アサルトリリィ Thousand Flower (汐風波沙)
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プロローグ

初投稿です。


プロローグ

パンパンっ!

カンカンカンっ!

弾丸や金属がぶつかり合う音が静かな廃墟街に響く。

菜月(なつき)、そっちに逃げたわよ!」

藍莉(あいり)っ、下がって!」

「えっ!?」

その瞬間、廃墟と廃墟の間を飛んでいた藍莉は地面に叩き落とされた。

「ぐはっ!」

「藍莉っ!」

菜月は地面に叩き落とされた藍莉の傍に駆け寄った。

「まだまだね、私も……」

「藍莉、ごめんね、私がもっと早く気付けていれば……」

「仕方ないわ、今回の相手はヒュージの変異種だから、油断した私が悪い。菜月、私を置いて逃げて。2人とも死ぬくらいなら、菜月が生き残って今回の相手の情報を持ち帰って。」

「嫌だっ!」

「菜月……」

菜月は藍莉を抱き締めた。

「藍莉ちゃんを失うくらいなら、私もここで死ぬ!私、だって、藍莉ちゃんが……」

「菜月ちゃん……」

「だから、2人で最後の時を迎えよ?」

「そうね……」

2人は手を絡ませて寄り添った。

「ねぇ、本当に私でよかったの?」

菜月は問いかける。

「菜月ちゃん以外とは絶対に嫌だ!」

「そっか、私たち両想いだね!」

「そうだね!」

2人は目を閉じ、死を受け入れる。

「……戦場でイチャイチャするくらいなら、学校(ガーデン)で続きやってくれないかな!」

その瞬間、ヒュージに大量のナイフ型チャームが刺さった。

「「!?」」

ヒュージは、唐突の攻撃にダウンしている。

そして、その上に一人の少女が月明かりに照らされながら立っていた。

「左の子!」

「わ、私!?」

「そう、お前だ。早く怪我人連れて逃げろ。逃げる時間くらい稼いでやるよ」

「でもあなたは!」

「私の事は心配するな、アンタら2人よりかは強いから」

「……わかりました、あとはお願いします。死にそうになったら逃げてくださいけ!」

そう言い残し、藍莉と菜月はその場から離脱した。

「さてと、邪魔なヤツらは行ったからそろそろ本気出しますか。何時まで寝てんだよ!」

少女は持っていたナイフ型チャームを1本使用し、ヒュージを貫いた。

「ギュイィィィィ!!」

「おっと、振り落とされる訳には行かないよな!それで、アンタは私をどう楽しませてくれるのかな?」

そう言うと、ヒュージは元々の形から変形した。

「へぇ、アンタは変形して戦うのか。少しは私を楽しませてくれそうだ!」

そう言うと少女はヒュージから飛び降りた。

着地の瞬間、ヒュージは、斧のような形状の腕2本で少女に殴りかかった。

当たる直前、少女は手持ちのチャームで攻撃の方向をずらす。

「やっぱり電脳(レプリカ)じゃ、大したダメージにならないよな。」

その後もヒュージの腕による連撃を受け流すだけの防戦一方を強いられる。

「そろそろ、逃げ切れたかな。じゃあ、やるか!」

少女は腰に着けているナイフ型チャーム(本物)を両手に3本ずつ持つ。

「ここからは、本気モードだ。ついてこれるなら、ついてきてみろヒュージ!」

その瞬間、少女は先程とは比にならない速度で加速した。

「はあぁぁあ!」

6本のチャームを投げる。

6本全てがヒュージの左腕を切り裂き、ヒュージの左腕が切り落とされる。

「ギュイィィィィィィィィィィィン!!」

「痛いだろ?私も痛かったさ。()()()()()()()()()!」

そう言うと、ヒュージはさらに自らをさらに変形させた。

「まだ形が変わるのか、なら、私の奥の手でお前を一撃で葬ってやるよ」

少女の元に先程投げたナイフが戻ってきて、少女の前で円を描くように空中で回転している。

「本来、この弾丸はリリィ7人で繋いで放つのだが、私には、その必要が無いらしい。」

そう言うと目の前のナイフが薄紫に光出した。

そして、腰からリボルバー型チャームを取り出し、弾丸を装填する。

その瞬間、ヒュージは少女に自身の体内のマギをレーザー光線として放つ、だが、少女は既に上に飛んでいた。

「これが、私の全力だ。そのまま塵になりやがれ!

''ズィーベンヴェルト戦術!!''」

そう言うと、ナイフの中心を1発のマギスフィアが通り抜けた。

その瞬間、マギスフィアにマギが大量に注入され、ヒュージに直撃した。

その瞬間、ヒュージは爆散した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

プロローグ________

 




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第1話 平行世界?

第1話!!


百合ケ丘女学院 工廠科

 

「出来たわよ、グロっぴ!」

「こんな朝早く呼び出されたと思ったら、チャームの試験か〜、百由さまぁ……」

工廠科(ミリアム・ヒルデガルト・v・グロピウス)の朝は早すぎる。早朝でも、深夜でも、日中帯であっても百由に呼ばれたら、ヒュージと交戦していない限りはシュッツエンゲルである百由の元に駆け付けなければならない。

「と言うよりも、まだ03:00じゃぞ!もう少し寝せてく……」

「私、この間の一柳隊の戦いを見て思ったの。マギリフレクターも貫通するくらいの威力の火力が出るチャームが必要だって。なので、早速マギリフレクターに向かって打ってみましょう!」

「百由様、寝た方がいいんじゃ……」

「じゃあ、グロっぴ。フェイズトランセンデンス使ってトリガーを引いてね!」

「ちょっと人の話を聞いた方がいいのじゃ!1回限りじゃぞ!

 フェイズトランセンデンス!!!」

そう叫ぶと、ミリアムはチャームのトリガーを引いた。

バチィィィィン!!!!!!

何かの破裂音が聞こえた。

のと同時に試験室が白い光に包まれた。

「百由様、弾丸何を使った!!」

「そんなの決まってるじゃない!ノインヴェルトの弾丸、丁度手元に2つあったから、1発使ったわ!」

「このアホ〜!!」

の叫びと同時に百由とミリアム、そして、試作チャームは、光に吸い込まれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「痛たたた、ここは、何処、なの……じゃ!?」

「いやぁ、派手に失敗したね〜、これはまた理事長代行に怒られちゃうね。ところでグロっぴ、ここは何処なっ!?」

2人は、空間に穴が空いているのを見てしまったのだ。

「……どうしてくれるのよ!私の大事な実験室の試験場に穴を開けるなんて!ただでさえ予算削られてるのに!」

「どうしてもらうのは、百由様の方じゃ!何時も呼び出しては深夜テンションで儂にフェイズトランセンデンスを使えと言ってきて!いつか次元にでも穴が空くかもって思っておったわ!帰れなかったら、一生甘いドーナツを作ってもらうんじゃからな!」

「まぁ、実験に失敗は付き物よ!とりあえず元の世界に……」

その瞬間、空間に空いていた穴が塞がった。

「グロっぴ、もう1発打てたりする?」

「儂のレアスキルがどういう特性が忘れたのか?」

「……」

つまり、この2人は帰れないのである。

「どーしたらいいのよ〜!このままじゃ、チューニングしておいてと言われてる夢結のチャームもチューニング出来ないじゃない!」

「試作品作るよりも先に、そっちをすべきだったのじゃ……」

「あ、でも、次元超えてる訳だから、してなくてもバレないじゃない!」

「そういうところはプラス思考なんじゃな!」

ツッコミ疲れたのか、それともマギ切れで疲れてるのかミリアムはぐったりしている。

「それじゃあ、人里まで降りると……」

「動かないで!」

その瞬間、百由は後ろを振り返る。

そこには、チャームを構えたリリィが、立っていた。

 




次回 出会い!?


