Mixingfate(交錯する運命) (nao_japan_fourth)
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Mixingfate(交錯する運命)プロローグ

この物語はかなり複雑な人間関係になり
初期段階では作者の意図は分からないと思います
物語の全体像が判るのは連載中盤辺りかな


 あの日から5年が経ち俺も22歳になった、プラントに別れを告げて3年あまり

 久しぶりにプラントへ降り立つ

 ターミナルから覗くアプリリウス市内の姿はあまり変っていない

 入国検査で一悶着あったがアッサリと通してくれた

(他国の外交官が申告もしないで個人の資格で入ろうとしたのだから当たり前)

 イザークに連絡を入れたら誰か迎えに寄こすと言っていたが到着時間からすでに30分も過ぎ

 考え事をしていたらいつの間にか人だかりが出来ていた

「?」

 俺を見ているような気もする

 なんだろう?ファッションなんて気にした事が無いから服装が流行遅れだったかと

 そんな事を考えていたらいきなり肩を叩かれた

「おいアスラン、待ち合わせ場所が違うだろう」

 振り返ったら、ディアッカがいた

「5番ターミナルじゃなかったか」

「3番だ、おかげで捜しまくったぞ」

「すまない、悪かった・・・・・・・・久しぶりだなディアッカ」

「本当に久しぶりだな、アスランは公式な用が無いと全くプラントに顔を出さないから」

「仕方が無いだろう、これでもオーブの外交官だからな」

「お前がオーブなんかに逃げちゃったから俺が苦労すんだよイザークのお守りにキラのお守り

 ついでにシン達のお守りまでもだ」

「何だそれは?俺は逃げたわけじゃないぞ」

「そんな言い訳が俺に通用するとでも?」

「なに」

 二人は口喧嘩をしながらもエレカに乗って目的地へ向かっていた

「まぁキラのお守りも後三日でバトンタッチだからいいけどよ」

「その事に関しては謝る、白服の事は俺が辞退させておけば良かったとは思っていたんだ」

「そんな一言で済ませられてたまるか今はそれ程でもなくなったが一時は険悪だったんだぞ

 あの二人の仲が悪くなったのはお前のせいでも有るんだから」

「どういう意味だ」

「特別入隊のキラは能力を示さないと行けないし相当なプレッシャーだったろうよ

 イザークの奴が最初はキラに色々教えてやっていたんだがあまりにもアスランと比較するから

 その内にキラが反発したラクス・クラインの恋人と分かっているから風当たりも強かった

 更にアスランと比較されたら堪らん俺だって逃げ出したくなる」

「なんで?キラなら十分その力はあるだろう」

「MS操作や情報工学の方面ではアスランと同じくらいできるけどな格闘技や戦略とか戦術は

 簡単に習得できないだろうが」

「そうだけどディアッカ、キラの能力は俺以上だぞ教え方が悪いんじゃないのか」

「確かに最初の頃は嫌がらせなんか受けて居た見たいだ」

「それじゃぁ」

「俺は正直に言うとキラはザフトに入るべきじゃなかったのかも」

「?」

「キラが何を考えてザフトに入ったのか知らないがプラントやザフトの為じゃない事は確かだぜ」

「そうだな・・・それより俺が逃げたと言うのはどう言う意味だ、ディアッカ」

「それを今さら俺の口から言わせる気?」

「なんだ」

「アスランお前はラクス・クラインから逃げたんだろう」

「!」

 ディアッカの言葉に思わず黙るアスラン

「なんで奪い返そうと思わなかったんだ、まだキラのものと決まっていた訳じゃないだろ

 そりゃぁキラはお前には親友でラクス・クラインにとってはお前は・・・・この話は無しだ

 それでもアスランはラクス・クラインが好きだったんだろう」

「何を言っているディアッカ、あの時の俺にはカガリがいただろう、別にラクスは関係ない」

「嘘を付くな、それならカガリと何故結婚しなかった?アスハ家もお前の事を認めていただろう」

「そんな暇なんか無かったよ、カガリは代表、俺は外交官として各国を飛び回っていたから」

「それこそいい訳だろうカガリが結婚した時のホッとしたお前の顔、俺は今でも覚えてるぞ」

「・・・」

「アスラン、お前はキラとラクス・クラインが仲良くしている所を見たくなかっただけだろう」

 アスランはディアッカの言葉に少しの間、沈黙した

「確かにディアッカの言う通り逃げたのかも知れないがラクスとキラの事じゃないぞ

 二人が仲良くしていようが別に気にしていた訳じゃない俺が戻らなかった理由は別にある」

「?」

「俺は事情があったとはいえ一度ならず二度も裏切った、俺の所為で死んだザフト兵士達もいる筈

どんな顔をして遺族の人達に会えば良い?そんな俺がプラントに戻る事など許される筈が無い

俺はそれを乗り越えて理想の為に生きるなんて事が出来るほど俺は強く無い、それに・・・」

「それに?」

「俺は恥知らずじゃない」

「!」

 アスランの一言は現在プラント政界を支配しているクライン派を非難している言葉で

 ディアッカはその言葉にこそアスランがプラントに戻らなかった真の理由があると思った

 ラクス・クライン

 二つの大戦を止めたプラントの英雄、市民達は熱狂してラクス・クラインの帰還を諸手を挙げて

 喜びその市民達に支持されてラクス・クラインは現在、最高評議会議員であり国防委員会顧問と

 外交部顧問を務めて次の議長選挙には当選するとも言われている、ラクス・クラインはまだ良い

 たとえ考え方がずれていても真剣だ、だがラクス・クラインを持ち上げている

 クライン派はそれほど支持されるべき人間達なのか

 5年前と3年前に彼等が行ったプラントに対する裏切り行為、物資の横流し技術情報の漏洩

 更に情報操作によりプラント及びザフトを混乱させ要らぬ犠牲者まで出している

 勝てば官軍の論理で関わった人達は罪にすら問われていない代わりに旧デュランダル派は

 容赦なく公職やザフトから追放された、この事は公平で公正といえるだろうか

 

「当時の事を持ち出しても仕方が無いさ三日後にキラとラクスは結婚する、婚約していた時も

 婚約者と言う関係でしかなかったラクスの心の中には始から俺はいなかったよ

 まぁ俺も同じだからラクスの事を言えないさ、皆誤解しているようだが俺はラクスを好きとか

 愛しているとか思った事は一度も無いよ」

「え、本当に?あれほど仲が良く見えたのに信じられないな」

 ディアッカは疑うようにアスランを見る

「仲良く見えたとしたらお互い恋愛感情が無かったからだ、嫌いでも無かったしな将来結婚する

 相手としか思って居なかった」

「そうなの?・・・それでか?アスランがラクス・クラインの結婚式に出席する気になったのは」

「あぁ多分な、それに自分以外の私用でプラントに来るのはこれが最後になる」

「?」

「ラクスにこれを渡す為に今回は来たんだ」

 アスランはバッグを少し開けて見せる、中に入っていたのはピンク色と紫のハロが二つ

「そういえばキラが修理できないって言っていたな」

「そのままだ修理はしていない」

「なんで?」

「ハロは鎖だ、だからもう修理する気は無いとラクスに直接伝える為だよ」

「鎖か」

「俺の心を縛る鎖さ、昔の婚約者のプレゼントなどいい加減に捨てればいいものを何時までも

 持っていられてはこっちも迷惑だ」

「それでも直してくれと言ったら?」

「直してやる、そして同じピンクのハロを大量生産してやるさ価値がなくなるくらいに安く」

「それはいくらなんでも意地悪しすぎじゃないか」

「どうしてだ?キラの気持ちも少しは考えてやれよ」

「そうか、そうだな」

 

 目的地であるプラント公共墓地に着いた、アスランはプラントに来た時は必ずここに来る

 ここにはアスランが失った思いの全てがあった

 ニコルやラスティー達と両親に挨拶をしてから最後は必ずミーアとレイの墓の前に立つ

 助けたかった人と助けることが出来なかった人、二人に祈りを捧げる

 墓から戻る途中、アスランはディアッカに告げる事があった

「イザークもいれば良かったんだがディアッカ、イザークにはお前から伝えてくれないか

 俺は結婚するかも知れないとな、まだプロポーズをしていないがオーブに戻ったらするつもりだ

 決まったら招待状を出すその時はよろしくな」

 ディアッカはアスランの何気ない言葉を頭で理解するのには少し時間が掛かった

「え、誰と、・・・まさか」

「安心しろコーディネーターの女性だ、ミリアリアじゃない」

「だ、誰もミリーの事だなんて言っていないだろう」

「ディアッカ、もっと積極的に動かないとミリアリアを誰かさんに盗られる」

「誰かさんってお前の事じゃないのか?二人は既に出来ていて同棲までしているとか噂が

 プラントまで流れてくるぞ」

「確かにミリアリアとは仲が良いから妙な噂が流れたらしい、今でも二人で街を歩いていると

 恋人同士に間違われる事もあるからな、だけどなミリアリアが俺の事をどう思っているのか

 判らないし残念ながらトールを死なせた俺では彼女を幸せには出来ない」

「・・・そうだったな」

「相手はディアッカも良く知っているよ、オーブでプラント領事館付き武官をしている娘だ」

「俺が良く知っている娘?」

「再会した時にお互い飲み比べし過ぎて俺が先にダウンした、何度も会って意識する様になってな

 思い切ってプロポーズしようと思っている、彼女も受け入れてくれると思うし婚姻統制局で

 確認したら俺と彼女の相性は悪くないそうだ」

「酒がお前より強くて武官と言う事は赤クラスでオーブ!イザークの秘書だったシホちゃん?」

「当たりだ」

「八つ当たりされる俺の身にもなってくれよイザークはシホちゃんが秘書に戻ってくる事を

 期待していたんだぞシホちゃんが秘書を辞めてからイザークの秘書は皆、長続きしないんだよ」

「仕方が無いだろう感情だけはコントロールできないからな」

「それで今日の予定は?」

「このままホテルに直行だ、周辺の散歩ぐらいするだろうけど式の日まではなるべく外に

 出ないつもりだ」

「なんだ独身最後のキラに会ってやらないのか?キラも喜ぶぞ」

「さっきのディアッカみたくラクスとの事を蒸し返されるのも嫌だよ、下手に会ったら

 メディアの餌食になるだけさ、新郎の友人として式に出ると言っても俺はオーブの外交官だぞ

 簡単に外出なんか出来るわけが無いだろうが」

 

 ホテル前までディアッカに送ってもらいフロントで別れた

 だがディアッカへの話と違いアスランは部屋に入り荷物を置いてすぐに出かけた

 エレカを借りて向かった先は今は住む者がいない筈の旧クライン邸である

 一応修理はした見たいだが誰も住んでないようだ、 庭に立つと色々と思い出されてくる

 シーゲル様あなたを死に至らしめた男の息子の妻になるよりラクスの心を守る事が出来る

 キラの方がラクスの夫には相応しいです、シーゲル様これで良かったですよね

 イザークに聞きましたラクスとキラの間に子供が出来ない事を例え貴方の血を受け継ぐ

 子供が出来なくてもラクスにはキラの方が俺より相応しいですよね

 

 真顔で嘘を付けるようになった自分を喜んで良いのか悲しむべきなのか、俺も大概嘘吐きだな

 ディアッカの言う通り俺はラクスとキラが仲良くしている姿を見たくなかったからオーブでも

 二人と離れていた、カガリを手伝うと言うのは単に言い訳だ

 今でも俺はラクスの事を忘れられない、カガリやメイリンに逃げようと思った事もあるけど

 態度に出るのだろな二人とも俺から離れて行った

 ・・・イザークが婚約した事でシホは自棄になってたけど今は俺に心を開いてくれている

 シホは好きだしシホを大事にしたいとも思ってる、プロポーズすれば良い返事は聞けると思う

 でも何故だろう、何で俺はラクスを忘れられない?何で何時までも未練を引きずっている?

 3日後にラクスはキラの妻になるのだからもう手の届かない所へ行ってしまうのに

 

 そんな事を考えながらぼんやりしていたら周囲が暗くなっていてもう夜の時間だ

 久しぶりでプラントの環境を忘れていたようだ

 ホテルに戻ろうとエレカに向かおうとしたら屋敷の中から人の声が微かにした気がした

 浮浪者か?プラントにそんなものが存在する筈が無く気になったアスランは屋敷に入る

 ドアにはかつての物と同じセキュリティーでラクスの事だ変更はしていないだろう案の定ドアが

 開き屋敷に入ってそのまま進むとやはり微かに声が聞こえ

 2階から聞こえてくるようで音を立てないように階段を上がる

 音が聞こえて来るのはかつてラクスの部屋からでドアの前に立つがこの部屋だけは完全に

 修理されている事が分かる

 女の偲び声がする、幽霊?それこそまさかだろう

 ドアのノブに手を掛けようとした時に微かに声が聞こえてきた

「・・けて、私を助けて・・・・アスラン助けて・・・・」

 微かに聞こえた声はラクスの声?、アスランはドアのノブを静かに廻した

 ノブには指紋認証式の装置が付いている事に初めて気がついたが何故かドアは開いた

 部屋の中に入ったアスランが見たのは机に伏せて泣いていたラクスの姿だった

 突然入って来たアスランをラクスは驚きの目で見るが二人に言葉はいらなかった

 やがて二人は抱きしめあいお互いを求めベッドに倒れる二人の視線が絡み合い

 求めているものを理解し全てをさらけ出していた

 始めて求めていたのがお互いと理解した二人の意識の中に3日後の事は無かった

 明後日にはラクスは結婚式の新婦となり純白の衣装に身を包む、その身を新郎ではない

 アスランにすべてを委ねた

 親友の妻となるラクスをアスランはその腕の中に抱しめる

 二人は初めて望んでいたものを得たのだから今の二人に裏切りと言う言葉は頭の中に無い

 それは一瞬の夢、陽炎のように短くて儚い夢

 明け方、アスランの腕に抱きしめられながらラクスは目覚めた

 このままこの腕に抱かれていたい、でもそれは決して許されない

 起き上がろうとするとアスランが無意識にラクスを抱きしめようと腕に力が入る

 大切なものを離さないように

 それでもラクスはアスランの腕から逃れるように起き上がり二人の行為の結果を見た

 初めての証の色がベッドのシーツにある

 ラクスはアスランを起こさないように居た証拠を消す、幸いにもシーツはラクスが包まって

 寝たので処理は簡単だ

 私物を全てバッグに詰め服を整えたラクスはアスランを見た

 その姿を焼き付けるかのように見てからその頬にそっと唇を重ね無言で部屋を出て行く

 到着していたオートエレカに乗って屋敷を振り返りラクスは初めて涙を流した

 愛していた筈の男を裏切った事にではない、自分がアスランを愛していた事に気が付いたからだ

 初めて抱かれた喜びと二度と抱かれる事の無い悲しみ、既に手遅れな事に気が付いて泣いた

 

 ラクスは結婚式の日が近くになるにつれて後悔している自分に気が付いていた

 最初はマリッジブルーだと思ったラクスは警護の人間達だけに旧クライン邸に居る事を告げて

 三日が経っていた、でも求めていたのはキラでは無く自ら拒否した筈のアスランだと気が付いた

 そしてアスランが突然目の前に現われたときラクスに言葉は要らなかった

「ご免なさいアスラン」

 ラクスは新クライン邸に帰り着くまで泣いていた、まるでこれからの人生で流す全ての涙を

 今出してしまう心算だったのかも知れない

 

 アスランが目を覚ましたのは昼少し前でラクスが居ない事に気が付く

 ラクスが居た形跡も無く、昨日あれほど貪欲に抱いたラクスの匂いもしない

 慌てて周囲を見るが自分の荷物があるだけだ

「・・・・夢?、・・・・幻か?」

 あまりにも鮮明に思い出す事が出来るラクスの泣き声と歓喜の声

 この手にまだ残るラクスの柔らかい感触、あれが夢?やはり夢なのだ

 二日後にラクスはキラの妻になるのだから有ってはいけないのだ

 ラクスが俺に抱かれるなんてある筈がない、キラを裏切るなどする筈がない

 ラクスを忘れる事ができない俺に誰かが見せてくれた夢

 アスランはそう考えながらホテルに戻るためエレカに乗り屋敷を後にした

 

 この時二人は監視されてた事に気が付かなかった

 本来は監視ではなくラクスの護衛だったのだが突然現われた男の事を報告すると

 その監視も役目となった

「ただいま屋敷を出ました」

「・・・」

「はい、間違い無くアスラン・ザラです」

「・・・」

「ええ、クライン議員も」

「・・・」

「はい流石に記録は残しませんでしたがクライン議員とアスラン・ザラは男女の関係を持ちました」

「・・・」

「報告書に書きますか?」

「・・・」

「わかりました、特秘として書類に書き処理します」

 ラクスの護衛を担当していたのはある国防委員の直属の部下

 国防委員の元へ緊急報告として上げられた報告書の内容が洩れてしまう

 

 結婚式当日式場に予想より早く着いたアスランとディアッカ・イザークは花婿の控え室を訪問

「「「おめでとう、キラ」」」

「アスラン、それにディアッカ、イザークもありがとう、まだ3時間もあるのに早く来たね」

「ディアッカが急かすからだ、どうせ結婚式は二の次で女の子が目当てだろうお前は」

「イザーク、ラクス・クラインの花嫁姿を早く見たいと言って信号を悉く無視したのは誰だよ」

「二人ともこんな所で喧嘩するな、キラが困った顔をしているぞ」

「ねえ、二人とも悪いけどアスランと二人きりで話がしたい少しの間だけ席を外してくれる?」

「ああ二人とも久しぶりだったな、俺達はラクス嬢の処にでも先に行っているか」

「悪いね二人とも」

 アスランを残して二人は部屋を出たが何故かイザークがその場から動かずドアの側に立ったまま

 珍しく緊張している、イザークが動かないからディアッカも一緒にいることになる

 

 二人が出て行った後

 

 アスランは一昨日の夢の事があり流石に気まずく無言、キラも何故か無言

 やがてキラが先に口を開いた

「ねえ、アスラン」

「どうしたキラ」

「カガリもメイリンもアスランの事が好きだったのにどうして結婚しなかったの?」

「その事かタイミングが合わなかっただけだよ」

「正直に答えてアスランは今でもラクスの事が好きなんでしょう」

「な、何を言っているラクスとキラは結婚するのだぞそれも今日だ」

「親友として友情の全てを賭けて本当の事を教えて嘘を付いたら絶交だよ」

「あぁ今でも好きだよ、でもそれは友人としてだ」

「友人として本当に?・・・・・・アスラン、その服を着てくれないかな」

 キラに言われて指差された服を見た、それは花婿が切るべき純白の服だ

「何を冗談言っているキラ、これは今からお前が着る服だろう」

「違うよラクスもアスランの事を好きだよ、だからこの服を着るのは僕じゃなくて君だ」

「キラ、冗談は止めろ」

「冗談じゃないよアスラン、僕は知ってるアスランがラクスを女として抱いた事をね

 それも僕と結婚する二日前だよそれともアスランにとっては唯の遊び?」

「あれは夢だ」

「どうして夢だと思うの?アスランにはラクスの感触がまだ残っているよね」

「!しかし」

「ねえ僕はいつもアスランから大切なもの貰ってばかりいるからラクスは君に返す

 ラクスは僕と結婚する前にアスランに抱かれた余程の覚悟がなければそんな事をしない

 ラクスは素直になってやっと自分の気持ちに気が付いた、それに僕ではラクスの望みを叶えて

 上げられないからね」

「俺だってラクスの望みなんか知らない、知らないものを叶えらる筈がないだろう」

「ラクスの望みは自分の産んだ子供に子守唄を歌う事だよ、僕では無理だからね」

「だけど」

 キラはドアに向かって声を掛けた

「イザークにディアッカ、二人ともそこで聞いているだろう?入ってきていいよ」

 部屋に入って来た二人、アスランはディアッカにいきなり殴られた

「俺を大嘘付いて騙した罰だ、反省しろよ」

 無言だったイザークがキラ・を見て話しかけた

「間男は殺されても仕方がない決闘でもするか?今のアスランになら勝てると思うがどうする」

 そんなイザークにキラは寂びそうに微笑んだ

「僕は賭けに勝ったことになるのかな」

「賭けって何だよキラ」

 キラの独り言にディアッカが質問する

 アスランとイザークも首をひねったがやがてイザークはある事に気が付いた

「キラ、お前は最初からそのつもりだったのか」

 アスランとディアッカはイザークの質問の意味がわからない

「1年前に婚約してから暫らくして気が付いたよラクスが見てたのは僕じゃなくて僕を通して

 アスランを見ていた事にね、僕だってラクスの事は好きさでもね心がないラクスと結婚しても

 耐えられるほど僕は強くはない直ぐに離婚する事になる多分ね、もしラクスがアスランを好きと

 気が付いたらどっちを選ぶのか賭けだったよ、ラクスが選ぶのはアスランだと思っていた

 まさか偶然に再会した二人が関係しちゃうとは思ってもいなかったけどね」

 そんなキラの言葉にイザークが以前からの疑問を聞く

「アスハ代表や母親も呼ばない、この結婚式を計画したのはキラの考えだったのか」

 イザークの言葉にアスランとディアッカもハッとなる

 そうキラとラクスの結婚式なのにカガリも母親のカリダも招待されていなかった

 されていたのはアスランとイザークとディアッカ、そして3人の事を知っている人達で

 3人とごく親しい人物達だけだ

「他の人達にはどんな言い訳も出来る、だって母さんに結婚の事は伝えていない

 カガリにはアスランに内密の話があるから結婚すると嘘の招待状を出したからと言ってあるしね

 だから結婚式で新郎がアスランに変っても大丈夫、さあアスラン行って花嫁が待っているよ

 もうラクスを泣かしたら承知しないからね」

 

 キラとイザークに部屋を追い出され

 茫然としていたアスランはディアッカに片腕を取られて行くが残された二人はしばし無言

「見直したぞキラ」

「元々ラクスは初めて会った時に僕に宣言したんだアスランの妻になるってね、僕との事を

 ラクスも愛情と勘違いしていたし僕もラクスが愛してくれていると思っていた」

「でも普通は出来ないぞ、結婚式の当日に花嫁を他の男に渡すなんて惨めになるだろう」

「惨め?アスランに抱かれたのならラクスは死ぬまでアスランを忘れないよ、抜け殻のラクスと

 結婚した方がもっと惨めさ、僕はそれ程お人好しじゃない

 ラクスが自分の気持ちに気が付かなければ結婚する気にもなれたけど長続きはしないだろうね

 ・・・イザークだろう?ワザと情報をリークしたのは」

「気が付いていたか、キラが言う通り情報を流したのは俺だ、キラは賭けに勝ったと言ったが

 それは俺も同じだ、キラと少し意味は違っていたが俺も賭けた」

「イザーク、君はラクスがアスランを本当は好きだと分かっていたんだ」

「当たり前だ付き合いが長いからなラクス嬢とは本人より俺の方が知っている」

 そして二人は無言で部屋を出た

 

 キラの代わりにアスランが新郎姿で現われその場に居た全員が驚き

 それからが大変だった

 ラクスはアスランに抱きついて泣き出しルナマリアとメイリン、ヒルダがラクスを宥めている

 アスランはバルトフェルトに吊るし上げられ特にダコスタには延々と説教をされ

 皆が落ち着いたのは式が始まる一時間前だった

「二人とも覚悟は出来た?僕に恥を掻かせてくれるのだから幸せにならないと承知しないからね」

「キラ、すまん」

「大丈夫、アスランにも罰があるから」

「キラ、罰って何だ?」

「アスランにはオーブを離れてプラントに復帰してもらうからね」

「しかしそれは」

「ラクスはプラントの重要人物なんだよ、結婚したからと言ってオーブに行ったら困る

 別にザフトに戻ってとは言わないよアスランはラクスと一緒にプラントの舵取りをする

 これが罰だよ」

「・・・わかった、カガリには謝る」

「ご免なさいキラ」

 ラクスはまた涙を流している

「こらキラ泣かすのならアスランしろ真面目な顔をしているくせに結婚式直前の花嫁を

 喰っちゃったど助平だからな」

 特秘も何もあったものじゃない

 イザークが秘密をばらしてしまったおかげでアスランはヒルダとダコスタに再び説教されている

 よく見るとイザークもディアッカもそしてシンも顔が赤くキラも似たようなもので

 式の前だというのに大分酒が入っていた

 女性陣も相当飲んでいるようでメイリンは酒癖が悪かったのかアスランに絡んでいる

(振られた?恨みもあるよ多分)

 どうやらルナマリアは泣き上戸のようでラクスに泣きながら抱き着いていた、

 意外な事に一番騒ぎそうなヒルダは飲み始めて静かになりバルトフェルトとダコスタも

 寡黙になった、そしてはしゃいでいたのはやはりディアッカとシンだった

 

 

 そんな式場の喧騒から少し離れた所で

「どうだ、システムは正常に働いているか」

「入力エネルギー量が少し足りないが大丈夫、テスラコイルは正常だ」

「フィラディルフィアの時と違い1000Ghzの装置だ、確実にキラ・ヤマトを殺せる

 惚れた女と共に死ねるのだ、慈悲を与えて上げるのだから感謝して貰いたいくらいだな

 ひょっとして天国へ行けるかもな」

「そうだな、プラントの歌姫ラクス・クラインと一緒に逝けるのだからな」

「パトリック様とアスラン様の仇がようやく討てる」

「少し予定が早くないかモニターに花嫁が映っている・・・映りが悪いな」

「仕方ないさ、これ以上接近すると警戒装置に気付かれる」

 祭壇に二人が昇り、誓いの言葉を交わしている

「やるぞ、システムON」

「了解」

 凄まじい勢いで電気が消費され変換されたエネルギーが蓄積されてメーターは振り切れそうだ

 メーターの横についている赤いランプが点灯した、充填率105%を示し二人はお互いの顔を見た

 そしてお互いに頷きレバーが引かれ高周波と磁場発生装置が作動し正常動作を確認した

 二人は先行している仲間に合流する為、武器を手に走り出した

 しかし二人が装置から離れた後システムを制御するコンピューターが異常な反応をした事に

 気が付くものは誰もいなかった

 

 

 

 アスランとラクス

 宿命なのだろうか

 神は

 宇宙の意思は

 高貴な生贄を欲していた

 そして悲劇の幕が切って落とされる

 

 

 二人は仲間達に見守られて婚姻の誓いを立て指輪の交換、アスランが用意されていた指輪を取り

 ラクスの指に填めようとした時に突然指輪が光り出した、

 それだけではないラクスが身に着けていた耳飾も光り出している

 そして強烈な頭痛がアスラン達を襲う、イザーク達は何が起きたのか判らなかった

 アスランとラクスは靄が懸かったようになり発光した

 発光現象が始まった時、同時に武装した男達が入り込んできて銃を乱射した

「キラ・ヤマト死ね」

 男達は発光現象が治まり出した靄に向けて銃弾を打ち込む、現状を把握したイザーク達の中で

 シンがすぐに応戦し緊急事態を察知したイザークの部下達が応援に駆けつけた

 銃撃戦の結果暗殺者達の内3名は即死、残り4名の中で軽傷で済んだのが2名、2名は重傷

 イザーク達に負傷者はいなかった

 やがて発光現象が治まり出したが7色に発光を繰りかえし放電現象が起きていて近寄れない

 比較的軽傷の男をイザークとディアッカが尋問した

「何をした貴様、答えろ」

 男は素直に白状した

「は、は、は、無駄だ1000Ghzの高周波帯の磁場をまともに浴びた、もう生きちゃいない

 何も残らないさ」

「なんだと貴様ぁ」

「これでキラ・ヤマトは死んだ、パトリック様の仇も取れた」

 男の言葉にイザークは思わずよろめき男の事を思い出した

 嘗てザラ邸で警備をしていた男だ

 この男達は逆恨みでキラを殺そうとして二人を間違えたのだ

 突然、男が倒れる

「この馬鹿野郎僕を殺すつもりならちゃんと確認してよ」

 起き上がった男は自分を殴った男を見て唖然とした

「キラ・ヤマト、な、何故生きてい・・」

 男は最後まで喋る事は出来なかった

 イザークが殴りディアッカが蹴ったからだ

 拘束された者への暴行は厳禁の筈だが誰も止めようとしない

 勿論二人がやらなければ他の誰かがやっていただろう

 発光現象が完全に治まり皆は祭壇を見たが何もなかった

 用意された祭壇の燭台も何もかも存在していない

 祭壇の下に何かが落ちていた

 イザークが落ちていた物を手で掴もうとしたがどういうわけか床に食い込んでいる

 それはアスランがラクスの指に填めようとしていた指輪の台座

 残ったのは床に食い込んだ台座だけだったのだ

「ふん、キラ・ヤマトを殺せなかったがアスラン様を裏切ったラクス・クラインを殺せた

 もうどうにでもしろ」

 再び、男は殴られた

「貴様等のくだらない逆恨みでなんでアスランとラクス嬢が死ななきゃならない」

 イザークの言葉に男は何を言われたのか理解出来なかった

「ここで結婚しようとしていたのはアスランとラクス嬢の二人だったんだ

 やっと二人とも幸せになれる筈だったのにアスランが貴様等に何をした」

 イザークの絶叫に近い声に男は愕然とした

「アスラン様?まさか、嘘だアスラン様はオーブに・・」

 男は黙った、額に銃を突きつけられたから

「アスランとラクスを死なせたんだ望みどおり殺してやるよ」

 銃を突きつけたのはかつてない殺意を出していたキラ

 その殺気にイザークですら思わず後退するが

「止めろキラこんな下らない連中の為に手を汚すなアスランもラクス嬢もそんな事

 望んじゃないだろう」 

 イザークの言葉にキラは引き金を緩めた

 暫らくして男達はイザークの部下に拘束され連行されていった

 

 残された者、その場に居た者

 皆、無言だった

 言葉が出ない

 言葉が出るわけがない

 

「僕が悪かったのか?僕が邪魔をしなければ、僕が早くラクスの気持ちに気が着いてやれば

 こんな事にはならなかったのか」

 そう呟いてキラは涙を隠しもせず式場を出て行った

 再び、皆無言

 一人去り

 また一人が去る

 やがて誰もいなくなった

 残されたのはお祝いの為に用意されたた花束だけである

 

 一ヵ月後

 

 

 

 プラント市民によりアスランとラクスは夫婦として葬儀が行なわれ

 二人に起きた悲劇に市民の多くが涙した

 

 葬儀を終えたキラはザフトを除隊してオーブへ帰る前にイザーク達と共にアスランとラクスの

 慰霊をしようとしたが祭壇で再び発光現象が起きキラだけが巻き込まれる

 キラが巻き込まれてから時々放電現象が起きる為にホールは閉鎖された

 

 キラが巻き込まれた日から数日後

 閉鎖されたホワイトシンフォニーホールの祭壇で再び発光現象が起きたが

 その事は誰にも知られる事は無く

 発光現象が治まった時、祭壇下には一枚の写真が落ちていた

 淡紫色の髪をした双子らしい子供達で写真の裏側にはクラン、アインと

 書かれていた




 あとがき
「フィラディルフィアの時」の意味を知りたい方はお手数ですが
 フィラディルフィア実験にて検索してください
 説明すると専門用語ばかりで長い文章になるので


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Mixingfate 第01話

 独立自由都市バロンシティー

 

 バロンシティーは元々ある国の王が統治権の放棄と交換条件で月へ移住する為に作られた都市だ

 その王は事故により死んでしまい王の一族は祖国を離れる事を嫌って相続権を放棄した

 王は自由主義者でコーディネーターやハーフコーディネーター達に対する偏見もないから

 プラントに不満を持つコーディネーターや地球連邦に不満を持つナチュラルが自然に集まり

 大規模な都市国家が出来、バロンと呼ばれる事を好んでいた死んだ王に敬意を表すために

 バロンシティーと言われたのが始まりだとされている

 

