………んん!?そういえばスルーしちゃったけど、『薬』って言ってなかった!?私の聞き間違い!?

 

悟飯「その後、僕も五月さんも眠りについたかと思えば、五月さんが…………僕に覆い被さって、僕にのしかかってきて……それで…………その………き、きき、き………//////」

 

んんッ!?孫さんの顔が真っ赤!?あの時の四葉チェックと同じ反応!?というか五月が孫さんに覆い被さってのしかかった!?!?あの五月が!!?ブレーキ壊れてない五月!?

 

四葉「き…?」

 

悟飯「………キスされました…………」

 

四葉「…………まじ?」

 

悟飯「マジです………」

 

四葉「…………」

 

悟飯「…………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うえええええええええッッ!?!?!?」

 

 

 

四葉「五月とマウストゥーマウスをしたんですかッッ!?!?」

 

悟飯「したというか…。されたというべきか……。とにかく、お母さんが入れた薬のせいで五月さんは変なテンションになってたんだよ!!だから、五月さんが悪いわけじゃなくて………」

 

四葉「いえいえ!良い悪いの前に聞きたいことがあります!!五月とキスをして嫌だったのか否か!!そこが一番重要ですよ!?孫さんどうなんです!?」

 

悟飯「………………正直に言うと、嫌じゃなかった…………」

 

四葉「ほほう!」

 

ということは、今のところは五月が超有利なのでは…?圧倒的に三玖が不利じゃないッ!?

 

四葉「孫さんは五月のことどう思ってるんです?五月はご存知の通り孫さんのことが大好きです!既に告白も済ましたそうですけど、孫さんは返事されてないみたいじゃないですか!何故保留してるんですか?」

 

悟飯「……保留しているつもりはないんだよ。ただ、僕は今まで恋愛っていうものに触れたことがなかったんだ。だから、どういう感情が恋愛感情なのか分からないんだ……」

 

なーるほど。中途半端な気持ちではお付き合いしたくないと………。

 

四葉「……人を好きになるということはそこまで難しいことじゃありませんよ。この人と一緒にいたい。それだけでもいいんですよ?」

 

悟飯「えっ…?そ、それは……」

 

四葉「孫さんは難しく考えすぎなんですよ。もう少し気を楽にして考えてみましょうよ!」

 

悟飯「………うん。そうするよ」

 

四葉「それがいいです!」

 

悟飯「…って、恋愛相談をしに来たわけじゃないんだから…。勉強するよ!」

 

四葉「はい!!」

 

その日から、定期的に孫さんの家に訪ねてマンツーマン授業をするようになった。もうみんなの足を引っ張るような私にはなりたくない…!!

 

でも、五月の行動には驚いたなぁ……。まさかあの五月が……。道理で孫さんがあそこまで赤面するわけだ……。

 

 

 

 

 

 

試験まで1ヶ月を切った時、私達は集中力の限界に差し掛かり、5人とも倒れている状態だった。そんな時に風太郎君が遊園地に行こうと提案したのだ。これにはみんな驚いた。

 

久々に行く遊園地はとても楽しかった。ただ、私はここでも勉強しておきたかった。そのため、一人で観覧車に乗って勉強していた。何周もしていたので、スタッフの人が少し困った様子だった。ところが、途中から風太郎君が同じ観覧車に乗ってきた。どうやら外からもリボンが見えていたらしい。

 

風太郎君と会話をし、流れで私だけが落第したけど、みんなが私の為に転校してきてくれたことを話した。そしたらなんと、風太郎君の方からマンツーマン授業の提案をしてきてくれた。

 

そして、どうやら私は姉妹の中では国語ができるようだった。そこで風太郎君は、私がみんなに国語を教えることで成績アップを図ろうと言うわけだ。流石風太郎君…。

 

この作戦はうまく行き、みんなは順調に模擬試験の成績を伸ばし続けていた。

 

 

 

 

 

そして、試験の返却日……。

 

風太郎「四葉!試験どうだった?」

 

四葉「……上杉さん、すみません。実を言うと、姉妹のみんなに教えてもらった方が分かりやすい時もありました。不出来ですみませんでした……。そして、ありがとうございました………」

 

自分の瞼から涙が込み上げてくる。風太郎君の前で涙を見せてしまうことになるけど、それ以上に、私がこんな成績を取れたことが凄く嬉しかった……。

 

四葉「私、初めて報われた気がします……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

悟飯「………四葉さん、結果はどうだった?」

 

四葉「はい…!自分でも信じられないくらいの高得点です…!ありがとうございました!これも孫さんに見てもらったお陰です…!」

 

悟飯「……それは違うよ。僕はきっかけを与えただけに過ぎない。頑張って勉強して成績を向上させたのは、他でもない四葉さんだよ。おめでとう、四葉さん!」

 

四葉「……ありがとうございます…!」

 

悟飯「……ところで、何点だったの?」

 

四葉「それはみんなで集まった時にお見せします!」

 

悟飯「ええ!?」

 

みんな驚くだろうなぁ…。私がこんな高成績を出すなんて……。って言っても、姉妹の中でビリなのは変わらないと思うけど……。それでも嬉しいな……。

 

 

 

中野四葉:5教科合計点???点

 

合格/たいへんよくできました

 




 いつも誤字脱字報告ありがとうございます。
 さて、前回募集したアンケートについてですが、別にオリキャラじゃなくても全然ストーリーに支障が出ないことが判明したので、既存のキャラのみで行きます。オリキャラ苦手な方はご安心ください。というか、むしろオリキャラじゃない方がいいストーリーを作れるかも(笑)


 三玖と四葉の点数は次回判明します。というか、一応次回分は既に書けてるんですけどね。ただ書き上げたばかりなので、もう少し見直しします。


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第34話 最後の試験が一花&五月&二乃の場合

 前回のあらすじ……。
 悟飯は三玖のバレンタインの意図までは気付かなかったものの、バレンタインチョコであることには気付いた。そして、四葉とのマンツーマン授業も開始することになったそうだ。三玖と四葉は果たしてどれくらい点数を取れたのだろうか?

 ちなみに、前回と今回は物語は時系列順には進んでおらず、それぞれの視点ごとに分けて1月〜3月を繰り返している。

悟空「なあ、そろそろオラ出てきてもいいか?」

界王「待て!まだその時じゃないわい!」



 

最後の試験が一花の場合

 

チョコを作る三玖と二乃の様子を伺っていたら、まさかのフータロー君の襲来!四葉が参考書を忘れたとのこと。私は二人の邪魔をしない為に書店にて参考書を買ってあげることになった。

 

とほほ……。今は少し苦しい生活を送っているんだけど……。これも三玖のため…!

 

……でも、フータロー君とお買い物に来てるなんて、なんかデートみたいだな…。そう考えると楽しくなってきたかも…?

 

風太郎「なあ一花、結構いい値段だがいいか?」

 

一花「し、心配しないで!買ってくるから!」

 

ってあれ?もう一冊本を持っているじゃん?参考書とはまだ別物かな?

 

一花「おや?そっちの本は?」

 

風太郎「いや、これはいい……」

 

……まさか、まさか、あのフータロー君が…!?そうだよね!女の子に隠す本なんて、それくらいしかないよね!?

 

一花「まさかエッチな本を!?」

 

風太郎「違え!!まだ買うと決めたわけじゃないが……」

 

そう言いながらフータロー君は本の表紙を見せてくれた。……『良い教師になる為のいろは』……?ふーん……。

 

一花「いい先生になりたいんだ〜?」

 

風太郎「う、うっせー!」

 

あっ、フータロー君照れてる。もー!可愛いなぁ!

 

一花「どうせだから参考書と一緒に買ってあげようか?」

 

風太郎「自分で買えるって…」

 

一花「遠慮しないで!もしかしたら、今度こそ落第になっちゃうかもしれないからね」

 

風太郎「……ん?今度こそ?」

 

一花「あれっ?言ってなかったっけ?私達、前の学校で………」

 

 

 

………………

 

 

………

 

 

 

風太郎「じゃあこれ、よろしく」

 

一花「は、はーい…。支払いしてくるからブラブラしてて!」

 

風太郎「一花。実はお前が姉妹で一番飲み込みも早い。仕事との両立を保ててるのが何よりもの証拠だ。今度こそ合格するぞ!」

 

一花「うん。やるだけやってみるよ」

 

支払いをしている間、クラスメイトの男子に会った。そこで手を怪我していることを指摘された。さっきフータロー君に声をかけられて手をぶつけちゃった時のやつだ…。それを見て死亡寸前の人のような扱いを受けた私…。そこまで大袈裟にしなくても……。

 

そして、その後にはフータロー君にも気付かれた。だけど、彼が言ったのはたった一言。

 

 

 

『やっぱドジだな。気をつけろよ』

 

 

 

こんな言葉でも、君が言うと胸に響いてしまうんだ……。それくらいに私はフータロー君のことが好きなんだな……。

 

 

 

 

 

 

 

 

三玖「この期末試験で赤点回避をして、姉妹の中で一番の成績で、そうやって自信を持って悟飯の生徒を卒業できたら、今度こそ好きって伝えるんだ…」

 

一花「……いいんじゃないかな?それが三玖なりのケジメのつけ方なら……」

 

三玖は強いな…。私はまだ戸惑っている中で、三玖も、五月も……。みんな強いよ……。

 

一花「三玖ならできるよ。頑張ってね!」

 

三玖「一花……」

 

 

 

 

 

 

試験返却当日……。

 

四葉「あっ!一花も来ましたよ!一花は何点だったの?」

 

一花「私?私は………」

 

 

中野一花:

 

国語:51

数学:75

社会:46

理科:61

英語:57

 

合計290点

 

 

合格/たいへんよくできました

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

五月の場合

 

風太郎「今日で3学期が始まって1週間。せっかくの日曜日…。これからって時に何故五月がいない!?」

 

悟飯「確かに……。あんなに張り切っていたのにどうしたんだろう?具合悪いのかな?」

 

風太郎「是非やってください!!そして確かめてください!!……って言ってたじゃん!!」

 

一花「まあまあ…」

 

三玖「静まって」

 

四葉「でも本当にどこ行ったんだろう…」

 

二乃「ほら、五月はあれよ。今日は『あの日』なのよ」

 

悟飯「あの日…?あの日って……」

 

風太郎「………あの日?なんだよそれ、ハッキリ言えよ!!」

 

三玖「直球に聞いてきた」

 

一花「ノーデリカシーの名を欲しいがままにしているね……」

 

悟飯「……五月さんは何か用事?」

 

一花「そ、そうそう!用事なの!」

 

風太郎「なんだよ……。それは試験より大切な用事なんだろうな?もしそうじゃないなら許さねえぞ…!」

 

四葉「ううっ…。それは………。女の子には…!!」

 

二乃「いや、普通に母親の命日」

 

風太郎「……じゃあみんな、席について始めましょうかね………。って!おい、騙されねえぞ!お前らだって同じ母親じゃ………」

 

ーー

 

ーーーー

 

ーーーーーー

 

『あなたとの隠し子です』

 

『全員同じ年齢です』

 

マルオ『今日から君達は五つ子だよ』

 

ーーーーーー

 

ーーーー

 

ーー

 

風太郎「……すまん。始めよう」

 

一花「いらぬ深読みしてない…?」

 

悟飯「……もしかして、月命日なの?」

 

四葉「そうなんです。お母さんが亡くなったのは8月14日なんです」

 

悟飯「………差し支えなければでいいんだけど、死因は……?」

 

四葉「あはは…。お母さんは体の弱い人だったので、病気で………」

 

悟飯「………そっか」

 

一花「……?それを聞いて何か意味あるの?」

 

悟飯「いや、ちょっと気になっただけだよ」

 

一花「……?」

 

二乃「あの子は律儀に毎月14日に墓参りに行ってるのよ」

 

三玖「近くだからフータローと悟飯も今度お線香あげてよ」

 

悟飯「……うん」

 

風太郎「律儀ねぇ……」

 

 

 

 

……私はお母さんのようになれるのでしょうか…?お母さんのお墓の前でそう呟いた時に、お母さんの元生徒さんという下田さんに会った。下田さんは昔は不良だったそうですが、お母さんの中に信念のようなものを感じ、先生に憧れて、塾講師になったそうです。

 

お母さんは誰にも媚びずに、鉄仮面だったにも関わず、めちゃ美人だったから生徒から相当人気があり、歳が近いこともあるのか、ファンクラブが結成されるほどだったとのこと。

 

下田さんのお話を聞いて、私もお母さんのような先生になろうと、進路希望調査に記入しようとしたところ、下田さんに止められた。『お母ちゃんになりたいだけなんじゃないか?』そう言われました。

 

言われてみれば、私はお母さんが死んでからというもの、お母さんの代わりになろうと必死でした…。

 

 

でも、上杉君が考案した、生徒同士で教え合うシステムのお陰で、先生になりたい理由を見つけ出せました。上杉君には感謝しています…。教えている人に感謝の気持ちを伝えられた時のあの時の気持ちを大切にしたい……。

 

 

お母さん。私は先生を目指します……。お母さんになりたいからではなく、私の意思で………。

 

 

中野五月:

 

国語:57

数学:45

社会:39

理科:83

英語:51

 

5教科合計275点

 

 

合格/たいへんよくできました

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

二乃の場合

 

3学期が始まり、試験があと2ヶ月というところに差し掛かった。最近妙にあいつのことを意識してしまう…。でも、それはカカロット君のことが忘れられないだけ…。こいつのことなんて何とも思ってない……。

 

 

思い出しちゃダメ…………。

 

 

 

一花に呼ばれて家に戻ってみたら、三玖がいた。どうやらこの子はあいつにチョコを渡す為に作っているらしいけど、何もかもダメダメ。だけど、必死に頼んでくるもんだから、つい手伝ってあげたくなっちゃった…。

 

 

何日かかけてようやく三玖一人でもチョコを作れるようになった。

 

 

……せっかく忘れられそうだったのに、思い出させないでよ……。

 

 

 

 

三月になり、試験が返却された。赤点は見事に回避できていた。

 

………今までの日々を思い返してみると、あいつは私のことなんてなんとも思ってない。強いて言うなら、守らなければならない、か弱い生徒程度。

 

だから、あいつにはもう会わない…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

悟飯「五月さんは何点だったの?」

 

五月「私は5教科合計で275点です」

 

風太郎「成長したな…。三玖はどうだったんだ?」

 

三玖「私はね……」

 

 

中野三玖:

 

国語:55

数学:58

社会:85

理科:52

英語:41

 

 

合計291点

 

 

 

 

 

五月「す、凄いですね三玖!!」

 

風太郎「この調子だとやはり三玖が一番だろうな。流石だぜ、三玖」

 

三玖「う、うん…!」

 

四葉「あっ!一花も来ましたよ!一花はどうだった?」

 

一花「私は赤点なかったよ。みんなは?」

 

四葉「おお!!これであとは二乃だけだね!」

 

風太郎「一花は何点だったんだ?」

 

一花「私?私は290点」

 

五月「!?凄いですね一花!!」

 

四葉「三玖と僅差だよ!!」

 

一花「!?三玖は何点だったの?」

 

 

周りの反応を見て一花は自身が点数を高く取りすぎてしまい、三玖を超えてしまったことを懸念した。

 

 

三玖「私は291点。あと少しで一花に負けるところだった……」

 

一花「よ、よかった…。ということは、三玖が一番じゃない?おめでとう!」

 

だが、僅差で三玖がトップに立っていることを確認できた。この事実に一花はホッと胸を撫で下ろした。

 

三玖「うん…!」

 

店長「そうだ上杉君。二つ結びの子が先に来てこれを置いてったけど」

 

風太郎「それは…!試験結果の紙!?」

 

店長「それと伝えようと思ってたけど、彼女から伝言」

 

 

 

『おめでとう。あんたらは用済みよ』

 

 

中野二乃

 

国語:43

数学:42

社会:59

理科:51

英語:67

 

 

合計262点

 

合格/たいへんよくできました

 

 

 

四葉「やったー!!これで全員赤点回避だッ!!」

 

悟飯「みんな凄いけど、その中でもよく頑張ったのは三玖さんと一花さんだね!」

 

三玖「……悟飯、前に言ってくれたよね?私を一番優秀にしてくれないかって」

 

悟飯「うん。言ったね。懐かしいなぁ…」

 

三玖「悟飯のお陰でここまで来れたんだよ?私はそんな悟飯のことが……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

四葉「みんな見て見て!!きっと驚くと思うよ!!」

 

四葉はここぞというタイミングで、自身の詳細な成績をみんなに公開した。その成績は……………。

 

一花「……えっ!?!?それ、本当に四葉の成績表…?」

 

風太郎「なん……だと…!?」

 

 

 

中野四葉

 

国語:78

数学:47

社会:56

理科:49

英語:63

 

 

合計293点

 

 

 

風太郎「一番危なかった四葉が、一番の成績を取った………だと…!?」

 

三玖「……………えっ?」

 

五月「す、凄いですよ四葉ッ!!!!一体どれほど勉強を!?!?」

 

四葉「えへへ…。もうみんなの足を引っ張りたくないから、死ぬ気で頑張ったんだ……」

 

悟飯「す、すごいね、四葉さん………。少なくとも、前回のテストまでは姉妹の中では一番低かったのに……」

 

四葉「それもこれもみんなのおかげです!本当にありがとうございます!!」

 

 

四葉はここまでの成績に至ったのは、林間学校後に、悟飯が四葉を応援することを決意した時から始まった個別指導、3学期に入ってから本格的に始動したマンツーマン授業、そして、風太郎のマンツーマン授業も受け、自習も欠かさなかったからである。

 

四葉はみんなよりも勉強ができない。だからこそ、みんなよりも勉強をして、みんなよりも高い成績を獲得できたのだ。

 

 

風太郎「凄いじゃないか、四葉!もう五人の足を引っ張るお前はいねえよ!!」

 

四葉「……えへへ」

 

三玖「……四葉おめでとう…。私もまだまだだね…」

 

四葉「そんなことないよ!三玖だってすごいよ!」

 

一花「………」

 

この結果に一花は素直に喜べなかった。三玖の目的を知っていたからというのもあるが、もしも四葉が三玖の目的を知ったとしたら、間違いなく四葉が罪悪感に苛まれるからだ。

 

 

五月「私達ばかりでなく、上杉君は何点だったんですか?」

 

風太郎「あっ!やめろッ!!見るな!!」

 

五月「あっ!危ない……。また罠にかかって100点の自慢をされるところでした……」

 

風太郎「チッ、無駄に賢くなりやがって…」

 

四葉「やっぱり気に入ってたんですね……」

 

店長「試験突破おめでとう!今日はお祝いだ。上杉君の給料から引いておくから好きなだけ食べるといいよ」

 

風太郎「もー!店長ったら冗談ばっかり!!」

 

悟飯「えー!?いくらなんでもそれは悪いですよ!僕が払います!!」

 

店長「いや冗談だよ。今日は店の奢りだから好きなだけ食べるといいよ」

 

悟飯「いや、それも悪いですよ…。せめて何かお手伝いさせて下さい…」

 

店長「そう?じゃあお言葉に甘えちゃおうかな?」

 

風太郎「店長……………」

 

四葉「ありがとうございます!」

 

五月「でも、まだ一人来てないんです」

 

店長「ああ…。二つ結びの子かな?」

 

悟飯「だったら僕が連れて来るよ」

 

風太郎「おう。助かる」

 

四葉「二乃をお願いしまーす!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

見事に五人とも赤点を回避することができた。もう僕達がいなくても、赤点回避することができるだろう。

 

そう考えると、少々寂しいものがあった。なんだかんだ言って、家庭教師の仕事を半年も続けてきたのだ。最初は二乃さんや一花さんを始め、なかなか勉強してくれなかった。二乃さんに至っては、僕と上杉君を認めないとまで宣言したのでビックリしたっけなぁ…。

 

でも、時間が経つうちに、二乃さんも僕達を拒否するようなことはなくなった。

 

四葉さんは、実は昔に上杉君と会ったことがあり、勉強したけど思うように成績が伸びずに挫折しかけたこと。

 

林間学校では、サイヤ人の襲来があり、僕の正体を五月さんに知られてしまったし、二学期の期末テスト前なんかは二乃さんと五月さんの大喧嘩が起こり、五月さんを匿う形で僕の家に泊めた。そこであんなことがあり、五月さんが林間学校の時から僕のことを好きでいてくれたことも知った。

 

この半年、本当に色々あった。僕の場合は家庭教師の業務が終わっても、ボディガードを任されている。学校も同じだし、五月さんに至ってはクラスも同じだから、みんなに会わないということはない。

 

だけど、いつもの日常が少し変わるだけで、寂しい思いが出てきたりする。

 

……結局、みんなに僕の正体が知られちゃったのか……。僕って本当に隠し事が苦手なのかな………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

マルオ「……帰ってきたか、二乃君」

 

二乃「パパ。その君付けやめてって言ってるでしょ」

 

マルオ「悪かったね、二乃。先程全員から赤点回避の連絡をもらったよ。君達は宣言通りに七人でやり遂げたわけだ。おめでとう……」

 

二乃「あ、ありがとう……」

 

パパからこんな風に素直にお祝いされるなんて、今まであったかしら…。引き取ってもらった後から、私達とパパが顔を合わせた回数は少ない。

 

マルオ「……どうやら上杉君を認めざるを得ないようだね。だから明日からはこの家で……」

 

二乃「……あいつらとはもう会わない。それと、もう少し新しい家にいることにしたわ」

 

マルオ「……なんだって…?」

 

二乃「試験前に五人で決めたの。当然一花だけに負担はかけない。私も働くわ」

 

そう…。自立なんて立派なことはしたつもりはないし、正しくないのも承知の上。普通に考えれば、元の家に戻った方がいいに決まっている。でも……

 

二乃「あの生活が私達を変えてくれそうな気がする…。少しだけ前に進めた気がするの!今日はそれだけ伝えにきたの」

 

マルオ「……理解できないね。前に進むなんて抽象的な言葉になんの説得力もない。君たちの新しい家とやらも見させてもらったが、僕にはむしろ逆戻りしているようにも見える」

 

 

えっ…!?パパは新しい家の住所なんて知らないはず…!!

 

……まさか、江端さん…?

 

マルオ「五年前までを忘れたわけではあるまい?もうあんな暮らしは嫌だろう?いい加減我儘は……」

 

 

 

 

 

 

ヒュー スタッ

 

パパが言い切る前に、そいつは空から黄色の雲に乗って現れた。

 

悟飯「二乃さん、もう打ち上げ始まっちゃうよ?早く行こうよ」

 

二乃「あんた……」

 

マルオ「……君が孫君だね。この度は娘達を赤点回避に導いてくれてありがとう」

 

悟飯「どうも中野さん。僕だけの力ではありません。上杉君と中野さんの娘さん達五人の努力があってこその今回の結果です。僕はきっかけと知識を与えただけに過ぎません」

 

 

マルオ「そんなに謙遜しなくてもいいよ。あと、僕のことはマルオと呼んでくれて構わない。……話は変わるが、君からも言ってほしい。娘達に元の家に戻るように…」

 

悟飯「……確かに、今の家にいるよりも、元の家にいる方が金銭面でも、生活面でも、勉学面でもいいでしょう」

 

 

……やっぱりそうよね。なんとなくだけど、私達七人の中では、こいつは一番パパ寄りの考えなのは何となく分かっていた。

 

 

悟飯「だけど、娘さん達にとって重要なのは、どこにいるかではなく、五人でいることなんだそうです」

 

マルオ「だったら五人で元の家に帰るといい。それなら元の生活水準にも戻るし、それぞれの負担も減るし、五人で一緒に居られることに変わりない」

 

悟飯「……仰る通りです。でも、もう少しだけ、五人の我儘を聞いてあげてくれませんか?」

 

二乃「あんた……」

 

マルオ「……これでも十分我儘を聞いてあげた方だと思うのだがね…。娘達が進もうとしているのは茨の道。後悔する日が必ずくる。それでも君は、娘達の我儘を聞き入れろと、そう言うのかい?」

 

悟飯「…挑戦することによって得られることもありますし、後悔することによって得られるものもあります。だから、どうかお願いします……」

 

マルオ「………」

 

こいつはパパに頭を下げた。そこまでする義理はこいつにはないはずなのに…。

 

どこまでお人好しなのよ……。

 

マルオ「……頭を下げないでくれ。だが一つだけ言わせてもらおう。君も既に承知だと思うが、娘達のボディガードとしても雇っている。娘達に何かあったら、ただでは済まさないよ?」

 

悟飯「例えこの身が滅びようとも、娘さん達を……。地球を守ります。それが僕の父親との約束でもありますので………」

 

マルオ「……そうかい。打ち上げがあるんだろう?二乃、早く行ってあげなさい」

 

二乃「……ありがとう、パパ…。私達を見てて」

 

 

ビューン!!!!

 

 

私が黄色の雲に乗ると、孫は私に配慮しているのか、かなり抑えたスピードで飛び立った。

 

マルオ「……江端、めでたいことに娘達が全員試験を突破したらしい。僕は笑えているだろうか?」

 

江端「勿論でございます……」

 

マルオ「………そうか。父親だからね。当然さ……」

 

マルオは当然笑顔ではなかった。かと言って険しい顔をしているわけでもなく、何か悩んでいるようにも見えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……今、私は孫と空中散歩と言うべきなのかしら?とにかく、空を飛ぶ黄色い雲の上から夜景で輝く夜の街を眺めていた。

 

……こいつが白馬の王子様で、私はその後ろに乗るお姫様……。で、白馬はこの黄色の雲……。ヘンテコな白馬の王子様ね…。せめてバイクなら…………。いや、こいつにバイクは似合わないわ…。

 

 

二乃「あんたは用済みだって言ったはずだけど?」

 

悟飯「まあまあ、一応僕はまだ家庭教師だから……」

 

二乃「……っていうかこの雲…」

 

悟飯「ああ、これ?筋斗雲って言うんだ。お父さんが昔よく乗ってた乗り物なんだ」

 

二乃「ふーん…。まあ、あんたがバイクに乗って来るよりかはまだ似合うかもね」

 

悟飯「あはは……。僕もそろそろ人目を気にするなら、バイクの免許とかも取った方がいいかもしれないね……」

 

二乃「あんたのバイク姿なんて、超絶似合わないわ」

 

悟飯「あはは………。そういえば、もう聞いてるかもしれないけど、他の四人も無事試験を突破したよ」

 

二乃「えっ?何!?風で聞こえない!!」

 

悟飯「そうか…。じゃあ着いたらみんなから聞いて。みんなを待たせたら申し訳ないから、ちょっと飛ばすよ?しっかり掴まってね?」

 

 

 

(……こうして長かった僕の家庭教師の仕事も一区切り。卒業まで多少の不安はあるが、五人は一つの壁を乗り越えたのだ。その経験は、きっと進級してからも役立つだろう。そうなると、僕達家庭教師は本当に用済みになるのかもしれない。さっきも思ったことだけど……)

 

 

 

悟飯「こうして会話するのも、これが最後なのかな……?ちょっと寂しくなるね……」

 

二乃「……」

 

 

最後……か。

 

確かに、生徒と教師として会話するのはこれが最後になるのね。これからは普通の同級生。

 

そう考えると、こいつとの距離が離れるように感じる。

 

……不思議よね。最初はむしろ離れてほしかったくらいなのに、今はその逆。

 

最初、こいつと出会った時は最悪の気分だった。いつの間にか三玖がこいつに惹かれてるし、まさかあの五月も想いを告げているし……。

 

でも、楽しい思い出もあったわね…。

 

 

金髪のこいつが、私が崖から落ちたところを助けてくれて………。

 

何気ない会話をして…………。

 

一緒にお菓子作りをして……………。

 

 

こいつが宇宙人と戦って……。セルとも戦って………。

 

私達を守る為に必死に戦うそいつの姿は、テレビで見た金髪の男の子より、最初に出会った『カカロット君』より…、普段のこいつよりもカッコよく見えた。

 

 

 

 

………ああ。なんだ。私………。

 

 

二乃「ねえ……」

 

悟飯「うん?」

 

 

 

カカロット君じゃなくて、こいつのこと、いつの間にか…………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「好きよ」

 




*補足

 四葉が姉妹の中で1番の得点を取ったことにより、意図せず三玖の告白を阻止する形になってしまいました。どうしてこんな構図にしたのかというと……。


 過去編にて、四葉が風太郎の約束を果たす為に勉強に力を入れ始めた時、四葉はゲームを捨てようとしますが、三玖がやりたいとのことで、三玖にゲームをあげることにしました。これによって三玖は武将物のゲームにはまり、武将好きになりました。
 これがきっかけとなり、三玖の成績は上がり、勉強しているはずの四葉よりも高い点数を取りました。それによって四葉は傷付いたと思います。

 今回はその逆です。意図していないにも関わらず、まるで仕返ししているかのような構図にしたかったのでこのような形にしました。悟飯と四葉がマンツーマン授業をするようにしたのも、悟飯が四葉だけには毎日問題を送信するようにしたのもこの為だったりします。


 二乃が筋斗雲に乗れたことに違和感を抱いた人は多いかと思いますが、この時の二乃は純粋に恋する乙女になってたので乗れました。普段の二乃は乗れません(特に初期の睡眠薬を飲ませにきた頃とか)

 つまり、今回限定というわけなのですよ。2%〜



 ようやく二乃の告白に辿り着いた…!さてさて、ここからヒロインレースが大変なことになる………かも?


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第8巻(上)
第35話 押してダメなら更に押す


 前回のあらすじ……。

 前回にて、四葉が姉妹の中でトップの成績を収めるという偉業を成し遂げた。これも血の滲むような努力のお陰なのだが、意図せず三玖の告白を阻止してしまったことを四葉は気付いていない……。

 五月は教師になる決意をし、二乃も赤点を回避。これにてノルマを達成し、みんなで赤点を回避することができたのだ。

 しかし、悟飯と二乃が筋斗雲に乗っている時、二乃がまさかの告白…!これに悟飯は気付いているのか否か、果たして………?

悟空「……モテ過ぎじゃねえか?」



悟飯と二乃は筋斗雲のお陰で、あまり時間をかけずにケーキ屋に到着することができた。

 

四葉「孫さーん!二乃を連れてきてくれたんですね!こっちですよ!」

 

悟飯「うん!」

 

二乃「……(言っちゃった…!言っちゃった…!!こいつが好きだなんて、どうしちゃったの私ッ!?初めての告白なのに……。なんで突然言っちゃったんだろう……。あーどうしよう!…………っていうか、なんでこんな無反応なのよ!?)」

 

二乃は、先程筋斗雲の上で悟飯に告白をしたものの、悟飯が反応を示さないため、少々機嫌が悪くなっていた。

 

二乃「ねえ、さっきの話だけど…」

 

店長「孫君、だよね…?丁度よかった。食器洗いできるお願いしたいんだけど」

 

悟飯「はい!それくらいなら!」

 

二乃「……ふん…。いいわ。後でにしてあげるわよ」

 

 

 

四葉「期末試験突破お疲れ様〜!!」

 

 

「「「「「かんぱーい!!」」」」」

 

 

三玖「本当に赤点回避できるとは思ってなかった」

 

四葉「うんうん!この答案用紙を額縁にいれて飾りたいよ!」

 

一花「それはもうちょっといい点数取ってからにしようよ…。嬉しい気持ちは分かるけど……」

 

二乃「お祝いだからってこれだけ贅沢しても大丈夫かしら?」

 

二乃達が座る席のテーブルの上には、一人ずつそれぞれ違う種類のケーキが用意されていた。どれも値段が張りそうな物ばかりである。

 

五月「店長さんがご祝儀としてご馳走してくれるそうですよ」

 

二乃「……ちょっと待って。上杉はバイトしてるから分かるけど、孫はなんでキッチンに入っていったのよ?」

 

一花「悟飯君はタダでケーキをもらうわけにはいかないから何か手伝わせてほしいって言ってたよ?それで、店長さんがその言葉に甘えたってわけ」

 

三玖「変に律儀…」

 

四葉「孫さんらしいね!」

 

五月「…それにしても、私達の注文する商品はやはりバラバラですね……」

 

四葉「まあこれは平常運転だね…」

 

三玖「……はい、四葉」

 

四葉「えっ?何これ?」

 

三玖は自分のケーキの一部をフォークに刺し、四葉に差し出す。

 

三玖「現文の問題、四葉の予想がドンピシャだった」

 

五月「そうでしたね」

 

二乃「あれは助かったわ」

 

一花「じゃあ私も!」

 

二乃「私も」

 

四葉「えええ!?」

 

三玖だけでなく、一花、二乃、五月も四葉にケーキを差し出した。四葉は少々戸惑いながらも、それぞれ口にして……。

 

四葉「……ししし…!おいしいね!」

 

それだけ述べた。

 

四葉「あっ!でも、それを言ったら私もみんなに助けてもらったからお返ししないと…」

 

二乃「それを言ったら私も……」

 

五月「では少しずつシェアをしましょう。きっとこの試験もそうやって突破できたのですから……。しかもいろんな味が楽しめてお得です!」

 

一花「本当はそれが目当てじゃ……」

 

せっかくいい感じの台詞を言ったのに、五月が平常運転過ぎるので台無しである。

 

三玖「……四葉、本当にありがとう…。それにおめでとう。次は負けないから」

 

四葉「……?うん!」

 

四葉は何故『次は負けないから』と三玖に言われたのか、イマイチ要領を得ない感じであった。それもそのはず、三玖が一位に拘る理由を知る由もないので仕方ない。

 

二乃「まさか一番危なかった四葉が一番とはね……。意外」

 

四葉「あはは…。今回は本当に死ぬ気で頑張ったからね…。わっ!五月のケーキ美味しい!」

 

五月「ええ、私のおすすめです。もう一度食べたかったのですよ」

 

三玖「もう一度って……」

 

二乃「いつの間に一人で来てたのよ…」

 

一人で来たわけではなく、下田と会った際に奢ってもらった時の話であるが……。

 

五月「えっと、その時もご馳走になりまして……。…みんなに話しておきたいことがあるのですが…。私、学校の先生になりたいです……」

 

三玖「えっ…」

 

一花「それって………」

 

五月「も、勿論過ぎた夢ではありますが……」

 

四葉「いいと思う!五月の授業分かりやすかったもん!!ピッタリだよ!!」

 

五月「四葉……」

 

一花「当然私も応援するよ!」

 

三玖「じゃあ五月は大学を受けるんだ…」

 

二乃「いよいよ三年生って感じね」

 

四葉「あっ、進級と言えばお父さんに伝えないと……」

 

一花「一応私がしといたけど、返事がまだ……」

 

二乃「それなら大丈夫よ。さっき私が直接話したから」

 

一花「やっぱりマンションに行ってきたんだ」

 

五月「それで、お父さんはなんと?」

 

二乃「当たり前だけど、あまりいい反応はもらえなかったわ。今はまだ甘えさせてもらってるけど、いつかケジメをつけないといけない日が来るはずだわ」

 

三玖「でも、マンションに行ったにしては帰ってくるのが早かった」

 

二乃「それはあいつが雲に乗って来たからよ」

 

「「雲…??」」

 

筋斗雲の存在を知らない一花と三玖はイマイチ理解できていないようだった。それも仕方のないことで、普通は雲の上に人が乗ることなどできない。しかし、筋斗雲に乗ったことのある五月と四葉はすぐに理解した。

 

五月「西遊記に出てくるような黄色い雲のことですよ。心の綺麗な人は乗れるそうですよ」

 

三玖「へぇ…。まあ悟飯は私達の常識が通用するような人じゃないから嘘ではないんだろうけど……、二乃がいい子…………?」

 

二乃「ちょっと何よ?私がいつ悪いことしたってのよ?」

 

三玖「睡眠薬」

 

二乃「ミニオボエガナイワ」

 

二乃は即答で否定するが、少し片言になっている。

 

一花「へぇ…。じゃあ夜の街を空中散歩してきたってわけかな?意外とロマンチックなことをするじゃん、悟飯君」

 

二乃「……そうね。だからあんなことを………」

 

五月「……あんなこと?」

 

二乃「あっ!お皿片付けてこよっかな!!」

 

二乃は誤魔化すかのように席から立ち、キッチンに向かった。

 

三玖「あんなことって……なんだろう?二乃が焦ってるなんて珍しい……」

 

五月「なんだか嫌な予感がします」

 

四葉「??」

 

案外、その嫌な予感は当たっていたりする……。

 

一花「じゃあ私もお手洗いのついでに手伝うよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

店長「よし、ひと段落…。僕は少し休憩を入れるからよろしくね上杉君。それから孫君も、今日はわざわざありがとうね」

 

悟飯「いえいえ。ご馳走してもらったのでこれくらいはさせて下さい」

 

一方その頃、悟飯達はキッチンにて食器洗いをしていた。

 

店長「凄くいい子じゃないか…。上杉君の友達だとは思えないよ」

 

風太郎「失礼ですね…。あっ、店長。プリンを一つ取り置きしてもいいですか?」

 

店長「いいけど、好きだっけ?」

 

風太郎「いえ、バレンタインのお返しに」

 

店長「!?君は仲間だと思ってたのに…。裏切り者……」

 

風太郎「妹のですけど……」

 

店長「な、なんだ…。そういうことか…。てっきりあの五人のお友達からかと思ったよ」

 

風太郎「あり得ないですよ」

 

店長「孫君もどうだい?ホワイトデー用に1つ取り置きしていかないかい?」

 

風太郎「店長、なんか悟飯には優しくないですか…?」

 

悟飯「いえ、相手も手作りをくれたので、僕も手作りで返そうかなと……」

 

店長「裏切り者っ!!」

 

悟飯「ええっ!?」

 

突然裏切り者扱いされた理由が悟飯には分からず、ただただ困惑する。

 

風太郎「気にするな。店長は情緒不安定だからな」

 

悟飯「あはは………」

 

風太郎「俺はそろそろプリンを取ってくるわ。悪いが一旦ここ頼めるか?」

 

悟飯「うん」

 

っと、そこに………。

 

二乃「ご苦労様…。って、店長さんは?」

 

風太郎「今奥に行った。何か用があったのか?」

 

二乃「そ、そう…。お礼を言おうと思ったんだけど…、少し待とうかしら」

 

風太郎「そうか。じゃあ俺はプリンを取り置きに行ってくる」

 

風太郎は決して察したわけでも、気を使ったわけでもないが、意図せず二人きりの状況が出来上がった。その状況を都合よく思った二乃は、さっき聞きたかったことを聞こうと思ったが、イマイチ踏み出せずに、悟飯の手伝いをすることにした。

 

悟飯「二乃さんは別にやらなくてもいいのに……」

 

二乃「それを言ったらあんたもでしょう?」

 

二乃が加わったことによって、想定よりも早く食器を洗い上げてしまった。

 

悟飯「よし、全部終わったね。店長さんには僕から伝えとくから、座って待っててよ」

 

二乃「そ、そうね!そうするわ!」

 

二乃はそのまま戻ろうと歩み始めたが、このままではダメかと思ったのか、途中で立ち止まった。

 

悟飯「……?どうしたの?」

 

二乃「……やっぱり筋斗雲の上で言ったことは忘れてちょうだい……」

 

悟飯「あ〜…。好きって言ったこと…?別にいいけど……、わざわざ言わなくても……」

 

二乃「……!?(こ、こいつ!?)」

 

二乃は一旦忘れて欲しいと思いつつも、自身の人生初の告白をこんなにも軽く扱われることに怒りを覚えた。

 

二乃「あ、あんたねぇ!!それはそれでどうなのよ!!」

 

悟飯「えっ…?でも、二乃さんが忘れろって言うから………」

 

二乃「あ、あれは…!恥ずかしいっていうか……。アクセルを踏みすぎたっていうか………」

 

悟飯「………?そんなに恥ずかしいことかな?」

 

二乃「はぁ!?(な、何言ってんのこいつ!?人生初の告白が恥ずかしくないわけないでしょ!?)」

 

悟飯の反応に困惑する二乃。しかし、次の悟飯の台詞によって、二乃は悟飯の反応に納得するのであった。

 

悟飯「だって僕と会話をするのが好きって意味だったんでしょ?」

 

二乃「…………はっ?」

 

一体どう捻くれたらそんな結果に辿り着くのだろうかと呆れる二乃。だが、強ち間違っていない。好きな人と会話することが嫌いな人はいないだろう。

 

悟飯「あっ、それとも筋斗雲に乗るのが好きって意味だった……?いや、二乃さんのことだから、筋斗雲の上から見る夜景が好きって意味なんじゃないかなー?ロマンチックなの好きなんでしょ?」

 

悟飯は名推理を言ったとでも言わんばかりの顔をしながらそう語るが、論外レベルの回答である。確かに、二乃はそういったことが好きである。しかしながら、悟飯に対して言った『好き』という意味はもっと単純である。

 

二乃「呆れた…。もういいわ!!」

 

悟飯「ええ!?二乃さん!?」

 

二乃の怒りは沸点を超えたのか、キッチンから駆け足気味に去った。

 

二乃「……(何よ…。一体どう考えたらその結論に至るのよ…。これでハッキリしたわね。あいつにとって私達は恋愛対象外。三玖のバレンタインには一応気付いていたみたいだけど、あの様子じゃ三玖の想いには気づいてなさそうだし………。むしろ気付かれなくて好都合だわ!!)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

悟飯「うーん………。僕、何か怒らせるようなこと言っちゃったかな?」

 

悟飯は二乃を怒らせてしまった原因を考察してみるが、何故怒ったのかが全く分からない。

 

悟飯「……四葉さんなら分かるかな?」

 

そう考えていると、足音がしたので、店長が休憩から戻ってきたのかと思い、悟飯は洗い物が終わったことを伝える。

 

悟飯「店長さん。もう洗い物は終わりましたよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

二乃「あんたを好きって言ったのよ

 

 

しかし、そこに現れたのは、休憩から戻った店長ではなく、先程不機嫌になって席に戻ったはずの二乃であった。

 

悟飯「………へっ?(二乃さんが好き?誰を?あんた…?まさか僕?)」

 

悟飯はようやく二乃の言っていた『好き』という意味を理解する。五月の場合は、生命の危機から救ったからまだ自身に惚れてしまうのは分かった。しかし、二乃がそうなる理由が全くと言っていいほど思いつかない。

 

そもそも、最初はあんなに嫌われていたのに?睡眠薬を使って追い出そうとしていたのに?

確かに最近は拒絶されるようなことはなくなってはいたが…………。

 

 

悟飯「あはは!いやだなぁ二乃さん!いくら僕でもその嘘には騙されないよ?悟天でももうちょっと上手い嘘をつくよ?」

 

二乃「………言い逃れのできないようにしてあげるわ。あんたを男として好き。異性として好き。私はそう言ったのよ」

 

しかし二乃はめげずにアタックする。

 

悟飯「あ、あはは……。そんなムキにならなくても……」

 

二乃「そりゃムキになるわよ。乙女の人生初の告白をここまで粗末に扱われているんだから………」

 

悟飯「………まさか、本当に…?」

 

二乃「さっきからそうだって言ってるでしょ」

 

悟飯「…………へっ?」

 

ようやく二乃の告白が嘘でないことに気付くと、悟飯は心底驚いてしまう。でもそれは仕方のないこと。出会った当初はあんなに嫌われていたのに、今は異性として好きと断言されている。『私はあんたを認めない』と言われたことを悟飯は未だに鮮明に覚えている。だからこそ、二乃の告白には困惑した。

 

悟飯「に、二乃さん……?」

 

二乃「返事は求めてないわ。本当にムカつく。対象外なら、無理にでも意識させてやるわ…」

 

二乃は更に畳み掛けるように、鈍感な悟飯でも気づくように…。いや、既に気付いているが、念を押すようにアタックをする。

 

二乃「あんたみたいな鈍ちん野朗でも好きになる女子が、地球上には一人くらいはいるって言ったわよね?」

 

 

二乃が家出した時に確かに聞いた。そして続け様に………。

 

 

二乃「それが私よ…!残念だったわね…!」

 

 

顔を赤らめながら、そう言い切った。

 

いくら天然で鈍感な悟飯でも、やっと二乃の想いを認知し、理解した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その告白を聞いていた者が約2名いた。その約2名は、二乃と悟飯に気づかれないように、声量を抑えて会話する。

 

風太郎「……はっ?あれマジか?」

 

一花「二乃があんな嘘つくわけないよ…」

 

風太郎「嘘だろ………。俺が取り置きに行ってる間に何があった………」

 

突然の展開に、ただただ困惑する一花と風太郎であった…………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

最後の試験が悟飯の場合

 

 

さて、もう3学期が始まってしまったので、マルオさんに上杉君を認めさせる為に頑張るぞ!

 

五月さんはやる気と気合いが十分!今までとは明らかに違う。でもそれ五月さんだけでなく、他のみんなにも言えること。

 

特に、四葉さんに至っては、マンツーマン授業を要求された。四葉さんは五人の中でもかなり勉強している方なのに、それでも尚、教えてほしいというのだ。僕も家庭教師。その思いに応えないわけにはいかないし、何より四葉さんが勉強をこんなにも頑張る理由を僕は知っている。だからこそ僕は四葉さんも全力で応援する。

 

……でも、3学期に入ってから三玖さんが毎日のようにチョコをくれるんだよね。というか、食べることを強制されている。一体どういうことだろう?

 

 

 

 

 

チチ「それはバレンタインに備えてるだよ!」

 

悟飯「へっ?」

 

バレンタインと言えば、お世話になった人や、好きな人に送るっていうあの……?

 

チチ「んだ!悟飯の好みを把握する為に色々な味のチョコを食べてもらってるんでねえか?」

 

………言われてみれば、色々なメーカーのチョコを食べたっけ?甘いもの、極甘のもの、少々苦いもの、苦いもの、ホワイトチョコレート、いちごチョコなど、様々なものを食べた。

 

………でも、三玖さんが僕に…?

 

 

悟飯「そっか!日頃から家庭教師でお世話になっているからか!わざわざそんなことしなくてもいいのに……」

 

チチ「…………はぁ………」

 

何故かお母さんは大きく溜息をついた。

 

チチ「……悟飯。もしもその子が悟飯のことが好きで頑張っているとしたらどうするだ?」

 

悟飯「へっ…?」

 

チチ「いい加減鈍感キャラは卒業してもらわなきゃダメだべ。女子をちゃんと見てあげるだよ!女子ってのは案外繊細な心を持ってるんだべ!些細なことで傷付いちまうだぞ?」

 

悟飯「………分かった」

 

……しかし、よく考えてみると、三玖さんは僕のことが好きなのだろうか?キャンプファイヤーのフォークダンスに誘ったのも、勤労感謝の日のお出かけも……。まさかそういう意味だったのか…?

 

………でも、五月さんみたいに告白されたわけでもないのに決め付けるのは、なんというか…。自意識過剰というか、ナルシストではないだろうか…?なんか僕はそういうのが苦手だ…。あはは…。

 

 

 

 

 

2月14日。三玖さんは本当にチョコを作ってきた。しかも手作り。今までの料理からは考えられないくらいに美味しいチョコに仕上がっていた。こんなに美味しいものをいただいたからにはそれ相応のお返しをしないと…。それをお母さんに言ったら……

 

 

チチ「手作り!?そりゃもう本命だろ!?義理なわけねえだ!!」

 

悟飯「そ、そうかな…?」

 

チチ「なら悟飯もしっかりとお返ししねえとダメだぞ!!テストが終わったらチョコの作り方を教えてやるだ!!しっかりお返ししてやるだぞ!」

 

悟飯「う、うん………」

 

こうして、僕はホワイトデーに三玖さんに手作りチョコをお返しすることにした。三玖さんは抹茶が好きなんじゃなかったっけ?どうせなら抹茶チョコとかにしたいな………。

 

 

 

でも、実は三玖さんからだけでなく、五月さんからもチョコをもらった。

 

五月「そ、孫君…!良かったらこれ、どうぞ!」

 

悟飯「えっ…?いいの?」

 

五月「……あなただからあげるんですよ///」

 

そう。五月さんは僕のことを好きでいてくれている。だからこのチョコも…。

 

五月「三玖のように手作りというわけにはいきませんでしたが……」

 

悟飯「ううん、ありがとう!嬉しいよ!」

 

五月「ホワイトデー、期待してますね♪」

 

………失礼なのは承知だが、五月さんはホワイトデー目的で僕にチョコをあげたのでは?と考えてしまうような返答だった………。まあ頑張るけどさ。

 

 

 

 

そして、3学期の期末テストが終了し、結果が返ってきた。僕は一応全教科満点をキープしている。この結果だから順位は当然一位。しかし………。

 

風太郎「マジで恥ずい。一生の不覚…」

 

まさかの上杉君が点を落としたのだ。今までずっと満点だったのにも関わらずに……。

 

悟飯「す、凄い珍しいね……」

 

風太郎「本当に恥ずい……。家庭教師、俺に対してもお願いできないか…?金なら……」

 

悟飯「いや、お金は貰わなくてもいいって……。僕はもう十分もらってるから……」

 

風太郎「すまん…。働き始めたら返すから……」

 

悟飯「だからいいって!」

 

高校のテストで初めて満点を逃した上杉君は、相当悔しかったようだ…。

 

 

 

その後、五人からも結果を聞いたら、みんな赤点を見事に回避した。こうして僕たちの目標は達成されたわけだ。

 

でも、四葉さんが一番だったのは流石に予想外だった…。でも、目の前で四葉さんが努力している姿をこの目で何度も見てきた。だから別におかしいことでもなんでもないと思う。

 

ここまで本当に長かった………。でも、これで僕の家庭教師としての仕事は終わったのだろうか…?

 

そう考えると、少し寂しいな…。そう思いながら、二乃さんを迎えに行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

二乃「あんたを好きって言ったのよ」

 

 

予想外だった。まさか二乃さんが僕のことを好きだとは……。最初は僕を揶揄っているのかと思った。でも二乃さんの真剣な表情を見て、とても冗談を言っているようには見えなかった。

 

しかも、五月さんよりも積極的になるものと思われる。五月さんに対してどのように思っているのかだけでも手一杯だというのに、ここで二乃さんまで………。僕はどうすればいいのだろうか…。

 

誰に相談すればいいのかな…?お母さんに相談すると……

『五つ子なんだろ?纏めてお嫁さんにもらっちまうだ!』

などと、意味不明な発言をすることが目に見えている……。クリリンさんはマロンさんと18号さん……、今まで二人と付き合ったことがある。相談するならクリリンさんだろうか……?

 

ベジータさんは論外だよね…。恋愛なんてすっ飛ばしてブルマさんと結婚してそうだし……。あれ?そもそも結婚してるのかな?書類上は……?

 

天津飯さんは……そもそもどこにいるか分からないし、恋愛に興味は無さそうだしなぁ……。

 

ピッコロさんはそもそも性別がないって前に聞いたし、デンデも同様だ。

 

……ヤムチャさん…?少なくとも浮気をするくらいにはモテるんだよね?でもヤムチャさんもどこにいるのかは正確には分からないし……。ここは………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よお悟飯!久しぶりだな!」

 

スキンヘッドとは程遠い毛量を生やしたクリリンさんが出迎えてくれた。戦いをやめたことを機にスキンヘッドもやめたそうだ。

 

悟飯「お久しぶりです、クリリンさん!」

 

18号「なんだい?相談ならそれ相応のゼニーは用意しなよ?」

 

クリリン「それくらいはタダで乗ってあげろよ……」

 

18号さんは相変わらずガメツイ…。

 

マーロン「こんにちは!悟飯さん!」

 

悟飯「こんにちは!マーロンちゃん!」

 

そして、18号さんの髪色に、クリリンさんの面影が残る顔をした女の子は、クリリンさんと18号さんの娘さんの、マーロンちゃんだ。クリリンさんと18号さんは、絶賛幸せな生活を送っている真っ最中というわけだ。

 

クリリン「俺に相談なんて珍しいな?戦いのことじゃなさそうだし……。そういや、この前セルみたいな気を感じたんだが……大丈夫だったか?」

 

悟飯「はい…。負けはしたものの、セルはそのまま宇宙に旅立ったそうで……」

 

クリリン「マジかよ…。悟飯やベジータでも倒せないとなると……。いよいよやべえな……」

 

でも、セルは僕たちを殺す気は全くないようだった。その気分が変わらない限りは安全だろうが……。

 

クリリン「でも俺に相談なんて、やっぱり戦いのことじゃないよな?もしかして恋愛かー?高校に通ってるんだもんなー?このこの〜!」

 

悟飯「………」

 

クリリン「ご、悟飯…?」

 

悟飯「実は、その通りでして……」

 

クリリン「マジかよ!?!?」

 

事情を察したのか、18号さんとマーロンちゃんは僕とクリリンさんの二人だけの空間を作ってくれた。亀仙人さんは18号さんに無理矢理どこかに連れて行かれちゃったけど………。

 

クリリン「それで、好きな子でもできたのか?どんな風に告白したらいいとかそんな感じの相談か?」

 

悟飯「………いえ、逆です」

 

クリリン「逆…?逆ってお前……」

 

悟飯「……はい。先日、告白されまして………」

 

クリリン「マジかよ…。まあ悟飯は顔も性格もいいからな!しかも勉強もできて運動もできる!モテない方がおかしいって話だよな!」

 

悟飯「いえ、一人だけならまだよかったんですよ」

 

クリリン「………まさか、2人?」

 

悟飯「告白されたのは……。でも、もしかしたらもう一人僕に好意を持ってくれてるんじゃないかと、お母さんが言ってまして……」

 

クリリン「その話詳しく」

 

三玖さんに手作りバレンタインチョコをもらったことを伝えると……。

 

クリリン「そりゃどう考えても義理じゃねえって…。料理下手な子がそこまで努力して作ったんだろ?本命じゃないわけないだろ……」

 

悟飯「そ、そうなんですか…?」

 

クリリン「しかし、3人もねぇ……。告白された二人には返事をしたのか?」

 

悟飯「いえ…。そもそも返事は不要って言われまして……」

 

クリリン「でもよ、これ言っちゃうとちょっとクズ男っぽくなっちまうけど、今の悟飯は選べる側だぜ?あまり難しいことは考えずに、この子と付き合いたいって思った子と付き合えばいいじゃん?勿論付き合いたくなかったら振ってもいいわけだし……。告白されたからといって必ずしも付き合わなきゃいけないわけじゃないぜ?」

 

悟飯「それはそうでしょうけど…。でも………」

 

クリリン「………まさかとは思うが、3人とも好きだなんて言わないよな…?」

 

悟飯「いえ。根本的な話になるんですけど、そもそも異性としての好きという感情が僕には分からなくて……」

 

クリリン「うーん…。そうだ!それならこう考えろよ!まずはその子とキスする想像ができるか!」

 

悟飯「……想像というか……」

 

クリリン「……おいおい、まさか付き合う前に……?」

 

悟飯「されました……」

 

クリリン「された!?凄え積極的な子だなおい!?じゃあその子とキスして嬉しかったかどうかだ!」

 

悟飯「……まあ、嫌ではありませんでした……」

 

クリリン「もう付き合っていいんじゃね?」

 

悟飯「いや、こういうのは慎重になった方がいいかなぁっと……」

 

クリリン「はぁ……まあいいや。次は、そうだなぁ…。その子を独占したいかどうかだな!」

 

悟飯「独占…?」

 

前に、前田君も言っていたような…?

 

クリリン「そうそう!その子が他の男といるところを想像してみ?少しでも嫌な気持ちにならないか?」

 

他の男…?上杉君とか……?いや、嫌な気持ちにはならないかな……?

 

悟飯「いえ、特に……」

 

クリリン「えっ?うーーん……。じゃあこれだ!相手のことばかり考えてるかどうかだ!!」

 

悟飯「相手のこと?」

 

相手のこと……。五月さんに対してどう返事をしようか未だに考えているし、二乃さんもつい先日のことで頭いっぱいだし、お母さんに言われて気付いた三玖さんの本命チョコ。まさか三玖さんまでもが好意を持っているとは思わなかった為、最近ずっと考えっぱなしだ。

 

…………えっ?じゃあ、僕は3人とも好きってことなの……?

 

クリリン「……まあいいや。とにかく!あまり難しく考えないこと!俺だって18号のことが好きだって気付いた時には、特に難しいことは考えずに18号を庇ったし、俺の方が弱いけど、守ってやりたい。そう思えるんだ」

 

悟飯「守りたい…?」

 

クリリン「そう。地球を守りたいとか、世界の人々を守りたいって気持ちとはまた別にな」

 

…………

 

 

クリリンさんからいいアドバイスは聞いたものの、核心を突くようなものは得られなかった。でもクリリンさんには感謝かな?多少は恋愛感情のことについて知ることができた。

 

 

 

そして家に帰ると……。

 

チチ「悟飯!こんなのが届いたぞ!」

 

悟飯「へっ?」

 

お母さんが見せてきたチケットをよく見てみると……。『虎岩温泉』という旅館に泊まれるチケットだそうだ。ご丁寧に3人分……。

 

悟天「お母さん!お泊まりに行けるの!?」

 

チチ「んだ!3人で行こうな!」

 

悟天「わーい!!やった〜!!」

 

悟飯「……ん?これは…?」

 

開いた封筒の中には、手紙らしき物もあった。差出人は、中野マルオ……。

 

マルオさんじゃないか?一体どういう意図だ…?

 

 

手紙の内容をサラッと紹介すると……

 

 

 

 やあ孫君。今回は本当にありがとう。これからも家庭教師、ボディガード共に励んでくれたまえ。

 さて、本題に入るが、君達家族にこの旅行券をプレゼントしよう。偶には家族で旅行するのも悪くないだろう?

 では、また今度会おう。

 

 

………とのことだった。

 

なるほど…。特別ボーナスみたいなものなのかな…?

 

何がともあれ、貰ったものを使わなくては無礼というもの。ありがたく使わせてもらうとしよう。

 

悩み事を一旦忘れてリラックスできる絶好の機会だ。

 

 

………と思っていた時期が自分にもありました…。

 




 やっと二乃をヒロインレースに参加させることができた……。これにてそれぞれのヒロインは確定。さてさてスクランブルエッグ編をどうするかですなぁ…。悟飯は気で5人を見分けることは容易いので、三玖が五月に扮してアレをやってもすぐに見破られますし……。時間がかかりそうだなぁ…()


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第36話 三玖、いざ出陣


 前回のあらすじ…。
 悟飯は二乃の告白に気づかなかったが、それにはお構いなしに二乃は悟飯に再度告白をした。流石に鈍感な悟飯でも気づいたようで…。
 しかも、三玖の想いにも徐々に気づきつつあり……

 そして、悟飯はマルオから旅行券をプレゼントされることになったが、そこで……………


今回もちょっと過激よ~(当社比)



 

本編に入る前に、学年末テストが終了した後のお話…。3月14日のお話を……。

 

 

 

 

悟飯「はい三玖さん、これ」

 

三玖「あっ……これ…?」

 

悟飯「お返しにね。三玖さんは抹茶系が好きだって聞いたから、抹茶チョコにしてみたんだ」

 

三玖「…!!あ、ありがとう…!」

 

悟飯「こっちこそ、1ヶ月前はありがとう!」

 

こんなやり取りを、教室でやるものだから…………。

 

 

 

「えっ?なになに?孫君と中野さんって付き合ってるの?」

 

「マジで!?俺、三玖さん狙ってたのに!?」

 

「無理だ…。外見中身共に良くて勉強も運動もできるやつには敵わねえ……」

 

学校では結構な噂になったとか…?しかも………。

 

五月「孫君!」

 

悟飯「あっ、丁度良かった。五月さんにはこれをあげるよ」

 

五月「えっ…?これは……?」

 

悟飯「ほら、今日はホワイトデーでしょ?バレンタインのお返しをしなきゃって思ってね。五月さんは色々な味を楽しみたいんじゃないかと思って、頑張って作ってみたんだ」

 

五月「ありがとうございます!!」

 

五月が三玖を牽制するかのように現れると、悟飯はそこで五月にもチョコを渡してしまうものなので………。

 

「マジ!?姉妹がライバルなの!?」

 

「ドラマでしか見たことねえ展開だ…」

 

「わあ…。孫君が本格的にモテだしてるよ……」

 

だが、五月は悟飯からチョコをもらえたことよりも、チョコそのものをもらえたことの方が嬉しそうである。

 

それに比べ、三玖は悟飯からお返しをもらったのが嬉しそうだったのが顔を見れば誰でも分かるほどだった。

 

 

 

 

三玖「まさか手作り!?しかも美味しい……」

 

五月「これも手作り…?孫君って料理もできるんですね………」

 

と言っても、チチに手伝ってもらっていたのだが、それはまた別のお話。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

春休みを迎えた。春休みには虎石温泉という旅館に泊まれるチケットをもらったため、孫家は家族旅行をすることにした。

 

悟飯と悟天は舞空術で、チチは筋斗雲に乗ろうとしたが、何故か乗れなかった。

 

チチ「おかしいだ!?昔は乗れただぞ!?」

 

悟天「お母さん悪い子なの?」

 

悟飯「しょ、しょうがないなぁ…」

 

悟飯がチチを担ぎ上げるような形で行くことになった。

 

チチが筋斗雲に乗れなくなった理由は悟飯には何となく察しがついていた。

 

五月に対して薬を盛っていたのだ。それは明らかに純粋で綺麗な心を持つ者がやることではない。したがって、今のチチは悪い子認定されたのだ。

 

 

 

舞空術だからなのか、あっという間に島に着いた。

 

悟天「どの辺で降りる?」

 

悟飯「あそこに展望台みたいなところがあるから、あの辺で降りよう」

 

チチ「だな!」

 

地面が近付いてきたので、チチもいることもあって減速する。そしてそろそろ着地という時に………。

 

 

「「ヤッホー!!」」

 

 

何やら聞き覚えのある声が約2種類ほど………

 

風太郎「!?」

 

五月「上杉君、何故ここに!?」

 

 

 

悟天「……ねえ、あれ五月さんと風太郎さんじゃない?」

 

悟飯「………えっ?」

 

そんなまさか、と悟飯は目視で確認してみると、あら不思議。しっかり風太郎と五月がいるではないか。

 

悟天「……取り敢えずちょっと遠回りする?」

 

悟飯「……そうしようk「あっー!あそこにいるのは孫さんじゃないですか!?」」

 

四葉の一言で空中にいる悟飯達を完全に認識してしまった一行。

 

五月「そ、孫君も!?」

 

風太郎「お前までここにいるのかよ!?」

 

三玖「悟飯も来てたんだ……」

 

何故か息切れしてる三玖に……

 

一花「嘘……」

 

驚いている一花に……

 

二乃「……ふふっ」

 

何故か機嫌の良さそうな二乃もいた。

 

 

悟天「……わざわざ遠回りする必要もないね?」

 

悟飯「……うん」

 

仕方なく悟飯達は遠回りすることなくそのまままっすぐ進んで着地した。

 

チチ「へぇ!こうして見ると本当に五つ子なんだべなぁ!そっくりだ!五月さ!久しぶりだなぁ!」

 

五月「お久しぶりです、チチさん」

 

二乃「……既に挨拶が済んでるなんて、やるわね……」

 

三玖「…………」

 

五月とチチが面識があることに約2名が嫉妬している。

 

チチ「そして、あんたが風太郎さか!悟飯がいつも世話になってるべ!」

 

風太郎「は、初めまして……。俺こそいつも世話になってます」

 

初対面のメンバーは取り敢えず挨拶を済ませると……。

 

風太郎「まさか、お前らも家族旅行なのか…?」

 

悟飯「うん」

 

「まさに家族旅行だ。だが気をつけなければならないよ」

 

そこにもう一人の声が聞こえる。五つ子でも上杉一家でもない。

 

マルオ「旅にトラブルは付き物だからね」

 

五つ子の父、マルオであった。

 

 

 

 

 

江端「この島随一の観光スポット、『誓いの鐘』です。この鐘を鳴らすとその男女は永遠に結ばれるという伝説が残されております」

 

……なんというか、林間学校のキャンプファイヤーみたいだなぁ…。と林間学校を懐かしく感じる悟飯。

 

風太郎「どこかで聞いたことある伝説だ。そういうのどこにでもあるんだな。コンビニか!」

 

……………

 

風太郎が珍しくツッコミをしようとしたのだが、みんなからの反応はない。

 

マルオ「さて、ここで昼食にしようか。全員準備を始めてくれ。ただし、足元には気をつけよう。この辺は滑りやすい」

 

しかしなんていう偶然なのだろうか?…いや、よく思い出してみよう。このチケットの差出人は誰だったか?それは目の前にいるマルオだ。そしてこのチケットは日付が指定されていた。

 

………つまり、マルオが合わせたということになる。でもないとこんな偶然はあり得ない。

 

……しかし、上杉一家に関しては本当にただの偶然なのだろう。風太郎も拍子抜けした感じになっている。

 

……しかし、悟飯はこの旅行で一旦悩み事を忘れようと思っていたのに、これでは五つ子……というよりは、二乃と三玖と五月の3人のことを一瞬でも忘れることができないのではないだろうか?

 

風太郎「な、なあ悟飯」

 

悟飯「うん?」

 

風太郎「俺は……どうなったんだ?再雇用してもらったのか……?」

 

悟飯「……そういう話は僕は聞いてないね……」

 

風太郎「くっ…。なら…!」

 

どうやら風太郎は家庭教師として正式に復職できているのかが気になるらしい。

 

風太郎「なあ一花!説明してほしいんだが……」

 

一花「あはは……。ごめん、忙しいからまた後でね?」

 

風太郎「よつ……」

 

四葉「う〜…。緊張してきた…。うまくできるかな…?」

 

風太郎「……?」

 

何故かみんな他所よそしい…。一体どうしたんだろう?マルオに何か言われたのだろうか?

 

二乃「……どうしたのよ?」

 

悟飯「…!?」

 

何故か風太郎にではなく、悟飯に呼びかける二乃。

 

二乃「言いたいことがあるならハッキリ言いなさいよ、『悟飯』」

 

二乃の呼び方に悟飯は違和感を覚えた。いつもなら『あんた』か『孫』だったのに、ファーストネームで呼ぶようになったのだからそれは仕方ないのだが……。

 

三玖「……!ま、待って…。呼び方……」

 

三玖はそれにすぐに気が付き、二乃に問いかける。

 

二乃「私達も出会って半年が過ぎたわ。そろそろ距離を詰めてもいいと思わない?」

 

三玖「それは常々考えているけど……」

 

二乃「あっ、そうだわ!あだ名とかどうかしら?三玖、なんか考えなさい」

 

三玖「私っ!?どうしよう……。孫……悟飯……ゴハン……。ゴー………ハー……」

 

三玖「は、ハー君!!なんちゃって…!」

 

二乃「へぇ?いいじゃない」

 

三玖「って、そんなことはいいから準備するよ!」

 

二乃「はいはい、分かったわよ」

 

 

風太郎「……心中察するぜ…」

 

風太郎からは何故か同情の目で見られる始末……。まさか、あの時の告白を見ていたのだろうか…?そう考える悟飯。

 

風太郎「五…「五月君。何をしているんだい?江端から弁当を受け取ってくれ」」

 

風太郎が五月に話しかけようとしたが、マルオによって遮られてしまった。

 

マルオ「さあ準備を始めよう。久々に家族全員が揃ったからね。家族水入らずの時間だ」

 

と、風太郎の方を片目に見ながら呟いた。

 

「おーい!」

 

「遅えぞ風太郎!!」

 

風太郎がいることで大体察してはいたが、らいはと勇也も現れた。

 

らいは「あれー?なんでみんないるのー?」

 

悟天「こんにちはー!」

 

四葉「らいはちゃん!」

 

五月「上杉君の家族もいらっしゃったのですね」

 

一花「じゃああの人がお父さん?」

 

二乃「あまり似てないわね。でも私のタイプかも……」

 

三玖「確かに似てないかも」

 

勇也「……ん?ありゃ誰かと思いきや……」

 

勇也はマルオの方を見ながらそう呟いたが、勇也本人以外には聞こえない。

 

マルオ「おや?雨が降ってきたね」

 

四葉「えっ?」

 

マルオ「山の天気は変わりやすいね。下山して宿に向かおう。江端、片付けを頼んだよ」

 

一花「えーっと……」

 

四葉「仕方ありませんね…」

 

三玖「じゃあね、悟飯、フータロー」

 

二乃「多分同じ旅館よね?」

 

風太郎「おい五月、お前ら…」

 

五月「……孫君、上杉君。後でお話があります」

 

悟飯と風太郎だけに聞こえるように、五月は二人にそう伝えると、足早に姉妹の後を追って行った。

 

らいは「雨なんて降ってないけど…?」

 

チチ「んだ?あの人が五つ子の父親だか?なんだかつまんなそうな人だべなぁ?」

 

悟飯「お母さん、失礼だよ……」

 

悟天「なんというか、堅苦しい感じだよね…」

 

勇也「まああいつは昔からそんな奴だからな……。そういや、お前が風太郎の友達っていう……なんだっけ?ライスだっけ?」

 

風太郎「悟飯な」

 

勇也「そうそう、孫悟飯君だったか?風太郎がいつも世話になってるな。俺のことは勇也と呼んでくれ」

 

悟飯「いえ、こちらこそ。お世話になっているのは僕の方ですよ、勇也さん」

 

お互いの一家の挨拶が終わると、雑談をしながら旅館に向かった。

 

らいは「うわぁ…。お化け屋敷みたい…」

 

勇也「やってるよな…?」

 

決して汚いわけではないのだが、良く言えば古風な旅館。悪く言えば、ボロくさい旅館と言ったところだろうか。そんな旅館である。

 

ピコン

 

悟飯「……ん?」

 

そこに、悟飯の携帯に一通のメールが届いた。差出人は五月である。恐らく先程のことだろう。

 

悟飯「……0時に中庭へ、だって」

 

風太郎「0時に中庭か……。(しかし何故あそこで直接言わないんだ…。周りくどいだろ……)」

 

それまでは取り敢えず旅行……というか旅館を楽しむことにした悟飯と風太郎。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

僕は悟天と共に温泉に浸かっているところだ。ここはどうやら男湯と女湯だけでなく、混浴もあるようだが、僕と悟天は男湯にいる。お母さんは恐らく女湯にいるだろう。

 

……そして、何故かマルオさんもいる。いや、何故っていうのはおかしいか…。居てもおかしくないか……。

 

悟天「兄ちゃんくらえ!」

 

悟天はお湯をバシャバシャと僕にかけてくる。ここはプールじゃないんだぞ!

 

悟飯「悟天!ここはプールじゃないんだぞ!静かにしてろって!」

 

悟天「はーい……」

 

お泊まりだからなのか、悟天はいつもよりもはしゃいでいる気がする…。

 

マルオ「……どうだい孫君、ここのお湯は?」

 

悟飯「いいお湯ですね…。最近温泉に入っていなかったので、温泉なんて久しぶりですよ……」

 

マルオ「そうかい…。君は戦いばかりで身体が疲れているだろう?ここでゆっくり休むといい」

 

悟飯「ありがとうございます……」

 

悟天「……あれ?おじさん、兄ちゃんが戦えること知ってるの?」

 

マルオ「色々あってね。あと僕はまだおじさんという歳じゃないよ」

 

……マルオさんって案外歳を気にする人なのかな…?なんかイメージとは違うというかなんというか……。

 

マルオ「最近はどうだい?娘達の周りで何か起きてないかい?」

 

悟飯「いえ、特に何も」

 

マルオ「何も起きないのが一番だが、平和というものは何がきっかけで崩れるか分からないからね。君なら娘を守ってくれると期待しているよ」

 

悟飯「あはは……」

 

またセルのような敵が現れたら、5人を絶対に守れるとは言い切れない…。一度死にかけたことによってパワーアップして、以前の力を取り戻したのはいいとして、それでも今のセルには勝てない。それに、セルよりも強い敵が現れたら間違いなく今の僕なら負ける。

 

だからこそ、最近になって修行を再開したのだけど……。

 

マルオ「旅先でもトラブルが付き物だからね」

 

悟飯「……まさか」

 

僕達に旅行券をプレゼントしたのって…。

 

マルオ「やはり君なら気付いてしまうか。その通りだよ。娘の身に何かあったらいけないから、この旅行でも君を近くに置いといた方がいいと思ってね。家族と旅行もできて一石二鳥だろう?」

 

……一石『二鳥』ではない気がするけど……。まあいいや…。マルオさんのおかげで今回の旅行は成立しているんだから、変に文句は言えないし、僕としても近くにいた方が、何かあった時はすぐに駆け付けることができるので安心することができる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

チチ「で、でけぇ…!!」

 

悟飯の母親、チチは驚愕していた。五つ子だから似てて当然だと思っていたが、5人が5人とも出るところは出てて引っ込むところは引っ込んでいるのだ。チチも自分は美人でスタイルがいい方だと自負しているし、実際そうなのだが、歳故か、五つ子に色々な意味で負けた気がしたチチであった。

 

五月「ち、チチさん…?どうしたんですか?」

 

チチ「みんなデケェ…。こうして見ると本当にすげぇなぁ……」

 

一花「なんかセクハラ親父みたいな感想言いますね……」

 

二乃「あなたが孫悟飯君のお母様ですか?初めまして!私、二乃って言いまーす!」

 

チチ「んだ!よろしくだ!」

 

三玖「わ、私は三玖です!よろしくお願いします…」

 

謎の対抗心を見せて、二乃と三玖は真っ先に挨拶を済ませる。

 

チチ「あー!!この前悟飯にチョコをくれた三玖さっておめぇのことだったのかぁ!!おめぇの気持ちは理解してるつもりだ!鈍感な悟飯でも三玖さの気持ちに気づくように言っておいただぞ!!」

 

三玖「……えっ?」

 

二乃「……まずいわね」

 

チチ「それに四葉さも久々だなぁ!あれからマンツーマン授業はもうしないだか?」

 

「「「はっ…??」」」

 

四葉は悟飯のマンツーマン授業を受ける為に孫家に訪れたことがある。五月も決して邪な考えで孫家にお邪魔したわけではない。しかし、チチのこの台詞は二乃、三玖、五月にとってはとんでもない爆弾だった。

 

二乃「ちょっと四葉!?一体どういうことか説明してもらおうかしら!?私だってまだ行ったことないのに!!」

 

三玖「四葉…。私を応援するって言ってなかったっけ…?まさか、抜け駆け…?」

 

五月「四葉…。あなたはうえす…ゲフンゲフン!!他の人がいながら…!!」

 

四葉「ま、待ってみんな…?何か勘違いしてない…!?」

 

一花「なるほどね〜…。四葉が今回のテストで一位を取ったのはそういうことだったのか……」

 

二乃、三玖、五月が四葉に迫る様子を見て、チチはこんな提案をする…。

 

チチ「んだ?そんなに家に来たいなら、今度誰かお泊まりに来るだか?」

 

「「「!!!!ッッ」」」

 

この提案に二乃、三玖、五月は当然噛み付かないわけはなく……。

 

二乃「はいはい!!私は料理が得意というか毎日姉妹の分を用意してるのでお役に立てるかと!!」

 

チチ「それは頼もしいだなぁ!」

 

三玖「ま、待って!私だってチョコを作れます!!」

 

二乃「それは私が手伝ったからでしょ!?」

 

五月「孫君のお家のことは姉妹の中では私が一番知ってますので、私が行くのが妥当かと!!」

 

二乃「はっ?あんた一回行ったことあるんでしょ?あんたは論外よ」

 

三玖「ズルい。みんな平等。だから五月は除外」

 

五月「この前は公平だって言ってませんでしたか!?」

 

チチ「わ、わぁ……」

 

まさか冗談半分で提案をしてみた結果がこれだ。予想以上に自分の息子がモテていることを認識して、チチは嬉しいような寂しいような、そんな複雑な気持ちになっていた。

 

一花「……なんか私達だけ置いてきぼりにされてるような……」

 

四葉「あはは……。みんなグイグイ行くね……」

 

なお、悟飯ではなく別の人が好きな二人はこのカオスな状況に付いて行けてないご様子だ。一花はまだしも、四葉にとっては、二乃はいつから孫さんのことが好きになったの?という状態なので、ややこしくなっている。

 

チチ「ま、待つだ!!家はそんな広くねえからそんないっぺんに来られたら困るだよ!」

 

二乃「じゃあ選んで下さい!!」

 

三玖「誰が悟飯に相応しいか!!」

 

五月「今、ここで!!」

 

チチ「んな大事なこと、オラに決められるわけねえだよぉおおッッ!!!」

 

 

 

 

一方、混浴風呂では………

 

勇也「なんだ?五つ子ちゃんとチチさん盛り上がってるな…。悟飯君ってそんなにモテモテなのか、風太郎?」

 

風太郎「……そのようだな」

 

らいは「モテモテなのは孫さんだけじゃないよ!ねー!お兄ちゃん?」

 

風太郎「誰のこと言ってるんだよ……」

 

勇也「しかし、混浴風呂があったから家族全員で入ることができたぜ…。俺達は先に上がってるからな、風太郎」

 

風太郎「ああ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、もうすぐ0時になる。と言ってもあと20分ほどあるが…。

 

五月さんの指定通りに中庭に向かうことにする。

 

 

「あっ…」

 

悟飯「あれ?五月さん?丁度いいところ………に?」

 

あれ?おかしいな…。気が五月さんのものではない…?これは……。

 

悟飯「…いや、三玖さん…?で合ってるよね…?」

 

三玖「……分かるんだ」

 

悟飯「う、うん…。気を読めるからなんだろうけど……」

 

三玖さんは何故か五月さんの格好をしている。ご丁寧に髪飾りとアホ毛まで再現している。

 

悟飯「……ところで、どうして五月さんの格好をしてるの?」

 

三玖「……昔、四葉がリボンをつけ始めたんだけど、みんなと同じ格好じゃなくなったから、お爺ちゃんは私達姉妹の仲が悪くなったんじゃないかって勘違いして倒れ込んじゃったの」

 

えぇ……。

 

三玖「それで、もうお爺ちゃんには心配をかけないようにしようってことで、姉妹のうちの誰かの格好に合わせようってことになったんだ」

 

悟飯「それで五月さんの格好に……」

 

三玖「そういうこと」

 

な、なるほど……。ただおふざけでってわけではないらしい。

 

三玖「……悟飯はさ、私達の関係をどう思っている?」

 

悟飯「……友達、そして教師と生徒の仲…。上杉君風にいうなら、パートナーかな…?」

 

三玖「そう……」

 

悟飯「………でも、最近はそれだけじゃない気がするんだよ」

 

三玖「………えっ?」

 

悟飯「実は僕、告白されたんだよ……。相手の名前は挙げないけど……」

 

三玖「……五月と二乃でしょ?」

 

悟飯「いっ!?な、なんで知ってるの!?」

 

三玖「二乃と五月の様子を見れば一目瞭然。というか五月が悟飯に告白したのは、フータロー以外は知ってる」

 

悟飯「そ、そうなの…?……あっ」

 

そういえば、家庭教師をやめるって言った時に、五月さんが告白の返事を求めた時…………。

 

三玖「それで、告白されて……?」

 

三玖さんが話の続きを促しているようなので、僕は続ける。

 

悟飯「……友達やビジネス上のパートナーって言葉だけじゃ説明できない気がしてきたんだ…。まだ五月さんにも返事をしていないのに、二乃さんからも告白をされて……さらに………」

 

三玖「……さらに?」

 

………思い切って聞いてみるか…?今、ここで?三玖さんが僕のことをどう思っているのか……。

 

悟飯「………この前さ、お母さんや知り合いの人からこんな話を聞いたんだよね。『バレンタインチョコでわざわざ手作りしてくる人が義理チョコなわけがない』って……」

 

三玖「……!!」

 

悟飯「しかも、料理があまり得意じゃない人が頑張っている場合は尚更本命だろうって……」

 

三玖「……!?!?」

 

悟飯「……三玖さんは、僕のことをどう思ってるの…?」

 

三玖「………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

えええええッッ!?!?

 

ご、悟飯が私の想いに気付きつつある!?ど、どうしよう…!!もう隠せるような段階じゃない気がする…!!でも、まだ自信を持って好きだなんて言えないよ…!!

 

と、取り敢えず…!!

 

 

三玖「……ご、悟飯はどう考えてるの?」

 

悟飯「……あ、あのさ…。自意識過剰だって笑わないでね…?」

 

…………この前振り…。間違いない……。悟飯はもう私の想いに気付いちゃってる…。鈍感な悟飯だから気付かないままだと思ってた……。でもなんでこのタイミングなの…?私は四葉に負けたばかりで自信がないのに………。

 

悟飯「………もしかすると、三玖さんも僕のことが好き……なんじゃないかと…。もし違ったらごめんッ!!」

 

三玖「………だとしたら、どう思う?」

 

悟飯「えっ…?」

 

三玖「私なんかに好かれても、悟飯は迷惑なだけでしょ…?それに、私は一番優秀な生徒じゃない…」

 

 

さっき、温泉では勢いに任せて積極的になっちゃってたけど、私は……

 

 

悟飯「……三玖さんは、あの時こう言ったよね?『私を一番優秀にしてくれる?』って……」

 

三玖「……あっ…」

 

 

覚えてくれてたんだ…!

 

 

悟飯「三玖さんが自分を卑下する必要はないんだよ。僕が四葉さんを支援していなければ、三玖さんは間違いなく一番優秀な生徒だった………」

 

 

えっ…?四葉を支援って……。マンツーマン授業のこと?

 

 

三玖「……四葉を支援って、どういうこと?」

 

悟飯「……これは四葉さんの秘密でもあるから、あまり大っぴらには言えないんだけど、四葉さんはある人と約束をしたんだよ。『沢山勉強をして、互いに必要とされる存在になろう』って」

 

 

そ、そうなの?………そういえば、ある日突然四葉はゲームはもう卒業するって言ってた。そこから四葉は勉強するようになったけど、それと関係があるのかな…?

 

 

悟飯「……四葉さんは失敗しちゃったけど、再会したある人は約束を守ってくれてたんだって。それで申し訳ない気持ちで一杯になっちゃったらしいんだ」

 

 

………その『ある人』って、まさかフータローかな…?四葉ってフータローには甘いというか、世話焼きというか……。

 

………流石にそんなことはないかな?

 

 

悟飯「……それを聞いて、僕はつい四葉さんを応援したくなっちゃったんだ。だから三玖さんが一番優秀な生徒じゃないのは僕の責任だよ。ごめん……」

 

三玖「あ、謝らないで…!!私がもっと勉強を頑張ったら良かったのに…」

 

悟飯「いや、三玖さんは十分頑張っている。むしろ、三玖さんは勉強会外で他の人に教えてもらってないでしょ?勿論、姉妹同士では教え合っていたとは思うけど、それ以外では自習ぐらいしかしていないよね?」

 

三玖「う、うん……」

 

悟飯「……それを考慮して考えるなら、やっぱり三玖さんが一番優秀なんじゃないかな?」

 

三玖「……!!」

 

 

………点数では四葉に負けたかもしれない。でも、悟飯が私を一番優秀な生徒だと認めてくれるなら………。私は……。

 

 

 

 

 

 

 

 

三玖「………好き」

 

悟飯「へっ…?」

 

三玖「私は、悟飯のことが好き…!!」

 

 

………言っちゃった…!?

 

 

悟飯「ほ、本当に………?」

 

三玖「うん…!!」

 

でもいい。悟飯に一番優秀だって認めてもらえただけで、私は自信が持てたのだから………。

 

悟飯「あ、あはは……。どうやら自意識過剰じゃなかったみたいだね………」

 

 

………もう想いも伝えちゃったし、私も五月や二乃みたいに積極的になっちゃってもいいよね……?

 

 

三玖「……ところでさ、悟飯。私とキスするとしたら、どう思う?」

 

悟飯「えっ、ええッ!?な、何を言ってるの三玖さん!?付き合ってもいないのにキスなんて…!?!?」

 

三玖「…………五月とはしたのに…?」

 

悟飯「な、ななな、なんでそのことを…!?!?」

 

三玖「…………嘘。今のはカマをかけただけ」

 

悟飯「………へっ?」

 

 

ふーん……。食欲を抑えられなくて爆食いしているような感じで、五月も自分の想いに我慢ができなくて悟飯にキスしたんだろうな…。きっと悟飯は優しいから、無理に払い除けることはしなかった…。いや、できなかったんだよね?

 

でも、そっか……。五月はもうしてるんだ。学生のうちに付き合うのは不純だって言ってたのに……。ずるい子。

 

 

三玖「……私とはどうなの?」

 

悟飯「い、五月さんとは、その……じ、事故で!!あれは状況があまりにも特殊だったからそうなっちゃっただけで…!!それ以前に!!付き合ってもいないのにそんなことは………」

 

三玖「……嫌ではないんだね?」

 

悟飯「えっ…?」

 

 

グイッ

 

 

 

 

私は悔しかった。妹である五月に先を越されたことに。二乃や五月に遅れを取っていたことに。

 

 

………そして何よりも、例えどんな状況であろうと、悟飯が五月とキスするのを許容したことが、私は許せなかった。

 

 

だから、私が五月の味を忘れさせてあげる。上書きしてあげるんだ。こうすれば五月にも二乃にも遅れを取らないどころか、一歩も二歩もリードできるもんね?

 

それに、悟飯ならこんなことをしても私を嫌いにならない気がする。何故か確信できるんだ。だからこんな大胆な行動も、ふとした拍子にできてしまったんだろう。

 

 

悟飯「むっ…!?」

 

 

三玖「………ぷはっ……」

 

 

ふふっ…。初キスの味はレモン味って聞くけど、レモンの味はしなかったな…。だけど、私の好きな味だった。

 

 

三玖「……私と五月、どっちがうまかった?」

 

悟飯「み、みみみ、三玖さん……?//////」

 

あっ、悟飯の顔が真っ赤だ。五月にされた時もこんな顔したのかな?こんなに顔を赤くしてくれるということは、私を意識してくれているということ。

 

………なんだか、とっても嬉しい。

 

悟飯「だ、ダメだよ…!!!僕達はまだ付き合っていないんだよ…!?」

 

三玖「………でも、五月とはしたんでしょ?」

 

悟飯「だ、だから!五月さんとのキスは………」

 

三玖「例えどんな状況でも、悟飯なら五月を離すことができたでしょ?今回もそう。でも悟飯はそれをしなかった。それは少なくとも、私や五月とキスするのは嫌ではなかったってことでしょ?」

 

悟飯「そ、それは………その…………」

 

三玖「………ごめん。意地悪し過ぎた」

 

悟飯「……あ、謝る気ないでしょ……」

 

ふふっ…。ダメだ。さっきから頬が緩んでしまう……。悟飯は私を拒絶しなかった。それだけでも嬉しいのに、悟飯とキスまでしちゃった。しかも悟飯は私の舌も受け入れちゃって……。

 

………それとも、いくら頭のいい悟飯でも、突然のことにどう対処すればいいのか分からなかったのかな?だから五月の時もなし崩し的にキスを許しちゃったのかな?

 

……そんな気がする。

 

 

……さて、五月の味を忘れさせるためにもう一回……………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガシッ

 

悟飯「…!!」

 

 

シュン‼︎

 

 

突然誰かに掴まれる感触を感じ、攻撃される予感がしたので咄嗟に高速移動をして回避した。

 

「………ブツブツ」

 

悟飯「あ、あれ…?受付のお爺さん…?」

 

「……ブツブツ」

 

悟飯「な、なんて言ってるのかな…?」

 

あまりにも小声であった為、僕には聞き取れなかった。お爺さんの言葉を聞き取ろうと、僕は耳を近づける。

 

「……見たぞ。ワシの孫に手を出しおったな…?殺すぞ………」

 

このお爺さん怖いよ!?平気で怖いこと言ってるよ!?

 

悟飯「ま、待って下さい!僕は決して手を出したわけじゃなくて…!!」

 

三玖「……お爺ちゃん。悟飯のせいじゃないのは本当。私からやったことなの」

 

祖父「……それは本当か、三玖?」

 

三玖「う、うん……。ほ、本当だよ///」

 

って、この人、三玖さん達のお爺さんだったのか………。

しかも、五月さんの格好をしているのにも関わらず、一瞬で三玖さんだと判別した。家族だからかな…?

 

祖父「……三玖を泣かせるようなことがあったらどうなるか、覚えておくんだぞ…?もし泣かせたら、例え地球の裏側に逃げようが、お主を殺す……」

 

悟飯「あ、あはは………」

 

な、何か勘違いされている気がする…。

 

 

 

何やら祖父に三玖と悟飯が既に恋仲であると勘違いされてしまっているようだ。三玖も積極的となり、二乃、三玖、五月の間に起こる恋愛戦争は更に激しいものとなるだろう…。

 

悟飯はこれから一体どうなってしまうのか……。

 





 3月9日(三玖の日)に間に合わせたかった()
 というわけで、三玖も流れで告白しました。五月だけでなく、二乃もヒロインレースに参加したことが大きな要因ですね。それに加えて、チチが三玖のバレンタインの意図(予測)を伝えていたこと、クリリンと相談した際に、本命以外にあり得ないと言われたこともあって、そこから三玖の過去の行動を思い出して、ひょっとして…?と悟飯が思い始めた感じです。

 案の定、三玖らしくネガティブになりますが、悟飯の励ましと、悟飯が優秀だと認めたことによって三玖は告白に踏み切りました。そして五月に対抗するためにディープなキスを仕掛ける。ここは原作での文化祭にて、三玖は風太郎に対してディープを仕掛けた疑惑があるというか、描写的にほぼ確定だと思ったので、特に薬が盛られていない状況でもやってもおかしくないということで、このような展開にしました。

 こうしてみると、五月も三玖もキスを済ませているのに、二乃だけ済ませてない……。あれ?二乃が一番遅れを取っている…?まあ参戦の時期が時期だからしょうがないね()

 もう隠すこともないので三玖も積極的になります。こうなったのは五月の存在がデカいです。あとは二乃の参戦も。

お爺ちゃんに関しては、無堂の件があるので、あそこまで怖くなっても仕方ないよ……。いやほんとに…。


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第37話 第二回五つ子ゲーム

 前回のあらすじ…。

 悟飯はマルオからもらった旅行券で旅行に行くことになった。そこにはなんと、上杉一家と中野一家が勢揃いだった。なんという偶然?

 温泉では、二乃、三玖、五月の猛アピールがチチに炸裂して、流石のチチも困惑。

 五月に中庭に呼び出されたので、中庭に向かっていた悟飯は、何故か五月の格好をした三玖に遭遇。いろいろあって三玖は悟飯に告白!これによって、想いを伝えていない(悟飯側の)ヒロインはいなくなったわけだ。

 ちなみに、三玖は悟飯に………おっと、これ以上言うのはプライバシーの侵害かな?いや、こうして一般公開している以上は公開処刑をしているようなものではないだろうか?(メタ発言)



衝撃的な出来事があったものの、五月さんに呼び出されたため、中庭へと急ぐ。『私とキスした直後に他の女の子に会いに行くんだ?』と、少々意地悪な顔をした三玖さんに言われたけど…。

 

………僕からしたわけじゃないんだけど…。でも、拒否もしなかった僕も僕だし…………。

 

………僕って、もしかしなくてもダメな男なんじゃ………?

 

だって、付き合ってもいない女の子とキスしてるんだよ?しかも2人も……。でも僕は未だに返事をしていない…。

 

……いつから背中を刺されるんじゃないだろうか……。

 

そんな考え事をしながら移動していたら、いつの間にか中庭に到着していた。

 

五月「あっ、孫君!来てくれたんですね」

 

悟飯「……あっ、ちょっと遅れちゃったかな?待った?」

 

先程の三玖さんは五月さんの格好をしていたこともあり、先程の出来事を思い出してしまった……。うう…。五月さんに物凄い申し訳ない気持ちになってきた……。

 

五月「いえ、それほど待っていませんよ。それにしても、上杉君遅いですね…」

 

悟飯「……何してるんだろう?僕が呼びに行こうか?」

 

五月「いえ、別に彼が遅れても問題はないので、先に孫君に尋ねます」

 

どうやら僕と上杉君に聞きたいことがあるから呼び出したらしい。旅行先で勉強の話ではないだろうから…。なんだろう?

 

五月「春休みに入ってから、一花も二乃も三玖も四葉も様子がおかしいのです。何かご存知ありませんか?」

 

………二乃さんの様子がおかしいことは見当がつく。恐らく僕が関係しているのは間違いない。

 

五月「……いえ、二乃は聞くまでもありませんね。二乃が突然積極的になりだしたんですよ。先程、チチさんと一緒に温泉に入ったんですけど、話しているうちに、誰か孫君の家にお泊まりしないかという話になりまして……」

 

悟飯「えっ?」

 

お母さん……。なんでまたそんなことを勝手に決めるの……。

 

五月「その時、何故か二乃が泊まりたがってたんですよ。私はそのことを不思議に思いました。最近、孫君は二乃と何かありましたか?」

 

悟飯「………」

 

これは言っていいことなのだろうか…?そんな気軽に言いふらすのはなんか違う気がする……。

 

五月「……告白されましたか?」

 

悟飯「!?ッ」

 

五月「どうやら私の嫌な予感は当たってしまったようですね………」

 

悟飯「き、気付いてたの…?」

 

五月「二乃の様子を見てなんとなく…。金髪の孫君の時と似たような感じでしたので……」

 

まだ僕の変装がバレてない時のことか…。二乃さんは好きな人には一直線なタイプだということは、僕もよく知っている…。

 

五月「二乃は解決しましたが、他の三人は心当たりありますか?」

 

………もう1人はなんとなく分かる。三玖さんだ。三玖さんは姉妹の中で一位の成績を取れなかったことを気にしていたようだ。でも、先程僕が解決したみたいだけど………。

 

悟飯「……三玖さんは心当たりがあるよ」

 

五月「ほ、本当ですか!?」

 

悟飯「……でも、内容はあまり気軽に言えることじゃないかな…。さっき三玖さんと話したんだけど、どうやら悩み事は解決したみたいなんだ…」

 

五月「そ、そうなんですか?それならいいんですけど…。となると、一花と四葉は……?」

 

悟飯「その2人は分からないかな…。ごめん」

 

五月「謝らないで下さい。上杉君なら何か知っているかもしれません。もう少し彼を待ってみましょう」

 

悟飯「そうだね」

 

 

 

……しかし。

 

五月「な、何故彼は来ないのですか!?もうすぐ0時30分ですよ!?」

 

悟飯「流石に遅いね…」

 

五月「これ以上遅いとお父さんになんと言われるか……」

 

悟飯「………しょうがないね…。今日は取り敢えず引き返そうよ。上杉君に聞きたいことも僕と同じでしょ?もしも上杉君と会ったら僕から伝えておくよ」

 

五月「……分かりました」

 

 

今日は時間的に厳しくなってきたので、そのまま就寝することになった。部屋に戻る途中で上杉君に会っていないので、明日は朝早く起きてみよう。朝早くに起きて修行をして、上杉君が起きた時にでも部屋に行けばいいだろう。流石にこの時間に行くのは迷惑だろうから………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日…。

 

予定通り朝早くに起床。着替えて外に出て、周りに誰もいないことを確認して簡単に修行する。この島は人が少ないので、ちょっと派手な修行もできるのがいい。

 

 

 

 

 

悟飯「はぁ………」

 

そして修行が終わり、朝風呂に浸かる。

 

それにしても、一花さんと四葉さんは一体何に対して悩んでいるのだろうか?思い当たる節がない……。

 

……というより、僕自身も悩みがあるんだけど……。三人から告白されたというのに、誰1人にも返事をしていない…。僕のことを好きになってくれるのは嬉しい気はするのだが………。

 

悟飯「………はぁ……。どうすればいいのかなぁ……」

 

「なによ。辛気臭い顔しちゃって」

 

悟飯「いや〜…。ちょっとね……」

 

「悩み事なら私が聞いてあげようか?」

 

悟飯「うん。ありがと…………ん??」

 

 

あれ?ちょっと待って?僕は誰と会話しているんだ…?

 

 

二乃「……どうしたのよ?」

 

悟飯「…………」

 

あれ?気のせい?目の前に二乃さんがいるような気がするのは気のせい?睡眠時間が少なかったからかな?寝ぼけているのかもしれない……。

 

悟飯「………あれ?」

 

目を擦っても二乃さんは消えない……。あれ…?もしかして……。

 

悟飯「もしかして、僕女湯に入っちゃったの!?」

 

二乃「違うわよ。それはないから安心しなさい」

 

悟飯「あ、あれ?そうなんだ…。じゃあなんで二乃さんがここにいるの!?」

 

二乃「なんでって、ここは混浴よ?別におかしくないでしょ?」

 

悟飯「えっ…………?」

 

あ、あれ?僕は男湯に入ったつもりなのに…。しまったぁ……。悩み事に気を取られて間違えちゃったんだ…!?

 

二乃「にしても、あんたとはよく風呂で会うわね?どうせ一緒になったんだし、体でも洗ってあげようか?」

 

悟飯「………へっ?」

 

 

んん?二乃さんは何を言っているんだ?

 

 

二乃「もしかして、タオルを使わずにやれって言いたいの?全く…。このムッツリスケベ」

 

悟飯「いや、何も言ってないし、そもそも洗ってほしいとも言ってないんだけど………」

 

な、なんか違和感がある……。なんだろう、この違和感は………。

 

悟飯「……って、なんで僕がいるのにここに来てるの!?」

 

 

ち、近いよ!?凄く近い!?

 

 

二乃「細かい事は気にしないの。ほら上がりなさいよ。洗ってあげるから」

 

悟飯「さっき自分で洗ったからいいよ〜…」

 

二乃「だめよ。あんた雑に洗ってそうだもん。私が()()まで丁寧に洗ってあげるわ」

 

……待って?隅々って部分が強調されていたような気がするのは僕の気のせいかな?なんかこの二乃さん、あの日に暴走した五月さんに似たものを感じるんだけど………。

 

…………ということは?二乃さんは僕のことが好き。好きな人には一直線。既に僕に告白している………。

 

 

 

……………あっ。これはまずい。

 

悟飯「や、やだよ!恥ずかしいって!!」

 

二乃「もう何度もお互いの裸見て見慣れてるでしょ?今更恥ずかしがってるんじゃないわよ…。あらやだ、筋肉質♪」

 

 

わーっ!?まずいまずい!!今の二乃さんは何するか分からないぞッ!?いっそのこと今からでも男湯に…!!

 

 

 

 

 

 

 

ガラッ

 

風太郎「…………はっ?」

 

なんと、そこに上杉君が現れた。今の僕の状態は………。明らかに二乃さんが僕を引き上げようとしている異常な光景。しかも二乃さんは上杉君が来たことも気づかずに僕の体を洗おうとする。

 

いや、怖いよ!?その目はやめて!?

 

二乃「ほーら、優しくしてあげるから楽になりなさいよ?一緒に気持ちよくなりましょ?」

 

流石五つ子…。あの時の五月さんと全く同じことを言っている……。というか、体を洗うだけで普通はそんなワードは出てこないと思う……。

 

って、何冷静に分析してるんだ…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

風太郎「お前、手の施しようのない変態だなぁ?」

 

 

二乃「ヒッ‼︎」

 

 

ようやく二乃さんは気づいたみたいだ…。

 

二乃「わっ!?うううう、上杉ッ!?何勝手に私達の情事を邪魔してくれてんのよ!?」

 

風太郎「公共の場でそんなやましいことしようとすんじゃねえッッ!!!!せめて誰にも見られないところでやれッッ!!!!」

 

上杉君…?怒るところそこじゃないでしょ…。

 

二乃「つーか何入って来てんのよ!!変態っ!!」

 

二乃さんはそう言うと、足早に風呂場を去っていった…………。た、助かった………………。

 

風太郎「変態はどっちだよ…」

 

悟飯「……………上杉君、ありがとう…。君が来なかったら、僕は………」

 

風太郎「いや、少しは自分で断れよ?特に二乃に対しては曖昧な態度を取ったら何されるか分からんぞ?」

 

それを身をもってついさっき体験しました………。

 

悟飯「それより上杉君、昨日はどうして中庭に来なかったの?僕と五月さんは30分も待ってたんだけど……」

 

風太郎「……ああ。実は俺も中庭に向かってたんだが、途中で五月に会った」

 

悟飯「えっ?」

 

風太郎「そこで五月に、家庭教師をやめるように促された」

 

悟飯「………時間で言うといつぐらい?」

 

風太郎「……確か、日付が変わる前くらいだったはずだ」

 

ということは、五月さんは既に中庭にいるはず……。そして、その時間は僕と三玖さんは一緒にいたので、三玖さんでもない。となると、残りの3人のうちの誰か………。

 

悟飯「……それは五月さんじゃないよ。五月さんの格好をした誰かだよ」

 

風太郎「はっ?どういうことだ?」

 

悟飯「実は昨日、僕も同じくらいの時間に五月さんの格好をした三玖さんに会ったんだ。なんで五月さんの格好をしているのか聞いたら、『お爺ちゃんを心配させないため』だって…」

 

風太郎「お爺ちゃん…?あの爺さんか?」

 

悟飯「うん。姉妹で違う格好をすると、仲が悪くなったんじゃないかって勘違いして倒れ込んじゃうんだって」

 

風太郎「なんだよそれ……」

 

悟飯「だからみんな五月さんの格好をしているらしいんだ」

 

風太郎「……なるほどな。じゃあ五月は中庭にいたし、三玖はお前といたから……一花、二乃、四葉のうちの誰かだな…」

 

悟飯「そうなるね………」

 

 

ガラッ

 

 

隣の方で扉を開く音が聞こえた。すると……。

 

風太郎「デミグラス」

 

悟飯「で、デミ…?」

 

「は、ハンバーグ……」

 

 

なんだその合言葉……?……合言葉で合ってるよね?

 

 

風太郎「よし、どうやら本物の五月のようだな」

 

悟飯「えっ?向こうに五月さんがいるの?」

 

「その声は……。孫君ですか?」

 

風太郎「ああ。誰にも邪魔されずに五月と話すにはここが打って付けだと思ってな」

 

「あ、あの…。いくらなんでも温泉で仕切り越しというのは……」

 

風太郎「いや、流石に同じ湯はないだろ」

 

「そういう意味ではありません!!」

 

風太郎「だがここなら父親の目も届かないだろ?」

 

「……無茶苦茶です」

 

確かに、内緒話をしたいなら打って付けだけど……。

 

悟飯「……電話じゃだめなの?」

 

風太郎「生憎、俺の携帯電話は充電切れだ」

 

それじゃ携帯電話の意味がないじゃん…。

 

風太郎「………昨夜、俺はフロントで偽五月に会った。そこで家庭教師を辞めるように促された」

 

五月「えっ……」

 

風太郎「さっき悟飯から聞いた話だと、そいつはお前じゃなかったってことだ。悟飯は三玖にも会ってたみたいだから、五月のフリができるのは、一花、二乃、四葉のうちの誰かということになる」

 

五月「…ええ。それしかあり得ません」

 

……どういうことだ?一花さん、二乃さん、四葉さんのうちの誰かが上杉君を拒絶しているということだろうか?何故今頃になって?

 

風太郎「誰か怪しいやつはいなかったか?」

 

五月「……それが、春休みに入ってからというもの、一花も二乃も四葉も様子が変なんです…。昨夜はそれをお伺いする為にあなたを呼び出しました。何かご存知ありませんか?」

 

風太郎「………(二乃は恐らく悟飯絡みだろうな……)ご存知ないな。直で聞いてみればいいだろ?」

 

五月「身内の私よりもあなたの方が適任かと……」

 

風太郎「……ん?って、なんで前向きに解決しようとしてんだ俺!?そんなことやってる場合じゃねえだろッ!!俺にとって偽五月問題の方が最優先だ。あいつの真意が理解できないままじゃ本当に家庭教師解消になりかねない…」

 

……果たして本当にやめさせたいのだろうか?家出をしてまで上杉君を迎え入れることができるようにあそこまで大掛かりに準備をしたのに、そんな突然…

 

風太郎「お悩み相談は後だ!!」

 

五月「そ、そうですよね…。しかし、私も偽五月に共感できる所もあるのです。私達はもうパートナーではありません」

 

風太郎「ええ〜…。お前も…?」

 

悟飯「えっ…?」

 

まさか、五月さんも上杉君をやめさせようとしている…?いや、それはないはず……。だったら、この前の引っ越し騒動は一体なんだったんだ、という話になってしまう……。

 

五月「偽五月の真意は私にも分かりませんが、もう利害一致だけのパートナーではないということですよ。だってそうでしょう?」

 

 

………そういうことか。五月さんが言いたいのは、もう仕事上の関係だけではないということ。始めたばかりの時はただの教師と生徒だったかもしれない。だけど、今はもう違う。

 

ただのビジネス上のパートナーという言葉では片付けられないくらいに共に時間を過ごしてきた。花火大会、林間学校、年末年始、そして、この旅行…。

 

五月「これだけの時間を共有してきたのです。それはもう、友達でしょう?」

 

そう、ここまで一緒に過ごしておいて、友達でないとは言えない気がする。………まあ、僕の場合は友達というよりは、友達以上恋人未満……とも少し違うかな…?少なくとも、二乃さん、三玖さん、五月さんの三人は、僕をただの友達としてではなく、恋仲になることを希望しているようだが……。

 

流石に一花さんや四葉さんまで僕にその感情は向けてないよね…?いや、一花さんはないと断言できるし、四葉さんも恐らく恋愛感情があるとしたら上杉君に対してだと思う……。

 

……それにしても、最初はあれだけ上杉君のことを嫌っていたのに、今では友達だと言っている…。なんというか、懐かしいというか、感便深いものがある。

 

風太郎「……恥ずかしいことを堂々と…。せっかくの旅行が台無しだ。……やるか、お悩み相談………………。あれ?聞こえなかったか…?」

 

 

 

バンッッ!!!

 

 

 

五月「ありがとうございますッ!!」

 

悟飯「うわッッ!!!?」

 

な、なんで五月さんがこっちに来るの!?

 

風太郎「お前!なんでこっちに来てんだよ!?」

 

五月「混浴なので問題ありません!!」

 

風太郎「俺がいるけど!?」

 

五月「何を言っているんですか?友達ならこれくらい当たり前………」

 

当たり前ではないでしょ!?

 

五月「………ではありませんね…///」

 

あっ、よかった……。どうやら冷静さを欠いていただけみたいだ…。

 

五月「すみません…。忘れてもらえると助かります……」

 

風太郎「…………お前にはやってもらわなきゃいけないことがあるんだ。しっかり頼むぞ」

 

五月「えっ?何をですか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

五人の部屋の前で見張りをしているマルオさんの目を欺くために、五月さんがマルオさんに話しかけた隙に僕達が五人の部屋に行くということになった。結果、この作戦は成功したわけだけど……。

 

風太郎「……五月の森……?マジで全員五月になってんのかよ…?」

 

「……フータロー君に悟飯君…。ノックくらいしてよ…」

 

「びっくりさせちゃった?」

 

「これはですね……」

 

「丁度よかったわ。もう一度試してみたかったのよ。覚えてるかしら?五つ子ゲーム。私達が誰が誰だか当ててみなさいよ」

 

風太郎「よし!それなら悟飯が…」

 

「ダメだよ〜。悟飯君はこっちでやってね〜」

 

そう言われて、一枚の写真を渡された。

 

「全員五月の格好をした写真を用意した。写真なら顔だけで見分けることができるでしょ?」

 

悟飯「………嘘」

 

確かに、写真だと気を使って見分けることは不可能だ。…………考えたな…。

 

風太郎「はっ?マジで…?」

 

「フータロー君は一人ずつ面談形式だよ!」

 

風太郎「……うそーん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ということで、僕は別室……というか、面談の待機室で写真を利用した五つ子ゲームをしている。………なんで僕までやることになってるんだろう…?

 

二乃「なによ?まだ分からないっての?もう会って半年にもなるのよ?」

 

悟飯「顔だけで見分けろって言われても………」

 

いや、本当に気という存在がありがたい…。上杉君が姉妹の見分け方で苦労する気持ちがよく分かった……。

 

悟飯「………ん?」

 

一番左の子……。落ち着いた雰囲気というか……。この物静かな雰囲気……。

 

悟飯「……一番右の子は三玖さんでいいかな?」

 

三玖「……正解…!」

 

二乃「むぅ……」

 

四葉「凄いですね孫さん!」

 

二乃「まだ三玖だけじゃないの!ちゃんと全員見分けなきゃダメよ!!」

 

悟飯「えぇ……」

 

一人見分けるだけで10分は時間を使ったんだけど………。

 

一花「やっほー。戻ったよー」

 

二乃「あっ、じゃあ次は私が行くわね」

 

そう言うと、二乃さんは上杉君と面談に行った。

 

三玖「どうだった?」

 

一花「うーん…。やっぱりフータロー君じゃまだ厳しいみたいだね…。悟飯君はどうだったの?」

 

三玖「それがね、ついさっき私だけ見分けることができたの」

 

一花「おお!流石悟飯君!男前だね!」

 

悟飯「……?う、うん?」

 

見分けられることと男前なことって関係あるのかな…?まあいいや…。

 

悟飯「……あっ」

 

真ん中辺りにいるこの子…。笑顔というか、元気が有り余っている様子が伺える。これは多分……。

 

悟飯「真ん中は四葉さんかな?」

 

四葉「おおっ!!正解です!!」

 

三玖「四葉は他の姉妹の中でも一番見分けやすいかも…」

 

一花「確かに。姉妹の中でここまで元気なのは四葉くらいだよね」

 

四葉「ししし!」

 

 

さて、あとは残り三人だけど……。ダメだ…。分からない…………。いや、諦めるのはまだ早い…。もうちょっと注意深く観察してみれば、何か分かるはず…!

 

 

悟飯「うーん………」

 

 

観察すること約5分……。

 

 

二乃「次、三玖の番よ」

 

三玖「分かった」

 

 

今度は三玖さんが面談に行くようだ。

 

 

二乃「それで、何か進展はあったの?」

 

一花「ついさっき四葉を言い当てたよ」

 

二乃「ふーん…。他には?」

 

一花「他の姉妹はまだかな……」

 

二乃「……あっそ」

 

四葉「二乃、拗ねないの!」

 

悟飯「………ん?」

 

左から2番目の子…。上手く言葉に言い表せないけど、自信がある感じというか……。気が強そうというか………。

 

……この雰囲気は多分……。

 

悟飯「……左から2番目が二乃さん?」

 

二乃「……!!正解!!」

 

よし!これであと2人……いや、実質1人かな?

 

一花「大分時間がかかってるとはいえ、なかなか優秀な成績ですなぁ」

 

なんで上から目線なの……?

 

さて、あとは一花さんと五月さんだな。1番右が三玖さん、左から2番目が二乃さん、真ん中が四葉さん。となると、1番左と右から2番目が一花さんと五月さんのどちらかになるわけだが……。

 

………1番左の子は落ち着いている感じがする。これは長女の一花さんではないだろうか?

 

悟飯「……1番左が一花さんかな?」

 

四葉「おお!正解ですよ!」

 

悟飯「それで、右から2番目は五月さん本人ってことになるね」

 

二乃「全問正解……。やるわね」

 

悟飯「でも、時間がかかりすぎちゃったからまだまだだよ……」

 

三玖「四葉、次」

 

四葉「はーい!」

 

どうやら三玖さんが戻ってきたようだ。そして次は四葉さんの番らしい。

 

三玖「どうだった?」

 

一花「それがなんと、全問正解だよ!」

 

三玖「すごっ……」

 

二乃「……待ちなさい?私達を見分けられるってことは、愛があるってことよね?ってことはもう付き合ってもいいんじゃないかしら?」

 

一花「に、二乃…!?」

 

二乃「ということで、ハー君は私がもらうわね」

 

悟飯「へっ?」

 

三玖「何言ってるの二乃?その理屈なら、1番最初に見分けられた私に付き合う権利が与えられるはず」

 

一花「ま、まあまあ!一旦落ち着いて………」

 

四葉「ただ今戻りました〜……」

 

これにて上杉君の方の五つ子ゲームも終了したようだ。あっちはどうだったんだろう?

 

四葉「あはは……。うっかりボロを出してバレちゃいました……」

 

一花「あちゃー……」

 

二乃「まあ四葉らしいわ。でも本番はここからよ。ここにいる私達4人を同時に見ても見分けられるかどうかよ」

 

ガラッ

 

上杉君もこちらにやってきた。

 

風太郎「あ、あれ…?どれが四人目の五月だ…?さっきは分かったのに………」

 

二乃「はぁ………。ガッカリ。やっぱりダメみたいね」

 

風太郎「待ってくれ!もう一回……」

 

 

コンコンっ

 

 

!?誰かが入ってくる!?まさかマルオさんか!?

 

 

ガラッ

 

 

四葉「あっ、お爺ちゃん!」

 

一花「おはよー」

 

祖父「……ブツブツ」

 

二乃「えっ?えっ?」

 

三玖「なんか心配してるみたい」

 

一花「安心して。今でもそっくり仲良しだから」

 

祖父「……」ニッコリ

 

「「「「あはははっ!!」」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

悟飯「あ、危なかった……」

 

僕は咄嗟にベランダに逃げ込んだ。というか、ベランダから飛び立って様子見中。お爺さんの気が部屋から離れていったらまた元に戻ることにしよう。

 

……よし、部屋を出ていったみたいだ。

 

 

 

 

 

 

 

悟飯「……あれ?誰もいない…?」

 

どうやらみんな出ていったみたいだ。そういえば、時間からしてそろそろ朝食の時間だろうか?僕も自分の部屋に戻ることにしよう……。

 

 

………と、廊下を歩いていたら……。

 

 

祖父「……見たぞ?また孫に手を出そうとしたな?」

 

風太郎「あっはっはっ!今日は何もしてませんよ!!」

 

祖父「三玖よ、何もされとらんか?」

 

三玖「う、うん……」

 

祖父「……ブツブツ」

 

風太郎「……三玖、先に行っててくれ!」

 

と、上杉君はお爺さんを駆け足で追いかけて行った。

 

悟飯「……上杉君、どうしたんだろう?」

 

三玖「さあ……」

 

……上杉君が何故お爺さんを追いかけたのかは不明だが、とりあえず朝食を取ることにしよう。いい加減お腹が空いてきてしまった……。

 




 なんか低クオリティな気がするけど許ちて……

 私、中学時代に一卵性の双子の友達がいたんですけど、その2人はマジで顔が似てたんですよね。マジで見分けがつかなかった。だけど、段々時間が経つに連れて、顔にも微妙な違いがあることに気付いたんですよ。ただ説明するとなると難しいんですけど……。

 ですので、例え五つ子でも、長い間共に時間を過ごせば普通に見分けられるようになるんだと思います。でも、漫画やアニメの絵を見る限りだと、全く見分けがつかないような気がしますけどw

 追記
 風太郎の中の人が未来への咆哮歌った動画があるってマジですか?


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第38話 あの世


 これは、悟空がいるあの世でのお話である。今回は、あの世での悟空の生活を少し覗き見てみよう……。


 

悟空「よっしゃー!!ついに超サイヤ人を更に超えた超サイヤ人になれたぞ!!」

 

界王「お前、無茶苦茶だな……」

 

悟空は、あの世で修行に修行を重ねて、超サイヤ人を超えた超サイヤ人を更に超えた超サイヤ人になれたそうだ。

 

界王「悟空、たまには天国でゆっくりしたらどうだ?」

 

悟空「なに言ってんだよ界王様。そんなことしたら、オラ退屈しちまうよ」

 

界王「……お前、この状況を見てもそれが言えるのか?」

 

あの世の戦士達が集う大界王星では、あの世の天下一武道会というものが定期的に開催されていた。天国に来た者の中でも、生前に特別な活躍をした善人だけが体を持つことを許されている。悟空もそのうちの1人なのだが……。

 

界王「お前が超サイヤ人3になったせいでこの星は滅茶苦茶なんじゃ!少しは頭を冷やしてこい!!」

 

悟空「なんでだよ?戦いできなくなっちまったら、オラ退屈過ぎて死んじまうぞ」

 

界王「もう既に死んでおるだろうが!」

 

こうして、悟空は一時的に大界王星を追い出され、今は仕方なく天国でなんとか暇を潰そうとしているところだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

悟空「困ったなぁ…。ここで修行なんてできるわけねえし……」

 

「おや?悟空ではないか?お主は今、あの世の戦士達と戦っていたはずじゃが?」

 

悟空に親しげに話しかけてきた老人は、悟空の育ての親である孫悟飯だ。悟空の息子である悟飯の名前は、この祖父から取ってきたものなのだ。

 

悟空「じっちゃん!!久しぶりだな!!」

 

悟飯(爺)「全く…。お主はワシから会いに行かないと永遠に会いに来ないんじゃないかと思っちまうわい」

 

悟空「ははっ……すまねぇな」

 

悟飯(爺)「ところで、なんでここにおるんじゃ?」

 

悟空「実はよ、新しい超サイヤ人に変身することができたんだけど、そいつの気が凄すぎて、大界王星が無茶苦茶になっちまったみたいでよ…。頭を冷やしてこいって界王様に怒られちまった」

 

悟飯(爺)「今の時点でも反則級に強いというのに、まだその先を求めるのか……」

 

悟空「それがサイヤ人の血ってやつなのかもな」

 

 

悟飯は久々に孫悟飯と話すことができて、どこか嬉しそうな様子であった。

 

 

悟空「…じっちゃんが死んじまったのはオラのせいだったんだな…。すまねぇ…謝っても許されることじゃねえのは分かってるけど……」

 

悟飯(爺)「気にするな悟空。ワシの不注意のせいじゃよ」

 

悟空「……そっか」

 

悟空は、未だに自分のせいで悟飯(爺)が死んでしまったことを悔いているようで、悟飯に会う度に謝罪をしているそうだ。

 

悟飯(爺)「そうじゃ悟空よ。この前、凄い美人な奥さんに会っての!なかなか若いピチピチギャルだったぞ!」

 

悟空「なんだよ…。オラはチチ以外の女には興味ねえぞ」

 

悟飯(爺)「カァーーッ!!一丁前にカッコいい言うようになりよって!!まあ話だけでも聞け。その奥さんは幼い娘さんを残してここに来てしまったらしいんじゃ。今でも娘さんのことを心配しとるんじゃが、その娘が凄いんじゃよ!!」

 

悟空「なんだ?もしかして、その娘はサイヤ人だったんか?」

 

悟飯(爺)「悟空じゃあるまいし……。いや、ある意味サイヤ人よりも珍しいかものぉ…」

 

悟空「へぇ?」

 

悟飯(爺)「なんと、その娘さんは五つ子だそうじゃよ!!」

 

悟空「………い、五つ子…?五人同時に生まれたってことか?」

 

悟飯(爺)「そういうことのようじゃな」

 

悟空「ひぇ〜…!!そいつはすげえなぁ…!!」

 

悟飯(爺)「今は高校に通ってるようじゃが、奥さんの生前もどうやら成績がよくなかったようでな。そこも心配してるようじゃ」

 

悟空「高校…?ってことは、悟飯と同い年なのか。あっ、この悟飯はオラの息子の方だからな」

 

悟飯(爺)「言わなくても分かっとるわい」

 

同姓同名である為、かなりややこしくなっている。

 

悟空「……ん?五つ子の娘?」

 

悟飯(爺)「なんじゃ?心当たりでもあるのか?」

 

悟空「ああ。オラ、たまに下界の様子を覗いてるんだけどよ、悟飯のやつが家庭教師……だっけ?かなんかで働き始めたみてぇでよ」

 

悟飯(爺)「ほう?俗に言うアルバイトじゃな?」

 

悟空「ああ。多分それだと思う。んで、確か五つ子の同級生を教えてるとか……。そんな感じだった気がすんだよなぁ…」

 

悟飯(爺)「なんと!?それは凄い偶然じゃな……。おや?あそこに別のピチピチギャルがおるではないか!じゃあまたの悟空!!」

 

悟空「おう!じっちゃんも相変わらずだな〜」

 

久々に育ての親との会話を楽しんだ悟空は、やることがない為、とりあえず散歩をすることになった。

 

 

悟空「……ん?」

 

天国には様々な人がいる。久々に再会した家族と楽しく雑談する者。何かを悔やんで泣いている者。……言葉に表すとキリがないくらいに様々な人がいる。

 

だが、悟空の目に、ある1人の女性の姿が目に入った。

 

悟空「………なんか、すげえ辛気臭え顔してんなぁ……」

 

悟空もお人好しだからか、はたまた、やることがなくて暇だからかは不明だが、その女性に声をかけてみることにした。

 

悟空「よっ!おめぇ元気が無さそうだけど、どうした?」

 

「……あなたも体を持っているんですね」

 

悟空「あ?ああ…」

 

「先日お会いしたご老人から聞きました。死後も体を持てる者は限られるそうですね。前世で何かを救うような偉業を成し遂げた者だけが持てるとか……」

 

悟空「ああ。そのお陰で死んでもこうして修行ができるしな!」

 

「…私は人生失敗ばかりでした…。まだ幼い娘達を残して死んでしまうなんて…。私如きが天国にいられることが本当に不思議です」

 

悟空「……オラも息子がいるぞ。オラが生きてる時はまだ10歳ぐらいだったけど、その時点でオラよりもしっかりしてたからな。オラの子供とは思えねえくらいにはな」

 

「……不安にはなりませんか?幼い子を残して死んでしまったことに」

 

悟空「ああ。オラよりもしっかりしてるってのもあるけど、オラ、父親らしいことをあまりしてやれなかったからさ……。オラがいなくなったからってそこまで困るようなことはねえはずさ」

 

一応、セルゲームの直前は父親らしいことはいくつかしていた。

 

悟空「ま、そんな気にする必要はねえよ。子供ってのはオラ達親が思ってるよりも結構強いし、しっかりしてるもんなんだよ」

 

「……」

 

悟空は悟空なりにその女性を慰めるような言動をするが、未だに曇った顔が晴れる様子はない。

 

悟空「……オラ丁度暇だからさ、よかったらオメェの娘のことについて話してくれねえか?」

 

「……それは構いませんが……」

 

その女性は何故悟空が自分に構うのかよく分からなかったが、どうせ死んでしまったのだし、別にいいか、と考えたのかは分からないが、語り始める。

 

「……私には恩師がいました。私は尊敬する恩師のような教師になりたいと強く思うようになり、無事に教師になることができました」

 

悟空「教師?ああ、先生のことか!」

 

「ええ。そして、私は教師になってしばらくして、その恩師の方と結婚しました。数年後には子供も授かりました」

 

悟空「ふーん?」

 

ここまで聞くと、特に何事もない順風満帆な生活を送っていたように聞こえる。

 

「私のお腹の中には五人の娘がいました。所謂五つ子です」

 

悟空「五つ子……えっ?五つ子!?」

 

五つ子と聞いて、悟空は先程の悟飯(爺)との会話を思い出す。どうやら、悟空の目の前にいる女性は、悟飯の生徒の母親らしい。

 

「しかしそれが判明した途端、彼の行方が不明になりました。彼は娘が五人もいると知って逃げたのだと思います」

 

悟空「うひゃ〜…。そいつはひでぇな」

 

「それでも、私は娘達を育てると決心しました。ですが女手ひとつで娘五人を育てることはそう簡単ではありませんでした…。教師だけでは五人を養うのに十分な給与もないため、娘達には苦労させてしまいました……」

 

ということは、娘達を育てるために、相当頑張って働いていたに違いない。自分の身を削って子育てをしていたのだろう。

 

「…私は、娘達にとっていい母親だったのでしょうか…?娘達はもっと裕福な家庭に生まれれば、何不自由ない幸せな生活が送れていたのでは、と考えてしまうと………」

 

悟空「……何言ってんだ。そんなこと言ったら娘にぶっ叩かれるぞ?」

 

「……えっ?」

 

悟空「確かに貧乏な生活だったかもしれねえけど、話を聞く限りじゃちゃんと母親らしいことしてんじゃねえか」

 

「ですが……」

 

悟空「オラなんか息子に勉強を教えたことなんてねえし、世話なんて殆ど妻に任せちまってた。それにオラ働いてなかったしな。そんなオラに比べればおめぇは立派だぞ」

 

悟空「それに、オラはこんな親だけど、オラの息子はオラに感謝してくれてたんだ。オラでも子供から感謝されたんだから、おめぇが娘に感謝されねえわけねえだろ?」

 

悟空はそもそも働かなくとも、自給自足の生活をすることもできないことはなかったし、悟空は地球を何度も救っている英雄だ。しかし、悟空は自分のことを英雄とは思ってはいない。

 

「……あなた、お名前は?」

 

悟空「孫悟空だ。おめぇは?」

 

「……中野零奈です」

 

悟空「零奈っちゅうんか…。よろしくな!」

 

零奈「ええ……」

 

心なしか、零奈の顔に少しだけだが、光が差し始めたように見えた。

 

 

こうして、悟飯の父親である孫悟空と、五つ子の母親である中野零奈が出会った。

 

 

零奈「息子さんは今何歳なんですか?」

 

悟空「確か17だったと思う。高校?だっけ?なんか学校に通ってるみてえだ」

 

零奈「その年齢ですと、丁度私の娘達と同い年ですね……」

 

悟空「へえ!そうなんか!同い年と言えば、オラの息子は悟飯っちゅうんだけど、悟飯が最近働き始めたらしいんだけんど、なんか同い年の女の子相手に家庭教師してるらしいんだよ」

 

零奈「同級生を相手に家庭教師するとは……。随分頭のいいお子さんなのですね」

 

悟空「そうなんだよ!オラの息子とは思えねえくらいにしっかりしてて頭もいいんだよ!それでよ、その生徒ってのが凄え珍しくてよ」

 

零奈「珍しい?」

 

悟空「おう。なんでも五つ子らしくてよ」

 

零奈「……五つ子…?それ、私の娘ではないでしょうか…?」

 

悟空「ああ。オラもそう思う」

 

零奈「……まさか生徒と教師の親同士がこうして天国で会うことになるとは……」

 

悟空「いや〜…。オラも最初声をかけた時は、まさかおめぇが悟飯の生徒達の母親だとは思わなかったぞ!」

 

 

偶然とは恐ろしいものである。

 

 

零奈「……あなたは、下界の様子も見ることができるんですか?」

 

悟空「ああ。オラの知り合いに占いババってやつがいるんだけど、そいつの水晶玉や、界王様に頼んで見せてもらうこともできるぞ」

 

零奈「……娘達の近況について、知る限りのことでいいので、教えていただけませんか?」

 

悟空「ああ。オラも常に見ているわけじゃねえから、部分的にしか話せねえけどな」

 

 

悟空は、悟飯と五つ子の生活の様子を部分的にではあるが、零奈に説明する。

 

悟空「そうだなぁ…。最近悟飯が五つ子のうちの3人だっけ?にモテてるみたいでよ」

 

零奈「娘達が……」

 

悟空「ああ。いつか背中を刺されそうでオラ心配だぞ!」

 

親同士の雑談は、かなり長く続いたようだ。2人の親が一体何を話したのかは、当人達しか知らないだろう……。

 

零奈も、自分の娘達が幸せに暮らしているようで、安堵の表情を浮かべていた。

 

 

 

零奈「今日はありがとうございました…。あなたのお陰で少し心が楽になりました」

 

悟空「それは良かったな!そんじゃ、またな!」

 

こうして、悟空の1日限りの暇つぶしは終わった……。

 

 

 

 

 

『悟空〜!!大変だ〜!!』

 

悟空「なんだ界王様?」

 

突然、界王がテレパシーで話しかけてきた。同じくあの世にいる悟空にわざわざテレパシーで話しかけるということは、よほどの急用なのだろう。

 

『地獄でセル達がまた暴れ回っているらしい!止めに行ってくれないか?』

 

悟空「ああ!丁度戦いたいところだったしな!」

 

『頼んだぞ〜!!』

 

そうと決まれば、セル達の気を見つけて瞬間移動するだけだ。

 

悟空「……見つけた…!!」

 

 

シュン‼︎

 

 

悟空はその場から姿を消した。

 

 

 

 

 

フリーザ「ほーっほっほっほっ!少しはマシな方がここにはいないのですか?」

 

セル「………」

 

フリーザ「セルさん?この前からずっと考え事をしていらっしゃるようですが、どうかしましたか?」

 

セル「………」

 

セルは、ある日を境にずっと考え事に浸るようになった。その原因は誰にも分からない。

 

フリーザ「……今日も返事なしですか」

 

 

シュン‼︎

 

 

フリーザ達が暴れ回っている地獄に、悟空が瞬間移動で現れた。

 

悟空「おめぇ達懲りねえなぁ?この前パイクーハンに懲らしめられたばっかだろ?」

 

フリーザ「ふんっ…。一度や二度敗北した程度で折れるようなフリーザ様ではありませんよ」

 

本来ならギニュー特選隊などのフリーザの部下達もいたはずだが、何故かこの場にはいない。悟空やパイクーハンの圧倒的なパワーに恐れ慄いているのだろうか?しかし、フリーザ親子やセルは懲りずに何度も暴れ続けているのだ。

 

悟空「おめぇ達いい加減にしろ!!鬼達に迷惑がかかってんだろ!!」

 

フリーザ「こんなところに何年も閉じ込められているんですよ?不満が溜まって当然です」

 

悟空「それはおめぇ達が生前に悪いことしまくったのが悪いんだろ?」

 

っと、悟空はど正論をフリーザにぶつけた。

 

セル「……孫悟空よ」

 

悟空「なんだセル?どうした?」

 

セル「………どうやら、『この世』にも私が現れたようだな?」

 

悟空「……みてぇだな。なんかよく分からねえけど、別の世界のおめぇと悟飯達が戦ったみてぇだな」

 

セルと悟空は、水晶で偶々別世界のセルが現れた時の現世の様子を眺めていた。

 

セル「別世界とはいえ、私でさえも認めるほどの化け物の名前は魔人ブウ…。孫悟空、貴様は聞いたことがあるか?」

 

悟空「オラはねえな……」

 

コルド「……なに?魔人ブウだと…?」

 

ここで、初めてフリーザの父親であるコルド大王が口を開いた。

 

フリーザ「魔人ブウ…?確か、パパが絶対に手を出すなって言ってた……」

 

コルド「そうだ。あいつはあまりにも危険だ。かつて私がコルド軍を率いていた時、戦力が大幅に減らされた上、占領した星を破壊されることが何度もあった。私も戦いに挑もうとしたが、戦わずとも分かった。ヤツには勝てんと」

 

悟空「……そんなに強えやつなんか?」

 

コルド「ああ。孫悟空。お前でも勝てるような相手ではない」

 

悟空「なんだって…?今のオラでも勝てねえんか?」

 

コルド「ああ。いくら超サイヤ人を超えた超サイヤ人になれるからといって、ヤツには勝てん」

 

悟空「じゃあよ!最近さ、オラは更にそれを超えた超サイヤ人に変身できるようになったからさ、実際に変身してみるから、それで勝てるかどうか見てみてくんねえか?」

 

セル「なにッ!?更に超えた超サイヤ人だと!?」

 

フリーザ「はっはっはっ!!修行のし過ぎて頭がおかしくなりましたか?」

 

悟空「ちっとも信じてねえな?なら見せてやるよ…!!はぁぁぁぁ…!!」

 

 

 

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ…!!

 

 

悟空は一旦超サイヤ人2へと変身する。そこから徐々に気を高めていく。

 

気を高めれば高めていくほど、地獄の大地、空気は揺れ動き、地獄にいる者は皆何事かと騒ぎ始める。

 

セル「ば、馬鹿な…!!まだ気が膨らみ続けている…!?!?」

 

これには流石のセルも驚いている様子。驚いているところ悪いが、悟空の気はまだまだ上昇する。

 

悟空「はぁぁあああああ…!!!!」

 

 

更に気が高まっていくと、揺れは地獄だけには留まらなくなってきた。天国にも届き、閻魔大王のいるところにまで揺れが及んでいる。

 

 

更に高まると、北の界王星があった場所、大界王星にまで及ぶ。

 

界王「まさか…!?またあれになってるのか!?そこまで変身しなくてもセル達を倒せるだろ!?」

 

 

 

 

悟空「だぁあああああああッッ!!!!!」

 

 

ボォオオオオオオオオッ!!!!!

 

 

セル「ぬおッッ!?!?!!?」

 

フリーザ「ぐわっ…!!」

 

コルド「な、なんだ…!?!?」

 

 

 

 

悟空から放たれた光はやがて収まった。目を開けてみると、そこには……。

 

 

「…………」バチバチバチッ

 

 

セル「なっ…!?!?」

 

変わったのは気だけではない。外見もかなり変わっている。眉毛が無くなっただけでなく、髪も異常に長くなっているのだ。ラディッツを知っている者なら、ラディッツと同じくらいの髪の長さになったと言えば伝わるだろう。

 

セル「馬鹿な…!!これほどまで極められるというのか…!?」

 

フリーザ「な、ななっ…!!」

 

コルド「な、なんだそれは…!?」

 

 

超3悟空「こいつが超サイヤ人を超えた超サイヤ人を更に超えた、超サイヤ人3だ」

 

 

セル「超サイヤ人3……だと…!?」

 

超3悟空「なあ、フリーザの父ちゃん。今のオラとその魔人ブウってやつが戦ったら、オラは勝てんのか?」

 

コルド「……………もしかしたら、勝てるかもしれん…」

 

フリーザ「なっ…?パパ!?」

 

セル「……もうとっくに私が追いつける境地ではないのか…?」

 

 

シュイン…

 

悟空「そっか!そいつはワクワクしてきたな!まあオラは死人だから、ブウってやつがこっちに来てくれねえと戦えねえけどな!!」

 

悟空はコルドの返答に満足したのか、元の黒髪に戻した。どういう仕組みか分からないが、眉毛もしっかり復活しているし、髪の長さも元に戻っている。

 

フリーザ「…………」

 

コルド「…………」

 

セル「………」

 

悟空「おっとそうだ!オラはオメェ達を懲らしめる為にここに来たんだった!!覚悟しろよおめぇら!!」

 

コルド「大人しくしてます……」

 

フリーザ「そうした方が懸命ですね…。大変不本意ですが……」

 

セル「私にもお前の細胞が含まれているのだ…。いつかお前を越す……」

 

悟空「あ、あり?」

 

セル「私達は、大人しく監獄に戻るとしよう」

 

悟空「えっ?お、おーい!!」

 

悟空がセル達に呼びかけるが、セル達は自ら監獄に入ってしまった。

 

悟空「………なんだそりゃ…」

 

しかし、その状況を作り出したのは、紛れもなく孫悟空自身なのだが、悟空の天然さ故か、そのことに全く気付いていない。

 

 

 

 

 

 

界王「馬鹿もーん!!なんの為に一時的に大界王星を追い出したと思ってるんだ!!」

 

悟空「はははっ!すまねえすまねえ!」

 

大界王「ああ。悟空ちゃん、あれならもうここで変身しても大丈夫だよ?耐えられるようにここ直しといたから」

 

悟空「ホントか!?サンキュー大界王様!!」

 

こうして悟空は大界王星に限って自由に超サイヤ人3に変身することができるようになったとさ………。

 





 次回分は一応できてるんですが、見直しや修正等もすると思うんで、そんなすぐには投稿できないかと思います。

 細けえこったぁ気にしないでくれよな!今日の私はワクチンの副作用で頭が悪くなってるので、後書きはこれくらいにします…。


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第39話 謎の多い旅行


 前々回のあらすじ……。
 二乃と五月が風呂に乱入してきたり、五つ子の祖父に三玖と悟飯の関係を誤解されたり、五つ子ゲームが開催されたりと、色々な目に遭っていた悟飯。

 五つ子ゲームは長い時間をかけながらも、見事に全問正解することのできた悟飯。

 そして前回は、悟空と零奈があの世で対談することになった。悟空のお陰で少しは零奈の心が軽くなったようだ。

 しかし、悟飯は恋愛に関する悩みが解決していない。付き合っていないのに二人とキスをしてしまっている悟飯。本当に刺されないか心配になってしまうが……。



 

一方その頃、温泉では……

 

二乃「痒いところはありませんか〜?」

 

一花「もー、ここまでしてくれなくても良かったのに……」

 

一花は二乃に誘われ、2人で朝風呂に入っていた。今度はちゃんと混浴ではなく、女湯に入っている。

 

二乃「あら、足どうしたの?平気?」

 

一花「うん。山でちょっと捻っちゃって…。痛くはないかな?」

 

二乃「もう…。気をつけなさいよ?」

 

一花「……この温泉も変わらないね」

 

二乃「昔は五人で入ってたっけ」

 

一花「……それで、今日はなんで私なんだろう…?」

 

昨日は五人で入ったものの、普段は一緒に入るということはない。特に、特定の誰かと一緒に2人で入るということは尚更ないのだ。その為、一花は二乃が自分に何か用があって朝風呂に誘ったのではないかと簡単に推測した。

 

二乃「……一花の話が聞きたくなったのよ。ほら、あんたって沢山されてるらしいじゃない?告白とか……」

 

一花「…!!」

 

確かに、一花は姉妹の中でも突出して告白される機会が多かった。つい最近も三玖が変装していたとはいえ、前田に告白された。

 

こんな話を持ちかけてくるということは………。

 

二乃「こんなことは他の子には言えないわ。……好きな人ができたの」

 

 

 

 

一方その頃、五月が強引にマルオと会話をしてマルオを引き止めているのだが、そろそろお腹が空いて悲鳴をあげそうになっていた。

 

ちなみに、五月は気づいていないが、娘から声をかけられたのが嬉しかったのか、少しだけマルオの頬が緩んでいたのだが、それは別のお話。

 

 

 

 

二乃「恋愛相談なんだけど、出会いは最悪だったわ。でも気づいちゃったのよ。あいつが好きだって」

 

一花「…(二乃も三玖も五月も、みんな真っ直ぐで強いな…。でも私は……)」

 

二乃、三玖、五月の三人は、悟飯に対してこれまで様々なアタックを仕掛けていた。と言っても、二乃は参戦したばかりなので、先の2人と比べたらまだ数は少ないが……。

 

その三人はライバルがいるからかもしれない。だからここまで積極的に責めているのかもしれない。だが、一花の場合は状況が少し変わる。一花のターゲットである風太郎を狙うライバルというライバルは存在しない。だからなのか、一花はあまり積極的になれなかった。

 

いや、それだけではない。もしも自分の想いを風太郎に告げてしまったら…。今までのような関係ではいられなくなるのではないかと危惧しているのだ。だからこそ、既に告白した五月と二乃や、分かりやすいアタックをしている三玖を『強い』と言ったのだ。

 

一花「えっと、友達の話だよね…?」

 

二乃「私の話よ」

 

二乃は最早テンプレとも言える友達の話作戦を遂行しないどころか、隠す気が全くないらしい。

 

二乃「相手は……。だめ!こればかりは言えないわ!!秘密!!」

 

一花「……(知ってるけど…)」

 

一花は二乃の告白を影で聞いていたと言うこともあるが、そもそも二乃の想いは既に他の姉妹にも勘づかれている。鈍感な五月でも気付いているのだが、二乃はそのことに気付いていないらしい。

 

二乃「……つい先日、そいつに告白しちゃったけど、それが正解だったか自分でも分からないわ。そこで聞きたいの。告白されたら、多少は意識したりするのかしら?」

 

一花「……(二乃が、もしも悟飯君じゃなくてフータロー君に……だとしたら…………)」

 

 

 

『私の経験ではだけど………。ごめん。そういうのはなかったかな』

 

二乃の足を引っ張るような台詞が頭に浮かんだ。一花はそんな自分に嫌気がさしていた。

 

 

 

一花「うーん…。私の場合はちょっとは意識するかな?でも、それがきっかけで相手のことが好きになった、なんてことはないかな……」

 

これが一花の正直な感想だった。告白されれば多少は意識する。だが、それで相手のことが好きになるかと言われれば、また別の話だ。

 

二乃「……そう。多少は意識するのね。でも告白だけじゃ足りなそうね……」

 

一花「……二乃」

 

しかし、これだけは聞きたかった。あれだけ悟飯のことを嫌っていた二乃が、何故急に悟飯のことが好きになったのか。

 

一花「…出会いは最悪だったんだよね?なのにどうして今はその人のことが好きになったの?」

 

二乃「…あいつは私の大切なものを壊す存在として現れたわ。だけどあの夜、私の初恋の人に会ったのよ。だけどその初恋の人は、そいつの変装で、私が勝手に勘違いしてただけだった……」

 

この時点で既に二乃が自身の好きな人のことについて隠す気がないことが分かる。二乃の初恋の相手は、セルゲームに参加していた金髪の少年。そしてその少年の正体は悟飯であることは既に知っていた。

 

そんなことはお構いなしに、二乃は続ける。

 

二乃「……そして理解しちゃったのよ。私が拒絶していたのは、彼の役割であって、彼個人ではなかったことを……。王子様が彼だと気付いてからはもう歯止めが利かなかったわ」

 

一花「……」

 

だが、一花は知っている。今まで悟飯に対してどんな態度を取ってきたかを。

 

例えば初日。悟飯には効かなかったとはいえ、睡眠薬を盛っていたし、その後も授業を妨害していた。一度や二度ではない。

 

そんなことをしておいて、好きになったら態度を変えてアタックするというのは、些か都合が良すぎではないか?一花はそう考えた。

 

一花「…ちょっと都合が良すぎじゃないかな?最初は拒絶していたんでしょ?なのに、気付いたら好きだなんて……」

 

一花は少々苦笑いをしながら二乃にそう言った。別に二乃の恋路を邪魔するつもりはないが、いくら優しい悟飯でもそれを許してもいいのだろうか?と少々疑問に思ってしまった……。

 

 

 

というのは建前で、これ以上は恋愛に関する話をしたくなかったのだ。それをする度に、風太郎のことを思い出してしまう。そして臆病で卑怯な自分に嫌気がさしてしまうのだ。だからこの話を早く終わらせたかったのだ。

 

二乃「……そうね。こればっかりは自分でも引いてるわ。だからって諦めるつもりはないけど。だってこれは私の恋だもの。私が幸せにならなくちゃ意味ないわ」

 

一花「……(自分の恋だから、自分が幸せにならないと意味がない……か)」

 

一花「……もし、同じ人を好きな人がいたら?その子の方が自分よりずっと彼のことを想ってるとしたら?」

 

二乃「それは、そうね………。悪いけど蹴落としてでも叶えたい。そう思っちゃうわ」

 

一花「……(と、止まらない……!愛の暴走機関車だ!話も聞いてくれない!相談だって言ったのに!!)」

 

二乃「あんたと話せてよかったわ。やっぱ告白だけじゃ足りないのね」

 

一花「えっ…?な、何をするつもり…?」

 

二乃「手を……ううん。抱きしめて…、それでも分からないなら……。

 

 

 

 

 

 

キスするわ」

 

 

一花「!?ッ」

 

いきなり二乃がキスすると言い出したものなので、一花は驚いてしまう。だがこの子ならやりかねないとも思ってしまう。何故なら今の二乃はブレーキが壊れた愛の暴走機関車なのだから…。

 

一花「そ、それはまずいよ!いきなりキスって…!?」

 

二乃「……そ、そうよね。冷静に考えて……。下手くそだったら嫌われちゃうわ」

 

一花「……(そういうことじゃないよ!?まあ、悟飯君なら下手でも全然嫌ったりしないだろうけど……)」

 

 

次に、二乃は目をギラリと光らせ、一花に急接近する。

 

二乃「あんた、キスシーンはもう済んだのかしら!?」

 

一花「な、何をするつもり…!?」

 

二乃「いいじゃない!姉妹なんだから!!」

 

一花「姉妹だからダメなのぉおおおッ!!」

 

二乃の暴走具合には、長女の一花も流石に骨が折れた……。

 

 

 

 

 

「ひゃ!」

 

「まだ冷たい……」

 

「やめて下さいよぉ!」

 

「あっ!二乃と一花も来たみたいだよ!」

 

 

 

 

祖父「今来たのが一花と二乃」

 

風太郎「えっ?」

 

祖父「あれが三玖」

 

風太郎「えっ?」

 

祖父「その隣が四葉」

 

風太郎「えっ…?」

 

 

悟飯「……」

 

僕は五月さん、二乃さん、三玖さんの三人に誘われる形で海に来ている。悟天とお母さんは山で自然を堪能しているところだ。

 

……ところで……?

 

悟飯「……上杉君、何をしているの?」

 

風太郎「師匠にあいつらの見分け方を教わっているところだ」

 

いつの間にかお爺さんを師匠呼びしている……?それにしても、五人を見分けるコツをどうしてこんな必死に………。あっ、偽五月さんの件か…。

 

祖父「……お主。三玖と付き合っているんだから、せめて三玖の顔は分かるんだろうな……?」

 

……誤解されたままだったんだ…。今のうちに誤解を解いた方がいいかな…?

 

悟飯「あの、僕は三玖さんと付き合ってるわけじゃ……」

 

祖父「なに…?それなのに孫と接吻したのか?殺す……」

 

悟飯「い、いやだなぁ!冗談ですよ!冗談ッ!!」

 

祖父「笑えぬ冗談はよせ」

 

悟飯「あ、あはは………」

 

風太郎「はっ?せ、接吻!?お前、何してんだよこんな時に………」

 

悟飯「あ、あれは色々あって…………」

 

ダメだ…。このままでは僕がどうしようもない女垂らし野郎に認定されてしまう気がする……。

 

祖父「お主、どれが三玖か当ててみろ」

 

悟飯「へっ…?」

 

今は五人とも五月さんの格好をして遊んでいる。だから顔だけで見分けるのはとても難しい。時間をかければできないこともないのだが、1人見分けるだけでも10分ないと厳しいのが現状だ。

 

だから、今は気を使って区別するしかないのだ。

 

悟飯「……今、海の水を汲んだ子が三玖さんですよね?」

 

祖父「……なかなかやるではないか…。だが儂はまだお主を認めたわけではないぞ…?三玖に案じて許してやってるだけだ……」

 

……ここで否定をしたらまた……。どうやったら誤解を解けるのだろうか…。

 

「わあ!たくさん釣れてますね!」

 

風太郎「ああ、殆ど爺さんの手柄だがな」

 

「これはなんて魚ですか?」

 

祖父「メバル」

 

「これは?」

 

祖父「アイナメ」

 

「これは?」

 

祖父「クロダイ」

 

(みんな一緒に見える……)

 

 

「これは?」

 

祖父「ああ…。これはキスだな」

 

「…!!」

 

その言葉を聞いた途端、五月の格好をした五人のうちの1人が、ズンズンと悟飯に歩み寄ったが………。

 

「………今じゃないわね。五月の姿じゃむしろ五月が有利になるかも……」

 

「………」

 

 

 

悟飯「……?」

 

な、なんだ…?上から何か落ちてくるような気が……?……いや、あれは…!!

 

 

 

 

 

ブンッ‼︎

 

 

 

 

 

悟飯「……!!」

 

 

突然、謎のマシンが空中に現れた。しかし、角度的に他のみんなはこれに気付いていなかった。

 

しかも、そのマシンは、悟飯も見覚えのあるものだった。

 

悟飯「……まさか…!」

 

 

ドシューン‼︎

 

悟飯「!?」

 

しかし、そのマシンは急発進をして、海の向こうへと姿を眩ましてしまった。

 

 

悟飯「……間違いない…。あれは……」

 

 

 

 

 

 

 

 

ザバァアアアアアアアンッ!!!

 

 

「きゃっ!!」

 

「な、なによ!?」

 

 

マシンが突然現れた位置から真下に何かが落ちた。いや、誰かが落ちた。

 

悟飯「と、トランクスさん!!」バシューン‼︎

 

 

悟飯は五つ子の祖父が目の前にいることをお構いなしに、舞空術を使ってその人物の救出に向かった。

 

悟飯「無事ですか!トランクスさん!!」

 

……そう。この悟飯の言動から、マシンとは、タイムマシンのことを示唆していたのだ。だが…………

 

 

悟飯「……?トランクスさんじゃない…?………気はそこまで弱っていない…。気を失っているだけか…?」

 

四葉「待って下さい!お父さんはお医者さんですから、一度お父さんに見てもらいましょうよ!」

 

悟飯「そうか…。分かった!!」

 

 

ドシューンッ!!

 

 

悟飯は全速力で旅館に戻って行った…。

 

風太郎「な、なんだ…?何があったんだ…?」

 

祖父「……あの者……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

悟飯「マルオさんはいますか!!」

 

マルオ「……君は娘達と共に海に行っていたはずだが…?」

 

悟飯「この人が……」

 

マルオ「……なるほど…。私も命を救う医師だ。今できる限りのことはしてみよう」

 

悟飯「いえ、命の心配はいりません。ただ気絶しているだけだと思うのですが、一応……」

 

悟飯は空から落ちてきた人をひとまずマルオに任せた。気を感じることはできるし、そこまで弱っているわけでもないので、命の心配はいらない。

 

だが……。

 

マルオ「……左腕を失っているようだね?だが、出血していないところを見ると、かなり前に失ったものと思われる……。特に気にする必要はなさそうだ。君はもう戻っていていいよ。この人は僕が見ているよ」

 

悟飯「……ありがとうございます」

 

悟飯が助け出した謎の人物…。彼は孫悟空によく似ていた。だが悟空にしては髪が短いし、雰囲気も違う…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

みんなもバスで戻ってきたようで、さっきのことを心配されたが、特に問題はなさそうだと言っておいた。実際、命に別状はない。

 

……おや?部屋に戻ると、二乃さんからと思われる手紙が……。夜に展望台に来てと書いてある。……なんだろう?

 

 

 

 

悟飯「どうしたの、二乃さん?」

 

二乃「あら、ちゃんと手紙を読んでくれていたみたいね」

 

今度は五月さんの格好をしているわけではないらしい。

 

二乃「ちょっとあんたと話をしたかっただけよ」

 

悟飯「それなら電話でもいいんじゃ……」

 

二乃「細かいことは気にしないの。それでさ、この鐘、知ってる?」

 

ああ…。これは先日、江端さんが説明していた鐘だ。確か、男女2人で鳴らすと結ばれるとかなんとか………。

 

悟飯「……って感じの鐘だよね?」

 

二乃「そうよ。よく覚えてるわね?」

 

悟飯「ま、まあ……」

 

二乃「………」

 

悟飯「………?」

 

ん?二乃さん、突然目を瞑ってなにをしているんだ…?

 

悟飯「二乃さん、眠いの?」

 

二乃「あーそうね。確かに眠いかも。王子様がキスしてくれれば目が覚めると思うんだけどな〜」

 

悟飯「………」

 

 

なるほど。二乃さんの目的がよく分かった。ダメだ。これ以上付き合ってもいない女の子とキスするわけにはいかないぞ。既に2人とキスしてしまっている。それだけでも充分まずいのに、更にもう1人とキスしました、なんてことになったら……いよいよあのお爺さんに殺されてしまう……。

 

 

二乃「逃がさないわよ」ガシッ

 

悟飯「わっ!!」

 

立ち去ろうとしたら、二乃さんが僕を掴んできた。

 

悟飯「だ、ダメだって!付き合ってもいないのにキスするなんて!!」

 

二乃「ふーん?三玖とはしたのに?」

 

悟飯「…………えっ?」

 

な、なんで……?いや、三玖さんみたいにカマをかけているに違いない…!二度も同じミスはしないぞ…!!

 

悟飯「嫌だなぁ…。証拠もないのに…。その場面でも見たのかな?それとも、信憑性のない噂に惑わされたとか?」

 

二乃「三玖がね、寝言で『悟飯とキスできた…。やった……嬉しい………』って言ってたのよ」

 

悟飯「………」

 

いや待て、冷静になろう。寝言が証拠になるわけがない。そんなの横暴だ。

 

悟飯「……三玖さんの夢の中での話じゃないかな…?僕は三玖さんとそんなことした覚えはないよ…?」

 

二乃「いや、今日の朝からどうも三玖の様子がおかしいのよ。史上最高レベルで機嫌がいいのよ。そこまで三玖を上機嫌にできるのはあんたくらいだと思うのよ」

 

悟飯「い、いや?そうとも限らない  ないよ?」

 

二乃「あの後三玖に問い詰めてみたのよ。そしたら自白したわよ。三玖からキスしたんですってね?」

 

み、三玖さん!?

 

二乃「明日から三玖のご飯に甘いもの入れまくるわよって言ったらあっさり降参したわ」

 

それはずるいよ…。

 

二乃「あんたとキスした理由が、五月と同じ土俵に立つためだとか言ってたのよ。これはどういう意味なのかしらねー?」

 

悟飯「………あ、あははは」

 

二乃「言っとくけど、逃げたらパパとお爺ちゃんに言うから」

 

お爺さんはともかく、マルオさんには絶対に言わないで!?こんなこと言われちゃったら絶対に逃げられないよ!?

 

ああ……。僕はどうしようもないダメ男だ……。

 

二乃「……やっぱりなし」

 

悟飯「………えっ?」

 

二乃「こんなズルい方法でキスしても虚しいだけだわ。姑息な手を使わずに真正面から挑みたいわ」

 

悟飯「二乃さん……」

 

二乃「……どうしても私とキスしたくなかったら、私なんか放っておいて旅館に戻ればいいわ。だけど、少しでも私とキスしたいって思ってくれるなら…、ここに残ってほしいの!」

 

……二乃さんは本当に僕のことを好きでいてくれているんだな…。でも二乃さん。その言い方はさっきよりもずるいと思うよ……。僕は五月さんと三玖さんとキスをしてしまっている。それなのに、二乃さんだけ拒否だなんて………。

 

…………でも、付き合ってもいないのにキスするのも良くないことだ。だったら僕はどうするべきなんだ?二乃さんの想いに応えてあげるべきなのか?それとも、このまま旅館に戻った方がいいのか…?確かに、戻ればこれ以上は過ちを犯すことはない。だけど、二乃さんの心を傷付けることは間違いない。

 

 

 

『相手とキスする想像ができるか---』

 

 

 

……できないことはなかった。むしろ違和感がないように感じられた。……………ということは………?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

二乃「…………えっ?」

 

おや?二乃さんの様子が……。

 

悟飯「どうしたの?」

 

二乃「……ママ?」

 

悟飯「えっ?」

 

まま…?ママって言ったのか…?ママって、母親を意味する言葉だよな…?でも、五人のお母さんは病気で亡くなったはず……。ドラゴンボールを使っても生き返らせることは不可能なはず…。

 

 

「………二乃」

 

二乃「ほ、本当に、ママなの…?」

 

「二乃、久しぶりですね」

 

どうやら、二乃さんから見たら、本当に母親らしい。……なんで?そんなはずはないぞ…?一体、どういうことだ?

 

二乃「ねえ、ママはあの日死んだはずよ…?葬式もしたし、火葬するところだって見たのよ…?」

 

零奈「ええ。私は確かに一度死にました。ですが、娘のお陰で現世に戻ることができました」

 

……娘?どういうことだ…?二乃さんは様子を見るに知らなそうだから、他の4人の誰かが生き返らせた………?

 

いや、ドラゴンボールでも不可能なことを、あの4人ができるはずがない…。

 

零奈「……あなたは?」

 

悟飯「ぼ、僕ですか?孫悟飯です。二乃さんを含む、娘さん達の家庭教師をさせていただいてます」

 

零奈「孫悟飯…?あなたが……」

 

悟飯「……??」

 

零奈「……ここでは平和に過ごしているのですね……」

 

悟飯「えっ?それ、どういう意味です?」

 

零奈「細かいことは気にしないで下さい」

 

二乃「……ママ…!ママ!」バッ‼︎

 

二乃さんは、久しぶりにお母さんと再会できた嬉しさを抑えられなかったのか、二乃さんのお母さんに飛び込んだ。

 

二乃「会いたかった…!会いたかった…!!」

 

零奈「私もですよ、二乃……」

 

2人が抱き合うその光景は誰がどう見ても、愛している親と、愛されている子であった。

 

だけど、どうもおかしい…。怪しい…。本来なら生き返ることのできない人のはず……。それにも関わらず、こうして僕たちの前に現れている…。二乃さんが認めているのだから、少なくとも外見は二乃さんのお母さんで間違いないのだろうが………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

零奈「ハッ!!」

 

バシュッッ!!!!!

 

二乃「キャッ!!!!!」

 

次の瞬間、何故か零奈の気が急激に高まり、それと同時に二乃が光だした。

 

 

シュン‼︎

 

 

二乃「はぁ……はぁ………な、何が起きたの…?」

 

悟飯は二乃の危険を察知し、何かが起こる前に二乃を零奈から引き剥がした。

 

悟飯「………一瞬だが、二乃さんの気があんたに移されるように感じた……。なんのつもりだ?」

 

零奈「………娘を返しなさい。例え孫君でも私の邪魔をするなら、容赦しませんよ?」

 

悟飯「な、なにを…?」

 

零奈「はぁっ!!」

 

 

カァッ!!!

 

 

悟飯「なっ…!?」

 

なんと、零奈が気弾を発射した。

 

 

二乃「きゃっ!!」

 

 

ビュン‼︎

 

 

悟飯が二乃に覆い被さると、そのすぐ真上をエネルギー弾が通過した。

 

エネルギー弾の風圧によって、鐘が揺らされて鳴り響いている。

 

悟飯「二乃さん、大丈夫?」

 

二乃「………まさかそこまで歓迎されているとは思わなかったわ」

 

悟飯「えっ…?んっ…!!」

 

 

………二乃と悟飯の影が重なった。

 

 

悟飯「な、ななな、何を…!?///」

 

二乃「……恋は攻めてこそとは思ってたけど、あんたには特に有効なのがよく分かったわ」

 

悟飯「二乃さん!?今の状況分かってる!?」

 

二乃「ああ。鐘が鳴り響いているわね。そしてこの鐘の近くにいるのは私とハー君だけ。あら?これって伝説が本当なら………」

 

 

 

カァッ!!!

 

 

悟飯「はっ!!」

 

 

バシンっ!!

 

 

またしてもエネルギー弾が飛んできたものの、今度は悟飯が弾く形で被害を免れた。

 

悟飯「お前!!何者だ!!二乃さんのお母さんじゃないな!?」

 

零奈「何を言っているのですか?私は正真正銘、二乃の母親の中野零奈です」

 

悟飯「それはおかしい…!ならなんで気を扱えるんだ!?気を扱える人は、地球上ではかなり限られた人数しかいないはずだ!!」

 

そう。中野零奈は一般人のはずだ。にも関わらず、こうして気弾を発射したので、悟飯は警戒心を強める。

 

 

 

シュン‼︎

 

 

零奈「はっ!!」

 

 

ドカッ!!

 

 

悟飯「がっ…!!」

 

 

悟飯は突然のことに対応できず、零奈の攻撃を許してしまった。

 

悟飯「だりゃ!!」

 

悟飯は拳をいくつも繰り出すものの、零奈には1発も当たることはなかった。

 

 

 

ドコォオオッ!!

 

 

悟飯「ぐっ…!!(まさか、人造人間として蘇ったのか…?いや、それなら気を感じないはず……。いや、セルみたいなバイオロイドタイプならあり得るのか…?だけど、肝心なのは『娘が生き返らせてくれた』と言っていたことだ…。これが真実なら、人造人間という線はかなり薄くなる……)」

 

一般人であるはずの零奈が、超化していないとはいえ悟飯を圧倒することができる理由は、人造人間として改造されたぐらいしか思いつかないが、Dr.ゲロの名前が上がってない上に、自身の生前の記憶も残っている様子なので、その可能性は限りなく低い。

 

悟飯「はぁああああッ!!」

 

 

ボォオオオッ!!!

 

 

零奈「……それは、超サイヤ人」

 

超悟飯「……なんであなたが超サイヤ人の存在を知っている…?」

 

零奈「……五月の記憶を介して知っていますからね」

 

超悟飯「……一体どういう意味だ?五月さんの記憶を介している…?」

 

零奈「お喋りが過ぎましたね……。二乃をこちらへ引き渡して下さい」

 

超悟飯「……そいつはできないな」

 

零奈「なら、力づくで従ってもらうまでです!!」シュン

 

 

零奈は常人には見えないスピードで悟飯に接近する。しかし……。

 

 

超悟飯「だっ!!」

 

 

ドカッッ!!!

 

 

零奈「ぐっ…!!」

 

超サイヤ人になった悟飯には余裕で目で追うことができた。

 

超悟飯「はぁあ…!!はっ!!」ブンッ‼︎

 

続いて悟飯は零奈の足を掴むと、回転を始めて零奈を振り回し始める。ある程度勢いがつくと、悟飯は零奈を遥か上空に投げつけた。

 

 

零奈「はっ!!」バババッ‼︎

 

 

零奈は体制を立て直すと、悟飯に向けて気弾をマシンガンの如く連射した。

 

 

超悟飯「なっ…!?二乃さんがいるのにお構いなしに!?」

 

二乃「きゃっ!!」

 

悟飯は二乃を庇いながら気弾の雨を器用に避けた。

 

 

超悟飯「はっ!!!」カァッ‼︎

 

 

零奈「…!!」

 

 

 

ドグォオオオオオオオオオン!!!!

 

 

悟飯は更に隙をついて気弾を発射し、見事に相手に直撃した。

 

超悟飯「二乃さん、怪我はない?」

 

二乃「……あ、ありがとう…。やっぱりあんたは金髪の方がカッコいいわ」

 

超悟飯「そ、そう……」

 

褒められて若干嬉しい悟飯であるが、状況が状況なので、素直に喜ぶことはできなかった。

 

 

零奈「……なるほど。私が知る孫君よりもかなりできるようですね」

 

 

相手は先程の気弾が効いたのか、多少はダメージが入ったように見える。

 

零奈「……かー、めー、はー、めー…!!」

 

超悟飯「……!?あ、あれは…!?」

 

なんと、零奈はかめはめ波の体制に入った。実際に両手で青い光を作り出している。あれは間違いなくかめはめ波であった。しかし、五つ子の母親である零奈が何故かめはめ波を使えるのか悟飯は疑問に思ったが、考える余裕などなかった。

 

 

超悟飯「……かー、めー、はー、めー…!!」

 

 

二乃「やめてッ!!」

 

 

超悟飯「…!!」

 

二乃「これ以上ママを傷つけないで!!」

 

超悟飯「で、でも!あれは偽物で!!」

 

二乃「それはなんとなく分かるけど、それでもママを傷つけてるみたいで…」

 

零奈「波ぁああああああああッッ!!!!」

 

 

ズォオオオオオオオオオオオッ!!!

 

 

超悟飯「まずい…!!」

 

 

二乃「う、うそ…!!」

 

実の娘である二乃がいるにも関わらず、躊躇なくかめはめ波を放っている時点で、本物の母親であるはずがないのだ。しかし、二乃が言うには、どこからどう見ても本物の母親らしい。

 

 

バチッッ!!!

 

超悟飯「はぁぁぁぁ……!!!」

 

 

悟飯は零奈の放ったかめはめ波を次第に押し始める。わざわざ超サイヤ人2にならなくても押し返すことは可能だ。

 

 

 

ドンッ!!!

 

 

悟飯は零奈のかめはめ波を跳ね返した。

 

 

ガシッ!!

 

 

超悟飯「ぐっ…!?」

 

二乃「は、ハー君!?」

 

零奈「私はこの時を待っていました。あなたの気をいただきます」

 

超悟飯「ぐっ…!!あっ…!!(な、なんだ…!?僕の気がみるみる減っていく……いや、吸い取られているのか…!?これじゃあ、まるで人造人間19号や20号みたいじゃないか…!!ということはやっぱり…!!)」

 

しかし、悟飯は力を出そうにも、首を思いっきり掴まれている上に、自身の気をどんどん取られているため、時間が経てば経つほど抵抗が出来なくなる。が、既に抵抗ができるほどの力が残っていない。

 

超サイヤ人2に変身しようにも、力が入らない為にそれも叶わない。

 

二乃「ママ!ハー君を離して!!ハー君は敵じゃないの!!」

 

零奈「二乃は黙っていて下さい」

 

と、零奈は冷たく言い放った。

 

二乃は確信した。目の前にいるこの人間は、自分の母親によく似たただの他人だと。

 

零奈「二乃?私達は長いこと離れ離れになってしまいました…。でももう大丈夫です。母である私が戻ってきました。これからは一花、三玖、四葉、五月と共に6人で暮らしましょう?」

 

一見、久々に娘に会えた母親が、娘に同居を提案しているように聞こえる。というか、側から見たら殆どの人がそう判断するだろう。

 

しかし……。

 

零奈「永遠に………」

 

二乃「えっ………?それ、どういう意味…?」

 

 

 

 

シュイン…

 

 

悟飯「ぐっ…!ぁ…!!」

 

そして、悟飯はとうとう超サイヤ人の状態を保てなくなってしまった。

 

二乃「ママやめて!それ以上はハー君が死んじゃう!!」

 

 

 

 

 

ドゴォオオオオオッ!!!!!

 

 

 

零奈「……!!」

 

 

悟飯「がはっ…!!」ドサッ

 

 

何者かが零奈を攻撃したことによって悟飯は解放された。

 

 

二乃「ハー君!しっかりして!!」

 

悟飯「ぐっ…!油断した…!!」

 

「……君は…」

 

二乃「あの…!ありがとうございました!!ハー君は私の大事な人だったんです!あなたがいなかったら、ハー君はもしかしたら………えっ…?あなた……………」

 

「……そうか。それは良かった」

 

シュン

 

零奈「……あなたは…」

 

突如、悟飯と二乃の目の前に現れた、山吹色の道着を着た戦士。

 

「零奈さん。もう人造人間17号と18号はあなたが倒しました。それなのに、何故まだ戦うんです?この人達は明らかに人造人間とは関係がない……」

 

零奈「…私は娘を失いました…。だから取り戻す必要があるのです。もう娘を失わないため、私が娘達を守ってあげなくてはならない…!!」

 

その戦士の雰囲気は、どことなく悟空に酷似していた。しかし、額には傷があり、左腕を失っている。さらに、悟空のような独特な髪型ではない。

 

「五月を解放して下さい…!!お願いします…!!」

 

零奈「それはできません。私は他の4人とも共に過ごす為に過去に来たのです。もしその邪魔をするなら、例えあなたでも………」

 

「……そうか。なら…!!」

 

 

ボォオオオッ!!!

 

超サイヤ人に変身した戦士は、未来の世界でたった1人……いや、正確には2人で戦い続けていた。

 

「オレはあなたを止める!!例えこの身が滅びようともッ!!!!」

 

その誇り高き戦士の名は、孫悟飯という……。

 





 初めてリクエストにしっかり?応えたような気がする…。ということで、未来悟飯は本編でも登場することになりました。今回のストーリーは、未来悟飯を出してほしいという沢山の要望から生み出されたものですので、間接的に読者の皆様が作ったようなものです。

 未来悟飯の登場だけでなく、零奈が謎の復活。未来悟飯が現代に来た理由、零奈が生き返った理由は、未来世界での出来事と合わせて判明させる予定ですので、あと数話はお待ち下さい。次回、次々回、その次くらいまでは未来世界の話になると思います。


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絶望の未来、追憶編
第40話 絶望の未来の追憶


 前回のあらすじ…。
 二乃と一花は温泉で恋愛相談をするが、二乃の暴走っぷりに骨が折れそうになる一花。

 海で遊んでいた五つ子と風太郎と悟飯だが、突然空から人が落下。悟飯はすぐに救助し、マルオに見てもらうも、大事には至らなかった。

 夜、二乃に呼び出されて展望台にやってきたが、意図を察した悟飯は戻ろうとするが二乃に引き止められた。最初は脅しに近い形で二乃がキスを迫ったが、却下した。正々堂々と自分にぶつかる二乃の姿を見て、少々なやんでしまった悟飯。そこに、何故か五つ子の母親である零奈が現れる。
 その零奈は何故か超サイヤ人になった悟飯ともいい勝負をした。そして、そこに現れたもう1人の戦士が……。



零奈「……どうしても、戦うというのですね?」

 

「全てはあなたを止め、五月を助けるためだ…!」

 

零奈「ならば、容赦しません!!」シュン

 

「…!」シュン‼︎

 

金髪に変化した青年の戦士は、高速で動く零奈とまともに張り合っていたのだか、二乃の目ではそれを認識することができなかった。

 

それよりも、二乃には気になることがあった。

 

二乃「……金髪になった…?」

 

今は二乃の腕の中にいる悟飯のように金髪に……。すなわち、超サイヤ人に変化したのだ。それだけではなく、その青年の姿を見て、一瞬悟飯だと錯覚してしまった。

 

二乃「……ハー君はここにいるわよね…?でも、あの人がハー君に見えたのは………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

戦士は片腕しかないものの、右腕と足を駆使して零奈の攻撃に対処していた。

 

零奈「流石ですね…!でも、人造人間を倒せないあなたが、私に勝てるとお思いで?」

 

「勝てる勝てないじゃない…!あなたを止め、五月を取り戻すには戦うしかないんだ!」

 

零奈「はっ!!」

 

 

ドカッ!!

 

ドコッッ!!!

 

 

「ぐっ…!!はぁ!!」バッ‼︎

 

 

零奈「…!!」

 

戦士は零奈から何発か攻撃を食らったものの、痛みを堪えて気弾を発射する。

 

零奈「ふっ…!!」

 

 

バシンッ!!

 

 

しかし、ハエを払うかのように零奈は気弾を弾いた。

 

 

シュン‼︎

 

 

零奈「…!!」

 

 

「だりゃあッ!!!」

 

 

ドコォォオオオッ!!!!

 

 

しかし気弾はフェイク。気弾に気を取られている隙に零奈の背後に周りこみ、戦士は零奈を地面に叩きつけた。

 

 

ドォオオオオオオンッ!!!!

 

 

「はぁぁあああ…!!!」バチバチッ

 

相手が浮かび上がってくる様子はないが、それでも戦士は次の技を準備している。右手に気を集中させつつ、相手の出方を伺っているようだ。

 

 

ガラッ!

 

 

零奈「……戦闘力で劣っているとはいえ、流石に一筋縄ではいきませんか…」

 

「今だ!!魔貫光殺砲ッ!!!!」

 

 

ビィイイイイイッッ!!!!!

 

 

なんと、戦士はピッコロが得意とする魔貫光殺砲を放った。

 

 

バチッッ!!!!

 

 

零奈「ぐっ…!!!」

 

 

魔貫光殺砲のスピードは予想以上に速かったのか、零奈は避けることができずにまともにくらってしまう。

 

 

零奈「……まさか魔貫光殺砲をも使えるとは……。流石ですね」

 

「………」

 

 

 

悟飯「……もう大丈夫」

 

二乃「ちょっと…!」

 

 

ボォオオオッ!!

 

 

悟飯は体力が回復し、再び超サイヤ人に変身した。

 

 

 

零奈「………」

 

 

スタッ

 

超悟飯「さっきはありがとうございました。僕も手伝います!!」

 

「……君も超サイヤ人になれるのか…?」

 

超悟飯「はい!」

 

零奈「……くっ…!ここは一旦引くべきのようですね…!!」

 

 

バシューンッ!!

 

 

2人を相手にするのは不都合だったのか、零奈は遠くに飛び立って姿を消した。

 

 

悟飯「……行ったか…」

 

「……そのようだね」

 

 

2人は超サイヤ人を解除し、元の黒髪に戻った。

 

悟飯「……ところで、あなたは何者なんですか?二乃さんのお母さんを知っていたようですし、超サイヤ人にもなれるし、何よりその道着は、僕のお父さんがよく着ていたものにそっくりだ……」

 

「……そうか。君が孫悟飯なんだね…」

 

悟飯「何故僕の名前を…?」

 

「それは後で話す。二乃がいるなら、一花、三玖、四葉、五月もいるかな?もしかしたら風太郎もいるのかな?できればその5人とも話がしたい」

 

悟飯「……!?」

 

目の前の青年は何故か風太郎と五つ子のことを知っていた。これにより、悟飯は青年の気、服装、技を見て、何となく正体は分かったのだが、確信するにまでは至らなかった。

 

二乃「なんであなたがあの子達のことを知ってるのよ…?」

 

「それも後で話す。そうだ。気絶していた僕を助けてくれたのは君なんだろう?礼を言わせてくれ」

 

悟飯「い、いえ!わざわざお礼なんて……」

 

「そのお礼と言ってはなんだが、オレの正体を洗いざらい話す。なんでここに来た目的も、あの零奈さんが何者なのかも……」

 

「……あっ、ところで、今はエイジ何年だか分かる?」

 

悟飯「今?今は確か…。エイジ774年です」

 

「……そっか。ということは、10年前か……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

悟飯と二乃は、青年を五つ子の部屋まで案内をすることになった。旅館に入ったまではいいのだが、問題はその後…。

 

 

一花「あっ!二乃!」

 

マルオ「…二乃君、今までどこに行っていたんだい?」

 

二乃「そんなことはどうでもいいわ。取り敢えずこの2人と上杉も私達の部屋に呼ぶわね」

 

マルオ「……孫君と上杉君はともかく、この人は何者なんだい?さっき私が気絶していた彼の面倒を見ていたが……」

 

「…マルオさん…。初めまして……」

 

マルオ「……僕のことを知っているようだが……?僕のファン……ということはないだろう?」

 

「はい。マルオさんにもお話があります。娘さんのお部屋に入ることをどうかお許し下さい」

 

マルオ「僕にも話があると?それならここで済ませればいい。わざわざ娘達の部屋に入ることもないだろう?」

 

二乃「パパ。この人を入れてあげて。万が一この人が何か変なことをしようものなら、ボディガードがそこにいるでしょう?」

 

二乃は悟飯を見ながらマルオにそう言った。

 

マルオ「………ふむ。それもそうだね。だが長居は許さないよ?」

 

 

こうしてマルオの許可が降り、五つ子の泊まる部屋に、悟飯、風太郎、マルオ、青年が揃った。

 

一花「あっ、その人はさっきの……」

 

三玖「無事だったんだ」

 

四葉「良かったです!」

 

五月「……しかし、何故孫君と上杉君もいるんですか?」

 

風太郎「それは俺が聞きたい」

 

「よし、みんな集まったみたいだね。じゃあまずは自己紹介するよ。オレは10年後の未来からやってきた孫悟飯だ」

 

風太郎「孫悟飯だと…?いや、ただ同姓同名というだけかもしれんし……。だが10年後の未来からやってきただと?そんなことあり得るわけがないだろ?」

 

悟飯「……いや、この人は嘘をついてないよ、上杉君」

 

風太郎「はっ?いや、そんなはずは…」

 

五月「……だとすると、未来の孫君……ということですか?」

 

未来悟飯「ああ。その解釈で間違いないよ」

 

三玖「嘘……」

 

二乃「道理でカッコいいと思ったわ」

 

一花「なんか、こっちの悟飯君の方が頼もしいかも…」

 

四葉「あの、なんで左腕がないんですか?」

 

風太郎「四葉、そんなこと気軽に聞くもんじゃないぞ」

 

四葉「そ、そうですよね!すみません…」

 

未来悟飯「いや、気にしなくていいさ。オレの力不足で失っちゃっただけだから……」

 

マルオ「……君が仮に未来の孫君だとしよう。何故君はこの時代に来たんだい?」

 

未来悟飯「それは、タイムマシンを盗んだ零奈さんを追うためです」

 

マルオ「零奈さん……だって?」

 

マルオは、喪った愛する人の名が出てきたため、らしくもなく取り乱す。

 

風太郎「零奈…?零奈って……」

 

一花「お母さんのこと……だよね?」

 

風太郎「えっ?(こいつらの母親も零奈って言うのか…?)」

 

三玖「どういうこと…?未来なのにお母さんは生きているってこと?」

 

未来悟飯「いや違う。正確には、蘇らせたんだよ。五月が……」

 

五月「えっ…?わ、私が…?」

 

未来悟飯「あっ、勿論向こうの五月がだよ」

 

二乃「……だめだわ。話が全く見えてこないわ」

 

未来悟飯「そうだろうね。今からなんで零奈さんが蘇ったのか、オレがこの時代に来たのかを説明するよ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これは、もう一つの未来の話。

 

人造人間の危険性を伝えに来たトランクスが生まれ育った未来と物凄く似ているが、また別の未来の話。

 

今回は、何故未来の悟飯が来たのか、何故零奈が生き返ったのか。もう一つの未来世界での出来事を追いながら見ていこう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

文化祭が終了した。風太郎は一花、二乃、三玖、四葉、五月の五人のうちの一人を文化祭最終日に選んだ。

 

その相手は四葉だった。だが、四葉は風太郎の前から逃げ出したしまった。風太郎が傷付かなかったといえば嘘になる。しかし、風太郎は諦めずに四葉に話をかける。

 

その努力は実り、2人は無事に恋仲になることができた。

 

二乃「結局、フー君は四葉に取られちゃったわね……」

 

一花「でも、本当に付き合い始めたのかな…?今日もいつもと変わらなかったもんね」

 

三玖「……もし付き合ってないなら、私がそのポジションにつけばいいだけ」

 

二乃「だめよ。フー君に添い遂げるのは私よ。これは決定事項よ」

 

五月「なに寝ぼけたこと言ってるんですか……。上杉君はもう四葉と付き合うことになったんですよ?」

 

二乃「分からないじゃない。もしかしたら些細な喧嘩で別れるかもよ?そしたら隙を見て私がフー君にアタックするだけだわ」

 

一花「あはは……。二乃は強いね…」

 

二乃「ま、安心しなさい。付き合ってる間に奪うようなことはしないから」

 

五月「ならいいのですが……」

 

 

 

 

「なあなあ、聞いたか?」

 

「人造人間がそろそろマヤリト王国を壊滅させそうなんだってな…。次はどこの国に行くんだろう……」

 

「マヤリトの軍事力でも対処できなかったんでしょ?大丈夫かしら……」

 

 

………そう。この世界は、孫悟空が心臓病で死に、ベジータ、ピッコロ、天津飯、餃子、ヤムチャ、クリリンなどのZ戦士が人造人間に殺されてしまった世界だ。だが、人造人間の被害はマヤリト王国のみに留まっているが、次の標的はどの国かと、世界中の人間が人造人間に怯える日々を過ごしていた……。

 

二乃「……人造人間……ね」

 

五月「何故そんなことをするのでしょうか……。理解できません」

 

人造人間に関する話題は毎日のように聞く。誰もが人造人間に怯えているからだ。

 

三玖「……もしこの国に来たら、私達はどうなるのかな……」

 

一花「……少なくとも私達じゃどうにもできないね……」

 

風太郎「お前ら、まだいたのか?先に帰って勉強してろって言ったのに……」

 

四葉「みんな待っててくれたんだ!」

 

二乃「遅いわよ、フー君に四葉」

 

一花「それじゃあ帰ろうか」

 

 

……皆さんは既にお気づきだろうが、この世界では、悟飯は旭高校に通っていないため、五つ子の家庭教師は風太郎一人である。

 

 

風太郎「……ったく、最近はどいつもこいつも人造人間の話ばっかりだな」

 

四葉「仕方ないですよ…。マヤリト王国があんな惨状になっているんですから……」

 

勉強以外のことに関心がない風太郎でも、流石に人造人間の件は知っていたようだ。

 

二乃「不安だわ…。もし人造人間が襲ってきたら、フー君が私達を守ってくれるかしら?」

 

風太郎「……できる限りのことはするさ」

 

四葉「無理しなくてもいいですよ、上杉さん」

 

風太郎「無理なんかしてないさ。お前がいなくなったら、俺はもう生きていけないかもしれん……」

 

四葉「う、上杉さん?///」

 

風太郎「……何言ってんだ俺。今のは忘れてくれ」

 

一花「ヒューヒュー!お熱いねえ!」

 

五月「全く…。浮かれてしまう気持ちは分かりますが、少し自重して下さい」

 

風太郎「すまん……」

 

 

こうして、今日も五つ子と風太郎は平和な日々を過ごしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

スタッ

 

17号「さて、次はこの辺にするか」

 

18号「そうね。ここら辺人間が多そうだし」

 

 

平和というものは、いつ如何なる時も、何が原因で崩れるかは分からないものなのだ……。

 

風太郎「じ、人造人間…!!」

 

二乃「う、嘘…!」

 

三玖「あ、あぁ……!!」

 

一花「お、落ち着こう…!みんな…!」

 

五月「と、取り敢えず肉まんを差し上げれば…!」

 

風太郎「それで大人しくなるのは五月だけだ…!!」

 

皆冷静さを保とうとするが、それは叶わなかった。

 

想定されていた最悪の状況が、今まさに訪れたのだから。

 

 

18号「ねえ17号?目の前に早速人間がいるけど、どうする?殺しちゃう?」

 

17号「まあ待て。そんなすぐに殺してしまったら、俺達の楽しみがあっという間になくなっちまうだろ?だからまずは街を破壊しよう」

 

18号「……なるほど。怯える人間どもの顔を見るのも悪くないかもね」

 

物騒な会話を何事もないごく普通の会話だと言わんばかりに表情を変えずに話していた2人は、それぞれ手を出し…。

 

 

17号「……」カァッ‼︎

 

18号「……」ズォオオオッ‼︎

 

 

 

ドグォオオオオオオオオオン!!!!

 

 

 

街の破壊を開始した。

 

風太郎「や、やべ…!逃げろお前ら…!!」

 

風太郎達はできるだけ人造人間から距離を取ろうとする。が……。

 

17号「まあ待てよ。逃げたところで俺達に怯える時間が伸びるだけだぜ?それでも逃げるって言うなら、好きにすればいいけどな」

 

高速移動で風太郎達のすぐ後ろまで移動してきた17号は、そのまま街の破壊を再開した。

 

風太郎「そ、そうだ…!らいはが…!」

 

五月「この時間ならまだらいはちゃんは中学校にいると思います!ですから私達も一旦学校に逃げましょう!」

 

二乃「いや、人の少ないところに逃げた方がよくない?学校じゃ目立ちすぎて、すぐに人造人間に破壊されるに決まってるわ!」

 

四葉「なら、どこに逃げれば…!!」

 

 

 

六人はどこに逃げればいいかも分からないまま、取り敢えず学校へと引き返すと……。

 

 

ドグォオオオオオオオオオン!!!!

 

 

「きゃあああああっ!!!!」

 

「人造人間だぁああああッ!!!!」

 

「とうとう日本にも来やがったッ!!!!!」

 

先回りされたのか、学校は既に火の海と化していた。

 

 

風太郎「嘘……だろ?」

 

四葉「み、みんなは…!?」

 

学校はすでに破壊し尽くされたのか、人造人間が近くにいる様子はなかった。

 

風太郎達は、生存者を探して学校を歩けるところだけで歩き回った。

 

風太郎「……お前、前田なのか…?」

 

血だらけになった前田に……いや、前田だったものに風太郎は呼びかけたが、返事はない。

 

武田「ははっ……。まさか人造人間がこんなにも早く襲来するとはね……」

 

風太郎「た、武田…!!」

 

武田「せめて、君にもう一度テストで勝利してから、死にたかったな……」

 

風太郎「何言ってんだよ武田!お前はまだ死んでねえだろ!!」

 

武田「無理だね……ここまで出血していては、もう助からないだろう……。意識も朦朧としてきた……。上杉君、付き合うことになったからには、中野さん達をしっかり守ってあげるんだよ……」

 

 

それが、武田の遺言となった。

 

風太郎「武田……!武田…!」

 

 

風太郎は武田にも呼びかけるが、もう返事をしてこない。

 

風太郎「くそ…!人造人間め…!!なんでこんなことを…!!!」

 

二乃「……フー君」

 

風太郎「二乃……、そっちは…?」

 

二乃「……だめ…。みんな死んでた……。2年生の頃の友達も、3年生になってできた友達も…!!」

 

風太郎「……っ!!」

 

一花「……こっちも」

 

三玖「……この学校の生徒で生きているのは、私達だけかも……」

 

四葉「どうして………どうして……!!」

 

五月「…………人造人間め…!!」

 

6人とも生存者を探し回ったが、誰一人として生き残っている者はいなかった。風太郎達は、今日は五つ子の家で勉強会をすることになっていたが、昨日は学校の図書室で勉強していた。幸いにも、風太郎達は偶然生き残っていたのだ。

 

風太郎「……少なくとも学校に残ってた奴らは………」

 

五月「どうしてこんなことをするんですか…!!こんなに壊して…!!!殺して……!!!!なんの得があると言うのですか!!」

 

 

17号「なんの得があるか……ねえ」

 

18号「人間共がこうして幸せそうに過ごしているのが気に食わないんだよ。私達だって本来ならそこにいたはずなのにさ」

 

二乃「………っ!!あんた達に何があったか知らないけど、それで他の人に八つ当たりするなんて最低よッ!!どうしてこんなことを平気で…!!!」

 

17号「俺達はもう人間じゃないからな。()()だからこそ、()()でこんなことができるんだろう?」

 

18号「あんたねぇ……。寒いダジャレ言うんじゃないよ」

 

17号「……さて、良ければ俺達がお友達のところに行かせてやろうか?まあ、片道切符だけどな」

 

人造人間の今度の標的は五つ子と風太郎。一瞬で学校をこのような惨状にできたのだ。今から走って逃げたとしても逃げることはできないだろう。かと言って人造人間に戦いを挑むのも無謀だ。

 

全世界の軍事力を結集させて、人造人間にぶつけたとしても、人造人間に傷一つ与えられるかどうかさえも怪しいというのに。

 

風太郎「……やるなら俺からにしろ」

 

17号「ほう?」

 

風太郎「俺は勉強しかできねえどうしようもない野朗だが、こいつらは違う…。こいつらは、俺とは違って明確な夢を持って前に進んでいるんだ…!だからこいつらは見逃してやってくれ!」

 

四葉「う、上杉さん!?」

 

二乃「フー君!?何言ってんのよ!?あんた死ぬわよ!?」

 

一花「そんな無茶な…!!」

 

五月「何を馬鹿なことを…!!」

 

三玖「ふ、フータロー…!!」

 

17号「……素晴らしい勇気だ。その勇気を称えて、俺がこの手でお前を殺してやろう」

 

風太郎「……じゃあ、あいつらは見逃してくれるんだな…?」

 

17号「ああ、俺はな」

 

風太郎「……なら」

 

 

 

「はぁああッ!!!」

 

 

カァッ!!!

 

 

 

17号「……!!」タンッ

 

 

 

ドグォオオオオオオオオオン!!!!

 

 

風太郎「うわっ!!なんだ!?」

 

四葉「上杉さん!!大丈夫ですか!?」

 

風太郎「あ、ああ……」

 

突如、17号目掛けてエネルギー弾が飛んできた。17号はそれにすぐに気が付き、難なく回避をした。

 

17号「……誰だ?」

 

18号「………さあ?初めて見る顔だね」

 

「………人造人間…!性懲りも無く街を破壊し…!人々を殺しやがって…!!!絶対に許さないぞ!!!」

 

山吹色の道着を来た少年が、17号と18号に向けて怒鳴りつける。

 

17号「………あいつ、孫悟飯じゃないか?」

 

18号「ああ。孫悟空の息子の?」

 

そう、彼はこの時間軸の孫悟飯。人造人間が現れてからというもの、勉強をすることを諦め、ひたすら修行に明け暮れていた孫悟飯。本来なら学者になる為に勉強したいところだが、彼の心がそれを良しとしなかった。

 

悟飯「ピッコロさん達の仇だ…!今日こそお前らを破壊する…!!」

 

17号「随分強気に出たな?」

 

18号「まあいいんじゃない?久々にちゃんとした相手が出てきてさ」

 

17号「そうだな。最近はただ街を破壊するのにマンネリを感じていたところだったからな。丁度いい」

 

悟飯「はぁあああッ!!」

 

 

ボォオオオッ!!!!

 

 

悟飯は超サイヤ人に変身し、17号に突撃する。

 

17号「ふっ…!」

 

シュン‼︎

 

17号「!!?」

 

17号が悟飯に蹴りを入れようとするが、悟飯はそれを回避した。17号と18号は気で相手を追うことができないため、目で追うしかないのだが、油断していたせいか見逃した。

 

 

ドゴォッ!!

 

17号「ぐっ…!!」

 

悟飯は17号の死界から17号に打撃を与えた。

 

 

18号「だぁああッ!!!」

 

 

ドカッ!!!

 

 

超悟飯「ぐっ…!!」

 

 

しかし、人造人間はそう簡単にやられるはずもなく、18号に仕返しをくらう。

 

 

超悟飯「…!!」ガシッ

 

18号「…!!?」

 

しかし、悟飯は痛みを堪えながら18号の足を掴む。

 

 

超悟飯「はぁああああッ!!!!」ブンブン‼︎

 

悟飯は18号を何回か振り回し、今にも崩れそうな校舎に18号を投げつけた。

 

 

超悟飯「はぁあああッ!!!」パッ

 

 

 

ドゴォオオオオオオオンッ!!!

 

 

18号が校舎に叩きつけられると、ついに衝撃に耐えられなくなったのか、校舎は崩れ始めた。

 

 

17号「はっ!!」

 

超悟飯「魔閃光ッ!!!!」

 

 

ドォオオオオオオッ!!!!

 

 

17号「なっ…!?」

 

 

ドグォオオオオオオオオオン!!!!

 

 

17号が悟飯の前に現れたが、悟飯はすかさず魔閃光で応戦し、17号に見事に当てることに成功した。

 

素人目で見れば、17号と18号相手に悟飯が優位に立っているように見える。

 

 

超悟飯「だだだだだだだだだッッ!!!!!」ババババッ‼︎

 

 

しかし、悟飯は攻撃をやめない。先程魔閃光を当てた17号を標的にし、気弾をこれでもかと言うほどに連射する。悟飯はここで17号を破壊するつもりなのが、誰がどう見ても分かるレベルだった。

 

 

一花「す、凄い……!」

 

二乃「もしかして…!人造人間をやっつけられるんじゃない!?」

 

三玖「あの人ならできるかも…!」

 

四葉「誰だか分かりませんけど、頑張れ〜!!!!!!」

 

五月「倒しちゃえ!!人造人間を倒しちゃってください!!!!」

 

風太郎「いける…!これならいけるぞ…!!」

 

誰もが悟飯の勝利を確信した。

 

 

 

シュン‼︎

 

 

ドゴォオオオオオッ!!!!!

 

 

超悟飯「がはっ…!!」

 

18号「甘いねぇ?ちゃんと死体は確認しておいた方がいいよ〜?はっ!!」

 

 

ズォオオオオオオオッッ!!!!

 

 

超悟飯「ぐわぁあああああッ!!!!」

 

瓦礫の下敷きになったはずの18号は、突然悟飯の前に現れ、悟飯に強力なエネルギー砲を浴びせた。

 

 

18号「まあ、久々に楽しい戦いだったよ。そりゃッ!!!」

 

 

ドゴォオオオッ!!!

 

 

 

ヒューーー

 

ドゴォオオオオオオオン!!!!

 

18号は悟飯を地面に向けて投げつけ、悟飯は校庭にクレーターができるほどの勢いで地面に叩きつけられた。

 

 

一花「そ、そんな…!」

 

二乃「嘘でしょ……!?」

 

 

6人は悟飯の勝利を確信していただけに、希望に満ちた顔が豹変し、一気に絶望に支配された顔になった。

 

 

18号「さて、今のうちにトドメを……」

 

 

シュン

17号「まあ待て、18号」

 

18号「なんだよ17号!」

 

17号「あいつはもう少し生かしておこうぜ?もう少し強くなれば、もっと楽しい戦いができるかもしれん。それに、俺達と張り合える奴は恐らく悟飯が最後だろう。楽しみを消すのは惜しい」

 

18号「………分かったよ。にしてもよく無事だったね?まるで無傷じゃないかい?」

 

17号「ああ、俺にはバリアがあるからな」

 

 

 

ヒュー スタッ

 

18号と17号は、五つ子と風太郎の前に着地をし……。

 

17号「お前ら、命拾いしたな?今の俺達は気分がいいから、お前らは生かしておいてやる」

 

18号「何してるんだよ17号。早く次行こうよ」

 

17号「ああ。そうだな……。じゃあな」

 

 

バシューン!!

 

 

ようやく五つ子と風太郎は、これまでに経験したことのない程の緊張感から解放された。

 

 

風太郎「た、助かった……のか?」

 

二乃「そのようね……」

 

三玖「あの人、まだ生きてるかもしれない…!助けてあげようよ!」

 

四葉「そうですね!」

 

四葉は悟飯が叩き落とされた場所に走って向かう。クレーターができてるとはいえ、人の足でも上り下りできる程度であった。

 

四葉「よいしょ……」

 

四葉は軽々と気絶して黒髪に戻った悟飯をおんぶし、風太郎達のところに戻ってくる。

 

四葉「すごいですよ!あれだけ物凄い勢いで叩きつけられたのに、まだ生きています!!」

 

五月「では、取り敢えずお父さんのところの病院へ急ぎましょう!!」

 

救急車は機能していないと判断し、自分達の足でマルオの病院へと足を運んだ。しかし…………。

 

 

五月「そ、そんな……!!」

 

三玖「お父さんは無事なの!?」

 

風太郎「くそ…!!ここもやられてたのか…!!」

 

 

マルオの病院は、既に人造人間の手によって、瓦礫の山に姿を変えていた。

 

二乃「ということは、江端さんも……」

 

悟飯「………ぐっ…!人造人間め…!!」

 

四葉「あっ、起きましたか?」

 

悟飯が喋ったことを確認し、四葉は悟飯に声をかけるが……。

 

悟飯「この野朗…!!よくもピッコロさんを…!!みんなを……!!!!」

 

……どうやら寝言のようだった。

 

四葉「……この人も、人造人間に家族や友達を殺されたのかな…………」

 

二乃「かもしれないわね……」

 

「………みんな、生きていたかい…」

 

四葉「……!!!」

 

風太郎「お父さん!!!」

 

マルオ「君にお父さんと呼ばれる筋合いはないよ」

 

なんと、マルオは生きていたようだ。

 

二乃「パパ!!生きてたの!?」

 

マルオ「ああ…。奇跡的に僕だけ助かったようだが、病院の中にいた患者や職員は…………」

 

五月「そう………ですか…………」

 

むしろ、この惨状でマルオだけでも生き延びていたことは奇跡と言えよう。

 

マルオ「娘達だけでも生きていてくれたことが嬉しいよ…。ところで、その人も怪我人かい?」

 

四葉「怪我というほどではなさそうなんですけど……」

 

マルオ「すまないが、僕の病院は見ての通りだ。今患者が来ても、何も対応ができない状況だ」

 

 

 

三玖「…………?あれは?」

 

三玖が空を指差した。みんながその方向に目を向けると、何やら飛行機のようなものが空を飛んでいた。その飛行機は、こちらの姿を確認したのか、その場に降りてきた。

 

降りてきた飛行機からは、一人の少々老けた女性が降りてきた。

 

「悟飯君!!良かった!!無事だったのね!!」

 

「悟飯さん!!」

 

四葉「あの、この人は……?」

 

「ああ。あなた達は悟飯君に助けられた人達ってことでいいのかしら?」

 

五月「ごはん……というのですか?もし四葉が背負ってる方を指しているのでしたら、その通りです」

 

「……なるほどね。とうとう外国にも手を出し始めたか………」

 

「くそ…!人造人間め…!!僕がもっと強ければ…!!!」

 

「仕方ないわよ、あんたはまだ9歳なんだから」

 

マルオ「……あなた、CCの社長のブルマさん……ですよね?」

 

ブルマ「残念ながらそんな会社は今ないけどね。パパとママが殺されちゃったから、一時的に私が社長をやってた時代もあったけど……。ちょっと待って?あなた白衣を着ているけど、もしかして医者?」

 

マルオ「ええ。これでも院長を勤めてました」

 

ブルマ「丁度いいわ!医者がいてくれるとこっちも助かるのよ!どうせ住む場所は破壊されちゃってるでしょ?付いてきてくれないかしら?」

 

二乃「えっ?悪いけど、私達は……」

 

マルオ「ありがとうございます」

 

二乃「ちょ、パパ!?」

 

マルオ「二乃君。君たちの家も人造人間によって破壊されていた。ここにいてもまともな生活を送る事はできないだろう」

 

二乃「そ、そんな…!!」

 

ブルマ「命があるだけあなた達は運がいい方よ?悟飯君にあとでお礼を言いなさいよ?」

 

五月「それは勿論ですが……」

 

ブルマ「せっかくだし、私の家に住む?一応私の家はまだ人が住める状態なんだけど……」

 

風太郎「ま、待ってください。俺には親父やらいはが………」

 

ブルマ「………私は空からここの周辺の様子を見渡すことができたんだけど…。この辺はもう建物が何一つ残ってなかったわ……。一瞬で人造人間が破壊しちゃったみたい……………」

 

風太郎「うそ………だろ……?らいは…!親父………!!!!」

 

四葉「う、上杉さん………」

 

なんということか。風太郎は家族を全員亡くしてしまった。母親は風太郎が幼い頃に事故死し、残された父親と妹は人造人間によって殺されてしまったのだ。いや、正確には殺されたところを見たわけではない。しかし、建物一つ残ってないと考えると、殺されてしまったと考えるのが妥当だろう。

 

風太郎にとって、その現実は到底受け入れ難いものだった。昨日までは何事もない平和な日々だったのに、数分で突如としてその平和は奪われ、家族も友人も奪われたのだ。

 

風太郎「くそ……!!!!親父ぃ…!!らいは……!!!!」

 

二乃「ちょ、ちょっと、フー君」

 

一花「…二乃、今はそっとしてあげて」

 

二乃「でも………」

 

一花「………いいから」

 

二乃「………っ…」

 

今の風太郎は見ている側としても辛かった。そのため、慰めの言葉をかけようとするが、今の風太郎には届かないだろう。

 

ブルマ「……取り敢えず、私の家で心と体を癒しなさい……」

 

 

こうして、五つ子と風太郎、マルオはブルマの家に居候をさせてもらうことになった。

 

 

 

 

この絶望的な世界での話は、次回に続く。

 




 未来悟飯が回想するような形になってます(悟飯視点ではないけど)。次回、次々回まではこのような形になります。現代での続編はもうちょいお待ちくだせぇ…。未来悟飯がなぜきて、なぜ零奈が蘇ったのかを丁寧にやっていきたいんで……。

 ということで、スクランブルエッグ編は一時中断して、「絶望の未来、追憶編」ということになります。

 ……何気に40話いっとる…。


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第41話 夢を捨ててまで…


〜前回のあらすじ〜

 とうとう日本にも襲来した人造人間達。風太郎と五つ子は、人造人間に遭遇したものの、人造人間と戦いに来た悟飯によって九死に一生を得た。

 ところが、既に人造人間によって、彼らの友人や知り合い、さらには家族なんかも奪われてしまった。

 特に、らいはと勇也の生存確率が極小であるという事実は、既に母親を失っている風太郎にとっては特にショッキングな情報であった………。

 そして、住む場所を失った五つ子と風太郎、マルオは、ブルマに連れられてブルマの家に居候させてもらうことになった……。



 

飛行機の中でお互いに自己紹介をした一行。五つ子と風太郎は、悟飯が自分達と同い年だという事実に心底驚いていた。自分達が勉強、恋愛、学校行事などで青春を謳歌している間に、世界を守る為に同い年の少年が戦いに身を投じていたのだ。それは無理もないことだ。

 

そして、現在9歳のトランクスは……。

 

トランクス「……お母さん…。悟飯さんが目を覚ましたら教えて」

 

ブルマ「おっけー」

 

悟飯はブルマと医師であるマルオが見ることになった。その間に、トランクスと四葉を除く五つ子メンバーが買い出しに行くことになった。

 

風太郎のメンタルケアには四葉が適任だろうと、一花が提案したので、四葉は不在である。

 

一花「……こっちの方が被害が凄いって聞いたけど、思ってたよりも人が住んでるんだね」

 

トランクス「はい。ここはかなり初期に人造人間が襲来した街だからか、人造人間もまだどのように暴れればいいか要領が掴めなかったのでしょう」

 

二乃「それにしても驚いたわ…。まさか私と同い年の人があんな風に命懸けで戦っていたなんて……」

 

三玖「信じられない……」

 

トランクス「……悟飯さんは、ずっと一人で戦ってきたんです」

 

五月「たった一人で、ですか…?他に志を共にする仲間はいないのですか…?」

 

トランクス「僕が生まれて間もない頃の話ですが、数人は人造人間に立ち向かう戦士がいたそうですが、みんな人造人間に殺されてしまったそうです」

 

三玖「そんな…………」

 

トランクス「今、まともに人造人間と戦えるのは悟飯さんだけなんです。僕も強くなって、悟飯さんと共に人造人間に立ち向かえるようになりたい…!」

 

トランクスは9歳という幼さでありながら、既に命を懸けて戦う覚悟ができていたことに、四人は驚きを隠せなかった。言葉遣いからも、とても年相応には見えない。歳の割にはしっかりし過ぎていて心配になってしまう。

 

……環境が彼をこんな風に成長させたのかもしれない……。

 

 

 

 

 

 

 

 

悟飯「……はっ!」

 

ブルマ「あら、目を覚ましたのね」

 

悟飯「ブルマさん……」

 

悟飯は長いこと気絶をしていたが、ようやく意識を取り戻した。

 

悟飯「ブルマさん…。オレ、またダメでした……。やっと超サイヤ人になれたのに……」

 

ブルマ「今嘆いても仕方ないでしょ?そんなことは気にしないで、夜ご飯にするからちょっと待っててね?」

 

悟飯「……ありがとうございます」

 

ブルマ「あっ、そうだ悟飯君。トランクスが悟飯君と話したがってたから、トランクスに会ったら話しかけてあげてね?」

 

悟飯「分かりました」

 

そう言われたので、悟飯はトランクスに会いに行く。だが、家中を探しても見当たらなかったため、一旦外に出ようとしたところだった。

 

 

一花「あっ、目を覚ましたんだ?」

 

二乃「……さっきはありがと」

 

三玖「もう起き上がって平気なの?」

 

五月「まだダメですよ!安静にしてないと!」

 

 

トランクスと共に買い物袋を持った少女四人が悟飯の前に現れた。しかし、悟飯はこの少女四人に見覚えがない。

 

悟飯「……君たちは…?」

 

一花「あれ?私達のこと覚えてない…?」

 

三玖「無理もないよ。あんな必死になって戦ってたんだもん」

 

悟飯「……ん?」

 

悟飯は、三玖の台詞から人造人間と戦った時に助け出された人々なのかと結論を見出した。

 

悟飯「………ごめん。オレがもっと強ければ、君たちの街は人造人間どもに好き勝手されることはなかったはずだった…!!」

 

五月「あ、謝らないでください!!」

 

二乃「そ、そうよ!あんな化け物に立ち向かっただけでも立派よ!!」

 

悟飯が突然四人に対して謝罪してきたものなので、四人は困惑してしまうものの、悟飯に頭を上げるように促す。

 

悟飯「……この程度じゃダメだ…!やっぱりもっと強くならないと…!!」

 

トランクス「……悟飯さん。そのことでお話が……」

 

悟飯「どうした、トランクス」

 

トランクス「……僕に稽古をつけてください!!」

 

トランクスのこの言葉に、5人とも特に驚く素振りは見せなかった。

 

悟飯「……本当ならダメだと止めたいところだ。だけど、情けないことにオレだけじゃ人造人間を倒せそうにない。トランクスもサイヤ人の血を引いてるんだ……。言っておくが、まだ幼いからって甘やかしたりはしないぞ!いいな!」

 

トランクス「……!!はい!!」

 

トランクスはここまで快諾されるとは思っていなかったようで、嬉しそうにしながら元気よく返事をする。

 

悟飯「あっ、そうだ。ブルマさんが夕食を作ってくれているみたいだから、君達も良かったら食べていきなよ?」

 

一花「あー……。そのことなんだけど……」

 

三玖「私達もここに住むことになった」

 

悟飯「……あれ?そうなの?そっか…。じゃあこれからよろしく!」

 

しかしその後、四人の名前を聞きそびれたことに気付いた悟飯は、後で四人の名前を聞くことに……。

 

そこで、四人とも名字が同じで、顔もそっくりだったことから、姉妹だろうと推測した。確かにそれは正解なのだが、一花、二乃、三玖、五月に加えて四葉も入れて五つ子であると聞かされた時の悟飯の表情は、四人にとっては忘れられないものとなったであろう…。

 

 

夕食になり、風太郎と四葉を呼び出しに行った四人。風太郎は未だに部屋に引き篭もっているのではないかと予想していたが、意外にも風太郎は持ち直していた。

 

三玖「ふ、フータロー!?もう大丈夫なの!?」

 

二乃「無理してない?」

 

風太郎「ああ。いつまでもウジウジしてたら、親父とらいはになんて言われるか分からねえからな…。それに、四葉にお前らもいるんだ。全て失ったわけじゃない……」

 

四葉「えへへ……」

 

二乃「あらやだ、フー君ったら」

 

三玖「……勘違いしちゃうけどいい?」

 

五月「全く…。上杉君は相変わらず女垂らしですね」

 

風太郎「人聞きの悪いことを言うなッ!!」

 

一花「………(四葉に任せて正解だったみたいだね)」

 

二乃「あっ、そうだわ。私もブルマさんの手伝いに行ってくるわ」

 

三玖「私も」

 

二乃「やめなさい!食材が無駄になるでしょうが!!」

 

三玖「私だって上達してる!」

 

 

 

 

ということで、夕食に………。

 

悟飯「ブルマさん、おかわり!」

 

ブルマ「本当に孫君そっくりね〜……。はい」

 

悟飯「ありがとうございます!」

 

五月「すみません。私もおかわりを」

 

ブルマ「あら、五月ちゃんも食べるのね。はい」

 

五月「ありがとうございます」

 

風太郎と四人は五月の大食らいっぷりにさぞ驚くだろうなぁと思っていたのは束の間、逆にこちらが驚かされる始末。

 

 

風太郎「あんた……。無茶苦茶食べるんだな……」

 

四葉「五月でさえも引いてる…!?」

 

二乃「ほらフー君。せっかく私が作ってあげたんだから食べなさいよ」

 

三玖「これ、私の自信作なの。食べてみて、フータロー」

 

風太郎「ちょ、お前ら!俺の口は一つだけなんだぞ!!」

 

四葉「ちょっと待って下さい!!上杉さんは私の彼氏なんですよ!!」

 

ブルマ「あらあら、上杉君モテモテじゃないの」

 

風太郎「ったく…。俺には既に四葉という彼女がな……」

 

悟飯「あれ?風太郎と四葉って付き合ってたんだ?お似合いだと思うよ!」

 

二乃「はぁ?あんた全然分かってないわ。私は可愛いし料理できるし手先器用だし、フー君の喜ぶことならなんだってしてあげるってのに四葉とフー君がお似合いだなんて。まあ確かにお似合いではあると思うけど、私とフー君の方が絶対にいいペアになるに決まってるわ」

 

悟飯「いや、お似合いなのかお似合いじゃないのかどっちなのさ……」

 

三玖「二乃はダメ。二乃とフータローが付き合ったら、二乃は無理矢理フータローを金髪にしそう」

 

一花「あ〜……。それ分かる」

 

二乃「仕方ないじゃない。金髪のフー君は反則級にカッコいいんだもの」

 

三玖「そして自分の体に風の刺青を入れてそう」

 

一花「あー!それも分かる!」

 

二乃「流石にやらないわよ!憧れるけど!!」

 

五月「………騒がしくてすみません……」

 

ブルマ「気にしなくて大丈夫よ。久々に賑やかで楽しいから」

 

悟飯「……風太郎ってよくモテるの?」

 

五月「まあ……。私達姉妹には特に……と言ったところでしょうか」

 

ブルマ「あらそうなの?じゃあ姉妹5人で一人の男を取り合うドロドロな展開とかあったでしょ?ほら、五つ子で顔もそっくりなんだから、姉妹の中の誰かに成りすまして……」

 

一花「……あ、あはは……」

 

ブルマが話している途中、一花が段々と気まずそうになっていく。

 

二乃「そういえばそんなこともあったわね。ねえ一花?」

 

一花「こ、この話はもうやめようか!」

 

こんな感じでいつもより騒がしい夕食は終了。

 

トランクスは悟飯に稽古をつけてもらう為に、暗くなったのにも関わらずに外出をした。

 

家は多少ダメージを受けている箇所があるとはいえ、確かに人が住める程度ではあった。しかも相当大きな家で、一人ずつ部屋を割り当てても余るくらいに部屋数はあった。

 

 

 

 

 

夜の23時頃。トランクスと悟飯が修行から帰ってきた。

 

悟飯「やるなトランクス!あの調子なら、意外とすんなりと超サイヤ人になれるかもしれないぞ!」

 

トランクス「本当ですか…?」

 

悟飯「ああ。でも超サイヤ人になっただけじゃ人造人間は倒せない。オレももっと強くならないと……。その為にもトランクスが早く超サイヤ人になってくれると助かるな。オレも協力するよ」

 

トランクス「はい!!」

 

悟飯「今日はもう遅い。風呂に入って寝るといいさ」

 

トランクス「明日もよろしくお願いします!悟飯さん!」

 

悟飯「おう!」

 

トランクスは悟飯の言われた通りに風呂場に向かった。悟飯は喉が乾いて飲み物を求めてリビングに向かった。

 

すると……。

 

 

五月「……おや?孫君ですか。随分遅かったですね」

 

悟飯「五月…。まだ起きてたのかい?」

 

五月「ええ。こんな状況とはいえ、勉強はしておいた方がいいかと思いまして……」

 

悟飯「勉強……ね…………」

 

悟飯が最後に勉強をしたのはいつだっただろうか?人造人間が現れてからは、毎日修行の日々が続き、まるで勉強する暇はなかった。

 

そんな悟飯は、勉強をする為に夜遅くまで起きていた五月を見て、昔も自分はよく勉強をしていたな…。と懐かしく思うのであった。

 

悟飯「…こんな時に勉強するなんて…。何か叶えたい夢でもあるの?」

 

五月「はい。私は先生を目指しています。母のような立派な教師に……」

 

悟飯「へぇ…。先生か……」

 

五月「ですが、思うように成績が伸びなくて………」

 

悟飯「………そっか。良かったらオレが教えてあげようか?」

 

五月「………えっ?失礼ですけど、孫君って勉強できるんですか?」

 

悟飯「ああ。今でこそ戦いや修行ばかりしかしてないけど、これでも昔は勉強ばかりしてたんだ。学者になるためにね」

 

五月「そうだったんですか…」

 

悟飯「だから人造人間を倒して、平和な世界が訪れたその時は、勉強をまたやりたいな……」

 

五月「孫君…………」

 

 

 

 

 

 

 

 

そうか…。この人は本当は戦いなんてしたくないんだろう。でも、人造人間という脅威に立ち向かうために、自分のやりたい事を捨ててまで戦いに身を投じているんだ……。

 

なんて立派な人なんだろう……。

 

五月「……勉強を、教えてくれませんか?」

 

悟飯「うん。大丈夫かなぁ…。勉強するのは久々だから……」

 

 

久々という割には、孫君は私に分かりやすく教えてくれた。

 

孫君は得意不得意な教科は特にないようで、どの教科も教えるのが上手だった。もしかしたら、上杉君といい勝負かもしれない。

 

教えてもらいながら聞いた話によると、孫君は今まで学校に通ったことがなかったらしい。だから家庭教師の人に教わるか、独学で勉強するしかなかったそうだ。人造人間が現れてから勉強していなかったというのに、ここまで高校生の範囲を上手に教えられるとなると、幼少期の時点で高校生の勉強は完成していたか、完成に近かった状態だと考えられる。

 

流石、学者を目指していた人だというべきだろうか…。彼なら、人造人間さえ現れなければ、本当に学者になれたのかもしれない……。

 

 

悟飯「よし、もう遅いから今日は寝た方がいい。詰め込み過ぎは逆効果だからね」

 

五月「……孫君」

 

悟飯「……ん?」

 

彼が私に勉強を教えている時の顔は、嬉しそうだった。その反面、どこか寂しそうにも見えた。

 

五月「今日はありがとうございました」

 

悟飯「うん。また聞きたいことがあったら言ってくれ。力になるよ」

 

五月「それは大変ありがたいお話ですが、孫君に迷惑をかけるわけにはいきません。それに家庭教師なら既に上杉君がいますし」

 

悟飯「へえ…。じゃあいつもは風太郎に教えてもらってるんだ?」

 

五月「はい」

 

悟飯「そっか……。じゃあ………」

 

五月「孫君!」

 

悟飯「ん?どうした?もしかして、まだ聞きたいところがあったとか?」

 

……彼は、本当は戦いたくないんじゃないか?本当は夢の為に勉強したいんじゃないか?

 

それなのに、彼一人に背負わせてしまっていいのか?人造人間なんて倒せない人が大勢いるんだ。逃げたって誰も責めはしない。

 

五月「……無理、してませんか?」

 

悟飯「………」

 

五月「あなたは、学者になりたいとおっしゃってましたよね…?本当なら、私のように勉強をしたいんじゃないですか…?」

 

悟飯「…ダメだ。オレがやらなきゃ誰がやるんだ…。オレがいなくなってしまったら、この世界を守る戦士がいなくなってしまう…」

 

五月「あっ……」

 

孫君はそう言って、私の部屋を後にした。

 

五月「孫君………」

 

……何か力になれることはないだろうか…?

 

 

 

 

 

翌日…。早速ブルマさんと二乃が朝食を作ってくれた。お父さんは今日もこの病室で患者の対応をしているそうだ。このCCは、現在は病院としても使われているそうで、医師が不足していることからお父さんに協力を申し出たらしい。

 

そのため、この食卓にはお父さんがいない。

 

ブルマ「昨日もそうだけど、二乃ちゃん悪いわね〜」

 

二乃「住まわせてもらってるんですから、これくらいさせて下さい」

 

ブルマ「私も助かっちゃうし遠慮なく手伝ってもらっちゃおうかしら」

 

五月「おはようございます」

 

ブルマ「あら、おはよう五月ちゃん」

 

二乃「五月、もうご飯できてるから、みんな呼んできて」

 

五月「分かりました」

 

 

四葉はいつも通りと言うべきか、既に起床していて私が呼び出すまでもなかった。三玖はまだ寝ていたけど、呼んだらすぐに起きた。

 

上杉君は……昨日のこともあったからか、呼びかけても起きる気配がなかった。上杉君はそっとしてあげた方がいいかもしれない……。

 

あとは、一花ですが……。

 

 

五月「……あれ?」

 

一花のことだから、既に汚部屋の片鱗が見えているかと思いきや、そんなことはなかった。

 

……考えてみれば、増える物がないから当然といえば当然か……。

 

五月「一花、起きてください。朝食ができていますよ」

 

一花「……ん〜…?もうそんな時間かぁ……。ふぁ……おはよう……」

 

五月「おはようございます」

 

一花「…そういえば五月ちゃん。昨日は悟飯君と二人っきりで何してたの?」

 

五月「ああ…。孫君に勉強を教えてもらってたんですよ。上杉君は昨日のこともあったら疲れてたと思いまして……」

 

一花「あれ?てっきり五月ちゃんはもう切り替えて新しい恋を始めたのかと思ったけど違うんだ……」

 

五月「違います!!」

 

一花「そっか……。でも悟飯君って勉強できるの?なんか四葉みたいな感じで運動しかできないタイプだと勝手に思ってたんだけど……」

 

五月「彼は人造人間が現れるまでは勉学に励んでいたそうですよ。なんでも将来の夢は学者だそうで……」

 

一花「学者!?それはすごいね…。悟飯君のイメージがなんか変わるなぁ…」

 

 

……朝食の場に孫君とトランクス君はいなかった。

 

彼らは早朝から修行に励んでいるらしい。それも人造人間を倒す為なのだろう。人造人間さえ現れなければ、孫君は普通に勉強し、トランクス君も歳相応の楽しい生活を送っていたのではないだろうか……?

 

………全ては、人造人間のせい…。人造人間は、彼らからも奪ったのだ。

 

孫君からは勉強と将来の夢を……。

 

トランクス君からは、幼少期そのものを……。

 

 

 

トランクス「ただ今!」

 

悟飯「戻りました」

 

 

こうして修行から帰ってくる孫君は、何事もなく笑顔だ。しかし、私はなんとなく分かっている。彼は本当なら勉強したいだろうし、トランクス君をそんな危険な目に遭わせたくないだろう。だが、人造人間がそうさせているのだ。

 

人造人間が…………。

 

…………人造人間……?人が造った人間ということだろうか…?

 

人が?人を?

 

 

 

 

 

 

 

 

私も人造人間を造り出せたりするのだろうか……?

 

二乃「五月、なにボーっとしてるのよ?」

 

五月「あっ!ご、ごめんなさい……」

 

二乃「ほら、食器片付けるの手伝いなさい。あんた沢山食べるんだからこれくらいはしなさいよ」

 

五月「なっ!?人を穀潰しみたいに言わないで下さい!!」

 

 

私はその日以来、人造人間のことが気になり始めた。どういった技術でできるのか。どのようなパーツがあれば完成するのか…?などなど…。

 

勿論、教科書に載ってるはずなどなく、インターネットは人造人間のせいかうまく機能しない。

 

科学者だというブルマさんにも一応聞いてみたものの、『流石の私でも分からない』という答えが返ってきた。

 

つまり、人造人間を作るには相当な頭脳が必要だと言うことだ。私なんかでは到底無理だ……。

 

もし私が人造人間を作ることができたら、人造人間に対抗することができるのではないかと考えてたが、それこそ身の丈に合わない夢……いや、妄想に過ぎなかったのだろう。

 

 

もうこの事は忘れよう。いつも通り勉強するだけだ……。教師になるために……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから4年の月日が過ぎた。時はエイジ778年

 

上杉君は完全とはいかなくとも持ち直し、みんなが元気を次第に取り戻してきた頃のこと……。

 

勿論、受験などできるはずもない。しかし、勉強会は以前のペースほどではないが、定期的に行われていた。

 

風太郎「よし。取り敢えず今回はこれぐらいにしよう」

 

ブルマ「お疲れ様〜」

 

 

 

……私はというと、五科目のうち、得意な理科の成績が特に伸びていた。当然だ。もう4年も経っているのだ。

 

大学の範囲はブルマさんに教えてもらっている。とは言っても、教師になるための勉強ではなく、あくまでも科学者向けのものではあるが……。

 

ブルマさんが教えているのは私ただ1人。なぜこうなったかというと、私が理科が得意だからというのもあるが、理科……特に物理や化学の知識を身につけ、人造人間に対抗しうる何かを発明できるようになれないかと考え、その主旨を数年前にブルマさんに説明したら、ブルマさんが教えてくれることになった。

 

今はまだまだ未熟だが、いずれは人造人間を破壊し、平和な世界を取り戻せたらと思っている。そうしなければ、私の夢である教師にはなれないし、孫君が勉学に復帰することもできない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

二乃「五月は相変わらず熱心よね」

 

一花「私も協力できるならしたいけど、五月ちゃんみたいに理科が得意なわけじゃないからなぁ……」

 

四葉「風太郎も一緒に教わらないの?」

 

風太郎「ああ。今の俺は大量の生徒を抱えているからな」

 

今の風太郎は、学校に通えなくなってしまったが勉強をしたいという子供達に勉強を教えているのだ。少なくとも、五つ子と出会う前の風太郎からは想像できない光景であった。

 

四葉「昔の風太郎ならそんなこと絶対にしないのに、変わったよね」

 

風太郎「お前もだろ?昔は『上杉さん』って呼んでたじゃねえか?」

 

四葉「あはは…。もう4年も付き合っているんだよ?それくらいは不思議じゃないと思うけど……」

 

四葉はというと、子供達に運動をさせている。謂わば体育教師のようなものだ。愛想の良さから、子供達には大人気だ。

 

一花「四葉もフータロー君も立派だよね………。二乃と三玖はお料理ができるからいいけど、私も何かできたらなぁ……」

 

そんなことを言っている一花だが、一花は持ち前の演技力を駆使して人々に笑顔を届けているので、何もしていないというわけでもない。

 

今の五つ子と風太郎は、ボランティアグループとして、西の都でかなりの有名人になっている。

 

『速報です!〇〇街が人造人間の被害に遭っています!住民の方は安全なところに避難してください!!』

 

そして、人造人間によって世界人口はみるみる減少していた。あと少しで人造人間が現れる前の半分にまで減少する勢いだそうだ。

 

一花「……また暴れてるんだ…」

 

風太郎「そこまで人間を殺して、あいつらは何がしたいんだ………」

 

四葉「また、私達みたいに、友達も、家族も、住む場所も奪われる人が出ちゃうのかな…?」

 

「「「………」」」

 

その四葉の言葉に、四年前のことを思い出してすっかり口を閉じてしまった三人。

 

一方で、五月はブルマの手伝いをしながら着々と知識を身に付けていった。ブルマという師匠がいるからだろうか?五月もブルマほどではないにせよ、かなり優秀な科学者になりつつあった。

 

ブルマ「よし。今日もお手伝いありがとう」

 

五月「いえ、私がやりたくてやってるので……。ところで、本当にタイムマシンを作るつもりなんですか?」

 

ブルマ「ええ。過去に行って人造人間に関する何かを得られればいいんだけどね。設計図とか手に入れば好都合なんだけど……」

 

五月「……過去に行って孫君のお父さんに心臓病の薬を渡すというのはダメなんでしょうか?」

 

ブルマ「……完璧なタイムマシンができれば今のこの状況はそれだけで変わると思うわ。だけど、今の状況が状況なだけに、材料を揃えられるか分からないから、完璧なタイムマシンを作れるかどうか……」

 

完璧でなければ、過去に行って歴史を変える度に並行世界……所謂、パラレルワールドを作り出してしまい、自分のいる世界は何も変わらないのだ。完璧なタイムマシンなら、並行世界を作り出さずに歴史を変えることができる。理論上はだが………。

 

 

そして、事件が起きた。

 

 

 

 

 

トランクスが息を切らしながら帰宅した。何事かと思い、全員で一斉に声をかけようとした、その時………。

 

トランクス「大変だ!!悟飯さんが!!悟飯さんが!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………孫君は、今日も人造人間に挑んだようだ。強くなったトランクス君と共に立ち向かったそうですが、まだまだ人造人間には敵わなかった。人造人間は孫君達に容赦がなくなってきたらしく、今度は殺そうとしてきたらしい。

 

トランクス君を庇ったら、左腕を失ってしまったらしい。最後に残った仙豆も死にかけのトランクス君に渡したそうだ。

 

悟飯「くそ…!人造人間め…!!」

 

 

孫君は夢の中でも人造人間と戦っているようだった…。

 

 

マルオ「…正直生きて帰ってこれたのが奇跡だよ。片腕を失っただけで済んだのは不幸中の幸いだ」

 

五月「……命に別状はないんですね?」

 

マルオ「ああ。その認識で間違いないよ」

 

三玖「良かった…」

二乃「無理しすぎよ」

 

トランクス「俺のせいだ…!俺が弱かったから…!!俺が足を引っ張ったから…!!」

 

ブルマ「トランクスは悪くないわ」

 

風太郎「無茶苦茶しすぎだよ。お前……」

 

四葉「孫さん…………」

 

 

そうだ。悪いのは人造人間だ。アイツらさえいなければ…!!

 

 

 

アイツがいなければ、今頃私達はそれぞれの道に進んでいた!

 

 

二乃と三玖はもしかしたらもうお店を開けていたかもしれない。四葉は上杉君と楽しい日々を過ごせていたかもしれない。トランクス君も、孫君も……!

 

 

………アイツらをどうにかして破壊すれば、その日常を取り戻せるのだろうか……?

 

 

一花「……五月ちゃん。顔がすごいよ?」

 

五月「………えっ?」

 

どうやら自分でも気付かないくらいに酷い顔をしていたらしい。一体どんな顔をしていたのかは、聞く気にもならなかった。

 

一花「……五月ちゃんさ、ブルマさんのお手伝いをするようになったけど、本当にブルマさんに恩返しをするためだけなの?」

 

一花は私にだけ聞こえる程度の声量で聞いてきた。

 

五月「……他意はありませんよ」

 

一花「……困ったらお姉さんに相談してほしいな」

 

五月「ええ。悩み事ができたらそうさせてもらいます」

 

孫君は左腕を失ってしまった。こうなってしまっては、孫君はますます不利になってしまうだろう。私が一刻も早くブルマさんと協力をしてタイムマシンを開発し、過去を変える。こうするしかない。でないと、孫君はもうすぐ死んでしまうだろう…。

 

 

 

 

 

 

この絶望的な世界の話は、また次回に続く……。

 





 タイトルの意味はこう。悟飯は学者になる夢があったが、人造人間が出現した為に断念する。これと同じく五月も教師という夢を断念することになりました。

 皆さんもうお気づきだろうかと思いますが、五月が少しずつ、少しずつおかしくなってきています。


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第42話 絶望

 前回のあらすじ…。

 悟飯と五つ子、風太郎が出会った。風太郎と五つ子は西の都でボランティアグループとして活動し始め、五月は科学者見習いとして働き始めた。どうにかして人造人間を倒す装置を作れないかという思惑で科学者見習いになったのだが、悟飯が人造人間との戦いの際に片腕を失ってしまったようで………。


 ……R18Gに入らないかな…?大丈夫かなこれ…?


 鬱展開が嫌いな方はブラウザバックを推奨しますぜ~



孫君が腕を失って数日が経った。

 

孫君は無事に意識を取り戻して、全員から戦いをやめるように説得されるが、孫君は断った。

 

トランクス君は自分のせいで孫君の腕がなくなってしまったと責めていた。そのため、少々塞ぎ込んでいたのだが…。

 

 

五月「……トランクス君」

 

トランクス「……五月さん…」

 

五月「少し、私に協力してくれませんか?」

 

トランクス「えっ?」

 

五月「雲を掴むような話ですが、上手くいけば人造人間を倒すことができるはずです」

 

トランクス「ほ、本当ですか!?」

 

私の考えはこうだ。どこかに残っているはずの人造人間の生み出した研究所を見つけ出し、そこから人造人間の設計図を持ち出して、人造人間の弱点を見つけるのだ。

 

トランクス「それは名案です!早速行きましょう!!」

 

五月「いえ、どこにあるかも分からないのに闇雲に探してもただ時間を消費するだけに過ぎません」

 

トランクス「そ、そうですよね……」

 

五月「ですからまずは聞き込みですね」

 

まずはその手の情勢に詳しそうなブルマさんに聞いてみることにした。

 

ブルマ「うーん……。人造人間の研究所なんて分かってたら最初から行ってるんだけどなぁ……」

 

五月「では、野心が強い有名な科学者とかはいませんでしたか?」

 

ブルマ「……野心が強いかどうかは分からないけど、嫌なやつだけど有名な科学者なら知ってるわよ。Dr.ゲロって言ってね、天才的な頭脳の持ち主で、私のパパと肩を並べるくらいだったとか……」

 

五月「その人の研究所の場所は分かりますか?」

 

ブルマ「……確か、北の都の近くの洞窟を研究所にしてるって噂よ。今でもその場所が変わってなければの話だけど……」

 

五月「いえ、それだけ知ることができれば十分です。ありがとうございます!」

 

トランクス「それじゃあ早速行きましょう!」

 

五月「ええ!」

 

ブルマ「ちょっと!どこ行くのよ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私はトランクス君に背負われながら北の都へと向かった。その付近の洞窟を徹底的に探し回ると……。

 

五月「……!あれじゃないですか?」

 

トランクス「あっ…!あそこだけ不自然に機械が…!!」

 

それらしい場所に降りてみると、頑丈そうな鉄の扉が無残に破壊されているような痕跡があった。

 

五月「……ここ……でしょうか?」

 

トランクス「うわぁ…。機械がいっぱいだ…」

 

どうやらビンゴのようだった。人1人が入れそうなカプセルがいくつもあった。恐らくここが人造人間の製造場所だったのだろう。なら設計図もどこかにあるはずだ。

 

トランクス「うわっ…!こいつも人造人間でしょうか……?」

 

五月「……?」

 

トランクス君が一つのカプセルに向かってそう呟いているのを聞いた私は、そのカプセルを見た。

 

………オレンジ色のモヒカン型の髪の毛をした、やたらとゴツい人間のようなものが閉じ込められていた。

 

五月「……間違いなく人造人間でしょうね…。起動すると脅威が増える可能性がありますからそっとしておきましょう」

 

トランクス「い、今のうちに破壊した方がいいんじゃないでしょうか…?」

 

五月「それは17号と18号の設計図を見つけ出してからです。それまで下手に手を出さないで下さい」

 

トランクス「は、はい……」

 

 

……もし、この人造人間を私達の味方に誘い込めたら、あの二体の人造人間に対抗するのに打って付けだ。しかし、そう簡単に人造人間が味方になるはずなどない。ここはそっとしておくのが一番だろう。

 

 

……おかしい。いくら探しても設計図が見当たらない。ロッカーや金庫の中だろうか?しかしこの部屋にはそれらしきものが見当たらない。

 

五月「………おかしいですね」

 

トランクス「設計図なしに作り出すなんて、できませんよね…?」

 

五月「……もしかしたら、それができるほどの天才だったという可能性もありますが……」

 

ただそれはないだろう。少しでもミスする可能性を減らす為に設計図は必ず書くだろう。ならばどこかに厳重に保管されているのが普通だ。

 

五月「………おや?」

 

研究室をよく探索してみると、何やら地下に繋がりそうな梯子を発見した。

 

トランクス「こ、これは…?」

 

五月「恐らくここを降りれば、私達の目当てのものがあるはずです……」

 

 

 

梯子をしばらく降りると、それらしい部屋が姿を表した。だが、予想外だったのが………

 

 

五月「なっ…!?」

 

トランクス「な、なんだこれは…!?」

 

 

 

培養器のような巨大な機械の中に、まるで胎児のようなものが浮かんでいたのだ。

 

五月「これも、人造人間……?」

 

トランクス「な、なんなんだ、こいつは…!?」

 

五月「………私はこれについて調べてみます。トランクス君は設計図を探し出してください」

 

トランクス「はい!」

 

 

私はこの目の前の謎の生物について何か手がかりがないか手当たり次第で探した。すると、ある引き出しに計画書のようなものがあったので、それを一読してみた。

 

 

…………これは……!?

 

 

五月「な、なんと……」

 

 

人造人間セル。

 

孫悟空、ベジータ、ピッコロ、天津飯、ヤムチャ、クリリン、餃子などのあらゆる戦士の細胞を組み合わせた完全なるバイオロイド型の人造人間。17号と18号を同個体に取り込むことによって完全体となる。

 

 

-追記-

 

宇宙の帝王を名乗るフリーザとコルド大王の細胞も採取し、これを使用するものとする。

 

 

 

 

 

-追記-

 

あまりにも完成に時間がかかり過ぎ、完成の目処が立たない為、この計画を中止するが、コンピューターに作業を続けさせるものとする。

 

 

五月「……こんな人造人間まで生み出そうとしていたなんて……」

 

トランクス「五月さん!17号と18号の設計図を見つけました!あと16号ってヤツの設計図も見つけたんですけど、どうしましょう?」

 

五月「……一応持って行きましょう。多めに持っていって損はないはずです」

 

トランクス「はい!」

 

トランクス君は3つの設計図をホイポイカプセルに収納した。

 

五月「……ん?」

 

よく見ると、この計画書はセルだけのものではないようだ。過去作から最新作まで一気に情報を載せた図鑑のようになっていた。

 

 

 

………15号までは廃棄して、16号は停止状態で保存されているらしい。17号と18号は人間を改造したタイプ。そして、最新作がセル……ということになっている。

 

 

………ということは、上に保管されていたものは16号ということになる。

 

 

 

そして更に16号の詳細データが載っていた。

 

結論から言うと失敗作のようだ。自然を大切にして戦うようなことがない。パワーこそ17号と18号の上を行くが、これでは孫悟空を殺すことができない。

 

………そう判断したらしい。

 

 

五月「…………16号を起動してみましょうか…?」

 

トランクス「な、何言ってるんですか!?危険すぎます!!更に敵を増やしてどうするんですか!?」

 

五月「……これを見て下さい」

 

トランクス「……?これは…?」

 

五月「Dr.ゲロが記した人造人間のデータです。それを見れば、歴代の人造人間の特徴がよく分かるはずです」

 

トランクス君にその本を渡すこと数分…。

 

 

トランクス「確かに、17号や18号とは違って穏やかだそうですが…。それでも俺達の味方になるとは限りません!」

 

五月「そう……ですよね…。設計図は私が持ちます。私が携帯電話で合図をしますので、それを受け取ったらここを破壊して下さい。特にあの胎児のような人造人間は念入りに」

 

トランクス「分かりました」

 

 

私は持参したホイポイカプセルに設計図を収納し、梯子を上って先程のフロアに辿り着いた。

 

……トランクス君の言う通り、リスクを増やすべきではない。破壊してしまうのが適作なのは分かる。

 

…………しかし、この人造人間を起動しないにしても、持ち帰って17号や18号を倒す人造人間を作る手掛かりにならないだろうか?破壊するのは少々勿体ない気がしてならない。

 

……私は、一度トランクス君にこのフロアに来るようにメールした。するとほんの数秒で彼は駆けつけた。

 

トランクス「どうしました?まさか、16号を起動するつもりですか!?」

 

五月「……いえ、起動せずにそのまま持ち帰りたいんです。そうすれば………」

 

トランクス「…俺はここで破壊するべきだと思います。これ以上脅威を増やしたくない……」

 

五月「……分かりました。では、下の階だけ破壊して下さい」

 

トランクス「な、何故…!?」

 

五月「いいですから………」

 

トランクス「……何か考えがあるんですね…?分かりました……」

 

トランクス君は少々私を疑っていたが、納得してくれたようだ。

 

私が外に出た時に合図を送った。それと同時に何回か地震のような揺れが発生し、遠耳に爆発音も聞こえた。しかし、洞窟が崩れるようなことはなかった。

 

しばらくして、トランクス君が研究室から出てきた。私達はそのまま帰宅するのであった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

悟飯「………」

 

実は、さっきのブルマさんと五月の会話が聞こえていた。どうやら五月は、人造人間の設計図を手に入れて、ただ戦って破壊するのではなく、弱点を見つけてそこを利用する方法を思いついたみたいだ。そのあとはトランクスと共に舞空術で研究所を探しに行ったみたいだ。

 

マルオ「孫君、具合はどうだね?」

 

悟飯「お陰様で大分よくなりました」

 

マルオ「それは良かったよ……。左腕は治すことはできなかったが……」

 

悟飯「いえ、これに関してはオレの不注意のせいです。気にしないで下さい」

 

マルオ「……そうかい」

 

悟飯「ところで、みんなはどうしてますか?」

 

マルオ「五月とトランクス君は共にどこかに外出したみたいだ。他のみんなは外の子供達を励ましに行ってるよ」

 

悟飯「そうですか……。いい人たちですね。あなたの娘さんも、風太郎も……」

 

マルオ「それを言えば、君だって随分お人好しではないかな?世界を救う為にやりたいことや夢を捨ててまで戦いに身を投じているというのに」

 

悟飯「……それ、五月から聞いたんですか…?」

 

マルオ「ああ。数年前にね。五月が科学者になりたいと言い出した時は本当に驚いたが、五月も人造人間をどうにかして倒したいのだろう…」

 

悟飯「ええ。早く倒して平和な世界を取り戻さなきゃいけない…。その為にもオレは今からでも修行をしないと……」

 

マルオ「それは無茶だ。やめた方がいい。君はつい先日まで気絶をしていたのだよ?もう少し休んだ方がいい」

 

悟飯「大丈夫です。オレはお父さんと同じで体は頑丈ですから!」

 

そうだ。オレがやらなくちゃならない。オレが人造人間を倒し、悲劇の連鎖を止めなくてはならない。その為にも、1秒たりとも時間を無駄にできない…!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドグォオオオオオオオオオオオン!!!

 

 

悟飯「なっ…!?」

 

マルオ「……!?」

 

突然、爆発音が辺りに響いた。何事だ…!?まさか…!いや、ここは一度襲来されたのに、また襲ってくるわけが……!!!!

 

 

『臨時ニュースです!再び人造人間が西の都に現れました!!お住まいの方は安全な場所に避難して下さい!!』

 

悟飯「人造人間め…!!」

 

 

ボォオオオッ!!

 

 

マルオ「そ、孫君…!」

 

これ以上人を死なせるわけにはいかない…!!本来なら修行したいところだったが、そうも言ってられない!!

 

超悟飯「マルオさん。ありがとうございました」

 

バシューンッ!!

 

オレは窓を突き破って舞空術で爆発音が響いた所に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方で……。

 

ドグォオオオオオオオオオオオン!!!!

 

「「「「きゃあああああああッ!!!」」」」

 

風太郎「なっ…!?」

 

四葉「い、今のは…!!」

 

一花「ど、どうしたの!?」

 

二乃「……まさかよね?」

 

三玖「こ、子供たちは…!?」

 

今の爆発で子供が何人死んだだろうか…。最早考えたくもなかった。それよりも、懸念されていた最悪の事態が、再び訪れた………。

 

 

17号「よう。久しぶりだな?」

 

18号「また会うなんて、あんたらも運が悪いね〜?」

 

 

人造人間が、再び風太郎達の前に現れたのだ。

 

 

風太郎「お、お前ら…!!そこにはまだ小さい子供がいたんだぞ…!!」

 

18号「だったら何?それがどうしたっていうのさ?」

 

人造人間を相手に情で訴えかけるのは無効。相手は最早心など持ち合わせていない化け物。話し合いなどできるはずがなかった。

 

風太郎「お、お前ら…!早くにげ……!」

 

 

バシュッッ!!!

 

 

………一本の細い光が、風太郎の胸部をあっさりと貫いた。

 

風太郎「がはっ……!!」

 

 

四葉「風太郎ッ!!?」

一花「フータロー君ッ!!?」

二乃「フー君ッ!!?」

三玖「フータローッ!!?」

 

4人が同時に、反射的にそう叫んだ。

 

風太郎「なに……やってんだ……。早く逃げろ………!お前ら…………!!」

 

四葉「で、でも、そしたら風太郎が…!!!!」

 

風太郎「俺のことは……もういい。お前らだけでも……!!」

 

二乃「い、いやよ!!フー君がいない人生なんて歩みたくない!!」

 

一花「私だってそうだよ!!もう5人じゃダメなの!!6人で一緒じゃなきゃ耐えられないの!!」

 

三玖「だからお願い…!フータロー…!!目を閉じないで…!!!!」

 

風太郎「この……大馬鹿共が…!!最後くらいは俺の言うことを……聞いてくれ…!!!」

 

二乃「いやよ!!そんなのお断り!!フー君が一人で死ぬくらいなら、私は……」

 

 

グシャ………!!!!

 

 

 

一花「…………ぇ…?」

 

先程まで必死に風太郎に話しかけていた中野家五つ子の次女が、突然口を閉ざした。

 

いや、その口がないのだ。それもそのはずだ。なぜなら、首から上が存在しないのだから………。

 

三玖「い、いやぁあああああッッ!!!!!!」

 

四葉「二乃ぉおおおおおおッッ!!!!」

 

ただでさえ風太郎が死にかけになってもう助からない状況になり、大声を出して泣き叫びたいところを堪えていた3人だったが、たった今1人の身内を亡くしたことによって、感情のブレーキが完全に壊れてしまった。

 

18号「ピーピーうるさいなぁ…。もう少し静かにできないのかい?ガキじゃあるまいしさ?」

 

風太郎「て……め………ぇ………!!」

 

一花「よくも…!よくも二乃を…!よくも二乃をッ!!!」シャキッ

 

一花はどこから取り出したのか、鋭利な包丁を18号に突き刺そうとした。

 

 

グサッ!!!

 

 

ニヤリ、と一花の頬が歪んだ。

 

 

一花「あ、あはは!あははは!!やったよ!!人造人間を殺し…」

 

 

 

 

ポタッ

 

 

 

ポタッ

 

 

 

 

これは何の音だ?液体が床に落ちる音だ。じゃあなんだ?赤い。赤黒い。

 

 

 

赤黒くて鉄臭い。ということは、これは血だ。じゃあ誰の?風太郎の?二乃の?人造人間の?

 

 

 

 

 

 

 

どれも不正解だ。

 

一花「………あっ……」

 

 

ドサッ

 

 

正解は、一花の血だった。

 

18号「ばっかじゃないの?私にそんなの通るわけないじゃん」

 

一花は確かに18号に包丁を当てた。だが当てただけなのだ。18号に傷は何一つ付いていない。服に穴が空いた程度である。

 

18号「ったく…!!コイツのせいで服に穴が空いちまったじゃないかッ!!!」

 

しかも、服が傷ついたことによって、18号の逆鱗に触れてしまったようだ。

 

四葉「な、なんで二乃と一花も」

 

 

ドカッ!!!!

 

四葉「……ガッ……!!!」

 

 

18号「うっさい!少し黙ってなッ!!静かにできないってんなら、二度と喋れないようにしてやる!!!」

 

18号がズンズンと四葉に歩み寄っていく。四葉を殺す気だ。なんとしてもそれは阻止したい。四葉だけでも守りたい!そう思った三玖は、考えるよりも先に行動に出ていた。

 

 

 

ガシッ…

 

18号「……なんだいその手は?どけな」

 

三玖「ダメ…!四葉を殺さないって約束するなら、どける!」

 

18号「邪魔だって言ってんのよ!!」

 

三玖「いやだ!!」

 

 

 

 

ズバッ!!!

 

 

三玖「………あれ?」

 

 

 

おかしい。まだ18号の足を掴んでいるはず。それなのに18号はどんどん四葉に歩み寄る。なんで?腕も確かに18号の足についていっている。

 

 

 

じゃあ、なんで三玖本人はそこに取り残されるのか……?

 

 

三玖「あ、ああぁあああぁあああッッ!!!!!!!」

 

18号が腕を切り落とした。ただそれだけのことだった……。

 

 

グシャッ!!!

 

 

しかし、そんな三玖の悲痛な叫びもすぐに収まった。

 

17号「頭に響くからやめてくれ。おや、もう二度と喋れなくなっちまったか。これは失礼」

 

風太郎「いちか……!にの……!みく……!よ、よつば……!!」

 

 

四葉「み、みんな……!!みんな…!!」

 

ものの数分で一気に4人もの大切な人を失った。正確にはまだ1人は生きながらえているが、それも数分の命だ。

 

18号「ふふふっ……。17号、確かにコイツはいいや」

 

17号「だろう?こうして間近で人間の絶望した顔を眺めるのも悪くないだろう?ただ壊すよりも長い時間楽しめるしな」

 

なんと、人造人間達は、ただの娯楽の為だけに人を殺したのだ。このような非道で残酷な方法で。それが四葉には許せなかった。

 

人生で二度とないくらいに四葉は怒りを感じた。四葉がサイヤ人ならば、超サイヤ人に覚醒できるほどに。

 

四葉「……お、お前ら…!!遊びなんかでこんなこと…」

 

 

 

ドバッッッ!!!!!

 

 

 

四葉「………っっ!!!!」

 

 

 

最早何も発言は許さんと言わんばかりに18号は蹴る動作をするだけで四葉の腹部に風穴を開ける。

 

 

四葉「あっ……………」

 

 

ドシャ…

 

 

 

 

 

18号「さて、もう行こうよ17号」

 

17号「そうだな。せっかくだし、一旦この辺をぶち壊しながら楽しもうぜ?」

 

18号「いいねぇ…。あっ、でもその前に服を調達してきていい?さっき服に穴を開けられちゃったからさぁ」

 

17号「それくらい好きにしろ」

 

 

 

四葉「ふうたろう……!いちか…!にの…!みく……!!」

 

四葉は薄れゆく意識の中、身体を這いずって既に息絶えた3人と、もうすぐで命の灯火が消えそうな風太郎に近づいた。

 

風太郎「よつば………」

 

何を思ったのか、四葉は5人で縁を描くようにして手を繋いだ。残りの力を振り絞って、一花の手を二乃に重ね、二乃の手を三玖に重ね、三玖の手を自分の手に重ね、もう片方の手で風太郎の手を掴んだ。

 

風太郎「……なるほどな……」

 

風太郎は四葉の意図を汲み、反対の手で一花の手を掴んだ。

 

 

一花も、二乃も、三玖も、まだ温かった。

 

 

 

風太郎「……五月は1人残っちまうな……」

 

四葉「ごめんね、五月………一緒にいてあげられなくて……」

 

風太郎「大丈夫だ。五月は強い……。1人でも、生きていけるさ………」

 

四葉「………天国でも、みんなでずっと一緒に過ごそうね?風太郎……」

 

風太郎「……ああ。永遠に一緒だ、四葉…………」

 

 

2人はその言葉を最後に、力を使い果たして息絶えた。

 

 

18号「あら?トドメを刺そうかと思ったけど、死んじゃったみたいだね?」

 

17号「なんだ。相変わらず人間って脆いな」

 

 

 

スタッ

 

超悟飯「人造人間!お前達を今度こそ破壊する!!」

 

18号「まーた来たよ。いい加減あんたの相手をするのも飽きてきたんだよ」

 

17号「全くだ。もういいか。そろそろ殺してしまおう」

 

超悟飯「……(本当は風太郎達が無事かどうかを確認したいが、人造人間を先に見つけてしまった以上は、そっちを優先するしかない…!!)」

 

18号「ああ。そうだ、面白いものを見せてあげるよ」

 

超悟飯「興味ないな」

 

17号「まあそう言うなって。きっとお前も興味を示すだろうさ」

 

18号「見てみなよあそこ。死に際に円なんか組んじゃってさ」

 

超悟飯「………だからなんだ」

 

悟飯は死体を直視するようなことはしなかった。今はとにかく人造人間と戦うことが最優先だ。悲しんでいる場合ではない。例え誰が死のうとも。

 

18号「ロマンチックよねぇ。最後はこう言ってたんだよ?『天国でもみんなでずっと一緒に過ごそうね、フータロウ』ってさ」

 

17号「あれは傑作だったな」

 

超悟飯「………今、なんて言ったんだ…?(フータロー…?ふうたろうって言ったのか…?風太郎…!?まさか…!!)」

 

突然嫌な予感がした悟飯は、転がっている5人の死体に初めて目を向けた。

 

 

超悟飯「………嘘だ…」

 

一花、二乃、三玖、四葉、風太郎の5人が、円を描くようにして倒れ込んでいた。そこら中に赤黒い液体が飛び散り、気を微塵も感じない。

 

超悟飯「……そ、そんな…!!」

 

17号「おや?ひょっとしてお友達だったかな?そいつはすまなかったな」

 

18号「何言ってんだい。最初から謝る気なんかないくせに」

 

 

 

 

超悟飯「…………なんで、殺した…?」

 

18号「えっ?そりゃあ楽しいから……」

 

 

ゴゴゴゴゴゴゴゴッ

 

 

17号「……?なんだ?」

 

18号「地震かい?」

 

 

大地が揺れ、空気が揺れる。これは勿論、自然現象の地震が起こしているものではない。

 

 

17号と18号には感じ取れないが、悟飯の気が通常ではあり得ない程肥大化しているのだ。

 

 

超悟飯「なんで殺した…?なんで殺したんだぁああああッッ!!!!」

 

 

ボォオオオオオオオオッ!!!!

 

 

18号「くっ…!」

 

17号「なんだ?」

 

 

突然、悟飯からまるで嵐のような強風が吹き荒れる。既に倒壊寸前だった建物はいくつも崩れ始め、道に地割れが生じる。

 

この光景に、流石の17号と18号も只事ではないことを察したようだ。

 

 

超悟飯「許さないぞ…!!貴様らぁああああああッッ!!!!」

 

 

ブォオオオオオオオオッ!!!!!

 

 

 

18号「………17号」

 

17号「ああ。ちょっと面倒なことになっちまったかもな」

 

 

 

 

 

 

 

 

トランクス「……!!」

 

五月「……?どうかしましたか、トランクス君?」

 

トランクス「悟飯さんの気がこれまでにないくらいに膨れ上がっている…!!」

 

五月「えっ…?」

 

トランクス「人造人間が現れたんだ!!俺にしがみついて下さい!!全速力で向います!!!!」

 

五月「えっ?ちょっと…」

 

 

バシューンッ!!!!

 

 

五月「わわっ!!お、落ちちゃったらどうするんですかぁああッ!!!?」

 

風太郎、一花、二乃、三玖、四葉が殺されたことを知って怒った悟飯。その怒りがトリガーとなって悟飯の眠っていた力を呼び覚ましたのだろうか…?

 




 見直して初めて気付いたけど、こりゃひでぇ…!ラブコメ要素皆無!最早DBZ未来編!!

 未来悟飯のエピソードを見直して気付いたんですけど、ブチギレて限界突破するシーンがないんですよねぇ。ということで、今作にはその要素を取り入れてみました。

 ……やべぇ。そろそろスランプになりそう…。一度外出をして外の空気を取り入れた方がいいかもしれませんなぁ…。そうすると何故か新しいエピソードを思い付いたりするんですよね〜…。

 ちなみに16号はなんとなく生かしたかったんです。

 最近展開が迷走してないか不安になる…。(スランプになりかけるとよく起こる現象)


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第43話 復讐心から生まれるのが人造人間

 前回のあらすじ……。

 悟飯が左腕を失った。これに危機感を覚えた五月は、人造人間の設計図を手に入れようとする。ブルマに聞き込み、Dr.ゲロという科学者が人造人間を作ったのではないかと絞り込み、その研究所に行くと、見事に人造人間の設計図をゲットした。

 それと同時に、17号と18号を取り込むことによって究極の人造人間に進化するセルの存在を知るが、誕生前にトランクスが破壊した。

 しかし、16号は未だに破壊していない。

 トランクスと五月が西の都を離れている間に再び17号と18号が襲来。一花、二乃、三玖、四葉、風太郎は無残にあっさりと殺されてしまった。それを知った悟飯は、人造人間に対して激しい怒りを持った……。


※第22話を大幅に修正しました。悟飯が五月に襲われかけているシーンの地の文を悟飯視点から三人称視点に変更、微修正しました。今後の展開に大きな変更はないのですが、もし興味があればそちらもどうぞ。ちなみに変更前よりより過激になってます。なおR18ではないです。最近鬱展開が多いので、そちらを見て癒されるのもいいかもしれませんよ〜()
 そのうち第22話のifでR18ものでも書いちゃおうかしら。つか書きたいんだけど、需要あるかな…?()
 取り敢えず書いた場合はpixivには投稿する予定。こちらに投稿するかは未定。



超悟飯「貴様ら…!!絶対に許さないぞッ!!!」

 

 

ドシューンッ!!

 

 

17号「なっ…!?」

 

17号と18号は油断していた。彼らは悟飯のように気を感じ取ることもできないし、スカウターのような装置もない。よって、悟飯がパワーアップしていたとしても気づけないのだ。

 

 

ドゴォオオオオオッ!!!!

 

 

17号「ぐわっ!!」

 

17号は今までに経験したことのないような痛みに襲われる。どんな兵器だろうと、戦士の攻撃だろうと痛くも痒くもなかった。

 

だが、今の悟飯は一味も二味も違う。怒りによって眠っていた力が覚醒した悟飯だ。いくら人造人間でも今回ばかりは一筋縄ではいなかった。

 

18号「17号ッ!!この野朗…!!」シュバ‼︎

 

ここで、普段ならどんなに注意していても18号の拳が悟飯に命中していた。だが、先述の通り、今の悟飯は二味も違う。

 

 

ガシッ

 

 

 

18号「なっ…!?」

 

悟飯は逆に18号の腕を掴み……

 

 

超悟飯「おりゃあああッッ!!!!」

 

 

ヒューーン‼︎

 

 

18号を既に崩壊しかけていた建物に投げつける。

 

超悟飯「魔閃光ッッ!!!!」

 

 

ドォオオオオオオオオオオッッ!!!!

 

 

 

 

ドグォオオオオオオオオオオオンン!!!!!

 

 

普段は出せない威力の魔閃光を放ち、悟飯は今度こそ18号を破壊しようとした。無論、魔閃光だけで攻撃を終わらせるようなことはなく、気弾の雨を18号に向けて降らせた。

 

 

18号「しゃああああッッ!!!!」

 

 

しかし、18号はまだ無事のようだったが、その表情に余裕はない。まるで自分のプライドを傷付けられてイラついてるかのような表情だった。

 

 

超悟飯「はっっ!!!!!」

 

 

 

ドッッ!!!!!

 

 

 

18号「うっ……!!!」

 

 

悟飯は高速で向かってくる18号を、気合で一旦足止めする。

 

 

超悟飯「はぁあああああッッ…!!」

 

右手の人指し指と中指を頭に当てて、そこに気を集中させる。かつての師匠のピッコロから教わったわけではないが、間近でよく観察し、見様見真似でやってみたらできた技、魔貫光殺砲をトドメとして18号に放とうとしていた。

 

 

シュン‼︎

 

17号「貴様如きがよくもやってくれたなぁ!!!」

 

 

いつも一方的にボコボコにしていた悟飯相手に不覚を取ったからか、17号は少々冷静さを欠いていた。悟飯に急接近し、急所に打撃を当てようとするが……。

 

 

超悟飯「……!」バッ‼︎

 

 

17号「!?ッ」

 

 

悟飯は右手を17号に向けた。

 

 

超悟飯「お前が本命だッッ!!!!」

 

 

ビィイイイイイイイッッ!!!!!

 

 

 

バチッッ!!!

 

 

17号「ぐわぁああああああッッ!!!!」

 

 

ドォオオオオオオオオオオン!!!!

 

 

17号は身体が貫通することこそなかったが、魔貫光殺砲の威力に逆らえずに遥か遠くに飛ばされてしまった。

 

 

18号「粋がってるんじゃないよ…!人間風情がッッ!!!」ドシューン‼︎

 

18号は持ち直して再び悟飯にかかる。

 

 

ドカッ!!!

 

18号「ぐっ…!!」

 

ドコッッ!!!!

 

18号「な、なんで…!!」

 

ガシッ

 

18号「なっ…!?!?」

 

悟飯は接近してきた18号を蹴り、殴り、頭を掴む。

 

 

超悟飯「だぁぁりゃあああああッッれ!!!!」

 

 

ドンッッ!!

 

 

ドンッッッ!!!

 

 

ドンッッッッ!!!!

 

 

ドンッッッッッ!!!!!

 

 

悟飯は18号の頭を掴んだまま突き進み、幾つもの建物を突き破るが、そんなことはお構いなしに突き進み続ける。

 

18号「こんのぉおお……!!」ポワッ

 

 

この様には18号は相当頭にきたようで、容赦なく悟飯を殺そうと本気でエネルギー砲の準備をする。

 

 

超悟飯「………」ポワッ

 

 

18号「………!!!!!」

 

 

しかし、悟飯は18号の頭を掴んでいる右手でそのまま魔閃光を放つ。

 

 

 

超悟飯「はぁあッッ!!!」

 

ドォオオオオオオオオッッ!!!!

 

 

 

18号「くっっそぉぉおおおおおッッ!!!!一体どうやってそこまでの力を身につけたってんだいッ!!!」

 

超悟飯「お前らをもう許さないと言っただろう!今日!今ここで!!お前らを絶対に殺すッ!!!」

 

 

悟飯は片手を失ったにも関わらず、18号を圧倒するほどではないにせよ、確実に押していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

一方その頃、トランクスと五月は……

 

 

トランクス「……!!悟飯さんの気が更に……!!」

 

五月「も、もう少しゆっくりにしてくれませんか!?そろそろ腕が……」

 

 

ィィイイイイイイイッッ!!!!

 

 

トランクス「なっ…!!?あれは悟飯さんの……!!?」

 

 

舞空術で移動していたトランクスと五月のすぐそばに、高速で迫ってくる一本の光があった。

 

トランクス「危ないッ!!!」

 

五月「わっ…!!!」

 

トランクスはそれにギリギリ気付き、間一髪のところで避けることに成功するが……。

 

 

ブォオオオオオオオオッ!!!!!

 

 

トランクス「うわぁああああッッ!!!?」

 

五月「お、おおお、落ちるッッ!!?」

 

 

その光から発生した風圧によってトランクスと五月が吹き飛ばされかけるが、なんとか持ち直すことができた。むしろ吹き飛ばされたことによって西の都がもう目の前の地点まで来ていた。

 

 

 

 

 

スタッ

 

トランクス「五月さん、大丈夫ですか!?」

 

五月「ううっ…。吐きそうですけどなんとか………」

 

 

無事に西の都に辿り着いた。

 

トランクス「そうだ…!人造人間がこの街にいるはず!悟飯さんに加勢しないと!!」

 

五月「上杉君や一花達は無事でしょうか?」

 

……ふと、周囲を見渡してみた。五月が降り立った場所は、幸か不幸か、悟飯と人造人間が遭遇した場所だった。

 

五月「……………………えっ?」

 

 

それは、つまり……………。

 

 

 

 

 

 

 

 

五月「うわぁあああぁああぁぁああああああッッッ!!!!!!!!!

 

 

 

風太郎、四葉、一花、二乃、三玖の死体がある場所であった。

 

トランクス「ど、どうしました五月さん!?!?」

 

五月「一花!二乃!!三玖!!!四葉!!!!上杉君ッッ!!!!!」

 

五月は泣き叫びながら、友と姉達の名前を呼ぶ。しかし、返事はない。

 

トランクス「……なっ!?!?これは……!!!!!」

 

トランクスは五月が突然泣き叫び出した原因が分かったようだ。

 

トランクス「い、一花さん…」

 

描写こそされなかったが、トランクスが超サイヤ人になれずに落ち込んでいた時、一花はよくトランクスを励ましてくれていた。

 

 

『大丈夫だよトランクス君!頑張っていればいつかきっと報われるから!!私もそうだったから!!』

 

 

こうやって励まされたのが今でも鮮明に記憶に残っている。

 

 

そして、二乃。二乃はいつもブルマや三玖と共にご飯を作ってくれていた人。それでいて人には遠慮なく意見が言える人だった。

 

 

『いつまでウジウジしてんのよ。あんたがやらなきゃ誰がやるのよ』

 

 

厳しい時もあったが、彼女はとても優しかった。

 

 

続いて、三玖。彼女は控えめで大人しい印象だった。だが、よくトランクスを励ましていたのは三玖だった。

 

 

『私も昔は自分に自信が持てなかった。だけど、ある人のお陰で自信が持てるようになったんだ。だからトランクスも自信を持って!私は応援するから!』

 

 

 

四葉。彼女はいつも笑顔だった。子供達にも常に笑顔で元気よく話しかけ、子供達からの人気は熱かった。

 

 

『トランクス君。それくらいで孫さんは見捨てたりしませんよ!それに暗い顔してたら心も暗くなってしまいます!!常に笑顔でいれば、きっと何もかも上手くいきますよ!!!』

 

 

そして、風太郎。

 

彼は表立って人に親切することはないし、励ますようなこともあまりしない。だが、トランクスは知っていた。風太郎は充分思いやりのある人であったことを。五つ子のように直接言葉で励ますようなことはなかったが、風太郎は自慢の知識を用いて様々な雑学についてトランクスに語りかけていた。

 

どうにかして気を紛らわそうとしてくれていることがよく分かった。

 

 

『…お前は俺達よりも歳下なのに頑張り過ぎだ。たまには我儘を言ってもいいんだぞ』

 

 

不意打ち気味にこんなことを言われたこともあった。

 

 

 

 

そんな彼らが、人造人間に殺されてしまった。それを認識してしまった。見てしまった。

 

 

トランクス「うわぁあああああああッッ!!!!!」

 

 

プツンっ!!

 

 

 

トランクスの中で、何かが切れた。

 

 

 

ボォオオオオオオッ!!!!

 

 

超トランクス「うわぁあああああああああッッ!!!!!!」

 

 

トランクスにとって、彼らは新しくできた家族のようなものだった。それくらいには深く関わってしまった。

 

 

トランクスは、大切な人を失った見返りとして、超サイヤ人に覚醒することができたのであった。

 

だが、素直に喜べない。喜べるはずがない。

 

 

トランクスは雄叫びをあげながら、ひたすら金色に輝くオーラを増大させ続けるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

お母さん。私、守れなかった。4人を守ることができなかった。母の代わりになると誓ったのに。母の代わりに導くと誓ったのに。

 

 

一花も、二乃も、三玖も、四葉も、5人の大切な上杉君も………守れなかった。

 

 

 

守れなかった。守れなかった守れなかった守れなかった守れなかった守れなかった守れなかった守れなかった守れなかった守れなかった守れなかった守れなかった守れなかった守れなかった守れなかった守れなかった守れなかった守れなかった守れなかった守れなかった守れなかった守れなかった守れなかった守れなかった守れなかった守れなかった守れなかった守れなかった守れなかった守れなかった守れなかった守れなかった守れなかった守れなかった守れなかった守れなかった守れなかった守れなかった守れなかった守れなかった守れなかった守れなかった守れなかった守れなかった守れなかった守れなかった守れなかった……。

 

 

 

どうして守れなかった?

 

 

………そっか。私がお母さんじゃないからだ。お母さんならきっと守ってくれたよね?私がお母さんの代わりなんて務まるはずなんてないよね?だって、お母さんはお母さんだけだもん。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…………そっか。そうだよね。

 

お母さんなら、人造人間だって簡単に倒してくれるよね?そうだよね?だったら私が天国からお母さんを呼び戻すね?

 

お母さん、きてくれルよネ?私が準備すルから、お母さんも準備してテネ?

 

 

そして、みんなの仇を打って。そして力不足だった私を叱っテ……?

 

 

 

 

私がお母さんの器を造ルから、もうちょっと待っててネ?

 

 

 

 

 

 

あれ?なんだろう?視界が広くなった気がする。頭が冴えてるような気がする。私、どうしたんだろう?こんな感覚は初めてだよ。

 

 

 

 

 

 

今なラ何をやッテもウまくいク気がスる……。

 

 

 

 

五月「あはっ…。あはは………あはははっ!!!あはははははハはっ!!!!あははハはハはッッ!!!!あはハハハハハハッッ!!!!!」

 

 

そうダ…!!私ガ人造人間ヲ作ればイイ!!お母さんヲ人造人間とシテ蘇らせレバいいンダ!!

 

なんダ。こンな簡単ナこと、何デ今まで思いつカなかっタんだろウ?

 

 

五月「待っててみんなぁ…!お母さんが仇を打ってくれるからぁ…!!お母さんが仇を打ってくれたら、私もそっちに行くからァ!!!!」

 

 

 

 

 

五人の死によって、トランクスは超サイヤ人に覚醒した。

 

 

それと同時に、五月の中の何かが覚醒した。…………というよりは、壊れてしまったのだろう。正気という名の心が………。

 

 

五月「今に見てろよ人造人間ッ!!!私の姉をッ!!上杉君を殺したことを今に後悔させてやるッッ!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

スタッ

 

17号「くっ……!孫悟飯め…!いつの間にあんな力を……!!!」

 

超トランクス「……!!人造人間…!!貴様ぁああ…!!!!」

 

 

ドシューンッ!!!

 

 

トランクスは17号を見つけると、すぐさま飛びかかった。殺された者達の仇を打つ為に。

 

17号「ガキまで超サイヤ人になってるのか…!!」

 

17号はトランクスが覚醒していたことに驚きはした。だが……。

 

 

ドコッッ!!!!

 

 

超トランクス「がっ……!!!」

 

 

17号「だがお前など相手にならん」

 

 

いくら超サイヤ人に覚醒したとはいえまだ成り立てだ。トランクスでは17号に敵わなかった。

 

 

超トランクス「よくも…!よくも…!!よくもぉおおおおッッ!!!」

 

 

ドゴォオオオッ!!!

 

 

17号「ぐっ…!!!」

 

しかし、トランクスは負けじと17号に仕返しをする。だが、大したダメージになっていない。

 

17号「ふん。少しはできるようだな。なら、これはどうだ?」シュン

 

 

超トランクス「……!?」

 

 

ドカッ!!

 

 

超トランクス「ぐっ……!!」

 

 

ドコッッ!!!

 

 

超トランクス「うおっ…!!」

 

 

17号がスピードを強化すると、超サイヤ人に覚醒したトランクスでも目に追えなくなっていた。それもそのはず、超サイヤ人に覚醒し、なおかつ数年修行した上で、怒りによって限界以上の力を出している悟飯でやっと人造人間を押せたのだ。トランクスにはまだ荷が重すぎた。

 

 

17号「死ね」

 

 

カァッ!!!!

 

 

17号はトドメの一発を放つ。かなり疲弊したトランクスでは避けることは難しいだろう。

 

 

 

 

バシンッ!!!!

 

 

17号「なに……!!?」

 

超悟飯「大丈夫か、トランクス?」

 

超トランクス「ご、悟飯さん……」

 

 

18号と戦っていたはずの悟飯が駆けつけた。

 

 

超トランクス「すみません。俺、また悟飯さんの………」

 

超悟飯「…………超サイヤ人になれたんだな…。君はゆっくり休んでるんだ」

 

超トランクス「でも………」

 

超悟飯「オレが片付ける。だから安心して眠っていろ」

 

超トランクス「……悟飯、さん……」

 

 

シュイン…

 

 

トランクスは悟飯の言葉に安心したのか、超サイヤ人状態を解除して眠りについた。

 

超悟飯「…………さて、ようやく戻ってきたか、17号。お前はもう終わりだ…!!!」

 

17号「ふざけたことを…。お前に俺を倒せるとでも…?」

 

超悟飯「今のオレならできるさ…」

 

 

スタッ

 

18号「17号!今の悟飯は相当強いよ!!今のうちにやっちゃおう!!」

 

17号「そうだな」

 

 

「「はっ!!!」」

 

 

ズォオオオオオオオオオオオッッ!!!!

 

 

 

二体の人造人間は悟飯の飛躍的な成長を危惧したのか、フルパワーで一斉にエネルギー砲を放った。

 

 

超悟飯「……(お父さん…!奴らを破壊できなくてもいい…!奴らを追い返せるだけの力を下さい…!!!)」

 

 

悟飯は薄々気付いていた。今のパワーでも人造人間を倒す決定打にはならないだろうと。

 

超サイヤ人に覚醒したトランクスを見て、もう少し時間稼ぎをしたかったのだ。

 

 

超悟飯「今なら…!あの技を打てる気がする…!!!」

 

悟飯は右手に青い光を生成する。

 

 

超悟飯「かーめーはーめー…!!!」

 

 

この時、悟飯は初めて父が多用していたかめはめ波を作ることに成功した。

 

 

超悟飯「波ぁあああああああああああああッッ!!!!!!」

 

 

 

ズォオオオオオオオオオオオオオッッッ!!!!!!!!

 

 

 

18号「なっ…!?」

 

17号「そんな馬鹿な……!?!?」

 

 

悟飯のかめはめ波は次第に二体の人造人間のエネルギー砲を押し始めた。

 

 

17号「人間なんかに、俺達が負けるはずが……!!!」

 

 

超悟飯「波ぁあああああッッ!!!」

 

 

 

ズォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッ!!!!!!!

 

 

 

悟飯はなんとか人造人間を追い払うことに成功した。17号と18号はかめはめ波に押し出され、遥か遠くで爆発をした。

 

 

 

シュイン…

 

悟飯「はぁ………はぁ……………(これで人造人間を破壊できていればいいんだが…、そんな都合のいい話があるわけないか………)」

 

悟飯は全ての力を出し切ってしまい、超サイヤ人の状態を保てなくなってしまった。

 

悟飯「くそ…!!オレがもっと早く気づけていたなら…!風太郎も!一花も!二乃も!三玖も!四葉も!!みんな死ぬことはなかった…!!くそ…!!!くそッッ!!!!」

 

 

悟飯は右手を何度も地面に叩きつけ、後悔の念をぶつけていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

悟飯「……五月」

 

五月「あはっ…。孫君?」

 

オレは五月に合わせる顔があるのだろうか?五月と初めて会った時、オレの力不足で彼女達の故郷は人造人間に蹂躙された。そして今度はどうだ?またしてもオレが頼りないばかりに、殺されてしまった……!!

 

五月「大丈夫ですよぉ…!私、全然気にしていません!!」

 

悟飯「い、五月…?」

 

五月「もうすぐお母さんが戻ってきてくれます。そうすれば人造人間なんて木っ端微塵です!」

 

………今の五月は何かがおかしい。よく見ると、頬に涙が流れた跡がある。やっぱり泣いてたんだ……。泣かない方がむしろおかしいさ……。

 

 

 

………じゃあ、何で五月は笑っているんだ………?

 

 

五月「あはははッ!!人造人間が恐怖に怯える顔を想像すると…!!私はなんでもできる気がしてしまうんです!!待っててねみんな…!!お母さんがみんなの仇を打ってくれるから…!!!!私が打たせるからぁ!!!!!!」

 

 

…………正気じゃない…。きっと一気に5人殺されておかしくなっちゃっんだ…!

 

悟飯「五月…!君はゆっくりしているんだ!!心が疲れ切っているんだろう?あとのことはオレに任せて………」

 

五月「お断りします。私にはやらなければならないことができたので……」

 

悟飯「い、五月!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

その日以来、五月はおかしくなっていった。

 

 

ブルマ「五月ちゃん!ご飯もういらないの?」

 

五月「いりません」

 

 

最初は些細な違いだった。ご飯を食べる量が減ったくらいだ。

 

 

 

 

 

マルオ「五月、ちゃんと睡眠できているかい?この頃毎日のように研究に没頭していると聞いたよ。少し休んだ方が……」

 

五月「大丈夫です」

 

 

いつからだろうか。五月の目の下に隈が当たり前のようにできていたのは…。

 

 

 

 

 

ブルマ「五月ちゃん!!具合悪そうよ!!今日はゆっくりしてなさい!!」

 

五月「お構いなく」

 

トランクス「だめです!無理して倒れてしまっては元も子もありません!!」

 

マルオ「五月、せめて今日は休んでくれ。君の体調が心配だ」

 

五月「………うるさいなぁッッ!!」

 

ブルマ「ひっ…!!」

 

 

いつからだろうか。周りの人を拒絶し始めたのは………。

 

 

 

 

 

 

 

五月「もうすぐ……!!もうすぐで…!!!」

 

 

いつからだろうか……?女性らしいふくよかな体つきから、あんなにもやつれて痩せこけていたのは……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

悟飯「い、五月……!!それは…!!?」

 

 

五月「………お母さんです」

 

 

いつからだろうか……?母親の墓を掘り出して、骨壷を取り出すような奇行に走り出したのは…………。

 

 

 

 

 

 

 

 

五月「孫君、見て下さい…!!もうすぐで私のお母さんが蘇ります!!」

 

 

いつからだろうか?骨からDNAを採取し、クローンを造り出すようになったのは…………。

 

 

 

 

 

 

五月「あははは!!達人達の戦闘データをゲロの研究所から盗んできました…!!これをお母さんに覚えさせれば……!!!!」

 

悟飯「五月…!こんなことはもうやめてくれ!!」

 

 

 

いつからだろうか?母親のクローンを改造し始めたのは……………。

 

 

 

 

 

 

 

五月「…………」

 

 

悟飯「…………」

 

 

 

いつからだろうか?

 

 

オレと五月が言葉を交わさなくなったのは………………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時はエイジ784年。

 

 

風太郎達が死んでから、もう6年という時が過ぎた。

 

 

オレとトランクスは以前よりも強くなったが、それでもあの時ほどの力を出すことはできなかった。

 

 

それでも修行し続けた。トランクスの成長は著しく、あと少しでオレを超えるんじゃないかという気さえしてきた。

 

 

悟飯「流石ベジータさんの息子だ…。もう少しでオレは抜かされちまいそうだ」

 

トランクス「そんなことありません…!!俺なんかまだまだですよ!」

 

 

 

ドグォオオオオオオオオオオオン!!!!

 

 

トランクス「あっちは…!西の都…!!」

 

悟飯「またか…!!」

 

 

ボォオオオオオオッ!!!!

 

 

超悟飯「トランクス!行くぞ!!」

 

 

ボォオオオオオオッ!!!!

 

 

超トランクス「今度こそみんなの仇を打つッ!!!!」

 

 

ドシューンッ!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

17号「なかなか現れないな、孫悟飯」

 

18号「結構長い間放置しちゃったけど大丈夫?」

 

17号「大丈夫だ。俺達だってトレーニングして以前よりもパワーアップした。そうだろう?」

 

18号「まさか悟飯があそこまでパワーアップするとは思わなかったからね…」

 

17号「今の俺達なら大丈夫さ」

 

人造人間達は相変わらず暴れ回っていた。街を蹂躙し、人々をなんの躊躇もなく殺していた。

 

 

 

 

 

 

五月「とうとう現れましたね、人造人間」

 

 

 

そこに、髪はボサボサになり、身体がやつれて、目の下に隈ができた、最早別人のように成り果てた五月が姿を現した。

 

 

 

17号「……おや?お前は……」

 

18号「ああ……。あの時の……。なんの用だい?身内に会いたいなら、私が送ってあげるよ?」

 

五月「………ハッ!!何をほざいているんです?この日をどれほど待ち侘びたことかッ!!」

 

 

五月の後をついて行くように、一人のめちゃ美人な女性が姿を現した。

 

 

「………五月、彼らが一花達を殺したんですね……?」

 

五月「そうです…!遠慮なく破壊しちゃって下さい、『お母さん』」

 

 

………五月は、一体の人造人間に対してそう呼んだ。

 

 

零奈「許さない…!!よくも娘達を…!!!!」

 

 

シュン‼︎

 

 

ドゴォオオオオオッ!!!!

 

 

18号「がはっ……!!!」

 

 

17号「じゅ、じゅうはち…」

 

 

ズォオオオオオオオオオオオッッ!!!!!!

 

 

18号は零奈が放ったエネルギー砲で呆気なく消滅した。

 

 

17号「ば、馬鹿な!?18号ッ!!!?」

 

 

五月「あははははッッ!!!いいですねぇその顔ッッ!!!今まで散々人殺しをしてきたんだッッ!!!!恐怖に溺れた末に無様に死ねばいいですッッ!!!!それが、私の姉妹に!!上杉君に手をかけたてめぇらへの判決だッッ!!!!!」

 

 

17号「この野朗……!!!」

 

 

カァッ!!!

 

 

五月の発言が頭にきたのか、17号は五月に1発の気弾を発射する。

 

 

シュン

 

零奈「……娘に手出しはさせません!」

 

 

バシンッ!!!

 

 

しかし、零奈によって弾き返された。

 

 

17号「ば、馬鹿な…!!なら、これでどうだッッ!!!!!」

 

 

ズォオオオオオオオオオオオッッ!!!!!!

 

 

17号は以前よりもパワーアップしたエネルギー砲で零奈を倒そうと試みる。

 

 

零奈「ハッ!!!!」

 

 

 

ドグォオオオオオオオオオオオン!!!!

 

 

17号「な………んだと……!!?」

 

 

しかし、零奈の気合によって相殺されてしまった。

 

 

17号「な、何故だ…!!何故貴様にこれほどの力がある!!人造人間でもないのに!!!」

 

五月「いえ、人造人間ですよ。歴としたね……」

 

17号「ば、馬鹿な…!!人造人間は俺達が最新型のはずだ!!旧型は16号を除いて排除されたはずだ!!!」

 

五月「私が作ったんですよ。盗み出したあらゆる人造人間の設計図を参考にして、私が一からね!!」

 

 

五月は一旦零奈のDNAを採取し、クローンを作った。そこからクローンに人造人間化改造を施し、セルにも使用された達人達のデータをインプットすることによってわざわざ達人達の細胞を用いなくても、零奈の姿を保ったまま強力な人造人間を造り出すことに成功したのだ。

 

零奈の記憶は、五月の記憶を元に生成されたものである。

 

 

五月「名付けるとするなら、人造人間07(零奈)……ですね」

 

17号「なっ…!!?」

 

 

そう。この零奈こそが、現代にて悟飯と二乃の前に突如として姿を現した零奈の正体だった。

 

 

Dr.ゲロが造った人造人間ではなく、五月が人造人間を作り上げたのだ。全く新しい人造人間を……。

 

 

Dr.ゲロは、孫悟空に復讐する為に人造人間を造った。

 

五月は、17号と18号に復讐するために造った。

 

 

皮肉なことに、対象は違えど、五月の目的はDr.ゲロと全く一緒だった。

 

 

人造人間とは、強力な復讐心を持った人間から生み出される者のことを言うのかもしれない……。

 

 

 

零奈「………私の娘に手をかけた罪は決して軽くありません。死になさい」

 

 

 

ドグォオオオオオオオオオオオン!!!!!

 

 

 

17号も18号のように呆気なく破壊されてしまった。

 

 

五月「あハッ!!あははははははははははッッ!!!!私やったよ!!みんな見てるッ!!?お母さんが仇を打ってくれたよぉおおッ!!!!あははははははははッ!!!!!私もそっちに行く………から…………………」

 

 

ドサッ………

 

 

五月は今まで溜めに溜めてきた疲労に耐えられなくなったからか、それとも復讐を果たして心が落ち着いたからだろうか。五月は糸が切れた操り人形のように倒れてしまった。

 

 

零奈「……!!五月…!!五月!!」

 

 

17号を撃破した零奈は、倒れた五月の元に駆けつけた。

 

零奈「しっかりして下さい!五月!!」

 

 

 

 

スタッ

 

超悟飯「なっ…!?どうなっている…!?人造人間が………」

 

超トランクス「た、倒された……のか!?」

 

 

零奈が17号を破壊する様子を、悟飯とトランクスはギリギリ見ることができた。

 

超悟飯「と、とうとう完成したのか…!五月の人造人間が…!零奈さんが……!!!」

 

 

 

零奈「五月………」

 

 

超悟飯「……五月の気が…!五月は無理をしすぎたんだ…!!もう助からない…!!」

 

超トランクス「そ、そんな…!!なんとかならないんですか!?」

 

超悟飯「………」

 

 

五月は過労死する。悟飯はそう捉えたのだろう。だが、五月が死ぬことはなかった。

 

 

零奈「………私と共に探しましょう。一花を、二乃を、三玖を、四葉を……」

 

 

バシュッッ!!!!

 

 

超悟飯「なっ!!」

 

超トランクス「なにを!!」

 

 

零奈が五月に手を触れると、五月と零奈が突然光出した。五月が次第に光へと変化し、零奈に吸い込まれていく。

 

 

超悟飯「五月ッ!!!??」

 

 

やがて、五月だった光が零奈のオーラとなり、零奈と五月は一つになった。

 

 

零奈「………タイムマシンというものがあるのですね………」

 

 

バシューンッッ!!!

 

 

超悟飯「まずいッ!!」

 

 

バシューンッッ!!

 

 

零奈が突然飛び立ったので、悟飯もそれを追いかけることにする。五月が零奈に取り込まれて混乱していたが、五月を助けることが最優先であった。

 

 

 

 

ブルマ「えっ…!?ちょっとなに!?」

 

零奈「すみません。借ります」

 

 

零奈は器用にタイムマシンを操作して起動し、今にも過去に飛び立とうとしているところであった。

 

ブルマ「ちょっと待ちなさいって!!あなた何者!?」

 

超悟飯「……!(過去に飛ばれてしまったら、五月も二度と……!!)」

 

 

超悟飯「逃すかぁああッッ!!!」

 

 

ガシッ

 

 

悟飯はタイムマシンの足の部分を掴んだ。

 

 

シュン‼︎

 

 

それと同時にタイムマシンは悟飯と共に姿を消した…………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

未来悟飯「…………これが、オレがこの時代に来た理由と、零奈さんが蘇った理由です…………」

 

 

 

五月が生み出した人造人間零奈は、17号と18号を破壊し、過労死寸前の五月を吸収し、タイムマシンを盗み出して過去に飛んだのだ。悟飯はタイムマシンにしがみつくことによってなんとか現代まで追いかけることができたのだった………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

絶望の未来、追憶編(完)

 




 ということで未来の回想編は今回にて終了。再び現代に戻ります。五月を如何に狂わせるかで苦労したなんて裏話があるのはまた別のお話。五月の闇堕ちに関してはある方の作品を参考にさせていただいています。五月が闇堕ちした作品はそれ以外に私は知らないので…。勝手に参考にしちまってすみません。

 零奈が悟飯達の前に初めて現れた(39話時点)で零奈の正体が分かった人います?39話時点でですよ。流石にいないかな…?いや、一人か二人は流石にいるか……。

 ここにきて、没にしたオリキャラを紹介します。

・中野六海(人造人間623号):製作者はDr.ゲロのコンピュータ。性別は男。無からではなく、五つ子の細胞を集めて合成し、戦士のデータをインプットした人造人間。ある人物達を吸収することによってセルを圧倒する人造人間に進化する。

 てな感じのキャラを考えてました。だけど無理があると判断&オリキャラ反対派の方が結構いたので没にしました。そもそもなんでDr.ゲロのコンピュータが五つ子の細胞を使うか意味不明。ここが一番重要な欠点でした。

 そこで代打となったのが零奈。さらに製作者を未来の五月に変更しました。こうすることによってある程度造られる理由ができたし、病死した零奈を擬似的に生き返らせることができるし、未来悟飯を本編に登場させることができるし、オリキャラが苦手な人でも安心できるというように良い事尽くめでした。

 そんな経緯で生まれたのが人造人間零奈(07)でした。

 やべぇよ!次回分できてねぇ()


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第8巻(下)
第44話 お悩み相談?



 前回までのあらすじ…。
 未来の世界では、風太郎と一花、二乃、三玖、四葉の五人が殺されたことによって、トランクスが超サイヤ人に覚醒し、五月は心が完全に壊れて、なりふり構わずに母親である零奈をベースにした独自の人造人間を開発した。その人造人間はあっという間に17号と18号を破壊できるほどの強さを持つという……。そんな人造人間は未来の五月を吸収した後に、この時代にやってきたという。

 果たして、人造人間の目的は…?


悟飯「五月さんが人造人間を造った……!!!?」

 

風太郎「おいおい。意味が分からねえぞ?五月がサイボーグを?」

 

一花「うわぁ………。私達そっちの世界じゃ殺されてるんだ………」

 

二乃「……」ポロッ

 

未来悟飯の話を聞いた各々の反応はそれぞれだったが、二乃に至っては、あまりにも絶望的な話だった為か、涙を流している。

 

しかし、未来悟飯は全て赤裸々に話したわけではない。四葉と風太郎が付き合っていた事は伏せているし、他の四人も風太郎に惚れていたことも伏せている。これは、不用意に歴史を変えることを防ぐ為だろう。

 

五月「私、そんな風になっちゃったんですか…?信じられません……」

 

四葉「そんな酷い人たちがいるんですね………」

 

三玖「………」

 

 

五月は別世界の自分が零奈を甦らせたことを信じることができないし、四葉は非道の限りを尽くしていた二体の人造人間に若干引いていたし、三玖に至っては無言のままだ。

 

 

マルオ「……人の為に戦うところは本当に孫君なのだね…。しかし、零奈さんをこの目で見るまでは君の話を信じる事はできない。確かに君は孫君に似ているが、時代を移動できるなど考えられない」

 

未来悟飯「そうですよね…。そう簡単に信じることなんてできないと思います……」

 

案の定、マルオは未来悟飯の話を信じていなかった。しかしそれも無理はない。タイムマシンというものがこの場にないわけだし、肝心の零奈もいない。

 

 

二乃「パパ。確かにママがさっき現れたわ。あれは間違いなくママだった」

 

一花「ほ、本当にお母さんだったの?」

 

二乃「ええ。あくまで外見はね……」

 

 

もしも本当に零奈ならば、五つ子にとってはこれ以上ない幸運。母親と再会できるのだ。それを嬉しく思わない子供はごく少数にとどまるだろう。

 

 

未来悟飯「ところで、この世界はどうなってるんです?少なくともこの国は平和なようですが……」

 

四葉「今はどこも平和ですよ!7年前にセルという怪物が現れましたが、そこにいる孫さんが倒してくれたので!!」

 

未来悟飯「……セル?セルってなんだい?」

 

別世界のセルが新たに現れたりもしたが、そこには触れないでおく。

 

悟飯「セルというのは、あらゆる戦士の細胞を寄せ集めて造られた人造人間なんです。17号さんと18号さんを吸収することによって完全体となって、究極の人造人間になるんです……」

 

未来悟飯「そんな人造人間までいるのか…!?聞いたことないぞ!?待て…!それよりも、今、人造人間をさん付けで呼んだのかい?一体どういうことだ…?」

 

悟飯「……僕達の世界での17号さんと18号さんは、決していい人ではなかったんですけど、不用意に街を破壊したり人を殺すような悪人ではなかったんです。あなたには受け入れ難い事実かもしれませんが………」

 

未来悟飯「あ、ああ…。あの人造人間達が……?信じられない………。しかし、そんな究極の人造人間を君は倒したというのかい?」

 

悟飯「は、はい……。お父さんが犠牲になってしまいましたが……」

 

未来悟飯「…?どういうことだ?お父さんは心臓病で死んだんじゃなかったのか…?」

 

悟飯「そのはずだったんですが、今から約10年前にトランクスさんが未来からやってきて、特効薬を渡してくれたんです。同時にトランクスさんから人造人間が現れることも聞きました」

 

未来悟飯「……トランクスが…?」

 

トランクスの世界では、既に悟飯も人造人間によって殺されてしまったという話は聞いていた。つまり、この未来悟飯はトランクスの世界とはまた別の未来から来たのだと思われる。

 

悟飯「かなりややこしくなってしまいますが、トランクスさんの世界もあなたの世界と似たような境遇だったそうです。トランクスさんが未来から来て歴史を変えてくれたから、今のこの世界があるんです……」

 

未来悟飯「そっか……。トランクスが………」

 

 

 

一花「にしても五月ちゃん。天才なんだね……」

 

四葉「未来で科学者になれるならきっと先生にもなれるよ!!」

 

五月「ええっ!?そ、そんな!私なんて…!!」

 

二乃「……確かに、五月は未練がましく母親の行動を真似ることはあるけど、まさかそんな形で生かされるとはね…」

 

 

 

悟飯「……一旦話を整理しましょう。あなたの目的は、そちらの五月さんを助けること……そうですよね?」

 

未来悟飯「ああ。それで間違いないよ。今となってはどこに零奈さんがいるのか分からないけど………」

 

悟飯「………その零奈さんは、何故五月さんを吸収したんでしょう…?」

 

未来悟飯「それが分からないんだ……。全くもって分からない…。過労死で今にも死にそうな五月を庇う為に取り込んだとも取れる。だけど、それならわざわざ過去に飛ぶ必要はないんだ」

 

悟飯「………いや、待って下さい。二乃さんが突然光出したのって………」

 

未来悟飯「………五月が取り込まれた時と同じだ……。ということは……」

 

 

「「二乃(さん)を吸収しようとした!?」」

 

 

二人の悟飯が見事にハモりながら結論を導き出した。

 

 

二乃「ふぇッ!?!?」

 

マルオ「二乃君を……?」

 

一花「二乃は別に死にそうじゃなかったよね…?」

 

三玖「単純に娘だったからとか?」

 

四葉「…………もしかして、五人で一緒にいること………」

 

四葉の言葉に、全員が耳を傾け始めた。

 

四葉「昔、お母さんに言われました。大切なのはどこにいるかではなく、五人でいることだって……」

 

風太郎「ああ。そういえばそんなことを言ってたな」

 

マルオ「つまりその零奈さんは、娘達が五人で共にいることを望んでいるということか……」

 

悟飯「……もしかして、5人とも取り込もうとしている……?」

 

 

「「「「「えっ……??」」」」」

 

 

当事者になりうる五つ子が呆然としてしまう。自分が誰かに吸収されるかもしれないなんて言われてしまえば、危機感が芽生えても仕方ない。

 

 

 

一花「そ、それって私も!?」

 

二乃「私はやられかけたし……」

 

三玖「私も…?」

 

四葉「ええ!?いくら五人一緒とはいえ、そこまで!?」

 

 

悟飯「……未来の五月さんは、あらゆる人造人間を参考にしながら零奈さんを造ったんですよね?」

 

未来悟飯「ああ。そうだけど……」

 

悟飯「その中に、セルという人造人間は……含まれていたら、セルのことを知らないはずはないですもんね………」

 

未来悟飯「いや、もしかしたら参考にしていた可能性はある。五月は目的こそ教えてくれたけど、詳細までは教えてくれなかったんだ」

 

悟飯「……なら、セルを参考にしている可能性もあります。あの零奈さんはかめはめ波も使ってきました。人造人間の中でそれができたのはセルだけ……」

 

未来悟飯「………言われてみれば、17号と18号はオレが知っている技は使ってなかった………」

 

悟飯「セルも参考にされていたとなると、誰かを吸収することによってパワーアップする仕組みを開発していても不思議じゃないですよ。人造人間を造ることができるなら、それも可能なんじゃないでしょうか?」

 

未来悟飯「……なるほど。つまり、五月は零奈さんの教えを反映して、一花、二乃、三玖、四葉も含めた五人を吸収することによって完全体になるように開発した可能性がある………。そう言いたいんだね?」

 

悟飯「はい………」

 

 

生きてきた環境が違えど、同じ孫悟飯だからだろうか。互いに理解が早く、会話がスムーズに進んでいるが、他の者はなんの話をしているのかよく分からない様子だ。

 

悟飯「……となると、完全体になったら今の僕でも手に負えない可能性がある…。早く零奈さんを見つけ出した方がいいですね……」

 

未来悟飯「………いや。破壊する」

 

 

「「「「「えっ…!?!?」」」」」

 

 

偽物とはいえ、母親を破壊すると言い出した未来の悟飯に、五人は驚きの声をあげた。

 

 

マルオ「…待ってくれ。その零奈さんは悪者なのかい?そうでもないなら……」

 

未来悟飯「そんな甘いことは言っていられません。あの零奈さんは人造人間であり、五月が人造人間を憎みながら開発したんです。いつどこで凶暴化するか分かりません。それなら、まだ手に負えるうちに破壊するべきです。世界の平和のためにも………」

 

悟飯「そ、そんな…!確かに偽物かもしれませんが、殺すなんて…!!」

 

未来悟飯「現に君に敵対しただろう?味方になる保証なんてどこにもない」

 

 

そう言われてしまうと、悟飯は未来の悟飯に何も反論ができなくなってしまった。

 

 

未来悟飯「……しかし、今のオレじゃあ零奈さんを倒すことはできない。情けない話だが、ここのオレはオレよりも強いらしい。君の力を借りたいんだ」

 

 

これが、相手がフリーザやセルのような極悪人ならば悟飯は快く引き受けただろう。しかし、今回の相手は五つ子の母親。親を失う悲しみは悟飯は知っているから、せっかく再会できるかもしれないというのに、殺す気には到底なれなかった。

 

 

悟飯「………」

 

未来悟飯「君…!状況が分かっているのか!?他の四人も取り込まれる可能性があるんだぞッ!!」

 

悟飯「分かりますよ…。でも……。また失う悲しみを味合わせたくないんです………」

 

未来悟飯「……っ!」

 

 

失う悲しみ。これは未来の悟飯にも通ずるものがあった。一緒にナメック星へ旅に出たクリリン。サイヤ人達を相手にする時に共に戦った天津飯、ヤムチャ、餃子。フリーザ妥当という共通の目的で共闘したベジータ。

 

そして、尊敬していた師匠であるピッコロに、戦いが大好きで優しい父親、孫悟空……。

 

 

 

夢を諦め戦士になった後に出会った、風太郎、一花、二乃、三玖、四葉……。

 

 

未来の悟飯は沢山の仲間を失った。だから現代の悟飯の言いたいことが痛いほど理解できた。

 

 

未来悟飯「君の言いたいことはオレも痛いほど分かる…。だが、君は『守る為の戦い』というものが分かっていない。全てを守ることなんてできないんだよ……」

 

悟飯「でも…………」

 

悟天「取り敢えずその人の居場所が分からないならどうしようもなくない?」

 

悟飯「確かに………」

 

未来悟飯「……えっ?君は誰だ?」

 

風太郎「ちょ、お前っ!?」

 

 

何故か悟天が部屋に入ってきていた。

 

 

悟天「僕、孫悟天です。実はさっきのお話、少し聞いてたんだ………」

 

未来悟飯「ご、ゴテン…?」

 

悟飯「どの辺から……?」

 

悟天「なんか、そのお兄さんが未来から来たとか兄ちゃんだとか……」

 

悟飯「それ全部じゃん………」

 

どうやら悟天も未来悟飯の話を全部聞いていたらしい。

 

未来悟飯「兄ちゃん…?まさか、君はこの悟飯の弟くんなのかい?」

 

悟天「うん!そうだよ!」

 

未来悟飯「なんだって…?」

 

未来の悟飯の世界では誕生すらしていなかった命。トランクスが未来から来て、運命に抗ったことによって新たに誕生した命なのだ。

 

未来悟飯「………そっか。でも君の言う通りだな。今は零奈さんの居場所が分からない」

 

とはいえ、零奈の目的が残りの四人の吸収だということを考えると、五月以外の五つ子四人に危険があるということになる。

 

未来悟飯「取り敢えずオレはその辺で野宿でもしているよ」

 

悟飯「えっ…!?僕の部屋で良ければ一緒に寝ましょうよ!お母さんにも会えますよ!!」

 

未来悟飯「……母さんか…。いや、やめておくよ。この世界ではあくまでも他人だからね」

 

そう断ると、未来の悟飯は窓を開けて飛び去ってしまった。

 

 

これによって、未来悟飯による会議は終了した。

 

風太郎、マルオ、悟飯と悟天が部屋を出た時のこと………。

 

 

マルオ「………またしても娘達に危機が及んでいるようだ…。頼んだよ、孫君」

 

悟飯「はい!任せて下さい!」

 

初めて本格的にボディガードとしての仕事に就くことになった。

 

 

 

 

 

 

 

そのまま就寝かと思いきや、悟飯は携帯で一花を呼び出していた。一体悟飯は一花になんの用があるのだろうか?マルオには、長女である一花に今後の護衛プランを伝えたいと、それらしい嘘をついて誤魔化した。

 

 

悟飯「やあ一花さん。来てくれたんだね」

 

一花「どうしたの悟飯君?こんな夜中に女の子を誘い出すなんて……。もしかしてエッチなお誘いかな?」

 

悟飯「違うよッ!?」

 

一花のこのようなノリは悟飯は少し苦手である。

 

悟飯「………いやね。実は五月さんからみんな悩み事を抱えてるみたいだって聞いたんだ。二乃さん、三玖さん、四葉さんは解決したんだけど、そういえば一花さんはまだ解決してなかったなって思ってさ………」

 

四葉の件は風太郎を経由して、上手く変装ができるかどうか悩んでいるということを知った。

 

悟飯「何か悩み事があるなら聞かせてくれないかな?」

 

一花「…………どうしてそんなこと聞くの?悟飯君が家庭教師だから?」

 

悟飯「違うよ。単純に困っているようだったから力になってあげたかっただけだよ」

 

一花「…………そっか。悟飯君にしてはやけに気が効くなぁって思ったけど、深い意味はないんだね」

 

悟飯「……そうだね。君が偽五月であるかどうか以外はね」

 

一花「……!?ッ」

 

 

一花は突然図星を突かれたからだろうか、一瞬表情を乱してしまうが、持ち前の演技力でなんとか持ち直す。

 

 

一花「に、偽五月?なんのことかな?」

 

悟飯「五月さんとして上杉君に家庭教師をやめるように促したのは、一花さんなんじゃないの?」

 

一花「…………どうしてそう思うの?」

 

悟飯「五月さんはこう言っていたんだ。春休みに入ってから四人とも様子がおかしくなったって。でも二乃さんの悩みも三玖さんの悩みも四葉さんの悩みも判明したけど、どれも上杉君の解雇に繋がるような悩みではなかった……。そこで、残る君が偽五月なんじゃないかって思ったんだ。まあ、ただの消去法みたいな感じではあるけど……」

 

かなり当てずっぽうに近いとはいえ、悟飯の予測は当たっていた。風太郎に家庭教師をやめるように促したのは一花だったのだ。しかし、何故一花がそんなことをしたのか?

 

一花「………そうだね。私だよ」

 

悟飯「……なんでそんなことを言い出したの?それも、僕と上杉君だけじゃなく、上杉君だけに………」

 

一花「……悟飯君はさ、私達の関係をどう思ってる?」

 

悟飯「……?それ、三玖さんからも聞かれたなぁ…」

 

一花「えっ?」

 

まさか同じような質問を三玖からもされているのは予想外だったようだ。似たような質問をしていることから、三玖ももしかしたら悟飯に対して同じようなことをしたのかもしれない…。そう考えた。

 

悟飯「もうただのビジネス上の関係だけじゃないんじゃないかって思ってるよ。あんなに長い時間を一緒に過ごしたんだもん。もう友達って言ってもいいと思ってたんだ………」

 

一花「(やっぱりそうなるよね〜…。悟飯君は三玖の好意には気づいて……うん?)ちょっと待って?『思っていた』?それ、どういうこと?」

 

悟飯「………実を言うと、僕と友達以上の関係を持ちたがっている人がいて……」

 

一花「二乃と五月ちゃんのこと?」

 

悟飯「あれ?五月さんはともかく、なんで二乃さんのことも………」

 

一花「あはは……。実はあの時の告白を聞いちゃったんだ……」

 

あの時の告白とは、二乃が悟飯に対して、ケーキ屋のキッチンで告白をした時のことである。

 

悟飯「そ、そうだったんだ…。実はもう一人いるんだけど………」

 

一花「……えっ?(まさか、三玖のことも気付いたの…?)」

 

悟飯「その………三玖さんも、僕のことを好きでいてくれているみたいで……」

 

一花「ようやく気付いたんだ」

 

悟飯「えっ?よ、ようやくって…?」

 

一花「悟飯君は全く気づいていないだろうけど、林間学校前からずっと三玖は悟飯君のこと好きだったんだよ?」

 

悟飯「えっ!?!?そんな前からッ!?!?」

 

一花「でも良かった…。これで三玖もようやく報われるね!それじゃあ私はこれで………」

 

悟飯「って待って。まだ何も解決してないよ」

 

この雰囲気なら誤魔化せると思ったのだろうが、悟飯は案外注意深いので流すことはできなかった。

 

悟飯「それで話を戻すけど、僕達の関係と上杉君の解雇とどう繋がるの?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あはは………。上手く流せるかと思ったけど、一筋縄ではいかないみたいだ…。

 

もうバレてしまったのだから、話してしまってもいいだろう。

 

 

一花「……私はね、ある人との関係を変えたいの。ただの友達じゃなくて、それこそ恋人とかに……」

 

悟飯「あっ、もしかして上杉君のことを言ってる?」

 

 

……………えっ?

 

 

一花「ななな、なんで悟飯君がそのことを知ってるのッ!?まだ誰にも話したことないのに!?」

 

 

いや、正確には三玖には勘づかれているけど、三玖が言いふらすとは思えない。

 

 

悟飯「いや、なんというか…。今までの一花さんの行動を見て、なんとなくそうなんじゃないかなーって思ってたんだ…」

 

一花「えーっと……、具体的に気付いたのはいつ?」

 

悟飯「……確か、上杉君が入院した時のことかな?ほら、一花さんが上杉君にパンを食べさせてあげたでしょ?あの時に気付いたんだ」

 

一花「………悟飯君、よく見る女の子の対象間違えてるよ?」

 

悟飯「えっ?ご、ごめん………」

 

 

なんで鈍感なのにこういうことには気付いちゃうかなー……。多分五月ちゃんの好意に気付く前に気付いてるでしょこれ?

 

 

悟飯「ごほんっ!とにかく、一花さんが上杉君のことが好きなのは理解したよ。でもそれと家庭教師の解雇はどう関係があるの?」

 

一花「生徒と教師の関係のままじゃ、私とフータロー君の関係はずっと変わらない。多分友達止まり。……私はその関係が嫌で、終止符を打たなきゃいけないって思ったんだ。そしたら昨日の夜、偶然フータロー君に会ったから言ったんだ。………けど、そう言った時にフータロー君が少し悲しそうな表情を浮かべたように見えたんだ」

 

悟飯「…………」

 

 

悟飯君は何も言わずに私の話を聞いてくれていた。変に気を使われるよりもずっと話しやすかった。

 

 

一花「それが間違っていた事を悟った時にはもう取り返しがつかなかった。それでフータロー君がお爺ちゃんに投げられた時に逃げちゃって………。そのままどうして良いか分からなくて。今に至るまでずっと逃げてきてたんだ…。悟飯君に気付かれなかったら、今後もずっと逃げてたんだろうね、私」

 

 

多分私は自虐的な笑みを浮かべながら呟いた。フータロー君を騙した上に、多少なりとも傷付けたのだ。自分が嫌になるに決まっている。特にまっすぐな五月ちゃんや二乃、三玖を見ていると自分が如何にズルくて汚いかがよく分かる。

 

 

だけど悟飯君は、そんな私に微笑みながら………。

 

 

悟飯「そっか……。それくらいに上杉君のことが好きなんだね……。でもそれはハッキリ言わないと伝わらないよ」

 

 

 

『ハッキリ言わないと伝わらない……』

 

悟飯君のこの言葉は妙に説得力があった。確かにフータロー君も悟飯君と同じくらいに鈍感だろう。だからはっきり伝えなければ私の想いなんて一生気付いてくれないだろう。

 

だけど、私にはそんな度胸はない。二乃や五月ちゃんのように真っ正面からぶつかるなんてとても………。

 

 

悟飯「明日、最後に上杉君に会ってあげてくれないかな?上杉君はね、僕よりも君達のことをよく見てくれているはずだよ。この前の全教科0点騒動覚えている?あれは癖で犯人を特定したけど、その癖を把握していたのは上杉君なんだよ」

 

 

……そういえばそんなこともあったな。よく見ていると言えば………。

 

 

 

 

『その作り笑いをやめろ』

 

 

私の笑顔が作り笑いだと彼は見抜いた。今にして思えばそれからだ。私が彼のことを意識するようになったのは。

 

 

なんで私は忘れていたんだろう。私が彼を好きになった理由…。フータロー君は私のことをちゃんと見てくれているから好きになったのではないか。それなのに私が信用しないで一体誰が信用するんだ?

 

 

一花「………気付いてくれるかな?私だって………」

 

悟飯「大丈夫。気付いてくれるよ……」

 

 

うん。分かったよ。私はもう逃げない。ちゃんとフータロー君と向き合うよ。

 

 

一花「ありがと、悟飯君」

 

悟飯「………どういたしまして」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

悟飯は一花を見送り、自分の部屋に戻ろうとした時だった……。

 

 

未来悟飯「へぇ…。やるねぇ!」

 

悟飯「わっ!?いたんですか!?」

 

未来悟飯「ああ。君と少し話をしたくてね。まだ勉強を続けているであろう君にね………」

 

 

どうやら未来の悟飯は現代の悟飯に用があったらしい。

 

 

未来悟飯「君は、風太郎達と一体どんな関係なんだい?」

 

悟飯「……上杉君とは親友、同じ学校に通っているんです。五つ子の5人もそうです。僕は上杉君と共に5人の家庭教師をしています」

 

未来悟飯「………そっか。君も家庭教師をしているんだね。…ピッコロさんや、クリリンさん達も生きているんだよね?」

 

悟飯「はい。みんな元気ですよ。天津飯さんと餃子さんだけは今どこにいるのか分かりませんけど…。ピッコロさんは神様と合体して一人になりましたし、クリリンさんなんか18号さんと結婚して子供までいるんですよ!」

 

未来悟飯「えっ!?クリリンさんと18号がッ!?嘘だろッ!!?」

 

悟飯「あはは…。あなたにとっては信じ難いことでしょうけどね…。そうだ…!信じ難いことと言えば、最近はベジータさんがちゃんと父親しているんですよ!この前なんかトランクスから聞いた話だと、何か賭け事をしてトランクスが勝ったからベジータさんが遊園地に連れて行くことになったそうですよ!」

 

未来悟飯「あのベジータさんが…!!?想像できないな……。トランクスも歳相応に楽しい生活が送れていてなによりだよ……」

 

そう。未来の世界では、人造人間が人々を襲っていた為か、トランクスは真面目に成長してしまった。本来ならブルマかベジータのようなやんちゃな子供に成長していただろうに……。

 

だが、現代の悟飯の話を聞く限りでは、トランクスはしっかり子供っぽい生活をしているようだった。

 

 

未来悟飯「……究極の人造人間を倒し、この世界を救った君に頼みたいことがあるんだ」

 

悟飯「……なんでしょう?」

 

未来悟飯「……5人を……。いや、6人をしっかり守ってやってほしいんだ」

 

悟飯「6人…?6人って………」

 

未来悟飯「……そう。顔がそっくりな五つ子に、やたらと勉強ができる不器用な家庭教師をね………」

 

 

無論、6人とは五つ子と風太郎のことを意味していた。未来の悟飯は五月を除いた5人を守ることができなかった。それが原因で五月が壊れてしまい、零奈を人造人間として蘇らせる原因になってしまった。

 

 

未来悟飯「オレにはできなかったことを君は成し遂げた。だから、君の親友と生徒を守ってくれ……」

 

 

未来の悟飯はせめてもの償いとして、こちらの世界の五つ子と風太郎には平和で幸せな生活を送ってもらいたかったのだろう。悟飯に6人を守るように頼んできたのだ。

 

絶望の未来へのせめてもの抵抗……と言ったところだろうか。

 

 

悟飯「………はい。任せて下さい」

 

 

未来の悟飯は悟飯からいい返事を聞き、安心したような笑顔を一瞬見せながら、窓から外へ飛び立っていった。

 




 2日に1回更新をやりすぎた反動でモチベ低下中。ゆっくりではありますがぼちぼち次回分も制作中です。

 dTVに加入してかなり時間が経ったんですが、なんとドラゴンボールシリーズほぼ全部見れるみたいですね。劇場版も含めて。こりゃたまげたなぁ……。ということで、メタルクウラのやつとボージャックのやつを早速見ました。一度見たことあるんですけど、内容ほぼ忘れていたので、この小説(?)を書いている時にちょうどよかったのです。
 元々は仮面ライダーシリーズを安価で見る為に加入したのに、これは嬉しい誤算でしたね。無印DBのアニメとかも見たことないから見てみようかな……(漫画でしか見たことがない)。

 関係ないけど、嵐のふるさとっていい曲だよね。(嵐の曲だとつい最近知った)


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第45話 家族旅行最終日

 未来の世界での出来事を聞いた一同。現代と未来の悟飯によって、人造人間零奈の目的は五つ子(五月を除いた残り四人)の吸収ではないかと考察し、五つ子の護衛に専念することになる。

 その零奈はあくまで人造人間ではあるが、遺伝子的に見れば五つ子の実の母親であることに変わりはない。悟飯はどうにかして未来五月と共に零奈も救い出せないかと考えるが、未来の悟飯は破壊することを選択する。同一人物でも環境によって考え方に差異が生じるようだ。

 その後、悟飯は一花の悩み相談に応じることに。風太郎を悩ませていた偽五月の正体は一花だったと判明し、風太郎と恋仲になりたいが、二乃や五月、三玖のようにまっすぐなアタックをすることができないからこのような手を取ったらしい。悟飯は一花を説得し、旅行の最後に風太郎にチャンスを与えたのだった………。



翌日……。

 

五月の姿に変装した一花と風太郎は、大広間にいた。一花と風太郎が悟飯に誘導される形で対面することになった。

 

風太郎「………お前は初日の夜、俺と話した五月ってことでいいんだな?」

 

一花「……はい。私は……」

 

風太郎「五つ子ゲームを結局俺は正解できなかった。降参だ。だが負けっぱなしってのも癪だな。……リベンジだ。せめてお前だけは俺から正体を暴く」

 

(それが、今俺が示せるお前たちと向き合う覚悟だ)

 

風太郎「……五月から話は聞いてるな?」

 

一花「ええ………」

 

風太郎「それならあいつに頼まれてた件を含め順を追って説明していこう。最初は四葉。あいつの悩みはこの旅行自体にあった。よって今日が終われば自動的に解決する。そしてお前は四葉じゃない。あいつはお前ほど完璧には変装できないからな」

 

一花「……正解です」

 

風太郎「続いて三玖でもない。お前が俺と会った時は三玖は悟飯といたそうだからな。三玖だけは絶対にありえん」

 

一花「………正解です?これで私は一花と二乃に絞られたわけですが……」

 

風太郎「……っとその前に、デミグラス」

 

一花「!? で、デミッ!?」

 

風太郎「いや、その反応で安心した……」

 

風太郎は、念の為五月本人かどうかを確認する為に合言葉を言ったが、反応を見るに五月本人ではないことが分かった。

 

風太郎「話を続ける。お前が一花か、二乃か………。まだ分からない」

 

一花「……(そうだよね…。私は何を期待していたんだろう……。悟飯君でさえも五つ子ゲームをクリアするのにかなり時間を掛けていた………。フータロー君には……………)」

 

一花と言えば一花にも見えるが、三玖と言えば二乃にも見える。五つ子なのだから顔は殆ど同じだ。

 

風太郎「お前さ………。俺のこと名前で呼んでくれない?」

 

一花「上杉君、その手にはかかりませんよ」

 

風太郎は自身の呼び方で見分けようとした。一花は『フータロー君』と呼び、二乃は『上杉』と呼ぶ決定的な違いがあるが、流石にその思惑も見破られてしまう。

 

風太郎「内緒話があるから耳を貸してくれ」

 

一花「左耳ならどうぞ」

 

風太郎は他にも姉妹のワンポイントで区別しようとするも、偽五月のガードは硬く、なかなかボロを出さない為、風太郎はかなり苦戦していた。

 

風太郎「……ダメだ。お手上げだ」

 

一花「……そう……ですよね」

 

風太郎「ああ、あいつを呼んできてくれ」

 

一花「……?あいつ?」

 

風太郎「ほらあいつだよ。お前らの末っ子の……今お前が変装している…………いつ………」

 

一花「ああ、そういうこと……」

 

姉妹の中で唯一五月のことを『五月ちゃん』と呼ぶのは一花だけだ。五月の呼び方で区別しようと試みたのだろうが、一花にはすぐにバレてしまった。

 

一花「五月ね……」

 

風太郎「……(分からんッ!!)」

 

五月ちゃんと呼ぶのは一花だけだか、五月と呼び捨てにするのは二乃だけでなく、三玖と四葉もそうだ。これだけでは二乃と断定することはできなかった。

 

一花「……やっぱり分からないですよね…。もうやめましょう?」

 

風太郎「ま、待て…!!」

 

一花は誤魔化すように笑いながらそう言った。悟飯は『きっと気付いてくれる』と言っていたが、所詮は綺麗事だったのだと自分に言い聞かせ、大広間を後にしようとした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

風太郎「…………お前」

 

 

……………俺はあの仕草を知っている…。誤魔化すように笑うあの仕草は……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

風太郎「………全く。お前は本当に出来の悪い生徒だ。言われたことも実行できないとはな」

 

一花「…………えっ?」

 

風太郎「俺はあの時、お前にこう言ったはずだ。『その作り笑いはやめろ』とな」

 

 

 

 

 

『大丈夫。きっと気付いてくれるよ』

 

 

 

 

ああ……。悟飯君の言う通りだったよ。フータロー君は………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

風太郎「はぁ………。お前は一花。そうだろう?」

 

 

 

 

一花「……………当たり…!」

 

風太郎「うおッ!?」

 

 

ドサッ…

 

 

ウイッグが落ちた。

 

涙が零れるよりも先にフータロー君に抱きついていた。そのまま彼を畳に押し倒してしまった。

 

 

一花「…………ねえ、どうして分かったの?」

 

風太郎「………さっきお前が『もうやめましょう』って言った時、お前が誤魔化すように笑っていたから…。花火大会の時のお前のことを思い出したんだ……」

 

一花「………そっか」

 

風太郎「………一つ聞いていいか?何で俺をクビにしようとしたんだ…?」

 

一花「………今はそう思ってないけど、理由は………」

 

風太郎「いや、やっぱいい」

 

一花「えっ…?聞かなくていいの?」

 

風太郎「………わざわざ五月に成りすまして言ったくらいだから、相当言いづらいことだったんだろうし、もうそのつもりもないらしいからな…。よく考えたらわざわざ聞く必要もない」

 

……私の事を気遣ってくれたんだ。フータロー君って普段はノーデリカシーの名を欲しいがままにしているのに、何でこんな時だけ…………。反則だよ……。

 

一花「…………分かった。でもいつかは話すね」

 

風太郎「無理しなくてもいいぞ」

 

一花「………怒ってる?」

 

風太郎「なんでだ?」

 

一花「だって、私の都合で振り回しちゃったから………。旅行なんだから家族と楽しみたかったはずなのに、余計な心配事を増やしちゃって………」

 

風太郎「………………安心しろ。俺は別に怒っていない。お前らの身勝手な行動にはもう慣れたからな」

 

改めて思った。私、フータロー君が好きなんだ。恋をしているんだ。ずっと前から……。あの時から………。だから拒絶されたくなかったんだ……。

 

……………………ずっと今が続けば良いと思ってた。この一番心地良い空間が変わって欲しくなかった。

 

でも、本当は……………。

 

 

 

「……………………誰にも取られたくなかったんだ

 

風太郎「……?」

 

今思えば、そんなことは当たり前のことだったんだと思う。だけど、お姉さんとしての立場や、四葉の件で本心を曝け出すことを躊躇っていた。

 

 

けど、それはもう過去の話。四葉には悪いけど、私はもう譲るつもりはないから……。

 

 

 

 

『これは私の恋だもの。私が幸せにならなくちゃ意味ないわ』

 

 

 

 

今なら二乃の言っていたことがよく分かる。二乃は当たり前のことを言っていたんだ…………。妹に教わるなんて、私はお姉さん失格だなぁ………。

 

 

 

 

一花「ねえ、フータロー君。私を見つけてくれてありがとう……!!」

 

 

風太郎「……おう」

 

 

私は二乃や五月ちゃんみたいに真っ正面からぶつかることもできないけど、覚悟しててね、フータロー君……!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

風太郎「一花、重いからいい加減降りてくれないか?」

 

一花「あーッ!?女の子に対してそれは禁句だよッ!!」

 

 

………やっぱりフータロー君はノーデリカシー男だ……。なんで君なんだろうね。本当に………………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あなたは新郎を、病める時も、健やかなる時も、富める時も、貧しい時も、夫として愛し、慈しむことを誓いますか?」

 

「はい。誓います」

 

純白のウェディングドレスを見にまとった女性が答える。

 

「それでは、指輪の交換を行います」

 

「あっ…」

 

しかし、何があったのやら、指輪の交換は後回しにされた。

 

「はぁ……。こんな結婚式前代未聞だよ……」

 

結婚式の参列者のうちの一人が呆れるようにそう呟く。

 

「それでは、誓いのキスを……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

四葉「らいはちゃん!」

 

らいは「なーに?四葉さん?」

 

四葉「今日で旅行もおしまいだけど、どうでしたかー?」

 

らいは「うん!すっごく楽しかったよ!昨日はお父さんとたくさん遊びに行ったんだ!お兄ちゃんがいなかったのは残念だけど、凄いところにブランコがあってね!」

 

らいはは四葉に今回の旅行について聞かれると、楽しそうに語り始めた。その様子から心から楽しめていたことがよく分かる。

 

らいは「この旅館は最初は驚いちゃったけど、とってもいいところだって、学校が始まったら友達に言うんだ!」

 

とびっきりの笑顔でらいはが言った。祖父が運営する旅館を気に入ってくれたことが相当嬉しかったのか、四葉はらいはに抱きついた。

 

四葉「わぁ〜っ!!やっぱりらいはちゃんはいい子です!!戸籍の改ざんという犯罪ギリギリの手を使ってでも妹にしたいです!!」

 

五月「思いっきり犯罪ですが……」

 

チチ「そういえば、この旅館はお爺さんが運営してるって聞いたぞ!いいとこでねえか!」

 

二乃「良ければぜひもう一度来てくださいね!」

 

チチ「んだ!そうさせてもらうだ!ところで……おめぇは………二乃さ?」

 

二乃「はい!そうです!」

 

チチ「顔がそっくりで訳分からねえだよ……」

 

 

五つ子とらいは、チチは、ゆっくりと温泉を堪能していた。その一方で……。

 

 

 

 

 

 

 

 

風太郎「………」

 

勇也「かーッ!!堪んねえな!お前も一杯どうだ、マルオ!!」

 

マルオ「上杉、僕を名前で呼ぶな。それに酒は苦手だ。特別な時にだけと決めている」

 

勇也「ったく!お前は昔から堅ぇーんだよ。長湯して少しふやかしたらどうだ?」

 

風太郎「親父、俺は先に上がるわ」

 

勇也「おう!」

 

風太郎はマルオとの件でかなり気まずかったのか、颯爽と上がっていった。しかしチチが温泉に入っているのに、何故男湯に悟飯と悟天がいないのだろうか?

 

勇也「そういや、仲居さんから不思議な話を聞いたんだが」

 

マルオ「やめてくれ。世間話をする間柄でもないだろう?」

 

勇也「まあ聞けって。知っての通り、この旅行はうちの息子とお前んとこの嬢ちゃんが当てたもんだ。そんなことあると思うか?五組限定だぜ?」

 

風太郎「…!」

 

風太郎は去り際にこんな会話を聞く。

 

勇也「そこで仲居さんに質問したんだ。この旅行券が当たった客は何人来ましたかってな。そしたら驚いたね。俺らより先に四組来てたんだとさ」

 

五組限定のチケットのはずだ。だが、三玖と風太郎が当てた分も含めると六組になる。この旅館は五つ子の祖父が経営する旅館である。マルオか祖父が関係していることは言うまでもないだろう。

 

マルオ「……不思議な話もあるものだね」

 

勇也「だろー!?」

 

 

 

風太郎「……(あの父親が偽の旅行券まで作り出してでもここに来た理由……。そんなの決まっている)」

 

 

『最後くらい孫達とまともに話してはどうか?あなたに残された時間は少ない』

 

『……思い出は残さぬ。あの子らに二度と身内の死の悲しみを与えたくない』

 

 

風太郎は昨日の夕方頃までは、あいつらならそんなの乗り越えていけると確信していた。

 

だが、それはどうだろうか?

 

未来から来たという悟飯から聞いた絶望的な世界での話……。

 

 

身内四人が殺されたことによって、心が壊れた五月。そこから新たに脅威が生み出された。

 

そんな話を聞いてしまっては、風太郎は自信を持って『あいつらなら乗り越えられる』とは言い切ることができなかった。

 

 

 

 

 

 

 

だが、それは五つ子に触れ合う前の風太郎の感想だ。今の風太郎はそうは思わない。

 

その未来では人造人間によって残虐に殺されてしまったのだ。病気や寿命死とは訳が違う。

 

今のあの五人なら、それくらいは簡単に乗り越えられるだろうと、五つ子を身内の次によく知る風太郎はそう確信できた。

 

風太郎「……実は昨夜の話を聞いていたんですが……」

 

風太郎は旅館から出て行く前に、五つ子の祖父に昨夜のことについて話しかけようとしたが、人の家の事情に首を突っ込むのも如何なものかと思い、何を話せばいいか分からなくなった。

 

だから、取り敢えず………。

 

 

 

風太郎「お世話になりました………」

 

 

祖父相手に深々とお辞儀をしながら、礼を述べた。

 

 

祖父「……孫達はわしの最後の希望だ。零奈を喪った今となってはな……」

 

風太郎「えっ……」

 

祖父「孫達に伝えてくれ。自分らしくあれとな……」

 

風太郎「……あいつらは、きっと乗り越えます。あなたの死も…。あいつらは強い。短い付き合いですが、それは保証します」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方で、風太郎達が温泉に入っていた時のこと…………。

 

 

悟天「……それで、未来の兄ちゃんだっけ?なんか用?」

 

未来悟飯「オレと手合わせしてほしいんだ」

 

悟天「えっ!?兄ちゃんと!?無理だよ勝てっこないよ!!」

 

悟飯「悟天。やる前から諦めちゃダメだぞ?」

 

悟天「やだよ!!」

 

悟飯「しょうがないなぁ……。悟天が勝ったらこの前言ってたオモチャ買ってあげようと思ったのになぁ……。悟天が嫌だって言うなら無理強いはしないけど……」

 

悟天「約束だからね!!」

 

狡賢く成長しても悟天はまだ7歳の子供。意外と単純なのだ。

 

悟天「でも兄ちゃんが相手なら手加減しないからね!」

 

未来悟飯「それでいいぞ!」

 

悟天「はぁああああッ!!!!」

 

 

ボォオオオオッ!!!!