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第2話 まさかの出会い

「どういう状況なのか、説明を私は求めるわ」

百由はチャームを構えているリリィに言い放った。

「どうもこうもないでしょ。貴方たち二人は、ケイブから出てきた。それが事実です。」

「ケイブ?儂らは、実験に失敗して、次元に穴でもあけてしまったのかのう?」

「へー、ってそれ絶対怒られるで済まないよね!」

「何を言っているんですか?とりあえず、貴方達を連行……」

「ちょっと待て」

百由とミリアムを拘束し連行しようとしたところを誰かが止めた。

「その2人は私に任せろ。」

「でも安藤(あんどう)先生!」

「いいから、ここは私に任せろ。」

「……わかりました。お気を付けて!」

そう言うと、ミリアムと百由にチャームを向けていたリリィはその場を去った。

「さてと、百由様とミリアム。何故2人はここに居るんだ?」

「まさか、本当に貴方だと思わなかったわ。」

「お主の方こそ、この世界はどうなっておるんじゃ、鶴紗(たずさ)よ」

そこには、ミリアムと同じレギオンのメンバーである安藤鶴紗が居たのだった。

「それよりも、何故さっきのリリィが貴方の事を『先生』と呼んでいたのかも気になるわ。」

「その辺の話は、学園に戻ってから話すとして……、何故2人はここに居るんだ?」

「そりゃあ、私たちは……」

「儂らは百由様のくだらん実験のせいで平行世界に繋がる空間の穴を開けてしまったのじゃ。今はその穴も閉じて元の世界に戻れなくてどうするか悩んでおったら、さっきのリリィが儂らにチャームを向けて来たんじゃ。」

「なるほど、百由様なら有り得ない話ではないな。とりあえず、理事長代行の所へ行こう。あの人なら、何か知っているかも……」

バァァァァァァン!

鶴紗の声を遮るように大きな爆発音がかなり近辺で鳴った。

「この音って……」

「グロっぴ、チャームの横のハッチ開けて!私たちのチャームが入ってるから。」

「こういう時だけは用意周到なんじゃな、百由様は!」

そう言うと、ミリアムは百由にチャームを1本投げた。

「今日も頼むわよ、アステリオン!」

キュィィン

百由がチャームを握ると、チャームが起動した。

「行くぞ、ニョルニール!」

但し、ミリアムのチャームは起動しなかった。

「な、なんじゃと!?」

「そういえば、グロっぴ今マギ切れ状態じゃなかったかしら。フェイズトランセンデンス使用後だし。」

「これだからチンチクリンは……」

「鶴紗、儂はお前だけには言われとうない。」

「私の身長が伸びないのは、リジェネーターが細胞組織の細胞分裂も元に戻すせいだ。まあ、伸びないのが身長だけで、1部では合法ロリと言うあだ名がついているのは事実だが……」

「お、おう、そうじゃったのか……」

「じゃあ、私はさっきの音の方に行くから、グロっぴと安藤さんは、ゆっくり追いかけてきて。」

「「了解」なのじゃ!」

そう言うと、百由は地面に円を描き、地面を蹴り上げ現場へと向かった。

「鶴紗、すまんのう。儂がマギ切れのばかりに。」

「いや、極力私もなるべくなら戦闘には参加したくない。面倒だからな。それに……」

「それに?」

「昔よりも胸が大きくなったせいで動きずらいんだよ。」

「なんじゃと!それは儂に向けてのマウントか!その喧嘩買うぞ、幾らじゃ〜!!」

「落ち着け、私だって女なんだ。仕方ないだろ。」

ミリアムと鶴紗はあまり人には聞かれたくない内容の話をしながら、百由を追うのであった。




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第3話 ボロボロのリリィ

皆さんこんにちは、汐風波沙です。
今回は会話多めです(大半が会話です)。


「ちょっと、何よこの状況は……。」

百由が到着した頃には、ヒュージは姿を消していた。

そして、地面には大きなクレーターが出来ており、その中心に1人のリリィが立っていた。

「あの子がやったのかしら?不味いわね!」

百由はその子に近づく、その瞬間、そのリリィが崩れ落ちるように倒れた。

「ちょっと、大丈夫!?」

「……」

倒れているリリィからは反応がない。

「息は……、してるわね。状況からしてマジ切れね。」

「百由様!美夢(みゆ)!」

「おい鶴紗!儂を置いていくんじゃない!」

そこにミリアムと鶴紗が合流した。

「鶴紗さん、あなたこの子知っているの?」

「はい、うちのクラスの川添(かわぞえ)美夢、うちの学校の最高戦力ですね。今日は非番のはずなのに……」

「川添……、ってもしかしてこの子美鈴(みすず)様の血縁者なの!?」

「ああ、この世界で唯一カリスマの上位互換、レアスキル《ラプラス》を発動させ、人類滅亡を阻止したリリィの川添美鈴様の娘です。」

「ちょっと待つのじゃ!ラプラスを発動させたのはもう一人おるじゃろ!」

「もう1人?それは、誰だ?」

「そうね、もう一人いたわ。お人好しで、総受けのリリィが」

「名前を教えてくれ、そのリリィがこの世界を救う希望かもしれない!」

「鶴紗、本気で言っておるのか?」

「そうよ、あなた達のレギオンのリーダーでしょ?」

「2人とも何を言っているんですか、私は()()()()()()()()()()()()なんてありませんよ。」

「なん、ですって!?」

「じゃあ、この世界には一柳梨璃はいないのか!?」

「そうですね、この世界には多分そのリリィは存在していません。そのリリィがいたら、この世界の惨状は少しは解決していたのかもしれませんね……。それよりも、今はこの場から早く離れましょう。ヒュージを倒した後でも、危険すぎます。」

「それもそうね、鶴紗さんの本拠地に行きましょうか」

「もう行くのか?儂はまだマギが完全に回復したわけじゃないのに〜」

「ほら、拠点に戻ったらドーナツやるから頑張れ!」

「それは魅力的なのじゃ!儂、今ならマギなしでもヒュージを倒せそうじゃ!」

「本当にグロっぴは甘いものが好きなのね。とりあえず、この子は私が抱えていくわ。ところで、予備の服とかないかしら。この子、制服がボロボロなのよね〜」

「仕方ないよ、拠点に戻らないと服も無い。でも、私のローブくらいは貸せるから、着せてやってくれ」

そう言うと、鶴紗は着ていたローブを脱いで百由に渡した。

「リリィなら、第一に身だしなみなのに、こいつにはまた指導しないとな」

「鶴紗、少し嬉しそうじゃな。」

「ああ、生徒と話が出来るのはとても嬉しい。なんせ私は猫としか話したことが無いからな!」

そんな他愛のないことを話しながら、鶴紗達の拠点に向かっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

百由 脳内________

 

もしもこの子があの規模の攻撃を一人で出来るのなら、マギリフレクターも一撃で破ることが出来るのでは無いのかしら。

最も、このチャームは何?

腰の部分に本体が着いているようだけど、どうして6本のナイフと一丁のリボルバーが装備されているの?

