やはり俺が仮面ライダー龍騎なのはまちがっている。 (伊勢村誠三)
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台本版
#01 ADVENT AGEIN


主な登場人物

・比企谷八幡
・雪ノ下雪乃

・満坂栄喜
・仲田真澄

・平塚

・???

・ミスパイダー
・レスパイダー


〇暗室

 

男がライターで誕生日ケーキの蝋燭(ろうそく)に火をつけていく。

同時に何処からか聞こえてくる録音された誕生日の歌。

 

音源『Happy barth day to you♪Happy barth day to you♪

   Happy barth dear』

 

名前の部分の無音。

フラッシュバック。

雨の中を走る車。

犬を追いかけるレインコートの少女。

葬式の光景。

崩れ落ちるコートの男。

テルテル坊主を見上げる少年。

 

音源『Happy barth day to you♪』

 

男、何も言わずに蝋燭を吹き消す。

最後まで顔は見えない。

 

〇サブタイトル「ADVENT AGEIN」*1

 

〇学校 特別棟

 

西日の差し込む廊下を一人のスーツの女の後ろを男女一人づつ生徒が続いて歩いている。

 

男子生徒1「平塚センセ―。

特別棟の四階って空き教室しかなかったすよね?

説教なら生徒指導室で良いじゃあねえっすか。」

 

平塚「説教だけならな。

お前たちには教師を舐め腐った態度をとれる根性を矯正すべく、

奉仕活動に従事してもらう。」

 

女子生徒1「満坂(まんざか)のような面白おかしい敬語を使ってる奴ならともかく私もですか?」

 

男子生徒1→満坂「俺、仲田(なかた)さんみたいに教師を遠慮なくこき下ろしたりしませんけど?」

 

平塚「無自覚か。これは想像以上に厄介だな。

だが、あいつらも張り合いがあるだろう。」

 

満坂M*2『あいつら?』

 

平塚「邪魔するぞー。」

 

女子生徒2「先生、前回もノックをしろとお願いしたはずですよね?」

 

平塚「ノックをしてお前が返事をしたためしがあったか?」

 

女子生徒2「ないでしょうね。いつもあなたがそれより早く入室してますから。」

 

長椅子とパイプ椅子の並んだ教室内。

右側奥に女子生徒2が、入口手前に男子生徒2がそれぞれ文庫本を読んでいる。

 

平塚「C組の仲田真澄(ますみ)とF組の満坂栄喜(さかき)。入部希望者だ。」

 

女子生徒1→真澄「奉仕活動を命ぜられた覚えは有っても志願した覚えはないんですが?」

 

男子生徒2,どこかげんなりした顔をする。

栄喜、それに気付いて眉を動かす。

 

栄喜「奉仕活動…入部?ボランティア部なんてウチのガッコにありましたっけ?」

 

女子生徒2「新設の部活だから知らなくて当たり前ね。ここは奉仕部よ。」

 

栄喜「奉仕部?」

 

女子生徒2「ええ。持つ者が持たざる者に慈悲の心を持ってこれを与える。

人はこれをボランティアと呼ぶの。

途上国にはODAをホームレスには炊き出しを、

持てない男子には女子との会話を。

困っている人に救いの手を差し伸べる。それがこの部活動よ。」

 

真澄、鼻で笑う。

女子生徒2、真澄を睨みつけるが、すぐに視線を栄喜に戻す。

 

栄喜「で、アンタはその奉仕部のリーダー様って訳かい?」

 

女子生徒2「部長の雪ノ下(ゆきのした)雪乃(ゆきの)よ。歓迎するわ。」

 

栄喜「ああ…よろしく。」

 

雪乃、栄喜、握手を交わす。

 

栄喜「あー、どこか適当に座っても?」

 

雪乃「ええ、どうぞ?」

 

栄喜、男子生徒2の二つ隣の席に座り、

リュックを降ろして上着から取り出したスキットルを煽る。

 

雪乃「登山の趣味でもあるの?」

 

栄喜「いや、単にポケットに入れれるサイズってだけ。」

 

スキットルをしまう栄喜。

それと同時にドアの取っ手に手をかける真澄。

 

雪乃「どこに行くつもり?」

 

真澄「御大層な売り文句並べてやってる事本読んでるだけだろ?

私が居る意味あるか?」

 

雪乃「あるわ。依頼がいつ来ても良いように待機。

その間何をしようと自由だけど早退は認めないわ。」

 

真澄「はっ!温いな。目標だけいっちょ前に掲げて受け身かよ。

私のあのニコ中女への態度なんぞよりお前の甘ったれたスタンスの方が問題なんじゃないか?」

 

雪乃「なんですって?」

 

息をのむ男子二人。

立ち上がった雪乃と指定カバンをその場に置いた真澄。

ゆっくりと距離を詰める。

 

真澄「もっと分かりやすく言ってやろうか?」

 

雪乃「ぜひお願いするわ。

もっともそれがただ単に私を煽りたいだけじゃなければだけど。」

 

思わず何度も視線を合わせてしまっては再び女子二人の方を向くを繰り返す栄喜と男子生徒2。

 

平塚「待て待てお前ら、五分もたたずに何をやってる?」

 

平塚、入室しながら二人の方に寄って行き、間に立つ。

 

栄喜「センセ―もしかして外でスタンバってました?」

 

平塚「そんな訳が無かろう。

ただ単にお前と仲田の分の入部届を持ってっ来ただだ。

だがそうだな…古今東西、意見がぶつかればバトルで解決すると相場が決まってる。」

 

真澄「いい歳してフィクション観ジャンプコミックスで止まってて恥ずかしくないんですか?」

 

平塚から繰り出された裏拳を体を逸らしてよける真澄。

平塚、一瞬驚いた後、拳をそのまま口元に持っていき咳払い。

 

平塚「しばらく依頼は私が斡旋しよう。

その依頼をお前ら四人で達成して、最も貢献率の高い者を最終勝利者とする。

というのはどうかな?」

 

男子生徒2「え?俺と満…坂?もですか?」

 

平塚「当然だ。お前も奉仕部の一員だからな。」

 

栄喜「おい初めて会話したとは言えクラスメイトの上の名前ぐらい覚えててくれよ。ヒキタニ君。」

 

男子生徒2「ヒキガヤ」

 

栄喜「え?」

 

男子生徒2→比企谷(ひきがや)「俺の名前は比企谷だ。」

 

5人「………」

 

栄喜「…すっげぇごめん。」

 

比企谷「いや、いい。教師以外大半の連中に間違えられてるし。」

 

平塚「と、ともかく!勝負方法に異存はないな?」

 

真澄「ありまくりですよ。

その勝負、私に何の旨味があるんですか?」

 

平塚「そうだな…当然常識の範囲でだが、

負けた奴らにそれぞれ一回だけ何でも言う事を利かせられるというのはどうだ?」

 

栄喜、真澄、目を見開いて驚く。

比企谷、苦虫をかみつぶしたような表情をする。

 

平塚「どうした比企谷?随分と自信なさそうだが…」

 

比企谷「別に…」

 

そう言ってそっぽを向く八幡。

突然耳鳴りのようなSE、こめかみを押さえて苦しむ八幡。

不思議そうにする平塚、雪乃。

 

平塚「比企谷?」

 

比企谷「すいませんトイレ行ってきます!」

 

席を立ちあがり教室をかけ出ていく八幡。

ぽかん、としながら見送る平塚と雪乃。

真澄は彼が出ていったドアを睨んでいる。

 

栄喜M『へー、比企谷君もそうなんだ。』

 

〇中CM

 

〇特別棟 男子トイレ

 

駆け込んだ八幡。

鏡の前に立ち、ポケットから取り出したカードケースを掲げる。

鏡の中から飛び出した銀色の光が腰に巻きつき、Vバックルに変形。

右手を左斜めにまっすぐ突き出すポーズを取り、

 

比企谷「変身!」

 

Vバックルにセット。

無数の灰色の残像が重なり、仮面ライダー龍騎に変身。

 

龍騎「ふっ!」

 

龍騎、鏡に頭から飛び込むと、鏡張りのトンネルのような場所に出る。

そこに止めてあったライドシューターに乗り込み、発進。

 

〇左右変転した世界 スタジアム?

 

龍騎「蜘蛛型か…」

 

柱に出来た巨大蜘蛛の巣に引っ付く二体の怪人、ミスパイダーとレスパイダーを確認。

左腕に着いたドラグバイザーの蓋を開けると、ベルトにセットされたカードデッキからアドベントデッキを引き抜き、装填。

 

バイザー『STRIKE VENT』

 

ドラグクローを装備、龍の口を模した部分から放った炎で巣を焼く。

自らの巣の意図に絡まって炎上するミスパイダー。

脱出したレスパイダー、怒りの方向と共に龍騎に突進してくる。

 

龍騎「はぁ!」

 

もう一度火炎攻撃。しかし避けられて蜘蛛糸を吐きかけられる。

クローで受けるが、開閉部分に糸が絡みつきもう使えない。

 

龍騎「ふっうううう!」

 

龍騎、思い切りドラグクローをレスパイダーに投げつける。

避けるレスパイダー。その隙に新たなカードをバイザーに装填。

 

バイザー『SWORD VENT』

 

ドラグセイバーを召喚。レスパイダーの打撃をよけながら顔、スネ、頭と的確に狙って振り下ろす。

そして膝をついたところを顔面を蹴って距離を置き、バイザーにまたカードを装填。

 

バイザー『FINAL VENT』

 

飛来した無双龍ドラグレッダーが龍騎の周りを旋回。

 

龍騎「はぁああああ……ッ!」

 

ジャンプして空中で体を捻り、右足キックの構えを取る。

 

龍騎「はぁあああああああああ!」

 

ドラグレッダーの炎ノブレスに押し出され、レスパイダーに飛んで行く。

ドラゴンライダーキック、炸裂!

地面をえぐりながら吹っ飛んだ先で大爆発。

 

???「その調子だ。戦え。」

 

龍騎「!?」

 

ふり返る。鏡でできた仮面をかぶった奇妙なコート男が立っている。

 

???「戦い続けろ比企谷八幡(はちまん)

仮面ライダーは、戦わなければ生き残れない。」

 

そういって黒い靄になって消える???

龍騎はやり切れないとでも言いたげに地団太一回を踏んだ。

*1
第一話はオープニングが無い

*2
モノローグ、キャラクターの独白のこと。以降Mと表記




台本形式という物にはじめて挑戦してみたのですがいかがだったでしょうか?
その都合上少なくとも仮面ライダー龍騎の要素に関しては最低限ディケイドの龍騎編を見ていないと分かりづらくなってしまってると思います。
誠に申し訳ありませんん!
その他、改善点など有りましたら遠慮なくコメントなどにてお知らせください!
それではまた次回!


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#02 BLUE BAT-MAN 

主な登場人物
・比企谷八幡
・八幡の妹
・雪ノ下雪乃

・仲田真澄
・真澄の叔母(沙奈子)

・仮面の男

・モンスター
・仮面ライダーシザース
・仮面ライダーライア


〇アバン*1

 

無数に姿見が配置されたホール。

前回のラストに現れた仮面の男が歩いてくる。

が、実像の方は見えず、鏡にしか映らない。

 

仮面の男「合わせ鏡が無限の世界を形作るように、

現実における運命もひとつではない。」

 

仮面の男「同じなのは欲望だけ。

全ての人間が欲望を背負い、その為に、戦っている。」

 

仮面の男「その欲望が背負い切れないほど大きくなった時、人は、ライダーになる。」

 

 

仮面の男「ライダーの戦いが始まるのだ」

 

仮面の男、ポケットから取り出した裏向きのアドベントカードを投げる。

 

〇オープニング*2

 

〇サブタイトル「BLUE BAT-MAN」

 

〇冬の街 どこか公園

 

ダッフルコート姿の八幡が寒そうに身震いしながら歩いてくる。

足に何か当たって滑る。ブランクのカードデッキ。拾い上げる八幡。

 

八幡M「2002年1月。俺はあのデッキを拾ってしまった。」

 

八幡M「出不精の俺がそれを交番に持っていく機会なんてそん時ぐらいしかなかったのに俺はそのまま家に帰ってしまった。」

 

八幡M「寒さに耐えかねたのか、それとも買ったばっかの本でもあったのか、そこは思い出せないけど、とにかく俺はそれがド級の厄ネタなんて知らずに持ち帰ってしまった。」

 

八幡M「確信を持って言える。俺が仮面ライダーなのは間違いだ。」

 

〇比企谷家 八幡の私室

 

八幡「はぁー。」

 

ベッドに寝っ転がった八幡。

手にした龍騎のデッキを眺めてはため息を吐く。

机を見ると、何冊か教科書とノートが積まれている。

デッキをポケットにしまうと机に向かう。

しかしすぐに耳鳴りのような音が響く。

鏡を見るとドラグレッダーが唸りながらこっちを見ている。

 

八幡「あー!もう!あの大食らいが…昨日やったばっかだろ…っ!」

 

苛立ちながらデッキを構えてポーズを取る。

 

八幡「変身!」

 

龍騎に変身。鏡に飛び込んでいく。

 

〇ミラーワールド どこかの倉庫

 

ミラーワールドに降り立つ龍騎。

周囲を探っていると背後から急降下してくるヒト型

 

モンスター「!!!!!(気持ち悪い鳴き声)」

 

龍騎「っと!(ちょう)…いや、羽開きっぱだし()か?」

 

鱗粉を吹き付けてくるモンスター。

転がりながら避けるとカードを引き抜く龍騎。

立ち上がりながらバイザーにセット。

 

バイザー『GUARD VENT』

 

ドラグシールドが両腕に装備される。

立を前に突っ込んでいく龍騎。

モンスター、それに鱗粉を吹き付けるが、

表面に火花が散るばかりで龍騎には届かない。

 

龍騎「おらぁああ!」

 

そのまま突進を仕掛ける龍騎。

バランスを崩したところに連続攻撃を浴びせる。

 

モンスター「!!!!!(気持ち悪い鳴き声)」

 

飛び去ろうとするモンスター。龍騎はドラグシールドを捨てると二枚のカードを取り出す。

 

バイザー『アドベント』

 

無双龍ドラグレッダー、モンスターの行く手を遮るように飛来。

尾でモンスターを龍騎の方にはたき落とす。

 

バイザー『SWORD VENT』

 

ドラグセイバーを装備した龍騎、落下して来たモンスターに向かって走り出す。

 

龍騎「はぁあああああ!はっ!」

 

ドラグセイバーを大上段に構える龍騎と驚くモンスターのアップ。

 

龍騎「はぁあああああああああっ!」

 

斬り落とされるモンスター。

無事着地した龍騎はすぐさまとびかかってマウントを取ると逆手に持ったドラグセイバーをさっき付けた傷に突き刺す。

 

モンスター「ーーーーーッ!……ッ!…ッッッ!……」

 

動かなくなったモンスター、ドラグレッダーに咥えられて持ち去られる。

徐々に遠ざかっていくバリバリと何かが砕ける音。

 

龍騎「…ああはなりたくねえな。おっと…」

 

龍騎の手から粒子が上がり始める。

続いて体全身からも上がり始める。

 

龍騎「いっけねぇ。さっさと戻んねえと。」

 

龍騎、近くの鏡から帰還、変身を解除する。

 

八幡「はぁ…こんなこといつまで続ければいいんだよ。」

 

八幡の妹「(off)*3お兄ちゃんごはんだよー!」

 

八幡、一瞬テーブルにデッキを置こうとするがポケットにしまって部屋を出る。

 

〇中CM

 

〇紅茶喫茶花鶏(あとり) ホール

 

真澄「いらっしゃいませ…て、お前…。」

 

雪乃「嘘でしょ?」

 

真澄、一瞬渋い顔をするが、すぐさま営業スマイルを作り直してメニューと水を渡す。

 

真澄「ごゆっくり。」

 

背を向けると同時にまた眉間にしわを寄せる真澄。

それを見たカウンターの店主、眉を吊り上げる。

 

花鶏店主「真澄、その子総武の子だろう?休憩がてら話てきな。」

 

真澄「知らない仲じゃないけど別に話す仲でもない。

それに休憩なら10分前にとった。」

 

花鶏店主「良いから行っときな!

なんだかあの子とアンタは仲良くなりそうな気がするしね。」

 

真澄「驚いた。叔母さんの勘も外れるんだな。」

 

花鶏店主→真澄の叔母「何言うんだい。わたしの勘は当たるよ!」

 

真澄、ため息を吐きつつも雪乃の注文を取りに向かう。

 

真澄「お決まりでしょうか?」

 

雪乃「ダージリンをストレートで。」

 

真澄「そりゃいい。本物を飲ませてやる。」

 

雪乃「まさかあなたが淹れるの?」

 

真澄「沙奈子(さなこ)叔母上にみっちり仕込まれててね。」

 

真澄、手際よく紅茶をいれて雪乃に出し、反対側に座る。

 

雪乃「……。」

 

真澄「さ、召し上がれ。チップは結構だ。」

 

自信満々の真澄。怪訝そうな表情の雪乃。

受け皿語と持ち上げ、取っ手をつまんで口に運ぶ。

 

雪乃「!!?……」

 

驚いた表情を浮かべた後、紅茶と真澄を何度も交互に見て、一瞬悔しそうな顔をするが、すぐに落ち着くとゆっくりと紅茶を飲みだす。

 

真澄「いかがかな?」

 

雪乃「……あなたを侮っていたわ。」

 

真澄、勝ち誇ったように笑う。

雪乃、悔しそうに顔をゆがめる。

だが紅茶はしっかり味わっている。

 

雪乃「店主さんの事を叔母上と呼んでいたけど、その縁でバイトしてるの?」

 

真澄「いや、家の手伝いみたいなもんだ。

小遣いに色は付けてもらってるが、別にバイトしてるわけじゃない。

特に欲しいものも無いしな。」

 

雪乃「そう…。」

 

それっきり会話のなくなる二人。

カウンターの方から沙奈子が何やらジェスチャーでも言ってきてるが黙殺する真澄。

雪乃が紅茶を飲み切ったところで耳鳴りのような音が響く。

 

真澄「叔母さん、お会計!」

 

真澄、食器を片付けると控室に入り内側から鍵をかけると、ロッカーの内側に張ったミラーシールにエプロンのポケットから取り出したカードデッキを掲げる。

鏡の中から飛び出した銀色の光が腰に巻きつき、Vバックルに変形。

拳を作った右腕を振るポーズを取り、

 

真澄「変身!」

 

Vバックルにセット。

無数の灰色の残像が重なり、仮面ライダーナイトに変身。

右手に装備されたダークバイザーを納刀し、鏡にダイブ。

 

〇ミラーワールド 市街地

 

ライドシューターから降りたナイト、耳を澄ますと金属音が聞こえてくる。

向かった先で仮面ライダーシザース、ライアが戦っている。

 

ナイトM『あのカニ野郎はこの前不意打ちして来た奴だな…。』

 

フラッシュバック。

ナイトの背後からバイザーで殴り掛かるシザース。

振り向いたナイトと切り結ぶ。

 

ナイトM『もう一人は…初めて見る顔だな。新参者か?』

 

ライア「よせ!こんな戦いなんの意味があるんだ!?

人と人とが戦うなんて間違ってるだろ!やめるんだ!こんな戦い!」

 

シザース「黙って戦え!」

 

シザース、左手に着いたシザースバイザーを開いてカードをセット。

 

バイザー『STRIKE VENT』

 

シザースピンチを装備、ライアに殴り掛かる。

ライア、左手の盾型のエビルバイザーで受けながら説得を続ける。

 

ナイト「おいおい、随分ケツの青いガキがライダーになったもんだな!」

 

ナイト、走りながらバイザーにカードを装填。

 

バイザー『SWORD VENT』

 

ウイングランサーを装備。

ライアを蹴り、シザースに斬りかかるナイト。

シザース、シザースピンチで受けるが、切り結ぶうちに腕からすっぽ抜ける。

 

ナイト「そこ!」

 

バイザー『GUARD VENT』

 

シザース、バイザーにかぶせるように装備したシェルディフェンスでウイングランサー防ぐ。

そのまま地面の方に逸らすと、バイザーの刃で挟み壊。

ナイト、素早く飛びのきながらバイザーを抜刀する。

 

ライア「(off)やめろ!」

 

バイザー『SWING VENT』

 

ライア「はあっ!」

 

ライア、装備したエビルウィップでナイトの腰を掴んで後方にやると、シザースとナイトの間に立つ。

 

ライア「やめるんだ!こんな無意味な戦いは!

傷付け合ってどうする!?」

 

ライアに猛然と襲い掛かるシザース。

その様子を窺うナイト、バイザーを逆手に持ち直し、新たなカードを装填。

 

バイザー『NASTY VENT』

 

ナイトを中心に快音波が発生。

頭を押さえて悶える二人。

 

ナイト「精々蟹味噌ぶち晒せ!」

 

ナイト、再びカードを装填。

 

バイザー『FINAL VENT』

 

契約モンスターの闇の翼ダークウイングが飛来。

ナイトの背中に合体すると、その翼をマント状に変質させる。

回転する黒い繭となったナイトはシザースの胸板を貫き、着地。

()(しょう)(ざん)、炸裂!

 

胸より上を失ったシザース、二、三歩よろけて膝をつき、粒子を上げ始める。

 

ライア「な、なんてことを!」

 

ナイト「助かったよ。あわよくばお前事始末したかったが、それはこれからやればいい。」

 

ライア「ふざけるな!人を、殺しておいてなんだそれは!

カニの彼にだって愛する家族や友人がいたはずだ!

それを踏みにじっておいて何のつもりなんだ!」

 

ナイト「それがどうした?」

 

鼻で笑うナイト。

バイザーを順手に持ち直しながら間合いを取る。

 

ナイト「残された連中が可愛そうだと思うなら全員まとめて連れてこい。

あのカニと同じところに送ってやる。」

 

ライア「ふざけるな!」

 

戦い始める二人。*4

 

〇エンディング*5

 

*1
オープニング前に挿入されるシーンのこと

*2
Alive A life(松本梨香)

*3
そのキャラクターの姿は見えないがセリフは言っている状態。以下offと表記。

*4
戦いながら徐々にエンディングのイントロが聞こえてくる

*5
Go!Now!~Alive A life neo~(松本梨香)




第二話、いかがだったでしょうか?
本当は一月から始まって六月ごろをゴールにするプロットもあったのですが、それだとあんまり俺ガイル要素を組み込めないのでこのような形になりました。
今回退場のシザースですが、ベースは講談社文庫の小説仮面ライダー龍騎に登場したシザースになりますね。
ライアに言った「黙って戦え」と言うセリフは仮面ライダードラゴンナイトでシザースに相当するインサイザーが言ったセリフです。
次回もお楽しみに。


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#03 CRAZY CARDBATTLE

主な登場人物
・比企谷八幡
・雪ノ下雪乃
・由比ヶ浜結衣

・仲田真澄
・満坂栄喜

・仮面ライダーシザース
・ボルキャンサー
・ベルデの男
・デッドリマー


〇アバン

 

黒い画面、映し出される12枚の裏向きのアドベントカード。

 

N*1「すべてが左右に反転した世界、ミラーワールド。

そこは現実のルールをあまりにもわかりやすく反映した世界。」

 

上段、下段にそれぞれ6枚づつ並ぶカード。

うち4枚、龍騎、ナイト、シザース、ライアのカードが表側にひっくり返る。

 

N「その世界で戦う者たちは、仮面ライダーと呼ばれる。」

 

色を失い崩れるように消失するシザースのカード。

その分が詰められ、11枚のカードが残る。

 

N「戦わなければ、生き残れない。」

 

〇オープニング*2

 

〇サブタイトル「CRAZY CARDBATTLE」

 

〇比企谷家前

 

自転車に乗る八幡。

カバンを前のカゴに入れて漕ぎ出し始める。

 

八幡M『青春とは嘘であり悪である。

この桜舞う4月の空の下繰り広げられる今しかない高校生活の大義のもとの仲良しごっこはこの世の何より醜悪だ。』

 

一瞬耳鳴りのような音がする。

カーブミラーを見るとミラーワールドの同じ場所でシアゴーストの群れが横切るところだ。

 

八幡M『そう思っていた。ライダーバトルの真実を知るまでは。』

 

自転車をこぎ出す八幡。画面が左右反転し、

さっき八幡が去って行った方からライドシューターに乗った龍騎が来る。

テロップ、4カ月前

 

八幡M『ライダーになって数日、俺はミラーモンスターと戦っていた。

はじめは無視しようと思った餌の催促も、自分が食われかければ理解する。

俺はあの時いやいや戦ってた。今もだけど。』

 

龍騎「ここか…」

 

ぐったりした女性を羽交い絞めにするボルキャンサーを発見。

ドラグセイバーを装備して斬りかかる。

女性を落したボルキャンサー、龍騎に襲い掛かる。

激しい戦い。

しばらくして、その間に一台のライドシューターが滑り込んでくる。

 

シザース「……。」

 

龍騎「! 俺以外にも居るのか?」

 

シザース「はっ!」

 

とびかかって来たシザース、バイザーで龍騎に殴り掛かる。

 

龍騎「ぐわぁ!何を…」

 

シザース「黙ってやられろ!100億円!」

 

再び殴り掛かるシザース。それをセイバーで弾く龍騎。

その間にボルキャンサーは女性を連れて逃げる。

龍騎、背後を足られ後ろから首を絞められる。

 

龍騎「ひゃ、100億だって?」

 

シザース「俺以外のライダー全員殺して百億円!それが俺の願いだ!」

 

龍騎、何とかバイザーを開いてカードをセット、

 

バイザー『ADVENT』

 

呼び出されたドラグレッダー、シザースを攻撃。

戦いながら話す二人。

 

龍騎「願い?ただの欲望だろうが!」

 

シザース「そうだ!それの何が悪い!仮面ライダーは全部で12人!

どいつもこいつも願いの為に殺人を許容する屑どもだろ!

そのゴミ掃除をしてやってんだ感謝されても文句言われる筋合いはねえな!」

 

龍騎「ッ!…ああああああ!」

 

龍騎、シザースを蹴り飛ばして距離を作る。

注いてカードをバイザーに装填。

 

バイザー『STRIKE VENY』

 

シザース「!」

 

シザースもそれを見てカードを装填。

 

バイザー『GUARD VENT』

 

シェルディフェンスを装備。炎攻撃を受けるが、

吹っ飛ばされただけで変身解除に至らない。が、体から粒子が上がり始める。

 

シザース「ちっ!時間切れか…」

 

撤退するシザース、肩で息をしながらそれを見送る龍騎。

 

龍騎「なんだったんだ…ん?」

 

自分の体からも粒子が上がっているのに気付いた龍騎。

 

龍騎「スーツが…戻んないと…。」

 

龍騎、近くの車のミラーから現実に帰還。

変身を解除する。

 

八幡「なんだったんだ一体…」

 

男1「(off)お前、新参者か?」

 

ふり返る、ベージュのコートの男が立っている。

 

八幡「なんだアンタ?まさかさっきの蟹男か!?」

 

男1「いや、奴はシザースと呼ばれるライダーだ。

素顔は知らんが、ライダーの中でも特別嫌な奴だよ。」

 

八幡「…そう言うアンタは?」

 

男1→ベルデの男「ベルデだ。お前は、新しい龍騎か。」

 

八幡「龍騎…。」

 

デッキを取り出す八幡、男も黄緑色のデッキを取り出す。

 

ベルデの男「精々先代…榊原みたいに戦いを止めようとか無駄なことはするなよ。

結局俺たちは一度結んだ契約から逃れられない。

勝って願いの力を使うしかない。」

 

八幡「願いって、そんなドラゴンボールみたいな…。」

 

ベルデの男「ああ、きっと神か悪魔かなんかがかなえてくれんのさ。

信ずるものは救われる。ってな。ま、頑張れよ。」

 

八幡の肩を叩いて去って行くベルデの男。

ただそれを見送る八幡。

 

八幡M『俺は火中の栗を拾うつもりも、

降りかかってくる火の粉を黙って受け続ける気にもならなかった。

けど死ぬのは、絶対に嫌だった。だから戦う。

それはきっと、俺にしては珍しくまちがってないと思えたから』

 

〇中CM

 

〇放課後 奉仕部部室前

 

八幡、ドアをノックする。

 

雪乃「(off)どうぞ。」

 

ドアを開けるともう既にほかの面子は全員来ていた。

座っている位置は昨日と同じ。

真澄は栄喜の左斜め前。

 

雪乃、奥で本を読んでいる。

真澄、何か勉強をしている。

栄喜、持って来たラジカセで何か聴いている。

 

雪乃「誰?」

 

八幡「不本意ながら部員をやってる比企谷ですよ。」

 

雪乃「ああ、ヒキガエル君。」

 

八幡「なんで俺の小学校の時のあだ名知ってんだよ…。」

 

雪乃「にしても凝りもせぬに三日も連続で来るとは、相変わらずマゾヒスト疑惑とストーカー疑惑は消えないわね。」

 

八幡「誰が好き好んでこんなとこ来るか。

強制されてなきゃ来ねえよ。」

 

真澄「お前ら口喧嘩ならもっとむこうでやってくれないか?集中できないんだが?」

 

雪乃「ほら、勉強の邪魔になってるわよ、騒音谷君。」

 

八幡「谷しかあってねえよ。」

 

八幡、カバンを置きながら前回と同じ位置に座る。

ほどなくしてドアがノックされる。

 

雪乃「どうぞ?」

 

女子生徒「し、失礼しま~す。」

 

ギャル風に制服を着崩した少女、入室。

八幡たちを見て驚く。

 

女子生徒「ふぇえ!?どうしてヒッキーに満坂くんまでいるの!?」

 

八幡「ヒッキーってなんだヒッキーって。

俺はこの通り登校してるだろ失礼な。

おい満坂、こいつお前の知り合いか?」

 

栄喜「いや、クラスメイト。名前ぐらい覚えろ。

由比ヶ浜さんだよ。

ほら、いつも三浦さんとか葉山あたりとつるんでる。」

 

八幡「……ああ、あのリア充連中共か。そう言えばこんなん居たな。」

 

女子生徒→由比ヶ浜「こ、こんなん!