 

 

未来悟飯「なっ!?この歳で超サイヤ人になれるのか!?」

 

未来の悟飯は16歳で初めて超サイヤ人に変身することができたが、目の前の悟天は7歳でありながら超サイヤ人にあっさりと変身した。これには10歳で超サイヤ人になった現代の悟飯も初めて見たときは驚いたのだが、注目すべきは………。

 

 

未来悟飯「………なんだ?何かおかしい?」

 

超悟天「……?」

 

未来悟飯「超サイヤ人は興奮状態になるはず…!なんで…!?」

 

そう。超サイヤ人でありながら平静を保ち続けているのだ。

 

未来悟飯「くそ…!こっちの世界にはこんな天才がいるなんて…!!はぁあッ!!」

 

 

ボォオオオオッ!!!!

 

 

超未来悟飯「最初から飛ばさないとキツいぞ…!!」

 

超悟天「あれ?兄ちゃん手加減し過ぎじゃない?」

 

悔しいことに、未来の悟飯はこれでも限界に近い力を出していた。それでも悟天には及ばないのだ。超サイヤ人の状態で平静を保てている時点で圧倒的な差があると言ってもいい。

 

 

超悟天「いくよ!!」シュン

 

 

超未来悟飯「……!!!」

 

 

超悟天「そりゃ!!」

 

 

ガッ!!

 

超未来悟飯「ぐっ…!!」

 

 

未来悟飯は悟天の動きを捉えることができなかったが、悟天の動きが単調だったこと、未来悟飯は戦闘経験が豊富だった為なんとか攻撃を受け止めることができた。

 

超未来悟飯「はっ!!」

 

 

小さい子に全力を出すのに抵抗があった未来悟飯だったが、自分より強力な気を持つとなれば話は別だ。

 

 

超悟天「よっ!」

 

悟天は小柄な体を生かして未来悟飯の攻撃をスラリと避けていく。小柄ということは、的が小さいということ。加えてすばしっこいとなると、攻撃を当てるのはかなり難しいのだ。

 

 

ドカッ!!!

 

超未来悟飯「ぐっ…!!」

 

超悟天「そりゃー!!」

 

 

ドッ!!!!!

 

超未来悟飯「ぐわっ…!!!!」

 

 

勝負は続けるまでもなく、悟天の勝利に終わった。

 

超悟天「未来の兄ちゃん、大丈夫?」

 

超未来悟飯「あ、ああ……。まさかここまでとはね…………」

 

 

実は未来悟飯にこの世界の戦士はどれほどの強さなのかを確かめたいと言われたのだ。それではということで、腕試しに現代の悟飯が選んだのが悟天であった。

 

 

未来悟飯「オレは向こうでたくさん修行をしてきた。それなのになんで………」

 

未来悟飯は超サイヤ人を解除しつつ、どうして自分の実力が伸びないのか思い悩んでいた。

 

悟飯「………」

 

悟飯は過去の出来事を思い出してみた。何故自分が強くなれたのか?

 

 

一番最初の修行……。

 

ピッコロに荒野に連れ去られて1年間みっちり稽古をつけられた。次に修行したのは、人造人間が来たと未来のトランクスに教えてもらった時、悟空とピッコロと共に修行をした。

 

そして次。精神と時の部屋で悟空と修行をした。

 

 

現代の悟飯にはあって、未来の悟飯にはないもの……………。

 

 

 

 

 

 

 

悟飯「…………師匠」

 

未来悟飯「えっ…?」

 

 

悟飯が呟いた。

 

 

悟飯「僕には本格的に修行するときは常に師匠がいました。ピッコロさんの時もあれば、お父さんの時もありました…………」

 

未来悟飯「師匠………か………」

 

 

修行によって自分の強さを伸ばす時、確かにピッコロに見てもらった方が効率が良かった。未来の悟飯はサイヤ人襲来に備えた修行以外ではろくにピッコロと修行していなかった。

 

本格的に修行を開始した時には、Z戦士は自分しかいなかった。そのため師匠となる存在どころか、自分がトランクスの師匠になる必要があった。

 

未来悟飯「そっか……。そういうことだったのか………」

 

悟天「それならベジータさんはどう?トランクス君もベジータさんに鍛えられているみたいだし!」

 

未来悟飯「トランクスが…。トランクスと悟天はどっちが強いんだい?」

 

悟天「トランクス君の方がちょっと強いかな?少し前まで僕は空も飛べなかったし」

 

未来悟飯「そ、そうなのか………」

 

この世界のトランクスは既に自分を超えていることを知り、少し悔しさを覚える悟飯。

 

悟飯「いや〜……。ベジータさんは素直に鍛えてくれるとは思えないなぁ……。ピッコロさんの方がやっぱり適任じゃないですかね?」

 

未来悟飯「ピッコロさんか……。懐かしいな……」

 

悟飯「ピッコロさんなら天界にいると思いますよ?多分こちらの状況には気付いていると思うので、一度会いに行ってみては?」

 

未来悟飯「………そうだな。そうさせてもらうよ。だが、オレがこの場にいなくなってしまっては……いや、君たちがいるなら大丈夫か……。五人を零奈さんから守ってくれ……。頼んだ」

 

悟飯「はい…!」

 

悟天「うん!任せて!」

 

 

未来の悟飯は気を頼りに天界へと移動を始めた。

 

悟天「ねえ兄ちゃん。未来の兄ちゃんを兄ちゃんが鍛えさせればよかったんじゃないの?」

 

悟飯「いや、あっちの兄ちゃんも兄ちゃんだからな。考えることは同じだよ」

 

悟天「……?」

 

悟天はイマイチ要領を得ない状況だったが、悟飯の言っている意味はこうだ。

 

自分なら、尊敬しているピッコロに鍛えてもらいたい。

 

同じ孫悟飯だからそこ分かることなのだ。例え環境が違えど、孫悟空の息子であり、ピッコロの弟子である孫悟飯には変わりないのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

上杉、中野、孫一家が同時に旅館を出発した。せっかくだからみんなで写真を撮ろうということになった。

 

 

風太郎「また来ます。あなたとの思い出を作りに……」

 

祖父「……その時は、五人の顔くらい見分けられるようになっているんだな…」

 

 

 

 

 

そんな会話をしていることは一切知らない悟飯。

 

悟飯「……あっ」

 

五つ子の祖父が近づいてくると、どうしても気まずくなってしまう。

 

祖父「…………お主の顔をどこかで見たことがあると思っていたんじゃ…。お主はあの孫悟空の息子だったのじゃな…」

 

悟飯「…!!」

 

驚くことに、五つ子の祖父は悟空の名前を知っていた。

 

悟飯「どうして、お父さんの名前を…?」

 

祖父「あれはまだわしが若い頃だった……。わしは天下一武道会を観戦するのが趣味でよくマヤリト王国に行っていたもんじゃ……」

 

天下一武道会…。悟飯にとっては馴染みのない大会だが、悟空とチチが結婚するきっかけにもなった大会だそうだ。そこでまだ悪者だったピッコロと死闘を繰り広げたり、天津飯やクリリン、餃子と壮絶な戦いをしたりしたとか……。

 

祖父「第23回だったか……。ピッコロの生まれ変わりを名乗る者が現れたが、孫悟空がその大魔王の生まれ変わりを倒したんじゃ……。わしは途中で避難してしまったから詳細は分からなかったが……」

 

この第23回天下一武道会で観戦していた者達はピッコロという存在に恐れ慄いたが、事後報告で孫悟空というものが優勝したことによって、孫悟空は大魔王を倒した英雄として一部の観客からは認識されていたのだ。

 

その観客のうちの一人が、この祖父だったというわけだ。

 

 

祖父「その前の大会でも孫悟空の活躍はよく見とった。その少年達が参加し始めたのは確か第21回だったか………。あの時の戦いは凄まじいもので、今までにない緊張感と憧れをもらったもんじゃ……。その少年達に影響されて武道を始めてみたはいいものの、世界中から集まる達人達相手にわしの独学の武道は通用しなかった………」

 

祖父はその時のことを楽しそうに生き生きと語っている。余程天下一武道会を観戦するのが好きなのだろう。

 

祖父「……話が逸れてしまったな。あの孫悟空の息子ならば、三玖を途中で捨てるようなことはしないだろうが、念の為言っておく。三玖を……孫達をお主が泣かせるようなことがあれば、わしはお主を許さん………」

 

結局は三玖との関係を誤解されたままではあった。だが、殺気のようなものは感じられなかった。

 

悟飯「………お爺さん。これ以上誤解されない為に言っておきます。僕は三玖さんとは恋仲ではありません。ただ、三玖さんが僕に好意を持ってくれていることは事実です………」

 

祖父「……そうだったか。それはすまないことをしたな……。だったらいつまでも返事を先延ばしにするようなことはするでない。三玖がお主に向けるものが真剣なものだということは、お主も理解しておるだろう?」

 

悟飯「………はい。出来るだけ早く決着をつけるつもりです。でも、中途半端な気持ちでお付き合いはしたくない…。自分自身の気持ちをはっきりさせたいんです………」

 

祖父「…………そうか。お主の気持ちがはっきりするまでに、孫達を"気"ではなく顔で見分けられるようになるんだな………」

 

悟飯「…………!!気のことまで知っていたんですか………」

 

祖父「ほれ行け。孫達が待っておるぞ」

 

悟飯「……お世話になりました!」

 

 

こうして、悟飯は五つ子の祖父に仮ではあるものの、認められることとなった。

 

悟飯は五つ子の祖父に言われたことを思い出し、できるだけ早く自分の気持ちをはっきりさせようと心に誓うと同時に、五人を絶対に守り抜こうと誓うのであった。

 

 

 

 

江端「それでは撮りますよ。はい、チーズ」

 

 

カシャ

 

 

四葉「よかったー!みんなで撮っておきたかったんだよねー!」

 

五月「この姿のままでよかったのでしょうか…?」

 

三玖「これはこれで記念だね」

 

チチ「格好まで揃えられちゃ、誰が誰だか分からねえだな………」

 

四葉「チチさんも見分けられますよ!!愛があれば!!」

 

勇也「ガハハハッ!愛で(アイ)を補うってか!!」

 

マルオ「さあ、行こうか。この辺りは滑りやすく危険だ」

 

 

風太郎「……だとしたら、俺があの時、一花だと分かったのは………」

 

らいは「お兄ちゃん!一人でブツブツ不気味に呟いてないで行くよー!!」

 

風太郎「おう。(何はともあれ、見分けたことには変わりない。フッフッフッ………)」

 

 

これでもう変装で騙されることはなさそうだと、安心するように呟いた風太郎の元に、五月の格好をしたら一人の少女が駆け足で現れた。

 

その少女は何をしたいのか。自身の顔を風太郎の顔に近づけようとしているように見えなくもないが……。

 

風太郎「いや、本当になんだよ…!」

 

風太郎はその行動のわけが分からずに困惑するが、一歩下がろうとしたその時に足を滑らせてしまい、目の前の少女は風太郎に寄りかかるような体制になっていたため、突然のように倒れそうになる。

 

風太郎は倒れまいと何かを掴もうとするが、鐘から垂れ下がっていた紐を掴む。しかし、これでは転倒を回避することはできず、ただ鐘を鳴らすだけとなってしまった。

 

 

ただ転倒するだけならよかった。だが目の前の少女が風太郎に覆い被さるように倒れた。

 

 

 

 

と同時に、誓いの鐘の音が鳴り響く中で、その少女と風太郎の唇が重なった。

 

 

風太郎「……キ…!なんで……!?」

 

 

「おーい!!」

 

「………///」ダッ‼︎

 

 

風太郎「ま、待て!」

 

 

誰かに呼ばれると、少女は顔を赤らめながらその場を後にした。

 

 

風太郎「………やっぱり誰だか分からねえ………」

 

 

風太郎はこの瞬間からあの少女を特別に感じるようになるのだが、この時の風太郎はまだそれに気付いていなかった…………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………………お前が未来のトランクスが言っていた、未来の悟飯か………」

 

「……お久しぶり……いや、初めまして、ですね………」

 

 

そして、ある場所で時空を超えた再会を果たすことになる……。

 




 五つ子の祖父が武道?柔道?に精通している理由はそれっぽくしました。お爺さんの過去は特に記述されてなかったし、まあ大丈夫やろ()

 さてさて、ここまでは計画通りなのですが、肝心のこの先が未定な模様()。しかしここで執筆の手をためてしまえば"長期"スランプに陥るのが目に見える…。ゆっくり執筆するかぁ……。てかゆっくりやらないと雑になるのでそれは作者のプライド的に許せないものがあるのです。

 もう4月デスネ〜……。時の流れが早いなぁ…。一年前のこの時期の自分は、まさかこんなハイペースで更新しているだなんて想像もついてないだろうなぁ…()
 何が起こるか分かったもんじゃないですな。ドラゴンボールと五等分の花嫁両方映画あるやん。無茶苦茶楽しみですわ。

 ところで、誰か悟飯の誕生日知らない…?5月8日は違うよね…?


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第46話 旅行帰りも油断大敵

 前回のあらすじ…。
 風太郎は見事に一花を見抜いたと同時に、一花は自身の気持ちをはっきりさせた。

 一方で、未来の悟飯と悟天が手合わせをすることになったのだが、悟天が圧勝する形で幕を閉じた。現代の悟飯と未来の悟飯の違いは、自身の潜在能力を理解して、それを引き出す師匠の有無であった。そこで、未来の悟飯はこの世界のピッコロに鍛えてもらうために天界に向かった。

 そんな中、風太郎が五月の格好をした五つ子のうちの誰かと事故とはいえ、誓いの鐘の下でキスをしてしまった。風太郎も悟飯のことが言えなくなりつつある……。



未来悟飯「この世界では初めましてですね、ピッコロさん……」

 

ピッコロ「お前、本当に悟飯なのか…?甘さが微塵も感じられない……」

 

未来悟飯「甘さなんて持っていたら生きていけない世界で生きていたものですからね。それよりもピッコロさんは気そのものが変わったように感じます……。もしかして、ピッコロさんも超サイヤ人のように覚醒できる何かが?」

 

ピッコロ「俺は人造人間を倒す為に神と融合して、元の一人のナメック星人に戻ったんだ」

 

未来悟飯「ええ!!?神様と!?じゃあ、この世界のドラゴンボールは……」

 

ピッコロ「そのことなら心配はいらん。後任の神が新たに作り出したからな」

 

ピッコロがそう言うと、神殿からもう一人のナメック星人がミスターポポと共に現れた。

 

「お久しぶりですね、悟飯さん」

 

未来悟飯「……?君は…?」

 

ピッコロ「ナメック星で会ったことがあるはずだぞ」

 

未来悟飯「ナメック星で…?あっ!もしかして……!!」

 

未来の悟飯にとっては懐かしい存在だった。このナメック星人とはナメック星人が新生ナメック星に移住して以来一度も会っていないのだから……。

 

未来悟飯「デンデなのか!?まさか君が神様になるなんてなぁ!!」

 

ピッコロ「さあ、お前がここに来た理由は既に把握している。早速お前を俺が鍛えてやる」

 

未来悟飯「……!本当ですか!?」

 

ピッコロ「ああ。今のお前はまだ鍛える余地が残っているからな。精神と時の部屋に入るぞ」

 

未来悟飯「……?精神と時の部屋…?」

 

デンデ「ご存知ありませんか?」

 

未来悟飯はデンデとピッコロから精神と時の部屋について説明を受けた。それを知った悟飯は、自分の世界でもそこにトランクスと共に修行すれば、あの五人は死なずに済んだのではないかと後悔し始めていた。

 

ピッコロ「もう過ぎたことを気にしても仕方ないだろう。さあ行くぞ」

 

ちなみにだが、精神と時の部屋はデンデが神になってしばらくしてリニューアルされた。今後セルのような事態が発生する可能性があるため、一人につき48時間という制限を取り除き、入れる最大人数を4人にまで増やした。しかし、最大4人入れるとは言っても、ベッドは2つのままだし、食料は2人で1年分しかないのだが………。

 

 

この時、未来の悟飯は久々に師匠に鍛えてもらえることに喜びを感じていた。

 

未来悟飯「ピッコロさん。よろしくお願いします!!」

 

ピッコロ「知っているだろうが、俺の修行は地獄に行った方がマシだと思うほどの過酷な修行だ。覚悟しろよ」

 

未来悟飯「勿論ですよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

悟飯は五つ子達と共に船に乗船していた。これは零奈が海上で襲来した際に逃げ場がない為である。悟飯がいなければ間違いなく四人は取り込まれる。それを防ぐために悟飯だけはここに残った。悟天とチチはしばらく島に留まるらしいが、まもなく舞空術で帰宅するところだろう。

 

風太郎「……別にここまで着いてくる必要はなかったんじゃないか?」

 

悟飯「いや、もしもここで零奈さんが来た場合は非常にまずいことになる。海の上だから逃げ場がないんだよ」

 

風太郎「………確かにな…。お前がいた方がいいわけか………」

 

二乃「にしても驚いたわ。まさかあんたが家族よりも私を優先してくれるなんてね♪」

 

一応合ってると言えば合ってるのだが、二乃のその言い方では誤解が生み出されかねない。

 

三玖「むっ…!二乃、それは違う…!悟飯は私の為に残ってくれたの!」

 

二乃「なによ三玖。珍しく積極的じゃないの?」

 

三玖「だってもう告白したもん」

 

 

「「「「「!?!?ッ」」」」」

 

 

船に乗っていた五つ子だけでなく、この三玖の言葉には、風太郎やマルオも驚いていた。

 

二乃「う、嘘…!キスしたのは知ってるけど、まさか告白までしてたなんて…!!」

 

悟飯「わーっ!!二乃さん!!それ以上は……!!!!!」

 

五月「えええッ!?どどど、どういうことですか三玖ッ!?」

 

三玖「私は五月と同じ土俵に立っただけ。これで後は二乃だけだね」

 

二乃「何言ってんのよ。私だってもう済ませたわよ」

 

三玖「むっ…!やっぱり二乃は危険…!」

 

五月「な、ななな、なにを言ってるんですか!!!私なんか、そそ、孫君と一夜を共にしたことだってあるんですよッ!!!」

 

風太郎「………悟飯、お前……」

 

悟飯「それ以上言わないで…。言いたいことは分かってるから………」

 

悟飯は船に同乗したことを激しく後悔した。何故ならこの船には、五つ子の父親であるマルオも乗っているのだから、その事実を聞かれてしまっては、信用の問題が出てきてしまう。

 

しかも、3人はマウントを取る為に爆弾発言をマシンガンのように放ちまくる。最早3人とも愛の暴走機関車認定されてもおかしくない。

 

風太郎「………」

 

 

 

だが!!

 

風太郎も他人事ではなかった!!風太郎も出発直前に五月の格好をした五つ子の誰かに、事故とはいえキスを仕掛けられたのである!!

 

四葉「あ、あはは……。なんか凄い修羅場になりそう」

 

一花「そ、そうだね〜………」

 

風太郎にキスを仕掛けた者は、恐らく今言い争っている3人ではない。となると、四葉か一花の2択になるわけだが……

 

風太郎「……(何アホなこと考えてんだ俺は……)」

 

風太郎は羞恥に身を悶えそうになったので考えるのをやめた。

 

勇也「おうおう?なんだ悟飯君?見た目に反してプレイボーイなのか?ガハハハッ!!やるじゃねえか!!風太郎も見習えよ!!」

 

風太郎「見習いたくねえよ!!」

 

悟飯「………誰か僕を殺してください」

 

 

「「「それはダメッ!!!!」」」

 

 

先程言い争っていた3人が、今度は一致団結して悟飯に自○の制止を促す。当然半分冗談で言ったのだが、五つ子にとっては冗談でも嫌だったようで……。

 

二乃「なんで私という可愛い女の子に迫られて死にたいなんて言うのよ!!この親不孝者!!」

 

三玖「もう悟飯無しだと生きていけない…。悟飯が死ぬなら私も……」

 

悟飯「冗談だからッ!!本気にしないでッ!!!!」

 

五月「冗談でも言っていいことと悪いことがあります!!身の程を弁えて下さいッ!!!!」

 

悟飯「はい………」

 

3人に尽く説教される悟飯を見て……。

 

 

らいは「孫さん、将来は絶対奥さんに尻を敷かれる旦那さんになるね……」

 

勇也「ガハハハッ!!青春してんじゃねえか!!」

 

 

四葉「………愛が重いと感じたのは私だけ?」

 

一花「大丈夫。私もだから……」

 

 

そんなノホホン?とした雰囲気の中で…。

 

 

ゴゴゴゴゴゴゴゴッ………

 

マルオ「………………」

 

 

ただ1人、無茶苦茶シリアスなオーラを出している者がいた……。

 

勇也「あちゃー…。やっぱああなったか……」

 

 

マルオ「これはどういうことかな孫君?先程聞いた話によれば、娘に手を出したそうだが……?」

 

悟飯「あ、あはは………」

 

悟飯の口からは最早乾いた笑い声しか発することができない。何故なら付き合ってもいない女の子3人とキスをしてしまったのだから。しかも相手は雇い主の娘。

 

 

悟飯、(社会的に)絶体絶命のピンチ!!

 

 

マルオ「まさか君が娘に手を出すとは思わなかったよ……。これは早急に手を打つ必要がありそうだね」

 

風太郎「ま、待って下さい!!悟飯をやめさせたら、今の家庭教師は………」

 

マルオ「やむを得ん。上杉君を家庭教師として復帰させよう。そして孫君は解雇……」

 

 

「「「はっ…?」」」

 

 

なんと、3人からマルオに対してとんでもない殺気が放たれる。それに流石のマルオを一瞬怯んでしまう。

 

二乃「ハー君をやめさせる?悪い冗談はやめなさいよ?そんなことしたら問答無用で縁を切るわよ?」

 

三玖「悟飯をやめさせた瞬間に私は[ピー(自主規制)]するからね?」

 

五月「私は毎日孫君の家に通い詰めてそこで勉強を教えてもらいます」

 

 

マルオの悟飯解雇発言によって事態は急変。二乃はマルオとの縁を切ると言うし、三玖は色々な意味で危険だし、五月に至っては本末転倒。そこでナニをしでかすかも分からないような状態。

 

反論しようとしたマルオだったが、確信してしまう。今のこの娘達は、やると言ったら絶対に実行する!!そんな絶対の意思を感じた。100年以上の絶望のループさえも打ち砕くほどに強い意思を感じたのだ。

 

ちなみに、3人とも目のハイライトは『どこ行くねーん!?』状態である。

 

 

マルオ「ははは……。何を言うかい…。冗談だよ…………」

 

マルオは確信した。最早恋ではなく、愛の領域に達していると……。少々歪んでないか心配ではあるが………。

 

勇也「マルオを折らすなんて、やるじゃねえか………」

 

明るく取り繕っている勇也も若干ながら引いてしまっている。

 

風太郎「……(こいつら怖え…!!)」

 

風太郎はかなり恐怖を感じた。まあ無理はないだろう。

 

四葉「みんな孫さんが大好きなんだね!!」

 

純粋な四葉はただ悟飯が大好きなんだなぁと認識しただけ。

 

一花「……(私はああならないように気をつけよう………)」

 

一花は自分は絶対にああならないようにしようと決意するのであった……。

 

 

らいは「えっ?これラブコメだよね?昼ドラじゃないんだよね?」

 

おっと、あまりの展開にらいはがメタ発言をしてしまっているぞ!!

 

 

勇也「マルオ。あれは諦めた方がいいぜ。危険を顧みずに駆け落ちするパターンだ。それに悟飯君の何が悪いんだよ?お前の面倒くさい部分を綺麗に取り除いた感じで丁度いいじゃねえかよ?」

 

マルオ「し、しかしだな……」

 

 

マルオは親としても雇用主としても複雑な思いをしていた。悟飯は圧倒的な力を持ちながらも善行にしかその力を使わなかった。そんな子なら娘を任せてもいいかと思った一方、いざそうなるとどうしても父親として思うところがあったのだ。

 

 

しかし、マルオはこの恋愛事情に干渉する権利がない………いや、その権利は三人から剥奪されたのだ。最早何を言っても無駄であるのだ……。

 

 

 

マルオは妥協に妥協を重ねて、出した答えが………。

 

マルオ「………孫君。娘とは節度のある健全な付き合いを頼む…」

 

悟飯「あはは…………」

 

マルオも悟飯から娘に手を出したとは考えてはいない。娘から手を出したのだと分かっていても、悟飯も年頃の男であるため、何をきっかけに誤ちを犯してしまうか分からないのである。

 

そのような心配は父親としては当然のことだろう……。

 

悟飯「僕もそれを望んでいるんですけどね…………」

 

悟飯の呟きによって確信した。悟飯は娘達に振り回されているのだと。

 

マルオ「………せめて、誤ちを犯さないように最大限努力してくれ……。これは父親としてのお願いだ……」

 

悟飯「分かりました………」

 

悟飯とマルオの間に気まずい空気が流れ始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…………なんだあれは?

 

娘が………。二乃、三玖、五月が孫君にべったりだ。彼女達は私という母親という存在が必要だったのではないか?私が彼女達を導かなければならないのではなかったのか……?

 

それがどうだ。娘達は幸せそうにしているではないか。私のことなんて最早忘れてしまったかのように。

 

未来の世界ではこんな娘達の顔は見たことなどない。

 

………何故か羨ましい。これほどまでに誰かを恨んだのは初めてかもしれない。私はこの世界の孫君に激しい憎悪というべきか、嫉妬というべきか、そんな感情が私を支配した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

人造人間さえ現れなければ、私だって!!!!

 

 

 

 

 

悟飯「……!!!!」

 

バシンッ!!

 

「「「「!?!?」」」」

 

 

勇也「な、なんだ今のは!?」

 

らいは「孫さん何したの!?」

 

突然飛来してきた光の玉を悟飯が弾いた。その光景は五つ子と風太郎は多少ではあるが見慣れていた。しかし、初めて眼前でその様子を見た勇也とらいはは動揺を隠せずにいる。

 

無論、マルオも表向きは冷静を保っているが、実際には突然のことに少々混乱している。

 

 

勇也「あ、ありゃあ先生か!?いや、そんなはずは………」

 

マルオ「………彼は本当に未来の孫君だったのか……。本当に零奈さんは………」

 

らいは「ええ!?あの人空を飛んでるけど、お父さんの知り合い!?」

 

 

零奈「許さない…!娘を返せ…!私の、私の娘をッ…!!!」

 

 

五月「ヒッ…!!」

 

今の零奈の顔はとても人に見せられるようなものではなかった。その証拠として、母親のことが特に大好きであった五月がその母親相手に怯えているのだ。いや、怯えているどころの話ではない。恐怖を感じたのだ。

 

五月でこの反応なのだ。他の姉妹の反応は記述するまでもない。

 

悟飯「返せもなにも、娘さんはあなたのものではない…。それにあなたは偽物だ…」

 

零奈「偽物なはずがあるものですか…!私は五月の努力によってこうして現世に蘇ることができた…!!過去の世界で娘達を保護して、あとは永久に六人で………」

 

勇也「………マルオ」

 

マルオ「……ああ。あれは零奈さんではない。零奈さんの形をした何者かだ」

 

勇也やマルオも零奈本人ではないことはなんとなく勘づいたようだ。

 

 

零奈「………人造人間以外はこの手にはかけないと誓っていましたが、私から娘を奪う孫君を許すわけにはいかない…!!」

 

悟飯「……(どうやらどこかで地雷を踏んじゃったみたいだな……。ここはいきなり飛ばさないとまずいかもしれない……)」

 

 

そう判断した悟飯は、超サイヤ人に変身するべく、ゆっくりと空中に浮かび上がり、それと同時に気を高めていく。

 

 

悟飯が気を高めていけばいくほどに、海の波が強くなる。地表にいないため分かりづらいが、地面もかなり揺れている。

 

悟飯「はぁぁああああああ……!!!」

 

らいは「ええ!?孫さんが飛んでいるよ!?どど、どういうこと!?」

 

勇也「………まさか…!」

 

 

ボォオオオオッ!!!!!

 

 

超悟飯「………」

 

やがて悟飯から発せられる光が強くなり、悟飯の髪が金髪に変化し、瞳はエメラルドグリーンに変化する。

 

悟飯の周りからは金色の炎のようなオーラも出現し、そこにいるだけで相手を怯ませることができるほどの威圧感を放っていた。

 

零奈「……!!そこまで気を高めることができるとは……!!」

 

超悟飯「あんたを破壊するとまではいかないが、あんたを無力化するためにこちらも全力を尽くす」

 

今の零奈の戦闘力は、第二形態のセル程度である。その程度であれば、超サイヤ人2にならずとも零奈を撃破することは容易い。しかし、悟飯の目的は取り込まれた未来の五月の救出もある。零奈を早々に破壊してしまっては、未来の五月ごと殺してしまう恐れがあるのだ。

 

勇也「やっぱり…!!セルゲームに参加してた弁当売りの少年ってのは…!!」

 

らいは「えっ…?じゃあ孫さんって……」

 

 

超悟飯「……ここはあの人達が危険だ。場所を変えさせてもらうぞ……。ハッッ!!!!!!」

 

 

ドンッッッ!!!!!

 

 

零奈「くっ…!!」

 

 

超悟飯「……」ドシューン‼︎

 

 

悟飯は気合で零奈を押し出すと、押し出された零奈を全速力で追いかけた。

 

 

勇也「……風太郎。とんでもない大物と友達になったもんだな……」

 

風太郎「ああ。俺の自慢の親友だ」

 

勇也「お前、まさか…」

 

風太郎「ああ。知ったのはつい最近だけどな……。黙ってて悪かった」

 

勇也「……いや、気にするな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

超悟飯「ここなら存分に戦えるぞ」

 

零奈「……」

 

超悟飯「あんたは五月さんの他に4人を吸収することによって完全体へとなる。違うか?」

 

零奈「……何故そのことまで知っているんです?」

 

超悟飯「ただの考察だ。未来の僕からあんたの誕生の経緯を聞いてな……」

 

零奈「……そうです。私は5人の娘を取り込むことによって、初めて私がこの世に帰ってきた意味が成し得るのです。それが私が幼い娘を残し、守り切れずに殺されてしまったあの世界の娘達へと罪滅ぼしなのです……」

 

言ってることは筋が通ってるように見えて、関連性がない。未来で娘が死んだからといって、この時代の娘の人生を奪っていい理由にはならない。

 

超悟飯「未来であの四人が死んでしまったことは本当に気の毒だと思う。だが、この世界の彼女達には関係のないことだ」

 

零奈「それでも私の娘であることには変わりありません」

 

 

ピカァッ!!!!

 

 

超悟飯「なっ…!!!?」

 

零奈は予備動作なしで太陽拳を放った。これによって悟飯は一時的に視力を失うことになってしまう。

 

零奈「今のうちに………」

 

 

シュン

 

 

超悟飯「無駄だ……」

 

零奈「……!!」

 

五つ子の元に向かおうとした零奈の前に悟飯が現れた。悟飯は相手を目だけでなく気で追うこともできる。ここが地上ならば零奈が極限まで気を抑えて移動すれば良かったのだが、ここは海上で空を飛ぶ必要がある。そのため、視力を奪っても意味を成さないのである。

 

ちなみにだが、零奈はセルのようなバイオロイドタイプの人造人間であり、17号や18号とは違って気を感じ取ることは可能である。

 

超悟飯「太陽拳で目潰しされるとは…。油断したが、この付近に陸がなくて幸運だった………」

 

零奈「くっ…!なら…!!」

 

 

ピコッ

 

 

超悟飯「!?ッ」

 

悟飯は突然何かに縛り付けられるような感覚に襲われる。

 

零奈「今のうちに……!」バシューン‼︎

 

零奈が五つ子に向けて発進したため、悟飯も後を追おうとするが……。

 

 

超悟飯「……!!動けない…!?」

 

悟飯は金縛りにあって動けなくなっている。あの零奈は過去の戦士達の戦闘データがインプットされており、戦士の技を使用することが可能であった。故に、餃子の技も使用可能であるということだった。

 

超悟飯「……なら…!!」

 

悟飯は金縛りを突破する為にさらに気を高めていく。いくら気とは根本的に違う超能力と言えど、圧倒的なパワーの前には無力になるのだ。

 

超悟飯「はぁあああああッッ!!!!」

 

 

ボォオオオオッ!!!!!

 

 

悟飯が超サイヤ人2に変身すると、先程の縛られる感覚が綺麗さっぱりなくなった。無事に金縛りを解くことに成功したのである。

 

超2悟飯「さて、急がなければ…!」

 

 

ドシューンッ!!!

 

 

悟飯は五つ子を守り抜く為に、力強く発進した。

 

 

 

 

 

 

 

零奈「……さて、邪魔者がいなくなったことですし、娘の保護を……」

 

零奈は一瞬にして五つ子が乗る船に辿り着いた。零奈の目前にいる五つ子はまるで親に子食いされる寸前のハムスターのように恐怖に震えていた。

 

零奈「さあ娘達……。私がいるからにはもう大丈夫です。早くこっちに……」

 

二乃「お断りよ!!偽者なんかに着いて行くものですか!!」

 

零奈「……私はそんな風に育てた覚えはないのですが……」

 

二乃「当たり前でしょ!!あんたは偽者なんだから!!」

 

二乃は完全に踏ん切りがついたようで、目の前の零奈を偽者として拒絶している。

 

零奈「……ならば、少々手荒になってしまいますが……」

 

 

 

ドンッッッ!!!!!

 

 

零奈「うっ……!!!!」

 

二乃に手を伸ばした零奈が突如として吹き飛ばされるように船から投げ出された。無論、それをやったのは、二乃が白馬の王子様とする人物……。

 

 

二乃「ハー君っ!!」

 

超2悟飯「危なかった………」

 

 

孫悟飯であった。

 

零奈「な、なぜ金縛りが…!?それにその気は…!!!!」

 

超2悟飯「圧倒的で純粋なパワーに勝るものはない。超能力も圧倒的なパワーの前には無力になるんだ」

 

さらに悟飯は零奈を吹き飛ばしただけではなかった。零奈の懐からタイムマシンが収納されているカプセルを奪い取ることに成功したのだ。

 

零奈「……これではあまりにも状況が悪すぎる……。撤退するしか……」

 

超2悟飯「逃すか。破壊しないにしても、ここで無力化する…!!」

 

実際、今の悟飯から零奈は逃亡することなど不可能である。今の悟飯は文字通り"光速"で動くことが可能であり、零奈がどれだけ全速力で逃げようが、一瞬にして悟飯に追いつかれるのだ。

 

太陽拳をやっても気で追われるから無駄だ。そしてここは海上なので気を抑えて移動することも不可能。零奈にとってはまさに絶対絶命だった。

 

 

 

 

ォォォォオオ……

 

 

超2悟飯「……!!なんだこの気は…!!」

 

零奈「…!?」

 

 

 

悟飯も零奈も宇宙から突然来訪した謎の気に気を取られていた。零奈はすぐに持ち直し、今がチャンスだと言わんばかりに行動を起こした。

 

零奈「……(何者だか分かりませんが……)太陽拳ッ!!!」

 

 

 

ピカァッ!!!!

 

 

 

超2悟飯「なっ…!!!」

 

 

二乃「きゃっ!!」

 

三玖「ま、眩しい…!!!!」

 

 

零奈は再び太陽拳を繰り出して、悟飯の目潰しをする。何故通用しない手をもう一度使用したのか、悟飯にとっては意味不明であった。

 

 

 

ドンッッッ!!!!

 

 

 

超2悟飯「……!?」

 

 

何かが何かに当たるような音がした。それと同時に零奈の気配が綺麗さっぱり消えたのである。

 

 

超2悟飯「な、なんだ…!!?どういうことだ!?!?」

 

 

悟飯達には全く見えなかったが、零奈は飛来してきた宇宙船にわざとぶつかった。そしてその宇宙船にしがみ付くことによって、気配を消しつつ高速で逃亡することを実現したのである。

 

 

これには流石の悟飯も一本取られた。

 

 

悟飯の視力が回復する頃には、零奈の姿はどこにも確認することはできなかった。気で探ろうとするが、これまた見つけることが不可能だった。

 

 

超2悟飯「あの状況でどうやって逃げたんだ…!?まさか、あの宇宙船に乗っていた奴らとグルだったのか…!?」

 

しかし、悟飯は零奈の行方を追う前に確認すべきことがあった。

 

超2悟飯「そ、そうだ!!五人は!!」

 

 

悟飯は高速で着地し、五つ子の安否を確認する。

 

二乃「眩しかった……。一体何だったのよ……」

 

三玖「ビックリした……」

 

一花「目が焼けたかと思ったよ……」

 

五月「目が痛い気がします……」

 

四葉「まだ目があけられましぇ〜ん!!」

 

 

どうやら無事だったようだ。

 

 

 

シュイン…

 

悟飯「よかった……。無事だった……」

 

悟飯は五人の無事を確認すると超サイヤ人を解除し、元の黒髪に戻った。

 

勇也「……ありゃどういうことなんだ…?」

 

らいは「どど、どういうことなの!?孫さんって……」

 

悟飯はこれ以上隠しても仕方がないと判断し、らいはと勇也にも自身の正体について話し、あの零奈の正体についても話をした。

 

らいは「えっ…!?お兄ちゃんそんな人と友達だったのッ!?なんかすごい!!」

 

勇也「……五月ちゃんが先生を蘇らせた…?未来の世界?別の世界…?ダメだ。頭がこんがらがってきた…」

 

零奈のことを知らないらいはは悟飯がセルゲームの"弁当売りの少年"だと分かると驚嘆し、零奈のことをよく知る勇也はあの零奈の正体を聞いても理解できていない様子だ。

 

むしろ五つ子や風太郎の理解が良すぎただけである。これは前から悟飯の正体を知っており、悟飯が常識では語れない存在であると理解しているからこそなのだが……。

 

風太郎「でもまた逃しちまったんだよな…?どうするんだ?」

 

悟飯「……気で追おうにもどうしようもない。どこかに隠れちゃったみたいなんだよ。でも………」

 

悟飯は風太郎にカプセルを見せる。

 

風太郎「……なんだこれは?」

 

悟飯「多分、あの人造人間が乗ってきたタイムマシンが入っているカプセルだよ」

 

風太郎「……まさか、未来に行って設計図を手に入れて、弱点を見つけようと…?」

 

悟飯「……というよりは、取り込まれた未来の五月さんを救い出す方法を見つけ出したいんだ」

 

しかし、悟飯はタイムマシンの操縦の仕方を知らなかった。唯一知っている可能性がある人物は未来の自分なのだが、帰ってくるまでに最低でもあと1日はかかるだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、船は何事もなく進み、本州に無事到着した。途中でマルオは家に帰るように説得するも、当然の如く五つ子は受け入れなかった。上杉一家とも別れ、悟飯と五つ子だけになった時のことであった。

 

一花「タイムマシンを盗めたなら、あとは未来に行けば解決なんじゃないの?」

 

悟飯「それがそんな簡単な話じゃないんだよ。タイムマシンにも燃料が必要みたいで、未来に行ったら次はいつ戻って来れるか分からないんだ……」

 

二乃「世の中そんなに甘くないってわけね………」

 

悟飯「そもそも僕はタイムマシンの動かし方を知らないから、未来の僕を待つ必要があるんだ」

 

三玖「そうなんだ……。じゃあ、それまで私達は危険ってこと……?」

 

零奈には既に五つ子の気を覚えられているだろう。悟飯が離れてしまえば、チャンスと言わんばかりに四人を取り込むに違いない。そのリスクを回避する為には………。

 

五月「じゃあ孫君が家に泊まれば問題ありませんね!」

 

悟飯「えっ……?」

 

三玖「なな、何を言ってるの…!?」

 

二乃「何今更恥ずかしがってんのよ。前にも何度か泊めたことあったでしょ」

 

一花「そうだね。それがいいんじゃない?」

 

四葉「私もそれでいいと思います!」

 

悟飯「……(確かに、今の状況で僕が離れるのはとてもまずい……)分かった。お母さんに伝えておかないと……」

 

 

「「「やった……」」」

 

 

一花「わあ……。妹達がどんどん策士になっていく気がする……」

 

四葉「………大丈夫かな…?」

 

 

別の意味で心配をする一花と四葉であった。

 

仮に未来に行けたとして、未来の五月を助ける手立てを見つけることはできるのだろうか……?

 




 時間かけてるのに低クオリティでスマソ。

 なんか勢いだけで書いてて気付いたけど、悟飯2回も太陽拳くらってるのテラワロス。太陽拳ってサングラスでもかけてないと回避むずそうだよな。ほぼ予備動作なくても使えるんだもん。

 ちなみに人造人間零奈のキャラが度々変わってるように見受けられると思いますが、これは私がキャラ設定を決め損ねているわけではありません。

 取り敢えずタイムマシンを盗み出す展開までは計画通りといえば計画通りなのだが……。さーてここからどうしようかなぁ……()
 ゆっくり考えるとしますかぁ…。


 最近思うこと。ザマスの人類絶滅計画は神から見たら案外正常な計画かも知れない…。あくまでも神から見た場合の話なので、主観が人間となると話は別だけど。

 いや、やっぱり絶滅は流石に過剰だわ()。でも最近はザマスの考えに共感し始めている…。そんな人いない?流石にいないかぁ………疲れてるのかな()

…誤字脱字あったらよろしくお願いします(他力本願)


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第47話 混沌

 未来の悟飯はピッコロと再会し、改良された精神と時の部屋で修行をすることになった。

 一方で、現代の悟飯は五つ子の海上の帰宅に同行することになった。これは海上で零奈が現れたら逃げ場がないことを懸念したためなのだが、案の定零奈が現れた。悟飯は零奈の懐からタイムマシンを奪い取ることに成功し、未来に行って設計図を見つけ出し、そこから未来の五月を救い出せる可能性が見えてきたのであった………。

 しかし、五つ子に危険が及んでいることには変わりがないので、悟飯は五つ子の住んでいるアパートに泊まることになったのであった。

 この事実を知れば、マルオは一体どう思うのであろうか…。目的が護衛ということもあってかなり複雑な心境になることは間違いないだろう……。

 そして、突然飛来した謎の宇宙船の正体は、一体……?



カァァ…

 

宇宙船の扉が開く。そこから出現したのは、またしても戦闘服を装着し、尻尾を生やした戦闘民族、サイヤ人であった。そのサイヤ人が地球に来た目的とは……?

 

「……どこにいるんだ、バーダック…」

 

「あいつはスカウターをぶっ壊したはしいからな。こちらからの追跡は不可能だ」

 

「全く…。面倒だねぇ………」

 

「そんなことより俺は腹が減ったぜ。何か食わねえか?」

 

「テメェは相変わらずだな」

 

 

四人のサイヤ人が、地球の大地に足を着いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バーダック「……!!」

 

ギネ「……?どうしたんだい、バーダック?」

 

 

バーダックも地獄での鍛錬によって、気を感じ取ることができるようになっていた。その為、サイヤ人四人組の気配にも気付いていたのだ。

 

バーダック「こいつら………」

 

ギネ「も、もしかして、ターレスから誰かしら派遣されてきたのい!?」

 

バーダック「……かもしれねぇな。行ってみるとするか………」

 

ギネ「えっ…?バーダック…?」

 

バーダック「待ってろ。すぐに片付けてやるからよ」

 

ドシューン!!

 

バーダックはターレスから派遣されたと思われるサイヤ人を撃退するべく、飛び立っていった。

 

しかし、バーダックの顔は何故か戦いに行く時の顔とはまた別のものであった。まるで……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

人造人間零奈は、宇宙船が着地する直前に宇宙船から離れ、その後は地面を走ることによって悟飯の追跡から逃れていた。

 

 

 

 

 

 

零奈「…………」

 

私は五月に必要とされて現世に舞い戻ったとされている。されているというのは、実を言うと私の記憶がないのだ。生前の記憶というものがない。ただ五月から教えてもらっただけの知識。私の娘は五つ子で、私は五人に平等に愛情を注いで育ててきたと。

 

私の娘は人造人間17号と18号によって殺された。だからそいつらを殺さねばならないと五月が言った。だから私は娘の要求に応える形でその二体を撃退した。

 

その後は、五月の要望に応える形で五人一緒になるために過去に飛んだ。今にも死にかけの五月を私の中に取り込むことによって、擬似的に延命させている。

 

五月はこう言っていたはずだ。娘には母親が必要。代わりではない、本物の母親が………。

 

だが、実際はどうだ?私がいなくても彼女達は幸せそうだった。むしろ私が目の前に現れた時、彼女達は私を拒絶した。

 

………本当に、私は必要な存在なのか…?もし不要ならば、私が生まれてきた意味はなんだ……?

 

『何を悩んでいるのですか』

 

……!!

 

『あなたは母親でしょう?娘を守ることは当然のこと……。それを何故疑問視するのです?』

 

しかし、孫君が言っていた…。私は偽物であると。そして、私に娘を拘束する権利などないとも………。私が娘を取り込むことは、本当に娘達のためになるのでしょうか……?

 

『何を言っているのですか?私達は五人揃って初めて完璧な存在となるんですよ。昔、彼に言われました。お前らは5分の1人前だと…。ならば、1人前になる為には五人が1つになる必要がある……そうでしょう?』

 

 

ですが、一人一人の人生が………。

 

 

『なんのためにあなたが生まれたと思っているんですか?人造人間をただ破壊するだけじゃない。二度と同じ誤ちが繰り返されないようにするのが"私達"の使命……。ならば、その第一歩として、私達が完璧な存在となって、圧倒的な力を得なければならない。そうしなければ、また人造人間のような愚かな敵が現れる』

 

 

……私には、あなたの言っていることが理解できません。

 

 

『何も分かっていませんね。世界を支配する為には、圧倒的な力が必要だということですよ。私達が世界を支配すれば、もう悲しむ人がいなくなる……。戦争だって無くすことができる。無益な争いもなくせる……。私達が世界の頂点に立てば、そんな世界を造り出すこともできるんですよ……?』

 

 

………私が完璧な存在になれば、もう無益な争いは不要になるのですか…?本当に……?

 

 

『ええ。ですから、まずは力をつけましょう…。残りの四人をなんとしてでもこちらに引き込むんです。なーに。最初は彼女達は抵抗するでしょうが、きっと分かってくれますよ。なんせ、私と彼女達は………………』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

()()()なんですから……………』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

スタッ

 

バーダック「……このあたりのはずなんだが…………」

 

 

 

バーダックは気を感じ取った場所に着いたのだが、扉が開いた宇宙船4機しか確認することができない。だが、それはあくまでも目視の場合の話である。

 

 

バーダック「おいてめぇら。そこに隠れてるのは分かってんだよ。出てきやがれ」

 

 

 

「「「「………」」」」

 

 

バーダックに既にバレていたことが発覚すると、四人のサイヤ人は大人しく木陰から出てきた。

 

バーダック「………お前らもターレス側か?」

 

「……!!」ドシューン‼︎

 

 

バーダック「……!!」

 

 

バーダックの質問を無視して1人のサイヤ人がバーダックに向かってくる。

 

 

バーダック「馬鹿か」

 

 

ドカッッ!!!!

 

 

「がっ……!!!」バキッ

 

 

バーダックがサイヤ人に向かって肘打ちをした際に、スカウターにも命中したらしく、スカウターが破損してしまうが、バーダックはそんなことをお構いなしに戦闘を続ける。

 

バーダック「なんだ?この程度か?かかってこいよ。全員一斉にな……」

 

 

「「「……だぁあああ!!!」」」

 

 

残りのサイヤ人が結集してバーダックに挑む。しかし………。

 

 

バーダック「……」

 

 

ドコッッ!!!!

 

 

バーダックは無言で残りの三人も見事に撃退する。またしても器用にスカウターを破壊した。

 

 

バーダック「…………さて、もう茶番はお終いにしようぜ、()()()

 

 

……バーダックは親友の名を口にした。

 

 

トーマ「……全く。お前、どれだけ強くなれば気が済むんだ…?」

 

バーダック「テメェがサボってるだけだろ。セリパ、お前も地獄で怠けてたんじゃねえか?」

 

バーダックは女サイヤ人をセリパと呼んだ。

 

セリパ「チッ……。あんたも同じ下級戦士のはずなのに、一体どこで差が出たもんかね………」

 

「ちくしょー!食い物食ってればもう少しはマシな戦いができたと思ったんだがなぁ………」

 

バーダック「一度死んでも大食漢は治らねえみてえだな、トテッポ」

 

禿頭で額に三本傷のある大男はトテッポ。

 

「相変わらずみてえだな。バーダック」

 

バーダック「お前も少しは痩せたらどうだ?パンブーキン」

 

おかっぱ頭で髭面の太った男をパンブーキンと呼んだ。

 

 

そう。先程地球に飛来したのは、かつてフリーザ軍に所属していた時に、バーダックと共にチームを組んでいた者達であった。

 

トーマ「それにしてもバーダック。よく俺の狙いが分かったな……」

 

バーダック「たりめえだろ。俺とお前の仲だろうが」

 

バーダックが現在の住居から飛び立つ時の謎の笑顔の正体はこれであった。殺されてしまった仲間や親友に再会できると思うと、喜びを隠すことができなかったのだろう。

 

 

セリパ「だけど、これで私達はバーダックに始末されたって向こう側は勘違いしているだろうね」

 

パンブーキン「だがよ。それなら俺達がバーダックを倒したことにした方がよかったんじゃねえか?」

 

トーマ「馬鹿野郎。バーダックの戦闘力も俺たちの戦闘力も把握されているのに俺達がすんなりと勝ってみろ。明らかに怪しまれるだろうが」

 

パンブーキン「言われてみればそうだな……」

 

バーダック「……さて、再びチームを結成する時が来たようだな……」

 

こうして、バーダック率いる反ターレス勢力が結成された。トーマ達も元々ターレスのやり方には思うところがあったのだ。そこでバーダックが離反し、ギネを人質にする計画が持ち上がった時に、トーマが立候補したのだ。そうして、トーマ達はギネを捕らえるスパイとして、地球に派遣されたのだが、バーダックに合流するための建前でしかなかった。

 

セリパ「………別にここで住むのは構わないんだけどさ、住処はどうするのさ?」

 

バーダック「それなら俺とギネがいいところを確保してある。着いてくるといいさ」

 

パンブーキン「あん?いいのかよ?お前らの愛の巣にお邪魔しちまってよ」

 

バーダック「寝言は寝てから言え」

 

トテッポ「そんなことよりも何か食わせてくれ。腹が減って仕方ねえ」

 

 

バーダック率いるバーダックチームは、自分達の家に帰宅するのであった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

悟飯は五つ子宅にお邪魔……というよりもお泊まりに来たのだが、ここにきて問題が発生した。

 

一花「そういえば、悟飯君が寝るスペースなくない…?」

 

前の家のように広いベッドもなければ、広い部屋もない。その為、悟飯の寝床が確保できないという難点があった。

 

五月「で、でしたら私と寝ましょう!私達は一緒に寝たことがあるのですから、何も問題ありませんね!むしろ世界中から推奨されるべき行為です!!」

 

三玖「むっ…!!それなら私も同じ…!私だって悟飯と一緒に寝たことあるもん…!!」

 

これは悟飯が初めて五つ子宅(Pentagon)に泊まりに来た時、悟飯が三玖のベッドを使わせてもらっていた時のことである。三玖は寝ぼけて自室に戻ってしまい、結果として悟飯に添い寝する形になったのだ。

 

二乃「はっ!?なにそれ!?だったら私が一緒に寝るべきよね?だって私は一度も一緒に寝たことないのよ?」

 

五月「だめです!!二乃は孫君に何かしら手を出しそうですし!!」

 

二乃「あんた自分のこと棚に上げてるんじゃないわよ」

 

一花「あっ、そういえば悟飯君を襲ったって前聞いたけど、結局五月ちゃんは何をしたのかなー?」

 

五月「なっ…!?」

 

三玖「……なら尚更五月と二乃はダメ。それなら私が一緒に寝れば問題ない」

 

二乃「却下よ却下!!」

 

四葉「三人とも!一旦落ち着いて!!」

 

三玖「そうだ。四葉と一花に決めてもらおうよ」

 

二乃「……そうね。こいつに対してなんとも思ってないこの2人に決めてもらうのが妥当かしら」

 

五月「そうですね。このまま三人で話していても埒があきません」

 

一花「私達に振ってきたか〜……」

 

四葉「わ、私が決めるの……?」

 

悟飯「あの〜……一ついいかな?」

 

二乃「なに?私と寝たいならそうすればいいわ。私は大歓迎よ」

 

三玖「私も大歓迎。むしろ来て欲しい」

 

五月「孫君は勿論私ですよね!?」

 

悟飯「えーっと……、いや、僕は別に布団なくても寝れるからリビングで寝るよ?」

 

一花「……!」

 

そう。こうすることによってある意味平等になるのだ。誰か1人が悟飯と一緒に寝てしまっては他の2人が不満を持つことは間違いない。ならば、悟飯が別の場所に寝るべきなのである。

 

 

………というか、付き合ってもいない年頃の男女が同じ布団どころか、同じ家で寝ることが異常なのだが、そこには目を瞑っておこう。

 

一花「悟飯君がいいならそれでも……」

 

四葉「それはいけません!!お客さんにそんな粗末な扱いはできません!!」

 

ここで四葉のお人好しが発生したことによって振り出しに戻った。

 

 

 

それにより、悟飯は誰の一緒に寝るかという内容の五つ子会議が開催されたのだが、一向に決まる気配がない…。主に三人が自分の主張を譲らないため話が全く進まないのだ。

 

 

「「「ぎゃーぎゃーぎゃー!!」」」

 

 

四葉「ど、どうしよう…!話が全然進まないよ…!どうする一花?」

 

一花「……zzzz」

 

四葉「寝てるッ!!?」

 

一花は長期化する会議に耐えきれずに夢の中に意識を落としてしまった。ちなみに六人とも入浴は済ませている。

 

四葉「うーん?うーん……。うーん……!」

 

悟飯「あの、四葉さん……。僕は本当に布団がなくても寝れるから……」

 

四葉「それはいけません!健康に悪すぎます!!」

 

四葉がお人好しな為、悟飯の提案が中々受け入れられないため、会議は更に長期化し、日をまたごうとした時のこと……。

 

二乃「どうやら絶対に譲る気がないようね……」

 

三玖「だったら、ここは恨みっこなしの……」

 

五月「ジャンケンで決めるのが妥当でしょう」

 

呆れるくらい時間をかけた末、じゃんけんで決めることになった。何故もっと早くそれで決めようとしなかったのだろうか…?

 

悟飯「あの……だから僕は………」

 

悟飯の意見は最初から最後まで聞き入れてもらうことはなかった……。

 

ちなみに、新たに悟飯が自費で寝袋を買うことを提案し、四葉からの賛成意見を得たのだが、主に三人から却下された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜寝室にて……〜

 

 

一花「……zzz」

↑寝るの大好きな人

 

四葉「……zzz」

↑早寝早起きタイプなので限界が来た

 

三玖「むむむ……。悔しい」

 

悟飯「…………」

 

二乃「ふっ…。勝ったわね」

 

五月「……zzz」

↑睡眠欲には勝てなかった

 

 

 

勝利の女神は二乃に微笑んだのである。

 

寝室には布団5枚が敷かれており、奥から順に、一花、四葉、三玖、悟飯と二乃、五月という順番で寝ているのだ。

 

そして今起きているのは、三玖、悟飯、二乃のみである。

 

二乃「ちょっと離れすぎよ。もうちょっとこっち来なさいよ」

 

悟飯「いや、でもそれは………」

 

二乃「………もしかして、私と寝るの、そんなに嫌なの…?」

 

ここで発動、二乃のギャップ作戦!!具体的な内容は、普段は強気な二乃がここぞとばかりに涙目を見せることによって相手にギャップ萌えさせるという効果が期待できるという作戦だ!!

 

悟飯「……(出会った頃からは想像できない顔だな…………)」

 

悟飯はというと、意外と理性的に分析していた。

 

だが、心にくるものはあった。

 

悟飯「い、いや……。嫌ってわけじゃ……だけどこの状況は明らかにおかしいと思うよ…?」

 

二乃「なんでよ」

 

悟飯「一枚の布団に二人も入るのは流石におかしいよ…(そもそも僕に対して警戒心が薄すぎない…?)」

 

悟飯はとにかく押しに弱い。弱すぎる。悟飯には『押してダメなら引いてみる』ではなく、『押してダメなら更に押す』の方が圧倒的に……。

圧倒的に効果的である。

 

そもそも年頃の異性と寝ることを良しとする悟飯も他の男子から見てしまえば明らかにうらやま………もとい、大変けしからん事態なのである。

 

悟飯は四葉並み………いや、それ以上に純粋であることからか、はたまた二乃達が押しに押してきたからなのか、一緒に寝ることに抵抗はないようだ。いや、ないわけではないのだが、嫌ではないようだ。

 

二乃「私がいいって言ってるからいいのよ。遠慮しなくていいから」ギュッ

 

と言いながら、悟飯の左腕に抱きつく。

 

悟飯「ちょ、ちょっと…!?」

 

悟飯は大声を出しそうになるが、なんとか堪えて二乃に注意する。二乃の胸に実っている二つのデカメロンが悟飯の腕に直撃している為、悟飯の気が気でないのだ。

 

悟飯「これは絶対おかしいよ…!なんでくっついてくるの…!?」

 

二乃「だって寒いんだもの……。ハー君の体温で私を温めて…♡」

 

普段の二乃はここまで積極的になることはないだろう。というのも、踏み込むところで踏み込めないのが二乃だからだ。ところが、深夜テンションというのは恐ろしいもので、普段できないようなことを平気で実行できてしまうのだ。

 

三玖「二乃、そのハー君って呼び方やめて」

 

二乃「なによ。親しみを込めて私が呼んでるのよ。あんたには関係ないでしょ」

 

三玖「元々は私が考えた名前なのに……。むっ…!」ギュッ

 

三玖は頬を膨らませながら空いている方の腕をガッチリ確保し、悟飯を具材とし、二乃と三玖の二人による二人の為の中野姉妹サンドが出来上がってしまう。

 

これによって、悟飯に逃げ場はなくなってしまうのだった。

 

悟飯「ちょ、ちょっと〜…!?」

 

悟飯は中野家に泊まったことを後悔しかけていた。五つ子を守るために泊まりに来たはいいのだが、三玖と二乃がまさかここまで仕掛けてくるとは予想外だったのだろう。

 

…………何故キスされたのにそんな甘い考えができるのかよく分からないが、悟飯は恋愛初心者なのでそこは分からなくても仕方ないのかもしれない…。

 

 

 

 

 

 

何分か、何時間か……。悟飯にとっては長い時間が経った。気が付いたら二乃と三玖は夢の中にいた。2人ともとても幸せそうな顔をしている。しかしながら、悟飯の腕は依然として確保されたままであり、悟飯は自由に動くことができない状態であった。

 

悟飯「………寝れない……」

 

女性の象徴とも言えるモノを両腕に押し付けられてしまっては、寝るに寝れない。しかし、時間が経つと強い眠気に襲われ、悟飯はようやく眠ることができたのである……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方その頃……。

 

 

 

 

 

 

 

 

六人で1人になるためには、まず孫君を倒さなければならない…。しかし、今の私では孫君には到底敵わない。もう何人かこちら側に引き込めれば、戦況は大きく変わるかもしれないが、その為には孫君の隙をつくか、戦闘力を上回る必要がある。私はどうすれば………

 

 

 

シュン‼︎

 

「……お困りのようだな」

 

零奈「……!!」

 

人造人間零奈の目の前に、もう1人のパーフェクトな人造人間が現れた。

 

セル「そろそろ地球に戻ろうかと思った矢先、謎の気を感じたから追跡してみれば、お前は何者だ?見たことがない………」

 

零奈「………あなたは?」

 

セル「自己紹介が遅れたな。私の名前はセル。全てにおいてパーフェクトな人造人間セルだ」

 

零奈「セル……?人造、人間…!!」

 

セルが自身が人造人間であることを明かすと、零奈の気がみるみる上昇していく。しかし、これ以上上げると悟飯に気付かれてしまうので、多少加減はする。

 

セル「先程は孫悟飯の気も感じだ。お前は孫悟飯に勝ちたいのだろう?なら手助けしてやる」

 

零奈「私は人造人間の味方になど…!!娘を殺した人造人間なんかに…!!」

 

セル「そう邪険にすることはないだろう…」ピッ

 

零奈「!!」

 

セルは目にも留まらぬ速さで零奈の頭部に手を触れる。

 

セル「…………面白いことになっているようだな。Dr.ゲロ以外が造り出した人造人間か……。実に興味深い」

 

零奈「な、何故そのことを…!!」

 

セル「記憶を覗かせてもらった。聞かれそうなので先に答えるが、私が完全な存在だからできること……とだけ答えておこう」

 

かつて、悟空が初めてナメック星に来た時、悟飯の記憶を除いてナメック星の状況を把握したあの能力を使用したようだ。

 

セル「お前はただの地球人をベースにして造られたのにも関わらず、1人だけ吸収してそれほどの戦闘力を秘めている。ならば、お前には先程教えたあの技との相性がいいだろう……」

 

零奈「あの技…?教えたとは…!?」

 

セル「私の場合、戦闘力を一定以上上げる際には超サイヤ人の力も使う。それとあの技を併用すると身体に大きく負担がかかってしまうが、お前はそのリスクが少ない。それを使って孫悟飯をうまくあしらい、残りの四人を取り込むことだな……」

 

 

ドシューン!!

 

 

セルは何かを零奈に託した後、再び地球を後にした。セルは何が目的なのだろうか…?

 

零奈「あの技…?一体なんのこと…」

 

零奈は自身を分析し始める。すると、今まで存在していなかったデータが新たに存在していることが発覚。そのデータを分析してみると……。

 

零奈「………!!これなら…!!娘達を取り戻せる…!!」

 

 

零奈は、○○○を習得した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、宇宙でも……。

 

 

ターレス「……ちっ。トーマ達からの通信が途絶えた」

 

ダイーズ「やはりダメだったか…。あいつらはただの下級戦士だった。それが超サイヤ人に敵うはずがない……」

 

アモンド「しかし、やけにあっさりし過ぎだっせい?もう少し善戦しても違和感はなかったはずだっせい」

 

アモンドの言う通り、トーマ達4人がいくら最下級戦士と言えども、もう少しもってもおかしくはなかったはずだ。だが現実は文字通り秒でやられている。

 

レズン「………明らかに怪しいな」

 

ラカセイ「ならば無人偵察機を地球に送るとしよう。取り敢えず奴らが着地した座標に設定する……」

 

ターレス「……あいつらも裏切ったんじゃねえだろうな…?」

 

ダイーズ「仮に裏切ったのなら、あいつらを始末してしまえばいいだけのこと……そうだろう…?」

 

カカオ「ンダ」

 

 

ピピピッ!!

 

 

ターレス「……?!なんた!?」

 

レズン「たった今付近に移動型惑星を探知した」

 

ターレス「惑星…?惑星そのものを動かしてるってことか?デタラメだな……」

 

ラカセイ「……この電波は惑星スラッグのものだ……」

 

ターレス「スラッグだと…?ってことは…………」

 

ダイーズ「………?どうしたターレス?何か知っていることでも…?」

 

ターレス「ああ。その惑星は日光に弱い魔族とか呼ばれている種族が住んでいる惑星だ。ナメック星が破滅の危機に瀕した際に何人か脱出したガキのナメック星人がいてな。そのうちの1人がスラッグ星に辿り着いたんだ」

 

その危機に同じくして、神とピッコロが別れる前のナメック星人、カタッツが地球に避難してきたのだが、実は避難したのは1人だけではなかったのだ。

 

ターレス「そのナメック星人はなかなか特殊な存在だったんだ。ナメック星人は基本温厚で悪事を働くことは一切ない。しかし、そいつは生まれながらの悪だった……」

 

アモンド「まさか…!そのナメック星人は、宇宙の暴れん坊として有名なスラッグ…!?」

 

ターレス「……その通りだ。だが奴らは俺達の天敵と言ってもいい。気に入った星は、持ち前の科学力で光を遮断しし、魔族が好む気温の低い星に改造しちまう。それをやられちまうと、神精樹に適した惑星ではなくなる……」

 

ダイーズ「ならば潰すか?」

 

ターレス「……いや、できればこちら側に引きこみたい」

 

ダイーズ「できるのか?そんなことが……」

 

ターレス「ヤツも俺達と考えていることは同じなはず……。なら、志を共にする仲間として引き込める可能性は充分にある」

 

レズン「……それはどうだろうか」

 

ターレス「なんだ?何か文句でもあるのか?」

 

ラカセイ「スラッグは気に入らない態度を取るやつはすぐに始末すると聞く。奴が宇宙の征服を企んでいるのなら、俺達の存在も忌み嫌っているはずだ……」

 

ターレス「なるほどな…。同族嫌悪ってやつか?まあいい。俺達の邪魔になるなら殺すだけだ」

 

 

 

こうして、2人の荒くれ者が出会うこととなる………。

 




 タイトルの意味は、宇宙の方もバーダックの方も悟飯の方も色々あって混沌としているという意味です(意味不)。そろそろタイトルのネタ切れがヤバイでやんす…。最悪取り敢えず無名にしといて、後で考えることにしても問題は無さそうですけどねぇ……。

 ようやくターレスサイドにも動きが出てきました。前回登場した謎の宇宙船はトーマのものでした。バーダックチームが再結成され、ターレス率いるクラッシャー軍団にチームで対抗していきます。ちなみにバーダック以外のメンバーも結構戦闘力が上がっていますが、超サイヤ人にはなれないため、バーダックに比べるとかなり劣っています。

 次回に明かされるんですが、ターレスの戦闘力が無茶苦茶上がってます。10話か9話で初登場したターレスがようやく地球に襲来してくるかも……?長っ。

 セルはとにかく戦士を増やそうとしているような状況というよりは、悟飯の潜在能力を知ってそれを最大限まで引き出そうとしている感じ。程よい敵を出せば悟飯がどんどん強化されていくのではないかと狙っています。

 もう皆さん分かっていると思いますが、人造人間零奈の人格は、五月が作り出した零奈の物ではなく、狂った未来の五月のものでもあります。

 ちなみに今作のクラッシャー軍団には上下関係は存在しません(再投)。スラッグが登場しそうな雰囲気ですが、スラッグに関しては今後の活躍を期待すると多分後悔します…………。スラッグの戦闘力は劇場版と同程度です。


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第9巻
第48話 バイト探し


 前回のあらすじ…。
 零奈が逃亡に成功するきっかけとなった宇宙船には、かつてバーダックと共に星々を荒らしていたバーダックチームであった。バーダックはトーマ達と合流し、反ターレスチームを形成。そして一旦は地球に住み着くことにした。

 一方で、悟飯が護衛の為に五つ子の住むアパートに泊まりに来ていたのだが、ここで布団が不足していることが発覚し、誰が悟飯と同じ布団に寝るかで五つ子会議が開かれた。一花と四葉は最早蚊帳の外で、二乃と三玖と五月の3人が自分の主張を譲らず、結局はじゃんけんで決め、二乃が勝利した。

 その一方で、人造人間零奈がセルと接触し、セルが零奈にある技を教えた。その技の教えをこいた零奈は、悟飯に勝てると確信していた。

 そして、クラッシャー軍団は、トーマ達の信号が途絶えたことに疑念を感じるが、スラッグ率いる魔族軍団を発見し、取り敢えずはそちらにコンタクトを取ることにした。



スラッグ「ぐあっ!!」

 

スラッグ率いる魔族軍団は、ターレス率いるターレス軍団の襲撃によって、壊滅寸前であった。

 

事の発端は、スラッグがターレスの勧誘を拒否したことから始まった。そこからは秒読みでスラッグの軍団は壊滅の道を辿っていた。

 

スラッグ「な、なぜだ!!若返り装置で最盛期の力を取り戻したこの俺が、サイヤ人如きに敵わないとは…!!」

 

ターレス「さて、スラッグ。最後のチャンスをやるよ。無様に土下座して命乞いをするなら仲間にしてやる」

 

スラッグ「誰が貴様なんかに…!!」

 

ダイーズ「愚かな。お前と俺達の差は歴然だ。その証拠にお前が従えていた魔族は全滅した」

 

レズン「しかし、スラッグ星に住む魔族の科学力も馬鹿にできないな…」

 

ラカセイ「今後の発明品の参考にさせてもらうとするか」

 

ターレスとダイーズはスラッグの前で勧誘を続け、アモンドとカカオは残りの魔族を片付け、レズンとラカセイは魔族達が発明した機械類を分析していた。

 

ターレス「そうかそうか…。じゃあここが貴様の墓場だ!」

 

カァァッ!!!!

 

スラッグ「馬鹿な…………」

 

 

ドグォォオオオオオオオオオン!!!!!!!

 

 

スラッグはターレスのエネルギー弾によって、肉片一つ残らずに消滅した。

 

 

ターレス「さて、邪魔者を片付けた。この星に神精樹を植え、粗方食ったらそろそろ地球に向かうとしよう……」

 

ダイーズ「そうだな」

 

 

 

 

ピピピッ

 

ターレス「警戒信号……。戦闘力測定不能だと…!?」

 

ターレス達が所有するスカウターは、レズンラカセイ兄弟のお手製のもので相当高性能だ。最終形態のフリーザやクウラの戦闘力さえも数値として映し出すことができる優れものだ。

 

それが測定不能のということは、それを上回る莫大な戦闘力を持つ者が接近しているということを意味していた。

 

 

 

スタッ……

 

蝉のようにも、蛙のようにも見えるその生物は、着地するなりターレス達の顔を観察する。

 

「………もう一つそれなりの気があったはずだが………。少し遅かったか」

 

ターレス「……何者だお前…?宇宙空間から宇宙船なしでここに来たように見えるが……?」

 

宇宙空間でも生き延びることのできる種族は殆どいない。それこそフリーザやクウラでもなければ不可能なはずだ。宇宙空間での生存に戦闘力は関係ない。

 

「……私の名前はセル。究極の生命体とでも名乗っておこうか……」

 

ターレス「究極の生命体だ…?」

 

セル「一つ聞きたいことがあるのだが、先程言っていた『神精樹』とは、一体どういったものなのだ?」

 

ダイーズ「……こいつ、俺たちの話を聞いていたのか?」

 

ターレス「ほう?気になるか?俺達の仲間になるって言うなら話してやってもいいぞ」

 

セル「……その前に、お前達の目的について聞かせてもらおうか?もしや、フリーザ亡き今でもフリーザに忠誠を誓っているサイヤ人がいるはずがあるまい?」

 

ターレス「その辺の知識はあるようだな。だったら教えてやろう」

 

ターレスは自身達の目的をセルに告げた。好きなだけ暴れ回り、好きな星を壊し、美味いものを食いうまい酒に酔うという生活が、如何に素晴らしいかを熱弁した。

 

そのターレスの言葉に、その場にいたダイーズは時々頷く。

 

ターレス「どうだ?悪くない話だろう?お前はどうやらフリーザやクウラよりも強いらしい。一緒に暴れてみないか?」

 

セル「……確かに魅力的な話だな。では神精樹の実がどういうものか、教えてもらおうか」

 

ターレス「………仲間になるって解釈でいいんだな?」

 

ターレスは不敵な笑みを浮かべながらセルにそう尋ねると、セルは無言を貫く。その無言を肯定と見做したターレスは、神精樹の実について解説し始めた。

 

セル「………要するに、星のエネルギーを吸い取った実を食べることによってパワーアップするということか……」

 

ターレス「そういうことだ。さあ、俺達と共に……「貴様、名前は?」」

 

ターレス「おっとそうだった。俺の名はターレス。かつて下級戦士だった戦闘民族サイヤ人だ」

 

セル「………ターレスとやら。貴様は本当にサイヤ人か?」

 

ターレス「…………なに?」

 

要領を得ない質問に、ターレスは若干困惑する。

 

セル「私の知っているサイヤ人というのは、常に自分の力で自分の実力を伸ばそうとする者達だった。少なくとも貴様のようにそんな木の実に頼りすがるような奴は見たことがない。貴様にはサイヤ人の誇りがないらしいな?」

 

ターレス「な、なんだと…!?」

 

さっきまで仲間になるかと思われたセルが、突然自分を侮辱してきたものなので、ターレスは御立腹である。

 

ダイーズ「貴様…!」

 

セル「その情けないサイヤ人と連んでいるお前らも同類ということか……」

 

ターレス「………貴様、死にたいらしいな?」

 

セル「悪いことは言わん。超サイヤ人にすらなれないただのサイヤ人が私に挑まない方がいい。無駄な戦いは私も避けたいのでね」

 

ターレス「ぶっ殺す」

 

 

ボォオオオオッ!!!!

 

 

ターレスは、セルのその言葉についにキレて擬似超サイヤ人に変身した。

 

ダイーズ「い、いきなりか!?」

 

ターレス「俺を怒らせたことを後悔させてやる!!」

 

ドジューンっ!!!

 

金色のオーラを纏ったターレスは、そのまま勢いでセルに突進し、拳を振るった。

 

「」

 

ターレス「……!?見えなかった…!!」

 

しかし、当たる寸前でセルが突如として姿を消した。

 

 

ドカッッ!!!!

 

 

ターレス「ぐわっ!!!」

 

 

ターレスは後ろから衝撃波を受けて、近くの岩場に身を叩きつけられてしまった。

 

ダイーズ「……!!貴様ぁ!!!」

 

カァァッ!!!

 

ターレスがやられたことによってダイーズが加勢する。それなりのパワーを誇るエネルギー弾をいくつか連射する。

 

セル「………」

 

しかし、ダイーズの攻撃が迫っているにも関わらず、セルは防御すらしようとしない。

 

ダイーズ「愚か者め!!あの世で後悔しろ!!」

 

ドグォォオオオオオオオオオン!!!!!

 

エネルギー弾は全弾セルに命中した。これを見たダイーズは、セルが死んだものだと確信した。

 

 

セル「あの程度の実力でよく慢心できるものだな」

 

ダイーズ「………な、なに……!?」

 

ところが、セルは死んでいるどころか、擦り傷ひとつついていない始末であった。しかもダイーズの後ろにいつの間にか回り込んでいた。

 

セル「邪魔だ」

 

トンっ!!

 

ダイーズ「」ドサッ

 

セルはターレスにだけ用があるのか、ダイーズを手刀で気絶させた。

 

セル「……全宇宙を跪かせるだったか?貴様には過ぎた夢だ。諦めるがいい」

 

ターレス「……なんだと?」

 

セル「貴様のような下級戦士にできるはずがないと言っているのだよ」

 

ターレス「……!!!!」

 

その言葉を聞いた瞬間、ターレスの表情は恐ろしいものになっていた。

 

セル「……(もう一息か?)所詮貴様はただの下級戦士だったのだ……。とんだ期待外れだ。ガッカリした」

 

ターレス「きさまぁ……!!!!」

 

 

ゴゴゴゴゴゴゴゴッ!!

 

 

セル「ふっ……」

 

次第に惑星の大気、大地が揺れ始めたことを確認すると、セルは不敵な笑みを浮かべる。

 

ターレス「貴様だけは絶対に許さねえぞ…!!貴様だけは…!!!」

 

 

ボォオオオオオオッ!!!

 

 

セル「………」

 

ターレスはやがて黒髪から、輝く金髪に変化し、髪が逆立つ。瞳の色がエメラルドグリーンに変化し、ターレスの周りを黄金の炎のようなオーラが覆う。

 

セル「………計画通りだ」

 

超ターレス「……お礼だ。貴様をここで葬ってやる」

 

シュン‼︎

 

そう言うと、ターレスは高速移動で姿を消し、セルの背後に再び現れて首を狙って拳を振るった。

 

 

パシッ

 

 

超ターレス「……!!!」

 

しかし、セルの右手がそれを阻止する。

 

超ターレス「馬鹿な…!俺の動きが見えていたというのか…!?」

 

セル「素晴らしいパワーだ。ただの超サイヤ人でありながらここまでの気を持つとは………。だがそれでも孫悟飯には勝てないだろうな。バーダックというサイヤ人はともかく……」

 

超ターレス「なに…?」

 

セル「では、機会があればまた会おう」

 

ズォオオオオオオオッ!!!

 

ターレス「」ドサッ

 

 

セルは一気に気を解放したと同時に、ターレスに向けてエネルギー砲を放つ。これによって、超サイヤ人に覚醒したとはいえども、ターレスは生命に関わる重傷を負った。

 

攻撃の威力が高すぎるためか、ターレスは金髪から黒髪に元に戻り、気を失っていた。

 

 

セル「……(これで後はこいつが回復すれば、孫悟飯を強化する丁度良い敵が誕生するはずだ。うまく立ち回って孫悟飯の強化を手助けすることだな)」

 

ドジューン!!

 

セルは用が済んだのか、惑星をあとにして去っていった。

 

 

 

少しすると、気絶したターレスとダイーズを見かけたクラッシャー軍団は、急いで二人をメディカルマシンに入れて治療を開始するのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日……。

 

 

五月「そんくん……すき〜…………」

 

三玖「すきだよ………ムニャムニャ…」

 

 

悟飯「…………タスケテ」

 

悟飯はいち早く起床したのだが、三玖と五月に何故か抱きつかれていた。腕に抱きつかれているのではなく、悟飯の身体にである。そのため、悟飯は起き上がれずにいた。

 

ちなみに二人とも無意識にこうなってしまっただけであり、決してワザとではない。

 

もう一度言う。これは単なる偶然で決してワザとではない。

 

 

悟飯「四葉さん……助けて…………」

 

悟飯は同じく起きていた四葉に助けを求めた。だがしかし…………。

 

四葉「こんな幸せそうな顔をして寝ている二人を起こす気にはなりません!なんとか頑張って下さい!」

 

悟飯「ええ!?」

 

四葉は非情(?)であった。悟飯を見捨てると、そそくさとリビングに駆け込んでいった。

 

一花「……zzz」

 

悟飯は一花に助けを求めようにも、ぐっすり眠っていたので断念した。

 

五月「……んん?」

 

と、ここで五月が目を覚ました。

 

悟飯「あっ、五月さんおはよう。早速だけど起きてくれないかな…?」

 

五月「………」ギュッ

 

悟飯がそう言うと、五月は頬を膨らませながら逆に抱きしめる力を強めた。

 

悟飯「あ、あの…?五月さん……?」

 

五月「嫌です。拒否します」

 

悟飯「なんで!?」

 

五月「もう少しだけこのままお願いします」

 

悟飯「僕も起きたいんだけど………」

 

五月「だったら私達を退けて起き上がればいいじゃないですか?」

 

悟飯「そ、それは…………」

 

悟飯の力ならできないことはない。寧ろ可能なのだが、それをやると、最悪二人が怪我をする可能性がある。悟飯はそれを良しとはしなかった。

 

五月「………ならいいじゃないですか」

 

五月さん、本当に変わったなぁと感傷に浸りながら現実逃避しようとする悟飯であるが、すぐに現実に引き戻された。

 

三玖「むっ……。五月、離れて」

 

今度は三玖が目を覚まし、五月に対抗するかのように抱きしめる力を強める。

 

五月「孫君はまだ誰のものでもありません。だから誰が抱きついてもいいじゃないですか」

 

いや、家族を除いて逆に誰も抱きついてはいけないと思う。せめて恋仲になってからそういうことをした方がよろしいかと思います。

 

三玖「………じゃあ私もこうしてる」

 

悟飯「ええ!?」

 

一花「ふぁぁ……おはよう…………」

 

ここでようやく長女が起床した。

 

一花「あっ、そっか。悟飯君がお泊まりに来てたんだっけ…?服を着たいからここを出て欲しいんだけど………」

 

悟飯「…………」

 

だが、悟飯は無言である。一花はその意味をすぐに察した。

 

一花「ほーら二人とも。悟飯君が迷惑してるから一旦離れようか?」

 

五月「いやです」

三玖「いや」

 

一花「口を揃えて拒否された………」

 

一花は、『甘え下手な五月ちゃんがいつの間にか甘え上手になったなぁ』と感傷に浸りながら現実逃避を試みた(即視感)。

 

 

ガチャ

 

二乃「あんたら!!いつまで寝ているのよ!!さっさと起きなさい!!」

 

朝食の用意が完了した二乃が来たことによって、ようやく悟飯が解放される………………

 

五月「もう少し待ってください」

 

一花「ご飯より悟飯君を優先したッ!?」

 

なんと五月が食より想い人を選んだ。

 

二乃「あら?ダイエットかしら?いい心がけね。なら五月は昼食も夕食も抜きね!」

 

五月「まま、待ってください!!それだけは勘弁を〜ッ!?!?」

 

ここで二乃の特権を利用した脅迫をする。中野家の料理長である二乃だからこそできる所業である。

 

一花「………やっぱり五月ちゃんは五月ちゃんだったかぁ………」

 

三玖「じゃあ私は………」

 

二乃「あら。じゃあ三玖は3食チョコレートを御所望かしら?」

 

三玖「……ごめん。すぐ行く」

 

二乃の機転によって悟飯はようやく解放されたのだ。

 

一花「やるね〜二乃」

 

悟飯「ありがとう二乃さん………。助かったよ………」

 

二乃「あら、感謝してくれるの?なら何かお礼があるのかしら?」

 

悟飯「えっ?」

 

二乃「そうね…。そういうことなら今度の週末にデートに行きましょ!勿論2人きりで!」

 

悟飯「えっ?いや……」

 

二乃「もしかして、何か予定入ってた?」

 

悟飯「いやいや、予定は入ってないけど………」

 

二乃「じゃあいいわよね?私とデートできることを感謝しなさい!」

 

悟飯「う、うん……」

 

一花「……(そういうことだったのかぁ……策士だなあ二乃………)」

 

 

こうして悟飯は二乃とのデートの約束を取り付けた。良かったね!(二乃!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お姉さんは妹達(主に三人)の将来が心配だよ………」

 

「あら?文句があるなら、あんたは3食しいたけ…「なんでもないよ!!だからそれだけはやめてッ!!?」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

朝食を食べ終えると、一花が姉妹に話があるらしい。

 

一花「来週からお家賃を五人で五等分します」

 

「「「「「!?!?」」」」」

 

悟飯「へっ?」

 

一花が急に方針転換するものなので、住民でない悟飯も含めて情けない声を出してしまう。

 

一花「払えなかった人は前のマンションに強制退去だから、みんなで一緒にいられるように頑張ろっ!ということで、よろしくね♡」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

悟飯「まさか急にあんなことを言い出すなんて………もうちょっと余裕を持たせた方が良かったんじゃないかな…?」

 

一花「あはは……。みんなに困らせるようなこと言っちゃったかなぁ」

 

一花と悟飯は、今外にいる。一花は仕事に行くそうで、悟飯は一花が社長の車に乗るまでの間は護衛をすることになっている。主に人造人間零奈対策である。

 

悟飯「もしかして、さっきの仕返し?一花さんって椎茸がにがt」

 

一花「ナンノコトカナ?」

 

片言になりながらも誤魔化す一花。

 

一花「でも仕方ないんだ。今日までは家賃のために確実な仕事しかしてこなかったけど、そろそろ私もやりたいことに挑戦してみようかなって思って…」

 

そして強引に話を戻してきた。

 

悟飯「………もしかして、そのやりたいことって、上杉君のことも…?」

 

一花「……そういうことだからさ、悟飯君も協力してくれる?」

 

悟飯「もちろん!応援しているよ!」

 

一花「ありがとっ。私も応援してるからね」

 

悟飯「……?」

 

悟飯は何故自分が応援されるのか分からないと言った顔をする。

 

一花「ほら、二乃に三玖に五月ちゃんに迫られているじゃん?だから、早く一人を選んであげなよ?じゃないと、いつか愛想尽かされちゃうかもよ?」

 

悟飯「…………僕もこのままじゃダメだと思っている。分かっているんだけど、まだ僕は誰が好きなのかよく分かってないんだ………」

 

一花「………そっか。律儀だね〜……」

 

一見ただ保留しているだけのように捉えることもできるが、悟飯は相手がどれだけ真剣に自分のことを想ってくれているのかは理解しているつもりだ。だからこそ、自分も真剣な気持ちで向き合わなきゃならないと思っているのだろう。

 

一花「まあ、できるだけ早くするんだぞ〜!」

 

一花は社長の車を見つけると、そちらに向かって駆け出して行く。悟飯は一花が乗った車が発進したのを確認すると、ある場所に向かって歩み始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カランカラン…

 

四葉「あっ、孫さん!こっちですよ!」

 

朝、一花に家賃を五等分すると言われたので、急遽喫茶店でバイト探しをしている四人。

 

三玖「コンビニ……。新聞配達……。どれも大変そう」

 

五月「全員で同じところでできたら安心できるのですが………」

 

二乃「そんなに募集している職場はないわ。それに得意なこともそれぞれ違うんだし」

 

四葉「私に接客業なんてできるかなぁ………。悪ーいお客さんが来たらどうしよう………」

 

四葉はその悪ーいお客さんが来た時を想像し………。

 

四葉「………お金を稼ぐって大変だなぁ………」

 

そんな感想をこぼした。

 

二乃「それでもお金が必要なんだもの。まさか一花が急にあんなこと言い出すとは思わなかったわ。どのみち働くつもりだから求人集めてて良かったわ」

 

三玖「でも、あの一花の感じ懐かしかった」

 

四葉「あっ、私も思った!」

 

五月「寧ろ今まで一花一人に無理させ過ぎましたからね」

 

二乃「そうね。ああなった一花は中々手強いわ。それにしても強制退去って……あのマンションで一人きり……」

 

三玖「もしかしたらお父さんと二人きりかも」

 

二乃「緊張感あるわね………」

 

五月「…孫君。何かおすすめのバイトはありますか?」

 

悟飯「おすすめって言っても、僕はこの家庭教師のバイトが初めてだから……」

 

二乃「家庭教師が初めてのバイト!?」

 

三玖「チャレンジャー………」

 

五月「そ、そうなんですか………」

 

四葉「五月、まだ見つからないの?」

 

五月「ええ。するからには自分の血肉となりえる仕事にしたいのですが……」

 

血肉になりえる仕事。それはつまり……

 

悟飯「賄いが出るところってこと?」

 

五月「私を上杉君と一緒にしないで下さいッ!!!」

 

二乃「でもやりたいことってのは同意だわ」

 

四葉「あっ!上杉さんと言えば、こんなバイトを見つけたよ!」

 

四葉が三人に見せた求人元は、この前の打ち上げに行ったケーキ屋であった。風太郎は既にここでバイトをしている。

 

二乃「ケーキ屋、ね……。ここなら私の特技が生かせそうだわ」

 

悟飯「いいんじゃないかな?二乃さんのスイーツは今でもパティシエになれるんじゃないかってくらいに美味しかったし」

 

二乃「ふん!当然よ!私に作れない料理なんてないわ!」

 

二乃は悟飯に褒められることが予想外だったのか、ツンの入った返事をするも、内心は発狂寸前まで悶え喜んでいた。

 

二乃「そうだ。せっかくだから食べに来なさいよ。特別にケーキを作ってあげるわ」

 

悟飯「本当!?楽しみだなぁ…!」

 

悟飯の胃袋は既に二乃の料理によって鷲掴みにされているのだが、悟飯本人はそれに気づいていない。特にスイーツ系はチチが作ることもあまりない為か、悟飯は二乃のスイーツをかなり気に入っている様子だ。

 

三玖「………私もそこでバイトする」

 

二乃「はぁ!?あんた正気!?」

 

三玖は二乃に嫉妬したからなのか、頬を膨らませながら同じところで働くと言い出した。

 

三玖「私もケーキを作って悟飯に喜んでもらう」

 

二乃「やめなさい!あんたが作ったら食材が無駄になるわ!」

 

三玖「この前は悟飯が心の底から美味しいって思えるようなチョコを作れたもん!」

 

二乃「それは私が手伝ったからでしょう!?」

 

悟飯「こらこら、喧嘩しない……」

 

と、喧嘩の原因である悟飯が仲裁に入る。

 

四葉「私はやっぱりみんなで一緒の仕事がいいな…。三玖、このお掃除のバイトなんてどう?一緒にやろうよ!」

 

三玖「むぅ…………」

 

 

 

CHA-LA‼︎ HEAD-CHA-LA‼︎ ナニガオキテモキブンハ~♪

 

 

ピッ

 

悟飯「はい、もしもしブルマさん?」

 

どうやら悟飯の携帯の着信音だったようだ。

 

二乃「一体どんな着信音よ……」

 

悟飯「………本当ですか!?すぐ行きます!!」

 

悟飯はブルマから何を言われたのかは分からないが、嬉しそうに通話を終えた。

 

二乃「一体どうしたのよ?ブルマさんに何か用事?」

 

悟飯「うん!頼んでいたものが完成したみたいで!ちょっとしたらすぐに戻ってくるよ!」

 

悟飯は喫茶店を出ると、ひと気のない場所に移動し、筋斗雲を呼んで全速力でカプセルコーポレーションに向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

悟飯「こんにちは〜!」

 

ブルマ「久しぶり!これつけてみて」

 

悟飯はブルマから腕時計のような物を受け取った。

 

悟飯「……?これ、ただの腕時計じゃないですか?」

 

ブルマ「違うわよ。西の国がスマホみたいな腕時計販売してるでしょ?その機能と一緒に変身機能も加えた感じね。そこの赤いボタンを押せばいいから」

 

悟飯「……それ、著作権か何かに引っかかりません?」

 

ブルマ「大丈夫よ。そこは気にしないで頂戴」

 

悟飯「は、はぁ……赤いボタンですよね?」ポチッ

 

 

シュン‼︎

 

悟飯が腕時計の赤いボタンを押すと、なんと悟飯の服装が一新された。燃え上がるような赤いマントに、山吹色をベースとしたヘルメットが装着され、某特撮ヒーローに出てきそうな見た目であった。

 

悟飯「うはーっ!!いいっ!!これはすごいですよ!!」

 

ブルマ「でしょー!?」

 

悟飯が大喜びをしていると、トレーニングを終えたばかりなのか、汗だくのトランクスとベジータがブルマの元にやってきた。

 

トランクス「………誰?」

 

悟飯「僕だよ僕!孫悟飯!」

 

トランクス「ええ!?悟飯さんなの!?」

 

悟飯「そうだぞ!どうだこの服装?かっこいいだろ!」

 

トランクス「………ノーコメント」

 

悟飯「あれ?」

 

トランクスから思ったような反応をもらえなかったので、今度はベジータに聞いてみることにした。

 

悟飯「どうですベジータさん!この格好!強そうでしょう!?」

 

ベジータ「……誰だそれを作ったやつ。センスのカケラもねえな」

 

ブルマ「……」ビキッ

 

ベジータ「……!?よ、よく考えてみれば悪くないかもな………」

 

ベジータは何かを察したからなのか、意見を180°とまではいかないが、変更した。

 

悟飯「そこはカッコいいって言ってくださいよ〜!!素直じゃないんだから〜!!」

 

ブルマ「そうよね〜?」

 

ベジータ「(なんだこいつ。カカロットとは比べ物にならないくらいウザイぞ……)」

 

今日の悟飯はヒーローっぽい格好に変身できるようになったからなのか、やけにテンションが高く、ベジータから煙たがられている。

 

悟飯「ありがとうございました!ブルマさん!!」

 

ブルマ「またいつでも遊びに来てね〜!!」

 

悟飯は満足気に再び喫茶店に戻ろうとしたが、携帯電話を確認したところ、既に家に戻り始めているとのことだったので、本日の授業を実施する為にそちらに向かうのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

悟飯「いや〜!それにしてもあんなカッコいいものをくれるなんて、ブルマさんには感謝だなぁ!!」

 

変身装置が余程気に入ったようで、悟飯は外であることを忘れて何度も変身をする。幸いにも、周りに人がいなかったことが救いだろうか……。

 

 

ピコンっ

 

悟飯「ん?えっ!?」

 

悟飯が変身装置で遊んでいると、五月から一通のメールが届いた。

 

 

 

 

 

『助けて下さい!!!!』

 

 

悟飯「な、何があったんだ…!?」

 

ドシューンッ!!!

 

気を確認したところ、人造人間零奈の気を感じることはないが、五月から送られてきたメールの文面を見て、かなり急を要するものであったらしい。悟飯は全速力で五月達のいるところへ向かった………。

 




 遅くなりました。なんで遅くなったかと言いますと、昨日更新しようとしたら、今回分のデータが吹っ飛びました。その為、ここでやめたら確実にエタると思い、昨日は気合いと記憶だけで書き直していました。幸いにもストーリー自体は覚えていたので、なんとか1日で1話を作り直すことができました。マジで危なかった。スランプにならずに済んだぜ……。

 そして、長らく悩んでいたグレートサイヤマンをようやく登場させることができそうです。無理矢理にでもグレートサイヤマンを登場させた理由はすぐにとは言いませんが、そのうち分かると思います。

 そして次に悩んだのが、三玖をどうやってパン屋に誘導するか。原作では風太郎がいるから二乃と三玖がケーキ屋に来たという形でしたが、この作品では悟飯は家庭教師以外でバイトをしていないので、二乃はともかく三玖が来る理由がないし、パン屋の求人を見ることもないので「あれ?詰んだ?」と思いましたね。でもまあ今話見てもらったので分かると思いますが、なんとか上手く纏められました。

 オリジナル展開はやはり時間がかかるなぁ…。でもオリジナル展開がないと面白みがないし……。仕方ないね!あと長期休み終わったから、もしかしたらペースが遅くなるかも。もしかしたら早くなるかも。早くなる場合は理由は聞かないでww。確実に五月や風太郎に怒られるような理由だから(笑)

……最近、タイトルがかなり無理矢理感あるなぁ()

本日(4/15)は風太郎の誕生日だそうです。ということで、おめでとう(絵が描ければなぁ)


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第49話 零奈の"人格"

 前回のあらすじ…

 セルによって、ターレスが超サイヤ人へと覚醒した。

 一方で、悟飯は五つ子(主に3人)に振り回される日々を送っているのだが、二乃の機転によって悟飯は二乃と後日デートすることになった。それはそれとして、一花の提案によって、四人はバイトを探すことになった。

 悟飯はブルマに頼んでおいた変装道具が完成したようなので、カプセルコーポレーションで受け取り、その装置を大変気に入ったご様子。五つ子宅に戻った時、五月なら何やら不穏なメールが………。



全速力で五月のいる場所に着いた悟飯だが、何やら人集りがすごい。一体何があったのか五月に尋ねる。

 

五月「孫君!四葉が生活費を下ろす為に銀行に行ったのですが……!!」

 

 

 

ダガガガガッ!!!!!

 

 

悟飯「!?ッ」

 

その人集りは野次馬ではなく、警察の、しかも特殊部隊であった。

 

悟飯「な、なんだ!?」

 

「おらおら!!突入してきたらこのバズーカーでぶっ飛ばすぞ!!」

 

「ふへへ!兄貴の言った通りですね!この国は銃社会じゃないから、銃一つ持つだけでビビりやがりますね!」

 

どうやら銀行強盗らしい。しかもかなりの重装備をしていると見た。

 

悟飯「……これは早速出番か…?」

 

五月「そ、孫君?」

 

悟飯「ちょっとごめん!トイレ!」

 

五月「ええ!?こんな時にですか!?」

 

 

 

 

 

 

よし、誰もいないな?早速これを使うとしよう!!

 

悟飯「へーんしんっ!!!」ピッ

 

 

赤いボタンを押すと、粒子状になって保管されていたスーツが出現し、変装完了!!

 

悟飯「さーて、いっちょやりますか!」シュン

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドカッッ!!!

 

「なっ!?兄貴!?」

 

 

よし、バズーカを持った方は倒したぞ!

 

「お、お前!何者だ!?」

 

何者…?ここで自分の名前を名乗るわけにはいかないよな…?どうせならカッコいい名前………。グッド………グレイト……………サイヤ人…………。

 

 

 

そうだ!!

 

 

悟飯「私は正義と平和を愛する者!!グレートサイヤマンだ!!!!」

 

 

僕はいつか見た特撮番組のポーズを取り敢えず真似ることにした。自分流のポーズは家に帰ったらじっくり考えることにしよう!

 

「ぐ、グレートサイヤマンだぁ?だははははっ!!!!だっせぇ名前!!!あははははっ!!!!」

 

 

なっ!?せっかく人が一生懸命考えた名前だっていうのに…!?!?

 

悟飯「バカにするなぁ!!!!」

 

 

ダンダンッ!!!!

 

 

五月「ヒッ!?あ、アスファルトを踏み抜いたッ!?!?」

 

 

「………ごめんなさい。よく考えたらカッコいい名前でした(アスファルト踏み抜く奴に拳銃で勝てる気がしねえ!!!!)」

 

悟飯「そうだろそうだろ!分かってもらえたようで何よりだ!!」

 

「自首します………」

 

悟飯「それがいい!!!」

 

「何やってんだバカもん!!」

 

 

ドンッッッ!!!!!

 

 

さっき僕が倒したと思っていた大男の方はまだ意識があったようで、バズーカーを撃ってきた。

 

 

悟飯「……!!」

 

 

ピタッ

 

 

だけど、気を応用すればこんなものはすぐに止められる。なんなら更に押し出して…………

 

 

ドグォォオオン!!

 

 

「……自首しまーす………」

 

 

はい!解決!!

 

 

「す、すげぇ……」

 

「み、見たか?あのダサいやつ、バズーカの弾を念力みたいに押し返してたぞ?」

 

 

「うわっ!?兄貴ぃ!?」

 

「なんだこの変なやつ!?やっちまえ!!」

 

銀行の中にいた強盗犯二人が外の異変に気付いたのか、外に出てきて僕に拳銃を向けてきた。あれ?よく見たら、ただの小銃じゃなくてマシンガン…?

 

 

ダガガガガッ!!!

 

 

悟飯「……」シュシュシュッ

 

 

本当なら弾を避けることもできるのだが、避けてしまえば後ろにいる人達が怪我をしてしまうかもしれない。だからここは弾を掴んで無力化しておこう。

 

「うわっ!?全部弾を止めやがった!?」

 

「ば、化け物かぁ!?」

 

 

シュン‼︎

 

 

バキッ! バキッ!

 

 

そしてこれ以上乱射できないように、銃も壊しておこう!

 

 

「………自首しまーす」

 

「同じく………」

 

 

よし!これで今度こそ解決!!

 

 

悟飯「これに懲りたら、もうこんなとこはするんじゃないぞ〜?それでは、さらばだ〜!!!」

 

ドシューンッ!!!

 

 

悟飯はグレートサイヤマンの格好のまま飛び立ち、その場を去るフリをした。

 

 

「なんだったんだ?あのグレートサイヤマンってやつ?」

 

「格好はともかく、無茶苦茶強かったよな?」

 

「というか、空も飛んだぞ?」

 

五月「空を飛ぶ?いや、まさか………」

 

 

 

 

 

四葉「五月〜!!」

 

五月「四葉!無事だったんですね!!」

 

四葉「うん!強盗が突然入ってきた時はビックリしたよ!!」

 

悟飯「ごめーん!お待たせ!」

 

五月「何やってるんですか孫君!こんな時にトイレだなんて!!」

 

悟飯「あはは……。ちょっとお腹が痛くて…………。それで、強盗犯は?」

 

五月「………なんでしたっけ?なんか、ヒーロー?みたいな人がやっつけてくれましたよ?確か、名前は…………クレープサラダマン…?でしたっけ?」

 

悟飯「違うよ!!グレートサイヤマンだよ!!」

 

五月「な、何故孫君が知っているんです…?」

 

悟飯「あっ…。いや、なんというか、さっき噂話を聞いてね………あはは………」

 

四葉「グレートサイヤマン…?もしかして、さっきのあのカッコいいヒーローさんですか!?」

 

悟飯「そうそう!よく分かってるね四葉さん!!センスいいよ!!!」

 

四葉「そうでしょう!?よく言われます!!!!」

 

五月「それはそうと孫君。さっきはどうやってバズーカーの弾を押し返したんですか?」

 

悟飯「あれは気を応用すれば簡単だよ。気の塊を押し出す感じで………」

 

五月「………………やはり孫君でしたか。あのグレートサイヤマンの正体は」

 

四葉「えっ…?そうなんですか?」

 

悟飯「………いいっ!?そそ、そんなことはないよ!?」

 

五月「じゃあ何故孫君は今丁度帰ってきたんですか?それにグレートサイヤマンのことについても詳しかったですし、私の知る限りではグレートサイヤマンというヒーローは今日初めて現れたはずですよ?それなのに噂が存在するはずがありません」

 

悟飯「…………あはは(しまったぁ……。完璧な変装をしていたはずなのに……)」

 

四葉「ええ!?孫さんがあのヒーローさんなんですか!?羨ましいなぁ……」

 

悟飯「四葉さんも着てみる?」

 

四葉「いいんですか!?やったぁ!!」

 

悟飯、まさかの秒で正体がバレる。

 

悟飯「…(これ、ちゃんと変装できてるのかなぁ……)」

 

グレートサイヤマンをダサいと思いつつも、心の中に留めておく五月であった。

 

 

 

 

 

 

 

五月「ところで四葉。あの格好が本当にかっこいいと思ってるんですか?」

 

四葉「えっ?だって自分の危険を顧みずに人を助けているんだよ!?そんな人がどんな格好をしてもカッコ悪いはずがないよ!!!」

 

※意訳:格好はともかくやってることは大変素晴らしいことだ。

 

 

五月「(よかった……。四葉の感覚も正常なようですね……)」

 

 

 

 

 

 

 

 

三玖「負けた………」

 

二乃「なんで料理対決で勝てると思ってたのよ…………」

 

二乃と三玖は早速面接に行っていたのだが、採用する人数は1人までとのことで、二乃と三玖がケーキの出来で対決することになったのだが、勝敗は最早言うまでもなかった。

 

三玖「あっ、こっちのパン屋さんも募集してるんだ………」

 

二乃「いいの?そっちはケーキ屋じゃなくてパン屋だけど?」

 

三玖「うん。別によく考えたらケーキに拘る必要はないから」

 

二乃「さっ、早く帰りましょ。今日も勉強会があるんだから」

 

三玖「うん」

 

後日談ではあるが、二乃はケーキ屋で、三玖はパン屋でバイトをすることになった。

 

 

 

 

 

 

 

「一花ちゃんお疲れ様。今日もいい演技だったよ」

 

一花「ありがとうございます!」

 

一花は本日の女優としての仕事を終えて帰宅しようとしている時のこと……。

 

 

 

 

 

 

スタッ

 

一花「……!!!」

 

一花の目の前に、それは現れた。

 

零奈「一花、お久しぶりですね……」

 

一花「人造、人間………」

 

ガシッ!!

 

一花「ぐっ……!!」

 

零奈は一花を逃さまいと、首を掴んだ。

 

周りからは悲鳴や叫び声が聞こえるが、そんなことお構いなしに零奈は続ける。

 

零奈「どうして私を拒否するのです?私はあなた達の母親だというのに……。頑張って育ててきたというのに……」

 

一花「く、くるし…!やめ……!」

 

 

 

 

 

零奈「……!!」タンッ

 

 

ビュンッ!!!

 

 

突然、剣が空を切った。

 

 

ドサッ

 

一花「ゲホっ…!!けほっ…!!」

 

 

一花の首が零奈の手から解放され、一花は咳き込みながら、自分を助けてくれた人物の顔を見る。

 

一花「……悟飯君じゃ、ない……?」

 

そもそも悟飯は剣を持ち合わせていない。悟飯は基本的に気弾と拳で戦う。

 

 

「…………お前は何者だ…?この子に何をしようとした?」

 

 

その剣を持つ勇者の名は………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ある世界でのお話……。

 

 

「それで?あの緑の化け物も人造人間だったわけね?」

 

「はい。でもそいつも倒したので、この世界にも平和が訪れたはずです」

 

俺の名前はトランクス。つい先日20年前の過去から帰還し、人造人間17号と18号。そして今さっきセルを倒してきたところだ。これでこの世界にはもう理不尽に人の命を奪う悪魔はいない。それを俺は過去の世界のあの人達に報告しに行くところであった。

 

ブルマ「結局孫君は死んじゃったらしいけど、悟飯君がそのセル?ってやつを倒したのよね?こっちの悟飯君は人造人間を倒せなかったけど、あっちの悟飯君は上手くやってくれたのね……」

 

トランクス「はい。あっちの悟飯さんは物凄い強さでした……」

 

あの時の悟飯さんは本当にすごかった。完全体のセルをも圧倒する力を持っていた。セルが一度蘇った時の話はよくわからない。その時俺は死んでいたので、天津飯さん、ヤムチャさん、クリリンさんなどから聞いた話ではあるが……。

 

向こうの世界では大した活躍はできなかったけど、こっちの世界ではようやく長きに渡る戦いに終止符を打つことができた………。

 

 

安らかに眠って下さい、悟飯さん……。

 

 

トランクス「それでは、俺は過去の世界に報告に行ってきます」

 

ブルマ「いってらっしゃい。大丈夫だとは思うけど、一応気をつけてね?」

 

トランクス「はい!」

 

時代はエイジ768年。悟飯さんがセルを倒した年の1年後にセットしている。あまり不用意に別の時代に行って歴史を不要に変えてしまうのを防ぐためだ。

 

俺はタイムマシンを発進させた。

 

 

…………だが、途中で問題が起きた。

 

何故だか分からないが、タイムマシンが謎の引力に吸い込まれるように流れてしまったのだ。このような現象に遭遇するのは初めてだった。タイムマシンをなんとかコントロールし、タイムホール内で故障することはなんとか避けることができたし、無事に過去の世界に辿り着くことができた。

 

…………だが…。

 

トランクス「エイジ775年…!?」

 

なんと、俺がセットしていた時代よりも7年後の世界に来てしまったらしい。タイムマシンが不具合を起こして途中の時代に緊急着陸したのだろうか?しかし街の様子を見渡してみる限り、この世界は平和そのものだ。俺が行った過去の世界の未来であることには間違いない。

 

さっきのハプニングで燃料を使い切ってしまったらしい。このままでは未来に帰ることができない………。さてどうしたものか……。取り敢えずタイムマシンはカプセルにしまうとして、燃料はこの時代の母さんを頼りにするしかない……。

 

 

「きゃーー!!!」

 

トランクス「!?」

 

俺が考え事をしていると、突然悲鳴のような声が聞こえた。その声が聞こえた方向に向かうと、女性が少女の首を絞めているようだった。俺はその少女を助けるために剣を振るった。

 

その結果、少女は解放された。だが不可解なのは、こいつの潜在パワー……。普通ではこれほどの力を持っているなどあり得るはずがない。少なくとも、第二形態のセルと同等かそれ以上はある。

 

まさか、こいつは新手の人造人間なのか?人造人間はセルで終わりじゃなかったというのか?

 

もし仮に人造人間だとして、悟飯さんや父さん達を狙うのはまだ分かる。だがこいつが狙ったのはこの少女。何故この子を狙ったのか意味が分からなかった。だから俺は尋ねた。

 

トランクス「……お前は何者だ…?この子に何をしようとした?」

 

零奈「………トランクス君…?」

 

トランクス「!?」

 

そいつは何故か俺の名前を知っていた。この時代の俺はもう喋ることも自由に動き回ることもできるだろう。だが何故今の俺の姿を見て何故瞬時にトランクスだと断言した?考えられる可能性はただ1つだ。こいつもまた別の未来から来た人造人間だろう。それなら俺を見てトランクスだと瞬時に判断できるのは納得できる。

 

人造人間だというのならば………!!

 

トランクス「お前が何者かは知らないが、人造人間であるというのなら、ここでお前を倒す!!」

 

ボォオオオオッ!!!

 

零奈「……!!」

 

これ以上命を弄ばせたりはしない!!人造人間を好き勝手にさせてたまるか!!

 

超トランクス「貴様はここで倒す!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

三玖「一花、仕事が終わったからもうすぐ帰ってくるって」

 

二乃「あら?まだお昼なのに珍しいわね?」

 

四葉「よーし!取り敢えずお昼ご飯まで勉強頑張ろう!」

 

 

悟飯「……五月さん。くれぐれもあのことは内緒にしてくれないかな?」

 

五月「……分かりました」

 

悟飯はグレートサイヤマンの正体について広めないように五月に頼んだ。先程も四葉にも頼み込んでいたのだが、五月に対しては念のためということであろう。

 

悟飯「……!!!」

 

突然悟飯の表情が変わり、険しいものへとなった。五月はそれを瞬時に見抜いた。

 

五月「……どうしたんですか?」

 

悟飯「………ごめん。自習してて!」

 

悟飯は五月にそう伝えると、急いで玄関から外に出て、階段も降りずに舞空術で飛び立っていった。

 

三玖「あれ?悟飯どうしたの?」

 

五月「……何やら用事ができたようです。私達はしばらく自習していましょう」

 

二乃「用事……ね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドカッッ!!!

 

零奈「ぐっ……!!」

 

超トランクス「はっ!!!」

 

ドコッッ!!!

 

零奈「おかしい…!どこからそのパワーが…!!」

 

零奈が一花を襲っているところにトランクスが立ち合い、人造人間零奈と未来のトランクスによる戦いが勃発していた。

 

過去に精神と時の部屋で修行をしたことのあるトランクスは、普通の超サイヤ人の領域を遥かに超えており、第二形態のセルなら圧倒できるほどの力を持っていた。

 

その為、今の零奈相手にはトランクスが優勢であった。

 

超トランクス「何故か俺のことを知っているようだな…。お前はどの時代からやってきた!?貴様はいつ造られた人造人間なんだ!?」

 

シュン

 

パシッ

 

零奈「……!!」

 

零奈はトランクスの質問を無視して攻撃するも、トランクスに阻まれる。

 

超トランクス「答える気がないようだな……。それならそれでいい。お前を破壊するだけだッ!!!」

 

ボォオオオオッ!!!!

 

零奈「!?ッ」

 

トランクスは更に気を高め、零奈を始末しにかかる。

 

超トランクス「消えろッ!!!!」

 

カァァッ!!!

 

トランクスは零奈を始末する為に、バーニングアタックをノーモーションで放った。今までの零奈であれば、この攻撃を避けることも敵わずに消滅していただろう。

 

零奈「…………界王拳」

 

 

ギャウウウゥッ!!!!

 

 

超トランクス「!!」

 

 

零奈はセルとは違って、比較的界王拳による反動を受けづらいのだ。その為多少無理をした使用も可能となっている。

 

 

ドカッッ!!!

 

超トランクス「ぐっ…!(さっきよりも大幅にパワーアップしている…!!だがまだなんとかなる程度だ…!!今のうちに倒す!!)」

 

零奈「2倍ッ!!」

 

 

零奈は界王拳の倍率を徐々に高めていき、トランクスを次第に追い詰めていく。

 

超トランクス「くっ…!!(まずい!このままでは俺の手に負えなくなる…!!)」

 

 

 

 

 

 

 

「ハッ!!!!!」

 

 

 

ドンッッッ!!!!!!

 

 

零奈「ぐっ……!!!」

 

 

間一髪のところで、何者かがトランクスの援護に回った。

 

 

「やっぱりトランクスさんだ…!大丈夫ですか!?」

 

超トランクス「え、ええ…!それより、まさかあなたは……!!」

 

超2悟飯「どうも!お久しぶりです!」

 

超サイヤ人2に変身した悟飯であった。

 

超トランクス「悟飯さん!お久しぶりです!それよりあいつはなんなんですか!?新手の人造人間なんですか!?」

 

超2悟飯「その話は後にしましょう。まずはあいつを止めなくては………」

 

超トランクス「止める…?甘いですよ!破壊するべきです!あいつは無力な少女を襲っていました!!奴はこの時代の17号や18号、16号とは訳が違います!!」

 

超2悟飯「ええ。確かにヤツは危険です。でも、破壊する前に助け出したい人がいるんです」

 

超トランクス「…………まさか、セルのように誰かを吸収したんですか…!?」

 

超2悟飯「………そんなところです」

 

一通りの会話を終えると、先程悟飯の気合によって吹き飛ばされた零奈が戻ってきた。

 

零奈「………私の努力を否定するように次から次へとポット出の戦士が現れていく…。何故ですか…!!なんであの時に現れてくれなかったんですかッ!!」

 

超トランクス「な、なんだ?何を言っているんだ、あいつは…!?」

 

トランクスは零奈の言動を理解できずに困惑していたが、悟飯にはなんとなく理解できていた。

 

恐らく、何故こっちには"僕達"がいて、あっちの世界にはいなかったのかということだ。

 

向こうにも孫悟飯やトランクスという戦士は存在していた。だが環境が違かった為か、強さには大分差が出てしまった。向こうの悟飯とトランクスも、今戦っている悟飯やトランクスのような強さを持っていれば、向こうの風太郎や五つ子達は死なずに済んだはずなのに………。

 

そんな零奈の…………五月の嘆きが、悟飯には聞こえた気がした。

 

零奈「許さない…!許さない…!こっちでは幸せそうに暮らしているというのに、何故私は…!!私だけが辛い思いをしなければならないのかッ!!!

 

いつだってそうだ。私だけがいつも辛い思いをしていた。あの時だってそうだ。私は恋を自覚する前に既に恋が終わっていた。私が自覚した時には、既に四葉に取られていた……。でもそんなことはもうどうでもいい。私の気持ちにも踏ん切りがついた……。

 

だけど、その後自分達の街は壊され!友人も殺された!!家も壊された!!更には家族も殺されたッ!!!!そして今度は私に人の温もりを!!家族との触れ合いを諦めろと言うのかッ!!どいつもこいつも、どれだけ私からどれたけ奪えば気が済むんだッ!!!!!!」

 

 

ギャウウウゥ!!!!!

 

 

超トランクス「………!!!なんて気だ!!!!」

 

超2悟飯「……!!!」

 

 

一通り叫び終わった後に、零奈は界王拳の倍率を更に上げ、リスクなしの限界値である10倍にまで達していた。

 

 

零奈が界王拳10倍を使う時、戦闘力を数値化することは難しいが、他の戦士と比較して強さを現す場合……。

 

 

 

現在の悟飯の超サイヤ人2と互角か、やや劣るかという程の力を持っている。

 

 

 

トランクスは零奈の強さに呆然としていたが、悟飯は違った。

 

決して慢心しているわけでも、油断しているわけでもなかった。先程の零奈の台詞から、悟飯はある確信をした。

 

 

超2悟飯「……(もしかして、人造人間零奈という人格は既にないか機能していない…?人造人間零奈はまだ何も奪われたことのないはず……。ということは、まさか……………)」

 

 

人造人間零奈の人格………。それは本当に五月が作り出したものなのか?

 

人造人間零奈は未来の五月を取り込んだと、未来の自分が言っていた。セルが17号や18号を取り込んだ時、セルの人格には影響が出なかったが、今回はどうだろうか?

 

そもそもセルと零奈は似ているようで根本的に違う。同じ細胞タイプの戦士といえども、零奈には戦士達の細胞が含まれていない。あるのは零奈のDNAのみだ。そして戦士達の技や戦闘データがインプットされ、五月を取り込んだ。

 

セルはゲロから造られたが、零奈は五月が造った。もしもどこかしらで不具合が出ていたとしたら?

 

もし、何らかの原因で、五月の人格が表に出ていたら……?

 

 

 

超2悟飯「………そうか…!今零奈さんを動かしているのは、五月さんなんだ…!!」

 

長いようで短い思考の末、悟飯は結論を見出した。

 

零奈「あぁあああッ!!!」

 

ギャウウウゥ!!!

 

零奈は界王拳を駆使してトランクスに急接近した。このままではトランクスがやられてしまう。今の零奈にはトランクスは絶対に敵わない。

 

 

ドンッッッ!!!

 

超2悟飯「くっ……!!!」

 

トランクスに向かって突き進んでいた拳は悟飯が受け止めた。

 

零奈「邪魔だッ!!!」

 

 

ドゴォォオオッ!!!!

 

超2悟飯「ぐはっ……!!!」

 

零奈は空いている方の手を使って悟飯の腹部を殴り込む。

 

腹部に強烈な衝撃を食らった悟飯一瞬腹を抑えるが、痛みを堪えてすぐに持ち直した。

 

超2悟飯「くっ…!(まさか界王拳まで使えるとは思わなかった…!全力を出さないと、こっちがやられる…!!)」

 

シュン‼︎

 

超トランクス「…!!(見えない…!あの時のセルと同等か、それ以上の速さで動けるということか…!?)」

 

 

ドカッッ!!!

 

 

零奈「がはっ……!!」

 

超2悟飯「だりゃっ!!!」

 

ドコッッ!!!!

 

零奈「ぐぅ…!!」

 

 

トランクスは目で追えなくても、悟飯には追跡が可能だった。今の零奈は、10年前に戦ったセルと同等かそれ以上の力を持っている。だが、悟飯は先日の並行世界のセルとの戦いによって全盛期の力を取り戻した上に、本格的に修行を再開した為、あの頃よりも更に実力が増していた。

 

 

零奈「ぐぁあああッ!!!!」

 

 

零奈はヤケクソ気味に気弾の雨を降らせるが、悟飯はそれらを全て避ける。気弾の一つも擦りすらしなかった。

 

零奈「ば、馬鹿な…!!この技を覚えたというのに…!!」

 

超2悟飯「残念だったな……!俺だって修行しているんだ!!この前のようにはいかないぞ!!」

 

零奈「ならば……!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一花「あの人も金髪になった…。もしかして、悟飯君の知り合い……?」

 

あの人が助けてくれた後、お母さんに似た人造人間とあの人はどこかに行ってしまった。恐らくそこで死闘を繰り広げているのだろう。私は取り敢えず家に帰らなきゃ……。屋内に避難しないとまた狙われるかもしれない……。

 

 

………そう、考えている時だった。

 

「ねえねえお姉ちゃん」

 

私の服の裾を掴んできた。声からして幼い少女……。小学生だろうか?やけに聞き覚えのある声に、私は思わず振り向いた。

 

一花「…………えっ?」

 

そんなことがあるのか?世の中にはそっくりな他人が3人はいると聞いたことがあるが、いくらなんでも似すぎではないか……?目の前にいる少女は、幼少期の私………。いや、"私達"に似ていた。

 

顔だけの話ではないのだ。声 

 

 

声も……

 

 

体格も………

 

 

服装も……………

 

 

髪型も…………………

 

 

 

何もかもが瓜二つだった。

 

「ねえねえお姉さん。お姉さんって、一花っていうの?」

 

一花「……!!!!」

 

私の本能が警告している。"早く逃げろ"と……。目の前の少女は危険だと訴えてくるのだ。

 

私は意を決して逃げることにした。ただのそっくりさんなら何も問題はないのだ。あの子が私を見失うだけ。それだけなのだ。

 

 

 

 

 

 

 

「もー!逃げるなんて酷いよ〜!!」

 

一花「………えっ?」

 

なんで…?私は全速力で逃げたんだよ?なのに、どうしてあなたは追いついたの?いや、いつ追い越したの…!?

 

気味が悪い…。早く逃げなきゃ……!!

 

 

パシッ

 

 

そう思ったら、目の前の少女が私の両頬を両手で触れてきた。

 

「ねえ?お母さんと一緒になるの、そんなに嫌なの?娘なのに?ねえなんで?どうして?お母さんのこと嫌いになったの?」

 

一花「あっ……!いや……!!」

 

「ねえ?なんで?どうして?答えてよ?ねえ?ねえ?」

 

 

助けて、悟飯君…!

 

 

「ねえ!ねえねえ!!

 

 

 

 

 

 

ねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえッ!!!!!

 

 

 

 

たすけて、フータローくん……!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やった……。あと3()()だね、お母さん……!」

 




 長期休みは偉大だっていうことは、長期休みが終わってから毎回気付く(定期)。

 ようやく人造人間零奈編が終わる見通しが出てきました。終わり方は既に決めてたんですけど、途中の過程の部分がまだ決まってなかったですが、なんとか目処がついたところです。

 ここで気晴らしにR18でも書こうかと思っとります(気晴らしで書くものなのかという質問はなしよw)。以前も言ったと思いますが、五月が悟飯を襲った回である第22話のifです。もしもあの時に一線を越えてしまった場合のお話的なものを書いてみようかなーと。ただR-18なんて書いたことないから書けるか分からんけど、物事は何もかも挑戦なので、書いてみようかと。というか書いてみたいだけです。

ちなみに載せるとしたらpixiv限定です。こちらで載せるとシリーズ全体R-18にしないといけないから()
 ということで、できたらURL載せます。

 最近忙しくなり始めたので、感想返信が多少雑になるかもしれませんが、ご容赦ください……。あとそれに伴って更新頻度落ちそうです(現に落ちている)。取り敢えず最低週一投稿を目安に頑張ります。


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第50話 ドコデモ五人デ

 前回のあらすじ…。

 変身装置を気に入った悟飯は、銀行強盗に巻き込まれた四葉を助ける為に早速スーツを装着した。悟飯はグレートサイヤマンと名乗り、強盗犯を全員無力化させた。

 一方で、一花の元にこっそりと現れた人造人間零奈が一花を取り込もうとしていたが、未来から人造人間を倒したと報告しに来たトランクスによって一命を取り留めた。だが、目の前に現れた謎の少女によって、一花は……………。



悟空「………一体、どういうことだ…?何が起きてんだ…!?」

 

 

オラは久々に下界の様子を見ることにした。占いババから借りた水晶に映っていたのは、天国にいるはずの零奈と戦っている悟飯と未来のトランクスだった。

 

何が起きてんだ…?

 

界王「悟空!ここにおったか!」

 

悟空「界王様!!こいつは…!!」

 

界王「……どうやら、また別の未来から来た刺客のようだ」

 

悟空「また別の未来…?トランクスのとはまた違うってことか?」

 

界王「ああ、ワシも詳しいことは知らないのだが……、色々と事情は複雑なようじゃ……」

 

悟空「くそ…!誰か事情を知ってそうなやつ………。そうだ!界王様!背中借りるぞ!」

 

界王「分かった」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガチャ

 

精神と時の部屋でみっちり修行をした未来悟飯は、より一層逞しく見える。

 

ピッコロ「この1年間で相当腕を上げたな、悟飯」

 

未来悟飯「いえ。これもピッコロさんのお陰ですよ。今まで一人で苦労して修行していた時のことが嘘のようですよ」

 

ピッコロ「甘さのないお前ならなんとかなるだろう。新しい人造人間とやらを倒してこい」

 

未来悟飯「はい!それでは!!」

 

ドシューン!!

 

未来悟飯は、未来の五月を助ける為、人造人間零奈を止めるために発進した。

 

デンデ「ピッコロさん。あの悟飯さんも相当腕を上げましたね……」

 

ピッコロ「ああ。あの悟飯は修行に対する力の入れ方が根本的に違かった。環境がそうさせたと考えると少々複雑ではあるがな………」

 

デンデ「……結局、腕は直せなかったんですね………」

 

ピッコロ「ナメック星人のように再生できるわけではないからな。だが安心しろ。それを補う技は教えておいた」

 

デンデ「えっ?そんな技があるんですか?」

 

ピッコロ「ああ。技というよりは気の応用だがな…………」

 

 

『ピッコロ!ピッコロ!』

 

ピッコロ「……!!この声は…!!」

 

デンデ「ど、どうしたんですか!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

悟空「そうだ!オラだ!」

 

『急にどうしたんだ?こっちは今立て込んでいるんだ。無駄話なら後にしてくれ』

 

悟空「今までオラが雑談の為に話しかけたことがあったか?」

 

『…………何かあったのか?』

 

悟空「今悟飯と未来のトランクスが戦っているやつがいるだろ?」

 

『何!?未来のトランクスも来ていたのか!?』

 

悟空「も?もってどういうことだ?」

 

『未来の悟飯もこの世界に来ているんだ。今さっき天界を出発してしまったがな』

 

悟空「おいおい、この世界未来から色々なやつ来すぎじゃねえか?」

 

『………それで、悟飯と戦っているやつがどうした?』

 

悟空「そいつ、オラがついこの前天国で会ったやつにそっくりなんだよ!」

 

『………なるほどな。なら奴の正体を話すとしよう。俺が未来の悟飯と修行していた時に聞いた話だが……』

 

ピッコロの話によればこうだ。

 

 

その未来の悟飯は、トランクスとはまた別の未来から来たやつ。

 

未来では悟飯の友達が一人を除いて、人造人間に皆殺しにされてしまった。

 

それで残った一人が激しい憎悪を抱いて自身の母親をモデルに人造人間を造ったこと…………。

 

 

 

『ざっとこんな感じだ』

 

悟空「そういうことだったのか………」

 

『そういうことだ。俺も仙豆を用意して加勢しようと思う。だからそろそろ……』

 

悟空「待ってくれ!オラにいい考えがある!未来の悟飯の友達も助けられるし、ドラゴンボールで生き返れねえそいつらの母親も生き返らせることができるアイデアがな!」

 

『なに!?そいつは本当か?聞かせてもらおうか?』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

二乃「……?なによこれ?」

 

三玖「どうしたの、二乃?」

 

二乃「ほら」

 

二乃が3人に携帯電話の画面を見せると、一花からのメールが一通届いていた。内容は、『外に出てきてくれないかな?会わせたい人がいるんだけど』とのことであった。

 

二乃「なにこれ?どういうこと?」

 

三玖「………まさか、彼氏?」

 

四葉「ええ!?」

 

五月「ま、まさかそんな………」

 

二乃「はあ!?彼氏ですって!?だらしのないダメ男だったらどうすんのよ!!こうなったら五つ子審査よ!!あんた達も出なさい!!」

 

二乃に釣られるように外に出た3人。しかし、そこには一花の姿はなかった。

 

二乃「あれ?誰もいないじゃない?」

 

三玖「おかしい……。悪戯かな?」

 

四葉「いや、こんな悪戯は今まで見たことがないよ?」

 

一花の姿を確認できずに不審に思った四人。取り敢えず家に戻ろうとした、その時のことであった。

 

「ねえねえお姉ちゃん!」

 

二乃「えっ?お姉ちゃんって…………、えっ!?」

 

三玖「こ、この子……!」

 

四葉「そっくりだ…!」

 

五月「ど、どういうことです……?」

 

「一花お姉ちゃん探してるの?」

 

二乃「そ、そうそう!!よく知ってるわね!それで、一花お姉ちゃんはどこにいるの?」

 

「お姉ちゃんはね、"私の中"にいるよ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「「…………えっ………?」」」」

 

あまりにも意味不明な言動に、四人は頭を悩ませた。この子は何が言いたいのか?何かのなぞなぞなのか?クイズなのか?

 

思考を巡らせていると、その少女は二乃の頭を撫でた。

 

二乃「ちょ…!!なにしてんのよ!?」

 

「いつも料理頑張ってて偉いね…。でもね、もう頑張らなくてもいいんだよ?」

 

二乃「えっ?な、何を………」

 

 

バシュッッ!!!!

 

 

二乃「きゃっ!!!!」

 

「「「二乃ッ!!!」」」

 

頭を触れられた二乃は、少女によって異変が起きた。二乃の周りに光が発生し、やがて二乃自身が光に変化し、少女に吸い込まれるようにして消えてしまった。

 

三玖「う、嘘………!!」

 

四葉「まさか……!この子は………!!!」

 

五月「三玖!四葉!!早く逃げ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やった♪ついに全員揃ったよ、お母さん♪」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

零奈「ふふふっ…!」

 

超2悟飯「……?(なんだ?)」

 

突然、零奈が笑みを浮かべた。

 

決して悟飯相手に優勢になっているわけではない。むしろ劣勢である。零奈は界王拳を使用することによって、超サイヤ人2の悟飯よりも体力の消耗が激しい。その為、先程よりも気がだいぶ落ちてしまった。

 

その零奈が、何故か勝利を確信したような笑みを浮かべているのだ。悟飯とトランクスは不気味で仕方がなかった。

 

超トランクス「馬鹿な…!圧倒的に悟飯さんが有利だ!なのに何故あんな表情を……!!」

 

超2悟飯「何を笑っている?」

 

零奈「………あなたはもう終わりですよ」

 

超2悟飯「なに?」

 

この言葉の意味が分からなかった。何故なら、悟飯は零奈を五つ子に接触させていない。つまり、吸収することは不可能であり、完全体になることは不可能なのだ。だからこれ以上のパワーアップはできない。

 

 

 

 

 

………はずだった。

 

 

「お母さ〜ん!!」

 

零奈「おや、帰ってきましたか」

 

超2悟飯「………?」

 

超トランクス「あいつは……?」

 

超2悟飯「あの顔………」

 

零奈の元に幼い少女が飛んできたのだ。お母さんと呼んでいることから、零奈の娘であろうか?

 

超トランクス「……!まさか、セルジュニアみたいな個体か……!!」

 

超2悟飯「!?ッ」

 

トランクスの言葉を聞き、悟飯の頭に嫌な予感が過った。

 

もしもあの幼い少女が、本体である零奈同様に、五つ子を取り込むことができるとしたら………?

 

「言われた通り"四人"連れてきたよ!」

 

零奈「ご苦労様です。さあ、私の中に戻ってきてください」

 

「うん!!」

 

その少女は快諾すると、光となって零奈に突進した。それを零奈は受け入れ、光は零奈の中へと入っていった。

 

零奈「……お帰りなさい、一花、二乃、三玖、四葉…………」

 

超2悟飯「………!!そ、そんな…!!」

 

悟飯の嫌な予感が的中してしまった。

 

零奈「…………これで六人一緒になりました。もうあなた達と戦う意味はありません」

 

超2悟飯「ま、待て!!そうはさせるものか!!!一花さん達を返せ!!」

 

零奈「………邪魔をするのですか?これ以上私から奪うというのですか…………?」

 

パァァアアア……!!

 

超2悟飯「……!!!」

 

超トランクス「こ、今度はなんだ!?」

 

 

突如、人造人間零奈が光出した。

 

 

超トランクス「………!!気がどんどん膨れ上がっていく……!!」

 

超2悟飯「くそ……!!くそ!!まさかそんな手があったなんて……!!油断したッ……!!!!」

 

 

 

やがて光は収まった。そして、かつて零奈がいた場所を見ると………。

 

超トランクス「姿が変わった…!今度はなんだ…!!」

 

 

超2悟飯「……………えっ?」

 

 

「………ようやく意識を完全に乗っ取ることに成功しました」

 

 

 

悟飯には、この声には聞き覚えがあった。五人同じ声でありながら、一際透き通った声をした少女。

 

最初は真面目だが不器用な少女だと思っていたが、意外と積極的で、一時は襲われかけたこともあった。

 

 

特徴的なウェーブのかかった髪に、ピンと剃り立つアホ毛。

 

右耳には一花が身に付けているピアス。

 

横髪には、二乃が愛用している、蝶を連想させる髪飾り………。

 

首には、三玖が愛用しているヘッドホン………。

 

頭には、四葉のトレードマークであるうさ耳リボン………。

 

そして、風太郎風に言えば、センスのかけらもない星形のヘアピンを身に付けている、今の五月よりも少し大人びた五月に似た女性が、目の前にいたのだ。

 

 

超2悟飯「五月、さん……?」

 

未来五月「さあ、第二ラウンドといきましょう………」

 

 

 

 

 

 

 

ドカッッ!!!!!!!

 

 

超2悟飯「ごはっ………!!!!」

 

五月の姿をした人造人間零奈が構えを取った次の瞬間。悟飯でも目で追うことができない程の速度で悟飯の腹部に拳を叩きつけた。

 

その威力は先程とは比べ物にならない程であった。はっきり言って普通ならば我慢できるものではない。しかし、今まで何度も死にかけた悟飯は耐えた。耐えなければならなかった。

 

超2悟飯「ぐぅッ……!!」

 

未来五月「よく耐えましたね……。流石です。でも、あと何発耐えられますかね?」

 

 

ドドドドドドッ!!!!!

 

 

超2悟飯「ぐわぁああッ!!!!」

 

 

五月の格好をした人造人間零奈は、悟飯の胴体に連続で打撃を加えていく。超サイヤ人2に変身した悟飯でさえも対応ができない程の速さに、悟飯は防御の姿勢を取ることすら許されず、ただひたすらその打撃を受けるしかなかった。

 

 

未来五月「はぁ!!」

 

ドゴォォオオッ!!!!

 

 

 

 

ドグォォオオオオオンッ!!!

 

人造人間は、悟飯を痛ぶることに飽きたのか、ゆっくり落ちていく悟飯に追い討ちをかけるように蹴りを加えて地面に叩き落とした。

 

超トランクス「そ、そんな…!馬鹿な…!!」

 

 

 

シュン‼︎

 

超2悟飯「魔閃光ッ!!!!」

 

 

ドォオオオオオオオオッッ!!!!

 

 

未来五月「……!!!!」

 

 

ドグォォオオオオオオオオオオンンッ!!!!!

 

 

しかし悟飯も黙ってはいなかった。修行を本格的に再開した悟飯の実力は、潜在能力も相まって順調に伸ばしつつあった。その為、完全体になってパワーアップした相手に大幅に遅れを取るということはなかった。

 

 

未来五月「………少しは効きましたよ?」

 

超2悟飯「ちっ…!!」

 

しかし、至近距離で魔閃光を当てたのにも関わらず、目の前にいる五月のような人造人間は平然とした顔をしている。

 

未来五月「そうだ。せっかくの逸材ですから、実験台になってもらいましょうか」バッ‼︎

 

 

相手が右手を振り上げると、突如針の形をした気功が出現した。相手が右手を握り締めると、その針は悟飯に向かって高速で突き進んでいく。

 

超2悟飯「……!!」ドシューン‼︎

 

悟飯はただの気功ではないことを悟ると、防御して受け止めるようなことはせずに高速で避ける。

 

未来五月「甘い!」

 

超2悟飯「なっ…!」

 

しかし、針は文字通り90°、180°向きを変えて標的である悟飯に向かってくる。

 

超2悟飯「はぁあああッ!!!」ボッ‼︎

 

 

悟飯は気のバリアを張って針を防ぐ。しかし、幾つもあった針のうちの一本が腕に当たってしまった。

 

 

プスッ‼︎

 

超2悟飯「ぐっ……ッ!!」

 

その針が当たったからといって特に大ダメージを受けるといったことはなかった。しかしすぐに異常が起きる。

 

 

超2悟飯「………??」クラッ

 

突然目眩が襲う。頭がクラクラし、正常な思考を妨害してくる。それに強烈な眠気も同時に襲ってくる。

 

超2悟飯「……まずい……!そういうタイプの、技か………!」

 

なんとか意識を保つことはできたが、それでも体が自由に動かすことが難しくなってしまった。

 

未来五月「ほう…?あの技には睡眠作用があったのですが、根性で起き続けるとは……」

 

この五月、取り込んだ姉妹の特徴を含んだ技を扱うことができる。針の技は二乃が家庭教師初日に風太郎と悟飯に飲ませた睡眠薬をモデルに作られた技だ。

 

未来五月「ま、これで楽に倒せるというものです」シュルルル

 

頭に付けていたウサ耳リボンを取り外し、リボンを解く。そしてそのリボンを………。

 

 

ビシッ!

 

 

超2悟飯「ぐっ……!!!」

 

 

伸ばして悟飯の身体に巻き付け、悟飯を拘束した。

 

超2悟飯「な、なんだ、これ…!?」

 

リボンを使用していることから、言うまでもなく四葉をモデルに作った技だ。とはいえ、四葉がリボンをこのような意図で使用したことは一度もない。

 

 

グググッ…!

 

 

超2悟飯「ぐわぁあッ…!!」

 

意識が薄れていく中、更に追い討ちをかけるようにリボンの締め付けが強くなっていく。

 

未来五月「無駄ですよ。そのリボンはもがけばもがくほどに締め付けが強くなっていきます。大人しく殺されてしまった方が、楽ですよ?」

 

 

ブオン…

 

 

五月に似た人造人間は星型のヘアピンにそっと触れると、それを取り外す。するとその星型ヘアピンは気功に変化し、鋭い刃を持った星型の気円斬となった。

 

超トランクス「させるかぁッ!!!」

 

 

バァンッ!!!!

 

 

先程まで静観していたトランクスであったが、悟飯が窮地に立たされてしまった為に加勢に入る。バーニングアタックで未来の五月の気をこちらに引こうとする。

 

 

ドグォオオオオオオオオンッ!!!

 

 

 

超トランクス「当たった…!?」

 

トランクスは相手が避けると予想し、次の攻撃を準備していたのだが、なんと防御もせずに当たりにいった。

 

 

未来五月「………邪魔ですね」

 

煙が晴れるとそこには、無傷の五月に似た人造人間がおり、ヘッドホンに手をかけると、マイク付きヘッドホンに変化した。

 

そのマイクに向かって………。

 

 

未来五月「"落ちろ"ッ!!!」

 

 

 

 

ドンッッッ!!!!!!

 

 

超トランクス「なにがぁッ…!!!」

 

 

ドォオオオオオオンッ!!!

 

 

五月がそう叫んだだけでトランクスは地面に吸い込まれるようなに急降下して地面に激突した。

 

 

超トランクス「ば、馬鹿な…!ヤツは『落ちろ』と叫んだだけだぞ!?言葉にするだけでそれを実行できるというのか!?」

 

未来五月「さて、それではさよならです。この世界の孫君」

 

 

ブゥウウウウンッ!!!

 

 

星型の気円斬は悟飯に向かって高速に回転しながら進んでいく。その様子はまるで本物の気円斬のようだった。気円斬はどんな頑丈な物でも切ることができるクリリンが生み出した有能な技である。その為、悟飯に当たれば、間違いなく悟飯は身体を切断されるだろう。

 

しかし、逃げようにもリボンが拘束して身動きが取れない上に、意識が朦朧としている。

 

トランクスは気円斬を相殺する為に気弾を放とうとするが……。

 

未来五月「"落ちろ"」

 

 

ドンッッッ!!!!!

 

 

超トランクス「ぐぅ…!!!」

 

 

再び身体が重くなり、手を上げることができなくなる。

 

超トランクス「くそぉ…!!悟飯さぁああああんッッ!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「気円斬ッッ!!!!!」

 

 

 

ブゥウウウウンッ!!!!!

 

 

未来五月「……!!!」

 

 

 

 

 

ズバッ!!!!!!

 

 

上から飛来してきた"本物"の気円斬が人造人間が放った星型気円斬を一刀両断する。本物の気円斬の方が切れ味がよかったようで、真っ二つにされた星型気円斬はその場で爆発した。

 

 

 

 

 

「久々にヤバい気を感じたから来てみれば、こりゃ一体どういうことだ?未来のトランクスもいるし、悟飯が弱り切っているし、目の前の女の人は一体………」

 

悟飯を救出した戦士は、ナメック星で長い時を共に過ごしたクリリンであった。

 

未来五月「あなたがZ戦士の……。まあ始末することは容易いですが……」

 

 

人造人間は自分の攻撃が阻止されたことが気に食わなかったのか、標的を真っ先にクリリンに変更する。

 

クリリン「おいおい嘘だろ!?いきなり俺かよ!?」

 

 

 

 

 

「真・気功砲ッ!!!!」

 

ドォオオオオオオオオオオンッ!!!!

 

 

未来五月「ぐっ…!!!!!」

 

 

人造人間は真気功砲によって下に押し出される。地面には大きな菱形の穴が空き、その穴に人造人間は吸い込まれるように落ちていく。

 

 

クリリン「気功砲…?まさか…!!」

 

 

「久しぶりだな、クリリン、悟飯。見違えたな」

 

 

セルゲーム後、もう2度と会うことはないだろうと別れを告げたはずの天津飯であった。

 

クリリン「天津飯ッ!!お前まで…!?」

 

天津飯「悟飯ともあろうものがこれほど弱ってしまうとは……。相当分が悪い相手のようだな」

 

クリリン「ひょっとするとあの時のセルを上回っているかもしれない………」

 

天津飯「厄介な敵が現れたものだな…」

 

 

シュン

 

真気功法によって穴に吸い込まれた人造人間は、少々時間をかけて天津飯らの前に再び現れる。

 

 

未来五月「波ぁああああああああッッ!!!!!!」

 

 

ズォオオオオオオオオオオッッ!!!!

 

 

かめはめ波を既にスタンバイした状態で。

 

 

だが、技の選択が悪かった。

 

この時ばかりは相手が悪かった。

 

 

 

天津飯「かぁああああッッ!!!!」

 

 

ドンッッッ!!!!

 

 

未来五月「なっ……!?!?」

 

天津飯は元々鶴仙流の武道家で、亀仙流の技の対策がしっかり成されている武道派だった。

 

かめはめ波を跳ね返す技もその鶴仙流の技のうちの一つで、大小に関係なくかめはめ波を跳ね返してしまうのだ。

 

 

人造人間は自身の技に呑み込まれ、爆発した。

 

 

クリリン「す、すげぇ……!本当に大小関係ないんだな………」

 

天津飯「正直焦った…。少しでもタイミングを間違えれば、こちらがあれの餌食になっていたからな………」

 

 

 

 

 

 

シュルルル

 

 

ガシッ!

 

天津飯「ぐっ…!」

 

クリリン「り、リボンッ…!?」

 

 

未来五月「よくもやってくれましたねぇ…!今のは死ぬかと思いましたよ…!!」

 

 

天津飯とクリリンもリボンの拘束術にハマってしまい、身動きが取れなくなってしまった。

 

 

クリリン「ま、まずっ…!これ、全く動けないぞ…!」

 

天津飯「ぐっ…!それに加えて、抵抗すればするほど縛りもキツくなる…!!」

 

 

未来五月「どうしてみんなして私の邪魔をするのですか?私はただ姉妹と共に過ごしたかっただけなのに………」

 

 

 

 

 

 

 

 

「それは君が間違っているからだよ」

 

未来五月「…………!!!!」

 

 

長らく待たせられた。

 

 

本来未来の五月を救出しなければならない人物、未来の悟飯がようやく戦場に到着した。

 

クリリン「こ、こいつが、トランクスの言っていた未来の悟飯か…!」

 

天津飯「なに?悟空じゃないのか…?」

 

 

 

未来五月「孫君…………」

 

未来悟飯「君はあらゆる間違いを犯してしまった……。君がやろうとしていることは、あの17号や18号達と変わらないんだぞ!?それでもいいのかッ!?」

 

未来五月「……っ!うるさい…!あなたに何が分かるんですか…!友人も家族も失った私に、そのまま孤独で生き続けろと…?そう言うんですかッッ!?」

 

未来悟飯「そうは言ってない!!確かに死んでしまった人たちはもう生き返れない!だけど君にはまだ大切な人がいるんじゃないのか!?この時代の姉妹を奪ってしまったら、この時代の五月も君と同じ気持ちを味わうことになるんだぞ!?」

 

未来五月「だからなんですか?この世界は平和そのものじゃないですか?幸せそうじゃないですか?だったら私にも少しはその幸せを分けて下さいよ…!」

 

未来悟飯「だったら何もこの世界のみんなを殺す意味はないはずだ…!」

 

そう。この未来の五月の行動は段々矛盾しつつあるのだ。

 

姉妹と過ごしたいから、この世界の四人を取り込んだ。そこまでは分かるのだが、その邪魔をする悟飯達を殺そうとしているのだ。殺す必要まではなく、戦闘不能にすればいいだけのはずだ。

 

 

五月は、人間と人造人間という"孫悟空の抹殺に特化した兵器"の間で迷子になっているのかもしれない。

 

未来五月「も、もういいです!あなたも私の邪魔をするなら、死んで下さい!!」

 

未来悟飯「説得は無理か…!」

 

ボォオオオオッ!!!!

 

未来の悟飯は超サイヤ人に変身した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

超トランクス「あれは…!」

 

 

片腕がない…!山吹色の道着を着ている…!後ろの文字が『飯』!額に傷がある…!

 

 

あの人は…!あの人は俺がよく知る人物だ…!!!!

 

 

超トランクス「悟飯……さん?悟飯さんなんですか…?」

 

信じられなかった。俺がよく知る悟飯さんにもう一度会えるとは思っていなかった。本当なら今すぐにでも話をしたい。加勢をしたい。でも謎の術のせいでそれも叶わない。

 

しかも、あの悟飯さんはどこで修行したのか、気の大きさは凄まじいものであった。もしかすると、この世界の悟飯さんより強いのかもしれない…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方で、あの世では………。

 

閻魔「……悟空。本気で言っているのか?」

 

悟空「ああ。頼む…!」

 

閻魔「…………まあ宇宙を何度か救った英雄だ。一回ぐらいは我儘を聞いてやるとしよう……」

 

悟空「本当か!?サンキュー!!」

 

悟空は閻魔大王と何かしら交渉をしていたようだが、それも無事に終了したようである。

 

閻魔「今までに前例はないが、界王様の許可も頂いているなら仕方ない。占いババに連れて行ってもらわなければ、体を持たない魂だけの存在は消滅してしまうから注意してくれ」

 

悟空「ああ!さて、最終確認だが、覚悟はできてんのか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

()()

 

 

 

零奈「……ええ。孫さんの話が本当なのであれば、また娘達の元に戻れますし、未来の娘を救うこともできる……。私としては願ってもいない幸運です」

 

悟空「でもいいのか?もし上手くいったとしても、ただの人間として生きていけねえぞ?それでもいいんか?」

 

零奈「問題ありません。お願いします」

 

悟空「………分かった。占いババに下界に連れて行ってもらったら、ピッコロっていう肌が緑色でターバンとマントを付けているやつがいるはずだ。そいつに付いていってくれ」

 

零奈「分かりました。しかし、孫さんは………」

 

悟空「オラのことは気にすんな。しっかり娘を救ってやれ!」

 

 

零奈「………はい」

 

 

 

未来の悟飯と未来の五月の衝突、悟空の謎の作戦……。果たして、どうやって未来の五月を救出して、他の四人も助け出すというのだろうか…?

 

そして、零奈を下界に連れて行く理由は一体…………?

 




 トランクスを落としたあの技のモデルは、呪術の呪言です。一発で戦況が大幅に変わるような言葉(死ね、消滅しろetc…)は実行できない。

 UA10万突破したみたいですね。お気に入りも400人突破しましたね、ありがとうございます。こうして伸びているところを見ると、やっぱ文章力には問題ないのかな…?


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第51話 悟空の頭脳戦

 前回のあらすじ……。

 零奈ジュニアとも呼べる、人造人間零奈の分身が五月以外の四人を取り込んでしまった。そして悟飯と戦っていた零奈は勝利を確信し、零奈と零奈ジュニアは再び一つになり、零奈は五人を取り込んだ完全体になった。

 完全体になった零奈は、何故か五月の姿に変身した。恐らく、最初に取り込まれた未来の五月だろう。その完全体零奈の強さはセルを上回っているとされ、悟飯でも苦戦を強いられることに………。駆けつけたクリリンと天津飯のお陰で命は助かったものの、悟飯は意識が朦朧とした戦闘不能状態であった。

 精神と時の部屋で1年分の修行を終えた未来の悟飯が駆けつけた。彼がどれほど強くなったのかは不明だが、悟飯が戦闘不能になった今、完全体零奈に立ち向かうことができるのは未来悟飯のみとなっている。

 ちなみにタイトルの意味は、悟空の作戦のことです。



五月「はぁ…!はぁ……!」

 

 

みんな…!みんないなくなってしまった…。幼い頃の私たちにそっくりな子が二乃を……!三玖を…!四葉を…!!

 

 

みんな連れ去ってしまった…!でも大丈夫だよね?孫君なら、どうにかしてくれるよね……?

 

 

五月「……!?そ、孫君ッ!?」

 

孫君が地べたに倒れ込んでいたので、私は彼を心配して彼の元に駆け寄る。

 

………私は彼にまだボロボロになれと言うのか…?彼は命を張って私の姉達を助けてくれようと必死になってくれているのに…………。

 

私は、何もできないの…………?

 

 

悟飯「五月……さん?」

 

五月「そうです!五月です!私が分かりますか!?」

 

悟飯「わ、分かるから、あまり揺らさないで…!!」

 

よ、よかった………。取り敢えず生きているみたいだ………。

 

五月「お、お母さん似の人造人間はどうしたんですか!?」

 

悟飯「い、今………上で未来の僕がなんとかしてくれている………」

 

五月「上……?」

 

 

 

 

 

 

 

 

ドカッッ!!!!

 

 

ドコッッ!!!!!

 

 

超未来悟飯「はっ!!」

 

ドンッッッ!!!!!

 

未来五月「ぐっ……!!!」

 

 

駆けつけた殆どの戦士がリボンで無力化された中、未来悟飯だけが未来五月と戦っていた。

 

 

未来五月「いつの間にそんな強さを…!!」

 

超未来悟飯「どうやら時間の流れが変わる便利な部屋があるらしくて、そこで一年分修行したんだ…!」

 

完全体零奈とはいえども、修行した未来悟飯相手には一筋縄にはいかないようだ。しかし油断はできない状況だ。今のところはどちらが勝利してもおかしくない状況だった。

 

超未来悟飯「君は何がしたいんだ?子供達を導く教師を目指していたんじゃなかったのか!?今君がやっていることは、子供達の将来を奪うことと何も変わらないッ!!」

 

未来五月「わ、私は…………」

 

超未来悟飯「17号と18号を破壊する。君はその為に寝る間も食べる間も惜しんで頑張っていた。そしてその悲願は達成されたはずだ…!家族と一緒に過ごしたいという気持ちは分かる…!だけどこの世界の4人は無関係なんだよ…!!あの子達にはあの子達の人生があるんだ!だから解放してあげてくれ!!」

 

未来五月「………わ、私は………ッッ!!!」

 

未来の五月は、未来悟飯の説得によって迷いが生じたようだが、頭を抑えて苦しみ始める。

 

超未来悟飯「ど、どうしたんだ…!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一花「…………あれ?」

 

ここはどこだっけ……?確かさっき……。

 

 

 

思い出した!私は幼少期の私達に似た女の子に…………。じゃあここは………?他のみんなはどうしたの…?

 

…………上に座っているのは、五月ちゃん……?私は気になったので上に行ってみる。この不思議な空間の中では、どうやら私でも空を飛び回ることが自由にできるようだ。いや、浮いていると言った方が適切かもしれない。重力がなくなったような、そんな感じ……。

 

一花「……五月ちゃん…?」

 

 

 

「いい加減に認めろ。17号と18号が現れたのは孫悟空のせいなのだ。孫悟空さえいなければ、お前の家族も友人も殺されることはなかったのだぞ?さあ孫悟飯もトランクスも皆殺しにしてしまえ。そうすることによって、貴様の復讐は果たされるのだ」

 

未来五月「ち、違います…!孫君は関係ありません…!!」

 

…………誰の声だ?少なくとも五月ちゃんの声でもなければ、そもそも女性の声でもない。どちらかというと、年老いた男性の声のように聞こえる……。

 

「聞き分けが悪いな小僧。では何故孫悟飯を攻撃する?トランクスを攻撃した?何故殺そうとした?」

 

未来五月「私は殺そうとなんてしてません…!!あなたが勝手に……!!」

 

「殺してしまえ。そうしてしまえば2度と邪魔をされずに済むぞ?お前が描く理想の未来が完成される」

 

……………この人……?

 

「おや?どうやら"材料"が意識を取り戻したようだな」

 

一花「ざ、材料…?」

 

確かに、私達を取り込むことによって完全体となるなら、私は材料ということになるのだろうが、そう呼ばれるのはちょっと…………。

 

「私はDr.ゲロの意志を継ぐ者…」

 

一花「ドクター、ゲロ………?」

 

「そこからか………Dr.ゲロは人造人間を造り上げた偉大な科学者だ」

 

人造人間を造り上げた…!?じゃあ…!!

 

未来五月「こ、殺すなんて………そんな…………」

 

「まだ迷っているのか?あいつらを放置してしまえば、また17号や18号のような悪魔が生み出されるかもしれないのだぞ?それでもいいのか?」

 

未来五月「…………」

 

………そっか。その科学者の意志を継ぐ人が何らかの理由でこの中に入ってきて、操縦者とも言える五月ちゃんに影響を与え続けていたってことかな…?

 

…………もしかしたら、まだ五月ちゃんを正気に戻す余地はあるかもしれない…!

 

一花「五月ちゃん!!その人の言うことを聞く必要はないよ!!私も未来の悟飯君から話を聞いたけど、悪いのは明らかに人造人間の方だよ!!悟飯君達は何も悪くない!!!!」

 

未来五月「一花………。やっぱり、そうだよね…………。私がやっていることは間違っていたんじゃ………」

 

「…………流石五つ子と言ったところだな。4人揃って全く同じことを言いよる」

 

一花「へっ………?」

 

私はその言葉を聞くと、無意識に後ろを振り向いた。

 

一花「………!?みんな!!」

 

二乃、三玖、四葉……………。

 

私が探していた3人が、そこに何でできたのか分からない紐のようなもので拘束されているのが見えた。

 

「私の邪魔をするから少々眠ってもらっているだけだ。殺してしまっては力を使い熟せないからな」

 

一花「へっ………?」

 

未来五月「や、やめて下さい!もうみんなを巻き込むようなことはしたくありません!!私のやっていることは間違いでした!!17号と18号が倒された時点で、人造人間は破壊するべきでした………。今から4人を解放します!!!」

 

一花「五月ちゃん…………」

 

「…………愚か者め」

 

 

 

 

グラッ………

 

一花「わっ!?」

 

 

 

 

 

刹那。

 

 

 

不思議な空間が歪む。

 

 

 

 

 

未来五月「ぐっ……!!!!」

 

「もうよい。貴様はDr.ゲロの意志を継ぐ為の操り人形となれ。貴様に意思は不要だ………」

 

未来五月「あがっ………!!やめ……!」

 

「何度洗脳しても、姉妹一人一人に説得される度に洗脳が解けていく………。愛の力というものは恐ろしいものだ」

 

一花「ちょっと!!五月ちゃんに何をしているの……!!!?」

 

五月ちゃんはだんだんと謎の黒い霧に包まれていく。やがて五月ちゃんの姿が見えなくなってしまいそう……!!

 

ガシッ……!

 

一花「なっ!?」

 

私も二乃達のように拘束されたしまう。待って…!!このまま五月ちゃんが完全に黒い霧に包まれたら、取り返しの付かないことになってしまう……!!

 

「もうよい。貴様も黙っておれ。あとは私がなんとかしよう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「喜べ。もう2度と会えなかったはずの母親の中にまた戻ることができるのだからな……………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

未来五月「ぐぅぅ…!!!あぁッッ!!!!」

 

超未来悟飯「い、五月!!どうしたんだ!?」

 

明らかに異常だった。

 

 

未来悟飯が説得していた時、未来五月は突然苦しみ出した。だが、何かと葛藤しているようにも見える。

 

未来五月「孫君……!!逃げて…!!」

 

超未来悟飯「……?何を………?」

 

未来五月「早く……!!逃げてッ…!!!!」

 

超未来悟飯「な、なんでオレが逃げるんだ!?」

 

未来五月「ぐぅ…!!は……や……く!!うっ…………」

 

 

超未来悟飯「五月!?」

 

 

未来五月は一瞬意識を落とす。

 

 

すると、突然"気"そのものが変わる。

 

 

超未来悟飯「………!?ッ」

 

 

容姿は基本変わらないのだが、髪色が段々と変化していく。肌を見る限りでは20代の女性そのものなのだが、髪色が徐々に銀………というよりは、白いものに近づいていく…………。

 

 

 

変化はそれだけではなかった。

 

 

超トランクス「……!!重くなくなった…!?」

 

クリリン「おお!!リボンが解けたぞ!!」

 

天津飯「ああ。だがそれ以上にまずいことになってしまったようだな………」

 

クリリン「へっ………?」

 

 

 

 

 

 

 

 

超未来悟飯「な、なんだ!?まだ完全体じゃなかったっていうのか!?」

 

未来五月「………ご機嫌よう。孫悟飯」

 

超未来悟飯「い、五月?」

 

未来五月「ただ今を持ってお前の知る五月は消滅した。五月はDr.ゲロの忠実な下僕となったのだ」

 

超未来悟飯「何っ……!?どういうことだ!?」

 

未来悟飯は目の前の五月の言葉を疑った。いきなり五月が消滅したとか言うのだ。意味不明である。だが、変化した気そのものが証拠だと言わんばかりに、増幅を続ける。

 

未来五月「私はDr.ゲロの意志を継ぐ者…………Dr.ゲロが作り出したコンピュータのAIだ」

 

超未来悟飯「!!ッッ」

 

そう。間接的に人造人間零奈を動かしていた者の正体は、五月ではなくDr.ゲロのコンピュータだったのだ。

 

正確には、人造人間を動かしていたのは五月だった。だが、その五月はコンピュータに影響されて暴走していたのだ。

 

超未来悟飯「ど、どうして……」

 

未来五月「貴様の疑問は最もだろうな。この人造人間を造ったのは、Dr.ゲロではなく、五月だった。だが貴様は知っているか?五月は人造人間を造る際に私にも頼ったのだ」

 

未来の五月は努力して科学者見習いになれたとはいえ、本来なら五月が人造人間を造れるはずがなかった。天才科学者のブルマでさえも造ることのできない五月が何故人造人間を造ることができたのか?

 

それは、Dr.ゲロのコンピュータの力を使ったからだ。コンピュータのサポートを受けてようやく完成したのが、人造人間零奈だったのだ。

 

未来五月「さて、土産話も終わりにしよう。貴様はここで始末する」

 

 

 

ゴゴゴゴゴゴゴゴッ………!!!

 

 

人造人間は気を上昇させる。ただでさえ完全体セルと同等の力を持ち合わせているというのに、気はさらに増長し続けて、留まるということを知りもしない。

 

未来五月「見せてやろう!人造人間零奈の圧倒的なパワーを…!!!!」

 

 

 

ボォオオオオッ!!!!!

 

 

 

人造人間が気を解放すると、嵐が吹き荒れている際に発生するような強風が街を襲う。

 

 

その異常な光景に、鳥達は木々から次々と飛び立つ。ペットは吠え、魚は飛び跳ね、世界中で雷雲が発生する。

 

 

ただ気を解放しただけでこれほどの異常を地球に齎したのだ。実際に戦うとなれば、一体どれほどの…………。

 

 

未来五月「滅びろ。孫悟飯…………」

 

超未来悟飯「…………オレも本気を出さなきゃいけないようだな……」

 

 

ゴゴゴゴゴゴゴゴッ

 

 

一時は収まった振動が、今度は未来悟飯が気を上昇させている為に再び揺れ始める。

 

 

超未来悟飯「はぁぁああああ……!!!!!!」

 

 

 

 

ボォオオオオオオオッ!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

未来五月「…………ほう」

 

超2未来悟飯「…………」バチバチッ

 

 

1年間の修行を経て、未来悟飯もまた超サイヤ人2に覚醒することができたのだ。

 

未来五月「………この時代の悟飯と同じ超サイヤ人のようだが、レベルが違うな…………」

 

超2未来悟飯「ああ。ピッコロさんに鍛えてもらったからな」

 

未来五月「だが、左手がない状態でどうやって戦うというのだ?それでは圧倒的に私を上回らない限りは、私を倒すことなど不可能だろう?」

 

超2未来悟飯「だろうな………。正直そこまでできるとは思っていなかった。だから、早速使わせてもらう…!はぁああああ……!!!」

 

未来悟飯は気を集中させる。ないはずの左手に気を集中させると、少しずつ肩から光が伸びてくる。

 

未来五月「………!!!」

 

 

超2未来悟飯「はぁッ!!!!」ブオン‼︎

 

 

………ピッコロが腕を再生する時のように、未来悟飯も腕を再生した。

 

正確には再生したわけではなく、気の塊を作ることによって左腕を再現したのだ。これで左腕の代わりの完成だ。

 

 

未来五月「…………なるほど。それなら確かに左腕の代用は可能だな。だが、それがどうした?」

 

超2未来悟飯「お前を倒し…!五月達を助け出してみせる……!!!」

 

未来五月「何を言っている?救い出すことなど不可能だ」

 

超2未来悟飯「…………なに?」

 

未来五月「私を倒すには、この身ごと滅ぼす必要がある。一花も、二乃も、三玖も、四葉も、五月諸共滅ぼせば、私を倒すことも可能だ」

 

超2未来悟飯「なに…!!卑怯だぞ…!!!」

 

未来五月「4人はまだドラゴンボールが存在するなら生き返らせることができるかもしれんが、五月はこの世界の人間ではない。果たして、五月はどうなるかな?」

 

人造人間は、未来悟飯の思考を先読みするかのように淡々と語る。

 

最悪の手段として、一度倒してしまって5人を生き返らせればいいと考えていただろう。だが、未来の五月は別世界の人間。神龍が別世界の人間にまで干渉できるのかどうかは不明なのだ。

 

未来五月「つまり、お前は何も救うことができなかったのだよ」

 

超2未来悟飯「…………(誰も救うことができない……?唯一残った五月さえも救えないのか……?この世界のオレはみんなを守っているのに、オレは……?)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『なに惑わされてんだ、悟飯!!』

 

超2未来悟飯「………!?この声は……」

 

『おめぇのダチのことなら心配するな。おめぇはそいつを足止めしろ』

 

超2未来悟飯「お、お父さんなんですか!?」

 

『今はそんなことどうでもいい!!おめぇの真の力を見せてみろ!!おめぇなら目の前のそいつを食い止めることはわけねえはずだッッ!!!!』

 

超2未来悟飯「………何か作戦があるんですね。分かりました…!!」

 

未来五月「………とうとう壊れたか?」

 

超2未来悟飯「待たせたな。さあ、勝負だ………!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

悟飯「……!!」

 

五月「そ、孫君…!!いきなり立ち上がっては……!!!」

 

悟飯は未来の五月が"変化"したことによって、術による特殊効果が切れた為、意識がはっきりした。

 

しかし、先程の戦いで体力はかなり消耗していた。今加勢しても恐らく未来悟飯の足を引っ張り兼ねないだろう。

 

悟飯「………五月さん。ごめん………」

 

五月「………何故、謝るんですか?」

 

悟飯「……みんなは人造人間に取り込まれた………。そして今の僕には手に負えない強さを手に入れてしまった………。僕が不甲斐ないばかりに…………」

 

五月「…………私こそすみません」

 

悟飯「なんで五月さんが…………」

 

五月「………私、いつも見ているだけでした。林間学校の時も、セルが現れた時も…………、そして今も………!!」

 

 

 

悲劇のヒロイン………。

 

ヒロインは助けてもらって美味しい立場だと勘違いしている方は少なくないだろう。

 

戦えないヒロインは、常にヒーローの心配をするのだ。ただ待っているだけ。愛する人の力になれない……。

 

それがどれだけ辛いことなのか………。

 

 

五月は、今まで悟飯がボロボロになるところを何度も見てきた。それも自分を、自分達を守る為にだ。

 

確かに守ってもらえて嬉しくないわけはないのだ。だが同時に自分のせいで傷付けてしまったと、罪悪感を覚える者もいる。

 

その者のうちの1人に、五月も含まれているのだ。

 

 

五月「私は何もしていないのに………!孫君だけが傷付いて…!!私は力になりたいけど、何もできなくて………!!」

 

悟飯「………そんなことない」

 

五月「………へっ…?」

 

悟飯は涙を流す五月の頭に手を置く。その手をゆっくりと動かし、五月の頭を優しく撫でる。

 

悟飯「何もしていないなんてことはないんだよ、五月さん。僕は五月さんのお陰で毎日が楽しいんだ。今までがつまらなかったわけじゃないんだ。でもね、五月さんと………。五月さん達と出会ってから僕の周りは騒がしくなったんだ…………。最近はそんな生活もいいなって思い始めて………。そんな平和な生活を守りたいって思った」

 

決してつまらなかったわけではないが、五つ子と出会ってからというもの、勉強を教える楽しさも覚えたし、風太郎と悟飯は価値観が似たようなものであったが、五つ子はそうでもなく、悟飯に新しいことを教えてくれた。

 

五つ子に振り回される生活に、悟飯はいつの間にか慣れ、そんな生活を守りたいと思うようにもなった。

 

恋というものが決してバカにしてはいけないものだということも分かった。

 

五つ子に勉強を教えるだけじゃない。悟飯もまた、五つ子から沢山のことを学んだのだ。平和な世界での生活というものを…………。

 

悟飯「……だから、そんな顔をしないで…………。君には泣いてほしくない」

 

五月「……孫君…………」

 

悟飯は体力を消耗してしまったため、戦いに加勢することは現実的ではない。だから五月を慰めることにした。

 

 

「…………お取り込み中悪いな」

 

悟飯「……!ピッコロさん…!」

 

ようやくピッコロが到着した。ということは、即ち………。

 

五月「………お、お母さん……?」

 

魂だけの状態とはいえ、本物の零奈もまた、ここに到着したことを意味していた。

 

零奈「五月………。大きくなりましたね…………」

 

五月「本物………ですか?」

 

ピッコロ「ああ。よく見てみろ。頭に輪っかが付いているだろう?それは死人の証だ。更に足もないだろう?それは魂だけの存在だという証だ」

 

五月にとってはそんなことは些細な問題だった。本物の母親に久しぶりに会えたのだ。死ぬまで二度と会えないと思われていたあの母親に………。

 

五月は嬉しかった。抱きつきたかった。だが、姉妹4人が取り込まれてしまったこの状況では、素直にそれを実行する気にもならなかった。

 

零奈「ええ、あなた達の知る母親です」

 

ピッコロ「随分体力が消耗しているな。これを食え、仙豆だ」

 

悟飯はピッコロから仙豆を受け取るとそれを口に含み、数回噛んでから飲み込むと、傷は塞がって怪我も治り、体力も全快した。

 

悟飯「ありがとうございます!これで僕も加勢しに………」

 

ピッコロ「待て。まだその時ではない」

 

悟飯「な、何故……!?」

 

ピッコロ「もう少し待て。未来の悟飯があと少しでなんとかしてくれるはずだ」

 

悟飯「……?どういう意味です?」

 

ピッコロ「まあ見ていろ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

未来五月「はっ!!!」ブン‼︎

 

超2未来悟飯「……!」

 

人造人間は、先程現代の悟飯にも命中させた針型の気弾をいくつも出現させる。その針を未来悟飯に向け発進させる。

 

超2未来悟飯「はっ!!」ガッ‼︎

 

未来五月「……!?」

 

だが、悟飯は避けることもバリアを張ることもしなかった。腕で受け止めたのだ。気でできた左腕なら、その気弾によって状態異常になることはない。

 

未来五月「な、なら…!!」ブン

 

針が通用しないと理解すると、今度はリボンを出現させた。そのリボンを伸ばして……………。

 

超2未来悟飯「そっちがそうするなら、こうだ!」ギューン‼︎

 

未来五月「はっ…!?」

 

なんと、未来悟飯も気弾でできた左腕を伸ばしてきた。伸ばした腕でリボンを掴むと、人造人間から奪い取ってみせた。

 

未来五月「くぅ……!!馬鹿な…!!」

 

超2未来悟飯「………はっ!!!」

 

 

ドグォオオオン!!!

 

 

未来五月「……!!ッ」

 

 

そして未来悟飯はリボンを爆破する。逆に利用できそうだが、何故わざわざ爆破したのだろうか…?

 

 

超2未来悟飯「こいつは手に触れていなくても動かすことができるんだろう?オレがリボンを奪って油断している隙にこれで拘束するつもりだったんだろうが、その手には乗らないぞ」

 

未来五月「……どうやら油断も隙もないようだな…。同じ孫悟飯でもまるで別人のようだ」

 

超2未来悟飯「オレもこうはなりたくなかったさ………」

 

未来悟飯のこの鋭い洞察力と感は絶望的な世界で得たもの。常に平和とは程遠い世界で生きてきたからこそ得た技術なのだ。未来悟飯も積極的にこの技術を得たわけではない。

 

未来五月「まあ、これなら回避はできないだろうが………」

 

人造人間は再びヘッドホンをマイク付きヘッドホンに変化させる。

 

超2未来悟飯「………?」

 

流石の未来悟飯も何かをするのか見当もつかなかった。だか取り敢えずどんな攻撃が来てもいいように警戒はする。

 

未来五月「……"落ちろ"」

 

 

ドンッッ!!!!!

 

 

超2未来悟飯「ぐぬっ……ぬッ!?」

 

 

未来悟飯は何もしていないのに地面に吸い込まれるように墜落していく。途中で気を解放してなんとか術を解くことに成功したが、どういうメカニズムで自分を落としたのか、未来悟飯にはまだ理解できていなかった。

 

超2未来悟飯「……(言葉にするだけで実行できる技…?これは最早超能力や魔術の域だ………。どうすれば回避できるんだ?)」

 

未来悟飯は持ち前の頭脳で考察するも、核心には至らなかった。

 

未来五月「………"落ちろ"」

 

超2未来悟飯「………(だが何もせずにやられっぱなしになるわけにはいかない。取り敢えず探るんだ。どうやって攻撃しているのかを……!!)はぁっ!!」

 

 

カァッ!!!!

 

 

未来悟飯は自分と人造人間との直線上に気弾を放つ。少しすると……

 

 

ドンッ………!!!

 

 

超2未来悟飯「……!」

 

 

気弾が急降下したのだ。人造人間が発言してから僅かなラグがあるのでもしや?とは思ったが、どうやら言えば良いというものではないらしい。

 

発言した時、特殊な効果を持つ透明な気弾のようなものが飛び出し、それが対象に命中することによって初めて効果が発揮されるようだ。

 

 

超2未来悟飯「そういうことなら…!」

 

 

ブォンッ!!

 

 

未来悟飯は気の塊でできた左腕、特に左手を円状に広げて傘状の盾を作った。

 

それを自分の前に突き出したまま人造人間に向けて突進する。

 

未来五月「仕組みが分かったところで無意味だ!"爆せろ"!!」

 

超2未来悟飯「今だッ!!」

 

悟飯は先程の感覚を頼りに、左腕腕の先端部分、つまりバリアを切り離す。するとそのバリアは突然爆発する。

 

超2未来悟飯「そしてこうだ!」

 

 

ギューンッ!!!

 

 

ガシッ!!!

 

 

未来五月「な、なにぃ!?」

 

未来悟飯は左腕は煙を通り抜けて人造人間へと突き進み、その腕は人造人間に巻きついて拘束をした。

 

 

未来五月「馬鹿め!!それでは貴様が動けないだろうッ!!!」

 

しかし人造人間は未来悟飯に生まれた隙を利用して、先程の針を生成して未来悟飯に向けて発射した。

 

 

 

 

 

だが………。

 

 

超2未来悟飯「無駄だ」ブチッ

 

 

未来五月「!?ッ」

 

 

気の塊である左腕は、伸ばすこともできるし、消滅させることもできるし、切り離すこともできる。既に巻き付いている部分だけ残してしまえば、人造人間を拘束しつつ回避することができるのだ。

 

未来五月「だが無駄だ!!!」

 

しかし、針の気弾は90°だろうが180°だろうが方向転換が可能な仕様だ。未来悟飯の策略も無駄に思われた……。

 

 

超2未来悟飯「………」ドシューン‼︎

 

 

未来悟飯は人造人間に向けて舞空術で飛ぶ。人造人間に限界まで近付くと、未来悟飯は急上昇する。

 

未来五月「私を油断させて自滅させようという作戦か。見え見えだぞ!!」

 

無論、相手もそんな単純ではない。だがこれで良かった。方向転換に気を取られているからいいのだ。

 

 

シュン‼︎

 

 

未来五月「……?」

 

未来悟飯は針の後ろに高速移動すると…………

 

 

 

超2未来悟飯「ハッ!!!!!!」

 

 

 

 

ドンッッッ!!!!!!

 

 

 

気合で針を後押ししてやった。

 

 

 

未来五月「なっ……」

 

 

プスッ…………

 

 

未来五月「ぐっ…!しまっ………」

 

 

未来悟飯のこのような行動は流石に予測できなかったのか、人造人間は対処できなかった。そのまま針の効果で強烈な眠気に襲われた。

 

これこそ、未来悟飯とピッコロの狙い。この状況を作り出したかったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

ピッコロ「今だ!!行くぞ!!」

 

零奈「はい!」

 

ピッコロ「かぁああああ……!!!!!はっ!!!!!!」

 

零奈「……!!」ググッ

 

 

 

ピッコロが右手を前に突き出すと、零奈は人造人間に吸い込まれるように引っ張られていく。

 

五月「ちょっと!?何してるんですか!?」

 

ピッコロ「適正な魂を入れてやる。それだけの話だッ!!!!」

 

 

スポンッ

 

 

未来五月「なに……?何か、入ってきやがった………!?」

 

 

そのまま魂状の零奈は、人造人間の中に入ってしまう。

 

悟飯「な!?何をしているんですか!?」

 

ピッコロ「これでいいんだ。あの体は中野零奈のクローン体だ。本物の零奈の魂が入れば、零奈がその体の所有者になるはずだ………」

 

悟飯「そ、そもそも、ピッコロさんはどこでそんな技を………」

 

ピッコロ「これは前の神の技だ。自分が人間に憑依することはあったが、他人を他人に憑依させるのは初めてだったから完全に賭けだったが、取り敢えず上手くいったようだ…………」

 

これは、先代の神が天下一武道会に、『シェン』という選手として出場した時に使用した技だった。その時の神は人間の体を借りてまだ邪気が濃かった頃のピッコロを封印しようとしたが、失敗に終わってしまった。

 

今回はその技の応用をしたのだ。

 

ピッコロ「(孫。ヤツの中はどうなっている?見えるか?)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

悟空「ああ。見えてるぞ……。ちょっと零奈だけじゃ厳しいかもしれねえ…」

 

 

気の塊でできた左腕を駆使して人造人間を翻弄した未来悟飯は、人造人間を自滅させて弱らせることに成功した。

 

その隙をついて、ピッコロが零奈を人造人間の中に送り込んでしまった!

 

どうやらこれが悟空の作戦のようだが、果たして上手く行くのだろうか?

 




 零奈が人造人間零奈に入り込む展開はかなり最初の方から考えていました。過程で詰まったのでペースが落ちていましたが………。人造人間零奈編もそろそろ終盤に差し掛かってきました。あと1,2話で決着がつくと思います。

 それと、以前から言っていたR-18作品についてですが、完成したので近いうちにpixivに投稿すると思います。投稿したら、第22話と最新話の後書きにURLを載せる予定です。

 おや?今日は四葉の日ですか…。


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第52話 解放

 人造人間を操っていたと思われていた未来五月は、なんとDr.ゲロのコンピュータのAIに操られていたことが判明!未来五月を完全に洗脳し、人造人間は本領を発揮するが、精神と時の部屋で修行をした未来の悟飯は、単純に戦闘力が上がっただけでなく、気の応用も大幅に効くようになっていた。

 そこにピッコロと、あの世からやってきた零奈が到着した。隙を見計らって、ピッコロは人造人間の中に零奈の魂を憑依させた。これが今後の戦いにどのように影響するのだろうか?



零奈「………上手く入り込めたようですね………」

 

 

最初にこの提案をされたときは本当に驚いた。

 

まず、パラレルワールドから私をモデルに作られた人造人間……所謂、サイボーグが娘達に危害を加えていると聞いた時は取り乱してしまったが、私が娘達を助け出せる可能性があると聞いたときは更に取り乱してしまった。

 

私も母親として、娘達を救いたかった。例え地獄に落ちようとも、未来ある娘達を、愛する娘達を助けたかった。その思いで再びこの世に戻ってきたのだ。

 

零奈「………!?一花?」

 

髪は私が知っているものよりもかなり短くなっていたが、それでも一花だとすぐに分かった。右耳にピアスを付け、ショートカットヘアにしたようだ。その一花はよく分からない紐のようなもので捕らえられている。意識はないようだが、悟空さんやピッコロさんの話によれば生きているらしい。

 

 

零奈「……二乃」

 

二乃はセミロングのツーサイドステップ……。蝶々のような美しい髪飾りを付けており、服装から見てもオシャレに気を使っているのがよく分かった。

 

そんな二乃も一花同様に拘束されて、気絶している。

 

零奈「……三玖」

 

三玖は二乃とは正反対だ。オシャレに気を使っていなさそうだ。首にヘッドホンをつけており、前髪で片目が隠れてしまっている。

 

零奈「………四葉」

 

 

ある日突然リボンをつけ始めた四葉が目の前にいた。このリボンを見てすぐに四葉だと気付いた。彼女は特別であることに拘っていたが、一時的なものではないらしい。

 

……何に拘っていたのかは、私には分からなかった。だが四葉にとっては余程重要なことだったのだろう……。そう思うと、四葉のリボンをもう少し褒めてあげても良かったのかな……と今更ながら後悔してしまう。

 

 

 

 

………私がこの体に入れば、主導権は私に握られるはずだと聞いた。だがまだ体を自由に動かせそうにない。それに、未来の五月も見つけていない。この人造人間を造り出した張本人はどこに…………。

 

 

「…………まさかのご本人が登場とはな………。これは流石に驚愕した」

 

零奈「!?何者ですか!?」

 

「私はDr.ゲロの意思を継ぐ者…。お前はここに何をしにきた?」

 

零奈「私は娘達を救い出したいだけです。あなたがこの体の主導権を握っている方ですね?娘達を解放しなさい…!」

 

「それは不可能な相談だ。失せろ」

 

零奈「そうはいきません。私は娘達を助ける為に再びあの世からここに来たのです…。解放するまではここに留まり続けます」

 

「なら、力付くで私を倒してみろ。貴様には不可能だろうがな」

 

 

零奈「………!!!」

 

 

零奈は突然意識を奪われそうになるが、なんとか耐える。

 

 

「私はまだ力のほんの一部しか使ってない。私が本気になれば、お前は永遠にここに囚われ続けることになる。それでもいいのか?よくないなら出て行くことだな」

 

零奈「………何故です?」

 

「なに?」

 

零奈「何故、私を追い出そうとするのです?娘達と同じように取り込んでしまえばいいものを………」

 

「…………既に完全体になったからこれ以上は不要なのだ」

 

零奈「私がいると不都合なのですね?私はこの体と相性がいい。それもそうです。この体は私の体のようなものなのですから当然です。私がいると、主導権を取られかねないから追い出そうとしている。そうでしょう?」

 

 

 

 

 

 

ガシッ!!

 

 

零奈「なっ……!?」

 

 

零奈は謎の黒い霧のようなものに四肢を掴まれ、身動きができなくなった。

 

「貴様ぁ…!好き勝手言いよって…!!そんなに死にたいなら、ここで消滅させてやる!!」

 

零奈「ぐっ………!!」

 

「私というプログラムを完全に消し去らない限りお前が主導権を握ることはない!!だが貴様にはその力がないのだ!!諦めろッ!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『まずい!このままじゃ零奈が消滅しちまう!!』

 

ピッコロ「(なに!?どうすればいいのだ!?)」

 

『あの人造人間の中にいる爺さんを倒せればいいんだが……!!』

 

ピッコロ「……?(爺さんだと?まさか、そいつはDr.ゲロではないのか?)」

 

『ゲロ?よく分からねえけど、人造人間19号と一緒にいた奴にそっくりだぞ?』

 

ピッコロ「(……Dr.ゲロめ……。要はそいつを精神世界で倒すことができればいいわけだな?)」

 

『いや、確かにそうなんだが………』

 

『それ、オレにやらせてください!!』

 

『………おめぇは、未来の悟飯か?』

 

『はい!!人造人間の根源をここで断ちたいんです!!オレにやらせて下さい!!』

 

ピッコロ「(しかし、それではそこにいる人造人間は誰が食い止める?俺もお前との修行で腕を上げたとはいえ、まだまともに戦えるほどでは………)」

 

『何言ってるんですか。そこに適任者がいるでしょう?オレと同じ孫悟飯ならできるはずです』

 

『………分かった』

 

ピッコロ「(なに!?それでいいのか?)」

 

『ああ。ここは2人の悟飯に任せようぜ、ピッコロ』

 

ピッコロ「………むぅ」

 

悟飯「ぴ、ピッコロさん?」

 

悟飯と五月から見れば、ピッコロはずっと黙り込んでいるようなものだった。

 

ピッコロ「………悟飯。まだ戦えるな?」

 

悟飯「はい!!」

 

 

ピッコロ「………なら、お前は人造人間の相手をしてくれ」

 

悟飯「……?」

 

悟飯は不思議に思う。今の敵は人造人間しかいないのに、わざわざ人造人間の相手をしろと言うのか?

 

ピッコロ「……結論から言おう。Dr.ゲロのコンピュータという名のDr.ゲロが人造人間の体を支配している。そいつを内部で破壊し、零奈に主導権を握らせる」

 

悟飯「えっ…?でもどうやって……」

 

ピッコロ「そこは未来のお前に任せる。お前はその間に人造人間を食い止めるんだ。いいな?」

 

悟飯「……はい!」

 

『それじゃあピッコロさん、お願いします!!』

 

ピッコロ「かぁああああッ!!!!」

 

 

 

超2未来悟飯「……!」ググッ

 

 

 

未来悟飯も零奈と同じように、人造人間に引き込まれるようにして人造人間の中に入って姿を消した。

 

五月「そ、孫君!!」

 

悟飯「…大丈夫。僕は帰ってくるから」

 

悟飯は仏のような顔で五月に言い、安心させる。そして五月から視線を逸らして前に向くと、戦闘時の険しい顔になり、超サイヤ人2に変身する。それで振り向かないまま………。

 

超2悟飯「じゃ、行ってくる!」

 

 

ドシューンッ!!!

 

 

五月は飛び立つ悟飯の姿を見届けることしかできなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

超2未来悟飯「………ここが人造人間の精神世界か…………」

 

この中にいる悪の根源を倒してしまえば、みんなを助けることができるはずだとお父さんが言っていた。オレが不甲斐ないばかりに五月に苦労させてしまったし、手を汚してしまった。なら今度はオレが助ける番だ。

 

「………ほほう。まさかお前までここに入り込んでくるとはな…………」

 

超2未来悟飯「……!!誰だお前は!!」

 

この老人が、父さんの言ってた悪の根源なのか…?

 

「私はDr.ゲロの意思を継ぐ者だ。自己紹介後に早々悪いが、貴様には消えてもらうぞ」

 

超2未来悟飯「そう簡単に消されてなるものか!死ぬならせめてここにいるみんなを助けてから死んでやる!」

 

「ほう。命を捨てることに躊躇がないようだな……。その勇気は褒めてつかわそう。だが、貴様はここに入ってきた時点で敗北が確定している」

 

 

超2未来悟飯「………!!ッ」

 

な、なんだ……!?意識が遠のいていくようだ……!!!

 

 

「ここは人造人間の中だ。つまりこのフィールドは私の意のままに操作することができるということだ。貴様が不利になるように設定することも可能だ」

 

超2未来悟飯「ぐっ……!!くそぉ…!!」

 

ま、まずい……!!ここで気を失うわけにはいかない……!!五月の苦労に比べれば、こんなもの………!!!

 

 

 

 

ドンッッ!!!!!

 

「ぐっ……!!」

 

 

突然、空間が揺れだす。なんだ?これもあいつの仕業か?

 

 

「ちぃ…!外からも内からも孫悟飯が攻めてくるとは……!!小賢しい真似を……!!!!」

 

 

そういうことか…!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

未来五月「ぐぅ……!!」

 

五月の姿をした人造人間は、精神内で未来悟飯の対処に気を取られていた為、悟飯に先制攻撃を許してしまう。

 

未来五月「ちぃ…!外からも内からも孫悟飯が攻めてくるとは……!!小賢しい真似を……!!!!」

 

超2悟飯「人を騙して吸収したお前が言うのか……」

 

未来五月「いいだろう!内の悟飯も外の悟飯も纏めて片付けてくれる!!」

 

人造人間はリボンを取り出し、悟飯を拘束する為にそれを伸ばす。

 

 

 

 

 

ズバッ!!!

 

 

未来五月「……!!!」

 

クリリン「よし!切れた!!」

 

だが、気円斬によって伸びていたリボンは途中で切り落とされてしまう。

 

未来五月「雑魚の癖に生意気な……!!」

 

 

 

 

ドグォオオオオオオン!!!!

 

 

今度は天津飯の気功砲が命中する。ダメージは大したことがないとはいえ、妨害されて人造人間は苛立っていた。

 

 

 

 

ドカッ!!!!

 

 

未来五月「ごはっ………!!!」

 

 

そちらに気を取られている隙に悟飯が腹部に拳を叩きつけると、そのまま気弾を発射し、吹き飛んだ人造人間に更に追い討ちをかけるように拳圧で攻撃をした。

 

未来五月「おのれぇ………!!!一気に片付けてやるッ!!!界王拳ッ!!」

 

 

ギャウウウウッ!!!!

 

 

超2悟飯「しまった……!!」

 

人造人間はついに堪忍袋の尾が切れて界王拳を使用する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふはははははっ!!!これで外の孫悟飯はもう終わりだッ!!!外のお前を片付けたら次は貴様の番だ!!」

 

超2未来悟飯「こいつ…!」

 

未来悟飯は精神世界でコンピュータに立ち向かっていたが、環境が未来悟飯にとっては不利であった。

 

未来悟飯は精神も鍛え上げられているからこそここまで耐えることができているが、並の者なら既に洗脳されているところだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シュン

 

 

ドコォオオオッ!!!!!

 

 

 

「ぐぅぅ……!!」

 

未来悟飯は意識を繋ぎ止めつつ、AIに強烈な一撃を叩き込んだ。

 

「何故だ……。何故この環境でそこまで足掻くことができる……!!」

 

超2未来悟飯「これ以上オレの力不足を理由に犠牲者を出したくないんだ…!!貴様を倒し、悪の根源をここで絶つ!!」

 

「ほざけ小僧!!貴様だけで何ができる?下手にここで暴れれば、五月の心が壊れかねないし、一花、二乃、三玖、四葉も無事だとは限らない!零奈に至っては魂が消滅する可能性がある!!この環境下で貴様一人でなにができるというのだ!!!!」

 

超2未来悟飯「勘違いするな。今戦っているのはオレだけじゃない」

 

「外の世界の奴らは既に敗北確定!!ならば残りは貴様だけだろう!!」

 

超2未来悟飯「何を言っているんだ。"ここ"にもオレと共に戦ってくれている仲間がいる!!」

 

「まるで意味が分からん」

 

超2未来悟飯「なら、外の様子を確認してきたらどうだ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

ドカッ!!!

 

 

ドコッ!!!!!

 

 

未来五月「はぁ……!はぁ…!な、何故だ…!!何故界王拳を使用しているのにも関わらず、貴様に及ばないのだ!?」

 

超2悟飯「さあな。俺にも分からないが、この好機を逃がす手はない!!」

 

そう。セルをも上回る力を持っているはずの人造人間は、現代の孫悟飯に押されていた。先程弱っていた悟飯が全快したことによって、サイヤ人の特性が発動して戦闘力が上がった可能性がある。しかしそれを加味したとしても、界王拳を使用している人造人間を相手に押しているのは明らかにおかしい。

 

 

考えられるのは、内部の不調だった。

 

 

 

 

 

 

「ま、まさか…………!」

 

 

超2未来悟飯「意識はなくとも、お前の好き勝手な行いを止める為に抵抗してくれているようだな。オレも数年という短い時間しか関わってなかったとはいえ、みんなのことはよく知っている。あの子達は、一筋縄ではいかないぞ?」

 

 

人造人間に取り込まれてエネルギー源にされている四人が抵抗をしているのだ。精神を極限まで統一させることによって初めて成功する界王拳とこの状況は相性が悪すぎたのだ。

 

「く、くそぉ……!!ならば、せめて貴様だけでも葬ってやる……!!」

 

 

AIは精神世界の環境を変え、悟飯を始末しにかかる。だが、上手く作動しなかった。

 

「なっ!?何故だ!?まさかあの五つ子がここまで干渉してこれるはずがない!?なら何故コントロールが効かない!?」

 

零奈「娘達の想いが勝ったのですよ。あなたの野望にね」

 

「なっ……!!貴様、洗脳されたはずでは……!!!」

 

零奈「私は地獄に落ちる……いえ、消滅することをも覚悟でここに来ました。あなたの下らない野心に、娘を助ける為にここに来た母親が敗北するわけがないでしょう!!!!」

 

零奈は先程洗脳されかけたが、娘達を助けるという強い意思のお陰でなんとか回避することはできた。だがそのままAIに立ち向かっても分が悪いことは分かりきっていたので、応援が来るまでは洗脳されたふりをしていたのだ。

 

「に、人間どもめ…!許さん……!!許さんぞぉ………!!」

 

零奈にようやく人造人間の主導権が渡った。これによって、AIは最早ただのお飾りとなったはずだ。あとは諸悪の根源を追い出すだけだ。

 

超2未来悟飯「本当はオレの手で倒したいところだが、ここで強力な力を使ってしまってはみんなが危ない…。だから追い出させてもらうぞ……!!」

 

零奈「私の家族に危害を加える不届き者は、出ていきなさい!!!」

 

 

 

ドンッッ!!!

 

 

「ぐぬぬぬっ………!!!ここでワシが負けるわけにはいかぬ……!!この人造人間は、ワシにとって最後の希望なのだ…………!!!!」

 

零奈が主導権を握ったことによって、人造人間の精神世界から諸悪の根源である、"Dr.ゲロをモデルに作られた"コンピュータのAIを追い出そうとするが、AIは最後の力を振り絞って留まり続けようとする。

 

超2未来悟飯「もうお前は負けたんだよ。諦めろ」

 

未来悟飯が静かにそう怒鳴ると、AIを殴り飛ばす。

 

 

「ば、馬鹿なぁ………!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

AIを見事に追い出すことに成功し、未来悟飯は超サイヤ人状態を解除した。

 

未来悟飯「………初めまして。あなたが本物の零奈さんですね」

 

零奈「ええ……。あなたのことは悟空さんからお話は伺っています」

 

未来悟飯「お父さんが………。ごめんなさい。オレが弱かった為に、五月以外はみんな死んでしまいました……。この世界のオレは見事に5人とも守り切っていますが…………」

 

零奈「謝らないで下さい。あなたは五月だけでも守ってくれた……。それだけで十分です。確かに、別世界とはいえ娘達が殺されてしまったのは誠に遺憾です………。でも、あなたのせいではありません……………」

 

未来悟飯「零奈さん……………」

 

二人がそんな会話をしていると、黒い煙に包まれていた未来の五月が姿を現した。

 

未来五月「………わ、私は………」

 

未来悟飯「五月!良かった……」

 

未来五月「孫君………。隣にいる人って……………」

 

未来悟飯「ああ、君がよく知っている人だよ」

 

五月はゆっくりと零奈に向かって歩み始める。顔をマジマジと観察し、本物の母親であることを確信すると、零奈に向かって走り出した。

 

未来悟飯はその様子を微笑みながら見守っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

パシンッ!!

 

未来五月「………?」

 

未来悟飯「ええ!?」

 

だが、乾いた音が響いた。叩かれたのは五月。叩いたのは、零奈だった……。

 

未来五月「お、お母さん………?」

 

零奈「五月……。あなたは何をしたのか、分かっていますか?」

 

未来五月「……………」

 

五月は心当たりがあるのか、すっかり黙り込んでしまう。

 

零奈「姉妹も友人も殺され、憎しみを抱いてしまうのは仕方ないでしょう…。ですがあなたはやってはいけないことをしました。墓から骨壷を掘り出す…。ましてや、そこからクローン人間を作ってしまうなんて…………」

 

未来五月「………でも、私は人造人間に復讐したかったんです。心のどこかでやってはいけないと思いつつも、お母さんに人造人間を倒してほしかったという思いが強すぎて……………」

 

零奈「………あなたはこの世界の娘達も、孫君達にも迷惑をかけました……。下手したらこの世界もあなたの世界のような状況に陥っていた可能性があるのですよ?」

 

未来五月「ごめんなさい……。私が軽率な行動をしたばかりに……!ごめんなさい……!!」

 

五月は涙を流しながら零奈に謝罪し続けていた。悟飯は何故五月が心を壊し、人造人間を造ったのかを知っている。そしてその原因が自分にもあることを知っていた。

 

未来悟飯「零奈さん。五月のこの行動にはオレにも責任があります。オレが最初から人造人間を倒す力を持ち合わせていればこんなことにはならなかった……。五月が罪を背負わなければならないというのなら、オレも一緒に背負います」

 

未来五月「そ、孫君…………」

 

零奈「…………………あなたの努力を否定したいわけではありません。でもこれだけは言わせて下さい……」

 

零奈は大きく息を吸うと…………。

 

 

零奈「五月ッ!!!少しは自分の身体を大切にしなさいッ!!!

 

五月は自分の行いのことで更に怒られると思っていた。しかし零奈から浴びせられた言葉は、予想に反して自分を心配する意味を孕んだ言葉だった。

 

未来五月「お母さん…………?」

 

零奈「本当はもっと叱りたいことが沢山あります…。でもあなたの精神状態が正常でなかったことは私も分かっているつもりです。ですからこれ以上は説教はしません」

 

 

零奈は目の前にいる五月を抱きしめ、慈愛に満ちた顔で…………

 

 

零奈「………今までよく頑張りましたね、五月……………」

 

 

暖かく、優しい声で、そう言った。

 

 

未来五月「うん……。うん……!私、頑張ったんだよ……!!みんなの仇を打ちたくて………!!私………!!!」

 

零奈「ええ………。よく頑張りました………」

 

 

 

 

 

 

 

未来悟飯「よかった……………」

 

 

未来悟飯はその親子の一部始終を、静かに眺めていた。

 

しばらく五月は零奈の胸の中で泣いていたが、泣き疲れてしまったのか、そのまま眠ってしまった。

 

零奈「大きくなっても、甘えん坊さんですね…………」

 

未来悟飯「…………零奈さん。これからどうするんです?」

 

零奈「私はこの中に残ります」

 

未来悟飯「えっ……!?の、残るって…!?」

 

零奈「孫悟空さんが閻魔大王様に融通を効かせて下さいました。私の過去の話を聞いて思うところがあったのでしょう」

 

未来悟飯「お父さんが………。しかし、その身体は人造人間です…。普通の人間とはわけが…………」

 

零奈「それも承知の上です。娘達が望んでくれるのなら、私はこの世界で過ごしたいと思っています…………」

 

未来悟飯「……………そうですか」

 

未来悟飯は零奈の覚悟を聞き取り、後は何も言わなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

超2悟飯「………?なんだ?」

 

未来五月「………」

 

 

先程から、人造人間の動きが止まった

 

 

ままだった。悟飯は不意打ちに警戒しながらも、様子を冷静に伺う。

 

ところが、人造人間は全く動く気配がなかった。

 

超2悟飯「ど、どういうことだ…?」

 

クリリン「な、なあ………もしかして、中で未来の悟飯が何かしてくれたんじゃねえか?」

 

天津飯「そうだといいが、突然動きだすかもしれないぞ………」

 

その場にいたZ戦士は警戒を続けながら人造人間を観察した。

 

未来五月「……はっ…!」

 

天津飯「構えろ!!」

 

クリリン「うわっ!」

 

突然人造人間が動き出したので、天津飯とクリリンは最大限警戒する。

 

未来五月「はぁ……!はぁ………!!」

 

超2悟飯「……!!魔閃……!!」

 

 

悟飯は相手がエネルギー砲を撃ってくると踏んで、かめはめ波では跳ね返される可能性があるので、魔閃光で対抗しようと準備をする。しかし……。

 

 

未来五月「はっくしょん………!!!

 

 

超2悟飯「………へっ?」

 

クリリン「はぁ?」

 

天津飯「なに?」

 

 

ただくしゃみをしただけだった。警戒していただけに、Z戦士達は情けない声を出してしまう。

 

クリリン「な、なに?また動きを見せたと思えば、くしゃみ?」

 

天津飯「人造人間もくしゃみをするのだな…………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だが、ただのくしゃみではなかった。Dr.ゲロの意思を持ったAIがくしゃみと同時に追い出されたのだ。

 

「くっ!くそぉ……!!!だがワシは生き返ることができた……!!また新たな人造人間を造り、奴らに必ず復讐してやる……!!」

 

Dr.ゲロとして現実世界に出現したAIは復讐を胸に誓ってその場を去る…………

 

 

 

 

 

「残念ながらその復讐は達成されない」

 

「………!!!!」

 

「何故なら、今この場で俺に殺されてしまうからだッ!!!」

 

 

 

 

………ことは、もう一人の未来の戦士によって阻止された。

 

超トランクス「Dr.ゲロ…!貴様があの人造人間を操っていたのか……!!」

 

「と、トランクス……!!」

 

超トランクス「貴様には苦労させられた!俺の世界は17号と18号に蹂躙されるし、この世界ではセルに苦労させられ、あの人造人間にも世話になった」

 

「に、にげ……!!」

 

超トランクス「俺は憎い!人造人間よりも!!人造人間を生み出した貴様がッ!!!!消えて無くなってしまえッ!!!!!!!」

 

 

 

ズドォオオオオンッ!!!!!

 

「ちくしょーーーー!!!!!!!」

 

 

 

ドグォオオオオオオオオオオオオンッ!!!!!!!

 

新たに誕生したDr.ゲロは、トランクスによって綺麗に掃除された………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

未来五月「………」ヒュー

 

 

超2悟飯「!?」

 

天津飯「今度はなんだ…?」

 

クリリン「向こうでもトランクスが何かしたみたいだし、やっぱり何か作戦を立ててたんじゃ…?」

 

人造人間は地表にゆっくりと降り立ったので、Z戦士も地上に降り、地上戦の準備をする。だが………。

 

 

 

未来五月「………」ピカァアア

 

 

人造人間が光出すと、その光は6つに分かれ、それぞれが人間の形に変化する。

 

未来悟飯「………………ようやく終わったのか………?」

 

光のうちの一つは未来悟飯に変化する。残りの五つの光は、5人とも容姿がそっくりな少女に変化する。

 

 

クリリン「おっとっと!」

 

天津飯「………そっくりだな」

 

クリリンは倒れてくる一花を、天津飯は四葉を抱える。

 

 

悟飯は二乃と三玖の二人を抱え込んだ。

 

超2悟飯「よかった……。みんな無事だったのか……………」

 

そして、未来悟飯は……………。

 

 

 

未来悟飯「…………お帰り、五月」

 

 

どこか満足気で、幸せそうな顔をさせながら可愛らしい寝息を立てて眠っている未来五月を抱えた。

 

 

 

そして、肝心の人造人間は、元の五つ子の母親の姿に戻った。

 

 

零奈「………皆さん、ご迷惑をお掛けしました」

 

天津飯「………??」

 

クリリン「あ、謝ってきたぁ!?」

 

零奈「私はもう戦うつもりはありません……。この度は本当にお騒がせしました」

 

クリリン「い、いや!いきなりそんなこと言われたって…………」

 

未来悟飯「………いや、クリリンさん。この人の言うことは信用しても大丈夫ですよ」

 

クリリン「へっ?な、なんで……?」

 

未来悟飯「………この人は、本物の母親だから…………」

 

クリリン「いや……。言っている意味がよく分からないんだけど………」

 

天津飯「だが未来の悟飯の言う通りかもしれん。相手から戦意は感じられない」

 

クリリン「た、確かにそうかもしれないが……」

 

クリリンと天津飯はイマイチ状況が掴めなかったが、さらに悟飯が超サイヤ人を解除したので、二人も人造人間に対する警戒を解いた。

 

 

 

 

 

 

 

「悟飯さーーーん!!」

 

未来悟飯「……!!!」

 

悟飯は耳を疑った。この声は自分がよく知っている言葉だった。この世界の彼はまだ幼いからこんな低い声は出せないだろう。だが、自分の世界の彼は自分についてきていないはずだ。

 

 

 

スタッ

 

超トランクス「ほ、本物だ……!!俺がよく知る方の、悟飯さんだ………!!」

 

未来悟飯「………………そうか。君が未来から来たというトランクスか……」

 

超トランクス「俺の時代での悟飯さんは死んでしまいましたが……、こうして再会できて俺は嬉しいです……!!」

 

未来悟飯「……オレも嬉しいぞ。オレの期待以上に腕を上げてくれたみたいだ………」

 

 

 

 

 

 

悟飯「………僕達はお邪魔なようですね」

 

クリリン「取り敢えず、この子達は病院に運べばいいのか?」

 

悟飯「はい。僕の知り合いに院長さんがいるので、その病院に行きましょう」

 

ピッコロ「待て。お前はここに残ってやれ」

 

悟飯「ピッコロさん…?」

 

天津飯「ピッコロか。久しぶりだな」

 

クリリン「よっ!」

 

ピッコロ「………ああ」

 

ピッコロは一言だけ返事をし、悟飯が担いでいた三玖と二乃を持つと、今度はピッコロが二人を担いだ。

 

悟飯「いや!僕が連れて行きますよ!!病院の場所を知っているのは…………」

 

ピッコロ「大丈夫だ。俺も把握している。それに、お前の帰還を持っている者がいることを忘れるな」バシューン‼︎

 

クリリン「あっ!おい待てよピッコロ!」

 

天津飯「素直じゃないやつだな、ピッコロは」バシューン

 

ピッコロの後を追うように、クリリンと天津飯も病院に向かった。

 

 

 

 

スタッ

 

悟飯は仕方なく地上に降り立った。

 

悟飯「うーん………。どうしてピッコロさんはあんなことを…………?」

 

 

タッタッタッ………

 

 

悟飯「………?」

 

 

タッタッタッ!!

 

 

 

悟飯「うわっ!?」

 

ボフッ!!

 

 

突然、悟飯の胸の中に飛び込む者がいた。その正体は言うまでもない……。

 

 

五月「……………」

 

悟飯「い、五月さん………?」

 

五月「………私、結局何もできませんでした。ただ孫君の無事を祈ることしかできませんでした」

 

悟飯「五月さん…………」

 

五月「私、凄く心配したんですよ……?今度こそ本当に孫君はいなくなってしまうんじゃないかって、一瞬でもそう考えてしまうと、怖くて…!怖くて…!!」

 

悟飯「……心配し過ぎだよ。でもごめんね………」

 

五月「…………姉達は、無事ですか?」

 

悟飯「うん。みんな気を失っているけど、命に別条はなさそうだよ……」

 

五月「………良かった……。誰もいなくならなくて…………。孫君が帰ってきてくれて…………。本当に…………」

 

悟飯「………………うん……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

零奈「あの、お取り込み中申し訳ありませんが、私もいることをお忘れなく…………」

 

 

五月「……………//////」

 

五月は想い人に体を預けている姿を母親に見られて、顔を赤らめながらゆっくり離れた。だが名残惜しそうに悟飯の顔を見る…。

 

零奈「………あの五月が私以外に甘えるなんて……………」

 

五月「お、お母さん……!!これは………!!」

 

零奈「…………私を母として認めてくれますか………?」

 

五月「………えっ…?」

 

五月はピッコロから事情を聞いていた為、目の前の母親に似た人造人間は、体はともかく中身は本物の母親であることは理解していた。

 

零奈「私は幼いあなた達を残したままあの世に旅立ってしまいました。…今更ではありますが、娘達を見守りたいから、この世に戻ってきました……。でも私は一度死んだ身です……。もし、あなた達が許してくれるなら、もう一度、私と一緒に暮らしてくれませんか?」

 

 

数秒、沈黙した。

 

 

 

その沈黙を破るように、五月は口を開いた。

 

五月「こちらこそ喜んで!本物の母親ならば大歓迎です!!」

 

 

ドンッ

 

五月は零奈に向かって駆け出し、飛び込んだ。零奈は五月を受け止め、抱きしめ返した。

 

五月「………お帰り、お母さん…!!」

 

零奈「…………ただいま、五月………」

 

 

そんな光景を見て、悟飯は自然に頬が緩んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

悟空「いや〜!良かった良かった!!これでみんなハッピーだな!!」

 

界王「全く…。お前さんはとんでもないことを思いつくものだな…………」

 

悟空「まあこれで良かったじゃねえか!誰も死なずに済んだんだし、零奈も生き返れてよかったな!」

 

界王「いや、正確にはお前は………」

 

悟空「ん?どうかしたか、界王様?」

 

界王「………いや、お前がいいならそれでいいんじゃ…」

 

悟空「なんだよ~、はっきり言ってくれよ~」

 

界王「なんでもないから気にするな……」

 




 というわけで、ここで人造人間零奈編は一区切りです。最後はちょっと雑というか軽い感じになってしまったような気はしますが、なんとかハッピーエンドにすることができた……!!

 こうして中野家の母親は蘇ることができました。元々は『未来悟飯を出してほしい!!』というリクエストだったのですが、色々なアイデアと統合してここまで壮大(当社比)な物語ができました。ただ、長編オリジナルストーリーだったので、かなり苦労しました…(笑)。安易にオリジナルストーリーに手を出すものじゃないですね………。

反省はしている、後悔はしていない。

 と言いつつも、まだ未来悟飯や未来五月が未来に帰らなければ、人造人間零奈編は終了とは言えない気はしますが、取り敢えず一区切りですw

 次回からはラブコメ寄りのオリジナルストーリーを1,2話投稿し、その後に未来悟飯と未来五月が未来に帰って、ようやく3学期に入って全国模試編に入ると言った感じですかね。多少予定は変わる可能性はありますけどね。

 今回はがっつり戦闘だったので、しばらくはラブコメ要素強めで行きたいところではありますが、まだターレスとメタルクウラが残っているんですよねぇ……。というかブウもいるやんけ。このシリーズを始めた当初は戦闘シーンは全く入らない予定だったのに、今ではがっつり入っている……。というかメインがバトルになりつつある…()

 というか、この零奈編で何度もスランプに陥りそうになりました……。完結もしていないのに凄い達成感……。でも完結まであともう少し!なんてこともないんですよね〜……。というか五等分基準だとまだ9巻なんですよね……。あと5巻分もありますやんw

 まあとにかく、これからも頑張っていきます。この作品はゆっくりでもなんとしても完結させたいところです。

 ちなみに、前々から言っていた第22話ifのR-18は5月5日にpixivにのみ投稿予定です。URLもここに載せる予定ですので、気が向いたら見に来てね。

〜追記〜

ということで貼りました。こちらです。
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=17525005


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第53話 綺麗な満月

 人造人間の中に潜入した零奈は、中で実質主導権を握っていたDr.ゲロのコンピュータ……という名のDr.ゲロに苦戦していたが、未来悟飯も応援に駆けつけた。更に外から現代の悟飯も加勢し、二人の悟飯で内と外からそれぞれ攻めていた。

 だが、人造人間の内部にいた未来悟飯は苦戦を強いられ、圧倒的に不利だったが、無意識に悟飯達に協力をした五つ子のお陰でなんとか追い出すことに成功。トランクスが仕留めたことによって、悪の根源は完全に消滅した。

 未来五月も正気を取り戻したが、零奈に説教される。だがそれと同時に慰められ、今まで溜めていた悲しみを全て吐き出した未来五月は、満足するかのように寝てしまった。そして5人とも人造人間から解放され、無事に全員救うことができた2人の悟飯であった………。



現在、マルオの病院には5人の入院患者がいる。4人は既に意識を取り戻しているが、一応検査の為に一日だけ入院することになった。

 

だが、もう一人……。未来の五月は未だに意識を取り戻していないのだ。

 

 

 

マルオ「孫君、よく娘達を取り返してくれた……。お礼を言うよ」

 

悟飯「いえ、僕だけの力じゃありません。みんなのお陰なんです」

 

クリリン「しかし悟飯。お前、ボディガードと家庭教師を兼任しているのかよ……。つーかそれ以前に正体バレてるし……。そういう不器用なとこは悟空に似てるよな…………」

 

マルオ「あなた達にもお礼をしたい」

 

マルオはそう言うと、懐から分厚い札束を取り出す。

 

クリリン「うえ!?い、いやいや!!俺達は金目的で助けたわけじゃないですからッ!!」

 

天津飯「俺達はあくまで脅威を取り除く為に動いた。それだけのことだ」

 

マルオ「し、しかし………」

 

クリリン「ど、どうせ俺たちにやるなら、悟飯の給料にでもしてやってください!!」

 

悟飯「ええ!?クリリンさん!?」

 

マルオ「……それもそうだね。そうさせてもらうよ」

 

悟飯「ま、マルオさん!?」

 

ということで、この日の悟飯の給料はとんでもない額になったのだが、それはひとまず置いておこう。

 

未来悟飯「……それで、五月の様子は?」

 

マルオ「……未来の五月君は命に別条はないよ。ただまだ意識が戻らない……。もしかすると、人造人間に取り込まれていた時に何かしら脳機能に異常がもたらされたのかもしれない。そうなると、最悪植物状態になる可能性もある」

 

未来悟飯「そ、そんな……!!!」

 

マルオ「だが僕は医者だ。最善は尽くすつもりだよ」

 

 

 

 

 

 

マルオからの説明を受けた一同は、一旦五つ子のうちの4人の元にお見舞いという形で出向くことになった。

 

一花「いや〜…!悟飯君の知り合いって本当にユニークな人達ばかりだね…!」

 

五月「ひ、ひぃ……!み、三つ目お化け……!!」バタン

 

五月は天津飯を見て気絶してしまう。

 

悟飯「わっ!!い、五月さん!?しっかりして!?」

 

天津飯「………俺の顔、そんなに怖いのか……?」

 

未来悟飯「あ、あ〜…….その〜………。三つ目が原因かと………」

 

ちなみにだが、何故未来悟飯がこの時代にやってきたのかは既に天津飯とクリリン、トランクスにも説明済みである。

 

トランクス「………ですが、おかしいですね」

 

未来悟飯「うん?何がだ?」

 

トランクス「………俺は、そこの五つ子ちゃん達には初めて会いました」

 

未来悟飯「えっ……?ど、どういうことだ?」

 

トランクス「そもそも、俺の世界では国という概念が存在しません。だからこの世界は俺の知る歴史から随分逸脱していると言えます」

 

未来悟飯「な、なんで……?この世界はトランクスが一度来た過去の世界のはずだろ?」

 

トランクス「はい。そのはずなんですが…………」

 

悟飯「……実は先日、並行世界から来たというセルと戦いました。そいつは幾つもの世界を巡ったと言っていました」

 

未来悟飯「……つまり、そのセルという人造人間がいくつも並行世界を生み出したことによって、この世界の歴史は本来のものとは大きくズレてしまった………そう言いたいのかい?」

 

悟飯「はい…………」

 

何やら難しい話をしており、五つ子はよく分からないというような顔をしていた。小難しい話ばかり聞いてもつまらなかったのか、二乃が口を開く。

 

二乃「そうだ、ハー君。今度のデートの予定だけど、私一度サタンシティに行ってみたかったのよね!ハー君なら簡単に行けるでしょ?」

 

クリリン「ええ!?お前こんな美少女とデートできんのかよ!?羨ましいぞこんにゃろう!!」

 

悟飯「……18号さんの前では絶対に言わないで下さいね?」

 

クリリン「わ、分かってるよそんくらい」

 

三玖「えっ?何それ?初耳なんだけど?どういうこと悟飯?」

 

二乃「この前ハー君が泊まりに来た時、あんたらが朝になってもいつまでもハー君にくっつき続けるもんだからハー君が起き上がれなかったじゃないの。そこで私が機転を利かせて助けてあげたからその見返りよ」

 

さらっと爆弾発言をする二乃。この台詞から、現代の悟飯は付き合ってもいない女子と寝るプレイボーイに聞こえてしまう。

 

トランクス「………悟飯さん。流石にそれはどうかと…………」

 

未来悟飯「いくら世界が平和で恋愛もできるからといって、それはやりすぎじゃないかな?」

 

天津飯「少し煩悩が強いんじゃないか?」

 

悟飯「…………ごめんなさい」

 

確かに最近の悟飯は、側から見たら、付き合ってもいない女の子と遊んでいる男にしか見えないのだが………。それには深いわけがあるが、説明するととても長くなってしまう………。

 

二乃「ということだから、諦めなさい」

 

三玖「むむっ………」

 

一花「あはは………程々にね〜……」

 

四葉「取り敢えずみんな元気になって良かったね!」

 

 

 

 

 

 

 

 

そして…………。

 

マルオ「………!!零奈さん……?今度は本物の、零奈さん……?」

 

零奈「……お久しぶりです、マルオ君」

 

マルオ「……根拠や証拠があるわけではないが、今度は本物だ…!!だが、あなたは既にこの世の者ではないはず……!」

 

零奈「それには色々と複雑な事情がありましてね………。話すと長くなってしまいます…………。それで、頼みたい……ことが………………」

 

 

 

ドサッ

 

 

マルオ「!?零奈さん!?零奈さん!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

五つ子の病室にいた悟飯と未来悟飯は再びマルオに呼び出された。

 

未来悟飯「えっ?零奈さんが倒れた……?」

 

マルオ「ああ…。突然意識を失ってしまったんだ……。今はベッドの上で安静にさせているんだが………」

 

悟飯「そんな………。どうして突然……」

 

「……そ、それは………。恐らく故障してしまったのだと思います」

 

「「「……!!」」」

 

そう発言したのは、先程まで意識を失っていたはずの未来五月であった。

 

未来悟飯「い、五月!?もう起きて大丈夫なのか!?」

 

未来五月「ええ……。お陰様で……」

 

マルオ「………それで、故障というのは………?」

 

未来五月「先程までの戦いで、人造人間の身体には通常ではあり得ないほどの負担が掛かってしまいました…。私は界王拳を使用することを想定して設計していません。あくまでも17号と18号を倒せればいいと思って造りました」

 

そもそも、未来五月は人造人間零奈に吸収機構を取り付けるつもりはなかったのだが、Dr.ゲロのコンピュータが勝手に付けたのだろう。

 

未来悟飯「そ、そんな……!!せっかく零奈さんは生き返ったのに………」

 

未来五月「………私が、直します」

 

未来悟飯「そ、そんな…!いくらなんでも無茶じゃ……!!」

 

人造人間零奈の身体は、ほとんどがバイオロイドタイプであり、生身の肉体とほぼ変わらなかった。だが、他の人造人間同様に少々改造を施しているので、そこの機械部分が故障してしまったのかもしれない。

 

未来五月「構造を知っているのは私だけです…。ならば私が責任を持って直す必要があると思います………」

 

 

 

 

こうして、未来五月は人造人間零奈を修理することを決意するが、設備に問題が生じた。だがそれはブルマのところを借りれば問題ないだろうという結論に至り、ブルマにこの病院まで来てもらうように悟飯は連絡した。

 

 

 

 

 

一花「わあ…!少し大人な五月ちゃんだ!」

 

二乃「ちょっと痩せてるんじゃない?大丈夫?」

 

三玖「ちゃんと食べないとダメだよ?」

 

四葉「睡眠も大事だよ!」

 

私は敵討ちをしたかった。姉達を殺した人造人間に……。上杉君を殺した人造人間に…………。

 

強い憎しみを抱き、私は何を思ったのか、母親のDNAを採取し、母親モデルの人造人間を造り出した。だが私だけでは人造人間なんて造ることができなかった。そこで頼ったのが人工知能だった。だが、それに頼ったのが間違いだった………。

 

………いや、そもそも人造人間そのものを造ろうとしたことが間違いだったのだろう……。もしもあの人造人間の中に本物の母の魂が入り込まなければ、この世界は今頃…………。

 

何よりも、私は目の前の"別の姉達"に謝罪しなければならない。

 

未来五月「皆さん、この度はご迷惑をおかけしました……………」

 

私は4人の姉達に対して深々と頭を下げる。

 

未来五月「私がしたことは、謝った程度で許されることではないのは重々承知しています。ですが…………」

 

二乃「何言ってんのよ。確かあんたはコンピュータだっけ?それに操られてたんでしょ?確かに、ママの骨壷を掘り起こすなんて、末代まで祟られてもおかしくない愚行に走ったことは反省するべきだけど、少なくとも私達を巻き込んだことに関してはあんたは悪くないわ」

 

未来五月「に、二乃………」

 

一花「うん。私達を巻き込んだことに関しては、私も未来の五月ちゃんは悪くないと思うな」

 

未来五月「一花…………」

 

三玖「同じ状況下なら、私も似たようなことをしていたかもしれない……」

 

未来五月「三玖…………」

 

四葉「みんな、殺されちゃったんだもんね………。私はみんなが殺されちゃったら、何するか分からないよ……」

 

未来五月「四葉…………」

 

 

なんて出来すぎている姉達なのだろうか。私のせいで、人造人間の中で永遠に時を過ごす可能性があったというのに………。それでも、私を許すというのか……?

 

一花「五月ちゃんは頑張りすぎたんだよ。その証拠としてほら、鏡を見てごらん?」

 

一花は手鏡を未来五月に渡す。五月はそれを受け取り、自分の姿を見てみると………。

 

未来五月「………わぁ…」

 

痩せこけた顔。真っ黒にできた隈。お世辞にも健康と言える風貌ではなかった。

 

二乃「未来の私達のために、そんなになるまで苦労してくれたんでしょ?」

 

三玖「確かに、全部が全部褒められる行動ではないと思う。でも………」

 

四葉「そこまで五月が頑張ってくれたなら、きっと未来の私達も安心して眠っているんじゃないかな!」

 

未来五月「み、みんな…………」

 

 

私はひたすら泣いてしまった……。

 

年齢的には、この世界の姉達の方が歳下だ。でも、私は小さい末っ子のように、過去の姉達に泣きついてしまった。

 

 

………………あぁ……。私は、甘えられる相手が欲しかっただけなんだな……。だから、人造人間のモデルも母親にしたんだろうな……………。

 

 

人造人間の中で母が説教してくれたから、私は完全に正気を取り戻した。過去の姉達の励ましの言葉のおかげで、私は大いに救われた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数分後、ブルマが病院に到着し、零奈はCCに運ばれることになった。

 

ブルマ「あっ、そうだ!確か未来の悟飯君とトランクスも来てるんでしょ?せっかくだし私の家に泊まって来なさいよ!」

 

未来悟飯「すみません………。この子もいいですか?」

 

ブルマ「あれ?五月ちゃん…?にしてはやけに………。もしかして、未来の?」

 

未来五月「は、はい………」

 

ブルマ「そうなんだ!あなたが人造人間を造っちゃったっていう!全然いいわよ!」

 

こうして、未来組は一時的にCCに住むことになった。ブルマが運転してきた飛行機に零奈を乗せ、病院を後にした。

 

 

 

 

 

一花「あっ、そういえば聞いたよ?確か天国から、魂だけの本物のお母さんが来て人造人間の中に入ってんだよね?」

 

悟飯「ピッコロさんによればそうみたい」

 

二乃「…………ってことは、本物のお母さんが帰ってきたってこと………?」

 

悟飯「うん。でも、ごく一部の機械部分が原因で体調を崩しているみたい。これから未来の五月さんやブルマさんに見てもらうみたい……」

 

三玖「そう……なんだ」

 

四葉「お母さんが、帰ってきた……?」

 

五月以外は、零奈の魂が入った後の人造人間を見たことがない為、この事実を告げられても半信半疑であったが、ひとまず問題が解決したことには変わりないことは理解した。

 

「………っと、ここか」

 

悟飯「あれ?上杉君?」

 

どうやら風太郎もお見舞いに来たようだ。

 

四葉「う、上杉さん!?」

 

風太郎「どうやら俺の知らない間に大変な目にあっていたようだな……。大丈夫か?」

 

二乃「ええ。ハー君のお陰でね」

 

三玖「フータローこそ、大丈夫だったの?」

 

風太郎「俺は特に問題はない。少し外が騒がしいと感じた程度だ」

 

一花「それにしても、まさかフータロー君がお見舞いに来てくれるとは思わなかったよ!」

 

風太郎「何を言っているんだ?俺はバイトのついでに寄っただけだ」

 

四葉「えっ?でもあのケーキ屋から病院って、上杉さん家とは違う方向じゃあ…………」

 

風太郎「ついでだついで!生徒の心配をするのが教師の勤めだろう!」

 

風太郎は相変わらず素直じゃなかったが、五人を心配していることには変わりないようだ。そんな様子を見て、悟飯は微笑むのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

入院した4人の体調に問題がないことが確認されると、4人は退院を許可された。そしてあのアパートに戻ることになった。

 

五月「………孫君」

 

悟飯「うん?」

 

五月「……本当に、ありがとうございます……」

 

悟飯「…うん。なんとかなって良かったよ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日の夜………。

 

悟飯が二乃からメールを受け取り、デートの日程を取り決めている時のこと………。ブルマ家では…………。

 

未来悟飯「………そうか。やっぱりあの五人は知らないわけか…………」

 

トランクス「はい……」

 

 

未来悟飯とトランクスは、それぞれの世界で起きた出来事を確認し合っていた。

 

未来悟飯「だが、それ以外は殆どオレのところと変わらないみたいだな……」

 

トランクス「そうですね……」

 

未来悟飯「……なあ、トランクス。組手をしてみないか?」

 

トランクス「俺が悟飯さんとですか…?」

 

未来悟飯「ああ。お前がどれほど強くなったのか、確認してみたいんだ…」

 

トランクス「………分かりました。場所を変えましょう」

 

 

 

 

 

ブルマ「あらどうしたの?こんな夜遅くにお出かけ?」

 

未来悟飯「はい。すぐに戻りますので」

 

ブルマ「気をつけてね〜」

 

一方で、ブルマは未来五月と共に、人造人間の修復に取り掛かっていた。

 

ブルマ「それにしても、よく人造人間なんて造ることができたわね……」

 

未来五月「ええ……。あの時の私は正常じゃなかったので…………」

 

ブルマ「話は大体聞いてるわ。私も家族全員殺されちゃったら、おかしくなっちゃうかも………。だからあまり気にすることはないわよ!」

 

未来五月「ブルマさん…………」

 

ブルマ「それじゃ、あなたのお母さんの目を覚まさせてあげましょ?」

 

未来五月「……!はい!」

 

 

 

 

 

 

 

 

ドカッッ!!!

 

超トランクス「はっ!」

 

 

ドカッッ!!!

 

超未来悟飯「ぐっ……!やるじゃないか!」

 

 

トランクスと未来悟飯は、西の都から遠く離れた荒野で組手をしていた。二人とも超サイヤ人に変身し、お互いに引けを取らない戦いが繰り広げられていた。

 

 

超トランクス「だだだだだっ!!!」

 

 

トランクスは未来悟飯目掛けて気弾の連射をする。未来悟飯はスラスラ避けて行くが、トランクスは相手の動きを予測しながら気弾を放つ。

 

ところが、未来悟飯もまたトランクスの癖は知っている。どう予想ささてどう撃ってくるかを予測しながら行動していた。

 

 

超トランクス「バーニングアタック!!」

 

 

カァァッ!!!

 

超未来悟飯「……!!」カッ‼︎

 

 

ドグォォオオオオオオオオン!!!

 

 

トランクスが放ったバーニングアタックは、未来悟飯の気合によって相殺された。

 

超トランクス「(いける!)」

 

 

トランクスはその隙に悟飯の背後を取った。これで勝てると確信をした。

 

 

 

 

 

 

バシッ!!

 

超トランクス「………!!!」

 

 

ところが、未来悟飯は直前に後ろに振り返り、トランクスの拳を受け止めた。

 

 

超トランクス「だりゃりゃりゃりゃ!!!!」

 

 

トランクスは相手が片腕であることを利用し、両腕を駆使する。未来悟飯も流石に片手だけではカバーしきれないところがあるのか、何発か拳が掠った。

 

超未来悟飯「やるなトランクス…!やっぱりオレの期待以上だ……!!」ブアン‼︎

 

 

超トランクス「………!!!」

 

未来悟飯もハンデを切り捨て、左腕部分に、左腕型の気の塊を生成する。

 

 

超未来悟飯「ここからは弟子だからといって手加減はしないぞ……!!」

 

超トランクス「はい………!!」

 

このトランクスにとっては、人生で最後となるであろう師匠との組手は、非常に充実した時間となった。

 

例え負けたとしても、トランクスは満足だった。もう二度と会うことすら叶わないと思っていた自分の師匠に、再び会うことができたのだから……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

トランクス「流石悟飯さんですね……。俺もかなり強くなったはずなのに……」

 

未来悟飯「いや、トランクスも相当腕を上げたな。こっちのトランクスは、まだ人造人間に勝てるかどうかも危ういからな。ここまで強くなってくれると分かれば、戻ったらまた鍛えてやらないとな………」

 

トランクス「そうしてやってください。向こうの俺も喜ぶと思います」

 

未来悟飯「ああ………」

 

こうして、時空を超えた師弟の組手は幕を閉じた…………。

 

 

 

 

 

 

 

未来悟飯「ただ今戻りました」

 

ブルマ「あらお帰り〜」

 

未来五月「お帰りなさい」

 

未来悟飯「さて、オレ達も風呂に入るか!」

 

トランクス(未来)「はい!!」

 

未来悟飯「ってあれ?五月、いつの間に…」

 

いつの間にか目の下に隈がなくなり、風太郎と姉妹が殺される前の女性らしい体つきに戻っていた。

 

ブルマ「さっきピッコロが来て、仙豆を渡してきたのよ。食わせてやれって」

 

未来悟飯「ピッコロさんが……」

 

どうやらピッコロが気にかけてくれたらしい。

 

 

 

 

風呂場に向かおうとした時、目の前にはベジータが立っていた。

 

トランクス(未来)「と、父さん……!」

 

ベジータ「久しぶりだな、トランクス」

 

未来悟飯「べ、ベジータさん……?」

 

ベジータ「…………お前が未来の悟飯とやらか。こっちの腑抜けと違って、随分頼もしい面をしているな」

 

トランクス「パパ〜!さっき攻撃当てられたから、遊園地に連れてってよ!」

 

ベジータ「分かった分かった。遊園地に連れて行ってやるから静かにしろ」

 

トランクス「やったー!!ってあれ?お兄さん達誰……?」

 

ブルマ「その人達はね、未来のトランクスと悟飯君よ」

 

トランクス「へっ…?未来の俺…?いやいや、そんなはずは…………」

 

ベジータ「本当のことだ。よく気を探ってみろ」

 

トランクス「…………マジですか」

 

トランクス(未来)「短い間だけど、よろしく!」

 

トランクス「は、はい……。よろしく…」

 

未来悟飯「そうか……。本当にこっちの世界は平和なようだな……」

 

未来悟飯は、自分の知らない年相応のトランクスを見て、改めてこちらの世界は平和なのだと認識した。それに加えて、ベジータが息子を遊園地に連れて行くなど、未来悟飯は想像することができなかった。

 

未来悟飯「あなた、本当にベジータさんなんですか………?」

 

ベジータ「何を言ってやがる?」

 

未来悟飯「………いえ、何も」

 

未来悟飯の認識では、ベジータは悪人という認識のままだった。一時共闘していたとはいえ、幼少期の印象がとても強かったからだ。そのベジータが、ここまで普通の地球によくいる父親のようなやり取りをしているのを見て、自然と頬が緩んだ。

 

ベジータ「なんだ貴様。気持ち悪いぞ」

 

未来悟飯「はは……。ごめんなさい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夜遅くになった………。既に殆どの人が眠りについている中、ブルマと未来五月はまだ起きていた。

 

未来五月「………これでお母さんは目を覚ますはず……」

 

ブルマ「お疲れ〜……。私はお風呂に入ったら寝るわね」

 

未来五月「夜遅くまでありがとうございます……」

 

ブルマ「いいのよ!気にしないで!」

 

そう言うと、ブルマは欠伸をしながら風呂場に歩み出した。

 

未来五月「ふぁぁぁ………。しばらくすればお母さんは目を覚ますはず……」

 

未来五月は零奈に毛布を掛け、ソファに腰掛けてコーヒーを淹れる。コーヒーの味をゆっくり楽しんでいた。

 

未来五月「………………こうしてゆっくりするのはいつぶりだっけ………」

 

未来五月にとって、こうして平和なひと時を過ごすのは本当に久々だった。高校3年生の時、人造人間17号と18号が自分達の故郷を襲い、友達やクラスメイトの大半は死んでしまった。色々あってブルマの家に住み着いたが、数年すると17号と18号に風太郎と姉達4人が殺されてしまった。

 

その憎しみから人造人間零奈を生み出した。そのお陰で17号と18号は消え去った。だが、この世界に新たな脅威を生み出してしまったのもまた事実。母親の代わりにみんなを守ろうと誓ったのに、むしろみんなを危険に晒してしまった………。

 

未来五月「私、許されてもいいのかな……?」

 

私は取り返しのつかないことをしようとした。にも関わらず、あんなにすんなりと許されてしまってもいいのだろうか?

 

 

 

 

 

 

 

未来悟飯「いいんだよ。君はもう自由なんだよ」

 

未来五月「…………孫君。盗み聞きしていたんですか?」

 

未来悟飯「い、いや!そんなつもりじゃ………」

 

未来五月「………私は、今まで通り過ごしていいのでしょうか……?私は下手したら、17号や18号と同じことをしようとしていたのに…………」

 

未来悟飯「過ぎたことはもう考えなくていいんだよ。君は久々にお母さんと再会した時に叱られただろう?それで充分罪は償ったはずだ」

 

未来五月「でも…………」

 

未来悟飯「もういいんだよ。あんなに頑張る必要はないんだ……。君は姉妹の復讐鬼ではなく、中野五月という一人の人間に戻っていいんだよ」

 

未来五月「……それでも、私は私を許すことができません。この罪は一生をかけても償いきれるかどうか……」

 

未来悟飯「………なら、オレもその罪を背負おう」

 

未来五月「……孫君には関係ないはずでは?」

 

未来悟飯「違う。オレがもっと早く自分の力を引き出すことができれば、君の友達や姉妹は死ぬことはなかったんだ。だから、一緒に罪を背負おう」

 

未来五月「…それ、聞き様によってはプロポーズにも聞こえますが?」

 

未来悟飯「えっ?ええ!?いや、そんなつもりで言ったわけじゃ………」

 

未来五月は勇敢な戦士としての悟飯しか見たことがない為、こんなに慌てふためく悟飯は初めて見た。もしかしたら、これが本来の孫悟飯という人間なのかもしれない…。戦いが長い間続いていたから、戦士としての仮面が外れなかったのかもしれない。

 

ようやく、戦いは終わったのだ。悟飯は戦いという地獄から、ようやく解放されたのだ。

 

未来五月「…………孫君って、恋をしたことはありますか?」

 

未来悟飯「………考えたこともなかったな。戦いばっかりだったからさ……」

 

未来五月「なら、これからは恋のことについても勉強しないとですね」

 

未来悟飯「ははは……。でももうオレは27歳か……?随分歳を取っちまったなぁ……」

 

正確には、精神と時の部屋に1年間入っていたので、28歳である。

 

未来五月「それを言ったら私もですよ……。この歳にもなると、中々いい相手が見つけられませんよ」

 

未来悟飯「そっか……。確か、五月は風太郎のことが………」

 

未来五月「ええ。確かに好きでしたよ。でもとっくにその気持ちに決着はつけられています。平和に戻ったことですし、そろそろ新しい恋を始めてしまおうかと………」

 

未来悟飯「そうか……。頑張れ!」

 

未来五月「ええ。頑張ります。あなたを必ずや、私の旦那さんにしてみせます」

 

未来悟飯「おう!…………えっ?」

 

未来五月「私はあなたにどれほど救われたか、分かってないでしょう…?今にして思えば、助けて頂いたあの日からあなたのことが気になっていたのかもしれません」

 

未来悟飯「い、五月?」

 

未来五月「そして、あなたは将来の夢を捨ててまで戦士になったそうじゃないですか……。不本意に戦いに参加させられているあなたを見て、少しでも力になりたかった………。だからブルマさんの元で科学者になり、タイムマシンをいち早く完成させようと奮起しました………」

 

未来悟飯「………」

 

未来五月「ですが、その途中で姉妹と上杉君が殺され、私の心は壊れました。そこからお母さんをモデルにした人造人間を生み出してしまったわけですが……………」

 

悟飯は五月が真剣な話をしていることを察すると、ただただ静かに聞いていた。

 

未来五月「私はとんでもない誤ちを犯したにも関わらず、孫君は許してくれた。一緒に罪を背負うと言ってくれた……。私はあなたに救われました。きっと孫君のあの言葉がなければ、私は今頃………………」

 

未来悟飯「五月…………」

 

未来五月「ねえ孫君。今日は綺麗な満月ですね?」

 

未来悟飯「…………ああ。そうだね。だけど本当にいいのかい?」

 

未来五月「それが聞きたいのは私の方です」

 

未来悟飯「…………オレなんかで良ければ…………」

 

未来五月「………ええ。末永くよろしくお願いしますね!」タッ

 

未来悟飯「………!!」

 

 

まん丸の綺麗な満月が夜空を照らす日に、二人の影が重なった。

 

 

未来悟飯「い、いきなり…!?///」

 

未来五月「さあ、もう寝ましょう。孫君も連日の戦いで疲れているでしょう?」

 

未来悟飯「……あ、ああ…………」

 

本来なら生まれなかったであろうカップルが、この瞬間をもってして誕生した。

 




 これにて今度こそ人造人間零奈編は終了です。まだ未来悟飯と未来五月は帰っていませんが、これはもう終わりということでいいでしょう。未来悟飯と未来五月は、零奈が意識を取り戻すまでは残るつもりです。

 ここでそろそろ花嫁を決定しようかと思ってきたところです。本編で明確に判明するのは、恐らく原作同様に学園祭の時になると思いますけどね。まあもしかしたら悟飯だけ変わる可能性もなくはないですが……。そして悟飯の花嫁になる伏線を実はチラホラばら撒いてたりするんですよね。

 まずは五月。見ての通り、正ヒロインっぷりを披露しているというのと、悟飯が一番最初に恋愛を意識するようになった相手というのと、未来悟飯と未来五月が結ばれたという点。あとはクラスメイトに付き合っているのではないかと噂されている点。これが五月の伏線です。

 次に二乃。二乃は悟飯と共に鐘キスをしています。これは原作のことを考慮すると、最も有力な伏線になっていると考えている人は多いでしょう。あとは二乃の料理を悟飯が無茶苦茶気に入っている点。

 最後に三玖。三玖は伏線としては他の二人に比べたら薄いですが、お爺ちゃんに関係を勘違いされていた点です。三玖が一番可能性低くないか……?と考える人は多いでしょうが、伏線が少ないからと言って三玖が選ばれないとは限りません。しかも三玖は原作通りに料理学校に通うことになれば、二乃程とまではいかなくとも、上手になるのは決まってます。そして三玖は原作よりも積極性が増していますからね。これから何を仕掛けてくるか分かりませんよ?

 というように、誰を花嫁にしても違和感がないように伏線をばら撒いてます。まあ我らがねぎ大先生に比べたら安直な伏線だったり、拝借したものもありますけどね。現時点では誰が花嫁になると思いますか?ちなみに私はまだ決めていません(オイコラ)。でもそろそろ決めると思います。多分ね……。
 ちなみに本編ではハーレムエンドはあり得ませんのでご留意を。ifストーリーの方ではちゃんと書くつもりです。

 無茶苦茶長い後書きになりましたが、次回は二乃とのデート回になります。ただ平穏にデートが終わるのか、はたまた何かが、またはナニかが起こるのか…?それは次回のお楽しみに。

 ちなみにですが、前から言っていた第22話IF(R-18)をpixivにて投稿しました。興味のある方はぜひ。

https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=17525005


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第54話 二乃のターン

 前回のあらすじ……。

 悟飯がプレイボーイだと勘違いされた。そして未来の五月は意識を取り戻したが、逆に零奈がダウンしてしまったが、五月とブルマでどうにかできるようだ。

 未来悟飯とトランクスが時空を超えた師弟による手合わせが行われた。これは未来トランクスにとってはさぞ嬉しかっただろう。

 そして、未来五月はみんなに自分の行いを許してもらうと、新たな恋を始めると言うが、なんとその意中の相手とは未来悟飯のことであった。2人は早速付き合うことになった。めでたしめでたし………。


 っと、終わりそうな言い方で締めくくるわけにはいかない。未来の悟飯は結ばれたが、現代の悟飯は未だに誰とも結ばれていないぞ!



 

朝になった。今日の悟飯は朝から二乃とのデートを控えている。と言っても、二乃と付き合っているわけではなく、色々と訳があるのだが、そこは過去回を参照してもらおう。

 

 

悟飯は筋斗雲で中野家アパートに向かう。アパートの前で降りると、インターホンを鳴らす。

 

一花「やっほー悟飯君」

 

ドアを開けたのは一花であった。

 

一花「話は聞いてるよ。今日は二乃とデートなんでしょ?今呼んでくるから!」

 

一花はそう言うと奥に入り、二乃を連れてくる。

 

二乃「あの……その………おはよ…………」

 

悟飯「うん。おはよう!」

 

悟飯は元気よく挨拶するが、二乃は緊張しているのか、いつもよりも声が小さい。

 

一花「それじゃ、楽しんできてね〜」

 

一花は二乃と悟飯を見送ると、颯爽と仕事に向かって行った。

 

悟飯「それじゃあ、僕達も行こうか。サタンシティでいいんだよね?」

 

二乃「え、ええ………」

 

悟飯は筋斗雲に乗るように二乃に促すが、二乃の様子がおかしいことに気付いた。

 

悟飯「あっ………」

 

 

 

 

『女の子の服装は褒めてあげなきゃダメだよ〜!』

 

 

……いつだか言われた気がする。悟飯は二乃が普段以上にオシャレしていることに気付いた。

 

悟飯「なんか、今日の二乃さんはいつにも増して綺麗だね」

 

二乃「………!?えっ…?それって……」

 

二乃は顔を赤くしながら呟く。

 

二乃「…きょ、今日は張り切って来たんだから…。私がどれだけハー君のことが好きか知ってほしいから………」

 

二乃は上目遣いになりながら悟飯にそう言う。強気な二乃しか見てこなかった悟飯は、ギャップ萌えというやつであろうか?二乃のことが可愛いと思ってしまった。

 

悟飯「さ、さあ!!行こうか!!」

 

悟飯は自分の顔が熱くなっていることを自覚すると、二乃に筋斗雲に乗るように促す。顔こそ見えなかったが、二乃は悟飯の耳が赤くなっていることを見逃さなかった。悟飯に意識してもらえることが分かると、二乃は安堵する。

 

 

悟飯は二乃を乗せると筋斗雲を発進させる。空中で二乃は…………

 

 

 

 

 

 

 

二乃「覚悟しててね、ハー君♡」

 

 

 

 

っと、悟飯の耳元で呟いた。

 

悟飯の耳が更に赤くなるところを、二乃は見逃さなかった。

 

 

 

 

 

 

 

二乃「すっごいわぁ…!!英雄が住んでいる街ってことで再開発されたみたいだけど、相当都会だわぁ……!!」

 

悟飯「そ、そうだね……。都会は僕も西の都ぐらいしか行ったことがないから新鮮だよ」

 

二乃「じゃ、じゃあまずはあの服屋に行きましょう!!」

 

悟飯「えっ……?僕は服はこの前買ったからいいんだけど…………」

 

二乃「私のを買いたいの!それくらい察してよね!」

 

悟飯「ははは………」

 

二乃は悟飯が自分の事を意識していることを把握すると、いつものように攻撃力全振りモードに入る。悟飯の手を引っ張って洋服屋に入った。

 

 

 

 

 

二乃「わあ…!色々な服があるわね…!こっちもいいけど、こっちも捨てがたいわ…………」

 

かれこれ1時間…。二乃は服選びに没頭していた。

 

悟飯「(女の子の買い物って長いのかな……?やっぱり服には拘るのかな…?)」

 

二乃「ね、ねえ!こっちとこっち、どっちがいいと思う?」

 

二乃が差し出してきたのは、紫色のスカートと赤色のスカートだった。どちらもシンプルなデザインであった。

 

悟飯「うーん………。僕個人としては、紫色の方がいいかな?」

 

二乃「わ、分かった…!じゃあこれとこれなら?」

 

今度は上着のようだ。片方はピンク色をベースとし、所々に小さくウサギの模様が付いた可愛らしい服。

 

もう片方は、ラベンダー色を基本とし、白い水玉模様が入ったこれまたシンプルなものであった。

 

悟飯「…………こっちかな……?」

 

悟飯が指差したのは前者。二乃はそそくさと試着室に入っていった。

 

 

 

待つこと数分。二乃が試着室のカーテンを開ける。

 

するとそこには、先程悟飯が選んだ腹を着こなしている二乃がいた。

 

悟飯「わっ……」

 

普段の二乃の服装とはこれまた違った魅力があった。二乃はもう少し大人っぽくお洒落な服を着ているイメージで、これまたギャップ萌えというものを感じていた。

 

二乃「ど、どうかしら……?」

 

悟飯「に、似合っていると思うよ!」

 

二乃「………それだけ?」

 

悟飯「へっ?」

 

二乃「もっと他にも言うところがない?ほら、例えば私が可愛いとか……」

 

それは服とは関係ないのではないだろうか?と悟飯は心の中で突っ込む。

 

悟飯「でも二乃さんはどんな服を着ても似合うと思うよ?だっていつも可愛いし……」

 

二乃「……………えっ!?」ボッ‼︎

 

二乃は悟飯の呟きを聞き逃すことはなく、拾ってしまった為に顔が一瞬にして真っ赤になった。

 

二乃「わわ、私が可愛いのは当然のことよ!そ、そう!!太陽が西から登って東に沈むくらい当たり前のことよ!!」

 

悟飯「二乃さん、逆…………」

 

悟飯の指摘でようやく正気に戻った二乃は、『これ買うわ!!』と試着した服をそのまま買い、それに着替えてデートを続行した。

 

 

 

 

二乃「次は……そうね…………。そろそろランチにしましょうよ!」

 

悟飯「そうだね。いい時間かも」

 

時間にして12:30。そろそろ昼食の時間だ。

 

二乃「実は私行きたいところを調べてきたの!このお店なんだけど……」

 

二乃がスマホの画面を悟飯に見せる。見るからに高そうなお店であった。

 

二乃「大丈夫よ。奢らせるようなことはしないから!」

 

悟飯「いや、でも………」

 

二乃「今日は半ば強引に私が連れてきちゃったから、それくらいはさせなさい!」

 

悟飯が反論を言う前に押し切り、その店に向かうこととなった………。

 

 

 

 

 

 

………のだが。

 

二乃「あっ……。やばっ。お金換金するの忘れてたわ………」

 

悟飯「あっ、僕はゼニー持ってるけど?」

 

二乃「それはなんか悪いわ…。今回は自分の分は自分で払うわよ」

 

二乃はそう言うと銀行に向かうが……。

 

 

 

 

 

「動くな!そのお金を置いて投降しなさい!!」

 

「ふざけんな!!この金は俺達の物だもんね!!!」

 

 

どうやら銀行強盗がいたらしく、犯人達は銃を乱射している。警察官は車の影に隠れてやり過ごすも、説得を続けているが、進展はなさそうだ。

 

二乃「うわぁ……。そういえばネットで見た気がするわ……。この街は治安が悪いって…………」

 

悟飯「そのようだね……。ちょっとこっち来て!」

 

二乃「へっ?えっ?」

 

悟飯は二乃の腕を掴んで路地裏に移動する。

 

二乃「やっ……。あの……?えっ?こ、こんなところに連れ込んで何するつもり……!!?」

 

悟飯「二乃さん。これからのことはできるだけ口外しないでほしいんだけど……いいかな?」

 

 

二乃「(それって、2人だけの秘密ってこと……!!?ってことは、私はここでハー君と……!?だ、ダメよ!初めてはちゃんとしたところで………。でも、そんなワイルドで野生的なハー君も素敵……♪)」

 

 

 

 

 

 

 

悟飯「変身っ!!!!」ピッ

 

 

 

二乃は何か如何わしい想像をしていたようだが、二乃の予想は大きく外れる。

 

 

グレートサイヤマン「よし、変身完了!」

 

二乃「…………へっ?」

 

二乃は突然悟飯の格好がダサいものになったので、情けない声を出してしまう。

 

グレートサイヤマン「二乃さん、君はここにいてね!!」

 

二乃「えっ?ちょっと!?」

 

二乃の静止を聞かずに悟飯はグレートサイヤマンの格好のまま強盗の前に姿を現した。

 

「な、なんだ貴様!?」

 

グレートサイヤマン「……私は、悪は絶対に許せない!!正義の味方………」

 

 

悟飯は不思議なポーズを取ると、足で駆け足をし、その後に開脚して右手を地面につけ、両手を左右に広げた後に、円を描くようにしなから頭に手を近づける。そして…………

 

 

グレートサイヤマン「グレートサイヤマンだ!!!!!」

 

 

 

………と、いまいち締まらない決めポーズを取って、悪人の前に名乗り出た。

 

 

「ギャハハハハ!!!!」

 

「だっせえ名前っ!!!!」

 

しかし、強盗犯達に笑われてしまう。

 

「悪いなダサいヒーローさんよ。コイツで退場してくれや」

 

 

強盗犯のうちの一人がバズーカに火を噴かせる。

 

 

だが、悟飯はバズーカの球を目の前で止めて見せる。

 

「なっ………!?」

 

それに驚いた強盗犯達は、悟飯に向けて銃を放つ。1秒間に何発も球を放つのだが、悟飯は片手でそれらを瞬時に掴んで無力化する。

 

「こ、こいつやべぇ!ダサいけど強いぞ!!!」

 

「おい、あれ持ってこい!!」

 

強盗犯のうちの一人がグレネードを投げる。それは悟飯の近くで爆発する。これによって始末できたと大喜びをする強盗犯だが、主犯と思われる強盗犯の背後に立っていた。

 

驚く強盗犯を無視して悟飯は一人ずつ丁寧に手刀を当てて気絶させた。

 

「うおおおお!!!!!」

 

「誰だか知らねえけどかっこいいぞ!!!!!」

 

そんな歓声が上がった。人前に出ることがあまりない悟飯は照れてしまうが、ここはビシッと決めたいところだ。

 

グレートサイヤマン「それじゃあ諸君、さらばだっ!!!」ドシューン‼︎

 

悟飯は野次馬に手を振ると、そのまま飛び立つフリをして二乃の元に戻ってきた。

 

悟飯「お待たせ!それじゃ、お金下ろしに行こうか!」

 

二乃「えっ?ええ………」

 

二乃は悟飯の活躍の一部始終を見ていたのだが…………。

 

 

二乃「(やばい…。恋は盲目って言うけど、流石にあの格好はないわ………)」

 

流石の二乃でもダメだったようである。

 

 

 

 

 

 

 

 

「お待たせ!さあ悪者共をとっちめるわよ!!……ってあれ?なになに?自首したの?」

 

「いえ、それが………」

 

警察官はジェットフライヤーで駆けつけた少女に事情を説明した。

 

「ふーん………?バズーカを止めたり、銃弾を全部受け止めたり、空を飛んだりねぇ………。それが本当なら人間辞めてるわね…………」

 

「それが本当なんですよ!見て下さいよ!!!」

 

野次馬の一人が、先程の光景を映像に記録したのか、少女に動画を見せる。

 

「………この手の動き……。普通じゃないわね……。格好とポーズがダサいとはいえ、やるわね………」

 

「なんでも、グレートサイヤマンとか言うらしく…………」

 

「グレートサイヤマン……?ふーん…」

 

 

 

 

少女は一通り聞き終えると、自宅に帰って早速調べ物をした。

 

「グレートサイヤマン…………。あっ、日本って国でも目撃情報があるわね…。この感じだと、初めて出現したのは日本の愛知県……ってところね。どんな奴か興味が湧いてきたわ……。動きを見るに武術にも精通してそうね……」

 

グレートサイヤマンに興味を示した人物の名前は…………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

()()()()様、お食事の用意ができました」

 

「お疲れ様。今行くわ」

 

ビーデルと呼ばれた少女は、パソコンをスリープモードにすると、すぐさま部屋を出た。

 

 

 

「武道家として気になるわね…。グレートサイヤマン…。あなたの正体に興味が湧いてきたわ」

 

ビーデルと呼ばれた少女は、広い家の廊下を歩きながら、呟くようにそう言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

二乃「はぁ!美味しかったわね!!」

 

悟飯「そうだね」

 

悟飯と二乃は昼食を済ませた。しかし今度はスイーツを食べに行こうと二乃に提案された為、いくつもスイーツ店を巡っているところだ。

 

二乃「はい、あーん」

 

悟飯「……?」

 

二乃が悟飯にケーキを差し出してくるが、悟飯はその意図がいまいち分からなかった。

 

二乃「口!開けなさいよ!」

 

悟飯「へっ?」

 

悟飯が口を開けた隙に二乃はケーキを悟飯の口に放り込んだ。

 

二乃「……どう?」

 

悟飯「うん。美味しいよ!!二乃さんのと同じくらい美味しいよ!やっぱり二乃さんは今の腕でも充分お店を出せると思うよ?」

 

二乃「!?そ、そう……。ま、まあ!!私の料理が美味しいのは当然のことよ!!」

 

二乃は平静を装ってケーキを口に入れるが、そのフォークは悟飯に差し出した物と同一であり、所謂、間接キスというものをしたことに気づいた二乃は卒倒しそうになる…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

のは、普通の少女の反応。残念ながら二乃はその普通には当てはまらない。

 

二乃「ふへへ……。ハー君と間接キス………」

 

無茶苦茶喜んでいた!しかもどうやら如何わしい妄想をしているようだ。

 

悟飯「あれ?二乃さーん?おーい?」

 

悟飯は、二乃の前で手を振るが反応がない。どうやら完全に自分の世界に入ってしまったようだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まあそんなこともあり、デートもそろそろ終盤に差し掛かってきた頃のこと……。

 

悟飯がトイレに行くということで、二乃はその場で待機していた時のこと。二乃は悟飯とデートするために相当気合を入れてきたわけで……。元々のビジュアルも相まって、とんでもない美少女がそこに一人でいるわけで………。

 

「おや?君、可愛いね?一人ならこれから俺と夕食食べに行かない?いいお店知ってるんだけど」

 

二乃「生憎、私には連れがいるから」

 

「いいじゃん!ちょっとだけだからさ!」

 

二乃「(うざっ………)」

 

二乃は先程まで悟飯とデートしていたので上機嫌だったが、ナンパされたことによって不機嫌になった。

 

悟飯「お待たせ〜!………ってあれ?」

 

「…ねえお嬢ちゃん…?ひょっとして、お嬢さんの連れって……?」

 

二乃「そうよ。この人よ」

 

二乃がそう明かす。するとナンパしていた男の興味が何故か二乃から悟飯に移る。

 

ヤムチャ「お前いつの間にこんな可愛い子を手に入れたんだよ悟飯!?」

 

悟飯「やっぱりヤムチャさんでしたか……。こんなところで何してるんですか?」

 

ヤムチャ「い、いや〜!そこのお嬢ちゃんに道案内を……」

 

二乃「はぁ?何言ってんのよ。ナンパしてきた癖に誤魔化すの?というか、このナンパ野郎はハー君の知り合いなわけ?」

 

悟飯「ま、まあ………」

 

ヤムチャ「なんだよ……。彼氏持ちならそう言ってくれよ。悟飯の彼女に手を出すつもりなんかないぜ俺は…」

 

悟飯「いや、別に彼女ってわけでは……」

 

ヤムチャ「まあなんにせよ、これ以上お二人さんの邪魔をするわけにはいかないから、俺はここでお暇させてもらうぜ。じゃあな!!」

 

悟飯「はい!お元気で!!」

 

ハプニングはあったものの、予想外の再会という形でなんとか丸く収まった。

 

二乃「…………悪い人ではなさそうね。……!」

 

二乃は何か閃くような仕草をすると、悟飯にこんな提案をする。

 

二乃「ねえハー君。ちょっと疲れてない?」

 

悟飯「えっ?僕はそうでもないけど?」

 

二乃「わ、私はちょっと疲れているのよね〜!!ど、どこかに休憩できるところが………あっ!あそこなんてどうかしら!?」

 

と、二乃が指差した先は…………。

 

悟飯「………ホテル?」

 

そう。ホテルであった。

 

悟飯「いや、僕達は泊まりに来たわけではないと思うんだけど……」

 

二乃「ち、違うわよ!ただの休憩よ!ホテルは休憩することもできるのよ!知らないの?」

 

悟飯「へぇ……初めて知ったな。じゃあ休む?」

 

二乃「……!?そ、そうね!そうしましょう!!」

 

いい感じに言いくるめられた悟飯は、二乃の提案を了承してホテルに入って行く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そのホテルは、普通の旅館とかビジネスホテルとかそういった類のものではなく、男女一人ずつ一組の客が多い少し特殊なホテルなのだが、悟飯はそもそもホテルに詳しくない為、特に気にしなかった。

 

 

 

 

 

 

 

二乃「ちょっと汗かいちゃったかも…。ハー君は?」

 

悟飯「えっ?僕は別に………」

 

二乃「…………ちょっと汗臭い気がするわ。入ってきたら?」

 

悟飯「へっ?本当に?」

 

悟飯は自分の匂いを確かめてみるが、特に汗臭く感じなかった。

 

二乃「ほら、着替えならさっき買ったやつがあるでしょ?それに着替えればいいじゃない!」

 

二乃の服が選ばれた後、実は悟飯の服も二乃のチョイスによって選ばれた物を買ったのだ。

 

悟飯「それもそうかな……?じゃあ一応浴びてくるよ」

 

二乃「え、ええ!」

 

悟飯は念の為にシャワーを浴びることにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

わぁあああ!!!ちょっと待ちなさい!?なんでハー君はあんなに平常心でいられるのよ!?!?ここラブホよ!?男女でラブホに入ってるのよ!!?その状況分かってんの!??

 

まさかこんなにすんなりと上手くいくとは思わなかったわ………。にしても、ハー君ってその手の知識に疎いのかしら?まあ田舎で暮らしてたみたいだし、それも仕方ないのかしら…?

 

で、でもこれからどうしようかしら…。ハー君から私に手を出すようなことは絶対にしないだろうから、ヤるなら私から手を出さないとまず無理よね……。でも待って……。いざ土壇場になると緊張してきた………。今にも心臓が爆発しそうだわ……………。

 

悟飯「二乃さん、シャワー空いたよ」

 

二乃「わ、分かったわ。じゃあ私もシャワー浴びるわ」

 

 

 

 

うわぁああああああ!?!?これマジでヤっちゃう感じっ!!?待て待て!ヤバいんですけど!!?身体は念入りに洗わないと……!!ハー君に不潔だなんて思われたくないもの……!勇気を出しなさい二乃!!!ここでやらなきゃ、三玖か五月にハー君を取られちゃうわ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

悟飯「やあ。結構長かったね」

 

扉が開く音がしたので、二乃がシャワーから戻ってきたのだと悟飯を思った。確かに間違ってはいないのだが、悟飯が見た二乃の姿は明らかに異様なものであった。

 

 

悟飯「わ、わわっ!?な、ななな、なんでタオル一枚だけなの!!??」

 

タオル一枚で出てきた二乃を見て顔を赤くし、服を着るように促すが、二乃は何故かその格好のままベッドに座っていた悟飯に近づき、押し倒す。

 

悟飯「…………へっ?」

 

悟飯は自分が何をされようとしているのか理解できていない。だが、前にも似たようなことがあった気がすると、記憶を探ってみる。

 

探ってみた結果……。以前に五月を自宅に泊めた時に酷似していた。

 

それを知った瞬間、悟飯はナニかの危険を感じた。

 

悟飯「えっ?ちょ…!?」

 

二乃「……悪いけど、ここで決着をつけさせてもらうわ」

 

悟飯「いやいや…!二乃さん、何をしようと………」

 

二乃「あら?ここがただのホテルだとでも思ってたのかしら?なら勉強不足のあんたに教えてあげる。ここはね、ラブホテルってところなのよ。愛し合う男女が入るようなホテルなの。そんなところに入ったなら……、覚悟はできてるのよね?」

 

悟飯「…………なにそれ?」

 

初めて聞いたと言わんばかりに悟飯は返答する。どうやら、ラブホテルのことは知らなかったようだ。

 

取り敢えず、過ちを起こさないために二乃を退けようとする。しかし………

 

悟飯「(な、なんだ……?頭がぼーっとしてきた………?)」

 

二乃「……ようやく効いてきたみたいね。あんたって戦闘以外だと隙だらけよね」

 

どうやら二乃は悟飯の飲み物に何かを仕込んでいたらしい。悟飯はまんまとその薬を摂取してしまったというわけだ。

 

悟飯「(ま、まずい…………)」

 

五月の時と状況は似ているが、決定的に違うところがあった。

 

五月の時は、五月から攻めてきたのだ。悟飯さえ手を出さなければどうにかなった。だが今回は違った。二乃は悟飯から手を出させようと画索したのだ。

 

 

 

悟飯は目の前の二乃という女を欲し始めた。自分が正気でないことは分かっている。それでも目の前の二乃が欲しくて堪らなくなってきてしまった。

 

身体は次第に熱くなり、段々と興奮状態に入っていく。

 

二乃「……本当は私だってこんなことはしたくないわ……。でもあんたが悪いのよ?確かに返事を見送ったのは私自身よ。でもね、いつまでも返事を先延ばしにされるのも気に食わないわ。でもそれは、逆に言えば、私と結ばれても構わないって意味よね?」

 

悟飯「そ、それはどういう……」

 

二乃「私はあんたに告白した。でも、あんたはすぐに振らなかった。つまりあんたは私と付き合う可能性があるってことよね?」

 

確かにそうだ。悟飯はまだ誰が好きなのかはよく分かっていない状態…であるはずだ。そして3人から告白されたが、誰にも返事をしていない。付き合う可能性がないなら、その相手は振っているはずだ。それをしていないということは、二乃のように捉えることも不可能ではない。

 

二乃「……悪いけど、あんたの初めては私がもらうわ……!」

 

悟飯「ぐっ……!」

 

悟飯はダメだと我慢する。一線を越えてはならないと自身に言い聞かせる。だが、二乃に仕掛けられた飲み物の影響か、理性も意味を無くし始めていた。このままでは、悟飯の方から二乃に手を出してしまうだろう。

 

何か方法はないかと対抗策を考える。しかし、考えているうちに理性が溶けてきてしまい……………。

 

 

 

 

 

バサッ!

 

二乃「………!!」

 

悟飯「もう………。ダメだ………!」

 

悟飯の理性は、限界を迎えて二乃を押し倒した。悟飯の手は次第に二乃の方に伸び………………。

 

二乃「(つ、ついに……。この時が…………)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バチンッッ!!!!!!

 

 

悟飯「ぐっ……!!!!」

 

 

二乃「………へっ?」

 

 

しかし、悟飯は自分自身を叩いた。既に理性は崩壊したはずだった。にも関わらず、何故そのような行動ができたのか………?

 

 

悟飯「はぁ………はぁ……………。危なかった……………」

 

二乃「な、何よ……。何でそこまで必死になって我慢するのよ…………?」

 

悟飯「……二乃さん。ちょっと怯えてたでしょ……?」

 

二乃「は、はぁ…!?私が…!?」

 

悟飯「うん。手が震えていたんだ。もしも二乃さんが怯えていなかったら、僕は……………」

 

二乃「そ、そんなわけないでしょ…!!私がどんな思いでここに誘い込んだか……!!」

 

悟飯「二乃さん。焦ってるでしょ…?」

 

二乃「……!」

 

二乃は図星を突かれたからか、黙り込んでしまう。

 

悟飯「二乃さんって強引に見えてさ、結構人のことを考える繊細な子だもんね……。だから、付き合ってもいないのに無理矢理こんなことするのは…って、迷いがあったんじゃないかな?」

 

はっきり言ってその通りだった。早く手を打たなければ、ライバルである五月か三玖のどちらかに悟飯を取られてしまう。そう焦っていた。だから今回のデートが成立した時、ここに誘い込む計画は既に立てていた。

 

だが、相手の同意がないのに無理矢理してしまうことを二乃の良心が許さなかった。だから迷いが生じていた。

 

だから、悟飯があと少しで二乃に手を出そうという時に、二乃は震えてしまったのだ。

 

やっと結ばれる。そういう嬉しい気持ちと同時に、本当にこれでいいのか?という迷いもあったのだ。

 

二乃「……私、最低ね。私からその気にさせたはずなのに…………」

 

悟飯「……いや、僕がいつまで経ってもはっきりとした返事をしなかったのがいけないんだと思う………」

 

二乃「そ、そうかもしれないけど……」

 

悟飯「二乃さん。間違いは誰にでもあるんだよ。だから気にしなくていいよ」

 

二乃「……!!あんた!!自分が何されたのか分かってる!?私はあんたから手を出させようとしたのよ!!既成事実を作って、付き合っちゃおうって考えてたのよ!!!もしもあんたに既に意中の相手がいたら……………」

 

 

 

 

 

 

ポンっ

 

悟飯はヒステリックになりかけた二乃の頭に手を置く。そして優しく撫でる。

 

悟飯「………いいんだよ。間違いは誰にでもある。僕にも非があるんだし、二乃さんは自分を責める必要はない」

 

二乃「でも………」

 

悟飯「………そうだ。確か秋に学園祭があったよね……?その時まで待ってくれないかな?その時までには、必ず答えを出す…………」

 

二乃「えっ………?それって………」

 

つまり、遅くとも学園祭の時までには3人に対して返事をするということを意味していた。

 

悟飯「いつまでも保留にするのはもうやめだ………。学園祭までに、僕は僕の気持ちを理解する……。いや、しなくちゃならない…………」

 

二乃「い、いいのよ!焦らなくても……」

 

悟飯「………今日の二乃さんを見て思ったんだ。いつまでも待たせるのは可哀想だって。だから、その時までには…………」

 

 

スッ……

 

ここで、撫でられていた二乃が悟飯にそっと抱きついた。

 

二乃「………馬鹿。どこまでお人好しなのよ………」

 

二乃は悟飯に気づかれないように、そっと泣いた。

 

しかし、数秒で二乃は立ち直る。

 

二乃「決めた。やっぱり私は悟飯が好き!今回の出来事ではっきりしたわ!!あんたも今日の出来事で私がどれだけ好きなのか理解したでしょ?」

 

悟飯「うん。そのつもりだよ」

 

二乃「今日は間違えちゃったけど、次からこんなセコい手は使わないと約束するわ。次からは正攻法で好きにさせてみせるわ……!!」

 

二乃は、悟飯が自分達の気持ちを尊重してくれていることを理解し、さらに悟飯のことが好きになってしまった。だから絶対に愛おしい彼を手に入れてみせると、心に誓った。

 

二乃「だから、覚悟しててね、ハー君♡」

 

悟飯「……ははは。お手柔らかにお願いします……」

 

一波乱どころか二波乱あったものの、無事に二乃とのデートは終了した。

 

悟飯は今回の出来事で、二乃、三玖、五月の3人に対して、学園祭までには返事をできるようにしようと、心に誓った……。

 




 今まで散々ビーデルは登場しない的なことを言ったな。あれは嘘だ。ヒロインとして登場するかはまだ未定ですけどね。ちなみにグレートサイヤマンを無理矢理にでも引き出した理由はこれです。ビーデルを登場させる為です。でもないと悟飯とビーデルを絡ませることができないのでね………。

 こら、絡ませる(意味深)って言うんじゃあない!!それは原作で起こったことであってこの作品では起こるか分からないんだから(笑)

………何を言っているんだろうか。きっと疲れてるんやな(断言)。

 まあ、というわけでこれからはビーデルさんもぼちぼち出番はありますよ。とはいえ悟飯のヒロインとして活躍するかはまだ未定です。でもここまで来て今更ビーデルと結ばれます!ってのはこの作品の趣旨から外れてしまうんですよなぁ…。
でも皆さん。林間学校付近の悟飯の予知夢(?)を見返して下さいな。悟飯のお嫁さんは五つ子の誰かとはまだ断言してないんですよねこれが。でもここに来てビーデルが今更ヒロインレースに参加しても勝てない気がするけどなぁ…。流石に遅すぎた()。今の悟飯は五つ子3人に意識が向いちまってますからねぇ…。せめて五月のお泊まり回の前にヒロインレースに参加してれば勝ち目は充分あった。

 ということで、現実的に考えてビーデルがヒロインレースに参加しても勝ち目ない気がしますのでビーデルのヒロイン化の線は薄いですねぇ…(ないわけではないかもしれない)

 後書き長すぎて草。要約すると、ビーデルは今後も出るけどヒロイン化する可能性は低いよってことです。最後の方の二乃の台詞は序盤の『私はあんたを認めない』のオマージュです。

 ちなみに次回は原作ベースのストーリーだと思います。無茶苦茶久々に。


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第55話 今日から3年生

 前回のあらすじ……。

 色々あって二乃とデートをすることになった悟飯は、サタンシティでデートをしていた。しかし、サタンシティは比較的治安が悪いようで、悟飯はグレートサイヤマンに変身して銀行強盗犯を上手く撃退した。ところが、その光景を知った一人の少女、ビーデルがグレートサイヤマンに対して興味を持ったようだ。

 そして、デートの終盤に、二乃に上手いこと言いくるめられてホテルに入った悟飯は、二乃に迫られるも、強い意志によって一線を越えることはなかった。そして、自分と結ばれるために必死になっている二乃を見て、自分に告白した3人の少女には、学園祭までには返事をすると、心に決めた。



二乃とのデートが終了し、とうとう3学期に突入しようとしていた。今日は始業式の日。一花は風太郎を待ち伏せして一緒に登校していた時、他の四人は悟飯と共に登校していた。

 

普段は悟飯と共に登校することはないのだが、今回は深い訳があった。

 

悟飯「……みんなに…。特に、二乃さんと三玖さんと五月さんには大事な話がある」

 

二乃「………」

 

三玖「どうしたの?」

 

五月「大事な話とは……?」

 

悟飯「……3人は、僕に対して告白してくれたよね……。その返事を、遅くとも学園祭までには出す。だから、それまでは待ってほしいんだ…………」

 

三玖「!!!??」

 

五月「えっ…?えぇ!!?!」

 

二乃はデートの時に既に聞いていたので把握していたので特に反応はしなかったが、三玖と五月は突然悟飯が返事をすると言うものなので、驚きの声をあげてしまう。

 

四葉「えっ……?付き合ってもいないのに3人とキスをするような優柔不断な孫さんが、お返事を……!!!?」

 

悟飯「あの……。地味に傷付くからその言い方はやめてほしいかな…………」

 

三玖「……急にどうしたの?」

 

悟飯「……待たせるのは酷だということを、つい先日思い知ったんだ…。だから早めに答えを出したい……。そう思ったんだ」

 

五月「………何があったのかは分かりませんが、それが孫君の意思だというのなら尊重しましょう…。お待ちしてますからね!」

 

悟飯は告白に対する返事に関する報告を主に3人に向けてした。こんな報告をしておいてなんだが、悟飯は未だに誰が好きなのか明確になっていない。本当に学園祭までに自分の気持ちをはっきりさせることができるのだろうか…?

 

五月「そういえばクラス替えですね…。去年度は孫君と一緒だから良かったのですが、今年度は別々になってしまうかもしれません…………」

 

二乃「兄弟姉妹は別のクラスにバラされるらしいから、姉妹の中で誰かしらはハー君と同じクラスになるんじゃないかしら?」

 

四葉「私はみんな一緒がいいなー!勿論上杉さんと孫さんも纏めて!」

 

三玖「四葉…。流石にそれはあり得ないよ………」

 

 

しかし、予想外の結果となる。

 

 

昇降口の前に掲載されていたクラス名簿を見ると、3年1組に風太郎の名前が一番上にあり、少し下に悟飯の名前もあった。そして………。

 

 

 

 

 

 

中野一花

中野五月

中野二乃

中野三玖

中野四葉

 

 

 

 

………というように、まさかの1つのクラスに五つ子が集結するという結果になった。勿論これは偶然なったわけではなく……………。

 

 

 

「旦那様。無事お嬢様方が同じクラスに配置されたとのことです」

 

「そして?」

 

「彼らも同じクラスです」

 

「………ご苦労」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

新しいクラスに入る。

 

そこには去年度までは見たことのないような顔ぶれもある。そんな新しいクラスに、風太郎と悟飯、更には中野家五つ子が集結した。

 

これには流石の風太郎も困惑した。無論風太郎だけでなく、悟飯も少々混乱している。

 

風太郎「嘘だろ……?まさか全員集まるとは………」

 

悟飯「……………凄いよね」

 

しかも、席順は風太郎の後ろに悟飯。風太郎の右横に一花、その後ろに五月、二乃、三玖、四葉という順番になっていた。

 

明らかに席が近すぎる。ここまでくると最早何かしらの権力を持った者の息が吹きかかっているのではないかと勘繰ってしまうほどだ。

 

まあ実際はその通りなのだが……。それを悟飯と風太郎は知る由もない。

 

一花「よろしくね、フータロー君!」

 

五月「よろしくお願いしますね!孫君!」

 

一花は風太郎の、五月は悟飯の隣を獲得することができてご満悦の様子。二乃と三玖は五月に対して嫉妬する。そんな様子を後ろから四葉が微笑みながら見守るという、なんとも混沌とした状況。

 

 

 

 

しかし、自由時間になると、それが霞んで見える程に騒がしい時間を迎えることとなる………。

 

 

 

 

「わあ〜!!」

 

「中野さんが五つ子なのは知ってたけど……」

 

「実際揃っている所を見るとすげえな」

 

「やっぱりそっくりなんだね〜」

 

世界中を探しても中々見つからない五つ子に、クラスメイトは興味津々のようで、五つ子を中心に人集りができていた。

 

「苗字だと分かりづらいから名前で呼んでいい?」

 

一花「うん。その方が私達もありがたいかも」

 

こういう状況には慣れているのか、器用に対応する一花。

 

「あれやってよ!同じカード当てるやつ!」

 

二乃「ごめんねー。テレパシーとかないから」

 

表情では笑っているが、内心イライラしている二乃。

 

「三玖ちゃんも似てるんでしょ?もっと顔見せてよ〜!」

 

人前に立つのが苦手で困惑している三玖に……。

 

四葉「わわっ…!」

 

五月「押さないでください!」

 

人集りに揉まれそうになる四葉と五月と、反応は十人十色とよく言ったものか、それぞれ見事に違った。

 

 

 

 

 

 

 

「やっぱり五つ子ともなるとこうなっちゃうか……」

 

悟飯「そうだね。僕も初めて見た時は驚いたもん………」

 

「そういえば君も彼女らの家庭教師をしていたんだよね?」

 

悟飯「あれ?よく知ってるね?話したことあったっけ?」

 

「僕の父親がこの学校の理事長なのは以前話したと思うけど、中野院長とは兼ねてより懇意にさせていただいてるのさ」

 

悟飯「へぇ……。そうなんだ………って、そろそろ止めた方がいいよね?」

 

「そうだね。このままじゃ怪我人が出てしまうかもしれないから、ね?」

 

悟飯がやたらとキラキラしたオーラを放つザ・好青年と親しげに話していた。どうやら以前から面識があるようだが、その好青年の正体は一体……?

 

 

風太郎「退いてくれ」

 

「何?上杉君も中野さん達のこと気になるの?」

 

風太郎「トイレだ。邪魔だから退いてくれ」

 

風太郎は相変わらずそっけない態度を取る。

 

「えっ、何あれ……」

 

「感じ悪っ……」

 

そんなそっけない態度を取るものなので第一印象は良くないものであった。

 

一花「あはは…。私達は無視……」

 

五月「相変わらずですね。上杉君は2年の時からあんな感じです。クラスでは孫君以外とは敢えて関わらないようにしているというか……」

 

三玖「そういえば林間学校の係も一人でやろうとしてたよね」

 

一花「根は良い子ってみんなに知ってもらえたらいいんだけど………」

 

二乃「あれはあんな態度をとってるあいつが悪いわ…………」

 

 

「ねえ中野さん。あれやったことあるでしょ?幽体離脱」

 

「シンクロしたりとか」

 

「どこに住んでるの?」

 

二乃「………いい加減に……」

 

一花「まあまあ……」

 

堪忍袋が切れそうな二乃を抑える一花。

 

悟飯「みんな!5人とも困っているからそろそろやめてあげよう!」

 

「そんなに捲し立てたら中野さん達も困っちゃうよ」

 

「孫君に武田君…!」

 

悟飯が先程親しげに話していた好青年は武田というらしい。本名は武田祐輔と言い、悟飯と風太郎に次いで定期テストで常に2位をキープしていた天才である。

 

武田「ね?」

 

何故だか分からないが、武田の周りからキラキラしたオーラのようなものが見えるが、多分気のせいだろう。

 

二乃「あ、ありがとう……」

 

「確かに二人の言う通りだな……」

 

「はしゃぎ過ぎちゃった…。ごめんね?」

 

武田「だけど気持ちは分かるよ。五つ子だなんて、みんな君達のことがもっと知りたいんだよ。ね?」

 

二乃「は、はははは………」

 

一花「どーもー……」

 

「みんな席につけ。オリエンテーションを始めるぞ」

 

ここで担任の教員が入室したので、武田は『また休み時間に』と言い残して自分の席についた。

 

四葉「武田さん!なんて親切な人なんでしょう!!」

 

二乃「そう?胡散臭いわ」

 

一花「こらこら………」

 

三玖「………というか、悟飯はあの武田って人と仲良さそうだったけど…?」

 

悟飯「うん。クラスは違かったけど、よく話していたかな。特にテストが近くなると」

 

二乃「一体どこに接点があったのよ……」

 

悟飯「それは………って、先生が来てるから席につくよ」

 

 

 

 

 

「今日からお前達は3年生だ。最高学年になった自覚を持ち、後輩達に示しがつくような学生生活を送るように心がけ…………」

 

先生は喋っている途中で口を止めた。喋る内容を忘れてしまったわけではなく、四葉が先程からずっと手を上げているからだ。

 

「えー……。なんだ?」

 

四葉「このクラスの学級長に立候補します!!」

 

「ええ〜……。まだ何も言ってないけど………」

 

四葉「そこをなんとか!!」

 

「いや、反対もしてないけど。まあ他にやりたいやつがいないなら……」

 

学級長に立候補する女子が他にいなかった為、女子の学級長は四葉になった。

 

四葉「皆さん!困ったら私になんでも言ってくださいね!」

 

「じゃあついでに男子も決めとくか。やりたいやついるかー?」

 

四葉「いますかー?」

 

「推薦でもいいぞー」

 

四葉「いいぞー!」

 

何故か四葉は先生の台詞の一部を復唱するので、一花は内心恥ずかしくなってきていた。

 

「武田だろ。武田じゃなかったら孫だな」

 

「まあ武田だろうな。そのうち誰かが推薦するだろ」

 

武田「やれやれ……」

 

どうやら武田は人望が厚いらしく、誰もが武田が学級長を努めると思い込んでいたようだ。

 

四葉「先生!私、学級長にピッタリな人を知っています!!」

 

「ほう?誰だ?」

 

「ほらきた」

 

そして、四葉は…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

四葉「上杉風太郎さんです!!」

 

風太郎「はぁ!?!?!?」

 

なんと風太郎を指名した。こっそり勉強をしていた風太郎は自分が突然指名されたことに驚いて立ち上がってしまう。

 

周りからは、上杉君で大丈夫なのか?武田を差し置くなんて何者だ?などとこそこそ話が漏れていた。

 

「よし。次の係も決めるか」

 

風太郎「先生!俺はまだやるとは……」

 

だが他に立候補する男子がいなかった為、風太郎が学級長になった。

 

 

 

 

 

休み時間になった。風太郎は早速トイレに向かう為か、教室を出た。武田も風太郎の後を追うように教室を出た。

 

 

 

そして、五つ子は悟飯の周りに集まる。

 

 

三玖「ねえ悟飯。もうすぐフータローの誕生日なんだけど………」

 

悟飯「そうだね。確か4月15日だったと思うけど」

 

四葉「去年は何をプレゼントしましたか?」

 

悟飯「うーん……。去年は筆記用具をあげたよ。上杉君が普段買わなそうな高性能なやつを」

 

一花「あはは…。勉強の虫のフータロー君なら確かに喜びそう……」

 

二乃「今まで世話になったし、私達からも何かプレゼントしようか考えてるんだけど、何かいいのある?」

 

悟飯「えっ…?うーん……。取り敢えずそれとなく本人に聞いてみたらどうかな?」

 

五月「………そうですね」

 

三玖「じゃあ私が聞いてくるね」

 

一花「よろしくね〜」

 

こうして三玖も風太郎の後を追うように教室を出た。

 

悟飯「プレゼントを渡すのはいいとして、お金の方は大丈夫なの?」

 

一花「だ、大丈夫!そこはなんとかするよ!」

 

悟飯「そう……?」

 

 

ということで五つ子+悟飯による会議は終了し、自由時間となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

風太郎「いいか!?面倒なら身に付けているアイテムで覚えろ!このセンスの欠片もないヘアピンは五月だ!俺はこうして見分けている!!四葉はあの悪目立ちリボンだ!!」

 

五月「いきなり失礼な話ですね……」

 

悟飯「(あれ?珍しく上杉君が社交的だ………)」

 

悟飯は、風太郎が自分と五つ子以外に積極的に関わろうとする姿を見たことがなかったので、クラスメイトに五つ子の見分け方を熱弁している風太郎が新鮮に見えた。

 

「上杉君すごーい!!」

 

「ありがと!」

 

「意外でびっくりしちゃった!!ちゃんと中野さん達のこと見てたんだ!」

 

風太郎「いや、そうじゃなくて……」

 

「流石学級長だね!!」

 

「もっと5人のこと教えて!」

 

風太郎「はっ?」

 

風太郎は二人の女子のクラスメイトに引っ張られながら今度は二乃の方に向かっていく。

 

風太郎「いや、あれ四葉じゃなくて二乃!!!?」

 

 

 

悟飯「……上杉君も変わったんだなぁ」

 

 

この出来事を機に、五つ子を見分けることのできる風太郎が、五つ子に用がある時の経由地的なポジションとしてクラスメイトに頼られるようになるのだが、当の本人はただただ面倒くさく感じていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

風太郎「えー、我々も3年生になったということで………」

 

武田「すみませーん。上杉学級長。声が小さくて何を言っているのか聞き取れません。もう少し大きくお願いします。ね?」

 

風太郎「………1学期のメインと言っていいあのイベントについて話し合いたいと思います!いよいよ始まります……全国実力模試「修学旅行ですね!!」」

 

四葉「皆さん全力で楽しみましょう!!」

 

風太郎「えー……。そっちかー……」

 

風太郎が間違えたので、四葉が横から大声で訂正した。逆に何故修学旅行よりも全国模試の方がメインイベントだと思ったのかを聞きたいところではあるが、受験を意識しているなら確かに一大イベントと言えるだろう。とはいえ学級会で話す内容ではない。

 

二乃と三玖が何かやりとりをしていたが、悟飯は気付かなかった。放課後になると、五月に話しかけられる。

 

五月「あの…。孫君、今日はこの後時間ありますか?」

 

悟飯「今日は特に予定がないけど……。どうしたの?」

 

五月「いえ、実は………。このお店に行こうかと…………」

 

五月は悟飯に提示したスマホの画面には店名が載っていたのだが…………。

 

悟飯「それ、この前行ったケーキ屋さんじゃない?そこがどうしたの?」

 

五月「この春に新作が出たんですけど、一緒に行きませんか?」

 

悟飯「そうなの?じゃあ行こうか!」

 

五月「で、ですが…。その……。お願いがありまして…………」

 

悟飯「お願い………?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

悟飯は一度帰宅した後に再び五つ子のアパート付近に着ていた。そこで五月を待っていたのだが…………。

 

五月「………ど、どうも………」

 

悟飯「………五月さん?」

 

五月が明らかに怪しい格好をしていた。サングラスに、分厚いコートに、マスクという謎の重装備だ。

 

悟飯「なにその格好……?」

 

五月「こ、これには訳がありまして…。諸事情で孫君にも変装してもらいます!!」

 

ということで、聞きたいことが山ほどあった悟飯だが、五月の希望に沿う形で悟飯も変装する。

 

悟飯「よし。こんな感じでどうかな?要は僕が孫悟飯であるってことを隠せればいいんだよね?」

 

五月「え、えぇ………」

 

悟飯はグレートサイヤマンの格好をしていた。と言っても、ヘルメットはサングラスとバンダナで代用している。だがこれはこれで怪しい人物である。

 

五月「(ヘルメットの方がまだマシかもしれません…………)」

 

こうして、二人組の不審者が誕生したのである……………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

風太郎「おっ、今日からか」

 

二乃「ええそうよ。ところでこの髪型どうかしら?」

 

風太郎「まあ仕事はしやすそうだな」

 

二乃「あのね…。そこはちゃんと褒めないとモテないわよ?」

 

風太郎「モテなくて結構だ」

 

二乃は今日が初めてのバイトらしく、風太郎と共にケーキ屋のキッチンにいた。

 

風太郎が二乃に対してプレッシャーをかけるも、二乃は持ち前の腕で店長が絶賛するほどのケーキを作り上げた。その光景に風太郎は頭痛がした。

 

しかし、今日はバイトも総動員のようだ。今日は大切な予約が入っているとのことだ。

 

店長「実は今夜は大事な予約が入っているんだ。それもたった二人だ」

 

M•A•Y。この界隈では知る人ぞ知る有名レビュワーであり、素顔は晒さず正体も知らない。しかし、口コミサイトに星を付けた分だけ客が倍増すると言われている程に評価は的確であり、その人は度々この店にも来ていたらしく、救われたこともあったとか…。今夜初めて予約が入ったので、失敗は許されないとのことだ。

 

「ちょっと待ってください。MAYさんって二人組なんですか?」

 

店長「いいや。いつもは一人なんだが、今日はお連れ様がいるらしい。恐らくMAYさんのご友人だろう。ということで、MAYさんはこの春の新作をご所望だ!目指せ星5!!」

 

「「「「はい!!!」」」」

 

 

 

ということで、二乃は初仕事ながら重要な役職に就いたわけだが、普段から料理しているといえ、やはり上手くいかないものだ。ケーキの生地の味に違和感があると指摘を受け、新たに作り直すハメになり、生地を新たに作る前に休憩が入った。

 

 

 

二乃「どうしよう…。私のせいでみんな忙しそうだった……。やっぱり戻って……」

 

風太郎「店長も言ってたがお前のせいじゃない。つーか新人に任せた店長が100%悪い」

 

二乃「でも普段なら…………」

 

風太郎「……これ見てみろよ。でもあんまりじっくり見るなよ?」

 

そう言うと、風太郎は大きな段ボールを棚から下ろし、中身を二乃に見せる。

 

風太郎「クリスマスの時に100個のところを俺が間違えて1000個注文しちまったサンタの飾りだ。向こう10年はこれでやっていける」

 

二乃「えっ……?」

 

二乃は、あの自信過剰な風太郎が突然自分の失敗を語るものなので、何事かと目を擦る。

 

風太郎「あとこの机の傷、俺が一人で転んだ時の傷だな。客のテーブルに別のケーキを運んだり、割った皿の枚数は数え切れねえ。それに比べたら小さいミスだ」

 

二乃「………もしかして、励ましてくれてる?」

 

風太郎「違えよ!仕事の過酷さを教えてやってるんだ。一応先輩だからな…」

 

二乃「…………あんたって、励ますことできたのね。そういうことはしないキャラだと思ってたわ」

 

風太郎「だから違えって言ってるだろ!」

 

風太郎は口では否定しているが、珍しく弱気になっている二乃を見て、励ましてやろうと思い、行動に移したのもまた事実だ。二乃はそんな風太郎を見て、風太郎に対するイメージが少々変わった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

店長「二人ともいいところに!MAYさんがいらっしゃったよ!」

 

風太郎「分かりました。すぐ行きます」

 

 

「あれがMAYさん……」

 

「誰がオーダー取りに行く?」

 

「お前行けよ」

 

「嫌だよ。怖えし……。てかどこだ?」

 

「ほらあそこだよ。3番テーブルの………」

 

その3番テーブルの方を見てみると…。

 

黒いサングラスをかけ、特徴的なウェーブがかかった髪の上にピンと反り立つアホ毛に星型のヘアピン。

 

もう一人は、山吹色のバンダナにこれまた黒いサングラスをかけ、赤や緑の主張が激しいコミカルな服装をしている人物が…………。

 

 

風太郎「(……確かに怖えわ)」

 

この二人はどこからどう見ても不審者である。特に後者。場所によってはコスプレイヤーとして受け入れられるかもしれないが、この場では明らかに怪しすぎた。

 

しかし、二人は前者の正体をすぐに看破した。あの特徴的な髪型で、5月を意味するMAY……。明らかにあの人物だ。

 

二乃「あの、私行ってきます!」

 

「中野さんすげぇ……」

 

「新人なのに根性あるな………」

 

二乃は有名レビュワーに勇敢に挑んでいった……。

 

風太郎「(いや、あっちの派手なやつは誰だよ!?)」

 

だがしかし、風太郎は後者の正体は分からずじまいだったようだが、二乃はすぐに分かった。つい先日も似たような服装を想い人がしていた。

 

 

 

二乃「五月、なにしてんのよ」

 

五月「に、二乃!?何故気付いたんですか!?」

 

二乃「これでよく気づかれないって思ったわね……。それからハー君も、なにその格好?」

 

悟飯「あ、あれ?バレちゃってる…?」

 

二乃「そのユニークなセンスで1発で分かったわよ。二人とも明らかに不審者ですって格好をするんじゃないわよ」

 

悟飯「えー?この格好カッコよくない?特にサングラスとバンダナ!ここは僕も拘ったところなんだけど…」

 

二乃「オシャレ下級者にも程があるわ」

 

悟飯「ええ!?」

 

 

結局、1発で変装がバレた二人であった。なんだかんだ言って変装が下手な五月と悟飯は似た者同士なのかもしれない……。

 

ちなみにケーキは美味しかったそうです。付けられた星の数は、神と五月のみぞ知る………。

 

 

 

 

 

 

 

 

ビーデル「はぁ………。グレートサイヤマンの手がかりが殆どないわね…。出没したのもたった2回らしいし、これじゃ本当に日本って国に住んでいるのか分からないわね………」

 

ビーデルはグレートサイヤマンの行方を追っていた。単純に興味本位である。空を飛べたり、動きから武術に精通した者だと結論を見出し、単純に中身が知りたいだけ。言わば知的好奇心というものだ。

 

ビーデル「…流石にSNSに手がかりがあるとは思わないけど………。えっ………?」

 

ビーデルは気まぐれにSNSでネットサーフィンをしていると、一つの呟きが目に止まった。

 

 

 

 

 

 

アカウント名:M・A・Y

 

『本日はREVIVALというケーキ屋さんで新作ケーキをいただきました。今回はグレートサイヤマンさんと一緒です。彼もとても喜んでいました。私基準では星は………』

 

 

 

 

 

 

 

ビーデル「……へぇ…。お店の住所は愛知ってところの…………。やっぱりここに住んでいるか、活動域のようね」

 

なんということか、五月は悟飯とデートできたことを密かに自慢したかったのか、あろうことかグレートサイヤマンの名を上げてしまったのだ。

 

ビーデル「やっぱりグレートサイヤマンの正体を知るには、ここに行くしかないみたいね……。さて、いつ行こうかしら…?何かしら事件とかが起きてくれればすぐに見つけられるんでしょうけど……………」

 

悟飯の悩みの種が知らないところで増えているような気がするが、本人は気づいていないからセーフ……。になるのだろうか………?

 

ビーデル「……そんなに美味しいケーキなのかしら?ちょっと食べてみようかな?」

 

そして、ケーキ屋の店長が目論んだ通りに、MAYのレビューは宣伝にもなったのである。良かったね店長!!

 

 

 

 

 

 

 

 

悟飯「ところで五月さん。五月さんってお店のレビューなんてやってたんだね」

 

五月「な、何故それを…!?」

 

悟飯「二乃さんから聞いたんだけど、今日は有名レビュワーから予約が入ってたみたいなんだよ。それって……」

 

五月「な、ナンノコトデショウ?」

 

結局悟飯にもバレた五月であった。

 




 武田の順位に関して。悟飯と風太郎が2人揃って同率1位になっているので、本来なら3位にすべきなんでしょうが、なんか武田は2位のイメージが強いのでゴリ押しです。

 武田は恐らく1年生の頃に風太郎に突っかかっていたんだろうなという想像の元、悟飯は1年生の頃から武田と面識があることになっています。風太郎は持ち前の無関心さによって存在自体認知していませんが……。

 五月のやらかして悟飯の正体に少しずつ近づきつつあるビーデル。はてさて、いつバレるのやら………。

 ちなみに書き溜めは58話の途中までは現在完成しておりますが、ある程度ストックを貯めときたいので、投稿ペースが上がることは多分ないです。

……前回ビーデル登場させたけど意外と反応が薄い…?出しちゃまずかった………?

 あとそろそろ五等分の花嫁の映画公開ですね。私は初日に行こうかと思っています。楽しみで仕方ないです。無堂って五つ子の実父という重要なポジションにいながら出番無茶苦茶少ないですよね。


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第56話 悟飯覚醒

 前回のあらすじ……。

 悟飯は自身の決意を3人に話した。そしてその日からは3年生としての生活がスタートしたのだが、なんと悟飯と風太郎が去年に引き続き同じクラスだったが、驚くのはまだ早い。なんと五つ子も揃っていたのだ。

 五つ子が勢揃いということで、クラス中大騒ぎ。悟飯と武田が仲裁に入ったことによってその騒ぎは幾らかマシになった。四葉は突然風太郎を学級委員に推薦したが、その意図は一体………?

 そして、悟飯は五月と共に変装をしてケーキ屋に行って新作を味わっていたが、二乃と風太郎にはその正体がすぐにバレてしまった。



悟飯が五月とケーキを食べに行った翌日……。

 

「えっ?上杉って誰?」

 

四葉「(もう忘れられてる!?)」

 

四葉は風太郎のプレゼントのついて、アイデアを聞くためにクラスメイトに聞き回ろうとするも、そもそも風太郎の存在は忘れ去られていた。と言うのは大袈裟だが、学級長としての印象しかないようだ。

 

武田「上杉君はそういうのは受け取るタイプじゃないと思うけど。ね?」

 

武田からはそんな回答が返ってくる。

 

「上杉君の好きそうなもの…?うーん………ごめん。全然分からないや」

 

女子にも聞くが、当然のように分からないと回答される。

 

「ところで四葉ちゃん!小耳に挟んだだけど、上杉君と付き合っているって噂、本当なの?」

 

四葉「………わ、私が上杉さんと…?」

 

「2人とも学級長で仲良さそうだし、あんな大胆に推薦するなんて勘繰っちゃうよね〜!」

 

「でも火のないところに煙は立たないって言うし!」

 

四葉「わ、私が上杉さんとつ……つき…なんて…!!恐れ多い!!」

 

「どうかなー?上杉君の方も満更でもないかもよ?」

 

 

 

 

 

 

 

なんて噂が蔓延っているのは事実である。四葉と風太郎が何気に共に行動することが多いことが原因なのだが…。

 

 

「中野さん!6.9秒!」

 

「6秒台?速え………」

 

四葉はこのタイムだったが、同じく共に走っていた三玖は10.5だった。五つ子なのにこの格差……。努力とは恐ろしいものである。

 

「でもあっちのがやべえよな」

 

「あっち?」

 

「ほら、孫だよ。あいつ5秒台だぜ?」

 

「おいおいえぐいな」

 

ちなみにだが、悟飯はそれでもかなり抑えている方である。本気を出せば恐らく0.0000000……(以下略)。

 

「体育委員いるか?これ片付けておいてくれ」

 

「今日は休みですよ」

 

「じゃあ学級委員頼む」

 

四葉「はい!」

 

風太郎「はぁ………はぁ…………」

 

悟飯「う、上杉君、大丈夫……?」

 

風太郎「やべぇ………しんどい………」

 

悟飯「お仕事変わろうか?」

 

風太郎「いや、それは自分でやる……」

 

 

 

風太郎は息を切らしながらも、学級委員としての仕事を熟す為に立ち上がって、一人で荷物を運ぼうとするが、風太郎にとっては重すぎた為に四葉と共に運ぶことになった。

 

「ほら〜やっぱり」

 

「絶対何かあるよね〜」

 

 

 

武田「………孫君。君は運動もできるんだね………」

 

悟飯「まあね」

 

ちなみにだが、武田は人並み以上には運動できるが、四葉や悟飯には及ばない。むしろその2人……特に悟飯が異常なまでにでき過ぎるだけである。

 

 

 

 

 

 

昼休みになった。悟飯は二乃と三玖と一花と共に誘われる形で食堂に行くことになった。

 

二乃「というか、前から聞きたかったんだけど、あの武田って奴といつ接点なんてできたのよ?」

 

悟飯「あー……。そういえば話そびれていたね……。あれは確か…………」

 

 

 

 

 

 

 

 

あれは1年生の時の中間テスト後の出来事だった。テストが全て返却され、学年単位で順位が公表された時のこと。僕と上杉君が1位だった。そのすぐ下に武田君の名前があったんだっけ?

 

このテストの時からだ。僕と上杉君が話すようになったのは。それまでは上杉君は誰とも喋ろうとしなかったし、僕もそれまでは上杉君は無口な人だと思っていた。だが意外にもお喋りなんだなぁ……と、話してみてイメージが変わった。この頃からはクラスは違かったが、上杉君とよく勉強するようになっていた。上杉君も誰かと勉強するよは懐かしみがあったようで、気分転換になったらしい。

 

で、僕が帰宅しようとした時だったかな…?

 

武田「君が孫悟飯君か……」

 

悟飯「……?君は?」

 

武田「僕は武田祐輔。この名前に身に覚えはないかい?」

 

悟飯「武田君…?ああ!学年2位の!」

 

武田「孫悟飯君!!今回は一位の座を譲ってしまったが、次は君に勝ってみせるからね!覚悟しておくようにね!!」

 

悟飯「えっ?」

 

最初は何故かライバル?敵?そんな感じだった。僕としては別に誰とも競っているつもりはなかったんだけど…、武田君はどうやら1位に拘っていたようだ。

 

しかし、1年1学期の期末……2学期中間、期末………。どのテストでも僕は満点をキープし、武田君は2位をキープしていた。

 

だが、武田君は毎回宣戦布告をしてくるので、僕も多少は武田君を意識するようになった。彼はただ一位に拘っているようには見えなかった。学年一位はあくまでも通過点……。そんな感じがした。

 

それで、僕は武田君にそれとなく聞いてみた。何故そこまで必死に僕に勝とうとするのかと。すると逆に、何故君は一位を取り続けることができるのか?と聞き返された。

 

僕には学者になるという夢があるということを伝えると、武田君も同様に夢があるとのこと。詳しいことは本人の口以外から口外するのは良くないだろうから夢は伏せておくけど、僕も彼も夢を追っている過程で勉強をしているに過ぎない。そんな共通点があったからか、ただ競い合うだけの関係ではなくなった。今ではどちらかと言うと、友達という言い方の方が合うかもしれない。

 

 

 

 

 

悟飯「………こんな感じかな」

 

三玖「そんなエピソードがあったんだ………」

 

二乃「だからあんなに親しげに話してたのね………」

 

一花「………ということは、フータロー君に対しても対抗心を燃やしているんじゃ…?」

 

悟飯「みたいだね。上杉君は他人に関心がないから、武田君の存在を認識しているのか怪しいけど………」

 

二乃「ずっと2位で上杉を追っていたのに、認識されてなかったとしたら憐れ過ぎない………?」

 

三玖「フータローだからあり得る……」

 

そういえば、今更だけど………。

 

悟飯「四葉さんと五月さんはどうしたの?」

 

三玖「四葉は五月と相談だって。よく分からないけど」

 

悟飯「ふーん?」

 

一体何を話しているんだろう…?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日の放課後。本日は久々に全員で集まって家庭教師をすることになった風太郎と悟飯。一花は仕事で不在ではあるが、最近はみんなバイトをしていることもあって中々集まることができない為、これはチャンスだということで勉強会が開かれた。

 

三玖「ここで勉強するのも久しぶり」

 

二乃「最近はみんな忙しいものね」

 

四葉「一花は今日も仕事だけど、私も試写会行きたかったな〜……」

 

三玖「………ところで、五月はバイト…」

 

五月「ギクリ…」

 

二乃「あんた、まだ見つけてなかったの?」

 

五月「も、もう少しだけ考える時間を下さい………」

 

風太郎「お前ら、口より手を動かせ。月末の全国模試はもうすぐだぞ?」

 

二乃「ひと通り埋めたわ。はい、答え合わせよろしく。ハー君っ♡」

 

二乃は問題を解き終わると、悟飯の元に回答を提出するが、なんかあざとい。恐らく何かしら他意があるのだろう。

 

三玖「……私ももう終わってる」

 

二乃「邪魔なんだけど……」

 

三玖「なんで?」

 

二乃「はっ?」

 

悟飯「2人とも…!落ち着いて…!」

 

しかし、三玖が阻むように悟飯に回答を提出しようとする。そのせいか、二乃と三玖の間で喧嘩が勃発しそうな雰囲気になっていた。

 

風太郎「いや、俺の手空いてるんだが………」

 

四葉「模擬試験難しかったね〜」

 

五月「そうですね。しかしそれほど不安でもないというか………」

 

四葉「だよね!」

 

三玖「うん。学年末試験はみんなで乗り越えたんだもん」

 

二乃「一度越えた壁だもの。余裕だわ」

 

四葉「こうなるといよいよ卒業も見えてきましたね!上杉さん!!」

 

風太郎「……よっしゃ!!答え合わせするぞ!!」

 

ということで、4人の成績は右肩上がりになっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それならばどれだけ良かったことだろうか。現実は非情である。情け?そんなものはない(無慈悲)。

 

風太郎「嘘だろ……?ほとんど赤点じゃねえか……………」

 

あろうことか、何故か3人の成績は落ちていた。

 

悟飯「こ、これは酷いね…………」

 

風太郎「お前らあれか?学年が上がると脳がリセットされる仕組みなのか?」

 

四葉「なるほど!道理で!!」

 

悟飯「何そのシステム…。厄介ってレベルじゃないよ………」

 

三玖「できたと思ってたのに………」

 

二乃「言い訳になるかもだけど、ここ最近は仕事ばっかであんま自習できてないのよね」

 

悟飯「……なるほど。確かに五月さんの点数は殆ど下がってない………」

 

五月「すみません!すみません!!」

 

風太郎「無事卒業とか言ってる側からこれだ。俺の模試勉強もあるってのに………。じゃあ、間違えた箇所から順番に確認していくぞ」

 

「「「「お願いします!!!」」」」

 

そして、しばらく復習をしていた。最初の頃とは違って、みんなやる気があるので、同じできない状態でも、圧倒的にこの状況の方が良かった。やる気があるのとないのとでは、頭に入る知識量もかなり変わってくる。やる気があるとは素晴らしいものだ。

 

 

 

 

 

ピンポーン……

 

だが、途中でインターホンが鳴った。

 

五月「はーい……」

 

五月が玄関に出る。宅配便か何かかと予想していたが、訪問してきた人物は……………。

 

「失礼するよ」

 

風太郎「!?っ」

 

三玖「お、お父さん!?」

 

なんとマルオが来たのだ。まさかとは思うが、強引に連れ戻す気だろうか?

 

二乃「どうしたのよ急に………」

 

マルオ「もうすぐ全国模試と聞いてね。彼を紹介しに来たんだ。入りたまえ」

 

悟飯「か、彼……?」

 

 

 

「お邪魔します。申し訳ない。突然押しかける形になってしまって」

 

悟飯「た、武田君…?なんで……?」

 

何故か武田がマルオの紹介したい人物として目の前に現れた。

 

二乃「えっ?君って………」

 

三玖「どういうこと?」

 

四葉「私、何がなんだか………」

 

その突然の訪問者に戸惑いを隠し切れていない各々。それもそのはず、武田と彼らは殆ど接点がない。悟飯でも個人的に関わりがある程度だ。

 

マルオ「今日からこの武田君が君達の新しい家庭教師だ」

 

二乃「はぁ!!??」

 

五月「ど、どういうことですか!?説明して下さい!!」

 

マルオ「おっと……。言葉足らずだったね。上杉君に代わる家庭教師が武田君だ」

 

四葉「ど、どういうことですか?」

 

マルオ「……上杉君。先の試験でも君の功績は大きい。孫君も謙遜か事実かは分からないが、君を必要としている程だ。成績不良で手を焼いていた娘達が優秀な同級生に教わるということで、一定の効果を生むことを教えてくれた」

 

三玖「それなら、フータローを変える必要はないよね?」

 

四葉「なんで上杉さんだけ……!!」

 

悟飯「………あっ」

 

悟飯はマルオの意図に気付いたようだ。優秀な同級生………。風太郎の成績を知っている悟飯だけが意図に気付いたのだ。

 

マルオ「そう。それは彼が未だに優秀ならの話だ」

 

四葉「……えっ?」

 

三玖「ど、どういうこと…?フータローはいつも通り満点を取ったんじゃ…?」

 

マルオ「孫君は順位と点数を維持していたが、残念ながら上杉君はどの科目でも点数を落とし、順位も落としている。孫君に次いで優秀な同級生となったのが彼だ。僕個人としては、孫君1人でも十分だと思っていたが、彼は1人では厳しいと言っていてね。確かにボディガードも兼任しているとなると負担は計り知れない。ならばということで、もう1人の家庭教師に相応しいのは彼だと判断した」

 

マルオの正論に何も言い返せず、空間が沈黙の渦に包まれた時。その沈黙を武田が破ったのだが………。

 

武田「ふっふっふっ…!

 

ヤッタ!!勝った!勝ったぞ!!イエス!オーイエス!!イエスイエスイエスッッ!!!!!!」

 

武田はキャラが変わったように風太郎に勝利したことを大喜びしていた。

 

武田「上杉君!長きに渡る僕らのライバル関係も今日で終止符が打たれたッ!!ついに僕は君を超えたッ!君の代わりも僕が務めてあげよう!!始まりは2年前、学年トップを目指して……」

 

風太郎「いや、お前誰だよ」

 

武田「えっ?ほら!ずっと2位に迫っていた武田祐輔………」

 

風太郎「あんなに突っかかってきたのはそういうことだったのか。ずっと分からなかったんだが………。今まで満点しか取ってなかったから、2位以下は気にしたことなかったわ」

 

武田「2位、以下ッッ……!!!」

 

テンションだけで天国に到達しそうだった武田を、風太郎のそんな正直で遠慮のない一言が地に叩き落とした。

 

悟飯「(なんか武田君が可哀想…)」

 

二乃「(2位以下…。憐れだわ…)」

 

五月「……分かりました。学年で一番優秀な生徒が家庭教師に相応しいというのなら構いません。恐らくそれだけが理由ではないのでしょうが……」

 

 

マルオは以前、五月に対して『上杉君が嫌いだ』と暴露していた。恐らく今回の提案も私情があってのことだろう。だが五月はそんな理不尽な提案に抵抗する為、こう宣言した。

 

五月「しかし、それなら私にも考えがあります。私が3年生で1番の成績を取ります!!」

 

四葉「えっ?」

二乃「えっ?」

三玖「えっ…?」

悟飯「んっ…?」

 

マルオ「ふむ……」

 

五月にとっては無謀な提案に、各々がつい反応してしまう。確かに五月は成績が下がってないとはいえ、学年トップの成績を取るなど今のままでは夢のまた夢である。

 

マルオ「いいだろう」

 

三玖「ちょ、ちょっと待って!お父さんに何言われても関係ない!フータローは私達が雇っているんだもん!!」

 

二乃「そうよ!ずっとほったらかしにしてたくせに、今になって…「いい加減に気付いてくれ」」

 

二乃はマルオに対して反論しようとしたが、武田の一言がそれを阻んだ。

 

武田「上杉君が家庭教師を辞めるということ、それは他ならぬ上杉君の為だ。君達のせいだ…!君達が上杉君を凡人にしたんだ!」

 

武田は生徒である4人を責めるようにそう言う。つまり、五つ子5人が風太郎の足を引っ張っていると言いたいのだ。

 

マルオ「彼には彼の人生がある。解放してあげたらどうだい?」

 

悟飯「い、いくらなんでもそんな言い方は……!!」

 

この言い方には流石の悟飯も思うところがあった。確かに足枷になってしまっているかもしれない。とはいえ、流石に言い過ぎだと、悟飯は少々怒りを感じた。

 

武田「では何故今まで満点を維持していた上杉君が点を落としたんだい?」

 

悟飯「そ、それは…………」

 

しかし、風太郎の成績低下の要因である事実には変わりない。悟飯はそれも承知していたので、言い返すことはできなかった。

 

武田「僕個人としては君にも家庭教師をやめてほしい。ライバルがこういう形で実力を失う姿を見たくないんだ」

 

悟飯「な、何を言って………」

 

武田「孫君、君はまだ満点を維持し、一位の座を僕に譲ってくれないね。僕としても学年一位に上がりたいところではあるが、勝つからには本気の相手に勝ちたいんだ。誰かに足を引っ張られることのない、最高のコンディションの相手を負かしたいんだ。だから君も凡人になる前に…………」

 

 

悟飯「………………」

 

 

確かに武田の言い分も一理ある。このままでは悟飯の成績にも影響しかねない。とはいえ、武田は何度も執拗にあの5人が足枷になっていると言った。直接そう言ったわけではない。だが、意味としては言ったといって差し支えない。

 

確かに最初は反抗的だった。でも今は一生懸命努力している。そんな彼女達を足枷と呼ぶことを悟飯は許せなかった。

 

悟飯「……君は、みんなが頑張っている姿を見たことある?ないでしょ?できなくても、諦めずに努力する彼女達の姿を…………」

 

武田「な、何を………」

 

悟飯「何も知らない癖に……。彼女達の努力している姿も見たこともないくせに……!知ったような口を聞くなッッ!!!!!!

 

 

ブォオオオオオオッ‼︎

 

 

武田「!?っ」

 

 

必要以上に5人を貶す武田が許せなかった。とはいえ、流石に超サイヤ人に変身する程ではなかった。

 

だが、悟飯は感情を制御しきれずに気を少々解放してしまった。その影響で一瞬とはいえ、部屋の中に強風が吹き荒れた。

 

 

マルオ「しかし孫君。武田君の言っていることは間違いではないはずだ。現に上杉君は順位を落とした。これが何よりの証拠ではないかね?」

 

悟飯「あなたもあなたですよ、マルオさん。上杉君に一回怒られたくらいでここまでしますか?」

 

マルオ「………なに?」

 

まさか自分自身にも怒りの矛先を向けられると思っていなかったのか、マルオは怪訝な素振りをしながらも、平静を装って返事する。

 

悟飯「あなたが忙しいことは重々承知している。5人を育てるために一生懸命働いていることも、5人のことを考えて家庭教師を付けたことも承知しています。だが、あなたは娘さんを見ていない。分かっていない」

 

マルオ「………どういうことかな?」

 

悟飯「そもそも、何故彼女達が家出したのか、まさかとは思いますけど理解してないわけないですよね?彼女達が家出をしたのは、立ち入り禁止になった上杉君を必要としていたから……」

 

マルオ「しかし上杉君はあの時自分から辞めた。それを娘達が無理矢理……」

 

悟飯「ええ。確かに上杉君本人の意思ですよ。やめたのも、再開したのも。そもそも何故上杉君が辞めようとしたのか、分かっています?彼女達は一度家出をする程の大喧嘩をしました。その仲を戻す為に彼は奮闘しました。でも本来ならこれは家庭教師がするべきことではありませんよ?それなのに、上杉君はそれが上手くできなかったからと言ってやめたんですよ?」

 

マルオ「………何が言いたいんだい?」

 

悟飯「あなたが娘さん達を気にかけてあげないから…「悟飯。もういい」」

 

悟飯「上杉君!今まで僕も我慢していたけど、いい加減……!!」

 

風太郎「やめろ」

 

悟飯「う、上杉君………?」

 

風太郎はヒートアップした悟飯を抑えるようにこう続ける。

 

風太郎「確かに2人の言う通りだ。武田が俺を過剰に評価してんのは分かった。お前が言っていることも間違っていない。確かに俺は凡人になった」

 

風太郎は落ち着きながら、静かに淡々と語る。

 

風太郎「だが去年の夏までは……。あるいはこの仕事を受けていなかったら……俺は凡人にもなれていなかっただろうよ…………。

 

教科書を最初から最後まで覚えただけで俺は知った気になっていた。知らなかったんだ。世の中にこんな馬鹿共がいるってことを。俺がこんなにも馬鹿だったことを…。こいつらが望む限り、俺は付き合いますよ。解放してもらわなくて結構だ」

 

マルオ「そこまでする義理はないだろう?」

 

風太郎「……義理はありません。だが、この仕事は俺達2人にしかできない自負がある!!こいつらの成績を落とすことなんてしません。俺の成績が落ちてしまったことに関してはご心配をお掛けしました。

 

俺はなってみせます。武田に勝ち、学年一位………いや、全国模試一位に!!!!!」

 

 

風太郎は自信満々に宣言した。

 

四葉「う、上杉さん!!?」

 

風太郎「なんだよ!?」

 

五月「流石に全国は無茶ですって!」

 

三玖「フータロー!もう少し現実的に………」

 

風太郎「あ!?学年一位じゃ今までと変わらないだろ!?」

 

流石の風太郎でも無謀だと感じた4人は風太郎に詰め寄る。

 

二乃「全国模試十位以内!!」

 

五月「これでどうですか!!」

 

風太郎「おい!離せ!!」

 

武田「………大きく出たね。無理に決まっている。それも五人を教えながらなんて…………」

 

マルオ「………いいだろう。もしこの全国模試でそのノルマを達成できたら、改めて君が相応しいと認めよう」

 

こうして風太郎のノルマは定められた。

 

マルオ「当然だとは思うが、孫君には上杉君以上の成績を出してもらうが、異論はないね?」

 

悟飯「…………ええ。その代わり、僕が一位…………いや、全て満点を取った暁には、僕のお願いも聞いてもらいますよ?」

 

「「「「ま、満点ッ!!!?」」」」

 

五月「い、いくらなんでも流石に満点は……!!」

 

三玖「ご、悟飯…!!もう少し冷静に……」

 

悟飯「静かにしてて」

 

マルオ「ほう?ちなみにどんな願いだい?」

 

悟飯「簡単なことですよ。これ以上は父親としての仕事を放り出さないこと。たったこれだけです」

 

マルオ「………具体的には?」

 

悟飯「娘さん達としっかりと向き合うこと………」

 

風太郎「お、おい…!それ以上は……」

 

マルオ「ふむ。いいだろう。そのノルマを達成できた場合は君の願いを聞き入れるとしよう。だが、達成できなかった場合は…………。分かってるね?」

 

悟飯「………」

 

悟飯はマルオの問いに対して無言だったが、マルオはそれを肯定と見做した。

 

マルオも悟飯の言い分に思うところがあったのか、悟飯の要求を案外すんなりと了承した。

 

マルオ「それじゃあ、期待してるからね……。頑張りたまえ」

 

武田「覚悟しておくんだよ、2人とも」

 

 

こうして、2人は五つ子の住むアパートを後にした。

 

 

 

 

武田「しかし中野さん。良かったのですか?」

 

マルオ「何がだい?」

 

武田「孫君は他人の家庭事情に干渉しがちと言いますか……」

 

マルオ「………いや。彼の言い分はよく分かっている。僕は娘達から逃げているのかもしれないね……」

 

武田「な、中野さん?」

 

マルオ「おっと失礼。今の独り言は聞かなかったことにしておいてくれ」

 

武田「は、はい………」

 

どうやらマルオも自分が父親としての役割を果たし切れていないことがなんとなく分かっていたようで、他人に指摘されてしまうとは、父親失格ではないだろうか…?そんなことを考えていたかどうかは本人にしか分からない。だが、娘達とまともに接していない自覚はあったようだった。

 

武田「ところで、孫君は何者なんですか?彼が怒った瞬間、室内であり得ない程の強風が吹き荒れましたが………。それに孫君が彼女達のボディガードをしていたなんて、一言も………」

 

マルオ「………君は知らなくていい。彼には彼の事情がある、とだけ言っておこうか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

マルオ「(しかし、まさか孫君があんなに怒るとは思わなかった………。下手したら彼の方が父親として適性があるのではないだろうか……?)」

 

流石に冗談を交えた考えであるが、マルオは以前の風太郎、そして今回の悟飯の指摘も相まって、自分がこれから父親としてやっていけるのか不安になっていたのだが、それを顔に出さないようにしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

風太郎「お前……。心臓に悪いからやめてくれ…………」

 

五月「いきなりビックリしましたよ。武田君に対して怒鳴るなんて………」

 

三玖「お父さんに対しても怒るし……」

 

四葉「ヒヤッとしました…………」

 

一方で、悟飯は4人に先程のことで軽く説教を受けていた。

 

悟飯「でもあれは武田君の言い方が悪い。いくらなんでも言い過ぎだ。何も見てこなかったのに……。それにマルオさんは私情を挟み過ぎだ。一度上杉君に指摘されたぐらいであんなに……」

 

風太郎「こんなガチギレしてる悟飯は初めて見た…………」

 

五月「私達のために怒ってくれるのは嬉しい気はしますが、限度というものがありますよ!」

 

二乃「………でも、パパに対して言ってほしいことを言ってくれたのはスカッとしたわ」

 

三玖「で、でも……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

風太郎「………ということがあった」

 

一花「あの悟飯君がそんなに怒ったんだ………?想像できないや……」

 

風太郎「俺も約2年の付き合いだが、初めて見たぞ…。あんな悟飯は…………」

 

風太郎は翌日から、登校中だろうが構わずに模試勉強をするようになった。そこに一花がいつものように風太郎を待ち伏せし、コーヒーを貢ごうとするも、風太郎はコーヒーが苦手な為失敗した。

 

一花「でもフータロー君も悟飯君も大きく出たよね。フータロー君は10位以内、悟飯君に至っては1位で、しかも全科目満点でしょ?」

 

風太郎「流石に俺も止めたんだが、あの時の悟飯は一切引かなかったんだ。でも悟飯なら本当に取りかねないぞ?」

 

一花「あはは……。確かに……。そして相手はあの武田君でしょ?」

 

風太郎「知ってるのか?」

 

一花「2年の時同じクラスだったからね。あの時からザ・好青年って感じだったよ。あれはあれで大変そうだったけどね」

 

風太郎「まあ相手が誰であろうと負けるつもりは毛頭ない。これから月末の試験まで勉強漬けだ。覚悟しろよ」

 

一花「わ、私達もかぁ……」

 

風太郎「とはいえ、他の姉妹と違い、学年末試験の頃から働きながら勉強してきたお前だ。何も心配してないがな」

 

一花「……!むふふ、乙女の扱いが上手になりましたな〜」

 

風太郎「あれ?お前眼鏡とか掛けてたっけ?」

 

一花「今更!?前言撤回!!やっぱり鈍ちんだね……」

 

一花は風太郎の台詞に感心しかけたが、結局はいつも通りの風太郎であったことで若干期待外れ感が否めなかった。

 

一花「もっと早く気付いてほしかったかな…。どう?少しは知的に見えるんじゃない?まあ一応変装なんだけどね」

 

風太郎「変装……?」

 

一花「ほら、昨日私が出た映画の完成試写会があって、そこそこテレビとか取り上げられたみたいだしさ……。お、覚えてる?映画の時のことなんだけど……」

 

風太郎「………ぷくく…!声をかけられないように変装してたのか…!これは大女優様だぜ……!!」

 

風太郎は笑いに堪えながら一花を揶揄う。

 

一花「もー!恥ずかしいから言わないで!!」

 

風太郎「……おや?あれお前らの妹じゃねえか?やっと追いついたみたいだな」

 

一花「……そ、そうだね」

 

一花は風太郎との2人きりの時間が終わってしまうと思うと、少々寂しい気持ちになり、もう少し2人きりで居たいと思うようになった。

 

風太郎「また五月何か食ってやがるな。四葉の声はうるせえし、二乃がうちのバイトに入ってきた時はビックリしたな。向かいのパン屋で三玖が働き出したと聞いた時はもっと驚いた。何故かライバル店の客向きが減ったとうちの店長が喜んでたな………」

 

一花「……(やめて…!それ以上は他の子の話をしないで…!!)」

 

一花は気がつくと風太郎の手を取っていた。姉妹の話をされると、一花の独占欲がグツグツと湧き、姉妹の話を中断したかった。

 

一花「ねえ、このまま2人でサボっちゃおうよ?」

 

"私だけを見てほしい"

 

一花のそんな乙女チックな思いが一花の口を自然と動かした。だが風太郎は全国模試の為に猛勉強中だ。

 

風太郎「ダメっしょ」

 

一花「」チーン

 

そんな提案が通るはずもなかった。

 

一花「いいじゃん!少しだけ!」

 

風太郎「模試があるって言ったろ」

 

一花「1限目体育だよ!!」

 

風太郎「それなら…。って、そんなわけにはいくか!!」

 

一花はなんとか2人でサボって2人きりの時間を作ろうとしたが、風太郎が真面目、模試前ということもあってその努力は無駄に終わった。

 

一花がギリギリまで粘っていると、2人は遅刻寸前になってしまった。

 

風太郎「お前がダダこねるから遅刻寸前じゃねえか!!」

 

一花「フータロー君真面目すぎ!」

 

風太郎「ただでさえお前は昨日の勉強会をサボってたんだ。しっかりしてくれ」

 

一花「……(サボってたって……。私は私で仕事してるんだけど…!そもそも私抜きで話が進んでたのも少し気にしてたんだからね!)」ムスッ

 

一花は頬を膨らませながら、心の中でそうグチを漏らした。確かに一花は仕事で参加することができなかっただけなので、ただサボっているのとは訳が違う。まあ言葉の綾だろうが……。

 

 

 

ガラッ

 

「一花さん!朝のニュース見たよ!!」

 

「女優ってマジ!?」

 

「びっくりしたぜ!まさか同じクラスにこんなスターがいるなんて!」

 

「ずっとこの話題で持ちきりだよ!」

 

風太郎「……そんなにデカい映画だったのか?」

 

一花「まあね……」

 

クラスメイトの騒ぎ様に、風太郎は余程大きい映画でかつ、大々的に報道されたことを察した。

 

風太郎「……どうでもいいけど、オーデション受けてよかったな。これでお前は立派な嘘つきだ」

 

 

ドクンっ

 

 

クラスメイトの賛辞も確かに嬉しかった。だが、どんな賛辞よりも、一花にとっては、風太郎の何気ない一言の方が心に響いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ちなみに、一花と風太郎が来る前のこと……。

 

武田「孫君。昨日はあんな無礼をして済まなかったね。あれは上杉君と君を焚きつける為に敢えてああいうキツい言い方をさせてもらったよ」

 

悟飯「……僕も少し頭に血が昇っていたみたいだからお互い様だよ。だけど、僕を本気にさせたこと、後悔するよ?」

 

武田「ふふっ…!そうこなくちゃ……!やはりライバルと競うなら本気の相手じゃなきゃね!僕も負けないからね!!」

 

こんなやり取りがあった。

 

三玖「……焚きつけるためって…。余程本気の悟飯を負かしたいんだね……」

 

五月「………あんなに燃えている孫君は初めて見た気がします」

 

二乃「えぇ……。そうね…………。まるで別人みたいだわ…………」

 

武田の焚きつけ作戦は見事に成功し、悟飯は本気になった。果たして、悟飯は自ら課したとんでもないノルマを達成することができるのか?