この形式のチャーム、何処かで見た覚えがあるんだけど……、ダメだ、思い出せないわ。

とりあえず、あの人が生きていれば、あの人に会って話を聞かないといけないわね。




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第4話 力の根源

今回は1度過去に戻ります。


「美夢、貴方は私達リリィの最後の砦なの。絶対に生きてこの世界を救いなさい。」

「夢結お母さんも一緒に行こうよ!」

「私は……」

「夢結さん、時間よ」

「わかりました。またね、美夢。私は必ず貴方に会いに行くわ。たとて死んでもね」

そう言うと、夢結は美夢を抱き締めた。

「これでお別れなんて、嫌だよ……」

「私もよ。でも、リリィになったのだから、自分の使命を必ずやり遂げてみせるわ。」

夢結は美夢から離れた。

「この子をよろしくお願いします」

「わかりました。命に変えても新拠点に連れて行きます」

そう言うと夢結はヘリコプターから降り、扉を閉めた。

「行ってきます、そして、さよなら美夢。出してください!」

夢結がそう命令すると、ヘリコプターは上空に飛び上がった。

そして、前進したのを見届けて夢結は戦場に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「美夢ちゃん、寂しい?」

「ううん、私、寂しくなんかないよ。だって、夢結お母さんは、私が逃げちゃったら、必ず戻ってきてくれるもん」

「美夢ちゃん……」

女性は美夢を、抱きしめた。

「ごめん、ごめんね。今回の作戦は……」

"バーン!!"

その瞬間、ヘリの後方で爆発音がした。

「マズイな、エンジンがやられた。このヘリは時期に落ちる」

「どうしてヒュージの攻撃が……、きゃぁぁぁぁ!」

ヘリコプターは回転しながら落ちて行く。

「美夢ちゃんだけは、あの人が大切にしている美夢ちゃんだけは!」

その瞬間、美夢は悟った。

『私、死んじゃうんだ。夢結お母さんに生きてって言われたのに……』

そう考えた瞬間、美夢の中で何かが目覚めた。

「嫌だ、嫌だよ!死にたくない!!」

そして、ヘリコプターは地面に叩きつけられそうになった瞬間、落下が止まり、地面にゆっくりと落ちた。

その衝撃で、扉が破壊され荷台に置いてあった一振のグングニルが外に出された。

「私だって戦える!」

「美夢ちゃんだめ!」

女性は美夢を止めようとしたが、間に合わなかった。

美夢は外に出されたグングニルを拾い上げた。

その瞬間、チャームが起動し

「はああああ!」

目の前にいたヒュージを真っ二つに切り裂いた。

「私だって、私だってリリィだもん!やってやれないことなんてないの!」

そう言うと、マギをチャームの刃に集め、囲んでいたヒュージを薙ぎ払うように一掃した。

「すごい……」

「感心してないで、アンタはあの子を回収しに行きな。お前さんのブリューナクも積んであるから、行ってこい!」

「ありがとうございます!!」

そう言うと女性は自分のチャームを持って美夢を追いかけた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

美夢は旧拠点に向かって走っている。

そこで戦っている夢結を助けるために、襲い来るヒュージを薙ぎ払いながら進み続ける。

そこに準大型ヒュージが立ち塞がる。

「邪魔ァァァァァ!!」

そう言いながらチャームの銃弾にマギを込めマギスフィアを打ち出す。

マギスフィアは、準大型ヒュージを撃ち抜き、その後ろにいたヒュージの群れを壊滅させた。

そして、旧拠点に戻ってきた。

「夢結お母さん!!」

「来ちゃダメよ美夢!!」

夢結が一瞬のよそ見したことで、ヒュージと夢結の勝負は決着した。

夢結のダインスレイフが地面に落ちる。

それと同時に夢結の身体が中に投げれられる。そして、ヒュージは鋭利な両腕で更に夢結を切り刻み、大量の血が辺りを鮮血に染めた。

「ああ、あああ、あああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

その瞬間、美夢の心の中で何かが壊れる音がした。

「殺す、殺す殺す殺す!」

美夢がヒュージに飛びかかろうとした瞬間、

「美夢ちゃんダメ!」

女性リリィが美夢を抱きしめた。

「離せ!離せよ!アイツは!アイツだけは私の手で殺す!絶対に殺すの!」

「いい加減にしなさい!」

女性リリィは美夢の頬を叩いた。

「え……」

美夢は唖然とした。

「今の、仲間の大切さを知らない貴方じゃ絶対に勝てない!だから、今は引きなさい。そして何時か強くなって、その時に夢結さまの、お姉様の仇を打ちなさい。私だって、今戦わないと行けないと思っ待てる。でも!今は無理なの。だから、ね。今は引こうよ。」

「わかった……」

そう言うと、力が抜けたように美夢は眠りに就いた。

そして、女性リリィは地面に円を描き、その場を飛ぶように去った。

その際に女性はダインスレイフを回収し、去ったことは誰も知らない。

 




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第5話 目覚め

今回は会話かなりモリモリです。


目が覚めると、知らない誰かの背中だった。

優しい匂いがする。

とても落ち着く。

「お、目が覚めたようね。」

「おはようございます、私、どのくらい気絶してましたか?」

「ん〜、多分私が駆け付けた時には立ったまま気絶してたから、多分小一時間くらいじゃないかしら?」

「じゃあ、1時間も私を担いだ状態だったんですか!?」

「そうなのよ〜、でも、貴方、マギ切れで倒れたんでしょ?もう大丈夫なの?」

「はい、ある程度回復したので、下ろしてもらって大丈夫です。」

美夢は、百由の背中から降りた。

「ところで、自己紹介していなかったわね。私の名前は真島百由、1部の学会からは週間百由って呼ばれているわ!」

「え!?本当にあの()()()()さんなんですか!?私、貴方に1度お会いしたかったんです!私、チャームの開発とか、設計とかしていて……、あと、今装備しているチャームも私の自作なんです!」

「ちょっと落ち着こうか、拠点に着いたら、貴方のラボにお邪魔させて貰えないかしら、私のチャームの、修理をしないといけないのよ。」

「でも、そのチャームは使用してませんよね?」

「違うの、もう一本の方をね修理して、グロっぴにもう1発打ってもらわないと、元の世界に戻れないのよ。」

「元の世界?戻る?一体どういうことですか?」

「とりあえず、起きたのなら降りろよ美夢」

「うげっ!?その声はまさか……」

「そうだぞ、お前の担任であり、生徒指導の安藤鶴紗だよ!」

「嫌だ!嫌だよ〜!百由さんから絶対に降りないですからね、私!降りたら私殺されます!」

「私としては、早く降りて欲しいのだけど」

「百由様、そういう時は振り落とせばいいのじゃ。」

「あ〜!その手があったか!」

百由は、美夢を背中から振り落とした。

「百由さんが私を見捨てた〜!」

「心配するな、私はお前を見捨てないからな〜!」

「安藤先生、今回だけは許して……」

「許すわけないだろ!お前、毎回毎回戦闘の度にマギ切れになりやがって!もう少し加減をしろと言っているだろうが!」

「ご、ごめんなさい……」

「でも、今回は特殊だったから、許すし、お前が逃がした2人、ちゃんと拠点まで戻ってきたぞ。」

「良かったです、2人を助けられて。」

「まだヤツを探してるのか?」

「はい、誰かに倒されてるはずがないんです、アイツは必ず何処かで生きているはずなんです。私がこの手で倒す、それが私がリリィとして戦う意味です。」

「そうか、でも、もう少し大人しくしろ、夢結さまが負けたのなら、お前一人じゃ絶対に勝てない。」

「ちょっと、待ちなさい!夢結が負けた!?そんな化け物ヒュージがいるの?そんなの、梨璃さんのラプラス無しじゃ勝てないじゃない……」

「だから、()()()の覚醒を待ってるんだよ」

鶴紗は、美夢の頭を撫でる。

「コイツはラプラスに覚醒した川添美鈴さまの娘だ、母親にできて娘に出来ないことはないはずだからな!でも、コイツは群れるのを嫌う。」

「だって、仲間は居ても邪魔になるだけですから。」

「そういう事ね……、なら、私達と一時的なレギオンを組みましょ!」

百由はミリアムの肩を抱く。

「儂もか!?」

「シュッツエンゲルとしての命令よ!」

「あーもー好きにしたらいいのじゃ!」

こうして、美夢、鶴紗、百由、ミリアムでレギオンを一時的に組むことになった。

 