ヒッキーサイテー!それ人を呼ぶ言い方!?」

 

八幡「初対面でひきこもり呼ばわりするお前が言うな。」

 

雪乃「女子と喋れるのがうれしいからって入口で話し込まないでくれるかしら引籠谷君。」

 

八幡「だからちゃんと登校してるし部活に出てるまであるってんの。」

 

真澄「それで?お前はなんでこんな監獄のような場所に来た?」

 

結衣「か、監獄!?ここって生徒のお願いを叶えてくれるとこなんだよね?」

 

真澄「いいや。対価もないのに誰がするかそんな面倒なこと。」

 

結衣「!?」

 

真澄「手助けするだけって話だ。」

 

結衣「そう、なんだ?」

 

八幡M『分かってねえな…』

 

栄喜M『分かってなさそう…』

 

雪乃「で、あなたは何を手伝ってほしくてこの奉仕部に?」

 

結衣「あ、うんえっとね…」

 

結衣、八幡の方を見て言いよどむ。

 

八幡「俺いると話しにくいか?」

 

結衣「い、いやその、えっと…」

 

その時、耳鳴りのような音が響く。

 

八幡「…俺、ちょっと飲み物買ってくるわ。」

 

栄喜「俺はトイレに。」

 

部室を出て、栄喜が先に行ったのを確認する八幡。

踊り場の窓にカードデッキを構える。

 

八幡「変身!」

 

龍騎に変身。ミラーワールドに突入する。

そのすぐ後、階段下から栄喜が戻ってくる。

 

栄喜「へ~、榊原の奴死んでたんだ。

じゃ、龍騎には奇麗サッパリ消えてもらいますか。」

 

栄喜、ポケットから取り出したカードデッキを掲げる。

鏡の中から飛び出した銀色の光が腰に巻きつき、Vバックルに変形。

拳を作った右腕を左腕と交差させながら振り上げるポーズを取り、

 

栄喜「変身!」

 

仮面ライダーゾルダに変身。

ミラーワールドに突入する。

 

〇ミラーワールド どこかの屋上

 

走る龍騎、それを追うように銃弾が着弾する。

デッドリマー、立体物の多い屋上を飛び回りながら的確に龍騎を撃ってくる。

 

龍騎「あんの眼鏡猿!何とかして近付かねえと!」

 

バイザー『(off)SHOOT VENT』

 

一発の砲弾がデッドリマーに着弾。

ビルの下に落ちていく。

 

龍騎「な!まさか…」

 

ゾルダ「……。」

 

ゾルダ、手にしたギガランチャーを捨て、ベルトに引っかけていたマグナバイザーを左手でも持つ。

 

ゾルダ「ふっ!」

 

マグナバイザーに撃たれた龍騎、なんとか遮蔽物の間を縫って走る。

ゾルダ、追い掛けながら次のカードをセット。

 

バイザー『SHOOT VENT』

 

ギガキャノンを装備、二発のビーム砲が龍騎を襲う。

機材に当たり炎と煙が立つ。

伏せる龍騎、煙が晴れず追撃は無い。

 

龍騎「だったら…」

 

龍騎、バイザーを開いてカードをセットするがベントインはしない。

 

ゾルダ「……。」

 

ゾルダ、再び武器をマグナバイザーに持ち替え、龍騎に近づいてくる。

 

龍騎M『今だ!』

 

バイザー『STRIKE VENT』

 

ドラグクローを装備した龍騎、煙から飛び出し渾身の右ストレートを浴びせる。

 

ゾルダ「ぐぁあああああああ!」

 

ダメージを受けたゾルダ、吹っ飛ばされるが胸を押さえながら立ち上がり逃げる。

そして近くの鏡から戻る。

 

ゾルダ「はぁ!はぁ!」

 

ゾルダM『あ、危ない…ゾルダの防御力でなければやられていた…』

 

階段を降りるゾルダ、丁度そこに校舎から出ていこうとする生徒がいる。

 

男子生徒「ん?なぁ!?」

 

ゾルダ、生徒の側頭部を叩く。

昏倒した生徒、その場に倒れ伏す。

基壇から足音、変身を解除する栄喜。

デッキを男子生徒に握らせる。

 

栄喜「おい!おいしっかりしろ!比企谷!いいとこに来た!

保健室に行って連絡して来てくれ!」

 

八幡、呆然としてよた、よたと去って行く。

栄喜、男子生徒を担ぎながら邪悪に笑う。

 

〇エンディング*3

*1
ナレーション、以下N表記

*2
Alive A life(松本梨香)

*3
Go!Now!~Alive A life neo~(松本梨香)




第三話、いかがだったでしょうか。
ライダーは全部で12人、はたしていないのは誰でしょうか?
ゾルダの栄喜ですが、名前の由来は横浜市の地名、満坂(本牧の中に有ります)と、俺ガイルの命名法則に従ってまんざか→さか→さかき、栄喜です。
漢字は予測変換で出て来たのをそのまま採用しました。
次回もお楽しみに。


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#04 DOUBT OF DUEL

主な登場人物
・比企谷八幡
・雪ノ下雪乃
・由比ヶ浜結衣

・仲田真澄
・満坂栄喜

・ソロスパイダー


〇アバン

 

黒い画面、映し出される12枚の裏向きのアドベントカード。

 

N*1「すべてが左右に反転した世界、ミラーワールド。

そこは現実のルールをあまりにもわかりやすく反映した世界。」

 

上段、下段にそれぞれ6枚づつ並ぶカード。

うち6枚、龍騎、ナイト、シザース、ゾルダ、ライア、ベルデのカードが表側にひっくり返る。

 

N「その世界で戦う者たちは、仮面ライダーと呼ばれる。」

 

色を失い崩れるように消失するシザースのカード。

その分が詰められ、11枚のカードが残る。

 

N「戦わなければ、生き残れない。」

 

〇オープニング*2

 

〇サブタイトル「DOUBT OF DUEL」

 

〇総武高校 二年F組の教室

 

結衣「ヒッキー!部活行こう!」

 

八幡「……」

 

八幡M『多分、ゾルダはあの時満坂が介抱してたあいつだ…。

俺は、俺は危うく殺しちまうところだった…。』

 

結衣「ヒッキー?聞いてる?」

 

拳を握り締める八幡。

こめかみに皺が寄り、苦しそうな表情になる。

 

八幡M『もし、もしあのまま殺してたら俺は…

でも反撃しなかったら死んでた!あんな、あんなの…』

 

結衣「返事ぐらいしろし!」

 

八幡「!……え?もしかして俺に話しかけてた?」

 

結衣「逆にヒッキー以外誰が居るの?」

 

八幡「悪いな、こうゆう環境で俺に話しかけてくれる人間なんて今までいなかったんでな。」

 

結衣「ヒッキー…」

 

八幡「その生暖かい目をやめろ。普通に傷つく。」

 

八幡、結衣、奉仕部に移動。

 

〇放課後 奉仕部部室前

 

八幡、ドアをノックする。

 

雪乃「(off)どうぞ。」

 

ドアを開けると雪乃と栄喜はもう来ていた。

座っている位置は昨日と同じ。

 

雪乃「いらっしゃい由比ヶ浜さんに…誰?」

 

八幡「泣くぞ。」

 

雪乃「やめなさい絶対気持ち悪い。それでどちらさま?

そろそろ名乗らないと名無しの権兵衛と呼ぶことになるのだけど?」

 

八幡「昨日ヒキガエルとか呼ばれてた比企谷八幡君ですよ。」

 

雪乃「ああ、引籠谷君ね。」

 

八幡「だから谷しかあってないっての。」

 

雪乃「そんなことより由比ヶ浜さん、今日こそ大丈夫なんでしょうね?」

 

結衣「大丈夫!ちゃんと今朝ますみんにレシピ貰ってきたから!」

 

栄喜「ますみん?もしかして仲田さんのこと?」

 

結衣「うん、真澄ちゃんだからますみん。」

 

八幡M『流石リア充。

あいつともうそんなに仲良くなってんのか?』

 

雪乃「そのあだ名、本当に通すの?

彼女昨日そう呼ばれた時すごい顔してなかったかしら?

そこの引籠谷君にも不評ですし。」

 

結衣「えー?そお?ヒッキーもますみんもいいと思うけどなー。

んー…例えば雪ノ下さんはゆきのんで、満坂くんは…んー?」

 

雪乃「ゆ、ゆきのん…」

 

栄喜「俺は出てこねえのかよ…」

 

雪乃「ん!話がそれたわ。そろそろカギを取りに行った仲田さんが戻る頃よ。

昨日は達成できなかったあなたのクッキー作りを完遂させましょう。」

 

八幡「クッキー作り?」

 

雪乃「お礼の品で作って渡したいそうよ?」

 

〇家庭科室

 

結衣「出来た!」

 

雪乃「ええ、出来たわね。ようやくクッキーの形をした物が。」

 

栄喜「昨日はクッキー作んなかったの?」

 

真澄「クッキーどころか食い物すら作ってない。

あれはクッキーと素材を同じくする灰クズだ。灰クズ。」

 

結衣「な、何が灰クズだし!ちょっと失敗しただけだし!」

 

雪乃「ちょっとですって!?」

 

真澄「あんな分量も時間も滅茶苦茶な上に桃缶やらなんやら詰め込んどいてちょっとだと!?」

 

八幡「おいマジかよ…」

 

栄喜「それ焼きあがる前に止めらんなかったの?」

 

真澄「止めたよ。けどもう手遅れだった。

ずっと付きっ切りで見てたはずのこの部長様がなんも言わなかったせいでな!」

 

雪乃「ずっと我関せずだったあなたに言われたくないけど、そうね。

確かに失敗したことないから歪な物の正し方を知らなかった私にも落ち度があるわね。」

 

八幡「うわウザ。」

 

栄喜「部長殿…それ他の奴らに言わない方がいいっすよ?」

 

真澄「あきらめろ。こいつは出来ない奴の気持ちが、いや出来ない奴がいることが分かってないんだ。」

 

結衣「ちょ、ちょっとみんな…。」

 

真澄「ん?ああ。悪いな、相談中に。

とにかくレシピに忠実にこなせば問題なかっただろ?」

 

真澄、焼きあがったクッキーを一つまみ。

 

真澄「ん、昨日の毒見から100億歩進歩したな。

流石に雪ノ下のには及ばないが。」

 

八幡「毒見って…昨日どんだけ酷かったんだよ。うま。」

 

栄喜「おー、去年妹が作ったのよりいい出来じゃん。」

 

どこか浮かない顔の結衣。

不思議そうにする三人。

 

雪乃「材料は有るしもう少しなら作れるわ。引き続きやるわよ。」

 

栄喜「え?これでよくないっすか?」

 

雪乃「何を言っているの?人に贈るモノなのよ?

完璧を目指して当然でしょう?」

 

八幡「正しい意見だな。」

 

真澄「比企谷?」

 

雪乃「あら、良かった。正常な判断ができるという事は脳までは腐ってないのね。」

 

八幡「けど場合に寄っちゃ良くはねえだろ。

極端な例だけど、殺人はしちゃいけませんって正しいことだが、相手が殺しにかかってきてたりしたら……ッ!!」

 

結衣「?」

 

真澄「どうした?なんでそこで言いよどんだ?」

 

八幡「い、いや!とにかくだ。

お礼で渡す相手がどんな奴かにもよるが、

由比ヶ浜みたいなのに奇麗なラッピングの手作り菓子とか渡されたら大抵の男子は思わずクラッと来ちまうだろよ。」

 

結衣「!…た、例えばヒッキーでも?」

 

八幡「ああ。思わず一目ぼれしてソッコー告って振られて黒歴史を増やすまであるぞ。」

 

真澄「随分と実感のこもった言い方だな。」

 

八幡「ほっとけ。誰に迷惑かけてないし問題ないだろ。」

 

栄喜「気づくと不幸自慢して空気ぶっ壊すの、

部長殿の遠慮が行方不明の毒舌と同じだと思うけど?」

 

雪乃「一緒にしないでくれるかしら?その勘違い、ひどく不快だわ。」

 

栄喜「ヘイヘイ。」

 

雪乃「返事は一回。」

 

栄喜「はーい。」

 

結衣M『そっか…昨日みたいなのはアレだけど、気持ち、か。』

 

突如響く耳鳴りのような音。

白い糸が栄喜の首に巻きつく。

 

栄喜「な!こ、これは!」

 

鏡に引きずられていく満坂、つい反射でカードデッキを取り出す。

 

八幡「お前それ!」

 

栄喜「! あーもう!変身!」

 

栄喜、ゾルダに変身して鏡に引き込まれる。

 

結衣「え、えええええ!?満坂くんがなんかジバンみたいなのに変身した!?」

 

真澄「全く、世間ってやつは狭いな。」

 

雪乃「仲田さんあなた何言って…」

 

真澄「変身!」

 

真澄、ナイトに変身。自分から鏡の中に飛び込んでいく。

 

八幡「はー…良かった。」

 

結衣「!? え…もしかしてヒッキーも…」

 

八幡「変身!」

 

龍騎に変身ミラーワールドに突入する。

 

雪乃「なにが、起こっているの?」

 

結衣「分かんない…」

 

〇ミラーワールド 家庭科室

 

首に糸を付けられたゾルダ。

左手でバイザーを引き抜きソロスパイダーの顔面を狙う。

が、糸でからめとられ動きを封じられる。

 

ナイト「はぁ!」

 

乱入したナイト、バイザーで糸を切りながら降り立つ。

さらに続いて龍騎登場。バランスを崩したソロスパイダーにドロップキックを浴びせる。

 

ゾルダ「ナイト!?まさか…仲田さん?」

 

ナイト「ご明察だ。さ。やろうか?」

 

龍騎「やってる場合か、あいつ逃げるぞ!」

 

そう言ってソロスパイダーに格闘戦を仕掛ける龍騎。

 

ゾルダ「どうする?」

 

ナイト「……ま、手の内を見ておくのもありか。」

 

ナイト、龍騎の攻撃の合間に斬撃を繰り出す。

ゾルダ、バイザーで的確に攻撃の邪魔をしていく。

 

ナイト「このまま続けるか?」

 

龍騎「いや、外に出す!ここじゃ狭すぎて無理だ。」

 

ナイト「よし、合わせろ!」

 

バイザー『『SWORD VENT』』

 

ドラグセイバーとウイングランサーが繰り出される。

窓を突き破り落下するソロスパイダー。

その後を追って飛び降りる三人。

 

ソロスパイダー「しゃぁあああ!」

 

大ジャンプからの蜘蛛糸で離脱しようとするソロスパイダー。

ゾルダに撃ち落とされ失敗に終わる。

 

バイザー『FINAL VENT』

 

龍騎「はぁあああああ!」

 

ドラゴンライダーキック、炸裂。

火柱を上げて爆散するソロスパイダー。

 

ゾルダ「おうおう。やるじゃないか。」

 

ナイト「龍騎、か。早めに潰しておくか。」

 

ナイト、ウイングランサー片手に龍騎に近づく。

 

龍騎「はぁ!」

 

龍騎、ナイトに斬りかかる。

ナイト、ウイングランサーで受け止める。

 

ナイト「なんのつもりだ?」

 

龍騎「降りかかる火の粉を払うだけだけど?」

 

ナイト「違いないな! ッ!」

 

2人に銃撃を放つゾルダ。

三人、それぞれ均等に距離を取り、構える。

 

龍騎「満坂、よくも騙してくれたな?」

 

ゾルダ「騙されるお前が悪い!が、割り切ったのは意外だな。」

 

龍騎「そーゆうもんだろ?ライダーバトルって。」

 

激突する三人。*3

 

〇エンディング*4

 

*1
ナレーション、以下N表記

*2
Alive A life(松本梨香)

*3
戦いながら徐々にエンディングのイントロが聞こえてくる

*4
Go!Now!~Alive A life neo~(松本梨香)




第四話、いかがだったでしょうか?
龍騎のメイン3ライダー、奉仕部に集結と言う感じですが、やっぱり最初はバトルになります。
八幡は根は善人でもひねくれてるので、
上っ面だけでも割り切るのは早いです。
さて、どうやって収拾つけようか…。
次回もお楽しみに。


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#05 EGO AND ELEMENT

主な登場人物
・比企谷八幡
・雪ノ下雪乃
・由比ヶ浜結衣

・仲田真澄
・満坂栄喜


〇アバン

 

黒い画面、映し出される12枚の裏向きのアドベントカード。

 

N*1「すべてが左右に反転した世界、ミラーワールド。

そこは現実のルールをあまりにもわかりやすく反映した世界。」

 

上段、下段にそれぞれ6枚づつ並ぶカード。

うち6枚、龍騎、ナイト、シザース、ゾルダ、ライア、ベルデのカードが表側にひっくり返る。

 

N「その世界で戦う者たちは、仮面ライダーと呼ばれる。」

 

色を失い崩れるように消失するシザースのカード。

その分が詰められ、11枚のカードが残る。

 

N「戦わなければ、生き残れない。」

 

〇オープニング*2

 

〇サブタイトル「EVIL ELIMINATE」

 

〇ミラーワールド 総武高校中庭

 

戦い続ける龍騎、ナイト、ゾルダ。

ゾルダ、銃撃で距離を作りながらカードを装填。

 

バイザー『STRIKE VENT』

 

ギガホーンを装備。近接戦にも加わって行く。

激しい戦い。三者、全く譲らぬ攻防。

 

結衣「ゆきのんどうしよう!?

なんか…なんかやばいよ!止めないと!」

 

雪乃「と、止めるっていったってどうやって!?」

 

結衣「どうって…わ、私!鏡に入ってみる!うりゃあああああ!」

 

結衣、助走をつけて頭から鏡にダイブ。

ミラーワールドに突入。

 

雪乃「ええぇ!?ちょ!ちょっと!由比ヶ浜さん!?」

 

ミラーワールドの家庭科室。

窓を開け、外に向けて叫ぶ結衣。

 

結衣「こらー!何やってるの!」

 

龍騎「はぁ!?」

 

ナイト「あいつ!どうやって!?」

 

結衣「なんだかよく分かんないけどなんで戦ってるの!ちょっと待っててそっち行くから!」

 

ゾルダ「こっちの台詞だ!そこを動くな大馬鹿!戻るぞ!」

 

龍騎「なんで?」

 

ゾルダ「モンスターと契約してない奴は入るのに使った鏡でしか戻れない!

その上一度入れば出るときにはデッキが必要だ!」

 

龍騎「そうなのか!?」

 

ナイト「お前そんなことも知らなかったってことは新参者か?」

 

慌てて戻る三人。

途中結衣と合流し、家庭科室に戻る。

 

龍騎「…せーのだからな。

残って背後とるとかなしだからな?」

 

ナイト「見くびるな。殺るんだったら正面からやる。」

 

ゾルダ「おー怖い怖い。そんじゃ行きますか、あせーの!」

 

龍騎、ナイト、ゾルダ。現実世界に帰還。

即座に変身解除すると三人同時にデッキを鏡に投げ込む。

 

結衣、デッキをキャッチして来た時と同じように鏡から出る。

 

結衣「出れた!」

 

真澄「危なかったな。変身しててもあの世界は10分しか体がもたない。

生身だったら5分と持たないぞ。」

 

結衣「え?それって…」

 

八幡「あれってスーツの限界とかじゃなかったんだな。」

 

栄喜「ああ。多分だけど、酸性の液が並々入ったバケツにアルカリ性の欠片をいれたら中和されるみたいなことなんじゃない?」

 

八幡「現実(こっち)がプラスならミラーワールドはマイナスってことか?」

 

真澄「多分だけどな。」

 

真澄、結衣からデッキを受け取ろうとするが、雪乃、それより早くデッキを奪い取る。

 

八幡「あ、おい。」

 

雪乃「説明してもらいましょうか?」

 

〇中CM

 

〇総武高校特別棟 家庭科室

 

 

真澄、黒板の前に移動してチョークをとる?

 

真澄「何から聞きたい?」

 

雪乃「あの鏡のむこうの世界は何?

このカードケースは何なの?

変身…と言うより装着してたあの奇妙なスーツは?

なんで戦っていたの?」

 

真澄、鏡の世界、カードデッキ、変身、戦い、と書く。

 

真澄「あの世界はミラーワールド。現実をどこまでも左右真逆に反映した世界だ。

人を喰らうミラーモンスターが住まうのと、

おおよそが人が住めるような環境でない以外は何なのかイマイチわからん。

お前らはどうだ?」

 

栄喜「俺も凡そそんな認識。比企谷君は?」

 

八幡「俺も良く知らん。案外、出入りできないだけで昔からあったんじゃねえかな?って思ったことはあるかな。知らんけど。」

 

栄喜「そうかい。」

 

雪乃「それで、このカードケースは?」

 

真澄「それはカードデッキ、アドベントデッキとも言うな。

仮面ライダーへの変身を可能にする物で、

それを渡してきた仮面の男が言うには全部で12個。

つまり仮面ライダーは全部で12人。」

 

栄喜「俺のゾルダ、仲田さんのナイトに比企谷君の龍騎。あとシザースと、他には?」

 

八幡「ベルデって奴知らないか?」

 

真澄「戦ったのか?」

 

八幡「いや、デッキ持ってる人と話しただけだ。大学生ぐらいの男だった。」

 

真澄「そうか。あと私が戦った事あるのはライアって腰抜けだけだ。

つまりあと6人はまだどんなので誰が変身してるか分からん。」

 

真澄、りだーたちの名前を書いていく。

 

真澄「入ってるアドベントカード内容はデッキによってまちまちだな。

私のにはストライクベント何て入ってないし。」

 

雪乃、ナイト以外ののデッキをしまってからナイトのカードをすべて引っ張り出す。

確かにストライクベントのカードは無い。

 

真澄「その中に一枚なんちゃらベントって名前じゃないカードがあるだろ?

それが契約のカードだ。」

 

雪乃、ダークウイング以外のカードをデッキに戻す。

 

真澄「そのカードを使う事でライダーはモンスターに餌やりをする代わりに力を借りれる契約を結べる。

つまりそれを破く、燃やすなどして消失した場合、契約を一方的に破棄されたと判断したミラーモンスターに殺されることを意味する。」

 

結衣「こ、殺されるって…」

 

栄喜「文字通りさ。奴らの主食は同じミラーモンスターと人間だからな。」

 

結衣、思わず窓から飛びのき、雪乃の裾を掴む。

 

八幡「人喰った後のやつとかなぜか他のより強いのそうゆうことなのね?」

 

栄喜「普通消化とかで動き悪くなりそうなもんなのにな。」

 

真澄「話を戻すぞ。そのカードがどれくらい重要かと言うとデッキの中で一番重要だ。

モンスターと契約する前はコントラクトっていう絵柄のないカードの状態なんだが、

それはデッキに一枚しか入ってない。少なくとも私のはそうだった。

つまりカードの破損は死と同義だ。モンスターからの助力を失ったライダーは大幅に弱体化する。」

 

八幡「剣とか呼べるは呼べるけど当たっただけで折れるからな…」

 

結衣「ヒッキーそれ大丈夫だったの?」

 

八幡「全く大丈夫じゃねえよ。

やけくそでコントラクト使って契約しなきゃ喰われてた。」

 

真澄「そしてお待ちかねの仮面ライダーだが…そのカードデッキで変身して戦う戦士のことだ。

鏡の世界で殺し合い最後に残った最強の仮面ライダーのみが、どんな願いもかなえれる。」

 

雪乃「散々非科学的かつ超常的過ぎる物を見せられては来たけど…怪しい話ね。

あなたたちはこれを渡してきた胡散臭い仮面の男の言われるままに戦ってるわけ?」

 

真澄「あいつは確かに神か悪魔か、

それともそのどっちかの使いか何者か知らんが、

私達一個人にこんな力を授けれる存在だぞ?

それにライダーは願いの為に他者を殺すことを選んだ連中の集まりだ。

そいつらを消して願いをかなえられるなんて最高だろ?」

 

黒板を消しながら振り返り不敵に言う真澄。

 

雪乃「それを言うならあなたもそのクズじゃないの。

それにそんな血濡れた願いじゃ誰も救われないわ。」

 

真澄「別にいいよ、慈善事業じゃなくて自己満足でやってんだ。

そんな私の願い、分かるか?」

 

雪乃「?」

 

真澄「私はお前ほどじゃないが大体の物を持ってる。

見ての通りの容姿端麗。頭脳明晰。肌は弱いが運動も得意。

そんな私が何を願うと思う?」

 

雪乃「そんなの自分のためでしょう?」

 

真澄「はっ!お前、ライダーじゃなくてよかったな。

お前みたいなタイプは生き残れないぜ。」

 

雪乃「あなた、自分の生殺与奪の権が握られていることを分かっているのかしら?」

 

真澄「お前こそ、まだ契約は続いてることが分かってないのか?」

 

鏡を見るとダークウイング、ドラグレッダー、マグナギガが雪乃を狙っている。

 

八幡「マジかよ…」

 

栄喜「そりゃ、向こうも死活問題だからな。なあ!

せっかくライダーが3人もこの奉仕部の部員なんだ。

平塚センセ―が勝手に始めてくれちゃった勝負、

俺らルールで副賞のいう事聞かせられるってやつ、

ライダー関連なら何でもありにしないか?」

 

真澄、驚く三人をとは違い乗り気で

 

真澄「そりゃあいい!私が勝ったら雪ノ下の土下座と、

満坂と比企谷のカードをすべて貰おうか。」

 

八幡「え?」

 

栄喜「じゃあ俺は部長殿のおごりで高級フレンチと、

二人が契約のカードを破くことなんてどうよ?」

 

八幡「は!?」

 

結衣「ちょ!ちょっと二人とも!それ残りの二人が死んじゃうじゃん!?」

 

真澄「当たり前だろ?殺さないでどうするんだ?」

 

本気で不思議そうなトーンで言う真澄。

思わず気圧される結衣。

 

雪乃「…いいでしょう。」

 

八幡「な!?お前まで何言って…」

 

雪乃「ただし、奉仕部での勝負がつくまで三人は共闘を守る事。

これだけが条件です。」

 

4人「!?」

 

真澄「そりゃいい。敵の手の内見ながら邪魔者消してけるってことだろ?」

 

栄喜「なるほど。て、訳だ。よろしくな。ヒ・キ・ガ・ヤ・君。」

 

栄喜、八幡の肩を叩く。

八幡。こめかみを押さえて深いため息を吐いた。

 

〇エンディング*3

*1
ナレーション、以下N表記

*2
Alive A life(松本梨香)

*3
Go!Now!~Alive A life neo~(松本梨香)




いかがだったでしょうか?
バイトやらなんやらでちょっと間が空いてしまいましたが、第五話です。
正直共闘なしでも良かったのですが、真澄も栄喜も全く戦いに躊躇してないので原作に近いなんやかんや仲いいライダーたちを書こうと思った結果こうなりました。
次回もお楽しみに。


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#06 FAKE FREINDSHIP

主な登場人物
・比企谷八幡
・雪ノ下雪乃
・由比ヶ浜結衣
・葉山隼人
・ギャル

・仲田真澄
・満坂栄喜

・ワイルドボーダー


〇アバン

 

黒い画面、映し出される12枚の裏向きのアドベントカード。

 

N*1「すべてが左右に反転した世界、ミラーワールド。

そこは現実のルールをあまりにもわかりやすく反映した世界。」

 

上段、下段にそれぞれ6枚づつ並ぶカード。

うち6枚、龍騎、ナイト、シザース、ゾルダ、ライア、ベルデのカードが表側にひっくり返る。

 

N「その世界で戦う者たちは、仮面ライダーと呼ばれる。」

 

色を失い崩れるように消失するシザースのカード。

その分が詰められ、11枚のカードが残る。

 

N「戦わなければ、生き残れない。」

 

〇オープニング*2

 

〇サブタイトル「FAKE FRIENDSHIP」

 

〇放課後 総武高校2年F組

 

八幡、号令が終わるや伸びをしてカバンを手に取る。

 

栄喜「よ!比企谷君!この後暇?

だったらちょっと遊びいかない?」

 

八幡「い…いや、俺にはこの後ジオン軍として戦う使命が…」

 

栄喜「ジオン?…あー、ガンダムのアーケード?

だったら対戦しようよ。

こう見えて一年のころは留年ギリギリのサボりストだったんだぜ?

ゲーセンも良く行ったもんさ。」

 

八幡、若干嫌がりながらも断れなさそうと気付く。

 

ギャル「ねー結衣。この後アイス屋寄ってかない?

あーし今日チョコとショコラのダブルの気分なんよ。」

 

結衣「あの……あたし、今日ちょっと行くところあるから……」

 

八幡M『あっちも大変だな…』

 

ギャル「あんさー 結衣のために言うけどさ。

そういうはっきりしない態度、結構イラっとくるんだよね。」

 

ごめん…と力なく謝る結衣。

ギャル、ますます機嫌を悪くする。

 

ギャル「こないだもそんなこと言って昼休みバックレなかった?

ちょっと最近付き合い悪くない?」

 

ギャルの気迫に押される結衣。

ちらちらと廊下の方を見始める。

 

栄喜「ありゃ、コウモリは大変だね。」

 

八幡「それどっちかって言うと…」

 

真澄「おい由比ヶ浜!誘ってきたのはお前だろ?

いつまで待たせる?」

 

八幡「あいつだろ。」

 

栄喜「いや、彼女はコウモリはコウモリでも血を吸うタイプでしょ?」

 

ギャル「あ?何アンタ。」

 

真澄「何ってそこの茶髪ピンクに散々待たされてただけの者だが?」

 

結衣「ちゃ、茶髪ピンク!?」

 

真澄「いいから行くぞ。これ以上待たせるな。」

 

真澄、結衣のカバンを取って彼女に渡すと教室を出ようとする。

 

ギャル「ちょ、ちょっと! あーしらまだ話終わってないんだけどっ!」

 

真澄「うるさい金ドリル。その似合ってねえ上に肌にも合ってねえ見栄だけの高いファンデーション落してから出直してこい。」

 

ギャル「な!?」

 

静まり返る教室。

全員が真澄を見てる。

 

真澄「それともなんだ?お前のも選んでやろうか?」

 

ギャル「え、選ぶ?」

 

結衣「あ、うん!ますみんお化粧とかすっごく詳しくて選んでもらうかなーって。」

 

ギャル「……」

 

真澄「行くぞ。」

 

真澄、結衣を連れて教室を後にする。

それと同時に鳴る耳鳴りのような音。

八幡、栄喜。結衣たちをすり抜けながらデッキを見せる。

 

栄喜「俺らが。」

 

真澄「まかせた。」

 

八幡、栄喜、男子トイレに入り、人の出入りを確認。

 

2人「「変身!」」

 

仮面ライダーに変身、鏡に突入していく。

 

〇ミラーワールド コンテナ街

 

ゾルダ「なーんか、こんな感じの場所に出るのが多い気がするのは気のせいかね?」

 

龍騎「ミラーモンスターの習性なんじゃないか?しらんけど。」

 

モンスター「!!!!!!(猛るような鳴き声)」

 

猪型のモンスター、ワイルドボーダー出現。

ライダー2人、左右に飛んで避ける。

 

「ちっ!やってくれたな!」

 

ゾルダ、カードを引き抜くがワイルドボーダーの胸部法に手首を撃たれる。

 

ゾルダ「しまった!龍騎!拾ってくれ!」

 

龍騎、バイザーの蓋を開けると飛び出して行ってカードを拾い、自分のバイザーに装填する。

 

バイザー『GUARD VENT』

 

龍騎「いてぇ!」

 

ギガシールド、ゾルダの手元に現れ攻撃をもろに受ける龍騎。

 

龍騎「ッ!…なんで?どこ行った?」

 

ゾルダ「悪いなこっちだ。お前のやり方がまずかったんじゃないか?」

 

龍騎「そうなのぉ?」

 

ゾルダ、ギガシールドを構えながらマグナバイザーをフルオートで連射。

ワイルドボーダー、射撃船が不利と悟り突進攻撃に切り替える。

 

ワイルドボーダー「!!!!!!!(猛るような鳴き声)」

 

ゾルダ「おおおおおお!!!!」

 

衝撃!ゾルダとワイルドボーダーが激突。

よろけたゾルダを踏み台に飛び、敵の背後を取る龍騎。

 

バイザー『STRIKE VENT』

 

龍騎「はぁああい!」

 

背中にゼロ距離火炎弾を放つ龍騎。

意図を察したゾルダ、ワイルドボーダーの逃げ場を奪うべくその場に踏ん張る。

 

ワイルドボーダー「ー----っ!」

 

爆散。衝撃波に吹っ飛ばされた2人。

そこに飛来したドラグレッダーが砕けたワイルドボーダーの上半分を持っていく。

下半分はマグナギガが持って行った。

 

龍騎「あー、疲れた。」

 

ゾルダ「お疲れさん。ゲーセンどうする?」

 

龍騎「そんな気分じゃねえ。それより腹減った。

サイゼでも行こうぜ。」

 

ゾルダ「だな。…ッ!」

 

ゾルダ、起き上がってマグナバイザーを構える。

コンテナの角からライアが現れる。

 

龍騎「マゼンタのヒラメ野郎…あいつがライアか。」

 

ライア「待ってくれ!戦うつもりはないんだ!」

 

ゾルダ「じゃあなんでこっちをこそこそ覗き見てやがった?」

 

ライア「俺は、俺はライダーの戦いを止めたい!