 

また、風太郎も武田に勝利することができるのか?それとも、今回も武田が勝利するのか?

 

 

 

史上初の悟飯の模試による激闘が、幕を開けようとしていた……。

 




 今回の武田君が五つ子を足枷だというシーン。あれは独自解釈も少々含まれています。武田が五つ子を足枷と言う時、悟飯は何かしら思うところはあるだろうと思いました。ただ一回言った程度では流石にキレはしませんが、武田がしつこく五つ子を足枷だと言ったことによって悟飯の怒りが小爆発しました。そして正しさばかりを語るマルオにもその被害が及んだ感じです。

 キャラ崩壊してないかな?大丈夫かな…?でも悟飯は風太郎よりも感情的な部分はあるはずだから……、違和感はないかな………?

 というわけで、悟飯は五つ子は足枷ではないことを証明する為に本気を出した感じです。次回の悟飯は少しキャラ崩壊しているかも…?

 タイトル的に悟飯の新形態が出るのでは?と予想した人もいるかもしれませんが、残念ながら違います。

 ちなみにごと嫁の映画見てきました。とにかく最高でしたね!!なんなら2日連続で見たくらいですしw
まだ見てない方は是非見てください。ごと嫁好きで見ないのは普通に損ですよ!

……今になって喪失感来た…。


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第57話 足枷なんかじゃない

 前回のあらすじ…。

 突如五つ子アパートに訪問してきたマルオが武田を連れてきたかと思うと、なんと風太郎の代わりに家庭教師をしてもらうと提案してきた。これは風太郎の成績が下がってしまったことが原因だ。

 無論、五つ子と悟飯は反対するが、武田が風太郎の為に解放してくれ。五つ子が風太郎の足枷になっており、このままでは風太郎だけでなく、悟飯までもが凡人に成り下がってしまうと、五つ子を貶すような言動をした。

 今まで身近で五つ子が努力している姿を見てきた悟飯にとって、これは聞き捨てならない言葉であった。悟飯は武田に対して一言怒ると同時に、マルオの行動にも怒りを小爆発させる状況になるも、風太郎が仲裁に入り、風太郎は全国模試で10位以内、悟飯は全科目満点というノルマが課され、風太郎&悟飯と五つ子の家庭教師陣営vsマルオと武田のボンボンコミュニティ陣営という形で新川中島の戦いとも言える模試戦争が、幕を開けたのであった………。



一花が出演した映画の試写会がそれなりに大々的に報道されたことにより、クラスメイトにも一花が女優であることを認識され、物珍しさからか、一日中引っ張りだこであった。

 

四葉「おーい、一花〜!図書室に先に行ってるね!」

 

一花「あっ、私も………」

 

「えー!もっと話聞きたいな!」

 

「もうちょっといいでしょ?」

 

「例えば、有名人に会ったとか……」

 

一花「………ごめん!」

 

「待って一花ちゃん!」

 

一花は長くなる予感がし、隙をついて駆け出すも、クラスメイトが追いかけてくる。そのクラスメイトを撒く為に三玖に変装してやり過ごした。一花はクラスメイトに心の中で謝罪した。

 

風太郎「……お前、まだここにいたのか。早く行くぞ、三玖」

 

一花「あっ、ごめん、私………」

 

風太郎「もう公開とか早えよな」

 

一花「……えっ?何が?」

 

風太郎「一花の映画の話。お前が昨日教えてくれたんだろう?」

 

一花「……(そっか。あれからいろいろあったもんね……。きっと私だけじゃなくて、みんなとも………。私のことだけ、なんていかないか…………)」

 

一花はやはり他の姉妹の話をしてほしくないと思ってしまう。四葉以外は風太郎に対しては想いを寄せてないとしてもだ。どうやら一花は姉妹の中でも独占欲が強い方らしい。

 

 

 

『好きにしなよ!』

 

三玖が昔そんなことを言っていた気がする。

 

『蹴落としてでも叶えたい……』

 

二乃がそんなことを言っていた気がする。

 

 

 

一花はやはり自分は狡くて卑怯だと思いつつも、もう手段を選んでいる場合ではない気がしてきた。

 

自分のことを意識してほしい……。自分だけ見てほしい……。そんな想いが溢れ出してきた。

 

一花「フータローく…フータロー…!」

 

風太郎「なんだ?」

 

一花「教えてあげる。一花、フータローのこと好きだよ」

 

風太郎「!?ッ」

 

突然の告白に、風太郎は頭が真っ白になってしまう。

 

一花「凄くお似合いだと思う…。私、応援するね!」

 

風太郎「………それ、本当なのか?」

 

一花「うん。嘘じゃないよ」

 

一花は三玖の格好をしたまま風太郎に告白した。これは一歩間違えればとんでもない行為だ。もし三玖が風太郎に想いを寄せていたとしたら三玖の恋路を阻むことになる。三玖が悟飯に想いを寄せているから良かったが、一歩間違えたら後戻りができない可能性があった。

 

風太郎「…………そうか。やはりか…」

 

一花「………ふぇ…?やはりって……?ど、どういうこと…!?///」

 

突然の不意打ちに、一花は顔を紅く染めてしまうが、三玖として風太郎に問い続ける。

 

風太郎「………だから、一花が俺に好意を持ってくれていることだ……。恥ずかしいこと言わせんな…………」

 

一花「嘘……。あのフータローが………」

 

風太郎「……まあ、色々あったんだよ……」

 

 

 

 

 

『私を見つけてくれてありがとう…!』

 

 

 

旅行最終日のあの日、偽五月の正体が一花だと看破した時のことを風太郎は思い出していた。正体を見破ったら、一花は風太郎に飛びつき抱きついてきた。今日の朝のコーヒーや、登校時にやたらとエンカウントすることも含め、風太郎はひょっとして、一花は俺に好意があるのではないか…?とひそかに考えるようになっていたのだ。

 

 

風太郎「だが三玖。何故お前がそれを伝える?こういうのは本人が言うべきことなんじゃないのか?勝手にバラしちまっていいのか?」

 

一花「そ、それは………その…………」

 

風太郎「……ん?待て、お前………。ひょっとして一花か?」

 

一花「えっ?な、何を言ってるのフータロー君…!!私は三玖だよ!!」

 

風太郎「おい、今"フータロー君"って………」

 

一花「き、気のせいじゃない…?今日のフータローなんか変だよ?そ、そうだ!喉乾いてきたから抹茶ソーダ買いに行こうかな…!!またね、フータロー!」

 

風太郎「お、おい待て…!まだ話は…!!」

 

一花はこれ以上ボロを出さない為に逃げる様に駆け出していった。

 

風太郎「……抹茶ソーダを買うからやっぱり三玖…?いやでも、……やっぱ分かんねえ…………」

 

全国模試を控えている重要な時期に、風太郎は悩みの種を抱えてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一花は帰宅後、風呂場の中で姉妹グループL○NEにあるメッセージを送る。その内容を要約すると、『風太郎に迷惑かけない為に、誕生日プレゼントの話は一旦なしにしよう』とのことだった。

 

 

 

 

翌日……。風太郎は昨日の告白に頭を悩まされるもの、模試勉強と勉強会は欠かすことはなかった。というか………。

 

悟飯「そろそろ休憩にしようか!」

 

悟飯は武田の宣戦布告以来、やたらと家庭教師に力を入れるようになった。その姿は風太郎が引いてしまうほど。しかもみんなが休憩している時は模試勉強をしている始末。体力も化け物な悟飯だからこそできる異業である。

 

四葉「つかれた〜………」

 

一花「五月ちゃんは?」

 

三玖「用事があるって言ってた」

 

四葉「上杉さん、ここの問題ですけど………上杉さん?」

 

四葉は悟飯が自分の勉強に熱中し始めた様子を見ると、風太郎に質問しようとするが、その風太郎はどこかうわの空だった。

 

風太郎「悪い。少し外の空気を吸ってくる」

 

 

 

 

 

 

 

三玖「フータロー?」

 

風太郎「三玖か……」

 

風太郎のことが心配になった三玖が追いかけてきたようだ。風太郎は三玖と2人きりになったこの状況で、思い切って先日のことを聞こうとする。

 

風太郎「昨日のことなんだが……」

三玖「明後日のことだけど………」

 

だが、どうやら聞きたいことがあったのは風太郎だけではなかったようだ。

 

風太郎「えっ?なんだ?」

 

三玖「フータローこそ………」

 

風太郎「お、俺は………」

 

一花「2人で何の話をしてるの?」

 

ここで、まるで狙ったかのようなタイミングで一花が現れたことにより、三玖に対して質問ができなくなってしまった。

 

一花「ん?」

 

風太郎「………なんでもいいだろ」

 

 

三玖「フータロー、大丈夫かな?」

 

一花「大丈夫だよ。私達にできることは、少しでも負担を減らしてあげること……。だから誕生日のことは一旦忘れよ?」

 

三玖「………うん」

 

一花「……(これで私だけがフータロー君に渡せば、効果的になるはず…)」

 

一花は四人を出し抜いて自分だけプレゼントを渡そうと計画していたようだ。一花は再び図書室に戻ろうとすると、何やら買い物を済ませてきた二乃が目の前に現れる。

 

二乃「迷ってたら遅れちゃったわ……。あいつになんて言われるかしら………」

 

一花「に、二乃…?それ、なに……?」

 

二乃「これ?疲労回復効果のあるアロマよ。もうあいつの誕生日だし………。って、当日までの秘密だったわ……」

 

一花は状況を理解するのに時間がかかった。二乃は確かに暴走機関車だが、それは風太郎に対してではなく、悟飯に対してのみだ。プレゼントは中止と釘を刺したのにも関わらず、二乃が風太郎に対してのプレゼントを用意したことに動揺を隠せなかった。

 

一花「昨日のメッセージ見た…?」

 

二乃「ああ、あれね。でもあげたいものはあげたいわ。バイト先で色々お世話になったし………。それに…………」

 

一花「それに……?」

 

二乃「ハー君の好みとかさりげなく教えてくれたしね」

 

一花「(そこかぁ……)」

 

どうやら風太郎は恋愛的に二乃の手助けをしているようで、二乃はそれについても感謝をしたいようだ。

 

二乃「で、どうせあんたもプレゼント用意してるんでしょ?」

 

一花「……………」

 

一花はこれ以上隠しても無駄だと思い、懐からギフトカードを取り出す。

 

二乃「………もしかして、一人だけプレゼントを渡せば効果絶大ってのを狙ってたのかしら……?って待って?それをあいつに対してやるってことは、一花、あいつのこと好きなの…!?」

 

一花「………うん。大好き」

 

二乃「えっ?ちょ………マジ?」

 

一花は二乃から驚かれるが、気にすることなく続ける。

 

一花「…二乃はさ、悟飯君が大好きなんだよね?」

 

一花は念の為に二乃に確認を取る。普段は悟飯にグイグイアタックしているが、わざわざ遅れてまで風太郎の誕生日プレゼントを選んでいたとなれば、警戒してしまっても仕方のないことだ。

 

二乃「ええそうよ。私だけじゃない。五月と三玖もよ…。こっちはライバルが多くて大変だわ」

 

しかし、二乃は好きな人には一直線で一途なタイプ。揺らぐことはない。

 

一花「それについては私も同感かな。みんな"こっち側"じゃなくて安心しているよ」

 

二乃「気楽でいいわね。そっちはライバルがいないから」

 

一花「それがそうでもないんだけどね……」

 

二乃「………?」

 

二乃は一花の言っていることの意味がいまいち理解できず、首を傾げる。

 

確かに、一花にとって明確なライバルというのは存在しない。だが、恋愛に敏感な四葉が本格的に動き出すとなると、一花にとってはとんでもない脅威となる可能性がある。

 

それだけでない。姉妹以外にも風太郎の魅力に気づいた女子が出てきた時は……

 

二乃「……まっ、いいんじゃない?私はあんたの恋を応援するわ」

 

一花「あれ?意外だね……。二乃なら男の趣味が悪いとか言いそうなのに……」

 

二乃「私をなんだと思ってるのよ……。私も上杉と結構関わってきたから、あいつがどんな人なのかは一応理解しているつもりよ……。少なくとも、誰かを泣かすようなやつじゃないってことはね」

 

二乃も風太郎と深く関わってきたためか、最初の頃のように拒絶するようなことはなくなり、家庭教師としてか、友人としてかは不明だが、彼を認めているようだ。

 

二乃「………でもさ、ギフトカードってどうなのよ……?」

 

一花「これなら好きな物を買えるじゃん。二乃だって男の子のプレゼントにアロマはどうかと思うけど………」

 

二乃「さっきも言ったけどこれには疲労回復効果もあるのよ。最近あいつ疲れてるでしょうし、丁度いいでしょ?にしても本当に意外だわ……。あいつのどこが気に入ったのよ?」

 

一花「フータロー君って無愛想でノーデリカシーに見えるし、実際そうなんだけど、たまに見せる優しさとか……、頑張ってる姿とか……。そういうところを見て、だんだん……って、恥ずかしい話させないでよ…!!」

 

二乃「この程度で恥ずかしがってちゃ、いつ告白できる分からないわね」

 

一花「痛いところ突くなぁ……」

 

一花も先程告白した。と言っても、三玖に成りすまして伝えたので、それが告白としてカウントされればの話ではあるが………。

 

二乃「………そういえば、5月8日はハー君の誕生日っぽいのよね……。その時の誕生日プレゼントも考えないと……」

 

一花「私達の三日後かぁ…。随分近い日だね」

 

二乃「もうこれは運命なんじゃないかしら?やっぱりハー君は私と結ばれる運命に………」

 

一花「いや、誕生日の近さで言ったら五月ちゃんが一番近いんじゃ…?」

 

二乃「あーあー、聞こえない」

 

二人はそんな会話をしながら図書館に辿り着く。すると、三玖と四葉が席に座っていたのだが、四葉が何か作業をしていた。手の動きから、勉強をしているわけではなさそうだ。

 

二乃「四葉、何してんのよ?」

 

四葉「千羽鶴を作ってるんだ!休憩中に上杉さんの試験合格を願って作ろうかと思って!」

 

一花「それ、病気の人にあげるやつじゃなかったっけ?」

 

二乃「ま、まあ、幸運の効果はあるって聞くし……………」

 

四葉「上杉さん、あれからずっと疲れてるように見えるんだ。言わないだけで私達に教えながらってのが凄い負担になってるんだよ。だからせめて体を壊さないように…………」

 

二乃「でもプレゼント中止って……」

 

四葉「あっ…………。ごめーん!そんなつもりじゃなかったんだー!!」

 

四葉は泣き叫びながら謝罪をするが、ここは図書館。二人はそんなことはいいからと、四葉を静かにさせようとするが…………。

 

四葉「これじゃあ私がズルしてたみたいだもん!!約束を破るなんて、人として最低だ〜!!!!」

 

四葉のこの言葉は自分自身に対して言った言葉なのだが、四葉以外にもダメージを受けた者がいたとかいないとか…………。

 

三玖「ごめん…!!これ、スポーツジムのペア券!一緒にトレーニングしようと思って………。抜け駆けしてごめん!」

 

どうやら三玖も風太郎にプレゼントを渡すつもりのようだった。考えていることが変わらないのが、流石五つ子というところだろうか。

 

一花「じゃあこうしよう。やっぱり模試前に渡すのは勉強の妨げになっちゃうから、この模試をフータロー君が無事乗り越えたらみんなで渡そ」

 

四葉「うん!」

 

三玖「それがいい」

 

二乃「……ちょっと、一花はそれでいいの?」

 

二乃は一花に小声で聞く。

 

一花「うん。みんなフータロー君のこと分かってないよ。全員で一斉に渡しても、私のを一番に喜んでくれるに決まっている」

 

二乃「………随分自信満々ね…」

 

 

 

三玖「じゃあ当日は何もなしか………」

 

四葉「じゃあこんなのはどうかな!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

4月15日。この日は風太郎の誕生日である。だが風太郎本人はそんなことも忘れて夜遅くまで、図書館で勉強に身を投じていた。

 

悟飯「………上杉君、大丈夫?」

 

風太郎「……?あ、ああ………」

 

悟飯「最近寝てないんじゃない?ちゃんと寝ないと体壊すよ?」

 

風太郎「ダメだ…。あいつらが足枷じゃないってことを証明しねえと……」

 

風太郎だけでなく、悟飯も夜遅くまで残って勉強していた。

 

五月「こんな時間まで自習だなんて…。ご苦労様です。差し入れです」

 

悟飯「あっ、五月さんこんばんわ!」

 

五月「こんばんわ」

 

図書館に現れた五月は風太郎のそばに栄養ドリンクを置く。風太郎はそれを受け取り、すぐに開封して飲用する。

 

風太郎「何言ってんだ。苦労なんてしてねえ。俺を誰だと思ってやがる」

 

五月「……先日、塾講師をされている下田さんという方の元へと出向いてまいりました。バイトと言えるのかは分かりませんが、下田さんのお手伝いをしながら更なる学力向上を目指します」

 

風太郎「……俺達じゃ力不足か?」

 

五月「拗ねないで下さい。そうじゃありませんよ。模試の先、卒業の先の夢の為に教育の現場を見ておきたいのです」

 

悟飯「夢……?」

 

風太郎「お前らのやることは本当に予測不能だ。新学年になってから、四葉も二乃も、一花ときて…………三玖も…………」

 

五月「……?何かあったので…………」

 

風太郎「…………」スピー

 

五月「寝てる!?」

 

悟飯「あはは……。ちゃんと寝ないから………」

 

五月「全く…。体調を崩してしまったら元も子もないというのに………」

 

悟飯「……そういえば五月さん。夢って………?」

 

五月「ああ……。孫君にはまだお話していませんでしたね。私は将来教師になりたいんです。母のような教師に……」

 

悟飯「そうだったんだ…。初めて知ったなぁ…………。って、何してるの?千羽鶴…?」

 

五月が突然千羽鶴を置いていくので、悟飯は疑問に思って五月に聞く。

 

五月「これは上杉君の誕生日プレゼントです。本当はちゃんとしたものを渡したいのですが、模試前に渡してしまうと迷惑かと思いまして………」

 

悟飯「なるほどね……。でも千羽鶴って病気の人にあげるものじゃ………?」

 

五月「それがですね、ただの千羽鶴じゃないんですよ?実はですね……………………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

風太郎「……?いつの間に…………」

 

風太郎はいつの間にか寝てしまったことを把握すると、携帯電話を取り出して時間の確認をしようとすると、らいはからメールが届いていることに気付いた。家で誕生日会の準備をしているから待っているとのことだ。

 

風太郎「……そっか。今日だったな。帰るか…………。……?」

 

荷物を片付けようと机に目を向けると、そこには五羽の千羽鶴があった。その千羽鶴から何やら文字のようなものが見えたので、気になって千羽鶴を広げてみると…………。

 

風太郎「………!!!」

 

なんと、その千羽鶴は模擬テストの解答用紙だった。しかも5人ともしっかり成績を上げていた。

 

風太郎「……………一人じゃない……か。あいつらも頑張ってるなら尚更負けられねえな…………」

 

 

 

 

 

 

 

試験当日。とうとうこの日が来た。風太郎&悟飯が武田と競う日が……。

 

五月「おはようございます……」

 

風太郎「ああ、おはよ………」

 

五月「いよいよ試験当日ですね……」

 

四葉「が、頑張りましょー…!!」

 

二乃「ってか、目の隈凄いわね……」

 

三玖「人のこと言えない」

 

一花「どう?全国十位いけそう?」

 

風太郎だけでなく、5人とも寝不足のようだった。どうやらみんな夜遅くまで勉強に身を投じていたようだ。家庭教師を始めたばかりの頃からは考えられない光景である。

 

風太郎「勿論だ……」

 

そんなやり取りをしてしばらく歩くと、武田と悟飯が何やら高校の昇降口前で話をしている。一体何を話しているのかと近づいてみると……。

 

武田「よく逃げずにここまで来たね!それはひとまず褒めておこう!だがしかし、君は後悔することになるだろう!あの時逃げておけばよかったと!!」

 

どうやら武田は悟飯に対して挑発?をしているようだ。武田にとって悟飯は越えるべき壁の一つだ。悟飯に対抗心を燃やしているのだろう。

 

悟飯「……その言葉。そっくりそのまま返すよ」

 

そして、普段の悟飯からは考えられないような言動。マジでどうしちゃったの…?と6人から思われているが、悟飯は気にすることはない。

 

武田「今日はいつにも増して強気だね…。普段の君からは想像できないね」

 

悟飯「あんなことを言われたら負けるわけにはいかないからね…………」

 

よくよく考えてみると、悟飯は人の為に勉強をしたのは初めてなのだ。学者になるという夢は母に影響されたとはいえ、自分自身の意思で決めたもの。勉強も基本的には自ら進んでやっていた。でもそれは自身の夢を実現させる為の勉強だった。家庭教師もその延長線上にあった。

 

だが、今回は違う。5人が足枷ではないことを証明する為だけに勉強をしてきた。何気に悟飯が人の為だけに勉強したのはこれが初である。

 

武田「おや?上杉君そこにいたのかい?ならさっきの話も聞こえていたはずだ。覚悟しておくように!!」

 

二乃「朝からうるさいわね………」

 

四葉「二人は負けません!!」

 

武田「君達には話していない!!」

 

武田の宣戦布告以来、悟飯も武田もキャラ崩壊していないかと若干心配になる6人だが、今は試験が最優先だ。そんな細かいことは気にしている場合ではない。

 

武田「上杉君!ここが僕と君の最終…」

 

風太郎「お前ら急げ。まだ開始まで時間がある。少しでも悪あがきしておくんだ」

 

しかし風太郎は武田に構うことなく昇降口へと向かっていく。

 

風太郎「悪いな。一騎討ちじゃないんだ。こっちには7人いるからな……」

 

武田「……ふふっ。それが君の弱ささ…」

 

 

 

 

 

 

全国統一模試が開始された。一科目である国語が終了した。

 

一花「フータロー君、顔色悪いけど大丈夫…?」

 

風太郎「き、気にすんな………」

 

恐らく風太郎の体調が悪いのは、連日重ねた寝不足もあるだろうが、本来なら勇也が飲むはずだった牛乳を飲んでしまったからだろう。勇也の胃は丈夫なので、賞味期限が1週間過ぎていても問題はないが、普通はそうならない。

 

その頃、武田はクラスメイトに戦績を聞かれていたが、『今回も武田がこの学校のトップで決まり』と言われ、全国でも上位を目指している武田にとってはそんな賛辞に近い言葉も、所詮は猿山の大将か…。という感想を抱かせるだけだった。

 

 

 

 

昼休みになった。悟飯はというと、昼ご飯を食べながら次の科目の勉強を熱心にしている様子。普段の悟飯でもここまで勉強しないので、心配になってしまう人が結構いたとか………。

 

だが、風太郎はトイレに篭りっきりで出てくる様子がないとのこと。そんな中で風太郎と武田があるやり取りをしたそうだが、その内容は本人達のみが知る…………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

試験は無事終了した。風太郎は最後の科目で突然倒れるように眠ってしまったようだ。これが響かなければいいが…。

 

 

 

 

 

江端「旦那様。先月行われた全国模試の結果が届きました」

 

マルオ「ご苦労」

 

江端「お嬢様方は個人差はあれど、前年より大幅に成績を伸ばしております。家庭教師という選択は結果的に大成功と言えるでしょう。勿論、お嬢様方の努力あってこそのことです。そして、武田様は全国8位の快挙でございます」

 

ここで、風太郎と悟飯のライバルである武田は全国8位。勝つ為にはこれ以上の順位を獲得している必要があるが、果たして…………?

 

 

江端「そして、惜しいことに、上杉風太郎様は………3位。旦那様には残念な報告となりますが、彼の宣言通りとなりました」

 

マルオ「………おかしな答案だね?前四科目はノーミスの満点。最後の科目のラスト数問だけ白紙で提出とは………」

 

江端「報告によれば、突然気を失うように寝てしまったと……。試験勉強で根を詰めすぎていたのかもしれません」

 

 

それはつまり、全問しっかり解いていたとしたら………………。

 

 

マルオ「…………まさかね」

 

 

江端「そして、孫悟飯様は…………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

武田「上杉風太郎…。孫悟飯……。彼らには悉く邪魔されてばかりだ。彼らと関わる度に僕の予定は狂わされる……。全く困ったものだよ…。

 

 

だがその覚悟、見事だ…………。孫君に至っては、まさか自ら課した無理難題を有言実行してしまうとはね…。君には完全に敗北したよ…………」

 

 

武田の言葉が意味すること…。それは、悟飯が全科目満点で全国1位の成績を獲得したことを意味していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

武田「見事、という他ないね。君が10位以内に入ったとしても勝つつもりで臨んだ全国統一模試。8位というのは僕にとって願ってもない順位だ。それがまさかその上をいかれるとはね……。3位おめでとう。孫君に至っては全科目満点の1位……。本当に見事という他ないね。もうすぐ修学旅行だけど……」

 

風太郎「ちょっと待て。何故俺は昼間からお前とブランコを漕いでいるんだ?」

 

武田「ははっ。昨日の敵は今日の友。これが青春なのかもしれないね」

 

風太郎「帰る」

 

悟飯「いやいや上杉君、本来の目的を思い出して………」

 

風太郎は立ち漕ぎに切り替え、四葉との勤労感謝の日のデートの時のような失敗はせず、上手く跳ぶことに成功する。

 

武田「やるね。まあ焦るんじゃない。忘れたのかい?僕らは呼び出されたんだ。ほら、ご到着だ」

 

悟飯と風太郎は、武田と共にある人物を公園で待っていた。

 

マルオ「待たせてすまないね。まずは武田君。全国8位おめでとう。出来の良い息子を持ててお父さんも鼻が高いだろう。医師を目指していると聞いたよ。どうだろうか?君のような優秀な人材ならば僕の病院に…………」

 

武田「申し訳ございません…。大変光栄なお話ではありますが、僕の進路についてはもう少し考えたいと思っています」

 

マルオ「………そうかい。良い返事を期待しているよ。それから上杉君」

 

風太郎「はい」

 

マルオ「君に家庭教師の仕事を再度頼みたい」

 

風太郎「えっ…………」

 

マルオ「報酬は相場の5倍。アットホームで楽しい職場だ」

 

風太郎「よーく知ってます………」

 

マルオ「また君に依頼するのは正直不本意だ。本来ならプロでさえ手に余る仕事……だが、君達にしかできないらしい。やるかい?」

 

風太郎はこの提案を了承する以外の選択肢はない。既に無給状態で教えているのだから、それが給料ありとなればいい事づくめだ。

 

風太郎「勿論!言われなくてもやるつもりだったんだ。給料がもらえるなら願ったり叶ったりですよ!」

 

マルオ「それは良かった。では当初の予定通り卒業まで………」

 

風太郎「あっ、そのことで一つお伝えしたいことがあります。成績だけで言えば、あいつらはもう卒業までいける力を身につけています」

 

マルオ「頼もしいね」

 

風太郎「……だけど、五月の話と…………こいつ…武田の話を聞いて思い直しました。次の道を見つけてこその卒業。俺はあいつらの夢を見つけてやりたい…」

 

マルオ「……随分な変わりようだ。就任直後の流されるまま嫌々こなしていた君とはね」

 

風太郎「し、知っていたんですか………」

 

マルオ「どのような方針を取ろうが自由だ。間違っているとも思わないしね。だが忘れないでほしい……」

 

先程までの比較的和やかな雰囲気から一変し、マルオは険しい表情になり、禍々しいオーラを放ちながら風太郎に告げる。

 

マルオ「君はあくまでも家庭教師。娘達には紳士的に接してくれると信じているよ……………」

 

風太郎「も、勿論一線を引いてます!俺は!俺はね!!」

 

風太郎は、一応マルオが娘の心配をしていることはよく理解した。不器用ながらも父親としての責務を果たそうと努力しているらしい。

 

マルオ「………そして最後に孫君。君も宣言通りに全国一位……。それも全科目満点を獲得してきたわけだ……。君のお母さんも鼻が高いだろう」

 

悟飯「……では、僕のお願い、聞いてもらえますね?」

 

マルオ「勿論だ。君に言われずとも、いつかはどうにかしなければならないと考えていた。きっかけを与えてくれた君には感謝するよ………」

 

そう言うと、マルオは悟飯に頭を下げた。

 

悟飯「や、やめて下さい!流石にそこまではしなくても!!そもそも、あの時の僕は少々苛立ってただけと言いますか…………」

 

マルオ「……だが、すぐに君の願いを聞いてあげることはできない。僕は娘達とどう接すればいいか分からないんだ……。住む場所…。必要なお金は用意してきたとはいえ、今まで娘達を放ったらかしにしてきたというのに、今更どう関わればいいのか…………。僕には分からないんだ…………。だから、少しだけ待ってほしい…………」

 

これはマルオにとっては複雑な問題であった。そもそもマルオと五つ子は血が繋がっていない。そこも複雑な問題を更に複雑化している要因だろう。

 

悟飯「…………分かりました」

 

マルオ「あと、こちらからもお願いなのだが…………」

 

マルオは春休みの旅行の帰り、船の上での出来事を思い出しながら悟飯に頼み事をする。

 

マルオ「できるだけ、娘達には紳士的に接してほしい………」

 

悟飯「あはは………。分かりました……」

 

これに関しては、悟飯もマルオも実質お手上げ状態であった。ここで風太郎もその問題に加わるとなると、マルオが連日頭痛に襲われる未来が容易に想像できてしまうが、もしかするとそうなる可能性もあるので……。風太郎にはなんとか頑張って欲しいものである(無茶振り)。

 

こうして、新川中島の戦いとも言える模試戦争は、悟飯と風太郎側家庭教師陣営が勝利を納め、マルオと武田とも本格的に和解をして、幕を閉じた……。

 




 はい。風太郎と武田は原作通りです。悟飯はいつも以上に力を出したので、順調に全科目満点で一位に君臨しました。マルオも元から五つ子との関係をどうにかしたいと考えていたようで、きっかけを与えてくれた悟飯には感謝すると言っていましたが、風太郎と悟飯の2人に同じ内容で説教されたことによって、ようやく重い腰が上がったと言ったところですね。マルオ本人は、医師なのに零奈を救えなかったから五つ子に顔を合わせづらいのかもしれませんね。

 武田とも本格的に和解し、悟飯と武田の関係は模試前よりも深いものとなり、風太郎にはようやく認知されたという状況です。

 一花お姉さんは原作通り、三玖に変装して風太郎に告白します。今回は三玖が悟飯に好意を向けていたため、大した事にはなりませんでした。とはいえ、旅行最終日に一花は風太郎に飛びついているので、風太郎にも好意がバレかけています。その為風太郎も薄々気付いていました。風太郎ってラブコメの主人公にしては意外と鈍感じゃないですよね。

 あと、悟飯の誕生日に関しては5月8日ということにしてあります。公式ではいつ誕生したのかは明言されてなかったはずですので……。

 喪失感が半端ないです…。特に映画のEDの『ありがとうの花』を聞くと凄いですよ……。ごと嫁終わっちゃうんだなぁ……って。ドラゴンボールの方でも、GTの4番目?のEDも喪失感凄いですよね。あれ?私だけかなそう感じるの?『錆びついたマシンガンで今を撃ち抜こう』で合ってるかな?これもドラゴンボールの終わりって感じがしますよね〜……。

 あと、ドラゴンボールにも五等分の花嫁にも合いそうな歌があることに気付きました。『Blue Velvet』ですね。皆さんはGTのEDのイメージが強いと思いますけど、歌詞をよく聞くとごと嫁にも合いそうだなぁ…って感じました。ごと嫁というよりは、恋愛系には全部合いそうですけどね。「DAN DAN心惹かれていく」も歌詞は恋愛系に合いそうですけど、GTのイメージが強すぎるんですよねぇ…w

 そういえば、映画効果かは分かりませんけど、お気に入りがまたジワジワ伸び始めました。ありがとうございます。ここまで来たら555件に到達したいところですね。

 ちなみに前回の悟飯の激怒シーンですが、もしかしたら修正するかもしれません。静かに怒る方があの場には合ってたような気がするので……。

 後書き長すぎ笑


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第10巻
第58話 班決め


 前回のあらすじ…。

 試写会の影響で引っ張りだこになっていた一花は、クラスメイトの目を欺く為に三玖に変装してやり過ごしたが、そこに丁度風太郎が……。偶然に偶然が重なり、一花は三玖の格好をしたまま風太郎に告白するが、風太郎に正体が看破されそうになったので逃亡。

 5人で風太郎の誕生日プレゼントを渡すかどうかについては、模擬試験の採点済みの解答用紙を使って千羽鶴にし、本物のプレゼントは後で渡すという形になった。

 そして、風太郎は全国3位、悟飯は全国1位で、しかも全科目満点という功績を残し、風太郎は家庭教師として本格的に復帰し、悟飯達は五つ子が足枷ではないことを見事に証明してみせた。



 

マルオ&武田と和解した悟飯と風太郎は、車で五つ子の住むアパートまで送ってもらった。

 

五月「えっ……?今、乗ってきたのお父さんの車じゃ…………」

 

そこに丁度五月と鉢合わせになった。

 

風太郎「まあ………家庭教師復帰できることになった」

 

五月「……!!」

 

その報告を聞き、五月は出会った頃からは想像もできない笑顔になる。

 

五月「功績が認められたのですね!おめでとうござい………ってあれ!?何故避けるのですか!?」

 

風太郎はマルオに言われた距離感を意識しており、一花の件もあって余計慎重になっていた。

 

五月「………お父さんに何か言われたのですか?」

 

悟飯「あはは…。娘達には紳士的に接してほしいって言われたから、その影響だと思う………」

 

五月「なるほど……」

 

悟飯「ということで、五月さんももう少し控え……「無理です」」

 

風太郎は紳士的に接することはできても、悟飯はその娘達から迫られ過ぎて不可能なお願いかもしれない……。

 

 

 

四葉「あっ!上杉さんに孫さん、いらっしゃい!」

 

一花「やっと来た〜」

 

二乃「遅いじゃないのよ」

 

風太郎「うおっ!?なんだこれ!?」

 

風太郎が家に入ると、部屋中にやたらと荷物が溢れていた。

 

四葉「生活も落ち着いてきたので、大掃除をしていたんです!」

 

風太郎「試験の反省会をする予定じゃ………」

 

二乃「ねえ!アロマ使った!?」

 

二乃は風太郎の言葉を遮る……。というよりは、誤魔化すように尋ねる。

 

風太郎「えっ?」

 

二乃「ほら、あげたじゃない!誕生日プレゼント!」

 

風太郎「あ〜……。アロマな!ふんふんアロマね。人を選ぶが俺はうまいと思うぜ!」

 

どうやら風太郎はアロマを何かの食べ物と勘違いしているようだが、食べたら恐らくお腹を壊すだろう。

 

二乃「絶対分からなかったでしょ…。今度使い方を教えてあげるからしっかり使いなさいよ」

 

一花「フータロー君、私のプレゼントだけど………」

 

風太郎「ああ………。なんかお前だけ変だったな。あれで買い物しろってことか?」

 

一花「うん。あれでらいはちゃんの好きな物買ってあげたら喜んでくれるんじゃないかな?」

 

風太郎「最高!!マジで助かる!ありがとな!一花!!」

 

風太郎は家のことを任せているらいはに好きなものを買えるということで大喜び。一花は器用なだけあって策士である。

 

二乃「…………なるほどね……。それなら確かに大喜びだわ…」

 

四葉「私の贈り物はどうでしたー?」

 

風太郎「ああ。お前よくあんなに……」

 

どうやら風太郎は四葉から大量の何かをもらったらしい。何を貰ったかまでは不明だが……。この前の話からして、四葉は千羽鶴を贈った可能性が高いが果たして…………?

 

風太郎「………あ〜……。今日はもう勉強もできなそうだし、帰るか」

 

悟飯「えっ?どうしたの?」

 

一花「もう少しくらいゆっくりしていったら?」

 

四葉「そうですよー!」

 

だが風太郎は足早に部屋を退出する。それに何か異変を感じた悟飯も風太郎を追うように退出する。

 

悟飯「上杉君、どうしたの?やっぱりマルオさんに言われたことを気にしてる?」

 

風太郎「いや〜……。まあ確かにそうなんだが………。てかお前の方が気にするべきだろ?」

 

悟飯「おっしゃる通りです………」

 

風太郎の正論にぐうの音も出ない悟飯。しかしマルオに言われただけで風太郎がここまで態度を変えるのはやはり変だと思い、悟飯が質問をしようとしたその時であった………。

 

五月「………隠し事の匂いがします」

 

五月がこっそり扉を開けて風太郎を睨んでいた。

 

風太郎「怖えよ。てか五月か…。何の用だ?」

 

五月「ビンと来ました。あなた、私に何か隠していませんか?」

 

風太郎「い、いや?何も隠していないが?」

 

五月「………」ムムムッ

 

五月は納得のいく返答を得られなかった為、頬を膨らませながら風太郎を睨み続ける。だがその姿は威嚇どころか相手に癒しを与えるだけだ。相手が風太郎でなければの話だが……。

 

そんな五月の様子を見て、なんか小動物みたいだなんて感想を抱いたもう一人の家庭教師もいるとかいないとか………。

 

五月「ではこうしましょう!あなたの隠し事を話してくれたら私も一つお話ししましょう!」

 

悟飯「あー……」

 

悟飯は恐らく有名レビュワーとしての五月のことが秘密なのだろうと予測する。悟飯には既にバレかけている。何なら二乃と風太郎にもほぼバレている。

 

風太郎「いや、別に聞きたくないんだけど………」

 

五月「なっ!いいじゃないですか!!もう黙っていられないのです…。こうでもしないと言えません………」

 

風太郎「そこに悟飯がいるがいいのか?」

 

五月「孫君にならどんな秘密だろうと喜んで教えます!なんなら私のほくろの「分かった。お前がどうしようもない変態なのは分かったからそれ以上は言うな」」

 

五月「なっ!?失礼ですね!!」

 

悟飯は何故五月が変態扱いされているのか理解できていないが、風太郎はいい機会かと思い、五月と悟飯に秘密を打ち明けた。

 

風太郎「言っとくが引くなよ?」

 

五月「ええ!」

 

風太郎「俺にもモテ期が来た」

 

五月「うわぁ…………」

 

引くなと言われておきながら、思いっきり五月が引いているが、それはひとまず置いといて風太郎は話を進める。

 

風太郎「驚くのはまだ早い。相手はあの一花だ」

 

五月「えっ…?一花?四葉じゃなくて…?」

 

風太郎「何でそこに四葉が出てくるんだ?四葉には寧ろ応援していると言われるし、三玖からもそう言われるし…」

 

五月「三玖と四葉が応援……?」

 

悟飯「あれ?じゃあ一花さんが告白してきたの?」

 

風太郎「いや、そうじゃ………いや、どうだろうな」

 

悟飯「えっ?」

 

五月「どういうことですか?」

 

風太郎「おい待て。いつまで俺のターンが続くんだ。俺はめちゃくちゃ恥ずかしいことを言ったぞ。それ相応のものを早くよこせ」

 

五月「は、はい!実は私は……もう一つの顔があるのです」

 

風太郎「……!!」

 

悟飯「もう一つの顔?」

 

五月「はい。実は私が………!!!」

 

 

ガチャ

 

四葉「私が五月を探してくるよ!ってあれ?上杉さんと孫さん?まだいたんですね?五月もここに……。一花が押入れの段ボールが誰のかって………。もしかしてお話中だったかな?」

 

風太郎「こいつが今恥ずかしい秘密を言うところだ」

 

四葉「へえ」

 

五月「すみません!またの機会に!」

 

風太郎「お、おい待て!!俺は言ったのにフェアじゃねえ!!」

 

だが五月に室内に逃げられてしまった以上は中に入っても秘密を打ち明けることはまずないだろう。

 

四葉「あー………お邪魔してしまったみたいですね」

 

風太郎「まあ大概予想はつくがな。四葉、有名レビュワーメイって知ってるか?」

 

四葉「めい……?いえ、聞いたことないですね…………」

 

 

悟飯「…………」

 

だが、悟飯は本当にレビュワーのことについて話そうとしていたのか疑問に思っていた。もう一つの顔…………。

 

五月と二乃が喧嘩をして家出をしていた頃のこと。五月が何故か見たこともないような服装をして風太郎と共にいた。風太郎は変装した五月を"零奈"と呼んでいた。その零奈という名前そのものは母親から取ったものだということは今でこそ分かるが、もしかすると"零奈"の正体が私だと言いたかったのではないか?悟飯はそんな思考を巡らせる。

 

……だが、それ以上考えても仕方ないので、今回は素直に帰宅することにした。

 

 

 

 

 

風太郎が家庭教師復帰を果たした翌日。悟飯はカプセルコーポレーションを訪れていた。

 

未来悟飯「なるほど……」

 

未来五月「そ、それは大変ですね……」

 

零奈がまだ目を覚さないため、現代に留まり続けている未来五月と未来悟飯にある相談をしていた。

 

悟飯はこれまでの自身の周りで起こっている恋愛事情を丁寧に説明し、今に至るわけだ。

 

未来五月「こちらの世界では3人が孫君の方に傾いているんですね………」

 

未来悟飯「だけど、なんでオレ達に相談しようと……?」

 

悟飯「いや〜……。お二人ならどうにかできないかな〜と………」

 

悟飯は3人に、学園祭までには答えを出すと告げたはいいものの、具体的にどうすればいいか分からずじまいなのである。

 

未来五月「そこまで難しく考える必要もないと思いますよ?一緒にいて楽しいとか、幸せだと感じる人を選ぶとか………。とにかくあまり気難しくする必要はないかと」

 

悟飯「しかし彼女達は真剣です。その想いになんとなくで応えるのはどうかと………」

 

未来五月「恋愛は勉強とは違います。教科書を読んでも答えは出てきません。ですから、自分の直感で答えを導き出してしまっても良いのではないでしょうか?私達の世界でも二乃を始めとして、みんなそこまで難しく考えていないと思いますし…………」

 

未来悟飯「オレからは何かアドバイスできるわけじゃないからなんとも言えないなぁ……。恋愛に関してはサッパリだから………。トランクスはどうだ?」

 

トランクス(未来)「そんなことを俺に聞かれましても………」

 

無論、未来トランクスも長い間戦いに身を投じていたので、恋愛に関してはこの中では未来五月が最も知識が豊富なのではないだろうか?

 

未来五月「私から言えることはこれ以上ありません。ただ、返事をあまり先延ばしにしないようにしようとするその姿勢は評価すべきですね」

 

悟飯「………分かりました。それから、零奈さんの方は?」

 

未来悟飯「まだ目を覚ましていないよ。だからオレ達はもうしばらくはここに留まるつもりだよ」

 

悟飯「そうですか………。そういえば、トランクスさんはタイムマシンの燃料が切れているんでしたよね?どうやって帰るんですか?」

 

トランクス(未来)「一応、タイムマシンに設計図が入っていたので、それを母さんに見せて分析してもらっています。もう少しで燃料の原料が判明しそうだとのことです」

 

未来悟飯「でも変だな……。確かタイムマシンが途中でトラブルを引き起こしてこの時代に来たんだろ?タイムマシンが壊れてたのか……?」

 

トランクス(未来)「その可能性は捨てきれませんが……。恐らくそうじゃないと思います。原因はもっと別のところにあると思いますが、それは俺も分かりません………」

 

悟飯「………あっ!そうだ!!」

 

悟飯は突然思い出したかのように、未来悟飯に一つのカプセルを渡す。

 

未来悟飯「…!こ、これは…?」

 

悟飯「それが零奈さんの乗ってきたタイムマシンです。本当は未来に行って何か弱点を特定するつもりでこっそり奪ったものですけど、その必要もないのでお返しします」

 

未来悟飯「ありがとう!これでいつでも帰れるぞ!」

 

未来五月「あっ、そうです!もうそろそろ修学旅行がありますよね?」

 

悟飯「ええ。ありますけど……?」

 

未来五月「班決めの際は注意して下さいね………。恐らく、それなりに修羅場になると思うので………」

 

悟飯「……?は、はい。分かりました」

 

悟飯はいまいち理解できていない様子だったが、班を決める時には嫌でも理解することになるだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

未来五月「孫君。私達の関係は伝えなくてよかったのですか?」

 

未来悟飯「ああ。変にオレ達の関係を伝えて、彼の決断に影響を与えるのは好ましくない………」

 

未来五月と未来悟飯の関係については未だに二人だけの秘密に留めている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、5月5日(五つ子の誕生日)のこと………。

 

 

悟飯「やあみんな!」

 

一花「あれ?今日は家庭教師の日じゃなかったよね?」

 

二乃「どうしたのよ?」

 

悟飯「ほら、今日は…………ね?」

 

悟飯はこの日の為に5人に向けてプレゼントを用意していたのだ。

 

悟飯「はいじゃあまずはこれ、一花さんの分」

 

一花「えっ?なになに?」

一花はホイポイカプセルから出現したプレゼント箱を開ける。すると……。

 

一花「あれ……?これは………?」

 

箱の中身は、飲食店の支払い料金が無料になるチケットが2枚入っていた。と思いきや、2枚組でそれぞれ別の店が幾つもある。一花はこのプレゼントの意図をすぐに理解した。

 

このプレゼントを使って上手く風太郎をデートに誘おう!そういう意図である。

 

一花「ありがと!悟飯君!」

 

二乃「あれ?私達の誕生日なんていつ伝えたのかしら……?」

 

三玖「結構前に私がさりげなく教えた」

 

五月「グッジョブです三玖!」

 

悟飯が五つ子の誕生日を知ったのは、勤労感謝の日に三玖と悟飯がデート(?)をした時のことである。

 

二乃「えっ?じゃあ私にも何かあるのかしら!?」

 

二乃も一花の時と同様にプレゼント箱を受け取り、それを開封すると……?

 

二乃「…………あっ、この紅茶……」

 

悟飯「その紅茶は結構有名なブランドものらしいんだけど、二乃さんは確か甘めのやつが好きだって聞いたから、ミルクティーに合うやつにしてみたんだ」

 

二乃「嬉しい!ありがとう!!」

 

三玖「じゃあ私も開けるね」

 

三玖もプレゼントを開ける。

 

三玖「…………これ、宇治抹茶だ……!」

 

悟飯「ここに来る前に京都に行って買ってきたんだ。確か三玖さんは抹茶が好きだったよね?」

 

三玖「うん!大好き!ありがとう!」

 

三玖の大好きには2つの意味が含まれていたのだが、鈍感な悟飯がそれに気付くことはない。

 

三玖「あっ、この大好きには、抹茶が好きって意味と悟飯が好きって意味が含まれてるんだよ?」

 

悟飯「……あ、ありがとう…?」

 

三玖「なんで疑問系……?」

 

突然そんなことを言われてもどう反応すればいいのか分からないので仕方ないと思う。

 

四葉「私も開けていいですかー?」

 

悟飯「うん!いいよ!」

 

今度は四葉が開封する。

 

四葉「……おや?リボン?それにスニーカーも?」

 

四葉のプレゼントは、色々な種類のリボンにスニーカー何種かであった。

 

悟飯がここまで色々な種類のリボンを用意した理由は、ちょっとした変化に風太郎に気付いてもらえるようにという意図が込められているようだ。悟飯は鈍感な癖に、何故かこういうことは気が利く。

 

そしてスニーカーは、運動が大好きな四葉にはもってこいの品だ。しかも足に負担が掛かりづらいとされている靴を選んできたそうだ。

 

四葉「わーっ!ありがとうございます!でも私の足のサイズをどうやって把握したんですか……?」

 

三玖「……あっ。それで私の足のサイズを聞いてきたんだ」

 

悟飯は以前聞いたことを思い出した。その聞いたことというのが、五つ子はスタイルがほぼ同じなので、姉妹の誰かが採寸をすれば本人が採寸したのと同義になるということ。この話をさを思い出して、悟飯は三玖に足のサイズを聞いたというわけだ。

 

五月「じゃあ私ですね!」

 

五月もプレゼントを開ける。

 

五月「………!!!こ、これは…!!!」

 

五月といえばやはり食。食べ物。色々な飲食店だったり、スイーツ店だったり、焼肉屋であったり、寿司屋であったり、とにかく食べ物関連の割引券やらクーポンやらが沢山入っていた。

 

五月「ありがとうございます!!早速使って………」

 

二乃「いや、あんたさっきお昼ご飯食べたばっかでしょうが」

 

悟飯「それから…………。あとはこれだね!冷蔵庫は空いてる?」

 

二乃「ええ。丁度空いてるわよ」

 

悟飯「分かった」

 

悟飯はホイポイカプセルから取り出した箱を開封し、五つ子に見えないように冷蔵庫に中身をしまった。

 

誕生日に冷蔵庫…。これはもうアレしかないだろう。

 

悟飯「それじゃあ、これは好きな時に食べてね!!」

 

一花「悟飯君。もらった後でこんなことを言うのは変かもだけど、お金は大丈夫なの?」

 

悟飯「うん。この前の人造人間騒動があったから、マルオさんからボーナスをもらったからね」

 

忘れてはならない。悟飯は家庭教師でもあり、ボディガードでもあるのだ。

 

 

 

 

 

 

ちなみに風太郎が五つ子にプレゼントを渡すことはなかった。何故かって?風太郎は5人の誕生日を知らないから仕方ないね!!あれ?ところで悟飯は何で風太郎に教えてあげなかったの?

 

 

 

悟飯「えっ?上杉君、5人の誕生日知らなかったの?」

 

なんて後日談があったのは、また別のお話である。

 

 

 

そして、ある日の朝のこと………。

 

一花「あの……。相談したいことがあるんだけど………」

 

一花が悟飯に相談事とは珍しい。悟飯は勉強関連のことかと相談に乗る。だが実際には違った。

 

一花「私、フータロー君に告白しちゃった…………」

 

悟飯「えっ……?一花さん本人が…?」

 

一花「うん…。でも三玖に変装した時に………。今思うとなんであの時に言っちゃったんだろう…………」

 

悟飯「そういえば上杉君もそのことで頭を悩ましていたっけ…?」

 

一花「…でも、私はもう後には引かないって決めたんだ。だからさ、私からのお願い事があるんだけど……。修学旅行の班についてで……」

 

悟飯「……!!」

 

修学旅行の班決めといえば、未来五月が修羅場になると言っていた。悟飯はその言葉を思い出す。

 

一花「噂だとひと班につき5人までしか組めないみたいなんだよね。だからいつものメンバー全員ってわけにはいかないんだよね」

 

悟飯「そうだね………」

 

一花「そこでさ、悟飯君は多分フータロー君と組むでしょ?そこ譲ってくれないかな?」

 

悟飯「えっ………?」

 

一花「私と四葉とフータロー君の3人で班を組みたいと思ってるんだけど、ダメかな………?」

 

どうやら一花はこれが目的だったらしい。修学旅行で勝負を仕掛けるつもりなのだろうか?

 

だが、これは無理があった。何故なら風太郎は既に班のメンバーを決めていたからだ。悟飯に風太郎に武田に、懐かしの前田の4人で既に組むことを決定してしまっている。

 

悟飯「いや、僕達は………」

 

一花「じゃあそういうことだから、よろしくね!」

 

一花は悟飯が自分にとって不都合な内容を告げようとしていたことを察したからか、慌てていたからかは不明だが、悟飯の言葉を遮って自分の席に戻っていってしまった。

 

悟飯「…………参ったなぁ……」

 

 

 

 

 

 

 

「えー、先日全国模試の結果が返ってきたと思うが、このクラスの中に上位を獲得した人がいる。だからその中でも特に高いトップ10に入ったやつを紹介するぞ。まずは武田だ。全国8位という非常に優秀な成績を残してくれた。先生は特に何もしてないが鼻が高いぞ」

 

武田が全国8位ということで、教室中から歓喜の声が溢れる。

 

「しかし、上には上がいる。第3位もこのクラスにいる。学級委員長の上杉だ。2年学年末のテストでは順位を落としたが、あの時は偶々調子が悪かっただけなんだろう。おめでとう」

 

風太郎が更にその上を行く第3位ということで、教室中が驚きの声で溢れる。とはいえ、風太郎は学年1位を長い間キープしていたので、そこまで可笑しい話ではなかった。

 

「しかし、このクラスにまだ上がいる。なんと全国1位をなったやつがいる。先生は焦らすの苦手だからさっさと言っちゃうな。孫だ。全国1位は本当に誇ってもいいと思うぞ。おめでとう」

 

「えっ?このクラスやばくない?」

 

「全国1,3,8位が勢揃いってやばいよね?」

 

「みんなすごっ……。私は絶対そんな上位に上がれないわ………」

 

「しかも全国ででしょ?凄くない…?」

 

確かに、一学校の一クラスに全国上位がこれだけ揃っているのはある意味異常な光景かもしれない。

 

 

「というわけで、全国模試も無事に終わったので、修学旅行の話に入ろうと思う。事前に配られたパンフレットに三日間の流れは書いているはずだが、皆んなは明日までに班を決めておいてくれ。班は5人までだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

四葉「えーっと、孫さん孫さんっと……」

 

四葉は悟飯を探していた。理由はこのと同じ班になる為だ。正確には、悟飯と三玖と四葉の3人で同じ班になる為である。二乃、五月、三玖と悟飯を巡ってバチバチさせている3人だが、この中では三玖が一番消極的だ。四葉は三玖のパン作り修行に付き合いながら、三玖に協力することを約束した。修学旅行の昼休みの時に同じ班になっていれば、悟飯にパンを渡すことができるという算段だ。

 

四葉「あっ!いたいた!おーい!そ「四葉!」」

 

四葉が悟飯を呼ぼうとすると、一つの声に遮られた。

 

一花「ちょいちょい」

 

一花は手でこっちにきてと手招きをする。四葉はその意図を察して一花と共に空き教室に入っていった。

 

四葉「どうしたの、一花?」

 

一花「修学旅行楽しみだね。私達って京都初めてだっけ?」

 

四葉「違うよ?小学生の頃行ったじゃん?」

 

一花「そうだったね。四葉はまた行きたいところある?」

 

四葉「ベタだけどお寺かなぁ………」

 

一花「クラスのみんなは5人組で悩んでいるみたいだけど、私達にはお誂え向きだよね」

 

四葉「あはは…。五つ子で良かったね」

 

一花「でもフータロー君はどうだろう?もう3年生なのに悟飯君以外に友達いなさそうだしなぁ…。お姉さん心配だよ」

 

四葉「えーっと………」

 

一花「仕方ない。ここで私達が人肌脱ごうよ。私と四葉とフータロー君でひと班。いいよね?」

 

四葉「えっ?一花…?」

 

四葉は既に三玖に頼まれているというのに、ここで一花とも約束してしまってはブッキングしてしまう。四葉には選択肢が実質ないようなものだったのだが………。

 

一花「ごめん電話だ。じゃあ四葉、よろしくね!」

 

四葉「あっ!一花!まっ……」

 

だが一花またしても返事を聞かずに去っていった。なかなか狡賢い長女である。

 

四葉「……どうしよう……」

 

 

 

 

 

 

 

風太郎「お、今日は珍しく三玖がいるな」

 

三玖「この後バイトだけど、ちょっとだけ参加する」

 

四葉「全国模試以来の全員集合ですね!」

 

7人は学校の図書室にて勉強会を開いていた。みんなバイトや仕事でなかなか集まることはなかったが、今日は珍しく全員集まっていた。

 

風太郎「ああ…。あれから1週間経ったんだな………」

 

二乃「五月、なーに熱い視線を送ってんのよ?」

 

五月「い、いえ!さっ、勉強を始めましょう!!」

 

五月は何故か風太郎に対して熱い視線を送っていたとのこと。

 

三玖「………その前に、修学旅行の話をしたい」

 

「「「「……!!」」」」

 

ここに来て、少女達にとっては本題とも言える話題が三玖から展開される。

 

三玖「悟飯は誰と組むか決めた?」

 

悟飯「えっ…?ああ……。僕は………えっと……………」

 

風太郎「なんだよ?歯切れ悪いな?」

 

悟飯は既に風太郎達と班を組むことで決定している。だが一花を応援するとも言った以上、本当にこのままでいいのかと思い悩んでしまう。

 

一花「……そういえば、四葉が話したいことあるって言ってたよ!」

 

四葉「ええ!?えっと……。私は………」

 

一花「ね!」

 

三玖「なに?」

 

風太郎「早く言えよ」

 

そして四葉は完全に板挟み状態になってしまった。先に三玖と約束していたが、お得意のお人好しが発動して一花の方を手助けするべきか迷っていた。

 

二乃「ちょっと待ちなさい。四葉が何を言うつもりなのかは知らないけど、詰まるなら先に言わせてもらうわ。ハー君、私と班を組みましょう。2人っきりで」

 

三玖「…!!!」

 

五月「ふ、2人きり…!?」

 

一花「………(二乃、ナイス!)」

 

三玖と五月の顔が曇りだした中、一花だけは少しだけ明るい顔になる。二乃が悟飯と組んでくれれば、ほぼ必然的に風太郎をこちら側に引き込めるからだ。

 

悟飯「に、二乃さん!?」

 

二乃「好きな人と回る。あんたに拒否権はないから!」

 

一花「そうなんだ?二乃と悟飯君で組むんだ?なら私達は私と四葉とフータロー君でどうかな?」

 

四葉「い、一花……?」

 

一花はここでチャンスと言わんばかりに畳み掛ける。

 

風太郎「いや待て、俺も………」

 

一花「えー?でも悟飯君と組めないんじゃフータロー君お友達いないんじゃない?ここは私達と組もうよ!その方がきっと楽しいよ!」

 

悟飯「ちょっと二乃さん、僕の話を…」

 

二乃「うっさい!あんたは黙ってなさい!私はこうするって最初から決めてたのよ!!あんたなんかが私とデートできることを感謝しなさい!!」

 

三玖「わ、私も…………」

 

三玖は二乃に何かを物申したいようだが、いまいち勇気が出ないようで言い出せずにいた。

 

二乃「言いたいことがあるなら今、はっきり言いなさいよ」

 

二乃は三玖をしっかり見つめてそう言う。『土俵に上がってこい』と言っているのだ。二乃は姉妹と真っ正面から勝負をする気なのだろう。

 

五月「……でははっきり言わせていただきます。二乃は少々利己的ではないでしょうか?」

 

二乃「はぁ?どこがよ?」

 

五月「孫君が何か伝えようとしていましたが、二乃はそれを妨害しましたよ。ここは孫君に決めてもらいましょうよ。どのような班を組みたいかを」

 

三玖「……!!」

 

これは勇気を出せない三玖にとっては救いの手とも取れた。確かにこれなら姉妹から不満が出ることはないだろう。

 

二乃「それもそうね。ハー君は勿論私とよね!?」

 

五月「勿論私ですよね!私、美味しい京都グルメを知ってますよ!!」

 

三玖「……わ、私も…!!美味しい和菓子を知ってる!!」

 

ここに来てようやく三玖も土俵に上がってきた。さあ、第一次シスターズウォーの幕が開く

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

悟飯「いや、僕達はもう既に組んでるんだけど………」

 

 

二乃「」

三玖「」

五月「」

 

 

…………ことはなかった。

 

 

一花「そっかぁ。じゃあフータロー君は…「だから、俺も既に組んでるんだっての」」

 

一花「」チーン

 

 

こうして、班決め論争の結果。姉妹は姉妹で班を組むことになった。

 

 

一花「あはは…。フータロー君に友達ができてよかったね……」

 

二乃「全く……。なんでこうなるのよ…」

 

五月「まさかもう既に組んでいたなんて…!もっと早く手を打つべきでした…!!」

 

三玖「折角勇気を出したのに………」

 

四葉「…………(気まずい)」

 

他の姉妹がそれぞれの想い人を懸けて熱くなっている中、四葉は場違い感が半端なく、気まずくて仕方なかった。

 

 

 

 

 

ちなみに、悟飯達の班のメンバーはというと………。

 

前田「班長は誰がやんだコラ」

 

悟飯「前田君も一組だったんだ……」

 

武田「この僕を差し置いているまい!悪いが上杉君には譲らないよ!」

 

風太郎「いや、やりたくねえから勝手にやってくれ」

 

 

悟飯、風太郎、武田、前田という面子だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな楽しい修学旅行が迫ってきている中、それを阻むかのように、1つの脅威が着々と地球に近づいていることを地球に住む人々はまだ知る由もない…。

 




 はい。今回は悟飯が五つ子に誕プレを贈りました。勤労感謝の日のデート時に、三玖がさりげなく悟飯に誕生日を伝えたのはこの時の為の伏線的なものです。風太郎は誕生日知らなかったから仕方ないね()

 そして一花は四葉だけでなく、悟飯をも巻き込んで行くスタイルです。ある意味暴走機関車です。人のこと言えませんなぁ…。四葉は3人の中では一番消極的な三玖を応援することにしますが、一花にもお願いをされて板挟み状態に。

 二乃も真っ正面からアタックしますが、一花の反応がここで原作とはほぼ真逆になります。一花は風太郎と悟飯が一緒にならなければ、こちら側に引き込むことは容易いですからね。まあ既に班を組んでいた為、この修羅場は強制的に終了しました。

最後の文を見たなら分かると思いますが、次回からはまたラブコメではなく、バトルメインになります。しばらくラブコメにしたいとか言っておきながら、これは酷い笑


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第59話 帝王襲来

 前回のあらすじ…。

 悟飯は五つ子に誕生日プレゼントした。しかし風太郎は誕生日のことを知らなかった為、風太郎は何も送ってない状態である。

 そして、修学旅行の班決めは、多少は修羅場になったとはいえ、一応は丸く収まったのだが………。



一方、悟飯達の修学旅行の班が決定された頃と同時刻、新ナメック星では……。

 

 

 

「な、何者だ!?!?」

 

「は、離せ!!」

 

「ぐほっ…!この……!!」

 

ナメック星人が謎のロボットに次々と拘束されていく光景が広がっていた。ナメック星人の抵抗も虚しく、ロボットの前では無意味となった。

 

手を縛られて繋がれて連行される者が大多数だったが、中には網に捉えられて引きづられる若いナメック星人もいた。

 

「くっ…!なんとかならないのか…!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

デンデ「……!!まずい…!!」

 

ピッコロ「…何かあったのかデンデ?」

 

デンデ「はい…。今、ナメック星が存続の危機に陥っています…!!」

 

ピッコロ「何ッ!?どういうことだ!?」

 

デンデ「分かりません。ですが、現地のナメック星人が正体不明の機械に拉致されています!!」

 

ピッコロ「くっ…!どうやって新ナメック星に向かえば…!!」

 

『そのことならワシに任せろ〜』

 

ピッコロ「……!!その声は、界王様!?」

 

『その通りじゃ。今から地球の言語で新ナメック星の座標を伝えるから、それを元に宇宙船で向かうといい』

 

ピッコロは界王から座標を聞くと、テレパシーでZ戦士達にカプセルコーポレーションに集まるように伝えて、自身もそこに急行する。

 

 

 

 

 

 

 

『悟飯!新ナメック星が大変なことになっている!至急カプセルコーポレーションに来てくれ!!』

 

悟飯「……!!分かりました!!」

 

風太郎「お、おい?どうしたんだ悟飯?」

 

悟飯「ごめん上杉君。今日の家庭教師は上杉君だけでお願い!!」

 

二乃「えっ?!」

 

五月「孫君!?」

 

悟飯はピッコロのテレパシーを聞きつけると、ひと気のないところですぐ様飛び立ち、カプセルコーポレーションに到着した。

 

 

 

 

悟飯「どうも!」

 

ブルマ「あら悟飯君!新ナメック星が大変なことになっているらしいじゃない!取り敢えずそっちのテーブルに座って!!」

 

ブルマに指示されたテーブルを見ると、既にZ戦士達がほぼ揃っていた。

 

トランクス(未来)「悟飯さん、お疲れ様です」

 

クリリン「よお悟飯。バイト中だったけどよかったのか?」

 

悟飯「ええ。頼れるもう1人の家庭教師がいるので」

 

ヤムチャ「つーか、トランクスも未来の悟飯も来てるとか初耳だぜ?一体何が起きたんだよ?」

 

天津飯「お前……。気で感じ取ることはできなかったのか?」

 

ヤムチャ「あ〜………。確かに馬鹿でかい気があったような……?」

 

天津飯「平和だからといって怠けるのは程々にしろよ?」

 

未来悟飯「…………みんな懐かしいや…」

 

クリリン「そっか。お前にとっちゃ、俺達とは本当に久々の再会になるんだもんな」

 

ピッコロ「………さて。みんな集まったところで本題に入る。デンデによると、新ナメック星が何者かによって壊滅の危機に瀕しているらしい」

 

クリリン「それって、やっぱフリーザ軍みたいな?それとも、復活したっていうサイヤ人の仕業か?」

 

ピッコロ「いや、そのどれにも当て嵌まらん。正体不明の機械生命体と言ったところだろう」

 

天津飯「………そいつらを俺達が倒せばいいんだな?」

 

ピッコロ「そうなる。ブルマによれば、宇宙船で約1日ほどで着く距離にあるらしい」

 

悟飯「えっ…?凄く早くないですか?」

 

トランクス(未来)「どうやら母さんは宇宙船に改良を重ねていたようで、エンジンの性能がアップしているようです」

 

トランクスの説明に全員が納得すると再びピッコロの声に耳を傾ける。

 

ピッコロ「というわけで、今からその宇宙船で新ナメック星に向かおうと思う。しかしその宇宙船にも定員がある。全員で向かうことは恐らく不可能だ」

 

未来悟飯「ではオレが行きましょう。オレはこっちの世界では基本やることがないので」

 

トランクス(未来)「俺も行きます!」

 

天津飯「俺も参加させてもらう」

 

餃子「僕も!」

 

クリリン「俺は嫁さんがなんて言うかなぁ………。18号さえ許してくれれば行くんだが…………」

 

トランクス(未来)「えっ?クリリンさん、18号と結婚したんですか!?」

 

クリリン「あ、ああ……!まあな!」

 

トランクスは人造人間と結婚したことを知ってかなり驚愕している様子だ。

 

ピッコロ「無論俺も行く。ヤムチャ、お前はどうする?」

 

ヤムチャ「おいおい…。みんな行くって言うなら俺も行くしかねえじゃねえか!行ってやるぜ!」

 

悟飯「では僕も…」

 

ピッコロ「いや、お前はダメだ」

 

悟飯「えっ!?なんで!?」

 

悟飯も新ナメック星に向かおうとするも、ピッコロに止められてしまう。

 

ピッコロ「お前はここに残れ。未来の悟飯とトランクスがいるだけでもこちらは過剰戦力だ。もしもターレスというサイヤ人がこの隙に来てみろ?只事ではなくなるぞ?」

 

確かにそうだ。この隙にクラッシャー軍団が襲来し、地球に神精樹を植えられてしまえば取り返しの付かないことになってしまう。そのことを考慮すると、地球にもある程度の戦力は残しておいた方がいい。

 

というか、新ナメック星の騒動はターレスの陽動の可能性も考えられなくはない。地球の警備が手薄になった隙を狙っている可能性もなくはない。

 

悟飯「………確かにそうですね。僕には学校生活もありますし、その方が都合いいですね」

 

ピッコロ「そういうことだ。俺達が不在の間、地球は頼んだぞ」

 

悟飯「はい!」

 

地球に残る戦士は悟飯とベジータ。ちびっ子達も含めるなら悟天とトランクスがいる。零奈が目を覚ませば零奈もその陣営に加わるはずだ。

 

新ナメック星に向かうZ戦士達は、早速宇宙服を装着する。クリリンは18号の許可を取る為に一旦帰宅し、色々あったそうだが結局は許可をもらえたとのこと。

 

 

 

 

未来悟飯「ということで、行ってくるぞ、五月」

 

未来五月「えっ………」

 

未来悟飯は事の経緯を説明し、自分がしばらく不在になることを未来五月に伝えた。

 

未来五月「だ、大丈夫なんですか!?帰ってきてくれますか!?」

 

未来悟飯「………ああ。オレには帰りを待ってくれる人がいる」

 

未来五月「で、でも…!私、孫君までいなくなってしまったら……!!」

 

未来悟飯「…………」

 

未来五月「えっ…」

 

未来悟飯は納得しない未来五月を引っ張り、2人の影を重ねる。

 

未来五月「そ、孫君………?」

 

未来悟飯「安心しろ。オレは死んだりしない。君の為にも、必ず生きて帰ってくる」

 

未来五月「………約束ですよ。破ったら許しません…!」

 

未来悟飯「ああ。勿論だ………」

 

 

 

 

 

 

 

ブルマ「(あら〜……!未来の悟飯君と五月ちゃんってそんな関係だったの!?こりゃこっちの悟飯君もどうなるか見ものね!)」

 

 

そんな2人のやり取りを見ている者が1人いた。

 

 

 

 

 

悟飯「それじゃ、お気をつけて!」

 

ピッコロ「ああ。行ってくる」

 

ピッコロ達が乗る宇宙船は扉を閉めるとゆっくり浮かび上がり、一定以上の高度に達すると急加速して空に消えていった。

 

悟飯「………それじゃ、僕は……」

 

悟飯は携帯電話を取り出すと、連絡先一覧から風太郎を選択し、電話をかける。

 

『お前、急にどうしたんだよ?急用でもあったのか?』

 

悟飯「まあそんなとこ。そっちはまだ授業やってる?」

 

『ああ。まだ続けてるぞ』

 

悟飯「分かった。じゃあ僕もそっちに戻るよ」

 

『いいのか?用事は?』

 

悟飯「うん。もう済んだことだから。それじゃあまた後で!」

 

そう言うと悟飯は電話を切る。携帯電話を収納し、舞空術で旭高校に戻る。

 

一旦高校に戻った悟飯は、風太郎や五つ子から質問攻めにあう。悟飯は風太郎や五つ子に隠す必要はない判断し、事の状況を説明した。

 

二乃「そっか……。そういうことだったのね」

 

一花「そのナメック星?っていうところは大丈夫なの?」

 

悟飯「うん。みんながなんとかしてくれるはずだよ」

 

二乃「そっ。ならハー君はいつも通りの生活ってわけね」

 

悟飯「うん。僕は地球のことを考えてのお留守番」

 

五月「待ってください…。私達を置いてってそこに行こうとしてたんですよね…?」

 

三玖「悟飯……。私達のボディガードなのに、それは切腹」

 

悟飯「ええッ!?」

 

 

悟飯はその後は普通に家庭教師としての仕事を再開し、その日は何事もなく終了し、悟飯は帰宅した。

 

 

 

 

 

 

 

 

その日の夜7時頃、中野家アパートでは……。

 

 

一花「明日は5月8日…。確か悟飯君の誕生日だよね?」

 

二乃「ええ、間違いないわ」

 

三玖「悟飯は家庭教師もボディガードも頑張っている。模試も終わったことだし、ちゃんと祝ってあげたい」

 

四葉「そうだね!私も孫さんから素敵なプレゼントをもらったから、私も何かいいものをプレゼントしたいな……」

 

五月「でも、何がいいんでしょう?」

 

二乃「上杉情報によると、ハー君はやっぱり食べ物系なら外れはないようだわ。どうやらスイーツ系は普段食べないらしいから、無難にケーキを作ってあげましょう」

 

一花「二乃はそれでいいとして、私達はどうしよう……?」

 

三玖「私は料理苦手だし…………」

 

四葉「孫さんの他に欲しいものってあるんですかね?」

 

五月「孫君ってあまり物欲がなさそうですしね……」

 

三玖「実はさっき悟飯にそれとなく聞いてみたんだ」

 

五月「ナイスです!それで、なんと?」

 

三玖「確かね…………」

 

 

 

 

『ここに魔法のランプがあります。願いが5つ叶います。悟飯は何を願う?』

 

『えっ……?普通は3つまでじゃないの…?そ、そうだなぁ……。まずはお父さんを生き返らせたいかな……。次に、宇宙全体が平和になってほしいね』

 

『………まだ願いは3つ残ってるよ?』

 

『そう言われてもなぁ………。やっぱり美味しいものを食べたいかな?甘いものはあまり食べないから特にそれがいいかな?………これ以上は思いつかないよ』

 

 

 

三玖「………って感じだった」

 

二乃「相変わらずね……」

 

五月「孫君のお父様を生き返らせるのは無理ですよね?流石に………」

 

一花「無理でしょ。お母さんの件は例外だし………」

 

四葉「世界平和……。これも私達じゃ無理だね……」

 

 

「「「「うーん…………」」」」

 

 

二乃のプレゼントは決まったとはいえ、他の4人はプレゼントの決定に迷っていた。

 

二乃「……なら、5人とも料理にしたらどう?ハー君は超が付くほどの大食らいだし、ケーキ5ホールとかも容易く平らげちゃうんじゃないかしら?」

 

一花「……無難にそれかなぁ…?」

 

三玖「それしかない……」

 

四葉「そうと決まれば!」

 

五月「教えて下さい!二乃!!」

 

二乃「………しょうがないわね。5人で作るわよ!」

 

こうして、悟飯の誕生日プレゼントは食べ物系に決定された。

 

 

 

 

 

 

翌日……。

 

悟飯「それじゃあお母さん、悟天。行ってきます!」

 

「「いってらっしゃい!」」

 

悟飯はいつも通り起床し、舞空術で旭高校に向かう。ひと気の無い路地裏で悟飯は着地し、そこからは普通に徒歩で登校しようとした…………。

 

 

ガシッ……。

 

悟飯「………!!!!」

 

 

正体不明のロボットが悟飯の行手を阻むようにして現れる。

 

悟飯「………何者だ?」

 

ロボットには気は存在しないので、悟飯の反応も少々遅れてしまった。その隙が、致命的なミスとなった。

 

悟飯「………!!!?」

 

「………マザーコンピューター。標的に麻酔銃を撃ち込みました。もうじき無力化するでしょう」

 

『よくやった。では俺もそちらに向かおう』

 

ロボットは誰かと連絡を取っていたが、悟飯は意識を保つことが精一杯で内容は頭に入ってこなかった。

 

「お前が地球育ちのサイヤ人、孫悟空の息子だという正体は割れている。貴様は大人しく寝ているがいい」

 

悟飯「お前は…………なに…………もの…………」

 

 

 

ドサッ

 

 

悟飯の意識はそこで途切れてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

同時刻、とある場所では……。

 

 

「ふふふっ…。ターレス一味のサイヤ人から聞き出した情報によれば、孫悟飯は超サイヤ人を更に越えていると聞く。今の俺様でも問題はないだろうが、念には念をだ……。地球人から生命エネルギーを採取してから嬲り殺しにしてくれよう………」

 

"マザーコンピュータ"と呼ばれたそれは、道中でサイヤ人を捉えて拷問し、情報を引き出していたのだ。そいつはその情報を元に、悟飯を一旦無力化したのだ。

 

「地球にはどれほどの生命エネルギーが溢れているのか、楽しみだな………。順調ならばナメック星からの生命エネルギーが届くまであと数日………。地球人が死滅する頃に丁度届くだろう……」

 

そう。新ナメック星を襲来した大元の黒幕はこいつだったのだ。

 

「貴様らサイヤ人がいくら力をつけようが無駄だ。この俺様こそが真の宇宙の帝王だと思い知らせてやる」

 

ターレスに葬られたはずのフリーザの兄、クウラが"メタルクウラ"として、地球に現れようとしていた………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「みんな席につけ。朝のホームルームを始めるぞ…」

 

風太郎「………悟飯のやつどうしたんだ?」

 

二乃「メールで遅刻の連絡もないわ。ハー君はサボるとは思えないし……」

 

三玖「心配……」

 

一花「忘れ物して取りに戻ったとか?」

 

五月「………嫌な予感がします」

 

四葉「気にしすぎたよみんな!」

 

朝のホームルームの時間になっても悟飯が現れないことを不思議に思う6人。実は悟飯は路地裏で強力な麻酔銃にやられて眠ってしまっているのだが、それを知る由もない。

 

「……?なんだ?急に暗くなったぞ?」

 

「なんだあれ?積乱雲か?」

 

「な、なんだあれ……?」

 

「もしかして、UFO…!?」

 

「いやいや、まさか………」

 

突然空が暗くなったことに騒めき始めるクラス。先生は静かにするように釘を刺すも、自身も不審に思っていた。

 

それもそうだ。今までこのような現象に遭遇したことはない。日食にしてもいくらなんでも暗すぎる。未知の状況に世界中は騒ついていた。

 

一花「………なにあれ?」

 

三玖「す、すごい………」

 

風太郎「な、なんだあれは……?日食でもここまで暗くは………」

 

五月「ま、まさか…!!将棋星人が本当に襲来してきたのでは!?」

 

四葉「な、なにそれ?」

 

だが、五月の冗談半分の回答は、半分正解だった。

 

 

ブーー!!!

 

突然、恐怖感を煽る警報がそこら中に鳴り響き、有事を知らせる放送が世界中に流される。

 

『緊急速報!緊急速報!ただ今、地球上空に巨大不明飛行物体が急速に接近しています!屋外にいる人は、直ちに地下かシェルターに避難して下さい!』

 

その警報を聞き、クラス中がパニックになった。

 

風太郎「ま、まさか…!悟飯がいないのって……!!」

 

影は次第に近づき、四方八方に触手のようなものを伸ばしながら、地面に接触した。

 

接触すると同時に、激しい揺れに襲われる。

 

「「「きゃあああああ!!!」」」

 

「うわっ!?」

 

「な、なに!?何が起きたのよ!?」

 

「ぶつかった!?隕石ッ!?」

 

「やべえ!!俺たちは終わりだぁああああ!!!」

 

武田「お、落ち着こうみんな!冷静に行動しなきゃ助かるものも助からないよ。ね?」

 

武田はクラスメイトを落ち着かせようと奮闘するも、この異常事態の中ではそれも無意味に終わった。

 

五月「そ、孫君!孫君は!?」

 

 

 

 

 

 

ガシッ……

 

ガシッ…

 

 

ガシッ!

 

 

 

ガシッ!!

 

 

 

 

ガシッ!!!

 

 

 

 

 

 

すると、触手のようなものから穴が開き、そこからロボットが次から次へと出向する。足音を隠すことなく堂々と歩き、そのうちの数体が校舎に飛んできて…………。

 

 

 

バリーンッ!!!

 

 

窓ガラスを割り、窓際の生徒から順に次々と捕獲していく。

 

「に、逃げろ〜!!!!!」

 

「誰か助けて〜!!!!!」

 

風太郎「ぐっ…!一旦逃げるぞお前ら!!!」

 

武田「仕方ない!ここは外に避難するしかない!!」

 

三玖「で、でも悟飯は……!!」

 

五月「孫君なら大丈夫です!!」

 

四葉「取り敢えず走ろう!!」

 

しかし、廊下にも生徒達がごった返しているこの状況では、逃げることも困難になっていた。

 

武田「みんなこっちだ!!非常口がそっちにある!!」

 

武田は理事長の息子。運良く学校内の地図を把握していた為、生徒にもあまり認知されていない非常口に武田が案内する。そこには生徒はそれほどおらず、風太郎達は武田のお陰でスムーズに避難することができた。

 

武田「くっ…!一旦そこの木陰に隠れよう!!」

 

しかし、外に出てもロボットがそこら中にうじゃうじゃいた。武田の指示に従って6人も木影に隠れる。そこは丁度緑が生い茂っており、体を隠すには打って付けの場所だった。

 

二乃「うう………。こ、怖いわ…!私達を連れ去ってどうするつもりよ……!」

 

一花「分からないけど、碌な目に遭わないのだけは断言できるね………」

 

三玖「ここでやり過ごせればいいけど……」

 

四葉「ど、どうしよう……!みんなが連れて行かれちゃう………!!助けに行かなきゃ……!!」

 

風太郎「馬鹿やめろ…!!あのロボットは簡単に窓を突き破ったんだぞ…!?いくら運動ができるお前でも敵わねえって…!!」

 

五月「だ、大丈夫です…!私達には最強のボディガードがついているじゃないですか……!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『………この周波数であっているか?』

 

突如、外の放送から聞き覚えのない声が聞こえる。何者かが……………。いや、クウラがハッキングしたのだ。

 

『ご機嫌よう、地球人の諸君。私は宇宙の帝王、クウラという者だ。貴様らの身にこれから起こることを説明してやろう』

 

五月「く、くうら……?」

 

風太郎「悟飯が言ってたサイヤ人ってやつか………!?」

 

『この星は俺が頂く。そして貴様らはこのビッグゲテスターの生命エネルギーとなって共に生き続けるのだ。このクウラ様に地球人如きの貴様らが利用してもらえることをありがたく思うがいい………』

 

この説明を聞き、7人はゾッとした。生命エネルギーとして利用する。理解は難しかったが、どういう目に遭うかはなんとなく想像できてしまったからだ。

 

二乃「利用してやるって……!!何よ偉そうに……!!!」

 

三玖「ま、まずい……!これ、多分死ぬよりも辛いやつだよ……!!」

 

四葉「そ、孫さん…………!早く助けに来てください………!!」

 

風太郎「悟飯は何してんだ………!」

 

 

 

 

ガサガサ……

 

 

「「「「「「「……!!」」」」」」」

 

7人は木陰に隠れていたが、ロボットが緑を掻き分けて発見されてしまった。

 

「無駄な抵抗はよせ。お前達は温度の違いで区別することが可能だ」

 

四葉「くっ……!みんな、逃げ……!」

 

 

シュバッ‼︎

 

 

四葉が6人を逃そうと立ち上がるも、すぐに両手を縛られてしまう。

 

二乃「よ、四葉……!!」

 

「無駄な抵抗はよすんだ。貴様ら如きの戦闘力では、我々には敵わない」

 

五つ子と風太郎、武田はロボット相手に成す術もなく、意図も容易く捉えられてしまった………。

 

二乃「は、離しなさい……!!!」

 

風太郎「離せよこの野郎……!!」

 

手足を縛ったロープをロボットは器用に操って、一列の集団を作る。こうすることによって、一人一人の動きの自由を奪うことができるのだ。1人逃げ出そうとすれば、他の者も同じペースで走らない限りは逃げることがほぼ不可能だ。

 

五月「そ、孫君…………!!」

 

三玖「や、やぁ………!!!」

 

一花「これ……!簡単には解けないよ……!!」

 

四葉「私も無理……………」

 

武田「…………万事休すというところか………」

 

色々試行錯誤する7人だったが、ロボットが常に近くで見張っている現状では、この絶望的な状況を打破する手筈は整えられない。悟飯が気絶している今、地球のこの地域はまさに地獄絵図と化していた…………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カプセルコーポレーション付近では………。

 

トランクス「なんなんだよお前ら!!ママの手を離せ!!!」

 

 

ドグォォオオオオオオオン!!!!

 

 

ベジータ「この星を頂くだと?だったらこの俺様を倒してからにするんだな!!」

 

 

ドグォォオオオオオオオン!!!

 

 

トランクスもベジータが次々とロボットを破壊することによって、ロボットはトランクスとベジータの撃退態勢に入るが、ロボットの戦闘力はトランクスとベジータ親子からすれば微々たるもの。はっきり言えば舐めプしても余裕で倒せるレベルだった。

 

トランクス「ねえ!なんなのこいつら!!パパ知らない!?」

 

ベジータ「宇宙の帝王を名乗っていやがった…。まさかとは思うが、フリーザの親戚がまだ残っていたというのか…?丁度いい機会だ。ここでアイツの一族の血を根絶やしにしてやるぜ…!!」

 

ベジータは好機と言わんばかりに気を高めていく。トランクスも超サイヤ人に変身しない範囲で全力を出し、引き続きロボット撃退に励んでいた……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

悟空「なあおばば。また水晶玉貸してもらってもいいか?」

 

占いばば「またか……。まあ別にええんじゃがのぉ〜………」

 

悟空は定期的に下界の様子を見守っている。そして今日もいつもの平和な地球の………。主に悟飯の生活の様子を見守ろうとしていた。

 

悟空「………!!!?な、なんだよこれ……!!!!?」

 

占いばば「えらいことになっておるぞい!?」

 

悟空「くそぉ…!黒幕は誰なんだ…!!占いばば!!」

 

占いばば「む、無理じゃ……!!これ以上視点を近づけることは困難じゃ……!!」

 

悟空「畜生……!悟飯は!?」

 

占いばば「お前さんの息子じゃったな?ちょっと待っておれ」

 

占いばばは水晶を操作して悟飯が見える位置に切り替えた。するとそこに写ったのは、何故か地べたに横たわっている悟飯の姿だった。

 

悟空「ご、悟飯……!!なにやってんだよ!!!起きろ!!!おめぇのダチが連れ去られちまうぞ!!!」

 

占いばば「目を覚ます様子が一切ないの……」

 

悟空「そ、そうだ!ベジータは!?」

 

占いばば「ベジータは息子のトランクスと共に西の都で戦っておる」

 

悟空「くっ…!じゃあピッコロは!?」

 

占いばば「…………どうやら、ナメック星におるようじゃ。似たようなものがナメック星にもおる」

 

悟空「それって、未来の悟飯とトランクスもか!?」

 

占いばば「そうじゃの……」

 

悟空「ま、マジかよ……!!じゃあどうすりゃいいんだ………!!」

 

占いばば「………悟空よ。こんなことはあの世とこの世を行き来できる立場で言うべきではないのだが……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

悟天「トランクス君!これどうなってるの!?」

 

悟天は起床後、トランクスやベジータの気が高まっていることを察知して西の都に来ていた。

 

トランクス「見ての通りだ!!変なロボットが人を連れ去ろうとしてるんだよ!お陰で世界中がパニックになってるぜ!!悟天も手伝ってくれ!強さはそれほどでもないけど、数が多すぎる!!」

 

悟天「世界中……?ま、まさか…!!!ごめんトランクス君!!用事を思い出した!!!」

 

 

ドシューンッ!!!!

 

 

悟天は何かを思い出したかのようにその場を後にした。

 

トランクス「お、おい悟天!!こんな時に用事なんて気にしてる場合かよーーーーッッ!!!!!」

 

 

 

 

悟天「(世界中ってことは、兄ちゃんの学校も大変なことになっているはず…!なのにさっきから兄ちゃんの気を感じない…!!)」

 

悟天は悟飯の気を感じないことを不審に思い、日本に着陸する。悟飯に弁当を届ける為に何度かPentagonの方の中野家を訪れたことがあった為、その記憶を頼りにマンション前までやってきたのだ。

 

悟天「…………何あれ…?」

 

悟天の目の前には、まさに地獄が広がっていた。巨大な宇宙船にも惑星にも見えるものが着陸したことによって、幾つも家屋が倒壊している。それだけでなく、ロボットによって捕らえられた人々が列を作ってどこかに連れ去られそうになっていた。

 

………その中に、見覚えのある顔が……。

 

 

らいは「はぁ…!はぁ……!!」

 

悟天「らいはさんだ!!」

 

風太郎の妹であるらいはが走って逃げていた。らいはだけはまだ捕まっていなかったようだが、恐らくそれも時間の問題だ。

 

 

らいは「痛っ…!!」

 

案の定、らいはは慌てて逃げていた為、何かに躓いて転倒してしまう。その隙をロボットは見逃さず、らいはを捕らえようとする……。

 

 

 

 

 

 

 

 

悟天「突撃ーーーーッッ!!!」

 

 

ドグシャ……!!!!

 

 

悟天は頭からロボットに突っ込み、頭突きでロボットの体を貫くと、ロボットは少し漏電して爆散した。

 

 

 

悟天「大丈夫!?らいはさん!!」

 

らいは「ご、悟天君……!?」

 

予想外の出来事に、らいはの脳は処理が追いついていなかった。

 

悟天「逃げて……って言っても、そこら中にロボットがいるもんね……」

 

らいは「ど、どうしよう……!お仕事に行ったお父さんも無事かどうか……」

 

悟天「なんてことないよ!!僕が悪い奴らをみんな蹴散らしてあげるよ!!」

 

悟天は満面の笑みをらいはに向ける。その笑顔でらいははひとまず気が緩み始めた。

 

らいは「でも悟天君……。まさか孫さんみたいに……?」

 

悟天「うん!兄ちゃんほどじゃないけど、僕だってそれなりには強いんだよ!!」

 

ドグシャッッ!!!

 

真後ろから急接近してきたロボットに特に驚くことなく対処しながら悟天はそう言う。

 

悟天「もー!!!数が多いよ〜!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

悟天がらいはを守りながらロボット退治をしている時のこと……。旭高校付近にいた者は全員捕らえられた。最初の方に捕らえられてしまった者は既にビックゲテスター内部に向けて出発させられている。

 

風太郎達はなんとかロープを切るなり解くなりして逃亡を図ろうとするも、ロープは意外にも頑丈で解くことすら叶わなかった。

 

二乃「ハー君はいつになったら来るのよ…!」

 

風太郎「………もしかして、不意打ちにあったんじゃないか……?」

 

四葉「ど、どういうことですか…?」

 

風太郎「悟飯が世界中で起こっている異常事態に気付かないはずはない。だから、悟飯は先に手を打たれたのかもしれん…………」

 

三玖「じゃ、じゃあ…!悟飯は来ないの……!?」

 

風太郎「………すぐには」

 

五月「そ、そんな……!!」

 

武田「………君達、孫君がこの場に来たところでどうにかできるというのかい?相手は異常だ…。現在は世界中の軍隊が対応しているみたいだが、まるで歯が立たないそうじゃないか?そんな集団に孫君1人では………」

 

風太郎「そうか……。お前は知らなかったんだったな。悟飯はな………」

 

風太郎は悟飯のことについて話そうとした時、ロボットが一体目の前に現れる。

 

「次はお前達だ。これからビッグゲテスター内部に向かう」

 

とうとうこの時が来てしまった。風太郎らはなすがままにロボットに連行されてしまう。その間、不安になる者。涙を流す者。愛する人が到着することを信じて待つ者など、反応は様々だ。

 

だが、肝心の悟飯は超サイヤ人にも効く強力な麻酔銃によって眠らされている。すぐに来ることはないだろう。

 

しかも、ビッグゲテスター内部への入口はすぐそこにあった。中に入ってしまえば、どうなるかは誰にも分からない。

 

三玖「悟飯……!早く来て……!!」

 

五月「孫君………!」

 

二乃「は、早く来なさいよ…!!私の王子様なら……!!!」

 

 

 

 

 

ガシャンッッ!!!!!

 

 

ドグォォオオオオオオオオオン!!!!

 

 

「「「「「「!?!?」」」」」」

 

ロボットは唐突に爆発する。それによって風太郎の列は足を止めた。だが、何故ロボットが爆発したのかは原因不明だったが、その原因はすぐに分かった。

 

「反逆者か。捕らえろ」

 

複数体のロボットが、"山吹色の道義を着た男"に取っ掛かろうとする。

 

 

シュン‼︎

 

 

グシャッッ!!!

 

 

しかし、その男は高速移動で避けるとロボットは互いにぶつかる。その直後に男はロボット2体を両手で押し潰した。

 

「この人間、只者ではない」

 

目の前の反逆者がただの地球人ではないことを察し、ロボットは数を更に増やして男に立ち向かう。

 

 

ガシッ!!

 

 

ロボットの拳を腕で受け止める。

 

 

ガッ!!!

 

 

ロボットの蹴りを膝で受け止める。

 

 

ガガッ!!!!

 

 

ロボットの蹴り、拳を使ってない方の腕で対処し、男は回転しながらロボットを蹴り、殴り…………。

 

 

 

 

はぁああッッ!!!!!

 

 

 

ブォオオオオオオッ‼︎

 

 

 

 

強風を発生させて、その男を囲んでいたロボット達は四方八方に吹き飛ばされた。

 

「だりゃあ!!!」

 

 

グシャ!!!

 

 

シュン‼︎

 

 

「はぁああッッ!!!」

 

 

ドグシャッッ!!!!

 

 

その男は吹き飛ばされたロボットを次々と風穴を空けて爆散させる。

 

 

 

 

スタッ

 

 

一通り倒すと、男は元の位置に戻ってきた。

 

 

二乃「ね、ねえ!この人って、未来のハー君でしょ!?」

 

三玖「でも、未来の悟飯はナメック星?っていうところに行ってるんじゃ………」

 

四葉「それに、左腕が…………」

 

五月「きっと私達の危機を察知して駆けつけてくれたんですよ!!」

 

「………どうやら俺様の出番のようだな」

 

 

銀色に輝く、ロボットにも宇宙人にも、"フリーザ"にもよく似ている者がゆっくりと空中から舞い降りてきた。

 

「……………話は聞いてるぜ?おめぇがフリーザの兄貴だってことはな」

 

そう。目の前に現れたフリーザに似た銀色の正体は、フリーザの兄であるクウラ………否、メタルクウラであった。

 

「おめぇはやっぱりフリーザの兄貴だな。やってることはあいつとほとんど変わらねえ。おまけに、真っ正面から挑んでも勝てねえのを分かってて悟飯を眠させたんだろ?汚ねえ真似するじゃねえか………」

 

メタルクウラ「………貴様、何者だ?」

 

「オラか?オラは……………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

悟空「地球育ちのサイヤ人、孫悟空だ」

 

頭に天使を連想させる輪っかを浮かべた悟空が、静かに怒りながらクウラに自身の正体を告げた。

 




 はい。このタイミングでまさかの悟空の登場です。天下一武道会の時に悟空が登場することは皆さん大体察していたと思うので、ここで不意打ちです。

 設定を見て気づいたんですけど、風太郎の身長は178cmで、悟飯は176cmだそうです。風太郎ってマジで高身長だったんですね。というか悟飯は180は超えてると勝手に思ってたので、なんか意外です。

 ちなみに悟空が何故この世に占いババの同行無しで戻ってこれたのか、それは次回(だったかな?)に解説されます。セル編終盤やボージャック戦の時も一瞬だけ戻ってきてる感じの描写があったので、それの独自解釈というか勝手に付けた設定みたいなものが含まれています。


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第60話 悟飯の父親、孫悟空

 前回のあらすじ…。

 ナメック星に異常事態が発生したことをデンデは察知して、Z戦士達は新ナメック星に出向くことになった。だがベジータと悟飯は、万が一のことを考えて地球に留まることにした。

 ところが、悟飯は不意を疲れ、超サイヤ人にも効くほどの強力な麻酔銃によって眠らされてしまい、その隙に地球はメタルクウラの手によって好き勝手に荒らされたい放題だった。

 地球に残っていたトランクス、ベジータ、悟天はロボットを次々と破壊するが、五つ子達の近くには戦士達が誰一人としていない状況だった。

 悟飯が現れない絶望的な状況の中、何故か死人であるはずの悟空が五つ子達の前に姿を現した。



メタルクウラ「………何?ソンゴクウ?貴様がフリーザを倒したという………」

 

悟空「その通りだ。よく知ってんじゃねえか」

 

メタルクウラ「ふん。丁度いい機会だ。貴様らサイヤ人を痛ぶるのは地球人から粗方生命エネルギーを頂いてからにしようと考えていたが、まあいい」

 

五月「えっ…?孫悟空って……。孫君のお父様じゃ………?」

 

二乃「えっ?この人が…?」

 

風太郎「でも、悟飯の親父は既に殺されたんじゃ…………」

 

悟空「ああ。だから頭に輪っか付いてんだろ?それが死人の証だ」

 

三玖「………やっぱり悟飯の親だね」

 

一花「常識が通用しないところは流石というべきかな…………」

 

四葉「わーっ!その天使の輪っか絶妙に似合ってますよ!!」

 

武田「…んん?死人?孫君のお父さんは既に……亡くなったという話は以前から聞いていたが、あなたが本当に?」

 

悟空「ああ。おめぇら、いつも悟飯が世話になってんな」

 

メタルクウラ「……この俺様を前にして雑談とは……。余程死にたいらしいな…!」

 

ドシューン!!

 

悟空が油断していると踏んだクウラは、悟空に向かって光のような速さで接近し、悟空に拳を放つ。

 

 

 

ドガッ!!!!!!

 

 

メタルクウラ「ぐぉ………!!!」

 

だがクウラの拳は当たることはなく、逆に悟空に拳をお見舞いされた。

 

悟空「だぁあああ!!!!」

 

 

ズォオオオオオオオッッ!!!!!

 

 

悟空は気功波を用いて、クウラの胴体に風穴を空けた。

 

メタルクウラ「………な、なんだと…!?」

 

悟空「残念だったな。おめぇ程度なら、超サイヤ人にならなくても余裕で倒せんぞ?」

 

メタルクウラ「くくくっ…!こいつは失礼した…!貴様もやはり本物の超サイヤ人…!ならばこちらも全力で相手するまでだ!!!」

 

 

シュルルル

 

悟空「なに?」

 

悟空が空けた風穴は一瞬にして塞がれてしまった。

 

メタルクウラ「どらぁああ!!!」

 

シュバッ‼︎

 

メタルクウラは先程のように悟空に拳を放つ。しかし先程とは比べ物にならないほどに速さが増している。とはいえ、悟空にとっては避けられない程の速さではなかった。

 

悟空は体を逸らしながら拳を回避し、頭が地面につきそうになったところで手を地面につけ、手に力を込めてクウラにキックをお見舞いする。

 

メタルクウラ「チッ…!やるな!」

 

クウラは一旦悟空から距離を置き、指に力を込める。

 

メタルクウラ「だが、こいつはどうかな!」

 

ビッ!!!!

 

クウラは一本の光を指先から放ち、その1本の光は真っ直ぐ悟空に向かう。

 

 

悟空「……」シュン

 

 

メタルクウラ「避けた…!?」

 

 

悟空は何事もないかのようにデスビームを避ける。

 

メタルクウラ「オラオラァァアア!!!!」

 

クウラはデスビームを連射し、いくら悟空でも避けきれないように計算しながら放つが、悟空はデスビームを超える速さで全てのデスビームを避けた。

 

メタルクウラ「なっ…!!全て…!!」

 

悟空「オラだってただ死んだわけじゃねえんだ。あの世の修行を舐めねえ方がいいぞ…!」

 

メタルクウラ「くくくっ…!ならこれでどうだ!!!!」

 

 

ビッ!!!!

 

 

クウラは先程よりも太い光を放った。その光は今までのデスビームより鈍く、悟空は当然のように回避する。

 

メタルクウラ「かかったなアホが!!」

 

悟空「……!?」

 

 

 

二乃「きゃ…!!」

 

風太郎「やべっ……!!」

 

クウラの言動で嫌な予感が頭に過り、悟空は振り返ると、なんとデスビームは五つ子達に向かっていた。

 

メタルクウラ「さあどうする!?そこにいる奴らは貴様の大事な奴らなのだろう?貴様が死ぬか!アイツらが死ぬか!!さあ選べ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

悟空「………おめぇ、ホントセコいやつだな」

 

メタルクウラ「………なに?」

 

悟空から返ってきた言葉は、意外にも冷静にクウラを評価する言葉であった。焦りでも怒りでもない。ただの冷静な一言………。

 

 

悟空「界王拳ッッ!!!!」ボッ‼︎

 

 

悟空が雄叫びをあげると、周りに赤いオーラが出現する。

 

 

悟空「………!!」

 

 

ギャウウウッ!!!!

 

 

甲高い音を鳴らしながら高速で移動し、五つ子達とデスビームの間に立つ。

 

悟空「………」

 

 

バシンッ!!!!

 

 

悟空はハエを祓うようにデスビームを弾き飛ばした。だがそれで終わりではない。

 

 

 

ギャウウウッ!!!!

 

 

メタルクウラ「なっ…!」

 

 

 

ドゴォォオオッッ!!!!!!

 

 

メタルクウラ「ぐぬぅ………!!!!」

 

 

悟空はそのまま折り返すようにクウラの前に現れると、流れるようにクウラの頬に赤いオーラを纏った拳を叩き付けた。

 

その拳はクウラを逃すことなく、そのまま地面に叩きつけた。

 

クウラは流れるように地面に倒れ、その地面は強力な力によってクレーターが発生した。

 

 

二乃「す、すごい………!!」

 

三玖「流石悟飯のお父さん………!」

 

 

悟飯のような力強い戦闘スタイルではない。長年の経験から積み重ねてきた綺麗な戦闘フォーム。ただ気を膨らませてぶつけるだけでなく、無駄なく気を使用して攻撃するその姿に、五つ子と風太郎には『強い』という感想以外に、綺麗だという感想を抱かせる。

 

 

メタルクウラ「この野朗ぉお!!!」

 

 

ズォオオオオオオオ!!!!!

 

 

倒れ込んでいたクウラは目の前にいた悟空に顔面からエネルギー砲をヒットさせる。クウラはシテやったりという顔でニヤける。

 

 

 

ガシッ…

 

メタルクウラ「なっ……!?」

 

だが、悟空がこの程度でくたばるような戦士ではない。地球を幾度となく救ってきた戦士を侮ってはならない。

 

悟空「オラオラオラ!!!!」

 

悟空はクウラの尻尾を掴むとそのまま振り回し、ある程度回転させて上空に投げる。

 

メタルクウラ「だからどうした!!」

 

クウラは投げ飛ばされただけで特にダメージはなく、そのまま悟空に突進しようと考えるが。

 

 

悟空「はっッッッ!!!!!」

 

 

ドンッッッ!!!!!!

 

 

メタルクウラ「ガッ………!!!!」

 

 

悟空は気合によってクウラを更に上空に追いやる。

 

 

悟空「はっ……!!!」ギャウウウッ‼︎

 

 

悟空もクウラの後を追うようにして、界王拳を駆使して上空に移動する。

 

 

 

 

悟空「かー!めー!はー!めー!!

 

 

 

悟空はクウラを追いかけながらかめはめ波を準備し………。

 

 

メタルクウラ「この猿がぁあ…!!目にものを見せてくれる!!!」

 

クウラと同じ高度に達した時……。

 

 

 

悟空「波ぁああああああああああああああッッッ!!!!!!!

 

 

 

ズォオオオオオオオオオオオオオッッ!!!!!!

 

 

 

かめはめ波を解き放った。

 

 

 

メタルクウラ「なっ……!ぬぉおおおおおおお……!!!!」

 

 

 

ドグォォオオオオオオオオオオオオオオオン!!!!!!

 

 

メタルクウラはそのままかめはめ波の青白い綺麗な光に飲み込まれ、そのまま爆散し、破片一つ残さずに消滅した。

 

 

 

 

 

スタッ

 

悟空「はぁ……………」シュゥ…

 

悟空は地上に降り立つと、界王拳を解除し、リラックスする。

 

 

 

「うぉおおおお!!!!」

 

「すげぇ!?誰だあの人!!?」

 

「なんか孫君に似てない?孫悟空って言ってたし!!!」

 

「頭の輪っかはよく分からねえけど、すげえ強えぞあの人!!!!」

 

 

 

一花「あ、あの!大丈夫ですか!?」

 

悟空「ああ。なんてことはねえ。それよりおめぇら、そんなんじゃ不便で仕方ねえだろ?今切ってやるから待ってろ!」

 

悟空は手を縛られた一花を見て、1人ずつロープを切断することを提案する。

 

 

 

 

 

 

 

メタルクウラ「なるほど………。流石はフリーザを倒しただけのことはある」

 

悟空「………えっ?」

 

先程、悟空が倒したはずのメタルクウラが、目の前に再び姿を現した。

 

メタルクウラ「残念だったな。本体である俺様はビッグゲテスターのコアにいる。俺の分身とも言えるメタルクウラは、ビッグゲテスターの偉大な科学力によって量産可能なのだ!!!」

 

悟空「嘘だろ……?」

 

後ろからメタルクウラがまた1人、2人、3人…………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いや、両手両足を使っても数えきれない程のメタルクウラが姿を現した。

 

 

メタルクウラ「……だが、さっきの戦闘でも貴様が本気を出していないのは明らかだ。だから………!!!」

 

 

 

ブォオオオオオオッ‼︎

 

 

悟空「な、なにッ!!!?」

 

 

メタルクウラは今まで第四形態…。つまり、フリーザにとっては最終形態とされる姿だったのだが、その先の第五形態……。クウラにとっての最終形態に変身をした。

 

メタルクウラ「「「「さあ、第二ランウドを始めようかッ!!!!」」」」

 

悟空「くっ……!!界王拳ッッ!!!」ギャウウウッ‼︎

 

 

悟空は界王拳を駆使してメタルクウラに勇敢に挑む。

 

 

ドゴォォオオッッ!!!!!

 

 

悟空「ぐわっ……!!!」

 

だが、先程までのクウラではない。変身したことによってあらゆるステータスがアップしたクウラに、界王拳では敵わない。

 

悟空「くっ…!10倍だッッ!!!!」

 

悟空は界王拳を10倍に引き上げ、攻撃を受けたクウラに仕返しをし、周りのクウラにも同様に蹴りを喰らわせようとするが………。

 

 

バシン!!!

 

悟空「がっ……!!!」

 

一体目に尻尾で叩かれ。

 

 

ガガガッ!!!!

 

悟空「うわぁああ!!!!」

 

 

2体目に拳の連打をお見舞いされ。

 

 

メタルクウラ「オラァアア!!!」

 

 

ドゴォォオオッッ!!!!!

 

 

上空から重力を利用して蹴りを喰らわしてきた3体目によって、悟空はその蹴りに連動するように落下し、建物に叩きつけられ、その建物は大きな音を立てて崩れていく。

 

 

二乃「あっ…!!学校が!!!?」

 

四葉「そ、そんなぁあ!!!?」

 

そう。悟空が落下した建物は、旭高校の校舎であった。

 

風太郎「な、なんてことだ…!!!これから俺はどうすりゃいいんだ!?高校に通えなくなったら大学は!?」

 

武田「上杉君。気持ちは分かるが、今心配すべきことはそこではないと思うよ。ね?」

 

今後の進路の心配をする風太郎に構うことなく、ロボットが再び五つ子達を囲む。

 

 

 

「おいおい、嘘だろ!?」

 

「誰だか分からないけど、頑張って〜!!!!!」

 

「負けるなぁああ!!!!」

 

 

状況が打って変わり、悟空が不利になると、生徒たちは悟空を応援する。

 

二乃「そ、そうよ!頑張れ!!あんな身勝手な奴らに負けるんじゃないわよ!!!」

 

五月「地球を幾度となく救ってきた孫君のお父様なら……!!!」

 

三玖「負けないで!!」

 

四葉「あの悪い人達をやっつけて下さい!!!!」

 

 

その生徒達に呼応するように、五つ子達も悟空にエールを贈る。

 

 

メタルクウラ「………鬱陶しいハエどもだ。目障りだ。死ね」

 

 

パッ!!!!!

 

 

一花「あっ………!!!」

 

 

メタルクウラはそこそこ大きなエネルギー玉を校庭に向けて放つ。悟空が瓦礫の中に埋もれている中、その光を跳ね返せる者はこの場にはいない。

 

 

 

「させるかッッ!!!!」

 

 

ドンッッッ!!!!!!!

 

 

そこに悟空が現れ、……悟空?いつの間にか赤い鉢巻を巻き、顔に傷を付けた悟空似のサイヤ人が、スピリッツキャノンを放ってクウラのエネルギー玉を押し返した。

 

メタルクウラ「何者だ…………?」

 

「てめぇに名乗る名前はねぇ」

 

 

ボォオオオオッ!!!!

 

 

その金髪のサイヤ人はこう名乗る。

 

超バーダック「俺はただの下級戦士だ」

 

 

 

シュン‼︎

 

 

 

 

ドゴォォオオッッ!!!!!

 

 

メタルクウラ「ぐっ……!ぁぁ……!!」

 

 

超サイヤ人になったバーダッグは目で追えぬ速さでメタルクウラに突進し、メタルクウラに風穴を空けた。

 

メタルクウラ「だが無意味だ」

 

メタルクウラが腹部を再生させようとしたその時であった。

 

 

ガシッ!

 

 

超バーダック「ほらよ!!」ブン‼︎

 

 

メタルクウラ「なっ!!?」

 

 

バーダッグは尻尾を掴んでクウラを投げ飛ばす。

 

超バーダック「オラァア!!!!」

 

 

パッッ!!!!!

 

 

バーダッグはそのまま流れるようにしてスピリッツキャノンを放ち、メタルクウラを爆散させた。

 

 

メタルクウラ「貴様も超サイヤ人になれるのか……!!」

 

メタルクウラ「まあいい。お前ら纏めて嬲り殺しにしてくれる」

 

超バーダック「やれるもんならやってみやがれ。こっちだ!!」バシューン‼︎

 

 

バーダッグはそのまま遠くへ飛び、メタルクウラ達もバーダッグを追うようにして飛び立っていった。

 

 

三玖「あの人…………」

 

二乃「確か、ハー君の父方のお爺さん……………」

 

 

ガラッ!!!

 

 

しばらくすると、悟空は瓦礫から飛び上がり、回転しながら綺麗に着地した。

 

悟空「いちち…!!油断しちまったぁ…!!」

 

四葉「だ、大丈夫なんですか!!?」

 

悟空「ああ!これくらいなら日常茶飯事だぞ!!」

 

武田「よく死にませんね………」

 

悟空「ははは!!既に死んでるけどな!!」

 

バーダッグのお陰で、束の間の平和が訪れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

メタルクウラ「さっき言ったはずだろう?いくらでも量産できるとな」

 

 

そのようなことがあろうはずもなく、更にメタルクウラが増員された。

 

二乃「ま、また!!?」

 

悟空「おめぇ、いい加減しつけえぞ…!!」

 

風太郎「おいあんた!!悟飯みたく金髪になれるんじゃねえのか!!あれになればいいだろう!!?」

 

悟空「………確かにそうなんだけどよ……」

 

 

悟空は、占いばばに言われたことを思い出す…………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『あの世とこの世を行き来できる身で言うことではないのかもしれんが、わしの同行がなくともこの世に行くことはできる……………』

 

『えっ!?そいつは本当か!?!?』

 

『ああ。以前に次元の歪みによって、この世に放り出されてしまった死人がいたんじゃ。その死人がワシの同行なくしてこの世に足を踏み入れてしまったばかりに、一瞬にして肉体ごと消滅してしまったんじゃ。そういったことがごく稀に発生するもんじゃから、わしの同行がなくても、1時間だけはこの世に留まることを許可されているんじゃ』

 

『そっか!それなら早く言ってくりゃいいのによ!!』

 

『待て悟空!!この制度はあくまでも緊急用じゃ!!常用できるものではないんじゃ!!』

 

『……?どういうことだ?』

 

『……この制度は戦闘を考慮されておらん。即ち、お主が超サイヤ人以上の力を使えば、この世に居られる時間は更に縮む』

 

『………具体的には?』

 

『超サイヤ人なら30分、2なら15分。3になれば………、恐らく5分もないだろう…………』

 

『………なら、界王拳は?』

 

『恐らく10倍までなら何の支障もなく使えるじゃろう。じゃが注意してくれ。この世に行けば、勿論一度だけ帰れる時の24時間に影響する。1時間この世に行けば、残りは23時間になる』

 

『………そっか。なら迷いはねえ』

 

『………一応言っておくが、ワシはお主を止めたからな』

 

『ああ!サンキュー!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

悟空「………(超サイヤ人に変身すればコイツらを片付けやすくなる。だが、オラがここに居られる時間は縮んぢまう…。それまでに悟飯が起きてくれればいいんだが…………)」

 

メタルクウラ「どうした?来ないのか?ならこっちから行かせてもらうぞ!!」

 

悟空「悟飯はまだ目が覚めそうにねぇ…!オラがやるしかねぇ……!!」

 

 

ゴゴゴゴゴゴゴゴッ……!!

 

 

悟空「はぁあああああッッ!!!」

 

 

ボォオオオオッ!!!!

 

 

悟空はやむを得ず超サイヤ人に変身する。変身した後は、クウラを睨みつける。

 

 

超悟空「おめぇだけは謝っても絶対に許さねえぞ……!!地球をこんなに滅茶苦茶にしやがって……!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夢を見ていた。僕と"彼女"が結婚式に参加する夢を……………。

 

 

『五つ子ゲームファイナルだよ!』

 

『愛があれば、気を使わなくても見分けられるよね?』

 

ははは…。彼女達らしいや。他の3人はまだ結婚しないのにウェディングドレスを着ちゃうなんて………。

 

夢の中の僕は、気を使わなくとも当たり前のように彼女達の正体を言い当てた。

 

夢を追い続け、世界的な大スターになった一花さん。

 

夢を追い続け、自分のお店を出した二乃さん。

 

夢を追い続け、同じく二乃さんと共にお店を開いた三玖さん。

 

過去の件の楔から解き放たれ、幸せな生活を送っている四葉さん。

 

夢を追い続け、教師になった五月さん。

 

 

 

僕がこの結論を出すのは本当に長かった。悩みに悩み抜いた末に、ようやく答えを出すことができたのだから。

 

 

 

 

 

 

 

『なにやってんだ悟飯!』

 

……?結婚式に参加しているお父さんが何かを言っている………?

 

『いつまで眠っているんだ!おめぇが寝ている間に地球が滅茶苦茶にされてもいいのか!?』

 

何を言っているの?僕は今、彼女との晴れ舞台……

 

『早く目を覚ませ!オラが守るんじゃねえッ!!おめぇがあの娘っ子達を守ってやるんだぁあああッッ!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

悟飯「はっ……!!」

 

僕は今まで何を………!!?……そうだ。変なロボットが目の前に現れたと思ったら、その後眠っちゃったんだ…!!!

 

それにしても、なんだこの状況は……?幾つも建物が崩れているし、何か変な物が着陸している。そ、それにこの気は……!!そ、そんなはずは……!!

 

 

 

 

 

 

 

 

ドコォンン!!!!

 

 

ドガァァアン!!!

 

 

超悟空「畜生…!いくら倒してもキリがねえ……!!!」

 

悟空が超サイヤ人に変身するとメタルクウラ軍団をあっさり倒すことはできた。だが倒しても倒しても、さらにメタルクウラは出現する。悟空のタイムリミットが迫る中、この状況は好ましくなかった。

 

メタルクウラ「ふははははっ!!どうした超サイヤ人!!その程度か!?」

 

超悟空「くっ…!!残り時間少ねえけど、やるしかねえか…!?」

 

しかも悟空はメタルクウラとの戦闘に気を取られ、次々とビッグゲテスター内部に連れ込まれる人々の方まで気を回すことはできなかった。

 

五月「……!!孫君…!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

グシャ……!!!

 

 

突如、目の前のロボットが爆散する。

 

風太郎「なっ…!!」

 

五月「あ、あなたは……!!」

 

 

 

 

 

 

・・・ようやく、彼女らのボディガードが到着した。

 

悟飯「………ごめん。遅くなった!」

 

二乃「もう…!遅いわよ…!!何してんのよ馬鹿ッ!!!!!」

 

涙目になりながら、悟飯の生還を喜ぶ二乃。

 

五月「………私は信じてましたよ。孫君なら必ずや助けにきてくれると………」

 

最後まで信じていた五月。

 

三玖「良かった…!無事だったんだね!」

 

悟飯の安否を確認できて安堵する三玖。

 

悟飯「……本当にごめん……。さて、状況が掴めないけど、まずはあのロボットから片づけないとね」

 

 

シュン‼︎

 

悟飯は寝起きとはいえ、絶好調であった。生徒達を連れ去ろうとするロボットを次々と破壊する。だが破壊してもロボットが次々と出てくることに気づく。

 

悟飯「………あそこか」

 

悟飯はロボットの出現口を見つけると、気を右手に集中させて気弾を作り、それを放って出口を塞いだ。

 

悟飯「…………よし。これでこの辺りはしばらく大丈夫なはずだ」

 

その光景を見て、特に悟飯のクラスメイトは驚いてしまう。

 

「えっ……?孫君……?」

 

「よ、よく分からねえけど、凄え…!」

 

 

シュン‼︎

 

 

悟飯は少しの隙も見逃さず、刺客が送られないうちに、人質となっている者達の手を縛るロープを高速で1人ずつ切っていく。

 

二乃「あっ……!!」

 

二乃達の拘束状態も解かれ、自由に身動きできるようになった。

 

 

 

 

スタッ

 

悟飯の到着に気付いた悟空は、悟飯のすぐそばに着地する。

 

超悟空「……やっと起きたな悟飯。こんな時にいつまで寝てんだ」

 

悟飯「すみません……。お父さんはなんでここに…?」

 

超悟空「細けえ話は後だ。目が覚めたならおめぇはアイツらの相手をしてくれ」

 

悟空はそう言って、メタルクウラ軍団を指差す。

 

悟飯「お父さんは?」

 

超悟空「オラは中を叩く。そうしなきゃいくら倒してもキリがねえ」

 

悟飯「………………分かりました。任せて下さい!!」

 

悟空「頼んだぞ、悟飯!!」バシューン‼︎

 

超サイヤ人を解除した悟空は、ビッグスター内部に入り込む為に、ビッグゲテスターに接近する。

 

メタルクウラ「逃すか!!」

 

だが、メタルクウラがそれを見逃すはずはない。悟空に向けてデスビームを放つ。

 

 

悟飯「はっ!!!!」

 

バチッッ!!!!

 

メタルクウラ「!?」

 

しかし、悟飯の気弾によってそれは阻止された。

 

メタルクウラ「貴様は……。どうやらお目覚めのようだな」

 

悟飯「………お前は……?」

 

メタルクウラ「おっと。お前には自己紹介がまだだったな。俺様はクウラ。この宇宙を支配する帝王だ。早速だがサイヤ人の血を引く貴様には死んでもらう」

 

悟飯「………フリーザの親戚か何かか…?なら容赦しない……!!!」

 

悟飯は悟空のようなタイムリミットは存在しない。先程までの失態を取り返すように、気を徐々に上げていく。

 

 

ボォオオオオオオオオッ!!!!!

 

 

悟飯は超サイヤ人を超越した存在、超サイヤ人2に変身し、クウラを睨む。

 

近くにクラスメイトがいるが、この状況下で正体など気にしてはいられない。悟飯は目の前の敵を殲滅する為に最初から本気で相手にかかろうとする。

 

超2悟飯「さっきは油断したが…。俺はもうお前相手に不覚を取らない…!!」

 

メタルクウラ「ぐっ……!!!測定器を使わなくとも分かるぞ…!!とてつもない生命エネルギーだ……!!だが、この俺様に敵うと思うなよ!!!」

 

ドシューンッッ!!!!

 

相手の実力が分からないクウラは、何の考えも無しに悟飯に突撃していく。

 

 

 

ガシャ……!!!

 

 

メタルクウラ「ぐぉ……!!!」

 

 

 

だが、悟飯が腕を少し振るだけでクウラの胴体に風穴が開く。それだけクウラと悟飯の間には力の差があった。

 

 

 

メタルクウラ「「「「この野朗…!!!」」」」

 

 

残りのメタルクウラ達も悟飯に取っ掛かる。しかし……。

 

 

超2悟飯「……….」

 

 

ドンッッッ!!!!

 

 

悟飯は両手で一体ずつ掴み、互いをぶつけてメタルクウラを粉砕する。

 

 

下から飛んできたクウラはひと蹴りで2体ほど粉砕する。

 

上から叩きつけようとしてきたクウラには、一度高速移動で撒いてから悟飯が叩きつけ、地面に落とすと同時に気弾を放ち、爆散させる。

 

だが、次々とメタルクウラが現れる。

 

メタルクウラ「思い上がるなよ!猿がぁあああッッ!!!!!」

 

メタルクウラは怒りと共に悟飯に突撃する。一体はデスビームを放ち、一体は気弾をマシンガンのように連射し、一体はそのまま悟飯に向かう。攻撃の仕方は十人十色といったところか。

 

 

超2悟飯「消えろッッ!!!!

 

 

ズォオオオオオオオッッ!!!!!

 

 

メタルクウラ「なっ…!!?」

 

メタルクウラ「馬鹿な…!!!」

 

メタルクウラ「こんな…!もの……!!!!」

 

 

 

ドグォォオオオオオオオオンン!!!!!

 

 

悟飯は360°回転しながら魔閃光を放ち、周りにいるクウラを一気に爆散させる。

 

いくらクウラが復活しようとも、悟飯には敵うことはなかった。数を増やしても無駄だとメタルクウラは悟ったのか、少し大人しくなり始めた。

 

「す、すげぇ……!!孫ってあんなに強かったのか……!!?」

 

「というか、ああいうの見たことあるよね?」

 

「そうそう!確かセルゲームにいたよね!突然金髪になる変な人達!」

 

「そんな凄い奴がクラスメイトにいたのかよ!!!?」

 

 

 

三玖「……すごい」

 

二乃「流石ハー君……。やるじゃない」

 

五月「これで今回も助かりましたね……」

 

武田「う、嘘だ…!彼があの時の戦士だったとでもいうのかい……?」

 

 

 

 

 

 

 

 

グゴゴゴゴゴゴッ!!!!

 

 

超2悟飯「!?」

 

風太郎「な、なんだ…!?」

 

悟飯が気を高めているわけではない。悟空も悟天もベジータもトランクスも気を高めているわけではないにも関わらず、大地が突然揺れ出す。

 

 

ガッ!!!!!

 

 

二乃「きゃっ!!!」

 

四葉「うわっ!!!?じ、地割れ!?」

 

突如地割れしたかと思うと、その隙間から太い根っこのような物が伸びてくる。

 

風太郎「なんだこれ!?何かの植物か!?!?」

 

 

超2悟飯「………!?なんだ…?あれ!?」

 

 

悟飯がある方向を見ると、かなり遠くだろうか?そこに巨大な木のようなものが生えていた。今でも成長を続けている。まるで豆の木を連想させるかのような大きさの木………。その木が急激に成長すると共に、地球にも異変が起こる。

 

四葉「へっくち!」

 

二乃「さ、寒っ…!!」

 

三玖「きゅ、急に寒くなってきた…!」

 

一花「今の時期はむしろ暑くなる時期じゃないの〜……?」

 

五月「はっくしょん!!」

 

突然気温が下がってしまったもので、半袖の学生が多い中、くしゃみをしたり、鼻水を啜る学生が多発した。

 

超2悟飯「………なんだこれ?どういうことだ………!?」

 

メタルクウラ「……してやられた。ターレスが神精樹を植えたのだ」

 

超2悟飯「な、なんだって!?」

 

どうやら、メタルクウラが襲来して世界が混乱した隙を狙ったようだ。これには流石に悟飯にとっても予想外だった。

 

超2悟飯「しまった……!!このままじゃ……!!」

 

メタルクウラ「………惑星のエネルギーも喰らおうと思ったが、この状態ではそれも不可能か……。もういい。この星に用はない」

 

 

するとメタルクウラが複数体現れる。そのままメタルクウラ達は指を上に上げて、スーパーノヴァを生成する。

 

メタルクウラ「痛ぶり尽くしてから殺そうと思ったが……。予定変更だ。滅び行くこの星と共に運命を共にするがいい!!!」

 

地球の運命は、如何に………?

 




 前回も指摘のあった通り、悟飯は原作よりも強くなっているはずなのに、原作よりも平和ボケしているんですよね〜……。ま、まあ……。原作よりも早い段階で学校に通ってたから、その分平和ボケしちゃったんだよねきっと…(震え声)

 まあ、このメタルクウラ編の後からはしっかり主人公するはずです。悟飯の情けない姿は今回限りになる……はずです………。


 ここでふと思ったのですが、随分前に非台本形式化しよう的なことを言って、結果的に台本形式で続行して、こちらが完結してから、限定公開している方で非台本形式を載せようということになりました。

 そうなったのですが、最近書いてて思うことあるんですよね。『あれ?別に台本形式じゃなくてもいいんじゃね?』と。そこで思いついたのが、通常公開しているコチラを通常形式に直し、限定公開にしている方を台本形式にする案です。

 でも以前にコチラは台本形式にしますって言った手前、いきなり変更するのはどうなのかなーと思ってるんですよね。そこで皆さんにご意見を頂こうかと考えています。ちなみに台本形式はpixivにも投稿しているんですよね。それも含めてコチラは台本形式じゃなくてもいいんじゃないかと思い立ったわけです。

 もし非台本形式化する場合は、全話分通常形式を作成してから一気に切替えるので、すぐに変わることは多分ありません。代わりに限定公開している方に台本形式を投稿します。

※限定公開とは

 通常公開とは違い、検索一覧には表示されないが、URLをクリックするか、お気に入り登録をしている人なら見ることのできる投稿形式のことです。

 気が向いたらアンケートにご協力お願いします。


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第61話 徹底抗戦

 前回のあらすじ……。

 あの世からやってきた悟空は、最初はメタルクウラを相手に善戦していたものの、変身されたことによって押されてしまう。タイムリミットが縮まってしまうが、仕方なく悟空は超サイヤ人に変身する。そこに目を覚ました悟飯が駆けつけた。クラスメイトに正体がバレてしまうが、背に腹は変えられない。悟飯は覚悟を決めて超サイヤ人2に変身し、メタルクウラに戦いを挑んだ。

 ところが、巨大な木が突然出現して…………。



メタルクウラ「予定では痛ぶり尽くしてから殺そうと思ったが……。予定変更だ。滅び行くこの星と共に運命を共にするがいい!!!」

 

 

ゴゴゴゴゴゴゴゴッ………

 

 

クウラがそう叫ぶと、地球に引っ付くように滞在していたビッグゲテスターがゆっくりと浮かび上がり、触手のようなものは収納され、元の惑星型に戻る。

 

超2悟飯「させるかぁッ!!!」

 

悟飯はスーパーノヴァを跳ね返すべく、かめはめ波の準備をする。

 

 

 

 

 

 

 

 

だが、スーパーノヴァを生成している個体は、悟飯の目の前にいる個体だけではなかった。

 

 

らいは「な、何あれ……?太陽……?」

 

超悟天「往生際が悪いぞ!!」

 

 

悟天の前にいた個体も。

 

 

 

 

 

超バーダック「野朗……!!」

 

バーダックの目の前にいた個体も。

 

 

 

 

 

超ベジータ「思い上がるなよ。貴様らの時代はもう終わったんだよ」

 

ベジータとトランクスの目の前にいる個体、全てがスーパーノヴァを生成していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして…………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

超2悟飯「かーーー……!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

超悟天「めーーーー……!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

超悟空「はーーー……!!!めぇぇ〜……!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「波ぁあああああああああッッ!!!!!!」」」

 

 

 

 

………悟飯がメタルクウラと戦っていた時、他の戦士達はどうなっていたのだろうか?それぞれ見ていこう………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

メタルクウラ襲来、悟天の場合

 

 

 

 

悟天「………大分倒したはずなんだけどなぁ…………」

 

悟天はロボット相手にしばらく戦い続けていたが、ロボットが相手だとあまりにも暇ができてしまう為、人質として手を縛られていた人たちの救出をした。これで手足を縛られている者は、悟天付近にはいない。

 

らいは「ご、悟天君!そろそろ逃げようよ!」

 

悟天「ダメだよ。逃げたらこの変なロボット達に何されるか分からないよ?」

 

 

スタッ

 

悟天「……?」

 

悟天の前に、銀色の帝王が現れた。

 

メタルクウラ「………貴様のその姿……。孫悟空にそっくりだな」

 

悟天「孫悟空……?確か僕のお父さんの名前だよね…?なんで知ってるの?」

 

メタルクウラ「……」シュン

 

 

ドッッ!!!!!

 

悟天「ぶわっ………!!!!」

 

悟天の質問に答えることなくクウラは悟天に殴りかかる。この不意打ちには流石に悟天は対応することができなかった。

 

らいは「ご、悟天君!?大丈夫なの!?」

 

悟天「痛ぁあ……!!!お前ぶったなぁ!!僕はまだ何もしてないのに!!!!」

 

メタルクウラ「サイヤ人は皆殺しだ」

 

 

ドシューン!!!

 

 

幼い悟天が相手だろうとクウラは情けをかけるつもりはない。相手がサイヤ人の血を引いているならば、例え赤ん坊だろうと容赦しない。

 

 

悟天「分かったぞ…!お前悪い奴だな!この街をめちゃくちゃにして…!許さないぞ!!!」

 

 

ボォオオオオッ!!!!!

 

 

メタルクウラ「なにィッッ!!!?」

 

 

らいは「えっ……?その姿って………」

 

悟天はクウラが事の黒幕だと確信すると、超サイヤ人に変身した。幼い悟天が超サイヤ人に変身したところを見てメタルクウラはそれはそれは驚く。

 

メタルクウラ「く、くくくっ…!それがどうしたッッ!!!!」

 

 

クウラは一瞬怯むも、悟天に容赦なくデスビームを至近距離で放つ。

 

 

超悟天「」フォン

 

 

メタルクウラ「なっ……!!?」

 

 

しかし、悟天に命中したかと思えば、ただの残像だった。

 

 

 

 

ドゴォォオオッッ!!!!

 

メタルクウラ「ぐはっ………!!!!」

 

 

上から悟天が姿を現し、クウラは頭部にエルボーを食らった。その影響によって頭部が歪んでしまう。

 

メタルクウラ「こ、このくそガキがぁ…!!頭に乗るんじゃないぞ!!」

 

クウラはものすごい勢いで拳を連続で繰り出すが、悟天は持ち前のすばしっこさと体の小ささを利用して器用に避ける。その事が癪に触り、クウラは段々と冷静さを欠いていった。

 

メタルクウラ「おのれぇ……!!」

 

超悟天「やっ!!!」

 

 

ズォオオオオオオオッッ!!!!

 

メタルクウラ「なっ………!!!」

 

悟天はクウラの隙をついてエネルギー砲を発射。それによってクウラの腹部に風穴が空く。

 

メタルクウラ「ば、馬鹿な…!!こんなはずじゃ………!!」

 

シュルルルル

 

しかし、クウラは空いた腹部を瞬時に修復した。

 

メタルクウラ「だが無駄だ!」

 

超悟空「ふーん?じゃあ復活できないくらいにボコボコにしちゃえばいいんだね!」

 

メタルクウラ「なに?」

 

超悟天「かー…!めー……!!はー……!!めぇぇ〜……!!!!!」

 

悟天はクウラを標的として、巨大なかめはめ波を生成する。

 

メタルクウラ「なっ…!?貴様……!!」

 

超悟天「波ぁああああああああああッッ!!!!!!!

 

 

 

ズォオオオオオオオオオオオッッ!!!!!!

 

 

悟天の手からかめはめ波が解き放たれ、クウラに向かって真っ直ぐにその青白い光は突き進む。

 

メタルクウラ「馬鹿め!これくらいなら避けること、訳ないわ!!」

 

しかし、クウラは跳び上がることによってかめはめ波を回避しようとする。

 

だが、その行動に移るのが早すぎた。

 

超悟天「せーのッッ!!!」

 

 

ズォオオオオオオオッッ!!!!

 

 

悟天から放たれたかめはめ波は緩やかに方向転換し、再びメタルクウラに突き進む。

 

メタルクウラ「な、」

 

 

 

ズォオオオオオオオオオオオッッ!!!!

 

メタルクウラ「ちくしょーーー………!」

 

 

グォォオオオオオオオオンンッッ!!!!!!

 

 

「やるじゃえねか小僧!!!」

 

「いいぞいいぞ〜!!!!」

 

敵がやられたことによって、街はお祭り騒ぎになった。

 

超悟天「………えへへ」

 

悟天はこういう人混みにはなれないが、人に褒められるのは素直に嬉しかった。

 

らいは「あ、ありがとう……。助かったよ」

 

超悟天「うん!僕も悪い奴をやっつけられてスカッとしたよ!!」

 

 

スタッ

 

メタルクウラ「「「無駄だ。俺様はコアが破壊されない限りは永遠に量産することが可能だ」」」

 

超悟天「ええ!!?ずるいぞそんなの!!!」

 

 

ズガガガガッ!!!!!

 

らいは「きゃっ!!!」

 

超悟天「危ない!!」

 

悟天はらいはの危機を察してらいはを持ち上げ空中に避難する。ふと地上を見下ろしてみると、異様な光景が広がっていた。

 

超悟天「………なにあれ?」

 

地割れから巨大な木の根が生えていた。そして遥か遠くには、豆の木を連想させるような巨大な木が生えており、未だに成長を続けている様子を確認できた。

 

メタルクウラ「………この星も共に滅び行く運命か……。ならば……!」

 

メタルクウラはゆっくりと浮かび上がり、指を空に向けると………。

 

メタルクウラ「………」ブゥゥゥン…

 

メタルクウラは太陽のような見た目をしたエネルギーの塊、スーパーノヴァを生成する。

 

らいは「なにあれ……?太陽……?」

 

超悟天「往生際が悪いぞ!!」

 

メタルクウラ「貴様らサイヤ人諸共、この星と共に滅びるがいいッッ!!!」

 

 

メタルクウラはそう叫ぶと同時に、こちらにスーパーノヴァを発射する。スーパーノヴァはゆっくりと悟天の方に近付いていた。

 

超悟天「…………」スタッ

 

らいは「ご、悟天君!!逃げようよ!!いくらなんでもあれは跳ね返せないよ!!」

 

悟天は地上に降り、ゆっくりとらいはを下ろすと、かめはめ波の準備をする。それを察知したらいはは、今回ばかりは悟天でも勝ち目がないと判断して避難を促すが………。

 

超悟天「大丈夫。これくらいなら跳ね返せるから」

 

 

 

 

悟天はらいはを安心させるように満面の笑顔を作る。その光景はまるで、林間学校で悟飯が五月を助けた時のようだった。

 

 

悟天「かぁぁ〜……!!」

 

 

 

スーパーノヴァは着々と近づいてくる。

 

 

 

超悟天「めぇぇ〜……!!!

 

 

だが、悟天は恐ることなく迎え撃とうとする。

 

 

 

悟天「はぁぁ〜……!!!!

 

 

 

その姿は、幼いながらも、悟飯や悟空のような、逞しい戦士の姿に、らいはには少なくともそう見えた。

 

 

 

 

 

超悟天「めぇぇ〜………!!!!!!

 

 

だが、何かを守る為に命を懸けて戦う者は、年齢性別問わず、戦士と呼ぶ。

 

 

 

 

先程よりも強い光を孕んだかめはめ波が悟天の両手で生成される。スーパーノヴァは着弾寸前で、一部の建物が崩れ始めた。

 

もうすぐ地面に激突する。その時に、満を辞して。

 

 

 

 

 

 

 

超悟天「波ぁああああああああああああああああッッ!!!!!!!

 

 

 

ズォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッ!!!!!!!

 

 

 

悟天が今まで放ったことのない規模のかめはめ波がスーパーノヴァを押し始める。

 

メタルクウラ「ば、馬鹿な…!あんなガキに、この俺様が負けるはずなど…!!」

 

超悟天「そこの悪いやつ!!兄ちゃんの学校生活を、邪魔するなぁあああああッッ!!!!!!」

 

 

 

ズォオオオオオオオオオオオッッ!!!!!!

 

 

悟天は更にかめはめ波を強化した。

 

 

メタルクウラ「グワァッッ……!!!」

 

 

クウラ自身も自分に迫ってくるスーパーノヴァを回避することができず、そのまま宇宙空間に押し出される。

 

メタルクウラ「(馬鹿な…!!俺様は本気を出しているはず……!!それでもあの小僧には勝てないというのか!?)」

 

 

クウラはふと横を見ると………。

 

 

悟飯のかめはめ波によって押し出されたクウラ達。

 

 

バーダッグのスピリッツキャノンによって押し出された何者かの姿が見えた。

 

 

 

 

 

 

メタルクウラ「まあいい。俺が死んだところで、他の個体がすぐに現れる。そうして野垂れ死ぬまで悪足掻きをすればいい」

 

しかし、メタルクウラは無限に増殖する。いくらメタルクウラを倒しても減るはずがない。そう思われていた。

 

 

メタルクウラ「ウッ…………!!!!」

 

刹那、メタルクウラに異常が現れた。否、ビッグゲテスターのシステム全体に異常が現れた。

 

メタルクウラ「(ば、馬鹿な…!再生が効かない……!!まさか、コアが破壊されたのか……!!?)」

 

メタルクウラは急に弱体化し、各々の技に飲み込まれ、姿を消した………。

 

 

 

 

 

メタルクウラ「………」

 

超悟天「………あれ?」

 

また新たに現れたメタルクウラを倒そうと奮起していた悟天だが、メタルクウラが突然固まってしまう。

 

超悟天「あれ?おーい?寝てるの?」

 

悟天は声をかけるが、メタルクウラは微動だにしない。

 

超悟天「………」チョンチョン

 

突いても。

 

超悟天「……?」ベシベシ

 

叩いても………。

 

超悟天「お前の母ちゃんでーべそ!!」

 

悪口を言っても全く反応がない。

 

超悟天「あれ?おかしいなぁ……?」

 

ドグォォオオオオオオオオンン!!!!

 

超悟天「わっ!!!!!!」

 

しかし、突然爆発する。

 

らいは「わっ!!!?悟天君ッ!!?」

 

目の前で大爆発を目撃したらいはは悟天の身を心配する。

 

超悟天「あはは……。服がボロボロになっちゃった…………」

 

だが、悟天自身はほぼ無傷で無事だった。

 

らいは「……」

 

超悟天「らいはさん?どうしたの?」

 

らいは「…………」

 

超悟天「あ、あれ?」

 

 

 

ギュッと

 

突然抱きつかれる。

 

超悟天「えっ?えっ?どうしたの?」

 

らいは「こ、怖かった…!怖かったよぉ……!!!」

 

らいははしっかりしているとはいえ、まだ中学生。それもこの前まで小学生だったのだ。こういった事態には当然慣れていないし、慣れていないのが普通だ。今まで我慢していた分、涙が溢れ出てきてしまった。

 

超悟天「えっ?あれ…?泣いちゃった…。どうしよう……?えーっと、よしよーし?」

 

悟天は昔にチチや悟飯にやられたように慰める。しかし幼い故かその仕草は少々ぎこちなかった。

 

超悟天「…………困ったな。兄ちゃんはこういう時どうしてるんだろう…?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

メタルクウラ襲来、悟飯の場合

 

 

 

メタルクウラはスーパーノヴァを作り出し、それをそれぞれの個体が作り出したもの同士を融合させ、1人では到底作ることのできない大きさのスーパーノヴァを作り出した。

 

メタルクウラ「これで貴様もお終いだッ!!!」

 

メタルクウラ「いくら超サイヤ人を越えていようが」

 

メタルクウラ「これは跳ね返せまいッッ!!!!!」

 

その巨大な光の玉がこちら側に接近してくる。事情が分からない一般人でもこの世の終わりが近づいていることを理解できてしまうようだ。この付近は完全にパニックに陥っている。

 

 

だが、悟飯の勝利を信じている者達がいた。

 

 

自堕落だが、夢を追い、ひたむきに努力する長女。

 

 

 

 

家族思いで女子力が高く、悟飯を愛してやまない次女。

 

 

 

 

物静かでネガティブだったが、悟飯をきっかけに成長し始めている三女。

 

 

 

 

6年前、京都で約束をしたある男の子との約束を再び果たそうと奮闘している四女。

 

 

 

 

林間学校で助けられて以来、悟飯のことを考えない日がなくなり、同じく悟飯を愛してやまない五女。

 

 

 

 

1年生の頃からの悟飯の親友で、悟飯と勉強面で切磋琢磨し、時には家庭教師としても協力をしてきた、悟飯とは別のもう1人の家庭教師。

 

 

 

 

 

『かーーーー………!!』

 

 

 

超2悟飯「……俺は、未来の自分と約束した……!!」

 

 

 

『めーーーーー………!!!』

 

 

 

 

超2悟飯「自分が守れなかった6人を代わりに守ってくれって……!!!!」

 

 

 

 

『はーーーーー………!!!!!』

 

 

 

 

超2悟飯「地球を頼んだと、ピッコロさんに託された………!!!!!」

 

 

 

 

 

『めーーーーー………!!!!!』

 

 

 

 

 

超2悟飯「お父さんに、託された……!!!!!」

 

 

 

もう、情けない姿を……!!醜態を晒すわけにはいかない………!!!!!

 

 

 

 

 

「「「「「「いけぇぇえええええええええええ!!!!!!!」」」」」」

 

 

6人が同時にそう叫ぶ。それを合図に、悟飯のかめはめ波は放たれた。

 

 

 

 

 

超2悟飯「波ぁあああああああああああああああああああああッッ!!!!!!!!!!

 

 

 

 

ズォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッッッ!!!!!!!!

 

 

悟飯の力強いかめはめ波は、巨大なスーパーノヴァをも押し出す。

 

 

メタルクウラ「なっ…!!」

 

メタルクウラ「俺たちで作り出した技を……!!!」

 

メタルクウラ「いとも容易く……!?」

 

 

悟飯のかめはめ波は地球からスーパーノヴァと共にメタルクウラを遠ざけていく。

 

 

 

 

 

ドグォォオオオオオオオオンン!!!!

 

超2悟飯「………!!!!」

 

 

突如、ビッグゲテスターの方で爆発が発生した。それと同時に宇宙に向けて青白い光が走り出す。

 

 

超2悟飯「お父さんか…!」

 

その正体は、悟空のかめはめ波だった。ビッグゲテスターのコア、メタルクウラの本体を潰したのだ。

 

 

メタルクウラ「ぐっ……!!」

 

メタルクウラ「し、しまっ……!!」

 

先程まで威勢の良かったメタルクウラも突然力を失う。それに気づいた悟飯は隙を見逃さずに、かめはめ波を更に押し出す。

 

 

 

 

超2悟飯「波ぁああああああああああああああああッッ!!!!!!!!

 

 

 

 

 

悟飯のかめはめ波は、見事スーパーノヴァを押し返すことに成功し、宇宙の彼方で遠くで爆発した。

 

 

そのすぐ後に、悟天のものと思われるかめはめ波が同じくスーパーノヴァを押し出し、遥か遠くで爆発する光景を見る事ができた。

 

超2悟飯「悟天もこの戦いに参加していたのか………………」

 

地球のあちこちにいたロボットやメタルクウラは完全に停止し、爆発した。

 

これによって、地球の脅威はほとんど取り除かれた……………。

 

 

 

超2悟飯「……………あとはあの神精樹をどうにかしないと……………」

 

 

…………一難さってまた一難とはまさにこのこと。悟飯は次の敵を倒すべく、神精樹が生えている方へと向かおうとした。

 

 

超2悟飯「………?」

 

 

だが、様子がおかしい。遠目から見て、木にヒビが生えているように見える。そのヒビは段々と上に伸びていき…

 

 

 

超2悟飯「!?ッッ」

 

 

木は真っ二つに割れる。その直後に綺麗な爆発が発生した。

 

 

 

その爆発の後、しばらくすると光の玉が降り注いだ。その光が川だった場所に落ちると、水が復活した。

 

乾いた大地に落ちると、潤い緑が生い茂った地面に変化した。

 

枯れ果てた木に落ちると、緑が再び生い茂る。

 

赤かった空が段々と青くなり、次第に元の地球に戻っていった。

 

 

超2悟飯「………?一体なんだったんだ?神精樹の成長が失敗したのか…?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

メタルクウラ襲来、悟空の場合

 

 

悟空は悟飯が帰還した後、対メタルクウラ戦は悟飯に託し、悟空はビッグゲテスター内部に侵入して本体を撃退しに向かっていた。

 

その道中、ビッグゲテスター内部でもメタルクウラがわんさかいた。

 

超悟空「思い通りには行かねえか……」

 

メタルクウラ「ここは通さないぞ」

 

メタルクウラ「俺達を倒してからにするんだな」

 

超悟空「(オラに残された時間は少ねえ…。このまま突っ切るしかねえな)」

 

 

ドシューンッ!!!

 

 

悟空は構わずメタルクウラの壁を突き破ろうと加速する。

 

メタルクウラ「愚かな」

 

メタルクウラ「死ねッ!!!!」

 

メタルクウラ軍団は悟空に向けて一斉にデスビームを連射する。

 

超悟空「………!!!」

 

 

ボォオオオオッ!!!!!

 

 

悟空はメタルクウラを突き抜ける一瞬だけ超サイヤ人2に変身し、そこを通り過ぎたら元の超サイヤ人に戻る。

 

メタルクウラが現れたら突き破り、現れては突き破りを繰り返すと、広い空間にたどり着いた。中心部には何やら丸い物体がある。

 

クウラ「……とうとうここまできたか」

 

超悟空「随分ひでぇ様じゃねえか」

 

クウラ「……丁度いい。貴様のエネルギーをもらうぞ」

 

 

ギュルルル

 

超悟空「………!!!」

 

悟空は迫ってくる細い機械に気づかず、腕と脚を拘束されてしまう。

 

クウラ「ふははははッ!!超サイヤ人の生命エネルギーをいただくぞ!!」

 

超悟空「ぐっ………!!!」

 

その機械を伝って、悟空の気はビッグゲテスターに吸収されていく。

 

クウラ「凄まじいエネルギーだ…!!!これを全て取り込めれば、地球人など最早用済みだ!!」

 

超悟空「そんなにエネルギーが欲しいんなら、もっと分けてやるよ!」

 

 

ボォオオオオオオッ

 

 

クウラ「な、なにッ!!!?」

 

 

悟空は超サイヤ人2に変身し、エネルギーを一気に流し込む。

 

クウラ「ま、まずい…!!回路を遮断しろッ!!」

 

超2悟空「させるかッ!!!!!」

 

 

ボォオオオオオオオオオオッ!!!!!

 

 

悟空は更に気を解放し、ビッグゲテスターにダメ押しを与えていく。

 

 

ドグォォオオオオオンッッ!!!!!

 

 

クウラ「ま、まずい……!!エネルギーがあまりにも膨大すぎたか……!!」

 

どうやら、ビッグゲテスターには超サイヤ人の力は持て余されるようで、エネルギーの過剰摂取でメイン回路が遮断されてしまい、あちこちの系統で故障が生じてしまった。

 

クウラ「なっ……!!メタルクウラも動かせなくなったか………!!!」

 

超悟空「あとはおめぇだけだな」

 

クウラ「くっ……!!おのれぇ!!!」

 

クウラはゆっくりと自身の体を再生しようと目論んでいたのだろうが、目の前の悟空に対抗する為に急いで機械の体を構築する。

 

ガッ!!!!

 

超悟空「……!!」

 

床から出現した機械の腕に悟空は捕まる。

 

クウラ「貴様だけは…!せめて貴様だけはこの場で葬ってやるッ!!!」

 

超悟空「かー………。めー…………」

 

クウラ「俺が宇宙の帝王なんだッ!!」

 

超悟空「はー………!めぇぇぇ…!!」

 

クウラ「俺が、最強なんだぁあああああああッッ!!!!!!」

 

 

ボッ!!!!!

 

悟空がかめはめ波を放つ準備を終えると、気を解放して機械の腕を破壊する。

 

 

 

 

 

 

シュン‼︎

 

 

クウラ「………!!!」

 

そのまま瞬間移動でクウラの目の前に現れる。

 

 

超悟空「言ったはずだ。オレはお前を許さねえってな」

 

 

目の前で冷たく言い放ち………。

 

超悟空「波ぁぁあああああああああああああああああッッ!!!!!!!

 

 

ズォオオオオオオオオオオオオオオオオッッ!!!!!!

 

 

 

『フリーザ。貴様は甘い。その調子だとあの猿共に消されかねないぞ?』

 

 

 

 

『クウラ様!!惑星ベジータから1人用ポッドの出発を確認!!始末致しますか!?』

 

『………………あれはフリーザのミスだ。尻拭いは自分でやらせるんだな』

 

 

 

 

 

 

 

 

クウラ「甘かったのは、フリーザだけではなかった…………。この俺もまた、甘かったようだな……………………」

 

 

 

 

 

 

 

ドグォォオオオオオオオオオオオオオオオオオンッッ!!!!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シュン‼︎

 

 

悟空「ひぇぇ……!!瞬間移動がなかったらオラ死んでたぞ……!!!」

 

悟空は瞬間移動で悟飯の元に避難した。

 

超2悟飯「お、お父さん……!!」

 

悟空「………よくやったな、悟飯」

 

超2悟飯「……………はい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

メタルクウラ襲来、バーダックの場合

 

 

バーダックはとある場所の空き家を使って、かつての仲間達と共に比較的平和な生活を送っていた。ところが、ビッグゲテスターの着陸により事態は一変。謎のロボットが自分達に襲いかかってきた為、バーダッグ達はそのロボット退治に追われていた。

 

バーダック「ちっ…!なんだこの雑魚共は……!!」

 

トテッポ「倒しても倒してもキリがねえ!」

 

セリパ「いっそのことここら一帯を吹き飛ばしちまうか!?」

 

パンブーキン「そんなことしても恐らく無駄だろう。あの馬鹿でかい惑星からウジャウジャと湧いて出てきやがる!」

 

トーマ「くそ…!ならばあの惑星に出向くしか………!!」

 

バーダック達は痺れを切らして本拠地に乗り込みに行こうかと話し合っていたその時、予想外の敵が現れる……。

 

 

 

 

 

 

 

 

「よお。元気にしてたみたいだな?」

 

ギネ「あ、あんたは……!!!」

 

バーダック「…………なんの用だ?」

 

ターレス「決まってるだろ?サイヤ人同士の用事というやつだよ」

 

バーダック「ふっ…。その様子だと、大分神精樹の身を食ってきたみたいだな?これはお前らのせいか?」

 

ターレス「こいつは違えよ。これはクウラの仕業だ」

 

バーダック「何?クウラだと……?」

 

一時期クラッシャー軍団と敵対していたリーダーの名前があがる。

 

ターレス「ああ。あいつは俺が倒した後、ビッグゲテスターという星のゴミが集まってできた機械惑星のコアと融合したらしい。そしてそこで作ったゴミ屑をここに送り込んでいるというわけだ」

 

バーダック「そうか…。なら何故このタイミングでこの星に来た?事が落ち着いて来てからの方が貴様もやりやすいだろう?」

 

ターレス「俺もそう思っていたんだがそうはいかねえんだなこれが。ヤツはこの星ごと食うつもりのようだ。折角の綺麗な青い星をこの俺が見逃すと思うか?」

 

バーダック「……!ま、まさか…!」

 

ターレス「ああ………。この期に乗じてダイーズ達に神精樹の種を埋めてもらっている。もうじき発芽してこの星のエネルギーを吸い尽くすだろう…」

 

してやられた。クウラとターレスが手を組んだわけではないが、クウラが招いた混乱を利用して、ターレス達が地球に神精樹を植えてしまったのだ。

 

バーダック「ちっ…。してやられたってわけか」

 

ターレス「でもまずはてめぇだけは俺の手で始末する。この俺に屈辱を与えたことを、もう一度地獄に行って後悔するんだな……!!!」

 

 

ゴゴゴゴゴッ……

 

 

ターレスは何時ぞやの件でバーダックに恨みがあるようだ。何時ぞやの件というのは、バーダックが超サイヤ人に変身した時の話だ。バーダックが超サイヤ人に変身したことで、自分が変身したものは超サイヤ人ではなかったことを知り、屈辱を覚えたというものである。

 

バーダック「やっぱり戦いは避けられねえか…………」

 

だが、バーダックもただ引き下がるような男ではない。ターレスに対抗するように気を引き上げていく。

 

ターレス「へっ……。まさかお前と直接戦うことになるとはな…。同じ下級戦士でありながら、俺と同じように高い戦闘力を誇っていた…。俺はそんな貴様を気に入っていたのだがな………」

 

バーダック「嘘つけ。お前も俺のことが気に食わなかっただろうが」

 

ターレス「そういえばそうだったな…。昔から貴様とはソリが合わなかった…」

 

 

 

ドシューンッ!!

 

 

ドシューンッ!!

 

 

 

 

 

 

 

ドゴォォオオンッ!!!!!

 

 

 

2人の下級戦士………。否、元下級戦士同士の戦いが幕を開けた。

 




 こんな時間に投稿するの珍しいな……。

 メタルクウラ編はそこまで長引かせるつもりはありません。メタルクウラ及びクウラ好きの方には申し訳ないのですが、サクっと終わらせます。変に長引かせるとグタる未来しか見えないので。

 バーダックvsターレスに関しては、比較的丁寧にやると思います。バーダックだけ主な敵が悟飯達とは違うので。

 以前、『ブウ編をこのままやるなら、五等分キャラが置いていかれそう』みたいなご指摘を受けました。確かに五等分キャラで戦力になるキャラといえば、零奈くらいしかいないんですよね。今はダウンしてますけど。ですがそれについては、つい先日解決致しました。ですのでご安心(?)下さい。

 ちなみにらいはの心情については次回以降のどこかの後書きで解説します。



*前話のも載せましたが、一応こちらにも載せます。

 ここでふと思ったのですが、随分前に非台本形式化しよう的なことを言って、結果的に台本形式で続行して、こちらが完結してから、限定公開している方で非台本形式を載せようということになりました。

 そうなったのですが、最近書いてて思うことあるんですよね。『あれ?別に台本形式じゃなくてもいいんじゃね?』と。そこで思いついたのが、通常公開しているコチラを通常形式に直し、限定公開にしている方を台本形式にする案です。

 でも以前にコチラは台本形式にしますって言った手前、いきなり変更するのはどうなのかなーと思ってるんですよね。そこで皆さんにご意見を頂こうかと考えています。ちなみに台本形式はpixivにも投稿しているんですよね。それも含めてコチラは台本形式じゃなくてもいいんじゃないかと思い立ったわけです。

 もし非台本形式化する場合は、全話分通常形式を作成してから一気に切替えるので、すぐに変わることは多分ありません。代わりに限定公開している方に台本形式を投稿します。

※限定公開とは

 通常公開とは違い、検索一覧には表示されないが、URLをクリックするか、お気に入り登録をしている人なら見ることのできる投稿形式のことです。

 気が向いたらアンケートにご協力お願いします。

 ※聞き方を間違えたのでアンケートを作り直しました。以前のアンケートにご回答して下さった方には申し訳ございません。


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第62話 下級戦士vs下級戦士

 前回のあらすじ……。

 悟天、悟飯はそれぞれメタルクウラを撃破し、悟空は本体であるクウラ本人を倒すことに成功し、ビッグゲテスターの機能はほとんど停止した。

 悟飯達がメタルクウラと戦っている時、バーダックとターレスもまた、サイヤ人同士で戦っていたのだ…。



悟飯達がクウラ軍団と戦っている間、バーダックはターレスと一騎討ちをしていた。

 

 

ターレス「ちっ……!!」シャ‼︎

 

ターレスはバーダックに拳を繰り出すが、バーダックはうまい具合で相手の攻撃を避ける。

 

バーダック「おりゃあッ!!!!」

 

ドゴォォオオッ!!!!

 

ターレス「ぐぅ……!!!」

 

その隙にバーダックがターレスに重い一撃を食らわせる。

 

ターレス「なかなかやるじゃねえか…!神精樹の実を一つも食ってないというのに…………」

 

バーダック「はっ!いつまでも孫に置いていかれるのは、サイヤ人としてのプライドが許さねえもんでな………」

 

バーダックは悟飯と戦って以来、毎日のように修行をしていた。戦う相手がいないとはいえ、超サイヤ人のその先を実際に知ったことによって、イメージが明確化され、トレーニングの効率が飛躍的にアップしたのだ。

 

ターレス「くくくっ…!!なら、これでどうだ………!!!!!」

 

 

 

ボォオオオオッ!!!!!

 

 

バーダック「……!?」

 

ターレスは擬似超サイヤ人に変身する。普通の超サイヤ人より半分ほどの力しか出せない形態で、ターレスが超サイヤ人の前に変身を果たした姿であった。

 

バーダック「なんだその姿…?超サイヤ人なのか……?」

 

ターレス「未完全だがな…」

 

 

シュン

 

 

バーダック「!!」

 

ターレスは突然姿を消す。だがバーダックにはギリギリ動きが見えていたので、ターレスの攻撃に備えて防御姿勢を取る。

 

 

 

 

ドカッッ!!!!

 

 

バーダック「なっ………!!?」

 

ターレス「かかったな」

 

だが、それはターレスのフェイクだった。最初はバーダックに視認できるスピードで移動し、途中から視認できないスピードに急に上げることによって、バーダックの目を欺いたのだ。

 

ターレス「どうした?超サイヤ人はこんなものじゃないはずだろ?とっとと超サイヤ人に変身したらどうだ?」

 

バーダック「ふん……。そこまで死にてえなら、殺してやるよ………!!!」

 

 

バーダックの髪が重力に逆らって上向きに変化する。瞳は徐々にエメラルドグリーンに変化し、髪も徐々に黒色から金色に変化する。

 

 

バーダック「はぁああああああッ!!!!!」

 

 

 

ボォオオオオオオッ!!!!!!

 

 

 

パンブーキン「す、すげぇ……!!」

 

トーマ「あれが、伝説の……!!」

 

トーマ達は、初めて見る伝説の存在の姿に言葉も出ないようだ。

 

超バーダック「さあ、超サイヤ人になってやったぞ。これでどうすればいい?お前を殺せばいいのか?」

 

ターレス「ふふふふっ……!ふはははははははッ!!!!」

 

超バーダック「………?どうした?何がおかしいんだ?」

 

ターレス「超サイヤ人に変身すると、通常時に比べどれほどパワーアップするか、お前は知っているか?」

 

超バーダック「さあな。詳しい数値は知らん」

 

ターレス「だろうな。だったら教えてやる。超サイヤ人は通常時に比べ、戦闘力が50倍になる。つまり、通常時の戦闘力が高ければ高いほど、超サイヤ人に変身した時の戦闘力もそれだけ膨大なものになる」

 

超バーダック「………!ま、まさか…!」

 

バーダックはターレスの意図が読めたようで、顔に焦燥感が現れる。

 

ターレス「神精樹の実を食べ続けた上に、変な化け物に殺されかけた俺はあの時よりも戦闘力が遥かに増している。そんな俺が超サイヤ人になれば…………どうなるかは言うまでもないだろう?」

 

ターレスがそう言うと、大地が揺れ始め、ターレスも超サイヤ人に変身する。

 

擬似超サイヤ人に変身できることは知っていたバーダックだが、クラッシャー軍団を抜け出して数ヶ月の間に、ターレスが完全な超サイヤ人に変身できることまでは把握していなかったし、想定もしていなかった。

 

超ターレス「どうだ?お前はスカウター無しで戦闘力を測ることができるのだろう?測定してみろよ?」

 

超バーダック「…………」

 

超ターレス「どうした?あまりにも圧倒的なパワーの前に、言葉も失ったか?」

 

超バーダック「………いや、思ったよりも大したことがなかったと安心しているだけだ」

 

超ターレス「……ッ!!貴様ぁ…!!」

 

 

ドゴォォオオッ!!!!!

 

超バーダック「グゥッ………!!!!」

 

とはいえ、ターレスの戦闘力がここ最近で爆発的に上がっているのは事実。というか、戦闘力で言えば、ターレスの方が上であった。このまままともに戦っていては、バーダックが敗北するのは時間の問題。なんとかして対策を練らなければならなかった。

 

超バーダック「(くそ…!!どうすりゃあいいんだ……!!)」

 

 

ガシッ……

 

超バーダック「…………!!」

 

バーダックの目にはあるものが見えた。それは銀色に輝く謎の生命体。バーダックには、これがフリーザの親戚で、クウラだとすぐに分かった。

 

クウラはターレスに一度倒されたことによってメタルクウラと化した。ならどのサイヤ人よりも、ターレスのことを恨んでいるはずだ。ならば、この手を利用しないわけにはいかない。

 

超バーダック「………ターレス。お前の強さに自信があるなら、コイツを受けてみやがれ」ポワッ

 

 

超ターレス「………?」

 

 

バーダックは自身の必殺技であるスピリッツキャノンを右手で生成し、それをどんどん肥大化させていく。

 

超ターレス「………いいだろう。そして無傷の俺を見て絶望すればいいさ……。その時がお前の死時だ」

 

ターレスは必殺技の受け入れ態勢に入る。余程自分の強さに自信があるようだ。

 

超バーダック「なら、遠慮なく"行かせて"もらうぜ!!!」

 

 

ドンッッッ!!!!!!!

 

 

バーダックは早めにスピリッツキャノンを放つ。目的はターレスにダメージを与えることではない。

 

 

ドグォォオオオオオオオンッ!!!!!!

 

 

 

超ターレス「……ん?(いくらなんでも手応えがなさ過ぎる……。一体どういうつもりだ…?ヤツならもっと力をいれるはずだ…………)」

 

ターレスはバーダックのように気を感知することはできない。その為、スピリッツキャノンを被弾したことによって視界は煙に支配され、何も見えない状態にあった。バーダックはこれを利用したのだ。

 

 

 

 

超ターレス「…………!?」

 

煙が晴れる頃には、バーダックの姿はどこにもなかった。

 

超ターレス「あ、あの野郎………!!!逃げやがったのか……!?どこまでも俺を苔にしやがってぇ………!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

無論、バーダックは逃げたわけではない。

 

超バーダック「………!!!」

 

バーダックがメタルクウラの集まる場所に辿り着くと、そこには………。

 

 

「界王拳ッ!!!!!!」

 

 

容姿が自分にそっくりで、山吹色の道義を着た男がクウラと対峙していた。しかも超サイヤ人に変身せずにクウラを圧倒していた。

 

超バーダック「カカロットなのか……?」

 

しかし次の瞬間、メタルクウラが変身すると、悟空の戦況は一気に悪くなり、なんと建物に叩きつけられてしまった。

 

トドメを刺すように崩れた建物に向けてエネルギー砲を放ったクウラを見て、バーダックは考えるよりも先に行動に移していた。

 

超バーダック「させるかぁッ!!!」

 

 

 

ドンッッッ!!!!!

 

 

メタルクウラ「なにッ!!!?」

 

バーダックはエネルギー砲を最も容易く跳ね返す。

 

メタルクウラ「何者だ…………?」

 

超バーダック「てめぇに名乗る名前はねぇ」

 

 

ボォオオオオッ!!!!

 

 

バーダックは気を開放しながら、こう名乗る。

 

超バーダック「俺はただの下級戦士だ」

 

 

 

シュン‼︎

 

 

 

 

ドゴォォオオッッ!!!!!

 

 

メタルクウラ「ぐっ……!ぁぁ……!!」

 

 

バーダッグは目で追えぬ速さでメタルクウラに突進し、メタルクウラに風穴を空ける。

 

メタルクウラ「だが無意味だ」

 

メタルクウラが腹部を再生させようとしたその時であった。

 

 

ガシッ!

 

 

超バーダック「ほらよ!!」ブン‼︎

 

 

メタルクウラ「なっ!!?」

 

 

バーダッグは尻尾を掴んでクウラを投げ飛ばす。

 

超バーダック「オラァア!!!!」

 

 

パッッ!!!!!

 

 

バーダッグはそのまま流れるようにしてスピリッツキャノンを放ち、メタルクウラを爆散させた。

 

 

メタルクウラ「貴様も超サイヤ人になれるのか……!!」

 

メタルクウラ「まあいい。お前ら纏めて嬲り殺しにしてくれる」

 

超バーダック「やれるもんならやってみやがれ。こっちだ!!」バシューン‼︎

 

 

バーダッグはそのまま遠くへ飛び、メタルクウラ達もバーダッグを追うようにして飛び立っていった。

 

 

メタルクウラ「どこまで逃げる気だ?俺様はその気になればこの星ごと破壊することができるのだぞ?」

 

超バーダック「まあそう焦るな。今からテメェが恨んで仕方ねえ奴のところに案内してやるからよ」

 

メタルクウラ「なに…?」

 

超バーダック「ターレス……。この名前に身に覚えはないか?」

 

メタルクウラ「………!!!!」

 

クウラにとって、ターレスはただただ屈辱を与えられたサイヤ人だった。クウラは特定の人物を恨むようなことは今までなかったが、ターレスだけはどうしても許すことができなかった。

 

メタルクウラ「そいつは本当なんだろうな?」

 

超バーダック「俺に付いて来い。そうすりゃあ会えるさ」

 

バーダックが元の場所に到着した。

 

超ターレス「随分待たせるじゃねえか?………!!お前は……!!」

 

メタルクウラ「ほう…。どうやら本物のようだな。猿とはいえ、感謝するぞ」

 

こうすることによって、クウラの標的はほぼターレスに絞られ、一時的とはいえ、クウラを仲間にすることができたのだ。

 

メタルクウラ「貴様だけは……!!」

 

メタルクウラ「許さんぞ……!!」

 

メタルクウラ「ただ嬲り殺しにするだけではなぁッ!!!!」

 

 

ドシューンッ!!!!!

 

超ターレス「ちっ…!面倒なことをしてくれやがって……!!!」

 

ターレスはメタルクウラの対処に追われ、バーダックとの戦闘どころではなくなってしまった。

 

超バーダック「よし……。この隙に…」

 

シュン‼︎

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドカッッ!!!!

 

トーマ「ぐっ……!!こいつら、なんて強さだ……!!」

 

トーマ達は、クラッシャー軍団であるダイーズ、アモンド、カカオによって絶体絶命のピンチを迎えていた。トーマ達はいくら頑丈な戦士とはいえ、神精樹の実を長年食べ続けてきたクラッシャー軍団に勝てるだけの実力を持ち合わせていなかった。

 

ダイーズ「全く愚かな連中だ。俺達に従っていれば、やがては貴様らも宇宙の頂点に立てていたというのにな……」

 

カカオ「ンダ」

 

アモンド「地獄で後悔するでっせい」

 

トーマ「畜生……!俺達は、また地獄に舞い戻るというのか………!!!」

 

 

 

 

 

 

ドゴォォオオッッ!!!!!

 

 

ダイーズ「ガッ……!!!!」

 

ダイーズが突然吹き飛ばされる。何事もかと、アモンドとカカオは、ダイーズが吹き飛ばされた反対側を見る。

 

超バーダック「情けねえ野朗だ。サイヤ人なら最後まで諦めるんじゃねえ」

 

ダイーズを吹き飛ばした犯人は、バーダックであった。

 

アモンド「お、お前は……!?」

 

カカオ「ンダ…!」

 

超バーダック「よう。久々だな」

 

アモンド「裏切り者でっせい!お前は殺しちまってもいいってターレスに言われてまっせい!!ここで倒すッ!!」

 

アモンドはパワーに特化した戦士だ。スピードは遅いが、パワーが自慢の戦士。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドゴォォオオッッ!!!!!

 

 

アモンド「ごっ…………!!!」

 

だがそれがどうした。というのがバーダックの感想。超サイヤ人にならずとも、アモンドを倒すことなど楽勝であった。

 

 

アモンド「ば、ばか…………な…………」

 

 

ドシャ

 

アモンドはそのまま地面に倒れる。

 

超バーダック「雑魚は引っ込んでいろ」

 

カカオ「ンダ!」ガチャ

 

 

超バーダック「………!!」

 

 

 

ダガガガガッ!!!!!!

 

カカオの肩や膝の部分の装甲が開いたかと思えば、そこに存在する穴からミサイルやマシンガンがバーダックに向けて連射される。バーダックにヒットすることによって、連鎖的に爆発を起こしている。

 

カカオ「ンダ…」

 

カカオは表情を変えることはないが、内心はほくそ笑んでいた。この至近距離で全弾被弾したのだ。無事では済まない。

 

 

 

 

 

 

 

 

超バーダック「…………」

 

…………はずだった。

 

超バーダック「マッサージにもなりやしねえぜ」

 

バーダックは静かにカカオの横を通り過ぎていく。カカオは何故攻撃されないのか疑問に思ったが、この好機を逃す手はない。バーダックに向けてレーザーを放とうとしたその時………。

 

 

 

ガシャ……!!!!

 

カカオ「ンダ………?!」

 

カカオの機械部分が全て粉砕された。

 

超バーダック「てめぇはもう既に死んでるぜ」

 

ドグォォオオオオオオオオオンッッ!!!!!!!

 

カカオはそのまま爆散し、アモンドを巻き込んで消滅した。

 

超バーダック「大丈夫か、トーマ?」

 

トーマ「ああ……。助かったぜ、バーダック」

 

 

スタッ

ダイーズ「貴様ぁ…!」

 

最初に吹き飛ばしたダイーズはまだ生存していたようだ。

 

超バーダック「まだ生きていたか……。悪いことは言わねえ。今なら見逃してやらんこともない」

 

ダイーズ「もういい…。貴様はここで潰してやる…!ターレスの出る幕はねえ!!」

 

バキッ

 

ダイーズは懐から取り出した刺々しい実を食し、戦闘力を急増させる。

 

ダイーズ「これで貴様も終わりだぁああッッ!!!!」

 

ダイーズは高速で接近し、腹に風穴を開けるべく拳を突き進める。

 

 

 

 

 

 

 

だが、あくまでもダイーズにとっては高速と言われるスピードになるだけだ。バーダックにとってはなんてことはない。

 

 

 

ドゴォォオオッッ!!!!!

 

ダイーズ「がはっ…………!!!!」

 

バーダックの拳がダイーズの腹に深く突き刺さる。

 

超バーダック「残念だったな。神精樹の実は確かに食べれば食べるほど強くなる。だが、戦闘力が10万ずつしか増えねえんだよ。戦闘力が倍になるわけじゃねえから、途中から効率が悪くなるんだよ」

 

ダイーズ「な、なにぃ………!?」

 

超バーダック「ターレスの野郎が何であそこまで強くなれたか知ってるか?それはあいつがサイヤ人だったからだ。途中で死にかけたり、超サイヤ人に覚醒したから、あいつは強くなっていった」

 

ダイーズ「じゃ、じゃあ…!俺は……!!」

 

超バーダック「ああ。途中から無駄だったんだよ」

 

 

 

ズォオオオオオオオッッ!!!!!

 

 

バーダックはそのままダイーズをエネルギー砲で消滅させた。

 

 

超バーダック「……あとはあの鬱陶しい双子だけだが…。見かけねえな…?」

 

 

 

ゴゴゴゴゴゴゴゴッ……!!!!

 

超バーダック「な、なんだ…!?」

 

地面が突然揺れ始め、地割れが進行する。ボロボロになったトーマをかかえながらバーダックは浮かび上がる。その直後に、大きな木の根のようなものが地中から姿を現した。

 

超バーダック「これが神精樹ってやつか……!!」

 

遥か遠くに豆の木を連想させる巨大な木が聳え立っていた。その木は次々と刺々しい実を生やしていく。

 

超バーダック「まずいな……。このままでは地球は壊滅するな………。っと!」

 

 

ドォオオオオオオオオオンッッ!!!

 

バーダックは神精樹を眺めていたが、空から降ってくる異物に気付いて回避する。

 

メタルクウラ「お、おのれぇ……!!」

 

 

シュン‼︎

 

超ターレス「何度も言わせるな。俺様に歯向かうなら死ねッッ!!!!」

 

 

ズォオオオオオオオッッ!!!!!

 

その異物の正体はメタルクウラで、地面に叩き落とされた直後にターレスの手によって消し去られた。

 

超ターレス「さて…。面倒なことをしてくれたじゃねえか?お詫びだ。廃れ行くこの星に貴様の墓場を立ててやる」

 

超バーダック「ちっ……」

 

どうやらターレスは複数体いたメタルクウラをあっという間に殲滅してしまったようだ。

 

超ターレス「……やはり貴様を殺すのは惜しい。俺と共に来ないか?俺達は同じサイヤ人だ。今や生き返らせたサイヤ人も数を減らしちまっている。数少ない仲間だ」

 

超バーダック「何度も言ってるだろ?俺はお前のやり方が気に食わねえってな」

 

超ターレス「それに、俺の女が好まない………だったか?」

 

超バーダック「ああ。よく覚えてるじゃねえか」

 

超ターレス「だったらもう気にすることはないさ」

 

超バーダック「……………何?」

 

超ターレス「てめぇの女とやらはもういねえんだよ」

 

超バーダック「……………どういう意味だ…?」

 

超ターレス「あの女、本当にサイヤ人なのか?サイヤ人のくせに、戦闘を好まないだと…?同じ戦闘民族の血が流れていると思うと虫唾が走るぜ」

 

超バーダック「……………てめぇ、ギネに何しやがった…!?」

 

超ターレス「そんなに気になるなら見に行けばいいだろ?そんな遠くねえからよ」

 

超バーダック「………!!!」

 

 

 

バーダックはターレスの意味深な発言が気になり、ギネの様子を見に行く。

 

超バーダック「………!!ギネッ!!」

 

 

 

 

 

しばらく飛ぶと、そこには地べたに倒れているギネがいた。

 

超バーダック「おい!しっかりしろ!!おいッ!!!!!」

 

セリパ「す、すまねぇ…!!」

 

超バーダック「……!!セリパ!」

 

セリパ「ターレスの野朗…。強すぎた…。お前がどこかに逃げて行ったからその腹いせってことでこっちに来たんだ……!!お前がただ逃げるとは思ってなかったが…………!!」

 

超バーダック「……………」

 

バーダックは冷静に気を確認する。ギネはまだ生きている。とはいえ、何か治療を施さなければ生命に関わる重傷だ。

 

バーダックは確かにターレスが許せなかった。自分の大切な人を傷付けたのだ。バーダックでなくとも誰でも怒るだろう。

 

だが、それ以上に自分が許せなかった。自分の浅はかな考えによって、ギネは傷付いてしまった。それが許せなかった。

 

 

スタッ

超ターレス「ほう?まだ生きていたのか。腐ってもサイヤ人ってわけだ。だがそいつはもうじき死ぬさ。そんなサイヤ人の風上にも置けない出来損ないのことなんか忘れて俺と一緒に来いよ。自由気ままに暴れ回り、美味いものを食い美味い酒に酔う。こんな楽しい生活はないぜ?」

 

超バーダック「…………せぇ」

 

超ターレス「なんだ?もっとはっきり言ってみろ」

 

超バーダック「うるせえっつってんだよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドンッッッ!!!!!

 

超ターレス「!?ッ」

 

バーダックを中心に、突如クレーターが出現する。バーダックは無意識に気を徐々に高めていき、やがては稲妻が発生する。

 

超バーダック「自分が情けねえ。ついあの時のことを思い出しちまった……。俺はてめぇを許せねえが、それ以上に俺自身を許せねえ……!!!!」

 

 

ゴゴゴゴゴゴゴゴッ……!!!!!

 

 

次第に揺れは強くなり、気を感じ取ることのできないターレスでも何が起きているのか理解し始める。

 

超ターレス「まさか…!超サイヤ人のその先に……!!?」

 

超バーダック「はぁああああああああああああああッッ!!!!!!」

 

 

ドォォオオオオオオオッ!!!!!

 

 

超ターレス「ぐっ………!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

超2バーダック「…………」バチバチッ

 

バーダックはターレスに対する怒りと自分自身に対する怒りが重なり、見事に超サイヤ人2に覚醒することができた。

 

超ターレス「そ、それがどうしたというんだ……!!こっちは常に神精樹の実を食い続けてきたんだ…!!貴様如きに負けるはずは…………」

 

 

 

 

ドゴォォオオッッ!!!!!!

 

 

超ターレス「ぐぁ…………っ!!」

 

 

ターレスには何が起こったのか理解ができなかった。唯一理解できたことは、突如腹部が激痛に襲われたことだけ。何をされたのか認識することができなかった。

 

超2バーダック「ターレス。下級戦士同士、いい加減決着をつけようぜ…?」

 

超ターレス「……上等じゃねえか…!!ここが貴様の死に場所だッ!!!!」

 

ドシューンッ!!!!!

 

 

ターレスは空中に飛び上がり、気を高めて自身の究極奥義である、メテオバーストを両手を使って生成する。

 

 

超2バーダック「これで、終わらせてやる」

 

バーダックはその場に立ったまま右手に力を込め、同じく究極奥義である、スピリッツキャノンを生成する。

 

どちらの技も時間が経つにつれて肥大化していく。

 

 

 

超ターレス「死ねぇええええええッッ!!!!!!!」

 

 

ズォオオオオオオオオオオオオオッッ!!!!!!!!

 

 

メテオバーストはバーダックに向かって高速で突き進む。

 

 

 

超2バーダック「これで最後だぁあああああああッッ!!!!!!」

 

 

 

ドッッッ!!!!!!!!

 

 

 

バーダックのスピリッツキャノンも放たれ、各々の技がぶつかり合う。

 

 

 

超ターレス「なっ………!!ば、馬鹿なッ……!!!!」

 

超2バーダック「死ぬのはテメェだッ!!!!!!このクズ野朗ぉおおおおおおおおッッ!!!!!!!」

 

 

ググググググッ……!!

 

 

バーダックはターレスの技をじわじわと押していく。ターレスの終わりの時が刻一刻と近づいていた。

 

 

超ターレス「くっ…!このまま終わってたまるかぁ…!!やっと伝説の存在になったんだ……!!このまま全宇宙を支配してやるんだ……!!!こんなところでくたばるわけにはいかねえんだッ!!!!!」

 

 

バリッ

 

 

ターレスは技を放っている途中で神精樹の実を食し、戦闘力をアップさせるが…………。

 

 

 

超ターレス「…………!!!?な、何故だ……!!?何故押し出せない!?」

 

ターレス程の戦闘力を持ち合わせている者が食べても、戦闘力は気持ち上がった程度しか変化はない。大猿になれば問答無用で10倍。超サイヤ人になれば50倍とはいかないのが神精樹の実。

 

どれだけ食べようが、上がる戦闘力は固定で10万付近だ。億単位の戦闘力を持つ者に10万足されたところで、毛が生える程度の変化でしかないのだ。

 

超2バーダック「あばよ。俺が死んだら会いに行ってやるよ」

 

 

 

 

 

ズォオオオオオオオオオオオオオッッ!!!!!!!

 

 

超ターレス「ぐぁぁあああああああああああああああッッ!!!!!!」

 

 

ターレスのメテオバーストは、完全にスピリッツ押し負け、ターレスはスピリッツキャノンに飲み込まれてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

超2バーダック「……………終わったな。まずはギネをどうにかしねえとな……」

 

バーダックは駆け足気味になってギネの元に駆け寄る。ギネを優しく抱えると、バーダックは自身の気をギネに分け与えた。

 

ギネ「………ば、バーダック……?」

 

超2バーダック「無事か?」

 

ギネ「あんたのお陰でね…………」

 

超2バーダック「そうか……。ゆっくり休め。あとは俺がなんとかする」

 

ギネ「ああ……。頼んだよ………」

 

ギネは再び目を閉じた。

 

セリパ「お、おい!」

 

超2バーダック「大丈夫だ。ただ気絶しただけだ」

 

セリパ「それならいいが…。それよりもあれ、どうする?」

 

セリパが指差したのは神精樹。あれがある限り、地球の生命エネルギーはどんどん吸い尽くされてしまう。早くしなければ、地球は取り返しの付かないことになってしまう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ターレス「はぁ……はぁ…………!!」

 

なんと、ターレスはバーダックのスピリッツキャノンを浴びながらも、生き残っていた。これはただ本当に運が良かっただけである。

 

ターレス「ちく、しょう……!!なんて無様な姿なんだ……!!」

 

ターレスはなんとか神精樹まで辿り着いたが、既に満身創痍の状態だ。また神精樹の実を食べたところで、バーダックに敵うはずがない。はっきり言って八方塞がりだった。

 

「…………まさかここまでするとは思わなかったぞ」

 

ターレス「てめぇは、何時ぞやの…!」

 

セル「久々だな。ターレスといったか?まさかバーダックというサイヤ人にも負けるとはな…。お前の言う通り、無様な姿だ」

 

ターレス「………何しにきやがった?」

 

セル「なーに。この木にちょっと用があってな…………」

 

ターレス「お前も神精樹の実を狙っていたのか……!!」

 

セル「勘違いされてもらっては困る。私はそんなものには興味ない」

 

ターレス「なら、その木に何の用があるっていうんだ……!?」

 

セル「せっかく育てたところ悪いが……この木のエネルギーは地球に返還してもらう」

 

ターレス「なに……?そんなことできるわけが………………」

 

 

セル「ふんっ!!!!」ポワッ

 

 

セルが右手に力を入れると、それほど大きくない光の球が現れた。

 

セル「元気玉というものを知っているかな?星や生物から少しずつ生命エネルギーを分けてもらい、強力なエネルギーを生み出す技だ」

 

ターレス「な、なに………!?」

 

セル「無論、神精樹からも分けてもらっている。貴様は少々やり過ぎた。ここで滅びるがいい」

 

ターレス「この、クソ野郎……!!」

 

セル「それではまた会おう。もう会うことはないだろうがな」

 

 

パッ!!!!!!

 

 

元気玉が高速でターレスに接近する。大ダメージを負ったターレスには当然避けられるわけがなく………。

 

 

 

バチッッッッ!!!!!!!

 

 

ターレス「ギャアアアアアアアアアアアアアッッッ!!!!!!!!!」

 

 

ターレスは元気玉に飲み込まれると、そのまま神精樹に向かって突き進め、中央に穴を開けると、元気玉はセルのコントロールによってどんどん上昇する。木の中身を突き破りながら上昇し、再び外に出る。

 

 

 

 

セル「………貴様を生かしておく意味はあまりなかったな」

 

 

 

ドグォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオンッッッ!!!!!!!

 

 

 

ターレスは元気玉と共に爆散して、騒がしく散っていった……………。

 

その直後、セルの元気玉の効果によって神精樹が枯れ始めると同時に、神精樹からエネルギーのようなものが溢れ出し、地球全体に散らばった。

 

その散らばったエネルギーは、地球の各所に戻り、水を流し、土を肥やし、生き物を復活させた。

 

 

 

セル「孫悟飯達を手助けするつもりはなかったのだが……。まあいいだろう」

 

セルは、地球が滅びてしまうと、腕を張り合えるライバルを失うことを恐れて神精樹を破壊したのだろうが、結果的に悟飯達を助ける形となった。

 

 

…………ちなみに、レズンとラカセイはセルの手によって呆気なく消滅してしまった。

 




 初期案では、ターレスは悟飯と戦う予定でしたが、悟飯がパワーアップすることを想定していませんでした。その為、バーダックとターレスが戦った方がいい勝負ができるのではないかと考え、このような形に落ち着きました。ギネが傷付けられて超2に覚醒する展開は結構前から考えていました。

 ベジータ視点で対メタルクウラ戦を簡潔に語り、その後の出来事について語るのが次回になると思います。取り敢えずメタルクウラ編は次回で終わりということになり、その後は原作通り?の修学旅行になります。そろそろいい加減ラブコメ詰めたい………。

 ちなみにアンケートは聞き方を間違えたので作り直しました。諸注意(?)は前回と同じです。ちなみに変更するとしても、完結後になる可能性が高いです。


 なんかこれだけだと寂しいので、裏設定的なものを一部公開します。


※マルオが悟飯を雇った理由。

 風太郎が家庭教師として雇われたのは、マルオの腐れ縁であり、風太郎の父親である勇也に頼み込まれたからというのは原作で明らかになっています。今作もこれと相違ありません。とすると何故悟飯も家庭教師として雇われたのか?……それは保険的なものです。悟飯は風太郎と同じく不動の学年トップです。それに加え、例のボンボンコミュニティで悟飯の人柄について武田父(旭高校理事長)に尋ねたところ、人柄としても特に問題ないと判断したので、悟飯も家庭教師として雇ったという感じです。

 風太郎は学年トップとはいえ、勇也の息子ということでマルオは多少疑念的なものを抱いたはずですので、悟飯が家庭教師として雇われる理由としては妥当なのかな〜と。そう考えました。

…………まあ後付け設定なんですけどね(オイコラ)

ドラゴンボールの映画早速見に行きました。ブロリーまでとは少し趣向が違うような気はしましたが、無茶苦茶面白かったです。3D作画ということで不安になっている人もいたそうですが、私は普通に神作画だと思いました。驚かされる展開もあるので、皆さんはネタバレ等を見ないで映画を見ることを推奨します。

 私?私はネタバレしませんよ?ちなみに映画見た方は既にいると思いますけど、私の作品で映画のネタバレを含むコメントは『絶対に』しないで下さい。した場合は誠に勝手ながら削除させていただきます。


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第63話 君に感謝

 前回のあらすじ……。

 バーダックとターレスは、メタルクウラを巻き込みながらも死闘を繰り広げた。バーダックは不利な状況が続いたが、最愛のギネを傷付けられたことによって超サイヤ人2に覚醒し、ターレスを死の寸前まで追い詰めた。

 ターレスは上手く生き残ったが、セルの元気玉によってトドメを刺され、神精樹と共に散った。何気にセルの暗躍によって、地球は再び綺麗な青と緑を取り戻したのだった…………。


悟空達が地球で激闘を繰り広げていた中、新ナメック星に行ったZ戦士達はロボットの退治を完了したところだった。

 

ムーリ「助かった……。なんとお礼を言ったらいいか………」

 

現最長老であるムーリが戦士達に例を述べる。

 

未来悟飯「いえ、気にしないで下さい」

 

クリリン「それにしても随分数が多かったよな………」

 

天津飯「ああ。修行を続けていなければ危うかったな……」

 

ヤムチャ「俺はかなりギリギリだったぜ………」

 

餃子「それはヤムチャが修行を疎かにしていたからだ」

 

ヤムチャ「返す言葉もねえ………」

 

トランクス(未来)「……しかし、地球の方は大丈夫なんでしょうか?界王様の話によれば、フリーザの兄であるクウラが荒らしているんでしょう?」

 

トランクス達は、途中で界王に連絡を受けて地球が大変になっていることを知ったが、悟飯達が残っていることもあり、この新ナメック星を放置するわけにはいかないということで、こちらで戦うことにしたのだ。

 

ピッコロ「………そのことなら心配無用だ。悟飯達がクウラを倒したようだ」

 

未来悟飯「それは良かった………」

 

ピッコロ「…………だが、地球の被害が深刻だ。神精樹の件も解決したとはいえ、街が無茶苦茶になっているようだ。瓦礫に埋もれて死人が出たかもしれんな…………」

 

ムーリ「そのことならドラゴンボールを使ってくれ。私達を助けてくれた礼だ」

 

ピッコロ「いいのか?すまん。恩にきる」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方で、事が落ち着いた地球では……。

 

悟空「よっ、悟飯。久しぶりだな」

 

悟飯「お父さん………」

 

悟飯と悟空が久々に再会したところであった。正確には、前話で既に再会しているが、まともに話していないのでカウントしないことにしよう。

 

悟空「あの世でおめぇ達の様子は時々見守っていたぞ。本当によく頑張ってるな、悟飯」

 

悟飯「いえ、僕もまだまだですよ……。肝心な時に眠ってしまったり………」

 

悟空「ああ。おめぇは確かに平和ボケしちまってるな。しかも大事な時に限って油断しちまってるしな…。もうちょっとしっかりしねえとダメだぞ?」

 

悟飯「ははは……。すみません………」

 

悟空「あの五つ子は……。いや、地球はおめぇが守るんだ。おめぇがやらなきゃ誰がやるんだ?オラはもう死んでんだぞ。それにおめぇももう18だろ?いつまでも甘えんのはなしだかんな」

 

悟飯「…………」

 

悟飯は悟空の静かな説教をただ黙々と聞いていた。

 

悟空「おめぇがしっかりしなきゃ、おめぇの大事なもんは守れねえ。おめぇはあの五つ子の娘っ子やダチが死んじまってもいいんか?」

 

悟飯「よくないですよ!」

 

悟空「だろ?ならもう少し気張れ。今回オラが来れたのは本当に奇跡みたいなもんだからな。また何かあった時にオラが来ることは多分ねぇ」

 

悟飯「………はい」

 

悟空「……それと悟飯。誕生日、おめでとう」

 

悟空は悟飯が誕生した時に立ち会っていなかったものの、悟飯の誕生日はしっかりと覚えていた。勿論、わざわざ祝う為だけにこの世に来たわけではない。それでも、悟飯はとても嬉しかった。

 

悟飯「……ありがとうございます、お父さん。そういうお父さんも明日は誕生日ですよね?」

 

悟空「そうだな…。まあオラはそろそろあの世に帰んなきゃなんねぇんだけどな」

 

悟飯「………やっぱり、生き返ったわけではないんですね………」

 

悟空「……そんな悲しい顔すんなって。もう一回くらいはこの世に来れるからよ」

 

悟飯「………えっ?それ、本当ですか!?」

 

悟飯は思いがけない事実を知り、かなり驚愕する。

 

悟空「ああ。実は一回だけ24時間限定でこの世に行けるんだ」

 

悟飯「………あっ、でも僕のせいで…」

 

悟空「ああ……。そのことなんだけどよ…………」

 

悟空は悟飯に今回の件について簡潔に話す。悟飯はすぐに理解した。

 

悟飯「そんな制度があったんですね…」

 

悟空「ああ。オラはその制度を利用させてもらったってわけだ。だから次こっちに来た時は23時間はいられるぞ」

 

 

 

シュン‼︎

 

五月「わっ!!!!!」

 

 

悟空は悟飯と一通り話すと、瞬間移動で五つ子と風太郎の元に現れる。

 

悟空「よっ!おめぇらが零奈の娘だな?いつも悟飯が世話になってるな」

 

五月「い、いえ!こちらこそいつもお世話になっています!」

 

二乃「あの……、あなたが本当にハー君の父親の……?」

 

悟空「ああ。孫悟空ってんだ。よろしくな!っつっても、もうあの世に帰るんだけどな…………」

 

三玖「悟飯のお父さん…。もうちょっと話したかったのに…………」

 

四葉「さっきはありがとうございました!悟空さんがいなかったら、私達はどうなっていたか……………」

 

悟空「そのことは気にすんな。とにかくおめぇらが無事で良かったぞ」

 

一花「(人を守る為なら自分の身を投げ出す………。この人は本当に悟飯君の父親なんだな………………)」

 

武田「…………あの」

 

悟空「ん?なんだ?」

 

武田は先程までこの状況についていけてない様子だったが、ようやく口を開いて悟空に問う。

 

武田「あなたは………。いえ、あなた方親子は何者なんですか……?」

 

悟空「………そいつは悟飯から聞いてくれ。多分悟飯の方が説明は得意だろうしな」

 

 

 

シュン‼︎

 

すると、今度は水晶玉に乗った老人が急に現れた。

 

占いばば「悟空よ。そろそろ時間じゃ。これ以上この世にいると、1日だけ帰れる権利がなくなってしまうぞ?」

 

悟空「もうそんな時間か…。まあ超サイヤ人に変身しちまったしな…。仕方ねえか」

 

五月「待ってください!最後にこれだけは言わせて下さい!」

 

悟空「ん?なんだ?」

 

五月「………私達と孫君を出会わせてくれてありがとうございます。こうして毎日孫君と楽しい生活を送れるのも、父親であるあなたのお陰です………」

 

悟空「ん?なんでオラのお陰なのかはよく分からねえけど、サンキュー!!でもオラもおめぇ達に感謝してんだ。おめぇ達といる時の悟飯はいつにも増して楽しそうにしてるからな……。これからも悟飯と仲良くしてやってくれ」

 

五月「分かりました!"お義父さん"!!」

 

「「!!!?」」

 

五月の悟空の呼び方に対して約2名が反応する。

 

二乃「ちょっと待ちなさい!何勝手に父親呼ばわりしてんのよ!!!それは私の台詞なんだから!!」

 

三玖「違う。悟飯の奥さんは私」

 

 

悟空「いや、オラはおめぇらの父親じゃねえと思うんだけんど………。まあいっか!あ、そうだ。確か風太郎だったよな?」

 

風太郎「えっ?はい。俺が風太郎ですけど…………」

 

風太郎は突然呼ばれた為、少々気の抜けた返事をしてしまう。

 

悟空「おめぇには特に悟飯と仲良くしてやってほしいんだ。おめぇと悟飯はなんか気が合うみてぇだし、同年代で初めてできた悟飯のダチだしな」

 

風太郎「言われなくとも、いつも仲良くさせてもらってますよ」

 

悟空「そっか。そいつを聞いて安心したぞ」

 

占いばば「では行くぞ」

 

 

悟空はゆっくりと浮かび上がる。

 

 

 

悟空「じゃあな悟飯ッ!!!死んだらまた会おうなーーーーッ!!!!」

 

 

 

二乃「死んだらって…………」

 

一花「あはは……。ユニークなお父さんだね…?」

 

 

 

 

悟飯「お父さん………。ありがとう……」

 

もうこの世にはいない父親に向けて、悟飯は感謝の言葉を述べた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

悟空「あっ、あの世に戻る前に1箇所だけ寄らせてくれねえか?」

 

占いばば「お前さん……。さっきの台詞の後にそれはないじゃろう…………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

メタルクウラ襲来、ベジータの場合

 

 

 

ベジータとトランクスはメタルクウラが現れてからというもの…………。

 

 

 

グシャ!!!!!

 

メタルクウラ「ば、馬鹿な……!!」

 

超ベジータ「口ほどにもねえぜ」

 

ベジータはメタルクウラ相手に最早遊んでいた。なんなら、トランクスの修行相手に上手く利用しているくらいである。

 

メタルクウラ「この俺様が、あのガキのオモチャになるなど………!!!」

 

超ベジータ「貴様らの時代はもう終わったんだよ。老害は引っ込んでいろ。これからはサイヤ人の時代だ」

 

メタルクウラ「猿がでかい口を叩くんじゃない…!!」

 

 

 

 

 

 

グシャ……!!!!

 

 

突然、メタルクウラの視界が上下180°変わる。

 

 

超ベジータ「貴様、自分の今の立場が分かってないらしいな?愉快なやつだぜ。貴様はいくらでも量産されると言ったな?それは同時に意識も共有しているということだ。つまり、貴様が見下していたサイヤ人に何度も何度も殺される経験をするわけだ。こりゃあいいぜ」

 

ベジータはクウラの弟であるフリーザにいいように利用されていた。悟空がフリーザを倒したことによってやっと自由になれた。しかし、超サイヤ人になって以降、ベジータは自分の手でフリーザに復讐をしたかった。

 

そこで現れたのが兄であるクウラ。一応フリーザの親戚に当たる為、フリーザの代わりにサンドバックになっているという現状だ。

 

 

 

グシャ!!!

 

ベジータはメタルクウラの頭部を片手で難なく破壊する。しかし新しいメタルクウラがすぐに現れる。

 

メタルクウラ「貴様ぁ…!余程死にたいらしいな…!」

 

超トランクス「ギャリック砲ッ!!!!!!」

 

メタルクウラ「!?!?ッ」

 

 

 

ドグォォオオオオオオオオオン!!!!

 

 

新しく現れたのクウラは、トランクスによってすぐに粉砕される。

 

超トランクス「パパ…!もう100体は倒したと思うけど…………」

 

超ベジータ「ほう………。ならあと400体追加だ」

 

超トランクス「ええッ!?流石にそれは無茶だよッ!!!」

 

超ベジータ「甘えるな!俺はすでに1000体は倒しているぞ?俺様の息子ならば、せめて半分の500体は倒すんだな」

 

超トランクス「鬼だ……………」

 

本来なら地球を懸けての戦いのはずなのだが、何故だかベジータ親子にとってはトレーニングの延長線上という扱いを受けていた。

 

 

 

 

グゴゴゴゴゴゴッ…!!

 

 

超ベジータ「………!!!」

 

超トランクス「な、なんだッ!?」

 

巨大な木の根が地中から突然姿を現す。既に壊れかけていた建物をその木の根が追い討ちをかけるように次々と破壊される。

 

メタルクウラ「お、おのれぇ……!!」

 

それと同時にメタルクウラ軍団が一斉にスーパーノヴァを作り出し、一斉に放つ。

 

これには流石にトランクスも少々怖気付いてしまうが、ベジータにはそんな感情はカケラもない。

 

超ベジータ「こんなもの、わざわざ技を使う必要はないぜ」

 

 

ドシューンッ!!!!

 

 

 

ベジータは空高く飛び上がり、自らスーパーノヴァに突っ込んでいく。

 

メタルクウラ「はははッ!!!!」

 

メタルクウラ「馬鹿めッ!!!!」

 

メタルクウラ「そのまま焼け死ぬがいいッ!!!!!!」

 

 

ドンッッッ!!!!!!

 

 

 

 

メタルクウラ「!?!?ッ」

 

だが、クウラの予想とは裏腹に、ベジータは片手だけでスーパーノヴァを受け止める。

 

メタルクウラ「ば、馬鹿な………!!!そんなはずは……!!!!」

 

超ベジータ「もういい。貴様は用済みだ。消えろ」

 

 

 

 

 

ドンッッッ!!!!!!!!!

 

 

メタルクウラ「ぐぉおおおぉあああああああぁぁああぁああッ!!!!!!!!!!」

 

 

ベジータは気合でスーパーノヴァを押し出すと、メタルクウラ軍団はそれに巻き込まれる。自身の技で自らの身を滅ぼす結果となった。

 

超ベジータ「…………おや?」

 

超トランクス「あ、あれ?なんか止まっちゃった……………」

 

ベジータがスーパーノヴァを跳ね返した直後、他のメタルクウラの動きが完全に止まった。

 

メタルクウラだけではない。人間を連れ去ろうとしていたロボットの動きも完全に止まっていた。

 

 

超ベジータ「なんだ?どうなってやがる?」

 

だが、異変はこれだけではない。突如生えた謎の木の根も突然光に変化し、地球全体に光の粉となって降り注ぐ。

 

超ベジータ「………?一体なんだったんだ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

シュン‼︎

 

 

悟空「………よっ、ベジータ」

 

超ベジータ「…………カカロットか」

 

悟空「久しぶりだな。地球を守ってくれてサンキューな」

 

超ベジータ「俺はただフリーザの兄貴が気に食わなかっただけだ。貴様に礼を言われる筋合いはない」

 

悟空「相変わらずだな……。少しは素直になってくれてもいいのによ………」

 

超ベジータ「やはりさっきの気はお前だったのか……。何故死んだお前がここにいるのかは分からんが原因などどうでもいい。ここで決着をつけるぞ。俺はあの時から更に強くなった…。それは貴様もだろうが……。いい加減決着をつけようじゃないか?」

 

悟空「すまねえなベジータ。今はそれはできねえ」

 

超ベジータ「なに?どういうことだ?」

 

悟空「今のオラは時間制限付きで一時的にこっちに戻ってきているだけにすぎねえんだ。その時間はさっきクウラ達と戦う時に使っちまった。だからもうあの世に行かなきゃなんねぇ………」

 

超ベジータ「…………そうか」

 

悟空「でも安心してくれベジータ。あと一度だけ、23時間だけこっちに戻って来れるんだ。その時に決着をつけようぜ。オラも強くなったおめぇと戦いてえしな」

 

超ベジータ「ふん。覚悟しておくんだな」

 

悟空「ああ、おめぇもな………」

 

悟空は最後に言い残し、静かに消えていった……………。

 

超トランクス「ねえパパ?今の人は誰?」

 

超ベジータ「………………下級戦士でありながら、いつもエリートの一歩先を行く、ただのサイヤ人さ」

 

超トランクス「……?ふーん?」

 

トランクスはベジータの言っていた意味がいまいち理解できていなかったようだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こうして、地球に再び平和が訪れた。視点は再び悟飯のところに戻そう……。

 

 

 

悟飯「みんな!怪我はない!?」

 

一花「うん。大丈夫だよ」

 

二乃「……………」

 

 

ドンッッ!!!!

 

悟飯「わっ!!?に、二乃さん!!?」

 

二乃「馬鹿馬鹿馬鹿ッ!!!!来るのが遅いのよ!!!!怖かったんだから!!!!!心配したんだからッ!!!!!!」

 

二乃はポカポカと悟飯を叩きながら泣き叫ぶ。悟飯はそんな二乃の頭に手を乗せ、優しく撫でる。

 

悟飯「ごめん………………」

 

三玖「むっ…………。わ、私も怖かった!」

 

 

トンっ…

 

 

悟飯「み、三玖さんまで!!?」

 

三玖も二乃の真似をするようにポカポカと悟飯を叩く。二乃とは違って優しく叩くので、全く痛みを感じない。というか、側から見たらただのイチャイチャにしか見えない。

 

五月「うぅ……!!!ふわぁぁあああああんッ!!!!!怖かったですぅぅぅ!!!!!!!」

 

しかし、今回の件で一番泣いてしまったのは五月だった。末っ子だからなのかは不明だが、子供のように泣き叫んでしまう。その為、悟飯に駆け寄る余裕もなかった。

 

一花「あらら…。よしよし五月ちゃん。もう大丈夫だから……ね?」

 

四葉「うんうん!孫さん達が悪い奴らをやっつけてくれたからもう大丈夫だよ!!」

 

五月「ほんとぉ………?」

 

 

 

ズキュンッ!!!!!

 

 

一花「(あっ、やば…………)」

 

四葉「(久しぶりの甘えん坊な五月……!!!)」

 

 

 

((可愛すぎる………!!!!!))

 

 

 

普段は母親の代わりになろうと取り繕っていた五月だが、それがない今はただただ可愛い末っ子……。その姿の虜になってしまう姉2人がそこにはいた。

 

風太郎「はぁ………。今回ばかりは死ぬかと思ったぜ……………」

 

武田「僕もだよ……。ここまで命の危機を感じたのは人生で初めてだよ……」

 

実際、命の危機を本気で感じる人など殆ど存在しないだろう。セルやピッコロの件もテレビを通しての情報であり、実際に目の前で殺されそうになる人間は早々いない。

 

 

 

 

 

 

 

「ねえねえ!孫君って8年前にセルゲームに参加してたの!?」

 

「あの金髪はどうやったらできるんだよ!?俺にも教えてくれよ!!!」

 

「すげえ強え!!あのビームどうやって打つの!!?CGとかじゃないんでしょ!!?」

 

無論クラスメイトから質問攻めに遭うのは言うまでもなかった。日本のメディアでそこそこ取り上げられた一花でさえあんなにクラスメイトがごった返していたのだ。世界中に知られている戦士となれば、そのスケールは大きく変わる。

 

悟飯「わわわっ……!!みんな押さないでよ〜〜!!!!?」

 

悟飯は『一花さんもこの前はこんな気持ちだったのかなぁ………』という感想を心の中に留めておいた。

 

風太郎「………しかし、学校も街も無茶苦茶だな……………」

 

武田「これからどうやって生活していけばいいのかな……。電気も通信も碌に通ってないと見るべきだろうね……」

 

風太郎と武田は現実的な問題を話し合う。日本だけでなく世界中が同じような状況に陥っている。ビッグゲテスターの着陸やメタルクウラの襲来、神精樹の根っこによる被害などで1時間弱という短い時間で地球はほぼ崩壊状態に陥っていた。

 

 

 

 

シュン…‼︎

 

武田「なっ……!!!?」

 

風太郎「ば、馬鹿な……!!!?そんなことあるわけが………!!!!」

 

だが、瓦礫の山と化していた校舎が、一瞬にして元のよく知る校舎に戻っていた。周りを見回すと、校舎だけではなかった。

 

あちこちに地割れやクレーターができていた校庭。

 

瓦礫の山と化していた街。それによって潰された家具や人々。

 

全てがメタルクウラが襲来する前の、人々が見慣れた状態に戻っていた。

 

四葉「な………何がッ!!!?」

 

一花「どういうこと…………?」

 

悟飯の正体を知ったことによって多少は非常識なことに理解を示し始めた一花達だが、今回は流石に困惑している様子。それもそのはずだ。崩壊していた街や建物が一瞬にして戻ったのだ。それこそ、今まで見ていた光景が夢であったと言わんばかりに…………。

 

一花達の反応は正常と言わざるを得ない。

 

悟飯「……(もしかして、ナメック星人の人達が助けてくれたのかな…?)」

 

だが、悟飯だけは心当たりがあったようだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

らいは「あれ?街が元に戻った……?」

 

悟天「…?よく分からないけど、これで元通りだね!」

 

らいは「………うん」

 

悟天「あっ……。そういえばお母さんに黙って家を出ちゃったんだった…。ちょっと帰り辛いなぁ………………」

 

らいは「…………だったら、うちに泊まっていく………?」

 

悟天「えっ?いいの?」

 

らいは「うん!助けてもらったお礼に!」

 

悟天「えー?でも、確からいはさんの家って生活が厳しいんじゃ………」

 

らいは「命に比べたら安いよ!さあさあ、上杉家にご案内で〜す!!」

 

悟天「わわっ!引っ張らないでよ〜!!」

 

どうやら、らいはが悟天に助けられたことによって、この2人の関係性に変化が生じそうだ。

 

今までは、らいはと悟天は兄の友達の弟と妹という認識でしかなかったが、この瞬間をもって別のものに変化し始めていることに、悟天は気付いていない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

クラスメイトの質問ラッシュにあっていた悟飯だったが、なんとか理由をつけて抜け出し、荷物を整理して帰宅しようとしたが、道中で五つ子に呼び止められ、家に来るように言われた。

 

今日は家庭教師の日ではなかったはずだが、五つ子の言う通りに悟飯は5人に付いて行く。五つ子の住むアパートに到着した。

 

一花「あっ、まだ入っちゃだめだよ?いいよって言うまではダメだからね!」

 

悟飯「えっ?う、うん………」

 

悟飯は一花の言う通りにドアの前で待機する。しばらくすると入っていいとのことだったので、悟飯はドアを開ける。だが、カーテンが閉ざされていて暗かった。

 

悟飯「あれ?みんなどこに行っちゃったのかな?」

 

悟飯は明かりを求めてリビングの電気を付ける。

 

 

 

 

パーーンッ!!!!

 

 

「「「「「お誕生日おめでとう!!!!!」」」」」

 

 

五つ子は目の前でクラッカーを鳴らして悟飯の誕生日を祝った。

 

悟飯「……………えっ?どういうこと?」

 

一花「えっ……?」

 

二乃「いやいや…!今日が何の日か自分で分かってないわけ!?」

 

三玖「もう少し自分を大切にするべき………」

 

四葉「上杉さんとは違った形で抜けてるところがありますね…………」

 

悟飯「えっ?今日って何かあったっけ?みんなの誕生日はこの前過ぎたはずだし……………」

 

五月「はぁ………。今日はあなたの誕生日ではありませんか、孫君」

 

悟飯「…………あっ。そういえばそうだったなぁ………。色々あって忘れてたよ………………」

 

悟空にも誕生日を祝われたというのに、クラスメイトに揉みくちゃにされてしまったせいか忘れていたようだ。

 

二乃「全く…………」

 

三玖「このケーキ、私達5人で作ったんだ」

 

一花「私も普段は料理はしないんだけど、二乃に教えてもらいながら作ったら味に問題はないはずだよ?」

 

悟飯「えっ?これ全部僕1人で食べるの?それは流石に悪いよ………」

 

二乃「いいの!この前と今日のお礼よ!!いいから素直に食べなさい!!」

 

悟飯「あはは……。分かった。それじゃあ………」

 

四葉「ちょっと待ったーーーーッ!!!!まだろうそくに火を付けていませんよ!!!」

 

四葉がそう言うと、5人が蝋燭に火をつけていく。悟飯の年に合わせて、計18本もの蝋燭が立てられている。数が数であるため、綺麗に五等分することはできなかった。

 

 

 

 

 

再び電気を消し、悟飯が蝋燭に息を吹きかけて消す。再び悟飯の生誕を祝われると、悟飯はケーキを口に運ぶ。

 

無論、ただ食べるだけではなかった。二乃、三玖、五月がそれぞれ悟飯にケーキを食べさせようとしてくるものなので、いつものペースで食べることができなかったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

悟飯「(ありがとう……。君達がいてくれるだけで、僕は幸せだよ………)」

 

 

悟飯はこの幸せなひと時を噛み締めていた。それと同時に先程悟空に言われたことを思い出し、これからは常に気を引き締めていこうと心に誓った……。

 

 

 

 

 

 

ところが、これで帰宅とはいかなかった。二乃達が泊まるように駄々をこねていた訳ではない。

 

風太郎からメールが届き、何故か悟天が上杉家にいるとのこと。悟飯は上杉家に悟天を迎えに行った………。

 

 

 

 

らいは「あっ!孫さんこんばんは〜!」

 

悟飯「こんばんは……」

 

上杉家に入ると、何故か悟天がらいはにカレーを振る舞われていた。

 

風太郎「お前の弟が何故かいるんだ。早く連れて帰ってくれ」

 

らいは「お兄ちゃん!お客さんにそんな言い方はないでしょ!!」

 

そう言いながら、らいははお玉で風太郎の頭を叩く。少し鈍い音がしたが、大丈夫なのだろうか……?

 

らいは「悟天君には助けられたから、色々お礼をしてるんだよ!お兄ちゃんも孫さんに何かお礼しなよ?」

 

風太郎「そういや今日は悟飯の誕生日だったな。家庭の状況がこんなもんだから碌なものは用意できねえが、こんなのでよければ………」

 

風太郎が悟飯に用意したプレゼントは赤縁筆だった。今年は受験生だということで、縁のあるものを買ったのだろう。

 

悟飯「わーっ!ありがとう!」

 

悟天「……それじゃ、僕はそろそろ帰るね」

 

らいは「えー?もう帰っちゃうの?もう少しゆっくりしていきなよ〜」

 

風太郎「………(今日のらいは、なんか我儘だな……。珍しいこともあるもんだな………)」

 

悟天「ううん。今日は家で兄ちゃんの誕生日会があるから!」

 

らいは「そっか………」

 

らいはは少々寂しそうな顔をする。それにすぐに気付いた悟天はらいはにこう言う。

 

悟天「また今度遊びに来るよ」

 

らいは「ほんと?」

 

悟天「うん。僕はまだ学校には行ってないから、お勉強のない日なら」

 

らいは「じゃあじゃあ!連絡先交換しよう!」

 

悟天「うん。いいよ」

 

 

悟天とらいはが連絡先を交換したことを確認すると、悟飯は玄関の扉を開けて外に出る。

 

悟飯「それじゃ、お邪魔しました〜」

 

悟天「またね〜!」

 

らいは「うん!またいつでも来てね〜!」

 

 

 

 

 

風太郎「……なあ、らいは。まさかとは思うが…………」

 

らいは「ん?なーに、お兄ちゃん?」

 

風太郎「…………いや、やっぱりなんでもない」

 

らいは「ふーん?変なお兄ちゃん」

 

 

風太郎「……(悟天はまだ一桁だぞ…?流石にらいはが悟天に対してそんな感情は抱いていないはずだ……。そ、そうだよな……?)」

 

その真意は本人のみぞ知る………。

 




 ここでらいはの心情について解説します。らいはが悟天に対して恋愛感情を抱いてるから否かについて。

 らいはは悟天に対してそのような感情を持ち合わせているかと言われると微妙です。どちらかと言うと、大きくなったらいい男になりそうだから今のうちに確保しておこうみたいなそんな感じの考えです。

 悟飯、風太郎や五つ子との出会いのような形では、同級生にライバルが生まれてしまう可能性もあるが、小さいうちから手を打っておけば自分が有利になるという考えです。らいはの作戦は既に始まっています。

 もしもらいはの作戦が上手くいけばGTのようなチャラい悟天はきっと誕生しないでしょう……。多分ある意味悟飯よりもしっかりした一般人っぽくなるでしょう……。

 というか、YouTube上で映画の無断転載上がりすぎでは…?これはいけませんねぇ…(唖然)。消されてもゾンビのように蘇ってて草枯れる。まあ真のDBファンならそんなものに惑わされずに劇場に足を運びますよね?そうですよね?(圧)


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第64話 修学旅行

 前回のあらすじ…。

 悟飯達は無事に地球から脅威を排除した。ナメック星にいたメンバーの活躍によって、ナメック星のドラゴンボールを使えることとなり、ポルンガの力によって地球はメタルクウラ襲来前の状態に戻された。

 悟飯の素性は旭高校の全生徒に晒されてしまうことになってしまった。これから悟飯の学校生活はどうなってしまうのだろうか……?



風太郎とらいはが修学旅行に向けて買い物をしている時のこと……。悟飯はというと、武田に修学旅行用に買い物をしようという誘われたのだ。

 

武田「もうすぐ修学旅行だね。孫君は何を持って行くか決めてるかい?」

 

悟飯「いや、僕はまだだよ」

 

武田「そうかい。ならば僕のおすすめの品を紹介するとしようか」

 

悟飯「……それで?今日は何か聞きたいことがあるんじゃないの?」

 

武田「………流石だね。既に見破られていたか………」

 

悟飯は武田の呼び出しの真意を理解していたようだ。恐らく、悟飯の正体についてだろう。

 

武田「まさか、君がセルゲームに参加していた超人だとは思わなかったよ。お陰で僕の父も大騒ぎだよ」

 

悟飯「あはは……。できれば正体を晒したくはなかったんだけど………」

 

武田「それでも君は人の命を選んだんだろう?僕には真似できないね…。しばらくは孫君の周りは騒がしくなるだろうが安心してくれ。僕が父に頼んで孫君の正体を広めないようにすることをメール、書面等で全生徒に届けるように頼んでおいたよ」

 

悟飯「ありがとう……」

 

武田「その見返りと言っては厚かましいかもしれないが、君のことについて教えてもらいたい。君のその力や、敵の正体とか聞きたいことは山ほどあるが、君の話しやすいようにしてくれて構わない」

 

悟飯「………」

 

悟飯は、ここまで来てしまえばいっそ話してしまった方が楽だと判断した。特に武田のような人物ならば、悟飯が何故正体を隠して過ごしていたのかは察しがついているはずだ。

 

 

 

悟飯はまずは自身の生い立ちに関して話をする。父親である孫悟空がどんな人物なのかを簡潔に説明し、自分が今まで経験してきた過去を噛み砕いて話す。

 

無論、セルとの戦いは欠かさずに話した。

 

 

 

 

武田「………なるほど。君が宇宙人とのハーフだというのは少々衝撃的だな…。ますます僕の夢を叶えたくなってきたよ」

 

武田は実際に宇宙人が存在することを知ると、好奇心を露わにして自身の夢を叶えようという気持ちがさらに強くなったようだ。

 

武田「君は今まで大変だっただろう。地球を守りながら勉強にも励み、あれだけの成績を残した…。尚更僕も負けていられないね…………」

 

悟飯「……そうだね。今思い返しても、あの時は本当に辛かった………」

 

武田「そんな非日常を送っていれば、日常を求めるのも納得だね……。ならば今度の修学旅行、君は誰よりも楽しまなくてはならないね」

 

悟飯「えっ?」

 

武田「君が全力で修学旅行を楽しめるようにサポートしよう。そうと決まればまずは備品を買え揃えなくては!」

 

悟飯「えっ?ちょっと?武田君?」

 

武田「さあ付いて来たまえ!君に娯楽の素晴らしさを享受しよう!!」

 

武田も基本勉強に時間をかけてきたとはいえ、風太郎や悟飯のように他のものを犠牲にしてきたわけではないようで、ある程度の娯楽は知っているようだ。

 

武田「まずは何を買おうか?服は………修学旅行は制服での行動が義務付けられていたね……。ならば………」

 

武田と何を買うか迷っていた悟飯。主に食べ物関係で迷っていたのだが、そこに意外な人物が………。

 

 

らいは「あれ?孫さん?」

 

四葉「武田さんまで…!?」

 

武田「やあ、中野さんに……。君は?」

 

らいは「私、上杉風太郎の妹のらいはです!あなたはお兄ちゃんの友達ですか?」

 

武田「友達…?そんな簡単な言葉で語れるような関係ではないさ。上杉君と僕は1年生の頃から切磋琢磨して……(以下略)」

 

らいは「(あー…。つまりお兄ちゃんのライバル兼お友達ってことね)」

 

らいはのこの考えで大体合っている。

 

悟飯「四葉さん達はここに何しにきたの?」

 

四葉「私は五月の付き添いに!」

 

らいは「私はお兄ちゃんの付き添いです!」

 

武田「おや?上杉君も来ているのかい?彼はどこにいるんだい?」

 

らいは「お兄ちゃんならあっちのベンチに座ってると思いますよ?」

 

武田「そうか。ありがとう。上杉君も同じ班だし、せっかくだから彼も巻き込むとしよう!」

 

武田はややテンション高めで風太郎のいる方向へ歩き出す。悟飯も後を追おうと店を出るが…………。

 

 

 

 

 

 

 

悟飯「五月さん、何してるの?」

 

五月「わっ!?そそ、孫君!?何故あなたがここに!?」

 

悟飯「僕は武田君と買い物に。さっき何してたの?」

 

五月「何って……。私は試着を………」

 

悟飯「いや、五月さんはさっきこの前の格好で上杉君と話してたでしょ?」

 

五月のしていたあの格好とは、風太郎の思い出の子である"零奈"の変装のことである。

 

五月「……私は、ただ上杉君に気付いてほしいだけなんです。6年前、私達の中で誰と会ったのかを………」

 

悟飯「……もしかして、四葉さんのこと?」

 

五月「えっ…?何故孫君が……?」

 

悟飯「色々あってね……。なるほどね……。その気持ちは少し分かるけど、四葉さんにも四葉さんの都合があるはずだよ。ここは四葉さんに任せようよ?」

 

五月「………本当に、それでいいのでしょうか……」

 

悟飯「今はしばらく様子見しようよ。四葉さんには四葉さんなりの考えがあるだろうしね」

 

五月「むぅ……。分かりました。あの、そこでちょっと待ってて下さい」

 

悟飯「……?分かった」

 

悟飯は五月の指示通りに待機する。五月は試着室のカーテンを閉めて着替えているようだ。

 

 

 

 

悟飯「わっ……!!!!!」

 

五月「ど、どうですか……?」

 

なんと五月が大胆な行動に出た。実は悟飯が来る前に・・・

 

『ら、ららららいはちゃん!これなんてどうでしょう!!』

 

『い、五月さん!これはいくらなんでもアダルトすぎるよ!!』

 

『こ、こここ高校生ですからね!これくらい普通です!』

 

なんて会話があったのだが、悟飯は知る由もない。

 

はっきり言おう。五月は悟飯に対して大胆にも下着姿を披露している。しかも無茶苦茶アダルトなやつを。

 

 

悟飯「な、なにしてるの!?」

 

悟飯は急いで目を逸らそうとするが、五月が悟飯の手を掴む。

 

五月「………ちゃんと見てください……」

 

悟飯「……!!?」

 

いつになく甘えるような声で悟飯に訴えかける。これには悟飯にも応えたようで、恥ずかしいが五月をまじまじと見る。

 

悟飯「………い、いいんじゃないかな…?」

 

五月「……(あぁあぁあああっ!?私はなんて大胆なことを!!)」

 

五月も我に返り、自分が何をしているのかよく分かったようだ。

 

悟飯「な、なんで僕に見せようと…?」

 

五月「そ、そんなの……。あなたに見てほしいからに決まってるじゃないですか………」

 

 

 

 

 

武田「孫君、そこで何をしているんだい?」

 

悟飯「あっ、ごめん。すぐ行くよ!」

 

五月「あっ……」

 

悟飯は武田の一声を利用して退散する。

 

五月「…………もっと見てくれてもいいのに………。私、そんなにスタイルよくないのでしょうか………」

 

そんなことはなく、悟飯は単に恥ずかしいから逃げ出しただけなのだが、悟飯ほどではないにせよ、鈍感な五月はそれに気付くことはなかった。

 

 

 

 

 

 

武田「おや?孫君、顔が赤いよ?どうしたんだい?」

 

悟飯「えっ?は、走ってきたからじゃないかな〜?あはは………」

 

武田「そうかい?君がただ走る程度で疲れるとは思わないけど………」

 

風太郎「おい、俺は早く帰りたいんだが」

 

武田「釣れないことを言わないで、君も楽しもうじゃないか!」

 

 

こうして、武田、風太郎、悟飯の3人によるショッピングはそれなりに続いた。悟飯は特に何か買ったわけではないが、あまり友人とこうした娯楽をすることはなかったので、新鮮で楽しかったという………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

修学旅行当日になった。悟飯はメタルクウラの件以来、クラスメイトの引っ張りだことなって大変な思いをしていた。特に女子からは同じ班になろうというお誘いが数多く寄せられたのだが、主に3人の鋭い眼差しによってそれは阻止された。

 

そして、京都駅に向かう為に、東海道新幹線の名古屋駅に旭高校の三年生は集合していた。

 

一花「いよいよ始まるね」

 

四葉「おーい五月〜!新幹線乗るよ〜!」

 

五月「はーい!」

 

二乃「ひとまずハー君の班に付いてくわよ」

 

一花「でもフータロー君が嫌がってたよ?」

 

三玖「そのハー君やめて……」

 

五月「上杉君!清水寺行きましょうよ!私達の班と一緒に!」

 

風太郎「はっ?いや、今回は班ごとに行動だろう?」

 

五月「まあそう言わずに!」

 

確かに、四葉には四葉なりの考えがあるのかもしれない。しかし、五月は風太郎に、6年前に会ったのは四葉だと気づいてほしいという思いが強かったようだ。

 

二乃「えっ……?」

 

三玖「五月、どうしたんだろう……?」

 

 

 

 

場所は移って新幹線の車内。五つ子はトランプで暇潰しをしていた。だが、三玖は朝早くから起きてパンを作っていたようで、時々船を漕いでいた。

 

しかし、ただの遊びのトランプだったはずが、どういうわけか勝ったら何でも命令できる権利を付与するとのことで、四葉以外の姉妹はバチバチと擬音が鳴りそうなくらいに睨み合っていた。

 

四葉「(これ、トランプだけの盛り上がりだよねっ!?)」

 

 

 

 

 

 

新幹線は無事に京都駅に着き、生徒達は駅の空いているスペースで集合している。

 

「大きい荷物はこちらでホテルに送っておく。貴重品だけは持っていくように。諸注意は以上だ」

 

連絡事項が一通り済まされるとその場で解散となり、1日目の班行動の開始だ。本格的に始まる修学旅行に生徒達は騒ついているのだが、二乃は何故か怪訝な素振りを見せていた。

 

五月「どうかしましたか?」

 

二乃「……ううん。多分気のせいだわ。ところで、ハー君の班はどこに行くのかしら……?」

 

四葉「みんなは行きたいところある?」

 

二乃「それはやっぱ、旅と言えばお洒落なお店よね〜!古いお寺より楽しいわ!」

 

一花「分かってないなぁ。せっかくの京都だよ?京都ならではの美味しい食べ物を食べさせたいよ」

 

五月「私もその意見に賛同ですが、今はもう少しこの駅内であの日の………、いえ!散策してもいいかと思います」

 

二乃と一花はそれぞれの想い人と回ることを想像しながら語るが、五月だけはその2人とは違った反応を見せる。その様子に気づいた四葉が問いかける。五月はその問いに応えようとするが、風太郎の班が出発したとのことで、この話は中断された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

前田「なんだここ?」

 

武田「学問の神様が祀られている神社さ。前田君、君の成績は見るに堪えないんだから、深〜く祈りたまえ」

 

前田「んだとコラァ!!」

 

悟飯「抑えて抑えて……」

 

風太郎「お前らうるせぇ!!」

 

 

 

 

二乃「……なんか地味ね」

 

一花「こらこら……」

 

五月「あっ、移動するみたいですよ」

 

四葉「隣にも神社があるみたいだね」

 

五つ子班は風太郎班を追跡している真っ最中だ。4人は恐らくここら辺で何かを仕掛けたいのだろう。

 

三玖「自由昼食は今日しかないのに…。やっぱり班行動が最大の難関……」

 

四葉「大丈夫!きっと2人きりになれるチャンスはあるはずだよ!!」

 

三玖は朝イチで作ったパンを悟飯に食べてもらいたいようで、その機会を伺っているようだ。そして四葉はそんな三玖のサポートに回っているようだ。

 

 

 

四葉「わあっ!!これずっと鳥居なの!?」

 

五月「写真では見ていましたが、やはり実物は壮観ですね」

 

二乃「映えるわ〜。ほら、あんた達もピース」

 

カシャ

 

四葉「……なんだか姉妹だけなのも貴重だよね!」

 

一花「あー……。五人だけってなかった?」

 

四葉「花火の時の写真は撮ってないっけ?」

 

五月「それこそ小学生の頃の修学旅行以来ですよ」

 

四葉「じゃあ今度は全員で…「悟飯、もう上かな?」」

 

三玖は焦っているのか、一人でに呟くように問いかける。

 

二乃「なかなか見えないわ」

 

一花「男の子は速いから……」

 

四葉「よーし!私達も頑張ろう!」

 

そう意気込んだはいいものの、立て続けに存在する階段に四葉以外は苦戦している様子だった。四葉は体力のない三玖をサポートしつつも先頭を歩く。

 

二乃「あの子は気楽でいいわね……」

 

一花「あれが四葉のいいところだよ」

 

二乃「それもそうね」

 

 

 

そしてある程度登ったところで、別れ道が現れる。二つとも山頂に続いているようで、風太郎班が使ってない道を選択してしまえば入れ違いになる可能性もあった。その為5人はどちらの道に行くか迷っていた。

 

五月「もうお昼ですし、あそこのお店でお食事を取りましょう!」

 

三玖「待って、お昼は………」

 

二乃「何よ?他に食べたいものがあるの?」

 

四葉「……!」

 

既にすぐ近くにあるお店で昼食を取る流れになり、なんとか三玖の都合に合わせられないかと四葉は思考を巡らせあることを思い出す。

 

新幹線での賭け事。あれは四葉の勝利となって幕を閉じた。それはつまり、四葉は4人に対して何でも命令できる権利を有していることを意味していた。四葉はこれを存分に利用しようと考える。

 

四葉「二手に分かれよう。私と三玖が右のルートで、一花と二乃と五月が右のルートね!そうすれば上杉さん達と入れ違わずに済むよ!」

 

二乃「ちょっと待ちなさい」

 

一花「勝手に決められちゃ…」

 

四葉「何でも命令できる権利ッ!!勝者の言うことは絶対ッ!!!」

 

四葉は見事にその権利を行使し、三玖に満面の笑みを向けた。

 

 

 

 

 

 

ということで二手に分かれた。一花達左ルート陣は………。

 

二乃「あんたが余計な提案をしたせいで変なことになっちゃったじゃない」

 

一花「はは……。まさかこんな使われ方をするとは思わなくて………」

 

二乃「人の流れから見てあっちが正規ルートよ。もしかしたら先に合流されるかもしれないわ………」

 

五月「あっ、お手洗いです!丁度行きたかったのでこっちで正解でした!」

 

二乃「この先にはないのよね〜…。私も行っておこうかしら」

 

一花「じゃあ私はここで待ってるね」

 

二乃と五月はトイレに入るが、一花はその前で待機する。

 

一花「………フータロー君って何が好物なんだろ…?」

 

一花はその間、風太郎に対する貢ぎ作戦を練っていた。だが風太郎の好物がよく分からないので、何をあげればいいのか考えている。

 

一花「………!あれ?珍しい…」

 

一花は、普段見ないような珍しいものを見つけたらしく、スマホを取り出して写真を撮り、姉妹のグループL○NEに送信する。

 

一花「……ん?地面に何か文字が………。えっと……?なにこれ?」

 

一花は怪しいとは思いつつも、ある行動に移す………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

五月「もうお腹が空きましたね……」

 

二乃「ハー君達はお昼ご飯どうするつもりなのかしら?」

 

五月「………あれ?一花は?」

 

二乃「…………待ってるねって言ってたわよね……?」

 

 

 

 

 

 

 

 

一方で右ルート陣。こちらは三玖が早々にダウンしてしまったが、四葉が背負うことによって通常よりも速く登っていた。

 

三玖「ごめんね四葉………」

 

四葉「気にしないで!三玖は今日の為に頑張ってきたんだから、絶対に成功させないと!!」

 

三玖「四葉…………」

 

三玖は四葉に背負われながら頂上にたどり着いた。

 

四葉「あれ?一花?もう着いてたんだ!」

 

三玖「早いね…………」

 

頂上に着いたので、三玖は四葉に降ろしてもらって自立する。

 

一花「……………」

 

四葉「一花?おーい?」

 

一花「……ん?ああ……。まあそんなところだ」

 

四葉「……??ところで、一花は孫さん見なかった?」

 

一花「ソン……?誰のことだ?」

 

四葉「ええ!?孫悟飯さんだよ!!まさか忘れちゃったの!?」

 

一花「………そんなわけないだろう!?孫悟飯……?孫悟飯!?まさか、孫悟空の息子のことか!?」

 

四葉「う、うん……。そうだけど……」

 

三玖「……?どうしたの一花?具合でも悪いの?」

 

四葉「きっと演技の練習じゃない?」

 

三玖「ああ、そういう…。仕事熱心だね一花………」

 

一花「ははは……。まあそんなところ」

 

 

 

風太郎「よし!一番乗り!!」

 

風太郎も頂上に着いたようだが、四葉達が通ったルートから来た。いつのまにか追い越していたようだ。

 

四葉「あっ!上杉さん!!孫さんを見ませんでしたか?」

 

風太郎「悟飯か?もうすぐ来ると思うが…………」

 

一花「…………」

 

風太郎「ん?どうした一花?」

 

一花はゆっくり風太郎に歩み寄る。

 

風太郎「……?一花……?」

 

 

スッ…

 

風太郎「!?ッ」

 

四葉「い、いいい、一花ッ!?」

 

三玖「えええ!?(修学旅行でフータローに何か仕掛けそうだったけど、白昼堂々ここでするつもり!?)」

 

一花は両手で風太郎の頬を捕らえ、顔をゆっくりと近づける。

 

風太郎「お、おい!?一花!?何するつもりだ!?」

 

風太郎もこれからされることを察したのか、一花に離れるように指示するが、一花の顔はどんどん近づいて来る。もうすぐで唇同士が接触するという時だった…………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一花「チェーーーーーンジッッ!!!!!!

 

 

ピカッ!!!!!!

 

 

風太郎「………!!!!!」

 

 

一花の口からビームのようなものが放たれ、そのビームは風太郎の口に伸びる。その瞬間に周囲が強く光り出した。

 

四葉と三玖は何が起きたのかまるで分からず困惑していた。

 

 

 

 

 

 

 

風太郎「ふっ…!ふふふ…!ふははははははは!!!地球人とはいえ、男の体を手に入れたぞ!!これでいくらかマシに動けるはずだッッ!!!!!」

 

四葉「う、上杉さん…?」

 

三玖「勉強のし過ぎで頭おかしくなっちゃったのかな……?」

 

一花「いっつつ……!おい一花!!お前何し…………………えっ…?」

 

一花は風太郎の姿を見て呆然としていた。まるで信じられないものを見たかのような顔である。

 

一花「な、なんで俺が目の前にいるんだ…?それに俺、背が縮んだか…?つーか胸重ッ!!どうなって…………」

 

一花は自分の体を確かめるように胸を触る。

 

一花「……!!!?な、なんだよこれ…?!ちょっと待て………?」

 

一花は周りを見渡す。風太郎の他に、四葉と三玖の姿を確認した後に髪を触って髪の長さを確かめる仕草をする。

 

一花「…………ないはずのモノがあってあるはずのモノがない……?ま、まさかとは思うが…………………」

 

風太郎「よし!戦闘力を高め………………って、しまったぁあああッ!!どうせなら孫悟飯と入れ替わればよかったではないかッ!!くそ!!!俺としたことがなんたるミスッ!!一生の不覚ッッ!!!」

 

四葉「上杉さん、本当にどうしたのかな?」

 

三玖「旅行テンションってやつじゃない?」

 

一花「おい一花!!お前の中身は一花なんだろうッ!?俺の体返せッ!!!」

 

風太郎「ふふふっ…!返すわけ………」

 

 

グゥ〜……

 

風太郎の腹から音が鳴る。

 

風太郎「………この体は食べ物に飢えているようだな……。よし、食糧補給だ!久々にチョコレートパフェを食べたいなぁ!!」

 

風太郎は突然そう言い出して走り出してしまった。

 

一花「おい待っ……ッ!!」

 

 

ドサッ!!

 

一花は何もない地面で転んでしまう。

 

一花「(くそッ!!足が短くなっちまったのを考慮せずに走ろうとしたからこけちまった…!!逃したッ!!!)」

 

四葉「一花!?大丈夫!?」

 

一花「あ、ああ……。それと四葉、俺は一花じゃなくて………………」

 

四葉「それにしても、今日の上杉さんは凄いテンション高いよね……」

 

三玖「確か林間学校の時もあんな感じだったよね」

 

 

 

 

二乃「はぁ…………やっと頂上だわ……」

 

四葉「あっ!二乃!」

 

三玖「追いついたんだ」

 

二乃「あっ、一花!なんで私達を置いて先に行くのよ!!」

 

五月「行くならせめて一言お願いします!!」

 

一花「いや、だから俺は一花じゃ………」

 

 

 

 

(いや、待てよ?このまま俺の正体を告げたところでこいつらは信じるか?俺だったら信じねえ…。悟飯の件でいくら非現実的なことに理解があるとしても、今回は特に異常だ。それに中身が風太郎だなんて言ってみろ…?もし信じてもらったとしても…………)

 

 

 

 

『あ、あんた…!入れ替わったことを良いことに一花の身体にあんなことやこんなことを……!!!!』

 

『不純です!!』

 

『最低…………』

 

『上杉さんのハレンチッ!!!!』

 

 

 

 

一花「(……ってことになりかねん…。ここは一花を演じ続けるしかねえ…!!)」

 

一花「ご、ごめーん!急に走り出したくなっちゃってさ!」

 

二乃「なに四葉みたいなこと言ってんのよ…。上杉に会いたいなら素直にそう言いなさいよ」

 

四葉「でもその上杉さんが変なテンションでどこかに行っちゃったんだよ」

 

二乃「ああ…………」

 

五月「…まあ仕方ないでしょう。久々の宿泊行事で浮かれているんですよ」

 

一花「(お前らの中での俺はどう映ってるんだ一体…………)」

 

もうお気づきの方もいるだろう。一花と入れ替わった何者かが風太郎と入れ替わったことにより、何者かは風太郎の体に、風太郎は一花の体に入り込んでしまったのである。

 

二乃「もう!花火大会の時もそうだけど、一言言ってよね!」

 

一花「す、すま……、ごめんね〜……。お姉さん次から気をつけるよ…(自分で自分をお姉さんって言うのなんか恥ずいな…………)」

 

風太郎は慣れない一花の口調に苦戦しながらもなんとか一花を演じる。流石に姉妹の愛があるとしても、体が一花で中身が風太郎だと見抜くのは非常に困難だろう。

 

前田「うぅ………。もう動けねえ……」

 

悟飯「前田君、大丈夫?」

 

武田「全く…。下のお店で食べすぎだよ」

 

前田「孫の方が食ってたはずなのに……お前の胃はどうなってるんだコラ……」

 

風太郎班である悟飯達も頂上に到着した。なお前田は悟飯に背負われている。

 

武田「あれ?上杉君がどこに行ったか知らないかい?」

 

四葉「それが、変なテンションで先に行ってしまいまして…………」

 

武田「変なテンション…?上杉君は行事ではしゃぐようなタイプではなかったと思うけど……?」

 

悟飯「それがそうでもないんだよ。林間学校の時も文句を言いながらも結構ノリノリだったし」

 

武田「硬派に見えて意外とミーハーなのだね……」

 

一花「……!(そうだ!生き物のエネルギーってやつを感じることのできる悟飯なら!!)」

 

悟飯「………?」

 

一花の中にいる風太郎は、悟飯になんとか事情を察してもらおうと悟飯をジッと見つめる。

 

悟飯「……?どうしたの、一花さん?」

 

一花「………はぁ…。ちょっとこっち来い」

 

一花の姿をした風太郎(以降、風太郎と記す)は悟飯を呼び出し、2人だけに聞こえる程の声量で話しかける。

 

一花「悟飯…!俺だ!風太郎だ!俺は一花じゃないんだ!信じられないかもしれないが、体は一花だが中身は上杉風太郎なんだ!」

 

悟飯「……?なんの冗談?それとも演技の練習?」

 

一花「生き物のエネルギーってやつで俺を探ってくれ!そうすれば嘘かどうか分かるはずだ!」

 

悟飯「……?うん?」

 

悟飯は風太郎の指示通りに気を探る。しかし、体そのものは一花のもの。そもそも気が変化しているのであれば、悟飯はその異常に気づくはずだ。それに気づかないということは、気は一花のもののままなのだ。

 

悟飯「………気は一花さんのものだけど………?」

 

一花「(嘘だろ…!?エネルギーも一花のままなのか…!?)待て!本当に上杉風太郎なんだ!俺は一花じゃないんだ!」

 

悟飯「うーん…。なら僕と上杉君だけが知っていることも知っているよね?それを答えることができたら信じるけど………」

 

一花「よしのった!」

 

悟飯「………(一花さんはそこまでして僕を騙したいのだろうか…?意図は分からないけど、ここは付き合うとしよう)」

 

悟飯「じゃあ問題を出すね?五月さんを本人だと見抜く為に編み出した合言葉は!」

 

一花「デミグラス、ハンバーグ!!」

 

悟飯「………合ってるね。でもこれだけじゃまだ信じられないかなぁ…。そうだ!上杉君の苦手な食べ物は?」

 

一花「生魚だ!」

 

悟飯「………(おや…?この情報は上杉君は極端に人に広めたがらなかったはず……。それを一花さんに話したと考えにくい………)これは流石に分からないでしょ?僕と上杉君が初めて会話した時の台詞は?」

 

一花「『おい学年1位、俺と勝負しろ』だ!!」

 

悟飯「………!?」

 

そう。風太郎は1年生の1学期中間テストの後、自分と同じくオール満点を取った悟飯に対して勝負をしかけたのだ。その時に放った台詞なのだ。

 

これは悟飯と風太郎しか知らないはずだ。それはつまり……。

 

悟飯「(まさか、本当に上杉君……?でも、一花さんと中身だけが入れ替わるなんて……………)」

 

悟飯「……ねえ上杉君(?)、体が入れ替わる前に相手は何か言ってなかった?」

 

一花「ああ言ってたぞ。確か、『チェンジ!!』って大声で」

 

悟飯「………!!!」

 

悟飯はその台詞に身に覚えがあった。ナメック星に行った際に、悟空と戦い悟空と入れ替わったあの…………。

 

悟飯「……ギニューか…」

 

一花「……?なんだって?」

 

悟飯「いや、なんでもないよ。君は上杉君なんだね?信じるよ」

 

一花「……!信じてくれるのか!流石俺の親友だぜ!!」

 

悟飯「………それで、相手は上杉君の体にいるんだね?」

 

一花「ああ!間違いないぜ!」

 

悟飯「………分かった。みんなに心配をかけないために上杉君はそのまま一花さんを演じてて」

 

一花「ああ、分かった」

 

悟飯「……よし。武田君に前田君。僕は上杉君を探してくるから2人で好きなところ回ってて!!」

 

前田「はっ?おいコラ!!」

 

武田「行ってしまったね………」

 

悟飯は"風太郎の気"を探りながら駆け出して行った。

 

四葉「……?孫さんまでどうしたんだろう?」

 

二乃「一花、ハー君と何内緒話してたのよ?」

 

一花「な、なんでもないよ!ちょ、ちょっと聞きたいことがあってね!(やり辛え……。頼むから早く俺の身体を連れてきてくれ…………)」

 

なんと、ギニューによって一花と何かが入れ替わり、その後に風太郎と入れ替わってしまったようだ……。

 

風太郎と一花は、無事に元の体に戻ることができるのであろうか……?

 




 修学旅行編は多分シリアスありません。原作とは違ってギャグ寄りです。…やっぱりシリアスもあるかも…?ここは敢えて曖昧にしておこう…。
 ドロッドロなやつを期待していた方には申し訳ない。このヒロインの分散状態では誰も闇落ちしないと判断致しました。二乃は姉妹想いだし、三玖は健気だし、五月は真面目だから……ね?一花は風太郎側だし、四葉は超譲歩姿勢だし。ここから誰かを狂わせろって言われても無理難題定期(そんな定期ない)

 何やらまた伸びた……?今度はドラゴンボールの方の映画効果だろうか…?まあいいや。555まであともう一歩ですなぁ……。

 さて、なんと一花の体に風太郎が入り込んでしまっていますねぇ……?これはある意味原作の修学旅行よりも大惨事ですよ。ということで、次回の次回はサービスサービスぅ!(絵がないからサービスというのかは微妙だけれども)


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第65話 チェンジ

 前回のあらすじ…。
 遂に始まった修学旅行。二乃は悟飯にどうアタックするかを試行錯誤し、三玖はどうにかして昼までに、自分で焼いたパンを渡そうと奮闘し、五月は、どうにかして風太郎に、6年前に出会った子は四葉だということを気付かせようと行動する。

 そんな中、なんと一花がギニューと入れ替わってしまったことが発覚。そしてギニューと風太郎が入れ替えられ、風太郎は一花の体に入ってしまった。悟飯はこれに気付いたのだが、一花本人は無事なのだろうか……?

 シリアス?そんなものはない(無慈悲)


やっほー!最近は売れっ子女優になりつつある中野一花だよー!今日はみんな大好き修学旅行に来ているんだ。私は姉妹と京都を満喫しているよ!

 

 

 

「……ゲコッ」

 

……………本来ならね……。

 

 

私は何故か蛙になっていた。たまたま近くにあった鏡で自分の姿を見たら、あら不思議!なんとナメクジみたいな触覚の生えた蛙がいるではありませんか!

 

…………それが私だった……。

 

どうしてこうなっちゃったんだろう…。というか私の体はそのまま走っていっちゃったし…………。

 

こんなことになるなら好奇心に任せてあんなことをするんじゃなかった……。

 

 

 

 

 

 

遡ること数分前………。

 

 

 

一花「あっ!珍しい蛙がいる!写メ送ろっと………あれ?嘘!蛙が文字を書いてる!?」

 

一花はとても珍しいカエルを見つけ、そのカエルはなんと文字を書いている。その様子に釘付けになり、しばらく様子見する。そして出来上がった文章が………。

 

一花「なになに?『次の言葉を言うとあなたにラッキーが訪れる』…ふーん?蛙なのに面白いこと考えるね〜?じゃあお姉さんが第一被験体になってあげよう!」

 

そして、次の言葉を発言する。

 

一花「えっと…?ちぇんじ…?あ、changeね!」

 

「ゲコッ‼︎」ピカッ‼︎

 

一花「きゃっ!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

一花「ふふふ…!ふははははっ!!!!かかったな地球人の女よ!この体はしばらく借りていくぞ!!ふははははははッ!!!!!!」

 

 

こうして、一花と蛙が入れ替わったしまったのである。

 

 

 

(本当にどうしよう…。このままじゃ人に踏み潰されかねないし、森に入ったら蛇とかがいるかも……………)

 

一花は碌に動けずにじっとしていた。

 

そんな時である……。

 

「あら?何この蛙?触覚が生えてる…?珍しいわね……」

 

「!?っ」

 

(あ、あれ!?この人って…!!)

 

 

「………」

 

「うん?」

 

一花は蛙の体を必死に使いながら文字を書いていく。

 

「うそぉ…!この蛙、人間の文字を理解しているの…?これ研究所とかに寄付したら物凄い金額もらえそうね……。って、助けて………?『ソンゴハン』って人がいたらその人に引き渡してほしいですって?」

 

「………」コクコクッ!

 

蛙になった一花は必死に頷いて目の前の人と意思疎通を図ろうとする。

 

「………なんの縁か分からないけど、私も丁度その人に用があるのよ?感謝しなさいよ?」

 

(良かったぁ……。これでなんとかなりそう……。こういう非日常的なものは悟飯君に任せるのがいいよね…。でもこの人、悟飯君に何の用があるんだ、う…?)

 

一花はその少女の肩の上に乗せてもらい、安全に移動することに成功する。しかし、元の体を取り戻せなければ一生蛙のまま過ごすことになってしまう………。

 

 

 

 

 

 

 

悟飯「……………」

 

一方その頃、悟飯は風太郎と入れ替わったと思われるギニューを探して走り回っていた。

 

 

悟飯「(くそ!蛙になったからといって見逃さなければ良かった…!早く見つけて体を返させないと…!!あとは僕の体も狙うだろうから、そこも気をつけて……………ん?)」

 

高速で走っていた悟飯が突然足を止める。風太郎の気を感じ取ったのだ。その場所には…………。

 

悟飯「…………喫茶店?」

 

………それがあった。

 

 

 

悟飯はその喫茶店に入る。適当な席に座ってメニューを悩んでいるフリをする。

 

 

 

風太郎「んー!うまい!美味いぞ!!ここのパフェは美味い!!地球の食べ物を侮っていたぞ!!もしもフリーザ様に再びお会いできるのなら、地球を侵略することを提言しようっ!!」

 

しっかりとギニューがいた。だが、チョコレートパフェを楽しんでいるようだった。

 

「お、お客様…?そんなに食べてよろしいのですか…?代金の方は……」

 

風太郎「ああ、すまん。金はちゃんと払おう。これだけ美味いものなんだ。値段通りとは言わず…………。うん?これか?」

 

ギニューは財布を取り出してその中身を確認する。すると………。

 

風太郎「な、なにぃ!?金がない!?こいつ、さては貧乏だな!?」

 

ギニューは体の持ち主である風太郎が貧乏であることを知らなかったようで、お会計ができない状態に陥っていた。

 

「それは困りましたね……。場合によっては無銭飲食ということで、警察の方に対応をお願いすることもありますが…………」

 

風太郎「くっ…!ここで捕まるわけにはいかん!!」

 

悟飯「あっ…!」

 

ギニューは席から飛び上がり、店を後にする。店員はギニューを追いかけようとするが……。

 

悟飯「ま、待ってください!彼の代金なら僕が払います!!!」

 

「あなたがですか…?」

 

悟飯「はい!彼とは友人ですので……。元々は僕が奢ることになってたんですよ!!」

 

「そ、そうなのですか…?かしこまりました……。チョコレートパフェ、フルーツパフェ、抹茶パフェ、あんこパフェそれぞれ3点ずつで7,200円になります」

 

悟飯「………(食べすぎでしょ………)」

 

悟飯は支払いを済ませた直後に颯爽と店を後にし、風太郎の気を追跡する。

 

 

 

 

風太郎「ぜぇ……ぜぇ………!な、なんだこの体は…!!走るだけですぐに息切れが生じる……!!これなら前の女の方がずっとマシだったぞ……!!地球人は女の方が身体能力が高いのか……!?」

 

 

悟飯「…………見つけたぞ」

 

風太郎「あっ……?お、お前は………!!孫悟空か………!?」

 

悟飯「残念ながら違うな…。僕はその息子だ」

 

風太郎「孫悟飯の方か!!なら丁度良い!!貴様の体を……ぎゃふん!?」

 

悟飯は風太郎の体に手刀を当てて気絶させる。こうすることによってギニューを逃さず、風太郎の体を傷つけずに確保することができるのだ。

 

悟飯「…………あとはあの蛙と上杉君を連れて来れれば完璧だ……。一旦ホテルに戻るとしよう……」

 

悟飯は気絶したギニュー……風太郎の体をおんぶし、自分達の泊まるホテルに直行する。部屋に入ったら、逃げられないように体を拘束し、体の入れ替えもできないように口を塞いだ。側から見たら風太郎を誘拐したようにしか見えないが、状況が状況なので致し方ない。

 

 

 

一方で、悟飯が去った後の五つ子達はというと…………。

 

三玖「私、どうしよう……。お昼までにはこれを渡したかったのに…………」

 

三玖は悟飯にパンを渡す機会を失って落ち込んでいる。

 

四葉「だ、大丈夫だよ!!上杉さんを見つけたらきっと戻ってくるって!」

 

二乃「上杉のやつ……!三玖を泣かせるなんて…!!会ったら1発お見舞いしてやるんだから!!」

 

五月「二乃!それはやりすぎです!」

 

一花「……(勘弁してくれ…。あれは俺じゃないんだっての……。言えねえけど………)」

 

武田「……困ったね。僕達はどうしようか?」

 

前田「回る場所はお前が決めてるんだから、そのまま回るしかねえだろコラ」

 

武田「しかし、あれは上杉君と孫君を楽しませる為のプランであって………」

 

前田「あっ?俺は?」

 

武田「君は対象外だ」

 

前田「喧嘩売ってんのかコラッ!!!」

 

一花「お前らうるせえッ!!!」

 

「「「「「「えっ……?」」」」」」

 

一花「あっ………(しまった!つい…!)」

 

周りのみんなは一花が普段言わないような乱暴な言葉に驚いている。

 

一花「ほ、ほら!喧嘩したら折角の修学旅行が台無しだよ!前田………くんも笑顔……ね!」

 

前田「な、中野さんがそう言うなら……」

 

一花「(頼む悟飯…。早く俺の体を連れ戻してくれ……!!!)」

 

 

 

 

 

「何かしら?騒がしいわね…」

 

「ゲコッ(わ、私だ…!悟飯君とフータロー君以外はいる……!私と入れ替わったあの人は何をしてるんだろう…?)」

 

「何?あっちが気になるの?」

 

「ゲコッゲコッ‼︎」

 

「そう?じゃあ……」

 

 

 

「お、おい!あれって………」

 

「ミスターサタンの娘のビーデルさんじゃね!?」

 

「マジかよ!?なんでこんなところにいるんだよ!?」

 

ビーデル「やっば………」

 

そう。蛙の姿になってしまった一花を匿っているのはビーデルだった。しかし、何故ビーデルが悟飯に用があるのだろうか?グレートサイヤマンの正体はまだ割れていないはずだが……。

 

 

「ビーデルさん!」

「サインくださいお願いします!」

「きゃ〜!本物よ〜!!こっち向いて〜!!」

「なんですかその蛙!!新種のペットですか!?」

 

「ゲコッ‼︎(うわ!押さないで!落ちちゃうから!!)」

 

 

 

二乃「えっ?嘘っ!?やばっ!超やばいんですけど!!あれ超有名人がいるじゃないのっ!!私も写真お願いしてくるわ!!」

 

四葉「びーでる…?もしかして、あのミスターサタンさんの娘さんの!?わ、私も〜!!!!」

 

前田「だってよ武田。どうすんだよコラ」

 

武田「英雄とされている人の娘さんか…。一目見てみたいかもね………」

 

五月「一花一花!あのビーデルさんですよ!もしかしたらビーデルさんも一花のことをご存知かもしれません!!一度行ってみましょうよ!!」

 

一花「いや、今はそんな気分じゃ……」

 

五月「こんな機会は滅多にないですよ!行きましょうよ!!」

 

五月の力強さに負け、一花の姿をした風太郎は成す術もなく引っ張られる。

 

一花「少しは俺の話を聞けぇええええええええッッ!!!!!」

 

三玖「……有名人…?なんだ、悟飯じゃないのか…………」

 

一方で、三玖は悟飯にパンを渡すことに失敗した為に拗ねていた。

 

 

 

ビーデル「……あなた達、邪魔よ。早く退いて」

 

「「「「えっ……?」」」」

 

ビーデル「早く退きなさい!!道のど真ん中に群がってたら他の人にも迷惑でしょう!?そんなことも分からないの!?」

 

「「「「「すみません……」」」」」

 

ビーデルの熱心なファンだと思われる数十人はそそくさとビーデルから離れていく。二乃はそれをチャンスだと言わんばかりにビーデルに接近する。

 

二乃「あ、あの!一枚だけでも写真いいですか!?」

 

ビーデル「ごめんなさい。パパとは違って私はそういうの苦手なの」

 

二乃「そ、そう言わずに……」

 

四葉「二乃!ビーデルさんが嫌がっているから…!」

 

二乃「むぅ……。分かったわよ……」

 

「ゲコッゲコッ」

 

二乃「……ん?あれ!その蛙……」

 

ビーデル「あら?この蛙のこと知ってるの?」

 

二乃「まあ…。実は姉から送られてきたL○NEに………」

 

そう言いながら二乃は慣れた手つきでスマホを操作し、トーク画面をビーデルに見せた。

 

ビーデル「……………この蛙…。そうね。多分この子だわ」

 

四葉「なんでビーデルさんがその子を…?」

 

ビーデル「うーん………。なんか分からないけど、この子相当頭がいいのよ?文字を書けるの」

 

四葉「ええ!?本当ですか!?」

 

ビーデル「ええ。なんなら見てみる?」

 

ビーデルは蛙の姿をした一花を地面に下ろすと、書きやすいように木の枝を取り寄せてくる。

 

「ゲコッ………」

 

蛙は不慣れな手つきながらも、しっかりと意味を成す文章を構築していく。

 

二乃「……なになに?『入れ替わってるから注意して……?』」

 

一花「…!(まさか、あの蛙が一花…?)ねえ、もう少し何か書かせてみようよ!」

 

二乃「それもそうね。なら……」

 

一花「そうだ!君の名前………そうだ!風太郎って名前を聞いた時になんて呼ぶ?」

 

二乃「はぁ?何よその質問?」

 

一花「い、いいじゃん!なんとなく気になったんだから!」

 

「ゲコッ」

 

蛙は不慣れながらも文字を書いていく。

 

二乃「……『フータローくん』だって。一花と同じね」

 

一花「………じゃあ次は、夢を書いてみようか!」

 

四葉「え〜?蛙さんに夢なんてあるのかな〜?」

 

五月「……でも、知能を持った蛙がどのような夢を持つのか気になりますね……」

 

蛙は不器用ながら文章を完成させる。

 

二乃「女優…?まるで一花ね……」

 

四葉「ほぼ一花だね………」

 

五月「というか雌だったんですね……」

 

一花「………ねえ!その子私にくれないかな?」

 

ビーデル「えっ?でも、この子は孫悟飯君っていう子に会いたがってるのよ。どういう繋がりかは知らないんだけど……」

 

二乃「ええ!?なんでハー君と!?」

 

ビーデル「分からないわ。でも用があるみたいよ?って、もしかして孫悟飯君と知り合いなの?」

 

二乃「えっ…?ま、まあ……」

 

ビーデル「ほんと?じゃあその孫悟飯君のところに案内してくれないかしら?私も丁度用事があるんだけど……」

 

二乃「あ〜……。でも、今はどこにいるのか分からないんですよね〜……」

 

ビーデル「あらそう……。ならいいわ」

 

「………」

 

蛙も心なしか怯えているように見える。

 

一花「…(もしも本当にあの蛙の中身が一花なら………)ちょっと近くで見せてもらってもいいですか?」

 

ビーデル「いいわよ。そもそも、私のペットじゃないし………」

 

 

 

一花「………なあ、お前一花なのか?」

 

一花の姿をした風太郎が周りには聞こえない声量で蛙にそう問いかける。

 

「……!」

 

蛙の姿をした一花は警戒しているのか、返事をしようとしない。

 

一花「実は俺、風太郎なんだ…!なんかいきなりチェンジって叫ばれたら俺の体がどっか行っちまったんだ……!!」

 

「ゲコッ⁉︎(えええ!?じゃあ、私の体にフータロー君が入りこんじゃってるの!!!?)」

 

一花「とにかく俺について来い…!悟飯が俺の体を連れ戻して俺達を元に戻してくれるはずだ…!」

 

「ゲコッ‼︎(よ、良かった……。一生このままなのかと思ったよ………)」

 

 

 

ビーデル「そうだ。せっかくだから、これも渡しておくわね」

 

一花「っとと…!」

 

ビーデルがホイポイカプセルを風太郎に投げ飛ばす。

 

ビーデル「それを使うと動物の言葉が分かるんですって。その子になら使えるんじゃない?専用アプリを入れると使いやすいそうよ?」

 

一花「えっ……?いいんですか?これ、結構高いでしょ?」

 

ビーデル「お金なんて気にしなくていいわ。それと、今更気付いたけどあの中野一花だったのね。私はあなたの演技、結構好きよ。他の女優と違って自然な振る舞いが上手だと思うわ。これからも頑張ってね」

 

一花「あ、ありがとうございます……」

 

ビーデル「それじゃ、私はこれで」

 

そう言うと、ビーデルは早歩きでその場を後にした。

 

二乃「…………羨ましいわ」

 

五月「きゃーー!!!ビーデルさんが一花を認知してましたよ!!これでもう一花も大スターですね!」

 

四葉「よかったね!一花!」

 

一花「あっ、うん…(つーか、ビーデルって誰だよ?)」

 

家庭の事情によってテレビかない為、サタンは知っていてもビーデルまでは知らない風太郎だった。

 

ピコン

一花「……!」

 

そんな会話をしている時、悟飯から連絡が来た。どうやら風太郎の体を捕えたらしい。

 

一花「……ごめーん…。私は一旦ホテルにこの子を置いてくるから、先に行ってて!」

 

二乃「えっ?ちょっと一花!?」

 

四葉「ま、待ってよ一花!!それなら私が!!」

 

四葉は風太郎を追いかけるように走る。

 

二乃「………なんでこうなるのよ」

 

五月「ま、まあすぐに戻ってきますよ!私達は今のうちに昼食を取りましょう!」

 

三玖「昼食…………パンを渡せなかった…………」

 

五月「あっ!!私はそんなつもりでは………!!」

 

 

 

 

 

 

一花の姿をした風太郎はホテルに到着し、本来風太郎達が泊まる部屋に来ていた。そこには…………。

 

 

悟飯「やあ、上杉君」

 

一花「…………側から見たら、俺を誘拐してるヤバい奴じゃねえかお前」

 

悟飯「ははは…。上杉君の体を傷つけずに捕まえるにはこうするしかなかったんだよ…………」

 

椅子に手足を縛り付けられていた風太郎の姿が……。と言っても、風太郎の体の中身はギニューなのだが…。どうやらまだ気絶しているようだ。

 

悟飯「………ところで、なんで四葉さんも?」

 

四葉「ちょちょちょ!?孫さん、上杉さんに何してるんですか!?」

 

一花「はぁ……。仕方ない。姉妹の中で唯一理解を示してくれそうなのはお前だけだからな……。説明するぜ」

 

風太郎は四葉に対しては誤魔化すことを諦め、噛み砕いて説明した。

 

簡潔に言うと、一花が謎の蛙と入れ替わってしまい、その後に一花と入れ替わった蛙が一花の体と風太郎の体を入れ替えた。そして今こうなっている。

 

四葉「………………えっ?そんなことってあります…?私、何がなんだか………」

 

四葉はこの複雑な状況に、頭から煙が出そうなくらいに脳をフル回転させているようだか、それでも理解し兼ねているらしい。

 

一花「……とにかく、今はこっちが上杉風太郎、この蛙が一花、俺の体がギニューっていうやつのなんだよ」

 

四葉「……でも、流石に体が入れ替わるなんて…………」

 

「ゲコッゲコッ‼︎」

 

一花「……ほれ見ろ。これ」

 

四葉「……ん?」

 

四葉は風太郎に差し出された画面を確認した。一花のスマホは例の動物翻訳装置と連動したアプリを起動しており、蛙になった一花の言葉を人間の言語化することができるのだ。

 

『四葉、お子様パンツはそろそろ卒業しないとダメだぞ〜?』

 

…………そう翻訳されていた。

 

四葉「なっ…………!!!?ま、まさか本当に!?!?」

 

一花「だからそう言ってるだろ?」

 

四葉「な、なるほど…!ようやく理解しました!でも、どうやって元に戻るんですか?」

 

悟飯「それはギニューにもう2回チェンジしてもらうしか………。いや、一応もう一つ方法があるといえばある」

 

一花「何?それは本当か?それが本当ならそっちの方がいいんじゃねえか?」

 

悟飯「………ただ、そっちの方法は少し時間がかかるんだよね」

 

一花「なんでもいい!元に戻せるなら早くしてくれ!!どうやるんだ!?」

 

「ゲコッ‼︎」

 

悟飯「………それは、ドラゴンボールを集めることだよ」

 

一花「ドラゴン……ボール……?なんだそれ?」

 

悟飯「手のひらサイズで、それぞれ1〜7個星が描かれている玉があるんだよ。それを7個全て揃えることによって願いを3つ叶えることができるんだ」

 

四葉「そ、そんな凄いものがあったなんて…………」

 

一花「マジか!?じゃあ………いや待てよ?その玉ってどこにあるんだ?」

 

悟飯「流石上杉君だ。そう、ドラゴンボールは世界中に散らばっているんだ。だから全部集めるのに相当時間がかかるんだよ。一応その玉の場所が分かるレーダーがあるにはあるんだけど、ある程度近づかないと分からないしね…………」

 

一花「はぁ…………。やっぱり都合良くそんなに事は上手く行かないか……」

 

四葉「………じゃあ、もしもそのぎにゅう…?っていう人を説得できない場合は………………」

 

悟飯「うん。今すぐに入れ替えることは無理だろうね。だから僕は今からでもドラゴンボールを集めに行こうと思っているんだけど……………」

 

一花「……………」

 

風太郎は、以前の武田と悟飯と共にショッピングをした時のことを思い出す。

 

 

 

 

『おい武田。何故そこまでお前が張り切る?』

 

『君、孫君の親友なんじゃないのかい?孫君はこの世界を守る為に自分の身を削りながら守ってきたんだよ?そんな彼を少しでも行事の時だけでも楽しませようと考えないのかい?』

 

 

 

 

 

一花「……なあ、一花。修学旅行の間はその姿で我慢してくれねえか?」

 

四葉「な、何を言っているんですか!上杉さん!?」

 

「ゲコッゲコッ」

『ええ!?私に蛙でいろと!?それとも、私の体に興味深々なのかな?フータロー君?』

 

一花「それは断じてない。ほら、悟飯は今まで俺達を守る為に頑張ってくれてただろ?せめて修学旅行の時は気兼ねなく楽しんでほしいって思ってな…」

 

四葉「いや、それは無理じゃないですか?だって一花が蛙になっちゃってるんですよ?それに敵が上杉さんの体を乗っ取ってるんですし………」

 

一花「……確かにッ!!そもそも一花の修学旅行が台無しになっちまうじゃねえかッ!!!」

 

風太郎「………はっ!!ここはどこだ!?………なッ!?お前らは…!!」

 

風太郎の姿をしたギニューは、目の前にいるメンツに驚く。それもそうだ。今まで自分がチェンジしてきた顔が勢揃いなのだから。

 

一花「やっと起きたか。早速だが俺の体を返してもらおうか。ついでに一花のも」

 

「ゲコッ⁉︎」

『ついでって酷くないッ!?』

 

悟飯「さあ、大人しく返すんだ」

 

風太郎「……ふ、ふふふっ…!何を言うか!私が孫悟飯の体とすり替わってしまえば何の問題もない………ってあれ?手足が縛られて動けないッ!?」

 

悟飯「どうだ?僕の方に向けなかったら、僕と入れ替わることもできないだろう?」

 

風太郎「くぅぅ……!!小賢しい真似を……!!」

 

悟飯「小賢しいのはどっちだッ!!人を騙した挙句、勝手に体を入れ替えやがって……!!!」

 

風太郎「だが体は返さん!!蛙はもうウンザリだ!!意地でも返さん!!また蛙に戻るなら、地球人として細々と暮らした方がよっぽどマシだ!!!」

 

悟飯「返さないって言うなら………」

 

風太郎「おっと!手荒な真似をする気か?この体がどうなってもいいならやればいいさ!!貴様にはできるかな?」

 

普段はフェアな戦士であるはずのギニューだが、長年の蛙生活が余程嫌だったのか、普段は使わないような小狡い手を使う。

 

悟飯「卑怯な…!!」

 

風太郎「ふははははッ!!どうだ!!手も足も出まい!!がっ………!!」

 

悟飯「!!」

 

ギニューは突然、糸が切れたように気絶してしまう。その様子を不審に思った悟飯は、警戒しながらも風太郎の体の様子を探る。気を感じるので絶命したわけではないようだ。なら急にどうしたというのか……?

 

風太郎「……」

 

四葉「お、起きた………?」

 

風太郎「よっ!悟飯!」

 

悟飯「………??」

 

風太郎「オラだよ!孫悟空だ!!」

 

悟飯「お、お父さん……!?」

 

風太郎の体が突然悟空だと名乗るものなので、悟飯は少々困惑してしまう。

 

風太郎「ああ!あの世で様子を見させてもらったけど、ギニューがあまりにも狡い手を使うもんだから、ちょっとちょっかい出させてもらったぞ!!」

 

悟飯「いや、待ってくださいよ…?何故お父さんがコチラに来てるんです?」

 

風太郎「ああ……。それは意識だけをこの体に入れてるんだ。今、精神世界でギニューと戦ってる。決着がつくまで時間がかかっちまいそうだ。その間、おめぇらは旅行を楽しめ。じゃあ!」

 

言いたいことだけ言うと、またすぐに気絶してしまった。

 

一花「…………お前の親父無茶苦茶過ぎねえか?死んでもこっちに戻ってくるし、人の体に入り込むし………」

 

悟飯「ははは……。でも頼りになるでしょ?」

 

四葉「確かに………」

 

「ゲコッ」

『じゃあ私はしばらくはこのままかぁ………』

 

一花「そうするしかねえみたいだ……」

 

四葉「…………戦いっていつ終わるんでしょうね…?」

 

一花「………今日中に終わるのか…?」

 

悟飯「分からないな…。精神世界で戦うなんて初耳だし…………」

 

四葉「……じゃあ、お風呂はどうするんです?」

 

「……!!!」

 

ここに来て、重大な問題発生!そう!風呂をどうするかだ!!このホテルは幸いにも各室に浴室がある。だが!!風太郎は異性である一花の体にいる!これが何を意味するか……。

 

一花「…………まあ、1日くらい入らなくても大丈夫だろ」

 

四葉「上杉さん……」

 

「ゲコッ……」

『フータロー君……………』

 

四葉「流石にダメです!!お風呂にはちゃんと入って下さい!!!」

 

一花「いやいや四葉!!お前バカか!?冷静に考えてみろ!!この体で風呂に入るってことは、つまり………。い、一花の………を見ることになるんだろ!?そいつはまずいだろ!!?」

 

風太郎はいつもよりも短い前髪を弄りながら自身の考えを主張する。

 

四葉「でも女の子がお風呂に入らないのも大問題ですよ!!」

 

悟飯「…………上杉君に目隠しをすればいいんじゃない?」

 

四葉「えっ?」

 

一花「いや、確かにそれなら見ずに済むかもしれないが…………」

 

悟飯「それで、四葉さんが一花さんの体を洗うってのはどうかな?そうすれば問題ないと思うけど…………」

 

一花「…………はっ?」

 

四葉「あ、あの……?孫さん……?それ本気で言ってます?」

 

悟飯「でも、一花さんの裸を見ずに体を洗う方法なんてそれくらいしかないと思うけど………」

 

「ゲコッ」

『………もうお嫁に行けない…………』

 

四葉「〜っ……!!が、我慢して一花!!こうでもしないと……ね?」

 

一花「はっ?おい四葉?お前何をしでかす気だ?」

 

四葉「う、上杉さん…!今日のお風呂は、私がお供させていただきます…!!」

 

一花「はぁ!!!!??無理無理無理ッ!!!!何考えてるんだお前ェ!!!!?」

 

四葉「わ、私だって恥ずかしいですよ…!!でもこれは一花の為です!が、我慢して下さい!!!」

 

「………ゲコッ」

『まあ………体が入れ替わっちゃってる時点で今更か………。四葉、私は覚悟を決めたよ(フータロー君以外の男の子だったら絶対に無理だったよ……)』

 

四葉「わ、私も覚悟を決めたよ…!」

 

とは言いつつも、四葉は無茶苦茶顔を赤くしている。まるで茹蛸のようだ。

 

一花「…………待て待て…?えっ?マジでやるの?」

 

「ゲコッ」

『…………ねえフータロー君。そういえば、トイレはどうしてたの?』

 

一花「トイレ……?……………そういや、さっきからずっと我慢してたんだわ…。やべ、漏れそう………」

 

四葉「だーーーっ!!!!それはいけません!!早くトイレに!!!」

 

一花「お、おい!?だがそんなことをしたら!!」

 

四葉「漏らす方が大問題ですよ!早くトイレに行ってください!!」

 

悟飯「………大変なことになっちゃったなぁ…………」

 

「ゲコッ…」

『でもこれは逆にチャンスかも…?これを理由に責任を取ってもらうって作戦はどうかな、悟飯君?』

 

悟飯「………………それはいくらなんでも理不尽じゃないかなぁ………」

 

今回の修学旅行。原作とは違ったベクトルで大変な展開となってしまった。果たして、風太郎たちは元の体を取り戻せるのか!?そして、悟空とギニューの戦いの行方は如何に!?

 

次回、四葉と風太郎の混浴!?次回はサービスすっから、ぜってぇ見てくれよな!!

 




 前にも言った通り、今回の騒動はギャグ寄りです。あまりシリアスな展開にはなりません。次回はワンチャンR-18に引っかかるかも…?流石にないと思いますけどR15は確定かなぁ…?つーわけで、フータロー君はジャンプラブコメ主人公特有の展開(というかToLOVEる的なオイシイ展開)に遭遇します。それもこれも全てギニューって奴の仕業なんだ………。

……展開迷走してない…?大丈夫…?(スランプになりかけるとよく起こる現象)

 ちなみに、悟空vsギニューの過程は書くつもりはないっす。今回の修学旅行編は戦闘したくないんじゃ……。

 ギニューのチェンジの仕方は、超アニメでやっていたやつを引っ張り出してます。


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第66話 女の子って怖いね

 前回のあらすじ…。

 ギニューの策略によって、蛙の体になってしまった一花は、そこに偶々居合わせていたビーデルに救出される形でなんとか保護され、無事姉妹達と合流することはできた。一花は自分の正体を一花の体に入ってしまった風太郎、悟飯、事情を聞いた四葉には気付いてもらえ、悟飯も無事風太郎と入れ替わったギニューを確保。しかも悟空が風太郎の体の精神内に介入したことによって、なんとか希望が見えてきた。

 ところが、ここで一花の体に関して問題が発生した。風呂はどうするのか…?色々あって、一花(風太郎)が目隠しをして四葉に体を洗ってもらうことになったのだが………。

 えっ?それなんてプレイ…?



未来五月「孫君、コーヒー入りましたよ」

 

未来悟飯「ありがとう」

 

 

未来組の2人は、零奈がまだ目を覚さないので、ブルマ家にてゆっくりしていた。トランクスの方はそろそろタイムマシンの燃料が完成しそうだとのことで、もう少しで元の時代に帰れるそうだ。

 

未来五月「ナメック星の方は平和に戻ったんですよね?」

 

未来悟飯「ああ。五月は大丈夫だったかい?こっちも大変なことになってたみたいだけど………」

 

未来五月「こちらのトランクス君とベジータさんが無双していたので、私は無事でした」

 

未来悟飯「ははは…。まあフリーザの兄だから、ベジータさんにとっては思うところがあったんだろうなぁ……」

 

そこまでは普通に会話していたのだが、未来の五月が突然未来の悟飯に腕を回して抱き締める。

 

未来悟飯「……?えっと……?」

 

未来五月「もう……。心配させないで下さいよ……。不安だったんですから…」

 

未来悟飯「……だから言っただろ?必ず帰ってくるって」

 

2人は自然とそういう雰囲気になり、互いの顔を近づけ……………

 

 

 

 

 

 

 

 

トランクス「へー?じゃあ未来の世界には悟天もいないの?しかも18号さんが悪人だなんて想像もつかないや……」

 

トランクス(未来)「逆に俺も18号が善人になってるとは驚きだよ。しかもクリリンさんと結婚してるなんて……っておや?悟飯さんに五月さん、どうかしましたか?」

 

未来悟飯「……いや、なんでもないよ」

 

未来五月「空気を読んで下さい……」

 

トランクス(未来)「えっ…?俺達、何かしましたか……?」

 

未来悟飯「いや……。気にしなくていいよ」

 

トランクス(未来)「……?そ、そうですか?悟飯さんがそう言うなら………」

 

トランクス「そういえば、"こっち"の悟飯さんは修学旅行に行ってるんでしょ?いいなぁ………」

 

未来悟飯「修学旅行ね…。そういえば、五月の修学旅行はどんな感じだったの?」

 

未来五月「あはは……。色々ありましたからね……。こちらの世界では平和に終わってくれるといいのですが………」

 

 

 

 

 

 

 

 

未来五月が心配しているような問題は起きていない。しかし、この世界ではまた別の問題が発生していた。

 

四葉「う、上杉さん…?目隠ししましたね…?」

 

一花(風太郎)「お前が強く結んだから大丈夫だろ……」

 

風太郎はギニューによって一花の体と取り替えられてしまい、今の一花の中身は風太郎になっているのだ。

 

そんな風太郎は、目隠しで視界を厳重に管理されている。

 

四葉「目は塞いでありますけど、匂いとか嗅がないで下さいね…!?絶対ですよ!!」

 

一花「そういうこと言うなッ!!俺をなんだと思ってやがるッ!!」

 

四葉「………では、服を脱がせますね…」

 

四葉は一花の服を慎重に脱がしていく。風太郎はなんとも言えない気持ちになりつつも無心になる。

 

スルッと布が落ちる音がするが、風太郎は何も考えないことにする。

 

 

最初こそ風太郎は風呂に入ることは反対したのだが、慌てふためく四葉に押されに押されてしまってこうなってしまったのだ。風太郎自身も情けないと感じている。

 

四葉「………ぜ、全部脱げましたね……」

 

四葉が服を脱がせ終わると、風太郎と共に風呂場に入る。

 

四葉「で、では、まずは頭を洗いますね…!」

 

一花「それくらいは目が見えなくても自分でできる」

 

風太郎は四葉の申し出を断って自分で髪を洗う。普段は大雑把に洗うが、女優業で容姿にも気を使うであろう一花のことを考えて、普段よりも丁寧に洗う。

 

四葉「あっ、トリートメントもしっかりしないとダメですよ…!」

 

一花「分かった…………」

 

2人はそれ以降はほぼ言葉を交わさなかった。それも無理のないことで、体は四葉と一花とはいえ、精神は風太郎と四葉だ。つまり、異性と近距離で混浴しているも同然なのだ。

 

一花「……(四葉の野朗…!変なことを言うから……!!)」

 

風太郎は先程言われてしまったことを変に意識してしまい、いやでも男とは違う乙女特有の匂いに反応してしまいそうになる。今は体が女性だったのが幸いか、テントが張るような事態にはならない。

 

四葉「じゃ、じゃあ次は体を洗いましょうか!!」

 

一花「はっ…?いやいや、それはやめておかないか?」

 

四葉「ダメですよ!か、体もしっかり洗わないと!!」

 

風太郎は四葉に流されるがままに体を洗ってもらう。

 

一花「ひゃ…!く、くすぐってえよ四葉…!」

 

四葉「へ、変な声を出さないで下さい!」

 

一花「いや、そんなこと言われても、くすぐったくて…!ひゃん…!!!」

 

四葉「た、頼みますから変な声を出さないで下さい!!」

 

こうして体は洗い終わった。風太郎は精神的に疲労困憊状態なのだが、湯舟にも浸からなければならない。目が見えないので四葉が体を支えながら湯船に浸かる。

 

一花「…………おい、何故お前も一緒に入るんだ?」

 

四葉「い、いいじゃないですか!お湯に入らないと寒くて風邪を引いてしまいそうです!」

 

四葉は顔を赤くしながらも風呂に浸かる。その間、互いに無言を貫く。というか、恥ずかしくて会話どころではないのだ。

 

一花「わ、悪い四葉。俺はもう上がるから…!」

 

四葉「ま、待ってください!そのまま上がろうとしたら……」

 

ツルッ

 

一花「おわっ!?」

 

四葉「危ないっ!!!」

 

風太郎は足を滑らせ、四葉はそれを庇うが、四葉も巻き込まれて共に転倒してしまう。

 

四葉「あいたたた………。大丈夫ですか、上杉さ……ッ!!!?」

 

一花「いててて……。た、助かった…。うん?なんだこの柔らかいの?四葉、風呂にクッションか何か持ち込んだのか?」

 

四葉「〜〜〜〜ッ!!!!!」

 

四葉のタワワに実ったメロンが、風太郎の頭部を、緩衝材になるような形で受け止めていた。それはつまり…………。

 

四葉「……………う、上杉さん…。今のはなかったことにして下さい………」

 

一花「はっ?なんだよ?って、なんだこれ?」

 

四葉「……〜〜〜っ!!!!」

 

風太郎は何か違和感を感じたようで、突起物のようなものを触る。

 

四葉「お、お願いですから……!じっとしてて下さい……!!!!」

 

一花「あ、ああ……。すまん」

 

四葉「(冷静になれ四葉…!い、今は中身が上杉さんでも、体は一花なんだから…!そう…!これは姉妹のスキンシップ…!やましいことは何もない…!!でも中身が上杉さんって………。違う違う!!相手は一花…!相手は一花…!!)」

 

四葉は自分にそう言い聞かせ、なんとか冷静さを保とうとした。

 

 

 

 

 

 

 

 

一花「はぁ………。風呂に入るだけで疲れる…………」

 

四葉「…………上杉さんのえっち。責任取ってください……

 

一花「…ん?何か言ったか、四葉?」

 

四葉「な、なんでもありません!!」

 

一花「……?それならいいが……」

 

風太郎と四葉は長い時間をかけてようやく風呂から上がり、風太郎の視界もようやく元に戻った。

 

 

 

 

 

 

 

一方その頃、走った一花と四葉を追いかけてきた二乃と三玖と五月は……。

 

 

二乃「全く……。一体どうしたってのよ一花…………」

 

五月「さっきから様子が変ですし……」

 

三玖「………ブツブツ」

 

二乃「ちょっと三玖。いつまで拗ねてんのよ……………。パンなら別に昼じゃなくてもいいじゃない。大食らいなハー君ならいつ渡しても…………。待ちなさい?ひょっとして、一花は気付いたのかも?」

 

五月「……?何にですか?」

 

二乃「盗撮犯に追われていることよ」

 

五月「と、盗撮犯?」

 

二乃「京都駅にいた頃からずっと感じてたの。間違いないわ。修学旅行生がターゲットにされるって前にニュースで見たもの」

 

五月「……確かに、先日の試写会で有名になった一花を狙っているとしたら、あり得ない話ではないですね……」

 

二乃「いーや、多分ターゲットは一花だけじゃないわ。私のことも狙ってるはずよ」

 

五月「……何故二乃なのですか?」

 

二乃「なんかよく分からないけど、失礼ねあんた」

 

 

 

 

二乃達が歩いて部屋の前まで来た。事前に渡されたカードキーを使って部屋に入室しようとしたその時……。

 

 

 

カシャ

 

五月「は、ははは…。二乃が変なことを言うから、私まで幻聴が聞こえてきました……………」

 

二乃「あれ〜?お、おかしいわね〜?今は一花いないはずなのに…………。で、でもいくらなんでもホテルの中でなんて……………………」

 

 

二乃はシャッター音の聞こえた方向に目を向けると、そこには光る黒い物体が………………。

 

カシャ‼︎

 

 

「「きゃあああああああああッ!!!!!!!」」

 

 

 

 

 

悟飯「どうしたのみんな!?」

 

悲鳴を聞いて悟飯が即座に駆け付けてきた。

 

二乃「と、とと、盗撮犯よ!!代わりに捕まえてくれない!?」

 

悟飯「分かった!あっちだね!」

 

悟飯は二乃に指定された方向に走っていく。そちらに1人の気を感じたので、恐らくそいつが犯人だろう。

 

悟飯「……あれ?前田君?」

 

前田「な、なんだ……。お前か」

 

悟飯「………まさか君が盗撮犯だったなんて……………」

 

前田「違うわコラッ!!これは上杉に頼まれたんだよ」

 

悟飯「上杉君に?」

 

前田「ああ。なんでも、5人で揃っている写真を撮って欲しいって」

 

悟飯「上杉君が…………。アルバム撮影するのもいいかもしれないけど、こっそり撮るのはちょっと…………」

 

前田「上杉にそう頼まれたんだよ!」

 

悟飯「はぁ…。取り敢えず、特に問題はなさそうだね……」

 

悟飯は盗撮犯の正体と意図が分かったところで引き返す。

 

ビーデル「ねえ、さっき悲鳴が聞こえたけど大丈夫?」

 

二乃「え、ええ……」

 

五月「私達は大丈夫です…」

 

悲鳴を聞いてビーデルも駆けつけてきたようだ。

 

三玖「……!悟飯!」

 

三玖が悟飯を見つけると、突然目に生気を取り戻して駆け寄る。

 

三玖「これ、本当はお昼に食べてほしかったんだけど…………」

 

悟飯「………これは」

 

悟飯は紙袋から物を取り出すと、そこにはクロワッサンが………。

 

悟飯「これ、三玖さんが作ったの?」

 

三玖「うん。悟飯に食べてほしくって」

 

悟飯「じゃあいただきます」

 

二乃「えっ?今食べるの?」

 

悟飯はすぐに三玖が焼き上げたクロワッサンを口の中にいれる。

 

悟飯「……うん。クロワッサンらしくしっかりとサクサクした生地になってていいね。シロップも塗っているのか、程よい甘さが口に広がって美味しいよ!随分上達したね……」

 

三玖「うん。悟飯に喜んでほしかったから…………」

 

 

二乃「むむむっ。この雰囲気、いただけないわね」

 

五月「まあ良かったじゃないですか。三玖が無事にパンを渡せて」

 

二乃「まあ、そうかもしれないけど………」

 

ビーデル「………へえ、君が孫悟飯君なのね…………」

 

悟飯「えっ?はい、そうですけど……」

 

ビーデル「ちょっとあなたに聞きたいことがあるのよ。こっちに来てくれる?」

 

悟飯「……?はい?」

 

 

二乃「………怪しいわね。女狐の匂いがするわ」

 

五月「…………そうですね。これは監視する必要がありそうです」

 

三玖「むむっ…。私と悟飯の邪魔をした。いくら有名人だからといって重罪。切腹」

 

二乃「それは流石にやりすぎよ……」

 

二乃達はこっそりとビーデル達の後をつけていく。

 

 

 

ビーデルと悟飯はひと気のないところに移動した。

 

ビーデル「さて、自己紹介がまだだったわね。私はビーデル。Mr.サタンの娘って言えば分かるかしら?」

 

悟飯「Mr.サタンってあの…?あの人に娘さんなんていたんだ……………」

 

ビーデル「そう、いたのよ。それで、私はあなたにちょっと聞きたいことがあって会いに来たのよ」

 

悟飯「会いに来たって………。そもそもなんで僕の名前を知ってるんですか?」

 

ビーデル「それは、あなたの学校の理事長から情報をもらったのよ」

 

悟飯「いっ!?」

 

世の中というのは金で動いてるもの。サタンの娘であるビーデルには莫大な財産が存在し、その一部を使って理事長から情報を買ったのだ。

 

悟飯「わざわざそんなことをして僕になんの用ですか?」

 

ビーデル「それはね……。これよ」

 

ビーデルは慣れた手つきでスマホを操作して、ある動画を悟飯に見せた。

 

悟飯「………いっ!!!?」

 

ビーデル「この投稿はもう既に削除されちゃったけど、たまたま見つけて保存できたから良かったわ……」

 

その動画の内容は、悟飯が超サイヤ人に変身し、メタルクウラ達と戦っている動画だった。ほとんどカメラで捉えることはできなかったものの、悟飯が超サイヤ人になる瞬間はしっかりと記録されていた。

 

ビーデル「単刀直入に聞くわね?あなたがグレートサイヤマンなんでしょ?」

 

悟飯「……………あなたの要求はなんですか?」

 

ビーデル「なんか凄い警戒されているわね……。別にとって食いはしないわよ。あなたにちょっとお願いがあってね…………」

 

悟飯「………なんですか?」

 

ビーデル「あなた、前チャンピオンの孫悟空の息子らしいじゃない?今度天下一武道会があるんだけど、そこで現チャンピオンの娘と前チャンピオンの息子が出場するとなると、物凄く盛り上がりそうじゃない?」

 

悟飯「えっ?天下一武道会……?」

 

天下一武道会といえば、沢山いる観客の中で世界中から集まった武術の達人と競う大会だと母から聞いたことがあった。

 

ビーデル「あっ、もし出場しなかったら、手を滑らせてこの動画をネットに公開しちゃうかもしれないわね〜」

 

悟飯「ま、待ってくださいよ!!出ます!!出ますから!それだけはやめて下さい!!」

 

ビーデル「ほんと!?約束だからね!これで天下一武道会は盛り上がること間違いなしね!!相手がつまんなそうだからホントあなたが参加してくれると助かるわ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

二乃「へぇ…。なんでハー君に用があるのかと思えば、ストーカーだったのね」

 

悟飯「に、二乃さん!?」

 

そこに、こっそり後を付けていた二乃が姿を現した。

 

ビーデル「ストーカーって……人聞きが悪いわね」

 

二乃「はっ?やってることがストーカーそのものでしょうが。しかも情報を買ったですって?ガチストーカーじゃないの、キモっ」

 

ビーデルが良からぬ手段で悟飯を特定し、脅迫に近い形で天下一武道会の出場を促すものなので、二乃は先程と打って変わって敵対心全開でビーデルと話す。

 

ビーデル「何よ?私は才能がある人に天下一武道会に出場するように"お願い"してるんだから、あんたには関係ないでしょ?」

 

二乃「しつこい。いくら顔が良くてもしつこい女はモテねえんだよ。とっととここから消えろよ」

 

二乃はハイライトをオフにした状態でビーデル相手に強く出る。

 

ビーデル「はぁ?それが人に物を頼む態度?義務教育ちゃんと受けてきたのかしら〜?」

 

二乃「それあんたが言う?犯罪紛いのことをしてハー君に近づいたあんたが??」

 

並の人間なら、最初の二乃の威嚇だけでも萎縮してしまうが、ビーデルは数々の凶悪犯相手に勇敢に立ち向かった、謂わばヒーローのような人物。ちょっとした威嚇程度で引き下がるわけがないのだ。

 

悟飯「ちょ、ちょっと!2人とも!」

 

二乃「Mr.サタンの娘で、少し顔がいいからって調子に乗ってんじゃねえよ。とっとと失せろよ」

 

ビーデル「あーら?あなたこそ自分の容姿に自信過剰なんじゃないかしら?調子に乗ってるのはあなたの方じゃなくて?」

 

二乃「はっ?」

 

ビーデル「何よ?なんか文句ある?」

 

五月「ふ、2人とも!落ち着いてください!!」

 

三玖「…………これはもう誰にも止められないよ、五月」

 

五月「諦めるのが早すぎます!!」

 

ビーデル「なんなのあなた?やたらと悟飯君を庇っているようだけど、悟飯君とどんな関係なのよ?」

 

二乃「あーら、いい質問ね!そんなに知りたいなら教えてあげるわ!」

 

ビーデルの質問に、二乃は突然笑顔になって悟飯の腕を掴んでこう宣言する。

 

二乃「私は孫悟飯君の彼女兼未来の花嫁の中野二乃でーす☆ということで、ハー君のストーカーなら諦めなさい。既に席は埋まってんのよ」

 

おめぇの席ねえからッ!のような勢いでビーデルに向かって高らかに宣言する二乃。

 

五月「はっ?」

三玖「はっ?」

 

しかし、言葉に約2名が過剰に反応する。

 

五月「何を言ってるのですか二乃!!その席は私のです!!間違っても二乃ではありません!!」

 

三玖「五月でもない。悟飯の奥さんに相応しいのはこの私。2人は悟飯を振り回して迷惑をかけそうだからダメ」

 

ビーデルと二乃の口喧嘩だったはずが、姉妹3人の男の子取り合いに打って変わってしまった。あまりの急展開にビーデルは呆然としている。

 

 

 

ビーデル「………………ねえ、悟飯君」

 

悟飯「………はい」

 

ビーデル「いつまでもこの状態を放置してると、そのうち刺されるわよ?」

 

悟飯「ははは…。ごもっともです……」

 

ビーデル「はいはい!確かにあんな手荒な真似をした私も悪かったわ」

 

ビーデルは言い争いを無理矢理中断させる為に両手で叩いて自身に注目を浴びさせる。

 

二乃「……何よ急に」

 

ビーデル「あんな形で脅迫するのは確かにやり過ぎた。それについては謝るわ」

 

二乃「…随分あっさり引くのね。ハー君程のいい男なんて他にいないのに」

 

ビーデル「別にそういう意図はないから……。ちなみに、天下一武道会で優勝すると、賞金で1000万ゼニーもらえるのよ?」

 

悟飯「えっ?それ、本当ですか?」

 

ビーデル「ええ。準優勝でも半分の500万ゼニー、3位で300万ゼニーって感じで、優秀な成績を残せば賞金が獲得できるのよ?」

 

悟飯「へ、へぇ……」

 

ビーデル「ちなみに、天下一武道会に出場してくれれば、この動画は消してあげるわよ?あと、ご存じの通り私はMr.サタンの娘でもあるの。だからどの企業もちょっとお金を出せばある程度の要求は聞いてくれるのよ?だから、あなたが出場してくれるなら、今後あなたの正体に関わる動画が出回った時は"お願い"して消すこともできちゃったりするかもしれないわね〜。それじゃ、大会楽しみにしてるわね」

 

ビーデルは天下一武道会の賞金について端的に紹介すると、そのままその場を去っていった。

 

ビーデルが最後に言い残した言葉……。悟飯が天下一武道会に出場すれば、今後悟飯の正体に関する情報が出た際に手を加えることができることを意味していた。これは悟飯にとってもメリットができてしまったようだ。

 

二乃「………………結局何がしたかったのかしら、あいつ…………」

 

三玖「二乃、態度豹変しすぎ」

 

二乃「仕方ないでしょ!!ハー君の生活を脅かそうとしてたのよ!!むしろそれで怒らない方がおかしくない!?」

 

五月「だとしても、二乃は二乃でやりすぎですよ……………」

 

悟飯「(写真を残されるのはまずいな……。でも今後ネットに上がったら消してくれるっていうのはありがたいかも…。平穏な生活の為にも天下一武道会に出場した方がいいかもな………)」

 

二乃はこの一件以来、ビーデルの事が嫌いになってしまったようだ。嫌いというよりは、敵として認識し始めたと言った方が正しいかもしれない……。

 

 

悟飯は再び自分達の泊まる部屋に戻った。

 

悟飯「……あれ?」

 

風太郎「よっ!」

 

悟飯「も、もう終わったんですか…?」

 

風太郎「ああ!ちょっとしぶとかったけど、なんとかなったぞ!」

 

悟空は精神世界でギニューを倒すことに成功したようだ。

 

悟飯「じゃあみんなを連れてきます!」

 

 

 

 

 

 

 

 

一花「はぁ…………。やっと元に戻れるのか……………」

 

「ゲコッ」

『このまま一生蛙として過ごさなきゃいけないのかと思って焦ったよ……』

 

悟飯は一花の姿をした風太郎と蛙の姿をした一花を連れてきた。

 

風太郎「よし、みんな揃ったな。取り敢えずどこでもいいからオラの…………じゃねえな。風太郎の体に触れてくれ」

 

一花と風太郎は、悟空の指示通りに肩に触れる。

 

風太郎「はぁぁああああ……!!!」

 

風太郎の体内には、ギニューの精神があるからか、悟空でもボディチェンジ能力を使用することができるようだ。肩に触れていた2人も光り、しばらくするとその光は収まった。

 

風太郎「………あれ?俺は元に戻ったのか………?」

 

一花「わ、私の手……!私の顔だ…!!良かったぁ……!!!」

 

「ゲコッ‼︎」

『そんじゃ、要は済んだみたいだし、オラは帰るぞ』

 

悟飯「何度も助けてもらってすみません…………」

 

『今回は気にすんな!これは完全にギニューが悪いしな!んじゃな!!』

 

その言葉を最後に、蛙は意識を失ったのか倒れ込んでしまう。

 

風太郎「………しかし、体を入れ替えるタイプの敵もいるとはな………」

 

一花「全くビックリだよ。お陰でお姉さんの体はフータロー君の好き勝手に「してねえよッ!!!!!」」

 

一花「えー?でも、私の体でお風呂に入ったんでしょ?と、ということは……私の生まれたままの姿を見たってことだよね…?」

 

一花は風太郎を揶揄うように淡々と語るが、段々顔が赤くなっていく。

 

風太郎「恥ずかしがるなら言うな。それに俺は目隠しをして風呂に入ったからな」

 

一花「四葉とでしょ…?もっとダメじゃん!?一気に実質2人の美少女と混浴するなんて……。罪な男だなぁフータロー君は!」

 

風太郎「………………なあ、この話はもうやめにしないか?」

 

一花「…………そ、そうだね……」

 

一花は負けじと風太郎を揶揄い続けるが、諸刃の剣であることを自覚して、この話は取り敢えずなかったことにした。

 

悟飯「………この蛙はどうしよう」

 

悟飯は蛙の体ごとギニューを始末するべきかどうか悩んでいた。

 

風太郎「……なあ、言葉を発することができないならそのままにしてもいいんじゃないか?」

 

一花「どうやら相手に言わせても成立するみたいだから、ちょっと可哀想な気はするけど、ここで潰しちゃった方が………………」

 

悟飯「そうなんだよね………。もしまた誰かに入れ替わったりしたら大惨事だからね………」

 

「ゲコッ…?ゲコッ⁉︎」

『な、なんだ!?まさかまた蛙に戻ってしまったのか!?』

 

どうやらギニューは目が覚めたようで、すぐに今の状況を把握できたようだ。

 

「ゲコッゲコッ‼︎(くっ…!おのれぇ!折角言葉を発することのできる体を手に入れたというのに!!)」

 

どうやら反省している様子はないようだ。

 

風太郎「………おい。こいつ人様の体を勝手に使っておきながら謝る素振りを見せねえぞ?これは潰しちまった方がいいんじゃね?」

 

一花「私も酷い目にあったからね……。それがいいんじゃない?」

 

勝手に体を取り替えられた2人もご立腹のようだった。

 

悟飯「そうだね。そうしよう」

 

「ゲコッゲコッ‼︎」

『待て待て!!体を勝手に入れ替えたことは謝る!!だが俺は蛙のまま生活をするのが嫌だったんだ!!!だから今回は見逃してくれ!!!』

 

悟飯「ダメだね。そうやって逃げた先でまた誰かと入れ替わるつもりだろう?」

 

「ゲコッゲコッ‼︎」

『頼む…!!今度こそ誰とも入れ替わらん…!!!』

 

風太郎「おいおいそんなの嘘に決まってるぜ。とっとと潰そうぜ!!」

 

一花「そうだよ!私だって一生蛙として過ごさなきゃいけなくなるところだったんだから!!」

 

悟飯「……やっぱりそうだよね。よし、ここで…………」

 

 

 

 

 

 

 

 

シュン‼︎

 

悟飯「!?あ、あれ!?」

 

風太郎「蛙が…………消えた!?」

 

一花「そ、そんな…!!!」

 

悟飯「蛙の姿でそんな早く動けるはずは……………………。って、お前…!?」

 

風太郎「……?はっ!?」

 

一花「う、うそ………!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

悟天「何この蛙?ナメクジみたいに触覚が生えてるね?」

 

何故か悟天が旅館にいた。大方、悟飯の修学旅行を羨ましがって、悟飯の気を追ってこちらに来てしまったのだろう。

 

悟飯「ご、悟天!!その蛙をこっちに渡せ!!そいつは危険だ!!今すぐに潰さないと!!」

 

悟天「えー!?蛙さん潰すの!?ダメだよそんなこと!!!」

 

悟飯「そいつは悪いやつなの!!いいから兄ちゃんに渡せって!!」

 

悟天「いくら兄ちゃんの言うことでも、それは聞けないよ!!」

 

 

悟天はそう言うと高速で部屋を後にする。

 

悟飯「ばっか……!!!余計なことを……!!!!」

 

悟飯も流石に取り乱してしまうが、すぐさま悟天を追いかける。

 

風太郎「………おいおい。このままじゃ次の被害者が出ちまうぞ…?」

 

一花「どうしよう…。でも私達にはどうにもできなくない……?」

 

 

 

 

一方で、悟天と悟飯は超スピードで鬼ごっこをしていた。悟天が捕まれば蛙は潰されるのだが、悟天は蛙をただの珍しい蛙としか思っていない。まさか悪の軍団の幹部だとは思いもしないだろう。ただの蛙だと思っているからこそ、理不尽に潰されそうになる蛙を守ろうとしているのだ。

 

悟飯「悟天…!そいつを野放しにすると危ないんだって!!早く兄ちゃんに渡せ!!!」

 

悟天「蛙さんが可哀想だよ〜!!!」

 

悟飯「くっ…!こうなったら!!」

 

ボォオオオオッ!!!!

 

悟天「ええ!?」

 

悟飯はこれ以上ギニューにボディチェンジをさせないために、多少手荒になってしまうが、悟天から蛙を奪おうと超サイヤ人に変身する。

 

悟天「なんでそこまでして蛙さんを殺そうとするの!?」

 

ボォオオオオッ!!!

 

悟天もまた超サイヤ人に変身して悟飯から全速力で逃げる。既に海まで走りきってしまったので、今度は舞空術を駆使して空を飛びながら追いかけっこは続行する。

 

 

 

 

 

 

 

そんな追いかけっこを繰り返すこと1時間……………。

 

 

超悟飯「悟天……!兄ちゃんはふざけているわけじゃないんだ…!!」

 

超悟天「蛙さんが可哀想だよ!!」

 

悟飯と悟天の追いかけっこは未だに続いていた。今は陸地について休憩中と言ったところか……?

 

超悟天「そもそも蛙さんが悪いことできるわけないじゃん!!」

 

超悟飯「そいつは体を入れ替えることができるやつなの!!それで勝手に体を入れ替えて悪さをするやつなんだよ!!」

 

未来悟飯「…………こんなところで何をしているんだい?」

 

超悟飯「………えっ?」

 

どうやら、偶然にもカプセルコーポレーションの前まで来ていたようだ。

 

超悟天「あっ!未来の兄ちゃんだ!!聞いてよ!!兄ちゃんがこの蛙さんを殺そうとしてるんだよ!!可哀想でしょ!!」

 

未来悟飯「あっ!そいつ、ギニューが乗り移った蛙じゃないか!!!」

 

超悟天「えっ…?ぎにゅー?」

 

未来悟飯「そいつはフリーザ軍に所属していた悪〜いやつだったんだ。兄ちゃんもそいつに殺されかけたんだけど、色々あってそいつは蛙の体の中に紛れこんじゃったんだよ」

 

超悟天「えっ…?じゃあ、兄ちゃんの言ってたことって………?」

 

未来悟飯「本当のことさ」

 

超悟天「…………ごめんなさい」

 

超悟飯「あっ、いや……。兄ちゃんも説明不足だったよ…………」

 

ようやく誤解は解けたようだ。これでギニューを始末することができるかのように思えたのだが……。

 

ブルマ「あ〜!!そいつ懐かしい!!確かフリーザ軍の部下で、体を入れ替えることができるやつでしょ!?私もそいつに体を入れ替えられて大変だったわ〜」

 

未来悟飯「えっ?そんなことがあったんですか?」

 

ブルマ「ええそうよ。もう大変だったんだから!!思い出したらイライラしてきたわ。ちょっとその蛙頂戴」

 

超悟飯「ダメですよ。この蛙は始末しないと、次の犠牲者が…………」

 

ブルマ「大丈夫よ。私の研究所で預かるわ。だって地球には存在しない生き物ですもの。それだけで研究価値は十分あるわ」

 

「ゲコッ⁉︎(な、なにぃ!?)」

 

超悟飯「ブルマさん。間違っても大声で『チェンジ』って言っちゃダメですからね…!」

 

ブルマ「おっけー。ちゃんと隔離しておくから安心して」

 

「ゲコッ~⁉︎(ま、待て!?そんなことしたら俺は二度と…!!頼む…!!助けてくれ〜!!!!!)」

 

しかし、そんなギニューの必死の訴えは誰にも届くことはなかった………。

 

超悟飯「………………これで、良かったのかな……?」

 

未来悟飯「まあ……。研究所に隔離するならいいんじゃないかな?」

 

 

こうして、修学旅行中に発生した入れ替わり事件はあっさりと幕を下ろしたのだった…………。

 

これで心置きなく修学旅行を楽しむことができるはずだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

しかし、1人思い悩んでいる乙女がいた…。

 




 今更ですけど、お気に入りが555を突破してましたね。なんなら600突破してるし。なんか最近また伸びてきたけど何かあったっけ…?

 見直してみて気付いたけど、初期は本当に文章力ガバガバだなぁ(今はできてるとは言ってない)。どっかのタイミングで地の文微修正かけた方が良さそうだなと思ったりしてます。

 ちなみに、次回はまあラブコメっぽくなります。ギニューの件が解決してしまえば、あとは平穏(?)な修学旅行しか残ってませんからね〜。原作のようなドロドロには期待しないでね。

 ビーデルと二乃が喧嘩する展開は実は結構前から考えてました。ビーデルのコンタクトの取り方だと間違いなく二乃の反感を買いそうですが、そもそも二乃は悟飯に睡眠薬を飲ませてるんですよね。効かなかったけど。だからやってることのヤバさで言うと、二乃の方がダントツという…()。でも悟飯にとっては正体をバラされる方がヤバいのです。

 なんかこのシリーズが6/23の日間ランキングに載ったようです。28位だったそうですが、それは過剰評価な気がする…。なんで台本形式、テレテレ系、擬音ありでランキングに載るんだ……?不思議だ……。

 ちなみに、ある人からこんな指摘を受けました。

・地の文が少なすぎ(多分序盤(1〜10話あたりのことを指していると思われる))
・戦闘シーンで擬音が多すぎる
・擬音、テレテレ系、台本形式が内容を薄くしている
・ただ前書きと1話の最序盤はいい感じ
・改行が多い

とのことだそうです。でも台本形式ってそういうものだと思うんですけどねぇ()。というか戦闘シーンの擬音に関しては、漫画版ドラゴンボールを意識して敢えて載せてるんですがね……。改行に関しては、パソコンで見るかスマホで見るかによって大きく変わるので難しい問題。でも初期の方は台本形式だということを考慮しても確かに酷いかもしれない。ということで、時間はかかりますが初期の方を中心に修正を加えていくつもりです。無論、更新を最優先にしますけどね。でもテレテレ系は普通に排除しようかな……。


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第67話 災難の後の告白

 前回のあらすじ…。

 一花と入れ替わった風太郎と四葉が混浴する事態になってしまったが、特に何事もなく(?)終了し、悟空は精神世界でギニューを打ち倒すことに成功し、一花と風太郎は元の体を取り戻すことができた。

 そして、ギニューは蛙の体に戻ったのだが、色々あってカプセルコーポレーションの研究所に隔離されることとなった。哀れギニュー…………。

 ようやく修学旅行を楽しめるぞ、というムードの中、ただ1人、一花は少し悩む素振りを見せていた……。



ギニューによる入れ替わり騒動が発生したが、最終的にはブルマに仕返しという形で研究所で保護するという形で落ち着いた。一花と風太郎も元の体を取り戻すことができた。

 

悟飯は蛙が研究所で隔離されていることを事情を知る風太郎、一花、四葉の3人にすぐに伝えた。

 

風太郎「これで心置きなく修学旅行を楽しめるな」

 

四葉「ねえ一花、大丈夫?」

 

一花「あはは…。うん。私は平気だよ」

 

 

ところが、一花は最愛の風太郎に一時的とはいえ体を使われていたということで、表向きには特になんともない素振りを見せていたが……………。

 

 

四葉「お〜…!駅まで見える…!!」

 

五月「落ちたらどうしましょう…。柵はもっと高いと思ってました……」

 

四葉「それだけ私達が大きくなったってことだよ!」

 

四葉と五月は清水寺を訪れていた。清水寺と言えば、京都の観光地を代表する程知名度のある寺だ。

 

四葉「おっと…!!」

 

五月「!!!?」

 

四葉「………なんちゃって」

 

五月「もう!やめて下さい!!」

 

四葉「ごめんごめん」

 

四葉は柵に身を乗り出していたのだが、手を滑らせるような動作をする。だがそれはフェイクで、五月を揶揄って楽しんでいた。

 

五月「………それにしても、一花はどうしたんでしょうか…?急に一人で考え事をしたいだなんて…………」

 

四葉「……(もしかして、上杉さんと入れ替わっちゃったことを気にしてるんじゃ…………)」

 

四葉は大体察しがついていたが、それを五月に説明するわけにもいかなかった。

 

四葉「ちょっと体調が悪いんじゃないかな?ほら!林間学校の時も風邪引いてたし!!」

 

五月「だとしたら部屋で休まないと………」

 

風太郎「騒がしいなお前ら…。うおっ、久々に見ると高く感じるな………」

 

五月「あれ…?上杉君……?」

 

四葉「二日目は団体行動ですけど、孫さん達と一緒じゃないんですか?」

 

風太郎「ああ……。ちょっと一花に用があってな。お前らと一緒にいると思っていたんだが………………」

 

五月「一花はここにはいません。何やら一人で考え事をしたいとかで………」

 

風太郎「そうか……。二乃と三玖は……聞くまでもないな。しかし半分以下というのも寂しいな…………」

 

五月「た、たまにはいいじゃないですか!!ほら、せっかくの清水寺ですよ!!」

 

風太郎「お、おい!」

 

五月「上杉君見てください!!絶景ですよ!!」

 

風太郎「押すなって!!」

 

五月は少し考える仕草をした後、風太郎の手を引っ張って柵の近くまで誘導する。急にどうしたものかと、四葉は口をポカーンとさせている。

 

五月「ふふっ…。こんなのが怖いんですか?男の子なのに」

 

風太郎「あっ?ぜ、全然怖くないですけど〜〜??お前の方がビビってんじゃねえか?」

 

五月「な、何を………。あっ、そうです!ツーショット写真を撮りましょう!!」

 

風太郎「はぁ?なんでだよ!?」

 

五月「四葉、お願いします!」

 

四葉「い、いいけど…………」

 

五月の豹変に四葉は動揺を隠し切れていないが、五月の要望通りに風太郎と五月のツーショット写真を記録するが、五月は何故か風太郎と腕を組む始末。これが悟飯に対してなら納得できるのだが、一体どうしたのだろうか?

 

五月「(うわ…!私はなんて…!でも、これで上杉君は6年前のことを思い出してくれるはず…!!)」

 

どうやら五月は、風太郎が出会ったのが四葉であることをなんとか気付かせたいようだった。

 

 

 

 

 

一方で、二乃と三玖の行方はというと……………。

 

二乃「わっ…!待って!!超暗いんですけど…!!怖いわハー君♡」

 

悟飯「あの…。二人とも、ちょっと近いよ……」

 

三玖「離したら二度と出られないかもしれない…。だから悟飯に密着する」

 

二乃「ほら三玖!ハー君が嫌がってるでしょ!早く離れなさい!!」

 

三玖「嫌。そもそも悟飯が嫌がっているのは私じゃなくて二乃。だから二乃が離れて」

 

二乃「そんなのお断りよ」

 

三玖「なら私も」

 

悟飯「……(手すりを掴めばいいんだけど、それを言うのは野暮なのかな…?)」

 

二乃と三玖は、胎内巡りで悟飯にアタックしている真っ最中だった。一花と風太郎の身に起きたことも知らずに呑気なものである。まあ解決済みなのでいいのかもしれないが…………。

 

武田「随分モテモテじゃないか孫君。これなら君の今後の人生は安泰だね」

 

前田「お前は孫のなんなんだコラ」

 

武田は何故か成長する子供を見るような目で悟飯を見ているが、前田は冷静にツッコむ。

 

 

 

 

 

四葉「あれ?上杉さんはどこに行ったんだろう……?」

 

五月「いつの間にかいなくなってしまいました……(せっかくのチャンスなのにどうしましょう…………)」

 

四葉「………五月。何か私に隠していることある?」

 

五月「………!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一花「……あんなことがあった後じゃ、フータロー君に顔が合わせづらいよ…」

 

あの時は元の体に戻る為に必死だった為仕方なかったとはいえ、自分の最愛の人である風太郎に醜態を晒してしまった。おまけにその最愛の人が一時的とはいえ、自分の体に入り込んでしまった始末。その場では上手く取り繕っていたものの、やはり精神的にはくるものがあった。

 

一花「これからどうすれば…………」

 

風太郎「見つけたぞ、一花」

 

一花「………!?ふ、フータロー君!?な、なんで……………」

 

風太郎「少し話をしようぜ」

 

 

 

 

 

風太郎「実は、京都に来るのは初めてじゃないんだ。小学生の頃に一回来たことがあるんだ。あの日のことは今でも思い出せる。俺はあの日、"零奈"に振り回されるがまま辺りを散策した。俺を必要と言ってくれた彼女との旅が楽しくないはずがない」

 

一花「……えっ?零奈って……」

 

風太郎「ああ。お前らの母親の名前だな。恐らく母親の名前を借りたんだろうな」

 

風太郎は一息つくと、再び話し始める。

 

風太郎「気がつけば夜になっていた。学校の先生が迎えに来ることになっていたんだが、"零奈"が泊まっていた旅館の空き部屋で待たせてもらった。そこでは確かトランプしたっけ…。まあ担任にはこっぴどく叱られたがな…。だが今となってはいい思い出だ」

 

風太郎は当時の思い出を楽しそうに語る。普段はあまり見せない顔を見れて一花はラッキーだと思いつつも、それを言葉には出さない。

 

一花「………フータロー君、気を使ってくれてる…?」

 

風太郎「……まあ、あんなことがあったからな……。お前、無理してただろ?四葉の前では笑っていたが…。俺には分かったぞ」

 

一花「………当たり前だよ…(まさか好きな人と間接的にとはいえ入れ替わっちゃったんだもん……………)」

 

風太郎「………すまんな。あのギニューって奴のせいとはいえ、お前の体に入っちまった…」

 

一花「ううん。フータロー君は悪くないよ……。悪いのは私。好奇心に任せてあんなことをしなければ良かったんだよ」

 

風太郎「………嫌だっただろ…?少しの間とはいえ、俺が体を使っていたんだから…。謝って許されることじゃないのかもしれないが…………。すまん………。お詫びと言ってはなんだが、なんでも言うことを聞く…………」

 

一花「………なんでも?」

 

風太郎「ああ…。俺にできる範囲でだが…………」

 

一花「そっか……。じゃあまずは私の質問に答えて」

 

風太郎「あ、ああ………」

 

一花「……フータロー君は、私が蛙と入れ替わっちゃったって知った時、どう思った…?」

 

風太郎「………?どういう意味だ…?」

 

一花「ほら、蛙って人によっては苦手じゃん?だから…………」

 

風太郎「……何を気にしてるのか知らんが、俺はなんとも思ってないぞ?」

 

一花「………そっか」

 

一花は聞きたいことを聞けてスッキリしたのか、頬が少し緩む。それと同時に何か決心したような顔つきになる。

 

一花「じゃあ次。私がこれから言うことをしっかり聞いてね」

 

風太郎「………ああ」

 

一花「……フータロー君ってさ、普段は自信過剰なのに、こういうことになると途端に卑屈になるよね」

 

風太郎「……?どういう意味だ…?」

 

一花「………好きでもない男の子と体が入れ替わっちゃったら、私は耐えられないかな…」

 

風太郎「………そ、そうだよな…。もし俺の顔を見たくないって言うなら……」

 

一花「………こら、今は私の番」

 

風太郎が何か提案をしようとした時、一花は途中で口を挟んで妨害する。

 

一花「普通、好きでもない男の子と身体が入れ替わっちゃったら、お風呂に入れるようなことなんてしないよ。少なくとも私はね」

 

それは逆に言えば、好きな異性なら別に問題ないと言っているに等しい意味だった。

 

一花「………でも、私は嫌じゃなかったよ……?」

 

風太郎「……………はっ?う、嘘……だよな…?」

 

一花「嘘じゃないよ」

 

一花は顔を赤面させながらも、はっきりとそう言い切った。風太郎は女優業で培ってきた演技なのではないかと疑うが………。

 

一花「今まで気づかなかった…?修学旅行で同じ班になろうって提案したのも、勤労感謝の日にデートに誘ったのも……、キャンプファイヤーの時に踊ろうって誘ったのも………………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一花「君が好きだから、なんだよ…?」

 

 

恥ずかしさに耐えながら、一花はそう言い切った。

 

 

 

 

風太郎「……えっ?いや…!で、でも!俺はお前の体と入れ替わったんだぞ…!?それでお前は引いたんじゃ…」

 

一花「うん。引いちゃうね。相手がフータロー君じゃなければの話だけど」

 

風太郎は、ギニューの件で体の入れ替わりの際に、自分は一花の体に入ってしまった。一花が自分に好意を持っていることは知っていたとはいえ、そんな事態に陥ってしまったので、一花は自分のことを少なからず嫌いになってしまったのではないかと危惧していた。

 

だが、そんな風太郎の予想とは裏腹に、一花の気持ちは一切変わらなかった。確かに驚きはした。だが、風太郎に体を使われたところで、羞恥心はあっても、不快感は一切感じなかった。

 

一花の風太郎に対する想いは、もう既にそこまでに深いものになっているのだ。

 

一花「それじゃ、最後のお願いね……。私と付き合ってよ、フータロー君…」

 

風太郎「えっ………?流石に冗談……だよな…?」

 

一花「うん」

 

風太郎「………………はっ…?な、なんだよ…。驚かさないでくれよ………」

 

一花「でも君が好きなのは本当だよ?君に体を使われても不快感なんて一切感じなかったもん。むしろ………、私のことをもっと知ってほしいかな…?」

 

風太郎「……お前、自分で何を言ってるのか分かってるのか…?」

 

一花「……分かってるよ…。でも、どれだけ私が本気なのか知って欲しかったから…。この気持ちは嘘じゃないよ…!信じて……!!」

 

風太郎は一花の好意には気付いていたとはいえ、一花として告白を受けたのはこれが初めてである。珍しく誤魔化さず、真っ直ぐに相手の目を見つめて自身の想いを吐露していく姿を見て、風太郎はつい前髪を弄ってしまう。

 

風太郎「は、はは…。随分嘘を吐くのが上手くなったな……」

 

一花「………そっか…。まだ疑うんだ?」

 

一花は少し口角を上げて風太郎の顔に近づく。そのまま唇をそっと風太郎の頬に触れさせる。

 

風太郎「!?」

 

一花「これで信じてもらえるかな?」

 

風太郎「……嘘じゃ、ないんだな…?」

 

一花「………そういうことだから、覚悟してよね、セーンセ」

 

先程まで、今にも雨を降らしそうな雨雲が空を包んでいたが、隠れていた太陽が一花の満面の笑みを照らすように現れる。それを機に、雲は退かされるように移動して太陽がはっきりと姿を現し、暗かった空は一気に明るくなった。

 

その笑顔は、日光のせいか少々赤みを帯びていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

二乃「わ〜…!さっきまで雨降りそうだったのが嘘みたい…………」

 

三玖「綺麗………」

 

悟飯「よかったね。これでもう暫くは外を散策できそうだよ………」

 

武田「どうやら予報通りになったみたいだね」

 

前田「どこかに晴れ男でもいたのか?そいつに感謝だな」

 

 

 

 

 

 

 

前田「はぁ…………疲れた……」

 

悟飯「雨が降らなくてよかったよ……」

 

武田「僕に感謝するがいい」

 

前田「いや、なんでお前になんだよコラ」

 

悟飯「そういえば、上杉君はどこに行ってたの?」

 

風太郎「ちょっとな…………」

 

武田「ははは!さては迷子だね?」

 

風太郎「違えよ」

 

 

悟飯達は二日目の日程を終えてホテルに戻っていた。二乃と三玖は途中で姉妹達と合流した為、今この場にはいない。

 

前田「つーか明日どうするよ?コース選択があるだろ?」

 

悟飯「あ〜…。そういえばあったね…。みんなは決めてる?」

 

武田「僕はこのDコースがいいと思うよ。京都の歴史に触れることができるしね」

 

前田「上杉はどうなんだよコラ」

 

風太郎「………俺は、Eコースにしようかな…………」

 

武田「へぇ…。意外だね?上杉君は映画とかそっちの方に興味はあるのかい?」

 

風太郎「……Dコースは小学生の頃に行ったからな。どうせなら行ったことのないところに行きたい」

 

武田「じゃあそっちにしよう」

 

前田「そうだな。俺は特に行きたいところはないからな。孫は?」

 

悟飯「いいんじゃない?僕は京都自体よく分からないから決めようにも決められないしね………」

 

武田「じゃあ決まりだね」

 

 

 

 

 

 

 

一花「みんな。どうやらフータロー君達はみんなEコースにするみたいだよ」

 

二乃「ナイスよ一花!」

 

一花は悟飯達の会話をこっそりと聞いていたようで、二乃達に結果を報告していた。

 

一花「四葉、お風呂空いたから先に入れば?」

 

四葉「うん。そうする!」

 

二乃「じゃあ私もEコースにするわ。別のコースにしろって言っても、どうせ付いて来るんでしょうけど……」

 

三玖「……個人的にはDコースに行きたかったかな………」

 

二乃「あら、じゃあ三玖はそっちに行ってくれてもいいのよ?三玖の好きな歴史コースでしょ?」

 

三玖「だけど断る」

 

五月「私もそっちに行きます。2人を放っておくと、孫君に対して何をするか分からないので……」

 

二乃「五月にだけは言われたくないわ」

 

三玖「同感……」

 

五月「何故ですか!?」

 

三玖「お泊まり。襲われる」

 

五月「な、ナンノコトデショウ」

 

三玖に痛いところを突かれたのか、五月は片言になりながら返事をする。

 

一花「わあ…!五月ちゃんこれ攻めてるね〜…!着ないの?」

 

五月「こ、これは……!!」

 

五月が荷物整理しているところに一花が覗き込むと、派手な下着が入っていたので茶化す。その派手な下着とは、先日大胆にも悟飯に向けて披露した例の下着なのだが……………。

 

二乃「………やっぱり危険ね」

 

三玖「私情抜きで、悟飯を守るために私達も悟飯に付いた方が良さそう……」

 

二乃「そうねそうしましょう。なんとしてもハー君の貞操は守り抜くわよ」

 

五月「私は狼か何かですか!?」

 

五月は孫家でのお泊まりの件が尾を引いているのか、二乃と三玖から相当警戒されているようだ。

 

二乃「あながち間違ってないわ……」

 

三玖「否定できない………」

 

五月「うわーん!一花ぁ〜!!」

 

五月は一花に泣きつくが……。

 

一花「ごめん。今回は擁護のしようがないかな…?」

 

五月「ガーンッ!!!