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第6話 面会

「さてと、一体いつから話をしたら良いのだろうか……」

「初めから聞きたいのだけど、今は時間が無いから何故世界がこの有様になったのかだけ教えて貰えたらいいわ、理事長代行(りじちょうだいこう)。」

百由はそう切り出した。

現在、百由、ミリアム、鶴紗、美夢は戦闘を終えてから拠点に戻って来たが、鶴紗と美夢は、百由とミリアムを理事長室に案内した後、リリィ指導室へ向かい、百由とミリアムは理事長代行と話をするために現在面会中というわけである。

「別に私はこの世界を救うのよりも、私とグロっぴが元の世界に戻ることが出来ればいいの。その為には、今人類がどんな状況なのか知る必要があるから、聞いてるの。さあ、聞かせてもらいましょうか」

「百由様、ここには緑茶しか無いのじゃ。甘いミルクティーは無いのか〜?」

「後で探してあげるから、我慢しなさい。それで、教えてくださいますよね!理事長代行〜?」

理事長代行は、少し驚いた顔をしたが、すぐに何時もの表情に戻った。

「わかった。そして、相変わらず君も変わらないのだな、百由くん。」

「そうね、強いて言うなら、バストがDだったのがEになったくらいですね。」

「この状況で堂々とそれを言える君を尊敬することにしよう……。」

理事長代行は、頭を抱えた。

「少し、昔の話をするとするか……」

理事長代行は、そう切り出すと、3人分の緑茶を淹れた。

 

 

 

 

 

 

 

20年前________________

東北地方、青森と北海道の間の津軽海峡で、アルトラ級ヒュージが発生し、北海道と東北地方は、壊滅した。

その後、アルトラ級ヒュージは、眠りに着いたが、津軽海峡に新たなネストが出来た。

それにより、日本で大量のヒュージが発生し、人類は福島まで生存圏を奪われてしまった。当時の川添隊が防衛の為に出撃したが、川添美鈴以外は帰還、そしてその時に夢結が連れて帰ってきたのが、後に美夢となる赤子だった。

だが、彼女は夢結と共にGEHENNAの研究所に連れて行かた。

それから10年後、GEHENNAの施設がヒュージのケイブ発生により壊滅し、その時に夢結もヒュージとの戦闘に敗北し死亡した。

その瞬間を美夢は、双葉(ふたば)先生と見てしまっていた。

その際にレアスキルらしきものが発生したが、その後は何も見受けられていない。

 

 

 

 

 

 

 

「なるほど、戦場で生まれたリリィの娘があの川添美夢という訳ね。」

「まあ、そういうことじゃな。ところで、梨璃は居ないのか?」

「はて、梨璃というリリィは誰の事か?ここに居るのはみなリリィだが……」

「この世界には一柳梨璃が居ないということなの?」

「そのようじゃな、あやつがいれば、かなり戦況を打開出来る可能性があるのじゃが……」

「戦況を打開?」

「えぇ、彼女のレアスキルはカリスマ、いや、()()()()と言えば、理事長代行も分かるわよね?」

「あぁ、この世界には川添美鈴くんくらいしかその能力に覚醒していなかったが……」

「なんですって!?」

「まさか、百由くんの世界では覚醒していなかったのか?」

「私の知る限りでは、その可能性が高いというのが結論となっているわ。」

「そうか……、なら、一柳梨璃というリリィを見つけ出せば、もしかしたらということだな。」

「そうね、()()()()がこの世界を救うのに必要になるはずなのよ。だから、私は美夢の方をどうにかするから、理事長代行は、梨璃を探してください。」

「わかった、まさか、こんな世界になって君とまた話が出来て嬉しかったよ、百由くん。」

「まあ、また会えますよ近いうちに。行くわよ、グロっぴ!」

「百由様、待つのじゃぁ〜」

「それじゃあ、理事長代行。よろしくお願いします。それじゃあー!」

そう言うと百由は理事長室を退出した。

 

 

「さてと、どうしたものかね、双葉くん。」

そう言うと、理事長代行は1枚の履歴書を見た。

双葉梨璃

(旧姓一柳)




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第7話 少し前の話①

ここからは、作者の中での妄想がかなり膨大になります。
暖かい目で見守ってください


コンコンコン。

百由とミリアムが理事長室から出た後、控えめなノックが理事長室に響いた。

「入りたまえ」

理事長代行は、ノックの主を部屋に通した。

「失礼します、理事長代行先生。」

「盗み聞きとは、いい趣味とは言えないな。一柳、いや、今は双葉くんと呼んだ方がいいのか」

「そうですね、今の私に残ってるものなんて、このレアスキルと彼の残してくれたマギブースター付きの結婚指輪くらいですよ。」

「そうか、やはり君に()()を託していたのだな。君にそのレアスキルが発現した時は、秘密にするか、報告するか悩んだが、美夢くんを守るために君が秘密にした理由がわかったよ。」

「そうですね、今でも眠りにつくと思い出します。私はあの日を忘れる事が出来ていないのでしょうか?」

「いや、君の場合は彼が大切だったからであろう。私にも昔、大切な人がいたが、彼女は戦場から戻ってくることはなかった……」

理事長代行は、珍しくコーヒーを淹れた。

「珍しいですね、先生がコーヒーを飲むの。」

「コーヒーは結構好きなのだよ、まあ、主に人から話を聞く時に飲む、さてと、話を聞かせてくれないか」

「分かりました、彼とどう出会ってあの日を迎えるまで」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

10年前________________

私、一柳梨璃は百合ケ丘女学院を卒業し、本格的なリリィとしてヒュージと戦うことになりました。

配属されたのは、ネスト壊滅作戦の中心。

そう、夢結お姉様のいる部隊の隊長として、元一柳隊の皆と配属されました。

私達は百合ケ丘のネストを破壊した経験があるため、作戦ではその時の経験を活かし戦うように言われました。

あの時はラプラス目覚めたばかりで、何をどうすればいいか分からなかったというのが、本音でした。

それに、百合ケ丘のネストを破壊出来たのは、皆さんの協力あっての事でしたので、この作戦が上手くいくとは思っていませんでした。

そして、その予想は見事に的中した。

ネストに侵攻した際に、大量のケイブが発生し、私達はほぼ壊滅し、一柳隊ら私以外無事でした。

でも、私は運が良かったのか悪かったのか、左足の神経を切られて、左足の感覚がほぼ無くなりました。

その時、すぐに夢結お姉様が私を連れて救護拠点に連れて行ってもらいました。

私の容態は戦えるかどうかの緊急性を要したため、急患として扱われました。

その時、私は再会したのです。

甲州に居た時のもう1人の幼馴染で、私が初めて恋をした男の子、双葉(ふたば) 蒼伊(あおい)と。




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少し昔の話②

今回、遂に○○します。
感想・ご意見受け付けます。
あと、今回は長いです。



「すみませんっ!急患です、誰かっ!誰かいませんかっ!」

鶴紗は沢山の怪我人がいる救護拠点で看護師、もしくは医師を探していた。

隣で肩を抱えられた梨璃は気絶しているようだ。

「すみません、誰かっ!誰か梨璃を助けて!」

「急患ですね、僕が診ます。診察室へ!」

そう言うと男の医師は、鶴紗と梨璃を連れて診察室へ向かった。

 