そのために戦ってるんだ!」

 

〇中CM

 

〇放課後 サイゼリヤ

 

八幡「……。」

 

栄喜「……。」

 

ライアの男「それじゃあ同じクラスだけど一応。

俺は葉山(はやま)隼人(はやと)。仮面ライダーライアだ。」

 

八幡「……。」

 

栄喜「…俺はゾルダの満坂栄喜。こっちが龍騎の比企谷君。

それで?なんでお前はそんな酔狂な真似してるんだ?」

 

栄喜、ドリンクバーのコーラを飲みながら尋ねる。

 

ライアの男→隼人「酔狂かな?俺は人として当たり前のことをしてるつもりだけど…」

 

栄喜「ライダーってのは所詮ミラーワールドの住人だ。

蹴落とし、足掻き、そして自分の願いの為にまい進する。

違うか?」

 

八幡「その理屈だと全人類仮面ライダーじゃねえか。」

 

隼人「なんだって?」

 

八幡「…だってそうだろ?てか、

クラスカーストのトップにいるお前が何意外そうな顔してんだよ?」

 

隼人「…俺は、別にそんなつもりはない。

ただみんなが仲良くできるような環境を作りたいとは思ってる。」

 

栄喜「だったら悪い事は言わない。デッキを寄越せ。

お前のモンスターは俺と比企谷できっちり始末してやる。

そんないつものクラスのノリでライダーバトルを引っ掻き回してくれるな。

ちゃちい例えだが、内輪ネタを大人数の場でやるようなもんだ。」

 

隼人「! そうだ!そうすればいいんだ!

全員が全員のミラーモンスターを倒せばいいんだ!

そうすれば誰も死ぬ必要なんて…」

 

八幡「お前…」

 

栄喜M(話して無駄ってやつがこんなに厄介とは…)

 

八幡「おい葉山、お前さっき戦い止めるのが人として当たり前とかぬかしてくれやがったよな?」

 

隼人「…何が言いたい?」

 

八幡「お前それ故障が原因で飛べなくなったフィギュアスケーターのライダーとか、娘がレイプされた過去を無かった事にしたい父親ライダーとかにも同じこと言えんのか?」

 

隼人「!」

 

八幡「そんな奴らにもお前はあきらめろっていうのか?

自分の半分以上を構成してた壊れ物を直せるかもしれない希望の芽を正しいからって摘み取るのか?」

 

隼人「それは…」

 

言葉に詰まる隼人、八幡、カバンをもって席を立つ。

栄喜、千円札をテーブルに置くと八幡の後を追う。

 

栄喜「やるじゃん。あのクラスの王子様を言い負かすなんて。」

 

八幡「目には目、歯には歯。正しさには正しさだ。

ああゆう分かりやすい正義をかざす強い連中には弱い正義ってのは案外効く。

それが強い悪なら勇者も気取れるだろうが、かわいそうな被害者は同情以外しようがないからな。」

 

栄喜「あの様子だと自分の正義を信じ切ってるって程でもないようだけどね。」

 

八幡「そうだったら俺らのデッキ強引に奪い取ってただろ。お前も。」

 

栄喜「……。」

 

 

八幡「俺はドラグレッダーに食われたくないからライダーやってる。

お前はなんでなんだ?

仲田は…本当に手の内見ておきたいのと学校での生活があるからだろうけど、お前はF組だ。それに主武装は銃火器。

事を起こす場合間違いなくナイトは噛んでこない。

暗殺決めようと思えばどんだけでも方法あると思うんだが?」

 

栄喜「はぁ…ふつうそれ思っててもそんなペラペラ言う?

もしかして比企谷君会話らしい会話一日一回もしない日とかあるんじゃない?」

 

八幡「にゃ、にゃんの話でしょう…」

 

栄喜「噛むな気持ち悪りい。はぁー!ま、そうだな。

自分で言うのもなんだけど、誰からも同情されるような可哀そうな境遇とだけ言っとくかな。

あ、ちなみに俺は仮面の男から直接デッキを受け取ってる。

お前みたいに何の説明もなくなったのとは違うからな?」

 

八幡「そうかい…。」

 

栄喜「ゲーセンはまた今度ってことで。」

 

そう言って八幡の肩を叩くと栄喜は帰路に就く。

八幡も自転車に乗り込み反対方向に走った。

 

〇エンディング

*1
ナレーション、以下N表記

*2
Alive A life(松本梨香)




第六話、いかがだったでしょうか?
やっぱりどうしてもオリジナルキャラは掘り下げたくて出番を多くしてしまいます。
真澄は肌が弱いので日焼け止めとか、それ関連で化粧品とか詳しいです。
栄喜は諸事情合って高校一年時は本当に最低日数しか通学してなかったので、八幡ほどじゃないけど限りなくボッチで、ゲーセンの常連です。
次回もお楽しみに。


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#07 GUNSLINGER AND COLD AXE

主な登場人物
・比企谷八幡
・雪ノ下雪乃
・由比ヶ浜結衣
・平塚静
・戸塚彩加

・仲田真澄
・満坂栄喜

・仮面ライダータイガ
・シアゴースト
・シールドボーダー


〇アバン

 

黒い画面、映し出される12枚の裏向きのアドベントカード。

 

N*1「すべてが左右に反転した世界、ミラーワールド。

そこは現実のルールをあまりにもわかりやすく反映した世界。」

 

上段、下段にそれぞれ6枚づつ並ぶカード。

うち6枚、龍騎、ナイト、ゾルダ、シザース、ライア、ベルデのカードが表側にひっくり返る。

 

N「その世界で戦う者たちは、仮面ライダーと呼ばれる。」

 

色を失い崩れるように消失するシザースのカード。

その分が詰められ、11枚のカードが残る。

 

N「戦わなければ、生き残れない。」

 

〇オープニング*2

 

〇サブタイトル「GUNSLINGER AND COLD AXE」

 

〇ミラーワールド ショッピングモール

 

もう既に戦闘は始まっている。

大量のシアゴーストと戦う龍騎、ナイト、ゾルダ

 

龍騎「はぁ!やぁあああ!くそ!全く減らねえ!」

 

ゾルダ「何階だ!モンスターの安売りなんてアホやってる店は!」

 

ナイト「うまいこと言ってるつもりか!

口より手を動かせ手を!」

 

 

バイザー『SWORD VENT』

 

バイザー『STRIKE VENT』

 

バイザー『GUARD VENT』

 

 

それぞれウイングランサー、メタルホーン、ドラグシールドを装備。

戦闘を続けるが、一向に敵の数は減らない。

それどころか戦闘音に引き寄せられて益々集まってくる。

 

ゾルダ「一回外に出よう!このままじゃジリ貧だ!」

 

龍騎「だな!仲田!」

 

ナイト「ここではナイトと呼べ!」

 

バイザー『『FINAL VENT』』

 

飛び蹴りタイプのドラゴンライダーキックと飛翔斬が炸裂。

入口に大穴を開ける。

ゾルダ、その後に続き、入り繰りの天板をギガホーンのキャノン機構で打ち壊して塞ぐ。

 

ナイト「龍騎、もっと離れるぞ。」

 

龍騎「ああ。さっさと逃げて体制を…」

 

ナイト「そうじゃない。お前は新参者だからな。

親切で教えてやる。ゾルダのファイナルベントは圧倒的だ。」

 

ゾルダ、ベルトから二枚のカードを取り出す。

まず一枚目。

 

バイザー『ADVENT』

 

鋼の巨人マグナギガ、出現。

続いて二枚目のカードを装填。

 

バイザー『FINAL VENT』

 

ゾルダ「お前の断末魔がラストナンバーだ。」

 

マグナバイザーをマグナギガの背中に接続。

マグナギガの全砲門が開き、ミサイル、レーザー、ガトリング、キャノン砲が一斉発射。

エンドオブワールド、炸裂!

 

ゾルダ「レクイエムは瓦礫の音で。無作法で失礼。」

 

龍騎「建物ごとかよ…」

 

ナイト「大雑把すぎて確殺とはいかんらしいがな。

ほら、さっさとモンスターに食わせるもん食わせて戻るぞ。」

 

龍騎M『全く、ミラーワールドでやるわけだ。

現実でこんなんぶっ放したら大災害だ…。』

 

〇総武高校 奉仕部部室

 

八幡M『俺と満坂と仲田の三人で奉仕部内での決着までの同盟が出来て一週間が経過した。』

 

持って来たラジカセで音楽を聴いてる栄喜。

紅茶片手に宿題を解いている真澄。

雪乃にちょっかいをかけている結衣。

 

平塚「邪魔するぞー。」

 

雪乃「先生、ノックをお忘れですよ。」

 

真澄「邪魔するなら帰れー。」

 

栄喜「煙草なら余所で吸えー。」

 

結衣「皆ひどいよ!年長者は敬わないと!」

 

八幡「由比ヶ浜、お前が一番心ないこと言ってないか?」

 

平塚「…全く冷たいなお前たちは。

そんなお前たちを熱く滾らせる依頼を2つも持って来たというのに。

入って来い!」

 

平塚の声にジャージの生徒が入ってくる。

 

結衣「あ、さいちゃん!やっはろー!」

 

ジャージの生徒「由比ヶ浜さんこんにちは。

満坂君に比企谷君も。」

 

八幡M『え?何このめっちゃ可愛い子?こんな子うちのクラスに居たっけ?』

 

栄喜「やあ、戸塚君。良かったな比企谷君。

初見で名前間違えられてないぞ?」

 

八幡「あ、ああ。そ、そうだな…」

 

雪乃「ほぼ初対面の男子にデレデレするなんて気持ち悪いわよ吃音谷君。

それで、彼から2つ依頼があるという事でしょうか?」

 

八幡*3「ば、馬鹿な!こんな可憐で可愛らしい子が、男!?なんていう事だ…そんなの宇宙の法則の方がおかしいだろ!いったいなぜ神はこんないたずらを…」

 

奉仕部の残る4人、平塚、八幡を気持ち悪い物を見る目で見ている。

 

結衣「ヒッキー最低!さいちゃんF組だから知ってなきゃおかしいし!」

 

八幡「な!?どうして俺の心の声が…」

 

真澄「完全にフルオープンだったわ。

何もかもそのMAXコーヒーで爛れた喉から垂れ流しだよ。

今の今まで。」

 

八幡「え?マジ?」

 

戸塚「は、ははは…そうだよね。僕なんか全然男らしくないし…。」

 

栄喜「涙吹けよ。」

 

戸塚、栄喜のハンカチを受け取る。

 

平塚「んん!それで、もう一つの依頼の件だが…そっちは私からだな。

優劣をつけるわけじゃないが、多分戸塚の案件より厄介だ。

もし人員を分けるとすれば私、戸塚で3:2で別れてもらいたい。」

 

真澄「じゃあ由比ヶ浜と比企谷がダブったら仕切り直しってことで。」

 

結衣「ちょっと!」

 

雪乃「そうね。」

 

八幡「おい!」

 

栄喜「じゃ、やりますか。」

 

結衣「いや待ってって!それどうゆう事だし!」

 

八幡「なんで俺がこいつと同レベルで役に立たないことになってんだ?」

 

雪乃「うるさいわ騒音谷君。部長の命令は絶対よ。」

 

栄喜「いーからやるぞ。グッとパーで!」

 

5人「「「「「分かれましょ!」」」」」

 

〇中CM

 

〇奉仕部部室

 

八幡「この組み分けマジかよ…」

 

テニスコートで戸塚の相手をする栄喜、結衣のシーンを挿入。

すぐに奉仕部の風景に戻る。

 

真澄「最悪だ…由比ヶ浜だけならまだどうとでもなるというのに…」

 

雪乃「ええ、全くね。疫病谷君、くれぐれも両手に花とか深い極まる勘違いだけはやめなさい?私たちもあなたも不幸になるだけよ。」

 

八幡「安心しろ。中学で告白して晒されたり女子に誕プレ送って引かれたりして痛い目見続け3年。

以来勘違いだけはしないように気を付けている!」

 

真澄「お前、それ自慢げに言えることか?」

 

平塚「比企谷の憐れむべき中学時代のアレコレは置いておいて、依頼の件だが、

この生徒の生活態度があまりにも酷いのでな。

お前たちに原因を究明、そして可能なら同にアkする手助けをしてやって欲しい。」

 

真澄「要は生活指導(あんた)の仕事を私たちにやれと?」

 

八幡「職務怠慢?」

 

平塚「お前ら右の拳と左の拳、好きな方を選ばせてやろうか?」

 

雪乃「それで!その生徒は誰なんです?」

 

平塚「川崎(かわさき)沙希(さき)。比企谷と同じ2年F組の生徒だ。」

 

〇テニスコート

 

テニスを続ける栄喜、戸塚。

球拾いの結衣の体力が真っ先に無くなり、へたり込む。

 

栄喜「どーする?一回休憩挟む?」

 

戸塚「そうだね。じゃないと由比ヶ浜さん潰れちゃいそうだし。」

 

戸塚、結衣に手を貸して立たせる。

 

結衣「ううぅ…ごめんね。足引っ張ちゃって。」

 

戸塚「いいよ、練習付き合ってくれるだけありがたいからさ。」

 

栄喜「しかし…なんで俺らなんだ?テニス部には入ってるんだろ?

だったら同じ部の奴らに頼めばいいじゃん。」

 

戸塚「実は、皆3年の強い先輩たちが辞めてからやる気なくなっちゃってさ。」

 

栄喜「それで自分がその強い3年の代わりになろうってか?」

 

結衣「おー!さいちゃんかっこいい!」

 

戸塚「そうかな?」

 

栄喜「そう思うならちゃん付辞めてやれば?」

 

結衣「あだ名なんだしいいじゃん!」

 

耳鳴りのような音が響く。

栄喜、遠目に窓が水面の様に揺れたのを見る。

 

栄喜「悪い、ちょっとトイレ行ってくる。」

 

戸塚「僕は飲み物買いに。」

 

栄喜、トイレに駆け込むとジャージのポケットからデッキを取り出し

 

栄喜「変身!」

 

ゾルダに変身。ミラーワールドに突入。

 

〇ミラーワールド 校舎内

 

ゾルダ「は!」

 

マグナバイザーで出現したシールドボーダーを狙撃する。

しかし固すぎる装甲に全く効くいていない。

 

シールドボーダー「!!!!!!(猛り声)」

 

シールドボーダー、縦を持って近付いてくるが、

あまりに鈍重。ゾルダよりも遅い。

 

バイザー『STRIKE VENT』

 

無事装備を変えたゾルダと近接戦になる。

拳と武器による打撃の応酬。

パワーではゾルダを上回り、吹っ飛ばす。

ゾルダ、窓を破って机や椅子を倒しながら教室に転がり込む。

 

ゾルダM『ウイングランサーならトップスピードでなら貫けただろうが…』

 

ゾルダ「ない物ねだりをしてもな!」

 

バイザー『SHOOT VENT』

 

ギガランチャーを装備。

敵に標準を合わせ、引き金を引く。

 

バイザー『FREEZE VENT』

 

ゾルダ「!」

 

ランチャーに霜がかかったような模様が浮かび、ライダーのスーツ越しに温度が下がったのが分かる。

その動揺を突いてシールドボーダーは撤退してしまった。

 

ゾルダ「しまった!……(周囲を見渡して)誰だ?どこから見てやがった!?」

 

〇現実 校舎内

 

タイガ「……。」

 

現実世界から窓越しにゾルダを観察する仮面ライダータイガ。

ゾルダが撤退したのを確認するとその場を後にした。

 

〇エンディング*4

 

*1
ナレーション、以下N表記

*2
Alive A life(松本梨香)

*3
この時、八幡の口元を映さない

*4
Go!Now!~Alive A life neo~(松本梨香)




お久しぶりです。
バイトのシフトや授業の関係でなかなか投稿できずにいましたが,、第7話です。
一体だれがタイガなんでしょうね?(すっとぼけ)
次回もお楽しみに。


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#08 HATE AND HAZARDOUS

主な登場人物
・比企谷八幡
・雪ノ下雪乃
・由比ヶ浜結衣
・比企谷小町
・川崎沙希

・仲田真澄
・満坂栄喜

・仮面ライダーガイ
・???


〇アバン

 

黒い画面、映し出される12枚の裏向きのアドベントカード。

 

N*1「すべてが左右に反転した世界、ミラーワールド。

そこは現実のルールをあまりにもわかりやすく反映した世界。」

 

上段、下段にそれぞれ6枚づつ並ぶカード。

うち7枚、龍騎、ナイト、シザース、ゾルダ、ライア、タイガ、ベルデのカードが表側にひっくり返る。

 

N「その世界で戦う者たちは、仮面ライダーと呼ばれる。」

 

色を失い崩れるように消失するシザースのカード。

その分が詰められ、11枚のカードが残る。

 

N「戦わなければ、生き残れない。」

 

〇オープニング*2

 

〇サブタイトル「HIGH AND HAZARDOUS」

 

〇喫茶花鶏 四人席

 

雪乃「作戦会議を始めるわ。」

 

真澄「一応、私達は競争相手同士ってことになってるがいいのか?」

 

雪乃「依頼を果たせなければ競争も何もないわ。

勿論競い合うけど蹴落とし合うのは無しよ。いいわね?」

 

八幡「作戦って言ってもどうするんだ?

こいつの事何にも知らないだろ?」

 

雪乃「何のためにあなたが居ると思ってるの?

同じクラスなんでしょう?」

 

真澄「雪ノ下、こいつがもし一人でもクラスにまともな友人がいるなら平塚に睨まれてないはずだろ?」

 

雪乃「ああ、そうだったわね…。」

 

八幡「悪いように言うなよ仲田。そして憐れむような目を向けるなよ雪ノ下。

俺は他人を見たら他人と思い、無抵抗以前に無接触なだけだ。

平和主義過ぎて超ガンジーだろ?」

 

真澄「良いように言うな。それ周囲の誰の眼中にも無いだけだろ?」

 

雪乃「そのレベルまで行くと最早人間不信や対人恐怖症を疑うわね。

あとガンジーは修行と称して裸の少女を添い寝させたりしてたり、

若い女の子に夢中になってたせいで親の死に目に会えなかったような色欲魔人よ?

何勝手に自分の下半身事情をさらけ出してドヤってるのかしら?

ま、仮にあなたもそうだとしても女の子を口説けるような度胸はないでしょうけど。」

 

「違いないな。」

 

胸を押さえてうずくまる八幡。

 

八幡の妹「(off)あれ?お兄ちゃん?」

 

八幡「小町(こまち)…。」

 

八幡の妹→小町「お兄ちゃん何して…!?う、そ…。

お兄ちゃんが女子とお茶してる!?」

 

思わずカバンを落して固まる小町。

泣きながら兄の元まで行き

 

小町「うぅ…いつの間にかそこまで出来るようになってたなんて小町感激だよ!

成長したねお兄ちゃん!」

 

八幡「ヘイヘイ、マイリトルシスター。

これのどこが楽しくお茶してるように見えるんだ?

どう見ても口撃んじよる集団リンチの現場だろ?」

 

小町「え?違うの?

あ、愚兄がお世話になってます。比企谷小町です。

こんなごみいちゃんですが一つ良くしてやってください。」

 

雪乃「その勘違いだけは酷く不快だけれど、

それ以外は比企谷君と同じ血を引いてるとは思えないよくできた妹さんね。

奉仕部部長の雪ノ下雪乃です。よろしくね」

 

真澄「…仲田真澄だ。その男の面倒を見てるつもりはないが、まあ座れ。」

 

真澄、開いていた自分の対面側、八幡の隣の席を指す。

 

小町「おじゃましまーす。それで、なんの話してたんですか?」

 

雪乃「言うっていいのかしら?」

 

真澄「兄貴の方より酷い案は出ないだろうし、いいんじゃないか?」

 

八幡「まだ何の案も出てないだろ。」

 

雪乃、小町におおよその事情を説明する。

 

小町「んー…もしかしたらですけど、その人弟いません?

私の予備校の友達にも同じ名字で、お姉ちゃんいるって子がいて。」

 

八幡*3「何!?小町に男友達だと!?まさかその小僧小町を狙って…いや、まさかじゃないそうとしか考えられない!次会った時に適切な処置をしなければ…」

 

雪乃「シスコン谷君、処置っていったい何をするつもりなのかしら?」

 

八幡「え?」

 

真澄「お前、一人で良すぎて心の声と独り言の区別できなくなってるのか?」

 

八幡「まさか…」

 

小町「ごみいちゃん小町的にポイント低すぎ。

別に大志(たいし)君とはそんなんじゃないし。」

 

八幡「マジかよ…」

 

雪乃「それで、その川崎大志君がなんて?」

 

小町「なんでもそのお姉ちゃん朝帰りするようになったって言ってるんですよ。

その上エンジェルなんとかって店からそのお姉ちゃんに電話が来たって。」

 

真澄「その川崎大志が比企谷妹と同じ予備校ってことは…」

 

雪乃「通学路に関しては比企谷君が自転車を使わない場合と半分ぐらい被ってるとみていいわね。」

 

真澄「じゃあバイトの範囲も大体絞れるか。」

 

雪乃「ではまずバイトの裏付けをとることね。

比企谷君、仲田さん、お願いできるかしら?」

 

八幡「え?なんで?」

 

真澄「私ら以上の適任が居るか?」

 

真澄、ポケットからナイトのデッキを取り出す。

 

小町「あ、それ…」

 

八幡「!? 小町、しってるのか?」

 

小町「うん。例の大志君も持ってた。それはやってるの?」

 

〇中CM

 

〇総武高校 テニスコート

 

栄喜、結衣、コートで部活仲間と練習する戸塚を見ている。

 

栄喜「まあまあフォーム良くなってきてんじゃないの?」

 

結衣「だねー。あたしなんかすぐばてちゃうもん。」

 

栄喜「由比ヶ浜さんは体力なさ過ぎだからね?

俺らほど、はやり過ぎだけど、もうちょっとあったほうがいいよ?」

 

結衣「あ、あははー」

 

栄喜、結衣、そのまま帰路に就く。

 

結衣「ヒッキーたちの方手伝いに言った方がいいのかな?」

 

栄喜「一応勝負になってるし、どうなんだろう?

ま、由比ヶ浜さんは言ってもいかなくてもいいんじゃない?

俺はこの前の奴逃がしちゃったからそろそろ餌やりを…」

 

耳鳴りのような音が響く。

栄喜、にやりと笑う。

 

栄喜「早速おいでなさった。」

 

栄喜、デッキを取り出しながらカーブミラーに向かう。

 

結衣「ッ!満坂君待って!」

 

突如鏡から仮面ライダーガイが出現。

栄喜の手からデッキを蹴り落し、足先で踏む。

 

栄喜「チッ!マジかよ…」

 

栄喜、ファイティングスタイルを取る。

 

仮面ライダーガイ「……。」

 

ガイ、デッキを蹴って栄喜の足元に滑らす。

 

栄喜「?」

 

ガイ「取るんだ。フェアな勝負がしたい。」

 

栄喜、ガイに視線を向けたままデッキを拾い上げ、その奥の鏡に掲げる。

 

栄喜「変身!」

 

仮面ライダーゾルダに変身。

ミラーワールドに突入するライダーたち。

 

結衣「あ!……なんであたしさっき来るってわかったんだろう?」

 

いぶかしげに考え込む結衣。

その後ろから誰かが走ってくる。

 

??「ねえアンタ!」

 

結衣「!…えっと、川崎さん?」

 

???→川崎沙希「今、鏡に入ってったのって…」

 

結衣「え!?えっとぉ…これは、その…」

 

沙希「お願い!あの銀のライダーを倒さないで!

アイツ、私の弟なの!」

 

〇ミラーワールド 廃車置き場

 

ゾルダ、ガイ、まずお互い近接戦を挑む。

足払いの応酬、からの拳や肘でのインファイト。

 

ガイ「やるな…けど優勝するのはこの俺だ!」

 

ゾルダ「ほざくだけならだれでもほざける!」

 

ゾルダ、バイザーにカードをセット。

 

バイザー『STRIKE VENT』

 

ガイ「ふん!」

 

ガイ、それを見てから肩アーマーにはめ込まれたバイザーを開き、カードを投が入れる。

 

バイザー『CONFINE VENT』

 

ゾルダに装備されたギガホーン、砕けて消える。

 

ゾルダ「なに!?」

 

ガイ「こーゆーカードも有るんだよ!」

 

ガイ、新たにカードをベントイン

 

バイザー『STRIKE VENT』

 

メタルホーンを装備。

ゾルダ、バイザーで応戦。

 

ゾルダM『くそ!俺と同じタイプかと思えばけっこう機敏じゃねえか!

ナイトや龍騎ほどじゃないが、まずい!』

 

ゾルダ、顔面を狙って銃撃し、

目くらましをすると車の間に隠れる。

 

ガイ「!? どこだ!?逃げやがったか!?」

 

ゾルダM『なにか…なにか逆転できる材料は…』

 

何かに気付いたゾルダ。

ガイの頭よりやや上を狙って走りながら銃撃する。

 

ガイ「な、何が…うげぇ!?」

 

ボンネットがゆがみ、ガイの背後の二台積みあがった車の上の方が落ちる。

 

ガイM『しまった!デッキに手が届かない!』

 

ゾルダ「こいつで、ラストナンバーだ!」

 

バイザー『SHOOT VENT』

 

ギガランチャーを装備、藻掻くガイの頭に標準を合わせる。

 

ゾルダ「シュートォ!」

 

結衣「だめぇえええ!」

 

砲が発射されると同時に外の前に結衣が走り込んでくる。

 

ガイ「え?」

 

ゾルダ「はぁ!?」

 

爆音と火柱。

煙が充満し、視界が奪われる。

 

ゾルダ「あれは…」

 

煙の奥、結衣ではないシルエットと赤い輝る何かが見える。

しかしすぐに消えた。

 

ゾルダ「今のは一体…」

 

???「(off)次はない。」

 

ゾルダ「!!」

 

ふり返り、バイザーを向けるだが誰もいない。

その後ろの気絶した無傷の結衣と何とか車から抜け出したガイ。

 

〇エンディング*4

 

*1
ナレーション、以下N表記

*2
Alive A life(松本梨香)

*3
この時、八幡の口元を映さない

*4
Go!Now!~Alive A life neo~(松本梨香)




あけましておめでとうございます!
本年もやはり俺が仮面ライダー龍騎なのはまちがっている。をよろしくお願いします!
今回はガイとサキサキさんの初登場でしたがいかがだったでしょうか?
また次回もお楽しみに!


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#09 I don`t know his Idea

主な登場人物
・比企谷八幡/仮面ライダー龍騎
・雪ノ下雪乃
・由比ヶ浜結衣
・比企谷小町
・川崎沙希
・川崎大志/仮面ライダーガイ

・仲田真澄/仮面ライダーナイト
・満坂栄喜/仮面ライダーゾルダ

・???(回想)
・仮面ライダー王蛇


〇アバン

 

黒い画面、映し出される12枚の裏向きのアドベントカード。

 

N*1「すべてが左右に反転した世界、ミラーワールド。

そこは現実のルールをあまりにもわかりやすく反映した世界。」

 

上段、下段にそれぞれ6枚づつ並ぶカード。

うち8枚、龍騎、ナイト、シザース、ゾルダ、ライア、ガイ、タイガ、ベルデのカードが表側にひっくり返る。

 

N「その世界で戦う者たちは、仮面ライダーと呼ばれる。」

 

色を失い崩れるように消失するシザースのカード。

その分が詰められ、11枚のカードが残る。

 

N「戦わなければ、生き残れない。」

 

〇オープニング*2

 

〇サブタイトル「I don`t know his Idea」

 

〇総武高校付近 一般道

 

窓がゆらぎ、現実とミラーワールドがつながる。

そこから結衣、栄喜、大志、帰還。

 

栄喜「……。」

 

大志「……。」

 

大志、無言で栄喜を睨んで去って行く。

 

結衣「ちょ!ちょっと待って!」

 

大志「うるさい!アンタには関係ないだろ…。」

 

結衣「そんなこと言ったって…」

 

大志「死にたいんなら邪魔しない!

けど戦いの邪魔しないでください…。

アンタみたいなのが居るとしらけるんすよ。」

 

大志、今度こそ振り返らず走り去って行く。

 

結衣「あ…」

 

栄喜「…由比ヶ浜さん、アンタがいい人なのは分かった。

けど死にたくないならさっきみたいなのもうやめてくれよ?

流石に関係ない奴に死なれんのは気分悪い。」

 

表情を曇らせ、うつむく結衣。

 

栄喜M『ま、それ以上に、あの声や、あのライダーの事も有るし』

 

フラッシュバック。

煙の奥、結衣ではないシルエットと赤い輝る何かが見える。

 

???(回想)「(off)次はない。」

 

沙希「(off)あ、居た!」

 

沙希、息を切らせながら栄喜と結衣に駆け寄る。

 

沙希「はぁー、はぁー、大志は、弟は?」

 

栄喜「もう行ったよ。帰ったんじゃない?」

 

沙希「…そう。ねえアンタ。アンタがあの緑の奴なんでしょ?」

 

栄喜「…まあね。それで?」

 

沙希「頼む!大志を、弟を止めて!