 

中立的な一花でもこの始末☆。はてさて、この先(ry)

 

五月「うぅ……。みんなして私を虐めてきます…………」

 

 

そんな姉妹トークを楽しんでいる時、数回ノックされた後にドアが開かれる。

 

風太郎「五班、全員いるか?連絡事項だ。30分後2階の大広間に集合だそうだ……。って、五月は何してるんだ?」

 

五月「みんなが虐めてくるんです……」

 

風太郎「おいおい…。こんなところまで来て姉妹喧嘩は勘弁してくれよ…?」

 

二乃「違うわよ。五月だけハー君と同じコースに行ったら、いつ襲うか分からないから私達も付いた方がいいって話をしてたのよ」

 

三玖「悟飯の家にお泊まりした時の前科があるし」

 

風太郎「なるほど。五月、お前が悪い」

 

五月「あなたまで私を虐めるんですか!?」

 

風太郎「……!!まあとにかく、遅れることのないようにな」

 

風太郎は連絡事項を言い終えると、ドアを閉めて次の班に連絡する為に移動する……。何やら誰かの顔を見た途端に様子が変わったような気はするが……。

 

三玖「そういえばフータローって学級委員だったね」

 

二乃「………一花?なんかいいことでもあったの?」

 

一花「ん〜?別に?」

 

二乃「(これは上杉との間に何か進展があったようね……)」

 

二乃は何かを察したようだが、口には出さない。

 

四葉「ふ〜!!スッキリしたぁ!!」

 

そこに突然、バスタオル1枚(胸だけを上手く隠した状態)で浴室のドアを開けて出てきた四葉が現れた。

 

二乃「……上杉がいるけど…?」

 

四葉「……!?!?ッ」

 

 

ダンッッッ!!!!!

 

 

四葉は余程恥ずかしかったのか、ドアが粉々に砕けるのではないかというくらいに大きな音を立ててドアを閉める。

 

 

二乃「嘘よ。冗談よ」

 

四葉「もー!ひどいよ二乃!!」

 

三玖「でもさっきまでフータローがここにいたのは本当。少しは自分の格好に気をつけた方がいいと思う」

 

二乃「…………なんか三玖に言われても説得力がないわね」

 

三玖「それどういう意味………?」

 

 

 

 

 

翌日……。2泊3日の修学旅行もこれで最終日だ。この日はA〜Eの五つのコースから好きなところを選んで回るという形なのだが………。

 

 

一花「やっほー、フータロー君!」

 

二乃「会いたかったわハー君!」

 

三玖「寂しかった」

 

少し色っぽく風太郎に挨拶する一花、目が合ったら悟飯にすぐ飛びつく二乃と三玖に、その2人を引き剥がそうとする五月に、それを微笑みながら見守る四葉の姿が…………

 

 

風太郎「いや、待て。お前ら全員Eコースなのか……?」

 

四葉「はい!」

 

悟飯「そうなんだ。じゃあ3日目はずっと一緒かな?」

 

二乃「なんなら一生一緒にいてあげてもいいけど……?」

 

悟飯「えっ……?」

 

五月「なんで上から目線なんですか…。しれっと浮気を提案しないで下さい」

 

三玖「なんで既に五月と悟飯が付き合ってることになってるの……?」

 

悟飯が絡むと必ずと言っていいほど火花を散らすこの3人に、四葉は苦笑いを浮かべる他ない。だけど普段は仲がいいので余計に困惑してしまう。そんな様子に見かねたのか、武田が悟飯に耳打ちをする。

 

武田「……孫君、いい加減彼女達に返答をしたらどうだい……?」

 

悟飯「………学園祭までにはね…」

 

前田「学園祭に…?お前、意外とロマンチックなことするんだな……」

 

悟飯「……??」

 

悟飯は前田の言う意味がいまいち分からずに首を傾げる。

 

 

 

 

一花「ふーん……?悟飯君は相変わらずモテモテだね。悟飯君達のお邪魔しちゃ悪いし、私達は私達で回ろうよ!」

 

風太郎「えっ……?いや…………」

 

一花「私、言ったよね?覚悟してよねって」

 

風太郎「待て待て引っ張るな…!おい…!!!」

 

一花は既に風太郎にしっかりと想いを告げたからだろうか、今の二乃達を連想させるような積極的なアプローチをしている。

 

武田「………何故だろう。何故だか分からないけど、僕だけ置いてきぼりになっている気がしてならない………」

 

前田「ざけんなコラ。お前だってモテてるだろうがコラ」

 

そんな前田にも松井という彼女がいるのだが、ここは口を閉ざしておこう…。

 

 

 

 

 

その後の修学旅行は、多少の言い争いはあったものの、特に大喧嘩はすることはなく、平和だったそのもの。

 

 

三玖「ねえねえ!戦国武将の着付け体験だって!私達もやっていこうよ!」

 

悟飯「えっ?」

 

三玖「……だめ?」

 

三玖は上目遣いで悟飯に訴えかけてくる。

 

悟飯「あ、あはは…。うん、いいよ」

 

 

 

悟飯と三玖が和服に着替えたり……。

 

 

三玖「…………」

 

悟飯「あの人と写真を撮りたいの?じゃあお願いしてみようよ」

 

武士の格好をした人と共に写真を撮ったり……。

 

 

 

三玖「わあ!あれ撮ってよ!!早くしないと引っ込んじゃう!!」

 

悟飯「わ、分かったから引っ張らないで…!」

 

動く恐竜のオブジェに興奮したり……。

 

 

 

 

 

 

二乃「……ちょっと待ちなさい。なんで三玖だけおいしい思いをしてるのよ?」

 

五月「先日のパンの件で落ち込んでいたので、今日くらいはいいかと……」

 

二乃「なにそれ。私もあっちに行こ」

 

五月「あ〜!?待って下さい二乃!?」

 

五月は先日の件を案じて三玖に対して譲歩姿勢だったが、二乃は我慢できなくなって悟飯に向かって特攻する。結局五月も加わることになっていつも通りの光景が広がる。

 

 

四葉「わあ!一花、写真いっぱい撮ったね…………。って、殆ど上杉さんとのツーショット!?何かあったの?」

 

しかもその写真一枚一枚、やたらと距離が近い。

 

一花「うん。まあね♪」

 

風太郎「おい一花…。そろそろ休ませてくれないか……?」

 

一花「何言ってるの?今日は午後には帰っちゃうんだから、今のうちに楽しまないと損だよ!」

 

風太郎「か、勘弁してくれ………」

 

とは言いつつも、風太郎の口角が少し上がっているのを四葉は見逃さなかった。

 

 

 

四葉「そっか……。良かったね、一花

 

四葉は一花をお祝いしているようだが、その表情はどこか虚しく、悲しげなものだった…………。

 

 

 

 

 

 

 

 

悟飯「………………」

 

そんな四葉の顔を悟飯は見逃さなかった。他の4人は笑顔で修学旅行を楽しんでいる中で、四葉だけが浮かない顔をしていることに違和感を覚える。

 

二乃「どうしたの、ハー君?」

 

悟飯「いや、なんでもないよ」

 

 

 

 

 

 

 

修学旅行の日程も殆ど終わってしまった。後は帰宅するだけで、修学旅行の終わりを惜しむ声が沢山出てくる中…。

 

二乃「はぁ………。修学旅行楽しかったわ〜。ね、ハー君?……あれ?」

 

三玖「悟飯がいない………」

 

一花「ねえ、四葉見なかった?」

 

五月「四葉もですか…?まさか迷子では……?」

 

風太郎「……多分悟飯が探してくれてるんだろ。あいつは人の居場所が分かる特殊技術があるみたいだしな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

四葉「……………」

 

今回の修学旅行は楽しかったな…。姉妹も上杉さんもとても楽しそうだった。一花が蛙になっちゃったって聞いた時は相当焦ったけど、悟空さんと孫さんのお陰でどうにかなった。

 

その後の一花の様子が心配だったけど、どういうわけか元気になっていた。その理由を聞いてみたら………。

 

 

 

 

 

 

 

『一花、元気になったね?何かいいことでもあったの?』

 

『うん。私ね、フータロー君に告白しちゃったんだ………』

 

『えっ?ほ、本当に………?』

 

『うん……。色々あってね………』

 

『そうなんだ……。それで、上杉さんはなんて…?』

 

『まだ返事はもらってないよ。でも、いつかは………』

 

『………そっか。良かったね、一花』

 

『四葉はそれでいいの?』

 

『えっ?』

 

『だって、四葉も…『ううん!私のことなんか気にしないで!!』』

 

 

 

 

 

姉妹を転校に巻き込んだ私は特別になっちゃいけない……。風太郎君に誰も意識が向いていないのならまだしも、一花がそうなら…。散々迷惑をかけた私が風太郎君を横取りするような真似なんて絶対にできない………。

 

 

一花が風太郎君のことを好きになったのはなんとなく気付いていた。それに気付いたから、私はこの想いを消す為に、五月に頼んで変装してもらった。

 

もうあの想いは忘れることにしたんだ。解放しちゃダメ。姉妹に……。一花に迷惑がかかっちゃうから………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

悟飯「四葉さん、そんな暗い顔をしてどうしたの?」

 

四葉「そ、孫さん……!?」

 

 

僕は気になって仕方がなかった。みんな笑顔で修学旅行で楽しんでいた。ギニューの騒動に巻き込まれた一花さんと上杉君でさえも楽しんでいた。なのに四葉さんだけ何か思い悩んでいるような気がした。

 

だから、僕は思い切って四葉さんに聞こうと思う。もしかしたら、僕なら力になれるかもしれない。

 

 

 

悟飯「どうしたの?悩みがあるなら、僕に……」

 

四葉「………悩みなんてありませんよ?私は……一花がようやく前に進めたことを喜んでいるだけです」

 

悟飯「一花さんが、前に……?」

 

………薄々気付いてはいた。今日の一花さんは上杉君に対してやたらと積極的だった。3人の女の子に言い寄られている僕だからこそ分かるが、恐らく、一花さんは上杉君に告白をしたのだろう。だからあそこまで積極的になったんだと思う。

 

………そういえば、四葉さんの顔が暗くなったのも今日が初めてのような…?

 

 

 

…………まさか……。

 

 

 

悟飯「………本当に?今の四葉さんの顔、はっきり言っちゃうと酷いよ?」

 

四葉「……………ぇ?あっ…………」

 

悟飯「………何か思い悩んでいることがあるのなら、僕に話してほしいかな?それとも、僕じゃ頼りない?」

 

四葉「頼りないなんて…。そんな……」

 

悟飯「………ひょっとして、上杉君?」

 

四葉「……!!」

 

図星だったのか、四葉さんが少し動揺する様子を見せた。だけど一瞬にして元の表情に戻したところを見るに、四葉さんは本当は嘘をつくのが上手なのではないかと勘繰ってしまう。

 

悟飯「……一花さんとの関係が気になるの?」

 

四葉「あはは…。一花は私の姉ですし、多少は気になりますよ」

 

悟飯「……………」

 

自分で言うのもアレだが、僕は自分に対して向けられる好意には鈍感のようだけど、人が人に向ける好意には敏感な方だと思っている。だから僕には分かる。四葉さんは上杉君のことが好きなのだろう。しかし、何らかの原因で一花さんに譲っているように見える。

 

悟飯「…………そういえば、四葉さんは行事がある度に上杉君に対してこう言っていたよね。『後悔しないように』って」

 

四葉「えっ…?はい。上杉さんに少しでも楽しんでもらいたいので………」

 

悟飯「じゃあ、四葉さんはそれでいいの?それで本当に後悔しないの?」

 

四葉「な、何のとこですか……?」

 

こういうことを言ってしまうとデリカシーがないと言われてしまうかもしれない。だけど、これは言っておいた方がいい気がする。

 

悟飯「僕はね、四葉さんが上杉君に対して少なからず好意を持っていることには気付いていたんだ。何で四葉さんがそんなに譲歩姿勢なのか僕には分からない。だけど、それだと必ず後悔する」

 

四葉「な、何を言っているんですか!一花が幸せになるなら、私は後悔なんてしませんよ!」

 

悟飯「じゃあ、なんでそんな顔をしているの?」

 

四葉「……………えっ?」

 

四葉さんは自分でも気づいていないのだろうか…?先程よりも暗い顔になってしまっている。

 

悟飯「それが四葉さんの本心なの?四葉さんはそれで本当に後悔しない?」

 

四葉「私の………本心…………?」

 

四葉さんは少し考え込むような仕草をする。少し経つと、顔を上げて……。

 

四葉「…………私は上杉さんに相応しくありません」

 

ようやく発した言葉が、そんなネガティブなものだった。

 

悟飯「そんなことないと思うよ?少なくとも僕はお似合いだと思うけど……」

 

四葉「あはは……。孫さんは本当にお優しいですね。でも、この話を聞いたらきっとその考えは覆りますよ?」

 

四葉さんは自虐するように笑うと、四葉さんは転校前……。つまり、僕達が通っている旭高校に転校してくる以前の出来事を語り始めた……………。

 




 今回の一花の台詞回しの件ですが、無茶苦茶原作を意識しております。似たような台詞なのに、意味合いが変わってくるってのもいいよね。原作では段々雲行きが怪しくなって雨が降り出すのですが、今作は逆に段々雲行きがよくなって晴れました。この天気は恐らく一花の心情を表していると独自解釈したので、それを反映させました。原作では修学旅行で大きく後退することになりましたが、今作では逆に大きく前進することになりました。原作ではあまり見れなかった積極的な一花を見れるかも……?

 ちなみに次回は四葉のちょい曇り回です。ほぼオリジナル回です。


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第68話 "失敗"と"後悔"

 前回のあらすじ…。

 一花はギニューのボディチェンジによって、一時的にとはいえ、蛙になっていたことを気にしていた。そこに風太郎が現れるが、本人はそんな一花のことを特に気にしてないという。そんな答えを聞けたからだろうか、一花は自信が付いたのからなのか、衝動的なものからなのかは不明だが、風太郎に告白をした。風太郎はギニューの騒動の件で一花に嫌われていると思い込んでいたが、それは風太郎の杞憂だった。

 こうして、一花は大きな第一歩を歩み始めたわけだが、四葉だけ何故か浮かない顔をしていた。それに気付いた悟飯は、1人いなくなった四葉を追い、悩みを聞くことにした。そして、四葉の過去が悟飯に明かされる…。



私は風太郎君と約束をした日から、勉強に専念することにした。給料が高い職に就いて、お母さんを楽させるために……。その一心で勉強を頑張り続けていた。最初は確かに順調だった。姉妹のみんなに変わったと言われたっけ……。

 

…………だけど、お母さんは亡くなってしまった。私は私達を一生懸命育ててくれたお母さんに恩返しすることができなくなってしまった。今にして思えば、成績が伸びなくなったのもこの頃からだったと思う。当初の目的はお母さんを楽させるため。でもそのお母さんはもういない。心のどこかでそれが分かっていたからか、勉強に力が入らなかったのかもしれない。でも風太郎君との約束もあったし、人に必要とされる人になりたいから勉強を続けた。

 

でも、成績は全然伸びなかった。寧ろあれだけ勉強しても赤点すら回避できなかった。そしてゲームをして遊んでいた三玖に社会の点数で負けた時は本当に悔しかった。私が勉強以外の手段で人に頼られようとしたのはここからだったかもしれない。私はとにかく私自身が特別であることに拘った。

 

結果、私は勉強よりも運動の才能の方があったらしく、幾つもの部活に多重入部をして数々の功績を残した。『中野さんのお陰だ』。その言葉を聞いた時は、『ああ…。私は人に必要とされる存在になれたんだ』と心の底から本気で思っていた。

 

私はもう姉妹とは違う…。他の姉妹とは違って特別な存在だと自分を持ち上げていた。なんなら他の姉妹を見下していたかもしれない。

 

部活に時間を使っているから、勉強する時間など当然ないし、当時の私は勉強など必要ないと思っていた。だけど私が通ってた高校はあくまで成績を残して当たり前のところだった。部活でいくら功績を残そうが、赤点を取る生徒は不要だったみたいだ。

 

それを知られてから、部員達の見る目も変わった。まさか部活だけで満足していたのか?勉強もせずに部活だけやっていたのか?何故そんなこともできないのか…?飛んでくる言葉は色々あったけど、要は私は無駄な時間を過ごしたのだ。

 

他の姉妹はなんとか追試を突破したけど、私だけ突破できなかった。だから私だけが転校するはずだった。だけど姉妹のみんなはこんな私の為に不正をしたと嘘をついてまで私に付いてきてくれた…。私はその時初めて5人でいることの大切さというものに気付かされた。我ながら馬鹿だったと思う。この時までそれに気付けなかったなんて。

 

この時から、私は自分が特別であることを目指すのは辞めた。これからは私の為に付いてきてくれた姉妹の為に生きようと、そう心に誓った。そんな時だった。"彼"と再会したのは……。

 

 

『あれ、これなんだろう…?うわっ!?100点!?すご、誰だろう…?』

 

 

ある人が答案用紙を落とし、それに気付いた私は答案用紙の名前を確認する。そこに載っていた名前は『上杉風太郎』。一瞬風太郎君かと思ったけど、まさかそんなことあり得るわけがない。とはいえ、この答案用紙を失くしてしまったら、この風太郎という人は困ってしまうだろうと思ってその人の元に行った。

 

……顔を見た時は本当に驚いた。まさか本当に風太郎君だったなんて……。噂によれば、彼は常に学年トップの座を維持していたらしい。勉強に専念しているせいか、交友関係という関係も殆どなかったらしい。唯一それらしい関係があったのは、同じく同立で学年1位を維持し続けている『孫悟飯』という優等生だと聞いた。

 

『風太郎く………』

 

……この話が本当なら、風太郎君は全てを犠牲にしてまで勉強をしてきて、この結果を残した……。私との約束を守る為に、ここまで頑張ってきたのだ……。それが分かってしまうと、私があの時の少女であると名乗ることなんてできなかった。だから………。

 

『……上杉さん…!うーえすーぎさーん!!』

 

私はそう呼んだ………。

 

孫さんと共に風太郎君が新しい家庭教師になると聞いた時は、その場で大喜びをしたくなるほど嬉しかった。偶然転校先で風太郎君に会えただけでも奇跡なのに、家庭教師まで彼になるなんて………。でも………。

 

 

『うーん……。私はパスかなぁ…』

 

『嫌っ!!なんであんな奴らに教わらなきゃならないのよ!!』

 

『私も……。同級生に教わりたくはないかな』

 

『孫君はともかく、あんなデリカシーのない人から教わることは何もありませんッ!!』

 

 

何故か風太郎君の好感度が低かった。ちょっと悲しかったし、少し説教しようかと思った。でも私のせいでみんなを転校に巻き込んだのだ。そんなことできるわけがない………。

 

でも、風太郎君から教わって、それで人に見せられる成績になったら、その時は私の正体を明かして、風太郎君に対してずっと秘めていた想いを告げようと思っていた。姉妹の誰も風太郎君に対して興味ないなら、私がもらっちゃってもいいよね……?

 

………でも、一花は風太郎君に段々惹かれていった。他の3人は孫さんにぞっこんだったけど、それでも風太郎君の良さを理解し始めた。

 

私はそれが嬉しかった……。でも……。

 

私はみんなを転校に巻き込んだというのに、みんなを差し置いて私だけが特別になるのは、私自身が許せなかった。だから、この恋は忘れよう。そして一花の幸せを願おう……。そう心に誓った………。

 

 

 

 

 

 

四葉「………こんな感じです。どうですか?私がどれだけ上杉さんに相応しくないか、理解していただけましたか…?」

 

私はなんでこんなことを赤裸々に話してしまったのだらう……?風太郎君にでも、姉妹にでもなく、孫さんに………。

 

悟飯「………そうかな?四葉さんは四葉さんなりに約束を守ろうとしたんでしょ?」

 

四葉「私はあろうことか、姉妹をも見下していたんですよ…?それは恐らくみんなも気付いていた……。それでも私の為に付いてきてくれたんです。なら、私は身を引くべきです……。そうでしょう?見下したのに助けてもらっておいて、上杉さんも頂戴?そんなの虫が良すぎます………」

 

悟飯「…人はね、何かで上に立った時はみんなそうなると思うよ。誰かの為に役に立とうとしていた四葉さんなら尚更不思議じゃないと思う。それに四葉さんの場合はそこまで迷惑をかけてないでしょ?強いて言うなら、他の4人に心配させたくらいじゃないかな?」

 

四葉「でも、私は………」

 

私が発言しようとした時、孫さんは無言でこちらを見る。恐らく孫さんがまだ何か話すのだろう。

 

悟飯「……僕のお父さんがなんで死んだか、四葉さんは知ってる?」

 

四葉「はい…。確か、8年前のあの戦いでセルに殺された…。そうですよね?」

 

悟飯「うん。確かにそれで合ってるよ」

 

このタイミングで何故孫さんはこのような質問をしたのだろう?私には意図がまるで見えない。今までの話の流れからして脈略がない。突然話題を変えたようにしか見えない。

 

悟飯「………直接お父さんを殺したのはセルで間違いないよ。でもね……。実質お父さんを殺したのは、僕なんだ」

 

四葉「………………えっ…?」

 

今、孫さんはなんて言った…?私の聞き間違い…?孫さんが悟空さんを殺す…?

 

四葉「な、何かの冗談ですよね…?」

 

悟飯「冗談なんかじゃないよ。これは実話さ。聞いてみる?きっと四葉さんの失敗がちっぽけに聞こえると思うよ?」

 

孫さんが珍しく自虐するような言い方をする。孫さんがこんな言い方をすることは滅多にない…。……そういえば、時々何かを後悔しているような………。そんな哀しげな表情をしているところを見たことあるような気がするけど、それは孫さんが過去に失敗したのが原因……?

 

 

 

 

 

 

 

あれは8年前のこと……。僕が精神と時と部屋でお父さんと共に修行し、超サイヤ人を超えた力を身につけた後に参加したセルゲーム……。僕は仲間のみんなが傷付けられる姿を見て………。16号さんに説得されてキレた時………。僕は自分の限界を超えた。そして目の前にいたセルをも凌駕する力を得た。それは今まで最強だと思っていたお父さんを超えたことを意味していた。僕は嬉しかった。憧れの存在だったお父さんを超えられたことが。同時に、みんなを散々痛めつけたセルを懲らしめることができることを認識した時、僕の中に眠るサイヤ人の血が目覚めたような気がした。

 

あの時の僕なら、一瞬でセルを倒すことなどできた。だが僕はそれをしなかった。自分の力を過信し、もっと懲らしめてやる。死ぬよりも苦しい目に合わせてやると、わざと時間をかけて追い詰めた。

 

そういえば、あの時お父さんに言われたな…。早くとどめを刺せと。でも僕はそれを拒否した。自分の力を過信しきっていた。最早慢心さえしていた。そのせいで、セルは自爆という手段に出た。でもお父さんの瞬間移動によってなんとか地球は爆発を免れた。その後セルが復活して帰ってきたが、なんとか倒すことができた。

 

だけど、僕がやったことの代償はあまりにも大きかった。僕のせいでお父さんが死んだも同然だった。お父さん自身は気にしていなかったし、寧ろ僕が強くなったことを喜んでくれていたようだった。だけど……。

 

 

 

 

 

 

悟飯「……真相はこんな感じかな……。ねっ?四葉さんの失敗なんてちっぽけに思えてくるでしょ?だからあまり気に病む必要なんてないんだよ」

 

四葉「……………そんな…。でも、セルを倒せたのなら………」

 

悟飯「よくないよ。僕があんなことをしなければ、お父さんは死なずに済んだ。お父さんが死んだと知った時、お母さんは当然悲しんだよ。お父さんの仲間達も……。それに、悟天に至っては一度も父親の顔を見たことがないんだよ。これも全部僕のせいさ」

 

悟飯は思い悩むような素振りをするわけでもなく、自虐するように話すわけでもなく、ただ淡々と語っていた。

 

悟飯「……はっきり言って、こんな僕があの3人に言い寄られるほどの人間なのかって気になっているんだ。3人とも僕は素敵な人だって言ってくれるけど、僕はそうは思わない……いや、思えないんだ」

 

しかし、急に考え込むような素振りをしながら自分の考えを述べていく。

 

悟飯「正直、僕は彼女達にふさわしくないんじゃないかと思っている……」

 

四葉「そんなことありませんよ!!過去がどうであれ、今は地球を守る為に必死に戦っている!!私達はそんな姿を何度も見てきました!!だからこそ、二乃も!三玖も!!五月も!!!!孫さんのことが好きになったんだと思います!!!!」

 

悟飯「………そっか。四葉さんならそう言ってくれると思ってたよ」

 

四葉「えっ……?」

 

四葉は急に悟飯が何を言い出すのか訳が分からず、困惑するような声を出してしまう。

 

悟飯「過去がどうであれ、今はいいならいいじゃないか。そう言いたいんでしょ?なら四葉さんも同じじゃないかな?昔は他者を、姉妹を見下してしまったかもしれない。でも今は、ただ純粋に人の為に動いている。人の役に立っている。それで十分じゃない?」

 

悟飯が今まで自虐するように自身の失敗談を話したのは、こういう形で四葉のネガティブな考えを変える為に誘導したに過ぎないのだ。

 

悟飯「………それに、君は上杉君の役にも立っている」

 

四葉「私が…?上杉さんの……?」

 

悟飯「最近、上杉君が社交的になったでしょ?それは他でもない四葉さんのお陰なんだよ?」

 

四葉「私が……?」

 

悟飯「そう。四葉さんが人と関わることの大切さを行動で示して教えてくれたんだよ。四葉さんが上杉君を変えたんだ。これは僕にはできなかったことだよ。四葉さんだからできたことなんだよ」

 

風太郎は唯一悟飯と関わりを持っていた。だがそれは成績が互角だったから。きっかけはそれだけなのだ。互いに勉強を本分としていたことからも、考えが似通っていたからこそ仲が良かったのだ。そんな悟飯では、風太郎を社交的な性格に変えることは不可能だっただろう。ある意味風太郎と正反対だった四葉だからこそできたことなのだ。

 

悟飯「はい。これで四葉さんは僕の役にも立った。どう?勉強という形で役に立ったかはまだ怪しいけど、他の方法だと沢山人の役に立っている。そういった意味では、四葉さんは上杉君との約束を守れていたんじゃないかな?」

 

四葉「………どんな屁理屈ですか、それ……」

 

悟飯「そうかな…?別に屁理屈なんかじゃなくて事実だと思うけど……」

 

四葉は口では否定しているが、顔を見てみると、自然と微笑んでいることがよく分かる。

 

悟飯「僕は四葉さんに感謝しているんだ。僕じゃ上杉君をあんな風に変えることはできなかった。だから、ありがとう」

 

四葉「………私こそ、孫さんに感謝しているんですよ?」

 

悟飯「へっ……?」

 

悟飯は自分自身も礼を言われるとは思っていなかったようで、情けない声をあげる。

 

四葉「転校したばかりの時、上杉さんに関する噂はいいものではありませんでした」

 

四葉の言うことは事実で、風太郎に関する噂は良くないものばかりであった。その噂は事実が混じっていたものもあったが、根も葉も根拠もない噂も存在していた。どれもネガティブな印象を与えるものばかり。これらが風太郎の孤立化を更に深刻化させていたのだろう。とはいえ、風太郎本人が他人と連むことを好んでいなかったから、風太郎自身は傷付くことはなかった。

 

四葉「でも、そんな中で孫さんは上杉さんに接していた……。上杉さんの良さを知ってくれていた……。それだけで、私は嬉しいんです。だから、ありがとうございます…!」

 

先程まで今にも泣き出しそうだった四葉の暗い顔は、いつの間にか太陽のように明るい笑顔に様変わりしていた。どうやら悟飯との会話は悟飯の目論み通りかどうかは不明だが、いい方向に転がったのは確実だろう。これを機に恋に対して前向きになってくれればと悟飯は思った。

 

四葉「…………私、孫さんのお陰で少しだけ前に進めたような気がします。少し考えてみますね……」

 

風太郎をいい方向に変えたのは自分。悟飯がその事実を伝えたことによって四葉はもしかすると、自分の恋に対して前向きになったのかもしれない。それはまだ分からないが、少なくとも悩みは消えたように見える。

 

四葉「私、二乃と三玖と五月が孫さんのことが好きになった理由が分かった気がします」

 

悟飯「えっ?」

 

四葉「もしも、私があの時、上杉さんと出会っていなければ…。もしかしたら私の初恋は孫さんだったかもしれません」

 

四葉は、しししと白い歯を見せながら笑う。四葉にとっては軽いジョークだったのだが、悟飯にとっては胃が痛む発言だった。

 

悟飯「は、ははは……。そ、そう……」

 

こうして、悟飯による四葉のためのお悩み相談会は幕を閉じた。カッコよく締まらないのがなんとも悟飯らしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

修学旅行はもう終わり、バスで京都駅に向かっていた。もう既にバスは京都駅に到着しようとしていた。

 

武田「そういえば聞いたかい上杉君。例の盗撮騒動」

 

前田「悪りぃ。ミスった」

 

風太郎「やっぱりお前だったのか……」

 

武田「全く、空気を読みたまえ」

 

前田「つい気合いを入れすぎちまった…」

 

風太郎「はぁ……。まあ、頼んだのは俺だから気にすんな」

 

バスは京都駅に到着し、生徒達は新幹線に乗る為にゾロゾロと下車する。そんな中、修学旅行で疲れてしまったのか、一番後ろの5人席で仲良く居眠りをしている五つ子の姿があった。

 

風太郎「はい、チーズ」

 

風太郎は彼女達のそんな寝顔を前にしてシャッターを切り、姉妹の思い出の一枚として記録した。

 

 

 

 

 

 

ギニューの入れ替わり騒動があったり、風太郎が一花に告白されたり、悟飯が四葉の悩みを聞いたりと何かと色々あった修学旅行の数日後……。風太郎は"零奈"と名乗った女の子と例の池で会っていた。その"零奈"とは、五月が昔の自分達に変装した姿なのだが…。

 

風太郎「これ、渡しといてくれ」

 

五月「えっ?なにこれ?」

 

風太郎「お誕生日のお返しだ」

 

五月「……!これ、アルバム…!」

 

風太郎が前田に頼んで五つ子の写真を撮ってもらっていたのは、全てこれの為だった。姉妹の修学旅行の思い出として、アルバムを贈る為だったのだ。

 

風太郎「俺、金もねえし5人分も用意できねえんだ。ってことでそれを作らせてもらった。悟飯達にも協力してもらって完成した。お前達5人の思い出の記録だ」

 

五月「…そういえば、5人で写真なんて撮ってなかったかも……。ありがとう、風太郎君。これはみんなに渡しておくよ」

 

風太郎「てっきりお前も修学旅行で何か仕掛けてくると思っていたんだけどな」

 

五月「わ、私は私なりに仕掛けていたんだけどなぁ…………」

 

風太郎「……ともかく、零奈。お前には感謝している。あの日お前に会わなければ、俺はずっと1人だったかもしれない。お前のお陰で悟飯にも出会えたし、今の俺がある。6年ぶりの修学旅行はあっという間に終わっちまったが、良い思い出になると思ってこのアルバムを作ったんだ。ありがとな……」

 

 

 

 

風太郎がその場を去った後、零奈に変装した五月が後ろの影に話をかける。

 

五月「勝手な真似をしてごめんなさい…。ですが、打ち明けるべきです…!6年前、本当に会った子はあなただったと……」

 

四葉「……うん。今、打ち明けるべきか考えているところなんだ……」

 

五月「………えっ?」

 

五月は、四葉がその意見を否定してくるものだとばかり思っていたので、予想外の返答に呆然としてしまう。

 

五月「一体何があったんですか………?つい先日までは………」

 

四葉「まあ、色々あったんだよ!」

 

四葉はニコッとした笑顔を五月に向ける。その笑顔は、上部のものだけではない、心の底から浮き上がったものだった。

 

五月「四葉…………」

 

 

 

 

 

四葉「ということで、よろしくお願いします!孫さん!!」

 

悟飯「いや、いきなりどうしたの?」

 

四葉が悟飯に急用があると電話が来たものなので、筋斗雲を向かわせて四葉を孫家に連れて来たのだが………。

 

四葉「私なりに決意したんです…!」

 

四葉の考えはこうだ。

四葉も悟飯のように誰かを守れるような力を身につけたい。そして風太郎を守れるような自分になったら、その時は自分のことを打ち明けようと決意したようである。

 

四葉「そういうことで、孫さんに協力してほしいんです!!」

 

悟飯「いやいや、勉強の方は…?」

 

四葉「そっちも怠るつもりはありません…!!よろしくお願いします!!孫悟飯師匠!!」

 

悟飯「し、師匠……?」

 

悟飯が師匠と言われたのはこれが初めてである。未来悟飯はトランクスの師匠であったが、この世界の悟飯はそうではない。師匠という言葉を聞いて、悟飯は憧れの師匠であるピッコロを連想し、悪い気はしなかった。

 

悟飯「………四葉さんが本気なのは分かった。でも"気"は勉強とは違って、努力をすれば必ず報われるわけじゃないよ?そこは理解してもらえるかな?」

 

四葉「はい!私、頑張ります!!」

 

理解しているかどうかは微妙な返答だったが、こうして悟飯は四葉を一番弟子にするのであった………。

 

四葉「おや?それが孫さんの道着ですか?お似合いですよ!」

 

悟飯「ありがとう。これは僕の師匠と同じ道着だから気に入ってるんだ」

 

悟飯は修行する時に愛用している魔族の道着に着替えた。

 

悟飯「まずは気のコントロールからだね。四葉さんは運動はできる方とはいえ、気を扱えなきゃ話にならないからね」

 

四葉「気って……。確か、生きるエネルギーみたいな……?」

 

悟飯「そうそう」

 

悟飯は分かりやすくするために、実際に目の前で実演をすることにする。その場に座って意識を落ち着かせ、手に気を集中させる。すると、ホワッと光のようなものが出現する。

 

四葉「おお……!」

 

悟飯「まずはこれをやってみよう」

 

四葉「ええ!?こんなことできるんですか!?」

 

悟飯「うん。心を落ち着かせて集中すればいいんだよ。自分の中にある力を手に集中させる感じで」

 

四葉「むむむっ…。分かりました……」

 

四葉は悟飯の見よう見まねで気を具現化させようとする。途中で悟飯に何度も指摘されながら、方法を変えて何度も挑戦する。

 

ところが、四葉は戦ったことが殆どない。数時間経っても効果が表れる様子がなかった。

 

四葉「私、才能がないのでしょうか……」

 

悟飯「仕方ないよ。でも段々と進歩してきていると思うよ?もう少しやればできるかもしれないね」

 

四葉「本当ですか!?」

 

悟飯「うん。でももうこんな時間だし、取り敢えず昼ご飯にしようか」

 

四葉「はい!!」

 

四葉と悟飯は一旦孫家に戻り、チチに昼食を振舞ってもらうことになった。

 

チチ「いいだなぁ…!愛する人を守る為に強くなろうとするなんて…!!悟飯!しっかり四葉さを鍛えてやるだぞ!!」

 

チチは反対するということはなく、むしろ四葉の決意を聞いてなんか感動してしまっている。チチも武闘派の女性なので、女性が戦うことに違和感など感じないようだ。

 

四葉が修行するということで、悟天もそこに加わりたいと駄々をこねたが、運悪く今日は勉強する日だったため、一緒に修行するのはまた今度ということになった。

 

昼食を終えて、修行を再開すること数時間………。

 

四葉「お、おお……!!!」

 

悟飯「おお…!」

 

四葉は気を具現化させることに成功した。

 

四葉「す、すごいですよ…!これ、私自身の力で……?」

 

悟飯「まさか今日中にできるようになるとは思わなかったよ……。四葉さんは僕が思ったよりも才能があるかもしれないね」

 

四葉「……!!私、頑張ります!!姉妹のみんなを、上杉さんを守れるように!!」

 

悟飯「うん、その勢いだよ!」

 

悟飯は四葉が気を扱う才能が一定以上あることは既に分かっていた。四葉に稽古をつけることを頼まれた後に悟飯は四葉の気をよく探った。そして潜在パワーがあることに気付き、今回の修行が成立したのだ。

 

修学旅行後、このような修行をほぼ毎日のように行った。その結果、1週間が経つ頃には気を具現化させることは難なくできるようになったので、次のステップに移行することになった。

 

悟飯「四葉さんは本当に凄いよ。短期間であれだけ気を使い熟せるようになるなんて………」

 

四葉「いえ!これも孫師匠のご指導があってこそです!!」

 

四葉は謎のテンションで返答をする。普段の悟飯ならそのテンションを不思議に思うのだが、師匠という単語が自分自身に向けられているものだと知ると、それも気にならなくなる。

 

悟飯「それじゃあ次のステップだよ。次は舞空術だね」

 

四葉「ぶくう術……?」

 

悟飯「まあ説明するよりは見てもらう方が早いかもね」

 

悟飯はいつもの要領で宙に浮き、適当に空を飛び回って再び四葉の前に戻ってきた。

 

四葉「ああ!って、第二ステップがそれなんですか!!?」

 

悟飯「大丈夫。気を具現化できるならそんなに難しいことじゃないから。空を飛ぶイメージを思い浮かべながら気を集中させればいいんだよ。ちょっとでも浮ければ、あとは感覚でどうにかなるよ」

 

ということで、今度は舞空術の修行に移行することになった。

 

四葉「むむむっ…!!空に浮かべ〜!!」

 

悟飯「言葉に出せばいいってものじゃないよ?」

 

 

 

四葉「ふ、ふんぬ〜ッ……!!!」

 

悟飯「ダメダメ!力みすぎないで!心から落ち着かないと…。リラックスリラックス!」

 

 

 

四葉「孫さん、これはどうですか!?」

 

悟飯「えっ?それどうやったの?凄いけど舞空術ではないかな…?」

 

四葉はなんと、階段を作るようにして気を生成し、それを利用して上ることによって擬似的に浮かんだのだ。確かにこれは凄いことなのだが、これができて何故舞空術ができないのか不思議であった。

 

 

舞空術は気を具現化するよりも難しい技術だ。流石の四葉でも、戦闘未経験者だからだろうか、舞空術の会得には時間を要した。

 

 

更に1週間が経とうとした時……。

 

 

四葉「おお!やっと浮かびましたよ!!」

 

悟飯「いいよ!!その状態を維持して!!」

 

ようやく四葉は宙に浮かぶことに成功した。たった数cmとはいえ、これは大きな進歩だった。一度浮かべてしまえば、舞空術のコツを掴むのはとても簡単だ。

 

悟飯「よし、もう少し練習すれば舞空術もマスターできそうだね。まずは長時間浮き続けることができるかどうかだ」

 

 

 

 

 

四葉「どうもありがとうございました!!まだまだこれからですけど、大分成長できた気がします!!」

 

悟飯「うん。この調子なら、あと1ヶ月すれば確実に舞空術はマスターできるだろうし、下手したら気のコントロールも完璧になるかもしれないね」

 

四葉「それでは、明日もよろしくお願いしますね!孫師匠!!」

 

悟飯「それじゃまた明日学校でね!」

 

この日の修行は終わった。修行を続け、成果が出るたびに四葉は大喜びをしていた。きっとその成功が四葉の自信に繋がっているに違いない。この修行を機に恋に対しても前向きになってくれればと、悟飯は思っていた。

 

悟飯「……よし。それじゃ、みんなの為に問題を作るとしますか………」

 

そして彼は、家庭教師としての仕事を遂行する為に、自室に篭って今日も風太郎と共に問題作成に励むのだ…。

 




 今回のタイトルの意味について解説。失敗は四葉の過去を意味しており、後悔は悟飯の過去を意味しています。

 四葉は過去のことが原因で自分の恋に消極的になっています。姉妹に迷惑をかけてしまったからだと自分で自分に呪いをかけているような状態ですが、悟飯は自分自身の過去を四葉に明かします。自分の失敗に比べれば四葉の失敗は大したことないから気にする必要はないという意図で悟飯は過去を明かしました。
 悟飯は敢えて自虐するように語っていきますが、それは四葉が自分を擁護することを読んでの行動。四葉の擁護に悟飯がブーメランを投げることによって四葉の悩みを解消しようと試みました。
 結果、完全に解消されたとまでは行きませんでしたが、影響を及ぼしたのは紛れもない事実。原作よりは四葉の心は軽くなっています。

 ビーデルさんに比べて四葉は成長速度がやや遅めです。ビーデルは武道家であるのに対し、四葉は運動やスポーツができるというだけなので、実戦経験があるかないかでは大いに差が出ます。まあそれでも四葉の成長速度の時点で早い方だと思いますけど。次回もほぼオリジナル回になるかと思います。

 というか、最近無茶苦茶暑いですね。外に出るだけで疲れるレベル。ここ最近思考がまとまらなくて大変でしたよ。いやホントに。


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第11巻
第69話 決意


 前回のあらすじ…。

 四葉の過去を聞いた悟飯だったが、今度は悟飯が自分の失敗談を話すことにした。悟飯は自身の失敗談を話し、四葉の失敗など気にするほどではないと伝えるが、四葉の反応は微妙だった。そこで悟飯は自分を責める方法に出ると、四葉は悟飯を擁護する発言をした。悟飯はこれを狙っていたのだ。これを利用して、四葉を擁護することによって、四葉に自信を少しでもつけようと模索したのだ。

 そして、四葉は人を守れる力を手に入れることができたら、その時は恋に積極的になれるかもしれないとのことで、悟飯は四葉に稽古をつけることになった……。


四葉は今日も孫家で修行をしていた。夏休みになったので一日中修行することができる。ようやく浮けるようになったので、今度は長時間浮く訓練をすることになるはずだった…………。

 

四葉「孫さーん!見てください!もうこんなに自由自在に飛べますよ!!」

 

四葉は浮かび上がるまでに時間を要したものの、一度コツを掴んでしまうと瞬く間に成長するようで、舞空術に関しては完璧にマスターしていると言ってもいいレベルにまで達していた。

 

悟飯「す、凄いね…。浮いてからたった1日で……………」

 

四葉「なんかやり方が分かったらすぐにできるようになっちゃいました!では次のステップをお願いします!」

 

だが、四葉の最終目標は空を自由自在に飛べることではない。姉妹や風太郎を守れるような力を手に入れること。なら戦いの仕方も教えなければならない。その基礎として舞空術や気の扱いを教えていただけに過ぎないのだ。

 

悟飯「よし…。気を具現化させることはできるよね?」

 

四葉「はい。それならこの通り!」

 

四葉はドヤ顔で気を具現化させる。そしてその気を自由自在に操っている。

 

悟飯「それじゃあ、気功波を試しに撃ってみよう」

 

四葉「こうですね!」

 

 

悟飯「わっ!?!?」

 

悟飯は咄嗟に四葉が繰り出した気弾を避ける。悟飯のすぐ横を通り過ぎた気弾は、地面に着弾すると大爆発した。

 

四葉「わっ!!孫さん大丈夫ですか!?」

 

悟飯「い、いつの間に気功波を撃てるようになったの……?」

 

四葉「えへへ…。ハンドボールを投げるイメージでやったらなんかできちゃいました!!」

 

なんかでできちゃう辺り特別な才能を秘めているのではないだろうか?そんなことは兎も角、力の制御に関してはイマイチなので、悟飯は力加減の修行をすることに急遽変更。

 

四葉は日頃からスポーツしており、特に力加減が重要なバスケも得意だからだろうか、悟飯に気の加減のノウハウを教わるとすぐに加減も覚えた。

 

悟飯「凄い……。基礎ができたら1人で勝手に成長していく…………」

 

悟飯は四葉の成長っぷりに最早感服するしかなかった。

 

四葉「いえいえ!孫さんのご指導があってこそですよ!」

 

そして四葉は満面の笑みで悟飯のお陰だという。四葉さんは本当にいい人だなぁ、今まで出会ってきた悪人に四葉さんの爪の垢でも飲ませてやりたいと思うほどだった。

 

四葉「じゃあ次はあれ教えて下さいよ!カメハメハ!!」

 

悟飯「そうだね……。でもそろそろお昼にしようよ。もういい時間だよ?」

 

四葉「おっと!もうそんな時間ですか!」

 

四葉も気のコントロールが上達してきたので、気を解放して高速で走ることも可能になっている。その為、悟飯と四葉は新幹線でも追いつけないほどの速さで孫家に戻っていた。

 

悟飯「いや〜……。正直四葉さんがここまでできるとは思わなかったよ…」

 

四葉「上杉さんなら、勉強もこうだったらよかったのに、って言いそうですね!」

 

悟飯「あはは!確かに言いそうだ!……まあ僕も今そう思ってるけど」

 

四葉「急に辛辣ッ!!」

 

しかも雑談をしながら走ることも余裕だ。あっという間に孫家に辿り着いたのだが…………。

 

四葉「あれ?孫さん家の前に飛行機が止まってません?」

 

悟飯「あっ、本当だ。一体誰だろう…?」

 

 

 

ビーデル「あっ!どこに行ってたのよ悟飯君!!」

 

チチ「悟飯!!この女誰だべ!?まさか愛人じゃないだべな!?」

 

ビーデル「だーかーらー…!!そういうのじゃないって言ってるでしょうが!!何回言ったら分かるのよ!!」

 

何故かビーデルがここに訪れていた。なんでビーデルがここが分かったのか不思議に思った悟飯だが、以前の会話を思い出し、悟飯の情報を引き出しているなら住所を知っていてもなんら不思議なことではなかった。

 

悟飯「ビーデルさん、一体どうしてこんなところに……?」

 

ビーデル「いや〜、ちょっとあなたにお願いしたいことがあるのよ。あなたって空を飛べるじゃない?だから私にも空の飛び方を教えてほしいの!」

 

何ともタイムリーなお願い。つい先程まで四葉に教えていたところである。

 

悟飯「いや〜……。今は四葉さん……この人に教えているから手一杯で……」

 

ビーデル「あーあ。なんか拡散したくなってきた気分だわ」

 

悟飯「勿論いいよ!!喜んで!!」

 

四葉は悟飯が態度を急変させた理由は分からなかったが、ビーデルがしてやったりという顔をしているのを見て、何か脅迫をされているのではないかとあたふたしていた。まあそれは強ち間違っていない。

 

チチ「舞空術ってやつだか…?まあそれくらいなら別にいいだが、お礼って言ってエッチなことすんでねえだぞ?」

 

ビーデル「するわけないでしょうがそんなことッ!!!いーだッ!!」

 

チチ「なっ!?失礼な小娘だべ!!!べーだッ!!!」

 

ビーデル「失礼なのはどっちよ!!」

 

悟飯「ちょ、ちょっと2人とも!!」

 

四葉「………新たな修羅場の予感がします………」

 

こうして、悟飯達が昼食を済ませた後、気の特訓にビーデルも加わることになった。しかし四葉は舞空術を既にマスターしているので、気功波やそちらの方の練習をしたいところなのだが、ビーデルがいる手前、それはやり辛いということで、四葉には気のコントロールをとにかく極めるように自主トレーニングしておくように頼んだ。

 

悟飯「さて、まずは気のコントロールから始めようか!」

 

ビーデル「キ…?キって何……?」

 

悟飯「あれ?あっ、そうか。ビーデルさんに説明するのは初めてだったね。気っていうのは、生き物に流れているエネルギーみたいなものだよ」

 

ビーデル「生き物に流れているエネルギー……?うーん……。なんかいまいちピンと来ないわね……」

 

四葉「だったら私が実演してみせましょう!!!」

 

ビーデル「えっ…?」

 

四葉は有名人を目の前にしてテンションが上がっているようだ。

 

四葉「気というのは………。こんな感じのやつです!!」

 

四葉は右手に球状の気を生成し、左手を添えて、気の玉を微妙に遠くにある岩に向けてシュート!

 

気が岩に当たると丁度いい加減で爆発をした。その光景を見届けた四葉は何かをやり遂げたような清々しい笑顔をしていた。

 

 

ビーデル「……何?バスケをすると空を飛べるようになるってこと…?」

 

悟飯「ごめん。あれはちょっと分かりにくい例だから気にしないで」

 

四葉「ちょっと酷くないですか!?」

 

悟飯「気っていうのはね、こういうものだよ」

 

悟飯は四葉に教えたように、両手に気を集中させて、光を生み出して気を生成してみせる。その輝きにビーデルは目を奪われたようで、見惚れてしまっている。

 

ビーデル「へぇ…!綺麗……!」

 

悟飯「まずはこれを生み出せるようにしようか!」

 

ビーデル「……分かったわ」

 

悟飯「難しいことは考えないでね。両手にエネルギーを集中させるイメージだよ」

 

ビーデルは両手に力を込めるが、それはただ力んでいるだけ。悟飯はリラックスするように指摘し、ビーデルは深呼吸をして集中する。

 

しばらくビーデルに付きっきりで面倒を見ていると、ビーデルは四葉よりもコツを掴むのが早かったのか、すぐに気を具現化してみせたのだ。

 

ビーデル「あっ!できた!」

 

悟飯「おお…!ビーデルさんは格闘家なだけあってコツを掴むのが早いね…!これならすぐに空を飛べるようになりそうだ」

 

ビーデルはやはり武道家というのが大きいのだろう。気のコツを掴むのはかなり早かった。

 

ビーデル「それじゃ、次はいよいよ空を飛ぶ練習ね」

 

悟飯「舞空術も基本的にやることは変わらないよ。心を落ち着かせて、空を飛ぶイメージを思い浮かべればいいよ。一度浮かべば後は簡単だから」

 

 

 

 

 

 

悟飯とビーデルが舞空術の練習をしている時、暇を持て余していた四葉は悟天と模擬戦をしてみることにしたようだが………。

 

悟天「ほらほら、こっちこっち!」

 

四葉「は、速いですよ〜!!」

 

悟天は遠慮というものを知らないようで、超サイヤ人に変身していないとはいえ殆ど加減をしていない。

 

四葉「むっ…!そうだ!」

 

四葉はポンと手を叩いて何かを閃いた動作をする。手に気を集中させると、紐のような気の塊を生み出した。否、紐にしては少し太い。

 

四葉「それっ!!!」ギュルル‼︎

 

悟天「わっ!!!!」

 

その紐……いや、リボン型の気は悟天を捕らえることに成功した。

 

四葉「やったー!!!悟天君を確保ッ!!!」

 

悟天「ぐぬぬぬっ…!!」

 

悟天は力で振り解こうとするが、どうやらちょっとの力では振り解くことはできない程硬いらしい。

 

悟天「なら!」

 

ボォオオオオッ!!!!!

 

悟天は金色の炎のようなオーラを発生させ、金髪を逆立てて瞳をエメラルドグリーンに変化させる。超サイヤ人に変身すると、四葉のリボン型の気はすぐに突破される。

 

四葉「ず、ずるいですよ!!私はサイヤ人じゃないのでそんなことできませんッ!!!?」

 

超悟天「超サイヤ人を使わないなんて一言も言ってないもん!」

 

四葉「むむっ…!そういうこと言うと女の子にモテませんよ!!」

 

超悟天「別にいいもん。…って、あれ?今何時だっけ?」

 

四葉「えっ?今ですか?丁度3時ですけど?」

 

四葉はその辺に置いておいたスマホの時刻を確認して悟天に伝える。

 

超悟天「わっ!このままじゃらいはさんとの約束に遅れちゃう!!ごめんね四葉さん!!」

 

ドシューンッ!!!

 

悟天は超サイヤ人のまま舞空術で日本に向けて発進した。その理由を四葉の耳は一語一句零さずに聞き取っていた。

 

四葉「ら、らいはちゃんが、悟天君を……?何事ッ!?これは一大事ですよ!!?」

 

四葉は異常事態を察知し、急いでスマホを取り出して、らいはの兄である風太郎に連絡を取る。

 

 

 

 

風太郎「はぁ……。まさからいはに見られるとは思わなかった………」

 

風太郎はというと、『高校生のための恋愛ガイド』という本を購入したことがらいはにバレて少しいじられていたのだが、ふとらいはが『約束がある』と言って外出したのだ。

 

風太郎は一花の件で少しは恋愛に関心を持ったのか、はたまた射止めたい相手でもいるのかは不明だが、このような本を買うなんて、1年前の彼からは想像できる者は誰一人としていないだろう。

 

そんな風太郎は、珍しく勉強をしていなかった。それが幸いして、四葉の着信にいち早く気がついた。

 

風太郎「なんだ?勉強に関する質問か?夏休みに入ったばかりだってのに関心だな。他の姉妹にも是非見習ってもらいたい」

 

 

 

『上杉さん!!悟天君がらいはちゃんと2人で出かけるみたいですけど、これどういうことかご存知ですか!?』

 

風太郎「……はっ?」

 

風太郎は先程の出来事を思い出す。あんな本を持っていることがバレて恥ずかしい思いをしていた為、らいはが何故出かけるのか気にする余裕がなかった。しかし、四葉のこの着信によって風太郎は一気に覚醒した。

 

風太郎「(待て?まさかあの時の懸念が現実になろうとしているのか…!?でも悟天はまだ一桁だ…!いや、あのらいはのことだ…!!まさか……………)」

 

一言付け加えておくと、風太郎はシスコン。それは読者の皆さんも知っているだろう。しかし、四葉もらいはにぞっこんである。『上杉さんと結婚すれば合法的に姉妹に…?』なんて口走るくらいには。その為、四葉もある意味シスコンなのだ。

 

そんな2人が似たような状況を想像して慌てている。そんな2人が同じ結論に到達することは容易かった。

 

 

 

「『これは事実確認をする必要がある!!(ありますね!!)』」

 

勉強なんてそっちのけで風太郎と四葉は急遽悟天とらいはの尾行をすることになった。

 

 

 

 

 

ブォンッ!!!!

 

 

ビーデル「うわっ!!?な、何!?」

 

ビーデルは突然の強風に驚いて、せっかく浮けていたのに地面に着地してしまった。その強風の正体は全速力で走ってきた四葉なのだが………。

 

悟飯「ど、どうしたの四葉さん…?そんなに慌てて……?」

 

四葉「ごめんなさい孫さん!!急に用事ができてしまったので今日はこれで失礼します!!ありがとうございました!!!」

 

ドシューンッ!!!!!

 

四葉は一言悟飯に伝えてさっさと全速力で日本に向かってしまった。何故筋斗雲を使わなかったのかと不思議に思いつつも、余程何か重要な用事でもできたのだろうか?と悟飯は呑気に考える。

 

ビーデル「……ねえ悟飯君。あれぐらいまで飛べるようになるにはどれくらいかかるのかしら?あれぐらい自由に飛べるようになるまでここに通うわ」

 

悟飯「あ、あはは…………」

 

ビーデルがようやく浮けたことによって、悟飯はビーデルの訓練を終わらせることができると、なんとか上手く誘導していたのだが、四葉のこの一連の行動によって全て崩れてしまった。

 

孫悟飯の苦悩は続く………。

 

 

 

 

 

 

20分程経過した。その頃には四葉は上杉家には到着していた。そして風太郎と会ったのだが………。

 

風太郎「ど、どうしたんだ四葉?何故そんなに息を切らしている?」

 

四葉「ちょっと急いで来ただけなのでお気になさらず…!!では早速らいはちゃんと悟天君を追いましょう!!」

 

風太郎「おい待て。らいは達がどこに行ったのか分からないだろ?闇雲に探しても意味がないだろ?」

 

四葉「私のリボンセンサーがこっちだと反応しています!!」

 

風太郎「それ、あてになるのか?」

 

本当は気を利用して追っているだけだ。四葉は基礎がしっかりできてしまえば後は勝手に成長するタイプ。その為、人の気を追うことも容易くなっていた。しかしそれは風太郎には公表しない。自分がみんなを守れる力を手に入れたと確信してから打ち明けるつもりのようだ。

 

 

 

 

少し歩くと、確かにらいはと悟天の姿を確認した。

 

風太郎「お前のリボンセンサーとやら案外精度いいんだな。もしやリボンが本体なのか?」

 

四葉「そんなことありませんからね!?本体は私ですよ!?」

 

その言い方だとまるでリボンは四葉の体の一部だと言っているようにも聞こえてしまうが、細かいことは気にしないでおこう。

 

四葉「むむっ…?公園に行きましたよ?」

 

風太郎「公園で何するんだ…?遊ぶのか?」

 

 

 

 

らいは「はい悟天君、これどうぞ!」

 

悟天「?なにこれ?」

 

らいは「いいからいいから!開けてみて!」

 

らいはに言われた通りに悟天は箱を開けてみる。するとそこには………。

 

悟天「あれ?クッキーだ?」

 

らいは「ちょっと試しに焼いてみたんだ!良かったら食べてみてよ!」

 

悟天「いいの?僕の家あまりお菓子は出てこないからうれしいや!やったー!!」

 

 

 

 

風太郎「らいはぁ…!俺を1人にしないでくれぇ…!!!」

 

風太郎はらいはの行動に今にも泣き出しそうになっている。

 

四葉「しかしらいはちゃん。まさか今のうちに胃袋を掴んでおこうって作戦では……?恐ろしい子…………」

 

そもそも孫家でお菓子類が出ないのは珍しいと感じた。食事は沢山出てくるのだが、間食系はお客用に取ってある程度で自分達が食べる用には殆ど買っていないのだ。

 

クッキーを食べ終えたらいはと悟天は再び立ち上がって移動を開始する。

 

風太郎「よし!追うぞ!!」

 

四葉「上杉さんの瞳に炎が見えるような気がする…………」

 

 

 

四葉と風太郎はしばらく尾行していると、らいはと悟天はあるスーパーに辿り着いた。

 

風太郎「スーパーマーケット……?荷物持ちにするつもりか……?」

 

四葉「むむっ………。取り敢えず店内に入ってみましょう」

 

 

風太郎と四葉も店内に入ることにする。

 

 

 

らいは「ありがと!この卵1人1パックまでしか安くならないんだけど、悟天君もいると2パック買えるよ!」

 

悟天「クッキーもらったから、これくらいなら別にいいよ」

 

 

 

四葉「……あれ?」

 

風太郎「もしかして、本来の目的はこの為……?なるほど…!家計を考えての行動だったんだな!らいはマジ天使!!」

 

四葉「上杉さんがキャラ崩壊している………」

 

 

 

急遽尾行することになった四葉と風太郎だったが、2人(特に風太郎)が懸念するような事態にはならなそうだったので、そのまま引き返すことになった。

 

風太郎「しかし、クッキーで釣って買い物に付き合わせるとは、らいはも恐ろしいやつだ…………」

 

四葉「……そうですね」

 

しかし、四葉は疑問に思った。ただ買い物に人数が必要なら、風太郎を連れて行けばよかったのではないか?そうすればわざわざクッキーを作る必要はなかったはずである。なんなら風太郎と悟天を纏めて連れてくれば3パックも買える。ともかく合理的な方法とは思えない。

 

そう考えると、わざわざクッキーを焼いたのは・・・・

 

風太郎「ん?どうかしたか、四葉?」

 

四葉「な、なんでもありませんよ!!私はこれで失礼しますね!!」

 

風太郎「しっかり勉強しろよ〜!」

 

四葉はある考えに結論に辿り着いたが、風太郎に言うと面倒なことになりそうだと思い、敢えて黙っておいた。

 

四葉「……私、何気に上杉さんとデートしてたんだ……………」

 

2人で尾行することをデートと呼ぶなら、恐らくそうなのだろう()

 

 

 

そんな尾行デート(?)があった翌日。四葉は今日も元気に悟飯の元で修行していた。そろそろかめはめ波を撃てそうである。

 

四葉「波ぁあああああッ!!!!」 

 

ズォオオオオオオオッ!!!!

 

……と、空に向けて一本の青白い光が四葉の両手から放たれた。四葉はかめはめ波の習得に見事成功したのである。

 

四葉「やった〜!!撃てましたよ!!見てました!?」

 

悟飯「うん。もう技の基礎もばっちりだね。正直これ以上教えることはあるのかな…………」

 

四葉はもうZ戦士に加わっても申し分ないのではないだろうか?実戦経験がないのが少々不安だが、Z戦士に恥じぬ強さを持っているのは確かだ。

 

四葉「でも私はまだまだ修行させていただきます!孫さんの迷惑でなければの話ですけど!」

 

悟飯「うーん……。でもそろそろ勉強もした方がいいんじゃない?最近修行ばかりだったでしょ?」

 

四葉「一応家に帰ってからみんなで勉強してたんですけどね…。あはは……」

 

出会ったばかりの頃からは考えられない言動である。四葉は元々協力的であったとはいえ、他の3人(風太郎にとっては4人)は反抗的だった。そんな5人が一つになって勉強していると考えると、悟飯は感慨深い何かを感じた。

 

悟飯「それじゃ、今日はもう勉強に切り替えようか!」

 

そう思った矢先、当たり前のようにビーデルが孫家の前にいた。その為仕方なく今日も修行にすることにした。

 

 

ビーデル「大分浮けるようになったわ…!」

 

悟飯「凄い凄い!1日でそこまで浮けるようになるなんて!」

 

ビーデルは浮けるようになるまでが早かっただけでなく、舞空術の上達も早そうである。ただ四葉は基礎を掴むのが遅かったが、基礎を掴んでからは一人で勝手に急成長してしまったのだ。ビーデルはある意味安定して急成長していると言える。やはり武道家だから素人とは育ち方が違うのだろう。

 

 

そのような日々が過ぎていき、気がつけばビーデルが舞空術を習得しに通い始めてから1週間程が経った。

 

ビーデル「あはは!!すごいすごーい!!見て見て!!」

 

ようやく自由自在に飛べるようになってビーデルは大喜びをしている。

 

四葉「……あれ?ビーデルさん、いつの間に髪を切ったんですか?」

 

悟飯「僕のアドバイスを聞いてくれたんじゃないかな?」

 

四葉「アドバイス?」

 

悟飯「うん。髪が長いと相手に髪を掴まれて行動が制限されるリスクがあるから短い方がいいよって」

 

四葉「・・・・」

 

悟飯「……?どうしたの?」

 

だが、四葉は知っている。ビーデルの様子が最近変わったのを。最初はツンツンしていたビーデルだったが、日が経つに連れて角が剥げて丸くなってきたかのように素直になってきたのだ。そして悟飯の顔を見ると少し顔を赤くする始末。恋愛関係に敏感な四葉は、ビーデルが悟飯に対して少なからず好意を持っていることを察するには十分だった。

 

ビーデルは、今まで過保護に育てられてきた。一人娘だからというのが大きな原因かもしれないが、父親であるサタンは『私より強い男以外の交際は認めない』と何度もくどく言われていた。そしてMr.サタンの娘という看板が逆にビーデルの邪魔をしていた。要は憧れの存在だが、父親のことを考えて近づき難い存在でもあったのだ。クラスメイトを除いて中々ビーデルに親しくしてくれる人はいない。

 

だが悟飯は違った。悟飯だけは"サタンの娘"ではなく、ビーデルという一人の少女として接していたのだ。それを自覚したビーデルは、無意識に、確実に悟飯に惹かれていったのだ。

 

その為、髪型を変えるように提案された時は、好みの髪型に変えようかとウキウキしていたのだが、案の定悟飯の鈍感提案によってビーデルは怒ってしまうものの、結局は悟飯のアドバイスを受け入れてショートヘアにしたのだ。

 

四葉「………孫さんが天然の女タラシになってる……!!!」

 

四葉は危機感を覚える。このままビーデルが恋愛という名の戦争に参加するとする。まずは間違いなく二乃と衝突するだろう(というか既にしたことあるし)。それだけではない。恐らく姉妹達(主に3人)が結託して妥当ビーデル同盟を結成するに違いない。

 

メタな話になるが、ある世界ではビーデルは悟飯の嫁として嫁いでいる。四葉はそれを認知しているわけがないのだが、それを無意識に感じ取ったのか、はたまた女の感というものかは不明だが、四葉はここ最近で一番焦燥感を覚えてしまう。

 

四葉「(ど、どうしよう!?みんなに言うべきかな!?でも言ったら間違いなく喧嘩になっちゃう…!!うぅ…!!)」

 

四葉としては、姉妹に幸せになってほしいので、ビーデルの味方をする確率は限りなく低い。とはいえ、ビーデルを突き放すような真似は四葉の性格上できない。

 

ビーデル「悟飯君ありがとう!!これならもう大丈夫だと思うわ!」

 

悟飯「今更聞くのも変だけど、どうして舞空術を習おうと思ったの?」

 

ビーデル「ちょっとパパを驚かせたくって。最近のパパは調子に乗ってるから、娘が本気を出しているところを見て焦ってほしいのよ」

 

四葉「あれ?意外ですね?お父様に勝ってほしくないんですか?」

 

ビーデル「ううん。むしろ負けてほしいくらいだわ!チャンピオンになってから女遊びばっかり!!天国にいるお母さんが泣いてるわよ!!」

 

悟飯「(よし!)」

 

悟飯はサタンを負かしてもいいことを悟ると、こっそりとガッツポーズを取る。

 

ビーデル「そうだ!せっかくだしあなたも出たら?」

 

ビーデルは四葉に天下一武道会に出場するように進言した。四葉はそんなお誘いが来るとは思わず、ポカーンとしている。

 

ビーデル「あなただって、謂わば悟飯君の弟子みたいなものなんでしょ?きっといい線行くと思うのよ!まあパパには勝つのは無理だと思うけど」

 

ビーデルは父親がセルを打ち倒したものだと信じているのかどうかは定かではないが、サタンが武道家として優秀なのは事実。その為、悟飯がメタルクウラ達を撃退した事実を知っていてもサタンの方が強いと思っているようだ。

 

しかし四葉は知っている。目の前の悟飯がセルを倒したことを。だからといって敢えてそれを口にするほどお馬鹿ではない。

 

四葉「わ、私が……?」

 

ビーデル「前に組手したことあったでしょ?あなたの腕も中々だったと思うのよ!だからあなたにも是非出場してほしいわ!そうすれば今年の天下一武道会は盛り上がること間違いなしよ!」

 

四葉「あはは…。検討してみます……」

 

ビーデル「それじゃあまたね〜!!」

 

悟飯「うん!」

 

ビーデルはジェットフライヤーを使わずに舞空術で帰宅していった。

 

四葉「………孫さん」

 

悟飯「…?どうしたの?」

 

四葉「もしも、もしもですよ……?ビーデルさんに好きだって言われたら、孫さんはどうお返事します?」

 

悟飯「なんでそんな突拍子な質問を……」

 

四葉「…………」

 

悟飯は四葉がふざけて質問するしているのかと思ったが、四葉の真剣な顔を見て、何故かは分からないがふざけていないことは察し、悟飯も真面目に回答することにした。

 

悟飯「…悪いけどビーデルさんの気持ちには応えられないよ。だって、僕は既に3人も待たせている人がいる。僕自身もその3人にしっかりと返事をするって決めたんだ」

 

悟飯の意見は揺らぐことは無さそうだった。今にして思えば、ビーデルの性格を考えると、とても控えめなアプローチだったと四葉は感じている。もしかすると、自分の恋はもう叶わないものだと密かに感じ取っていたからなのかもしれない………。そう考えると複雑な気持ちになった。

 

悟飯「…って、これじゃまるでビーデルさんが本当に僕のことを好きになっているみたいじゃないか……。何言ってるんだろう僕……」

 

四葉「今、聞いちゃダメですか?」

 

悟飯「……?」

 

四葉「孫さんが、誰を選ぶのかを…!!」

 

四葉は悟飯の決意を聞いていたとはいえ、やはり姉妹の今後にも関わることなので、悟飯が誰を選ぶのかをいち早く知りたかった。

 

悟飯「………誰も選ばない」

 

四葉「…………!!!!!」

 

四葉はその言葉を聞いて、思わず悟飯をビンタしそうになる。だが、次の言葉を聞いてその手は止まった。

 

悟飯「……最初はそう考えていた。でもそれは3人を傷つける。いや、3人だけじゃない。一花さんと四葉さんも傷付くことになるだろうね…。だからそんなことはしないよ」

 

四葉「孫さん……………」

 

悟飯「……二乃さんは、最初こそ険悪な関係だったけど、関わっていくうちに本当は優しい子で、可愛い子で、人に気を使うことができる子だということは分かった。僕は二乃さんの料理は好きだし、僕に向けてくれる笑顔も好きだ」

 

四葉「じゃあ、二乃を選ぶんですか?」

 

しかし、悟飯は首を横に振る。

 

四葉「えっ……?」

 

悟飯「次に三玖さん。何故か分からないけど、彼女は守ってあげたくなる。最初は内気でネガティブだったけど、段々表情が豊かになってきて、僕が褒めると凄く嬉しそうな顔をしてくれるんだ。それに僕の為にチョコを作ってくれたり、料理を頑張ってくれてると思うと、なんか嬉しくなるんだ………。それに、何故か分からないけど、五つ子ゲームで決まって最初に見分けられたのは三玖さんなんだ」

 

四葉「えっ………?」

 

第一回五つ子ゲームは、林間学校後の0点事件の時。全員ポニーテールにして顔だけで見分けろと言われたあれだ。悟飯は気で区別することをやめ、顔だけで見分けようとした。その時、一番最初に見分けることができたのが三玖だった。

 

続いて第二回五つ子ゲーム。これは虎岩温泉の旅館で写真を利用して全員五月の格好をした5人を見分けるというものだった。時間はかかったが、一番最初に見分けられたのはこれまた三玖だった。

 

五つ子を…。三玖を見分けられるということは、三玖に対して愛が存在すると言っても過言ではなかった。

 

四葉「では、三玖ですか……?」

 

しかし、悟飯は再び首を横に振る。

 

四葉「じゃ、じゃあ…………」

 

悟飯「最後に五月さんだね。五人の中で初めて会ったのは五月さんだった。彼女は上杉君と度々衝突して大変だったよ。でも本当は素直で、甘えたがりだということが分かった。僕も彼女に散々振り回されたかもしれない。でも何故か憎めないんだ。むしろ振り回されて嬉しくなっている自分がどこかにいる。それに五月さんが何かを食べている時のあの笑顔が好きなんだ。見ていてこっちも幸せな気分になれる……」

 

四葉「………ということは、五月?」

 

悟飯は今度こそ首を縦に振る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そう思われたが、なんと横に振った。

 

四葉「……………えっ?」

 

四葉は頭が真っ白になる。悟飯は先程誰も選ばないということはしないと言った。にも関わらず、さっきのような状況だ。四葉には何が何だか訳が分からなくなってしまった。

 

四葉「ど、どういうことですか…?五月でもないって…………」

 

悟飯「……………分からないんだ」

 

四葉「分からない……?」

 

悟飯「…いや、違う…。一人選ばなきゃいけない。それは自分でもよく分かっている。だけど、誰か一人を選べば残りの2人は悲しむ……。僕は誰も悲しませたくないんだよ……。泣いている顔なんて、見たくないんだ…!」

 

四葉「…………孫さん」

 

悟飯の言い分も分かる。だが、四葉は変に慰めるようなことはしない。ここは敢えて厳しく言おうと心を引き締める。

 

四葉「孫さんはそんなことで二乃が、三玖が、五月が傷付くと思っているんですか?」

 

悟飯「えっ………?」

 

四葉「確かに、選ばれなかった2人は悲しむかもしれない。でもそれは一時的なものです。きっとみんなは孫さんの意見を尊重してくれると思います。ですから、覚悟を決めるべきです。返事をあやふやにすれば、それこそ3人は傷付きます!」

 

悟飯「……ありがとう。そうだよね…。…………分かった。覚悟を決めることにする」

 

四葉「ということは、既に孫さんには好きな人がいるんですよね…?勿論、あの3人の中で…………」

 

悟飯「………まあ、そういうことになるね………」

 

四葉「……やっぱりそうなんですね。私にだけでいいから教えて下さいよ〜!」

 

悟飯「…本当は学園祭の時に打ち明けるべきだけど……。他の誰にも言わないでね…?」

 

四葉「はい!!」

 

悟飯「僕は………………」

 

 

 

 

 

 

 

 

四葉は悟飯の答えを聞き、どこか満足気に、そして哀しげな表情だった。姉妹が幸せになる。それは四葉としてはとても嬉しいことだった。だが、同時に他2人の姉妹は悟飯と結ばれないのだ。それが分かってしまうと、彼女はどこか複雑な気持ちになった。

 

四葉「……孫さんが迷っていた気持ちが少し分かる気がします」

 

四葉は舞空術を使って帰宅しながら呟く。悟飯の覚悟は本当に思い切ったものであろう。悟飯の様子から察するに、もしかすると、3人とも好きなのではないだろうか?しかし彼は3人と付き合うという不貞なことはしない。本当に、悩みに悩んだ末に決めることができたのだろう。

 

四葉「ただいま〜!!」

 

四葉はこのことは誰にも言わないと心に誓い、現在住んでいる部屋の玄関をくぐるのであった………。

 




 今回は悟飯の花嫁について解説。
 悟飯は既に相手が決まっていると発言しています。そして実際に作者である私自身も決めています。悩みに悩んだ末にようやく決断できたので、もう変更することはないと思います。まあifストーリーで別の子が花嫁になった場合とかも書くつもりですけどね。

 ちなみにですが、実は私は最初から悟飯の花嫁を決めていたんですよ。『えっ?あんた散々決まってないって言ってたよね?』と思っている方は多いと思います。実際何度もくどくそう言ってきました。けどこれは、悟飯の花嫁が他の子に変更される可能性がまだあったから、敢えて未定だと言ってきたのです。もしこの説明で混乱している人がいたらすみません…。
 見返してみれば分かるんですけど、原作のごと嫁よりも非常に簡単な伏線があったりするんですよ。いや、本当にシンプルですよ。多分答えを見たら納得すると思います。まだ答えを出す気はありませんが、悟飯の花嫁を本編で判明させたら答えを出したいと思います。

 他のごと嫁二次創作を書いてる方の中には、曖昧エンドにする方もいますが、私はちゃんとはっきりさせます。ですので、皆様のご希望に沿うことは難しいと思いますが、ご了承下さい。その代わりと言ってはなんですが、それぞれのヒロインのifストーリーを出す予定です。アンケートでダントツに票が多いハーレムルートもifストーリーとして出す予定です。

 最後に、次回とその次は映画では悲しくもカットされたツンデレツン回になるのですが、原作のようなコミカルな感じではなく、結構シリアスになると思います。解釈違いが出ないか少々不安です。


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第70話 夏といえば水遊び

 前回のあらすじ…。
 四葉の修行は順調に進み、気の習得が進んでいたのだが、思いもよらない客人、ビーデルが孫家にやってきた。そしてビーデルも舞空術を習いたいと言った。

 さらに四葉と風太郎は悟天とらいはが2人で出かけるということで、尾行デートをしていたのだが、風太郎は特に問題ないと判断したらしいが……。

 そして、四葉は悟飯から誰を選ぶのかを聞いた。悟飯は1人を選ぶことによって他の2人を悲しませることを懸念していたが、四葉が説得することによって悟飯の覚悟は決まった。どうやら既に心に決めている人がいるようだった。それは二乃、三玖、五月の中の3人のうちの誰か………。悟飯は一体誰の手を掴むのだろうか……?



悟飯はただ今海に来ている。3年1組全員で海で遊ぼうと誘われたので、悟飯は予定を確認して、問題がなかったので承諾した。

 

そして今日に至る。

 

武田「やあ、久しぶりだね孫君。今日は彼女達はいないのかい?」

 

悟飯「今日は丁度引越しをしなきゃいけないらしくて…………」

 

武田「それは気の毒に……。彼女達はきっと孫君と遊びたかっただろうに……」

 

悟飯「は、ははは…………」

 

前田「つかお前の周りに中野さん達がいない光景初めて見たかもしれねえ」

 

3年生になってからというもの、五つ子3人の悟飯に対するアプローチは物凄いものであった。噂が広まるまでそんなに時間を要することはなかった。

 

椿「そうだよ〜!いっつも孫君の周りには二乃ちゃんと三玖ちゃんと五月ちゃんがいるもんね〜!!」

 

松井「ほんと、あの3人は孫君にべったりだよね〜。まさに愛されてるって感じ」

 

放送委員の椿に、前田の彼女である松井にも指摘される始末だ。

 

ちなみに、あまりにもアプローチが物凄かったので、風太郎が五つ子を見分ける時の材料としてクラスメイトに説明していたこともある。例えばこんな感じだ。

 

『何?四葉と二乃はどっちもリボンをつけてるから分かりづらい?なら悟飯にべったりな方が二乃だ。そしてヘッドホンをつけてて悟飯にべったりなのが三玖。センスのカケラもない星型ヘアピンを付けてて悟飯にべったりなのが五月だ』

 

とまあ、こんな感じの説明をすることにより、よく分からなくても3択に絞ることができるようになったのだ。

 

 

 

悟飯「そんなにいつも一緒にいたっけ……?」

 

椿「うん!孫君が三股してるのかって勘違いしそうになるくらいには」

 

悟飯「えっ!?」

 

前田「はっ?お前それは本当かコラ?」

 

悟飯「前田君は知ってるでしょ………」

 

そんな他愛のない会話を楽しんでいると、悟飯に近づいてくる影が二つ…。

 

椿「あれ?上杉君来てくれたんだ〜!!」

 

前田「よっ」

 

武田「久しぶり。元気にしてたかい?」

 

悟飯「らいはちゃんも一緒だったんだね?」

 

風太郎とらいはが来たのだ。らいはは武田と前田をまじまじと見て……。

 

 

 

らいは「違う」

 

辛辣にそう言い放った。

 

 

 

 

悟飯「まさか上杉君が海に来るとは思わなかったよ。てっきり勉強するものだと…………」

 

風太郎「らいはが海に行きたいって言って聞かなかったからな。お前こそ悟天はどうしたんだ?悟天なら駄々をこねてこっちに来そうだが………」

 

悟飯「今日はトランクスと遊ぶ予定があったらしいから、きっと今頃トランクスと遊んでいるよ」

 

風太郎「そうか」

 

 

 

その日、悟飯達は海で同級生達と様々な遊びをしていた。

 

 

 

 

ちなみに、中野家五つ子がいなかったことでショックを受けていた男達がいたとかいないとか………。そして悟飯と風太郎に五つ子の体調や様子を聞かれる始末である。悟飯に至っては、一体3人の中で誰が好きなのかとか、本当に三股してるのかとか、一人くらい俺にくれとか、恋愛に関する話題が絶えなかったそうだ。

 

風太郎はその様子を見て、確かに悟飯の周りにあいつらがいないのは珍しいと思ってしまったあたり、五つ子(正確には3人だけど)によって既に外堀が埋められているのかもしれない。

 

 

 

海を満喫していると、空はすっかり暗くなっていた。らいはは既に眠ってしまっている。

 

前田「上杉…。まだ痛えぞ……」

 

風太郎「だから謝っただろ……」

 

スイカ割りの時に何故か前田は埋められてスイカの隣に配置されたため、風太郎が誤って前田の頭を叩いてしまったのだ。

 

松井「まだメソメソ言ってるの?男らしくない。孫君じゃなかっただけまだマシでしょ?」

 

前田「やめろ。頭が消滅する」

 

仮に悟飯がやることになったとして、人の位置は目が見えなくても分かるので、間違っても前田の頭に悟飯の剣撃がヒットすることはないのだが…。

 

松井「ま、あの時は楽しかったよ。上杉君も楽しそうで良かったよ」

 

風太郎「えっ…?俺、楽しそうだったか?」

 

松井「うん。そう見えたけど違った?」

 

風太郎は無自覚だったようだが、他人から見れば十分楽しんでいるようにも見えた。これが1年前の風太郎ならば話が変わっていたのだろうが、悟飯の言う通り、四葉の………五つ子の影響を受けたからか、人並みに人付き合いもできるようになったようである。

 

武田「この後花火をする予定だけど、君は来るかい?」

 

風太郎「いや、俺は帰ることにする。らいはも疲れちまったしな。みんなによろしく伝えておいてくれ」

 

武田「……!!」

 

風太郎がこのような言動を知るものなので、武田と前田は心底驚いてしまう。

 

武田「意外だね…。上杉君がクラスに馴染もうとするとは………」

 

風太郎「そうか?元からだろ?」

 

前田「いや、それはない」

 

前田のツッコミはごもっともである。

 

武田「1年前の頃と比べたら驚くべき変貌だ。何が………いや、誰がそうしたのかは言うまでもないね」

 

風太郎は数年ぶりに海に来て、クラスメイトと盛り上がって楽しく感じていた。しかし、何か物足りなく感じていた。

 

 

風太郎「あーくそ…。五つ子(あいつら)もいたらいたらもっと楽しかったんだろうなぁ………」

 

風太郎は無自覚にそんな独り言を帰宅しながら呟いた。

 

 

 

 

 

武田「孫君は花火するかい?」

 

悟飯「そうだね……。僕は行こうかな」

 

悟飯はらいはのような小さい子を連れてきているわけでもなかったので、二次会に同行することにした。

 

 

 

 

 

悟飯「はぁ………。同級生と遊んだのは初めてだったなぁ…………」

 

悟飯も風太郎程ではないにせよ、学校とは勉強する為に行くものだと思っていた。ところが、五つ子に出会ったことによってそうでもないことを知った。風太郎に大きな変化が現れたから目立ってないだけで、悟飯もまた五つ子によって変化がもたらされているのだ。

 

悟飯「にしても、僕とあの3人っていつも一緒にいたんだな……。これは少し自重してもらうことも考えようかな…」

 

そんなことを考えていると、携帯電話に着信が……。誰かと確認すると、画面には『上杉風太郎』と表示されていた。

 

悟飯「もしもし?どうしたの?」

 

『海に行ったばかりで急だと思うが…。あいつらと一緒にプールにでも行かないか?』

 

悟飯「……あいつら?あの五人のこと?」

 

『ああ。あいつらだけ海に行けないのはちょっと可哀想だと思ってな……』

 

悟飯「なるほどね。僕は問題ないよ」

 

悟飯は風太郎がこんなことを言い出した理由はなんとなく察していた。風太郎は気付いていないのかもしれないが、五つ子と共に過ごす日々が日常になっているのだ。だから五つ子不在で海に行った時、謎の喪失感を感じていたのだろう。

 

しかし、それは悟飯も同じだった。クラスメイトに指摘されたということもあるのだが、やはり五つ子(特にあの3人)がいないと自分の周りが静かに感じてしまったのだ。悟飯もまた、五つ子が側にいることが日常と化しているのだろう。

 

悟飯は密かに五つ子に会えることを楽しみにしていた……。

 

 

 

 

 

そして、プールに行く日……。

 

風太郎と悟飯は少々遅れるということで、五つ子達は先にプールに入っていたのだが、風太郎が悟飯より一足先に来ていたところだ。丁度焼きそば5人前を頼んでいる五月を目撃したところだ。ちなみにちゃんと5人用らしい。一人で食べるわけではないが、これからプールで遊ぶというのに1人1人前は多いのではないだろうか………?

 

五月「あ、あの…!上杉君、この水着はどうですか?あなたが急に言うものだから慌てて買ってきたんです。前のものは少々収まりきらなかったので……」

 

風太郎「……なんだ?そういうのは悟飯に聞けばよくないか?」

 

普段は鈍感なくせに何故かこういう時に限って察しのいい風太郎。

 

五月「そ、そうかもしれませんが…!!同じ男性として何か参考にならないかと………」

 

風太郎「まあ悟飯なら余程変な格好でもない限り問題ないだろ」

 

五月「なっ…!あなたは素直に人を褒めるということができないのですか!?少しは孫君を見習ってください!!」

 

風太郎は素直に褒めればいいものの、こうやって捻くれた回答をするため、相変わらず五月と風太郎は軽く言い争いをする。側から見ると痴話喧嘩をしているようにしか見えない。

 

風太郎「そんなこと俺に期待しないでくれ………」

 

一花「ねえ?そんなところで何してるの?」

 

五月「あっ、いち………ヒッ‼︎」

 

五月は何やら一花に怯えているようである。風太郎からは一花の顔が見えなかったので、何故五月が怯えているのか分からなかった。

 

一花「ねえフータロー君?五月ちゃんのぷよぷよした体よりも、お姉さんみたいに引き締まった身体の方がいいでしょ?」

 

風太郎「知らん」

 

一花「えー?ほんとかな〜?じゃあなんで目を逸らしてるのかな〜?」

 

風太郎「ニヤニヤしながら近づいてくるな!!」

 

一花は黒い水着に麦わら帽子を着用している。その水着も結構際どいやつで、一花と風太郎は先日の修学旅行の件もあるので、風太郎は多少は意識してしまうようだった。

 

五月「ぷよぷよって……!!私は太ってませんよ!!そんなに………

 

悟飯「お待たせ〜!!!」

 

五月「あっ!孫君遅いですよ!一体何故………………」

 

振り返った瞬間。五月は頭が真っ白になる。

 

何故真っ白になったのか?それは悟飯が余程変な格好をしてたから?いや違う。なら何故?

 

悟飯が全裸だったから?

 

それも違う。じゃあ何故五月の頭は真っ白になったのか?それは………。

 

 

 

 

 

 

ビーデル「わぁ………。結構混んでるわね〜…。なんで私を誘ってくれなかったのよ!!」

 

悟飯「い、いや〜……。元々7人で行く予定だったし…………」

 

何故かビーデルが悟飯と共にやってきたのだ。しかもご丁寧に水着まで用意している。

 

五月「あ、あの……?あなたはビーデルさんでしたよね……?何故、あなたが孫君と……………?」

 

ビーデル「悟飯君がプールに行くって言うから、私も同行させてもらったのよ」

 

この言い方だと、悟飯からビーデルに伝わったように聞こえる。実際それは間違いではないのだが、ビーデルが孫家を訪れてもう少し修行に付き合ってもらおうとした時、悟飯が丁度プールに出かけるところに遭遇。そこで話を聞きつけて付いてきたというわけだ。

 

五月「(何故彼女が孫君と…?一体何が目的なんでしょう……?)」

 

五月は何故ビーデルが同行したのかはいまいち分かっていない様子だった。それが幸いして、五月がビーデルに対して敵対的になることはないだろうが………。

 

三玖「ゴハーン!!」

二乃「ハーくーん!!」

 

悟飯「あっ、二乃さんに三玖さん!」

 

「「会いたかった!!」」

 

悟飯「うわっ!?」

 

しかし、そこに地雷がやってくる。二乃と三玖は悟飯を見つけ次第、全力疾走して悟飯に飛びつく始末。二人とも悟飯に夢中で近くにいたビーデルには気付いていない模様。

 

二乃「ねえ聞いて!コンタクトが流されちゃってよく見えないの。本当にハー君かしら?よく見せて?むしろよく見て!」

 

三玖「悟飯もプールに来てくれて嬉しいよ。暑いけど平気?日焼け止め持ってきたんだけど、使う?」

 

二乃「どう?似合ってる?」

 

三玖「私にも塗ってほしいな」

 

 

この二人。しばらく悟飯に会えていなかったからか、普段よりも積極性が増していた。

 

ビーデル「えっ……?」

 

そしてその様子を間近で見ていたビーデルは若干引いていた。

 

二乃「…………はっ?」

 

三玖「えっ……?なんで………?」

 

ようやくビーデルが視界に入ったようで、ビーデルを見るなり急に機嫌を悪くする(特に二乃)。

 

二乃「ちょっと、なんであんたがここにいるわけ?お呼びじゃないんだけど??」

 

ビーデル「何よ?別に私がプールに来ようが来なかろうが私の勝手でしょう?」

 

二乃「えー!確かにそうね。だったらハー君から離れなさいよ。今すぐに」

 

ビーデル「へえ?あなたのものでもないのに独占する気…?それってどうなの?重い女ね〜」

 

そして売り言葉に買い言葉とはよく言ったものか。二乃が先に挑発するとビーデルもそれに乗って喧嘩をする始末。

 

五月「や、やめてください!!ここは穏便に……!!!」

 

四葉「おーっと!!喧嘩はいけませんよ〜!!」

 

四葉は無理矢理二乃とビーデルの喧嘩を静止しようとするが、一向に言い合いを止める気配がなかった。すると、四葉は誰もいないプールを睨みつけて……。

 

四葉「……せやッ!!!!!!」

 

 

ドボォオオオオオオオンンッ!!!

 

 

二乃「!?ッ」

 

ビーデル「な、何ッ!!!?」

 

突然、近くのプールの水が爆発するように噴き出した。気の修行をしていたビーデルと、元々極めていた悟飯は犯人が誰なのか一瞬で分かった。

 

四葉「ししし…!喧嘩をする悪い子は、あんな風にプールの爆発に巻き込まれてしまうかもしれません!!仲良くしないとプールの神様が怒ってしまいますよ!!」

 

四葉は白い歯を見せながらとびきりの笑顔で喧嘩していた二人にそう言う。満面の笑みが逆に恐怖心を煽り……。

 

二乃「はい…………」

 

ビーデル「大人しくしてまーす………」

 

二人はようやく喧嘩をやめた……。ビーデルはともかく、四葉が気を扱えることを知らない二乃も本能的にやばいと感じ、大人しくなった。

 

悟飯「四葉さん、随分強引なやり方をするね………」

 

四葉「せっかくのプールですからね!ギスギスするよりも楽しみたいじゃないですか!」

 

悟飯「そ、そうだね………」

 

悟飯は初めて四葉に対して恐怖心を抱いたとか抱いてないとか………。

 

 

そのあとは、特に喧嘩するような事態にはならなかった。これも四葉のお陰なのだが、それでも二乃とビーデルの仲は良くなさそうだ。三玖は意外とビーデルと気さくに話をしているが、さりげなく敵視しているのが四葉にはよく分かった。とはいえ、二乃のように言い合いをするわけではないので咎めるようなことはしなかった。

 

二乃「ねえ、私のバイト先の店長さんが入院しちゃったのよ。今度お見舞いに行こうかと思うんだけど……」

 

風太郎「ああ、その話は聞いている。俺も近いうちに見舞いに行こうかと考えていたところだ」

 

どうやら二乃と風太郎のバイト先の店長が事故に巻き込まれたのか病気をしたのかは定かではないが、入院してしまったようだ。

 

悟飯「えっ?あの店長さん入院しちゃったの!?じゃあお店は!?」

 

風太郎「無論臨時休業だな…。店長抜きで営業するわけにもいかんしな」

 

悟飯「そっかぁ……。この前お世話になったし、僕もお見舞いに行こうかな……」

 

二乃「……!!ええそうね!そうしましょう!!」

 

二乃は悟飯も見舞いに行くと聞いたからか、先程までのテンションとは打って変わって高くなる。ちなみに、この前お世話になったというのは、五つ子が初めて赤点を回避した日の夜のことである。その日は店長の奢りで打ち上げをやったのだ。

 

ビーデル「あら、あそこの店長さん入院しちゃったの?あそこのケーキ地味に気に入ってたのに………」

 

五月「ええ!?何故ビーデルさんが、わざわざあそこのケーキ屋さんを!?」

 

五月はビーデルがわざわざ日本に来てまでケーキを食べていることに驚いているようだ。何やら仲間意識のようなものを抱いているようだが、ビーデルは五月のようにグルメではない。

 

ビーデル「たまたま寄っただけよ。あるブロガーが絶賛してたものだからね」

 

ちなみにビーデルが悟飯の活動域をほぼ特定した原因でもある。五月が悟飯とデート(悟飯は自覚なし)してテンションが上がっていたからか、グレートサイヤマンと一緒にいるとSNSに載せてしまったのだ。

 

二乃「たまたま………ね。どーせストーカーしてる時のついでに寄ったんでしょ?」

 

ビーデル「あんたねぇ……。流石にそろそろ怒るわよ?」

 

 

ドボォオオオオオオオオオン‼︎

 

 

「「!?!?」」

 

 

一花「えっ?何……?爆発……?」

 

三玖「事故かな………?」

 

風太郎「ここのプール大丈夫か……?」

 

四葉「………喧嘩するとプールの神様が怒ってしまいますよ!!」

 

二乃「………そ、そうね……。やっぱり楽しまないとね……」

 

ビーデル「………私は悪くないわよね、これ……?」

 

またしても四葉が気を応用して爆発させたようである。しかも人がいないところをピンポイントで爆発させてるあたり、本当に気を極められているのだろう。もう立派なZ戦士の仲間入りだ。

 

二乃はすっかり大人しくなってしまったが、ここで問題が発生。

 

ウォータースライダーに来た一向だが、なんと2人1組で滑るらしい。これによって五つ子とビーデルによるジャンケンが行われることになった。ちなみに二乃は何故ビーデルが参加することになっているのか不満になっていたようではあるが、四葉の笑顔が二乃に向けられた為考えることをやめた。

 

 

じゃんけんの結果だが………。

 

 

一花「それじゃ一緒に行こうか、フータロー君!」

 

風太郎「おい待て。俺は悟飯とだな…」

 

一花「せっかく目の前に美少女がいるんだから、そっちと一緒にならないと損だよ?」

 

 

 

三玖「むぅ……」

 

五月「……むむっ…。羨ましいです」

 

 

 

二乃「勝利の女神は私に微笑んだようね!」

 

悟飯「は、ははは…………」

 

 

 

風太郎&一花、五月&三玖、二乃&悟飯、ビーデル&四葉という組み合わせで落ち着いた。

 

 

一花「ほら、フータロー君。美少女のお腹だよ?」

 

風太郎「その言い方やめろ」

 

 

一花はボディチェンジされたからなのかは定かでないが、やや暴走気味に感じる。一花は二乃のことを暴走機関車だと称していたことがあったが、人のことを言えない気がする。

 

 

五月は滑る時に怖がっていたので、三玖が姉らしく手を繋いでいた。

 

 

二乃「きゃーー!!怖いから手を握って♡」

 

悟飯「……(その割には笑顔だな…)」

 

そんな悟飯も自然と頬が緩んでいることに気が付いていない。

 

 

 

一方で、ビーデル四葉ペアは………。

 

 

四葉「あの、つかぬことをお伺いしてもよろしいでしょうか?」

 

ビーデル「そんなに畏まらなくてもいいわよ。それで?」

 

四葉「何故ビーデルさんは孫さんと共にここに来たんですか…?やっぱり孫さんのこと………」

 

ビーデル「あら……。気付かれちゃってたか………。私って分かりやすいのかしら………」

 

四葉「ということはやはり………!!」

 

ビーデル「ええ。私も悟飯君のことが好きになっちゃったみたい」

 

恋話をしていた。しかも滑っている最中に………。

 

ビーデル「でもね。ただ悟飯君が好きだから付いて来たわけじゃないの」

 

四葉「と言いますと?」

 

ビーデル「この前京都でも会ったでしょ?その時から悟飯君に好意を向けている子は最低3人いることは分かってたわ。だから確かめたかったの」

 

四葉「確かめる……?」

 

四葉はビーデルの言っている意味がいまいち理解できていないようで、オウム返しになってしまっている。

 

ビーデル「悟飯君があの3人の中で誰かしら意識してるんじゃないかって。今日来て分かったわ。やっぱり悟飯君はあの3人の中の誰かしらに既に惹かれているみたいね」

 

ビーデルは一瞬悲しそうな顔をした。だがすぐに笑顔に切り替わる。

 

ビーデル「きっと私じゃこの恋は叶えられない……。だから身を引くことにしたの」

 

四葉「そ、そんな…!!でも孫さんのことが好きなんですよね…?」

 

ビーデル「ええ。私を"私"として接してくれたのは彼が初めてだからっていう安直な理由だけどね……。ほら、私はMr.サタンの娘として有名でしょ?だから私は『サタンの娘』として見られることは多々あっても、『ビーデル』という一人の女の子として見てくれる人はいなかったのよ…………」

 

四葉「ビーデルさん…………」

 

ビーデル「正直未練が残らないって言ったら嘘になる。でもね、悟飯君の楽しそうな顔を見たら、潔く諦められる気がしたの」

 

四葉は複雑な思いだった。自分もつい最近までは似たような気持ちを抱いていたからだ。

 

ビーデル「そんな悲しい顔しないで。私はこれでいいと思ってるのよ」

 

四葉「いいんですか…?苦しく、ないんですか………?」

 

ビーデル「心配してくれるのね…。でも大丈夫。私はMr.サタンの娘のビーデル様よ?この程度で心が壊れるほど柔じゃないわ!」

 

ビーデルの顔は四葉がよくするような取り繕った笑顔ではなかった。四葉は自分がよくやっていた顔だから瞬時に理解した。目の前のビーデルという少女は本当に気持ちに踏ん切りがついたようだ。それは満面の笑みが証明していた。

 

 

スライダーで滑り終わった後、しばらくプールで遊び回り、その日は解散となった。ビーデルとはプールを出たらそのまま別れた。

 

風太郎と四葉は日焼け止めを塗っていなかった為に日焼けしていた。悟飯も丁度いい感じで日焼けしていた。

 

 

 

 

 

 

 

プールの日の次の日……。悟飯はケーキ屋の店長のお見舞いに行くことになっていた。

 

悟飯「やあ上杉君」

 

風太郎「悟飯か。お前はわざわざ見舞いに来ることもないだろう?」

 

悟飯「でも、あの日はお世話になったしね………」

 

風太郎「相変わらず変に律儀なやつだな」

 

二乃「お待たせ」

 

風太郎がそんな軽口を叩いていると、二乃が病院に到着した。

 

悟飯「やあ二乃さん。今日は珍しく遅かったね?」

 

二乃「はっ?ちょっとくらい遅れてもいいじゃない。器の小さい男ね」

 

悟飯「………あれ?」

 

しかし、何やら二乃の様子がおかしい。というより戻ったと言った方が適切かもしれない。

 

二乃「暑いんだから中で待てばいいのに、ホント頭が回らないのね」

 

悟飯「………んん??」

 

悟飯は違和感を拭いきれなかった。自分は二乃を不機嫌にさせるようなことをしたのだろうか?と自身の行動を振り返ってみたが、特に思い当たる節はなかった。

 

一方で、そんなやりとりを見ていた風太郎は…………。

 

風太郎「(押してダメなら引いてみろを実践してやがる……!!!)」

 

同じ本か記事でも読んだのか、二乃の意図がよく分かったようである。しかしそんな事情を知らない悟飯は困惑している。

 

二乃「ほら、いつまでも突っ立ってないで病室に行くわよ、孫」

 

ちなみに風太郎に対してはいつも通りの二乃である。

 

 

 

店長「やあ二人とも。元気にしてたかい?それから孫君はわざわざお見舞いありがとう」

 

悟飯「いえ、この前お世話になったので……」

 

風太郎「お怪我の具合は?」

 

店長「あとは術後の経過を診るだけだよ」

 

二乃「うわ、痛そう………」

 

店長は大丈夫だというが、左足は包帯によってぐるぐる巻きにされているところから見ると、結構な重症だったようである。

 

二乃と風太郎は流れるようにしてお見舞いの品を渡す。悟飯は果物を持ってきていたので、それを渡そうとするが……。

 

二乃「うわっ、店長は怪我してるのに果物だなんて気が利かないわね。切る人がいる時じゃないと食べれないでしょ?ホント気が利かないわね」

 

二乃がいちいち文句を言ってくるので、悟飯は本当に何かしたのではないかと脳をフル回転させる。

 

店長「孫君」

 

店長はちょいちょいと手招きをする。その意図を汲み取って店長に近づく。すると店長は小声で話し始める。

 

店長「どうした?喧嘩でもした?」

 

悟飯「いえ、それはないと思いますけど………」

 

店長「隠さなくてもいいよ」

 

悟飯「いや、本当に違うんですって」

 

 

 

二乃「あー喉乾いたわ。孫、あんた何か買ってきなさいよ」

 

悟飯は言われた通りに水を買ってきた。すると………。

 

二乃「はあ?お水って言ったら常温に決まってるでしょ?ったく、こんなこともできないなんて、使えないわ。役立たず」

 

悟飯「………………」

 

悟飯は少しショックを受けていた。好かれていたはずの人から繰り返される罵倒。悟飯は少々胸が苦しくなった。

 

風太郎「おい二乃。いい加減にしろよ。いくらなんでもやりすぎだ」

 

二乃「うっさいわね。何しようが私の勝手でしょ?」

 

悟飯「に、二乃さん…?僕何か怒らせるようなことしちゃったっけ?何かしたなら謝るから、教えてくれないかな?」

 

悟飯は本当に心当たりがなかった為、二乃に聞こうとするが……。

 

二乃「うわっ、触んないでよ」

 

悟飯「  」

 

二乃「じゃあ私は自分で買ってくるわ」

 

二乃は言うだけ言うと一旦病室を出た。

 

風太郎「悟飯?おーい、悟飯?」

 

一方、悟飯は相当ショックを受けたらしい。それも当然だろう。つい先日までグイグイきていたものが、いきなり嫌われてみよう。誰であろうと少しはショックを受けるだろう。

 

店長「本当に心当たりはないのかい?もしくは、何もしなかったんじゃないかい?」

 

悟飯「何も……してない?」

 

店長「そうか…。断言しよう。彼女は怒っているよ」

 

悟飯「………まあ、あの様子じゃそうですよね…………」

 

店長「よーく耳を澄ましてごらん。聞こえるはずさ。彼女の心の叫び声がね」

 

 

 

 

 

二乃(やりすぎた〜!!)

 

これが二乃の心の叫び声である。どうやら風太郎の読み通り、二乃は押してダメなら引いてみろを実践したようだ。

 

二乃「(うわー…!触んないでって言っちゃった!!どうしよう、嫌われちゃったかしら……?でも私に振り向かないハー君が悪いんだからね…!)」

 

二乃は両手で頬を抑えながら自身の行動を後悔するも、前向きに捉えて作戦を継続することを決意する。

 

二乃(それにしても演技だとしても辛いわ……。ハー君を好きになる前でもあんな酷いことは言わなかったもの)

 

 

 

『なに?君もストーカー?』

 

『しつこい。君もモテないっしょ?早く帰れよ』

 

『私達に対して愛があるってこと?なんかキモいんですけど………』

 

 

 

二乃「……うん。言ってなかったわ」

 

頭に何か浮かんだようだが、二乃は存在しない(と思われる)記憶を抹消した。都合が良すぎる気がするが気にしないでいただきたい。これが中野二乃という人間である。

 

 

「二乃君」

 

二乃は不意にそう呼ばれる。

 

二乃「パパ?」

 

マルオ「ようやく帰ってきてくれたみたいだね。一花君から連絡をもらっているよ。考え直してくれたみたいで嬉しいよ」

 

二乃「……それならなんでパパはいないの?」

 

マルオ「毎日帰りたいところだが、生憎忙しくてね。元々あそこは君達用に購入した"部屋"だ。好きに使ってもらって構わないよ」

 

二乃「そんな、部屋なんて………」

 

マルオ「おっと、すまない。もう行かなくては……」

 

二乃「……明日も忙しいの?」

 

マルオ「……ああ」

 

マルオと会話し終わると、ふと後ろから悟飯が現れる。

 

二乃「ハー……ゴホンッ!!なによ孫。用があるなら声掛けなさいよ」

 

悟飯「………」

 

しかし、悟飯は二乃に気付かずに素通りした。

 

二乃「えっ?ちょ、ちょっと!?聞いてる!?」

 

悟飯「あっ、二乃さん………」

 

二乃「ちょっと!私を無視するなんていい度胸ね!人の話はしっかり聞きなさいよ!そんなんだからダメだって言われるのよ。ホント鈍臭いわね」

 

二乃は相変わらず押さずに引いて悟飯の気を引こうとしているが………。

 

悟飯「……無理しなくていいんだよ?」

 

二乃「………えっ?」

 

悟飯は凄く辛そうな顔をして、しかし何かを決心したような顔をしていた………。

 




 もう70話だと……?つい最近まで最新話は50話とかじゃなかったっけ……?時の流れが恐ろしく早い…。

 さて、海、プールの後は原作通り二乃のツンデレツンが発揮されましたが、最後を見れば分かると思いますけど何やら不穏な雰囲気になっています。前回の後書きでも言いましたが、今回のツンデレツン回はちょっとシリアスになってます。解釈違いが発生しないかマジで心配であります…。どうか温かい目で見てやって下さい…。

 ちなみにpixivの方で考察メッセージを送ってもいいかと言われたのでここでも言っておきます。コメントや感想欄でなければ構いませんが、花嫁の答えは本編で判明させるまでは誰にも教えるつもりはないので、考察が合っていても間違っていても曖昧な反応になってしまいます。それでもよろしければご自由にどうぞ。


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第71話 誤解とは恐ろしいものである その2

 前回のあらすじ…。
 クラスメイト達と海を楽しんだ悟飯は、風太郎と共に五つ子とプールに行くことになった。そこでビーデルの乱入もあって不穏な雰囲気になりかけだが、四葉の機転でなんとかそれは避けられた。
 後日、ケーキ屋の店長が入院したことを知った悟飯はお見舞いに行くことになった。そこには当然バイトとして働いている風太郎と二乃もいたのだが、二乃は悟飯に対して何やら当たりの強い様子。それは二乃なりの悟飯の気を引く作戦だったのだが…………。



悟飯「……無理しなくていいんだよ?」

 

二乃「………えっ?」

 

悟飯は凄く辛そうな顔をして、しかし何か苦渋の決断をしたような顔をしながら二乃にこう伝える。

 

悟飯「まさか二乃さんがそんなに僕のことを嫌っていたなんて思わなかった。今まで気を使わせちゃってごめんね……」

 

悟飯は段々声量が小さくなってきたが、それでも二乃に伝えきる。すると悟飯は再び外に向けて歩き出す。

 

二乃「ま、待って!!」

 

二乃は悟飯の手を取って悟飯の歩みを止めた。

 

二乃「まだ話は終わってないわよ!何勝手に…………」

 

 

ブン‼︎

 

二乃「………………えっ?」

 

悟飯は二乃の手を無理矢理振り解くように強引に手を振る。

 

悟飯「無理しなくていいって。触られたくないくらいに僕のことが嫌いなんでしょ?」

 

二乃「えっ、ちょっと……」

 

二乃は再び歩み始めた悟飯を止める為に手を掴もうとする。しかし、悟飯はそれを綺麗に避けた。

 

二乃「ねえ!待って!!話を聞いて!!」

 

悟飯「………僕に構わないで」

 

二乃「………!!!!」

 

悟飯は弱々しくそう言った。

 

悟飯「触りたくないんでしょ?なら、無理して触らなくていいよ。僕なんかいない方がいいでしょ……?」

 

悟飯は弱い勢いでそう言うと、今度こそ病院を後にした。二乃は追わなかった。いや、追えなかった。

 

悟飯は、二乃が自分のことを嫌ってしまったと本気で思い込んでしまったのだろう。そう思ったから、悟飯は二乃を突き放そうとしたのだ。自分が近くにいることで二乃が傷ついてしまうのは、悟飯自身が許せなかった。

 

 

二乃「待って……!待ってよ…………!」

 

一方で、二乃は好きな人に嫌われてしまったのだと思ってしまった。先程までの自分の行動から考えてみれば何もおかしくなかった。二乃は愛する人に嫌われてしまったのだと思い込み、その場に座り込んで啜り泣くことしかできなかった。

 

その光景に周囲が騒ついていた。それに気付いた風太郎は何事かと興味本位で覗き込んで見ると、そこには床であろうがお構いなしにその場に座り込んで泣いている二乃が見えた。

 

風太郎「二乃!?どうした!?何があったんだ!?」

 

二乃「上杉…………」

 

二乃は涙が流れていようとお構いなしだった。今はただ話を聞いてくれる人が欲しかったのだ。

 

二乃「聞いて………。私ね、本で読んだ作戦を実行してみたの……。そしたら、ハー君に嫌われちゃった……………」

 

風太郎「はぁ!?悟飯がお前を嫌うだと!?そんな馬鹿な…!!!」

 

風太郎は知っている。家庭教師を始めたばかりの頃、二乃は悟飯にも強く当たっていたものだ。それでも悟飯は二乃に対して不快感は一切感じるようなことはなく、むしろどうすれば二乃と仲良くなれるか、そればかり悩んでいたのを風太郎は知っている。

 

風太郎「悟飯が嫌うわけないだろ…!!きっとお前がやりすぎちまったから、悟飯はお前に嫌われたと思っちまってるだけだって!!」

 

二乃「でも………!」

 

風太郎「お前らよりも1年間だけとはいえ、近くにいたからこそ分かる!!悟飯はお前の為に敢えて避けてるんだよ!悟飯はお前に嫌われていると思っているから、出来るだけ関わらないようにしようとしてるんだよ!!」

 

二乃「慰めなんていらない………。私は彼に嫌われちゃったのよ………」

 

風太郎「なんであいつの意見も聞かずに勝手に決めるんだよ!!一回話し合え!!そしたら誤解は解けるはずだ!!」

 

二乃「無理よ……。だって私はハー君に………嫌われちゃったのよ……!!」

 

二乃は"自身が思い込んでいる事実"を復唱し、その度に涙を流す。風太郎はどうにかできないかと頭を悩ませていたところに………。

 

四葉「話は聞かせてもらいました」

 

風太郎「四葉…!」

 

四葉「二乃、孫さんと話をしよう」

 

二乃「いやよ……。私は彼に嫌われちゃったもの…………」

 

四葉「二乃ッ!!!

 

二乃「!?」

 

四葉は啜り泣く二乃に対して咆哮するように大声で名前を呼ぶ。

 

四葉「二乃の好きな孫さんは、すぐに二乃のことを嫌いになるような人なの!?孫さんはそんな薄情な人だったの!?二乃は自分の好きな人のことを信じることはできないの!!?」

 

二乃「四葉……………」

 

風太郎「お前………」

 

四葉の言葉に目を覚ましたのか、二乃は手で涙を拭いてゆっくり立ち上がる。

 

二乃「…………ありがとう。いつもの私らしくなかったわ」

 

四葉「うん。それじゃあ早速行こうか」

 

二乃「行くって、ハー君の家に…?」

 

四葉「うん!孫さん本人とちゃんと話し合わないと!お互いに誤解してるみたいだし!!」

 

風太郎「そうだな。しっかり話し合ってこい」

 

二乃「上杉………。さっきは話を聞いてくれてありがとう」

 

風太郎「礼なんていらねえから、早く行ってこい」

 

二乃「……ありがとう」

 

二乃と四葉は病院から出ると、四葉は二乃をおんぶして舞空術で孫家に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

二乃「ちょっと待って?四葉、あんたいつ空を飛べるようになったのよ?」

 

四葉「これは色々あってね…。後で話すよ。取り敢えず今は飛ばすから、しっかり掴まっててね!」

 

そう言うと、四葉は今出せる全速力を出す。

 

 

 

 

 

 

悟飯「ただいま……」

 

悟天「兄ちゃんお帰り!」

 

悟飯が家に帰ると、悟天が笑顔で出迎える。悟飯はいつもならそんな悟天の頭を撫でてやるのだが………。

 

悟天「………兄ちゃん?」

 

今日はそれをしなかった。

 

悟天「………兄ちゃん、何かあったの?」

 

悟飯「いや、何もないよ。今日は勉強に集中したいから、ちょっとほっといて」

 

悟飯は手短にそう言うと、自室に向かおうとする。

 

チチ「あっ、悟飯。帰っただか。今日の晩飯は何がいいだ?」

 

悟飯「何でもいいよ」

 

悟飯は普段は何かしら希望メニューを言うのだが、今日はそっけなかった。そんな悟飯の異常に気が付き、チチは何かあったのかと聞く。

 

悟飯「だから何もないよ」

 

悟飯はそう言うと、自室に入った。

 

悟天「……今日の兄ちゃん、何か変だよ」

 

チチ「んだ…。何かあったみてえだな。そういえば、今日は病院にお見舞いに行くって言ってたべな…。もしかして、容態がよくなかったんじゃ……」

 

 

 

コンコン

 

不意にノック音が聞こえたので、チチは玄関のドアを開ける。

 

四葉「どうも、すみません」

 

チチ「んだ?四葉さ…?どうしただ?今日は修行の日じゃないはずだけど…」

 

四葉「それがですね、孫さんとお話したいという人を連れてきたんですけど……」

 

四葉がそう言うと、四葉の後ろからひょこっと二乃が姿を現した。

 

二乃「ど、どうも…。こんにちは」

 

チチ「んだ。確か二乃さだったか?話なら電話でもすればいいのに……」

 

二乃「いえ。直接お話がしたくて……」

 

チチ「ああ……」

 

チチはこの段階でなんとなく察した。悟飯と二乃が喧嘩をしたのだろうか?詳しいことは聞かずにチチは家の中に二乃を招き入れようとするが……。

 

悟天「………もしかして、兄ちゃんが変なのは二乃さんのせいなの?」

 

二乃「………そうよ」

 

悟天「じゃあ嫌だ。帰って」

 

チチ「ど、どうしただ悟天ちゃん?」

 

今まで静かだった悟天だが、急に二乃を睨み始める。

 

悟天「兄ちゃんがあんな悲しそうな顔をしてるのは二乃さんのせいなんでしょ?なら会わせたくない」

 

二乃「確かに私のせいよ…。でも会ってちゃんと話をしたいの…!」

 

悟天「いやだよ。忘れたなんて言わせないよ?僕は兄ちゃんが初めて家庭教師に行った時に、二乃さんに睡眠薬を盛られたことを知ってるんだからね?」

 

チチ「えっ…?それ、本当だか…?」

 

悟天「それだけじゃないよね?生徒の一人でも赤点を取ったらクビっていうノルマをつけられた時、二乃さんはわざと手を抜こうとしたよね?」

 

悟天が話しているのは、いずれも二乃がまだツンツンしていた頃の話である。二乃は過去の自分がしたことを否定するつもりはなかったが、このタイミングで痛いところを突かれた。

 

悟天「はっきり言うとね、僕は二乃さんのこと嫌いなんだ。だっていつも兄ちゃんに迷惑をかけてるんだもん」

 

チチ「悟天ちゃん…!なんてこと言うだ!!」

 

悟天「些細なことなら我慢したよ。兄ちゃん自身が気にしてないならいいって思ってた。でも今日は違った。いつも笑顔で帰ってくる兄ちゃんが今日は悲しそうだった。辛そうだった」

 

ここで明かされた新事実。なんと、悟天は二乃のことを嫌っていたらしい。子供というのは好き嫌いが激しいもので、二乃の印象はよくないものだった。出会ったばかりの頃の二乃の印象が脳裏に焼き付いているのだ。

 

悟天「はっきり言って、あれだけ兄ちゃんのことを嫌って散々嫌がらせをしてきたくせに、好きになったら態度を変えるって都合良すぎない?それで今度は兄ちゃんにあんな顔をさせて…!!もう我慢の限界だよ……!!!」

 

悟天は悟飯のことが大好きだし、尊敬している。だからこそ、悟飯を傷付けた(と思われる)二乃という存在が許せなかったのだろう。悟天は敵意を隠すことなく二乃に向ける。二乃は子供にそんな視線を向けられるとは思っていなかったようで、完全に先程の勢いをなくしてしまっている。

 

でも、それは過去の自分が悟飯と風太郎に向けたものと同じものだった。それを理解してしまったから、余計に萎縮してしまった。

 

悟天「………………でも」

 

先程まで二乃を散々責めていた悟天だったが、ここで一旦落ち着いた。

 

悟天「最近の兄ちゃんはね、よく二乃さん達のことを話すんだ。いつも笑顔で、楽しそうに……。最近の兄ちゃんの笑顔は二乃さん達が作ったものだって僕は知ってる。だからチャンスをあげる。次兄ちゃんを悲しませたら、もう2度と会わせてあげない」

 

二乃「………ありがとう」

 

二乃は一言悟天に礼を述べると、ゆっくりと家に上がった。チチに悟飯の部屋の場所を聞き、そこに向かった。

 

 

チチ「……悟天ちゃん。いつの間に大人になっただ………?」

 

悟天「………僕はまだ二乃さんを許したわけじゃないんだからね」

 

四葉「悟天君……。偉すぎます…………」

 

一方で、途中まで年相応の対応だったが、急に大人な対応をし始めた悟天に、チチと四葉の二人はただただ感心するしかなかった。二乃のことを嫌いとは言っても、どうやらそこまで嫌っているわけではないようだ。

 

 

 

 

 

二乃「あの……。二乃だけど、入ってもいいかしら……?」

 

悟飯「………どうぞ」

 

ノックをして、悟飯の了承を得ると、二乃はゆっくりとドアを開けて慎重に入る。好きな人の部屋に初めて入れたところで本当なら大喜びしたいところだが、今日はその為にここに来たわけではない。

 

二乃「…………さっきはごめんなさい。私はあなたのことなんて嫌ってないの!ある本を読んで『押してダメなら引いてみろ』って書いてるのを見て、それを実践してみただけなの……。でもハー君を傷付けたのは紛れもない事実よ……。本当にごめんなさい………」

 

二乃は悟飯に対して深々とお辞儀をする。二乃はそれだけ真剣に悟飯に謝罪をしたかったのだ。

 

悟飯「……じゃあ、僕のことを嫌ってるわけじゃないの?」

 

二乃「うん。今でも変わらずあなたのことが大好きなの。あんなことをした後で虫が良すぎるかもしれないけど……。例えあなたに嫌われることがあっても、どうしても謝りたかった……」

 

悟飯「………そっか。なんだ……。嫌われちゃったのかと思ったけど、そうじゃなかったんだね………。良かった………」

 

悟飯は思い詰めていたような顔から一転し、ホッとしたような顔つきになった。悟飯から徐々に笑顔が戻ってくる。

 

二乃「良かったって…。それ、どういう意味………?」

 

悟飯「だって、最初は二乃さんは僕のこと嫌ってたじゃん?それが長い時間かけてようやく仲良くなれたと思ったのに、また嫌われちゃったのかと思ったら、なんか悲しくなっちゃって……」

 

二乃「ごめんなさい……。私の身勝手な行動のせいでハー君を傷付けた………」

 

悟飯「もういいよ。気にしてないから」

 

悟飯はすっかりいつもの調子に戻ったようだ。それでも二乃は謝り続けた。

 

二乃「本当に、許してくれるの?私のこと、嫌いになってない?」

 

悟飯「ははは………」

 

悟飯は静かに笑うと、手を二乃の頭に乗せて、ゆっくりと撫でながら言う。

 

悟飯「大丈夫だよ……。僕が二乃さんのことを嫌いになるなんて、絶対にあり得ないから。だから安心して?」

 

二乃「…………」

 

二乃は悟飯の胸に顔を埋めてしばらく泣き続けた。悟飯はそんな二乃を優しく抱き寄せて頭を優しく撫で続けた。

 

 

そんな会話をこっそり聞き耳を立てて聞いていた者が約3名いた。

 

チチ「んだ…。仲直りできたみたいだな……」

 

四葉「ありがとうございます…。チチさん」

 

チチ「オラはなんにもしてねえだぞ」

 

悟天「………ふん。これで少しは懲りたかな…」

 

四葉「あはは……。手厳しいですね……」

 

悟天はまだ二乃のことを認めてないように見えるが、実際はそうでもなかった。なんだか悟天がツンデレっぽく見えるが、決してツンデレではない。ちょっと怒っているだけである。

 

 

 

四葉「ところで、何故二乃が睡眠薬を盛ったことを知ってもチチさんは怒らなかったんです?」

 

チチ「……そ、それはあれだべ!オラも似たようなことをしたことがあったから、自分のことを棚に上げて怒ることはできなかっただ……」

 

四葉「一体何をしたんですか!?」

 

詳しくは第22話をご覧ください。

 

 

 

 

 

それから何分、何時間経っただろうか…?

 

二乃「………あれ?私、いつの間に……」

 

二乃はあれからずっと悟飯の胸に顔を埋めていたが、いつの間にか眠ってしまったようである。窓を見てみると、既に月明かりが外を照らしていた。

 

二乃「やばっ…!あの子達に晩ご飯作らなきゃ……!!」

 

悟飯「その必要はないよ」

 

二乃が起きたことを察知し、悟飯は勉強を中断して二乃に話しかける。

 

悟飯「四葉さんが事情を話してくれていると思うよ。だから焦って帰ることもないよ」

 

二乃「そ、そう………」

 

二乃は自身にかけられた毛布を取って起き上がる。そして好きな人が普段寝ているベッドで眠ってしまったのかと考えると、少し恥ずかしいような、そして嬉しいような気持ちになる。

 

悟飯「良かったら晩ご飯食べていきなよ」

 

二乃「えっ?でも………」

 

悟飯「お母さんはすっかりその気だから。お母さんの料理も美味しいんだよ?」

 

二乃はチチの配慮を無下にするわけには行かないとは思いつつも、一つ懸念があった。

 

二乃「私、どうやら悟天君に嫌われてたみたいなの。だから私がいると迷惑だと思うんだけど………」

 

悟飯「あはは…。こう言うと自慢になっちゃうかもしれないけど、悟天はお兄ちゃんっ子だから、今日の僕の様子を見てそう言っただけだと思うんだ。もしも本当に嫌いなら、二乃さんを家にあげるようなことはしないと思うよ?」

 

二乃「……そうかしら」

 

悟飯「うん。だから変に遠慮する必要はないよ」

 

二乃「………分かった」

 

二乃は今日の一件があったからだろうか?いつもよりもしおらしくなっている。

 

 

二乃は最初は遠慮していたが、チチに押されることによって夕食は孫家で共にすることになった。悟天は特に何も言わなかったので大丈夫なのだろう。悟飯の言う通り、確かにチチの料理は美味しく、下手すると自分よりもよっぽど上手なのではないかと思ってしまう程だった。

 

 

二乃「ご馳走様でした。今日はわざわざありがとうございます」

 

二乃は律儀にお礼を言うと、帰宅の準備をするが……。

 

チチ「今日はもう遅いから泊まってくといいだ」

 

二乃「えっ…?いや、それは流石に……」

 

普段の二乃なら、この機を逃すような真似はせず、むしろ自分から泊まることを提案しただろう。しかし今日の二乃はどこか遠慮気味だ。

 

悟天「………別にいいんじゃない?」

 

二乃「えっ?でも、私のこと嫌いって…………」

 

悟天「……兄ちゃんに迷惑をかける人が嫌いなだけであって、別に個人的には二乃さんを嫌っているわけじゃないよ」

 

チチ「ほら、悟天ちゃんもこう言っていることだし、遠慮しなくてええべ?」

 

二乃「………ハー君は、どう?」

 

悟飯「えっ?僕……?」

 

悟飯は普段の二乃が相手なら、泊めるようなことはせずに帰していただろう。しかし、今日の二乃は自分が早とちりをして勝手に誤解したせいで傷付いてしまった。一応誤解は解けたとはいえ、アフターケアも必要なのかと考えると、今日だけは許してもいいのかと考えてしまう。

 

しかし、付き合ってもいない異性を泊めるのはいかがなものかとも考えてしまう。無論、五月の時は例外だが…。

 

チチ「んだ。悟飯がダメじゃないならいいだな」

 

悟飯「えっ?僕はまだいいって言ってないんだけど………」

 

チチ「なんだ?どうしてもダメだか?」

 

悟飯「いや……。でも………。まあ、今日くらいなら………」

 

チチ「ということだから、遠慮する必要はねえだぞ!」

 

二乃「……お、お世話になります……」

 

こうして二乃は孫家に泊まることになった。

 

それぞれ入浴を済ませた後に、そろそろいい時間になったので寝ようかという時……。

 

チチ「んじゃ、悟天ちゃんは今日はお母さんと寝るだぞ〜!」

 

悟飯「えっ?お母さん……??」

 

チチは悟飯に近づいて耳元で……。

 

チチ「乙女の心は結構繊細なんだべ。だから悟飯がしっかりアフターケアをしてやるだぞ」

 

悟飯にだけ聞こえるようにそう言うと、チチは悟天を連れて寝室に入った。五月の時のような半分ふざけた様子ではなく、今回は真剣な表情だった。

 

 

 

悟飯「はぁ…………」

 

悟飯は自分の甘さに嫌気がさしていた。本来なら二乃と別部屋にするべきだ。それは火を見るよりも明らかなのだが、今日のしおらしい二乃を見るとどうしてもそんな気にはならなかった。

 

二乃「………ねえ、寝ないの?」

 

悟飯「あっ、そろそろいい時間だね…。僕はその辺で適当に寝るから、二乃さんはベッド使っていいよ」

 

二乃「いや、そんなことしたら……」

 

悟飯「大丈夫。僕は外でも寝たことあるからさ」

 

悟飯は五月の時のような事態を防ぐ為に、二乃と距離を置くように心がけるが、二乃が悟飯の服の裾を掴んでくる。

 

二乃「…………今日は、一緒に寝て……」

 

悟飯「えっ?いや、何を言ってるの…?」

 

二乃「私が悪いのは分かってるんだけど、またハー君が私の前からいなくなっちゃうんじゃないかって不安になるの……。だから、今日は一緒に……ダメかしら……?」

 

二乃は弱気で、上目遣いで悟飯に訴えかける。

 

悟飯「……………ただ寝るだけだからね」

 

二乃「………うん」

 

悟飯はいつもの二乃ならば拒否していただろうが、今日の二乃はしおらしいので、間違いは起きないだろうと考え、二乃の精神状態のことも考慮して今日だけは一緒に寝ることにした。

 

ベッドに入るなり、二乃はさっきから悟飯を離そうとしない。悟飯は一時は二乃に離れるように言うが、寂しそうな顔をするのを見てしまうと、どうしても甘やかしてしまう。

 

悟飯が離れないことが分かると、二乃は安心したように意識を落とし、寝息を立て始めた。

 

悟飯「はぁ……。あんな顔をされちゃうとどうしても甘やかしちゃうなぁ…」

 

二乃「んん………。ハー君………。いなくならないで………。ずっとそばにいて……」

 

二乃が起きたのかと思って耳を傾ける悟飯だが、すぐに寝息を立て始めた。どうやら二乃の寝言だったようだ。二乃は不安そうな表情で眠っている。

 

悟飯「…………大丈夫。いなくなったりしないよ」

 

悟飯は二乃を起こさないようにそっと呟くやきながら二乃の頭を優しく撫でると、二乃は安心したような顔つきになり、そこからは寝言は発しなかった。

 

悟飯「………僕は本当に甘いなぁ…」

 

悟飯もそのまま眠りについた……。

 

 

 

 

朝になった。

 

外の動物達が既に活動を開始している。そんな中、チチは今日も息子達に朝食を提供する為に早起きをして料理をする。美味しそうな匂いが漂ってくると、二乃は丁度目を覚ました。

 

二乃「あっ…。やば、あの子達に朝ご飯を作らないと………」

 

二乃は焦って起床するが、腕に違和感を覚える。何故か隣に自分の好きな人がいて驚くが、記憶を掘り起こして納得する。

 

二乃「……最近は修行をする為に早起きをするって言ってなかったっけ……?」

 

悟飯が以前そんなことを言っていたような気がするが、今日はゆっくり寝ているようだ。

 

二乃「…まさか、私の為に……。ほんとお人好しなんだから……。どれだけ私を好きにさせれば気が済むのよ………」

 

悟飯を起こさないようにそっと顔に近づき、頬にキスをする。

 

二乃「……尚更引けなくなるじゃない。絶対好きにさせてみせるわ………」

 

一連の行動を済ませると、二乃はチチの朝食の準備を手伝う為に、部屋を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

悟飯「……………………」

 

悟飯は運がいいのか悪いのか、二乃がキスする直前に目を覚ましたのだが、起床していることがバレると面倒なことになりそうだったので狸寝入りをしていた。

 

悟飯「ははは…。参ったなこりゃ……」

 

 

 

 

 

二乃「あら、おはよう」

 

チチ「朝ご飯できてるだぞ〜」

 

悟飯「おはよう……」

 

悟飯は少し時間を置いて起床した。いつものように椅子に座って朝食ができるまで待機するのだが……。

 

二乃「………ふふっ」

 

悟飯「……!!?」

 

二乃が不意に投げキッスをするものなので、悟飯は先程のことも思い出して顔を赤くしてしまう。

 

チチ「………(んだ。2人ともすっかり元気になったみたいだな)」

 

チチはその光景を微笑みながら見ていた。

 

二乃「はい。できたわよ。このお味噌汁は私が作ったのよ?」

 

悟飯「いただきます………」

 

悟飯は一礼をすると、まずは味噌汁を口に運んで、体を内側から温める。

 

悟飯「…………おいしい」

 

二乃「ふふっ……。もっと食べていいのよ?」

 

悟飯が食事する光景を、二乃は両手で頬杖をつきながら笑顔で眺めている。その光景は、旦那の為に料理を用意した健気な妻を連想させるものだった。側から見れば2人は恋人……否、夫婦に見える。

 

チチ「…………若いっていいだなぁ…」

 

2人に聞こえないように、チチはそっと呟いた。

 

悟天「…………なんか兄ちゃん達、夫婦みたい」

 

悟飯「……!!?ゴホッゴホッ!!な、何を言ってるんだよ悟天!!?」

 

二乃「あらやだ、夫婦だなんて……♡」

 

悟天の唐突な発言に悟飯は慌て、二乃はポッとする。チチは2人の邪魔をするでねえと静かに悟天を一度注意してから、食事の場に座らせた。

 

 

 

 

二乃「今日はお世話になりました」

 

チチ「んだ。またいつでもうちに泊まりにくるといいだ。オラは大歓迎だぞ!今度はスイーツの作り方でも教えてけろ」

 

二乃「はい!」

 

悟飯「よし、それじゃあ出発するよ」

 

悟飯は今度も筋斗雲で二乃を送り届けようとしたのだが、二乃の強い希望によって、二乃を背負って舞空術で空を飛ぶことにした。

 

悟天「………また兄ちゃんを傷つけたら怒るからね……」

 

二乃「悪かったわよ。お詫びに今度はお菓子でも作ってあげるから」

 

悟天「むぅ………」

 

悟天は五月のように食べ物で釣ればいいというわけではないようだ。それでも、今は然程二乃に対して怒っているわけではないようだ。

 

悟飯「それじゃ、行ってきます!」

 

チチ「いってらっしゃい!」

 

その挨拶を合図に、悟飯は二乃を送り届ける為に発進した。

 

チチ「……?どうしただ、悟天ちゃん?」

 

悟天「…………二乃さんのお料理美味しかったなぁって思っただけ」

 

チチ「あらあら………」

 

どうやら二乃の料理は悟天の胃袋も掴んでしまったようである。

 

悟天「でも、やっぱりお母さんの料理が一番だよ!!」

 

チチ「あ〜…!!悟天ちゃんはやっぱり可愛いだ!!暫くお婿に出したくねえだ」

 

悟天「何言ってるの?」

 

 

一時はどうなるかと思われた、ツンデレツン作戦。悟飯に壮大な誤解を生んでしまい、二乃も悟飯も傷ついてしまい、すれ違いかけてしまったが、風太郎と四葉の後押しによってその誤解はなんとか解けた。

 

一時は後退したかと思われた関係だったが、今回の件で二人の仲はより一層深まったのかもしれない………。

 




 ツンデレツン回は原作通りにするとなんか違和感があるので手を加えようということで加えてたら、なんかシリアスになっててワロタ。どうしてこうなった……。
 ということで、今回はバリバリ二乃がメインの回でしたね。順番的には五月(林間学校)→三玖(勤労感謝の日)→五月(お泊まり回)→二乃(告白回)→三玖(旅行での告白回)→二乃(デート回)→二乃(今話)。
………あれ?なんか二乃回多くね?見返しててそう感じ始めました。詳細を事前に決めておかないからこうなるんだよなぁ()

 ちなみにあと数話すると天下一武道会……、つまり、魔人ブウ編が始動します。魔人ブウ編に関してですが、原作と丸被りするところは、地の文メインでサラッと書く感じで細かい部分まで触れないか、代わりに別視点を用意してカットする方針の2つを採用すると思います。原作と全く同じ部分を書いてもただのコピーですしね。今回のブウ編は登場キャラも増えるということで、原作のブウ編とは一味違ったものになると思いますので、適度に楽しみにしていただければ幸いです。

 pixivのコメントで、悟飯ビースト(新形態)の登場の有無に関して質問されましたが、そこはシークレットとさせていただきます。本編中で出るかもしれないし、番外編で出るかもしれないということで。


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第72話 家族

 前回のあらすじ…。
 二乃のツンデレツン作戦は悟飯に大きな誤解を与えたが、風太郎と四葉の後押しがあってなんとか解決した。何気に二乃は今回の件で悟飯の家にお泊まりを果たしたわけである。孫家に泊まってない悟飯のヒロインは三玖のみとなった。はたして、三玖はいつ孫家に泊まることができるのであろうか………?



舞空術で二乃をPentagonまで送り届けてた悟飯だったが………。

 

四葉「あっ、二乃!!丁度良かった!」

 

一花「今から電話しようと思っていたところだったんだよ!」

 

二乃「えっ…?なに?どういうこと?」

 

何故か既に4人が二乃を出迎える様にして待機していたので、二乃は状況が飲み込めなかった。

 

三玖「たった今お父さんから連絡が来たの!お母さんが目を覚ましたって!」

 

二乃「それ本当ッ!!?」

 

五月「はい。お父さんは既にあちらにいるそうです。私達も今からそちらに向かおうと思ったのですが……」

 

悟飯「あ〜……。なるほどね」

 

悟飯と四葉はともかく、残りの4人は空を飛ぶことができない為、零奈のいるカプセルコーポレーションに向かうには、筋斗雲に乗るか、ジェットフライヤーに乗るしかない。だが筋斗雲は精々2人までしか乗ることができない。だが、悟飯と四葉がそれぞれ1人ずつ背負えばどうにかならないことはないのだが…………。

 

悟飯「お迎えは来るの?」

 

四葉「はい!もうすぐ来ると思うんですけど………」

 

少し待つと、悟飯と四葉は一人の気の接近を感知した。

 

トランクス(未来)「どうも、遅くなりました」

 

悟飯「トランクスさん!」

 

トランクスは到着するとすぐにカプセルを放り投げ、ジェットフライヤーを出現させる。6人はそくささと乗り込んで、カプセルコーポレーションに向けて出発した。

 

悟飯「零奈さんが目を覚ましたということですけど………」

 

トランクス(未来)「はい。覚醒してようやく脳波が安定してきたところですよ」

 

二乃「じゃ、じゃあ、ようやく本物のママに会えるの……?」

 

トランクス(未来)「そういうことです」

 

四葉「本当に、お母さんが生き返ったんだ…………」

 

三玖「お母さんに会えるんだ……!」

 

5人は死んでしまったと思われていた母親に再会できることを知り、喜びを隠さずに感激していた。

 

悟飯「うん………。良かった…………」

 

悟飯はそんな姿を見て、嬉しそうに呟きながら微笑んだ。

 

 

 

 

 

 

 

カプセルコーポレーションに着くと、トランクスは顔パスでゲートを通過し、零奈のいる部屋に直行した。

 

トランクス(未来)「母さん。皆さんを連れてきました」

 

ブルマ「あっ!きたきた!こっちよこっち!」

 

5人は遠慮というものを忘れて走ってその場に向かっていく。

 

「「「「「お母さん!!」」」」」

 

マルオ「こら、騒がしくしたら他の人に迷惑だよ」

 

零奈「いいじゃないですか。今日くらいは」

 

普段は無表情なマルオだが、愛する人が目の前に戻ってきてくれたという事実に喜びを隠し切れずに頬が緩んでしまっている。

 

悟飯「…………マルオさんのあんな顔初めて見たな……」

 

上杉君が見たら物凄く驚きそうだな…。と感想をこぼした悟飯だったが、ふと思い出したように別室に移動する。

 

 

 

未来悟飯「やあ、どうしたんだい?」

 

未来五月「どうかしましたか?」

 

悟飯「………あなた達は、零奈さんが目を覚ましたら未来に戻るって言ってましたよね?」

 

未来悟飯「…ああ。オレ達はこの世界の住人ではないからね。いつまでもこの世界に居座るわけにはいかないんだ」

 

未来五月「少し寂しい気はしますよ。でも、私達も元の時代に帰らなければなりません………」

 

悟飯「………そうですか」

 

未来悟飯「寂しそうな顔をするな。君ならオレがいなくても、この地球を守っていけるだろう?」

 

未来五月「…………そうです。帰る前に最後に聞きたいことがあります」

 

悟飯「……?なんですか?」

 

未来五月「孫君は、もう決めたんですか…?誰と一生寄り添っていくのか」

 

未来悟飯「ちょっと、五月……!!」

 

未来の悟飯は五月の質問に少々渋い顔をするが、未来の五月は構わずに続ける。

 

未来五月「まだ決まっていないというのならそれで構いません。単純に興味本位ですよ」

 

悟飯「………僕は……」

 

 

 

 

未来五月「………ふふっ。そうですか。その答えが聞けて良かったです……」

 

未来の五月は悟飯の解答を聞くと、満足したような、どこか哀しそうな顔をしていた。

 

未来五月「ぜひ、彼女にもそのお返事をしてあげてください。きっと大喜びしますよ」

 

悟飯「ええ。必ず………」

 

未来悟飯「そっか…。以前相談してきた君は随分悩んでいるようだったけど、何かきっかけがあったのかい?」

 

悟飯「………確かに、気付いたのは結構最近です。でも、きっかけ自体はもっと前にあったんだと思います」

 

未来悟飯「………そうか」

 

未来の悟飯と五月はそれ以上は何も聞かなかった。現代の悟飯の答えを聞いてどこか満足気だった。

 

未来五月「……では、私達の関係も隠しておく必要はありませんね」

 

未来悟飯「……そうだな。ちょっと恥ずかしいけど」

 

悟飯「えっ?それ、どういう……」

 

悟飯が質問する前に、未来の五月が答えた。

 

未来五月「私達、付き合っているんです」

 

悟飯「…………えっ?えぇ!!!?」

 

その返答に悟飯は大声を上げて驚いてしまう。

 

未来悟飯「実はあの人造人間の騒動が収まってから始まった関係だけど、君の決断に影響を与えるのはよくないと思って秘密にしてたんだ。でも君にはもう心に決めた人がいる。そうだろう?ならもう伝えても大丈夫かと思ったんだ」

 

悟飯「ははは…。確かにそうですね」

 

未来五月「…では、彼女達にもお別れの挨拶をしましょう」

 

未来悟飯「………そうだな。何も伝えずに帰るわけにはいかないしな」

 

未来の悟飯と五月は少し時間を置いてから現代の五つ子にもお別れの挨拶をしようと決心した時だった。

 

 

『なんだよ?帰っちまうのか?折角オラが天下一武道会の時に帰ってこようと思ってたのによ』

 

 

……悟空があの世から声をかけてきた。

 

未来悟飯「お、お父さんッ!!?」

 

未来五月「悟空さんですか!!?」

 

『ああ。"こっち"の悟飯が天下一武道会に参加するらしいから、せっかくだしオラも参加しようと思ってる。オラもおめぇ達に会いてえし、天下一武道会の日まで残ったらどうだ?』

 

未来悟飯「でも、オレ達は別の時代の住人であって…………」

 

『んな細けえこった気にすんなよ!天下一武道会まであとちょっとなんだからよ!それに歴史が変わるとかそういうのも気にする必要はねえだろ?既におめぇらの知ってる歴史じゃねえんだからよ!』

 

悟空の言っていることは確かにそうだった。未来の二人が危惧している歴史改変。ところが既に歴史は改変されており、未来の悟飯と五月が手を加えても特に問題はないと言えばない。

 

未来悟飯「…………そうしたいのも山々ですし、お父さんの顔も見ておきたいですけど、遠慮しておきます」

 

未来五月「ええ。人造人間に無茶苦茶にされてしまった世界を復興させなければいけませんし………」

 

未来悟飯「何より、オレ達の帰りを待つ人がいるんです。これ以上みんなを心配させるわけにはいきません………」

 

『…………そっか。そいつは残念だな。でもおめぇらがそう言うなら仕方ねえな』

 

未来悟飯も本当なら悟空に会いたい。だが、未来の悟飯にも五月にも、帰りを待ってくれる者がいる。既に結構な期間滞在してしまっているので、向こうの時代でも同じくらいの時が流れているだろう。零奈も目を覚まして異常も見つからないことだし、未来の二人はこれ以上ここにいるわけにはいかないのだ。

 

『というわけだ悟飯。せっかくだから他の奴らも誘ってくれ。一応声をかけておいたけどな。どうせ23時間しかそっちにいられねえなら、みんなに会っておきてえしな』

 

悟飯「はい!」

 

『そんじゃ、未来の悟飯に五月。いつ会えるか分かんねえけど、また会ったらその時は話しような。んじゃな!』

 

そこで悟空の声は途切れた。

 

未来悟飯「………死んでるはずなのに、死人の雰囲気を出さないのがお父さんらしいや………」

 

未来五月「明るく、どこか温かい方ですね…………」

 

 

 

 

しばらく母親との団欒を楽しんだ五つ子は、ようやく落ち着きを取り戻し始めていた。

 

マルオ「最近は娘達に春がやってきたようでしてね…。特に二乃君、三玖君、五月君は孫君にべったりですよ」

 

零奈「あらあら…。あんなに小さかった娘達が大きくなりましたね……」

 

二乃「ちょっとパパ!!あまり恥ずかしいこと言わないでよ!」

 

一花「こういう時は恥ずかしがるんだ?二乃達って結構悟飯君にべったりだって学校中で噂されてるよ?」

 

マルオ「その話は僕の耳にも届いたよ。彼のことが好きなのは承知していたが、公共の場では謹んでほしいね」

 

五月「あ、はは…………」

 

三玖「でも悟飯の顔を見ると抑えられなくて…………」

 

悟飯「あれ?」

 

悟飯は再び零奈のいる部屋に戻ると、マルオが珍しく五つ子と自然に会話をすることができている。零奈がいるからだろうか?マルオは五つ子との会話を楽しそうにしているのが悟飯にはよく分かった。零奈が戻ってきたことによって、心に余裕が生まれたのだろうか?

 

零奈「好きな人にアタックをするのは構いませんが、迷惑をかけてはいけませんよ?」

 

二乃「でもでも!好きな人にはアピールしたいじゃない!しかもライバルは私の姉妹だし!」

 

三玖「うん。気が抜けない」

 

五月「容姿は同じですから、差をつけるなら中身ですもんね………」

 

マルオ「おや?孫君かい。いるならいると言ってくれ」

 

悟飯がいることにマルオがいち早く気付いた。

 

未来悟飯「やあ、みんな元気そうだね。あれから体調の方はどうだい?」

 

二乃「あっ!未来のハー君!!」

 

五月「私達は大丈夫ですよ。あなた達のお陰で」

 

零奈「………そういえば、私が目を覚ましたら元の時代に帰るそうですが、本当ですか?」

 

未来悟飯「ええ。元の時代には、オレ達の帰りを待つ人達がいますからね」

 

未来五月「それに、街の復興を手伝わなくてはなりませんしね」

 

零奈「……五月。いえ、未来の五月と呼んだ方がいいでしょうか…?」

 

未来五月「はい。なんでしょう…?」

 

零奈は深呼吸をした後に、未来の五月にこう述べる。

 

零奈「一度死んだ身であるはずの私がこうして再び娘達と触れ合うことができたのは、あなたのお陰です。本当にありがとうございます………」

 

未来五月「……やめて下さい。私は復讐という醜い感情を抱いてあなた……いえ、人造人間を造ったのです。お礼を言われるなんて、とても………」

 

マルオ「確かに、君は復讐の為に零奈さんの形をした人造人間を造ったかもしれない。だが、結果的には娘達に母親を再会させることができた……。違うかい?」

 

未来五月「それはあくまで結果論の話ですよ……」

 

マルオ「それでもいいよ。僕も父親としてではなく、僕個人として君に礼を言うよ」

 

未来の五月は複雑な心境だった。元は人造人間を破壊する為に、骨壷を掘り起こしてまで造り出した母親の形をした人造人間。それが色々あって本物の母親の魂が人造人間の中に入り込み、擬似的に蘇生することができたのだ。それは結果論であって、最悪この世界の崩壊を招いていた可能性がある。

 

未来悟飯「五月。みんながこう言ってくれてるんだ。もう過ぎたことは気にしなくていいんじゃないか?これから同じ誤ちを犯さなきゃいいだけさ」

 

未来五月「………そう、ですね」

 

当の未来五月本人は若干納得していない様子だったが、周りに押されて納得したようである。

 

未来悟飯「それじゃ、オレ達はそろそろ帰ります」

 

マルオ「………そうかい。だが帰りを待つ人がいるのなら引き止めるわけにもいかない……。向こうでも頑張りたまえ」

 

零奈「私達は応援してますよ」

 

未来五月「ありがとうございます……」

 

未来の2人は別れを惜しみながらも、その場を去ろうとする。その場を去ったら、後はタイムマシンをカプセルから取り出して元の時代に帰還するだけだ。だが、未来の五月は帰る前にどうしても伝えたいことがあったようだ。

 

未来五月「………お父さん、お母さん。この度、私は孫君と人生を共に歩むことになりました」

 

マルオ「………うん?」

 

一花「えっ?」

 

四葉「そ、それって……!!」

 

マルオと一花は一瞬何を伝えられたのか意味が分からず、四葉は意味を察しつつも、顔を赤くしながら確認を取る。

 

未来五月「私達は……結婚前提のお付き合いをしています………!」

 

零奈「それはおめでたいことですね…。しっかりとそちらの五月を支えてあげて下さい」

 

「「「「「えぇえええええええッッ!!!!!?」」」」」

 

事前に聞いていた悟飯や、なんとなく察していた零奈を除いて、5人は相当驚いていた。その為、建物中に響いてもおかしくないほどの大声をあげてしまう。

 

マルオは一瞬驚いたが、未来の2人の事情から考えて、然程おかしなことではないかと1人でに納得していた。

 

二乃「み、未来だと……!!!」

 

三玖「五月と、悟飯が………!!?」

 

五月「………と、言いますと…?これはこちらの世界でも孫君と私が結ばれるという予言……?」

 

三玖「い、いや!そっちの未来とこっちの現代は既に違う歴史で動いているから……!!」

 

二乃「そ、そうよ!まだ私達に勝機があるはずだわ!!」

 

当の悟飯本人がいることをお構いなしにそんな話をする3人。その様子を零奈は仏のような顔で見届け、マルオは少々難しい表情をしていた。

 

マルオ「………確か、そちらの世界では一花君達は………。そうだね。君がそっちの五月君を支えてあげる必要があるようだね。君達の関係を僕は歓迎するよ」

 

その言葉を聞くと、未来の五月は満足した表情になる。

 

未来五月「そうと決まれば、向こうのお父さんにもご報告をしなければなりませんね!」

 

未来悟飯「そ、そうだね……(久しぶりにお母さんに会わないと……)」

 

未来の悟飯は五月が唐突に報告するものなので、頬を掻いて誤魔化そうとするも、顔が赤かったため誤魔化しきれなかった。

 

 

 

 

未来の2人は外の広場に出た。2人を見送る為に、起き上がった零奈を含めた総勢が広場に集まっていた。

 

未来悟飯「……そうだ。最後に君に言いたいことがある」

 

そう言いながら未来の悟飯は現代の悟飯に近づく。

 

悟飯「はい?」

 

未来悟飯「……こっちのお父さんに聞いたぞ。君は戦う時に少々慢心する癖があるようだね」

 

悟飯「………そうですね」

 

悟飯はその言葉を聞き、セルゲームのことを思い出していた。自分が早々に勝負をつけていれば、犠牲にならなかったはずの人物の顔を思い浮かべる。

 

未来悟飯「いいか?例え相手に優位に立っていても、決して遊ぶようなことはしちゃいけない。もし君が守りたいものの為に戦うなら……、決して慢心はしちゃいけない……。これだけは言っておきたかったんだ」

 

悟飯「………はい」

 

未来悟飯「よし!オレから伝えたいことはこれだけだ。っと!一つ言い忘れていた」

 

先程とは打って変わって未来の悟飯は笑顔になる。

 

未来悟飯「君の特別な存在……、彼女をしっかり幸せにしてあげるんだぞ」

 

悟飯「…そちらこそ、そちらの五月さんを幸せにしてあげてください。彼女にとって、あなたは必要な存在です」

 

未来悟飯「……そうだな。お互いに頑張ろう」

 

互いにエールを送り終えると、どちらからともなく拳を差し出し、互いの拳を合わせる。そのまま何も言わずに離す。

 

未来の2人はタイムマシンに乗り込み、エンジンを起動させる。すると少しずつタイムマシンが浮かび上がっていく。

 

ブルマ「ちゃんと幸せにしてあげるのよ〜!!」

 

二乃「例え別の世界の五月でも、泣かせたら承知しないわよ〜!!」

 

一花「もういい年だし、子供は早めにね〜!」

 

零奈「一花……。少し自重しなさい」

 

一花「イテっ…!」

 

一花の言動は流石にやり過ぎたのか、零奈に軽くゲンコツされていた。三玖は無言で、だが笑顔で手を振る。四葉は両腕で精一杯手を振って太陽のような笑顔で見送る。

 

五月「私はあなたの分も教師として頑張ります!!絶対に夢を実現させてみせますから〜!!!」

 

それを聞くと、未来の五月は大声で『私の分もお願いね〜!!』と返事をする。

 

カプセルコーポレーションの最上階よりも高く浮かび上がった時、タイムマシンのドアは閉じた。それと同時に未来のトランクスが舞空術で未来の悟飯達の乗るタイムマシンと同じ高度まで昇る。そして未来の悟飯に向けてサムズアップする。

 

それを見て、未来の悟飯も未来のトランクスに向けて笑顔でサムズアップをした。

 

 

シュン‼︎

 

 

 

 

そして、タイムマシンは姿を消した。

 

 

 

一花「あーあ。帰っちゃったか……」

 

四葉「向こうでも幸せだといいね!」

 

三玖「きっと大丈夫だよ。あの2人、幸せそうだったし……」

 

二乃「そうねぇ…。私も負けてられないわ」

 

トランクス(未来)「……さて、俺もそろそろ元の時代に帰ります」

 

ブルマ「あら?トランクスはもう少しゆっくりしていけばいいのに……」

 

トランクス(未来)「そういうわけにはいきませんよ。元々この時代には、人造人間を倒したことを報告するために来たんですから…。トラブルがあったせいで長居してしまいましたし、向こうの母さんも心配してると思います」

 

ブルマ「そっか……。それもそうね」

 

どうやらトランクスが乗ってきたタイムマシンの方は、未来のブルマの設計図によって燃料の補給が成功したようである。

 

トランクス(未来)「お世話になりました。俺もこれで失礼します」

 

トランクスもタイムマシンを取り出し、帰還する準備をする。未来悟飯と同様に元の時代に帰還しようとしたところ、時代移動する直前でベジータの姿を確認した。

 

そのベジータはトランクスの方を見るだけで特にアクションを起こすことはしなかった。だが、トランクスはそんなベジータに向けてサムズアップをした。その直後、トランクスのタイムマシンも姿を消した……。

 

五月「みんな帰ってしまいましたね……」

 

マルオ「………さあ、僕達も帰ろうか。零奈さんも目を覚ましたことだしね」

 

二乃「………パパ。今日は忙しいの?」

 

マルオ「…………いつも忙しいが、いい加減家に帰れるように最大限努力するよ。孫君との約束もあるしね……」

 

零奈「そういえば、みなさんは今どこに住んでいるのです?」

 

四葉「それは私達が案内するよ!」

 

三玖「そっか……。お母さんはあの家のこと知らないんだよね………」

 

一花「きっとビックリするよ〜?」

 

二乃「キッチンも大分広くなってるから、料理もしやすいと思うわ」

 

五月「料理と言えば…!久しぶりにお母さんのパンケーキを食べたいです!!」

 

二乃「あっ!それ私も!!」

 

零奈「……ふふ。分かりました。料理は久しぶりなので、上手くできるかは分かりませんが、娘達の為に頑張ります」

 

「「「「「やった〜!!!」」」」」

 

久しぶりに母親お手製のパンケーキを食べられることが確定して、5人の娘達は年甲斐もなく大喜びをしていた。

 

零奈「……マルオ君も久々にどうですか?」

 

マルオ「………今日は早めに仕事を切り上げるようにします」

 

零奈「分かりました」

 

 

悟飯「うん。良かった………」

 

悟飯は母親が戻ってきて、とても嬉しそうにしている5人を見て、心が温かくなっていた。

 

ブルマ「うんうん。ドラゴンボールでも生き返らせることができないのに、まさか人造人間として生き返っちゃうなんてね……。でも、記憶があるならそれはもう本物よ」

 

悟飯「……そうですね」

 

零奈「そうです。良かったら孫君も如何ですか?娘達がいつもお世話になっているようですし」

 

悟飯「えっ……?でも、今日は家族で水入らずの方がいいんじゃ……?」

 

悟飯は久々の再会を邪魔するわけにも行かず、遠慮する。

 

一花「こーら。遠慮しないの」

 

四葉「お母さん!それなら上杉さんも呼んでいいかな?」

 

零奈「確かもう1人の家庭教師の方ですよね?いいですよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

悟飯「…ということがあったんだけど、上杉君も来る?」

 

風太郎「いや、遠慮しておく」

 

悟飯「ははは……。そ、そう……」

 

風太郎「…しかし、未来の悟飯と五月は帰っちまったんだな」

 

悟飯「うん。元から零奈さんが目を覚ましたら帰るつもりだったからね」

 

風太郎「しかし……。未来では悟飯と五月がな…………」

 

悟飯「あれ?上杉君ってその手の話には興味がなかったんじゃ……?」

 

悟飯は以前聞いた風太郎の恋愛スタンスを思い出して聞く。

 

風太郎「…確かに昔はそんなことを言っていた気がするが……。今はそんな気持ちを蔑ろにするわけにはいかないとも思い始めている。我ながら馬鹿らしいがな……」

 

悟飯「……そっか」

 

悟飯は以前四葉に言ったことを思い出していた。やはり風太郎は五つ子。特に四葉のお陰でいい方向に変わり始めていた。いや、もしかしたら既に変わり終えているのかもしれない。

 

四葉「あっ!上杉さんみっけ!!」

 

風太郎「四葉か。どうした?」

 

四葉「今日のパンケーキ会は強制参加ですよ〜!!上杉さんもちゃんと来て下さい!!」

 

風太郎「いやいや、家族水入らずの時間を邪魔するわけにはいかないだろ?」

 

四葉「そう言わずに!!お母さんも上杉さんに会いたがってますから!!」

 

風太郎「ちょっと待て!おい!引っ張るな!!」

 

悟飯「あはは……」

 

風太郎は四葉に振り回されて迷惑そうにしているが、よく見ると風太郎の表情は満更でもなさそうだった。

 

 

 

 

一花「はい!これが今の私達の家だよ!」

 

零奈「……………ひ、広いですね」

 

三玖「お母さんが引いてる……」

 

二乃「まあそうよね……。私達も最初は戸惑ったもの」

 

五月「でも大丈夫ですよ。すぐに慣れます」

 

零奈「TVも大きいですね……。まずリビングだけであのアパートよりも広そうですし……。上の階に1人ずつ部屋が用意されているとは…………」

 

零奈は五つ子が住んでいるマンションのグレードの高さに舌を巻いてしまった。まあ初めて見たら驚いてしまうのも仕方ないだろう。

 

一花「さあ、早速作ってよ!材料ならあるから!」

 

零奈「焦らなくても、パンケーキと私は逃げませんよ」

 

 

 

 

 

 

 

一方、未来悟飯と五月の世界では、とうとう悟飯達が無事に帰還したところであった。

 

タイムマシンが地面に無事着地すると、五月は悟飯に抱えられて降りる。ボタンを押してカプセル化し、所々が痛んだ建物の中に入る。

 

悟飯「ただいま戻りました」

 

五月「こ、こんにちは〜……」

 

ブルマ「五月ちゃんに悟飯君!?よく無事だったわね!!急にいなくなっちゃったから心配してたのよ!?」

 

トランクス「悟飯さんに五月さん!お帰りなさい!!」

 

悟飯「ああ、ただいま」

 

マルオ「おや……?ようやく帰ってきてくれたのかい?心配したよ……」

 

五月「すみません……」

 

トランクス「ところで、人造人間は……?」

 

五月と悟飯は、過去の世界で起こった出来事を丁寧に説明した。

 

マルオ「……なるほど。向こうの本物の零奈さんの魂が入って、そっちで暮らすことになったのだね……」

 

ブルマ「一時はどうなるかと思ったわ………」

 

五月「……今まで迷惑をかけてしまってすみませんでした……」

 

五月は、姉妹と風太郎が人造人間17号と18号に殺された後の行いを思い出してブルマとマルオ、トランクスにも謝罪をする。

 

トランクス「そ、そんな…!頭をあげてください!」

 

ブルマ「そうよ!あの時は精神状態がおかしかっただけよ!元に戻って良かったわ!」

 

マルオ「……僕も父親として娘達を守ることができなかったから、僕が強く言うこともできないね………」

 

だが、3人とも五月に対して怒っている様子はなく、むしろ心配していたようだった。

 

五月「あの……、それと、すごく急なんですが、もう一つご報告したいことが………」

 

ブルマ「なになに?」

 

五月の報告にブルマは興味津々だった。五月は悟飯の方を見ると、悟飯は無言で頷いた。それを確認し、五月は一度深呼吸をしてから切り出す。

 

五月「私達、結婚前提でお付き合いをしています………」

 

五月は少し恥じらいながらも、しっかりと3人にも伝えた。

 

ブルマ「ええ!?それ本当!?」

 

トランクス「お似合いだと思いますよ!」

 

マルオ「…………」

 

ブルマとトランクスは好感触だったが、マルオの反応は微妙であった。それに少々焦った五月は何かを言おうとしたが………。

 

マルオ「……孫君。五月君は友人も姉も失った……。だから君だけは五月君から離れないでほしい……。勝手なお願いだが、五月君を支えてくれるかい?」

 

悟飯「はい!僕は彼女と同じ墓場に入るまで一緒にいるつもりです!」

 

五月「そ、孫君……?」

 

悟飯ははっきりと恥じらいもなく、キリッとした表情でそう宣言する。あまりにも大胆な発言に五月は顔を真っ赤にして、ブルマはそんな五月をニヤニヤとした表情で見つめる。

 

マルオ「では、五月君を頼んだよ……」

 

悟飯「任されました……!」

 

ブルマ「そうと決まれば、もう1箇所ご挨拶に行くところがあるんじゃないの?」

 

ブルマに言われて悟飯の顔は引き締まったものに変わった。

 

五月「えっ……?もう1箇所って…?」

 

ブルマ「決まってるじゃない!悟飯君のお母さんのところよ!!」

 

五月「あっ…!」

 

悟飯「……そうですね。分かりました。では早速行ってきます」

 

五月「えっ、ちょ…!?」

 

悟飯は五月を背負ってすぐさま舞空術で飛び立つ。そのまま悟飯はパオズ山に到着した。

 

五月「ここが孫君のお家ですか…?」

 

悟飯「ああ……。ここに帰るのは本当に久しぶりだよ…。お母さんに怒られないといいけど………」

 

悟飯は戸惑ったようにそう言いながらドアを数回ノックする。すると、ドアはすぐに開いた。

 

チチ「おっ父。帰ってきただ……か……?」

 

悟飯「…………久しぶり、お母さん」

 

チチは悟飯の顔を見て固まる。だが、すぐに悟飯の顔を確認するようにまじまじと観察する。少しすると、チチは涙を流して悟飯を抱きしめた。

 

チチ「悟飯…!よく帰ってきてくれただ……!!オラ、悟飯も死んじまったのかと思って……!!!」

 

悟飯「ははは……。ごめん。人造人間を倒すまでは帰らないって決めてたんだ……」

 

チチ「オラは人造人間なんてどうでも良かっただ…!!ただ無事に帰ってきてくれれば良かったって、ずっとずっと願ってた……!!!」

 

悟飯はチチを抱きしめ返す。片腕しかないため、チチのように両腕でハグすることはできなかった。

 

悟飯「………ただいま、お母さん」

 

チチ「お帰り…!悟飯ちゃん……!!」

 

 

五月「………えっと……」

 

五月はこの感動の再会の場面で場違い感を抱いていたため、結構気まずくなっていた。しかしここから徒歩でカプセルコーポレーションに帰るわけにもいかないため、その場で気配をできるだけ殺しながらじっとしていた。

 

チチ「腕までなくしちまって…!!もうそんな無茶をするでねえだぞ!!」

 

悟飯「ははは……。それよりも、紹介したい人がいるんだ」

 

チチ「えっ……?」

 

悟飯はそう言いながら五月の方を見ると、チチもようやく五月の存在に気が付いた。

 

チチ「だ、誰だこの別嬪さんは!?」

 

五月「ど、どうも…!中野五月と申します……!こ、これからよろしくお願いします……!!!」

 

チチ「あ、あぁ……。これからって…?」

 

悟飯「……僕、この人と結婚前提で付き合ってるんだ」

 

チチ「…………えっ?」

 

今、チチの脳はパンク寸前だった。

 

ようやく帰ってきた息子。その息子は戦いによって負傷し、左腕を失ってしまった。それだけでも情報量が一杯だというのに、更に恋人も連れてきたではないか。既に情報だけで満腹寸前の状態だった。

 

チチ「えぇえええ!!?久々に帰ってきたと思ったら、嫁さんを連れてくるってぇえ!?!?」

 

五月「す、すみません…!ご迷惑でしたか……?」

 

チチ「んなとんでもねぇ!見たところおめぇはいい人そうだし、もう悟飯が無茶しないように面倒見てくれ!」

 

五月「は、はい…!」

 

チチの気迫に押され気味な五月だったが、五月と悟飯の関係を認めているようだった。少しすると、買い出しに行っていた悟飯の祖父である牛魔王も帰宅し、悟飯の帰宅と報告に驚いていた。

 

だが、牛魔王は戦いに身を投じていた悟飯が嫁を連れてきたということで、ようやく年貢の納め時かと安心したようだった。この日、悟飯と五月はチチに振る舞われた食事を美味しそうに味わっていた。特に、悟飯は久しぶりに食べる母親の味に涙が出てしまうほどだった。そんな悟飯にすぐにハンカチを渡す五月を見て、チチと牛魔王は、この人なら悟飯を幸せにしてくれるだろうと、心の中で呟いたのだった……。

 

 

 

 

〜おまけ〜

 

二乃「はい、ハー君あーん♡」

 

三玖「二乃、邪魔。これは私が焼いたの。食べてみて」

 

五月「孫君!このパンケーキは私が焼いてみたんです!ぜひご賞味ください!!」

 

悟飯「待って待って!全部食べるから!」

 

 

一花「はいフータロー君、あーん」

 

風太郎「やめろ。自分で食えるから…」

 

一花「そんな連れないこと言わないで口開けてごらん?」

 

風太郎「だから……むぐっ…!?」

 

一花「やった…!あーん大成功♪」

 

四葉「あー!上杉さんほっぺに蜂蜜がついてますよ!私が拭いてあげます!」

 

風太郎「やめろ!それも自分でできる!」

 

 

零奈「あらあら。娘達全員に春が訪れていたようですね………」

 

マルオ「…………」ゴゴゴゴゴッ

 

零奈「ま、マルオ君……?」

 

マルオ「………上杉君。君には紳士的な対応を求めたはずだが……?」

 

風太郎「俺は一線引いてます!!俺はね!!」

 

マルオ「孫君も、少しは自重してほしいのだがね?」

 

悟飯「僕が引いても彼女達が更に押してくるんです…………」

 

このように、2グループのハーレムが自然と発生し、その光景を零奈は笑顔で見守るが、マルオはシリアスオーラ全開だったので、風太郎と悟飯は物凄く気まずかったそうだ……。

 




 今回は主に未来組が帰宅するシーンでした。トランクスの方に関しては、報告に行ってから帰っただけなので特に書く必要はないと思いました。未来悟飯と未来五月の方が多分重要なので。
 そして現代でも零奈がようやく目を覚まして一緒に暮らすことになりました。これを機にマルオも父親らしい振る舞いをできるようになるかもしれませんね。
 ちなみに言い忘れていましたが、一花は普通に休学という選択肢を最初から選んでおり、風太郎に個別レッスンをお願いしている状況です。何故風太郎なのかは、普通に風太郎が好きだからというのもありますが、家庭の状況を考えてというのと、悟飯はボディガードも兼任しているからという意味合いもあります。丸々カットしていますが、このことは風太郎は勿論、姉妹と悟飯も知っています。この世界においては、一花が風太郎を避ける理由がありませんからね。

 さて、次回はいよいよ魔人ブウ編に突入します。魔人ブウ編を通過して学園祭が入る予定です。ブウ編が終わったらこの作品ももうすぐ完結ということになりますね。まあ本編完結という形で、その後しばらく後日談やifストーリーをダラダラと書き続けると思います。予定の部分まで書き終わったとしても、1年空いて追加ストーリーを書いたりするかもしれないですね。その辺は完全に未定ですが。
 しかし、碌にストーリーを決めずに始めたこの作品ももうすぐ本編が完結ですか……。まだ半年くらいしか経ってませんけど、そう思うと書き始めた頃がとても懐かしく感じますね。って、これは完結させてから言う言葉ですかね。まだちょっと早いですね。


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魔人ブウ編
第73話 天下一武道会


 前回のあらすじ…。
 零奈が目を覚ましたので、五つ子と悟飯はカプセルコーポレーションに行った。するとそこには既にマルオが既に到着しており、零奈は確かに意識を取り戻していた。五つ子は母親との会話を楽しむ中、悟飯は未来の二人と話をしに行っていた。未来悟飯が帰ると言った時、あの世から悟空が話しかけ、悟空も天下一武道会に出場すると報告するが、未来悟飯にも五月にも帰りを待つ人がいたため、断った。

 未来に帰った悟飯と五月は、ブルマとマルオに交際していることを報告し、次に孫家に訪れた。悟飯にとっては何年ぶりの帰宅だろうか。チチは息子が生きて帰ってきてくれたことに泣いて喜んだ。交際相手である五月を連れてきた時は驚かれたものの、歓迎している様子だった…。



中野家にてパンケーキ会を楽しんだ悟飯は、天下一武道会に悟空がやってくるとのことで、久しぶりにZ戦士を集結させようかと、世界中を回っているところだった。

 

だが、悟空は他のZ戦士にも伝えたようで、Z戦士達も今回の天下一武道会に出場する気は満々だ。特にベジータなんかは力の入り方が根本的に違った。しかしながら、天津飯と餃子に関しては未だに行方が分からない状態である。この前会った時に居場所を聞いておくべきだと悟飯は後悔していた。

 

悟飯「ということで、もうすぐ天下一武道会が開催されるんだけど、みんなも見に来る?」

 

三玖「……確か、世界中の武術の達人が集まる大会だっけ…?まあ、悟飯が出るなら行こうかな……」

 

二乃「えっ?なになに?何の話をしてんのよ?」

 

悟飯はついでに中野家にも訪れていた。

 

二乃「へぇ……。面白そうじゃない。私も行こうかしら」

 

五月「いえ、受験は……?」

 

二乃「何言ってんのよあんた。ハー君の晴れ舞台を見届けないっての?愛が足りないわね」

 

"愛が足りない"

 

五月はこの言葉を聞いて急に行く気になったようである。

 

五月「そんなことはあり得ません!!未来では私は孫君と結ばれてるんですから、そんなことあり得るはずがありません!!」

 

三玖「………正直鬱陶しい」

 

五月は未来の2人が結ばれたことを知って以来、度々これを口にするため、三玖は若干鬱陶しく思っていた。

 

一花「へぇ!この日は……。丁度仕事がない日だ…!せっかくだし私も行こうかな〜?」

 

四葉「みんな行くなら私も!!」

 

零奈「では、私は付き添いということで」

 

取り敢えず中野家は全員天下一武道会に来るようだ。四葉は出場するのかどうかはまだ不明である。しかしマルオは病院のこともあるため、なかなか時間を作れないということで、天下一武道会には来れないそうだ。

 

悟飯「まあ、そこは仕方ないね……」

 

悟飯は一礼して中野家を去ると、次は上杉家に向かう。

 

らいは「へぇ!面白そう!」

 

らいはは大会の詳細を聞いて面白がっていた。

 

勇也「へぇ!優秀な成績を残すと賞金がもらえるのか!どうだ風太郎。俺らも出場してみないか?」

 

風太郎「流石に無理だ。悟飯の仲間達も出場するんだろ?今からじゃとてもじゃないが時間が足りん」

 

いくら金に執着がある風太郎でも、流石に現実を見ていたようである。確かに四葉のように修行を頼んだところで四葉のように成長できるとも分からないし、仮に四葉以上に成長してもZ戦士に追いつくのは非常に難しい。

 

らいは「観戦だけでもいいから行こうよ〜!!」

 

風太郎「いや、俺は受験生だから親父と2人で行ってこい」

 

勇也「一日くらいいいじゃねえか!」

 

風太郎「いや、夏は海にもプールにも行ったしな………」

 

らいは「……ダメ?」

 

いい返事をしない風太郎にらいはの上目遣いが炸裂した。これによって風太郎は折らざるを得なかった………。

 

風太郎「も、もちろんいいさ………」

 

こうして、上杉家も観戦しに来ることになった………。

 

 

 

 

悟飯「それで、四葉さんはどうするの?」

 

四葉「うーん……。実は結構迷っているんですよね…。ただ私は実践経験がないので、プロの人達に勝てるかどうか………」

 

悟天「じゃあ実際に組手してみればいいんじゃない?」

 

四葉「えっ…?」

 

悟飯「うん。そうだね。じゃあ何回か模擬戦をやってみよう」

 

四葉「ええ!?孫さん相手にですか!?無理無理!!勝てるわけないですって!!」

 

悟飯「流石に本気は出さないよ……」

 

四葉「ほ、本当ですね?超サイヤ人は絶対にダメですからね!!」

 

悟飯「だから変身しないって!」

 

四葉と悟飯は何度か模擬戦をした。他の出場者も各々で修行をし、天下一武道会本番に向けて精を出していた。

 

 

 

 

ギネ「なあバーダック!!こんなもの見つけたぞ!!」

 

バーダック「ほう?天下一武道会?」

 

バーダックはしばらく地球に住み着いていた為、地球の言語も理解できるようになっていた。その為、天下一武道会の案内をサクサクと読み進めていく。

 

バーダック「ほう?戦って上位に就けば賞金か…………」

 

ギネ「これからの生活のこともあるし、バーダックなら優勝なんて楽勝だろ?いい稼ぎになると思うんだけど…」

 

バーダック「……それもそうだな。だがどうせならアイツらにも出場させるとしよう。そうすりゃ…………」

 

バーダックはチームのメンバーを出場させようかと考えていたが、突然口を止めた。

 

ギネ「ば、バーダック……?どうしたんだい?」

 

バーダック「…もしかすると、あいつらも出場するかもしれねえな…」

 

ギネ「あいつら……?」

 

バーダック「まあいい。今回は俺1人で出場する。そしてこの大会がどういうものかを把握することにする」

 

ギネ「別にそんなに慎重にならなくてもいいんじゃないかい?もうクウラもターレスもいないんだろう?」

 

バーダック「………そうだな。だが……」

 

バーダックはいくつか懸念があった。一つは超サイヤ人になれたバーダックをあっさり完封したセル。彼は目的の為なら手段を選ばないタイプだと踏んでいる。次にベジータ。以前は見逃してもらったが、残忍で冷酷だと噂が蔓延っていたあの王子が次も見逃してくれるとは限らない。そんな化け物達がいるところにチームのメンバーを出してしまうと、あっさりと殺されかねないとバーダックは判断した。

 

バーダック「まあ念の為だ。俺もトレーニングを本格的に再開するとしよう………」

 

こうして、バーダックも出場することを決意した。

 

 

 

 

 

悟飯は天下一武道会が開催される日まで基本的に修行に明け暮れていた。偶に風太郎と共に五つ子に家庭教師をしに行ったり、四葉に稽古をつけたりするくらいであった。

 

そうして、夏休みは終わる数日前……。ようやく天下一武道会の日がやってきた………。

 

上杉一家と中野一家(マルオは仕事の為不在)は前日から天下一武道会付近のホテルにて宿泊しているそうだ。なお、上杉一家の宿代はマルオが負担している。腐れ縁とはいえ、友人(?)の宿代を持つとはマルオはぐう聖だ。そんなことはさておき、悟飯の方はカプセルコーポレーションで一旦集合することになっていた。

 

悟飯「どうも皆さん!お久しぶりです!」

 

クリリン「おう!久しぶり!!」

 

ブルマ「いよいよ今日ね〜!孫君が帰ってくるんでしょ?」

 

チチ「8年ぶりだべ…!良かっただな悟天ちゃん!おっ父に会えるだぞ!」

 

悟天「う、うん?」

 

悟天にとっては、父親がいない日々が日常となっているため、父親という言葉を聞いてもピンと来ない様子である。

 

ウーロン「にしても久々だよなぁ!悟空のやつが帰ってくるのって!」

 

ヤムチャ「ほんとだよな。あいつのことだから、俺たちが想像もできないくらいに強くなってるんだろうなぁ……」

 

これに関してはみんなほぼ同意見である。悟空はあの世でも修行しているのは確かで、超サイヤ人3にもなっているが、それを知っている者はここにはいない。

 

クリリン「だが、天津飯のやつはどうしたんだ?」

 

ピッコロ「天津飯はもう二度と会うことはないだろうと言っていたからな。この前会ったとはいえ、どこにいるのかは分からん」

 

クリリン「ま、まあ…!1人でも出場者が減ってくれれば俺としては助かるんだけどな!はは……」

 

ベジータ「……(俺はこの時を待っていたぞ。貴様と思う存分に戦える時をな……)」

 

それぞれの思いを胸に、一行は天下一武道会へと向かった……。

 

 

 

 

 

一方その頃、天下一武道会の会場では先に来ていた上杉一家と中野一家が現場に到着していた。

 

風太郎「人多っ………」

 

らいは「わぁ…!屋台がたくさん…!!私あれ食べてみたい!」

 

四葉「じゃあ私がなんでも買ってあげちゃいますよ〜!!」

 

四葉はウキウキ気分でらいはを連れて屋台を巡る。ここにはお祭りに来たわけではないのだが、当人達はとても楽しそうである。

 

一花「ねえフータロー君。お腹空かない?お姉さんがなんか買ってあげようか?」

 

風太郎「言っとくが俺は他人から施しを受けるつもりはないぞ」

 

一花「そんな連れないこと言わずにさ〜」

 

風太郎「お、おい…!いいから離れろ!」

 

一花は相変わらず風太郎本人に揶揄いながらもアピールをする。風太郎は親も目の前にいるので非常に恥ずかしく、一花を引き剥がそうとするも、風太郎の力ではそれは不可能だった。

 

勇也「がはははっ!一花ちゃんだったか?風太郎をよろしく頼むな!」

 

一花「はい、頼まれました〜!」

 

風太郎「おい馬鹿親父。ふざけたこと抜かしてんじゃねえ!!」

 

 

二乃「いいわぁ…。私もあんな風にハー君に抱きつきたい……」

 

三玖「悟飯、早く来ないかな……」

 

五月「あの、公衆の面前でやるのだけはやめて下さいよ…?」

 

普段は積極的な五月だが、今日は母親の見ている前だからだろうか、真面目に振る舞っている。

 

勇也「しっかし、先生が生き返っちまったってマジですか?」

 

零奈「はい。色々ありまして……」

 

勇也「いや〜!!先生が生き返ってくれて俺は嬉しいですよ!なんたって俺の恩師ですからね!!」

 

勇也は零奈が戻ってきたことを特に驚くことなく受け入れていた。

 

 

 

そこに、一際目立った集団がこちらに歩いてくるのが見えた。

 

らいは「よ、四葉さん…!あの人達凄いよ!?なんかターバンとマントつけてたり、M字禿げだったり、妙にダサい格好をしていたり!!」

 

四葉「そ、そうですね……(あの人達の"気"……まさか…!!)」

 

悟飯「あっ!四葉さんにらいはちゃん!みんなもいるんだ!」

 

らいは「えっ……?誰?」

 

悟飯はサングラスに山吹色のバンダナをしているため、らいはは正体に気づかなかったようだ。悟飯はそれを察してゴーグルを取り外す。

 

悟飯「はい。これで分かる?」

 

らいは「えっ?そ、孫さんなの…?」

 

悟飯「うん!そうだよ!」

 

らいは「えー、なんか孫さんのファッションセンス、絶妙にダサい」

 

悟飯「……えっ?」

 

ここで大打撃。幼い子からのストレートな一言は、どんな悪口や陰口よりも心に響くものである。

 

悟飯「えっ………?あの、僕の格好ってそんなにダサいんですか…?」

 

クリリン「ちょっとなぁ…」

 

ヤムチャ「正直女ウケはよく無さそうだよな……」

 

トランクス「ノーコメント」

 

ピッコロ「そんなダサい格好は捨ててとっとと魔族衣装に着替えたらどうだ?」

 

らいはの評価を皮切りに、Z戦士達の辛辣な評価が悟飯の耳に届くと、悟飯のメンタルはどんどんライフを減らしていく。

 

四葉「そ、そんなことありませんよ〜!!だってこれはヒーローの衣装ですよ?いくらダサくてもカッコイイに決まってるじゃないですか!!」

 

ここで四葉がフォローするが、はっきり言うと下手である。四葉の悪意のない一言がさらに悟飯のライフを削る。

 

三玖「わ、私は…!!どんな格好をしてても、悟飯はカッコいいよ…?」

 

三玖は顔を赤くして顔を手で覆い隠しながらそう言った。

 

ヤムチャ「(えっ?何この子可愛すぎない?健気すぎない?)」

 

クリリン「(こんな子に愛されてて付き合わない悟飯は多分将来的に呪われるな。羨ましいぜこんちくしょう)」

 

そんな男達の嫉妬が蔓延る。というかクリリンは既婚者にして子持ちだというのに、それは如何なものかと思われる。しかも18号は五つ子に負けないどころか、寧ろ上回る可能性さえあるビジュアルだというのに、罰当たりな男である。

 

二乃「あっ!ハー君だ!!会いたかった!!」

 

悟飯「ちょ、ちょっと二乃さん!ここは人前だから…!!」

 

二乃「え〜?私はそんなの気にしないわ!」

 

ヤムチャ「(あの子はこの前のデートしてた子じゃないか!?)」

 

クリリン「(マジでなんで悟飯はとっとと返事をしないんだ?)」

 

五月「こ、こら二乃!離れてください!!孫君に迷惑ですよ!!」

 

二乃「うっさいわね。そう言って空いた場所を自分がぶん取るつもりでしょ?このムッツリスケベ」

 

五月「む、むっつ……!!」

 

五月はムッツリスケベという言葉に過剰に反応し、二乃から離れるかと思いきや………。

 

五月「な、何を言っているのですか、二乃!!私はムッツリなんかではありませんよ〜!!!?」

 

そう言って五月は公衆の面前で堂々と悟飯の腕に絡みついた。

 

悟飯「ちょ、五月さん……!!?」

 

 

 

チチ「はぁ………」

 

ブルマ「どうしたのチチさん?」

 

チチ「オラももうすぐお婆ちゃんって呼ばれる日が来るのかと思うと少し複雑な気分になっちまって……」

 

チチはそう言うが、流石に気が早すぎではいかとブルマは内心で突っ込んだ。なんなら牛魔王に実際にそうツッコまれている。それはヤムチャやクリリン、18号も思ったことであるのだが………。

 

二乃「なるほど…!チチさん、お孫さんは男の子がいいですか?女の子がいいですか?なんなら両方ですか?」

 

チチ「いいだなぁ…。オラは娘はいなかったから孫娘がいいけど、どっちでも孫なら嬉しいだな………」

 

二乃「なるほど。そういうことならバンバン子供産むわ」

 

五月「に、二乃…!!何を言っているのですか!?」

 

二乃「あーら、まさか五月はハー君との子供を産めないの?そんなんじゃハー君に相応しくないわね?」

 

五月「何言ってるんですか?他の男なら兎も角、孫君との子供なら野球できるくらいの子を産んでも構いません。私の愛を見くびらないで下さい!!」

 

三玖「子供……。あっ、やめて悟飯…!私達はまだ学生なのに……。でも、悟飯がいいなら……」

 

一花「さ、3人とも!!!それ以上はここではやめようか!!!」

 

流石の一花もこの状況はまずいと思ったのか、大声を上げて妹達のセクハラじみたトークを強制終了させた。流石長女である。

 

ブルマ「………あ、愛が重い」

 

零奈「……私はどこで育て方を間違えたのでしょうか……」

 

勇也「いや、先生は多分間違えていませんよ。それもこれも全て孫悟飯ってやつの仕業なんです」

 

勇也は謎のノリで零奈をフォローするが、零奈はまともに受け止めてしまったようで………。

 

零奈「そうですか…。ならば孫君に責任を取ってもらわねば…………」

 

勇也「あっ、やべ。やりすぎた」

 

勇也は勝手に悟飯の外堀を更に埋めてしまったようである。

 

 

そんな馬鹿げたやり取りが繰り広げられていたが、ある人物の登場によってそれは一気に鎮まる。

 

 

 

 

悟空「よっ!みんな久しぶりだな!」

 

悟空が現れると、みんながそっちを向く。見てみると、見慣れた道着姿が目についた。しかし頭の上には天使を連想させる輪っかがあった。これは悟空が死人であるという証である。

 

占いばば「それじゃあ悟空。23時間だけじゃからな。くれぐれも"アレ"にだけはならんようにな」

 

悟空「おう!サンキューな、おばば!」

 

占いばばは悟空の付き添いが終わるとそそくさと帰ってしまった。

 

チチ「悟空さ〜!!!」

 

真っ先に悟空に向かって行ったのは、妻であるチチだった。

 

チチ「会いたかっただよッ!!オラ、ずっと会いたかっただ…!!!」

 

悟空「すまねえな、チチ………」

 

泣きながら抱きつくチチを悟空は抱きしめ返して優しく撫でる。

 

クリリン「ほんとに久しぶりだな〜!!」

 

悟空「あれ?クリリンいつの間に毛が生えたんだ?」

 

クリリン「言い方ッ…!!前にも言っただろ?ただ剃ってるだけだって」

 

亀仙人「悟空よ。よく帰ってきたな」

 

悟空「おう。じっちゃんも久しぶり!」

 

悟空は仲間達に次々と挨拶をすると、互いに積もる話でもあるのだろうか、会話が途切れることはなかった。特に悟飯とチチは家族ということもあるのだろうが、とても嬉しそうである。

 

しかし、そんなほっこりした会話をする中、1人は平常運転な者もいる。

 

ベジータ「カカロット。今日こそ貴様と決着をつけるぞ。覚悟しておけよ?」

 

悟空「おう!そっちもな」

 

たったそれだけの短いやりとり。だが、このやり取りは長年のライバル関係に終止符が打たれる時が近いことを意味しており、それを理解しているのは悟空とベジータだけである。

 

 

勇也「ほーう?あれが悟飯君の父親ねえ……」

 

零奈「私もあの世で何度かお話したことがありますよ。とってもいい方ですよ」

 

勇也「ガハハッ!先生が言うなら間違いないな!」

 

 

風太郎「………悟空さんって、人気者なんだな……」

 

五月「まあ、地球を幾度となく救ったヒーローみたいなものですからね」

 

二乃「というよりは、交友関係が広いように見えるけど」

 

 

 

 

そして、天下一武道会の受付までやってきた。まず初めにトランクスと悟天が名前を記入しようとしたら……。

 

「あ、君達15歳以下でしょ?だったら少年の部だよ」

 

トランクス「はあ?少年の部?何それ?」

 

係員の説明によると、15歳以下のちびっ子達は大人とは別に子供同士で戦う少年の部というものができたそうだ。大人とは完全に別枠ということだ。

 

悟天「えー?何それ!」

 

トランクス「大人とやらせてくれよ!」

 

「ダメダメ。これは決まりだから」

 

ブルマ「へぇ…。今はそんなものもできたのね〜……」

 

チチ「そっか…。なら優勝は悟天ちゃんに決まりだな」

 

ブルマ「あら、分からないわよ?うちのトランクスの方が強いんじゃないかしら?」

 

チチとブルマが互いの息子の強さで競い合いそうになった時…。

 

らいは「私は悟天君が勝つと思う!!だって間近でその強さを見てきたもん!!」

 

チチ「そうだよな!!悟天ちゃんの方が強いに決まってるだな!」

 

らいは「間違いないです!!」

 

ブルマ「えっ?まさか悟天君も隅に置けない感じ?」

 

恋愛関連に関しては相変わらず鋭いブルマである。

 

らいは「そうだ!はい悟天君!今日は試しにお饅頭作ってみたの!初めて作ったから上手くできてるか分からないけど……」

 

悟天「わーい!やった〜!!ありがとう!!」

 

悟天はこの夏休み期間でらいはに度々餌付けされており、既に胃袋が掴みかかれている。悟天にとってはらいはの料理もお気に入りなのだ。そして悟天はそんならいはに懐くのは必然である。故に、らいはの作戦は順調に進んでいると言える。

 

悟天はその純粋さを全面に出しらいはに抱きつく。この光景は、花火大会にらいはが四葉に抱きついた時のことを想起させる。

 

らいは「あ〜…!!もう悟天君可愛い!!!!お持ち帰りしたいくらい!!」

 

チチ「ちょっと待つだ!いくらなんでも悟天ちゃんにはまだ早いべ!!」

 

ここで我に帰ったチチが制止を促すが。

 

らいは「えー?じゃあ数年後、悟天君がもっと大きくなってからでもダメですか?」

 

チチ「あっ、それならいいだぞ」

 

もう少し粘れよと誰かからツッコミを受けたチチ。自分の息子を安売りしすぎではないだろうか…?

 

風太郎「らいは…!?血迷ったか!?」

 

勇也「ま、待ってくれ…!父ちゃんを1人にしないでくれぇ……!!」

 

そして血涙を流している者が2人。

 

二乃「らいはちゃん…。相手の親に約束を取り付けたわよ…?」

 

三玖「策士…………」

 

五月「お、恐ろしい子です…!」

 

トランクス「………なあ悟天。お前…」

 

悟天「ん?なーにトランクス君?このお饅頭はあげないよ?」

 

トランクス「いや、別に饅頭はいらねえ(悟飯さんがモテてるって度々言ってるけど、お前もじゃね?)」

 

トランクスは心にこそそう思ったが、口には出さないでおいた。

 

そんな様子を見て、Z戦士達は悟天も幼いのに隅に置けないと思うのであった。ちなみに悟飯はよく分かっていない。

 

ということで、少年の部に出場する子はここで一旦お別れとなった。悟天とトランクスなら大人に誘拐されそうになってもぶん殴って撃退することができるので安心である。

 

クリリン「いや〜…。この大会は本当に久しぶりだなぁ…」

 

クリリンがそうぼやくと、突然辺りが騒がしくなってきた。

 

「おい!ミスター・サタンが到着したってよ!!」

 

「マジかよ!?行こうぜ!!」

 

 

地球の英雄(ということにされている)Mr.サタンの顔を拝もうとするファンが続出。Mr.サタンの周りはあっという間に人で埋め尽くされてしまった。

 

サタン「うおおおッ!!みんなの英雄Mr.サタン様の到着だ〜!!!私を越えるのは誰だ〜!!!」

 

その雄叫びを聞こえると、連動するように一般大衆が歓声をあげる。それに引き続いてシャッターを切る音が絶えない。インタビューで今日の調子はどうだと聞かれたら、『120%の確率で勝利するかな!』と自信満々に答えていた。一方で隣にいたビーデルは、マスコミを煙たそうにしている。

 

 

クリリン「すげぇ人気者だな……」

 

ヤムチャ「あんなのでも世界チャンピオンなんだよな……」

 

悟飯「うわぁ……。カメラ多いな……」

 

そんな悟飯の一言に気づいたようで…。

 

「あ、あれ!?」

 

「カメラが一斉に壊れた!?」

 

「なんで〜!!!?」

 

ちなみにカメラというのはスマホも含まれている。全て壊されたわけではないのだが、カメラを出すとその瞬間壊されるということで、カメラやスマホを取り出さない人が続出したそうだ。

 

ちなみに、カメラを破壊した犯人はピッコロである。弟子の為にカメラを壊してあげるとは流石である。ただしカメラを壊す行為は普通に犯罪なので、良い子のみんなは真似しないでいただきたいところだ。

 

 

 

そして、天下一武道会の予選に入るわけだが……。

 

「それでは予選についてご説明します。毎度のごとく、パンチマシーンで数値で高い方から順に16人選出致します。ですがチャンピオンであるMr.サタンは無条件での出場となりますので、実質15人になりますね」

 

係員が簡潔にそう説明した。以前の予選は本番と同じように戦って決めていたのだが、当時よりも人数が増えた為に、スムーズに予選を終わらせる為にこのような形になったようだ。

 

そしてパンチマシーンの使い方を説明するということで、Mr.サタンが選手達の前に堂々と出てくる。羽織っていたマントをその辺に投げ捨てて、思いっきりマシンにパンチを決めると……。

 

「137点です!!これまた素晴らしい点数ですね!」

 

ちなみに、パンチマシンの最高記録は139点で、これもまたMr.サタンが叩き出した記録らしい。この点数を見た出場者達は、『今年もサタンの優勝か』とぼやいていた。つまり、一般人にとってはこの記録は相当なものなのだろう。

 

「それでは、出場者の皆さんは順番にこのマシンに殴り込んで下さい!思いっきりやってくださいね!!」

 

それを合図に悟飯達も選手列に並ぶ。そこである違和感を五つ子達は感じた。

 

二乃「あれ?四葉?そっちは選手列よ?観客席はこっちだけど?」

 

四葉「あっ!そ、それは………」

 

一花「あれ?二乃見てなかったの?さっき四葉は受付に名前を書いてたよ?」

 

二乃「はぁ!?」

 

三玖「えっ?四葉も出場するの?」

 

五月「ええ!?いくら運動ができる四葉でも無茶じゃないですか!?」

 

四葉「あはは…。本当はサプライズにしたかったんだけど……」

 

零奈「四葉、無理だけは絶対にしないで下さいね」

 

四葉「うん!私頑張るよ!」

 

四葉が出場することに皆驚いている様子である。

 

風太郎「四葉」

 

四葉「はい!なんでしょうか上杉さん!」

 

風太郎「頑張れよ」

 

そのなんてことのない一言のエール。四葉は母親や姉妹に応援されるのと同じくらいに、その言葉が嬉しかった。

 

四葉「はい!!精一杯頑張ります!!」

 

風太郎「……!お、おう……」

 

クリリン「えっ?君も出場するのか?流石にやめた方がいいんじゃないか?」

 

ピッコロ「腑抜けたなクリリン。そいつは気を抑えているだけだ」

 

クリリン「うぇ!?いつの間に気を覚えたんだよ!?」

 

四葉「孫さんにみっちり稽古をつけてもらったので!!」

 

クリリン「ちょっと待て?お前あの3人に迫られてるのにこの子とワンツーマンでやってたわけ?」

 

悟飯「えっ?は、はい…」

 

クリリン「お前馬鹿か!?まさか五つ子全員攻略するつもりか!!?」

 

悟飯「それは断じてないです……」

 

クリリンの気迫に押されつつも、しっかりと否定をする悟飯。そんな話をしていると、悟飯の肩が叩かれる。振り返ってみると、そこにはビーデルがいた。

 

ビーデル「やっほー!悟飯君!」

 

悟飯「ビーデルさん!さっきマスコミが沢山いたけど大丈夫だったの?」

 

ビーデル「ええ。こっそり抜け出してきたわ。それにしてもちゃんと出場してくれて良かったわぁ…。特に、四葉!あなたも出場してくれるとは思わなかったわ!」

 

四葉「あはは……。ま、まあ…」

 

クリリン「………悟飯。まさかこの子も…?」

 

悟飯「だから違いますって」

 

何が違うのかはよく分からないが、多分何も違わないだろう。そして雑談をしていると、自分達の番が来た。

 

クリリン「18号!ちゃんと加減しろよ!!」

 

18号「分かってるって」

 

18号が出てくると、周りの選手(特に男)の視線を釘付けにした。あんな華奢で美人な女性が出場するとなれば、それは目立つのも必然というものだろう。18号は面倒くさそうにパンチマシンを殴ると……。

 

「な、774!!!?」

 

通常ではあり得ない数値を叩き出してしまったため、係員を含めて心底驚かれている。Mr.サタンでさえ139を超えた数値を出したことはないのだ。一般人からしたらそれは驚かれるに決まっている。

 

クリリン「じゅ、18号!!」

 

流石に18号もまずいと思ったのか、今度は慎重にパンチをする。

 

「に、203点……」

 

続いてクリリンが……。

 

「ひゃ、192点……」

 

続いて悟空が……。

 

「ひゃ、186点………」

 

続いてピッコロ……。

 

「に、210点…………」

 

次々にMr.サタンをあっさりと越える数値を出てくる出てくる……。係員は故障かと点検を始めようとしたが……。

 

ベジータ「退いてろ」

 

 

ドグォォオオオオオオオン!!!

 

 

なんと、ベジータがパンチマシンを破壊してしまった。パンチマシンは吹き飛んで粉砕されてしまった。これを見て自信を無くした選手が大量にいたとか………。

 

悟飯「あちゃ〜……。ベジータさん何やってるの………」

 

四葉「私達の番が遠のいちゃいましたね………」

 

ビーデル「あれ、悟飯君の仲間達よね?何者なの、あなた達…?」

 

悟飯「ははは………。そこは聞かないでほしいかな………」

 

しばらくして新たなパンチマシンが用意された。すると係員が試しにパンチをしてみると50という数値が出てきた。それを何回か繰り返して新しく用意された機器は壊れていないことが確認されると、すぐに予選が再開された。

 

悟飯「四葉さん…!頑張ってね!」

 

四葉「はーい!お任せを!!」

 

「えっ?なんだ?今回美少女多くない?」

 

「さっきの203点を出した女の人並みに可愛いぞおい」

 

「見た感じビーデルさんと同い年かな?」

 

四葉は誰もが認める美少女である。そんな美少女がこんかむさ苦しい大会に出ているということで、注目を集めている。当の四葉は気にすることなくパンチマシンに殴り込む。

 

四葉「せーのッ!!!」

 

カカーン‼︎

 

パンチマシンの計測終了を知らせるベルが鳴り、係員が確認すると……。

 

「よ、428点ッ!?また故障か!?」

 

四葉「あっ…………」

 

ビーデル「うっそ……。あんたも…?」

 

まさかの点数で自己紹介をしてくるスタイル。というのは冗談で、恐らく加減をミスってしまったのだろう。

 

四葉「も、もう一回やりますね!」

 

四葉は一般人時代の感覚を思い出し、それよりも強い力を込めてパンチをすることにした。すると………。

 

「158…?ま、まあこれくらいなら……?」

 

一応加減はできたらしいが、それでもMr.サタンの数値を越えてきている。

 

悟飯「よーし、次は僕だな………」

 

悟飯はこれまでの高校生活での教訓を活かす時が来た。高校1年生の頃は、加減がよく分からずにやらかしまくっていたものだが、2年も一般人に混じって生活すれば流石に覚えるというもの。悟飯はある程度加減してパンチを決める……。

 

「に、258点です」

 

悟飯「あれ!?」

 

しかし、悟飯は度重なる戦闘でその強さが増していた。そのことを考慮せずに殴った為にこの様である。

 

ちなみにもう一度殴ったら140という数値が出た。いい感じに加減ができてはいるのだが、それでもMr.サタンの数値を越えていた。ちなみにビーデルの数値は139点と、Mr.サタンの最高記録に並んだ。

 

この結果ならば当然悟飯達は全員予選を突破した。さて、天下一武道会は一体どんな戦いを披露してくれるのだろうか……?

 




 一応再掲です。原作と丸被りする部分は基本的にカットするか、地の文メインでサラッと流すイメージです。台詞が少々変わる場合もあるのでご留意を。現段階では77話まで書き溜めができているのですが、ここで注意点を……。今回のブウ編は残酷な描写タグの効果が存分に発揮されると思って下さい。文字だけとはいえ、結構シリアスになると思います。下手したら原作よりもシリアスになるんじゃないかな……?
 ちなみに、書き溜めができているからといって一気に投稿することはないと思います。というのも、もうすぐ忙しくなって書く時間を確保できなくなる可能性が高いんですよね。と言っても2週間程度だとは思うんですがね。安定供給をする為に敢えて今までのペースを保ったまま投稿させていただきます。ご了承下さい。


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第74話 乙女の逆襲

 前回のあらすじ…。
 とうとう天下一武道会がやってきた。例年なら5月の上旬に開催されるのだが、クウラ襲来の件もあった為、延期になっていたのだ。
 悟空が23時間限定とはいえ帰還し、みんなは大喜び。ベジータは悟空と決着をつけられることを楽しみにしていた。



四葉「いや〜…。なかなか加減が難しいですよね。加減し過ぎると予選落ちちゃいますし………」

 

悟飯「うん。多分そういうことなんだろうなぁ……」

 

一般人レベルまで加減することはあっても、中途半端に加減することをしたことがなかったから、パンチマシンに関しては加減が難しかったのだろう。

 

悟空「おっ!きたきた!ちびっ子達の試合が始まるぞ〜!!」

 

天下一武道会の少年の部が始まった。第一試合はトランクスとイダーサという子の勝負。イダーサの方が年齢が上であった為、こちらが勝つと予想されていたが、何やら会話をした後にトランクスが蹴って、殴って、あっさりKOを決めてしまった。

 

アナウンサー「と、トランクス君の勝利です!!」

 

ビーデル「す、凄いわねあの子……」

 

四葉「流石トランクス君ですね!」

 

そして何試合か行われた後、今度は悟天の番が来た。悟天は大衆を前に緊張しているようだったが、キチンと礼をした後、試合を開始する。相手はイコーゼと言って、先程のイダーサという少年の弟のようだ。イコーゼも14歳という歳の割には腕が良かったのだろうが相手が悪い。悟天にはどんな攻撃も効かずにあっさり負けてしまった。

 

ビーデル「すごっ…………」

 

四葉「流石悟天君ですね!」

 

ビーデル以外は当然の結果だと分かっていた為、特に驚くような素振りは見せなかった。しかし、その様子がビーデルに違和感を抱かせた。

 

 

その後、泣く子が出たり、じゃれあいの末に自爆したりなど、少年の部ならではの戦いが見られたが、とうとう少年の部の決勝戦が開催される……。

 

クリリン「とうとう悟天とトランクスだぞ…!!」

 

四葉「どっちが勝つんですかね?」

 

ベジータ「トランクスに決まっているだろう。なんたって俺の息子なのだからな」

 

そんなことを言っていると、いつの間にか悟天とトランクスの戦いが始まった。互いに高速戦闘を繰り広げ、譲らない状況である。

 

ビーデル「……………」

 

ビーデルはそんなちびっこ2人の戦いに驚いて目を見開いている。

 

四葉「おお!いけいけ!そこだ!」

 

四葉は普通に悟天とトランクスの両方を応援している。

 

悟空「へぇ〜!やるなあいつら!」

 

クリリン「流石はベジータと悟空の息子なだけはあるよな」

 

 

 

二乃「うわっ!はやっ!見えないんですけど!!」

 

五月「悟天君もトランクス君も流石ですね………」

 

らいは「いけー!どっちも頑張れ〜!!」

 

風太郎「あれだけ動けばあんだけ食うのも納得だな…………」

 

零奈「あっ、今トランクス君の攻撃が微かに当たりましたね」

 

三玖「お母さんは見えるんだ………」

 

 

 

しばらく互いに譲らない展開が続いたが、一旦戦いがストップする。するとトランクスが両手に気を集中させて、気功波を悟天に向けて撃ち込んだ。悟天は当然これを避けるが、トランクスは観客に当たる直前で一気に上昇させた為、観客は無事だ。

 

クリリン「ひぇ……。ヒヤッとさせるなよ……」

 

悟空「ちびトランクスやるじゃねえか。しっかり気のコントロールができてんぞ」

 

続いて、悟天もかめはめ波をトランクスに向けて放つ。今度は『かめかめ波』と言い間違えることはなく、しっかりと『かめはめ波』と叫んで放つ。トランクスも当然これを避ける。そしてかめはめ波は選手が待機している建物の屋根に当たりそうになるが、悟天がかめはめ波を上向に変えることによってそれを防いだ。

 

悟空「へぇ!悟天もコントロールできてんだな!」

 

 

 

トランクス「あれ!?お前いつの間にそんなに器用にコントロールできるようになったんだ!?」

 

悟天「兄ちゃんとたっぷり修行したからね!!」

 

トランクス「くそ…!あまり遊んでいる場合じゃないかもな…!!」

 

 

 

今度はトランクスと悟天がお互いに接近し、取っ組み合う。そして悟天は力負けしてトランクスに投げ飛ばされる。しかし悟天は舞空術を利用して空中で止まるが、トランクスの姿が見えない。

 

トランクスを探していると、後ろから突然現れたトランクスに全身を掴まれる。トランクスは全身に力を込めて悟天を苦しめる。このままでは悟天は死んでしまうので、降参させようというトランクスの作戦なのだが……。

 

ボォオオオオッ!!!

 

超悟天「……!!」

 

トランクス「うわっ!!」

 

超サイヤ人禁止ルールを破って、悟天はトランクスの拘束を力づくで解いた。

 

2人は着地をして、悟天は超化を解く。

 

トランクス「おい悟天!超サイヤ人は禁止のはずだろ!?汚ねえぞ!!」

 

悟天「ごめんごめん…。つい…」

 

 

 

悟空「ひぇ…!あいつあの年で超サイヤ人になれるのか…!!」

 

ベジータ「汚いぞカカロット!超サイヤ人に変身しやがって!」

 

悟空「いや、オラに言われても……」

 

 

 

これには流石の悟空もびっくりしている様子である。一瞬とはいえ、超サイヤ人姿の悟天を見てどこかで見た気がすると囁かれていたが、当のちびっこ2人は気にすることなく試合を続ける。

 

トランクスは先程から左腕を使わずに右手だけで戦っている。悟天は空高くに飛び上がると、『突撃!!』と叫んでトランクス目掛けて急降下する。トランクスは悟天に接触する直前で避けて悟天を自爆させようと試みるが、悟天は手に気を集中させて地面を両手で叩くことによって、トランクスのいる方向に跳ねる。このままではトランクスに悟天の特攻がヒットするのだが…。

 

ボォオオオオッ!!!

 

超トランクス「くそ!」

 

トランクスも禁止ルールを破って超サイヤ人に変身し、悟天の突撃を避けた。さらに追撃で左手から気功波を放って悟天に攻撃する。

 

悟天「うわわっ!!!」

 

悟天はブレーキをするも、観客席に足をつけてしまった為、場外負けとなってトランクスの勝利となった。

 

呆気ない終わり方だったものの、想像を遥かに超えた素晴らしい試合であった為、観客席から大量の歓声が上がった。

 

悟天「トランクス君も超サイヤ人になった…!おまけに左手使ってるし!」

 

トランクス「お前も超サイヤ人になったからおあいこな!あと左手は直接殴ってないからセーフ。男なら文句言いっこなしだぜ!!」

 

それでも文句を垂れていた悟天だったが、トランクスがおもちゃをあげると言うと喜んで引き下がった。やはり狡賢くなってもまだ子供である。

 

悟空「ちびトランクスも超サイヤ人になれんのか!?」

 

ベジータ「はっはっはっ!どうだカカロット!どうやらトランクスの方が血統が良かったらしいな!」

 

ベジータは嬉しそうに悟空の肩を叩きながらそう言う。息子の戦績に喜ぶとは、流石父親の鏡である。

 

 

二乃「あら…。最後は呆気ない終わり方だったわね……」

 

一花「でも試合は凄かったね〜。殆ど見えなかったけど…………」

 

らいは「あちゃー…。悟天君負けちゃったかぁ………」

 

 

 

続いて、優勝者特典として、チャンピオンであるMr.サタンとの試合と戦えるという試合があるのだが……。

 

クリリン「予選も終わったことだし、そろそろ戻るか?」

 

悟空「そうだな」

 

これからMr.サタンの戦いが披露されるというのに、悟空達は何の躊躇もなくその場を去ろうとする。

 

ビーデル「ちょ、ちょっと!これからあの子とMr.サタンとの試合があるのよ!?見ていかないの!?」

 

悟飯「そ、そうだよね!もしかしたらいい勝負をするかもしれないし!」

 

四葉「私も俄然興味があります!」

 

悟空「そっか。じゃあまた後でな、悟飯」

 

ビーデル「えっ………?」

 

悟空達は当然のようにその場を去った。

 

ビーデル「なんかあの人達変わってるわね。チャンピオンの試合を見たがらないなんてさ」

 

悟飯「あはは…。そ、そうだね………」

 

四葉「おおお!ついにMr.サタンの試合をこの目で…!!!」

 

四葉は期待を胸にトランクス対Mr.サタンの試合を見ることに専念するが…。

 

サタン「がはっ!!!」

 

四葉「………あれ?」

 

あっさりと叩き飛ばされたサタンを見て唖然してしまった。あまりにもあっさりしすぎた勝負だった。

 

ビーデル「ぱ、パパ…!?大丈夫なの!?」

 

 

サタン「あはは!強いな僕!!おじさん負けちゃったよ〜!!」

 

しかし、サタンは思いっきり壁に叩きつけられたというのに、何事もなかったのように起き上がる。サタンのその行動は、子供にわざと勝たせてあげたように捉えられたようで、観客席から関心の声が上がる。

 

一方で、トランクスと四葉は、サタンが強いのか弱いのかよく分からない謎の人物として記憶に残った。

 

 

 

 

 

そして、とうとう大人の部が開催されるかと思いきや、どうやら30分休憩を挟むようである。そこで悟飯達は食事を取ることになるのだが、悟空、悟飯、ベジータの食欲は凄まじいものだった。ビーデルは当然引いてるし、四葉は五月で慣れていると思っていたがそれは甘かった。

 

クリリンやピッコロは最早慣れた様子で見守っている。

 

クリリン「なあ悟空。死人なのに飯食う必要があるのか?」

 

悟空「別に食う必要はねえんだけど、やっぱりこっちの方がメシ美味えや」

 

悟飯「あれ?ビーデルさんと四葉さんは食べないの?ダイエット中?」

 

ビーデルと四葉はお互いに顔を向き合わせる。取り敢えず考えていることは同じだということは顔を見て大体察せた。

 

クリリン「むしろお前らが食べすぎなんだよ。まったく、サイヤ人の胃袋ってのはどうなってんのかね………」

 

二乃「あら。そのサイヤ人に負けない胃袋を持つ強者がこっちにはいるわよ?」

 

クリリン「えっ?いやいや、流石に冗談きつ…………い?」

 

 

 

 

 

五月「こ、こんなに大きなお肉食べてもいいのでしょうか!!?」

 

悟飯「いいんだよ。大会関係者は好きなだけ食べていいんだって」

 

五月「あ〜……!!!孫君大好きです!!!」

 

と大胆に告白しつつも、五月の視線は食べ物に釘付けであった。

 

クリリン「す、すげぇ……。実はあの子もサイヤ人なんじゃないか……?」

 

ビーデル「………あの子もいつもあんなに食べてるの?」

 

四葉「はい…」

 

ビーデル「よく太らないわね……。その体質羨ましいんだけど………」

 

 

 

風太郎「なあ、これ全部無料なんだよな!?タッパーに入れて持ち帰っても……「やめて下さい!!このくだり何回目ですか!!?」」

 

いつものようにハイテンションになる風太郎に食事に夢中だった五月が思わずツッコんだ。今日も地球は平和である。

 

 

 

 

 

 

 

悟飯達は食事を済ませると、トーナメントの位置を決めるくじ引きをする為に集合場所に向かうが、その最中に謎の二人組に出会した。片方は小さめだが、紫色の肌をし、黄色いピアスのようなものを両耳に付けている少年。もう片方は、同じようなピアスをつけた赤色の肌の初老の男性と言ったところだろうか?ちなみに少年の方は浮いている為、この時点で只者ではないことがよく分かる。

 

「こんにちは。あなたが孫悟空さんですね?」

 

悟空「何でオラの名前を……?」

 

「噂を聞きましてね。一度あなたとお手合わせをしてみたいと思っていたんです。勿論、勝てる自信などありませんが………」

 

少年はそう言うと、悟空に握手を求めた。悟空は快くそれに応じた。

 

「なるほど。噂通りの良い魂をお持ちだ」

 

悟空「……?」

 

悟空は目の前の少年の言っていることがいまいち理解できなかった。

 

「あっ。申し遅れました。私は『シン』と申します。ではまた後ほどお会いしましょう」

 

悟空「おう!またな!」

 

一風変わった少年と初老の男性は集合場所に向かった。

 

悟空達も集合場所に向かうと、くじ引きがちょうど始まったのだが……。

 

 

ベジータ「………!!あいつ……」

 

悟空「どうしたんだ、ベジータ?」

 

ベジータはある方向を凝視していた。悟空はそれが気になっていたようで、同じ方向に目をやると……。

 

悟空「ひぇ!!あいつオラにそっくりだなぁ!!」

 

クリリン「お、おいおい……!?まさかアイツもサイヤ人なんじゃ……?」

 

ベジータ「ああ。ヤツもサイヤ人だぞ」

 

ピッコロ「何?まだ生き残りがいたのか?」

 

悟飯「………(あの人か)」

 

悟飯とベジータはそのサイヤ人と戦ったことがあるし、そのサイヤ人の正体を知っていた為、特に警戒することはなかったが、ピッコロとクリリンは結構警戒している。

 

 

バーダック「……カカロットに孫に王子も出るのか……。あいつらは連れてこなくて正解だったな………」

 

バーダックも向こうの視線に気づいたようだ。本人は気付いていなかったが、ひそかに口角が上がっていた。

 

 

四葉「むむっ……」

 

ビーデル「どうしたの?」

 

四葉「なんか、あの人達感じが悪くありませんか?」

 

悟空「ああ、おめぇよく気付いたな。オラもあいつらはなんか変だと思ってた」

 

クリリン「なんか気合い入れすぎじゃねえか?」

 

四葉が違和感に気づいた二人組というのが、何故か2人とも禿げている。これだけなら不審ではないのだが、目にやたらと力が入っており、頭から血管が浮き出ている。そして額に謎の『M』という字。四葉にとってはこれが不気味で仕方がなかった。

 

 

 

だが気にしたところで何も変わるわけではない。くじ引きを順調にしていった結果………。

 

 

1:クリリン

 

2:プンター

 

 

3:シン

 

4:マジュニア(ピッコロ)

 

 

5:ビーデル

 

6:スポポビッチ

 

 

7:中野四葉

 

8:ヤムー

 

 

9:キビト

 

10:グレートサイヤマン(悟飯)

 

 

11:孫悟空

 

12:ベジータ

 

 

13:18号

 

14:Mr.サタン

 

 

15:マイティマスク

 

16:バーダック

 

 

という順番になった。ちなみにこれはトーナメント形式であり、1番と2番が戦い、3と4、5と6・・・というようにな形で試合が行われることになっている。

 

 

まず第一試合のクリリンvsプンター。プンターは巨体だが素早い移動が可能だった。しかしそれは一般人基準の話であり、地球人の中では最強のクリリンには成す術もなかった。プンターがクリリンに先手を譲ると、クリリンは遠慮なく腹部を殴り、頬を何回かビンタした上で蹴り飛ばして場外に持っていった。

 

アナウンサー「第一試合はクリリン選手の勝利です!!」

 

クリリンは当然だと言わんばかりの笑みを浮かべて選手の控室に入っていく。

 

四葉「凄かったですよクリリンさん!!孫さんが言ってた『地球人最強』という評価は本物ですね!」

 

クリリン「いや〜、君みたいな可愛い子にそんなに褒められると照れちゃうなぁ………。あっ……」

 

クリリンは四葉に褒められて鼻の下を伸ばしかけるが、途中から殺気が向けられているに気づいたようで……。

 

クリリン「まあ18号の方が断然美人で可愛いけどなっ!!!!」

 

クリリンは必死にそう言うが、18号から放たれる殺気は止むことはない。ただし先程よりは弱まっている。

 

 

続いて第二試合。謎の少年シンとピッコロによる対決だったが、何故かピッコロが棄権をした。何故そうしたのかと聞かれたピッコロは……。

 

ピッコロ「次元が違いすぎる……」

 

意味深にそう言った。クリリンは次の試合で当たるのにと嘆き、悟空はシンという少年がどれほどの強さを持ち合わせているのか興味を持ち始めた。

 

続いて第三試合。Mr.サタンに続いて優勝候補とされているビーデルvs四葉曰く不気味な人のスポポビッチの対決である。

 

ビーデルが出場するということで、観客は大盛り上がりである。

 

ビーデル「やぁッ!!!」

 

前半はビーデルが圧倒的に優勢だった。ビーデルが次々と繰り出す技に、スポポビッチは手も足も出ないようすであった。ビーデルはそのままの調子で場外に持ち込もうとするが……。

 

 

スポポビッチ「……」ニヤッ

 

不敵な笑みを浮かべている。これまでの戦況を見るに、ビーデルが圧倒的に優勢であるはずだ。だが、相手は余裕そうである。

 

悟空「……あいつ、なんか変だぞ。試合を棄権した方がいい」

 

異常に真っ先に気付いたのは悟空。相手が正気でないことを察し、ビーデルに棄権させるように促す。

 

悟飯「いや、でもビーデルさんの方が優勢ですよ?」

 

四葉「私もそう見えますけど……」

 

悟空「今はな。だがあいつは変だ。なんか違う……」

 

 

そして試合は続く。

 

ドカッッ!!!

 

ビーデル「がっ…!!!」

 

ビーデルはここで初めてスポポビッチの攻撃を受けてしまう。ビーデルは前半で飛ばしすぎた為か、何度かスポポビッチの攻撃を許してしまう。このままではまずいと思ったビーデルは、舞空術を使って空中に避難した。

 

クリリン「えっ!?あの子舞空術を使えんのか!?」

 

悟飯「彼女には僕が教えたんですよ」

 

四葉「ちなみに私も飛べますよ!」

 

クリリン「なんだ?家庭教師の次は舞空術の教師か?」

 

 

ビーデル「はぁ……はぁ………」

 

ビーデルはしばらく空中で休憩することにした。ビーデルが空を飛んでいるということで、観客は困惑している様子だったが、アナウンサーはそれが鶴仙流の舞空術であるとすぐに分かった。

 

スポポビッチ「ふひひ…!」

 

ドシューン!

 

ビーデル「!?」

 

なんと、スポポビッチも空を飛んだのだ。そしてビーデルは驚いている隙にスポポビッチに武舞台に叩き落とされた。

 

ビーデル「がはっ…!!」

 

 

悟飯「ま、まずい…!!」

 

四葉「あわわっ…!一気にピンチですよ!!」

 

 

スポポビッチ「でりゃー!!!」

 

ドゴォン!!

 

ビーデル「あっぶな………」

 

重力を利用してビーデルに膝蹴りを仕掛けたスポポビッチだったが、これをギリギリで避ける。そしてビーデルはスポポビッチの頭部に蹴りを食らわせたのだが………。

 

 

ボキッ!!

 

ビーデル「えっ…?嘘…!!」

 

なんと、スポポビッチの首の骨を折ってしまったのだ…!!首の骨が折れたということは、当然相手は死亡…。相手選手を殺してしまった場合は失格となる。

 

ビーデルが殺人を犯してしまったとして、観客から悲鳴や困惑の声が聞こえる中、不自然な方向を向くスポポビッチは何事もなかったかのように立ち上がり………。

 

スポポビッチ「………」ゴキッ

 

頭を元の位置に戻してきた。

 

アナウンサー「お、おっと…?スポポビッチ選手は生きています!!試合は続行です!!しかし今のは一体………」

 

ドゴォッ!!!

 

ビーデル「かはっ…!!!」

 

安心したのも束の間、スポポビッチの拳が容赦なくビーデルの腹部に突き刺さる。この攻撃には流石に応えたのか、ビーデルはお腹を抑えて咳き込みながら後退りをする。

 

 

二乃「ちょちょちょ!!あいつ乙女のお腹を容赦なく殴ったわよ!?あり得ないんですけど!?」

 

一花「確かに酷いけど、これってそういう競技なのかな……?」

 

 

だが、相手は度を越えた狂人であった。

 

ドカッッ!!!!

 

ビーデル「ぐっ……!!!」

 

今度は容赦なくビーデルの顔を殴りつける。

 

悟飯「うわっ…!!!」

 

四葉「な、なんてことを…!!」

 

クリリン「お、おい!!そろそろヤバいんじゃないか!?」

 

悟飯「ビーデルさん!今すぐ降参して!!」

 

 

ビーデル「いやよ…!誰が…!!」

 

悟飯達はスポポビッチの異常さに気がついてビーデルに説得するも、チャンピオンの娘というプライドがあるからだろうか、一向に降参する気配がなかった。

 

ガッ…!!!

 

ビーデル「きゃ…!!!」

 

ビーデルはスポポビッチの力強い突っ張りに押し負けて倒れてしまう。そしてスポポビッチは…………

 

ダッ…!!!!

 

ビーデル「ぎゃぁ…!あぁあぁぁああああッ!!!!!!」

 

なんと、足でビーデルの頭を容赦なく踏み潰そうとしている!!

 

四葉「なっ…!!これはいくらなんでも…!!!!」

 

悟飯「や、やめろお前!!殺したら失格になるんだぞ!!!」

 

スポポビッチ「………」

 

しかし、スポポビッチはビーデルを見下しながら痛めつけることそのものを楽しんでいるようだった。天下一武道会本来の意義を無視した行為である。

 

 

二乃「ちょ…!!あれ反則でしょ!!」

 

一花「なんで試合は中断されないの!?」

 

ヤムチャ「天下一武道会ってのは、基本的に相手が戦闘不能になるか、場外に落とされるかしないと試合は終わらないんだ……」

 

三玖「そんな…!あのままじゃ…!!」

 

五月「ひっ…!!」

 

五月は最早スポポビッチの行動に恐怖している。あんな残酷なことを平然とやってのける彼に五月は心の底から恐怖していた。

 

流石にこれでは試合どころではない。ビーデルの惨状に観客達が悲鳴をあげており、軽くパニック状態になっている。ほとんどのものが試合をやめるように叫んでいた。

 

悟飯「や、やめろ…!!やめろ…!!!!」

 

そして正義感の強い悟飯は、この行動を見過ごせなかった。怒りによって無意識に気を解放していき、その余波によってバンダナが取れてしまったが、それに気付かなかった。

 

悟飯「くそ…!!許さないぞ…!!」

 

悟空「やめろ悟飯!!落ち着け!!」

 

悟飯があと一歩で乱入しそうになったその時……。

 

ヤムー「その辺にしておけ!本来の目的を忘れたか!!」

 

ヤムーと呼ばれた選手がスポポビッチにそう言うと、弱ったビーデルを無造作に掴んでそのまま場外に投げ飛ばした。

 

アナウンサー「す、スポポビッチ選手の勝利です…。誰か!ビーデル選手を救護室に!!」

 

ビーデルの傷は放っておくと大事になりかねないレベルだったので、急いでタンカーが用意されてビーデルが運ばれる。

 

 

二乃「ねえ、ちょっとあれ大丈夫なの!?」

 

一花「救護室に運ばれたけど……」

 

三玖「………無事……じゃないよね……」

 

らいは「ふぇ………」

 

らいははあまりの試合の惨状に今にも泣き出しそうになっている。

 

風太郎「らいは。大丈夫だ。きっと悟飯がなんとかしてくれるさ」

 

勇也「ああ。悟飯君に任せれば、あのお嬢ちゃんもきっと無事だぜ」

 

勇也と風太郎はそんならいはを慰める。

 

五月「……私、彼に抗議してきます!!」

 

二乃「や、やめなさい五月!!あれは流石にヤバいわ!!何されるか分からないわよ!?」

 

五月「ですが…!!」

 

 

 

 

悟飯「そうだ…!誰か仙豆を持っていませんか!?!?」

 

ピッコロ「俺が持っているぞ」

 

悟飯「すみません…!それ一つ下さい!!」

 

ピッコロから仙豆を受け取った悟飯は走って救護室に向かった。ビーデルに仙豆を食べさせてあげるのだろう。

 

アナウンサー「さて、ハプニングはありましたが、次は中野四葉選手対ヤムー選手です!お二人は武舞台に上がってください!!」

 

ヤムーは無表情で、四葉は怒りを込めてヤムーを睨みつけていた。

 

クリリン「待て…!ヤムーってやつもスポポビッチってやつに似たやばい雰囲気を感じるぞ!棄権させた方がいいんじゃないか!?」

 

悟空「………かもな。だがあいつはまだ理性的だから大丈夫なんじゃねえか?」

 

クリリン「だ、だけど…………」

 

 

アナウンサー「それでは、試合を開始して下さい!!」

 

 

四葉「………あなた、さっきのスポポビッチさんのお仲間ですか?」

 

ヤムー「ああ。そうだが?」

 

四葉「…何故さっきの試合をもっと早く止めなかったんですか?」

 

ヤムー「別にあの女がどうなろうが知ったこっちゃない。だが、俺達はある目的の為にこの大会に出場しているんだ。無駄な時間はかけてられねえ」

 

四葉「……無駄な、時間……?」

 

四葉は知っている。ビーデルと共に修行をしていた四葉は、いつの間にかビーデルと仲良くなっていた。そして、ビーデルが一生懸命頑張っているのを間近で見てきた。そしてさっきの試合。乙女の顔を気にすることなく必要以上に傷付け、彼女の心をズタズタにした。四葉はそれが許せずにいたし、それを止めなかったヤムーも許せなかった。

 

ヤムー「お前もとっとと片付けてやる。スポポビッチみたいに遊んでやらないからな」

 

四葉「そうですか……。本当はご本人にお返しをしたいのですが………」

 

 

 

二乃「あれ?四葉がやる気になってない…?」

 

三玖「……もしかして、さっきの試合を見て怒ってる…?」

 

五月「あの人はスポポビッチって人と話してましたもんね…。もしや仲間…!?」

 

零奈「………四葉」

 

 

 

四葉「私はあなたも許せません。この試合に勝って、スポポビッチさんもボコボコにしてあげます………」

 

四葉は静かにそう言うと、戦闘態勢に入った。

 

ヤムー「俺を倒す?減らず口を…。まあいい。少しは現実ってものを見せてやるよ」

 

ヤムーも多少はやる気になったようで、互いに出方を伺う。

 

ヤムー「……!!!」

 

まずはヤムーが動いた。常人では目で追うことが不可能に近い速度で四葉に接近し、懐に回って腹部に拳を突きつけようとする。

 

 

ガッ…!!!

 

四葉「…………」

 

ヤムー「ほう………」

 

しかし、そんなヤムーの攻撃を四葉は片手であっさりと受け止めた。

 

ヤムー「さっきの女よりは少しはできるようだな。ならこっちも少し本気を出すとしよう…!!」

 

ズバババッ!!っとヤムーの拳が高速かつ連続で四葉に向けて繰り出されるが、それを四葉は両手を駆使してこれまた高速で阻止する。

 

 

ドゴォオッ!!!!

 

ヤムー「ぐぅ…!!!」

 

そして、四葉の拳撃がヤムーの腹部に命中した。

 

四葉「やぁッ!!!!」

 

ドカッッ!!!!

 

ヤムー「ばっ…!!!」

 

そして、攻撃を受けて怯んでいるヤムーに追い討ちをかけるように回し蹴りを喰らわせた。

 

ヤムー「このガキ…ギャ…!!!」

 

ヤムーは一方的に攻撃されていることに怒りを感じだが、そんなことは知ったことかと言わんばかりに四葉のビンタが容赦なく放たれる。

 

四葉「ビーデルさんの試合を無駄な時間だと言ったこと、後悔させてあげますよ…!!!」

 

ドガガガガガガッッ!!!!!

 

四葉の拳撃が連続で命中する凄まじい音が武舞台中に響く。

 

アナウンサー「凄い!!これは凄い!!華奢な見た目からは想像もできない強さです!!四葉選手の攻撃が次々と流れるようにヤムー選手に命中します!!」

 

「あの子すげぇ…!!」

 

「可愛い上に強いとか最高かよ!!」

 

「頑張れ!四葉〜!!」

 

 

四葉!!四葉!!四葉!!

 

そんな四葉を応援する声が武舞台にいる観客達から届けられる。普段の四葉ならこの状況で照れる仕草をしたのであろうが、今の彼女は一味違う。今の彼女は友人であるビーデルを理不尽にも傷付けたことに対して怒っていた。だから応援など気にすることなく試合を続ける。

 

クリリン「こ、怖えぞあの子…!」

 

悟空「ひぇ〜…!!あいつやるじゃねえか…!!」

 

 

 

五月「よ、四葉……?」

 

三玖「四葉って喧嘩もできたんだ…」

 

二乃「まあ……。空を飛べるならそれくらい当然よね」

 

一花「えっ!?四葉が空を飛べるってどういうこと!?」

 

二乃「あら?知らなかったの?」

 

二乃は四葉が舞空術を使えることを教えると………。

 

三玖「なにそれ?悟飯の家に通い詰めてたの…?」

 

五月「四葉…。あなたという人は、そこまで尻軽な人だとは思いませんでした…」

 

一花「すっごい言われ様………」

 

ちょっとカオスになった。

 

 

ヤムー「調子に乗るな…!!」

 

ヤムーは四葉の攻撃網から避難して、一旦距離を取る。そして両手に気をこめて………。

 

ヤムー「死ねッ!!!!

 

 

ズォオオオオオッッ!!!!

 

 

なんと、気功波を放った。

 

 

クリリン「うえ!?嘘だろ!?」

 

しかも、気功波の向かっている方向は不幸にも二乃達のいる方角だった。四葉に向けて撃たれたため、二乃達のいる上の席は直接被害を受けることはないだろうが、下の観客は下手すると死ぬだろう。

 

シュン‼︎

 

四葉「しっ!!!」

 

ドンッッ!!!

 

四葉は足蹴りだけでヤムーの気功波を上に弾き飛ばした。

 

アナウンサー「な、なんと…!!四葉選手も浮いています!!最近は浮くのがブームなのでしょうか!?何故今になって鶴仙流がブームに……!!?」

 

ヤムー「ちぃ…!!」

 

ヤムーも舞空術を使って四葉に急接近するが…。

 

ヤムー「はっ!!」

 

ドグォォオオオン!!!

 

四葉「!!」

 

気功波が放たれたので身構えた四葉だったが、途中で爆発した。恐らく目眩しのつもりだろうが……。

 

 

シュバ‼︎

 

ヤムー「よし!!」

 

ヤムーの拳が四葉の体を貫通した。

 

四葉「こっちですよ」

 

ヤムー「……!!!!」

 

声の聞こえた上を向くと、何故か無傷の四葉がいた。そう、ヤムーが攻撃できたと思った四葉は残像だったのだ。

 

 

クリリン「すげぇ…!!残像まで使えるのか!?」

 

悟空「将来有望だなぁ……」

 

ビーデルがスポポビッチに敵わなかった要因は、あくまで舞空術を使えるようになることを目標として修行をしていたが、四葉の場合は姉妹や風太郎を守れる力を欲して修行をしていたのだ。つまり、四葉の場合は、攻撃や防御、あらゆる戦闘方法を悟飯から学んだのだ。特に、実戦修行は四葉の成長に大いに貢献している。

 

 

ドカッッ!!!!!

 

アナウンサー「おおっと!!四葉選手の攻撃が決まった!!!」

 

四葉はバレーでアタックする要領でヤムーを叩き落とした。

 

ヤムー「くそ…!!くそ…!!!()()()()()に力を引き出してもらったのに!!何故あの小娘に勝てねえんだ!!」

 

 

悟空「……?」

 

クリリン「バビディって言ったか…?」

 

ピッコロ「引き出しただと…?どういうことだ…?」

 

バビディという言葉を聞いて、今まで静かだったシンが僅かにピクリと動いた。

 

ヤムー「こんなはずじゃ…!!あの小娘を負かせられないんじゃバビディ様のお役には立てない…!!!」

 

スポポビッチ「待てヤムー!あいつはエネルギーを吸い取った方が…!!」

 

ヤムー「黙れッ!!!」

 

ヤムーはスポポビッチの言葉には耳を傾けずに四葉に向けてひたすら気功波を連射する。その様子を見て、二乃と五月が軽く悲鳴をあげているが、母親である零奈だけは何故か冷静に試合を観戦していた。

 

 

シュルルル‼︎

 

ヤムー「!?」

 

煙を通り抜けて紐状の気の塊がヤムーを縛り付けると、紐が伸びてきた方向にヤムーが引っ張られる。そして……。

 

四葉「……これで終わりです」

 

 

ドゴォォオオッッ!!!!!!

 

ヤムー「ぐおっ………!!!」

 

四葉はそのまま重力を利用してヤムーを蹴りながら落下する。四葉は場外になる直前で舞空術を利用して武舞台に移動した。

 

アナウンサー「場外!!四葉選手の勝利です!!」

 

 

結果、四葉の圧勝となった。

 

悟飯「あれ?四葉さん勝ったんですか!?」

 

ビーデルに仙豆を渡した悟飯がここで戻ってきた。

 

悟空「ああ。あいつなかなかやるな。本当に気を覚えたてなんか?」

 

悟飯「ええ、一応………」

 

クリリン「こりゃあウカウカしてたら地球人最強の称号が取られちまうかもな…………」

 

クリリンはそう言っているが、四葉は流石にそこまでには達していない。

 

 

四葉「…………」

 

スポポビッチ「……!!」

 

四葉は武舞台を降りる前に、スポポビッチを睨みつけた。『次はお前がこうなる番だ』と警告しているのだ。女の復讐心は怖いものである。

 

悟空「そんじゃ、次は悟飯の番だな!相手は只者じゃなさそうだから気をつけろよ!」

 

悟飯「はい!」

 

 

続いての試合は、悟飯vsキビト…。キビトはシンという少年と一緒にいた初老の男性である。はたして、彼の実力は如何に……?

 




 次回予告を書こうと思ったけど、急にスタイルを変更するのもアレなのでやめました。というか次回予告はちょっとしたネタバレになっちゃう可能性もありますからね。
 何度もくどく言ってますが、原作と丸被りする部分はカットします。カットされた場合は原作と同じような出来事が起きてるんだなと思って下さい。
 スポポビッチに四葉がボコられると予想している方が結構多かったですが、ボコられたのは原作通りビーデルでした。そして四葉とヤムーの試合に移行しますが、ここで四葉の実力が見えてきた感じですね。まだZ戦士ほどではないにせよ、パワーを引き上げられたヤムーの上をいく実力を持っています。個人的な偏見ですが、四葉は本気で怒ると五つ子の中で一番怖いと思う。これ共感してくれる人いるかな…?
 ちなみに四葉はこのまま無双するかと言われるとそんなことはありません。


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第75話 バトルロワイヤル

 前回のあらすじ…。
 試合は順調に進み、少年の部はトランクスが優勝を飾った。そして大人の部に入り、クリリンは圧勝。ピッコロはシン……またの名を、界王神相手に棄権をした。そしてビーデルもスポポビッチの試合に移ったのだが、スポポビッチがとんでもない悪だった。必要以上にビーデルを傷付けた後に勝利した。これが許せなかった四葉は、対ヤムー戦で圧勝する姿を見せた。四葉に関しては今後の成長が期待できる新人である。
 そして、悟飯対キビトの試合になるのだが……。



二乃「いや〜…。四葉凄かったわね」

 

一花「妹が人外になっていく………」

 

三玖「私もできるのかな……?」

 

五月「きゃー!四葉が勝ちましたよ!」

 

零奈「………四葉」

 

風太郎「しかし、四葉のやついつの間に………」

 

らいは「四葉さんすごーい!」

 

勇也「……(なんか怒ってたような気がするのは気のせいか…?)」

 

 

それぞれが感想を口にする中、悟飯対キビトの試合が開催されたのだが…。

 

五月「……あれ?一向に始まる気配がありませんね……?」

 

二乃「なんか話してるみたいよ?」

 

三玖「ここからじゃ聞き取れない……」

 

一花「なんか悟飯君が驚いてるね?」

 

風太郎「なんだ?食い過ぎで腹でも痛くなったのか?」

 

らいは「孫さんに限ってそれはないと思うけど………」

 

 

試合がなかなか始まらない理由は、キビトと悟飯がこのようなやり取りをしていたからだ……。

 

キビト「……超サイヤ人とやらになれ。もしもの場合に本当に私達の助けとなるのか試してみたい」

 

悟飯「……!!何故超サイヤ人のことを…!!それに助けになるって……?」

 

キビト「そのことはいずれ分かる。まずは超サイヤ人の実力を見たいのだ」

 

 

シン「……始まったか」

 

キビトは悟飯に対して意味深な発言をした。超サイヤ人のことも知っていたため、悟飯は何故相手が知っているのか疑問に思ってしまい、しかも超サイヤ人に変身しろと言う意図がまるで読めない。

 

悟飯「冗談じゃないですよ…!こんな大勢の前で超サイヤ人になんて……」

 

 

クリリン「なんだ?何話してんだ?」

 

悟空「あいつ、超サイヤ人になれってさ………」

 

クリリン「えっ?なんで……?」

 

ピッコロ「悟飯…!!!!」

 

ピッコロはキビトに対して警戒をしている悟飯に対して、首を縦に振って合図する。

 

悟空「なんだピッコロ!何かあるのか!?」

 

ピッコロ「………何かは分からない。だが……」

 

ピッコロがそう言いかけた時、シンと呼ばれた少年が口を開いた。

 

シン「申し訳ありませんが、悟飯さんを利用させていただきます。そして、皆さんはこれから何が起こってもしばらく動かないでいただきたいのです。どうかよろしく………」

 

クリリン「な、なに?」

 

悟空「どういうことだ……?」

 

しかし、突然そんなことを言われてもハイそうですかと納得できるはずがなかった。ベジータはシンに対して警戒心を全く隠すことなくこう言う。

 

ベジータ「訳の分からないヤツの言うことなど聞けん。正体を言え」

 

ピッコロ「……こ、このお方は界王神様だ。大界王様も含めて全ての界王様達の神だ……………」

 

クリリン「……!!!」

 

ベジータ「なんだと…!!」

 

ピッコロからシンの正体に関する衝撃的な事実が告げられた。悟空はどこかで聞いたことがあったのか、納得する素振りを見せた。

 

 

 

悟飯「はぁあああああッッ!!!!

 

ボォオオオオッ!!!!!

 

風太郎「えっ!?」

 

二乃「な、何してんのよハー君!?」

 

一花「そんなことしたら、正体が…!!!」

 

悟飯はキビトの言う通り超サイヤ人に変身する。というか、超サイヤ人を超えた超サイヤ人に変身する。

 

 

ビーデル「う、嘘…!あれって、セルゲームの時にいた男の子…!!」

 

悟飯に渡された仙豆によって完全に復帰したビーデルは、幸か不幸か悟飯が超サイヤ人に変身する瞬間を目撃していた。

 

 

 

界王神「恐らく、これからヤムーとスポポビッチが悟飯さんに襲い掛かると思いますが、あなた方は何もしないで下さい」

 

悟空「どういうことだ?」

 

クリリン「悟飯ならあの2人程度どうにかなると思いますけど………」

 

 

 

超2悟飯「さあ、お望み通り超サイヤ人を超えた超サイヤ人になってやったぞ?これからどうするんだ?」

 

キビト「(なんというパワーだ…!純粋なエネルギーだけでこれほどの力を身につけている人間がいるとは…!!とても下界の者とは思えん…!!)」

 

 

ベジータ「ちっ。何度か死にかけたからあの頃の力を取り戻したようだが、ちゃんと修行していればもっと力をつけていただろうに………」

 

界王神「いえ、それでも大変素晴らしいパワーですよ……これなら…」

 

 

ヤムー「今だ!」

 

スポポビッチ「がーっ!!」

 

超2悟飯「なんだお前達!!」

 

悟飯はヤムーとスポポビッチが乱入してきたことによって警戒するためにそちらを向いたが………。

 

界王神「……!!」ピッ

 

超2悟飯「……!!!!」

 

界王神の金縛りによって悟飯の身動きは封じられた。

 

 

ズンッ…!!!

 

超2悟飯「ぐっ……!!!!」

 

スポポビッチは悟飯を抑えつけ、ヤムーは謎の巨大なランタンのようなものを悟飯の体に突き刺した。突き刺されると、段々と悟飯の気が小さくなっていく……。

 

悟空「な、なんだ…!?」

 

 

 

二乃「きゃーー!!!!!ハー君!!!?」

 

三玖「どうしちゃったの!!!?」

 

五月「あ、あんな太いものが…!!!!い、痛そうです…!!!!!」

 

 

 

しばらくすると、スポポビッチはランタンを抜き、ヤムーと共に武舞台を飛び去っていった………。

 

界王神「まだです!まだ何もしないで下さい!!キビトが元に戻してくれます!!」

 

界王神は心配して悟飯に近づこうとする悟空やクリリンを止めると、こう続ける。

 

界王神「これからあの2人に気付かれないよう、こっそりあとをつけます。もしよろしければ、私と一緒にあなた達も来てください。そうしていただけると助かります…………」

 

界王神はそう言うと、そのまま2人の後を追うように飛び立つ。

 

クリリン「ど、どうするよ悟空?」

 

悟空「オラはついて行くさ。あの界王神様が助かるっつってんだからよ。それに、こうなったわけを知りてえし」

 

ベジータ「ふざけるな!貴様は23時間しかこっちにいられないんだろう!そんな下らないことで時間を食ってたまるか!俺は貴様と決着をつけるためにわざわざこんな下らない大会に出たんだぞ!!」

 

案の定、ベジータは悟空の案に猛反対した。戦闘民族として、悟空と決着をつけたいのだろう。

 

悟空「じゃあ向こうでやればいいじゃねえか。オラは取り敢えずついて行くからな」

 

そう言うと、悟空も界王神の後を追うように飛び立つ。するとベジータも舌打ちをしながら悟空を追いかける。ピッコロもそれに続いて飛び立ち、クリリンも18号に許可を取ってから悟空達を追いかける。

 

 

二乃「えっ?なに?」

 

ブルマ「ベジータ達どこ行っちゃったのよ!!」

 

チチ「あっ!悟飯ちゃんが起き上がっただ!!良かっただぁ………」

 

三玖「……あ、あれ!?」

 

五月「孫君もどこかに行っちゃいましたよ!?」

 

二乃「あー!!あのビーデルって女!!ハー君と空中デートしてる!!ふざけんじゃないわよ!!」

 

三玖「むむっ…。悟飯、後で切腹」

 

ヤムチャ「ははは…。悟飯って本当にモテモテだなぁ………」

 

悟飯達も悟空を追いかけて行ってしまった。これによって、天下一武道会は硬直状態になってしまった。

 

五月「しかし、あの様子は只事ではなさそうでした。四葉なら何か事情を知っているかもしれません」

 

そう言うと、五月はスマホを取り出して四葉に電話をかける。

 

五月「もしもし、四葉?今どういう状況ですか?」

 

『分からない。だけど、只事じゃないのは確かだよ。なんかあのヤムーとスポポビッチって人、孫さんみたいに強い人のエネルギーが目的でこの大会に出てたみたい』

 

五月「なんですって………」

 

『とにかく、私はここに残ることにするよ。何かあっても、悟空さんや孫さんが行くならきっと大丈夫だよ!』

 

五月「……そうですよね。分かりました」

 

五月は電話を切った直後、周りにいたメンバーに四葉から聞いた状況を説明する。

 

ブルマ「はぁ……孫君が帰ってきたと思ったらこれかぁ……。気の毒ね……」

 

ヤムチャ「まあでも、悟空達が行くなら何かあっても大丈夫だろ?」

 

亀仙人「そうじゃな。何も心配することはないじゃろうな」

 

悟空のことをよく知る者達は、悟空を信頼し切っていた。このことからも、悟空がどのような人物だったのかがよく分かる。

 

 

 

バーダック「……妙だな。カカロットの奴ら、一体何しに行ったんだ…?」

 

出場者の1人であるバーダックは、悟空達の行動を不思議に思いつつも、後で追いかければいいかと思い、賞金稼ぎを優先することに決めた。

 

そして、悟空達がいなくなって1時間が経過しようとしていた………。

 

アナウンサー「えー!ただ今を持ちまして、特例として残った出場者同士でバトルロワイヤルをすることになりました!!提案者はMr.サタンです!!」

 

サタン「この俺様がいれば何も問題はないだろう!そうだろう諸君!!」

 

サタンの提案ということで、これまで散々待たされていてイライラしていた観客は一気に大喜びである。

 

アナウンサー「えー、それでは、18号選手対中野四葉選手対バーダック選手対マイティマスク選手対Mr.サタンによるバトルロワイヤルの開催です!!」

 

 

 

ちなみに、バーダックの顔を見た観客席メンバーは……。

 

二乃「ねえ、あれって……!」

 

三玖「間違いない………」

 

五月「何故孫君のお爺さまがここに!?」

 

一花「へえ!あれが悟飯君のお爺ちゃんなんだ?まだまだ若そうだね〜」

 

ブルマ「えっ!?それってどういうこと!?確かにあいつ孫君にそっくりだけど、孫君のお父さんなの?」

 

ヤムチャ「そういや、サイヤ人が生き返ったって話だったよな…?もしかして、悟空の実の父親ってことか…?」

 

チチ「えええ!!!?それ本当だか!?」

 

亀仙人「なんと……。確かに、ただ似ているだけではない…。気配もなんとなくではあるが、悟空に似ておるわい……」

 

こんな反応をしていた。そして視点は武舞台側に戻る。

 

サタン「(やばーい…!よくよく考えてみたら、全員で一斉にこっちに向かってくるに決まってるじゃないかぁ…!!)」

 

しかし、サタンは覚悟を決めて戦闘態勢に入った。

 

サタン「さ、さあ!この私に向かってくる勇敢な戦士は誰だ〜!!?」

 

 

マイティマスク「行くぞ悟天!」

「うん!分かってる!!」

 

18号「……(あいつ、身長の割には腕が短いな……)」

 

マイティマスク「行くぜ!!」ドンッ

 

18号「は、速い!!」

 

まず、マイティマスク(に入れ替わって変装をした上のトランクスと下の悟天が18号に先行攻撃をする)

 

18号「(あの小さい腕から放たれたとは思えないほどのパワー……。こいつは只者じゃなさそうだ……)」

 

だが、18号もあっさり敗れるほど弱くない。マイティマスクの攻撃を流すように受け止めてやり過ごす。

 

マイティマスク「気をつけろよ悟天。クリリンさんの奥さんは昔はパパよりも強かったらしいから」

「分かった!」

 

マイティマスクと18号による1対1の戦いが始まった中……。

 

アナウンサー「おおっと!!バーダック選手と四葉選手とMr.サタンは一向に動きを見せないぞ!?互いに出方を伺っているのか!?」

 

四葉「むむむっ…。どっちから攻めればいいんでしょうか………」

 

バーダック「………ほう。あいつらなかなかやるじゃねえか」

 

バーダックはマイティマスクと18号の戦いを観察し、四葉は慎重になって相手の出方を伺っていた。

 

バーダック「……だが、俺の敵ではないな」

 

ドシューンッ!!!

 

空中戦を展開する18号とマイティマスクに割って入るようにバーダックは参戦した。

 

マイティマスク「な、なんだお前!!」

 

バーダック「今はバトルロワイヤルなんだろ?俺も混ぜろよ。はっ!!!

 

ブォオオオオオオオオッ!!!!

 

マイティマスク「ぐっ…!!」

 

18号「こいつ…!!」

 

バーダックは気で強風を発生させて、マイティマスクと18号を吹き飛ばすことを試みたが、2人は案外動かなかった。

 

バーダック「カカロット達がいなくなって退屈するかと思ったが、案外そうでもなさそうだな………」

 

18号「おい、そこのマスク野朗!そいつを協力して倒すよ!!」

 

18号はバーダックが只者でないことを本能的に察知して、マイティマスクに協力を持ちかける。

 

18号「しゃあ!!」

 

ドカッッ!!!!

 

バーダック「ぐぁ…!!」

 

18号が本格的にエンジンを蒸してきたのか、攻撃のスピードもパワーも上がっていた。その為バーダックにヒットする。

 

マイティマスク「おい悟天!あれやるぞ!」

「うん!」

 

ボォオオオオッ!!!

 

マイティマスクに変装している悟天とトランクスも本気を出すために超サイヤ人に変身する。

 

バーダック「……!!その気配は…!」

 

18号「……!そういうことだったのか…!」

 

マイティマスク「行くぜッ!!!」

 

ズォオオオオッッ!!!!

 

バーダック「……!!!!」

 

バーダックはマイティマスクから放たれた気功波を咄嗟に回避した。すると、気功波は海にまで届いて大爆発を起こした。

 

バーダック「やべぇな……。あいつ、何者だ……?気配からして超サイヤ人であることは確かだ………」

 

18号「余所見するとは、随分暇そうだね?暇つぶしに付き合ってあげようか!!」

 

18号はエネルギー永久式の人造人間であり、その特性を活かしてエネルギー砲を絶えず連射する。

 

バーダック「ちっ、厄介だな」

 

バーダックは鬱陶しそうにそれらを避けて……。

 

バーダック「たあッ!!!」

 

ドゴォォオオッッ!!!!

 

肘を18号の頬に当てる。バーダックは攻撃を当てる瞬間に一瞬だけ気を高めたため、いくら超サイヤ人になってないとはいえ、18号の頬を傷付けてしまった。

 

18号「くっ…!!この野朗…!!!

 

18号は頬を傷付けられたことによって怒り、気円斬を投げる。

 

バーダック「…!!(こいつはヤバい!!)」

 

バーダックは気円斬の本質を見抜いてスレスレで避ける。すると気円斬が掠ったのか、頬に浅い切り傷ができ、そこから血が垂れ始める。

 

バーダック「ちっ…!」

 

マイティマスク「馬鹿!!方向を合わせろ!!」

「うわわわ!!!」

 

その気円斬はマイティマスクに向かい、これを避けようとしたが、悟天とトランクスがそれぞれ反対方向に逃げようとした為、服が引っかかって上手く逃げることができず…。

 

ズバッ!!!

 

丁度悟天とトランクスが別れる形で服が裂かれた。

 

アナウンサー「おおっと!?18号選手の攻撃によってマイティマスク選手が裂けた!?」

 

超トランクス「やっべぇ!!どうして反対方向に逃げるんだよ!!」

 

超悟天「だ、だって!!」

 

アナウンサー「おやおや?ま、マイティマスク選手が2人になった…!?2人での出場はルール違反です!!失格!!」

 

超トランクス「やべ!バレちまった!逃げるぞ!!」

 

超悟天「うん!!」

 

ドシューン!!!

 

悪戯っ子2人は舞空術で逃げるように去っていった。

 

 

らいは「あー!!悟天君が全然戻ってこないと思ったら!!」

 

ブルマ「全く………」

 

亀仙人「やはりあの2人じゃったか…」

 

三玖「それならあの戦いも納得……」

 

五月「……ですが…」

 

 

18号とバーダックが睨み合っている中、四葉とサタンは………。

 

四葉「む、むむっ…!!(ひぇ〜…!!やっぱりチャンピオンさんと戦うなんて恐れ多いよ〜!!!?)」

 

四葉は十二分にサタンを超えた実力を持っているのだが、それとは無関係にチャンピオンと戦うことがただ気まずいようだ。その為一向に向かってくる気配はない。

 

サタン「(よ、よし!このお嬢ちゃん相手ならなんとかなりそうだ…!俺はチャンピオンなんだ!少しはカッコいいところを見せないと…!!)」

 

サタン「悪いなお嬢ちゃん!勝負の世界は非情なものなんだ!手加減はしないぞ!」

 

サタンは幸か不幸か、四葉の試合を見ていなかった為、四葉の実力を知らない。

 

アナウンサー「おおっと!Mr.サタンは相手が女の子であろうと容赦しないようです!ですがこれが天下一武道会というものです!出場者になれば、老若男女問わずに実力によって優劣を判断される世界です!!」

 

サタンを応援する声も上がるが、先程の四葉の試合を見ていた観客も大勢おり、ビジュアルの良さも相まって四葉を応援する者も多数いた。

 

四葉「勝負の世界は非情…?」

 

チャンピオン相手だから遠慮をしていたが、四葉はその言葉を聞いて全力で倒そうと意気込んだ。

 

四葉「よーし!それなら私も全力を尽くします!!」

 

ドンッと、四葉が地面を蹴る音が響いた。サタンがその音を認識した時には既に四葉が目の前にいた。そしてサタンに向けて拳を突き出している真っ最中であった。

 

サタン「(えっ、はやっ………)」

 

サタンが心の中で言い切る前に、四葉が突然その場を離れる。サタンは何故四葉がそんな行動を取ったのか不思議だったが、その理由はすぐに分かった。

 

 

ドグォォオオオオオン!!!!

 

サタン「うわっ!!!!」

 

サタンの目の前で何かが落ちてきたのだ。

 

アナウンサー「おおっと!18号選手がバーダック選手に叩き落とされました!!」

 

18号「ちっ…!!あいつも超サイヤ人になれるなんて聞いてないよッ!!」

 

サタン「えっ…?」

 

サタンは18号が落ちてきた方向をマジマジと見る。すると……。

 

超バーダック「………」

 

金髪に変化したバーダックの姿がそこにはあった。

 

サタン「(嘘ぉおおおッ!!あいつもトリックを使ってるッ!!?)」

 

 

バーダックは一瞬にして地面に着地し、18号の目の前まで歩く。

 

超バーダック「やるじゃないかお前。俺を超サイヤ人に変身させるほどとは思わなかったぞ」

 

18号「畜生…!!このままじゃ…!!」

 

四葉「わぁ…!!あの人も金髪に…!!すごい気だ…!!」

 

四葉はバーダックの気に軽く怯んでいた。

 

18号「ちぃ!!」

 

ボムっ!!!

 

超バーダック「むっ……?」

 

18号はバーダックを目を盗む為に気弾を利用して煙を発生させると、一瞬にして四葉の側に移動した。

 

四葉「わっ…!!」

 

四葉もすぐに気付いて戦闘態勢になるが。

 

18号「待ちな。あんたの強さはさっきの試合を見て大体分かってる。私とあんたであいつをぶっ飛ばしてやろうよ。あんたにとってもあいつが邪魔だろう?」

 

四葉「た、確かに私1人では勝てませんね……。わ、分かりました…!!」

 

四葉もバーダックに勝つ為には協力するしかないと思い、18号の案を了承する。

 

ブォオオオオオオオオッ!!!!

 

そのやり取りが終了すると同時にバーダックが気を利用して煙を吹き飛ばした。

 

超バーダック「さて、ちゃんと話し合いはできたのか?」

 

18号「なっ…!!」

 

超バーダック「おいおい。まさか俺がしてやられたとでも思ってたのか?俺は敢えて隙を作ってやったんだよ」

 

18号「この…!!」

 

四葉「い、いきますよ…!!」

 

18号はバーダックに突っ込むが、バーダックは軽く攻撃を否して反撃をする。その間に四葉は気で作ったリボン型の拘束技を準備する。

 

四葉「それ!!!」シュルルル

 

 

ガシッ!!!

 

超バーダック「なっ…!!!」

 

18号「よし!!よくやったよ!!」

 

四葉の拘束は上手くいった。18号が全力で挑むことによってバーダックの注意をそっちに引いていたのだ。

 

超バーダック「くそ…!解けねえ!!」

 

18号「いいか?相手は化け物だ。思いっきりやるよ!!」

 

四葉「はい!!」

 

18号は右手にエネルギーを集中させる。それと同時に四葉がかめはめ波を生成し、それを徐々に肥大化させていく。

 

 

ヤムチャ「なっ…!!あれは…!!!」

 

亀仙人「あの子、かめはめ波も使えるのか…!!!」

 

 

18号「これでチェックメイトだよッ!!!!」

 

カァァッ!!!!

 

 

四葉「ごめんなさい。でも勝負の世界は非情だそうです!!

 

波ぁああああああッ!!!!!」

 

 

ズォオオオオオオオッ!!!

 

 

18号のエネルギー弾と四葉のかめはめ波がバーダックに向かって突き進む。バーダックはそのまま成す術もなくそれらを食らう……。

 

超バーダック「だぁあああああッッ!!!!

 

ボォオオオオオオオオッ!!!!!

 

 

ヤムチャ「なっ…!!!」

 

亀仙人「な、なんて気じゃ…!!あやつも超サイヤ人が完成しとる…!!!」

 

 

四葉「あっ…!嘘……!!」

 

18号「嘘だろオイ…!!!」

 

超バーダック「残念だったな。だが、ここまで俺に力を引き出させるとは、やるじゃねえか」

 

バーダックは気を更に高めることによって四葉の拘束術を力技で解き、直前でエネルギー弾とかめはめ波を弾き飛ばしてしまったのだ。

 

 

シュン‼︎

 

 

ドカッッ!!!!!

 

四葉「きゃっ…!!!!」

 

 

五月「四葉ッ!!!!」

 

三玖「お、落ちちゃう!!」

 

二乃「でも、空を飛べるなら…!!」

 

実際その通りで、四葉は舞空術を使って場外判定を回避できるはずだったが。

 

バシン……!!

 

 

四葉「わっ……!!!」

 

突然目の前に現れたバーダックに弾かれることによって、ハエ叩きに叩かれた蝿のように落ちてしまった。

 

アナウンサー「おっと!!ここで四葉選手が場外です!しかし初出場で4位という記録は大変素晴らしいものです!」

 

四葉「あはは……。負けちゃいました」

 

四葉は先程の衝撃で服についた埃を払いながらそう呟いた。こうして残るはたった3人になったわけだが……。

 

超バーダック「………!!!!!」

 

18号「……?なんだ……?」

 

突然、バーダックが頭を抑える。

 

超バーダック「ぐわぁぁ…!!こいつは……!!!!」

 

 

 

 

 

『やめろベジータ!!!!』

 

『こうでもしなければ、貴様は俺と戦わないだろう?』

 

 

『まさか、おめぇわざとバビディの術にかかったんじゃ…………』

 

『俺は、昔の俺に戻りたかったんだぁあッッ!!!!!』

 

 

『お前なんか、嫌いだぁああああッッ!!!!!!』

 

『いいぞいいぞ〜流石魔人ブウだ!』

 

 

 

『悟飯の気が既に消えてしまった…。俺のせいだ。許せ…………』

 

 

 

『俺1人地獄には行かん……。てめぇらまとめて道連れだ……!!!!』

 

 

『さらばだ、ブルマ、トランクス……。そしてカカロット………………』

 

 

 

 

超バーダック「はぁ………!はぁ……!!はぁ………!!!」

 

18号「……?な、なんだ?」

 

バーダックはしばらく頭を抑える仕草をしていたが、ようやく頭を離したと思ったら、今度は息切れを起こしている。

 

超バーダック「(な、なんだ…?今のは…?王子が気味の悪いやつに洗脳されてここを破壊する。そしてカカロットが王子と戦う。その後にとんでもないやつが現れるとでもいうのか……?)」

 

バーダックは、かつて滅ぼした民族から呪いとして受け取った()()()()が発動し、近い未来で起こる出来事を先に見ていた。場面はすぐに切り替わってしまったものの、どうなるかは大体予想ができた。

 

超バーダック「……ちっ。やむを得ん。もう少し遊んでいたかったが、時間がなさそうだ…………」

 

 

ドンッッッ!!!!!

 

18号「グゥッ……!!!!!」

 

バーダックの気合に押し負け、18号は場外に落ちてしまった。

 

サタン「………うそ」

 

バーダックはサタンに向かってゆっくり近づいて行く。

 

サタン「(いや〜!!怖いよ!?勝てるわけないじゃん!!あんな化け物相手に…!!!)」

 

超バーダック「……おい、お前」

 

サタン「は、はい…!!」

 

超バーダック「ここは危険だ。早くこの試合を終わらせるぞ」

 

サタン「えっ?ど、どういう意味ですか?」

 

超バーダック「このままダラダラ大会を続けていれば観客もその分残ることになる。そうなると、ここを破壊しに来るやつが現れる。早くしろ…!時間がないんだ…!!」

 

本当ならここは危険だからすぐに立ち去れと言うべきだったのだろうが、危険だという根拠がない。まさか未来予知して未来の出来事を知ったと話すわけにもいかない為、この方法が最善だと判断したのだろう。

 

サタン「そ、そう言われましても…!!」

 

 

シュン‼︎

 

 

突然、悟空と悟飯と界王神とベジータが武舞台上に現れた。

 

超バーダック「なに…!?いくらなんでも早すぎる…!!!」

 

そして、バーダックはすぐにベジータの違和感に気づいた。

 

超ベジータ「…………貴様は…」

 

ベジータの額に、『M』という文字が刻まれており、物凄い邪気をヒシヒシと感じる。

 

超バーダック「(こいつはやべぇ…!!)」

 

超ベジータ「…………うるせえ!!俺の目的はカカロットだけだ!!他の奴らなどどうでもいい!!」

 

 

 

五月「や、やっぱり悟空さんですよ!」

 

二乃「ハー君もいるわ!いなくなったと思ったら急に…!!」

 

三玖「………でも、なんか変じゃない?」

 

四葉「…うん。特にベジータさんからは物凄い邪気を感じるよ………」

 

亀仙人「お主、そこまで分かるとは…。この感じ、まるで昔のあやつに戻ったみたいじゃわい」

 

五月「昔……?そういえば孫君から聞いたことがあります…。ベジータさんは昔は相当な悪人だったと………」

 

亀仙人「左様。じゃが、悟空達と関わっていくに連れて丸くなったかと思ったんじゃが………」

 

ブルマ「ベジータが、戻った…?どういうことよ!?」

 

 

 

超ベジータ「………」スッ

 

ベジータは不敵な笑みを浮かべながら片手を観客席に向けて突き出す。

 

悟空「ベジータ…!まさか…!!」

 

 

ズォオオオオオオオッッ!!!!!

 

 

ベジータの右手からは観客がいようとお構いなしに気功波が放たれた。

 

悟空「ばっかやろう…!!!!」

 

悟空は咄嗟にそれを受け止める態勢になるが………。

 

悟空「うわっ…!!しまった!!!」

 

超サイヤ人に変身したベジータの気功波を通常状態で受け止めるには流石に無理があった。気功波は悟空を吹き飛ばすと…………。

 

 

ドグォォオオオオオオオオオンッッ!!!!!!!

 

 

ベジータから見て、前方向に位置していた観客席を観客ごと消し飛ばした。突然の出来事に、少しの間硬直していた観客達だったが、すぐに悲鳴や叫び声をあげながら避難し始めた。

 

五月「なっ…!!!!!!」

 

ブルマ「何してんのよベジータ!!!!?」

 

二乃「な、何してんの…!!!?」

 

一花「い、今ので………。人、死んだよね………?」

 

四葉「ど、どうしちゃったんですか!?!?」

 

風太郎「くそ…!よく分からねえけど、とりあえず避難するぞ!」

 

らいは「う、うん!!」

 

勇也「おい!!四葉ちゃん達も逃げるぞ!!!!」

 

しかし、ベジータは観客達の反応を気にすることなく、次に右方向に手を向けて気功波を放った。その方向は、なんと五つ子達がいる方角であった。

 

亀仙人「まずい…!!!!」

 

零奈「くっ…!!!!」

 

零奈は今度は咄嗟に反応し、五つ子達の前に出る。

 

零奈「せめてこっちの観客だけでも守ります……!!!」

 

零奈は人造人間の中に眠るデータを頼りに気を一瞬にして高める。そして気功波を弾き飛ばそうと受け止めたのだが………。

 

勇也「先生ッ!!!!」

 

零奈「このパワーは…!!!」

 

四葉「お母さん!!手伝うよ!!!」

 

零奈「だめです!!!四葉では手に負えません……ぐぁあああッッ!!!」

 

零奈は受け止め切ることはできなかったが、気功波を横に弾き飛ばすので精一杯だった。しかしそちらには別の観客がいた為、そっちにいた観客は気功波の餌食になった。

 

凄まじい轟音と共に沢山の命が一瞬にして散ってしまった瞬間である。

 

そして、零奈は先程の一連の流れでダメージを負ってしまい、意識を失ってしまった。

 

四葉「お、お母さん!!しっかりして!!」

 

 

ゴンッ!!!

 

風太郎「がっ…!!!」

 

らいは「お兄ちゃん!!」

勇也「風太郎ッ!!!」

 

そしてその爆発によって飛んできた破片が風太郎の頭部に直撃した。その衝撃によって風太郎は頭から血を流している。

 

四葉「う、上杉さん!!!!」

 

風太郎「やべ……。ボーッとしてきた」

 

一花「フータロー君!!しっかりして!!!!」

 

勇也「お、おい!!風太郎!!!」

 

突然凶悪になってしまったベジータ。関係のない者を容赦なく巻き込むその姿は、昔のベジータを連想させるものであった。一体ベジータの身に何があったのか……?

 




 今回は四葉vs悟天+トランクスvs18号vsバーダックvsサタン回でした。ちなみに四葉達が試合をしている間にクリリンとピッコロが石にされ、ベジータがプイプイを、悟空がヤコンをあっさりと撃破し、悟飯はダーブラを圧倒とはいかなくても、結構善戦していました。ところが結局原作通りベジータはバビディの術にワザとかかります。ヤコン戦で超サイヤ人2の悟空の強さを知ってしまったのがやっぱり大きいんでしょうね。バーダックはいつかの予知能力が発動しましたが、結局生かすことができませんでした。
 とまあ、こんな感じでブウ編は書いていくと思います。描写外で原作通りのイベントが発生し、描写する部分でオリジナルイベントが発生するような、そんな感じで書ければと思っています。


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第76話 悲劇

 前回のあらすじ…。
 天下一武道会が開催され、悟天とトランクスの試合を見て、悟飯が戦っている姿を見たことがあっても、やはり驚いてしまった。少年の部はトランクスの勝利で幕を閉じた。
 大人の部では、クリリンはあっさり勝ち、ピッコロは『シン』という少年を相手にすることになっていたのだが、なんと棄権してしまった。
 ビーデルはスポポビッチと試合をすることになったのだが、このスポポビッチは極悪非道なやつであった。ビーデルを必要以上に痛みつけ、ビーデルを殺す勢いであったが、ヤムーが止めたことによってなんとかなった。
 この行いに四葉は怒り、ヤムーに対して何故もっと早く止めなかったのかと言ったら、関係ない。止めた理由は時間の無駄だからと言った。その言葉に四葉はキレ、本気でヤムーを打ち倒したのだった……。



ベジータの身に異変が起きる少し前に時を戻そう……。四葉達が天下一武道会でバトルロワイヤル形式で戦っていた時………。

 

ダーブラ「カァッ!!!」

 

超悟飯「はっ!!!」

 

ドゴォォオオッッ!!!!!

 

ダーブラ「ぐおおっ……!!!」

 

ピッコロとクリリンは、暗黒魔界の王ダーブラの唾によって石にされてしまった。2人を元に戻すべく、ダーブラを倒しにバビディの宇宙船に潜入していた。

 

バビディはこれまでプイプイとヤコンという邪悪な刺客を仕向けてきたが、ベジータ、悟空があっさりと倒してしまった。そして今、悟飯はダーブラと戦っている真っ最中であった。ダーブラは8年前に現れたセルと同等の力とされていたが、今の悟飯ならダーブラを倒すのは余裕ではないにしろ、可能な範囲であった。

 

ダーブラ「ば、馬鹿な…!!この俺が…!俺は暗黒魔界の王だぞ…!!」

 

超悟飯「知るか。そろそろ決着をつけさせてもらうぞ…!!」

 

ダーブラ「ちっ…!!」ピッ‼︎

 

超悟飯「!?」

 

ダーブラは魔術を使用して悟飯の視界を一時的に奪うと、悟飯に不意打ちをする為に剣を出現させ、それを悟飯に向けて振る。

 

ガンッ…!!!!

 

ダーブラ「なっ!!!?」

 

悟飯は目を瞑りつつも剣をしっかりと受け止めた。

 

超悟飯「しゃあッ!!!!」

 

バキッ!!!!

 

そして、悟飯は剣をあっさりと折ってしまう。

 

ダーブラ「く、くそ……!!」

 

『何してんだよダーブラ!早くそいつらを殺しちゃってよ!!』

 

ダーブラ「しょ、少々お待ちくださいバビディ様…!!!」

 

ベジータ「あの野朗…!何をグズグズしてやがる…!!!」

 

悟空「ベジータ。そう焦らなくてもそろそろ決着がつきそうだぞ?」

 

ベジータ「黙れ!俺は早くこんなお遊びを終わらせたいんだ…!!貴様は今日が過ぎたら二度とここには来れなくなる!そうなる前に、貴様と決着をつけたいんだ!!!」

 

ダーブラ「…………ほう」

 

ベジータは中々つかない決着に対してイラついていた。

 

ダーブラ「(バビディ様。いい発見をしましたぞ。場所を宇宙船に戻してください)」

 

『なに?どういうことだ?』

 

ダーブラ「(いい人材を発見致しました。あとは奴らに仲間割れをさせましょう)」

 

『へえ?あの中に正義の為に来たわけじゃないやつがいるってこと?まあいいや、パッパラパー!!』

 

バビディは魔術を使用して、一時的にダーブラの住む暗黒魔界をバトルフィールドとしていたが、解除して元の宇宙船に戻した。

 

超悟飯「……!!?なんだ!?」

 

ダーブラ「戦いは終わりだ。もう俺が戦う必要はない」

 

超悟飯「逃げるのか!?」

 

ダーブラ「違うな。そうではない。いい人材が見つかったから俺が出る必要がなくなったのだ」

 

ダーブラはそう言うと、隣の部屋に移動して扉が閉まった。

 

超悟飯「見つかった………?」

 

悟空「どういうことだ……?」

 

界王神「……!!ま、まさか…!!」

 

 

 

ダーブラ「如何ですか?バビディ様」

 

バビディ「へぇ!こいつは確かに凄い邪心だねぇ…!これなら十分こっち側に引き込めるよ。よくやったねダーブラ」

 

ダーブラ「お褒めに授かり光栄です」

 

バビディ「それじゃあ始めようか。はぁぁあああ………!!!」

 

バビディは邪心や欲などの心を利用して戦士を集めてきた。邪心が強ければ強いほどバビディの手下として洗脳しやすいのだ。元々は極悪人だったベジータは、今でこそ丸くなったとはいえ、邪心は悟空達に比べて大きかった。

 

ベジータ「……!!ぐぉぉお……!!」

 

界王神「やっぱり!!ベジータさん!何も考えないで下さい!!奴らはあなたの邪心を利用しています!!」

 

悟空「まさか…!バビディの魔術ってやつか!!」

 

界王神「はい!!恐らく!!!」

 

超悟飯「べ、ベジータさん!!そんな奴に操られないで下さい!!」

 

ベジータ「うるせえ、黙れ……!!」

 

ベジータは頭を抑えながら苦しむような素振りを見せる。ベジータの邪心を利用してバビディの洗脳魔術が確実に侵食していた。

 

 

 

バビディ「よーし、もうこっちのものだよ〜。あとは限界以上に力を引き出してあげるよ」

 

ベジータ「ぬぉおおおおおッッ!!!」

 

ボォオオオオッ!!!!!

 

超悟飯「なっ……!!!」

 

 

ベジータは苦しみながら超サイヤ人に変身する。そして、超サイヤ人に変身完了すると、先程の出来事が嘘のように静かになった…。しかし………。

 

超ベジータ「はぁ……………はぁ………」

 

超悟飯「……!!!」

 

悟空「しまった……!!」

 

ベジータの額には『M』の文字がくっきりと刻印されていた。これは、ベジータがバビディの支配下に置かれてしまったという証である。

 

超悟飯「そ、そんな……!!」

 

 

『それじゃあいいところに場所を移してあげるよ。パッパラパー!!』

 

こうして、ベジータは突然凶悪になった………否、戻ってしまったのだ。自制心をなくしたベジータは、天下一武道会の試合を観戦しに来た観客を容赦なく大量虐殺をしてしまったのだ。

 

 

 

 

悟空「ぐっ…………」

 

悟空は先程のベジータの行いを思い出して苦虫を噛み潰したような険しい表情をした後に、覚悟を決めたかのように超サイヤ人に変身した。

 

界王神「いけません悟空さん!!これではバビディ達の思うつぼですよ!!」

 

超悟空「ベジータ。おめぇはオラと戦う為に敢えてバビディに支配されて自制心をなくした……。違うか?」

 

界王神「それ、本当ですか!?」

 

超ベジータ「こうでもせんと貴様は俺と戦わん。たった1日で貴様は二度とこの世からはいなくなってしまうからな」

 

界王神「そ、そんなことで…!!たったそれだけのことでこんな馬鹿なことを…!!?」

 

超ベジータ「馬鹿なことだと!!!?俺にとってはそれが全てだ!!魔人ブウのことなどどうでもいい!!!」

 

ベジータは、長年のライバルである悟空と決着をつけたかった。セルゲームの時に悟空が死に、もう2度と悟空と戦えないことを知ったベジータは、一時的にトレーニングをやめてしまったほどにショックだった。だが、ここでようやく悟空が帰ってくることを知った。ベジータは再び悟空と戦えることを喜んだ。だが、そんな大事な日に邪魔が入ったのだ。

 

超ベジータ「こいつは…!こいつは俺を超えやがった!!同じサイヤ人でありながら…!!この俺を抜いたんだ!!!圧倒的な力を誇っていた王子であるこの俺に!!

 

こいつに命を助けられたこともあった…!許せるもんか…!!絶対に…!!!」

 

超悟空「…………」

 

悟空はベジータの心の叫びを聞き終えると、何かを決心した顔つきになった。

 

超悟空「バビディ!!オラはベジータと戦うことにした!!場所を移せ!!!」

 

界王神「お待ちなさい!!どうしても戦うと言うのなら、この私を倒してからにしなさい!!」

 

超悟空「…………」ポワッ

 

界王神「……!!」

 

界王神にそう言われて止められるも、悟空は手に気を集中させて気功波を生成する。その様子を見た界王神は、悟空とベジータが戦うことは避けられないのだと悟った。

 

界王神「………でしたら、私達はバビディ達のところに行きましょう………」

 

悟飯「えっ……?でも、扉は閉じてますし、それに衝撃を加えたら………」

 

界王神「どうせこのお二人が戦ってフルパワーで魔人ブウが復活してしまうくらいなら、不完全な形で復活してしまった方がマシですよ………」

 

悟飯「……分かりました」

 

悟飯は下に向かう宇宙船のドアを破壊しようとした時、扉が開かれた。

 

悟飯「……?なんで…?」

 

界王神「恐らく宇宙船を壊されたくないのでしょう。奴らもブウをフルパワーで復活させたいでしょうからね……」

 

悟飯「………お父さん。せっかく今日だけ戻って来れるのに、こんなことになってしまって残念です………」

 

超悟空「………」

 

悟空は無言で、しかし笑顔で悟飯の言葉を聞くと、行けと首を振って促した。悟飯と界王神は、罠だと分かっていたものの、他に選択肢はなかった為そのまま下に降りて行った。

 

超悟空「頼んだぞ、悟飯………」

 

超ベジータ「さあ行くぞカカロット!!殺してやる!!!!」

 

超悟空「待てベジータ!!ここでやるのは危険だ!!ブルマ達が巻き込まれて死んじまってもいいのか!!!?」

 

超ベジータ「ぐっ……!!黙れ!!今の俺はブルマの妻、トランクスの父親のベジータではない!!誇り高き戦闘民族サイヤ人の王子、ベジータ様に戻ったんだッッ!!!!!」

 

ベジータは一瞬躊躇う表情をしたが、すぐに雄叫びをあげながらそう訴えると、ブルマ達のいる方向に手を向ける。

 

超ベジータ「カカロット…!そんなにあいつらが邪魔なら、俺が消してやる!!」

 

超悟空「馬鹿…!!やめろベジータ!!!!」

 

超ベジータ「死ねぇえええッッ!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

フータロー君が目を覚さない…!なんでこんなことになっちゃったの…?あの人のせいだ……!あの人があんなことをしなかったら……!!!!

 

『へえ…。君、ベジータのことが憎いんだね?』

 

だ、誰!?私の脳内に直接!?

 

『もしも僕に全て任せてくれるなら、君の力を引き出してあげるよ?』

 

私の力を引き出す……?どういうこと?

 

『君の妹みたいに力を得ることができるんだよ?そうすれば、あの憎きベジータも倒せるかもよ?』

 

……待って。何か怪しい……。いきなり脳内に話しかけてきて、そんな虫のいい話があるのだろうか……?四葉は必死に修行をしたからあれほどの力を得たらしい。それを一瞬にして引き出せるとは思えない。私も嘘をつくことがあるからよく分かる。今私に話しかけてきている人は何かしら企んでいる……。

 

『ちょっとショックだな〜……。君の脳内に直接話しかけられるってことは、君の思考も読み取れるんだよ?』

 

し、しまった…!

 

『もう。まあ君が断ろうと僕の手下になってもらうけどね。ちょっと人手不足で困ってるんだ』

 

何者かがそう言うと、私の脳内にある映像が流れる………。

 

 

 

 

『嘘……だよな?』

 

『嘘じゃないよ……』

 

 

あれ……?これ、三玖に変装してフータロー君に告白した時のだ……。でもこれがどうしたっていうの………?

 

 

 

 

『三玖を止めるため、私は嘘を演じ続ける……!』

 

えっ?何この記憶……?この光景は修学旅行……?三玖に変装して……。えっ?私、こんなことした覚えないよ……?確か蛙と入れ替わって大変なことに…………。

 

『これは君がしたかもしれないこと。つまり、並行世界で起きているかもしれない可能性の話だよ?分かるかい?君はフータローって奴に恋焦がれている。そしてそいつ以外は何もいらない。君はそんな欲望を持っているんだよ』

 

フータロー君以外は必要ない…?そんなはずない…!!確かにフータロー君のことは大好きだけど、姉妹のみんなも大事なの…!!

 

『ふーん?これを見てもそんなことが言えるのかな?』

 

そして謎の人物は私の脳内に直接映像を送り込んでくる………。えっ?なに、この光景…………?

 

『よーく見てごらん?これが君の本来の姿さ』

 

映像に映し出されているのは、私自身。だけど、なんか私とは違う気がする。私はこんな歪んだ笑顔なんてしたことない。なんなら演技でもこんな顔はしたことがない……。一体何の記憶なの……?

 

『はぁ……♡私の大好きなだーいすきなフータロー君♪邪魔者はみーんな私が片付けてあげるからね?フータロー君を傷付けるようなやつは、1人残らず殺してやるんだから』

 

…………えっ?顔も声も間違いなく私…。でも、私はこんなこと言わない!

 

『いい加減認めなよ。あなたは私。私はあなたなんだよ?あなたはフータロー君が傷ついた時、あのおじさんに殺意を抱いたよね?その感情の正体こそ私……。フータロー君を傷付けられてしまった為に生まれてしまった中野一花なの』

 

『うへへへ!これでもう君は僕の手下だね。いい働きを期待するよ?』

 

えっ…?嘘、何するの…!?やめ………

 

 

 

 

 

 

ドゴォオオッ!!!

 

超ベジータ「…………?」

 

ベジータは何者かの蹴りを頬に受けて、数歩後退りをした。

 

超ベジータ「………貴様、何のつもりだ?」

 

「…………」

 

悟空「…!!おめぇ……!!いつ気を………、!!!!」

 

悟空はその『少女』の気を感じ取ってあることに気付いてしまった。

 

悟空「おめぇ…!!まさか……!!!」

 

一花「……………」

 

ベジータの前には一花が立っていた。ベジータに蹴りをいれた者の正体は一花だった。しかし、一花は気を扱えないはずである。四葉でさえも悟飯に稽古をつけてもらって扱えるようになったのだ。

 

 

 

二乃「えっ……?な、なんで一花が……?」

 

四葉「ど、どうしちゃったの一花……?それに、この邪悪な気配………!!」

 

 

 

 

一花「……フータロー君を傷つける奴は許さない…!!許さない…!!!!許さない……!!!!!

 

悟空「まさか、おめぇもバビディの術に……!!!!」

 

 

 

 

 

バビディ「よしよし。なんとか保険も作り出すことができたぞ」

 

ダーブラ「バビディ様。何故あんな小娘を…?」

 

バビディ「天下一武道会ってやつを覗いていたんだけどさ、その時にこいつの姉妹が素の強さでヤムーを圧倒していたから使えるかと思ったんだよ。ベジータは言うことを聞かないし、何よりコイツはこれから界王神と共に来る地球人にとって大切な存在だそうだ。ダーブラじゃあの地球人に勝てるか怪しいからね」

 

ダーブラ「も、申し訳ありません……」

 

なんと、バビディは一花を魔術で洗脳してしまったのだ。一花がバビディの魔術にやられるほどに邪心が強かったのだろうか……?

 

………しかし、これは偶然によって引き起こされたものだった。ベジータが暴れたことによって、風太郎が傷付いてしまった。それによって、一花はベジータに対して殺意に近い黒い感情を抱いてしまったのだ。そこにあと1人くらい手下を確保したいバビディの目に入ってしまったというわけだ。

 

そして、バビディが邪心を引き出そうとすればするほど、一花という少女には心の奥底に闇が存在していることが分かった。未来の五月の世界では、一花はライバルである姉妹達を出し抜く為に三玖に変装をして、三玖を競争から脱落させようとしていた。この行動は独占欲の強さの証であり、姉妹よりも風太郎を選んだ瞬間だった。この世界の一花はライバルというライバルが現れなかった為、闇が表に出ることはなかったし、本人がそれに気付くこともなかった。

 

………だが、バビディによってその闇の部分を引き出され、自覚させた後に円滑に洗脳してしまったのだ。

 

しかも、一花は悟飯に対して有効である。バビディは悟飯は一花を傷付けられないことを、一花の記憶を読み取ることによって把握した。先程の戦いでダーブラは悟飯相手に何度も不覚を取っていた為、相当都合が良かったのだ。

 

 

 

一花「フータロー君を傷つける奴は許さない……!!私の邪魔をするやつは、許さない!!!!」

 

超ベジータ「雑魚は引っ込んでいろ」

 

前髪で隠れてしまっているが、額にくっきりとM字が刻印された一花に、同じく額にMの字を持つベジータが睨み合う。

 

『あ、ちょっとちょっと!イチカ…だっけ?そいつは味方だよ!お前はこっちに来るんだ!』

 

バビディは魔術を利用して一花に命令する。洗脳を受けた一花はバビディの駒になる。

 

一花「…………あなたも、フータロー君と私の邪魔をするんだ……?」

 

『なっ……!!まさかこいつも…!!も、もう一度言うよイチカ!!早く僕のところに来るんだ!場所は分かっているはずだよ!』

 

一花「待っててねフータロー君。邪魔な奴らを一掃するから。邪魔者がいなくなったら、2人で………」

 

ベジータはバビディの指示によって苦しむ動作をしていたが、一花にはその様子が全く見られなかった。

 

『こ、こいつ…!!よく分からないけど、フータローってやつへの愛が大き過ぎて心を支配しきれなかったのか…!!なんてやつだよ…!!これ最早ヤンデレってやつだよ……!!!もういいや、パッパラパー!!!』

 

シュン‼︎

 

一花「……!?」

 

バビディは魔術を使用して、悟空とベジータのバトルフィールドを移したことによって、ベジータと悟空はボロボロになった武舞台から姿を消した。

 

超バーダック「……あの王子…。正気じゃなかったな……。くそ…!!」

 

ドシューンッッ!!!

 

バーダックは先程のベジータの様子を見て思うところがあったのか、試合を放棄して飛び立ってしまった。これによって一応サタンの勝利が確定したのだが、先程の騒動が原因で観客は殆ど残っていなかった。

 

一花「あれ?いなくなっちゃった……?まあいいか…………」

 

一花は対象がいなくなったため、これで大人しくなるはずだが………。

 

一花「…………さて」

 

 

シュン‼︎

 

 

一花は五つ子の前に高速移動をする。

 

四葉「い、一花…!!」

 

二乃「あんた、いつの間にそんな術を…!!」

 

一花「ねえ、四葉。四葉はフータロー君を独占したい?」

 

四葉「………な、何を言ってるの?」

 

一花「私ね、バビディって魔道士に洗脳魔術をかけられちゃったみたいなんだ」

 

四葉「ええ!!!?」

 

三玖「う、嘘……!!!!」

 

ヤムチャ「な、なんだって…!!!」

 

亀仙人「だから気が邪悪なものに…!!」

 

一花「でも、私のフータロー君に対する思いは支配しきれなかったみたい」

 

四葉「えっと、つまり……?」

 

一花「……私はね、フータロー君と幸せに暮らしたいんだ。フータロー君の怪我を治したら、フータロー君を連れて……」

 

四葉「ちょ、ちょっと待って一花…!」

 

一花「何?四葉も邪魔するの?あいつみたいに………」

 

四葉「上杉さんと暮らすって……。上杉さんの意思は?」

 

一花「大丈夫。フータロー君ならきっと分かってくれるよ。だって私のパートナーだもん」

 

今の一花からは正気を感じなかった。それを無意識に感じ取った四葉は警戒をしている。

 

一花「四葉もフータロー君が好きなんでしょ?でもさ、悪いけど私に譲ってくれないかな?」

 

幸いなことに、風太郎は意識を失っていたので今の言葉を聞いていなかった。だが、今の一花の言葉を聞いて驚いている者が数名いる。

 

四葉「………多分だけど、上杉さんは今の一花にはついて行かないと思う」

 

一花「そう?じゃあ力づくで連れて行くよ」

 

勇也「お、おい!待ってくれ!せめて風太郎の怪我を治してからじゃないと!」

 

一花「関係ない。フータロー君の面倒は私が見るよ。お金も、食事も、私の身も心も、フータロー君が望む物なら私が何でもあげる。フータロー君のお世話だってする。ううん。私がしたいの。だから、フータロー君をちょうだい?」

 

バビディに完全に支配されなかったが、自制心を完全に失ってしまったようである。魔術によって風太郎に対する想い、独占欲が溢れ出してしまい、一花自身も制御ができなくなってしまっている。

 

四葉「それはダメ!!!」

 

一花「なんで?」

 

四葉「今の一花を見たら、上杉さんはきっと………」

 

一花「そう。邪魔をするんだ?やっぱ四葉は邪魔者なんだね」

 

四葉「………えっ?」

 

先程まで笑顔だった一花が突然真顔になった。

 

 

ドゴォォオオッッ!!!!!

 

 

四葉「ぐあっ…!!!一花……!!!」

 

サタン「ひぃ!!だ、大丈夫か!!?」

 

一花の攻撃を受けて四葉は武舞台に叩きつけられた。四葉は一花が攻撃してくるとは思いもしなかったので、受け身を取ることもできなかった。

 

二乃「ちょっと一花!!何してんのよ!?」

 

一花「何って?邪魔者を消そうとしているだけだけど?」

 

二乃「邪魔者って……!!あんた…!!自分が何を言ったのか分かってんの!?四葉は私達の大事な家族なのよ!!?」

 

一花「だから何?四葉は私の妹だからフータロー君を譲れって?冗談じゃないよ」

 

二乃「そこまで言ってないわよ!!」

 

五月「い、一花!!こんなことはもうやめて下さい!!お母さんが何て言うか………!!!」

 

一花「うるさいなぁ…。結局、みんなは私の味方なの?それとも、四葉の味方なの?」

 

三玖「一花…!元の優しい一花に戻ってよ!!こんなの、私達の知ってる一花じゃない!!!」

 

一花「三玖の知ってる私がどういうものか知らないけど、私は私だよ?もしフータロー君との生活を邪魔をするなら、私は相手が姉妹だろうと関係ない。私の邪魔をする姉妹なんて姉妹じゃないよ」

 

二乃「あ、あんた…!!!!!それじゃあ、今までの生活はなんだったのよ!私達、どんな時も5人で頑張ってきたじゃない…!!!一花は私達を引っ張ってくれたでしょ!!!?」

 

二乃は泣きながら一花にそう訴えた。

 

一花「……………」

 

二乃の言葉に、流石に一花も思い直したのだろうか……。

 

 

 

 

 

 

 

 

一花「だから?

 

二乃「…………えっ?」

 

一花「だから何?昔は協力し合っていても、今邪魔をするなら『敵』以外の何者でもないでしょ?」

 

だが、一花は思い直す素振りすら見せなかった。一花は冷たく二乃に言い放つと、二乃に手を向ける。

 

一花「あっ、そうだ。二乃の料理は美味しかったよ。今までありがとね」

 

一花は手に気を集中させて気功波を生み出すと、それを二乃の顔面に向ける。これが放たれれば、気を扱えない二乃は一瞬にして吹き飛んでしまうだろう。

 

一花は何の躊躇もなく気功波を放とうとしたその時である………。

 

 

ドカッッ…!!!!!

 

一花「……!!!!?」

 

ヤムチャ「悪いなお嬢ちゃん。目の前でみすみす殺人犯を作るわけにはいかないんだ」

 

ヤムチャが一花の攻撃を阻止した。

 

一花「何?あなたも私の邪魔をするの?そんなにフータロー君との関係を歓迎しない?」

 

ヤムチャ「そうは言ってないさ。だけど君が正気に戻った時、君の手で姉妹に手をかけてしまったことを知れば、きっと君は悲しむだろう?」

 

一花「何を言ってるの?意味が分からないんだけど」

 

ヤムチャは一花の説得を試みるも、当の本人は聞く耳を持たない。そのままヤムチャに複数の拳撃が放たれたが、ヤムチャはそれらを器用に避ける。いくら戦士を引退したとしても、ヤムチャとて超人である。一花相手に不覚を取るほど落ちぶれてはいない。

 

ヤムチャ「(困ったな。俺がこの子の気を引くことはできるが、どうすれば元に戻せるんだ……?)」

 

ヤムチャは一花の攻撃を避けながら思考するが、なかなかいい案が思い浮かばなかった。

 

一花「いい加減にしてよ…!!」

 

一花は攻撃が当たらないことにイラつき始めたのか、近接戦から遠距離戦に切り替える。両手に気を集中させて、小規模の気功波を生成し、それをマシンガンの如くヤムチャに向けて連射をする。

 

ヤムチャ「くっ…!こうなったら二刀流だ…!!!」

 

ヤムチャは自身の専用技である操気弾を2つ生み出して、一花から放たれた気功波を次々と爆破していく。器用に操作される操気弾を見て、一花は一瞬怯んだ。

 

ヤムチャ「おい!!みんなは今のうちに避難しろ!!俺は取り敢えずこの子を食い止める!!」

 

ヤムチャが避難を促すと、勇也は風太郎を抱え、チチが零奈を抱えて避難を始める。

 

一花「逃すと思う?」

 

一花は気功波をまた躊躇なく放つが、ヤムチャがこれを弾くことによってみんなは無事だった。

 

一花「…………なんちゃって」

 

ヤムチャ「……?」

 

 

グサッ……!!!!!

 

ヤムチャ「な、なに…………がはっ…!!!」

 

 

なんと、ヤムチャが一花の気弾を弾いた途端、球型の気弾が突如鋭利な形に変化して、ヤムチャの肩を貫いた。

 

ヤムチャ「そ、そんなの……!ありかよ……!!!!」

 

一花「だって正攻法じゃ勝てないもん。悔しいけど。それじゃあ、バイバーイ」

 

一花は不敵な笑みを浮かべてフルパワーの気功波を放った。その光はヤムチャに向かって容赦なく突き進んで行く。

 

バシン……!!!!

 

一花「……!」

 

しかし、それは18号によって一花の方へと弾き飛ばされ、爆発した。

 

18号「ったく。小娘が調子に乗ってんじゃないよ。マーロンを傷付けようとしたこと、後悔させてやるよ」

 

 

ガンッ……!!!!

 

一花「……!!!」

 

一花は爆発を利用して18号の目を欺いて不意打ちをしようとしたが、18号には通用しなかった。

 

18号「悪いね。私には通用しないよ」

 

18号は一花の眼前に移動し、エネルギー砲を目の前で浴びせようとする。

 

四葉「待ってください!!!!!」

 

18号「…………なんだい?」

 

一花「四葉…………」

 

四葉「一花は、私に任せてくれませんか?」

 

18号「あんた、分かってんのかい?こいつはあんたよりも強いかもよ?はっきり言うと、この場にいる奴らだと私じゃないと手に負えないよ?」

 

四葉「それでも…!一花は私の家族です…!どうか私に任せてくれませんか!」

 

18号「あんたね……」

 

四葉「あなたは娘さんを守ってあげて下さい!!」

 

18号「……ちっ。分かったよ。死ぬんじゃないよ」

 

18号はマーロンの側に移動すると、マーロンを連れて観客席を後にした。ヤムチャは深い傷を負ったものの、自力で浮いて外に避難をした。

 

 

一花「………四葉。どういうつもり?」

 

四葉「……一花。私達ってさ、口喧嘩はしたことあるけど、殴り合いの喧嘩をしたことはないよね」

 

一花「ああ……。確かにしたことないかもね〜…」

 

四葉「………なら、今しようよ」

 

一花「えっ?」

 

四葉「殴り合いの()()

 

四葉は戦いとしてではなく、()()として一花と戦うことにした。そうすれば()()()()()()()()()()()()()()()()。そう信じての言葉だった………。

 

一花「ふーん…?そっかぁ……。フータロー君を懸けて勝負しようってこと?いいじゃん。やろうよ、喧嘩」

 

四葉の提案に、一花は快く承諾した。

 

一花「私は負けないし、負けてあげないよ?」

 

四葉「…………」

 

四葉はその言葉を聞くと、無言のまま戦闘態勢に入る。一花も同様に戦闘態勢に入り、2人の間に緊張感が走る。

 

四葉「(私はこれまで何度も一花に助けられた。お母さんが死んだ時、一花自身も辛いはずなのに、私達を導いてくれた。私が転校する時も、一緒についてきてくれたけど、あれも一花の提案なんでしょ……?長女で優しい一花に私は何度も助けられた…………)」

 

四葉はこれまでのことを思い出し、一花は本来ならいい人物であることを再確認した。

 

四葉「(一花が風太郎君と一緒になりたいって気持ちは本物だと思う。でも姉妹が邪魔者だなんて、それは一花の本心じゃない。もしそれが本心なら、私達の為に色々やってくれるはずがないもん)」

 

そして、四葉の顔は戦士の顔と言っても差し支えのないくらいに、覚悟の決まった顔に変化する。

 

四葉「(きっと一花は魔法のせいでおかしくなっているんだ…!だから今度は私が一花を助ける番だ…!!!)」

 

四葉は心の中でそう叫ぶと、互いの拳がぶつかり合う音が響き始めた………。

 

 

 

 

 

 

 

一方で、観客席にいた一向は、再びジェットフライヤーの中に入っていた。

 

二乃「一花…!!なんで…!!!どうしてよ!!!」

 

三玖「四葉に一花…。大丈夫かな……」

 

五月「二乃、四葉を信じましょう……。四葉が一花を元に戻して帰ってきてくれますよ………」

 

五月はそうは言いつつも、顔は険しいものであった。

 

ブルマ「ベジータ……。どうして……」

 

そして、ブルマはベジータが何故あんな残虐な行為に及んだのか理解できずにいた。

 

ヤムチャ「多分、魔道士ってやつの仕業だろうな……。そいつの魔術はあの子みたいに人を邪悪な者に変えちまうんだろう…………」

 

亀仙人「となると、悟空達は厄介な者を相手にしているわけじゃな……」

 

ヤムチャはチチに手当してもらった為、大事には至っていない。本来なら素人の手当では不十分であるが、気で出血を抑えている状態だ。

 

チチ「悟飯も四葉さも一花さも大丈夫だか……。悟空さも悟天ちゃんもどこかに行っちまうし………」

 

ブルマ「トランクスもあれっきり帰ってこないし…………」

 

亀仙人「………よし。ドラゴンボールを集めよう」

 

ブルマ「えっ?なんでよ?」

 

亀仙人「さっきので人が死んでしまったじゃろう?その人達を生き返らせねばならん………」

 

ヤムチャ「それもそうですね…。ブルマ、レーダーはあるか?」

 

ブルマ「レーダーはうちにあるわ」

 

ヤムチャ「よし、まずは取りに行くぞ」

 

風太郎「いっつつ……。あれ?ここは………」

 

らいは「お兄ちゃん!?」

 

勇也「風太郎!?大丈夫か!?俺が分かるか!!!?」

 

風太郎「ああ、分かったから揺らすな。吐きそう………」

 

風太郎は頭を打って出血していたが、意識を取り戻したところを見ると大したことはなかったそうだ。

 

三玖「良かった………」

 

風太郎「あっ、そうだ!みんなは…!!」

 

五月「大丈夫です。私達は無事です」

 

風太郎「そうか……。って、四葉と一花はどうした……?」

 

亀仙人「………あの子達は………」

 

亀仙人が分かりやすく説明すると、風太郎は急に焦り出した。

 

風太郎「おい嘘だろ!!?一花が操られて………、四葉が一花を止める為に………!!!?」

 

ヤムチャ「俺もこの怪我がなければ……。仙豆は持ってたりしないよな?」

 

亀仙人「うむ…。恐らく悟空が持っておるだろう………」

 

ヤムチャ「畜生……!!情けねぇぜ、俺…!!!」

 

ビーデル「待って!!」

 

ジェットフライヤーが発進するという時に、ビーデルがジェットフライヤーに乗り込んできた。

 

チチ「おめぇは確か………」

 

ビーデル「さっきの話、聞かせてもらったわ。よく分からないけど天下一武道会が大変なことになってるみたいね。私もできることなら協力するわ」

 

チチ「おめぇ……。いい奴だったんだな………」

 

ビーデル「……私は何をすればいいの?」

 

こうして、五つ子達+Z戦士達に加え、ビーデルもドラゴンボール集めに協力することになった。

 

悟空とベジータが対決している中、四葉と一花による史上最強の姉妹喧嘩が起ころうとしている……。そして、悟飯と界王神は魔人ブウの復活を阻止する為にバビディ達と台頭する。

 

バビディによって壊されそうになる姉妹の絆を、四葉が守ろうと立ち上がったが、四葉は姉妹の絆を守り切ることはできるのであろうか………?

 




 はい。一花推しの方々申し訳ありません。一花が闇落ちしてしまいました(by闇落ちさせた張本人)。修学旅行では闇落ちしないと言ってましたが、あくまで修学旅行での話です。でもこれは全てバビディって奴のせいなんです。一花は悪くありません。バビディの術の効果が一花にとっては強すぎた為にこんな邪悪な感じになってしまいました。
 ちなみにここでこだわったポイントは、一花(闇一花)がとにかく風太郎に対する執着がすごいこと。バビディの術で欲望、独占欲が全開になっています。そして悪の存在になってしまったので、姉妹だろうと邪魔する場合は躊躇なく殺します。そしてブウ編では活躍がなかったヤムチャが活躍したことですね。ただヤムチャは相手が女の子ということもあり、本気を出せなかった上に、殺る気マンマンの一花に不意打ち気味の攻撃でダウンしてしまいました。

 次回はシスターズウォー(物理)になります。作者の趣味趣向が結構反映されている気がします。次回を見たら作者がどんなシチュが好みなのか分かるかもね(オイ)

………最近クオリティ落ちていないか不安です。なんせ見直せる時間がなかなかないのでね………。

 ちょっと補足。一花と互角の戦士の場合はあの不意打ちの攻撃によって胸を貫かれてましたが、ヤムチャはZ戦士としての経験や実力差が生きて急所を外すことができたって解釈していただけると助かります。
 ちなみに一花がバビディの術にかかった理由、バビディが一花を選んだ理由は本編通りです。ただしあの闇一花はオリジナルである一花を元にバビディがパパッと作った都合のいい人格と解釈してください。ただし風太郎への愛のせいで都合のいい部下にはなりませんでしたが……。


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第77話 Sisters War

 前回のあらすじ…。

 ベジータはバビディの魔術によって邪悪な頃のベジータに戻されてしまった。ベジータは次々と観客を殺してしまった。悟空はベジータを止める為に戦うことを決意した。

 悟飯は界王神と共に、魔人ブウの復活を阻止するために、バビディとダーブラが待ち受ける階層に向かった。

 一花がバビディの洗脳魔術を受けたしまったため、正気を失ってしまった一花を元に戻す為に、四葉は一花と喧嘩という名の戦いをすることになった。



四葉「……………」

 

一花「……………」

 

 

四葉と一花の戦いはまだ始まったばかりだったが、全くの互角であった。

 

四葉「はぁっ…!!!」

 

ガッ…!!!!

 

四葉は正拳突きをすると、一花はそれを受け止めて、逆に回し蹴りを喰らわそうとする。

 

四葉「やっ!!!」

 

ドカッッ!!!!

 

一花「ぐぅ……!!!!!」

 

だが、四葉は反対側の腕でそれを受け止め、一花の顎に膝をぶつける。しかし一花も負けずに、そのまま四葉に頭突きをお見舞いする。

 

一花「このぉ……!!!」ポワッ

 

一花は気功波を生成し、それを四葉に向けて連射するが、四葉は武舞台を走りながら器用に回避する。時にはスライディングをし、時には跳び、時には弾きながら全て避けていた。

 

一花「流石だね四葉…。やっぱり姉妹の運動担当は四葉だよ」

 

一花は全ての攻撃を避けられたのにも関わらず、余裕の笑みを崩さない。その原因はすぐに分かった。

 

一花「残念。四葉はまんまと私の作戦に踊らされていたんだよ?」

 

四葉「……!!!」

 

なんと、四葉の周りには大量の気弾が存在していた。その気弾は先程四葉が避けたものや弾いたものであった。

 

一花「この勝負、私の勝ちだね……」

 

一花が右手を閉じる動作をすると、四葉の四方八方に存在していた気弾が一斉に四葉に向かって進み始めた。

 

四葉「……い、いち」

 

ドグォォオオオオオオオンッッ!!!!!!!

 

四葉は何かを言おうとした時、一花の気弾が目標に到達した。それによって連鎖的に爆発を起こしていた。

 

一花「あーあ……。大人しく私にフータロー君を渡してたら私の可愛い妹として女の子らしく暮らせたのに、残念…」

 

一花は言葉とは裏腹に、怪しげな笑みを浮かべながらその場を去ろうとした時………。

 

ガシッ…!!

 

一花「なっ………!!!!」

 

リボン型の気功によって一花が拘束された。

 

四葉「えへへ……。上手くいった……」

 

所々に血を流した四葉が一花を捕らえることに成功したことを確認すると、弱々しく笑う。どうやらあの気弾の包囲網からは完全に抜け切ることはできなかったものの、全てを食らわずに済んだようだ。

 

一花「四葉…!!何のつもり…!!!」

 

四葉「私は本当なら一花を傷付けたくないの!だからちゃんと話し合おうよ!!!」

 

一花「話し合う?フータロー君を私から奪おうとする女狐と話し合えって?笑えない冗談だよ、四葉」

 

四葉「一花!本当にそれでいいの?私を倒したら、次は姉妹のみんなにも手を出すつもりでしょ?」

 

一花「私とフータロー君の邪魔をするなら例え姉妹が相手でも容赦しないよ?」

 

四葉「………っ…」

 

何の躊躇いもなくそう言った一花に対して、四葉は悲しげに、苦虫を噛んだような顔をする。

 

四葉「本当に、それが一花の本心なの?」

 

一花「うん。フータロー君以外は全部いらない。逆に言えば、フータロー君さえいてくれればいいの。でも四葉は姉妹がいいんでしょ?ならフータロー君を渡してよ」

 

四葉「嘘でしょ」

 

一花「はっ?なんで?」

 

四葉「一花、本当に上杉さんだけで満足するのかな?」

 

一花「何を言ってるの、四葉?」

 

四葉「私は知ってるよ?昔の一花は我儘だったもんね。私が仲良くしたいって言った子と翌日には仲良くなってたり、私が大切にしてたシールを勝手に使ったり………」

 

一花「何が言いたいの?それとフータロー君は関係なくない?」

 

四葉「昔の一花は我儘だったんだよ。だからきっと一花は上杉さんだけじゃ足りない」

 

一花「ふーん?でもその姉妹が私とフータロー君の邪魔をするんじゃ本末転倒じゃない?」

 

まるで話は進みそうになかった。平行線を辿るだけである。

 

四葉「それに、姉妹のみんながいなくなったら、上杉さんはきっと悲しむ…!」

 

一花「……!」

 

"上杉さんが悲しむ"

 

四葉がそう言うと、今まで邪悪な笑みを浮かべていた一花が一転して焦燥するような顔になった。

 

一花「それ、どういうこと…?」

 

四葉「上杉さんにとって、私達5人はかけがえのない存在になりつつあるんだよ。もし一花が姉妹を殺しちゃったりしたら、上杉さんはきっと一花を拒絶する」

 

一花「…………」

 

四葉「だからもうこんなことはやめよう!!お願いだから元の一花に戻ってよ!!!」

 

四葉は必死に一花に訴えかける。あの優しく、お姉さんらしい一花に戻ってくれることを信じて……。

 

一花「そっか。じゃあ魔人ブウに殺されたことにすればいいじゃん」

 

四葉「…………えっ?」

 

一花はとんでもないことを言い出した。四葉が言った言葉でようやく一花は思い留まるかと思ったが、むしろ一花の元の考えを促進してしまった。

 

風太郎が一花を拒絶するのは、一花が姉妹を殺した場合の話。では、一花ではなく別の誰かが姉妹を殺したことにすることが、今の一花にとっては邪魔者を消し、風太郎を手に入れられる画期的な手段だと認識したのだ。

 

………そもそも姉妹は邪魔者ではなく、大切な家族なのだが、邪悪な心を必要以上に拡大された彼女にはそんな考えはなかった。

 

一花「ありがとう四葉。実は私もそれを懸念していたんだけど、さっきの話を聞いていい作戦を思いついたよ」

 

ボォオオオオッ!!!!

 

四葉「うそ………!!!」

 

一花は更に気を高めて四葉の拘束術を無理矢理解いた。一花は四葉との戦いで気の扱い方を学習していたのだ。姉妹の中でも飲み込みの早い彼女は四葉の戦闘スタイルを間近で見ながら学習をしていたのだ。

 

その為、先程までの彼女とは一味違うのだ。

 

一花「はっ!!!!」

 

ドカッッ!!!!

 

四葉「ぐぇ………ッ!!!」

 

 

先程の数倍のスピードで腹部に正拳突きを喰らった四葉は、腹を抑えながら数歩後退りする。

 

一花「あれ〜?もう終わり?ならお姉さんはとっとと終わらせちゃうよ?」

 

そう言うと、一花は地面を蹴って再び四葉に接近する。四葉は腹部の痛みを堪えて防御する姿勢になる。

 

ガガッ…!!!

 

四葉「わっ……!!!」

 

しかし、四葉は腹部を庇いすぎて足に注意がいかなかった。一花は四葉の足に軽く蹴りを入れてバランスを崩し、四葉を転倒させようとする。実際四葉はバランスを崩して転倒しかけている。

 

 

バキャ…!!!

 

四葉「あ"っ……!!!!!」

 

そして、一花は容赦なく四葉の腹部に再び衝撃を与えた。今度は正拳突きではなく、膝を腹部に深く食い込ませていた。

 

四葉「けほっ…!!ゲホッ……!!!」

 

四葉は腹部に強い衝撃が与えられたことによって、強く咳き込むが、それは隙を作っているだけにすぎなかった。

 

ドカッッ!!!!

 

四葉「……っ!!!!!」

 

咳き込む四葉に容赦なく一花の拳が頬に放り込まれると、そのまま四葉は流れるように地面に叩きつけられた。

 

四葉「かはっ………!!!!!」

 

一花「あれあれ〜?どうしたの四葉?本当にギブアップ?」

 

四葉が一花に勝てない理由はいくつかあった。

 

まず、四葉は一花を殺すつもりで戦っていないこと。しかも、一花は四葉を殺す気で戦っていた為、更に達が悪いのだ。

 

次に、一花と四葉は五つ子の姉妹であり、潜在能力はほぼ同じである。つまり、一花も四葉のように修行すれば同様の力を得ることができるはずなのだ。

 

最後に、バビディによって強化されているからだ。これらの要因によって、一花は四葉を超える力を得てしまったのだ。しかもバビディによって必要以上に邪悪な心が拡大されてしまっている為、姉妹に対する愛着も大分薄れてしまっている。

 

四葉「はぁ……!はぁ………!」

 

四葉は満身創痍の状態だが、一花を救う為になんとか立ち上がった。

 

四葉「一花…!今度は、私が助けるから…!!今まで助けてもらった分を、今返すからッ………!!!」

 

一花「なら死んでよ」

 

カァァッ!!!!

 

四葉「う"ッ!!!!」

 

四葉の訴えを無視して一花は気功波を放つ。四葉には既に避ける体力が残っていない為、防御姿勢を取ってダメージを極力抑えようとするが、腕にもダメージが入ってしまい、血が出る。

 

一花「随分粘るね?そんなに姉妹が大事なんだ?」

 

四葉「当たり前、だよ…!大切、な…!大切な、家族だもん…!!」

 

四葉は息を切らしながらそう答えたが、今の一花には全く響かなかったらしく、特に反応はなかった。

 

一花「じゃあその家族の為にフータロー君を渡してほしいんだけどなぁ……」

 

一花はそう言うが、四葉の答えは変わらなかった。一花は四葉の目を見てそう判断した。

 

一花「もう……。いい加減終わらせようよ?これ以上は時間の無駄だよ?四葉も死にたくないでしょ?負けを認めるならお姉さんが特別に見逃してあげるよ」

 

四葉「はぁ…………はぁ…………………」

 

だが、四葉は返事をせずに一花を真っ直ぐ見続ける。

 

四葉「私も、本気を出す……!!」

 

ボォオオオオッ!!!!!

 

一花「……!!!!!」

 

ここに来て気を全開にした四葉に一花は目を見開いて驚いた。

 

一花「なんで、今までその力を使わなかったの?」

 

四葉「私は一花を傷付けたくなかった…!だけど、今の一花は二乃も、三玖も、五月も…!!風太郎君以外はみんな殺しちゃう!!だから、私がそんなことはさせない!!!!」

 

シュン‼︎

 

ドカッッ!!!!!!

 

一花「ぎっ………!!!」

 

四葉は先程とは比べ物にならないスピードで一花に拳を叩きつけ……。

 

四葉「はっ……!!!!」

 

カァァッ!!!!!

 

反対側の手で気功波を撃ち、一花にヒットさせる。一花は気功波の威力に押し出されて、今は誰もいない観客席に叩きつけられ、席は強力な衝撃によって砕ける。

 

ドゴォッッ!!!!

 

一花「ッ!!!」

 

続いて、一花に蹴りを突き刺すと、一旦一花から離れた。

 

四葉「はぁ……!!!!」ポワッ

 

四葉は両手に気を集中させて、気弾を連射する準備を始める。

 

一花「四葉ァアア!!!!!」

 

自身の優勢が崩されて、頭に血が上り始めた一花は怒鳴り声をあげる。そして四葉に突進をしかけようとしたが…。

 

四葉「…!!!」キッ‼︎

 

ドンッッッ!!!!!!

 

一花「うっ…!!!!!」

 

四葉は目を見開いて気合を撃ち、それによって一花は再び観客席に叩きつけられる。

 

四葉「だだだだだだだッッ!!!!!!!!

 

更に四葉は一花に向けて気弾の連射を開始した。今の一花はみんなを傷付け、やがては殺すと確信した。だから一花を傷付けてでもみんなを守り、一花をみんなの元に戻ってこれるようにしようと決心した。一花を傷付けるのは不本意だが、こうでもしないと一花自身を苦しめる結果を生み出してしまうことになるので、一花を含めた姉妹のみんなを守りたい四葉にとっては苦渋の決断だった。

 

四葉「はぁ…………はぁ………………」

 

四葉は気弾の連射を終えて息を切らす。気の爆発の連続によって観客席は原型を崩し、瓦礫の山と化していた。だがまだ一花の気を感じるので、死んではいないが、確実に弱っている。四葉は休息を取る為に一旦着地した。

 

一花「はぁ…………はぁ………………」

 

煙の向こうから傷だらけの一花が姿を現した。四葉の攻撃は効果を発揮したようで、一花を確実に弱らせている。

 

一花「はぁ……。参った。お姉さん降参だよ」

 

四葉「…………えっ?」

 

意外な言葉に、四葉は情けない声を出してしまった。あそこまで風太郎に執着していた一花がこうもあっさり引くはずがないと思っていたからだ。

 

一花「ごめんね、四葉。私、目が覚めたよ。姉妹を殺そうとしてるなんて、どうかしてたよ………。自分で考えても恐ろしいと思う……。四葉が身を削って止めてくれなかったら、今頃………」

 

四葉「一花……!!!!」

 

四葉は満身創痍ながら、パァっと笑顔に切り替わる。その様子はまるで、大雨を降らせていた雷雲が突然開いて太陽の光が顔を覗かせるようだった。

 

一花「ねえ四葉。仲直りしよう…?こんなダメなお姉ちゃんでも許してくれるなら………」

 

四葉「うん…!うん…!!!」

 

四葉は一花に駆け寄ってハグしようとする。

 

ガシッ…!!

 

四葉「………?」

 

先程まで両腕を広げてハグを促していた一花だったが、左腕で右腕を掴んでいた。

 

一花「あ、あれ?なんだろう……?おかしいなぁ……?四葉…!逃げて……!!」

 

四葉「………ん?」

 

一花「あ、あれ?私何言ってるの?変だなぁ………?疲れちゃ……いいから!!四葉!!早く逃げて!!!」

 

四葉「えっ?何を言ってるの、一花…?」

 

一花は右腕を左側に引き込むような動作をするが、右腕を右側に戻そうとする動作も同時にする。まるで左半身と右半身それぞれに意志があるようだった。

 

右目は青黒く濁っており、左目は宝石のように透き通った青色をしている。

 

一花「だめ!騙されないで!!逃げるか私を倒して!!はぁ?何言ってるの?余計なことを口走らないでくれる?」

 

四葉「えっ??一花…????」

 

一花「もうこんなことはしたくないの!!私は四葉を殺したくない!!」

 

四葉「えっ?どういうこと?正気に戻ってくれたんじゃ……?」

 

一花「う、うん!!どうやら悪い方の私が四葉を騙そうとしているらしいんだ…!!ちょっと待ってて!!すぐに終わるから…!!」

 

一花の挙動不審な行動に四葉は困惑するしかなかったが、この時、一花の精神内では、一花同士の壮絶な戦いが繰り広げられていた。

 

 

 

 

 

 

 

一花「ねえ!こんなことはもうやめて!!私は妹も四葉も殺したくない!!!」

 

闇一花「まだそんな甘いことを言ってるの?フータロー君を欲しがっているのは紛れもなく()()()()自身の欲望なんだよ?私はあなたの願いを叶える為に行動してあげてるんだよ?」

 

ここは、一花の心の中。両目が宝石のように透き通った青色をしている一花の目の前に、両目が底が見えない程に、闇のように青黒く濁りきった瞳をしている一花…。通称、()()()がいた。

 

一花「確かに私はフータロー君が欲しい!でも姉妹を殺してでも欲しいだなんて思わない!!それに二乃、三玖、五月ちゃんは関係ない!!あの3人がフータロー君を取ることはあり得ないよ!!!」

 

闇一花「最近の様子を見る限りだと、悟飯君は既に誰か一人に絞ることができたみたいだよ?そうなれば2人は振られることが確定している……」

 

一花「それがなんなの!?」

 

闇一花「私達は五つ子だよ?悟飯君に振られた心の隙を埋めるように、今度はフータロー君を手に入れようとするかもしれない」

 

一花「そ、そんなことは………」

 

闇一花「ないって言い切れる?」

 

一花「で、でも…!それが姉妹を殺していい理由にはならない!!!」

 

一花は必死にバビディによって作り出された闇の人格である闇一花と戦っていた。だが闇一花はバビディの魔術によって力が引き出されている。つまり一花よりも闇一花の方が強力なのだ。そんな闇一花相手に一花が対抗できているのは、闇一花よりも圧倒的に強い意志があったからだ。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()があったからこそだった。

 

闇一花「はぁ……。同じ()()だから君も分かってくれると思ってたけど、それは私の妄想にすぎなかったみたいだね。あなたも私の『敵』なんだね」

 

一花「がっ………!!!!」

 

闇一花「もういいよ。消えな。フータロー君よりも姉妹を優先する中野一花なんていらない。今日から『私』が中野一花だよ」

 

一花「だ……め………!!!!やめて……!!!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一花「……………」

 

四葉「い、一花………?」

 

一花の二重人格めいた行動がようやく終わった。それを確認した四葉は、一花に恐る恐る近寄る。

 

一花「………」スッ

 

一花は顔をあげると、満面の笑顔で四葉にこう言う。

 

一花「やった…!!私、自分の闇に打ち勝ったよ!!」

 

四葉「ほ、ほんと!?!?じゃあ、完全に元の一花に戻ったの!!?」

 

一花「うん!!元に戻れたのも四葉のお陰だよ!!本当にありがとう!!!こんな立派な妹を持てて私は幸せだよ!!」

 

四葉「………!!!!」

 

四葉は初めて報われた気がした。今まで姉妹に助けられっぱなしだった自分がようやく姉妹を助けることができたのだ。それ以上に、一花が元に戻ったことが何よりも嬉しかった。

 

四葉「一花〜!!!!」

 

四葉は怪我をしていることを忘れて一花に駆け寄り、抱き寄せた。

 

一花「おおっと…!ビックリしたぁ……」

 

四葉「一花ぁ…!!ひぐっ…!!元に戻ってくれて良かったよぉ……!!!」

 

四葉は泣きながら一花の生還を喜んでいた。そんな四葉に一花は優しく頭を撫でてあげる。

 

一花「もう……。甘えん坊さんなんだから…………」

 

一花は泣きつく四葉を見て頬を緩めて撫で続ける。その姿は、仲のいい姉妹そのものである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

グシャッ……!!!!!!

 

四葉「ッッ!!!!!」

 

一花「ざんね〜ん♡

 

 

 

四葉の腹部を貫通したのは、一花が生み出した鋭利な形をした気弾だった。闇一花が一花の意識を叩き潰し、闇一花を消し去ったように振る舞うことで四葉を巧みに騙したのだ。四葉は濁りきった瞳に気づくことができなかったのだ。

 

四葉「いち…………か…!かひゅ…!!

 

一花は無造作に四葉を離して、数歩後ろに歩く。すると、四葉は口から血を吐き出し、支えを失った為にうつ伏せになるように倒れ込む。四葉の()()が床にどんどん広がっていた。それと同時に四葉の意識が薄れていく。

 

四葉はなんとか顔を上げて、一花の顔を見た………。

 

四葉「…………あっ……」

 

その時に見た一花の顔は、完全に闇に染まりきったものだった。まるで()()()()とでも言わんばかりの歪んだ笑顔。そんな闇に染まりきった一花に見下されているのを見て、四葉はこう思った。

 

四葉「(……ああ。あの時と同じだ…。私が黒薔薇の部活で功績を残した時、体育館にいたみんなを壇上から見下ろしていた時の私と同じだ………)」

 

流石に当時の四葉はそこまで歪んだ笑顔はしていなかったが、四葉にとっては似たような状況だと感じたのだろう。

 

一花「やっぱり四葉は甘いね。でも結構強かったよ。フータロー君はもらうね。バイバイ」

 

一花は死にかけの四葉には興味がないといった様子で後ろを向き、風太郎の気を察知して飛び立とうとするが、一花は足に違和感を覚えた為、振り返り直す。

 

四葉「だ………め………!みんなは……殺させない……!!」

 

どんどん拡大していく鮮血の血溜まりを気にすることなく、四葉は一花を止める為に最後の力を振り絞る。

 

一花「あーあー…。諦めが悪いなぁ…。四葉はもう負けたんだよ?離しな」

 

一花は冷たく言い放つと、足を思いっきり振って四葉が掴んでいた手を強引に離す。その力が少し強かったた為、四葉は何回か転がって今度は仰向けに倒れる。

 

一花「待っててねフータロー君。君を迎えに行くから」

 

ドシューンッ!!