 

 

 

 

 

「さて、傷を見せていただけますか?」

「私はいい、この子を、梨璃を助けてください。」

「分かりました、足の出血が酷い。僕のレアスキルで傷口は治せますが、血が増える訳では無いので、安藤鶴紗さん、動けるのであれば手伝って頂けませんか?」

「分かった、ところで何故私の名前を知っている?」

「知らないんですか?」

男性医師はゴム手袋をはめる。

「戦場で、貴女のことを知らない人なんて、いませんよ」

「そうか、それで私は何をしたらいい?」

「そこに血液パックがありますよね、梨璃さんの血液型と合うものを選んでください。」

「わかった。」

鶴紗は血液パックを選び始めた。

「梨璃はA型だから……、これだ!見つけたぞ、次は何を……」

鶴紗は、その瞬間驚きを隠せなかった。

男性医師は、メス型のチャームを使用し、梨璃の傷口をひとなぞりした。

その瞬間、傷口がくっつくように塞がった。

「お前、そのレアスキルまさか……」

「そう、君のリジェネーターのオリジナル、グネーセンだよ。僕もGEHENNAの実験体だったんだ。だから、この世界の為に戦う君たちを死なせる訳には行かないんだよ。」

「そうだったのか……」

そう言いながら、鶴紗の傷は塞がって、完全に治ってしまった。

「噂通りだね、リジェネーターの力は。」

「やめてくれ、この力は好きで手に入れた訳じゃないから」

「確かに、でも、君にその力が渡って良かった。そのおかげで、()()()()()()()()。」

「お前、梨璃の事知ってるのか!?」

「知ってるも何も、私と蒼伊君は、幼馴染だもん。」

「梨璃っ!?」

その時、梨璃が目を覚ました。

「もう大丈夫なのか!?痛みは無いか?血は足りてるか?足の感覚はあるか?」

「うん、もう大丈夫。ありがとう鶴紗ちゃん。」

梨璃は鶴紗を抱きしめる。

「梨璃、梨璃っ!」

鶴紗も梨璃を抱き締める。

「何か、良い物が見れた。医者やってて良かった。」

蒼伊は、微笑みを浮かべながら呟いた。

「鶴紗ちゃん、蒼伊君と2人にしてくれない?少し話をしたいから。」

「わかった、でも、襲われそうになったら言えよ。お前は可愛いんだから、もう少し自覚を持て」

「うん、ありがとう。」

そう言うと、鶴紗は診察室の外へ出た。

 

「さてと、久し振りだね、もうあれから6年経ったんだね、梨璃ちゃん。」

「そうだね、時の流れって本当に早いね、蒼伊君。」

「ねぇ、約束覚えてる?」

「忘れてないよ、と言うよりも、忘れられないよ。じゃあ、再会できたし、私達()()()()()()。」

「本当に良いの?」

「当たり前だよ、私の初恋なんだから……」

「なんだ、僕ら両想いだったんだね。」

「そうなのかもね。」

「実はさ、いつか会えた時にと思ってずっと準備してたんだ、これ……」

蒼伊の手には黒い小さな箱、そして、蒼伊は梨璃の前で膝をつき、箱を開けた。

「一柳梨璃さん、僕と結婚してください!」

箱の中には、白銀色の指輪が入っていた。

「綺麗……」

「答えを聞きたいんだけど……」

「口に出さないと、ダメ?」

「梨璃の口から聞きたいんだ!頼むよぉぉぉぉぉおっ!?」

その瞬間、梨璃は蒼伊に抱き着いた。

「そんなの、YESかはい以外考えられないよ!」

「あぁ……、うぉぉぉぉぉぉぉ!!」

雄叫びを上げながら蒼伊は梨璃を抱き締めた。

「死んでも、死んでも大事にします!」

「その言葉、忘れるなよ蒼伊先生。」

その瞬間、鶴紗が診察室へ戻ってきた。

「梨璃、おめでとう。これで、私が守ってあげなくても大丈夫だね。」

「ありがとう、鶴紗ちゃん。私、今、とても幸せだよ。」

その後、蒼伊の雄叫びにより、2人の結婚は救護拠点、そして戦場のリリィ達にまで拡散され、それを祝福するようにリリィ達はヒュージを倒し、人類のボーダーラインである福島を保つことが出来たのであった。

 