大志にこれ以上罪を重ねさせないで!」

 

〇夜 満坂栄喜の私室

 

栄喜、椅子に腰かけ、目を閉じ天井を向いていたが、

目を開け、机に置いたストレートタイプの携帯電話を取る。

 

真澄「(off)はい。仲田です。」

 

栄喜「満坂だ。今ちょっといいか?」

 

真澄「(off)五分くらいなら…」

 

栄喜「仮面ライダーガイの正体が分かった。」

 

真澄「(off)! どこのどいつだ?」

 

栄喜「そっちの依頼の川崎ってやつの弟。名前は大志。」

 

真澄「(off)それで?」

 

栄喜「少々トリッキーなカード持ってて厄介なんだ。

お前の手を借りたい。」

 

真澄「(off)比企谷はどうする?」

 

栄喜「言わなくていいだろ。

邪魔してくるなら仲田さんが抑えてくれればいい。」

 

真澄「(off)いいだろう。こっちの依頼の件ともダブルから、情報収集の機会はどんだけでもある。」

 

栄喜、じゃ、そういうことで。と、電話を切って机を向く。

 

栄喜「さぁ、お前が二人目だぜ。角頭君。」

 

〇中CM

 

〇総武高校 奉仕部部室

 

雪乃「由比ヶ浜さん、満坂君。

戸塚君のところに行く前にちょっといいかしら。」

 

結衣「サキサキの弟君の事?」

 

栄喜「その件なら昨日電話で仲田さんに伝えてありますけど…」

 

雪乃「ええ。それは聞いてる。私が知りたいのは、

あなた達から見て、川崎大志がどんな人間だったかという事。」

 

栄喜「驚いた。部長殿にも人間の心があったんですね。」

 

結衣「満坂君いいすぎだし。ゆきのん人と話すの苦手なだけだし。」

 

雪乃「あなた達が私をどう思ってるかは聞いてないわ。それでどうなの?」

 

栄喜「比企谷よりもライダーに向いてない感じっすかね。

態々先制攻撃ではたき落とした俺のデッキ返してくるぐらいですし。」

 

結衣「うん…きっと後戻りできなくなっちゃっただけだと思う!」

 

雪乃「そう、ありがとう。なら交渉の余地ありと判断するわ。」

 

結衣「がんばってね!」

 

雪乃「一応競争相手なのだけど…」

 

ちょっと困ったように言いつつも、少し嬉しそうにする雪乃。

結衣、栄喜、退出。それから約十数分後。ノック音がする。

 

雪乃「どうぞ。」

 

真澄「じゃまするぞ。」

 

八幡「うーす…。」

 

雪乃「来たのね。仲田さんと…誰?」

 

八幡「お前も飽きないな。雪ノ下。

仮面ライダー龍騎こと比企谷八幡君ですよ。」

 

雪乃「ああ。いたわねそんな人も。」

 

真澄「下らんことに時間使うな。ほら、さっさと始めるぞ。」

 

八幡、真澄、着席。

雪乃、栄喜たちから得た情報を二人に説明する。

 

真澄「そうか。なら私は川崎沙希を追おう。

今朝からダークウイングを尾けさせてるし、

お前らよりかは対人能力有るつもりだ。」

 

八幡「まあ、そうだな。それで俺は…」

 

雪乃「あなたも行くのよ。

妹さんに連絡すれば川崎大志君の学校ぐらいわかるでしょう?」

 

八幡「別に俺じゃなくても…」

 

雪乃「ファイナルベントを相殺できるカードが二枚あるあなたが適任だからよ。」

 

八幡「じゃあお前はどうするんだ?」

 

雪乃「仲田さんと行くわ。もしこっちに川崎大志君が来た場合、川崎沙希さんを捕まえておけないもの。」

 

真澄「決まりだな。しくじんなよ?」

 

八幡「こっちの台詞だ。」

 

〇駅 改札口前

 

真澄「川崎。」

 

沙希「…なに?」

 

真澄、口笛を吹きながらデッキを見せる。

 

沙希「!?」

 

沙希、逃げようとするが、雪乃が道を塞ぐ。

青ざめた顔で逃げ場を探す沙希。

 

雪乃「落ち着いて川崎さん。

別に何かしようって訳じゃないわ。鏡の件とは別件よ。

まあ、関係がないとも言えないのかもしれないけれど。」

 

沙希「別件?」

 

真澄「お前、最近生活態度酷いんだってな。

生活指導のヤニ女居るだろ?あいつに頼まれてな。」

 

沙希「……。」

 

真澄「ちょっと話そうぜ。いい店知ってるんだ。」

 

〇大志の中学校

 

八幡M『うーわぁ、視線が、視線が刺さる…。

そりゃそうか。

この目のせいで通報されたことも一度や二度じゃ…。』

 

耳鳴りのような音が響く。

振り向くと、カーブミラーに仮面ライダーガイが映っている。

 

八幡「…はぁ、仕方ない。」

 

八幡、近くの公衆トイレに駆け込み、デッキを構えてポーズを取る。

 

八幡「変身!」

 

八幡、龍騎に変身し、ミラーワールドに突入。

 

ガイ「アンタ、総武の制服だったな。ゾルダから聞いたのか?」

 

龍騎「まあ、そんなとこだよ。今日は話があって来た。」

 

ガイ「そんなものいらない!」

 

バイザー『STRIKE VENT』

 

ガイ、メタルホーンを装備。

龍騎に殴り掛かって行く。

 

龍騎「……これ、自衛だからな!」

 

龍騎、ガイの攻撃を避けながらバイザーを開き、

カードをベントイン。

 

バイザー『SWORD VENT』

 

ドラグセイバーを装備。

メタルホーンと鎬を削る。

 

龍騎「おい川崎!大志でいいんだよな?

お前はなんで戦ってるんだ!」

 

ガイ「お前には関係ない!」

 

龍騎「かもな。けど生憎仕事なんでな!」

 

なおも続く近接戦。

ガイ、新たにカードをベントインする。

 

バイザー『ADVENT』

 

メタルゲラス出現。龍騎に右側からタックルを仕掛ける。

龍騎、ガイにドラグセイバーを投げつけ、怯ませると、

自分もカードを装填。

 

バイザー『GUARD VENT』

 

ドラグシールドを装備。それを見たガイ。

カードを切る。

 

バイザー『CONFINE VENT』

 

龍騎M『読んでたよ!』

 

龍騎、後ろに転がりながら避けると、またカードをベントイン。

 

バイザー『STRIKE VENT』

 

ドラグクローを装備。火炎攻撃を放つ。

 

バイザー『CONFINE VENT』

 

炎と武器が同時に消える。

 

龍騎M『二枚あったのかよ!』

 

ガイ「はぁああああ!」

 

龍騎、ガイの渾身のタックルで吹き飛ばされる。

その隙を逃がさずファイナルベントのカードを取り出すガイ。

 

ガイ「……くっ!うぅ!」

 

龍騎「?」

 

中々バイザーの蓋を閉じようとしない。

 

???「(off)うわぁああああああ!」

 

2人「!?」

 

左の方から黄緑色の仮面ライダーが吹っ飛ばされてくる。

 

紫のライダー「ああ?なんだぁ…他にも遊んでる奴らがいやがったか…」

 

ガイ「ッ!王蛇!」

 

紫のライダー→王蛇「俺とも、遊んでくれよぉおお!」

 

ベノサーベルを持った王蛇が斬りかかる。

四戸もえに戦うライダーたち*3

 

〇エンディング

 

*1
ナレーション、以下N表記

*2
Alive A life(松本梨香)

*3
戦いながら徐々にエンディングのイントロが聞こえてくる




遂に王蛇登場です。ガイはタイガが早めに出てる分、
13RIDERSの手塚みたいな感じになってます。
さて、原作では多分一番出番のないベルデをどう絡ませるか…。
次回もお楽しみに。


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#10 he Jolt guy

主な登場人物
・比企谷八幡/仮面ライダー龍騎
・雪ノ下雪乃
・川崎沙希
・川崎大志/仮面ライダーガイ

・仲田真澄/仮面ライダーナイト

・浅倉威/仮面ライダー王蛇
・木村/仮面ライダーベルデ
・仮面ライダーアビス(回想)
・アビスラッシャー(回想)
・アビスハンマー(回想)


〇アバン

 

黒い画面、映し出される12枚の裏向きのアドベントカード。

 

N*1「すべてが左右に反転した世界、ミラーワールド。

そこは現実のルールをあまりにもわかりやすく反映した世界。」

 

上段、下段にそれぞれ6枚づつ並ぶカード。

うち9枚、龍騎、ナイト、シザース、ゾルダ、ライア、ガイ、王蛇、タイガ、ベルデのカードが表側にひっくり返る。

 

N「その世界で戦う者たちは、仮面ライダーと呼ばれる。」

 

色を失い崩れるように消失するシザースのカード。

その分が詰められ、11枚のカードが残る。

 

N「戦わなければ、生き残れない。」

 

〇オープニング*2

 

〇サブタイトル「Judge of rider battle」

 

〇ミラーワールド 大志の中学校

 

バイザー『STEAL VENT』

 

王蛇、バイザーにカードをセット。

龍騎の手からドラグセイバーが離れ、ひとりでに龍騎を攻撃。

そして、王蛇の手に収まる。

 

龍騎「武器が!」

 

王蛇「いいのもってるじゃねえか…ああっ!」

 

王蛇、そのまま龍騎に斬りかかろうとする。

 

バイザー『HOLD VENT』

 

横から飛んできたバイオワインダーが、王蛇の腕に絡みつく。

 

ベルデ「はぁ!」

 

ベルデ、糸を手繰り、王蛇を転ばし、その隙に新しいカードを切る。

 

ベルデ「おい!絶対喋るなよ!?」

 

龍騎「え?それどうゆう…」

 

バイザー『CLEAR VENT』

 

龍騎、ベルデと共に透明化。

王蛇、それを見て苛立ち気にそこにあったベンチを蹴り壊す。

 

王蛇「ああっ!……そう言えばまだお前が居たなぁ…」

 

ガイ「!!」

 

ガイ、徐々に息が荒くなり、震え始める。

フラッシュバック、膝から崩れ落ちるサメのライダー。

 

ガイ「ああああああー---ーッ!」

 

逃げ出すガイ。

王蛇鼻を鳴らして八つ当たり的に周囲の者を壊し始める。

 

王蛇「ああーっ!イライラするぜ…」

 

王蛇、ミラーワールドから脱出。

景色から浮かび上がるように龍騎、ベルデ、出現。

 

ベルデ「…いったな。」

 

龍騎「みたいだな…。なあ、なんでアンタ俺を助けてくれたんだ?」

 

ベルデ「あの場に二人も残ってたらもっと長く浅倉が止まったかもしれないだろ?」

 

龍騎「浅倉?あの蛇のライダーか?」

 

ベルデ「ああ。聞いたこと無いか?連続殺人犯、戦後最悪の死刑囚。

浅倉威。拘置所を脱走してこの街に潜伏している。ライダーとして戦うために。」

 

〇現実世界 喫茶花鶏

 

八幡「こんちわー。」

 

真澄「いらっしゃい…て、お前か。

観た所川崎大志はいないようだが、まさかサボりか?」

 

八幡「そうじゃなくてこっちで。」

 

八幡、龍騎のデッキを見せる。

その後ろをついてきていたベルデの男、ベルデのデッキを出す。

 

真澄「!? 雪ノ下、川崎、相席いいか?」

 

雪乃「!…ええ。良いでしょう。」

 

木村、失礼、と言いながら沙希の横に座る。

八幡、雪乃の横に座る。

真澄、冷水を2人にも出すと、二歩下がってカウンターにもたれかかる。

 

雪乃「それで、あなたは?」

 

ベルデの男→木村「週刊ATASHI JOURNAL』の木村だ。

今、この町の連続失踪事件を追っている過程で、こいつとね。」

 

そう言ってデッキと名刺をテーブルに出す木村。

八幡も自分のデッキを出す。

 

八幡「一応、久しぶりですよね。」

 

木村「ああ。あの後シザースはアビスの次に脱落したらしいが…無事でよかったな。」

 

八幡「ええまあ、ってちょっと待ってください。

今アビスが脱落って言いました?」

 

木村「知らないのか?仮面ライダーアビス。

俺もついに正体まではつかめなかったが、あの王蛇によって倒された。」

 

〇中CM

 

〇回想 ミラーワールド

 

アビス「はぁ!」

 

ベルデ「ふっ!」

 

どこかの駐車場。アビスとベルデが戦っている。

 

バイザー『ADVENT』

 

アビス、アビスラッシャーとアビスハンマーを召喚。

ベルデ、三人の連携攻撃を掻い潜りながらカードを使う。

 

バイザー『CLEAR VENT』

 

アビス「な!?消えた…どこに!?」

 

ベルデ、後ろからアビスに回し蹴りを叩きこむ。

それから流れるように二体のモンスターにもキックを浴びせる。

 

アビス「くそ!どこに…」

 

王蛇「(off)なにやってんだ、お前…」

 

アビス「!?」

 

王蛇「暇なら俺と遊んでくれよぉおお!」

 

王蛇、アビスに鳶膝蹴りを加えながら躍り出る。

そしてそのまま怯むアビスに連続攻撃。

 

アビス「くっ!お前ら!」

 

モンスターたち、王蛇にとびかかる。

アビス、その隙にカードをベントイン。

 

バイザー『STRIKE VENT』

 

アビス、水流を拳から放つが、王蛇、アビスハンマーを盾に凌ぐ。

 

アビス「な!?」

 

王蛇「そんなもんかぁ?温りいなぁああ!」

 

アビス、たまらず撤退を選び、駐車場の外に逃げ出す。

後に続くモンスターたち。それを追う王蛇。

 

木村「(off)俺もその後を追ったんだ。

もちろん透明化したままな。そこで見たのは…」

 

アビス「うっ!」

 

ガイ「良いから俺と勝負しろ!」

 

ガイ、アビスにつかみかかり、拳を振るう。

アビス、どうにか逃げだし、カードを切る。

 

バイザー『FINAL VENT』

 

アビスダイブを発動。二体のサメ型モンスターが合体し、アビソドンに変身。

アビスと共にガイに突撃する。

 

バイザー『CONFINE VENT』

 

アビスダイブがカード能力に打ち消される。

アビス、二体のモンスター、地面に転がる。

 

バイザー『FINAL VENT』

 

駐車場の入り口から現れた王蛇。

ベノスネーカーの強酸液に押し出され、強力なバタ足キックを放つ。

ベノクラッシュ、サメ型モンスターたちに炸裂、爆散。

アビス、アーマーから粒子が上がり始める。

 

アビス「そんな!契約が!あ…」

 

王蛇、狼狽するアビスの背中にベノサーベルを突き立てる。

うめき声を最後に絶命したアビス、粒子をあげて消滅する。

 

ガイ「あ、ああ…うわぁああああああああ!」

 

王蛇「ああ?なんだよ…逃げんなよ!なぁああああ!」

 

ベルデ「…。」

 

〇回想終了 喫茶花鶏

 

木村「てのが、俺の見たすべてだ。」

 

雪乃「なるほど。実質殺人に手を貸してしまったショックでやけになってる、と。」

 

沙希「そんな…」

 

八幡「もしかしたら、倒した相手が死ぬとか思ってなかったのかもな。」

 

木村「あり得る。俺の把握してる限りライダーの中で一番若いし、

賞金の良い何かスポーツの大会みたいな感覚だったんじゃないか?」

 

沙希「!?」

 

沙希、唇を一文字に結び、肩を震わせる。

 

真澄「どうした?」

 

沙希「私の、私のせいだ…私のせいで…」

 

雪乃「詳しく聞かせてくれるかしら?」

 

八幡「おい雪ノ下…」

 

雪乃「あなたは黙ってて。」

 

八幡、真澄の方を向いて肩をすくめる。

真澄、無言で成り行きを見守る。

 

沙希「私が、学費の為に無理してバイトしたりするの見られたから…手っ取り早くお金稼ごうとして…。」

 

真澄「そこを仮面の男に付け込まれた、か。」

 

八幡「そうやって願いのある人間を選んでんのか。

ん?じゃあなんで俺選ばれたんだ?」

 

木村「俺みたいに、たまたまミラーワールドに引き込まれたから、

ライダーになるか死ぬか選ばされた奴もいる。

君の場合、龍騎の穴を埋めたかっただけなんじゃないか?」

 

八幡「何その流れ弾みたいなの…」

 

雪乃「コミュニケーションの死なさ過ぎで、自分の周りに誰もいないと思い込んで生存本能に基づく危機感すら欠如してるという事ね。」

 

八幡「ぼっちには必要ないからな!」

 

真澄「お前、残り半数になるまで生き残れてると良いな。」

 

木村が席を立つと同時に真澄、エプロンを外して裏に戻る。

 

沙希「ま、まって!アンタらまさか…」

 

真澄「悪いが川崎沙希。私にとって自分以外のライダーは敵だ。

これ以上誰かと休戦するつもりもない。お前の弟は殺す。」

 

木村「俺は静観させてもらう。若人の問題は若人に任せる。

それに君らみたいなタイプは、大人、嫌いだろう?」

 

雪乃「!?」

 

沙希「比企谷…」

 

縋るように八幡を見る沙希。

 

八幡「……。」

 

八幡、気まずそうに目を逸らす。

 

〇エンディング*3

 

*1
ナレーション、以下N表記

*2
Alive A life(松本梨香)

*3
Go!Now!~Alive A life neo~(松本梨香)




お久しぶりです。皆さんいかがお過ごしでしょうか?
オミクロンだか、なんだか知りませんが、
新学期までには収まっていて欲しいと切に思う次第です。


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#11 Kamen rider will fight to…

主な登場人物
・比企谷八幡/仮面ライダー龍騎
・雪ノ下雪乃
・由比ヶ浜結衣
・川崎沙希
・川崎大志/仮面ライダーガイ

・仲田真澄/仮面ライダーナイト
・満坂栄喜/仮面ライダーゾルダ

・浅倉威/仮面ライダー王蛇
・木村/仮面ライダーベルデ
・ソノブラーマ


〇アバン

 

黒い画面、映し出される12枚の裏向きのアドベントカード。

 

N*1「すべてが左右に反転した世界、ミラーワールド。

そこは現実のルールをあまりにもわかりやすく反映した世界。」

 

上段、下段にそれぞれ6枚づつ並ぶカード。

うち10枚、龍騎、ナイト、シザース、ゾルダ、ライア、ガイ、王蛇、タイガ、ベルデ、アビスのカードが表側にひっくり返る。

 

N「その世界で戦う者たちは、仮面ライダーと呼ばれる。」

 

色を失い崩れるように消失するシザース、アビスのカード。

その分が詰められ、10枚のカードが残る。

 

N「戦わなければ、生き残れない。」

 

〇オープニング*2

 

〇サブタイトル「Killer of Kamen rider」

 

〇夜 ミラーワールドの奉仕部部室

 

ゾルダ「どうだった?」

 

ナイト「明日、川崎大志を二人で強襲する。

たしかテニス部休みだろ?戸塚との練習はあるのか?」

 

ゾルダ「ない予定になってる。」

 

ナイト「そりゃいい。早くしないと比企谷が腹決めて妨害してくる可能性があるからな。」

 

ゾルダ「そう思うなら学校サボってでもしかけた方がいいんじゃないの?」

 

ナイト「後々の平塚の干渉で動けない方が痛い。

サボりとかはライダーが残り半数切ってからだ。」

 

ゾルダ「なるほど。それじゃあ、連帯でも確認しとこうか!」

 

ゾルダ、バイザーを引き抜いて背後を撃つ。

割れる窓と共にソノブラーマが落ちる。

ナイト、ゾルダ、窓から飛び降り、格闘戦に入る。

 

ソノブラーマ「ー---っ!」

 

ソノブラーマ、応戦するが、二人が係では分が悪く、劣勢を強いられる。

ナイト、ソノブラーマに腕を掴まれ、ゾルダの方に投げられる。

 

ゾルダ「逃がすかぁ!」

 

ゾルダ、倒れながらもバイザーを撃ち続け、

飛び立とうとするソノブラーマを撃ち落とす。

 

ナイト「トドメは任せろ!」

 

バイザー『ADVENT』

 

ダークウイング飛来。

ソノブラーマに体当たりしながらナイトの背後に回り合体。

 

バイザー『FINAL VENT』

 

ナイト「うぉおおおおおおおお!」

 

背を向け逃げ出したソノブラーマに飛翔斬炸裂!

 

ゾルダ「お見事。明日は問題なさそうだね。」

 

ナイト「ああ。ガイを脱落させて、残り9人だ。」

 

〇朝 川崎家前

 

玄関が乱暴に開かれ、大志、沙希、表に出る。

 

沙希「お願いだから待って!」

 

大志「くどいよ姉ちゃん!

俺はもう引き返せないところまで来てるんだ!」

 

沙希「このまま進んでいったら絶対ダメってことでしょ!

お願いだからデッキを捨てて!仲田だって大志を狙ってる!

きっといつか!」

 

大志「デッキを捨てた所で!……俺はもう人を殺してる!

それに、もしそんなことをすれば俺は口封じに仮面の男に殺される!」

 

大志、泣きながら沙希を睨む。

 

沙希「そんな…」

 

大志「姉ちゃんだってなんも話してくれなかったくせに…。

こっちの心配無視してたくせに都合がいいんだよ!」

 

大志、呆然とする沙希を置いて登校する。

 

〇総武高校 自転車置き場

 

八幡「はぁ…。」

 

八幡、自転車の鍵を抜きながら憂鬱そうにため息を吐く。

 

八幡「どうしたら…ん?」

 

隣に止まった自転車のミラーに移る人影を見つける。

ふり返ると、ワインボトルを振りかぶる沙希が居る。

 

沙希「ああああ!」

 

八幡「うぉおおお!」

 

振り下ろされるワインボトルをなんとか避ける八幡。

沙希、その場に崩れ落ちて泣き始める。

 

八幡「え?いや…はぁ?」

 

八幡、校友時に何したらいいか分からない。

とりあえずハンカチを渡す。

 

八幡「お、おい…落ち着けよ。何が、というかなんでと言うか…。

何から聞いたらいいか分かんないけど…」

 

沙希、ハンカチを受け取り、しばらくすると泣き止みはした。

 

沙希「ごめんなさい…」

 

八幡「ああ。もう殴りかかってきたのは、その…。

責めはしないから理由を教えてくれ。」

 

八幡M『大方、大志関連だろうが』

 

沙希「大志を説得するのは、もう無理だと思って…。

だったらもう…戦って、大志のデッキを、、壊すぐらいしか思いつかなくて…」

 

また泣き出す沙希。

 

八幡「…しかたねえ。解決案の提示みたいで、

奉仕部的にはグレーだが…。」

 

沙希「?」

 

八幡「要は金の問題を解決しりゃ良いんだろ?

だったら今からバイト全部やめて、授業態度まともにして奨学金狙いで行くぐらいしか俺には思いつかん。

けど、それをやると戦う理由がなくなった大志がやけになる可能性もある…。」

 

沙希「そ、それじゃあダメじゃん!」

 

八幡「だから俺がガイのカードを奪うかメタルゲラスを撃破するかする。」

 

沙希「でもそしたら仮面の男が口封じに…」

 

八幡「俺のドラグレッダーを護衛に付かせる。」

 

沙希「いいの?そしたらアンタは…」

 

八幡「いざとなったら仲田や満坂を頼る。」

 

沙希「いいの?それって…」

 

八幡「ライダーバトルを速攻で終わらせればいい。」

 

沙希「……それ、難しいなんてもんじゃないよ?

なんでアンタそこまでしてくれんの?」

 

八幡「シスコン、ブラコン仲間のよしみだと思っとけ。

あ、言っておくけど、俺が勝手にやる事だからな?」

 

そう言って八幡は龍騎のデッキを取り出し、さっきのミラーを睨む。

 

〇中CM

 

〇放課後 総武高校2年F組

 

号令の直後、真澄、すぐに席を立つと一瞬だけ八幡の方を見る。

 

八幡「……。」

 

真澄「!」

 

真澄、慌てて視線を逸らし、足早に教室を出る。

 

八幡「!? まさか今日なのか?」

 

八幡続いて走り出る様に教室を出た。

 

〇放課後 奉仕部部室

 

ドアが乱暴に空き、八幡が飛び込んでくる。

 

雪乃「誰!?」

 

八幡「満坂と仲田は!?」

 

雪乃「まだだけど…て、あなたノックもせずに…」

 

八幡「やっぱりもう行ったか!」

 

八幡、龍騎のデッキを窓にかざす。

 

結衣「やっはろー!ってヒッキー?」

 

八幡「変身!」

 

八幡、龍騎に変身。そのままミラーワールドに突入する。

 

結衣「ええぇ!?な、なに!?ゆきのん!

なんでヒッキー変身したの?またモンスター?」

 

雪乃「…由比ヶ浜さん。川崎さんを呼んできてくれるかしら?」

 

結衣「それって!」

 

雪乃「そのまさかかもしれないわ。」

 

〇ミラーワールド 大志の学校

 

ナイト「やぁあああ!」

 

ゾルダ「はぁ!」

 

ガイ「ぐぁああああー!」

 

龍騎、目的地に到着。

ガイ、ナイトとゾルダに攻撃されている。

 

龍騎「もうおっぱじめてやがったか!」

 

龍騎、ライドシューターのアクセルを目いっぱい吹かせる。

三人の間を突っ切る龍騎。

 

ナイト「うお!」

 

ゾルダ「龍騎!?もうきやがったか!」

 

龍騎「……。」

 

龍騎、無言でバイザーを開き、カードをベントイン。

 

バイザー『SWORD VENT』

 

ドラグバイザーを装備。

背後のガイに斬りかかる。

 

ナイト「は?」

 

ゾルダ「え?」

 

ガイ「ぐぅうう!あ、アンタも…」

 

龍騎「勝負がつくまで共闘を守る。俺たち奉仕部のルールだろ?

何そんない驚いてるんだよ!?」

 

ナイト「いやそうだが…」

 

龍騎、呆けるナイトとゾルダをよそにガイに攻撃を浴びせ続ける。

 

龍騎「いいざまだな!姉ちゃん泣かして一人抱えて突っ走った結果、こんな序盤に退場か。」

 

ガイ「だ。だまれ!アンタら全員倒せばいいだけだ!」

 

龍騎「その割には技にさっきが無いぞ!

ミラーモンスターの方があるくらいだな!」

 

龍騎、受け流しからのキックと剣の連撃でガイを的確に追い詰めていく。

 

ガイ「だ、まれ…っ!俺は後戻りできないんだ!」

 

龍騎「それで苦しんでる事すら誰にも言わずにずるずる悪い方に沈んでくのか!?

そうなってる姉ちゃん見てらんなくてライダーになったんじゃないのか!?」

 

ガイ「!!…そ、それは…」

 

龍騎「お前が人を殺すのは勝手だ。

だがそうやって手に入れた汚い金で生活するのは誰だと思う?」

 

龍騎、剣を左逆手に持ち直し、カードを引いてバイザーを開ける。

 

龍騎「お前の家族だ。」

 

ガイ「ッ!」

 

バイザー『STRIKE VENT』

 

ドラグクローを装備。ガイの腹部に叩きこむ。

 

龍騎「お前は耐えられるのか?

他人の血と臓物で豊かな暮らしをする家族を見て、

自分の手が真赤だって何度も思い知らされる日々に。」

 

ガイ「それは…それは…」

 

龍騎「自分の我儘だって開き直んなら、後悔の無いように戦え。

それが出来ないんならライダーなんてやめちまえ。」

 

ガイ「…アンタ、なんで俺にそこまで?」

 

龍騎「ブラコン姉ちゃんが案だけ苦しんでんのまじかに見せつけられちゃあ、

シスコン兄ちゃんとしては一肌脱がない訳にはいかなかっただけだ。

比企谷小町って飛び切りの美人、知ってるか?」

 

ガイ「え!?じゃあアンタ、小町さんのお兄さん!?」

 

龍騎「ああ、言っとくけど妹は渡さんからな?」

 

龍騎、立ち上がるとナイト、ゾルダに向き直る。

 

ナイト「いつからお前は青春活劇が好物になったんだ?

随分その腰抜けの肩を持つじゃないか。」

 

ゾルダ「それに他人の為の願い否定しておきながら、

自分は他人のために戦うの、ちょっと気にくわないからな…」

 

龍騎「俺は、特に命を賭けて戦う理由なんて、

死にたくないからぐらいしかないけど、

別にライダーを守るを今んとこの願いにしてもいいんじゃねえの?

知らんけど。」

 

ナイト「そうか、ならその願いに殉じて死ね!」

 

龍騎「逃げろ大志!」

 

ガイ、二対一でも奮闘する龍騎に背を向け逃げ出す。

 

〇エンディング*3

*1
ナレーション、以下N表記

*2
Alive A life(松本梨香)

*3
Go!Now!~Alive A life neo~(松本梨香)




お久しぶりです。いかがだったでしょうか?
八幡が進んで真司みたいなことするのは不自然に思えたので、
川崎姉弟にそのキーを担ってもらいました。
次回もお楽しみに。


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小説版
ADVENT AGEIN


息抜きで小説形式の一話を書いてみました。


 

そこは澱んだ空気に満ちた場所だった。

それと同時に、どうしようもなく濃い暗黒の只中でもあった。

伸ばした手の行方さえ見えず、壁のありかも分からない。

どれくらいそうしていただろう?

時計も有るが見えないので体感だが1時間ぐらいだろうか。光がついた。

1人の男が座る円卓の真ん中に置かれた誕生日ケーキの蝋燭(ろうそく)に火がつけられていく。

同時に何処からか誕生日の歌が聞こえてくる。

 

『Happy barth day to you♪

Happy barth day to you♪Happy barth dear…』

 

名前の部分の意図的な空白。

火をつけた男はただ黙ってケーキを睨んでいる。

 

『Happy barth day to you♪』

 

男は何も言わずに蝋燭を吹き消した。

その顔は最後まで見えなかったが…何故か、私には泣いてるように見えた。

 

 

 

 

「ADVENT AGEIN」

 

 

 

 

1

『高校生活を振り返って』なんて作文を書かされたことはないだろうか?

高校生活の部分を何に置き換えてもいい。

小学校生活でも中学生活でも部活動でも入社一年目でも今日の授業でもいい。

書いててこう思ったことはないだろうか?