 

薄れ行く意識の中、四葉は一花が飛び立ってしまったことを認識した。

 

四葉「ああ…。ダメだったよ……。私は一花を救うことができなかった。ごめんなさい、孫さん……。あなたの教え、無駄にしちゃいました……………」

 

更に意識が薄れる中、四葉は一花を救えなかったことの後悔を口にしていた。

 

四葉「私、なんでいつもこうなんだろう……。私がする努力は、大抵無駄に終わるんだ……。勉強も、部活も、そして今回も…………」

 

視界が不安定になった時、四葉の中では今までの思い出が再生されていた。6年前の修学旅行で、金髪でやんちゃな風太郎に出会い、互いに必要とされる人間になろうと約束したこと。

 

旭高校に転校して、風太郎と再会した日のこと。悟飯と風太郎が家庭教師として我が家に訪れたこと。

 

林間学校で風太郎を手伝ったこと。

 

病院のお見舞いや、姉妹喧嘩の末の仲直り……。悟飯の戦いに、姉妹の恋愛模様………。

 

数えるとキリがなかった。

 

四葉「あはは………。夢、叶えられなかったな………」

 

四葉は右手を空に向けて上げる。

 

 

 

 

 

『いつか風太郎君のお嫁さんになれますように………』

 

 

 

 

 

四葉「死んじゃうんだ、私………。もう2度と、姉妹のみんなに、お母さん………孫さんに………………風太郎君に会えないんだ………」

 

そう思ってしまうと、もうすぐ死ぬというのに、四葉は涙が止まらなかった。それと同じように、出血も止まらなかった。それも仕方のないことだった。なぜなら、先ほどの一花の攻撃で腹部に風穴が空いてしまったからである。これで出血しない方がおかしい。

 

四葉「こんなことになるなら………早く風太郎君に言えば良かったなぁ………」

 

四葉はとうとう手をあげる力すらも無くなってしまい、手を床に叩きつけるように倒してしまう。瞳の光は段々弱くなり、小さくなった命の灯が間もなくが消えようとしていた。

 

四葉「うえすぎ、さん………………ふうたろう、くん………………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

すきだったよ…………。ずっ、と………

 

 

そこから、四葉は一切言葉を発しなくなった。瞳孔は完全に開き、目は光を失ってしまった。それでも血は流れ続け、鮮血の血溜まりを作り続ける。四葉が死んでも、その現実を受け入れろと言わんばかりに時間だけはいつも通り過ぎていく。鮮血は、決して時が戻ることはないと主張するように流れ続けた……。

 

 

 

 

 

 

この瞬間をもって、中野四葉という1人の少女………。姉妹を救う為に自分の命をも顧みずに勇敢に悪意に立ち向かった誇り高き戦士は、命を散らした…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一花「はぁ…!!やっと敵が一人減ったよ。あとは少なくとも3人いるのか…。でもまあ、みんな気を扱えないから楽かな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ポロッ……

 

一花「あれ……?涙…?なんで……?」

 

今の一花には悲しみなんて存在しない。そのはずなのに、何故か涙が流れ始め、止まらなくなってしまった。

 

一花「なんで…?どうして……?まさか四葉を殺したから………?そんなはずはない……。私は生まれ変わったんだ……。フータロー君以外はいらないはずなんだ……!!」

 

一花は涙を拭くが、やはり止まらない。そのことに少々苛ついてしまっている。

 

一花「まあいいや。フータロー君は……あっちか」

 

 

 

 

 

 

二乃「……!!」

 

風太郎「どうした、二乃?」

 

ジェットフライヤーでカプセルコーポレーションに向かっている途中で二乃が不意に後ろを向いた。

 

二乃「………分からない。でも、なんか嫌な感覚がしたの…。なんか、炎が消えたような………そんな感じ……」

 

亀仙人「……………」

 

ヤムチャ「くそ…!!」

 

その二乃の感覚は正しかったようで、ヤムチャと亀仙人は難しい顔をしている。

 

ビーデル「…………そういえば、さっきまで同じくらいの強さの気がぶつかり合っていたけど、片方が消えたわ……」

 

二乃「ま、まさか……!」

 

五月「だ、大丈夫ですよ!四葉はきっと笑顔で帰ってきてくれますよ!」

 

三玖「だといいけど…………」

 

風太郎「…………一花、頼むから元に戻ってくれ………。四葉、無理をしないでくれ…………」

 

それぞれの思いを胸に、ドラゴンレーダーを取る為にカプセルコーポレーションに急ぐのであった……。

 

 

 

 

 

 

 

その頃、悟飯界王神と共にはダーブラとバビディの所にいた。目の前には魔人ブウが封印されている玉があった。

 

バビディ「ねえダーブラ。あの地球人に勝てる見込みはあるの?」

 

ダーブラ「ええ。先程は少々遊んでしまいましたが、今度は本気を出します」

 

魔術によって、既にバトルフィールドが外に変えられていた。

 

界王神「悟飯さんはダーブラの方をお願いします。私はバビディと戦います……」

 

悟飯「分かりました…!」

 

 

 

 

 

 

スタッ

 

悟飯が超サイヤ人に変身しようとしたその時、何者かがその場に降り立った。

 

悟飯「……!!!お前は…!!!!!」

 

バビディ「うん?今度はなんだ?」

 

ダーブラ「また雑魚が来たか」

 

セル「雑魚とは随分な言われ様だな…。自己紹介でもしているのかな?」

 

ダーブラ「なんだと…!」

 

なんと、その正体はセルだった。

 

セル「感じたことのある気だと思って来てみれば、やはり貴様らだったか」

 

ダーブラ「やはり…?」

 

バビディ「なんだって?お前とは一度も会ったことないけど?」

 

セル「気にするな。こちらの事情だ。貴様らは魔人ブウを復活させる気なのだろうが、そうはさせん。魔人ブウの復活だけはなんとしてでも阻止してみせる」

 

悟飯「……!(そういえば、あのセルでさえも魔人ブウは化け物だと称しているくらいだった…!それくらいに強いのか…!魔人ブウって…!!!)」

 




 なんというか……。私はどうやらこういうシリアス系を書いている方が筆が進むようです……。マジでこの話はすらすらと書けたもん…。性格悪いんだなぁきっと()
 しかも一花は原作よりも酷い目に遭っている気がする。これなら原作通り修学旅行で闇落ちするだけの方がまだマシだったんじゃないかレベルですよね。ちょっとやりすぎてしまったかもしれない……。

 ちなみに、四葉と一花が姉妹喧嘩をしている時に同時に悟空とベジータが戦っていますが、原作と同じ展開なのでそこは割愛します。

 ここでのポイントは、ブランコこいで『好きだったよずっと』のシーンはこの小説においてはカットしてたんですけど、敢えてこの場面に持ってきた点ですね。これは本当に拘りました。ね?私って性格悪いでしょ?w
 あともう一つ拘っているのが、ドラゴンボールで蘇生できることを知っていても尚、喪失感?悲しみ?を伴うように工夫している点ですかね。上手く表現できてるかは微妙ですが、ドラゴンボールで生き返れるけど悲しいと感じていただければなぁ…と思ってます。

 ちなみに四葉が死ぬ際のイメージbgmは『confession』です。『ひぐらしのなく頃に』で流れる切ないbgmです。『confession ひぐらし』で検索すればYouTubeで出てくると思います。多分ね。

ごときす尊い…。まずは王道(?)の四葉ルートからプレイしてます。


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第78話 魔人ブウ

 前回のあらすじ…。
 本来なら妹思いの長女で心優しい一花だが、バビディの魔術によって邪悪な存在になってしまった。四葉は暴走した一花を止めるべく、勇敢に悪意に立ち向かったが、一花の機転の利いた作戦によって命を落とした…。彼女は死ぬ間際に風太郎に告白をしたが、それは風太郎本人の耳には勿論、誰にも聞かれることはなかった…。


ダーブラ「魔人ブウの復活を阻止するだと?ならこのダーブラ様を倒してからにするんだな」

 

セル「いいだろう。貴様と戦うのはこれが2度目だからな。唾を吐いて相手を石にしたり、魔術を使用することは知っているから私には通用せんぞ?」

 

ダーブラ「なに!?何故そのことを…!!?」

 

ダーブラは教えていないはずの相手に自分の手の内が知られていることに驚いている。

 

セル「前は私が受けたダメージが蓄積されて魔人ブウが復活したが、今度はそうはさせん」

 

 

 

シュン‼︎

 

ドカッッ!!!!

 

ダーブラ「ぐっ……!!!」

 

セルは気を一瞬にして高めてダーブラに襲いかかった。ダーブラは突然のことに対処ができずに吹っ飛ばされてしまう。

 

セル「……!!」

 

ドゴォッ!!!!

 

ダーブラ「ぬっ…!!!!」

 

 

更にセルは瞬間移動を利用してダーブラを地面に叩きつけることを試みるが、ダーブラが地面に直撃する直前で突如姿を消した。

 

ダーブラ「かかったな!!」

 

ダーブラは魔術を使用してセルの目を欺いていたのだ。剣を出現させてセルに斬りかかろうとしたが……。

 

ドカッッ!!!!!

 

ダーブラ「ゲハっ…!!!!」

 

セルは振り返らずに手の甲をそのまま後ろに振ってダーブラの顔を打ちつけた。

 

セル「言ったはずだ。貴様が魔術を使えることを知っているとな」

 

ダーブラ「このぉ…!ぺっ!!」

 

ダーブラは唾をいくつか吐いてセルに当てようとするが…。

 

セル「はぁ!!」

 

カァァッ!!!

 

セルはそのうちの一つに気弾を当てた。すると気弾が段々灰色に変化し、石に変わる。

 

ダーブラ「馬鹿め!」

 

シュン‼︎

 

セル「こんな使い方もできるんだな、これが」

 

バキャ…!!!!!

 

ダーブラ「ぐあぁああッ!!!!」

 

なんと、セルは石になった気弾をダーブラの頭に叩きつけた。流石にダーブラの頭の方が頑丈だったのか、石は粉々になるが、ダーブラは頭を抑えている。

 

ダーブラ「貴様ぁ……!!!!」

 

バビディ「何してんだよダーブラ!!早くそのセミみたいな変なやつ倒しちゃってよ!!」

 

界王神「………よく分かりませんが、彼も我々と目的が一致しているようですね。私達はバビディを……」

 

悟飯「はい!」

 

バビディ「うわわっ…!!ま、待て!!」

 

悟飯「待つもんか…!!魔人ブウは復活させないぞ…!!!」

 

ボォオオオオッ!!!!

 

悟飯は超サイヤ人に変身して、バビディを始末しようと気功波を撃つ準備をする。

 

バビディ「待て待て!!お、おいダーブラ!!」

 

ダーブラ「バビディ様!!」

 

主人であるバビディの危機を察知してすぐに駆けつけようとするが……。

 

シュン‼︎

 

バビディ「なっ…!!!」

 

セル「おいおい……。どこに行くんだ?もう少し私を楽しませてほしいんだがな?」

 

セルがその行手を阻んだ。

 

バビディ「ちぃ…!!ならこれを見ろ!!!」

 

超悟飯「………!!?」

 

バビディは魔術を駆使して映像を生み出し、それを悟飯に見せる。

 

超悟飯「なっ……!!これは…!!!」

 

その映像には、四葉と一花の戦いが、最後までしっかりと映し出されていた。つまり、()()()()()()()()()()()()()()()()映像も流されるわけで……。

 

超悟飯「な、なんで…!なんで一花さんが四葉さんをッ…!!!!!」

 

バビディ「僕の魔術でちょちょっとね。イチカって子はフータローってやつに恋焦がれてたみたいだよ?そしてベジータが暴れた時にそいつが傷付いたもんだから殺意が露わになってね。そこで僕が目をつけたら、イチカは充分こちら側に引き込めることが分かったよ」

 

超悟飯「お前のせいか…!!!」

 

バビディ「ふひひひ……!!だから僕を殺さない方がいいよ?もし殺したら、きっとあの子も死んじゃうよ?」

 

超悟飯「なんだって…!!」

 

界王神「そんな魔術は聞いたことない…!!悟飯さん、ハッタリです!!」

 

バビディ「いーや、僕が新しく生み出したんだよ。僕が死んだら手下も死ぬようにね。スポポビッチがあっさりと爆発した感じでね」

 

と、バビディは魔術について丁寧に説明しているが、どこか焦っているようにも見える。実は手下を道連れにする魔術というのは全くのデタラメ。悟飯を食い止める為の嘘でしかないのだ。

 

超悟飯「貴様ぁ…!!よくも…!!よくも四葉さんを…!!!!!!」

 

バビディ「ちなみにあれは僕の仕業じゃないよ?あくまでもイチカの意志なんだからね!」

 

悟飯はセルやフリーザのような色々な極悪人に会ってきたが、ここまで狡猾で下衆な悪人とは出会ったことがなかった。悟飯は今までにないほどの怒りを感じ、今にもバビディを殺しそうになるが、一花を殺さない為になんとか我慢する。

 

だが、それも限界に近かった。

 

超悟飯「殺す……

 

 

 

ドォオオオオオオッ!!!!!!!!

 

界王神「!!!!?ッ」

 

セル「……!!!!!」

 

ダーブラ「な、なんだ……!!!?」

 

突然悟飯から発生した光の柱。それが天に伸び、金色の大きな柱が生成される。だが柱というのはあくまでも比喩表現であり、気があまりにも膨大であった為、オーラが縦に伸びているのだ。

 

界王神「な、なんてパワーだ…!!これほどまでだったとは…!!これなら、不完全な魔人ブウなら倒せるかも…!!!」

 

セル「とんでもないやつだ……。本気で怒らせるとこれほどまでにパワーアップをするとは……。私は恐ろしいやつを相手にしていたのだな…………」

 

超2悟飯「貴様を殺す…!!!!

 

バビディ「おや?ラッキー!パッパラパー!!!

 

超2悟飯「……!!!」

 

今の悟飯は、バビディに対して膨大な殺意を抱いている。それは邪心に近い感情である。即ち、バビディの術を悟飯に振りかけるのに丁度いい機会だったのだ。

 

バビディ「ひひひ…!!馬鹿め!そのまま僕の手下になっちゃえ!!」

 

バチンッ!!!!!

 

稲妻が走る音がすると、悟飯がもがき苦しむことはなくなった。

 

バビディ「な、なにぃ〜!!!?」

 

超2悟飯「お前程度の魔術なんて効くものか」

 

悟飯はオーラを縮小させることなく、そのままゆっくりとバビディに向かって歩み寄る。

 

バビディ「ま、待て待て…!!イチカが死んじゃうんだよ!!?それでもいいのか!?!?」

 

超2悟飯「じゃあなんでベジータさんについては言及しない?」

 

バビディ「……!!そ、それはあれだよ!えっと………」

 

超2悟飯「さっき言っていた魔術が実在するならベジータさんも死ぬはず。なのにお前は一花さんだけ死ぬと言った。それは何故か?答えは簡単だな。お前は俺に殺されるのを避ける為に、咄嗟にそれっぽい嘘をついたのさ」

 

バビディ「は、はたしてどうかな?嘘をついている証拠なんてどこにあるのかな?」

 

超2悟飯「これから証明すればいいだろう?」

 

悟飯は不敵な笑みを浮かべまると、バビディに向けて気功波を放つ準備をする。

 

超2悟飯「死ね、クズ野郎………」

 

 

 

 

 

 

ビーッ!ビーッ!!ビーッ!!!

 

バビディ「!!!?」

 

突如警報音が鳴り響いた。バビディはすぐにブウが封印されている玉の元に行き、エネルギーメーターを確認した。

 

バビディ「や、やったぞ!!ついに魔人ブウが復活だ!!!!」

 

界王神「な、なんだって!!?いくらなんでも早すぎる!!!」

 

超2悟飯「ベジータさんとお父さんが超サイヤ人を超えた力で戦っているんだ…。それなら納得だ」

 

界王神「何を呑気なことを言っているんですか!?魔人ブウが復活してしまいますよ!!逃げましょう!!!」

 

超2悟飯「何を言っているんですか?このまま破壊すればいいでしょう?」

 

界王神「えっ……?」

 

呆然とする界王神をよそに、悟飯は両手を揃えて腰を下げると……。

 

超2悟飯「かー…!めー…!!はー…!!!めぇぇええ…!!!!

 

ブウの玉をバビディごと葬り去るために、フルパワーのかめはめ波を準備する。

 

ダーブラ「ば、バビディ様…!!!!」

 

セル「ぬっ…!!!」

 

この危機的状況でダーブラがセルを切り抜けてバビディの元に到着する。

 

超2悟飯「波ぁああああああああああああああッッ!!!!!!!!

 

 

ズォオオオオオオオオオオオオオオオオッッ!!!!!!

 

 

悟飯の両手から巨大なかめはめ波が放たれた。ダーブラはバビディがその光に飲み込まれる前に、主人を投げ飛ばした。

 

バビディ「だ、ダーブラ!?」

 

ダーブラ「どうか、ご無事で………!!」

 

ゴォオオオオオオオオオオオオオッッ!!!!!!!!

 

ダーブラ「ぎゃああああああああああ……!!!!!!!!」

 

その直後、ダーブラは青白い巨大な光に一瞬にして飲み込まれて、肉片一つ残らずに消滅した。

 

それと同時に、魔人ブウの封印された玉もその光に飲み込まれた。

 

ドグォォオオオオオオオオオオオオオオオオオンンッッ!!!!!!

 

そして、魔人ブウの玉とダーブラを巻き込んだかめはめ波は、遥か遠くで大爆発を引き起こし、きのこ雲を発生させた。その雲を見るに、悟飯のかめはめ波の威力の強大さを物語っている。

 

バビディ「そ、そんな…!ダーブラも、魔人ブウの玉もない…!!」

 

界王神「は、はは…!はははっ!!残念だったなバビディ!お前の野望もここまでだ!!悟飯さんの圧倒的なパワーを前に、ダーブラと魔人ブウが封印された玉は完全に消滅した!!」

 

界王神は予想外の出来事に大喜び。棚から牡丹餅どころか、棚からホールケーキレベルの幸運であった。

 

セル「………!!違う!!!!

 

界王神「えっ?何が違うのですか?現に魔人ブウが封印されている玉は消滅しました」

 

超2悟飯「……確かに、セルの言う通り凄まじい気が…………」

 

界王神「ご、悟飯さんまで…!こんな時に冗談はやめてくださいよ!!」

 

セル「貴様、それでも全ての上に立つ界王神か?上をよく見てみろ」

 

界王神「えっ……?」

 

界王神はセルの言われた通りに上を見た。そこには、先程悟飯がかめはめ波を撃った余波によって発生したと思われる煙がまだ残っていた。

 

界王神「………?何も……」

 

界王神が何もありませんがと言いかけた時、違和感に気づく……。

 

モクモクと煙が不自然に1箇所に集まりだし、腕、足、胴体と見られる形が次々と現れ、次第に輪郭がはっきりしていく。

 

界王神「ま、まさか…!!そんな…!!!!」

 

 

 

ぽんっ!!

 

ブウーーーーーーーーッッ!!!!

 

今、最強にして最恐と言われていた魔人が復活した。

 

 

ズシンッ!!

 

具現化された体で重々しく着地すると、ブウは息を目一杯吸って吐く動作をする。久しぶりの外の空気を味わっているように見える。

 

バビディ「あ、あれが魔人ブウなのか…?」

 

しかし、その魔人というのが、どうにも威厳がなかった。全身はピンク色の肌をしており、頭部には小さい穴がいくつか開いており、触覚のような一本の突起物が生えている。

 

紫色のマントを羽織り、パンツのような白いズボンに、『M』と書かれたベルト。更に、黄色いグローブのようなものを身につけている。だが、やはり顔に威厳がない。どちらかというと、無邪気な子供のような表情である。

 

超2悟飯「ほ、本当にあれが魔人ブウなんですか……?」

 

界王神「そ、そうです…!忘れやしませんよ…!あの恐ろしい顔は…!!!」

 

 

バビディ「やっぱりアイツが魔人ブウなのか…!?」

 

 

超2悟飯「魔人って言うから、もっと大きいものだと………」

 

セル「見た目に惑わされるなよ。奴は破壊することと、食べることしか脳のないやつだ……。下手に刺激すると銀河系を滅ぼしかねん」

 

超2悟飯「そ、そんなに強そうかな…?なんとかなりそうだけど………」

 

セル「馬鹿め。やつは本気を出していないだけだ……。本気を出したブウを見た時、貴様は余裕の笑みを崩すことになるだろうな………」

 

セルは珍しく冷や汗を掻いている。その様子から、どうやら大袈裟に言っているわけではないことを悟飯は察した。

 

バビディ「お、おいブウ!僕は魔道士ビビディの息子のバビディって言うんだ!僕が君を久しぶりに蘇らせてあげたから、今日から僕が新しい主人だよ!」

 

そう話しかけられたが、ブウは少しバビディを観察した後に、そっぽを向いてまるでバビディの話を聞かない。

 

バビディ「お、おい!ブウ!挨拶をしろよ!こっちを向け!お前のご主人だぞ!!」

 

ブウ「バァアアッ!!!

 

バビディ「うわぁああ!!?」

 

ブウはしつこく話しかけるバビディに突然振り向き、変顔をして驚かせると、『カカカッ』と巨大に似合わぬ甲高い笑い声をあげる。

 

バビディ「こ、これは…。失敗だ……」

 

 

 

 

 

スタッ

 

超バーダック「……なんだこいつは?」

 

魔人ブウの凄まじい気を感じ取って、当初の予定では悟空とベジータの元に向かおうとしたバーダックだったが、急遽こちらに目的地を変更したようだ。

 

セル「ほう…。超サイヤ人を超えた貴様も来るとは丁度いい…。ここは一旦共同戦線を張るとしよう。孫悟飯もお前も魔人ブウの恐ろしさは理解しているはずだ………」

 

超バーダック「……よく分からねえが、予知で見たヤツに似ている…。こいつが災いの元凶か………」

 

セル「仕方ない……。まずはジュニアで様子を見るとしよう………」

 

そう言うと、セルは試しに2体ほどのセルジュニアを生み出して、魔人ブウに向かわせた。

 

セルジュニア「キキキキッ!」

 

セルジュニア「キキ〜!!」

 

ブウ「ん?なんだお前ら?俺と遊びたいのか?」

 

ブウはセルジュニアが近づいても同様することなく、むしろ無警戒にセルジュニアに近づく。

 

セルジュニア「キャアアア!!!」

 

ドカッッ!!!!

 

セルジュニア1の強力な蹴りが、ブウの巨大な腹にヒットした。威力はブウの腹が凹んでいることが物語っているだろう。

 

セルジュニア「キキキキッ…!!!」

 

セルジュニア「しゃあああ!!!」

 

セルジュニア2が同じくブウに接近し、頭、腕、足などあらゆる場所に打撃を加えていく。セルジュニア1も同様にブウに攻撃するが、今の所はブウは何もアクションを起こさない。

 

バビディ「ぶ、ブウ…?なにしてんだよ?君は最強の魔人じゃなかったのかい……?」

 

セルジュニア「ウキキキ…!!」

 

セルジュニア「デブ!ノロマ!」

 

セルジュニアはブウが手も足も出ないことを確認すると、馬鹿にするように笑い始めて、終いには悪口を連呼する。

 

ブウ「………」

 

すると、先程まで笑顔だったブウが、怪訝な表情をし始めた。

 

ブウ「カチーンッ!!」

 

そう言うと、ブウは謎のダンスを披露しつつセルジュニアの前に立ち直す。

 

セルジュニア「キキキキッ!!!」

 

セルジュニア「ウキャキャキャ!!」

 

セルジュニアはそんなブウの奇行を腹を抑えて笑っている。

 

 

ぽんっ!!

 

セルジュニア「ウッ!!?」

 

セルジュニア「キキッ!!?」

 

突如、ところどころに凹みがあった魔人ブウの体は元に戻り、それを見てセルジュニアは目を見開いて驚いている。

 

 

 

ぴーーーーーーーーーーっ!!!!!!!!

 

やかんのお湯が沸いた時に出るような甲高い音が鳴ると同時に、ブウの頭部と腕にある小さな穴から湯気のようなものが出続ける。数秒後にその湯気は収まったが………。

 

超2悟飯「あっ……!あぁ…………!!」

 

超バーダック「化け物がっ…!!」

 

セル「言っただろう……?とんでもない化け物だとな…………」

 

ブウ「にっ…!」

 

ブォオオオオオオオオッ!!!!!

 

ブウは走る動作をしてセルジュニアに接近する。

 

セルジュニア「きっ…!!」

 

セルジュニア1はあまりのスピードに咄嗟に身構えるが………。

 

ブウ「ほっ!!!」

 

ドスッ!!!!!

 

セルジュニア「あ…がが……っ!!」

 

なんと、腕を少し振るっただけでセルジュニアの体が裂けた。

 

セルジュニア「キキっ!!!!?」

 

セルジュニア2はその様子を間近で見て恐怖する。魔人ブウには敵わないことを本能で理解して逃亡を図るが……。

 

ブウ「お前、クッキーになっちゃえ!!」

 

ビビビッ!!!!

 

セルジュニア「ギャアアアアア!!!!」

 

セルジュニア2はブウの触手のような角から放たれた光線に当たると、体が固まって、なんとセルジュニア型のクッキーが爆誕した。

 

ブウ「ほほほい!!」

 

ブウはそれをうまくキャッチして、早速口の中に一口で放り込むと、バリバリと硬いものを噛み砕く音が聞こえ、少しするとゴクンと飲み込むような音が聞こえた。

 

ブウ「ぷはぁ……!!!」

 

バビディ「す、素晴らしいよ!魔人ブウ!!」

 

 

 

 

 

 

超2悟空「おいベジータ…!魔人ブウの気が突然膨れ上がったぞ…!!オラ達はとんでもねえ化け物を生み出しちまったんだ…!!このままじゃ…」

 

超2ベジータ「知ったことか。俺達の勝負には関係ない」

 

ベジータと悟空は、あれ以来ずっと二人で戦っていた。2人とも本気でやり合っているからだろうか、お互いに体も服もボロボロになっており、互いに出血している。

 

超2悟空「このまま放っておいたら、ブルマもトランクスもみんな殺されちまうぞ!!」

 

超2ベジータ「くっ……!!黙れ!!!俺は甘さを掻き消す為にバビディに魂を売ったんだ…!!!誰がどうなろうと構わん!!!」

 

超2悟空「………嘘だ。おめぇは完全にバビディに魂を売ったわけじゃねえだろ?」

 

超2ベジータ「……………」

 

ベジータは悩むような仕草をして、苦渋の決断をするように、『わかった』と言い、こう続ける。

 

超2ベジータ「勝負はお預けだ。どうやら貴様は魔人ブウが気になって集中ができないらしいからな………」

 

超2悟空「ベジータ……!!」

 

ようやく納得してもらえて、悟空は嬉しそうな表情をしつつ、ポケットに手を突っ込んだ。

 

超2悟空「どうやら向こうにはセルに悟飯に、もう一つデケェ気を持っているやつがいる。みんなでやればどうにかなるぞ…!」

 

その隙に、ベジータが悟空の頸目掛けて思いっきり両腕を振り下ろした。

 

超2悟空「…………!」

 

悟空の意識は一瞬にして持っていかれ、超サイヤ人状態が解除されて素の黒髪に戻ってしまった。その際に落とした仙豆をベジータは一粒食べ、怪我や疲れを全快させた。

 

超2ベジータ「流石の貴様も隙をつかれてはどうしようもなかったようだな……。俺が出してしまった魔人ブウは俺が片付ける。貴様との決着はその後だ」

 

ベジータは既に気を失っている悟空に語りかけるようにそう言い、悟空に背中を向けて飛び立つ。

 

超2ベジータ「………その時にまだ俺が生きていたらの話だがな…………」

 

ベジータがそう呟いた時には、既に悟空の元を去っていた。

 

 

 

 

 

 

バビディ「さ、さあ魔人ブウよ!僕の言うことを聞け!」

 

ブウ「べー!」

 

ブウは相変わらずバビディに従う気はないようだが、次の一言でブウは一気に従順になった。

 

バビディ「そんな態度を取ってていいのかな?僕は君を封じ込める呪文を知っているんだぞ?またあの中には入りたくないだろ?」

 

ブウは必死に首を縦に振り、バビディの機嫌を取ろうとしていた。

 

バビディ「ふははは!!それでいいんだよそれで!」

 

 

 

超2悟飯「まだブウは子供みたいなものじゃないですか…?これなら、バビディさえ倒してしまえばそう無茶なことはしないんじゃ…?」

 

セル「馬鹿か貴様は。あいつは破壊と食べることしか考えてないと言ったはずだ。ヤツはそういう生き物なのだ」

 

界王神「この人の言う通りです…!それにバビディがいなくなってしまえば、二度とブウを封じることができなくなってしまいます…!!バビディが手に負えなくなって封じるのを待つしかありません…!!!」

 

超2悟飯「…………」

 

界王神「私は界王神でありながらどうすることもできない自分が悔しくて仕方がありません……。こんなはずではありませんでした……。バビディを倒し、魔人ブウの復活を止める自信があった…!」

 

界王神は次々と後悔を口にする。

 

界王神「こんなことなら、あなた達のように人間でありながら、これほどまでに私の力を大きく超えていることが分かっていたなら、あの方法もあったというのに……!!!!」

 

超2悟飯「えっ…?あの方法って……」

 

バビディ「さあ魔人ブウ!最初の命令だ!あの2人を殺すんだよ!!」

 

悟飯が界王神の意味深な発言を聞こうとしたが、バビディが悟飯と界王神を殺すように指示する声が聞こえたので、悟飯は戦闘態勢になるが……。

 

界王神「いくら悟飯さんでも敵いっこありませんよ!!ここは一旦引くべきです…!!!」

 

超2悟飯「……分かりました!!」

 

悟飯はブウに立ち向かおうとしたが、界王神の安全を考えて一旦引くことを決意する。

 

超2悟飯「こっちです!」

 

悟飯は界王神の手を引きながら全速力でブウから離れるために飛ぶ。

 

超2悟飯「スピードには自身があるんです…!!大丈夫!そうすぐには追いつけるはずがありません!!」

 

 

 

 

 

ピタッ

 

ブウ「ばーーっ!!!!」

 

自信満々にそう言った直後、悟飯と界王神の前にブウが現れた。超サイヤ人2に変身した悟飯を遥かに凌駕するスピードを持ち合わせていたのだ。

 

超2悟飯「そ、そんな……!!」

 

ブウ「お前、邪魔」

 

ドカッッ!!!!!

 

超2悟飯「ぐわっ!!!!!」

 

ブウは悟飯をあっさりと地面に叩き落とすと、次は界王神の方を見る。界王神はこの状況に絶望しかけるが、なんとか抵抗しようと気合を当てるが…。

 

ブウ「……にぃ」

 

ブウが糸目を開け、不気味な笑みを浮かべながら界王神に気合のお返し。自身のそれよりブウの方が火力が高かった為、界王神はあっさりと吹き飛ばされた。

 

界王神「くっ…!!!」

 

空中で踏み留まることはできたが、目の前にブウが現れ………。

 

ブウ「ほい!!!」

 

バチンッ!!!!!

 

界王神「あがっ…!!!」

 

両手で挟まれるように叩かれた後に、あっさりと地面に叩きつけられた後にブウが容赦なく倒れた界王神相手に全体重をかけてのしかかる。

 

界王神「かはっ……!!!!」

 

バビディ「いいぞいいぞ魔人ブウ!そのまま界王神を殺しちゃえ〜!」

 

ブウ「ほほーい!」

 

ブウはそのまま触手型のツノを界王神に向けると、何かしらのお菓子にするつもりなのか、光線を放つ準備をする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドゴォォオオッッ!!!!!!

 

バビディ「ああ!!?お前ぇ…!!!」

 

間一髪のところで悟飯の蹴りが炸裂した。それによってブウは少し吹っ飛ぶが、すぐに体勢を立て直した。凹んだ顔もすぐに元通りになった。

 

超2悟飯「(なんてことだ…!手応えが全くない…!!!)」

 

セルゲーム時よりも強くなったはずの悟飯の攻撃もブウには無力に等しかった。セルが化け物と称する魔人はそれほどまでに強かったのだ。

 

ブウ「お前、邪魔だな。死んじゃえ」

 

無邪気な顔のままブウは悟飯を殺す為に気功波を放つ。なんでもない気功波だが、これは悟飯にとってはとてつもない威力を孕むものであった。

 

超2悟飯「……!!!」

 

それに加え、避けようにもスピードも速すぎる。威力もでかいので弾くこともできない。悟空のような瞬間移動という手段も、バビディのように魔術を使えるわけでもない悟飯は……。

 

超2悟飯「ぐわぁああああああッッ!!!!!!!」

 

なす術もなく、ブウの攻撃を受けるしかなかった………。悟飯はそのままブウの気功波に押されて宇宙空間に押し出されるものだと思われたが……。

 

ドグォォオオオオオオオオオンッ!!!!!!

 

途中で爆発が発生した。悟飯は大ダメージを受けながらも、まだ行動可能だったようだ。

 

超2悟飯「はぁ……!はぁ………!危なかった…………」

 

ブウ「むっ…!お前、しつこい!」

 

バビディ「全く、誰だよ!邪魔をしたのは!」

 

セル「私だ」

 

ブウ「ん?」

 

ドゴォォオオッッ!!!!!

 

ブウ「ぶああッッ!!?」

 

セルの蹴りによってブウは大きく後退するが、少しするとなんともなかったかのように起き上がり、顔の凹みを修復した。

 

セル「孫悟飯。ここは共同戦線だ。我々は今争っている場合ではない」

 

超2悟飯「………そのようだな」

 

超バーダック「俺も本気を出す必要がありそうだな…!!!」

 

ボォオオオオッ!!!!!

 

バーダックはブウの恐ろしさを目の当たりにしたので、全力を出す為に超サイヤ人2に変身する。セルもただ金色のオーラからスパークを纏った金色のオーラに変化させて気を上昇させる。

 

ブウ「お前らまとめてみーんな殺してやる!」

 

セル「やれるものならやってみろ……!究極生命体はそう簡単には死なんぞ?」

 

超2悟飯「(ヤツをこのまま放っておけば、みんな殺されてしまう…!!ここでケリをつける!!)」

 

超2バーダック「(すまねえ、ギネ。生きて帰れねえかもしれねぇ…)」

 

それぞれの思いを胸に、魔人ブウに対抗するべく3人の戦士達が立ち上がった。この3人で協力すれば、ブウを打ち倒すことはできるのだろうか…?

 




 今回は悟飯のパワーアップ、四葉の死を知ったことによってダーブラが死ぬタイミングが微妙にズレましたね。そしてセルとバーダックも加わることによって、原作とは少々違った形になります。
 今回は少々強い悟飯を意識していますが、それでも相手が相手なので今の段階ではあまりいい活躍は期待できないですね……。ちなみに次回は共闘回になりますけど、戦闘力はあまりはっきりしていないので計算はわりと雑になっているのでご了承ください。
 一花サイドは次々回になる予定です。


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第79話 圧倒的な強さ

 前回のあらすじ…。
 なんとか阻止しようとしていた魔人ブウの復活。ところが、悟空とベジータの戦いが影響して予想よりも早い段階で魔人ブウが復活した。セルジュニアは一瞬で殺され、超スピードで退避しようとした悟飯にも瞬時に追いつくほどの驚異的なスピードも持ち合わせていた。悟飯1人では間違いなく敵わない魔人ブウだが、セルとバーダックと共に協力をすれば、目の前の強敵を倒すことができるのだろうか……?



バビディ「なんだ?3人で挑めば魔人ブウに勝てると思ってるのかい?無駄だよ。ブウの強さは分かっただろう?諦めて潔く殺された方が楽かもよ?」

 

セル「お断りだね…。ようやく好条件の世界を見つけたのだ。みすみす手放すわけにはいかん」

 

バビディ「何を言ってるのかよく分からないけどしつこい奴らだね。やっちゃいな、ブウ」

 

ブウ「ほほーい!!!」

 

セル「……お前ら、目を瞑れ」

 

セルの指示通り、悟飯とバーダックは目を瞑ると、セルは両手を頭に添え…。

 

セル「太陽拳ッッ!!!!!

 

ブウ「!!?っ」

 

バビディ「うわっ、眩しっ!!」

 

セルの頭部から強烈な光が発生し、ブウとバビディは一時的に視界を奪われることになった。

 

バビディ「お、お前ぇ…!一体何をしたんだぁ…!」

 

セル「お前ら、精一杯気を溜めろ。奴は私のように核さえ消せばいいわけではない。ヤツの再生能力は私のそれの完全なる上位互換だ。細胞一つさえ残っていればたちまち再生する」

 

超2悟飯「なんだって……!!?」

 

セル「だから地球の一部を壊すつもりでやれ。さもなくば、お前もお前の大切な存在も皆殺しにされるだろうな…」

 

超2バーダック「………やってやるよ。俺が運命を変えてやる…!!」

 

バーダックは気を精一杯解放し、自身の究極奥義であるスピリッツキャノンの準備をする。

 

悟飯もその様子を見て、同様にかめはめ波を生成し、それを肥大化させていく。だが、ここである違和感に気づく。

 

超2悟飯「お、おい!お前は…!!?」

 

セル「私は少しブウを追い詰める。ブウがダメージを受けている時、その傷を回復させる前にお前らの技を放て。そうすれば奴を倒せるかもしれん…」

 

超2悟飯「…………分かった」

 

セルはトドメを2人に任せてブウの前に移動する。

 

ブウ「むむっ…!お前!さっきはよくもやったな!」

 

バビディ「くひひ…!僕達の目を奪った隙に逃げればいいものを…!」

 

セル「逃げたところで地球が破壊されれば同じようなものだ」

 

バビディ「そうかい!無駄な抵抗だとようやく理解したか。ブウよ、さっさとそいつを殺してしまえ〜」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドグォォオオオオオオオオオンッッ!!!!!!!

 

バビディ「うえええ!!!?」

 

超2悟飯「な、なんだ!!?」

 

超2バーダック「こいつは………」

 

突如、地面が大爆発をした。バビディの宇宙船が何者かによって破壊されたようである。

 

セル「ふはははっ!!流石サイヤ人と褒めてやりたいところだ。ベジータ」

 

超2ベジータ「ふん。貴様もいたとはな」

 

バビディ「べ、ベジータ!?」

 

宇宙船をぶち壊したのはベジータだ。これによって、悟飯、ベジータ、セル、バーダックという現在地球にいるメンバーの中でも最強クラスの4人が集結した。

 

セル「ベジータ。貴様もヤツの恐ろしさは分かっているはずだ。今バーダックと悟飯に気を存分に溜めさせている。私がブウをある程度追い詰めてから消し飛ばす作戦だ。お前も協力してくれるか?」

 

超2ベジータ「断る。あいつは俺がだしてしまったんだ。誰の手も煩わせん」

 

ベジータは無理矢理悟空と勝負してしまったせいでブウが復活したことに責任感を感じているようだった。

 

セル「馬鹿か…!!あいつの強さが分からんのか…!!?」

 

超2ベジータ「ああ。分かってるさ。俺じゃ敵わないことぐらいはな」

 

セル「なら何故………。もしや、サイヤ人の血か?」

 

超2ベジータ「まあ、そんなところだ」

 

セル「………じゃあいい。この4人の中で私を除けば貴様が最も大きな気を持ち合わせている。お前は勝手に動くがいい。私も勝手に動かせてもらう」

 

超2ベジータ「好きにしろ」

 

ドシューンッッ!!!

 

セルと話し終えると、ベジータはいきなりブウの顔に蹴りを深く突き刺す。

 

バビディ「うわぁ!?ブウ!!?」

 

今まで感じたことのない衝撃にバビディはブウが敗れてしまったのではと危惧してしまうが……。

 

ブウ「………」

 

何事もなかったかのように顔の凹みを修復する。

 

ガシッ…!

 

ブウ「ほお!!?」

 

超2ベジータ「だぁあああッッ…!!!!」

 

ベジータはブウの角を掴むと、それを引っ張ってブウの体をこちら側に持ってくる。そして殴る。ブウの角が伸びてまた縮んで体ごと戻ってくるが、またベジータが殴って伸びる。しばらくその繰り返しだった。

 

セル「……今は善戦しているが、ヤツが本気を出せば………。ベジータがここにいたのは幸運だった………」

 

ベジータの戦いぶりを少し観察したセルは、そのまま気を収縮させる。スパークを伴った金色のオーラが、ただの金色のオーラに変化する。

 

超2悟飯「セルのやつ…!何をしているんだ……!!?」

 

超2バーダック「………あいつはなんの考えもなしに行動するようなやつではない。恐らく、何か策があるんだろう………」

 

 

超2ベジータ「オラァ!!!!」

 

ドォォオオオンッ!!!!

 

何回か一連の動作を繰り返したベジータは、乱暴にブウを投げ飛ばすと、激突した岩山が崩れ、ブウは瓦礫の山に埋もれた。

 

バビディ「ぶ、ブウ!!?」

 

その様子にバビディは狼狽える。もしもブウがやられてしまったら、今度は自分の番なのだ。相手はどいつもこいつもダーブラを超えているであろう戦士達の集まりだ。バビディがいくら魔術の天才といえど、その戦士達に太刀打ちできるほど強くはない。

 

 

 

ガラッ…

 

しかし、ブウはこれまた何ともない様子で瓦礫の山を抜け出すと、遊び相手ができた子供のようにはしゃぎながらこう言う。

 

ブウ「お前、なかなか強い!もっと俺と遊べ!」

 

超2ベジータ「それ以上汚い口を開くな。この不細工野朗」

 

ブウ「ブサイク?なんて意味だ?」

 

バビディ「醜くてみっともない顔って意味だよ」

 

ブウ「………」

 

ブウがベジータの発言の意味を理解すると、少し湯気を出して手を振り回す。

 

ブウ「お前、俺の悪口を言ったな?もう許さないぞ!」

 

超2ベジータ「…………」

 

ベジータはブウに返答することなく、右手から膨大な気が凝縮された気功波を放つと………。

 

 

バチッッ…!!!!!

 

 

ブウ「ぎゃっ…!!!!!!」

 

その気功波はブウの腹を貫通した。

 

バビディ「なっ…!!!?なにぃ〜!!!!?」

 

超2ベジータ「ふっ………」

 

攻撃が決まってニヤけたベジータだったが、ブウは特に痛がる素振りもなく起き上がると、大きな穴の空いた腹を一瞬にして塞いだ。

 

超2ベジータ「ちっ…………」

 

ブウ「………今のは、ちょっと痛かったぞ。へへ………」

 

 

 

超2悟飯「………!!!!」

 

超2バーダック「やべぇぞ…!!!」

 

 

セル「ちっ…。もう少し瞑想をしたかったのだが………」

 

 

ブウ「お前なんか…………」

 

バビディ「ぶ、ブウ…?何を……?」

 

先程のベジータの攻撃がそれなりに効いたのか、顔に青筋を浮かべたブウは気を急激に解放し始める。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ブウ「嫌いだぁぁああああああああああああッッ!!!!!!!

 

 

 

 

ドグォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!!!!!!

 

 

 

 

 

 

超2悟飯「うわっ!!!!」

 

超2バーダック「伏せろ!!!!」

 

セル「くっ…!!」

 

バビディ「ば、バリヤ〜!!」

 

超2ベジータ「うお……!!?」

 

 

 

ブウは気を解放することによって、周辺を大爆発させる。あまりにも突然の出来事に、悟飯とバーダックは伏せることしかできなかった。セルはどこで覚えたのか分からないが、瞬間移動を用いて一時的に避難した。ベジータはブウのすぐそばにいたのでそのまま被弾した。一方で、バビディは魔術によるバリアを張ることによって窮地を凌いだ。

 

 

 

 

 

 

 

超2悟飯「………お、収まったか…?」

 

周りが静かになったことを確認した悟飯は、そっと起き上がる。するとそこにはスカッとした表情のブウと、息が荒いバビディ、傷だらけのベジータがいた。

 

超2悟飯「べ、ベジータさん…!!」

 

超2バーダック「待て。俺らの目的を忘れたか?」

 

超2悟飯「で、でも…!あのままじゃベジータさんが……!!」

 

超2バーダック「構うなッ!!ここで攻撃するチャンスを見逃せば、恐らく俺達は皆殺しにされるぜ?これがラストチャンスなんだ。こっちに集中しろ」

 

超2悟飯「くっ………」

 

悟飯はベジータを助けたい気持ちを抑えて、かめはめ波のチャージを再開した。先程のブウの攻撃によって大分乱れてしまったが、立て直すのにそこまで時間はかからなかった。

 

 

 

ブウ「ほほほう!ほほほう!」

 

バビディ「ふひひひひ!ベジータめ!ザマァ見ろ!僕の命令に逆らうからだよ〜!」

 

超2ベジータ「くっ………!あっ…!」

 

 

シュン‼︎

 

ブウ「うん?」

 

無抵抗のベジータを今まさに攻撃しようとしたブウだったが、セルが瞬間移動で戻ってきたことによって注意がそちらに引かれる。

 

セル「まさかあんな攻撃を仕掛けてくるとは……。だが準備はできた。究極の生命体であるこの私が、貴様を倒してやろう。光栄に思うがいい」

 

バビディ「ふん!お前も馬鹿だね!!魔人ブウの恐ろしさがまだ分からないのかい?」

 

バビディにベタ褒めされて鼻を伸ばすブウ。この様子だけを見るなら、ちょっとでかい子供のようだ。しかし、その正体は破壊と殺戮を楽しむ魔人だ。

 

セル「最初から知っていたさ。だから私は瞑想していたのだよ」

 

そう言うと、セルは気を解放する。相変わらずスパークを纏わないただの金色のオーラだが、一瞬にしてその金色のオーラが赤色が混ざったものに変化する。

 

セル「(スーパー)界王拳ッ!!!!

 

 

ギャウウウウウッッ!!!!

 

 

バビディ「な、なんだ……!!!?」

 

そのまま気を上げるだけではブウには敵わない。だからセルは界王拳を使うことにしたのだ。

 

セル「10倍だぁあッッ!!!!」

 

ドォオオオオオオオオッ!!!!!

 

 

 

超2悟飯「!!?」

 

超2バーダック「これは…!いけるのか…!!!?」

 

 

セルはいきなり10倍に引き上げ、一瞬でブウの後ろに回り込むと…。

 

 

ドカッッ!!!!

 

ブウ「ぶあっ…!!!」

 

まずは蹴りを入れてブウを空中に飛ばすと、セルは先回りをしてブウを地面に叩き落とし……。

 

 

ドゴォォオオッッ!!!!!

 

 

ブウ「ふおおっ!!?」

 

重力を併用した蹴りを食らわせる。

 

ブウ「ふん!!」

 

拳を振るったが、ブウの拳は空を切るだけだった。

 

ドカッッ!!!

 

ブウ「!!?」

 

 

ガガガガガガッ!!!!!

 

 

セルが連続でブウの顔に拳を叩きつける音が辺りに響く。その様子を見て、バビディは焦るが、ブウは顔を赤くして湯気を口から吐き出すが、セルは吐き出される直前で引いた。

 

ブウ「お前確かに強い。でも、俺には勝てない!」

 

セル「それはどうかな?」

 

 

ゴゴゴゴゴゴゴゴッ…!!!

 

セルの気が更に上昇することによって地響きが強くなる。

 

セル「瞬間的に出せるパワーはまだまだこんなものではないぞ?」

 

 

11,12,13,14……………

 

 

界王拳の倍率は更に増していき、ブウと互角の気の大きさになる。

 

 

超2バーダック「どっちも化け物か…!!」

 

超2悟飯「そ、そうか…!界王拳は精神を統一する必要がある……!!だからあんなところで瞑想を……!!!」

 

 

セル「20倍だぁああああああッッ!!!!!!!

 

 

ブォオオオオオオオオオオオオッッ!!!!!!

 

 

セルは自身の限界である20倍にまで引き上げることに成功した。これでブウの戦闘力を上回ることに成功したわけだが………。

 

セル「(くっ…!やはりまだ瞬間的にしか出せん…!!継続的に引き出すのは10倍が限界か…?)」

 

やはり強大な力にはデメリットが存在するようで、20倍はほんの短時間しか使えなさそうだ。

 

セル「短期決戦といこうじゃないか!!!」

 

 

ドゴォォオオッッ!!!!

 

 

セルはブウを上空に殴り飛ばすと、追ってブウの腹に蹴りを入れる。圧倒的なパワーにブウの腹は耐えられなかったようで、大きな風穴が開く。

 

ガシッ

 

セル「まだまだ……!!!」

 

セルはブウの目にも追えないほどの速さで至る所に強力な打撃を与えていくと、ブウの体にもようやく傷が現れ始める。それでもセルは未だに攻撃をやめずに続行する。

 

セル「ぶらぁああッッ!!!!」

 

ドカッッ!!!

 

ブウ「ぶぅぅ…!!!」

 

一連の動作をしばらく行ったセルは、両手をブウに叩きつけて、空から突き落とす。

 

セル「はっ!!!!!」

 

ギャウウウウウッッ!!!!!

 

更にセルは界王拳を駆使して落ちるブウを追い………。

 

ドゴォォオオッッ!!!!!!

 

ブウ「ぐおおあっ…!!!!!」

 

ブウの顔に足を突きつけ、ブウの落下速度を加速させる。ブウが地面に叩きつけられることを確認したセルは…。

 

セル「はぁあああッッ!!!!」

 

気弾を連射する。気弾一つ一つには力が篭っており、スピードも無茶苦茶速い。今のブウにはとても避けられるものではなく、なす術もなく攻撃を受け続けるしかなかった。

 

ギャウウウウウッッ!!!!

 

セル「……!」ガシッ

 

ぼろぼろになったブウを掴み、悟飯とバーダックの方に投げつけると……。

 

超2悟飯「……!!!今だッッ!!!!!!」

 

超2バーダック「死にやがれッッ!!化け物がぁあああああッッ!!!!

 

 

ドンッッ!!!!!!!

 

 

超2悟飯「波ぁああああああああああああッッ!!!!!!!!

 

ズォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッ!!!!!!!!!

 

 

こちらに飛んでくるブウ目掛けて、2人の必殺技が容赦なく放たれる。

 

 

バチッッ!!!!!!

 

 

ブウ「ぶわぁあああああ!!!!?」

 

2人の技に接触すると、ブウは悲鳴をあげながらセルの方に押し出されていく。セルもそれを黙って見過ごすわけではなく………。

 

 

セル「かー…!!めー…!!はぁぁあ…!!!めぇぇええ…!!!!」

 

 

界王拳の効果でかめはめ波が高速で生成され、肥大化のスピードも尋常なものではなかった。

 

セル「波ぁああああああああああああああああッッ!!!!!!!

 

セルの両手からも青白い光が放たれる。

 

ブウ「………!!!!!」

 

セルのかめはめ波と、悟飯のかめはめ波&バーダックのスピリッツキャノンがブウを挟むように身を削る。

 

ブウ「ぶわぁあああああああッッ!!!!!!!

 

 

 

ドグォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンンッッ!!!!!!!!

 

 

しばらく3人の技が拮抗した後、膨大なエネルギーに耐えきれずに大爆発を起こした。

 

 

シュイン…

セル「はぁ………はぁ………………はぁ……………………」

 

20倍界王拳の反動が大きかったのか、セルは大きく息を切らしながら界王拳を解除した。

 

 

超2バーダック「…………やったか?」

 

超2悟飯「ど、どうでしょうか………」

 

 

 

しばらく経って煙が晴れると、ブウの影は確認できなかった。悟飯とバーダックは辺りを飛んで確認するが、ブウの破片と思われるものも確認できなかった。

 

超2バーダック「こいつは………」

 

超2悟飯「や、やった…!!勝ったんだ…!!!!」

 

セル「くっ……!予想以上の反動だ…。これでヤツを倒せてなければ……」

 

バビディ「そ、そんな…!!ブウ!!!!!返事しろ〜!!!!!」

 

大声でブウを呼ぶが、返事をする声が聞こえることはなかった。

 

バビディ「そ、そんなぁ……。ぼ、僕の魔人ブウがぁ……………」

 

 

 

 

 

 

 

モクモクモク…

 

セル「な、なにッッ!!!!?」

 

超2悟飯「……!!!!!!」

 

超2バーダック「う、嘘だろ……?」

 

 

目に見えない大きさの破片が残っていたのか、不自然にピンク色の煙が浮上し、体の形を形成して………。

 

 

 

ポンっ…!

 

ブウ「………………」

 

明らかに激怒しているブウが復活した。

 

 

セル「な、なに……!!20倍界王拳のかめはめ波に、あの2人の全力の気をぶつけても倒せないというのか!!?」

 

シュン‼︎

 

セル「うおッ…!!?」

 

青筋を浮かべ過ぎて今にも顔が破裂しそうなブウがセルの目の前に現れた。

 

ブウ「ほぉおおおおおおおおッッ!!!!!!!」

 

ズォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッ!!!!!!!

 

予備動作なしでブウの口からエネルギー砲が放たれた。至近距離からそれをくらい、なおかつスタミナを大分消費したセルは避けることも防御することもできずに…………。

 

セル「そ、そんな……!!!バカなぁあああああああああああッッ!!!!!!!!!!」

 

 

ドグォォオオオオオオオオオオオオオオン!!!!!

 

 

呆気なく消滅してしまった……。

 

 

超2悟飯「なっ……!!セルが…!!」

 

シュン‼︎

 

ドゴォォオオッッ!!!!!!

 

超2悟飯「ギャアアアアアッッ!!!!!ぐあっ…!!!」

 

今度は悟飯の目の前に突然現れたと思ったら、悟飯の右腕がへし折られた。痛みに堪えきれずに叫ぶ悟飯を容赦なく乱暴に髪を掴むと……。

 

ブウ「お前も死ねッッ!!!!!」

 

 

ズォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッ!!!!!!!!!

 

 

超2悟飯「ぐわぁああああああああああああああああああッッ!!!!!!!!!!

 

もう片方の腕から放たれた強烈なエネルギー砲を至近距離から食らった。そのままエネルギー砲に身を任せるようにして悟飯は吹き飛んでいく……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その時、悟飯にとって()()()()()()のことを思い出していた……。

 

悟飯にとっては、五つ子は特別な存在であり、特に悟飯に告白をした3人は悟飯が恋愛に興味を持つきっかけになった。3人からの告白を受け、長い期間を経てようやく悟飯なりの答えを出すことができた。そんな彼女を守ろう。絶対に悲しませたりはしない。学園祭にその子に告白の返事をしよう。そう考えていた。

 

ところが、今は魔人ブウのエネルギー砲によって生死を彷徨っている状態。生きてその子の前に帰ってこれるか分からない状態であった。悟飯がエネルギー砲の威力に耐えきれず、意識を失った…………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『………め…す…………ちゃ………です…』

 

(……ん?誰だろう…?誰かが僕に何かを言っている………)

 

『孫さん。あなたはまだこっちに来ちゃダメです』

 

(ま、待って…!!君は…!!!)

 

悟飯の意識が暗黒に落ちた中、見覚えのある少女が目の前に現れた。その子は悟飯の特別な子に酷似した容姿をしているが、あの子とはまた別の人物。その子の頭には、天使を連想させる輪っかが存在していた。

 

『あなたは私と違ってみんなを守れる力があります。どうか、私の分までみんなを守って下さい……』

 

悟飯はその子に押し戻された。意識せずとも浮いていたはずの体がどんどん落ちていく……。

 

(待って…!なら君も……!!!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

超2悟飯「ぐぅッ…!!!!」

 

悟飯はなんとか意識を持ち直したものの、エネルギー砲に押し出される現状を変えることは難しかった。

 

超2悟飯「ダメだ……!!ここで死ぬわけにはいかない…!!()()にも頼まれたじゃないか……!!!ここで、死ぬわけには、いかないんだぁああああああッッ!!!!!」

 

 

 

ドグォォオオオオオオオオオオンッ!!!!!!

 

 

 

悟飯は自身に残らせた力を最大限に使ってエネルギー砲を爆破させた。これでようやく悟飯はエネルギー砲から解放されたのだが、もう飛ぶ力も残っておらず、重力に従って落ちていく……。

 

悟飯「みん……な……………

 

完全に力を使い果たしたことによって超サイヤ人の状態を維持できなくなり、本来の黒髪に戻る。地面に落ちると、悟飯はゆっくりと意識を落とした…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

超2バーダック「クソ野郎…!ふざけやがって…!!」

 

ブウ「あとはお前だけか?」

 

セルも悟飯もブウに完封されてしまった。残るはバーダックとベジータのみであるが、ベジータの状況を見るに、まともな戦力になるのはバーダックしかいないが、バーダックだけではとてもじゃないがブウには太刀打ちできなかった。

 

バビディ「ひひひ!流石魔人ブウだよ!手強いあの2人もあっさりと倒しちゃったもんね〜!」

 

超2バーダック「くそ…!はぁあッ!!!」

 

バーダックは無駄だと理解していたが、ブウに向けて1発のエネルギー砲を撃つ。

 

ブウ「何だ今の?痛くも痒くもないぞ?」

 

当然のようにブウには効かなかった。

 

超2バーダック「だりゃあッッ!!!!」

 

ドゴォォオオッッ!!!!

 

今度は物理攻撃。ブウにアッパーを見事にくらわせたが……。

 

ブウ「ニヒヒ」

 

やはり効かなかった。

 

ブウ「ほっほっほっ!!」ポワッ‼︎

 

超2バーダック「……!!そいつは…!!!」

 

バーダックはブウが出したものを見て目を見開いて驚いた。何故か目の前の怪物が自分の究極奥義を扱おうとしているではないか。一度しか見せていないというのに、ここまで精度よく真似できるものなのだろうか……?これもまた、最強の魔人故の規格外のスペックなのかもしれない……。

 

ブウ「ほい!!」

 

ドンッッ!!!!!!!

 

ブウのはバーダックの見様見真似で再現をしたスピリッツキャノンを放った。

 

バチッッ…!!!!!

 

超2バーダック「自分の技でやられてたまるかよ……!!!!!」

 

度を超えたスピードで避けることは難しいと判断したバーダックは、思い切って受け止めるか弾くことにした。しかしパワーがありすぎて弾くことは難しかった。

 

超2バーダック「ぐぬぬぬっ……!!」

 

バーダックはなんとか堪えようとするが、どんどん後ろに押し出される。気を更に解放してもこの状況に変わりはなかった。

 

ブウ「お前、しぶといな。これならどうだ?」

 

そう言うと、ブウは両手を添えてあるポーズを取った。

 

超2バーダック「……!!そのポーズは…!!!」

 

ブウ「ほぉおおおうっ!!!!!」

 

ズォオオオオオオオオオオオッッ!!!!

 

掛け声こそ本家のそれとは全く別のものであったが、技自体はかめはめ波と遜色なかった。

 

超2バーダック「ぐぁあああああああああッッ!!!!!!

 

スピリッツキャノンに加えてかめはめ波も受け止めることは流石にできずに技に飲み込まれてしまう。

 

超2バーダック「あ……が………ガッ……!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

『なんだ?怖い顔してもちっとも怖くないぞ?』

 

『これが超サイヤ人を更に超えた超サイヤ人を更に超えた、超サイヤ人3ってところかな………』

 

眉毛がなくなり、やたらと髪が長くなった悟空………。

 

『パンパカパーン!!正義の味方ゴテンクス様の登場だぜ!!!』

 

誰だか分からないが、同じく超サイヤ人3に変身している少年に……。

 

『良かった……。なんとか間に合ったみたいだな……………』

 

超サイヤ人に変身していない孫悟飯だったが、何故だか目の前の化け物を圧倒している孫悟飯。

 

 

 

 

 

どれもこれもバーダックが予知能力で見たものだった。

 

超バーダック「へっ……(仕方ねえ…。あとはガキ達に任せるとするか……………)」

 

 

 

 

 

 

 

ドグォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンン!!!!

 

 

 

 

 

 

遥か遠くで、地球全体を揺らすような大爆発が発生した。

 

 

 

 

 

 

 

 

バビディ「やったやった〜!流石魔人ブウだ!邪魔者が殆どいなくなっちゃったよ〜!」

 

ブウ「ほほほい!!」

 

超2ベジータ「くっ…!不死身の上に、これほどまでに強いとは……。もうお手上げだぜ………」

 

ようやく行動できるようになったベジータだったが、先程までのブウのやりたい放題な行動を見ると、自分では勝てないことが嫌でも理解できてしまった。

 

バビディ「おや?まだ生きてたの……?それじゃあ、最後の邪魔者を殺しちゃってよ、魔人ブウ」

 

ブウ「おっけー!!」

 

 

 

 

 

ピッコロ「………どうなっていやがる?あの馬鹿でかい気を持ったやつが魔人ブウなのか……!?」

 

クリリン「と、とてもじゃないが俺が敵う相手じゃねえよ…!!」

 

ダーブラが殺されたことによって、石にされたピッコロとクリリンは元に戻っていたが、悟飯とバーダックがやられる姿を見て、何もできずにただじっとしているしかなかった。

 

クリリン「な、なあピッコロ…?お前でも勝てそうにないのか……?」

 

ピッコロ「セルと悟飯とあのサイヤ人、更にベジータが協力したというのにあの様だ。俺1人が行ったところで無駄死にするだけだろう………」

 

クリリン「しかし……。悟飯の気が感じられないぜ………?」

 

ピッコロ「………もしかすると……」

 

悟飯は死んだのかもしれない。そう言いかけた時、2人のちびっ子がこちらに到着した。

 

超トランクス「あれ?ピッコロさんじゃん?」

 

超悟天「クリリンさんもいる?」

 

ピッコロ「お前ら!超サイヤ人を解け!見つかってしまうぞ!」

 

指示通りにトランクスと悟天は超サイヤ人を解除して元に戻ると、その場にしゃがみ込む。

 

トランクス「あれは……。パパだ!」

 

悟天「トランクス君のお父さんだよね?」

 

トランクス「あのピンク色のやつが魔人ってやつか?」

 

クリリン「ああ、あいつはやべぇぞ。ビームを出して相手を菓子にしたり、体に穴が空いてもすぐに再生するんだ」

 

トランクス「うぇ…!」

 

悟天「お、思ったよりもヤバそうだね………」

 

トランクス「ま、まあ!パパに任せれば大丈夫さ!」

 

ところが、ベジータは既に深傷を負った身であり、フルパワーを出し切ることができなかった。ブウに顔を殴られた後に、体の一部を引きちぎると、それをベジータに向けて投げる。投げられた体の一部が1人でに動き出し、ベジータに巻き付いた。

 

トランクス「あっ…!!!」

 

クリリン「あのベジータがあそこまで好き勝手にされるなんて……!!」

 

身動きの自由を奪われたベジータは、ブウに何回か蹴られた後、思いっきりのし掛かられた上に顔を何度も殴られる。その様子にトランクスが我慢できなくなり、立ち上がる。

 

ピッコロ「やめろ!お前が行っても勝てる相手ではない!!」

 

超トランクス「いやだ!!!」

 

超サイヤ人に変身したトランクスは、真っ先にベジータの方向へ飛ぶ。

 

超悟天「ま、待ってよトランクス君!!」

 

悟天もトランクスの後を追うように超サイヤ人に変身して向かう。

 

ピッコロ「くそ…!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

超トランクス「だりゃあッッ!!!」

 

トランクスが力一杯ブウを蹴ると、この不意打ちは応えたようで、岩山を何個か突き破りながら吹き飛んでいった。

 

超トランクス「パパ!しっかりして!」

 

超悟天「おじさん大丈夫!?」

 

2人はブウの体の一部をベジータから引き剥がした。

 

超2ベジータ「お前ら……何故ここに…」

 

超トランクス「ここからは俺達であの魔人を倒そうよ!」

 

超2ベジータ「………ダメだ。お前らはどこかに隠れてろ」

 

超悟天「む〜…!!僕達だって結構強いんだよ!」

 

超トランクス「そうだよ!1人じゃ無理でも、3人でなら……!!」

 

超2ベジータ「…………」

 

しかし、トランクスや悟天よりも経験も単純な力も上であるバーダックと悟飯、更に一時的とはいえ、ブウの戦闘力を上回るセルが協力しても倒すことができなかった。ベジータはそのことを思い浮かべると、どうしてもいい反応ができなかった。

 

超2ベジータ「………トランクス。そういえば、お前を抱いてやったことがなかったな。抱かせてくれ」

 

超トランクス「えっ…?いきなりどうしたの?」

 

ベジータはトランクスの返答を待たずに優しく抱きしめる。

 

超トランクス「は、恥ずかしいよ……」

 

数十秒ほど抱きしめると、ベジータはゆっくりと、少し名惜しそうにしながら離れる。

 

超2ベジータ「………トランクス。ママを大事にしてやれよ」

 

超トランクス「えっ?それ、どういう………」

 

トランクスの言葉はそこで途切れた。ベジータが手刀を軽く頸に当てたことによって、トランクスは意識を失ったのだ。その証拠に、金髪から元の紫色の髪に戻っている。

 

超悟天「おじさん!どうしてトランクス君をぶったの!?ねえ!!どうして!!!?トランクス君のお父さんなんでしょ!!?なんで!!!?」

 

超2ベジータ「………悟天、だったか?悟飯のことはすまなかった…。恨むなら俺を恨んでくれ」

 

超悟天「えっ?どうしてそこで兄ちゃんが…?」

 

そして、悟天もその後の言葉は続かなかった。トランクスと同様に悟天もベジータの手によって気絶させられた。そして丁度いいタイミングでピッコロが現れた。

 

超2ベジータ「………バビディの野朗を始末したようだな」

 

ピッコロ「ああ…。魔人ブウも許せないが、最も許せなかったのはあいつだ。あいつが全ての元凶だからな……」

 

超2ベジータ「……そいつらを頼んだ」

 

ピッコロ「……お前、死ぬ気か?」

 

ピッコロの問いにベジータは無言で頷いた。そして、ベジータは死ぬ前に最後の質問をする。

 

超2ベジータ「なあ、ピッコロ。俺が死んだ場合はどうなる?カカロットのように体は残るのか?」

 

ピッコロ「……こんな時に慰めを言っても無意味だからはっきり言っておく。お前は人を殺しすぎた。だから地獄に落ちるだろう。地獄に落ちれば、体はなくなり、魂が浄化され、前世の記憶もなくすだろう………」

 

超2ベジータ「………そうか。残念だ………」

 

ベジータの質問が終わったことを把握したピッコロは、悟天とトランクスを抱えたままその場を後にした。

 

ブウ「おい待て!逃がさないぞ〜!」

 

超2ベジータ「おい待て!貴様の相手は俺だ!この醜い風船野朗め!!」

 

ブウ「……!!お前、また悪口を言ったな!!弱虫のくせに…!!!」

 

超2ベジータ「俺1人では地獄に行かん…。てめぇも道連れだ…!!」

 

こうして、ベジータの最期の戦い……。最初にして最後の誰かを守る為の戦いが幕を開けた…………。

 




 ベジータvsブウは無茶苦茶名シーンだけど、原作と展開が変わらないんでカットします(無慈悲)。てかそうしないと余裕で100話超えちゃうと思います。ということで許して……。
 次回は意外な展開です。戦闘シーンはあるけどあまりドラゴンボールっぽくないかもしれませんね。
 実はここ最近になってドラゴンボールZカカロットをプレイしています。あのゲーム原作に忠実で凄い。1日中プレイしていますww。ただし原作では普通にあったグロ描写が大分軽くなってますけどね。追加コンテンツで未来の話もあるようなので、ブウ編まで終わったらそっちも是非プレイしたい…。


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第80話 愛の力

 前回のあらすじ…。
 セル、バーダック、ベジータと共に魔人ブウを倒そうと考えた悟飯。セルの20倍スーパー界王拳のかめはめ波に加え、悟飯のかめはめ波、バーダックのスピリッツキャノンによって魔人ブウは完全に消滅したかと思われたが、なんと生きていた。各々の技で力を使い果たしてしまった3人は、順番にあっさりと魔人ブウに撃破されていく……。セルは核ごと消し去られ、悟飯はなんとか一命を取り留めるも、意識を失ってしまう。バーダックは最後まで抵抗したが、それも虚しくバーダックも消えてしまった……。
 なんとか動けるようになったベジータは、人生で最初で最後の、『人を守るための戦い』に身を投じた……。


超2ベジータ「……!!!!」

 

ブウ「……!!!!」

 

ベジータはこれまでにないほどに気を高めていく。並の攻撃ではびくともしないことは既に分かっており、細胞1つでも残すことを許されない。となれば、その細胞を一つも残さないほどの大技を魔人ブウに放つ必要があった。

 

しかし、ベジータにはそんな力も技もない。…………だから、文字通り自分の命を燃やしてでも魔人ブウを倒すことを決意した。だから先程ピッコロにあんな質問をしたのだ。

 

超2ベジータ「…(……あの小娘もバビディの術にかかってやがったな。あれも多分俺のせいだろう…。許せ。その代わりと言ってはなんだが、魔人ブウと共に心中する。…………さらばだ、ブルマ、トランクス………。そして、カカロット)

 

 

 

 

 

 

 

うぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!

 

 

最後に聞こえた彼の勇ましい雄叫びと共に周囲は気に包まれる。そして一気に爆発を引き起こして魔人ブウごと巻き込んだ。

 

誇り高き戦闘民族のサイヤ人の王子、ベジータ4世は、この瞬間を持って絶命した………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

クリリン「なに…!!?ベジータが…?」

 

ピッコロ「ああ。あいつは生まれて始めて誰かの為に戦おうとしている。自分の為ではなく、他人の為にな……」

 

クリリン「あのベジータが……」

 

クリリンとピッコロは悟天とトランクスを抱えながら、なるべく全速力で魔人ブウとベジータがいる場所から離れていた。

 

 

 

ブォオオオオオオオオオオッッ!!!!

 

クリリン「べ、ベジータぁああああああああッッ!!!!!!!」

 

ピッコロ「ぐっ…!!!!!!」

 

ベジータが自爆覚悟で気を解放したことによって、大分離れたはずのピッコロとクリリンの元にまで爆風が届いた。

 

 

 

少しするとその爆風も収まった。するとピッコロはトランクスと悟天をクリリンに託す。

 

クリリン「えっ?お前、何するつもりだよ?」

 

ピッコロ「俺は様子を見てくる……」

 

クリリン「取り敢えず俺は戻るけど、悟飯もベジータも死んじまったんだろ…?どう言えばいいんだよ…?」

 

ピッコロ「隠してもいずれはバレる。正直に話した方がいいだろう……」

 

そのままピッコロは来た道を引き返していった。

 

クリリン「嘘だろ……。チチさんやあの五つ子……特に3人にはどう言えばいいんだよ………………」

 

 

 

 

 

 

一方で、ドラゴンボールを7つ集め終えたジェットフライヤー組は、カプセルコーポレーションで神龍を呼び出す…。

 

二乃「………待って。一度会場に戻りましょう」

 

四葉の心配をする二乃の提案によって一旦引き返そうとするのだが…。

 

「ふーん?そんなに四葉が心配なんだ?相変わらずだね、二乃は」

 

返り血に染まった一花が現れた。

 

二乃「い、一花…!!!」

 

18号「あんたっ……!!」

 

一花「おっと、あなたもいたのかぁ…。これはちょっと不利かも……」

 

三玖「ね、ねえ一花…?その血は何…?」

 

一花「ああ?これ?これは四葉の血だよ?」

 

一花はなんてことないと言った様子で答えた。まるで今日の朝食を聞かれて気軽に答えるような、そんなテンションで。

 

五月「よ、四葉の………?」

 

二乃「ま、まさか………よね?」

 

風太郎「………」

 

一花は辺りを見回すと、彼女の目当ての人物である風太郎がそこにはいた。

 

一花「あっ、フータロー君!なんでお姉さんから逃げるの?さあ一緒に行こ?」

 

風太郎「……待て。これだけは聞かせてくれ」

 

一花「なーに?フータロー君の質問にならなんでも答えてあげるよ?バストサイズ?それとも好みのプレイかな?あっ!もしかして欲しい子供の人数とか!?もー!フータロー君ってば気が早いんだから〜!!」

 

風太郎「……お前、四葉はどうした?」

 

一花「……………」

 

先程まで笑顔だった一花の表情が、突然闇を孕んだものに変わった。

 

風太郎「四葉は、お前を食い止める為に戦っていたと聞いた……。四葉はどうしたんだ?」

 

一花「………それを聞いてどうしたいの?」

 

風太郎「答えろッッ!!!!

 

一花「……!!!!」

 

風太郎が突然怒鳴った。一花もこの反応は予想外だったのか、足を踏み外して尻餅をつく。

 

風太郎「お前はさっき、その返り血は四葉のだって言ったな?四葉はどうした?いや、聞き方を変えよう。お前は四葉に何をした?」

 

一花「……………」

 

風太郎はしつこく一花に対して質問をする。だが一花は答えないし、答える気配すらない。

 

風太郎「………一花。お前はそんなにも弱いやつだったのか…?魔道士ってやつにちょっと操られる程度で、四葉を…!姉妹を傷付けるようなやつだったのか…?!」

 

一花「………さい……」

 

風太郎「お前はいつも姉妹の為に頑張っていた!!俺が家庭教師をやめた時なんかは、お前一人で生活費を賄っていたじゃないか!5人で一緒にいることに拘っていたじゃないか!!そんな妹想いのお前が…!!!!」

 

一花「うるさいッッ!!私はフータロー君さえいてくれればいいの!他には何もいらないの!!!今までがおかしかっただけだよ!!!」

 

風太郎「くそ…!」

 

風太郎はなんとか一花の説得を試みるが、どうやら効果はなさそうである。

 

一花「聞きたいことはそれだけ?もうないなら行くよ」

 

風太郎「待て。結局お前が四葉をどうしたのか聞いてない」

 

一花「…………そんなに知りたい?」

 

風太郎「ああ。四葉も俺の大切な生徒だ。生徒の安否を確認するのも教師の努めだろ?」

 

一花「…………分かったよ。なら教えてあげる。四葉は死んだよ

 

風太郎「…………なんだって?」

 

あまりにも衝撃的な事実をあっさりと告げられてしまった為、風太郎は理解できずに一瞬困惑した。

 

風太郎「………もう一度、いいか?」

 

一花「だ〜か〜らぁ、四葉は死んだんだって」

 

風太郎「…………嘘、だよな?」

 

一花「嘘じゃないよ

 

突きつけられる過酷な現実。今まで風太郎を笑顔で支えてくれていた四葉は死んだと、あまりにもあっさりと、滑らかに伝えられた。

 

二乃「四葉が…………死んだ……?」

 

五月「そ、そんなはずは………!!」

 

三玖「ね、ねえ…?嘘でしょ?嘘だって言ってよ…!!!」

 

一花「だから嘘じゃないって。そんなに疑うなら、見てみる?」

 

そう言うと、前髪に隠れたMの字が不気味に光り出した。

 

一花「こんな感じかな……?ぱっぱらぱ〜。なんてね」

 

 

パッ‼︎

 

それは突然出現した。

 

悪目立ちする緑色のリボン。走りやすそうなスニーカー。428という文字がプリントされたTシャツに、動きやすそうなズボン……。

 

それらが赤黒く染まっていることを除けば、紛れもなく四葉の形をしたものであった。

 

「「「「四葉!!!!」」」」

 

唐突に現れた四葉に駆け寄る4人。三玖は泣き叫びながら四葉を呼ぶ。五月はひたすら小声で四葉を呼び続ける。二乃は『大丈夫!?しっかりしなさい!!!!』と呼びかけるが、どの呼びかけにも応じなかった。

 

二乃「……!!!!!」

 

二乃が四葉に触れた時、あることに気づいてしまった。

 

二乃「………つ、冷たい……………」

 

よく見てみると、完全に開ききった腹部。そこから抉れるように不自然な形をしている内臓。服に滲みきった血。完全に開いた瞳孔………。専門知識がない二乃でも、今の四葉が"四葉の形をした肉"に成り果ててしまったことを理解してしまった。

 

 

二乃「よつ……ば……!!四葉ぁあああああああッッ!!!!!!!

 

五月「いやぁあああああああッッ!!!!!!!!

 

 

18号「マーロン!見るな!!」

 

らいは「えっ?四葉さんがどうしたの!?」

 

勇也「ら、らいは!!見ちゃダメだ!!!」

 

ビーデル「ひ、酷い………!あんまりだわ……!!!」

 

あまりの惨状に、18号と勇也はそれぞれの子供の目を隠して視界を阻害する。零奈が意識を失っているのが不幸中の幸いといったところだろうか……。しかし、それでもこの状況は酷かった。特に、四葉と親しい姉妹や風太郎にとっては、想像を絶するほどの絶望感を味わうことになる………。

 

三玖「ひ、ひどいよ……!!一花…!!どうしてこんなことをするの…!!?四葉が何をしたっていうの!!!?」

 

三玖が必死に訴えるが、一花はそんな姉妹達の様子に気にかける様子もなかった。

 

一花「ねっ?これで四葉がどうなったかは分かったでしょ?分かったら………」

 

風太郎「よつ……ば?嘘だよな?あんなに無駄に元気だったお前が、死ぬなんて、あり得るわけがないよな……?」

 

意外にも、四葉が死んだという現実を突きつけられて一番動揺しているのは姉妹達ではなく、風太郎だった。

 

風太郎「なあ………?返事してくれよ?いつもみたいに笑顔で話しかけてくれよ?いつもみたいに、馬鹿やってくれよ…!」

 

三玖「ふ、フータロー…。四葉はもう……」

 

風太郎「なっ!三玖からもなんとか言ってやってくれよ!!なんで黙っているんだ?なあ?」

 

三玖「…………」

 

三玖は意外とこの状況を冷静に把握できていた。二乃と五月は未だに泣き叫んでいる。その2人を見たからだろうか。自分がしっかりしなければならないと無意識に思ったからなのかもしれない。

 

風太郎「二乃もなんとか言ってやってくれよ!いつまでも寝ているこの大馬鹿野朗に!」

 

二乃「…………」

 

風太郎「五月!!お前もなんで泣いてんだ?」

 

五月「…………」

 

勇也「風太郎…………」

 

一花「ふ、フータロー君…?」

 

上杉さんが悲しむ

 

四葉に言われた言葉が、不意に一花の頭の中に浮かんだ。四葉の言うことはまさに正しかった。現に四葉の死という現実から逃げている風太郎がいた。それは悲しむ以前の問題で、四葉の死を認めたがらなかったのだ。しかし、それは四葉の死を誰よりも悲しんでいるという証拠でもあった。だから認めたくないのだ。

 

風太郎「はは……。なあ?一花、お前は何をしたんだ?二乃みたいに睡眠薬でも飲ませたのか?」

 

一花「ふ、フータロー君。だから四葉は………」

 

風太郎「あっ、これドッキリってやつか?ったく、冗談でもやっていいことと悪いこともあるんだぜ?そんなことも分からないくらいにお前達が馬鹿だとは思わなかったぜ。罰として次の課題は倍な!」

 

もう見ていられなかった。ひたすら現実逃避し続ける風太郎にどう声を掛ければいいのか、彼の父親である勇也でさえも分からなかった。

 

一花「(ああ…。四葉が言っていたの、このことだったんだ……)」

 

風太郎「なんで、誰も答えてくれないんだよ……?四葉が死んだなんて、タチの悪い冗談を……、なんで誰も否定してくれないんだ………?なあ………?」

 

大切なものは、失って初めて気づく。よくそんな言葉を聞くが、今の風太郎にはそれがよく当てはまっていた。

 

家庭教師初日。悟飯と一緒なら多少はきつくても大丈夫だろうと思っていたが、はっきり言って風太郎は舐めていた。四葉以外は皆風太郎の授業の受けたがらなかった。五月は食堂の件で険悪だったし、三玖は同級生から教わりたがらない。二乃に至っては睡眠薬を飲ませてくるほど。一花はこの3人よりは遥かにマシとはいえ、乗り気ではなかった。

 

そんな時、彼を支えてくれていたのは四葉だった。彼女だけは最初から風太郎の授業を笑顔で受けていた。そんな彼女に幾度となく助けられていた。彼女の太陽のような笑顔に照らされていたから、今日まで頑張ってこれた。このことを風太郎は今更気づいてしまったのだ。だからこそ、四葉の死を認めたくなかった。

 

風太郎の心が壊れる。まさにその時だった………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『上杉さん』

 

風太郎「……!!?四葉か!?四葉なのか!!?」

 

不意に聞こえてきた、風太郎にとって特別な存在の声。だが、四葉の方を見ても相変わらずの様子。しかし聞こえてきた声は紛れもなく本物であった。

 

『どうか、一花を恨まないであげて下さい……。一花は悪い奴に操られているだけなんです。その証拠に、一花は自分と戦っていました。姉妹を殺したくない、四葉を殺したくないって、はっきり言ってしていました』

 

風太郎「……!!それ、本当か……?」

 

風太郎の目の前には、半透明になった四葉の姿があった。手を伸ばしても、体をすり抜けて触れることは叶わない。しかし、声と姿は確認できた。

 

『私では一花を救えなかった。でも、一花にとって特別な存在である上杉さんなら、きっと…………』

 

風太郎「ま、待ってくれ、四葉…!」

 

『大丈夫ですよ、上杉さん。私はあなたに協力するだけです』

 

そう言うと、半透明の四葉は風太郎に手を触れる。何故自分からは触れられなかったのに、四葉からは触れることができるのかは不思議でならなかった。

 

風太郎「……!!これは………」

 

『分かりますか?これが私の気です。これは君に託すよ。私が持っていた力に比べればちっぽけなものだけど、君なら一花を救ってくれるって信じてるよ…………』

 

風太郎は自身の力が漲っていくことを自覚した。これが気…。悟飯達が扱っていた力………。それに、ただ力が漲るだけではなかった。その力はどこか暖かった。まるで彼女の太陽のような笑顔が与える安心感のような………。

 

 

 

 

亀仙人「……むっ!!」

 

ヤムチャ「あいつの気が、急激に…!!」

 

ビーデル「………なんか違う。あの気は………何か違う」

 

存在しないはずの四葉から託された力によって、気が急激に膨れ上がった風太郎。彼から発せられる気は……。

 

一花「温かい………?」

 

風太郎は涙を腕で雑に拭き取ると、立ち上がって一花の方を向く。

 

風太郎「……一花。お前の呪いを解いてやるよ…!俺と四葉でな!!」

 

ボォオオオオッ!!!!!!

 

ヤムチャ「……!!!」

 

亀仙人「修行もしていないのに、なんという気じゃ…!!!!」

 

風太郎から発せられるオーラは、四葉や地球人Z戦士達が発するような無色のオーラではなかった。どこか温かさを感じさせるような、自然を連想させるような、黄緑色。見ているだけで心安らぐような、そんな色だった。

 

五月「上杉……君……?」

 

二乃「な、なにしてんの……?」

 

一花「う……ふふふっ……。そっかぁ…。私じゃなくて四葉を選ぶんだね…?分かったよ。そこまで言うなら………」

 

ドォオオオオッ!!!!!

 

風太郎の優しさ溢れるオーラとは対照的に、どす黒いオーラを発する一花が対峙する。

 

一花「力づくで私しか見えないようにしてあげるよ…………」

 

風太郎「………やれるものならやってみろ……!!(四葉…。お前のお陰で目が覚めたぜ。……本当にありがとう)」

 

誰もが予想だにしなかった、家庭教師 vs生徒という構図が完成した。

 

 

ドンッッッ!!!!

 

まず聞こえたのは、一花が地面を蹴る音。

 

一花「たあッッ!!!!」

 

四葉と戦った際に積み上げた経験を駆使して風太郎の懐に蹴りを決めようとするが……。

 

 

ガッ……!!!

 

一花「……!!!」

 

何故か一花の足が途中で止まる。何かに掴まれているような、そんな感覚だった。風太郎が掴んでいるのかと思ったが、どうやらそうではないらしい。

 

一花「…………四葉?」

 

風太郎のすぐ後ろに半透明の四葉の姿を確認できた。しかし、二乃達は一才反応していなかった。どうやらこの四葉が見えているのは一花と風太郎だけのようである。

 

風太郎「一花…。本当は姉妹を殺したくなかったんだろう…?気付いてやれなくてすまなかった……。一瞬でもお前を疑っちまった俺を恨んでくれ………」

 

 

ドカッッ!!!!

 

一花「……!!!!」

 

風太郎の殴りが炸裂する。しかし、一花は不思議と痛くも痒くもなかった。

 

一花「……?なんのつもり……?ふざけてるの?」

 

風太郎「ふざけてなんかないさ。俺は大真面目だ」

 

しかし、これほど攻撃力がないとなれば、一花にとってはビッグチャンスだ。とっとと風太郎を気絶させて連れ去ろうと意気込む。

 

ガガガッ…!!!!

 

一花「………!!?」

 

風太郎「お前の攻撃パターンは四葉が教えてくれた……!!!」

 

一花の繰り出す攻撃は全て風太郎にいなされるか避けられるだけだった。

 

風太郎「おんどりゃああッッ!!!」

 

ドゴォッッ!!!!!

 

一花「ぐっ……!!!!」

 

またしても風太郎の攻撃をまともに受ける一花だったか、相変わらず痛みは一切感じない。

 

一花「……(フータロー君は一体何がしたいの…?もしかして、本気を出せば私を殺せるって意味……?)」

 

だが、その一花の推理は綺麗に外れていた。風太郎は一花を倒す為に戦っているわけではない。先程言った通り、一花を救うために戦っているのだ。

 

 

一花「……!なに、今の……?」

 

風太郎からの攻撃を受けて少し経った時、一花に異常が現れ始める。

 

 

 

 

 

 

幼少期から、姉妹や母親と共に過ごしてきた記憶が突如掘り起こされる。その記憶は()()()()()()()()()()()だった……。

 

 

 

 

風太郎「……(どうやら効果が出始めたみたいだな)」

 

風太郎が扱っている力は、単に人や物を傷つける力ではない。四葉のような優しさが篭った特殊な力である。これを纏って攻撃する場合、相手を傷つけることはできない。その代わり……。

 

 

一花「ふ、フータロー君…?君は一体何をしたの………?」

 

風太郎「さっき言っただろ?呪いを解いてやるってな。俺と四葉で」

 

 

 

悪の心……。もっといえば、邪気を浄化する効果がある。だがこれが効くのはあくまでも同程度かそれより少々実力が上回る者だけで、相手の方が圧倒的に強い場合は効果がない。

 

この力の正体は優しさ。それは欲望、悪意、邪気とは正反対に位置するものだった。故に、邪気や悪意を利用して効果を発動させたバビディの魔術に効果的なのである。

 

 

一花「(よく分からないけど、私が私じゃなくなる気がする…!早めに決着をつけた方がいいかも……!)」

 

一花は風太郎の攻撃の正体に気づいたわけではないが、自分に対して何かしらの効果が作用していることを察知し、気を更に解放して風太郎に向かう。

 

風太郎「やべ…!」

 

ここで決めてやる…!と、一花は右手に渾身の力を込めて風太郎の顎に近づける。強力なアッパーを決めて一気にノックアウトしようと企んでいたが……。

 

ガッ……!!!!

 

一花「なっ………!!?」

 

またしても風太郎ではない誰かに止められてしまった。その正体は勿論……。

 

 

一花「四葉………!!!」

 

風太郎の少し後ろで彼をサポートするように行動する半透明の四葉だった。

 

一花「死んでも私の邪魔するなんて…!!これなら半殺し程度に済ませておくんだった……!!」

 

風太郎「それ、本気で言ってるのか?」

 

一花「勿論」

 

風太郎「嘘だな」

 

ドカッッ!!!!!

 

一花「うっ………!!!!!」

 

風太郎「つくならもっとマシな嘘をつけ」

 

不意にアッパーを止められた一花に、風太郎のアッパーがお見舞いされる。なすすべもなく一花は吹き飛ばされ、倒れる。

 

一花「なん……で……!!どうして私の邪魔を……!」

 

一花はゆっくりと起き上がって風太郎を………否、そのすぐ後ろにいる他の人には見えない四葉を睨む。その睨まれている半透明の四葉は、一花を敵視するような目で見返すのではなく、優しく微笑みかける。

 

一花「………!!!!」

 

それが今の一花の癇に障った。

 

一花「このぉ…!!四葉さえ……!四葉さえいなければ、運命の再会をしたのは私だけだったのに……!!四葉なんて生まれてこなきゃ良かったッッ!!!!!!」

 

 

一花は大声で狂うように吐き捨てる。今の言葉は聞き捨てならないと二乃が立ち上がって一花に何かを言いかけるが………。

 

勇也「待て」

 

二乃「……!!」

 

それを勇也に止められた。

 

 

 

 

 

一花「この…!このぉおおおッッ!!!!!」

 

一花は更に気を解放して風太郎に飛びかかる。風太郎は特に防御もせずに待ち構えていた為、一花と共に転がる。

 

一花「たあッッ!!!!」

 

 

ドカッッ!!!!

 

 

一花「なんで!!!!」

 

 

ドゴォッッ!!!

 

 

一花「死んでも!!!」

 

 

ドカッッ!!!!!

 

 

一花「私の邪魔を……!!!!」

 

 

ドカッッ!!!!

 

 

一花「するのっ!!!?」

 

 

ドゴォォオオッッ!!!!!

 

 

馬乗りになった一花は、無抵抗の風太郎に何度も殴りかかる。風太郎はただそれを痛そうにするわけでもなく、かと言って抵抗するわけでもなく、無言で受け続ける。

 

ヤムチャ「あ、あれは……!!」

 

亀仙人「やはりまだ戦うのは早すぎたか…!!!」

 

ビーデル「………違うわ」

 

亀仙人「むっ……?」

 

ビーデル「よーく見てみて」

 

 

 

 

 

風太郎「一花、随分弱ってきたんじゃねえか?」

 

一花「そ、そんなはずは…!!」

 

現に一花は気を最大限まで解放している。その一花の攻撃を何度も喰らっている風太郎は無傷でいられるはずがないのだが、何故か風太郎は無傷。それも全く痛がる素振りすら見せない。

 

一花「な、なんで……?どうして…?」

 

風太郎「お前はかかった魔術によって四葉と同等以上の力を身につけた。その魔術の動力源はお前の悪の心…。いや、欲望や独占欲、悪意だ。でもそれが薄まれば、力が弱まるのも無理はないだろ?」

 

一花「……!!!」

 

ここで初めて風太郎がどういう攻撃をしてきたのかを理解した一花だったが、時すでに遅し。既にかなりの効果を受けていた。

 

一花「そ、そんなはずは…!!」

 

カァァッ!!!!!!

 

気功波を放って、それが風太郎の顔面に直撃するが、風太郎は息を吹いて鬱陶しそうに煙を退かすだけだった。

 

一花「くっ…!だったら…!!」

 

1発で効かないなら連射してやる。そう思って手から気弾を発射しようとしたが………。

 

 

 

 

ぼんっ!!

 

一花「………えっ?」

 

小さな煙が出るだけで不発となった。偶然かと思って何度も発射するように試みるが………。

 

 

ポンっ…

 

こんな間抜けな音が何度も鳴るだけだった。

 

 

一花「そ、そんな……!!嘘だ…!!!私はフータロー君を自分のものにできるだけの力を手に入れたはずなのに……!!!」

 

風太郎「さあ、もう終わりにしよう、一花。元の一花に戻る時だ………」

 

一花「……!!」

 

その台詞を聞いた一花はあることを閃くが………。

 

一花「ぐっ………がっ………!!!!」

 

頭を抱え、膝から崩れ落ちる。力で黙らせたもう1人の………。本来の一花が再び抵抗し始めた。体の支配権を握ったはずの闇の一花だったが、風太郎の攻撃によって闇一花のみがダメージを受けていたのだ。そうなれば、本来の一花がこのチャンスを見逃すはずがない。

 

しかし、それでも闇一花は立ち上がる。

 

一花「今のうちに……!!消し去らないと……!!私が私じゃなくなる…!!」

 

自分の中に眠る本来の一花を撃退するために、まだ微かに残っている力を使って本来の一花を潰そうとする。

 

そんな一花に向かって、風太郎がゆっくりと歩き出す。

 

一花「ま、待って…!今は来ないで…!!」

 

風太郎「断る」

 

一花「そ、そんなことしちゃったら、私が消えちゃうんだよ?それでもいいの!?」

 

風太郎「元の一花に戻るだけだ。消えるわけじゃない」

 

一花「分かってないよフータロー君は…!!今私の中には"2人の一花"がいるんだよ?そのうちの1人が消えようとしているの…!それが"私"…!!」

 

風太郎「……確かに、一花は独占欲やらそういうのが強い方なのかもしれない。だが、お前は一花じゃない」

 

一花「…………えっ?」

 

風太郎「いつも妹達のことをよく見ていたあの長女が、なんの躊躇もなく妹を殺せるはずがねえ……。どんな理由があろうとも、一花なら四葉を殺すようなことは絶対にしない…。だからお前は偽者だ…!!」

 

闇の一花は、風太郎に『一花』だと認めてもらえなかった。それが精神的にきたようで、膝から崩れ落ち、地面に両手をつける。

 

一花「そ、そんな……。フータロー君が、『私』を拒絶した……?認めてくれないの…?私も一花なのに……?」

 

風太郎「………!!」

 

前髪で隠れているM字だったが、風太郎はこの目ではっきりと見た。今まで色濃く記されていた黒いM字が、徐々に薄まっており、今は殆ど見えない状態になっていた。あともう少しで本来の一花が戻ってくるところにまで迫っていた。

 

一花「あはは……。そろそろタイムオーバーか…。四葉にフータロー君。君達は本当に凄いよ……。ここまで来るといよいよ認めざるを得ないね………」

 

風太郎「そうか。大人しく元に戻ってくれると助かるんだがな」

 

一花「……フータロー君。最期に頼みがあるんだけど………」

 

風太郎「…………なんだ?」

 

闇の一花は諦めたような顔をしながら風太郎にこう言う。

 

一花「最後に、抱きしめて?」

 

風太郎「…………」

 

一花「『私』は人の温もりを知らない…。知らないまま消えるなんて嫌だ…。だから、お願い…………」

 

風太郎「…………分かったよ」

 

思いの外、あっさりと風太郎は承諾する。少々恥ずかしがる仕草も見られたが、風太郎は男を見せた。一花の背中に手を回し、優しく彼女を抱擁した。

 

一花「ああ………。温かい……………」

 

闇の一花と言えど、元は一花の心の一部から生まれた者。故に、風太郎に恋する乙女ということは一花本人と何ら変わりがなかった。風太郎に抱擁された一花は幸せそうな笑みを浮かべてゆっくりと目を閉じる……。

 

一花「………ねえ、どうして私のお願いを聞いてくれたの?」

 

風太郎「……最後なんだ。これくらいはいいだろ?」

 

一花「ふふっ…。やっぱりフータロー君は優しいね……。そんな君が大好き」

 

風太郎「……ああ。知ってるぞ」

 

一花「そっか……。じゃあ許してくれるよね?」

 

風太郎「はっ?今なん…」

 

 

 

ドォォオオオッッ!!!!!!

 

 

 

ビーデル「………!!!!!」

 

ヤムチャ「な、なんだ……!!?」

 

18号「ま、まさか……!!!」

 

一花の気が急激に膨らみ続ける。オーラがどんどん膨張し、肥大化していく。

 

風太郎「な、なんだ……!!?今のお前にはそんな力は残ってないはず…!!」

 

一花「やっぱり『私』はフータロー君が大好き…!"私"にも渡したくない。どうせ『私』が消えちゃうなら、フータロー君と一緒に消えるよ…。そうすれば、永遠に一緒だよね?」

 

 

18号「自爆する気か…!!!」

 

一花の意図を読み取った18号は、主にマーロンを守る為にエネルギー砲を風太郎ごと巻き込んで放とうとするが……。

 

五月「ま、待って下さい!!そんなことしたら、上杉君と一花が…!!!」

 

18号「ここで殺らなかったら、あんた達も死ぬことになるんだよ!?」

 

二乃「待って…!これ以上は家族を喪いたくない…!!一花!!やめて!!!」

 

一花「もうダメだよ…。引くことなんてできない…。『私』が消えて他の誰かにフータロー君が渡るくらいなら、一緒に死んでやるもん…」

 

風太郎「やめろ一花…!!お前まだ…!!」

 

一花「フータロー君が悪いんだよ?『私』を一花って認めてくれなかったから………。君が『私』を拒絶したからッ!!!!」

 

自暴自棄になった闇の一花は、元に戻ってしまう前に自爆をして風太郎と共に無理心中をしてしまおうと思い立ってしまったらしい。一花は自爆を中断する気は全くないようで、18号が風太郎ごと消滅させなければ、他のみんなも纏めてお陀仏になってしまう。

 

風太郎「くそ…!!(すまん四葉……。俺じゃ無理だった………。寧ろお前の他の姉妹も巻き込んじまう…!!俺はお前に力を託されたっつうのに…!!やっぱり俺は勉強以外は何もできない男だ…。悟飯のように、誰かを救うことなんてできない……)」

 

 

 

 

 

 

 

 

『できますよ』

 

風太郎「……!!」

 

諦めかけた時、四葉の声が再び聞こえた。

 

『上杉さん、諦めるにはまだ早いですよ。あなたにしかこの状況を打開できません』

 

風太郎「(馬鹿な…!そんな方法があるわけが…………)」

 

『私が聞いた話によると、どうやら2人の一花の心を一つにすればいいそうです』

 

風太郎「(はっ?それどういう意味だ……?)」

 

『要するに、2人とも同じ感情にすればいいんですよ』

 

風太郎「(同じ感情に……?例えば、2人とも怒るとか……?)」

 

『そうそう!そんな感じです!』

 

風太郎「(でも、そんなのどうすりゃいいんだ……?)」

 

『私にいい考えがあります………』

 

四葉は他の人には聞こえない声量で風太郎にその方法を伝える。と言っても、今の四葉を認識できるのは一花と風太郎のみなのだが………。

 

 

風太郎「…………はっ?それ本気か?」

 

あまりにも突拍子もない提案だったのか、風太郎は思わず声に出して驚いてしまう。

 

『はい。これなら一花を今すぐにでも元に戻すことができると思います』

 

風太郎「(だ、だが…!俺がその……き、き……をするんだろ…!!?本当にそれで効果があるのか!?)」

 

『はい。姉妹の私が言うんだから間違いありませんよ!名探偵四葉のお墨付きですの?』

 

風太郎「("迷"探偵の間違いだろ…)」

 

そんな軽口を叩くが、今の四葉は何も言い返さなかった。

 

『上杉さん…!』

 

風太郎「(分かったよ…!やればいいんだろ!!?それしかこの状況を打開する方法がないっていうなら!やってやる!!!!)」

 

風太郎は意を決して一花を強く抱きしめる。

 

一花「えっ…?フータロー君?」

 

風太郎「一花、我慢してくれ………」

 

風太郎は片手で一花の顎を添えて少し上向きに誘導する。そして顔をゆっくりと近づけて………。

 

 

 

 

 

 

一花「…………!!!?ッッ」

 

 

 

………風太郎と一花の唇が重なった。

 

 

二乃「…………はっ?」

18号「…………はっ?」

 

二乃と18号の声が同時にハモる。

 

三玖「ふ、フータロー!?」

 

五月「こんな時に何をしているんですか!?トチ狂いましたかッ!!!?」

 

らいは「お、お兄ちゃんっ!!!?」

 

ほとんどの者が風太郎の行動に困惑していた。それも当然のことだ。自爆しようとしている相手に誰がキスをするのだろうか?普通は誰もしない。殺し合いの最中に呑気にお菓子を食べているようなものである。

 

少しすると、2人の口は離れる。一花は顔を真っ赤にして風太郎を見るが、その仕掛けた本人も顔を赤くする。

 

一花「えっ………?ちょ、私何されたの…?」

 

しかし、これは四葉の狙い通りだった。一花も闇の一花も風太郎のことが大好きである。2人の唯一の共通点と言ってもいい。それを利用したのだ。好きな人からいきなりキスをされれば、誰でも困惑するし、同時に嬉しくもなる。

 

ドクンッッ…!!!

 

一花「………!!!」

 

心臓が張り裂けそうになるほどバクバクと振動する。それと同時に顔に血液が送り込まれているのか、熱を帯びて顔が更に赤くなる。心の中は最早穏やかなものではなくなった。

 

この時、初めて2人の一花の感情が一致した。それと同時に、一花が闇から解き放たれた。

 

一花「あっ…………」

 

先程まで吹き荒れていた気の嵐が突然収まり、周辺は一気に静寂に包まれた。

 

18号「……あいつ、自爆を阻止したのか………?」

 

倒れかけてくる一花をしっかりと支える風太郎。その一花の額には、今までくっきりと刻印されていたはずのM字が綺麗さっぱりなくなっていた。つまり、バビディの呪縛からようやく解放されたことを意味していた。

 

二乃「も、もしかして……!?」

 

三玖「元に戻ったの………?」

 

五月「ええ!!?あんな方法で…!!?」

 

 

 

 

 

 

一花「ふーたろーくん…………」

 

風太郎「……お帰り、一花……………」

 

目元に涙を溜めた一花を慰めるように、抱きしめ続けながら風太郎が頭を撫でてあげる。その優しさがとどめになってしまったのか、一花は風太郎の胸に顔を埋めて大声で泣き叫んでしまった。

 

一花「フータローくん…!!私、怖かった……!!!暗いところにずっと閉じ込められて……!!!四葉を…!!四葉を……!!!!!!」

 

風太郎「一花…。お前は本当によく頑張った………」

 

風太郎と四葉の『愛の力』が、バビディの呪いを解いた決定的瞬間であった。

 




 なんだかんだいって名シーンは簡潔に描写しちゃいました。
 この回は原作主人公もたまには活躍させなきゃなぁと思って作った回であります。この回を逃したら風太郎単独で戦う回が2度と来ないと思ったので…。実を言うと五つ子の他4人もバビディの洗脳魔術に引っかけようかと考えておりましたが、風太郎が活躍すること、今の四葉じゃ闇落ちはあまり似合わないことを考えて、一花だけになりました。
 なんか死者の力を借りる展開どっかのアニメだか漫画にあった気がするんだよなと思ったら、普通にセル編終盤の悟飯と悟空やんけ。そういった意味では普通にドラゴンボールっぽかったですね。でもキスで終わらせるのはドラゴンボールっぽくはないでしょ。……ないよね?
 ちなみに一花vs風太郎(&四葉)の時のイメージbgmは、『未来への咆哮 feat by 松岡禎丞』です。まさかの風太郎の中の人が未来への咆哮を歌っていたというね…w。こちらもYouTubeで検索すると出てくると思います。

……あれ?ごと嫁サイドの主戦力の零奈さんは……?


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第81話 悟飯の死

 前回のあらすじ…。
 バビディの魔法によって暴走した一花はなんとか風太郎の元に辿り着いた。四葉が戻ってこないことに違和感を感じた風太郎は一花に問い詰めると、あっさりと自分がしたことを自白した。実際に死体を見せられたことによって風太郎は壊れかけるも、そこに四葉が現れたが、一花と風太郎以外には認識できなかったようだ。風太郎は四葉の力を借り、最後は死闘を繰り広げたとは思えないようなトドメを刺して一花を正気に戻すことに成功したのだった……。



一花「私、四葉を…!殺しちゃった…!妹を殺しちゃった……!!!!」

 

風太郎「殺したのはお前じゃない…!!邪悪な魔道士ってやつのせいなんだ…!お前のせいじゃないんだ…!!!」

 

一花「でも…!!でも………」

 

風太郎「いいんだ一花。四葉は怒っていなかった………」

 

一花「そんなはずないよ…!!」

 

風太郎「いや、お前ははっきりと言ったんだろう?四葉を殺したくないって。それがお前の本心だった……。でもそれを踏み躙ったのは魔道士ってやつだ。憎むべき相手はそいつだ………」

 

 

 

 

 

亀仙人「………こりゃたまげたわい…!まさか本当に正気に戻すとは…!!」

 

ヤムチャ「今だから正直に言うが、俺は一旦殺してからじゃないと正気には戻せないと決め込んでいた…………」

 

ビーデル「キスで元に戻すなんて……。ロマンチック……………」

 

風太郎の思いがけない行動によって呪縛が解けて正気に戻った一花。しかし、彼女の記憶は未だに残っており、四葉をその手で殺したことも鮮明に覚えているのだ………。

 

 

一花「なんで…?なんでフータロー君は私を助けたの…?私が憎くないの…?」

 

風太郎「ああ。あれは一花を名乗る別人がやったことだ。決してお前のせいじゃない」

 

一花「………フータロー君はそう思ってくれても、他のみんなは………」

 

 

 

 

ダキッ!!!

 

一花「!!?」

 

二乃、三玖、五月の3人が一花に飛び込んできた。

 

一花「えっ……?」

 

二乃「良かった…!!やっと元に戻ってくれたのね…!!本当に良かった…!!!」

 

五月「一花ぁ…!!!!」

 

三玖「一花…!!元に戻ったんだ…!!良かった……!!良かった…!!!」

 

3人とも一花を恨んでいる様子はなかった。寧ろ一花の帰還を泣くほど喜んでいるように見える。

 

一花「み、みんな……?なんで……?」

 

二乃「なんでって…!!一花も大事な家族なのよ…!!心配して当たり前じゃない!!」

 

一花「私は心配されるような人間じなないッ!!!だって、私はこの手で四葉を……!!!!」

 

三玖「それは悪い奴が一花の体を利用して好き勝手しただけだよ!だから一花は、悪くないんだよ……!!!」

 

五月「悪いのは魔道士です…!!一花は悪くありません!!」

 

一花「み、みんな……みんなぁ…!!」

 

4人はお互いに抱き合って泣き合う。そこにはいつも一緒にいたはずの四葉の姿はなかった。しかし、4人の姉妹は確かに感情を、痛みを分けあった。

 

 

 

風太郎「…………良かった……」

 

その様子を見て風太郎は微笑むが、すぐに暗い顔に戻る。一花を戻すことはできたが、尊い犠牲が生まれてしまった……。風太郎と4人の姉妹にとって、母親である零奈にとっても大切な存在である、中野四葉という存在……。

 

風太郎「……!!そうだ…!!四葉!!」

 

風太郎は辺りを見回して四葉を探す。半透明になってしまった彼女だが、風太郎は彼女を認識することができた。だから風太郎は四葉を探す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『風太郎君……』

 

風太郎「……!!」

 

上から四葉の声が聞こえたので、顔を上げると、女神のように優しく微笑んでいる彼女の姿があった。

 

風太郎「四葉…!お前もあいつらのところに行ってやれ!」

 

『それはできないよ…。もう私は戻らなきゃいけないから………』

 

風太郎「戻るって、どこにだよ…?あの家(マンション)のこと………だよな?」

 

『ううん。あの世にだよ………』

 

風太郎「な、なんで……!!お前は本当に死んだってことか…?なら、どうして俺に力を貸すことができた…!?」

 

『それはあの世の偉い人にお願いしたからなんだよ…?だから今回は特別。最後に風太郎君と話す時間のおまけまでもらっちゃったんだ……』

 

風太郎「その喋り方………!まさかお前が……!!!」

 

6年前にあった思い出の子の正体に勘づいた風太郎を見て、四葉は太陽のような明るい笑顔を見せながらどんどん浮上していく。

 

風太郎「ま、待て…!!待ってくれ!!!

 

『風太郎君。6年前に君に出会って約束をしたけれど、私はその約束を守れなかったよ。ごめんね……。でも、君はちゃんと守ってたよね……。勉強して、頭がよくなってた……。君は本当にすごいよ』

 

風太郎「待ってくれ…!約束を守れていなかったのは俺の方だ…!俺はお前らに出会うまでは碌に人に必要とされるような人間じゃなかった…!!だがお前は違うだろ…!!その馬鹿みたいな優しさからお前を必要とする人間は大勢いた…!!だから謝るのは俺の方だ…!!」

 

『……君が家庭教師になってくれて本当に良かった。短い人生だったけど、君と出会えたから私は楽しかったよ?』

 

風太郎「そんなことを言うな…!お前はまだまだこれから……!!!」

 

『上杉さん………風太郎君……』

 

四葉は既に消えかけていたが、最後にこう伝える……。

 

『君に出会えて、本当によかった…!!!』

 

涙を流しつつも、太陽のような笑顔で揚々と答えた彼女は、そのまま姿を消してしまった…………。

 

風太郎「待ってくれ…!俺の前からいなくならないでくれ…!!俺にはお前が必要なんだ………!!!頼む…!!頼むよぉッ!!!

 

風太郎は人に弱みを見せるようなことは滅多になかった。強いて言うなら、二乃と五月が家出をした際に現れた"零奈"に対して弱みを見せたくらいだ。それでも涙を見せるようなことはしなかった。しかし、今回は違かった。

 

風太郎「うぁあああぁあああぁあああああああぁああッッ!!!!!!!!!!

 

行き場のない悲しみをひたすら床にぶつけた。四葉が離れたことによって風太郎の力は常人レベルに戻った。その為、地面を殴れば殴るほど自分の手が傷つくだけだった。それでも風太郎は殴るのをやめなかった。

 

勇也「風太郎…!!」

 

その様子に見かねた勇也が止めに入る。

 

風太郎「なんだよ、親父…」

 

勇也「……男だってな、泣いていい時もあるし、泣かなきゃいけない時だってあるんだ……。今は精一杯泣け……」

 

風太郎「くっ……!うっ……!!!うぁああぁあああぁ………!!!」

 

今まで我慢していたのだろう。風太郎の目からは大粒の涙が何滴も、何十滴も溢れ落ちる。勇也はそんな風太郎の頭を撫でてやりながら慰める。

 

らいは「お兄ちゃん…………」

 

らいはは泣く兄をただ眺めることしかできなかった…………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ヤムチャ「…………なあ。四葉ってお嬢ちゃんもドラゴンボールで生き返られるんだが、今それを伝えるべきかな……?」

 

チチ「ど、どうだかな…?今はやめた方が………」

 

ブルマ「ちょっと、今はね…………」

 

亀仙人「……しかし、こうして見ると、本来なら一度死んだ者は蘇らないのが普通じゃ……。もしかすると、わしらは人の死というものを軽く見るようになってしまったのかもしれんの……」

 

ヤムチャ「…………」

 

ドラゴンボールは、寿命や病気で死んだ者でない限りは蘇生することが可能である。彼らにとってはそれが当たり前のことと化してたり、人が死んでもそこまで悲しむようなことはなかった。ところが、風太郎を始めとする彼らの反応を見て、それは特別なことだということを思い知らされた。

 

 

 

 

 

 

 

一方で、場所は変わってあの世では……。

 

四葉「ありがとうございました、界王様………」

 

界王「これくらいはお安い御用じゃ」

 

四葉は界王の力を使って風太郎に自身の力を貸し与えていたのだ。半透明の四葉が現れたのも、界王の力が原因だったりする。それに一花を元に戻す方法を教えてくれたのも界王だ。何故四葉がいきなり界王のところにいるかというと、魔人ブウ絡みの件ということで特別処置だそうだ。界王の命令とあらば閻魔大王も従うしかなかった。

 

界王「あの……。お前さんにはちょっと言いにくいんじゃが………」

 

四葉「はい?」

 

界王「あのシリアスな雰囲気の後で言うのは申し訳ないんじゃが、お前さんは生き返れる」

 

四葉「…………ほぇ?」

 

とんでもない事実に四葉は大きく目を見開き、リボンをピンと伸ばして驚愕する。

 

界王「地球にはドラゴンボールというものがあってな?それを7つ集めればどんな願いも3つ叶えられる。それは死者を蘇らせることも可能なんじゃ」

 

四葉「うええええええッッ!!!!?それ本当ですかッッ!!!?」

 

界王「ああ、本当じゃ。決して慰めなどではないぞ?」

 

四葉「やったぁああああッッ!!!!またみんなと一緒に暮らせるんだ…!!」

 

界王「…………ただし」

 

四葉「………?」

 

界王は思い詰めたような顔をしてこう告げる。

 

 

 

 

 

 

界王「生き返ったとしても、魔人ブウに再び殺されるかもしれんがな………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

クリリンは、悟飯やベジータが死んでしまったことをチチ達にどういう風に説明しようかと考えていた時、ピッコロが全速力で戻ってきた。

 

クリリン「お、おい!?どうした!?」

 

ピッコロ「魔人ブウはまだ生きていた!!!」

 

クリリン「えっ?!嘘だろッッ!!!?」

 

ピッコロ「取り敢えず俺達は神殿に避難するぞ!!あそこなら余程のことがない限りは安全だ!!」

 

 

ピッコロとクリリンは魔人ブウに気づかれる前に神殿に到着した。

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、ベジータの不意打ちによって気絶した悟空はやっと目を覚まし、現状の確認をしていた。

 

悟空「……ベジータの気も感じねえ…。謎の気に、セルと悟飯の気も…。みんな魔人ブウにやられちまったのか…?」

 

ポケットの仙豆がなくなっていることを把握した悟空は、ベジータが一人で魔人ブウと戦いに行ったのかと簡単に推測する。

 

悟空「………ピッコロとクリリンは無事みたいだな……」

 

シュン‼︎

 

クリリン「悟空!?」

 

ピッコロ「お前、生きてたのか!?」

 

ピッコロとクリリンの気の位置を特定して悟空は瞬間移動をして天界に移動する。

 

悟空「ああ…。なんとかな」

 

デンデ「その怪我治します!」

 

服と怪我を治してもらった悟空は、ピッコロとクリリンからベジータとブウの戦いの行く末を聞いた。

 

悟空「そっか……。セルと悟飯が全力で戦っても勝てねえ…。ベジータが捨て身の攻撃をしても勝てなかったのか……」

 

ピッコロ「あいつは人生で初めて人を守るために戦ったんだ。あの時のあいつは、確かに誇り高きサイヤ人の王子だった…………」

 

クリリン「そこで、俺達はドラゴンボールを集めて生き返らせようと思うんだ」

 

悟空「………いや。今ドラゴンボールを使わない方がいい。悟飯とセルが協力しても勝てなかったのに、生き返らせてもまた殺されるだけだ………」

 

ピッコロ「むぅ……。確かに…………」

 

クリリン「でも、先にドラゴンボールを集めといた方がいいんじゃないか?」

 

悟空「そうだな………」

 

悟空が立ち上がった時、空が急に暗くなった。この現象は、ドラゴンボールを7つ集めた時に現れる神龍が召喚された証拠である。

 

悟空「なに…!!?なんで……!!!」

 

デンデ「もしかして…!天下一武道会でベジータさんが沢山の人を殺したじゃないですか!ブルマさん達がその人達を生き返らせようとしているのかも…!」

 

悟空「そいつはやべぇ…!今使っちまったら後一年使えねんだぞ…!!」

 

 

悟空は必死にブルマ達の気を探し、見つけたらすぐに瞬間移動をした。その少し前、カプセルコーポレーション前では………。

 

 

 

風太郎「えっ…?四葉が、生き返る…?」

 

二乃「ど、どういうこと……?」

 

ブルマ「この世にはドラゴンボールっていう便利なものがあるのよ。7個集めると大抵の願いは3つ叶えてくれるのよ。寿命を迎えて死んだ人や、病気で死んだ人を除けば生き返らせることは可能よ!」

 

五月「……!!ああッ!!以前孫君に聞きました!!それで一度死んだはずの孫君のお父様が生き返ったって!!」

 

二乃「はぁ!?なんでそんな重要なことをもっと早く言わなかったのよ!?」

 

五月「四葉が死んで一花もおかしくなっていたから動揺していたんです!!」

 

風太郎「……あっ(そういえば、確か修学旅行の時も悟飯が言ってたっけ……死んだ人も生き返らせることができるのか…!?)」

 

三玖「でも良かった…!!これで四葉は戻ってきてくれる…!!」

 

一花「ほ、本当に……?四葉は、戻ってくるの……?」

 

ヤムチャ「ああ。だから安心しな!お嬢ちゃん!」

 

ブルマ「それじゃ、そうと決まれば神龍を呼び出すわよ〜!!」

 

亀仙人「久々じゃの……」

 

ブルマはカプセルを投げてドラゴンボールが収納されている箱を取り出し、そこからドラゴンボールを取り出して7個地面に置く。すると7つのドラゴンボールが同時に光出す。この状態であの合言葉を言えば、高層ビルの高さを超える大きさの龍が参上するというわけだ。

 

ブルマ「いでよ神龍っ!!そして願いを叶えたまえ〜!!!!」

 

合言葉を唱えた途端、7つのドラゴンボールが強く発光する。その光から……。

 

神龍『グォオオオオオオッ!!!!!!

 

大きな龍の頭が出現したかと思いきや、蛇のような長い胴体が現れ、少々複雑な動きをした後に、ようやく神龍の動きが止まった。

 

五月「ひ、ひぇえええ!!!!!」

 

あまりの迫力に、五月は肝試しの時とは比較にならない程驚き、尻餅をついてしまっている。

 

一花「うわ…!これCGじゃないんだよね…?デッカ……!!!」

 

二乃「ほ、本当にこいつ願いを叶えてくれるの!?私達に襲いかかってきたりしない!!?」

 

三玖「だ、大丈夫…!多分見た目が怖いだけだと思う…!!多分………」

 

らいは「大きい…!龍って本当にいたんだ〜!!」

 

勇也「こりゃあ驚いた………」

 

初めて神龍を見た者の反応はそれぞれ。殆どは神龍のその見た目に恐怖していた。

 

ブルマ「あ〜……。私達も最初はあんな感じだったっけ?」

 

ヤムチャ「懐かしいな…。初めて見た時は本当に怖かったぜ………」

 

懐かしんでいる場合ではない。早くしないと神龍が引っ込んでしまう。

 

神龍『さあ、願いを言え。どんな願いも3つだけ叶えてやる』

 

ヤムチャ「どういえばいいんだ?ベジータに殺された人達を生き返らせてくれって言えばいいのか?」

 

ブルマ「それだと四葉ちゃんは生き返ることができないじゃない?」

 

ヤムチャ「それもそうか…。面倒だからこうするか……。今日死んだ人達を生き返らせてくれ!あっ、勿論悪人を除いてな!」

 

神龍『容易い願いだ………』

 

承諾した神龍は、真っ赤な目を光らせると黙り込む……。

 

神龍『願いは叶えられた。2つ目の願いを言え』

 

二乃「願いが叶った…?本当に…?」

 

二乃は確認をするために振り返る。すると………。

 

二乃「……!!四葉の怪我が治ってる!!」

 

「「「「!!!?」」」」

 

この言葉に4人が反応する。

 

四葉「う、うーん………。あれ?私……」

 

二乃「四葉…!!」

 

三玖「ほ、本当に生き返った!?」

 

五月「す、すごい………!!」

 

一花「四葉…!!」

 

生き返った四葉の姿を確認し、一花が真っ先に四葉の元に走る。

 

 

 

 

四葉「ふぇ…!!!?」

 

風太郎「良かった…!本当に、良かった…!!!!」

 

しかし、先に四葉に抱きついたのは風太郎だった。

 

四葉「ううう、上杉しゃん!!?なな、何をして……!!!!?」

 

風太郎に抱きしめられていることを認識した四葉は顔を真っ赤にして風太郎に呼びかけるが、風太郎は『良かった』と言うだけで中々離してくれない。嬉しいような、恥ずかしいような複雑な感情に襲われていた。

 

一花「四葉ぁッ!!!!」

 

そんなことはお構いなしに一花は泣きながら四葉に飛びつく。

 

一花「ごめん…!!ごめんね四葉!!!痛かったでしょ?苦しかったでしょ?私のせいで…!!ごめんね!!!!」

 

泣きながら四葉に何度も謝罪をするが、四葉は怒ってないよと優しく返答して一花の頭を撫でる。

 

五月「四葉ぁああ!!!」

 

三玖「本当に生き返ったんだ!!」

 

二乃「心配したんだから!!馬鹿ぁあッ!!!!!」

 

四葉「うわっ!!!?みんな!!!?」

 

少し遅れて残りの3人が一斉に四葉に飛びつく。

 

四葉「み、みんな〜!!苦しいよ〜!!!」

 

そう言いつつも、四葉は涙を流しながらも笑っている。この場に戻ってくれたことを嬉しく思っているのだ。再び大好きな家族や風太郎と共に過ごせると確定して喜びを隠しきれていない。

 

悟空「しまったぁあ!!間に合わなかった!!!」

 

ブルマ「孫君!?」

 

亀仙人「悟空!?どうしたんじゃ!?」

 

このタイミングで悟空が天界から瞬間移動をしてきた。

 

悟空「な、なあデンデ!1つ願いを叶えちまったみたいだけど、その場合どうすればいいんだ?」

 

『そしたら願いはもういいって言ってください!そうすれば4ヶ月後には再びドラゴンボールを使えるようになります!!』

 

悟空「オーケー!分かった!神龍!!もう願いはいい!!サンキューな!」

 

神龍『承知した。ではさらばだ〜!!』

 

神龍の体は突然光となってドラゴンボールに戻る。すると強く光る7つのドラゴンボールは宙に浮き、ある程度の高さまで上がると、7方向に散らばってしまった。

 

悟空「みんな!詳しいことは後で説明するから、取り敢えずオラの手に掴まってくれ!」

 

そう言うと、悟空はその場にいた者達を連れて瞬間移動をした……。

 

 

 

 

 

二乃「うわっ…!!一瞬で移動しちゃった………」

 

四葉「ここどこですか……?」

 

亀仙人「ここは天界と言って、神様が住んでおられるところじゃ」

 

五月「か、神様ッ!!!?」

 

勇也「えっ?神様って実在したのか?マジで?」

 

らいは「へぇ!じゃあ神社のお祈りの効果は本物なんだね!」

 

亀仙人「(その神様は恐らくまた別人じゃろうがの…………)」

 

クリリン「おお!全員連れてきたのか!」

 

18号「クリリン!無事だったのかい?」

 

クリリン「ああ、俺はな……」

 

二乃「………あれ?ハー君は?」

 

クリリン「……!!」ギクッ

 

天界に呼び集められたはずの一同だが、何人か足りなかった。特に五つ子達にとっては最も関わりのある悟飯が不在であることに違和感を感じた。

 

三玖「そういえば……」

 

五月「見当たりませんね……」

 

四葉「………この辺りにはいないみたいだよ。気が見つからない」

 

チチ「そういえば悟天ちゃんもどこだか?」

 

ブルマ「トランクスもいないし……」

 

クリリン「と、トランクスと悟天は無事です!多分あっちで寝ているんじゃないですかね?」

 

ブルマ「そう?ならいいんだけど……。そういえばベジータは………」

 

クリリン「あ、あ〜…………」

 

悟空「………仕方ねえ。どうせ隠してもバレるんだ。オラが話す」

 

クリリン「えっ?悟空!?」

 

悟空は険しい顔つきになると、みんなに……。特に、五つ子や風太郎にとっては激震が走るほどの衝撃的事実を告げる。

 

悟空「………悟飯とベジータは死んだ。魔人ブウに殺されたんだ」

 

チチ「ご、悟飯ちゃんが………!!!」

 

牛魔王「あっ!チチ!?」

 

受け入れ難い事実にチチは気絶をしてしまい、そんな娘を牛魔王が庇う。

 

ブルマ「べ、ベジータが……!!そ、そんな………!!!!!」

 

ブルマは最愛の夫の死を知って涙を流す。終いには大声を出して年甲斐もなく大泣きしてしまう。

 

二乃「な、何言ってるのよ!!さっきのドラゴンボールってやつで生き返れたんじゃないの!?そうよね!?だって悪人を除いて生き返るんでしょ?現に死んだはずの四葉だって生き返ったんだもの!」

 

五月「そ、そうですよ!!孫君は生き返っているはずです!!」

 

悟空「……ん?なんで悟飯が生き返るんだ?『ベジータに殺された人達を生き返らせて』って願ったんじゃねえのか?」

 

ヤムチャ「面倒だから『今日死んだ人達を悪人を除いて生き返らせて』って願ったぞ?」

 

デンデに治療されながらヤムチャは簡素に答える。

 

悟空「そうなんか?それなら確かに悟飯は生き返っているはずだな……」

 

三玖「な、なんだ……。もう二度と会えないのかと思っちゃった…………」

 

一花「…………あれ?でも四葉はさっき………」

 

3人はドラゴンボールで悟飯は蘇生したものだと信じて疑わなかったが、先程の四葉の発言を聞いていた一花は不思議に思う。

 

四葉「………見つからない。孫さん程の人の気が見つからないはずがない…!」

 

ピッコロ「………俺が探しても見つからん………」

 

悟空「ああ。オラも探ってみたが見つからねえ…………」

 

二乃「な、なんで…?ドラゴンボールは願いを叶えてくれるんでしょ……?」

 

ヤムチャ「ベジータはともかく悟飯が悪人判定されるとはとてもじゃないが考えにくい……。なら、悟飯はどうして………」

 

ピッコロ「………もしかすると、宇宙空間に放り出されたのかもしれん……」

 

悟空「なんだって?」

 

ピッコロのそんな呟きに悟空が反応した。

 

ピッコロ「俺はあの時の戦いを見ていた。悟飯は魔人ブウの気弾によって吹き飛ばされていた。その気弾は爆発することなく飛び続けていた…。つまり、悟飯は()()()()()()()()可能性がある」

 

悟空「……!!そういうことか…!仮に生き返ったとしても、宇宙空間じゃあ息ができないから……………」

 

ドラゴンボールで人を生き返らせた場合、死ぬ直前の位置で生き返ることができるのだが、そこが宇宙空間だと再び窒息死してしまうのだ。ピッコロの考えでは、今回の悟飯はそうなってしまったのではないかと考えたのだ。

 

二乃「…………なに、それ………?嘘よね……?」

 

悟空「現に悟飯の気が見つからねえんだ。生きてる可能性は低い………」

 

三玖「そ、そんな……!!そんなぁ…!!!!」

 

風太郎「四葉が生き返ったと思ったら、今度はお前が死ぬのかよ……!!!くそッ!!!!!」

 

五月「そ、そんな…!!!嘘です!!!私は認めませんッ!!!あの孫君が死ぬなんて…!!殺されるなんて…!!!そんなこと…!!!!!!!」

 

悟空「気持ちは分かるけど、そんな騒いでも仕方ねえ…………」

 

一花「ちょ、ちょっと…!その言い方はいくらなんでも…!!!」

 

二乃「っ!!!!!あんた!!!!!!」

 

悟飯の実の父親だというのに、悟飯が死んだと聞かされても悲しむ素振りを見せない悟空に、二乃がズンズンと近づいていく。

 

二乃「あんたねぇ…!!息子が死んだのよ!!!!?それなのにその態度はなんなの!!!?息子のことをなんとも思ってないわけ!!!!?」

 

悟空「そんなことはねえさ」

 

二乃「ならなんでそんな平気な顔をしていられるのよ!!!?それでも父親なの!!!?」

 

悟空「……………」

 

二乃が悟空の胸ぐらを掴み、いよいよ殴りかかるところにまできたが、二乃の腕が突然止まった。

 

悟空「…………息子が死んで、何とも思わねえ父親がいるわけねえ…。…でも、今は悲しんでいる場合じゃねえんだ…。悲しむのは仇を打ってからだ」

 

本当にごく僅かな一瞬だけだったが、悟空の顔が哀愁漂うものに変化していた。それに気付いた二乃は、そっと悟空の服を離す。

 

二乃「嘘…!!嘘よっ!!!!私の前からいなくならないって約束してくれたのに!!!!!なんで!!なんでよぉおおおおおおおおッ!!!!!!!!!

 

受け入れ難い現実に、二乃は大声で泣き叫ぶ。何度も何度も最愛の人の名前を呼びながら泣き叫ぶ………。

 

三玖「悟飯…?うそ、だよね………?私、今からそっちに逝くよ…!!悟飯を一人ぼっちにはしないから……!!」

 

四葉「ま、待って三玖!!早まらないで!!!!」

 

悲しみのあまりに壊れかけている三玖。そんな彼女を放っておくと何をしでかすか分からないので、四葉が必死に取り押さえる。最早目の焦点が合っていなかった。

 

五月「わ、私は認めませんッ!孫君は必ず帰って来てくれます…!!私はそう信じてます…!!!!」

 

五月は悟飯の生存を信じると言うが、目からは涙が溢れ落ちている様子を見るに、考えていることは二乃や三玖と同じのようである。

 

一花「こんなの………。あんまりだよ………………」

 

あまりの現状に、ただそれだけしか言うことができない一花。

 

四葉「なんで、こうなっちゃうのかな…………。少し前まではみんな笑顔だったのに…………」

 

一花が助かって自分も生き返ったかと思いきや、今度は悟飯が死んだことによって再び絶望に叩き落とされた四葉。

 

デンデ「……私は神でありながらなんて無力なんでしょう…。私如きが神を名乗るなど…………」

 

ピッコロ「デンデは気に病む必要はない。お前はドラゴンボールをパワーアップさせた大きな功績がある。お前のお陰で大勢の人間が生き返ることができたんだ」

 

デンデ「ピッコロさん…………」

 

 

 

 

零奈「……!!!」

 

今まで気絶をしていた零奈だったが、ようやく意識を取り戻した。飛び起きて掛け布団を剥ぐと、現状を確認する。辺りを見回してみると、自分にとっては見覚えのない場所だった。隣に悟天とトランクスが寝ている。

 

零奈「………ここは?…!」

 

零奈は気を探ると、他のメンバーもいたことを確認し、窓から飛び降りて娘達と合流する。

 

零奈「…………何があったのですか?」

 

何故か姉妹の殆どが泣きすぎたせいか瞼が腫れていた。三玖に至ってはさっきからブツブツと独り言を呟いており、四葉の呼びかけに全く応じない状態である。

 

悟空「……零奈。実はな」

 

悟空は今まで起こったことを手短に話した。ちなみに、一花が闇落ちをして四葉を殺したこと。その後にドラゴンボールで生き返ったことは伏せている。これは無駄な心配をさせないための悟空なりの配慮だった。

 

零奈「そんな……。孫君が………。セルやベジータさんが協力しても勝てないのですか?」

 

悟空「ああ……。魔人ブウはそれくらいに強え。多分オラでも無理だと思う」

 

クリリン「そ、そんな…!!お前が無理って言うなら一体誰があいつを倒すんだよ!?」

 

悟空「………オラ1人で無理でも、アレをやればいけるかもしれねえ………」

 

ピッコロ「……あれ?あれとはなんだ?」

 

悟空「フュージョンっていうんだ。オラがあの世で教えてもらった技なんだけど、2人であるポーズを取ると合体することができるんだ」

 

クリリン「な、なんだって!?」

 

デンデ「悟空さん!それってメタモル星人の技ですよね?」

 

悟空「おお!よく知ってんなデンデ!」

 

そして悟空は更に説明を加える。フュージョンによって合体した場合は2人のパワーを足しただけではなく、更に大幅パワーアップをするらしい。ちなみに気や体格が同じくらいでないと合体はできないようだ。

 

クリリン「なるほど……。でもドラゴンボールは使っちまったから、ベジータや悟飯は無理か…………」

 

悟空「そうだな…………」

 

クリリン「そ、そうだ!あの悟空にそっくりなやつはどうだよ?」

 

悟空「オラに……?ああ、いたなそういえば」

 

悟空にそっくりな人物というのは、バーダックのことである。実の父親であるから似ていて当然ではある。

 

ピッコロ「クリリン。お前も見ていただろう?あいつも悟飯達と共にあっさりと魔人ブウにやられる様を」

 

クリリン「そ、そうだったな……。もしかして最悪な事態ってやつか…?」

 

クリリンはナイスアイデアを出したと思っていたからなのか、しょんぼりとしてしまう。

 

そんな時だった。

 

『やっほー!地球のみんな〜!今日は君達にお話があるんだ〜!』

 

悟空「……!!この声…!」

 

ピッコロ「バビディか…!!!」

 

バビディが魔術を使って悟空達……だけではなく、地球上の全人類に対して話しかけているようである。一体なんの企みがあるのだろうか……?

 




 実は命の大切さに関してはここで伝えるつもりだったんですが、77話時点で伝わってたみたいですね。察しのいい方が多くてビックリしてます。そしてようやく魔人ブウ編の敵という敵はブウだけになったわけですが…。

 というか、悟飯の死亡誤報を書いてて思ったのが、ここの三玖はなんかすぐに自○しようとしてて無茶苦茶心配になるなぁ…。書いてる本人が何言ってんのとは思うかもしれないけど。ちなみに原作では悟飯の死をそこまで重く受け止めてない(と思われる)悟空でしたが、ここでは少し父親っぽさと戦士っぽさを合わせて出してみました。個人的にはこんな感じの方がしっくり来たので。流石に息子が死んだ(と思っている)のになんとも思わないわけはないと思うので。

 ちなみにカカロットはブウ編までクリアしました。あとはビルス編と復活のフリーザ編と未来編ですかね。無茶苦茶面白いから今度は難易度を上げて2周目に入ろうかな……。ちなみにごときすは四葉、一花、二乃のグッドエンドは見ました。今は三玖ルートを進めてるところです。


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第82話 やっぱり悟空は強い

 前回のあらすじ…。
 一花が正気に戻り、ドラゴンボールによって四葉も生き返ったことによってなんとか明るい雰囲気を取り戻した風太郎と五つ子達。ところが、今度は悟飯が死んだと悟空から聞かされることになる。上げて落とすとはまさにこのことだった。二乃は泣き崩れ、三玖は最早精神の限界、五月は泣き叫ぶことしかできなかった。四葉や一花はそんな姉妹の姿を見て顔を曇らせる……。
 そんな時、脳内に直接バビディが語りかけてきたのだ…。



『平和に暮らしているところ突然悪いね〜。僕はある3人のバカどもに不愉快な目にあったから、その3人の居場所を教えてほしいんだよね〜。みんな目を瞑ってね?そいつらの顔を今見せるから』

 

脳内に直接聞こえてくる声に、世界中の人々は何事かと狼狽えるが、指示通りに殆どの者が目を瞑る。

 

『こいつらなんだけど見覚えあるかな?本人達は分かってるでしょ?早く出てきた方がいいよ〜?』

 

二乃「こ、これって……!!」

 

五月「トランクス君、悟天君にピッコロさん………ですよね?」

 

しかし、殆どの者がバビディとブウの正体を知らない。見知らぬ人に突然不愉快な目にあったから3人組を探してほしいと言われても、すぐに承諾する人はあまりいない。

 

『おっと、自己紹介がまだだったね?僕は魔道士バビディって言うんだ。君達の脳内に直接語りかけることも、映像を送ることができるのも僕の魔法のお陰ってことだよ』

 

バビディは自身の容姿を発信すると、次は魔人ブウの紹介に移る。

 

『そしてこいつが僕の家来の魔人ブウ。僕よりもうーんと怖いんだよ?怒らせない方が身のためだよ〜?』

 

二乃「こ、このデブがハー君を…!!!」

 

三玖「許せない…!!よくも、よくも悟飯を…………!!!!」

 

悟飯を殺した張本人の名前が出てきたことによって、三玖と二乃は隠す気のない殺気を放つが、バビディと魔人ブウには届かなかった。

 

『さて、本人達からの連絡もないし、早く出てこないとどうなるか見せてあげるね。魔人ブウ、打ち合わせ通りにやっちゃってよ』

 

『オッケー!!』

 

映像はバビディとブウがある街を見下ろしている光景に切り替わる。街の人々をブウが超能力か魔法で浮かび上がらせる。

 

二乃「な、何する気!?」

 

四葉「まさか、突き落とす気じゃ…!?」

 

それだけならまだマシだったかもしれない。ある意味もっと残酷な方法で人を殺した。

 

『キャンディになっちゃえ!!!』

 

ツノから放たれたビームによって、人々が一瞬にしてキャンディに変えられると、魔人ブウは一気にそれを吸い込む。ゆっくり舐めるようなことをせず、ガジガジと噛んで一瞬で食事を終了させてしまう。

 

一花「う、嘘………!!!!」

 

三玖「た、食べられちゃった…!!」

 

ピッコロ「くそ…!!バビディの野朗…!!!」

 

『こんな感じで名乗り出てこない場合はお菓子にされて食べられちゃうよ〜?それじゃ、仕上げに掃除しちゃおうか。ブウ!』

 

『ほい!』

 

快諾したブウは、息を目一杯吸い込んで腹を膨らませる。

 

ブォオオオオオオオ!!!!

 

溜めた空気を一気に吐き出して街を瓦礫の山へと変貌させた。息を吹くだけでこの威力だということは、魔人ブウがそれだけ強大な力を持っていることを意味していた。人々はその光景を見て魔人ブウの恐ろしさを理解してしまった。

 

『あれれ?かえって散らかしちゃったかな?まあこんな感じで街が滅茶苦茶にされたくなかったらアイツらの居場所を教えてね〜?』

 

バビディが魔法による通信を切ろうとした時、おっと言い忘れてた、と言って補足説明に入る。バビディの説明によると、バビディと話したいと念じればコンタクトが取れるとのこと。その説明をした直後に一本の連絡が入ったようで………。

 

『なになに?どうしたの?』

 

『その人達なら本日開催された天下一武道会に出場していました。名前は紫色の髪の子がトランクス。独特な髪をした子が孫悟天。ターバンとマントを羽織った顔色の悪い人はマジュニアです』

 

『えっ?名前なんてどうでもいいんだよ?今の居場所か住所を教えてほしいんだけど?』

 

『えっ?いや、それは…………』

 

『えっ?まさかそんなことも知らないのに僕に連絡を入れてきたの?』

 

呆れるようにバビディがそう言った途端、映像はバビディから天下一武道会のスタッフに移る。

 

『あがが……!!!!』

 

するとすぐにスタッフはもがき始め、頭部が不自然に膨らみ始める。やがて膨張に耐えきれずに破裂して首から大量の出血をする。

 

二乃「きゃああああッ!!!!!!」

 

零奈「みなさん!見ない方が賢明です!!」

 

四葉「ひ、酷い………!!!」

 

人が死ぬ瞬間を滅多に見ない五つ子、上杉一家の中には吐き出しそうになっている者もいた。

 

『こんな感じでつまらない報告だったら殺しちゃうからね?念の為にもう一度言うよ?』

 

そう言うと、バビディは映像を再び流して、トランクス、悟天、ピッコロの順に容姿を公開していく。

 

『こいつらの居場所か住所がわかる人がいたら連絡してね〜?早くしないと魔人ブウが全人類を滅ぼしちゃうからお早めにね〜!』

 

『ばいばーい!!』

 

そんなブウの陽気な声を最後に映像は途切れた………。

 

ピッコロ「くそ!バビディめッ!!」

 

四葉「あんな酷いことをするなんて…!許せない……!!!」

 

零奈「それは私も同感です………」

 

クリリン「なあ悟空。ふと思ったんだが、トランクスと悟天はどうだ?」

 

悟空「えっ?何がだ?」

 

クリリン「フュージョンだよ!あの2人なら気も体格も大体同じくらいだろ?丁度いいと思うんだけど………」

 

悟空「……!!それだッ!!でかしたぞクリリン!!」

 

ポポ「それ、俺が言おうと思ってたのに………」

 

出番を奪われたポポが何かを嘆いていたが、今はそれを気にするほど平和ではない。

 

ピッコロ「しかしどうする?その2人が修行している間に下界にいる人々は殺されていく………」

 

悟空「でぇじょぶだ。ドラゴンボールで生き返れる」

 

ピッコロ「しかし、破壊された街は…」

 

悟空「それもドラゴンボールで元に戻る」

 

デンデ「いえ、待ってください。先程の願いで一度に沢山の人を生き返らせてしまいました。そうなると4ヶ月後に叶えられる願いの数は1つだけかと……」

 

悟空「えっ?そうだったか……?いや、それならみんな元に戻してって願えばいいんじゃねえか?」

 

ピッコロ「それなら確かに……。いや、しかし…………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夢を見ていた。あの日の夢を……。

 

『・・・・・』

 

『えっ?何で君を選んだかって?それはね…………』

 

長い時間を経て、ようやく僕が出した答えで、3人に返事をするあの日のこと……。選ばれなかった2人は泣いているのは分かった。慰めようと思ったけど、余計な気遣いは寧ろ傷つけるだけだと言われた。だからと言って誰も選ばないと言えば、彼女達を長期的に傷付けていたに違いない。そう考えたから僕は1人を選んだ。選ばれた時の彼女の顔は今でも忘れない。これから先、どんなことがあっても必ず君を守る。僕は君のことが……………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

悟飯「……!!!!」

 

界王神「よかった!間に合った!!」

 

キビト「魔人ブウの攻撃を受けてよく生存していたな…」

 

悟飯が目を覚ますと、目の前には界王神とキビトの姿があった。界王神はともかく、キビトはダーブラに殺されたはずである。どうしてはこの場にいるのか不思議で仕方なかった。

 

悟飯「あれ……?なんであなたが生き返っているんです?もしかしてそういう能力があるんですか?」

 

キビト「いいや。私にも分からん。気がついたら生き返っていた」

 

界王神「目を覚ましたばかりのところ申し訳ないのですが、私に付いてきてくれませんか?悟飯さんに案内したいところがあるので」

 

悟飯「えっ?はい。分かりました」

 

キビトと共に悟飯は界王神の後を追いかける。しかし、キビトは悟飯の格好を気にしているのか、何度もこちらを見てくる。

 

キビト「………聖なる界王神界でその格好は如何なものか………」

 

そう言うと、キビトは悟飯を指差しながら服装を変えた。

 

悟飯「えっ?なんですかこれ?」

 

キビト「うむ。せめて服装はその場に相応しいものにせねばな」

 

悟飯「なんかこれ、キビトさんとペアルックみたいですね…………。(そういえば三玖さんとペアルックになったこともあったっけ………)」

 

 

そのまま移動し続けると、ある崖に辿り着く。そこには一つの剣が突き刺さっているのが確認できる。

 

キビト「ほ、本当にゼットソードを…?」

 

悟飯「ゼットソード…?なんですそれ?」

 

界王神「我々界王神の間で伝えられている伝説の剣です!これを引き抜けた人には凄い力が与えられるとか…!」

 

悟飯「なるほど!僕がこの剣を抜いて魔人ブウと…!」

 

界王神「そういうことです!」

 

悟飯「よ、よーし!」

 

ゼットソードを引き抜こうとする悟飯だが、思いの外硬くて抜くことができなかった。

 

悟飯「おー!いちちち…!これ相当重いですね…!!」

 

界王神「はい……。私も試してみましたが、抜ける気配は………」

 

キビト「ふん。人間如きにこの伝説の剣が引き抜けてたまるものか」

 

そう言って人間である悟飯を見下すキビトだが………。

 

超悟飯「はっ!!!!」

 

悟飯は超サイヤ人に変身をし、さらに気合いを入れて準備する。

 

キビト「超サイヤ人か…。無駄だ。人間であるお前にはな………」

 

界王神「キビト、黙って見てごらんなさい」

 

目上の者にそう言われたキビトは大人しく悟飯を見守ることにする。剣を掴んだ悟飯は先程と同じように引き抜くのに苦労するが………。

 

グググッ

 

超悟飯「うおおお……!!!!」

 

少しずつ、少しずつ剣が上向きに動くのが確認できる。

 

界王神「おおッ!!これは…!!!」

 

キビト「ば、馬鹿な!!人間に引き抜けるわけが……!?代々の界王神様方も引き抜けなかったというのに!?」

 

 

シャキン……!!

 

超悟飯「はぁ………はぁ………………」

 

気を一気に解放すると、剣が一気に引き抜かれて、その刀身を顕にする。

 

キビト「なっ……!?」

 

まさか人間に引き抜けるとは思ってもみなかったのか、キビトは腰を抜かして驚愕している。界王神はただ純粋に感心している。

 

界王神「流石ですよ!!どうです!?何か変化は!?」

 

伝説の剣を引き抜けた悟飯に対して興奮気味に質問する界王神だが…。

 

悟飯「……いえ、特に…。でもこの剣は重いですね…!!もしかすると、この剣を持ちながら修行すればいいのかもしれませんね…!!」

 

悟飯は不器用に剣を振りながらそう呟くと、界王神は納得するような素振りを見せる。途中キビトに剣を振るうのが遅いと馬鹿にされるが、悟飯が剣をキビトに持たせると、キビトは持つことすらできずに地面に落ちる。

 

……そんな調子で悟飯は界王神界で修行をすることになった………。

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、その頃………。

 

「…………ここはどこだ?私は……。どうやら死んでしまったようだな………」

 

天使を連想させる輪っかを頭上に浮かべている緑色の人造人間セルは、自身の状況を冷静に分析する。

 

セル「…それにしても、私の後ろに凄い行列ができているな…。魔人ブウに殺された地球人か…?」

 

そんなことを呑気に考えていたが、ようやくセルの番がやってきた。ここで閻魔大王の審査によって、天国に行くか地獄に行くかが決定される。

 

閻魔「…どうやらお前は別世界で様々な悪事を働いたそうだな。お前は地獄行きとする」

 

セル「(それでいい……。私は奴に会いたいのだからな………)」

 

地獄行きが決定したセルは、穴が開いて落とされる。すると地獄に到着するのだが、鬼を振り払ってある場所に向かっていった…………。

 

 

 

 

 

 

 

戻って現世…。丁度悟天とトランクスが目を覚ましたところに、悟空が現状を2人に説明しているところだ。

 

悟天「兄ちゃんが、死んだ……?」

 

トランクス「パパも死んだって…?嘘、だよね……?」

 

悟空「………悪りぃけど、嘘じゃねえんだ……」

 

悟天「う、嘘だ!!兄ちゃんが死ぬはずないもん!!うわぁああああああああ!!!!!!!」

 

トランクス「パパがあんな奴なんかに…!!!」

 

悟空「……泣きてえ気持ちも分かるが、今はその時じゃねえ!悔しかったら仇を打つ為に修行すんだ!いいな?」

 

 

 

 

 

 

 

そんなこんなで、悟天とトランクスがフュージョンの特訓に打ち込むことになった時のこと……。

 

二乃「嘘よ…!嘘よ嘘よ嘘よ嘘よ嘘よ嘘よ嘘よ嘘よッ!!!!!!」

 

三玖「もう…。嫌だ…!!悟飯がいない世界なんて……!!」

 

零奈「二乃、三玖……。どうか気を確かに………………」

 

未だに泣き続ける二乃と三玖のケアをする零奈だが、大切な人物が死んだ時どうするべきかは流石に分からない。その為、これといった言葉をかけることはできなかった。

 

四葉「み、みんな………。私がもっと強ければ……!!魔人ブウを倒せるだけの力があれば………………」

 

一花「……いや、四葉。私のせいなんだよ………」

 

四葉「えっ……?」

 

風太郎「どういうことだ…?まさか、お前が悟飯を殺したのか……?」

 

一花「ううん。そうじゃない……いや、結果的にはそうなるのかもしれない…。あの魔道士は確かこう言っていた…。『ダメージを受けた分のパワーは魔人ブウの復活のエネルギーとして使われる』って………」

 

四葉「えっ?それって…………」

 

つまり、四葉と一花が戦った際に、四葉にダメージを与えたことによって、一花が少なからず魔人ブウの復活に貢献していたことを意味していた。

 

一花「私、本当に取り返しのつかないことをしちゃった……。私なんかがいなければ、四葉は死ぬことなんてなかったし、みんな悲しまなかったんじゃ…?」

 

風太郎「お、おい一花………!」

 

一花「寧ろこの場にいていいのか分からないよ……?私は殺人者なんだよ?極悪人なんだよ……?それなのに魔人ブウの被害者ヅラしてここにいるなんておかしいよ……。今からでも殺されに……」

 

風太郎「ま、待て一花!!」

 

一花「止めないでフータロー君。私は私自身がしたことが許せないの…。姉妹にも顔向けなんてできないよ…………」

 

四葉「やめて!!!私は気にしてないから!!そもそも私を殺したのは一花とはまた別人なんだよ!!!」

 

一花「それでも!!あの人格は私から生まれたことに変わりないんだよ!?なら私のせいだよ!!!!」

 

悟飯の死、一花の闇堕ち、四葉の死が姉妹の精神の崩壊に拍車をかけていた。短時間であまりにも重い出来事が連続して起きすぎている。こういった事態に慣れているブルマ達はまだマシな方だったが、五つ子達はあくまでもまだ一般人。こうした事態には慣れていなかった。流石のZ戦士達も、この状況を見るに堪えなかった。

 

四葉「どうしましょう…。私が力不足なばかりに………」

 

風太郎「いや、お前のせいでもないさ……。これに関しては、全部魔道士バビディって奴のせいだ………。本来ならお前らが気に病む必要はないんだ…」

 

一花「そう言われても………」

 

風太郎「あ〜……!!少しでも罪悪感を感じるなら二乃と三玖と五月をどうにかしてこい!!」

 

一花「………うん。分かった」

 

まだ納得していない一花だったが、取り敢えず今は二乃、三玖、五月の3人を慰めに行く。

 

風太郎「くそ……!!なんで死んじまうんだよ、悟飯……!!!」

 

四葉「上杉さん…………」

 

 

 

 

 

 

そして同時刻。バビディとブウが別の街を破壊したのだが、精神が不安定な五つ子達が気にしている場合ではなかった。さらに、トランクスと悟天にフュージョンの稽古をつけさせるのはいいとして、ある問題が発生していた。

 

悟空「そっか……。確かにドラゴンレーダーがないと、ドラゴンボールを集められなくなっちまう………」

 

ブルマ「ドラゴンレーダーなら家にあるわ。今から取りに行かないと……」

 

そんな時だった……。

 

『やっほー。みんなに良いお知らせだよ〜?さっき3人の顔を見せたじゃない?そのうちの紫色の髪をしたガキはトランクスって言うんだけど、そいつの住所が西の都っていうところらしいんだよね〜。ということで、その街を破壊しちゃおうかな〜?』

 

バビディがそんなことを言ったのだ。

 

悟空「やべ…!!」

 

ピッコロ「まずいぞ…!今ドラゴンレーダーがなくなってしまったら…!!!」

 

悟空「………トランクス。おめぇはレーダーを探してこい」

 

トランクス「えっ?でも、おじさんはどうするのさ?」

 

悟空「オラは魔人ブウを食い止める」

 

悟天「えー?そんなことできるのー?気絶して何もしてなかったのに?」

 

魔人ブウが暴れ、悟飯とベジータが身を呈して戦っていたというのに、悟空だけが気絶していたということで、ちびっ子2人から辛口な評価を受けていた。

 

悟空「ああ。ちょっとくらいなら大丈夫さ」

 

トランクス「本当に〜?」

 

そう言うと、悟空は魔人ブウの気を頼りに瞬間移動した………。

 

 

 

 

バビディ「ななっ!?お前は…!!」

 

悟空「よう、バビディ」

 

バビディ「ベジータに殺されたと思っていたけど、生きていたんだね…。そういやお前にお礼しなきゃね。お陰で魔人ブウが復活したんだからね」

 

悟空「……オラもベジータも甘く見ていた。魔人ブウがここまで凄え奴だとは思っていなかった………」

 

ブウ「えっへん!!」

 

バビディ「当たり前だよ。僕のパパが作ったんだぞ。で、何しに来たんだ?」

 

悟空「なーに。ちょっと忠告しに来ただけさ」

 

バビディ「忠告ぅ〜??この僕達に〜?これは面白いよ!そうだ!地球のみんなにも聞かせてあげよう!!」

 

バビディは何かを思いついたように魔法を発動させ、地球にいる者全員に悟空の姿が映るようになる。

 

悟空「いいか!おめぇの探しているあの3人は近いうちに絶対現れる!約束する!!」

 

バビディ「なんで待つんだ?何か企んでいるのかな?」

 

悟空「ああ……。おめぇらを倒す特訓をしているんだ」

 

バビディ「だははは!!面白いこと言うね〜?僕達を倒すだってさ、ブウ」

 

ブウ「かかかかかっ!!!!」

 

悟空の発言が余程面白かったのか、2人は腹を抱えて大笑いをする。

 

バビディ「そんなに待つわけないだろバーカ。すぐにここに連れてこい。でないと地球人を殺し続けるよ?そもそも僕達は破壊行為そのものも楽しんでいるんだけどね」

 

悟空「……だろうな。じゃあオラもちょっとだけ抵抗させてもらおうかな…」

 

悟空に戦意があることを把握したバビディは、ブウに戦うように指示するが、ブウは口笛を吹くだけで何もしようとしない。何度も命令されてようやく戦う気になった。

 

悟空「…………」

 

その様子を見て、悟空は思ったままのことを口にする。

 

悟空「おめぇ、そんなに強えのにバビディの言いなりか?」

 

バビディ「こら!余計なことを言うんじゃないよ!!ブウは僕の家来なんだから言うことを聞いて当然だよ!!」

 

ブウ「…………」

 

バビディ「な、なんだ?また封印されたいのか?」

 

ブウ「………俺を封印したら、お前はあいつに殺されるぞ?」

 

いつ知恵をつけたのだろうか…。ブウはど正論を言ってバビディを黙らせる。

 

ブウ「でも、あいつを殺してやる。良い子みたいだから嫌いだもーん」

 

バビディ「ほっ…………」

 

結果的にバビディの思い通りになり、安堵する。

 

悟空「ちぇ、しょうがねえな……」

 

あわよくばブウがバビディに反抗して破壊活動をやめさせることができるのではないかと考えた悟空だったが、その作戦は無駄に終わったため、当初の予定通り魔人ブウと戦うことにした。

 

超2悟空「……!!!!」

 

悟空が超サイヤ人2に変身すると、先程まで悟空の実力を疑っていた悟天とトランクスに変化が起こる。

 

超トランクス「す、すげぇ…!!パパと同じくらいの気だ…!!」

 

トランクスは速やかにレーダーを回収するために超サイヤ人に変身していた。

 

バビディ「無駄だ無駄!ベジータもそれをやってたけど無理だったんだぞ?」

 

このバビディの発言はごもっともで、あの時のベジータと悟空は全くの互角だった。故に、今の悟空でも恐らくブウに勝てないだろう。しかしそれが分からない悟空ではない。

 

超2悟空「………なら、超サイヤ人を超えた超サイヤ人をもう一つ超えてやるか…………」

 

 

 

ピッコロ「な、なに!?超サイヤ人を超えた超サイヤ人を、更に超えるだと!?」

 

クリリン「じょ、冗談だろ…?更にその先があるなんて……なあ?」

 

四葉「う、嘘ですよね……?今よりも強くなるんですか………?」

 

悟空の発言をバビディの魔法を通して聞いていた各々は驚く。今でも十分強いというのに、更に強くなれるというのだ。本来なら他の4人もこの発言に対して何らかの反応を示していたはずだが、一花は少し前までの自分がしてきた行いに対する悔い、他3人は悟飯が死んでしまったことによってそれどころではなかった。

 

 

バビディ「なに?スーパー……なんだって?」

 

超2悟空「超サイヤ人だ。せっかくだから一から教えてやるよ」

 

そう言うと、悟空は一旦超化を解除して黒髪に戻る。

 

バビディ「なんだ?諦めたのか?」

 

ボォオオッ!!

 

超悟空「まずこれが超サイヤ人だ」

 

ボォオオオオッ!!!

 

超2悟空「そしてこれが超サイヤ人2だ」

 

バビディ「ちっとも変わってないじゃないか?それがなんだって言うんだい?」

 

超2悟空「いいことを教えてやるよ。超サイヤ人は通常時の大体50倍の戦闘力になるんだ。超サイヤ人2は更にその2倍だ。つまり、通常時と比べたら100倍だな。そして、次に変身する奴は更にその4倍の戦闘力になる………これが………!!!!」

 

グゴゴゴゴゴゴッ…………!!!!

 

悟空が力むと地球全体が揺れ始める。

 

 

 

 

ピッコロ「な、なんだ……!!?」

 

クリリン「マジなのか悟空!?」

 

零奈「信じられない……!!気が確実に膨れ上がっています………!!!!」

 

四葉「あなた達は一体どれだけ強くなるんですか……!!?」

 

 

 

超2悟空「うぁぁああああ……!!!」

 

超サイヤ人2まではスムーズに変身できていたが、3になると変身するだけでも時間を要する。悟空自身も超サイヤ人3にはまだ慣れておらず、現世で披露するのはこれが初めてとなる。

 

世界中では悟空の気の膨張に伴って、海が揺れ、大地が大幅に揺れ、建物に至ってはガラスが割れたりヒビが生えたりする。中には崩れる建物もあった。

 

その間に悟空の髪が少しずつ、確実に伸びていき、眉毛が段々と薄くなっていく………。

 

バビディ「な、なんだぁ!?」

 

気を感じることのできないバビディでも、今回の変身は今までのものとは違うことを悟る。

 

超2悟空「うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおッッ!!!!!!」

 

 

ボォオオオオオオオオオオオッッ!!!!!!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

超3悟空「………………」

 

バビディ「な、なんだぁ…!?」

 

ブウ「そんな怖い顔をしたってちっとも怖くないぞ」

 

超3悟空「待たせたな…。これが超サイヤ人3だ。まだこの変身には慣れてねえから随分待たせちまったな………」

 

 

 

 

ピッコロ「な、なんだと………!!!」

 

クリリン「これが、悟空なのか……!?」

 

ヤムチャ「あいつどこまで強くなれば気が済むんだ……!?」

 

亀仙人「凄まじい気の嵐……。今までの超サイヤ人とは違うということか……!」

 

零奈「あれほどの気を持つことができるなんて……。一体どんな修行をしたら…………」

 

四葉「少なくとも私じゃ想像もできないよ…………」

 

悟空の新たな超サイヤ人を見た反応は殆ど同じであった。今回は見た目も大幅に変わっていることから、かなりインパクトがある。

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、その悟空の凄まじい気の嵐は界王神界でも感じ取ることができるほどのものだった。

 

超悟飯「こ、これはお父さんの気!?なんてパワーだ……!!!」

 

キビト「この聖域にまで届くとは…!!」

 

界王神「これなら魔人ブウを倒せるかも…!!」

 

 

 

 

バビディ「ふ、ふん!2だか3だか知らないけど、それがどうしたって言うんだい?あんなのあっさりと片付けちゃえよブウ!」

 

超3悟空「そうだ……。さっさとやろうぜ………」

 

バビディ「へっへっへ〜!僕を通じて地球中の人間どもが見ているんだ!恥をかかせてやれ〜!!」

 

 

 

 

シュン‼︎

 

ブウ「……!!!!」

 

一瞬何をされたのか認識できなかった。魔人ブウは悟空達のように気を認識しているわけではない。ただ扱えるのと認識できるのは訳が違う。悟空の莫大な戦闘力にブウは気づいていない。

 

目の前の孫悟空というサイヤ人は、最強であるはずの魔人ブウと同じ土俵に立っているのだ。いや、もしかすると魔人をも上回っているかもしれない…。

 

バビディ「ぶ、ブウ!?」

 

ガシッ!!

 

悟空はブウのツノの部分を掴んで頭部を殴る。するとブウのツノの部分が伸びるので、それを利用して悟空は何度もブウの頭部を殴り続ける。その後にぶん回して思いっきり投げつける。

 

投げつけられブウは建物に叩きつけられ、その建物は当然のように崩れる。しかし不死身の魔人ブウがこの程度で死ぬはずもなく、瓦礫の山から抜き出したら、ベジータが使っていた気弾の連射を利用する。

 

超3悟空「これは……!!!」

 

悟空はその攻撃を慣れた手つきで弾いたり避けたりする。だが、少し戦っただけで相手の技を扱えるとなると、今までの敵とは一味も二味も違うということになる。

 

超3悟空「かー…!めー……!!はー…!!めぇぇえ…!!!!

 

波ぁああああああああああッッ!!!!!!

 

ズォオオオオオオオオオオオオオオッッ!!!!!!

 

悟空は一気に気を溜め、魔人ブウを消滅させる勢いで巨大なかめはめ波を放った。

 

ブウ「……!!!」

 

しかし、ブウは直前で避けた。外れた悟空のかめはめ波は遠くの海に着弾し、大爆発を起こした………。

 

バビディ「あ、あぶな〜…!!こいつは今までの奴らとは格が違うかも…!!」

 

主人であるバビディが焦っている中、魔人ブウは未だに余裕の笑みを崩さない。そもそも魔人ブウ自体が緊張感という概念が存在しない生き物である。

 

ブウ「にひひ!」

 

無邪気な笑顔を浮かべたブウは、悟空がかめはめ波を放つ際に取ったポーズを真似て、光の玉を作り出す。

 

超3悟空「……!!!!」

 

ブウ「ぶぅうううううッッ!!!!」

 

ズォオオオオオオオオオオオオオオッッ!!!!!!!

 

ブウの両手から放たれたかめはめ波は悟空に向かってまっすぐ突き進んでいくが………。

 

超3悟空「ちっ…!!!!」

 

悟空はなんてことないといった様子でそれをブウに向けて跳ね返す。

 

ブウ「にぃ…!」

 

ブウもまた同じようにかめはめ波を弾き返すのだが、その方向が……。

 

バビディ「うわぁ!!危ないだろ魔人ブウ!!」

 

なんと、主人であるバビディがいる方向であった。バビディは運良く避けることができたが、その先には街があった。かめはめ波の方向を変えるものは誰もおらず、そのまま街全体がかめはめ波の餌食となった……。

 

超3悟空「しまった……!!!!」

 

バビディ「あーあー……。あれで地球の10分の1はなくなったんじゃない?とんだ正義の味方だよね〜?」

 

 

 

 

 

 

そんな戦闘の様子をバビディの魔法を介して見ていた者達は、皆驚くしかなかった。特に、悟飯がセルやバーダックと共闘しても手も足も出なかった様子を見ていたピッコロとクリリンとっては、悟空がたった一人でブウと互角以上に戦っていることに恐怖さえ覚えた。

 

ピッコロ「どっちも化け物だ…!!」

 

ヤムチャ「この調子なら、悟空でも魔人ブウを倒せるんじゃ……?」

 

四葉「これなら絶対いけますよ!!」

 

はたして、地球の運命は如何に……?

 




 次回まではほぼ原作通りとなりますが、それ以降は原作とは大きくかけ離れた展開になる可能性があります。というのも、84話以降はまだ書けてないからなんとも言えないだけなんですけどね。でも77話や80話のような感じで新たなイベントというかストーリーも作り出したいので帰るつもりです。
 超3悟空vsブウに関してはカットしてもよかったんですけど、なんかそんな気にはなりませんでした。ただ他の戦闘(特にオリジナル展開のやつ)に比べると大分端折ってますけどね。てかそうしないと本当にペースが遅くなるんですよね。だってブウ編が始まってもう10話超えたんじゃないですか…?いや、正確にはまだかな…?あまり変に引き伸ばすようなことはしたくないんですよね…。でも要所を取り除くわけにもいかない…。難しいネっ!!

 ちなみにセルが地獄行きになってる件の補足。彼は誕生時の世界では結構派手に暴れていました。そして恐らく閻魔様の仕分けシステムは、多分魂に経歴的なものが刻まれてるんじゃね?という考えの元こうなりました。

 今83話までしか完成してません。ストックピンチです…。ペース落ちたらすみません…。でもあと少しで84話は完成しそうなのでなんとかなりそう……?取り敢えず無理しない範囲で頑張ります。


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第83話 フュージョン

 前回のあらすじ
 バビディが魔法を利用して全地球人にある街を破壊する光景を見せて脅してきた。その理由は悟天、トランクス、ピッコロの居場所を割り出すためである。
 一方で、悟飯はキビトの回復術によってなんとか意識を取り戻し、界王神界で魔人ブウを倒すために修行することになる。
 そして、悟空は西の都が破壊される前にドラゴンレーダーを回収させるべく、時間稼ぎとして魔人ブウに挑んでいった。悟空は超サイヤ人2の先の超サイヤ人3にまで変身し、悟飯やセル、バーダックをあっさりと倒した魔人ブウ相手に互角に戦っていたのだが……。



超3悟空「いや、おめぇは本当にすげえよ。すっとぼけた顔してるけど、相手の技を見切って瞬時に自分のものにしちまうなんてよ」

 

ブウ「えっへん!!!」

 

超3悟空「……(トランクスの気が再び動き出したな……)」

 

トランクスがドラゴンレーダーを発見したことを確認した悟空は、超サイヤ人3を解除して元の通常形態に戻った。

 

ブウ「おい待て!お前良い子のくせに強い!もっとお前と遊ぶぞ!!」

 

悟空「そいつは光栄だな……。でもオラには時間がねえんだ…。この辺で勘弁してくれ………。その代わりと言っちゃなんだが、3日………いや、2日後にはオラよりも強えやつが現れる。それまで何もしないで待っててくれねえか?」

 

バビディ「へっへーん!そんな話、僕達が聞くと思う?ますます張り切って殺しちゃうもんね〜!!」

 

悟空「ちっ……。惜しいな。魔人ブウとの戦いは楽しいのによ……。おめぇが地獄に落ちたらたっぷりと閻魔様に絞ってもらえるように言っとくぜ……」

 

バビディ「なんだかよく分からないけど逃すわけないでしょ?やっちゃいな、ブウ!!」

 

 

シュン‼︎

 

しかし、悟空は一瞬にして姿を消してしまった。

 

ブウ「あれ?あいつ、どこ行った?」

 

バビディ「ああ!お前のせいで逃げられちゃったじゃないか!デブ!ノロマ!!!」

 

ブウ「……………ねえねえ、バビディ様。俺いいこと思いついた!」

 

バビディ「なんだ?どうせ碌なことじゃないだろうけど聞いてあげるよ」

 

ブウ「あのねあのね…………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シュン‼︎

 

ピッコロ「悟空!!」

 

クリリン「お前凄いな!!一体あの世でどんな修行をしたんだよ!!?」

 

悟空「……………」

 

ピッコロ「お、おい悟空?」

 

悟空「…………ブウのやつ、本当にバビディをやりやがった…………」

 

ピッコロ「なに?バビディを……?」

 

ピッコロは気を確認するが、確かにバビディの気を感じることはできなかった。

 

悟空「これで大人しくなってくれればいいんだが………………」

 

ところが、魔人ブウはバビディがいなくなったからといって、破壊活動をやめるようなことはしなかった。むしろ計算せずに破壊し続けているため、以前よりも早いペースで人々が殺されている。

 

悟空「くそ……。ダメだったか………くっ………」

 

ピッコロ「ど、どうした悟空?」

 

悟空「超サイヤ人3ってのは本来あの世でしかなっちゃいけねえ変身なんだ。時間っていう概念がある現世で使っちまうと一気にヘトヘトになっちまうんだ………。オラに残された時間は少ねえ……(早く戻ってこい、トランクス!)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、あの世では………。

 

セル「ほう?ここが地獄か………」

 

「そうだ。貴様はこれから生まれ変わるまでここで過ごしてもらうオニ」

 

セル「………そうか。そうだ。フリーザ達はどこにいる?あいつらも地獄に落ちているはずだ」

 

「フリーザ……?ああ、そいつらならあっちにいるオニよ?」

 

セル「なるほど……。わざわざすまないな…………」

 

セルが律儀に鬼に礼を述べると、不自然に光り始める。

 

「な、何をするオニ!!」

 

セル「心配するな。ここを荒らそうとしているわけではない…………」

 

(とうとうこの願いを使う時が来たな。私を生き返らせろ………)

 

セルが心の中でそう唱えると、頭上に存在していたはずの輪っかが綺麗さっぱりなくなってしまった。

 

「ええ!?どういうことオニ!?まさか、噂のドラゴンボールオニか!?」

 

セルが単独で生き返れた理由は少々特殊である。ある世界で集めたドラゴンボールを使い、こう願ったのだ。

 

『今回分の願いを、私の好きなタイミングで叶えられるようにしてくれ』

 

こう願うことによって、セルの意思によって好きなタイミングで願いを叶えられるようにしたのだ。別世界のドラゴンボールの存在しない世界に行ってしまった時の対策のようなものだった。

 

セル「さて、向かうか…………」

 

ドシューンッ!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

セル「………ここだな」

 

悪者の溜まり場だろうか……?セルにとっては見覚えのない連中が集まっていた。

 

ナッパ「ああ?なんだ貴様?」

 

クウラ「貴様、死んでないな?」

 

フリーザ「あなた、セルさんですよね?いつの間に生き返ったんですか?」

 

セル「………そうか。貴様がフリーザか。お前も私のことを知っているようだな?」

 

しかし、セルの目的はフリーザでもない。本来の目的はもう1人の自分だったのだ。ここからは2人のセルが同時に喋ることになるので、並行世界からきたセルを『セル(並行)』と表記する。なお、セルゲーム時に悟飯と戦った方のセルは『セル(死亡)』と表記する。

 

セル(死亡)「………貴様がパラレルワールドからやってきたという、もう1人の私か…………」

 

セル(並行)「そうだ。貴様が私のことを知っているとは驚きだがな…」

 

セル(死亡)「わざわざここまで来て何の用だ?」

 

セル(並行)「……貴様は魔人ブウという存在を知っているだろう?私はあの怪物を倒したいのだ。それには、お前の力が必要だ」

 

セル(死亡)「私の力だと……?どういうことだ………?…!!まさか!!」

 

並行世界のセルの真意に気づいた既に死んでいるセルは、驚愕する表情を並行セルに向ける。

 

セル(並行)「そうだ。ナメック星人が融合する時のように、私達も融合するのだ。私とお前が融合すれば間違いなく魔人ブウを遥かに凌ぐ究極の生物が誕生する…………」

 

セル(死亡)「………断る」

 

セル(並行)「何故だ?貴様は生き返ることができるのだぞ?それに今までにないほどのパワーアップを遂げることができるというのに……」

 

セル(死亡)「ベースは貴様になるのだろう?それは私が貴様に吸収されるのと同義ではないか?」

 

死人のセルにそう言われた並行世界のセルは、不敵な笑みを向けてこう言う。

 

セル(並行)「なら貴様はここで永遠に暮らすか?究極の人造人間ともあろうものが惨めにも生まれ変わるまで永い時間を待つと?」

 

セル(死亡)「ぐっ…………」

 

セル(並行)「私がベースとなって融合すれば、私は大幅にパワーアップし、お前は生き返ることができる。悪くない取引だと思うのだがね?」

 

セル(死亡)「くっ………!!」

 

確かに並行世界のセルの言うことは正しかった。このまま地獄にいてもただ退屈なだけである。そしてよく分からない生物に生まれ変わってしまうならいっそ………。

 

セル(死亡)「………いいだろう」

 

セル(並行)「流石私なだけあって、飲み込みが早いな」

 

しかし、この並行世界のセルは中々悪どい。自身に蓄積された願いの力で既に地獄にいたセルも生き返らせればよかったものを、わざわざ生き返らせなかったのだ。それも全て自分がベースとなって究極の力を得るためである。

 

セル(並行)「…………はっ!!!!」

 

ベースとなる並行世界のセルが死んでいるセルに触れると、死人のセルは光となって並行世界のセルに入り込んでいく。

 

セル「ふははははッッ!!!!素晴らしい!!まだ融合が完了していないというのに、溢れるばかりのパワー!!これぞ私が求めていた力だッ!!!!やはり人造人間セルは究極の生物だったのだ!!!!!!」

 

融合が完了すると、その膨大な気に地獄が揺れる。地獄だけでなく、閻魔の元にもその気が届いた。

 

フリーザ「な、なんと……!!」

 

クウラ「合体しやがった……!!」

 

セル「…………ふふふっ…。これなら魔人ブウも恐るるに足らん……!!!待っていろよ魔人ブウ。その呑気な笑顔を一瞬で絶望に染まりきった顔に塗り替えてやろうではないか……!!!」

 

ドシューンッッ!!!!

 

セルは高笑いをあげながらその場を後にした。2人のセルが1つになり、真の究極生物が産声をあげた、

 

………否、最早究極生命体という枠をも飛び出ているかもしれない。現存する生物という枠に当て嵌めるのもおこがましいだろう。

 

セル「もう私はただの人造人間セルではない…。究極生命体の枠を飛び越え、誰にも辿り着けない境地に辿り着いた生物の名は……………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

トランクスが無事帰還してドラゴンレーダーの回収に成功した。早速フュージョンの特訓を始めようとした悟空だったが、悟天とトランクスがさっきと違ってやる気満々だった。どうやら先程の超サイヤ人3を見て悟空の評価を改めたらしい。そして順調にフュージョンの特訓が進んでいる頃………。

 

零奈「二乃、もう大丈夫なのですか?」

 

二乃「大丈夫じゃないわよ……。でも、いつまで泣いてもハー君は戻って来ないの…………」

 

すっかり泣き腫らして、最早希望という名のハイライトが瞳から消えてしまった二乃がいた。

 

二乃「もう、いやよ………。私が人生で初めて本気で恋をした相手と、こんな形でお別れになるなんて………………」

 

二乃はすっかり諦めてしまったようだ。もう全てがどうでも良くなってしまったような、そんな様子だった。

 

五月「二乃…!!なにも私達は孫君の死体を見たわけじゃありません!!死んでいるとは限りませんよ!!」

 

二乃「うるさいッッ!!!宇宙空間で死んでたらそんなの確認できるわけないでしょッッ!!!?往生際が悪いのよアンタはッッ!!!!!!」

 

零奈「二乃…!!」

 

三玖「…………殺したい」

 

四葉「えっ……?」

 

三玖「悟飯を殺したのって、魔人ブウってやつなんでしょ?悟飯のところに逝く前に、そいつを道連れにしたい………!!」

 

全てを諦めてしまった二乃とは対照的に、三玖は魔人ブウに対して強い殺意を抱いていた。しかしこれは正常な怒りではなかった。最早完全に壊れていた。悟飯の死という現実を受け止め切れずに、三玖の精神は崩壊してしまったのかもしれない……。

 

五月「孫君は死んでないんです!誰が何と言おうと、死んでないんだよ…!!孫君は………!孫君…!!そんくん……!!!!うわぁあああああああああんッッ!!!!!!」

 

五月もとうとう我慢できずに泣き出してしまった。心が荒んだ娘達をケアするために零奈は大忙しである。泣いている五月はまだマシな方で、最早自暴自棄気味になっている三玖に、廃人寸前の二乃なんかはいくら慰めても無駄である。

 

四葉「みんな……!!落ち着いて…!!」

 

風太郎「そ、そうだ!俺だって辛いさ。でもな、ここでウジウジしてても………」

 

一花「私のせいだ…!私が四葉と戦ったから…!!私が操られたから…!!全部私のせいだ…!!悟飯君が死んだのも、地球のみんなが次々と殺されていくのも、3人がこんなにも傷ついたのも…!!全部私のせいだ…!!私のせいだ…!!」

 

風太郎「一花…!!だからお前のせいじゃねえんだ!!」

 

一花「フータロー君。もう私は生きているのが辛いよ………」

 

風太郎「はっ………?」

 

一花「私の身勝手な行動がみんなを傷付けた……。地球を滅ぼしかけている……。その事実に耐えられないんだ………」

 

風太郎「お、おい!!!」

 

どこからか取り出したのか、一花は包丁を自分の首に向けて、今にも突き刺そうとしていた。

 

 

 

シュン‼︎

 

一花「!?」

 

しかし、一花の手にあった包丁は一瞬にして消えた。それと同時に一花が気絶する。

 

風太郎「一花!?」

 

しかし、倒れる一花を四葉が抱えた。四葉が高速で包丁を取り上げた後に、手刀で一花を気絶させたのだ。

 

風太郎「四葉…………」

 

四葉「…………こうでもしないと、今の一花はいつ死んでもおかしくありません…………」

 

風太郎が質問する前に、四葉が苦虫を噛むような表情で先に答えた。精神的に不安定な二乃と三玖も一旦寝かせることにした。寝ることによってある程度精神が回復してくれればいいのだが、そう簡単に行くとは思えない。気休め程度の応急処置でしかない。神殿内にあった寝室に、一花、二乃、三玖の3人を寝かせた。

 

ポポ「ポポ、一応催眠術をかける。でもこれはあくまでも応急処置。放っておけばまた元に戻る」

 

四葉「いえ、応急処置だけでも十分です。ありがとうございます………」

 

ポポは寝ている3人に、精神を安定させる催眠術をかける。しかしこの催眠術は永久に続くものではないため、時間が経つと効果が切れてしまうのだ。

 

そんな重苦しい空気が続く中、悟空のタイムリミットが来てしまった。超サイヤ人3になったことによって現世にいられる時間が大幅に減ってしまったようだ。しかもメタルクウラ襲来時に1時間分の時間を先取りで使っていた関係上、悟天とトランクスにフュージョンを教えることができたのは本当に数分だけだった。

 

チチ「悟空さ!本当に帰ったちまうんか!?」

 

悟空「ああ……。悪りぃけど時間切れだ…………」

 

クリリン「せっかくの1日がこんなことになっちまうなんて………」

 

悟空「そんな顔すんなよクリリン。仕方ねえさ……………」

 

ピッコロ「………フュージョンの特訓は俺が引き継ぐ…。だが最後に聞かせてくれ。超サイヤ人3になった時、お前は魔人ブウを倒せたんじゃないのか?」

 

悟空「…………分からねえ。魔人ブウもデタラメな強さだったからな。でもこれだけは言える。オラは既に死んだ身だ。今生きている若え奴らになんとかしてほしかった……。でも、あのチビ達を見て賭けてみる気になったんだ……。やべえ賭けだけどな………」

 

占いばば「悟空よ。そろそろ行くぞ」

 

悟空「ああ………」

 

腕の中にいるチチを離し、占いばばと共にあの世に戻ろうとしたその時だった。

 

悟天「…………」

 

何やら悟天がソワソワしていた。

 

チチ「……もしかして、おっ父に抱っこしてもらいたいんでねえか?」

 

悟天「…………」

 

悟天はゆっくり頷いた。

 

悟空「なんだそんなことか。それならお安いご用さ。ほれ」

 

悟空がしゃがんで両手を出すと、悟天はゆっくり近づく。しかし恥ずかしいのか中々悟空に抱きつかない。その様子を見てチチが悟天を抱っこして悟空に引き渡す。

 

悟空「……悟天。母ちゃんを頼んだぞ」

 

悟天「…………うん」

 

しかし、時間も限られているので悟天を降ろす。まだまだ足りないと言った様子の悟天だったが、場の空気を察して我儘は言わなかった。

 

悟空「……そうだ。最後におめぇ達…」

 

悟空は占いばばに一言断りをいれ、最後に五つ子……。特に悟飯を愛したやまない3人に話しかける。

 

悟空「………悟飯が死んじまって悲しい気持ちはよく分かる…。あの世で悟飯に会ったらよろしく言っといてやる……」

 

四葉「……よろしくお願いします……」

 

悟空「……もし、フュージョンが上手くいかなかった場合は、おめぇ達がなんとかしてくれ」

 

四葉「………えっ?」

 

五月「どういう意味ですか………?」

 

悟空の言っている意味が分からないと言った様子の五つ子。確かに四葉は気を扱えるとはいえ、とてもじゃないが魔人ブウに太刀打ちできるレベルではない。

 

悟空「おめぇ達は無力なんかじゃねえってことさ………」

 

意味深な発言を残して悟空は今度こそ占いばばと共にあの世に戻る為に浮かび上がる。

 

悟空「じゃあみんな!!死んだらまた会おうな!!」

 

縁起でもないこと言い残して、この世から姿を消した……………。

 

クリリン「全く、悟空のやつ…………」

 

 

 

 

 

 

一方その頃、界王神界では悟飯が未だにゼットソードを使って修行をしていた。

 

悟飯「相変わらず重いなぁ…!!」

 

不器用に振り回すが、やはりこれといった効果が得られたように感じられなかった。しかし真っ赤な嘘が界王神の間で語り継がれていたとは思えない。恐らくこの剣を使いこなした時に物凄い力を得られるのだろうと、悟飯は界王神の伝説を信じて修行を続ける。

 

悟飯「だりゃあっ!!!」

 

気合いを入れ直して剣を振るったその時……。

 

シュン‼︎

 

悟空「うわっ!!!?」

 

目の前に悟空が突然現れた。振るわれた剣に当たりそうになっていた悟空だったが、直前で避けてなんとか無傷だった。

 

悟飯「お、お父さん!?!?」

 

界王神「ご、悟空さんなのですか!?」

 

キビト「ま、またしてもこの聖域に人間が………!!!!!」

 

悟飯「どうしてこんなところに?まだ23時間経ってないでしょ?」

 

悟空「それについてなんだが……」

 

悟空は悟飯が気絶した後の出来事を丁寧に説明する。先程の強大なパワーの正体は悟空が変身した超サイヤ人3であることも告げる。

 

悟空「あと、あの五つ子の娘っ子達がおめぇが死んだと思い込んで落ち込んでたぞ………」

 

悟飯「……そうですか。でも一花さんは元に戻ったし、四葉さんは生き返ったんですよね?良かったぁ…………」

 

悟空「生きてるなら早くあいつらに顔を見せに行けって言いてえところだが、今は魔人ブウを倒すために修行中だもんな………」

 

悟飯「ええ。このゼットソードは物凄いパワーをくれるみたいなんですが、今のところ手応えがないんですよね…」

 

悟空「ふーん?というか随分動きが鈍いな?そんなに重いんか?」

 

悟飯「はい。持ってみます?」

 

悟空「ああ」

 

悟飯は悟空にゼットソードを渡すと…。

 

悟空「ひぇえ…!!こいつは確かに重いぞ…!!」

 

と言いつつも、しっかりと持ち上げて剣を振るうことはできていた。その様子にキビトは口を開けて驚いているようだった………。

 

悟飯は数時間でゼットソードを大分使いこなせるようになっていた。修行の成果の腕試しとして、宇宙1硬いカッチン鋼を切ろうとするが、なんとゼットソードの刀身が折れてしまった。伝説の剣がやけに呆気ないと思ったその時……。

 

「お前さん達は何か勘違いをしておるようじゃの」

 

………一人の老人が姿を現した。よく見てみると、界王神やキビトと似たような服装をしている。

 

界王神「あ、あなたは……?」

 

「わしか?ワシはお前さんより15代前の界王神じゃなこれが」

 

界王神「じゅ、15代前の…!!」

 

キビト「界王神様ぁ!?!?」

 

悟空「なんで界王神様が封印されてんだ?なんか悪いことしたんか?」

 

老界王神「んなことしてないわい!!昔にわるーいやつに封印されちゃったんじゃなこれが。それもわしの能力を恐れてな」

 

悟空「凄え能力……?(試してみるか)」

 

悟空は突如老界王神に向けて気弾を放った。老界王神が何か凄い力を見せてくれるのではないかと期待して打ったのだが………。

 

 

ドォォオオオンッ!!!

 

悟空「いっ!!!?」

 

キビト「ばっ……!!!!!!」

 

界王神「な、なんてことをッ!!!?」

 

老界王神は顔面からまともに食らってしまった。

 

悟飯「お、お父さん!?」

 

老界王神「アホタレッ!!!死んじまうじゃろがッ!!!」

 

顔から煙を出しながらも、取り敢えず無事だった老界王神は悟空に抗議する。

 

悟空「い、いや〜……。どんな凄え力を持ってるのかなって思ってさ……」

 

老界王神「ふんだ!もうお前さんには教えてあげないよーだ!!」

 

悟空「オラが悪かったよ…!頼む、この通り…!!」

 

老界王神「謝ったって許さんわい!」

 

悟空「………そうだ!今度さ、ホカホカのエッチな写真をやっからさ!それでどうだ?なっ!」

 

悟飯「お、おお、お父さん!!?」

 

界王神「何を言ってるんですか!?」

 

悟飯は顔を赤く、逆に界王神は顔を青くして動揺する。

 

老界王神「ふーんだ。そんなものいらないわい!」

 

界王神「そうです!仮にも界王神なのですから……」

 

老界王神「写真なんてなくても神眼で生着替えを覗けるもんね〜!!」

 

そんな情けない先祖の言葉に現役の界王神は思わずずっこけてしまう。

 

悟空「………そうだ!じゃあわけえ女の子の乳を触らせてやるからよ!それならどうだ?」

 

老界王神「………ほほう?顔は?」

 

流石の界王神でも本物を触る機会は滅多にないようで食いついた。

 

悟空「多分美人な方だと思う」

 

老界王神「スリーサイズは?」

 

悟空「もちろんボンキュッボンだ。どうだ?」

 

老界王神「へえ…!そいつはいいのぉ…約束じゃぞ!」

 

悟空「よっしゃあッ!!(やっぱり亀仙人のじっちゃんと同じタイプだったか…!!)」

 

悟飯「………待ってくださいお父さん。その若い女の子って、誰のことです?」

 

悟空「ほら!おめぇの生徒がいたろ?五つ子の娘っ子の!」

 

悟飯「な、何言ってるんですか!!?ダメに決まってるでしょ!!??」

 

悟空「いいじゃねえか!5人もいるんだから一人くらい!減るもんじゃねえんだしよ!」

 

悟飯「………お父さん」

 

悟空のこの発言に悟飯は冷たい目線を送る。すると流石に悟空もやばいと感じたのか、代替案を立てようとする。

 

悟空「じょ、冗談だよ、冗談!しかしどうすっかな〜…。チチは……、いや、ここはブルマにすっか」

 

老界王神「ブルマ?そいつは若い女なのか?」

 

悟空「ぴちぴちギャルってほど若いわけじゃねえけど、まだまだいけると思うんだけど………」

 

老界王神「……まあそれでもええわい」

 

悟空「サンキュー!じゃ、オラはもう二度と現世に行けねえから、悟飯からブルマに言っといてくんねえか?」

 

悟飯「ええ!?僕がですか!?」

 

悟空「頼むよ!ブルマの乳だけで地球を救えるかもしれねえんだぜ?頼むよ!!」

 

悟飯「………(魔人ブウを倒せたとしてもブルマさんに殺されるよ……)」

 

こうして取り敢えず交渉は済んだ。しかし悟飯よ。五つ子はダメでもブルマはいいのか……。

 

老界王神「話は済んだかの?しかし、まさか剣を引き抜くのが界王神じゃなくて人間だとはなぁ……。世も末じゃわい」

 

そう言われた界王神は申し訳なさそうに頭を下げた。

 

老界王神「……それじゃ剣を抜いたお前さん。ちょっとこっちこい」

 

悟飯「えっ?は、はい」

 

悟空「ところで界王神のじっちゃん。凄え能力ってなんだ?」

 

老界王神「聞いて驚くなよ〜?そいつの潜在能力を限界以上に引き出す力じゃ!どうじゃ?言葉も出ないだろう?」

 

悟空「……そうか?よく聞くやつじゃねえか?」

 

悟空は超神水や悟飯やクリリンから聞いた旧ナメック星の最長老の能力のことを思い出しながらそう言う。

 

老界王神「あほたれ!!限界以上じゃぞ!!それじゃあ始めるぞ。お前さんはそこに立っておれ」

 

悟飯「はい」

 

悟飯は老界王神の指示通りにその場に立つ。すると老界王神が潜在能力を引き出す能力を発揮するのだが……。

 

老界王神「魔人ブウを倒してこーい!!」

 

そう言った後、悟飯の周りを周りながら踊るのを繰り返す。3周したところで悟飯がどれくらい時間がかかるのかを聞くと……。

 

老界王神「儀式に5時間、パワーアップに20時間じゃ〜!!」

 

悟飯「いっ!!?」

 

悟空「は、はは……。オラは昼寝してくるから頑張れよ……はは」

 

悟空は逃げるようにその場を後にした。

 

界王神「…これ、我々は起きていた方がいいですよね?」

 

キビト「………でしょうな…」

 

 

 

 

 

そして翌日…。魔人ブウによって世界人口が大幅に減った……。だが、ようやくフュージョンが完成しそうだということで………。

 

ピッコロ「行くぞ…。練習通りにやればいいからな」

 

悟天「はい!」

トランクス「はい!!」

 

みんなが見守る中…。

 

悟天「フュー!!ジョン!!」

トランクス「フュー!!ジョン!!」

 

 

「「はっ!!」」

 

 

二人の指が合わさった時、悟天とトランクスの体が光だして二人の光が重なる。それと同時に激しい閃光が走る。

 

ゴテンクス「…………」

 

ドーンという効果音が似合いそうな体型の戦士が爆誕した。今のところ凄まじい気は感じないが、本当にフュージョンは成功したのだろうか?

 

クリリン「す、凄い太ってるけど大丈夫なのか……?」

 

ブルマ「ほ、本当に戻るのよね?」

 

チチ「あれじゃ愛せねえべ……」

 

ヤムチャ「そうか!目には目を!デブにはデブをってことか!!」

 

亀仙人「確かに、魔人ブウも太っておったの……。見た目だけで判断するのは無粋じゃが………」

 

ゴテンクス「えっほ!えっほ!」

 

ヤムチャ「おっ!走り始めたぞ!」

 

ゴテンクス「はぁ……はぁ…………」

 

四葉「ものの数秒で疲れてる…。これは失敗ですね………」

 

ちなみにピッコロの指摘によれば、悟天が『ジョン!』の時に手をグーにしていたそうだ。そこがトランクスと同じくパーなら上手くいってたとのこと。やり直しを命じるも、どうやって元に戻るのか分からない為30分後にやり直しということになった。

 

2度目の挑戦。今度こそ上手くいったかと思いきや、最後のポーズで指がずれてしまったためにまた失敗した。今度は先程とは対照的に痩せこけている。なんなら何もしていないのに既に息切れを起こしている。

 

四葉「言うまでもなく失敗ですね……」

 

そしてまた30分後……。今度こそポーズは完璧になった。2度あることは3度あるとはならず、3度目の正直となった。今度は適度に筋肉がついており、戦闘向けの体になっていた。そして凄まじい気の嵐が発生する。

 

四葉「す、凄い気だ…!!!!」

 

亀仙人「これは成功じゃわい!!」

 

ピッコロ「超サイヤ人にならずともこれほどとは……!!超サイヤ人の状態で合体した場合はどれほどの…!!」

 

気を感じ取ることができる者は、ゴテンクスの凄まじい気に圧倒されていた。そしてピッコロは30分後に超サイヤ人状態でのフュージョンを指示するが………。

 

ゴテンクス「魔人ブウ如き、このゴテンクス様がいればどうってことないぜ!!」

 

………性格がやたらと自信過剰なものになってしまった。

 

ピッコロ「馬鹿!今でも確かに凄いがそれでも魔人ブウには…!!」

 

ゴテンクス「分かったよ。そこまで言うなら魔人ブウの死体を持ってきてやるよ。ちょっと待ってな!!」

 

ドシューンッ!!!

 

ゴテンクスは人の話も聞かずに勝手に飛び立っていった。

 

ピッコロ「馬鹿…!お前が死んだら全てパーになるんだぞ!!!」

 

ヤムチャ「で、でもよ?あんなに自信満々だったんだぜ?もしかすると本当に倒してくれるんじゃないか?」

 

四葉「ならいいんですけど………」

 

数分後………。

 

ゴテンクス「やられちゃった………」

 

ボロボロになったゴテンクスが戻ってきた。だが悟飯やセルを一瞬で倒した魔人ブウ相手に逃げることができただけでも、これは期待大だろう。だが…。

 

ピッコロ「アホッ!!この技はもっと修行をしてから本領を発揮するんだ!!分かったら大人しく俺の言うことを聞けクソ坊主ッ!!!!」

 

四葉「………まだまだ道のりは長そうだね………」

 

零奈「ええ…………」

 

四葉「………ところで、一花達は?」

 

零奈「一花は段々正気に戻ってきました。これも上杉君のお陰です。でも3人は…………」

 

四葉「…………そっか……」

 

風太郎のアフターケアによって、一花は立ち直りかけているようだが、あと3人は悟飯の死を受け止め切れずに未だに立ち直っていないようだった。だがポポの催眠術の効果によっていくらかマシだった。

 

 

ゴテンクスのフュージョンが再び解けたので、今度は超サイヤ人に変身してフュージョンした。すると今度も上手くいったのだが、ゴテンクスはまた調子に乗って今度は地球を何周もする。そして魔人ブウを倒しに向かうが、直前でフュージョンが解除されて戻ってきた。

 

一方その頃、サタンは何故かブウと仲良くなったのはいいものの、道中で拾った犬とサタンが銃に撃たれたことによって魔人ブウからもう一人の魔人ブウが生み出されてしまった。魔人ブウは無邪気なブウと純粋悪のブウに別れてしまったのだ。

 

二人のブウは戦ったのだが、最終的には純粋悪のブウが勝利を収めた。自分のお菓子光線を食らってしまった無邪気なブウはチョコになり、それを純粋悪のブウが食べると、ピンク色の煙を出しながら体を変化させた。

 

すると、ガリガリだった魔人ブウは、適度に筋肉がついた体になった。如何にも戦闘向きの体になったと同時に、以前よりも大幅にパワーアップしてしまった。その光景を、サタンと犬はただ黙って見ていることしかできなかった………。

 




 次回からは原作とはかけ離れた展開が続くかもしれません。セル同士の融合に関しては結構な方が予想していましたね。セルが地獄に行った描写を出した時点で勘付かれるだろうとは思って最早隠す気はなかったのですが…。ちなみにセルが自身に付けた名前はもう少し後で判明します。

 あ〜!!ストックがない…!!まずいですよ()。ちなみに今のストックは84話までです()


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第84話 どこでも五人で

 前回のあらすじ
 魔人ブウと戦っていた悟空だったが、体力の消耗が激しい為に撤退。その後数分間はちびっ子二人にフュージョンを教え込むこととなった。そしてそのちびっ子達はしばらくするとフュージョンに成功するが、2回失敗して3回目にしてようやく成功。しかし調子に乗って魔人ブウには敗北。4回目は超サイヤ人でフュージョンするも、直前で切れて失敗した。そんな中、魔人ブウから悪の魔人ブウが出現し、今までの無邪気な魔人ブウは吸収されてしまった。
 一方で、一命を取り留めた悟飯は界王神界で修行をしていたところ、15代前の界王神が出てきた。そして色々あってそのご先祖様の力で潜在能力を引き出せてもらえることとなったが、計25時間かかるとのこと。果たして、悟飯は間に合うのか……?



ピッコロ「なんてことだ……!!」

 

クリリン「ど、どうしたんだ?」

 

ピッコロ「魔人ブウが無邪気な方と悪い方に分裂したが、悪い方に取り込まれてしまった」

 

クリリン「えっ……?それって………」

 

ピッコロ「魔人ブウが更に凶悪な存在となった…………。しかも前よりも強くなっている」

 

クリリン「そ、そんな……!!!」

 

今の状況でも絶望に近い状態だというのに、追い討ちをかけるような知らせが入ったことによってクリリンの顔は更に青くなる。

 

ピッコロ「……正直、超サイヤ人のゴテンクスでも勝てるかどうか…………」

 

クリリン「ま、まあなんとかなるだろ!あの歳で超サイヤ人になれたちびっ子達なら…!というか、なんとかならないと地球はお終いだ…………」

 

ピッコロ「ああ………(頼むぞ二人とも………)」

 

ピッコロとクリリンはちびっ子二人に命運を託すことにしたが………。

 

ピッコロ「………!!!」

 

クリリン「な、なあ?物凄い気がこっちに近づいて来てないか?」

 

ピッコロ「しまった…!!今度の魔人ブウは気を認識できるぞ!!!!!!」

 

ピッコロが大声でみんなに知らせるが時すでに遅し。太っていたはずの魔人ブウは戦い向けの体に変化した姿でピッコロの目の前に現れた。

 

ブウ「………出せ」

 

ピッコロ「な、なに?」

 

ブウ「出せぇええええええええええええええええッッッ!!!!!!!

 

グゴゴゴゴゴゴッ!!!!!!

 

ピッコロ「ぐっ……!!なんて気だ…!!!」

 

魔人ブウは大声でそう叫ぶ。叫ぶだけで天界の地面を揺らした。その異常事態に何事かと、神殿の中にいた者達がゾロゾロと出てくる。

 

ピッコロ「な、なんだ?何を出せと言うんだ?」

 

ブウ「あの面白い奴が言っていた。数日後に強いやつが現れるってな。ここにいることは分かっている。早く俺と戦うやつを出せ」

 

どうやら変異しても記憶は引き継いでいたようで、魔人ブウは強い相手を要求する。だが、その相手とはゴテンクスのことであり、肝心の本人は精神と時の部屋で修行中だ。なんとタイミングの悪い時に来るのだろうか。

 

ピッコロ「ま、待て!そいつは今疲れを癒すために寝ているんだ!お前もどうせなら万全な状態の相手と戦いたいだろう!?」

 

ブウ「俺は待つのが嫌いだ。さっさと起こせ」

 

ピッコロ「(くそ…!なんとか時間を………そうだ…!!)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

出せぇええええええええええええええええッッッ!!!!!!!

 

「「「きゃああああッッ!!?」」」

 

「「うわぁああ!!!?」」

 

先程まで寝ていた一花、二乃、三玖の3人と、昼寝をしていた悟天とトランクスが大きな叫び声と揺れによって目を覚ました。寝ぼけた頭をフル回転させながら現状を確認しようと窓のそばまで歩くと、そこには見慣れないピンク色の生物がいた。その特徴的なツノで魔人ブウだとすぐに気がついた。

 

一花「痩せてる……?」

 

二乃「あ、あいつは……!!!」

 

三玖「悟飯の、仇…!!!!」

 

トランクス「あれ?あんな姿だったっけ?」

 

悟天「随分変わっちゃったね?」

 

ピッコロと魔人ブウが会話をしているのは遠目でも理解できたが、声のボリュームがボリュームなので聞き取ることができなかった。しかし、次の一言は声が大きかったため聞き取ることができたのだが、その内容が……。

 

ピッコロ「そ、そうだ!!!まだ下界に地球人が沢山残っているだろう!?まずはそいつらを全滅させてからでもいいんじゃないか!!?確か地球人を全滅させると言っただろう!!!?」

 

一花「なっ………!!!!!」

 

二乃「なに、ほざいてんの………?」

 

三玖「聞き間違い………?」

 

ピッコロの予想外の言動に、3人は目を丸くするしかなかった。

 

 

 

 

 

 

五月「そ、そんなことさせてはいけません!!!」

 

五月は先程のピッコロの発言を聞いて抗議をしようとするも、ヤムチャに止められた。

 

五月「な、何をするんです!!?」

 

ヤムチャ「嬢ちゃんには受け止めきれないかもしれないが、こうでもして時間を稼がないとゴテンクスが魔人ブウに勝てないかもしれない…。そうなれば、ドラゴンボールも消滅して地球は蘇らずにそのままだ……。だから、仕方ないんだ………」

 

四葉「し、しかし……!!!」

 

 

 

 

 

ブウ「…………」

 

ピッコロの指摘でやりたいことを思い出した魔人ブウは、天界の端で下を見下ろしながらゆっくりと歩く。一周したところで魔人ブウは立ち止まった。

 

ブウ「………!!」

 

ピッコロ「なっ……!!!」

 

突如としてブウが空に向けて手を挙げると、その手から無数の光が下に向かっていく。その光は次第に地上に近づき、残っている人間を次々と貫いていく。………ごく一部の人間を除いて、地球人は一瞬にして殲滅されてしまった。

 

ピッコロ「こ、こんな一瞬で…!!!」

 

ブウ「さあ、地球人は全滅した。早く強いやつ出せ」

 

ピッコロ「ま、待ってくれ…!せめてこの砂が全て落ちるまでは…!!」

 

ピッコロは大きな砂時計を出してブウに待つように要求するが、相変わらずブウは待つ気がないようだ。

 

ピッコロ「おい!あそこにいるMr.サタンの娘も待ってほしいと言ってるぞ!!」

 

ブウ「何!?」

 

ブウはツノを伸ばしてビーデルの匂いを確認し、サタンと似ていることを確認すると、その場に座り込んで待つことにした。

 

ピッコロ「……よし。これで少しは時間を稼げる」

 

なんとか時間稼ぎに成功したピッコロは、悟天とトランクスを精神と時の部屋で修行させるために起こしに行った。しかし、先程のブウの叫び声によって既に目覚めていた。

 

チチ「………」

 

その直後にチチが、魔人ブウの元にズンズンと歩いていく。

 

四葉「えっ、な、なにを……!!?」

 

パチンッッ!!!!

 

思いっきりブウの頬にビンタをした。

 

四葉「なっ………!!!!!」

 

ピッコロ「馬鹿…!!!!!」

 

チチ「おめぇが悟飯ちゃんを殺しただな…!!よくも……!!!よくも……!!!!!」

 

ブウ「……たまごになっちゃえ」

 

チチ「えっ?」

 

そう呟いた瞬間、ブウのツノからビームが放たれると、チチは一瞬にして卵になってしまった。卵になったチチは地面に落ちて………。

 

ブウ「………」

 

グシャ‼︎

 

………呆気なく潰された。

 

一花「………!!!!」

 

二乃「うそ………!!!」

 

三玖「あ、あぁあぁ……!!!」

 

悟天「お、お母さん……!!!!お母さぁああああんッッ!!!!

 

ピッコロ「お、おい待て!!」

 

今にもブウに飛びかかりそうになった悟天を抑えながらピッコロはこう続ける。

 

ピッコロ「お前の母親も後でドラゴンボールで生き返ることができる!今お前が魔人ブウに挑めば間違いなく殺される!そうすればみんな殺されてお終いだ…!!」

 

悟天「で、でも……!!」

 

ピッコロ「悔しかったら修行をして、フュージョンを完全に自分達のものにするんだ…!!その時に思いっきり魔人ブウをボコボコにしてやればいい…!!だから今は堪えろ…!!!!」

 

悟天「………わ、分かった……」

 

まだどこか納得していない様子ではあったものの、今の自分では敵わないことは既に分かっていたので大人しくなった。ピッコロはそのまま二人を精神と時の部屋に連れていった……。

 

二乃「あ、あいつ……!!また…!!!」

 

一花「どうにかしたくても、私達じゃどうにもならない…………」

 

三玖「く、悔しい……」

 

 

 

 

 

しばらくすると、ブウは突然立ち上がった。それに気付いたピッコロはブウの元に駆け寄る。

 

ブウ「俺、もう待てない。早く強いやつ出せ」

 

ピッコロ「待ってくれ…!まだ砂が全部落ちていないだろう!?」

 

ブウ「もう待つの嫌だ!!早く出せ!!!!」

 

ピッコロ「くっ……(こうなったら仕方ない……)分かった。ついて来い」

 

その言葉にブウはやっとかと言わんばかりに頬が緩んだ。クリリン達はブウ達を尾行するが、二乃達は追いかけることをしなかった。

 

二乃「………悟天君達が倒してくれるわよね………」

 

三玖「…………うん。でも、できることなら自分の手で倒したい」

 

一花「いくらなんでもそれは無理だよ。私達じゃ………」

 

四葉「私でも絶対に無理だよ……」

 

五月「あの……。一つ提案があるのですが、悟天君とトランクス君がやったように、私達もフュージョンをすることはできないのでしょうか?」

 

四葉「あ〜……。気はともかく、体格はみんな同じだもんね」

 

一花「でもあの技も結局は本人達の力量が関係してくるんでしょ?私達じゃ魔人ブウを倒すまでにはならないんじゃないかな…?」

 

五月「そうですか………」

 

 

そんな話をしている時……。

 

ドグォォオオオオオオオオン!!!

 

突然爆発音が聞こえた。

 

四葉「な、何が……!!?」

 

その音が聞こえた位置に全員で駆けつけると、部屋の一部が崩れ落ちているのが確認できた。

 

五月「えっ……?」

 

四葉「これは、どういうことですか…?」

 

クリリン「………あれは精神と時の部屋って言ってな…。こっちの世界とは時間の流れ方が違うんだ。つまり異世界ってことだな。あそこにあった扉はその世界とこの世界を繋ぐ唯一の出入口だったんだ……。これが破壊されたということは、ゴテンクスが魔人ブウに負けたということだ…………」

 

クリリンが懇切丁寧に説明したため、五つ子達でもすぐに状況を理解することができた。しかし………。

 

らいは「えっ………?じゃあ、悟天君は………?」

 

クリリン「すまんが、ドラゴンボールで生き返らせるしか…………」

 

ブルマ「と、トランクスは……!?」

 

ヤムチャ「………トランクスもピッコロも今頃…………」

 

ブルマ「そ、そんな………………」

 

ブルマは夫だけでなく息子も喪った現実を叩きつけられ、絶望のあまり膝を崩して倒れ込む。いくらドラゴンボールで蘇生可能だとはいえ、精神的ショックがあまりにも大きかった。

 

五月「うそ…………!!」

 

二乃「そ、そんな……………」

 

一同がくらい雰囲気に包まれる。本来ならここで何もせずにゆっくりしたいところだが…………。

 

 

ウァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッ!!!!!!!!!!!!!

 

 

謎の大声に全員が耳を塞いだ。と同時に気を認識できる者にはある異変を感じ取ることができた。

 

四葉「……!!この気は…!!」

 

クリリン「ゴテンクスもピッコロも生きてるぞ…!!だけど……!!!」

 

ヤムチャ「魔人ブウも生きてやがる!?」

 

ビーデル「ど、どういうことなの!?あの扉は唯一の出入口なんじゃないの!?」

 

ヤムチャ「そのはずなんだが……」

 

あまりにも異常な状況に、一同は外に出て確認をする。気を感じ取ることができることから、魔人ブウにゴテンクス、ピッコロもこちらの世界に戻ってきているはずであるが………。

 

クリリン「だ、誰もいない………」

 

ビーデル「あれ……?ピッコロさんとゴテンクス君の気がなくなった…?」

 

ヤムチャ「どうなってるんだ……?」

 

混乱している一同だが、悩む時間など与えられないようだ。

 

クリリン「な、なんだ…?あの細いの…?」

 

ヤムチャ「お、おい…!!あれって…!!!」

 

その細長いのは複雑に絡まっていたが、体制を立て直して真っ直ぐピンと伸びる。そして細長いのがどんどん膨らみ……。

 

ブウ「…………」

 

魔人ブウへと変貌した。

 

クリリン「そ、そんな…!!!」

 

ブウ「俺もう我慢できない…。何にしようかな………。チョコに決めた!!」

 

クリリン「………18号。俺があいつの気を引くから、その隙に………」

 

18号は何を言いかけたが、クリリンが魔人ブウに向かって勇敢に立ち向かおうとする姿を見て、何も言わずに走って逃げる。その後に続くようにビーデルとブルマも逃げる。

 

 

 

 

四葉「ま、まずい……!!」

 

その光景を少し離れたところから見ていた四葉は、後から追いかけてきた一花達を止める。

 

四葉「ダメ!!魔人ブウが戻ってきた!!」

 

風太郎「なに……!!?」

 

一花「嘘でしょ……!?」

 

 

ビビビッ!!!!

 

四葉「………!!!」

 

四葉はそっと顔を覗かせて様子を伺うと、クリリンがチョコにされたようだった。

 

四葉「あ、あぁあぁ……!!!」

 

そして魔人ブウはなんの躊躇もなくそのチョコを食べ始める。

 

四葉「に、逃げなきゃ……!!私達も食べられちゃう……!!!」

 

風太郎「待て…!!逃げたところですぐに追いつかれるんじゃないか……!?」

 

ビビビッ!!!!

 

18号「きゃあッ!!!!!」

 

逃げていた18号も魔人ブウのお菓子光線によって、抱えていたマーロンと共にチョコに変貌させられた。魔人ブウは魔法を使ってそのチョコを浮かして口に運んだ。

 

二乃「う、嘘………!!」

 

勇也「ら、らいは……!!」

 

らいは「こ、怖いよ……!!」

 

零奈「…………」

 

みんなが慌てて軽くパニックになっている中で、零奈だけが比較的冷静な顔をしていた。

 

零奈「…………皆さんにお話があります……」

 

 

 

 

 

 

 

 

ビビビッ!!!!

 

ビーデル「きゃあっ!!!!!」

 

18号とマーロンの次はビーデルが餌食となった。

 

亀仙人「くっ…!!こうなったら最終手段じゃ……!!!」

 

最早魔人ブウは誰にも止められないと判断した亀仙人は、懐から小さな瓶のようなものを取り出した。

 

亀仙人「魔封波ッ!!!!!!

 

亀仙人の両手から緑色の渦巻きが魔人ブウに向けて伸びていく。かつてピッコロ大魔王を封印しようとした時に使った技で、成功すれば魔人ブウを封印することができる。

 

ブウ「………!!」キッ‼︎

 

魔人ブウが気合を少し込めるだけで魔封波を相殺した。こればかりは相手があまりにも上手すぎたのだ。

 

亀仙人「む、無念……」

 

ブウ「死ぬ前にチョコになれ!!」

 

亀仙人が魔封波の反動で息絶える前にお菓子光線がヒットして、魔人ブウの口の中に溶けた。

 

殆どの者が逃げ、一部が抵抗したが、みんなチョコに変えられてしまった。魔人ブウという怪物には誰も対抗することができなかったのだ。残るは五つ子とその母親の零奈、上杉一家のみである。

 

ブウ「さーて、あと9個もチョコを食べることができるな……」

 

シュン‼︎

 

勇也「………!!!!」

 

らいは「あっ……!!!!!」

 

魔人ブウは気の察知能力を駆使して、自分から一番遠ざかっていた二人の気を見つけたので、そちらに高速移動してきた。

 

ブウ「チョコになれ」

 

ビビビッ!!!!

 

風太郎「らいはッ!!!!親父ッ!!!!!!」

 

らいはと勇也も今まで食べられてきた者達のように抵抗することもできずにチョコに変えられてしまった。そして手慣れた動作で口に運んでしばらく噛んだ後に飲み込んだ。

 

風太郎「く……そ……!!!テメェ…!!!!!!」

 

ブウ「お前もチョコになれ」

 

ビビビッ!!!!

 

風太郎「ぐぁああぁああっ!!!!!」

 

風太郎にもお菓子光線が直撃してチョコに変貌してしまった。魔人ブウはもう一度チョコの味と感触を楽しもうと手に取って口を大きく開けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

ドゴォォオオッッ!!!!!!

 

ブウ「ぶぇ……ッ!!!!!!」

 

突如、頭部に凄まじい衝撃が加えられた。魔人ブウはチョコを手放して思わず頭を抑えてしまう。

 

ブウ「痛い……!!!誰だッ!!!!?俺をぶったのはッ!!!!」

 

 

……ストッ

 

その少女の手の中にチョコは収まった。

 

一花「よかった……。フータロー君だけでもなんとか間に合った」

 

なんとその少女の正体は一花だった。一花が魔人ブウに痛みを感じさせるほどの威力で頭を殴ったとでも言うのだろうか………?

 

ブウ「お前…!!さっきまで雑魚だったはず……!!なんで急にそんな力を……!!!!!」

 

一花「うん?そんなの簡単なことだよ。私達は五つ子で、得意なことは見事にバラけている。でも、5人揃えば無敵だということ……。それを思い出しただけだよ」

 

一花はなんてことないと言った様子で答えるが、言っている意味を理解できなかった魔人ブウは青筋を立てながら一花に突っ込む。

 

ズガッ…!!!!!

 

ブウ「ぐはっ……!!!!!!」

 

しかし、魔人ブウが攻撃する直前で一花の正拳突きが魔人ブウの腹部に突き刺さった。

 

一花「あれれ〜?もしかして、思ったよりも強くない…?」

 

ブウ「……!!!!!」

 

その一言にキレた魔人ブウは口からエネルギー砲を放出した。それになす術もなく飲み込まれた一花を見て、魔人ブウは口角を上げた。

 

「ざんね〜ん♪」

 

グサッ…!!!!!!

 

ブウ「かはっ……!!!!!!」

 

先程まで一花の形をしていたものが、突然鋭利な針のようなものに形を変えて魔人ブウの体を突き刺した。

 

一花「そっちはただの囮だよ〜。まんまと騙されたね〜」

 

一花は魔人ブウを揶揄うように笑いながらそう言う。

 

一花「たあッ!!!!!」

 

ドカッッ!!!!!

 

ブウ「ぐぅ……!!!!!」

 

魔人ブウは一花の攻撃を受け止めることも避けることもできずに威力に従って落下する。

 

一花「……!!」

 

そんな魔人ブウを一花は舞空術で全速力で追う。猛スピードで魔人ブウを追い越して……。

 

ブウ「だあッ!!!!」

 

一花「……!!!」

 

かなり接近したところで魔人ブウが腹部に突き刺さっていた針を抜いて一花に向かって投げた。流石にこの近距離では避けることはできない……。

 

一花「三玖…!!!」

『うん!!』

 

ピュン‼︎

 

ブウ「……!!!!?」

 

三玖「盾ッ!!!」

 

カンッ‼︎

 

一花が少し光り出したと思いきや、その姿を突然三玖に変貌させた。彼女達は五つ子であるから、容姿は非常に似たものになっているが、そうではない。一花は三玖の姿になったのではなく、三玖本人に変身したのだ。

 

そして、三玖の右手から気で生成された盾が出現し、針の投撃を防いだ。

 

ブウ「な、なんだお前……!!?」

 

ブウは今まで見たことのないタイプの敵に遭遇して狼狽えていた。変身するにしてもここまで一瞬でそれを遂げる者は誰一人としていなかったからだ。そもそも変身する予兆という予兆が殆どなかった。

 

三玖「…………」

 

三玖は魔人ブウの問いを無視すると、今度は気で生成した弓のようなものを右手で取る。

 

ブウ「………?」

 

そして左手に矢のようなものを生成し、弓にセットする。左手で弓を掴み、右手で弦を引く………。

 

ブウ「……!!!」

 

魔人ブウはどんな攻撃をしてくる気なのかをようやく察した。しかし気づくのが少し遅かった。

 

三玖「はっ!!!!」

 

ビュンッッ!!!!!

 

三玖が弦から手を離すと、引っ張られて戻ろうとしていた弦が一気に元の位置に戻る。それと同時に気で生成された矢が押し出され、超速で魔人ブウに向かって突き進む。

 

ドスッ…!!!!!!

 

ブウ「ぐぁああッ!!!!!」

 

あまりの速さに魔人ブウはなす術もなく貫通を許してしまう。その矢の勢いのまま、魔人ブウは下界の地面まで叩き落とされた。

 

三玖「…………ふぅ」

 

追いかけてきた三玖は適当な位置に着地し、一息ついた。

 

 

 

 

 

何故彼女達が魔人ブウ相手にこれほど優勢に戦えているのか。その原因は数分前にあった………。

 

 

 

 

 

話があると言って零奈は五つ子を引き留めた。

 

一花「話って何?手短にお願い!」

 

二乃「早くしないと私達もチョコにされて食べられちゃうわ!!」

 

零奈「………みなさんは、私が……いえ、私の体が初めてこの世界に現れた時のことを覚えていますか?」

 

三玖「えっ?う、うん……」

 

四葉「その時は確か、未来の五月やドクターゲロ…?っていう科学者が中にいた時の話だよね……?」

 

一花「あの時は大変だったよ……。四人もお母さんに吸収されちゃったんだもん………」

 

二乃「………あっ」

 

一花の言葉を聞いて、二乃は思い出したような声をあげると同時に何かを察したようだった。

 

零奈「再び一つになりましょう。でなければ私達は食べられてお終いです」

 

四葉「えええ!!!?でも勝てるのかな!!?今よりはマシになるかもしれないけど!!」

 

五月「…………あの時はみんな嫌々吸収されてしまいました…。でも、今回は違います。みんなが魔人ブウを……!孫君の仇を打つために一つになろうとしている……。私達の心は最早一つになっていると言っていいでしょう」

 

零奈「それに、四葉はあの時に比べてとても強くなっています…。ですから、あの時よりも強化できるかもしれません……。あなた達が良ければ………」

 

一花「………そうだね。このまま何もできずに死んじゃうより……」

 

二乃「少しでもハー君の仇を打てる可能性があるなら……!!」

 

三玖「悟飯の仇を打てるなら……!!」

 

四葉「再び平和が訪れるなら…!!」

 

五月「私達に迷いはありません!!」

 

零奈「………大きくなりましたね…。皆さん、私の体に触れてください。どこでも構いません」

 

一花「行くよみんな。覚悟はいい?」

 

二乃「当たり前でしょ?」

 

三玖「今更何を言ってるの?」

 

四葉「正直言うと怖いけど、みんなと一緒なら平気!」

 

五月「そうです…。私達一人一人は100点満点中20点しかないかもしれませんが、5人揃えば100点満点……。つまり、無敵だということです…!!いえ、本物のお母さんもいるので限界突破ですよ!!」

 

零奈「………では、行きますよ!!!」

 

「「「「「うん!!!」」」」」

 

零奈「はぁぁああああ……!!!!!」

 

すっかり戦士の顔になった5人が光と化して零奈の体の中に入っていった。すると零奈自身の体が光り出して変化した。

 

一花「………あれ?あの時は未来の五月ちゃんだったけど、今度は私なんだ?」

 

あの時は心も時代もバラバラだったし、異物も入っていた為に本領を発揮することがなかった人造人間零奈完全体。

 

その人造人間は、巨大な悪に立ち向かう為に再び爆誕した。今度は異物もなく、五つ子の年齢も統一されており、心も1つになっていた。それは無理矢理取り込む吸収ではなく、融合と表現するに相応しい状況だった。

 

一花「この力……!!これなら…!!」

 

こうして、人造人間零奈の真の完全体が初めて完成したのだ………。

 

 

 

 

 

悟空「こ、こいつはすげえぞ…!!」

 

界王神「まさか6人で融合するとは…!!」

 

一方で、界王神界では、界王神が用意した水晶玉で地球の様子を見ていたところであった。その為、ブルマ達がチョコにされたところもしっかり見ていた。このまま五つ子もチョコにされて食べられると思っていた悟空達は、大幅パワーアップして現れた一花達に度肝を抜かされていた。

 

悟空「(まさかここまで強くなるとは思わなかった……。せいぜいここで修行する前の悟飯程度までだと思ってたぞ………)」

 

悟飯は悟空達のリアクションを先程から気になっていたが、老界王神によるパワーアップの儀がまだ終わっていないため、そちらに集中するしかなかった。

 

悟空「……もしかしたら、こいつらが魔人ブウを倒しちまうかも………」

 

界王神「それは厳しいかと…。魔人ブウの底力はまだまだこんなものではないはずです………」

 

悟空「でも、チビ達が負けちまったかもしれねえとなると、地球を守れるのは五つ子の娘っ子達だけなんだ。賭けるしかねぇ……!!」

 

なんと、零奈と五つ子で再び融合し、今の魔人ブウに引けを取らないパワーを手に入れた人造人間零奈………。ひょっとすると、彼女達が本当にみんなの仇を取ってくれるのかもしれないが、果たして………?

 




 すみません。丁度いいところで区切る為に今回は短めです。皆さん五つ子がチョコにされることを予想されている方が多かったですが、結構前からこの展開は考えていました。とは言っても、人造人間零奈編終了後の話なんですけどね()
 前の完全体零奈はここまで強くありませんでしたが、その理由として、まず五つ子を強引に吸収したからです。五つ子の意思に反して無理矢理力を使っているような状況だったので、前回は精々超2程度でした。次に、五つ子の年齢が統一されていることです。人造人間零奈は違う時代の他の五つ子を吸収することは想定されてなかったためですね。そして最後に不純物がいたからです。これはDr.ゲロの意思を持ったコンピュータのことを指します。要は完全体モドキだったわけです。今回登場したのが本来の完全体というわけです。
 てなわけで、五つ子にも十分活躍する機会があったわけなのですよ。ここからしばらくは原作にはない展開が続くものと思われます。

人造人間完全体(真)のスペック:

タイプ一花:悪い言い方をすれば、狡賢い手が得意。普通の戦士が扱わないようなトリッキーな技の扱いを得意とする。相手を騙すような技を出すのも得意。

タイプ三玖:肉弾戦は不得意だが、飛び道具ならお手のもの。弓や銃、刀を模倣した気の塊で戦う。相手に気付かれずに隠密行動することを得意とする。

 今回出てきた形態のみを載せています。二乃、四葉、五月と更なる詳細データに関しては次回以降掲載します。そしてストックが潰えるww(あと少しで85話できるんですけどね)


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第85話 融合戦士の力

 前回のあらすじ

 魔人ブウ同士で分裂してしまい、悪の方に吸収されて更に強くなった魔人ブウは、気を察知できるようになってピッコロ達のいる神殿まで辿り着いてしまった。ピッコロはなんとか時間稼ぎをするも、それも少ししか効果はなく、ゴテンクスと魔人ブウは精神と時の部屋で戦わせることとした。
 そして、色々あって精神と時の部屋に閉じ込められたはずの魔人ブウが現世に脱出し、天界にいた者の殆どがチョコにされて食べられてしまった。最後にチョコにされた風太郎だけは、五つ子と零奈が融合して爆誕した真の完全体零奈によって一命を取り留めた。真の完全体として戦った一花と三玖は、魔人ブウ相手に互角にやり合っているが………?



ブウ「ぐぬぬぬ……!!!」

 

体を再生させた魔人ブウが再び三玖の前に現れた。

 

ブウ「ぐがぁああああッ!!!!」

 

完全に冷静さを失った魔人ブウが突進してきた。三玖はその状況を冷静に把握して次の一手を打つ……。

 

三玖「…………中野三玖、いざ参る」スッ

 

今度は右手から刀の形をした気の塊を出現させた。

 

三玖「はあッ!!!!」

 

ズバッ!!!!!

 

ブウ「!!!?」

 

それを至近距離で振り回して魔人ブウの体を一刀両断した。

 

ブウ「グギギ……!!!!」

 

ブウは頭から湯気を噴き出しながら切断された体をくっつける。最強になったはずの自分と互角に戦っている目の前の存在が気に入らないのだろう。

 

ブウ「がぁあああッ!!!!!

 

三玖「……!!!!!」

 

魔人ブウはさらに気を解放して三玖に詰め寄る。

 

ドカッッ!!!!

 

三玖「くっ…!!!」

 

ドゴォッ!!!!!

 

三玖「うっ…!!!!!」

 

三玖の場合だと接近戦は苦手なのだろうか。魔人ブウの攻撃を上手くいなすこともできずにまともに受けてしまう。

 

 

ピュン‼︎

 

ブウ「!?」

 

しかし、またしても突然姿を変える。今度はセミロングにツーサイドステップというヘアスタイルで、両サイドに蝶型リボンをつけた少女、二乃の姿に変わる。

 

二乃「よくもやってくれたわねッ!!!!!」

 

 

ドゴォォオオッッ!!!!!!

 

 

ブウ「ぐがっ……!!!!!」

 

二乃から放たれた重い一撃が魔人ブウの顔面に向かって放たれた。

 

ブウ「ぐぁあああああッッ!!!!!」

 

不死身生物でもこれは痛かったのか、顔を抑えて悶絶していた。ところが、二乃は容赦なく追撃していく。

 

ドカッッ!!!!

 

二乃「その程度で叫んでるんじゃないわよ!!!」

 

ドゴォォオオッッ!!!!!

 

ブウ「ぐおっ……!!!!」

 

二乃「あんたに殺されたハー君はね…!!!!」

 

ドカッッッッ!!!!!!!

 

二乃「もっと痛い目にあったのよ!!!!苦しいめにあったのよッッ!!!!!!!!」

 

 

ドゴォォオオッッ!!!!!!!

 

二乃の一撃一撃が重く、魔人ブウの体に確実にダメージを蓄積させていく。しかもその一撃は重いくせに素早いため、避けることも困難だった。

 

ブウ「ばあッッ!!!!」

 

ボンッ!!!!!!

 

二乃「きゃ…!!!!!」

 

ブウは一旦砂埃を発生させて二乃から距離をとった。二乃相手には近接戦闘は不都合だと察して遠距離戦に切り替える。

 

ブウ「お前なんか死ねぇえええ!!!!!」

 

ズォオオオオオオオッッ!!!!

 

魔人ブウは、以前悟飯やセルとの戦いで学習をしたかめはめ波を二乃に向けて容赦なく放った。だが……。

 

二乃「ふんッ!!!!」ボォオオッ‼︎

 

二乃は一気に気を解放すると、なんと自らかめはめ波に突っ込んだ。

 

ブウ「なに!?馬鹿かあいつ!!?」

 

二乃「だぁあああああああああああああああッッッッ!!!!!!

 

 

ズゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッッ!!

 

 

物凄い轟音をたて、二乃はかめはめ波を掻き分けながら魔人ブウに接近する。

 

二乃「うぉりゃあッッ!!!!!!!!

 

 

ドカッッッッ!!!!!!!!!

 

 

ブウ「ぐわぁああッッ!!!!!」

 

そしてそのままの勢いで魔人ブウの頬に拳を遠慮なくぶつけた。その勢いによって魔人ブウは近くの岩山に叩きつけられ、岩山は崩れ落ちた。

 

二乃「まだまだ終わらないわよ…!!」ポワッ

 

しかしこれでも手を緩めない二乃。最愛の人を殺した恨みというのは本当に恐ろしいもので、昔の二乃でもここまで追い詰めるような真似はしなかっただろう。

 

二乃「あだだだだだだだだッッ!!!!!!!!!

 

小さく、しかし絶大な威力を誇る気弾を次々と魔人ブウが埋まっていると思われる瓦礫の山に放っていく。気弾が着弾すればするほど砂埃が酷くなるがそんなことは知ったことではない。二乃は最愛の人の仇を打つことしか考えていなかった。

 

二乃「はぁ………!はぁ……!はぁ…………!!!どんなもんよ!!」

 

流石に疲れてきたのか、気弾の連射をやめて一休みする二乃。しかし、その勝ち誇ったような顔はすぐに崩れることとなる。

 

ガラッ!

 

ブウ「うぅうぅううぅああっ…!!!!」

 

今にも湯気を噴き出しそうな程に憤っている魔人ブウが瓦礫の山から姿を現した。傷だらけだった体はいつのまにか無傷になっていた。

 

二乃「あっそ…。そんなにサンドバッグにされたいようね………」

 

コキっと手を鳴らして再び戦闘体制に入る二乃。

 

二乃「いいわよ。それなら、とことん嬲ってあげるわよ…!!」

 

ブウ「調子に乗るなよ…!!お前が俺に勝てるわけがない…!!!俺は最強なんだ…!!!!」

 

二乃「はっ?調子に乗ってんのはあんたの方でしょ?相手が悪かったわね。せいぜい地獄で己の行いを悔やみなさい」

 

シュン‼︎

 

 

ドゴォォオオッッ!!!!

 

ブウ「ぐおっ……!!!!!」

 

 

冷たくそう言い放った二乃は、高速移動で魔人ブウに詰め寄り、顎に蹴りをお見舞いする。

 

二乃「たあッッ!!!!!」

 

そのまま足を振り下ろして踵落としを決めようとする。

 

ガンッ!!

 

二乃「ちっ…!」

 

二乃は部屋に飛んでいた蚊を仕留め損った時のように舌打ちをする。二乃の足は地面を抉るだけだった。

 

ブウ「がぁあああああああああああああああッッッッ!!!!!!

 

二乃「〜〜ッッ!!!!」

 

魔人ブウが突如近所迷惑では済まされないレベルの雄叫びをあげる。思わず二乃は両手で耳を抑えた。

 

ブウ「もう俺は怒ったぞッ!!お前を絶対に殺すッ!!!!」

 

ダンッ!!!!

 

二乃「……!!!!」

 

ドゴォオオッッ!!!!!

 

二乃「うぐっ…!!!!!」

 

魔人ブウは全力で地面を蹴ると、一瞬にして二乃の懐にまで辿り着き、遠慮なく顔面に拳を打ちつけた。

 

二乃「いった…!!!!よくも乙女の顔に傷を……!!!!!」

 

青筋を立てた二乃は体の周りがひかりだした。

 

ブウ「!?」

 

ブウはその異常にすぐに気付いたが、遅かった。

 

二乃「あんたなんか…!!ハー君を殺した…!!苦しめたあんたなんか……!!死になさいッッ!!!!!!!」

 

 

ドォォオオオオオオオオオオッッッッ!!!!!!!!!

 

 

ブウ「ぶわぁああああああああッッッ!!!!!!!!!!」

 

二乃の周りに集まっていた光が突如気の嵐に変貌した。近くにいた魔人ブウもそれに巻き込まれてしまう。

 

 

二乃「あの怪物…!!よくも私の可愛い顔を思いっきり殴ってくれたわね…!」

 

二乃は自身の頬を手で抑えながら愚痴をこぼすが……。

 

二乃「…………嘘でしょ……?」

 

ブウ「あ……へへ………ほほ………」

 

身体中から煙を出した魔人ブウを見つけて呆然としていた。

 

ブウ「ふんっ!!」

 

しかし傷も体の歪みも一瞬にして元に戻した。

 

二乃「本当に不死身のようね………」

『二乃!この調子じゃスタミナ切れになっちゃうよ!』

 

二乃「……分かったわよ…!四葉、交代よ!」

 

ピュン‼︎

 

ブウ「ああ!?」

 

四葉「よし…!任せて二乃!」

 

今度は四葉に姿を変えた。何度もコロコロと姿を変える相手にブウは目を丸くしていた。

 

ブウ「なんだお前……?ただの変身じゃないな…?なにをした……?」

 

四葉「へっへーん!あなたにだけは教えませーん!」

 

あっかんべー!と魔人ブウを煽る四葉。単純な魔人ブウはこれだけで怒って冷静さを欠く。

 

ブウ「ガァアアッッ!!!!」

 

猛スピードで突っ込んでくる。

 

四葉「とう!!」ドシューン‼︎

 

 

ドォォオオオンッッ!!!!

 

 

しかし、四葉が直前で飛び上がったことによって魔人ブウは自爆した。

 

四葉「てやッッ!!」

 

カァァッ!!!!

 

更に追撃で気弾を撃ち込む四葉。やはり5人の中では戦闘経験は圧倒的なだけあって、立ち回りも上手だ。

 

シュバッ‼︎

 

四葉「よっと…!」

 

それでも油断せず、高速移動で突如目の前にきた拳をスレスレで避けた。

 

ブウ「……!!!」

 

これを避けられると思っていなかったのか、魔人ブウは少しの間硬直していた。

 

四葉「せいッ!!!」

 

ドゴォォオオッッ!!!!!

 

その隙に四葉が回し蹴りを決めた。

 

ブウ「ぐぅ…!!!」

 

しかし、顔の歪みを元に戻した魔人ブウは再び四葉に殴り込む。

 

四葉「…!!」

 

それにいち早く気付いた四葉が両手でブウの手を掴んだ。

 

四葉「せやッッ!!!!!!」

 

そして魔人ブウの体を持ち上げて…。

 

ドォォオオオンッッ!!!!!

 

ブウ「ぐっ…!!!!」

 

背負い投げを決める。

 

四葉「よし、次五月ね!!」

『ええ!?私ですか!?』

 

ピュン‼︎

 

今度は四葉の姿から五月の姿に変化した。しかし当の本人はまだ心の準備ができていなかったようであたふたしている。

 

ブウ「また姿が変わった…………。もう面倒だッッ!!!ケーキになっちゃえッ!!!!!!」

 

ビビビッ!!!!

 

再び魔人ブウのツノから光線が放たれた。五月はそれを避けたのだが、すぐ後ろにあった岩山が大量のケーキの山に変化した。

 

五月「…………そういえばお腹が空きました…………」

『あんた!こんな時にそんなこと気にしてる場合じゃないでしょ!!?』

 

五月「そ、そう言われましても……!!あー、我慢できません!!」

 

そう言って五月は落ちてきたケーキを口の中に入れる。

 

五月「お、おいひいでふ!」

 

ケーキの味にはご満悦のようである。しかし………。

 

ブウ「それは俺のケーキだぁああッッ!!!!!」

 

ドシューンッ!!!

 

自分が用意したケーキを無断で食べられたことが気に障り、五月に向かって突進を仕掛ける魔人ブウ。ところが五月は未だに食事を続けている。

 

ブウ「(馬鹿め!もらった!!)」

 

ドゴォォオオッッ!!!!!

 

ブウ「!!!!?」

 

しかし、ビンタとは思えない音をたてて魔人ブウは弾き飛ばされた。途中で止まったからいいものの、魔人ブウは自分が何をされたのか理解できていなかった。

 

『…………もしかして…?』

『五月ちゃんの姿の時に何か食べるとスタミナが回復するんじゃ…?』

『そんなことってあるッ!?』

『ドメ肉…………』

 

ブウ「ガァアアッッ!!!!」

 

魔人ブウは再び咆哮を上げて周囲に強風を発生させる。すると五月が確保していたケーキも吹っ飛ばされてしまった。

 

五月「ああ!?私のケーキが!!」

 

ブウ「お前のじゃないッ!!!」

 

一見こんな間抜けなやり取りをしているが、これでも五月の行動はしっかり意味があった。五月形態になった時、何でもいいので食べ物を食べるとスタミナが回復するという特性を持つ。ちなみに美味しく感じれば効果は高まる。逆に言えば不味い物でも多少は効果があるということだ。

 

五月「むむっ…!!食べ物を粗末にする不届き者は許せません!!」

 

『怒るとこそこッ!!?』

 

主に五つ子の中でツッコミ役を担当?している二乃にツッコまれたが五月は気にしない。

 

ブウ「お前気に入らない…!人の食べ物を勝手に取るなッッ!!!

 

『あんたもそれ怒ること!!?』

 

ある意味緊張感のない戦いであるが、忘れてはいけない。目の前の魔人は宇宙そのものを滅ぼす可能性があるほどの怪物である。そんな化け物との戦闘である。しかもそんな化け物が正論を言っているので状況はさらにカオスになっている。

 

ブウ「お前がチョコになれッ!!」

 

再び魔人ブウのツノから光線が放たれた。しかし五月は避けるようなこともせずにその場に留まるだけである。

 

『えっ、五月ちゃん!?』

『何してんのよ!?早く避けなさい!!』

『チョコにされちゃうよ!?』

『わ、私が変わるよ!』

 

五月「あっ、ご心配なく」

 

五月は一息おいてこう続ける。

 

五月「確かに、人の食べ物を勝手にとってしまったことは謝ります。なら、自分で用意すればいいだけのこと……」

 

意味深にそう言うと、なんと五月の象徴とも言えるアホ毛が不気味に光り出した。

 

『ま、まさかとは思うけど………』

 

五月「お菓子ばかりではバランスが悪いです!!」

 

ビビビッ!!!!

 

ブウ「何ッ!!?」

 

なんと五月のアホ毛から魔人ブウが放ったような光線が放たれた。2つのビームが拮抗し………。

 

ポンッ…!!!!

 

…………チョコではなく、何故かチョコまんが出来上がった。

 

シュン‼︎

 

五月「………ん?これ肉まんじゃなくてチョコまんじゃないですか?」

 

ブウ「・・・・・」

 

魔人ブウも、まさか自分以外にビームで食べ物を生み出す技を使ってくるとは思ってもおらず、口を開けて呆然としている。

 

五月「じゃあ…、今度はらいはちゃんお手製のカレー&卵焼きで!」

 

ビビビッとアホ毛からビームを出して岩に当てると、しっかりと卵焼き付きのカレーが生み出された。元から付いていたスプーンを使って美味しそうに食べ始めた。

 

ブウ「………」

 

魔人ブウはその様子を羨ましそうな目で見る。

 

五月「………あげませんよ?」

 

ブウ「まだ何も言ってない……」

 

五月「そんな目で見てたら嫌でも何を考えてるのか分かりますよ!」

 

『………ねえ、私達ってさっきまで殺し合いをしてたんじゃないの……?』

『私もその認識……』

『あ、頭が痛いわ………』

『へ、平和だなぁ(白目)』

 

二人のやり取りを見て頭を抱える、精神内に待機している4人。

 

ブウ「俺にもくれ!それ食べてみたい!」

 

五月「あげませんよ?」

 

ブウ「頼む!俺が知らない食べ物は自分で生み出せないんだ!」

 

五月「…………えっ?あなた、カレーを知らないんですか?」

 

ブウ「かれえ?なんだそれ?」

 

五月「じゃあカツ丼は!?海鮮丼も!?焼肉も!?!?ピザも!!!?」

 

ブウ「聞いたことない!」

 

五月「な、なんて可哀想な……!!!」

 

五月は可哀想な子供を見るような目で魔人ブウを見た。そして……。

 

五月「……分かりました。今回だけ特別ですよ!」

 

ブウ「い、いいのか!?」

 

五月「今回だけですよ!」

 

そう言うと五月は別の岩にビームを当ててカレーを生み出した。

 

五月「はい、どうぞ」

 

ブウ「う、美味そうだ…!」

 

魔人ブウは器用にスプーンを使ってカレーを頬張り始める。彼もまた美味しそうに味わって食べている。

 

『……はぁ……』

『ナニコレ?』

『食べ物は争いをなくす……?』

『あ、あははは………』

 

魔人ブウは緊張感のない生物であるため、突然このように態度が軟化することもあり得る。しかし、五月はそれに当てはまらないはずなのだがこの様である。

 

ブウ「…………」

 

五月「……?どうしました?」

 

ブウ「辛いッ!!辛ぁああああああああああいッッ!!!!!!!」

 

魔人ブウは口から炎が出そうなほど辛く感じていた。実は魔人ブウは誕生時から甘い物しか食べたことがなかった。その為辛い物は初めてで、普段甘い物を食べている分、余計辛く感じてしまったのだ。

 

ブウ「お前…!!!許さない!!殺してやるッッ!!!!」

 

五月「ひぇえええ!!?」

 

『なるほど!五月は魔人ブウを嵌める為にわざわざカレーを用意したんだね!』

『………そんな感じには見えないけど…』

『まあそういうことにしときましょ……』

 

怒った魔人ブウは残ったカレーを放り投げて五月に向かって突っ込む。

 

五月「……!!今、食べ物を粗末にしましたね……!!!!!」

 

ドゴォォオオッッ!!!!

 

しかし、五月は食べ物を食べるとスタミナが回復する体質に変わっており、その効果でフルパワーを出すことが可能であった。

 

ブウ「ぐがっ……!!!!」

 

攻撃を受けた腹部を抑えながら悶絶する魔人ブウ。しかし、五月は攻撃するのをやめようとはしない。

 

五月「あなたはなんて無礼な…!!せっかく私が用意したカレーを「ピュン」」

 

五月がくどくどと何かを言っていたが、突然一花の姿に変わったことによってその説教は中断された。

 

一花「キリがないから勝手に代わったよ〜。五月ちゃんは体力回復の時だけお願い…」

『そ、そんな〜!!?』

 

ブウ「…………お前、変なやつ……」

 

一花「あなたにだけは言われたくないなぁ………」

 

本当に先程まで死闘を繰り広げていたのかと、目を疑うような状況になってしまっているが、再び場に緊張感が走る。ようやく死闘が再び繰り広げられる…………。

 

「ありゃりゃ?これどういう状況…?」

 

一花「……えっ?」

 

声が聞こえた方を振り返ると、眉毛がなくやたらと髪が長い金髪の少年に、ターバンにマントを羽織った緑色……即ち、ピッコロがそこにはいた。

 

一花「ぴ、ピッコロさん!?じゃあもしかしてもう片方は……トランテン君!?それって超サイヤ人3じゃ…」

 

超3ゴテンクス「違うよ!ゴテンクスだよ!ゴテンクス!!」

 

ピッコロ「お、お前…!一体どうやってそれほどの力を…!!」

 

一花「あ〜………。説明するとちょっと長くなるんだけど………」

 

ブウ「………ほお?お前も出てこれたんだな」

 

超3ゴテンクス「……そういえば、神殿には誰もいなかった……。お前……」

 

ブウ「ああ。あいつらならここにいるぞ。ごちそうさま」

 

ブウは自分の腹を叩きながらそう言った。

 

超3ゴテンクス「カッチーン!完全に怒った!!」

 

ボォオオオオッ!!!!!

 

一花「わお…!すごい気…!!」

 

ゴテンクスは気を解放して魔人ブウに殴りかかった。

 

ブウ「ぐぅッッ!!!?」

 

それに対処できなかった魔人ブウは少し吹っ飛ばされた後に戻ってきた。

 

ブウ「お前もなかなかやるな……」

 

超3ゴテンクス「へっ!そうやって笑っていられるのも今のうちだぜ!!正義の死神ゴテンクス様がお前をギッタンギタンのケチョンケチョンのボコボコにしてやるぜ!!!」

 

ドシューンッッ!!

 

お互いに突っ込んで攻撃を仕掛ける…。

 

ドカッッ!!!!

 

ブウ「ぶぅ…!!!!!」

 

しかし、ブウは力で押し負けて吹っ飛ばされた。

 

超3ゴテンクス「よーし!次にこれ!連続スーパードーナツ!!」

 

ゴテンクスは吹っ飛ぶ魔人ブウ目掛けて幾つかの輪っかのようなものを投げつける。するとその輪っかは魔人ブウを捉え、囲んで縮小してボール状になった。

 

超3ゴテンクス「ねえねえ、ちょっとそこの2人も手伝ってよ」

 

ピッコロ「……?」

 

一花「な、何を?」

 

超3ゴテンクス「激突ウルトラブウブウバレーボールだ!!!いくわよー!!」

 

ピュン‼︎

 

四葉「はーい!そういうことなら私にお任せを!!」

 

超3ゴテンクス「ええ!?なんで急に四葉さんになってるの!?!?」

 

ピッコロ「…!(そうか…!零奈と五つ子全員で融合したな…?それにしても以前とは比べ物にならないほどのパワーだ…。一体どうしてこれほどの……)」

 

超3ゴテンクス「ちょっとピッコロさん!ノリ悪いよ!!いい?戦いってのはノリがいい方が勝つんだよ!?分かった!?」

 

ピッコロ「……(俺は何に怒られているんだ……?)」

 

超3ゴテンクス「それじゃあ改めまして……。激突ウルトラブウブウバレーボールだ!!いくわよー!!」

 

四葉「はーい!!」

 

ピッコロ「は、はーい………」

 

四葉は元気よく返事するが、ピッコロはこんなことをする意味が分からずに乗り気ではないが仕方なく返事をする。

 

超3ゴテンクス「はい!パス!!」

 

ゴテンクスがボールをトスしてピッコロにパスする。

 

ピッコロ「と、トース!!」

 

ピッコロも同じようにトスして今度は四葉にパスする。

 

四葉「トース!!」

 

そして同じようにして四葉はゴテンクスにパスする。

 

超3ゴテンクス「アタックッ!!!!!!」

 

ドンッッッ!!!!!!

 

そして、ゴテンクスはボールを思いっきり叩きつけて地面に激突させた。激突した地面はあまりの衝撃に耐えきれずに大きなクレーターを生み出した。

 

四葉「おお……!!これはすごいですね…!!」

 

超3ゴテンクス「当たり前だよ!なんたって俺様の力が強すぎるからな!!」

 

四葉「…………ちょっと自信過剰過ぎるような気はしますが………」

 

超3ゴテンクス「まあこの程度でやられるとは思えないけどな。おーい!!早く出てこいよ!!むっちゃ強くなってられるのは後ちょっとだけなんだからさ!!!次むっちゃ強くなるには1時間かかるんだからさぁ!!」

 

 

 

 

 

 

ドォォオオオオオオオオオオッッ!!!!!!

 

超3ゴテンクス「うわっ!!!!!」

 

四葉「わぁあああッッ!!!!?」

 

突然、クレーターの最深部から巨大な気功波が放たれたが、四葉とゴテンクスはスレスレで回避した。

 

超3ゴテンクス「もう!危ないじゃないかぁ!!連続死ね死ねミサイル!!!!」

 

そう叫んでゴテンクスは気弾の雨を魔人ブウがいると思われる方向に打ちまくる。

 

ピュン‼︎

 

三玖「……ここは便乗させてもらう」

 

そう言うと、三玖は弓……ではなく、空中に沢山の銃を模倣した気功を大量発生させる。

 

超3ゴテンクス「うお!?姉ちゃん何それ!?」

 

ゴテンクスは連続死ね死ねミサイルを連射しながらそう尋ねてくる。

 

三玖「これは火縄銃をイメージしたもの。1575年6月28日……天正3年5月21日に起きた長篠の戦いで、織田信長と徳川家康連合軍が実際に戦で使った銃。当時飛び道具は弓矢や槍くらいしかなかったけど、織田信長が銃を取り入れたことによって武田勝瀬に勝利したんだよ。実は火縄銃は弾薬を補充するのに時間がかかるんだけど、信長は沢山の銃と兵士を用意して、火薬を補充する部隊と射撃をする部隊に分けたんだ。こうすることによって……」

 

ピッコロ「そんな豆知識などどうでもいいから早く攻撃しろッッ!!!!」

 

三玖「はっ…!歴史のことが絡むとつい…!!」

 

超3ゴテンクス「(凄い細かく説明してくれてたんだろうけど、なんのことだかさっぱり…………)」

 

しかし、勉強していないゴテンクスにはなんのことだかさっぱりであった。正確には合体元のトランクスは高度な教育を施されているが、日本史については一切習っていない。

 

三玖「……うちーかた……。はじめッッ!!!!!!

 

ドドドドドドッ!!!!!!!!

 

三玖が合図すると同時に、大量の火縄銃を模倣した気功から大量の気功波が飛び出してくる。その連射速度はゴテンクスが両手で撃つ連続死ね死ねミサイルを圧倒的に上回るレベルだった。

 

ピッコロ「うおお!!!これは凄いぞ!!!!」

 

超3ゴテンクス「えっ!?ちょっと待って!?弾数多過ぎるよ!?」

 

あまりの凄さにピッコロは感心し、ゴテンクスは驚愕している。

 

『ちょ、すごっ!!』

『織田信長のあの名場面をどうやったらこんなエグい攻撃にアレンジできるのよ!?』

『わ、わー………』

『み、三玖!!これ以上やると地球が…!!!』

 

三玖「あっ、そうだ………撃ち方やめ!!」

 

超3ゴテンクス「流石にこれだけやれば弱ってるだろ!」

 

終了の合図をしたと同時に攻撃がぴたりと止んだ。ちなみにゴテンクスも同タイミングで攻撃をやめている。

 

超3ゴテンクス「でも、三玖さんすごいね…。俺でもあんなに連射することはできないよ………」

 

三玖「ふふん…!これが戦国武将、織田信長の力……!!」

 

ピッコロ「最早貴様自身の力だろう、それは………」

 

ピッコロが軽くツッコミを入れていると、ボロボロになった魔人ブウがゆっくりと浮かび上がってきた。

 

ピッコロ「……!いいぞ…!目の前に自分と互角以上の戦士が現れたことによって、身体的にはともかく精神的には確実にダメージが入ってる!」

 

やはり傷は一瞬にして再生してしまうが、メンタルの方はそうはいかないようである。

 

超3ゴテンクス「へっへーん!!やっぱり俺様が強すぎるからビビってるんだな!!はっはっはっ!!!」

 

三玖「いや、ビビってはいないと思うけど…………」

 

超3ゴテンクス「おらおらどうした魔人ブウ!俺が怖いのか〜?はははははっ!!!!!」

 

ゴテンクスが高笑いを上げていると、ブウが急にスピードを出してゴテンクスに向かう。ピッコロと三玖はそれにすぐに気がついたが、肝心のゴテンクスは何がツボになったのかずっと笑っている。

 

ドカッッ!!!!!!

 

四葉「ぐぅっ……!!!!」

 

四葉にスタイルチェンジした後に、持ち前のスピードを駆使してゴテンクスの前に出てきたはいいが、碌な防御もできずに魔人ブウの拳撃によって吹き飛ばされてしまう。

 

超3ゴテンクス「あー!!姉ちゃん達によくも……!!!!」

 

ブウ「次はお前だぁ!!!」

 

スカッ

 

超3ゴテンクス「お姉ちゃん達の代わりに仕返し!!!」

 

ドゴォォオオッッッ!!!!!!

 

ブウの攻撃を見事に避けたゴテンクスは続け様に蹴りをぶつける。すると魔人ブウは勢いそのまま街に墜落するように激突してしまった。

 

超3ゴテンクス「そろそろ決めないとまずいなぁ……!!ここからは全力だ!!!」

 

ドシューンッ!!

 

ゴテンクスもまた魔人ブウを追いかけた。

 

ピッコロ「くっ……!お前ら、大丈夫か!!」

 

ピッコロは吹き飛ばされた四葉の心配をしてそばに降りる。

 

四葉「はい……。なんとか…………」

 

ピッコロ「それならいいが、早くゴテンクスに加勢してくれ。あいつはどうも魔人ブウを相手に遊びたがるようだ…。このままでは……」

 

四葉「それはなんとなく分かってるんですけど、私達の力だけでは魔人ブウを倒せるかどうかはかなり微妙ですよ…?」

 

ピッコロ「くっ…。確かにな。魔人ブウには驚異的な再生能力が存在する。その再生をする間もないうちに消し去る必要があるな………」

 

 

 

 

 

 

 

 

『なら、俺にいい考えがある』

 

四葉「!!!?」

 

『この声…!まさか……!!』

『フータロー君!?なんで!!?』

 

『気が付いたらお前らと一緒にいた。ったく、チョコを持ったまま戦うな!!少し前まで溶けそうになって死ぬかと思ったんだぞ!!!』

 

『そ、それについてはすみません……』

 

なんと、チョコにされていたはずの風太郎が、何かしらの弾みで人造人間零奈に取り込まれてしまったようだ。

 

四葉「(……ところで、上杉さんの考えというのは……?)」

 

『ああ。それについては今から話す。お前らの戦闘スタイルはさっき見てたからよく分かった。5人それぞれ向き不向きがある。今回はそれを利用して持てる力を全て魔人ブウにぶつける』

 

人造人間零奈に取り込まれた風太郎は魔人ブウを倒す秘策があるという。本人が言うには、これで倒せなければ今の俺達には無理だろう、と言っていた。

 

風太郎の作戦とは一体……?

 




 急にモチベが出てきてびっくりしてます。なんと86話ももうすぐ完成です。風太郎はちゃっかり取り込まれていますが、今後の展開のために必要なので完璧してくだせえ……。

 あとですね、ちょっとした展開予想程度なら問題ないんですけど、あまりにも踏み込んだ展開予想は感想欄(コメント欄)では控えて下さい。ただ予想を言いたい気持ちは分からなくもないので、もしそういった踏み込んだ予想を書きたい場合はメッセージでお願いします。ただ、ちょっとした予想程度ならいいですよ?



人造人間零奈(真)完全体のスペック その2

タイプ二乃:戦闘スタイルは猪突猛進。肉弾戦を得意としており、RPGで言うならバーサーカータイプ。悟飯の仇を打ちたいという強い思いから、二乃の姿になると他形態よりも強力なパワーを得ることができる反面、気の消費が若干激しい。しかし防御力も他形態より高め。作中で魔人ブウに放った大技は、GTにてパンがやってた乙女バーストそのものである。

タイプ四葉:5つのタイプの中で最も汎用性の高い形態。スピードが特に優れている上に、四葉本人の経験から気の運用効率が高いため、気の消費が少なめ。肉弾戦の方が得意だが、遠距離戦も苦手ではない。四葉のリボンを模倣した拘束術で相手を縛ることも可能。

タイプ五月:実は他形態に比べて戦闘に向いていないが、あくまで相対的な話である。アホ毛からビームを出し、魔人ブウのように物を食べ物に変えることも可能。五月の場合だと、色々な食べ物を再現できる他、味付けにもしっかり拘る。更に自身で生み出した食べ物でなくとも、何かしら食べれる物であれば、それを食べる度に気が回復するというチートじみた特性もこの形態限定だ。ただし、度を超えた限界突破は不可能である。得意な技は星型気円斬。作中では人造人間零奈編にて1度使用されている。

零奈本人:Dr.ゲロのコンピュータが、ゲロの都合のいいように制作するために、完全体になった時は零奈本人の意思は表に出ない仕様になってしまっている。後々Dr.ゲロが乗っとるつもりだったが、未来と現在の悟飯の活躍でその野望は阻止された。


戦闘力:実を言うと超3ゴテンクスよりも少し強め。ただし原作の究極悟飯ほどは強くないが、多彩な攻撃を使えるため、相手からしたら相当厄介である。


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第86話 帰ってきた家庭教師

 前回のあらすじ
 零奈と融合した五つ子は、それぞれの特色を活かしながら魔人ブウと互角以上に戦っていたところ、何かしらの方法で精神と時の部屋の空間から脱出したゴテンクスとピッコロが現れた。そこからはゴテンクスとの共闘になったのだが……



『持てる力の全て……?』

『どういうことか説明しなさいよ!』

 

『ああ……それはな……………』

 

 

 

 

 

 

 

 

ピッコロ「おい。どうした?」

 

ピュン‼︎

 

五月「いえ、中の姉妹達とちょっと作戦会議をしていたところです」

 

四葉スタイルから五月スタイルに変身し、ゴテンクスの元に向かうかと思いきや………。

 

五月「はっ!」ビビビッ

 

ピッコロ「なっ……!!?」

 

アホ毛から放ったビームを岩山に当てたかと思えば、大量の食べ物が生み出された。

 

ピッコロ「アホかッ!!!こんな時に呑気に食事している場合かッ!!!!」

 

五月「こういう状況だからこそです!!」

 

『腹が減っては戦はできぬって言うしね』

 

 

"まずは五月に変身してありったけの食い物を食え。そうしてまずはお前達のスタミナを全快させる。なんなら限界突破させたいくらいだ"

 

 

五月のこの行動は、風太郎の作戦のうちの1つであった。

 

ピッコロ「……!!(こいつが食べ物を食う度に気が増大していく…!!なんて特性を持ち合わせていやがる!!)」

 

短時間で食べ物を飲み物のようにかきこんだ五月は、今度はスタイル一花に変身する。

 

一花「よし!行きますか!!」ドシューン‼︎

 

ピッコロ「あっ、おい待て!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

ブウ「ぶぁあああッッッ!!!!」

 

ズォオオオオオオオオオオオッ!!!!

 

超3ゴテンクス「ギャアアアアアアアアアッッッ!!!!?」

 

場所はゴテンクス達のいるところに移って、とある街。魔人ブウの口から放たれた気功波によって街は壊滅した。ところがゴテンクスは身体中に擦り傷は作っているものの、無事であった。

 

超3ゴテンクス「こんにゃろう…!!お返しッッッ!!!!!!」

 

ズォオオオオオオオオオオオッ!!!!

 

ブウ「ぶわぁああああッッッ!!!!」

 

ゴテンクスもやられたものと同じようにして魔人ブウに仕返しをする。ボロボロになった魔人ブウに追い討ちをかけるように殴り込む。

 

超3ゴテンクス「よーし!そろそろ決めちゃうぜ!!!ギッタンギッタンのケチョンケチョンのボコボコにしてやるぜッッ!!!」

 

ゴテンクスが気を両手に集中させ始めるが、魔人ブウは再生する気配がなかった。ゴテンクスはこのチャンスを利用するべく全力のかめはめ波を放とうとする。

 

 

 

ポンッ

 

ゴテンクス「あ、あれ……?」

 

情けない音と共にゴテンクスの超サイヤ人状態が解けてしまった。いくらフュージョンして強くなったとはいえ、超サイヤ人3による気の消費は尋常ではないため、30分の中でもごく僅かな時間しか変身することの出来ない形態だったのだ。

 

ゴテンクス「あ、ありゃりゃ〜……どうしましょ…………」

 

ブウ「…………」

 

この隙に魔人ブウは再生をして体を無傷にする。そしてゴテンクスに少しずつ近付いていく……。

 

ゴテンクス「わわわっ!!!待て待て!!!!!こっちくるな!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

ザクッ!!

 

ブウ「ぐっ!!!?」

 

突如地面から針のようなものが生え出てきて、その針が魔人ブウの両足を固定するように突き刺した。

 

ゴテンクス「な、なんだ!!?」

 

一花「やっほー!私だよ!」

 

ゴテンクス「お姉ちゃん達!!?」

 

一花「それじゃ、次は三玖だよね?フータロー君!」

 

『ああ。そうだ!』

 

ピュン‼︎

 

三玖「……よし!」

 

三玖の掛け声と共に手を振り上げ、空中に大量の手槍型の気弾を用意した三玖は………。

 

三玖「突撃ッ!!!!」

 

普段は出さないような大声で合図をすると、手槍型の気弾が一人でに魔人ブウに向かって動き始める。

 

ブウ「こんなの簡単に避け……!!?」

 

三玖「一花の針は少し特殊なんだよ…!強力な気を持つ人ほど気の力で磁石みたいに張り付くの。だから膨大な気を持っているあなたは逆に抜けづらくなってるの!」

 

ブウ「な、なにぃ!!!?」

 

ザザザッ!!!!

 

ブウ「ぐわぁッッッ!!!!!」

 

降りかかる手槍になす術もなく突き刺されていく魔人ブウ。しかし三玖は手を緩めなかった。

 

"一花と三玖で魔人ブウを固定できる技をしかけろ。固定できるなら地上でも空中でも構わないが、地上の方が望ましいな"

 

無論この行動も風太郎の作戦のうちの一つだった。

 

三玖「……よし、四葉お願い!」

 

ピュン‼︎

 

四葉「ラジャー!!四葉リボン!!」

 

ガシッ!

 

ブウ「!?!?」

 

今度は四葉に変身すると、お得意のリボン型の気を使って魔人ブウを拘束する。ここまでしつこく固定する理由としては、魔人ブウが体の一部を使って逃亡する可能性があるので、それを防ぐための処置でもあった。

 

四葉「とうッ!!!」

 

ドンッッッ!!!!!!

 

今度は両足を利用して全力で地面を蹴る。するとその地面は大規模な地割れを起こすがそんなことは気にしている場合ではない。四葉のスピードを駆使して大気圏、その先の宇宙空間にまで飛び出した。

 

四葉「最後は二乃だよね!」

 

ピュン‼︎

 

二乃「任せなさい!!!」

 

ボォオオオオッ!!!!!!!!

 

二乃「はぁぁぁぁああああ……!!!!」

 

どうやらこれで作戦の最終段階らしい。二乃に変身すると気を溜め続ける。

 

 

"四葉のリボン術で魔人ブウの分身を阻止しろ。その上で四葉のスピードを利用して宇宙空間まで飛べ。その後二乃に変身して気を溜めろ。あとは気を全開にして魔人ブウに突っ込め!重力も上乗せして魔人ブウにぶつけろ!出し惜しみは絶対にするな!!"

 

 

 

二乃「……出し惜しみなんてするはずがないわ……!!愛する人の仇相手なんかにねッ!!!!」

 

ドシューンッッッ!!!!!

 

二乃が魔人ブウ目掛けて発進する。大気圏に突入すると自分の周りが炎で包まれるが、これごと魔人ブウにぶつけてやるといった様子で二乃は更に加速する。

 

 

 

 

 

 

ピッコロ「あいつら、どこに行ったんだ…?」

 

悟天「なんか分からないけど、魔人ブウを縛ったら空に行っちゃったよ?」

 

ピッコロ「なに?」

 

トランクス「何がしたいのかな…?」

 

ピッコロ「(空…?拘束……。まさか…!!)」

 

ピッコロ「お前ら!!早くここを離れろ!!」

 

悟天「えっ?」

 

トランクス「なんでだよ〜!」

 

ピッコロ「ちっ!」

 

言うことを聞きそうにないと判断したピッコロは、トランクスと悟天を掴んでその場を後にする。

 

悟天「ちょ、ちょっとピッコロさん!」

 

トランクス「離せよ!!!魔人ブウを放っておくのか!!?」

 

ピッコロ「あいつらの足を引っ張るな!とんでもないことを起こすつもりだ!」

 

「「えっ?」」

 

 

トランクスと悟天が不意に空を見上げた時、赤く光る……否、燃え盛るものが物凄いスピードで落ちてくるのが確認できた。

 

悟天「ま、まさか…?」

 

トランクス「あれが姉ちゃん達ってことはないよな……?」

 

 

 

 

 

 

 

二乃「はぁああああああああッッッ!!!!!!!!!

 

そのまさかだった。

 

ブウ「うわぁああッ!!!!やめろぉおおおおおッッッ!!!!!」

 

ゴゴゴゴゴゴゴゴッ!!!!!

 

超スピードで落ちてきた二乃を、魔人ブウは超能力を使って一時的に堰き止めた。

 

二乃「無駄よ…!!!大人しく…!!!滅びなさいッッッ!!!!!」

 

バキッ…!!!

 

ガラスが割れるような音がした…。それと同時に二乃が再び突き進み……。

 

 

 

 

 

 

 

 

ドグォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンンンンッッッッッッ!!!!!!!!!!!

 

 

トランクス「うわぁあああああッッッ!!!!」

 

悟天「わ〜!!!?」

 

ピッコロ「頭のネジが外れているんじゃないか…!!!?」

 

二乃はその勢いのまま魔人ブウに衝突し、その周辺は一瞬にして爆発して史上最大規模のクレーターと化した。

 

トランクス「ひぇ〜………!!こっわっ……!!!」

 

悟天「地球がなくなるかと思った………」

 

魔人ブウに向かって突進した二乃は、まるで地球に落ちてくる隕石のようであった。

 

スタッ

 

二乃「はぁ………!はぁ……………!さ、流石にやったわよね………?」

 

少しすると、悟天達のすぐそばに二乃が戻ってきた。

 

悟天「に、二乃さん!?」

 

トランクス「あれでよく無事だったな!自爆したのかと思ったよ!!」

 

二乃「まあ、ちょっとそれに近いかもしれないわね……………」

 

ピッコロ「よくあんな無茶苦茶な作戦を思いついたな……」

 

二乃「ええ。これで魔人ブウを倒せていなかったら、今の私達では倒せないってことになるわ……………」

 

二乃は先程の攻撃で気を大量に消費してしまったためか、息を切らしていた。

 

 

 

 

シュウ~

 

 

二乃「………!!!」

 

ピッコロ「ま、まさか………!!!」

 

ポンッ!!!

 

ブウ「……………」

 

なんと、あれほど過激な攻撃を仕掛けたというのに、魔人ブウは煙から再生してきたではないか………!!

 

悟天「う、嘘だ……!!」

 

トランクス「あんなデタラメな攻撃でも倒せないなんて………!!」

 

二乃「そ、そんな…………!!」

 

ブウ「今のは死ぬかと思った……。チビ達のせいで油断した…………」

 

二乃「…………ねえ、もう一度フュージョンできるかしら?」

 

ピッコロ「ダメだ。フュージョンが解除されてから再びフュージョンするには1時間必要だ。そして二人のフュージョンが解けたのはついさっきだ……」

 

二乃「…………なら、五月!」

 

ピュン‼︎

 

五月「お任せを!!」

 

ピンチかと思いきや、五つ子達には五月がいた。五月スタイルの時に食べ物を食べればスタミナが回復するというチートスキルを所持しているのだが。

 

ガシッ!

 

五月「あっ!!離して……!!!」

 

ブウ「ホントはあいつが来るまで待とうかと思ったけど、お前は今のうちに始末する!」

 

ドカッッ!!!!!

 

五月「かはっ…………!!!」

 

魔人ブウら五月のアホ毛を掴んで食べ物を生み出すのを阻止した。その直後に拳を腹部に叩きつけ、五月が咳き込む。

 

五月「ごほっ!ごほっ……!!!」

 

ドゴッッッ!!!!!

 

五月「ぎゃ……!!!!!」

 

ドカッッ!!!!!!

 

五月「や、やめ……!!!」

 

バキッ!!!!!!

 

五月「あがっ…………!!!!」

 

スタミナ切れして力を出せない五月を相手に容赦なく次々と攻撃する魔人ブウ。ピッコロと悟天達は手助けをしようとするも、相手が相手なので介入できずにいた。しかし、魔人ブウが攻撃すればするほど五月の怪我が増えていく。五月が死ねば融合している姉妹に零奈、風太郎も死ぬことになる。

 

だから、五月は死ぬわけにはいかない。しかし何もできない絶望的な状況だった。

 

ブウ「むんっ!!!!」

 

ドンッッッ

 

五月「ぎっ……!!!!!」

 

殴りつけるのは飽きたのか、今度は五月の頭を掴んで地面に叩きつける。

 

五月「こ、この……!!!」

 

ブウ「黙れぇ!!!」

 

ドゴォォオオッッッ!!!!!

 

反撃しようとした五月を殴り飛ばした魔人ブウは、追い討ちをかけるように飛び蹴りを決め、五月は近くの岩山に叩きつけられた。

 

ブウ「はぁぁああ……!!!」

 

そして魔人ブウは三玖がしたように、銃を模倣した気弾を生成して、その銃口を五月に向けた。

 

ブウ「自分達で生み出した技で死ねぇえええええ!!!!!」

 

ドドドドドドッ!!!!!!!!

 

叩きつけられて動かなくなった五月に容赦なく銃弾の雨が降り注ぐ。岩山も巻き込まれて連鎖的に爆発を引き起こした。

 

 

トランクス「あ、あぁ………!!!」

 

悟天「い、五月さぁあああんッ!!!!」

 

ピッコロ「な、なんてやつだ…!あんな特殊な技も真似ることができるというのか……!!?」

 

魔人ブウが攻撃をやめてしばらく経つと煙は晴れて五月の姿は確認できたが、身体中が傷だらけになってピクリとも動かなくなってしまった。

 

悟天「や、やだぁああッッ!!!五月さんまで死なないでよッッッ!!!!」

 

ピッコロ「大丈夫だ…!気は微かに残っている…!!!」

 

悟天「く、そ……!!許さないぞぉおおおおッッ!!!!」

 

ボォオオオオッ!!!!

 

五月がやられた怒りで超サイヤ人に変身した悟天は無鉄砲に魔人ブウに突撃を仕掛けるが……。

 

ブウ「ほいっ!!!」

 

ドゴォォオオッッッ!!!!!

 

敢えてスレスレで避けた魔人ブウにメテオスレッジを食らわせられ、地面に叩きつけられた。

 

トランクス「馬鹿悟天…!!フュージョンもしてないのに勝てるわけないだろ!!」

 

ブウ「………」

 

超悟天「く、くそ…!!」

 

ピッコロ「くそ…!!この際だ!!やれるだけやってから死んでやる!!」

 

ピッコロは半ばヤケクソ気味になって悟天を庇うように魔人ブウに向かって突き進む。

 

ドカッッ!!!!!

 

ピッコロ「ごふぁ…!!!」

 

ブウ「お前が俺に勝てるわけないだろう!!」

 

しかし、途中でブウに強烈な一撃を与えられたことによって腹部を抑えて後退りする。

 

ブウ「さーて、どうしようかな?」

 

超悟天「あ、あぁ……!!!」

 

急に冷静になった悟天は、現在の状況を把握してしまった。あと1時間はフュージョンすることができない上に、唯一魔人ブウに対抗しうる五月達は戦闘不能。そしてその怪物が目の前にいた。

 

悟天はまだ8歳という若さだが、死を覚悟して涙しそうになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

ドゴォォオオッッッ!!!!!

 

ブウ「ぬっ!!!!」

 

超悟天「わっ…!!!」

 

トランクス「お、お姉ちゃん…!?」

 

二乃「はぁ………!はぁ…………!!」

 

二乃フォームになって再び魔人ブウに立ち向かう人造人間零奈完全体がそこにはいた。

 

超悟天「な、なんで……!!どうして…!!」

 

ブウ「お前、まだ生きていたか…。でも全然痛くないぞ?さっきの攻撃でパワーを使い果たしてしまったようだな?」

 

二乃「くっ……!!」

 

ブウの指摘は二乃にとっては図星だった。痛いところを疲れて苦い顔をしている。

 

ピッコロ「馬鹿…!!意識を取り戻したなら食べ物を食べてスタミナを回復させれば良かっただろう!!!?」

 

二乃「うっさい!!そんなこと分かってるわよ!!でも、私達よりも小さい子が傷付いてるのに放っておけって言うの!!!?」

 

考えるよりも先に行動してしまう二乃にとって、ピンチになっている子供を見逃すことなど到底無理な話である。状況によってはナイスな判断になっていたかもしれないが、今回ばかりは賢い判断とは言えなかった。

 

ブウ「まあいい。まだ死んでないなら、じっくり嬲ってじわじわと殺してやる!!」

 

シュン‼︎

 

ドカッッ!!!!

 

二乃「くっ……!!!やっ!!!」

 

魔人ブウの攻撃を堪えて反撃を試みる二乃だが、体を捻じ曲げて回避された上に更なる追い討ちを食らう。

 

二乃「かはっ……!!!」

 

ブウ「どうした!?そんなものか?」

 

自分と互角の力を持つ相手が電池切れだということに気づいた魔人ブウは、それはそれは楽しそうに相手を蹴る、殴る、気弾を当てるなどして痛ぶり尽くす。

 

二乃「くっ……!!」

 

ピュン‼︎

 

四葉「リボン!!」

 

四葉フォームに変身してリボン型の気でブウを拘束して一旦離れる。

 

四葉「よし!今のうちに………」

 

ブウ「ふへ…!!」

 

ギューンッ!!

 

しかし、拘束されたのはあくまでも胴体のみ。ブウは首を超スピードで伸ばして四葉に頭突きを食らわせた。

 

四葉「がっ……!!!!」

 

ブウ「させるかッッ!!!」

 

四葉は魔人ブウの隙を作って回復を試みるが、魔人ブウに隙はなかった。頭突きをみぞおちに食らわせたことによって四葉はしばらく身動き不能となってしまう。

 

ガッ!!

 

しかし、そんな無抵抗な四葉に魔人ブウは強力な蹴りを入れて倒す。そして無防備になった腹部を踏みつける。

 

四葉「ぎゃぁ……!!!!や、やめ……!!!!」

 

ブウ「いい顔だ…!その顔をもっと見せろ……!!!」

 

トランクス「く、くそ……!!このままじゃ姉ちゃんたちが……!!」

 

悟天「トランクス君!フュージョンを試そうよ!」

 

トランクス「えっ!?まだ1時間経ってないからできないだろ!!」

 

悟天「でも、このままじゃ…!!!」

 

悟天は涙を浮かべながらトランクスに訴えた。これ以上身近な存在を失いたくないのだ。トランクスはその意図を汲み取る。

 

トランクス「わ、分かったよ…!ダメでもともとやってみるぞ!!」

 

悟天「うん!!」

 

 

 

 

ピッコロ「………!!!!」

 

ブウ「………!!!!!」

 

直後、ピッコロと魔人ブウが不意に空を見上げる。

 

ピッコロ「な、なんだこの気は!?とてつもなく大きい!!!!何者だ…!!!!」

 

ブウ「(きたか………!!!!)」

 

その莫大な気の持ち主が超速でこちらに接近していた。今まで感じたことのない気を察知して焦るピッコロ。しかし、その気の持ち主の姿が見え始めた。その者は山吹色の道着を着ていた。

 

ピッコロ「ご、悟空だ!!!」

 

悟天「…………違うよ!兄ちゃんだ!!」

 

トランクス「えっ?」

 

ピッコロ「な、なんだと!?」

 

「その足を退けろ」

 

ブウ「……!!!!」

 

さっきまで飛んでいたと思われていたその気の持ち主、孫悟飯は一瞬でブウの前に移動し……。

 

悟飯「聞こえなかったか?退けろッッッ!!!!!!!」

 

ブォオオオオオオオオッ!!!!!!!!!!

 

ブウ「ぐぅううううッッッ……!!!!」

 

気合だけで魔人ブウを大きく後退させた。

 

悟天「やっぱり兄ちゃんだ!!生きていたんだ!!」

 

四葉「そ、そんさん……?」

 

悟飯「やあみんな。よくここまで頑張ってくれたね……。あとは僕に任せて」

 

ピュン‼︎

 

二乃「な、なんで……?死んだんじゃなかったの………?」

 

居ても立ってもいられずに二乃が勝手に変身し、悟飯に問いかける。

 

悟飯「危機一髪のところで界王神様に助けてもらったんだ………」

 

二乃「ば、馬鹿ぁ…!!!本当に死んだと思ったんだからぁ……!!!!」

 

悟飯「あ〜…!!ご、ごめん……」

 

二乃は立ち上がってボロボロの体で悟飯の体をポカポカと叩く。そんな二乃の頭を悟飯は優しく撫でる。

 

ピュン‼︎

 

三玖「良かった……!本当に良かった……!!!」

 

悟飯「三玖さん………。本当にごめん…。心配させちゃって……」

 

三玖に変身すると、今度はギュッと強く抱きしめる。

 

悟飯「………って、なんで四葉さんが二乃さんになったり三玖さんになったりしてるの!!?」

 

三玖「あっ、それはね………」

 

ピュン‼︎

 

一花「この前未来の悟飯君と五月ちゃんが来た時があったじゃん?あの時みたいに私達は一つになったの!」

 

悟飯「そ、そういうことか………」

 

ピュン‼︎

 

五月「ふ、ふわぁあああん!!孫君!!!!」

 

悟飯「わわわッ!!!!!」

 

五月に変身すると、顔を擦り付けるような動作をして悟飯に泣きついた。

 

悟飯「本当にごめん……。心配させちゃって…………」

 

五月「本当ですよ、馬鹿…………」

 

悟飯「…………さあ、離れてて」

 

五月「………えっ?」

 

涙目になりながら顔を上げる五月だったが、悟飯の真剣な顔を見て指示に従うことにした。

 

五月「………孫君なら倒してくれるって信じてますから………」

 

悟飯「うん。任せて」

 

悟飯は静かな笑顔で五月にそう語りかけた。そんな悟飯にときめく五月と他2名だが、その場を離れて悟天達のいるところに戻った。

 

ピタッ

 

先程吹き飛ばされた魔人ブウがこちらに戻ってきた。悟飯は魔人ブウを睨みつけながらこう問う。

 

悟飯「他のみんなはどうした……?」

 

悟天「ここにいる人以外はみんな食べられちゃったんだよ!!」

 

悟飯「な、なに!?お母さんやデンデもか!?」

 

悟天「そうだよ!!」

 

悟飯「(な、なんてことだ…!!頼みの綱のデンデまで……!?)」

 

ドラゴンボールでみんなを生き返らせることができない可能性が出てきて、一瞬焦ってしまう悟飯だが、微かにデンデの気を感じ取ることができて余裕を取り戻した。

 

ブウ「………!そうだ!思い出したぞ!お前は前の俺にぶっ飛ばされたやつだ!!今更何の用だ?まさか俺を倒すつもりか?」

 

ブウは挑発的な言動で悟飯に話しかけるが、悟飯は余裕の笑みを崩さないまま、こう返答する。

 

悟飯「違う。貴様を殺す為にここに来たんだ」

 

ブウ「!?ふへへへへへ!!!!お前が俺を!?笑わせるな!!!前の俺にぶっ飛ばされたお前がどうやって俺を殺すんだ?」

 

ピッコロ「(そ、そうだ……。確かに悟飯は強くなったようだが、それでも魔人ブウに勝てるほどでは……。しかし、一体何をしてあそこまで……?)」

 

ピッコロは気の種類そのものが変わった悟飯に対していくつか聞きたいことがあった。そもそも今の悟飯は今までの悟飯ではない。15代前の界王神の能力によって、自分の潜在能力を限界以上に引き出し、気を究極まで極めた状態でここにやってきたのだ。魔人ブウに勝てるほどではないのは、まだ彼が気を解放していないからだ。気を解放すれば魔人ブウを圧倒するほどの力を感じることになるだろう。

 

そんな悟飯は最早ただの孫悟飯ではない。究極の存在、究極(アルティメット)とでも言った方がいいだろう。

 

究極悟飯「……はぁあああああッッ!!!!!!」

 

ブォオオオオオオオオッ!!!!!

 

悟飯が気を解放した瞬間、その膨大な戦闘力に圧倒されて魔人ブウでさえも黙り込んでしまった。

 

ピッコロ「す、超サイヤ人にも変身していないのに、なんて気だ……!!!」

 

五月「す、すごい…………」

 

悟天「さっすが兄ちゃんだ!!」

 

トランクス「これ、ひょっとすると超ゴテンクスよりも強いんじゃ……?」

 

 

ブウ「そ、それがどうした!!」

 

究極悟飯「…………」

 

魔人ブウの問いを無視して、悟飯は表情を変えずに詰め寄る。

 

ブウ「うっ……!!!うぅ…!!!」

 

目の前に自分を圧倒的に超えているかもしれない敵と出会い、魔人ブウはかなり動揺しているようだった。それと同時に悟飯という存在そのものに怒りを感じ始めたようで、威嚇をしているが、悟飯は全く動じない。

 

究極悟飯「どうした?来ないのか…?なら、こっちから行かせてもらうぞ?」

 

 

ドカッッッ!!!!!!!!

 

 

ブウ「うあっ………」

 

 

悟飯とブウの様子を見ていたピッコロ達にとっては本当に一瞬の出来事だった。先程まで魔人ブウの前にただ立っていただけの悟飯が、瞬きをする間に魔人ブウの腹部に蹴りを入れていたのだ。その威力が膨大だったためか、ブウは口から紫色の血と思われる体液をもらすが、すぐに拭き取る。

 

ドゴォォオオッッッ!!!!!

 

しかし、その動作をしている間に、悟飯の強力な蹴りが炸裂して、ブウは何歩か後退りする。

 

ブウ「うガァアアッッッ!!!!」

 

魔人ブウは怒りに任せて、何の捻りもない拳撃を繰り出すが、悟飯は冷静に対処する。左手でブウの攻撃を受け止め、足を使って顎に攻撃する。それによって怯んでいる隙に再度腹部に強烈な一撃を加えると、魔人ブウは腹部を抑えて苦しんでいた。

 

究極悟飯「…………」

 

その様子を悟飯はじっくりと眺めていた。相手を痛ぶって楽しんでいるわけではなく、敵の動きを観察しているようにも見えた。

 

ブウ「うがぁああッッ!!ぶっ飛ばしてやる!!ぶっ飛ばしてやるぞぉおッッッ!!!!」

 

究極悟飯「ふん、やれるものならやってみろ」

 

戦っている二人の様子は対照的だった。ブウは先程から悟飯に一方的にやられている為か、段々と熱くなってきていたが、悟飯は依然として真顔のままだ。

 

ズガガガガッ!!!

 

魔人ブウが連続して繰り出す拳、足を軽く受け止めた。ブウが腕を振り払って攻撃しようとすると、悟飯はブウの後側に飛んだ後にすぐに接近する。

 

究極悟飯「おりゃああッッッ!!!!」

 

ドゴォォオオッッッ!!!!!

 

ブウ「ウゴッ……!!!?」

 

魔人ブウは顔に悟飯の跳び膝蹴りを受け、そのまま尻から転倒し、地面を削りながら吹き飛ばされる。

 

スタッ

しかし、悟飯はすぐに魔人ブウに近づき、いつでも追撃できるように準備していた。

 

ピッコロ「(し、信じられん…!!あれほどの短期間でどうやってここまでのパワーアップを成し遂げたというのか……!!?)」

 

究極悟飯「はぁああああッッッ!!!!!」

 

悟飯の成長の凄まじさに感心するのはいいが、なんと悟飯は魔人ブウをこちらに投げ飛ばしてきた。

 

悟天「うわわ!!?」

 

トランクス「逃げろ!!」

 

ピッコロ達はなんとか反応して避ける。悟飯は投げ飛ばした魔人ブウを追いかけるが、途中で魔人ブウが静止して口から気功波を吐き出した。

 

バシンッッ!!!

 

しかし、その強力な一撃も悟飯は最も容易く弾き飛ばした。

 

ブウ「うがァアアッッッ!!!!」

 

怒った魔人ブウは体を丸めて悟飯に突進してくる。

 

究極悟飯「ぐぐっ……!!」

 

悟飯はそのまま魔人ブウに押し出されて岩山にのめり込んでしまうが、少しすると岩山の上を突き破って魔人ブウが吹き飛んでいった。その後を超速で悟飯が追いかけ、追い越すと魔人ブウを叩きつけて地面に落とす。

 

しかし、魔人ブウは直前で体制を整えて地面に着地した。1度は魔人ブウに敗北した悟飯。そのはずが、当時よりパワーアップしたブウを圧倒していた。

 

ブウ「……!!?」

 

魔人ブウは悟飯を目視で確認しようと辺りを見回すが、見つけることができなかった。

 

究極悟飯「こっちだ」

 

ブウ「……!!!!」

 

声が聞こえた方を振り返ると、確かにそこには悟飯がいた。

 

 

"ウスノロ"

 

 

以前までの悟飯ならそう言っていたかもしれない。つい先日までは魔人ブウにはとてもではないが勝てる力など持ち合わせていなかった。だが、今はその相手に圧倒的に優位に立っている。

 

しかし、今の悟飯は違う。明確に守りたい人がまだ残っているし、守りたかった人も生き返らせることもできる。それを認識していた悟飯は、いくら余裕とは言っても遊ぶような真似はしなかった。故に………。

 

 

ズォオオオオオオオッッッ!!!!!!

 

 

至近距離で魔人ブウに向けて気功波を放った。それによって魔人ブウの体は消滅したように見えるが……。

 

 

五月「た、倒しました…………」

 

ピッコロ「す、すごいぞ…!!!」

 

悟天「やった〜!!!兄ちゃんが勝った!!」

 

トランクス「よっ!流石悟飯さん!!」

 

究極悟飯「………いや、まだだ」

 

ピッコロ「なに?」

 

悟飯の言う通り、煙が不自然に集まるとすぐに体を形成し、魔人ブウの姿になった。

 

ブウ「ぐぬぬぬぬ…………」

 

五月「ま、また……!!」

 

悟天「しぶといやつ……!!!」

 

トランクス「でも今の悟飯さんなら楽勝だろ!!」

 

 

 

 

ブウ「………やっぱりお前だったか」

 

究極悟飯「なに?」

 

ブウ「俺はゴテンクスっていうチビ達と戦っている時から貴様の存在は感じていた。遥か遠くに俺を超えるかもしれないほどの気があることは分かった………」

 

究極悟飯「……(あの時か)」

 

悟飯が潜在能力解放の儀を終え、試しに究極の力を開放した時の話だ。あまりの力に悟空も含めて皆が驚いていたのだが、それはまた別の話だ。

 

ブウ「俺は俺より強い奴を許さない…!お前を許さない…!!」

 

究極悟飯「なるほどな。実際に試してみたら本当に上だったと…。だが、俺も貴様を許さない。お母さんやみんなを殺し、友達を傷つけたお前をな……!!!」

 

悟飯はここで魔人ブウのを仕留める為に気を最大限まで解放しようとした。しかし、その時………。

 

ドォォオオオッッッ!!!!

 

ブウ「へへへっ…!!楽しみだなぁ…!!」

 

究極悟飯「………!!」

 

魔人ブウの気が不自然に膨らみ続けることを確認した悟飯は、すぐにその場を去る。

 

ガシッ!

 

五月「ふぇ!?」

 

完全に体力を使い切っていた五月を掴みつつ、悟飯はこう続ける。

 

究極悟飯「みんな!魔人ブウは自爆する気だ!!早く離れて!!!」

 

ピッコロ「なにッ!!!?」

 

悟天「ええ!!!?」

 

トランクス「に、逃げろ!!!」

 

皆それぞれが今出せる全力を使ってその場を後にした。少しすると……。

 

 

ドグォォオオオオオオオオオオオオオオオンッッッ!!!!!!

 

大爆発が発生し、ギリギリ被弾を免れた悟飯達にも熱と衝撃は伝わった。

 

 

ピッコロ「た、助かった………」

 

トランクス「ひぇ〜……!!」

 

五月「こ、怖かったです………」

 

取り敢えず爆発の被害を免れた悟飯達は適当な場所を探し、そこに着地した。

 

ピッコロ「………魔人ブウは死んだのか?」

 

究極悟飯「いいえ。奴はまだ生きています」

 

トランクス「ええ!!?」

 

悟天「あ、あんなに大爆発したのに…!!?」

 

究極悟飯「考えてみろ。魔人ブウは本気を出せば地球を粉々にできるほどの威力を出せるはずだ。そうすれば僕達を巻き込んで心中することも容易い。でもそれをしなかった…………」

 

ピッコロ「………何か企んでいるとでもいうのか……?」

 

究極悟飯「恐らく。詳しいことは分かりませんけどね………」

 

一時はピンチになった戦士達だったが、大幅にパワーアップした悟飯の帰還によってなんとか一命を取り留めることができた。魔人ブウは何故かワザと加減をして自爆技を仕掛けたようだが、何か企んでいるのだろうか……?

 




 いつも月曜と木曜で投稿日を固定していたんですけど、遂に崩れましたね……。実を言うと一昨日まで旅行していた関係で書く時間がありませんでした。ということで許してちょんまげ。

 今回の悟飯はとにかく舐めプを排除したつもりです。最初のは魔人ブウの手の内を探る戦闘ですね。この悟飯は未来悟飯にも釘を刺されていますし、何より守りたいと思える人の数が多いのも大きいですかね。

 ちなみに、今回の究極悟飯ですが、原作よりも戦闘力が上がっていたりします。これは悟飯が覚醒前の段階で原作よりも強くなっていることが主な要因です。

 うん、疲れた。次回分全く書けてない()。それではまた。


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第87話 ブウの悪知恵

 前回のあらすじ
 老界王神の施しによって、大幅にパワーアップして返ってきた悟飯は、フュージョンが切れた上に体力切れでピンチになっている人造人間零奈完全体(五つ子と風太郎)の元に現れた。

 彼は単純な戦闘力だけでなく、精神面でも大いに成長していた。間違いなく魔人ブウを追い詰めていたが、ブウは何かを企んでいるらしい……。



悟飯達を巻き込んで自爆した魔人ブウだが、どうやら生きているらしい。しかし、しばらく待ってみてもブウが出てくる様子はなかった。

 

究極悟飯「……なにを企んでいるのかは分からないが、しばらく出てくる気配がないな………」

 

トランクス「まあ、もし生きてたってへっちゃらだぜ!あんな野朗なんか悟飯さん一人でも十分だし、フュージョンして超ゴテンクスになれば楽勝だもんな!」

 

悟天「うん!」

 

はしゃいでいるトランクスと悟天を笑顔で横目に見ながら、数歩前に出る。ピッコロもその意図を察して同じように前に出た。

 

ピッコロ「聞かせろ悟飯。どうやってそこまで極めた」

 

究極悟飯「……簡潔に話すと、15代前の界王神様の能力のお陰です。自分に眠る潜在能力を限界以上に引き出してくれたんです」

 

ピッコロ「界王神様のご先祖が…?」

 

究極悟飯「それよりピッコロさん。ドラゴンレーダーは誰が?」

 

ピッコロ「それは俺が持っているが………」

 

究極悟飯「……?どうしたんです?」

 

五月「実を言うと、そのデンデさんも魔人ブウにお菓子にされてしまって……」

 

苦い顔をして言葉を詰まらせたピッコロの代わりに、卵焼き付きカレーライスを頬張る五月が答えた。

 

究極悟飯「ああ…。それなら大丈夫ですよ。デンデなら生きています」

 

ピッコロ「なに?そんなはずは……」

 

究極悟飯「よーく気を探って見てください。気を微かに感じるでしょう?」

 

悟飯に指摘され、もう一度辺りの気を探ってみる。するとピッコロは確かにデンデの気を確認できた。

 

ピッコロ「ほ、本当だ!!デンデだけでも生きていたのか!!」

 

悟天「うん!僕も見つけた!」

 

トランクス「あっちの方角だよな!」

 

五月「………確かに、微かに気を感じます」

 

他の3人もデンデの存在を認識できたようだ。

 

究極悟飯「さあ、今のうちにデンデを助けましょう!いつまたブウが現れるか分かりませんからね」

 

その言葉を合図に、5人はその場を飛び立ってデンデの元へと向かうべく、舞空術を使用した。

 

究極悟飯「………ところで、五月さん」

 

五月「はい?」

 

究極悟飯「…………そのカレー、どこで用意してきたの?」

 

ピッコロ「実を言うと、そいつも魔人ブウのようにアホ毛から出るビームで物を食べ物に変える能力を持っている。しかも食べ物を食べれば体力も回復するおまけ付きだ」

 

究極悟飯「ええ!?なにそれ!?」

 

五月「これでいつお腹が空いても大丈夫ですね!」

 

究極悟飯「うん。確かに今のうちに沢山食べてもらった方がいいかもしれないね。また魔人ブウが現れた時は徹底抗戦をしかけるぞ…!」

 

 

そうして、五月は食べ物を食べながらデンデの元に向かっている時……。

 

究極悟飯「………うん?」

 

五月「あ、あれは……?」

 

ピッコロ「なんだ?人か?」

 

究極悟飯「はい。あれは…………」

 

 

 

 

 

 

サタン「ビールが飲みたい……。水でもいい………」

 

 

 

 

 

五月「あれは、Mr.サタンでは!?」

 

トランクス「ええ!?まだ生きていたのか!?しぶとい奴だなぁ…」

 

五月「えぇ…………」

 

サタンは特に何か悪いことをしたわけでもないのにこの言われ様に、五月は少々気の毒に思った。

 

トランクス「あんな奴は放っておこうぜ」

 

ピッコロ「いや、あいつも連れて行ってやろう。奴も根は善人なんだ。あいつはあいつなりに地球を救おうとしたんだ」

 

ピッコロの一声でサタンも救出することが決まり、ピッコロはサタンを、悟天は近くにいた犬を拾うことにした。

 

ピッコロに掴まれた直後はバタバタと抵抗していたサタンだったが、自分に危害が加えられないと分かると大人しくなった。そして冷静になって周りを見渡すと……

 

サタン「お、お前は………」

 

武道大会の時、ビーデルに変な物を食べさせ、致命傷から回復させた人物、悟飯がいた。

 

究極悟飯「こんにちは!」

 

サタン「こ、こんにちは………」

 

悟飯はなんてことないように挨拶するが、平然と空を飛びながらそれをする悟飯に困惑しながらも挨拶を返すことを忘れないMr.サタン。それはさておき……。

 

ピッコロ「しかし、何故デンデだけ助かったんだ…?時間はたっぷりあったはずなのに………」

 

五月「はむ…。それに関しては、私達がすぐに挑んだからだと思います。だから奇跡的にその人だけが助かったのかと………」

 

ピッコロ「なるほど……。それならば納得だが………」

 

究極悟飯「あれ?お父さんがピッコロさん達はブウが出てきてから割とすぐに出てきたって言ってましたけど………」

 

ピッコロ「……そ、そうか…!なんてことだ…!俺は逆上して勘違いしていたんだ…!次元の穴が空いた時間を考慮しても数十秒しかタイムラグはなかった…!おまけにそこの食いしん坊が戦っていたお陰で、逃げたデンデを探して殺す隙などなかったのだ…!!」

 

ピッコロは一人でに納得するが、その拍子にサタンを持つ手を離してしまい落下するが、トランクスが持ち直したことでなんとか助かったサタン。

 

トランクス「無茶するなぁ…。ピッコロさん………」

 

サタン「ど、どーも………」

 

「おーーい!!」

 

そこに、トランクスに向けて手を振るデンデの姿が現れた。

 

トランクス「神様だ!!」

 

そしてトランクスは喜んだ拍子にピッコロと同じようにして手を離してしまう。

 

サタン「あっ、やば…。今度こそ死んだ…………」

 

 

 

 

 

 

ガシッ!!

 

サタン「!!!?」

 

四葉「す、すみません!!大丈夫でしたか!?」

 

ここでお人好しな四葉が表に出てくることによって、サタンはなんとか地面への激突を免れることはできた……。ちなみに、五月が沢山カレーやカツ丼などを食べたお陰で、零奈完全体は準備万端である。

 

サタン「あ、ありがと…………」

 

デンデの話によると、ポポが下界に向けて放り投げてくれたらしい。その為デンデだけは助かることができたようだった。ピッコロはそんなミスターポポの行動を賞賛していた。

 

サタン「な、なんだ…?あの顔色の悪いガキは……?」

 

トランクス「こら!失礼だろ!神様だぞ!神様!!」

 

サタン「ええ!?なんだって!?あれが!!?」

 

ピッコロはデンデのビジュアルで神だということに驚いている様子だった。

 

四葉「……お気持ちお察しします」

 

みんなが普通にデンデに接している中、ただ一人サタンに理解を示す者がいた。

 

 

 

 

そして、しばらく雑談していると……。

 

サタン「そういえば、ビーデルはどこに行ったんだ?お前と一瞬に飛んで行ったはずだが…………」

 

四葉「!!!」

 

究極悟飯「あっ………それは…………」

 

ピッコロ「………ビーデルも魔人ブウに殺された………」

 

サタン「…………えっ?び、ビーデルが…?ブウに……?そ、そんなはずは…!!あのブウが私の娘を殺すなど…!!」

 

ピッコロ「あのブウはお前の知るブウではなくなってしまった……。奴はただの破壊獣へとなれ果てたのだ……」

 

サタン「そ、そんな……!!おいお前…!!どうしてビーデルを守ってやらなかった!!お前がいながらどうして!!」

 

究極悟飯「………すみません」

 

悟天「大丈夫だよおじさん!ビーデルさんも生き返れるから!」

 

サタン「……!?それ、本当か!?本当なんだろうな!!?嘘じゃないだろうな!!!」

 

サタンは悟天を振り回しながら詰め寄るが、あくまでも悟天は嘘ではないと言う。実際ドラゴンボールさえあればビーデルも生き返ることは可能だ。

 

究極悟飯「………!!!!」

 

四葉「!?」

 

ピッコロ「うおっ!!!?」

 

しかし、そこに一つの巨大な気が接近してくるのを確認できた。その正体は言うまでもなく……。

 

トランクス「ま、魔人ブウだ…!!!」

 

サタン「何!!ブウだと!?」

 

ピッコロ「ま、まさかあいつ、もう戦うつもりなのか!?たった1時間ほどで一体何が変わったというのだ!!?」

 

そう。魔人ブウの気を探ってみれば分かるのだが、殆ど変化はない。新しい技でも編み出したのか?それとも、これも作戦のうちなのだろうか……?

 

魔人ブウの姿を目視で確認した悟飯は立ち上がって今度こそ倒すと意気込む。

 

究極悟飯「みんなは巻き添えを食わないように気をつけて!!」

 

四葉「待って下さい!私もお手伝いします!!」

 

究極悟飯「ダメだ!僕一人だけでもいい!!」

 

四葉「お願いします…!!学校のお友達も…!お爺ちゃんも……!!お父さんも…!!みんな殺されたんです…!!!せめてトドメだけでも……!!!」

 

究極悟飯「………分かった。だけど絶対に油断はしちゃダメだよ?」

 

悟飯は四葉の覚悟を聞き取り、付いてくることを了承し、悟飯と共に四葉は魔人ブウの元に向かった。少し離れた岩山にまで移動し、そこで着地をして待機する。

 

四葉「…………一体、何が変わったんでしょうか……?」

 

究極悟飯「分からない…。だけど、何かするつもりなのは確かだ……」

 

ブウ「ふへへ………」

 

そして、再び悟飯の前に着地した。サタンは魔人ブウに話しかけようと試みるも、魔人ブウからの返答は一切なかった。本当に変わってしまったことを知ったサタンはどこか悲しげであった。

 

究極悟飯「…………」

 

四葉「…………」

 

悟飯とブウはしばらく睨み合っていた。しかし、悟飯は魔人ブウがどのように変わったのかまるで検討もつかなかった。

 

トランクス「ハッタリじゃないの?どうせ悟飯さんと戦ったらまたすぐに逃げ出すって!!」

 

四葉「あわわ…!!」

 

そんな風に煽ればまた魔人ブウが感情的になってしまうと危惧していた四葉だったが、何故か魔人ブウはその言葉を聞いて不敵な笑みを浮かべていた。それに対して違和感を覚えた。

 

ブウ「おいチビ達!!出てこい!!!俺はお前達と戦いたいッ!!!」

 

究極悟飯「!?」

 

予想外の言動にみんなが驚く。だが….

 

究極悟飯「勘違いするな!貴様の相手はこの俺達だ!!!」

 

ブウ「はははっ!まずはチビ達と決着をつける!その後にお前達と戦ってやる!!」

 

四葉「ど、どうしてそんなことを…?う、上杉さん!」

 

『分からん……。しかもチビ達にフュージョンさせるということだろ…?無駄に敵を増やすように仕向けるのは合理的とはとても言えん。俺にも何を考えているのかさっぱりだ』

 

現在、零奈完全体の頭脳を担当する風太郎だが、そんな風太郎でも魔人ブウのこの行為には理解し兼ねているようで、全く見当がつかないようだ。

 

究極悟飯「どういうつもりだ!?貴様はこの俺を倒したいんじゃなかったのか!?」

 

ブウ「どうしたチビ達!!出てこい!!俺とやるのが怖いのか?さっきまでの威勢はどうした!?」

 

「「なに!!?」」

 

あからさまな挑発行為だが、悟天とトランクスはその言葉に反応してしまう。

 

トランクス「お前全然分かってないな?さっきも元に戻らなきゃ俺達の完全勝利だったんだぜ!!」

 

ブウ「へえ?そうだったかな?その割にはビビっているみたいだったがな…?」

 

「「なんだとぉ!!!」」

 

魔人ブウはちびっ子二人を更に煽って二人を戦場に駆り出そうとしている。悟飯はその意図がまるで分からなかった。

 

悟天「よーし!馬鹿な奴だ!今度こそ僕達でやっちゃおうよ!!」

 

トランクス「おう!あんな奴に舐められるわけには行かねえもんな!!」

 

ピッコロ「ま、待て!!何か変だぞ!!」

 

トランクス「へん!考えすぎだよピッコロさん!!あんな馬鹿なやつに作戦なんて考えられる頭脳なんてないよ!!」

 

悟天「そうだよ!!」

 

二人は魔人ブウの手のひらで踊らされているとも知らず、悟飯と四葉の前に出てくる。

 

トランクス「よーし!もうフュージョンできるぜ!!」

 

究極悟飯「ダメだ!!奴は俺達で倒す!!お前達は黙ってみていろ!!」

 

四葉「あれは何かを企んでいる顔です…!その企みが分かるまでは、どうか抑えてくれませんか?」

 

悟飯はあくまでも厳しく、四葉は比較的柔らかく二人に引くように言うが、悟天達は引かなかった。

 

悟天「兄ちゃんは知らないんだよ!フュージョンした僕達の強さを!!」

 

トランクス「お姉ちゃん達は見てただろ?超ゴテンクスの凄さをさ!!」

 

四葉「それは、確かに見てましたけど………」

 

トランクス「ならいいじゃねえか!!」

 

悟天「今度はいきなり超サイヤ人3だ!!」

 

そして、二人は今度も完璧にフュージョンのポーズを決め、融合する……。

 

 

 

ボォオオオオッ!!!

 

超3ゴテンクス「ジャジャジャジャーン!!正義の死神スーパーゴテンクスだ!!!」

 

究極悟飯「ほお……」

 

確かにこの強さなら魔人ブウ相手でも倒せるだろうと考える悟飯。一瞬任せてもいいかと考えるが……。

 

究極悟飯「待て。これは遊びじゃないんだ。いいから黙って見てろ。どうしても戦いたいというなら、俺と一緒に戦え!」

 

超3ゴテンクス「まあまあ、ここは俺にご指名みたいだから任せてくれよ!一回騙されたと思ってさ!!」

 

ピュン‼︎

 

三玖「………」

 

今度は三玖フォームに変身し、悟飯をジッと見つめている。

 

究極悟飯「……?どうしたの?」

 

三玖「ううん。ちょっとRPGみたいだなって思っただけ」

 

究極悟飯「あ、rpg……?」

 

三玖「そっか。悟飯はゲームやらないんだっけ?ターン制のゲームで、敵を倒すと経験値が手に入るんだよ。経験値を多く手に入れるとレベルアップして強くなれるんだ。だから、もしこれがRPGならあの魔人ブウの考えも納得が行くんだけど、経験値の概念がない現実で一体何がしたいのか分からないなって思って……」

 

『あんたこんな時に何考えてるのよ!?!?』

『三玖!?今は遊びじゃないんですよ!?』

 

内部にいる二乃や五月から突っ込みを受けたが、これが三玖の感じたこと。悟飯と風太郎はそんな三玖の考えをヒントにもう一度魔人ブウの目的を推察してみることにした。

 

究極悟飯「(つまり、僕を倒すためにゴテンクスを倒して強くなろうと…?でもこの世界はゲームじゃない…。仮にゴテンクスを倒したからと言って急激に強くなるわけじゃない)」

 

『(ましてや、自分と互角以上の敵を増やすだけで得はない。それは魔人ブウ自身も分かっているはず。にも関わらずわざわざあの二人を挑発してフュージョンさせた………)』

 

悟飯と風太郎もゴテンクスが出現することによって、魔人ブウにとってメリットが存在することまでは推察できた。しかしそのメリットの詳細に辿り着くことができていない。

 

 

 

ワンワンワン‼︎

 

三玖「………?」

 

ゴテンクスが発するオーラと風の音しか聞こえない中、三玖はもう一つの音の存在に気づいた。先程からサタンが抱えている子犬が吠えているのだ。それも何かを睨みつけるようにして。

 

三玖「………何かを威嚇してる?」

 

究極悟飯「えっ…?」

 

三玖「あっ……その、あの子犬ちゃんがさっきからずっと吠えているのが気になって」

 

究極悟飯「子犬が……?」

 

三玖「さっきからずっと威嚇しているような………」

 

究極悟飯「それは魔人ブウに対してじゃないのかい?」

 

三玖「そ、そう言われるとそう思える…………」

 

だが、三玖の着眼点は素晴らしかった。悟飯は再び魔人ブウに警戒の視線を向けるが、三玖はそのまま犬の方を見ていた。すると犬はサタンの腕から抜け出した。このまま魔人ブウの前にまで出てくるのかと思ったが、もっと手前で止まった。

 

「わんわんわん!!!」

 

犬は魔人ブウではなく、ゴテンクスの方を睨みつけていた。いや、正確にはもっと下の方だった。三玖もその犬に合わせるように地面に目を向ける……。

 

三玖「……!!あのピンク色……!!」

 

ピンクの半液体のようなものが、少しずつ地面を這いずってゴテンクスに近づいていることを確認できた。サタンは三玖よりも早めに気づいたようだったが、何が起きているのか分からずに固まっていた。

 

三玖「魔人ブウの思惑が分かった……!!」

 

究極悟飯「えっ?!」

 

 

 

 

超3ゴテンクス「よーし!行くぜ!!」

 

ゴテンクスがとうとう戦闘を開始しようとしたその時………。

 

 

 

 

 

 

 

ドグォォオオオオオオオオオンッ!!!!!

 

超3ゴテンクス「うわぁああ!?!!?」

 

ゴテンクスとすぐ後ろそれぞれの位置に、三玖がいつの間にか放った矢が爆発するように突き刺さった。

 

超3ゴテンクス「チョ!!これお姉ちゃんの技でしょ!!?いくら俺を止めたいからってこれはないんじゃない!!!?」

 

三玖「いいから、見てみて」

 

超3ゴテンクス「ああ!!?何をだよ!!!!………えっ?」

 

ゴテンクスはそれぞれ矢が突き刺さったところを見ると、謎のピンク色の物体が矢に突き刺さされていた。

 

三玖「はっ……!!!」

 

ドグォォオオオオオオオオオン!!!!!

 

三玖は手で合図して矢を爆発させると、その物体は跡形もなく消し飛んだ。

 

ブウ「き、貴様ァ……!!!!!」

 

究極悟飯「み、三玖さん?一体魔人ブウの作戦って……?」

 

三玖「作戦としては源義経の逆落としと似たようなものかな」

 

逆落としとは、源氏の義経が平氏との戦いである一ノ谷合戦にて、急坂を馬で駆け降りて奇襲するというとんでも戦法のことを言う。つまり一言で言えば不意打ちというやつだ。

 

三玖「魔人ブウは自分自身に気を引いて、その塊でゴテンクスに奇襲を仕掛けようとしていたんだよ!!」

 

『………いや、本当にそれだけか?』

 

三玖「えっ……?」

 

『ただの奇襲でも効果はたかが知れているぞ?そんなことをしても悟飯はおろかゴテンクスにも勝てるとは思えん』

 

三玖「た、確かに………」

 

名推理を叩き出したと思っていた三玖だったが、どうやらその推理は外れてきたようで、手で顔を抑えて縮こまっていた。

 

究極悟飯「い、いや!でもその奇襲に気づけただけでも三玖さんはすごいよ!」

 

ブウ「…………ふっ!ふふふっ…!!」

 

超3ゴテンクス「なんだ?何がおかしいんだよ!!」

 

ブウ「………確かに、ある意味奇襲かも知れないな…」

 

究極悟飯「ある意味……?」

 

「うおっ!!!」

 

三玖「!!?」

 

突然悲鳴のような声が聞こえたため、後ろを振り向いた悟飯達。そこには、ゴテンクスのすぐ後ろにまで迫っていたものに似たピンク色の物質が、ピッコロに纏わりついていることが確認できた。

 

三玖「えっ……?どういうこと……?」

 

ブウ「倒す為の奇襲じゃない!!」

 

魔人ブウが手を動かすと、ピッコロを捉えた塊がブウに向かって進む。

 

究極悟飯「ま、まさか……!!」

 

ブウ「そして………」

 

魔人ブウはピッコロをこちらに引き込むのと同時並行で何かのポーズをする。両手に気を集中させていることは分かるのだが、ただ何をするつもりなのかまでは分からない。

 

ブウ「魔封波ッ!!!!

 

超3ゴテンクス「う、うわぁああ!!!!!」

 

ゴテンクスは魔人ブウの両手から出た緑色のオーラのようなものに包まれ、それに捕らえられたことによって身動き不能となり、じわじわと魔人ブウに引き寄らされて行く。

 

究極悟飯「ま、まずい……!!!」

 

スポンっ!と呆気ない音が響くと同時にゴテンクスが魔人ブウの体内に取り込まれる。その直後にピッコロを捉えたブウの体の破片が本体に戻り、ピッコロをも取り込む。

 

三玖「そ、そんな……!!!」

 

三玖はゴテンクスに迫る体の一部は気づくことができたが、自分より後ろにいたピッコロの方にまでは気が回らなかった。悟飯と風太郎も何か企みがあるとしたら、ゴテンクスに関係するものと睨んでいたので、こちらは完全に不意をつかれた形となった。

 

究極悟飯「こ、この野朗………!!!」

 

悟飯は悔しそうにするが手遅れだった。魔人ブウはゴテンクスとピッコロの吸収を完了し、姿も変えた。以前よりも体格が更に良くなり、鼻が高くなった上に触覚のようなツノも太くなっていた。更に今まで上半身は裸だったのだが、今回からはゴテンクスが身につけていた、あのゴツゴツした服を身につけていた。

 

ブウ「どうかな悟飯君。この瞬間に、後にも先にも生まれないであろう最強の魔人の誕生だ」

 

究極悟飯「き、汚いぞてめぇ…!!2人も取りこんじまうなんてよ…!!」

 

ブウ「お前のせいだぞ。お前は絶対に最強であるはずの私より強くなった。遥か遠くにお前の存在を感じた時からこの作戦は既に始まっていた」

 

三玖「そ、そんなに早い段階で…!?」

 

ブウ「もしかしたら私より強いかも知れない。そこで考えたのだ。その時戦っていたスーパーゴテンクスとかいうチビを吸収すれば、どんな奴が現れたって最強の王座は揺るがない。だが、そのちびのパワーは時間制限付きのようでな。もし吸収する瞬間に戻られては困るから、次の機会に見送ったのさ」

 

三玖「そ、そんな………!!」

 

『そういうことか…!頭悪いのかと思ったが、実は良かったのか……!!』

 

悟飯は魔人ブウの作戦を聞いてしてやられたという意味を込めて舌打ちをする。

 

究極悟飯「そういうことか……。だが、そうペラペラ喋っている割には頭の悪さは変わってないようだな?最強になりたければこの俺を吸収すれば良かっただろう?」

 

ブウ「何も分かってないな。敵もいないのに最強になって何の意味がある?前の私が言ったはずだ。お前を許さないとな」

 

究極悟飯「……!!」

 

三玖「だとしても、何で私達を吸収しなかったの…?その方が手取り早かったはず……!!」

 

ブウ「確かに、貴様を吸収した方が都合は良さそうだ。パワーはこの超ゴテンクスよりも若干上回っている上に、多彩な技を使用できる。だが、前の私は貴様も許すことができなかった。だからチビ達ではなく、貴様は殺そうとしたのだ」

 

悟飯が駆けつける前の出来事のことである。フュージョンが解けた悟天やトランクスはすぐに殺せたのにも関わらず、そっちではなくしつこく五つ子に拘った理由は、単に回復を阻止したかったからというものだけでなく、許すこともできなかったのだ。

 

三玖「な、なるほど………」

 

ブウ「特にあのショートヘアの強気な女。あいつは特に許せん。だから、最強の力を持ってお前たちを仲良く宇宙の散に変えてやろう」

 

究極悟飯「そういうことか…。納得」

 

ブウ「さて、勝負を急がせてもらうぞ。ゴテンクスとやらは時間制限付きなのでな」

 

究極悟飯「貴様にしては冷静な判断だ…。ピッコロさんを吸収したのは正解だったようだな…………」

 

その言葉を最後に両者は互いに互いを睨みつけていた。三玖は戦闘が始まることを察知して戦闘態勢に入るも……。

 

究極悟飯「待って。まずは俺だけにやらせてくれ。三玖さんは万が一俺がピンチになったら援護してくれればいい」

 

三玖「…………分かった」

 

悟飯の言うことを聞いて三玖は少し離れたところ、デンデとサタンが巻き添えを食らわないように近くで待機しておくことにした。

 

究極悟飯「はっ!!!!」

 

ブウ「……!!!!」

 

動き出したのはほとんど同時。お互いに引かなかった。

 

究極悟飯「っらぁ!!」

 

ドカッッ!!!!!

 

まずは悟飯のエルボーがブウの顎にヒットする。しかしその直後にブウのパンチが悟飯の頬を殴る。

 

しばらく高速戦闘を継続していた。その速度は三玖達零奈完全体でも目で追うのがやっとな程。

 

三玖「す、凄い……!!」

 

先程までの悟飯も本気を出していたわけではなかったのだ。相手の手の内を知る為に敢えて手加減をしていた。だからこそ、三玖達は悟飯も自分達と互角程度の強さだと思っていた。しかし実際には悟飯の方がよっぽど強かったのだ。

 

だが、そんな悟飯を相手に全く引く姿勢を見せない魔人ブウに、三玖は焦燥感を抱いていた。

 

三玖「悟飯なら、大丈夫だよね……?」

 

 

究極悟飯「ウラァ!!」

 

ドゴォォオオッ!!!!

 

ブウ「ふんっ!!」

 

ドカッッ!!!!

 

悟飯の蹴りがブウの顔面に当たった直後にブウの拳が悟飯の頬に当たる。すかさず悟飯はブウの腹部に反撃する。

 

それによって少し飛ばされた魔人ブウの片足を掴み……。

 

究極悟飯「ありゃぁあッ!!!!」

 

ドガガガガガガッッ!!!!!!

 

地面に向けてブウを容赦なく投げ飛ばすと、地面を抉りながらブウは地中に練り込み、穴を掘り続けながら吹き飛ばされていく。

 

究極悟飯「……!」

 

悟飯は追撃する為にそんなブウを追いかけるが、ブウが吹き飛んでいった方向から気功波が飛んでくるのが見えたので、それを回避する。

 

ブウ「はぁあああッッ!!!」

 

究極悟飯「……おりゃあッッ!!!」

 

魔人ブウがこちらに足を向けながら接近しているのが見えたので、自分も反撃するべく同じようにして魔人ブウに接近する。

 

 

ドゴォォオオッッ!!!!

 

 

ブウ「ぐぅぅッ……!!!!」

 

究極悟飯「ぐぉぉっ…!!!」

 

両者の足が両者の頬に当たり、互いに吹き飛ばされるが、すぐに体制を整えて着地した。

 

究極悟飯「…………」

 

ブウ「………お前、まだ実力を隠しているな?この俺を相手に探りを入れているのか……?」

 

究極悟飯「……くっ…、流石ここがピッコロさんだ。全てお見通しってわけか………」

 

悟飯は自分の頭を指差しながら笑うが、その表情に少しずつ余裕がなくなってきていた。

 

究極悟飯「……なら、本気出すか…!」

 

ブウ「来い」

 

ゴテンクスとピッコロ吸収してしまった魔人ブウ。遥かにパワーアップしたのは確かなようで、強くなった悟飯と互角に戦っていた。しかし、悟飯も魔人ブウもまだまだ余裕な様子だ。二人が隠している実力に差はないのか?もしあるとして、一体どちらが勝っているのだろうか……?

 




 タイトルはほぼアニメのやつですね。今回は魔封波も取り入れてみました。というのも、以前亀仙人が魔人ブウに向けて魔封波を放ったことがあるんですよね。わざわざあのシーンを入れたのは実を言うとこの為だったりします。

 この辺は結構原作とそこまで相違はありませんが、この後から大分差異が生じてくるかと思うので、楽しみにしていただけたら幸いです。ちなみに評価バーが赤になっていたのでビックリしました。まさか自分が書いた作品でここまで行くとは思っていませんでした。初期の初期は叩かれたこともあったけど、応援に応えて折れずに続けてよかったなぁと思ってます。

 なんか後書き短いので少しおまけでも入れましょうかね。ということで……



一花のぼやきコーナー!

どうも皆さん。現在女優として大活躍中の中野一花です!ここではメタな話も出てくるけど気にしないでね!

さて、私が愚痴りたいことについてなんだけど、私の扱い酷くない?みんな良く見てみてよ!原作では私が暴走しちゃって三玖を傷付けるくらいだったけどさ、修学旅行編とか魔人ブウ編とか見た!?何あれ!?そんなに私の悪評を広めたいのかな!?修学旅行編では原作よりも私が酷い目にあってるし、魔人ブウ編なんかは原作よりも酷いしえぐい闇堕ちしていない!?この台本作った人私にどれだけ恨みがあるのかな!?全世界の一花推しから恨み買ってるよねこれ?しかも後書きか前書きで『一花は闇堕ちしません』って言ってたよね?一花推しの人を上げて落としてるし、これって歴とした詐欺じゃないかな!?これはお詫びとしてこの作品では私がフータロー君に選ばれるように結末を操作してもらわないとね!!………ん?DMが届いたね…。どれどれ……?

『どうも。この度はご意見を寄せていただきありがとうございます。愚痴の返信ですが、別にあなただけが酷い目にあってるわけではありませんよ。未来の五月ちゃんなんか肉親を1人残らず殺された上に闇堕ちさせられましたからね』

一花「あー…。確かに未来の五月ちゃんに比べたら大分マシかもしれない…………。あれ?でもそれはあくまでパラレルワールドの話だよね……?」

その後、24時間待っても返信は来なかった……。





って、原作の一花がこの作品を読んだらこんなことを叫びそうだなーっていう妄想。ただそれだけです、はい。ちなみに私は一花も好きですよ。決して嫌いではありません。


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第88話 復活のC・N

 前回のあらすじ
 自爆を装っていた魔人ブウだったが、悟飯達がデンデとサタン達を救出した後に現れた。特にパワーアップも姿も変化していない魔人ブウ相手に疑問を感じで警戒するも、再びフュージョンして誕生したゴテンクスとピッコロが吸収されてしまった…!!

その後の戦いでは悟飯と魔人ブウは全くの互角で勝負はつかなかったが、それは両者共に実力を隠していたからなのだが、果たして悟飯はゴテンクスとピッコロを吸収した魔人ブウに勝てるのだろうか……?


究極悟飯「はっ!!!!」

 

先に動き出したのは悟飯だった。先程とは比べ物にならない速度で蹴りを放つ。

 

ガッ…!!

 

究極悟飯「!?」

 

しかし、魔人ブウに最も容易く掴まれてしまった。だがここで怯む悟飯ではない。もう片方の足で攻撃を試みるが、これまた阻止されてしまう。

 

ブウ「さあ!お次はなんだ!!」

 

今度は魔人ブウが悟飯の様子を伺っているという印象だ。先程までの余裕が悟飯には感じられなかった一方で、ブウはまだまだ余裕と言った様子だ。

 

究極悟飯「だりゃあッッ!!!」

 

カァァッ!!!!

 

悟飯はこのまま引くわけにもいかず、手から気功波を放つが、魔人ブウは体の柔らかさを活かして回避する。

 

究極悟飯「おわっ…!!」

 

そしてツノ部分で悟飯の首を捕らえた。

 

究極悟飯「ぐぐぐっ……!!!!」

 

三玖「だ、ダメだ…!加勢しないと…!!」

 

究極悟飯「だ、ダメだ!!」

 

三玖はピンチになりつつある悟飯に加勢しようとするが、悟飯に止められたため、少々不満気な顔をしながらも指示に従った。

 

ブウ「はぁあ!!」

 

ドカッッ!!!!

 

究極悟飯「ぐぅ…!!?」

 

魔人ブウはツノを振り回して悟飯を地面に叩きつけるのかと思ったが、それは違った。殴りやすいところにまで持ってきて殴り飛ばしたのだ。

 

スタッ

 

悟飯はなんとか岩山に横向きで着地することができたが、魔人ブウが追撃として放った気功波が刻々と迫っていることには気づいていない様子だった。

 

三玖「はっ!!!!

 

ビュンッッ!!!!!!

 

 

 

 

ブウ「……!!!!!」

 

 

デンデが悟飯に声をかける前に、三玖の矢形の気功波が横から突き出てきたことによって軌道が逸らされ、悟飯に当たることはなかった。

 

ブウ「………やはりなかなか厄介な存在だなお前は……」

 

そう言いながら魔人ブウは冷静に次の一手の準備をしていた。

 

ブウ「…………」ビビビッ

 

額に中指と人差し指が添えられ、その部分は稲妻と共に光が生成されていく。

 

究極悟飯「あっ……!!!!」

 

悟飯はこの技に見覚えがあった。そう、これは師匠であるピッコロが得意とする技、魔貫光殺砲であった。それを三玖に向けて放とうとしているのだ。もしも三玖が食らってしまえばひとたまりもない……。

 

ブウ「魔貫光殺砲ッッ!!!!」

 

ビィイイイイイッッ!!!!!

 

究極悟飯「くっ……!!」シュン‼︎

 

三玖「ご、悟飯ッ!!!?」

 

魔人ブウの指からその技が放たれたとほぼ同時に、三玖の前に悟飯が現れた。その姿勢は既に相手の技を受ける体制になっていた。

 

三玖「だ、だめ……」

 

バチッッッッ!!!!!!

 

究極悟飯「グガァ……!!!あぁああッッ……!!!!!」

 

悟飯は技が当たった部分から血が流れるが、そのことは気にも止めなかった。後ろにいる大切な存在を守る為に何がなんでも耐えなければならなかった。

 

 

ドグォォオオオオオオオオオンッッ!!!!

 

あまり時間が経たないうちに魔貫光殺砲は爆発をした。その爆風に悟飯と三玖も巻き込まれるも、三玖はほぼ無傷で済んでいたが、悟飯は身体中に擦り傷や切り傷などができていた。

 

 

スタッ

 

悟飯をしっかり押せることを確認した魔人ブウは勝ち誇ったような笑みを浮かべながら着地し、ゆっくりと悟飯の前まで歩く。

 

ブウ「どうやら隠していた実力に大分差があったようだな?」

 

究極悟飯「……………」

 

魔人ブウの言葉に沈むように、悟飯の体から力が抜けた。その様子を見て、三玖は悟飯は戦意を失ってしまったのではないかと考えた。

 

三玖「(さ、作戦会議!!)」

 

『このままじゃまずいわ…!!パワーアップしたハー君でも歯がたたなそうよ!』

 

『ど、どうしましょう…!!孫さんは今の私達よりも強いのに……!!』

 

『ならばお前らの多彩な戦い方で翻弄するしかない…!!一花!お前の出番だ!!』

 

『……了解!!』

 

 

脳内で作戦会議が終了した。ここまでほんの僅か0.5秒。

 

三玖「はっ!!!!!」

 

三玖は何の前触れもなく手から気功波を放つが、魔人ブウはそんな不意打ちもあっさりと回避する。一回転して地面に着地……する前に手を伸ばした。

 

三玖「………!!!?」

 

伸びた手に掴まれた三玖は何す術もなく幾つもの障害物に叩きつけられながら押されていく。

 

究極悟飯「み、三玖さん…!!」

 

ブウ「私はこの宇宙最強の力を!お前らを殺す為に手に入れたのだ!!」

 

究極悟飯「やあッッ!!!!」

 

悟飯はブウの攻撃を止める為に気を全開にして殴りかかるが………。

 

べチンッ!!

 

究極悟飯「かはっ……!!!!」

 

物凄い威力を含んだツノに叩かれ、少しの間身動き不能となった。

 

ブウ「………ん?」

 

シュン‼︎

 

一花「ざんねん!!…………えっ?」

 

してやったりという顔でブウの背後に現れた一花フォームになった零奈だったが、現れたと同時に光の玉を持った魔人ブウの手が一花の眼前に来る。

 

ブウ「残念だったな。違和感には()()()()気付いていたのだよ!」

 

カァァッ!!!!

 

例え顔が命の女優であろうとお構いなしにブウは顔に気功波を放った。眼前にあるため当然避けることも防御することもできず、まともに食らってしまう。

 

一花「きゃあ…!!!」

 

なんとか爆発から抜け出した一花だったが………。

 

一花「……!!!」

 

今度は一花が背後を取られた。

 

ブウ「どうした?お得意の騙し術は使わないのか?」

 

一花「くっ……!!なら…!!!」

 

シュパパ!っと一花の体が突如五体に増殖した。

 

一花「これならどうかな!影分身の術!!ありきたりだけどね!!」

 

一花が新たに生み出した影分身は見掛け倒しではなく、本当に5人に増やしているのだ。しかし、天津飯の四身の拳のように気を四等分するものではなく、本体以外は一度ダメージを受けると消える仕様の代わりに、自分をそのままの強さで増やすことができるのだ。

 

ブウ「くだらん」

 

だが、魔人ブウはその一言で一花の技に対してそう吐き捨てた。

 

 

ドカッッ!!!!

 

 

一花「なっ………かひゅ……!!!」

 

あまりの威力に耐えきれずに一花は口から血を吐き出した。まさか、ブウがピンポイントで本体に攻撃を当ててくるとは思いもせず、碌に受身体制も取ってなかったのだ。

 

ブウ「お前は馬鹿か?俺は気を読むこともできるのだぞ?その技の特性をきちんと理解してから使うべきだったな」

 

腹部を抑えて動かない一花にもう一撃入れようと魔人ブウの手が動いた。

 

 

 

 

ドゴォォオオッッ!!!!!

 

 

ブウ「ちっ……!!!」

 

だが、横から悟飯が蹴りを入れたことによってそれは阻止された。

 

究極悟飯「大丈夫!?」

 

一花「ちょ、ちょっとピンチかも……」

 

究極悟飯「くそ……!!」

 

 

 

はははぁあ!!!!