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少し昔の話③

少し長いです。
そして、この回は2回に分けました。


梨璃と蒼伊の結婚式当日________

「夢結様、早いですね。」

結婚式開始1時間前、鶴紗はどうやら落ち着かない様子で教会に来ていた。

だが、鶴紗よりも落ち着いていないリリィがもう一人いた。

「当たり前じゃない、大切なシルトの晴れ舞台でもあり、私からの旅立ちの日なのよ。遅刻なんてしたら、美鈴お姉様からどんな風に虐められてしまうか……」

「夢結様、言葉と表情が真逆になってますよ。」

口では立派な事を言っている割には、声が震えているのである。

「夢結様、落ち着いてください。これ、胃薬です。」

「あら、ありがとう。助かるわ……」

夢結は手持ちの水を使用して、胃薬を服用した。

「鶴紗さん、あなたは梨璃さんの結婚相手と会ったのでしょ?どんな人だったの?」

「王子様でしたよ、見た目も性格も。ただ、レアスキルだけは騎士って感じでした。」

「そうなのね、それなら、私も安心して梨璃を任せることが出来るわ……」

「まぁ、夢結様がキャラでもないのに胸を張っていらっしゃいますわ。まあ、胸だけで言えば私の方が大きのですが。ところで、いつものメンヘラをしなくてよろしくて?」

少し煽りの入った言葉で鶴紗と夢結の会話を遮った。

1人の女リリィが鶴紗の隣に座る。

「楓、お前は人を煽らないと気の済まないタチなのか?」

「私だって内心驚きとあの人への憎悪で埋め尽くされていますのよ!私の、私の可愛い梨璃さんをあっさりと手の中に収めてしまう、本当にこれだから男の人は……」

「楓さん、これが現実なの。諦めて祝うこともこの世界の為よ。」

「嫌ですわ!私の梨璃さんを返してくださいな!」

「お前のじゃないだろ。」

「そうよ、()()梨璃よ」

「まあ、今となっては蒼伊先生の梨璃になって知ったのですがね」

「「……」」

鶴紗は、2人にオーバーキルをしてしまった。

2人からは負のオーラが溢れている。

「ところで夢結様、隣の子は誰だ?」

「そうですわ、いつの間に、と言うよりも誰と夜に営んでいつ産んだ子ですか?」

「楓さん、貴女には本気で説教した方がいいようね。先に言っておくけど、私はまだ()()よ」

「「えっ!?」」

その場が凍りついてしまった。

「そ、そうなんですね〜……」

「てっきり卒業してから、色んな男を誑かして食い物にしていたのかと思っていましたわ……、まさかここまでメンヘラを拗らせていますとは」

「悪かったわね、メンヘラで。まあ、私なんてそのせいで梨璃に捨てられたんだわ……」

夢結は、ヘラってしまっている

「楓、責任取って夢結様に男紹介してやれ。なるべく超ドMの変態でイケメンがいいだろう。」

「そうですわね、私の知る限りでは、多分居ないと思いますが……、責任を取るなら、やっぱり2人とも蒼伊先生に貰って頂いた方が……」

「法律的にダメだろ」

2人の会話をよそ目に夢結は本気で落ち込んでいた。

「大丈夫、夢結お母さん?」

美夢は、優しく夢結の頭を撫でる。

「か、楓。今の聞いたか?」

「え、ええ。衝撃的すぎて、脳に焼き付いてしまいましたわ……」

2人は唖然としている。

「一体いつの間に産んだんですか?」

「だから、この子は私の子じゃないけど、私のことを母親と同じと思っているのよ。まあ、私も自分の子供みたいに思っているわ」

「鶴紗さん、これって……」

「多分1年間で極度の梨璃不足で、男に身体を許し、ヤリ捨てされてしまった末路なんだろう」

「だから、私の子じゃないって言ってるでしょ!」

「じゃあ、誰の子ですの?」

「美鈴お姉様よ!あの人と、あの人を誑かした男の子供よ!」

「あー、何も聞かなったことにしておきますね。ところで、その子、名前何って言うんですか?」

「美夢、自己紹介しなさい」

「は〜い!」

美夢は椅子から立ち上がり、鶴紗と楓の方を向いた。

「初めまして、川添美夢です。8歳です。」

「な、なんですかこの子、天使なんですが……」

「ああ、問題なく守ってあげたくなるな。美夢ちゃん、飴食べるか?」

「食べる〜」

「鶴紗さん、餌付けは程々でしてちょうだい、私のような性根が曲がった子に育ってしまうから」

「そうですわよ、美夢ちゃん、こっちのチョコレートもあげますわ」

「本当に程々にしてちょうだい!」

この時、夢結は美夢を連れて来た事を少しだけ後悔していた




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少し昔の話④

遅くなりました、多分次も遅くなります。
申し訳ありません。


結婚式から数週間後、2人はそれぞれ忙しい日々を過ごしていた。

梨璃は、戦場にて一柳隊改めて、白井隊となり夢結が隊長という形で落ち着き、副隊長となり後方支援となった。

蒼伊は、今まで通りの戦場医師としてリリィ達の怪我を診療すると同時に、自身の専門分野であるリリィ支援のアイテム開発も行っている。

結婚指輪は、お互いのリリィの指輪を交換し、互いのチャームの使用が可能となる形となった。

また、それとは別に梨璃の指輪には蒼伊が開発した()()()()()()の機能が実装されており、相手からのマギの入っている攻撃をシールドが破壊されるまで防ぐことが出来る。シールドは、一定量のマギを流せば、回復・復活させることが出来る超優れ物である。

だが、戦況は決していいものではなかった。

むしろとても悪い状況であった。

今まで押していたが、ここに来てヒュージのケイブの数が今までの倍になってしまったのである。

だが、1つのケイブから出てくるヒュージの数はかなり少なくなったものの、大半が変異種と呼ばれるマギを使って攻撃してくるヒュージであった。

 

 

 

 

 

 

 

________________救護拠点

 

 

「まったく、今日もかなりの負傷者だな。」

「前線では戦闘が激化しているみたいですよ。」

「どこ情報だ?」

「いつも通り一葉司令官からです。」

「やっぱりか、流石元エレンスゲのリリィだな。」

「これでも、結構仲は良かった方ですよ。」

「そうなのか……」

「そうなのです。それよりも、どうなんですか、新婚生活」

看護師は目をキラキラさせながら問いかける。

「ふ、普通だよ。帰ってきた梨璃を膝枕しながら頭を撫でて癒されてる」

「癒してるのではなく?」

「ああ、梨璃はめちゃくちゃ甘えん坊なんだよ。まあ、そこがとても可愛いんだけど。」

「うわぁ〜、お惚気けご馳走様です。」

とても満足そうな顔をしている。

「話は変わるが、ここにいる看護師で戦えるリリィって何人いる?」

「私を含めて20人です。ああ、そう言えば()()()()()()()()使()()()んでしたね」

「ああ、男では珍しくリリィなんだよな。」

「かなり珍しいですよね。第1世代以来の男のリリィですもんね。」

「まあ、正直なところゲヘナに実験されてたから、チャームを握っていないから、今は起動出来るか分からないけどね。」

「そうなんですか……、失礼な事聞いてしまって申し訳ありません。」

「いや、大丈夫だよ。いつかは話すつもりだったし。」

「でも!それでも、思い出したくない記憶のはずですよね?」

「優しいんだな、定盛くんは……」

蒼伊は看護師の頭を撫でた。

サラサラの髪を優しく。

「なっ……、はわぁ……」

少し照れているようだ。

顔を真っ赤にしながら、でも、満更でもなさそうな表情をしている。

「……そんなんだから、勘違いする子が多いんです。」

「ん?何か言ったか?」

「もういいでしょ、そろそろ離してください!梨璃さんに言いますよ!」

「それは困るから、止めます。」

蒼伊は、定盛の頭から手を離した。

「あと、私を呼ぶ時は姫歌かヒメヒメっていつも言ってますよね?」

「わかった、わかったから落ち着いてよ、定盛くん。」

「だ〜か〜ら〜!」

その言葉を遮るように警報音がなる。

『エマージェーシー、エマージェーシー!只今、救護区域内でケイブの発生を確認。動けるリリィ、待機中のリリィは直ぐに戦闘態勢に入ってください。繰り返します…………』

その瞬間、定盛の目の色が変わった。

「先生、逃げてください。生き残って、救える命を救ってください。」

「ダメだ、僕も戦う。」

「いえ、先生は逃げるべきです!」

定盛は、強く言う。

「死亡フラグ回避してるんですよ、今。だからこそ、逃げるべきなんです!先生は生きて、梨璃さんと幸せな家庭を築いて、幸せになる権利と義務があるんです!だから、今は逃げてください……」

定盛の言葉は本気だった。そのせいで、喉を通りかけた言葉が、消え失せた。

「……わかった、でも、研究データは持って行かせてくれ。アレは絶対に必要なものだから!」

「分かりました、私はヒュージがここに来たら、倒します。」

「わかった。任せるよ、姫歌」

「了解しました、蒼伊先生!」

2人はそれぞれの役割を理解している。

姫歌は、ヒュージから蒼伊を守り、蒼伊はリリィのために研究中の武器を実用段階まで持っていく。

『各リリィに通達!今回のケイブから現れたヒュージは一体。だが、何かが……』

その瞬間、2人のインカムが通信を切断した。

いや、正確には()()()()()のだった。

「ヒュージが、通信施設を壊しやがった。通信は不可能だな……、姫歌!5分でいい、5分でいいから持たせてくれ!ヒュージ一体にこの研究を邪魔させてたまるか!あの子が、成長して、この武器を使えるようになるまで、生きているつもりだったが、仕方が無いか。」

蒼伊は、1本の鉄の塊らしき物に術式を書き入れていく。

そのスピードは、通常のスピードではありえない速度である。

ほぼ終わりに近づいた瞬間、壁を突き破り、ヒュージが診察室に入ってきた。

「ギュイィィィィィイン」

「コイツ、まさか変異種!?」

通常のヒュージと変異種の違いは、多いが、判別方法は戦うか、鳴き声を聞くしかない。

ただし、変異種は鳴き声を変えられる。

だから、被害に遭うリリィが多いのだ。

「だけど、私にとってはリハビリ相手にも……」

「よし、これで完了だ。姫歌、ここを脱出す……

姫歌、危ない!」

「え……」

姫歌が立っていた足元が崩れて、地下に落ちていった。

蒼伊は手を伸ばすが、届かない。

「姫歌ぁぁぁぁあ!」

そんな事も気にせず、ヒュージは蒼伊に襲いかかる。

振り下ろした斧状の腕が、蒼伊の首元に当たろうとした時、ヒュージの腕が、弾かれた。

「マギ……シールド、まさか!?」

「蒼伊くん!」

「梨璃!?」

インカムに俺の名前を呼ぶ声が聞こえた。

「良かった、間に合ってよかった!今からそっちに……」

「いや、来るな!地下に姫歌が落ちた。そっちの救助を頼む。」

「でも!」

「梨璃っ!」

「はいっ!?」

「今回だけは、俺のお願いを聞いてくれよ。コイツだけは、今ここで狩らないとダメなんだよ。だから、姫歌を頼む」

「……わかった。でも、地下に降りたら、私のシールドは使えないよ。」

「大丈夫、僕だってチャームを使えるよ。任せておいてよ。2人が出てきたら、撤退する。」

「了解!お互い健闘を祈ります!」

蒼伊は、インカムを捨てた。

「待たせたな、本気でお前を狩る!電脳(サイコキネシス)