 バロンハイスクール

 授業を終えて教室を出たところでアスランは呼び止められた

「アスラン少しの間だけ時間有るか」

 アスランをそう言って呼び止めたのはルーム担任のヤマダ教諭

 そのままアルバイトに向かおうとしていたアスランは腕時計を見るとまだ余裕があった

「はい、大丈夫です」

「ここでは不味いから教員室で話そう」

「分かりました」

 アスランはヤマダ教諭の後を付いて行きながら何か失敗したかな?と考えていた

 教員室に入り席に座るとヤマダ教諭はアスランにも座るように促しアスランは素直に席に着いた

「君が申請していた例の件だが先程返事があった」

「どうだったでしょうか」

「OKだ、一ヵ月後に面接と試験を行うそうだ」

「ありがとうございます、先生」

「君の実力だよ、君みたいな優秀な生徒を手放す事になるのは残念だが生徒が望む道に進める事は

 教師にとって嬉しいものだ、とにかく一ヵ月後の試験頑張れよアスラン」

「はい、本当にありがとうございます」

 アスランはそう言って教員室を出ようとしたが再び呼び止められた

「そうだアスラン、教授から連絡があってなお嬢さんがまた熱を出したそうで今日の家庭教師は

 中止だと伝えるのを忘れていた」

「またですか、わかりました」

 アスランはそう言って教員室を出た

 教授の娘は我が儘で元々病弱だったのだがアスランが家庭教師になるまで何人か家庭教師を

 していたが機嫌が悪いとすぐに仮病を使う

 アスランが家庭教師になってあまり我が儘は言わなくなったのだがそれでも時々仮病を使う

 原因は彼女と彼女の義母の確執が殆んどだった、アスラン自身は彼女に嫌われていないが

 家庭教師の日には彼女の義母が何故か一日中家に居るので彼女は不機嫌に成り癇癪を起こし

 今日みたいに仮病を使うのだ教授もアスランの所為でない事を知っているからただ熱を出した

 としか連絡を寄こさないのだ 

 

 突然アルバイトが中止となったから時間が余り今日は他のアルバイトの予定も無いアスラン

「そうだ久しぶりにマイさんのところに顔を出すか久しぶりにシャルの顔も見れるしシュンさんに

 逢えるかもしれない」

 アスランはそう呟いてマイ・キサラギが住む家に向かう

 

 彼の名はアスラン・リヒター16才

 プラント出身のバロンハイスクールに学ぶ学生で元はオムニシティーへの留学生だった

 12才の時一時的にプラントの父親の元へ母親と共に戻ったのだが1年もしない内に両親が

 離婚してしまう

 原因はプラント実力者の娘とアスランとの政治的な婚約話らしい、その事でレノアが激怒して

 大喧嘩の末に離婚、アスランは婚約話の相手が誰かも知らず名前すら知らない、そして母親と

 プラントからバロンに引っ越したのだがアスランが14才の時ユニウスセブンに出張していた

 レノアは地球連合の核攻撃に巻き込まれて行方不明となる

 プラントの父親の元に帰る選択肢もあったが自分の意思でバロンに残った、幸いレノアは住居と

 多額の遺産を残したから生活する事には特に問題は無く知り合いでバロンハイスクール理事長の

 推薦等で学費等は免除となっている、理事長は他の援助も申し出ていたが残された遺産には手を

 つけたくなかったから生活費くらい自分で稼ぐとアスランはアルバイトをしている

 最近は理事長から養子にならないかと持ちかけられている

(シャルと兄妹か出来れば婚姻前提の婚約する事を望んでいるらしい)

 アスランは常に首席を争うほど優秀、また彼はスポーツ分野においても優れており特に格闘技は

 優秀だ、格闘技と言っても剣道や古武道、合気道などで最近は弓道も始めている

 アスランは最初、格闘技などやるつもりは無かったのだがマイに挑発されて始めたのだ

 流石にシュンには勝てないが今ではマイとは互角(実際は無意識に手加減していたのだが)

 妹のように可愛がっているシャルが男達(元ザフトの兵士だったらしい)に襲われた時には

 全員を叩き伏せたのだが

 男達は全員二ヶ月以上の重傷で男達も武器を持っていたので罪に問われる事が無く、この件で

 彼に喧嘩を仕掛ける人はいなくなる

 おかげでシャルに手を出そうとする不良もいなくなったが後で嫌と言うほどマイとシュンに

 説教された

 

 マイの家へ向かう途中でアスランはナイトファルト・フェルムとエルフリート・クロイセンに

 出会った

 二人はデート中のようだ

「ようアスラン、これからアルバイトか?」

「こんにちはアスラン」

 二人はいつものように挨拶をする

 ナイトファルトはバロンシティーの軍関係の実力者の息子だが気さくな人柄で結構人気者だ

 またアスランに良くバイトの話を持ってくる友人でもありプラント出身者のコーディネーター

 だが恋人のエルフリートはナチュラルだったりする、エルフリートはマイの知人でシャルとも

 仲が良い

「いや今日のバイトは中止、マイさんの所へ久しぶりに顔を出そうかなと思っていたんだ」

「久しぶりって、たった三日だろうが」

「あら、マイさんは今日は道場の方にいるわよ」

「そうそう、何かマイさんのおじいさんが地球から来たとか言っていたからな」

「そうか、おじいさんが道場に来ているのか、止めたおじいさんの訓練はきついからな

 道場に顔を出すと特訓に付き合わされるこのままシャルにでも逢ってから大人しく帰るか」

「は、は、残念だったなシャルちゃんも道場に行った見たいだぞアスラン」

「なんでシャルまで」

「シャルちゃんがマイさんの弓道って言ったかしら、その練習を見に行ったみたい」

「帰ろ」

 マイさんどころかシャルまでいないのじゃしょうがない、シュンさんは居るのか居ないか何時も

 不明だし道場におじいさんまでいて3人が揃っていて笑顔だったら怖いので逃げるのが一番だ

 

 シャロン・シグナス、通称シャル、バロンハイスクール理事長の孫で妹の様に可愛がっている

 ハーフコディネーターの少女、音楽科でピアノを専攻、プロデビューも果たしておりプラントや

 地球にも「月の姫」の呼び名で知られている

 

 アスランが引き返そうとした時にナイトファルトが呼び止めた

「そうだアスラン一週間後空いているか?良いバイトの話があるんだが」

「一週間後?・・駄目だよユニウスセブンの跡へ行く事になってただろう忘れたのかナイト」

「あ、すまん忘れてた」

「ごめんねアスラン、ナイトはバカだから」

「どういう意味だそれはエル」

「事実を言ったまでよ」

「いいよ二人ともそんな事で喧嘩なんかするなよ、じゃぁな二人とも」

 アスランは二人にそう告げて引き返していった、それを見送ったエルがナイトを叱る

「もうナイト、今度アスランに会ったら謝りなさい」

「なんで」

「アスランのお母さんはユニウスセブンで亡くなったのよ」

「ぁ、アイツに悪い事しちゃったな」

「気が付いた?ユニウスセブンの跡へ行く事は元々ナイトのお父さん達が言い出したことで

 シャルちゃんも慰霊の為の演奏をするのよ、プラントの歌姫も来るらしいし貴方も私も

 参加する予定でしょう」

「そうだったアイツ、辛いだろうな」

「でも大丈夫かしら」

「なにが」

「プラントと地球の戦争の最中にそんな所へ行って」

「大丈夫だろう、プラントの皆には同胞の墓標だぞ連合だって慰霊に訪れる人間を攻撃なんて事

 するわけが無いさ、たとえコーディネーター相手だってそんな事すれば

 地球連合内部で批判されるだろ」

「でも何か嫌な予感、オーブのコロニーにもプラントが何かするって噂があるから」

「それこそまさかだろう、オーブは中立国だぞ」

「ヘリオポリスには友達が居るのよ」

「大丈夫だって、それより急がないと映画始まっちゃうぞ」

「そうね、行きましょう」

 二人は映画を観るために去った

 

 二人と別れて暫らく歩いていたアスランは悪寒がした、ついでに呼び止める声もする

「アスラン」

 アスランは聞こえない振りをしてそのまま行こうとしたが遅かった

「わしを無視して行くつもりか?いい度胸じゃの坊主」

 嫌々振り返ったアスランの目の前には笑顔(怖い)のイチロー・キサラギが居た

「あ、おじいさん、お久しぶりです、何時こちらへ」

「ワザとらしいな坊主、少したるんどるようじゃから鍛え直してやる付いて来い」

 アスランは言い訳などをしていたが有無を言わさず引きずられて行く

 アスランが連れ込まれた場所はシャルとマイが住んでる理事長宅の隣にある道場

 バロン軍の兵士も皆マイ目当て良く通ってくるがそんな兵士は三日と続かない

 マイの恐ろしさを見ると皆逃げ出してしまうからだ

 マイ・キサラギ 18才 

 現在、バロンアカデミーの大学院で心理学を学ぶ学生

 双子の弟シュンと16才の時バロンアカデミーに入学して僅か一年で特進で大学院に進む

 腰まで届く黒いストレートの髪、漆黒の瞳に雪の様に白い肌、整った顔立ち才色兼備の美女(?)

 おまけに古武道や剣道、合気道などを幼い頃から祖父に教えられた護身術をも完璧にこなす

 文武両道とは彼女の事を言うのだろうでも恋人はいない、理由は男嫌いだからと噂されている

 両親がバロン軍と道場の行き来ばかりしていて娘の身を心配して友人の理事長に預けたのだが

 心配なんかする必要は無いだろうマイはとんでもなく強いのだから、更にはマイ以上に強い

 シュンもいるのだから

 そんな彼女だが欠点もいくつかある、ひとつはアスランとシャルを溺愛している事

 男嫌いの筈がそんな態度をアスランにだけは示さない

 初めてあった時にはマイに抱きしめられてしまったくらいだ、その後も時々抱きしめられる

(羨ましい?彼女のようにスタイルの良い女性に抱きしめられたら男にとっては拷問に等しい)

 おかげでアスランは多くの男達に睨まれたりしている、尤もアスランも男扱いされてないけど

 アスランはマイが住むシャルの家に泊まることが時々あるが下着姿でアスランの前を平気で

 彷徨くなど日常茶飯事だった

 もう1つはおしゃれに無頓着な事で同じ種類の服ばかり持ってる所為も有るだろうけど同じ服を

 一ヶ月くらい着てる事もあるもちろん洗ってはいるだろうけどね

 あと1つは多分すぐに分かるだろう

 

 幸いな事にマイとシャルは別棟にある弓道用の道場に居る

 

 今日は剣道みたいと思っていたらイチローが小さい木刀を二本持ち、アスランに普通の木刀を

 渡した

「おじいさん?」

 アスランの問いにイチローは

「今日は異種試合じゃ、坊主の剣が少しでもわしに触れたら坊主の勝ち。ほれ、始めるぞ」

 イチローの言葉にアスランは慌てて構えた

 右手の小太刀を正眼に構え左手の小太刀をやや下げ気味に構える、左右に動くアスランの動きに

 合わせ微妙にイチローも正対するように動く、常に正眼の小太刀の先はアスランの喉を指してる

 僅か数分の事なのにアスランの額からは汗が出ていた、本来小太刀を得意にしているのは

 アスランだが踏み込む事が出来ない、イチローの構えに隙がなさ過ぎて小太刀が大きく見える

 アスランは頭の中で考えた、そしてイチローの癖を思い出した・・・でも、その手は誘いだ

 ・・・・・・!そうか

 アスランとイチローが対峙してる時にマイが道場に入って来たが真剣なアスランは気が付かない

 アスランが動き木刀の中心をワザとずらして右手の小太刀に受けさせイチローが左手の小太刀で

 腹を掃うように横に動かし木刀の付け根をずらしてそれを受け半円のように振り下げた時

 マイが持っていた木刀を投げ付けた

 その木刀はイチローの小太刀とアスランの木刀に当たった

「こら、マイ邪魔するでない」

「勝負あり、おじい様。そこまでです」

「・・・そうじゃな、命拾いしたの」

「・・・」

「?」

 アスランには二人の会話の意味がわからなかった

「だが以前よりは少しマシな目になった」

「・・・」

「アスラン今日はお帰りなさい。シャルも演奏会の打ち合わせに行った、シュンも久しぶりに

 アスランに会いたいと言っていたからねあとで夕食作りに泊まりに行ってあ・げ・る・わ♪」

 マイのその一言を聞いたアスランの顔色が変った

「あ、今日は夕方から一件バイトが入っているから遠慮します」

「そう?残念ね。気を付けて帰るのよアスラン」

「は、はい。ではおじいさんありがとうございました」

 アスランは二人に告げるとあっという間に逃げ去ったが残された二人は沈黙した

「おじい様、今のはアスランの勝ちでした」

「そうじゃ・・・あの坊主は何処まで強くなるのやら、そら恐ろしいな」

「私は既にアスランに勝てません、私と対峙した時は無意識に勝ちを譲ってくれているのです

 アスランは身を守る時、大切な人を守る時にしか本気になりません」

「武道の天才と言われたお前がな、僅か二年でわしが年月を掛けて到達した技量をものにした

 ワシでも勝てんようになったわ、坊主はコーディネーターだナチュラルだなど関係無い

 ワシがお前に教えた全てをすでに吸収している上に閃きが凄いのだ

 アスランこそ天つ才じゃな」

「天つ才・・・それがアスランにとって良い事?」

「だが坊主は・・・なにか迷っているようじゃな」

「迷っている?」

「マイ、お前は理由を気が付いているな」

「!」

「どうじゃマイ」

「?」

「坊主をお前の婿に・・・・」

 

「アスランは私の肉親と同じでしょ祖父様だって知ってる筈よ」

「なんじゃその目はわかった、わかったからそう睨むでないお前は坊主の事になると直むきになる

 ワシはノミの心臓じゃから弱いんじゃぞ」

「何処がです、アフリカ象よりも強~い心臓の癖に」

「ヒ、ヒドイ孫じゃな」

「そう言うなら年寄りらしくお茶でも啜って日向ぼっこでもしていて下さい」

「・・・・・・」

 祖父と孫の口喧嘩は何時もの様に祖父の無言の負けで終わりマイは出ていったがイチローは残る

「天つ才か・マイよ、坊主の才能が世に知られれば利用しようとする奴が現われる

 その時坊主を引き止める事が出来るとしたら家族だけぞ、わしにとってアルテス、エリーと違い

 血は繋がっていなくともお前は可愛いのだぞマイよ、坊主の結婚なんて人の道から外れる事は

 判っている、判っているがマイよ、それでもお前は自分の選択を後悔するかもしれないぞ」

 

 あの二人も何でマイとシュンを預かったのだろう

 幼い時から髪の色や瞳の色まで薬で変装させてマイとシュンがかわいそうだ

 それに坊主はプラントにいると言っていた筈なのにおかげでマイとシュンは坊主と

 出会ってしまった

 

 マイの実の母親と逢ったのは10年前だ武術の講義の為にプラントに行った帰りの事で

 専用ボートが故障して漂流、修理をしようとして寄った廃棄コロニーで二人の男女と会った

 二人には双子の子供が居たのだが子供を育てる環境ではない

 雰囲気からして二人が夫婦と思えなかった事からアマリとシーラが二人を説得した

 幸い年齢が近い子供がいた二人は双子を養子として彼等から預かった

 名前・容姿・年齢も偽った(偽ったと言うより誤解した、双子とも5歳に見えなかったから)

 

 マイとシュンは年齢は15歳だがとても15歳には見えず20歳くらいに見られる事も有る

 

 二人とも両親の良い所ばかり受け継いだのだろう

 わしが教えた事は短期間で全て吸収しアマリとシーラも持てる全てを教えたおかげでマイは

 武道の天才少女と呼ばれるようになった、もっともシュンの方が強いのだが武道より学問や

 芸術の方が好きらしい

 二人は特進で大学に入学、マイは心理学をシュンは実の母親の影響か戦略学を専攻していた

 二人を預けている所のシャロンとも本当の姉妹や兄妹のように仲が良いが二人共シャロンと

 同じ年齢だ

 マイとシュンを預かる時に女性からある秘密を教えられた

 ある男の子の名前とマイとシュンの関係、彼女が何故我々に教えたのか疑問は残ったが

 今になってみれば彼女はひょっとしてこの日が来るのが判っていたのかも知れない

 

 アスラン、マイ、シュンお前たちはどうなって行くのか運命は変えられるのか

 

 

 蛇足ながら

 武道のみならシュンに勝てる人間はバロンに一人しかいない

 キサラギ夫妻の部下でありイチローの弟子でもあるアラン・ジィーノと言う男だ

 訓練センターで主に戦略論や戦術論を教えているがこの男がデタラメに強い

 二人を相手にしても身体に触れる事すら出来ない

 MSの操縦もザフトの赤出身で防衛軍の現役エースが5人がかりで対峙しても

 15分もかからない内に全員が倒されてしまった

 ザフト兵最強と呼ばれるザフトアカデミィー教官ビッツの再来と言われているほど強い

 しかしアラン・ジーノと言う男は正体不明で彼には過去の記憶が無いのだ

 アマリ・シーラ夫妻がコペルニクスに出張していた時に偶然、遭遇して連れ帰ったのだが

 記憶喪失の為にキサラギ夫妻が預かる形となった

(彼の名前は着ていた服のイニシャルをヒントにキサラギ夫妻が付けた)

 彼が持つ知識や技能、技術はザフト出身者だと思われるがプラントに紹介しても該当者無し

 最初はただの雑用係だったのだが訓練センターの講義中に突然に教官の教え方が悪いと言って

 口論となりシュミレーション戦を戦わせたら戦術・戦略とも教官達が完全に敗北してしまった

 その教官の教え子達が再びMS戦を挑み敗れたので教官として採用された

 

 完全な自治権と軍備を認められた独立自由都市バロンシティーは有能な傭兵組織等を吸収して

 防衛軍を組織した

 現在、防衛軍基地では慰霊団護衛の為の編成準備中だった

「小隊規模しか護衛を付けてはいけないとはどうしてすか慰霊団を守る為の護衛部隊が

 それだけの戦力ではすぐに遣られてしまいます、例えザフト出身者が多いと言っても

 うちの部隊は新兵ばかりなんですよ」

「グラディス少佐、君の言う事は私にだってわかっているさ」

「ならば、どうしてですか」

 さすがに護衛部隊の編成責任者のグラディス少佐は上官であるマイス中佐に喰って掛かった

「上層部が地球連合を刺激したくないそうだ」

「マイス中佐、私は納得できません」

「少佐、納得できないのは私も同じだが上層部の決定事項だ」

「・・・了解しました」

「ただし新型艦の使用を許可されたぞMSもMS-RS07を一機と現行型を6機の使用を

 認めさせた」

「不味いのではないですか例のオーブのMS技術とザフトの技術を融合させた機体

 ザフトと共同で作ったMSを改良したと言う」

「大丈夫あの機種は実験機だからな、それに新型艦は高速でいざという時は逃げろ

 実験機は破壊して証拠は残すなという命令だ」

「それにしたって」

「機密事項だが新型艦はザフトが開発中のE型高速戦艦の1.5倍は出るそうだ」

「え、噂のE型高速戦艦の1.5倍?」

「ああもっとも火力は同等らしい、ついでに言うとMS搭載能力は2倍以上だ誰にも言うなよ」

「はい・・・名前は」

「グリスターンと言うそうだ、意味は確か薔薇園と言ったかな」

「薔薇園ですか戦艦にはそぐわない名前すね」

「それと今回は輸送艦やクルーザーは使用しない事になった、グリスターンと護衛艦二隻だけだ」

「では彼等は何処へ、・・・まさかグリスターンへですか」

「そうだ上層部も何を考えているやら、小隊規模の護衛に新兵の部隊何かあったら如何する気だ」

「そうですよまったく、わかりました了解します」

 

 この事は防衛軍上層部の油断だったが彼等を責めるのも間違いであろう、追悼の為の慰霊団が

 攻撃されるなんて思ってもいなかったからだ

 まさか慰霊をする為に訪れる人々を攻撃する事など普通は考えない

 例え軍艦であろうと追悼の為の民間人を攻撃する事になるのだ

 何処の国でも決して許される筈が無い

 自国民に対する無差別攻撃の許可証を敵に与えるようなものだ

 

 

 

 プラント、ザフト軍基地

 数日後に迫った秘密作戦の為の打ち合わせが行われていた

「ミゲル達が陽動をする、キラは一番機をイザークは二番機ディアッカは三番機ラスティは四番機

 ニコルは五番機を確保せよ、時間的にはギリギリだが落ち着いて行けば大丈夫だ。質問は?」

 皆無言

「よし、皆大丈夫だ訓練どおりにやれば成功するお前達にはその力がある、以上解散だ」

 

 皆はバラバラに出て行った

 一人残された男は窓の外を見ながら呟いた

「皮肉だなキラ・ヤマトが部下とは最高のコーディネーターの力とやらを利用させてもらうか」

 部屋を出た少年達は皆、赤い戦闘服を着ている、ザフトのエリートの証だ

「なぁイザークこれからどうする」

「訓練に決まっているだろう」

「やっぱりそうなるわけ」

「何だ不満か」

「なぁ、いくらシュミレーションでキラの奴に負けたと言っても・・」

「負けた訳じゃない、あれは絶対機械の故障だ」

「潔良くないですよイザーク」

「そうそう」

「黙ってろニコル、ラスティーも」

 イザークは一人離れて歩いているキラ・ヤマトを睨みつけながら声を掛ける

「キラ・ヤマト、訓練に付き合え」

 振り返ったキラ・ヤマトは?と言う顔をした

「なぜ?今からラクスに会いに行くんだけどイザーク」

「馴れ馴れしく名前を呼ぶな、ふん軟弱者には用は無いとっとと行けよキラ・ヤマト」

「そうなら声を掛けないでね、君達には訓練は必要だろうけど僕には必要ないものだから」

 キラの答えにイザークが顔色を変えたがニコル、ディアッカ、ラスティ等が慌てて止める

 その様子を見ていたキラは何も言わずに基地を出て行った

 残された4人はと言うと

「イザーク、止せよ。キラが強いのは確かなんだから」

「ふん、奴が強いのはMS操縦とシュミレーションだけだろうが」

「アカデミーの成績はそれでも上位でしたよキラはだから赤を着ている」

「どうせ事務官連中が婚約者の父親に負けたのだろうさ、教官達だって不思議がっていただろう」

「そうだよな、ラスティーの言う通りに決まっているんだよ」

「みんな、同期なのにどうしてキラが嫌いなの?」

「ニコル、お前はあの成績で仲間と認めるのか」

「・・・でも」

「アイツが全ての教義で優秀なら例え嫌な奴でも認めるさ、だがアイツは何だ好きな教義は

 自分から進んで受けるくせに嫌いな教義は適当にしか受けていない、おまけにMSの集団戦法は

 無視、個人の技量だけで済まそうとする確かにアイツに素質がある事は認める

 本気を出せばかなり強い事も認めるがあんな奴が赤なんて認めるか」

「そうだな」

「俺もそう思う」

「・・・」

 ニコルはため息をついた

 内心、彼自身もそう思っていたからだ

 そうしてイザークが怒りながらシュミレーションルームに向かうと

 残されたニコル、ディアッカ、ラスティは慌てて着いて行く

 

 アプリリウス市にある閑静な高級住宅街にひと際大きい屋敷

 現プラント最高評議会議長シーゲル・クラインの家だ

 突然尋ねて来たキラにメイド達は驚きながらも今ラクスが居る場所へ案内をする

「ラクス様、キラ・ヤマト様がお見えになりました」

「キラ様が?如何したのでしょう、今日はお会いする約束の日ではなかった筈ですのに

 ・・・とりあえず、こちらへ」

 少しの間があってからバルコニーへキラ・ヤマトが姿を見せた

「やぁラクス、暇になったから来たよ」

 いつもの如くキラは自分の都合でしかラクスの元へは顔を出さない

 自由を求めるキラの姿にラクスは思った、キラ様にとって自由に代わるものは無いのですかと

「キラ様、暇になったとは?先程イザーク様に電話をしましたら訓練だと仰っていましたが?」

「彼等には必要なんだ、彼等は弱いからね」

「イザーク様が弱い?」

「ラクスの幼馴染だから余り言いたくないけど彼等はMS戦やシュミレーショんで僕に勝った事が

 無いから訓練が必要なんだよ」

 キラの言葉にラクスは軽い反発を感じながらも頷き

 キラは自分の婚約者で近い将来夫のなる人だからあまり波風は立たせたくない

「それで本日は如何しました?」

「ちょっと重要な任務をする事になったから暫らく会えないんだ

 ラクスが寂しい思いをしちゃぁいけないと思ってね」

「そうですか、それでは気を付けて言ってらっしゃいませ」

「それだけ?」

「他に何か有りまして?」

「もう僕達16才だよ、キス位してくれてもいいんじゃない」

「なにも他の方々の真似などしなくても宜しいですわ、それにまだ結婚していません」

「ラクスは少し硬すぎ、もっと自由に生きなきゃ駄目だよ」

「私も近いうちにユニウスセブンの慰霊祭に参加します、その準備が忙しくて余り暇もありません」

「そうごめんね。じゃぁ帰るよ僕は」

「任務の成功と無事の帰還をお祈りしています、本当にお気を付けて」

「うん」

 キラは嵐のように来て嵐のように去った

 ラクスは未来の夫の後姿を見ながらため息をついた

 確かに自由に生きる事は大切です、でも本当の自由とは何でしょう?私にはまだ分かりません

 キラ様の事を理解できれば答えが出るのでしょうか?

 キラ様との婚約を父様に頭を下げられて頼まれたので承知しました

 父様が言うのには強硬派の人々を懐柔すると言いました

 私に婚約の話が来たのは二度目で一度目の方は婚姻統制局のお墨付きの方だったらしいのです

 その方だったら宜しかったのに私も女ですから子供を産みたいと思うのは我侭でしょうか

 でも何時の間にか話し自体が消えてしまい二度目がキラ様で初めてお会いした時は

 自由に生きようとする方だと思いこの方ならと思いましたがなぜか違和感も覚えるのです

 いけないのは判っているのですが心まではどうにもなりません

 何時の日にかキラ様を理解できる大人に成りたいと思いますラクスはそう呟きながら慰霊の為に

 歌う歌の練習に集中していく

 

 ラクスはまだ知らない

 ユニウスセブン慰霊の為に向かった先で運命の出会いをする人物がいる事に

 その出会いがラクスにとって幸福なのか不幸なのかそれはわからない

 ただラクスの生きていく道を変えてしまう出会いとなる事を

 

 キラは基地へ向かうエレカの中で考えていた

 ラクスが自分に向ける目、あれは結婚を約束した女の目では無い

 ラクスは何故僕を理解してくれない?何故僕を認めない?

 赤を纏い、ザフト最強のクルーゼ隊に所属する僕キラ・ヤマトの事を何故認めない?

 

 最高評議会議長の娘、プラントの歌姫ラクス・クライン、彼女に相応しいのは僕

 自由を得る為の力を持つこの僕だけなのに

 政略結婚が嫌なの?プラントの婚姻統制だって同じ様なものなのに例え政略結婚だって

 良いじゃないか、僕達は選ばれた人間なのだから

 ・・・・・・ザラ委員に頼まれたからラクスと婚約したけど間違いだったのかな?

 例えラクスが僕を分かってくれなくても結婚するのは決まっている事だ

 名前だけの夫でもいいさラクスと僕には子供が出来ないのだから

 そんなことを考えながらキラは基地へ向かった

 

 

 アスランは家に帰ったが迎えてくれる家族はいない

 夕食をを作りながら漠然と考えている内に料理は出来てしまった

 良く見れば少年が一人で作ったにしては良く出来ている

 友人達の中では有名だがアスランの料理の腕はかなりのものだ

 もっともアスランの料理が上手いのはマイのおかげだが

 どうしてか?

 マイはシュンと一緒に良く泊まりに来る

 以前は料理を作ってくれたのだが才色兼備・文武両道のマイにも欠点がある

 なぜか料理に関してだけはロールキャベツを除いて壊滅的な料理しか作れない

 マイが個性的(?)な料理を食べさせてくれ己の生命活動の危機を感じ自分で作る様になった

 

 シュンがマイの料理をどうして平気で食べれるのか今でも謎だ、ヤッパリ双子だからか

 (そんな馬鹿な)

 マイは今でもシュンと一ヶ月に一度は泊まりに来るがに注意されたのか下着姿で彷徨く事は無い

 それでも料理はアスランが作るけどね

 料理が出来上がりシャワーを浴びてから夕食を食べる

 食事が終われば趣味の工作の時間、いつもの行動パターン、

 

 今は動くペットロボットを2体製作中で完成まじかであとは対象人物のデータを入れるだけ

 とりあえずシャルに白を1つ

 ピンクはマイさん駄目だワザとじゃなくても反射的に弓矢の的か木刀のエジキになりそうだな

 簡単には壊れないけど・・・そうでもないか

 マイさんは木刀でヘルメットを割ってしまう人だからなぁ

 シュンさんは僕と同じでこういう事が好きだから改造されてしまいそうだな

 アスランがそんな事を思い浮かべながら考えていた時、机の上にあった音楽雑誌が目に入る

 シャルがくれたものでプラントでしか発行されていない雑誌だ

 プラントの歌姫ラクス・クラインの特集が組まれている

 以前シャルと共演した時の事が載っていてDDMが付きで歌とインタビューが見れて聴ける

 シャル曰く歌姫はまるで不思議な国の王女様見たいと言っていた

 とりあえず試験するだけなら後で消せばいいから歌姫のデータで良いか思い

 シャルと歌姫のデータと音声を入力し終わった

 

 寝る前のひと時ふと窓際の写真に目が行く

 そこには母レノアと幼い自分の並んだ写真があった

 決して他人には見せないがアスランの心の傷は簡単には癒えない

 アスランには母レノアの死を今でも受け入れる事が出来ない

 出来ないでいるから余計に傷が深くなる、でも彼を責める事など誰が出来るだろうか

 突然、奪われた小さな幸せを認めることが出来ない少年の心、

 父親は母親の死にも一度しか連絡してこなかった

 離婚したと言っても嘗ては愛していた妻なのに父親のアスランに対する姿勢も心の傷を

 深くしている原因でもあった

 

 母上、アカデミーへの特進が面接試験に受かったら認められそうです

 マイさんにシュンさん、シャルも喜んでくれると思います、母上も喜んでくれますか?