 

『こんなんに1000字も書く事ねえよ』、と。

 

別に字数はなんでもいいんだが、少なくとも俺は有る。

中身があるだかないんだか分からん授業や、たいして目的がある訳でもない生活に書くことなんて大体中身があるだかないんだかわからないものになるし、とっ散らかったものになる。

じゃあお前はそれが原因で今、教師に連行されてるのか?と、聞かれると実は違う。

 

書けることが少ないのだ。

 

書くことが、じゃあない。

自慢じゃないが、この俺、満坂栄喜はかなり刺激的な高校生活を送っているし、確固たる目的もある。

だがそれらはとても出ないが人様にお見せできるようなものではないのだ。

まあ、とは言え、マトモな作文を出さなかったこと自体は咎められるべきと理解してるのでこうして甘んじて連行されているのだ。

だが……

 

平塚(ひらつか)センセ―。

特別棟の四階って空き教室しかなかったすよね?

説教なら生徒指導室で良いじゃあねえっすか」

 

俺は前を歩く担任にして生活指導の平塚に思ったままを訪ねた。

すると平塚は視線だけをこちらにやり、

 

「説教だけならな。

お前たちには教師を舐め腐った態度をとれる根性を矯正すべく、

奉仕活動に従事してもらう」

 

と、言った。

妹から聞いて存在自体は知っていたが、どこの学校にも問題児を囲っておく用の部活やら委員会やらがあるらしい。

流石に自分がたった一回の作文の不備で入れられるとは思わなかったが。

 

「満坂のような面白おかしい敬語を使ってる奴ならともかく、私もですか?」

 

平塚に鋭く返した隣を歩く彼女はC組の仲田真澄。

我が総武高校二年生なら知らぬ者の居ない有名人だ。

生まれつき色素の薄い白に近い金髪と白過ぎる肌、薄紫に近い瞳の彼女は妖精のように美しい。

定期試験では常に全科目10番以内をキープし、スポーツも万能。

どのグループにも属しないにも関わらず発揮される誰も近寄らせぬ存在感から『総武高二大クールビューティー』の一角として羨望と嫉妬の眼差しを向けられる傑物だ。

 

「俺、仲田さんみたいに教師を遠慮なくこき下ろしたりしませんけど?」

 

しかも誰にも物怖じしない。

セクハラ紛いの発言をした教師をボロカスに貶して心を追ってやめさせたのは今や伝説として語られている。

そんな超問題児と同列に扱われるのは流石に遺憾である。

 

「無自覚か。これは想像以上に厄介だな。

だが、あいつらも張り合いがあるだろう」

 

仲田、そして俺の顔を見ながら平塚は溜息混じりに言った。

どうやら顔に出てたらしい。

にしてもあいつらとは誰だろう?

 

「邪魔するぞー」

 

ガラガラと無遠慮にドアを開けて中に入る平塚。

それに続いて気にせず入って行く仲田に続いて俺も中に入った。

間取りは下の階の同じ位置の部屋と変わらない。

長椅子とパイプ椅子が並べられていて、

右側奥に女子生徒が、入口手前に男子生徒が1人づつ座って文庫本を読んでいた。

 

「先生、前回もノックをしろとお願いしたはずですよね?」

 

本に栞を挟んで立ち上がった女子生徒がジト目で平塚を見ながら近づいて来た。

 

「ノックをしてお前が返事をしたためしがあったか?」

 

「ないでしょうね。

いつもあなたがそれより早く入室してますから」

 

ところで後ろの2人は?と、続けた彼女に平塚は

 

「C組の仲田真澄とF組の満坂栄喜。

入部希望者だ。」

 

と、紹介した。

 

「奉仕活動を命ぜられた覚えは有っても志願した覚えはないんですが?」

 

仲田の反論にそれを聞いた現在絶賛蚊帳の外の男子生徒がどこかげんなり、と言ったような表情をした。

もしかしたら、彼も同じ境遇なのかもしれない。

だがこんな顔するほどの事をやらされるのか?

と思うと警戒もするし疑問も湧く。

 

「奉仕活動…入部?

ボランティア部なんてウチのガッコにありましたっけ?」

 

「新設の部活だから知らなくて当たり前ね。ここは奉仕部よ」

 

「奉仕部?」

 

「ええ。持つ者が持たざる者に慈悲の心を持ってこれを与える。

人はこれをボランティアと呼ぶの。

途上国にはODAをホームレスには炊き出しを、

持てない男子には女子との会話を。

困っている人に救いの手を差し伸べる。それがこの部活動よ」

 

平塚の代わりに答えた彼女は堂々と答えた。

部員定数五名に達してない。とか、

相談窓口を自称するならこんな辺境域に部室を構えるなよ。とか、

言いたいことは色々あったが、それを聞いた仲田が

 

「はっ!」

 

と、鼻で笑ったせいでそれを言う機会は失われた。

俺を挟んで仲田を睨みつける彼女には突き刺さる冷気、否、凍気の様な攻撃性があったからだ。

残念ながらここで余計な口を聞けるだけの勇気はない。

 

「で、アンタはその奉仕部のリーダー様って訳かい?」

 

が、どうにか会話を続ける事は出来た。

すぐ切り替えた彼女は俺に手を差し出しながら柔らかに言った。

 

「部長の雪ノ下雪乃よ。歓迎するわ」

 

「ああ……よろしく」

 

握手を交わしながら俺は雪ノ下を観察した。

『総武高二大クールビューティー』の一角にして苛烈極まる仲田真澄とは対極の孤高の美人。

全教科一位の座を入学当初から守り抜き、帰国子女だけが集められるJ組でも一際目立つ才女様。

顔は知らなかったが、なるほど。

化粧っ気が全くないのにこんなにも美しいのだ。

総武に来るまでに100回は告白されてるとかいう噂もあながち嘘じゃないのかもしれない。

 

「あー、どこか適当に座っても?」

 

「ええ、どうぞ」

 

俺は相変わらず会話に入って来ようとしない彼の二つ隣の席に座り、リュックを降ろした。

彼とは同じクラスの筈だが、会話した事は一度もないな。

なんて思いながら上着から取り出したスキットルを煽る。

 

「登山の趣味でもあるの?」

 

「いや、単にポケットに入れれるサイズってだけ。」

 

珍しいものを持ち歩いてると対して関わりもない奴に話しかけられることもある。

俺はお決まりの返事を返すと、ドアを開ける音がした。

見ると仲田が帰ろうとしていた。

 

「どこに行くつもり?」

 

「御大層な売り文句並べてやってる事本読んでるだけだろ?

私が居る意味あるか?」

 

「あるわ。依頼がいつ来ても良いように待機。

その間何をしようと自由だけど早退は認めないわ。」

 

凍気なんて涼しい風とばかりに仲田は不敵に笑うと

 

「はっ!温いな。目標だけいっちょ前に掲げて受け身かよ。

私のあのニコ中女への態度なんぞよりお前の甘ったれたスタンスの方が問題なんじゃないか?」

 

と言ってみせた。

当然、そんな事を言われた方は……

 

「なんですって?」

 

悍ましい凍気を発しながら立ち上がる。

俺と彼が息を呑んだのは同時だった。

雪ノ下と指定カバンをその場に置いた仲田はゆっくりと距離を詰める。

 

「もっと分かりやすく言ってやろうか?」

 

「ぜひお願いするわ。

もっともそれがただ単に私を煽りたいだけじゃなければだけど」

 

思わず何度も視線を合わせてしまっては再び女子二人の方を向くを繰り返す俺ら。

そのまま触れそうなほどの至近距離で罵倒の応酬が始まるかと思われたが…

 

「待て待てお前ら、五分もたたずに何をやってる?」

 

あまりにも良すぎるタイミングで平塚が入室して来た。そして2人の間に立つ。

 

「センセ―もしかして外でスタンバってました?」

 

「そんな訳が無かろう。

ただ単にお前と仲田の分の入部届を持ってっ来ただけだ。

だがそうだな…古今東西、意見がぶつかればバトルで解決すると相場が決まってる」

 

「いい歳してフィクション観ジャンプコミックスで止まってて恥ずかしくないんですか?」

 

仲田の煽りに裏拳を繰り出さす平塚。

だが仲田は体を逸らして簡単によけて見せた。

平塚ら一瞬驚いた後、拳をそのまま口元に持っていき誤魔化すように咳払いをした。

 

「しばらく依頼は私が斡旋しよう。

その依頼をお前ら四人で達成して、最も貢献率の高い者を最終勝利者とする。

というのはどうかな?」

 

「え?俺と満……坂?もですか?」

 

「当然だ。お前も奉仕部の一員だからな」

 

彼はまさか自分も巻き込まれるとは思ってなかったかのように本気で動揺している。

馬鹿なのか?

何故そこで巻き込まれないと思ったんだろうか?

 

「おいおい。

初めて会話したとは言えクラスメイトの上の名前ぐらい覚えててくれよ。

ヒキタニ君。」

 

「ヒキガヤ」

 

「え?」

 

「俺の名前は比企谷だ」

 

「………」

 

沈黙が教室を支配した。

平塚も仲田も雪ノ下も若干避難するような目を向けている。

 

「…すっげぇごめん。」

 

「いや、いい。

教師以外大半の連中に間違えられてるし」

 

「と、ともかく!勝負方法に異存はないな?」

 

「ありまくりですよ。

その勝負、私に何の旨味があるんですか?」

 

私に、と言うあたりこの女の性根が分かる。

 

「そうだな…当然常識の範囲でだが、

負けた奴らにそれぞれ一回だけ何でも言う事を利かせられるというのはどうだ?」

 

平塚としては一番妥当な副賞を挙げたつもりなんだろう。

だが、その条件に物凄く覚えのある俺はちょっと驚いた。

見ると仲田も同じような顔をしており、比企谷は、苦虫を噛み潰したような表情をしている。

 

「どうした比企谷?

随分と自信なさそうだが……」

 

「別に……」

 

そう言ってそっぽを向くのと同時だっただろうか。

突然耳鳴りのような甲高い音が響いた。

窓を見るが何も映っていない。

じゃあここじゃないか(・・・・・・・)

 

「比企谷?」

 

「すいませんトイレ行ってきます!」

 

そう言うと比企谷は席を立ちあがり教室を駆け出ていった。

へー、比企谷君もそうなんだ。

 

 

 

 

 

2

俺は男子トイレにかけこむと鏡の前に立ち、ポケットから取り出したカードケースを掲げる。

鏡の中から飛び出した銀色の光が腰に巻きつき、奇妙なベルトに変形。

俺は右手を左斜めにまっすぐ突き出すポーズを取り、

 

「変身!」

 

バックルにカードケースをセット。

無数の灰色の残像が重なり、俺は仮面ライダー龍騎に変身した。

俺は龍騎の横向きの格子戸のような仮面が嫌いだ。

騎士風だが拷問器具のようにデカくて重い。

その上塔に閉じ込められた者につけられる外れない呪いの仮面に似てる気がするからだ。

まるで終わらない契約を暗示しているように見えるからだ。

 

「ふっ!」

 

しかし文句ばかり言ってもやらなければならない事は変わらない。

鏡に頭から飛び込むと、俺は鏡張りのトンネルのような場所に出る。

そしてそこに止めてあったバイク、ライドシューターに乗り込み、ハンドルについたカードトレーにベルトのケースから引き抜いたカードをセットする。

エンジンが入ったのを確認すると思い切りアクセルを吹かした。

 

 

 

 

 

3

トンネルの様な空間を抜けると、相変わらず気持ち悪い左右反転した文字通りの鏡の世界に出た。

見た感じ、どこかのスタジアムの外側。

ライドシューターを降りてしばらく歩くと、目当ての奴らがいた。

 

「蜘蛛型か…」

 

2本の柱の間に巨大な蜘蛛の巣を作り、引っ付く二体の怪人がいた。

ミラーモンスターと呼ばれる連中だ。

 

主食は人間。

 

一度入れば変身しない限り決して出れない鏡の世界に引き摺り込み食らう。

そんな化け物を退治しなければならない。

左腕に着いたガントレッド型の召喚機、ドラグバイザーの蓋を開け、ベルトにセットされたカードケースからカードを引き抜き、装填。

 

『STRIKE VENT』

 

どこからか飛来した龍頭型の手甲、ドラグクローを装備する。

正拳突きの構えを取り、拳を繰り出すと同時に龍の口を模した部分から放った炎で巣を焼いた。

自らの巣の意図に絡まって炎上する蜘蛛型2体。

片方は炎から抜け出せず弱るら出したが、脱出した片方は怒りの方向と共に突進して来た。

 

「はぁ!」

 

もう一度火炎攻撃。

しかし今度は避けられて蜘蛛糸を吐きかけられた。

クローで受けるが、開閉部分に糸が絡みつきもう使えない。

 

「ふっうううう!」

 

使い物にならなくなったドラグクローを投げつける。

避ける蜘蛛モンスターだが、その隙に新たなカードをバイザーに装填するのが目的だ。

 

『SWORD VENT』

 

柳葉刀型ドラグセイバーを召喚。

蜘蛛モンスターの打撃をよけながら顔、スネ、頭と的確に狙って振り下ろす。

そして膝をついたところを顔面を蹴って距離を置き、バイザーにまたカードを装填。

 

『FINAL VENT』

 

蜘蛛型モンスターを跳ね飛ばしながら飛来したドラグレッダーが俺の周りを旋回する。

 

「はぁああああ……ッ!」

 

両腕を回しながら腰を大きく落とし、ドラグレッダーと共に飛び上がる。

空中で体を捻り、右足キックの構えを取る。

 

「はぁあああああああああ!」

 

ドラグレッダーの炎ノブレスに押し出された俺は炎の一矢となってモンスターに飛んで行く。

必殺のドラゴンライダーキックを受けた蜘蛛モンスターは地面をえぐりながら吹っ飛んだ先で大爆発を起こした。

 

「その調子だ。戦え」

 

「!?」

 

ガサガサと耳に触る掠れた声にふり返る。

鏡で出来た仮面をかぶった奇妙なコート男が立っていた。

春だと言うのに全く肌を露出させていないそいつは全く感情の見えない口調で続けた。

 

「戦い続けろ比企谷八幡。

仮面ライダーは、戦わなければ生き残れない。」

 

そういって男は黒い靄状の何かになって消えてしまった。

全く訳が分からない。

この世界も、この力も、奴がなんなのかも、戦う意味も。

やり切れない苛立ちに俺は思わず地団駄を踏んだ。




いかがだったでしょうか?
機会があったり好評だったりしたらたまにやりたいと思います。


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BLUE BAT-MAN 

明日はちょっと立て込んでる予定なので、
今日(12月18日)のうちに書いて予約投稿です。
執筆のお供はCO-OPの果汁入りソーダのグレープ。
サンガリアのラムネの次に好き。


 

さっ、さっ、と何かが擦るような音がする。

そこは畳の小さなアパートだ。

昼間だというのに真っ暗な室内には一切の光が無い。

カーテンは閉め切られているし、テレビには新聞紙がかぶせられ、外から見れば分かるが、窓は黒のペンキで塗ったくっている程の徹底ぶりである。

鏡や水道も破壊されており、その部屋には水を含めあらゆる世界を映すものがなかった。

男の光をなくした目を除いては。

 

その目から、白い光と共に男が降り立つ。

首まで生地の有る長袖に長ズボン、黒いブーツ、手には手袋。

裾の長いフード付きのカートを羽織り、顔は固め部分だけひび割れのような穴が開いた鏡の仮面に隠されている。

 

「辰巳や竜生に続き榊原もか。龍騎のデッキは呪われてるな」

 

仮面の男は感動なくつぶやくと、首をつってる榊原のポケットからブランクになった龍騎のカードデッキを抜き取り再び榊原の目からミラーワールドに戻った。

 

 

 

 

「BLUE BAT-MAN」

 

 

 

 

1

2002年1月。俺、比企谷八幡はあのデッキを拾ってしまった。

あの日は午前の曇りから一転して晴れてくれはしたが、それでもまだ寒かった。

冷える手をダッフルコートのポケットに突っ込み鼻をすする。

帰り道、何だったかは忘れてしまったがこれ以上外にいる用事もなかったからだったと記憶している。

 

「ん?」

 

こつん、と、左足が何かを蹴った。

滑って道の淵にぶつかって止まったそれを拾い上げてみる。

それは黒いカードケースだった。

四隅の上二つには白い角ばったYの字のような、下の方にはMの字のようなレリーフがついていて、固いし重い。

中には紙ではない材質でできたカードが入っている。

 

誰かの落とし物だろうか?

そう思ったなら普通はその場に置いて立ち去るか、交番に届けるかするだろう。

だが、出不精の俺がそれを交番に持っていく機会なんてそん時ぐらいしかなかったのに俺はそのまま家に帰ってしまった。

寒さに耐えかねたのか、それとも買ったばっかの本でもあったのか、そこは思い出せないけど、とにかく俺はそれがド級の厄ネタなんて知らずに持ち帰ってしまった。

確信を持って言える。俺が仮面ライダーなのは間違いだ。

 

 

 

 

2

「はぁー。」

 

ベッドに寝っ転がった俺は手にした龍騎のデッキを眺めていた。

だが何時までもそうしてる訳にもいかず、デッキをポケットにしまうと机に向かう。

俺の通う総武高校は県内屈指の進学校。

民度の低さはお墨付きだし、しっかりとしたスクールカーストが形成されてるような糞学校だが、勉強面は大体ちゃんとしている。

だから得意科目も苦手科目もそれなりにちゃんとやっとかないといけないのだが…また今日も俺にだけ聞こえる耳鳴りのような音が響く。

鏡を見ると、想像通り俺の契約モンスターであるドラグレッダーが唸りながらこっちを見ていた。

 

「あー!もう!あの大食らいが…昨日やったばっかだろ…っ!」

 

人が勉強しようとしたりゲームしようとしたりするとすぐこれだ。

腹減ってるのは分かるが契約は3日に1回で良いはずなのにこうもたかられるとストレスだ。

 

「変身!」

 

俺は乱暴にポーズを取って龍騎に変身すると鏡に飛び込んだ。

何時も通り謎のトンネル空間に用意されたライドシューターに乗って鏡の世界に移動する。

しばらく音の強くなる方に向かって進んでいくと倉庫街のような場所に出た。

周囲を探りながら歩いていると、背後から何かが急降下してくる。

 

「!!!!!」

 

気持ち悪い鳴き声と共に突っ込んできたそいつを避けるて、振り返る。

 

「っと!(ちょう)…いや、羽開きっぱだし()か?」

 

やはり鏡の世界に住むモンスターだった。

モンスターには様々なタイプがある。

こいつのような虫型、動物型、ロボット型、そしてドラグレッダーのような空想上の生き物の姿をした者たち。

それらはそこから更にモチーフをそのまま巨大化させたようなタイプと、人型、所謂怪人のような恰好になってるのの2タイプに分けれる。

今回の蛾のモンスターは後者だ。

 

俺はベルトにハマったデッキからカードを引き抜き、立ち上がりながら左手のバイザーにセットする。

 

『GUARD VENT』

 

ドラグレッダーの腹部装甲を模した片手盾、ドラグシールドが二つ両腕に装備された。

俺はそれを前に出し、まっすぐモンスターに突っ込んでいく。

モンスターは俺に鱗粉を吹き付けるが、爆発性を持ったそれは全てドラグシールドの表面に当たって火花が散らすばかりで届かない。

 

「おらぁああ!」

 

そのまま突進を仕掛け、バランスを崩したところにヤクザ蹴りと肘撃ちの連続攻撃を浴びせる。

 

「!!!!!」

 

怯んだ奴はモンスターのくせに俺の攻撃をうまく受け身を取って距離を作ると背中の翅を広げて飛び去ろうとした。

 

(させるか!)

 

『アドベント』

 

ドラグレッダーを奴の行く手に呼び出し、尾で俺の方にはたき落とさせる。

 

(位置、速さ…完璧だ!)

 

『SWORD VENT』

 

ドラグセイバーを装備し、俺は落下して来るモンスターに向かって走り出す。

 

「はぁあああああ!はっ!」

 

そしてドラグセイバーを大上段に構え、飛び上がる!

 

「はぁあああああああああっ!」

 

渾身の一撃で地面に叩きつけてやる。

そして着地してすぐまたモンスターにとびかかってマウントを取ると逆手に持ったドラグセイバーをさっき付けた傷に突き刺す。

 

「ーーーーーッ!……ッ!…ッッッ!……」

 

可細い声もついに途切れ、モンスター力なく動きを止めた。

そんな奴をドラグレッダーは咥えて持ち去る。

徐々に遠ざかっていくバリバリと何かが砕ける音。

その昔、家で飼ってるアメショーが野良のネズミを捕まえて来た時のことを思い出した。

あの日は図太い俺の妹も食欲が失せていた物である。

かく言う俺も。その時も今も気分はよくない。

 

「ああはなりたくねえな。おっと……」

 

龍騎のスーツから粒子が上がり始める。

スーツの限界なのか、俺はこの世界に10分ほどしかいられないのだ。

 

「いっけねぇ。さっさと戻んねえと」

 

俺は近くの鏡から部屋に戻り、変身を解除した。

 

「はぁ、、こんなこといつまで続ければいいんだよ」

 

言っても無駄だが言わずにはいられない。

俺は本来、やらなくていい事はやらない主義なのだ。

あと自分から激動の中に飛び込んでいくのも。

 

「お兄ちゃんごはんだよー!」

 

下の階から愛しの妹が俺を呼ぶ声がする。

 

俺は手にしたままのデッキをどうするか一瞬迷ったが、結局テーブルには置かずポケットにしまって部屋を出た。

 

 

 

 

3

総武高校最寄駅から徒歩で15分ほどの場所に、小さな喫茶店がある。

紅茶を専門に扱い、店主がやや気まぐれで定休日が多い事を除けば味も接客もおおむね好評。

そんな喫茶花鶏(あとり)に一人のうら若き乙女が来店した。

 

「いらっしゃいませ…て、お前…。」

 

「嘘でしょ?」

 

雪ノ下雪乃である。対応しようとした店員、仲田真澄は一瞬渋い顔をしたが、すぐさま仕事モードの営業スマイルに切り替え、

 

「ごゆっくり」

 

と、カウンターに戻った。だが本心は押し殺し切れず背を向けると同時にまた眉間にしわを寄せる。

それを見たカウンターの店主、真澄の叔母である沙奈子(さなこ)は何かに気付いたのか真澄を手招きした。

 

「真澄、その子総武の子だろう?休憩がてら話てきな」

 

「知らない仲じゃないけど別に話す仲でもない。

それに休憩なら10分前にとった」

 

「良いから行っときな!

なんだかあの子とアンタは仲良くなりそうな気がするしね」

 

「驚いた。叔母さんの勘も外れるんだな」

 

「何言うんだい。わたしの勘は当たるよ!」

 

真澄はため息を吐きつつも雪乃の注文を取りに向かった。

こういった叔母の行動は止められない。

約11年一つ屋根の下で生活してればいやでもわかる事だった。

 

「お決まりでしょうか?」

 

「ダージリンをストレートで」

 

それを聞いた真澄は営業スマイルではなく素の笑みを見せると、

 

「そりゃいい。本物を飲ませてやる」

 

と、いつもの調子で話し始めた。

 

「まさかあなたが淹れるの?」

 

いきなり接客を捨てたことにも、紅茶をいれれることにも雪乃は驚いた。

口調や立ち振る舞いから彼女からあまり女性を感じる事が無かったからだ。

 

「沙奈子叔母上にみっちり仕込まれててね」

 

そう言った真澄は言うだけあって手際よく紅茶をいれて持って来た。

そして雪乃の反対側に座る。

 

「……。」

 

「さ、召し上がれ。チップは結構だ」

 

と、自信満々に両腕を組んだ。

怪訝に思いながらも雪乃は受け皿語と持ち上げ、取っ手をつまんで湯気の立つ紅茶を口に運ぶ。

 

「!!?……」

 

「いかがかな?」

 

「……あなたを侮っていたわ」

 

真澄の入れる紅茶は美味かった。

水は茶葉の適温。香りもいい。

食器もこの紅茶の色に最も合うイメージの物を選んでおり、もしかしたら自分よりうまいかもしれない。

そう思って雪乃が悔しそうに顔をゆがめたのに気付いた真澄は勝ち誇ったように笑みを深める。

 

「店主さんの事を叔母上と呼んでいたけど、その縁でバイトしてるの?」

 

紅茶を味わうだけかと思ったが、雪乃は話を振って来た。

まあ、当然の疑問だろう。

聞かれることにも慣れてるので素直に答える。

 

「いや、家の手伝いみたいなもんだ。

小遣いに色は付けてもらってるが、別にバイトしてるわけじゃない。

特に欲しいものも無いしな」

 

「そう……」

 

それっきり会話は途切れた。

雪乃も真澄も続けるつもりなど無いし、特に真澄はカウンターの方から沙奈子が何やらジェスチャーで言っているが全て黙殺する。

このまま話し続ければ口車に乗せられるようで嫌だし、何よりこの女とは深いかかわりを持つべきではないと直感が告げていた。

雪乃が紅茶を飲み切るのを待って立ちあがると、同時に耳鳴りのような音が響く。

周囲を見ると、その音はやはり真澄にしか聞こえていない。

 

「叔母さん、お会計!」

 

真澄は手早く食器を片付けると控室に入り内側から鍵をかける。

そしてロッカーの内側に張ったミラーシールにエプロンのポケットから取り出したナイトのカードデッキを掲げた。

鏡の中から飛び出した銀色の光が腰に巻きつき、Vバックルに変形。

拳を作った右腕を振るポーズを取り、

 

「変身!」

 

Vバックルにセット。

無数の灰色の残像が重なり、真澄は仮面ライダーナイトに変身。

右手に装備されたダークバイザーを納刀し、ミラーワールドに突入していった。

 

 

 

 

4

ライドシューターである程度すすむと、耳を澄まして音で探す。

金属音が聞こえてくる方に向かうと、その先でオレンジ色の仮面ライダー、シザースとマゼンタ色の仮面ライダー、ライアが戦っていた。

 

(あのカニ野郎はこの前不意打ちして来た奴だな……)

 

シザースとは今まで何回か戦ったことがあったが、いずれも背後から不意打ちを仕掛けて来た狡い奴だ。

変身前の面を拝んだことはないが、きっとあの蟹の仮面の下は下衆な顔に違いないとナイトは勝手に思っていた。

 

(もう一人は…初めて見る顔だな。新参者か?)

 

ライアの方はアラビア風の見ようによっては悪党のような仮面のライダーだった。

肩や頭部の飾り、そして何より左手に装備した盾形のバイザーから察するに契約したモンスターはエイかヒラメだろう。

 

「よせ!こんな戦いなんの意味があるんだ!?

人と人とが戦うなんて間違ってるだろ!やめるんだ!こんな戦い!」

 

ライアは何を血迷ったのかシザースを説得しようとしているようだった。

馬鹿な奴だ。あんなことを言えば好戦的な連中に憎まれ、面白がられ、このんで戦いを挑まれることなど目に見えてるだろうに。

 

「黙って戦え!」

 

シザースは左手に着いた蟹の鋏を模したバイザー、シザースバイザーを開いてカードをセット。

 

『STRIKE VENT』

 

契約モンスターの腕を模したシザースピンチを装備し、ライアに殴り掛かる。

そうなってもライアは左手のエビルバイザーで受けながら説得を続けている。

 

「おいおい、随分ケツの青いガキがライダーになったもんだな!」

 

ライアが自分から攻めようとしないのを確信するとナイトはバイザーを開きながら二人の間めがけて走り出す。

 

『SWORD VENT』

 

馬上槍型の武器、ウイングランサーを呼び出してライアを蹴り、その勢いのままシザースに斬りかかる。

シザースピンチで受けるシザースだが、切り結ぶうちに武器が腕からすっぽ抜ける。

武器の質ではナイトが勝るようだ。

 

「そこ!」

 

『GUARD VENT』

 

頭を貫こうとウイングランサーを突き出すが、シザースはバイザーにかぶせるように装備した甲羅型の盾、シェルディフェンスでウイングランサー防いだ。

そしてそのまま槍先を地面の方に逸らすと、ウイングランサーをバイザーの刃で挟み壊した。

武器を失ったナイトは素早く飛びのきながらバイザーを抜刀する。

 

「やめろ!」

 

『SWING VENT』

 

「はあっ!」

 

こんどはライアがナイトとシザースの間に飛び込んで来た。

装備したエビルウィップでナイトの腰を掴んで後方に放るとシザースの方を向き、また説得を始める。

 

「やめるんだ!こんな無意味な戦いは!

傷付け合ってどうする!?」

 

そんなライアにやはりシザースは猛然と襲い掛かった。

ライアの方が防戦一方だが、それでも拮抗しているのを確認するとナイトはバイザーを逆手に持ち直し、新たなカードを装填した。

 

『NASTY VENT』

 

ナイトを中心に契約モンスターの闇の翼ダークウイングが発するのと同じ快音波が発生する。

シザースとライアは頭を押さえて悶え始めた。

 

「精々蟹味噌ぶち晒せ!」

 

ライアみたいな甘ちゃんはいつでも殺せる。

なら狙うのは不意打ちをこのみ生きてる限り延々コッチの気を散らして来るシザースだ。

 

『FINAL VENT』

 

実質の処刑宣言と共に飛来したダークウイングがナイトの背中に合体する。

そしてナイトが走り出すと同時にその翼をマント状に変質させる。

 

「はっ!」

 

そのマントはナイトの体を包み、回転する黒い繭となってシザースの胸板を貫いた。

着地と同時にマントが解け、翼を基の形に戻したダークウイングが飛び去る。

ナイト自慢の必殺技、()(しょう)(ざん)が完璧に決まった!

 

胸より上を失ったシザースは二、三歩よろけて膝をつき、粒子を上げ始める。

 

「な、なんてことを!」

 

「助かったよ。あわよくばお前事始末したかったが、それはこれからやればいい。」

 

ゆっくりとライアの方に向かうナイト。

ライアは怒りで震える手でエビルウィップを握り締め、ナイトを糾弾した。

 

「ふざけるな!人を、殺しておいてなんだそれは!

カニの彼にだって愛する家族や友人がいたはずだ!