蒼伊は、術式を書き込んでいたチャームを引き寄せる。

「頼むぞ、()()()()

チャームが起動する。但し、通常のチャームとは違い銃部分が存在しない。

切断に特化しているチャームだ。

「ぐあっ!!マギの侵食が激しいな。戦闘の終わりまで身体、持ってくれよ!」

 

 

 

 

 

 

_____________少し昔の話④ [完]




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少し昔の話⑤

またしても遅くなりました。



キュイイイイン

チャームにマギが吸われる。

「チッ!やっぱりこのチャームは、マギの吸収量が多い……、でも、それ故に起動しさえすれば、お前を葬ることなど……簡単だ!」

その瞬間、チャームが起動する。

真っ黒だったチャームの刃が黄金に輝き始めた。

「さあ、本番はここからだぜ!」

蒼伊は、チャームを軽く振る。

チャームの刃先からマギで出来た斬撃が飛び出した。

斬撃はヒュージの腕を1本切り裂いた。

「ギュィィィィイン!!!」

ヒュージは、一瞬何が起きたのか理解出来ていないようだったが、痛みのフィードバックで、やっと、腕を切り裂かれたことに気が付く。

「痛いか?そう、それが痛みだ。お前の狩ってきたリリィたちの痛みだ!そして、今度はお前が狩られる番なんだよ!」

蒼伊は距離を詰める。

ヒュージもそれに合わせて距離を詰めてくる。

 

カァァァァァァン!

 

ヒュージの腕と蒼伊のチャームがぶつかり合い、そのノックバックで、双方後ろへ吹き飛ぶ。

蒼伊は、チャームを地面に刺し、転倒を防ぐ。

「意外にタフだな……、でも、俺にはもう守らないといけないものがあるんだよ!!」

蒼伊はチャームを握り、地面から引き抜き、ヒュージに向かって走り出した。

「うぉぉぉぉぉぉお!」

ヒュージの左腕の結合部を切り付けた。一撃で切り裂いた。

チャームの遠心力を利用し、次の一撃を叩き込もうとした瞬間、

「ギュィィィィィィィィ!!!!!!!!!」

ヒュージが姿を変えた。

「おわっ!?」

ヒュージが姿を変える瞬間、強い衝撃波が発生し、蒼伊は、後方に吹き飛んだ。

「やっぱり大人しくやられてくれるわけないよなぁぁぁ!」

蒼伊はもう一度ヒュージに斬りかかった。

「捉え……」

蒼伊が間合いまで距離を詰めた瞬間、切り落としたはずのヒュージの腕が蒼伊の横腹を捉えた。

そのまま10メートルほど後方のコンクリート壁までぶっ飛ばされた。

「ぐはっ!!」

壁にぶつかり、蒼伊は吐血した。

「とりあえず、内蔵はやられてないが、今のコンクリートにぶつかったことで肋骨は何本か逝ったかもしれないな……、それでも、俺は諦める訳にはいかないんだよ!梨璃や、他のたくさんのリリィ、そして、辛かったはずなのに、いつも笑っていた()()の為にも!だから、俺は限界を超えてやるんだよ!」

蒼伊は立ち上がり、チャームをヒュージに向けた。

「ネストになんて戻らせてやるもんか!

 電脳(レプリカ)ぁぁぁぁぁぁあ!!」

その瞬間、蒼伊が今まで踏んできた場所に勝利の剣と同じチャームが出現した。

「驚くのは、まだ早いぜ……

 ゼノンパラドキサ!

 さあ、ここからが本番だ。」

「ギュィィィィィィィイ!!!!!!!」

今度はヒュージが突進してきた。

ヒュージの右腕が飛んでくる。

それを1本目の電脳で切り伏せる。

次に左腕が飛んできた。

「おらっよ!」

またしても、1本目の電脳で切り伏せる。

「次は、俺のターンだ。」

そう、ヒュージは、気付いていなかった。

自分が既に電脳チャーム郡の真ん中におびき出されていた事を。

「今回ばかりは、俺の勝ちだ!」

蒼伊は、1本目の電脳を投げ捨て、オリジナルの勝利の剣を地面に突き刺した。

そして、2本目の電脳を使い、ヒュージに突進しながらヒュージを切り裂く。

そのまま通過した先に、次の電脳チャームが刺さっている。

それに持ち替え、2本目を投げ捨てる。

そして、同じ動作を繰り返す。

1度チャームを入れ替える度に加速する。

どんどん加速し、もう既にヒュージは、反応することさえ不可能な速度に達した。

「これで、決める!」

最後、オリジナルの勝利の剣に持ち替え、最後の電脳を投げ捨てる。

「くたばれぇぇぇぇぇぇぇぇえ!!!!!」

最後の一撃で、ヒュージを切り裂いた。

ヒュージは、活動を停止した。




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少し昔の話⑥

遅くなりました、よろしくお願いします!


「はあ、はあ、はあ、はあ……」

蒼伊はマギを使い切り、既に限界を迎えていたが、最後の一撃で変異種型ヒュージを倒した。

「終わったー!」

その場に蒼伊は倒れ込んだ。

三年振りにチャームを起動し、大規模の攻撃を行使したのだ。

ヒュージは真っ二つに切り裂かれており、傷口にはマギを吸うことが出来なくなる封印術式を書き込まれている、これでこのヒュージは確実に動けなくなる。

蒼伊の必勝パターンである。

「まさか、サブチャームである電脳も正常に動作してくれて、本当に助かった。」

蒼伊は空を眺める。

曇っていた空はいつの間にか雲の隙間から光がさしていた。

「綺麗だ、まるで神が降臨したような景色だ。」

その瞬間、ケイブが雲の上で発生した。

救護拠点の全警戒システムは停止中、つまり、今ケイブが開いても誰も気付くことが出来ないのである。

「これは!?そうか、システムでも検知できないヤツもいるんだな。」

蒼伊は空を見上げ少し笑みをこぼした。

「蒼伊!」

姫歌を連れて地上に上がってきた梨璃が蒼伊に近く。

「梨璃、早くここから離れろ。もうすぐアルトラ級が空から落ちてくる。」

「なら、蒼伊も一緒に……」

「見ての通り俺はマギ切れで動けない。だから、姫歌と一緒に逃げろ。お前ら2人が避難拠点まで逃げる時間は稼いでやる。」

蒼伊はもう一度チャームを握る。

「私も残る。」

「ダメだ、梨璃!」

「私は貴方の(パートナー)なの!だから、生きる時も死ぬ時も一緒じゃないと……」

「ごめん、梨璃……」

蒼伊は、梨璃の鳩尾を殴る。

「姫歌、まだ動けるか?」

「まあ、人1人抱えて走るくらいは出来ます。」

「じゃあ、梨璃を頼む。あと、梨璃が目覚めたらこれを渡してくれ」

蒼伊は姫歌に手紙を渡す。

「これは?」

「まあ、俺から梨璃に送れる最後のプレゼントかな。」

「そう、ですか……」

姫歌は少し悲しそうな顔をしていた。

「そんな顔するな、姫歌。せっかくの可愛い顔が台無しだぞ。」

「そんな、可愛いだなんて……」

「まあ、梨璃の次の次の次くらいにな」

「そのセリフがなければ感動的だったのに!」

「ごめんごめん。でも、調子取り戻したみたいだな。」

「うん、必ず生き残りなさいよ。」

「まあ、残り数パーセントの奇跡にかけるとするよ。」

「じゃあ、私たちは行くわ。」

「おう、道中お気をつけて!」

「ありがとう。」

そういうと気絶した梨璃を抱えて姫歌は走り出した。

 