 そう言えばグラディス少佐が母上に花をくれました母上の部屋に飾っておきました

 少佐も良くアルバイトを紹介してくれます

 先日、基地の作業用モービル移動のバイトの時にMS運転の基本を教えてくれて少し筋が良いと

 褒められました

 分かっていますよ母上の嫌いな軍人には成りませんが何かあった時に皆を

 守る為にも全てを吸収していたいのです

 僕がマイさんから武道を教えて貰っているのは軍人に成って母上の仇を取る為だと

 皆には誤解されているようですがマイさんが僕に教えてくれるのはそんな事の為では無い事は

 分かります、教えてもらい始めてから落ち着いて人を見ることが出来るようになった気がします

 母上は生きていますよね今は戻れないだけですよね、僕は母上が戻って来るまで何時までも

 待っています

 アスランはいつもの様に心の中でレノアに語りかけてからベッドに入り眠りに着いたが

 その頬には涙の跡が見えた

 「母上、なぜ・・・・・」

 寝言だったのだろう、アスランの呟きは途切れた

 

 

 平穏な日常はすぐに崩れる

 数日後アスランは地獄の中にいた、アスランが平穏な日常に戻ることは出来るだろうか

 そしてその地獄の日々の中で友人となる男の命が失われる事など

 今のアスランは夢にも思ってもいないだろう

 

 

 ザフトは無警戒だったオーブ領のヘリオポリスを予定通り強襲した

 順調に作戦を推移させていた彼らの前に立ち塞がる男がいる

 5機のオーブ製MSの内、4機のみ奪取に成功したが残る一機は失敗

 残る一機には既にパイロットが搭乗していたからだ

 機体はGAT-X105ストライク、ナチュラル用にカスタマイズした試験OSを搭載した機体だった

 搭乗者はムウ・ラ・フラガ大尉

 エンデュミオンの鷹と呼ばれる大西洋連邦のエースパイロット

 彼自身はMSパイロットではなかったが上層部の命令により適正試験の為に訓練をしていた

 

 フラガに適正が有ったのがザフトもヘリオポリスにも不幸な事になる

 陽動に出ていた部隊の何人かが死亡したり捕虜になったり

 その原因は奪取部隊の一人が突出した為で援護に出た陽動部隊の何人かと奪取部隊の一人が

 発射体勢にいたフラガの前に飛び出す形となり回避も出来ず倒されてしまった

 突出した一人はそれでも攻撃を止めず無差別に軍事工場を攻撃しこの無差別攻撃は

 ヘリオポリス崩壊の引き金を引く事になった暫らくしてザフトは引き上げ

 フラガも崩壊するヘリオポリスからの脱出の為に用意された新型戦艦に捕虜となった

 ザフト兵士と少数の民間人達と共に乗り込んだ

 

 その戦艦の名前をアークエンジェルと言う




 あとがき
 批判的に書いていますけどキラの扱いが作者にしては比較的まともかな?
 本編をまるっきり無視しているように見えますが本編で死ぬ人は基本的にこの世界でも
 例外を除いて退場するようになります(たぶん)
 長編になるか短編で終わるかは作者次第と言う事で気長にお願いします
 グリスターンは中世ペルシャ語で薔薇園と言う意味ですが特に意味はありません
 アスラン・リヒターのリヒターは英語ではライト、ドイツ語ではリヒト、
 明るい、または輝く等の意味があります

アマリ・シーラ・イチローの正体は朝日ソノラマ刊ガンダム最初期小説の人間関係と逆シャアの
結末に準じていますので誰か直ぐお判りに成ると思いますから敢えて書きません
(イチローの正体だけは無理かも笑)



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Mixingfate 第02話

 ザフトのAA追跡部隊旗艦ヴェサリウス

 艦内休息室では各パイロット達が各々休息を取っていたのだが彼らの休息を妨げる大声がした

 どうやら喧嘩のようだ一人のパイロットが様子を見に行き近寄ってみると赤を着ている者同士の

 喧嘩だった、見ると一人が廊下に片膝を着いていた

 相手の男は同じ赤を着ている男達に止められている

「キラ、さっきの戦い方は何だ」

「何だって?ちゃんと足止めになったろう」

「なんだとう、お前が勝手にポジションから離れたからあの白い奴を逃したんだぞ」

「違うよイザーク達がもっと早く回りこめばイージスでし止められたんだ

 自分達の動きが悪いのを僕のせいにしないでくれる?」

「ふ、ふざけるな、予定外の行動をした奴は誰だ、お前だろうが」

「だから何度も言ってるでしょう、あの時はそれが一番だと思ったんだよ君達の速度なら

 追いつく筈だったんだ、あの一機が邪魔しなければあの白い戦艦は落とせていたんだ」

「プランを変更したなら何故連絡を寄こさない、それが当たり前だろうが」

「君達ならそれくらい判断できるだろう、何の為の赤だよ」

 イザークの顔は次第に赤みが増してきている

「貴様が身勝手な事をしたからラスティーやミゲル達が死んだんだぞ

 反省もせず同じ事の繰り返しかお前の頭は飾りかキラ」

「それは僕が馬鹿って言ってるの?」

「馬鹿、ふん、それ以下だ。」

「聞き捨てなら無いねその言葉、僕より臨機応変に対処する能力の劣る君に言われたくは無いよ」

「なんだとう赤の資格も無い奴がなにをほざいている」

 再び殴りかかろうとするイザークを必死で止めるディアッカとニコル

 険悪を通り越して最悪な関係に成るイザークとキラ

 それを見に来ていたパイロットはイザークが叫んだ相手の名前を聞いて驚いた

(あれが噂の死神か嫌な所に配属されたな、母さん俺戦いが終わるまで生きてないかも)

 そう呟きながらパイロットは休息室に戻った

 そうキラ・ヤマトは味方からも死神と呼ばれている

 彼が攻撃に参加すると戦果は確実に上がり敵にとっては死神以外の何者でもないのだが

 ではなぜ味方からもそう呼ばれるのか?彼が参加した作戦には犠牲者が必ず出るからだ

 もちろん戦いは敵がいるからこそ成り立つわけで敵も必死だから味方に犠牲者が出るのは

 仕方無いが犠牲者の大半はキラの独断専行の煽りを喰って死ぬ事が多く前回のヘリオポリス

 急襲戦でもキラが奪取し損ねた機体を破壊しようと攻勢限度を越えた為にミゲルや他の隊員達が

 キラの意図を察知、援護に回る為に配置されていた位置より前進した所を発射態勢にいた

 ストライクに攻撃されて回避する事も出来ず撃破されたのだ

(そして皆、MIAに認定された) 

 だがキラは無能者では無い、間違いなく有能だ、先程イザークに反論した彼の意図した作戦で

 間違いなく敵を殲滅できた、臨機応変に対処する彼の能力は天才的と言っても違わないが彼は

 自分を基準に考えすぎるし変更した事を自分が出来る事だから味方も出来る筈だと考えて仲間に

 連絡すらしない、これでは連携作戦は成り立たずイザークが怒るのも無理は無い

 トップで卒業したイザークはキラの思考した作戦が成功したら確かに撃沈できた事は理解してる

 しかしキラの独断専行が許せないのだ

 アカデミーに入隊した頃のイザークとキラは仲が悪かった訳ではないディアッカから見ればだが

 むしろ仲が良かったかも知れない

 だがキラの持つ自由思考に次第に付いていけなくなり二人の仲は悪化した

 これで全ての面で優秀ならばイザークも認めていたかも知れないがキラは自分の好きな分野の

 訓練や授業には積極的に参加するが苦手や嫌いな分野になると消極的すぎた

 それでも赤を許されるのだからキラ・ヤマトの持つ才能が如何に優れているか分かる

 実際得意なMS戦やシュミレーション、情報処理等は同じ赤の中でもダントツトップで2位は

 全てイザーク、もっとも格闘戦・銃撃戦などの成績は赤の中でもキラは最下位だ

 再び殴ろうとするイザークだが艦内に放送された次の言葉で止まる

《コンディションレッド・コンディションレッド、待機隊員は順次所定の位置に着け

 クルーゼ隊は作戦室へ集合、コンディションレッド、繰り返すコンディションレッド》

 その警報を聞いて全員が作戦室に集合する為にキラを除いてその場を離れた

 一人残されたキラは仕方が無いと呟いてから作戦室に向かう

 集合したメンバーが一人足りないのに気が付いたクルーゼだが

「キラはどうした」

「さぁ、またどっかで昼寝でもしているんじゃないですか」

 ディアッカの答えに皆が笑う、そこへキラが入って来る

「遅いぞキラ・・・おまえ達、また喧嘩したのか」

「いいえ、別に」

「そうか」

 クルーゼは赤5人が仲が悪いのに頭を悩ませていた

 最初は利用できる人材を得たと喜んだが5人は仲が悪すぎた5人と言うよりキラと他の3人

 ニコルはそれほど酷くは無かったがラスティーと一番仲が良くその死によってニコルもキラから

 距離を置くようになった

 彼等の顔を見ればすぐに分かったが今はそれど頃ではない事を思い出し仕方が無い黙殺しよう

 皮肉だがクルーゼはキラの気持ちが良く分かる

 上昇志向の強いキラだが当然ながら彼にはプラントに伝手が少ない

 何故キラの上昇志向が強いのかはプラントに来た事情に由来していた、両親がナチュラルで

 第一世代でもあるキラはオムニに居た頃コーディネーターで何事にも優秀な故か陰湿な苛めに

 会っていたが理由はそれだけではない、コーディネーターだった事も確かに原因だがキラの

 人を見下している様な態度にも影響していた、無意識だと思うのだがその様な言動もする為だ

 同じコーディネーターのアスランは苛めが少なかったと言うより殆んど無い

 アスランの成績は全科目でほぼ首席だったのに苛めに遭ってない事を考えればキラ自身の性格に

 何か問題があると考えるのが普通だろう

 そして表面的な友達は多かったが庇ってくれる程の親友と呼べる存在はいなかった

 キラは苛めに反抗する形で上昇志向が強くなりプラントに移住しオムニの事を全て切り捨てた

 ザラ委員から失った自分の息子代わりに歌姫との婚約をして欲しいと言う話に飛びついたのは

 議長の娘である歌姫ラクスと婚約すれば上層部と繋がりが出来ると考えた事もあるのだろう

 アスランとキラは同じコーディネーターだがそれほど親しく無い(そんな奴が居たな程度)

 アスランの住居がある事故で壊れた為キラの住居とは学校を挟んで反対側だから親しくなる

 機会も無く、キラはアスランがザラ委員の実子ある事すら知らないのだ

 

「国防本部から緊急指令だ、ユニウスセブン慰霊の為に訪れていた追悼団が行方不明になった

 至急、捜索をせよとの命令だ」

 その言葉を聞いてキラが不満を口にした、もっとも他の隊員も心の中は同じ考えだったが

「民間人の捜索に何故、僕たちが行かなきゃならないのですか」

 クルーゼは彼らの不満もわかるがしかし国防本部からの命令は他の事は無視しても実行せよだ

「お前達の気持ちも分かる、だが今回は仕方あるまい追悼団には最高評議会議長の娘である歌姫が

いるからだがバロンシティーの月の姫も一緒に乗ってる、歌姫の要請で追悼団に加わって貰った

 バロンシティーは重要な中立国だからな月の姫に何かあったら大変な事になる」

「ラクス嬢が」「ラクス様が」「ラクス・クラインが」「ラクスが」

 突然、静かだった室内が喧騒に包まれる

「静かにそう言うわけだから判ったな推定宙域に付いたら直ちに捜索を始める以上だ、解散」

 クルーゼはそう告げると部屋を出た

「そう言えばラクスがそんな事言っていたね」とやけに冷静な言葉を口にしてキラは部屋を出た

 

 AAことアークエンジェルはザフトの追撃を躱し地球連合軍と合流する為細心の注意を払って

 ある宙域に居たのだが民間人や捕虜達を乗せたので不足していた物資が急速に減っている

 最重要なのは水だ、水が無くては人は生きていけないので乗員がある場所からなら補給できると

 発案したがしかし何人かの乗員は反対した、その場所に入るのはあまりにも心理的に抵抗がある

 反対した人間達にほぼ共通しているのはその場所が地球連合軍の罪の証であり、敵対者達には

 神聖な墓標だ、しかし若き艦長は死んだ人間より生きている人間と決断し、そして彼等は見た

 提案した乗員ですら後悔した自分達の仲間が行った愚かな行為の結果を、死の世界の姿を、

 民間人で水の補給を手伝う為に名乗り出た女性達の中には吐いてしまう者もいた

 そのうちの一人フレイ・アルスターは軍艦の生活に慣れず息苦しさを感じてたので外に出れると

 思い志願したのだが

 始めの内は平気だった巨大なコロニーを一瞬で崩壊させた地球連合軍を誇らしく思った

 だから気楽に実験棟見たいな所にも入る、己の人生観が全て変わってしまうとも思わず

 

 フレイの目へ最初に入って来たのは親子の遺体

 シェルターに逃げる時間も無かったのだろう母親は小さな子供を抱えたまま死んでいた

 思わず顔をそらすフレイに新たなものが目に入いったそれは女性物のバッグで先ほどの女性の

 腕に巻きついていたバッグでそのバッグから何かが見え開けて見た目に入ったのは写真

 親子だと思われる幼児と女性の写真と書類、特徴からしてこの遺体の女性のようだが子供は違う

 写真の裏を見た時フレイは見なければ良かったと更に後悔する

 記載されていたのはフレイと同じ国の出身者である事を示す名字や出身地を示す資料だった

 そして書類を見たフレイは吐いただけではなく膝も震え出す、書類に書かれていたのは先ほどの

 女性の正体で彼女はフレイの祖国では聖女の如く尊敬されてた女性である

 守るようにしていた抱きかかえていた子供はコーディネーターだった

 女性は祖国に子供を残してプラントに住む人々の為にと此処へ来て同胞からの攻撃から

 コーディネーターの子供を守り死んだ

 もう1組の親子らしき遺体も浮かんでいたがこちらは先ほどと違い女性はコーディネーターで

 子供は如何見てもナチュラルである

 この女性も先ほどの女性と同じように子供を庇って死んだ

 子供を助けようとするのは本能の様なものなのかも知らない、そこにはコーディネーターも

 ナチュラル無いのだ

 その事に気が付いたフレイは己の中の何かが崩れていくのを感じ初めて連合軍の罪深さを知る

 この農業用実験施設はナチュラルが多く暮らしていた地区だったのに連合軍は同胞をも無差別に

 葬り去った

 

 茫然としていたフレイに女性が声を掛けた

「フレイ、そろそろ集合の時間・・・フレイ大丈夫?」

 フレイの友人ミリアリア・ハウは声を掛けても反応の無い彼女を見た

 そして彼女の前を漂っていた遺体に気が付いてミリアリアも思わず顔を背けたが

 彼女の視線が向いていたのは遺体ではなく手に持っている写真と書類、横から写真と書類の

 内容を把握したミリアリアは彼女が受けたショックの意味に気がついた

 フレイの親は地球連合軍事務方のトップでユニウスセブンに核攻撃を命令した幹部の一人だ

 ショックを受けている彼女を放って置く訳も行かずミリアリアは手を引きながら集合地点に

 向かうが偶然にも地球を遠望できる場所がありそこから地球が見える

 だがその地球は錯覚だと分かっているが赤く染まっているように見えた

 この罪の跡地の中から見える地球の姿がミリアリアには近い将来の姿に思えてしまう

 かつて大西洋連合がまだアメリカ合衆国といってた頃にヒロシマとナガサキへ原子爆弾を投下

 罪無き民間人を無差別に殺戮いや虐殺した、そして核兵器の恐怖が始まったのと同じ様に

 地球連合軍はユニウスセブンへ核攻撃をした事で開けてはいけないパンドラの箱を再び

 開けたのではと思えるミリアリアだった

 集合地点に集まった人々は皆無言で中には泣いている人の姿もある

 女性仕官の誘導で全員この場を離れた、どうにか必要な分の水を確保した一行だが暫らくは皆

 気が重たかった

 

 その頃、グリスターンは大変な事が起きていた

 見張り役とレーダー監視員の二人が同時にミスをしてグリスターンに近寄ってくる彗星軌道の

 デブリを見逃す、不運な事に護衛艦はグリスターンの後方で艦隊配置の変更準備をしていて

 気が付かず、結果見逃したデブリがグリスターンに衝突、艦の損害自体は大した事無いのだが

 人的損失が出た

 デブリがグリスターンのブリッジの一部とブリーフィングルームを突き破り 最悪な事に緊急

 事態への対処の為ブリーフィング中の会議室外壁へ衝突して艦長と副艦長、MSパイロット達

 艦橋要員達が宇宙に放り出されてしまった

 現在は緊急要員が応急措置をして気密スーツ着用ならブリッジに入れるようになるも至急修理を

 必要としたが人員が足りない、何故ならデブリは護衛艦2隻にも連続して衝突し1隻の動力部を

 完全破壊、残る1隻もグリスターンと同じくブリッジに衝突して完全に破壊されてしまう

 艘艦不能になった2隻とも人員の大半を失いその被害はグリスターンよりはるかに酷い

 幸いな事に民間人と話をしていたおかげでマイスとグラディスは難を逃れてたが護衛艦を含めて

 生存者の中には二人より上位者がおらず下士官も数える程しかいない

(本来の指揮官である上級幹部はプラントの追悼団に帯同していた)

 二人は熟慮の結果、護衛艦の廃棄を決め生き残った人達をグリスターンに収容した事により

 ブリッジ要員は補充できたがそれでも人員が圧倒的に足りない

 MSを搭載しない護衛艦タイプの為にパイロットもいない、MSの経験者も殆んどおらず

 マイスとグラディスは経験者だったがマイスは現場を離れてから十数年経っていてまだMSが

 実験段階の頃である、グラディスも実戦経験はザフト時代に少しだけあるだけだ

 それでも現在必要とされている外部からのブリッジの修理は出来るがグラディス一人だけでは

 相当な時間が掛かってしまうだろう

「そうだ少佐」

「何でしょうか中佐」

「確か工学部の学生が何人かいたな彼等に助けて貰おうか」

「確かに、ですが二人しかいませんよ」

「それでも力を貸して貰う。工学部ならモービルくらい操作した事は有るだろう」

「二人ともMSを操作した事がありますよしかも素質ありですが一人は無理だと思います」

「?どうして民間人のそれも学生がMSを操作した事があるのだ、それに無理とは?」

「軍志望でフェルム准将の息子ナイトファルト・フェルムは言わなくても理由は判りますよね

 いま一人は乗ってくれるか分かりません、彼は軍隊と言うものを憎んでるかも知れませんから」

「?どう言う事だ」

「彼はレノア・リヒター博士の息子なんですよ」

「レノア・リヒター博士・・・そうか」

「彼が乗っているのは慰霊の為なんです、リヒター博士はユニウスセブンで亡くなりました

 軍艦で行く事に決まった時は辞退して来ましたが幹部達に説得されて参加してくれたのです」

「そうだったのか、で経験があるとは?」

「彼、アスランという名前ですが生活の為に色々アルバイトをしていて私が管轄する基地でも

 作業用モービル移動のアルバイトをした事があります、まったくの偶然ですがその時に故障した

 MSを移動して貰ったのです、アスランは嫌でしょうがパイロットとしては一流になれますね

 中佐はMSを初めて乗って動かせますか?」

「無理だなMSの原型を操作した事がある私でも今のMSは複雑でただの操作ができる位か」

「彼はバランス感覚がとても凄いですレクチャーしただけでMSを基地の反対側まで倒れないで

 歩行していきました」

「それは凄いな」

「それにアスランがザフトに入れば間違いなく赤の力はありますよ、実力、素質とも」

「実力とはどういう意味だ確かに機械操作は天性かもしれないがそれだけで赤は無理だろう」

「アスランはアルバイトに追われながらも成績は常にトップクラス、アカデミーへの飛び級の話も

 ほぼ確定していますしおまけに武術はマイ・キサラギの愛弟子です」

「キサラギ教官の養女のマイ・キサラギか武道の天才と言われてたな私も対戦した事がある

 実戦ではないとは言え一度も触れる事が出来なかった」

「一ヶ月前に彼女と話をしました、アスランは既に自分より強いと言っていました」

「そんなに強いのか、素質ともとは?」

「アスランの父親は誰か知っていますか」

「今はじめて名前を聞いたのに知るわけがないだろう」

「アスランの父親はプラントのパトリック・ザラです」

「パトリック・ザラ、ザフト創設の中心的存在だったパトリック・ザラ国防委員か?」

「そうです」

「確かにあの方の息子ならな、しかし頼んでみてはどうだこのままでは如何にもならないぞ」

「分かりました頼んでみますが期待しないで下さい。それでアスランが乗るMSをどれにします」

「MSは専任登録制になっていたな実験機にしよう何かあっても破棄すれば良いからな」

 

 アスランは貴賓室の中で一人ボンヤリしていた

 ナイトやエルフリートに話しかけられても考え事をしていて上の空だった

 他の誰も気にしなかったようだがアスランは先ほどの振動が気になっていた

 グリスターン程の大きさの船が揺れたのだ外部で何かが起きているのではないかと思った

「アスラン、ナイト、二人共話があるから側に来てくれないか」

 突然顔見知りのグラディス少佐がアスランを呼んだので少佐の方に向かう

 ナイトも首をひねりながらアスランの横に並び歩き出していた

 少佐の側に近寄ったら少佐は無言で通路へ出てくれと首だけで促したので二人はそれに従い

 通路に出た

「すまんが二人とも何も言わずに着いて来てくれ」

 アスランとナイトは何か嫌な予感がしたのだが素直に着いて行く

 民間人立ち入り禁止区域に入って軍艦の頭脳とも言うべき艦橋の手前まで来た

 そこには少佐より階級が上の軍人が待っていた

「君達がMSの経験がある工学部の学生か、私は現在この艦の責任者のマイス中佐だ

 二人ともよろしくな」

「はぁ」「はい」

 二人の反応はそれぞれだった

「実は二人に頼みたい事がある、まぁ口で説明するより見て貰った方が直ぐ理解できるか」

 中佐はそう言うと艦橋に通じるドアを開けた、促されて内部を見た二人は絶句する

「いまから述べる事は機密事項になる二人ともそのつもりで居て欲しい、見た通りだ

 デブリがぶつかって現在修理が必要だが人手が足りない、特に外部で作業する為の人間が

 グラディス少佐しかいない状況だ、そこで君達の力を借りたい」

 ナイトが中佐に質問する

「それは僕たちに修理を?」

「そうだ」

 アスランも質問する

「旗艦の修理も出来ないほど護衛艦にもデブリが当たって被害が出ているという事ですか」

 マイスは目を見開いてアスランを見つめそれからグラディスをみると中佐の反応に

 グラディスが頷く

「そうだ護衛艦はすでに破棄をしたのだがMSを扱える人間達が護衛艦にはいなかった」

「つまりこの艦のMSパイロットの皆さんも?」

「そうだ、艦長や艦橋要員たちと共に今は彼らもデブリとなっている」

 少し顔色が青くなったナイトが再び質問した

「僕たちの役目は少佐と共に外部からの艦橋修理ですか」

「ああ、頼めるか」

「もちろんですよ、なぁアスラン・・・・・・アスランどうした?」

 ナイトがアスランに同意を求める為声を掛けたのだが何かを考えているようで

 そしてアスランはマイスに再度質問した

「マイス中佐、他に何かあったのですね一箇所に主要な人達が集まるほどの事が」

「!」

 この時マイスは少し恐怖を感じた、並みの指揮官ではたった一言でここまで推論できない

 この少年の洞察力は頭抜けている、鍛えれば赤どころか白服になれるいやそれ以上だ

 さすがにパトリック・ザラの息子だ

 再びマイスはグラディスを見ると今度ばかりはグラディスも驚いている

「アスランと言ったかな君の名前は」

「はい」

「現在追悼団が行方不明になっている、デブリが衝突したのは捜索の為のブリーフィングの

 最中だった」

 中佐のその一言に二人は驚いた、何故ならナイトの父親はプラントの追悼団に加わっている

 そしてアスランにとってもシャルが同じように加わっているからだ

「分かりました作業を手伝えばいいのですね、MSのフライトデッキへ案内をお願いできますか」

 二人は心配していたのを拍子抜けするほどアスランが簡単に了承したので返ってびっくりした

 もちろんアスランは心の中で葛藤はあったがグリスターンの事を特に気にしてはいなかった

 それよりシャルの事が心配だった為にグリスターンを修理し早く捜して欲しいとただそれだけを

 考えていたアスランだった

 

 アスランに用意された機体は試験機を示す赤い色をした機体MS-RS07、バロン防衛軍が

 ザフトより依頼されて内密に開発したMSがあり、そのMSを再設計したMSの実験機だ

 何故?ザフトがバロンなどの小国にMS技術を提供してまで依頼したのか?

 ザフト技術陣は壁に当たっていてそこでMS開発を別の角度から開発してみようと考えた

 バロンは形式上中立国、そして地球連合や他の中立国の技術を吸収している事に目を付ける

 ザフトはオーブや地球連合と同じ事を行っていたのだがオーブより条件的には良好だった

 バロン防衛軍はコーディネーターが多いのでオーブよりも検証速度が速くまた的確に出来た

 最新MS技術は機密だから提供しなかったが技術を提供した事は後に正しさも証明されるが

 そしてMS技術を提供した事自体を後悔する事にもなる

 なぜならバロンが作ったMSを基本にGAT-Xシリーズの技術とザフトの最新技術で作られたのが

 ザフト最強のMSと言われるZGMF-X09B・ZGMF-X10A・ZGMF-X12T・ZGMF-X13Aなのだ

 そしてZGMF-X10AとZGMF-X13Aを破壊したのはアスランの戦闘記録を参考としてバロンが

 独自開発したMS BMS-X7Bだった

 

 基本的な操縦方法をレクチャーされアスランとナイトはとりあえず練習を少しだけして

 外に飛び出すが二人は始めての宇宙空間で操縦間隔が掴めずMS操作に慣れないせいもあり

 あらぬ方向に行ってしまいそうに成ったがグラディス少佐の機転でどうにか艦橋外部に取り付く

 こうしている間にもグリスターンはユニウスセブン跡地へ向かっていた

 さすがに二人とも慣れない宇宙での作業で緊張していたが少佐の適切なアドバイスにより

 作業を順調に進めて行き数刻後にはナイトが分担した作業を終えて戻っていた

 アスランも受け持った区域の修理が終わりグリスターンに帰還しようとした時に中佐から

 連絡が有る

 新たにデブリが発見されたと、そして

「アスラン君MSのビーム砲で軌道を逸らしてくれないかグリスターンのシステム連結が

 完了していないらからはまだ照準が出来ないのだ、すまんが頼めるか」

 アスランは少し間を置いてから

「はい」

「そうかすまないなパネルにビーム砲の射出ポイントが表示されているから受け取ってくれ

 少しの間艦を視認できない距離まで離れる事になるから方位には気を付けてな」

「わかりました」

 そう言ってアスランはディスプレイに表示されている箇所まで行きビーム砲を受け取ると

 デブリのある方向へ移動を開始した、その様子をモニーターで見ていた中佐と少佐は思わず唸る

 余りにも簡単にビーム砲を受け取りデブリへ移動して行くアスラン

 慣れない筈のMSで更に初めての宇宙空間での行動、基地で訓練を積んでも簡単に出来る事では

 ないのだ、それをいとも簡単にやってのける宇宙空間でのバランス間隔と距離間隔に感嘆した

「少佐、彼がザフトのMSパイロットに成れば指折りのパイロットになれるぞ」

「そうですね、本人が望むかは別としてですが」

 アスランは二人が自分の事をそんな風に話してる事と知らない

 デブリが小さいながらも見えてきた既にグリスターンは計器でしか存在を認識できない距離で

 幸いな事にビーム砲はエネルギーパック方式でMSのエネルギーを消費しないタイプだ

 アスランはデブリが至近距離に近づくまでの間、自問自答していた

 何故僕はあれ程母上に誓ったのにMSなんかに乗って操縦しているのだろう、でも宇宙を一人で

 居るのは気持ちがいい、何も考えなくてもいいからなのかな

 母上、MSに乗ってこんな落ち着いた気持ちで居る僕は可笑しいですか、いつか母上に会えたら

 叱られますね、人を殺める為に作られたMSを操縦するなんてと皆の生還が掛かってますから

 少しの間だけ許して下さい

 

 デブリがハッキリと認識できる距離に近寄りビーム砲を構える

 この時にアスランは少佐に言われた事を忘れ自動照準のスイッチをオンにするのを忘れ

 そしてアスランは回転するデブリの中心位置を中々つかめず更に接近してしまい照準が合い

 引き金を引くとビームは狙いを外れずデブリの中心を射った、崩壊するデブリに近寄りすぎてた

 アスランは飛び散る破片に巻き込まれ避けるのが精一杯、一瞬の衝撃で気を失うアスランだが

 直ぐに気が付きMSの被害状況を確認するが問題ない、ただグリスターンの位置が不明となり

 連絡を取ろうと通信機をオンにしたその時グリスターンからではない通信をキャッチした

「・・・・れはアークエンジェル・・シーゲル・クラインの令嬢ラクス・クラインと

 バロンのシャロン・シグナス嬢を保護している」

 突然飛び込んで来た通信の内容にアスランは思わず

「え」

 更に耳を傾けるアスランの元へ信じられない言葉が飛び込んで来た

「・・・当艦へ攻撃が加えられた・・・責任の放棄と判断・・・処理をするつもりで・・」

「な」

 茫然とするアスラン、更にMSと思われる通信も聞こえた

「救助した民間人を人質に取る、それが地球連合の正義か」

 その言葉を聞いた時アスランの中で怒りが込み上げて来る

 彼等は僕から母上を奪っただけでは足りないのかそしてシャルまでも奪うというのか

 許さない、必ずシャルは助けてみせる

 アスランはグリスターンへ連絡も入れずエネルギーやビーム砲のエネルギー残量を確認後

 通信が流れてくる方位へMSを向けた

 それは彼自身が持つ宿命、やはり彼は運命から逃れる事はできないのか

 後に地球連合・ザフト双方から怖れられ畏敬の念を持たれるMSパイロット誕生であった

 

 



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Mixingfate 第03話

 

《救助した民間人を人質に取る、それが地球連合の正義か》

 

 わざわざ全周波数通信で発せられたパイロットの怒りの声

 

 良心が痛むけれどナタルの判断は結局正しい、若きマリュー・ラミアスは思わず顔を伏せた

 この船に乗っている全ての人間の命を預かるものとして私達にはすで打つ手が無い

 合流しようとした先遣隊は目前で消滅し他に手段が無い、卑怯と言われても生き残る為には

 私もナタルの様にならなければ駄目なのだろうか

 その頃、医務室の前に立ったフレイは何気なく担当看護師が閉め忘れていたドアを開いた

 無言で医務室に入ると奥には一人患者が寝ている

 年齢的には自分と変らない筈だ、髪の色はオレンジ色で少年と言うより青年

 そう寝ていた患者はコーディネーターでヘリオポリスの戦闘で負傷し意識を失い捕虜となった

 兵士だ

 彼らの手によって私を愛してくれた父は目の前で死んだ、フレイの中で怒りが込み上げてくる

 ふとベッドの脇にある戸棚が目に行く相変らず管理が杜撰で扉が開いている

 手術用のメスが目に入り腕を伸ばしてメスを掴む

 その時患者が目を覚ました

「俺を殺したいのか」

 その言葉を聞いて私のスイッチが入った

「父は死んだのよ、あなたも死になさい」

 動けない青年は何の反応も示さずただ一言

「いいさ気が済むようにすれば、どうせ助かっても捕虜となって処刑されるだけだろう」

「当たり前だわ、父を殺した奴の仲間のくせに」

「そうか事情は知らないが君の家族が死んだのか、だけど謝るつもりは無い」

「殺してやる」

 私はメスを握り締め捕虜の青年に向け近寄ろうとした

「フレイ、何をしているの」

 背後から声を掛けられ振り返ったらミリーが近寄って来てメスを取り上げられた

「フレイ、何を馬鹿な事をする気なの何をしようとしたか分かっているの」

「止めないで父は死んだの、だからコイツも死ぬのよ」

 メスを奪い返そうとしてミリーと揉み合いになる

 その時青年が声を掛けてきた

「家族や仲間が死んだら悲しいし怒りも湧くのは当たり前だが先に手を出したのは地球連合だ」

「何を言っているのヘリオポリスには民間人が何人居たと思うの」

 今度はミリーが反論した

「あんな所で兵器を作っていた奴らが悪い、中立国といいながら地球連合の兵器を作ってた

 オーブの自業自得だ」

「そんなの私達に関係ないでしょう」

「ユニウスセブン」

 その一言に私もミリーも動きが止まった

「ユニウスセブンには軍の施設なんか一つも無く民間人だけで農業施設しかない無防備な

 コロニーだったのにそこへ君達の同胞地球連合は何をした、核を打ち込んだのは誰だ」

 兵士の声は高ぶってはいない、それだけに彼の怒りの大きさがわかる

 そしてそれはコーディネーター全ての怒りなのだ

 私は二組の女性達と子供達の事を思い出した

「俺、俺達だって好きで戦争したい訳じゃない、家族を仲間を多くの同胞を守りたいだけだ」

 その言葉に私達は反論できなかった

 いつもの自分なら反論できた、父が亡くなり怒りをぶつける相手が目の前に居るのに

 ユニウスセブンの跡地であの女性達を見てしまった所為なのか

「ごめんなさい、フレイ行くわよ」

 ミリーに腕をつかまれて出てゆこうとする私に捕虜の青年が再び声を掛けてきた

「別に謝る必要は無いその子の気持ちは十分に判る、俺達だって同じだからな」

 その一言が与えた衝撃は強烈だった、私と彼等は何も変らない何処も違わないのだ

 父を殺したのはこの青年ではないのにその言葉は私への謝罪だと感じ私は人として敗北を感じた

 