それを踏みにじっておいて何のつもりなんだ!」

 

「それがどうした?」

 

奇麗事ばかり叫ぶライアを鼻で笑うナイト。

バイザーを順手に持ち直しながら挑発するように続けた。

 

「残された連中が可愛そうだと思うなら全員まとめて連れてこい。

あのカニと同じところに送ってやる」

 

「ふざけるな!」

 

エビルウィップとダークバイザーは火花を散らした。




小説版第二話、いかがだったでしょうか?
お察しの通り仲田真澄は小説仮面ライダー龍騎の秋山蓮をベースに龍騎系作品における(メンタル)最強の女性仮面ライダーをコンセプトに造っております。
名前は蓮の没案からそのまま採用。
ちなみに真司は元々北島亮って名前になる予定だったそうです。

こちらが真澄の御尊顔になります。


【挿絵表示】


ななめーかーというメーカーで作らせていただきました
元々主人公の妹がモンスターに支配されて変化したもの、という設定だったそうなのでアホ毛あり。
アルビノなので肌は白く、髪はものすごく薄い金髪。目は紫に近い色です。
オリキャラ解説はこの辺にして、今回はそろそろ終わりたいと思います。
次回もお楽しみに。


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CRAZY CARDBATTLE

約3日ぶりです。
年末休みなのにレポートに忙殺されそう!
多分これが今年最後になります。


 

比企谷家の朝は早い。

自転車で行って帰ってこれる距離とは言え、学校とはそれなりに距離がある。

しかも八幡は妹の小町を後ろに乗せて、中学まで送ってから総武高校に向かう為、必然的に2割り増しぐらいの巨r地と時間がかかるのだ。

 

「いってきまーす!」

 

「おう。気を付けてな。」

 

カバン片手に飛び降りた妹を見送って自転車をこぎ出そうとする八幡。

しかしいつもの様に耳鳴りのような音が響いた。

カーブミラーの方まで行ってみると、白いヤゴ型の怪人、シアゴーストがミラーワールドの同じ道を埋め尽くさん数歩いている。

 

(流石にあの数は御免だな。)

 

そう思って無視して自転車をこぎ出す八幡。

 

「なーんだ。来ないのか。まとめて消してやろうと思ったのに。」

 

ミラーワールドにて、八幡からは死角の別の反射物からその様子を眺める者がいた。

グリーンのアンダースーツの上には戦車のような装甲。

顔を隠す仮面は龍騎のよりも近代的な横格子戸状の中から赤いモノアイが輝いている。

 

『FINAL VENT』

 

「バン!」

 

 

 

 

〇「CRAZY CARDBATTLE」

 

 

 

 

1

青春とは嘘であり悪である。

この桜舞う4月の空の下繰り広げられる今しかない高校生活の大義のもとの仲良しごっこはこの世の何より醜悪だ。

そう思っていた。ライダーバトルの真実を知るまでは。

 

「変身!」

 

ライダーになって数日、俺はミラーモンスターと戦っていた。

はじめは無視しようと思った餌の催促も、自分が食われかければ理解する。

俺はあの時いやいや戦ってた。今もだけど。』

 

「ここか…」

 

出た先は、多分どこかの公園の一角。

引き込まれたらしい女性を羽交い絞めにして蟹のモンスターが連れ去ろうとしていた。

 

「たくっ…どいつもこいつも大食いだな!」

 

『SWORD VENT』

 

俺はドラグセイバーを装備して斬りかかった。

女性を落した蟹モンスターは当然ながら反撃して来た。

甲殻類モチーフゆえの固い部分が多く、

両腕の鋏もドラグセイバーと同等の切れ味を誇るのだろう。

避けた後ろにあったオブジェを真っ二つに挟み切っていた。

 

(なら耐久して隙を見つけて関節を壊す!

そこにファイナルベントを叩きこんでやる!)

 

そう考えしばらく戦っていると、その間に一台のライドシューターが飛び込んでくきた。

乗っていたのはちょうど今まで戦っているモンスターと同じメタリックオレンジのライダーだった。

 

「……。」

 

「! 俺以外にも居るのか?」

 

「はっ!」

 

とびかかって来たオレンジのライダーは左手に着いたバイザーの刃で斬りかかって来た。

 

「ぐわぁ!何を…」

 

「黙ってやられろ!100億円!」

 

再び殴り掛かるライダー。それをセイバーで弾く。

距離を取ろうと一歩下がると、視界の端で女性を連れて逃げる蟹モンスターがいた。

そっちに気を取られた隙に背後を足られ後ろから首を絞められる。

 

「ひゃ、100億だって?」

 

「俺以外のライダー全員殺して百億円!それが俺の願いだ!」

 

そう叫ぶとオレンジのライダーは俺の首を絞め折ろうと力を籠め始めた。

狭まる視界に流石にやばいと感じた俺はどうにかバイザーを開いて適当に取ったカードをセットする

 

『ADVENT』

 

呼び出されたドラグレッダーは俺の思った通りに敵ライダーを攻撃してくれた。

脱出した俺はセイバーで斬りかかりながら叫んだ。

 

「願い?ただの欲望だろうが!」

 

「そうだ!それの何が悪い!仮面ライダーは全部で12人!

どいつもこいつも願いの為に殺人を許容する屑どもだろ!

そのゴミ掃除をしてやってんだ感謝されても文句言われる筋合いはねえな!」

 

「ッ!…ああああああ!」

 

俺はつば競り合う敵を強引に押し切ってキックで全歩に飛ばして隙を作る。

そして今度は狙ってカードを引き、バイザーにセットする。

 

『STRIKE VENY』

 

「!」

 

敵もそれを見てもそれを見てバイザーを開いてカードを装填する。

 

『GUARD VENT』

 

バイザーの上にかぶせるように甲羅型の盾が装備される。

俺はそこに全力全開のドラグクローファイヤーを叩きこんでやった。

 

「うぉおおおおお!?」

 

衝撃こそ殺せなかったが、持ち前の固さのお陰で敵ライダーは吹っ飛ばされただけで変身解除に至らない。が、体から粒子が上がり始めている。

 

「ちっ!時間切れか…」

 

撤退する敵を俺は肩で息をしながらそれを見送った。

 

「なんだったんだ…ん?」

 

見ると自分の体からも粒子が上がっているのに気付いた。

及川らず子の世界には10分ぐらいしかいられない。

 

「スーツが…戻んないと…。」

 

俺は適当な近くの車のミラーから現実に帰還して変身を解除した。

 

「なんだったんだ一体…」

 

そして改めて呟いた。

ライダーが全部で12人いるのは分ったが、なぜ戦わないといけない?

それに願いが叶うってなんだ?

 

「お前、新参者か?」

 

全く聞き覚えのない声にふり返る。

その先にベージュのコートの男が立っていた。

 

「なんだアンタ?まさかさっきの蟹男か!?」

 

もしそうならただじゃ置かない。

争いごとを好むつもりはないが、向こうから来るなら別だ。

 

「いや、奴はシザースと呼ばれるライダーだ。

素顔は知らんが、ライダーの中でも特別嫌な奴だよ。」

 

「…そう言うアンタは?」

 

「ベルデだ。お前は、新しい龍騎か。」

 

「龍騎…。」

 

俺がデッキをとりだすと、男も黄緑色のデッキを取り出す。

龍騎のデッキには中心に金色の龍のレリーフが有るように、ベルデのデッキにはカメレオンの物がついていた。

 

「精々先代…榊原みたいに戦いを止めようとか無駄なことはするなよ。

結局俺たちは一度結んだ契約から逃れられない。

勝って願いの力を使うしかない。」

 

「願いって、そんなドラゴンボールみたいな…。」

 

「ああ、きっと神か悪魔かなんかがかなえてくれんのさ。

信ずるものは救われる。ってな。ま、頑張れよ。」

 

ベルデの男はそう言って俺の肩を叩いて去って行った。

その後帰って色々考えたけど、俺は火中の栗を拾うつもりも、降りかかってくる火の粉を黙って受け続ける気にもならなかった。

けど死ぬのは、絶対に嫌だった。だから戦う。

それはきっと、俺にしては珍しくまちがってないと思えたから

 

 

 

2

「どうぞ。」

 

短いノックの音に返って来た声に従いドアを開ける。

総武高校奉仕部はもう既にそろっていた。

雪乃と栄喜は昨日と同じ位置に、真澄は栄喜の左斜め前に座っている。

 

それぞれ奥で本を読んでいたり、勉強をしていたり、持って来たラジカセで音楽を聴いていたりと、思い思いに過ごしていた。

 

「誰?」

 

本から顔を上げた雪乃は開口一番、八幡を口撃してきた。

見た目だけの糞女め。

きっとこいつはライダーになったらシザースみたいに戦うに違いないと滅茶苦茶失礼なことを想いながら八幡も買い言葉を返すことにした。

 

「不本意ながら部員をやってる比企谷ですよ。」

 

「ああ、ヒキガエル君。」

 

「なんで俺の小学校の時のあだ名知ってんだよ…。」

 

「にしても凝りもせぬに三日も連続で来るとは、相変わらずマゾヒスト疑惑とストーカー疑惑は消えないわね。」

 

「誰が好き好んでこんなとこ来るか。

強制されてなきゃ来ねえよ。」

 

「お前ら口喧嘩ならもっとむこうでやってくれないか?

集中できないんだが?」

 

真澄が冷たく言った。

見ると顔を上げて無ければ、動かすペンすら止めていない。

全く興味ありませんと体で言っているように見えた。

 

「ほら、勉強の邪魔になってるわよ、騒音谷君。」

 

「谷しかあってねえよ。」

 

そう返して八幡も機能と同じ位置に座った。

何をしようかと悩んでる間にドアがノックされる。

どうやら平塚ではないようだ。

 

「どうぞ。」

 

「し、失礼しま~す。」

 

入って来たのは一応進学校かつ偏差値高めの総武高校では目立つ少女だった。

スカートは短く、片方にだけお団子を作った髪は元の茶髪が分かる程度にピンクに染められている。

どことなくアホっぽい奴が来たな、と八幡は思った。

 

「ふぇえ!?どうしてヒッキーに満坂くんまでいるの!?」

 

その派手な女は手前に座る男子二人を見るなり素っ頓狂な声を上げて大げさなぐらいに驚いて見せる。

八幡は彼女が誰か本気でわからなかった。

 

「ヒッキーってなんだヒッキーって。

俺はこの通り登校してるだろ失礼な。

おい満坂、こいつお前の知り合いか?」

 

「いや、クラスメイト。名前ぐらい覚えろ。

由比ヶ浜さんだよ。

ほら、いつも三浦さんとか葉山あたりとつるんでる。」

 

そう言われて八幡もようやく合点がいった。

 

「……ああ、あのリア充連中共か。そう言えばこんなん居たな。」

 

「こ、こんなん!ヒッキーサイテー!それ人を呼ぶ言い方!?」

 

「初対面でひきこもり呼ばわりするお前が言うな。」

 

「女子と喋れるのがうれしいからって入口で話し込まないでくれるかしら引籠谷君。」

 

「だからちゃんと登校してるし部活に出てるまであるってんの。」

 

口げんかが終わらずいつまでも本題に入らない。

見かねた真澄はようやく顔を上げると結衣のそばまで行く。

 

「それで?お前はなんでこんな監獄のような場所に来た?」

 

「か、監獄!?ここって生徒のお願いを叶えてくれるとこなんだよね?」

 

「いいや。対価もないのに誰がするかそんな面倒なこと。」

 

「!?」

 

「手助けするだけって話だ。」

 

「そう、なんだ?」

 

思い切り首を傾げながら言う由比ヶ浜に一同思いっきりため息を吐いた。

 

(分かってねえな…)

 

(分かってなさそう…)

 

「で、あなたは何を手伝ってほしくてこの奉仕部に?」

 

「あ、うんえっとね…」

 

由比ヶ浜は、八幡の方を見て何故か言いよどんだ。

ついさっきまで顔も知らなかった相手に何を隠すことがあるというのだろうか?

 

「俺いると話しにくいか?」

 

「い、いやその、えっと…」

 

なお言いよどむ由比ヶ浜。

問いただそうとしたその時、

相変わらず見計らったように耳鳴りのような音が響いた。

 

「…俺、ちょっと飲み物買ってくるわ。」

 

「俺はトイレに。」

 

部室を出て、栄喜が先に行ったのを確認すると、

八幡は踊り場の窓にカードデッキを構える。

 

「変身!」

 

そして龍騎に変身。ミラーワールドに突入した。

そのすぐ後、階段下から栄喜が戻ってくる。

 

「へ~、榊原の奴死んでたんだ。

じゃ、龍騎には奇麗サッパリ消えてもらいますか。」

 

栄喜はポケットから牛のレリーフの付いた緑のカードデッキを取り出して掲げる。

鏡の中から飛び出した銀色の光が腰に巻きつき、Vバックルに変形。

拳を作った右腕を左腕と交差させながら振り上げるポーズを取り、

 

栄喜「変身!」

 

バックルにデッキをセット。

仮面ライダーゾルダに変身した栄喜は龍騎と同じようにミラーワールドに突入した。

 

 

 

3

走る龍騎を追うように銃弾が地面に着弾する。

今回遭遇した敵は猿型のデッドリマーだった。

立体物の多い屋上を飛び回りながら的確に龍騎を撃ってくる。

 

「あんの眼鏡猿!何とかして近付かねえと!」

 

しゃえひ物に隠れながら出方を窺う龍騎。

こちらを見失ったのか、デッドリマーはきょろきょろと辺りを探っている。

 

『SHOOT VENT』

 

丁度デッドリマーがこちらを向いたその時、奴の背中に砲弾が直撃。

そのままビルの下に落ちていく。

 

「な!まさか…」

 

「……。」

 

発射場所と目される場所に向かうとそこにはゾルダがいた。

手にしたランチャー砲型武器、ギガランチャーを捨ててベルトに引っかけていたビームガン型バイザー、マグナバイザーを左手でも構える。

 

「ふっ!」

 

なんとか遮蔽物の間に飛び込んだ龍騎はその中を縫うように走る。

目で見ずとも銃声と足音でゾルダが追いかけてくるのが分かった。

 

『SHOOT VENT』

 

足を止めゾルダは両肩にビーム砲、ギガキャノンを装備。

左右二発の同時に放たれるビームが龍騎を襲う。

狭い空間だったおかげで龍騎ではなく機材に当たり炎と煙が立つ。

当たればただでは済まないだろうが、

この煙だらけの中下手に打ってこないはず。

 

「だったら…」

 

龍騎はバイザーを開いてカードをセットするがベントインはしない。

強襲にはタイミングが重要だ。

バイザーの音声で位置を気付かれるわけにはいかない。

 

「……。」

 

ゴン!と重いものが落ちる音に続いて足跡が聞こえてくる。

どうやら再び武器をマグナバイザーに持ち替えて近づいてきたようだ。

 

(今だ!)

 

『STRIKE VENT』

 

煙から飛び出しながら装備したドラグクローで渾身の右ストレートを浴びせる。

 

「ぐぁあああああああ!」

 

胸部にもろにそのライダーパンチを受けたゾルダは吹っ飛ばされるが、胸を押さえながら立ち上がり逃げだす。

 

「はぁ!はぁ!」

 

乱れる息を何とか整えながらゾルダは階段を駆け下りた。

 

(あ、危ない…ゾルダの防御力でなければやられていた…)

 

どうにか誤魔化さなければ。

背後から誰かがミラーワールドから戻る音を聞きながらゾルダは思案した。

すると丁度そこに校舎から出ていこうとする生徒を見つける。

 

「ん?なぁ!?」

 

ゾルダはその生徒の側頭部を叩いて昏倒させた。

そして変身を解除して満坂栄喜にもどると、デッキを男子生徒に握らせる。

 

「おい!おいしっかりしろ!比企谷!いいとこに来た!

保健室に行って連絡して来てくれ!」

 

我ながら迫真の演技だったようで、八幡は呆然としてよた、よたと保健室の方に走って行った。

栄喜は男子生徒を担ぎながらその背中に邪悪な笑みを向けた。




それでは皆さん良いお年を!
来年もやはり俺が仮面ライダー龍騎なのはまちがっている。をどうぞよろしくお願いします!


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DOUBT OF DUEL

こんにちは。伊勢村です。
12時現在神奈川は雪が降ってます。
つい一昨日まで長野に居たのに変わらず寒いです。
このSSで八幡たちが冬を迎えるころにはコロナとかどうにかなってて欲しいものですね。


 

総武高校二年F組の教室にて。

授業もホームルームも終わり、もう部活や予備校に向かった者たち以外、つまりこの後特に予定のない者たちが、この青春の時をどう過ごそうか、それともこのままダべっていようか?なんて話している中、比企谷八幡は一人思案していた。

 

「ヒッキー!部活行こう!」

 

「……」

 

 

(多分、ゾルダはあの時満坂が介抱してたあいつだ…。

俺は、俺は危うく殺しちまうところだった…。)

 

「ヒッキー?聞いてる?」

 

結衣の声も聞こえない程八幡は考え込んでいた。

自然と拳に力がこもり、結衣からは長い髪で見えないが、苦しげに表情を歪ませる。

 

(もし、もしあのまま殺してたら俺は…

でも反撃しなかったら死んでた!あんな、あんなの…)

 

「返事ぐらいしろし!」

 

が、流石に怒鳴られれば我にも代える。

周囲を見渡すと、何事かと他の生徒が八幡と結衣を見ていた。

 

「……え?もしかして俺に話しかけてた?」

 

「逆にヒッキー以外誰が居るの?」

 

「悪いな、こうゆう環境で俺に話しかけてくれる人間なんて今までいなかったんでな。」

 

実際そうなのだ。中学で大分勘違いやらかした挙句、

寒い迷走しまくった八幡は所謂腫物扱いで、クラス中の嘲笑と憐みの的だったのだ。

 

「ヒッキー…」

 

「その生暖かい目をやめろ。普通に傷つく。」

 

クラス中からの視線に嫌な物を思い出しながら、八幡は結衣と共に部室に向かった。

 

 

 

 

「DOUBT OF DUEL」

 

 

 

 

1

誰かがドアをノックする。

雪乃の「どうぞ。」の声を待って扉があけられる。

入って来たのは比企谷八幡に由比ヶ浜結衣だ。

昨日と同じ位置に座っていた栄喜は顔には出さなかったが、意外に思った。

もしかしたら意外とメンタル強いのかもしれない。

 

「いらっしゃい由比ヶ浜さんに…誰?」

 

「泣くぞ。」

 

「やめなさい絶対気持ち悪い。それでどちらさま?

そろそろ名乗らないと名無しの権兵衛と呼ぶことになるのだけど?」

 

「昨日ヒキガエルとか呼ばれてた比企谷八幡君ですよ。」

 

雪乃の毒舌に皮肉で返す八幡。

口撃されると分かっていたのでこれまた口に出さなかったが、

意外と言いバランスの2人なのかも、と思う栄喜。

 

「ああ、引籠谷君ね。」

 

「だから谷しかあってないっての。」

 

それ以上は無駄と判断した八幡は荷物を降ろして昨日と同じ席に座った。

 

「そんなことより由比ヶ浜さん、今日こそ大丈夫なんでしょうね?」

 

「大丈夫!ちゃんと今朝ますみんにレシピ貰ってきたから!」

 

自分が直接やってないのにその豊満な胸を張る結衣。

雪乃の顔を見ると、怪訝そうな、不安そうなそんな表情だ。

 

「ますみん?もしかして仲田さんのこと?」

 

「うん、真澄ちゃんだからますみん。」

 

(流石リア充。

あいつともうそんなに仲良くなってんのか?)

 

そう思いながら八幡は読書を始めた。

流石ぼっち。会話は聴いても、

関わる気は一切なさそうだった。

 

「そのあだ名、本当に通すの?

彼女昨日そう呼ばれた時すごい顔してなかったかしら?

そこの引籠谷君にも不評だし。」

 

どうやら引籠谷君の予想に反して真澄本人からは不評のようだ。

 

「えー?そお?ヒッキーもますみんもいいと思うけどなー。

んー…例えば雪ノ下さんはゆきのんで、満坂くんは…んー?」

 

「ゆ、ゆきのん…」

 

「俺は出てこねえのかよ…」

 

地味にダメージを受ける栄喜だった。

まあ、サカサカとか、キー君とか付けられるよりマシだが、

ハブられたらハブられたでいい気分はしない。

 

「ん!話がそれたわ。そろそろカギを取りに行った仲田さんが戻る頃よ。

昨日は達成できなかったあなたのクッキー作りを完遂させましょう。」

 

「クッキー作り?」

 

「お礼の品で作って渡したいそうよ?」

 

そう言って立ち上がると先に真澄が言って待って居る家庭科室に向かった。

 

 

 

 

2

「出来た!」

 

調理開始から数十分。

漸く冷めたそれをペーパーを敷いたさらに盛り付け、

お手本と大体同じものが出来上がった。

途中何回か残る女性二人のフォローが入ったが、

イイ感じなのではないだろうか?

 

「ええ、出来たわね。ようやくクッキーの形をした物が。」

 

「昨日はクッキー作んなかったの?」

 

栄喜の素朴な疑問に、

本当に苦虫を噛み潰したような表情で答えた。

 

「クッキーどころか食い物すら作ってない。

あれはクッキーと素材を同じくする灰クズだ。灰クズ。」

 

「な、何が灰クズだし!ちょっと失敗しただけだし!」

 

「ちょっとですって!?」

 

結衣の抗議に珍しく雪乃が声を荒げた。

 

「あんな分量も時間も滅茶苦茶な上に桃缶やらなんやら詰め込んどいてちょっとだと!?」

 

「おいマジかよ…」

 

「それ焼きあがる前に止めらんなかったの?」

 

「止めたよ。けどもう手遅れだった。

ずっと付きっ切りで見てたはずのこの部長様がなんも言わなかったせいでな!」

 

「ずっと我関せずだったあなたに言われたくないけど、そうね。

確かに失敗したことないから歪な物の正し方を知らなかった私にも落ち度があるわね。」

 

「うわウザ。」

 

「部長殿…それ他の奴らに言わない方がいいっすよ?」

 

「あきらめろ。こいつは出来ない奴の気持ちが、

いや出来ない奴がいることが分かってないんだ。」

 

ぐん、と雪乃に対する好感度の低下を感じる三人だった。

そして同時に奉仕部なんて造らされた理由を垣間見た気がした。

 

「ちょ、ちょっとみんな…。」

 

「ん?ああ。悪いな、相談中に。

とにかくレシピに忠実にこなせば問題なかっただろ?」

 

そう言って真澄は焼きあがったクッキーを一つまみ。

シンプルなバター味のキック―は出来立て故にちょっと熱く、

サクサクでしょっぱさなの中にやさしい甘さがあった。

 

「ん、昨日の毒見から100億歩進歩したな。

流石に雪ノ下のには及ばないが。」

 

「毒見って…昨日どんだけ酷かったんだよ。うま。」

 

「おー、去年妹が作ったのよりいい出来じゃん。」

 

男子二人からも好評だったのだが、

結衣はなぜかどこか浮かない顔だ。

不思議そうにする三人をよそに雪乃が言った。

 

「材料は有るしもう少しなら作れるわ。引き続きやるわよ。」

 

「え?これでよくないっすか?」

 

「何を言っているの?人に贈るモノなのよ?

完璧を目指して当然でしょう?」

 

「正しい意見だな。」

 

「比企谷?」

 

ほとんどしゃべってなかった八幡が口を開く。

ついでとばかりにもう一枚クッキーを食べながら雪乃の前に立つ。

 

「あら、良かった。正常な判断ができるという事は脳までは腐ってないのね。」

 

「けど場合に寄っちゃ良くはねえだろ。

極端な例だけど、殺人はしちゃいけませんって正しいことだが、相手が殺しにかかってきてたりしたら……ッ!!」

 

「?」

 

「どうした?なんでそこで言いよどんだ?」

 

「い、いや!とにかくだ。

お礼で渡す相手がどんな奴かにもよるが、

由比ヶ浜みたいなのに奇麗なラッピングの手作り菓子とか渡されたら大抵の男子は思わずクラッと来ちまうだろよ。」

 

「!…た、例えばヒッキーでも?」

 

「ああ。思わず一目ぼれしてソッコー告って振られて黒歴史を増やすまであるぞ。」

 

「随分と実感のこもった言い方だな。」

 

「ほっとけ。誰に迷惑かけてないし問題ないだろ。」

 

「気づくと不幸自慢して空気ぶっ壊すの、

部長殿の遠慮が行方不明の毒舌と同じだと思うけど?」

 

「一緒にしないでくれるかしら?

その勘違い、ひどく不快だわ。」

 

「ヘイヘイ。」

 

「返事は一回。」

 

「はーい。」

 

(そっか…昨日みたいなのはアレだけど、気持ち、か。)

 

そんなやり取りを見ながら、奉仕部の理念的には少々問題だが、答えを得た結衣は胸に手を当て小さくはにかんだ。

 

それと同時に、突如八幡たち三人に耳鳴りのような音が聞こえた。

同時に鏡から飛び出した白い糸が栄喜の首に巻きつく。

 

「な!こ、これは!」

 

そのまま鏡に引きずられていく栄喜は、

命の危機につい反射でカードデッキを取り出した。

 

「お前それ!」

 

「! あーもう!変身!」

 

作戦の失敗を悟り、栄喜はゾルダに変身すると抵抗をやめて自ら鏡に引き込まれた。

 

「え、えええええ!?

満坂くんがなんかジバンみたいなのに変身した!?」

 

「全く、世間ってやつは狭いな。」

 

「仲田さんあなた何言って…」

 

真澄も窓の前に立ち、ポケットから取り出したナイトのデッキを構える。

 

「変身!」

 

「はー…良かった。」

 

そしてゾルダと、ゾルダを襲ったモンスターを追ってミラーワールドに突入していった。

それを見送りながら放心していた八幡は騙された怒りより先に、誰も傷つけてなかった安ど感が先に来たことに少し驚きながらもデッキを取り出す。

 

「!? え…もしかしてヒッキーも…」

 

「変身!」

 

そして龍騎に変身して二人を追った。

 

「なにが、起こっているの?」

 

「分かんない…」

 

取り残された二人はただただ鏡越しに繰り広げられる戦いに困惑するしかなかった。

 

 

 

 

3

首に糸を付けられたゾルダは、引きずられながら左手でベルトに下げたマグナバイザーを引き抜き、敵の顔面を狙って撃った。

が、敵、ソロスパイダーは糸でゾルダをからめとって動きを封じる。

そしてそのまま噛みつこうと近付く。

 

「はぁ!」

 

しかし乱入して来たナイトのダークバイザーで糸を切られ姿勢を崩した。

その隙を続いてやって来た龍騎にドロップキックを叩きこまれ倒れる。

 

「ナイト!?まさか…仲田さん?」

 

「ご明察だ。さ。やろうか?」

 

ゾルダに向かってファイティングスタイルを取るナイトの背中を龍騎が叩く。

 

「やってる場合か、あいつ逃げるぞ!」

 

そう言って単身ソロスパイダーに格闘戦を仕掛けていった。

 

「どうする?」

 

「……ま、手の内を見ておくのもありか。」

 

ナイトは遅れて駆けだすと龍騎の攻撃の合間をカバーするように斬撃を繰り出す。

ゾルダはそのままの位置でマグナバイザーで的確にソロスパイダー攻めの機会を邪魔していく。

 

「このまま続けるか?」

 

「いや、外に出す!ここじゃ狭すぎて無理だ。」

 

「よし、合わせろ!」

 

ナイトのその声を合図に二人は同時にカードを切った。

 

『『SWORD VENT』』

 

柳葉刀型のドラグセイバーと騎乗槍型のウイングランサーが同時に繰り出される。

窓を突き破り落下するソロスパイダー。

その後を追って割れた窓から飛び降りる三人。

 

「しゃぁあああ!」

 

ソロスパイダーはすぐに体制立て直すと、

ジャンプからの蜘蛛糸を使った滑空で離脱しようとした。

が、銃を握れば百発百中のゾルダに撃ち落とされ失敗に終わった。

その隙に龍騎が次のカードを切る。

 

『FINAL VENT』

 

「はぁあああああ!」

 

飛来したドラグレッダーがナイトとゾルダを避けながら旋回し、龍騎と共に飛び上がる。

灼熱の弾丸と化した龍騎はソロスパイダーを蹴り砕くと宙返りを撃って着地した。

吹っ飛んだ先で火柱を上げて爆散するソロスパイダー。

その残骸を咥えたドラグレッダーは元来た方に飛び去って行った。

 

「おうおう。やるじゃないか。」

 

「龍騎、か。早めに潰しておくか。」

 

それを待って二人のライダーを龍騎の方に近寄って来た。

仮面の下のその目には好戦的な炎が宿っている。

 

「はぁ!」

 

龍騎はそんなナイトにためらいなく斬りかかった。

分かっていたナイトもウイングランサーで受け止める。

 

「なんのつもりだ?」

 

白々しく言って見せるナイト。

龍騎は内心ポーズだけでもそういうナイトに苦笑する。

 

「降りかかる火の粉を払うだけだけど?」

 

「違いないな! ッ!」

 

そんな2人に銃撃を放つゾルダ。

事前に察知した二人はそれそれ反対方向に飛びのく。

丁度3人が三角形になるように均等に距離を取って対峙する形だ。

 

「満坂、よくも騙してくれたな?」

 

「騙されるお前が悪い!が、割り切ったのは意外だな。」

 

「そーゆうもんだろ?ライダーバトルって。」

 

それ以上言葉は無かった。

剣が、槍が、銃が火花を散らし、怒声と破壊音がこだまする。

その音は冷徹なまでに現実に響かなかった。




いかがだったでしょうか?
感想、批評、その他いつでも受け付けております。
次回もお楽しみに


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EGO AND ELEMENT

一月はレポートの締め切りが乱立してるのでしばらく小説版の投稿が続くと思います。


 

ドラグセイバーがアーマーを絶たんと振るわれ、

その心臓をえぐらんとウイングランサーが唸る。

あまりに激しい近接戦の中に、銃はキツい。

そう判断したゾルダはバイザーをフルオートに切り替えて、とにかく弾をバラまいた。

たまらず二人が飛びのいた隙に、ゾルダはカードを装填する。

 

『STRIKE VENT』

 

ギガホーンを装備し、バイザーをベルトに下げると、近接戦にも加わって行く。

ゾルダの鎧とパワーは、砲撃の反動や、反撃に対処するためのもので、龍騎やナイトのような戦闘を目的としたものではない。

だが、栄喜は器用に立ち回り、防御力を生かした近接戦を展開していた。

 

「ゆきのんどうしよう!?

なんか…なんかやばいよ!止めないと!」

 

「と、止めるっていったってどうやって!?」

 

鏡の中で起こる異常事態、

三者が三者とも全く譲らない殺し合いに、

ただの高校生の結衣も、学年主席の雪乃もキャパオーバーだった。

だが目の前の状況を、どうにかしたいのは確かで、

 

「どうって…わ、私!鏡に入ってみる!うりゃあああああ!」

 

「ええぇ!?ちょ!ちょっと!由比ヶ浜さん!?」

 

雪乃の生死の声も聞かず、助走をつけた結衣は頭から鏡に突っ込んでいく。

そしてライダーたちが入った時と同じようにミラーワールドに突入した。

否、出来てしまった。

 

 

 

 

〇「EVIL ELIMINATE」

 

 

 

 

1

「痛ぁい!」

 

頭から突っ込んだために、当然ながら落っこちる格好になった。

だがすぐに、この歪極まる世界に来た理由を思い出し、

窓を開け、外で戦う3人に向けて叫んだ。

 

「こらー!何やってるの!」

 

「はぁ!?」

 

「あいつ!どうやって!?」

 

「なんだかよく分かんないけどなんで戦ってるの!