 

究極悟飯「!!?」

 

悟飯が再び魔人ブウの方へと向き直した時、魔人ブウに似た幽霊のようなものがこちらに接近していることに気がついた。すぐそばには痛みで動けない一花もいるので、自分だけ逃げるわけにもいかなかった。

 

究極悟飯「たあッ!!」

 

だから殴り飛ばして一旦距離を取ろうと考えたが、これが失敗だった。

 

にぃ…

 

究極悟飯「……!!!!」

 

悟飯の手が触れたと同時に幽霊は不敵に笑うと、光り出した。そう思ったと同時に大爆発した。

 

 

 

サタン「ま、まさか……!!やられちまったのか……!!!!」

 

デンデ「気を感じない……!!まさか、本当に………!!!!」

 

辺りは先程の爆発のせいで砂埃が舞っていて、周りの様子を確認することができなかった。それを利用して悟飯は一花を匿って岩陰に隠れてやり過ごそうとする。その際に気を消すように指示し、自分も気を極限まで抑える。

 

ブウ「…………どうやらあの一瞬だけで私とお前達の間の差を理解したようだな?だが、そこで気を消して隠れてやり過ごそうとしても無駄だ」

 

究極悟飯「チッ……!!」

 

悟飯は隠れている場所がバレていることを理解すると、渋々跳んでブウの前に現れる。

 

ブウ「………おや?もう1人の方はどうした?」

 

究極悟飯「……………」

 

魔人ブウの問いに悟飯は答えない。その代わりに自ら突っ込んでくる。

 

究極悟飯「だりゃあ!!!」

 

悟飯はブウに攻撃を当てようとするが、一度も擦りもしなかった。

 

ブウ「あくまでも答えるつもりはないらしいな。なら…!!」

 

魔人ブウは手から三つのリングのようなものを作り出し、悟飯に向けてそれを投げた。

 

究極悟飯「…!!!」

 

悟飯はそれを避けようとするも、スーパードーナツの方が速度が速く、すぐに追いつかれてしまう。

 

究極悟飯「グァアア!!!!!

 

そのままスーパードーナツは悟飯の体を締め付けるように縮んだ。

 

ブウ「どうかな?仲間の技でやられる気分は?」

 

究極悟飯「ぐわぁああああああッッ!!!!!

 

魔人ブウは余裕の笑みを保ったまま悟飯に聞くが、悟飯には返答する余裕がなく、苦しんでいた。

 

ブウ「返事もできないほど余裕がないというわけか……。なら、お前を葬り去るのに相応しい技をプレゼントしよう」

 

そう言って魔人ブウは両手を添えるような動作をし、そこに気を集中させる…。その手には段々と気が集まり、青白い球体を形成する。

 

ブウ「貴様の父親が愛用していたこの技でなぁああッッ!!!!」

 

デンデ「ご、悟飯さん!!!!」

 

ブウ「死ねッッ!!!!!」

 

ズォオオオオオオオッッ!!!!

 

魔人ブウの手からかめはめ波が離れ、悟飯の方に向けて高速で移動していく…。

 

究極悟飯「うぁあああああッッ!!!!!」

 

このままではかめはめ波をまともに食らってしまい、最悪死んでしまう可能性がある。それだけはなんとしても回避する為に悟飯は全力を出してスーパードーナツを破った。

 

ブウ「なに?」

 

着弾するスレスレで悟飯は避けることに成功した。外れたかめはめ波はその辺で大爆発を引き起こした。

 

ブウ「直前で破ったか……。だがそれがどうした?また隠れてやり過ごすつもりか?」

 

究極悟飯「くっ…!!」

 

いくら気を抑えても今の魔人ブウには看破されてしまう。その為悟飯は仕方なくブウの前に出てくる。

 

ドカッッ!!!!!

 

究極悟飯「ぐっ……!!!」

 

ドゴォォオオッッ!!!!!

 

究極悟飯「うわぁあッッ!!!!!」

 

既に体力が残り少ない悟飯とは正反対に、魔人ブウのスタミナは無限大と言っても差し支えがなかった。悟飯は先程の戦闘で相当体力を使ってしまったため、フルパワーで戦うことができないのだ。

 

ブウ「思ったよりも呆気なかったな?安心しろ。お前をあの世に送った後、すぐにあの小娘達も送ってやるから寂しい思いはせずに済むだろう?」

 

悟飯の次は五つ子達の番だということを再度認識した悟飯は、ボロボロになりながらも再び魔人ブウと戦う為に立ち上がる。

 

ブウ「ほう?まだ戦意が残っているというのか?余程あの小娘達が大切だと見た」

 

究極悟飯「あの子達だけは、殺させはしない……!!!!」

 

ブウ「まあ、どれだけ吠えようが無駄だがな。……本当ならお前の心が折れるまで遊んでやりたいところだが、この最強のパワーも時間制限がある。そろそろ終わらせてもらうぞ」

 

ドカッッ!!!

 

究極悟飯「ぬぁ…!!!」

 

カァァッ!!!!!

 

一度殴った後に気功波を浴びせてトドメを刺しにくる魔人ブウ。悟飯には立ち上がる体力すら残されていない状況だった。

 

ブウ「それにしても、お前がピンチの時にあの小娘達はどうしたのだ?お前がどこかに隠したのか?」

 

究極悟飯「ぁ………ぁぁ…………」

 

ブウ「…………最早会話する体力すらもないか…………」

 

 

 

 

 

 

 

 

ドカッッ!!!!!

 

ブウ「ふおっ!!??」

 

突然衝撃を感じて魔人ブウはバランスを崩して転倒した。その間に振り返ると、そこには二乃の姿になった零奈がいた。その顔は激怒した悟飯もビックリな程に、怒りに満ちていたものになっていた。

 

二乃「これ以上ハー君に、手を出すなァアアアアッッ!!!!!!」

 

ドカッッ!!

ドゴォォ!!

バキッ!!!

 

ブウ「(な、なんだこいつ…!さっきよりも気が大きくなっていやがる…!!)」

 

なんと、零奈完全体は先程よりも気の量そのものが増えていた。これは五月の姿に変身して食べ物を沢山食べ、体力が回復した後も食べ続けたことによって、多少は限界突破をしたのだ。

 

ブウ「だがそれがどうした!!」

 

とはいえ、今の魔人ブウ相手にはたかが知れていた。蝿を払うように叩かれた二乃はその威力に従って吹き飛ばされそうになるが……。

 

二乃「チッ…!!!」

 

ガゴッ!!!!!

 

ブウ「!!?」

 

足を岩山に捻じ込んで無理矢理止め、そのまま魔人ブウの顔に正拳突きをくらわせた。

 

ブウ「………ほう。なかなかやるな」

 

しかし、魔人ブウには全く効いてなさそうだった。

 

二乃「こうなったら…!!界王…

 

『待て二乃ッッ!!!!』

 

二乃「な、何よ!あれを使えば間違いなくあいつを倒せるのよ!?」

 

『考えてみろ!!超サイヤ人みたいなやつは特定種族限定の変身だが、界王拳はあくまでも技だ!!今のあいつに学習されてみろ!それこそ手の負える相手じゃなくなる!!』

 

二乃「くっ……!!仕方ないわね……!!」

 

この風太郎の判断は正しかった。界王拳は身の丈に合わない者が使えばとんでもない代償を背負うことになるが、魔人ブウは肉体のダメージなどあるようでないものだ。つまり、魔人ブウは界王拳を使用して肉体が傷ついたとしても、すぐに回復してしまうのだ。まさに混ぜるな危険というやつである。

 

ブウ「どうした?何か奥の手があるんじゃないのか?見せてみろ」

 

二乃「………気が変わったのよ。あんたには見せてやるもんですか…!!」

 

ブウ「………そうか(こいつは今までの様子をみるに、かなり感情的になるタイプだ。少し煽れば冷静さを失ってその奥の手を披露するだろう……。そしてその奥の手をコピーしてこいつを葬ってやる………)」

 

魔人ブウはそんな思考をし、実際に二乃に技を出させる為に口を動かし始める……。

 

ブウ「ピッコロとゴテンクスとかいうチビの片割れの記憶から知ったぞ。どうやら、貴様はあいつに恋焦がれているらしいな?」

 

二乃「なっ……!!それがどうしたってのよ!!!!」

 

まさかそんなことが知られているとは思ってもおらず、二乃は一瞬動揺するも持ち直す。

 

ブウ「……どうやら貴様はあらゆるアプローチをしているようだが、はっきり言ってやろう。貴様のやっていることは無駄だ」

 

二乃「…………えっ?」

 

ブウ「貴様がどれだけアプローチしてもあいつは振り向かないのだろう?つまり、お前のことなど何とも思ってないのだよ。強いて言うなら、守ってやらねばならない手のかかるペット程度の認識なのだよ」

 

二乃「ぺ、ペットですって!!?ハー君が私達をそんな風に見ているわけがないじゃない!!!」

 

ブウ「まあそれについては表現を誤ったかもしれないな。だが、振り向かないのは本当だろう?」

 

二乃「そ、それは…………」

 

ブウ「無駄なんだよ!!出会って睡眠薬を盛ったり、散々愚痴を言うような奴のことを好きになると思うか?他に言い寄ってくる女などいくらでもいる。それも、お前の近くにもな」

 

二乃「う、うるさい!!そんなのあんたが決めることじゃないわッッ!!!それを決めつける権利があるのは私かハー君だけよ!!!!」

 

魔人ブウは二乃を逆上させる為に思考錯誤するが、そう簡単に二乃が冷静さを欠くほどにキレることはなかった。

 

ブウ「そうかそうか…。なら話題を変えようではないか。孫悟飯は何故あそこまで苦戦していると思う?」

 

二乃「はぁ?そんなの、あんたがデタラメに強すぎるからに決まってるでしょ!!」

 

ブウ「いや、実を言うと私とあいつに戦闘力自体の差はそこまでないのだよ」

 

二乃「な、なんですって……?」

 

ブウ「私にはピッコロの頭脳と経験があるし、ゴテンクスとかいうチビ達の奇想天外な技も備えているし、元からある再生能力も付いているという点では孫悟飯よりも有利だ。だとしても孫悟飯があそこまで押されるはずはなかったのだよ」

 

魔人ブウはこれから言う台詞を二乃に対して言ったらどんな反応をするか、想像するだけでも吹き出しそうになるが、それを抑えてこう続ける。

 

ブウ「貴様が……いや、貴様らがチンタラしているからだ。貴様らが俺の技を避ければ良かったものの、それをしなかったから孫悟飯が代わりに受けた。スーパーゴーストカミカゼアタックの時もそうだ。お前らが痛いから動けないと甘えるから孫悟飯が代わりにダメージを受けることとなった」

 

二乃「そんな……!!」

 

二乃達は悟飯に加勢する為にこの戦闘に介入した。でも、思い返してみると確かに悟飯の足を引っ張っているような気がした。あの時は三玖の姿だったとはいえ、自分が変わって素早く避ければ済む話だったのだ。

 

ブウ「お前は……お前らは孫悟飯の役に立っていない!!むしろ足を引っ張ったのだ!!

 

二乃「そ、そんな………………」

 

魔人ブウにそう突きつけられて二乃は膝から崩れ落ちて俯く。なんなら涙さえ流していた。

最愛の人の力になりたい。そんな健気な気持ちから自分も戦った。その結果が最愛の人の足を引っ張っただけ。確かに一応当てはまっていたので、二乃はその事実にショックを受けてしまった。

 

ブウ「…………少々やりすぎたか…。まあいい。戦士になったとはいえ、所詮は青二才か……」

 

当初の予定とは変わってしまったが、目の前にいる二乃を始末するべく手に気を集中させる。

 

 

 

 

 

 

 

ズバッ!!!!

 

ブウ「!!!?」

 

しかし、その手を何者かが切り落とした。ブウは二乃がキレたのかと思って顔を見るが………。

 

三玖「…………」

 

意外にも、ブウに対して報復したのは三玖だった。

 

三玖「………繊細な二乃に対してあんなことを言うなんて……。重罪、死刑」

 

二乃や悟飯のように爆発的に怒るようなことはないが、三玖は静かながらも激怒していた。その証拠として限界突破していたはずが更に気が上昇していく。

 

ブウ「な、なにが………?」

 

三玖「それじゃあ今すぐ執行するけど、いいよね?」

 

ブウ「ほう?えらく威勢がいいな?良かろう。相手してやる」

 

魔人ブウは三玖と戦う為に腕を再生させようとするが……。

 

ブウ「……!?」

 

何故か再生ができなかった。原因を考えているところ、切断面が異様に熱く感じた。

 

ブウ「……(まさか、高熱によって再生しづらくなっているのか……?)」

 

三玖が持っている刀身を見てみると、確かにその剣は熱を帯びているようだった。というより、青い炎を帯びているようだった。

 

 

ブチっ

 

三玖「!?」

 

ブウ「その剣で切られたところから再生できないと言うのなら、更に切って再生すればいいだけのこと」

 

魔人ブウは自分の腕を自ら引き剥がした上で腕を再生させた。

 

三玖「そ、そんな…………」

 

ブウ「お前達の多彩な戦い方や特殊な技は確かに凄い。だが、ここが足りないようだな?」

 

魔人ブウは馬鹿にするように笑いながら、自分の頭を指して遠回しに三玖達を馬鹿にしていた。

 

ブウ「………?」

 

そんな風に煽って余裕をかましているブウだったが、三玖の遥か後ろにいる悟飯と1人のナメック星人、デンデを見てポカンとした表情に変化する。

 

デンデが悟飯に触れると、なんとたちまち悟飯の傷が癒えていくではないか。数秒経ったらあっという間に悟飯は無傷になった上、フルパワーを取り戻して復活した。

 

ブウ「なに………?」

 

三玖「…………?」

 

三玖もブウがまじまじと見ている方に向き直すと、先程まで傷だらけだった悟飯が完全復活をしていた。

 

三玖「ど、どういうこと……?」

 

ブウ「ほう…。傷が治っただけで特にパワーアップしているわけではないようだな。まさか2人でかかればこの私を倒せるとでも思っているのか?」

 

究極悟飯「くっ……!」

 

実際、傷を治した程度では今の魔人ブウには敵うはずもなかった。唯一の勝ち筋は、2人で協力して時間稼ぎをすることぐらいだが、あの魔人ブウは頭脳の方も優秀だ。そう上手く時間稼ぎできるか微妙なのだ。

 

究極悟飯「だけど、やるしかない…!」

 

悟飯は三玖達と共闘してなんとか時間稼ぎをしようと決意した、その時だった………。

 

ブウ「……!!!!!?な、なんだ!!!!!!!」

 

悟飯や零奈完全体をも上回る魔人ブウでさえもここまで驚愕する程の気を持つ者が急接近してきた。

 

究極悟飯「な、なんだ……!!?新しい敵か!!!?」

 

三玖「そ、そんな………!!」

 

 

 

 

ズザァ……

 

 

その気を持つ者は、悟飯達がその存在を認識してから一瞬にして到着した。

 

三玖「あ、あなた……!!!」

 

究極悟飯「い、生きていたのか!()()!!!!」

 

生き返った後に地獄の自分自身と融合したセルだった。

 

セル「いや、正確には一度死んださ。だが、ドラゴンボールのストックがあったので生き返ることができたのだ」

 

究極悟飯「す、ストック……?」

 

セル「まあ、細かいことは気にするな」

 

ブウ「………貴様も以前の私にやられた雑魚ではないか。今更何の用だ?お前が戦った時の私とは次元そのものが違う。それが分からないのか?」

 

セル「……なら、貴様も私があの時とは次元そのものが違うということが分かるはずだが……?」

 

悟飯達にとっては、セルが何故ここまで気を極められたのか不思議で仕方なかった。

 

セル「ふふふっ…!!ふはははは…!!!!」

 

ブウ「な、なんだ!?何がおかしい!?」

 

セル「おっと、これは失礼…。貴様の末路を想像したら、つい笑いが溢れてしまったか………」

 

ブウ「私の末路だと……?」

 

セルの言葉にカチンときた魔人ブウは徐々に気を高めて戦闘態勢に入る。ブウの気がセルに向いているうちに悟飯は三玖を誘導し、一時避難していた。

 

ブウ「面白い冗談だ。貴様如きが私を殺せるというのなら、試してみろ!」

 

セル「では、まずはウォーミングアップをさせてもらおうか?新しい体にはまだ慣れていないのでね」

 

ブウ「ほざけ!!!!」

 

ブウにしては珍しく、冷静さを欠いてセルに突進する。突進を受けたセルは少し後退する。それを好機と見た魔人ブウはセルの至る所に追撃していく。

 

セル「ほう……。なかなかやるな」

 

だが、セルはまだまだ余裕そうであった。

 

ブウ「当たり前だ!俺は最強の魔人なのだからな!」

 

その言葉の後も魔人ブウはセルに打撃を与えていく。セルは一切反撃せずにブウの攻撃をただ受けているだけだった。

 

ブウ「どうした?手も足も出ないか?」

 

セル「………防御力に関しては大体把握した。次はこちらから行かせてもらおう」

 

 

 

ドゴォォオオッッ!!!!!

 

ブウ「ぐおっ………!!!」

 

瞬間、セルのエルボーが魔人ブウの顎にヒットした。

 

セル「はっ!」

 

ドカッッ!!!!

ドカッッ!!!!

ドカッッ!!!!

 

セルは自分自身の力を試すように魔人ブウの体を殴り続ける。しかし、ただやられるだけの魔人ブウではない。

 

ブウ「おら!!!」

 

ツノ部分を利用してセルに反撃しようとする。

 

ブウ「……!!!?」

 

しかし、仕舞っていた尻尾を伸ばしてセルはそれを阻止した。

 

ブウ「うがぁああ!!!!」

 

ズォオオオオオオオッッ!!!!!

 

魔人ブウは即効で作り上げたかめはめ波をセルに向けて放った。セルがその光に飲み込まれたことを確認すると、魔人ブウは勝ち誇ったような笑みを浮かべる。

 

ブウ「ふ、ふふふっ…!ふはははははっ!!!案外呆気なかったな!!!」

 

煙が晴れると、そこには体が大破したセルの姿があった。魔人ブウのかめはめ波の威力の高さがこれで物語っていた。

 

三玖「や、やっぱりセルじゃ勝てないのかな!?」

 

究極悟飯「………(いや、さっき感じた気はこんなものじゃなかった……)」

 

三玖は援軍と思われるセルが来たことで一安心したはずが、そのセルが押されている状況にあたふたする。だが、悟飯はセルがまだ実力を隠しているのではないかと勘繰っていた。

 

セル「し、しまった……!!まさかここまでやるとは……!!!」

 

ブウ「ふははははッッ!!!!だから言っただろう!!?前の俺とは根本的に違うとな!!だが今更理解したところで遅い!!!今度こそ確実にあの世に送り届けてやろう!!!」

 

セル「チクショーー!!!!!

 

ブウ「ふはははははははッッ!!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ギュオッッ!!!!!

 

ブウ「!!!?」

 

先程はまで悔しそうに呻いていたセルだったが、突然大破した体を再生させて五体満足に戻った。

 

セル「なんちゃって……。馬鹿みたいに高笑いなんかして…。まさかとは思うが、あの程度で私がくたばるとでも思っていたのかな?もし本気でそう思っていたのなら、お前は幸せ者だな」

 

あれはただのフェイク。魔人ブウをおちょくる為の演技でしかなかったのだ。

 

ブウ「き、貴様………!!」

 

セル「どうした?私にあの世への片道切符を渡したいんじゃなかったのか?早くその切符とやらを拝見させてほしいのだが……?」

 

ブウ「ほざけッッ!!!!!!

 

セルの演技に引っかかった魔人ブウは青筋を浮かべながらセルに急接近し、腕を振る。

 

ブウ「……!!!」

 

しかし、その拳は空を切るだけだった。先程までそこにいたはずのセルの姿がなかった。

 

ブウ「………それで上手くやり過ごしたつもりか!!!?」

 

ブン‼︎

 

だが、魔人ブウはセルの動きを追えていたようで、後ろに拳を振った。しかしまたしても空を切るだけだった。

 

ブウ「………!!?な、何故だ……!!?確実に奴を捉えたはず……!!!!」

 

セル「こっちだ」

 

ブウ「………くおっ……!!!」

 

声が聞こえた方に振り向けば、ちゃんとセルがそこにはいた。セルの姿を目にしたブウは思わず情け無い声を出してしまう。

 

セル「どうした?まさか、私の動きが見えなかったのか?」

 

ブウ「く、くく…!くくく……!!」

 

さっきから一方的に煽られているブウは頭にある穴から煙を出して怒っていた。

 

ブウ「スーパードーナツ!!!」

 

手から三つのリングを放ち、それを使ってセルの体を縛り付ける。

 

セル「なに?」

 

ブウ「からの………」

 

今度は口から幽霊のようなものを出現させた。どうやら、スーパーゴーストカミカゼアタックでセルを倒そうとしているらしい。

 

ブウの口から出てきた幽霊はセルの体に触れるとすぐに大爆発を何度も引き起こした。

 

ブウ「ふはははっ!!!油断しているからだバーカッ!!!まんまと隙を突かれたな!!!」

 

魔人ブウは作戦が上手く行ったことを心の底から喜んでいるようで、腹を抱えて笑っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

セル「ほう?何がそんなに面白かったのかね?」

 

ブウ「………な、なん、だと………?」

 

しかし、セルは傷一つない状態で煙の中から現れたのだ……。

 

セル「お前は確かに最強だ。いかなる生物も貴様を超えることはできないだろう」

 

ブウ「な、なら…!貴様はなんだというのだ!!!!」

 

セル「だが、お前の最強はあくまで、()()()()()()()()()()()()()だ。私は最早ただのセルではない」

 

ブウ「な、何を訳の分からないことを………」

 

セル「……今の私は、()()()()()()()()()()()()()()()だ。次世代究極生命体…。セル・ネオ……とでも言っておこうか……」

 

あの世にいたセルと融合して、次世代究極生命体セル・ネオへと進化したセル。今のところは魔人ブウを相手に遊べるほど余裕があるようだが、このまま魔人ブウを倒すことはできるのか……?

 




 はーい。ペース遅くて本当にすんませんねぇ…。思った通りに時間が取れないんですわ。というか書きたくない時に無理矢理書くとエタりの原因になるので、モチベがない時は敢えて手を付けてないのも原因なんですけどね。
 それは置いといて、悟飯とブウの戦いは原作とは違うものにしようと思ったけど、割と変わってねえな……。ただ引き伸ばしているだけな気がしてきたので、もうちょい端折った方が良さそうだな。このままじゃ100話までにブウ編終わらんて。
 セルのネーミングがようやく判明しましたね。割と安直な気はしますが、ゴールデンフリーザとかよりは捻っているでしょう……。捻ってるよね……?次回以降のセルvsブウは原作パロが豊富になるような気がします。ので、セル編を中心に見直してみるのもありかもしれませんね。次回はちゃんと火曜に投稿できるかどうかは不明です。正直映画を見てモチベを上げたいけど、ごと嫁の映画はもう終わっちゃったから見れないのよ……。

 ちなみに、タイトルのC・Nは、C(ell)N(eo)という感じです。Nってなんだよ?って思った方は意外といるかもしれませんね。

 …か、完結…!なんとしても完結させねば…!


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第89話 一条の光

 前回のあらすじ

 ゴテンクスとピッコロを吸収した魔人ブウは戦闘力も頭脳も飛躍的に向上していたため、悟飯や零奈完全体でも苦戦を強いることになった。悟飯達がなんとか格闘していると、地獄のセルと融合した並行世界のセルが現れた。彼は自分のことを『セル・ネオ』と名乗り、魔人ブウを圧倒していた……。



ブウ「セル、ネオだと…?ふざけているのか!!!」

 

セル「私は至って真面目だが…?」

 

ブウ「お、俺は最強の魔人になったはずなのだ…!貴様に負けるはずなど…!!!み、認めんぞ…!!認めんぞッッ!!!!!」

 

セル「ほほう?」

 

怒りが頂点に達した魔人ブウは、巨大な気功の準備をしていた。

 

ブウ「これで地球ごと貴様を葬ってやる!!俺が…!俺が最強なんだッッ!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

ズバッ!!!!

 

ブウ「!!!?」

 

しかし、碌に気も溜められずに体を切断されてしまった。下半身とツノの一部は地面に落ち、気弾はどこかに飛んで爆発してしまった。

 

セル「………お前は……」

 

 

 

 

 

 

 

悟空「…あり?どうなってんだ?セル、おめぇは殺されたんじゃ……?」

 

なんと、悟空が帰還してきたのだ。しかも死人の証であるはずの天使を連想させる輪っかもなかった。

 

三玖「ええ!!?な、なんで…!?」

 

悟飯「お父さん!!?もう2度とここには来れないんじゃ……!!?」

 

悟空「あの後、悟飯達がピンチになっちまったから、界王神のじっちゃんがオラに命をくれたんだ」

 

悟飯「ええ!!?」

 

悟空「だから、オラは生きけえった」

 

なんと、悟空があまりにも特殊な方法で生き返った。この状況には悟飯も喜びたいところだが、今は魔人ブウ討伐に集中するべきである。

 

悟空「………でも、セルがいるなら駆けつける必要はなかったかもしれねえな…。あとこいつも………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

セル「……どうやら孫悟空の仕業のようだな」

 

ブウ「くそ……。邪魔が入ったか…!邪魔さえ入らなければ、今頃お前を…!」

 

セル「ほう?ならば私のフルパワーを見てみるか?」

 

ブウ「なに?」

 

セル「はぁぁあああああ………!!!」

 

セルはブウの返事も待たずに気を高めていく。セルが気を上昇させればさせるほど、宇宙中の人々を騒がせる。特に気を感じ取ることができる者にとっては、あまりにも膨大な気に気絶してしまいそうになるほどだ。

 

悟空「な、なんて気だ………!!!」

 

悟飯「一体、どうやったらあそこまで……!!!!」

 

 

 

 

 

 

セル「さあ、お待ちかねのフルパワーだ。これで貴様程度では私に傷一つ付けることが不可能だということは、ご理解いただけたかな?」

 

セルはあくまでも丁寧な口調で魔人ブウに語りかける。だが、言葉遣いとは裏腹にセルの顔は完全に相手を煽るものそのものだった。

 

ブウ「そ、そんな……!馬鹿な…!!」

 

魔人ブウは、パワーアップした悟飯と零奈完全体を始末するためだけにゴテンクスとピッコロを吸収した。悟飯と零奈完全体を圧倒することには成功したのだが、セルが現れたことによって魔人ブウ=最強という方程式がまたしても崩されてしまったのだ。この事実をブウはどうしても受け止めたくなかった。

 

セル「どうした?」

 

ブウ「あ、ぁぁ…!!」

 

セル「まさか、最強の魔人ともあろう者がこの私を前に怖気付いているわけではあるまい?」

 

ブウ「うぁぁああああああああッッ!!!!!!」

 

ドドドドドドッ!!!!!!!

 

魔人ブウはヤケクソ気味になってセルに向けて大量の気弾を連射する。それによってセルを中心として連鎖的に爆発が引き起こされていた。しばらくして魔人ブウは手を止めるが、煙が晴れて無傷のセルの姿をしっかり確認することができた。

 

セル「そんな小技をぶつけてきたところでビクともせんよ」

 

ブウ「な、なら…!!これを受けてみやがれ!!!!!」

 

魔人ブウは先程やったように魔貫光殺砲の準備をする。悟飯に対して撃った時より時間をかけてチャージし、指に気を集中させる。

 

セル「ほう?その技は…………」

 

ブウ「これを受けても、笑っていられるかなァアア!!!!!!?」

 

ビィイイイイイッッ!!!!!!

 

満を辞して、セルに向けて最大出力の魔貫光殺砲が放たれた。

 

セル「…………やはりこの程度か」

 

バシンッ!!!

 

ブウ「なっ……」

 

しかし、ブウにとっては最大出力の魔貫光殺砲でも、セルにとっては屁でもない威力だった為、簡単に片手で弾くことができてしまった。

 

ブウ「そ、そんな……!!あの技を……!!」

 

セル「魔人ブウよ。私が手本を見せてやるから、よーく見ておくがいい」

 

ブウ「………なっ…!!?」

 

そう言うと、セルはブウと同じように魔貫光殺砲の準備をする。チャージがブウよりも早く進行し、あっという間にブウにとっての最大出力と同程度貯めることができた。しかし、セルはそれを超えてチャージし続ける。

 

ブウ「な、何故貴様がその技を使えるんだ!!!?それはピッコロの技のはずだ!!まさか私のように技を真似することができるとでもいうのか!!?」

 

セル「……一つ言っておくと、私とピッコロは兄弟のようなものだ」

 

セルはそれだけ答え……。

 

セル「刮目しろ…。これが魔貫光殺砲だッッ!!!!!!」

 

 

 

 

 

バンッッ!!!!!!

 

ブウ「ぐほっ……!!!!」

 

魔人ブウでも視認できないほどの速度でセルの魔貫光殺砲は突き進み、魔人ブウの頭部を貫いてしまった。その魔貫光殺砲は遥か遠くで大爆発を起こした。

 

無論、魔人ブウは脅威とも呼べる再生能力を使ってその傷を癒すのだが、精神的なダメージまで癒すことはできなかった。

 

ブウ「ば、馬鹿な……!!こんなことがあってたまるか………!!」

 

セル「元々、私は完璧な生物をコンセプトに開発されたのだ…。何も不思議なことはあるまい」

 

セルの魔貫光殺砲の威力に、悟空と悟飯、三玖は驚愕していた。文字通り言葉も出なかった。

 

………だが、魔人ブウにとっての悪夢はここからだった。

 

 

ポンッ!!

 

ブウ「んなっ…!!!?」

 

さっきまではゴテンクスが着用していた服を着ていた魔人ブウは、今度はピッコロが付けているマントに変わった。

 

セル「………気が落ちたな。どういう原理かは知らんが、時間制限付きだったのか……。それともスタミナ切れか…。いずれにせよ呆気なかったな」

 

 

 

悟空「よっしゃ!!今の魔人ブウ相手なら悟飯でも十分だぞ!!!」

 

悟飯「どうやらフュージョンの効果が切れたみたいですね」

 

三玖「これで私達にも勝機が見えてきた…!!」

 

 

 

セル「………私が放っておいても、あいつらは貴様を逃すつもりはないらしいな?」

 

ブウ「ふ、ふふふっ……!!」

 

セル「(この状況で笑い出すとは……。本格的におかしくなってきたか?)」

 

ブウ「なあ、セル・ネオだったか?私は何故切断された体を元に戻さないと思う?」

 

セル「………なに?」

 

絶対絶命のピンチのはずの魔人ブウだが、まだ微かに笑っていた。どうやら何か作戦を立てていたようで、保険を使う時が来たようだ。

 

セル「(なるほどな)」

 

セルは魔人ブウの真意を理解したが、敢えて何もしなかった。ただ黙っているだけだ。

 

 

 

 

 

ギューン!!!

 

究極悟飯「うわっ…!!!」

 

なんと、悟飯のすぐ背後からピンク色の物体が突然姿を現した。

 

究極悟飯「はっ!!!!!」

 

幸いにも悟飯がすぐに気を解放したことによって、そのピンク色の物体を消し飛ばすことに成功した。

 

悟空「危なかったな悟飯…!危うく吸収されるところだったぞ……!!」

 

究極悟飯「はい…!少し油断していたみたいです…………」

 

 

 

 

 

ブウ「な、なんだと………!!?」

 

セル「どうやら貴様の目論見は失敗に終わったようだな」

 

ブウ「くそ……!!!クソォオオオオオオッッ!!!!!

 

魔人ブウは地球が割れるのではないかと言うほどの大声で叫ぶ。最強であったはずの自分があっさりと抜かれてしまったことに対して嘆くように、叫んだ。

 

セル「………だが、貴様が消滅してしまっては、私も新しい力を試しきることなく戦いが終わってしまう」

 

ブウ「…………なに?」

 

セル「私は自分の新たな力を試したいのだ。その相手にお前は打ってつけだと思っていたのだが……。正直期待外れだった」

 

ブウ「……………」

 

魔人ブウは万策が尽きたのか、セルの侮辱も無視するほどに落ち込んでしまった。しかし、次の言葉を聞いて魔人ブウは再びセルの話に興味を持つことになる。

 

セル「…………だから協力してやろう。貴様のパワーアップに」

 

ブウ「……………な、なに?どういう風の吹き回しだ……!!?俺をパワーアップさせて何のメリットがある!!!?」

 

セル「言っただろう?私は私の新たな力を試したいのだ。これでは理由として不十分かね?」

 

セルの言い分に納得したのか、魔人ブウは再び静かになる。

 

セル「孫悟飯かあの小娘…。どちらかを吸収してしまえ。そうすれば、貴様はさっきの形態が霞むほどの大幅なパワーアップを成し遂げることができるだろう」

 

ブウ「だ、だが……。今の俺では孫悟飯を吸収するのは困難だ…。手の内を知られている上に警戒されている以上、どうしようもない…………」

 

セル「だから言っただろう?協力してやるとな」

 

ブウ「……な、なに?」

 

 

 

 

シュン‼︎

 

ドカッッ!!!!!

 

悟飯「ガッ………!!!!」

 

三玖「せ、セル!!!?」

 

悟空「おめぇ!何のつもりだ!!!」

 

瞬間移動したセルは、悟飯のみぞおちに拳を決めて悟飯の身動きを一時的に封じた。その光景を魔人ブウにしっかり見せたことにより、魔人ブウもこの時ばかりはセルを信用することにした。

 

ブウ「馬鹿なやつだ……。敵に塩を……それも私に送るとは、正気の沙汰ではない…………」

 

正直複雑ではあるが、嬉しそうにそう呟いた魔人ブウは、着地してゆっくりと悟飯に近づいていく。

 

三玖「こんな時に仲間割れしている場合じゃないよ!!今やるべきことは魔人ブウを倒すこと…!!!そうでしょう!!!?」

 

セル「貴様の頭は随分都合良くできているようだな。私がいつ貴様らの味方になったと言った……?」

 

悟空「………おめぇ、まさか………」

 

セルが突然悟飯を攻撃した理由を悟空はいち早く察した。悟空は自身の推測が合っているならとんでもないことになると認識し、一気に戦闘態勢に入る。

 

悟空「一瞬でもおめぇに頼ろうと考えていたオラが馬鹿だった……!!」

 

三玖「えっ?どういうことですか…!!?」

 

悟空「いいか!!?セルは悟飯をブウに吸収させようとしている!!!!」

 

三玖「えっ!!!?」

 

悟飯「そ、そんな………!!!!!」

 

セル「おっと……。まさか孫悟空がここまで勘のいいやつだとは思っていなかった……。ご名答」

 

ブォオオオオオオオオッ!!!!!

 

悟空「ぐわっ……!!!!!」

 

セルは会話をしながら悟空を吹き飛ばしてしまった。

 

悟飯「お、お父さん!!!!」

 

三玖「悟飯を吸収なんて……!!させない!!」

 

三玖は再び剣を手に取ってセルに挑むが、どの攻撃も軽く避けられるだけだった。

 

セル「………気そのものは確かに素晴らしい。だが、動きに無駄が多すぎる。まるで、雑魚が突然力を得てしまったようだ………」

 

三玖「くっ……!なら……!!」

 

セルの煽りに乗じず、三玖は気による銃を大量生成し、その銃口をセルに向ける。

 

三玖「撃ち方、はじめッッ!!!!」

 

ドドドドドドッ!!!!!!!

 

三玖の言葉を合図に銃声が一斉に鳴り響いた。これなら足止め程度にはなるだろうと考えた三玖だったが……。

 

セル「……もう少し威力を上げることはできないのか?どうもマッサージにしては力が弱すぎる」

 

三玖「なっ…………!!」

 

なんと、痛がっている素振りすら見せなかった。

 

 

 

 

セルと三玖が戦っている間、悟飯は魔人ブウを相手に警戒心全開で対抗していた。

 

ブウ「くっ…!!まるで隙がない…!!」

 

究極悟飯「残念だったな。そう簡単に吸収されるわけにはいかないんだ」

 

ピッコロの要素が強く出た魔人ブウは先程よりも弱体化していた。その為、悟飯1人でも魔人ブウを倒すのには十分だった。

 

究極悟飯「セルがお前に手を貸すのは予想外だったが……。貴様を殺してしまえば何の問題もない………」

 

ブウ「くっ……!!あっ!小娘がセルに殺されそうだぞ…!!!」

 

究極悟飯「な、なに?」

 

悟飯は半信半疑ながらもセルの方を見る。すると確かに三玖が押され気味だったものの、殺されるとまではいかなかった。セルは三玖を相手に遊んでおり、殺す気はあまりないのが見て取れる。

 

魔人ブウは三玖を囮に悟飯を吸収しようと試みるが……。

 

カァァッ!!!!

 

悟飯にはその作戦は読まれていたようで、体の一部を消し飛ばされた。

 

ブウ「なっ……!!」

 

究極悟飯「まあそんなことだろうとは思っていたさ」

 

 

 

 

ドカッッ!!!!

 

究極悟飯「ぐおっ……!!!」

 

しかし、悟飯の頬に何者かの拳が叩きつけられた。

 

セルジュニア「ウキキキ……!!」

 

なんと、セルジュニアだった。

 

究極悟飯「お前か…!!今は遊んでいる場合じゃないんだ!!」

 

悟飯は気合を飛ばしてセルジュニアを追いやろうとするが、セルジュニアはそこから1ミリも動かなかった。

 

究極悟飯「な、なに………?」

 

セルジュニア「ウキキキ!!!」

 

シュン‼︎

 

究極悟飯「……!!そこか!!!」

 

悟飯はセルジュニアの動きを追って攻撃しようとするが、直前で避けられ、また攻撃、避けられ攻撃を繰り返していた。

 

セルジュニア「かかかっ!!」

 

究極悟飯「………まさか、俺と互角なのか……?」

 

親であるセル自身が大幅なパワーアップをしているのだ。その子供であるセルジュニアがパワーアップしていても何ら不思議なことではない。しかし、この場に於いては最悪だった。

 

ブウ「ふはははっ!これはいいい!!隙をついて貴様を吸収すればいいわけだな!!」

 

究極悟飯「くっ……!!セルの野朗…!!」

 

この状況では魔人ブウの相手など不可能だった。このまま互角のセルジュニアと戦っていては、スタミナが切れたところを狙われるに違いない。悟飯はその時のことを懸念していた。

 

 

 

 

シュン‼︎

 

ドカッッ!!!!

 

セルジュニア「キエ!!!?」

 

超3悟空「悟飯!話がある!」

 

究極悟飯「な、なんですか!?」

 

瞬間移動を利用してセルジュニアを一時的に追いやった悟空は、悟飯に話しかける。

 

超3悟空「……このままじゃ、おめぇはブウに吸収されちまう。そうなる前にこれを右耳につけろ」

 

そう言われ、黄色い耳飾りのようなものが手渡された。

 

究極悟飯「……なんですか、これ?」

 

超3悟空「そいつを右耳につければ、オラの左耳につけているポタラが反応しておめぇとオラは合体する。そうすれば、あのセルも倒すことができるはずだ」

 

究極悟飯「ほ、本当ですかそれ!!?」

 

超3悟空「ああ。だが注意してくれ。ポタラで合体しちまった場合はフュージョンとは違って2度と元に戻ることはねえ。それでもいいか…?」

 

究極悟飯「えっ!!?」

 

このままでは魔人ブウに吸収されてとんでもないことになってしまうのは明白だった。だが、悟空と合体して2度と元に戻れないとなると、3()()()()()()()()はどうすればいいのか?そう考え込んでしまう……。

 

超3悟空「迷ってる暇はねえはずだ…!もしおめぇが魔人ブウに吸収されたら、今度こそ地球は終わりだ…!!それでもいいのか……?」

 

悟空は怒鳴って急かすようなことこそしなかったが、これから起こることを予測して少々焦っている。悟飯はいくら地球を守るためとはいえ、2度と元に戻れないという情報を聞いてしまうとすぐに首を縦に振ることができなかった。

 

シュン

セル「ほう……?合体か……。実に興味深いな………」

 

しかし、ピッコロの細胞も含まれているからだろうか、遠くで三玖と戦っていたはずのセルはその話を聞きつけて瞬間移動してくる。

 

究極悟飯「ちっ……!やむを得ない…!!」

 

悟飯は決心してポタラを右耳につけようとするが……。

 

究極悟飯「………あ、あれ?!どこにいっんだ!!?」

 

セル「探し物とはこれのことかな?」

 

セルはポタラを悟飯に見せつける。いつの間にか悟飯からポタラを奪い取っていたようだ。

 

超3悟空「なっ……!!返せ!!!」

 

セル「返してほしくば、力づくで取り返してみることだな」

 

シュン‼︎

 

悟空は瞬間移動を利用してセルからポタラを取り返そうとする。しかしセルも瞬間移動を使うことができる為、互いに瞬間移動を使い合うだけで特に進展はない。だが、この瞬間移動合戦のお陰で三玖の手が空いた。三玖はすぐさま悟飯のところに駆けつけた。

 

三玖「悟飯!大丈夫!!?」

 

究極悟飯「うん。なんとか………」

 

セルジュニア「ウキキキ……!!」

 

しかし、セルジュニアがまだいる。悟飯でようやく互角に戦えるほどの強さを持つセルジュニアを相手にするには悟飯しかいない。

 

スタッ

スタッ

スタッ

 

「「「ウキキキ……!!!」」」

 

………だが、セルジュニアがさらに3体も追加されてしまった。

 

ガシッ…!!

 

究極悟飯「なっ…!!?は、離せ!!」

 

そのうちの2体が悟飯の身動きを封じるように絡みつく。どうやら本気で悟飯を吸収させようとしているらしい。

 

三玖「さ、させない……!!!」

 

三玖が剣を取ってセルジュニアを切ろうとするが、手の空いている2体のセルジュニアにそれを妨害されてしまう。

 

ブウ「ふはははは……!!これでいよいよあいつをも超える最強の魔人になれる……!!!」

 

三玖「やっ……!!このままじゃ…!!」

 

『三玖!交代してください!私ならなんとかできそうです!!』

 

三玖「五月…!分かった!!!」

 

ピュン‼︎

 

三玖は五月の言葉を信用し、零奈は三玖フォームから五月フォームに変身する。

 

五月「私の大好きな人が、あんな化け物に取られるなんてゴメンです!!!!」

 

ビビビッ!!!!

 

セルジュニア「ギャアアアッッ!!!!?」

 

五月の相手をしていたセルジュニアはビームをモロに喰らい、肉まんに変化してしまった。五月はその肉まんを高速で捕らえてそのまま食した。

 

五月「よし……!次は……!!!」

 

今度は悟飯の身動きを妨害しているセルジュニアに標準を合わせる。

 

究極悟飯「ま、ままま待って!!こっちに撃ったら僕も……!!!」

 

五月「大丈夫です!!元に戻すことも可能なので!!!!」

 

ビビビッ!!!!

 

究極悟飯「いや、ちょっと待って!!!?」

 

セルジュニア「キエ!!?」

セルジュニア「イイ!!?!」

 

躊躇なく五月が悟飯を巻き込むつもりでビームを撃ったことに驚きを隠せなかった。だが、悟飯は五月の言葉を信用し、逆にセルジュニアを捕らえる。

 

究極悟飯「はぁあ!!!!」

 

バチッッ!!!!

 

「「ギャアアアッッ!!!?」」

 

悟飯はビームに当たる直前で気を解放し、セルジュニア2体を盾にした。そうすることによってセルジュニアだけを食べ物に変異させることができるのだ。残り2体も無事肉まんになり、五月はそれを笑顔で頬張った。

 

ブウ「ちぃ……!!邪魔ばかりしおって……!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

ドゴォォオオッッ!!!!!!!

 

五月「かはっ…………!!!!」

 

しかし、突如として強烈な衝撃が五月の頭を襲った。突然のことに対処できなかった五月は倒れてしまう。

 

究極悟飯「なっ…!!五月さん!!!」

 

セル「おっと……。加減を間違えてしまったかな?」

 

無論、それをやった犯人はセル。魔人ブウのパワーアップを妨害する五月をいち早く排除したかったようだ。

 

五月「くっ……!!!この……!!!」

 

しかし、肉まんを4つ食べていたことが功を成し、五月はなんとか意識を保つことに成功した。そのままセルに反撃しようとするも、攻撃はいなされるばかりだった。

 

セル「はっ!!!!」

 

ピコッ

 

究極悟飯「!!!?し、しまった……!!」

 

セルが発動した金縛りによって、悟飯は完全に身動きを封じられることとなった。唯一手助けできそうな五月もセルによって妨害されている。まさに絶対絶命のピンチだった。

 

シュン‼︎

超3悟空「んなこと、させてたまるかぁああああッッ!!!!!」

 

ズォオオオオオオオッッ!!!!!

 

悟空は魔人ブウに向けてかめはめ波を放つが、魔人ブウはそれを最も容易く弾いてしまった。

 

超3悟空「くそぉ………!!!!」

 

シュン‼︎

 

セル「邪魔をするな」

 

ドゴォォオオッッ!!!!!

 

超3悟空「グワァアアッッ!!!!」

 

セルが気を解放して悟空を殴りつけると、威力に従って悟空は吹き飛ばされていく。途中岩山を何度も貫通したが、それでも悟空が止まることはなかった。

 

セル「さて、邪魔者がいなくなったようだな」

 

ブウ「ふははは…!気の毒だな孫悟飯君」

 

究極悟飯「く、クソォ……!!!!」

 

五月「や、いや…!!させない!!!」

 

ドシューンッッ!!!!

 

五月は魔人ブウとセルの思惑をなんとしても阻止するために、悟飯の方に向かって飛び立つ。

 

シュン‼︎

 

ドカッッ!!!!

 

五月「ぁっ………!!!!」

 

セル「大人しく見ておけ。邪魔をするな」

 

五月が腹を抑えて苦しんでいる間、魔人ブウはゆっくりと歩いて悟飯に少しずつ近づいていく。悟飯は金縛りによって全く身動きができない上、悟空はセルによって吹き飛ばされている。そして五月もセルの妨害によって無力化されてしまっている。状況だけで見れば、まさに蛇に睨まれた蛙だった。

 

究極悟飯「や、やめろ………!!!」

 

ブウ「ふははははッッ!!!今度こそ最強の魔人の誕生だ!!!!!」

 

魔人ブウは体の一部を引きちぎってそれを悟飯に向けて投げた。それは急に巨大化して悟飯を囲うように広がる。

 

五月「やめてぇええええええ!!!!!!!

 

シュン‼︎

 

セル「……!!?なに!!?」

 

五月「孫君だけは……!!孫君だけは……!!!!!」

 

なんと、五月は感情が昂ったことによって、ほんの一瞬だけ圧倒的な力を引き出した。それによって悟飯の目の前まで移動することに成功した。

 

五月「なんでもいいから!食べ物になっちゃえええええ!!!!!

 

ビビビッ!!!!

 

ブウ「なっ………!!!!」

 

ようやく吸収できると思っていた魔人ブウだったが、五月の食べ物光線によって体の破片はカレーへと変異してしまった。

 

五月「はぁ………はぁ…………!!危なかった…………………」

 

 

 

 

 

 

ガシッ

 

五月「なっ………!!?」

 

究極悟飯「は、離せ………!!!」

 

セル「一体吸収するだけでどれだけ時間をかけている」

 

悟飯と五月の頭を掴んでセルは、前にいる魔人ブウに向かって思いっきり2人を投げた。

 

究極悟飯「うわぁあああ!!!!」

五月「きゃあああああ!!!!」

 

セル「ふんっ!!!」

 

更にセルはダメ押しとして気合を2人に向けて放ち、完全に退路を経った。

 

ブウ「もらった!!!!!!」

 

魔人ブウは体を引きちぎって一つの破片をこちらに飛んでくる2人に向かって投げる。それは先程と同じように広がって悟飯と五月を取り囲み、捕らえた。

 

ブウ「よし!!!!あとはこっちのものだ!!!!!!」

 

魔人ブウは2人を閉じ込めた破片を自分側に引き寄せ、取り込んだ。

 

 

シュン‼︎

 

超3悟空「そ、そんな……!!!まさか2人とも吸収されちまったんか!!?そりゃねえよッッ!!!!」

 

瞬間移動して戻ってきた孫悟空だったが、時すでに遅し。既に2人は取り込まれ、魔人ブウも変身を完了していた。

 

ブウ「…………」

 

体型は以前と殆ど変わらないが、気の次元そのものが変わった。おまけに上半身の服は悟飯が着用していた山吹色の道着になっていた。

 

ブウ「ふはははッッ!!!!以前よりも大幅にパワーアップしてしまったぞ!!!!しかも今度は時間制限なしだ!!!!!」

 

セル「………ようやく私とまともに張り合えそうなやつが現れたか……」

 

セルは魔人ブウがパワーアップしたことを確認し、高揚感を隠し切ることができなかった。

 

悟空「畜生……!!!ちくしょうッッ!!!!!」

 

最初はパワーアップしたセルが倒してくれる。そう思っていた悟空だったが、見事に裏切られてしまった。状況は最早最悪と呼べるものにまで変化してしまった。悟空は一時でもセルを信用してしまったことを激しく後悔していた。

 

 

ブウ「ご協力感謝するよセル君。お待たせして済まない。今度こそ本物の最強の魔人の誕生だ!!貴様にあの世への片道切符を贈呈してやろう!!!」

 

セル「変化したのは威勢だけではないだろうな………?」

 

2人は睨み合うとすぐに戦闘態勢に入る。数十秒はどちらも動くことなく、相手の出方を伺っているようだった。

 

ブウ「はっ!!!!」

 

先手を打ったのは魔人ブウの方だった。超スピードでセルに接近し、眼前に迫る。この超スピードには流石のセルもびっくりしたのか、固まっているように見えた。

 

ブウ「もらった!!!!」

 

ドカッッ!!!!!

 

そして魔人ブウがメテオスレッジを決めたことによって、セルが地面に向かって猛スピードで落ちていく。

 

ブウ「……!!!」

 

魔人ブウはそんなセルを追いかけて、更に追い討ちをかけるように殴ると、セルは地面に強く打ち付けられた。

 

ブウ「………どうした!この程度でやられる貴様ではないだろう!!」

 

魔人ブウがそう叫ぶと、セルは今まで猛撃を受けたのが嘘のようにケロッとしていた。なんともない様子で浮かび上がった。

 

セル「流石に露骨だったか…」

 

ブウ「随分と余裕そうだな?言っておくが、私はまだまだ本気を出していないぞ?」

 

セル「それを聞いて安心した。むしろそうでなくてはこちらとしても面白くない…………」

 

魔人ブウはあくまでも以前の自分を超えたセルを倒すつもりで戦っているが、セルは完全に戦いそのものを楽しむ気でいるようだった。それに加えて融合後の自分の力を知りたいのか、強い相手を求めていた。そこでセルが思いついたのは、悟飯か零奈、またはその両方を吸収させて魔人ブウを強化させることだったのだ。

 

悟空「……(今はまだセルと魔人ブウが戯れているからいいが、どっちかが勝てばそいつがオラの敵になることは間違いねえ……。セルならまだマシかもしれねえが、それもあてにならねえ……)」

 

悟空は2人が互いに夢中になっている間に融合相手を探そうとするが、そこにいたのはサタンとデンデのみだった。悟飯か零奈のどちらかがいれば良かったのだが、不運なことに2人とも魔人ブウに取り込まれてしまったのだ。これは悟飯や五つ子が油断していたとかそういう問題ではなく、セルの策略によってこうなってしまったのだ。

 

………そんな時、絶体絶命かと思われた悟空に、一途の光が照らす……。

 

悟空「………!!この気は……、まさか…!!!!」

 

突然、感じた覚えのある気を持つ者が現れたのだが、セルと魔人ブウはそのことに気づいていなかった。悟空はこのチャンスを逃すような真似をするはずなどなく、すぐにその者の元へ瞬間移動した。

 

 

 

 

悟空「やっぱりおめぇだったか…!!」

 

悟空の目の前には、確かにそいつがいた。同じサイヤ人であり、その中でもエリートと称されていた者…。最初は敵として出会ったが、色々あって共闘し、互いに意識して歪み合いながらも、切磋琢磨して己を磨き続けるきっかけとなっていた存在……。

 

そのライバルには似合わない天使のような輪っかが頭に存在しており、閻魔大王が機転を利かせてくれたことを悟空は理解し、心の中で閻魔大王にお礼を述べた。

 

悟空「ベジータ…!丁度いいところに来てくれた……!!!」

 

ベジータ「………カカロット。何故だか知らんが、貴様は生き返ったようだな」

 

努力でエリートを超えた下級戦士と、地獄から舞い戻ってきた王子が、この場で再会した。

 




 セルは確かに原作のセルに比べたらマシですが、それでも悪人であることに変わりはないんですよね……。ということで、自分の欲を満たす為なら何でもしちゃうわけなんですよ。セルが味方になっていたと思っていた方はちょっと度肝を抜かされたかもしれませんね。油断も慢心もしない悟飯でしたが、セルのせいで吸収されました。もう今回はセルが大戦犯ですねこれ。

 今回の原作オマージュですが、セルがブウのパワーアップに協力するシーンは、ベジータが第二形態セルと戦った時のものですね。あのシーンは割と印象的でした。ちなみに何故か急にモチベが回復して少しだけストックができました。これでここ数週間よりは余裕を持てそうです。そういえば付け忘れましたけど、悟空はいつの間にかポタラを取り返してます。

 ちなみにブウ編のラストはどうするかを長らく考えていたんですけど、魔人ブウ編はあくまでも『ドラゴンボールZ 』の話なので、主人公は一応悟空になるんですよね。そう考えると、原作に準じたラストにした方がいいのかなぁって考えてます。悟飯は『孫悟飯は五つ子姉妹の家庭教師をするそうです(当作品)』の主人公であって、ドラゴンボールの主人公ではないんですよね。

 まあそのまんまにするつもりはないんですけど、そうなると悟飯の主人公らしい活躍が全然ねえやんと思う方もいるはず。ですがそこは安心して下さい。悟飯はまた別に活躍する機会があると思います。

 ちなみにこの調子なら一応魔人ブウ編は100話までに終わらせることはできると思います。ただ、本編が100話までに終わることは絶対にないですね。うん。まさかここまで膨大な話数になるとは思いもしませんでした。多分最初期の予定通り戦闘なしで純粋なラブコメにしたら、きっと50話くらいで完結してたんでしょうね…。でも最初期から見て下さった読者の方々の意見に流されて良かった気はします。やっぱりドラゴンボールなら戦闘がないとね…。それで倍以上の量になってるのワロタ。

……てか、最近やたらと伸びてるなぁ…。


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第90話 融合バーゲンセール

 前回のあらすじ

 ゴテンクスとピッコロを吸収して無茶苦茶強くなった魔人ブウを圧倒していたセル……否、セル・ネオだったが、そこに老界王神から命をもらって生き返った悟空が参戦!ところが、しばらくは魔人ブウとセルの対決が続いた。魔人ブウが弱体化して形成逆転かと思いきや、ここで異変が起きた。

 なんと、セルは自らの願望を叶えるために悟飯を魔人ブウに吸収させようとしてきたのだ。いち早く気づいた悟空は2人に知らせた。3人は全力で抵抗したが、セルが魔人ブウの援護、悟空を妨害することによって、悟飯だけでなく五つ子及び風太郎と融合した零奈諸共取り込んでしまった。こうして史上最強の魔人が誕生しセルと対決することになった。悟空はこの状態に絶望しかけたが、閻魔大王の機転によって一時的に蘇ったベジータが戦場に来たことによって、一途の光が見え始めたのだった…………。


ベジータ「………デタラメな気が2つもいやがる……。一体どうなっているんだ?」

 

悟空「ああ。それについては後で話すとして、占いババは早くあの世に逃げた方がいい。」

 

占いババ「わ、分かった!では頼んだぞ!!」

 

占いババがいなくなったことを確認した悟空は、一息ついて現状をベジータに説明した。

 

魔人ブウは悟天とトランクスにピッコロ、パワーアップした悟飯に五つ子達を吸収し、更にはセルがあの世のセルと融合したという推測も含めて話す。

 

ベジータ「セルの野朗……。余計なことをしやがって………」

 

悟空「でも、流石ベジータの細胞を持ってるだけはあるよな。敵に塩を送るなんて、あの時のベジータまんまじゃねえか!」

 

ベジータ「…………」

 

悟空「ちょ!悪い悪い!そんなつもりじゃなかったんだ…………」

 

仕切り直して……。

 

悟空「……ベジータ。何も言わずにこれを右耳に付けてくれ」

 

そう言うと、悟空はいつの間にか取り返したポタラをベジータに手渡そうとする。

 

ベジータ「……?何故だ?それを付けて何の意味がある?」

 

悟空「こいつをつけると、オラとおめぇで合体することができる。もし合体できれば、あそこにいるブウやセルを超えることができるかもしれねぇ…!」

 

ベジータ「断る」

 

悟空「なっ……!!!」

 

あのベジータのことだから、すぐに承諾してくれないだろうとは思ったものの、即答で拒絶されるとは思ってもいなかった。

 

悟空「な、なんでだよ…!!地球がどうなっちまってもいいのか!!?」

 

ベジータ「下らん。俺は既に死んだ身だ。もう地球のことなどどうでもいい」

 

悟空「馬鹿なこと言ってんじゃねえ!!今オラとおめぇが合体しなきゃ、みんなを生き返らせることもできなくなるんだぞ…!!!!」

 

ベジータ「みんな…?まさか、ブルマも……?」

 

悟空「そうだよ!!ブルマは魔人ブウにチョコにされて食われちまった!!!!」

 

ベジータ「……!!!」

 

この事実を突きつけられたことによってベジータの心が少し揺らぐが、ベジータの決意は固かった。

 

ベジータ「それでも、貴様と合体などせん!!それをするくらいなら一人で戦って存在ごと消滅した方がマシだ!!それに貴様は気に食わん!あの時俺は全力で戦えと言った!!貴様は超サイヤ人3に変身できるのにも関わらず!!それに変身しなかった!!!」

 

あの時とは、ベジータがバビディの術にかかって自制心を失った時のことだった。悟空とベジータは超サイヤ人2に変身して戦い、そのダメージが魔人ブウを復活させる元凶となってしまったのだ。その時に悟空は超サイヤ人3になれたはずなのに、ベジータ相手にそれをしなかった。そのことにベジータは腹を立てていたのだ。

 

ベジータは互いの修行の成果をぶつけ合いたかった。ベジータが唯一自身と戦えるライバルとして認めた悟空に、手加減されたことが気に食わなかったのだ。

 

悟空「あの変身はまだ慣れていなかったんだ…!それに時間が限られていたあの時に使っちまったら、オラは一瞬であの世に帰らなきゃいけなくなっちまってたんだ……!!そんな制限なんかなかったら、オラは全力でおめぇとやり合ったさ!!!」

 

これは悟空の本心だった。できることなら加減などしたくなかったが、あの時は時間制限もあったためそれが敵わなかったのだ。

 

ベジータ「言い訳などどうでもいい。とにかく貴様とは合体しない」

 

悟空「なんで分かってくれねえんだよ!!!おめぇの妻を魔人ブウが殺したんだぞ!!?悔しくねえのか!!!それにおめぇの息子は魔人ブウに吸収された!!!!しかもセルのせいでもあるんだぞ!!?助けてえって思わねえのか!!!!」

 

ベジータ「くっ………!だ、だが俺は……!!!」

 

ここまで言ってもベジータは悟空と合体することを承諾しなかった。

 

悟空「…………ベジータ…!!!一人で戦って勝ちてえ気持ちはオラにもよく分かる…!!だけどな、今はそんなことに拘ってる場合じゃねえんだ!!ここでオラとおめぇが合体しなけりゃ、ブウが勝つにしろセルが勝つにしろ、地球を元に戻せずに終わりだ…!!!」

 

ベジータ「……もしセルが勝てば地球を破壊することなどしないだろう!?」

 

悟空「確かにな……。だが、吸収されたトランクスに構うことなく魔人ブウを殺すだろうな………」

 

ベジータ「………!!!」

 

悟空「オラとおめぇが合体すれば、トランクスを助けるチャンスを作り出せるかもしれねえんだ……!!頼む!!!」

 

ベジータ「…………貴様は本当に……!分かった!!さっさとそのポタラとやらを寄越せ!!!」

 

悟空「ベジータ…!おめぇ最高だよ!!」

 

悟空の必死の説得によってベジータはようやく承諾した。それを聞いた悟空は密かに笑みを浮かべながらベジータにポタラを手渡す。

 

ベジータ「それで?これを右耳につければいいんだな?」

 

悟空「ああ。言い忘れていたけど、ポタラで合体した場合は二度と元に戻れねえらしいからな」

 

ベジータ「…………なに?」

 

その忠告を聞き終わる前に、既にベジータは右耳にポタラを付け終えていた。

 

ベジータ「貴様……!!付け終えてからそんな大事なことを言うやつがあるかッッ!!!!!」

 

悟空「仕方ねえだろ!!どっちにしろ選択肢なんかなかったんだからよ!!」

 

ベジータ「貴様!さてはわざと……!!!?」

 

悟空「うおっ!!!?」

 

二人が身につけたポタラが強く光り、お互いの体が引かれ合った。二人は引っ張られてぶつかると、そこから強烈な光が発生した。

 

 

 

 

 

 

クルクルクル……!!

 

 

スタッ!!!

 

よっしゃああッッ!!!

 

山吹色の道義をベースに、青いジャケットのようなものを着た戦士が姿を表した。両耳にはベジータと悟空がそれぞれ身につけていたポタラがあり、髪型はベジータに近いものとなっていた。

 

「…………本当に一瞬で合体できたな。確かにこいつは凄いぜ……」

 

合体戦士は自分の体を確かめるように至る部位を動かす。運動機能に異常がないことを確認すると、次は何やら考え込むような仕草をする。

 

「名前は……ベジータとカカロットでベジットと言ったところかな…?それにしても、これは想像以上だな……」

 

その戦士は自分のことを『ベジット』と名付けた後は、自分の強さを確かめるように殴る動作、蹴る動作を高速で繰り返していた。

 

ベジット「………しかし、相手がいなければピンと来ないものだな…。丁度いい。纏めて相手してやるぜ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方で、悟空とベジータが合体する前、セルと魔人ブウは……。

 

セル「………ウォーミングアップはこれくらいにして、そろそろ本気で行こうじゃないか。お互いにな……」

 

ブウ「いいだろう!!」

 

カァァッ!!!!

 

魔人ブウは即座に高出力の気弾をセルに向けて放った。魔人ブウはこの時は加減などしていなかった。が……。

 

セル「………」

 

バシンッ!!!

 

ブウ「!!?」

 

セルは表情を変えずにその攻撃を弾いた。

 

セル「双方の認識に食い違いがあったか…?ウォーミングアップは終わりだと言ったはずだが、伝わっていなかったかな?」

 

ブウ「ふ、ふん…!弾いたくらいで得意げになるなよ!!!」

 

魔人ブウは超スピードを活かしてセルに蹴りを食らわそうと足を突き出した。

 

セル「……!!」

 

しかし、セルはその蹴りを直前スレスレで避けると、右腕思いっきり振って魔人ブウの頬に拳を突き当てた。

 

ブウ「な、なに………!!?」

 

セル「どうした?本気でかかってこい」

 

ブウ「おりゃあ!!!」

 

ドゴォォオオッッ!!!!

 

ブウ「ぐっ……!!!!」

 

魔人ブウは再びセルに攻撃を試みようとしたが、膝打ちを食らって鼻血を出してしまう。

 

セル「おやおや……。貴様にも血というものが存在したのだな……。これは失礼した」

 

一方で、言葉では謝罪しているが、表情から見て謝る気が全くないことが伺えるセルに、魔人ブウは怒りを感じ始めていた。

 

ブウ「殺してやるッ!!!

 

セル「単細胞が………」

 

懲りずに蹴りを食らわそうとするブウの足を掴み、そのまま回転しながら地面に向けて投げ飛ばした。更に気弾の雨を降らせて追い討ちをかける。

 

セル「………出てこい!!この程度で終わってもらっては私の真価を発揮できないではないか!!」

 

その言葉の直後に魔人ブウは姿を再び表した。先程のように怒りに満ちた顔ではなく、勝ち誇ったような顔で……。

 

ブウ「これでも食らえ!!!」

 

ブゥウウウウンッッ!!!!!

 

魔人ブウは五月フォームの得意技である星型気円斬をセルに向けて放った。

 

セル「気円斬の亜種か……?なら……」

 

セルも右手を広げて円盤状の気弾……。気円斬を生み出した。こちらは文字通り円型の気功で、どんなものでも切り裂くことができるのだ。

 

セル「本物の気円斬というものを見せてやろう!!!」

 

セルも気円斬を放った。二つの気円斬がぶつかって火花を散らす。

 

 

 

 

 

ズバッッ!!!!

 

ブウ「…………なっ…!!?」

 

だが、星型気円斬は本家気円斬を前にして敗北した。そのままセルが放った気円斬は魔人ブウに向かって突き進んで行くが、柔らかい体を活かして回避した。

 

ブウ「お、おのれぇ……!!!!」

 

魔人ブウは頭や体の穴から大量の湯気を噴き出させ、自身の姿を覆い隠した。

 

ブウ「ふはははっ!!!これで俺の姿を見ることはできまい!!!!」

 

セル「…………馬鹿め……」

 

セルがそう呟くと、自身の体が光り始めた。その光はどんどん強くなり、やがて気を大量に含んだオーラへと変化していく………。

 

セル「爆裂魔波ッッ!!!!!

 

ドグォォオオオオオオオオオオオオオオオンッッ!!!!!!

 

相手が見えないなら、周囲を巻き込んで爆発させればいいだけのこと。これで近くにいたであろう魔人ブウはただでは済まないだろう。実際………。

 

ブウ「ぐぬぬぬっ………!!!!」

 

少し経つと、全身がボロボロになった魔人ブウの姿が露わになった。

 

セル「ちょっと派手にやり過ぎてしまったかな?まあ、わざわざあんなことをせんでも貴様の気で追跡すれば攻撃することはできたのだが……。それでは貴様の頭の悪さが露見してしまうかと思って配慮してやった」

 

セルは配慮してやったというが、それをわざわざ本人に向けて言うあたり性格が最高に悪い。はなから配慮する気などないのだ。

 

セル「……おっと。これは本人に向けて言うべきではなかったな……」

 

ブウ「うがぁああッッ!!!!!」

 

魔人ブウは怒りの雄叫びを上げると、すぐさま自分の体の傷を癒した。それと同時に口からお化けのようなものを吐き出した。

 

ブウ「さあゴースト達よ!!あいつの体に触れてくるがいいッ!!!」

 

魔人ブウの指示で幽霊達がセルに向かって直進してくる。

 

セル「…………」

 

しかし、セルは何もしなかった。応戦するわけでもなく、避けようとするわけでもなく、防御しようとするわけでもなかった。本当にただそこにいただけだったのだ。

 

ブウ「馬鹿め!!死ねぇええええ!!!!」

 

ドグォォオオオオオオオオオンッッ!!!!

 

幽霊達がセルの体に触れることに成功して次々と大爆発を引き起こして行く。その光景を見届けた魔人ブウは子供のようにはしゃいで喜んでいた。

 

ブウ「いえーいッッ!!!ザマァ見ろ!!!!いつまでも慢心して余裕をぶっこいているからだ!!バーカッッ!!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

ブォオオオオオオオオッ!!!!!

 

ブウ「!!!!?」

 

しかし、セルは強風を発生させて煙を強引に退かした。その時に現れたセルの姿は………。

 

セル「………少しは効いたぞ」

 

……ところどころ傷があったとはいえ、殆ど傷と呼べるほどのものでもなかった。

 

ブウ「ば、馬鹿な……!!!そんなはずじゃ………!!!」

 

セル「ん?どうした?今までこの私に全く攻撃が通用しなかったのに、やっと攻撃が通用したのだぞ?笑えよ、魔人ブウ」

 

ブウ「そ、そんなはずは…!!!俺は二人も取り込んだんだぞ……!!!こんなことがあってたまるか……!!」

 

セル「……………呆れた」

 

ブウ「………!!!!」

 

セルが放った一言は、魔人ブウにとっては聞き捨てならない言葉だった。

 

セル「せっかく私が貴様のパワーアップに協力してやったと言うのにこの程度だったとは……。結局私は私自身の真価を確認することができなかった……。最強の魔人……?聞いて呆れる」

 

ブウ「だ、黙れ……!!黙れぇええええッッ!!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………そこに、もう一人の合体戦士が姿を表した。

 

ベジット「おーおー?派手にやってるじゃねえか。ここら一帯の地形そのものが変わっていやがる………」

 

ブウ「き、貴様は………!!?」

 

セル「…………なるほど。孫悟空とベジータが合体してゴジータと言ったところかな?」

 

ベジット「違うな……。ベジータとカカロットでベジットだ。よーく覚えておけ」

 

セル「ベジットか……。なるほど。スマートな名前で実に覚えやすい………」

 

セルの目には最早ベジットしか映っていなかった。魔人ブウは自分と張り合えないと分かると、最早興味はベジットに移っていた。

 

ベジット「おいおいセル。なんだその目は?俺は魔人ブウとやる為に合体したんだが……?」

 

セル「……超サイヤ人にならずともそれほどの気を持つ貴様なら後でいくらでもできるだろう?それに、私がわざわざ孫悟空にポタラを返したのだからな。その見返りとして、私と戦ってもらおうか?」

 

ベジット「………どうやら魔人ブウでも貴様は手に余ったらしいな…。そこまで言うなら、お前の暇潰しに付き合ってやるよ……」

 

ボォオオオオッ!!!!!

 

当初の目的をすっかり忘れ、超サイヤ人に変身してセルと戦う気満々になったベジット。両者は互いに構えて戦闘準備に入った。

 

ブウ「ど、どういうことだ……!!この俺は眼中にないというのか…!!?俺は最強の魔人なのだぞ……!!こんなことが、あってたまるか………!!!最強は俺だァアアアアアアッッ!!!!!!」

 

超ベジット「うるせえ。邪魔するな」

 

セル「あっちで一人寂しく遊んでいろ」

 

ドンッッッ!!!!!

 

ブウ「ぐおっ……!!!!」

 

セルとベジットは仲良く気合で魔人ブウを戦場から追放した。魔人ブウの姿が見えなくなると同時に、互いの目線を元に戻した。

 

セル「さて………。では始めようか」

 

超ベジット「そうこなくっちゃな……。悟飯達を無理矢理吸収させた借りは返させてもらうぜ?」

 

こうして、互いに自分の強さを確かめたい者同士の、融合戦士同士の戦いの幕が開いた。

 

ドカッッ!!!!!

 

セル「ぬおっ……!!!」

 

まずはベジットのパンチがセルの頬を叩きつけた。しかしその直後にセルも同じように反撃をする。

 

すると今度はベジットが足を使ってセルを転倒させようとするが、セルは舞空術を使って浮かび上がった。

 

超ベジット「ふっ…!やるじゃないか」

 

セル「貴様もな………」

 

シュン‼︎

シュン‼︎

 

 

 

ドゴォォオオッッ!!!!

 

超ベジット「ぐおっ……!!!!」

 

セル「ふおっ……!!!?」

 

互いに瞬間移動をして近づき、互いの拳が互いの顔を叩きつけた。二人は即座に後退して距離を取ると……。

 

超ベジット「だっ!!!」

 

カァァッ!!!!

 

セル「はぁッッ!!!!」

 

カァァッ!!!!

 

今度は気弾の撃ち合いが始まった。気弾同士がぶつかったり、ベジットが避けたり、逆にセルが避けたりする。

 

超ベジット「いいもんやるぞ!!」

 

そう言うとベジットは一振りで大量の気弾を放つ。

 

セル「下らん!!」

 

ドォォオオオッッ!!!!

 

すると、セルは手を振りながら魔光砲を放ち、ベジットが放った気弾を相殺する。

 

シュン‼︎

 

超ベジット「ちっ……!!!」

 

煙の中から現れたベジットは、そのままの勢いでセルに蹴りをお見舞いしようとするが、セルも単純ではない。直前に避けてセルもまた蹴りをお見舞いしようとする。

 

フォン…

 

セル「なに?」

 

だが、セルが蹴りを入れたベジットは残像だった。

 

超ベジット「っしゃあッッ!!!」

 

そしてベジットは背後からエルボーを食らわそうとするが、セルも残像を使って回避した。

 

二人は一旦息を整えることにし、適当な位置に着地した。

 

超ベジット「流石だなセル…。もう一人の自分と合体しただけでここまで強くなるとはな………」

 

セル「それは貴様とて同じだろう?たった一人としか合体していないのに、どこぞの誰かとは大違いだ。動きや技のキレが根本的に違う………」

 

超ベジット「そりゃあ当然さ。俺達がどれだけ戦ってきたと思っていやがる?」

 

二人とも純粋に戦いを楽しんでいるようだった。単体の時では味わえないハイレベルな戦いを、それも自分と互角の力を持つ者と行っている為、純粋に戦いを好む者にとっては最高の状況だった。

 

超ベジット「………それじゃあ」

 

セル「そろそろ本番と行こうか………」

 

ゴゴゴゴゴゴゴゴッ……!!!!

 

その言葉を皮切りに第二ラウンド……。否、二人の本当の戦いが幕を開ける。今までの戦いはただのウォーミングアップだ。二人ともまだ全力を出していない状態での戦闘だった。

 

超ベジット「はぁぁああああああ……!!!!!

 

セル「かぁあああああああ…!!!!!!!

 

二人とも気を高めていく。気を高めていけばいくほど大地と空気が強く揺れる。だが二人ともそれを気にすることなく気を高め続けていく……。

 

超ベジット「だぁああああああああッッ!!!!!!

 

セル「ぶらぁああああああえあッッ!!!!!!

 

ドォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッッッ!!!!!!

 

ほぼ同じタイミングで二人のオーラが変化した。ベジットもセルもただの金色のオーラではなく、スパークを纏ったオーラに変化していた。ベジットは元々超サイヤ人に変身したことによって逆立っていた髪が、超サイヤ人2に変身したことによって更に逆立った。

 

超2ベジット「おいおい。これじゃあすぐに決着がつきそうにねえな………」

 

セル「貴様もここまで気を高められるとは………。これは期待以上だな……」

 

 

 

 

 

 

 

一方で、二人の気を遠くから感じ取っていた魔人ブウは………。

 

ブウ「あ、あいつら……!!俺を馬鹿にしているのか……!!?見せつけているつもりか……!!!?馬鹿にしやがって…!!!虚仮にしやがって……!!!!俺は最強の魔人だぞッッ!!!舐められたまま終わってたまるか……!!!」

 

ここまで感情が昂りまくっていた魔人ブウだったが、一周回って冷静になった。今の自分の状況を整理することにしたようだ。

 

今魔人ブウが取り込んでいるのは、悟天とトランクス、ピッコロ、悟飯、零奈である。特に零奈は五つ子と融合したことによって多彩な技を使用することができる。これをどうにかして活かせないかと試行錯誤をする。

 

………だが、別にそいつらの能力に頼る必要もなかった。元から魔人ブウに備わっている能力を上手く使えば奴らを出し抜けるのではないか…?魔人ブウはそう考えた。

 

ブウ「………最強の魔人としては姑息な手はあまり使いたくないが、やむを得ん……。このまま奴らに敗北するよりはよっぽどマシだ…!!!」

 

そう言うと、魔人ブウはゆっくりと二人がいる方向に向かって飛び始めた。

 

 

 

 

 

 

 

ドゴォォオオンッッ!!!!!

 

超2ベジット「ちっ……。やるじゃねえか」

 

セル「貴様こそな………」

 

あれからしばらく戦い続けていた二人だったが、その実力はほぼ互角と言っても差し支えがなかった。拳がぶつかり合うだけでその辺の地形が一気に変わってしまう。一般人ならば近づくだけでも死んでしまう可能性があるほどだった。

 

セル「……界王拳を使おうと思ったが、片割れが孫悟空の貴様も使えるとなると、無駄だな……」

 

超2ベジット「だろうな……。お互い条件はほぼ同じというわけだ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シュン‼︎

 

ブウ「キャンディになれ!!!」

 

ビビビッ!!!!!

 

セル「ぶらっ!!?」

 

超2ベジット「うわっ!!?」

 

魔人ブウはセルとベジットの瞬間移動合戦を目撃して瞬間移動の使い方も学習していた。その為、二人が戦いに夢中になっている隙に二人ともお菓子にしてしまえばいいと考えたのだ。

 

ブウ「よ、よし…!!やったぞ!!これで俺を超える者は誰もいなくなった!!今度こそ俺が宇宙最強だッッ!!!!」

 

魔人ブウは誰もいない荒野のど真ん中で盛大に爆笑する。余程自分より強い者達を排除できたことが嬉しかったのだろう。

 

 

 

 

ドカッッ!!!!!

 

ブウ「!!!?」

 

しかし、高笑いをする魔人ブウに鋭い衝撃が走った。

 

ブウ「ぐがっ………!!!!」

 

なんと、飴玉がブウの腹に食い込んでいるではないか。これは一体どういうことなのだろうか?

 

「ほう?どうやら貴様と俺の間に実力差がありすぎて、飴玉にされても行動可能なようだな」

 

しかもその飴玉は喋ることも可能とまできた。

 

「ならば私もか…。確かに殆ど自由に動くことができるようだな………」

 

そして、もう一つの飴玉も魔人ブウの目で追うのも難しいほどのスピードで行動を始めた。

 

ブウ「ふ、ふははははっ!!!動けるからなんだ!!捕らえて食ってしまえばいい!!!」

 

魔人ブウは一つの飴玉を必要に追いかけるが、飴玉はあまりにもすばしっこい。その為捕まえることができずにいると……。

 

「よっと!!!!」

 

ズバッ!!!!

 

ブウ「……!!!!!」

 

飴玉が魔人ブウの口の中に入ったかと思いきや、喉を貫通してツノを切断して脱出した。

 

「おっとすまんすまん。あまりにも惨めなもんで食べられてやろうかと思ったが、勢いのあまり貫通したみたいだな」

 

魔人ブウ「ぐぐぐっ……!!!」

 

「……なるほどな。私は飴玉になろうおも完璧な生物だというわけか……」

 

「どうする魔人ブウ?お前の相手は宇宙1強い飴玉と宇宙で2番目に強い飴玉だぜ?」

 

「おい……。まさかとは思うが、宇宙で2番目とは、この私のことを言っているんじゃないだろうな?」

 

何やら言い争いが始まりそうな二つの飴玉だったが、魔人ブウは飴玉状態の方が都合が悪いと判断して二人を元に戻した。

 

超2ベジット「おっと…!もうお終いか?」

 

セル「無駄な足掻きだったな………」

 

ブウ「(ど、どういうことだ…!?二人も吸収したのにコイツらに勝てないなんて……!!!こうなったら、どちらかを取り込むしかない……!!!)」

 

魔人ブウは片方でも吸収しない限り、どちらかに勝つことはできないと判断し、吸収の準備をする。幸いにも、先程の飴玉状態のベジット(と思われる者)に引き裂かれたツノが存在し、それを有効活用することにした。

 

セル「どうした?かかって来ないのか?」

 

ブウ「……まずは貴様らで決着をつけるがいい。俺が相手してやるのはその後の話だ」

 

セル「相手してやるだと?どうやら、己の立場も理解できてないようだな?」

 

超2ベジット「だが、ここはどちらが宇宙1かはっきりさせておきたいところだな」

 

セル「………それも一理あるか。では、続きを始めようか…………」

 

セルとベジットはお互いを睨み合って再び戦闘態勢に入った。これで魔人に対して注がれる注意はほぼなくなったも同然。魔人ブウはこのチャンスを逃さまいと、ゆっくりとツノを変形させてスライム状にし、セルかベジットのどちらかを取り込もうと企む。

 

ブウ「(………ここはやはりベジットというやつにするか……。あのセル・ネオというやつにはどれほどの屈辱を与えられたことか……!!)」

 

魔人ブウはセルを痛めつけるために、ターゲットをベジットに絞った様子だ。一方で、魔人ブウの手助けでもするかのようなタイミングで、ベジットは着地する。セルもそれに合わせて着地した。

 

超2ベジット「………セル」

 

セル「……なんだ?」

 

超2ベジット「俺は貴様と決着をつけたい。だが……」

 

セル「………魔人ブウが何かを企んでいる………とでも言いたいのかな?」

 

超2ベジット「ほう?気付いていたのか……」

 

セル「どうせ私かお前を取り込む気だろう。確かにそれも面白そうだが、今の私とお前の実力はほぼ互角と見た…。となれば、どちらかが奴に取り込まれれば、残された方は終わりだ」

 

超2ベジット「だろうな………」

 

二人とも魔人ブウに対して警戒を解いてるかと思いきやそんなことはなかったようだ。ベジットの前身であるベジータと、融合前のセルは魔人ブウに殺されたのだ。その記憶も保持している為、魔人ブウは侮れない存在だということをよく知っている。

 

セル「ならば、私と貴様で戦闘を開始するフリをして奴を始末するとしよう。その後は心置きなく宇宙最強を決めるゲームを開催することができる……」

 

超2ベジット「そいつは名案だ。そうさせてもらうぜ………」

 

 

 

 

ブウ「(よし…。互いに出方を伺って身動きもしない……!ゆっくり近づけ…!ゆっくり……!!)」

 

魔人ブウはスライム状の一部をゆっくりとベジットに近づけていく。二人ともその存在に気づいていることも知らずにじわじわと近づいていく。

 

 

シュン‼︎

 

セル「残念だが、私は貴様を侮っているわけではない」

 

ブウ「な、なに……!!?」

 

ベジットとセルは不意に魔人ブウの目の前まで瞬間移動してきた。しかもどちらも気功波の準備をしていた。

 

超2ベジット「そういうことだ。残念だったな、魔人ブウ」

 

ブウ「ま、待て……!!!!」

 

セル「波ァアアアアアアアアアアアアッッッ!!!!!!!」

 

魔人ブウが何かを言い終える前に、セルの両手からかめはめ波が放たれだ…………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドスッ……!!!!!!

 

セル「ぬおっ…………!!!!!」

 

超2ベジット「………悪いな。セル」

 

………と思われていたのだが、ベジットの右手から伸びている気製のソード、『ベジットソード』がセルの頭を貫いた。

 

超2ベジット「確か、貴様の場合は頭の核を潰せば殺すことができるんだったよな?」

 

なんと、不意打ちを受けたのは魔人ブウではなく、セルだった…………。

 




 最近プライベートが忙しくなってきて中々更新する時間が取れなくてすみません。そろそろ魔人ブウも終わりが近づいて来そうです。

 何気に忘れ去られている可能性があるので一応解説しておくと、ベジータは何気に原作より強くなってます。そして並行世界のセルも原作より強い上に融合し、ベジータも似たような感じなので、ベジットもまた原作より強くなってます。しかも超2状態になってるので余計ですね。その為、魔人ブウが悟飯と零奈を纏めて吸収してもベジット&セル・ネオには敵いませんでした。これで納得していただければ幸いです。はてさて、次回はどうなりますことやら(ストック的に)

……五等分の花嫁要素は何処へ……?


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第91話 悪夢の逆変身/戦士の覚悟

 前回のあらすじ

 悟空はベジータをなんとか説得してポタラで合体することに成功した。そして宇宙最強クラスの力を持つベジットという戦士が爆誕した。そのベジットの強さは、セル・ネオとほぼ互角であり、悟飯達を吸収した魔人ブウを圧倒するほどだった。

 魔人ブウは二人の隙を見てベジットを吸収し、セルを痛めつけることを思いついたが、二人にはそれが見破られて魔人ブウは消滅……するはずだったが、ベジットがセルの頭を貫いた。



セル「き……さ……ま……!!!」

 

超2ベジット「悪いが、俺は貴様を許したわけではないぞ?悟飯達はお前のせいで吸収されたんだ。ベジットという新しい人間になったとはいえ、カカロットとベジータの記憶は残っているんだ。即ち、貴様に対する怒りも多少なりとも残っていたんだよ」

 

ブウ「な、なんだ……!!?」

 

自分はやられると思った矢先、ベジットとセルが仲間割れを始めて困惑している魔人ブウ。正確には仲間割れとは違うが、今の状況を表現するにはその言葉が適切だろう。

 

超2ベジット「よっと……」

 

ベジットはソードを引っ込めると、力が抜けたセルを掴み、無造作に投げた。

 

超2ベジット「だが、貴様と決着をつけたかったのは本音だぜ?万が一何かの間違いで俺が死んじまったらあの世で戦おう」

 

セル「ま、まて………!」

 

超2ベジット「ほらよ!!!!」

 

何かを言いかけるセルを無視してベジットは思いっきり投げる。セルは無抵抗でそのままの勢いで空中に飛ばされていく。そのセルに向けてベジットは右手に力を込めて、技を放つ…。

 

超2ベジット「ビックバンアタックっ!!!!」

 

右手から巨大な球体が高速でセルに向けて突き進んでいく。その進撃を阻むものは何もなかった。

 

セル「…………なんちゃって」

 

ズォオオオオオオオッッッ!!!!

 

超2ベジット「うおっ!!!?」

 

セルは突然気を上昇させてかめはめ波を放ってビックバンアタックごと押し出した。ベジットは咄嗟に避けて回避したが、弾き返されたビックバンアタックが地面に着弾すると、その付近は最早クレーターのみとなってしまう程の大爆発を引き起こした。

 

超2ベジット「あっぶねぇ……!一歩間違えれば地球が木端微塵だった…。それよりなんで………!!」

 

セル「いいことを教えてやろう。私はもう一人の私と融合したことによって体の性質も変化したのだ。今までは1つしかなかった核が複数増殖したのだ。一つ核が潰されても、他の核が残っていればその核ごと再生可能なのだ」

 

超2ベジット「ちっ……。ブウ並みに面倒な再生能力を持ち合わせていやがる………」

 

ベジットは舌打ちしながらそんな感想をこぼした。

 

セル「それにしても、まさか貴様がそんな姑息な手を使ってくるとは思いもしなかったぞ……?この私の強さに恐れ慄いたか?」

 

超2ベジット「寝言は寝てから言え。貴様はそれで限界かもしれないが、俺はまだまだいけるぜ?」

 

セル「………何の冗談だ?界王拳ならば私も使えるが?」

 

超2ベジット「別に界王拳なんて使う必要はないさ。見せてやるよ……!!」

 

半信半疑のセルを納得させるべくベジットは気を急激に高めていく。ただでさえそこにいるだけで地球が悲鳴を上げそうな程の力を持ち合わせているのに、それが更に上がっていく。

 

セルもベジットが気を更に増幅させていくのを感じてハッタリではないことを確信した。

 

セル「…………なん、だと……?」

 

超3ベジット「……やはりな。チビ達にできて俺にできないはずはない……」

 

なんと、ベジットは超サイヤ人2のその先の領域……。超サイヤ人3に変身したのだ。

 

セル「ば、馬鹿な……!!こんなことがあってたまるか……!!!」

 

超3ベジット「どうする?お前がそのままの状態を維持しつつ界王拳4倍を使えば俺と張り合えるが…………」

 

セル「ち、畜生……!!」

 

シュン‼︎

 

超3ベジット「悪いが、貴様を逃すつもりはない」

 

セルの動きから、逃亡する気だと察したベジットはセルの足を掴んだ。

 

セル「は、離せ……!!!」

 

超3ベジット「………その反応を見るに、今の貴様はここまで極めることができていないらしいな………。なら宇宙最強はこの俺様で間違いないようだな………」

 

ベジットは淡々と喋りながらセルを地面に押し付ける。その後に上空に向けて投げ飛ばした。

 

超3ベジット「貴様には最高の技で決めてやるぜ……!!」

 

そう言うと、ベジットは手を合わせて両手に気を集中させる。黄色と空色と白が見事にグラデーションっぽくなっている気功波が生成され、それを更に肥大化させていく………。

 

超3ベジット「ファイナル……!かー…!めー…!!はー…!!!めー…!!!!

 

気を極限までかき集め終えたら、ベジットはその球体を両手から離した。

 

超3ベジット「波ぁああああああああああああああああああああッッッ!!!!!!!!!

 

ズォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッッ!!!!!

 

ベジータの得意技、ファイナルフラッシュと、悟空の得意技、かめはめ波を組み合わせた『ファイナルかめはめ波』を放った。

 

セル「ちくしょぉおおおおぉォォォォ…………!!!!」

 

ドグォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンッッッ!!!!!!!!

 

そのファイナルかめはめ波にセルはなす術もなく飲み込まれ、体が少しずつ崩れていくが、体が崩れ終える前に大爆発によってセルの体は消滅しただろう………。

 

 

ピュイン…

 

超ベジット「ふぅ……。流石に超サイヤ人3は俺でも疲れるな……」

 

セルを倒したベジットは超サイヤ人に戻り、魔人ブウのいる場所に戻っていく………。

 

 

 

 

 

超ベジット「よう、待たせたな」

 

ブウ「……(くそ…!まさかこいつがあれほどの力を持つとは……!!だがもう吸収できる奴はいないも同然だ…!なんとかしてコイツを吸収しなければ、俺様が殺される……!!!)」

 

超ベジット「どうした?来ないならこっちから行かせてもらうぜ?」

 

ブウ「(くそ……!一か八かだ…!!)」

 

魔人ブウは体の破片をゆっくりとベジットに近づけていく。ベジットは気付いているが気付かないフリをしてそこに留まる。

 

ブウ「(今だ…!!!!)」

 

体の一部を限界まで近づけた魔人ブウは、一気にベジットを囲むようにして拡大させた。それと同時にベジットにも動きが……。

 

超ベジット「(よし!バリア!)」

 

自身の体の周りに気のバリアを張ることによってブウの吸収を免れようというとする。ベジットはそのままブウの体に包まれて、その体の一部はブウ本体と融合した。

 

ブウ「……?やったのか…!?やったのか!!?奴がいなくなったということは、この俺が宇宙最強ということになったのか……!!!!!うははははははははははッッッ!!!!!!遂にやったぞぉおおおおおおッッッ!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

超ベジット「ちっ…。やかましいんだよこんちくしょう……。馬鹿みたいに笑いやがって………」

 

結果としてベジットの作戦は成功した。これで悟飯達の救出が可能となったのだが………

 

ピュン‼︎

 

悟空「!!?」

 

ベジータ「!!」

 

なんと、二度と戻らないはずのベジットが再び悟空とベジータに別れたのだ。

 

悟空「ど、どういうことだ…?界王神のじっちゃんは二度と元に戻れないって言ってたのに………」

 

ベジータ「そんなこと知るか。寧ろこの方が好都合だ」

 

ベジータは吐き捨てるようにそう言うと、右耳についているポタラを取って握り潰してしまった。

 

悟空「ああ!?おめぇ何でポタラを…!!?また外に出た時に必要になるかもしんねぇのに!!」

 

ベジータ「貴様との合体は二度とごめんだな」

 

悟空「しかも、おめぇは死人だからまたあの世に戻らなきゃいけなくなっちまうんだぞ!!!」

 

ベジータ「貴様と合体するよりかはマシだ」

 

ベジータの決意が固い事をなんとなく把握した悟空は、左耳についていたポタラを取って、ベジータがやったように握り潰してしまう。

 

悟空「……どうなっても知らねえからな………」

 

 

 

 

 

そして、悟空とベジータが悟飯達を救出する為にブウの体内を彷徨う少し前のこと………。

 

「…………くそ。なんだよこれ。全く動けねえ………」

 

一人の少年が身動きを取れない状態でそう呟く。その少年の名は上杉風太郎。彼は魔人ブウにチョコにされた後に一花の姿をした零奈完全体に保護され、いつの間にか取り込まれてしまったのだ。本来なら彼の人格が表に出ることはないはずなのだが、魔人ブウに吸収された際に五つ子と零奈は完全に意識を失い、代わりに風太郎の意識が表に出てしまったのだ。

 

風太郎「………静かになっちまったな。だが悟空さん達がここに来ていないということは、少なくとも吸収はされてないはずだ…。殺されてないといいが……」

 

風太郎は零奈完全体と融合していることを利用して自力でブウの吸収による拘束を引きちぎろうとしたが、魔人ブウに吸収された弊害故か、力が殆ど出なかった。

 

風太郎「くそ…。あいつらの記憶を頼りに気を上げようとしてもその気が不足している……。どうすりゃいいんだ……」

 

 

ベジータ「いた…!いたぞカカロット!!」

 

悟空「あり?何でおめぇだけ意識があるんだよ?」

 

そこに、何故か悟空とベジータがやってきた。

 

風太郎「な、何であんた達がここに!?」

 

悟空「へへーんっ!ちょっとした作戦が上手くいってな…!ちょっと待ってろ。すぐ助けてやる」

 

そう言うと、悟空は手からビームを出して風太郎が拘束されている肉片を引きちぎった。引き千切られたと同時に風太郎の力がある程度戻り、後は自力でなんとかできた。

 

風太郎「……よし。ありがとうございます」

 

悟空「気にすんな。後は悟飯達だな」

 

ベジータ「さっさと引きちぎってここを去るぞ。気味が悪い」

 

悟空「ああ、そうだな」

 

後は風太郎にしたように、ベジータはピッコロとトランクスを、悟空は悟天と悟飯を引きちぎって救出した。しかし周りに纏わりついている肉片を取り除くことは難しそうだったので、後で取り除くことにして、悟空は悟天とピッコロを、ベジータはトランクスを、風太郎は悟飯を抱える形となった。

 

ベジータ「それにしても不思議だな。こいつらは未だに意識を取り戻していないのに、何故貴様は目が覚めている?」

 

風太郎「……恐らく、俺だけ意識が別にあるからだろうな。五つ子とその母親の零奈さんは融合した際に意識もほぼ一つになったようだが、俺の存在はイレギュラーだった。だから本来表に出るはずのあいつらだけが意識を失い、結果として俺が引っ張り出されたんだと思う…………」

 

悟空「なるほどな……。だけど随分気を消費しちまってんな。それじゃ魔人ブウと戦う時におめぇに頼るのは難しそうだなぁ………」

 

そんな会話をしていると、ベジータは不意にその会話を途切らせる。二人を呼ぶと同時に指差すと、そこには……。

 

風太郎「こ、こいつは……!!!」

 

悟空「一番最初のブウじゃねえか!!」

 

ベジータ「な、何故このデブがここに……?」

 

風太郎「そ、そうだ…!!こいつを引き剥がせば、更に弱体化するはず…!!」

 

ベジータ「よし。なら引きちぎってしまうか」

 

悟空「待てよ?こいつは確かガリにチョコにされて食われちまったはずだから、ひょっとすると他のやつもいるんじゃねえか?」

 

風太郎「ほ、本当か!?なららいはや親父も……!!!!」

 

風太郎は悟空の発言を聞くと若干元気を取り戻して受け答えするが……。

 

「いや、いない。特別扱いはそいつだけだ」

 

風太郎「!!!?」

 

すると、いつの間にか魔人ブウがいた。何故か魔人ブウの体内に魔人ブウがいるのだ。

 

悟空「な、何でおめぇがここに!!?」

 

ブウ「ここは俺の体の中だぞ?俺の庭みたいなものだ」

 

今の魔人ブウ相手では、悟空とベジータが二人がかりで戦っても厳しい。となれば、零奈完全体のしての力を持っているはずの風太郎が適任なのだが、その風太郎は吸収の弊害故に体力を激しく消耗していた。五月フォームに変身して食べ物を確保できればいいのだが、生憎五月を含めた五つ子及び零奈は完全に意識を失っており、変身は不可能だった。

 

悟空「くそ…!ここはオラに任せろ…!」

 

風太郎「だ、だがあんた達じゃあのブウには…!!」

 

ベジータ「俺達を誰だと思っていやがる?戦闘民族を舐めるなよ…!!」

 

悟空とベジータは超サイヤ人に変身して唐突に現れた魔人ブウと対峙することにした。風太郎も加戦しようかと考えたが、今の状態では逆に足手まといになると考え、大人しく端で待機することにした。

 

 

 

 

 

 

 

一方その頃………。

 

 

 

 

 

 

 

………?どうやら目が覚めたらしいな。ここはどこだ……?確か俺は、ピンク色の化け物と戦って、見事に敗北して殺されたはずだ……。ならまた閻魔の野郎のところか…?……ったくよ。あんな化け物がいるなんて聞いたことねえぜ…。フリーザなんて目じゃねえぞ……。

 

「おい、大丈夫か?」

 

「………ああ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

膨大な気を感知した天津飯は、餃子を置いてその場に向かう途中だった。彼は悟空の面影を持った者が地面に倒れていることを目視で確認した。近づいて始めて気付いたが、彼は孫悟空ではなかった。とはいえ、見過ごすこともできなかったので、できる限りの応急処置を施してバーダックの目が覚めるのを待っていたのだ。

 

天津飯「大丈夫か?見るからにサイヤ人のようだったが、誰にやられた?」

 

バーダック「………お前は、あの世の鬼ってやつか……?見たことねえ顔だな」

 

天津飯「お前は何か勘違いしているようだが、ここはあの世ではない」

 

バーダック「………なんだと?」

 

天津飯のその言葉を聞いて目を見開いて起き上がった。

 

バーダック「じゃあ、ここは地球なのか…?まだ無事だったのか……?」

 

天津飯「ああ。今さっきまで魔人ブウともう一人の謎の気を持つ者が戦っていた。今はほとんど何も感じないが……」

 

バーダック「………そうか。あのピンク色の化け物はまだ残っていやがったか…」

 

天津飯「お前、魔人ブウと戦ったのか?」

 

バーダック「……その魔人ってのがあのピンク色のデブのことを言っているならそうだ。あいつはデタラメな強さだった……。はっきり言って今の俺じゃ勝てねえ………」

 

バーダックはそう言うと、まだ感じる巨大な気の方へ向かおうと飛び立つ。

 

天津飯「お、おい!!」

 

天津飯もバーダックの後を追うように飛び立つ。

 

天津飯「お前はさっきまで死にかけていたんだぞ?」

 

バーダック「俺は戦闘民族だ。この程度ならどうってことない」

 

天津飯「だ、だが……!!」

 

バーダックはそう言うが、身体中から出血している状態でとても大丈夫という状態ではなかった。だが、それは先程のことで、今は出血が止まっていくらかマシになっているようだった。天津飯はサイヤ人のタフさに感心しながらも、後は何も言わなかった。

 

 

しばらく飛んでいると、二人は魔人ブウが突っ立っている場所に辿り着いた。

 

天津飯「あいつが魔人ブウか……」

 

バーダック「………何?ほんとか?随分変わっちまったじゃねえか……」

 

二人が魔人ブウの姿を確認したと同時に………。

 

ブウ「ぐガァアアアアッッッ!!!!!!

 

魔人ブウが呻き出した。頭を抑えて苦しんでいるようにも見える。

 

天津飯「な、なんだ……!?何が起きている!!?」

 

魔人ブウは定期的に体から湯気を出しながら苦しんでいた。その時……。

 

 

ポンっ!!

 

悟空「よっしゃ!!出られたぞ!!」

 

悟空、ベジータ、風太郎の3人が突然姿を現した。と思いきや……。

 

 

ポンっ!!

 

気絶しているが、悟飯と悟天、トランクス、ピッコロも少し遅れて姿を現した。気絶している者達はそれぞれ一時的に抱えられ、適当な場所に置かれる。

 

ブウ「ガァァアアアア…!!!!」

 

天津飯「そ、孫!!何があったんだ!!!?」

 

悟空「あっ!おめぇ天津飯じゃねえか!!よく生きてたなぁ!!実は……」

 

悟空は魔人ブウの体内にいた時のことを噛み砕いて説明した。その説明を聞いて天津飯は大体の状況を把握した。

 

天津飯「なるほど…。それで悟飯達は気絶しているのか………」

 

悟空「魔人ブウもそろそろ手に負える程度に弱くなるはずなんだが……。ありゃ?おめぇも無事だったんか!!良かったなぁ!!」

 

悟空はバーダックを見るなり、そんな風に軽く話しかける。

 

バーダック「……俺はお前ではない。バーダックだ」

 

悟空「ああ。悪い悪い。バーダックだな?にしても、随分ボロボロだが大丈夫か?」

 

バーダック「気にするな。この程度は擦り傷だ」

 

なんてことないと答えるバーダックだが、悟空は若干心配そうにしていた。するとベジータがサイヤ人だから気にすることはないと言う。

 

 

悟空「………あれ?」

 

天津飯「おい、さっきよりも気が膨れ上がってないか?」

 

しかし、弱体化するはずの魔人ブウは逆に気が膨れ上がっていた。体も更にしっかりしたものになっている。最早筋肉が過剰なレベルである。だが、その状態も長くは続かず、小さくなって子供のような姿に変わってしまった。そこで魔人ブウの変化は終わったので、これでブウの変身は完了したようだ。

 

ベジータ「おいおい。随分小さくなっちまったぜ?」

 

悟空「あれならなんとかなるかもしれねえぞ!」

 

悟空とベジータは思惑通りに事が進みそうになっていてテンションが上がっていた。天津飯にとってはどちらにしろ強敵である為、そんな呑気に考えることはできなかった。そしてバーダックはというと………。

 

バーダック「ぐっ………!!この感覚は……!!!」

 

またしても頭痛に襲われ、未来のビジョンが脳内に浮かんだ………。

 

 

 

 

 

 

 

『やべぇ…!あんなの跳ね返せねえぞ!!?』

 

 

『お、おいカカロット……!!』

 

 

バーダックが見た未来の映像を順に追って説明すると、まずはあの魔人ブウが巨大な気功波を作り出して躊躇なく地面に向けて投げ飛ばした。悟空とベジータは瞬間移動で退避する前に悟飯達を助け出そうとするも、間に合いそうになく、途中でサタンとデンデを掴むとほぼ同時に、界王神とキビトがポタラ合体した、通称『キビト神』が瞬間移動が現れたので、悟空達は何とか逃げることができたが、悟飯達は助からなかった………。

 

その後、魔人ブウと悟空達は別の場所で壮絶な戦いを繰り広げていた……。悟空もベジータも苦戦している様子が伺えた。

 

 

 

 

 

ここまでがバーダックの見た未来である。

 

ブウ「ウギャギャォオオオオオオオオオッッッ!!!!!!

 

小さくなった魔人ブウは言葉にしづらい声で発狂する。その直後に右手を突き出して気功波を打ち出した。その気功波には地球を破壊するのに十分なエネルギーが含まれていた。

 

バーダック「ちっ…!!」

 

予知能力によってある程度ブウの行動を予測することができたバーダックは、スピリッツキャノンを投げてなんとかその気功波の軌道を逸らした。

 

ブウ「……い?」

 

魔人ブウがこちらを見てきた事を確認すると、悟空とベジータは超サイヤ人に変身して魔人ブウの気を引こうとした。だが………。

 

ブウ「イヒヒ……!!!」

 

ズゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッッ…!!!

 

なんと、魔人ブウはそんな二人を無視して更に巨大な気功波を一瞬にして生成してしまった。

 

超悟空「お、おいおい!あんなの跳ね返せねえぞ……!!!」

 

超ベジータ「カカロット!悟飯達を連れて瞬間移動で逃げるぞ!!!」

 

風太郎「こ、ここは俺が……」

 

風太郎は自らの命を犠牲にして時間稼ぎをしようと思ったが、よく考えてみると今の自分は五つ子と零奈と融合している状態だ。もし自分が身を投げれば五つ子や零奈も巻き込まれることになる。風太郎の独断でこの6人を巻き込むわけにもいかなかった。

 

ボォオオオオッ!!

 

超バーダック「………カカロット」

 

そんな絶望的な状況の中、バーダックは超サイヤ人に変身して立ち上がった。

 

超悟空「お、おめぇまさか…!!!」

 

超バーダック「カカロットはお前の息子達も連れて行け」

 

超悟空「ああ!それは勿論そうするけど、おめぇは……?」

 

超バーダック「………なあカカロット。この場で言うのは場違いかもしれねえが言わせてくれ。お前は俺にとって自慢の息子だ」

 

超悟空「………へっ?」

 

悟空はバーダックが言ったことを一部理解できていなかった。バーダックが悟空を息子と言ったこと。ここが引っかかったのだろう。

 

超悟空「む、息子って………」

 

超バーダック「俺は生き返る前はフリーザ軍の兵士として汗や血を流しながら一生懸命働いたもんだ。他のサイヤ人達も殆どはフリーザの命令に従っていた。にも関わらずあいつは惑星ベジータごとサイヤ人を滅ぼしにきやがった」

 

ナメック星の時に初めてベジータに教えられたものとほぼ同じだった。ラディッツやナッパは隕石が原因で消滅したと思い込んでいたが、ベジータだけは真実を知っていた。ベジータが死ぬ前にその事実を告げられたことにより、悟空は自らをサイヤ人として認められるようになったきっかけでもある。

 

超バーダック「俺はそのことを事前に知ったが、みんな信じなかった。俺はフリーザに立ち向かい、惑星ベジータの消滅を阻止しようとしたが、それも無理な話だった。そして俺は死ぬ間際にお前にあるものを託した……」

 

 

 

 

 

 

『カカロット……!!俺の意思を継げ…!!サイヤ人の手で、フリーザを倒してくれ……!!!!』

 

 

 

 

 

 

 

超バーダック「……冷静に考えれば、ガキの頃に戦闘力が2のクソガキに頼むようなことじゃなかった。でもお前は本当にフリーザを倒してくれた……」

 

バーダックは一通り語り終えると、一息置いてこう続ける。

 

超バーダック「俺は本来なら既に死んでいる身だ。だが色々あってこうして生き返ることができた。そしてお前やお前の息子が立派になったのをこの目で見ることができた………」

 

超ベジータ「ふん。サイヤ人らしからぬ発言だな。誰かに絆されたか?」

 

超バーダック「そういう貴様も噂ほど残忍で冷酷ではなかったがな………」

 

ベジータの横槍にバーダックは軽くツッコんだ。そして………彼は…………

 

超バーダック「カカロット。お前は生きろ」

 

ドシューンッ!!!!

 

彼はそれだけ言うと、魔人ブウが生み出した気功波の方へと飛び立った。

 

超悟空「あいつが、オラの父ちゃん…?」

 

超ベジータ「カカロット!早くしろ!!間に合わなくなっても知らんぞ!!!!」

 

超悟空「あ、ああ…!!!」

 

衝撃的な事実を告げられた悟空だったが、ベジータの一言によって我を取り戻した。

 

ブウ「ウギャギャォオオッッッ!!!!!」

 

魔人ブウは奇声を発しながら巨大な気功波を発射する。何も妨害がなければものの数秒で地球は木っ端微塵だが………。

 

超バーダック「……………」

 

その巨大な光の玉の前に、一人のサイヤ人が立ち塞がった。

 

今の自分の実力ではこの光の球を跳ね返すことも弾くこともできない。それが分かっていながらバーダックはここに来たのだ。

 

超バーダック「…あばよ。カカロット」

 

バーダックは残った力を全て右手に込める。そこから自身の究極奥義であるスピリッツキャノンを生成する。魔人ブウが生み出した気功が次第に接近してくるが、バーダックは限界まで溜め続ける。

 

超バーダック「これで、()()だぁああああああッッッ!!!!!

 

ズォオオオオオオオッッッ!!!!!

 

バーダックは限界まで溜めたスピリッツキャノンを投げると、魔人ブウが生み出した気功波とぶつかった。しかし拮抗する間もなくバーダックのスピリッツキャノンが押される形となった。

 

超バーダック「ググググッ……!!!!」

 

しかし、バーダックは残された力を振り絞って踏ん張り続ける。これによって魔人ブウの進撃を少し遅らせることに成功していた。

 

 

 

 

超悟空「天津飯!オラの手を掴め!!そうすりゃおめぇも助かる!!」

 

天津飯「………俺に構うな」

 

超悟空「な、なんでだよ!!!」

 

天津飯「餃子だけを残すわけにはいかない…。それに、移民に防衛を任せては、原住民として………地球人として示しがつかないだろう?」

 

超悟空「天津飯…………」

 

天津飯「孫!いけ!!」

 

超悟空「……くっ…!!」

 

天津飯は悟空の返事を待たずにバーダックの元に向かった。悟空は必死に気を探すも、魔人ブウの巨大な気が邪魔してそれもできなかった。

 

 

 

 

天津飯「真・気功砲ッッッ!!!!!!

 

ズォオオオオオオオオオオオッッッ!!!!!!

 

バーダックの隣に立った天津飯が、真気功砲を放って手助けする。魔人ブウの進撃が更に遅くなったが、それでも魔人ブウの攻撃を止めることはできない。

 

超バーダック「へっ…。お前、死ぬぜ?」

 

天津飯「俺の仲間をあの世で一人にするわけにはいかないんでな………」

 

超バーダック「そうかよ。勝手にしろ」

 

 

 

 

 

超悟空「ちくしょう…!!気が見つけられねえ…!!どこでもいいから、地球じゃねえところに………!!!!」

 

悟空達は悟飯達を担ぐと、再び飛びながら気を探る。その道中でデンデとサタンも見かけたので、手が空いていた風太郎が真っ先に二人を拾っていく。

 

 

 

シュン‼︎

 

キビト神「悟空さん!!」

 

瞬間移動で現れたキビト神の手を悟空が掴む。風太郎とベジータは既に悟空のどこかしらを掴んでいる状態だった。本来なら悟飯達を救出することなくこの場を去るはずだったが、バーダックと天津飯による捨て身の抵抗によってこの4人を救出することができた。だが………。

 

超悟空「ま、待ってくれ!!まだあっちに………」

 

キビト神「もう間に合いません!!早く!!!」

 

 

 

 

バーダックは横目で悟空が何か躊躇していることを確認すると………。

 

超バーダック「カカロットォオオオオオオッッッ!!!!早くいけぇええええええ!!!!!

 

そう大声で叫んだ。

 

超悟空「くっ……!頼む…!!!」

 

悟空は苦虫を噛むような表情をした後に、界王神に移動するようにお願いした。

 

キビト神「界界ッ……!!!!」

 

 

シュン‼︎

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

グゴゴゴゴゴゴッ…!!!!!

 

天津飯「ぐわぁあ……!!!!!」

 

超バーダック「うわぁああああッッ!!!!!!」

 

悟空達がいなくなって少しもしないうちに、バーダックと天津飯が完全に押し負けてしまった。それによって二人とも魔人ブウが生み出した巨大な気功波に飲み込まれてしまった。

 

超バーダック「か、か……ろっと……

 

この時、バーダックは所謂走馬灯というものを見ていた。自分が生き返ってから初めての戦闘……。地球では実の孫と会って戦い、そこで初めて超サイヤ人のその先があることを知った。ギネとも再会し、楽しい生活を送れた。

 

似合わない天使のような輪っかを浮かべた悟空がメタルクウラを翻弄するところもしっかりも見ることができた。バーダックは生き返ってからそこまで長い間生きていたわけではない。だが、内容はとても濃かった。今まであの世で過ごしていた分を取り戻したような感覚だった…………。

 

バーダック「元気、でな……

 

 

 

 

 

 

 

 

ドグォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンッッッ!!!!!!

 

 

 

 

この瞬間を持って、誇り高き戦闘民族サイヤ人であり、悟空の父親であるバーダックは命を落とし、地球は宇宙の塵となって消えたのだった………。

 




 バーダックと天津飯が出てこなかった理由がここで明かされましたね。実を言うとバーダックが時間稼ぎをして悟飯達も救出する展開はずっと前から考えてたんですよ。ここだけは外したくないなぁと思ってました。

 いよいよ魔人ブウ編も終盤になりましたね。ちょっと駆け足気味感は否めませんが、こうでもしないと恐らく変に引き伸びて飽きる人が出てきてしまうと思うんですよね。(私自身もそのうちの一人になると思うw)ですので、もっとゆっくり展開を楽しみたい方には申し訳ないんですけど、サクサクと進める形にしてます。やはり最後の戦闘は悟空に花を持たせるべきでしょうかね。と問いかけるようなことを言ってますが、自分の中では既に展開は決めてるんですけどね。そのままというのも面白くないので微妙に変えると思います。

 魔人ブウ編が終わったら……。この作品もいよいよ最終章に突入かな……?

 セルが死んだかどうかについては……。皆様のご想像にお任せします。


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第92話 最終決戦、開幕

 前回のあらすじ

 なんとかセルを倒したベジットは、次に魔人ブウを撃破するかと思いきや、なんと自ら吸収されに行った。その理由は中にいる悟飯達を吸収する為であり、バリアを張ることによって魔人ブウに取り込まれることを防いだ。そして何故か悟空とベジータに分離してしまった。不思議ではあったが、悟空達は悟飯達を救出し、脱出することに成功。

 ところが、変身した魔人ブウには理性という概念がなく、不意に地球を破壊しようとした。そこで目を覚ましたバーダックと遅れて駆けつけてきた天津飯が時間稼ぎをし、悟空達はなんとか避難することはできたものの、尊い犠牲が生まれてしまった………。



シュン‼︎

 

超ベジータ「ま、間に合ったのか……」

 

サタン「えっ……?どこ、ここ…?」

 

キビト神の瞬間移動能力によって界王神界に避難してきた悟空達…。デンデや風太郎は一安心する素振りを見せるが……。

 

超悟空「………あいつが、オラの父ちゃん……」

 

悟空だけが浮かない顔をしていた。

 

超ベジータ「どうしたカカロット。しけた面してるじゃねえか」

 

超悟空「いや、まさかあのバーダックってやつがオラの父ちゃんだとは思いもしなくてよ……………」

 

超ベジータ「………そんなことはどうでもいい。これからどうするんだ?地球のドラゴンボールは消滅してしまったぞ?」

 

キビト神「ドラゴンボール…?一体なんなのですかそれは……?」

 

超悟空「ああ、それはな………」

 

悟空がキビト神に対して丁寧に説明する。するとキビト神は大いに喜ぶ。

 

キビト神「なるほど!それなら地球も死んだ人達も元通りですね!」

 

老界王神「アホタレ!そんなものそう易々と使っていい代物じゃないわい!!」

 

ここで15代前の界王神が口を挟む。話の内容を要約すると、あれはナメック星人にのみ許されたチート技のようなもので、他の民族が使うことは許されないとのことだ。

 

超悟空「今はそんなこと気にしてる場合じゃねえって!ほら!さっきも約束しただろ?生のちちを触らせてやっからさ!!そこに免じて許してくれよ!」

 

風太郎「はっ?あんた何約束してんだ?」

 

当然の疑問である。この疑問に悟空は老界王神に聞こえないように小声でこう答える。

 

超悟空「だってよ、こうでもしねえと悟飯のパワーアップさせてもらえそうになかったんだぞ……。そう、仕方なかったってやつだよ」

 

老界王神「こらお前さん。聞こえとるぞ」

 

だがそんな対策も老界王神を前には無意味だった。

 

超ベジータ「………待て?生の乳を触らせてやるだと?一体誰のだ……?」

 

超悟空「え?えっと……。それは………」

 

超ベジータ「おい、まさかとは思うが……。ブルマのことじゃないだろうな?」

 

超悟空「えっ?何で分かったんだベジータ?」

 

その一言にベジータは一気に顔を真っ赤にして悟空に怒鳴る。

 

超ベジータ「馬鹿者ッ!!!勝手に人の妻を出すな!!!自分の妻を出せばいいだろ!!チチの乳を差し出せばいいだろうがッッ!!!!」

 

超悟空「だ、ダメだ!チチはもうぴちぴちじゃねえからよ!!」

 

超ベジータ「若さを求めるなら、あのよく似た五人組の小娘はどうだ?」

 

超悟空「いや、最初はオラもそうしようと思ったんだけど、悟飯の奴が絶対にダメだって言うからよ………」

 

風太郎「当たり前だろうがッッッ!!あんた何考えてんだ!!?あんなセクハラジジイに俺の生徒を差し出せって言うのか!!?」

 

老界王神「こら!ワシを誰だと思ってるんじゃ!!最近の若者は口の聞き方がなってないの……」

 

風太郎「知らねえよ!!とにかく俺は絶対に容認しねえからな!!(そんなこと許可したらマルオさんやあの爺さんになんて言われるか……!!!)」

 

そんな馬鹿げた会話をしている最中、サタンが現実と夢の区別もつかずに崖から飛んでそのまま落ちたのはまた別のお話。

 

キビト神「……!!た、大変です!!魔人ブウがそろそろ再生します!!」

 

超ベジータ「何!?惑星の爆発で吹き飛ばなかったのか!!?」

 

超悟空「くそぉ…!!そのまま放っておいたら周りの星が次々と破壊されちまう……!!!」

 

悟空達が何か策がないかと唸っているのに見かねて、老界王神がこんな提案をする。

 

老界王神「……界王神界は滅多なことがない限りは壊れたりはせん。それくらいには丈夫に作られておる」

 

超悟空「……?何が言いたいんだ…?」

 

老界王神「ここなら派手に暴れても問題ないということじゃよ」

 

老界王神のその一言で悟空はその意図を完全に理解した。

 

超悟空「分かった…。界王神様達はどこかに避難しててくれ。その後オラとベジータは魔人ブウを引き寄せる」

 

キビト神「ひ、引き寄せるってどうやって……?」

 

超悟空「あの魔人ブウが気を感じる事ができるなら、オラ達が全力で気を高めれば気づくはずだ………」

 

キビト神「………分かりました。その前にこれを!!」

 

そう言ってキビト神はポタラを渡そうとするが、悟空は断った。

 

超悟空「確かに合体すれば一瞬で倒せるだろうさ。でも、どうせなら一人で戦って決着をつけてえ………」

 

超ベジータ「よく言った。それでこそ戦闘民族サイヤ人だ」

 

ポタラを受け取る気がないことを確信した界王神二人組は、呆れつつもとデンデと共にキビト特有の能力の瞬間移動でどこかの惑星に避難する。それを確認した悟空は気を高めようとするが………。

 

超悟空「待て。なんでおめぇが残ってんだ……?」

 

風太郎「………俺はこの戦いを最後まで見届けたいんだ……。らいはや親父を殺した奴が滅びるのをこの目で見るまで俺はここから離れるつもりはない」

 

超悟空「おめぇ、死ぬかもしれねえぞ?」

 

風太郎「あんたらが負けたら、それは宇宙の終わり……だろ?」

 

超悟空「……こりゃあ責任重大だな…。な、ベジータ?」

 

超ベジータ「ふん」

 

風太郎の意思が固い事を確信した悟空は気を徐々に高めていく。その姿を見たベジータも同じようにして気を高めていく。すると界王神界は徐々に振動し始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

シュン‼︎

 

ブウ「ウギャギャォオオ!!!!!

 

すると、すぐに魔人ブウが悟空達の目の前に現れた。

 

超悟空「えっ!!?何でこんなに早く!!?」

 

超ベジータ「恐らく界王神の野郎の瞬間移動を見て真似たんだろうな………」

 

超悟空「なるほどな………」

 

魔人ブウが目の前に現れたことによって、2人が戦闘態勢になるものだと風太郎は確信していた。しかし……。

 

「「最初はグー!!ジャンケンポン!!あいこでしょ!!あいこで……」」

 

風太郎「………………はっ??」

 

なんと、じゃんけんを始めた。風太郎は何故じゃんけんをしているのか問うと……。

 

超ベジータ「どっちが魔人ブウと戦うのか決めてるんだ!!」

 

風太郎「はぁ!!?二人で戦うんじゃないのかよ!!?」

 

超悟空「やっぱり一人の力で倒してえんだ。大丈夫だ…!魔人ブウはオラが倒してやる!」

 

二人の戦闘バカに対して頭痛を感じる風太郎だか、細かいことは気にしないことにしておく。自分はスタミナ切れでどうすることもできない。この人達だけが頼りだ。ならばその人達に任せようと考えた。

 

超悟空「よっしゃー!!オラの勝ち!!」

 

超ベジータ「チッ…。仕方ない。超サイヤ人3の力とやらを見せてもらおう」

 

超悟空「いいのかベジータ?おめぇのの出番がなくなっちまうぞ?」

 

ジャンケンで勝ってはしゃいでいた悟空だったが、急に静かになって真剣な顔になる。そして恐らくベジータにだろうか……?次にこう語った…。

 

超悟空「…………今だからこそ言うが、ブウがデブの時に超サイヤ人3で倒す事ができた」

 

風太郎「はっ…?ふざけんなよ!!あの時倒してくれれば、地球のみんなや、親父やらいはは助かったかもしれねえんだそ!!!」

 

超悟空「そいつはすまないと思ってる。でもあの時のオラは死人だった。生きている若い奴らになんとかしてほしかったんだ…。本来ならあの時オラはいない存在だったんだ………」

 

風太郎の言い分も理解できるが、悟空の言い分も一理はあった。悟空は根からの善人だから偶々1日だけこの世に戻れる権利を得られたが、それでも悟空は死人だった。本来なら地球がピンチになっても悟空は介入できない存在。今後自分が二度と戻って来れなくなった時も、『悟空がいれば大丈夫だ』という考えを払拭してほしいという思いがあったのかもしれない……。

 

超悟空「だから、すまねぇ…。みんなが死んじまったのもオラのせいだ……」

 

風太郎「…………」

 

悟空の説明に一時的に感情的になっていた風太郎だったが、最後まで聞いて納得したのか、すっかり黙り込んでしまった。

 

超悟空「………あれ?ベジータ?」

 

しかし、ベジータは悟空の話も聞かずに遠くの岩山に移動してしまった。

 

超悟空「ああ!ベジータの野朗聞いてねえや………。えっ?」

 

ベジータが全く話を聞く気がないことを悟った悟空は魔人ブウとの戦闘に移ろうとするが、魔人ブウの方を見てはポカンとしてしまう。何故なら……。

 

ブウ「…………zzzz」

 

…………これから死闘が始まろうとしているのに、呑気に寝ているからだ。

 

超悟空「んにゃろう…!!オラは眼中にねえってことか…!!」

 

魔人ブウの態度に少し怒りを感じた悟空は徐々に気を高めていく。超サイヤ人2を介さずにいきなり超サイヤ人3に変身しようとしているため、いつもより揺れが一層激しいものとなっていた。段々と髪が後ろ向きに伸び、眉毛が薄くなっていき、オーラにスパークが纏われ始める。

 

ベジータ「ついに始まるぞ……。宇宙の命運を懸けた最後の戦いが……!」

 

 

 

 

超悟空「はぁああああああッッ!!!」

 

ドォォオオオオオオオオッッッ!!!

 

ブウ「……!!!」

 

悟空が超サイヤ人3になったことによって気も大幅に膨れ上がった。流石の魔人ブウもこの膨大な気を目の前に目を覚ましたようだ。

 

ブウ「ほーっ!!!」

 

魔人ブウは叫びながらゴリラが敵を威嚇するように自身の胸を叩く。

 

超3悟空「やっとやる気になったみてえだな………」

 

ブウ「ウギャギャアアアアッッ!!!!

 

魔人ブウが考えもなしに悟空に向けて突進してくる。だが、悟空は瞬間移動して魔人ブウのツノを掴み、それを使って魔人ブウを振り回す。

 

ブウ「ぎゃぎゃあああああッッ!!!」

 

超3悟空「オラァアアッッ!!!!」

 

悟空は何周か振り回すと、手を離して投げ飛ばした。ところが魔人ブウはキビト神がしたものと同一の瞬間移動を使って悟空の目の前に現れ、悟空の頬を殴った。

 

超3悟空「ぐっ…!!!はっ!!!」

 

ドカッッ!!!!!

 

だが超サイヤ人3になった悟空もただやられて黙るはずもない。魔人ブウにされたように悟空も仕返しする。

 

ドゴォォオオッッッ!!!

 

ドカッッ!!!!

 

今度は魔人ブウに蹴りを食らわされるが、悟空はエルボーでやり返す。更には魔人ブウが足を伸ばして地面から蹴りを食らわせようとするが、悟空は器用に避ける。

 

ブウ「ブァアアアアッッ!!!!」

 

ズォオオオオオオオッッッ!!!!

 

超3悟空「おっと……!!!」

 

魔人ブウはかめはめ波を放ったが、悟空はギリギリで避けて……。

 

超3悟空「波ァアアァアアァアアッッッ!!!!!!」

 

ズォオオオオオオオッッッ!!!!

 

超3悟空「ばっきゃろう!!こっちは本場のかめはめ波だもんね!!!」

 

かめはめ波を打ち返した。こちらは魔人ブウに見事ヒットして体が大破していたが、またすぐに再生してしまう。

 

ガジッ!!

 

超3悟空「イタタタッッ!!!」

 

ガジッ!!

 

ブウ「ギャアアア!!!!」

 

魔人ブウに腕を噛まれたら、悟空は魔人ブウの頭を齧り返したり……。殴られては蹴り殴り、蹴られては殴り蹴りを繰り返していた。今の魔人ブウと悟空は殆ど互角の状態だった。

 

ベジータ「……流石だぜ、カカロット。俺はあのデブの魔人ブウですら手も足も出なかったというのに、お前は互角に戦っている…………」

 

ここで魔人ブウと悟空の戦いをただ眺めていたベジータが口を開き、誰かに聞かせるわけでもなく語り始めた。

 

ベジータ「……なんとなく分かった気がする…。なぜ天才であるはずの俺がお前に敵わないのか…。それは守りたいものがあるからだと思っていた。守りたいという強い心が得体のしれない力を生み出しているのだと………」

 

確かに、悟空が戦う時は何かを守る時のことが多い。例えばラディッツの時は幼い息子を守るため……。自分達が襲来した時は地球を守るため……。ナメック星でフリーザと対峙した時も仲間を守るためだった……。

 

ベジータ「確かにそれもあるかもしれないが、それは今の俺も同じことだ…。俺は、俺の思い通りにするために…、楽しみのために…、敵を殺すために…。そしてプライドのために戦ってきた…」

 

そう。ベジータが悟空と会うまでは己の欲だけのために戦っていた。サイヤ人は戦って相手を殺すのが当たり前だった。そして悟空と出会った後は悟空を超えるために己を鍛えていた。

 

ベジータ「だが、あいつは違う…。勝つために戦うんじゃない。絶対負けないために、限界を極め続け戦うんだ…!だから、相手の生命を断つことに拘りはしない………。あいつはついにこの俺を殺しはしなかった。まるで、今の俺がほんの少しだけ人の心を持つようになるのが分かっていたかのように…。頭にくるぜ…!戦いが大好きでやさしいサイヤ人なんてよ…!!」

 

悟空は、悟飯のように何かを守るためだけに戦うのではない。悟空は戦いが好きだ。戦いそのものが好きだから、相手を殺すことには拘らない。だからベジータも殺さなかった。当時はクリリンのように殺そうとするのが正しかったのかもしれない。だが、結果的にはベジータもピッコロのように柔らかくなり、人の心を持ち始めた。その証拠として、ブルマやトランクスを守る為に自爆したのだ。

 

悟空は他のサイヤ人と同じように戦闘が大好きである。だが、他のサイヤ人と決定的に違うのはその優しさだった。優しいのに戦いそのものが大好きとは一見矛盾しているように聞こえる。だが、悟空は戦いそのものが好きなのであって、相手を傷つけることを好んでいるわけではないのだ。ここが悟空の他のサイヤ人とは決定的に違うところだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「がんばれカカロット…!お前がナンバーワンだ…!!」

 

ベジータは、この時初めて悟空のことを"下級戦士"としてではなく、自分と対等……いや、それ以上の"ライバル"として認めた決定的瞬間だった……。もうベジータは悟空に対して悪意は持ち合わせていない。彼の中では、殺すべき宿敵から、超えるべきライバルに変わったのだ。

 

 

 

 

超3悟空「ちくしょう…!このままじゃこっちがスタミナ切れになっちまう…!」

 

しばらく戦闘が続いたが、全くの互角の戦闘に加え、魔人ブウには脅威的な再生能力が備わっていたため、戦況は平行線を辿っていた。しかも敢えてゆっくり再生して遊んでいた。

 

超ベジータ「………どうした?もう終わりか?」

 

その様子に見かねたベジータが悟空に話しかけてくる。

 

超3悟空「えっ?もう交代の時間か!?もう少しやらせてくれよベジータ!!」

 

超ベジータ「始めから交代する気のないくせによく言うぜ…。カカロット。気を最大限まで溜めればいけるか?」

 

超3悟空「えっ…?あ、ああ……。1分間時間を稼げればなんとかなると思うけど………」

 

超ベジータ「1分だな……?分かった」

 

ボォオオオオッ!!!!

 

ベジータはそう言うと超サイヤ人2に変身した。悟空はその意味を察したようで……。

 

超3悟空「べ、ベジータ…!!おめぇまさか……!!」

 

超2ベジータ「1分程度、この俺が稼いでやる。貴様は気を溜めるのに集中しろ!!」

 

超3悟空「……サンキューベジータ!でも死人はもう一度死ぬと魂ごと消滅しちまうぞ……。だから、死ぬなよ?」

 

超2ベジータ「……余計なお世話だ」

 

悟空はベジータを信頼し、その場に留まって気を溜め続けることにした。

 

超2ベジータ「………この俺様が相手だぜ、魔人ブウ……!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………なんだここは?僕は確か魔人ブウに吸収されて、その後………。見覚えのある景色だ……?確か、ここは……。

 

 

 

 

悟飯は目を覚ました。現状を確認するために立ち上がって辺りを見回す。寝起きでなかなか頭が回らない中、なんとかよく知る人物を目撃し、そちらに向かって歩いていく。

 

風太郎「ご、悟飯……!?目が覚めたのか!?」

 

悟飯「う、うん……。ここって界王神界だよね……?地球はどうなったの…?」

 

風太郎「…………」

 

悟飯の質問に風太郎は顔を曇らせた。しかし隠してもバレると思ったのか、口を開いたその時……。

 

 

 

 

 

 

ドグォォオオオオオオオオオン!!!

 

超2ベジータ「グワァアア…!!!」

 

ブウ「ギャギャギャアアア!!!」

 

 

 

悟飯「べ、ベジータさん!!?それにあれは魔人ブウ!!?」

 

風太郎「………地球は魔人ブウに破壊された……。魔人ブウに取り込まれてたお前達とサタンってやつと神様だけはなんとか連れて来られたが、他は………」

 

悟飯「じゃ、じゃあ…!!みんなは…!!!?」

 

風太郎「あいつらのことなら心配ない。今もまだ俺と融合中だ」

 

悟飯「えっ……?どういうこと?」

 

風太郎は悟飯に五つ子達と融合してしまった経緯を説明した。

 

悟飯「………なるほど……。じゃあ6人とも無事なんだね?」

 

風太郎「その認識で間違っちゃいない………」

 

悟飯「……よし、僕は魔人ブウを倒しに行ってくるよ。上杉君はそこで待ってて」

 

風太郎「いや、待て。まずは気を高めてみろ」

 

悟飯「えっ…?う、うん………」

 

悟飯は風太郎の指示通りに気を高めていった。だが………。

 

悟飯「………あ、あれ……?思ったように気が…………!!」

 

風太郎「……魔人ブウに吸収された奴は体力が激しく消耗されているらしい…。今のお前じゃ足手まといになるだけだ……」

 

悟飯「そ、そんな…………」

 

風太郎「俺の場合、五月さえ意識を取り戻してくれればどうにかなると思うんだが…………」

 

なんと、悟飯は超サイヤ人にさえなることが難しい状態だった。それだけ体力が消耗している状態だったのだ。

 

悟飯「そ、そうだ…!!デンデに回復させてもらえば……!!」

 

風太郎「神様はこの戦いの巻き添えをくらうのを防ぐ為に他のところに避難した」

 

悟飯のアイデアも虚しく、いい案が全くない状態となった。

 

風太郎「そ、そうか……!!どうせなら俺も回復させてもらってから避難して貰えば良かった…!!くそ……!!!」

 

そう言って風太郎は後悔するが、過ぎたことは仕方ない。

 

超2ベジータ「ぐぉおおお……!!!」

 

悟飯「くそ……!!!やっぱりこのままベジータさんを見殺しにするわけにはいかない…!!!」

 

ボォオオオオッ!!!!

 

悟飯は思い通りに気を高めることはできないとはいえ、超サイヤ人には変身することが可能だった。

 

超悟飯「ベジータさんを離せぇえええええッッ!!!!!」

 

風太郎「あの馬鹿……!!!」

 

ドシューンッ!!!

 

悟飯は目の前でベジータが殺されかけている光景を見逃すことはできなかった。悟飯は比較的感情的になってしまう側面があるため、何かに耐えるということがどうも苦手だ。風太郎は仕方なく悟飯に加勢する形で飛び立つ。

 

超悟飯「だりゃあッッッ!!!!」

 

シュバッ‼︎

 

悟飯が放った拳は体を捻って回避された。

 

 

ドカッッ!!!!

 

超悟飯「ぐはっ……!!!!」

 

そしてエルボーで地面に叩きつけられた。魔人ブウはベジータに飽きたのか、そちらには見向きもせずに今度は悟飯を必要以上に攻撃する。

 

シュルル‼︎

 

風太郎「オラっ…!!!離しやがれ……!!!!」

 

風太郎は四葉の技であるリボンの拘束術で魔人ブウの身動きを封じようと試みる。実際一時的に魔人ブウの動きが止まった為、効果があるかのように見えたが………。

 

ギューンッッ!!!

 

風太郎「!!??」

 

手を複雑に伸ばした後に風太郎の頬に拳を当てた。グニャグニャと曲がっている腕から放たれる拳はそこまで痛くなさそうに見えるが、実際はそんなことは全くない。素早い上にしっかりと重い一撃を繰り出すことができるのだ。

 

風太郎「化け物かよ……!!五月さえ目を覚ましてくれれば……!!!」

 

 

 

 

 

 

ドドドドドドドドッッッ!!!!

 

超悟飯「はぁあああああッッッ!!!!!!」

 

すかさず追撃をしようとした魔人ブウ相手に悟飯は気弾を連射して対抗する。それを見た風太郎も悟飯と同じようにして魔人ブウに攻撃を仕掛けるが………。

 

ガジッ…!!!

 

超悟飯「なっ……!!!」

 

風太郎「くそ……うおおあ!!?」

 

 

煙の中から伸びてきた2本の腕が二人を捕らえるとほぼ同時に持ち上げられ……。

 

 

ダァアアアアアンッッッ!!!!!

 

 

風太郎「ぐぁ……!!!」

 

超悟飯「ぎゃ……!!!!!」

 

反対側の地面に強く打ち付けられた。

 

サタン「ブウ!!!弱い者いじめはよさんか!!!!」

 

ブウ「………イ?」

 

一方的になぶっていた魔人ブウを止めたのは、意外にもサタンだった。

 

サタン「黙って見ていたら好き勝手しおって!!このミスター・サタン様が相手してやる!!」

 

ブウ「イヒヒ」

 

魔人ブウの興味は悟飯達からサタンに移ったようだ。魔人ブウは地面を蹴って一瞬でサタンの目の前まで来る。

 

サタン「や、やっぱし夢でも怖い…!!」

 

あのサタンが勇気を出したかと思えば、どうやらまだ夢と勘違いしていたようだ。サタンはやはり怖くなって一瞬で土下座をする。そして、何故かサタンはギリギリで魔人ブウの蹴りを回避した。

 

超3悟空「見直したぞサタン…!!」

 

だが、サタンが攻撃を回避できたのはしっかりとした理由があった。

 

ブウ「グァアアッッッ!!!!

 

魔人ブウはサタンを攻撃しようとしても、頭を抑えて悶絶していた。まるでサタンを攻撃したいが、攻撃したくないと言ったような様子である。

 

サタン「も、もしかして、俺の気迫に押されたのか……?」

 

だが、愉快な思考の持ち主の(あるいは夢と勘違いしてるからか)サタンは自分の気迫に圧倒されていると勘違いしているが、それは事実無根である。

 

サタン「わーっはっはっはっ!!どうした魔人ブウ!!この俺様が怖いのか!!?今泣いて謝ったって許してやらないからな!!!」

 

ブウ「……!!!」

 

だが、先程はまで苦しんでいた魔人ブウは突然苦しむのをやめた。モムモムと何かを噛むような仕草をしてしばらくすると、何かを吐き出した。

 

 

 

ボンッ!!!

 

超3悟空「!!!!?」

 

ベジータ「あ、あれは……!!!」

 

なんと、一番最初の魔人ブウが今のブウから吐き出されたのである。

 

超3悟空「そ、そうか……!!サタンのやつとあのブウは仲が良かった…!それでサタンを攻撃できなかったのか……!!!」

 

ブウ「イヒヒ……!!!」

 

だが、この状況は最悪だった。サタンと仲のいいブウと分裂したということは、今の魔人ブウはサタンを攻撃することに拒絶反応わや示すことはないということ………。

 

ドカッッ!!!!

 

サタン「あ〜…!!!夢でも痛いよぉおお…!!!!」

 

魔人ブウの拳撃を受けた痛みに悶絶してしまったサタン。だが、自分の身を考えてその場から素早く離れて挑発するが、流石に勝てそうにないと分かったのか……。

 

サタン「ま、まあ…!今回は見逃してやろうかな〜?私もちょっと言い過ぎちゃったかもしれないし?」

 

ブウ「ギャハハ!!!!」

 

サタン「うわぁああ!!!!」

 

当然、魔人ブウはサタンを見逃すことなどあるはずもなく、再び拳撃がサタンに………。

 

 

ズガァアアアッッ!!!

 

 

ブウ「!!!?ッッ」

 

………届かなかった。何者かが放った気弾が地面を削りながら魔人ブウに向かって突き進んでいたが、ブウは直前になって気づいたので避けた。そして気弾が飛んできた方向を向くと………。

 

「………サタンをいじめるな。お前嫌いだ……!!」

 

なんと、一番最初の魔人ブウ……。ブウ(善)がいち早く意識を取り戻してサタンを守ったのだ。

 

サタン「ぶ、ブウ!!!目を覚ましたのか!!!!」

 

心配するようなサタンの声にブウ(善)は笑顔で答えた。だが、その顔はすぐに引き締まった。

 

ブウ(純粋)「キィィイイ…!!!」

 

自分の娯楽の邪魔をされたからか、魔人ブウ(純粋)はブウ(善)に向かって突進する。ブウ(善)もまた同じように突進するが、途中で足を伸ばした魔人ブウに蹴られて後退する。

 

ズガァアアア……!!!

 

ブウ(善)「ぶぅ!!!」

 

ドカッッ!!!!!

 

だが、ブウ(善)は手でスピードを殺して地面から跳び、魔人ブウに頭突きを食らわせた。

 

ガジッ!

 

ブウ(善)「!!?」

 

だが、今度は手を伸ばした魔人ブウにツノの部分を掴まれ、大きく半円を描くように振り回された後に地面に叩きつけられた。

 

ブウ(善)「ほぅ…!!!」

 

カァァッ!!!!

 

だが、ブウ(善)はダメージを気にすることなく魔人ブウに向けて気弾を放った。

 

 

バァアアッ!!!

 

ブウ(純粋)「!!!?」

 

その気弾は見事に魔人ブウの左半身を消し飛ばしたが、その驚異的な再生能力でまたすぐに元に戻った。

 

ブウ(純粋)「ウギャギャォオオオッ!!!!

 

グォオオオオッッッ!!!!

 

そして、魔人ブウは自ら突進してブウ(善)に突っ込むと、ブウ(善)の頭を消し飛ばした。

 

サタン「ぶ、ブウ!!」

 

その光景を見たサタンは心配する声をあげるが………。

 

ポンっ!!

 

ブウ(善)「………」

 

こっちのブウもまた驚異的な再生能力を持ち合わせていたため、何の問題もなく再生した。それを見てサタンは安堵する。ある意味、超サイヤ人3の悟空よりも頼りになる味方が増えたことによって勝機が増したかに見えたが………。

 

ブウ(善)「………困った。ちょっと勝てない」

 

そんなブウ(善)の頼りない声が静かに響く………。

 

ベジータ「………どうやら最悪のゲームになっちまったようだぜ………」

 




 今回は途中で悟飯と風太郎が少し参戦する以外は概ね原作通りになりましたね。でもここは描写を省きたくないと思いました。特にベジータのナンバーワン発言。ここは外しちゃダメでしょ。しかし想定よりも早く展開が進んだので、そろそろ魔人ブウ編も終わりそう。下手すると次回で終わりなのではないか…?もしそうなら丁度20話で締め括られるということになりますね。魔人ブウ編だけ破格級に長いけど、漫画だと6,7巻?分もあるから当然と言えば当然なのかもしれないですね。割と省いた気がするんだけど、その代わりオリジナル展開もあったので、どっこいどっこいですかね。

 ちなみに結構前に、この作品の本編に置いてのバトル展開は魔人ブウ編が最後的なことを言った気がしますが、多分それ嘘になりますw。それが判明するのは次回になると思いますけどね。理由としては悟飯がしっかり主人公する物語を書きたいということです。ので、魔人ブウ編で悟飯に花を持たせるなら最後のバトルになるし、原作のように悟空がメインになるようなら最後ではなくなる……と言った感じです。

 では、次回もお楽しみに……。


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第93話 宇宙を懸けた死闘

 前回のあらすじ…。

 バーダックと天津飯の捨て身の時間稼ぎによって、悟飯達を救出することに成功した悟空達だったが、すぐに魔人ブウが現れ戦闘開始に…。魔人ブウと悟空がしばらく戦い続けていたが、魔人ブウの方が若干優勢であった。その為悟空は時間稼ぎをベジータに任せて、自分は気を溜めることに専念していたのだが、1分をオーバーしても溜まりきらなかった。

 一方で、目を覚ました悟飯と風太郎も加戦するも苦戦。そこにサタンという意外な人物が活躍し、魔人ブウを食い止めた上に、一番最初の魔人ブウと分裂させ、魔人ブウ同士の対決が始まった。だがその対決もこちら側にとってはいい状況と呼べるものではなかった………。


魔人ブウ(純粋)と魔人ブウ(善)が戦っている時、悟空はあるハプニングに見舞われていた。

 

超3悟空「ちくしょう……!気が…!!気が減っていく……!!!」

 

ベジータ「な、なに……!?」

 

ピュイン

悟空「なっ………!!?」

 

悟空はとうとう超サイヤ人3の状態を保てなくなり、超サイヤ人状態が解除されてしまった。

 

ベジータ「な、何をしてるんだカカロット!?」

 

悟空「ちくしょう…!!そうだった…!オラはもう死人じゃねえ…!!時間という概念がある状態で超サイヤ人3になると体力が激しく消耗されちまうんだ……!!だから気を溜めるよりも減る方が早かったんだ…!!!」

 

ベジータ「な、なんだと………!!?」

 

悟空「ちくしょう……!!このままじゃ……!!」

 

そして魔人ブウ同士の戦いは最悪な方向へと傾いていた。ブウ(善)は既に傷だらけになっている上、気が減り始めている。いくら不死身の魔人ブウとはいえ、ブウ同士の場合は例外となってしまうようだ。居ても立ってもいられなくなったサタンも加勢するが、魔人ブウに蝿を払うような感じで飛ばされてしまった。だが、サタンはそれでも諦めずに魔人ブウに立ち向かおうとしていた。

 

ベジータ「…………おい!!界王神達とデンデ!!どうせあの不思議な玉で今の状況を把握しているのだろう!!?俺の声が聞こえるなら返事しろ!!」

 

『は、はい!聞こえてますが、どうされました?』

 

ベジータは唐突に思い付いたかのように叫び出し、界王神とコンタクトを取る。

 

ベジータ「今からナメック星に行ってドラゴンボールを掻き集めてこい!」

 

『えっ?ドラゴンボールを集めてどうするつもりです?まだ地球を戻すには早くないですか?』

 

ベジータ「いいから早くしろ!!俺に考えがある!!」

 

『わ、分かりました!』

 

ベジータの意図がいまいち分からないデンデだったが、ベジータの考えを期待してか了承した。

 

悟空「ベジータ、デンデの言う通りだよ。まだ地球を戻すのは早えぞ」

 

ベジータ「……カカロット。貴様は何度地球を救った?」

 

悟空「えっ……?な、なんだよ突然…?何回だったかなぁ………」

 

ベジータの突拍子な質問に悟空は考え込むが、悟空は分からないと言った様子で答えた。

 

ベジータ「……地球の奴らは貴様ばかりに任せて不公平だとは思わんか?」

 

悟空「……!!おめぇ、まさか…!!」

 

ベジータ「元気玉の用意をしろ」

 

そう。ベジータは元気玉で魔人ブウを一掃することを思いついたのだ。だから元気玉に必要な気を集める為に生き返らせようというのだ。

 

『ベジータさん!着きました!ドラゴンボールは既に皆さんが揃えて下さったので、ポルンガは既に呼び出してあります!願いはどうしますか!!?』

 

ベジータ「まず、一つ目の願いで地球を元通りにしろ!二つ目の願いで魔人ブウが復活した日から死んだ奴らを極悪人を除いて生き返らせるようにしろ!」

 

悟空「ベジータ、そんな面倒なことをしなくても、みんな元に戻してくれって願えばよくねえか?」

 

ベジータ「馬鹿者。そう願えばダーブラやバビディまで生き返るだろうか…。それに俺が殺してしまった連中が生き返らない」

 

悟空「………おめぇ、結構考えてんだなぁ……」

 

悟空はベジータがよく考えていることに感心する。途中でデンデが1つの願いで複数人を生き返らせることができないことを指摘したが、今の最長老であるムーリが、フリーザ襲来時以降に似たような事態に対処する為にパワーアップさせたとのこと。老界王神が快い顔をしなかったが、この場はなんとか切り抜けることができた。

 

『ベジータさん!2つ目の願いも叶いました!!』

 

悟空「あれ!?おめぇ輪っかが消えてんじゃねえか!!極悪人じゃねえってよ!!良かったな!!!」

 

なんと、ベジータも生き返ることに成功した。だがそれに浮かれている場合ではない。

 

ベジータ「よし!次は地球の奴らに声が聞こえるようにしてくれ!」

 

しかし、これは界王神達ができることではなかった。それを聞いたベジータはどうしようか困っていた時に……。

 

『それなら私に任せろ〜!それは私の得意分野じゃ!』

 

ベジータ「だ、誰だ!!?」

 

悟空「この声……!!!」

 

そう。界王神よりは下級の神様であるが、それなりに偉い界王…。正確には、北の界王だった。

 

『ワシなら地球だけとは言わず全宇宙に声を届けられるぞ!ベジータはよく分かっておるな!最後にワシが生み出した元気玉を選択するとは、センスがいいなぁ!』

 

ベジータ「御宅はどうでもいい。さっさとしろ」

 

『冷たいなぁ…。よし、準備は既にできてるぞ』

 

ベジータ「……聞こえるか、世界の人間共!!俺はあるところからお前達に話しかけている!!

 

分かっているだろうが、お前達のほとんどは魔人ブウに殺された。だが、ある不思議な力で生き返らせてもらったんだ。町や家などもすっかり元に戻ったはずだ。だが、こいつは決して夢なんかじゃないぞ!

 

今、あるところでお前達に変わって魔人ブウと闘っている戦士がいる!!だが、正直言って情勢はかなり悪いと言える!魔人ブウの強さは、あのセルをもはるかに上回るんだ…!そこで、お前達の力を借りたい!手を空に向けてあげろ!!お前達の力を集めてブウを倒すんだ!!かなり疲れるが心配するな!思い切り走った後と同じようなもんだ!

さあやれ!!手を上げろ!!」

 

 

ベジータはらしくもない行動を取った。戦闘民族サイヤ人のエリートとしてプライドが高かったベジータは、人に物を頼むということを殆どしなかった。だが、今のベジータは形振り構っていられなかった。宇宙を救う為に、自分で頭を下げる覚悟さえあった。

 

悟空「やるなベジータ!見直したぜ!!みんな!!オラに元気を分けてくれ!!!可能な限りで頼む!!!」

 

ベジータの行動に感心した悟空は、手を上げて元気玉を作る体制に入った。

 

 

 

 

 

 

天津飯「………この声、ベジータか?」

 

バーダック「あの王子がこんなことをするとはな……。らしくもないことをしやがる………」

 

そう言い、天津飯とバーダックは躊躇なく手を上げて元気を渡した。

 

 

 

 

 

 

 

クリリン「おお!ベジータの声だ…!!まさかベジータがこんなことをするなんてな!!」

 

ヤムチャ「俺らの元気を使え!!」

 

ビーデル「えっ?なになに?」

 

勇也「なんだか知らねえが、俺たちの力を使え!!」

 

らいは「お願い!魔人ブウを倒して!!」

 

ドラゴンボールの願いによって生き返った天界組も快諾して元気を渡す。

 

 

 

 

 

ベジータ「やい、地球人ども!さっさと協力しやがれ!!また魔人ブウに殺されたいのか!!これは夢でもないぞ!マジなんだ!!たまには貴様らも力を貸せ!!」

 

しかし、ベジータの頼み方が下手くそな為に、殆どの者が協力しない状態だった。なんなら、バビディの仲間だと誤解されていた。そこで痺れを切らした悟空が自ら口を開いた。

 

悟空「地球のみんな!!頼む!!頼むから元気を分けてくれ!!みんなの助けが必要なんだ!!空に手を上げてくれ!!早く…!!」

 

悟空が自ら頼むと、意外な、懐かしい協力者も現れた……。

 

 

 

 

 

 

 

「スノ!悟空だ!!間違いない!!」

 

「みんな!手を上げて!!!」

 

かつて悟空が少年だった頃、レッドリボン軍に支配されていた村を悟空に救われた村人達……人造人間8号が手を上げた。

 

 

 

 

 

「ウパ!この声は……!!」

 

「悟空さんだ!間違いない!!」

 

 

聖地カリンで暮らしていたウパ達……。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……なるほど、悟空か…。懐かしいぜ」

 

更に、最近はみんなの前に姿を現さなくなったランチに………。

 

 

 

 

 

 

 

「………この声、ベジータと孫悟空か?状況がいまいち掴めないが、ここは協力してやろう。まさか孫悟空を抹殺する為に造られた人造人間が孫悟空に力を貸す日が来るとはな……」

 

18号の双子の弟にあたる17号も手を上げた………。

 

 

 

 

 

 

 

「…………どうやら再び2人に戻ったようだな…。まあいい。この私が直々に手を下してやってもいいのだが、貴様らでどうにかするがいい……」

 

そして、緑色でセミのような見た目をした人型の生物も手を上げた………。

 

 

 

 

 

 

 

悟飯「お、お父さん……!!僕の残り少ない気だけど、受け取って下さい…!!」

 

風太郎「よく分からねえけど、それで倒せるなら倒してくれ…!!」

 

既に疲労困憊の悟飯と風太郎も悟空に手を貸した。そして………。

 

ピッコロ「あ、あれは……!!元気玉か!!!?」

 

トランクス「うわぁ!!?なんだよあれ!!?でっか!!!」

 

悟天「すごーい!!」

 

ピッコロ「お前ら!手を上げて悟空に気を分けるんだ!!!」

 

丁度いいタイミングで目を覚ましたピッコロ、トランクス、悟天も手を上げて悟空に手を貸した。

 

 

 

 

悟空「よし!大分集まってきたぞ…!!だけどまだまだ足りねえ…!!もっとくれ…!!頼む!!お前らの力が必要なんだぁああ!!!!」

 

しかし、先程のベジータの下手な頼み方も相まって、中々協力してもらえそうになかった。その様子に見かねて悟飯と風太郎も声を上げた。

 

悟飯「皆さん!!お願いします!!!どうか力を貸してください!!!ここで悲しみの連鎖を断ち切りたいんです!!!もう誰も死なせたくないんです!!!!!」

 

風太郎「お願いだ…!!疑う気持ちも分かるが、今だけは騙されたと思って手を上げてくれ……!!!一人でも多く手を上げてくれれば、それだけ命が救われる可能性が上がるんだ!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「………この声は、上杉君と孫君か……」

 

「そのようでございますな、旦那様」

 

そして、ドラゴンボールによって生き返ったマルオと江端がその声を聞いていた。

 

「……僕はまだ君達を認めたわけではない……が、今回は協力してあげよう。その代わり、魔人ブウを確実に倒してくることだね………」

 

そして、マルオと江端、病院職員全員も手をあげる………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ケーキ屋店長「今の声は上杉君か……」

 

パン屋店長「ええ……。とすると、もしかして三玖ちゃんも向こうで………」

 

風太郎の声が聞こえた二人は、風太郎に協力する為に手を挙げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なあ、今の声って孫じゃないか!!?」

 

「学級長の声も聞こえたぞ!!」

 

武田「みんな!手をあげたまえ!!!君達はあの日……。機械兵隊が襲来した日を思い出したまえ!!君達は誰に救われた?誰のお陰で助かったんだい?」

 

椿「それは当然決まってるよね!みんなも分かってるでしょ!!!」

 

武田の言葉を合図に、旭高校で顔の広い椿も加勢し、全校生徒が耳を傾け始めた。

 

前田「お前ら!!もう一度聞くぜ!!誰に救われたんだ!!!?」

 

「「「孫悟飯……!」」」

 

前田「声が小せえぞ!!誰に救われたんだ!!!?言ってみろコラッッッ!!!!!!」

 

「「「「孫悟飯だぁあああああッッッ!!!!!」」」」

 

前田「なら恩返しをする為に、今すぐ手を上げやがれコラァアアッッッ!!!!

 

前田の掛け声がスイッチとなり、全校生徒が一斉に手を上げて気を差し出した。その姿を見た前田の彼女、松井がこう言った。

 

松井「………今の無茶苦茶かっこよかったよ?更に惚れちゃった♪」

 

前田「う、うっせ!!」

 

武田「僕の出番が取られちゃったね☆」

 

前田「お前、なんだその顔は!?その気味悪い薄ら笑いやめろ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……お主は孫達を守る為に体を張るタイプだろうとは思っていたが、まさかそれほどだったとはな……。考えを改めた方がいいかもしれぬ」

 

そう言って、1人の老人も手を上げた……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

悟空「よっしゃ……!!いいぞ…!!ちょっとずつ集まってきている……!!」

 

ところが、魔人ブウを消滅させるにはいまいちの量だった。界王の能力によって地球にいる者達の声が聞こえてくるが、『ホントに大丈夫か?』『どうせ夢だろ』『騙されるかバーカ』など、信じない者達が多数だった……。

 

そして元気玉に気づいて悟空を阻止しようとする魔人ブウを止めるために立ち向かったベジータもボコボコにされる中、1人の英雄が動き出す……。

 

 

サタン「貴様らいい加減にしろッッ!!さっさと協力しないかぁああッッ!!このミスター・サタン様の頼みも聞けんというのかッッッ!!俺が魔人ブウを倒してやるから、お前達も早く力を貸さんかッッ!!」

 

悟空「………えっ?」

 

意外な人物が口を開いたことによって悟空はポカンとしてしまう。その様子にサタンは何か勘違いしたようで…。

 

サタン「仕方ないだろう…。こう言わないと奴らは信用しない…!今は魔人ブウを倒すことが先決だ!」

 

そう言った。そしてこのサタンの言葉が大いに効果を出した。名も知らない者に力を貸すならいざ知らず、世界の英雄、ミスター・サタンとなれば、協力を惜しむ者などいない。サタンコールをあげながら人々は次々と手を上げていく。少し遅れて一気に悟空に気が届いた。

 

悟空「……!!!よっしゃ!!!地球のみんな!!!ありがとな!!!!」

 

巨大な元気玉………否、超元気玉が完成し、とうとう魔人ブウを倒せる威力を孕むまでに至った。満を辞して……。

 

悟空「べ、ベジータ!!早くそこから退いてくれ!!!!」

 

魔人ブウに一方的に攻撃され続けていたベジータは最早動く体力も残っていない様子だった。ベジータは自分に構うなと言うが、悟空はどうしても元気玉を放つことを躊躇ってしまう。だが……。

 

悟空「あ、あれ………?」

 

サタン「早くしろーー!!!!そいつを撃てば魔人ブウを倒せるんだろう!!!??」

 

悟空「サタン……!!!」

 

基本的に臆病でビビりなサタンが、ここぞとばかりに男を出した。

 

悟空「サタン……!おめぇは本当に宇宙の救世主かもな!!!」

 

こうして、悟空が心配する要素は何もなくなった。あとはこの元気玉を魔人ブウに向けて放つだけ。それでこの戦いは終わるのだ…………。

 

悟空「くたばっちまぇえええええ!!!!!!

 

超元気玉が、宇宙を救う為に発進した。

 

ブウ(純粋)「ヒィ!!!?」

 

魔人ブウはこの気の塊がただの気の塊ではないことに本能的に気がついた。逃げようとするが、超スピードで迫ってくる元気玉を回避することはできないと判断した魔人ブウは、すぐに切り替えて元気玉を突き返そうとする。

 

ブウ(純粋)「ギギギッッ………!!!!」

 

なんと、魔人ブウは元気玉を受け止めた。しかしとても苦しそうだ。あともう一押しできれば魔人ブウを仕留めることができる…………。

 

悟空「くそ……!!あとちょっとなんだ……!!!あとちょっとでぇ……!!!!!」

 

 

 

ベジータ「………しまった」

 

サタン「えっ……?」

 

ベジータ「………計算が違った……。肝心のカカロット体力が足りん……!!!」

 

ここで重大な欠点が判明した。元気玉を放つ悟空本人の体力が殆どないこと……。体力がないため、いくら元気玉が高威力を持っていたとしても、魔人ブウに押し返されてしまうのだ。

 

ブウ(純粋)「イヒヒ……!!!」

 

なんとか押し返せることを確信した魔人ブウは、少し余裕の笑みを浮かべてゆっくりと歩き出した。

 

悟空「くっ……!!くそぉおお……!!!!」

 

それによって悟空の方が押されてしまった。

 

 

 

 

 

ドンッッッ!!!!!

 

悟空「……!!悟飯!!!」

 

だが、悟飯が加勢して直接元気玉を押し返そうとした。

 

ブウ(純粋)「ギィ……!!!!」

 

それによって魔人ブウは更に苦しい思いをすることになった。

 

悟飯「お父さん、すみません……!あの時、僕がとっととケリをつけていたらこんなことにはならなかった……!結局僕はあの時から変われてないんですよ…!!セルゲームのあの時から……!!!!」

 

悟飯の悲痛な叫び………。後悔の念が吐露されていく。だが、悟空は悟飯を責めるようなことはしない。

 

悟空「そんなことはねえさ…!おめぇはここ最近変わり始めている!いい方向にな……!!!」

 

悟飯「そんなこと………!!」

 

悟空「あるさ……!!ひょっとすると、絶対に守りたい奴でもできたんか?」

 

悟空は分かって言ってるのか、偶然なのかは定かではないが、悟飯の近況を知っているかのような口ぶりで話す。

 

悟空「安心しろ。確かにあの時のおめぇは遊び過ぎたかもしれねぇ。でも今のおめぇは立派な戦士だ。そこは自信を持て……!!」

 

悟飯「お父さん……」

 

 

 

ドンッッッ!!!!!

 

 

ブウ(純粋)「ギィィ……!!!!」

 

 

悟空「お、おめぇもか!!!」

 

 

悟空達が親子で会話をしている時、更に加勢するように風太郎がやってきた。風太郎は悟飯の隣で直接元気玉に触れて押し出そうとしている。

 

風太郎「……こうしてお前と共に戦っているのが夢みたいだ……」

 

悟飯「………えっ?」

 

風太郎「……お前にはこういったことは任せっきりだった…。お前は凄えよ。五人の問題児に一切イラつくことなく家庭教師を熟す上に、地球ごと守ってきたんだからな………。俺はそんなお前に密かに憧れていたんだ」

 

悟飯「………」

 

風太郎「………いつかお前の手助けをしたい。それは戦いという形じゃなくてもいいから、何か手助けをしてやりたかったんだ……。思えばお前が戦えると知る前からお前に助けられっぱなしだったよな」

 

風太郎は昔を懐かしむような顔をしながら悟飯に語りかける……。

 

風太郎「人との関係を極力絶ってきた俺にとって、家庭教師というのはある意味ハードルが高かった。そんな時にお前がいてくれただけで心強かったし、お前がいてくれたからあの五つ子も勉強してくれるようになったんだと思う……。もしも俺一人でやってたら、無茶苦茶時間がかかってたぜ?」

 

悟飯「そんなことないよ。僕だって上杉君に助けられたことがあったよ。僕がこの学校に入ってきたばかりの時、僕は高校というものがよく分かってなかった。学生は常に勉強して当たり前だと思っていた。

でも、周りは違った。勉強ばかりしている僕には友達という友達はできなかったんだ。そんな時に初めて気が合ったのが君だったんだ………」

 

悟飯もまた、昔を懐かしむような顔になりながら語る。

 

悟飯「僕は君という友達ができるまでは、学校は自分の夢を叶えるための手段としてしか見てなかった。だから学校が楽しみとかそういう感情はなかったけど、上杉君と話しながら勉強することが密かに楽しみになってたんだ………」

 

風太郎「ふっ……!よく恥ずかしいことをスラスラと言えるな……。俺には真似できん…………」

 

悟飯「ははは……。でも上杉君も似たようなものでしょ?」

 

風太郎「………そう考えると、俺達って似た者同士なんだな…………」

 

悟飯「そうだね………」

 

まるで世界の命運を決める戦いの最中であることを忘れているかのように二人でひたすら会話をする2人。だが……。

 

風太郎「………俺はお前の親友になれて誇りに思っている。お前とあいつらに出会えたことは、俺の数少ない自慢さ………」

 

悟飯「はは、上杉君らしくない台詞だね?」

 

風太郎「それと、もう一つある」

 

悟飯の言葉を遮って、風太郎はこう言った。

 

風太郎「こうして、お前の隣で共に戦えていることだ………!!!!」

 

悟飯「……!!!!」

 

風太郎「さあ、そろそろこの戦いを終わらせようぜ…?元の生活を取り戻すために……!あいつらを笑顔で卒業させる為に!!!

 

悟飯「……!!うん!!!」

 

この時、風太郎の悟飯はどこからか不明だが不思議と力が湧いた気がした。本来なら2人とも魔人ブウに吸収された弊害と元気玉に分けた影響で、悟飯に至っては超サイヤ人にすらなれないはずだった。だが、今の自分達なら力を引き出せる……。

 

何故か、2人とも全く同じタイミングで確信できた。

 

 

風太郎「はぁぁあああああ……!!!!!

 

悟飯「だぁあああああああッッッ!!!!!!

 

 

悟飯と風太郎の気が徐々に高まっていくと同時に、魔人ブウがどんどん押されていく。そして魔人ブウはまともに元気玉を受け止めることも難しくなり、両手から全身で受け止めるような態勢になってしまう。

 

ブウ(純粋)「ギィイイイ!!!」

 

 

 

悟空「……全くよ…。一応元気玉はオラが作り出したってことを忘れてねえか?まあいいけどよ………。おめぇ達を見てると不思議と疲れが吹っ飛んだ気がするぜ」

 

悟空は笑顔でそんな愚痴を漏らすと、次に魔人ブウに向けてだろうか?こう語りかけた。

 

悟空「おめぇは凄えよ。たった1人でここまでよく頑張ったな……」

 

ブウ(純粋)「ギィイイイ!!!!?」

 

悟空「今度はいいやつに生まれ変われよ……!!1対1で勝負してぇ…!!オラももっともっと腕を上げて待ってるからな………!!!!」

 

 

 

 

 

「「「「「「「「いけぇええええええええええッッッ!!!!!!!」」」」」」」」

 

タイミングを合わせたわけではないのに、全地球人、Z戦士、旭高校学生、あの世の住人、ナメック星人達が一斉にそう叫んだ。それが伝わったからか………。

 

 

ボォオオオオッ!!!!!

 

超悟空「はぁああああああああッッッ!!!!!!」

 

悟空は既に体力が限界を突破しているはずなのに、超サイヤ人に変身して元気玉を押す。

 

ボォオオオオッ!!!!!!

 

超悟飯「ウァアアアアアアッッッ!!!!!!!」

 

風太郎「おりゃああああああッッッ!!!!!!」

 

 

悟飯もまた超サイヤ人に変身し、風太郎は今出せる全力の気を解放し、元気玉を押す。

 

 

ブウ(純粋)「ギィイイイ……!!!!」

 

魔人ブウはとうとう悲鳴を上げ始めた。体が元気玉の効果によって少しずつ崩れ始めたことによって、本能的に死を感じたのだろう。だが、この程度では魔人ブウをまだ倒すことはできない。

 

 

 

『悟飯君!!フータロー君!!!』

 

『ハー君!!上杉ッッッ!!!!』

 

『悟飯ッ!!フータローッ!!!』

 

『孫さん!!上杉さんっっ!!!』

 

『孫君っ!!上杉君ッッッ!!!』

 

 

いつの間にか五つ子が意識を取り戻したようだ。風太郎の熱い思いに連動したのかもしれない。

 

『『『『『いっけぇえええええええええええええッッッ!!!!!!』』』』』

 

この時、悟空の目には、五つ子が悟飯と風太郎の背中を押しているように見えた。

 

超悟空「悟飯……。本当にいいダチを持ったなッッッ!!!!!!」

 

 

グォオオオオオオオオオオオオオオオッッッ!!!!!!!

 

ブウ(純粋)「ガァアアアアアアアアアアアアッッッ!!!!!!!

 

悟空、悟飯、風太郎、五つ子達の連携によって魔人ブウの体はとうとう元気玉に侵食され始めていく………。腕から粉状になって徐々に自分の体が崩壊する様を、魔人ブウは見る暇などなかった。その様子を確認した悟空は……。

 

 

超悟空「……またな!!!」

 

 

大声でそう言った。そして………。

 

 

超悟空「ハッ!!!!!

 

 

この戦いに於いて、最後の雄叫びを上げた。

 

 

ブウ(純粋)「グァア……!!ァ……ァ…………

 

これによって魔人ブウの全身は元気玉に包まれると、緩やかに崩壊していく。それでも元気玉は止まらず、界王神界の地面を抉りながら突き進んでいく。魔人ブウが完全に消滅するまで、悟飯と風太郎は元気玉から手を離すことはなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、遂に宇宙の脅威である魔人ブウが、完全に消滅した…………。

 

 

 

悟飯「はぁ…………はぁ………………」

 

風太郎「うぇ………、し、死ぬ………!」

 

完全に力を使い果たした2人はその場に倒れ込んで素早く呼吸をする。悟空も完全に力を使い果たし、超サイヤ人から元に戻ってゆっくりと地上に降り立った。

 

サタン「は、ははっ……!!やったのか……!!?やったんだな…!!!」

 

悟空「………」

 

悟空は力なさげに首を縦に振った。

 

サタン「はははッッッ!!!!!地球のみんなぁああ!!!!お前達のお陰で、魔人ブウを倒すことができたぞぉおおおおッッッ!!!!!」

 

界王を経由して地球に届けられたその言葉は、数多くの地球人の歓声を生み出した。

 

ベジータ「………カカロット」

 

ベジータもまた体力を使い果たしており、地面を這いずりながら悟空に近づいていく。そして無言で笑顔のまま悟空に向けてサムズアップを送る。

 

悟空「…………」

 

悟空もそれを見て、同じようにサムズアップを送った。2人とも先程まで死闘を繰り広げていたのが嘘のようないい笑顔だっだ………。

 

 

ピュイン…‼︎

 

「「「「「きゃああ!!!?」」」」」

 

そして、突然風太郎と五つ子と零奈に分かれてしまった。どうやら限界以上に体力を使うと融合状態を保つことができないようだった。

 

一花「いっててて………」

 

二乃「つ、疲れたわ……………」

 

三玖「もう、動きたくない…………」

 

四葉「…………こんなに疲れたのは、初めてです…………」

 

五月「お腹、空きましたぁ…………」

 

5人とも口にすることは違えど、同じような意味合いだった。

 

零奈「5人とも……。そして、上杉君に孫君………。本当によくやってくれました…………」

 

零奈も息を切らしながら娘、風太郎、悟飯に賛辞を送った。

 

風太郎「は………はは………。どうも……」

 

風太郎は今にも死にそうな声でそう返事した。

 

悟飯「………上杉君…。いや、風太郎………」

 

風太郎「………!!」

 

悟飯はその後無言で手を出した。その意味をなんとなく察した風太郎は、同じように手を出し、同時に手を動かし……。

 

 

 

パチンッ!!!

 

………寝っ転がりながらというなんとも奇妙な状況だが、思いっきりハイタッチをした。2人とも………いや、一花も、二乃も、三玖も、四葉も、五月も……零奈も………。皆が疲労困憊というのが嘘だと確信できるほどのいい笑顔だった。

 

 

元気玉を提案したベジータ。元気玉を作った孫悟空。元気玉を作るのに人々を説得したミスター・サタン。元気玉を押した風太郎(+五つ子と零奈)と悟飯……。

 

 

その場にいた彼らは、間違いなく地球の…………否、宇宙の救世主となったのだ。ただ、彼らは見返りなど求めやしない。

 

何故なら………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼らは人々を守るZ戦士なのだから……

 




 終わったぁ…!!長かったぁ……!!いや、まだ悟飯の花嫁は判明させてないんですけど、それでも終わった感が半端ないんですよね……。皆さんはどうでした?個人的には原作DBより最終回っぽくなってしまった気がするんですけど……。これ、この後またバトル展開持ってきて大丈夫かな……?本編中のバトルはこれで最後にした方がいい気がしてきた………。
 ちなみに私の中での扱いは、悟空がフィナーレを飾ったことになってます。ので、悟飯が大活躍するバトル展開をこの後作りたいんですけど、先述の通りやり辛くなってますw。ここで超久々にアンケートを取ろうかと……と思ったけどやっぱりやめます(なんやねん)。
 ここまで来たら私のやりたいようにやっちゃおうかと思ってます。ただやっぱり学園祭はあまり崩したくないので、学園祭後になりそうですね……。
 ちなみにですが、私の技術でよろしければ、悟飯と花嫁となる子の学生甘々イチャイチャ?を書ければと思ってます。ブラックコーヒーを用意することをお勧めします(まだ先だけどw)。

 まだ最終回じゃないですよ。もうちょっとだけ続きます。あと本当にちょっとだけですよ(本編は)。


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第94話 取り戻した平和

 前回のあらすじ…

 もう長くは語らない……。悟空達は遂に、魔人ブウを倒すことができたのだ……



ピッコロ「………これは、酷い有様だな………」

 

悟飯達が一向にこちらに顔を見せる気配がなかったので、何をダラダラしているのかと心配して見に来たピッコロだったが、見事に全員地面に倒れてグッタリしていた。

 

悟飯「ぴ、ピッコロさん………」

 

悟空「よおピッコロ……。さっきはサンキュー……」

 

ピッコロ「ああ…、お前ら、本当に大丈夫か?今にも死にそうだが………」

 

悟飯「だ、大丈夫です…………」

 

悟天「兄ちゃん!ボロボロじゃん!!」

 

トランクス「うわっ!!パパ!!大丈夫!!!?」

 

 

 

『そういえば、後一つ願いが残っていますけど、どうします?』

 

悟空「もう地球も元に戻ったし、極悪人以外は生き返ったんだろ?ならもう願いはないんじゃねえか?」

 

悟飯「…………そうだ。ピッコロさん、デンデにこう伝えてくれませんか?」

 

ピッコロ「むっ?なんだ?」

 

悟飯「3つ目の願いは…………」

 

 

 

 

 

 

 

悟飯の願いは、本人の要望によって、デンデ、ピッコロ、本人だけの秘密として留めておくことにした。なんでもサプライズをしたいのだそう。誰にするつもりなのかはなんとなく分かっているが、それをわざわざ口に出すピッコロとデンデではない。

 

キビト神の瞬間移動で戻ってきたデンデに回復させてもらい、皆が元気を取り戻した。するとサタンが何かに駆け寄って行く姿を目撃する。するとそこには………。

 

ベジータ「ま、魔人ブウ……!!!!」

 

そう。サタンと仲の良かった、ふくよかな魔人ブウだった。

 

ベジータ「まだ眠ってやがるな…!今のうちにトドメを刺してやる!!」

 

サタン「ま、待ってくれ!!こいつは悪いやつの言うことを聞いてただけなんだ!!頼む!!見逃してくれ!!」

 

ブウに向けて気弾を撃とうとするベジータに向けて、サタンは土下座をしてまで頼み込んだ。

 

ベジータ「……だが、こいつがまたあの魔人ブウのようなやつを生み出したらどうするつもりだ!!!?」

 

サタン「俺が責任を取って保護するから!!頼む!!!」

 

ベジータ「き、貴様ぁ……!!」

 

悟空「ベジータ。待ってくれ」

 

聞き分けの悪いサタンに対して怒り心頭のベジータだったが、悟空が止める。

 

悟空「デンデ、こいつを治してやっえくれ」

 

ベジータ「ば、馬鹿者!!?お前分かっているのか!!?」

 

悟空「こいつはよくやってくれたさ。サタンとこいつもいなかったら、オラ達は多分全滅してたぜ?」

 

ベジータ「だ、だが……!!こいつの姿を見て地球人どもが黙っているとは……!!」

 

悟空「そこは地球のドラゴンボールが使えるようになるまで我慢してもらえばいい。ドラゴンボールでブウに関する記憶を消してもらえばいいさ」

 

ベジータ「………ちっ。好きにしろ」

 

サタン「ありがとう…!本当にありがとう!!」

 

サタンは涙を流しながら礼を言った。本当なら一花達も目の前にいる魔人ブウを助けることには反対だった。だが、風太郎の記憶を介して人を守る為に戦っているのを実際に見た。その姿を見てしまうと、どうしても見逃してもいいのではないかという考えが生まれた。

 

悟飯「………さあ、帰ろうか」

 

風太郎「………そうだな」

 

悟空「そういやオラ腹減っちまったよ!久しぶりにチチの飯をたらふく食ってぐっすり寝てえや……」

 

五月「私もお腹が空きましたぁ………」

 

悟空の言葉で五月はデンデに回復させてもらったにも関わず、力なく倒れそうになるが、悟飯に支えられた。

 

悟飯「あはは……。大丈夫……?」

 

五月「あ、ありがとうございます……」

 

悟飯に肩を借りている状態になり、顔を赤くしながら礼を述べる五月を見て約2名が反応する。

 

二乃「あっ、私も疲れちゃったわ。今にも倒れちゃいそうー」

 

三玖「お腹すいたー。悟飯、おんぶして〜」

 

一花「こらこら…。君達、さっき回復させてもらったでしょ?」

 

四葉「いつもの光景が戻ってきたね」

 

この四葉の一言によって、宇宙に再び平和がもたらされたことを実感する各々…。

 

悟空「よーし!今日はオラの家で打ち上げやろうぜ!!」

 

三玖「……!!それ、いいです!!私も参加していいですか!!?」

 

悟飯の家に行けるチャンスが到来し、三玖が真っ先に反応すると、悟空は快諾した。

 

二乃「私も私も〜!!」

 

五月「ち、チチさんのご飯久しぶりに食べたいです〜!!」

 

零奈「あらあら……。急に決めちゃって大丈夫なのですか?」

 

悟空「まあ、なんとかなるだろ」

 

悟飯「ははは………」

 

零奈の問いに相変わらず軽い返事をする悟空。ようやく見慣れた光景が戻ってきて、悟飯は引き締めていた気を一気に緩めた。

 

 

 

 

 

 

 

シュン‼︎

 

悟空「よっ!みんな!!」

 

悟空の瞬間移動で界王神界にいた者達が一斉に天界に戻ってきた。悟空の姿を見るなりチチが飛びついてきた。それを軽々と受け止める悟空…。そして悟天を見かけて優しく抱き寄せるチチ。

 

そして、ベジータが戻ってきたことによって涙しながら喜んだブルマ。更にトランクスもそこに姿を現したことによって拍車がかかって更に大粒の涙を流させてしまう。だが誰もがみんな笑顔だった………。

 

風太郎と悟飯、五つ子達も戻ってきたことによって、勇也とらいはも風太郎に向かって走って行く。風太郎は父親と妹が生き返ってくれたことが本当に嬉しかったのか、涙を流しながら喜んでいた。だが、敢えてそこに誰もツッコむようなことはしなかった。

 

ビーデル「あっ、悟飯……君?」

 

今にも悟飯に飛びつきそうになってしまったビーデルだったが、悟飯の周りにいる3人の少女と、悟飯自身の満面の笑みを見てその歩みを止めた。

 

ビーデル「……幸せそだなぁ、悟飯君」

 

不思議と嫉妬心のようなものは浮かび上がらなかった。何故か悟飯の幸せそうな顔を見て、不思議と納得できてしまった。

 

ビーデル「あの子達には敵わないようね……。あーあ。もうちょっと早く悟飯君に出会えていればなぁ………」

 

そんな風に後悔を口にしているようなビーデルだったが、その顔はまるで太陽のように輝かしいものだった。

 

サタン「び、ビーデル…!!ビーデル!!!!」

 

ビーデル「ぱ、パパ!!?」

 

愛娘のビーデルを見るなり駆け寄るサタン。だが、その直後に姿を現した者の姿を見て唖然としてしまう。

 

らいは「ま、魔人ブウ!!!?」

 

勇也「おいおいおい!!?なんでそいつがこっちにいるんだ!!!?」

 

無論、Z戦士達も黙っていなかったが、悟空や悟飯の必死の説得によってなんとかその場は収まった………。

 

 

 

 

 

悟飯「そうだ。上杉君とらいはちゃん。それから、勇也さんに会わせたい人がいるんです」

 

らいは「………?」

 

勇也「なんだなんだ?君の彼女さんの紹介なら、君の両親に紹介した方がいいんじゃないか?」

 

悟飯「あはは…。いいえ、あなた達が最初に会わなければなりませんよ……」

 

悟飯が急に真剣な顔になったのを見て、余程重要なことだと察して勇也もふざけた様子を切り上げる。

 

勇也「そっか……。今すぐに会った方がいいか?」

 

悟飯「ええ。その方が彼女も喜ぶと思いますよ」

 

らいは「えー?誰だろ?早く連れてって下さい!!」

 

風太郎「なんだ?そんな話は聞いてねえぞ?」

 

いまいち状況が分かってない風太郎だったが、悟飯は悟空に頼んで風太郎の自宅付近に瞬間移動させてもらった。一礼を言うと、悟空は用事が済んだら家に帰るように伝えると、また天界に戻っていった。

 

風太郎「なんだ……?うちの近所にいるのか?」

 

らいは「誰かな〜?」

 

勇也「…………おい、あれって………」

 

勇也は目を擦った。これは夢か?確かに先程まであの世にいたので、夢のようではあった。だが、今は確実に現実のはずである。

 

風太郎「…………えっ?」

 

風太郎もまた自分の目を疑った。何故あの人がいる?どうしてだ?そんな疑問ばかりが頭に浮かんだ。だが、そんな考えは次の一声ですぐに吹き飛んだ。

 

「勇也……?それに風太郎なの……?らいはまで………!!!」

 

ダッ…!!

 

勇也は何も言わずその女性を抱きしめた。

 

勇也「なんだこれは?自分にとって都合のいいことが起きすぎて逆に夢か疑いたくなっちまうぜ………」

 

風太郎「お袋……!!お袋なのか!!?」

 

らいは「お、お母さんだよ!!間違いないよ!!!」

 

…………そう。何故か風太郎とらいはの母親で、勇也の妻が生き返ったのだ。何故生き返ったのかは………少し前の悟飯の台詞を思い出してほしい……。

 

悟飯は3つ目の願いを誰かのサプライズに使うと言っていた。それがこれだった。風太郎の母親を生き返らせたかったのだ。しかし、あの土壇場で何故こんなことを思いついたのだろうか?

 

上杉母「私、何がなんだか………」

 

風太郎「………お前、さっき叶えた3つ目の願いってまさか………」

 

悟飯「うん。上杉君のお母さんを生き返らせることだよ」

 

風太郎「なんで、そんなことを……?」

 

悟飯「…………だって、僕のお父さんも零奈さんも生き返ったのに、上杉君のお母さんだけそのままなんて……。寂しいでしょ?」

 

風太郎「お前、そんな理由で……」

 

悟飯「………上杉君。去年の君の誕生日を覚えてる?」

 

悟飯は風太郎の言葉を遮ってそんなことを問う。

 

風太郎「………確か、お前にやたらと高スペックな文房具セットをもらった気がするな…………」

 

悟飯「じゃあ今年は?」

 

風太郎「そういやもらって………いや、まさか……………」

 

そう。今年は悟飯は風太郎に誕生日プレゼントを渡していないのだ。それは丁度全国模試と被り、風太郎の邪魔をしない為の悟飯の……。悟飯達なりの配慮だった。そこで………。

 

悟飯「遅くなったけど、僕からの誕生日プレゼントだよ。おめでとう、上杉君………。いや、風太郎」

 

…………悟飯の3つ目の願いは、風太郎の誕生日を祝う為に使ったというわけである。

 

風太郎「お前……!!ホント大馬鹿だな………」

 

悟飯「ははは……。確かに折角の願いを個人的な事情で使っちゃったからね……」

 

風太郎「……でも、そんな親友を持てたことは俺の自慢だ」

 

 

 

 

勇也「そうだ……。これはお前に返すよ」

 

そう言うと、勇也は自身の妻にサングラスを渡した。勇也が常にかけていたサングラスは、自身の妻の形見だったのだ。だから常に肌身離さずに付けていたのだ。

 

上杉母「これ………」

 

勇也「お前が愛用していたサングラスだよ」

 

上杉母「あなた…………」

 

勇也「…久しぶりにお前の焼いたパンが食いてえな……。なっ?風太郎」

 

風太郎「………ああ!」

 

らいは「私も食べたーい!!」

 

上杉母「あーもう…!!人が現状を把握し切れてないのに、呑気ね……」

 

そう言いつつも、何かと嬉しそうな顔をする風太郎の母……。悟飯はその光景を笑顔で見届けていたが、こちらの存在に気づいたようで……。

 

上杉母「……根拠はないけど、あなたが私の夫と子供達に再び会わせてくれたんでしょ?お礼を言わせて」

 

悟飯「いえ、いいですよ!そんな……」

 

上杉母「いいえ。こうしてまた家族に会えたのはあなたのお陰なんだもの…。何かお礼をさせて!!」

 

悟飯「え、えっと……」

 

まるで二乃を連想させるかのような押しの強さに悟飯は若干困惑していた。そこで風太郎が助け舟を出す。

 

風太郎「………だったら、今日はそいつの家でパーティをやるから、その料理にお袋のパンを出したらどうだ?」

 

らいは「あっ!それいい!!いいよ!!!」

 

勇也「がはははっ!!!おうおう!!そうしちまえ!!!」

 

上杉母「ちょっと久しぶりだから上手く焼けるか分からないけど、そんなことでいいなら!!」

 

悟飯「あ、あはは…?これでいいのかな……」

 

地球は今日も平和なようで何よりである。

 

 

 

 

 

 

 

用事が済んだ悟飯の元に、狙ってやってきたかのようにブルマが運転する大型のジェットフライヤーが着陸した。

 

扉が開かれると、そこには孫一家が揃っていた。それだけではない。ベジータ達、ヤムチャ達Z戦士、Mr.サタン達と中野家一家に秘書の江端などなど…。

 

悟飯が知っている者達が勢揃いだった。

 

チチ「ほら!後は悟飯達だけだぞ!」

 

悟空「早くしろよ!オラもう腹減っちまって仕方ねえんだからよ!!」

 

「私もお腹が空きました〜!!」

 

後ろからも何か聞こえたような気がするが気にしないことにしておく。悟空達に言われるがまま悟飯達もジェットフライヤーに乗車して、パオズ山に向けて発進した………。

 

 

 

 

三玖「こ、ここが悟飯の家……!!遂に来た……!!!」

 

勇也「よーし!今日は飲むぜぇええ!!!」

 

上杉母「こら、程々にしろ!」

 

勇也「いて…!ゲンコツすることはねえだろ………」

 

 

 

チチ「ちょっと人数多いだなぁ……。料理できる人達集まってけろ!!」

 

チチの召集に二乃、零奈、風太郎母が集まった。

 

チチ「さあ!今日くらいは奮発するだぞ〜!!悟空さは魚や肉をたんまり取ってくるだ!!」

 

悟空「よし!いっちょやるか!!」

 

ベジータ「………カカロット。どちらがより多くの食料を確保できるか勝負だ」

 

悟空「おっ?いいんか?この山はオラの実家だぞ〜?おめぇ不利なんじゃねえか?」

 

悟空はベジータの提案に煽るようにそんな返事をすると、ベジータも対抗心を燃やしてこう言う。

 

ベジータ「ふん!サイヤ人の王子として貴様にハンデを与えてやってるまでだ」

 

悟空「おめぇ、ちょっとやべぇって思ったろ?」

 

ベジータ「行くぞ!!」

 

悟空「あっ!おめぇ汚ねえぞ!!!」

 

 

 

 

 

悟天「ねーねートランクス君!僕達もやろうよ!!」

 

トランクス「おっ!そうだな!じゃあ勝った方がご馳走もらうからな!!」

 

悟天「えー!それはずるいよ〜!!」

 

トランクス「男なら始めから諦めんなよ〜!!!」

 

 

 

ヤムチャ「よーし!誰か酒持ってこい酒!!」

 

ブルマ「ヤムチャが買って来なさいよ!あんた大して活躍してないんだから!!」

 

ヤムチャ「ええ!!?おい、俺だってそれなりには活躍しただろ?ここはクリリンだ!行け、くりり………」

 

謎のノリでクリリンに任せようとしたヤムチャだったが、物凄い殺気を感じて自分から率先して酒を買いに行った。

 

クリリン「18号……。今のはやめろって………」

 

18号「ああ、悪い。ついな………」

 

マーロン「お母さん怖い…」

 

 

 

少しすると、天津飯と餃子も姿を現した。

 

クリリン「おっ!天津飯に餃子!!久しぶりだなぁ!!!」

 

天津飯「よう。ここに沢山の気が集まっていたから何事かと思ったら……」

 

クリリン「ほらほら!お前達も参加しろって!たんまりご馳走が出るって話だからよ!!」

 

天津飯「……魔人ブウ討伐の打ち上げと言ったところか……。ならば遠慮なく……。それでいいか?餃子」

 

餃子「うん!」

 

天津飯「何か手伝えることはないか?」

 

 

 

 

 

 

悟飯「いや〜……。随分と賑やかだね」

 

風太郎「そうだな…。正直俺はもう寝てえよ………」

 

悟飯「まあまあ。ここは付き合ってあげようよ、風太郎」

 

風太郎「……なあ、なんで呼び方を変えたんだ?」

 

これは風太郎の素朴な疑問だった。悟飯はどんなに親しくても、家族以外は基本的に呼び捨てをするようなことはしない。彼は真面目で礼儀正しい性格だからだ。

 

悟飯「さあ?なんとなく?」

 

風太郎「なんだよそれ………」

 

悟飯「ただ、親友なのにいつまで名字で君付けなのはどうかなって思っただけだよ」

 

風太郎「……そうかよ」

 

上杉母「はいはーい!まずはパンが焼けたよ〜!!!」

 

零奈「パンケーキもありますよ〜!」

 

悟飯「………だってさ、風太郎」

 

風太郎「おう。それじゃ………」

 

「待ちたまえ」

 

食卓に向かおうとした風太郎と悟飯だったが、五つ子の父親であるマルオに呼び止められた。

 

風太郎「お、お父さん……!!ご無沙汰しています!!」

 

マルオ「君にお父さんと呼ばれる筋合いはないよ」

 

いつものやりとりを繰り広げた風太郎とマルオ。

 

マルオ「…………君達2人には心底感謝しているよ。どうやら君達は僕達が死んでいる間も最前線で戦ってくれていたみたいだね…………」

 

風太郎「……悟飯はともかく、俺はあいつらの………あの五つ子がいなかったらまともに戦うこともできませんでしたよ」

 

マルオ「そうかい……。娘達を戦いに巻き込んだことについては特別に不問にしてあげよう。…………上杉君に孫君。今回は雇い主としてではなく、父親として………僕個人としてお礼を言わせてほしい。ありがとう……………」

 

突然深々と頭を下げたマルオに顔をあげるようにアタフタしながら言う風太郎。悟飯は「はい!」とだけ言って後は何も言わなかった。

 

 

 

 

 

悟空「うめぇなぁ!!おっ、ベジータこれ食わねえんか?もらうぞ」

 

ベジータ「あーっ!!貴様俺の好物の寿司をッ!!!」

 

悟空「あっ!おめぇオラのチャーシュー取りやがったなッ!!!!」

 

「「喧嘩すんなッッッ!!!!」」

 

2人のサイヤ人は2人の奥様に叱られたり…………。

 

クリリン「この!大空に!!翼を広げ!!と・ん・で〜ゆきませーん!!」

 

ヤムチャ「ちょ!!クリリン歌詞が違う!!!」

 

勇也「んだそのちんちくりんな歌はァアア!!俺が手本を見せてやる!!!」

 

亀仙人「いいぞ若いの!!やれやれ〜!!!」

 

男達は基本的に酔っ払っていた。

 

勇也「おいマルオぉ!!お前も飲めよぉおお!!」

 

マルオ「僕はさっき飲んだ。もういい」

 

勇也「んだよぉ!!少し飲んだら後はいくら飲んでも変わらねえだろぉ!!?」

 

マルオは勇也の酔っぱらい特有のダル絡みにウンザリしながらも、なんだかんだで対応してやる。彼は祝い事にしか酒を飲まないが、飲んだということは、少なくとも彼はこの催しを祝うべきものだと捉えているようだ。

 

 

二乃「はい、ハー君あーん!」

 

三玖「悟飯、あーん」

 

五月「孫君!今食べてるものを私に下さい!!」

 

二乃「こら!!あんたは欲張り過ぎなのよ!!!」

 

三玖「五月はやっぱり危ない。下がってて」

 

五月「嫌です!!!!」

 

悟飯を巡って争う3人に………。

 

 

 

 

四葉「上杉さーん!!このパンケーキ美味しいですよ!ぜひ食べてみてください!!」

 

風太郎「い、一体何個食わせる気だ……」

 

一花「こーら、四葉。フータロー君が困ってるよ?」

 

 

こちらは争いは起きてないものの、両手に花状態の風太郎だったり……。

 

 

 

 

 

らいは「おお!美味しい!このパン美味しいよ!!ね!悟天君!!」

 

悟天「うん!!!」

 

トランクス「………ちぇ。何故か勝ったはずなのに負けた気分だぜ…」

 

年齢の割には隅に置けない悟天だったり、年の割にはマセているトランクスだったり……。

 

 

 

 

とにかく騒がしいパーティとなった。しばらく騒ぎ続けた一同は徐々に帰宅を始めていた。

 

三玖「うっ……。食べ過ぎた…………」

 

一花「五月ちゃんじゃなくて三玖が食べ過ぎるとは…………」

 

五月「何か失礼なことを言われた気がします」

 

二乃「三玖、大丈夫?」

 

三玖「大丈夫じゃ、ないかも………」

 

零奈「あらあら……。これは重症かもしれませんね……………」

 

マルオ「なら僕が見てあげよう。この後病院に「動きたくない……」……そうかい」

 

悟飯「………三玖さんの様子はしばらく僕達で見ておきます。体調が回復したらそちらに送り届けますよ」

 

マルオ「………分かった。よろしく頼むよ」

 

四葉「三玖?本当に大丈夫?」

 

三玖「へ、平気じゃないかも………」

 

二乃「……まあいいわ。それじゃハー君。三玖のことよろしくね?」

 

悟飯「うん。任せて!」

 

中野家は体調不良の三玖は孫一家に一旦任せることにして帰宅することにした。

 

風太郎「………今日、本当に戦ったんだよな?宇宙を滅ぼす可能性のある化け物相手に………」

 

悟飯「うん。夢じゃないよ。この平和は僕達で掴み取ったものだよ」

 

風太郎「………もう夏休みも終わりだよな…。次会う時は、学校か?」

 

悟飯「そうだね。それじゃ、またね」

 

風太郎「ああ、またな」

 

風太郎は眠ってしまったらいはを背負ってジェットフライヤーに乗せてもらい、上杉一家を最後に乗せてそれは出発した。

 

悟飯「………急に静かになったなぁ…」

 

チチ「さて悟空さ。これからのことについて話すべ!」

 

悟空「ん?これからのこと?」

 

チチ「ほれ、悟空さはセルとの戦いが終わった後は働くって約束したのを覚えてるだか?」

 

悟空「…………あっ。そういやそうだった………たはは……………」

 

チチ「そんなことだろうと思ったべ。でも安心してけろ。悟空さに向いてる仕事を探してきただ!」

 

悟空「うへぇ〜……。オラ修行してえんだけど、約束しちまったもんは仕方ねえなぁ…………」

 

悟空は先程までとは打って変わってテンションが駄々下がりになってしまった。とはいえ約束を守る男であり、大人しくチチの言うことを聞くことにした。

 

チチ「悟飯。三玖さのことは任せてもいいだか?」

 

悟飯「うん」

 

チチ「悟天ちゃんはオラの部屋で寝かせてくるだ。そっちはゆっくりするだぞ〜」

 

悟飯「……………ん?」

 

悟飯はチチの意味深な台詞に引っかかったものがあったが、今は三玖の看病が最優先なので気にしないことにする。眠っている三玖をベッドにまで運び、そっと寝かせてあげると、悟飯は勉強を始める。

 

 

 

三玖「………」ムクッ

 

すると、三玖が静かに起きた。その気配を察知して悟飯が声をかける。

 

悟飯「あれ?三玖さん、目を覚ましたの?もう大丈夫?」

 

三玖「うん。もう平気。あれは嘘だから」

 

悟飯「……えっ?」

 

三玖「素直に悟飯の家に泊まりたいって言うとみんなから反対される。だからお腹痛いフリをして誤魔化した」

 

なんとも策士な子なんだろうかと悟飯は内心苦笑した。

 

三玖「………迷惑、だったかな?」

 

あまりにも悟飯の反応がないため、三玖は上目遣いでそう聞いてくる。これが悟飯には相当応えたようで……。

 

悟飯「そ、そんなことないよ!!迷惑だなんて、そんな…………」

 

三玖「なら良かった」

 

悟飯の返事を聞くと急に笑顔になる三玖を見て、ずるいと思いつつも声に出さない悟飯。

 

三玖「えっ?こんな時にも勉強?」

 

悟飯「うん。そろそろ学校も始まるし、色々あってあまり勉強できない日もあったからね」

 

三玖「今日は早めに休むべき。お風呂に入ったら?」

 

悟飯「それもそうだね。でもそれなら三玖さんが先に入ってきたら?」

 

三玖「分かった。じゃあ一緒に入ろ?」

 

悟飯「………うん?」

 

三玖はしれっととんでもない提案をしてきた。会話の流れが綺麗過ぎて違和感に気付くのが少し遅れてしまった。

 

三玖「今、うんって言った?よし、じゃあ一緒に入ろう」

 

悟飯「待て待て待って!!!それはダメ!!絶対にダメッッッ!!!!」

 

三玖「むぅ……。分かった。じゃあ先にお風呂いただく」

 

三玖は悟飯の返答に不満そうに頬を膨らませるが、ここで妥協する悟飯ではない。三玖は案外大人しく引き下がってお風呂に入っていった。

 

悟飯「………はは。たった数日しか経ってないはずなのに、この感じが懐かしいや…………」

 

悟飯は1人でにそう呟いた。

 

 

 

 

 

 

2人とも風呂に入り終えると、そのまま就寝することにした。

 

悟飯「って待って。何しれっと一緒に寝ようとしてるの?」

 

三玖「ダメ?」

 

悟飯「うん、ダメだよ」

 

三玖「…………」

 

悟飯「いや、上目遣いしてもこれは譲れないから…………」

 

この行動パターンのシンクロ率はなんとも五つ子らしいだ。二乃は状況が状況だったから仕方ないとはいえ、流石に3人とも一緒に寝るわけにはいかない。

 

三玖「二乃や五月とは寝たのに…?私だけ一緒に寝ないの?それって、私のことが嫌いってこと?そうか……。悟飯は私のことが嫌いなんだね………」

 

悟飯「………その手には乗らないよ」

 

三玖「ダメだった」

 

やっぱりか、と悟飯は内心呟いた。三玖はある意味引く時は引くので一番楽ではある。

 

悟飯「それじゃ、僕は床で寝るよ。お休み」

 

三玖「うん。お休み………」

 

こうして、2人は就寝………。

 

 

 

 

 

 

 

三玖「………」

 

悟飯「あの、なんでこっちに来てるの?」

 

三玖「寒い」

 

悟飯「それならベッドで寝ればよくない…?」

 

何故か床に毛布を敷いて寝ている悟飯の隣にやってきた。

 

三玖「私だけベッドを使うのは不平等。悟飯が床なら私も床」

 

前言撤回。3人の中で一番手強いのは三玖かもしれない。悟飯は三玖が床で寝ることによって全身を痛めることを危惧して、仕方なくベッドに入ることにした。三玖はしてやったりといった笑顔になる。

 

三玖「………安心して。私は五月みたいに襲ったりはしないから」

 

悟飯「いつまでそれを引きずってるの………」

 

三玖「ふふっ…。でももし悟飯が私を選んでくれたなら、速攻で襲っちゃうかもしれないけど」

 

今のは聞かなかったことにしようと、悟飯は内心ぼやきながら狸寝入りをした。

 

三玖「あれ?寝ちゃったの?やっぱり疲れてたんだ………」

 

三玖は見事に悟飯が眠ってしまったと勘違いすると、悟飯の頭を抱き寄せて自分の胸の方に誘導した。

 

悟飯「!!!?」

 

悟飯は飛び起きようとしたが、ここで起きてしまえば狸寝入りがバレてしまう。そう簡単に決断することはできなかった。

 

三玖「それも当然だよね………。私達を守る為に死にかけになりながら戦ってたんだもんね………。今日はゆっくりお休み……………。大好きだよ、悟飯」

 

悟飯は目を瞑っていたので表情を見ることはできなかったが、三玖はまるで頑張った子供に声をかける時のような優しい顔をしながら優しい声で悟飯を労った。その声を聞くと不思議と悟飯は眠気に襲われ、今度は狸寝入りではなく、本当に眠ってしまった。

 

三玖「……ふふっ。悟飯の寝顔可愛い……。こんな顔をして眠っている人が私達を守ってくれてたなんて信じられないくらい………」

 

三玖はしばらく悟飯の寝顔を見てホクホクしていたが、いつの間にか眠っていたようだ…………。

 

 

 

 

 

 

 

魔人ブウ編 〜完〜

 




 はい。前回でほぼ魔人ブウ編は終わったようなものですが、これにて今作の魔人ブウ編は終わりです。残すシナリオは学園祭とその後の話のみです。原作では魔人ブウを倒した後ではパーティ的なのしてる描写ないんですよね。まあアニメではありましたけど。ちなみに孫家でパーティを開催させた理由としては、孫悟空が帰ってきたというメッセージ性を込めています。それだけです。

 そして、風太郎の母親はめでたく生き返りました。理由としては、零奈と悟空が生き返っているのに、風太郎の母親だけ生き返らないと風太郎、勇也、らいはが可哀想だなぁと思ったからです。風太郎の母親の名前ってマジでなんだ……?キャラは何故かなんとなく想像できたんですけどね。

 ということで、悟飯の花嫁もあと少しで判明するわけですが……、以前このような質問をいただいたので先に答えます。GTや超には進むかと言われると正直微妙です。そもそもその2つは殆どが悟空やベジータが主役ということもあり、ごと嫁キャラと絡ませるのが難しいという点ですね。ただ無理矢理やるとしたら、今作の人造人間零奈編で出てきた未来悟飯の方で魔人ブウ編及びブラック編をやるくらいでしょうかね……?ただこの辺は本編中にはやりません。番外編という形になると思います。……まあ、やるかどうかも未定ですけどね。

 ここまで読み進めている方、もう少しだけお付き合い頂けると幸いです。


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最終章
第95話 近づく"運命の日"


 今回は新章……というか、本編最終章突入ということでいつもやってたあらすじ系は今回はやりません。というかあれはアニメドラゴンボールを意識して書いていたものなので、ごと嫁メイン回しかない(と思われる)ので、ここからは前回のあらすじは書かないことにしようかなぁとか思ってます。まあ決まったわけではないので分かりませんけどね。

『孫悟飯は五つ子姉妹の家庭教師をするそうです』が、遂に最終章に突入。

 果たして、悟飯の花嫁は一体誰になるのか?最終章はそれをお楽しみに……。



目を覚ました三玖は特に動じることなく起床するが、自身の胸に悟飯の頭を引き寄せたまま寝顔を眺めていた。

 

悟飯「………ふがっ…!?息苦しい…」

 

三玖「おはよう、悟飯」

 

悟飯「………!!!?」

 

三玖「ふふっ、可愛い……」

 

悪戯な表情を向ける三玖を見て、悟飯は若干困惑してしまうが、今は羞恥の方が勝っていた。

 

悟飯「は、離して!!」

 

悟飯は無理矢理三玖を引き剥がして少し離れた。

 

三玖「ごめんね?意地悪するつもりはなかったんだけど」

 

悟飯「………謝る気がないでしょ……」

 

三玖「さあ?」

 

曖昧な返事に腑に落ちない悟飯だったが、お腹が空いたのでチチが既に作っているであろう朝ご飯を食べるために部屋を出てリビングに向かう。

 

チチ「あっ!おはよう2人とも。朝ご飯はもうできてるだぞ」

 

三玖「ごめんなさい。昨日は押しかける形になってしまって………」

 

チチ「気にすることはねえだよ!ささ!さっさと食べた食べた!」

 

三玖「…………あれ?そういえば悟空さんは?」

 

悟空は生き返ってからは再び孫家で住むことになっていたはずだ。にも関わらず悟空の姿が見えないことに違和感を覚えた三玖はチチに質問する。

 

チチ「ああ、悟空さなら今頃畑を耕しに行ってるだよ。そろそろ帰ってくると「バタン」」

 

悟空「ただいまチチ!!オラ腹減っちまったぞ!!」

 

チチ「んだ!ちゃんと働いてるみてえだけど、そのまま家に入るのはやめてけろ」

 

作業着が土で汚れている悟空を見て満足そうな顔をするチチだが、土だらけで家に入られると大惨事なので、一旦それをどうにかしろと言う。そんな夫婦を片目に悟飯と三玖は朝食を味わっていた。

 

三玖「…………美味しい」

 

悟飯「モグモグ……おかわり!!」

 

三玖「はやっ………」

 

悟飯の食欲に驚いた三玖はつい感想をこぼしてしまった。それを気にすることなく悟飯は次々と食べ物を口に運んでいった………。

 

 

 

 

朝食を食べ終え、身支度も済ませた三玖を悟飯が送り届けることにした。三玖はチチと悟空に別れを告げ、まだ起きていない悟天にもよろしく伝えておいて下さいと言うと、悟飯と共にその場を発進した。

 

ちなみに、三玖のリクエストで筋斗雲に乗っている。

 

三玖「こ、これが筋斗雲っていうものか…………ほ、ほんとに落ちないよね?」

 

悟飯「大丈夫だよ。万が一落ちたら僕が助けるからさ」

 

三玖「…………ずるい」

 

悟飯の不意打ち気味な言葉に顔を少し赤くする三玖だが、なんだかんだで相乗り筋斗雲を堪能することができた。

 

 

 

 

 

 

三玖「今日はありがとね、悟飯」

 

悟飯「ううん。こっちも楽しかったよ」

 

三玖「………もうすぐ学校が始まるね」

 

悟飯「そうだね……。そうなるとまた家庭教師も本格的に再開かな?」

 

三玖「…………学園祭も近いよね」

 

悟飯「……………そうだね」

 

学園祭というワードが出ると、三玖も悟飯も真剣な表情に変わる。学園祭と言えば、学生が催しの準備をして周辺住民や受験を考えている中学生をもてなす行事であり、学生自身も楽しむ行事であるが、悟飯達の間ではそれとは別の特別な意味を含んでいた。

 

悟飯「(……もうすぐ、僕は答えを出すことになる。僕の答えはもう決まっている。だからこそ、ちょっと緊張してきたな…………)」

 

そんな思いを胸に、悟飯は再び孫家に帰宅し、勉強を再開するのだった……。

 

 

 

 

 

 

 

時は少し進み、2学期が始まった。旭高校の2学期のメインイベントと言えば学園祭であり、その話で持ちきり……

 

 

 

「孫ッッッ!!!!お前が魔人ブウを倒したのか!!!?そうなのか!!!?」

 

「上杉学級長!!あんた無愛想なやつだと思ってたけど見直したぜ!!!」

 

「凄いよ孫君!!地球の英雄だね〜!!!」

 

「わ〜!!よく見ると学級長って隠れイケメンじゃない!!!?」

 

先日の件によって、悟飯と風太郎は一躍有名人になってしまった。ドラゴンボールが復活するまではあと3ヶ月程の時間が必要である為、まだ人々から魔人ブウに関する記憶を削除できていないのだ。その為悟飯達も最前線で戦っていることを知っている旭高校生にとって、悟飯と風太郎は身近にいる大英雄のような存在となってしまった。

 

風太郎「だからなんだ?」

 

「「「「えっ?」」」」

 

風太郎「最前線に立ってたからなんだって言うんだ?そんなことどうでもいいだろう?大事なのは脅威が去ったか否かだ」

 

そして、肝心の風太郎はいつものように塩対応。これが原因で風太郎は交友関係が狭いのだが………。

 

「えっ?学級長かっこよすぎない?」

 

「えー?ただカッコつけてるだけじゃないの?」

 

「学級長は今までのキャラを見るにそんなやつじゃないでしょ。あれは素でしょ」

 

「えっ?だとしたらかっこよすぎない?」

 

しかし、状況が状況だったため、逆に好感度が上がる状態だ。余談だが、悟飯は周りに群がる生徒を退かすのに大分時間がかかった。

 

そんな状態が1ヶ月近く続き、いつの間にか学園祭の準備をする期間に突入していた。

 

二乃「魔人ブウの脅威が去ってもう1ヶ月経つのね…………」

 

三玖「時の流れは早い」

 

二乃達は窓から学園祭の準備をしている学生達を眺めながらそう呟いた。

 

四葉「放課後なのに賑わってるね〜」

 

二乃「まだ先なのに随分気合が入ってるわね」

 

三玖「去年は転校したばかりだったからバタバタしてたけど、準備に参加できるのは嬉しい」

 

二乃「そうね〜………」

 

その後二乃は気怠げそうに入試判定の話をした後に悟飯と同じ大学に行けることを夢見ていたが、悟飯が目指す大学は西の都のハイレベルな大学であるため、今の二乃では到底無理な話だった。その現実を三玖にツッコまれていた。

 

二乃「あーあ。これが終わったら受験まっしぐらなのね……」

 

四葉「でも、うちのクラスはそもそも何をするんだろうね?」

 

一花がそう問いかけた時、担任に四葉が呼び出された。職員室で話を聞くとどうやら学園祭での屋台決めについてもう1人の学級委員である風太郎と話してほしいとのことだった。用事が済んだ四葉は職員室を後にするが、同時に五月もそこを退出するところに遭遇した。

 

四葉「五月!ここで何してるの?」

 

五月「四葉。奇遇ですね。私は授業で分からないところがあったので先生に質問を……。四葉は?」

 

四葉「私は学園祭のこと!学級長中心で色々決めてくれってさ」

 

五月「そういえばまだ未定でしたね。そういえば学級長って………」

 

四葉「ああ………。上杉さんはこういうお祭りはどうなんだろうね……?」

 

どうやら三年生は屋台で食べ物を提供する伝統があるという話を五月にするが、なんと食べ物関連の話なのに五月は用事があるとその場を後にした。

 

四葉「五月が食いつかないなんて珍しい……」

 

地味に失礼なことを考えながら教室に荷物を取りに行く四葉。扉を開けようとするとそこには、勉強をしている風太郎がいた。何故か咄嗟に隠れてしまったが、頭隠してリボン隠さずとはよく言う………言わないが、それで風太郎にバレてしまった。

 

風太郎「なんか用か?」

 

四葉「お取込み中すみません…えっと……」

 

風太郎「なんだ?用件があるなら早く言ってくれ。今は少しでも時間を無駄にできない」

 

四葉「う、上杉さんに用なんてありませんよーだ!!」

 

風太郎「はあ?なんだあいつ?」

 

四葉は咄嗟に教室を後にしてしまった。その理由は突如ドキドキしてしまったから……。何故今まで普通に接していたのに急にそうなってしまったかと言うと、先日一花に言われた一言が原因だった。

 

『四葉のやりたいようにやりなよ』

 

この言葉を頭の片隅に置いていた四葉は風太郎を目の前にしてその言葉を思い出してしまったのだ。

 

風太郎「どうしたんだよ」

 

四葉「ぬわっ!!?」

 

考え事をしているところに突然声をかけられた為に、体をびくつかせながら驚いてしまった。

 

四葉「う、上杉さん!」

 

風太郎「お前様子が変だぞ?屋台のことを話し合わなくていいのか?」

 

四葉「………えっ?さっきは時間を無駄にできないって…………」

 

風太郎「そうだよ。だからこそだ。学園祭は俺達にとって最後の行事だろ?やるからには徹底的に楽しむと決めた!!!

 

ついてこい!!去年の屋台のデータを聞き込みに行くぞ!時間は有限だから、いくらあっても足りない。頼りにしてるぞ」

 

風太郎の意外な言葉に、四葉は段々と明るいものに変わって元気よく返事をした。四葉は風太郎に頼りにされていることが嬉しくなり、その後の聞き込み作業はかなり急ピッチで進められたとか………。

 

 

 

 

 

 

そして翌日…。クラスで屋台決めをすることになった。二乃がたこ焼きに一票を入れるも他の女子の反応は芳しいものではなかった。そこで三玖がソワソワしていることに気づいた風太郎が彼女を指名すると、三玖はパンケーキと答える。これは去年までのデータにはないものだが、女子からは高評だった。褒められ慣れない三玖は顔を下に向けて顔を隠すが、若干嬉しそうな顔をしていた。

 

そして、四葉はお得意のお人好しが発動し、質問に丁寧に答えたり、招待状が欲しいと言われれば用意し、出し物の客の心配をしている人には所定の場所にチラシを貼れることなど、手際よく教えていた。四葉がこんなに頼られる理由は学級委員であるからだ。だが風太郎のところにはそういった問い合わせがあまり来なかった。その疑問を口にした風太郎に三玖が『人望…』と小さな声で答える。そんなやり取りに悟飯が苦笑していた。

 

二乃「にしても屋台ねぇ…。何を作るにしても腕がなるわ」

 

三玖「うん。腕がなる」

 

二乃「ちょっ!!あんたが作る気!?そんなことしたら周辺住民同時食中毒だわ!!!」

 

三玖「私だって上達してる!」

 

二乃の失礼な物言いに三玖は頬を膨らませながら抗議の視線を送ると同時に……。

 

三玖「それに二乃もいる」

 

二乃「……!!」

 

三玖「なら安心」

 

……と、不意打ち気味な台詞を述べる。

 

四葉「ふー……。お待たせ〜」

 

三玖「お疲れ様」

 

二乃「あんた働きすぎじゃない?」

 

四葉「えへへ……。最後のイベントですもんね。1ミリも悔いが残らないようにしましょうね!」

 

そう言って四葉は満面の笑みを風太郎に向ける。風太郎は四葉の顔を見るなり前髪をいじりながらそっぽを向いてしまった。

 

悟飯「(……あれ?照れてる……?)」

 

悟飯は風太郎のそんな仕草に若干疑問に思うところがあったが、あまり深く考えないことにした。

 

 

 

 

 

そして更に翌日。パンケーキ派とたこ焼き派が同人数いたので、今度こそ2つに絞って多数決を取ったのだか……。

 

 

「パンケーキでいいじゃん!このままだと屋台のメニューが決まらないよ!」

 

「たこ焼きだって!決まらねえのは女子のせいだろ!」

 

「いい加減に諦めなさい男子!!」

 

「去年のデータ見ただろ!たこ焼きが嫌いな日本人なんて存在しねえんだよ!!ね?二乃さん!!」

 

「フワッフワなパンケーキ食べたことない?みんな大好きなんだよ!ね?三玖ちゃん!!」

 

なんと、未だにパンケーキにするかたこ焼きにするかで意見が分かれていたのだ。男子的には少ししょっぱい感じの定番なもので攻めたいが、女子はちょっとおしゃれで可愛い食べ物にしたいといったところだろう。

 

「あれ?二乃ちゃんもパンケーキ好きなんでしょ?なんでそっちの味方するの?」

 

「え?嘘ですよね二乃さん!?」

 

いつまで経っても終わらない争いに二乃が痺れを切らしたようで………。

 

二乃「あーもう!!仕方ないでしょ!!!」

 

二乃は机を叩きながら立ち上がってこう続ける。

 

二乃「私が最初に提案したんだもの!最後まで責任を持つわ!それと食べるのと作るのとでは話が別!!そのフワッフワなスフレパンケーキ、私だってたまに失敗するんだから!!」

 

こうして、これ以上の争いは無駄という結論になり、男子はたこ焼きで女子はパンケーキをやることになった。

 

悟飯「はぁ………。まさかこんなことでクラスが二分されるなんてね……」

 

五月「そ、そうですね………」

 

偶々隣にいた五月に話しかける悟飯だが、五月が妙にソワソワしていることに気付いた彼は問いかける。

 

悟飯「ねえ、何かあったの?やっぱりクラスが二分しちゃったことが気になる?」

 

五月「いえ、確かにそれも気になるんですが、その…………」

 

悟飯「………おや?」

 

そう。今日は全国模試の結果が返ってきた日でもあるのだ。悟飯は五月がこっそり持っている紙に気づき、芳しくない成績をとってしまったのかと納得する。

 

悟飯「あはは……。もしかして、悪かったの?」

 

五月「うううっ……」

 

五月は唸りながらこっそりと悟飯に結果を見せた。家庭教師を受け始めた頃に比べたら大分成績が上がってるとはいえ、五月の目指す大学はそれなりのレベルであり、今の五月ではD判定と出てしまったのだ。

 

五月「このままではお先真っ暗ですよ……」

 

悟飯「でもまだ2ヶ月以上はあるんだから、諦めるにはまだ早いよ」

 

五月「ですが、先生には一度親に相談した方がいいと………」

 

悟飯「……なるほどね。それで、相談は………し辛そうだね……」

 

五月「ええ……。お母さんやお父さんにはこれ以上心配をかけたくないんですよ……」

 

悟飯「……!」

 

悟飯は五月の発言に少し驚いた。というのも、マルオの優しさというものは分かりづらいもので、五月達にはそれが伝わってないものとばかり思っていたからだ。だが、五月はどういう経緯かは不明だが、マルオがしっかり自分達のことを心配してくれていることに気づいたようだった。

 

悟飯「………それじゃ、僕が教えようか?」

 

五月「えっ……?いえ、それに越したことはないのですが……。孫君は自分の勉強があるのでは………?」

 

悟飯「あはは……。僕の方は少し余裕があるから平気だよ。それに自分の勉強と人の勉強を両立できないようじゃ、学生のうちに家庭教師なんて引き受けることはできないよ」

 

五月「孫君………」

 

五月は悟飯の優しさに今にも泣き出してしまいそうになるが、ここは教室。クラスメイトもまだそれなりに残っている状態で泣いては非常に恥ずかしい思いをするのでなんとか堪えた。

 

五月「そうです!近日、私がお世話になっている塾に有名な講師による特別教室が開かれるらしいのですよ!孫君も行きます?」

 

悟飯「有名な講師………?」

 

悟飯は家庭教師や独学で勉強してきたとはいえ、塾というシステムを経験したことはなかった。最初はお金の心配もして断ったのだが、その時だけ特別に無料だということ伝えられると、好奇心に負けた悟飯は五月と共にその特別授業を受けることにした。

 

風太郎「………なあ、悟飯」

 

悟飯「うん……?」

 

 

 

 

 

悟飯は風太郎に呼び出されて何事かと思うと、どうやら風太郎は三玖と二乃が喧嘩しているのではないかと心配しているらしい。一応二乃はたこ焼き派の代表、三玖はパンケーキ派の代表ということになっており、普段からよく言い合いをする2人のことなので、そのような心配も当然かもしれない。つまり、風太郎1人ではその喧嘩を止められないが、悟飯が来てくれればどうにかできそうということだ。

 

悟飯は2人が仲悪くしている様子がなかったので大丈夫だろうとは思っていたが、念の為様子を見に行くことにした。2人の気を頼りに移動していると、仲良くベンチに座って会話をしている2人が見えた。

 

悟飯「ほら、心配する必要なんてないって言ったじゃん」

 

風太郎「………いや、あれ」

 

風太郎が指差すと、何やら二乃のことを睨んでいる女子が3名確認できた。二乃も彼女達に気づいて立ち上がるのを見て、悟飯は衝突を恐れて咄嗟に声をかけた。

 

悟飯「あっ!二乃さんに三玖さん!!そんなところにいたんだ!探したよ………」

 

二乃「えっ?」

 

三玖「悟飯にフータロー……?どうしたの?」

 

風太郎「……いや、一緒ならいいんだ。まあ今は忙しいが、せっかくの学園祭、楽しんでいこうぜ」

 

それだけ言って、風太郎と悟飯は足早に去って行った。

 

二乃「えっ……?一体何の用だったのかしら…………」

 

ふと女子達がいた方向を見ると、いつの間にかいなくなっていた。二乃としては真正面からとっとと来てくれた方が良かったので、溜息をついてしまう。

 

三玖「……二乃、悟飯に用があるから先に行ってて」

 

そう言うと、三玖は彼女なりの全力疾走で悟飯を追いかけて行った。

 

 

ちなみに、五月が二乃にもほぼ似たような話をしたのはまた別のお話。

 

 

 

 

 

そして更に別の日。またしても屋台決めは平行線を辿る一方で、このままでは本当に2つともやることになってしまいそうだ。そのことに四葉が頭を悩まして、風太郎にアドバイスをもらおうとするが、風太郎がいないことに気づく。

 

四葉「二乃ー?上杉さんどこ?」

 

二乃「あー。上杉ならさっき出ていくのを見たわ。こっちよ」

 

二乃の案内に従って四葉は後ろからついて行く。

 

四葉「そうだ!この前言ってた招待状を用意してるけど………」

 

二乃「………そうね。でも1つだけでいいわ」

 

四葉「えっ…?1つって…………」

 

二乃「パパを呼ぼうだなんて、一時の迷いだったわ。どうせ来るはずもないもの。最近はお母さんがいるから帰ってくるようになったけど、いっつも影でこそこそしてるんだわ」

 

四葉「ははは……。手厳しい…………」

 

二乃「でも………あっ」

 

二乃が続けようとした時、例の女子達が階段下にいた。お人好しの四葉を巻き込むわけにもいかず、二乃は咄嗟に隠れた。四葉もなんとなく察して同じように隠れる。

 

風太郎「………お前らの意見はよく分かった」

 

どうやらその女子達は風太郎と話していたようだ。

 

二乃「う、上杉……?」

 

 

風太郎「二乃は女子なのに男子組の中にいるのはおかしい……。あんな媚を売って男子の誰かを狙っているに違いない……か………」

 

自分のいないところで根も歯もないことを言われた二乃はイラついて前に出ようとするが、冷静な四葉に止められたことによって正気を取り戻す。

 

「そ、そう!もしその相手が祐輔だったら……。二乃ちゃんが相手だなんて、勝ち目がないよ…………」

 

二乃「(ユウスケ……?ああ、武田のことか…………)」

 

二乃は一瞬誰のことか分からなかったが、武田の名前はそんな感じだった気がするということを思い出すが、心の中であり得ないと返答する。何故なら二乃には既に意中の相手がいるのだから………。

 

風太郎「………勘違いだ」

 

「えっ?どうして……?」

 

風太郎「二乃の意中の相手はたこ焼き派にはいない。だから安心してくれ」

 

「はぁ!!?なんで上杉君にそんなことが分かるの!!?信じられないんだけど!!!意味分からない!!」

 

風太郎「………屋台のメニューを決める時のこと、覚えてるか?ただ1人、たこ焼きかパンケーキかを決めるのに悩んで決められなかったやつ」

 

その言葉を聞いて、両隣にいる女子2人は『やっぱりね』といった顔をするが、真ん中の子は納得がいってない様子。そこで風太郎は内心二乃に謝りながらこう告げた。

 

風太郎「に、二乃の意中の相手は悟飯だ……。だからお前のライバルとはなり得ない……。仲良くしてやってくれ」

 

「あ〜。やっぱりね」

 

「えっ!!?やっぱりって何!!?」

 

「だから言ったじゃん。二乃ちゃんは絶対武田君は狙ってないって。というか二乃ちゃんが孫君の腕に抱きついてるとこ見たんだよね私」

 

「なんでそれを先に言わないの!?」

 

「いや、言ったけど『祐輔が取られちゃう』って聞いてなかったじゃん…」

 

真ん中の子はまだ納得いってない様子だったが、両隣の友達に説得されてようやく納得してくれたようだ。

 

二乃「全く……。何勝手に言いふらしてんのよ。別にいいけど」

 

四葉「………きっと陰でこそこそするにも理由があるんだよ、二乃」

 

そう言われた時、二乃は少し昔のことを思い出した。マルオと出かけた時、パンケーキの写真を見た二乃は懐かしさからパンケーキを食べたいと言った。だがマルオは何も言わずに歩いてしまう……。そんな塩対応を受けた二乃はショックを受けるも、家に帰るとパンケーキのレシピと材料、用具一式が揃えられていた。

 

今にして思えば、あれはパパなりの気遣い…。いつでも好きな時にパンケーキを食べられるようにする気遣いだったのかもしれない。二乃はそう思った。

 

二乃「……四葉。招待状の文面を考えておいて」

 

四葉「……!うん!!」

 

 

 

 

 

 

更に別の日…。三玖はいつもより服装に気を遣ってルンルン気分でマンションのロビーから出てきた。今日は先日悟飯と約束した日……。つまり、悟飯と出かける約束をしていたのだ。これは三玖なりの思惑もあるのだが、それは後で語ることとしよう。それとほぼ同時刻……。マルオの仕事部屋では……。

 

 

「おーお。いい部屋だな院長さんよ。こんな部屋が用意されてちゃ、家に帰りたくなくなる気持ちも分からなくもないぜ」

 

マルオ「…お前の入室を許可した覚えはない。すぐに出て行け、上杉」

 

院長との面会人としては似つかわしくない格好をした人物、上杉勇也が入室してきた。いつものように砕けた口調でマルオに話しかけるところを見るに、仕事は関係ないことが伺える。

 

勇也「おいおい、随分水臭えじゃねえか。いい情報を知らせに来てやったのによ」

 

マルオ「………?」

 

勇也「………()()()が来てるぜ。数十年ぶりだ。同窓会しようぜ」

 

マルオ「あいつ………?」

 

勇也「ほれ」

 

いまいちな反応を見せるマルオだったが、勇也が取り出したチラシ……正確には、そこに載っている顔写真と名前を見て目を見開いた。

 

マルオ「…………なるほど。くれぐれも零奈さんや娘達には悟られないようにしてくれ」

 

勇也「その打ち合わせも兼ねてここに来たんだよ」

 

マルオ「………ならば彼も呼んでいいかね?」

 

勇也「彼……?まあ、お前が信用できるやつなら呼んでくれても構わんが……」

 

勇也の了承を得ると、マルオは携帯電話を取り出してある番号を打って電話をかける………。

 

 

 

 

 

 

 

悟飯「さーて、約束の時間までは余裕ありそうだな……。そろそろ三玖さんを迎えに行くとするか……」

 

今日、孫悟飯はデートする。と言っても、まだ誰とも交際関係になっているわけではない。三玖に出かけたいところがあると言われ、悟飯も付き添う形になったわけだ。そろそろ出発しようとしたその時……。

 

悟飯「……?マルオさんだ?」

 

マルオから電話がかかってきたのだ。

 

悟飯「はいもしもし?どうされました?」

 

悟飯はワンコール以内に通話ボタンをして電話に出た。

 

『急にすまないね、孫君。余程大事な用事があるなら後回しにしてくれて構わないが、もしそうじゃないなら今すぐに僕の病院に来てほしい。受付で君の名前を名乗り、僕に呼ばれていると伝えてくれ。職員にはこちらから伝えておく』

 

悟飯「えっ?いや、要件はなんですか…?」

 

マルオの急な要請に若干困惑した悟飯は要件を聞く。すると……。

 

『娘達のボディガードだ』

 

悟飯「……分かりました」

 

『理解が早くて助かる。それでは待ってるよ』

 

そう言うと、マルオは電話を切った。悟飯も電話を切り、すぐさま飛び立った。

 

悟飯「あちゃ〜…。三玖さんには申し訳ないけど、少し待ってもらおう。多分そこまで時間かからないはずだし……」

 

悟飯は三玖に遅れる可能性があることを告げ、文面を打ち終わって送信すると、携帯電話をしまって全速力で目的地に向かう……。

 

 

 

 

 

マルオの指示通りに受付で自分の名前を名乗った悟飯は、受付係に案内されるがまま歩いた。エレベーターに乗っていくつかのフロアを上がり、エレベーターを降りる。少し歩くと少し立派な扉があった。

 

「こちらになります。私はこれで失礼いたします」

 

悟飯「ありがとうございました」

 

悟飯は一礼を述べた後、その扉を3回ノックした。

 

「入りたまえ」

 

入室許可を得た悟飯はゆっくりと扉を開けた。

 

悟飯「失礼します……

 

必要最低限の声でそう言った悟飯は、今度は扉をゆっくり閉めた。

 

勇也「おお!?なんで悟飯君がここにいるんだよ!?」

 

悟飯「えっ!?勇也さん!!?」

 

マルオ「孫君、急に呼び出してすまないね。あともう1人来るから、それまで待っててもらえないかい?」

 

悟飯「分かりました」

 

まだ時間があることを把握した悟飯は、勇也が何故ここにいるかを聞くが、それも含めて後で話すと言われる。逆に勇也も何故この場に悟飯を呼んだのかマルオに聞いたが、これまた同じように返答された。そして……。

 

ガチャ…

 

「うーっす。お久」

 

マルオ「下田。ノックくらいしろ」

 

下田「別にいいじゃねえかよ、そんくらい。私達の仲だろ?」

 

勇也「だよな〜?堅苦しいんだからよマルオは。なあ、悟飯君?」

 

悟飯「あ、あはは………」

 

マルオ「上杉も孫君を少しは見習ったらどうだい?」

 

勇也「うっせい!これが俺の生き方だい!!」

 

下田「……それより、その子は…?」

 

下田と呼ばれる女性は悟飯の存在に気付くとその疑問をマルオにぶつける。全員が揃ったとのことで、マルオは説明を開始した。

 

マルオ「まず初めに孫君から紹介しよう。彼は孫悟飯君だ。旭高校3年生にして、常に学年1位に君臨し、先日返却された全国模試でも1位を獲得した優等生でもあり、娘達の家庭教師兼ボディガードだ」

 

下田「………いやいやちょっと待て?情報量多すぎやしないか……?」

 

ある程度悟飯のことを知っている勇也は納得する素振りを見せたが、全く知らない下田は頭から少量の煙が漏れ出そうな程頭を回転させても理解が追いつかなかった。

 

マルオ「……彼は娘達の家庭教師。そしてボディガードでもある。これだけ覚えてくれればいい」

 

下田「いや、そこは分かるんだけど、この子五月ちゃんと同級生だろ?その子がなんでボディガードを……?」

 

勇也「ガハハッ!!そいつは魔人ブウとの戦いで最前線に立ってた、謂わば戦闘のプロだよ」

 

下田「はぁ!!?マジで!!!?いつどこでそんなやつと知り合ったんだよ!!!?」

 

下田は食い気味に悟飯を見るが、当の本人は苦笑いを浮かべる他ない。

 

マルオ「……言っとくが、これは他言無用だ。孫君は落ち着いた生活を望んでいる。くれぐれもそれを妨害しないように」

 

下田「それは分かってるよ。んで、今日の要件は?わざわざ私達と会う為だけに呼び出したわけじゃないんだろ?」

 

そう言うと、マルオは一枚の紙を悟飯と下田に見せる。

 

マルオ「……今日はこの件で少し話し合いたい」

 

下田「………ああ。あいつが来るって話だな………」

 

悟飯「………おや?」

 

悟飯はそのチラシを見て、どこかで見たことがある気がすると感じる。確か……。

 

悟飯「ああ……!!確か五月さんが興味を示していた特別講義の……!!それがどうかしたんです?」

 

下田「……何っ?五月ちゃん、この特別講義のこと知ってるのか?」

 

悟飯「えっ?ええ……。なんでも、この無堂仁之助という人は相当有名な講師らしく………」

 

勇也「………そこなんだよ。問題は」

 

悟飯「えっ??」

 

事情を一切知らない悟飯は、勇也の言葉に首を傾げる。色々思考して予測するが、何故わざわざ集まるのか意味が分からなかった。だが、次のマルオの言葉を聞いて悟飯の頭の中にある数々の考えが吹き飛んだ。

 

マルオ「………彼、無堂仁之助は、零奈さんの元夫であり、彼女達の実の父親だ」

 

悟飯「………………えっ?」

 




 前半は前回からの引き続きの三玖メイン回です。他のヒロインに比べたら割とあっさりしている気がしますが気にしないでいただけると助かります。戦いが終わったばかりなので三玖なりに悟飯を気遣っているんです。そして中盤はほぼ原作沿い、後半は原作を軸としたオリジナル展開ですね。無堂に関しては詳細は出ていませんが、あの性格的に悪事働いてそうだなぁという妄想の元勝手に付け加えたものです。

 こうして最終章を書き記して思ったのが、この作品も終わりが近いんだなぁということ。始めたての時なんかこんなに戦闘入れる予定なかったけど、読者の意見に流される形で書いたらなんかいい感じに書けたんですよねぇ。私は読者に展開を任せる方が向いてるんですかね?

 そんなことはさておき、悟飯の花嫁は実は最初から決めていたと話していました。そして割と分かりやすい原作にはない、この作品特有の伏線を仕掛けていたりします。皆さん過去回を読み返す機会があったら見返してみてください。花嫁が判明した後に伏線の答え合わせ的なものをするつもりですが、多分分かったらすんなり納得できると思います。

 私のごとぱずのIDを貼っときます。理由はただなんとなくですw。追加したい方はご自由にどうぞ。
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第96話 学園祭

※五つ子それぞれの悟飯に対する心情

一花:最初は可愛い子だと思っていたけど、実はとんでもない大物だったことに驚いている時期があった。とはいえ、妹達に優しく接してくれる悟飯を見て、彼なら妹達を守ってくれると信頼している。
 悟飯に対して恋愛感情は持ち合わせていないが、後述する3人が悟飯に惹かれた理由はよく理解している。

二乃:最初は風太郎と共に姉妹の輪に土足で踏み入る不届き者として見ていた。ところがいつもキツく当たっているにも関わらず悟飯は自分に優しく接してくれることをいつも疑問に思っていた。それと同時に少しずつ自分の心が彼に溶かされていることに気付いていなかったが、後々気づくことになる。そして彼が自分の初恋相手であることが分かり、自分の気持ちに気づいた後は猛アプローチを仕掛けている。
 先述の通り、悟飯に対して恋愛感情を持ち合わせている。

三玖:最初は何故か同級生が家庭教師をする変な男の子として見ていた。要するにほぼ無関心である。だが彼と接していくうちに、彼の優しさに心が溶かされてからは少しずつ、確実に彼に惹かれていった。最初は控えめなアプローチだったが、ライバルが増えるとどんどんネガティブ思考に走っていた。しかし、悟飯の素直で優しい性格のお陰で他の姉妹同様に積極的にアプローチできるようになっていった。
 二乃と同じく悟飯に対して恋愛感情を持ち合わせている。

四葉:風太郎と唯一友人関係だった悟飯には興味深々だった。接していくうちに物凄く優しく、頼りになる人だと分かった。風太郎の良さを理解してくれている彼には感謝の気持ちもあった。ひょんなことから過去に風太郎と出会ったことが彼にバレた後は色々とサポートしてもらっていて頭が上がらない。原作よりも四葉が前向きになれたのは孫悟飯のお陰だと言っても過言ではない。今は彼の弟子として五つ子姉妹の中で唯一気を扱える武闘派ヒロイン。
 悟飯に対して恋愛感情を持ち合わせていないが、ある意味一番気軽に物事を相談することができる、そんな信頼できる存在である。しかし、風太郎との過去の出会いがなければ自身の初恋は悟飯だったかもしれないと冗談半分で言ったことがある。もしかすると、彼女が悟飯に惹かれる世界線もあるのかもしれない……。

五月:初対面で勉強を教えてとお願いしたら快く引き受けてくれた悟飯は第一印象が良かった。しかも他の男子とは違って、自分や姉達に対していやらしい視線を一切送ることもなかったため、男に警戒する傾向のある彼女だったが、悟飯には人生で初めて警戒を解いた相手である。勉強の理解が遅くても優しく教え続けてくれた彼に段々と惹かれていたが、彼女自身はその感情に気づくことはなかった……。はずだった。
林間学校でサイヤ人に誘拐されそうになり、絶体絶命のピンチを迎えていた五月だったが、自分の危険を顧みずに助けに来てくれた悟飯を見て、自分の中に存在する恋愛感情に気づいた。そこからは想いを抑え切ることができず、本人の目の前で爆発させてしまったこともあった。それが悟飯が五つ子を恋愛対象として見るようになるきっかけとなったので、地味にとんでもないことをしているムッツリ系ヒロイン。大食い、真面目という観点からも悟飯とは気が合う。
 先述の通り悟飯に対して恋愛感情を持ち合わせている。先述した二乃、三玖に比べて一番危ない獣扱いをされており、二乃と三玖が(悟飯に頼まれたわけではないけど勝手に)悟飯の貞操を守ろうと必死になってるのはまた別のお話。ちなみに余談だが、ある世界では悟飯が五月にパックリ食われてたりする(意味深)。



マルオの一言を聞いた悟飯は、一瞬頭が真っ白になってしまった。

 

悟飯「………えっ?父親って……」

 

マルオ「おや?僕と娘達が実の親子関係ではないことを伝え損ねていたかな?」

 

悟飯「いえ、それは五月さんから以前聞きましたけど………。確か、零奈さんのお腹の中にいる子が五つ子だと判明した瞬間に行方をくらましたと……」

 

下田「……それ、五月ちゃんから聞いたのか?」

 

悟飯「えっ?えぇ……」

 

下田「そうか!お前が例の男の子か!!」

 

悟飯「………はい??」

 

下田「五月ちゃんはさ、いっつも君のことを話してたよ!名前は言ってなかったけど間違いなく君だな!うん!!この前聞いたけど、君達同じ屋根の下で一夜を共にしたんだってな!!五月ちゃんは恥ずかしがって教えてくれなかったからこれだけは教えてくれよ!!ヤったのか!!?ヤってないのか!!!?さあ白状しろ!!!」

 

悟飯「なんなんですかあなた!!今は真面目な話をしてるんですよ!!?」

 

下田「すんません………」

 

高校生に怒られるいい年をした大人というなんとも奇妙な構図が生まれた。悟飯の言い方がキツくなってしまったのには理由が2つある。一つは悟飯自身が恥ずかしいから。もう一つは、実の父親のことについて知りたいから、である。

 

マルオ「全く、身の程を弁えろ下田。孫君のその認識で間違いないよ。そして彼は私達の先生でもある」

 

悟飯「えっ……?じゃあ………」

 

勇也「おう。下田もマルオも俺と同じクラスだったからな。たった1年間だけだけどな」

 

悟飯「な、なるほど………」

 

マルオ「……彼、無堂先生のことをもう少し詳しく説明するとしようか……」

 

 

無堂仁之助…。

 

教員界隈では、講師として招かれるほどの腕を持つ天才。無堂に教えられた者はたちまち成績が上がるという都市伝説的な噂までもが流布されているらしい。意欲のある生徒には根気強く教え、全力でサポートする……。それを聞く限りでは聖人君子にも聞こえる。

 

だが、一方で彼は教員界隈ではある種の権力のようなものを有しているようで、裏ではあまりよろしくないことをしているとのことだ。その詳細は不明だが、要するに善人とは呼べない存在であることを、悟飯は理解した。

 

マルオ「……このような感じだ。そして君にはボディガードを頼みたい。君のできる範囲で構わないから、彼と娘達を会わせないようにしてほしい。彼が下田の勤める塾で講師として来ているのは恐らく偶然ではない。娘達に何かしらアクションを起こそうとしているのだろう…………」

 

悟飯「………分かりました。僕にできることなら……」

 

下田「…………そうなると、まずは五月ちゃんにどう説明するかだな……」

 

悟飯「……そうか。あなたが五月さんが行っている塾の………」

 

下田「そういうことだ。塾では五月ちゃんに勉強をさせたり、教えさせたりしてるもんだ」

 

悟飯「………では、塾の中ではあなたが一番信用されている……ということですよね?」

 

下田「あ、ああ……。そうだけど…」

 

悟飯「………なら、こういうのはどうでしょうか?」

 

悟飯が出した案…。それは、簡単に言うと特別講義が中止になってしまったと嘘の情報を五月に伝えることだ。だが悟飯だけだと塾に確認を取られてはアウト。そこで下田の出番だ。塾関係者の下田から中止の旨を伝えられれば、五月も信用するだろうという考えだった。

 

勇也「悟飯君、結構悪いこと考えるじゃねえか?」

 

悟飯「あ、あはは………」

 

下田「五月ちゃんにはちょっと申し訳ないが、そうした方が良さそうだな…。にしても流石全国模試1位。頭がよくキレるじゃねえか」

 

悟飯「ど、どうも………」

 

五月の件に関してはとりあえず対策を検討できたので、次は全体的な話に移る……。

 

勇也「だが、四葉ちゃん達が五つ子ってのは高校ではよく噂になってるぜ?その噂を嗅ぎつけてやってくるかもな…………」

 

悟飯「……となると、一般人でも気軽に入れる学園祭が狙い目かも……」

 

マルオ「ほう……。この短時間でその結論に至るとは流石だよ。日の出祭の時には上杉にも協力を依頼している。僕と下田も時間さえ作れればそちらに向かうつもりだ。ただ一番娘達の近くにいることができるのは君だろう。もしもの時は、任せたよ?」

 

悟飯「はい!!」

 

勇也「………そういや、今日は随分おしゃれしてないか、悟飯君?」

 

悟飯「えっ?ま、まあ……。今日は三玖さんと出かける予定なので………」

 

下田「何!?三玖ちゃんて五月ちゃんの姉だよな!!?まさかデートか!?付き合ってるのか!!!?」

 

悟飯「違いますよ。ただ三玖さんが話し合いたいことがあるそうなので……」

 

マルオ「……孫君。くれぐれも娘達とは節度ある付き合いを頼むよ?」

 

悟飯「もちろんですよ。彼女達に襲われないように気をつけます」

 

悟飯は最後だけ小声で返事すると、院長室を後にした。

 

勇也「さて、俺達はもうちょっと話し合うとするか………」

 

下田「だな。できれば五月ちゃん達と接触させたくねえけど…………」

 

マルオ「………ああ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

うひゃ〜…!!マルオさん達と話をしていたら大分遅れちゃったぁ…!!三玖さん怒ってるぞ〜……!!!

 

三玖「………悟飯、遅い」

 

悟飯「ご、ごめん三玖さん!!!急にマルオさんに呼び出されちゃって……」

 

三玖「………お父さんに何か言われた?もしかして、私達との距離感のこと?」

 

悟飯「いや、そういうのじゃないよ。ほら、魔人ブウの一件があったでしょ?その給料のことで話があるって言って…………」

 

三玖「ああ、そういう」

 

今日は別件だけど、先日この話をしたのは本当だ。ただ、三玖さんには今日のことを伝えるべきか否か迷っている。三玖さんとしては、自分達と母親を見捨てた実父のことを思い出したくないのではないだろうか……?不用意に伝えることはないかな………。

 

悟飯「それじゃ、行こうか。待たせちゃったお詫びに今日は奢るよ」

 

三玖「えっ?悪いよ。私から誘ったのに」

 

悟飯「遅れちゃったお詫びだよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

三玖「来週はもう学園祭…。3日間楽しみだね」

 

悟飯「そうだね。ただ、それまでにクラスの二分状態をどうにかできるといいんだけどね…………」

 

悟飯と三玖は、彼女の提案によって水族館に来ていた。三玖は悟飯に伝えたいことがあるのだが、悟飯は純粋に出かけを楽しんでいた。

 

三玖「悟飯もパンケーキ食べに来てよ」

 

悟飯「うん。そうするつもりだよ」

 

その後、彼女達は特に学校の話をふることはなく、チンアナゴやシャチ、熱帯魚など、普段見ることのないような生き物を見て楽しんでいた。

 

三玖「……(悟飯楽しそう。今日来た時は少し元気のない顔をしてたけど、よかった…………)」

 

三玖は以前の勤労感謝デートのことを思い出していた。デートの終わり際に、彼はこう言っていた。

 

『こうやってさ、のんびり食べて、のんびり映画を見て、のんびり買い物をしてるとさ、今日も平和なんだなぁって、実感できるからさ……』

 

『それと同時に、僕はこんな平和な世界を守りたい…。そう思えてくるんだ……』

 

 

この当時、三玖は悟飯が言っていることがいまいち理解できていなかったが、今なら悟飯の言いたいことがよく分かった。彼は戦いを好んでおらず、平和な世界を望んでいる。そんな平和な世界を守るために、力をつけて苦労してきたのだろう……。そんな彼が、こうして普通の人と同じことをして楽しんでいる。それが分かるだけでも三玖の心は何か満たされるようなものを感じた。

 

だが、三玖は彼に伝えるべきことがある。楽しんでいる彼を邪魔するのは気が引けてしまうが、どうしても伝えたいことがあった。

 

三玖「………私、学園祭前に悟飯に言いたいことがあるんだ」

 

悟飯「…そうだ。僕も三玖さんに伝えることがあったんだよ」

 

三玖「……それ、先に聞いてもいい?」

 

悟飯の言葉に若干三玖は期待してしまう。返事は学園祭までにと彼は言っていた。だが、学園祭の前に返事しないとは言っていない。もしかすると自分を選んでくれるのか……?そんな淡い期待をしてしまう。

 

悟飯「大学の入試判定がAだったんだね!本当に凄いよ君は!!最初は落ちこぼれだったのかもしれないけど、こうしてのし上がれたじゃん!!ほらね!諦めずに努力して良かったでしょ!!」

 

三玖「そうだね…。これも悟飯とフータローのお陰……」

 

悟飯「あっ、話を遮っちゃってごめん。三玖さんは何を………」

 

三玖「あっ、見て?ペンギンがいるよ?」

 

悟飯「あ、あれ?待ってよ!」

 

今度は三玖の話を聞こうとした悟飯だったが、三玖は足早にペンギンコーナーに向かってしまったので、早歩きで彼女の後を追った。

 

 

 

 

『そしてこっちがアンちゃん。そこ後ろにいるのがサンちゃんです!さて皆さんに問題です!この子の名前はなんだったでしょうか?』

 

三玖と悟飯が来たところは、ペンギンショーが開催されているところだった。5羽のペンギンの顔はそっくりで見分けなどつきそうにもなかったが、三玖は当てたそうにしていた。自分達も五つ子でよく間違われることがあるので、共感するものがあったのかもしれない。

 

「似てるのも当然で、この5羽のペンギンちゃんは姉妹なんです!」

 

 

悟飯「……こうして見てみると、まるで三玖さん達みたいだね。丁度5羽だし」

 

三玖「確かに。そう言われると、あれ二乃っぽい」

 

三玖は先頭を歩いている気の強そうなペンギンを指差しながらそう言った。

 

悟飯「……じゃあ、あれが三玖さんかな?」

 

悟飯は後ろでゆっくりして歩いているペンギンを指差しながらそう言ったが、そのペンギンは途中で転んでしまった。

 

三玖「………悟飯」

 

三玖は悟飯が意地悪してきたものだと思って、頬を膨らませて抗議の視線を送る。

 

悟飯「ご、ごめん。そんなつもりじゃなかったんだけど…………」

 

そんなことがありながらも、三玖は悟飯に話しかけづらい状況であった。別に会話すること自体は何も問題はないのだが、三玖が悟飯に伝えようとしていたことがある。それは三玖は大学ではなく調理学校に通いたいと伝えるだけ。それだけなのだが、三玖は気まずさを感じていた。

 

「あはは、1羽だけ跳べてないよあの子」

 

そんな三玖を体現するかのようなペンギンが目の前にいた。他のペンギンは既に水中で泳いでいるのに、1羽だけ未だに飛び込まずにその場にいた。

 

三玖「……(ひとまず大学に行ってからでも遅くないかも…。あの時、二乃が言っていたことに少し憧れた。私も、もしかしたら悟飯と同じ大学に行けるかもしれない………)」

 

確かに、一度大学に行った後に専門学校に行っても問題はない。資金さえあればそれも可能だ。

 

三玖「………私、料理の勉強をしたい」

 

だが、三玖は自分の考えを悟飯に伝えることにした。その直前にペンギンが水中に飛び込んだ。まるで決意をした三玖と連動しているように動いていた。

 

三玖「だから大学には行けない。ごめんね、悟飯…………」

 

悟飯「料理の専門学校か………。なんで謝るの?三玖さんがそうしたいのならそうすればいいじゃん」

 

悟飯はなんてことないといった様子で答えた。少しは反対されるかと思っていた三玖はポカンとする。

 

悟飯「勉強はあくまで可能性を広げるためにするものだからね。沢山勉強したからといって大学に行かなきゃいけないわけじゃないし、三玖さんの意思で決めたものなら、僕は応援するよ」

 

三玖「……うん。大学に行くのも間違いじゃないと思う。何が正解かは分からない…。でも、もう自分の夢に進みたくて仕方ないんだ。

今日はそれを伝えたかったんだ。悟飯は私にとって特別な人だから……」

 

悟飯「………!!それって……」

 

三玖「勿論、変な意味で」

 

三玖はまたしても意地悪な顔をしてそう言った。悟飯は少し顔を赤くしながらも、その言葉を真剣に受け止めた。

 

三玖「私は伝えたよ。次は悟飯の番だよね?………待ってるから」

 

今の言葉の意味……。それは恐らく学園祭のことだろう。三玖は随分前に悟飯に告白をした。その返事を待っているという意味に違いない。そもそも悟飯自身が学園祭までには返事をすると言ったのだ。三玖がああ言ったのもすぐに納得できた。

 

 

 

 

 

風太郎「………何故お前がうちにいる」

 

一方でその日の夜。何故か五月が上杉家にいた。

 

上杉母「風太郎!そういうこと言わないの!」

 

ゴンっとらいはと共にカレーを作っていた母親が風太郎の頭をおたまで軽く叩いた。

 

五月「お父様、お母様、お邪魔しています」

 

風太郎「邪魔すんな。帰れ」

 

無愛想にそう言うと今度はらいはに同じようにおたま攻撃を浴びせられた。

 

風太郎「……本当に何しにきたんだよ。つーか、お前俺の家知ってたっけ?」

 

五月「四葉に住所を聞きました。………こちらです。四葉が上杉君に渡した覚えがないというので………」

 

五月がバックから取り出したものは手紙……。中身は旭高校学園祭……日の出祭の招待状だった。

 

五月「中には出し物の無料券や割引券が入ってて便利ですよ」

 

勇也「おい、こりゃあ助かるじゃねえか!ありがとよ五月ちゃん!」

 

らいは「お兄ちゃんなんでこんな大切なものを忘れてたの?五月さんにお礼言って!」

 

風太郎「あ、あり……」

 

珍しく風太郎が素直にお礼を言いそうになったが、勇也の言葉によってそれは遮られた。

 

勇也「学祭は俺達も楽しみにしてるからよ。ところで五月ちゃん。何もなかったか?」

 

五月「………?」

 

勇也「………いや、ないならいいさ」

 

上杉母「風太郎!外はもう暗いから女の子1人じゃ心配よ。送ってあげなさい」

 

らいは「はーい!カレーできましたよ〜」

 

五月「こ、これが噂のらいはちゃんカレーですか…!!いただきます!!」

 

ちゃっかり四葉からの評判を聞いたらいは特性カレーライスを堪能した五月は、風太郎に送ってもらっていた。

 

風太郎「お前、そんなことしてていいのか?判定聞いたぞ?」

 

五月「うっ………」

 

嫌な記憶を掘り起こされた五月は顔を若干青くする。

 

五月「だ、だからって希望校を諦めたりしません!学園祭返上の覚悟で頑張ります!!」

 

風太郎「頼むぞ………。入ってもらわなきゃ困る。これで落ちたら俺のやってきたことが無駄になっちまうからな」

 

五月「…………それは違いますよ」

 

風太郎が若干ネガティブな思考になったところで、五月がそれを否定する。

 

五月「女優を目指した一花…。調理師を目指した三玖との時間は無駄だったのでしょうか?」

 

風太郎「………そうは思いたくないな」

 

五月「……私達の関係は既に家庭教師と生徒という枠だけでは語ることができません。そう思っているのはきっとみんなも同じはずです……」

 

彼らは多くの時間を共有している。共に花火大会や林間学校に行ったり、家出騒動を協力して解決したり、偶然とはいえ一緒に旅行したり……。

 

さらには、脅威を打ち倒すために共に戦ったのだ。これでもただの家庭教師と生徒という関係だと言い張る者がいるのだろうか……?

 

五月「上杉君。たとえこの先どんな失敗が待ち受けていたとしても、この学校に来なかったら、あなたと出会わなければなんて後悔することはないでしょう…………」

 

風太郎「……(この関係は無意味じゃなかった……か。次は俺の番だな……)」

 

この時、風太郎は何かを決意したようだが、それは本人以外は知る由もない……。

 

 

 

 

 

 

 

そして、時は来た。

 

第29回、旭高校「日の出祭」の開幕だ。放送委員の放送によって開会式が開かれる……。

 

これは、悟飯がもうすぐ彼女達(三人)に返事をする時が迫っていることを意味していた。彼は彼女達と多くの時間を共有した。彼は彼女達に振り回されたこともあったし、彼女達から学んだこともあったし、肩を並べて共に戦ったこともあった。

 

だが、いつまでもこのままの関係を維持するわけにはいかない。悟飯は以前に彼女達に返事をすると宣言した。その約束を不意にするわけにはいかないし、悟飯自身がそれを良しとはしない。

 

それに………。孫悟飯の返事は既に決まっていた。一時期は誰も選ばないという選択をした方がいいかもしれないと考えた。だがそれではいけないと思ったし、今まで相談してきた人たちの意見を参考にし、悟飯自身の感情に素直になってみることにした。

 

そうした結果、彼が導き出した答えが、満を辞して彼女達に公開されることとなるのだ………。

 

 

 

 

 

 

『いよいよ始まります!旭高校「日の出祭」!まずは我が校が誇る女子ユニットによるオープニングアクトです!』

 

体育館の暗幕が開かれ、舞台が観客に見えるようになると、そこにはオープニングアクトを担当する女子ユニットがいた。そのメンバーには、中野二乃も含まれていた。

 

二乃「ラブ☆バケーション!恋に休み、なんてものないのよ〜♪2人だけの、特別な〜♪

 

どうやら歌は二乃が担当するようだ。悟飯、三玖、五月の3人は観客席から二乃の勇姿を見届けていたが、彼女の美声に思わず魅力されてしまった。

 

最初は乗り気ではなかった彼女だったが、笑顔でキレのいいダンスも披露している。彼女の見せ場は数分と短い時間ではあったが、容姿も相まって圧倒的なインパクトを残し、開会式が終了した。

 

 

 

 

 

 

悟飯「………おや?」

 

ふと携帯電話を確認した悟飯は、風太郎からメールが届いていることを確認した。

 

『学園祭初日15時に教室に来てくれ』

 

文面はそれだけだった。しかしわざわざ呼び出すくらいだから、余程重要なことなのだろうと悟飯は1人でに納得した。

 

三玖はパンケーキ屋のシェフを担当。毎日失敗し続けても諦めずに練習し続けた成果が実り、本番には綺麗なパンケーキを焼けるようになっていた。完成したパンケーキを見た女子達からは絶賛の嵐だった。だが、三玖は15時までに教室に行けるかどうか、それだけ心配をしていた。

 

 

四葉は学級委員の仕事として、屋台のチェックを行なっていた。食を扱う屋台の場合は、鮮度や衛生面に異常がないかや、火災の危険性がないかなどの検査を行う。

 

四葉「うまっ!このたこ焼き美味しいですね!」

 

「学級長のお墨付きだ!特訓した甲斐があったな!」

 

四葉「あっ、食材の鮮度には問題ないんですけど、この本の紙片は危ないので片付けて下さいね〜!」

 

四葉は15時までに間に合わせるように駆け足で次の屋台の点検に回る。後ろにいる二乃に気づかずにその場を去ってしまった。二乃はなんとしても四葉に声をかけたかったのだ。その理由が…。

 

「オープニングのダンスめっちゃ可愛かったです!」

 

「私、ファンになっちゃった!」

 

「良かったらうちのアメリカンドッグ食べて下さい!!」

 

二乃「……ど、どーも」

 

………と、オープニングセレモニーの影響で二乃の人気が急上昇してしまったのだ。このままでは知らないうちにファンクラブもできてしまいそうな程の勢いだ。

 

 

 

そんなファンから逃れるようにして辿り着いた食堂で五月を見かける。二乃はそんな時に何をしてるんだと聞くが、多分先日の模試の件だろうかと納得する。五月は学園祭という雰囲気に似合わず勉強をしていた。しかし15時までにはしっかり終わらせるとのことだ。

 

 

そして、風太郎も学級長としての仕事に追われていた。肉体的な作業が多く既に息切れ状態だった。

 

ガスボンベの替えを運んだり、迷子の子のために親を探したり、同級生の喧嘩を止めたり初老の男性の道案内をしたりと大忙しだった。

 

風太郎「もう……限界……………」

 

 

 

 

15時過ぎに三玖が駆け足で教室に入ってきた。

 

四葉「三玖!おっつー!」

 

二乃「遅い、遅刻よ」

 

悟飯「三玖さんおつかれ。屋台は大繁盛だったからね」

 

五月「私達だって時間を過ぎてましたよ、二乃」

 

風太郎「………いや、まだ1人いないぜ」

 

ガラッ

一花「やっほー」

 

そして最後の1人……。一花が入室したことで7人全員が揃った。

 

四葉「来てたんだ!」

 

二乃「なんで連絡寄越さないのよ」

 

三玖「よく騒ぎにならなかったね」

 

一花「あはは…。なんとかね〜」

 

風太郎「………これで全員集合だな」

 

五月「上杉君、何故呼び出したのですか?」

 

二乃「わざわざ学園祭中に呼び出さなくてもいいのに」

 

四葉「でも、やっぱこの感じが落ち着くよね!」

 

三玖「確かにそうだね」

 

一花「せっかくだし食べよっか」

 

四葉「屋台で沢山買ってきたんだ〜!!」

 

五月「私!ずっと我慢してました…!!」

 

一花「あーあー……」

 

 

姉妹同士ではしゃぐ5人を見て、どこか嬉しそうな風太郎だ。悟飯も仲のいい姉妹を微笑みながら眺めていた。そんな時だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

風太郎「俺はお前達六人が好きだ

 

………彼が唐突にそう切り出した。

 

二乃「ブフっ!!?」

 

三玖「……!!!?」

 

五月「ど、どういう意味ですか!!?」

 

四葉「えっ?あの……!?」

 

一花「………いきなり来たね」

 

悟飯「…………(なるほどね)」

 

唐突の風太郎の告白に顔を赤くする者、固まる者、驚いて吹き出す者、照れる者など反応はさまざまだった。だが風太郎はそんな彼女達に気遣うことなく続ける。

 

風太郎「この7人でずっと、このままの関係でいられたらと願っている。だが、答えを出さなければならないといけないと思う………」

 

一花「……フータロー君。いいよ」

 

一花は風太郎の言う答えが、何に対しての答えなのかを察したようだ。そして回答を促す。それを聞いた風太郎は息を深く吸って………。

 

 

風太郎「とはいえ、こんな祭りの最中に言うほど俺も野暮じゃない。俺も俺で整理しきれてないからな。最終日まで時間をくれ」

 

二乃「な、何よそれ…………」

 

三玖「フータローらしい………」

 

四葉「あはは…。急に真面目な話だから緊張しちゃったね」

 

 

 

 

 

 

 

悟飯「僕も君達六人が大好きだよ

 

気の緩んだ一同に悟飯が追撃を入れた。……一見そのように思える一言だが、悟飯は既に事前に伝えていた。

 

悟飯「僕も風太郎と意見は殆ど同じだよ。でも、いい加減答えを出す必要があるし、僕の中では既に整理できているんだ。僕の気持ちも理解できた。だから断言するよ。僕はこの中で、友人としてじゃなくて、()()()()()()()()()がいる」

 

三玖「………それ、今聞いてもいい?」

 

二乃「………」

 

五月「……ぜひ、聞かせていただけませんか?」

 

悟飯のこの言葉を聞き、三人は一気に真剣な顔になった。だが、悟飯は手を前に出してこう言う。

 

悟飯「でも、まだ言わない。学園祭前に返事をすること自体は僕も構わないんだけど、それが原因で学園祭に悪影響を出したくないからね…。だから、この学園祭の後夜祭に僕の気持ちを伝える。それまでは待っててほしい。後少しの辛抱でいいんだ………」

 

悟飯の言いたいことを簡単に言うと、振られた者は一時的とはいえ心が傷付いてしまうだろう。それによって学園祭の仕事に手がつかなくなる可能性があるのだ。悟飯としてはそれはなんとか避けたかった。折角の学園祭だから目一杯楽しんでほしいという願望も込めてのことだった。

 

二乃「なんだか拍子抜け……」

 

三玖「でも、悟飯の言うことも一理ある」

 

五月「……そうですね。私としてはお返事が気になってしまいますが、確実に答えを出してくれるのなら待ちます」

 

悟飯「ありがとね……」

 

こうして、引き締まった話題は終了してみんなで乾杯する。姉妹達はわいわいと談笑しながら屋台の食べ物を味わっていた。その隙を見計らって悟飯は風太郎を端っこに呼び出した。

 

悟飯「どうしたの風太郎…?まさか君も………」

 

風太郎「……ああ。しかし、まさかお前も同じタイミングで答えを出すとは思いもしなかったけどな」

 

悟飯「僕は彼女達には一応伝えておいたんだ。念の為にもう一度伝えただけ。そして、僕なりに整理できたことを伝えたかったんだ」

 

風太郎「……お前は、さっき異性として好きなやつが一人いるって言ってたよな?それ、誰なんだ?」

 

悟飯「おや?興味ある?」

 

風太郎「………まあな。お前の決断次第で姉妹の関係性が変わる可能性もあるんだ………そりゃな」

 

悟飯「………きっと風太郎は誰か一人を選んだことによって姉妹の絆に傷がつくことを恐れてるんでしょ?」

 

風太郎「………流石だな。なんでもお見通しだな」

 

悟飯「そりゃあ親友だからね…。でも君のその心配は無用だよ。彼女達はそんなことで仲違いしたりはしないさ。……もしかしてだけど、風太郎は誰も選ばない………そうしようとしてる?」

 

風太郎「………さっき言っただろ?俺はこのままの関係を大切にしたい。今の関係を壊すのが怖いんだ……」

 

悟飯「………確かに、一人を選ぶことによって姉妹の関係性は変わっちゃうかもしれない。けどね、誰も選ばなかったらそれはそれで傷つけることになるんだよ。難しいことは考えず、自分の気持ちに素直になってみなよ。そうすれば、案外早く整理ができるかもしれないよ?」

 

風太郎「はは……。お前はいいよな。既に自分の中で決着がついていて」

 

悟飯「長期間悩みに悩んだからね。色々な人にも相談したよ。今まで解いてきた中でも最難関の問題だったからね」

 

風太郎「はは…。そりゃ言えてるぜ」

 

悟飯「それじゃ、風太郎の答え、楽しみにしてるからね」

 

風太郎「見せ物じゃねえぞ?」

 

 

……この後、僕たちは知ることになる。学園祭初日は、無事に終わりなんてしなかったことを…………。

 




 学園祭始まってしまいましたねぇ。ちなみに現段階ではバトルを入れるかは未定です()。学園祭の後に入れるか最中に入れるかだったら、恐らく学園祭後……になると思う。最初から最後までノープランな私を許してくだせぇ……。でも悟飯の花嫁だけはノープランじゃないんですよねぇこれが。

 先に言っておくと、零奈は学園祭中はほぼ出てきません。その理由としては本編中に語る隙があるかどうか分からないので今のうちに言っておくと、所謂定期検診と被ってしまうからです。零奈の身は人造人間であり、今でも定期的に検診している状況です。とはいえ担当医にあたる人はブルマなので、融通を利かせてもらえるのでは?と思う方もいるだろうが、ご存知の通りブルマは社長なのでなかなかスケジュールを変えることはできません。かなり頑張って最終日だけでも来れるようにしてますが、諸事情により殆ど描写されないと思います。最終日だけ来るというのが結構重要。

 さて、今話の前書きは現在の五つ子の悟飯に対する心情を書き記してみました。次回は風太郎に対する心情を書き記す予定です。

 ちなみに、学園祭も原作や映画のように○○の場合って感じで分けると思います。ただ執筆していくうちに一花と四葉だけ原作まんまだったので、そちらはカットさせていただきます。


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第97話 最後の祭りが二乃の場合

※ミニコーナーその2
 五つ子の風太郎に対する心情

一花:
最初は五月ちゃんに恋心を抱いているガリ勉君という印象しかなかった。しかし彼は恋愛事は一切興味がなく、お色気で揶揄っても面白い反応をしてくれなかったのがたまに気にいらない。花火大会の時、風太郎に自分の演技について指摘されたことをきっかけに気になり始めた。そこからは彼と過ごせば過ごすほど彼に惹かれていった。林間学校時点では自身の想いを自覚していた。
風太郎に恋心を持つ姉妹は後述する四葉以外にはいなかったため、焦ることがないため原作のようなやらかしはなかったものの、魔人ブウ編でバビディの手によって無理矢理闇落ちさせられ、後々生き返ったとはいえ、四葉を自分の手で殺してしまったことを今も後悔している。この出来事さえなければ一花は今も風太郎に積極的にアプローチしていただろう。
 こうなったのも全て私(作者)のせいだ…。

二乃:
悟飯と同じく姉妹の輪に土足で踏み入る不届き者として見ていた。悟飯のようにお人好しな性格ならともかく、風太郎は善意ではなくお金の為にバイトを引き受けたのだと思って尚更気に入らなかった。しかし、彼もまたそれほど悪いやつではないことを無意識に感じ始めていたし、風太郎お手製の問題を破ってしまった時は罪悪感を感じていた。今は取り敢えず悪いやつではないと、警戒を解いている。
 風太郎に対して恋心は持ち合わせていない。しかし、最近はよくよく見てみるといい顔をしているとも思っている。しかし彼女は悟飯一筋だ。

三玖:
悟飯同様、いきなり家庭教師として来たよく分からない男の子という認識だった。歴史が自分より得意だということで勝負をふっかけ、色々あり自分の方が歴史の知識に関しては上手だと認識して幻滅。その後は風太郎が自分に勉強を教える為に一生懸命になっていること、自分の好きなものを信じろと言ってくれたことをキッカケに信用するようになる。
 風太郎に対しては恋愛感情を持ち合わせていないが、少しでも歯車が噛み違えば彼に惚れていた可能性がある。

四葉:
実は6年前に風太郎と約束した女の子の正体。悟飯には気付かれてしまったが、風太郎に気付かれるのは大分遅めだった。高校で風太郎と再会した瞬間からあの時会った風太郎君だということに気づく。姉妹が悟飯に惹かれていく中、このまま誰も風太郎のことを好きにならないなら、いいよね?と、初期は割と積極的だったのだが、一花の恋心を察知した途端に自分の気持ちを押し殺すことにした。しかし、何度か悟飯と話していくうちに、少しは自分の気持ちに正直になってもいいのかと思い直した。魔人の一件で一花に殺された際に、やはり自分は風太郎のことが好きでどうしようもないのだと実感し、ドラゴンボールで蘇生、魔人ブウを討伐した後は、二乃達悟飯ラブ勢ほどではないにせよ、割と積極的なアプローチをしている。皮肉にも、一花は四葉の命を奪い取ると同時に、彼女の中にあった恋の鎖も破壊したのだ。
 風太郎ラブ。6年前からずっと想い続けている。

五月:
高校では一番最初に風太郎と会った人物。あまりのデリカシーの無さに最初は険悪な関係になってしまう。悟飯がいなければ授業を受けてくれることはなかっただろう。しかし、悟飯のサポートや風太郎の誠意もあってなんとか和解することに成功。実を言うと悟飯にアプローチする為に何度か風太郎に相談しているが、「そんなもの知らん」と一倒されているなんて裏話もある。
 風太郎に対して恋愛感情はないが、友愛は存在する。



日の出祭二日目

 

椿「みなさーん!日の出祭も二日目!楽しんでますかー?放送部の椿です!本日は来てくれたお客様に突撃インタビューをしちゃいますよー!!」

 

「すごい盛り上がってるよね!」

 

「パンケーキが美味しいって聞いて来ちゃいました!」

 

放送部の椿はカメラを使って生中継していた。とは言っても、テレビ局に放映されているわけではなく、あくまで高校内での話。学内に設置されているモニターにこの生中継が映っている状態だ。

 

江場「中野さん見てる!?私のこと覚えてるよね?会いに来たよ!まだ走って……」

 

椿「マイク盗らないでください!?」

 

途中マイクを取られたり……。

 

「すまない。失礼するよ」

 

椿「そんなぁ……」

 

インタビューを断られたりと、そこそこアクシデントはあったものの、仕事は順調だった。

 

椿「では気を取り直して……。そこのお姉さん!あなたは何しにここへ?」

 

「私ですか?私は幼馴染に会いに……」

 

 

 

 

 

 

悟飯は適当にブラブラと外を回っていた。道中で旭高校が誇る英雄として囃し立てられていたがそれももう慣れっこ……だったはずなのだが、先日の魔人ブウの件でさらにヒートアップしてしまい、流石の悟飯も苦労の連続だった。

 

そして悟飯は風太郎を見かけるのだが……。

 

悟飯「隣の女の人……、誰だろう?見た感じ同級生っぽいけど、あんな人見たことないから……。別の学校かな?」

 

昨日の風太郎の台詞から察するに、隣にいる女の人は恐らく彼女ではないはず。そう考えた悟飯は一声かけてみることにした。途中まで諸事情で一緒にいた三玖と四葉に一言を告げてその女の人の正体を探ってみることにした。

 

悟飯「風太郎楽しそうだね。その人は?」

 

風太郎「悟飯か…。こいつは……「初めまして。いつもうちの風太郎がお世話になっています」」

 

悟飯「う、うちの……?」

 

隣の女子の台詞に思わずハテナマークを浮かべてしまう悟飯だが、風太郎が幼馴染だと訂正したことで納得する。

 

悟飯「なるほど……。どうも初めまして。僕は孫悟飯って言います」

 

「ご丁寧にどうも。私は竹林。風太郎が言ってた通り幼馴染ってところです」

 

と、ある程度の自己紹介を済ませると…。

 

竹林「まさか風太郎にこんな友達ができるとはね〜!!しっかり優等生になれたわけだ!!」

 

風太郎「うるせえ。たまたまだ、たまたま」

 

悟飯「ところで竹林さんは何故こちらに?」

 

竹林「久しぶりに幼馴染の顔でも見にこようかと!まあ忘れ去られていましたけど………」

 

風太郎「仕方ねえだろ。雰囲気変わったんだからよ」

 

竹林「あー!それ風太郎が言うんだ!!」

 

この二人をやり取りを見るに、本当に親しい仲であることが推測できる。確かにカップルと言うよりは友達からという言葉の方がしっくり来る絡み方である。

 

竹林「……そうだ!風太郎、こっち来て!」

 

風太郎「お、おい!!」

 

そう言うと竹林は風太郎の手を掴んで彼を引っ張る。悟飯は本当に仲がいいんだなぁと呑気に考えながら二人の後をゆっくり追った。

 

………そんなやり取りを見ている少女が二人いることに気づかずに……。

 

 

 

 

 

 

だが、行く先が問題だった。

 

五月「パンケーキいかがで…………」

 

二乃「……………はっ?」

 

竹林「風太郎、パンケーキだって!食べようよ!」

 

風太郎「ああ、ここは俺のクラスの屋台だ」

 

竹林「そうなんだ。いつもうちの風太郎がお世話になってます」

 

悟飯「(あーあ。またやってるよ)」

 

悟飯は竹林なりのジョークを遠目から見ていた。またからかって楽しんでいるところを見るに、一花さんと気が合いそうだと思ったのは内緒。

 

だが、相手が少しばかり悪かった。その場の雰囲気は和むどころか……。

 

五月「うちの…………」

 

二乃「ど、どちら様ですか〜?」

 

竹林に対してか、それともあんな告白をしておいて何女を連れてんじゃコラと風太郎に怒っているかは不明だが、若干青筋を立てた二乃が必死に自分を抑えて平静を取り繕う。

 

竹林「初めまして。竹林と申します。風太郎とは小学校からの同級生です」

 

二乃「あらそう。私達も同級生だけど教師と生徒。いわば同級生以上の関係と言っても過言ではないわ」

 

二乃は一花や四葉のことを案じて、敢えて竹林に対して牽制する態度を取る。そもそも二乃は心を許した者以外が介入してくることを嫌う。だから今回のこの態度もそういった部分から出てきているのだろう。

 

竹林「そうなんだ…!奇遇ですね!私も風太郎に勉強教えたんです!ずっと言うことを聞かなかった問題児に頼まれた時は驚いたなぁ……」

 

風太郎「いや、こいつらが俺の生徒」

 

竹林「あ、そうなんだ。じゃあこれではっきりしたね。私とあなた達。どちらがより親密なのか」

 

悟飯「あ、あれ?」

 

想像以上に修羅場になりかけているのを見て、悟飯は困った表情をする。さてどうしたものかと考えている時

に、四葉が突然飛び出し………。

 

 

四葉「私の方が上杉さんのこと……!!!!」

 

 

 

五月「ありがとうございます!」

 

だが、何かを言おうとした四葉の言葉は五月の大きな声によって遮られた。

 

五月「もしそれが本当ならば、私達は間接的にあなたのお世話になったと言えます。上杉君と過ごした時間はあなたには負けてしまいそうですが、その深さでは負けるつもりはありません!!」

 

………どうやら五月がこの場をなんとか収めてくれたようだった。

 

風太郎「お前ら、小っ恥ずかしいからやめてくれ…………」

 

五月「はっ……!!!」

 

自分がどれだけ恥ずかしいことを言ったのか後から理解した五月は顔を赤くして疼くまってしまった。

 

風太郎「それに竹林。あんまり揶揄うなよ。こいつらは俺の数少ない友人だ。全員が特別に決まってる……」

 

竹林「……風太郎。本当に大きくなったんだね…。ごめんなさい二人とも。パンケーキ、1つください」

 

五月「は、はい!!」

 

 

 

悟飯「………んん?」

 

結局悟飯には竹林の真意が理解できなかった。何故わざわざあんな挑発的な言動を取ったのだろうか……?だが、悟飯が考えてもその答えは出てくることはなかった。

 

悟飯「うーん……。不思議な子だなぁ」

 

 

 

 

『これにて、旭高校学園祭後夜祭。全てのスケジュールを終了とします』

 

そんな感じで学園祭は頻繁にアクシデントが起きた。それは小さなものから大きなものまで様々……。3日間という日にちはあっという間に過ぎてしまい、最終日の後夜祭も終わってしまった。悟飯は五つ子の指示の元、彼が選ぶ子の教室の扉を開けようとする……。

 

 

 

 

 

最後の祭りが二乃の場合

 

「中野二乃先輩?確かオープニングセレモニーで歌ってた……」

 

「そうそう!センターで一番目立ってた人だよ!今広場にいるらしいぜ!」

 

「マジで!?行ってみよっと!!」

 

二乃「……広場?どういうこと?」

 

「ってか問題どうするー?二乃、15時に約束があるんじゃなかった?」

 

二乃「むむむ、悔しいわ……」

 

時は遡って、学園祭一日目…。二乃はオープニングセレモニーが終わった後は友人達と共に学校内を回って日の出祭を満喫しているところだった。

 

「実は私も同じ時間に約束があるんだよね。仕事が終わった親が来るっぽいんだよね」

 

「あー、私の家族ももう学校にいるみたい」

 

「でも、このまま3人でいても……」

 

二乃「ダメよ!せっかく来てくれたのに!こんな所にいる場合じゃないわ!」

 

家族の絆を大切する二乃にとっては、友達よりも家族の方を優先してほしい気持ちの方が強かったようだ。

 

二乃「閉会までまだ時間あるし、少しでも長くいてあげなさい」

 

「えっ?でも二乃は……」

 

二乃「私のことはいいから早く!」

 

「…ありがと二乃」

 

「気をつけてね!」

 

二乃「はいはい」

 

こうして、その場には二乃のみとなってしまった。友達を見送ったはいいが、少し寂しくなってきてしまった。

 

二乃「……さて」

 

悟飯「なるほど、この問題を解けばいいんだね?」

 

二乃「わっ!!は、ハー君!?なんでここに!?」

 

横からひょこっと悟飯が姿を現した。

 

悟飯「もうすぐ15時になっちゃうからね。二乃さんは僕の近くにいたみたいだから来ちゃった」

 

二乃「そ、そう……」

 

悟飯「……(200……じゃなくて、20と0の間に僅かに空白がある…。0月0日……?ああ、そういうことか…。上に100円玉があるから、その20%で20円になるということは………)」

 

悟飯「よし!二重丸に進もう!」

 

二乃「はやっ!!?」

 

悟飯が問題を見てから解き終わるまでにかかった時間は僅か1秒である。そもそも超人は高速で動く必要があり、戦うとなれば自分の同じ速度で動く相手の動きも分析する必要がある。そうなると、自然と脳の回転速度が速くなるのである。

 

悟飯「それにしても、いつまでその格好をしてるの?もう制服に着替えてもいいんじゃない?」

 

二乃「……だって、見てほしかったんだもの………」

 

……と、二乃は上目遣いで悟飯を見る。そんな顔に一瞬ドキッとしてしまったのだが、それを顔に出さずに悟飯はこう答える。

 

悟飯「うん。二乃さんはやっぱり何を着ても似合うね」

 

二乃「〜っ!!そ、それは卑怯よ…」

 

悟飯「それにしても、ダンスのキレ凄かったね〜。最初は嫌がってたけど、なんだかんだでノリノリだったじゃん?」

 

二乃「あれは……なんというか…。今更恥ずかしがっても仕方ないかなって思って………」

 

悟飯「……まあ、元々あのセレモニーは四葉さんがやることになってたからね。二乃さんが引き受けるのはなんか意外だったよ」

 

二乃「四葉は誰にでもいい顔をして仕事を引き受けすぎなのよ。これだけじゃなくて演劇部とも約束したそうよ?」

 

悟飯「うひゃ〜…!忙しそうだなぁ…。でも四葉さんの負担を考えて二乃さんが引き受けたんでしょ?やっぱり姉妹のことが大好きなんだね」

 

二乃「………そうね。でも、それと同じくらいにあんたが好きよ」

 

悟飯「………そうか」

 

二乃は先程不意打ち(無意識)された悟飯に仕返しをしようとして出てきた言葉だったが、彼女の予想とは裏腹に、悟飯は急に真面目な顔になって返事をした。

 

二乃「そ、それだけじゃないわ!この仕事を引き受けたら、舞台から客席を見下ろせると思ったのよ」

 

悟飯「……?誰かを探してるの?言ってくれれば僕も手伝うのに………」

 

二乃「私達、お父さんにも招待状を送ったのよ。でも影も形もなかったわ。まあ、ダメで元々気にしてないけどね」

 

悟飯「………もしかしたら来ているかもしれないね。取り敢えず、教室で用事を済ませてから探しに行こうよ」

 

二乃「そうね。というか、用事ってなんなのよ?あんたは何か聞いてる?」

 

悟飯「いや、僕も詳細は分かってないけど、わざわざ呼び出すくらいだから重要な話でもあるんじゃないかな?」

 

こうして、悟飯と二乃は教室に向かって先に到着していた風太郎、五月、四葉と合流した。その後に三玖と一花も到着し、風太郎の大胆な告白がなされたのである……。

 

悟飯「いや〜。まさか風太郎があんな大胆な告白をするとはね〜……」

 

二乃「(ハー君の方がよっぽどストレートで大胆だったと思うけど……)」

 

実際、風太郎は『答えを出す』としか言っておらず、6人のことは大好きだと言ったものの、異性として好きとは一言も言っていない。一方で悟飯は異性として好きな人がこの中……つまり、二乃、三玖、五月の3人のうちの誰かのことが好きだと断言したのだ。二乃としてはそれが気になって仕方なかった。

 

悟飯「………気を探ってみたけどこの辺にはいないね…。そうだ!電話してみようよ!」

 

二乃「それはダメ!!」

 

悟飯「……えっ?どうして?」

 

どうしても父親に来て欲しいなら、直接話せば来てくれるだろうと悟飯は考えていた。実際、先日の話し合いでマルオが五つ子と彼女達の実父が接触するのを防ぐ為に出来るだけ様子を見にくると言っていたのだ。相当多忙ではない限りこちらに来てくれるはずだと踏んだのだが……。

 

二乃「大丈夫!もういいの!元から期待なんてしてないから……」

 

悟飯「でも、二乃さんは勇気を出したんでしょ?来てほしいって思ったから送ったんでしょ?このままでもいいの?」

 

悟飯が二乃に問いかけると、二乃は複雑そうな顔をしていた。悟飯は二乃の心の内を理解し、次の言葉を続けようとしたその時……。

 

勇也「おーいたいた。悟飯君に五つ子のお嬢ちゃんの……えっと」

 

らいは「次女の二乃さんだよ」

 

上杉母「あ〜!!私が先に言おうとしてたのに!!」

 

上杉一家が悟飯達の元にやってきた。

 

らいは「むむぅ…。なかなかお兄ちゃんに会えないね…。お兄ちゃんどこにいるか知ってますか?」

 

悟飯「風太郎なら……。多分たこ焼き屋の方にいるんじゃないかな?」

 

勇也「サンキュー。後でそっちの方に行ってみるぜ」

 

二乃「………ねえねえ、上杉のパパって何度見てもイケメンよね」

 

悟飯「……そうかもね」

 

二乃「……?」

 

悟飯の反応に違和感を覚えた二乃は彼の顔を覗き込むが、特に変わった表情は見せていなかった。だが、こんなそっけない態度を取るような人だったか?と疑問が浮かぶ。

 

風太郎「……あれ?親父にお袋にらいは?今日は来る予定じゃなかっただろ?」

 

丁度そこに風太郎が現れた。

 

らいは「あ、お兄ちゃん!やっと会えた!」

 

上杉母「そうなのよ。なんで急に行きたいって言い出したの?今日じゃないと行けない屋台でもあるの?」

 

二乃「いえ、そういうのはなかったと思いますけど……」

 

悟飯「もし行きたいところがあるなら案内しましょうか?」

 

勇也「ご丁寧にありがとな。大丈夫だ」

 

勇也は悟飯に向けてアイコンタクトを送ると、悟飯は殆ど察した。恐らく無堂と五つ子を接触させない為のパトロールと言ったところだろう。

 

勇也「つーか、マルオのやつは来てねえのか?」

 

二乃「父なら来てませんが……」

 

勇也「おかしいな…。あいつの部屋に行った時にここの手紙があったからてっきり来てるのかと………」

 

二乃「…!見てくれたんだ…!」

 

風太郎「……?ちょ、ちょっと待って?親父達って知り合いだったのか……?」

 

勇也「ああ。あいつとは昔からの腐れ縁だ」

 

風太郎の質問になんてことないと言った様子で答える勇也。風太郎の家庭教室のアルバイトを取ってきたのは彼であり、マルオとの腐れ縁があったからこそ実現したものだ。

 

ならば悟飯は何故スカウトされたのか疑問に残るが、マルオが勇也の息子だけでは不安だと感じ、同じく学年1位で教員や生徒からの信頼もある悟飯が抜擢されたという裏話もあったりする。

 

勇也「俺はバリバリのアウトロー。あいつは学年不動のトップで生徒会長だ」

 

風太郎「すげぇ………」

 

悟飯「いや、本当にすごい人ですね…」

 

勇也「いやいや、全国模試一位を取った悟飯君や3位の風太郎も十分凄いからな?」

 

上杉母「……えっ!!?全国模試3位!?風太郎が3位を取ったの!?」

 

らいは「そうだよ?言ってなかったっけ?」

 

上杉母「す、凄い………。大きくなったわね風太郎………!!」

 

上杉母は感動のあまりその場で涙を流しそうになった。勇也がすかさずハンカチを差し出したことで涙を見せるようなことはなかった。これはオーバーリアクションではないかと感じる者もいそうだが、母が生きていた当時の風太郎は勉強とは無縁の生活を送っていた。そんな風太郎が家族の為にここまで成績を上げたと考えてみよう。

 

これで泣かない親などいるのであろうか?

 

風太郎「お袋、大袈裟だ」

 

悟飯「いやいや、大袈裟じゃないでしょ?本当に凄いと思うよ?」

 

風太郎「昔から勉強できて、なおかつ戦っていたお前に言われてもあまり凄味を感じねえ………」

 

悟飯「あれ?そんなこと風太郎に話したっけ?」

 

風太郎「前の打ち上げの時に悟空さんから聞いたんだよ」

 

悟飯「なるほどね………」

 

勇也「……で、まああいつと俺は正反対な存在だったわけだ。奴とはよく対立したもんだぜ。それに俺を繋ぎ止められたのは………いや、ここから先はマルオに聞きな」

 

二乃「もしかして、お母さん……?」

 

勇也「先生の教師としての姿は見たことないだろ?ほんといい女だったぜ〜」

 

勇也のその言葉に上杉母の顔が一気に険しい者となっていた。らいはも度肝を抜かされたような表情をしているが……。

 

勇也「ま、うちの嫁さんには敵わねえけどな!!!」

 

ガハハと笑いながら自信満々にそう言った勇也の頭を上杉母のビンタが襲った。あらとても過激な照れ隠しだこと。

 

風太郎「…直接聞くも何も本人がいないんじゃ話にならねえだろ?」

 

勇也「安心しな。父親ってのは中々面倒くせえ生き物でな。あいつ自身の面倒くささも加わって2倍面倒くせえんだが、お嬢ちゃん達が心を開いていったように、あいつも少しずつ歩み寄っているはずさ」

 

悟飯「…………」

 

父親はめんどくさい生き物だと聞かされた悟飯は自分の父親を連想させてみるが………。

 

どこにもそんな要素がなかった。まあ孫悟空は一般家庭の父親像とはだいぶズレているので致し方ない。

 

悟飯「……そうですね。それに彼と僕の()()もありますしね」

 

勇也「約束…?なんだそりゃ?」

 

悟飯がマルオとの約束を勇也に丁寧に説明した。武田との模試戦争の時、全国模試1位かつ全科目満点だったら自分の願いを聞くことを条件にし、その願いを娘達としっかり接することとしたのだ。

 

勇也「ず、随分スケールのでかいことをするな……。まあ、魔人ブウとの戦いで最前線に立つ男ならそれくらいするか!!」

 

勇也は謎に悟飯の行動に納得してしまった。ちなみに二乃には聞こえないように説明した。

 

悟飯「……ということだからさ、信じて待ってみようよ?」

 

二乃「……うん。待ってみるわ」

 

こうして2日目…。二乃はマルオが来るのをベンチに座って待っていた。パンケーキの看板を持って自分達の屋台の宣伝をしている五月と共に雑談しながら待っている状況である。

 

「やあ、上杉君と二乃ちゃんのクラスの店ってこっち?」

 

「三玖ちゃーん!」

 

二乃のバイト先の店長と三玖のバイト先の店長が揃って訪れたようだ。前は険悪な雰囲気だったが、一緒に学園祭に来ているところを見るに、何かしら進展があったようだ。

 

二乃「………店長!来てくれたんですね!!」

 

「あれ?今ガッカリしなかった?」

 

どうやら顔に出ていたようである。二乃は気のせいだと店長に言い聞かせて、色々と軽い店長はまあいいかと納得する。

 

「1日目を見に行った子が教えてくれてね。二乃ちゃんが可愛い服を着て踊ってるってさ」

 

二乃「えっ…?全然気づかなかったわ…」

 

五月「お怪我の方はもう大丈夫ですか?」

 

「ええ、完治しました。いつでもいらして下さいM•A•Y様!!」

 

五月「な、ナンノコトデショウ…?」

 

「だからといってバイクはまだ早いですよ」

 

「なんだい?そんなに不安なら帰りは乗せてあげないよ?」

 

「べ、別に乗りたくありません!」

 

 

 

五月「…一瞬お父さんかと思いました」

 

 

 

 

 

 

 

ところが、マルオはしっかり学園祭に訪れていた。今丁度三玖が自分達の屋台を紹介しているところをモニター越しで見ていた。

 

マルオ「……なんだい?」

 

『折り返しありがとうございます。お休みのところすみません。お取込み中でしたか?』

 

マルオ「………ああ、構わないよ。すぐ行こう」

 

医者という特性上、どうしても出勤しなければならない時がある。今回はたまたま学園祭とバッティングしてしまい、娘達と会う前に帰らなければならなくなってしまった。

 

 

 

 

 

そして、2日目の学園祭も終了時刻となった。1組の女子が担当するパンケーキ屋は絶好調で、最優秀売り上げを狙えるのではないかという程の勢いだった。周りの女子はそのことで喜んでいたが、二乃は素直に喜べなかった。

 

「えっ?何あれ?」

 

「エアバイクだよね!?初めて見た〜!!」

 

「すげぇ…!!ちゃんと浮いてる…!!」

 

何やら珍しいものがあるようで、生徒達が群がっていた。二乃は何事かと覗き込もうとしたその時、人混みを掻き分けて出てくる者が一人……。

 

「………そんな顔するくらいなら、僕達から会いに行こうよ」

 

………なんと、エアバイクの持ち主は孫悟飯だった。

 

「えっ!?孫君バイクの免許なんて持ってたの!!?」

 

「いや、お前は必要ないだろ!?」

 

と、ど正論をぶつけてくるクラスメイトもいた。

 

二乃「えっ…?な、なんでバイクなんか持ってるのよ……?」

 

悟飯「ははは…。知り合いのツテで免許を取ったんだ」

 

実は、ブルマに協力してもらい、短時間でバイクの免許を取得することができたのだ。これは悟飯の移動を円滑にするためのものである。正体を隠しつつ移動するにはもってこいの乗り物なのだ。

 

二乃「……そう。わざわざバイクを用意してもらったところ悪いけど、私は行くつもりはないわ」

 

悟飯「えっ?どうして?」

 

二乃「パパは来なかった…!招待状は読んだのに、私達のことなんて微塵も考えてなかったのよ!!学園祭は明日もあるけど、もう嫌よ…。どうせ叶わないのなら、望んだことすら後悔しそうだわ………」

 

「そいつはどうかな?」

 

二乃「う、上杉?」

 

少し騒ぎになっているので何事かと様子を見に来た風太郎だったが、先程の悟飯と二乃の会話はばっちり聞いていた。

 

風太郎「……俺達はお前達家族のことをよく知っているわけじゃない。分かるのは普通の家族関係とはちょっと違うということだけだ。だが、逆にお前は知ってるか?」

 

二乃「……?」

 

風太郎「俺に対する警戒心、無茶苦茶凄いぜ……?」

 

そういえばそうだった気がすると二乃は少し昔のことを思い出す。しかし悟飯に対する警戒の視線は主に3人によって排除されてしまったが………。

 

風太郎「あれが父親の目なんだろうよ。お前達への愛情がなきゃできねえよ。だから文句を言ってやりてえよ。『お前らめんどくせえ』ってな」

 

椿「おーい!上杉くーん!!」

 

風太郎はナイスタイミングだと言わんばかりの顔をして椿の方に振り返った。どうやら放送委員の生中継は録画も同時にしていたらしい。そのインタビューの中にマルオらしき人物が写ってないかと閃いたのだろう。

 

風太郎は映像を流すように頼むと、最初は何やら見覚えのある先輩が…。そこは飛ばして次の動画に移ると…。

 

『どうもー!日の出祭楽しんでますかー?』

 

『なんだい、君達は?』

 

二乃「パパ……?」

 

どうやらマルオはちゃんと来ていたようだ。しかし職場から電話があったらしく、インタビューは中止となってしまった。合間を縫って来てくれていたらしい。

 

椿「どう?この人で合ってる?」

 

風太郎「サンキュー。親父の言ってた通りか。どうするんだ二乃?」

 

二乃「……分かった。行くわ」

 

風太郎「……つーことで、よろしく頼むぜ?」

 

悟飯は無言で頷くと、二乃にもう一つのヘルメットを渡した。エンジンをつけたバイクは数センチ宙に浮かび、その場を発進した。

 

二乃「……(そうよね。何弱気になってたのかしら。押しても引いても手応えがなくても、更に攻めるのが私だわ)」

 

 

 

 

 

 

 

マルオは一仕事を終えて院長専用部屋に入室する。するとそこには、入館許可証を持った悟飯と二乃がいた。

 

悟飯「どうも、突然すみません。お邪魔しています」

 

マルオ「……暗くなる前に帰りたまえ」

 

二乃「待って。もうすぐ焼けるから」

 

なんと、二乃はその場でパンケーキを焼いていた。マルオは愛する妻がパンケーキを焼いていたことを思い出し、感情に浸りそうになる。

 

悟飯「食べてあげてください。学校に来てたのは知ってます。二乃さんのパンケーキ、美味しいんですよ?」

 

 

マルオ「………」

 

『パンケーキ、ですか?』

 

『ええ。意外と安く作れて娘達も喜んでくれるのですよ』

 

昔の記憶が蘇る………。まだ愛する人が死ぬ前のことだった。医者となったマルオは体の弱い零奈の治療に奮起していた。最善は尽くしたはずなのに、彼女を死なせてしまった……。愛する人が亡くなったことを受け入れたくないから娘達から逃げていたのかもしれない。あるいは、医師であるにも関わらず母親を助けることができなかったことから顔向けできなかったのかもしれない……。マルオはそう自己分析した。

 

二乃「この生地、三玖が作ったのよ?あんなに料理が下手っぴだったあの子が目指すものを見つけて頑張ってる。三玖だけじゃないわ。私達5人、あの頃よりずっと大きくなったわ……」

 

今は零奈が生き返っているので、そんなことは気にする必要はないのではないかとも思えるが、零奈が蘇ったのはあくまで未来の五月のお陰だった。結局自分は何もできていないのだ…。

 

二乃「その成長をそばで見ててほしいの。お母さんだけじゃなくて、お父さんにも………」

 

だか、そんな遠慮は無意味だった。その娘達はそんな小さなことを気にするような者達ではないのだ。マルオはそれを今日理解した。

 

マルオ「………」

 

マルオは二乃の言葉を最後まで聞き、その後にパンケーキを口の中に運ぶ。二乃にとってマルオの表情は美味しいものなのか不味い時のものなのかよく分からなかったが、悟飯だけはこの後に続く言葉をなんとなく予想できたようだった。

 

マルオ「……この味。君達は逃げずに向き合ってきたんだね……」

 

二乃「えっ?それ、どういう………」

 

マルオ「……それにしても量が多いな。僕一人では食べられそうにない。次は家族全員で食べよう………」

 

その言葉に、二乃は涙目を浮かべて喜んだ。

 

二乃「きゅ、急に何よ!でも、みんなもきっと喜ぶわ………」

 

悟飯「……良かったね。それじゃ、僕はトイレにでも……」

 

ここからは家族水入らずの時間だと思った悟飯は、一旦その場を去ろうとするが、マルオに止められた。

 

マルオ「…これは君の……、いや、君と上杉君の計画かい?」

 

悟飯「えっ?そ、それは〜………」

 

二乃「そうよ。彼がここまで連れてきてくれたの」

 

マルオ「それはどうだろう?家庭教師としての範疇を超えていると思うのだが?」

 

悟飯「いえ、これはボディガードですよ。二乃さんを一人で行かせるわけにもいかないでしょう?もうすぐ暗くなるのに」

 

マルオ「…………それもそうだね。失礼した」

 

悟飯は咄嗟にそれっぽいことを言ったがなんとか通ったようでひと安心する。

 

マルオ「……これは私にはできなかったことだ。君達に頼んで心から良かったと思ってるよ。不出来だが親として、君達が娘達との関係を真剣に考えてくれることを願うよ。そう上杉君にも伝えておいてくれ」

 

悟飯「………はい」

 

 

 

 

 

二乃「ふん。今までほったらかしにしてたくせによく言うわ。ハー君はお父さんが思ってるよりもずっとしっかりしてるんだから!ねえ?」

 

それは威張ることなのだろうか?と若干疑問に思う悟飯だったが、口に出すようなことはしなかった。

 

二乃「……ハー君。今日はありがとね。それに、今までも……。それで、明日のことなんだけど………きゃあ!!

 

廊下を歩いている途中で二乃が足を滑らせて転倒しそうになる。しかも悟飯も巻き込んでしまったため、二人して転倒しそうになるのだが、その時に悟飯と二乃の唇が接近する。二乃はちゃっかり唇を近づけたのだが……。

 

悟飯「よっと……、気をつけないとダメだよ〜?」

 

運動神経抜群な悟飯のことだ。この程度で転倒するような軟弱者ではない。

 

マルオ「忘れ物だ」

 

物凄くギリギリのタイミングでマルオが院長室から姿を現した。もう少し対応が遅かったら悟飯から二乃にキスするような構図になっていただろう。

 

マルオ「……?何をしているんだい?」

 

悟飯「す、すみません!ちょっと転びそうになっちゃって…!」

 

マルオ「ふむ…。気をつけて帰るんだよ?」

 

悟飯「は、はい!」

 

二乃「(ちっ。惜しかったわ)」

 

マルオは忘れ物を取りに悟飯達から背を向けて移動を開始した。ギリギリセーフと悟飯は汗を拭って二乃に大丈夫?と声をかける。

 

あと少し悟飯の対応が遅ければキスできていた。だがそのチャンスを逃してしまった。だけど自分の為に踏ん張ってくれたから複雑な気持ちにもなってしまう。そのままキスできずに悔しい思いをする……。

 

 

 

 

 

 

 

 

二乃「ねえ……」

 

悟飯「ん?」

 

 

 

チュッ

 

悟飯「………!!!?」

 

廊下にリップ音が響いた。

 

 

二乃「やっぱ恋は攻めてこそよね」

 

二乃はその典型的なヒロインには当てはまらない。彼女は手応えがなければ更に攻めるタイプだ。彼女はキスできなければキスするまで挑戦し続けるタイプの人間だ。

 

マルオ「……ん?今なんと?」

 

二乃の言葉とリップ音を聞いたマルオは振り返って悟飯を睨みつけるが…。

 

二乃「ねえお父さん。これだけ言いたかったの(この先、姉妹達の関係がどのように変わったとしても、私の気持ちは変わらない………)」

 

二乃「ハー君を……。いいえ。

 

ハー君と上杉を家庭教師に選んでくれてありがと!!

 

満面の笑みで白い歯を見せながら、二乃はそう言った。

 




 普段は月曜に投稿するけど、なんとなくで日曜に投稿しました。特に深い理由はないです。

 というわけで、2日目と二乃編でした。原作とほぼ変わりない展開なんですよね〜。でも全てカットしていきなり悟飯に選択させるわけにもいかず、せめて悟飯のヒロインの場合は書いた方がいいかということでこのような形になっています。拘っているポイントはただ悟飯が風太郎の立場を取るだけではないということ。風太郎に合いそうな部分はそのまま彼に任せているという点ですね。悟飯が「親父にめんどくせえって言ってやりたい」なんて言うはずがありませんしね。

 ということで、次は三玖編になります。五月編は比較的オリジナルが入っているので、そこは新鮮味を感じることができると思います。




 ここでこういうの呟いても大丈夫かな…?利用規約確認してもそれっぽい違反は見当たらなかったから大丈夫なはず…。

 2022年10月7日より公開された五等分の花嫁の同人ゲーム、「五等分RE」を早速プレイしてみたわけですが、一言で言うと、控えめに言って神でした。PC(windows&Mac両対応)でもiPhoneでもAndroidでもプレイできるようです。スペックもそこまで気にする必要はなさそうです。

 それぞれテーマを決めて物語を制作されたようで、どのルートもクオリティが高いです。特に五月ルートや四葉ルートは驚かされる展開ばかり続くと思います。
下にDLリンク付きのURLを貼っておきます。製作者様のツイートに飛ぶことができます。ちなみに私はなんにも関わっていませんw。もう少し存在を早く知っていたら翻訳とかその辺に携わりたかったですね。

 気が向いたら是非プレイしてみて下さい。多分私のこの作品を見に来てる方々は大体の展開なら大丈夫って人が多いと思うので。詳しくは下記のURLよりご覧下さい。

五等分の花嫁の同人ゲーム「五等分:RE」
https://twitter.com/GotoubunRE/status/1578303517831286785
※上記のゲームはあくまで公式とは無関係の非営利目的の同人ゲームです。

 ちなみにこちらのゲームの感想はこっちには投稿しないでね。何度も言いますが私は製作側ではなくてプレイヤー側なので。


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第98話 最後の祭りが三玖の場合

*ミニコーナーその3
〜この世界について〜

 この世界は実を言うとかなり特殊。特にマヤリト王国とそれ以外の国の文明力の差が物凄い。本来ならそれほど文明力に差は開かないはずだが、何故こんなことになっているかというと………。その詳細に関しては後ほど語られる。
 人造人間零奈編にて未来トランクスが言及してた通り、本来なら「国という概念は存在しない」。そもそもトランクスが本来目指していた時代ではなく悟飯が高校生となっている時代に誤って辿り着いてしまったのも、この世界の特殊性が関係している。



『これより、旭高校日の出祭、後夜祭。

全てのスケジュールを終了とします』

 

 

最後の祭りが三玖の場合

 

三玖「ベリーパンケーキ、お待たせしました」

 

「おいしそ〜!!」

 

「学園祭のクオリティじゃないよこれ!」

 

「いい感じじゃん!」

 

「これを簡単に作れちゃうなんて、三玖ちゃん女子力高め〜!!」

 

再び時は遡って学園祭初日…。手慣れた様子でパンケーキを焼く三玖だが、前日までの猛特訓を経た結果であるため、簡単に作れたと言われると少し語弊がある。

 

「あっ、あれうちの男子じゃない?」

 

「もしかして敵情視察かな?だとしたら姑息だなぁ……」

 

「男子のたこ焼きには負けてられないよ!ね?三玖ちゃん!!」

 

三玖「あ、あの………。クラスの男子の話だけど………」

 

最初は声を詰まらせた様子で話すが…。

 

 

 

三玖「意地張ってないで仲良くしようよ!きっと一緒にやった方がいいよ!」

 

 

 

 

 

三玖「………(なんて言える勇気があったらいいけど………)」

 

はっきりした声で凛々しく語ったのは三玖の妄想の中の話…。基本的に気弱な三玖は意見をはっきりと言うことができないのだ。

 

「クラスの男子?なるほどね…。好きな男子がクラスの中にいるの?」

 

三玖「ふぇ!!?」

 

三玖の反応を見た女子達は確信して恋バナに発展する。

 

「誰だれ〜?」

 

三玖「ち、違う!いや、違くもないけど………」

 

「3日目告っちゃう?」

 

「おお!三玖ちゃんなら相手の男子もイチコロだよ!!」

 

「あっ!もしかして孫君じゃない?この前三玖ちゃんがアプローチしてるのも見たもん!」

 

三玖「話聞いて!」

 

「え〜勿体ない………。三玖ちゃんなら間違いなく成功するのに………」

 

「あ〜…。でも確かライバルに二乃ちゃんと五月ちゃんもいるもんね〜…。結構難易度高いかもしれないね〜……」

 

三玖「あ、あはは……」

 

ようやく恋バナが収まったことで緊張感が解けた三玖は、再びパンケーキを焼く作業に戻る。

 

「あーあ。男子と一緒ならチャンスがあったかもしれないのに…。三玖ちゃんの女子力を見たら孫君撃沈でしょ?」

 

風太郎「ならさっさと和解すればいいだろ」

 

「うわっ!?上杉君!?」

 

恋バナに夢中で風太郎の存在に気づかなかった女子が驚いたような仕草をする。

 

「えっ?私達があいつと?無理無理!それにうちらだけでも楽しいもんね?」

 

「第一それができなかったからこんな状況になってるんじゃん」

 

風太郎「まあ……。それは俺も責任を感じている…。だが、最後の学園祭だ。男連中も和解を望んでるんじゃねえのか?」

 

三玖「…!(それだ!)」

 

「え〜?あり得ないよ」

 

三玖「あ、あの…!今度は逆に私が敵情視察に行ってみるのはどうだろ?」

 

「あー!それいい!」

 

ということで、三玖は男子達の心情を探ることにした。女子達と同じように本当は和解を望んでいるかもしれない…。そんな微かな希望を胸にたこ焼き屋台に行った……。

 

 

 

 

 

「女子の奴らには負けねえぞ!!」

 

「「おーッ!!!」」

 

三玖「………あれ?」

 

風太郎「想像以上に溝が深そうだな。お互いに意固地になってやがる」

 

現状は風太郎が説明してくれた通りだった。むしろ男子は和解を望んでないようにも見える。

 

三玖「ど、どうしよう、フータロー…?」

 

風太郎「今回俺は中立でしかない。学級長という立場も警戒心を与えるだけだ。対立陣営のお前だからこそ、あいつらの気持ちを変えられるかもしれない。あくまで直感だけどな」

 

信じるか信じないかは三玖次第だと、後から付け加えた。三玖は風太郎のことを信用することにして、たこ焼き屋に出向くことにした……。

 

 

 

「へい、いらっしゃい!……って中野!?」

 

三玖「こ、こんにちは………」

 

「パンケーキ派のリーダーが何の用だ!?」

 

「今忙しいから後にしてくれ!!」

 

三玖は勝手にパンケーキ派のリーダーにされていることを不思議に思いつつも、ただたこ焼きを食べたいだけだと伝えようとする。普段の三玖ならばここで沈黙してしまうが……。

 

三玖「たこ焼き、一つください!」

 

「………なんだよ?クラスの女子に頼まれたのか?俺達を馬鹿にするつもりなら……」

 

前田「はいよ」

 

三玖の注文にあまりよろしくない反応を見せていた男子達だったが、たこ焼きを今まさに焼いている前田が返事をした。

 

「前田…!お前、いいのかよ?」

 

前田「最優秀店舗目指してんだろ?誰にも馬鹿にされるわけにはいかねえ。それに中野さん。林間学校の時は迷惑をかけたな………」

 

三玖「ううん。私も騙したからおあいこだよ。こっちこそごめんね」

 

そうこうしているうちにたこ焼きが完成した。

 

三玖「美味しそう…。いただきます」

 

「熱いから気をつけな」

 

三玖「うん。ありがとう」

 

三玖はたこ焼きに息を吹きかけて少し冷ました後に口の中に運ぶ…。

 

三玖「うまっ………。あっ!いや、おいしい………」

 

あまりの美味しさについ声がこぼれ出てしまった。それを後から自覚した三玖は言い直した。その様子を見て男子達は流石五つ子だと笑った。この意味が三玖には分からなかったが、先程屋台の点検で訪れた四葉と全く同じ反応を示したからである。

 

「こっちの話だ。ただ中野さんがお世辞で言ってないことは分かった」

 

三玖「うん。絶品!中がふわふわしてるのに外はカリカリ……。何か入れた?」

 

「よく気付いたな!牛乳が入ってんだ!」

 

前田「ふふふ…!この高火力改造コンロじゃなきゃ出せない味だぜ!」

 

三玖「そっか…。クラスの女子達にも食べさせてあげたいな………」

 

「は?」

 

三玖「1日目が終わったら私がみんなを連れてくる。男の子達が本気だってきっと伝わるはずだから!」

 

「そんなこと急に言われてもなぁ……」

 

「あいつらたこ焼きなんてダセーって言ってたぞ?誰があいつらの為に……」

 

風太郎「お前ら、素直に………」

 

三玖「待ってフータロー」

 

まだまだ素直にならない男子達に見かねて風太郎も説得しようとするが、三玖に止められた。

 

三玖「当日になってごめんなさい。でもこのまま終わりたくないのは同じ気持ちなはず…!全部終わって、卒業した後も『いい学園祭だったね!』ってみんなで喜べるものにしよう!!」

 

三玖が珍しくはっきりと大声で話す三玖に圧倒されながらも、まだ男子達は素直になれずにいた。そこで思わぬ助け舟が……。

 

武田「そういえば、前田君は松井さんに食べさせてあげてたよね?」

 

前田「てめっ!それは言うなって……」

 

武田「おや?そうだったかい?」

 

「どういうことだよ前田?」

 

一人抜け駆けしている者がいることを知った一同は、それぞれ食べさせてあげたい相手がいることを次々と告白していく。頑固だった男子達がようやく素直になった。

 

「こいつら…。気持ちは分かるけど…、まあ、俺も食わせたいやつがいないわけでもない……。中野さん、こいつらの為に頼んでもいいか?」

 

三玖「……!!うん!!もちろん!!」

 

三玖は笑顔で快諾した後、他の男子達にも話を聞いてくれたことに対して礼を述べてその場を去っていった。

 

「仕方ねえな」

 

「協力してやっか」

 

「ったく。俺達がいなきゃ始まらねえんだからよ」

 

風太郎「……………」

 

謎の雰囲気を風太郎は冷めた目線で眺めていたのはまた別のお話。

 

 

風太郎「さて、俺はそろそろ行かないと怒られそうだ。あとは一人で平気か?」

 

三玖「うん。大丈夫」

 

風太郎「じゃあ15時にな。忘れんなよ」

 

三玖「うん。あと、ありがとう。こうやって男の子達を説得できたのはフータローのお陰」

 

風太郎「はっ?俺は何もしてないだろ?お前がみんなを動かしたんだよ。強くなったな、三玖」

 

風太郎はそれだけ言うと背を向けて仕事場に戻っていく……。

 

三玖「(強くなった……か。私は悟飯とフータローがいなかったら、今までの私のままだったと思う。多分本人達は否定するだろうけど言わせて…。ありがとう)」

 

三玖は心の中で二人に礼を言った。それと同時に、勇気を出せばどんな不可能も変えられるのだと、自分自身にも自信を持った。

 

 

 

 

 

 

だが、事件は起きた。三玖は女子達を説得する為にたこ焼き屋台前に集合するよう呼びかけたのだが………。

 

「ねえ、ここって……?」

 

「たこ焼きだよね…?」

 

何やらたこ焼き屋台の周りが騒がしくなっていた。誰かの活躍によって既に火は鎮火していたものの、屋根のテント部分が半分ほど焼け落ちていた。こんな事態が発生してしまえば、学校側としても見逃すことはできず、たこ焼き屋台は出店停止となってしまった。

 

 

 

そんな事件が起きた日の翌日…。つまり、日の出祭二日目……。

 

 

三玖「……やっぱり火は悟飯が消したんだね?なんとなく分かってたけど…」

 

悟飯「うん。でも気づくのがちょっと遅かったみたいだね…。僕が来た時には結構燃えてたから…………」

 

三玖「…………」

 

悟飯「三玖さん。風太郎から聞いたよ?勇気を出してたこ焼き側の男子達を説得したんだってね?」

 

三玖「でも、結局意味なくなった……」

 

悟飯「そ、そんなことないよ!三玖さんの努力は無駄じゃなかったはずだよ!」

 

 

「お前の屋台だったのかよ!出店停止って!!」

 

「そうだよ。マジやってられねえぜ」

 

「自信満々だったから今日は絶対行こうと思ってたのに……。この空腹どうしてくれるんだよ」

 

「なら……」

 

 

 

三玖「……今のって」

 

悟飯「……ごめん。僕がもう少し早く気づけていれば………」

 

三玖「ううん。悟飯のせいじゃないよ。これは仕方のない事故だったんだよ………」

 

そんな暗い雰囲気に包まれる中、1人の少女の言葉によってそんな空気が一変した。

 

四葉「三玖!孫さんも!大変です!!上杉さんが知らない女の子と話してます!!」

 

三玖「えっ?」

 

悟飯「知らない女の子?」

 

ということで、四葉に案内される形で風太郎とその知らない女の子がいるという場所まで行く。すると確かに見え覚えのない女子と歩いていた。制服を着ていないことから、少なくとも旭高校の生徒ではないことが推測できた。

 

悟飯「ちょっと話しかけてみるよ」

 

三玖「あっ、悟飯…!」

 

悟飯は何も恐れる様子もなく風太郎とその女の子の元へと駆け寄る。後々風太郎の幼馴染で特に恋仲ではないことが判明したのだが、それはまた別のお話……。

 

 

 

二乃「あっ、三玖…!早かったわね。屋台当番急に代わってもらって悪かったわね」

 

三玖「それはいいよ。でもなんでエプロン着てるの……?」

 

二乃「……後でみんなに説明するつもりだったんだけど、聞いて…!」

 

 

 

そして日の出祭最終日。昨日の二乃の勇姿……。つまり、勇気を出してマルオの元に行ったことを聞いた三玖は、今度は自分の番だと自分自身を奮い立たせた。風太郎と悟飯を巻き込んで校舎の屋上に向かう三玖は、いつもの三玖とは何かが違った。

 

風太郎「なるほどな。たこ焼き、パンケーキ代表それぞれを呼び出したわけか。学園祭時は立ち入り禁止の屋上なら誰にも迷惑をかけることはないが…」

 

三玖「違うよ?迷惑をかけるのは私…」

 

悟飯「えっ?それどういう意味?」

 

三玖の言動に違和感を感じた悟飯はそのまま聞くが、扉が開かれ……。

 

「ふざけんな!どうせ俺達が店を出せなくなったのを嘲笑いにきたんだろ!!?」

 

「だから誰もそんなこと言ってないじゃない!!男子が事故を起こしたのが悪いんでしょ!!?」

 

「んだとッ!!?」

 

「なによ!!!?」

 

………代表者2人がまたしても喧嘩していた。悟飯が止めようとする前に三玖の足が先に動き出す。

 

「あっ!中野さん…」

 

「三玖ちゃん。この手紙って…?」

 

三玖「……よくして」

 

「「えっ?」」

 

 

「仲!良くっ!!してっ!!!」

 

 

三玖らしからぬ大声で2人に自分の思いをぶつけた。だが三玖が2人に伝えたいことはこれだけではない。

 

三玖「男の子も女の子もいつまでも意地張って…!もう高校生だよ!?来年大学生でしょ!!?こんな子供みたいな喧嘩して恥ずかしくないの!!?パンケーキとたこ焼きに上下なんてあるはずがない!!どっちも美味しい!!どっちもがんばってる!!なんでそれが認められないのッ!!?」

 

先程まで喧嘩していた2人に風太郎と悟飯も今の三玖には圧倒されてしまった。それくらいに今の三玖の勢いは凄い。今まで伝えたかったけどずっと我慢していたのだろう。話し出したらもう止まらなかった。

 

三玖「学園祭…。準備からずっと楽しくない。居心地悪い……!つまらない…!!

 

ずっと我慢してた!もう限界ッ!!」

 

風太郎「三玖………」

 

三玖「女の子!!

 

「は、はい!」

 

三玖「最終日目前でもう皆疲れてる。それもそうだよ。他のクラスは男女で役割分担をしてるから、たくさんの人が来る状況で半分の人数じゃ絶対乗り切れない。分かってる?」

 

「う、うん……」

 

三玖「それから男の子!!

 

「は、はい!!」

 

三玖「出店禁止は残念だった。皆が努力していることを知った分、気持ちは分かる。でも女の子を目の敵になんてしてないよね?お友達と話してた時……」

 

 

『この空腹どうしてくれるんだよ!』

 

『……なら』

 

 

三玖「……パンケーキを勧めてたでしょ?」

 

「えっ?嘘……」

 

「……見てたのか」

 

三玖「多分他の男の子も同じ」

 

「じゃあ、二日目からお客さんが増えたのって………」

 

「俺達は本気で最優秀店舗を狙ってたんだ。他のクラスに取られるくらいなら、お前らの方がマシだ」

 

「も、もっと早く言ってよ!!」

 

「言ってどうするんだ!!」

 

またしても喧嘩になる2人を三玖は頬を膨らませながら抗議の視線を送ることによって一瞬にして沈静化した。今の三玖に逆らえる者はいない。

 

三玖「……パンケーキ屋さんの裏方を男子に手伝ってもらおう」

 

「はっ?でも……」

 

「うん。私が良くても他のみんながなんて言うか………」

 

三玖「任せて。私が説得するから……。私を信じて」

 

三玖は2人の目をしっかり見ながら、静かながらも強い意思を感じさせる声でそう伝えた。そんな三玖に納得した2人は三玖に対して謝罪した後、屋上を後にした。

 

 

三玖「ふぅ…。疲れた」

 

風太郎「あんな大きな声を出せたんだな…。あいつらはなんて言ってたんだ?」

 

三玖「ひとまずは理解してくれたみたい。すごく我儘だったけど、勇気を出して言えてよかった」

 

悟飯「凄いよ、三玖さんは…。僕はすっかり諦めてたよ……。みんな競争する気満々だったからさ………」

 

風太郎「それを言ったら俺もだ。学級長でありながら、修復は不可能だって勝手に自分で線引いちまってた。お前には教えられたぜ………って、うお!!?」

 

風太郎が再び三玖の方に向き直した時、三玖がかなり近い位置にいつのまにか移動してきたので驚きの声を上げた。そしてジリジリと風太郎に詰め寄る……。

 

三玖「フータロー。あの女の子は誰?」

 

風太郎「女の子…?もしかして竹林のことか?ただの幼馴染だが……」

 

三玖「好きなの?異性として?」

 

風太郎「違う違う!!ただの友達だ!!」

 

三玖「…そっか。ならよし!これを聞くのもずっと我慢してた。あんな大胆な告白をしておいて他に好きな人がいたら切腹ものだからね」

 

風太郎「サラッと怖いこと言うなよ…。それじゃ、俺はそろそろ仕事に戻る。あいつの分も頑張らなきゃいけないからな………」

 

三玖「うん。分かった。ありがとね、フータロー」

 

風太郎「……?礼を言いたいのはこっちだよ。ありがとな、三玖」

 

風太郎は簡素に、しかしいい顔で礼を言うと屋上を後にした。

 

悟飯「……それにしても、昔の三玖さんじゃ考えられない行動力だよね…。ホント、成長したね…………」

 

三玖「うん。これも悟飯とフータローのお陰。あの時、フータローが自分に自信を持てって言ってくれたから……。悟飯が努力をすればエリートを超えられるって言ってくれた結果だよ?」

 

悟飯「あれ?僕そこまで言ったかなぁ……?」

 

意味合いとしては似たようなものである。三玖がまだ家庭教師に対して消極的だった頃、悟飯と風太郎がそれぞれ別で説得し、その時に三玖を応援する時にかけた声が先程三玖が言ったものだった。

 

三玖にとって、これらの声が成長するきっかけとなったのだ。

 

三玖「そうだ…。もう一つ我慢してたことがあるんだ。それには悟飯の力を借りる必要があるんだけど、いいかな?」

 

悟飯「僕の?うん。いいよ。僕に遠慮なんてしなくていいよ」

 

三玖「分かった。言質は取ったからね」

 

ドンッ

 

そう言った後、三玖は悟飯を押し倒して悟飯に覆いかぶさった。

 

悟飯「えっ?」

 

三玖「ごめん。説教は後で聞くね」

 

悟飯「……!!!?」

 

そして三玖の顔が悟飯の顔にゆっくりと落ちた。

 

三玖「(例えどんな越えられない壁が現れても、自分を信じ続ける限り……、努力し続ける限りどこまでも進んでいける)」

 

そして10秒後………。2人の顔が離れた。

 

三玖「もう迷わない………」

 

 

 

悟飯「ま、まさか……!我慢してたことって……!!!」

 

三玖「うん。でもまだあるよ?言質は取ったからね?逃がさないよ?」

 

悟飯「待って…!その目は……。待って!!流石にまずいって〜!!!」

 

この後、三玖は悟飯に逃げられてしまったという。三玖のやろうとしていたことが余程まずいものだったのだろう。実力行使に出られると無敵状態の三玖でもどうしようもなかった。

 

三玖「ふふっ…。やっぱり悟飯を揶揄うのは楽しいな……」

 

成長して強くなったと同時に、ちょっと悪戯っ子になってしまった三玖だった……。

 

 

 

 

 

 

おまけ:最後の祭りがZ戦士一向だった場合

 

 

悟空「おお!ここが悟飯の通ってる学校かぁ…!!一応一度来たことはあったけど、あの時は無茶苦茶だったからなぁ……!!」

 

チチ「悟空さ?あまり暴れ回っちゃダメだぞ?」

 

ピッコロ「悟飯はどこにいるんだ?気を見つけられん」

 

悟天「兄ちゃんは多分気を抑えてるんじゃないかな?普段の生活でも物を壊さないように注意してるし」

 

クリリン「賑やかだなぁ……。こんなに人が多いもんなんだな」

 

今のメンツを紹介しておくと、孫一家にクリリン、ピッコロ、トランクスとブルマのみとなっている。ベジータは特に興味なく、18号は(以下略)

 

悟空「つかオラ腹減っちまったぞ!」

 

悟天「僕もお腹空いた!」

 

チチ「んじゃ早速屋台にするだか」

 

悟天「確か兄ちゃんの屋台はたこ焼きとパンケーキだって言ってた」

 

トランクス「2つもやるもんなのか?」

 

ということで、まずはたこ焼き屋に行くことにした。

 

「へい!いらっしゃ……あなたは!?」

 

悟空「おっす!オラ悟空!悟飯の父親ってところだ」

 

「そりゃ知ってますって!あの機械軍団の時といい、魔人ブウの時もありがとうございます!!」

 

悟空「んな細けえこったぁ気にすんなよ。取り敢えずたこ焼き10箱くれ!」

 

「じゅ、10箱!!!?」

 

前田「は、はいよ………」

 

ということで、たこ焼き10箱(1箱6個入りなので60個)を受け取り、悟天と悟空で半分ずつ分け合うことにした。

 

悟空「ひゃ〜!うめぇな!!」

 

悟天「ほんとだ!外はサクサクなのに中はトロトロだ!!」

 

チチ「悟空さ、一つくれけろ…。これは隠し味に牛乳を使ってるだな?」

 

クリリン「美味そうに食ってるお前らを見てたら俺も食いたくなってきちまったよ。俺も買うか」

 

トランクス「俺も俺も〜!!ママ買ってよ〜!」

 

ブルマ「じゃあ私も食べちゃおうかしら?」

 

悟空「ピッコロ!おめぇも食うか?」

 

ピッコロ「……俺は水さえあれば生きることができる。別にいらん」

 

もしかすると知らない方もいるかもしれないので一応補足しておくと、ナメック星人は水と空気さえあれば生きることができるのだ。正確には太陽光も必要だが…。

 

 

続いてパンケーキ屋台…。

 

「うっそー!!孫君のお父さんじゃん!!」

 

「なんでこんなところに!!?」

 

悟空「おっす!いつも悟飯が世話になってんな!パンケーキ、取り敢えず全種類2つずつくれ!」

 

三玖「ぜ、全種類!!?」

 

チチ「こら悟空さ!欲張るでねえ!そんなに一気に頼んじまったらそちらも困っちまうだろ。なあ?」

 

「いえいえ!どうぞどうぞ!(これ、男子を追い抜けるチャンスじゃん!)」

 

悟空「だってよチチ。んじゃよろしくな!」

 

ちなみに後でみんなも注文しました。

 

悟空「うめぇ!!こんなフワッフワなのできるんか!!」

 

クリリン「クオリティ高いじゃないか!」

 

悟天「おいし〜!!これ本当に三玖さんが作ったの?」

 

三玖「うん」

 

チチ「これなら悟飯ちゃんの胃袋を鷲掴みできるレベルだな!」

 

三玖「悟飯の?……それいいです!!」

 

なんてやり取りがあったのはまた別のお話。

 




 今回は割と短め。DBメンツに関しては分けて書きました。学園祭編って色々と複雑なのであまり変にいじると大変なことになって収拾がつかないんですよね……。

 ただ原作と異なる点といえば、三玖が若干意地悪になっていることですかね。原作では風太郎に対してこんな感じの意地悪はしていない……はず。修学旅行編最後のあれくらいじゃないですかね?悟飯の性格的にも揶揄いやすそうだなぁということでこんな形にしてみました。

 ちなみに四葉編をカットするに当たってここに書き記しておきますが、四葉は原作のように疲労で倒れることはありませんが……。まあ色々あって大体原作通りに事が進みます()。なんで書かないかって?原作まんま90%くらいになってしまうからです()

 前書きの意味深な説明はちゃんと意味深なものです(某構文もどき)。しばらくは頭の片隅に置いといていただけるとより楽しめる………かも?