 一旦ヴェサリウスに後退したイザーク達は隊長を含め今後を如何するか会議の最中である

「さて、諸君どうする?」

 クルーゼの問いに簡単に答える事など誰も出来ない

 沈黙が皆を包む

 やがて、クルーゼは一人に尋ねた

「君の意見から聞こうか婚約者を人質にされたのだからなキラは」

 全員がキラに注目する

 そう人質に成っているのはキラの婚約者でもある

「攻撃してMSを破壊、人質解放を要求するのが一番かな」

「ラクス様を見捨てるつもり、キラ」

 ニコルがキラを問いただした

「見捨てる事になるかも知れないけど冷静になって考えてみてよ、AAと呼ばれる戦艦は新型の

 MSは一機しか無いようだからあのMSを落とせば、たかが戦艦一隻だよ抵抗できなくなるし

 当然ラクスや月の姫に手は出せない筈、甘い言葉で人質を解放させて後は好きにすればいい

 万が一ラクスや月の姫が死んだらその時は皆殺しにすれば良い事だよラクスは民間人とはいえ

 プラントの代表者だしそれ位の覚悟はある筈だよ、月の姫は可哀想だけどあのMSが地球連合の

 連中に渡ったらどうなるの?もっと犠牲者が出る国防委員会や評議会も反対は出来ないだろう」

 キラの意見は正しい本当に正論で的確な判断、GAT-Xシリーズが連合で量産されればプラントに

 危機が訪れるのは間違いない

 だが政略的な婚約とはいえ婚約者の命を危険に晒す姿勢のキラに反感が募る

「だが君達にあのMSを落とす事が出来るのか4対1でも勝てなかっただろう」

「みんなが僕の指示どうりに動いてくれれば勝てたはずだよ」

「なんだとう、貴様ぁ」

「おい、止めろよ隊長の前だぞ」

「!」

 相変わらず仲の悪さにクルーゼは思わずため息が出る

 チームワークがデタラメでは勝てない、しかも相手はエンデュミオンの鷹ムウ・フラガ

 こちらの攻撃を予測されて回避される相手だ

 せめてチームワークが取れていれば勝つチャンスも有るだろうが今のままでは勝てない

 思い切ってキラを囮にして残りでAAを落とすか無力化するかもう1つは俺も出て5対1で

 攻撃する、確かにキラの言う通りあのMSを破壊してしまえばAA一隻では何も出来ないだろう

 だが自棄を起こされて暴発、ラクス・クラインを殺されしたら俺の立場が不味くなる

 今の段階でそれは不味い・・・そうでもないか、ザフトと議会の対立が激化するのは返って望む

 方向に進むかも知れない

「イザーク、君ならどうする」

「ラクス嬢を犠牲にする覚悟が有るのならラクス嬢ごとAAを葬り去るのが一番だと思います」

 イザークの発言にさすがのクルーゼも声が出ない

「イザークこそラクスを見殺しにする気?」

 イザークの提案に流石のキラも驚いた

「お前の提案と対して変わらんだろう、お前の案でラクス嬢を保護できても人質を無視した事は

 ラクス嬢自身が知る事になり、お前は婚約者を見捨てたと非難される、俺達もどうなるか判らん

 ラクス嬢は議長の娘だそれを忘れたのか、そうなれば穏健派が出てきて俺達は良くて左遷

 お前は確実に婚約は破棄され良くてもザフトから追放、最悪プラント追放だな

 俺としてはラクス嬢を助けたいが無理なら仕方が無い、敢えてラクス嬢が危険になる覚悟が

 有るなら戦艦ごと葬り去ればいい死人に口なしだ、連合だって卑劣な行為だ自ら暴露など

 しないだろう、そしてあの戦艦を落としてしまえば一機のMSなどどうにでもなる」

 ラクスの幼馴染であるイザークの言葉とも思えない非情さにキラも黙る

 内心はどう思っているかわからないがイザークという男はプラントの為なら非情に徹する事が

 出来ると表面的にはそう思われている

 クルーゼはイザークの言葉に一理あると思う

 確かにプラントに報告する人間が皆死んでいなければ何も変らず助ける事が出来なかった

 殺されていたとそう証言すれば納得されるだろうし、イザークの言う通り連合側からもれる事も

 無い筈だ

「作戦を決定する、キラ、ニコルと俺はストライクと戦いながら奴をAAから引き離す

 注意は俺が惹きつけるから隙を見てキラとニコルは奴を攻撃せよ、奴がAAから離れたら

 イザークとディアッカはAAを攻撃、撃沈するのも捕獲するもその場で判断せよ」

「「了解」」

 了解の返事をしたのはイザークとディアッカだけだった

「クルーゼ隊長、あんな奴僕一人でも落とせます」

「キラ、お前には無理だ」

「どうしてですか隊長」

「そうならどうして今まで落とせなかった」

「それは、あいつが逃げてばかりだから」

「お前にはまだ無理だ、アイツはエンデュミオンの鷹だぞ」

「・・・」

 さすがに隊長の言葉に逆らうわけに行かずキラは渋々承知したのだが

 キラが承知したと思ったら今度はニコルが反対した

「クルーゼ隊長、編成を変えて下さい」

「なぜだニコル」

「キラとは組みたくない、キラの身勝手でまだ死にたくはありません」

 一番大人しいニコルの発言にクルーゼは驚いた

「どういう意味だよニコル、いつ勝手な事を僕がした」

「何時も勝手な事ばかりしている癖にもうキラの我が儘に付き合う気は無い

 隊長、僕はキラとは二度と組みたくありません組ませるのなら出撃を拒否します

 査問会に掛けられても文句は在りません」

 この瞬間キラにクルーゼ隊の仲間は一人も居なくなる

 今までチームを組めていたのはニコルが他の二人や他の隊員との橋渡しをしていたからだ

 そのニコルがキラと組む事を拒否した、直接の引き金はラクスを見捨てた事だろうが

 遠因は仲の良かったラスティーの死である、キラの独走に巻き込まれ死んだラスティー

 そして音楽家志望のニコルはラクスと面識があり憧れの存在でも在った

 そのラクスを婚約者のキラが見捨てるような行為に走った事で我慢の限界が来たのだろう

 では何故イザークの事を非難しないのか、ニコルにはイザークの葛藤が判っていたからだ

(人徳の差というものだろう)

 だがキラは躊躇せずラクスを見捨てた

 もちろんキラにも葛藤が有った筈だがそれを感じさせないキラに反感を覚えたのだ

「どうしても嫌かニコル」

「はい、隊長」

 クルーゼは本当に頭が痛くなってきた

 キラを基準にと思えば三人が反発し三人を基準に考えればキラが独走する、一番の原因は仲間を

 見下すような態度のキラで本人に自覚がない分余計に始末が悪い、キラの事を仲間と認めない

 他の二人いや三人になった

 これではどんな有能な指揮官でも勝てない

「判った俺とキラだけでストライクを相手にする、ニコルはイザーク達と組め、いいな」

「はい、了解しました」

 ニコルはイザークやディアッカと打ち合わせをしながら部屋を出て行く

 残ったのはクルーゼとキラの二人

「隊長なぜあんな勝手を認めたのですか指示は完璧の筈だった着いて来れないニコルが悪いのに」

「まぁ仕方が無いさ天才は理解されないものだよキラ、そう腐るな」

「ハイわかりました」

 だがクルーゼは本気で悩んでいた、このままで行けば必ず破綻してしまう

 あの三人を他の隊に出して別の人間達を補充するべきかキラ・ヤマトを出して誰かを補充するか

 それとも全員を出して再編成するか

 何処で狂った?キラ・ヤマトを受け入れた時からか?

 自業自得かな、本来赤服を認められない成績のキラを裏から手を廻して赤服を認めさせた報いか

 まぁどうにかするさとにかく結果さえ出せればいい

 それにしても俺はキラ・ヤマトをどうする気だろう、憎い筈なのに何故か哀れんでいる俺が居る

 なぁレイよ俺はキラ・ヤマトを知りすぎたのか?知らない方が良かったのか?

 自問自答するクルーゼだったが悩んでる時間は無く出撃の為、思考を切り替える

 「さて、行くか」

 

 問題のAAの中ではラクスとシャロンが恐怖心を和らげる為か話をしていた

「シャロンさん、大丈夫ですか」

「はい、大丈夫ですラクス様」

「ご免なさいね、私の為に貴女まで巻き込んでしまって」

「運が悪かっただけですラクス様の所為じゃない」

「静かになったようですね、戦いは終わったみたいですわ」

 ホッとするラクスとシャロン

「でもザフトの皆さん諦めてくれるのかしら?ラクス様が此処に居るのに」

「大丈夫ですわ、先ほどの通信を聞きましたらイザークの声が聞こえました、彼がいると言う事は

 あの方も居ると言う事ですわ」

「あの方?もしかしてラクス様の恋人?」

 シャロンが興味津々な顔をしてラクスに尋ねる

「恋人では有りません、将来私はその方の妻になります」

「婚約者?」

「そうです、とても優秀な方ですの」

「軍人さん?」

「ぇぇ、そうですわ」

 何故か望んでないと漠然とだがそう感じたシャロン、ラクスには何か蟠りがある気がした

「十六歳なのにプラントの女の子は大変ですね、相手の方を強制的に決められてしまうの?」

「それは誤解ですよ勿論選択の自由くらい有ります、私達コーディネーターは出産率が低いので

 婚姻統制で出産率を上げようとしていますが受け入る事を出来ない方も居ますからその時は

 拒否する事も出来ますわ」

「と言う事はラクス様はその方と相思相愛なんだ良かったですね」

 その言葉にラクスは複雑な顔をした、二人は婚姻統制で決った訳でも無くましてや恋愛関係が

 有った訳でも無い

 ラクスがキラの子供を宿す事は統制局の判定で100%無いと判明している

 キラの優れた遺伝子の所為で受精した卵子が耐えきれず細胞分裂を起こす前に壊れてしまう

 そしてラクスにも問題があった

 ラクスは第二世代コーディネーターだが彼女の両親は受精卵の時に容姿や声質意外には特別な

 遺伝子調整をしておらずある意味に置いて自然的なコーディネーターであり遺伝子に適合する

 人が極端に少ないのだ

「あの方と私は婚姻統制で決められたのでは有りませんわ」

「え」

 シャロンはラクスの顔を見て聞かなければ良かったとテーブルの上に出されていたグラスに手を

 出そうとして止めた

 水を持ってきたのはナチュラルの人だったけどこの水が何を意味するのか彼等は理解してない

 見ればラクスも喉が渇いている筈なのに手を着けてない

 聖なる墓標でもあるユニウスセブンから補充した水だ、自分はともかくラクスがその水を飲める

 筈が無い

 彼等は何も理解してない気付いて当然なのにその神経を疑う、何処まで罪を冒せばいいのだろう

 その罪に対する罰は必ず自分達へ返ってくるのに

 

 沈黙の続く中でラクスは別の事を考えていた

 二人の置かれた状況はとても悪い事だと、あのMSは強くザフトの皆さんが放置する?

 幼馴染の性格とキラ様の性格を考えればどうなるかは明白な気がした、しかし

「大丈夫です何があってもシャロンさんだけは守って見せます」

 自分一人だけではないシャロンもここに入るのだ

 彼女こそこの戦争とは関わりが無いのだから彼女だけは何としても守ると考えていたラクスに

 シャロンが

「大丈夫ですラクス様、私が困った時は必ずお兄様が助けに来てくれますから」

 もちろんその言葉がラクスの気休めになる分けも無い、民間人の青年一人では何も出来る筈無い

 それでも信じているシャロンの為に笑顔で返事をした

「そうですね、きっと来てくれますわ」

 当たり前だがラクスはシャロンの言葉が現実になると思ってもいなかった

 

 予定の宙域に向かう途中でアスランは慣れないMSの操作を必死に習得していた

 まずMSのOSを改変する理由は搭載されていた作業用OSでは思った通りに動ごかないからだ

 しかし改変自体は思ったよりも時間が掛からなかった

 初期プログラムがオーブ製作業用モービルのシステムに似てた事でその癖に気が付いたから

 どうしてと疑問に思ったがその事に時間をとられる訳にも行かずMSの武器リストを見る

 標準装備の武器は戦闘用の実剣が両脇に一組と掃討用の頭部に詰められた実弾が少し

 熱エネルギィー系の武器、艦橋修理に必要無いからビームライフルは当然だから持って来てない

 代わりにデブリを破壊す為に用意されたビーム砲が一基ある

《アスラン本来複数対1は避けるべきだけどそうなってしまう事もあるわねその時はまず乱戦に

 持ち込むの、そして飛び道具や長い武器を持っている人を最初に倒し次は動きの早い人を倒すの

 例え強そうな人がいても後回しにする》

《どうして?いつもは強い人から倒せと言ってるのに》

《それはね状況にもよるけどアスランが戦闘に巻き込まれたて複数対1になってしまったらまず

 体力を温存する事が一番、いきなり強い人と対決してしまうと体力や気力が持たないでしょう

 それともう1つ、戦っている相手と会話はしない事》

《どうして?》 

《殺し合いになったら手加減はしない、アスランは優しすぎるから手加減するかも知れないの

 相手を人間と思ったら本気になれない性格だから貴方はね、だから知らない方がいいのよ》

 マイさん、どうも自分から馬鹿な状況を作りそうだよご免なさい

 戦争する為に武道を教えたのじゃないと言われたのに、僕が助けなければシャルが危ないんだ

 終わって生きてたら殴っても叩いても抱きしめてもいいから(?)だから今回だけは許して

 下さいとアスランは心の中でマイに謝った

 急がないとシャルがどうなるか判らないから再びシステムチェックを再開したが何だ?

 Mirage Colloid?そんな事が出来るのかこのMS

 

 やがて来る戦いを感じながらムウ・フラガ大尉はAAの艦橋でタバコを吹かしていた

 敵MSが去る前に残していった言葉が心に蟠りを少し産む、ふ惨めなものだな

 だが俺達が生き残る為には利用できるもの利用する、アマちゃんの艦長も少し勉強しただろう

 戦場では何があってもおかしくはない事を利用できるものは何でも利用して生き残り最後に

 生き残った方が勝者だ

 それにしてもザフトの連中は強いな、シグー、イージス、デュエルは注意が必要だ

 シグーはいつもの奴でイージスは特に注意が必要だな

 ただ残念ながら性能と能力が合ってない俺が乗ってるストライクにアイツが乗っていたら

 無駄な事は考えるのは止めよう

 

 その時警報が鳴るザフト軍接近の知らせだ

 どうやら人質を無視する作戦だな、そうだ俺が奴らなら同じ事をした

 さて行くか

 ムウはタバコの火を消していまや愛機となったストライクに乗り込み操縦席に座り

 出撃準備が終わる頃、艦橋から連絡が来る

 接近中の機体は2機、シグーとイージス?2機だけ?おかしい

「ブリッジ、本当に敵は2機だけか」

「そうよ2機だけ、だから怖いのよ」

 さすが艦長に抜擢されるだけはある

 敵は俺と2機を戦わせてる間にAAを攻撃するつもりか

「俺が出たら高速で後退してくれ、少しでも冒険はしたくない」

「そうね、集合地点は?」

「君のベッドの中でどうだい」

「セクハラですね大尉殿生き残ってその気になれたらいいわよ、L3方面でどうかしら?」

「了解、その気にさせて見せるさ」

「そう?私は安くないわよ、がんばってね」

 AAは高速で後退したのでMSの戦闘状況が分からないほど離れデブリ地帯に隠れようとした

 だが其処にザフトのMS3機が先回りしていた

「さすがイザーク、ドンピシャだ」

「ふん当たり前だろう、俺はキラの馬鹿と違う」

「でどうするんですイザーク、ラクス様の事」

「仕方が無いだろう汚名は俺が受けるからニコルとディアッカは知らん顔をすればいい」

「降伏勧告してみませんかイザーク」

「無駄だ、ここで降伏するくらいならとっくにしているさ」

「分かりましたイザークが指揮官です、でも僕達も共犯ですよ」

「!」

「そうだぞイザーク、俺達は一連托生ってやつだ、イザーク一人にカッコ付けさせるか」

「二人ともすまない」

「仲間だろ俺達は」

「そうですよ」

 イザーク自身は外れて欲しかったのだがAAが後退することを見越して先回りしていた

「やるぞ」

 イザークが作戦開始の合図をして3機のMSは散開しAAを待ち受けた

 ディアッカのバスターが照準をAAの機関部に合わせ、まずAAの足を止める作戦

 上手く行けば乗り込んでラクスと月の姫を助ける事が出来るかもしれないからだ

 

 AAの病室で身を拘束され尋問されながら窓の外を見ていた捕虜の兵士がコーディネーターの

 優れた視力がバスターを見つけて思わず口に出してしまう

「MS」

 偶然、尋問に来ていたナタルが直ちにブリッジへ連絡、通報を受けたマリューは回避命令を出す

 結果バスターは初弾を躱されて予定が狂い他の二機が飛び出した、これではラクスを助ける事が

 出来無い、バスターは再度照準を合わせたがその時バスターのライフルが吹き飛ばされた

 AAからの砲撃ではない、ディアッカは周囲を探索するが至近距離には反応が無い

 バスターのライフルが吹き飛ばされたのを見て慌てて二人は周囲を探索するが見えない

 次の瞬間にブリッツのビームサーベルが腕ごと吹き飛ばされた

「ミラージュコロイドだ」

 イザークの叫びに二人とも驚く、ブリッツが持つ機能と同じいや更に進化した機能のようだ

「どこだ卑怯者、姿を現せ」

 別にイザークの声に合わせた訳では無いだろうがデュエルから少し離れた所へイージスに似た

 深紅のMSが現われる、根本的に違うのはイージスは青白いのに対してこのMSは深紅だった

 イザークは登録されている全MSと照合する、元地球連合のMSである当然地球連合とオーブの

 MSが実験機も含め登録されている、勿論現在はザフトのMSも登録されている筈なのだが

 該当無しだ

「引き返せザフト」

 所属不明のMSから通信、しかも電子ボイスだ

「ザフトと戦うつもりは無いけどシャルを傷つける事は許さない」

 深紅のMSからの通信にイザークは逆上した

「ふざけるな先に手を出したのは貴様だろう」

 デュエルが斬りかかる、しかし深紅のMSの動きはイザークの予想を遥かに超えていた

 深紅のMSとデュエルがすれ違った瞬間にデュエルの両腕が吹き飛ぶ明らかにデュエルより速く

 これほど強いパイロットをイザークは一人しか知らない、キラは確かに強いが対処の仕方はある

 そしてこのパイロットは訓練された軍人では無い、もし軍人なら自分は既に死んでいた筈だ

 現時点では勝てない気がしてイザークの背筋が冷たくなった

 その時再び深紅のMSからの通信が入った

「ザフトと戦いをする気は無い、俺は母上を奪った卑劣な連合からシャルを助けたいだけだ」

 卑劣な連合?

 コイツはコーディネーターなのか、シャル?ラクス嬢から聞いた事がある月の姫の愛称だ

 コイツも月の姫を助けたいのか

「歌姫も頼めるか」

 イザークは軍人として言ってはいけない事を言った

「出来るだけの事はします」

 深紅のMSからの返答を聞いた時なんとなくだが真面目で信用できる奴とイザークは思う

 先ほどの会話に唖然としている二人に声を掛ける

「二人とも撤退するぞ」

「それは流石に不味いだろイザーク」

「本当に不味いですよ」

「仕方無い、3機とも武器が無いし剣で戦うにしてもバスターだけで勝てるのか」

「「!」」

 バスターは遠距離戦で能力を発揮するように作られていて接近戦は機能的にも低い

 不意を衝かれたとはいえ接近戦用に作られたブリッツや汎用のデュエルが勝てなかった相手に

 バスターでの接近戦は無謀すぎる

 無言の二人にイザークは

「アイツにデカイ顔をされるのはしゃくだがこの手でラクス嬢を犠牲にしなくて済んだ」

「それが本音ですか」

「まったくだ、お前も十分我が儘だよ」

「ふん、帰還するぞ」

「「了解」」

 ザフトの3機は離れて行った

 この宙域に残されたのはAAと所属不明のMS一機のみである




何度も書き直してるので文脈が多少オカシクなってるかも知れません


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Mixingfate 第04話

 クルーゼが陽動し隙を作ってもストライクのムウはキラの攻撃を見抜きすべてを躱されてしまう

 コーディネーターのキラに比べればナチュラルであるムウの身体能力は当然ながら高くない

 だがどんなに鋭い攻撃でも見抜かれていたら当たる訳も無く、ムウと同じ事が出来るクルーゼが

 いなければキラは既に落されていたかも知れない

 戦闘を開始してまだ数分しか経っていないのにキラは息を切らしていた

 これには流石のキラも焦る、MS操縦に絶対の自信を持ってるキラにとっては屈辱でしか無い

 何時もの様に周囲が静かになり周りが良く見えてたにもかかわらず落とせない

(いわゆる種割れ状態)

 この状況になった時は負けた事が無いのにだ

 それから少し時間が経った頃突然ストライクが後方へ移動して行くと言うより逃げ出した

 クルーゼもキラもストライクの行動に驚いたが予定ではイザーク達が攻撃を開始した頃で

 ストライクに救難通信が入りはAAを助ける為後退したのだろう

 クルーゼ達は直ぐに追跡を開始するが追跡を始めて十数分後、信じられない事にイザーク達が

 ボロボロの姿で現われた

「どうした、イザーク何があった」

「正体不明のMSから攻撃されました」

「お前達がそこまでやられるなんていったい何十機いた?」

「1機です」

「「1機だけ?」」

「はい」

 イザークの言葉にクルーゼはもちろんキラも驚いて暫くは声が出ない

 イザーク達3名は決して弱くない事を良く知るクルーゼ

 この3人が1機相手にここまでボロボロにされ負けるなんて自分やキラですら無理だ

 AAにまだMSが残っていたのかと想像したクルーゼはイザークに問い糾す

「連合の新型がまだ残っていたのか、そんな情報は無かったが」

 だがさすがにクルーゼは冷静だった

 しかしイザークから返ってきた答えは

「連合ではありませんパイロットはコーディネーター、しかも連合を憎んでいるようです」

「連合が憎い?それでどうしてお前達と戦う事になった」

「わかりません、ブリッツの機能より優れたMC機能で気が付いた時にはやられていました」

 イザークはワザと焦点をぼかす様に言う理由は人質に成っている二人の為だ

 あのパイロットが人質の二人を解放するまでは倒してはいけない気がしたからだが

 あとはある目的の為

「あのパイロットは恐ろしく強い奴です、それこそストライクを操っているパイロットよりも」

 その一言がキラのプライドを刺激した

「イザーク達が弱すぎるだけだろう、そんなに強いなら僕が倒してやるよ」

 いつものなら直ぐに反発する筈のイザークは何も言い返さない

 そんなイザークを気にもせずクルーゼの指示を待たずキラはイージスを加速して行く

 そんなキラをクルーゼは無言で見送ったがしばらくしてイザークに声をかけた

 

「イザーク、おまえキラを態と挑発したな」

「隊長にはわかりましたか」

「どうしてだ」

「隊長、キラはそろそろ痛い目にあった方が良いと思います」

「キラが倒したらどうする気だ、ストライクのパイロットはどうしようも無いが実際のキラに

 勝てる奴などそう多くはいないぞ」

「今のキラでは絶対に勝てません」

 その言葉にクルーゼは信じられない顔をしたがいつも冷静な判断するイザークがそれほど言う

 相手とはいったい

「おそらくアカデミーのビッツ教官と同じような強さです」

 イザークの言葉にクルーゼは唖然とする

 ザフトMSパイロット最強といわれるカルナルバ、それこそキラがいくら強いといっても

 同じ機体で戦ったらまず勝てない相手がカルナルバである

「ただ」

「ただ何だ」

「MSパイロットとしての正規の訓練を受けていないと思いますから倒す手段は有ると思います」

「正規パイロットじゃないのにそんなに強いのかそいつ」

「まず間違いなく、おそらく格闘技か武術の心得がありそれもその方面では強い奴だと思ます」

「何故そう思う」

「あの馬鹿がMSのコントロールに関しては私より強い事は認めますがビッツ教官には勝てません

 ビッツ教官とキラの差は何だと思いますか」

「ビッツは格闘術のエキスパートだな」

「あの馬鹿が一番苦手な格闘の分野です、私はビッツ教官に少しだけ指導してもらいました」

「そうかとりあえず俺はキラを追う、お前達は大分やられてるようだから判断は任せる」

 クルーゼはイザーク達にそう告げてキラを追いかけていった

 残された3人は撤退するかクルーゼ達の援護の為追うか相談する

「どうするんだよイザーク?」

「行くしかないだろう」

「どうしてですか」

「連合の本体が接近している、あのMSにはおそらくクルーゼ隊長やストライクでも苦戦する

 そんな所を連合に攻撃されたら共倒れになる、見捨てるわけにも行かないだろう」

「でも、僕達には簡単な武器しか残っていませんよ」

「陽動くらい出来るさ」

「だな」

「はい」

 結局、3機は遅れてAAに向けて移動を開始したのだが追いついたイザーク達が目にしたのは

 信じられない光景だった

 頭部と片腕を失くしたイージスと片腕を落とされたシグー、同じく片腕を落とされたストライク

 3機とも武器が無くなってたがコクピット部分は無事だった

 さらにAAが機関部を破壊され行動不能のまま流されている

 まず到着したストライクがやられその前後にAAが逃げようとして機関部を破壊されたのだろう

 次に到着したイージスと戦闘となりイージスがやられ最後がシグーの順番だろうが

 あの3機相手にとんでもない奴だ両陣営を代表するパイロットを僅かな時間で叩き伏せた

 しかしイザークにはあのMSの倒し方のヒントが理解りかけていた

 軍人で無いからか深紅のMSは致命傷を与えてない

 致命傷を与える処が判らないのなら無理だが、態とならそこを上手く利用すれば倒せるのではと

 考えていた

 コクピットのレーダーには月方面へ向けてボートらしきものが去って行く様子が捉えられていて

 更には地球連合第八艦隊が接近する様子も捉えられている

 まともな戦力が無いままでは戦えないし相手は無傷の艦隊である、勝てる理由も無いので退避を

 優先し結局イージスとシグーを残りの3機で曳航する形となりヴェサリウスへ急ぐ

 その最中にイザークはクルーゼに話しかけた

「隊長、あのMC機能は厄介ですね、キラの奴どころか隊長までも」

「あのMSパイロットはMC機能を使用していなかったぞ、キラと戦ってる時も使ってなかった

 何か問題があったのだろう」

「使かって無い?まさか」

「キラが挑発する様な事をした見たいだな俺が着いた直後にイージスの頭部が吹き飛んだ」

「あれほど注意してやったのに挑発までするとは呆れた馬鹿だな」

 二人の会話を聞いていたキラがイザークに反論するように言い返した

「目的が同じだったなんて思わなかったんだよ、第一イザーク達だって叶わなかったのだろう」

「言っただろう連合を憎んでいると俺は勝てなかったがディアッカ達は戦う前にやられたんだ

 一緒にするな、どっちにしろお前は得意なMS戦で負けたのだ、上には上がいると言う事だ」

「MSの性能の差だよ同じ機体だったら僕が負けるわけが無い実力じゃないよ」

「「「・・・・・」」」

 キラの反論に3人は救いようの無い奴と思った

 クルーゼは流石に注意しなければ不味いと思いキラの性格を考えて外堀から埋めてゆく

「そうか同じ機体ならキラはビッツにも勝てるのだな」 

「無理です、今の僕ではあの人には勝てません」

「ほう、ビッツには勝て無くてもお前は今の俺には勝てるのだな」

「いいえ勝てません」

 クルーゼの詰問に近い問いにキラは正直に答えた

「だったら負けを認めろキラ、イザークの言う通りアイツの動き方はビッツと同じだった

 俺もまるでビッツと戦っている様に感じた、そしてあの動き方は訓練された軍人では無い

 軍人なら動き方を予測もできるが素人相手では予測も不可能だ、それでストライクの奴も

 やられたのだろう、その辺りに強さの秘密があるかもしれないが順応する力は凄いぞキラと

 戦ってた時より俺と戦った時の方がMSの腕が上がってた、MSパイロットとしての適正が

 有るのだろうな」

「何時か戦う事になるかもしれません、作戦を考えて置かないといけませんね」

「なるべくなら戦いたく無い相手だな、そうだイザーク、歌姫はAAから脱出したようだぞ」

 クルーゼの言葉に3人ともホッとしたがキラは複雑な顔をした

 見捨てるつもりなど最初から無く敢えて危険な状況を作り出し姫を助けに現われる騎士の様にて

 助け出すつもりだったとは言える筈も無い

 作戦が成功していれば救う事が出来、そうなればラクスも自分を見直してくれる筈だと

(可哀想だがラクスは既に夢見る乙女を卒業してる、でなければキラと婚約してない筈だ)

 それがストライクには勝てず、正体がわからない敵にイージスを傷つけられた

 こんな敵は初めてで自分と戦っているように思えたのは不思議だ、しかも明らかに手加減された

 イザーク達には強がりを言ったけど相手は自分より確かに強い

 知らなかったとは言えラクス達が乗っていたと思われるボートを執拗に攻撃してしまった

 ラクスはどう思っただろうか僕を許してくれるの?

 

 時を少し戻そう

 

 ザフトの3機が撤退して行き、所属不明のMSがAAの側に残った

 とにかく味方だろうとマリューは思い通信回線を開けてMSに呼びかけたのだが

「危ない所をありがとうございます、どちらに所属しているのでしょうか宜しければ所属と姓名を

 教えて貰えませんか」

「・・・」

「?」

 回線は繋がっている筈なのに返事が無い

 秘密部隊で正体を明かせないのかしらとマリューがそう思った時

「その戦艦の名はアークエンジェルと言いましたか」

「そうですが?」

「大天使ですか、卑劣な人間達が乗るには相応しくない名前ですね」

「な」

 その言葉は電子ボイスで加工されていたが明らかに悪意を感じる

 いつの間にか側に来ていたナタルが

「私はナタル・バジルール、聞き捨てならない事を言われたが所属を開示してから言うものだ

 貴官の言動は軍法会議に掛けられてもしかたがない侮辱だ」

「卑劣な人間に名乗る名前は無い、僕は軍人じゃない何処にも所属などしていない」 

 その言葉にブリッジに居た全員が驚いた

 軍人ではない人間がストライクは抑えていたけれど落とす事が出来ないほど腕が良いザフトの

 パイロット達が操るMSを3対1でありながら撃退してしまったのである

「僕の要求は人質達を解放して欲しいだけだ、脱出ボートのひとつくらい有るだろう」

 アスランはワザとシャルの名前を出さなかった、ここでシャルの名を出せば正体が明らかに

 成るしシャル自身の身の危険が及ぶ、更にはバロンシティーも巻き込まれてしまうからだ

「あなたはテロリストね」

 ナタルが声を荒げて詰問するように問う

「テロリスト?この僕が」

「当然です、民間人が軍人に武器で恐喝するテロリスト以外に考えられないでしょう」

「軍人が民間人を人質に恐喝することは良いのですか?」

「!仕方が無いでしょう我々が生き残る為です」

「あなた達にとっては民間人を無差別に殺す事も生きる為には仕方が無いのか」

「我々を侮辱する気、我々がそんな事する筈が無い」

 ナタルの頭の中にユニウスセブンの事が掠めたがその言葉を肯定する訳には行かないのだ

「巫山戯るなお前達はそう言ってユニウスセブンを正当化する気か?そうなら破壊しても文句を

 言えない筈だこの戦艦を操る人間は邪悪な連中だ、将来の為生きる為にはしょうがない自分達が

 助かる為なら無関係の民間人も人質にするような最低の人間達だからな」

 その言葉はブリッジに居た人間にとって痛いところを付いていた

「そんな事許される筈が無いでしょう、この船にはヘリオポリスの民間人が多く乗っているのよ

 巻き込む気」

「ユニウスセブンよりましだ、そしてこの船は軍艦だ」

「それでも許されない事だわ、民間人が乗っている事を知っていて攻撃するなんて」

「よくもそんな偽善を言えるなお前達、民間人しかいなかったユニウスセブンを攻撃したのは誰だ

 母上はユニウスセブンいたんだ、何の罪もない母上の命を奪った奴らの仲間だろうお前達は」

 パイロットの言葉に皆黙った

 このパイロットはユニウスセブンの遺族で有りいきなり攻撃されなかっただけでもましだ

 そして説得は絶対に無理と悟る

「一回だけしか言わないからな、脱出ボートを用意し人質達を乗せて出せ、時間は30分以内だ

 それ以上掛かったら船を破壊する以降通信しても無駄だ通信回線は切る、僕は卑怯者の貴方達と

 違う約束を守れば攻撃はしない、以上だ」

「待って」

 マリューが話しかけようとした時にはすでに回線は切れていた

 

 余りにも条件が悪すぎた

 ストライクは誘い出されているしこの艦には既にMSが残っていない、戦闘機を出しても

 MSが相手ではすぐ落とされてしまうだろう

 ユニウスセブンの遺族では交渉など出来る筈もない怪しい素振りを見せれば即座に攻撃してくる

「仕方が無いわね、ナタルはあの二人をデッキにチャンドラは捕虜にした兵士をデッキへ

 捕虜にボートを操作してもらうわマードックはボートの用意を急いで準備をして頂戴」

 マリューの言葉にナタルが

「いけません艦長、彼等は大事な」

「大事な何?人質それともゲスト?どっちなのかしら、それともあのパイロットが言う通り

 私達は最低の人間なの?」

「・・・」

「軍人ならこの艦を拿捕すれば良いのにしないのは彼が民間人だからよ、だから逆に怒りを

 制御できない、今は理性で抑えているけど彼にとって私達は仇の仲間なのよ、余り時間が掛れば

 本気で船を落とす気だわ必要以上に会話をしないのは躊躇いを無くす為ね、時間ギリギリまで

 使って駄目なら開放、それまでにストライクが戻ってこれば彼に任せて逃げるそれでは駄目?」

 マリューの提案にナタルも納得するしかなかった

「了解しました」

 ナタル達がブリッジから出て行った後、マリューは呟いた

「仕方が無い事か、艦長なんて引き受けるのじゃなかった」

「艦長、何か言いました?」

「なんでもないわ」

 

 突然、士官服を着た女性と男の兵士に連れ出されラクスとシャロンは緊張したが

 連れて行かれた先はフライトデッキそしてボートの中に入るように言われる

「どうしたのでしょう、開放してくださるのかしら」

「そう見たいですね、気が変ったのかな」

 二人は状況の変化に付いて行け無かったが直ぐに他の人が入って来た

 入って来たのはラクスに罵声を浴びせたナチュラルの女の子が青年を支えるようにしていた

 もう一人はその時止めてくれた女の子で一緒に入ってきた青年をラクスは見て驚き

 そして青年も驚く

「ラクスが何でここにいる?」

「ラスティー様もどうしてここに、そのお二人は?」

 医務室に拘禁されていたラスティーはラクスが乗っていた事を知らなかったのだ

 同じようにゲストルームで軟禁されていたラクスもラスティーの事は知らされていない

「このお二人さんはこの艦に乗っているのがもう嫌になったんだと」

「「・・・」」

 フレイとミリアリアは無言だったが頷く

 二人を見たラクスは始めの頃より刺々しさが無くなって何かが変わった感じがした

 ラスティーの言葉に目が覚めたのだろうか?理由はそれだけではなかった

 開放すると言って来た連合軍兵士が悪態を付きながら今の状況を説明したのだが余りに身勝手な

 やり方にフレイとミリアリアは反発してこの艦を離れる事にしたのだ

(チャンドラではなく別の士官、チャンドラだったらもう少し温和に話をしていただろう)

 ラスティーには急いでやる事がある、脱出ボートはその機能上中から閉めれば本格的な設備が

 無ければ外から開ける事ができない、艦の連中の気が変わらない内に中からドアをロックしたが

 この行動が結局彼等を助ける事になる何故なら艦が急に動き出したからだ

 窓から外を覗くといつの間にかストライクが戻って来て正体不明のMSと戦っていた

 

 アスランにMSがいきなり襲い掛かってきた、タイプとしては先ほどのザフトの3機に似てたが

 明らかにパイロットはナチュラルに思える、

 戦闘等はやりたくは無いけど仕方ないシャルを助ける為、あのザフト兵との約束だ歌姫も助ける

 その時視界の片隅でAAが動き出すのが見えた

 逃げる気か?