ちょっと待っててそっち行くから!」

 

「こっちの台詞だ!そこを動くな大馬鹿!戻るぞ!」

 

結衣の姿を認めた途端にナイトとゾルダは武器を捨て後者の方に向かって行く。

 

「なんで?」

 

「モンスターと契約してない奴は入るのに使った鏡でしか戻れない!

その上一度入れば出るときにはデッキが必要だ!」

 

「そうなのか!?」

 

「お前そんなことも知らなかったってことは新参者か?」

 

ライダーの速力ならたった数階分の高さなどあっという間だった。

廊下の途中で結衣と合流し、家庭科室に戻ると、ライダーたちは結衣が入って来たという窓の前に一列に並ぶ。

 

「…せーのだからな。

残って背後とるとかなしだからな?」

 

「見くびるな。殺るんだったら正面からやる。」

 

「おー怖い怖い。そんじゃ行きますか、あせーの!」

 

龍騎、ナイト、ゾルダはほぼ同時に鏡を超えて現実に帰還した。

そして即座に変身解除すると三人同時にデッキを鏡に投げ込む。

それをなんとかキャッチした結衣は来た時と同じように助走をつけて、だが今度は着地の事も考えて飛び込んだ。

 

「出れた!」

 

「危なかったな。変身しててもあの世界は10分しか体がもたない。

生身だったら5分と持たないぞ。」

 

「え?それって…」

 

「あれってスーツの限界とかじゃなかったんだな。」

 

「ああ。多分だけど、酸性の液が並々入ったバケツにアルカリ性の欠片をいれたら中和されるみたいなことなんじゃない?」

 

現実(こっち)がプラスならミラーワールドはマイナスってことか?」

 

「多分だけどな。」

 

そう言いながら結衣からデッキを受け取ろうとする真澄だったが

 

「あ、おい。」

 

雪乃がそれより早くデッキを奪い取る。

そしてそれら三つを見せながらいつもの様に冷たく言った。

 

「説明してもらいましょうか?」

 

 

 

 

2

真澄は黒板の前に移動してチョークをとり、

四人の方を振り向いた。

 

「何から聞きたい?」

 

「あの鏡のむこうの世界は何?このカードケースは何なの?

変身…と言うより装着してたあの奇妙なスーツは?

なんで戦っていたの?」

 

真澄は矢継ぎ早の質問を諫めることはなく、

鏡の世界、カードデッキ、変身、戦い、と書き続けていく。

 

「あの世界はミラーワールド。

現実をどこまでも左右真逆に反映した世界だ。

人を喰らうミラーモンスターが住まうのと、

おおよそが人が住めるような環境でない以外は何なのかイマイチわからん。

お前らはどうだ?」

 

「俺も凡そそんな認識。比企谷君は?」

 

流石にこの状態で無関係でいられない事ぐらいは分っていたようで、

普通に反応、対応した。

結衣はなんだか釈然としない気分になった。

 

「俺も良く知らん。案外、出入りできないだけで、

昔からあったんじゃねえかな?って思ったことはあるかな。

知らんけど。」

 

「そうかい。」

 

「それで、このカードケースは?」

 

「それはカードデッキ、アドベントデッキとも言うな。

仮面ライダーへの変身を可能にする物で、

それを渡してきた仮面の男が言うには全部で12個。

つまり仮面ライダーは全部で12人。」

 

「俺のゾルダ、仲田さんのナイトに比企谷君の龍騎。あとシザースと、他には?」

 

「ベルデって奴知らないか?」

 

「戦ったのか?」

 

「いや、デッキ持ってる人と話しただけだ。

大学生ぐらいの男だった。」

 

「そうか。あと私が戦った事あるのはライアって腰抜けだけだ。

つまりあと6人はまだどんなので誰が変身してるか分からん。」

 

真澄はライダーたちの名前を黒板に書いていく。

そして、次にカードだったか?と言いながらシザースの名前に赤の横線をいれた。

 

「入ってるアドベントカード内容はデッキによってまちまちだな。

私のにはストライクベント何て入ってないし。」

 

そう言われた雪乃は、ナイト以外ののデッキを一旦しまってから、ナイトのカードをすべて引っ張り出す。

ファイナルベント、ダークウイング、ナスティベント、トリックベント、ソードベント、ガードベント、シールの7枚。

確かにストライクベントのカードは無い。

 

「その中に一枚なんちゃらベントって名前じゃないカードがあるだろ?

それが契約のカードだ。」

 

雪乃はダークウイング以外のカードをデッキに戻し、それをまじまじと見た。

コウモリをそのまま大きくしたようなモンスターが描かれている。

 

「そのカードを使う事でライダーはモンスターに餌やりをする代わりに力を借りれる契約を結べる。

つまりそれを破く、燃やすなどして消失した場合、契約を一方的に破棄されたと判断したミラーモンスターに殺されることを意味する。」

 

「こ、殺されるって…」

 

「文字通りさ。奴らの主食は同じミラーモンスターと人間だからな。」

 

なんてこともなく言った真澄に結衣は慄き、

思わず窓から飛びのいた。そして雪乃の裾を掴む。

雪乃も今回ばかりは振り払う気になれなかった。

 

「人喰った後のやつとかなぜか他のより強いのそうゆうことなのね?」

 

「普通消化とかで動き悪くなりそうなもんなのにな。」

 

「話を戻すぞ。そのカードがどれくらい重要かと言うとデッキの中で一番重要だ。

モンスターと契約する前はコントラクトっていう絵柄のないカードの状態なんだが、

それはデッキに一枚しか入ってない。少なくとも私のはそうだった。

つまりカードの破損は死と同義だ。

モンスターからの助力を失ったライダーは大幅に弱体化する。」

 

「剣とか呼べるは呼べるけど当たっただけで折れるからな…」

 

八幡は二の腕をさすりながら疲れたように言った。

龍騎のデッキは最初、なんのモンスターとも契約してない状態だったのだ。

 

「ヒッキーそれ大丈夫だったの?」

 

「全く大丈夫じゃねえよ。

やけくそでコントラクト使って契約しなきゃ喰われてた。」

 

ドラグレッダーに。そう付け足した八幡。

よく見ると、思いだして気分が悪くなったのか顔が青い。

 

「そしてお待ちかねの仮面ライダーだが…

そのカードデッキで変身して戦う戦士のことだ。

鏡の世界で殺し合い最後に残った最強の仮面ライダーのみが、

どんな願いもかなえれる。」

 

「散々非科学的かつ超常的過ぎる物を見せられては来たけど…怪しい話ね。

あなたたちはこれを渡してきた胡散臭い仮面の男の言われるままに戦ってるわけ?」

 

ああ。きっと叶うからな。

と言って真澄は黒板消しを取りながら続けた。

 

「あいつは確かに神か悪魔か、

それともそのどっちかの使いか何者か知らんが、

私達一個人にこんな力を授けれる存在だぞ?

それにライダーは願いの為に他者を殺すことを選んだ連中の集まりだ。

そいつらを消して願いをかなえられるなんて最高だろ?」

 

黒板を消しながら振り返り不敵に言う真澄。

雪乃は彼女と初対面の時にも感じたこっちを見透かしてくるような嫌な感覚を思い出した。

 

「それを言うならあなたもそのクズじゃないの。

それにそんな血濡れた願いじゃ誰も救われないわ。」

 

「別にいいよ、慈善事業じゃなくて自己満足でやってんだ。

そんな私の願い、分かるか?」

 

「?」

 

「私はお前ほどじゃないが大体の物を持ってる。

見ての通りの容姿端麗。頭脳明晰。肌は弱いが運動も得意。

そんな私が何を願うと思う?」

 

「そんなの自分のためでしょう?」

 

「はっ!お前、ライダーじゃなくてよかったな。

お前みたいなタイプは生き残れないぜ。」

 

「あなた、自分の生殺与奪の権が握られていることを分かっているのかしら?」

 

「お前こそ、まだ契約は続いてることが分かってないのか?」

 

鏡を見るとダークウイング、ドラグレッダー、マグナギガが雪乃を狙って唸り声をあげていた。

その目には普段人間や他のモンスターを狙う時とは違い、殺意のみが宿っている。

 

「マジかよ…」

 

「そりゃ、向こうも死活問題だからな。なあ!

せっかくライダーが3人もこの奉仕部の部員なんだ。

平塚センセ―が勝手に始めてくれちゃった勝負、

俺らルールで副賞のいう事聞かせられるってやつ、

ライダー関連なら何でもありにしないか?」

 

八幡たち三人は、自分の命も簡単に脅かすその提案に大いに驚いたが、

 

「そりゃあいい!私が勝ったら雪ノ下の土下座と、

満坂と比企谷のカードをすべて貰おうか。」

 

「え?」

 

なんと真澄は乗り気で条件まで付けて来た。

すると、提案者の栄喜も不敵に笑い、

 

「じゃあ俺は部長殿のおごりで高級フレンチと、

二人が契約のカードを破くことなんてどうよ?」

 

「は!?」

 

「ちょ!ちょっと二人とも!それ残りの二人が死んじゃうじゃん!?」

 

「当たり前だろ?殺さないでどうするんだ?」

 

本気で不思議そうなトーンで言う真澄に結衣は思わず気圧された。

オロオロと後ずさって、縋るように雪乃を見る。

 

「…いいでしょう。」

 

「ゆきのん!?」

 

「な!?お前まで何言って…」

 

「ただし、奉仕部での勝負がつくまで三人は共闘を守る事。

これだけが条件です。」

 

「「「「!?」」」」

 

これには雪乃以外の全員が驚く番だったが、

真澄はすぐに持ち直し

 

「そりゃいい。敵の手の内見ながら邪魔者消してけるってことだろ?」

 

「なるほど。て、訳だ。よろしくな。ヒ・キ・ガ・ヤ・君。」

 

そう言って八幡の肩を叩いて部室に戻って行く栄喜。

こめかみを押さえて深いため息を吐いた八幡は真澄を見送ってからそれに続いて帰路についた。




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FAKE FRIENDSHIP

龍騎も20周年だそうですね。
僕が生まれた年のライダーだし、そりゃそうか。
これだけ長い間愛されてる作品ってだけで、
とても素敵なことですよね。


「起立!気を付け!礼!」

 

号令が終わるや否や、八幡は一回だけ伸びをしてすぐにカバンを手に取った。

面倒ごとに関わりたくないし、極力自分の部屋の中で過ごしたい彼は、後出しの用事とか申しつけられないうちにさっさと退散する事にしている。

 

「よ!比企谷君!この後暇?

だったらちょっと遊びいかない?」

 

だが、自分より出口側に居る栄喜を避けることはかなわなかった。

勘弁してほしい。誰かに誘われるなんて記憶してる限り、

初めてのそれに八幡はうまく対応できない。

まあ、そもそも誰かと話すこと自体まれだが。

 

「い…いや、俺にはこの後ジオン軍として戦う使命が…」

 

「ジオン?…あー、ガンダムのアーケード?

だったら対戦しようよ。

こう見えて一年のころは留年ギリギリのサボりストだったんだぜ?

ゲーセンも良く行ったもんさ。」

 

断れなさそうだな、と八幡は思った。

というか、栄喜も栄喜で問題児だったのが意外だった。

まあ、奉仕部なんぞに連れてこられてる時点で、

何かはあるだろうと思っていたが、想像していたベクトルとはだいぶ違った。

 

「ねー結衣。この後アイス屋寄ってかない?

あーし今日チョコとショコラのダブルの気分なんよ。」

 

「あの……あたし、今日ちょっと行くところあるから……」

 

(あっちも大変だな…)

 

ここ数日観察していてわかったが、

由比ヶ浜は所謂キョロ充である。

リア充の中でも太鼓持ちと言うか、風見鶏的な性質が強いタイプ。

腰巾着、とまでは言わんが、押しに弱く、

防御力が低く(当然八幡よりはあるが)はっきりものを言えないポジションだ。

 

「あんさー 結衣のために言うけどさ。

そういうはっきりしない態度、結構イラっとくるんだよね。」

 

ごめん…と力なく謝る結衣。

追及するギャル、クラスの女子カーストトップの三浦(みうら)優美子(ゆみこ)はますます機嫌を悪くしている。

 

「こないだもそんなこと言って昼休みバックレなかった?

ちょっと最近付き合い悪くない?」

 

優美子の気迫に押される結衣はちらちらと廊下の方を見始めた。

それがますます彼女の機嫌を損ねる。

 

「ありゃ、コウモリは大変だね。」

 

「それどっちかって言うと…」

 

「おい由比ヶ浜!誘ってきたのはお前だろ?

いつまで待たせる?」

 

扉を開けて真澄は顔を出した。

こっちもこっちで待たされたせいか不機嫌そうだ。

 

「あいつだろ。」

 

「いや、彼女はコウモリはコウモリでも血を吸うタイプでしょ?」

 

「あ?何アンタ。」

 

彼女から見れば突然の闖入者の真澄を睨む優美子。

だが似たタイプ、いや、容赦なさの一点で言えば、数段上の真澄は一切臆さず

 

「何ってそこの茶髪ピンクに散々待たされてただけの者だが?」

 

「ちゃ、茶髪ピンク!?」

 

「いいから行くぞ。これ以上待たせるな。」

 

真澄は結衣のカバンを取って彼女に投げ渡すと、

教室を出ようとドアの方に歩き出す。

 

「ちょ、ちょっと! あーしらまだ話終わってないんだけどっ!」

 

「うるさい金ドリル。その似合ってねえ上に肌にも合ってねえ見栄だけの高いファンデーション落してから出直してこい。」

 

「な!?」

 

その瞬間、それほど人数も残っていなかったが、それでもわかりやすく無音になる程教室が静まり返った。

当然だろう。クラスカーストトップの三浦優美子に、

全く臆さないどころか、逆に長髪とも取れる言動をして見せた真澄を、全員が見てる。

 

「それともなんだ?お前のも選んでやろうか?」

 

「え、選ぶ?」

 

「あ、うん!ますみんお化粧とかすっごく詳しくて選んでもらうかなーって。」

 

「……」

 

「行くぞ。」

 

真澄は今度こそ教室を後にする。

結衣は優美子に振り向きざまに、そうゆう訳でまた今度!

と、言って真澄についていった。

 

それと同時に鳴る耳鳴りのような音が響く。

八幡と栄喜はすぐに教室を出ると、

廊下の真ん中で止まっていた結衣たちに、

デッキを見せながら通り過ぎた。

 

「俺らが。」

 

「まかせた。」

 

2人は男子トイレに入ると、

人の出入りを確認してデッキを構えてポーズを取る。

 

「「変身!」」

 

仮面ライダーに変身、ミラーワールドに突入していった。

 

 

 

出た先はコンテナ街だった。

反転したロゴを刻印されたコンテナの細い道を、

二人は警戒しながら進んでいく。

 

「なーんか、こんな感じの場所に出るのが多い気がするのは気のせいかね?」

 

「ミラーモンスターの習性なんじゃないか?しらんけど。」

 

なんて話していると、前方からモンスターの猛るような鳴き声がする、

 

猪型のモンスター、ワイルドボーダーだった。

そのパワフルな突進をライダー2人は、左右に飛んで避ける。

 

「ちっ!やってくれたな!」

 

ゾルダはバイザーを先に開き、デッキからカードを引き抜くが、

ワイルドボーダーの胸部に着いた砲に、手首を撃たれ落してしまった。

 

「しまった!龍騎!拾ってくれ!」

 

それを聞いた龍騎はバイザーの蓋を開けると、砲撃の合間に飛び出して行って、

カードを拾い、自分のバイザーに装填する。

 

『GUARD VENT』

 

そのまま右手を突き出し、盾で防がれてるうちにゾルダに援護を任せようとしたのだが…

 

「いてぇ!」

 

ギガシールドはゾルダの手元に現れ、

龍騎は攻撃をもろに受けてしまった。

 

「ッ!…なんで?どこ行った?」

 

「悪いなこっちだ。お前のやり方がまずかったんじゃないか?」

 

「そうなのぉ?」

 

ゾルダはそのままギガシールドを構え、マグナバイザーをフルオートで連射。

数発貰ってワイルドボーダーは、銃撃ではゾルダに分があると悟ったのか、最初に見せた突進攻撃に切り替えた。

 

「!!!!!!!」

 

「おおおおおお!!!!」

 

ゾルダとワイルドボーダーが激突する。

両者、互いの衝撃を受けきれずに後ろによろける。

が、ライダーは二人いるのだ。

よろけたゾルダを踏み台に飛んだ龍騎は、

背後を取ると、素早く今度はちゃんと自分のカードをベントイン。

 

『STRIKE VENT』

 

「はぁああい!」

 

背中にゼロ距離火炎弾を放った。

意図を察したゾルダは、ワイルドボーダーの逃げ場を奪うべく、盾をしっかり構えて、その場に踏ん張る。

 

「ー----っ!」

 

火柱が立ち上がり、衝撃波は駆け抜けた。

煙が晴れると、そこに飛来したドラグレッダーが倒した敵の上半分を、マグナギガが下半分を持って行った。

 

「あー、疲れた。」

 

「お疲れさん。ゲーセンどうする?」

 

「そんな気分じゃねえ。それより腹減った。

サイゼでも行こうぜ。」

 

「だな。…ッ!」

 

そのあと軽口でも叩こうとしたゾルダだったが、気配を感じて銃口を向けた。

その先のコンテナの角からライアが現れる。

 

「マゼンタのヒラメ野郎…あいつがライアか。」

 

ゾルダに続いてファイティングスタイルを取る龍騎。

それを見てライアは慌てて両手を前に出しながら出てきた。

 

「待ってくれ!戦うつもりはないんだ!」

 

「じゃあなんでこっちをこそこそ覗き見てやがった?」

 

「俺は、俺はライダーの戦いを止めたい!

そのために戦ってるんだ!」

 

 

 

3

「……。」

 

「……。」

 

それじゃあ同じクラスだけど一応。

俺は葉山(はやま)隼人(はやと)。仮面ライダーライアだ。」

 

意外にも世間と言うのは狭いらしい。

この葉山と言う男、何を隠そう総武高校2年F組の生徒なのだ。

見ての通りの眉目秀麗。定期考査ではどの科目も必ず5本指にはいっており、サッカー部の主将も務めるなど文武両道。その上父は弁護士で、母は医者と、血筋も申し分ない絵に描いたような人物で、クラスカーストのトップに君臨する王子様だ。

 

「……。」

 

一言で言えば、八幡の嫌いなキラキライケメンリア充野郎である。

あまねく滅びろ。ミラーモンスターに食い散らかされて死ね。

嫉妬と、醜いマウント取りにも似た感情と、

ここ数日観察して分かったある部分の事もあって、八幡はこいつと一緒にいるこの時間が苦痛だった。

 

「…俺はゾルダの満坂栄喜。こっちが龍騎の比企谷君。

それで?なんでお前はそんな酔狂な真似してるんだ?」

 

ドリンクバーのコーラを飲みながら栄喜が切り出した。

見ると、彼も葉山を見る目は冷めている。

 

「酔狂かな?俺は人として当たり前のことをしてるつもりだけど…」

 

「ライダーってのは所詮ミラーワールドの住人だ。

蹴落とし、足掻き、そして自分の願いの為にまい進する。

違うか?」

 

「その理屈だと全人類仮面ライダーじゃねえか。」

 

「なんだって?」

 

「…だってそうだろ?てか、

クラスカーストのトップにいるお前が何意外そうな顔してんだよ?」

 

「…俺は、別にそんなつもりはない。

ただみんなが仲良くできるような環境を作りたいとは思ってる。」

 

ここが八幡が最も嫌悪する部分だった。

強引にマジョリティーに組み込まれたマイノリティーが、

本来どれだけマジョリティーより優れていようと、

そこでマイノリティーがどれだけみじめになるか分かっていないんだろうか?

 

「だったら悪い事は言わない。デッキを寄越せ。

お前のモンスターは俺と比企谷できっちり始末してやる。

そんないつものクラスのノリでライダーバトルを引っ掻き回してくれるな。

ちゃちい例えだが、内輪ネタを大人数の場でやるようなもんだ。」

 

「! そうだ!そうすればいいんだ!

全員が全員のミラーモンスターを倒せばいいんだ!

そうすれば誰も死ぬ必要なんて…」

 

「お前…」

 

(話して無駄ってやつがこんなに厄介とは…)

 

片頭痛置おぼえた様に顔をしかめる栄喜の代わりに、本当は会話するのも嫌だが、八幡は言ってやることにした。

 

「おい葉山、お前さっき戦い止めるのが人として当たり前とかぬかしてくれやがったよな?」

 

「…何が言いたい?」

 

九に攻撃的な口調になった八幡に驚いた様子の葉山だったが、

直ぐにいつもの爽やかイケメンフェイスをかぶり直す。

 

「お前それ故障が原因で飛べなくなったフィギュアスケーターのライダーとか、娘がレイプされた過去を無かった事にしたい父親ライダーとかにも同じこと言えんのか?」

 

「!」

 

「そんな奴らにもお前はあきらめろっていうのか?

自分の半分以上を構成してた壊れ物を、

直せるかもしれない希望の芽を、正しいからって摘み取るのか?」

 

「それは…」

 

言葉に詰まる隼人の返事を待たず、八幡はカバンをもって席を立った。

栄喜も千円札をテーブルに置くと八幡の後を追う。

 

「やるじゃん。あのクラスの王子様を言い負かすなんて。」

 

「目には目、歯には歯。正しさには正しさだ。

ああゆう分かりやすい正義をかざす強い連中には、

弱い正義ってのは案外効く。

それが強い悪なら勇者も気取れるだろうが、

かわいそうな被害者は同情以外しようがないからな。」

 

「あの様子だと自分の正義を信じ切ってるって程でもないようだけどね。」

 

「そうだったら俺らのデッキ強引に奪い取ってただろ。お前も。」

 

「……。」

 

そう言われて栄喜は意味ありげに、

不敵な笑みを浮かべるだけだった。

八幡は構わず問いかける。

 

「俺はドラグレッダーに食われたくないからライダーやってる。

お前はなんでなんだ?

仲田は…本当に手の内見ておきたいのと、

学校での生活があるからだろうけど、お前はF組だ。

それに主武装は銃火器。

事を起こす場合、間違いなくナイトは噛んでこない。

暗殺決めようと思えば、どんだけでも方法あると思うんだが?」

 

「はぁ…ふつうそれ思っててもそんなペラペラ言う?

もしかして比企谷君、

会話らしい会話一日一回もしない日とかあるんじゃない?」

 

「にゃ、にゃんの話でしょう…」

 

図星を付かれた八幡は、さっきの葉山への態度なんて嘘の様に、

動揺と変なテンションを露呈した。

 

「噛むな気持ち悪りい。はぁー!ま、そうだな。

自分で言うのもなんだけど、

誰からも同情されるような可哀そうな境遇とだけ言っとくかな。

あ、ちなみに俺は仮面の男から直接デッキを受け取ってる。

お前みたいに何の説明もなくなったのとは違うからな?」

 

「そうかい…。」

 

「ゲーセンはまた今度ってことで。」

 

そう言って八幡の肩を叩くと栄喜は帰路に就く。

八幡も自転車に乗り込み反対方向に走った。




久しぶりの小説編、いかがだったでしょうか?
内面描写とかはやっぱり地の文ある方が断然やりやすいですね。


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GUNSLINGER AND COLD AXE

超・超・超お久しぶりです。
ロワ界隈にどっぷりつかっております。
伊勢村です。
しばらくの間は新しい話は出せないと思いますが、平にご容赦を。
それでは、どうぞ。


 

相変わらず垂れ幕から看板まで何もかもが反転したミラーワールドのショッピングモールにて。

メインホール以外のすべてを埋め尽くしていたのか?

と、錯覚するほど大量の白いヤゴ型のモンスターシアゴーストと、

奉仕部の3ライダーたちはいつ終わるともわからぬ戦いを繰り広げていた。

 

「はぁ!やぁあああ!くそ!全く減らねえ!」

 

疲労からか、形も何もない無茶苦茶な構えでドラグセイバーを振るう龍騎。

勿論ある程度狙ってはいるが、それでも大体敵に当たる。

 

「何階だ!モンスターの安売りなんてアホやってる店は!」

 

もう狙うのをあきらめたのか、引き金を引きっぱなしにしたままバイザーを振り回すゾルダ。

鈍重な装備ばかりだから仕方ないと言えば仕方ない戦い方だが、非効率極まる。

 

「うまいこと言ってるつもりか!口より手を動かせ手を!」

 

それでもなんとか出来たわずかなスキに、三人はカードを使う事が出来た。

 

『SWORD VENT』

 

『STRIKE VENT』

 

『GUARD VENT』

 

それぞれウイングランサー、ギガホーン、ドラグシールドを装備し、

再びシアゴーストたちに向かっていくが、その数は一向に敵の数は減らない。

それどころか戦闘音に引き寄せられて益々集まってくる。

 

「一回外に出よう!このままじゃジリ貧だ!」

 

「だな!仲田!」

 

「ここではナイトと呼べ!」

 

ナイトと龍騎は同時に新たにカードを切る。

 

『『FINAL VENT』』

 

同時に放たれたドラゴンライダーキックと飛翔斬がシアゴーストたちを蹴散らしながら、

正面入り口のドアを吹き飛ばす。

 

ゾルダもすぐにその後に続き、

入り繰りの天板をギガホーンのキャノン機構で打ち壊して塞ぐ。

 

「龍騎、もっと離れるぞ」

 

「ああ。さっさと逃げて体制を……」

 

「そうじゃない。お前は新参者だからな。

親切で教えてやる。ゾルダのファイナルベントは圧倒的だ」

 

ゾルダはベルトから二枚のカードを取り出す。

まず一枚目をベントイン。

 

『ADVENT』

 

ゾルダの目の前に契約モンスターの鋼の巨人マグナギガが出現。

続いて二枚目のカードをバイザーに装填。

 

『FINAL VENT』

 

「お前の断末魔がラストナンバーだ」

 

マグナバイザーをマグナギガの背中に接続。

それと同時にマグナギガの体中に内蔵された全砲門が開く。

胸部ミサイルポット、頭部レーザー砲、腕部のガトリングと両脚のキャノン砲が一斉発射。

ライダーならば知らぬ者はいない破壊の嵐、エンドオブワールドが炸裂した

 

「レクイエムは瓦礫の音で。無作法で失礼」

 

「建物ごとかよ……」

 

見るも無残に潰れ崩れたショッピングモールを前に、

龍騎はただただ圧倒されるしか出来なかった。

 

「大雑把すぎて確殺とはいかんらしいがな。

ほら、さっさとモンスターに食わせるもん食わせて戻るぞ」

 

さっさと切り替えて餌やりに勤しむ二人を横目に、龍騎は盛大に溜息をついた。

 

(全く、ミラーワールドでやるわけだ。

現実でこんなんぶっ放したら大災害だ……)

 

 

 

 

 

 

「GUNSLINGER AND COLD AXE」

 

 

 

 

 

総武高校が奉仕部部室にて。

俺こと比企谷八幡と、満坂と仲田の三人で奉仕部内での決着までの同盟が出来て一週間が経過した。

その間にもう部室内での定位置ややる事みたいなものも決まってきた。

持って来たラジカセで音楽を聴いてる満坂。

紅茶片手に宿題を解いている仲田。

雪ノ下にちょっかいをかけている由比ヶ浜。

 

「邪魔するぞー」

 

「先生、ノックをお忘れですよ」

 

「邪魔するなら帰れー」

 

「煙草なら余所で吸えー」

 

「皆ひどいよ!年長者は敬わないと!」

 

「由比ヶ浜、お前が一番心ないこと言ってないか?」

 

こんな流れも半ばお約束になって来た。

ちなみに上から雪ノ下、仲田、満坂、由比ヶ浜、そして俺だ。

 

「……全く冷たいなお前たちは。

そんなお前たちを熱く滾らせる依頼を2つも持って来たというのに。

入って来い!」

 

平塚先生の声に、指定のジャージ姿の生徒が入ってくる。

中性的な可愛らしい顔立ちの生徒だ。

 

「あ、さいちゃん!やっはろー!」

 

「由比ヶ浜さんこんにちは。満坂君に比企谷君も」

 

そう言ってジャージの生徒は俺たちの方を見て可愛らしく笑った。

え?何このめっちゃ可愛い子?こんな子うちのクラスに居たっけ?

 

「やあ、戸塚君。良かったな比企谷君。

初見で名前間違えられてないぞ?」

 

「あ、ああ。そ、そうだな……」

 

「ほぼ初対面の男子にデレデレするなんて気持ち悪いわよ吃音谷君。

それで、彼から2つ依頼があるという事でしょうか?」

 

ば、馬鹿な!こんな可憐で可愛らしい子が、男!?

なんていう事だ…そんなの宇宙の法則の方がおかしいだろ!

いったいなぜ神はこんないたずらを……」

 

「ヒッキー最低!さいちゃんF組だから知ってなきゃおかしいし!」

 

気が付くと、戸塚以外の全員が俺の事をゴミを見る目で見ていた。

 

「な!?どうして俺の心の声が…」

 

「完全にフルオープンだったわ。

何もかもそのMAXコーヒーで爛れた喉から垂れ流しだよ。

今の今まで」

 

「え?マジ?」

 

「は、ははは…そうだよね。僕なんか全然男らしくないし……」

 

「涙吹けよ」

 

乾いた笑いと共に肩を落とす戸塚に満坂はハンカチ差し出した。

 

「んん!それで、もう一つの依頼の件だが……そっちは私からだな。

優劣をつけるわけじゃないが、多分戸塚の案件より厄介だ。

もし人員を分けるとすれば私、戸塚で3:2で別れてもらいたい」

 

「じゃあ由比ヶ浜と比企谷がダブったら仕切り直しってことで。」

 

そう言って仲田が立ち上がりながら拳を鳴らす。

 

「ちょっと!」

 

「そうね」

 

「おい!」

 

「じゃ、やりますか」

 

俺と由比ヶ浜の抗議の声をガン無視して残る二人も立ち上がる。

 

「いや待ってって!それどうゆう事だし!」

 

「なんで俺がこいつと同レベルで役に立たないことになってんだ?」

 

「うるさいわ騒音谷君。部長の命令は絶対よ」

 

「いーからやるぞ。グッとパーで!」

 

「「「「「分かれましょ!」」」」」

 

 

 

 

 

2

「この組み分けマジかよ……」

 

奉仕部部室からは、テニスコートで戸塚の相手にラリーする満坂と由比ヶ浜の姿が見えた。

まあ、由比ヶ浜さっきから全く動けていないが。

 

「最悪だ…由比ヶ浜だけならまだどうとでもなるというのに……」

 

「ええ、全くね。疫病谷君、

くれぐれも両手に花とか深い極まる勘違いだけはやめなさい?