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第99話 最後の祭りが五月の場合 1

※ミニコーナーその4
 孫悟飯の1年生時代

 この世界では高校1年生の春から高校に通っている。わざわざ日本の高校に通っている理由として、特待生制度や補助金制度が充実しているからだそうだが、詳細は不明。通いたての頃の悟飯は世間知らずかつ力加減がよく分かっていなかった為、体育の野球で盛大にやらかしてたりする。
 本編開始時には既に風太郎と仲良くなっていたが、初めから仲が良かったわけではない。色々あって現在まで至るのだが、その詳細は別で語ることにする。



『これより、朝日高校学園祭、後夜祭。全てのスケジュールを終了とします』

 

最後の祭りが五月の場合

 

 

時は日の出祭初日……。それよりも前のある日にまで遡る。

 

 

悟飯「どうも下田さん」

 

下田「おっ?なんだ孫君じゃないか。どうしてここに?」

 

悟飯「今日はあの人が来る日なんでしょう?僕だけ実際に会ったことないので、一度見ておこうかと………」

 

下田「……お嬢ちゃん……五月ちゃんは大丈夫なんだよな?」

 

悟飯「ええ…。上手く彼女を説得できましたよ。あまりいい反応ではありませんでしたけど……」

 

説得には成功したものの、有名講師による講義が中止されたということで、五月はとても残念がっていたとか…。

 

下田「……ぶっちゃけ授業を受けただけじゃあいつの本性なんて見えてこないと思うけどな……」

 

そんな下田の本音が吐露される。悟飯は無堂のことは五月やマルオから聞かされたとはいえ、実際に会ってないからまだ判別ができない状態なのだ。だからこそ今日会っておこうと思ったのだ。

 

下田「………まあ、お嬢ちゃんとの接触さえ避けられれば何も問題はない。好きなだけ見ていくといいさ」

 

悟飯「ありがとうございます」

 

悟飯は下田に一礼して塾の中に入ろうとしたその時だった………。

 

下田「うおっ!?お、お嬢ちゃん!?来てたのか!?」

 

五月「おはようございます下田さん。講義は中止になってしまいましたが、勉強はした方がいいかと思いまして」

 

なんと想定外のアクシデント。五月は講義に受けられなくとも勉強をしに塾に来てしまった。これは悟飯や下田も想定外だった。

 

五月「……あれ?特別講義あるじゃないですか?念の為来てよかったです!自習だけではどうも不安だったので、是非受けたかったんですよ!!」

 

悟飯「い、五月さん!!今日は僕の家で勉強しようか!!そうしよう!!」

 

五月「えっ!?孫君の家で…!?た、大変魅力的な話ではありますが……」

 

下田「おーお!いいじゃねえお嬢ちゃん!!そのままヤってこい!!」

 

五月「下田さんは何を言ってるのですか!!?」

 

悟飯は緊急対応策として、自分自身を利用することにした。度々家に来たがる五月なら釣れると思ったが、意外と五月の意思は固かった。下田もなんとなく察して悟飯の後押しをするが……。

 

五月「……やっぱり今日はこちらの授業を受けることにします。目指す夢の為に今はできることをしたいと思います!!」

 

五月の真っ直ぐな姿勢に悟飯は罪悪感を感じつつも、元父親との接触を避ける為に下田となんとか策を練ろうとする。しかしそれも無意味に終わってしまった。

 

「素晴らしい!こんな暗い世の中では夢を持てるというだけでも一瞬の才能だ!!」

 

そんな熱い言葉をかけてきたのは……。

 

下田「………こちらが今回の特別講師、無堂仁之助先生だ」

 

五月「よ、よろしくお願いします!」

 

もう対面してしまったので、下田は諦めて無堂をあくまで"講師"として紹介することにした。

 

無堂「才気溢れる若者よ。私は君にエールを送るよ」

 

悟飯「……………」

 

こうして、五月との約束通り特別講義を共に受けることにした。五月は悟飯の隣に当然のように座っているが、視線は無堂に集中していた。雑念を吹き飛ばして熱心に勉強しているところを見ると、どうやら本当にこの授業を受けたかったようだ。

 

悟飯も無堂の講義を聞きながら彼を観察していた。五月達の実父はどんな人間なのか?何故子や妻を見捨てたのか?そんなことを考えながら無堂を観察していたが、その日の講義で見る彼は特に悪い人間には見えなかった。寧ろやる気さえあればできてもできなくても手厚くサポートする。そんな印象だった。それにとても分かりやすい授業だった。これなら確かに教師としての評判が良くなるのは頷ける。

 

五月「本日はありがとうございました、無堂先生!!」

 

無堂「こちらこそ礼を言わせてくれ。君のようにやる気のある子ばかりならいいんだけどね………」

 

五月は授業が終わった後も無堂に質問していた。その質問に対してイヤな顔一つせずに丁寧に答えていく姿を見ると、本当に妻や子供を見捨てるような人なのだろうかと疑ってしまうほどだった。

 

 

 

五月「素晴らしい授業でしたね、孫君!!」

 

悟飯「そうだね……」

 

質問が終了したので、満足気に五月が帰宅している。悟飯は念の為彼女の自宅まで付いて行くことにした。

 

詳細を話すと、あの後無堂が五月と個人的な接触を望むようなことは一切なかった。聞いた話では生まれる前にいなくなったそうなので、彼も子供の顔が分からないのかもしれない。とはいえ、もうすぐ受験を控える彼女には余計なストレスをかけたくないので、念の為護衛することにしている。

 

五月「わざわざ家の前までありがとうございました。また明日お会いしましょう」

 

悟飯「うん。気をつけてね?」

 

五月「ここはもうエントランスですけどね…。でも孫君に心配されるのは悪い気はしませんね♪」

 

ご機嫌になった五月がエントランスに入って行く様子を笑顔で見送った悟飯は、学園祭当日は一応警戒しようと考えながら帰宅するのだった……。

 

 

 

 

 

 

そして特に何事もなく…。ということはなく、たこ焼き派とパンケーキ派の溝は深まっていたが、それ以外は特に何事も起こらなかった。そのまま日の出祭初日を迎える……。

 

風太郎「はっ?学園祭中も一人で自習してるのか、お前…?勉強ばかりで大丈夫か?友達いる?学校つまんねえなら相談に乗るぞ?」

 

五月「あなたにだけは言われたくなかった言葉です……」

 

寧ろ去年の風太郎なら『1秒も時間を無駄にできん』と言って勉強していただろう。なんなら学園祭に来ている五月はまだマシな方で、去年の風太郎ならそもそも学校にすら来ていないだろう。

 

風太郎「……俺ですらこの場の雰囲気に少しワクワクしちまってるのに…。だが不可解だな。これだけやってりゃあ、いくらお前ほどの馬鹿でも何かしらの成果が出ても不思議じゃないんだがな……」

 

五月「想像を絶するほどの馬鹿で悪かったですね!……約束は15時でしたよね?それまでには用意した問題集を全て終わらせます!!それまで教室にはいきません!!」

 

それから、五月は適度に水分補給しつつもずっと勉強を続けていた。先日返却された模試の結果……というより、志望校判定があまりいい結果と呼べるものではなかったからだろう。

 

 

悟飯「五月さん、随分頑張ってるね」

 

五月「そ、孫君…!!お仕事の方はいいんですか?」

 

悟飯「うん。働きすぎだから少しは羽を伸ばせってクラスの人が気を使ってくれたんだ。これ食べる?上杉君に聞いたよ。ずっと頑張ってるんでしょ?」

 

五月「ありがとうございます。でもお気持ちだけで十分です」

 

悟飯「でももうお昼だよ?何か食べないと回る頭も回らなくなっちゃうし…」

 

五月「ううぅ……。で、ですが………」

 

「じゃーん!たこ焼き!」

 

「おお!結構本格的じゃん!」

 

周りも屋台の食べ物を楽しんでいる為、五月の食欲が刺激されるも、強い意志で断ったが……。

 

悟飯「……しょうがない。これならどうかな?」

 

五月「………(えっ?)」

 

悟飯はたこ焼きを爪楊枝で刺し、五月の方に差し出す。

 

悟飯「ほら、口を開けて」

 

五月「(これは、俗に言うアーンでは!!?こんなビッグチャンス見逃すわけにはいきません!!)」

 

と、五月の強い意志は悟飯の意外な行動によって崩された。

 

五月「お、美味しいです…!」

 

悟飯「それは良かった。まだまだあるから沢山食べてもいいよ?」

 

五月「………」

 

悟飯「……ん?どうしたの?」

 

箱ごとたこ焼きを渡した悟飯を上目遣いで見る五月を見て、一体何を求めているのかと疑問に思う悟飯は取り敢えず聞くと……。

 

五月「……もっと食べさせてください」

 

悟飯「………!!!」

 

五月のその言葉に今更ながら自分が何をしたのか気づいてしまった。五月が頑なに食べないものなので、食べさせてあげようという親切心から出た行動だったが、冷静に考えれば所謂「あーん」をしたわけである。

 

「いや〜、初々しいねぇ…。これぞ学園祭という感じだね。数十年前の記憶が蘇ってくるよ」

 

五月「ふぇ!!?む、無堂先生!?」

 

なんかいい雰囲気になったところで、先日の講師であり、五月の実父でもある無堂が姿を現した。

 

悟飯「………」

 

先程まで柔らかかった悟飯の表情が一気に引き締まった。

 

無堂「確か君は、先日の講義に来てくれた五月ちゃん……だよね?」

 

五月「その節はお世話になりました、無堂先生」

 

無堂「そういえば君も来てたよね?確か全国模試一位の孫悟飯君」

 

悟飯「……!!何故そのことを……?」

 

無堂「まあまあ、細かいことは気にしないで。ところで、五月ちゃんはこんな時に勉強かい?」

 

五月「えっと、まあ………」

 

無堂「なんとストイックな!素晴らしい向上心だ!!授業に参加する生徒がみんな五月ちゃんみたいな心持ちなら僕も楽なのに…。僕はね、昔教師をしていた時から……」

 

悟飯は無堂に警戒しながらも様子見をしていた。だが今のところは特に何の変哲もない話だった。無堂が自分の経験談を話そうとすると、五月も教師を目指していることを聞いたと言う。

 

無堂「どうして教師を目指すんだい?」

 

五月「……正直に言うと、今まで苦手な勉強を避けてきました。ですが夢を見つけ、目標を定めてから学ぶことが楽しくなったんです。そんな風に私も誰かの支えになりたい……。それが私の………」

 

無堂「素晴らしい!なんて素敵で清らかな想いだろう!!」

 

五月は全て言い切る前に無堂が賞賛の言葉を贈る。その様子に悟飯は調子が狂いそうになるが、引き続き警戒することにする。

 

五月「…少しだけ報われた気がします。本当に私の夢は正しいのか……。今になってもそんなことばかり考えてしまって机に向かっても集中できず……。実は母が言っていた言葉があるんです。……あっ、母も学校の先生でして…」

 

無堂「知ってるよ」

 

悟飯「……!!」

 

五月「………えっ?」

 

無堂「僕は彼女の担任教師だったんだ。君は若い頃のお母さんにそっくりだよ」

 

五月「そっくり……?」

 

無堂「ああ、歪な程にね」

 

やはり五月の正体に気づいているようだ。それを察知した悟飯は今すぐにでも会話を止める準備をする。

 

無堂「君がお母さんの影を追っているだけならお勧めしない。歪んだ愛執は自分自身を破滅へと導くだろう。まるで呪いみたいにね………」

 

五月「………!!」

 

悟飯「あの………」

 

堪忍袋の尾が切れそうになった悟飯は我慢できずにその話に割って入った。

 

無堂「なんだい?」

 

悟飯「……いくらなんでもその言い方はあんまりじゃありませんか?」

 

無堂「そんなことはないよ。現に五月ちゃん自身が夢に追いついていない。自分の意思で目指していると無意識に思い込んでいる。だから呪いなんだよ」

 

悟飯「………なんなんですか、あなた?いきなりこんなことを……。まさかとは思いますけど、それを言いにくる為だけに来たんですか?」

 

無堂「そんなことはないよ。けど確かにキツい言い方になってしまったかもしれない。それは謝るよ。でもね、五月ちゃんにはお母さんと同じ道を辿ってほしくないんだ。彼女は僕に憧れて似合わぬ教職の道へと進んだんだ。最後までそのことを後悔していたよ…」

 

どういう意図だか分からないが、これは明らかに五月を妨害している。仮にも父親を名乗りたいのなら、娘の夢を応援してあげるべきだ。多少の忠告はあってもいいと思うが、今のは明らかに五月の夢を否定している。どうやらマルオの言っていたことは正しかったようだと、悟飯は自分の中で結論づける。

 

五月「すみません。この後約束があるので失礼します」

 

無堂「五月ちゃん。悩んでいるのならいつでも相談に乗るよ?きっと君にも合った道が見つかるはず…」

 

悟飯「………ちょっとお話いいですか?」

 

無堂「……なんだね?」

 

悟飯「五月さん。先に行ってて」

 

五月「わ、分かりました」

 

悟飯は五月をその場から立ち去ることを要求すると、彼女は荷物を整理した後に食堂を後にした。

 

悟飯「……一体どういうつもりですか?いくらなんでもあんな言い方はないでしょう?」

 

無堂「ごめんね…。だけどさっきも言った通りだよ。五月ちゃんのお母さんとは同じ道には進んでほしくない。そう思ったから………」

 

悟飯「随分、五月さんに拘るんですね?何か理由でもあるんですか?」

 

無堂「いやだなぁ……。せっかく真剣に僕の授業を聞いてくれた生徒をミスミス破滅させるのは心苦しいものがあって………」

 

悟飯「………いい加減猫を被るのはやめたらどうです?無堂先生……。いや、零奈さんの元夫であり、5人の実父の無堂仁之助さん?」

 

無堂「………誰から聞いたんだい?」

 

無堂の質問に悟飯は無言を貫く。

 

無堂「………何故君が私のことを知っているのかは聞かないでおいてあげるよ。それで……?」

 

悟飯「……あなたが五月さんにしつこく関わってくるのは、五月さんがあなたにとっての実の娘だから……。そうでしょう?今更何しに帰ってきたんですか?あなたのことは五月さんから聞いてますよ?零奈さんのお腹の中の子が五つ子だと聞いた瞬間に行方をくらませたと………」

 

無堂「君はなんなんだい?人の家庭に口を挟まないでくれるかい?」

 

悟飯「10年以上放っておいて自分の家庭扱いしないで下さいよ」

 

無堂「…………君の言いたいことはよく分かるよ。当時の僕に甲斐性があれば苦労させることなんてなかっただろうね…。それについては本当に申し訳ないし、許されることではないと思っている。だが、もし罪滅ぼしをすることを許してもらえるなら、五月ちゃん達の力になりたいんだ………」

 

…………話を聞く限りでは、今になって罪悪感を感じてきたというところだろう。だが戻ってくるのが遅すぎた。零奈は奇跡的に生き返ったとはいえ、無堂が逃げなければ、少なくとも零奈が死ぬことはなかっただろう。悟飯はどうしても無堂という人間を信用しきることはできなかった。そもそも何故今なのか?それが疑問で仕方なかった。

 

悟飯「………では、これだけ聞かせて下さい。何故今なんですか?」

 

無堂「…ずっと娘達のことを想いながら講師として全国を回っていた。そんな時、一花ちゃんが出演するCMを見たんだ……」

 

悟飯「………はい?」

 

無堂の言葉に唖然としてしまった。一見ずっと後悔しているような口振りだが、よく考えてみよう。ずっと娘達のことを想っていた。そして一花のCMを見た………。

 

ずっと娘達を想っていたことと一花のCMに何の関係があるのか…?いやないはずだ。無意識に出たであろう一花のCMという言葉から、悟飯はある結論を見出した。

 

悟飯「(この人、一花さんが出演するCMを見て思い出したから来たんだろ……!!?)」

 

恐らく、一花のCMを見て自分に娘がいることを思い出したんだろう。それで昔の記憶を掘り起こして罪悪感を感じ始めたというところだろう。

 

悟飯「………なるほど。あなたに娘さん達を会わせるわけには行きません。何を考えてるのかは知りませんけど」

 

無堂「な、何故だい!?君にそんなことを言う権利などないはずだ!!」

 

悟飯「ありますよ。僕は彼女達のボディガードとして正式に雇われています。彼女達に悪影響を及ぼすようなら到底見過ごすわけにはいかない。必要ならば証明書も提示しましょうか?」

 

無堂「なっ………」

 

悟飯「とにかく、あなたと五月さんをもう2度と会わせるわけにはいきません。学園祭を楽しむのは大いに結構ですけど、娘さん目的なら帰って下さい」

 

無堂「そ、そんなの理不尽だ!!私は彼女達の!五月ちゃんの父親なのだぞ!!?」

 

悟飯「知りませんよ。今の父親はマルオさんですよ?法律上はそうなっています。今更あなたが父親を名乗ったところで認められませんよ?それに、あなた、一花さんのCMを見て彼女達の存在を思い出したでしょ?」

 

無堂「……!!!!」

 

悟飯「それでは、忠告しましたからね」

 

悟飯はそれだけ言って食堂を後にした。悟飯はすぐさま背を向けた為、無堂がどんな表情をしているのか見えなかった……。

 

 

 

 

 

そして教室に移る。集合時間まで割と余裕があったので、先に行った五月しかいなかった。

 

悟飯「五月さん。さっきの言葉は気にしなくていいんだからね?君の夢は君自身が決めることなんだから。誰かの意見に流されることはないよ」

 

五月「………はい」

 

五月は元気なく返事をした……。

 

 

 

 

 

 

 

五月を慰めて翌日、学園祭2日目になった。マルオ達には連絡し、五月と無堂が接触してしまったことを伝えた。取り敢えず悟飯は無堂に釘を刺したことを伝えた。勇也は昨日に引き続きパトロールをすることにし、マルオも時間さえあれば必ず行くと言う。下田も同様だった。

 

悟飯「………」

 

悟飯はたこ焼き屋台が焼けてしまったため、女子達が担当するパンケーキ屋で裏方作業をしていた。悟飯だけは学級委員でもないのに中立派として扱われているため、特に問題はなかった。

 

悟飯「…………!」

 

しかし、彼は作業には集中してなかった。無堂の気は昨日の一件でしっかり記憶しておいた。その為、今五月と無堂が近くにいることを遠くからでも察知できた。

 

悟飯「ごめん!ちょっとトイレ!」

 

「ええ!?そ、孫君!?」

 

 

 

 

 

悟飯は大急ぎで五月の元に駆けつけた。だが、その時には既に無堂との会話は終わっていたようだった。

 

無堂「なっ……!き、君は…!!」

 

何故かおでこから血を流している無堂に、何かショックを受けているようにも見える五月がいた。

 

悟飯「昨日言いましたよね?娘さん達目的なら帰ってくださいって…」

 

無堂「君に何を言われようが関係ないだろう?僕と五月ちゃんは親子なんだから」

 

……どうやら自分が父親であることも明かしてしまったらしい。しかも相手は五月。状況が最悪だった。

 

悟飯「五月さん。行くよ」

 

無堂「お、おい!まだ話は終わってないぞ!」

 

悟飯が五月の手を取ってその場から退散しようとすると、無堂はまだ話したいことがあるようで、五月の肩を掴んで止める。

 

五月「……!!!!」

 

すると、五月の体が跳ねた。

 

 

 

 

シュン‼︎

 

無堂「……!!?い、いつの間に…!?」

 

五月が怖がっているのを感じ取った悟飯は、高速移動で無堂の腕を掴むと同時に彼の顔を見る…。

 

無堂「な、なんだね君は………ヒッ…!!!!」

 

無堂はその場で尻餅をついてしまった。何故なら悟飯が殺気を放っているからだ……。ここまで殺気を放ったのは魔人ブウと戦う時や、バビディを目の前にした時ぐらいだ。流石にそこまでとはいかないが、その時といい勝負をする程の殺気を放っていた。これには戦士でない無堂も恐怖してしまった。失禁しなかっただけでも強い方だろう。

 

悟飯「……柔らかい言い方じゃ理解できませんでしたか?だったらもう一度、分かりやすく言いますね?

 

 

二度と五月さん達に近づくな……

 

悟飯は最早敬語も取り払って再度無堂に警告した。次はないという意味を込めて眼力を放った。

 

悟飯「……行こう、五月さん」

 

五月「………は、はい」

 

今度こそ、悟飯は五月の手を取ってその場を去った。

 

悟飯「五月さん。あんな人の言うことを間に受けることはないよ。あの人は一花さんのCMを見て初めて君達のことを思い出したと同時に罪悪感を感じ始めたんだと思う。そんな薄情な人は父親なんかじゃない。赤の他人の言葉なんて、無視していいよ」

 

五月「……そうかもしれませんが、あの人の言うことは一理あると思います」

 

悟飯「えっ……?」

 

五月「今日はありがとうございます…。今日はこれで失礼します」

 

悟飯「あっ、五月さん…!」

 

小さくなっていく五月の背中を、悟飯はただ眺めることしかできなかった。追うことができなかった……。

 

 

 

その日の夜。悟飯は勇也の携帯電話を介して風太郎と会話していた。

 

『やっぱりあのおっさんが実父だったのか……。俺はなんてことを………』

 

悟飯「仕方ないよ。その時点では知らなかったんだし、僕も伝えておくべきだった」

 

実を言うと、学園祭初日に無堂が食堂に現れたのは、風太郎が道案内をしたからだった。まあ風太郎が道案内をしなくても他の人に道案内をされた可能性もあるので、今更と言ったところだ。

 

『……五月のことはお前に任せてもいいか?』

 

悟飯「………うん。こうなったのは僕の責任でもあるからね。僕にやらせてほしい」

 

『頼んだ。そっちは任せたからな…』

 

 

 

翌日…。悟飯は学園祭に行く前に、五月の家を訪れていた。番号を指定してインターホンを鳴らすが、返事はなかった。

 

悟飯「………困ったな。やっぱりあの人の言うことを気にしてるんだ…!」

 

こんな時に零奈は何をしてるんだと思ってる方もいると思うが、彼女は昨日まで泊まり込みでブルマ家で検診をしていた。今日はそのまま学園祭に訪れているといった感じの流れだ。その為、まだ五月が家に篭っていることを察知できていないのだろう。

 

悟飯「よっ…!」

 

ドシューンっ!!

 

エントランスから入ることは諦めて、ベランダから五月のいる部屋に入ることにした。広いベランダに辿り着いた悟飯は、ガラス越しにリビングで勉強をしている五月を見かけた。

 

だが、五月はベランダにいる悟飯に気づくことはない。だから、ガラスを軽く叩いて音を立たせる。

 

五月「!!?」

 

すると、五月は悟飯の存在に気づいた。いた場所が場所だったため、すぐに鍵をあけて扉を開けた。

 

五月「こんなところで何をしてるんですか、孫君!!?」

 

悟飯「ごめんね。五月さんが心配で来ちゃった……。インターホンを鳴らしても出てくれなかったから、何かあったのかと………」

 

五月「………取り敢えず、上がって下さい」

 

悟飯「うん。お邪魔します」

 

ようやくお邪魔することに成功した悟飯は、しばらく五月が勉強する姿を眺めていた。いつ話題を切り出そうかと思考していたら、五月が先に口を開いた。

 

五月「……孫君。こんなこと意味がないというのに、私は何をしているんでしょうか?」

 

悟飯「昨日も言ったけど、あの人は適当なことを言ってるんだよ。君達のことは考えてない」

 

五月「いいえ、そうじゃなんですよ。お母さんも言っていたんですよ。それなのに諦められない…!未だにお母さんを目指してしまっている。そう願う私は間違っているのでしょうか?」

 

悟飯「………まあ、確かに教師になってもいいことばかりじゃないしね」

 

五月「えっ……?」

 

悟飯「優秀な生徒ばかりとは限らない。世の中には想像を絶するほどの馬鹿がいるのだと思い知らされる。自分のポリシーを曲げても付き合っていかなければならない。他人と関わるってのは、心身共に疲れること間違いなしだ」

 

五月「あ、あの…?孫君……?」

 

あまりにも悟飯っぽくない喋り方に五月は困惑してしまう。目の前にいるのは確かに悟飯だ。だが、喋り方から、どうしてももう1人の家庭教師、風太郎の姿が思い浮かんでしまう。

 

悟飯「中には反抗する生徒も出てくるだろう。そんな時も逃げ出さずに向き合わなければならない。マジで大変だったぜ。俺はもうこりごりだ。教師になんて絶対になるもんじゃない」

 

そこまで言って一旦息を吸う悟飯。そして……。

 

悟飯「だがそれがどうした!他人の戯言なんて聞く価値もない!!お前の夢だろう!!?どれだけ逆風だろうが、進むも諦めるもお前が決めろ!!」

 

聞き続けてやっぱり思うのが、あまりにも悟飯らしからぬ口調だった。だからといって変装しているわけでもない。もし変装ならばベランダから侵入することなど不可能な芸当だ。

 

悟飯「………と、風太郎から預かってた伝言はここまで」

 

五月「やっぱり上杉君でしたか…。馬鹿って言われた時はびっくりしましたけど………」

悟飯「………でも、五月さんは馬鹿だと思う」

 

悟飯自身の言葉で馬鹿だと言われた五月は不意打ちを食らったように驚いた顔をするが…。

 

悟飯「五月さんの夢は、いきなり現れた他人にどうこう言われただけで諦められるようなものだったの?そんなに軽い夢だったの……?」

 

五月「いいえ!そんなわけありません…!!でも、本当に私の夢なんでしょうか…?私はただお母さんになりたいだけ……。ある人にそう言われたことがあります」

 

悟飯「違うでしょ?別にお母さんになりたいだけなら他にもいくらでも方法があるでしょ?でもその中で五月さんは教師という道を選んだ……。それはなんで?」

 

五月「……私は、あの気持ちを大切にしたい……。人に教えた時に感謝される時の気持ちを……!学ぶ喜びを大切にしたい……!」

 

悟飯「……なら、答えはもう決まってるでしょ?」

 

五月「私は……。私はお母さんのような先生になりたい!!私は私自身の意思で先生を目指します!!」

 

悟飯「………(そうだよ。五月さんは最初からお母さんになろうとしていたわけじゃない。お母さんみたいに素晴らしい教師になりたかった……。やっと気づいてくれたか………)」

 

ようやく五月の悩みが解決した悟飯はほっと一息をついた。だが、まだ一仕事残っている。

 

悟飯「……五月さんがそう願うなら、家庭教師として僕にできることはただ1つ。全力でサポートすることだよ」

 

五月「………ふふ。いいことを思いつきました」

 

五月は先程の雲がかかったような暗い顔から一転し、青空の中で輝く太陽のようないい笑顔でこう言う。

 

五月「勉強、教えてください」

 

悟飯「もちろん!」

 

悟飯は五月の願いに即答した。

 

五月「上杉君にもそう伝えておいてください!」

 

悟飯「分かったよ」

 

五月「こうなったら、自分の夢を意地でも叶えるためにお二人を最大限利用させてもらいます。覚悟してて下さいね?」

 

悟飯「ははは…。やる気があるのはいいことだ」

 

五月「でも、その前にやらなければならないことがあります」

 

そう。五月自身の問題はまだ解決していなかった。ある者と決着をつけなければならなかった。

 

悟飯「それじゃ、僕も…」

 

五月「待ってください。孫君にも、上杉君にも感謝しています。しかし今回は手を出さないで下さい。この問題は私達家族で解決します」

 

悟飯「………分かった。でも、危なくなったら介入させてもらうよ?」

 

五月の覚悟を聞いた悟飯は、ピンチになった時以外は決して舞台に上がらないようにしようと心に誓った。

 

そして、五月と悟飯は学園祭に帰還し、決着をつけることとなる……。

 




 五月の説得?シーンは本当なら風太郎にやらせたかったんですけど、それだと展開的に違和感があったので悟飯にしましたが、風太郎からの伝言という形でそのまま引っ張ってきたことで擬似的に風太郎を登場させてます。

 さて、次で100話にいくわけですが……。先に言うと100話では誰が悟飯のお相手となるかは判明しません。その次の101話で分かると思います。

 前書きに書いてある通り、風太郎と悟飯の出会い等の前日章的な話は本編終了後に書くはず…?場合によっては本編中に書くかもしれませんけど。
 こんな話が見てみたいといった意見があればさりげなく伝えて下さいな。早めに伝えてくれれば考える時間もそれだけ長くなるので。

P.S. やっぱり五等分RE面白い


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第100話 最後の祭りが五月の場合 その2

※ミニコーナーその5
〜この作品の裏話その1〜

 実を言うとなんで始めたかは作者も分からない。最初期(1〜6話辺り)と今(5,60話以降)を見比べてみれば作り込みに差があるのがよく分かると思われる。

 そもそもドラゴンボールと五等分の花嫁という組み合わせはどう考えても合わない。世界観も違ければジャンルも違う。本当に何故この組み合わせにしたのか分からない。ただ確実なのは、DBとごと嫁がどちらも好きだということ。しかしどういうわけか幾つもの幸運が重なって違和感がなくなった(ようである)。

 未来悟飯が登場する人造人間零奈編は、多くの「未来悟飯を出してほしい!」という要望から生まれた物語である。当初は「人造人間623」というオリキャラを出そうかと考えていたが、色々考えて零奈さんを人造人間化した方がいいと思い、あのような結末になった。
 他にも今では沢山の戦闘シーンが登場する今作だが、最初期は戦闘シーンを入れることは全く考えていなかったが、読者の「やっぱりバトルがないとね」のようなバトル展開を望む声も多かったため、その意見に流された結果、9話よりターレスとクウラが登場、その後にバーダックやセル、魔人ブウなどが登場するきっかけとなった。



五月は自分自身の問題に決着をつけるため、自ら無堂に会いに行くことにした。

 

五月「無堂先生こんにちは。五月です」

 

無堂「やあ五月ちゃん。まさか君から来てくれるとは思わなかったよ。僕の言葉に耳を傾けてくれるようになった……ということでいいかな?」

 

五月「もう一度聞かせて下さい。学校の先生になりたいという夢が間違っているのだとしたら、私はどうすればいいですか?」

 

無堂「五月ちゃんが五月ちゃんらしくあってほしい。その手助けがしたいんだ。君は今もお母さんの幻影に取り憑かれている。学校の先生でなければなんでもいいんだ。お母さんと同じ道を歩まないでくれ」

 

五月「何故急に私の目の前に現れたのですか?」

 

無堂「離れていた時もずっと気にしていたさ。罪の意識に苦しみながらね。それがどうだい?まさかこうして父親らしいことをしてやれる日が来るとはね」

 

無堂は誇らしげにそう言う。自分勝手な物言いに悟飯は感情的になりそうだが、共に影に隠れている二乃達に止められたことによってなんとか抑えることができた。

 

無堂「この血が引き合わせてくれたんだ。愛する娘への挽回のチャンスを……」

 

「ガハハ!父親だって?笑わせんな!!」

 

無堂に向けてそう吐き捨てたのは…。

 

勇也「うっーす先生。ご無沙汰」

 

下田「つっても、用があるのはうちらじゃないんだけどね」

 

勇也と下田だった。そしてもう1人…。

 

マルオ「無堂先生。お元気そうで」

 

五月「お二人に加えてお父さんまで……何故ここに?」

 

下田「ん?今どういう状況だ?」

 

勇也「俺らが連れてきたんだ」

 

無堂「中野君……。そうか、君にも謝るよ。きっかけができて本当に良かった。中野君には苦労かけたからね。思い返せば君は人一倍零奈を慕っていた覚えがある。すまなかった」

 

マルオ「いえ、あなたには感謝しています。あなたの無責任な行いが僕と娘達を引き合わせてくれた」

 

無堂「……どうだろう?こと責任に関しては君も果たせてないように見える。だから五月ちゃんはここにきた。頼りない君ではなく、僕のところにね」

 

マルオ「五月君が、ここに?」

 

無堂は人を、マルオを見下すような表情に切り替えてこう言う。

 

無堂「ああ、心中察するよ。これはまさに父親失格の烙印を押されたようなもの……。よければ僕が教えてあげようか?本当の父親の在り方を……」

 

あまりにも好き勝手な言い方に悟飯はまたしても自分を抑えられなくなりそうになるが……。

 

風太郎「冷静になれ。ここはあいつらに任せるんだ」

 

風太郎の一言で再び冷静さを取り戻した。

 

マルオ「何を言っているのですか?五月君はここにはいませんよ?」

 

無堂「なに?」

 

マルオの言葉を合図に、本物の五月が柱の影から姿を表した。実を言うと、今日、五月を名乗って無堂と話をしていたのは、星形ヘアピンをつけて赤色のサマーセーターにブレザーを着用した三玖だったのだ。

 

無堂「………何のつもりだね?」

 

五月「騙してしまいすみません。ですがこうなることは分かってました」

 

無堂「それがどうしたんだい?ただ間違えただけで………」

 

五月「愛があれば見分けられる。母の言葉です」

 

無堂「……!!!」

 

五月の言葉を皮切りに、無堂は急に感情的になった。ようやく本性を現したといったところだろう。

 

無堂「また彼女の話か!!いい加減にしろ!!そんないい加減な妄言をいつまで信じているんだい!!?今すぐ忘れなさい!!お母さんだってそう言うはずだ!!思い出してごらんよ!君のお母さんがなんて言ってたか!!」

 

五月「……確かに、お母さんは後悔を口にしていました」

 

無堂「そうだ!君のお母さんは間違った!!君はそうなるな!」

 

五月「知りませんよ!お母さんがなんて言ってたなんかなんて関係ありまそん!例え本当にお母さんが自分の人生を否定したとしても、私はそれを否定します!!いいですよね?だって私はお母さんじゃないのですから!!」

 

五月の迫力に圧倒されてすっかり黙り込んでしまった無堂を見て、すかさず五月は語り続ける。

 

五月「ちゃんと見てきました。全てを投げ打って尽くしてくれていた母の姿を……。あんなに優しい人の人生が間違っていたはずがありません!!!」

 

悟飯「五月さん………」

 

風太郎「……よくやった」

 

無堂「子供が知ったような口を…!」

 

マルオ「あなたこそ知ったような口振りですね。恩師に憧れ同じ教師となった彼女の想いが裏切られ、傷ついたのは事実。しかしそこで逃げ出したあなたが知っているのもそこまで。その後の彼女が子供達にどれほどの希望を見出したのかをあなたは知らない」

 

マルオは徐々に無堂に詰め寄りながらそう語る。そして最後に、無堂を真っ直ぐ睨めつけながら……。

 

マルオ「あなたに彼女を語る資格はない…!!!」

 

静かに、しかしはっきりと怒りを露わにしながらそう言い放った。

 

二乃「お父さん………」

 

マルオ「五月君。僕もまだ何かを言える資格を持ち合わせていないが、君が君の信じた方へ進むことを望む。お母さんも同じ想いだろう………」

 

五月「………はい」

 

……父親に夢を応援されているという事実を知った五月は、感動のあまり涙を流してしまった。だがこれは悲しんでいるから流れる涙ではない。嬉しいからこそ流れる涙なのだ。

 

だが、五月は涙を拭く。目の前にいる者にとどめを刺さなければならない。彼女は無堂に近づきながらこう語る。

 

五月「……結局最後まであなたから母への謝罪の言葉はありませんでしたね。私はあなたを許さない…!!罪滅ぼしの駒にもなりません!!あなたがお母さんに解放される日は来ません!!!」

 

無堂「……ちっ」

 

五月に圧倒されて何もできない無堂…。

 

無堂「くそぉ!!これだから馬鹿共は嫌いなんだ!!!!」

 

五月「きゃあ!!」

 

マルオ「五月君!!」

 

 

無堂は左手で五月を捕らえ、右手には懐から取り出した包丁があった。本来ならこんなことをする予定はなかった。しかし、彼は悟飯に釘を刺された時、悟飯に恐怖した。だから自衛の為に何か武器になるものをと、包丁を持参してきたのだ。

 

無堂「動くなよ?五月ちゃんがどうなってもいいのか!!?」

 

悟飯「くそ…!!お前ぇ!!!」

 

無堂「おっと動くなと言ってるのが分からないのか!!?五月ちゃんがどうなってもいいのか!!?」

 

五月「そ、孫君!!」

 

命の危機に晒されている五月だが、彼女は真っ直ぐと悟飯を見つめる。以前も似たような状況に陥ったが、そこで見事に五月を救出してみせた。今回もそうしてくれると五月は確信していたのだ。

 

悟飯「………お前の人生は終わりだ」

 

高速移動で五月を救出しようしたその時………。

 

 

 

 

シュン‼︎

 

悟空「よし!おめぇ大丈夫か?」

 

悟飯「お、お父さん!!?」

 

無堂「な、なんだお前!!?」

 

なんと、瞬間移動で現れた悟空が五月を救出したのだ。

 

悟空「ああ…?もしかして、おめぇが例の五つ子の娘っ子の父親か?」

 

悟飯「な、なんでそのことを……?」

 

悟空「ピッコロだよ。おめぇらのやり取りを聞いてたみたいでよ」

 

悟飯「な、なるほど………」

 

無堂「こ、この野朗ぉおお!!!」

 

人質を失った無堂はヤケになって悟空の方に突進する。

 

 

シュン‼︎

 

その両足で無堂の頭を掴み…。

 

零奈「だりゃあ!!!!」

 

ドンッッッ!!!!

 

無堂「ぐわっ…!!!」

 

下田「せ、先生!?先生じゃねえか!!!?」

 

なんと、零奈が足を使って無堂を地面に倒した。

 

悟空「全くよ。自分の娘に刃を向けるってどうかしてんぞ。馬鹿なことやってねえで働け」

 

そう言うお父さんも働き始めたのはつい最近じゃないですか…。と言いかけた悟飯だったが、なんとか抑えた。

 

悟飯「五月さん、大丈夫?」

 

五月「は、はい……。なんとか」

 

悟飯「良かった……。さてと……」

 

無堂「ぐぬぬっ……!!お前…!!!れ、零奈!!?何故ここに!!?」

 

零奈「色々あって生き返ることができました。さて、先程の件については、私がかつて愛した人として特別に見逃してあげます」

 

無堂「れ、零奈!!生き返っただと!?一体どういう………」

 

零奈「それと、一つ補足させて下さい。私は確かに生前に後悔を口にしていました。私のようになるなと五月にも何度も言いました。でもそれは、私が教師になったことに対してではありませんよ」

 

 

あなたと出会ったことですよ」 

 

 

無堂「……!!!れ、零奈……」

 

零奈「ですが、あなたと出会ったから娘達がいると思うと、後悔の一言で済ませるわけにはいきませんね…。娘達と巡り会わせてくれたことに関しては感謝します。さあ、早く娘達から離れてください。もしこのまま居続けるようなら……」

 

そう言いながら、零奈は戦闘体制を整えた。

 

その姿に無堂は完全に無気力になり、トボトボとその場を去っていった。

 

二乃「五月!!?」

 

一花「大丈夫!!?怪我はない!!?」

 

三玖「遠慮しないで言って!!」

 

四葉「何かあってからじゃ遅いもん!!!」

 

五月「わ、私は大丈夫ですよ!?」

 

取り敢えず事が済むと、勇也と下田、助けてくれた悟空にも礼を言った。そして………。

 

五月「お父さん。ありがとうございます」

 

マルオ「…………」

 

零奈「全く…。素直じゃありませんね、マルオ君は………」

 

マルオ「零奈さん………」

 

零奈「五月。母親でありながら、あなたの悩みに気づけなくてごめんなさい…」

 

五月「いいえ、いいんです。結果的に私の気持ちも整理することができましたから………」

 

 

 

 

 

 

 

一方その頃。無堂はトボトボと歩いて帰宅中…………ではなかった。

 

チチ「おめぇかぁ!!実の子供に刃を向けた不届き者はぁ!!!」

 

無堂「や、やめ……ゲフッ……!!?」

 

ブルマ「ち、チチさん!?流石にそろそろやめましょうよ!ね?」

 

チチ「許せるわけねえだろ!!?五月さはオラの娘みたいなもんだべよ!?悟空さも零奈さんも詰めが甘いだよ!!!いっそのこと悟飯ちゃんがかめはめ波を食らわせてもいいだぞ!!?」

 

ブルマ「そんなことしたら死んじゃうわよ!!?」

 

しばらくチチのサンドバッグにされていたが、それを知るのはほんの数人だけだった…………。

 

 

 

 

 

 

 

『上杉君。孫君。

 

今日の全てが終わる頃、私達は各々の部屋で待っています

 

各々の想いをかかえたまま……

 

 

 

 

 

 

 

あなたを待っています』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

最後の祭りが風太郎&悟飯の場合

 

風太郎「なあ悟飯。まだあそこにいなくて良かったのか?」

 

悟飯「うん。あれはもう家族だけの時間でしょ?邪魔しちゃ悪いよ」

 

風太郎「それもそうか………」

 

シュン‼︎

 

悟飯「お、お父さん!!?」

 

五月達の勇姿を見届けた悟飯と風太郎は屋台に戻る為に歩いていたが、五月と共に瞬間移動で悟空が現れた。

 

悟空「んじゃ、また後でな!」

 

シュン‼︎

 

五月を送り届けた悟空はまた瞬間移動してどこかにいった。

 

風太郎「随分ド派手な登場だな、五月」

 

五月「まだあなた達にはお礼を言えてなかったので」

 

風太郎「そんなの後ででもいいだろ?それに俺は何もしてないしな」

 

五月「そんなことありませんよ。あなたの言葉のお陰で分かりました。お母さんがいなくなってから、その寂しさを埋める為にお母さんに成り代わろうとしていました。そうしているうちにいつの間にか自分とお母さんの境界線が曖昧になってしまい、自分の夢までも自信を持てなくなってしまいました」

 

風太郎「……おい悟飯。まさか……」

 

悟飯「はは…。僕だけだと風太郎が薄情者みたいじゃん?」

 

風太郎「そんなこと気にしなくてもいいっての…………」

 

五月「…お母さんを忘れなくてもいい。お母さんに憧れてもいい。それに気づかせてくれたのは、上杉君です。ありがとうございます」

 

風太郎「………おう」

 

五月ははにかんだ笑顔で風太郎にお礼を言った。五月から素直に礼を言われるのが慣れていないためか、前髪を弄りながらそっぽを向く。

 

五月「それと、孫君」

 

悟飯「うん?」

 

五月「私はあなたがいてくれたから、何かあった時はあなたが守ってくれると確信していたから、勇気を出せました。ありがとうございます」

 

悟飯「いいよ。それに今回はお父さんと零奈さんに助けられちゃったしね…」

 

五月「……ほんと、孫君は自信というものが足りませんよね………」

 

そう言うと、五月は急に顔を近づけ、優しく悟飯の唇にキスをした。

 

悟飯「…………えっ!!!!?」

 

風太郎「お、お前!何やって…!!」

 

悟飯だけでなく、風太郎も目の前にいると言うのにお構いなしにキスをしたということで、悟飯は顔を真っ赤にするし、風太郎も前髪をいじりながらも注意をした。

 

五月「……君は凄い人だよ。もっと自信を持って!君は私の理想なんだから!」

 

悟飯「…………」

 

この時、五月が初めて悟飯に対してタメ口を聞いた。例え家族相手にも敬語で話していた彼女がタメ口を聞いたのだ。その喋り方が珍しいと感じたと同時に、悟飯はしばらくそんな五月に見惚れていた。

 

風太郎「……だってよ。良かったな、悟飯」

 

五月「拗ねないで、上杉君。君だって私の理想なんだよ?それだけ聞いてほしかったの!」

 

風太郎「………そうかよ」

 

そっけない返事をする風太郎だったが、どこか嬉しそうな様子だった。

 

悟飯「い、五月さん……!その喋り方…」

 

五月「あっ……!ほら!母脱却ということで……!!何か変でしょうか!!?って、ああ!!?戻っちゃいます!!」

 

風太郎「居心地悪いから普段通りにしてくれ」

 

五月「そ、そんなこと言わないでくだ……言わないで!!」

 

悟飯「………僕はその喋り方の方が好きだけどなぁ……」

 

五月「えっ?」

 

風太郎「なんだって?」

 

悟飯「あっ、いや!なんでもない!」

 

悟飯の呟きを聞き取れなかった五月と風太郎は聞き返すも、悟飯はその場で誤魔化した。……だが、本当は五月にはその呟きが聞こえていた。照れて少し足早になる五月を見て、微笑ましくなってしまった。

 

五月「孫君!待って〜!」

 

 

 

 

 

 

 

 

この学園祭は色々なことがあった。風太郎は一花に誰を選ぶのかしつこく聞かれたり……。無理する四葉のサポートをしたり、過労で疲れた四葉のケアをしてあげたり……。

 

悟飯は、本編中で描写されてた通り、とにかく本当に色々あった。ただでさえ彼らにとっては特別な学園祭だったが、良くも悪くも思い出に残るものとなっただろう……。だが、そんな悪いことも、時が経てばいい思い出となるものばかりだった。そういった意味では最高の学園祭だったのかもしれない。

 

だが、このまま学園祭を終わらせてはいけない。悟飯と風太郎には、最後にやるべきこと……。彼らにしかできない大仕事が1つ待っていた。

 

彼らは今、四葉が作った休憩所にて前田や武田と共に談笑をしていた。

 

風太郎「前田、何を落ち込んでんだ?」

 

前田「いや、明日からまたいつもの日常になると思うと落ち込むなぁって」

 

武田「なんでだい?僕は授業を受けられることにワクワクしているよ!」

 

風太郎「同じく」

 

前田「お前ら異常者には分からねえよ!!孫はどうだ!!?」

 

悟飯「あはは…。前田君の気持ちは分かるよ。もうすぐで終わるんだね、学園祭………」

 

風太郎「ああ。終わっちまう寂しさはあるよな………」

 

武田「僕的には楽しめたけど、上杉君は違うのかい?」

 

風太郎「微妙だな。基本裏方仕事ばかりしていたからな。最後の学園祭で何してんだか…………」

 

悟飯「僕も色々あったからなぁ…。楽しかったのは勿論だけど、忙しかったからね……」

 

前田「なんだお前ら。勿体ねえな。だったらいつまでもこんな所に座ってないでなんか屋台に食いに行こうぜ?」

 

風太郎「そうだな。腹減ってるし行くか。ずっと食ってねえし、行けずじまいの店もあったしな。それが終わったら、俺は約束があるしな………」

 

武田「なるほどね」

 

最後の意味深な一言だけで武田は殆ど察し、前田が五つ子なら授与式で見かけたことを伝える。

 

前田「確か一花さんも授与式の時にいたから5人勢揃いだったぞ」

 

武田「へぇ?前田君、よくあの一瞬で一花さんだと分かったね」

 

前田「ま、まあ……。おかしな話だが、前から一花さんだけはなんとなく分かってたんだ……。文句あったコラ!!」

 

武田「へー、なんでだろうね?」

 

風太郎「さあな」

 

愛があれば見分けられる…。この言葉は零奈が言った言葉であり、五つ子の祖父も言った言葉である。その言葉はどうやら本当のことだったようだ。

 

武田「上杉君と孫君は当然見分けられるんだろう?」

 

風太郎「えっ?」

 

悟飯「あはは……。僕は気に頼っているから、顔だけだとちょっと厳しいかもしれない………」

 

風太郎「確かにな。そう言われると自信はないが、最初は今以上に戸惑ったな。ただでさえ人の顔が覚えるのが得意じゃないし、その上であいつらはその利点をフル活用してきやがる。何度騙されたことか…………」

 

風太郎は去年とはいえ、昔を懐かしむように語る。彼女達との思い出を語っていくうちに、風太郎の顔はどんどん柔らかいものとなっていることに本人も気づいていなかった。

 

風太郎「最後まで困った奴らだよ。本当に………」

 

前田「よく言うぜ」

 

武田「ふと気になったんだけど、一体彼女達の誰から見分けられるようになったんだい?」

 

武田の突拍子な質問に風太郎は誤魔化して屋台に逃げようとするが…。

 

武田「ははは!待ちたまえ。今の間はなんだい?」

 

前田「おい武田、どういうことだ?」

 

武田「それは上杉君に聞こうじゃないか!」

 

風太郎「やめろ!離せ!!」

 

逃げようとする風太郎だが、基本的に力は貧弱だ。武田に掴まれただけですぐに無力化された。

 

悟飯「まあまあ、風太郎もそろそろ観念すれば?近々どうせバレるんだし」

 

前田「はっ?ど、どういうことだ?」

 

武田「そういえば、孫君はどうして急に上杉君の呼び方を変えたんだい?」

 

悟飯「まあ、色々あったんだよ、色々」

 

武田「色々…?その部分を僕は聞いたんだが……」

 

悟飯「まあ、武田君達なら別にいいか」

 

ということで、悟飯が風太郎の呼び方を変えた理由を要約して話すと…。

 

魔人ブウを討伐する時に風太郎も協力してくれた。そして風太郎が『お前共に戦えること』が自慢だと言ってくれた。それが嬉しくて……。同時に対等になれた気がした。だからこそ呼び方を変えたのだ。

 

悟飯「……こんな感じ」

 

前田「んだそれ!!?熱すぎるだろ!!?」

 

武田「これぞ男の友情……ってね」

 

風太郎「お前…!!わざわざ言うこともないだろうが!!」

 

悟飯「別にいいじゃん。どうせこの後告白するんだから」

 

……と、悟飯は風太郎にとっての爆弾を投下した。

 

前田「告白……?」

 

武田「上杉君が………?」

 

前田「ま、まさか…!?あの五つ子の中の誰かが好きなのか!!?」

 

風太郎「………悟飯、後で覚えてろよ?」

 

悟飯「ええ?ただ事実を言っただけじゃん」

 

風太郎「親しき仲にも礼儀ありって言葉を知らねえのかお前は…!!」

 

悟飯「はははっ!!!」

 

悟飯と風太郎は2年前から友人関係にあった。しかし、悟飯だけはどこか遠慮気味だったのだ。しかし、悟飯が風太郎とは対等な関係だということに気付いた……。いや、感じたからこそだろうか?少し遠慮がなくなって、本当に仲のいい親友同士のように見えた。

 

ただ勉強ができるから……。同じ家庭教師だからというだけではない。そんなものに関係なく、彼らは親しくなったのかもしれない……。

 

武田「さて上杉君。観念して話したらどうだい?」

 

風太郎「うっせー!黙秘黙秘!」

 

武田「水臭いじゃないか上杉君!僕らの仲に秘密は無粋!!」

 

風太郎「知らねえ!てか離せ!!」

 

前田「やっぱり誰かが好きなんだろ?五つ子のうちの1人が………」

 

武田「いや、待て待て冷静になろう。彼らの友情については認めるよ?だがあくまで家庭教師の延長線上……それに、こんな受験への佳境でそのような余裕が生まれると思うかい?」

 

確かに武田の言うことも一理ある。受験を控えているのに付き合い始めたら、それこそ勉強がおそろかになって失敗する可能性がある。特に風太郎のように常に高成績を残してきた優等生にとってそれは大きな痛手だろう。

 

前田「よっしゃ!!俺は今から告白しに行く!!」

 

風太郎「はっ?なんでだよ?」

 

悟飯「えっ?もう既に松井さんと付き合ってるんじゃなかったの?」

 

前田「確かにそうだが、付き合った後で想いを伝えちゃいけないなんて決まりや風習でもあるのか?こういう時だからこそ伝えるのがいいんじゃねえか!!」

 

悟飯「………そっかぁ。そういうことだったんだね」

 

以前、五つ子(3人)の猛アプローチっぷりに見ていられなくなった武田に返事をしてあげたらどうだい?と言われた事があった。その時に、学園祭までには返事すると言った。その時に前田に『意外とロマンチックなことをするんだな』と言われた。

 

当時の悟飯はこの意味が分からなかったが、今はその意味がよく分かった。

 

前田「ということで上杉。覚悟を決めろ。孫だって今日までには返事するって約束したんだろ?そうだよなコラ?」

 

悟飯「………そうだよ」

 

武田「いや、待ちたまえ!急に何を言い出すんだい?学生の本分は勉強であって………」

 

風太郎「確かにそうだ。学生の本分は学業。それ以外は不要だと信じて生きてきた。だが、それ以外を捨てる必要なんてなかったんだ。

 

勉強も、友情も、仕事も娯楽も恋愛も、あいつらは常に全力投球だった。凝り固まった俺にそれを教えてくれたのはあいつらだ」

 

たったそれだけのことに気づくまでにここまで待たせてしまった。風太郎は内心そう呟きながら……。

 

風太郎「きっと昔までの俺だったら、今この瞬間も悟飯だけ……。いや、1人だったかもしれないな。なんならこの3日間で1日も外出しなかったかもしれん」

 

武田「ふっ……」

 

前田「上杉……。何カッコつけてんだよ」

 

風太郎「か、カッコつけてなんてねえよ!!」

 

武田「僕はかっこいいと思うよ?」

 

風太郎「いや、そういうのもやめてくれ………」

 

武田のあざとい褒め言葉は流石の風太郎も拒否反応を起こしてしまったそうだ。

 

悟飯「でもさ、風太郎って魔人ブウの時もそうだけど、たまに素で臭い台詞を言うよね。あれはほんと不意打ちだよ」

 

風太郎「お前まで……。もういい!屋台行くぞ!!」

 

悟飯「ありゃりゃ…。怒らないでよ〜!ちょっとした冗談なのに……」

 

風太郎「少しでも謝る気があるなら奢ってくれ。金がないからな」

 

悟飯「まあそれくらいならいいよ。ただし出世払いね?」

 

風太郎「えぇ…。ここは奢る流れだろうが……」

 

どうやら遠慮がなくなったのは悟飯だけでなく風太郎も同様のようだ。少し前なら、風太郎自ら奢ってくれと言うことはないだろう。悟飯相手だからこそなのかもしれない……。

 

悟飯「嘘嘘。ちゃんと奢ってあげるよ。何が食べたい?」

 

風太郎「その前に1箇所寄らせてくれ」

 

悟飯「うん。いいよ。でもどこに行くの?」

 

風太郎「それはな………」

 

「この休憩所マジ助かる〜……」

 

「楽しかったね〜。もう歩けないよ…」

 

「というか、ここ初日からあったっけ?」

 

「あれ?どうだったっけ?」

 

生徒がそんな会話をしているのを見て、四葉の努力が役立っていることがよく分かり、自然と口角が上がっていることに風太郎は気づかなかった。

 

前田「つか、金がねえなら何で屋台に行こうと思ったんだよ?悟飯に拒否られたらどうするつもりだったんだ?」

 

風太郎「……決まってるさ。最後まで学園祭を楽しむ為さ」

 

 

 

 

 

悟飯達が前田や武田と談笑する少し前の話……。

 

五月「それで、私達がそれぞれ待っている教室ですが………」

 

風太郎「ま、待て待て!何もお前らがそこまでする必要はねえ!」

 

悟飯「そ、そうだよ!」

 

五月「私達で話し合って決めたことです。それに、あなた達が真に気にすべきはその先…………」

 

あなた達が向かうべき教室はただ1つ。この提案が逆にあなた達を困らせてしまうことは分かってます。

 

 

 

これが、私達の覚悟……。

 

 

どうかそれを理解して下さい……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

悟飯「………どうやら、僕と風太郎の向かう教室は別にあるみたいだね」

 

風太郎「そうじゃなきゃ困る…」

 

悟飯「だね……。それじゃ、頑張れ」

 

風太郎「悟飯もな……」

 

2人は軽く拳を合わせた後、それぞれ向かうべき教室に向かっていた。

 

風太郎が向かうのは、恐らく四葉か一花がいる教室のどちらか……。

 

悟飯が向かうのは、二乃、三玖、五月のいる教室のうちのいずれか……。

 

 

これまで散々悩まされた。最初に告白されたのは五月。二乃と大喧嘩をした末に家出し、財布を忘れたのに家に帰らないと言い張る五月を心配して悟飯が庇う形で泊めた日の夜…。

チチが媚薬を入れたことによって五月が大暴走し、彼女の気持ちを知ることとなったと同時に、五つ子を恋愛対象として見るきっかけになった。

 

 

それから次に告白されたのは二乃。最初は彼女に嫌われていたこともあって、まさか好意を持たれているとは思いもしなかった。五月に告白されたこともあり、自分の気持ちを分析していたところにもう1人加わったとなれば混乱するのも仕方のないこと。

だが、彼女にいきなり好意を抱かれたことを知っても、別に不快感は感じなかった。それは悟飯の優しさ故なのだろう。

 

 

そして、最後に三玖……。彼女は大人しく、最初は何を考えてるのかも分からなかった。だが、悟飯達が関わると彼女は目覚ましい成長を見せた。学園祭時のクラスの分断を解決したのなんかはいい例だろう。他にも、悟飯にしか見せない一面もあった。彼女は何故か悟飯に対して意地悪をすることがある。もしかするとそれが本来の三玖なのかもしれない………。

自分が彼女の成長のきっかけになったと思うと、何故だか嬉しくなってしまった。

 

はっきり言って、一夫多妻が認められるなら悟飯は全員選んでいたかもしれない。それくらいにみんなが好きだった。

 

 

だが、いつまでもこの関係を続けるわけにはいかない。複数の女の子とキスをするようなことはもうあってはならない。悟飯は自分の頬を叩いて緊張を解そうとする。そして、意を決して教室の扉を開ける………。

 

 

ガラッ

 

悟飯「お待たせ………」

 

悟飯が選んだ人は…………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

悟飯「…………あれ?」

 

しかし、その教室には誰もいなかった……。

 




 教室には誰もイマセンデシター……。
 これが何を意味するんでしょうかねぇ…。悟飯が選んだ子は二乃、三玖、五月の中の誰かなので、この中で一番逃げそうな子は三玖……と言いたいところですが、三玖は98話は見れば分かる通り、精神面でとても成長しているんですよね〜……。
 ちなみに振られたわけではありませんよ。3人ともあんなアプローチをしておきながら振るとは思えませんしね。悟飯はその子の教室に行く前に別の子の教室に入室しているわけでもないですし。

 まあその辺も込みで次回判明するんですけどね。さて誰でしょうねー?(すっとぼけ)

 100話達成!!長すぎるww。ここまで伸びるとは、たまげたなぁ……。


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第101話 運命の時

※ミニコーナー
〜悟飯が与えた影響〜

 今作は悟飯がいることによって、大分ドロドロとした展開が少なくなっている。原作の修学旅行の時のような蹴落とし合いは発生していない(バビディによる一花闇落ちは例外)。それに加え、素直な性格の悟飯のお陰で五月が割と初期から授業を受けてくれたり、三玖がやたらと積極的になっていたりする。それに加えて風太郎の負担が無茶苦茶減っている。
 更には四葉の悩みの解決を手助けしていたり、一花のサポートも少なからずしていたり……。とにかく悟飯が与えた影響は割と大きい。しかし二乃、三玖、五月の3人が若干ヤンデレの兆候を見せており、必ずしも良い影響ばかり与えているとも言い切れないのもまた事実。悟飯があまりにも優しすぎるけど、超鈍感だからこうなってしまったのだろうか……?



悟飯「……どういうことだ…?この教室で間違っていないはずなんだけど……」

 

もしかすると隠れているのではないかと思い、教室中を歩き回ってみたがどこにも彼女の姿は見当たらなかった。

 

悟飯「…………ど、どういうことだ…?」

 

悟飯が聞いた説明では、彼女達がそれぞれの教室で待っていると言っていたはずだ。しかしそこにはいない…。それはつまり………。

 

悟飯「も、もしかして、僕振られた…?」

 

そんなネガティブな思考が過ってしまう。だが……。

 

悟飯「い、いやいや……。今までの彼女を思い出せ…。そんなことはないはずだ……!きっとどこかに……!!」

 

教室を出たと同時に悟飯は駆け出す。彼女が自分を振るはずがない。今まであんなに猛アプローチをしてきて、長い間返事を待ってくれていたのだ。そんな彼女が今更自分を振るなど到底考えられなかったのだ。

 

五月「あっ、孫君…!」

 

悟飯「五月さん!!」

 

悟飯は五月を見つけ次第すぐに駆け寄る。

 

悟飯「あの、五月さん………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

五月「孫君。今は私と話している時間はないはずです。早く彼女を探してあげて下さい」

 

悟飯「で、でも…………」

 

 

………悟飯が選んだのは、五月ではなかった

 

 

五月「余計な気遣いは不要です。そういった気遣いは返って人を傷つけるんですよ?」

 

悟飯「………分かった」

 

それだけ言うと、悟飯は再び"彼女"を探す為に駆け出す。五月はふと手を伸ばしかけたが、すぐにその手を引っ込めた。

 

自分は彼に選ばれなかったのだ。もう彼は自分の手に届くところにはいないのだ…。それが分かってしまった途端、目から何か流れてくるのを感じた。

 

五月「………私はなんて嫉妬深いのでしょう……。例え姉妹の中で誰が選ばれようとも祝福するって、決めたはずなのに……………」

 

自分が選ばれなかったという事実を突きつけられ、ただひたすらに涙を流し続けた。彼に慰めてほしい。でも彼は私のものではなく彼女のものなのだ。彼に抱きしめてもらえない……。彼の温もりを感じてはいけないのだ……。

 

「………五月」

 

呼びかけられたので振り返ると、そこにはもう1人。悟飯に選ばれなかった自分の姉の姿があった。その姿を視認した瞬間、五月は無意識に目の前の姉に飛び込んでいた。

 

五月「終わり、ました……。終わっちゃったよぉ………!!」

 

「…………」

 

五月の涙に釣られて、五月の姉も涙を流してしまう。そんな五月を見た姉は五月を抱き寄せ、背中を軽く叩いてあげる…。誰もいない廊下に、2人だけの小さな泣き声だけが、虚しく響いていた…………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

走る…。

 

走る………!

 

ただ走る……!!

 

 

悟飯は彼女を見つけるまでとにかく走った。彼女を見つけ出すため…。彼女が何故教室にいなかったのかを聞き出すために………。

 

それだけじゃない。

 

 

 

悟飯は、愛おしく感じる彼女の顔を見たかった。

 

 

悟飯「………やっと見つけた」

 

ようやく見つけることができた。悟飯はその彼女の手を取り、立ち上がらせた。

 

「………な、なんで私なんかを……放っておいて」

 

悟飯「そうはいかないよ。なんで教室にいなかったのかを聞きたいし、僕の返事も聞いてほしいからね……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「二乃さん」

 

 

そう。悟飯が選んだのは、五月でも三玖でもなかった………。初対面は本当に最悪だっただろう。なんなら睡眠薬も仕込まれたり、度々授業の妨害をされたりと散々だった。

 

それでも、それを加味しても、悟飯が二乃を選んだのだ。

 

二乃「いいわ。あんたの返事なんて分かってるもの。それで、どっちを選んだの?五月?それとも三玖?」

 

悟飯「二乃さん………」

 

二乃「言っとくけど、変に気を使われると返って傷つくのよ。今は放っておいて」

 

悟飯「二乃さん……!」

 

二乃「そうよ……。私なんかが選ばれるわけないわよ…。あんたは優しいものね…。きっと心配してここに来てくれたんでしょ?」

 

悟飯「違う!違うんだ!!」

 

二乃「じゃ、じゃあ何よ?」

 

悟飯「僕は…!君を選んだんだよ!!五月さんでも三玖さんでもない!他でもない君を!!!」

 

周りにいる人にも聞こえてしまうのではないかというほどの大声でそう告白した悟飯に、二乃は信じられないといった様子で口を両手で覆った。

 

二乃「な、なんで私なの…?そんなはずないわよ…。初対面で睡眠薬を入れたり、度々授業を妨害したのよ?そんな私より、甘えん坊な五月や健気な三玖の方がずっと…………」

 

まるで昔の三玖のようにネガティブな思考に陥っている二乃を見て、悟飯はある結論に辿り着いた。二乃がここまでネガティブな思考沼に陥っている理由が分かったのだ。

 

悟飯「…………もしかして、魔人ブウに言われたことを気にしている…?」

 

二乃「……!!!」

 

どうやら図星だったらしい。その言葉を聞いた途端、顔をあげて悟飯の方をじっと見てきた。

 

冷静に考えればそうなってもおかしくないだろう。特に睡眠薬の混入など、故意にやってるなら殺人未遂に問われる可能性があるほどの行為だ。

 

それに、今まで散々悪口を言ってきたし、嫌がらせもしてきた。それなのに好きになった途端に態度を180°変えてきたのだ。人によっては不快感を感じてもおかしくない行動ではある。悟飯だからよっぽどの悪人ではない限り拒絶するようなことはない。でも、恋愛となれば話は別。急に態度を変えてくる人と一緒に過ごしたいかと言われれば、NOと答える人が多いだろう。

 

悟飯「………確かに、冷静に考えてみると少し常識に欠けた行動だったのかもしれないね………」

 

二乃「そ、そうよね………」

 

悟飯「でも、それは家族を守るためだった………。そうでしょ?」

 

二乃「まあ、確かにそうだけど……」

 

悟飯「僕達に明確に悪意を持ってその行動を取ったわけじゃないんでしょ?ならいいよ。僕は何も気にしない」

 

二乃は悟飯がただ自分を慰める為に気を使ってくれているのではないかと思ったが、次の言葉を聞いてそういうことでもないことがはっきりと分かった。

 

悟飯「僕は幼少期の頃からずっと戦っていたんだ。相手にしてきたのはみんな悪い奴ばかりだったよ。戦いが好きだって理由で人を傷付けたり、自分に逆らうからって人々を虐殺したり……。僕はそんな奴らばかり相手にしてきた」

 

二乃「……………」

 

悟飯「だからこそ、二乃さんみたいに家族愛に溢れる子に惹かれたのかもしれない……。人を大切にできる君に…」

 

二乃「……!!」

 

悟飯は決して愛に飢えていたわけではない。母親であるチチや父親の悟空に虐待されていたわけでもなく、しっかり愛情を持って育てられた。だが彼の目の前に現れる敵達は人を、命を大切にしない極悪人達ばかりだった。そんな奴らと戦うのは悟飯は嫌いだった。でも戦わなければ生き残れなかった。守れなかった。だから悟飯は戦った。

 

そんな風に命を粗末にする者達ばかりを相手にしてきたから、人を……。家族のことを想って行動する二乃に自然と惹かれたのかもしれない。

 

二乃「そ、それなら、三玖や五月だって………」

 

悟飯「そうだね。でも僕は二乃さんに惹かれていった……。正直僕自身もよく分かってないことが多いんだ。いつ二乃さんのことが好きになったのかも分からない。だけど、今は君のことが愛おしくてたまらない…。それだけは分かるんだ」

 

二乃「………口だけなら、なんとでも言えるわよ…」

 

弱々しく二乃はそう言った。どうやらまだ自信を取り戻せていないらしい。もしくは悟飯が気を使ってくれていると思い込んでいるのだろうか?

 

悟飯「……二乃さん。こっち向いて」

 

二乃「えっ……?」

 

こっちを向いて、と言っておきながら悟飯は手で二乃のクイっと上げる。そしてゆっくりと自身と彼女の唇を重ね合わせた。

 

二乃「!!!?」

 

それだけじゃなかった。悟飯は彼女の背中に腕を回して抱き寄せた。それによって悟飯の体温を感じるほどに密着していた。突然の出来事に二乃は顔を真っ赤にして硬直してしまう。だけどすぐに動きだした。二乃もまた悟飯がしたように彼の体に腕を回し、強く抱きしめた。

 

互いが互いに『()()()()()()()()()』と言っているような、そんな抱擁だった。

 

 

しばらくして、どちらともなく重なっていた唇を離した。

 

悟飯「………ど、どう?僕の本心だってこと、理解してくれたかな…?」

 

悟飯は、ただ慰めるだけでキスをするような人ではない。それは二乃もよく分かっていた。彼はキスをされたことこそ何度もあれど、自分からキスしたことは一度もなかった。つまり、悟飯の意思でキスをした相手は二乃が初めてということになる。

 

二乃「…………うん」

 

互いに顔が真っ赤だった。もう夜なので誰かに見られても夕日のせいにはできない。

 

悟飯「…………ねえ、二乃さん」

 

二乃「……なーに?」

 

悟飯「あんなことをした後でこんなことを言うのは野暮なのかもしれない。だけど言わせてほしい」

 

悟飯が何か重要なことを告げることを察した二乃は、真剣な顔のまま悟飯の顔をじっと見る。見られて少し照れそうになる悟飯だったが……。

 

悟飯「……僕と一緒に過ごすことになると、これから二乃さんは様々な危険に晒されるかもしれない………。それに、魔人ブウよりももっと強い敵が現れた時、僕は君を残して死んでしまうかもしれない……」

 

二乃「はぁ……。言いたいことはなんとなく分かったわ」

 

悟飯が懸念しているのは、掻い摘んで説明すると、これから沢山二乃に迷惑かけるだろうから、それが嫌なら自分のことを見捨ててもらっても構わないと言いたいのだ。

 

二乃「あのね、女の子は好きな男の為なら、例え火の中だろうと水の中にだろうと戦場の中だろうと、どこにだって飛び込めるのよ?」

 

悟飯「二乃さん………」

 

二乃「それに、私だってこれから沢山迷惑をかけるんだもの。お互い様よ。それに、あんたは守るものがある限り無敵よ。決して負けることはない。例え一時的に負けることはあっても、最後には必ず勝利してくれる。私達を……私を守ってくれる。そう信じてるわ」

 

悟飯「……うん。君のことは必ず守る。例えこの身が滅ぼうとも………」

 

二乃「それだけはやめて…。あんたがいなくなったら、私は何を楽しみに生きていけばいいのよ?」

 

悟飯「そうだね…。逆なら僕も耐えられないよ」

 

今まで自分に対して好意が向いてないと思っていた分、今は嫌でも意識してしまう。二乃ら彼の言動にいちいち反応してしまい、真面目な話をしてるのに嬉しさでニヤけてしまいそうだ。

 

悟飯「……はっ!」

 

カァァッ!!!!

 

二乃「えっ!!?何してるのよ!!?」

 

突然空に向けて気弾を放った悟飯にそうツッコむ二乃。確かに悟飯の行動は意味不明だった。だが、彼の行動の意味はこの後すぐに判明する。

 

スッと、悟飯は右手を伸ばし、彼女にこう言った。

 

 

悟飯「好きです…!僕と踊ってくれませんか?」

 

 

 

ドォォオオオンっ!!!

 

 

丁度いいタイミングで上空で爆発が起こった。ただ、戦闘中によく見慣れた爆発ではなかった。ベジータ風に言えば汚い花火ではなかった。

 

…………誰もが一瞬見てしまうような、そんな綺麗で鮮やかな花火だった。

 

二乃「………そんなの、決まってるわ」

 

まさかのサプライズに思わず驚いてしまった二乃だったが、答えはもう決まっていた。

 

二乃「………はい、喜んで…!」

 

と、悟飯の手を取った。

 

悟飯は言葉にするのは苦手なのかもしれない。何せ初めての告白だ。それに恋愛関連の知識も同年代に比べて圧倒的に少ない悟飯だ。上手い言い回しなどできるはずもない。

 

そう無意識に感じ取ったからだろう。悟飯は行動で示すことを選んだ。結果として二乃にもそれが伝わった。悟飯の選択は正しかったようだ。

 

悟飯「………それじゃ、行こうか」

 

二乃「………うん」

 

悟飯は二乃の手を取り、校庭の真ん中で燃えているキャンプファイヤーの近くまで歩いた。周りには既に何組かのカップルがフォークダンスを始めていた。

 

二乃「…………ねえ」

 

悟飯「………うん?」

 

二乃「私、今すっごく幸せな気分よ」

 

悟飯「僕もだよ、()()

 

二乃「〜!!っ」

 

またしても不意打ち。突然呼び捨てで呼ばれたものなので、二乃が驚いてしまった。

 

悟飯「い、嫌だったかな……?せっかくだから呼び方変えようかなって……」

 

二乃「……ううん。すっごくいいよ、悟飯」

 

悟飯「……!!!」

 

この時の二乃は少々意地悪な顔をしていた。先程の不意打ちの仕返しだろう。その仕返しは効果絶大だったようだ。

 

悟飯「ははは……。やっぱり君には敵わないや………」

 

彼らは両手をしっかり繋ぎながら、初めてのフォークダンスを踊る。2人とも動きはぎこちないものだった。それでも2人の顔はとても幸せそうなものだった。見ているだけでも自分が幸せになれそうなくらいに……。

 

二乃「………絶対に離さないから。浮気とかしたら承知しないんだからね」

 

悟飯「僕も絶対に離さないよ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

武田「なるほどね…。てっきり末っ子の五月さんかと思ったが……。これは意外だね」

 

隅でこっそり悟飯と二乃が踊っているのを見届けた武田は、1人でその場に座っていた。武田はモテる方であり、告白された回数も数え切れない。無論今回も例外ではなかったのだが、武田はまだ誰とも付き合う気はないようだ。

 

武田「さて…。頼むから、これが原因で勉強を疎かにすることだけは避けてくれたまえよ…。君は僕のライバルなんだから…………」

 

そう言うと、武田はその場をクールに去った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、後夜祭後のフォークダンスイベントも終了した。

 

二乃「……まるで夢みたいだわ。ハー…悟飯からあんなに好きって言われるなんて………そ、それに…………」

 

悟飯「夢じゃないよ。長い間待たせてごめんね…………」

 

二乃「こっちこそ……、会ったばかりの時はごめんなさい……」

 

悟飯「………なんだか、謝ってばっかりだね、僕達………」

 

二乃「……ふふっ。確かにそうね…」

 

些細なことでもクスッと笑い合うところを見るに、本当にお似合いのカップルなのかもしれない。実は悟飯と二乃が踊っているところは結構な人数に見られていたりする。その為……。

 

「二乃〜!!」

 

「おめでと〜!」

 

二乃の友達2人が声をかけてきた。

 

「いや〜、二乃の初恋相手って孫君だったんだね。なんか意外だよ」

 

「でもいいよね〜。初恋相手と結ばれるなんて………」

 

悟飯「は、ははは…」

 

二乃「うん。私には勿体ないくらいに素敵な人よ!」

 

 

 

 

 

 

 

同時刻…。風太郎は四葉が待機している保健室にて待機していた。本来ならいるはずの四葉がいないので待機していたのだ。スマホをベッドの上に置き忘れているのを確認した風太郎は、いつか戻ってくるだろうと予測して待ち続けていた。

 

そして、風太郎の予測通り四葉は保健室に戻ってきた。

 

風太郎「よお、待たせたな」

 

四葉がこちらに気付く前に、風太郎から声をかけた。風太郎の存在に気づいた四葉は、何故ここに彼がいるんだ?と驚いた表情を浮かべた。

 

四葉「な、なんで上杉さんがここに……?」

 

風太郎「お前に会いに来たからに決まってるだろ」

 

四葉「う、嘘ですよね……?嘘です!!こんなことあり得ません!!」

 

風太郎「……だよな。なんでこんなことになったんだか……。つーか俺の方が結構待ったぞ。なんでここにいなかったんだよ?」

 

四葉「だって、私のところに来るとは思っていなくて………」

 

風太郎「せっかく作りたてを買ってきたのに…………」

 

そう言いながら風太郎は唐揚げを取り出した。四葉からもらった唐揚げ無料券を使ってもらってきたのだが、これを四葉と共に食べたかったから買って来たと言う。

 

風太郎「……お前が一度死んじまった時、俺は思い知らされたぜ。どれだけお前に頼っていたのか……。お前がいたから家庭教師を続けられたんだってな」

 

四葉「う、上杉さん……?」

 

風太郎「………これだけは聞きたかったんだ。6年前、京都で会ったのはお前でいいんだよな、四葉?」

 

四葉「……はい。そうですよ」

 

時は一花がバビディの術によって悪人化してしまった時にまで遡る。一花に殺されてしまった四葉は、死んだ後も界王を介して風太郎に力を貸すことによって、なんとか一花を元に戻すことができた。その後四葉が風太郎から離れていく時、彼女は自身の過去を告白したのだ。

 

風太郎「俺はあの時、お前に出会い、あの約束をしたから今の俺がある。もしお前と出会えていなかったら、俺はあの頃の空っぽな人間のままだったらだろうな……。だからお前には感謝しているんだ」

 

四葉「上杉さん………」

 

風太郎「だが、勘違いしないでほしい。俺がここに来た理由は、それとは全く関係ない。昔出会ったからとか、そんなことはどうでもいいんだ」

 

四葉「………えっ?」

 

風太郎「お前の姉妹達はすげえいい奴で大好きな奴らだ。あいつらの家庭教師をやれたことを誇りに思う。だが、お前がいなければ俺はとっくに躓いていた………」

 

四葉「で、でも…!孫さんがいたじゃないですか!別に私がいなくても……」

 

風太郎「確かにな。だが悟飯はあくまで家庭教師だ。生徒として初めからお前が協力してくれたから、今までやってこれたんだよ」

 

四葉「上杉さん…………」

 

風太郎「そんなお前だからいいんだ。昔会ってようがなかろうが関係ない。俺は弱い人間だから、この先何度も躓き続けるだろう。こんなだせぇ俺の勝手な願いでなんだが……

 

 

その時には四葉。隣にお前がいてくれると嬉しいんだ」

 

風太郎「安心すんだよ。お前は俺の支えであり、俺はお前の支えでありたい。だから、嫌いならそれでもいいんだ。お前の気持ちを聞かせてくれ……」

 

四葉「上杉さん………」

 

今までの四葉なら風太郎に対して嘘をつこうとしていただろう。嫌いだと嘘をついて、他の姉妹……。今回の場合は一花に譲っていたに違いない。

 

だが、過去に何度か悟飯と相談したことがある。無論、恋愛相談として直接的に相談したわけではない。自分は風太郎に相応しくない、約束を守れなかった自分は相応しくないと思っていたところで、悟飯がそんなことはないと言ってくれた。

 

失礼だと自覚はしているが、悟飯自身の後悔談を聞いて自分の失敗は大したことはないのだとも思ったのも事実。それに、勉強ではなくて他のところで、何より風太郎にも役に立っていると言ってくれた。

 

更に、風太郎に相応しくなる為に修行もした。悟飯は快くそれに付き合ってくれた。もしここで自分の気持ちに嘘をついてまで振ったら、彼はなんて言うだろうか………?

 

………考えるまでもなかった。

 

 

四葉「………好きです。6年前から、ずっと好きでした…………」

 

四葉は、包み隠さず想い人である風太郎に想いを告げた。

 

その顔は、決して涙で濡れて……いた。しかし、表情は明るいものだった。

 

 

 

 

 

 

 

悟飯「良かった………」

 

二乃「………盗み聞きなんて、趣味悪いわよ?」

 

悟飯「でも、四葉さんのことだから風太郎から逃げるんじゃないかと思ってたんだけど、その心配は無用だったみたいだね」

 

二乃「……そうね」

 

フォークダンスが終了した後、風太郎がこちらに来ないことを不審に思った悟飯は気を頼りにこちらまで来ていた。四葉と一緒にいるところを見て、四葉を選んだことはなんとなく察した。だが、土壇場になって四葉が逃げ出さないか不安になってしまった為、こうして影でこっそり2人を見守っていたのだ。

 

四葉「……ふぇ!!!?な、なんでお二人がここに……!!?」

 

悟飯「…あ、あれ?おかしいな…?確か気はちゃんと抑えて………」

 

二乃「…………」

 

悟飯「そ、そうだった………」

 

悟飯は姿も気も隠していたとはいえ、二乃は気を抑える術を持っていなかったため、落ち着いたら二乃の気が近くに存在することに気づいてしまったのだ。

 

風太郎「お、おい。お前ら、いつからそこにいたんだ……?」

 

悟飯「い、いや〜?ついさっきだよ?うん。決して最初から聞いてなんていないから!」

 

二乃「それ、自白してるようなもんでしょうが」

 

四葉「〜っ!!!」

 

風太郎「嘘だろお前………」

 

自分達の告白が一語一句漏らさずに聞かれていたことを知り、四葉は顔を真っ赤にして口をパクパクさせ、風太郎は目線を逸らして前髪をいじり始めた。

 

 

 

 

 

 

 

そんなことがあった翌日…。学園祭は終了して、完全に元の日常に戻っていた。とはいえ本日は振替休日だ。殆どの者は学園祭が終わったことによってまた学園祭に戻りたいと思っている中、そうでもない者も一定数いる。

 

一花「おやおや?そっか、今日は初デートなんだっけ?」

 

二乃「ええ、そうね。付き合い始めて初めてのね………」

 

一花「ふーん?いつもよりおしゃれしてるじゃん?青春だねぇ……」

 

二乃「おっさん臭いこと言ってないで仕事に行きなさいよ?大丈夫なの?」

 

一花「おっとそうだった……。行ってくるね!」

 

本来なら一花は長期ロケのためにホテルに泊まっているはずだった。しかし昨日は五月と三玖のケアをするためにこっちに帰ってきてくれたのだ。自分も風太郎に振られたというのに、妹のために帰ってきてくれるとは、なんてできた姉なのだろうか…。この時ばかりは一花に頭が上がらなかった。

 

二乃「………よし。準備完了…」

 

 

 

 

 

旭高校の伝統……というか、傾向として学園祭後に付き合い始めるカップルが多いという。つまり、学園祭が終わった後でも戻りたいとは思わない者も一定数いると言ったが、そこで付き合い始めた者達がその一定数に当てはまるわけだ。

 

「……って伝説があるんだけど、俺その恩恵受けられてないんだが?」

 

「お前がモテないだけだろ?」

 

「けっ!俺から言わせりゃ、学祭で浮かれて告白までしちまうような奴は馬鹿だね!」

 

「それはある」

 

悟飯「…………」

 

再度言うが、本日は休日である。家でダラダラゲームする者やぐうたらしている者、友達とカラオケに行く者、軽く旅行する者など様々な休日の使い方がされている中、悟飯は………。

 

「お待たせ」

 

昨日の学園祭終了後……。二乃に返事をしてめでたく彼らは結ばれた。昨日の今日で早速デートに出かけているというわけである。

 

悟飯「………うん。やっぱり何を着ても綺麗だね……」

 

二乃「あ、ありがと……。ご、悟飯もカッコいいわ」

 

悟飯「あ、ありがと………」

 

お互いに褒め合ってお互いに照れ合う。そんな初々しくも甘々なカップルがいた。そのカップルを見て嫉妬する者や温かい目で見守る者など色々な人がいるが、彼らが周りの目を気にする余裕などない。今までは友人として、教師と生徒として接してきたが、付き合っている異性として接するのはこれが実質初めてなのだ。緊張するのも無理はない。

 

だが、デートプランは以前二乃とデートした時と大差なかった。悟飯はそもそもお出かけ自体に慣れていないし、二乃もそれはよく知っていた。だからデートプランは基本的に二乃が考えている。悟飯は申し訳なく思いつつも、二乃は好きでやってるからいいのだと言ってくれる。

 

 

ショッピングでは……。

 

 

二乃「ね、ねぇ…。これどうかしら?」

 

悟飯「ブフッ!!??な、なな、何を見せてるの!!!?」

 

突然ランジェリーショップに連れて行かれたかと思いきや、堂々と下着姿を披露する二乃に思わず赤面してしまう悟飯。どうやら付き合った後だろうが関係なく猛アプローチは続くらしい…。

 

二乃「ちゃ、ちゃんと見なさいよ…!今回は真剣に選んでるんだから………」

 

悟飯「え、えーっと、似合ってるんじゃないかな?あ、あはは………」

 

しかも周りには女性客がしっかりいる為、悟飯にとってはただの公開処刑でしかなかった。だが周りの観客は初々しいカップルを見守っているだけだった。何この優しい世界。野菜生活。サイヤ人だけに………。

 

あれ?ナレーションバグってる?ごめんなさい……

 

 

 

 

 

 

ナレーションが気を取り直して、今度は昼食。以前のように銀行強盗騒動が発生するようなことはなく、それなりに値段の張りそうなお店に入る。

 

悟飯「……よし。今日は僕が奢るよ」

 

二乃「えっ?!さ、流石に悪いわよ!」

 

悟飯「大丈夫だよ。お父さんが帰ってきてくれて仕事も始めるみたいだし、家庭教師代とボディガード代で結構余ってるからさ」

 

二乃「そ、そういうことならありがたく………」

 

そんなやり取りがあり、二乃が注文した料理………いや、飲み物が届くのだが………。

 

悟飯「…………えっ?これ、二乃さんが全部一人で飲むの?」

 

二乃「違うわよ!五月じゃあるまいし、一人で飲みきれないわよ」

 

言われてみると、確かにストローが二つあった。いや、正確には一つなのだが、咥えるところが2箇所ある。真ん中はハート型になっていて、なんとも特殊なストローだなぁと悟飯は思う。

 

これは、カップルストローというよくあるものである。

 

二乃「さ、一緒に飲みましょ?」

 

悟飯「一緒に飲む……?えっ?どういうこと?」

 

二乃はストローを咥えるが、飲み物を吸わずにそのまま待機する。ジーッとこちらを見てくるので何がしたいのかと疑問に思ったが、咥え口が2つあるところを見ると、そういうものなのかと納得した悟飯もまた咥える。

 

二乃「〜♪」

 

すると二乃は上機嫌になった。一方で悟飯は少々恥ずかしい思いをしたものの、目の前の二乃の笑顔が可愛く、つい見惚れてしまった。

 

二乃「………ちょっと、いくらなんでも見過ぎよ……。流石に恥ずかしいわ…」

 

悟飯「ご、ごめん………」

 

二乃「べ、別にいいけど…」

 

ちなみに、料理が届いたら二乃が食べさせて逆に悟飯も食べさせることになったのは言うまでもない。

 

そんな感じで何箇所も周った。そろそろ日も沈み始める時間になった。

 

悟飯「あっ、もうこんな時間なんだ…。もうそろそろ帰らないと、みんなが心配するでしょ?」

 

二乃「…………」

 

悟飯「に、二乃?」

 

二乃「ごめん。もしかしたら泊まりになるかもって伝えておいた」

 

悟飯「えっ…?えぇ!!?そ、そうなの!?」

 

二乃「だって、離れたくないんだもの…」

 

悟飯「言われなくたって僕は離れないよ?」

 

二乃「そうじゃないの…。不安になるのよ。あなたがどこか遠くに行っちゃうんじゃないかって。もう、あんな思いはしたくないの…………」

 

魔人ブウの件で、悟飯が死亡したという誤報が流れた時の二乃は見ていられるものではなかった。悟飯が死んだと聞かされた二乃は、胸が張り裂けそうになったし、悲しみだけで心が壊れてしまいそうだった。一時的とはいえ、無気力になって虚無感にも襲われた。それくらいに悟飯という存在が愛おしく感じるのだ。

 

悟飯「大丈夫。何があっても、最後には君の元に必ず帰ってくる。だから心配しないで?」

 

二乃「………うん」

 

本来ならもう帰るべきなのだろう。2人でなんとなく街を散歩していたら、辺りはすっかり暗くなってしまった。悟飯は夜ご飯までには帰る予定だったのだが、チチが悟空が戻ってきたことを忘れて一人分夕食を用意するのを忘れてしまったという。あの家族想いなチチがそんなヘマをするとは思えない。恐らく悟飯に気を利かせたのだろう。普段の悟飯なら余計なお世話だと言いたくなるだろうが、今日だけは何か違かった。

 

悟飯「………あっ」

 

無計画に歩いていたものなので、ある施設が沢山集まる繁華街まで歩いて来てしまった。そのある施設というのが、以前二乃とデートした時に入ったあの施設のことなのだが…………。

 

悟飯「ど、どうやら道間違えちゃったみたいだね〜…!も、戻ろうか!!」

 

なんとなく恥ずかしくなってしまった悟飯は来た道を引き返そうとするが、二乃が悟飯の腕をがっちり確保したままその場に止まろうとする。

 

悟飯「に、二乃……?どうしたの?」

 

二乃「…………」

 

実を言うと、二乃にとっては前回のデートのリベンジでもあった。以前は付き合ってもいないし、悟飯に他に好きな人もいたかもしれない。だから最終的には身を引く形となった。でも今回は違う。二乃は相変わらず悟飯のことが好きで、その悟飯も二乃のことが好き。つまり両想いなのだ。今回はその施設に入ってしまっても、何も問題はないというわけだ。

 

二乃「……ねぇ、私達ってさ、出会ってからどれくらい経つんだっけ?」

 

悟飯「えっ?丁度1年を過ぎたくらいじゃないかな?」

 

二乃「………もうお互いのことはよく知ってるわけだし、何回かデートもしたわけでしょ?なら……さ」

 

それとなく二乃が歩み始める。二乃の歩幅に合わせる形で悟飯もついて行く。その行く先は………。

 

二乃「もう、いいんじゃない?」

 

悟飯「ま、待ってよ…!!確かに僕達は色々な時間を共有したよ?お泊まり勉強会に林間学校、温泉旅行に修学旅行、そして魔人ブウとの戦い…。それを経て君のことはよく知れたと思う。で、でも…!僕達はまだ付き合い始めてまだ1日だよ…?いくらなんでも………」

 

二乃「………確かにそうね。でも……さ?」

 

先程のショッピングでランジェリーショップに寄ったのもこの時の為。既にキスも済ませているし、混浴の温泉に一緒に入ったりしてるし、なんなら同じベッドで寝たこともある。段階的にいきなり吹っ飛ばしてるわけでもない。

 

ただ、付き合い始めてから早すぎるだけで、他は特に問題ないと二乃は判断したのだ。

 

悟飯「…………」

 

普段の悟飯なら、例え押されても譲れないものもあった。しかし今は既に恋仲にあるし、両想いである。悟飯にもそういった欲求は存在するし、知識も人より少ないとはいえ、多少はある。好きな人からOKサインが出たらすぐにでも飛びつきたくなってしまうが、悟飯は二乃を大切にしたかった。彼女を傷付けるようなことはしたくなかった。

 

二乃「………あのね、これだけは言っておくけど、大事にされ過ぎても女の子は傷付くのよ?」

 

悟飯「えっ………?」

 

二乃「私達の関係をみんな認めてくれているわ。三玖に五月に……多分パパもね…。それに、チチさんや悟空さんだって気にしてないでしょ?私達だけの恋愛の形ってものがあってもいいって思わない?」

 

悟飯「……………」

 

何も返事はしない。だが悟飯の方から歩み始める。

 

付き合い始めて1日でここまで行くのは流石にぶっ飛んでいるかもしれない。しかし、彼らは1年間という短い時間とはいえ、数々の思い出を作ってきた。共に戦った時もあった。お互いのことは既によく知っている。周りも恐らく自分達の関係を認めてくれるはずだ。

 

………そう考えてしまうと、ストッパーとなるものはなくなってしまった。2人はそのまま施設に入り、チェックインした。

 

 

 

 

 

 

その日の夜…。悟飯と二乃は夜遅くまで起きていた。2人がそこで夜更かしをしてまで何をしていたのかは、本人達だけが知る秘密である…。

 




 エンダァァァァァァァァ!!イヤァァァァァァァァ!!!

……ということで、悟飯の花嫁は二乃でした。この作品を始めた時から悟飯の花嫁は二乃にしようかと考えていたんですけど、途中で五月とも良さそうだなぁとか、意地悪な三玖と悟飯もいいなぁとか思って悟飯の花嫁を変えようかと思っていた時期もあったんですけど、最終的には当初の予定通り二乃としました。
 なんで二乃にしたのかと言われると、本当になんとなくなんですよね。強いて言うなら悟飯を引っ張ってくれそうだからですかね。直感的に二乃が良さそうだと思いました。
 三玖や五月に期待していた方は本当に申し訳ありません。特に五月だと予想していた方は多かったのではないでしょうか?未来では五月と結ばれてたりしましたしね。あと五月の正ヒロインっぷりがすごかったり…。

 さて、花嫁が判明したということで、一体どこに二乃が花嫁の伏線が隠されていたのかについてですが……。答え合わせは次回にしますね。花嫁が二乃だと意識した上でまた探したい人もいるかもしれないので念の為ですが……。

 二乃が教室から逃げ出した理由を超分かりやすく説明すると、魔人ブウ(ゴテンクス吸収)との戦いの際にど正論をぶつけられたことが原因です。もしここで悟飯が来なければ、二乃は『やっぱりね…』とショックを受けていたから、ここで二乃が選ばれたことによって地味に救われてたりしてます。魔人ブウのあの台詞も伏線の1つだったりしました。

 えー…。まあ花嫁が判明したと同時にいきなり一線を越えてしまっているわけですが……花嫁を二乃にした場合はこうしようと結構前から考えてました。以前の54話だったかな?その辺で二乃と悟飯がデートすることになったわけですけど、そこで二乃は悟飯に仕掛けようとするも失敗しました。それは付き合ってないからとか、まだ悟飯の心情がよく分かってないからとか色々な理由があったわけですが、もう両想いだということはお互いに分かってるんですよね。それにお互いのことはよく知ってるし、キスしてたり一緒に寝てたりするので、まあいいかな……?ということでこんなぶっ飛んだ展開にしました。
 悟飯がそんなすぐにやるんかと思う方もいるかもしれないけど、DB原作では割とすぐビーデルが子供身籠ってたりしてたし、二乃の押しの強さもあればおかしくないなぁと思いました。三玖と五月は付き合い始めたらなんやかんやでゆっくり進みそう。付き合う前の押しは強くても付き合い始めたらなんかそうなりそうじゃない?そう思うの私だけかな……?

 ちなみに本編はもう少し続きます。もうしばらくお待ち下さい。本編終了後に今回は結ばれなかったヒロインのそれぞれのルート、ハーレムルートを載せたり要望にあった過去ifシリーズをちょいちょい書き足したり、イチャイチャするだけのほのぼの話しも書いたりとかしようかな〜とか考えてます。

 ちなみに花嫁の伏線(私が新たに作ったオリジナル)の答え合わせは次回の前書きに載せる予定ですが、全部は載せるつもりはないです。そして予定通り最後のバトル展開がもうすぐやってくるわけですけど、多分この作品史上一番設定が複雑になりそうなので大苦戦中。もしかしたらペース落ちるかもしれませんが、そこはご容赦下さい。


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第102話 砂糖をどうぞ

※ミニコーナー
〜花嫁が二乃となる伏線の答え合わせ〜

 悟飯が五つ子のアパートに泊まった時、色々あって悟飯と添い寝する為に例の3人でジャンケンするのだが、それで二乃が勝利した際の『勝利の女神は二乃に微笑んだようである』という地の文と、プール回の二乃の『勝利の女神は私に微笑んだようね!』という台詞。これはヒロインレースにおいて二乃が勝利することを示唆していた。ちなみに伏線は他にもあるんで、気になった場合はお気軽にどうぞ。

……ね?意外とシンプルだったでしょ?あと伏線と呼べるのか分からないけど、2話か3話の後書きに『二乃とビーデルって共通点多いよね。髪切るところとかツンが抜けてデレるところとか』的なことを書いた気がするんですよね。実を言うとあの時から二乃をお相手にしようと考えてました。



悟飯「ふぁぁ…。もう朝か……。あっ…!!!」

 

悟飯は日光の眩しさで起床した。時計を見ると9時を過ぎていた。

 

悟飯「…………そ、そうだった……」

 

2人はホテルの一室のダブルベッドで寝ていた。しかも2人とも生まれたままの姿だ。それはつまり、そういうことだ。

 

昨日のことを思い出した悟飯は顔が茹蛸になりそうなほどに顔を真っ赤にして両手で顔を抑えた。これではどっちが乙女なのやら………。

 

二乃「ん〜……?おはよ………。あっ…」

 

同様に二乃も起床した。悟飯ほどではないにせよ、昨日のことを思い出して顔をほんのりと赤くさせていた。

 

悟飯「あ、あ〜……。起きたんだ……」

 

二乃「え、えぇ……。って、もう9時過ぎてるじゃない…!」

 

悟飯「し、仕方ないよ。取り敢えず、服を着ないと…………」

 

二乃「そ、そうね…………」

 

服を着た後に朝食を取った2人は、再び部屋に戻ってゆっくりしていた。

 

二乃「ふわぁ〜……。まだ眠いわ……」

 

悟飯「だから早めに寝ようって言ったのに………」

 

二乃「あら?私を寝かせてくれたなかったのはどこの誰かしら?」

 

悟飯「うっ…………」

 

二乃「ふふっ…♪冗談よ。あれはお互い様でしょ?私とあなたもどっちも寝かせる気なかったじゃない?」

 

悟飯「そ、そうだね〜……」

 

昨夜あんなことをした後だというのに、割と冷静に会話をしている二乃を見て、メンタル強いなぁと感じる悟飯だった。

 

 

 

 

二乃「はぁ…。明日から学校が始まるのね……。いつも通りの日常かぁ……」

 

悟飯「ははは…。僕達にとっては慣れるまでいつも通りではないかもね」

 

二乃「それもそうね」

 

悟飯「………そういえば、三玖さんと五月さんの様子はどうだったかな?」

 

二乃「あのねぇ…。昨日の今日で他の女の話をする?まあ私の姉妹だから別にいいけど…。2人ともいつも通りに戻ってたわよ。だから変に気を使う必要はないわ」

 

悟飯「そ、そうか……。良かった………」

 

悟飯が二乃を選んだということは、五月と三玖が振られたと言っても差し支えがなかった。振られた2人は多少傷付いてしまっただろう。それがなんとなく分かっていた悟飯は、2人の心配もしていたのだ。

 

二乃「さあ、帰りましょ?流石にそろそろ帰らないと心配されるわ」

 

悟飯「そうだね」

 

こうして、悟飯と二乃のデートは幕を閉じた。まさか付き合って初のデートで恋のABCのCにいきなり到達したとは思いもしなかっただろう。既に色々やってしまった悟飯は、些細なことではあまり恥ずかしくなくなるのではないだろうか……?

 

 

 

 

 

 

 

二乃「ただいま〜」

 

四葉「あっ、お帰り二乃!どうだったの?初デートは!」

 

二乃「……とってもいい思い出になったわ。まさに最高の一時だったわ……」

 

四葉「そうなんだ…!良かったね!」

 

現在の時刻は10時過ぎ…。所謂朝帰りというものを堂々としているわけだが、四葉が何も反応を示していない。それは何故か………。

 

三玖「いいなぁ……。また悟飯の家に泊まったんでしょ?」

 

五月「まあまあ、お付き合いしてるんだから、それくらい当然ですよ」

 

そう。二乃はデート後に悟飯の家に泊まるということになっていたのだ。まさかちょっと特殊なホテルで一夜を過ごしたなんて誰も思っていないだろう。

 

零奈「二乃…。いくら交際関係になったとはいえ、少しは自重してください…」

 

二乃「はーい(どうやらバレていなさそうね)」

 

こんなことをマルオが知ったら一体どんな反応をするのだろうか…?考えない方がいいかもしれない……。

 

 

 

 

 

悟飯「ただいま〜」

 

悟天「あっ!兄ちゃんが帰ってきた〜!!」

 

チチ「お帰り悟飯。朝ご飯はもう食べてるだか?」

 

悟飯「うん。もう大丈夫」

 

悟空「昨日はどこかに泊まってたんか?帰ってくりゃ良かったのによ〜」

 

チチ「こら悟空さ!デリカシーのない質問はするでねえ!!」

 

どうやらチチは悟飯が朝帰りした理由を察していたらしいが、鈍感な悟空は何故悟飯が朝帰りしたのかよく分かってない印象だった。悟天も同様だが、こちらは年齢が年齢なので仕方ない。

 

ちなみに、二乃との関係は悟空、チチ、悟天に報告は済ませてある。逆に中野家の方では、二乃は4人と零奈には報告を済ませており、あとはマルオのみとなっている。

 

チチ「(にしても、まさか息子が初デートでいきなり朝帰りするとは思いもしなかっただ……。二乃さ、よっぽど押しが強えみてえだなぁ……)」

 

可愛くて良い子と結ばれたのは喜ばしいっちゃ喜ばしいのだが、あまりのロケットスタートっぷりに複雑な心情になっているチチだが、悟飯がそのことに気付くことはない………。

 

悟飯「って待って。なんか勘違いしてそうだから言うけど、僕は二乃さんの家に泊まっただけだよ…?決して2人きりとかじゃないからね?」

 

チチ「あら?そうだっただか?オラ勘違いしてたみてぇだな?」

 

 

 

 

 

そして、学園祭の振替休日が終わり、元の平日が帰ってきた。殆どの者が普段通りに行われる授業を憂鬱に思うのだが、一部だけ違った。その一部というのが、学園祭を機に付き合い始めた者達や、普段の授業の方が楽しいという珍しい者達なのだが、悟飯はどちらにも当てはまるが、前者の方がより当てはまっているといった印象だ。

 

まず、登校時から彼の生活は変化した。

 

 

 

悟飯「ねえ、別に学校でも会えるんだから、わざわざ一緒に登校しなくてもいいんじゃないかな?」

 

二乃「いいじゃない…。こうするだけでも登校が楽しくなるんだもの…。その、悟飯は嫌だった?」

 

まだ慣れない名前呼びに苦戦しながらも、恋愛暴走機関車の二乃はそれを実行する。そもそも名前呼びをするようになった原因は悟飯である。

 

悟飯「ううん。むしろ嬉しいよ」

 

そんな悟飯は誤魔化すことなくストレートに好意を伝える。回りくどいのが苦手な二乃からしたら、彼の直球な好意は嬉しく感じた。そっと彼の腕に絡みついて更に機嫌を良くする。

 

悟飯「ちょ、ちょっとくっつき過ぎじゃないかな?」

 

二乃「あら……。もう色々しちゃったのに、これくらいで恥ずかしがるの?」

 

悟飯をいじる意図でそう言ったのだろうが、その本人が言葉を連ねるうちに顔を赤くしていく。その自爆っぷりに悟飯はおかしくなってしまい、つい笑ってしまった。

 

二乃「な、なによ…!?笑うことはないでしょ!?」

 

悟飯「いや、今の二乃は可愛かったな〜って思って………」

 

二乃「〜〜っ!!!!」

 

またしてもど直球かつ不意打ちな好意。二乃は攻撃力に全振りしている反面、防御力が弱いのだ。好きな相手に少しでもこの類の言葉を言われるとどうしても弱いのだ。

 

 

 

「あ〜……!!なんだよあのカップル!爆発してしまえ!」

 

「いや、最早それを通り越して結婚してしまえ………」

 

「あれ?俺無糖ブラックコーヒーを飲んでるはずだよな…?買い間違えたか…?」

 

 

彼らはこうして周りの人達に糖分を供給していることを、本人達は知らない…。

 

 

 

 

だが、糖分供給は登校だけに留まらない。

 

 

「よーし、進路希望調査を回収するぞ〜…………。あっ?誰だこれ?中野……二乃!!」

 

二乃「えっ?はい?」

 

唐突に担任教師に呼ばれてあっけらかんとした様子で返事をする二乃。呼ばれた理由は………。

 

「あのなぁ……。お前ふざけてるのか?後で返却するから、修正しておけ」

 

二乃「えっ?ふざけてるつもりは全くありませんけど?」

 

「だとしてもこれはダメだ…。これは、そう…!ここに書かずに心にしまっておけ!そうした方がいいぞ!」

 

二乃「えー?」

 

不満気な二乃をなんとか説得した担任は溜息を吐きながら別の紙を確認していく。

 

三玖「ねえ二乃。なんて書いたの?」

 

二乃「『孫悟飯君のお嫁さん』よ?」

 

四葉「うえッ!!!?」

 

三玖「だ、大胆………」

 

二乃「だって彼は私のものだってアピールしておかないと、いらぬ蝿を呼び寄せるでしょ?」

 

三玖「………悟飯。二乃をこんな風に変えたんだから、しっかり責任を取ってね?」

 

悟飯「えぇ?僕のせいなの?」

 

風太郎「あー、多分そうなんだろう…」

 

そんな話をいつものメンバーでしていると………。

 

「………孫」

 

悟飯「……?は、はい?」

 

「なんだお前ら!!?独身の先生への当てつけか!!?なんだよお前ら2人揃ってお嫁さんとか夫とか!?確かに学園祭後はカップルが生まれるぞ!!?でもな、ここまでのバカップルは先生見たことないわ!!!我が校始まってお前らが初めてだわ、うん」

 

担任教師の大暴露にクラス中が騒めいた。

 

「えっ?なになに?孫君と二乃ちゃんって付き合い始めたの?」

 

「というかお嫁さんと旦那さんって……」

 

「これが新時代の夫婦漫才……?」

 

堂々とするつもりでいた二乃だが、流石にクラス中に暴露されて恥ずかしくなってしまったようで俯いている。しかしすぐに顔を上げて……。

 

二乃「い、いい!!?彼は私のもので、私も彼のものなのよ!!?変に手を出そうとしないことね!!!」

 

真っ赤な顔だがはっきりと堂々と釘を刺しておくことにしたようだ。ここまで来ると逆に清々しいものである。なんなら二乃に対し、あらやだ男らしいって感じている者もいた。

 

風太郎「………二乃はともかく、お前は何やってんの?」

 

悟飯「お、おかしいな……。確か大学に進学後に学者って書いたはずなのに………」

 

三玖「まさかの無意識……?」

 

四葉「恐ろし過ぎる……!」

 

どうやら悟飯は無意識に書いてしまったらしい。隣の席の五月は嫉妬を通り越して最早呆れている様子だった。

 

五月「浮かれてしまう気持ちも分かりますが、もう少し自重してください、()()()()()

 

三玖「五月も十分浮かれてる………」

 

 

 

前田「んだこれ?バカップルか?」

 

武田「まさしくそれだね………」

 

 

 

昼休みは……。

 

二乃「はい。今日はお弁当作ってきたの!食べてみて?」

 

悟飯「わ〜…!美味しそう…!!」

 

周りの目を気にすることがなくなった2人(というか二乃)は、遠慮なく悟飯の近くの席に移動して弁当を差し出した。

 

悟飯「あっ…!美味しい…!!」

 

二乃「良かった……」

 

悟飯は二乃の作った弁当で舌鼓を打つ。そんな姿を頬杖をつきながら笑顔で見る二乃。2人の姿はまさしく夫婦そのものだった。

 

風太郎「………なあ、誰かコーヒー持ってない?無茶苦茶苦いやつ」

 

三玖「……抹茶ソーダが激甘になってる」

 

四葉「に、二乃大胆だなぁ……」

 

五月「というか、物凄く幸せそうですね………」

 

三玖と五月は若干嫉妬の目線を送るも、ある意味息ぴったりの2人を見て諦めがついてしまいそうなほどだった。

 

三玖「(あれ?そういえば、四葉とフータローも付き合ってるんじゃなかったっけ?)」

 

悟飯と二乃のインパクトが大き過ぎててっきり忘れてしまうほどだった。ちなみに、この日は糖分過多になった生徒や教師が発生したとかしてないとか………。

 

 

 

 

そして放課後…。

 

風太郎「お前…!!何度言ったら理解するんだ!!?」

 

四葉「ふぇえ!!すみませーん!!!」

 

いつも通りミスって風太郎に説教される四葉の姿があった。こちらも付き合っているはずなのだが、全くそんな雰囲気を感じない。

 

二乃「あれ、本当に付き合ってるの?」

 

五月「なんというか、孫君達とは正反対ですね………」

 

三玖「でもこっちの方がある意味安心するかも………」

 

ここで比較してみよう。悟飯&二乃カップリングと風太郎&四葉のカップリングの進展を。

 

まずはキス。実を言うとこれはどちらも済ませているのだが、風四の方は正体が分からなかったり寝ている間だったり、とにかく本人達の自覚がない場合しかない。一方で悟飯と二乃は双方の意思でしっかりキスをしたことがある。

 

次にデート。悟飯と二乃は既に何度かデートしているが、四葉と風太郎はデートらしいデートはまだしていない。

 

そして、この2組のカップルには決定的な違いがある。四葉と風太郎の方が圧倒的に健全な付き合いをしているのだが、悟飯と二乃は初日から神っていた。どちらが正しい在り方なのかと問われれば、恐らく風太郎と四葉の方だろう。しかし、二乃と悟飯……。正確には、二乃はそんなことは気にしない。自分達だけの恋愛の形があってもいいという考えなのだ。

 

二乃「……なんというか、私達って飛ばしすぎたのかしら?」

 

悟飯「……ノーコメント」

 

五月「えっ?何の話ですか?」

 

二乃「こっちの話よ。気にしないで」

 

 

 

そんなこんなで勉強会も終わり、二乃と三玖と四葉はバイト、五月は塾の手伝いがあるとのことで、珍しく風太郎と悟飯の2人だけで下校しているのだが………。

 

風太郎「俺と四葉って本当に付き合えてんのかな……」

 

悟飯「………えっ?今なんて…?」

 

風太郎「二度は言わん……」

 

悟飯「あっはははっ!!またしても風太郎らしくない発言だね!」

 

風太郎「笑うな!こっちは結構真剣に考えてるんだからな………!!」

 

悟飯「ごめんごめん。でも確かに側から見たら今までと何も変わってないよね。もう少し恋人らしいことをしてもいいと思うんだけど……」

 

風太郎「お前らみたいなバカップルとは違って堂々とあんなことはできん」

 

悟飯「あ、ははは…………」

 

たった1日で悟飯と二乃というバカップルが学校内にいるとの噂で持ちきりになってしまっているほどだ。彼らは常に旭高校生徒に糖分を供給しており、その場にいればブラックコーヒーが苦手な甘党な人でも十分飲むことが可能だという都市伝説じみだ噂話も発生するほどだった。

 

悟飯「そ、そうだ!恋人らしいことなら、デートしてみたらどうかな?」

 

風太郎「で、デート……?」

 

悟飯「うん。僕と二乃も付き合い始めた翌日にはデートに行ったしね」

 

風太郎「………参考にどんなところに行ったか教えてくれないか?」

 

悟飯「それくらいなら別にいいよ?」

 

二乃とのデート日程を簡潔に纏めると、まずはショッピングし、ランチを食べ、またショッピングしたり遊んだり、そして最後は………。だが、最後の部分だけはどうしても伝えることができなかった。

 

風太郎「なるほどな……。参考にさせてもらう…。やっぱり俺が考えた方がいいんだよな……?」

 

悟飯「その方がいいと思うよ?本当なら僕も二乃とのデートの時にプランを考えようかと思ったんだけど、全くと言っていいほど思いつかなくてさ……。二乃には「あんたは仕方ない」って言われるし……」

 

風太郎「(そりゃあ、幼少期は勉強と戦いだけで過ごしてりゃそうなるよな…)」

 

ということで、風太郎は週末に四葉とデートしてみることにしたそうだ。悟飯は風太郎と別れ、舞空術で帰宅しようとしたその時………。

 

悟飯「……?メールか?」

 

『会ってお話がしたいのですが、後で孫さんの家に行ってもいいですか?』

 

と、四葉からメールが来ていた。

 

悟飯「何の用事だろう……?そういえば最近修行してなかったから……。いや、それなら修行したいって言うはずだから………なんだろう?」

 

四葉の意図は分からないものの、特に断る理由もない為、承諾する趣旨の返信をした後に帰宅した。

 

 

 

家に帰宅して3時間ほど経ち、既に日が沈み始めた時のことだった……。

 

悟飯「……!!」

 

悟空「おっ?この気は?」

 

悟天「四葉さんだ〜!!」

 

 

四葉「どうも皆さん、こんばんは〜!」

 

悟空「おっす!こんな時間にどうしたんだ?」

 

四葉「ちょ、ちょっと孫さんに相談したいことがありまして……」

 

悟空「悟飯にか?ならオラと悟天は向こうで修行でもすっか?」

 

悟天「うん!そうする!!」

 

悟空は何かを察して悟天を引き連れて遠くに修行に行った。四葉は悟空に感謝しながらも……。

 

四葉「あ、あのですね…!いつも恋人らしいことをしている孫さんにお聞きしたいのですが………」

 

悟飯「えっ?う、うん……?」

 

四葉「も、もっと上杉さんと恋人らしいことをするにはどうすればいいですか!!?」

 

悟飯「……(なんかさっきも似たような相談を持ちかけられた気がする)」

 

風太郎と四葉は正反対なようで、案外似た者同士だなぁと思った。

 

悟飯「そうだね…。やっぱり周りの目が気になっちゃうだろうから、週末にデートしてみたらどうかな?」

 

四葉「で、デート…!!その手がありましたか!!で、でも私から誘うのはなんというか…………」

 

悟飯「あ〜…。それなら大丈夫だよ。多分そろそろ来ると思うよ?」

 

四葉「えっ?何がです………」

 

四葉が言い切る前に携帯が振動していることを確認すると、画面を確認してメールが届いたことに気づいた。すぐに開いて内容を確認すると……。

 

『今度の週末に出かけないか?』

 

素気ない文章だが、風太郎なりに勇気を出して誘っているのだろう。そう考えると四葉は嬉しくなってしまってつい頬が緩んでしまう。

 

四葉「ま、まさか上杉さんからお誘いが来るとは思いもしませんでした…!!」

 

悟飯「良かったね!それじゃあ特にもう用事はないみたいだし……」

 

四葉「ま、待って下さい!まだお聞きしたいことがあるんですけど……」

 

悟飯「あ、あれ?そうなの?」

 

四葉「はい。その……、二乃と孫さんはどこまで進みましたか?」

 

悟飯「………………えっ??」

 

唐突な質問。四葉と風太郎もまた付き合い始めて日は浅い。流石に進展を気にするには早すぎると思うのだが、それは悟飯が言えることではない。

 

四葉「その………。初デートではどこまでするものなのかと……。た、例えば手を繋ぐとか………だ、抱きつくとか………」

 

四葉は割と微笑ましいアプローチを考えているようだが、残念ながらある意味相談する相手を間違っている。悟飯と二乃はそんな甘ったれた段階はとっくに超えており、もう既に恋人として最終段階まで行っている。しかし流石に四葉相手にそこまで馬鹿正直に話すわけにもいかなかった。ので………。

 

悟飯「て、手は繋いだかな〜…。いつも二乃に先を越されちゃうから、それに関しては自分からしてかな〜?」

 

ここで思い出してもらいたい。悟飯は四葉以上に嘘をつくのが苦手である。その為、悟飯の言動が嘘であることは四葉にはバレバレだった。

 

四葉「むむ…!なんだか怪しいですね?何か私に隠しているのでは…?」

 

悟飯「そ、そんなことないよ!」

 

四葉「私達は秘密を共有する仲じゃないですか!!包み隠さず話して下さい!!でないとこの間の件と釣り合いません!!」

 

四葉は地味に風太郎の告白、四葉の返事を聞かれていたことを根に持っていたようだ。

 

悟飯「だ、ダメダメ!!こればかりは言えないよ!!絶対に!!」

 

四葉「むむむっ………」

 

悟飯の意思が固いことを認識した四葉だが、せめてもの抵抗で頬を膨らませてこちらを睨んでくる。それでも悟飯は口を閉ざしたままだった。

 

チチ「あれ?四葉さ、来てただか?」

 

そこに、夕食時だというのに悟空達が帰ってこないことを不思議に思って様子を見に出たチチが現れた。

 

四葉「あっ!チチさん!先日は二乃がお世話になったそうで!!」

 

チチ「えっ…?二乃さ……?この前の喧嘩の件だか?」

 

四葉「あ、あれ?一昨日から昨日にかけて二乃がそちらに泊まったはずですが………?」

 

チチ「んだ?来てなかっただよ?一昨日から昨日は確か悟飯がそっち(五つ子の家)に泊まってるはずだが……?」

 

四葉「えっ?孫さんが?()()()()()()()()()()()のではないんですか?」

 

チチ「……んだ?」

 

四葉「えっ?」

 

二乃の言い訳と悟飯の言い訳が妙なところで重なってしまい、矛盾点が生じてしまった。お互いにそんな嘘を言うメリットなどなく…………。

 

チチ「………ん?ということは、悟飯も二乃さもそっちに行ってなくて……」

 

四葉「孫さん家に二乃と孫さんもいなかったと………。えっ?」

 

悟飯「……………」

 

ふと2人が悟飯の顔を見ると、そこには冷や汗を大量に流して目を逸らそうとしている悟飯がいた。

 

チチ「悟飯ちゃーん?これはどういうことか説明してもらうだよ〜?」

 

四葉「そ、孫さん…?えっ?ま、まさかですよね?」

 

悟飯「あわわわわ……!!!」

 

せっかく2人で話し合って上手い嘘を考えたというのに台無しである。悟飯は内心で二乃に謝りつつ、黙秘でこの場を切り抜けようとする。

 

だが、その素振りが逆に2人に対して真実を告げでいるようなものであった。

 

四葉「…………まさか…!」

 

チチ「本当に初デートで朝帰りしただか!!?」

 

四葉「ふぇ!!?そそそ、そんなわけないですよね!!?」

 

悟飯「……………も、黙秘で」

 

チチ「きゃーーー!!!これは思ったよりも早く孫の顔が見れそうだべ〜!!!」

 

チチは子供のようにはしゃぎながら赤ん坊用の服を買わねばと気の早いことを考えており……。

 

四葉「と、ということは……!!私は叔母さんということに!!?まだ高校生なのに!!?いや、来年からは大学生ですけど……!!」

 

四葉は割とアホなことを考えていた。

 

悟飯「流石に気が早すぎるよ!だからそういうのじゃないんだって!!」

 

四葉「いやいや!!お付き合いしている男女が夜に密室で2人っきりになってるんですよ!!?そんなの、……」

 

最後まで言い切る前に自分が恥ずかしくなってしまった四葉は口をパクパクさせて硬直してしまった。

 

悟飯「よ、四葉さんにお母さん?べ、別に2人が考えているようなことなんてやってないから!!デート中に二乃さんがびしょ濡れになっちゃったからシャワーを使う為にね……!!」

 

四葉「それでセッ……したんでしょう!!?よくある流れじゃないですか!!!」

 

悟飯「い、いやいや!!ぼ、僕達は健全な付き合いだよ!!」

 

 

ピロン

丁度そこに一つの着信がくる。悟飯は通知を確認しようとした時……。

 

 

シュバ‼︎

 

悟飯「……あれ?」

 

四葉「えーっと?」

 

チャットアプリを開いたタイミングで四葉が強奪した。そして………。

 

四葉「なになに…?『あの日の夜は最高のひと時だったわ。何より私の気持ちに応えてくれたのが嬉しかった。情熱的で野生味のあるハー君も私は好きよ。でも獣になるのは私の前だけにしなさいよね!他の女には絶対その姿を見せちゃだめよ!秒で堕としちゃうから!!

 

P.S. またデートしましょうね♡』」

 

新しく通知されたチャットを全て読み上げた四葉は、再び文章を見直して、その日の夜に何があったのかを完全に理解してしまった。

 

四葉「…………ぐはっ!!!」

 

四葉はあまりの羞恥心にその場に倒れ込んでしまった。まだお子様パンツを穿いてる子には刺激が強すぎたようだ。

 

チチ「………悟飯。責任はしっかり取らなきゃダメだぞ?」

 

いつになく真剣な顔でそういうチチに悟飯は最早何も言う気も起きなかった。

 

悟飯「は、ははは……………。それは勿論だよ……?うん………」

 

 

ちなみにその後、10分経って意識を取り戻した四葉は何事もなかったかのように帰宅した。踏んだり蹴ったりの悟飯であった……………。

 

 

 

 

 

そして中野家Pentagonでは、二乃と四葉による2人きりの密談が行われていた。

 

四葉「………二乃。初デートでいきなり一線を超えるって……、正気?」

 

チャットの文面を見るに、悟飯から誘ったのではなく、二乃から誘ったのは明白だった。そもそも悟飯の性格から考えてそんなに攻めるタイプでもない。

 

二乃「ええ、私は至って正気よ。血迷っていたわけでもないし、一時の感情に流されたわけでもないわ」

 

四葉「そ、そう……?」

 

二乃があまりにも自信満々にそう言ってしまうため、自分が正しいはずなのだが本当に正しいのか疑わしくなってしまった。

 

二乃「さ、最初は確かに恥ずかしかったけど、やっとここまで来たんだって思うと、恥ずかしさよりも嬉しさの方が勝っちゃって…。最後に『もう君なしで生きることができない』って耳元で囁いてくれたのよ……!!あんなの不意打ちよ…!!」

 

その時のことを思い出している二乃は羞恥心よりも嬉しさの方が勝っていたようで謎にクネクネしている。そんな二乃の様子を見て、自分にはまだそういうのは早いなと思ったと同時に、そこまで焦ることもないかと思い直したという………。

 




 今回はただただアホみたいなイチャイチャを書きたかっただけ。とにかくアホな展開を書きたかっただけです。ここら辺から悟飯のキャラ崩壊が進んでしまうかもしれないなぁ……。まあ今更な気はしますけど()

 今後の予定としては取り敢えず1話くらいオリジナル話を書いて、最後のバトルに入ろうかなぁと考えています。最後のバトルの設定がマジで複雑怪奇で整理というか言語化するのに苦戦中です。


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第103話 嫉妬

※ミニコーナー
〜風太郎&五つ子のZ戦士達に対する印象〜

 今回はZ戦士を中心に…。

悟空:
悟飯の父親ということもあり、信頼は厚い。生き返って接するごとに、時々抜けているところがあるが根本的には悟飯に似ているのだなぁと感じている。普段は頼りないが、ピンチの時は何故か頼りになる気がする不思議な人物。

ベジータ:
正直言うとそこまで接してないのでどういう人物かは分かりかねる。聞いた話では元は極悪人だったようだが、そんな面影は見たことはない。ただしバビディの術にやられた時は例外である。実は風太郎を傷付けたことをきっかけに、一花は彼をあまり好んでいないとか……?

クリリン:
悟空の親友であり、悟飯もよく共闘をしたある意味一番関わりのある彼だが、五つ子や風太郎とはあまり接点はない。しかし悟飯が信頼していることから、いい人ではあるんだろうという感じ。

ヤムチャ:基本的にクリリンとほぼ同じだが、一花が闇落ちした時に自分の身を挺して一花を止めていたので、評価は高め。しかし彼は浮気症だったとか……。そのことを知ったら五つ子はどう思うのだろうか………。ちなみに五つ子達はこのことは知らない。

天津飯:こちらもほぼ同じ。しかし五月からは三つ目のお化けと恐れられているらしい。彼は地味にそのことがショックだったりする。それで餃子に慰められているとかいないとか………。

トランクス:
悟天の親友ということだが、五つ子達とは殆ど関わりがない。一応ゴテンクスになっている時に同じく融合していた五つ子達と共闘はしている。だが、彼がどんな人物かはいまいち分かっていない。とはいえ、悟天と仲がいいからいい子なのは間違いないだろうという認識。

ピッコロ:
悟飯の師匠ということだが、なんといっても緑色の肌が目に付く。ブウが天界に来た時のピッコロの対応に違和感を覚えたが、根はいい人なのだと分かってはいる。ターバンを付けるだけでも印象は相当変わるらしい。

 取り敢えず今回のミニコーナーはここまで



ここはパオズ山……。悟飯は朝早くから二乃とデートに行き、その日の夜に卒業(意味深)をするのだが、今回は同じ日の悟空の様子を見ていこう。

 

悟空「よし!一通り耕すことはできたみてえだな…!」

 

悟空は生き返ってからは農家として働くことになった。そのためには、まず畑を用意する必要があるが、土地は広大にある為問題はない。機械類はまだ買ってないが、悟空の身体能力を持ってすれば問題ないだろう。

 

悟空「だけど、オラ一人じゃ流石に厳しいなぁ……。このままじゃベジータに置いていかれるかもしれねぇぞ……」

 

そのようなことを仕事中に考えていた悟空は、人を増やせないかと昼休みに提案するが………。

 

チチ「まだお金も用意できないだよ?人を雇うことなんて無理だべ」

 

悟空「そいつは困ったなぁ……」

 

悟空は何かいい方法がないかと考える。友人に頼るという選択肢が浮かんできたが、彼らには彼らの時間というものもある。

 

悟空「…………そうだ!チチ、ちょっと出かけてくるからな!」

 

悟空はチチの返事を聞かずに飛び立った。向かった先は………。

 

 

 

 

 

 

 

 

バーダック「………仕事、見つからねえな」

 

トーマ「地球の食べ物は栄養価が低いのか、俺たちにとっては足りないらしいな……」

 

トテッポ「もっと食いてえよ………」

 

セリパ「そう言われても、戸籍が必要なんだろ?ここは宇宙外交は積極的じゃないし、地球人以外の人類の存在を認識してないみたいだしな」

 

パンブーキン「どうすりゃいいんだ…。このまま原始的に狩りを続けるしかねえのか?」

 

バーダック達は働き口がなかなか見つからずに困っていた。今は山奥で狩をしてなんとか食い繋いでいるが、サイヤ人の食欲ではそれも限りがあるだろう。

 

ギネ「戸籍が本当に厄介だね…。それがなかったら話にならないよ?」

 

バーダック「ああ、だからまずはそこをどうにか……、…!」

 

その時まで座り込んでいたバーダックだったが、突如立ち上がって空の方を見上げていた。

 

バーダック「………カカロットか?」

 

ギネ「カカロット!?確かカカロットは死んだはずじゃ…………」

 

 

 

スタッ

 

高速でやってきた悟空が地面に着地した。

 

悟空「よっ!父ちゃん……でいいんだよな?」

 

バーダック「ああ」

 

ギネ「か、カカロット…?カカロットなのかい…?」

 

悟空「あ、ああ……。そうだけど、おめぇは?」

 

バーダック「………こいつは俺の妻……、つまり、お前の母親だ」

 

悟空「えっ……?」

 

ギネ「カカロット〜!!!!」

 

困惑している悟空をよそにギネが抱きついてくる。ギネの行動に悟空は更に困惑するが………。

 

悟空「………?なんだ……?なんか、懐かしい匂いだな…………」

 

ギネ「カカロット…!よく生きていたね!死んだって聞いた時は……もう!!」

 

悟空「ちょっと待ってくれ!オラの中でもまだ整理できてねえことがあるから、一旦離してくれねえか……?」

 

そう言っても聞かないギネだったが、バーダックが首根っこを掴んでようやく静かになった。冷静になったところで悟空が生き返った経緯を説明した…。

 

ギネ「そっか……。私達みたいに生き返れたんだね……」

 

悟空「おう…。おめぇがオラの母ちゃんかぁ………」

 

ギネ「覚えてないのかい?」

 

悟空「オラは赤ん坊の頃に頭を打って死にかけたことがあるらしいんだけど、多分その時に昔の記憶がなくなっちまったんだと思う………」

 

バーダック「じゃあしばらくは自分がサイヤ人であることも知らずに生きていたのか?」

 

悟空「ああ。そうなるな。初めてオラがサイヤ人だって知ったのは、ラディッツが来た時だった…………」

 

ギネ「ら、ラディッツ!?ラディッツが来てくれたのかい!?」

 

悟空「ああ。オラがサイヤ人だってことを告げた後、息子の悟飯を誘拐していきやがった。生きて返してほしければ、地球人を100人殺してこいってな」

 

サイヤ人にとって、人を殺すことなどほぼ日常のようなものだった。戦いが嫌いなギネはともかく、バーダックにとっては何もおかしくないことだと思った。

 

バーダック「お前にとっては異常なことかもしれねえが、サイヤ人にとってはそれが普通だった…………」

 

悟空「だろうな。その後会ったナッパやベジータも似たようなもんだったしな」

 

そして悟空はラディッツとの戦いについて簡潔に説明した。

 

バーダック「………はっ?」

 

ギネ「ら、ラディッツが、カカロットを殺そうとしていたのかい?」

 

悟空「ああ…。あの時のオラはラディッツには勝てなかった。だから、ピッコロっていうナメック星人と協力してラディッツを倒したんだ。でもその時にオラも死んじまった…………」

 

サイヤ人は子供相手にも非情…。確かにそういうサイヤ人も少なくなかったが、ギネはそんなことはなかった。地球人の母親のように、子供には愛情をたっぷり注いできたし、愛していた。ラディッツはそれなりに才能があると見られ、幼少期からベジータとチームを組まされていたが、戦闘力2と判定されたカカロット……悟空は長い間ギネに育てられていたのだ。

 

ギネ「ら、ラディッツが………そんな………!!!」

 

バーダック「………そうか」

 

今にして思えば、ラディッツはベジータとチームを組んでいたから、あのような残忍で冷酷な性格になってしまったのかもしれない……。

 

悟空「すまねぇ………。でも、あの時のオラは地球を守るのに精一杯だった。だから殺すしかなかったんだ………」

 

バーダック「カカロット、謝ることはねえ。それに関しては事情も聞かずに振り回したあの馬鹿息子が悪い」

 

流石にサイヤ人としての考え方が強いバーダックでも、その件に関してはラディッツの方が悪いという判断になったそうだ。

 

バーダック「………なあ、ラディッツも生き返らせることはできるか?」

 

悟空「えっ?まあ、できねえことはねえけど………。オラはあまり気が進まねえなぁ…………」

 

バーダック「もし生き返ってもまた暴れるようなら俺がなんとかする。だから、またドラゴンボールが使えるようになったら、ラディッツを生き返らせてもいいか?」

 

悟空「うーん……………」

 

確かにラディッツは凶悪なサイヤ人だ。しかしそれはベジータもかつては同じだった。彼もまた地球で長いこと暮らせばベジータのように丸くなるのかもしれない……。

 

悟空「……もしまたラディッツが暴れるようなら、オラが倒せばいっか!!」

 

バーダック「………それでこそサイヤ人だ」

 

こうしてラディッツの件が解決したところで………。

 

セリパ「ちょっと待ちな。カカロットだっけ?あんたはなんでここに来たんだ?」

 

悟空「あっ!そうだ…!そっちが本題だった………」

 

セリパに促される形で悟空がバーダック達の住む家にやってきた目的を話した。超簡潔に説明すると、畑仕事に人がほしいとのこと……。

 

セリパ「………1つ約束してくれ。その畑仕事を私達もした場合、分け前はあるんだろうな?」

 

悟空「えっ?どうだろうなぁ……。働くなら流石にあると思うけど、チチに話してみねえとなんとも言えねえなぁ…。あっ、チチってのはオラの嫁のことなんだけど…………」

 

『オラの嫁』

この単語を聞くと、さっきまで落ち込んでいたギネが少し元気を取り戻した。

 

ギネ「それって、カカロットの奥さんってことかい!!?」

 

悟空「あ、ああ……。そうだけど………」

 

ギネ「ならご挨拶しないと!行くよ、バーダック!!」

 

バーダック「おい、まだ働くって決まったわけじゃ………」

 

セリパ「まあいいんじゃない?地球に戸籍を持たない私達にとって、これ以上都合がいいところはないでしょ?」

 

トーマ「まずは行ってみるだけでもいいんじゃないか?」

 

バーダック「………チッ。しょうがねえな」

 

素気ないバーダックだったが、仲間達の意見を無視することはできないようだ。悟空に案内される形で各々はパオズ山にある孫家に向かう………。

 

 

 

 

 

少しして悟空達はパオズ山に到着した。

 

悟空「チチ〜!ただいま〜!!」

 

チチ「悟空さ!今までどこに行ってただ!?仕事そっちのけで修行しに行っちまったのかと思ったぞ!!」

 

悟空「悪い悪い……。けど、その代わり役立ちそうな奴らを連れてきたぞ?」

 

チチ「へっ?」

 

ギネ「あなたがカカロットの奥さんなのかい?私はギネ!カカロットの母親です!!」

 

チチ「かか、ろっと……?悟空さのお母!!?若いだ……!!!!若すぎるだよ!!!!じゃあそっちにいる悟空さそっくりな人は悟空さのお父だか!?」

 

チチが騒いでいたがそれは置いといて、みんなチチに自己紹介をした後に丁度仕事を探しているところだということを説明されたチチは………。

 

チチ「………人が増えればそれだけ収穫できる作物も増えそうだべなぁ…。でもすぐには作物は育たないだよ?賄いも給料もしばらくはあげられないべ……」

 

バーダック「構わねえよ。今のうちに働かねえと、そのうち俺達の住む場所から食料が消えちまうからな。お前達もそれでいいだろう?」

 

バーダックに反対する者はいなかった。ここなら悟空の両親とその友人ということで、戸籍とかその辺を気にする必要がないのだ。バーダック達にとってはこの状況は好都合だった。

 

チチ「じゃあ、今日から早速お願いするだよ。早速畑を耕して欲しいだ」

 

……悟空の意外な発想から、孫家農場の規模が大分大きくなった。これが後に孫家の農業を大繁盛させるきっかけとなるのだが、それはまだまだ先のお話である………。

 

 

 

 

 

一方でほぼ同時刻。バーダック達が孫家にいた頃、悟天は………。

 

悟天「わーい!チョコだ〜!!」

 

らいは「どんどん食べてね!」

 

らいはの胃袋作戦が順調に進行していた。魔人ブウの一件が済んでからは、らいはと悟天は結構な頻度で会っている。らいはは既に学校が終わっており、悟天は学校に行ってないので時間に縛られることもない。

 

悟天「それで今日はどこにお出かけするの?」

 

らいは「今日は悟天君にこの辺を案内してあげようかなって思って!」

 

悟天「そういえば、去年五月さんや兄ちゃんと一緒にパフェ食べたり花火大会に行ったりしたっけ………」

 

らいは「そうそう!確かその時に私達は初めて会ったんだよね〜!!」

 

悟天「そっか……。もう1年も経ったんだね〜」

 

らいはにとってはデートの予習のようなものであるが、悟天にはそんな概念はまだ存在しない。らいはも悟天に対して恋愛感情が存在するのかと言われると正直微妙であるが、好感度が高いことは間違いない。

 

 

 

らいは「ここは私とお兄ちゃんと四葉さんで行ったゲームセンターだよ!」

 

悟天「ゲームセンターか…。トランクス君と行ったことあるよ?」

 

らいは「じゃあ、まずはあのクレーンゲームでどれだけ取れるか勝負する?」

 

悟天「わーい!………って、お金は?」

 

らいは「……………あっ」

 

ここで痛恨のミス。貧困家庭にあるらいはには、少なからずお小遣いはあったとはいえ、娯楽に使える余裕があまりなかった。生活費の一部を使うことはらいはの性格上許せないのだ。

 

悟天「まあいいや。僕が払うよ」

 

らいは「えっ……?」

 

悟天「実は兄ちゃんがバイトを始めてからお小遣いが増えたんだ!」

 

そう言うと悟天はらいはの分のお金を出した。…一応補足しておくが、悟天はまだナンパ技術や女の子を喜ばせるような術を知らない。ところがこの子は無意識にやってのけているのだ。

 

らいはも人の恩義を無下にするわけにもいかず、しっかりとゲーセンを楽しんだ。

 

 

らいは「ねえねえ、最後にあれやろうよ!」

 

悟天「あれ?」

 

らいはが指差したのは、以前に四葉や風太郎と共に撮ったプリクラだった。

 

悟天「でも、あれって女の子が撮るものなんでしょ?トランクス君が言ってたよ?」

 

らいは「私もいるからいいの!ほらほら、行くよ〜!」

 

と、悟天は流されるがままプリクラの中に入る。操作方法はらいはが知っていたようで、器用に操作していく。

 

『笑顔でキメちゃお☆』

 

らいは「はいはーい!撮るよ〜!」

 

こんな感じで何回か撮影をした。無論楽しくなかったと言えば嘘になるのだが、悟天は1つ気になっていたことがあった。

 

悟天「……(なんからいはさん、事あるごとにくっついてきてるような……)」

 

写真に映らないから!とか、近づいた方が映えるんだよ!とかとか理由を並べて悟天にくっついていた。女の子のノリはこういうものなのかな?と悟天は勝手に納得したため、その後は疑問に思うことはなかった。

 

そして、夕方になったのでファミレスにておやつを食べることに……。

 

悟天は当たり前のようにデラックスジャンボパフェなるものを頼んでいた。そのサイズはどう考えても8歳の子が食べれるようなものではないのだが、悟天はあっさりと平らげてしまった。らいはは普通サイズを頼んでいたのだが、悟天の大食らいっぷりに驚くしかなかった………。

 

 

 

そして会計は当然のように悟天が払っていた。年齢的には小学生に奢られている中学生という構図が出来上がり、らいはは恥ずかしくなつてしまったのだが、ただ純粋な優しさで払っていた悟天にそれを指摘することもできず…。

 

悟天は8歳にして一花程とまではいかなくとも、貢ぎの才能を開花させているのかもしれない…………。

 

 

 

 

らいは「(流石に自分の分は自分で払えるようにしよう………)」

 

今まで年下の立場で人に接することが多かったらいはだが、しっかり悟天と出かけたのは実質今回が初めてだった。らいははせめて自分の分は払えるようにしようと心に誓った。

 

悟天「今日は楽しかったね〜!」

 

なんだかんだでその後も遊び回っていたらいつの間にか暗くなっていた。悟天はそろそろ帰らないとチチに怒られてしまうような状況だ。

 

悟天「もうそろそろ帰らないと……」

 

らいは「私もそろそろ帰って夕飯の準備をしないと…………」

 

ということで、そろそろ本日はお別れしようとした、その時………。

 

 

 

らいは「あっ!ねえ、あれって……」

 

悟天「…………あっ」

 

らいはが指差した先は、二乃と悟飯が楽しそうに喋りながら歩いている光景だった。

 

らいは「二乃さんと悟天君のお兄さんすっごく幸せそうだね…。まるで付き合ってるみたい…………」

 

悟天は学園祭最終日の夜、悟飯から二乃との交際開始報告を聞いていたが、いまいちピンと来なかった。しかし、今の2人を見てなんとなく把握した。

 

悟天「……………あんな兄ちゃんの顔見たことない………」

 

らいは「あれはお邪魔しちゃ悪いね。あっちに行こっか」

 

悟天「………うん」

 

悟天は悟飯の幸せそうな顔を見て嬉しい気持ちになった反面、ちょっとだけ二乃に嫉妬してしまった。

 

らいは「もしかして、二乃さんに取られちゃったって思ってる?大丈夫だよ。孫さんの弟ってポジションは悟天君だけのものなんだから!今まで通り甘えてもいいんだよ!」

 

悟天「……いいのかな?」

 

らいは「うんうん!でも、もし孫さんが二乃さんにばっかり構うようなら、私に甘えてもいいからね!」

 

悟天「………分かった」

 

なんだかんだいって策士ならいは。そのまま2人は帰宅してそれぞれの帰路につく………。

 

 

 

 

 

 

 

しかし、その日の夜………。

 

悟天「あれ?兄ちゃんは?」

 

夜ご飯になっても悟飯が帰ってこない上に、悟飯の分が用意されていないことを不思議に思った悟天は単刀直入に母親に質問する。

 

チチ「今日はお泊まりするみてぇだよ。だから夜ご飯は必要ないみてえだ」

 

悟天「そうなんだ…」

 

今日は目一杯甘えようと思ったのに、悟飯が帰ってこないとなるとそれもかなわない。

 

 

 

ということで、悟飯が家に帰って来なかったことをらいはに連絡した悟天。2人の男女がデートして帰って来ない意味をまだ知らない悟天は純粋にまた家庭教師をしているのかと思っていたが、今日はその日ではないはず。取り敢えずらいはに質問してみることに……。

 

らいは「………」

 

らいははその文面を見てつい手に持っていたお皿を落としそうになるが、なんとか堪えた。

 

らいは「朝帰りだぁ!!!?」

 

風太郎「ん?どうした、らいは?」

 

らいは「あっ!な、なんでもないよ!お兄ちゃん!!!」

 

そして悟天は続け様に『五月さんにも聞いてみる』とのメールが来たので、それだけは絶対にダメだと、事情を察したらいはは悟天に水を刺した。

 

らいは「(まさか孫さんと二乃さんが……)」

 

これが普段ならば誤解で終わったのだが、今回は誤解ではない。ちなみにらいはは悟飯と二乃がいつ付き合い始めたのかは知らない為、そこまで疑問に思うことはなかったが、付き合い始めた時期を知ったらさぞかし驚くことだろう…………。

 

 

 

 

 

時は遡って、記念すべき二乃と悟飯の初デートの日の朝…。彼女達の朝は早かった。

 

五月「ふぁぁ…。おはようございます……」

 

三玖「おはよ〜………」

 

零奈「おはようございます」

 

五月と三玖が珍しく早めに起きてきたが、ある違和感に気づいた。

 

五月「あれ?二乃が…………」

 

三玖「そっか……。悟飯とデートだもんね………」

 

五月「孫君……………」

 

三玖「五月、誰が選ばれても祝福するって決めたでしょ?」

 

五月「ええ、分かってますよ。でも、やっぱり二乃が羨ましいです………」

 

三玖「私だって同じ気持ちだよ…。でもこれは悟飯が決めたこと……。真剣に悩んで悩み抜いて決めたことなんだよ…?なら、応援しよ?」

 

五月「………はい」

 

五月はまだ微妙に納得してない様子だったが、確かに誰が選ばれても祝福すると言った。それにこれを機に姉妹と揉め事を起こすようでは、それこそ悟飯に後悔をさせかねないのだ。ならば自分も我慢しなければならない。辛いのは五月だけではない。同じく想い人に選ばれなかった三玖や一花だってそうだ。一花に至っては風太郎に実質的に振られたようなものなのに、五月と三玖を慰めてくれていた。

 

四葉「三玖に五月!おっはよー!」

 

三玖「おはよう」

 

五月「おはようございます」

 

四葉が丁度ランニングから帰ってきたようだった。

 

零奈「四葉、お帰りなさい。さあ、そろそろ朝ご飯にしましょうか」

 

そして今では母親である零奈も生き返ってくれている。はっきり言うと自分達は恵まれているとしか言い様がない。

 

 

 

 

 

零奈の手によって作られた温かい朝食を食べ終えると、姉妹達は早速勉強をすることにした。今は風太郎や悟飯がいなくても自主的に勉強するようになったのだ。零奈もその姿に感心しているようだった。

 

零奈「もし分からないところがあれば教えますよ。遠慮なくおっしゃってください」

 

四葉「はーい!」

 

四葉は元気よく返事をするが、五月と三玖の反応がいまいちだった。その理由は零奈も分かっているつもりだ。だから敢えてそのことを指摘するようなことはしない。

 

 

 

 

朝の勉強の小休憩中…。五月はひとまず自室に戻っていた。珍しくベッドに飛び込んだ。このままふて寝したい気分だった。

 

五月「…………いいなぁ、二乃」

 

敬語で話すことすら忘れ、ただひたすらに二乃のことを羨ましがっていた。五月はとにかく悟飯のことが愛おしかったし、好きだった。その気持ちは今でも変わらない。でも悟飯は既に二乃のものとなってしまった。でもそれは二乃が悟飯の意思を無視したわけではなく、悟飯自らの意思で決めたことだった。

 

五月「私、何がダメだったのかなぁ…」

 

自分で言うのもなんだが、五月は3人の中で一番悟飯と相性が良かったと思う。考え方が似通っていたし、ファーストコンタクトも良かった。一番最初に告白したのも五月だし、一番アタックしたのも五月と言って差し支えはないだろう。

 

正直言って、あまり二乃のことを祝福する気持ちにはなれなかった。

 

五月「(私も、孫君と一緒にパフェを食べたり、隣を歩いてお喋りしたり、映画を見ながら彼の隣に座ってドキドキしたり、彼の為に料理を作って、孫君を喜ばせたかったなぁ………)」

 

三玖は何かと今の結果に納得しているようだったが、五月は全然そんなことなかった。むしろ後悔がダダ漏れである。

 

五月「…………勉強する気になりませんね………」

 

 

 

五月「四葉、三玖」

 

三玖「どうしたの?」

 

四葉「どこか分からないところでもあった?」

 

五月「いえ……。気分転換に散歩してきます」

 

一言そういうと、五月は軽く身支度をしてから外出してしまった。

 

三玖「五月…………」

 

四葉「大丈夫かな……………」

 

三玖「大丈夫だよ。納得するまで時間がかかるだけ。それだけあの子も本気で恋をしていたってことだよ」

 

四葉「………そうだね」

 

四葉も想い人に選ばれた側の人間だった為、五月に対して何かフォローをできるような気はしなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

五月「はぁ…………」

 

私はなんて嫉妬深いのでしょう…。孫君自身の意思によって二乃が選ばれた。孫君の意思に従うことを私達は選んだし、例え自分以外が選ばれたとしても祝福する。そう決めたはずだった。だけど私はまだ納得できていない。昨日になるまで私がこんなに我儘な人間だとは思いもしなかった。

 

気分転換に食べ歩きでもしようかと思ったが、今の私は食欲がない。特に行くあてもなく街を彷徨い歩いているだけだ……。

 

「おい、あのお嬢ちゃん可愛くね?」

 

「誰か声かけてこいよ…!寂しそうにしてるから、きっとイチコロだって!」

 

「いっちょやるか……!!」

 

 

 

「ねえお姉さん?今1人?」

 

五月「……………」

 

「なんか寂しそうにしてるからつい声をかけちゃったんだ。良かったら美味しいお店知ってるんだけど一緒にどう?奢るよ?」

 

五月「…遠慮します。食欲がないので」

 

「そんな釣れないことを言わずにさぁ」

 

しつこい。鬱陶しい。今は誰にも構ってほしくない。しばらく1人にしてほしい。

 

五月「なんなんですかあなた達?私はその気がないと言ってるでしょう?」

 

「はっ?こっちが下手に出たからって好き勝手言いやがって……!!」

 

「もういいぜ。無理矢理連れていこうぜ?」

 

「うひょー!!今夜はご馳走だぜ!」

 

五月「いや!離して!!」

 

男達が強行手段に出た。私よりも男達の方が力が強く、私の力では振り解くことができなかった。

 

…………少し前の私なら、きっと孫君が助けに来てくれるに違いないと信じて疑わなかった。でも、今の彼は二乃のもの。私なんかに構う時間なんてないだろう。………そう思うと、抵抗する気さえなくなってしまった。

 

「あれ?急に力が弱くなったぞ?」

 

「もう力尽きた…?なわけないよな…?」

 

「お嬢ちゃんも素直じゃないな〜!」

 

ああ……。私、このまま知らない男の人たちと…………。

 

 

 

 

 

 

 

 

「たあッ!!!!!」

 

ドカッッ!!!!!!

 

「ギャアアア!!!?」

 

突然、1人の男が吹き飛んだ。

 

「あっ…!あ、あんたは……!!」

 

「チャンピオンの娘、ビーデル…!」

 

ビーデル「3人で1人の女の子を襲うなんて、随分セコいことをするわね?代わりに私が相手してあげてもいいわよ?」

 

「あ、相手が悪すぎる…!逃げるぞ!」

 

男達は格闘家を前にして尻尾を巻いて一目散に逃げていった。

 

ビーデル「大丈夫?少しは抵抗しないとダメじゃない?それとも、もしかしてそういう趣味……じゃなさそうね…」

 

五月「……ビーデルさん?」

 

 

 

 

 

 

 

どういうわけか、五月とビーデルが適当なファミレスにて昼食を共にしていた。

 

ビーデル「どうしたの?そんな浮かない顔をして?」

 

五月「……何も話す気にはなりません」

 

ビーデル「まあなんとなく分かってるけどね。悟飯君絡みでしょ?」

 

五月「……!!」

 

唐突に自分の悩みを言い当てられたことによって、五月は分かりやすい反応をした。

 

ビーデル「やっぱりね…。私で良ければ相談に乗るわよ?」

 

五月「……あなたには分かりませんよ。本気で恋をしていたのに、他の人に取られる気持ちなんて」

 

ビーデル「分かるわよ」

 

五月の愚痴にビーデルが即座に返答した。そのことに少し驚くが、どうせ慰める為の嘘だと言い聞かせ、ビーデルを突き放すような態度を取り続けようとしたその時………。

 

ビーデル「私だって、悟飯君に本気で恋をしていたんだもの」

 

その言葉を聞いて、五月は目を大きく見開いてビーデルを見た。

 

五月「それ、本当に……?」

 

ビーデル「ええ。でもその様子だと、悟飯君は誰かにお返事したみたいね」

 

五月「…………」

 

同じ境遇だったからだろうか…?五月は今日まで考えていたことを洗いざらいビーデルに話した。誰かに話すと不思議とスッキリした気分になった。

 

ビーデル「……あなたの気持ちは分かるわ。私だって悔しかったもの。彼は私の方には振り向いてくれない…。それを理解しちゃったからね…………」

 

五月「私は、誰が選ばれようとも祝福するつもりでした。でも、いざ私以外の人が選ばれたとなると、そうはいかないみたいで…………」

 

ビーデル「それだけあなたは本気で恋をしてたのよ。本気で彼を手に入れたかったの」

 

それはそうだ。今まで悟飯に選んでもらえるように、勉強も料理も一生懸命頑張った。不純な動機かもしれないが、それだけ悟飯のことが好きだった。

 

ビーデル「………でも、悟飯君と二乃…さんだっけ?その子の顔を見てみるといいわ」

 

五月「孫君と二乃の……?」

 

ビーデル「私の予想が正しければ、2人ともいい顔をしているはずよ。『私なんて立ち入る隙なんてない』って納得できるくらいにはね」

 

五月「…………」

 

ビーデル「もしも2人が浮かない顔をしているようなら、隙を見て奪っちゃえばいいのよ。そのつもりで狙い続ければいいわ。不謹慎な話かもしれないけど、別れる学生カップルって結構多いんだから」

 

五月「………いいんですか…?もう彼の隣は埋まっているのに………」

 

ビーデル「別にいいじゃない。あっ、これは不倫や浮気を強要しろって話じゃないから勘違いしないでね!あくまで2人の間に隙が生じたら上手く狙えばいいってだけの話だから!」

 

五月「わ、分かってますよ!!!」

 

ここまでビーデルと話して、五月の心は次第に軽くなっていった。無理矢理にでもこの恋を終わらせる必要はないのだ。納得するまでこの恋を続けてもいいのだ…………。それを教えてくれたビーデルには感謝しかない。

 

五月「…………しかし、あなたにとって私は敵なんじゃないですか?敵に塩を送るような真似をしていいんですか?」

 

ビーデル「いいのよ。私は私の中で決着がついたから……」

 

ビーデルは立ち上がって会計票を取った。そして去り際に………。

 

ビーデル「まあ、未練がないって言えば嘘になるけどね」

 

それだけ言って会計をしに行った。

 

 

 

 

 

五月「…………ビーデルさん」

 

私、あなたのことを勘違いしていた気がします。最初は二乃の言う通りストーカーのようなものだと思っていました。とても失礼な話ですけどね………。でも………。

 

 

 

五月「ありがとうございます…」

 

 

 

 

 

 

 

そして文化祭の振替休日が終わった登校初日……。私は孫君と二乃の息のあった(孫君は無自覚の)いちゃつきを見て、2人の幸せそうな顔を見て確信した。

 

悟飯「に、二乃!なんであんなことを言ったの!?」

 

二乃「それはあんたのお嫁さんになりたいからに決まってるじゃない♪それとも何?あんたは嫌なの?」

 

悟飯「嫌じゃないし、むしろ嬉しいけど………」

 

ビーデルさんの言っていることが理解できました。今ならはっきりと言える気がします。

 

 

孫君、二乃。おめでとう…………。

 

 

 

五月「浮かれてしまう気持ちも分かりますが、もう少し自重してください、()()()()()

 




 この前のアホみたいな展開とは一転してちょいシリアスになっています。五月の台詞はギャグではなく深い意味がありましたというお話です。あとはバーダック達の今後やら、らいはと悟天の現状等を語ったわけですね。五月はなんとなく五つ子の中で唯一他の子が選ばれても納得できなそうだなぁと思いました。ここで同じく失恋したビーデルと話すことによってなんとか納得できたという感じですね。なんかここのビーデルの精神年齢が原作よりもグッと上がってる気がするww

 さて、多分次回からバトルが再び来るわけですが、色々な意味で今までとは違います。というか複雑だからマジで整理がむずい。この話もある意味挑戦になっているような気がします。

 ちなみにタイトルについて解説。今回は三本立てになっているわけですが、1つ目はチチの嫉妬。あまり描写してないけど、ギネの若さにチチが嫉妬していました。でも正直これはこじつけかな。2つ目は悟天の嫉妬。これは言うまでもなく二乃に対してです。3つ目は五月です。これまた二乃に対するものです。ちなみに更新頻度落ちるかもです。


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第104話 ドッペルゲンガー

※ミニコーナー
〜悟飯&二乃と風太郎&四葉の進展早見表〜

悟飯&二乃:
キス:○
スキンシップ:○
合体(意味深):○
イチャイチャ度:測 定 不 能

備考:
付き合ってから1日でやること全てやっちゃってるカップル。早期に結婚したチチは特になんとも思っていないが、四葉に関してはキャパオーバーで色々やばい。とにかく色々と加速力が高すぎるカップルである。しかし減速力が低いのは謎。進展度を知ってるのは今のところは四葉とチチのみである。


風太郎&四葉:

キス:△
スキンシップ:×
合体(ry):×
イチャイチャ度:E

備考:
清い付き合いをしているカップル。キスは鐘キスの時の風太郎が四葉だと認識していない時と、学園祭時の風太郎が眠っている時に四葉からキスした2度のみ。四葉は二乃や悟飯の方を何やら羨ましそうな目線で見ているとか………。あの2人とまではいかなくとも、風太郎とイチャイチャしたいという願望が少なからずあるようだが、二乃のように押しが強くない上に、人の為に生きてきた四葉はなかなか言い出せないのだろうか…?風太郎も風太郎で何かと進展させたいと考えているようで、正反対なはずなのに考えていることが全く一緒なのが実に面白い。



悟飯のメンタルがボドボドになったり四葉が羞恥心に悶えたりした日の翌日のこと……。

 

本日は2人きりの登校ではなく、姉妹と風太郎も加えて6人で登校することにした。ちなみに一花は休学中である。やはり二乃としては悟飯との時間も大切にしたい一方で、姉妹との時間も大切にしたいのだろう。そういう家族想いな子だからこそ、悟飯は彼女に惹かれたのだ。無論、五月や三玖に家族愛が存在しないわけではないのだが、悟飯が二乃に惹かれた理由は本人もよく分かっていないのだそう。ただ、今は確実に二乃のことが好きでたまらないのだけは自覚しているという。

 

三玖「二乃、なんか嬉しそう」

 

二乃「当然よ!今日も彼に会えるんだから!」

 

五月「遠慮はしなくていいとは言いましたけど、節度は持ってくださいよ?」

 

二乃「なによ?付き合ってもないのに襲ったあんたには言われたくないわ」

 

五月「いつまでそのことを根に持つんですか!!?」

 

軽く言い争いがあり、四葉は先日のこともあってボーっとしていた。

 

風太郎「おい、大丈夫か四葉?」

 

四葉「あっ、はい!大丈夫です……」

 

風太郎「頼むからしっかりしてくれよ?推薦とはいえ、最低限の学力は必要なんだからな」

 

四葉「あはは……。気をつけます……」

 

二乃「あっ!いたいた!」

 

愛する人の姿を見かけた二乃は周りの目を気にせずに駆け寄って抱きついた。

 

二乃「おはよ!久しぶりね〜!!会いたかったわ!!」

 

三玖「久しぶりって………」

 

五月「昨日も会ってますよね…?」

 

四葉「あはは、ラブラブだね〜……」

 

四葉としては、二乃と悟飯がどこまで進んでいるのか知ってしまったため、あの大胆な行動にも納得がいく。風太郎は四葉と二乃達を繰り返し見て前髪をいじっていたが、その真意は不明である。

 

悟飯「やあ、おはよう。今日はみんなもいるんだね?」

 

五月「お邪魔でしたか?」

 

悟飯「いや、そんなことはないけど…」

 

二乃「ねえねえ!今日のお弁当は和食を中心にしてみたの!」

 

悟飯「そっか…!それは楽しみだなぁ…」

 

実を言うと悟飯に食べ物の好き嫌いは一切存在しない。その為、二乃は悟飯の好みを考えずに栄養バランスさえ考慮すればいいだけなので楽だそうだ。どこの誰とは言わないが、4人が4人とも好みが違うので朝食や夕食を作る時は苦労するのだそう……。

 

五月「…………全く。いいですか孫君!二乃が暴走した時に止められるのはあなただけなんですよ!しっかりして下さい!!」

 

悟飯「あっ、ハイ……」

 

唐突に始まった説教にただ返事をするしかなかった。

 

三玖「………五月。変わったね」

 

五月「……?何がですか?」

 

三玖「いや、なんでもない」

 

みんなでわんやわんやと会話しながら学校に到着する。教室に入ろうとする悟飯だが、いつまで経っても腕から離れない二乃に一言言う。

 

悟飯「あ、あの………。流石にそろそろ離れてほしいんだけど………」

 

二乃「何よ?今更恥ずかしがってるの…?」

 

悟飯「教室に入る度にみんなに言われるから恥ずかしいんだよ………」

 

二乃「ふーん…?なら絶対に離さない」

 

悟飯「ははは…………」

 

悟飯はまるで返答が分かっていたかのように力無く笑った。案の定、教室に入るなりクラスメイトに揶揄われたが、悟飯に近づく女子に対して二乃が睨みを利かせていたのは言うまでもない……。

 

 

 

そして昼休み。悟飯はいつものように二乃作の愛妻(?)弁当に舌鼓を打っていた。その様子を見て、クラスメイト達はまるで新婚夫婦が教室に紛れ込んでいるのではないかと錯覚してしまうほどだった。

 

四葉「………(いいなぁ…。私もあんな風に……………)」

 

風太郎「どうした、四葉?」

 

四葉「な、なんでもないですよ!」

 

三玖「……毎日見せられると流石にイライラする…………」

 

五月「み、三玖…!抑えて下さい…!」

 

 

 

 

 

悟飯「………!!!!!」

 

四葉「………!!!!!」

 

 

そこまで平和に続いていた昼休みだったが、悟飯と四葉が突如立ち上がった。いつもの彼ららしくなく荒々しく立ち上がったため、何事かと2人に視線が集まった。

 

悟飯「なっ………!ど、どういうことだ…?!」

 

四葉「………えっ?」

 

風太郎「ど、どうしたんだ四葉?何があったんだ?」

 

四葉「……孫さんの気が2つ…!何故か2つ存在するんです!!」

 

風太郎「………………はっ??」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方で悟飯達が昼飯を食べる少し前の出来事……。

 

悟空「チチ〜!!オラ腹減っちまったよ!早く飯にしてくれねえか?」

 

チチ「今作るからちょっと待ってるだよ〜!!」

 

畑仕事をしていた悟空だが、そろそろお昼時ということもありお腹が空いてしまったようだ。出来上がるまで少し修行でもして時間を潰そうかと思い立ったその時………。

 

 

スタッ

 

……悟飯がその場に降り立った。

 

悟空「ありゃ?悟飯じゃねえか?今日は学校じゃねえんか?」

 

悟飯「………孫悟空か」

 

悟空「おう!オラ孫悟空だぞ?頭でも打ったんか?なんか変だぞおめぇ?」

 

悟飯「………俺と戦え」

 

悟空「………へっ?」

 

目の前の悟飯の唐突の提案に若干困惑した悟空だったが、丁度暇をしていた時だったので、快諾した。

 

悟空「まさかおめぇからそんな提案をしてくれるとは思ってなかったぞ!手加減はいらねえからな!」

 

悟飯「ああ………」

 

唐突に始まった親子対決。お互いに気を高めていき、どちらも戦闘態勢に入った。

 

ドンッ!!

 

悟飯「……!!」

 

まずは悟飯が地面を蹴った。

 

悟空「おっと…!!」

 

あまりの超スピードに一瞬驚いた悟空だったが、攻撃の軌道を読んですぐに回避する。

 

悟空「でやっ!!!」

 

ドカッッ!!!!

 

そしてカウンターとして蹴りを放つ。これは上手くヒットして、悟飯は数歩分後ろに下がった。

 

悟空「悟飯。ここでやるのは危険だ。チチや悟天もいるからな。場所を変えようぜ?」

 

悟飯「その必要はない。どうせこの世界は滅びるのだからな」

 

悟空「えっ………?」

 

悟飯の意味深かつらしくない発言に困惑する。悟飯が家族を巻き込んで戦うようなことはしないはずだ。しかし今の悟飯はそんなことは気にしないといった様子だ。しかも世界が滅びるという不穏な言葉も気になる。

 

 

 

ドカッッ!!!!

 

悟空「うわっ…!!!」

 

悟飯の発言に気を取られた悟空は、攻撃を回避することができずに真正面から食らってしまった。

 

悟空「………おめぇ、悟飯じゃねえな?何もんだ!!」

 

悟飯「………流石孫悟空だ。()()()()()()だけあって、すぐに気付いたか……」

 

悟空「しゅ、主人公……?一体何のことだ!!?」

 

悟飯?「はっ!!」

 

カァァッ!!!!

 

悟空「……!!?」

 

バチンっ!!!

 

 

咄嗟に放たれた悟飯?の気弾が向かっていた先は、何と孫家だった。すぐに悟空が弾いたことによって家は無事だったが、少し離れた麓で爆発音が響いた。

 

 

チチ「悟空さ!!暴れるでねえ!そ、それに悟飯ちゃん!!?なんでここに!!?」

 

悟空「チチ!!こいつは悟飯じゃねえ!!よく似てるけど、全然違え!!多分こいつは偽もんだ!!!」

 

チチ「えっ……?!」

 

悟飯?「………そうだな。何者か……か…。俺に名前は存在しない……。そうだな、名前を借りるとしよう……。カタカナで『ゴハン』とでも名乗っておこうか?」

 

悟空「カタカナで、ゴハン……?」

 

目の前の悟飯によく似た人物は『ゴハン』と名乗る。一体何者なのだろうか…?

 

悟空「よく知らねえけど………」

 

ギャウウウウウッッ!!!!

 

悟空の周りに炎のような赤いオーラが纏われた。

 

悟空「オラァ!!!!」

 

ドンッッ!!!!

 

界王拳を使用した悟空にゴハンは気合を当てられ、吹き飛ばされた。だが、ゴハンにとっては大したことではない。すぐに止まろうとしたその時……。

 

シュン‼︎

 

悟空「波ァァアアアアアアッッ!!!!!」

 

ズォオオオオオオオッッ!!!!

 

 

瞬間移動をして至近距離に迫った悟空がそのままかめはめ波を放った。その距離で放たれては回避することは不可能で、しばらく悟空が放ったかめはめ波に押されていたゴハンだったが……。

 

ゴハン「はっ!!!!」

 

ドグォォオオオオオオオオオンッッ!!!!

 

少し気を高めるとかめはめ波は相殺され、爆発して消失した。

 

悟空「な、なんだって………?」

 

ゴハン「その程度じゃないだろう?魔人ブウを倒した後のお前なら、もっと力を引き出せるはずだ…………」

 

悟空「……よく分からねえけど、そんなに本気で戦いてえなら、相手してやるよ。その姿で悪さされちゃ、悟飯にも迷惑がかかるしな………」

 

相手は自分を殺しにかかっていることを確信した悟空は徐々に気を高めていく。相手が悟飯に似てようが気にしない。目の前にいる悟飯によく似た人物が悟飯ではないことが分かっているし、目の前の人物は世界を滅ぼそうとしているようだった。理由は不明だが、悟飯によく似たサイヤ人……というところだろうか?

 

悟空「はぁあああああッッ!!!」

 

ボォオオオオッ!!!!!

 

ゴハン「ほお?」

 

超サイヤ人に変身した悟空は、髪が逆立って金色に変化し、瞳はエメラルドグリーンに変わった。

 

超悟空「どうせおめぇも超サイヤ人になれるんだろ?さっさと変身しろよ」

 

ゴハン「………そこまでお見通しというわけか………。後に神の極意を会得するだけのことはある………」

 

超悟空「なに?神の極意……?何のことだ?」

 

ゴハン「気にするな。少なくとも、この世界のお前には関係のない話だ」

 

ボォオオオオッ!!!!!

 

目の前の悟飯によく似た人物、ゴハンもあっさりと超サイヤ人に変身してのけた。超サイヤ人に変身すると一層悟飯に似ている。

 

超悟空「やっぱりな………」

 

超ゴハン「ふん………」

 

 

 

シュン‼︎

 

 

ドゴォォオオッッ!!!!!

 

超悟空「グオッ……!!!」

 

超サイヤ人に変身したゴハンがいきなり悟空の頬に拳を打ち付けた。あまりにも威力が高かったため、軽く出血してしまったが、腕で血を拭き取る。

 

超悟空「すげえな……。筋だけなら本物の悟飯以上かもしれねえな………」

 

シュバ‼︎

 

超悟空「おっと…!会話すらしたくねえってか?つまらねえやつだな」

 

悟空が賞賛の言葉を贈っても興味が一切ないようで、ひたすら拳を振るう。しかし2度も同じ攻撃を喰らう悟空ではない。今度は綺麗に避け……。

 

シュン‼︎

 

超悟空「……!!」

 

背後に瞬間移動して、背中に思いっきり打撃を加えるつもりだったが……。

 

ガッ……!!!

 

超悟空「なっ……!!?」

 

ノールックのゴハンに受け止められた。

 

ドゴォォオオッッ!!!!!

 

超悟空「かはっ………!!!!」

 

そしてエルボーが悟空の腹部に打ち付けられた。

 

超悟空「けほっ……!や、やるじゃねえか……!!」

 

超ゴハン「……さあ、その先のステージを見せてみろ。超サイヤ人2ではない。さらにその先をな………」

 

超悟空「………おめぇ、どこまで知ってやがるんだ……?気持ち悪りぃ奴だな…。まあ、いいぜ?」

 

ゴゴゴゴゴゴゴゴッ……!!!

 

悟空は、笑いながらも相手が只者ではないことに薄々気付いていた。気を更に高めて超サイヤ人2に変身し、更にその先の形態へ至ろうとする。その過程で周辺の地面が強く揺れ、地割れが発生していたが、超サイヤ人3に変身することに慣れ始めたのか、魔人ブウと戦う時よりはいくらかマシになっていた。

 

超2悟空「うぁぁあああああああああああああああッッッ!!!!!!!

 

ドォォオオオオオオオオオオオオオッッッッ!!!!!

 

超ゴハン「………!!」

 

髪が足下まで伸び、眉毛がなくなって周りに激しいスパークを纏った悟空が現れた。

 

超3悟空「どうだ?こいつが超サイヤ人3だ。流石のお前でも少しはちびったんじゃねえか?」

 

超ゴハン「…………」

 

しかし、膨大な気を持つ超サイヤ人3悟空を目の前にしても、冷静さを欠くことはなかった。感情の起伏がないゴハンに少し……否、かなりの違和感を覚えた。

 

目の前にいる謎の人物から感情というものを感じない。人間としての何かが決定的に欠落しているようにも感じる。

 

超3悟空「………ちょっとは反応してくれてもいいんだけどなぁ…。それじゃ、第二ラウンドといくか…!!」

 

超ゴハン「……素晴らしい力だ。ならば俺ももっと力を引き出すことにしよう……」

 

ボォオオオオッ!!!!!!

超3悟空「…………はっ?」

 

すると、一瞬にして超サイヤ人2に変身したのだが………。気の総量が圧倒的に違った。目の前の人物は超サイヤ人2に変身したはず。にも関わらず、気の総量だけで言えば超サイヤ人3の悟空と互角レベルだった。

 

超3悟空「ど、どういうことだよ…?おめぇのそれは超サイヤ人2のはずだろ……?」

 

超2ゴハン「超サイヤ人3は確かに膨大な力を引き出すことができるが、何より体力の消耗が激しすぎる。超サイヤ人の完成形は超サイヤ人2なのだよ。それ以上変化させるのは最早無粋なのだ……。

 

超サイヤ人2のまま極めるのがもっともバランスが良いのだ」

 

悟空が超サイヤ人3の形態を得た理由はあの世で修行したからだ。時間という概念に縛られない死人は気の消費もいう概念がほぼ存在しないと言ってもいい。だから超サイヤ人3に変身することによるデメリットはほぼ存在しなかった。

 

しかし、時間という概念が存在する生人にとっては、一気に体力が持っていかれるものなのだ。そのことを考えずに生み出されたものが、超サイヤ人3というわけだ。

 

超3悟空「ひぇ〜……!!もしかして、悟飯がちゃんと修行を続けていたらここまで強くなってたってことか……?界王神のじっちゃんの能力抜きでここまで強くなれるんか!?」

 

ドカッッ!!!!

 

超3悟空「ぐっ……!!!」

 

ゴハンの強力な蹴りをなんとか腕で受け止め、カウンターとして拳を放つが軽々と避けられた。

 

超3悟空「(パワーで互角なら、技で勝負するしかねぇ…!)」

 

シュン‼︎

 

まずは瞬間移動をしてゴハンの背後に回り込む。しかし……。

 

超3悟空「……!!!」

 

ゴハンは既に悟空がいる方角を向いていた。まるで最初から悟空がそう行動することが分かっていたかのように。

 

シュン‼︎

 

超3悟空「だりゃ!!!!」

 

一時的に離れて遠距離線に切り替えた悟空は、手始めに気弾を連射する。

 

超2ゴハン「はっ…!!!」

 

ドガガガガガガッッ!!!!

 

超3悟空「んなっ……!!?」

 

だが、悟飯は避けるようなことはせずにバリアを張ってやり過ごした。

 

ドゴォォオオッッ!!!!!

 

超3悟空「ぐぅ………!!!!!」

 

呆気を取られていた隙に背後に回り込まれ、背中に強い衝撃を感じた。その時にはすでに地面に叩きつけられていた。

 

超3悟空「な、なんだ……?どうなってやがるんだ……?」

 

スタッ

超2ゴハン「………やはりこの体は素晴らしい。"その気になれば宇宙最強"という評価は伊達ではなさそうだ……」

 

超3悟空「………さっきからおめぇの言っている意味が分からねえ…。さっき、この世界は滅びるって言ってたな?あれは一体どういう意味だ…?まさか、魔人ブウよりも強い敵が来るんか?」

 

超2ゴハン「確かに魔人ブウより強い者は存在する。しかし、この世界が滅びる原因はそこにはない」

 

超3悟空「じゃあ、なんで……」

 

悟空が再び質問する前に、ゴハンが答えた。

 

超2ゴハン「この世界には通常ならあり得ない現象が起こっている…。貴様は何も感じなかったか?」

 

超3悟空「あり得ない現象………?」

 

超2ゴハン「………………まあいい。理解できなくて結構だ。私の目的はただ1つ……」

 

ゴハンは悟空の周りの歩きながらこう言う。

 

超2ゴハン「……()()()()()()()()()()()()()()()を消し、この世界を滅することだ」

 

超3悟空「悟飯がこの世界の核だって…?どういうことだ!!?オラにも分かるように説明し……」

 

トンッ

 

超3悟空「ぐわっ……!!!」

 

手刀を当てられた悟空は超化が解除され、黒髪に戻ってしまった。

 

しかし、先程からこの『ゴハン』という者は不可解な言動ばかり繰り返していた。

 

世界が滅びる。

 

本来ならあり得ない現象。

 

孫悟飯がこの世界の核となっている。

 

さらには、悟空のことを『本来の主人公』と呼んでいた。

 

 

ゴハンもまた戦闘が終わったことによって超化を解除した。

 

ゴハン「……この程度のパワーでは孫悟飯を倒すことなど不可能……。やはり、『アレ』になるしか方法はないか…」

 

そう言って空を見上げた。彼も一応サイヤ人に属すると思われるが、その象徴とも言える尻尾は確認できなかった。満月を見て大猿に、そこから超サイヤ人に変身するつもりだったのかもしれないが、それもできないはず…。

 

ゴハン「しばらくこの世界を観察し、孫悟空と戦ったことで確信した…。この世界は……………。盗み聞きとは作法がなってないな、ベジータ4世」

 

ベジータ「………気付いてやがったか」

 

途中でベジータが隠れていることに気づいてゴハンは独り言を止めた。

 

ベジータ「何故貴様がその名を知っている?」

 

ゴハン「まあ、何でも知っているとだけ答えておこう。それにしても、戦闘民族らしからぬ行動だな?」

 

ベジータはゴハンと悟空の戦闘を見て、とてもじゃないが自分が参戦できる環境ではないことに気付いて隠れていたのだ。彼の妙な言動を何度も聞いていた為、何が目的なのかを探る為だったのだが………。

 

ベジータ「ほっとけ。そもそも何故悟飯の格好をしていやがる?」

 

ゴハン「これは私もなりたくてなったわけではない…。素晴らしい力を持っている体であることには変わりないがな」

 

ベジータに興味をなくしたのか、悟飯はゆっくりと歩み始めた。

 

ベジータ「………どこに行く?」

 

ゴハン「これから孫悟飯に会いに行く」

 

ベジータ「ほう?今の貴様が悟飯に会えば、間違いなく殺されるぜ?それとも、貴様には奥の手があるとでも?」

 

ゴハン「確かにあるが…。今はまだ使うことができない。非常に残念だ」

 

意味深な言葉を言い残してゴハンは飛び立っていった。

 

ベジータ「………カカロット。いい加減起きやがれ」

 

悟空「ありゃ?バレてたか?」

 

悟空は気絶しているふりをしてこっそり会話を盗み聞きしていた。

 

ベジータ「貴様はあいつの言っていることを理解できたか?」

 

悟空「オラも正直よく分かんねえよ。何で悟飯とこの世界の崩壊が繋がるのか………」

 

「あいつは危険だ。消せるうちに消した方がいいぜ?」

 

膨大な二つの気を感知したことで、バーダックもその場に駆けつけていた。

 

悟空「父ちゃん……。そいつはどういう意味だ?」

 

ベジータ「そうか。貴様は確か未来を覗き見ることができるのだろう?何を見たんだ?」

 

バーダックは時折り未来を見ることができる。その能力を利用して魔人ブウとの戦いの際には自分の命を投げ出しながらも大活躍をした。

 

バーダック「………何も見えなかった」

 

ベジータ「…………何?」

 

悟空「なんだ?予知夢が発動しなかったんか?」

 

バーダック「違う。例の頭痛は起きたが、何も見えなかったんだ」

 

悟空「ど、どういうことだ……?」

 

バーダック「あいつの言う通り、世界が滅びることを意味しているのかもしれない……」

 

ベジータ「或いは、ヤツが未来を見せないように細工しているか………」

 

ゴハンはこの世界の何かを知っているような言動を何度も言ってきた。それに世界そのものを滅ぼすと言っていることから、もしや世界に干渉できる何かしらの能力を持ち合わせているのではないかとベジータは考えたのだ。

 

悟空「………悟飯に任せるだけじゃ解決しなさそうだな……」

 

ベジータ「最悪、ポタラを使うことになるかもしれんな」

 

余程合体することを嫌がっていたベジータから予想外の言動が発せられた。そのことに悟空は驚くと同時に、危機的な状況だと認識していることに気づいた。

 

悟空「………そうだな。あいつは何かが違う。今まで出会ってきた悪い奴らとは根本的に違う…………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

昼休みが終了する頃には、悟空ともう1人の悟飯の気は元に戻っていた。気になることは多々あったものの、悟空やベジータが生きていることを確認してひと安心した。

 

一花「やっほー!」

 

二乃「い、一花!?なんでここに!!?」

 

一花「今日は仕事が早く終わったからみんなに会っておこうかと思って!」

 

四葉「そうなんだ〜!!」

 

一花「それにしても、もう暗くなってきたね〜?ほら、もう月が見えるよ?」

 

二乃「あら、ほんと………」

 

三玖「冬が近づいてきてるもんね…」

 

四葉「そっか……。もうそんな時期ですもんね〜…………」

 

五月「綺麗な満月ですね………」

 

悟飯「…………」

 

みんなが感情に浸っている中、悟飯だけが浮かない表情をしていた。

 

風太郎「………どうしたんだ悟飯?」

 

悟飯「いや、昼のこともあって少し不安なんだよ」

 

風太郎「悟飯のドッペルゲンガーの話か?でも全くの同一人物なんて存在するのか?」

 

悟飯「分からないよ。昼にお父さんと戦ったみたいだけど、お父さんは殺されたわけでもないし、奴も生きているみたいなんだ…………」

 

風太郎「ただ悟飯にそっくりなサイヤ人ってだけじゃないのか?」

 

悟飯「それならいいんだけど………」

 

ドッペルゲンガー……。

 

それは、自分自身に容姿がそっくりな者のことを指す。このドペゲンが現れた時、本人は死ぬという話で有名だ。だが………。

 

 

 

 

 

 

 

スタッ

 

ゴハン「………よう。孫悟飯」

 

悟飯「お、お前は………!!」

 

二乃「こ、こいつよ!!朝に現れたのは!!!!」

 

五月「そ、そっくり……!!」

 

四葉「気も全く同じ………!!」

 

三玖「やっぱり似てる…!!」

 

一花「えっ?なになに?ど、どういうこと?」

 

悟飯の目の前に現れたソレは、悟飯本人どころか……………。

 

ゴハン「悪いが、貴様には消えてもらう」

 

世界そのものを死に導く最悪………否、災悪とも呼べる存在だった………。

 




 えー、はい。今回は今まで出てきた敵キャラとはベクトルが違うといいますか……。まあ今までとは違います()
 ゴハン(仮)が登場する伏線は実を言うとかーなーり初期の方にあります。確か12,3話辺りにあったはず…?もう大分前のことだから詳細は忘れてしまった…。今回はメタっぽい要素も入っております。実を言うとこのお話は元々考えていたお話に同人ゲームの「五等分RE」の影響を受けてメタ要素も取り入れてみようかと考えてました。少し前まではもっとガッツリとメタ要素を入れる予定だったのですが、なんか違う気がするということで大分控えめにしました。「ゴハン」に関して何か分からないことが有ればその都度補足説明致します。今回は本編中の文章だけで説明して理解させられる自信がないです。正直後書きや前書き等も駆使しないと難しい気がします。ということで、ここからは後書きを特に注視していただけると幸いです。

 最近何故か高評価化続きでバグってるのかと思ったけど、抑制剤が来て安心しました。ここ最近の高評価化率は異常でしたからねぇ…。無論嬉しかったんですけど、俺の作品がこんな高評価なん……?と、ちょっと疑問に思ったこともありますね。本編はあと少しのこの作品ですし、あと数話は超展開?変な展開?なんと言えばいいのか分かりませんけど、もう少しお付き合い下さいませ。

 ちなみに本日はワクチンを打ったのでしばらくは少々いつもより頭が悪くなっております。(だからなんだというお話)


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第105話 悟飯vs"ゴハン"

※ミニコーナー
〜ifストーリーの件〜

 今のところ考えているifストーリーの一覧が以下の通りです。

・選ばれなかったヒロインそれぞれの個別ルート
・ハーレムルート(この場合は風太郎側もハーレム)
・本編後のほのぼのストーリー

 確実にやるのがこの3種です。確実というか最優先事項って表現の方がいいかも…?これ以外にも沢山リクエスト来てたはずだけど、しっかり構成を考えてからじゃないと正直厳しいですね。んで、上の3つ以外にやろうとしているのが……。

・悟飯の幼児化
 これはよくある風太郎が幼児化するパターンの悟飯バージョンです。詳細に関しては見てからのお楽しみということにしておきます。

・悟飯と風太郎、五つ子達によるドラゴンボール集めの冒険(仮称)
 こちらはある読者の方からリクエストしていただいたお話です。多分初期DBのような感じでギャグ重視になるかと思います。

・未来トランクスと五つ子のお話(別シリーズ枠)
 こちらもリクで何人かの方に提案されたものです。どういうものかというと、絶望の未来で師匠である悟飯も失ったトランクスと故郷を壊されて放浪していた五つ子と出会うというお話。そしてトランクスの心の支えになる的な話ですね。これは本シリーズでやるにはちょっと厳しいので、別シリーズとして出す可能性の方が高いですが、もし本シリーズで出すなら更なるパラレルを生み出すしかないんですよね。そうなるとゴチャゴチャし過ぎて整理しきれなくなってしまう……。

 これ以外にもこんな話見てみたいなという意見があったら『メッセージ』でお願いします。メッセージに誘導する理由としましては、コメントや感想欄ではそのうち後ろに流されて確認できなくなってしまうからです。



悟飯「僕を……殺すだって?」

 

四葉「分かった……!!この人は孫さんを殺して自分が孫さんに成り代わろうとしているんですよ!!」

 

三玖「ドッペルゲンガーって実在していたんだ………………」

 

自分達は一卵性児という特性を利用して変装していたので、ドッペルゲンガーと例えられることはよくあった。しかしいくら他の姉妹に変装したからといって、姉妹を殺すような真似はしない。しかし、目の前にいる悟飯にそっくりな『ゴハン』は、悟飯を消すと言った。容姿が瓜二つで本人を消そうとする存在をドッペルゲンガー以外になんて名付ければよいのか?

 

ゴハン「ドッペルゲンガー…?そいつはちょっと違うな。私は別に孫悟飯に成り代わるつもりはない。この歪んだ世界を壊したいだけなのだからな」

 

悟飯「歪んだ………世界?」

 

ゴハン「君は今まで()()()を抱いたことはなかったのか?」

 

悟飯「ど、どういう意味だ?」

 

ゴハン「この世界に対してだよ。マヤリト王国とそれ以外の国の文明レベルに差があるとは思わないか?マヤリト王国の技術なら小物から家、飛行機に至るまでカプセルに収納することが可能だし、宇宙に進出することもできる。だが、他の国は行けて月だろう?それにカプセルのような収納グッズもない………」

 

悟飯「…………あっ」

 

文明差というものは国や地域によって存在するとはいえ、西の都や孫家があるマヤリト王国とそれ以外の国の文明レベルには圧倒的な差があった。しかし人々はそのことを気にしたことがなかった。いくら貧富の差があるからとはいえ、流石に差が開きすぎているのだ。それに他の国にマヤリト王国の文明技術が()()()()()()()()のもおかしい。

 

ゴハン「それに、この世界には本来存在しないはずの国という概念が存在している………」

 

悟飯「………それって、確か前にトランクスさんが言っていた………」

 

ゴハン「そう。未来のトランクスが言っていた通り、本来なら国という概念は存在しない。正確には大昔には存在していたが、争いをなくす為、地球外生命体に対抗する為に国は一つに纏め上げられた…。それがマヤリト王国だ」

 

四葉「えっ……?でも、マヤリト王国以外にも国は沢山……」

 

ゴハン「そこだよ。この世界の歪んでいる部分は」

 

四葉「???」

 

四葉は全く理解できず頭を抑えて考え込むような仕草をする。

 

ゴハン「………この世界は本来あるべき姿から逸脱している……。それは、もう一つの世界と融合したからだ

 

悟飯「……………なんだって?」

 

ゴハンは二つの世界が融合して1つの世界になったと言う。何を言っているのか全く意味が分からない。

 

悟飯「世界が融合?貴様は何を言っているんだ!!?この世界は最初から何も変わっていない!!!」

 

ゴハン「君はおろか、この世界を管理する界王神や破壊神すらもそのことに気づけていない。時の界王神もこの世界の存在に気づいていないだろうな……」

 

息を吐くように次々と出現する数々の専門用語に悟飯は理解に苦しんだ。単語の意味を知らなければ理解することなど不可能だ。

 

ゴハン「とにかく、この世界を放っておけば歪みが生じ、他の世界にも影響を及ぼすだろう……。そうなる前に私がこの世界を壊してやる」

 

二乃「な、何を言ってるのか全く意味が分からないんだけど…………」

 

ゴハンの言うことを全くもって意味が理解できない五つ子は、風太郎か悟飯に解説してもらおうと目を向けるが、悟飯や風太郎すらも理解できていない様子だった。

 

悟飯「………よく分からないが、お前がこの世界を脅かす存在だということは分かった……。なら、手加減はしない…!」

 

ゴハン「やはり戦闘は避けられないか…………」

 

悟飯は四葉に合図を送る。すると一瞬にして5人を一気に抱え込んで少し離れた場所に避難した。

 

悟飯「はぁ!!!!」

 

ボォオッ!!!

 

それを確認した悟飯は、潜在能力を解放した姿、究極になった。

 

ゴハン「ぐっ……!!!な、なんて気だ……!!!」

 

究極悟飯「僕はお前とは遊ぶ気はない。すぐに片付けてやる」

 

悟飯は目の前にいる得体の知れない者を危険視していた。先程から理解のできない言動ばかりしていたし、何より自分を狙っているようだった。近くに五つ子…………特に、二乃がいることもあっていち早く決着をつけたかった。

 

ゴハン「はぁあッッッ!!!!!」

 

ボォオオオオッ!!!!!

 

究極悟飯「!!!?」

 

だが、目の前のゴハンも超サイヤ人3と互角クラスの超サイヤ人2に変身して応戦を試みる。

 

ドカッッ!!!!

 

超2ゴハン「ぐお………!!!!」

 

どちらからともなく拳を突き出したが、悟飯の方がスピードもパワーも勝っていたため、ゴハンに拳が突き刺さった。

 

シュン‼︎

 

究極悟飯「!??」

 

突然消えたゴハンだったが……。

 

究極悟飯「そこか!!!!」

 

ドゴォォオオッッッ!!!!!

 

超2ゴハン「かはっ……!!!!」

 

後ろに振り向きながら蹴りを放って攻撃すると、見事ゴハンに命中した。

 

ガシッ!!

 

究極悟飯「はぁ!!!!!」

 

悟飯は五つ子達が巻き添えになることを恐れてゴハンを上に投げ飛ばし、自身もすぐに上がった。

 

ピタッ

超2ゴハン「ちっ………!」

 

空中で静止したゴハンは口から流れる血を無造作に拭き取りながら、目の前にいる悟飯を睨みつける。

 

究極悟飯「なんでお前が僕と瓜二つの姿をしているのかは分からないが、あの子達の……!二乃の人生を奪われてたまるものか………!!!!」

 

今の悟飯は相手に優位だからと言って遊ぶようなことはしない。五つ子達と関わり、幾多の戦闘を経験して彼は戦士として成長した。悟空やベジータのように戦いが好きな戦士ではない。ただ守りたいものの為に戦う戦士なのだ。

 

超2ゴハン「流石だ。やはり敵わなかったか………」

 

究極悟飯「………?」

 

相手は圧倒的に不利な状況に立たされているにも関わらず、余裕の笑みを崩さなかった。悟飯はそのことを不気味に思った。

 

究極悟飯「……!!そ、それは…!!」

 

ゴハンが見せてきたものは、尻尾。サイヤ人の象徴であり、幼少期の自分も生やしていたものだった。どうやら尻尾を見えぬ位置に隠していたようだ。

 

超2ゴハン「はははっ……!!これで貴様も終わりだ……!!!」

 

ゴハンが黄金の尻尾を出した瞬間、異変が生じた。本日は丁度満月の日で、1700万ゼノ以上のブルーツ波を目から取り入れることによって、ゴハンの体が急速に巨大化していく。あの時のベジータのように大猿化しているのだが、あの時とは決定的に違うものがあった。

 

それは大猿の色だった。本来なら茶色に近い黒色の体毛で全身が覆われるはずだが、目の前の大猿は黄金の体毛で覆われていた。目は血のように真っ赤になり、背丈は15m………否、それよりも遥かにでかくなっていった。

 

黄金大猿「グォオオオオオオオッッッ!!!!!!!!

 

 

ズシンッッッ……!!!!!!!

 

 

一花「うわッッッ!!?」

 

二乃「な、なにあれ……!?あいつ、大きな猿に……!!!!」

 

三玖「か、怪獣みたい………!!」

 

四葉「き、気が膨れ上がった……!!」

 

大猿になったゴハンは飛ぶことをやめて地面に着地すると、周囲を大きく揺らした。

 

五月「……………あれ?」

 

この時、ゴハンが大猿に変身した光景を見た五月は、いつだか聞いた悟飯の台詞を思い出していた。

 

『風情がないですね』

 

月が綺麗だと言っても悟飯の反応は微妙だった。しかしその原因は幼少期に満月を見て大猿になってしまったから少々トラウマなのだという。

 

五月「これが、大猿…………?」

 

目の前の怪物は、満月を見て大猿に変身したのだ。ならば…………。

 

五月「四葉!月を破壊して下さい!!そうすれば、目の前の大猿は元に戻ります!!!」

 

四葉「そうなの!?分かった!!!」

 

五月の助言を受け入れた四葉はかめはめ波を準備し、光の玉の照準を満月に合わせた。

 

黄金大猿「グォオオオオオオオッッッ!!!!!!!

 

大猿は鼓膜が破けそうなほどに大きな声で吠えているだけでこちらに気は向いていない。今ならチャンスだった。

 

四葉「波ぁあああああああッッッ!!!!!!!」

 

ズォオオオオオオオッッッ!!!!!

 

月を破壊するのに十分な気を溜めた四葉はかめはめ波を放った。光が月に向かって真っ直ぐ突き進んでいく……。

 

ズバァァアアアアアアッッッ!!!!!

 

 

四葉「わっ!!!??」

 

大猿の口から放たれた太い光線が一瞬にしてかめはめ波を消し去った。

 

黄金大猿「ふははははっ!!!そんなことさせるか!」

 

一花「えっ!!?あんな姿でも喋れるの!!!?」

 

黄金大猿「しかし目障りだな。まずは貴様らから踏み潰してしまうか」

 

二乃「なっ……!!!」

 

究極悟飯「やめろォオオオッッッ!!!!!!」

 

ドゴォォオオッッッ!!!!!

 

黄金大猿「グォオ……!!!?」

 

大猿が二乃達を踏み潰そうと右足を上げたが、悟飯が足元を思いっきり蹴ることによって大猿は転倒してしまった。

 

バシン!!!

 

究極悟飯「ぐわぁああ…!!!!」

 

だが、振り回された尻尾に叩きつけられた悟飯は地面に吹き飛ばされたが、直前で体勢を整えて綺麗に着地した。

 

究極悟飯「くそ……!!図体が大きい癖に思ったよりすばしっこい……!!!」

 

黄金大猿「鬱陶しいハエだな。叩き潰してやる」

 

究極悟飯「!!?」

 

いつの間にか起き上がった大猿の両手が悟飯を襲うが、直前で避けることによってペシャンコになることはなんとか避けられた。

 

究極悟飯「だりゃ!!!!」

 

悟飯は一振りで複数の気弾を生み出すと同時に放つ。それらは全て大猿に当たって連鎖的に爆発を引き起こしたが……。

 

黄金大猿「どうした?この程度か?」

 

究極悟飯「くそ………!!!!」

 

ただでさえ超サイヤ人3級の力を持つ者が更に大猿になったのだ。その戦闘力は究極悟飯をも上回っていた。しかし中々悟飯に攻撃が当たらない。大猿状態では図体が大き過ぎる為、相手に攻撃を当てることが非常に難しいのだ。悟飯は小さな体を利用して大猿の鈍い攻撃を避ける。しかし鈍いとは言ってもあくまで悟飯基準の話だ。四葉にとっては大猿のスピードも十二分に早いレベルだった。

 

ドグォォオオオン!!!!

 

悟飯の攻撃は大猿によく当たるが、大猿にはあまり効いていないようだった。全く効いてないわけではないからまだマシとはいえ、これでは悟飯のスタミナが切れた瞬間にハエのように叩き潰されてしまうことは明白だった。

 

究極悟飯「(なら尻尾を切り落とすまでだ……!!!)」

 

悟飯は後ろに回り込んで尻尾に魔閃光を当てようとするが………。

 

黄金大猿「尻尾を狙うことぐらいお見通しだ!!!」

 

ズォオオオオオオオッッッ!!!!!

 

究極悟飯「わっ!!!!!?」

 

なんと、尻尾の先端からエネルギー砲を繰り出してきたのだ。確かに気弾は手以外にも繰り出すことは可能だ。口や足から放つことができるのなら、体の一部である尻尾から放てるのも頷ける。

 

究極悟飯「くそ……!!的は大きいのに隙がまるでない……!!!」

 

 

 

 

一方で、悟飯が苦戦する様子を見ていた五つ子達は痺れを切らしていた。

 

二乃「悟飯が危ない…!!早く助けに行かないと……!!!」

 

四葉「でも、今の私達じゃどうしようもないよ!!」

 

三玖「お母さんさえ来てくれれば……」

 

零奈「私がなんです?」

 

一花「わっ!!いいタイミング!!」

 

膨大な気を察知して零奈が駆けつけてきたようだ。零奈の姿を確認すると一瞬にして五つ子が母の周りに集まった。

 

二乃「お母さん!協力して!」

 

四葉「孫さんだけじゃ負けそうなの!」

 

三玖「私達も力を貸したい!」

 

五月「少しでも孫君の手助けをしたいんです!!!」

 

一花「だから………」

 

零奈「………分かりました。本当はあまり娘を巻き込みたくはないのですが、目の前の敵は確かに強敵のようですね…。下手したら魔人ブウ以上かもしれません」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

四葉「とうッ!!!!」

 

零奈が光出したと思ったら、その光の中から四葉が飛び出してきた。

 

四葉「人造人間零奈完全体・四葉フォーム!!!ここに参上ッッッ!!!」

 

『カッコつけてないで早く行きなさいよ!!!』

 

四葉「わ、分かったよ二乃…」

 

ちょっとヒーローっぽくカッコつけてみたかった気持ちは分からなくもないが、今はやるべき時ではない。

 

 

 

 

 

ドカッッ!!!!!

 

黄金大猿「グォオオオオオオオ!!!!?

 

究極悟飯「!!?四葉さん、その姿は……!!!」

 

四葉「また合体しちゃいました!説教なら後で聞きます!!!」

 

究極悟飯「………分かった。動きは鈍いけど攻撃は重いから注意してね!!」

 

四葉「はい!!!」

 

ブォン!!!!!

 

大猿が放った重い一撃も四葉と悟飯は軽々と避けた。

 

四葉「リボンッッッ!!!!!」

 

黄金大猿「なに……!!?」

 

お得意の拘束術で相手の動きを止めようとしたが………。

 

黄金大猿「グォオオオオオオオ!!!!!」

 

バチッッ!!!!

 

四葉「嘘っ!!!?」

 

大猿が雄叫びを上げると同時に気を解放してリボンを突き破った。

 

黄金大猿「グォオオオオオオオ!!!

 

ズォオオオオオオオッッッ!!!!!

 

四葉「まず…………」

 

確かに大猿の動きは鈍い。しかし、大猿から放たれる気功波類までもが鈍いわけではなかった。一瞬の出来事に四葉は避ける暇もない………。

 

 

 

 

 

 

 

究極悟飯「ぐぅ……!!!!」

 

悟飯がスレスレで四葉を押して回避させたが、気功波が悟飯の腕に掠ってしまった。

 

四葉「そ、孫さん!!?大丈夫ですか!!??」

 

究極悟飯「う、うん…。なんとか……」

 

黄金大猿「惜しいな。今ので消せると思ったのだがな…………」

 

ピュン‼︎

 

三玖「はっ!!!」

 

誰かが命名したアサルトレイン……。つまり、三玖が作り出した気製の銃から放たれる気弾の雨が大猿に降り注ぐ。

 

黄金大猿「な、なんだ…!?この技は…!?」

 

珍しく大猿ことゴハンが動揺していた。

 

究極悟飯「よし……。クリリンさん、技を借ります……!!」

 

ブゥウウウウンッッ!!!!!

 

悟飯はこの隙に気円斬を作り出して尻尾に向けて放った。しかし………。

 

 

黄金大猿「グォオオオ!!!!!」

 

ドンッッッ!!!!!

 

気円斬の刃のない部分が大猿に叩きつけられたことによって、気円斬は消滅してしまった。

 

究極悟飯「そ、そんな……!!!」

 

本来なら四方八方を刃にすることができる気円斬だが、見よう見まねで放った悟飯の気円斬ではそれができなかった。悟飯はパワーこそあるが、気のコントロールに関しては悟空やクリリンの方が上手なのだ。

 

黄金大猿「…………やはり図体が大きいままではやりづらいな……」

 

グググッ……

 

究極悟飯「!!!?」

 

尻尾も切っていなければ月も破壊していない。にも関わらず目の前の大猿の体が縮み始めていた。

 

三玖「な、何が起きているの…!?」

 

究極悟飯「わ、分からない……!僕にもさっぱりだ………!!!」

 

 

 

 

 

 

 

「…………よし。ばっちりだな」

 

先程まで大猿だったゴハンは元の人間サイズに戻っていた。しかし、気の大きさはそのままどころか大猿の時よりも大きくなっていた。

 

それに不思議と下半身の服は元に戻っていたが、上半身は裸だった。しかし、上半身の大部分は赤い毛に覆われており、目の隈が大猿の瞳のように赤くなっていた。

 

瞳は超サイヤ人の髪を連想するような黄金に輝いており、黒い髪は超サイヤ人3に引けを取らないほどに伸びていた。

 

赤い尻尾を揺らしながらゴハンは初の試みが成功したことを大喜びしていたが、はしゃぐようなことはしない。

 

「どうだ?こんな姿は初めて見ただろう?」

 

究極悟飯「な、なんなんだ……。それは!!!?」

 

「これか?大猿のようなパワーを持ち合わせながら、超サイヤ人のようなスピードを兼ね備えた…………」

 

 

 

 

 

 

 

 

超4ゴハン「(スーパー)サイヤ人4(フォー)だ……!!」

 

究極悟飯「超サイヤ人………」

 

三玖「フォー………?」

 

超4ゴハン「これになるには、超サイヤ人3もしくはそれと同等の力を身につけた上で、理性を保ったまま大猿になれることが条件だった……。この変身をしたのは初めてだったが、上手くいったようだな…………」

 

初めて変身するはずの形態を丁寧に説明するゴハンだが、そんなことは悟飯達は気にならなかった。

 

先程までは、パワーはあったもののスピードが鈍かった怪物ならどうにか相手になると心のどこかで思っていたからそこまで焦るようなことはなかった。しかし、今目の前にいる敵は大猿ほどのパワーを持ちつつ、超サイヤ人のように素早い行動が可能なのは容姿を見るだけで明らかだった。

 

 

ドカッッ!!!!!!

 

究極悟飯「!!!?」

 

悟飯は何をされたのか分からなかった。しかし、痛みだけはしっかりと感じた。その痛みが攻撃を受けたことを嫌でも理解させる。

 

究極悟飯「………あがっ…」

 

三玖「ご、悟飯!!!?」

 

超4ゴハン「…………たった一撃でこの様か…………」

 

今の攻撃は悟飯にも見えなかった。ただの正拳突きで悟飯は呼吸がしばらくできなくなっていた。それくらいに相手はとんでもないパワーを持ち合わせていることを意味していた。

 

ピュン‼︎

 

二乃「よくも…!!よくも彼をッッッ!!!!!!!」

 

愛おしい存在が傷めつけられていてもたってもいられなくなって二乃が表に出てきた。二乃フォームは確かにパワー重視のバーサーカータイプだ。

 

ガッ……!!!

 

二乃「……!!!!」

 

しかし、二乃の拳は最も容易くゴハンの片手で受け止められてしまった。今の零奈とゴハンの間には大きな差が開いていた。超サイヤ人4は他者と比べてしまえば、超サイヤ人になったベジットやセル・ネオと互角……いや、それ以上かもしれない。そんな相手に二乃の攻撃が通用するはずもなかった。

 

二乃「この……!!」

 

ガッ!!!!

 

足も突き出すが、それすらも尻尾で受け止められてしまった。

 

超4ゴハン「攻撃というのは……、こうするんだよ!!!!!」

 

ズバッッッ!!!!!!

 

二乃「あがっ…………!!!!!」

 

ゴハンが手刀を振りかざすだけで二乃の………人造人間零奈の体を切断した。

 

ピュン‼︎

 

「「「「「きゃあ!!!」」」」」

 

しかし、人造人間零奈完全体は五つ子と零奈が融合することによって初めて成される形態である。人造人間の体に支障が出た場合は融合状態は解除されてしまうのだ。ちなみに、融合状態が解けただけで、零奈本人も無事である。

 

超4ゴハン「貴様のようなイレギュラーな存在には手こずらされる…。しかし大したことはなかったな」

 

そう独り言を呟くと、まずは零奈の方に歩み始めた…。

 

零奈「……!!」

 

超4ゴハン「まずは貴様からだ。本来なら現世に戻るはずがなかったが、この世界の未来に当たる世界で生み出されてしまった………。君もまたこの世界のバグの要因なのだよ」

 

零奈「む、娘達に手出しするようなら許しませんよ…!!」

 

三玖「そもそもなんで悟飯を殺そうとするの!?世界のバグって何!?」

 

超4ゴハン「………そうだな。せっかくだから冥土の土産に話してやるとするか。この世界で何が起きたのかを……」

 

 

 

 

 

 

元々この世界は1つではなかった。並行世界とは違い、根本的に違う『別世界』というものが存在している。

 

その世界ごとに様々な物語が存在する。

 

例えば、同じ宇宙人が存在する世界でも、悟空達のようにサイヤ人が幾つもの死闘を繰り広げるわけではなく、邪神の公務員が地球人の男子高校生に一目惚れする世界………。

 

カエルのような、マスコットのような宇宙人が、地球をペコポンと呼び侵略しに来るも、なんだかんだ言って馴染んでしまったり………。

 

そんな感じで『根本的に違う世界』というものが幾つも存在する。例えタイムマシンのようなものが作り出されたとしても、手違いでその世界に行くことは普通なら不可能だ。何故なら並行世界ですらないのだから。一応根本的に違う世界に移動できる者もいるが、それは極一部の限られた者だけの話だ。

 

だが、ある時、イレギュラーな事態が発生した。何者かが並行世界を幾つも生み出し、移動し続けた。それによって時空に歪みが生じて、もう一つの『根本的に違う世界』と融合してしまったのだ。

 

超4ゴハン「それがこの世界だ」

 

零奈「…………えっ?」

 

超4ゴハン「お前らに言っても理解はできないだろうが、この世界は『五等分の花嫁の世界』と名付けられている……。しかし、孫悟飯を始めとする気を扱える者が多数存在する『ドラゴンボールの世界』と融合してしまった……。その原因が………」

 

「私というわけだな…………」

 

超4ゴハン「…………ノコノコと現れやがったか、セル………」

 

セル「………貴様は何者だ…?」

 

実は2つの世界が融合してしまったのは、セルが短期間で頻繁に並行世界を移動してしまったからだ。並行世界が生み出され過ぎると、12ある宇宙を管理する文字通り全ての頂点に立つ王でさえも管理することが難しくなってしまう。そうした管理の行き届かない世界同士が融合してしまうことがごく稀にあるのだ。

 

超4ゴハン「そうだ。貴様さえいなければ、世界の融合など発生しなかったのだよ。全ての元凶は貴様にある」

 

セル「ならば貴様こそなんだ?身体は間違いなく孫悟飯だが、中身は違うな?何者だ?」

 

超4ゴハン「………私か?私は……強いて言うなら、この体に名付けられた『ゴハン』と名乗っておこうか」

 

 

 

零奈「…………もしかして…」

 

零奈はゴハンの仕草をじっと見ていた。彼女の父親から伝わる『愛があれば見分けられる』理論はなにも五つ子相手に限定した話ではない。

 

零奈「…………あなた、無堂先生ですか…?」

 

今は愛していなくとも、かつて愛していた人の仕草も零奈は覚えていた。

 

超4ゴハン「………この世界の私を見てもまだ先生と呼んでくれるのか…。君は優しすぎるよ、零奈」

 

五月「えっ…?無堂先生って……」

 

三玖「確か、私達の実父……?」

 

超4ゴハン「ああ。でも私は『この世界の無堂仁之助』ではない。私は別世界の無堂仁之助だよ」

 

零奈「あなた…!何故こんなことをするのですか…!!もしや、娘達に拒絶されたからこのようなことを……!?」

 

超4ゴハン「勘違いしないでもらいたい。私はこの世界の私のように妻や子を見捨てはしなかったさ。寧ろこの世界の私は何故そんな薄情な真似ができたのか、理解に苦しむね」

 

零奈「ならば何故こんなことを……」

 

超4ゴハン「………ならば話すか…」

 

 

 

 

 

 

それは私がまだ普通に父親として生きていた時の話だった……。妻の零奈が入院したと思ったら、お腹の中に5人の子供がいると診断が出たのだ。私は零奈の身を案じたが、彼女は5人の子を産みたいと言った。

 

正直、あの時の私は5人の子供を養う覚悟はなかったと思う。だが、愛する妻が逃げないのならば、私も逃げるわけにはいかない。何よりそんな無責任な行いをすることに私自身が許せなかった。

 

『零奈……。5人も子供を育てるとなると、この先沢山の苦難があるだろう。でも私は君と共に乗り越えていきたい………』

 

『あなた………』

 

 

 

 

こうして、私の妻である零奈は無事に出産した。子供も妻も健康で本当に良かったと思う。5人の子は上から順に一花、二乃、三玖、四葉、五月と名付けた。

 

成長すればするほど零奈に似てきて本当に愛おしい存在だった。私はあの時逃げずに向き合って良かったと心の底から思っていた。5人の娘と妻を満足に生活させる為に今まで以上に仕事に奮闘した。幸い、私は教師としての才能は高かったようで、仕事のオファーは沢山きた。家庭の時間を失わない程度に仕事に奮闘した。

 

 

 

『お父さん、ここ分からないよ〜』

 

『教えて〜!!』

 

『はは!待ちたまえ。いっぺんに教えることはできないから1人ずつだよ』

 

 

私の努力もあって、娘達にも好かれていた。大変なことは沢山あったし、零奈が何度か倒れることもあったが、今まで頑張ってよかったと思った。

 

 

 

 

 

そんな時だった…。ヤツが襲来したのは……。

 

ヤツの力は凄まじかった。世界中の軍隊で撃退しに行ってもヤツは返り討ちにした。ヤツはただ人が恐怖に溺れ、パニックに陥る姿を楽しんでいるように見えた。

 

『なんだ?この世界にはサイヤ人はおろか、気の概念を理解する者すらいないのか……?どうやら根本的に違う世界に来てしまったようだな…………』

 

ヤツは『セル』と名乗った。あいつは世界中の人々を次々と虐殺していった。本人はその気になれば地球を破壊することができると言った。恐らくそれは嘘ではないのだろうと当時思った。だがヤツはわざわざ人を殺して楽しんでいたのだ。

 

 

 

 

とうとう私の住む街にもやってきた。化け物が現れて娘達はパニックになった。だが私は冷静になるように呼びかけて、物陰に隠れてやり過ごすことを提案した。妻と娘を連れてひと気のない路地裏でやり過ごそうとした。

 

 

 

 

 

 

『残念だったな。私は人の持つ"気"を追跡することで、どこに隠れようが居場所を見つけることができるのだ』

 

だが、ヤツは私が窮地に出した策を嘲笑うかのように現れた。隠れた意味をなくして絶望した娘達の顔を見て、奴の口角が上がったのを私は今でも昨日のことのように覚えている。

 

そして、娘達が光に包まれたかと思ったら、一瞬にして塵一つ残らずに消滅した。ヤツの手によって…………。

 

その光景を見ることしかできなかった零奈は、ただひたすら絶望していた。しかし娘達の名前を呼ぶ暇もなくヤツに殺された。

 

私は悪夢を見ているようだった。夢なら覚めてほしいと本気で願った。だがそれは現実だったのだ。何故ヤツのような屑には力があって、私にはないのか疑問だった。私もヤツのように力があるのなら、私自身の手でヤツを消せるのに…………。そう思いながらヤツに殺された。

 

 

 

 

 

 

零奈「……………」

 

二乃「そんなことが………」

 

時は戻って現在。ゴハンとして目の前にいる無堂は過去のことを語った。それを聞いた零奈はただ呆然とするしかなかった。

 

セル「そういえば、そんなこともしている時期もあったな。あの時の私はまだ破壊活動に夢中だったな……。退屈なことだと気付くのにかなりの時間を要したが…………」

 

超4ゴハン「ふざけるなッ!!貴様のせいで私の娘と妻は死んだ!!私がこの体を手に入れられたのは、神が復讐をするチャンスをくれたとしか思えなかった。だからこの体で目覚めた時から鍛錬を欠かさなかった。この体には膨大な可能性が眠っていることは分かっていたから鍛錬が捗ったよ」

 

二乃「そ、そもそも!なんであんたがハー君の体を持ってるのよ!!?」

 

超4ゴハン「……いいだろう。せっかくだから話してあげるさ」

 

ゴハンこと無堂は、再び語り始めた……。

 




 はい。もう1人のゴハンの正体はまさかのパラレル無堂でした。割と最初の方から考えていたんですけど、他のクロスを書く人も結構無堂をラスボスにしてる人がいてワロタ。でも曲げたくもないのでこうなりました。

 何故パラレル無堂が悟飯の体を手に入れることができたのかは次回より解説致します。そして無堂がメタなことも知っている理由に関しても次回判明する予定です。と言ってもこれに関しては特に深い意味はないんですけどね…。

 なんか最近は編集する時間すらないほで更新頻度が急に減ってしまってすみません。あと1週間ほどしたらある程度は落ち着くはず…?ので、来週辺りまで週1更新になっちゃうかもしれないっす。


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第106話 憎まれる"力"

 ミニコーナー:
 作者は五つ子の中で誰が一番好き?

 実を言うとみんな好き。だから所謂箱推しというものに分類されるが、どちらかというと二乃&五月推し寄りという感じ。でもこの差は50歩100歩であり、そこまで差はない。ちなみに自分の好きなキャラ=悟飯のヒロインにしているわけではなく、あくまで悟飯と合いそうかどうかで判断しています。正直三玖は風太郎でも悟飯でもどっちでもいける気がする……。一花はそれなりのきっかけがないと厳しそう。四葉はあの出会いを改変しない限り変更は不可能と同義。

……ちなみに、今になって二乃&五月&ビーデルの3人を悟飯のヒロインとして争わせても良かったんじゃないかと思い始めている。風太郎に一花、三玖、四葉。悟飯に二乃、五月、ビーデル。あら丁度3人ずつになるじゃないですかやだぁ……。

 はいすんませんふざけすぎました。本編をどうぞ。



私はセルの手によって殺された後、あの世に行くわけでもなく、しばらく色々な世界を魂だけの状態で彷徨っていた。

 

 

 

『地球諸共、宇宙の塵になれぇえええええッ!!!!!』

 

ベジータと孫悟空というサイヤ人が先頭する光景や………。

 

 

『オレは怒ったぞ!フリーザァアアァアアッッッ!!!!!!』

 

 

『クリリンのことかァアアッッッ!!!!!!!!』

 

 

フリーザという宇宙人と金髪に変化した孫悟空が戦闘する光景…………。

 

孫悟飯がセルを打ち倒す光景や、全員で協力して魔人ブウを打ち倒す光景など、沢山の戦いを一部とはいえ見てきた。

 

その後、孫悟空が破壊神と出会って神の力を纏う力を得て、新たな領域に至る世界と、願い玉によって小さくされ、新たな旅を始める世界に別れていることも知った。

 

 

 

 

私は何故か色々な世界を見せられてきた。様々な戦いを見せられてきた。何故私がこれらを見れたのかは私にも分からない。誰かの悪戯か、はたまた夢だったのか…………。

 

 

だが、様々な戦いを見て私はあることをずっと考えていた。

 

 

 

 

 

 

 

超4ゴハン「力のない弱い者達は、常に力を持つ者同士の戦いに理不尽にも巻き込まれる」

 

零奈「……………」

 

超4ゴハン「零奈、君にも身に覚えがあるだろう?正確には君の体と言った方がいいか?五月が心を壊して君の体を作ってこの時代に来た時、何が起こった?」

 

二乃達は当時のことを思い出していた。五つ子は零奈に狙われるが、悟飯が戦ってくれたことによってなんとか回避し続けていた。しかしその戦いの余波によって怪我人が出たのもまた事実。

 

メタルクウラが地球に襲来した日なんかがいい例だろう。クウラはサイヤ人を倒す為のエネルギーを得る為に地球人を燃料として利用しようとしていた。これはまさにさっきゴハンが言っていたことに当てはまる。強い者同士の戦いに弱い者達が理不尽にも巻き込まれていた。

 

超4ゴハン「それで、この体を手に入れた経緯だが…………」

 

 

私が再び目覚めた時、不思議な液体の中にいた。

 

『やった!目覚めたぞターレス!!』

 

『思ったよりも早かったな。流石レズンとラカセイだ。お前らの科学技術にはいつも驚かされる…………』

 

『………私は何者なのだ?』

 

『いいか?お前はサイヤ人だ。孫悟飯というサイヤ人と地球人のハーフの細胞から作られたクローンだ。これからお前はクラッシャー軍団最強の傭兵となり、俺がこの宇宙の頂点に立つ為に協力してもらう』

 

どうやら運良く『孫悟飯』のクローン体に憑依していたらしい。まだ脳の調整が済んでないなどほざいていた気がするが、精神がない状態の体がそこにあったからたまたまここに辿り着いたのだろう。

 

私は力を持つ者が許せなかった。力を持つ者がいる限り犠牲者は絶えない。だから目の前にいる奴らも自分の手で葬りたかった。しかし当時の自分では力を引き出せないのもまた事実。素直に指示に従って己を鍛えることに没頭した。

 

面白いことに、鍛錬すればするほど自分の力が増していくことを実感できた。孫悟飯という存在はとにかく潜在能力が凄い。私が見せられてきた世界を見るに、しっかり鍛錬していれば、魔人ブウ相手にも苦戦せずに倒せていたことは間違いない。それくらいに彼は戦いにおいて天然の天才といっても差し支えがなかった。

 

 

私が超サイヤ人に変身できるようになった頃は、宇宙に蔓延っていた悪人を中心に狩っていった。自分の力は益々増していき、ついには超サイヤ人2にもなれた。超サイヤ人2になると殆ど敵という敵がいなかった。そこで私の頭の中にはある考えが浮かんだ。

 

 

 

 

 

 

力ある者がいる世界を滅ぼしてしまえば、もう私の家族のような犠牲者が生まれることがないのではないか…?

 

二乃「なっ…………」

 

超4ゴハン「そうは思わないか?零奈」

 

零奈「あなたもセルと同じことをしているではありませんか…!!この世界の人々が犠牲になってしまうのですよ!!?」

 

超4ゴハン「分かってないな零奈は。これは必要な犠牲なんだよ。事が済めば力を持つ者は絶滅し、争いがグッと減るだろう……………」

 

二乃「そんなことさせない…!させるもんですか……!!!」

 

超4ゴハン「……特にこの世界の存在は許せない。何故私の世界では家族が殺されたのに、この世界では生きているのか………!何故私の世界には…………」

 

何かを言いかけていたゴハンだったが、すぐに感情を覆い隠すような無表情に切り替わった。

 

超4ゴハン「…………さて、雑談はこれくらいにしようか………。まずはお前達を殺す。特に零奈、君はそれほどの力を持ってしまった。いずれその力は大量の犠牲者を生むことになるだろう。何より、あのセルと同じ人造人間であることに虫唾が走る……!!!」

 

表情を変えぬままゴハンの拳が零奈を襲う。だが、その拳は途中で止まった。

 

究極悟飯「ぐぉぉおぉおおお……!!

 

二乃「は、ハー君!!!?」

 

悟飯は既に意識を失いかけているにも関わらず、再びゴハンに挑む。

 

超4ゴハン「ほう……?意識が朦朧としているのに向かってくるか?実に面白い。どこまで耐えられるのか試してやろうか」

 

ドカッッ!!!!!

 

究極悟飯「がっ………!!!」

 

だが、今の悟飯よりも超サイヤ人4となったゴハンの方が圧倒的に強い。パワーもスピードも圧倒的に優れている上に、悟飯には悟空やクリリンのように多彩な戦い方や技があるわけでもない。だから一方的にやられるしかなかった。

 

二乃「いや……!!やめて……!!!」

 

だが、悟飯はゴハンを掴む手を離さない。

 

超4ゴハン「………何故だ。もう意識はないはずだぞ……?何故動けるんだ…?」

 

究極悟飯「うぉおおおおおッッ!!!!!」

 

超4ゴハン「…………!!!!!」

 

一瞬、悟飯の気が急上昇した。ゴハンはそれに違和感を覚えて離れた。

 

究極悟飯「ガァアアッッ!!!!!」

 

ズォオオオオオオオッッ!!!!!

 

超4ゴハン「ちっ……!!!!」

 

悟飯から放たれた気功波を弾き飛ばそうとするが、上手く跳ね返せなかった。

 

超4ゴハン「はぁああああああッッ!!!!!!!」

 

だが、更に気を高めたゴハンによって弾かれてしまった。

 

究極悟飯「うぐっ……………」

 

そのまま流れるように悟飯は倒れてしまった。

 

二乃「は、ハー君!?しっかりして!!!」

 

三玖「悟飯…!!悟飯!!!」

 

2人は悟飯に駆け寄る。悟飯の身を案じていた。

 

超4ゴハン「………(少しとはいえ手が痺れている……。そこまで孫悟飯が守りたい存在とでも言うのか…?目の前にいる者達が…………)」

 

セル「……………なるほど。つまり貴様を生み出した私に始末する責任があるというわけだな」

 

ここで、今まで静かにゴハンの話を聞いていたセルが再び口を開いた。

 

超4ゴハン「イキがるなよ人造人間。この力を手に入れた私には、例えもう1人の自分と合体したお前であろうと敵わない」

 

セル「その言葉、そっくりそのまま返してやる。そもそも孫悟飯の体を使っておいて自分の力のように誇示するでない」

 

超4ゴハン「貴様こそ、様々な達人達の細胞があってこその力だろう?」

 

セル「その細胞に記憶されている長所を活かせるのは、他でもない私自身だ」

 

超4ゴハン「殺してやる………」

 

中身が並行世界の無堂にとっては、目の前のセルは家族の仇だ。躊躇する理由など全くない。

 

ガッ……!!!!

 

ゴハンが振り出した拳をセルは軽々と受け止めた。

 

ドカッッ!!!!!

 

逆にセルの膝が接近したが、ゴハンが腕で受け止める。

 

ズガガガガガガッ!!!!!!!

 

体と体が激しくぶつかる音だけが響く。2人の手足の動きを追える者はいない。ただ凄まじい音だけが、激しい戦いだということを認識させる。

 

セル「ふはははは……!素晴らしい…!ここまでの高揚感を味わったのはベジット以来だ……!!!」

 

超4ゴハン「その気持ち悪い薄ら笑いを消し去ってやる」

 

ドカッッ!!!!!

 

バキッッッ!!!!!

 

戦いが続くに連れ、セルはどんどん高揚感が増していくばかり。戦いそのものを楽しんでいた。だが、ゴハンは時間が経つにつれて憎しみが増す一方だった。目の前の仇が笑っているとなれば当然のことだろう。

 

ドカッッ!!!!!

 

セル「ぶらぁ……!!!!」

 

しばらく経ち、ようやく攻撃が当たった。当てたのはゴハン、当てられたのはセルだった。

 

セル「はぁ!!!!」

 

セルはすかさず反撃を試みるが、ゴハンにあっさりと躱された上に腕を掴まれた。

 

セル「なに………!!?」

 

超4ゴハン「オラァ……!!!!!」

 

グシャ……!!!!!

 

ゴハンは力を込めて腕を引っ張り、セルの胴体からそれを引きちぎった。雑に宙に投げるとすぐさま気功波で破壊した。

 

セル「そんなことをして何の意味がある?私に再生能力があることをご存知ないのかね?」

 

超4ゴハン「ああ、あるさ。だが、お前の再生は魔人ブウのそれとは違って体力を消耗する……。違うか……?」

 

セル「………!!!!」

 

体を再生できるのは便利な機能だが、体力を消耗してしまうのがデメリットである。ゴハンはそのことを見抜いていたのだ。

 

セル「なるほど…。そこを見抜いていたとは驚きだ……。いや、知っていたと言う方が正しいか?もっとも、あの時死にかけてパワーアップした私にはそんなデメリットは存在しないがな」

 

超4ゴハン「………何?」

 

セル「超サイヤ人3になったベジットを相手にした時に私は敗れた…。しかし、奇跡的に幾つもある核のうちの1個は残っていた。そこから再生し、見事にパワーアップを成し遂げたのだよ」

 

超4ゴハン「なるほど……。だが大した問題ではない」

 

 

 

 

 

 

ドシャッッ!!!!!

 

セル「ぐるぁ…!!!!」

 

ゴハンは更に気を上昇させてセルの顔面を殴った。

 

セル「ば、馬鹿な……!!!これほどのパワーが………!!!」

 

超4ゴハン「言ったはずだろう?大猿のパワーを持ち合わせながら、超サイヤ人のようなスピードも兼ね備えたのが超サイヤ人4だと……。おっと、お前には説明していなかったな」

 

セル「なに………?」

 

超4ゴハン「まあいい。お前が知ったところでどうもならん。私は孫悟飯の有用性を理解している。だからこそ、この体の長所を存分に発揮させてもらうとしよう……………」

 

 

 

ゴゴゴゴゴゴゴゴッ……………

 

地面の揺れが強くなると共に、ゴハンの顔にも変化が現れる。

 

超4ゴハン「はぁぁぁぁ………!!!」

 

三玖「あの顔…………」

 

まるで怒りに満ちた悟飯のような顔だった。()()()()のクローンなのだからそれは当然なのだが………。

 

セル「まさか………!貴様……!!!」

 

超4ゴハン「忘れたか?私の家族はお前に殺された……。そして孫悟飯の体は激しい怒りを感じる度に限界以上の力を発揮できる…………」

 

これだけでセルは全てを理解した。過去に何度か悟飯がパワーアップをした。その時は大抵激しい怒りを感じた時だった。そして今のゴハンも、セルという仇相手に激しい殺意にも近い怒りを抱いている。

 

超4ゴハン「貴様の長旅も終わりだ」

 

両手に赤色に近い白い光の玉が生成された。そして手を重ねると玉も重なって巨大な一つの玉となる。

 

超4ゴハン「このかめはめ波は一味違うぞ……?差し詰め、大猿のパワーも兼ね備えた『10倍かめはめ波』とでも名付けておこうか?」

 

ゴハンは無言で10倍かめはめ波のチャージを続けていた。セルが全力で逃げようにも、今のゴハンから逃れることは不可能だった。

 

セル「…………ふふふっ…!ふはははははは!!!貴様は一つ失念している……」

 

超4ゴハン「何……?」

 

セル「貴様の体はサイヤ人と地球人のハーフだ。だが、私にはフリーザやコルドの細胞も含まれている……」

 

超4ゴハン「………!!!」

 

セル「この星と共に消えてなくなれ!!!!!!」

 

カァァッ!!!!!!

 

地球を壊すのに十分な威力を孕んだ気功波を地面に向けて放った。セルはゴハンに向けて勝ち誇ったような顔を披露する。

 

超4ゴハン「小賢しい真似を………」

 

ズォオオオオオオオッッ!!!!!!

 

………尻尾から放たれた光の線がそれを掻き消してしまった。

 

セル「ば、馬鹿な…………はっ……!!」

 

自分の策が失敗したことでショックを受けていたセルに、いつの間にか間近に迫っていた。

 

 

超4ゴハン「終わりだ」

 

 

ズォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッッ!!!!!!!

 

セル「ぐぼぁァアアァアア……!!!!」

 

限界まで溜められた10倍かめはめ波がセルの体に浴びせられた。そのままかめはめ波の流れに沿って宇宙に追い出されてしまう。しかし、これはセルにとって最後の保険だった。

 

セル「よ、よし……!!いいぞ………!!このまま私を宇宙に放り投げるのだ…!そうすれば、いずれ力をつけて奴にリベンジしてやる………!!!」

 

体が崩れ始めるが、幾つもある核のうちの1つさえ残っていれば再生可能なセルにとってはチャンスとも取れた。あとはどうにかしてこの攻撃から抜け出すだけ………。そのはずだった。

 

セル「…………なっ……」

 

熱を感じたので振り返ると、太陽がそこにはあった。かめはめ波の速度からして太陽に到達するのはほんの数秒にも満たない。

 

セル「うごぉぉぉおおおおお………!!」

 

だが、セルは界王拳を駆使してなんとか軌道を逸らすことに成功した。だが、これが決定打となってしまう……。

 

セル「ぬぉ……!!!!」

 

界王拳を使用するととてつもなく体力を消耗してしまう。その弊害によってセルは完全に光に飲み込まれてしまった。

 

セル「この………わたしが……………。こんなところで……………

 

そこでセルの声は完全に途切れた。今度は核が残るようなことはなく、地球の遥か遠くで大爆発と共にその命は消滅した。

 

 

 

 

 

 

零奈「………!!!」

 

四葉「セルの巨大な気が、消えた……!!!」

 

一方で、あの魔人ブウをも圧倒していたセルがあっさりと倒された光景を見て、四葉と零奈の顔は絶望に染まってしまった。他の4人に関しては最早何が起こったのか分かっていない。

 

超4ゴハン「…………さて。憎き仇は私自身の手で葬った。あとは孫悟飯を殺してこの世界を破壊するのみ…………」

 

二乃「ま、待ちなさい……!!彼だけは殺さないで……!!」

 

超4ゴハン「退け。お前では私に到底敵わない。例え零奈と融合したとしてもね」

 

しかし、二乃は引かなかった。好きな男のためなら、例え火の中でも水の中でも飛び込めるという二乃の言葉は嘘ではなかった。悟飯を守るために自分の身をも投げ出すつもりだ。だが、二乃だけではなかった。

 

三玖「………悟飯は、殺させない…!!長い間戦って、ようやく悟飯は幸せを手に入れたの……!!!その邪魔をするなら……!!!!」

 

五月「……………私は何度も孫君に助けられました。せめて今回だけでも、彼の力に………!!」

 

超4ゴハン「何も分かってないな。気の力を扱える四葉や零奈ならまだしも、お前達が出しゃばって何ができるというのだ?」

 

「「「………」」」

 

3人はその問いに答えることなくその場に留まり続けていた。

 

超4ゴハン「そうか……。君達はそんなに彼の死に様を見たくないというのだね?なら、先に殺してあげよう」

 

四葉「だ、ダメぇえええ!!!」

 

その言葉を聞いて四葉が駆け出す。例え敵わないと分かっていても、姉妹を守るために体が勝手に動いていた。

 

四葉「はぁあああッッ!!!!」

 

ズォオオオオオオオッッ!!!!!

 

走りながら気功波を放った。それは見事に当たってゴハンに爆発を引き起こした。しかし………。

 

ズォオオオオオオオッッ!!!!

 

四葉「えっ……」

 

一筋の光が文字通り光速で四葉に迫っていた。そのことに気づいた四葉だが時すでに遅し………。

 

 

 

 

 

 

 

 

シュン‼︎

 

四葉「………あれ?」

 

爆発に巻き込まれたかと思いきや、なんとその場に突如現れた山吹色の道義を着た戦士によって救出されていた。

 

超4ゴハン「ちっ。瞬間移動か………」

 

 

 

悟空「大丈夫か?無茶すんじゃねえぞ」

 

その正体は言うまでもなく、悟空である。

 

ベジータ「ふん…………」

 

少し遅れてベジータもその場に到達した。

 

 

四葉「お、お二人とも……………」

 

 

悟空「おめぇは離れてろ。あとはオラ達でなんとかする」

 

四葉「………分かりました」

 

四葉はすぐにその場を離れた。

 

悟空「…………ベジータ。本当にいいんか?」

 

ベジータ「奴のさっきの力を見て確信した。守るには羞恥を捨てるしかないようだな……………」

 

悟空「………やっぱりおめぇは最高だよ、ベジータ」

 

悟空とベジータはどちらが合図するわけでもなく、()()()()()に入る。

 

四葉「………!!!!」

 

零奈「あ、あれは…………!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

悟空「フュー……!!!!」

 

ベジータ「ジョンッ!!!」

 

「「はっ!!!!!」」

 

 

 

 

2人の指が触れた時、2人の体が光となった。悟空の体はオレンジ色の光に、ベジータの体は青色の光に変化して交差する。やがてその2つの光は混じり合って激しい閃光と共に新しい体を構築した。

 

 

 

 

 

 

「…………どうやら、ポタラで合体するのとはまた訳が違うようだな。だが、こっちはこっちでいい気分だ……」

 

零奈「す、凄まじい気の嵐……!」

 

四葉「これなら…………!!!」

 

 

「さて、お前だな?よく分からん理由でこの世界を壊そうとする者は……」

 

超4ゴハン「ああ。お前の名はなんという?」

 

「俺か?名前などどうでもいい」

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺は貴様を倒す者だ」

 

 

 

悟空とベジータがフュージョンしたことによって新たな戦士が爆誕した。その気はベジットに勝るとも劣らない膨大なものだ。彼は名前こそ名乗らなかったが、ポタラ合体の時とは名前が異なる。ゴクウとベジータでゴジータ…。それが今現れた究極の戦士の名前だ。

 

ゴジータ「さあ、覚悟はできているんだろうな?最初から全力で行かせてもらうぜ!!」

 

ドォォオオオッッ!!!!!

 

ゴジータは一瞬にして超サイヤ人2に変身した。しかしこれではさっき倒されたセルと同等程度の力である。とてもじゃないがゴハンに太刀打ちできそうもない。

 

超4ゴハン「………それがどうした」

 

ゴハンは冷静さを崩さずにゴジータに向かって突進していく。

 

ガッ…!!

 

超4ゴハン「………!!」

 

超2ゴジータ「はっ!!!」

 

ドカッッ!!!!!

 

ゴハンは腕を振るったが、ゴジータにいなされた。呆然としていたゴハンにゴジータの拳が顔面を襲った。

 

超4ゴハン「………今のはマグレか?」

 

自分の方がパワーもスピードも圧倒的に上であるはず。ならばこちらの方が有利になるはずだ。恐らく油断していたから攻撃を食らったに過ぎない。そのはずだ。

 

ズガガガガガガッ!!!!!

 

ゴハンの攻撃はしっかりゴジータに当たっている。当たってはいるのだが、全てゴジータの技術によって威力が殺されてしまっている。

 

超4ゴハン「ちっ!!!!」

 

ズォオオオオオオオッッ!!!!!

 

近距離で気功波を放ってしまえばゴジータも避けられないと踏んだゴハンは得意げな笑みを浮かべる。

 

超2ゴジータ「よっ…!」

 

だが、ゴジータは体を逸らして回避した。

 

ガンッッ!!!!

 

超4ゴハン「ぬぅ……!!!!」

 

そして、元に戻る勢いを利用してゴハンに頭突きを喰らわせた。ゴハンは口元を押さえていたが、そんなことは気にも留めずにゴジータの反撃が開始された。

 

超2ゴジータ「だあッッ!!!!!」

 

ドゴォォオオッッ!!!!!

 

ゴジータの綺麗な回し蹴りがゴハンの首にヒットした。

 

超4ゴハン「ちっ……!!この野朗…!!」

 

ゴハンはゴジータ相手に次第に怒りを感じ始めていたが、それが冷静さを欠く原因となっていた。ゴジータは長年の経験を活かして攻撃を躱していく。

 

超2ゴジータ「っしゃあッッ!!!」

 

ドゴォォオオッッ!!!!

 

そして隙を見て膝蹴りを顎に食らわせた。

 

超4ゴハン「うご…!?ば、馬鹿な…!パワーもスピードもこちらが上回っているはず……!!」

 

超2ゴジータ「パワーやスピードが勝っていれば勝てるってもんじゃないぜ?お前はまだまだだな」

 

ゴジータは悟空とベジータがフュージョンしたことによって誕生した究極の戦士だ。2人ともいくつもの死線を潜り抜けてきた戦士であり、その経験の多さは計り知れない。おまけに戦闘民族サイヤ人とは、戦えば戦うほど力を増していく。サイヤ人の血が濃ければ濃いほどその効率も上がっていくのだ。

 

老界王神の言葉を借りるなら、宇宙の中でも三本指に入る戦士のうちの2人が融合したのだ。力だけでなく、技術や経験も相当なものだろう。

 

超2ゴジータ「どうした?攻撃が段々と単調になってきてるぜ?」

 

超4ゴハン「だ、黙れ小僧がァアア…!!!!」

 

超2ゴジータ「俺からしたら、お前の方がよっぽどガキに見えるがな」

 

ドンッッ!!!!!

 

ゴハンはいつのまにか体が地についていた。ゴジータのエルボーによってそうなったのだ。

 

超2ゴジータ「さーて、この尻尾を切っちまえばお前は力を失うんだったよな?」

 

超4ゴハン「………!!!!」

 

ズォオオオオオオオッッ!!!!

 

超2ゴジータ「おっと……!!!」

 

ゴジータは危険を察知して直ちに尻尾から手を離して、その場から離れた。

 

超2ゴジータ「なるほどな。足かめはめ波みたいなものか……………」

 

超4ゴハン「ぐぅぅ…………!!!」

 

力とスピードならゴハンの方が好条件のはず。にも関わらず目の前のゴジータに不覚を取っていることにゴハンは内心苛立ち始めていた。

 

超4ゴハン「(何故だ……!!孫悟飯の肉体は最強のはずだ…!!誰にも敗れることはないはずだ………!!)」

 

超2ゴジータ「どうした?もう終わりか?」

 

超4ゴハン「一つ聞かせろ……!貴様は何故ここまで強いのだ…!単純なパワーやスピードなら私の方が上回っているはずだ……!!!」

 

超2ゴジータ「ああ、確かにそうだな。互角以上になるには超サイヤ人3になる必要があるだろうな。しかし、お前はその力を使い熟せていない。それは何故だか分かるか?」

 

超4ゴハン「………何?」

 

超2ゴジータ「それは貴様がサイヤ人ではないからだ。体は確かにサイヤ人の血を引いているが、肝心の中身はただの地球人………。サイヤ人の力を引き出せなくて当然だ。そう簡単に戦闘民族の力を使い熟せるもんじゃない」

 

超4ゴハン「吐かせ…。別に中身がサイヤ人である必要はない。()()もあるからな」

 

超2ゴジータ「前例だと…?」

 

超4ゴハン「貴様には、関係のない話だ!!!」

 

後ろから唐突に現れたゴハンの攻撃も長年の経験からか、すんなりと避けたゴジータは、ゴハンのみぞおちに肘をぶつけた。

 

超4ゴハン「かはっ………!!!」

 

超2ゴジータ「貴様は知らないんだろうな。守るべきものを持ってるやつは強いんだぜ?勝つ為ではなく負けない為に戦うなら尚更な………」

 

 

ここまでほんの数分だった。ゴジータは超サイヤ人2の状態で戦い続けている為、まだまだタイムリミットはある。残り25分以上は残っていた。この戦いを見届けていた者達は、誰もがゴジータが勝利するものだと確信していた。

 

超2ゴジータ「どうした?もう終わりか?俺はまだまだ行けるぜ?」

 

超4ゴハン「ち、畜生……!!」

 

 

膨大な気同士がぶつかり合っているのを察知して、他の戦士達も次々と現場に到着した。

 

ピッコロ「悟飯!しっかりしろ!!」

 

ピッコロは二乃の膝の上に寝かされている悟飯の元に駆け寄る。ただ気絶しているだけだと伝えられると安心すると同時に、連れてきたデンデに回復させた。

 

悟飯「……!!ここは……?」

 

デンデ「ご無事ですか、悟飯さん?」

 

悟飯「デンデにピッコロさんも……」

 

ピッコロ「お前ともあろうものが一方的にやられたようだな」

 

悟飯「はい……。相手は超サイヤ人4というものに変身して…………」

 

ピッコロ「まさか3の先があるとはな…。だが安心しろ。今は悟空とベジータが抑え込んでくれている」

 

悟飯「お父さんとベジータさんが…!?いくら2人でも………」

 

ピッコロ「それが、あいつらはフュージョンしたんだ。だから今のところは優勢だ」

 

悟飯「えっ……?」

 

悟飯は心底驚いた。ベジータは悟空と合体することを嫌がるはずだ。にも関わらず融合しているということは、それだけ今回の敵は相当脅威のある者なのだろう。

 

悟飯「………ですが、フュージョンは30分しか持ちませんよ…?今は優勢でも………」

 

ピッコロ「ああ。ヤツが何かしらの拍子に更にパワーアップした場合は、今のあいつらでも手に負えなくなるだろうな………」

 

 

 

 

 

超2ゴジータ「さて、そろそろ終わらせてもらおうか。どうせお前も知っているんだろう?30分という時間制限があることをな」

 

超4ゴハン「くっ………」

 

ゴジータは目の前の敵を消し去る為に気を溜める。それをいち早く察知したゴハンは対抗しようと試みるが…。

 

超4ゴハン「………」

 

突然、抵抗をやめてしまった。

 

超2ゴジータ「なに…………?」

 

弱ってきたとはいえ、ゴハンはまだまだ対抗できるほどの力を残していた。あれほどこの世界を壊すことに執着していたくせに、諦めるのが早すぎではないか……?ゴジータの頭の中にはそんな疑問が浮かんだ。

 

超2ゴジータ「……(もしや俺が大技を放った隙を見て何かしら仕掛けるようだな……)」

 

経験豊富なゴジータは相手が次に取る行動が大体予測できた。だから敢えて相手の意図通りに大技を放ってやることにした。

 

超2ゴジータ「かー……めー……はー……!めぇぇ………!!!」

 

両手に気を集中させ、青白い気の塊を生成する。その間もゴハンに対する警戒は怠らずに相手の動きを見ようとしていた。

 

超2ゴジータ「(さあ、どのタイミングで動くつもりだ?こっちはいつでもいいぜ…………)」

 

ゴジータは内心そう呟きながら……。

 

超2ゴジータ「波ぁぁああああああああああああああッッッ!!!!!!」

 

ズォオオオオオオオオオオオオオオオッッッ!!!!!!

 

その気の塊を放った。轟音と共に急速にゴハンに接近するが、ゴハンは動く気配を見せない。しかしゴハン程の力の持ち主ならばギリギリで回避することも可能性なはず。

 

超2ゴジータ「……なに!?」

 

だが、ゴハンは一切動かなかった。回避することもせずにそのままかめはめ波を受け入れたのだ。

 

超2ゴジータ「ど、どういうことだ…?」

 

自分の考えが外れたことでゴジータは動揺していた。敵はあれほど世界を破壊することに執着していたのに、そう簡単に諦めるはずもない。もしややられたフリをしているのか……?

 

超2ゴジータ「………気を消して隠れているのか……?」

 

 

 

 

 

 

ドカッッ!!!!!!!

 

超2ゴジータ「ぐぅ………!!!!!」

 

その衝撃は突然訪れた。相手が何か仕掛けることを警戒していたはずのゴジータが攻撃を許してしまうことなどあるのだろうか……?

 

超2ゴジータ「なっ………」

 

衝撃を感じた方に向き直すと、そこにはゴハンがいた。瞬間移動で後ろに回ってきたとしても、同じく瞬間移動を使えるゴジータならその動きを認識することができたはず。だがそれすらもできなかったのだ。本当に突然現れたとしか言いようがないのだ。

 

超2ゴジータ「………(直前になって奴の存在を再び感じた……。一体なんだというんだ………?)」

 

どうやら、ゴハンに備わっている力は膨大な気"だけではない"ようだ……。

 




 時間がかかって申し訳ないです…。投稿編集する時間が中々取れませんでした…。

 並行世界の無堂(ゴハン)について超簡単に整理すると、この無堂は『力そのもの』を恨んでいる。もっと言うなら自分の生活を滅茶苦茶にした『ドラゴンボール世界』のことも憎んでいる。その為、DB世界に馴染みつつある五つ子や人造人間零奈も駆除対象として見ている。だが一番恨んでいるのは元凶たるセル。
 何故この世界に来たか?それは原因が不明。誰かが転送させたのかもしれないし、単なる偶然か執念のせいかもしれない。『ゴハン』の体は、最初期の方で悟飯の血液が取られたDNAを活かして作られたクローン体。そこに無堂が憑依したという形になっている。

 超サイヤ人4vs超2ゴジータについて。こちらの優劣をつけるのは非常に難しいと感じました。恐らくベジットやゴジータなら超サイヤ人ぐらいになって超サイヤ人ゴッドなのではないかと思いました。(劇場版超ブロリーより、ブルー悟空と超サイヤ人ブロリーで苦戦していたのに、超サイヤ人ゴジータなら押していた&ゴッドの力を得る前の戦闘力だということを考慮した結果)。この辺は完全に作者の私見や偏見も入っているので違和感を感じた方もいるかもしれませんが、ご了承ください…。

……というような感じです。正直このお話どうやって纏めようか考えきれてないので、週一更新で手一杯です。そろそろ忙しくなくなるので、ようやく執筆に時間が回せそうだから、もう少しだけ待ってくだせぇ………。


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第107話 起死回生

※ミニコーナー
〜作者が修学旅行編の舞台にもなった京都に行ってきたよというお話〜

 実を言うと先週は京都に旅行に行ってきました。丁度紅葉ということで観光客で賑わってました。紅葉と寺の組み合わせが絶妙によく、SDカードの容量が大変なことになっちまってます………。

 そんなことはさておき、ごと嫁の聖地と呼ばれるところに時間の許す限り行ってきました。京都は主に修学旅行の舞台ですね。清水寺に伏見稲荷、東映映画村とか色々行って写真撮ってきました。実際に行ってアニメや漫画の再現度が高いことがよく分かりました。いや本当にまんまでしたもん。そして一番驚いたのが、たまたま行った大階段が2期OPで描かれていたこと。これは本当に偶々見つけたので物凄く驚きました。清水寺や伏見稲荷とかは定番の観光名所ですが、大階段は割と穴場なのかな………?もしこれから京都に行く人がいたら、京都駅近くの大階段に行ってみて下さい。夜に行くと本当に綺麗ですよ。

……………京都のバスの本数えぐいてぇ…。



警戒していたゴジータでさえも気づかないように背後を取って攻撃したことに悟飯とピッコロは驚いていた。

 

ピッコロ「なんてことだ……!!やつは瞬間移動も使えたというのか…!!」

 

悟飯「……………」

 

ピッコロは悟空のように瞬間移動を使えるのかと納得していたが、悟飯にはどうも違って見えた。どこかで見たことがあるような気がした。

 

悟飯「ピッコロさん。あれは恐らく瞬間移動ではありません」

 

ピッコロ「なに…!?ならどうやってアイツらに気づかれずに背後を取ったというんだ!?」

 

悟飯「それは……………」

 

身に覚えがあるということは、自分も戦ったことがある相手のはずだ。自分が戦ったことがある者といえば、ナッパにベジータ、ナメック星ではフリーザ軍の兵士にギニュー特戦隊、そしてフリーザ……。

 

悟飯「………ん?」

 

そういえばギニュー特戦隊には妙な奴がいた気がする。大した強さを持っていないにも関わらず何故か特戦隊として選ばれていた人物が…………。

 

悟飯「まさか、グルド……?」

 

ピッコロ「なに?なんだそいつは?」

 

悟飯「僕がナメック星に言った時に戦ったフリーザ軍のギニュー特戦隊って奴のうちの1人なんですけど、そいつは確か………、!!」

 

もしグルドが使っていたソレをゴハンも使えるとなると相当厄介だ。あれはあまり力を持たないグルドだったから勝てたが、それこそフリーザのような強敵が持ち合わせていたら間違いなく敗北していただろう………。

 

悟飯「まさか、あいつは時間を止められるんじゃ………!!!?」

 

ピッコロ「何ッ!!?」

 

風太郎「時間を止めるだと……?それが本当なら、あいつは無敵だぞ……!?」

 

悟飯「………」

 

だがグルドも無限に時間を止めていたわけではない。その能力を使うのにも制限があったはずだ。それが何かは分からないが……。

 

「………なるほどな」

 

悟飯「……!!!」

 

ピッコロ「お、お前は……!!!」

 

一瞬悟空と勘違いしてしまったが、そんなことはあり得ない。悟空はベジータと共に合体してゴジータとして奴と戦っている真っ最中だ。目の前に現れた者は悟空と同じサイヤ人で、同じ顔立ちをしていた。だが、違ったのは頬に刻まれた傷と血のように赤い鉢巻を身につけていることだった。

 

五月「孫君のお爺さま……!!!」

 

バーダック「よう。なんとか持ち堪えてるみたいだな」

 

ピッコロ「お前、何をしにここに来た…?」

 

バーダック「お前、俺の意識……いや、俺が頭の中で浮かべた映像をあいつに送ることは可能か?」

 

バーダックはナメック星人が不思議な力を持っていることは知っていた。しかしどのような異能を持ち合わせているかまでは把握してないから、念の為聞いたのだ。

 

ピッコロ「……できないことはないが、それをしてどうするつもりだ…?」

 

バーダック「相手が時間を止めてくるなら、こちらは先読みをすればいいだけのことだ……」

 

この説明だけで悟飯とピッコロは何がしたいのかが理解できた。

 

ピッコロ「………お前にはそんな能力があると………?」

 

バーダック「あいつもサイヤ人で、恐らくカカロットと王子が融合したのだろう?俺の一族が関わっているなら使えるはずだ」

 

ピッコロ「…………分かった」

 

 

 

 

 

 

 

超2ゴジータ「どうなっていやがる…!全く相手の動きを読めねえ…!!」

 

一方で、ピッコロ達があんなやり取りをしている時、ゴジータはゴハン相手に苦戦していた。

 

超4ゴハン「いや、直前で対応できているだけでも凄い方だろう?だが、その調子で大丈夫かな?」

 

超2ゴジータ「チッ………」

 

ゴジータもゴハンが気以外の方法で妙な術を使っていることはなんとなく察している。しかし、その術の効果や本質が分からない以上は対策しようにもない。

 

『おい、聞こえるか!?俺だ!ピッコロだ!!!』

 

超2ゴジータ「(なんだ…!見て分からないのか…!?今はコイツと戦うのに精一杯で………)」

 

『今からお前にある映像を送る!騙されたと思ってその映像を見てみろ!!』

 

超2ゴジータ「…(気に入らなかったらすぐに拒絶するからな)」

 

ゴジータは一度だけピッコロから送られてくる映像を見てみることにした。考えも無しに行動するピッコロではないことはゴジータもよく分かっている。何かしら今の状況を打破できる何かがあるからこそこんな状況で話しかけてきたのだろう。

 

超2ゴジータ「(信じるぞ、ピッコロ…!)」

 

すると、目の前のゴハンがまたしても消えた。気を探ってもどこにも存在を感じない。ピッコロに合図を送られ目を瞑る。すると…………。

 

超2ゴジータ「………!?これは……」

 

 

 

 

 

シュン‼︎

 

超4ゴハン「(もらった…!!)」

 

ゴハンは今度こそ決める為にゴジータの頸を狙っていた。今までの反応速度から見るに、今度こそ反応はできないはずだ。一気に力を込め……。

 

超4ゴハン「ぷはっ…………」

 

ゴハンは呼吸を再開した。それと同時に彼を除いて止まっていた時間が再び動き出した。この時止めは息を止めることによって可能としているが、息を止めながら……つまり、能力を発動させながら攻撃を仕掛けるのは身体に負担をかけてしまうから、攻撃する直前で能力を解除しているのだ。

 

何故このゴハンが能力を使用できるのかは、これまたレズンラカセイ兄弟が大きく関わっていた。ターレスがフリーザ軍の残党から入手したデータを元にグルドの超能力を一部とはいえ再現させてみせたのだ。その結果がゴハンに反映されているわけだが………。

 

ガッ…!!!

 

超4ゴハン「!!!?」

 

まるで行動が最初から読まれていたかのようにゴジータがすぐに反応した。

 

超2ゴジータ「だらぁッッ!!!!」

 

ドゴォォオオッッッ!!!!!

 

超4ゴハン「うごっ………!!!」

 

左手で攻撃を受け止めたゴジータは、右腕を使ってゴハンの鳩尾にエルボーをくらわせた。

 

超4ゴハン「ば、馬鹿な…!何故こちらの動きが……!!」

 

ゴハンは一時的に動揺するも、再び時を止めて今度こそ攻撃を当てようとする。先程よりも攻撃する直前まで息を止めるが……。

 

ガッ……!!!!

 

超4ゴハン「な、なに………!!!?」

 

しかし、またしてもゴジータに受け止められた。まるでどう攻撃するか予め分かっているかのような動きだった。

 

超2ゴジータ「お前、超能力と気を併用し続けたせいで、大分体力が落ちたんじゃないか?」

 

超4ゴハン「……!!」

 

超2ゴジータ「そうかそうか……。そろそろ本気出すか………」

 

ゴハンこと無堂は、ドラゴンボール世界に関連する出来事をどういうわけか知り尽くしていた。だが、2つの世界が融合したこの世界のことは全て知り尽くしているわけではない。故に、ベジット及びゴジータが更に力を引き出せることも知らないのだ。

 

超4ゴハン「き、貴様……!!!」

 

超2ゴジータ「一気に決めてやるぜ!!!」

 

 

ドォォオオオオオオオオオッッッ!!!!!!

 

 

超3ゴジータ「はぁぁあああああ……!!!!

 

 

超サイヤ人3に変身したゴジータは、更に気を溜め続けて、体が光り始めた。ゴハンは何か策はないかと練るが、相手の持ち時間はまだある。それに加えて超サイヤ人3に変身したばかりであるため、パワー切れになることもない。間違いなく絶対絶命のピンチだった。

 

 

超3ゴジータ「波ぁあああああああああああああああッッッ!!!!!!

 

ズォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッッ!!!!!

 

ゴジータの両手からかめはめ波…………いや、ただのかめはめ波ではなく、ベジータの得意技、ビックバンアタックも合わされた『ビックバンかめはめ波』が解き放たれた。その巨大な気功波はゴハンを飲み込む勢いで急速に迫っていた。ゴハンはかなり疲弊しており、能力を使う余裕はなかった。そして避けるほどのスピードも出せない。というより、かめはめ波のスピードが速すぎた。故に…………。

 

超4ゴハン「ぐっ…!うぉぉおおおぉおおぉおおぉ……!!!!!」

 

自身の体で受け止めるしかなかった。ただでさえ自分に近い力を持ち合わせていたゴジータが更にパワーアップし、その気弾を受け止めるのは正気の沙汰ではない。だが、こうする他なかった。

 

超3ゴジータ「しめたぜ…。お前はもう終わりだ」

 

ゴジータはビックバンかめはめ波を放つ手を右手のみに変えた。空いた左手を使って虹色のエネルギー弾を生成する。

 

超4ゴハン「……!!!!」

 

ある世界で、ジャネンバという邪念の塊と鬼が融合した強敵に対してゴジータが放ったものだ。この技は恐らく元気玉のように、邪気を取り払う効果があるのだろうと、初めて使う技だがゴジータはなんとなくそう感じた。

 

超4ゴハン「や、やめろ……!」

 

超3ゴジータ「はっ!!!!!

 

虹色の玉が放たれた。

 

超4ゴハン「やめろぉおおおおおお!!!!!!!!」

 

虹色の玉、ソウルパニッシャーは先程のかめはめ波を遥かに凌駕したスピードで迫っていた。かめはめ波を受け止めているゴハンには当然防御する術などなく………。

 

バチッッ!!!!!

 

超4ゴハン「ぐわァアアアアアアアアッッッ!!!!!!」

 

すぐに命中してしまった。

 

超3ゴジータ「波ぁああぁああッッッ!!!!!!

 

しかし、ゴジータはそれでも手を緩めるどころか力を入れ、かめはめ波を更に押し込んだ。当然ゴハンには今のかめはめ波を受け止める余裕もなく、あっさりと飲み込まれてしまった………。

 

 

 

 

 

ゴジータ「ふぅ…………」

 

ゴジータは超サイヤ人3の状態でかめはめ波とソウルパニッシャーを同時に使用したことによる疲労のためか、超サイヤ人状態を解除した。

 

二乃「た、倒したの……?」

 

ゴジータ「多分な。気を感じないから恐らく倒せただろう」

 

敵の姿が見えなくなったので、着地したゴジータの元にみんなが集まった。

 

ゴジータ「それにしてもバーダック。お前、いつからあんな自由に予知できるようになったんだ?」

 

バーダック「できるようになったのはつい最近だ。次に魔人ブウの時のような事態になるのを防ぐ為に自分の意思で未来を見えるようにした」

 

ピッコロ「未来が自由に見えるというのか……?それなら、どんな相手だろうと勝てるのではないか……?」

 

バーダック「馬鹿かお前は。自由に見られると言っても、俺の子孫に関連した未来でなければ見ることはできない。同じサイヤ人でも、王子の未来を見ることはできん」

 

ピッコロ「な、なるほど」

 

ゴジータ「それにいくら行動が分かったところで、実力に差があったら意味がない」

 

ピッコロ「そ、そうだ!それならお前の予知能力を使えば奴が倒されたかどうか分かるんじゃないか!!?」

 

バーダック「……それもそうだな。見てみるとするか………」

 

バーダックは頭を手で抑えて目を瞑り、未来の映像を見ていた。多少は頭痛を感じるが、それでも以前よりは余程マシだった。

 

バーダック「………おい、嘘だろ…?」

 

再び目を開けたバーダックは明らかに動揺していた。不穏な雰囲気を感じてピッコロが詳細を聞こうとしたその時……。

 

 

 

ドォオオオオオオッ!!!!!!

 

ピッコロ「なっ……!!!!」

 

悟飯「あ、あいつの気だ……!!!!」

 

ゴジータ「なんだと………?」

 

ドンッッッ!!!!!!

 

遠くに光の柱が見えたかと思いきや、目の前のゴハンが勢いよく着地したことによって、周辺の地面は地割れが発生していた。

 

ゴジータ「何故だ…。貴様は間違いなく俺の技をまともに食らった……。運良く生き延びたとしても、動けるほどの余裕はないはずだ…………」

 

超4ゴハン「私もそう思った…。だが、お前は超サイヤ人4の特性について1つ理解していないことがあった」

 

ゴジータ「なに……?大猿と超サイヤ人の性質を兼ね備えているんだろう?」

 

超4ゴハン「確かにそれも合っている。サイヤ人の象徴とも言える二つの変身を同時に起こしているということは、最もサイヤ人の力を引き出してるとも言える……。これで分かるかな?」

 

ゴハンの説明はイマイチだった。相手の顔を伺い、理解していないことを確認したゴハンは補足説明をした。

 

超4ゴハン「もう少し具体的に話そうか。超サイヤ人4はサイヤ人の力……、()()()()()()を取り込むことによって更にパワーアップすることができる」

 

ゴジータ「サイヤ、パワー………?」

 

五月「ど、どういう意味ですか…?」

 

聞きなれない単語を前に理解に苦しむ各々を見て、ゴハンは更に具体的な説明をする。

 

超4ゴハン「具体的には、サイヤ人が超サイヤ人に変身した際に発生する力だよ。その力を取り込むことによってパワーアップすることができる」

 

ゴジータ「………おい、まさか……!?」

 

ここまで聞いてゴジータはようやく理解した。超サイヤ人3は超サイヤ人の中でも強力な形態に当てはまる。その状態で放ったかめはめ波を一部でも取り込むことに成功したとするなら……。

 

超4ゴハン「ありがとう、ゴジータ。お前のお陰で私は更にパワーアップしたよ」

 

ゴジータ「くっ…!なら、気弾抜きで倒せばいいだけだ!!」

 

ボォオオオオッ!!!!!!

 

ゴジータは再び超サイヤ人3に変身してゴハンを睨んだ。

 

超4ゴハン「いいだろう。先程の借りは返させてもらう」

 

ドォオオオオオオッ!!!!

 

ゴハンが更に気を高めると、金色のオーラは今まで通りだったが、体の周りが赤く微かに光っていた。気を感じることができる者ならこの時点で分かった。どちらがこの戦いの勝利を収めるのかを。

 

超3ゴジータ「はっ!!!!!」

 

ドカッッ!!!!

 

超3ゴジータ「ぐおっ………!!!」

 

ゴジータから放たれた超速パンチを見事に避けたゴハンは、一気にゴジータに畳み掛けた。実はゴハンが当てた拳の数は1つではない。今の一瞬だけで軽く100発は超えているだろう。

 

超3ゴジータ「ぐはっ……!!!」

 

一気に100発もの攻撃を食らったゴジータはよろよろと地面に降りて倒れかけてしまう。しかし、例え口から血を吐き出したとしてもゴジータは立ち上がらなければならなかった。

 

ピッコロ「お、おい!!大丈夫か!!!?」

 

超3ゴジータ「退け。巻き添えを喰らうぞ」

 

この一言でゴジータがどれだけ危機感を感じたのかを察し、すぐにピッコロは離れた。

 

超4ゴハン「どうした?もう終わりか?」

 

超3ゴジータ「まだまだ終わらねえぜ…?」

 

今の一撃だけでも明らかに追い込まれているのが目に見えているというのにゴジータはまだ策があるようだった。何故か超サイヤ人2に戻ってその場を動かない。

 

超4ゴハン「………?何をしている?」

 

超2ゴジータ「…………体もってくれよ…!20倍界王拳ッッッ!!!!!!

 

 

ドォオオオオオオッ!!!!!!

 

 

悟飯「なっ…!!無茶だっ!!!」

 

超サイヤ人2の状態を維持しつつ界王拳まで使い出してしまった。しかし、こうでもしなければ今のゴハンには勝てないのも事実。体に負担がかかるとはいえ、背に腹は変えられなかった。

 

超2ゴジータ「オラァァッッ!!!!!」

 

ゴジータは最初から飛ばしていた。いくら悟空とベジータが融合して誕生したゴジータと言えども、超サイヤ人2の状態で界王拳を使用するなど無謀である。すぐに体力が尽きてしまうのは明白だが、ゴジータはこの一撃に賭けることにしたようだ。

 

 

 

 

ドカッッッッッ!!!!!!!!!

 

 

 

 

ピッコロ「や、やったか!!?」

 

側から見ればゴジータの攻撃が見事にゴハンに当たってように見えた。だがそれは違った。

 

超2ゴジータ「ば、馬鹿な………!!」

 

超4ゴハン「残念だったな。もう少し超サイヤ人2の状態に慣れていれば、もうちょっとマシな結果になっていたかもしれないね」

 

 

 

ズォオオオオオオオッッッ!!!!!

 

超2ゴジータ「ぐわぁああああああああああッッッッッッ!!!!!!」

 

ゴジータはただの気弾も防ぐことができずに流されるがまま地面に激突した。

 

ピュン‼︎

 

 

悟空「ち………くしょう…!!」

 

ベジータ「クソッタレめ………!!!」

 

それと同時にフュージョンさえも解除されてしまった。これによって一同はとてつもない絶望感を感じることになった。

 

五月「そ、そんな……!あの人達で勝てないなんて………!!」

 

三玖「どうすればいいの…?どうすれば勝てるの…………?」

 

四葉「う、上杉さん………!」

 

一花「フータロー………君……?」

 

四葉と一花が風太郎に助けを求めようとしたその時だった。

 

風太郎「………まない………。すまない、お前ら………!!」

 

なんと、あの風太郎が泣きながら五つ子に対して謝罪をしていたのだ。

 

二乃「な、なんで謝るのよ!?」

 

風太郎「お前らを笑顔で卒業させると約束した……!!それなのに……!それなのに…………!!!!」

 

五月「そ、そんな不穏なことを言わないで下さい!!!!」

 

最早風太郎は諦めていた。でもそれも無理のないことだった。相手は悟飯に完全体零奈、セル・ネオに加えてゴジータまでもを倒してしまった。自分達ではどうすることができないことを認識してしまい、その先にある未来を想像して絶望してしまったのだ。

 

一花「や、やめてよ!!フータロー君がそんなこと言っちゃったら、私は……!」

 

四葉「そ、そうですよ上杉さん!これから沢山の思い出を作りましょうよ!!!こ、こんなところで諦めちゃダメです!!!」

 

五つ子達はまだ微かに希望を抱いていたが、もう無理なのではないかと感じていたのも自覚していた。だから風太郎を責めることも否定することもできなかった。

 

悟飯「…………っ」

 

五月「もしかして、このまま世界は終わりを迎えるんですか……?」

 

三玖「いやだよ……!!私、やっとやりたいことを見つけたのに………!!」

 

悟飯「…………くっ…」

 

二乃「…………いやよ…!このまま終わるなんて……!まだもっと色々やりたいことがあるのに………!!?」

 

悟飯「………うぉおおおおおおッッッ!!!!!!!

 

悟飯は彼女らが絶望に染まる顔を見て覚悟を決めた。例え自分の身が滅びようとも、一時的に彼女達を悲しませることになったとしても、自分がなんとかしてみせる。あの時の父親のように……。

 

超4ゴハン「今更お前が向かってきたところでどうにもなるまい…。それとも、もう一度痛めつけられたいのか?生憎だが、もう生かすようなことはしないぞ?」

 

ボォオオオオッ!!!!!

 

悟飯が潜在能力を解放した状態である究極になる。だが、これだけでは足りない。さっきの感覚を思い出せ。二乃達が今にも殺されそうだったあの時のことを。その時に感じた感情を……。

 

究極悟飯「お前に、あの子達の人生を奪わせない……!!あの子達の笑顔は、俺が守る!!!!!!

 

ドォオオオオオオッ!!!!!!

 

超4ゴハン「……!!!!!?」

 

悟飯は限界の壁を突破した。今の彼はただの究極ではない。更にその先の領域に入ったようだ。その証拠として、今まではなかったスパークがオーラと同時に発生していた。

 

超4ゴハン「な、なんだ……!?なんだその力は……!!?」

 

ゴハンはどうやら今の悟飯の形態を見たことがないらしく、かなり慌てふためいていた。

 

 

シュン‼︎

 

超4ゴハン「!!?」

 

悟飯の姿を見失った。気や目、空気の流れなど様々なものを利用して悟飯の位置を特定しようとする……。

 

ドゴォォオオッッッ!!!!

 

究極悟飯「はぁあああッッ!!!」

 

悟飯の足がゴハンの頬に直撃した。その衝撃に耐え切れずに吹き飛ばされかけるが、なんとか踏みとどまった。

 

超4ゴハン「(さっきのゴジータに比べればまだマシだ……。だが、何故奴がこれほどの力を引き出せるのだ…?究極は15代前の界王神に潜在能力を限界以上引き出された姿のはず……。その先など存在しないはずだ……!!)」

 

しかし、それでも成長し続けるのが悟飯だ。彼は戦いを好まないが、誰かを守るためなら進んで戦う。もう失いたくないから、限界など簡単に突破してしまうのだ。孫悟飯とは、そういう人間なのだ。

 

二乃「す、すごい……!!すごいわハー君!!これなら………!!」

 

三玖「いける……!いけるよ!!」

 

五月「流石が私達の孫君です!!」

 

一花「いけ!ファイトー!!」

 

五つ子の顔に光が戻り始めた。ただ1人、四葉を除いて………。

 

いや、正確には四葉だけではない。気を感じることができる者は皆同じ顔をしていた。確かに悟飯は目覚ましい成長を見せた。それでも相手は超サイヤ人2の界王拳10倍ゴジータをあっさり倒す程の力を持つ化け物だ。

 

究極悟飯「はっ!!!!」

 

ガッ!!!

 

超4ゴハン「頭に乗るなよ…!!」

 

だが、ゴハンは悟飯の攻撃を受け止めた。だが、悟飯にとってそれは予想内のこと。特に驚くこともなく次の一手に出る。

 

究極悟飯「波ッッッ!!!!!

 

悟飯が受け止められた手から気弾を発射した。至近距離では流石の超サイヤ人4も避けることはできず、その気弾をモロに浴びた。

 

超4ゴハン「それがどうした!!?」

 

ドカッッ!!!!!

 

究極悟飯「ぐっ……!!!!」

 

しかし、それでもゴハンに対しては効果が薄かった。反撃をなんとか腕で受け止めようとするも、圧倒的な力に少しダメージを受けてしまう。

 

究極悟飯「魔閃光ッッ!!!!!」

 

超4ゴハン「ちっ!!!!」

 

悟飯は至近距離から魔閃光を放ったが、2度も同じ手は通用せず、弾き飛ばされてしまった。

 

超4ゴハン「驚いたよ。まさか単体でここまで、超サイヤ人の力も使わずに追いつくとはね…………」

 

究極悟飯「……………」

 

超4ゴハン「だが、それでもサイヤパワーを取り込んだ私には勝てない…!!大人しく諦めて世界の滅亡を受け入れろ…!!!」

 

究極悟飯「断る!!!」

 

超4ゴハン「なにぃ……!!?」

 

究極悟飯「この世界には、お前の言うように自分の力を私利私欲に使って暴れ回る奴もいる…!!気に入らないからってすぐに殺す奴もいる!!人の怯える顔を見たいからと殺そうとするやつもいる!!!でも、それと同時にいい人も沢山いるんだ!!!!!」

 

超4ゴハン「それは私も分かっているよ。でもね、君のように莫大な力を持つ者がいれば、いずれ世界は滅びる!」

 

ゴハンの言い分はなんとなく分かる。また魔人ブウのような凶悪な敵が現れれば、世界は滅びる可能性がある。しかしそれがなんだ?それがゴハンがこの世界を滅ぼしてもいい理由になり得るのか?

 

 

いや、そんなはずはない。

 

 

究極悟飯「もし間違った力の使い方をしている奴がいるなら僕が止める!!僕が倒す!!だからお前はこの世界に手出しをするなッッッ!!!!」

 

超4ゴハン「………あくまで諦める気はないようだな…………」

 

悟飯はあれほど叩きのめされてもゴハンに向かう理由はいくつかあるが、やはり一番大きいのは守りたい存在だろう。特に恋人である二乃は悟飯にとって大きな存在となっているだろう。二乃を殺してしまえば、悟飯は諦めるかもしれない。しかし怒りが限界点を超えて新たな力を引き出すかもしれない。だから二乃を殺すのは得策とは言えなかった。ならばどうやって悟飯を諦めさせる……?真正面から対峙すればいいのか……?

 

しかし、それでは体力の消耗が懸念される。その隙に再びゴジータもしくはベジットが爆誕すれば、ゴハンは今度こそ敗北してしまう。手短にサクッと倒す必要があった。

 

超4ゴハン「………!くたばれ!!」

 

ゴハンは悟飯に向かって気弾を放った。それはただの何の変哲もない気弾だが、悟飯は避けた。だがこの時点でおかしかった。悟飯が簡単に避けられる程の気弾を出すのはおかしい。

 

超4ゴハン「………ふっ」

 

ゴハンは不敵な笑みを浮かべた。その顔を見た悟飯は嫌な予感がして二乃達のいる方向を見た。

 

究極悟飯「し、しまった……!!!」

 

やはりそうだった。ゴハンは悟飯にではなく、二乃達目掛けて気弾を発射したのだ。

 

二乃「う、嘘……!!」

 

究極悟飯「くそ……!!」

 

しかし、これもまた罠の予感がしてならなかった。だが放っておけば二乃を始めとした悟飯の大切な存在が一瞬にして消されてしまう。だから迷っている暇などなかった。

 

悟空「や、やめろ悟飯ッ!!そいつは罠だぁああッッッ!!!!!」

 

悟空はそう声をかけるが、悟飯に選択肢などない。なんとか二乃の目の前に現れた悟飯は、気弾を弾き飛ばすことに成功した。だが、その気弾は決して悟飯にとっても軽いものではなかった。

 

 

バチッッ!!!!!!

 

 

究極悟飯「かはっ…………!!!!」

 

 

超4ゴハン「ちっ…!外したか…!!」

 

一本の光が悟飯の右胸を貫いた。左胸を外しただけでもまだマシな方だが、それでもただの負傷では済まされないレベルのダメージを負ってしまった。

 

二乃「は、ハー君ッ!!!」

 

ピッコロ「き、貴様ぁ……!!!」

 

デンデ「悟飯さん!今直します!!」

 

超4ゴハン「させるかぁッッッ!!!!!」

 

ゴハンが再びデンデに向けて一本の光を放った。

 

ボォオオオオッ!!!!!

 

超2バーダック「それはこっちの台詞だッ!!!」

 

バーダックは予知能力を活かしてビームを弾き返すとまではいかなくとも、弾道を逸らしてデンデへの直撃を阻止した。だが今のバーダックにできるのはこれが精一杯だった。

 

超4ゴハン「予知能力とは厄介なものだな………。ならこちらも………」

 

ドカッッ!!!!!!!

 

超2バーダック「うごっ……!」

 

バーダックには予知能力が備わっているものの、超サイヤ人4に変身したゴハンに時を止められては対抗することができなかった。バーダックはなすがまま遠くに吹き飛ばされた。

 

ピッコロ「デンデ!今のうちにやれッ!!!!!!」

 

デンデ「は、はい!!!」

 

ゴハンがバーダックに注意を引いている隙に悟飯を回復させようと試みるが、ゴハンはそこで回復させるほど甘くはなかった。

 

超4ゴハン「無駄だ!」

 

ビッ!!!!!!

 

またしても一本の光が放たれた。今度は防げる者が誰もいなかった為、デンデは…………。

 

 

 

 

 

シュン‼︎

 

 

悟空「甘えぞ…!!」

 

超4ゴハン「瞬間移動か………!!!」

 

今度は悟空が瞬間移動を使ってデンデを救出した。

 

………しかし、これではデンデが悟飯の怪我を治すことが一向にできないのだ。それを理解したゴハンは悟空達に注意しながらも、悟飯にトドメを刺そうとする……………。

 

ピッコロ「魔貫光殺砲ッッ!!!!!!!」

 

ビィイイイイイッッ!!!!!!!

 

しかし、悟飯の師匠であるピッコロがみすみす悟飯を見殺しにするわけがなかった。バーダックや悟空がデンデを庇っている間に魔貫光殺砲をチャージしていたのだ。

 

 

 

超4ゴハン「下らん」

 

 

バシンッッ!!!!!!

 

 

ピッコロ「なっ………!!!!」

 

なんと、一言だけ吐き捨ててこちら側に弾き飛ばして来た。ピッコロの後ろには五つ子や風太郎のような一般人もいる。

 

ピッコロ「このクソ野朗が……!!」

 

ピッコロは、弾き返された自身の技を右手でなんとか受け止めようとするも、片手だけで止めることなどできるはずもなかった…………。

 

ピッコロ「ぐぁああああッッ!!!」

 

右手に自分の技を受け、その腕は切断されてしまう。しかしナメック星人にとって、腕の一本や二本が失うことなど大した問題ではない。体力を消耗するとはいえ、すぐに再生できるのだから。

 

だが、問題はそこではない……。

 

 

ドグォォオオオオオオオオオンッッ!!!!!

 

ピッコロ「す、すまん………!!!」

 

悟空「嘘だろオイ…………!!?」

 

悟飯「み、みんなぁああああぁあああああッッ!!!!!!!!

 

なんと、ピッコロは弾き返すことができずに、後ろにいた五つ子達の方に魔貫光殺砲が向かってしまったのだ。

 

ベジータ「何をしてやがる、ピッコロ…!!!」

 

ドシャ

 

五月「かはっ…………」

 

一花「いった…………………」

 

だが、ピッコロが受け止めようとしてくれたお陰だろうか…?なんとか直撃は免れ、爆風で吹き飛ばされた際に生じた軽度の切り傷や擦り傷で皆済んでいた。

 

 

悟飯「き、貴様ぁあ………!!!」

 

超4ゴハン「惜しかったな。纏めて始末できるかと思ったのだが…………」

 

ドガガガッッ!!!!!

 

悟飯「……!!!?」

 

何をされたのか理解できなかった。ゴハンは悟飯に指一本触れてもいない。だが、確かに殴られた感触はあった。その威力に負け、悟飯は地面に倒れ込んでしまった。

 

実は、ゴハンは拳圧だけを連打して悟飯に攻撃したのだ。その攻撃は誰にも視認することができない程の速さで放たれ、防御することすらも許されずに攻撃を受けさせられたのだ。

 

超4ゴハン「終わりだよ、お前は……」

 

ゴハンは今度こそ悟飯にトドメを刺そうとゆっくりと歩み寄った。先程よりもパワーは落ちているとはいえ、まだゴジータと戦った時以上の力は持ち合わせていた。

 

悟空「べ、ベジータ!!ダメ元でもう一度フュージョンすっぞ!!!」

 

ベジータ「何!?あれは1時間経たないとできないのではなかったのか!!?」

 

悟空「そう言われてるけど、やるしかねえぞ……!!このままじゃ……!!」

 

ベジータ「ちっ……!!やるぞ、カカロットッッ!!!!!」

 

 

 

 

 

 

ズォオオオオオオオッッッッ!!!!

 

悟空「なっ………!!」

 

ベジータ「馬鹿な………!!!」

 

突如放たれた気功波に悟空達はなす術もなかった。しかし防御だけは長年の戦闘の感から咄嗟にすることはできたものの、気功波を食らってしまう。

 

悟空「ぐぁああああ………!!!」

 

ベジータ「くそ……!!!!」

 

ゴハンはなんとしてもフュージョンさせない気だ。ゴジータさえいなければ、後は敵という敵は存在しない。強い相手と戦いたがるサイヤ人やセルとは根本的に違った。本当に目的のためなら寄り道など一切しない。そんな思考の持ち主なのだろう。

 

超4ゴハン「さて、もう邪魔はいないな。最後に言い残すことはあるか?一応君はこの世界の娘達を守りながら生き抜いて来たんだ……。遺言くらいは聞いてやる」

 

悟飯「………」

 

超4ゴハン「…………何もないか…。それもそうだ。お前を殺したら、後は敵はいない。遺言を残したところで覚えてる者は私以外いないのだからな……。実に賢い判断だ」

 

ゴハンは表情一つ変えずに光の剣を作り出した。

 

超4ゴハン「さらばだ、孫悟飯」

 

そのまま悟飯に向けて剣が……………。

 

 

 

 

 

 

 

 

ザシュッ!!!!!

 

悟飯「………………えっ?」

 

超4ゴハン「何……!?」

 

……………()()()()突き刺さらなかった。

 




 マジで週1で手一杯状態になってるがな……。楽しみにしてる方には本当に申し訳ない………。今ガンガン書いているから回復するまでもう少し待ってほしいなり…。

 さて、本編の補足に入ります。悟飯が究極化した際のスパークは、スーパーヒーローを参考にしたものです。あの形態は通常の究極よりは強いだろうなという想像の元このような形になりました。ゴジータが敗北することは中々ありませんが、ここは悟飯に花を持たせたいということでご容赦くだせぇ…………。だけどあの状況で悟空とベジータが合体しないわけないので、ゴジータかベジットは出さなきゃまずかったと思っています。

 この戦い自体は次回で最後になる………と思う。


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第108話 僕達は天使だった…

 ちょっと今回の前書きはいつものミニコーナーとは違ってただのぼやきみたいなものです。先に申し上げるとこの108話を持ちまして、本編における戦闘シーン(修行等のトレーニングは除く)は全て終わります。完全オリジナル回とも言える今回と人造人間零奈編が一番構成に苦労した記憶があります……。
 何気にこの作品が投稿され始めて1年が経つのかな…?時の方が流れは早いですねぇ…。では本編をどうぞ。



ゴハンの手から伸びる気製の剣が悟飯を突き刺したように見えたが、何故か悟飯の胴体を突き抜けなかった。

 

一花「なっ…………」

 

五月「どう…………して……………!」

 

だが、悟飯の体に血が飛び散った。赤黒くて鉄臭い。しかし妙に綺麗だった。妙に生温かった。

 

悟飯「う、嘘だ……………………」

 

三玖「な、なんで……………………」

 

だが、その血は悟飯のものではない。確かに先程ゴハンのビームによって右胸が貫かれた。だが、気をコントロールすればなんとか出血は抑えられる。故に悟飯のものではない。ならば……。

 

 

 

 

 

ドサッ……

 

悟飯を庇った者が倒れ込んできた。悟飯はその者をすぐに抱き抱える。

 

悟飯「そ、そんな……!!どうして君が………!!!!なんで前に出てきたんだッッ!!!!!」

 

悟飯は自分自身に対して守れなかった怒り、悲しみを含んで彼女に叫んだ。

 

「…………だって、あなたには死んでほしくなかったんだもの……………」

 

四葉「二乃……!二乃ォ!!!」

 

そう。悟飯の恋人であり、大切な存在である二乃だった。何故ピッコロのようなZ戦士達じゃなくて二乃だったのだろうか……?彼らは激しく体力を消耗していたし、ゴハンによる妨害を受けていた。しかし五つ子や風太郎はノーマークだったのだ。だから二乃は動く暇があった。

 

悟飯「なんで……!!どうして…!!!!!」

 

二乃「いや、なのよ……!もう、あんな気持ちを味わいたくなかったの…。大切な人が消える、あの気持ちは…………」

 

悟飯「でも、だからって…………!!なんで……!!!!」

 

二乃「言ったでしょ……?女の子は、好きな男の為なら、戦場にだって飛び込めるんだって…………」

 

二乃の声が段々小さくなっていく。血液が流れ出ていくと同時に、二乃の魂が段々抜け落ちていくかのように、徐々に二乃の体に力が入らなくなっていく。最早喋ることすらも難しくなっていた。

 

でも、二乃は悟飯に言わなければならないことがあった。だから自分の身を犠牲にしてでも、彼の前にやって来たのだ。

 

悟飯「だからって……!!君の身を犠牲にする必要はないんだよ……!!!」

 

二乃「………ごめんなさい」

 

弱々しい声で、二乃がそう言った。

 

二乃「私ってね、考える前に先に行動しちゃうタイプなの。ごめんね、こんな馬鹿な私で……。こんな手段しか取れない私で……………」

 

悟飯「で、デンデ!!!早く二乃を!!!!」

 

デンデ「は、はい!!!」

 

二乃の気が段々小さくなっていく。それに気付いた悟飯はデンデに回復の依頼をする。今ならまだ間に合う。命を失う前なら、まだ間に合う。

 

だが…………。

 

 

超4ゴハン「させるか」

 

 

ドガガガッッ!!!!!!

 

ピッコロ「ぐぁああ……!!!!!」

 

悟飯「ピッコロさんッッ!!!!」

 

デンデに向けて放たれた複数の気弾をピッコロが庇う形で当たりにいく。

 

ピッコロ「悟飯……………」

 

ピッコロは最後に何かを言い残し、重力に従って地面に落ちながら気絶してしまった。

 

悟飯「そ、そんな………!!僕は、また守れなかったのか……?」

 

また守れなかった。あの時の悟空のように、また人を死なせてしまうのか…?自分の実力が伴わないばかりに、また殺してしまうのか………?絶対に守ると誓ったばかりなのに、彼女を死なせてしまうのか…………?

 

 

 

 

いやだ。そんなの嫌だ。

 

嫌だ、嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だッ………!!!!!

 

 

 

悟飯「嫌だぁぁあああああぁああああぁああッッッ!!!!!!!

 

悟飯は目の前の現実を否定するように泣き叫んだ。悟飯がここまで涙を流して泣き叫ぶのは初めてだった。むしろ今まで泣かなすぎただけだった。同い年の普通の男子なら、悟飯と同じ経験をすれば泣いた回数は数え切れないものとなっていただろう。悟飯は強かった。でも、それは守りたいものがあったから。大切な存在がいたから。

 

 

悟飯は我を忘れるように泣き叫んだ。もう嫌なのだ。戦うのも、悪い奴と会うのも。自分の大切な人が死ぬのも、傷つけてられるのも………。もう、懲り懲りなのだ。

 

超4ゴハン「…………壊れてしまったか」

 

悟飯はひたすら泣き叫ぶ。大切な存在を失いたくないという我儘。自分に力がないせいなのは分かってる。それでも、死なせたくなかった。一緒にいたかった。

 

 

 

 

 

そっと、突如彼の頬に彼女の温かく、ほのかに甘い香りを発する手が触れた。

 

悟飯「………!!」

 

二乃「---」

 

悟飯「な、何を………?」

 

二乃は笑顔を作りながら何かを悟飯に伝えた。その直後………。

 

ガクッと……彼女の体から力という力が失われるのを感じた。

 

悟飯「に、二乃……!!二乃!!!!」

 

彼女を呼びかけるが、反応がない。気を確認することもできない。だけど、その事実から目を逸らすように悟飯は呼びかける。

 

悟飯「二乃!!しっかりしてよ、二乃!!!!!」

 

風太郎「ご、悟飯!!!!二乃はドラゴンボールで生き返ることができる!!!だから冷静になれ!!あの偽物さえ倒せればいいんだ!!!!」

 

風太郎は冷静に物事を見て、悟飯に冷静さを取り戻すように言う。確かに二乃は死んだとしてもドラゴンボールで蘇生可能だ。何も2度と会えないわけではない。

 

 

 

超4ゴハン「ほう?その創造者が無事でなかったとしてもか?」

 

ドサッ!

 

 

風太郎の目の前に緑色の物体が投げ出された。なめくじのような触覚に、青紫色の液体が所々付着している物体…。

 

風太郎「お、おい………。まさか、神様か!!!!?」

 

悟飯と二乃が会話をしている間に、頼みの綱とも言えるデンデすらもやられてしまったのだ。いや、気を感じない。殺されてしまった。これではドラゴンボールは復活したとしてもただの石ころだ。

 

 

 

もう誰も生き返れない

 

 

 

悟飯「そ、そんな……!!そんなのって………!!!!」

 

超4ゴハン「(まだナメック星のドラゴンボールが存在するが、それすらも思い出せないくらいに動揺しているか……。二乃が自ら私に突っ込んだ時は本当に驚いたが、いい方向に事が転がりそうだな)」

 

悟飯「そんな………………」

 

悟飯はドラゴンボールすらも失ったことで完全に戦意………いや、生きる気力すらも失ってしまった。

 

超4ゴハン「おや?どうした?ダンマリか?」

 

悟飯「二乃……。お願いだから、目を覚ましてよ………。死んじゃ、嫌だ……」

 

四葉「……そ、孫さん……?」

 

四葉達にとって最後の希望とも言える悟飯は完全に壊れてしまった。大切な存在とはもう二度と会えない。その事実が心を激しく傷つけた。

 

風太郎「嘘だろ………?しっかりしろ!!!」

 

零奈「二乃…………。む、無堂先生……。あなたという人は……!!あなたという人はァアアッッ!!!!!!」

 

零奈は生前も感情を表に露骨に出すということをしたことがない。だが、二乃が殺されたことで鉄の仮面と言われた彼女の顔が完全に崩れた。その顔は憎悪。憎い存在をなんとしてでも殺したいという顔だった。

 

ガッ!!!!!

 

だが、実力差は明白。零奈はあっという間に意識を持っていかれてしまった。

 

超4ゴハン「哀れだな零奈。君も同じ場所に送ってあげるさ………」

 

一花「お、お母さん!!!!」

 

三玖「やっ……!!助けて!!」

 

四葉「そ、そうだ…!まだ手がある…!!」

 

超4ゴハン「融合か?しかし二乃はもういないぞ?それでは、完全体になることもできないだろう……?」

 

ゴハンはゆっくり、ゆっくりと五つ子と風太郎の元に近づく。唯一気を扱える四葉が迎撃するが、当然のようにビクともしない。平然とした表情でゴハンはゆっくり歩き続ける。しかし悟飯は二乃を抱えたまま彼女の名を呼ぶだけだった。

 

 

 

 

 

ベジータ「ビックバンアタックッッ!!!!!!!

 

悟空「元気玉ダァアアアアッッ!!!!!!

 

ベジータは速攻で作り上げたビックバンアタック、悟空は久々に片手サイズの元気玉を作り上げてゴハンに当てた。

 

ベジータ「この世界を……!!ブルマとトランクスを………!!!殺させてたまるかァアアッッ!!!!!!」

 

ボォオオオオッ!!!!!!

 

ベジータは残りの力を振り絞って超サイヤ人に変身した。

 

悟空「オレは、おめぇだけは絶対に許せねえッッ!!!!!!」

 

ボォオオオオッ!!!!

 

悟空もまた、残り少ない力で超サイヤ人に変身した。実は一度フュージョンを試せたのだが、やはりまだ再び融合することができなかったのだ。だから単体で向かうしかなかった。

 

超悟空「だあッッ!!!!」

 

ドガガガッッ!!!!!

 

平然と歩き続けるゴハンに拳を叩き続ける。しかしゴハンの足は止まらないし、気にも留めない。

 

超ベジータ「死ねッ!!くそったれめぇ!!!!!!」

 

ドカッッ!!!!!!!

 

逆にベジータは大きな一撃をゴハンの首に叩き込むが、同じくびくともしないし気にも留めない。

 

超4ゴハン「鬱陶しいハエがッッ!!!!」

 

ブォオオオオオオオオッ!!!!

 

超悟空「グァアア……!!!!」

 

超ベジータ「ふぉおお……!!!」

 

 

ゴハンは流石に鬱陶しくなったのか、気を解放して2人を吹き飛ばした。

 

 

 

 

 

 

ドドドドドドッ!!!!!!!

 

超悟空「何もしねえままやられるかァアアッッ!!!!!」

 

超ベジータ「俺達はサイヤ人だぞ…!戦闘民族を、舐めるなァアアッッ!!!!!!」

 

だが、遠くから気弾の雨を降らせてゴハンに攻撃する。

 

超4ゴハン「懲りない馬鹿どもめ。己の実力を弁えることすらもできないのか!!!サイヤ人というのは!!!!」

 

 

ドカッッ!!!!!

 

超悟空「がっ………!!!?」

 

ドゴォォオオッッ!!!!!

 

超ベジータ「ゴッ………!!!!」

 

痺れを切らしたゴハンが本格的に手を下した。

 

超4ゴハン「貴様らのせいだ…!貴様らがいたからセルが誕生した!だから私の家族も殺されたんだ!!!なのに貴様らは自分の番になったら拒否するというのか!!!!?そんなことが許されてたまるかァアアッッ!!!!」

 

 

ドグォォオオオオオオオオオンッッ!!!!!!!!

 

 

ゴハンは気を溜めて周辺を爆発させた。かなりの高度で爆発させたため、地上には然程影響がなかったものの、強風に襲われた。しばらくすると、煙の中から黒髪に戻ったベジータと悟空が落ちてきた。

 

圧倒的な敗北。もう誰もまともに戦えない。ドラゴンボールもなくなった。希望は残されていなかった。

 

風太郎「くそ……!!!」

 

だが、風太郎だけは諦めなかった。彼だけは決して希望を捨てなかった。先程覚醒した悟飯を見て、希望を持ち直したのだ。ズンズンと悟飯の方に歩いていく。悟飯はまだ二乃のことを呼び続けている。そんな悟飯の胸元を強引に掴んだ。

 

風太郎「てめぇ…!!!いつまで惚けてやがるんだッッ!!!!お前がやらなかったら誰がやるんだよッッ!!俺との約束を破る気か!!!!?」

 

悟飯「……………」

 

しかし、悟飯は答えなかった。

 

風太郎「お前が諦めてる中で、他の奴はみんな希望を見出している!!お前の師匠や父親なんかは気絶するまで戦ってたぞ!!!?」

 

悟飯「………………」

 

風太郎「なのにお前はこのまま好きなように暴れさせて負けるのか!!悔しくねえのかよ!!お前の大好きな二乃が殺されてなんとも思わねえのか!!!!!」

 

悟飯「そんなわけないッッ!!!!」

 

愚問だと言わんばかりに悟飯が感情的に返答した。

 

風太郎「なら最後まで諦めるなよ!!!二乃がなんでお前を庇ったか分かるか!!!?好きだからって理由もあるだろうが、それだけじゃねえッッ!!!!お前が勝ってくれるって信じていたからお前を庇ったんだッッ!!!!!」

 

悟飯「……………!」

 

風太郎「その信用を無下にするのか!!?二乃を犬死させる気かッ!!?」

 

悟飯「ぼ、僕は……………」

 

…………そうだ。戦いが嫌いだからって避けちゃダメだ。二乃はいないけど、三玖さんに五月さん、一花さん、四葉さんだって………風太郎もいる。悟天もいる。お母さんもいる………。みんなはまだ生きている。こいつを放置したら、みんな殺されてしまう………!!

 

 

 

 

『自分の力を信じろ…!悟飯………』

 

ここで、悟飯はピッコロに何を言われたのかを思い出した。気絶する直前だと言うのに、自分にエールを送ってくれていたとは…………。

 

 

 

『泣くのは、後にしなさい………。気付いたでしょ?あなたも我儘なのよ?』

 

『な、なにを…………』

 

『いいのよ。もう我慢しなくてもいいんだから。あの夜の時みたいに、自分に正直になりなさい………。本当のあんたを………悟飯を、さらけ出しなさい…………』

 

『に、二乃………!!!』

 

『私は先にいっちゃうけど、あんたまでこっちに来たら………許さないんだか…ら……………』

 

そして、二乃との会話も思い出した。二乃が死んでしまう現実を受け止め切れずに、本能的に記憶を封印していたが、向き合わなければならない。奴を倒さなければ、彼女が大好きだった家族や世界も滅ぼされてしまう。何より、彼女は悟飯を信頼していたのだ。全てが終わったその時、自分を生き返らせてくれることを信じて…………。

 

 

 

 

さあ、己の力を引き出すんだ。

 

 

怒れ、自分の無力さに。

 

怒れ、相手の理不尽さに。

 

怒れ、大切な者を傷付ける存在に……。

 

 

 

『愛してるわ、ハー……くん………』

 

 

悟飯「うぁぁぁああああああ……!!!!!!

 

 

超4ゴハン「………!!!!!??」

 

 

空気そのものが変わった。上空に存在していた雲が悟飯を中心に渦巻き始める。悟飯を中心に風も発生している。振動、発電、発熱………。あらゆる現象を引き起こしていた。

 

 

超4ゴハン「な、なんだ……!!?何が起きたというんだッッ!!!!?」

 

目は獣のように赤く血走り、髪が逆立ち始め、紫電と表現するにふさわしいスパークが悟飯を纏い始めた。

 

 

さあ、解放しろ、己自身を。そして、手短に戦いを終わらせてしまえ。戦いが嫌いなら、とっとと終わらせることができるほどの、圧倒的な力を得てしまえばいい。

 

 

悟飯「うぁぁぁああああああああアアアアアアァアアアアアアアァアアアアアアアアァアアアッッッッッッ!!!!!!!!!!!!

 

グォォオオオオオオオオオオオオオオオオッッ!!!!!!!!!

 

 

大きな雄叫びと共に悟飯の気が一気に膨張し、周りを包み込んだ。

 

 

 

 

 

超4ゴハン「な、なんだ………?」

 

 

光が収まったと思いきや、身体中でヒシヒシと感じる恐怖………。ただ気が膨大なだけではない。この力は異質だ。なんだ?超サイヤ人ではない。本能が訴えている。あの化け物とは対峙するなと………。

 

超4ゴハン「な、なんだ………!?何がどうなってるんだ………!!!?」

 

 

 

煙が晴れ、莫大な銀色のオーラと共に目が炎のように赤く染まった悟飯が現れた。周りには紫電が時折り発生し、それが更に恐怖感を煽る。()()()()()()()()()()が、心なしか髪が少しだけ伸びているようにも見える。その髪が重力に逆らって立っている為、悟飯がより一層大きく見えた。さながら毛を逆立てて少しでも自分を大きく見せようとするライオン…………否、獣のようだった。

 

 

悟飯「………………」

 

 

風太郎「な、なんだ…………?」

 

四葉「何が…………起きて………?」

 

 

悟飯「ウォォオオオオオオオオオオッッッッ!!!!!!!!

 

 

 

 

 

ドゴォォオオッッッ!!!!!!

 

超4ゴハン「ぐふっ………!!!!」

 

今、ゴハンは自分が何をされたのか理解できなかった。だが、何かしら攻撃されたのだけは理解できた。反撃しようと試みるが………。

 

超4ゴハン「……!(か、体が……!!)」

 

そう、体が言うことを聞かなかった。これは悟飯が特殊な能力を持ち合わせているわけではない。目の前の悟飯に恐怖し、動けなくなったのだ。まさに『蛇に睨まれた蛙』状態。先の一撃で上下関係が完全に決したのだ。それを本能で理解してしまったから、体が動かなかったのだ。

 

悟飯「…………」

 

コツコツと、悟飯は一歩ずつ近づいていく。その度にゴハンの恐怖心は増すばかりだった。

 

超4ゴハン「ふ、ふざけるな……!ふざけるなッッ!!!!私こそ最強だッッ!!!超サイヤ人4なら誰にも負けない………!!!!超サイヤ人4は、最強の形態だぞ………!!?」

 

ゴハンは本能に逆らって無理矢理体を動かす。両手に光の玉を生成し、それを合成した。

 

超4ゴハン「これでも食らってくたばれ!!!10倍かめはめ波ァアアアアァアアアアッッッ!!!!!!!」

 

ズォオオオオオオオオオオオッッッ!!!!!!!!!

 

巨大なかめはめ波が悟飯に向かって突き進む。だが悟飯は動じることもなかった。

 

悟飯「グァァアア………!!!!」

 

悟飯は両手でかめはめ波を掴み、強引に圧縮し始めた。

 

超4ゴハン「な、何ッッッ!!!!?」

 

 

シュン……

 

 

数秒もすると、悟飯の圧倒的な力によって、押し潰された。

 

超4ゴハン「ば、馬鹿な………!そんなはずは……………」

 

悟飯は何事もなかったかのように再び歩き始めた。

 

超4ゴハン「くっ……!な、なら……!!!!」

 

シュン‼︎

 

三玖「きゃっ!!!!」

 

 

ゴハンは高速移動をして三玖を捕らえると、盾にするようにして三玖を前に突き出した。

 

超4ゴハン「コイツがどうなってもいいのか!!!?お前が変な動きを見せれば、こいつは死ぬぞ!!!!!」

 

その言葉を聞くと、悟飯は歩みを止めた。

 

超4ゴハン「よ、よーし…………。利口だな。そのままジッとしていろよ?貴様の手足を不自由にしてから三玖は解放すると約束しよう……………」

 

どこぞの大魔王を思い出させる卑劣な作戦で悟飯を追い詰めようとする。勝利を確信したゴハンは、恐怖心を押し殺しながら悟飯の足に狙いを定める……。

 

 

超4ゴハン「………なっ」

 

だが、片手で捕まえていたはずの三玖がいつのまにか自分の前、悟飯がいたところにいた。

 

悟飯「相変わらず卑怯なやつだな。世界は変わって父親らしくなっても、根本的な部分は変わらないな」

 

超4ゴハン「なんだと………!!?」

 

いつの間にか自分の背後を取られていたのだ。悟飯の声を聞くまで全く気づかなかった。

 

超4ゴハン「くっ……!!あり得ん…!!あり得んッッ!!!そんな力、私は知らないぞぉおおおおおおッッッ!!!!!!!!」

 

ドカッッ!!!!!!!!

 

悟飯の胸に向けて正拳突きが放たれた。だが、悟飯は表情一つ変えずにその猛激を胸で受け止めていた。

 

悟飯「この程度か………。今度はこっちの番だ」

 

 

 

ドゴォォオオッッッ!!!!!!!

 

悟飯の渾身の一撃が、ゴハンの頬、腹部、足。これらの部位に同時に命中した。その力は凄まじく、ゴハンは物理法則に従って吹き飛ばされた。

 

 

ズザァアッ‼︎

 

だが、ゴハンは途中で踏み留まった。

 

 

超4ゴハン「はぁ………はぁ…………!かかったな………!!!」

 

ガシッとある人物達の頭を掴んだ。

 

悟飯「…………貴様……」

 

超4ゴハン「もらうぞ!お前達のサイヤパワーをッッッ!!!!!」

 

悟空「グァアアァアアッッ!!!!」

 

ベジータ「グォォオオオォオオオッッッ!!!!」

 

右手で悟空の、左手でベジータの頭を掴んで2人の力を強引に吸い出す。その影響によって、意識を失っているにも関わらず、2人は強制的に超サイヤ人に変身させられていた。しばらくすると2人は黒髪に戻り、掴まれていた頭を離されたことによって解放された。

 

超4ゴハン「貴様なんぞに……!!貴様なんぞに負けてたまるかぁあッッ!!!私は力を持つ者を滅ぼし、最後に私自身が自決することによって、『力』を完全に消滅させる……!!その悲願を達成する為には、貴様に負けるわけにはいかんのだァアアッッ!!!!!!」

 

サイヤパワーを取り込んだことによってゴハンは更にパワーアップをした。これで悟飯が圧倒できるというほどではなくなったものの、倒せない相手ではない。

 

悟飯「…………哀れだ」

 

超4ゴハン「何………?」

 

悟飯はその一言だけ述べた。すると、少し離れた場所から白い光が発生した。神々しい白の光が地面から発生しているのが分かった。

 

超4ゴハン「こ、今度はなんだ……!!!!?」

 

 

 

 

 

 

スタッ

 

少しすると、髪の長い少女が2人の目の前に現れた。薄桃色の綺麗な髪が風と共に靡く。まるで女神のような純白の服に、純白の帽子を深く被っていた。

 

悟飯「君は………………」

 

「ごめんね、悟飯君。君にばっかり背負わせちゃって…………」

 

口調は一花のように聞こえたが、どこか違和感を覚えた。二乃と五月が大喧嘩をして家出をした際、池に現れた変装をした五月のようにも聞こえる。だが、三玖にも見えるし、五月にも見える……。なんなら、二乃にも見えた。

 

「もう君だけが背負わなくていいんだよ?私達………ううん。私にも協力させて?」

 

超4ゴハン「貴様は………!貴様はなんなんだ………!!!!?」

 

ゴハンの問いに、目の前の少女は……。

 

 

「私は…………そうだなぁ……。零奈でもあり一花でもあるし、二乃でもあり三玖でもある………。四葉でもあり、五月でもあるし、昔の私達でもある。……そうだ!」

 

目の前の少女は純白の帽子を投げ捨てて、こう答えた。

 

六海「私は六海!6人が完全に一つになって、新しい人間として誕生したから、そう呼んでくれると嬉しいな!!」

 

超4ゴハン「六海だと……?」

 

悟飯「な、なんで………?二乃は死んだはずじゃ………………」

 

六海「そのはずなんだけど、私達みんなが二乃を救いたいって強く願った。その感情が呼応して、私達は完全に融合することができたんだよ」

 

つまり、5人の愛の力が二乃を取り込み、奇跡を引き起こしてこの新しい形態を生み出したということだろう。

 

六海「さあ、この戦いを終わらせよう?この世界から悲しみを消そう?」

 

悟飯「…………うん」

 

2人はこれ以降言葉を交わさない。交わさずとも何をしようとしているのか理解ができた。お互い少しだけ離れ、あるポーズを取った。

 

六海「いい?失敗は許されないよ?」

 

悟飯「分かってるよ」

 

 

 

 

六海「フュー………!!!」

 

悟飯「ジョンッッ!!!」

 

 

 

「「はっ!!!」」

 

 

 

風太郎「あいつら……!!やりやがった………!!!!!!」

 

2人は初のフュージョンを見事に成功させた。2人は光となって、それらが混ぜ合わさる…………はずだった。

 

風太郎「なっ………………」

 

6人が完全に融合し、1つの新しい人格として誕生した六海の体が大きな純白の白い翼に変化し、悟飯の背中に装着された。そして悟飯自身は獣のような赤い目は変わらず、髪の色が純白に近い銀色に変化し、髪が更に伸びて逆立った。

 

悟飯「…………これは……?」

 

何故か今まで悟空とベジータ、悟天とトランクスと言ったようなペアとは違った形になってしまったが、自分の力を確かめるに、どうやら失敗したわけではないようだった。

 

 

『ありがとう……。あなたなら私の意図を理解してくれるって信じてたわ……』

 

悟飯「………その声……二乃?」

 

『当たり♡』

 

 

 

超4ゴハン「な、なんだ……!?なんなんだ!その姿はッッ!!!!」

 

ゴハンはまたしても見たことのない形態に遭遇し、かなり動揺していた。目の前の悟飯は先程よりも一層獣らしくなったはずだが、それに似合わない天使のような翼を生やしていた。

 

悟飯「………さあ、ここは『主人公』で決着をつけようじゃないか………」

 

パチンッ

 

風太郎「うおっ………!!?」

 

 

悟飯が指を鳴らすと、風太郎が宙に浮き始めた。そのまま悟飯の意思に従うように風太郎は悟飯の隣にまで連れてこられた。

 

風太郎「な、なんだこの力は…!?何が起きてんだ……?」

 

天才と評されている風太郎でもこの状況は理解できていなかった。

 

風太郎「何がどうなってんだ…?悟飯は分かるのか……?」

 

悟飯「さあね。僕にもよく分からない。だけど、この戦いを終わらせるには『主人公の力』が必要らしい」

 

風太郎「はっ……?主人公…………?」

 

悟飯が何を言っているのか全く理解できなかった。しかし、ゴハンだけは何を言っているのか、なんとなく意味が分かった。

 

超4ゴハン「き、貴様………。まさか、全ての世界を………!!」

 

悟飯「ああ。お前が言う世界の歪みの意味も理解した。そしてこの世界において何故僕が主人公なのかもよく分かった」

 

なんと、悟飯もDB世界に於いて起こった様々な出来事を全て知ったようだ。

 

悟飯「もう無駄な争いは終わらせよう。あなたはもう戦わなくてもいいんだ…………」

 

超4ゴハン「……今更後戻りなどできるものか……!!!私は『力』を滅ぼす為にこの力を得た……。『力』を滅ぼすことが、私が家族にできる唯一の償いなのだ……!!!だからそれを、邪魔するなぁああああッッッ!!!!!」

 

ゴハンは禍々しい邪気を溜め始めた。その力の正体は憎悪。セル、DB世界、力に対する憎しみが詰め込まれていた。

 

悟飯「風太郎………」

 

悟飯は左手を風太郎に向けて伸ばすと、光が風太郎を包む……。すると……

 

風太郎「うおっ……!!な、なんだこれ!!?」

 

その現象が発生した時、風太郎のうちに大きな力が現れたのを感じた。四葉に力を貸してもらった時の力に酷似していた。

 

超4ゴハン「なっ……!どうやって上杉風太郎の力を引き出した……!?いや、貸し与えたのか……!?何をした…?」

 

悟飯「貸し与えてもいないし、引き出してもいない。ただ、奇跡を引き起こしただけだ」

 

超4ゴハン「……………何?」

 

悟飯「翼にいる6人の強い意思……。貴様を止めるという僕の意思が、奇跡を必然と引き起こしたんだよ」

 

超4ゴハン「奇跡を必然に……?馬鹿な…!!それは奇跡とは言わん…!!!奇跡は滅多に起こらないからこそ奇跡と呼ばれるのだ……!!!意図的に引き起こされてたまるか!!!!!」

 

悟飯「それを可能とするのが『主人公』だ。違うか?」

 

超4ゴハン「なっ………………」

 

そう。いくつもの物語で主人公が奇跡を引き起こすという現象は起こっている。一部例外もあるが、基本的には、主人公という存在は奇跡を引き起こすことのできる存在なのだ。故に、この世界における主人公と呼ばれる悟飯や、元々主人公だった風太郎も奇跡を引き起こすことができるのだ。今の悟飯はそれを理解しているから、それを利用したのだ。

 

悟飯「さあ、この無意味な戦いを終わらせよう…。僕達の手で………」

 

風太郎「……ああ。誰かが悲しむ世界なんてごめんだな。全てを得ようとするなんておこがましいと思っていたが、それを目指すのも悪くない気分だ」

 

2人がそう言うと、2人とも白く輝きだした。悟飯に至っては六海のいる白い翼が強く輝き出している。

 

 

 

 

人は忘れていた。僕達は天使だったということを。その天使は愛の種を撒き散らして、この地球…………いや、世界から悲しみを消したかった。背中の羽は無くしてしまったが、まだ不思議な力は残っていた。

 

だが、それでは悲しみを失くすことはできない。世界から悲しみを消すには翼を取り戻す必要があった。一時的でもいいから、天使に戻る必要があった。天使の紛い者でもいい。とにかく天使に近づければよかった。

 

 

 

 

悟飯「かー………!!」

 

風太郎「めー………!!」

 

悟飯「は〜………!!!」

 

風太郎「めぇ〜………!!!!」

 

 

 

そのかめはめ波はいつものように青白いエネルギーではなかった。悟飯が生やしている天使の翼のように、純白の輝きを出していた。その力は相手を倒すことを目的としていない。悲しみを消すことに特化した力なのだ。

 

 

超4ゴハン「認めない……!!認めんぞ……!!!そんな力、私は認めないッ!!!!!その力諸共、貴様らを消し去ってやるッッ!!!!!!」

 

ゴハンは自分の憎悪を凝縮したエネルギーの塊を放った。そのドス黒い力は悟飯と風太郎を飲み込む勢いで迫ってくる。だが、2人は大して動揺はしなかった。

 

風太郎「やるぞ、悟飯…!」

 

悟飯「うん…!いくよ……!!!」

 

 

 

 

 

 

「「波ァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッッ !!!!!!」」

 

 

 

 

超4ゴハン「なっ………!!!!」

 

2人から放たれたかめはめ波はあっという間に憎悪の塊を包み込んでかき消した。それと同時にゴハンを包み込む。

 

超4ゴハン「ぐわぁああああッッッ!!!!!!!馬鹿なぁぁあああああああッッッ!!!!!!!」

 

光に包まれたゴハン…………否、無堂は肉体が粒子に変化していく……。手が、足が………。体の末端部分から中心にかけて徐々に粒子状になっていく……。

 

その力を受けると同時に、自分が妻や娘達と接していた時の記憶が掘り起こされた。私はこの笑顔が理不尽にも消された。『力』に消されたから、『力』が憎かった。だが、冷静に考えれば、自分も同じ誤ちを犯そうとしていたのだ。それは薄々気付いていたが、憎しみに支配された自分は止まることができなかった。

 

だが、流れ込んでくるのは無堂の記憶だけではない。この世界の悟飯や風太郎の記憶も流れ込んできた。最初は衝突し、分かり合えないながらも分かり合おうと努力した。時には理不尽な力にも対抗した。時には守られ、時には守り、時には共闘もした。そうして、彼らの絆は深まっていった。

 

莫大な力を持ち、優しい心を持った孫悟飯という存在を知り、無堂は自分がどれだけ愚かだったかを認めることができた…………。

 

超4ゴハン「私の方が………消えるべき存在だったのだな………」

 

 

 

 

 

 

 

ドグォォオオオオオオオオオオオオンッッッ!!!!!!!

 

 

大きな爆発と共に、ゴハン………否、無堂はこの世界から消えた………。

 

 

 

風太郎「…………終わったのか…?」

 

悟飯「かなりの強敵だったね…。でも、まだ終わってないよ。まだやるべきことがある。そうだよね、みんな?」

 

悟飯は翼の方に問いかけ、少しすると頬が緩んだ。翼を羽ばたかせて空中へ飛び、右手を上に上げて光を作り出す………。

 

風太郎「お、おい!?何をする気だ…!?」

 

悟飯「融合を解く前に、最後にみんなを元に戻さないと……。この戦いによって傷ついた人を………街を……………」

 

ゴハンとの戦いは魔人ブウほどではないにせよ、莫大な被害を及ぼしていた。中には死人もいるだろう。ドラゴンボールで直そうにも、創造者であるデンデも殺されてしまった。ならばどうやって直すというのだ………?

 

悟飯「奇跡を起こせばいいんだよ。僕達ならできる……!!!」

 

悟飯の右手にあった光が四方八方に散らばった。その光は傷ついた人や建物などに向かって飛んでいく。その光が入り込むと、崩れた建物は元に戻り、死んだ人は蘇り、傷ついた人は怪我を完治させた。

 

悟空「いっちちち………。うわっ!?なんだ!?あれ、悟飯なんか!!!?」

 

ベジータ「な、なんなんだ、あれは…?新手の超サイヤ人なのか………?」

 

ピッコロ「こ、これは……………」

 

デンデ「まるで…………」

 

すると、死んでいたり気絶していた人々が次々と起き上がった。そして上にいる天使のような、獣のような悟飯を見ては驚くと同時に、目を奪われてしまうのだ。

 

風太郎「おいおい、これじゃまるで、全知全能の神じゃねえか……………」

 

 

 

やることを全て終えた悟飯はゆっくりと地面に降り立った。

 

悟空「な、なあ悟飯………。それは一体なんなんだ………?」

 

悟空がそう質問した瞬間………。

 

ピュン‼︎

 

悟飯「あ、あれ??」

 

一花「………!?」

 

二乃「あら?」

 

三玖「融合が解けた…………」

 

四葉「それにしてもなんだったんだろうね、あの力………」

 

五月「不思議ですね…………」

 

フュージョンしてまだ30分経ってないはずだが、何故か7人の融合は解けてしまった。そもそも、悟飯が変身したアレはフュージョンのそれとは全く違かったのだろう。

 

ベジータ「悟飯。あれはなんだったんだ?一体何をしたんだ?」

 

悟空「ポタラでもフュージョンでもねえよな………?もしかして、零奈を利用した合体か?」

 

零奈「いえ、私達はフュージョンをしたつもりなのですが………」

 

悟飯「………結局なんだったんでしょうね?」

 

ピッコロ「……本人達も分からないなら迷宮入りだな」

 

こうして、史上最大の戦いは幕を閉じた。一時はメタな世界を理解した悟飯だったが、融合が解除されると同時にその記憶は失われてしまった。五つ子達も同様である。それもそのはず、あの力は全員の心が完全に1つになったからこそ成し得た融合であり、フュージョンのように特訓すればできるようになるものでもない。同一人物同士がいれば可能かもしれないが、そんなことなど普通は起こり得ない。

 

あの融合ができたことこそが、本当の奇跡と言うべきなのかもしれない…。

 

二乃「あっ!綺麗な虹!」

 

悟飯「ほんとだ!雨も降ってないのに不思議だね〜…!」

 

全てが終わったその時、彼らの瞳には綺麗な虹がかかっていた………。

 

 

 

 

 

 

無堂「………むっ?ここは………」

 

私はさっきまで孫悟飯と戦っていた気がする………。そうか、私は敗北したんだったな。ということは、ここは地獄か……?にしては妙に懐かしい雰囲気を感じる…………。

 

一花「お父さん…!お父さん!!」

 

無堂「うん………?そ、そんなはずは……………」

 

 

私の目の前には、セルに殺されたはずの娘がいた。勿論見分けられるさ。この子の名前は一花。最近は女優を目指していると聞いた。私としてはしっかり勉学して大学に進学してほしいが、一花の熱心な思いを聞いて応援してみることにした。基本的にズボラな一花だが、女優業だけは長く続いているところを見ると、本気のようだ。

 

二乃「パパ!今日はママがよく作るパンケーキ作ってみたの!食べてみて!」

 

二乃はザ・女子高生という感じだ。最近の彼女はどうやら気になる男の子ができたらしい。名前は………なんだったかな?二乃は恥ずかしがり屋さんだから素直に教えてくれないのだ。零奈も知らないらしい。

 

三玖「お、お父さん!こんなの知ってる?」

 

三女の三玖は歴史好きのようだ。その影響で歴史だけが点数良くなる傾向がある。歴史に興味を持つことは決して悪いことではないが、それで他のことを疎かにしてほしくはない。

 

四葉「お父さん見てみて〜!!この前の大会で優勝したんだ〜!!!」

 

四葉は本当に可愛い子だ。いつも元気で明るく、この無堂家のムードメーカーとも言える存在だ。何度も挫けそうになった時、私は四葉の無邪気さに救われたことが何度もある。

 

五月「お父さん!今日は英語を教えて!この前分からないところがあって………」

 

そして末っ子の五月は甘えん坊で勉強熱心だ。何故勉強に熱心なのかを質問したところ、どうやら五月は零奈のような先生になりたいらしい。零奈を手本にするなら間違いなくいい教師になるだろう。ただ、少しは私にも憧れてほしいな…………。

 

零奈「お仕事お疲れ様です、あなた」

 

そして言わずもがな。零奈は私にとって最も愛おしい存在だ。無論、娘達も大切な存在だが、彼女はその中でも特別だ。零奈も教師として働いているはずなのに、いつも私を労ってくれる…。

 

 

 

………あれ?何故あんなことをした私がこんな幸福を享受しているのだ…?これは夢なのか………?地獄に落ちる前の、最後の夢なのだろうか…………?

 

グィィイイっ

 

無堂「いてててて!!!こら!やめんか五月!!!」

 

五月「ぼーっとしないで早く教えてよ!!」

 

この痛み……。もしや現実か…?いや、あり得ない。娘も零奈も、みんなセルに殺されたはずだ。なんで………?

 

 

『この世界から悲しみを消そう……?』

 

 

確か、あの世界の零奈と娘達が合体して誕生した『六海』がこう言っていた…。

 

 

『この無意味な戦いを終わらせよう』

 

確か孫悟飯がそう言っていた。

 

 

『全てを得ようだなんて、おこがましいことだと思っていたが、案外それを目指すのも悪くない気分だ』

 

上杉風太郎が、そう言っていた………。

 

 

 

……………まさか、彼らがこの世界を創り直したというのか…………?いや、そうでなければ私の目の前に零奈や娘達がいるはずなどない…………。

 

無堂「………っ………」

 

五月「お、お父さん!!?」

 

なんでだ……。私は君達を殺そうとしたのだぞ………?世界ごと滅ぼそうとしたのだぞ…………?それなのに、何故……。

 

零奈「あら……?何かお辛いことでもあったのですか……?」

 

二乃「えー?!誰よパパを泣かせた奴は!!許せないわ!!」

 

一花「まあまあ、二乃、抑えて」

 

三玖「どうしたの?大丈夫?」

 

四葉「もしも何か抱え込んでいるなら聞かせて!!!!」

 

孫悟飯………。君というやつは、本当に……………。

 

 

 

 

 

 

 

 

無堂「娘達をよろしく頼むよ、孫悟飯君……………

 

二乃「えっ?なんか言った?」

 

無堂「なんでもないよ、二乃。さあ、そろそろいい時間だしおやつにしようか。丁度二乃がパンケーキを作ってくれたからね」

 

五月「本当!?さっきからいい匂いがすると思ったけど!!」

 

二乃「コラ!!がっつくな!!!」

 

三玖「五月、慌てすぎ………」

 

四葉「どうどう!!」

 

一花「パンケーキは逃げないから落ち着こ?」

 

零奈「お行儀が悪いですよ、五月?」

 

五月「はーい………」

 

…………本当に微笑ましい。この団欒をもう一度見れる日が来るなんて………。君達にとっては私との出会いは最悪だったかもしれないが、私は君達に出会えて本当に良かった…………。

 

ありがとう、孫悟飯君………。

 




 はい、本編のバトルは全て終わりました。この後書きは主に補足をしときます。ちなみに今回の後書きは長めです。

 まず、悟飯がキレて変身した形態についてですが、あれはビーストではありません。ビースト未完全と言ったところですね。何故ビーストにしなかったかというと、流石に時系列的にビーストにするのは早すぎると思ったのと、SSJ4相手にビーストはオーバーキルにも程があるからですね。ちなみにビースト未完全の強さは、超サイヤ人ブルーから身勝手の極意兆の間ら辺をイメージしています。

 次に六海について:
 こちらは死にかけの二乃を救いたいという気持ちになった5人が『奇跡』を起こしました。実を言うとゴハン(無堂)が来た時から時空に歪みが生じ、メタな力が扱えるようになっているなんて裏設定もありますが、そこはまあ気にしなくても大丈夫です(えっ…?)。そして二乃を取り込み、人造人間零奈完全体は六海という1人の人間に変身しました。この六海こそが人造人間零奈の本当の完全体とも言えますが、この形態は覚醒条件が『6人の感情を完全に一致させること』なので無茶苦茶高難易度です。その為、実質今回限定の形態とも言えます。六海の戦闘力はこちらも『奇跡』という今回特有のバフと『愛の力』というバフがかかってることもあり、ブルークラスの強さはあるということになっております。

 悟飯(六海との融合形態)について:
 こちらはフュージョンしたつもりが、何故かフュージョンとはかけ離れた融合をしてしまったものです。これもまた『主人公補正という名の奇跡』によって成し得た形態であります。この融合はメタな力が扱える今回限定です。この先、超ドラゴンボールに願う以外は如何なる現象が起きようとも再び誕生することは有り得ないと言ってもいい形態です。この形態の強さはビーストを軽く超えている……かもしれませんが、この形態の真髄はあらゆる奇跡を自在に引き起こせることです。作中では、ゴハン(無堂)がいた世界に『愛の種』を撒き散らしたことによって奇跡を引き起こし、セルに荒らされる前の状況にまで戻されました。それに加えて死人は蘇るし、建物は直るしでなんでもアリな形態です。こんなのが常用できたら全王様も涙目ですわ………。ということで、超ドラゴンボール以外は一切の例外なく今回限定の形態ということにしました。

 そして最後に作中の文章ですが、今話はタイトルで察した方が多いと思います。ドラゴンボールZのエンディングテーマである、『僕たちは天使だった』の歌詞から拝借している表現が結構あります。その為、この回ではメタ要素もあるということで、天使っぽい何かに変身させようと結構前から目論んでいました。そこに『五つ子の誰かと悟飯もしくは風太郎がフュージョンした場合を見たい』というリクを見て、人造人間零奈完全体と悟飯がフュージョンする展開を思いついたわけです。他にも色々語りたいことはありますが、あまりにも長くなってしまうのでここまでにしたいと思います。

…………あの力を使えば未来の世界も救えたのではないかというツッコミはなしですよ(釘刺し)。それだと流石に………ね?