 シャルを助けるまでは絶対に逃さない

 ビーム砲を撃ちAAの機関部らしき所を破壊するがビーム砲エネルギーが切れてしまう

 ついでに連動していたMCのエネルギーも切れた

 素人の僕じゃ無理なのかMSに攻撃が当たらない

 やがてまるで誰かが僕を導いてくれるように周囲がクリアーになり相手の動き方が判る様になる

 マイさんが言っていた無心になれば見えないものも見えるようになる、これがそうなのか?

 攻撃してきたMSの動き方がまるで子供のように見え、そして僕は剣を持つ方を切り落とした

 ストライクの腕の部分が落とされた時にAAのブリッジでは皆が恐怖を感じた

 ザフト兵が4機がかりでも傷つける事すら出来なかったフラガ大尉のストライクの片腕を

 簡単に切り落とした正体不明のMS、この結果を見ればマリューの判断は正しい事になる

 あのMSが本気で攻撃してきたらAAは5分も持たない、マリューは急いで脱出ボートを切り

 離すように命じたが直後のAAに今一度の危機が訪れたザフトのイージスが攻撃してきたのだ

 戦場に到着したキラはAAの破壊された所を見て最悪の誤解をする

 正体不明のMSがAAを行動不能に陥いれ乗組員達はボートで脱出し当然人質のラクス達は

 処刑されたかAAに残されたかのどちらかと判断した

 まだ距離があったがビームライフルをボートに向けて撃つ

 撃たれた事に気が付いたのはボートの操縦桿を握っていたラスティーである

「キラの馬鹿野郎、何を勘違いしている」

 完全に回復したわけではないがそこはラスティーだ初弾は何とか交わしたのだがイージスは

 ボートへ向け再びビームライフルを撃つ

 機動性の劣るボートでは今度こそ駄目だとラスティーは思った

「誰だ状況判断もまともに出来ないキラのバカに赤なんか与えた奴は畜生恨んでやる」

 ラスティーの叫びにラクスは振り返った、キラは独善的な所があっても実力でザフトの赤を

 着ていると思っていたが幼い頃からラスティーの事を良く知っていて嫌っている人でも貶める

 事を決して言う人では無いラスティーだ

 その言葉はやがてラクスのキラに対する不信に繋がってゆく事になる 

 ビームは脱出ボートに直撃寸前に目前で拡散した

 深紅のMSが自身のビーム砲を直撃コースの間に投げ付けビームはビーム砲に当たって拡散

 ボートを助けたその行為を敵対行為と捉えたキラの逆上を誘った既に何時も以上に戦闘態勢が

 出来ていた(種割れの事)

 イージスの行動が理解できなく途惑うがビームライフルをボートへ向けて撃った事に怒った

《折角、助けようとしているのに何だこのバカは》

 目的は同じなのに誤解が生んだばかばかしい状況、この時軍人だったら通信回線を開くと言う

 選択肢が浮かぶのだが素人のアスランにそこまで求めるのは酷だろう(そんな時間も無いが)

 キラは本当に強い、確かに特殊な力や特技を持つクルーゼやカルナルバ・ビッツには勝てないが

 純粋にMS戦闘だけを考えればザフト軍パイロットの中では5本指に入るそれほど強いのだ

 それでもアスランの動きが読めず更には敵の感覚に途惑ってしう

 まるで自分と戦っているような奇妙な感覚、アスランはそんな事を判らず自由に攻撃した

 そしてアスランは怒りに任せてイージスの頭部とビームライフルを持つ腕を切り落とす

 それを見て驚いたのは二人、脱出ボートのラスティーと直前に戦場へ到着したクルーゼである

 ラスティーはキラを赤と認めていないがMS戦や関係能力は赤以上の力が有ると思っていた

 そのキラがアッサリと返り討ちだ、クルーゼもキラのMS戦能力自体に問題は無いと思ってた

 ラスティー同様に驚くが敵のMSは再びイージスに向けて剣を振り上げ攻撃態勢に入った

(余程アスランはアタマにきたのだろう)

 クルーゼはイージスを放って置くわけにも行かず牽制の為にビームを撃つが簡単に躱される

 今の攻撃が敵対行動として認知されたようでクルーゼをも攻撃してきた何時ものように攻撃を

 交わそうとするが予測不能の動きの為ストライクと同じ様にライフルを持つ腕を切り落とされ

 更には剣をも切り裂かれる

 

 ようやく落ち着いたアスランは脱出ボートに近寄りコクピットの窓から乗ってる人間を確認する

 間違いなくシャルが居た、シャルの隣にはピンク色の髪をした女の子がいる

 写真でシャルと一緒に写ってたプラントの歌姫だ、後はナチュラルらしい女の子が二人

 なんでナチュラルが二人も?

 そしてザフト兵らしき青年が一人いる負傷して捕虜になってたのだろう

 僕は彼等と違う、とりあえずAAは約束は守ったわけだからAAは見逃そう

 アスランは実際どうしようか迷った

 ナチュラルの2人は計算外だがどうにかなる、問題はザフト兵と歌姫の存在だ

 二人をグリスターンに連れて行けばバロンの人間とわかってしまう

 そうかと言って助けた二人を置き去りにする訳にもいかない

 アスランにはザフトと戦った為ザフトへ引き渡すという選択肢が頭に浮かばなかったのだ

 イザーク達が居ればまだ何とかなったかも知れないが残念ながら彼等はまだ到着していない

 やがて警戒レーダーが多数の移動物体を確認する

 弾き出されたデータは地球連合艦隊と接近するMSが3機

 アスランに迷っている暇はなく脱出ボートの後部に取り付き最大出力でボートを押しながら

 宙域を離れる

 その後、ザフトの哨戒部隊と遭遇し攻撃されたので全力でその場を逃げ出した

 この宙域に第八艦隊が到達

 地上降下が出来るAAだがある部分を致命的に傷つけてた、謎のMSの攻撃は機関部だけで無く

 耐圧隔壁ブロックをも貫通していたからだ修理にはモルゲンレーテ社のドックか月の宇宙艦隊

 基地でないと出来ないのでそのまま第八艦隊に収容された

 ヘリオポリス崩壊の時ドックも壊れたので後は月基地へ向かうしか手段がなかった

 月基地でヘリオポリスの民間人を解放後、AAは乗員の補充を済ませ第八艦隊に編入され

 ストライクの技術資料は地球に送られた

 余談であるがマリュー・ラミアスは自分が行った事を恥じて艦長職を別人に譲り、軍を退役し

 祖国に帰ったが何者かに誘拐されて行方不明となる

 戦争が終結してからある犯罪組織が摘発されたがその下部組織の売春組織で娼婦となってた

 マリュー・ラミアスが発見され彼女はその後薬物中毒により死亡した

 ナタル・バジールもやはり退役していた

 謎のパイロットの言葉がやはり心に残っていたのだろうか軍人としてやってはいけない事を

 恥じたのかマリューと同じように軍を退役したが祖国に帰らず月の独立都市バロンに移住する

 後にどういう経過を辿ってそうなったのか判らないがナタルはバロン軍准将の妻となり

 二人の子供を儲けている

 

 その頃マイスとグラディスは焦っていた

 デブリの軌道を逸らすために頼んだのだアスランが戻らないのだ

 ビーム砲の出力レベルを間違えたのかデブリは吹き飛んだ事は確認できたのでデブリの爆発に

 巻き込まれたのかも知れない、タイミングが悪い事にナイトファルトは薬を飲んで寝てしまった

 グラディスが捜索に出ても良いのだがそれをやるとグリスターンの指揮系統に穴が開いてしまう

 士官の数が極端に足りない現在のグリスターンではそれが出来ない

 しかもアスランが何時戻って来るかも知れないからこの宙域から動く事も出来ない

 地球連合軍とザフト双方の通信量が増えていると本国から連絡が来ていた

 いきなり攻撃される事は無いだろうが不味い時期だ、アスランが行方を絶ってから

 かなりの時間が経っている、やはり素人をMSに乗せたのが不味かったのか

 艦長室で二人は今後どうするか悩んでいた時にブリッジから連絡が来た

 Pi、Pi、Pi

「艦長代理、かなり遠距離と思われますがBWMS-RS07からの通信を受信しました

 いかがしますか?」

「そうか無事だったか、それは良かった。・・会話が出来るようなら艦長室へ回線を廻してくれ」

 だがマイスは何か嫌な予感がした

「それから回線は非公開で頼む、聞く権限は私とグラディス少佐のみとする」

「はい了解しました」

 マイスの言葉にグラディスは首をひねる

「中佐、どうして非公開に?」

「何か嫌な予感がする」

 

 そしてマイスの予感は的中した

 会話が出来るようになるとアスランはとんでもない事を言ってきた、地球連合軍が民間人を

 人質に取りザフトを脅したので救出しようとして地球連合軍と戦闘となり敵MSを一部破壊

 更に軍艦も一部破壊したと言うのだおまけに誤解したザフト軍と戦闘になり撃退したと

 さすがに最初は二人とも信じなかった

 当たり前だ、初めて乗ったMSで素人がザフト兵相手に戦闘を行い撃退したなどと

 信じる指揮官が何処にいる、これが地球連合軍相手だけならまだ信じる事も出来るのだが

 ザフト兵を相手に素人が勝つなど不可能に近い

(ザフトレッド4人と白服の指揮官クルーゼ、地球連合のエース、エンデュミオンの鷹を倒しとは

 誰も信じないだろう)

 しかも捕虜や人質になってた人間と民間人2名を乗せたボートを連れていて如何すれば良いか

 尋ねてきた時には信じるしかなかった、それも人質になっていたのは月の姫とプラントの歌姫だ

 その事を聞いた時、二人は卒倒しそうになった

 プラントの歌姫はバロンシティーでも顔を知らない人間が少ないほど有名で嘘の吐きようが無い

 また本当だと余計な問題が生じてしまう、バロンシティーは表面上今度の戦争には中立の立場だ

 成り行きといえ両陣営の軍艦やMSを攻撃したのがバロンのMSという事実をザフト兵や歌姫を

 通じてプラントに知られる訳には行かない、ザフト兵に死者は取り敢えずいないみたいだから

 ザフトには言い訳が出来るのだがアスランもその事を悩んで到着以前に連絡を寄こしたのだろう

 アスランはまだボートの人間と会話をしていないそうだから彼の正体はばれていない

 さすがにマイスもこの状況に追い込んだアスランを少し恨みたくなった

 更に話を総合すると慰霊団は二人を除いて全滅したか捕虜になったかのどちらかだ

 この艦に乗り組んでいる残りの慰霊団になんて説明するのかそれに慰霊団には

 バロンシティーの上層部や軍関係者が乗り込んでいたもし彼等が死亡していればどう考えても

 地球連合と当然断絶状態に成るもちろん非難されるべきは地球連合軍だが抗議をしようとすれば

 その情報源を聞かれる、もっとも先に手を出したのは地球連合軍だから言い訳はできる

 しかも慰霊団を攻撃するなんて彼等は決してやってはいけない事をしたのだから

 

 とりあえずマイスとグラディスは傭兵時代に作られた軍の秘密基地が近くにある事を思い出して

 そこへ行けと指示、グリスターンもそこへ向かう事にした

 

 バロンシティー防衛軍の秘密基地

 外観は廃棄されたように見せかけた小型のコロニーと言うより宇宙ステーションと呼ぶべきか

 アスランが指定された信号を送ると偽装された入り口部分が開き、内部が見える戦艦が

 5~6隻入るくらいの大きさのドックがあり、アスランはボートをドックの奥に押し込んだ

 

 まったく事情がわからずラスティーはどうすれば良いのか困ってしまったが

 現在このボートに居る5人の中では戦闘が出来るのは負傷している自分しかいないのだ

 他の4人を守る為ラスティーは警戒を強めていた

 外部に空気が供されて呼吸可能状態なるとMSからパイロットが降りてきてボートの前に来て

 呼びかけて来た

「開けてくれないか」

 意外に若い声だった

 その声に月の姫が驚いて顔を上げる

 ラスティーは慎重にドアの側によりドアを開け取り敢えずこのパイロットを抑えてしまおうと

 攻撃を仕掛けたのだがアッサリと交わされ逆に押さえ込まれてしまう

「ザフトの皆さんはどうしてそんなに好戦的なのですか?あのMSといい、あなたといい」

 パイロットスーツのフェイスを外そうとしたがそのパイロットに月の姫が抱きついた

「アスラン兄様、ヤッパリお兄様だ、ヤッパリ助けに来てくれた。来てくれると信じていた」

「こらこら、シャル」

「ム、失礼ね、チョッとくらい良いじゃない」

「本当にチョッとか?・・・それどころじゃないんだシャル少し離れてくれないか」

「ん~仕方が無い。マイさんがいない数少ないチャンスなのに」

 抱きついていたシャルは離れたがシャルはアスランの片腕を取っている

 そしてアスランはフェイスを外した

 現われたのはまだ少年らしさの面影が少し残る青年

 濃い藍色の髪に翡翠色の瞳が印象的な青年だった

 その青年の姿を見た3人+押さえつけられてる1名(ラスティーのこと)

 フレイとミリアリアは何故か頬が赤くなっていた

 ラクスは視線を青年の目から外せない、翡翠色の瞳になぜか惹き込まれて行く事を感じていた

 始めてあった筈なのに以前から知っているような不思議な感覚

 そんなラクスをラスティーは青年に抑えられながらもラクスを不思議そうに見ていた

 アスランは直ぐにラスティーを開放してから改めて名を告げた

「始めまして僕の名はアスランと言います、シャロンがお世話になりました」

 挨拶の言葉を告げて顔を上げたアスランの視線がラクスの視線と重なった時

《・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・めまして、アスラン・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 ・・・・・・・・・・・・・の子供は紫になるのでしょ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 ・・・・・・・・・・・・・・・のですかザフトのアスラ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・》

 突然、アスランは見た事も聞いた事も無いビジョンと会話がまるでフラッシュバックの様に

 頭に浮かび消えて立ち尽くす

《何だ今のは・・・幻聴?、それほど僕は疲れているのか・・・・・・・・・・》

 ふと歌姫の近くに居た少女が目に入った

 その少女は何かに怯えてるような今にも消えてしまいそうな感じがする

 少女に声を掛けようとしたがアスランは意識を失い倒れた




あとがき

 アスランはフレイ、ラクスと出会いましたがこれからどうなって行くのでしょうか


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Mixingfate 第05話




 プラント国防委員会、パトリック・ザラ委員執務室

 パトリック・ザラはクルーゼと連絡を取っていた

「わかった歌姫は取り敢えず連合から逃れたのだな」

「・・・」

「それで何者か見当が付かないのか」

「・・・」

「エザリアの息子が・・・そうか」

「・・・」

「それから今回の件に関して査問委員会が開かれる事になった至急本国へ戻るように」

「・・・」

「いや、国防部会ではない。ザフトの査問委員会だ」

「・・・」

「わかっている君達の責任を追及する為ではない。その謎のMSと行動、能力について調査する為

 だから全員出席するように」

「・・・」

「クルーゼ、気を付けて戻れよ、連合の艦隊がその宙域に出没しているらしいからな」

「・・・」

 

 そこで回線は途切れた

 パトリック・ザラは少しの沈黙の後、後ろを振り返り窓際の席に座っていた男に話しかけた

「クライン議長、ラクス嬢はどうやら連合の手からは逃れたようです」

「そうかありがとうパトリック。いつも君には迷惑をかけてしまうな」

「議長、・・・・シーゲル、私は当たり前の事をしただけだ。今回の事は民間の慰霊団でも

 護衛を付けなかったザフトのミスそれにラクス嬢はまだ行方不明だ」

「ラクスの事は仕方がないとまだ諦める事もできるが問題はバロンの月の姫だ、友好と親善だった

 慰霊団への参加が・・・仔細な情報はまだ入ってこないが慰霊団の何人が無事でいられるか

 最悪のケースも考えなければ、もし月の姫に何かあったら重要な中立国を失う事になるかも

 しれない」

「シーゲル、バロンの月の姫もおそらくラクス嬢と一緒にいる筈だ。エザリアの息子が問題の

 MSパイロットと話をしたようでラクス嬢の事を頼んだらしい、所属不明のパイロットの目的は

 確認できたわけではないが月の姫を救出する事だったらしい」

「所属不明のMSはバロンの関係者が操縦している事になるな、それなら月の姫も無事だが

 それはそれで不味い事になりそうだ」

「バロンの関係者と決まったわけではないが目的が同じだった者を勘違いで攻撃したらしいのだが

 もしもバロンのMSだったらバロンに高性能のMSを作る技術があったと言う事になる」

 現在の戦闘はMSの優劣で決まってしまう事が多くクルーゼ隊が使用しているMSも元は

 オーブが開発したMSである、バロンは中立国と言えど開発されたMSが強力すぎるのは

 プラントの為にはならないのだ

 だが二人はザフトの開発陣がバロンと共同でMS開発を進めていた事をまだ知らなかった

 

「パトリックこんな時に話す事ではないとは分かっているがラクスが無事ならあの二人の事だが

 そろそろ次の段階に進めてはどうかと思うのだ」

「次の段階とは結婚と言う事か?私は早すぎると思うぞキラもラクス嬢もまだ何か足りない

 気がする」

「何が足りないと言うのだ、二人ともあと一押ししてやる人間がいないだけだと思うが」

「シーゲル、お前は身内のことになると目が曇る。」

「どういう意味かな」

「ラクス嬢は迷っているキラの事を嫌っている訳ではなさそうだが只の結婚相手としか思ってない

 私にはそれだけの様な気がするのだ、ただ結婚すれば良い訳ではないだろう」

「理由は」

「それを聞く所を見るとお前だって気が付いているのではないのか」

「ラクスは優しい子だ私の立場を思って婚約の話を受けてくれた、確かにラクスはキラ君の事を

 決められた婚約者としか見ていないが何があってもキラ君と結婚するそれは間違いない」

「シーゲル、私とレノアが上手くやれて居た頃、時折レノアと二人でラクス嬢と遊んだ事がある

 その頃ラクス嬢が良く話してくれたよ、私の望みはレノア様の様な素敵なお母様になりたいとな

 キラとラクス嬢の間に子供が出来ない事を婚姻統制局の検査結果でお前も知っているだろう」

「ラクスはその事も承知の上でキラ君と婚約した、今さら不平を言うような娘ではないぞ

 プラントでは子供のいない夫婦など沢山いるだろう」

「我々から見ればラクス嬢はまだ子供だぞ、理性で理解できても感情は別物だろう」

「それでは何故キラ君を婚約者に推薦したのだ、推薦したのはパトリックだろうが」

「キラにはプラントに柵が無いからな万が一二人が不和になっても何とかなる、エザリアや

 タッドの子供でも良かったがあの二人の子供だと困る事になる」

 その時、パトリックの秘書官が飲み物を持って来たので話は中断した

 コーヒーを置いて秘書官は退室して行った

 シゲール・クラインはコーヒーを飲んでから再び話し出した

「パトリック、本音を言うと私はアスラン君をラクスの結婚相手に期待していたのだぞ

 アスラン君とラクスを婚約者にしようとエザリアやタッドに推薦された時は内心喜んだ本当だ

 だからお前の方から断られた時は半分本気で怒った、コーディネーター同士の中で二人は

 最高の組み合わせと言う検査結果の報告を婚姻統制局から聞いた時は本当に悔しかった

 私も父親だからなラクスが孫を産んでくれる事を期待していたのだレノアもラクスの事を

 可愛がってくれていたのになんで反対したのか」

 流石に話がレノアの事になるとパトリックも複雑な表情を見せた

「今だから言うがレノアもラクス嬢とアスランの婚約自体は反対ではなく最初は乗り気だった」

 パトリックが意外な事を言うのでシーゲルも驚いた

「どう言う事だパトリック?お前達が離婚したのは子供達の婚約話が原因ではないのか」

「レノアから俺に政治家を止めるようにと何度も言われてた、アスランを政治家や軍人にしたく

 無いからラクス嬢との婚約話が持ち上がった理由が強硬派と穏健派の対立を緩和する為と

 知った時、俺がそれを利用して政治的地位の向上を考えたと思ったのだ、確かにそう言う考えが

 有ったのも事実だが私に私欲は無かったレノアも理解していた筈だが納得しなかった

 政治家を止めてくれと何度も言われたよ、それからはシーゲルも知っている通りだ」

「そうだったのか始めて聞いた。そのレノアも亡くなってもう3年か」

 二人は、元気だった頃のレノアを思い出していた

「婚約の話を潰してくれた事、今ではレノアに感謝している」

「どう言う意味だ」

「アスランとラクス嬢が婚約又は結婚していれば必然的に私の地位は上がっただろうしそして

 レノアを失えば憎しみで暴走していた筈だ」

「それが何度も国防委員会委員長就任を辞退している理由かパトリック」

「今でも地球連合に対する憎しみは消えてないからな、冷静に連合を見る事が出来るまでは自分を

 信用できない、だから今の地位より上になる心算は無い」

「強硬派はエザリアを中心に勢力を拡大している次の改選では強硬派が逆転するかもしれない

 それを抑える事が出来るのはパトリック、お前しかいない」

「大丈夫だあの二人は俺たちと同じだ。無謀な事はしない筈だ」

 プラント独立の為に戦った仲間の顔が浮かんだ

「アスラン君も今ではもう16歳か大きくなったろうな」

「・・・」

「何故レノアが亡くなった時に引き取らなかったのだ?」

「遠まわしに関係者に頼んでアスランに聞いてみたが断ってきた、今はどんな生活をしているかも

 知らんよ、アスランの事は忘れる事にした」

「それはアスラン君を政治家や軍人にしたくないと言ったレノアの意思を尊重しての事か」

「そうだ」

 それだけでは無くパトリックはレノアに似ているアスランを見たくなかったと言うのが

 本音だとシーゲルには判っていた

「先日バロンアカデミーの代表が来た時に会談する機会があってな偶然だがアスラン君の話が出た

 最初はアスラン君と同じ名前の子だと思ったが苗字まで同じだから判ったのだが

 パトリックよアスラン君は今度特進でアカデミーに入学するらしい、代表に名を覚えられる程

 アスラン君は優秀らしいな」

「そうか」

 パトリックがそう答えてから二人は沈黙。やがてシーゲルは部屋を出て行く

「今更どんな顔をしてアスランに逢えと言うのだ、逢えるわけが無いだろう」

 そう呟いてパトリックも部屋を出た

 

 アスランが目覚めた時、自分が何故病室で寝ているのかわからなかった

 何処からか歌声が聞こえてくる、妙に懐かしさを感じる歌声だ

 起き上がり周りを見るとベッドの脇でシャルが椅子に座りアスランもたれ掛けながら眠っている

 シャルが看病していてくれていたようだ

 慣れない戦闘行為などしたからどうやら疲れで倒れた見たいだな

 それに興奮もしていたみたいでシャルの無事を確認したら気が抜けたのかも知れない

 ふと思い出したのはプラントの歌姫と視線があった時の妙なビジョン

 あれは何だったのだろうか意識を失う前に見たものはただの幻覚だったのか

 そして最後に見たのは燃えるような髪をした女の子の碧眼の瞳だ意志が強そうに見えても

 今にも消えてしまいそうな儚い瞳だった、その儚さに声を掛けようとしてからの記憶が無い

 その時、病室のドアを叩く音がして二人の女の子が入って来た

 プラントの歌姫と先ほど考えていた女の子だ

「シャロンさん、時間ですよ」

 歌姫が起こそうと近寄ってきたので

「そのまま寝かせてやってくれませんか、シャルも疲れているようですので」

 口に人差し指で静かにと合図してから

 シャルを起こさないようにそっとベッドから離れた

「大丈夫ですか、アスラン様」

 歌姫は僕を心配してくれているようだ

「あ、心配をおかけしました」

 そして視線が合った

 《・・・ラン、お友達と話し・・・》

 まただ、また話した事のない会話が頭の中に浮かびそして再び頭痛がしてきた

「シャルを頼みます」

 アスランは歌姫にそう告げて病室から逃げるように出る

 歌姫は病室に残ったがもう一人の女の子が一緒に着いて来た

「大丈夫なの?まだ顔色が悪いわよ」

「ありがとう僕は大丈夫、少し疲れただけのようだから」

「そうよかったわ、あの子心配して二日も寝ていないの」

「え、僕は二日も寝ていたの」

「いいえ今日で五日目よ、あの子はよほど心配らしくてすぐに病室に来てしまうの

 始めは薬で眠らさせていたのよ、だから交代で見る事にしたの」

「そうか皆には迷惑かけてしまったな、君にも、え~と君の名前は?」

「そうだったわね、私はフレイ、フレイ・アルスター」

「こんな時に変だけど、似合っている名前だね」

「あら、意外とプレイボーイさんだったのね」

「ち、違うよ、意識を失う前に君の瞳を見た、意志が強そうなのにとても儚く感じたんだ」

 アスランは無意識に女の子の心をくすぐってしまう事が良くあり

 しかもアスランの容姿は好みの差はあるだろうけど女の子にとって標準以上でフレイにとっては

 最良の好みに近かい容姿であった

 言われたフレイは自分の顔が赤くなるのを感じていたが何とか押さえ込むのに成功した

 ヘリオポリスで多くの男性達に声を掛けられた経験が豊富でプレイガールとも言われてるフレイ

 アスランには自分の事がそう見えたと思った

(もっとも経験が豊富と言っても実はフレイが男と付き合った事は無く噂が先行してるだけだ

 プライドが高かった所為もあるがそれ以前にフレイの心を揺り動かす男がいなかったのだ

 親からの強制で婚約者となったサイともデート等した事が無い)

 たぶん自分をその様に見てくる男の人は初めて、いままでその様な事は言われた事が無い

 男達は自分の容姿しか見てくれない、婚約者のサイもやはり表面の私しか見ていない

 月の姫からこの青年の母親の事を聞いた、それこそ青年の母親はプラントと地球連合の戦争に

 全く関係ないはずの人だったのにユニウスセブンで亡くなったらしい

 でもアスランと言う青年からはナチュラルに対する憎しみはあまり感じられない

 私を見る目はただの女の子に対する目、何故だろう私達が憎い筈なのに

 ユニウスセブン攻撃を指示した人の中には父が居た、そして自分は何も知らなかった

 父が死んだのだから私には勿論ザフトに対して憎しみがあるけれどザフト=全て悪い人達では

 無い事も知った

 だから本当に悪いのは誰?地球連合とプラントのどちらが悪いのかと言うのは無意味な事で

 今は戦争の起きた理由を知るべきだと思っている

 

 アスランは目的があった分けでは無く行く宛もないまま無言で歩いていた

 何故か歌姫の近くに居ると頭が痛くなるから、ただ歌姫の側に居たくなかっただけだ

「何処へ行くの?」

「いや、どこと言うか何処へ行けばいいのかわからない、それにここは何処?」

「酷い、知らないで歩き回っていたの?私だってここを知らないのに迷子になったの?」

「ごめん僕は軍人じゃないからここの構造がわからない、本当に迷子になった見たいだ」

 フレイはさすがに心細くなったからか前を行くアスランの左腕に右腕を絡めた

 一瞬、アスランは途惑った顔をしたがそのままにして歩き続けやがて二人は広い場所に出た

 人がたくさん集まっていたので現在位置を聞こうとして声を掛けた

 振り返ったのは二人

 一人はナイト、もう一人は捕虜になっていたザフト兵だったがナイトの様子が少しおかしい

 いつもは陽気なのに暗い感じがした

「ナイトどうかしたのか」

 ナイトは、フレイを少し睨んだが頭を振ってから話し出した

「あなたに罪は無いのにごめんねお嬢さん、アスランもう大丈夫なのか」

「ああ大丈夫だけど、どうした何があったのかナイトらしくないな」

 横からザフト兵が声を出した

「当たり前だろう、父親が死んだんだ平静でいられるはずが無いだろう」

「叔父さんが、・・・・ぁ」

「気が付いたか、ラクス達が乗っていた慰霊団の事をプラント政府が発表を先程した生存者は

 二人を除けば誰もいないもっとも二人とも行方不明の扱いだが」

「なんで、二人ともここに無事で居るじゃないか」

「そんな事公表できる訳が無いだろう、連合は事故を連合の所為にしていると非難しているのだ

 慰霊団を攻撃したのは誤解にしろ事実、この事を連合の市民達が知ればどう思う

 証人の二人が居ると知れば問答無用で消しにかかるに決まってるそんな事になったら

 バロンも巻き込まれるだろう」

「じゃあ君達はプラントに戻れないのか」

「俺はおそらく死亡扱いだから仕方が無いがラクスはプラントに月の姫はバロンに暫らくは

 戻れない」

「僕が悪かったのか、僕の所為なのか」

 黙っていたナイトが首を振りながら

「違う、アスランが二人を助けなければ事実は闇に葬り去られていた

 おかげで親父の事もわかった」

 その時、フレイがアスランの腕を強く抱いた

 アスランがフレイを見ると泣きそうな顔をしていた

「ご免なさい」

 以前のフレイからは信じられないくらい素直に謝った

 だがナイトから返ってきたのは

「君の所為ではないよ、立場が逆だったらザフトだって同じ事をするだろう」

「ちょっとまてナイト、ザフトはそんな事は絶対しない」

「そうじゃない後始末の事だよ、俺だってザフトが慰霊の為の人達を攻撃するなんて

 思った事は無いさ」

「そうか、そうなら良いが」

「それでは彼女達は?フレイやもう一人の女の子の事はどうする気なのかな」

 アスランが質問したが、答えが返ってきたのは前の二人ではなく後ろからだった

「二人には悪いが歌姫と同じ、ついでに言えば月の姫もな」 

 振り返ったアスランが見たのは憔悴した顔のグラディスだった

 その後ろにはマイスもいた

「グラディス少佐、どうしてですか彼女達こそ関係ないでしょう」

「彼女達には悪いが立場は同じだ、歌姫と月姫の二人と彼女達が一緒に出た事は当然連合も

 知っている、彼女達の居所が知られたら同じ結果になる、その方が二人の為にも良いし

 了解もすでに取ってある」

 フレイの顔を見るとアスランに向けて頷いてみせる

「私達はあの船から3人の方々のあとを勝手に付いて来ました、私もミリー、

 いえミリアリアもその事に後悔はしていません、私たちの事で迷惑は掛けたくは有りません」

「そう言うことだ、それにしても歩き回って良いのかアスラン、突然倒れたとラスティー君から

 聞いた時は心配したぞ」

「ラスティー?誰の事ですか」

「挨拶もまだったな、俺の事だよろしくなアスラン」

 ザフト兵が名乗り出た

「あ、よろしくアスラン・リヒターです」

「それは聞いたよ初めてあった時にな、それにしても君は強いな負傷していたとしても簡単に

 俺の事を押さえ込むのだから」

「少しは格闘技をやっているから」

「そうは言ってもな例え怪我をしていても軍人でザフトレッドの俺が何も出来なかったからなぁ」

「「「 え 」」」

 ラスティーの言葉にアスランとフレイを除く3人も驚いた

「どうしたの皆さんザフトレッドがそれほど珍しい?中佐も少佐も赤だったと聞きましたが」

「そうじゃない、そう言えばまだ正式な所属と名前を聞いていなかったなラスティー君

 軍機なのは分かるが教えてもらえないか」

 ラスティーは迷った、確かに彼等は中立国の人間で待遇も悪くはない

 そしてザフト以上に自由な雰囲気がラスティーには合う

 結局、スッカリなじんでしまっていた楽天的なラスティーは正直に答えた

(勿論、軍機に触れないよう)