私たちもあなたも不幸になるだけよ」

 

俺相手だと、いつも以上にいいも言ったりな女子二人。

こんな事ならまだ由比ヶ浜の方が良かったかもしれない。

 

「安心しろ。中学で告白して晒されたり女子に誕プレ送って引かれたりして痛い目見続け3年。

以来勘違いだけはしないように気を付けている!」

 

「お前、それ自慢げに言えることか?」

 

「比企谷の憐れむべき中学時代のアレコレは置いておいて、依頼の件だが、

この生徒の生活態度があまりにも酷いのでな。

お前たちに原因を究明、そして可能なら同にかする手助けをしてやって欲しい」

 

「要は生活指導(あんた)の仕事を私たちにやれと?」

 

「職務怠慢?」

 

「お前ら右の拳と左の拳、好きな方を選ばせてやろうか?」

 

不思議だな。

昔の自分なら萎縮していた自信があるが、

今は何とも思わない。

これ以上の殺意なんていくらでも見て来た。

今更何も怖くない。

 

「それで!その生徒は誰なんです?」

 

川崎(かわさき)沙希(さき)。比企谷と同じ2年F組の生徒だ。」

 

 

 

 

 

3

何度目か、明後日の方向に飛んで行った球を追いかけ、、ようとして由比ヶ浜さんが盛大にスッ転んだ。

なんだよ。もうばてたのか?

 

「どーする?一回休憩挟む?」

 

「そうだね。じゃないと由比ヶ浜さん潰れちゃいそうだし」

 

そう言ってラケットをケースに戻した戸塚は由比ヶ浜に手を貸して立たせた。

こういう一面を見ると、普通に紳士だね。

 

「ううぅ…ごめんね。足引っ張ちゃって」

 

「いいよ、練習付き合ってくれるだけありがたいからさ」

 

そう、彼からの依頼とは、自分のテニス練習に付き合ってほしいというものだ。

場合によっては探偵の真似事が必須な比企谷たちに比べれば、いくらか楽な仕事だ。

 

「しかし…なんで俺らなんだ?テニス部には入ってるんだろ?

だったら同じ部の奴らに頼めばいいじゃん」

 

「実は、皆3年の強い先輩たちが辞めてからやる気なくなっちゃってさ」

 

「それで自分がその強い3年の代わりになろうってか?」

 

「おー!さいちゃんかっこいい!」

 

「そうかな?」

 

「そう思うならちゃんつけ辞めてやれば?」

 

「あだ名なんだしいいじゃん!」

 

なんて話していると、耳鳴りのような音が響く。

遠目に窓が水面の様に揺れたのが見えた。

 

「悪い、ちょっとトイレ行ってくる」

 

「僕は飲み物買いに」

 

俺は戸塚とさっさと分かれるとトイレに駆け込み、

ジャージのポケットから取り出したデッキをいつものように鏡に構え、

 

「変身!」

 

仮面ライダーゾルダに変身してミラーワールドに突入した。

 

「は!」

 

左右反転した校舎内を探していると、赤い猪型のモンスターを見つけた。

確か名前は、シールドボーダーと言ったぁ?

俺はマグナバイザーで狙撃した。

しかし固すぎる装甲に全く効くいていない。

 

「!!!!!!」

 

シールドボーダーは専用武器の盾を片手に突っ込んでくるが、あまりに鈍重。

ゾルダよりも遅い。

 

『STRIKE VENT』

 

余裕で新たな武器を装備した俺は近接格闘を仕掛けた。

拳と武器による打撃の応酬。

が、鈍重な分、パワーではこちらを上回る奴に吹っ飛ばされた俺は、

窓を破って机や椅子を倒しながら教室に転がり込んだ。

ウイングランサーならトップスピードでなら貫けただろうが、ない物ねだりをしてもしょうがない。

 

『SHOOT VENT』

 

ランチャー砲型のギガランチャーを装備。

大きく腰を落とし、敵に標準を合わせ、引き金を引く!

 

『FREEZE VENT』

 

「!」

 

全く聞き覚えの無いカードを俺のではないバイザーが無感情に読み上げた。

直後、ギガランチャーに霜がかかったような模様が浮かび、

ライダーのスーツ越しにも温度が下がったのが分かる。

その動揺を突いて、シールドボーダーは撤退してしまった。

 

「しまった!……誰だ?どこから見てやがった!?」

 

周囲を見渡すが、人影は全く見当たらない。

さっきの凍結とは全く異なる背筋の寒さを感じながら、俺はその場を後にした。

 

 

 

 

 

同じころ、現実の校舎内のどこかにて。

 

「……」

 

現実世界から窓越しに去っていくゾルダを観察する姿があった。

白の上に、ナイトの物よりもずっと明るい青のラインの入る鎧に、

虎を模した仮面、斧型のバイザーを武器として携えた仮面ライダー、タイガだ。

タイガはゾルダが完全にいなくなったのを確認すると、

変身を解除しながらその場を後にした。

 




いかがだったでしょうか?
正直久しぶり過ぎて「こんなはなしだったっけ?」と、書いた本人がなっております。
はやく感を戻さなんきゃ。
次回もお楽しみに


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HATE AND HAZARDOUS

お久しぶりです。
伊勢村です。
リバイスもいよいよ大詰めですね。
次のギーツや龍騎20周年も楽しみです。
それではどうぞ。


放課後、客足がピークを迎える喫茶花鶏の四人席にて。

奉仕部の川崎沙希を担当する3人が作戦会議を始めていた。

 

「一応、私達は競争相手同士ってことになってるがいいのか?」

 

アイスティーのストローを弄びながら言う真澄。

しかし雪乃は首を振り、

 

「依頼を果たせなければ競争も何もないわ。

勿論競い合うけど蹴落とし合うのは無しよ。いいわね?」

 

「作戦って言ってもどうするんだ?

こいつの事何にも知らないだろ?」

 

紋切型のプロフィールの羅列された資料を見ながら、

八幡はけだるそうに言った。

それに雪乃は

 

「何のためにあなたが居ると思ってるの?

同じクラスなんでしょう?」

 

と、呆れたように返した。

 

「雪ノ下、こいつがもし一人でもクラスにまともな友人がいるなら平塚に睨まれてないはずだろ?」

 

「ああ、そうだったわね……」

 

女子二人にベクトルは違えど、貶された八幡は

 

「悪いように言うなよ仲田。

そして憐れむような目を向けるなよ雪ノ下。

俺は他人を見たら他人と思い、無抵抗以前に無接触なだけだ。

平和主義過ぎて超ガンジーだろ?」

 

「良いように言うな。それ周囲の誰の眼中にも無いだけだろ?」

 

「そのレベルまで行くと最早人間不信や対人恐怖症を疑うわね。

あとガンジーは修行と称して裸の少女を添い寝させたりしてたり、

若い女の子に夢中になってたせいで親の死に目に会えなかったような色欲魔人よ?

何勝手に自分の下半身事情をさらけ出してドヤってるのかしら?

ま、仮にあなたもそうだとしても女の子を口説けるような度胸はないでしょうけど」

 

「違いないな」

 

さっきまでは若干憐憫の混じっていた見下す視線が、

完全に冷気と蔑みになった視線に貫かれ、

胸を押さえてうずくまる八幡。

そんな彼に唯一声をかけたのは……

 

「あれ?お兄ちゃん?」

 

 

 

「HIGH AND HAZARDOUS」

 

 

 

小町(こまち)……」

 

八幡の妹の小町だった。

奉仕部一同と同じく学校帰りなのか、

八幡も二年前まで通っていた中学制服姿に鞄も持ったままだ。

 

「お兄ちゃん何して……!?う、そ……。

お兄ちゃんが女子とお茶してる!?」

 

思わずカバンを落して固まる小町。

泣きながら兄の元まで行き

 

「うぅ……いつの間にかそこまで出来るようになってたなんて小町感激だよ!

成長したねお兄ちゃん!」

 

ぱっ!と花が咲いたような笑みを浮かべる小町。

対して八幡はやや引きつった笑みを浮かべ、

 

「ヘイヘイ、マイリトルシスター。

これのどこが楽しくお茶してるように見えるんだ?

どう見ても口撃による集団リンチの現場だろ?」

 

「え?そうなの?

あ、愚兄がお世話になってます。比企谷小町です。

こんなごみいちゃんですが一つ良くしてやってください」

 

どうやらただの大袈裟なリアクションだったらしく、

すぐに涙をひっこめた小町は女子二人に礼儀正しく頭を下げた。

 

「その勘違いだけは酷く不快だけれど、

それ以外は比企谷君と同じ血を引いてるとは思えないよくできた妹さんね。

奉仕部部長の雪ノ下雪乃です。よろしくね」

 

八幡だけとの時には絶対に見せないだろう柔和な表情で小町に手を差し出す雪乃。

小町も「よろしくです!」と応じた。

 

「……仲田真澄だ。

その男の面倒を見てるつもりはないが、まあ座れ」

 

相変わらずぶっきらぼうではあったが、

真澄は開いていた自分の対面側、八幡の隣の席を指して、

座る様に促した。

 

「おじゃましまーす。

それで、なんの話してたんですか?」

 

雪乃と真澄は一度顔を見合わせて

 

「言っていいのかしら?」

 

「兄貴の方より酷い案は出ないだろうし、いいんじゃないか?」

 

「まだ何の案も出てないだろ」

 

眉間に皺を寄せて抗議する八幡を無視して、

雪乃は小町におおよその事情を説明した。

 

「んー……もしかしたらですけど、その人弟いません?

私の予備校の友達にも同じ名字で、お姉ちゃんいるって子がいて」

 

何!?小町に男友達だと!?

まさかその小僧小町を狙って……いや、まさかじゃないそうとしか考えられない!

次会った時に適切な処置をしなければ……」

 

「シスコン谷君、処置っていったい何をするつもりなのかしら?」

 

音まで凍らすような冷気を発しながら言い放つ雪乃。

 

「お前、一人で良すぎて心の声と独り言の区別できなくなってるのか?」

 

UMAとかそっち系の信じられない物を見る目で八幡を睨む真澄。

 

「まさか……」

 

「ごみいちゃん小町的にポイント低すぎ。

別に大志(たいし)君とはそんなんじゃないし」

 

実妹からも完全に呆れられた目線を向けられてしまった。

 

「マジかよ……」

 

流石に短期間に二階も同じことが有れば、流石の八幡も頭を抱えた。

そんな戦闘不能の彼を放置して話は進む。

 

「それで、その川崎大志君がなんて?」

 

「なんでもそのお姉ちゃん朝帰りするようになったって言ってるんですよ。

その上エンジェルなんとかって店からそのお姉ちゃんに電話が来たって」

 

「雪ノ下、その川崎大志が比企谷妹と同じ予備校ってことは……」

 

「ええ。通学路に関しては比企谷君が自転車を使わない場合と半分ぐらい被ってるとみていいわね」

 

「じゃあバイトの範囲も大体絞れるか」

 

「ではまずバイトの裏付けをとることね。

比企谷君、仲田さん、お願いできるかしら?」

 

「え?なんで?」

 

話だけは何とか聞いていた八幡が不思議そうに尋ねる。

 

「私ら以上の適任が居るか?」

 

そう言って真澄はポケットからナイトのカードデッキを取り出した。

ミラーワールドを介してなら、いけない場所はそんなにない。

 

「あ、それ……」

 

「小町、しってるのか?」

 

「うん。例の大志君も持ってた。それはやってるの?」

 

八幡は再び頭を抱えた。

真澄は一瞬、本当に一瞬だったが、

獰猛な笑みを浮かべたのを雪乃は見逃さなかった。

 

 

 

一方その頃、総武高校がテニスコートにて。

栄喜、結衣はコートで部活仲間と練習する戸塚の様子を見ていた。

 

「まあまあフォーム良くなってきてんじゃないの?」

 

「だねー。あたしなんかすぐばてちゃうもん」

 

「由比ヶ浜さんは体力なさ過ぎだからね?

俺らほど、はやり過ぎだけど、もうちょっとあったほうがいいよ?」

 

お陰でほぼ戸塚の相手は栄喜がしていたのだ。

その事を思い出し、流石に気まずくなり、

 

「あ、あははー」

 

と、目を泳がせまくり、ぎこちなく笑った。

栄喜はねちっこく追及したりはせず、いこーぜ。

と、言ってそのまま帰路につく。

しばらくは会話もなくただ歩いているだけだったが、

 

「ヒッキーたちの方手伝いに言った方がいいのかな?」

 

「一応勝負になってるし、どうなんだろう?

ま、由比ヶ浜さんは行っても行かなくてもいいんじゃない?

俺はこの前の奴逃がしちゃったからそろそろ餌やりを……」

 

そこまで言った所で耳鳴りのような音が響く。

栄喜はポケットに手を伸ばしながらにやりと笑い、

 

「早速おいでなさった」

 

取り出したカードデッキを近くに合ったカーブミラーに向ける栄喜。

 

「ッ!満坂君待って!」

 

しかしデッキを持った栄喜の手にめがけて、

鏡から飛び出した足が蹴りを繰り出して来た。

すぐさま飛びのいた栄喜だったが、手からデッキは蹴り落され、

鏡から完全に飛び出した西洋甲冑と犀の意匠の仮面ライダーが現れる。

そいつはゾルダのカードデッキを足先で踏み、構えを取る。

 

「チッ!マジかよ……」

 

栄喜も生身だがファイティングスタイルを取る。

殴り掛かって来るなら、躱して腰のデッキを抜き取ってやるつもりだ。

ゾルダに変身してくるなら、自分も敵のライダーに変身して迎え撃つ。

 

「……」

 

しばらく睨み合っていた2人だが、犀のライダー、ガイは、

ゾルダのデッキを蹴って栄喜の足元に滑らせた。

 

「?」

 

「取るんだ。フェアな勝負がしたい」

 

困惑する栄喜にガイが言った。

思ったより高い声だ。

変身しているのは多分栄喜や結衣より年下の少年だろう。

栄喜はガイに視線を向けたままデッキを拾い上げ、

その奥の鏡に掲げる。

 

「変身!」

 

何時も通りのポーズを取り、仮面ライダーゾルダに変身。

2人はほぼ同時にミラーワールドに突入した。

 

「あ!……なんであたしさっき来るってわかったんだろう?」

 

いぶかしげに考え込む結衣。

そうしている間に、その後ろから誰かが走ってくる。

 

「ねえアンタ!」

 

「!…えっと、川崎さん?」

 

同じクラスの川崎沙希だった。

余裕のない表情で、ずっと走って来たのか、結構な汗をかいている。

 

「今、鏡に入ってったのって……」

 

「え!?えっとぉ…これは、その……」

 

「お願い!あの銀のライダーを倒さないで!

アイツ、私の弟なの!」

 

 

 

ミラーワールドの廃車置き場にて。

ゾルダとガイは、それぞれ無手で近接戦でぶつかった。

足払いの応酬、からの拳や肘でのインファイト。

 

「やるな…けど優勝するのはこの俺だ!」

 

そう言ってキンッ!と胸部アーマーを指で弾くガイ。

 

「ほざくだけならだれでもほざける!」

 

そう言ってゾルダは腰に下げたバイザーにカードをセット。

 

『STRIKE VENT』

 

ギガホーンを召喚、装備して殴り掛かった。

 

「ふん!」

 

ガイはゾルダの打撃を避けながら、

肩アーマーにはめ込まれたバイザーを開き、

左手でデッキから引き抜いたカードを投げ入れる。

 

『CONFINE VENT』

 

突如ゾルダに装備されたギガホーンが砕けて消えた。

 

「なに!?」

 

「こーゆーカードも有るんだよ!」

 

驚愕するゾルダに殴りかかり、

更に新たにカードをベントインするガイ。

 

『STRIKE VENT』

 

今度はガイがメタルホーンを装備し、突っ込んでくる。

ゾルダはベルトからバイザーを引き抜き、それでもって応戦する。

 

(くそ!(ゾルダ)と同じタイプかと思えばけっこう機敏じゃねえか!

ナイトや龍騎ほどじゃないが、まずい!)

 

ゾルダはガイの顔面を狙って銃撃し、

目くらましをすると車の間に隠れた。

 

「!? どこだ!?逃げやがったか!?」

 

(なにか……なにか逆転できる材料は……)

 

ガイにばれない程度に周囲を見渡すゾルダ。

しばたらくして何かに気付いたのか、

ガイの頭よりやや上を狙って走りながら銃撃する。

 

「な、何が…うげぇ!?」

 

銃撃された廃車はバランスを崩し、

ガイをうつ伏せに潰すように落下。

粉塵と轟音と共に倒れ伏したガイは

 

(しまった!デッキに手が届かない!)

 

そんなガイにゾルダは仮面の下で獰猛に笑い、

 

「こいつで、ラストナンバーだ!」

 

『SHOOT VENT』

 

切り札の一つであるギガランチャーを召喚し、装備。

藻掻くガイの頭に標準を合わせる。

 

「シュートォ!」

 

「だめぇえええ!」

 

ギガランチャーの砲弾が発射される。

ガイの頭部をと、砲口の間に、滑り込んでくる影があった。

由比ヶ浜結衣だ。

ギリギリで走り込んで来た彼女は、両手を広げて立ちふさがり、

 

「え?」

 

「はぁ!?」

 

次の瞬間、一瞬世界が白く染まった後、爆ぜた。

視界が光とは別の物に奪われ、

仮面越しに焦げ臭いにおいが充満する。

ミラーモンスターの身体すら粉々にするギガランチャーを受けて、

恐らく死体も残ってだろうが、それでも目が離せず、

今さっきまで結衣が立っていた場所を呆然と見つめるゾルダ。

 

「あれは……」

 

狙撃に特化したゾルダの強化された視覚が、

煙の奥で動くガイではない、もちろん結衣でもないシルエットと、

赤く輝る何かが見えた。

しかし、煙が晴れるより早くその場から消えてしまった。

 

「今のは一体……」

 

「次はない」

 

「!!」

 

声が、全く聞いたことの無い壊れた機械で出力したような声が、

ゾルダの耳を不快にくすぐる。

即座に反射的にふり返り、バイザーを向けが、誰もいない。

 

ようやく煙が晴れた方目を向ければ、

どういう訳か、気絶しただけで無傷の結衣と、

何とか車から抜け出したガイがいる。

言いようのない不気味なものを感じながら、

ゾルダは結衣を抱えてミラーワールドを後にした。

 




いかがだったでしょうか?
プロットを見返してこいつこんなライダーにさせる予定だったっけ?
とか自分が思っている作者です。
夏休み期間は何とか投稿ペース上げれるかな?
次回もお楽しみに。


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I don`t know his Idea

こんにちは。伊勢村です。
バイトに即日採用ってあるんですね。
面接官さんと楽しく話せるのって、合格のサインと考えていいんでしょうか?


1

総武高校からそれほど遠くもない一般道。

その路肩に駐車された車の窓がまるで水面のようにゆらぎ、

一瞬の白い光と共に栄喜と結衣。

そして仮面ライダーガイの正体、川崎大志が現実に帰還した。

 

「……」

 

「……」

 

しばらく栄喜を睨んでいた大志だったが、

やがて視線を逸らすと踵を返して去って行こうとする。

 

「ちょ!ちょっと待って!」

 

慌てて止めようとした結衣だったが、

大志は腕を大降りに振って

 

「うるさい!アンタには関係ないだろ……」

 

「そんなこと言ったって……」

 

「死にたいんなら邪魔しない!

けど戦いの邪魔しないでください……。

アンタみたいなのが居るとしらけるんすよ」

 

そう言うと大志は今度こそ振り返らず走り去って行ってしまった。

 

「あ……」

 

栄喜「……由比ヶ浜さん、アンタがいい人なのは分かった。

けど死にたくないならさっきみたいなのもうやめてくれよ?

流石に関係ない奴に死なれんのは気分悪い」

 

そう言われた結衣はうつむいて黙りこんでしまった。

観なくともその表情は曇り切っているんだろうと分かる。

 

(ま、それ以上に、あの声や、あのライダーの事も有るし)

 

間違いなく、煙の向こうに居た光る赤眼のライダー(?)を思い出す。

なぜ奴が結衣を守ったのかは不明だが、

 

『次はない』

 

とのことだ。遠距離武器主体の栄喜としては、

引き金を引いてしまっていたらもうリカバーが効かないので、

これ以上心臓に悪いのは御免被る。

 

「あ、居た!」

 

なんて思っていると、栄喜たちがミラーワールドに入った地点の方から川崎沙希が息を切らしながら走って来た。

 

「はぁー、はぁー、大志は、弟は?」

 

「もう行ったよ。帰ったんじゃない?」

 

栄喜がそう言うと、沙希は『……そう』と返してから、

 

「ねえアンタ。アンタがあの緑の奴なんでしょ?」

 

と、問うてきた。

 

「……まあね。それで?」

 

「頼む!大志を、弟を止めて!

大志にこれ以上罪を重ねさせないで!」

 

随分と久しぶりに女子の土下座を見ることになった栄喜だった。

 

 

 

「I don`t know his Idea」

 

 

 

2

その夜 栄喜の私室にて。

彼は椅子に腰かけ、目を閉じ天井を向いていた。

が、考え事をしていただけで、

寝ていたわけではなかったらしい。

机に置いたストレートタイプの携帯電話を取り、

電話をかけ始めた。

 

『はい。仲田です』

 

「満坂だ。今ちょっといいか?」

 

余所行きのいつもよりちょっと高く感じる声をレアだな、

なんて思っていると

 

『五分くらいなら……』

 

警戒心満載のいつもの低い声が返って来る。

お互いの為にさっさと本題に入る事にした。

 

「仮面ライダーガイの正体が分かった」

 

「! どこのどいつだ?」

 

「そっちの依頼の川崎ってやつの弟。名前は大志」

 

「それで?」

 

「少々トリッキーなカード持ってて厄介なんだ。

お前の手を借りたい」

 

「比企谷はどうする?」

 

一応三人で共闘を守れとは言われている。

けど一人をハブってはいけないなどと言われた覚えは一度もない。

結衣の口に戸は立てられないだろうが、

この計画に関しては真澄が黙っていれば済む話である。

 

「言わなくていいだろ。

邪魔してくるなら仲田さんが抑えてくれればいい」

 

「いいだろう。こっちの依頼の件ともダブルから、

情報収集の機会はどんだけでもある」

 

じゃ、そういうことで。と、栄喜は電話を切って机を向いた。

 

「さぁ、お前が二人目だぜ。角頭君」

 

手にしたゾルダのデッキに向けて、栄喜は獰猛にほほ笑んだ。

 

 

 

3

翌日、総武高校奉仕部部室にて。

放課後になった一同は、

一度は集まったがまたすぐそれぞれの依頼解決の為に分かれることになる。

 

「由比ヶ浜さん、満坂君。

戸塚君のところに行く前にちょっといいかしら」

 

「サキサキの弟君の事?」

 

「その件なら昨日電話で仲田さんに伝えてありますけど……」

 

流石に真澄も依頼にダイレクトにかかわりそうなことは黙っていなかったようだ。

まあ、暗殺計画さえバレなければ栄喜としては構わない。

 

「ええ。それは聞いてる。私が知りたいのは、

あなた達から見て、川崎大志がどんな人間だったかという事」

 

「驚いた。部長殿にも人間の心があったんですね」

 

「満坂君いいすぎだし。ゆきのん人と話すの苦手なだけだし」

 

「あなた達が私をどう思ってるかは聞いてないわ。

それでどうなの?」

 

冷えた猫目を細めて睨む雪乃に一瞬背筋に嫌な汗が流れる二人だったが、

すぐに気を取り直し

 

「比企谷よりもライダーに向いてない感じっすかね。

態々先制攻撃ではたき落とした俺のデッキ返してくるぐらいですし」

 

「うん……きっと後戻りできなくなっちゃっただけだと思う!」

 

と、思ったままを伝えた。

 

「そう、ありがとう。なら交渉の余地ありと判断するわ」

 

「がんばってね!」

 

「一応競争相手なのだけど……」

 

ちょっと困ったように言いつつも、雪乃は少し嬉しそうだった。

そして二人が去ってからしばらくした後、

誰かが部室のドアをノックする。

 

「どうぞ」

 

「じゃまするぞ」

 

「うーす……」

 

「来たのね。仲田さんと…誰?」

 

「お前も飽きないな。雪ノ下。

仮面ライダー龍騎こと比企谷八幡君ですよ」

 

「ああ。いたわねそんな人も」

 

何か言いたそうな八幡だったが、真澄はそれを手で遮り、

 

「下らんことに時間使うな。ほら、さっさと始めるぞ」

 

と言ってさっさと席に着いた。

八幡もやや不満そうながらも従う。

雪乃はさっそく栄喜たちから得た情報を二人に説明した。

 

「そうか。なら私は川崎沙希を追おう。

今朝からダークウイングを尾けさせてるし、

お前らよりかは対人能力有るつもりだ」

 

「まあ、そうだな。それで俺は……」

 

「あなたも行くのよ。

妹さんに連絡すれば川崎大志君の学校ぐらいわかるでしょう?」

 

「別に俺じゃなくても……」

 

「ファイナルベントを相殺できるカードが二枚あるあなたが適任だからよ」

 

ガイのコンファインベントは凶悪だ。

普通のライダーなら、必殺技や使い慣れた武器や能力に頼ったところを、

無効化されれば窮地に陥るだろう。

だが武装も豊富でストライクベントの威力も必殺級の龍騎は適任だろう。

 

「じゃあお前はどうするんだ?」

 

「仲田さんと行くわ。もしこっちに川崎大志君が来た場合、

川崎沙希さんを捕まえておけないもの」

 

「決まりだな。しくじんなよ?」

 

「こっちの台詞だ」

 

三人はほとんど同時に立ち上がると、部室を後にした。

そして十数分後、学校の最寄り駅の改札口前にて。

目につく青いポニーテールが揺れてるのを見つけた真澄は、

早速後ろから声をかけた。

 

「川崎」

 

「……なに?」

 

ふり返った彼女に真澄は口笛を吹きながらデッキを見せる。

 

「!?」

 

即座に逃げようとする沙希だったが、

あらかじめ待機してくれていた雪乃が道を塞ぐ。

青ざめた顔で逃げ場を探しだした彼女に雪乃は、

極力穏やかな声でなだめた。

 

「落ち着いて川崎さん。

別に何かしようって訳じゃないわ。鏡の件とは別件よ。

まあ、関係がないとも言えないのかもしれないけれど」

 

「別件?」

 

「お前、最近生活態度酷いんだってな。

生活指導のヤニ女居るだろ?あいつに頼まれてな」

 

「……」

 

警戒は解かない。

が、デッキを見せたとよりかは、マシな顔色になる。

こちらの方が彼女の中では軽い問題らしい。

 

「ちょっと話そうぜ。いい店知ってるんだ」

 

 

 

4

(うーわぁ、視線が、視線が刺さる……。

そりゃそうか。

この目のせいで通報されたことも一度や二度じゃ……)

 

同じころ、小町から聞き出した川崎大志の通う中学校にて。

八幡は周囲からの視線に嫌悪感を感じながらも大志を探していた。

主に人の少ない方から探していると、

もうすっかり慣れた耳鳴りのような音が聞こえだす。

振り向くと、カーブミラーの奥に仮面ライダーガイが映っていた。

 

「……はぁ、仕方ない」

 

八幡は一度学校を出ると、

近くの公衆トイレに駆け込み、デッキを構えてポーズを取る。

 

「変身!」

 

龍騎に変身した八幡はミラーワールドに突入。

ガイと対峙する。

 

「アンタ、総武の制服だったな。ゾルダから聞いたのか?」

 

ガイは警戒心どころか敵対心を隠そうともせず、

仮面の奥から龍騎を睨みつける。

 

「まあ、そんなとこだよ。今日は話があって来た」

 

「そんなものいらない!」

 

『STRIKE VENT』

 

ガイはメタルホーンを装備し、龍騎に殴り掛かって行く。

大ぶりの打撃を避けながら龍騎はカードデッキからカードを引き抜く。

 

「……これ、自衛だからな!」

 

龍騎はバイザーを開き、カードをベントイン。

 

『SWORD VENT』

 

ドラグセイバーを装備し、メタルホーンの角と鎬を削る。

 

「おい川崎!大志でいいんだよな?

お前はなんで戦ってるんだ!」

 

「お前には関係ない!」

 

アーマーが、武器がオレンジ色の火花を散らし、

打撃と蹴りの応酬が続く。

 

「かもな。けど生憎仕事なんでな!」

 

接戦に焦れたのか、それともこれ以上龍騎と話したくなかったのか、

ガイは新たにカードをベントインする。

 

『ADVENT』

 

契約モンスターのメタルゲラスが出現。

龍騎に右側からタックルを仕掛けてきた。

強襲を避けた龍騎はガイにドラグセイバーを投げつけて怯ませると、

自分もカードを装填。

 

『GUARD VENT』

 

ドラグシールドを両肩に装備。

数で攻める敵に、防御力を挙げて対応する。

それを見たガイはまたカードを切った。

 

『CONFINE VENT』

 

(読んでたよ!)

 

ガイとメタルゲラスの挟撃を後ろに転がりながら避けると、

またカードをベントインする。

 

『STRIKE VENT』

 

ドラグクローが装備され、龍の口から火炎攻撃を放つ。

 

『CONFINE VENT』

 

しかしガイが新たに使ったカードの能力で、

その炎がかき消され、武器が砕けるように消えてしまった。

 

(二枚あったのかよ!)

 

「はぁああああ!」

 

一瞬固まってしまった龍騎に、ガイは渾身のタックルをしかけ吹き飛ばされる。

そしてすかさずファイナルベントのカードを取り出すガイ。

 

「……くっ!うぅ!」

 

「?」

 

しかしガイはカードをセットしたにもかかわらず、

中々バイザーの蓋を閉じようとしない。

 

「うわぁああああああ!」

 

「「!?」」

 

そうこうしている間に、

左の方から黄緑色の仮面ライダーが吹っ飛ばされてきた。

 

「ああ?なんだぁ?

他にも遊んでる奴らがいやがったか……」

 

ゆらり、と黄緑色のライダーが来た方からもう一人、

紫色の毒蛇をもした鎧のライダーが現れた。

 

「ッ!王蛇!」

 

王蛇と呼ばれた紫色のライダーはゴキゴキと音を立てて首を回すと、

 

「俺とも、遊んでくれよぉおお!」

 

と、叫びながら手にした突撃剣型の武器、

ベノサーベルを振り回しながら突っ込んでくる。

戦いは混迷を極めていった。




いかがだったでしょうか?
追いつくまであと二話。完全新規のエピソードもぼちぼち進めているので、ぜひこのままお付き合いください。
それでは、また。


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