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第109話 デート

 今回の前書きは特になし。ネタが尽きたわけではないけど、最近は本当に忙しくて執筆も編集もできん…。タイトルを考える力も……長期休みよ早く来てくれ()


戦いが終わり、この世界に再び平和が訪れた。悟空達は悟飯の新たな力に狼狽ながらも、流石純粋サイヤ人というべきか…………。

 

悟空「悟飯ばっか強くなられちゃたまったもんじゃねえな!オラももっともっと修行を頑張らねえとな!!」

 

ベジータ「いつまでも貴様が最強だと思うなよ?」

 

悟飯「は、はい………」

 

悟飯は別に強さを求めているわけではない。ただ大切なものを、人を守れるだけの力さえあればいいのだ。

 

二乃「全くもう………。脳筋ばっかりね………」

 

ふと二乃が悟飯のところに歩み寄ってきた。彼女はさっきまで死んでいたはず………。本来なら生き返ることもできなかったはずだが、奇跡が引き起こされて無事蘇ったのだ。魔人ブウの時、二乃は悟飯が死んだと思い込んだ時は本当に辛かったと言っていた。その気持ちが悟飯にもよく分かった。だから……。

 

 

二乃「!!!?えっ、ちょ!!?」

 

悟飯「良かった………!!!本当に、良かった………!!!!!」

 

悟飯は彼女を強く抱きしめた。

 

二乃「えっ!?ちょ、きゅ、急にどうしたのよ!!!?」

 

まさかこの場で抱き付かれるとは思ってもみず、二乃は不意を疲れて顔を真っ赤にすると同時に羞恥に悶えてしまう。

 

悟飯「もうあんなことはしないで。君のことは僕が必ず守るから……。もう君にあんな無謀なことはさせない。僕ももっと強くなるから………!」

 

二乃「あぅ………」

 

真剣な、男らしい眼差しを向けられ、二乃は完全にオーバーヒートしてしまった。

 

一花「ありゃりゃ、お熱いですなぁ」

 

三玖「むう………」

 

五月「ふふっ……。仲睦まじいですね」

 

風太郎「おい、流石にそこではやめろ。全く…………二乃のこととなると、お前は本当に馬鹿になるんだな……」

 

四葉「ししし…!いいじゃありませんか。それだけその人のことが大切ってことですよ」

 

風太郎「………そういうもんなのか?」

 

四葉「そういうものです!」

 

少し離れた場所で風太郎と四葉は談笑する。彼らもまた恋人同士なのだが、二乃と悟飯のような恋人らしいことはまだしていない。

 

風太郎「…………四葉も、あんな感じの方がいいのか?」

 

四葉「……………えっ?」

 

突然、風太郎らしからぬ質問が飛んできたことに、四葉は度肝を抜かされてしまった。

 

風太郎「い、いや!今のは忘れてくれ!!」

 

四葉「………私はいいですよ。上杉さんらしくいててくれれば、それだけでいいですから」

 

太陽のような、しかし色気も持った笑顔を風太郎に向けた。その顔を見て思わず風太郎はそっぽを向いてしまった。

 

悟空「よっしゃー!!まずは超サイヤ人4ってのを目指してみっか!!」

 

ベジータ「だが、尻尾を失った俺達が変身できるのか?」

 

悟空「あっ………。そういやそうだったなぁ…………」

 

ベジータ「まあいい。大猿の力なんぞに頼らずに俺はもっと強くなる。カカロットよりも、悟飯よりもな」

 

悟空「オラだって負ける気はねえかんな?」

 

ベジータ「ふっ……。ならば、どちらが先に新しい変身を会得できるか、勝負してみるか?」

 

悟空「望むとこだ!!よーし!もっと気合い入れてかねえとな!!」

 

2人の純粋なサイヤ人は相変わらずと言ったところだし、悟飯は未だに二乃を離さない。そしていい加減引き剥がそうとする一花と三玖に、微笑ましく見守る五月と零奈。下らねえと言いつつも満更でもなさそうなバーダックに、恋愛が分からないピッコロとデンデは何をしているのか全く理解できず……。

 

 

 

 

 

 

四葉「上杉さん………」

 

風太郎「なん………んっ!!?」

 

四葉「………ししし!顔真っ赤ですね…!」

 

風太郎「お、お前だって顔真っ赤だぞ?」

 

隅に隠れて恋人らしいことを達成した四葉と風太郎…………。

 

これらの光景は、まさに平和が戻ってきた証……。悟飯達全員で勝ち取った平和なのだ。しかしこの戦いは魔人ブウのように公のものにはなっておらず、戦い自体が起こったことを殆どの人が知らないまま過ごすこととなる……。

 

 

 

 

 

翌日、いつも通りの日常が再び広がる。悟飯と二乃は仲良く登校し、途中で姉妹と、風太郎と合流する。そのまま談笑して教室に入った。二乃と悟飯のイチャイチャっぷりはあれから更に加速した。二乃が死にかけてからというもの、悟飯もまた積極的になってしまったのだ。

 

しかし、積極的になったとはいえ、悟飯から大胆にも抱きつくようなことはしない。二乃とのやり取り1つ1つを大切にするような、そんな感じであった。

 

悟飯「今日もお弁当が美味しいや……。今度僕にも作り方を教えてよ」

 

二乃「えっ?それはいいけど、急にどうしたのよ?」

 

悟飯「だって、いつも作ってもらってばかりだから悪いかなって思って……」

 

二乃「そんなこと言わないで!!これは私が好きでやってるんだから!!」

 

悟飯「じゃあ僕も同じ理由で。いいよね?」

 

二乃「………わ、分かったわよ…」

 

と、悟飯が二乃に照れるのではなく、二乃が悟飯に照れることも多くなってきた。

 

 

四葉「あはは〜……。またやってる…」

 

三玖「もう少し周りを見るべき……」

 

五月「微笑ましいとはいえ、節度は持つべきですね」

 

四葉はともかくとして、他2人は付き合う前は猛烈アプローチをしていたというのに、そのことを棚に上げてる辺り、ちゃんと二乃の妹なのだなということを実感させる。

 

風太郎「全く……。浮かれすぎて受験に響かせるんじゃねえぞ………」

 

風太郎の言うように、もうすぐ受験シーズンとなる。イチャイチャするのは結構だが、そちらにばかり夢中になって志望校に受からないとなっては笑えない話である。

 

 

 

 

 

 

 

そんなことを言っていた風太郎だが、この週末は四葉とのデートの約束を取り付けていた。ということで、今回はそのデートの様子を手短に見ていこう。

 

 

四葉「ほ、本日はお誘いいただきありがとうございます………」

 

風太郎「休みの日なのに悪いな」

 

四葉「い、いいえ!そんな、嬉しいです………」

 

風太郎「そ、そうか…………」

 

それはそれは無茶苦茶初々しいやり取りだった。それはもう、二乃が見ていたらイライラしてしまいそうな程に。

 

風太郎「なんだかんだ学校じゃ2人きりになれなかったからな。(とてもじゃないが、アイツらのように恋人らしいことなんて堂々とできん)」

 

四葉「あはは、確かに、どこで誰が聞いてるか分からないですね………」

 

そこで会話が途切れてしまう。2人とも初のデートということで緊張し切ってしまっているようだ。だが、2人が緊張していても関係ない。

 

 

『急停車します。お立ちのお客様や、吊り革や手すりにお掴まり下さい』

 

 

四葉「きゃ!!?」

風太郎「な、なんだ!?」

 

どうやら線路内立ち入りの影響で列車が急停車してしまったらしい。その余波で風太郎と油断していた四葉がバランスを崩してしまったのだが………。

 

風太郎「………これ、逆じゃない?」

 

四葉「ですかね………」

 

四葉が風太郎に壁ドンをしているような構図が出来上がった。やだ四葉さん男前。

 

四葉「あっ!飛行機雲です!」

 

四葉はこの状況を誤魔化すように飛行機雲について解説する。とは言っても一言程度で、どうやらこれを見れるといいことがあるようだ。

 

風太郎「き、聞いたことないな…(このままでは男が廃れてしまう………)」

 

 

初っ端から挫けている風太郎だが、今回は微妙な関係を終わらせる為に念密にデートプランを練ったようだ。

 

風太郎「さあ!好きなものを頼め!!今日は俺の奢りだぞ!!」

 

四葉「わーい!!」

 

……風太郎はファミレスで大盤振る舞いをした。ファミレスなんてショボイと思ったそこのあなた。風太郎の家庭状況から鑑みて、これでも相当頑張っている方であるから大目に見てほしい。いや、見れない人は人間じゃねぇ!!(過激派的思想)

 

二乃「…………なんでデートの行き先がファミレスなのよ………」

 

三玖「初々しくていいと思う。どこかの誰かさんと違って」

 

二乃「はっ?」

 

一花「こらこら…。まあ、フータロー君にしては頑張った方だよ」

 

五月「ご飯も美味しいです!」

 

ちなみに、四葉と風太郎のデートはもれなく他の姉妹に加え、なんと悟飯も付き添っていた。いや、付き添いというより本人達に秘密で尾行をしているのだ。しかし四葉には尾行がバレてしまうのではないだろうか…?ところが、今日の四葉は初デートで緊張している為、そこまで気が回っていないのだ。だからまだ気づいていない。

 

ちなみに席は通路側から順に悟飯と二乃。向かい側に五月、三玖、一花の順に座っている。ちなみに五月と悟飯は本来の目的を忘れてファミレスから出された料理を楽しんでいる。

 

二乃「………あの、本来の目的を忘れてない?」

 

二乃は食べ物に夢中な悟飯に半ば呆れて話しかけた。すると………。

 

悟飯「あれ…?尾行を口実にしたデートかと思ったんだけど………」

 

二乃「違うわよ!?いや、確かにそれもありだけど、今日は違うわ!」

 

シスコンの二乃は四葉がちゃんとできるか心配で心配で尾行してきたのだ。今回は悟飯とデートをしたかったというわけではない。まあ、暇さえあれば悟飯とデートしたいのは事実である。

 

二乃「あっ…!クーポン使ってる!」

 

一花「抜かりないね〜………」

 

そしてデート中にクーポンを使用する風太郎の行動に、二乃は呆れ、一花は苦笑いをしている。

 

三玖「……?ダメなの?」

 

二乃「デートでクーポンとかNGでしょ」

 

どうやら三玖的にはクーポンはNGではないらしい。

 

二乃「全く……!2人とも焦ったいわねぇ…!!いっそのことカップルジュースでも注文しちゃいなさいよ…!そしてキスしてハグして[ピー]しちゃいなさいよ」

 

一花「二乃?ここは公の場だよ?」

 

案の定、暴走ストッパーこと一花がトリップし始めた二乃を静止した。我に返った二乃は悟飯の方をチラ見しつつ顔を赤くした。だが悟飯はご飯に夢中だったため、何を言っていたのか聞いていない。

 

悟飯「………クーポンやファミレスがNGとかはともかく、四葉さんは楽しそうだけどなぁ………」

 

そう。結局は当人達が楽しめているかどうかなのである。周りが何を考えようが、自分達が楽しければそれでいいのだ。無論、周りの人に迷惑をかけないように配慮はするべきではあるが…。

 

悟飯「それに、二乃だって僕が奢るって言った時に自分も払うって言ってたのに」

 

一花「おや〜?案外優しいんだね?」

 

二乃「ば、バカァ…!!なんでここで言うのよ……!!」

 

五月「…………隙あらばいちゃつくのはやめてもらえません?」

 

「「ごめんなさい…」」

 

 

 

 

場所は変わって図書館。デートで何故図書館というチョイスが出てくるのか謎であるが、そこは風太郎クオリティということで以下略。

 

四葉「何かお探しですか?」

 

風太郎「いや、えー……、進学が現実味を帯びてきて、目標とか夢が見えてきたんじゃねえかってな……。そこんとこどうなんだ?」

 

風太郎は携帯を見ながら四葉に話しかける。どうやら困った時何を話せばいいかリストのようなものを作成し、それを見ていたようだ。

 

二乃「なんでデート中に携帯見んのよ……!!?」

 

悟飯「お、抑えて抑えて……!!」

 

 

四葉「なんだか急な話ですね…」

 

風太郎「そんなことないだろ?お前には聞けずじまいだったからな」

 

四葉「……私は、やはり誰かのサポートをして支えることが合っていると思います。諦めから始めたことでしたが、今ではそれも誇れることに気付いたんです」

 

風太郎「そうか。お前らしいな」

 

四葉「いえ。そう思えたのは、上杉さんがそうだったからですよ」

 

風太郎「………そうなのか?」

 

四葉「はい!」

 

 

 

二乃「あ〜……!!ムズムズする〜…!!!」

 

五月「まあまあ………」

 

二乃からすればいつまで経ってもそれっぽい雰囲気にならないから焦ったいのだろう。まあ二乃達がロケットスタートをしただけで、四葉と風太郎の方が普通に健全である。

 

風太郎「それでも具体的な目標とかはあったんじゃないか?ほら、小さい頃の夢とか………」

 

四葉「あ、あったと言えばあったのですが…………」

 

風太郎「ん?なんだ?」

 

四葉「わ、忘れちゃいました〜!」

 

風太郎「なんだそりゃ。まあ思い出したならちゃんと言えよ。二乃は言ってたぞ、昔の夢」

 

二乃「……!?」

 

四葉「えっ?二乃が?なんでしたっけ?」

 

風太郎「確か、日本一のケーキ屋さん?」

 

二乃「そこまで具体的に言ってないわよ!!!」

 

風太郎「……………」

四葉「……………」

 

痺れを切らした二乃はつい2人の前に出て指摘してしまった。流石にこれで気付かないはずもなく、仕方なく他のメンバーも2人の前に現れた。

 

風太郎「悟飯に二乃……。お前らなぁ……」

 

悟飯「あ、あはは!!僕達はたまたまここに来ただけだよ!それじゃ、ごゆっくり!!」

 

二乃「ちょ、ちょっと!!」

 

まだ何か言いたげな二乃を無理矢理押してその場を離れる悟飯に、それについて行く一花と三玖。だが、五月だけは何かを思い出したように風太郎に一言言った。

 

五月「初デートでクーポンやスマホ見たりは気にした方がいいかと思います」

 

風太郎「…………四葉、行くぞ」

 

四葉「は、はい…」

 

五月「…………もう背中を押す必要はなさそうですね」

 

これまでのデート中の四葉の笑顔を見て、五月はそう確信したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

とか言いつつ最後まで尾行することになった。

 

悟飯「えっ?あの流れで普通ついてく?」

 

二乃「しーっ!黙ってなさい!」

 

 

最後は何の変哲もない公園だった。ここの何がデートスポットに最適なのか意味が分からないが、2人にとってはある意味特別な場所である。

 

四葉は勢いよく立ち漕ぎをし、跳んで綺麗に着地する。どうやらブランコから跳んでどれだけ遠く跳べるのかを競っているようだ。

 

そして風太郎も四葉と同じように勢いよく立ち漕ぎを始めた。

 

一花「ちょ、ちょっと…!あれ大丈夫なのかな…?」

 

悟飯「まあ、もし風太郎が怪我しそうになったら四葉さんがどうにかするでしょ」

 

そう思っていたのだが……。風太郎の乗っていたブランコは途中でチェーンが壊れ、風太郎は変な跳び方をしてしまい、全身を強く地面に打ち付けてしまった。

 

悟飯「なっ…………!!!?」

 

五月「だ、大丈夫なのですか……!!?」

 

しかし、どうやら風太郎は無事だったようだ。転倒した際についた砂に気にすることなく、四葉に何かを言っている。だが、この距離では聞き取ることも困難だった。しかし、最後の言葉だけはよく聞こえた。

 

風太郎「好きです……!結婚して下さい!!」

 

 

 

 

 

 

「「「「…………えっ??」」」」

 

なんと、風太郎はいきなりプロポーズをした。段階を飛ばしすぎて、姉妹の4人は呆然としてしまう。

 

悟飯「へぇ……。今のは決まったね」

 

だが、ただ1人。悟飯だけは風太郎に敬礼をしそうな様子で彼を褒め称えた。

 

二乃「いやいやちょっと待ちなさい。いきなり段階をすっ飛ばしてプロポーズよ…!?あり得なくない!?」

 

悟飯「えっ?そうなの?僕のお父さんとお母さんは天下一武道会の時に再会して、お父さんがプロポーズしたみたいだけど…………」

 

二乃「…………ああ。そういえばあの人達の息子だったわね、あんた」

 

悟飯「………なんだろうこの目。久々な気がする…………」

 

まるで出来ない子を見るような目で二乃……いや、姉妹達は悟飯を見ていた。この視線を感じたのは、確か……。いつ頃だっただろうか?

 

ちなみに悟空とチチの場合、大人になったチチをチチだと認識できなかった上に、お嫁にもらうという意味を分からずに約束し、本人の説明でようやく思い出すと同時に『じゃあ結婚すっか』というプロポーズと共に彼らは婚約を果たしている。これと比べてしまえば、風太郎のはまだマシだろう。結局は当人達が幸せかどうかが重要だ。

 

………結果、どうやらそのプロポーズは上手くいったようだ。勿論すぐに結婚するわけではなく、大人になってからという意味合いだろう。そして、四葉の昔からの夢が、風太郎にだけ説明された。

 

なんだかんだでデートが上手くいった様子を見届けた5人はクールに去っていった…………。

 

 

 

 

翌朝。いつも通りに起床した悟飯はいつも通りに朝食をとり、いつも通り筋斗雲で出発する。そしてある程度まで近くにきたら降り、道中にいる二乃達と合流した。

 

一花「おっは〜」

 

三玖「おはよう」

 

五月「おはようございます…」

 

四葉「おっはよーございまーす!!」

 

二乃「おはよ!」

 

5人に挨拶されて二乃に腕を確保されるまでがテンプレだ。他の四人も、悟飯も二乃の行動に慣れ、誰もツッコむようなことはなくなったものの、少し羨ましそうに見ている人が1人か2人いたとかいないとか……?

 

そして、駅まで歩いて風太郎との合流地点にまで辿り着いた。すると遅れて風太郎も合流してきた。どうやら珍しく寝坊してしまったようだ。

 

四葉「上杉さん、おはようございます!」

 

二乃「あんたはいつまでその言葉使いを続けてんのよ」

 

悟飯「おはよ、風太郎」

 

風太郎「おっす」

 

簡潔に挨拶し返した風太郎は、ある人物の様子が気になったようで……。

 

風太郎「五月……。お前、ひどいな…」

 

五月「何がでしょうか………?」

 

目に色濃く隈が刻まれていた。五月だけ目指す大学のレベルが高いということもあり、夜遅くまで勉強しているようだ。

 

三玖「五月、また徹夜してたの」

 

一花「大丈夫……?」

 

悟飯「ちゃんと寝ないと健康に悪いよ?」

 

五月「ここまで来たら最後までやり抜きます!!お二人とも、よろしくお願いします!」

 

 

そして放課後、頻度の減った家庭教師を図書室にて行うことになったのだが、案の定またしても四葉が何かミスをしたようで、風太郎にリボンを掴まれ注意されていた。しかし、そのあとリボンを直された四葉は幸せそうな顔をしていた。

 

二乃「普段通りの2人だわ、つまらない…。とても付き合ってるとは思えないわ」

 

五月「ええ…。もっとギクシャクするのかと思ってました。プロポーズしたと聞いた時は驚きましたが………」

 

二乃「……まっ、私たちの姉妹と付き合ってるんだもの。それくらいの覚悟でやってもらわなきゃね。ねー?ダーリン♡」

 

悟飯「あっははは………」

 

またしても隙あらばいちゃついている2人だが、三玖はその場に相応しくない顔をしていた。

 

五月「三玖、どうかしましたか?」

 

三玖「……私、もう受験しない立場なのに、ここにいてもいいのかなって……」

 

風太郎「そんなこと気にする必要あるか?家庭教師はもう終盤だ。たとえ今日教師と生徒の関係が終わったとしても、明日同じように会うだろうな」

 

悟飯「そうそう。それに家庭教師の約束は卒業させられるかどうかだしね」

 

四葉「三玖がいてくれた方が心強いもん!」

 

五月「そうです。そういえば、教えてほしい日本史の問題があったんです。どんな目標でもきっと1人では持ち続けられませんでした。何よりこうして皆んなで机を並べられた日々が、とても楽しかったです」

 

その言葉に続き、6人は再び勉強を始めるのだった……………。

 

 

 

 

 

 

 

勉強会が終わり、空はすっかり暗くなっていた。いつも通り6人で帰宅する。一花は仕事のため、駅で別れていた。そんな一花から姉妹に対してメールが来たようで、あるドラマの役を勝ち取ったとのこと。その文面は悟飯や風太郎にも来たのだが、風太郎のだけは他のみんなとは一味違ったものとなっていた。

 

風太郎「……………ったく…」

 

だが、それを見て何かを思ったのか、風太郎はなかなか言い出せなかったことをこの場で言うことにした。

 

風太郎「お前達に言っておかなきゃいけないことがある。俺が受ける大学は……ずっと言えなかったが………」

 

珍しく言葉に詰まる風太郎をジッと待ち続ける6人。

 

風太郎「とっ、東京なんだ!!!」

 

やっとの思いで風太郎は告げることができた。

 

風太郎「卒業したら俺は上京する。そしたらもうお前達と今までのようには…………」

 

二乃「えっ?そんなこと知ってるけど?」

 

風太郎が言い切る前に二乃が反応した。

 

風太郎「……はっ?」

 

四葉「敢えて聞くことはしませんでしたが…………」

 

五月「上杉君ならそう言うと思ってました」

 

三玖「だよね」

 

風太郎「……あー、そう。1人だけ盛り上がってたのか……。恥ずっ………」

 

四葉「あはは…。一生のお別れじゃないんですから。どこにいても上杉さんを応援しますよ!上杉さんがそうしてくれたように!!」

 

悟飯「そうそう。寂しかったら、僕と四葉さんならいつでも会いに行けるしね」

 

四葉「おーっ!それもそうです!!」

 

風太郎「ありがとな。お前達と会えて本当によかった」

 

昔の風太郎なら誰かと離れ離れになることを恐れることなどなかっただろう。家族以外の相手にそういう感情を持ち合わせなかったに違いない。だが彼も変わった。彼女達も変わったように。

 

風太郎「またな」

 

風太郎は満面の笑みで5人に別れを告げる。

 

四葉「はい!また明日!!」

 

悟飯「またね!」

 

そして、悟飯達もそれ相応の顔で返事をする。風太郎の姿が見えなくなった時、彼らはまた会話を再開する。

 

五月「予想通りでしたね」

 

二乃「物凄く寂しそうだったわ」

 

三玖「でも、ちょっと嬉しいかも」

 

四葉「上杉さんのあんな顔が見れるなんてラッキー!」

 

そんな元気の有り余った四葉の一言が聞こえた。悟飯は暗いしもう帰ろうと後ろにいる4人に伝えようと振り向くと………。

 

悟飯「…………!」

 

なんと、4人とも涙を浮かべていたのだ。もうすぐ風太郎と会えなくなる寂しさを実感したのだろう。高校を卒業すれば、みんなそれぞれ別の道を行く。高校のように毎日顔合わせをすることもなくなってしまうのだ。

 

だが、悟飯がそこには気を止めなかった。二乃が、五月が風太郎と会えなくなることに対して寂しい思いをするのも意外だが………。

 

悟飯「……(本当に、変わったな……)」

 

初めて会った時、彼女達は風太郎には特に嫌悪感を示していた。最初から友好的だった四葉や、面白いことに興味ありげな一花を除き、風太郎がいるだけで不機嫌になっていたような彼女達が、今はもうすぐ来る別れを惜しんでいるのだ。

 

昔のことを思い出し、悟飯は感情に浸っていた。

 

悟飯「みんな……。まだ風太郎とお別れってわけじゃないんだからさ…」

 

四葉「そ、そうかもしれませんが…。もうすぐこの生活が終わると思うと……」

 

やはり高校生活が終わってしまう寂しさもあるようだった。その気持ちは悟飯にもよく分かる。学校を学者になる手段としか考えていなかった以前の悟飯ならここまで寂しい思いをすることはなかっただろう。

 

悟飯「何も一生のお別れってわけじゃないよ。むしろ近い将来は家族になる可能性もあるわけだし………」

 

四葉「か、家族………!そ、そうですね…!」

 

二乃「ふ、ふんっ!今のは目にゴミが入っただけよ!」

 

悟飯に対しては大分素直になった二乃だが、風太郎相手ではまだツンが抜けないようだ。

 

悟飯「はいはい。泣くのはみんなが進路確定してからだよ。それまでは今まで通り頑張らないと……ね?」

 

しかしなかなか泣き止まない姉妹達を慰めるのに悟飯は苦労したと同時に、風太郎も五つ子も変わったんだなぁと感情に浸る。そして4人を慰め終わった悟飯は、Pentagonまで送るとその場から飛び立って帰宅した。

 

………確かに五つ子と風太郎も変わったのは火を見るよりも明らかだ。だが、悟飯もこの高校生活を通して変わっている。風太郎のように閉鎖的ではなかったし、五つ子達のように勉学面でズボラなわけでもなかったが、悟飯には一般人としての振る舞いというものがなかった。だが、ここ最近はどこにでもいるような普通の高校生のような振る舞いをするようになったのだ。風太郎と同じように、悟飯もまた戦士でありながら、凡人にもなれたのである………。

 

 

 

 

 

悟飯達が卒業するまで、残り僅か………

 




 原作ごと嫁ではこの後から卒業式を飛ばして一気に5年後の世界に飛び移りますが、今作ではゆっくり……かどうかは分かりませんが、原作よりかはゆっくり進めたいと思います。色々と日常パートを書いてから5年後…かどうかは分かりませんが、とにかく未来の話を書く形になると思います。そのため、もう少しだけお付き合い下さい。


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第110話 日常詰め合わせ その1

 今回は短いお話がいくつかある感じなのでこのようなタイトルにさせていただきました。もうシリアスな展開はほとんどありません。おバカな展開ばかりが続くと思って下さいww



恋愛相談

 

受験まで残り1ヶ月を切った。二乃は三玖と共に専門学校に行くことを決めたようで、今の学力なら問題ないようだ。その為、以前ほどの勉強はしていないとはいえ、復習は怠らない。そして悟飯とのデートもしばらくお預けかに思えたが、2,3週間に1回はデートをしている。それに加えて下校時にもデートみたいなことをしているので、なんだかんだいって恋人らしい生活を送っていた。

 

そんな調子で悟飯は大丈夫なのかと一度心配した二乃だが、その呟きを聞いた悟飯は、今の調子なら余程油断しない限りは大丈夫だとのこと。受験生なら誰しも一度は言ってみたい言葉である。

 

そんな二乃は、今日は珍しく友人に相談してもらっていた。

 

左こめかみ辺りにリボンを付けている山田に、黒髪のロングヘアーの大鳥。この2人は2年生の時からの二乃の友人である。そんな彼女達はファミレスである相談に乗っていたのだ。

 

二乃「彼に飽きられないか心配」

 

その言葉に激震が走った。まさか孫悟飯という男はそんなに女癖が悪かったのだろうか……?だが、顔だけで察した二乃は言い直した。

 

二乃「ち、違うわよ!!ほら!いつも同じことばかりやってるとマンネリ化して飽きるって言うじゃない?それがちょっと怖くて…………」

 

大鳥「あ〜……。頻繁に会ってると余計に起こりやすいって話だよね〜」

 

山田「昔の二乃ならそんな言葉が出るとは思えなかったな〜」

 

大鳥「ね!理想高そうだと思ったけど、孫なんてなんか意外」

 

二乃「そんなことないわよ。普段は確かに頼りない顔をしてるかもしれないけど、いざって時は本当にカッコいい顔するのよ!」

 

そして始まる悟飯語り……。悟飯と恋人になってからというもの、二乃が呼吸するようにほぼ毎日二乃の友人である2人が聞かされているものである。

 

山田「それもう聞いたから!!毎日聞いてる!!」

 

大鳥「毎日孫の魅力について語ってるけど、もしかして私達に紹介しようとしてるの?」

 

二乃「はっ?」

 

大鳥「じょ、冗談だからその目はやめて…!!?」

 

ちなみに、この時の大鳥の一言によって、二乃の悟飯語りは控えられたという。理由は説明するまでもない。

 

山田「はいはい。茶番はこれくらいにして、どうやってマンネリ化を対策するかだね?」

 

二乃「そうなのよ。自分でもどうすればいいかよく分からなくて………」

 

大鳥「なら次のステップに進めばいいんじゃない?確か学園祭から付き合ってるんだっけ?もうそろそろキスとかは………してそうだもんね」

 

二乃「勿論よ」

 

いくら心を許した友人相手とはいえ、ここまであっさりと公言するのもまた二乃だからこそなのかもしれない…。

 

山田「なら、いっそのこと最後まで行っちゃえば!!?」

 

大鳥「ちょ!?山田!!?」

 

山田「もうすぐクリスマスでしょ?そこで男が喜ぶような格好をしてアタックすればイチコロよ!!孫君ってウブで草食系って感じがするし、それくらい責めないと!!」

 

何やら面白そうだと思ったのか、進展を急かす山田だが、残念ながら……。

 

二乃「いや、その段階にはとっくにいってるのよね」

 

「「…………えっ?」」

 

2人は口をぽかんと開けて呆然とした。

 

大鳥「そ、その段階……?」

 

山田「あ、あ〜…!コスプレを披露するくらいにまで進展したんだね〜!」

 

山田は流石にABCのCにまで……つまり神るのは早すぎると判断し、恐らくコスプレの方の段階だろうと勝手に思い込んでいた。だが、追い討ちをかけるように二乃がこう言う。

 

二乃「いや、普通にセッ……」

 

大鳥「店員さーん!!追加注文OKですかーー!!?

 

大鳥が大声で二乃が続けたであろう言葉をなんとか阻止した。

 

二乃「なによ大鳥。それくらいで恥ずかしがってるんじゃないわよ」

 

大鳥「いやいやいや!!!普通に暴露するのはおかしいって!!?いくら友達だからと言ってここまであっさりとカミングアウトするのはおかしいよ!!?」

 

山田「それに二乃がよくても、孫君のことも考えないと!!!」

 

二乃「…………あっ」

 

そう。二乃本人が良くとも、悟飯にとってはとても恥ずかしいカミングアウトだったかもしれない。そのことを完全に失念していた。

 

二乃「そ、そうだったわ………」

 

大鳥「で、でもあの孫がね………」

 

山田「草食系と見せかけて、実は肉食系だったの………?」

 

二乃「何言ってんのよ。肉食も何も獣よ」

 

「「獣!!?」」

 

二乃「そうよ。それは告白された日の翌日のことだった……」

 

大鳥「絶対生々しいやつだからここでやめようかッッ!!!!」

 

2人がかりで妄想(事実)の中に入り浸りそうな二乃を現実に叩き戻し、ようやく本来の趣旨である相談に入る。

 

大鳥「ん〜………。やっぱりギャップっていうの?いつもと違う二乃を見せればいいんじゃない?例えば押すんじゃなくて引いてみるとか」

 

二乃「それ付き合う前にやって痛い目見たことあるのよね…………」

 

思えば、あの時の誤解で悟飯がショックを受けていたのも、あの時から二乃のことが好きだからだったのかもしれない。そう思うと胸が温かくなった。

 

山田「ならやっぱりいつもと違う格好で登場してみれば?」

 

二乃「いつもと違う格好ね………」

 

大鳥「あとは、いつもと違うデートをしてみるとか…………」

 

二乃「いつもと違うデート………」

 

要約すると、いつもと違うことをすればいいということだ。そして二乃は閃いた。

 

二乃「………!!そうか。ありがと!!今日は私の奢りにしとくわ!!」

 

大鳥「えっ?で、でも………」

 

二乃「それじゃ、私はやることを思い出したから!!」

 

そう言うと二乃は会計票を持ち出して会計を済ませ、駆け足でその場を去っていった。

 

山田「………まさか、今すぐ実践しようとしてるの?」

 

大鳥「でも今の時間からデートなんてできなくない?」

 

山田「いや、二乃と孫君ってもう行くとこまで行ってるんでしょ?なら……」

 

大鳥「…………私達にはまだ程遠い世界だわ…………」

 

山田「わ、私はしてみたい相手がいないこともないけど…………」

 

大鳥「(そういえば山田にはあの坊主がいたわ…………)」

 

2人は二乃がどこか遠い場所に行ってしまったような気がした………。

 

 

 

 

 

 

悟飯「…………急にどうしたのかな…?」

 

悟飯は突然二乃に呼び出された。メールの内容を簡単に言うと、「今日泊まりに来てくれない?」とのことだった。二乃のことだから、きっと勉強に追い込まれている五月や四葉のことを案じて勉強会を開きたいと考えたのだろうと思った悟飯は、用意をしてPentagonに向かっていた。

 

悟飯「やあ、こんばんわ!」

 

二乃「早かったわね。こんな時間に呼び出してごめんね?」

 

悟飯「いや、大丈夫だよ?」

 

ちなみに夕ご飯は済ませている。

 

悟飯「…………って、五月さん大丈夫?随分眠たそうだけど………」

 

五月「だ、大丈夫です……!よろしくお願いします…!!」

 

四葉「よろしくお願いしまーす!」

 

悟飯「………あれ?風太郎はどうしたの?」

 

二乃「流石に遅い時間だし、あまりらいはちゃんを1人にしたくないって聞いたから今回はやめておいたのよ」

 

悟飯「そっか………」

 

だが、悟飯はこの後思い知ることになる。何故風太郎が呼び出されなかったのかを…………。

 

 

 

 

 

 

勉強会は終了し、やはり悟飯がどこで寝るかで揉めるかと思われたのだが……。

 

三玖「私が一花の部屋で寝るから、悟飯は私の部屋使っていいよ?」

 

二乃「そうね。それがいいわ」

 

五月「私はもう寝ますね………」

 

二乃は案外素直に承諾し、五月は眠気に負けて先に部屋に戻ってしまった。

 

四葉「それではおやすみなさい!!」

 

悟飯「うん!おやすみ!」

 

そして悟飯は三玖のベッドを借り、意識を落とす…………はずだった。

 

悟飯「あれ?」

 

寝る前に携帯を確認すると、二乃からメッセージが来ていた。「私の部屋に来てほしい」とのことだった。

 

悟飯「何かあったのかな…?」

 

三玖の部屋から出た悟飯は、隣の二乃の部屋のドアをノックし、どうぞと聞こえたのでそっとドアを開ける。すると………。

 

悟飯「…………んん?」

 

言葉で説明するのは難しいが、何やら二乃はコスプレ?のようなものをしているようだ。右手にはムチも握られている。

 

悟飯「に、二乃……?その格好どうしたの?」

 

二乃「あら?随分気安く呼んでくれるわね?()()()………でしょう?」

 

悟飯「…………えっ?」

 

二乃「さあ、そこに這いつくばりなさい。生意気な下僕にはしっかり教育する必要があるわね」

 

悟飯「に、二乃……??何してるの…?」

 

これは所謂『プレイ』というやつなのだが、その手の知識に疎い悟飯は全く理解できずにいた。

 

二乃「私の言葉が聞こえなかったかしら?主の言葉は何よりも優先よ。さあ、それが分かったならそこに這いつくばりなさい!」

 

悟飯「………????」

 

悟飯は頭の上に無数の『?』を浮かべてしまった。

 

二乃「まず下僕のくせに服を着てるのが生意気ね。まずはその服全部脱ぎなさい」

 

悟飯「……!」

 

服を脱げとの命令を聞き、悟飯はなんとなくではあるが、二乃が何をしたいのか理解した。

 

ドンっ!

 

二乃「きゃあ!!」

 

悟飯は二乃をベッドの上に押し倒した。

 

二乃「ふぇ……?」

 

悟飯「どっちが生意気なのか……。はっきりさせる必要があるようだね」

 

二乃「あっ………(これ、寝不足コースだわ)」

 

 

 

 

 

 

 

三玖「…悟飯を起こそうと思ったけど、何故か部屋にいなかった」

 

珍しく二乃が先に起きていなかった為、三玖は自分でみんなの分の朝食を用意していた。出来上がったので五月、四葉と順調に起こしたはいいものの、悟飯はいなかった。だが四葉が朝ランニングするように修行している可能性もある。その為、二乃を先に呼ぶことにした。

 

三玖「二乃?朝ご飯作っといたよ?」

 

三玖はドアをノックしながら二乃を呼ぶが、起きる気配が一向になかった。

 

三玖「二乃?私だって料理の腕は上達してるんだよ?早く起きて」

 

しかし、反応は全くない。

 

三玖「………入っちゃお」

 

元々人を部屋の中に招くことにあまり抵抗のない三玖は、二乃の許可無しに勝手に部屋に入った。

 

三玖「…………ふぇッ…!!!?

 

二乃が寝ているであろうベッドを見て三玖は赤面してしまった。説明するまでもないが、二乃と悟飯が生まれたままの姿で一緒に寝ていた。流石にそれぞれの性別にしかない場所は見えていないものの、三玖には十分刺激が強かった。

 

ガチャリ……

 

三玖は逆に冷静になって二乃の部屋を去った。

 

三玖「…………これから二乃の部屋には無許可で入らないようにしよう……」

 

既に悟飯と付き合っているのだから、遅かれ早かれそういうことをするとは分かっていたが、予想以上に早くて驚いてしまった。

 

三玖「………もう悟飯は二乃のものになったんだね…………」

 

悟飯は二乃を選んだということを、改めて実感した。

 

 

 

 

 

二乃「ん……?さっき三玖がいたような気が………!!?」

 

自分の格好に気づいてしまったが、まだ少し眠気が残っていた。その為、眠気に任せて悟飯に抱きつき、二度寝をした……。

 

 

 

 

 

 

四葉「孫さんと二乃起きないねー?」

 

五月「…………」

 

三玖「きっと昨日沢山勉強したから疲れたんだよ」

 

五月は今日も勉強していた。四葉と三玖は比較的余裕があるため、五月の邪魔にならない程度に会話していた。

 

四葉「でも2人揃って寝坊って……まさか……………」

 

三玖「きっと四葉が考えてるようなことは起こってないと思うよ?多分…」

 

四葉「そ、そうかな……?」

 

三玖「そもそもナニかシようとするなら、二乃が自分の部屋に悟飯を招いているはず」

 

四葉「それもそうだね」

 

だが、四葉は知っている。学園祭の翌日の時点で2人が一線を超えたことを。そして三玖もまた、つい先程いつかは分からないが、少なくとも昨夜時点では一線を超えたことを知っている。四葉が知ったところで大して驚くことはないだろうが、三玖はできる子であり、2人の為にそれっぽい言い訳を代わりにしたのである。

 

 

悟飯「みんなおはよ〜……」

 

二乃「ごめんね三玖。朝ご飯作ってもらっちゃって」

 

三玖「ううん。それくらい問題ないけど………」

 

なんと、悟飯と二乃はほぼ同時に降りてきてしまった。これでは三玖が嘘をついた意味がなくなってしまうではないか。

 

四葉「(ああ……。やっぱり2人で夜に…………。わ、私もいつか風太郎君とそういうこと………するのかな…?)」

 

だが幸いなことに、五月は勉強に集中していたため、彼女が気づいた時には既に二乃と悟飯は朝食を食べ終えていたのだった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドッキリ

 

 

時は少しだけ流れ、また別の日……。

 

風太郎「よし今日は久々に全員……ではないが、勉強会を始めるとするか」

 

中野家マンションにて今では頻度が減ってしまった家庭教師の時間となった。とはいえまだ受験を控えている五月や四葉が主な対象となっている。ちなみに一花は今日も長期ロケによる撮影をしているとのこと。

 

風太郎「おい、二乃はどうした?」

 

三玖「……さっき勉強道具を取ってくるって言ってたけど……」

 

四葉「それにしては遅いね?」

 

五月「う、上杉君!!先に始めてしまって構いませんか!?」

 

風太郎「お、おう…。やる気があるのはいいことだが、あまり焦りすぎるなよ?」

 

悟飯「…ちょっと僕が様子を見に行ってみるよ」

 

あまりにも遅い二乃を心配して悟飯が二乃の部屋に出向くことになった。数回ノックをするが反応がない。ゆっくりドアを開こうとすると、あっさりと開いてしまった。どうやら鍵は掛けていないようだが………。

 

悟飯「………!!!!?」

 

なんと、二乃が赤い液体を撒き散らしながら倒れているではないか…!悟飯は咄嗟に二乃に駆け寄ったが……。

 

悟飯「……ん?これ、血の匂いじゃないな……?」

 

どうやら赤い液体は血ではないらしいし、なんなら美味しそうな匂いがする。よくよく見ると、撒き散らしているというよりは指先に付いているだけだった。そして少し逸らすと赤い文字で書かれたものがある。これがもし、二乃が死んでいればダイイングメッセージというものになっていたのだろうが、二乃は死んでないのでそれモドキということになる。

 

悟飯「………ん?」

 

薄い赤文字で「大好き」と書かれていた。気を確認するまでもなく、これがドッキリだということを確信した。

 

だが、過去のこともあって一瞬でも本気で心配してしまったのは事実。悟飯も少し仕返しをしてやろうかと思った。悟飯は二乃の影響で少し悪い子になりつつある。

 

悟飯「よっと……」

 

まず二乃を仰向けにしてからお姫様抱っこで抱え、そっとベッドに運んだ。ここから何をしてやろうかと悟飯は考えこむ。

 

悟飯「うーん……………」

 

どうすれば二乃を驚かせることができるか策を講じようとするが、悟飯はそのようなことをやったことがない。その為咄嗟に思いつくはずもなかった。

 

悟飯「はぁ……。まあいいか」

 

ベッドに寝っ転がっている二乃に掛け布団をかけ、優しく頭を撫でた。そのまま二乃の部屋を退出しようとする。

 

二乃「私は遊んでる間に寝落ちした子供かぁ!!!?」

 

悟飯「うわッ!!!?」

 

何かに耐えかねた二乃が飛び起きてそう突っ込んだ。悟飯は二乃が起きていることはなんとなく分かっていたが、まさかこのタイミングで大声を出してくるとは思いもせずにビックリしてしまった。

 

二乃「あのね!!?無防備に寝ている可愛い女の子を目の前にして何もしないってどうなのよ!!?ここ密室よ!?防音性もいいのよ!!?しかも付き合ってるのよ!!?」

 

悟飯「いやいや、今日はあくまで家庭教師をしにきたから、そういうことをするわけには…………」

 

二乃「……許せないわ。乙女のプライドにかけて今日はなんとしても犯す!!」

 

悟飯「ちょっと何を言ってるの!!?だから僕は………!!」

 

二乃「うるさーい!!大人しくそこに平伏しなさぁぁああい!!」

 

ムードもへったくりもあったものではないが、謎に怒った二乃によって悟飯は運動会(意味深)を実行させられることになったのだ………。

 

 

 

 

風太郎「おい、悟飯のやつ遅くないか?」

 

三玖「二乃も降りてこないし……」

 

四葉「私が連れてきますね〜!!」

 

悟飯が二乃を呼びに行って30分ほどが経過し、いい加減風太郎が痺れを切らした。2人は恋人同士ということで、多少はいいかと目を瞑ったのが間違いであった。

 

風太郎「まさかあいつがここまでご執心になるとはな………」

 

三玖「それだけ悟飯も二乃のことが好きなんだよ。本当に隙がないよね…」

 

風太郎「とはいえ、二乃はもう大丈夫かもしれないが、悟飯は受験を控えているんだぞ?あんなに浮かれてて大丈夫なのか?」

 

三玖「………流石に最近は酷いかもしれない……」

 

 

 

四葉「おーい!2人とも〜!!上杉さんがいい加減鬼杉さんになってしまいますよ〜!!」

 

四葉が謎の脅しをしつつ二乃と悟飯に退出を促すが、反応がない…。だが、2分くらいするとドアが開いた。

 

二乃「ごめんごめん。つい話し込んじゃったみたい!」

 

………謎にツヤツヤしている二乃と…。

 

悟飯「あはは………。疲れた……………」

 

何やらゲッソリしている悟飯が現れた。

 

四葉「そ、孫さんどうしたんですか!!?まるで生気を吸い取られたような顔してますよ!!?」

 

悟飯「あはは…。大丈夫だよ、うん…」

 

二乃「せいき……ね……。ある意味吸い取ってるかもしれないわね………」

 

二乃が歳に似合わず大人の色気を放ちながらそう呟いた。

 

四葉「(あ〜…………)」

 

それを見て四葉は全てを悟ってしまった。

 

二乃「さっ!家庭教師するんでしょ?早く降りましょ♪」

 

悟飯「う、うん………」

 

四葉「(何も考えないようにしよう)」

 

いちいち考えたてたら羞恥に悶えてしまうのは目に見えていたので、四葉は考えるのをやめた。

 

 

 

ちなみに二乃は、零奈がいない時を狙って悟飯を連れ込んでいます。だって零奈さんがいるとあんなことやこんなことがしづらいもの………。

 




 今回のお話は五等分REや某風二乃同人誌を始めとした二次創作作品を参考にしたお話が多めでした。ちなみに某同人誌とは、「このコマ割りなのよ!?」で有名なアレです。多分ごと嫁好きで二次創作漁る方なら知ってると思う。こんな感じでDB側も合わせて小ネタを出していけたらなぁとか思ってます。
 なお更新頻度………。


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第111話 ハロウィンとクリスマス

 今回までは主に二乃と悟飯の関係にスポットを当てましたが、次話は一花メインの話を書いて、その後に卒業式の話でも書いて5年後(正確な年数は不明)に移ろうかなぁと考えてます。そろそろ本編でやることじゃない話ばかり書いてしまいそうなので。ちなみに今回もおバカな展開というやつになりますね。今までのシリアスは何処へ………?


ハロウィン

 

本日は10月31日……。日本では仮装をして街を徘徊したり、お菓子を求めることで有名な行事とも言える日である。この日は一花も家に帰ってきており、悟飯と風太郎を巻き込んだハロウィンパーティーの企画をしていた。

 

一花「よし…。こんなものでいいんじゃないかな?」

 

二乃「仮装もバッチリね」

 

三玖「ちょ、ちょっと緊張する……」

 

四葉「こんなに大々的にパーティーをするのは初めてかもね!」

 

五月「確かに、今までは私達だけでやっていましたからね」

 

そんな話をしているとインターホンが鳴り響く。風太郎と悟飯がほぼ同時に到着したようだ。数分すると玄関のドアが開かれ、2人が入ってきた。

 

一花「よし。みんな打ち合わせ通り行くよ?せーの……」

 

風太郎「トリックオアトリート!!!お菓子くれなきゃ悪戯するぞ!!」

 

五つ子が言おうとしていた台詞を風太郎に取られた。流石に予想外の展開で五つ子は驚きのあまり固まってしまった。

 

二乃「こ、これは…?!」

 

三玖「四葉…!がんばれ!」

 

四葉「えっ?なんで私…?」

 

五月「ふ、不純です!」

 

一花「四葉…!お菓子を持たずにフータロー君の元にGo!」

 

四葉「えぇ!?なんで!?」

 

風太郎「何を話しているのか知らんが、お菓子はないのか!?らいはの為にお菓子をくれ!!」

 

(((((あ〜……。そういうことね)))))

 

風太郎が妙にテンションが高い理由が分かった。恐らくらいはの為に少しでもお菓子を欲しているのだろう。

 

一花、二乃、三玖、五月は事前に準備していたお菓子を風太郎に手渡した。だが、四葉のお菓子だけ二乃に取り上げられてしまったため、渡せない状況にある。

 

風太郎「なんだ四葉?菓子持ってないのか?」

 

四葉「そ、そんなはずはないんですけど…!!?」

 

四葉は必死にお菓子を探すが、どこを探しても見た当たらなかった。

 

一花「四葉!フータロー君と進展するチャンスだよ?お菓子はわ・た・し♡って言わないと…!」

 

一花が小声でそうアドバイスをするが四葉は顔を真っ赤にして一花を睨んだ。

 

風太郎「持ってないのか…。ならお前は悪戯だな!」

 

四葉「ええ?!そ、そんな…!!」

 

風太郎「まずはそこの机付近に座れ!」

 

四葉「えっ……?う、上杉さん…?」

 

風太郎「そして筆記用具とノートを取り出せ」

 

四葉「えっ?」

 

風太郎「そして今からマンツーマンの家庭教師を実施する!」

 

四葉「それのどこが悪戯なんですか…?」

 

一花「フータロー君………」

 

三玖「フータローらしい……」

 

どうやら4人が期待したような展開にはならなかったらしい。となれば、次は悟飯に備えるべしと悟飯の方に向き直すが………。

 

悟飯「へ〜…。ハロウィンってこういうイベントなんだね〜………」

 

どうやら悟飯がまともにハロウィンに接したのはこれが初めてらしい。マヤリト王国にはその手の文化が渡っていないのかもしれない。

 

三玖「……ん?ということは…?」

 

五月「孫君はお菓子を持っていない…?」

 

二乃「……!!!!」

 

悟飯がお菓子を持ってない可能性に気づくと、3人の目が一気に光出した。

 

「「「トリックオアトリート!!」」」

 

悟飯「えっ?」

 

二乃「お菓子!」

 

三玖「くれなきゃ!」

 

五月「悪戯しちゃいます!!!」

 

悟飯「えっ……?」

 

一花「知らない悟飯君の為に解説すると、ハロウィンとはお菓子を持ってないと悪戯される文化なのです!」

 

説明口調で一花が役割を果たすが、ざっくりとしすぎている。だがこれで大体は合っている。

 

悟飯「こ、困ったなぁ…。僕、今お菓子なんて持ってないよ………」

 

二乃「なら悪戯決定ね!」

 

三玖「やった………」

 

五月「何にしましょう………」

 

案の定悟飯はお菓子を持ち合わせておらず、悪戯を考える3人だが……。

 

一花「(あれ?二乃と悟飯君は既に付き合ってるけど、後の2人は……)」

 

一花は嫌な予感がしてならなかった。二乃と悟飯が付き合う以前の激しい戦いが再び幕を開いてしまうのではないだろうかという懸念だけが頭に浮かぶ。

 

三玖「じゃあ私は今度一緒にお出かけしよう?時間がある時でいいから」

 

悟飯「えっ?そんなことでいいの?」

 

三玖「うん。私にとってはそれで十分」

 

悟飯「そっか…。分かった!」

 

どうやら三玖は二乃と悟飯の関係を案じ、そこまで過激な悪戯は提案してこなかった。というよりこれではただの約束の取り付けだ。

 

五月「じゃあ私は………。この前新しくオープンした焼肉屋さんがあるんですよ!受験が終わったら一緒に行きましょう!!」

 

悟飯「それも悪戯なのかな……?」

 

一花「(おや?これは平和に終わりそうだな………)」

 

五月も三玖もそこまで過激な悪戯はしないようだ。一花は取り敢えずシスターズウォーの再来は免れたと安心するが……。

 

二乃「じゃあ私からの悪戯は……」

 

何やら悟飯の耳元で何かを囁いている二乃。二乃が離れると悟飯は顔を真っ赤にして慌てる。

 

二乃「それじゃ、後で部屋に来なさい♡」

 

そう言うと、二乃は一旦部屋に戻っていった。

 

一花「…ねえねえ悟飯君。二乃になんて言われたの?」

 

一花は気になったのでこっそりと悟飯に聞いてみることにした。

 

一花「……もしかして、エッチなお誘いとか……??」

 

悟飯「………!!!?」

 

なんとも分かりやすい反応。一花はいつの間にそんなに進展したのかと二乃に対して関心さえしてしまった。

 

一花「(確かにとっとと確保するならそれが手っ取り早いもんねぇ。悟飯君は二乃に攻略されたわけだ………)」

 

一花「まあ、悟飯君も男なんだしビッシリと決めないとね?そろそろ二乃の方も準備できたんじゃない?」

 

悟飯「えーっと………」

 

一花は反応が悪い悟飯に、去り際にこう言った。

 

一花「ちゃんと避妊するんだぞ?

 

悟飯「ブフォ…!?い、一花さんッ!!??」

 

からかいがエスカレートしてきたので流石の悟飯も怒ってしまったようだ。

 

一花「ごめんごめん!やっぱり悟飯君を揶揄うのは面白いね〜」

 

悟飯「むぅ…………」

 

五月「一花?悟飯君と何のお話をしていたんですか?」

 

一花「別にー?ただ二乃のエッチな仮装が見れるかもねって言っただけだよ?」

 

五月「なっ……!!!?」

 

三玖「その手があった………」

 

一花「もうダメだよ?悪戯も決めちゃったんだから」

 

 

 

悟飯は複雑な感情ながらも、二乃の部屋に向かうことにした。ノックをすると二乃に許可をもらったのでゆっくり入ると………。

 

二乃「トリックオアトリート♡」

 

……体に包帯を巻きつけただけの二乃がそこにはいた。包帯がなかったら生まれたままの姿になってしまう。

 

悟飯「ちょっ……!!!い、いくらなんでもその格好は……!!」

 

二乃「あら?お菓子はないのね?なら悪戯決定ね♡」

 

この後、悟飯は二乃によって散々運動をさせられました。尚本人も逃げようと思えば逃げられるのに、それをしないということは…………。まあそういうことである。

 

 

 

 

 

 

四葉「うぇ〜……!!なんでハロウィンにもなって勉強をしないといけないんですかぁ!!?」

 

風太郎「おい四葉!手を止めるんじゃないぞ!これは俺からの"悪戯"なんだからな!」

 

一花「…………なんか違う」

 

未だに風太郎の悪戯は続行していた。なんで同じ年頃のカップルなのにこうも差があるのか……。四葉に二乃ほどの押しの強さがないのも一因だろうが、1番の問題は風太郎にあるように思える。

 

一花「フータロー君さぁ……。せっかく四葉と付き合ってるんだから、もっと別の悪戯とか考えないわけ?」

 

風太郎「はっ?他にって何があるんだよ?」

 

一花「ほら、例えば……『甘いお菓子がないなら、代わりにお前の甘い唇をいただくぜ』……とか」

 

一花はこれまで培ってきた演技力を駆使して、風太郎の真似をしながらキザな台詞を言った。

 

風太郎「なっ……!!お、お前……!!何言ってんだよ……!?」

 

一花「そんなにドライだと、四葉に愛想をつかされちゃうかもよー?」

 

風太郎「……!!?」

 

思い返してみると、四葉とキスしたことは何度かあれど、風太郎からキスをしたことは一度もなかったのだ。全て四葉から動いたものだった。

 

一花「………ダメだこりゃ。四葉、ちょっとだけフータロー君を借りてくね?」

 

四葉「えっ?別にいいけど……」

 

一花「ガールフレンドの了承は得たので私の部屋に連行しまーす♪」

 

風太郎「おい!待て!!」

 

一花「大丈夫!彼女いる男の子にいやらしいことはしないから!」

 

風太郎「そういう問題じゃねえ!少しでも四葉に勉強させねぇと……」

 

一花「どこまでその悪戯に拘ってるの!!!?」

 

しかし悲しきかな…。風太郎よりも一花の力の方が強い為、情けなくも引っ張られるしかなかった。

 

だが、道中で一花の足が止まることになる。その場所とは、階段から見て一花の部屋より少し手前……。つまり、二乃の部屋の前である。

 

ア、アンッ…!!ハゲシ……ッ…!!

 

…………聞いてはいけない声を聞いてしまった。

 

風太郎「……ん?どうしたんだ一花?」

 

だが、風太郎には聞こえてなかったようだ。

 

一花「な、なんでもないよ……!!や、やっぱり下で話そっか……!!」

 

急に恥ずかしくなった一花は結局はリビングで風太郎を教育することにしたそうだ。教育の内容は、基本的に乙女は何を求めているかというものだった。だが、四葉の支えになりたいと考える風太郎は思いの外真剣に一花の話を聞いていた。彼らが出会ったばかりの頃を考えるとかなりカオスな光景である。だが、三玖、四葉、五月の3人はいつまで経っても降りてこない二乃と悟飯のことが気になり始めていた。

 

五月「………二乃と孫君、明らかに遅いですよね?」

 

四葉「あ、あはは……。きっと部屋で話に花を咲かせてるんじゃないかな〜?」

 

三玖「きっとそう。多分誰にも見られないところでいつも以上にイチャイチャしていると思う」

 

五月「………やっぱり羨ましいです」

 

四葉「最近、孫さんは二乃にお熱だもんね〜」

 

三玖「ちょっと寂しい………」

 

ハロウィンパーティーを楽しんでいたところ、零奈が帰宅する。

 

零奈「ただいま戻りました」

 

風太郎「あっ、どうも零奈さん。お邪魔しています」

 

零奈「お義母さんと呼んでもいいのですよ?」

 

四葉「な、何を言ってるの!!?」

 

零奈は四葉と風太郎、悟飯と二乃が恋仲になっていることを既に知っている。悟飯や風太郎に会う時はマルオとは正反対に、これを決まって言うのだ。最早挨拶代わりとなっている。

 

零奈「おや?二乃と孫君はいないのですか?」

 

三玖「二乃と悟飯は部屋で2人っきりでイチャイチャしてると思う」

 

零奈「………!!」

 

三玖はあくまでオブラートに包んだつもりだ。だが、零奈は母親の感だからだろうか……。悟飯と二乃が部屋でナニをしているのか、たったそれだけで察してしまった。

 

零奈「なるほど……。どちらが主犯ですか?」

 

三玖「二乃」

 

零奈「分かりました。二乃には後できついお仕置きをしましょう………」

 

四葉「えっ?お、お母さん……?」

 

一花「(まさかあれだけで察したの?)」

 

今の零奈は優しき母親の顔ではない。鉄仮面と呼ばれている時の顔だ。目も顔も笑っていない。

 

五月「えっ?二乃が主犯ってなんです?別にお部屋でお話するだけなら問題ないのでは?」

 

零奈「ええ、そうですね。お話だけならですが…………」

 

五月「……??」

 

姉妹の中では一番鈍感な五月はこの意味を理解していないようである。

 

風太郎「なんだ?二乃はなんか盗み食いでもしたのか?」

 

一花「二乃はそんなことしないでしょ。五月ちゃんじゃあるまいし」

 

五月「なっ?!い、一花!?」

 

 

 

二乃と悟飯が部屋に篭って1時間……。ようやくツヤツヤした二乃と、何やらスッキリしたような顔をした悟飯がリビングに降りてきた。

 

二乃「あっ、お母さん帰ってきてたんだ。お帰り〜」

 

悟飯「お、お邪魔してます………」

 

零奈「………二乃。気持ちは分からなくもないですが、少しは自重して下さいね?」

 

二乃「えっ……?」

 

零奈「孫君も……。然るべき処置はしっかりとするように」

 

零奈も元々教師とはいえ、自分も恋をして子供まで持った身。そこまで強く言えないとはいえ、姉妹達から二乃の行動を聞き、最近は行き過ぎているのではないかと懸念して注意した。つまり、零奈にも2人がどのステップまで進んでいるかバレているのである。

 

こうして、ハロウィンパーティーは零奈と二乃合作のパンプキンケーキをみんなで食べて締められたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

クリスマス

 

正確にはイブだが…。聖夜とも言えるこの日。四葉と風太郎は…………。

 

『流石にそろそろ勉強しないとまずいから断る』

 

クリスマスパーティーに誘ったはずが、風太郎の心無い返信によって花のないものとなってしまった。

 

四葉「う、上杉さん………。せめて今日くらいは付き合って下さいよぉ……」

 

二乃「仕方ないわよ。もう受験も佳境に入っているしね。それに、あっちも見てみなさいよ」

 

 

零奈「五月…?そろそろ休まれては…?」

 

五月「ダメです…!!例えクリスマスと言えども、少しでも多く勉強しなければなりません……!!!お母さん、お願いします!!!」

 

 

三玖「あんな状態じゃ仕方ない…」

 

一花「あはは…。今日はケーキを食べるだけにした方が良さそうだね〜……」

 

二乃「そうよ。ハー君もそろそろ受験が近いからって来てくれなかったもの」

 

四葉「でも一花、よく休み取れたよね?」

 

一花「あはは……。でも後は年末年始くらいでお休みはもうないよ……」

 

二乃「むぅ………」

 

しかし、ロマンチストな二乃は、クリスマスは恋人と共に過ごしたいとも考えていたが、家族と一緒に過ごしたい気持ちもある。どうすればいいかと悩んでいるところに、一花に肩を叩かれた。

 

一花「二乃、本当は悟飯君と過ごしたいんじゃないの?」

 

二乃「……否定はしないわ。でも今年は久しぶりに家族全員が揃いそうなのよ?」

 

一花「ふふふっ……。ならこうすればいいんじゃない?夜ご飯は私達と食べて、夜は悟飯君と過ごす………」

 

二乃「えっ?で、でもお父さんが帰ってきたら大変なことにならない?」

 

一花「そこは上手く誤魔化しておくよ…!せっかくのクリスマスなんだから………。そうだ!お姉さんからちょっと早いプレゼントだぞ♪」

 

そう言うと、一花はややテンション高めにプレゼント用のリボン"だけ"を渡してきた。

 

二乃「えっ?リボンだけじゃ意味ないじゃないの?」

 

一花「違うよ。悟飯君のプレゼントは、二乃自身だよ?」

 

二乃「……!!そ、そういうことね…」

 

一花は二乃を揶揄おうとリボンを渡したのだが、何故か二乃はノリノリであった。

 

一花「あ、あれ……?」

 

二乃「ありがと一花…!!これは有効活用させてもらうわ!!」

 

一花「あるぇ〜……?」

 

一花のプレゼントはこの後有効活用されることになるが、それはまだ少し先のお話である。

 

マルオ「ただいま」

 

そんな話をしていたら、マルオが仕事から帰ってきたようだ。

 

三玖「お帰りなさい」

 

マルオ「既にみんな揃っているようだね。待たせちゃったかな?」

 

二乃「そんなことないわよ」

 

四葉「五月〜!お父さんが帰ってきたからそろそろご飯にしよ!」

 

五月「えっ!?本当ですか!?お腹空きましたぁ!!!」

 

この日の夜の食卓、中野家では数年ぶり………いや、家族全員揃って初のクリスマスパーティが行われたのである。ちなみにマルオはちゃっかりお酒を飲んでいた。

 

 

 

 

そして、パーティも終わりを迎え、みんなが寝静まろうとしていた時のこと………。

 

二乃「…………どうやって彼の家に行こうかしら…………」

 

二乃は一花に言われてしまったことが原因で、余計に悟飯の家に行きたくなってしまった。筋斗雲は二乃では呼べないし、悟飯にお迎えを頼んでも恐らく断られてしまう。悟天に頼むという選択肢もあるが、二乃のことをあまり好んでいないようにも思える。となると、自力で行くしかないのだが、とてもじゃないが自力で行けるような距離ではない。

 

四葉「ねえ二乃。何気に今日初めて家族全員で揃ってクリスマスを迎えたよね?」

 

二乃「そうね〜。父親がいなかったり、お母さんが死んじゃったり、お父さんが帰ってこなかったりしてたからね……って……」

 

灯台下暗しとはこのことを言うのだろう。案外というか物凄く近いところに適当な人材がいた。

 

二乃「あんたがいたかぁ!!!

 

四葉「うわっ!!?どうしたの二乃!?」

 

二乃「四葉。頼みがあるわ。今からハー君の家まで送ってくれない!?」

 

四葉「えっ…?今から……?でも今日はお父さんとお母さんもいるよ…?」

 

二乃「どうしても今日じゃないといけないのよ…!!お願い…!!!」

 

四葉「で、でも…………」

 

基本的に人の頼みを断ることのない四葉だが、今回反応が悪いのはいくつか理由がある。まず、二乃が悟飯の家に行ってナニをする気なのか理解しているからだ。先日ほぼ母親にもバレたというのに、自分が加担する気にあまりならないのだ。そして2つ目にマルオがいることだ。マルオにバレてしまえば二乃と悟飯………いや、悟飯が大目玉を喰らうことになるだろう。それらを考慮すると、どうしても遠慮したいものがあった。

 

マルオ「どこに行くんだい?」

 

四葉「わーっ!!!?」

 

すると、そこに丁度マルオが現れた。

 

二乃「お、お父さん…?寝てたんじゃ…?」

 

マルオ「僕はもうちょっと起きてると思うよ。何せ仕事をしているからね」

 

院長とは忙しいもののようで、家に帰っても仕事が待機しているようだ。

 

マルオ「今日はもう遅い。夜ふかしは美容の敵とも言うし、早めに寝たまえ」

 

二乃「は、はーい………」

 

マルオがまだしばらく起きているとなると、二乃が出かけることは絶望的である。

 

四葉「二乃。今日は諦めるしかないよ。明日もあるし……ね?」

 

二乃「………分かったわよ…」

 

二乃は渋々諦めることにした………。

 

 

 

 

 

同日の孫家。こちらでも家族でクリスマスパーティを開催していた。悟飯の祖父に当たる牛魔王を入れて初めての5人によるパーティだ。とはいえ、既に食事は終えており、今は悟飯と悟天が遊んでいる真っ最中だ。

 

悟飯「あちゃ〜……負けちゃった」

 

悟天「わーい!兄ちゃんの下手くそ〜!!」

 

この兄弟はゲームで遊んでいたのだが、そういった娯楽を経験したことのない悟飯は悟天に負けっぱなしだった。

 

悟飯「むむっ…!そう言われると悔しいなぁ……悟天、もう一回だ!」

 

悟天「もう58連敗じゃない?大丈夫なの?」

 

そして悟天はいつにも増してテンションが高かった。最近は悟飯が二乃にお熱であるのと、受験による佳境で中々遊んでもらえなかったからだ。悟飯が二乃の申し出を断った理由の一つに、この日ばかりは悟天と遊んでやらないと可哀想だとも思ったからである。

 

悟空「はぁ…!こうしてみると、悟飯のやつしっかり兄ちゃんやってんだなぁ」

 

チチ「悟天ちゃんにとってはお兄ちゃんでもあって父親みたいな存在だったからなぁ………。悟空さが死んじまってから悟飯が一層大人っぽくなっちまったたぞ?」

 

悟空「ははは……。なんかそいつは悪いことをした気分だなぁ……」

 

牛魔王「そう言うなチチ。悟空さもあの時は地球を守るためにやってくれたことなんだから……」

 

チチ「それはオラも分かってるだが…………」

 

そう。悟空が死んでからというもの、悟飯はただでさえ歳に似合わず礼儀正しく大人っぽかったが、更に遠慮気味になってしまったようにも思える。しかし、高校に通い始めて1年半が経過し、五つ子達と出会ってからは歳相応の顔を見ることが多くなっていた。そんな顔を作り出せたのは五つ子や友人である風太郎のお陰なのだとなんとなく分かっていた。それもあってチチは最初から五つ子や風太郎に対しては好感度が高かったのである。

 

チチ「あの五つ子の娘っ子に出会ってからの悟飯は、どこにでもいる普通の高校生になってくれたべ?」

 

悟空「そうなんか?オラからしたら、前よりもよっぽど戦士っぽくなったけどな?」

 

牛魔王「細かいことはどうでもいいだ。子供が健やかに育ってくれれば、オラはそれ以上は求めないだよ」

 

この日の孫家は、1日中和やかな雰囲気に包まれていた。

 

 

 

夜遅くになり、悟天達はもう寝静まった頃、悟飯は遊びに使った分の時間を取り返すように勉強に取り組んでいた。

 

悟飯「ふぁ………。今日はこれくらいにしようかなぁ………」

 

だが、流石に眠気が来たようで、ここで悟飯は勉強をやめることにした。既に風呂や歯磨きは済ませているので、すぐに寝ることもできた。

 

悟飯「……………」

 

そして就寝に入ろうと思ったが、最近ある変化が起きたのだ。少し前までは悟天と共に寝ていたはずなのだが、悟飯だけの部屋になったのだ。悟天は空き部屋にあった場所を部屋として改良し、新しい悟天の部屋として過ごすこととなったのだ。何故このようなことをしたのかは分からなかった。

 

そして、隣に悟天がいない物寂しさを覚えてしまった。

 

悟飯「………ちょっと水飲むか」

 

眠れそうになかったので、一度リビングに行って水を飲むことにした。一杯だけ水を飲んで自室に戻ろうとしたが……。

 

 

コンコンッ

 

悟飯「………?(こんな時間に誰だ…?)」

 

恐る恐るドアを開けると………。

 

零奈「メリークリスマスです、孫君」

 

悟飯「えっ…?」

 

何故か零奈がいた。しかもサンタクロースの格好で………。

 

悟飯「な、何をしているんですか…?」

 

零奈「孫君にクリスマスプレゼントを渡そうかと思いまして。ちなみにこのプレゼントは()()()()ですよ。孫君のお部屋で1人の時に開けてくださいね。あと、くれぐれも()()に扱うように……………」

 

悟飯「は、はぁ……?」

 

零奈の意図は不明だが、零奈のプレゼントなら疑うこともないだろうと思った悟飯は受け取ることにした。やたらとでかいプレゼントボックスを言われた通り自室に運び、そっと置いた。

 

悟飯「…………僕だけがいる時に開けてって言ってたけど……あれどういう意味かな………?」

 

色々と聞きたいことはあったが零奈はさっさと帰ってしまったので仕方ない。恐る恐る開けてみると……。

 

二乃「メリークリスマス!!」

 

悟飯「えっ、に………の!!!?」

 

中から二乃が出てきた。しかも身体にリボンを巻いただけの格好で………。

 

悟飯「な、ななな………!!?何をしてるの!!!?(というか零奈さんは何をしてるんだ!!!?)」

 

二乃「何って………い、言わなきゃ分からないわけ……?」

 

二乃の身体は何度も見てきた悟飯だったが、流石の不意打ちに思わず顔を赤くしてしまう。二乃が勢いよく飛び出した勢いによって飛び出た紙がヒラヒラと舞い降りてきた。それに気づいた悟飯は手に取って………。

 

『メリークリスマスです。今日はクリスマスということでプレゼントを渡しますね。プレゼントはあなたに会いたそうにしていたあなたの大切な人です。くれぐれも乱暴だけはしないように。

 

P.S. これからは私のことは"お義母さん"と呼んでくださいね?』

 

悟飯「零奈さん…………」

 

真面目で冷静な人だと思っていたが、どうやらチチやブルマに近い人間のようだった。恐らく悟飯と二乃が相思相愛であることを知ってるし、悟飯を信用しているからこそこのようなことをしたのだろう。だが、悟飯は何か大事なものを失ったような気がしてならなかった。

 

二乃「………ねえ。この格好でいつまでも放っておかれると風邪引くんだけど………」

 

悟飯「……あっ」

 

手紙の内容に気を取られていた悟飯は二乃の存在を忘れていた。今の彼女はとても危ない格好をしている。

 

悟飯「ふ、服を着ればいいんじゃないかな………?」

 

二乃「…………違うでしょ。そこは『俺の体で温めてやるよ』でしょ?」

 

悟飯「ぼ、僕はもう寝るから!」

 

二乃「ちょっと待ちなさい!!女の子がこんな格好してるのに無視するとはいい度胸ね!!?」

 

悟飯「ダメだよ!今日この家にはお父さんにお母さんに悟天、お爺ちゃんもいるんだから!!」

 

二乃「………へぇ?2人きりならいいんだ?」

 

悟飯「あっ…!いや、そういう意味じゃなくて…………」

 

二乃「それにこの前、私の姉妹がいたのにお構いなしだったじゃない?あれはどういうことなのよ?」

 

最近は羽目を外し過ぎたと自覚している悟飯は、節度を守らねばと強い意思を持っていた。その為、最近は二乃と会ってもそのようなことはほとんどしなかったのだ。だが、そのせいで二乃は不満になっているというわけである。

 

二乃「まあいいわ。あんたがどんな返事をしようと、ハー君に拒否権はないから♡」

 

 

 

 

 

全てを終えた後、悟飯は『寧ろ二乃がプレゼントもらってない…?』と思ったが、今更気にしても仕方ないと心に言い聞かせ、眠りにつくのだった。

 

 

 

 

 

四葉「ねえお母さん?最近二乃と孫さん羽目を外し過ぎじゃない?お母さんはむしろ止めなきゃいけない立場じゃないの?」

 

零奈「だって………。あまりにも二乃が悲しい顔をするものですから………」

 

四葉「お母さんが甘くなってる…?!」

 

一度死んで長い間娘達を放ったらかしにしてしまった罪悪感からか、零奈は娘に甘くなっていた。これでは悟飯がなんとかしない限りどうしようもないではないか。

 

まあ、幸せならOKです?

 




 どうも。バイトやらテストやらで疲弊しまくっているMiurandです(甘え)。マジで最近は執筆する時間がないでやんす。時間があれば書けるんだがなぁ…。というのはさておき、私が更新をグダっている間にファンアートをいくつか頂きました。どれも素晴らしい絵なのですが、その絵の特集的なものをどこかのタイミングで載せたいなぁと考えています。でも載せるとしても恐らくハーメルンではなくpixivになるんじゃないかな〜…?初の番外編で悟飯達が語っていく形式でならこちらでも投稿するかもしれませんが。

 ちなみに作者はファンアートをもらえるだけで泣いて喜びますw


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第112話 悟飯と風太郎

 最近週1更新がやっとですなぁ。昨日はモチベが馬鹿みたいにあったのに腹痛で妨害されるとか……。なんだ私は小説書けない呪いでもあるんか……?そんな冗談はさておき、今回は風太郎と悟飯が出会った頃の過去話となります。その前にほんのちょっとだけ初詣の話もあります。本当は一花と悟飯の日常回にする予定だったのですが、急遽こうなりました。過去話の詳細は番外編としてやるかな?

 言い忘れてた…。明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。


あっという間に年を越し、新年となった。例えお正月といえども、マルオは忙しいらしく、五つ子に零奈も加えた6人で初詣に行くことになった。そして今年は決定的に違うことが……。

 

風太郎「よう」

 

らいは「みなさん、あけましておめでとうございまーす!!」

 

風太郎とらいはも初詣に来ることだった。しかも去年とは違ってしっかり待ち合わせをしていた。

 

一花「フータロー君は相変わらずの服装だね……」

 

風太郎「仕方ないだろ。うち貧乏なんだから」

 

四葉「う、上杉さん!あけましておめでとうございます!」

 

風太郎「おう、今年もよろしくな、四葉」

 

四葉「…………」

 

風太郎「……ん?」

 

基本的な挨拶の返しだったと思うのだが、四葉の反応が妙に悪い。

 

一花「フータロー君さぁ………」

 

一花が呆れたような目で見る。何故だ心外なと思いかけたが、理由はなんとなく分かった。

 

もしも四葉が自分のために今日の着物を用意してくれたとしたら、俺はなんて声をかければいいのか………。

 

風太郎「四葉、その……なんだ?そのラクダ、かわいいな」

 

四葉「あ、ありがとうございましゅ……」

 

なかなかに初々しい光景だ。殆どが微笑んでいる中………。

 

二乃「あ〜…!ムズムズする〜…!!」

 

三玖「ケダモノ二乃よりはマシ」

 

二乃「へっ!!?な、なんのことよ!?」

 

五月「そうですね。肉食性獣よりはよっぽどマシだと思いますが…?」

 

二乃「だ、誰が肉食性獣よ!!?」

 

零奈「今日くらいは上品に振る舞ってください」

 

3人の言い争いは目に余るものであった為、零奈が軽く拳骨をして止めた。

 

二乃「てか2人とも、まさか私とハー君がどこまで進んだか………」

 

三玖「うん、知ってる。というか見た」

 

二乃「なに勝手に見てんのよ!?」

 

三玖「鍵かけない二乃が悪い」

 

五月「私は三玖から聞きました。まさか二乃がそこまで暴走機関車だったとは思いもしませんでした」

 

三玖「私なら節度を保った付き合いをするのに」

 

一花「……これはツッコミ待ちってことでいいのかな?」

 

そんな馬鹿げたやり取りをしていると、もう1組の兄弟………否、家族が到着した。

 

悟空「オッスみんな!元気そうだな!」

 

悟飯「あけましておめでとう!」

 

チチ「今年もうちの息子をよろしくだ。特に二乃さ!」

 

二乃「はい!今年とは言わず一生よろしくお願いします、お義母さん!」

 

実を言うとクリスマスに襲いに行ったあの日、二乃はチチにバレてしまったが、叱られるどころか歓迎される始末。悟飯が起きるまで雑談に勤しみ、いつの間にか歳の離れた友人のような関係になってしまったのである。

 

悟飯「に、二乃……恥ずかしいよ…」

 

零奈「孫君に上杉君、私のことはお義理母さんと呼んでもいいのですよ?」

 

風太郎「なんであんたまでノリノリなんだよ………」

 

まあそんな下らないやりとりをしつつも、色々あってお参りをするところにまでやってきた。神社にお参りということで、願い事を思い浮かべるわけだが………。

 

二乃「………今思うと、本気で叶えたい願い事があるならドラゴンボール使えばいいわよね?」

 

悟飯「それ言っちゃダメでしょ……」

 

二乃「それで、どんなお願い事をしたのかしら?」

 

悟飯「僕はやっぱり地球が平和でありますように、かな」

 

二乃「あんたらしいわね……。私は一生隣の人と過ごせますようにってお願いしといたわ♡」

 

無論、初詣でもイチャイチャを欠かさない2人だ。だが一見すると二乃が一方的に好意を出しているようにも見える。しかし……。

 

二乃「でもさぁ…、私と一生に過ごしたいとか、そういうお願いごとはしないの?」

 

悟飯「だって、世界が平和じゃなかったら二乃と一緒に過ごせるか分からないじゃん」

 

二乃「……!!!!ッッ」

 

と、一方的な攻めかと思いきや、不意打ちを食らって赤面する二乃まではいつものことである。

 

チチ「女たらし…………」

 

零奈「将来浮気しないか心配です」

 

三玖「大丈夫だよ、浮気する原因は大体性欲。つまり、私が相手をすれば問題ない」

 

五月「世間一般ではそれを浮気と言うのですよ!!?」

 

悟飯「あっ、そうだ。風太郎は何をお願いしたの?」

 

風太郎「俺か?俺は今年も順調に勉強できますようにだな」

 

四葉「え〜…………」

 

とまあ、いつもの馬鹿げたやり取りはあったものの、初詣はこうして終える。正月は過ぎてもまだ冬休み期間であるため、二乃と悟飯は久々のデートを、風太郎と四葉はマンツーマンによる勉強会をしていた。

 

 

 

二乃「ねえ、素朴な疑問なんだけど、上杉とはいつから仲がいいの?」

 

悟飯「えっ?唐突だね?どうしたの急に?」

 

二乃「いや、なんていうか、私達と出会う前から仲良かったじゃない?しかも上杉って基本的には他人を寄せ付けない節があるし、どうしてハー君とだけ仲良かったのかなって………」

 

悟飯「うーん………。僕も詳しいことは忘れちゃったなぁ…………。あ、もしかしたら…………」

 

悟飯と二乃がデート中のこと。二乃は唐突に2人の関係が気になったようだ。それもそのはず、最近の風太郎と悟飯は二乃が嫉妬しそうになるほどに仲がいいのだ。あんだけ散々ヤっておきながら男相手に嫉妬するのは如何なものかとも思うが、二乃的には悟飯の1番に自分がなりたいのであろう。

 

 

 

 

四葉「孫さんと上杉さんっていつから仲良くなったんですか?」

 

風太郎「なんだ急に」

 

四葉「いえ、他人をあまり寄せ付けない上杉さんが同じく勉強できるというだけで孫さんと仲良くなるものとは思えなかったので…………」

 

一方で、こちらでも同じような質問を受けていた。

 

風太郎「そんなことはどうでもいいだろ。とにかく今は勉強だ、勉強」

 

四葉「あっ、もしかして私が他の男の人の話題を出したから怒ってます?意外と嫉妬深いんですね!このこの!」

 

揶揄う口調でそう言う四葉だが、途中から顔がどんどん赤くなっていくのを風太郎は見逃さなかって。

 

風太郎「お前、自分が恥ずかしいならそういうことは言うなよ?」

 

四葉「あ、あはは…………」

 

風太郎「………だが、嫉妬だと思われるのは心外だな。仕方ないから話してやろう。言っとくが、嫉妬だと思われたくないから話すんじゃないからな!」

 

四葉「は、はい!(思いっきりそういう風にしか見えないのですが……)」

 

こうして、悟飯と風太郎の双方の口から過去が明かされることになる……。

 

 

 

 

 

 

 

悟飯と風太郎

 

時は遡って2年前の4月。この日は悟飯と風太郎が旭高校に入学する日だった。

 

悟飯「こ、ここが学校かぁ……。どんな人がいるんだろ………」

 

悟飯は初めて過ごす学校に若干の憧れと緊張があった。今までは山奥で暮らしていたし、なんなら街に出ることも少なかった。何故悟飯がこちらまで通うことになったのかというと、結論から言えば学費の節約である。

 

元々通う予定だったオレンジスターハイスクールにはない、学費免除制度というものがあった。日本は高校までの補助は手厚い傾向にある。とはいえ、日本国籍を持たない悟飯にこれは当てはまらないかと思われたが、成績が特に優秀だとこれまた学費が免除される制度があった。悟飯の成績ならこの制度を使えると考えたチチが、この高校に行くように進言して今に至るのだ。

 

「おい、校門の前で突っ立つな。邪魔だ」

 

悟飯「あっ!ご、ごめんなさい……」

 

本人達は気づいていなかったが、実を言うと彼らの出会いはいいものではなかった。

 

風太郎「全く……。高校に進学したから浮かれてるのか?中学だろうが高校だろうが勉強するための場所であることには変わりないってのに」

 

無愛想な風太郎が通行の妨げになっていたところが本来の彼らの出会いだったが、この時は風太郎は関心がなかったため、悟飯は緊張していたため覚えていなかったのだ。

 

悟飯「うひゃ〜……。そっか、みんな学校に行ったことあるからそこまで緊張しないのかぁ……。僕も慣れるように頑張らないと…………」

 

そうして迎えた入学式。その保護者席にはしっかりチチと付き添いの悟天がいた。

 

 

 

入学式が終わった後は1年生のクラスに行くこととなる。悟飯と風太郎は1年生時は別クラスであった。風太郎は最初は勉強ができるということで大いに関心を寄せられていたが、彼自身の態度から次第と人は遠ざかっていた。風太郎があまりにも無愛想なことから、彼と仲良くしようとする者は現れなかった。

 

だが、同じく成績優秀者の悟飯は彼とは違い、柔らかい雰囲気だったので誰もが接しやすかった。知らない人と喋ることに慣れていない悟飯は緊張しまくっていた。

 

なんなら、その世間知らずな癖に礼儀を弁えており、誠実さ、優しさ、面倒見の良さ、天然さなどから悟飯の人気は主に女子を中心に急上昇していた。実はアプローチしていた女子もいたのだが、五月や二乃のように直球なアプローチではなかったため、全て悟飯が気づかずに撃沈していた。

 

だが、悟飯はある種の疑問を抱き始めた。

 

悟飯「……(話を聞く限りだと、みんなあまり勉強しないみたいだなぁ…)」

 

会話を聞く限りでは、勉強の話題は殆ど出てこない。テストに近づくと一気に質問される悟飯だったが、普段はそれとは全く関係ない雑談ばかり。オマケに勉強したくないという人までいる始末。悟飯は学校とは勉強する場だと教えられてきた。だから彼らの行動がいまいち理解できなかった。

 

悟飯「……(この学校にはちゃんと勉強している人がいないのかな…?)」

 

新生活が始まってしばらくして、悟飯はこのような疑問を抱くようになっていた。

 

 

 

 

 

一方で、風太郎も似たような感情を抱いていた。

 

風太郎「(やっぱりな…。自ら勉強し、進路を決める高校では勉強するやつは多少増えるかと思ったが、どいつもこいつも遊びやら恋愛やらどうでもいいことに夢中になっている連中ばかりだ。こいつらと関わっても時間の無駄だ。それなら勉強し続ければいい。そして、給料の高い会社に入れればいい……)」

 

風太郎は既に同級生達に最初から期待などしていなかった。受験を経て進学する高校なら多少はマシになるだろうかと考えていたが、そんなことは全くなかった。風太郎はこれまで通り勉強だけすればいいと思っていた。

 

 

 

そんな彼らが意気投合するのは、もう少し後のこと。

 

 

 

 

 

月日は過ぎて初めて迎えた定期テストである中間試験。悟飯は転入試験と同じように全て満点を獲得していた。入試の点数は公表されないが、定期テストからは生徒達の順位と合計点が記載され、それは生徒でも見ることができるようになる。つまり、悟飯は普通では考えられないほどの成績を残したことを確認することも可能だということだ。

 

「すっげぇ!!!!」

 

「孫君って勉強できるなぁとは思ってたけど、まさかここまでできるなんて!!」

 

悟飯「あはは……。どうも」

 

悟飯はクラスで賞賛の嵐に見舞われたが、悟飯としてはいつも通りやっただけに過ぎない。逆にみんなは勉強しなくていいのかと心配までしてしまうが、それは口に出さない。学生とはそういうものなのだろうとなんとなく理解していた。だが、自分は高校に通いたくて勉強しているわけではない。学者になりたいから勉強しているのだ。周りがどうであれ自分が勉強することに変わりはない。悟飯はこれまで通り勉強を続けようと決心する。

 

 

 

 

 

「うぎゃー!!俺赤点だわ!!」

 

「はっ?マジで?お前のとこ赤点だったらゲーム没収とか言われてなかった?」

 

「ゲームならまだマシだろ。俺なんてスマホ没収だぜ?」

 

「お前らの家厳し過ぎない?俺はなんにもペナルティないけど?」

 

「うぜぇな、お前今日奢りな」

 

風太郎「…………」

 

風太郎は最早自分の順位すらも見に行かない。何故なら自分が一位であることを確信しているから。他の生徒に競えるだけの力があるなんて期待していなかったから。だから風太郎はランキングが開示されてもいつも通り勉強を続けていた。全てはあの子との約束を果たすため。妹の為。いつか万札を神社に奉納できるように、そんな未来を目指してただひたすらに勉強する。

 

「いや〜凄かったな」

 

「まさか1位が2人もいるなんてね。今年の1年生は優秀だとかで先生達大騒ぎだったね〜」

 

風太郎「………はっ?」

 

この時、風太郎は初めて寝落ち以外でペンを落とした。

 

風太郎「なんだって……?」

 

風太郎は自分に渡された成績表を見る。国語100、数学100、英語100、理科100、社会100、合計500……こんな綺麗な数字が並び、順位の欄には『1』と記載されている。つまり、自分と同率の順位になる為には全て満点を取らなければならない。元々勉強ができる風太郎だから分かるが、ここまで完璧な点数を出すには並々ならぬ努力が必要だ。

 

風太郎「あり得ねえ…!きっと何かの間違いだ!!」

 

珍しく勉強を放棄した風太郎を見てクラスメイト達は驚いていたが、風太郎自身はそれどころではない。

 

風太郎「俺と張り合えるやつがいるだと!?」

 

一時は同級生に失望していた風太郎。関わっても何も得られないから関わろうとしなかった。そいつらと勉強したところでこっちの手間が増えるだけだから。ずっとそんな考えを持っていた。

 

風太郎「あり得ねえ!学生なんてどいつもこいつも恋愛や遊びに呆けているもんだ!!俺以外にそんな勉強してる奴なんて……!!」

 

きっとあいつらの見間違えだ。普段の風太郎ならそう思って気にしなかったはずだ。だが、彼は競う相手に飢えていたのかもしれない。自分と考えを共にする同志が欲しかったのかもしれない。その真意は風太郎自身にも分からなかったが、彼はただ自分と同じ成績を取った人物に興味が湧いた。

 

勉強と家族以外でここまで関心的になったのはいつぶりだっただろうか…。この時の風太郎は、まるで小学生の頃、新しいオモチャを与えられて喜んでいる時のような顔をしていた。

 

風太郎「はぁ……はぁ……………。こ、こいつか……!?」

 

上杉風太郎:500点、第1位

 

その下に…。

 

孫悟飯:500点、第1位

 

 

そう記載されていた。

 

 

風太郎「こんなやつが、学校にいたのか………」

 

一時は失望した同級生。その中に自分と競い合えるだけの相手がいることに風太郎は喜びを感じていた。無論、勉強する1番の理由は家族のため。それでも、自分と同じように猛勉強する同級生はいなかったため、孫悟飯という存在に興味が湧いた。

 

風太郎「おい!この孫悟飯ってやつは何組にいるんだ!!?」

 

「えっ……?確か……」

 

すぐ隣にいた同級生に悟飯のクラスを聞き、風太郎はそのクラスに行ってみた。孫悟飯とはどんな人物なのか。ただそれだけが知りたかった。

 

 

 

風太郎「………あいつか?」

 

「孫君すごいね〜!!私に勉強を教えてよ〜!」

 

悟飯「あ、あはは……。次の休み時間でね」

 

「私にも教えてほしいな〜!!この前も分かりやすかったもん!!」

 

 

風太郎「………はっ?」

 

風太郎が見た光景は、複数の女子に囲まれてチヤホヤされる悟飯の姿だった。勿論悟飯はこれを狙ったわけではなく、成績の優秀さと彼の性格がそれを引き起こしたに過ぎない。だが、前者しか知らない風太郎はこう思ってしまった。

 

風太郎「(あんな奴が俺と同格だと!!!!?)」

 

風太郎にとって、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()と思ってしまった。普段の悟飯を知らないのでそう見てしまっても仕方ない。風太郎は喜びから怒りと悔しさに感情が移り変わった。

 

気がつくと風太郎は教室の中に入っていた。そして女子を掻き分けて悟飯の前に立っていた。

 

「あれは………上杉風太郎…?」

 

「えっ?確かもう1人の1位だよな?」

 

風太郎「おい学年1位、俺と勝負しろ

 

風太郎は唐突にそう言った。

 

悟飯「えっ?えっと………。君は?」

 

風太郎「俺は上杉風太郎だ。一応この学校の主席だ」

 

悟飯「あっ、うん。よろしく……」

 

風太郎「で、だ。俺と勝負をしろ、学年1位!!」

 

悟飯「ど、どういうこと??」

 

悟飯は風太郎が何を言いたいのかよく理解できなかった。学年1位ということは、おそらくテストで勝負をしようということなのだろうが、何故その結論に至ったのか理解できずにいた。

 

風太郎「お前のような女たらし野朗と俺が同格というのは断じて許せん。勉強ってのは遊びじゃねえんだ。勉強を女遊びの武器にするんじゃねえ」

 

悟飯「えっ?な、何を言ってるんだ君は……?」

 

悟飯としては女遊びをしているつもりもないし、遊びで勉強しているわけでもない。しかし、そんな事情を知らずにチヤホヤされている悟飯を見た風太郎は誤解したまま話を進める。

 

風太郎「いいか?勝負は2回だ。次にある期末テストと2学期の中間テストだ。そこで実力の違いってやつを見せてやる……!!!」

 

風太郎はそれだけ言うと教室から去っていった。

 

「なにあれひどーい!!」

 

「孫君は真面目な人なのに!遊びなんかで勉強なんてしてないよねー?」

 

悟飯「う、うん………」

 

「確か上杉風太郎君だっけ?なんて薄情な人なんだろうね!?」

 

悟飯「………なんだったんだろう」

 

だが、自分と同じように勉強に勤しんでいる同級生もいるんだなぁと、悟飯の頭の中に上杉風太郎という名前と顔は強く印象に残った。その数日後に第2位の武田祐輔という少年にも宣戦布告されたのだが、これは以前語ったので割愛しよう。

 

 

 

 

そして迎えた期末テストの結果開示。風太郎は今回こそは自分の独壇場だと踏んでいた。

 

風太郎「(ふふふっ…!孫悟飯め。1学期の中間テストが一番簡単なテストだということを知らずに全力を出してしまったようだな。お前は女共にチヤホヤされる為に勉強したのだろうが、今回はそうはいかんぞ。何せ期末テストから難易度が上がるからな。中間では成績がよくても期末では順位がガタ落ちなんて話はよく聞く……)」

 

心でそう呟きながら成績表を開いた。前回と同じく100が五つに500と1の文字が堂々と記載されていた。

 

風太郎「ふっ……。勝ったな」

 

風太郎は勝利を確信した。

 

 

 

 

 

 

だが、彼の期待は裏切られることとなる。

 

風太郎「…………はっ??」

 

またしても、彼の名前の下に孫悟飯に1の文字があった。

 

風太郎「な、何故だ……。何故女遊びの為にそこまで勉強できるんだ……!!」

 

風太郎はとんでもない勘違いをしているが、事実悟飯はモテる。一部では悟飯は誰かと付き合ってるとか、何股もしているなんて大変失礼な噂も出ている程なので、悟飯がチヤホヤされている姿を見た風太郎がそう勘違いしてしまうのも仕方ない。

 

そして1学期が終わるまでの数日。彼は悟飯の行動を出来るだけ監視していた。他の人に怪しまれていたがそんなことを気にしている場合ではなかった。このままでは自分が勉強し続けていたことが馬鹿らしくなってしまう。自分が勉強してきた意味を持たせる為でもあった。

 

風太郎「………あいつ」

 

意外にも、悟飯から女子に話しかけることはなかった。寧ろ全てが受け身。オマケに休み時間だろうがお構いなしに勉強に時間を費やしていた。

 

風太郎「………女遊びの為ってわけじゃないのか………?」

 

約2ヶ月でようやく誤解は解けたものの、一度競争相手として見てしまうとどうしても勝ちたくなってしまうもの。風太郎は次こそは必ず勝つと意気込み、夏休みは高校受験以上に勉強することを決意した。

 

 

 

風太郎「うおおおおおお!!!!」

 

らいは「お兄ちゃん気合い入りまくりだけどどうしたの?」

 

勇也「そうだぞ風太郎。受験も終わったんだからもうちょっと気楽になってもいいんじゃねえか?」

 

風太郎「そうは言ってられねえよ。俺はなんとしてでも負かしたいやつがいるんだ。同率じゃダメなんだ。俺が勝たなければ意味がない!!!」

 

らいは「お兄ちゃんと同率ってことは、その人も全部満点なの!!?」

 

勇也「すっげえな。逆に勿体無く感じまうぜ」

 

 

 

猛勉強の末に迎えた二学期中間テスト。風太郎はここで決めてやるといつも以上に燃えていた。全て満点は相変わらずだったが、前よりも解くスピードが飛躍的に向上していたため、この前よりも見直しに時間を使うことができた。自分の成長を実感したと同時に今度こそ勝利を確信していた。

 

 

 

 

 

 

風太郎「…………おいおい」

 

だが、またしても悟飯は1位だった。風太郎が全て満点だったのにも関わらずだ。

 

風太郎「………これは認めるしかねえ。こいつも俺と同じように、何かの為に勉強してるんだ。そうじゃなきゃここまで長続きなんてしないはずだ」

 

1年生の2学期中間テストが終わったタイミングから、風太郎は孫悟飯を競争相手として見なくなった。寧ろ、初めて関わってみたいとさえ思った。

 

 

 

 

 

 

風太郎「焼肉定食、焼肉抜きで」

 

いつものメニューを注文した風太郎は食事を受け取った後にいつもの定位置につくことはなく、誰かを探し回るように歩いていた。悟飯がたまに食堂を使うことは把握している。その理由は………。

 

風太郎「………おいおい、話には聞いていたが…………」

 

悟飯「ぷはーっ!美味しかったぁ!」

 

4人席を1人で存分に使うほどの量の弁当を完食した悟飯の姿があった。

 

悟飯「さて、今日の復習をしておかないと…………」

 

風太郎「…………」

 

風太郎として久しぶりに自分から相手にコンタクトを取ろうとする。その為多少は緊張感を感じた。だが、自分が家族以外で興味を持つ相手は孫悟飯が最後だろうと思っていた。

 

風太郎「隣、いいか?」

 

悟飯「いいけど、君は確か……。上杉風太郎君……だっけ?」

 

風太郎「お前、よく俺のこと覚えてるな」

 

他人に関心がない風太郎は人の名前を覚えるのが苦手だ。その為、殆ど話したことがないのに自分の名前を覚えていた悟飯に感心してしまった。

 

悟飯「あはは…。まあね。だっていきなり勝負しろって言われたら、そりゃあ印象に残るよ」

 

風太郎「あの時はすまなかったな。お前が女子達にチヤホヤされているのを見て、つい女遊びの為に勉強してるのかと思っちまってた」

 

悟飯「あ〜…。あの時の言葉はそういうことだったんだ…………」

 

こんな説明を受ければ失礼だと怒るのが普通だろう。しかし、悟飯は怒るようなことはしなかった。寧ろ今までの疑問が解けてどこかスッキリしたような表情だった。

 

風太郎「(こいつ、変わってるな)」

 

風太郎は孫悟飯という人間が他の人とはどこか違う気がした。なんというか、余裕があるようなそんな感じだ。

 

風太郎「なあ、いきなりこんなことを聞くのは変かもしれんが、お前はどうしてそこまで勉強するんだ?」

 

悟飯「えっ?」

 

風太郎「お前が休み時間でも抜かりなく勉強しているのは知っている。ただの自己満足ってわけじゃないだろ?お前があの成績をキープし続けているのはそれ相応の理由が……勉強する理由があるからじゃないのか?」

 

普通ならこんなことを会ったばかりのやつにはしないだろう。それは風太郎でも分かっていた。しかし、彼は今すぐにでも知りたかった。何がそこまで悟飯を勉強させるのかを。

 

悟飯「……僕は小さい頃から学者さんを目指しているんだ」

 

風太郎「学者………学者!!!?

 

想像以上のスケールで風太郎はびっくりしてしまった。

 

悟飯「最初はお母さんに学者になりなさいって言われたのがきっかけだったんだ。でも、色々あって自分が学者になりたい理由を見つけたんだ。今までは家で自習してたんだけど、そろそろ学校に通った方がいいってお母さんに言われたんだ」

 

この色々という言葉には悟飯なりの重みが含まれていた。ピッコロとの修行、ベジータ達との交戦。フリーザ達との激闘。セルとの死闘……。

 

これらを通して、悟飯は1人でも多くの人を救いたいと思うようになっていた。そして自分の研究で人を救える何かを見つけ出せないかと思い立ったのである。その為、現在は生物系の学者を目指しているらしい。

 

風太郎「………そうか。一応似たような理由だったんだな」

 

悟飯「……逆に君はなんで?」

 

風太郎「……そうだな。お前だけ言うのもフェアじゃないよな」

 

まさか会ったばかりの人にこんなことを言うことになるとは思ってもいなかった。だが、不思議とこの悟飯とは仲良くなれる気がした。自分と同じように人のために役立てるように勉強しているなら……。そう思ったから、風太郎が勉強する理由を悟飯に教えた。

 

風太郎は家族……正確に言うと、妹の為に。悟飯は大勢の人の為に。結局は彼らが勉強する理由は同じようなものだった。

 

風太郎「………なあ、孫……」

 

勉強せずに遊んでばかりいる同級生に失望すらしていた風太郎。

 

悟飯「うん……?」

 

何故同級生達は勉強しないのかと疑問に思っていた悟飯。

 

風太郎「これからは、一緒に勉強しないか?そうすればお互いに得られるものがあるかもしれないぜ?」

 

悟飯「……!!」

 

そんな彼らが勉強する理由をお互いに知れば、仲良くなるのは最早必然と言うべきものだった。

 

悟飯「勿論!これからよろしくね、上杉君!!」

 

この日、悟飯にとって初めて自信を持って友人と言える存在ができた。以前までは風太郎一人でいることが多いと言われていたが、この時からは悟飯と一緒にいることが多いと言われるようになっていた。

 

また、いつも顔を変えない風太郎だったが、悟飯の前では次第に色々な表情を見せるようになり、『あの上杉を笑わせる孫は何者だ……?』と言われるようになったと同時に、『上杉君もちゃんと笑えるんだね』と、同級生達の間での風太郎に対する評価も改まりつつあった。

 

そんなこともあり、風太郎に声をかけようとする同級生が増えたのだが…。

 

風太郎「勉強の邪魔だ。放っておいてくれ」

 

こんな感じで、悟飯以外には相変わらず関心がないと言った様子で突き返すだけとなり、再び風太郎に話しかける人がいなくなったとか………。

 

 

 

 

 

 

武田「大体こんな感じの話だね☆」

 

時は戻って現在。デート中の二乃と悟飯に懇切丁寧に過去のことを説明していた武田だったが、ようやく説明を終えた。

 

二乃「説明ありがとう。だけどなんでここにいるのかしら?」

 

武田「たまたま君達を見かけてみれば、上杉君と孫君の過去の話をしていたようだったのでね。ここは僕が語らずにはいられないって思って出てきたまでだよ」

 

二乃「説明してくれたことには感謝するけど、デートの邪魔よ。帰ってくれない?」

 

悟飯「まあまあ……」

 

武田「しかし孫君。そんなにデートばかりに時間を費やして大丈夫なのかい?もうすぐ受験ではないのかい?」

 

二乃「ハー君はあんたなんかよりよっぽど頭がいいから余裕なのよ」

 

悟飯「そんなことないけど……」

 

武田「何故僕には当たりが強いんだい?」

 

二乃「デートの邪魔をしてるからよ!!いいからどっか行きなさい!!!」

 

悟飯「まあまあ二乃、落ち着いて……」

 

こうして、二乃に悟飯と風太郎の過去が明かされた。四葉にも風太郎の口から明かされていたのだが、こちら側は大変なことになっていた。それは次回語るとしよう……。

 




 なんか今までで一番作り込んだ気がする……。悟飯の体育の話とかいれてもよかったんですけど、今回は悟飯と風太郎の馴れ初めを書きたかったのでそちらは省きました。恐らくこの辺は番外編で気が向いたらやると思います。悟飯と風太郎は幼馴染ってわけでもないので、最初から仲がいいとは考えにくいですしね。多分同じ一位を取る悟飯に対抗心を抱いていたと思います。
 ファンアートの紹介は……今週中にできればいいけどできるか怪しい()


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第113話 幸せ空間

 最近の忙しさは半端じゃないぜ…。今話は風四メインの回となります。原作では結婚までキスもしないプラトニックな付き合いである可能性が高かったですが・・・

 まあ、この世界は基本世界から逸脱したパラレルなので、何やっても許されるだろう(極論)



一方で、風太郎と四葉側も説明が終わっていた。

 

四葉「へぇ…。やっぱり最初は競争から始まったんですね」

 

風太郎「やっぱりとはなんだ」

 

四葉「だって上杉さんのことですから、自分と同じ成績の人にもどうにかして勝って1位になりたいって思ってそうですもん」

 

風太郎「ぐうの音も出ねえ………」

 

四葉「でも、羨ましいですよ。孫さんと上杉さんって本当に仲良いじゃないですか。孫さんに嫉妬してしまいそうです。なんちゃって………」

 

風太郎「……お前も、俺ともっと仲良くなりたいのか?」

 

四葉「へっ……?」

 

風太郎「………」

 

風太郎は真っ直ぐ自分を見据えてきた。きっと真剣に聞いていることなのだろう。なら、自分も真剣に答えなければならない。

 

四葉「は、はい……。わ、私だって上杉さんのことがす、好きですから………。もっと進展を………うわわ!!!今のは嘘です!!!聞かなかったことにしてください!!!」

 

風太郎「進展………したいのか?」

 

四葉「ふぇ……?あぅぅ…………」

 

お互いに少々気まずい雰囲気が流れ始めた。しかし、それと同時に大人の空気も流れ始めた。

 

四葉「………そういえば、今日はこの家に誰もいないんですよね……」

 

風太郎「ああ。一花は言うまでもないし、二乃は悟飯とデート、三玖と五月は久々の気分転換、零奈さんはマルオさんのサポートに行ってるんだったよな?」

 

四葉「は、はい…………」

 

風太郎「そ、そうか…………」

 

四葉「ねえ上杉さん。二乃といえば、あのお二人はどこまで進んだかご存じですか?」

 

風太郎「はっ?なんだ急に?」

 

四葉「実は、あの2人ってもう行くところまで行っちゃってるみたいなんですよ」

 

風太郎「な、何を言ってるんだ四葉?」

 

いつもの四葉らしくなかった。風太郎はそれを感じて四葉を静止しようとするが、四葉の暴走は次第に激しくなっていく。

 

四葉「孫さんは二乃の気持ちに応えている…。勿論、二乃が分かりやすく求めているから……二乃に勇気があるからこそだと思いますけど……上杉さんって、私に魅力を感じないんですか?」

 

風太郎「お、おい!!お前本当にどうしたんだよ!!?そ!そうか!!勉強のし過ぎて疲れてるんだな!!取り敢えず休憩にするか!!」

 

四葉「………私は真剣に聞いてるんです。答えてよ、風太郎君」

 

風太郎「っ…!!お前……」

 

そんな呼ばれ方をされては不意打ちもいいところだ。これでは正直に答える他あるまい。

 

風太郎「………まあ、お前に魅力を感じないと言えば、う、嘘にはなる……」

 

四葉「…………」

 

風太郎「……………」

 

四葉「……………」

 

風太郎「な、何か言えよ………」

 

しばらくの間2人は沈黙していた。その沈黙を破ったのは四葉だった。

 

四葉「ねえ、上杉さん。知ってまか?」

 

風太郎「な、何がだ?」

 

四葉「高校生のカップルは付き合って3ヶ月経てば、もうそういうことをしていてもおかしくないそうですよ?」

 

風太郎「そういうことってなんだ?」

 

まさか四葉がそんなことを言うはずがない。そう思っていた風太郎は念の為聞き返してみる。もしかすると自分の誤解かもしれない。

 

四葉「そ、それは……………」

 

四葉は顔を赤くして俯いてしまった。その様子から何が言いたいか察してしまった。

 

四葉「上杉さん。私達って付き合ってるんですよね……?」

 

風太郎「あ、ああ…。俺はそのつもりだ…」

 

四葉「そうですよね……。なら……問題ないですよね?」

 

風太郎「お、おい四葉。お前どうしたんだよ!?んっ……!!!」

 

様子のおかしい四葉に問いかけるも、風太郎の口は彼女の口に塞がれてしまった。

 

風太郎「お前………!!」

 

四葉「私、二乃から聞いて羨ましいなぁって思っちゃったんですよ。私も大好きな風太郎君としてみたいなって……。今日は誰もいないんだよ?なら、いいよね……?」

 

風太郎「待て待て待て……!誰か帰ってきたらどうするんだ……!?」

 

いつもの四葉ならこんな積極的ではないはずだ。基本的に謙虚な彼女がこんなに押しが強いわけがない。押しが強いのは二乃だけで十分だ。絶対に何かあると思った風太郎は辺りを見回してみる。すると……。

 

風太郎「………ん?おい四葉。あの瓶はなんだ?」

 

四葉「あー、あれですか?あれは私が二乃に相談した時に渡してくれたやつですね〜。興味本位で飲んで見たんですけど、意外と効き目があるみたいですね〜」

 

なんと、四葉は媚薬を飲んでいたのだ。ただの興味本位で飲んでしまい、結果として風太郎と2人きりの時に効果を発揮してしまった。風太郎はようやく原因を掴み、この場の雰囲気で流されるわけにはいかないと四葉を引き剥がそうとするが………。

 

四葉「逃がしませんよ、上杉さん」

 

残念ながら風太郎より四葉の方が力強い。気の修行を抜きにしても強いのだ。その四葉に実力行使に出られれば抵抗できないのは明白である。

 

風太郎「おい待て!薬で流されるのは間違っている!!正気を取り戻せ!!」

 

四葉「むぅ……。もしかして、さっきの私に魅力があるっていうのは嘘だったんですかぁ?」

 

前に悟飯が五月に襲われかけたと言っていたが、恐らくこんな感じだったのだろう。しかも相手が四葉で自分は非力。誰かに助けを求めるしかないが、このマンションの部屋には2人きり。最早詰みとしか言いようがない。

 

 

しかし、ここで風太郎に一途の光が見えてくる。ガチャ、というドアノブを回す音が聞こえてきたのだ。

 

二乃「ただいま〜」

 

悟飯「お邪魔します」

 

そう。二乃がデートから帰ってきた上に悟飯までもが訪問してきた。

 

二乃「………って、あら?」

 

悟飯「あっ…………」

 

風太郎「二乃に悟飯!丁度良かった!四葉が変な薬を飲んで大変なことになってるんだ!!助けてくれ!!」

 

四葉「上杉さ〜ん♡

 

風太郎が助けを求めた直後に後ろから強く抱きしめられて耳を甘噛みされてしまう。なんとか声を我慢しながら必死に助けを求め続けた。

 

二乃「あっ、あ〜………」

 

悟飯「ね、ねえ?これは流石に止めた方がいいんじゃないの?」

 

風太郎は二乃が『私の妹に何してんのよ変態!!』と言ってビンタし、なんとかこの状況から救ってくれると読んでいた。しかし、二乃はもう風太郎のことを信用しているし、この前四葉から相談を受けたことから、四葉自身も進展したいという気持ちがあることを知っている。

 

二乃「そ、そうだハー君!そういえば回り忘れているところかあったわね!行きましょう!!」

 

悟飯「えっ?でも………」

 

二乃「いいから早く行くわよ〜!!」

 

悟飯「えっ?ちょっと!!!?」

 

風太郎「おい待て!!せめて悟飯だけでも残って………」

 

バタン……。

 

悟飯は先に行った二乃を追いかけるようにその場から去ってしまった。これでまた2人きりだ。先程のような奇跡はもう二度と起こらないだろう。

 

四葉「………」

 

だが、四葉の動きが止まった。

 

風太郎「よ、四葉……?」

 

四葉「さっきみたいに誰か帰ってきたらしらけちゃうね」

 

風太郎「そ、そうだろう!!だから今日のところはこれくらいにしよう!!な!!?」

 

四葉「よいしょっと」

 

風太郎「えっ?」

 

四葉は軽々と風太郎を持ち上げ、自分の部屋に運んでベッドの上に投げたと同時に鍵を閉めた。

 

風太郎「お、おい四葉………?」

 

四葉「ごめんなさい上杉さん……。私、我慢できません……!!」

 

風太郎「待て待て待て!!!!」

 

四葉「風太郎君……シよ?」

 

風太郎「んギャアアア!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

風太郎「………あっ?」

 

諦めて目を瞑った風太郎だったが、いつまで経っても服が脱がされない。目を開けてみると…………。

 

四葉「は、はわわわわ………!!!わ、私はなんてことを………!!ご、ごめんなさい上杉さん!!!私、なんてはしたないことを……!!!」

 

風太郎「よ、四葉?正気に戻ってくれたのか!!?」

 

四葉「うぅ………」

 

風太郎「よ、良かった…………」

 

彼にとっては何たる奇跡。四葉が正気を取り戻したのだ。取り敢えず過ちは犯さずに済みそうだと安堵した。

 

四葉「…………って……」

 

風太郎「ん?」

 

四葉「よかったって……、なんですか?」

 

風太郎「えっ?」

 

四葉「良かったってどういう意味ですか?」

 

風太郎「はっ?なんだよ、どうしたんだ?」

 

四葉「…………」

 

四葉は頬を膨らませながら風太郎のことを睨んでくる。何故睨まれているのか風太郎には分からなかった。

 

風太郎「いや、ほら、とんだ誤ちが起こるところだったから、それが起きなくて良かったって意味だ………」

 

四葉「………そう、ですか…」

 

風太郎の答えを聞いた四葉は少し悲しそうだった。

 

四葉「その………上杉さんは……私とそういうこと、したくないんですか……?」

 

風太郎「…………はい?」

 

また似たような流れになってきた。風太郎にとってこの状況は大変よろしくなかった。

 

風太郎「おい待て。正気に戻ったんだよな?まさかまたあの薬を飲んでないよな?」

 

四葉「私は至って正気ですよ………」

 

どうやら四葉は正気を失っていないらしい。では何故このようなことになっているのか………。

 

四葉「答えてください…………」

 

風太郎「…………ほら、俺達はまだ学生だろ?そういうのは、早いと思うんだ…」

 

四葉「でも、学生カップルは付き合って3ヶ月もすれば大体することはするんですよ?」

 

風太郎「だが、俺達がそれに合わせる必要なんてないだろ……」

 

四葉「………上杉さん、お父さんに言われたことを気にしています?」

 

風太郎「っ…!お前……!?」

 

四葉「なら、いいじゃないですか。上杉さんがプロポーズして、私が了承している。その時点で問題ありませんよね?」

 

風太郎「何を馬鹿なことを言ってるんだお前は?」

 

確かに2人が大人であるなら全く問題ないのかもしれない。しかし、マルオに釘を刺されている以上、どうしても一歩引いてしまうのだ。それに、万が一子供でもできてしまえば、今の自分には子供を養う力もない。

 

四葉「……そう、ですか…。上杉さんがしたくないというのなら、無理強いはしません。ごめんなさい、まだ薬の効果が残ってるみたいです……」

 

寂しそうな表情を浮かべながら四葉はゆっくり立ち上がって部屋から出ていこうとする。

 

……彼女はあんなに自分を求めてくれている。ビジュアルも性格もいいから言い寄ってくる男なんていくらでもいるはずなのに、だ。そんな彼女の好意を無下にしてしまっていいのだろうか?彼女の父親であるマルオを言い訳にして、逃げているだけではないのだろうか…?

 

寂しそうにする四葉を見ると、そんな思考に支配されてしまう。しかし風太郎は受験生であり学生の身。万が一のことがあればお互いに大変なことになってしまう。それは防ぎたい。防ぎたいが…………。

 

 

 

 

 

 

 

風太郎は、四葉には常に笑ってほしいと思った。

 

四葉「……!!」

 

風太郎はトボトボと歩く四葉を後ろから抱きしめた。

 

風太郎「………すまん。俺はマルオさんを言い訳にして逃げていただけだったのかもしれない。節度のある付き合いをしなきゃいけないって思っていた。でも、それでお前が傷つくっていうなら、俺は…………」

 

四葉「上杉さん…………」

 

風太郎からのアクションにより、2人のムードが高まっていく。どちらかともなく再びベッドの方に戻った。

 

四葉「………ごめんなさい上杉さん。私って面倒臭いですよね?」

 

風太郎「それを言うなら俺だってそうだ。それに、俺はお前のそういうところもひっくるめて好きなんだ……。気にすることなんてねえよ」

 

四葉「上杉さん……。私も大好きです」

 

以前の彼女なら特別になってはいけないと遠慮気味になっていただろう。だが、彼女の恋の鎖は既に破壊されている。彼女の想いを阻むものは存在しないのだ。

 

6年前からずっと抱え続けてきたその想いは、ようやく真の意味で報われたと言うべきなのかもしれない。

 

この後、風太郎と四葉は身も心も一つになった…………。

 

 

 

 

 

 

 

…………視点は変わって、延長デートを楽しんでいる二乃と悟飯は……。

 

悟飯「……ねえ二乃。あの2人を放っておいて良かったの?」

 

二乃「あれでいいのよ。四葉も進展を望んでいたわけだしね」

 

悟飯「だけど風太郎が明らかに助けを求めていたような気が………」

 

二乃「気のせいよ気のせい」

 

風太郎と四葉に気を使って外でショッピングを楽しんでいた。

 

二乃「あの2人は見ていてどうもムズムズするのよね。ここいらで激薬でも投入しようと思っていたところなのよ」

 

悟飯「いつも思うんだけど、二乃はそういう薬をどこから手に入れてるの?」

 

二乃「私達のお父さんは医者なのよ?」

 

悟飯「あっ……………」

 

どうやら飲んだ瞬間眠ってしまうような睡眠薬や、四葉が飲んでしまった媚薬はマルオが医療関係で持っていたもののようだ……って。

 

悟飯「いやいや、睡眠薬はともかく、媚薬は医療で使わなくない…?まさかとは思うけど……」

 

違和感を覚えた悟飯が二乃に尋ねようとしたが、二乃の様子がおかしい。さっきから顔を赤らめ、息が荒くなっている。そして妙に色気を放っていた。

 

二乃「あら?バレちゃったかしら?ハー君の体力が凄いものだから、元々私用に買ったものなのよ」

 

簡単に説明すると、悟飯はZ戦士ということもあり、体力もあっちの体力も凄まじいのだ。故に、一般人クラスの二乃ではどうも手に余ってしまう。そこで媚薬の出番というのが二乃の考えだそうだ。

 

悟飯「…………最近羽目を外し過ぎてるからダメだよ………?」

 

二乃「あらそう…。このままじゃきっと我慢できなくなっちゃうわ…。あら、あの金髪の男中々タイプだわ」

 

明らかにわざとらしいものの、今の二乃の様子を見ると、他の男に付いて行ってしまう可能性も捨て切れない。二乃は自分を追い込むことによって悟飯からアクションを起こさせようとしたわけである。まさに恋愛の暴走機関車であり策士でもある。しかし、これでは肉食性獣と呼ばれてしまうのも仕方ない。

 

悟飯「ううううっ…………」

 

二乃「どうしたのよ?そんなに唸って?」

 

悟飯「………そっか。君と付き合った時点でこうなることは決まっていたんだね………」

 

二乃「何よく分からないことを言っているのよ?」

 

はっきり言って悟飯は二乃という女を舐めていたのかもしれない。彼女は付き合う前から積極的だったとはいえ、まさかここまでだったとは予想できなかったのだ。だが、別に積極的に迫られるのも嫌じゃない。むしろ悟飯にとっては嬉しいまである。

 

悟飯「………二乃」

 

二乃「なーに?」

 

悟飯「行くよ」

 

二乃「(ふふっ…♡いただきまーす♡)」

 

こうして謎の駆け引きは二乃の勝利で収めた。というかこの2人はどれだけやるつもりなんだろうか?きっと彼女いない歴=年齢の人は嫉妬しまくっているに違いない。………なんだ私のことかぁ(意味分からない自爆)

 

 

 

 

 

 

二乃と悟飯が延長デート(意味深)を楽しんでいる間のこと。日も暮れてきたので三玖と五月が帰ってきた。

 

五月「久しぶりに食べました〜♪」

 

三玖「最近の五月は根を詰め過ぎ。偶には息抜きしないと体を壊すよ?」

 

五月「すみません三玖。ご心配をおかけしてしまって………」

 

2人はまず各々の部屋に戻ろうと階段を上ったのだが、そこで異様な光景を見た。

 

風太郎「………ぅぅぅぅ

 

三玖「フータロー!?」

 

五月「えっ?上杉君がどうかしたんですか…………上杉君ッ!!!?」

 

ゲッソリどころか最早萎れている風太郎が四葉の部屋のドアを開けたまま倒れていた。

 

風太郎「……!五月、三玖………丁度いいところに………。俺をここから引っ張り出してくれ…………………

 

三玖「どうしたのフータロー!?」

 

五月「明らかに様子がおかしいですよ!!?」

 

流石に風太郎の様子に心配になった五月と三玖は風太郎の元に駆け寄ろうとしたが………。

 

四葉「上杉さーん…。私はまだ満足していませんよ〜?」

 

風太郎「ヒッ……!!」

 

五月「………えっ?」

 

ドアの影から四葉のリボンが見えた。それと同時に腕が伸びて風太郎を掴むと、部屋に引き摺り込む。

 

風太郎「ま、待ってくれ四葉…!!俺はもう限界なんだ……!!た、助け……」

 

バタン……

 

風太郎が最後まで言うことなくドアは無慈悲にも閉められてしまった。しかもカチャっと鍵を閉める音も聞こえた。

 

五月「上杉君!?上杉くーーんッ!!!?」

 

三玖「……(あいつら交尾したんだ…)」

 

五月は引き摺り込まれてしまった風太郎を心配するように大声を出し、三玖は全てを察して五月に静かにするように言った。だがそれでも風太郎を心配する五月に、最近は料理の腕が上達したから確かめて欲しいと五月に言うと、態度をころっと変えてリビングに降りて行った。哀れ風太郎………。

 

 

 

 

 

 

またまた視点が戻って二乃と悟飯。またしてもやることをやり、今それが終わったところである。

 

二乃は初恋である悟飯と共に恋人らしいことをしまくれているので、幸せの絶頂の最中にいるのだが、ある悩みを抱えていた。

 

悟飯「あ〜……。またやっちゃった…」

 

そう。事を終える度に悟飯がこんな感じで萎縮してしまうのだ。多分マルオが悪さしているのだろうとなんとなく分かっていたものの、悟飯が自分の為に無理をしているのではないかと思ってしまうのだ。

 

二乃「………あの、一つ聞いてもいいかしら?」

 

悟飯「…?どうしたの?」

 

二乃「………私といて楽しいの?」

 

悟飯「………えっ?と、突然何を言っているの?」

 

二乃「……なんか思い返してみたら、私いつもハー君を連れ回してる気がするのよ。今日もここに連れ込んだのは私だし…………」

 

悟飯「…無理なんてしてないよ?少なくとも、二乃といる時間は楽しいと思っているんだ。ただ………」

 

二乃「ただ……?」

 

悟飯「…………最近、僕達やりすぎじゃない?」

 

二乃「…………………」

 

そんなことないと言おうとした二乃だったが、確かにデート……いや、会う度にほぼ毎回やっている気がした。ナニをやってるかは敢えて明言しないが、これでは獣ではないか。少なくとも悟飯はそう言いたいのだろう。

 

二乃「否定できないけど………ハー君は私とそういうことしたくないの?」

 

悟飯「そ、それは……………」

 

二乃と深い関係になったといえども、流石に堂々と言えるほど悟飯も図太くなったわけではない。二乃の影響を受けているとはいえ、悟飯の本質は奥手なのである。

 

二乃は顔を赤くして恥ずかしいそうにしている悟飯を見ると、悟飯の本心を見抜いて納得した。

 

二乃「別に気にすることないじゃない?寧ろ今の私達って思春期って呼ばれる時期なのよ?何もおかしくないわ」

 

悟飯「そ、そうなのかな………」

 

二乃「それにお父さんに何か言われてるから気にしてるんでしょうけど、遅かれ早かれこうなるんだから関係ないわよ」

 

悟飯「そ、それもそうなの……かな?」

 

二乃「そういうものなのよ」

 

二乃の考えは楽観的であったが、確かに一理ある。その言葉になんとなく安心感を覚えた悟飯はそろそろ寝ようとする。

 

二乃「あっ、ちょっと忘れ物」

 

悟飯「えっ?」

 

チュッ

 

2人きりの部屋にリップ音が響いた。

 

二乃「ふふっ…♪おやすみ♡」

 

不意打ちを食らった悟飯だが、そんな彼を気にすることなく二乃は眠ろうとする。

 

悟飯「……やっぱり大好きなんだなぁ、僕って

 

ボソッと呟いた。だが、ここは2人きりの空間で、今は物凄く静かだ。お互いの呼吸が聞こえてくるほどの距離で呟けば、当然聞かれるわけで……。

 

二乃「えっ!?い、今のもう一回言って!!!」

 

悟飯「えっ?今のって……?」

 

二乃「ほ、ほら!さっき大好きって言ってたじゃない!あれをもう一回言って!!」

 

告白時は堂々と好きだと聞いたが、今ではあまり聞かなくなってしまった。言葉ではなく行動で示してくれる悟飯だからその辺は不安に感じることは少なかったが、たまには言葉でも聞きたいものなのである。

 

悟飯「……えっ?僕、声に出してた…?」

 

二乃「ええ、思いっきり」

 

悟飯「そ、そんな…………」

 

自分の恥ずかしい独り言(無意識)が二乃に聞かれたことに気づいて恥ずかしくなってしまった悟飯だが、先程まで君はもっと恥ずかしいことをしていたんだぞ。なのに何故今更そんなことで恥ずかしがるのだろうか………。

 

二乃「もう一度はっきり言ってほしいな………」

 

どうしても悟飯の口からもう一度聞きたいのか、二乃が上目遣いになってそうお願いしてきた。羞恥に耐えながらも、悟飯は決心してもう一度言うことにした。

 

だが、悟飯は恥ずかしさのあまり若干テンパっていた。

 

悟飯「ぼ、僕は二乃のことが大好きなんだよ!!それはもう!結婚したいくらいには!!

 

二乃「えっ?」

 

悟飯「………えっ?」

 

二乃「…………ここでプロポーズ…?」

 

悟飯「…………あっ!!!い、今のは無し!!!聞かなかったことにして!!!」

 

二乃「ふふっ…。ねえ?」

 

悟飯「………うん?」

 

悟飯は大失敗をして落ち込んでいたが、二乃に呼びかけられて振り返る。

 

二乃「じゃあ、結婚しましょ?」

 

悟飯「えっ?」

 

またしても不意打ち。今のプロポーズとはお世辞にも言えないようなものが二乃にOKされてしまった。悟飯は嬉しいような悔しいような複雑な気持ちに襲われていた。だが、それも一瞬の話である。

 

二乃「なんて言うわけでないでしょ!」

 

悟飯「えっ?」

 

二乃「もうちょっと状況考えなさいよ!こんなところでプロポーズなんてプレイボーイそのものじゃないの!!」

 

悟飯「ご、ごめんなさい………」

 

二乃「だから聞かなかったことにしてあげる!!……プロポーズとしてはね」

 

悟飯「えっ?それ、どういう意味…?」

 

二乃「さーてね?じゃ、いいこと聞けたしおやすみ〜」

 

悟飯「えっ?ちょっと…………」

 

しかし、二乃は今度こそベッドに入り込んで眠り始めてしまった。危うくプロポーズが大失敗するところだったが、二乃の機転?慈悲?によってやり直すことができそうだ。悟飯本人もあれがプロポーズとなっては納得がいかない。風太郎が四葉に対してプロポーズした時は決まったと思っていたが、二乃の反応を見て後々調べると、プロポーズとはそれなりに準備をする必要があることを知った。

 

二乃の性格も考慮して、そういったことはちゃんとしたいと思っていたので、今回の二乃の配慮はありがたかった。

 

孫悟飯は中野二乃には敵わない。

 

 

 

 

 

 

幸せ空間が広がっていた悟飯と二乃だが、視点は変わって風四に戻る。

 

風太郎「…………四葉」

 

四葉「はい………」

 

風太郎「俺死ぬかと思ったんだが!!?つかお前怖えよ!!本当の意味で食われるかと思ったわ!!!」

 

四葉「す、すみませ〜ん!!!!」

 

四葉の暴走、風太郎の非力さが合わさって無茶苦茶大変なことになっていたらしい。これではムードもクソもないが、まあ彼ららしいと言えばらしいのかもしれない………。

 




 さて、次回こそ悟飯×一花メイン回になると思います。今の予定ではギャグ重視になると思います。初の番外編はファンアート紹介(悟飯たちがコメントする感じ)にしようかと考えています。でも多分pixiv限定公開だと思う。


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第114話 小さな反抗期?

 免許合宿って忙しいし疲れる…。でも安いし飯うまいし早めに免許取れるしでいいことが多いのよ…。
 そんなことはさておき、2週間ぶりの投稿ですが、まだしても一花回ではありません。次回こそは一花メイン回にする…!

 あといつもより短いけど許して…。


時は徐々に過ぎていく……。2月に入ると二乃と三玖が料理の専門学校に合格し、この2人に関してはひと段落といったところだ。五月は受験勉強に専念し、四葉は推薦に必要な最低限の学力を維持するために勉強を続けている。

 

風太郎と悟飯もそれぞれが目指す大学の為に日々勉強に奮闘している。この頃になると流石の悟飯もデートの頻度を減らして勉強に専念するようになった。二乃は寂しそうにしていたが、受験が終わったら沢山デートしようと言うと機嫌がよくなった。

 

さて、ここでもう一度言うが、二乃は受験も終え、卒業も確定していることからほとんど暇だ。しかも三年生は自由登校のため、行きたくないなら行く必要はないのだ。つまり……。

 

二乃「はいハー君、紅茶よ」

 

悟飯「ありがとう」

 

二乃は悟飯のサポートに徹していた。これだけならカップルとして別におかしいことではない。ないのだが……。

 

悟飯「………なんで僕の家にいるの?」

 

何故か孫家に入り浸っているのである。

 

二乃「えっ?もしかして、勉強の邪魔だった……?」

 

悟飯「いや、そんなことはないんだけどさ…………」

 

二乃「ならいいじゃない!悟空さんとチチさんは畑仕事でこの時間は家にいる時間が少ないんでしょ?誰がハー君のサポートをするのよ!」

 

別にサポートはなくてもいいんだけどと言おうとするが、それを二乃に言ってはいけないことはなんとなく分かっている。だから悟飯は二乃が家にいることは目に瞑ろうと思った。恐らく泊まる気でもないだろう。

 

二乃「……それにしても、ハー君のご両親って随分寛容よね」

 

悟飯「えっ?」

 

二乃「だって、息子が取られるかもしれないのに、結構私を歓迎しているというか………」

 

悟空はともかく、確かに子煩悩なチチなら悟飯を婿に出さんと言いかねない。セルゲーム前のチチなら間違いなくそう言っただろうが、彼女も一度最愛の人物を失って変わったのだ。

 

悟飯「それだけ二乃が良い子だってことじゃない?なら良かったじゃん」

 

二乃「まあね。でも、悟天君の反応はいまいちなのよね〜………」

 

過去に二乃と悟天は一瞬とはいえ対立していた時期もあった。悟天はどう考えているのか分からないが、二乃は悟天に対して苦手意識を持っているようだった。

 

 

 

二乃「はいハー君、召し上がれ!」

 

昼時になると、畑仕事で忙しいチチの代わりに二乃が昼ご飯を作っていた。チチには既に許可を得ており、自由にある食材を使ったというわけである。

 

悟天「……なんで二乃さんは当たり前のように家にいるの?」

 

二乃「別にいいじゃないの。私はハー君の恋人なんだし……ね?」

 

悟天「むぅ……」

 

二乃はあくまでも優しく悟天にそう言うが、彼は何かご不満な様子だった。

 

二乃「まあ、そんな膨れないで食べなさい!私の料理は絶品なんだから!!」

 

悟天「お母さんの料理の方が美味しいもん!!」

 

そうは言いつつも、悟天は美味しそうに二乃の料理を食べていた。普段は素直な悟天だが、二乃に対してだけは当たりが強いように思える。

 

二乃「………ね、ねぇ…。私、やっぱり悟天君に嫌われてるのかしら…!?」

 

悟飯「そんなことないと思うけど……」

 

二乃は不安になってこっそり悟飯に聞くが、普段は悟天から二乃に対する悪口のような話は一才聞かない。そんなに嫌ってはいないはずなのだが、今の態度を見るとそれも分からなくなってしまう。

 

悟天「……兄ちゃん達、また内緒話している………」

 

悟飯「えっ?」

 

悟天「……兄ちゃん、そんなに二乃さんのこと好きなんだ」

 

悟飯「そ、そうだけど………」

 

悟天「………」

 

悟天は食器の中身を空にするとすぐに立ち上がって自分の部屋に戻ってしまった。その仕草はどこかイラついていて、また寂しそうにも見えた。

 

悟飯「悟天………」

 

二乃「もしかしてちょっと早い反抗期かしら?」

 

悟飯「そんな急に来ないと思うけど…」

 

 

 

 

 

やっぱりそうだ。兄ちゃんは二乃さんと付き合ってから、やたらとデートに行くようになった。僕が遊んでってお願いしても、『勉強するから』とか、『ちょっと用事があるから』とか言って、大抵二乃さんとデートか勉強。勿論全く遊んでくれないわけじゃないけど、それでも二乃さんとのデートの回数の方が多い。

 

…兄ちゃん、僕よりも二乃さんのことが好きになっちゃったんだ。僕のこと、どうでもよくなっちゃったのかな…?

 

悟天「……やっぱり一人で遊んでいてもつまらない……」

 

一人で遊んでもつまらない。……そうだ…!

 

 

 

 

 

 

数時間後……。日がそろそろ沈み始める時間帯になり、チチと悟空も畑仕事から帰ってきた。

 

チチ「ただいま〜……」

 

悟空「たっぷり働いたから腹減っちまったなぁ!飯にすっか!」

 

チチ「まだ明るい時間だぞ?早くねえか?」

 

悟空「そう言われても腹減っちまったもんは仕方ねえよ……」

 

チチ「しょうがないだな……。んじゃ、ちょっと早い飯にするだか……。悟空さ、悟飯と悟天ちゃん……あと今日は二乃さもいただな。その3人を呼んできてけろ」

 

悟空「おう」

 

悟空はシャワーを軽く浴びていつもの道着に着替えた後、もうすぐ夕食ができることを伝える為に、まずは悟飯と二乃がいる部屋にノックする。

 

「はーい?」

 

悟空「悟飯に二乃……だったか?もうすぐ飯ができっぞ!!」

 

「はーい!!」

 

悟飯の返事を聞いた悟空は次に悟天の部屋をノックする。しかし、応答はない。

 

悟空「あり?」

 

もう一度ノックするが、またしても返事がない。不思議に思った悟空はドアを開けるが………。

 

悟空「あれ?悟天のやつどこ行ったんだ………?」

 

何故か悟天が部屋にいなかった。

 

 

 

 

二乃「ねえハー君、私退屈なんですけど〜」

 

悟飯「……勉強の邪魔はしないでほしいんだけど………」

 

二乃「なによ〜!私より勉強が大事だって言うの〜?」

 

一方で、二乃はあまり娯楽がない孫家に退屈を感じ始めていた。とはいえ、悟飯と一緒にいたいから常に悟飯の側にいるが、今は悟飯にくっついて退屈を紛らわせている。

 

悟飯「二乃が大事だからこそ勉強するんだよ。ちゃんと勉強して学者になつて、しっかり稼げるようにならないとね!」

 

二乃「えっ……?その答えはちょっと予想外だったわ………」

 

久しぶりに悟飯の不意打ちをくらった二乃はときめいてしまった。少しの間悟飯の顔をジッと眺め、彼の存在そのものが愛おしく感じるようになってしまった。

 

二乃「……あ〜!我慢できない!ハー君!しましょ!!」

 

悟飯「えっ……?いやいや!!僕今勉強中だし、お父さんもお母さんも悟天も起きているんだよ!!!?絶対に無理だって!!」

 

二乃「いいじゃない!声は我慢するから!!」

 

悟飯「僕が勉強しているからダメなんだって〜!!!」

 

そして二乃はまたしても暴走し始める。悟飯は勉強中だからと断るも、その程度で止まる二乃ではない。

 

二乃は上着を半脱ぎし、意地でも悟飯を意識させようと顔を近づけて……。

 

ガチャ

悟空「なあ悟飯、こっちに悟天はいるか?」

 

………しかし、ノーノックで悟空がドアを開けやがったので(二乃の)ムードが台無しである。

 

二乃「…………」

 

悟空「ん?どうした?オラの顔になんか付いてるんか?」

 

二乃「馬鹿ァアア!!!」

 

悟空「わっぷ……!!」

 

二乃は恥ずかしさのあまり、枕を投げつけて悟空に抗議する。

 

二乃「なんでノックもしないで勝手に入ってくんのよ!!?」

 

悟空「んなこと言われてもよ〜………。悟天の気をこの辺で感じねえんだよ」

 

悟飯「…………えっ?」

 

悟空に言われ、悟飯も周囲の気を探ってみた。確かに悟天の気は感じない。

 

二乃「えっ?お昼はいたのに………」

 

悟空「困ったなぁ……。悟天のやつ一体どこにいるんだ……?」

 

家族のうち誰も悟天が外出するという報告を受けていない。悪戯で隠れんぼをしている可能性もあるが、悟天はそのような悪戯をしたことがない。つまり黙ってどこかに出かけて行ったということだろう。

 

悟飯「………まさか…」

 

最近、悟天の機嫌が悪い傾向にあったのは知っていた。それは悟飯が二乃のことを話す時に限ってのこと……。昼の会話を思い出し、悟飯はひょっとすると自分に原因があるのではないかと思った。

 

悟飯「………お父さん、僕悟天を探してくるよ!!」

 

悟空「えっ?いや、おめぇはいいって。勉強しなきゃならねえんだろ?それにオラには瞬間移動があるし……」

 

悟飯「そんなこと言ってる場合じゃないですよ!!もし悟天が家出したとしたら………」

 

悟空「ならブルマの家に行ってるんじゃねえか?」

 

悟飯「それならブルマさんから連絡が来ますよ!!」

 

悟空「そ、そいつもそうだな……」

 

悟飯「とにかく僕は悟天を探しに行きます!!」

 

そう言うと悟飯は窓を開けてすぐに飛び立って行った。

 

悟空「おい悟飯!!………仕方ねえな。オラはまずはベジータのとこに……」

 

シュン‼︎

 

悟空は瞬間移動で心当たりを探ることにしたようだ。

 

ポツーン

 

二乃「………えっ?」

 

そして唐突に二乃だけが取り残された瞬間だった…………。

 

 

 

 

悟飯がやってきたのは日本。日本だとどうやらそろそろ日が暮れる頃らしい。

 

悟飯「(悟天……!どこにいるんだ…!!)」

 

 

 

 

 

 

 

一方その頃、上杉家では………。

 

風太郎「おい、何故お前がいるんだ?」

 

悟天「……………」

 

らいは「お兄ちゃんは黙ってて!今は私が話を聞いてあげてるんだから!」

 

悟天は悟飯とラブラブな二乃に嫉妬し、何故か上杉家に来ていた。悟天の友達といえば真っ先に出てくるのはトランクスのはず。にも関わらず、上杉家に来ていた。

 

らいは「やっぱり孫さんは二乃さんに付きっきりになっちゃったんだね〜」

 

風太郎「俺なららいはを冷遇するようなことはしないぞ!」

 

らいは「お兄ちゃんはもう少し四葉さんを優先しようか!」

 

悟天「………」

 

こんな下らないやり取りでも、悟天は羨ましく思えてしまった。無論悟飯に無視されているわけでも、構ってもらえないわけでもないが、頻度は明らかに減っている。

 

らいは「まあ、もしもそうなっちゃったら私のところに来ていいって言ったもんね。偉い偉い♪」

 

らいはは優しく微笑みながら悟天の頭を撫でていた。

 

らいは「でもよくお兄さんの前で我儘言わなかったね?」

 

悟天「…………だって、兄ちゃんは高校生活で色々あったから……。二乃さんが彼女になったって聞いた時は本当に嬉しそうな顔をしてたんだよ。だから、その邪魔をしたくないなって……」

 

らいは「悟天君、いい子すぎない…?」

 

悟天は基本的に悪戯好きな性格だが、根は悟空のように優しく、素直な子だ。今まで苦労してきた悟飯を見てきたからこそ、悟飯の前では我儘を言えなかったのだろう。

 

風太郎「なあ、一つ聞いてもいいか?」

 

悟天「なに?」

 

風太郎「お前は二乃のことが嫌いなのか?そんな二乃がお前の兄と仲良くしているのが気に食わないのか?」

 

悟天「……別に。そんなに嫌いってわけじゃないけど、去年の二乃さんを見ているとね……………」

 

風太郎「あ〜……。去年の二乃は本当に酷かったからな………。思えばあんなに二乃が丸くなったのも悟飯のお陰なのか…………」

 

らいは「でも二乃さんのことは嫌いではないんでしょ?ならどうして……」

 

悟天「……なんか、兄ちゃんが二乃さんに振り回されているみたいで嫌なんだよね……。兄ちゃんも悪い気はしないみたいだけど………」

 

風太郎「確かに、最近のあの2人を見てると、確実に尻を敷かれてるのは悟飯の方だもんな……………」

 

らいは「やっぱり…………。でも、二乃さんだって根はいい人だと思うよ?孫さんが選んだんだから間違いないと思うよ?」

 

悟天「根は優しい………。あっ………」

 

そういえば、まだ記憶に新しい魔人ブウ騒動の時、フュージョンが溶けた自分達に向かってくる魔人ブウを身を呈して受け止めてくれたのは二乃だった。確かに、根が優しくなければあんな行動は咄嗟にできない。ましてや考える前に行動なんて………。

 

悟天「………でも、やっぱり兄ちゃんが二乃さんにばかり構っているのはズルい……」

 

らいは「………そうだ!」

 

らいはは閃いた動作をすると、悟天にこんな提案をしてきた。

 

らいは「それなら、孫さんに悟天君という存在を再認識させるのはどうかな?」

 

悟天「えっ?」

 

風太郎「なんだ?どういう意味だ?」

 

らいは「悟天君は、二乃さんのことは嫌いじゃないんでしょ?」

 

悟天「うん。そうだけど……」

 

らいは「なら、悟天君が二乃さんに甘えてみたらどうかな!」

 

風太郎「おい、何故そうなる」

 

らいは「悟天君が二乃さんに甘えまくれば、きっと孫さんは自分が兄だってことを再認識してくれるはずだよ!」

 

風太郎「逆に嫉妬されないか?」

 

らいは「流石に8歳相手に嫉妬はしないでしょ。ましてや孫さんだよ?」

 

風太郎「それもそうか……」

 

悟天「…………」

 

らいはがそんな提案をしてみたので、悟天は二乃に甘える想像をしてみる。

 

………だが、上手く想像できない。

 

らいは「きっと二乃さんも悟天君と仲良くしたいんじゃないかな?おもちゃとかねだってみれば?もしかしたら買ってくれるかもよ?」

 

悟天「本当に!!?」

 

おもちゃを買ってくれるかもしれないという甘い言葉に悟天はすぐに釣られた。地球人戦士以上の力を持ちながらも、まだ中身は小さな子供。意外と単純なのである。

 

風太郎「なるほど……。もしらいはが俺以外の歳上に頼ったとなると……………。なんか嫌だ!!よし、その作戦で行こう!!」

 

風太郎は悟飯の立場を自分に置き換えた結果、無茶苦茶不快感を感じたらしい。故にこの作戦は有効だと判断した。

 

悟天「取り敢えずおもちゃねだってみるよ!!ありがとね!!」

 

らいは「またいつでも遊びにきてね〜!!」

 

悟天は満足したのか、舞空術で帰宅していった。

 

風太郎「…………なあらいは。あの方法じゃ根本的な解決にはならないんじゃないか?」

 

らいは「でも悟天君、おもちゃもらえるかもしれないとなるとすごく嬉しそうだったよ?」

 

風太郎「………まあ、本人がそれでいいならいいのか………?」

 

 

 

 

 

数十分後……。悟飯は悟天が帰ったきたとの連絡を受けて帰宅し始めた頃…。孫家では………。

 

悟天「ねえ二乃さん。おもちゃ買ってくれない?」

 

二乃「えっ……?きゅ、急にどうしたの?というかどこほっつき歩いてたのよ!!」

 

チチ「そうだべ悟天ちゃん!!何も言わずにいなくなっちまって…!!オラ山中探し回っただぞ!!?」

 

二乃とチチは遠くへ行けない分、パオズ山中を探したようだった。

 

二乃「急にいなくなったから心配したのよ!!どこかに出かけるならせめて一言くらい言いなさいよ!!」

 

チチ「そうだべ!!!心臓が止まるかと思っただよ!!」

 

二乃やチチだけでなく、今日悟飯も世界中を飛び回って探してくれているらしかった。悟飯がそこまで自分を必死になって探してくれたことを知ると、自分のことがどうでもよくなったわけじゃないことを知り、嬉しさを覚えた。

 

悟天「僕は兄ちゃんが全然構ってくれなくなったかららいはさんのところに遊びに行ってただけだもん!」

 

二乃「構ってくれないって…?」

 

悟天「そーだよ!二乃さんと付き合い始めてからだよ!!」

 

二乃「わ、私のせいなの!?」

 

こんな下らないやりとりをしつつ、悟天は昔のことを思い出していた。昔の自分には父親は存在しなかった。だが兄と母はいた。不意に姉が欲しいと思った時もあったが、それもほんの数日だけ。だが、姉がいたらそれはそれで楽しそうだなぁとも思っている。

 

実際、今の二乃と悟飯は誰がどう見てもラブラブであり、別れるどころかこのまま結婚までしてしまいそうな勢いである。もし結婚すれば、二乃は悟天にとっては義理の姉ということになる。近い将来そうなる可能性がある。本音を言えば五月がその相手になって欲しかったのだが、最近は二乃でもいいかとも思っていたり……。

 

それに、悟天は二乃が自分に気を使っていることが分かっていた。その原因もよく分かっているつもりだ。だからこそそれを最大限に利用してしまおうと考えた。どうせ近い将来義姉になるのなら、甘えたって許されるだろう。なんせまだ8歳だもの。

 

悟空「……だってよ、悟飯」

 

悟飯「あはは……。以後気をつけます…」

 

悟飯は兄であることも忘れないようにしようと心に誓った。

 

 

 

ちなみに、悟飯が必死に自分を探してくれていたことを後から知り、自分のこともちゃんと考えてくれているのだと再認識した。

 

余談だが、二乃は悟天におもちゃをちゃんと買ってあげたらしい。

 




 マージで疲労で書く気がなかなか起きないのですが、ちょっとずつ書いたものを投稿しました。まあいつもより短いんですがね…。あと、この前戦闘は最後だ的なこと言いましたが、また嘘になるかもしれません…。まあこの前のようなスケールの大きいものにはならないとは思いますが…。

 また、pixivの方ではファンアートを紹介する番外編を投稿しました。気が向いたら見に来てね。
 https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=19150765


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第115話 再来する脅威

 どうも皆さま、お久しぶりでございます。2週間の合宿免許を経た後に四国・九州・広島倉敷に旅行とアホみたいなことをしておりました。まだ本免試験が控えておりますが、恐らくようやく落ち着くと思います。

 ということで、ようやく一花&悟飯メイン回のシリアスパートになります。何度も何度も嘘ついてすみません……。いや〜、最近はほのぼのとし過ぎてて、そろそろシリアスを投下したいと思ったところにまたしても被害に遭う一花………。もしかして私の深層心理では一花を嫌っている……?そんなはずはないんだけどなぁ……()

 てなわけで、本編をどうぞ。ちなみに急ぎで仕上げたので誤字脱字がヤバいかもしれないです。気づき次第修正します。



何の変哲もない休日…。悟飯は勉強する間も惜しんであるところに訪れていた。それは…………。

 

二乃「…………ねぇ?本当に今日行くの?」

 

悟飯「マルオさんに予定を合わせてもらったんだから、急に予定を変えるのも失礼だよ」

 

二乃「いざとなったら緊張してきたわ………」

 

何故相手の両親の時は緊張していなかったのに自分のところになると急に緊張するのか不思議でならない。

 

悟飯「なんで緊張してるの……?普通は僕の方が緊張すべき場面だと思うんだけど……………」

 

二乃「い、いや〜……。お父さんがちゃんと認めてくれるのかなって………」

 

悟飯「ええ!?確信なかったの!?」

 

お父さんが自分達の関係を認めてくれているだろうと二乃が言ったのは、付き合い始めた翌日のこと………。彼女は悟飯と恋人らしいことをするために、根拠なくそう言ったのだ。

 

二乃「相手はハー君だし、いくら子煩悩なお父さんでも認めてくれるとは思うんだけど、最近の行動を思い返してみると…………」

 

悟飯「そう思うなら自重してほしかったんだけどなぁ…………」

 

と、いまいち締まらない会話をしつつも院長室の前まで辿り着いた。ノックして入室の許可を得たので、2人ともそっと入った。

 

マルオ「孫君。いつも娘達がお世話になっているね」

 

悟飯「こちらこそ、いつも娘さん達にはお世話になっています」

 

マルオ「ところで、私が忙しい身であることは知っているだろうが、わざわざ僕に時間を取らせたということは、余程重要な話なのだろうね?」

 

マルオは病院の院長として多忙な日々を送っており、休日を取るのも難しいし、家に帰ることも中々できない。最近は悟飯の約束や零奈が戻ってきたこともあり、できるだけ帰宅しようと努力しているらしい。

 

悟飯「はい。あなたにとっても、僕達にとっても重要な話だと思います」

 

マルオ「ふむ……。もしかして家庭教師の方で何か問題があったのかね?二乃と三玖が無事専門学校に受かった話は聞いているよ。一花は女優を目指し、四葉は推薦入学することがほぼ確定していると聞いた。もしかして、五月の成績が芳しくないのかね?」

 

悟飯「いや、家庭教師のことではありません」

 

マルオ「では、新たな脅威が訪れたのかね?」

 

悟飯「いえ、そういうものでもありません」

 

マルオ「……ならば何故僕を呼び出したんだい?」

 

マルオは少々不思議そうにそう尋ねた。悟飯は一度深呼吸をして、はっきりと言った。

 

悟飯「…僕と二乃の関係についてです」

 

マルオ「…………ほう?」

 

一瞬何を言ったのか理解できなかったのか、マルオは返事が遅れた。そしてどういう意味かを確認するために、今一度悟飯に問う。

 

マルオ「君と二乃の関係とは…?もう卒業後の進路が確定したから、生徒から卒業したと言いたいのかい?」

 

悟飯「違います。僕と二乃…二乃さんと交際をさせていただいてます」

 

マルオ「…………なんだって?」

 

まさか悟飯の口からそんな言葉が出てくるとは思っていなかったのか、顔にこそ出さなかったものの、度肝を抜かされてしまったようだった。一息置いたマルオは、現状の確認に努める。

 

マルオ「いつ頃から?」

 

悟飯「学園祭の最終日から……」

 

マルオ「ふむ……。そうか…………」

 

悟飯「あ、あれ?」

 

悟飯は沢山の質問をされるものだとばかり思っていたので身構えていたのだが、マルオは何故か納得するような素振りを見せた。

 

マルオ「……あの日、娘達との旅行から帰る時の船のことは今でも忘れないよ……。二乃を含む3人が孫君に恋心を抱いていることもそうだが、あそこまで殺気を出されたのは始めてだ……」

 

悟飯「あ、あはは………」

 

マルオ「それに孫君の性格からして、娘達の押しの強さに負けて誰かしらと付き合い始めるんじゃないかと思っていた。だからこれは想定内のことだ」

 

悟飯「そ、そうだったんですか………」

 

マルオ「………だから君達の関係を認めたいと思うが……。その前に聞かせてくれないかい?君は何故二乃と付き合いたいと思ったんだい?」

 

これは興味本意による質問ではない。悟飯が3人、特に二乃の押しの強さに負けて仕方なく付き合っているのか、それとも悟飯もしっかり二乃に対して特別な想いを持っているのかを見極める為の質問なのだ。当然悟飯は後者。むしろ押し負けて仕方なく付き合うような柄ならば、悟飯があんなに悩むこともなかったはずだ。

 

悟飯「………彼女との最初の出会いは、決していいものではなかったと思います。実際、最初は彼女に嫌われてましたから………」

 

二乃「そ、そのことは忘れてほしいわ………」

 

悟飯「………でも、二乃と接するごとに彼女が僕や上杉君を嫌悪する理由が段々分かってきたんです。二乃は姉妹の中でも家族を大切にする人で、分かりづらいけど本当は誰よりも優しくて、面倒見が良くて…………。

幼少期から戦ってきた僕にとって、人を大切にできる二乃がより一層魅力的な人に見えたのかもしれません」

 

マルオ「……ふむ。だが、家族を大切にしているという理由ならば、他の娘達でもいいはずだ。君は何故、二乃と付き合ったんだい?」

 

悟飯「………正直、詳しいことは僕にも分かりませんが、きっかけはあの時だと思います。僕が危険を呼び寄せているのかもしれないと思い、彼女達を危険に巻き込まない為に家庭教師を…。いや、転校も真剣に検討していました」

 

マルオ「……それは初耳だね。いつ頃の話だい?」

 

悟飯「風太郎………上杉君が家庭教師を辞退したでしょう?その時とほぼ同時期です」

 

マルオ「……ふむ。続けたまえ」

 

悟飯「はい。それで、その趣旨を彼女達にも説明しました。彼女達は嬉しいことに、僕を引き止めてくれました。でもその優しさに甘えて彼女達を巻き込むわけにはいかないと思い、その優しさに甘えるのは違うと思っていました。でも、その時に二乃が………」

 

 

 

『セルみたいな敵から私達を遠ざけるって言うけどね、あんな化け物が出てきたら地球のどこにいても同じなのよ?』

 

『あんたが私達の近くにいて私達を守りなさい。地球のどこに行っても同じようなもんなら、近くに超人的な身体能力を持ったボディガードを付けた方が安心するわ』

 

 

 

……思い返せば、あの時から二乃のことを意識し始めていたのかもしれない。自分が気づかなかっただけで、心の奥底では既に答えが出ていたのかもしれない。難しく考えるから気づくのに遅れてしまったのかもしれない。

 

 

 

悟飯「二乃がそう言ってくれました。多分それがきっかけだったんだと思います。それからも彼女達と沢山の時間を共有してきました。その中で分かったのは、二乃は案外無茶をしちゃうことです」

 

実際、二乃は考えるよりも先に行動するタイプであるが故に、人を助けるために自分がピンチになってしまう場面が多かった。それを象徴しているのは魔人ブウから悟天を守った時や、並行世界の無堂が憑依した"ゴハン"から悟飯を庇った時だろう。

 

二乃は自然体で姉らしい行動ができている分、自分の身を削りがちなのだ。自分ではそういう自覚がないのかもしれないが、少なくとも悟飯の目にはそう映った。

 

悟飯「だから、僕は二乃のそばにいて二乃を支えてあげたい。逆に僕が弱った時には、二乃に支えてもらいたい。そう思ったんです…………」

 

マルオ「……………」

 

二乃「………っ」

 

二乃は恥ずかしさのあまり顔を抑えて悶絶しかけるが、マルオは表情を変えなかった。

 

…………はずだった。この時、マルオは一瞬とはいえ、始めて零奈以外の人に笑顔を見せたのかもしれない。

 

マルオ「………同じだよ。僕と」

 

悟飯「えっ………?」

 

二乃「ど、どういう意味……?」

 

マルオ「僕も零奈さんを支えたい、側にいてあげたいと思った…。彼女は独り身でありながら5人の娘に愛情を注ぎ、仕事にも奮闘していた。その疲労からか倒れてしまうことも何度かあった。そんな無茶をする彼女を支えたいと思ったんだ……………」

 

悟飯「マルオさん……………」

 

マルオ「孫君。これからも娘をよろしく頼むよ」

 

マルオは、悟飯がちゃんとした理由を持って二乃と付き合っていることを知ると、反対する理由もないのか、あっさりと了承した。むしろ歓迎しているようにすら見えた。

 

マルオ「……しかし、2人とも学生だということを自覚しておいてくれ。清い付き合いをしてくれることを切に願うよ」

 

悟飯「あっははは……。肝に銘じます……」

 

二乃「……お父さん。ありがと!」

 

 

 

こうして、最大の難関とも言えるマルオとの対談を終えた。二乃と悟飯は晴れて両家族公認の関係となったわけである。

 

二乃「それにしても、釘を刺されちゃったわね。あの感じはなんとなく気付いてそうだけど………」

 

悟飯「あはは………。もしそうならこれから会うの気まずいな………」

 

二乃「大丈夫でしょ?どうせ将来的には一緒に暮らすんだから……ね?」

 

悟飯「それもそう……なのかなぁ…?」

 

二乃「ということで、今日も……」

 

悟飯「いや、流石にしないからね?」

 

二乃「チッ……」

 

悟飯と付き合ってからというもの、二乃のブレーキは本当に壊れてしまったらしい。悟飯が代わりにブレーキしてくれなければ、二乃は止まることができないだろう。

 

悟飯「いやいや、この前悟天に家出されたばかりだし、今日のこともあるから流石に自重しようよ……?」

 

二乃「………じゃあ、代わりにギュッてして?」

 

最近、ナニとは言わないが悟飯のお陰で頻度は減りつつあるが、その代わりに二乃はめちゃくちゃ甘えてくるようになっていた。それくらいならいいかと悟飯も二乃をこれでもかと甘やかしている。側から見るとただのバカップルにしか見えない。

 

二乃「…ありがと。これでハー君成分が充電できたわ」

 

悟飯「充電って………」

 

二乃「でも、この充電はすぐに切れちゃうのよ。だから明日も……ね?」

 

悟飯「そろそろ本格的に勉強しないとまずいんだけど…………」

 

そう。今まで受験生とは思えない頻度で二乃とデートをしていた悟飯だが、それは比較的余裕があるからの話。いくら学力があるとはいえ、そろそろ勉強に本腰を入れなければ危ない時期に差し掛かっているのだ。志望校に確実に受かる為には勉強は必要不可欠なのだ。

 

二乃「…………分かったわ。学者になることがあんたの夢だものね。そんな真剣な顔で言われちゃったら無理に拒否できないわ……」

 

悟飯「ごめんね?埋め合わせは試験が終わったらするから………」

 

二乃「約束よ!!!」

 

埋め合わせというワードを聞いた二乃は先程と打って変わってテンションが高くなった。昔はともかく今は無茶苦茶分かりやすくなっている。

 

上機嫌なまま二乃をPentagonまで送り、二乃は帰宅した。

 

悟飯「…………昔の二乃からは全然想像できないなぁ……」

 

悟飯は干渉に浸りながらひと気のないところを探して歩いていた。だが、ある方向が妙にいつもより気の数が多い。つまり、人集りができているということだろう。悟飯はその人集りを避けようとしたその時………。

 

一花「あれ?悟飯君じゃん?」

 

悟飯「一花さん?今日はロケじゃないの?」

 

一花「今日は別の撮影。ちょっと変わったヒーローものをやりたいんだってさ」

 

悟飯「へぇ〜……。ヒーローモノねぇ…」

 

一花「だけど、出演する予定だったスーツアクターさんが体調不良で来れなくなっちゃったんだよ。だから誰か代わりを用意できないかって必死になってるところなんだ」

 

悟飯「そうなんだ」

 

とはいえ、悟飯にとってはそういう撮影業界には関係のない話だ。確かに演じることができる人が限られているわけだし、代わりを用意するのは大変そうだ。

 

一花「でもさ、スーツアクターだからちゃんと運動できる人じゃないといけないんだよね〜。それも割と特別な訓練を受けてる人が望ましいんだって」

 

悟飯「でもそれじゃ余計に代わりを見つけるのは難しいんじゃない?」

 

一花「そうなんだよ。だから私にも頼まれたんだ。『もし知り合いにいい人がいたら紹介してくれ』って」

 

悟飯「ふーん………?えっ?」

 

流石にここまで来れば察するというもの。一花の視線の先は先程からずっと悟飯のみに向いている。そして、よく動ける人、もっと言えばアクロバティックな動きをできる人を求めている。つまり、今近くにいる人の中では悟飯が最適な人物ということに他ならない。

 

悟飯「いやいや待ってよ!?僕は演技なんてやったことないし…….」

 

一花「大丈夫!多分普段通りに戦ってくれればそれっぽく見えるから!!」

 

悟飯「そ、それはまずいよ…!そんなことしたら僕の正体が広まっちゃうよ…!」

 

一花「私がなんとかしておくから…!!お願い……!!!」

 

一花が珍しく真剣に頼み込んでいる様子を見ると、どうも本当に事態は急を要するようだ。

 

悟飯「……今日の撮影って、一花さんも女優として出演するの?」

 

一花「うん。そうだけど……」

 

以前、悟飯は一花の夢も応援すると言ったような気がしなくもない。言ったかどうかは置いといて、悟飯自身も一花の夢は応援したい気持ちだ。故に、自分が出演すれば一花が助かるのなら、出演してしまってもいいかと思った。

 

悟飯「…………そこまで言うならいいよ。でも、正体に関しては問題ないんだよね?」

 

一花「うん!顔は隠してあるからね!」

 

そういうことで、早速一花に付いていくと、更衣室に案内されて、ある服を渡された。

 

一花「はいこれ。このスーツが今回のヒーロー役の人なんだって!」

 

悟飯「……………えっ?」

 

悟飯は拍子抜けしてしまった。日曜の朝にやっているような特撮もののヒーローのことかと思っていたが、もっと身近なものだったのだ。

 

一花「悟飯君ってグレートサイヤマンって知ってる?今でも偶に現れるらしいんだけど、不思議な力を使って悪い人達を成敗するっていう正義の味方!」

 

悟飯「あ、あはは……。うん。知ってるよ?」

 

一花「なら丁度良かった!そのヒーローを演じてほしいんだ!どういうわけか分からないけど、悟飯君と似たような戦い方をするみたいなんだよね。だからいつも戦う要領でやってくれれば問題ないと思うよ?」

 

まさか自分の正体を隠す仮面として名を馳せていた『グレートサイヤマン』の役を演じることになるとは夢にも思わなかった。

 

一花「それじゃ、お願いね!!」

 

一花は悟飯の正体を知っているのかどうかは不明だが、悟飯に向けてウィンクすると更衣室のドアを閉めた。

 

悟飯「…………まあ、一度引き受けちゃったし、仕方ないか………」

 

 

 

 

ということで、着替えて撮影地に出てきた。

 

織田社長「おお!君が一花君が連れてきてくれたという代わりのスーツアクターの人かい?」

 

悟飯「は、はい。よろしくお願いします……」

 

織田社長「一花君、いい人材を連れてきてくれたじゃないか!!体格も声も本物にそっくりだ!!」

 

一花「あはは……。たまたま知り合いにピッタリな人がいたもので……」

 

それはご本人様なのだから似ていて当然なのだが、元々正体を隠す為に変身しているので、わざわざそのことを話すこともない。織田社長は満足しているので細かいことは問題無さそうである。

 

織田社長「それじゃあ、台本の通りに台詞を言ってくれれば大丈夫だからね」

 

悟飯「えっ?いきなり本番なんですか?」

 

織田社長「君なら大丈夫だ!!私の直感がそう言っている!!」

 

悟飯「は、はぁ………」

 

ということで、悟飯の出番が来るまでスキップ。出番が近づいてくると、あまり緊張することのない悟飯も緊張感を覚えてしまう。悟飯の出番はヒロインの女の子が突然現れた怪物に襲われているところを助ける場面だ。

 

「ギシャシャシャ!!!」

 

一花「きゃ〜!!!助けて〜!!!」

 

追いかけてくる怪物に背を向けながら一花が必死に走って逃げる。その気迫、必死さから本当に必死に逃げているかのように錯覚してしまう程の演技力だった。その手のものが素人の悟飯でも、勤労感謝の日に三玖と見に行った映画で出演していた時の一花よりも大分技術が向上していることが分かった。

 

監督「君!そろそろ出番だよ!」

 

悟飯「は、はい!!」

 

一花の演技力に見入るところではない。ここで自分はヒロインを助けるという大役を担っているのだから、失敗するわけにはいかない。

 

一花「きゃ!!」

 

悟飯「あっ…!!!」

 

一花は転ぶ動作をする。まるで本当に転んでしまったかのような動きだった。その間に怪物との距離は一気に縮まってしまった。

 

一花「な、なんでこんな目に遭うのよ…!!私、何も悪いことしてないでしょ…!?なんで…!!誰か、助けてよ……!!!!」

 

 

 

 

ドカッッ!!!!!!

 

「ギヒャ……!!?」

 

一花「…………えっ?」

 

悟飯「そこまでだ!!これ以上無実の人間を傷付けることは許さん!!」

 

悟飯は台本の通りの台詞を言った。本当にこれでいいのかと横目で社長や監督の顔色を窺うが…。

 

織田社長「す、素晴らしい……!!本当に一花君はいい人材を発掘しましたね…!!」

 

監督「いっそのこと正式にスーツアクターとして採用しちゃいます?」

 

織田社長「本当なら俳優として採用したいところだが、彼は素顔がNGらしいからね………。彼の顔を見てみたいよ……!!」

 

………どうやら無茶苦茶好評のようだった。

 

「無実の……人間だぁ?」

 

悟飯「そうだ!!この子がお前に何をしたって言うんだ!?」

 

「そいつは………。そいつは社長の娘なんだよ。金持ちで、運動もできて勉学にも精通している……。そんな天才なんだよ」

 

悟飯「まさか貴様…!才能を恨んでこんなことを……!?」

 

「確かに羨ましかった。でも、それだけでこんなことはしないさ。そいつは……!!そいつは私の息子をいじめ殺したんだ!!!!!」

 

悟飯「……!!?」

 

今解説すると、このヒーローものは少々変わっているようだ。純粋な正義と悪ではなく、それぞれ正義の信念を持っているらしい。純粋な正義と悪が戦うものは既に世に沢山出ていることから、少し捻ったものにしようということらしい。

 

「息子はただその子の失くした物を見つけてあげただけなのに…!!そいつは私の息子が盗んだとほざいて虐めたんだ……!!他の子も息子の優しさを知っていたから信じなかったが、そいつは親の権力に物を言わせて学校中にイジメをさせるように仕向けたんだよ……!!!最終的には息子は耐えられなくなって自殺した……!!!

 

息子をそこまで追い込んだクズが無実の人間だと……!?そんな奴が無実の人間だというのなら、俺は喜んで罪人になってやる!!!」

 

更に解説すると、この怪物は元々人間だったが、息子がいじめで自殺したことを気に自分の体を改造して、権力にも屈しない純粋な力を得たという設定だ。中々に重い設定である。

 

一花「そ、そんな……。私は………」

 

悟飯「…もしその子が本当にそんなことをしたなら、確かに許されることではないと思う……。だが、君は自らの手で人を殺めようとしている……!!それがどれだけ罪深いことなのが分からないのか…!?」

 

「何も分かってないのはお前だ!!!こんなクズを放っておいたら、息子のような犠牲者がまた出るんだぞ…!!?お前みたいな変なやつが何者かは知らないが、正義の味方を名乗るなら、私の邪魔をするな!!!!」

 

悟飯「変なやつ…?それは俺のことか?俺は……悪は絶対に許さない…!正義と平和を愛する………」

 

悟飯は事前に一花から聞いたポーズを決めながら、次のように述べる。

 

悟飯「グレートサイヤマンだ!!」

 

大分美化されているが、ダサいと作品としていまいち盛り上がりに欠けてしまうのだ。ギャグ路線ならそういう要素があってもいいのかもしれないが、この作品はゴリゴリのシリアス系の作品。なら、正義も悪もかっこよくしてしまえばいいという発想なのだ。

 

「悪を絶対に許さないなら、その小娘を殺してくれよ…!!なんで分かってくれないんだ……!!!」

 

悟飯「なんでもかんでも、暴力で解決すればいいというものではない…!!」

 

 

 

 

 

 

 

ザシュっ…!!!

 

悟飯「…………えっ?」

 

一花「…………そんな……」

 

怪物は、()()()()()()()()を噴き出しながら倒れてしまった。怪物に血の色が侵食し、血の池が生成される。その光景を見て撮影現場はどよめく。これはCGでも演出でもない。

 

本当に人が傷つけられたのだ。

 

悟飯「な、なんで………。織田さん!!これも演出なんですか!?!?」

 

撮影中でも構わずに悟飯はそう問いかける。だが、織田も監督も首を必死に横に振った。一花も驚いた表情で固まってしまっている。周りの反応を見て、本当の緊急事態だということを悟った。

 

悟飯「誰が一体こんなことを…!!」

 

「ふふふっ……。僕のことをもう忘れちゃったのかな?」

 

悟飯「………!!!」

 

悟飯はこの声に聞き覚えがあった。かつて今まで出会ったことがないほどのクズっぷりを発揮し、人に手を汚させるあいつの顔がより鮮明に思い出される。悟飯が誰よりも純粋に怒りを感じた奴が、何故か目の前にいた。

 

バビディ「本当に久しぶりだよね?サイヤ人とのハーフの孫悟飯君?」

 

何故か、魔人ブウに裏切られたはずのバビディが、天使の輪っか無しで目の前にいたのだ。

 




 今日の夜中に久しぶりに自宅に帰ってきました…。約3週間も自宅に一度も帰らないのはとても新鮮でしたね……。話し相手が少なくなってしまうので、家族のありがたみというものが分かりましたね…。

 そんなことは置いといて、シリアスパートの再来です。何故バビディが蘇ったのか?何故また悟飯達の前に現れたのか?そしてバビディが今更悟飯相手に何ができるのか?その辺は次回分かるかと思います。久々のバトル?パートを楽しみにしていただけたら幸いです。


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第116話 私は私のもの

 久しぶりの、前回のあらすじ…。

 悟飯は二乃と交際関係にあることをマルオに報告した。色々あったが、彼は2人の関係を認めてくれるようだ。これで晴れて両家族公認の仲になれたというわけだ。

 その帰り、悟飯は偶然一花達の撮影現場に出くわし、悟飯が急遽撮影の手伝いをすることになった。その役はなんと、自身のもう一つの姿のグレートサイヤマンだったのだが、撮影中に一花にとっても悟飯にとっても忘れることのないアイツが再び現れた…。



悟飯「サイヤ人とのハーフ…!?なんでお前がそのことを!!?」

 

バビディ「地獄にいる奴らに聞いたよ。なんたって君はあの宇宙の厄介者のフリーザを倒した孫悟空の息子なんだってね?道理で地球人にしては強いと思ったよ」

 

悟飯「……それで?何故生き返ったかは今は聞かないでおく。それよりも、貴様はどうしてここに現れた?」

 

バビディ「決まってるじゃないか。僕はこの世界………この宇宙を僕のものにするんだよ。僕がこの世界の支配者になるんだ!!」

 

悟飯「まだそんなことを言っているのか…!!魔人ブウはもうお前に協力しないぞ!!!」

 

バビディが何故生き返ったのかは疑問に残るところだが、今は取り敢えず何が目的かを知る方が先決だ。どうやら生前と目的は変わっていないようだが、悟飯は対面した瞬間に直感した。『こいつは今までの奴ではない。何かが変わっている』

 

そんな感じがした。

 

バビディ「そうだね。僕は見事に魔人ブウに裏切られたよ。その後の光景も地獄から見ていたさ。まさか魔人ブウにはあんなポテンシャルも秘められているとは思わなかったよ。同時に君もとてつもないパワーアップをした……。魔人ブウを再び僕の配下にしたところで、君には勝てないだろうね…………」

 

悟飯「なら何故再び僕の前に現れたんだ!?勝てないと分かっていながら……!!!」

 

悟飯はバビディが何をしたいのか察した。バビディに自分を倒せるだけの力があるとは思えない。そして自分を倒せるだけの力を有する配下もいるとは思えない。なら、どうすれば悟飯を倒すことができるのか………?

 

悟飯「ま、まさか……!!!お前、再び一花さんを……!!!!」

 

一花「………えっ?」

 

考えられる策はただ一つ。親しい人物を洗脳して刺客として送り込むことだ。一花は以前に洗脳されてしまったという事実がある。それだけでもバビディが実行する可能性は十二分にあった。

 

バビディ「それもいいけど、今の僕はわざわざそれをしなくても君に勝てるよ」

 

悟飯「………なんだって?」

 

バビディ「僕は何故今まで気づかなかったのか不思議でならないよ。魔人ブウという怪物を作り出した僕のパパ、天才魔道士ビビディをも超える超天才魔道士…。それが僕だ。僕のパパも気付かなかったからまんまと界王神にやられちゃったんだろうね」

 

悟飯「な、何を言っているんだ……?」

 

バビディ「つまり、僕自身が僕の魔力を駆使して戦えば、わざわざ配下を用意するよりも手っ取り早いということだよ」

 

一花「えっ………?」

 

確かにバビディの魔術はすごいものである。どれくらい凄いかは、今までの戦闘を思い返せば分かること。ベジータの捨て身の攻撃をバリアで防げる程の魔力、強力な魔法を行使することができるのだ。もしその魔力を攻撃に転じれば…………。

 

悟飯「…………確かにお前の魔術は凄いのかもしれない。だけどお前は知ってるか?純粋なパワーは何ものにも勝るんだ。そのパワーが大きければ大きいほどに……!!!!!」

 

ボォオオッ!!!!!!

 

悟飯は一瞬にしてアルティメット状態に変身を遂げた。その余波で周りの者を吹き飛ばし、周囲の建物を歪ませてしまった。しかも身につけていたヘルメットも吹き飛んでしまい、自分の素顔が残っていたスタッフ達に見られてしまったが、目の前の敵をいち早く倒すために、2度と一花にあんな事をさせないために、手っ取り早く終わらせる必要があると判断した。今の悟飯は守るために戦う戦士。戦いを楽しむようなことはもうしない。

 

織田社長「な、なんだ!?彼から出ているあの風は……!!?」

 

「もしや、あれは未確認金属生命体が襲来した時に、各地でそれを撃破したという………!?」

 

 

バビディ「……素晴らしい力だ。君の中に邪心があれば僕の配下にできたのに……。でも君は綺麗すぎる。僕が気に食わない程にね」

 

究極悟飯「そいつは光栄だな。僕も貴様に好かれたくはないのでね……」

 

バビディ「口の減らないやつだね。御宅はいいから、かかってきなよ」

 

究極悟飯「それじゃ、遠慮なく…!」

 

悟飯が地面を蹴った瞬間に、バビディの眼前まで迫った。一応バビディは目に追えていたようだが、反応する様子がない。あくまで目だけ反応できたということだろう。悟飯はそう判断して初っ端から本気で殴りかかった。

 

 

 

 

ドカッッ!!!!!!

 

究極悟飯「…………何ッ!!?」

 

しかし、バビディを殴ろうとした直前に、透明な球体のようなものが現れてそれの邪魔をした。

 

バビディ「僕の自慢のバリアさ。何の対策もしないで君の目の前に現れるとでも思っていたのかい?僕は超天才魔道士だよ?」

 

 

ズガァアアアアアッッッ!!!!!

 

究極悟飯「ぐはっ……!!!!」

 

自信満々にバビディが述べた直後に、指から太い光線のようなものが放たれた。このような攻撃は予測しておらず、悟飯はなすがまま吹き飛ばされた。

 

一花「ご、悟飯君!!?」

 

究極悟飯「な、なんだ今のは……!」

 

バビディ「いい質問だね。では僕が具体的にどんな風にパワーアップしたのか教えてあげるよ………」

 

バビディはゆっくりと悟飯に歩み寄りながら話し始めた。悟飯はバビディの油断を誘ってなんとか弱点を見つけ出せないかと、敢えて喋らせることにした。

 

バビディ「…………なんて言うとでも思ったかい?」

 

究極悟飯「……!!!!!」

 

バビディ「敢えて僕を喋らせて弱点を見つけ出そうって寸法でしょ?君の今の顔を見れば分かるよ。まだ僕が超天才魔道士だってことを理解してないみたいだね?」

 

バビディは短い手を伸ばし、伸ばした方の手を紫色に発光させながら……。

 

バビディ「まずは君を拘束といこうか」

 

 

ズゴッッッ!!!!!!!

 

 

究極悟飯「がぁああぁあッッッ!!!!!!」

 

バビディが手を広げると、悟飯が倒れている辺りを中心とした場所に、紫色の魔法陣のようなものが出現した。その魔法陣が悟飯の体を拘束しつつ、悟飯に苦痛を与えているのだ。

 

一花「な、何をしたの!?」

 

バビディ「ふははは!!答えてやるもんか、バーカ!!!!」

 

究極悟飯「ぐがぁ!ああぁああぁあああ!!!!!」

 

悟飯は気を高めてこれを掻き消そうとするが、何故か消えない。バビディの気はそれほど高くないはずだ。にも関わらず、この魔法を掻き消すことができなかった。

 

究極悟飯「な、なんでだ……!!どう、して……!!!気を解放しているのに……!!!!」

 

バビディ「あまりにも君が不憫だから教えてあげるよ。僕の魔法は純粋な魔法じゃないんだよ。魔力と生命エネルギーを同時に込めることによって、その魔法は圧倒的な生命エネルギーに掻き消されることはなく、絶大な効果を齎すんだ」

 

そう。バビディは地獄の住人達に悟空達との戦闘エピソードを聞き、これを思いついたのだ。圧倒的な力で異能が掻き消されてしまうなら、異能と力を組み合わせればいい。それを思いついてからというもの、自身の魔力を高める瞑想と、自分の気を高める修行は欠かさなかった。それだけバビディは悟空達に復讐したかったのだ。悟空が余計な入れ知恵をいれたから魔人ブウが反抗した。ベジータが自分に完全に支配されなかったから敗北した。悟飯が圧倒的な力を持っていたから、力に対して怯えてしまった。

 

 

その復讐を、ここで完遂するために、地獄から舞い戻ってきたのだ。

 

バビディ「よっと」

 

バビディは途中で魔法を解除した。それと同時に悟飯は立ち上がって戦闘態勢に再び入った。

 

バビディ「今ので大分参ったと思ったんだけど、中々やるね。魔人ブウ相手に果敢に立ち向かっただけはあるよ」

 

究極悟飯「はぁぁあああああああッッッ!!!!!!」

 

ドォオオオオオオオッ!!!!!!

 

悟飯は今のバビディが以前とは全く別人になったことを理解した。このままでは自分は負ける。自分が負ければ、恐らく誰も勝てないだろう。だから諦めるわけにはいかない。世界を、五つ子を、二乃を守る為には、初めから全力でぶつかるしかない。

 

究極悟飯「かー……!!めぇ……!!!!」

 

バビディ「おーおー……。いきなり大技かい?相当焦っているようだね?」

 

究極悟飯「は〜……!!!めぇぇ……!!!!!!」

 

バビディの挑発に乗ることはなく、悟飯はそのまま気を両手に集中させ続ける。生半可な攻撃では今のあいつを倒すことはできない。もっと込めなければ……!!あいつが油断している今がチャンスだ……!!!!!

 

 

 

織田社長「す、凄いですよ監督…!!!これは………!!!」

 

「ああ……!下手したら今日私達は死ぬかもしれんな……!!だが、この戦いは凄い……!!これが本物の戦いというものなのだな………!!!!」

 

 

 

バビディ「さあ、かかってきな。そして僕の圧倒的な強さに屈服しな」

 

究極悟飯「ほざけッッ!!!!貴様なんかに、俺は負けないッッッ!!!!!」

 

ズォオオオオオオオオオオオオオッッッ!!!!!!!!!

 

悟飯の全力が込められたかめはめ波が突き進む。巨大なそれは小さなバビディの体を一瞬にして飲み込まんと高速で接近した。

 

バビディ「ふふふっ。僕を舐めてもらっちゃ困るな。死ぬ気で鍛錬した僕の強さ、とくと見るがいい……!!!!」

 

バビディは両手を前に出して手を発光させると、次の魔法の準備をする。

 

バビディ「こいつで決めてやるよ。パッパラパー!!!!!」

 

ギュオオォオオオォオオォ!!!!!!!!

 

究極悟飯「!!!!!!?」

 

一花「そ、そんな……!!!」

 

バビディが魔法を発動させると、そこに小さなブラックホールのようなものが現れた。それは悟飯の巨大かつ強力なかめはめ波を掃除機のように吸い込んだ。

 

バビディ「ふふふっ…!君の全力も無駄に終わったね」

 

シュン‼︎

 

究極悟飯「!!!!!」

 

しかし、悟飯はかめはめ波が当たらなかった場合のことも考えていたらしく、すぐさま物理攻撃に移った。バビディに気づかれないように背後に回り、右手に全気を集中させてバビディの頭部に決めようとした…………。

 

バビディ「ふむ…。僕の真後ろにいるね?」

 

究極悟飯「なっ………」

 

ズォオオオオオオオオオオオオオッッッ!!!!!!!!!

 

究極悟飯「がっ…………………」

 

叫ぶ暇もなく悟飯は先程自分が撃ったはずのかめはめ波に飲み込まれてしまった。

 

一花「悟飯くーーーーーーーんッッッ!!!!!!!!」

 

織田社長「あ、あぁ………!!!」

 

「化け物だ………………」

 

バビディ「ブラックホールは知ってる人が多いと思うけど、ホワイトホールはご存知かな?ブラックホールはなんでも吸い込むけど、ホワイトホールはその逆…………って、聞いてないか」

 

消滅は免れることはできたものの、悟飯は大ダメージに耐えきれずに地面に倒れ込んでしまった。

 

バビディ「ね?僕は変わったんだよ。君と初めて出会った時の僕じゃない。僕は自分の手を汚すことにしたんだ。自分の手を汚さずにこの世界を勝ち取れるほど甘くないって思い知ったよ」

 

少し心を入れ替えたバビディは精神的にも物凄く強くなっていた。悟飯達に対する復讐心も強くなった要因として考えられるが、一番はやはり覚悟を決めたことが大きいだろう。

 

悟飯「く……そ…………!!!!」

 

体力をほとんど消耗した悟飯だが、これは彼にとっては絶対に負けられない戦いだ。こいつを放っておけば、地球どころか宇宙が滅茶苦茶にされてしまう。

 

バビディ「君、ゴキブリのように渋といね。戦闘民族って肩書きは伊達じゃないってわけだ」

 

悟飯「だま………れ……!!!」

 

バビディ「もうまともに喋れないか…。君はギブアップかな?よっ!!」

 

バビディの指から紫色の糸のようなものが伸び、その糸が悟飯の身体を拘束するように絡みついた。

 

悟飯「ぐがっ………!!!ぁあぁ…!!」

 

バビディ「おっと、下手に抵抗しない方がいいよ?この魔力で作った糸の切れ味はものすごいからね。下手に動くと今の君だとスルッといっちゃうよ?」

 

だが悟飯は疑問に思った。何故自分を殺さないのか?殺した方が手っ取り早くないのか?それとも自分を人質にするつもりか?

 

バビディ「さーて、余興を始めようか。きっと君も楽しめると思うよ。冥土の土産だと思って、潔く楽しんだ方がいいよ〜?」

 

バビディは不敵な笑みを悟飯に向けた後に、その顔を一花に向き直した。

 

一花「………!!!!」

 

その瞬間、一花に悪寒が走った。

 

バビディ「今度はこの前みたいにいかないよ?この術も改良したからね。前みたいに支配を中途半端に逃れられるなんて、考えないことだね」

 

悟飯「や、やめろぉ……!!!!」

 

一花「…………」

 

バビディ「…………あれ?」

 

しかし、今の一花には邪心という邪心は存在しない。故に、バビディの洗脳魔術にかかることはない。

 

バビディ「……なるほど。確か君はベジータが暴れてから邪心が現れたんだっけ……?なら………パッパラパー!

 

シュン‼︎

 

一花「…………えっ?」

 

バビディが魔法で誰かを呼び寄せたらしい。しかし、その人物が大問題だった。そして最悪なタイミングだった。

 

無堂「やあ、一花ちゃんだよね?僕のことは知ってるかな……?」

 

一花「あなた…………」

 

文化祭のあの日のことを忘れない。一花を誑かそうと突然目の前に現れ、勝手に母を否定し、五月の夢も否定した最悪な男。その男の額には、一花も見覚えのある婉曲したM字があった。

 

無堂「今の僕はバビディ様の忠実な部下となったんだよ。あの日、孫悟空と零奈にしてやられて以来、僕はまともに外に出れなくなっちゃったけど、力とは素晴らしいものだね。いずれは他の娘達と共に、バビディ様が築く新世界で共に過ごそうじゃないか」

 

一花「な、何を言ってるの……?」

 

バビディ「にぃ………」

 

 

キィィン‼︎

 

 

一花「ぐっ……うぁ……!!いや……!!!!」

 

 

甲高い音が一花だけに聞こえると、その瞬間から頭が妙に重たくなる。この感覚を一花は知っている。この後嫌なことが起こることも知っている。

 

無堂「一花、苦しむことはないよ。バビディ様の下僕となれば、圧倒的な力を得られる上に、新世界に住む権利が与えられるんだ!何も恐れることはない!」

 

一花「でも……!!そしたら、また姉妹を………!!!みんなを……!!!!殺しちゃ………!!!!!」

 

バビディは無堂と一花達の関係性も地獄から見ていたので知っていた。仲が悪いことを知っておきながら仲間に仕立てあげようとする上に、一花の邪心を上手く引き出したのだ。

 

バビディ「心配はいらないよ。君を僕の配下にすることができたら、残りの姉妹も僕の配下にするから」

 

一花「…………えっ?」

 

バビディ「知ってるかい?何故君が僕の術にかかるのか?そして姉妹もその可能性を秘めているか?それはこの無堂仁之助が原因だよ。君は邪心がないに等しい母親に育てられたから良い子になった。でも血の繋がりからは逃れられないものでね?表に出てないだけで、この男のクズ要素もしっかり引き継いでいるんだよ。つまり、上手くやれば残りの姉妹も邪心を引き出せるんだよ」

 

悟飯「やめろ……!!やめろぉおお…!!!!!!」

 

ボォオオオオッ!!!!!

 

悟飯は残りの力を振り絞って超サイヤ人に変身し、バビディに殴りかかる。

 

ガシッ

 

超悟飯「なっ………」

 

無堂「バビディ様の手を煩わせるわけにはいかないな…………」

 

ドゴォッ!!!!!!

 

今の悟飯では無堂相手にも敵わないようだ。それもそのはず、無堂はバビディの新しい洗脳魔術の実験台として利用されたのだ。新しい洗脳魔術は自分の都合のいいように洗脳できるだけでなく、強さを更に引き出すこともできてしまうのだ。

 

だが、悟飯は攻撃されても諦めなかった。

 

超悟飯「一花…さん…!!ダメだ…!!そいつに心を許しちゃダメだ…!もし君が洗脳されれば、また姉妹も風太郎も悲しむ……!!同じ惨劇を、繰り返さないで………」

 

無堂「黙れ!!!」

 

ドカッッ!!!!!

 

悟飯「ぐぉ……!!!」

 

とうとう超サイヤ人を保てなくなった悟飯は元の黒髪に戻ってしまった。

 

バビディ「そうだよ。感動の親子の対面だよ?邪魔するのは酷じゃないかな〜?」

 

一花「きゃあぁ……!!!やめて……!!!ああぁあああぁ!!!!!」

 

時間が経つほどに一花の悲鳴が大きくなっていく。

 

織田社長「一花ちゃん!?どうしたんだい!!?しっかりしてくれ!!」

 

バビディ「ふふふっ…。こいつらの周りを徹底的に壊してやる。僕を馬鹿にした罪は重いぞ………」

 

そう。一花を洗脳する過程も復讐の一環なのだ。悟空達の日常を周りから徐々に壊して、精神的なダメージを与えようとするつもりのようだ。悟飯は肉体的なダメージを与えすぎてダウンしかけているが、起きたら絶望が待っているだろう。自分の友人、恋人の姉に無残に殺されてしまえばいい。バビディはそういう考えだった。

 

一花「あがっ………やっ……!!!」

 

そして徐々に一花の額にM字が現れ始めていた。今回も洗脳から逃れることはできないのか………?

 

悟飯「やめ………ろ………!!!」

 

無堂「さあ一花ちゃん!あと少しで僕達は本当の親子になれる!僕と共に新世界を築こうじゃないか!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

四葉「へぇ…!お父さんに報告したの?」

 

二乃「ええ。なんとか認めてもらえて良かったわ………」

 

一方で、中野家は平和だった。四葉は二乃から交際報告をしたことを聞き、自分達もそろそろ報告した方がいいかと考えていた。

 

三玖「これで両家公認……。寝取れない…………」

 

二乃「さらっとやばいこと言わないでちょうだい」

 

五月「にしても、あのお父さんがよく認めてくれましたね?」

 

零奈「マルオ君はああ見えて優しい方なのですよ。不器用すぎて分かりづらい時がありますけどね」

 

二乃「あの時のハー君、かっこよかったなぁ………」

 

四葉「………!!!!!」

 

突如、オレンジジュースを入れていたコップを四葉は落としてしまった。それによってコップが割れると同時に飲み物が飛散してしまった。

 

二乃「よ、四葉!?何してんのよ!?」

 

四葉「一花が危ない……!!!!」

 

ドシューンッッッ!!!!!

 

二乃「って、ば…」

 

パリーンッッッ!!!!!

 

三玖「きゃあ!!!」

 

五月「な、何事ですか!!?」

 

四葉は何かを感じて大慌てで家を出た。それも玄関から出ることなく、窓を突き破って舞空術で飛び出したのだ。

 

二乃「四葉の馬鹿ぁあ!!なんで玄関から出ないのよ!!!!」

 

零奈「………これは…」

 

そして、零奈も周囲の異変に気づいたようだ。愛する我が娘、一花の気に異変を感じたのだ。

 

零奈「私は四葉を追いかけます!すみませんが、後片付けを頼みます!!」

 

ドシューンッッッ!!!!

 

五月「きゃっ!!!」

 

零奈も大急ぎで四葉の後を追うようにして割れた窓から飛び出して行った。

 

二乃「…………何事なの?」

 

三玖「あの四葉の顔……。只事じゃなさそうだよ?」

 

五月「一体どうしたんですかお二人ともぉ!!?」

 

 

 

 

本来ならこの異変に気づけるはずがなかった。というのも、バビディは『余興』を妨害されることを考慮して、自分達の周りに薄いバリアのようなものを張り巡らせ、そのバリアの内側にいる者の気を感知できないように仕向けたからだ。しかし、そんな状況で四葉と零奈だけは異変に気づくことができた。これも愛の力というやつなのかもしれない………。

 

零奈「四葉!あなたも!?」

 

四葉「うん!!この感じは………」

 

零奈「何が起こるか分かるのですか!?」

 

四葉「うん。このままだと、一花はまた洗脳される…!!操られちゃう!!」

 

零奈「なっ………」

 

四葉「えっ?お母さん!?」

 

四葉のその必死さから、一語一句嘘を言っていないことは分かった。零奈は間に合わせる為に四葉を抱えて全速力で現場に向かった。

 

 

 

 

バビディ「………むっ?どうしてここが分かったんだ…?」

 

Pentagonから撮影現場まではそこまで離れていなかった為、零奈のスピードならすぐに到着できた。

 

四葉「一花!一花!!!!」

 

一花「よつ……ば………」

 

零奈「それに、無堂先生……!?」

 

無堂「やあ零奈。どうせなら君もバビディ様の配下になるかい?清々しい気分になれるよ?」

 

四葉「ほ、本当のお父さん………?そ、その額は…………」

 

四葉はバビディのことを既に知っていた為、無堂もどのような状態に陥っているかすぐに把握した。

 

零奈「まさか、無堂先生も……?」

 

その問いかけに、四葉は無言で頷いた。

 

バビディ「丁度いいところに来たね?君も僕の配下になるかい?それとも、以前のように一花に殺されるかい?」

 

零奈「えっ……?以前のようにとは……」

 

四葉「一花!そいつに負けないで!!あの時の意思の強さがあれば、きっと上手く行くはずだよ!!!!」

 

しかし、一花は頭を抑える動作をやめようとしない。それに加えて額のM字が徐々に濃くなっていく………。

 

零奈「やめなさい…!やめなさい!!!!」

 

ズォオオオオオオオッッッ!!!!!

 

零奈は原因の元であると推測したバビディに目がけて気功波を放った。相手の気を探る限りでは、零奈ほどの戦闘力があれば倒すことは容易なはずだ。

 

バビディ「ブラックホール!!」

 

零奈「えっ…!?」

 

しかし、バビディが生み出したミニブラックホールによってそれも吸い込まれてしまった。

 

無堂「零奈。今のバビディ様には何をしても無駄だよ。単純な攻撃では最早何もできないよ」

 

バビディ「とはいえ、洗脳作業の邪魔をされるのは不愉快だねぇ。無堂、その2人の相手をしてあげてよ」

 

無堂「承知しました」

 

零奈「あなたでは、四葉はともかく私には絶対に敵いませんよ?」

 

無堂「それはどうだろうね?確かに、単純に気で勝負するなら君の言う通りだよ。でもね………」

 

無堂は今までの洗脳戦士とは違い、バビディが新たに開発した洗脳システムによって、単純に気だけが底上げされているわけではなく、一定量の魔力も与えられており、底上げされた気と併せて使用することによって絶大な効果を齎すようになっているのだ。故に、気を探るだけでは相手の強さを正確に読み取ることはできないのである。

 

零奈「……四葉。あなたは一花をどうにかして下さい。あの人は私がなんとかします」

 

四葉「………分かった!」

 

四葉が自分を無視して一花の方に駆け出すのを確認した無堂は行かせまいと手を突き出して砲弾のようなものを繰り出した。

 

零奈「させませんよ…!!!」

 

だが、零奈が黙って見過ごすはずもなく、そのパワーを持って弾き飛ばした。

 

無堂「チッ………。流石だね。どうして君がそこまで強くなったのかは分からないけど、一筋縄ではいかなそうだね」

 

零奈「娘達を見捨てただけでなく、今度は傷付けようとするとは……。あなたのことは絶対に許しません………」

 

元夫婦同士は睨み合い、お互いに様子を見合うだけとなった。無堂はバビディのように気と魔力の両方を使い熟せるわけではないようだ。なんとなくそのことを察した零奈は早期に決着を付けようと思案していた。

 

一方その頃、四葉は一花のすぐそばまで来ていた。

 

四葉「一花!しっかり……!!!!」

 

一花「よつば………!!」

 

バビディ「無駄だよ。もうここまで来ればこっちのものだよ。でも安心しな?君も近いうちに一花の仲間になるんだからさ」

 

四葉「そんなこと………させない!!」

 

四葉は気を最大限まで解放し、悟飯直伝のかめはめ波を構えた。

 

バビディ「おや?君もその流派なんだね……。でもさっきのを見なかったのかい?君よりもよっぽど強い君の母親の攻撃を無力化したところを……。それを理解した上でやろうとしているなら、ただの悪足掻きだ。やめておいた方がいいよ?」

 

 

 

無堂「これでも喰らえ!!!!」

 

零奈「しまっ…!!!!」

 

四葉「お、お母さん!!!?」

 

無堂はバビディのように紫色の糸のようなものを繰り出して零奈の身動きを封じることに成功していた。その技は魔力も込められているため、一筋縄では断ち切ることはできない。

 

バビディ「おや?余所見したね?ホワイトホール!!!」

 

ズォオオオオオオオッッッ!!!!!

 

四葉「えっ………」

 

先程、零奈がバビディに気功波を撃った時のことを思い出してほしい。バビディはブラックホールを生成して零奈の攻撃を吸い込んだが、悟飯の時のように吐き出していないのだ。即ち、バビディには攻撃のストックが残っていたということになる。

 

零奈「よ、四葉ぁああ!!!!?」

 

主戦力の悟飯はほぼダウンし、零奈は拘束状態。四葉も死の目前で、他のZ戦士達では察知できないように改造されたフィールド………。

 

彼らにとって、この状況はまさに絶対絶命と言えるものだった。

 

 

 

 

 

 

 

しかし、それでも強い意思を持って奇跡を起こす者がいた。

 

ギュォオオオッッッ!!!!!

 

バビディ「うぇ!!?」

 

バビディがホワイトホールから放ったはずの零奈の気弾はまたしてもブラックホールに吸収された。バビディは繰り出した覚えのないブラックホールを確認して焦っているようにも見えた。

 

バビディ「な、なんだ……?どうなっているんだ?」

 

無堂「馬鹿な…!!………いや、そうか…!一花ちゃんの仕業か!!」

 

バビディ「なに!?どういうつもりだ!!!?」

 

無堂「いえ、バビディ様。恐らく自分の家族を自分の手で説得したいのですよ。だからバビディ様の攻撃を……」

 

バビディ「………なるほど?だけど何も言わずにいきなり実行するのは頂けないなぁ………」

 

四葉「そ、そんな…………一花が……また……………」

 

バビディ達だけが使える特有の魔法も使えるようになっているところを見るに、一花も洗脳が完了してしまったらしい。四葉は再び起こるであろう姉妹間の戦闘に恐怖さえしていた。ただでさえ前の段階で強かった一花が、今度は全く躊躇もなく自分を殺しにかかってくるとなれば、恐らく勝ち目はない。

 

バビディ「さあ一花、手始めに四葉を痛めつけてやりな!」

 

一花「…………」

 

だが、一花はバビディの命令を無視してバビディの方に歩いてくる。

 

バビディ「お、おかしいな…?ちゃんと洗脳できたはずなんだけど…。手応えはあったはず………。何をしているんだ!早くやりなって!!!」

 

一花「………お渡ししたいものが……」

 

バビディ「ん?なんだい?」

 

 

 

ドンッッッ!!!!!

 

 

バビディが一花の正面を向いた時、一花が急に地面を蹴って跳び、バビディのすぐそばまで接近する。

 

四葉「……!!!!」

 

無堂「なっ…………」

 

一花「私の姉妹に…!家族に手を出すなぁああああッッッ!!!!!

 

バビディ「馬鹿め!!僕にはバリアがあるんだぞ!!君にも魔力があるとはいえ、僕のバリアを破れるほどの力は…………」

 

 

 

 

 

 

 

ドゴォォオオッッッ!!!!!!!

 

バビディが自信満々にその場に立っていると、バビディの頬が一花の右拳によって歪んだ。

 

バビディ「ぐぇええええッッッ!!!!」

 

バビディは地面を抉りながら吹き飛ばされていくが、途中で無堂によってなんとか引き止められた。

 

無堂「一花…!!お前なんてこと………」

 

零奈「あれは…………」

 

四葉「どういうこと…………?」

 

洗脳が完了したから魔力を備えている。洗脳が完了したから、苦しむこともなくなった。それは間違いないし、特徴的なM字もしっかり刻印されていた。だが、一花の目は以前のように青黒く濁ったような色ではなく、いつも通りの透き通った色をしていた。邪気を感じるはずなのに、その目からは正義の意思さえ感じた。

 

一花「…………私は2度とあなたに屈しない。私は、私だッ!!!!!」

 

ボォオオオオッ!!!!!!!

 

一花に刻印されたM字が発光すると、気と同時に魔力も解放された。一花が気の力を扱っているということは、紛れもなく洗脳が完了した証拠。

 

バビディ「なんだ……?何が起きているんだ……?お前は一体……!!!?」

 

 

 

 

 

 

 

ただ異質だったのは、額ではなく、()()()()()M()()()()()()()()()()ことだった…………。

 




 再び一花が洗脳されるかと思いきや、まさかの覚醒イベントでした。おい待て、何で風太郎のヒロイン側だけ戦えるようになったんだよおかしいよぉ。(やった本人)

 えー、ちなみに今回の戦闘だったり技は大分ダイの大冒険が意識されております。特に一花のM字が額ではなく右手の甲に現れるのは、まさにダイの覚醒そのもの。バビディの魔法陣や糸の拘束術なんかは完全に闘魔滅砕陣や闘魔傀儡掌ですwww。

 ちなみにバビディの強さの秘密に関しては本編中に記載されている通りです。実際魔道士ビビディよりバビディの方が優秀ならば、魔術上手く使えば多分強くなったんだろうなぁという妄想です。まあ、DB世界では基本的に気が最強なので、気と魔力を混ぜた力ということにすればまあどうにかなるやろってことでああなりました。バビディも超魔生物ハドラーみたく武人っぽくしたかったけど、やっぱりバビディには無理だったよ…。ザボエラとバビディって性格的に物凄く相性いいと思うの…。

 そしてあっさり洗脳されてる無堂ェ…。ゴハンとして襲来してきた無堂とは大違いや……。

 ちなみにこのパート、早くて次回、遅くて2話後くらいには終わると思います。


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第117話 反抗

 前回のあらすじ

 バビディに挑んだ悟飯だったが、本人は自身の才能を自覚し、更には魔力と気を併せた攻撃を思いついたことによって、悟飯にとって相性の悪い相手となってしまった。一花が再び洗脳される気配を感じた四葉と零奈はすぐにその場に向かったものの、特にこれと言って力になれず、一花は再び洗脳されるかと思いきや…………。



バビディ「な、なんてだ…!?僕の周りにはバリアが張り巡らされているのに……!?単に生命エネルギーだけじゃ突破できない特殊なバリアなのに…?」

 

それに、本来なら支配が完了したら現れるM字が額にではなく右手の甲に現れていた。これはいろんな種族を支配してきたバビディにとっては初めてのイレギュラーだった。そもそもベジータや以前の一花のように、完全に支配されなかった者もイレギュラーと言えばそうなのだが、今回はその次元が違う。

 

これは明らかに異常だ。しかも一花は明確な意志を持ってバビディに攻撃してきた。それに、今の一花の目は、バビディが気に食わない程の綺麗な目をしていた。

 

バビディ「ま、また失敗したっていうのか…!?改良した術が、またしても…!?」

 

 

 

零奈「どういうことですか……?一花は操られたんじゃないんですか……?」

 

四葉「分からない……。前みたいに一花から邪気を感じる。感じるけど…、いつもの一花に見える……。あの時とは違う…………」

 

バビディ「く、くそぉ……!!こうなったら、あの四葉ってやつを支配してやる……!!どうせまた異常な愛で支配を逃れたんだろうね……!!」

 

一花「あんた……!!まだ懲りてないの…!!?」

 

バビディ「パッパラパー!!!」

 

四葉「ッ……!!!」

 

バビディが呪文を発動させる動作をすると、今度は四葉が頭を抑える動作をした。しかし、今のところは少し頭に違和感を感じる程度で、危機感は特に感じなかった。しかし、何らかの要因で怒りなどの邪心に近い感情が引き出された時は非常に危険だ。

 

一花「あんたまた……!!」

 

無堂「おっと一花ちゃん。バビディ様の邪魔はさせないよ」

 

唯一バビディに有効打を与えることができる一花が再び攻撃しようとするが、無堂によってそれを遮られた。

 

一花「………できれば、一応私達が生まれたのはあなたのお陰でもあるから、あまり乱暴なことはしたくなかったんだけど………」

 

無堂「よく分かってるじゃないか。五月ちゃんの時とは違って物分かりがいいね?」

 

一花「…………でも、お母さんに苦労をかけたあなたには個人的に思うところがあるんだよね〜」

 

一花が無堂に感じた怒りがそのまま右手の甲にある紋章に反応し、更に一花の気と魔力が高められていく。

 

無堂「……!!!更に上がった…!?」

 

一花「その技の特性を把握する…。敵ながらも為になったよ。魔人ブウに指摘されたことはね……!!!!」

 

ドゴォッ!!!

 

瞬きをする間に一花が無堂の体に拳撃を加えた。無堂にもバビディ程の強力なものではないにせよ、バリアのような薄い膜が体の周りを張っていた。それにも関わらず、一花の拳はそれを突破した。

 

無堂「な、何故だ……!?何故僕やバビディ様のバリアを突破できる…!?」

 

一花「それはあなたのご主人様が教えてくれたんでしょ?魔力と生命エネルギーを掛け合わせるととてつもない効果を生み出すって」

 

無堂「だとしても、君はバビディ様より魔力は劣っているはず……!!孫悟飯程の生命エネルギーを持ち合わせているわけでもないのに……!!!」

 

 

 

四葉「………そっか…!そういうことだったんだ…!!!」

 

零奈「そういうこととは……?」

 

四葉「一花は支配を上手く逃れたんじゃない!!わざと支配されたんだ!!」

 

零奈「…………えっ?」

 

零奈は何を言っているのか意味がわからないと言った様子で四葉に返事をした。

 

四葉「一花じゃ孫さんみたいな気もないし、バビディみたいな魔力もないけど、一点に集中させれば勝る可能性がある……!!一花はそれにかけたんだよ!!」

 

零奈「………!!!」

 

そう。一花は紋章を額ではなく、右手の甲に現れるようにしたことにより、気も魔力も右手付近に集中するようになった。例え気や魔力の総量で劣っていても、一点の効果だけで考えれば、上回ることができるかもしれない。一花は単に支配を逃れるだけでなく、そこまで計算していたのかもしれない。

 

 

無堂「そういうことか……!!」

 

そして、無堂は四葉と零奈の会話を遠くから聞き、やっと一花の強さのカラクリを知った。だが、知ったところでどうにかできるわけではない……はずだ。

 

無堂「なら、僕も同じことをすればいいわけだ…!!娘にできて親にできないはずがないからね……!!!」

 

一花「……残念だけど、あなたには絶対にできない」

 

無堂「なっ……!!なんでそんなことが分かる!!?君は才能があるとでも言うのかね!?」

 

一花「いや?これは才能の有無の問題じゃないよ」

 

では、何故一花がバビディの支配を逃れることができたのか……?時を少し遡って一花の精神内で起こっていた出来事を見ていこう………。

 

 

 

 

 

一花「………ここは……」

 

少し時は遡り、悟飯達が必死に抵抗している頃、一花はバビディによって再び洗脳される危機に瀕していた。

 

闇一花「やあ、久しぶり」

 

一花「あ、あなたは………!!!」

 

一花にとってはもう1人のトラウマとも言える人物に精神内で顔を合わせることになった。かつて自分が支配された原因とも言える、バビディが一花を元に作り出した闇の人格だった。

 

闇一花「まさかまたこうして出てくることができるなんてね……。今度こそフータロー君を手に入れないと♪」

 

性格も考え方も以前のまま変わらないようだった。このまままた闇の人格に主導権を握られれば、四葉だけでなく他の姉妹をも殺してしまうかもしれない。

 

一花「………もう、あんなことはしたくない……!!」

 

闇一花「あーあ。そんな態度だから四葉に取られちゃうんだよ?何やってんだか……。顔もスタイルも全く同じなんだから、攻めればきっとフータロー君を手に入れることができたのに………」

 

一花「また、私の体を支配する気でしょ?そしてまた四葉を、姉妹を殺すつもりなんでしょ………?」

 

闇一花「……………確かにそれもいいね。でも、今は四葉なんてどうでもいいの」

 

一花「えっ………?どういう意味?」

 

闇一花「私、少し考えてみたんだけど、今思うと一番気に食わないのはバビディなんだよね」

 

一花「…………えっ??」

 

少し意外だった。あの人格は風太郎以外にはほぼ興味がなく、風太郎を手に入れるためなら何でもする人格。例え主人であるはずのバビディの命令でも聞くようなことはしなかった。それはバビディが気に入らなかったわけではなく、風太郎にしか興味がなかったからだ。

 

一花「どういう風の吹き回し…?」

 

闇一花「少し考えれば当たり前のことじゃん?私はあいつに生み出された。そして私のフータロー君に対する想いを利用して自分の都合のいいように使おうとしたわけでしょ?そして今回もそう。しかも今回は支配されたら、私の意思もほぼ働かなくなる。前みたいに抜け道のある術ってわけじゃないみたいだしね」

 

一花「そ、そんな…………」

 

目の前の人格よりもバビディのコマになってしまうことの方が問題だ。それでは本格的にみんなの、果ては地球人類の敵になってしまう。きっと沢山の人を殺してしまう。そんなことは絶対にしたくなかった。

 

闇一花「でも、私達ならできるかもしれないね」

 

一花「…………えっ?」

 

闇一花「あの額の紋章、なんで額に現れるか知ってる?あれは脳を支配しやすくする為にあそこに発現させてるんだって。なら、逆に言えば額以外の場所なら支配できないんじゃない?」

 

一花「………何が言いたいの?」

 

闇一花「私とあなたの力を合わせれば、支配を逃れることができるんじゃないのって言ってるの。どう?あなたにとっても悪い話じゃないと思うけど」

 

悪魔の囁きのようにも聞こえたが、完全に支配を逃れることができる可能性があるのは、目の前の人格が説明した通りの方法しかないのかもしれない。それに目の前の人格の風太郎への執着心はよく知っている。何故なら自分のことでもあるのだから。

 

一花「…そっか。いいかもね、それ」

 

闇一花「…今から2人で力を合わせて、右手の甲に紋章が現れるようにする。そうすれば、気と魔力が右手一点に集中するから、きっとバビディのバリアも突破できると思う」

 

一花「そしてバビディに反撃したいんでしょ?自分の想いを私利私欲で利用しようとしたことが気に食わないんでしょ?」

 

闇一花「………そういうこと。もし失敗しちゃったら、その時は私があなたの身体をいただこうかな」

 

一花「何を言ってるの?この体は元から、私のものでもあってあなたのものでもあるんだよ……?」

 

闇一花「よく言うよ…………」

 

一花が内に眠る闇の人格と和解した。それによって強力な力が生み出されることこそなかったものの、強い意志を生み出すことには成功した。この強い意志のおかげで一花は支配を逃れることができた。

 

 

 

 

 

無堂「馬鹿な……!!そんなことが可能だというのか……!?」

 

一花「もう一つの人格を生み出された私だからできたこと……だね!!」

 

ドカッッ!!!!!

 

時は戻って現在、一花は無堂と戦闘しながら精神内で起きた出来事を丁寧に説明していた。

 

一花「自分が私利私欲の為に生み出した者に反抗される……。清々しいほどの自業自得だと思わない?」

 

無堂「ガキが……頭に乗るな…!!!」

 

頭に血が登った無堂は何の考えも無しに拳を振るうが、スピードは一花が上回っていたようで、軽々と避けられてしまった。それどころか、振るった拳を掴まれ、引き込まれた。

 

無堂「なっ………!!?」

 

ドカッッ!!!!!!

 

再び無堂の頬に衝撃が走る。魔力と気が一点に集中された拳は流石に堪えるようだった。

 

無堂「ぐぬぬぬっ………!!!」

 

一花「あなたは落ちるところまで落ちたみたいだね。でもそれも仕方ないよ。あなたは自分の為なら娘を傷つけることだって厭わないような人なんだからさ」

 

無堂「君だってバビディ様に支配されている時点で同じだろう?」

 

一花「でも私は途中で踏みとどまった。あんたと一緒にするな!!!!」

 

一花は感情を上乗せすることによって紋章の力を更に引き出す。しかし、感情に身を任せるということは、それだけ冷静さを欠くということでもある。

 

無堂「……そこだッッ!!!!」

 

一花「ぐっ……!!!!!!」

 

感情に身を任せることによって生じた隙を見事に見つけ出し、無堂は一花に攻撃を与えることに成功した。

 

無堂「やはりそうだ。君は紋章の力を右手に集中させた分、他の部分がおそろかになってしまっている。まさに、諸刃の剣といったところだね」

 

一花「くっ…………」

 

一花もまさかこんなに早く弱点を見つけられるとは想定していなかったようで、図星をつかれると焦燥を含んだ顔色に変わった。

 

無堂「だが君の方が素早いし、攻撃力があるのは認めよう。はっきり言って今の僕では圧倒的に不利だ」

 

一花「………………」

 

しかし、弱点を把握されてしまっては相手もそれに合わせた動きをするようになってしまう。一花は少しでも早くこの勝負を終わらせて、バビディの元に向かいたいところだった。今はまだ四葉は大丈夫な状態とはいえ、何をするか分かったものではない。

 

無堂「勝負を急いでいるようだけど、そんなに四葉ちゃんが心配かね?」

 

一花「それは勿論。どこかの薄情者とは違ってね」

 

無堂「君は本当に口が減らないね」

 

一花は少しでも邪心を増幅させ、その分力を高めようとする。これは紋章の力を克服した一花だからこそできる神技と言っても差し支えはないのだが、あまりやり過ぎると暴走しかねない。それに、一花は基本は善人であるため、邪心を引き出すのにも限界がある。

 

無堂「素早さで勝てないなら、飛び道具で勝負するしかないね!!」

 

そう言うと、無堂は両手から大量の気弾を生み出した。無論これも魔力を含んだものである。何も対策せずに食らってしまえば、気の総量こそ少なくても、大ダメージを負ってしまう可能性がある。

 

素早い一花なら避けることは容易い。しかし、後ろに倒れている悟飯に当たってしまえば…………。考えるだけでも恐ろしかった。

 

無堂「……状況を把握できたようだね。どうする?自分を犠牲にするか、友人を犠牲にするか……………」

 

かつて零奈と融合して魔人ブウと対峙した時、悟飯は咄嗟に自分達を庇ってくれた。一花はそのことを思い出し、今度は自分の番だと言い聞かせ、防御をする姿勢に入った。

 

無堂「…………ほう?受けるのかね?」

 

一花「いいから、早く来な……」

 

無堂「ふん。少しは分からせてやる!!!!」

 

一花の挑発的な言動に乗った無理は、気弾を全て一花に向けて発射した。だが一花にとっては好都合だった。紋章の力を克服した彼女なら、通常よりも器用に魔力を操ることが可能なのだ。

 

一花「はっ!!!!!」

 

再びブラックホールを発生させると、全ての気弾を吸い込んだ。

 

無堂「むっ……!!!!」

 

一花「残念でした。まんまと引っかかってくれたね!!」

 

無堂「そういうことか……。なかなか姑息な手を使うね………」

 

一花「あなたにだけは言われたくないな」

 

無堂「なっ!!?」

 

無堂は数発だけ気弾を残し、一花の背後に近づけるような形で不意打ちをしようとしたが、当たる直前に一花がいた場所に残像が発生した。

 

無堂「……そこか!!!!」

 

だが、一花の動きをギリギリ追うことができた無堂は振り返って気功波を放った。してやったりという顔でニヤけるが………。

 

無堂「…………はっ??」

 

しかし、それは人の形をした気弾だった。

 

ドグォォオオオオオオオオオンッッ!!!!

 

無堂が放った気弾と衝突すると、無堂本人を巻き込んで大爆発を引き起こした。

 

一花「………元々私は正攻法で戦うのに向いてないタイプなんだよ」

 

爆風に背を向けた一花は、今度はバビディに視線を移して睨みつける。

 

バビディ「くぅ……!!やっぱりこいつには邪心が殆どない…!!なんて綺麗な心を持っていやがるんだ……!!」

 

一花「それはそうだよ。四葉は五つ子の中でも一番ピュアな心を持っているんだから」

 

バビディ「なっ……!!?」

 

一花「残念ながらあなたの手下はダウンしたよ」

 

バビディ「くそぉ………!!!」

 

洗脳も上手くいかないどころか、唯一自分に対して有効打を与えることができる一花がこちらに向かってくる。バビディにとっては都合悪いことこの上なかった。

 

バビディ「ぐぬぬぬ………。なら、これならどうだ……!?」

 

右手に火、左手に氷を発生させたバビディは、それを掛け合わせて一つの光を生成した。両手で持っていたその光を左手を前に突き出し、右手を後ろに引くことによって、弓矢のような形に仕上げる。

 

バビディ「どうだい?僕が新たに考えた新作の魔術さ。炎と氷の威力をほぼ同等にし、それを混ぜ合わせることによって爆発的な威力を生むんだ。並大抵の魔力でも山を消すことができるレベルなんだよ?この僕が使えば、どうなるか分かるよね?」

 

一花「…………」

 

バビディ「僕をコケにした罪は重いぞ!!ここで消えてなくなれ!!!」

 

バシュンッッ!!!!!

 

炎でもあり氷でもあるその光はバビディの手から離れて高速で一花の元に向かっていく。四葉や零奈の叫ぶ声が聞こえる中、一花は深呼吸をして右手に全ての力を込めた。

 

一花「はぁぁぁああああ……!!!!」

 

零奈「い、一花!!無謀です!!!」

 

四葉「逃げてッッ!!!!!」

 

だが、そのまま逃げてしまえば後ろの街は吹き飛んでしまう。その街にはきっと自分にとって親しい人もいるだろう。きっとらいはちゃんやフータロー君もいるに違いない。自分達の住むマンションもあるかも知れない。お父さんが経営する病院もあるかもしれない。

 

そんな人たちを守る為に、一花は自分の身を削る覚悟をした。

 

ドォォオオオッッッッ!!!!

 

魔力の塊が一花の右手と接触すると、一花は徐々に地面を抉りながら強制的に後退させられる。

 

一花「ああぁあぁああッッ!!!」

 

バビディ「ははははッッ!!!!そのまま死んじゃえ!!!」

 

一点に集中させているとはいえ、流石に一花1人では荷が重すぎた。後退する勢いは収まるどころかどんどん勢いを増していく。止まることを知る由もない。

 

四葉「一花…!!!」

 

見ても立ってもいられなくなった四葉は一花に加勢する為に飛び立った。

 

四葉「私の気を使って……!!!」

 

四葉の手が一花の体に触れると、四葉から気が送り込まれる。更にその力を右手に全て集中させる。

 

一花「うぁぁあああッッ!!!!!」

 

バシンッッ!!!!!!

 

バビディ「ええ!!?」

 

四葉に援助してもらってギリギリとはいえ、なんとかバビディの攻撃を弾き飛ばすことに成功した。

 

バビディ「ふーん?上手くやり過ごしたつもりだろうけど、周りはよーく見ないとね?」

 

一花「えっ……?」

 

その言葉に一花は振り返った。

 

一花「四葉!危ない!!!!」

 

四葉「えっ……?うわ!!?」

 

バキャッ!!!!!

 

無堂「ちっ………。気づかれたか」

 

直前で回避したが、先程まで四葉がいた場所は、無堂の攻撃によって地面が粉々になっていた。

 

一花「な、なんで……?私が倒したはずなのに…………」

 

無堂「言うことを聞かない子供には、お仕置きが必要だよねぇ!!!!」

 

説明こそしなかったが、バビディが新しく開発した術で洗脳された場合、バビディの魔力によって蘇ることを可能としているのだ。つまり、魔力の根源であるバビディを倒さない限りは、無堂の体を消滅させる以外に無力化することは不可能に等しいのだ。

 

一花「四葉!」

 

四葉「うん!!」

 

だが、2人とも素早さでは勝っているため、取り敢えず二手に分かれて逃げることを選択した。

 

バビディ「甘いよ!パッパラパー!!」

 

四葉「ぐっ…!?」

 

だが、バビディが魔力の糸が四葉を捉えたことによって、四葉の動きが止まってしまった。

 

一花「四葉……!!!!えっ…!!?」

 

助けに行こうとした一花だったが、同じくバビディの魔力の糸によって捉えられ、身動き不能となってしまった。

 

バビディ「残念だったね〜。別に1人しか捕まえられないとは一言も言ってないよ?」

 

零奈「………させると思いますか?」

 

だが、こちら側にはまだ零奈と言う主戦力が残されている。

 

無堂「ほう…?魔力を持たない君がどうやって僕達に立ち向かうって言うんだい?孫悟飯程の気の持ち主なら兎も角、君程度ならどうにかなるよ」

 

零奈「………あなたという人は、本当に……!!!!」

 

 

 

 

 

ドゴォォオオッッ!!!!!!

 

零奈「………えっ?」

 

突然、無堂が吹き飛んだ。一花も四葉も拘束され、零奈がまだ動き出していない中で無堂に有効打を与えることができるものなどいないはずだった。だが、無堂が吹き飛ばされたということは、それが可能な人物がいるということに他ならない。

 

 

究極悟飯「…………同じ父親でも、ここまで成り下がる奴がいるとはな………」

 

四葉「えっ……?!そ、孫さん!?」

 

一花「なんで……!!?さっきまでボロボロだったはずなのに………!!?」

 

究極悟飯「それは後で話す…。今はバビディを倒すことが先だ」

 

なんと、自分の攻撃をバビディに跳ね返されてダウンしたはずの悟飯が復帰していた。あの大ダメージから全回復するまての時間はとてもじゃないが経ってないし、仙豆も持ち合わせていないはずだ。デンデのように回復できる者も周りにいなかったはずだ………。

 

バビディ「な、なんでお前の攻撃が通じたんだ……!!?生命エネルギーだけだと通じないように開発したはずなのに……!!!そもそも、誰がお前を回復させたんだよ!!!ここにはそんなことできるやつは、僕以外には………」

 

「ほっほーい!!!!」

 

バビディの話を聞いていたのか、自分ならできると手を上げながら大声で返事をする者がいた。

 

一目見るだけでインパクトのある大きさに、特徴的な触覚のようなツノ。紫色のマントに、ピンク色の肌。無邪気で子供にも見えるその魔人は、再び元主人の前で姿を現した。

 

バビディ「お、お前は……!!魔人ブウ!!!?」

 

ブウ「ほーい!!!!!」

 

そう。悟飯を回復させたのは魔人ブウだった。彼は珍しい食べ物を求めてサタンの言いつけを破って外出するしていたのだが、そこに違和感のある場所を発見。たまたま訪れたところにバビディ達と交戦する悟飯達を見かけたというわけである。

 

バビディ「まさかまた僕の邪魔をしてくるとはね………。いいのかい?僕は君を封印することができるんだよ?僕に従うなら特別に許してあげるけど、もし応じないなら……………」

 

だが、バビディはこの状況を逆にチャンスに変えようと思考を巡らし、自分には魔人ブウを封印する呪文があることを思い出した。悟飯達Z戦士に復讐するのにブウは必要ないと判断していた為に、すっかり忘れていたのである。

 

ブウ「ふーん?でも、俺を封印したところでお前のピンチは変わらない」

 

バビディ「ぐぬぬぬぬっ……。そ、そうだ!!こいつらを見ろ!!この魔力の糸に捕らえられたやつに魔力を送ると面白いことになるんだよ?特に魔力の耐性がないやつに送ると、それはそれは面白い光景を見ることができるんだ」

 

バビディは捕らえている一花と四葉を盾にし、次の作戦を同時に練っていた。

 

ブウ「ほい!!」

 

ビビビッ!!!

 

一花「きゃっ!!?」

四葉「うわっ!!!?」

 

究極悟飯「えっ!!!?」

零奈「なっ……!!!?」

 

なんと、ブウは四葉と一花にお菓子光線を当てて2人をクッキーに変えてしまった。それと同時に魔力の糸は自然消滅し、クッキーは魔人ブウの手元まで運ばれた。

 

究極悟飯「な、何をしているんだ!?まさか食べる気か!!!?」

 

ブウ「むっ…。人間を食べ物にして食べちゃダメだってサタンに言われているからやらない。その代わり、こうする」

 

ビビビッ!!!

 

魔人ブウは再びお菓子光線を変え、今度はクッキーが一花と四葉に戻った。

 

一花「あ、あれ………?」

 

四葉「わ、私、生きてる……?」

 

究極悟飯「そ、そうか……!!そういうことだったんだ……!!!」

 

魔人ブウは一花と四葉を解放するために敢えて一度お菓子に変えたのだ。無闇に糸から引き剥がしては何が起こるか分かったものではない。だから一度お菓子に変え、再び戻す方法を選んだのである。

 

バビディ「くそ〜……!!!無駄に賢くなりやがって〜……!!!こうなったら封印して………」

 

ズォオオオオオオオッッッッ!!!!

 

バビディ「!!?ぶ、ブラックホール!!!!」

 

バビディが封印の呪文を唱えようとした瞬間に、悟飯の手からかめはめ波が飛んできた。それに対処するべくブラックホールを使用してギリギリのところで吸い込むことができた。

 

一花「はぁぁあああッッ!!!!」

 

だが、その死角から一花が迫っていることまでには気づかなかった。

 

ドカッッッ!!!!!

 

バビディ「うぐっ…………!!!?」

 

一花は勢いそのままバビディごと拳を地面に叩きつけた。

 

バビディ「こ、この〜……!!!」

 

魔人ブウを封印しようとすれば、悟飯の大技が飛んでくる。その大技はバリアで防ぐのは限界があるため、ブラックホールを使用して吸い込むが、ブラックホールを使うこと前が殆ど見えなくなってしまう。その死角から有効打を与えることができる一花が前進することによって、一種のコンボ技のようなものが完成したのだ。

 

バビディ「この〜!!!でも間抜けだね!!またこんな馬鹿でかい威力を持った技を僕に預けるなんてさ!!!!さあみんなくたばりな!!!!」

 

ホワイトホールが出現すると、悟飯が先程放ったかめはめ波が唐突に出現した。しかし悟飯はこれを予測できていたので、受け止める姿勢に入ったが…。

 

一花「待って!!」

 

一花に呼びかけられ、何事かと思って振り返ると、右手の紋章を光らせて魔術を発動させようとする一花の姿があった。

 

一花「はっ!!!!!!!

 

今度は一花が出現させてブラックホールによって、かめはめ波は再び一瞬にして姿を消した。

 

バビディ「くぅ〜……!!とことん邪魔だね君は…!!」

 

一花「四葉………」

 

四葉「うん」

 

合図を受けた四葉は、頭に付いていたリボンを外してそれに気を込める。するとリボンが光りだした。

 

四葉「よっ!!!!!!」

 

気を充填したリボンを投げると、バビディの体に巻き付いた。

 

バビディ「なっ……!!?なんだこれ!!!?取れないぞ!!!」

 

一花「………もうあなたは終わりだよ」

 

バビディ「なに〜?…………なっ」

 

バビディは絶望してしまった。自分の真下に現れたのはホワイトホール。恐らく出現させたのは一花。そして、一花は今まで何度かブラックホールを使用してきたが、これまで一度もホワイトホールを出現させていない。

 

 

 

つまり、これまでブラックホールで吸い込んだ力が、いっぺんに解き放たれようとしていることを意味していた。

 

バビディ「まっ………」

 

一花「これで、終わりダァアアアアアッッッッ!!!!!!!!

 

ズォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッッ!!!

 

バビディ「ぐぼぉぉああああああアアアアアアアアアアアアッッッ……!!!!!!」

 

バビディのバリアを突破した気の塊はそのままバビディの体を飲み込み、雲を突き抜けて宇宙空間に突き抜けていった。

 

一花「は、はははっ……。やった…!倒したよ!!!」

 

四葉「一花すごーい!!!!」

 

究極悟飯「い、今のは凄かったなぁ………」

 

零奈「お、おっかない技でしたね……」

 

織田社長「一花ちゃん、大丈夫なのかい!!?」

 

戦闘が無事終わったことを確認した社長は、すぐさま一花の元に駆け寄った。一花は笑顔で大丈夫だと答えると、どこか安心したような表情になった。

 

織田社長「し、しかし…、とんでもないハプニングに巻き込まれたものだね。ところで、そこにいるのは…………」

 

ブウ「………ん?」

 

織田社長「ひぃ…!!!」

 

織田社長は魔人ブウの顔を見るなりすっかり怯えてしまった。実はまだドラゴンボールで記憶の消去を行っていない為、地球の人々は魔人ブウの悪行を覚えているのだ。

 

一花「大丈夫ですよ社長。この魔人ブウはいい方の魔人ブウだから!」

 

四葉「そうですよ!さっきだって私達の味方をしてくれましたし!!」

 

織田社長「し、しかし…………」

 

究極悟飯「実は、魔人ブウはバビディというさっきのやつに操られてたんですよ…………」

 

織田社長「な、なるほど………?」

 

悟飯は咄嗟にそれっぽい嘘をついてこの場は誤魔化すことにした。取り敢えず平和は訪れたものの、戦場となった周辺はすっかり瓦礫の山と化していた。これでは撮影の再開などできるはずもない。今日のところは一旦帰宅するしかなさそうである。

 

四葉「それにしても、とんでもない災難だったね〜」

 

究極悟飯「でも一花さんも戦えるようになるのは正直予想外だったよ。てっきりまたバビディにやられたのかと……」

 

一花「あはは……。私もだいぶ焦ったよ〜…………」

 

すっかり平和ムードに切り替わった一行だが、織田社長と監督に関しては未だに状況が整理しきれていないし、何より一花がこういった事態に慣れている様子だということにも驚きを隠せずにいた。

 

 

 

 

 

バビディ「よ、よくやるね〜……。君達には完敗するところだったよ………」

 

究極悟飯「なっ………!!!」

 

一花「まだ生きていたの!!?」

 

なんと、バビディはまだ生きていた。それに気づいた一行は再び戦闘体制に入る。

 

バビディ「これだけは使いたくなったけどやむを得ない………。僕をここまで追い詰めた君達が悪いんだぞ……?数分後には君達が無様に命乞いをする姿が目に浮かぶよ」

 

どう考えてもバビディが勝利する未来は想定し難いのだが、それでもバビディはその奥の手に相当自信があるようだった。その奥の手とは一体……?

 




 本免試験受かって免許取得。ようやくやること全て終えた感じですよ。マージで疲れました。そして最近思うことがあるのですが、ちょっと蛇足しすぎたかなって気がします。このお話が終わったら本編は卒業式と結婚式をやって終わらせて、残りのやりたいお話は番外編とか後日談としてやった方がいいような気がしてきました。これ以上は蛇足しないと思います、はい。
 最近自分の過去作というか過去話を見直して思うのが、昔の私はなんでこんなストーリー作れたんだろうなぁという疑問。今の私にはあれほどの斬新?な話は作れないような気がしてならない……。最近支部の方ではブクマも減ってきましたからなぁ。まあそれに関しては恐らく蛇足が原因でしょうね。それもあってそろそろいい頃合いだと思っております。

 まあ、これからしばらくは時間が作りやすくなるので、じっくり考えながら執筆できそうかなぁと思っております。多分来週からはそれなりにクオリティが上がるはず……多分。


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第118話 目には目を、闇には闇を

 無茶苦茶お待たせして申し訳ないです。でもここまで来たら本編完結まであともう少し……!



バビディ「くおおおっ……!!!」

 

バビディが力み始めたかと思うと、周囲が光り始め、バビディの手足が、胴体が伸びた。

 

悟飯は今まで沢山の敵と戦ったことがあるが、その中には勿論変身する敵もいた。その変身する敵の大半は体が大きくなるか、無駄を省くかなどの変身だった。だが、共通するのはどの変身においてもある程度の筋肉があることだった。しかしバビディの変身とも言える今の変化は、胴体と手足が伸びただけにとどまり、筋肉はそこまで増えているようには見えなかった。

 

四葉「な、何が………?」

 

究極悟飯「分からない………」

 

零奈「特に、気の方に変化はありませんが…………」

 

しかも気が増大した様子もなかった。だが、その変化の異変に気づいたのはただ一人、この中で唯一魔力も扱える一花のみだった。

 

一花「違う……。バビディは自分の中にある魔力を全て使って今の変身をしたんだと思う……。さっきまで感じていたバビディの魔力が殆ど感じられなくなった…………」

 

バビディ「その通り……。この変身は僕の魔術の集大成とも言えるものだよ。かつて僕の父が魔人ブウを生み出した時のものに近いものさ」

 

究極悟飯「なに………?」

 

ブウ「俺のことか?」

 

バビディ「魔人ブウよ。貴様は何故生み出されたか分かるか?」

 

ブウはバビディに言われ考えてみるが、特にこれといった理由は思い浮かばなかった。界王神によれば、魔道士ビビディは世界を支配する為に魔人ブウを生み出したという。その魔人ブウはやがて何人もいた界王神を殺し、南の界王神と大界王神を取り込んで今の姿となった。

 

究極悟飯「それは、お前のように世界を支配するためじゃないのか……?」

 

バビディ「確かにそれもあるさ。でも、僕のように自分自身を強化してしまえば良かったのではないか?僕はずっとそう思っていたんだよ。でもね、パパの資料を見て納得したよ……」

 

界王神の中でも特に多種多彩な技を使うことができた大界王神は、ビビディにとっては天敵とも言える存在だった。かつて大魔力を利用して星の生命を食らい、自らの力として宇宙の脅威となった者がいたが、大界王神がその者の魔力を封印したことによって、銀河パトロールに逮捕されるに至った。

 

つまり、いくら今のバビディのように自身の魔力を高めたところで、魔力を封印されてしまっては元も子もない。故に魔人ブウが作り出されたのではないかという結論に至った。バビディはそのことについてこと細やかに話した。

 

究極悟飯「そんな経緯があったのか…!!!」

 

バビディ「そうさ。真相はどうか知らないけどね。でも、魔人ブウが大界王神を吸収した今、そんな手間はもういらないのさ。かつて星を食らっていた者のように、僕も自身の強化のために魔力を使うことこそが、世界の支配への近道なんだよ……!!!!!」

 

ドゥンッ!!!!!!

 

バビディが魔力を解放したと同時に全身に適度な筋肉が付与されたと同時に膨大な気も発生した。

 

究極悟飯「なっ………!!」

 

四葉「ここまで………!!!」

 

バビディ「ただ、これに魔力を使うと呪文系が使えなくなっちゃうのが傷なんだけどね………。でも、どうせ魔力が通じないのなら、魔力を身体強化に注ぎ込んでしまえばいいだけのことだ!!!」

 

バビディは魔力と気を併用するだけで勝てると思っていたが、一花が紋章の力を持ったまま反抗することは想定外だった。故に、最終手段としてとっておいたこの身体能力強化を実行することにしたのだ。自身の呪文が一花の呪文で跳ね返されてしまっては元も子もない。

 

バビディほどの魔力があれば、一花の攻撃も本来なら効かないはずなのだが、バビディはこの奥の手の変身をする為の魔力を残すために、防御にさく魔力も温存しておいたのだ。だから一花の攻撃だけ通じたというわけである。それほどまでに、バビディのこの変身は魔力を必要とするのだ。

 

究極悟飯「みんな!!下がってろ!!」

 

事の重大さに気づいた悟飯は他のみんなを避難するように促した。

 

ドンッッッ!!!!!!!

 

衝撃音が響いた。しかし悟飯には何の異常もなかった。先程魔法は使えないと発言していた。それがフェイクの可能性もなくはないが、とにかく今の悟飯には何も異常はない。だが、その衝撃音の音源を辿ればすぐに分かった。

 

一花「あっ………ぐふっ……」

 

究極悟飯「み、見えなかった……?」

 

悟飯でもバビディの動きを追うことができなかったのだ。確かに少し後ろにいるみんなに振り返って声をかけたのだから、視覚で追えなくてもおかしいことはない。だが、気の動きがなかった。そのはずなのに、バビディは超速で移動し、一花に強力な一撃を与えた。

 

バビディ「これで終わりだと思うなよ…!お前が身内にしたように、お前も同じ目にあって死ねッッ!!!!!」

 

ズァアアアアッッッ!!!!!

 

一花の体を叩きつけていた拳から気が放出され、それが彼女の体をあっさりと貫いた。あまりにもあっさり貫かれたものなので、一花自身は一瞬何が起きたか分からなかった。

 

また、横にいた四葉や零奈の反応も遅れた。彼女達もまた、敵を目と気の両方を使って追うのが当たり前だった。したがって、気で追えない敵を相手にするのは初めてのことだった。故に、反応が遅れてしまった。

 

四葉「い、いち…………」

 

バビディ「はっ!!!!!!!」

 

零奈「なっ……!!!」

 

四葉「きゃっ…!!!!!」

 

一花の身を案じて駆け寄ろうとした四葉だったが、バビディの気合だけで零奈諸共吹き飛ばされてしまった。悟飯はなんとか踏み留まることができたが、動くのは難しかった。それだけで今のバビディの強さがよく分かった。

 

究極悟飯「き、貴様ぁ……!!!!」

 

ドォォオオオッッッ!!!!!!

 

バビディが一花にしたことに対し、悟飯は非常に怒りを感じた。慎重に動かなければならない相手だと理解しながらも、バビディのした行動がそれを阻んだ。

 

バビディ「バカめ!!」

 

バビディは直前で悟飯の拳を避け、代わりに悟飯の顎に攻撃を決めた。

 

究極悟飯「ぐっ……!!!!!」

 

まともにアッパーを食らったが、空中で止まった。確かにバビディは強くなったが、前のように多彩な魔法を使われるよりは相性がいいような気がした。とても強くなったとはいえ、今の悟飯には手に負えないほどではないと感じた。

 

冷静ささえ保てれば倒せないことのない相手だが、今の悟飯は一花が致命傷を受けたことによって焦っている。それが悪影響を及ぼし、バビディの優位的な状況を生み出しているのだ。

 

ギュイイイ……

 

ドカッッ!!!!!!

 

バビディ「……!!!?」

 

今にも一花にとどめを刺しそうだったバビディだったが、魔人ブウが腕を伸ばして攻撃したと同時に、もう片方の腕で一花を自身のそばまで運んだ。

 

究極悟飯「ま、魔人ブウ…!!?」

 

バビディ「な、なにぃ……?」

 

ブウ「お前、大丈夫か?俺ならすぐに治せる」

 

笑顔でそう言った魔人ブウは、手の周りに緑色の光を発生させながら一花を回復させた。一瞬にして傷は完治した。

 

一花「あ、ありがとう………」

 

ブウ「バビディ、悪いやつ。容赦する必要ない!」

 

バビディ「ぐぬぬぬ……。貴様、まだ僕の邪魔をするというのか……。なら、まずはお前からだぁ!!!!」

 

ターゲットを変えたバビディは魔人ブウに向かって突進する勢いで向かっていく。

 

ブウ「むんっ!!!!」

 

ドンッッッ!!!!!!

 

だが、魔人ブウは避けるようなことはせずに、正面からバビディの突進を受け止めた。

 

ブウ「グギギっ………」

 

バビディ「無駄無駄。今のお前では、僕には勝てない!!!!!」

 

バビディはブウが抑え込んでいた腕を思いっきり振り払い、もう片方の手を突き出した。

 

ブウ「ぶっ……」

 

その手は魔人ブウの目にクリーンヒットした上に、追い討ちをかけるようにバビディの気弾が魔人ブウを襲った。その威力によって魔人ブウの頭がなくなっていた。

 

バビディ「バカめ。僕に逆らうからこうなるのさ。主人に逆らったやつには相応しい末路さ」

 

ぽんっ!!!

 

バビディ「ちっ…………」

 

だが、魔人ブウは不死身の生命体。細胞一つでも残っていれば綺麗に再生する生き物だ。生半可な攻撃では殺すことは不可能である。

 

ブウ「今のはちょっと痛かったぞ」

 

バビディ「だからなんだというんだ」

 

ドゴォォオオッッッ!!!!!

 

ブウ「……!!!!!?」

 

バビディは今ある気を一瞬だけ右手に集中させてブウの腹部を攻撃した。その衝撃によって魔人ブウは吹き飛ばされるはずだったが、バビディは殴った手をそのままブウの体を掴んだ。すると魔人ブウの体はゴムのように伸び、やがてバビディの方に戻ってきた。

 

究極悟飯「……!!!」

 

だがこれはチャンスではないだろうか?バビディは恐らくもう片方の手に気を集中させてブウに二撃目を与えるに違いない。一点に気が集中すれば、他の部位の防御は疎かになる。

 

バビディ「お前のようなデブは、もういらないッ!!!!!」

 

ドゴォォオオッッッ!!!!!!

 

ブウ「ぶあっ…!!!?」

 

究極悟飯「(今だっ!!!!)」

 

シュン‼︎

 

攻撃を当てた瞬間を狙い、悟飯が横から割って入った。そして悟飯もまたバビディの急所を狙って渾身の一撃を繰り出した。

 

究極悟飯「(これで終わりだ!!!)」

 

悟飯は勝利を確信した。間違いなく悟飯が勝利を収めるはずだった。

 

究極悟飯「………!!!?」

 

だが、手応えは最初にバビディに攻撃した時と似たものだった。何故か悟飯の攻撃はバビディ相手には通じなかった。まるでバビディの周りに薄いバリアがあるような…………。

 

バビディ「あーあ。今まで必死に避けてきたんだが………。これでは台無しだね」

 

ビッ!!!!

 

究極悟飯「うわっ…!!!?」

 

バビディは前触れもなく目からビームを放ってきたが、悟飯は咄嗟に回避した。

 

究極悟飯「ど、どういうことだ…!!今のお前は魔術が使えないはず…!!なのに今のはまるでバリアじゃないか…!!」

 

バビディ「……そうさ。確かにバリアは使えないよ。でもね、この体は魔力を利用して僕の身体能力を強化しているんだよ。つまり、常に僕の体の周りに魔力が流れ続けているんだ。その魔力と気を併せることによって、常時薄いバリアのようなものを展開しているのと同じ状態になるのさ」

 

究極悟飯「なに……?なら何故ブウの攻撃は通じたんだ…!?」

 

悟飯の質問に、バビディはブウを投げ捨てた後に答えた。

 

バビディ「それは、魔人ブウが対異能生物でもあるからだよ」

 

究極悟飯「何……?どういうことだ…?」

 

バビディ「さっきも述べた通り、魔人ブウは大界王神による魔力封印の対策として僕のパパが生み出した生き物なんだよ。だから魔人ブウにはあらゆる魔法が効かない、もしくは非常に効きにくいんだ。だから僕の実質バリアのようなものも突破できてしまうんだ」

 

だけど、力が足りないから大したダメージにならないけどねと、バビディは小馬鹿にしたように笑いながらそう答えた。

 

バビディ「あとは僕にまともに攻撃を加えられるのは一花だけだけど、あの子程度の力じゃ大したダメージにならないね。つまり、僕に決定打を与えられる者はいないんだよ」

 

究極悟飯「……………」

 

確かにバビディの言う通りならば、こちらのスタミナが切れてしまえばその時点でアウトだ。バビディの魔力と気のバリアのようなものを圧倒的な気だけでも突破できないとすれば、超サイヤ人2になったゴジータでも突破することは不可能だろう。それに関しては試してみなければ分からないが、生憎バビディが張ったフィールドバリアの影響によって、バリアの外にいる者がこの場所の気を探知することは不可能に等しい。四葉と零奈がここに気づいたのは、一花と血の繋がりがあるからかもしれない。

 

究極悟飯「………フュージョン…?」

 

だが、悟飯は思考の途中で引っかかるものがあった。フュージョン、融合、合体………。そういえば、以前自分は魔人ブウに吸収された身。今の魔人ブウは邪悪な存在ではないので、自分を敢えて吸収させれば、今のバビディでも余裕で倒すことができるのではないだろうか?だが、魔人ブウが悟飯を吸収して心はそのままとは限らない。もしかしたらまた邪悪な存在になってしまう可能性もある。

 

究極悟飯「……いいアイデアだと思ったんだけど……。リスクが大きい…」

 

バビディ「さて、君さえ倒しちゃえば後はこっちのものだ」

 

究極悟飯「(このまま戦っていたら、いつ体力がなくなるか分からない……。でも、ここで手を抜くわけには行かない……!!!)」

 

 

 

 

 

 

悟飯はバビディと対峙しながら策を必死に練っていた。バビディに攻撃を通すためには、単なる気では効果がない。ゴジータやベジット程のパワーを出せればなんとかなるかもしれないし、悟飯もそのパワーを身につけたことがある。だが、あの変身は常時できるものではない。相当な怒りを感じて初めて成し得る変身なのだ。

 

四葉「………今の聞いてた…?」

 

一花「………うん」

 

バビディに攻撃を通すためには、少なからず魔力が必要であり、更にダメージを与えるにはそれなりの力も必要である。

 

零奈「孫君程の実力者でもバビディを倒せないとなると、仮に6人揃ったとしてもほぼ無意味だということになりますね…………」

 

以前魔人ブウと戦った時のような完全体零奈になったとしても、力に関しては究極悟飯に劣る。だが、その力で魔力があれば多少はいい線を行くかもしれない。

 

一花「……!!それだ!!」

 

零奈「えっ?」

 

四葉「なに?なんか閃いたの?」

 

一花「四葉。悟天君とトランクス君がやってたやつ、覚えてる?」

 

四葉「えっ…?確かフュージョン……だっけ?」

 

一花「そう。それだよ。今の私達がフュージョンすれば、いい感じに魔力と気を併せ持った戦士が生まれるかもしれない……!」

 

四葉「でも、それならお母さんと融合した方がよくない?」

 

零奈「………いえ、一花の案の方が今は有効でしょう」

 

四葉「な、なんで……?」

 

零奈「私と融合してしまった場合、あくまで力のベースは私になってしまうのです。つまり、魔力を持ち合わせている一花と私が融合しても、その魔力を私が持つようなことはないでしょう……」

 

四葉「……だけど、フュージョンなら……」

 

一花「……そういうこと。このまま何もしないよりは、マシだと思わない…?」

 

 

 

 

 

バビディ「どうしたんだい、悟飯君?もう終わりかい?」

 

究極悟飯「くっ………」

 

あれから数十分攻防を繰り広げていたが、進展することは特になかった。悟飯の攻撃は届くものの、ダメージを与えるまでには至らない。そしてバビディの攻撃は極力当たらないように気を使っていたため、精神的にも疲れが出始めている。だが、この数十分で分かったことがあった。

 

究極悟飯「……バビディ。お前、万全な状態じゃないだろ?」

 

バビディ「なに……?」

 

究極悟飯「僕の攻撃を跳ね返せる程の魔術を扱えるお前が、その全魔力を使って自分の体の強化に使えば、それこそ誰も勝てない強さを手に入れてたはず……だけどどうだ?僕とほとんど互角だ」

 

バビディ「くっ……。実際にこういう使い方をしたのは初めてだったからね…」

 

究極悟飯「違うな。初めて使うものを切り札としてとっておくわけがない。お前は、一花さんに攻撃を跳ね返された時、自分の身を守る為に魔力を消耗してしまった…………違うか?」

 

バビディ「ぐぬっ……」

 

そう。バビディは一花に攻撃を跳ね返えされた時、咄嗟に魔力を使用して自分の身を守ったはいいものの、想定外の威力にバビディは体にダメージを負った。そのダメージを回復させるのにも魔力を使用してしまったため、想定よりあまり強化されていない状態なのだ。

 

バビディ「だが、お前の攻撃は僕には通じていない。君が体力を消耗し続ければ、いずれは僕が勝つさ」

 

究極悟飯「……本当にそうかな?」

 

悟飯が意味深な発言をした直後、少し離れた場所から強い光が発生した。

 

バビディ「なっ…!!?なんだこの光は……!!?」

 

究極悟飯「お前はどうやら周りが見えていなかったらしいな。なんで僕が、通じもしない攻撃をわざわざ仕掛け続けていたと思う?」

 

バビディ「ぐぬぬぬぬっ………。クソッタレめ……!!!」

 

 

 

 

「…………これが、フュージョン…?」

 

零奈「お、おお………」

 

何回か練習した後に、四葉と一花は見事にフュージョンを成功させた。髪の長さは大体四葉、髪色は薄桃色で、頭にはリボン、両耳にはピアスがついていた。服装はフュージョンする時の特有の服が装着されていたが、ゴテンクスやゴジータとは違い、胸部分には何故かサラシが巻かれていた。

 

 

だが、他の2組のフュージョンとは決定的に違うものがあった。

 

零奈「紋章が………2つに………」

 

先程まで一花の右手の甲に表れていた紋章と同じものが、今度は右手だけでなく左手にも具現化していた。四葉と一花はフュージョンによって気だけでなく、見事に魔力も大幅パワーアップさせることに成功したのだ。

 

「………お母さんと融合する時とはまた違う感覚………。そういえば、名前はどうしようかなぁ…………」

 

零奈「あ、あの………。今はそんなこと気にしている場合では…………」

 

「いやいや、名前って結構重要じゃない?一花と四葉で一葉…。いや、四花がいいかな………?」

 

零奈「いいから早く行きなさい!!」

 

「は、はい!!!」

 

零奈に促される形で四葉と一花の融合体は名前を決めてないことに不満を覚えつつも、今はバビディを倒すことが先決だと切り替えることにした。

 

 

 

 

「………たあっ!!!!!」

 

ドカッッ!!!!!!!

 

バビディ「ぐおっ………!!!!!」

 

身体能力を強化したバビディにも攻撃が見事に通った。その様子を見て悟飯は一安心した。

 

究極悟飯「………そんなことがあるなんて………」

 

フュージョンしたことによって、本来一つしかない紋章がさらに1つ増えたのだ。それによって元々一花が保有していた魔力の数倍は持っているということになる。これに加えてそれ相応の気があれば、今のバビディ相手にも十分なダメージを与えることが可能だ。

 

バビディ「くそぉ…!!!まさかこんなことがあろうとはぁ……!!こんなはずじゃなかったのに……!!!」

 

「残念だったね。あなたは人を己の欲の為にいいように使いすぎた。今そのツケが回ってきたんだよ。今のあなたにはぴったりな末路だね!!!!」

 

ドゴォォオオッッッ!!!!

 

四葉と一花の融合体……では呼び名が長いので、ここは見た目的に四葉要素が強いので、『ヨツカ』と仮称しておこう。ヨツカはバビディに反撃する暇も与えずに次々と攻撃を決めていく。

 

究極悟飯「よし、いいぞ…!」

 

ヨツカ「せーのッッッ!!!!!!」

 

ドカッッ!!!!!!

 

バビディ「かはっ……!!!!」

 

ヨツカがバビディを勢いよく叩きつけた。地面に激突するかと思われたバビディだったが、ヨツカが瞬時に地面まで移動し、両手をバッドに見立てて

 

ヨツカ「おらァアッッッ!!!!!

 

ガンッ!!!!!!!

 

バビディを打った。

 

バビディ「く、くそぉ……!!!!も、もう許さないぞぉおおおおおおおッッッ!!!!!!!」

 

ドォォオオオオオオオオオッッッ!!!!!

 

ヨツカ「なっ……!まだそんな力を隠し持ってたなんて……!!!!」

 

バビディは今ある魔力、気を最大限まで引き出し、最後の勝負に出た。これが失敗すれば、バビディは体力を使い果たして倒れるだろう。しかし、ここで勝負に出なければヨツカという強敵に倒されるのは明白。選択肢など始めからなかった。

 

バビディ「もうどうにでもなれ……!!貴様らさえ殺せれば、もうそれでいいわぁあああッッッ!!!!!!」

 

ズォオオオオオオオッッッ!!!!!!

 

膨大な魔力を含んだエネルギー砲を放った。ヨツカがかめはめ波で迎撃しようとした。

 

ヨツカ「……………うそ」

 

だが、ヨツカの力ではそれは無理だと悟った。バビディの魔力は今や底なしと言っても過言ではなく、いくらヨツカが一花の時よりも魔力がパワーアップしたと言えども、とてもじゃないが迎撃できるレベルではない。よくて被害を抑える程度が可能な範囲だ。

 

究極悟飯「…………諦めないで」

 

ヨツカ「………!!!」

 

究極悟飯「君だけじゃないんだ。僕だっている。何もあいつを一人で倒さなきゃいけないわけじゃない。みんなで協力して倒そう。僕と君の力なら、いける!!!」

 

波ァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッッ!!!!!!!!!!!!

 

 

悟飯の力強いかめはめ波が放たれたと同時に、バビディのエネルギー砲とぶつかった。だが、膨大な魔力もこもったバビディのエネルギー砲の方が優勢だったのか、僅かに押され気味だった。

 

ヨツカ「…………もう、あなたに家族の絆は壊させない…!!!!!」

 

そう言葉にした瞬間、ヨツカの両手の紋章が発光する。その紋章から力が全身に流れていくのを感じた。だが、その力を手に集中させる。目の前の敵を倒すため。一花を狂わせた諸悪の根源を滅ぼすため。地球を守るために、邪気を持った正義の戦士が産声をあげた。

 

ヨツカ「波ァアアアアアアアアアアアアアアッッッ!!!!!!

 

ズォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッッ!!!!!!!

 

バビディ「なっ…………」

 

悟飯のかめはめ波にヨツカのかめはめ波が加わった途端、押され気味だった状況が一変し、一気にこちら側が優勢となったどころか、一瞬にしてバビディの間合いにまで迫っていた。

 

バビディ「(まずい…!!このままでは僕は……!!!こうなったら、今ある力の全てを使って防御するしか……)」

 

シュルル‼︎

 

バビディ「なっ…………」

 

突如、自分の体が締め付けられるような感覚がした。ピンク色の物体がバビディの体に巻きついていた。

 

バビディ「ま、まさかぁ……!!!!」

 

飛んできた方向を見ると、遥か遠くに魔人ブウが立っていた。その魔人ブウはいつもより腹部が膨らんでいた。

 

ブウ「………お前みたいなクズなんか、死んじゃえ!!!バーカ!!!!!」

 

グォオオオオオオオオオオオッッッ!!!!!!!

 

その瞬間、バビディはかめはめ波に飲み込まれた。自慢の魔力でバリアを張ろうとするが、ヨツカの魔力によってそれは阻止された。気で守ろうにも、悟飯の圧倒的な力によってそれもできなかった。

 

バビディ「こ、こんなはずじゃ………ぁ…………………」

 

かめはめ波で体が削られる中、バビディは激しく後悔していた。自分が相手にしていた者がどれだけ強かったのかということ。絆というものの恐ろしさ。かつての子分の反逆。

 

だが、今更後悔しても無意味だった。なすすべもなく、バビディは再び地獄に送り返された。

 

究極悟飯「はぁ…………はぁ…………ははは……!!やったね!」

 

ヨツカ「…………うん!!」

 

悟飯達は、今度こそ確実にバビディを打ち倒した。それによって、世界に再び平和が訪れた。

 




 1ヶ月も空けてしまって申し訳ないです……。軽く?スランプに陥っていました。スランプに入ってる間にぼざろにハマってしまいました。なんだよあのアニメ。ただのギャグアニメかと思ったら熱いじゃないか……。

 ちなみにこの作品はあと数話で完結すると思います。もう変に伸ばすようなことはしません。このようにグダるだけなので()

 ちなみにヨツカの単純な強さはそれほどでもありませんが、元々洗脳された証だったバビディの紋章をうまいこと利用したので、そこそこの強さはあります。バビディが万全の状態で身体能力を強化した場合は、破壊神でギリギリどうにかなるかどうか程度の強さをイメージしています。

 では、次の投稿はいつになるか分かりませんが、今回はこれで。


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第119話 孫悟飯は五つ子姉妹の家庭教師を終えるようです

 たいっへん長らくお待たせしました。五つ子の誕生日までには最新話をなんとしても間に合わせたいという思いから急ピッチで仕上げて参りました。GWも予想外に忙しくなってしまったのが誤算でしたが、本当にギリギリでなんとか間に合わせることができてよかった……。こうなったらあとは結婚式のお話くらいしか残っていませんね。原作ベースで進めるならの話ですけど。
地の文少ないけど許して……



今度こそバビディを倒した悟飯達。間違いなくバビディの気は消滅したはずなのだが………。

 

ヨツカ「…………あれ?」

 

ヨツカの両手にある紋章は未だに消えていなかった。

 

究極悟飯「どうしてまだ残ってるんだろう……?バビディは今度こそ確かに死んだはずなのに…………」

 

ヨツカ「…………これは勝手な憶測だけど、洗脳を振り切ってこの力を克服したから、この力は自分自身の……いや、一花の物になったんだと思う。だからバビディに関係なくコレは残っているんじゃないかな?」

 

悪役側なら、そんな奇跡みたいなことが起こるかと怒鳴りたくなるような話だが、彼女達は幾多もの奇跡を引き起こしているのも事実だ。今更奇跡の1つや2つを新しく起こしたところで何もおかしいことはない。

 

零奈「これで一見落着ですね。孫君が負けかけた時はどうなるかと思いましたが……」

 

究極悟飯「はい……(それにしても、バビディはなんで生き返ったんだ…?ドラゴンボールは使われていないはずだし………)」

 

生き返った本人には結局聞かないまま始末してしまったため、閻魔大王にでも直接聞かない限りは原因は分からずじまいだ。

 

ヨツカ「にしても疲れちゃったなぁ。早く風太郎君のところで癒されに行こっと」

 

究極悟飯「えっ?」

 

ドシューンッ!!!!

 

零奈「えっ?あの…!?」

 

ヨツカはフュージョンが解けぬままその場を後にした。付き合っている風太郎の身としては好ましくない発言が聞こえたような気がするが、片方は四葉なので問題ないかもしれない…?

 

ブウ「あいつ、死んだのか?」

 

究極悟飯「ありがとう魔人ブウ。君のお陰でなんとか倒せたよ」

 

ブウ「俺、サタンにもう殺しはしないって約束した。だけど約束破った……」

 

究極悟飯「問題ないよ。あいつは物凄い悪いやつだから、サタンさんも分かってくれるって」

 

ブウはどうやら本当にサタンと仲が良いらしく、約束を破ってしまったことを軽く後悔していた。最初は敵として現れたが、サタンの活躍によって、初めて戦いもせずに仲間になったのだ。サタンはそういった平和的な交渉、あるいは交流が得意なのかもしれない。

 

悟空がサタンのことを救世主として評価したのも、そういう側面があるからなのかもしれない。

 

だが事情を知らない者は、魔人ブウを未だに敵として認識している。一花の事務所の社長は、悟飯や一花が魔人ブウを味方として扱っていたからか、そこまで敵視している様子はなかったが、万人がそうなるとは限らない。寧ろ敵として認識するだろう。だからこそしばらくは魔人ブウに対して外出の自粛が言い渡されていたのだが……。

 

究極悟飯「………もうそろそろドラゴンボールが使えるようになりますから、魔人ブウのことに関する記憶を消さないとですね…………」

 

零奈「そうですね、放置していれば……」

 

 

ざわざわ……

 

零奈「………このように、不必要な混乱を招く原因になりますからね」

 

撮影どころでは無くなってしまった。悟飯は社長や監督に事情を説明した上で、その場を後にした。気掛かりだったのは、フュージョンが解けないまま風太郎の元に向かっていったと思われるヨツカだが、気はある意味特徴的なものなので、すぐに見つかった。

 

 

 

ヨツカ「風太郎く〜ん!!会いたかったよ私の愛おしの風太郎くーん!!」

 

風太郎「ちょっ…!!くっつくな!!!てかお前は四葉…?いや一花か?だ、誰だお前!!?」

 

ヨツカ「どっちも正解とだけ言っておこう。ところで風太郎君。四葉の記憶を介して知ったけど、ヤったんだね」

 

風太郎「なっ……………」

 

ヨツカ「そういうことなら私ともヤろ?そうすれば一花も初恋で初の体験を迎えることになってみんなハッピーだよね?」

 

風太郎「お前の頭の中はお花畑なのか?俺には四葉という…か、彼女がいるから………」

 

ヨツカ「その心配ならいらないよ。半分は四葉だもん」

 

風太郎「………まさか、合体したのか?四葉と一花で…?」

 

ヨツカ「正解!賢い風太郎君にはご褒美を差し上げます!!」

 

風太郎「ちょ…………。口を近づけるな……むっ…!!?」

 

悟飯「………………」

零奈「………………」

 

そこには、風太郎相手にやりたい放題なヨツカがいた。外だと言うのにお構いなしでやりたい放題であった。

 

ヨツカ「…………えへへ。もしかして、こんなこともできるのかな?」

 

風太郎「はっ?」

 

ヨツカ「魔術!媚薬!!!」

 

風太郎「あっ、ちょ……!」

 

ヨツカ「おお!成功した!もしかしてこの力って、素直にならない風太郎君相手には有効打なのでは………?」

 

零奈「…………これ、バビディの影響をまだ受けているのでしょうか?」

 

悟飯「いえ、多分シラフだと思います………」

 

零奈「………ヨツカ………で会ってますよね?」

 

ヨツカ「あれ?お、お母さん……!!?」

 

母親の姿を見て、流石に暴れるのをやめた…………。

 

ヨツカ「そうだ!!お母さんも混ざる〜?」

 

なんてことはなかった。

 

零奈「正義の鉄拳」

 

ゴンッ!!!

 

ヨツカ「いてっ!!!」

 

あまりの自由奔放っぷりに、永らく封印されていた鉄拳を解放した。いくらフュージョンして強くなった身といえども、痛いものは痛いらしい。

 

零奈「身の程を弁えなさい。上杉君にも迷惑をかけていることを考えなさい」

 

ヨツカ「ご、ごめんなさい…………」

 

零奈は親の力でヨツカを説得し、風太郎を元の状態に戻した。

 

 

 

風太郎「……なるほど。またあのクソ魔道士が生き返ったのか。にしても洗脳を逆に自分の力に変えちまうとは、大したもんだな、一花」

 

一花「もう2度とあんな思いはしたくないからね………」

 

数分後、フュージョンが解けて四葉と一花に戻り、2人して一斉に風太郎に謝罪した後に、何故四葉と一花がフュージョンしたのか、後から来た悟飯と零奈が説明することになった。

 

四葉「………って、あれ?そういえば、実のお父さんの方はどうしたんだろう?」

 

悟飯「……………あっ」

 

すっかり忘れてたと言わんばかりの顔をした悟飯が急に焦り出した。だが…。

 

零奈「別に問題ないでしょう。放っておけばいいですよ」

 

悟飯「えっ?でも…………」

 

零奈「あなたは優しすぎます。時には厳しくすることこそが本当の優しさだということにも気づくべきですよ。特に今のあなたは二乃を甘やかしているように感じますし」

 

悟飯「は、はい…………」

 

零奈に言われて付き合い始めてからのことを思い出してみたが、確かに他の誰よりも甘やかしているように感じた。実際、人に甘いのが孫悟飯という人間である。

 

一花「あっ、そうだ悟飯君。例の件があってから、社長が君をスカウトしたがっているんだよ。特撮やアクションの方で大活躍できそうだからってさ」

 

風太郎「あ〜…。確かに悟飯の身体能力なら余裕で熟るだろうな。俺にはそんな身体能力がないから羨ましいぜ」

 

四葉「おっ…!それなら上杉さんも一緒に孫さんの修行を受けられてはどうですか?数ヶ月あれば今の私くらいにはなれると思いますよ!」

 

悟飯「いや、それは四葉さんに特別な才能があったからこそ実現できたことだから、多分他の人はあそこまで早く成長することはないんじゃないかなぁ………」

 

四葉「そ、そんな…!?」ガーン

 

風太郎「………いや、受験を終えてからなら普通にありだな」

 

一花「えっ?フータロー君が提案に乗るなんて意外」

 

風太郎「今まで様々な悪党どもが現れただろ?俺達は悟飯に守られてばかりだったし、一緒にいることで恐らく足も引っ張っただろう。なら、せめて自分自身を守れる力はつけた方がいいかと思ってな。今後も悪党が現れないとも限らないしな。ということで、頼めるか?」

 

悟飯「うん。僕は全然構わないよ」

 

四葉「やったー!これで一緒に修行できますね!」

 

風太郎「………つーか、お前、悟飯の家に行って修行してたのか?」

 

四葉「はい!孫さんのお家は山奥にあるので、あまり公に知られない方がいいこの力を行使するには丁度いいので」

 

風太郎「………そうか。じゃあ今度から俺と一緒に行こう」

 

四葉「えっ?それって…………」

 

一花「おやおや?フータロー君、もしかして嫉妬してる?」

 

風太郎「俺がそんなのするわけないだろ」

 

悟飯「あはは!!大丈夫だよ風太郎。僕は二乃一筋だから。でも確かに一緒に修行した方が、2人のモチベーションも上がりそうだね」

 

一花「そうだ。私もいいかな?この力の扱い方もよく分からないし」

 

そんなこんなで、悟飯が抱える生徒の数が日々上昇していくことになるのだが、それはまだ少し先のお話。悟飯達の平和なやり取りを天空から見ていたピッコロ達は、今回のバビディ復活の件を重大視していた。

 

ピッコロ「……なに?バビディ自ら蘇生魔術を生み出しただと…!?そしたらまたあいつが蘇るのではないか!?」

 

デンデ「いえ、それはどうやら対策済みだそうです。今回の件で地獄では罪人の魔力や気の力が最小限まで抑えられるようにするそうです」

 

ピッコロ「何故最初からそうしなかったのだ……………」

 

デンデ「でもよかったじゃないですか。これで地獄から悪人達が蘇る可能性は大分下がりましたし」

 

ピッコロ「そうだな。ドラゴンボールでも使われん限りはな……」

 

デンデ「しかし、バビディは本当に天才魔道士だったのですね。大量の魔力を消費するとはいえ、蘇生魔術を生み出した上に魔人ブウ以上の力を身につけられるとは…………」

 

ピッコロ「もしもヤツがその力を使って魔人ブウを従えてたとしたら…。考えたくもないものだな。今までの修行では足りないかもしれないな」

 

 

 

 

 

そこから時は進み……

 

ドラゴンボールが復活し、魔人ブウに関する記憶がほぼ全ての人々から消されて、魔人ブウはミスターブウとして地球で生活することになった。

 

二乃と三玖は専門学校に無事合格し、悟飯にご褒美を要求するも、三玖に調子に乗るのは良くないと釘を刺された。

 

 

五月「孫君!無事に大学に受かりました!!!」

 

悟飯「おお!本当に!?」

 

四葉「やったー!!!!」

 

二乃「一番心配だった子もどうにかなったみたいね」

 

零奈「本当によく頑張っていましたからね。努力が報われて良かったです……」

 

風太郎「ということは、俺らもようやく自分の勉強に専念できるわけだな」

 

悟飯「僕も最後の追い込みをしないと…………」

 

二乃「えっ?じゃ、じゃあ………」

 

悟飯「うーん………。デートはしばらく我慢してほしいかな…?ごめんね……」

 

二乃「…………」

 

四葉「あはは……。二乃拗ねないの」

 

五月「そうですよ。付き合えてるだけ充分幸せものですよ」

 

三玖「そうそう。それ以上は我儘。寧ろ今までの振る舞いでよく悟飯が許したなってレベルだよね」

 

五月「そうですよ!!それだけ二乃に甘やかすなら私にもすこーしだけでいいからその愛情を分けてくれても全然構わないというのに!!」

 

零奈「堂々と浮気宣言をしないでください」

 

一花「まあまあ!取り敢えず今日は五月ちゃんの合格をお祝いしないと!!お母さんにお願い(意味深)してもらってお父さんも帰ってくるわけだし!」

 

五月「えっ!!?結果も伝えてないのにですか!?」

 

零奈「あの人は五月が合格すると信じていたのでしょうね。最近のあなたの頑張りを見て体調の心配もしていましたし」

 

二乃「なんでそれを直接言わないのかしら…………」

 

五月が難関大学に合格し、後は四葉が油断さえしなければ大学に合格できるという状況になり、悟飯と風太郎は最後の追い込みをすることになった。その為当然しばらくは勉強に専念することになるので、デートなんてしていられるほど余裕ではない。一部棘があったり下心があったりする子がいたが多分気のせいだろう。

 

悟飯「………いよいよ試験本番だな」

 

とうとう悟飯にも試験の日が訪れた。幼少期から学者を目指してずっと勉強し続け、今日までやってきた。そしてこの日でそれらの努力が報われるか、はたまた無駄になるかが決まると言っても過言ではない。いくら死闘を繰り広げてきたZ戦士の一員といえども、自分の夢がかかっているのだから緊張してしまうのも無理はない。

 

悟飯「………風太郎も二乃も、みんなも応援してくれてるんだ。何より五月さんが合格したんだから、教師である僕だって合格しないと示しがつかないよね………。よし、いくぞ……!!」

 

 

 

武田「おや?らしくもなく緊張しているのかい?」

 

風太郎「かもな。だが俺は1人じゃねぇ」

 

そして偶然か、はたまた必然か……。風太郎と武田も、悟飯とは志望校が違うとはいえ、試験日が同じ日だった。

 

風太郎「悟飯は恐らく合格するだろう。ここで俺だけ落ちたらカッコ悪いからな」

 

武田「それならそれで僕が初めて君に勝つことができるけどね」

 

風太郎「おいおい。受かる前提かよ。なら尚更受からないとカッコ悪いじゃねえか」

 

 

 

 

…数日後…

 

二乃「…………まあ、当然よね」

 

三玖「あの西の都の大学に受かっちゃうなんてすごい……。しかも主席でしょ?」

 

五月「まあ、当の本人はそれほど驚いているご様子はありませんけどね…」

 

四葉「上杉さんも主席だって」

 

一花「久しぶりに学校に行ったけど、武田君相当悔しがってたね〜。また僅差でフータロー君に負けたんだってさ」

 

二乃「受かったのに悔しがるって……」

 

風太郎「ようやく肩の荷が降りた気がするぜ………。この日のために今までずっと勉強してきたからな」

 

悟飯「そうだね。でもまだ僕達の仕事は終わってないよ?」

 

風太郎「ああ。一花は休学した分、卒業試験ってのを受けて合格しないと卒業できないからな。そこまでは気を抜けないな」

 

一花「大丈夫だよ。ロケの間もフータロー君に勉強教えてもらったし、余程油断しなければ大丈夫だって」

 

 

 

進学組は皆結果が判明し、無事に志望校に合格することができた。あとは一花が無事に合格できるかどうかだが、これも一花の言う通り問題はないだろう。彼女も風太郎の助力を受けながら頑張ってきたのだから。きっと5人……否、7人揃って笑顔で卒業できるに違いない。

 

 

 

 

そして、その日が訪れた。

 

前田「お前の祝辞、くそつまんなかったな」

 

風太郎「当然だろ。漫才じゃあるまいし」

 

武田「だけどなんで君が祝辞を担当したんだい?本来なら3年間首位を維持した孫君が担う役割のはずだけど……」

 

風太郎「あいつは辞退した。ドラゴンボールで魔人ブウに関する記憶は消えたはずだが、何故か悟飯を英雄視する奴らが絶えないらしいからな」

 

武田「……機械軍団の時の記憶は消していないのかい?」

 

風太郎「いや、2つ目の願いで消したらしいが、悟飯が戦って悪い何かを倒してくれたっていう記憶が残っていたようだな。要は完全には消しきれなかったらしい」

 

武田「なるほど。上杉君が魔人ブウと戦っている姿をみんな見てなかったけど、孫君の場合は機械軍団の時に限っては見てたから、強く印象に残ってたのかもしれないね」

 

前田「で、その孫本人はどこにいるんだよ?」

 

武田「あっちの方にいるよ。多分女子に第二ボタンを狙われているんじゃないかな?」

 

前田「あいつ、戦闘以外は隙だらけだな………」

 

風太郎「武田も他人事じゃないだろ?確かお前のボタンも狙われていると聞いたが…………」

 

武田「僕は既に隠してあるから問題ないさ。上杉君、ほしいなら君にあげるが………」

 

風太郎「いやいらん」

 

男組が雑談をしていると、女子の大群を掻き分けてようやく悟飯が合流した。

 

悟飯「お待たせ…。なんかみんなにボタンくださいって言われて大変だったよ…………」

 

前田「ようモテ男。いつか背中を刺されるぞコラ」

 

悟飯「でもなんでみんな第二ボタンを欲しがるのかな?」

 

武田「えっ?孫君、意味を知らないのかい?」

 

風太郎「まあこいつはそういうやつだしな」

 

前田「なんだよ。学園祭に告白したからロマンチストになったのかと思いきや、そうでもないみたいだな」

 

前田達が悟飯に意味を教えると、悟飯は納得したようで……。

 

悟飯「へぇ〜そうなんだ………。えっ、じゃあ、みんな僕のことが好きなの?」

 

前田「そうだぞコラ。お前は武田に並んで旭校トップクラスのモテ男なんだよコラ」

 

武田「最近は中野さん達が孫君に付きっきりだったからみんな諦めかけていたみたいだけどね」

 

悟飯「そ、そうだったんだ…………」

 

風太郎「しかもお前と二乃が付き合ってるってのは専らの噂だからな。この学校で知らないやつはいないんじゃないか?」

 

前田「上杉がそう言うと信憑性増すな」

 

実際、悟飯と二乃のバカップルぶりは学年に留まらず、全学校生徒、なんなら教員達にも知られている。

 

悟飯「………そうだ、風太郎。みんなが呼んでるよ。せっかくだから写真を撮ろうってさ」

 

風太郎「あいつらか?分かった」

 

そう返事すると風太郎は立ち上がり、悟飯と共に五つ子の方に歩み始めた。その直後に大量の女子が武田に押し寄せ、第二ボタンを求めていたそうな…。悟飯達は計らずも面倒事を回避したようだ。

 

風太郎「お前、もしかして見えてたのか?」

 

悟飯「えっ?何が?」

 

風太郎「………いや、なんでもない」

 

四葉「あっ、おーい!」

 

二乃「やっときたわね」

 

三玖「悟飯、女子達に揉みくちゃにされてたね。大丈夫?」

 

二乃「えっ!?それは本当なの!?もしかしてボタンを取られてたりは……」

 

悟飯「大丈夫だよ。このボタンは本当に大切な人にしかあげないから」

 

二乃「ふ、ふーん?それで?その大切な人って誰のこと?」

 

二乃は悟飯がなんて返事するのか分かっているくせに、悟飯に問う。

 

悟飯「………はい」

 

悟飯は言葉で二乃と答えるのではなく、二乃の目の前で第二ボタンを外して二乃にあげるという形で返事をした。

 

それを受け取った二乃はこれ以上ないほど幸せそうな顔をしていた。

 

三玖「口じゃなくてボタンで返事するとは………」

 

五月「孫君って無意識にロマンチックなことしますよね」

 

一花「女たらしならぬ二乃たらし…?」

 

風太郎「…………」

 

悟飯と二乃がまたしても2人だけの世界を作り出しているが、そんなことはお構いなしに風太郎が6人……特に五つ子をじっと見続けていた。

 

四葉「あ、あの……?上杉さん?」

 

三玖「どうしたの?」

 

風太郎「………全員、卒業証書を持っているのか………。夢じゃないよな?」

 

五月「あなたはとうとう最後までデリカシーを身につけませんでしたね…!」

 

風太郎「いやお前…。赤点だった奴らが卒業できるレベルにまでなったんだぞ?少しは感慨に浸ってもいいだろ………」

 

悟飯「あ〜…。僕達が初めて会った時はみんな落第寸前だったからね〜……」

 

一花「そうだよ。フータロー君と悟飯君に感謝しなきゃ。2人のお陰でこうしてみんなで卒業できたんだし!」

 

三玖「それもそうだけど、悟飯と出会って世界は広いってことも分かったしね」

 

四葉「まさか宇宙人が実在するとは思わなかったもんね〜」

 

 

悟空「おっ!おめぇらここにいたか!」

 

勇也「風太郎にみんな。卒業おめでとさん」

 

風太郎「親父に悟空さん……」

 

四葉「………悟空さんがスーツを着てる…!?」

 

悟空「あーこれか?オラは本当は道着で来たかったんだけどよ、チチがどうしても今日はこの格好じゃねえといけねえっていうから………」

 

チチ「当たり前だべ!!息子の晴れ舞台だってのに正装で来ねえ親がどこにいるだか!!!!」

 

悟天「兄ちゃん卒業おめでとう!」

 

悟飯「ありがと、悟天」

 

牛魔王「悟飯もすっかり大きくなったべな〜。ピッコロさに連れ去られた時が懐かしいべ」

 

零奈「おや?みなさんもうお揃いですか」

 

上杉母「ちょっとあなた!なんで先に行くのよ!!」

 

らいは「そうだよお父さん!危うく逸れるところだったんだから!」

 

勇也「すまんすまん……。早くこのカメラ(こいつ)で撮ってやりたかったからよ」

 

マルオ「全員揃わないと意味がないだろう………」

 

勇也「んじゃ、全員揃ったことだし撮ろうぜ。今日の主役さん達は真ん中に集まりな」

 

1年生……。悟飯と風太郎が入学し、しばらくして2人は意気投合した。そこから孤独だったはずの2人の学校生活は変化した。しかし、悟飯と風太郎はどちらも勉強を第一とする姿勢に変わりはなかった。

 

それが変わったのが2年生の2学期。そこで五つ子が転入し、悟飯と風太郎は家庭教師をすることになった。1人では厳しかったかもしれないが、2人で協力してなんとかこの日に辿り着いた。

 

2人のノルマは5人を卒業させること。しかしその障害は生半可なものではなかった。まだ学力の向上だけを目的とするならマシだったのだが、五つ子(1部)の反抗、5人とも赤点候補生、五つ子の姉妹喧嘩など、様々な問題が起きた。

 

それだけでなく、地球の存亡そのものを揺るがすような強敵が襲来することが何度もあった。その度に悟飯が、途中からは五つ子と風太郎も協力してその強敵を打ち倒してきた。

 

7人は関わっていくうちに、お互いに足りなかったものを補いながら成長した。特に、風太郎は勉強星人から凡人に。悟飯はZ戦士からZ()()()()()()()()()()()になることができた。

 

この高校生活は、彼ら、彼女らにとって、かけがえのないものになったに違いないだろう。

 

勇也「おっ!いい写真撮れたじゃねえか!」

 

両サイドに各々の両親、中央に今日卒業した笑顔の悟飯達7人が並んだ写真が綺麗に撮れた。7人全員卒業証書の入った筒を持っている。これは7人が全員卒業できたことを意味している。それも笑顔で。悟飯と風太郎は家庭教師の役目を全うしたのだ。

 

悟飯「あの……もう一枚お願いしてもいいですか?」

 

勇也「別にいいが……。なんか気に入らないところでもあったか?あ〜、もうちょっと二乃ちゃんとくっついて撮りたかったか?」

 

悟飯「いや、それは………違くはないんですけど………」

 

勇也「なんだよ?はっきりしたらどうだ?二乃ちゃんに告白した時みたいによ」

 

悟飯「えっ?なんでそのことを………。もしかして風太郎……!!?」

 

風太郎「文化祭の時の仕返しだ。これでおあいこだな」

 

らいは「お兄ちゃん…………」

 

悟飯がもう一枚写真をお願いした理由。それはとても単純なものだった。

 

悟飯「………ピッコロさんも一緒に撮りましょうよ!!そこにいるんでしょう?」

 

二乃「えっ?いたの?」

 

ピッコロ「………構わん。お前ら家族と友人だけで撮ればいいだろう」

 

悟飯「そんなこと言わないで下さい。僕がこの学校生活を送れたのは、ピッコロさんのお陰でもあるんですから」

 

 

勇也「……?どういう意味だ?」

 

悟空「ははーん…?そういうことか…」

 

勇也「なんだなんだ?どういうことだ?」

 

悟空「実はピッコロは悟飯の……」

 

 

悟飯は元々甘えん坊な御坊ちゃまだった。潜在能力こそ昔からあったものの、悟空のように常に戦っていたわけでもなく、野生に生きる子でもなかった。だがサイヤ人襲来を機に、ピッコロが悟飯を鍛えたところから、悟飯のZ戦士としての人生が始まった。

 

つまり、ピッコロがいなければ悟飯は戦えないままだった可能性が高いし、今の礼儀正しい性格はなかったかもしれない。

 

悟飯が戦えたから、五月をサイヤ人から守ることができたし、崖に落ちそうになった二乃を助けることができた。もしも悟飯が戦えてなければ……。恐らく5人は笑顔で卒業することがなかっただろう。そもそも卒業以前の問題だった可能性すらある。故に、()()()()()()()()()、五つ子卒業の影の功労者はピッコロと言っても過言ではなかった。

 

ピッコロ「………一枚だけだぞ」

 

悟飯「……!はい!!」

 

勇也「へぇ……。そんなことがあったのか」

 

悟空「ああ。生き返ってもう一度会った時はびっくりしたぞ。突然オラよりもしっかりした子になっちまったんだからな」

 

 

上杉母「よし!それじゃあ、もう一枚いくよー!!」

 

 

勇也「………俺もあんたらに感謝してるんだぜ?」

 

悟空「ん?オラ達にか?」

 

勇也「ああ。俺の息子が、あんたの息子と友人になった。それで様々な災難に巻き込まれちまったかもしれねえが、こうしてまた嫁さんと一緒に写真を撮ることができるようになったんだからよ。マルオのやつも口では言わねえが、きっと感謝してると思うぜ?」

 

悟空「そうか?でもそのお礼ならオラじゃなくてドラゴンボールに言ってくれ。オラ達はあくまで強えやつらと戦っただけだからよ」

 

勇也「俺もそう言えるくらい強い男になりたいもんだぜ」

 

悟空「オラみたいに強くなるのは厳しいかもしれねえけど、ある程度までなら強くなれると思うぞ?」

 

勇也「そいつは本当か?今度鍛えてもらってもいいか?」

 

悟空「おう!その代わり畑仕事手伝ってもらえると助かるんだけんど……」

 

勇也「力仕事なら任せな!」

 

こうして、今度こそ全員が納得のいく写真を撮ることができた。五つ子達がいたから、悟飯は一般人になれた。五つ子達は、悟飯達と出会えたから、もう一度大切な人と過ごすことができるようになった。

 

本来ならあり得なかった幸せが、ドラゴンボールの、Z戦士達のお陰で確かにここに存在していた。

 

零奈「……皆さん。ご卒業、おめでとうございます………!!」

 

 

………こうして、孫悟飯と上杉風太郎は、五つ子姉妹の家庭教師を終えたようです。

 




 卒業式も無事に終わりましたね〜…。若干駆け足感が否めないですが、あまりグダグダやるとDBアニメ並みに引き伸ばしちゃいそうなので、ここは重点だけ書いて流してしまった方がいいかなと思いました。この卒業式で伝えたかったことは、五つ子と風太郎だけじゃあり得なかった幸せ、悟飯達Z戦士だけじゃあり得なかった幸せというものです。特に悟飯は原作だけでは高校生活がここまで充実していたかどうかは分からないので完全な憶測になってしまいますが、普通の高校生のような生活は送ってないような気がします。そういった意味では、五つ子がいたから高校生らしい高校生になることができたとも言えます。
 そしてごと嫁側の方のあり得なかった幸せというのはもう言うまでもありませんね。風太郎の母や零奈ともう一度出会えたことです。これに関してはドラゴンボールや人造人間技術の力がないとどうしようもないですからね。もしかして私がこの作品を始めたのは、みんな本当の意味でハッピーにしたかったからなのか……?

 あと、急ピッチで仕上げたので、もしかするとこのお話は修正が入るかもしれませんが、大まかな展開は変えるつもりはないです。次のお話はいつになるかまだ不明ではありますが、5月中にはなんとか完結まで持っていきたいところですね。しかも別ルートも残っているからそっちもやらないと……w。そんな中でぼざろに浮気してるワイって………。

 ではまた次回で。


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第120話 今までも、これからも【本編最終話】

 大変長らくお待たせ致しました。途中エタりかけたりしたものの、ようやく本編最終回になります。少し駆け足気味かもしれませんが、これ以上書くと蛇足になってしまうかなと思ったので、必要最低限しか書いていないつもりです。それでも余裕で1万文字を越えていますけど………。

 一応今後も番外編として不定期に更新はしていくつもりですが、とりあえず本編はここまでとします。それでは、最終回をどうぞお楽しみください。



悟飯と二乃が付き合い始めて、早くも2年が経過していた。当時18歳だった悟飯と二乃は今や20歳になっていた。

 

2人は既に結婚を前提に付き合っていたが、悟飯は優秀だった為か、飛び級をして既に大学を卒業し、今は学者補佐をやっていた。悟飯の夢まであともう一歩というところに差し掛かっていた。

 

悟飯「あの時からもう2年も経ったんだね。時の流れは早いもんだ………」

 

二乃「そうね〜。にしても、まさか悟飯が飛び級するなんて思いもしなかったわ。まあ、お陰で当初の予定より早い段階で結婚できるようになったからいいけど♡」

 

悟飯は過去に、父親のマルオに結婚前提で付き合っていることを告げた。その時に『結婚は、必ず二乃を幸せにできる状況になってからするように』と言われた。悟飯が学者補佐になって高給取りになったことにより、その条件を達成したというわけだ。

 

悟飯としてはもう少しゆっくりしてもいいんじゃないかと思っていたが、二乃は言うにはできるなら早く結婚したいらしい。まあ、2年の付き合いにもなればそんな意図は悟飯にも伝わっており、かなり早い段階から結婚式の計画を立てていた。

 

悟飯「よかった。みんなこの日なら来れるってさ」

 

二乃「それはそうよ。だってその日は私達にとっては特別な日だし」

 

そして、結婚式に選んだ日は5月5日。二乃の誕生日であり、他の五つ子にとっても誕生日の日である。

 

悟飯「一花さんも今じゃ世界的大スターだもんね〜。むしろよくこの日に休みを取れたね」

 

二乃「まあ、途中からアクション女優として有名になってた気がするけど…」

 

実は、バビディが謎の復活を遂げて撃破した後、一花に弟子入りを頼まれたのだ。悟飯に断る理由はなく、これを了承して、一花は2人目の弟子となった。それに続いて風太郎も四葉に守られてばかりではダメだと思い、同じく弟子入り。五月もまた、生徒を守れる教師を目指したいと更に後から弟子入りをした。流石に全員が全員四葉のように急成長したわけではないが、各々の目標にはなんとか届いたらしい。

 

二乃「一花はまだ分かるけど、まさか五月までもが弟子入りするとは思わなかったわ」

 

悟飯「あの時の五月さんは真剣な目をしていたよ」

 

二乃「まあ、責任感の強いあの子らしいわ………。って、もうこんな時間じゃない!早く出かけましょ!」

 

悟飯「そんなに急がなくても………」

 

そして、この日は忙しい悟飯が珍しく休日だった。二乃はひと月ほど前には耳にピアス用の穴を開けており、いつか2人でピアスを見に行きたいと考えていたそうだ。

 

 

 

 

 

そして日は経ち5月5日。めでたく悟飯と二乃の結婚式が開催される日が訪れた。5月5日という日は五つ子にとって特別な日だが、今年はただの誕生日ではない。

 

一花「帰ってきたわニッポン!いや〜この雰囲気が懐かしいな〜」

 

五月「最近の一花は忙しそうだったもんね。よくこの日に休暇取れたよね」

 

一花「社長にちょっと事情を話したら融通利かせてくれたんだ」

 

五月「それじゃ、早くいこう!もうみんな集まってるみたいだし」

 

一花「お〜、五月ちゃん車運転するようになったんだ〜。話には聞いていたけど、実際に見ると……違和感すごいね」

 

五月「久しぶりに会ったと思ったら失礼だね……。上杉君に影響されちゃったのかな?」

 

一花「むぅ……。五月ちゃんの意地悪」

 

実は五月は免許を習得する際、学科試験の方は問題なく受かったものの、技術試験の方で苦戦していたという裏話もあるのだが、ここでそれについて詳細に語るのは野暮だろう。

 

一花「みんな久しぶり!元気にしてた?」

 

三玖「一花。お帰り」

 

四葉「と言っても、私はそんなに久しぶりってわけじゃないけど……」

 

一花「それは四葉から会いに来てるからでしょ」

 

実は姉妹思いの四葉は、至る所で一人暮らしをしている一花の身を案じて定期的に会いに行っていた。普通なら気軽に海外へ飛び回ることなどできないが、四葉ももう立派な戦士の一員。外国に飛ぶことなど容易なことだった。

 

四葉「だって未だに一花の部屋汚れてるんだもん。自分で掃除しないじゃん」

 

一花「あはは…。面目ない…………」

 

二乃「全く、大女優様になっても自堕落なところは変わらないのね」

 

一花「あっ、今日の主役のご登場だね」

 

大人になった五つ子は皆それなりにオシャレを覚えており、学生の頃はすっぴんだった三玖、四葉、五月も最低限のおめかしをしていた。だが、今日の主役の二乃は一際力を入れていた。

 

一花「二乃のオシャレ力には際限ないのかね〜?今度から二乃を担当メイクさんとして雇っちゃおうかな?」

 

二乃「生憎、私はそんなに暇じゃないのよ」

 

一花「あれ?ピアス付けてるの?」

 

二乃「ええ。ハー君と一緒に選んだのよ。結婚するまでには付けたいって昔から思ってたし」

 

一花「なーんだ…。せっかくだから経験者であるお姉さんがピアス穴空けようとしてあげたのに………」

 

二乃「なんか別の意図を感じるから気持ちだけ受け取っておくわ」

 

四葉「それよりみんな!そろそろ会場に行こうよ!二乃の準備もあるし!」

 

中野家のやり取りはこんな感じだった。ちなみに二乃の母親にあたる零奈は、マルオを迎えに行っているそうだ。その為この場では不在だった。

 

 

 

一方で、孫家では……。

 

悟空「チチ〜、ほんとにこんな服装でいいんか?」

 

チチ「むしろいつもの道着じゃダメだべ。今日は息子の晴れ舞台だぞ?」

 

悟空「それはそうかもしれねえけど…。なんか肩っ苦しいんだよなぁ…」

 

チチ「それオラ達の結婚式の時も言ってたべ」

 

もうそんなに経つのかぁと悟空は昔のことを思い出していた。天津飯に敗北した3年後の天下一武道家でチチと再会し、お嫁にもらうという意味をそこで知り、天下一武道家史上に名を残すようなプロポーズをした。

 

今日の主役、悟飯が誕生したのはその数年後。悟飯を仲間達に顔合わせをした日には、自分が宇宙人だったことを知ったり、息子が攫われたり、自分は殺されたりと散々な日だった。思えば楽しむ戦いから守る為の戦いに切り替わったのは、この時からだったような気がした。

 

悟空「………いつ死んでもおかしくなかったのに、こうして年貢を納める時が来るとは思わなかったな…。もしかすると、オラはこの日のために戦い続けてきたのかもしれねえな……」

 

悟天「なんかお父さんがお父さんらしくないこと言ってる」

 

悟天のツッコミにずっこけながらも、既に出発した今日の主役を追いかけるために3人も出発した。

 

 

 

そして式場では、既に二乃はお色直しを、悟飯もまた披露宴に出る準備をしていた。

 

悟飯「き、緊張するなぁ……」

 

「新郎様。新婦様のご親族がお越しくださいました」

 

悟飯「おっ…!確かあの4人は二乃と一緒に来たはずだから…………」

 

マルオ「すまないね。仕事が立て込んでいて、来るのが直前になってしまった」

 

零奈「今日くらいお休みを取ってもよかったでしょう……」

 

悟飯「マルオさんに零奈さん…!」

 

零奈「ふふっ。どうやら緊張しているようですね。心配いりませんよ。今まで数多くの強敵を倒してきた孫君なら」

 

悟飯「それとこれとは話が違いますよ………」

 

マルオ「……孫君。僕は回りくどいことが苦手だから単刀直入に言うよ。二乃は心から喜んでいるかい?」

 

悟飯「……!」

 

悟飯は二乃ではないため、二乃の心情全てを把握しているわけではない。だが、交際を始めてから幸せそうにしていない二乃を見たことがなかった。

 

いつもの悟飯ならば、きっと喜んでいると思いますなど、断言を避けるような言葉選びをしていたはずだ。でも、この場においてはそれではダメだと、自身の直感が言っていた。

 

悟飯「はい。予定よりも早く結婚できることになって、それはもう物凄く喜んでますよ」

 

マルオ「………そうかい。そういえば、君はもう既に学者補佐だったね…。君が交際報告に来た時にも言ったと思うが、二乃を不幸にするようなことがあれば、僕は君を許さないよ」

 

このマルオの言葉には、他の人とは違う重みがあった。その当時も愛していた人で今の妻、零奈は無堂に見捨てられ、残ったのは5人の子供だった。それでも零奈は子供に愛情を注ぎ、やがて過労が原因と思われる病気で倒れてしまった。

 

同じような過ちを繰り返したくない。そんなマルオの強い想いが含まれた一言だった。

 

悟飯「そんなことがあれば、僕は僕自身を許すことができませんよ」

 

だが、そういった経験をしていないとはいえ、悟飯もまたマルオと同じ気持ちだった。悟飯は交際を始めた時から既に、『彼女が望むなら、同じ墓場に入るまでそばに居続ける』と、覚悟を決めていた。

 

マルオ「…………そうだったね。今までの君を見るに、さっきの忠告は余計なお世話だったね。これからも、娘をよろしくお願いします」

 

悟飯「はい…」

 

「新郎様。新婦様がお呼びです」

 

悟飯「あっ、でも………」

 

マルオ「いいよ。行きなさい」

 

悟飯「………では」

 

悟飯は一度頭を下げると、待機室から出て二乃の下に向かった。

 

 

 

side悟飯

 

悟飯「二乃〜、来たよ〜」

 

二乃「もうすぐ着替え終わるから、そこで待ってて〜」

 

悟飯「はーい」

 

この日を楽しみにしていたのは二乃だけじゃない。勿論僕だって、この日を楽しみにしていた。でも結婚式の日を決めてから今日に至るまでは物凄く短く感じた。まるであの時の高校生活のように。

 

僕の高校生活は、普通の人とは少し違ったのかもしれない。クラスで話す知り合いなら沢山できたけど、心の底から友達だと言い張れるほどの友人はいなかった。だけど、よく勉強するという共通点から、風太郎と仲良くなった。

 

お互いに学力を研鑽していった結果、2人とも常に学年1位をキープすることになり、それがきっかけであの5人に出会った。

 

風太郎と家庭教師のバイトをすることになったのには驚いたけど、それよりもこの世に五つ子なんて存在するんだって思った。別に五つ子が生まれる確率はゼロではないからあり得ない話ではない。でも、まさかその子達と家庭教師と生徒という形で関わることになるとは思ってもいなかった。

 

最初は特に二乃との仲は良好と言えるものではなかったけど、今ではこうして婚姻に至るまでに深い関係になった。出会った当初はまさか結婚するなんて、まさか付き合うなんて、まさか好きになるなんて考えもしなかった。人生って何があるか本当に分からない。

 

……っと、感傷に浸るのは式が終わってからにしよう。感傷に浸るのはいつでもできるけど、僕と二乃の結婚式は今日だけの特別なイベントなのだから。

 

「おまたせ〜!!」

 

悟飯「……………えっ?」

 

そういえば、今日もあの日の夢を見たっけ。初めて見たあの子達は、容姿も気もよく似ていた。それほど印象的で、僕にとってはかけがえのない思い出の一部になっていたんだろう。

 

悟飯「…………なにしてるの?」

 

「五つ子ゲーム!」

 

「ファイナルよ!」

 

「愛があれば」

 

「当然見分けられるわよね?」

 

「ちなみに気で読み取るのは禁止よ!まさかとは思うけど、悟飯はそんなセコい真似はしないでしょ?」

 

悟飯「………はははっ」

 

この子達は……。まさか結婚式という土壇場でこんなことをしてくれるとは…。二乃や四葉さんはともかく、他の3人は今のところ結婚する予定がないのに、こんなことで花嫁衣装を着て思うところはないのだろうか?

 

悟飯「全く…。でも、君達にとってはこれは遊びじゃないんでしょ?」

 

「よく分かってるじゃない」

 

「これでも花嫁の親族だもの。っていうのは嘘で、私が二乃よ」

 

「何言ってんのよ。二乃は私よ!」

 

「花嫁と言えば私でしょ!」

 

悟飯「…………全く。二乃、僕のことを馬鹿にしてるでしょ」

 

付き合い始めて2年…。この子達と関わり初めてから3年も経ったのだ。もう気なんて使わなくても誰が誰だかなんて分かる。特に、僕が一番愛してやまない二乃を見つけることなんて、今まで解いたどんな難問よりも簡単なことだ。

 

「………えっ?」

 

 

 

『宴もたけなわとなりましたが、そろそろお時間のようです。最後に新婦から親御様へ感謝を込めたメッセージです』

 

「お父さん、お母さん。私が今日この日を迎えることができたのは、2人がいたからに他なりません……」

 

 

 

 

「………えっ?私?」

 

悟飯「今の僕なら、二乃だけとは言わずに、他のみんなだって見分けることができるんだから。君は三玖さん…。そうでしょう?」

 

 

 

『三女の三玖とは、価値観や考え方が私と正反対だったのでよく喧嘩しました。でもその分、姉妹というよりは親友に近い存在かもしれません。いつか三玖と一緒に、私の夢を叶えたいと思っています』

 

 

 

悟飯「わっ…!」

 

三玖「………たまに不安になる。私、上手くやれてるかな?」

 

悟飯「………そんなの、三玖さんが一番よく分かってるんじゃない?三玖さんはいつもそうやって弱い自分と戦ってきた。そうして勝った結果は間違いなく君の戦果だよ。もっと自信をもって!」

 

三玖「……!うん!そう言ってくれると思ってた、ありがとう悟飯!」

 

悟飯「………そして、次に君が一花さん」

 

 

 

『長女の一花は自堕落だけど、私たち姉妹を優しく纏めてくれる、私の自慢の姉です。ご存知の通り、今では大活躍の大女優さんで、私の憧れでもあります』

 

 

 

 

一花「せいかーい。一応聞くけど、本当に気を利用してないんだよね?」

 

悟飯「そういう嘘を見破るの、一花さんなら簡単でしょ?」

 

一花「まあね〜」

 

一花さんはそう言うと、右手の甲に紋章を出現させた。最早この力は一花さん自身の能力となったようで、今ではピッコロさんの指導の元、魔術も自由自在だ。

 

悟飯「一花さんには特に辛い目に合わせちゃったよね……。申し訳ないと思っている」

 

一花「謝らないでよ。悪いのは悟飯君じゃないんだし、それに、結果論ではあるけど、これで良かったと思ってるからさ!」

 

一花さんは間接的に僕のせいでバビディに洗脳され、実の姉妹である四葉さんを傷つけてしまった。でも……。

 

悟飯「君の姉妹に対する思いの強さは尊敬に値するよ。僕は二乃を誰にも負けないくらい愛してるって自負してるけど、君には負けちゃうかも……」

 

その思いの強さ、意志の強さは他の4人にはないもの、一花さんにしかない強さだと思う。

 

一花「そんなことないよ。こっちが妬けちゃうくらいに2人は愛し合っているんだからさ〜」

 

「えっ?一花っていつから私のことをそんな目で見てたの?生憎だけど私にはそういう趣味はないの」

 

一花「そういう意味じゃないからっ!!!」

 

悟飯「あはは!なんて言ってるけど騙されないよ。君は五月さんでしょ?」

 

「ええ!!?」

 

 

 

『五月は私の可愛い妹です。偶に心配になることもあるけど、私よりもしっかりしているところもあります。数々の苦難に阻まれても、最後まで諦めずに夢を叶えたその姿勢は、姉である私も見習いたいほど立派なものです』

 

 

 

五月「あちゃ〜…。なんとか騙せるかな〜って思ったんだけどなぁ……」

 

悟飯「ということは、僕が見分けることができるっていうのを信じて疑わなかったみたいだね」

 

五月「む〜。一応前よりも変装上手くなったんだけど、自信がなくなっちゃうな〜」

 

悟飯「いやいや、前よりも上手くなってるよ。と言っても、今後変装する機会なんてそんなにないと思うけどね」

 

五月「それを言われると痛いなぁ…」

 

悟飯「……この際だから言うけど、実は僕が君達を恋愛対象として見始めたのは、君がきっかけなんだ」

 

「「「「「えっ!!!?」」」」」

 

この発言はどうやら5人にとっては衝撃的な事実だったらしい。

 

五月「ど、どういうこと!!?」

 

悟飯「ほら、五月さんが家出してお泊まりした時があったじゃん?あの時……」

 

五月「わーわーっ!!!!その時のことは忘れてください!!!!!」

 

悟飯「ありゃりゃ」

 

あの時は本当に驚いたよ。お母さんは五月さんを僕の隣に寝かせようとしてくるし、五月さんは五月さんで僕を押し倒してあんなことやこんなことをしてきたし………。僕の理性が働かなかったら、五月さんと交際を始めて、やがては結婚していたのかもしれないな…。もし五月さんがそこまで計算していたと考えるとゾッとするので深くは考えないようにしているけど。今の反応を見るに衝動的なものだったらしい。

 

でも、もしもあの出来事がなかったら、僕は今も独り身だったかもしれない。愛する人と一緒にいる幸せを知らないまま過ごしていたかもしれない。だから、今ではあの事も感謝している。

 

三玖「………悟飯。後でじっっくり聞かせてもらうね

 

悟飯「お、お手柔らかにお願いします……。って、そこは二乃が言うべき台詞なんじゃないの?」

 

三玖「私の方が先に悟飯のこと好きだったのに………

 

悟飯「あ、あはは………。さ、さーて、二乃はどっちカナー?」

 

一花「露骨に話を逸らしたね」

 

五月「うん。逸らしたね」

 

「あら?ここに来て分からないなんてことはないわよね?」

 

「もしここで間違えちゃうようなら、親族として結婚は認められないわね。まあ、そういうのは置いといて、私が花嫁なんだけど」

 

悟飯「それで君が四葉さんでしょ?」

 

 

 

 

『四女の四葉は、姉妹の中で一番親切で、誰にでも優しく接することができる自慢の妹です。でも偶に人の頼みを断りきれずに抱え込みすぎちゃう上に自分だけで解決しようとすることがあるので、たまに心配になります。でも、そんな四葉にも信頼できるパートナーがいるので、私が心配する必要はもうないでしょう』

 

 

 

 

四葉「あはは…。あっさりと看破されちゃいましたね。流石孫さんです!」

 

悟飯「でも四葉さんも変装が上手くなったよね。演技だけで判断するとしたら難しかったよ」

 

四葉「私は演技自体は苦手ではないんですけど、嘘をつくのが苦手でして……」

 

悟飯「えっ?でもさっきは普通に嘘を言ってなかった?」

 

四葉「花嫁とは言いましたけど、()()()()()()()()()()()()()()()()ですよ?」

 

悟飯「ああ、そういうこと…………」

 

偶に思う。実は一番ずる賢いのは四葉さんなんじゃないかって。でも高校生の頃の四葉さんはこんな感じじゃなかったので、ひょっとすると風太郎の影響を受けているのかもしれない。

 

悟飯「多分自覚はあると思うけど、四葉さんは自分で抱え込み過ぎちゃう癖があると思うんだ。でも誰かに相談することは恥じゃないよ。君が頼ってきたところで、僕は勿論みんなも迷惑だなんて微塵も思わない。それだけは覚えていてほしいんだ」

 

四葉「はい!心に刻みます!」

 

悟飯「………そして君が、二乃だ」

 

僕は事前に準備していた指輪を、彼女の左手薬指にはめてあげた。僕はその時の彼女の表情を、永遠に忘れることはないだろう。もしも忘れるとしたら、それは僕という存在そのものが消滅した時だろう。

 

二乃「…………ええ、そうよ。全問正解なんてやるじゃない。別に私だけ当ててくれてもよかったのよ?」

 

悟飯「でもそれじゃ他の4人に失礼でしょ?せっかく気合いを入れて用意してくれたのに」

 

二乃「ほんと、変なところでも真面目なんだから………」

 

 

『姉妹のみんながいなかったら、私の人生は全く別物になっていたでしょう。時には五つ子ということを負い目に感じたことはあったけど、その分何倍何十倍も楽しかった記憶が残っています。もしも生まれ変われるとしても、私は次も五つ子になることを望みます。私は、五つ子の姉妹として生まれることができて幸せでした!』

 

 

 

悟飯「………本当に、今までありがとね。君達がいてくれたから、今の僕がある。高校生活を楽しめたのも君達のおかげだよ」

 

一花「何を言ってるの?今世の別れみたいなことを言ってるけど、これからは家族として私たちと関わるんだよ?良かったね悟飯君。大女優様の親戚になれるよ〜?」

 

悟飯「はははっ。そうだね」

 

二乃「それを言うなら、一花だって私のおかげで何度も地球を救った大英雄様と親戚になれるんだから感謝しなさい!!」

 

三玖「なんで二乃が自慢気に話すの…?」

 

二乃「これから私たちは正式に夫婦になるのよ!夫婦の財産は共有物なの!つまり悟飯の名誉は私の名誉にもなるのよ!」

 

五月「それはちょっと違くない?」

 

三玖「その暴論が通るなら、同じ遺伝子で構成されてる私も悟飯のお嫁さんということになる」

 

四葉「えっ?」

 

五月「ええ!!?なら、私達は5人の妻に2人の夫という複雑な関係ということに……!!!?」

 

一花「あはは……。冗談はほどほどにね〜」

 

 

 

『他の家とはちょっと違うのかもしれないし、人から見れば奇妙なのかもしれないけど、私はそんな家族が大好きです。今までも、これからもずっと……』

 

 

 

 

悟飯「はぁ……。緊張した〜」

 

風太郎「お疲れ様、悟飯。スーツは返しといてやるよ」

 

悟飯「ありがとう風太郎」

 

風太郎「まさかもう結婚することになるとはな。いずれするのは確信していたが、まさか学生のうちにするとは…」

 

悟飯「違うよ風太郎。僕は飛び級でもう卒業したから、今は学者補佐だよ」

 

風太郎「まさか大学に行ってから才能の差を見せつけられるとは思ってもいなかった…………」

 

悟飯「そんな悲しいことは言わないでよ。僕は物心がつく前から勉強してたんだから仕方ないって」

 

風太郎「でも死闘を繰り広げながらだろ?俺には到底真似できないね」

 

悟飯「それはそうだよ。僕にはできなくて風太郎にしかできないこともあるんだから」

 

風太郎「ああ、そうだったな。お前はとことん人を甘やかすからな。この前の二乃の暴走だって、俺と四葉でなんとか止めたんだからな」

 

悟飯「あはは……。その節はどうも……」

 

風太郎「んじゃ、俺はこれを返しに行ってくるぜ」

 

悟飯「うん。ありがとう」

 

そう言うと風太郎はスーツを丁寧に畳んでから部屋を出た。最近は四葉と同棲するようになり、風太郎も家事をよくするようになったのだそう。

 

二乃「は〜、緊張した〜………。なんかスピーチの時手慣れてなかった?」

 

悟飯「それは多分、大学では人前で発表する機会がたくさんあったからだと思うよ。論文発表の時なんて、教授の質問攻めに合わないかヒヤヒヤしたんだから、その時に比べたらまだマシだったよ」

 

二乃「ずっと一緒にいるから気にしてなかったけど、私ってとんでもなくハイスペックな人と付き合ってたのね…」

 

悟飯「何言ってるの。ここまで頑張ってこれたのは二乃のお陰だよ」

 

二乃「嬉しいこと言ってくれるわね。でも、誓いのキスの時は流石に緊張してたみたいね?震えてたわよ?」

 

悟飯「そ、それは……。あんなに大勢の前でキスをするのは初めてだったから流石にね〜…………。それに揶揄ってるけど二乃もでしょ!」

 

二乃「ナンノコトカシラ。そんなことより向こうでみんなが待ってるから行くわよ!」

 

悟飯「はーい(露骨に話を逸らしたな)」

 

披露宴も無事に終わり、2人は緊張から解き放たれた。この日を境に、2人は正式に夫婦となり、家族となった。婚姻後は新婚旅行も計画しており、その計画も今から本格的に練ろうというところだった。

 

悟飯「お待たせ〜って、何してるの?どこか旅行に行くの?」

 

そしてテーブルの上に乗せられた大量の旅行パンフレットを見て、悟飯はそう言った。

 

五月「行くのって、なんで他人事なの?」

 

悟飯「えっ?」

 

風太郎「あー、すまん悟飯。俺は止めたんだがな……………」

 

悟飯「ど、どういう意味?」

 

二乃「何って、決まってるでしょ。まさかもう忘れたわけじゃないでしょうね?」

 

悟飯「いや、二乃と新婚旅行をしようって話は前からしてたけど、他のみんなは関係ないでしょ?もしかして卒業旅行の計画?みんなそろそろ卒業だっけ?」

 

三玖「えっ?2人だけで行くの?」

 

悟飯「むしろ新婚旅行ってそういうものじゃないの?」

 

五月「孫君。私たちの関係って他の人とは一味違うでしょ?」

 

悟飯「あーもう言いたいことは分かったよ。みんな付いてくる気なんでしょ?」

 

四葉「はい!ご迷惑でしたか?」

 

悟飯「いや、別に迷惑ってわけじゃないけど………けど……………」

 

風太郎「お前の言いたいことはよく分かる………」

 

二乃「別に2人きりで旅行なんてこの先いくらでもできるじゃない。でも、7人揃って予定を空けられることなんてなかなかないのよ?せっかくだしみんなで行った方が楽しいじゃない!」

 

悟飯「…………それもそっか」

 

どうやら風太郎も含めて他の5人も悟飯と二乃の新婚旅行について行く気のようだ。悟飯は五つ子姉妹の絆の強さを侮っていたようだ。

 

二乃「それじゃあみんな!行きたいところに指差すわよ!せーの…!!」

 

 

悟飯「風太郎。そういえば高校の時もこんなことなかったっけ?」

 

風太郎「ああ。あったな。確かみんなで卒業旅行の行き先もあんな感じで決めてたな」

 

悟飯「そういえばあの日の風太郎、四葉さんと結婚式をあげる夢を見てたんでしょ?本当は今すぐにでも式をあげたいんじゃないの?」

 

風太郎「馬鹿野郎。俺はまだ学生なんだぞ?そんなことしたらマルオさんに何されるか分からん」

 

悟飯「あの人ならなんだかんだで許してくれそうなんだけどなぁ…(否定はしないんだなぁ)」

 

風太郎「…………そういや、あの時も同じことを思ったっけな」

 

悟飯「『五つ子ってめんどくせえ』……だっけ?」

 

風太郎「なんで一語一句覚えてるんだよ。気持ち悪いぞ」

 

悟飯「でも風太郎も満更でもないんでしょ?みんなで旅行行くの」

 

風太郎「………そういうお前はどうなんだよ?」

 

悟飯「それは勿論………」

 

『これから先も、この5人が仲良くいてくれると嬉しいな。』悟飯は2年前の卒業旅行の時も、この新婚旅行の時も、全く同じことを思った。

 

悟飯「親友なら当ててみなよ、僕みたいに」

 

風太郎「………訂正するわ。お前もあの五つ子に負けず劣らずめんどくせえよ…」

 

悟飯「素直になれない風太郎も大概だと思うよ?」

 

風太郎「おっ?言うようになったな、お前。着実に二乃の影響を受けているようだな」

 

悟飯「じゃあ風太郎は四葉さんみたいに頭にリボンをつけるようになるのかな?」

 

風太郎「やめてくれ。俺があんな馬鹿デカリボンをつけるわけないだろ」

 

悟飯「フラグにならないといいね?」

 

風太郎「やめろ?俺は絶対につけないからな!?」

 

 

 

 

 

 

 

さらに3年後。結婚して月日が経った今でも悟飯と二乃の仲は良好だった。二乃は専門学校を卒業して三玖と共に店を開いた。上杉家の一階は、実は上杉母がパン屋を営むために準備されていたスペースだったのだ。上杉母も無事に生き返ったということで、一緒に働いているようだが……

 

『せっかくなんだし、二乃ちゃんと三玖ちゃんでお店を開いたら?』

 

と鶴の一声があり、一応店を管理しているのは二乃と三玖ということになっている。『なかの』という店名をつけているのだが、意外にも1番の人気メニューは上杉母の作るパンだった。このパンに関してはお持ち帰りもできるのが強いのだろう。

 

そして、悟飯も学者補佐から晴れて学者となり、彼もまた夢を叶えた。今は研究に勤しんでいるものの、家庭の時間もしっかり忘れていない。

 

「パパ〜!そろそろふー君と四葉叔母さんの結婚式に行かないと遅れるんじゃないの〜?」

 

悟飯のことをパパと呼んだ幼い少女は、『二依菜(にいな)』。2年ほど前に悟飯と二乃の間に生まれた長女である。容姿は二乃のそれを強く引き継いでいるが、髪の色は悟飯から遺伝したのか、綺麗な黒だった。髪型は、昔の二乃と同じツーサイドステップに蝶型のリボンをつけたものだ。

 

悟飯「そうだね。早く行かないと。ってあれ?お母さんは?」

 

二依菜「お母さんなら先に行ったよ。なんでも、四葉叔母さんの特別な日だからって」

 

悟飯「あ〜…。なるほどね〜。それなら僕達は先に式場に行こうか!」

 

二依菜「うん!!ふー君も四葉叔母さんも、このお父さんとお母さんみたいに綺麗になるのかな?」

 

 

【挿絵表示】

 

 

悟飯「そうだね。きっと風太郎はかっこよくなって、四葉さんは可愛くなると思うよ!」

 

二依菜「でもお母さんには敵わないって言うんでしょ?」

 

悟飯「ありゃりゃ…。二依菜はお利口さんだね〜」

 

二依菜「えっへん!」

 

娘の二依菜は、悟飯と二乃を中心に、悟空、マルオ、ピッコロも写っている写真を指差した。

 

ちなみに補足すると、二依菜は誰に似たのか、物心がついた時から悟空かピッコロに稽古をつけてもらっており、2歳にして既に相当な強さを身につけていた。流石に超サイヤ人にはなれないものの、既に舞空術も使えるほどである。

 

悟飯「あれ?悟天とお父さん、何をしてるの?」

 

子供ができてからは、2人は孫家の隣に新しい家を建てて、そこに住み始めていた。その為、少し歩けばすぐに実家に帰れる。つまり、悟天と悟空もすぐそばにいるということだ。

 

悟天「ちょっとお父さんに稽古をつけてもらってたんだ…………」

 

悟飯「へぇ?悟天が?急にどうしたんだよ?」

 

悟空「それがな、悟天のやつが」

 

悟天「わーっ!!お父さんそれは言わない約束でしょ!!?」

 

悟空「おーっとそうだった。わりぃわりぃ」

 

二依菜「どうせらいはちゃんでしょ?」

 

悟飯「あー、なるほど…。悟天、兄ちゃんもその気持ちはよく分かるぞ。その気持ちを忘れないようにね」

 

悟天「別にそういうのじゃないし…」

 

悟天は二依菜に悟空と間違われることが多くなったこともあり、あの特徴的な髪型を強制的に直して髪型を変えてしまったようだ。悟飯的には少しショックだったらしい。

 

悟飯「というか、これから結婚式に参列するのにそんなに泥だらけになってどうするの!!?」

 

悟空「わりぃわりぃ…!ちょっと熱が入っちまってよ〜…」

 

悟飯「軽くシャワー浴びてスーツに着替えてよね2人とも!僕達は先に行ってるから。お父さんは瞬間移動ですぐに来れるでしょ?絶対に道着じゃなくてスーツで来るんだよ〜!!!」

 

悟飯はそう言いながら、二依菜と共に舞空術で式場に向かった。

 

悟天「…………なんか兄ちゃん。お節介になったよね」

 

悟空「チチや二乃みてぇになっちまったな、あいつ」

 

 

 

二依菜「あれー?ママもいつもより綺麗になってる〜?どうして?」

 

二乃「ふふふっ。何をするためだと思う?」

 

悟飯「…………まさか」

 

二乃「勿論!あんたにだけやって上杉……だと紛らわしくなるのよね。()()()にやらない理由はないわよ。私の身内と結婚するなら、これくらいの問題はすんなり解けてくれないと安心して任せられないわ」

 

悟飯「まあ、その心配はいらないと思うけどね」

 

二依菜「お母さん何をするつもりなの〜?」

 

悟飯「ふふふっ。なんだと思う?二依菜、当ててごらん?」

 

二依菜「お父さんを見限ってふー君のお嫁さんになるとか?」

 

二乃「そんなことするわけないでしょ!!!?

 

この時、悟飯はこう思った。この娘は将来は大物になるだろうなぁと。そして3年ぶりに五つ子ゲームファイナルが開催され、風太郎は悟飯の時のように呆気なく全問正解をさせたらしい。

 

 

 

 

 

悟空「………にしても、悟飯が結婚してもう3年か……。早えもんだなぁ」

 

悟空は結婚写真を眺めながらそんなことを呟いていた。

 

そして、その写真を持ち運び、物置小屋まで移動した。その中にはドラゴンボール、四星球が飾られていた。

 

悟空「………じっちゃん。オラの息子の悟飯がもうこんなに大きくなっちまったぞ。できればじっちゃんにも見せてやりたかったな〜。あれから息子が辛そうな顔をしたのを見たことねえんだぞ?」

 

その四星球は、悟空の育ての親で息子の悟飯と同姓同名でもある、孫悟飯の形見だった。その四星球を育ての親の孫悟飯として見立てて、悟空は語りかけていた。

 

悟空「オラ、今まで楽しいから、好きだからって理由で戦っていたけど、息子の悟飯の戦いを見て思ったんだ。大切なものを守るために戦うってのも悪くねえって。勿論これから戦いを楽しまねえわけじゃねえけど、オラはいつまた悪くて強えやつが現れても、大切な人達を守れるように、もっともっと強くなる」

 

悟空は難しいことは苦手だ。だから感じたことを、思ったことをそのまま口に出しただけだった。だが、それでも育ての親には伝わったようだ。

 

 

悟飯(爺)「ワシも、あの暴れん坊が今ではしっかりお爺ちゃんやってて安心したぞ〜」

 

 

界王を介しているわけではなかったので、悟空にその言葉は届かなかった。でもそれでいいのだ。悟空の言葉が育ての親である悟飯に伝わるだけで。

 

悟空「よし、悟天、行くか!」

 

悟天「うん!」

 

こうして、悟空はスーツに着替えた後に悟天を連れて瞬間移動した。

 

 

 

 

悟飯「風太郎、お疲れ様」

 

風太郎「おう。すまんな、スーツ返しに行ってもらっちゃって」

 

悟飯「それくらいお安い御用だよ。それで、あの5人は?」

 

風太郎「ああ。あの時と同じだよ。人の新婚旅行に勝手に付いて来ようとしてやがる」

 

悟飯「ははは……。二度あることは三度あるとはまさにこのことだね。……ん?」

 

悟飯は5人が相談し合う様子を微笑ましく見守りながらも、ある違和感に気づいた。

 

悟飯「ねえ風太郎。四葉さんのリボンはどうしたの?」

 

風太郎「ああ。もういらねえんだとよ」

 

悟飯「ええ!?毎日欠かさず付けていたのに……。一体なんで……?」

 

風太郎「…………さあな」

 

別に悟飯になら話してもよかったのだが、風太郎はなんとなくこのことを秘密にしておきたかった。四葉の言動から察するに、四葉がリボンを付けた理由は、『私が四葉だと気づいてもらうため』。風太郎がノーヒントで五つ子を見分けられるようになったことによって、そのリボンは役目を終えたというわけだ。

 

悟飯と風太郎は親友。だとしても、このことは風太郎と四葉の心の中だけに留めておきたかったようだ。

 

四葉「風太郎〜!!」

 

二乃「悟飯〜!!」

 

「「あなたは行きたいところないの〜?」」

 

悟飯「………だってさ。風太郎はどこか行きたいところある?」

 

風太郎「俺は別にどこでもいいさ。あいつと………。アイツらと一緒にいられるならな」

 

悟飯「大事なのは、どこかにいることじゃなくて"みんな"でいること、だもんね!」

 

 

 

 

 

 

これで、『孫悟飯は五つ子姉妹の家庭教師をするそうです』の物語はおしまい。

 

物語自体は終わってしまうが、悟飯達はこれからも幸せな生活を送っていくだろう。だが、もしかすると、更なる強敵がやってくるかもしれない。あの敵が強くなって蘇ってくるかもしれない。悟空達の知らない宇宙があるかもしれない。まだ誰も見たことのない新たなドラゴンボールがあるかもしれない。

 

しかし、それらをここで語るのは野暮なことだ。何故ならこれは、悟飯と風太郎と五つ子姉妹達の、奮闘、恋愛、友情を描いた物語なのだから。

 

 

 

孫悟飯は五つ子姉妹の家庭教師をするそうです

 

おしまい

 




※最終話につき、クソ長後書き注意

 終わった……。終わりましたよ。本編だけなら120話。IFとファンアート紹介も含めれば全部で122話…!1話平均1万文字前後………。よく完結まで持ってこれたなぁと思っています。実はちゃんと完結させたシリーズはこれが初めてなんですよ。他は途中でスランプに陥ってエタったのがほとんどです……()。達成感マジで凄いです。ええ、ほんとに……。

 最初はただごと嫁の二次創作小説を見たいだけだったのですが、何故かドラゴンボールと五等分の花嫁のクロスオーバーという形で私自身が書き始めていました。本当になんでだろうね?途中指摘もあった通り、絶対合わんだろって自分でも思っていたんですけど、書き進めていくと意外とそうでもなく、むしろバトル展開を入れた方がしっくり来ました。最初期は本当にバトル展開は全くない方針だったんですよね。でもバトル展開も導入した結果、バーダックの復活、ターレスの超化、人造人間零奈の誕生に、未来悟飯の登場。さらには魔人ブウ編からはごと嫁側のキャラクターも本格的に戦力になり…。

 今考えると、両方の作品が好きな人にとってはあまりにも贅沢ですね。盛りに盛ってますやん。我儘設定ってレベルじゃあねえぞ。皆さんは私が凄いっておっしゃっていますけど、私からしたらこの作品を作り上げたのは両原作者の鳥山明先生、春場ねぎ先生は勿論のこと、『孫悟飯は五つ子姉妹の家庭教師をするそうです』の読者である皆さんが作ったも同然です。というのも、この作品は度々読者の意見を反映して方針を何度も変えてるんですよ。もし意見を反映されてなかったら、ただ悟飯が家庭教師をしていくだけになるんですよね。それだと多分赤まで上がらなかったんだろうなぁってしみじみ思っております。

 更に、魔人ブウ編の途中からだったかな?ファンアートを書いてくれた方が出てきまして、それを機に沢山の人がファンアートを書いてくださいました。まさか自分の作品が絵にされるとは思ってもいなかったので、本当に感動しました。

 これ以上書くと文字数がとんでもないことになってしまいそうなので、そろそろまとめさせていただきます。ここまでご覧いただき、誠にありがとうございました!本編は完結ということになりますが、これからはルート別のifやリクエストにあった小話などを不定期に投稿しようかと考えているところです。

  ちなみに、二依菜ちゃんのイメージ絵がこちら。(作者はAkpin様:https://www.pixiv.net/users/65568832)


【挿絵表示】


 最後になりますが、この作品を読みに来てくださった、読者の皆様。ファンアートを描いてくださった絵師の皆様。

 長い間、本当にありがとうございました!


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