「ラスティー・マッケンジー、第xxx期ザフトアカデミー卒業順位は4位のザフトレッド

 クルーゼ隊に配属しヘリオポリス奇襲作戦にて死亡と判定されていると思う、多分」

 ラスティーの答えにやはり黙ってしまった3人、意味がわからないのは

 アスランとフレイの二人だけ

「アスランが退けたのは俺の仲間だしかも簡単に倒したじゃないかそれほど驚く事はないでしょう

 MSで戦闘操縦したのは初めてだったのだろうアスラン、ザフト最強部隊と言われていたのに

 素人に簡単にやられるとは情けないなぁ」

 ラスティーの言葉にさらに驚いたのはマイスとグラディス

「ちょっとまてラスティー君、クルーゼ隊のザフトレッドを4人も本当にアスランは退けたのか」

「ザフトレッドは4人だけどクルーゼ隊長まで倒したんですよアスランはね

 それだけじゃないです連合のパイロットは多分エースクラスのパイロットだと思いますよ」

 マイスとグラディスは今度こそ気を失うかと思った

 今のが事実だとすれば、ザフトと簡単に接触も出来ないザフトのクルーゼ隊は

 ザフト出身者の多いバロン防衛軍にもその存在が鳴り響いている、彼等にも面子がある筈だから

 下手に接触したら今度こそ倒そうとしてくるのは間違いない

 (そんな事は無かったのだがマイス中佐も混乱して判断を誤った。無理も無いけど)

 そしてバロン本国に帰国もできない現状

 本国経由で歌姫とラスティーを送還しようと思っていたがそれも出来ない

 二人は全ての道が塞がれた気がした、マイスとグラディスはお互いの顔を見てから

 少しため息をした

「どうしますマイス中佐」

「指令室に戻って少し頭を冷やそうか少佐」

「そうしますか」

 二人の士官は周囲の人々に挨拶する事すら忘れて基地の指令室に向かう

 代わりに二人の女性が現われた、エルフリートとフレイと共にボートに乗っていた女の子だ

「ここに居たのフレイもラスティーさんも、何か有ったの?」

「どうしたのかしら、お二人ともこの世の終わりのような顔をしていたみたいだけど」

 離れて行く二人を見ながら話しかけてきた

「ラスティーさん、薬の時間ですよ軍医の人がすぐ来てくださいといっていました」

「ありがとうミリアリアさん」

 本来はフレイの役目だったのだがアスランと一緒に居なくなったからミリアリアが代わりに来た

「ナイト、少しは落ち着いた?」

「ああ、エル心配かけた。まだ気持ちの整理が付いていないが何とか大丈夫だ」

「こう言う時は何かで発散するのが一番よ、私も付き合って上げるから行きましょう」

 エルは心配そうにナイトに寄り添い出て行こうとしたがそのエルにミリアリアが声を掛けた

「エル、私はどうすれば?」

「ぁ、ミリーごめんね、悪いけど二人にしてくれない」

「分かったわ」

 ミリアリアはナイトに向かって黙って少し頭を下げた

「君も気にしなくていいよ、君達の所為じゃないから」

 ナイトはエルと一緒にこの場を去った

 残されたのは4人、去った二人がこれからどうするのか想像できたのは2人

 理解出来なかったのはアスランとフレイだが正確にはアスラン一人だけ何も分からなかった

(フレイはなんとなく想像はできていた)

 そしてアスランとフレイ、ラスティーとミリアリアが組む形となった

「そう言えば君の名前も聞いていなかった」

「そうだったわね、私の名前はミリアリア・ハウよろしくねアスラン、エルとは幼馴染

 フレイの親友よ」

「こちらこそよろしく」

 笑顔で答えるミリアリアにアスランはミリアリアと握手をしようとしたが何故か体が動かない

 フレイがアスランの左腕を取っていたので前にいけなかったのだ

 フレイは笑顔でミリアリアを見ているが笑顔なのに何故かもの凄く怖く感じるアスランだった

 ミリアリアはそんなフレイを見ると苦笑いしながら近寄り、アスランに聞こえないよう

 そっと声を掛ける

「大丈夫よ、今はまだ興味が無いから」

 その言葉にフレイの顔が少し赤くなる

 そんなフレイの様子を見たミリアリアはフレイと知り合って3年になるけど

 こんな事は初めてだった、出会って間もない青年にフレイが寄り添っている

 フレイは今まで恋と呼べるほどの恋愛などした事が無かった筈と思う

 フレイの性格は良く分かっている、繊細で優しい子だけど身を守る為いつも無意識に

 王女様のように振る舞っていた、そのフレイが素直に反応してくる

 まさか一目ぼれ?、恋愛感情を越えた何かをフレイから感じる気がする

 

 ラスティーが医務室に行くといったのでアスランも病室に戻る事にしたがある事を思い出した

 3人をその場に置いて近くに居た兵士に案内をしてもらいグリスターンに向かい

 私室に置いてあった物を手に再び3人が待つ場所に戻り病室に向かった

 

 寝ているシャロンの頭を優しく撫でながらラクスはアスランと言う青年の事をボンヤリと

 考えていた、どこかで逢った気がするのに思い出そうとしても思い出せない

 ラクスは5歳以下の記憶は年相応に覚えているのに6歳の頃の記憶だけが何故か曖昧で

 思い出せない、その思い出せない記憶の中で逢った事がある気がしたラクスだった

 アスランも5歳の頃の記憶が何故か曖昧で二人とも10年前の記憶が無いに等しいのは偶然?

 実はこの二人幼い頃に合っていた、最もお互いの記憶に残るほどでもなく父親・母親同士が

 親しい友人だから不思議ではない

 

 

 ひょっとして私を避けているのですか?先ほどのぎこちない態度は一緒に居たくないという

 感じでした、アスラン様のお母様はプラント対地球連合の戦争に巻き込まれてユニウスセブンで

 被害にあわれ亡くなられたと聞きました、父はプラントの指導者で一方の当事者ですから

 嫌われて当然ですね、

 何故でしょうアスラン様の事を知りたいと思います、今までその様な事を思った事がありません

 キラ様にもその様に感じた事がありませんでした

「お兄様~マイさんばかりずるーい」

 突然、シャロンが声を出したので思わず撫でていた手が止まり、ついでに思考も止まってしまう

「・・・・」

 寝言だったらしい

 ラクスはふとシャロンとアスランの関係にも興味を持った

 シャロンに兄弟姉妹はいないと聞いている、でもシャロンがアスランに示す態度は本当の

 兄妹以上で、そしてもう二人同じような人がいるらしい

 シャロンは無意識に政治的なもの戦略的なものを正確に捉える事が出来る子だそして何時も

 毅然としているシャロンがアスランの前に出るとただの妹になってしまう関係が羨ましいと

 そんな事を考えていたらシャロンが目を覚まし暫らくボンヤリとしていたがアスランが

 居ない事に気がついた

「あれ、お兄様は?」

「シャロンさんの事を頼まれて出て行かれました」

「酷い私を置いて行くなんて」

「仕方がありませんわ、シャロンさんは寝ていましたから」

「む~、アスランお兄様は一人にしておくと危険なのに」

「???何が危険なのですか?」

 シャロンの言葉に疑問しか浮かばないラクスだった

「だってお兄様を一人にしておくと直ぐ女の子が寄って来るの」

 ラクスはシャロンの言葉に笑いそうになる、ようするに妬き餅なのだ

 確かに印象的な青年であり自分の心も揺れている事はわかっている

「大丈夫ですわ、ここには女の子があまり居ませんでしょう」

「いるわ、ラクス様にあの二人の女の子がいるもの」  

「あら、言いましたでしょう私には婚約者が居ましてよ」

 ラクスの言葉にシャロンはジッとラクスを見つめた、無言で見つめられているとラクスは

 隠しているものが出てきそうになり目をそらす

 慌てて目をそらしたラクスにシャロンは

「ふ~ん、やっぱりラクス様もお兄様のことが気になる見たいね」

 反論しようとした時に当のアスラン達が入って来た

 それもフレイと並んで来たからシャロンの機嫌が悪くなる

 シャロンの機嫌が悪い事にアスランは直ぐに気が付いた

 だからシャロンの側にきて頭を撫ぜながら

「シャル起きていたのか、ごめんな疲れている様だったからラクスさんに頼んだけど」

 シャロンは頭を撫でられただけで機嫌が良くなったが追求する事を忘れない

「お兄様、私が居たこと忘れていたの」

「だから忘れたわけじゃないってば、本当だぞシャル」

「ふ~ん、フレイさんと仲がよさそうで良かったねお兄様♪」

「ふ、普通だろ」

「そう?始めて見たわ、お兄様のにやけた顔♪」

「ど、どこも、にやけてなんかいないだろう」

「ふ~ん♪」

 アスランとシャロンの会話を聞いていた残りの4人は笑い出すのを堪えていた

 まるで本当の兄妹みたいだと皆思ったのだ

 そうアスランはマイやシュン以上にシャルに弱かった

 だがアスランはこの状況から逃れる為の秘密兵器を取り出した

「ほら約束のペットロボットだこれを取りに行っていたんだよ」

 渡されたのは銀色に輝く丸い球体のモノだった

「ほんとうれしい。名前はなんて言うの」

「ハロだ、可愛がってくれよシャル」

「よろしくね、ハロ」

 声を掛けられた銀色ハロは

「ハロ、シャル元気、シャルアソボ」

 そう喋りながら病室の床の上でシャロンの周りを跳ねている

 それを見ていた4人の内、女の子3人が羨ましそうに声を出した

「可愛いわね」

「私も欲しいな」

「ハロですか、可愛いですわね」

 だがラクスの言葉にまるで反応したようにアスランの手に残されたピンク色をした同じものが

 突然、アスランの手から飛び出した

 飛び出したピンクのハロはラクスに近寄りラクスの周りを跳ねている

「ハロ~ラクス」

 「「「「「 え 」」」」」

「あ」

 驚いたのはラクスだけではなかった

「あ」と声を出したのはもちろんアスランだ

「ラ~ク~ス、ア~ソボ」

 ラクスは驚いたがハロのかわいらしさに手に抱いたりダンスをしているようにも見える

 そんなラクスを見ながらシャロンがアスランに聞く、聞くというより詰問に近い

「お兄様どう言う事なのか説明してくれます?手が早いのにもほどがありますよ

 あったばかりの女の子それもプラントのアイドルで歌姫のラクスさんにだなんて」

 詰問に近いのに何故かシャロンはそれほど怒っていないように見えるのは不思議だが

 他の3人も何故?という感じでアスランの答えを待っている

「手が早いって、ち、違う偶然だよ、テストに使って消すのを忘れてただけだよ

 ハロをテストしていた時にシャルがくれたDDMが手元に有ったから」

 アスランの答えにDDMを渡した本人のシャロンだけは納得したようだが複雑なのは

 フレイだった

 当然だろう気になるアスランが偶然とはいえ女の子にプレゼントしたようなものだから

 アスランの性格からしてどう見てもピンクのハロのデータを消去など出来るはずがない

 必然的にピンクのハロはラクスのものになるからだ

「ふ~ん、アスランは女性の喜ばし方を知っているなぁ。俺も見習わなくては」

「ち、ちょっとラスティーさん、喜ばし方ってそんなつもりじゃ」

「う~んアスラン、そのラスティーさんと言うのは止めてくれないかな、呼び捨てでいいよ

 年だってそれほど変わらないだろう?それに君達とは永い付き合いになりそうだから」

「?」

 この時、ラスティーはただ漠然とだがここに居る人達と行動を共にする気がしていた

「それにしてもラクスがあんなにはしゃいでいるのを見るのは何年振りだろうな」

「と言うとラスティーさんは」

「ラスティーだってば」

「ラ、ラスティーはラクスさんをご存知なのですか」

「敬語も止めてくれなんとなく身体がむずむずする。幼馴染だよ家が近くて子供の頃は

 よく遊んだな、でもラクスが婚約する前に俺はザフトに入隊して暫らく逢わなかったが

 まさかラクスの婚約者が同期は思わなかったけどね」

「え、ラクスさんは婚約なさっているの」

 フレイの質問だが嬉しそうだ、当のフレイも婚約しているのにその事を忘れてる

「まぁラクスの意思じゃない政治的という奴だ、ラクスの親父さんとザラ国防委員の策略だな」

 その言葉にアスランの笑顔が消える

 ザラと言うのはプラントでは珍しいと言うより現在は一人しか居ない苗字なのだ

 アスランの父親であるパトリック・ザラしかいない筈だ

「うん、どうかしたかアスラン」

「その、もしかしてザラ国防委員とはパトリック・ザラですか」

「アスラン知っているのかそうだパトリック・ザラ国防委員だよ、まぁあの方は有名だからな」

「そうですか」

 父上はまだそんな事をしているのかとアスランが思い暗い顔をしたので

 ラスティーが誂う

「なんだ、アスランはラクスが気に入ったのか残念だったな」

「違います、プラントの事を考えていただけです」

「そうか本当に?」

 

 

 基地の司令室でマイス中佐とグラディス少佐は先程報告された事実に困惑していた

「次から次へと問題が起きるのだ、非科学的だが私達は呪われているのかなグラディス少佐」

「そう思いたくもなりますね中佐」

 脱出してきたラスティーとラクス、フレイとミリアリアの基地内移動用IDを作成しようとして

 遺伝子検査を命じたのだが二人が困惑してる理由は手元にある遺伝子検査報告書の内容である

「何でラクス・クラインとフレイ・アルスターのデータが同じなんだ」

「容姿も声質も全然違うのに、でも何度も検査を繰り返した結果だそうですよ中佐」

「計算上100億分の一回位でしか起きない筈がよりによってなんでこんな時に起きる

 コーディネーター同士やナチュラル同士なら納得もできるがコーディネーターとナチュラルでは

 実際、200億人必要と言う事だなんぞ」

 二人は頭を抱えてしまった

 ラクス・クラインのプラント送還やザフトへの接触も駄目、本国へ連絡は取れても戻れない

 この基地には大隊規模が一年間活動できる資材やエネルギーが蓄積されてるからまだ良いが

 自分達より階級の高い人間は居ずおまけにグリスターンに居る民間人は政治的にも地位が低い

 全て自分達に罹ってくる、普通なら逃げ出したくもなる

「アスラン君が悪い訳ではないがこうなると恨み言の1つも言いたくなる」

「そうですね、本国も不用意な連絡はするなと言ったまま回線が繋がりませんから本国からは

 増援を寄こすとは言ってましたが当てにはなりませんね、そろそろ決断する時期に来ていますが

 どうします中佐?」

「そうだがアスラン君は拒否するだろうな」

「ええ、でも私達全員が生き残る為には彼の力は必要です」

「全ての責任は私が取る非常事態に於ける指揮官権限にてアスラン・リヒター、ナイトファルト・

 フェルム両名を本日より軍属とする」




フレイとラクスですが贖罪的な気持ちが強くてアスランの事を今はまだ男として見てません


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Mixingfate 第06話

別世界の人物がこの世界に来た理由の一部が明らかになりますがその別世界は2つ
一つはこのseed世界と似た世界、もう一つはコーディネーターの概念が存在しない宇宙世紀世界


 その時男は嫌な予感がした妻になった最愛の女性を街中で見失しなったからだ

 あの日からよほどの事が無い限り妻は夫から離れる事は無く

 心当たりを探すが見つからず日も暮れ、もしかして家に帰っているかと急いで家に帰ったが

 やはり妻の姿は見つからない

 自分も妻もこの世界の存在ではないのだから当然この国に友人や知人も居ないから焦りが募る

 その時

「ジオンのスパイがいるのはあの家だ」

 どこかで聞いた声がしたがそれどころでは無く急いで逃げなくてはならない

 自分も妻もこの国にとっては招からざる客なのは事実だ

 もしかして妻は彼らに捕まってしまったのか?

 何かあった時の為に決めてた場所を男は必死で目指して逃げた

 ようやく約束の地に着いたがそこには気を失った妻と嘗ては妻の婚約者だった男が居た

「ようやく来たね」

「なぜだ?」

「決まっているでしょう彼女を返してもらう為だよ、彼女には君は相応しくない」

 その時、妻の身体が光り出した

「何をした」

「君のいない世界に行く為だよ、彼女の望みは叶えられたからね次は僕の番だよ」

 妻の婚約者だった男も光り出した

「二度と・会う事・は無い・さよな・ら・ア」

 妻も妻の婚約者だった男も消えた

「彼女は、彼女が選んだのは・必ず見つけ出す」

 そして男も光り出しやがて男も消える

 

 男はベッドから飛び起きた

「夢か」

 着ていたシャツが汗でびしょ濡れだった

 男はモニターのスイッチをONにした

 隣の部屋、元婚約者の部屋が映る

 あの男から彼女を奪い返した、しかし彼女は決して自分を許そうとしない

 彼女を無理やり自分のモノにしようとした事も有ったが彼女に触ろうとするとまるで見えない

 壁が在るように彼女に触る事が出来なかった

 そんな時、裁定者と名のる存在が二人の前に現われて裁定者は自分に告げた

{お前は罪を犯した、罰として永遠に彷徨う地獄を与える}

 彼女は次元漂流者になったと裁定者は彼女にも告げた

 彼女が心を開かぬ限り誰も彼女に触る事は出来ない傷つける事も出来ない

 触る事が出来るのは次元漂流者として生まれた彼女の子供達だけだと

 そして裁定者は知っていたのだろう彼女に何かを告げて去った

 あの時あの男の子供を彼女は妊娠していた

 異空間に入り込んだせいか分からないが彼女のお腹は直に大きくなりやがて彼女は双子を産んだ

 あの男と彼女によく似た容姿の子供達

 子供達は直に大きくなったが何故か5歳頃で成長が止まってしまった

 自分達が居た世界によく似た世界や自分達が存在しない世界

 幾つもの世界を渡り歩いたが子供達は相変らず5歳位だ

 やがて子供達の目の輝きに自分への憎しみを感じ、この世界に流れ着いて偶然知り合った

 夫婦に預けた

 この世界は自分達が居た元の世界に似ているせいか時折来る連絡で子供達は成長を始めたと

 

{お前は罪を犯した、罰として永遠に次元漂流する地獄を与える}

 自分はそれほどの罪を犯したのだろうか?

 確かに自分の所為で散った命は少なくないけれどそれは自分と彼女の為だった

 悪夢を見る為に男は再び眠りに就く

 

 グリスターンが隠れた秘密基地の近くにある廃棄されたコロニー群

 その中の一基はコロニー外部から見れば廃棄されて当然に見えるが内部の設備は生きていた

 ここに生活している人間が二人居る

「痛みは治ったかい?」

「えぇもう大丈夫ですわ、でもどうしてでしょう今までこのような事無かったですのに

 あの子達を手放した罰でしょうか」

「罰が当たるとしたら僕だ、確かにあの夫妻が言う通り子供達を育てる環境では無かったからね

 君の所為ではないよ」

「あの人達に預けて10年になりますわ、あの子達は元気にやっているでしょうか」

「大丈夫、あの人達は信頼できると思う」

「あの子達も大きくなったでしょうね」

 モニターを見ていた目が一点に集中した

 表示されているのはプラントと月の通信量

「ここも同じような状況見たいだけどどこか違うね」

「あの二人は私達と同じようになるのでしょうか」

「罰を受けるのは僕だけでいい、彷徨えるオランダ人になるのは僕だけでいいよ」

「・・・」

「彼から引き離し巻き込んだ事で本当は君も僕の事を恨んでいるのだろ?」

「私は」

「素振りは見せないけど判っているよ、君は今でも僕を受け入れてくれない次元漂流者となった

 君を僕が力ずくで望んでも君自身が望まない限り受け入られる事はないけど永遠に会えない彼を

 君が忘れる日は来るのかな、あの子達と父親である彼を永遠に逢えなくしたのだからね

 人と関わりを持てば僕がした事が如何に不条理か理解る筈だよ、あの子達も僕を恨む事になる」

「・・・」

「人生は永き旅と誰かが言っていたけど僕の罪の旅は何時まで続くのだろうか」

 

 

 マイスとグラディスの心配してた通りアスランは軍属になる事を拒否し私室に閉じ籠もり

 ナイトが説得しても駄目だった、その所為で一時的に二人の仲が険悪になってしまう

 マイスとグラディスはシャロンに説得して貰おうとしたが彼女は説得する事自体を拒否した

 時間的にまだ余裕があるとはいえ早急に確定しなければ困る事になるので二人は焦る

 私室に閉じこもってしまったアスランを外に引っ張り出したのは意外な人物だった

 探索と称し基地の外でボートを操作して貰う為と称してアスランを連れ出した人物はアスランが

 会う事を避けていたラクスである

 

 基地を少し離れてからアスランはボートを止めた

 窓から宇宙を無言で眺めている歌姫の横顔はハロと戯れている時とはまるで別人で神秘的な

 雰囲気すら感じられるのだが、ただ何故かマイとどこか似ているように思え親近感を感じるのだ

 どこがと問われたら答えようは無いのだが

「私は宇宙を見るのが好きですわ」

 アスランに向けて喋ったのではないラクスの独り言のようだ

 ラクスは振り返りアスランをじっと見つめた

 何時もラクスと視線が合うと頭痛がするアスランだったが今はしない

「ラクスさんもそうですか僕も好きです。嫌いなMSに乗った時でも宇宙空間に出た時は

 何故か落ち着きました」

 アスランがそう答えるとラクスは少し微笑むが

「アスラン様、今日は私をお避けにならないのですね」

「え、避けてなど」

「いいえアスラン様は私を避けていました、今日こそは理由を知りたいと思いまして

 マイス中佐とグラディス少佐に許可を頂いてボートをお借りしました」

「・・・」

 アスランはシャルやマイならまだしも女性と二人きりになるのは苦手だ

 このような状況に追い込んだマイス中佐とグラディス少佐を恨みたくなった

「アスラン様、私の父はプラントの指導者の一人です」

「?それがどうかしましたか」

「プラントと地球連合の戦争をどう思います。アスラン様は私の父が憎いですか」

「意味がわかりませんがラクスさん」

 本当に分からないのかアスランは首をひねった

「アスラン様のお母様は戦争の犠牲となってユニウスセブンでお亡くなりとお聞きしました

 片方の指導者である父は憎しみの対象になります、違いますか」

 アスランはラクスの言いたい事が判った、プラントの指導者が憎いからその娘であるラクスをも

 避けているのかと聞きたいのだ

「たとえラクスさんがプラントの指導者の娘さんでも関係はありません、確かにプラントの一部の

 指導者に少しは恨みもありますがラクスさんを避けていた理由は違います」

 ラクスが少しホッとしたような顔をするよほど気にしていたようだ

「アスラン様、それではどうして私を避けていらっしゃるのでしょうか」

 ラクスと視線が合うたびに頭が痛くなり幻覚が見えるなどと言っても信じて貰えないだろう

 アスランは告げても良いのか困ってしまった

「それからアスラン様、フレイさんやミリアリアさん見たいにラクスと呼んでいただけますか

 私だけ敬語では差別ですわ」

 ラクスは頬を膨らませていたがそう言われてもアスランには呼び辛い

 彼女はプラントの民間人とはいえアイドルでそして歌姫と呼ばれるのに相応しい容姿と声、

 彼女の歌はバロンでも良く聴かれている、そんな女の子を呼び捨てに出来るはずも無かった

「そう言われてもラクスさんこうしませんか、ラクスさんが僕の事を呼び捨てにしてくれたら

 僕もラクスと呼びます」

 幼馴染のラスティーですら呼び捨てにしない程ラクスは男に対して礼儀正しい事を知ってる

 故に彼女には出来ないと思い提案したのだが

(ラクスが二人の時だけだがイザークを呼び捨てにしてる事をアスランが知ってる筈もない)

「はいわかりましたアスラン、約束ですわ」

 少し頬が赤かったがラクスはアッサリとアスランを呼び捨てにしたので困ったのはアスランだ

 だけど約束は約束である

「わかりました、ラ、ラクス」

「はいアスラン」

「私がラ、ラクスを避けていたのは、シャロンや他の皆には内緒にして貰えますか」

「はいアスランと私だけの秘密ですわね♪」

「それほどの事ではありませんが、初めて貴女とあった時の事を覚えていますか」

「はい、もちろん覚えておりますわ」

「貴女と視線が合った時の事です、幻覚と言うのか良く分かりませんが妙なビジョンや会話が

 頭の中で浮かびただの疲れから来たのだと思いました、でも医務室で再びお会いした時やはり

 同じ事があり貴女に合う度に頭痛がするのです、だから貴女に合うことを避けていました

 何故そうなるのかわからないのです」

「そうでしたか、どの様なものでしょうか」

「ハッキリと覚えていませんが貴女と僕が知り合いのような会話でしたが奇妙な事に今の年齢位の

 僕と貴女だった気がします」

「私も、初めて・・・きゃ」

 アスランに近寄ろうとしたラクスは床を張っていたコードによろめいてしまう

 そのラクスをアスランが抱きとめた、腕の中の視線が絡み合うラクスとアスランだが

 アスランとて男である無意識だろうが抱きしめている腕に力が自然と入る

 ラクスは抱きしめられた事が恥ずかしかったのか異性としてのアスランが怖くなったのか 

 慌ててアスランから離れた

「ご、ごめんなさい、ありがとうございます」

「だ、大丈夫ですか」

 女の子を抱きしめてしまった事がアスランも気まずかったのか狼狽え返事が吃る

「ア、アスラン、ありがとうございます」

「いえ、こちらこそ」

 ラクスは始めて男女二人きりだと言うことを認識した

 もしアスランが邪な気を起こせばラクスには抵抗できない

 でも心の何処かでそれを望む自分がいる事も気が付いてしまいラクスの動悸が止まらない

 ふと父シーゲルの顔が浮かぶ

 【流されては駄目です私には婚約者がいる居るのです、父の期待を裏切る事は出来ない】

 やがてラクスは乱れた心を静める為に宇宙を見た

 そんなラクスにアスランが

「もうだいぶ離れてしまいました、もう戻りましょう」

 ラクスに告げると同時にアスランはボートを反転させる

 落ち着きを取り戻したラクスは星を見ながら語り出す

「何故人は争うのでしょうか?私は戦いが嫌いです身を守る為と称する武器も嫌いです

 武器も無ければあの方は戦争に出る事も無くあの方を理解する為の時間も増えるのに」

 アスランは黙ってラクスの言葉を聴いている

「何故あの方は軍人に成ったのでしょうか?あの方はよく自由に生きると言っていました

 自由とはそれほど大切なのでしょうか?あの方が何を望んでいるのか私にはわかりません

 アスランにはわかりますか?」

 あの方と言うのはラスティーが言っていたラクスの婚約者の事だとろう

 嘗ての同級生であるキラがラクスの婚約者だともちろんアスランは知らない

 婚約者の事を知らない筈のアスランに問うほどラクスは悩んでいる

 そしてラクスが言っている事の一部はアスランが悩んでいた事でもある

 母を失ったアスランはもちろん戦争が憎い、地球連合が彼女達に行った行為を目の当たりにして

 考えた事が二つあった

 ラクスが言った通り人は何故争うのか?

 戦争を望んでいるのは利益を得る人達と一部の狂信者達だとマイやシュンも言っていた

 あの戦艦のクルー達も戦いなど望んでいないと思うけど

 戦いになれば人間としての良識など必要無いどんな卑怯な事をしてでも生き残ろうとする

 アスランにはその事自体が戦う事を正当化している気がした、

 身を守る生き残る為といいながら武器を敵に向け、守る為の武器であっても相手を死に至らす

 では彼女の言う通り武器が無くなれば戦いは無くなるのか?守る為と言う大義名分が存在する

 限り戦いは無くならない、人は自分の身体ですら凶器とする事が出来るつまり肉体ですら武器に

 成るのだから武器を無くす事などできるはずが無い

 まだアスラン・ザラと呼ばれていた頃に父パトリックから言われた言葉

《人には役割がある、人の為に何かを生み出す者安らぎを与える者望みの為に人を導く者

 人を守る者、お前は何になりたい》

 まるで今の状況を予言していた言葉だ

 シャルや歌姫は人々に安らぎを、でも今の僕には人の為に生み出す者になれない

 バロンに帰れなければ何も出来ない、ラクスの婚約者もそう思い人を守る者になったのか

 それともラクスが言うように自由を求める為に軍人に成ったのかもしそうならばおかしい

 軍人とはある種の必要悪で守るために必要な暴力だ僕もそう思う

 でも自由を求める為に自分達以外の人達を武力で押さえつけまた敵対する

 そこに相手の自由は無い、自分が自由なら他人の自由は無くてもよいのか

 信じるものや価値観など人によって違う筈なのに

「ラクス、その方とは貴女の婚約者の方ですか」

「はい」

「僕はその人の事を知らないので批評できる立場ではないけど婚約者の方も貴女が大事だから

 貴女を守る為に軍人に成ったのではありませんか?」

「あの方は私を好きではありません、あの方から私は好きだと言われた事がありませんわ」

「そうでしょうか、それは一方的な考え方ではないですか?本心を人には明かさない人もいます」

「・・・」

「では伺いますが何故婚約をされたのです?それともさせられたのですか?貴女の意思は

 無かったのですか?」

 この事を聞くのは嫌だったのだが知りたかった父パトリックとラクスの父親が二人の意思に

 関係なく婚約させたのかアスランはどうしても知りたかった

「私の意思です、確かに政治的な配慮というものによる婚約でしたがあの方が嫌いでは有りません

 好きというより憧れでしょうか自由を失わないように生きてゆく姿に憧れました

 私も本当に嫌いでしたら拒否は出来ました」

 選択権は与えていたのだな父上もラクスの言葉に少しホッとしたアスランだった

「ですが何故、軍人に成る必要が有ったのでしょう、確かに私は戦いが嫌いですが現状では

 戦う方が必要なのを否定するほど愚かでもありません、それでもあの方は軍人に成らなくても

 指導者としての道もあった筈です、私と結婚の約束をしたと言うのはそう言うことなのです」

 おそらくラクスは今まで誰にも相談できなかったのだろう

 父親は婚約者との結婚を望んでいるから、相談できる筈も無かった

 母親はラクスが幼い頃に他界していたおりラクスが相談できる人は誰もいなかった

 出会ったばかりのアスランに問うほどラクスは心が追い詰められていたのかも知れない

「婚約者の方が何を考えてザフトに入ったか分りませんがラクスを守る事も心の中にあったと

 思いますよ」

 アスランはラクスにそう告げたがラクスの婚約者がラクスの為に入ったとは思えなかった

 何故ならラクスが人質に成っていた事を知っていながら攻撃をしたからだ

 勿論、軍人だから命令に逆らえなかったのかも知れないがボートを何度も攻撃したのは

 ラクスが死んでも良いと考えたからではないだろうか

(これはアスランの誤解である、ラスティーが指摘した通りキラは状況判断を誤っただけだ

 脱出ボートに乗っているのを連合の兵士と思ったから攻撃した

 もっともラクスも一緒に居た可能性を最初から考慮していないのはキラの浅慮

 アスランがいなければラクス達は死んでいたからアスランの言う事も間違ってはいない)

「私はあの方に見捨てられたのでしょうか」

 やはりラクスもアスランと同じ事を考えたのだろう

 この時のラクスは初めてあったフレイの時と同じように儚く感じられた

 ラクスはアスランをじっと見つめていたがやがて周囲の視野が狭くなり

 《アスランと私の子供は紫の髪になるのでしょうか》

 《ハロはアスランと私の婚約の証ですわね》

 《私はアスランの妻になります》

 ただ呆然としながらもラクスはアスランが見た幻覚とはこの事かと思う

「アスラ・・・・・」

 言葉を出そうとしたラクスだが声を出し切る前にラクスは倒れた

 アスランが抱き止めたので床に倒れる事は無かったがラクスを見ると既に意識を失っていた

「ラクス、ラクスどうしました」

 声を掛けてもラクスはビクともしない

 少し躊躇いながら胸に手を当て鼓動を確かめる心臓はとりあえず正常のようだ

 精神的な疲れかもしれないとアスランは思った

 アスランは腕の中で意識の無いラクスを見つめる

 腕の中の体温と重さ触れた胸の隆起、出会ってから初めてラクスに女を感じる

 アスランも健康な男だ魅力的な女性が無防備で腕の中にいる状況で変な気を起こしても

 仕方無い

 ラクスの顔にアスランは近続く、しかし頭を振り顔を離した無防備の女の子にそんな事を

 するのは卑怯者のする事だ

 それでも暫らくラクスの顔を見つめていた

         この娘もフレイもミリアリアも今は守ってくれる人がいない

 ・・・母上、許してくださいますか僕はこの娘もフレイもミリアリアも守りたい

 生きていて欲しいと思います、今のこの娘達には守る為の力が必要です

 望んで得た力ではないですが僕にも少しは力があります、再び合う時には怒ってもいいです

 だから許して下さい僕はMSに乗ることにします母上

 ラクスを抱いたままアスランはコントロールパネルを操作する

 秘密基地が出すビーコンに合わせ自動操縦に切り替えた

 通信で連絡をしたいが何処で遠距離通信を傍受されるかもしれないだからそれは出来ない

 椅子に座りラクスを抱え直すがそれでもラクスは目覚めない

 アスランは焦りつつも冷静になる、邪念を祓うためにも必要だった

 この時アスランが欲望に流されていたらラクスの人生は変っていたと後に語っているように

 この時がラクスの転換点だったのかもしれないがアスランにとっても転換点だった

 やがて秘密基地に接近、近距離通信のできる距離に近き通信回線を開いた

「アスラン遅かったな」

 予定より帰還の遅いアスラン達を心配して待機していたグラディスがモニターに映り

 声をかけてきた

「少佐、医療班を用意してもらえますか。歌姫が倒れました」

「なに、大丈夫か」

「心音などは正常ですからおそらく疲れだと思います」

「そうかわかった、用意させる」

「それからマイス中佐に通信回線をつなげて貰えませんか・・秘密回線で」

「?わかった」

 暫らくしてマイスが顔を出す

「どうしたアスラン君、歌姫は無事か」

「はい大丈夫だと思います」

「話があるのだろう」

「マイス中佐、約束してくれますか」

「何をだ」

「例えどんなに困ってもラクス達を犠牲にしないと連合のような事はしないと約束できますか」

「?状況にもよるが彼女達が望まない事は絶対しないと約束しよう」

「男として元ザフトの誇りに賭けて約束してくれますかマイス中佐」

「約束しよう、私の人生全てを賭けても良い」

「・・・中佐、臨時の軍属の件ですが了解しました」

 ラクスは説得などしてはいないが皆はアスランがラクスに説得されたと思ったらしい

 

 女が急に倒れ男は慌てた

「どうしたんだ、再びだなんて」

「何でもありません、もう大丈夫ですわ」

「そうは言っても」

「本当に大丈夫、・・・・ただ」

「?」

「ただ何かが始まった気がします、あの頃の私が見えました」

「・・・」

「私達に関わる何かが」

「おそらく君の子供達にも関わる何かだろう」

「でも今まで通りにするしかありませんわ」

「そうだな君は干渉してはいけないのだ、次元漂流者なのだから」

「辛いですわ」

 

 

 月面、地球連合宇宙艦隊基地

「それで彼等はどうした」

「はいユニウスセブンで慰霊団を攻撃した連中の指揮官や士官達は大半が事故で死んだそうです」

「そうか・・・残るはAAの連中だな」

 副官は苦々しい顔をしている司令官に話を続けた

「艦長だった人間は軍を退役後、祖国に戻りましたが予定通り何者かに誘拐され行方不明に

 副官だった女性士官は退役後捕捉前に月の独立都市バロンに移住しました

 彼女から漏れる可能性がありますのでスパイを潜り込ませようとしましたが無理でした」

「バロンか目障りな都市国家だな」

「そうは言っても独立国です」

「わかっている、オーブに匹敵する技術を持ちプラントとも親密でオーブと違い政権首脳の多くは

 コーディネーターだ我々に力を貸す訳が無い」

「例のプラン、発動しますか」

「まだ早いな、先にオーブだ」

「私見ですがオーブよりバロンを先に片つけた方が良い気がします」

「無理だな理由が無い、オーブを取り込んだ後で無ければ他の都市国家の反発が考えられるから

 時期尚早だ」

「わかりました」

「しかしAAを攻撃したMSは何処の所属だったのかまだわからないのか」

「情報が少なすぎますねフラガ少佐が言うにのは全く新しい技術体系の基に作られたらしいと」

「少佐?彼は大尉ではなかったか」

 指令官は首をひねりながら副官に尋ねた

「飴と鞭、口封じですよ」

「彼等が使えるようになるまではエンデュミオンの鷹はまだ必要だからな」

「アズラエル理事の部隊ですか」

「そうだ彼等が使えるようになればザフトのMSを恐れる必要は無い」

「残るのは謎のMSを開発した国家、いや組織ですか」

「ザフトでもない、連合でもないとなれば後はオーブしかないがそれもありえない」

「バロンと言う事はありませんか」

「確かに技術力は高いがMSの基礎技術があの国には無い筈だMSを製造するのは簡単ではない

 最新の技術と基礎技術の蓄えが無ければ開発する事すら出来ないそれがMSだ考えても見たまえ

 MSの基礎技術を作ったアジアの島国は今でもMSを製造できない

 バロンはその逆なのだオーブとは基本的に違う」

「そうでしたね」

 副官はそう返事をしたが別の事を考えていた

 確かにMS製造や開発には基礎技術が必要だが何処からか手に入れたらどうなる?

 オーブより技術力があるとされるバロンだそうなれば強力なMSを開発するかもしれない

 その可能性まで否定しても良いのだろうか?少し探りを入れておくべきだな

 副官は真実に近い事を言い当てた

 ザフトからの基礎技術の提供によりバロンは独自でもMSを開発できる能力をすでに得ていた

「アラスカ作戦は順調のようだな」

「そうですね、あとは餌をどうするかです」

「アズラエル理事はプラントに情報網を作ったと聞いたがなんと言っている」

「あまり上手く行っていませんね、情報網を統括させようとした人物に接触できないようです」

「ふん民間人に何が出来る。情報戦は素人が考えるような甘いものではない」

「しかし、だからこそザフトやプラントの油断を突けるのではないでしょうか」

「兎に角ザフトの主力を一気に叩く事が出来る少ない機会だ慎重に進めろよ」

「はい」

「成功すればプラントなどすぐに消滅させれるのだ、この宇宙には不純分子などは要らない

 奴らなど消し去ってしまう事が出来る」

「・・・」

 司令官はブルーコスモスの強硬派でありそしてユニウスセブン攻撃を直接指揮した男だった

 

 

 バロンシティー防衛軍本部、防衛軍の総参謀長室

「プラント政府は例のMSを我々の開発したMSと疑っているのだな」

「間違いありませんね、市内にいるプラント政府の情報員の動きが活発になっています」

「ザフトの技術部はなんと言っている」

「公表はまだ待って欲しいとだけです」

「緊急事態だというのがわからないのか全くこれだから技術者と言うのは」

「そうですが総参謀長。かえって良かったかも知れません」

「?」

「バロンとプラントが一部とはいえ繋がってる事が公になれば地球連合の攻撃対象にもなります」

「そうだな地球連合も黄道同盟の嘗ての主力がバロンへ移籍しているとは思ってもいないだろう」

「問題は彼らの処遇です、判断を誤ると連合・プラント双方から攻撃されます」

「精鋭部隊を出すか?使用された艦やMSは破壊して乗員達とゲストを連れ帰る」

「彼らから連絡があった時点で実行しすれば上手く言ったかもしれませんが今からでは遅いです

 彼等も監視を強化していますから部隊を動かせば追跡されますね」

「ザフトに連絡を入れてゲストを迎えに行かせるのは・・・・・駄目か」

「そうですね、ザフトにも面子がありますから彼等はただでは済まないでしょう」

「如何にも成らないか」

「賭けですが二つほど手があります」

「どういう手だ」

「一つ目は先程の総参謀長が言われた手の応用ですが彼らを我々が葬り去る」

「ば、馬鹿な」

「もちろん一つ目は行う気はありません、もう一つはバロンと証明されるものを全て排除し

 独立集団として動いてもらう」

「それしかないか」

「補給等は秘密の補給基地を数箇所使用して貰えれば2~3年は持つ筈人的補充はする心算です」

「兵装の補充はどうするのだ、制式機の補充は楽だろうが実験機の補充はどうする」

「実験機は現在あるのが最後で補充は出来ません、共同開発のMSを改良した別の実験機を

 データ収集の意味も兼ね与えようかと思っています」

「そうか、人選はどうする」

「訓練センターのキサラギ夫妻と部下のアラン・ジーノが名乗り出ていますし夫妻の双子の子供が

 臨時に軍属になりました、両親と友人を心配したのだと思います」

「大丈夫なのかキサラギ夫妻はわかるがまだ子供だろう、18歳だったなあの双子はもう子供と

 言えないか、それにアラン・ジーノの正体は未だ明らかになっていないのだろう」

「双子に関しては大丈夫です適正検査を済ませました、優秀ですねあの双子達は

 アラン・ジーノに関しては少し奇妙な事がありますがおそらく大丈夫でしょう」

「君の判断に間違い無いだろう、問題は連合・プラントを誤魔化して彼等と接触させるかだな」

「それが最大の問題ですね」

「船団を組ませてユニウスセブンへ向かわせようか」

「?」

「前回の慰霊団参加は公式ではなかったしブラフにもなる、途中で脱落艦が出る事は良くある」

「しかし合流に時間が掛かりますが」

「しかたがない我慢して貰おう」

「指揮官はどなたにしますか?」

「マイス中佐を准将に昇進させて指揮を取らせよう、グラディスも中佐に昇進させる」

「何故でしょうか」

「キサラギ夫妻は二人とも中佐だぞ忘れたのか?アラン・ジーノも確か少佐だったはずだ」

「失念していました」

 戦略が決まって落ち着いたのか二人はくつろいでいたが総参謀長がふと思い出したように

 副官に尋ねた

「そう言えば、アラン・ジーノの奇妙な事とはなんだ」

「プラントの婚姻統制局から連絡が有りまして登録されている者に同一遺伝子保持者がいると

 言う事です」

「なんだそこまで判ったのなら」

「同一遺伝子保持者の年齢が16歳で該当者でないと何処の誰とも教えてくれませんでした」

「恐ろしく確率の低い偶然の一致なのか、彼はどう見ても25~6歳だからな」

 

 

 増援部隊出発日、キサラギ邸前

「姉さん薬は?」

「効いているはずよ、4人とも明日まで起きないしメイドの皆さんもね」

「でもどうして?それにジィーノにはどう言い訳するの」

「お母様から連絡が来たの時満ちるとね、ジィーノには何とか誤魔化すわ、それにジィーノは

 何時も私達に優しいから大丈夫よ」

「そうだね、義母さんや義父さん、義兄さん、義祖父様とはこれでお別れだね」

「そうよ寂しいけど、私達も次元漂流者なのだから仕方がないわ」

「僕はあの男が赦せない」

「私もあの男は恨んでいるけどお母様は望んで次元漂流者に成ったのではないのよ」

「わかっているよ」

「お義母さんやお義父さん達はこの日が来る事を覚悟していた筈よ」

「そうだね、未練を残さない為にも行こうか姉さん」

「「・・・」」

 二人は無言でキサラギ邸を離れるが一度振り返る

 少しの間見ていたがやがて振り切るようにキサラギ邸を離れて行く

 二人がここに戻る事は二度と無いのだ

 

 

 プラント、某所

「それで歌姫の消息はまだ分からないのか」

「ああ、クルーゼ隊の邪魔をした連中の正体もまだ不明だ」

「困ったな、次のステップに進ませようとしたのに」

「本気なのかその計画は」

「本気だ、それには歌姫を味方に付ける必要がある」

「しかし歌姫が思惑通り動かなかったら終わりだぞ」

「その時は情報を市民にバラすと脅す、歌姫は全て失う事になる」

「だからと言って歌姫をレイプするなんて事がばれたら我々も全て終わりだぞ」

「分からないようにやるさそこは抜かりない、元々シーゲルが悪いのだ」

「だが肝心の歌姫が行方不明では」

「プランBの実行準備をしていた方が良いかも知れないな」

「それは最終手段でまだ早いがシーゲルの動向はリークしてある」

「どちらが人類を指導するのに相応しいかナチュラルの愚か者どもに思い知らせてやる」

「そうだ、ユニウスセブンの報復を、ナチュラルを全て滅ぼすのだ」

 

 ラクスが目覚めた時、側に居たのはラスティーとミリアリアの二人

 最近、この二人は仲良くて会話も多い

 なんとなくラクスは目を開けず二人の会話を聞いていた

「だからさっきの事は決してラクスに言っては駄目だよ、ラクスは見かけより頑固なんだ」

「でもラクスさんの婚約者はラスティーさんの仲間でしょう?その方が良いのじゃない」

「キラって言うのはラクスの婚約者の名前だけどあの二人が一緒に居るのを見た時違和感が無くて

 お似合いだと思った」

「それなら何故なの」

「ラクスが無理をしている事に気付いたからだ」

「無理を?何を無理しているというの」

「ラクスはキラを理解しようとして無理してる、だがキラの考え方を受け入れる必要は無い」

「でもそれはラクスさんの自由だわ、少なくてもラスティーさんが決める事ではないと思うの」

「そんな事わかっているさ、でもアスランとラクスが並んでいるのを見るとラクスは自然なんだ

 あのラクスは俺が幼い頃から見ていたラクスだ、アスランは初めて本当のラクスを知人以外で

 引き出した男じゃないかな、それだけじゃなくラクスはアスランを異性として意識している筈だ

 本人はまだ気が付いていないと思うけどな」

「でも何故?その事をラクスさんに告げてはいけないの」

「幼友達だし俺だってラクスの幸せを願っている当然だろう、でもなラクスの婚約にはプラントの

 政治が絡んでいる、プラントがその事でガタガタになるのを黙って入られない」

「脱出ボートを攻撃してきたのはラクスさんの婚約者の人なんでしょう?つまりラクスさんが

 どうなっても良いと考えていたからではないの」

「あれはキラの勘違いだ、冷静になって考えればあの状況では俺でも攻撃したかも知れない」

(ラスティーは根本を間違えてる、その前にイザークから情報を得ているのだから勘違いでは無く

 自身が叫んだ通り状況判断の重大なミス)

「でもその事をラクスさんは知っているのよ、ラスティーさんが叫んだ事を聞いているのだから

 例え誤解であろうと事実でしょう、今まで通りに接することなんか出来無いと思うわ」

「本音を言えば俺はキラは嫌いだ、ラクスが望むならアスランと付き合って欲しいくらいだが

 アスランはフレイさんの方が気になっている見たいだからラクスが泣く事になる」

「そう?でもアスランさんはフレイにそんな感情を持っていると思えないけど」

「まさか」

 その時、医務室のドアが開かれ、シャロンが入って来た

「ミリアリアさん交代ですよ」

「え、もうそんな時間?それではお願いねシャロンさん」

「はい、わかりましたお疲れ様」

 ミリアリアが出るのに合わせラスティーも医務室を出たが先に廊下に出てたミリアリアが

 出てきたラスティーに再び声を掛ける

「確かにアスランさんはフレイを気にしているけど、フレイを恋愛対象して見てるのか分からない

 フレイもアスランさんを気にしているけど好きになったと思い込もうとしてる気がするの」

「そんな馬鹿な事が」

「アスランさんのお母さんはユニウスセブンで亡くなったと聞いたわ、その事がフレイの中では

 消化しきれていない気がするの」

「!贖罪か?」

「ええ、アスランさんとフレイは出逢うべきではなかったのかも」

 

 ミリアリアとラスティーが出て行き、狸寝入りをしていたラクスは起きようとしたが

 シャロンが独り言を言い出したので起きるタイミングを失ってしまう

 

「全くお兄様も意気地が無い、たとえ眠っていてもラクス様にキスのひとつ位しても

 罰は当たらないのにね、それにしてもお兄様はモテモテだねラクス様といいフレイさんといい

 どうして皆お兄様を好きになるのかしら?ラクス様、寝たふりしてないでお答え下さる?」

 突然シャロンに狸寝入りをしていた事を見抜かれて恥ずかしそうにベッドで起き上がる

 シャロンがラクスを見ている瞳に嫉妬の色は無い、純粋に疑問?と言う感じだ

「シャロンさん、私は別にアスランの事を好きという感情はありません

 でも誤解なさらないでアスランの事を嫌いと言うわけでもありませんから」

「!ふ~ん、それはどうでも良い存在と言う事なの?」

 シャロンはラクスの言葉を聞いて何故かニコリとした

(昨日まではお兄様の事をアスラン様って言ってたのにねぇ)

「先日お話した通り私には婚約者が居ります、私は他の男の方をその様な対象として

 見てはいけないのです」

 ラクスは先ほどのラスティーが言った言葉が頭から離れない

 《ラクスの婚約にはプラントの政治が絡んでいる》

 

 

 アスランがフレイさんを好きなら彼の側に私の居場所は無いのですね

 そうならばプラントの為に生きる事は間違い無いのでしょうか




初期のアスラク好きでした
少し急展開前の手詰まり感ですか、上手くいきません


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Mixingfate 第07話

修正


「だから、その案は駄目だと言っている」

「しかし、わが国の立場が悪くなります。代表、再考を」

「くどいわが国の基本理念は変える事はしない、下がれ、これ以上の論議は不要だ」

「・・・」

 副代表はそれでも何か言いたそうだったが諦めて部屋を退室した

 部屋に残されたのは二人

「代表、ウナトの言う事にも再考の余地があるかも知れません」

「ホムラ、お前まで」

「そうではありません、私もわが国の基本理念を破りたい訳ではありませんが兄上

 プラントが我が国を敵性国と認識している以上防衛手段の1つとして考えておくのも

 必要な事ではないかと思いますが」

「連合と同調などしたら、今度こそプラントはわが国を敵対国と認識する、一度失った信用を

 再び回復するのは容易ではない」

「先に攻撃してきたのはプラントではありませんか、非難されるべきはプラントですよ代表」

 そんなホムラにウズミが言い返した

「それも中立の立場を利用して連合の兵器などを作っていたオーブが悪いと言われたら

 如何するのだ」

「そう言う事実はありません」

「無駄だ、以前ならその論法でプラントも引き下がっただろうが今回は証拠がある」

「それは強奪されたGAT-Xシリーズの事ですか」

「そうだモルゲンレーテの社名入りのMSが4機も連合の正式ナンバーをつけている」

「ではプラントと取引をしては如何でしょう、GAT-Xシリーズのノウハウを引き渡すと言う

 条件では、彼らもわが国の技術を欲しいでしょう」

「それでは連合が黙っていないだろう、それにその手はすでに使えなくなった」

「使えなくなったとは?」

「GAT-Xシリーズ5機がすべて遣られたそうだ」

 ウズミは少しため息を付きながらホムラの問いに答えた

「5機とも・・・やられた?」

 ホムラはウズミの言葉に驚いた、陣営が違う5機がどうしてと思ったのだ

「先程キサカから連絡が有った、ザフトの4機と連合の1機が所属不明のMS1機に遣られた

 AAも大気圏突入が出来なくなり連合の月基地での修理が必要だ、それも同じMSに

 遣られたそうだ」

「連合とザフトを敵にしている勢力があると言う事ですか兄上」

「詳しい事はまだ判らんがザフトと戦ったのは偶発的だったらしい、問題はそのMSがGAT-X

 シリーズよりも全ての面で上回っていた事だ、つまり我がオーブより優れた技術力を持つ組織

 または国家がプラント以外に存在すると言う事だ、当然連合やプラントの関心はそちらに向く

 結果オーブは軽視される」

「我々が今連合側に同調したらプラントは今度こそ躊躇うことなく攻撃対象にオーブを選ぶと

 言う事ですか」

「そうだ連合はGAT-Xシリーズの後継機を開発中らしいが間に合わないだろう、連合へ

 同調するとしても時期が早すぎる」

「ですが、いずれプラントと対立するのでしたら・・・」

「マルキオを通じてプラントのクライン議長と会談をセッティングしている、議長自身は

 乗り気なのだがプラントにも事情があるから極秘の会談になるだろう」

「兄上、今は時期的に不味い連合を刺激します、それに会談場所は?警備を考えると

 独立コロニーでも危険です」

「とりあえずコペルニクスの予定で調整している」

「コペルニクスですか分かりましたそのつもり準備します。そういえばカガリは今何処に?」

「馬鹿娘は月へ向かってる頃だ、キサカの目を盗んでルーオと一緒に民間機で月へ向かった」

「ルーオも一緒ですか」

 ホムラは苦々しげに、ウズミに聞いた

「ルーオには内密にカガリの護衛を頼んのであるからな、あの二人は存外仲が良いようだ

 カガリとユウナとの婚約は早まったか」

「私の立場では何とも言えませんな」

 

 バロンシティーを発ったユニウスセブン公式慰霊団は連合軍からの干渉などを退けていたが

 ある宙域で護衛の為に随伴していた戦艦1隻が故障、護衛艦5隻を随伴に残し慰霊団は

 ユニウスセブンへ向かった、連合軍・ザフト両軍ともしばらく戦艦の動向を監視していたが

 故障とわかり興味を失って再び慰霊団追跡監視を再開、離れて行く

「どうやら両軍とも故障と思ってくれたみたいね」

「そうですね艦長・・・・」

 アーサーは複雑な顔をして去って行くザフトの艦艇を見ていたが

 そんなアーサーの横顔を見ていた艦長が声を掛ける

「皮肉だわね、あの時攻撃したMSを救援する為の部隊に配属されるなんてね、あのパイロット

 私を許してくれるかしら」

「艦長の所為ではありません、すべて私が独断で・・・」

「違うわ結局承認したのは私よ責任は私にあるの素直に殴られましょうか?二人とも」

「判りました、二人で謝りましょう」

 新任の艦長の名をタリア・ヴィヴィアン、副艦長の名はアーサー・トライトン

 二人はアスランがAA攻撃後にグリスターンへ向かう途中に遭遇したザフトの哨戒部隊を

 率いていた

 アスランを攻撃したのだがすべての攻撃はかわされて逃げられた

 その事で以前よりタリアの事を良く思っていないザフト軍人事部に目をつけられタリアは

 ザフトから警備員に左遷されアーサーも資料室に左遷、その待遇に二人とも切れザフトを

 除隊してバロンへ移住した

 幸い嘗てアカデミーの同期生がバロン軍に在籍していたおかげですぐに入隊でき

 そして初任務はグリスターン救援だった

「でもバロンにMSを開発する能力があるとは思わなかった、それもあれほど強力なMSをね」

「この艦に積まれているMSのデータを見ましたがザフトのMSと共通した部分が多く見られ

 バロンとザフトは裏で繋がっている可能性があります、その事を考えるとMSが優れていると

 言うより、あのパイロットが異常に強いのでは?」

「そうなるとますます皮肉ね、私達は本当にずぶの素人にやられたと言う事よ」

「パイロットは軍人ではないからMSパイロット訓練を受けている筈がありません

 コーディネーターである事を差引いても彼自身がザフトの赤クラスより強いのではないかと」

「考えて見ればザフトのエース部隊であるクルーゼ隊が勝てなかった相手だわ、アーサーが言う

 通り強いパイロットである事は確かね」

「ただバロンのMSはメインの部分は全く新しい技術体系の基に設計開発されていると思われ

 特別な機能が有りその所為で勝てた可能性も否めませんが」

「その可能性もありね、アーサーの推測が正しければバロンとザフトは何の為に繋がっているのか

 留意しておく必要が有るけどバロンはプラントと違う、それに私たちを受け入れてくれた」

「私も始めは抵抗がありましたが彼等は分け隔てもせずに接してくれる姿を見てこのありようこそ

 ナチュラルとコーディネーターの人類が目指す未来の姿のような気がします、例えプラントと

 バロンが裏で繋がっていようとナチュラルとコーディネーターの双方の為になるから私は

 バロンに命を賭けるつもりです・・・おかしいですかね」

「アーサー、あなたは変わったわね」

「そうですか?」

「いい意味でよ私も変わらなければいけないわね」

「・・・」

 アーサーは元々楽観主義者と言うよりお調子者の処と早とちりなどをする処があった

 そんな彼だが本来は優秀な軍人である、でなければ若い年齢で戦艦の副艦長になれる筈が無い

 今回の事で彼の考え方が変わってしまったようだ

 

 

 女は何かが近続いて来るような感じがしていた、それが子供達かそれとも何か別のものか

 この世界に飛ばされてから初めて感じた感覚、心が高鳴っている事に途惑った

 もうすぐ成長した子供達に合える喜びなのか、それとも不安か実の夫から引き離されても

 あの男といる母親を子供達は如何見ているのだろう、でも夫と再会する為にはあの男と

 いるしかない、その事をあの子供達は理解してくれるかしら

             私は如何したい?如何すれば良いのでしょうか

 

 

 

 ある場所で二人の人間が怪しげな会話をしている

「では間違いないのだなコペルニクスで会談が行われる事」

「ああ、間違いないよ、僕が誰か知っているでしょう」

「それはわかっているさ、だが君の行為は所属する国家を裏切る事になるのだぞ」

「裏切る?違うよ、大勢がどうなるか予測できない指導者達は国を滅ぼすのさ、僕の行為は

 救国の為なんだよ、だからたとえ婚約者の父親でも排除しなければならない」

 まだ少年の面影を残す青年の言葉を内心不快に思いながら聞いていた

「あの方はもっと早く引退すべきだった。そうすれば歴史に僕の義父として名を残せた」

 聞いていた男は心の中でつばを吐いた

(名を残すのは確かにお前だ、義父になる男を裏切り国家を裏切った唾棄すべき存在として)

「ところで、婚約者殿の行方はわかったのかい」

「いや、あれから何処へ行ったのか情報部や軍が躍起になって捜しているらしいが

 いまだ行方不明だよ、ボートだからどこかに隠れる事は出来ない筈なのにね」

 男は青年の答えに失望した

 無理をしてまで青年と接触したのは青年の婚約者の情報が得られるかもと思ったのだ

 青年にとって義父になる筈の男の立場

 軍での影響力を考えての事だった

 情報無しか、但しBIGな情報を手に入れた

 プラントの議長とオーブ代表の極秘会談か、使えそうだな

「そうか、それは残念だ早く見つかることを祈っているよ、それではまた」

「ああ、また」

 二人は見知らぬ人のように分かれた

 この青年が男に漏らした情報によって、全ての事態が動くことになる

 その事によって己の死を招く事になるとは青年は夢にも思ってもいなかっただろう

 

 

 連合とザフトの監視船が去って、ようやく動き出した増援部隊だが

 秘密基地に直接行こうとはしなかった万が一を考えて迂回をしたのだが

 L3方面からL6方面へ移動していた時に救難信号をキャッチ、タリアとアーサーは思わず顔を

 見合わせた、秘密任務を帯びた部隊である下手な選択をしたらザフトや連合に知られる事になる

 悩んだ二人はタリアと同格のアラン・ジィーノ少佐に聞いてみた

「当然、無視すべきですね」

 ジィーノ少佐がアッサリと即答したので、タリアは思わず反発して言い返した

「この信号は民間の救難信号だわ、軍事行動とは別よ助けるべきでしょう?」

「確かに信号は民間船で中立的なスカンジナビア王国の信号、しかし民間船だからと言って

 軍人や情報部員が乗ってないと保証できますか?」

「それは分からないわ」

「艦長、我々はとても微妙な状況に置かれています、艦長の意見が正しのですが我々の救援を

 待っている人達の事をお考え下さい・・・もし、どうしても気になるのでしたらMSを偵察に

 出して見ては?救難信号を発信している船を偵察して救助が必要か確認してはどうでしょう

 機関の故障くらいでしたら放って置いても良いと思いますが」

 ジィーノ少佐の提案にタリアは少し考えて返事をした

「確かにジィーノ少佐の言う通りだけど、この艦に乗っているパイロットでそこまで技量のある

 MSパイロットは少ないのでは?聞けば訓練課程の途中の人たちが多いと聞いたけど?」

 タリアの皮肉にジィーノ少佐は考え込む、確かに増援部隊には精鋭は殆んどいない

 しかも訓練生ばかりなのも事実で才能、錬度、両方を備えたパイロットは少ない

 艦隊防衛の事も考えれば数少ない錬度の高いパイロットは残して置くべきだ

「私と、・・・・マイ・キサラギ、シュン・キサラギの3名で出ましょう」

「「え」」

 タリアとアーサーは驚いた

 ジィーノ少佐はバロン軍訓練センターの教官と言っても戦略や戦術を教えていてMSや格闘戦を

 教えている訳ではないのだ

「でも」

「大丈夫ですよ、これでも訓練はしていますから、またそうで無ければMS戦の戦術を教える事は

 出来ないでしょう?」

「確かにそうですが、キサラギ姉弟を連れて行く理由は?」

「あの二人には才能が有ります、早めにMSに慣れさせておこうかと思いまして」

「そう判りました、ジィーノ少佐の判断を優先させましょう、頼むわね」

「了解しました、それでは」

 そう告げてアラン・ジィーノ少佐はブリッジを出て行った

 

 ザフト以外にMS戦の実戦経験を持つ人間は少なく連合軍ですら数少ない人達しか居ない

 あれだけ強力なMSを開発したオーブ軍でも殆んど居ない、バロン軍はザフト出身者が多いと

 聞くからMSの基本操作くらいは訓練されているだろう

 現時点での各小隊を率いるMSパイロットに行わせた方が確実の筈なのに経験の少ない

 ジィーノ少佐が出る、そう言うことかタリアはジィーノが艦隊防衛を考えてそうした事に

 気が付いた

 考え込んでしまった艦長にMS小隊を率いるパイロット達のリーダー格の一人ボーグ大尉が

 近寄り声を掛ける

「ジィーノ少佐ならお荷物が二つぐらい有っても大丈夫ですよ艦長、」

「どう言う意味?」

「艦長はバロン軍に入隊して日が浅いでしょうから知らないでしょうがジィーノ少佐は我が軍の

 最強MSパイロットですよ」

「「?」」

 ボーグ大尉の言葉に疑問が余計に出てしまった二人

 そんな艦長と副艦長にボーグ大尉が告げた

「ザフトのカルナルバ・ビッツをご存知ですかお二人とも」

「もちろん知っているわよ、ザフト最強と言われるMSパイロット」

「それなら話が早い、少佐は現時点でカルナルバ・ビッツを倒せる唯一の人間と言われてます」

「そんな人がいるなんてカルナルバの戦闘を見たけど神業だったわよ」

「少佐はザフト出身の赤5人と同時にMS戦をやりましてあっという間に倒してしまいました」

「!・・・」

「5人共ザフトでは白服候補に挙がっていた優秀な人材で現在バロン軍精鋭部隊の各指揮官を

 勤めています」

「なんでそんな人が軍訓練センターの教官を、それもMSの教官ではない科目の」

「これ以上は上層部の許可を得ないとお教えする訳には参りませんが上層部は少佐が一緒だから

 訓練成績が良い人間ばかりを派遣したのです更に言うのなら艦隊防衛の為に我々を残したのだと

 思いますよ」

 ボーグ大尉の答えにアーサーはようやくジィーノ少佐が自ら出たのか納得、艦隊防衛の事は

 副艦長である自分が気が付いて進言すべき事だ、そして軍の上層部が何故国家の命運を

 左右する筈の作戦に成績が良いとは言え訓練生ばかりを派遣して来たか良く判った

 普段は別の科目を教えているジィーノ少佐に鍛えて貰うつもりなのだ

 

 各MSのコクピットでマイとシュンはアランに言われた通りの操作をしている

「どうだ二人とも、基本は以前に教えたからそれほど難しくないだろう」

 マイとシュンはアランにすぐ返事が出来ないくらい四苦八苦していた

 そんな二人にアランは問いかける

「二人とも本当に良いのか?MSパイロットになると言うのは人殺しになるという事で死ぬ

 可能性も高い、君達は武道の達人だが武道が強いからと言ってパイロットとして優れているかは

 別問題、キサラギ教官達と先生(イチローのこと)がパイロットとしての動作の基本を武道の

 中で教えていたから慣れれば強くなり助かる確率も上がるが戦場では生き残る為に必要なのは

 強い意思だ、違う表現を用いるのなら明確な殺意と言っても間違いじゃない

 君達二人にそれが出来るのか?本音を言えば君達を人殺しなんかさせたくは無いのだが」

「・・・判っているわアラン、でも私たちがこの世界で生き残るのには必要なことよ」

「この世界ときたか大袈裟だな、シュンはどうなんだ」

「僕も同じだよジィーノ、母上に合うまでは僕達は生き残らなければいけないんだ。」

「!シュン」

「ご、ごめん」

「二人の事情はキサラギ教官達からある程度は聞いているからそう怒るなマイ」

「「 え 」」

「そんなに詳しく知っている訳じゃないが君達がキサラギ教官達の養子になった経緯だけだ

 二人が軍に志願した理由は途中で脱走するつもりなんだろう?だから教官達に迷惑が掛らない様

 教官達を眠らせた、違うか?」

「!どうして」

「アスラン・リヒターと言ったか二人の友人の名前、その人物には会った事は無いがその彼と

 月の姫を助けたいからじゃ理由が弱い、二人が軍人に成るほどの事では無いとなれば残る理由は

 一つだけ君達の母親の事だ、幸い母親が住んでる場所は秘密基地の近くらしいからMSが

 あれば簡単に行けるだろう、違うのか?」

「ジィーノは艦長たちにその事を告げるの?」

「・・・」

「そのつもりはないが二人のせいで戦闘などに巻き込まれるようだったら、理解るな」

「何故?、軍規に違反するのにそこまで」

「まぁ先生に頼まれてたしな、俺も記憶を無くしていた処をキサラギ教官達に助けられた

 だから止めるべきと判っているが、一番の理由は君達が可愛いからだな」

 アランの言葉にマイの頬が少し赤くなり、シュンの顔色が青くなる

「何を勘違いしてる、言って置くが俺はマイのような子供を異性として見た事など無いぞ

 恋愛感情など当然無い、もちろん同性に変な興味なんて無い」

 その言葉にホッとするシュンと少し頬を膨らませているマイ

「なんだ、チョッとは期待したのに残念だわ」

「馬鹿年齢差を考えろ、俺に過去が無い事は二人とも知っているだろう」

「「 はい 」」

「自分は何者か俺は自分を見つける為に過去を捜している教官達には悪いが先生も教官夫妻も

 安心できる存在ではなかった、そんな俺が安心できたのは君達だけだから、君達の願いは叶えて

 やりたいのさ」

(それに教官達を負かした時の様にこの二人といると何かを思い出せるような気がする)

「二人とも準備は良いかそろそろ出るぞ。あまりぐずぐずしている時間は無いからな」

「「了解」」

「それから言っておくが艦から発進したらマイは前方下位へ、シュンは前方上位へ必ず

 2回ローリングをしてから予定地点の上位と下位へ向かえ、ローリングは細心の注意を払って

 行う事、誤って母艦にぶつけるなよ、さらに周囲の状況に気を付ける事」

「「なんで?」」

「やば判る、それが出来ればお前達は生き残る可能性が高くなる、俺が先に出るが出ても

 すぐにお前達は出るなよ一呼吸置いてから出ろ、ただしマイとシュンは同時に出ろこの艦は

 2機同時に出れるから艦内でぶつかる事は無い筈、それからフェイスは必ず着けろよ

 二人とも分かったな」

「「はい」」

 

 アランは何故か冷静になって行く自分が不思議だった

 MSで宇宙空間に出るのは初めての筈なのに妙に懐かしくて同時に不快になる

 この感覚はまるで宇宙空間で生きてきたような感覚、その感覚があの二人と一緒に出るからだと

 アランは気が付いた、やはり自分はあの二人と何か関係が有るのか

 そんな事を考えていたらブリッジから発進OKの連絡がきた

「アラン・ジィーノ、出る」

 カタパルトに乗りアランはバーニアを少し吹かし微調整した

 アランのMSはカタパルトの強力な磁気ドライブで射出された

 射出と同時にアランのMSは進行方向に対して360度のローリングを開始

 集結ポイント付近まで全く無駄の無い動作で移動した

 続いて

「マイ・キサラギ出ます」

「シュン・キサラギ出ます」

 2機とも無事に射出されたが

 アランから見るとマイは下への展開が大きくなり予想地点より下位に行ってしまった

 シュンはローリングをしすぎて止める為の時間が掛かってしまい予想より到達する時間が

 オーバーした

 そんな3機を見ていた、タリアとアーサー、ボーグ大尉

 まずボーグ大尉が感想を言う

「あの二人、本当に初めてなのか?長く訓練している連中でもあんな事は簡単に行かないぞ」

「大したものね、でもなんでローリングなんかしたのかしら」

「そうですね、時間の無駄としか思えないのですが」

 そんな二人の疑問にボーグ大尉が答える

「お二人ともザフト出身でも空母戦の経験が少ないようですね、あの3人が行なったのは

 航空基地や航空母艦の戦闘機乗りが行っていた迎撃時の出撃戦法です、更にジィーノ少佐が

 まず警戒及び陽動を引き受けあとの2機の安全を確保したここは宇宙空間で大気圏内では

 ありませんから、3機出撃の時は上下方向とセンター・・・・」

「「?」」

 モニターを見ながら解説していたボーグ大尉の声が突然途切れた

「如何したの?」

「敵だ」

「「 え 」」

 モニーターにはバロン軍と違う光点が3個ほど表示されている

「いくらなんでも、この状態では不味い!」

「?急いで出撃準備を!」

 突然、黙ってしまったタリアとボーグ大尉にアーサーが尋ねた

「二人ともどうかしました?」

 アーサーを見た二人はモニターを指し示す

 モニターを覗くとすでに3個の光点が消えていた

 そしてその側にはバロン軍のMSを示す光点が1個点滅している

「どう言う事?、故障ですか」

 その時、ジィーノ少佐のMSから連絡が来た

「艦長、艦隊を急いで移動して下さい。連合の別部隊が近くまで来ているようです先ほどの

 3機のMSは偵察のようでした」

「それで3機のMSは?」

「シュンが見逃したので私が処理、破壊しました」

「「「 ! 」」」

 

 

「彼等は我々がバロン艦隊から出たMSだと気が付いていなかったと思いますがバロンのMSだと

 気が付かれると面倒ですので万が一の事を考えて即時の合流は避けるべきです、艦隊は予定の

 コースで秘密基地へ向かってください」

「貴方達は如何するつもりなの」

「とりあえず民間船の様子を見てから廃棄コロニーに隠れて連合をやり過ごします」

 瞬時の判断でMSを破壊、艦隊の安全確保、更にバロンの立場を考える

 戦略と戦術を同時に考えているジィーノ少佐

 タリアは彼の言っていた通りにするべきだったと後悔した

「ごめん、ジィーノ少佐の言う事を聞いていれば」

「違います艦長は正しい判断をしたのです後悔や恥じる必要は有りません、あの時に艦長が

 民間船を見捨てていたら誰もあなたに着いて来なくなりましたよ」

「でも」

「艦長、議論している暇はありません」

 そこで通信は途切れ、同時にモニターに映っていた光点も消えた

「全艦隊に通達、L7方面に移動開始、急いで」

 艦長の言葉にブリッジに居た全員が反応した

 艦隊が動き始めてから、一息ついたタリアはアーサーに言った

「・・・・・アーサー、私は駄目な艦長だわ」

「・・・」

 

 遠ざかる、艦隊をレーダーで確認、ジィーノは二人に声をかけた

「行くぞ、二人とも」

 シュンはジィーノに謝るため、MSを接触させてきた

「ごめん、僕のミスで」

「違う一人で出るべきだった、シュンのミスじゃない二人を選択した俺のミスだそれに艦長の

 提案を拒否しなかった俺のミスだ。それから二人に言っておくが今の出撃ではマイ

 君の方がミスとしては大きい」

「え、どうして?」

「敵のMSがマイ寄りだったら俺でも間に合わなかった、マイが合流ポイントを大きく外したから

 警戒が疎かになったシュンはローリングをとめる事が出来ず敵を見逃した、二人ともMS戦では

 一瞬のミスが命取りになる自分だけならまだ良いが仲間を危険に晒す事も考えに入れておけよ」

「・・・はい」「はい」

 

 3機のMSは慣性飛行状態で救難信号が発せられた方位に向かって行く

 暫らくするとレーダーに船らしきものとデブリが映った

「・・・」

 ジィーノがデブリに取り付いた

 マイとシュンも同じように取り付きジィーノはMSからシーカーを発射、船舶側への岩壁に

 シーカーを固定した、シーカーからの映像はMS3機に同時に送らて来た

「さて、マイ、シュン、二人はあの船の状況を如何見る?」

「別に故障しているようには見えないけど」

「・・・脱出ボートが1個無いわ」

「ほうマイよく気が付いた、あのタイプの客船は常に4個のボートを接続させておくものだ

 それが3個しかない、さて・・・どう思うボートが無い理由を」

 マイとシュンは、そう問われて考える

 やがて考えが纏まったのかマイがジィーノに話しかける

「可能性としては、3通りかな」

「言ってみろ」

「まずはハイジャックか盗賊行為をした人達がボートを奪って逃げたのが1つ目、次は船内で

 騒乱が起きて一部の人達がボートで出たのが二つ目、可能性は少ないと思うけど客が何等かの

 事情でボートを奪って出て行ってしまったのが三つ目」

「だけどそれなら客船が現場に止まっている理由にならないと思うけど?」

「もし1つ目と二つ目なら操艦出来る人が死んじゃったとか負傷してるとかで動かす人がいない

 可能性が有ると思うわ、三つ目なら周囲を捜してるのかボートに呼びかける為

 止まっているのじゃないかしら」

「僕は病気と言うか伝染病が発生したのじゃないのかと思う」

「シュン、この間のDDMの見すぎじゃないの?理由になってないわよ」

「う」

「俺は1つ目の可能性は無いと思う」

「どうして?」

「盗賊だったら最初から船で襲うだろうな、ハイジャックだったら船ごと消える筈だと思うが?」

「そうかも」

 ジィーノは思った

 マイは思ったより偵察任務に向いているかもしれないシュンはデーターを与えられて初めて

 実力を発揮できるタイプで戦略家でマイは戦術家だ、即応能力はマイの方が勝る

「それで二人だったら如何する、船に近寄って連絡や確認するか?」

「当然そうすべきよ」

「僕は反対、僕達の事はまだ知られては行けないのでしょう、もう少し様子を見るべきだよ」

 実際、ジィーノは迷っていた

 遠距離からの偵察には限界がある、マイが言う通り接近しなければこれ以上の事は分からない

 しかし、シュンが言う通り私たちの事はまだ知られてはいけない

 そして連合が近くに来ている事を考えれば戦闘に巻き込まれる怖れもある

 自分ひとりなら如何にでもなるがシュンやマイ達が心配だ、それに自分の我が儘だとは

 分かっているが出来るなら二人を人殺しにはしたくない

「ジィーノ?」

「うん、如何した」

「通信が・・・」

 見るとコクピットのパネルの一部が点滅していた、国際信号を示す緑のランプが点滅している

 ジィーノは受信のみのスイッチをONにした

「こちら客船フィンランド、当艦の乗客が二日前にボートを勝手に持ち出しました近くを

 航行している船が有りましたら周囲にボートを見られませんか、発見されたらご面倒でも当艦に

 連絡をいただけませんか、繰り返します・・・・・・」

 3人は拍子抜けした

「マイが言った通りだったな、三つ目の奴だ」

「馬鹿みたい」

「近寄らないで正解だったでしょう姉さん」

「そうねシュンの言う通りだったわ」

 二人の会話を聞いていたジィーノのパネルが赤い点滅をする

 気が付かない内に連合が接近してきている

 どうも接近してくる艦艇数からすると連合はこの客船を目指していたようで遭遇したMSは

 方位を間違えたようだ

「不味い後退するぞ、確かL4方面は廃棄されたコロニー群がまだあった筈二人とも掴まれ」

 ジィーノのMSに2機ともつかまりジィーノのMSは予備のブースターを使用して加速

 L4方面へ向かって行く

 

 アランと二人は連合の索敵範囲から逃れて一時L4コロニー群に身を潜めた

 少しトラブルに巻き込まれたがとりあえずトラブルを解決、その後も遭遇した連合と戦い

 身を隠しながら秘密基地に辿り着いたのは艦隊と別れてから1ヶ月後の事

 到着したマイとシュンを待ってたのはアスランの行方不明という事態である




幻想のエスペラント


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Mixingfate 第08話

手詰まり感大です


 疲れたからもう少し寝るとシャロンに告げ、ラクスは寝たが

 ほんの1時間もしないうちに夢によってラクスは目を覚ました

 

    『ねぇ、なんでラクスは自由に生きないの』

    『キラ様、自由とはなんでしょう?』

    『ラクスは自由も分からないんだね、束縛されず自分の意思だけで生きて行ける事だよ』

    『それでは秩序が無くなってしまいますわ』

    『その秩序こそ最大の束縛だよ、たとえば恋愛や性はもっと自由の筈だったそれを

     くだらない法律や慣習で束縛している』

    『それではキラ様お伺いしますがもし皆さんがキラ様の言う通りに例えばイザーク様が

     私と結婚したいと言いまして私もイザーク様と結婚したいと望みましたらキラ様は

     その事を認めますか』

    『認めるわけが無いでしょう』

    『どうしてですの?その事はわたくしの自由ですわ違いまして?』

    『自由に生きて良いのは資格がある人間だけだよ』

    『資格とは?』

    『自由に生きて良いのは選ばれた人間、ラクスに資格があってもイザークには無いよ』

    『何故ですの』

    『それはね・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・』

 

 

「・・・・・?・・・・夢?・・・・・・」

 もしかして警告ですか?わたくしは間違っているのでしょうか・・・・何を?

 

 

 数ヶ月前のバロンシティー・キサラギ邸、マイとシュンが出て行った日の午後

 薬に耐性があったのだろう、キサラギ夫妻は起きていた

「やられたな二人とも見事に処分して行った」

「そうね・・・でも如何してかしら」

「おそらく母親から連絡が来たのだろう。未練を無くす為に僕達に黙っていたのだ」

「・・・アマリ、貴方は寂しい?」

 妻の問いに夫は苦笑いをしながら

「血は繋がっていなくても10年間子供として接してきたんだ当たり前だろう、情が湧かない方が

 どうかしてる、シーラだってそうだろう?いや僕以上か」

 妻は頷いて

「もちろんよ、でもあの子達も私達と同じようになるのかしら?」

「それは分からないな、二人にとってこの世界は本流に近いはずだから」

「何故、あの二人に教えてあげなかったの?私たちも同じなのと」

「裁定者が僕達に告げた言葉を忘れたのか?多次元漂流者に終わりはない、僕たちがこの世界で

 暮らして行けるのは多次元漂流者である事を悟られていないからだ

 この世界は僕達がいた世界とは根本的に違う、気が付かれては再び未知の世界に飛ばされる

 アルテスとエリーにそんな思いをさせたくない

 ・・・それよりあの男女にあった時の事だけど、僕はあの男に恐怖を感じたよ目的の為なら

 何でも利用する感じだった温和そうに見えるのにな」

「貴方も?私もそう感じた、まだ貴方と仲が悪かった頃の兄さんと同じように感じたのを

 思い出すわね、死んだと思っていた貴方と兄さんが突然私の前に現れた時に思わず貴方へ

 抱き着いたら私も一緒に二人と同じ多次元漂流者になってしまったわ」

「君は後悔しているかい、ぼくの事を恨んでいる?」

「貴方と生きて行けるのにそんな事がある筈ないでしょう、兄さんには気の毒だったけどね」

「まさか彼だけ歳を取ってしまうとは思わなかったよ」

「二人ともじじいで悪かったな」

 突然、声を掛けられ二人は振り返るとそこにはイチロー・キサラギが立っていた

「兄さん、いつの間に」

「シャ・・・お兄さん、薬は?」

「馬鹿にするな、俺もお前達と同じだぞ・・・・・・マイとシュンは出て行ってしまったか」

「はい、別れの時が来たようです」

「だがまだ一波乱有りそうだな・・・二人とも、元の世界に帰りたいか?」

「どういう意味」

「あの世界に帰りたいかと聞いている」

「兄さんこそ如何なの、元の自分に戻りたい?」

「・・・この世界に来て良かった事がある」

「「 ? 」」

「お前の笑顔が見られる事だ、あの世界で生きていたとしても俺はお前を苦しめるだけだ

 俺はお前が愛しているこの男と死ぬまで殺し合いをしていた馬鹿だからな・・・同じ地球圏でも

 彼女を感じられないのは残念だがな」

「「・・・」」

 そんなイチロウの思いを聞いたアマリとシーラは黙ってしまう

 気まずさと沈黙に耐えかねたのかシーラが二人に疑問を問い掛ける

「私達3人がこの世界に取り込まれたのは裁定者がそうしたから、裁定者はこの世界を如何する

 気なのかしら?私達がこの世界に必要な理由は何かしら」

 アマリは妻の疑問に少し考えてから

「おそらくマイとシュンを育てると言うだけじゃないかな、それかあの男女に絡んだ何かだろうな

 でも僕達は積極的にこの世界に関わってはいけないんだ」

「そうだなアルテスとエリーのためにもな」

 イチロウの言葉にアマリとシーラは頷いた

「シーラ、兄さん、最近になって気が付いたが事ある、アスランとアランだけど改めて見比べると

 二人は似ていると思わないか?」

「そう言えばあの二人は似ているな」

 シーラはそんな二人を呆れたように見つめ

「今頃気が付いたの?確かに似ている、でもね貴方も兄さんも忘れている事があるわよ」

「 ? 」

「何だそれは」

「マイとシュンはアスランよりもアランに似ているのよ、マイは変装を解いたらアランとマイは

 親子と間違えられるほど似ているわよ、マイとシュンがアスランに似ているのは必然だけど

 アランがあの二人と似ているのは偶然なのかしら」

「「 ! 」」

「アランは記憶が無いと言ったけど本当に覚えていないのは自分の名前だけでは無いかしら?

 そうでなければアランの強さを説明できない、そしてアランはアスランと何らかの関わりがあり

 それ以上にマイとシュンに関わりがあるはずだわ」

「アランは本当に何者だろうな。卓越した知識・才能・技術、そして異常なほどの戦闘力、

 まさか彼も・・・そんな事がある筈ないか」

「如何したの兄さん?」

「アランの正体はもしかしてこの世界での裁定者に選ばれし者・・・逆に言えば裁定者に

 選ばれし者なら」

「ひょっとしてアランも多次元漂流者かも知れないわね」

「「 まさか 」」

「それもこの世界とあまり変わらない世界の多次元漂流者なら影響は最小限で済む筈よ」

「それなら説明が付くな本当に記憶喪失だとしても思い出した知識や経験にあまりギャップは

 無い筈だ」

「・・・」

「もしかしてアランはあの女性が探している人物なのかも知れない、妙にマイとシュンに

 優しいのも納得できるしマイとシュンが懐いた理由も判る、本人達は知らなくても血の繋がりは

 強いからな・ん、待てよ・・・そうするとアランとアスランは」

 イチローの辿り着いた答えに二人とも辿り着き愕然とした

「そんな事が・・・そう言えばアランとアスランは一度も会った事が無いな」

 マイとシュンがアランと共にL4コロニー群に身を潜めて居た頃、アスランとラクスの運命を

 狂わす事になる事件がコペルニクスシティーで起きた

 

 その日、コペルニクスシティーでオーブとプラントの首脳会議が行われていた

 勿論お互い敵対する勢力には極秘の会談である

 

「ウズミ代表、オーブ政府がモルゲンレーテの件に関わっていない事は判りました

 しかしプラントの強硬派はあなた方に不信感を持っております説得の努力はしますが先ほどの

 条件で納得してくれるか余り期待しないで下さい」

 シーゲル・クラインは脱力感に覆われていた、オーブのウズミ代表達が言うには

 モルゲンレーテの件は一部の利権政治家が独断で行なった事だと訴えてきた、それくらいは

 プラントの調査部がザフトの情報部に確認を取らなくても独自で知っていた、せっかく強硬派を

 抑える事の出来る人物を連れて来たのに過去の状況を説明するだけに終始しているオーブ代表に

 幻滅した、そしてオーブ代表の意図が分からない、ウズミは連合各国と渡り合ってきた人物で

 非凡な政治家では無い筈だが主張するのは凡庸な政治家が考えそうな事ばかり・・・

 ウズミの狙いはなんなのだ

「代表、あなたの考えている事はなんですか、何をお望みなのですか?」

 シーゲルの隣で二人の会話を聞いていた男がウズミに質問した

 やや間をおいてウズミが答えようとした時に事件は起きた

 ウズミの背後のドアが突如開かれ3名の男が乱入してマシンガンを乱射した

 

 シーゲルの隣に居た男がすぐに反応してとっさにシーゲルを引き倒し、覆いかぶさった

 すぐに応戦したザフトの護衛官により乱入者は射殺されたが、しかし首脳達は全員倒れていた

 その場で意識が有った首脳はオーブのウズミ代表一人のみだった 

 

 コペルニクスでテロが起きた日から数日後

 アスランは積極的ではなかったがMSの訓練をしたり練習を兼ねて近距離を偵察していたが

 偵察行動の時にはフレイやミリアリア、ラクス、たまにだがシャルを乗せて行う事がある

 理由は4人の気晴らしの意味もあった

 シャルとラクスを除いた二人

 フレイとミリアリアは自分の力ではどうにもならない処まで来た己の運命を悟ったのか

 バロン軍に志願した(但し、あくまで臨時)

 工学部の学生だったミリアリアは通信担当の補佐、法学部の学生だったフレイは看護士の資格を

 持っていたため医務室の看護助手になった事で二人がストレスを溜めるようになったのだ

 別に難しい事をしているわけでは無い、ハッキリと言うならば二人の容姿の所為である

 フレイは兵隊達に大人気である、そんな彼女が看護士でいるから舐めとけば治ってしまうような

 傷でも医務室に押しかけそんな兵隊さん達で医務室は大繁盛していた

 フレイのストレスとは忙しすぎる事である

 ミリアリアも同じような理由である、さすがに通信室に押しかける人達は少ないから医務室に

 比べれば忙しくは無いがミリアリアは兵隊より下士官達に人気があったからフレイと同じように

 ストレスを溜め込んでいたのである

(その所為でミリアリアは艦橋オペレーターに配置換えとなる)

 ラクスとシャルにはフレイとミリアリアのような事は無いのだがラクスはバロンの人間では無い

 プラントの歌姫、そしてプラント最高評議会議長の娘だ。皆、腫れ物に触るような態度で

 接しられて内心不満があった、シャルは他の3人とはまったく別の理由である

 シャルの不機嫌の理由はアスランが軍属となって訓練などでアスランがかまってくれないからだ

 シャルが不機嫌だと矛先がアスラン只一人に向かうから、ご機嫌取りの為にアスランが

 連れ出していたのだ、本来軍隊でこのような事を認めるはず無いが最初は拒否していた

 マイス中佐とグラディス少佐だがアスランを無理やり軍属にしてしまった後ろめたさがり

 黙認するようになった

 アスランの能力ならよほどの事が無い限り不測の事態にならないと判断したこともある

 バロンのMSはコクピットが広く出来ていてパイロット以外もが乗り込めるように出来ている

 その為、必ずもう一人が乗っていた

 例えばラクスとフレイの時はラスティーがミリアリアとシャルの時はナイトが同乗している

 (勿論、ラスティーが乗るの時はまだ偵察機だった)

 

 アスランはその日もラクスとラスティーを乗せて偵察機で出ようとしていたが見送りに着ていた

 皆の前でアスランに近寄ってきたラスティーがいつもと違いラスティーは普段着の格好でとても

 これから宇宙に出る服装では無く皆が疑問に思っていると

「アスラン、体調が悪いくてなすまないがラクスを頼む」

 アスランとラスティーの視線が絡みさらにラクスとラスティー視線が絡み合う

 一瞬の出来事だその事に誰にも気が付かれない

「しかたがないな」

 アスランはいかにも残念そうにラスティーに答えてからラクスに声を掛けた

「そう言う事になりました、行きましょうかラクス」

 アスランの問いかけにラクスは少し緊張したように

「わかりました参りましょう、アスラン、よろしくお願いしますわ」

「こちらこそ」

 何時ものような普段と変わらない会話だが違和感を感じていた人間が一人いたミリアリアだ

 ラクスがハロを持っていたせいだ何時もはハロを置いて行くのにと更にコクピットの窓から

 見えたアスランに何時もの笑顔が無かったせいだった

 ミリアリアはラクスと二人きりだから緊張しているのかもしれないと思った

 そのミリアリの隣に居たラスティーが深刻そうな顔をしていたのだが誰も気が付かない

 ラスティーは心の中で呟いた(アスラン、本当にラクスを頼んだぞ)

 二人が偵察機に乗り込み艦橋からの発進許可が下りるとその場に居た全員が退避の為の待機所に

 移動しカタパルトから射出された偵察機は高速で移動して行きあっという間に見えなくなった

 そして二時間後、偵察機からの信号が途絶え直ちに捜索が開始された、しかし可能性のある

 宙域を捜索をしたのだが何も見つからない

 その内にザフトの哨戒艦が接近してきた為に捜索を断念して全機引き上げた

 ザフトの哨戒艦が去ってから再び捜索を再開したが偵察機の痕跡は何も見つからず焦った

 マイス中佐とグラディス少佐だが二人の捜索に余り時間を掛けているわけにも行かない

 何故なら増援部隊が近続いてきたから受け入れの準備をしなくてはいけなかったのだ

 未練を残しつつマイス中佐とグラディス少佐は捜索打ち切りを決定した

 捜索打ち切りに抗議したのはシャルとナイト達だったが結局諦めるしかなく打ち切り後

 シャルは部屋に閉じ篭ってしまった

 捜索隊が諦めて帰還したのを確認したアスランはザフトの哨戒艦が去るのを待ってからデブリの

 影に隠れていた偵察機を起動する、連動した信号システムは既に無効にしていた

 これでバロン軍に悟られる事は無い

「・・・」

 無言でプラントへ向かう準備をしているアスランにラクスが声を掛けた

「アスラン、ごめんなさい」

 そんなラクスにアスランはどの様に返事をしたものか考えたが良い返事が見つからず

「先程ラスティーに返事をした通りですよラクス、仕方がありません」

「でもアスランはバロン軍を裏切る事になってしまいました」

「何時か判ってくれますよ、たとえ汚名を着ても僕は正しい事をしている心算です

 だからラスティーもグリスターンに残ってくれたのです」

「ですが・・・」

「もう言わないで下さい、すでに後戻りは出来ないのですから」

 ラクスはハロを抱きしめながらアスランを見つめる事しか出来なかった

 

 アスランが結果的にバロン軍を裏切る事になったのは如何してなのか?それは偶然立ち聞きした

 マイス中佐とグラディス少佐、二人の会話が原因だった

 三日前、MSのシュミレーションを終えたアスランは結果報告の為に教官である

 グラディス少佐の部屋に向うが部屋に居なかったから書類を置いて帰ろうとして通路を間違えた

 暫らく歩いていると聞きなれたグラディス少佐の声がする

 その時アスランには珍しく茶目っ気を起こした、何時も落ち着いているグラディス少佐を

 驚かしてやろうとして無言で近寄ったのだ

「この情報は確かなのですかマイス中佐」

「まだ第一報だからなそう詳しくはわからんが」

「それでどうします、歌姫に伝えるべきですが」

 突然、ラクスに関する事が聞こえたのでアスランは立ち止まる

「まだ歌姫をプラントへ返すせない状況だそうも行かないだろう、耳に入れ取り乱されても困る」

「ですがクライン議長は歌姫にとって父親ですよ、その父親がテロに遭って死にかけている事を

 娘である彼女に伝えないのは」

「私だって同じだよ、しかし皆の命を預かるものとしてはどうしようもない」

「歌姫が事実を知った時に恨まれますね」

「わかっている、それでも今は歌姫に伝えるべきではない」 

 二人はその後無言となりアスランに気が付くことなくその場を去った

 アスランは立ち尽くしていた、ラクスの父親が重体?なぜあの人達は・・・仕方が無いのか

 でも・・・

 アスランはレノアのことを思い出した、優しかった母の死を見取る事も出来なかった自分

 何度も母は死んでいなくてただ戻る事が出来ないだけと思い込もうとした事もある、しかし家に

 帰るたびに母はもう戻らない処へ行ってしまったのだと思い知らされた

 せめて母の最期の時、一緒に居たかった

 マイス中佐達の会話の意味は自分でも分かる・・・でも、間違っている僕は如何すればいい?

 アスランは悩んだ末にラスティーに相談した

 ここにいる人間ではラスティーが一番ラクスの事を知っている

 最初はどのタイミングでラクスに告げるかを相談するつもりだけだったのだが

「シーゲル様が重体?」

「うん」

「なぜ?」

「テロに遭ったらしい」

 アスランの自信の無さにラスティーは?とアスランを見る、その様子を見たアスランは

「マイス中佐達が話していたを偶然立ち聞きした、だから正確な処は分からないけど

 クライン議長がテロに遭って死にかけていると」

「なんでそんな重要な事を娘であるラクスに・・・当然か、あの人達の立場ではそうするか」

 ラスティーは軍人としてまたここにいる全ての人の生命を預かる者としてマイス達が取った

 処置は正しいと理解るだけに二人を非難できない

「それでアスランは俺に如何しろと?」

「いや、如何すれば良いのか相談したかっただけだよ」

 ラスティーは思う、ラクスは年のわりにしっかりしていて見た目はお姫様なのだが中身はとても

 頑固で自分を持っている女の子だ

 父であるシーゲル議長がテロに遭う可能性も考えていただろう

 自分が連合に捕らわれていた時も覚悟は出来ていたと言っていたくらいだ

 暫らくは動揺するだろうがすぐに立ち直る、だから何時伝えても大丈夫だろう

 ラクスに伝えれば誰がラクスへ喋ったのか当然問われる

 アスランは軍属になったばかりでその事を理解していないのでは無いか?

「ラクスは強い子だ伝えるのが遅くなっても大丈夫だと思う、それより君は大丈夫なのか?

 機密に属する事を簡単に人に伝えて軍機違反に問われるぞ、それともラクスが好きだからか?」

 ラスティーはその時アスランはフレイではなくラクスを好きなのかと思ったのだが

「違うよ」

「だが、そう考えなければ」

「違うよそう言う事じゃないんだ」

 そのまま何も言わず窓の外を見ているアスランはラスティに振り向き、呟いた

「母上が亡くなった時、僕は側に居てやる事出来なかった」

 その言葉を聞いたラスティーはハッとした

「母上はどんなに心細かっただろう」

 そしてアスランは再び、窓の外を見る

 窓の外を見ているアスランは普段の様子とまるで違う、ラスティーは己の愚かさを悟った

 この優しい青年はまだ心の傷が癒えていない、プラントと連合間の戦争に巻き込まれ死んだ

 突然に失われた母親の命、その死をまだ己の中では消化し切れていないのだろう

 愛だ、恋だという次元の問題では無いのだ

 やがてアスランはラスティーに言う

             「ラクスを父親に合わせてあげたい」 

 ラクスはシーゲルの死を見取る事が出来るのだろうか?そしてグリスターンに残った

 ラスティーの運命は?アスランは?どうなってしまうのか、マイ達と再会できるのだろうか




 あとがき
 Mixingfate 第08話をお届けしました
 副題は<アスラン脱走>です
 アスランは裏切る運命でしょうか?流されているだけのような気がしますが
 ただと言うかヤッパリと言うかラクスが絡んでいるんだよね
 しかしカガリはどこで何をしている?フレイはどうなる?
 マイとシュンがアスランに似ているのは必然ってどう言う意味でしょう

 作者の独り言
 アスランと言う言葉の意味ですが
 サンスクリット語(梵語)では惑いし者・決められぬ者・迷える者とか言う意味がありまして
 古代ケルト語では笑える事にズバリな【裏切り】と言う意味があるそうです
 やっぱり名前の所為だな(笑)


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