 

 

 

その後、アルトラ級ヒュージが空から飛来し、救護拠点だった場所は大きなクレーターとなった。

その後、調査のために派遣されたリリィはクレーターの中心部に1本のチャームが刺さっているのを発見した。

そして、双葉蒼伊の行方を知るものも1人としていなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これが、私の知っている全てです。」

梨璃は、理事長代行にそう告げる。

「そのチャームは今、誰が使用しているんだ?」

そして、理事長代行は質問する。

「それは……」

「美夢ちゃんの使っているチャームでしょ?」

百由は、理事長室をノックもせずに開いた。

「盗み聞きとはいい趣味ではないな、百由くん。」

「そこに関しては申し訳ないと思っているわ。ごめんなさいね、梨璃ちゃん。いえ、双葉梨璃さん。」

「いえ、百由様は昔からそういうところありましたから、大丈夫です。」

「本当に私ってヤバイ女だったのね。」

「なに、今更気にする必要はなかろう。そのイカレ具合は死んでも治らんだろうから。」

「理事長代行も言いますね、中々……」

「まあ、そんな冗談が言い合えるほどこの世界の私達も仲が良かったという事でしょ。」

「じゃな。ところで、何故美夢くんのチャームに使われていると考えたのか、教えて貰えるか?」

「それは最も簡単なことです。実際に私が彼女のチャームに触れているからです。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

_____________少し昔の話[完]




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第8話 電脳チャームとマギ許容量

今週分の投稿です、よろしくお願いします!



「いや〜、いい湯じゃったの〜」

「あらグロっぴ、少し溶けた?」

百由は美夢の工房に向かっていると、温泉から出て、机に伏せて溶けているミリアムを見つけた。

「そうじゃの、このまま液体になってしまうのじゃ〜」

「溶けている暇があったら、早く制服をちゃんと着なさい」

「無理なのじゃ〜、ここの温泉は悪魔が住んでおる……」

ミリアムは更に溶ける。

百由は少し頭を抱えているようだ。

「こうなれば、奥の手ね。グロっぴ、ここにドーナツがあります」

百由は何処からか包みに入っているドーナツを取り出した。

「も、百由様、それを儂にくれるのか!?」

「グロっぴが今すぐシャキッとして、美夢さんの工房に付いてくると言うなら、あげるわよ」

「なんじゃ、その桃太郎方式は……」

「じゃあ、いらないの?」

「いらないとは言ってないのじゃ!わかったわい!シャキッとすればいいのじゃろ、シャキッと!」

ミリアムは、立ち上がり着崩していた制服をしっかりと着た。

「それじゃあ、ドーナツを貰おうかのう、百由様」

「何言ってるの?美夢さんの工房に付いてくるまでが約束でしょ」

「また儂を騙したな〜!」

「いやいや、今回ばかりはグロっぴの自業自得でしょ。はやく行くわよ」

「ちくしょ〜!」

ミリアムは百由に引き摺られる形で美夢の工房まで連れて行かれることになったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

________美夢の工房

「お邪魔するわよ!」

百由はドアを開ける。

美夢は、チャームに術式を書き込んでいる最中だった。

「グロっぴ、ドーナツあげるから、ここからは少し黙っておいてね」

「言われなくてもわかっとるわい。儂も工廠科の生徒じゃ。今がどんなタイミングなのかも。」

百由とミリアムは近くの椅子に座る。

ミリアムは百由の隣でドーナツを頬張る。

とても幸せそうな顔をしていた。

「グロっぴ、あの術式どう見る?」

「なんじゃ、百由様には珍しく目をとても輝かせながら話しておるが……」

「私って、いつも目が死んでるの!?」

「いつも徹夜明けで目に狂気が走っとるわい!」

「嘘でしょ……、まぁ、それは今は置いておいて、どう見る、あの術式」

「そうじゃの、儂も何度も術式の書き込みをやっているわけじゃないから、詳しくはわからないが、儂らが使っているチャームの術式とは少し違うのじゃ。根本的な何かが……」

「そう、私達の使っているチャームよりも術式の行が多いの。多分、彼女にしか作れない術式ね」

「なるほど……、儂にはさっぱりなのじゃ」

「グロっぴもそのうちわかるようになるわよ」

そんなひそひそ話をしている間に、どうやら美夢の術式の書き込みが終わったようだ。

「ふ〜、おわったぁ〜!」

美夢は両腕を伸ばし、腰をひねる動作をした。

両動作共に、背骨のボキボキっとなる音がした。

そして、エプロンを脱ぎ机に置こうと振り返ると、百由とミリアムがいることに気付いた。

「あ、百由様とミリアムさん。来ていたんですね!」

「あ、うん。お邪魔、してるわ……」

「やはり、お主も鶴紗タイプの着痩せするやつだったか……、同類だと思っていたのに〜!」

何故ふたりがこんなことになっているのか。

そんなの、美夢の現在の格好にあったのである。

上はスポーツブラ、下は足が丸見えのショートパンツであった。

「でも、本当に綺麗な体してるわね、美夢さん」

「も、百由様!?」

百由は美夢の右腕を掴む。

「ちょっ!?どこ触って、ひゃうっ!」

「二の腕も引き締まってるけど、しっかりと筋肉がついてる。背中も柔らかさを残しつつも筋肉で支えられている。腰も安産型でいい腰。お腹周りも細いのに腹筋はついているし、お尻から足にかけてもいい筋肉がついてる。そして、極めつけは、この胸!」

「はうっんっ!」

百由が美夢の胸を掴んだ瞬間、美夢は身体をビクンっとさせ、顔を真っ赤にしていた。

「百由様、そろそろ辞めておけ、アイツが来たら厄介になり……、遅かったか」

美夢の声を聞いて鶴紗が部屋に入ってきた。

と同時に、百由は何者かによって美夢から引き剥がされた。

「痛い、待って、このままじゃ私の腕折れちゃうから、話してくれないかしら!と言うよりも、鶴紗さん、貴方先生ならこの子を止めてくれないかしら!」

「百由様、諦めてください。」

現在、百由は部屋に鶴紗の後ろから入ってきた何者かによって腕挫腋固(うでひしぎわきがため)を受けている。

「仕方ないわねっ!」

百由は、背中に乗っている何者かを振り落とすために、立ち上がり、背負い投げをした。

「さっきの分のお返しよ!」

と言いながら、腕挫十字固(うでひしぎじゅうじがため)をする。

「ギブギブ!このままだと、私の腕折れちゃいます!ごめんなさい!謝りますから、許してください!」

「何言ってるの?私の腕を折ろうとしたのに許してもらえるとでも思ったの?もちろん許すわけないわよね!オラァ!」

「イヤァァァァァ!」

ここから10秒間ほど、何者かの悲鳴が部屋に響いていた。

「百由様、そろそろ勘弁して上げてください。ウチのナンバーワンリリィを潰すのだけは辞めてください」

ここでようやく鶴紗が止めに入った。

何者かは、ほぼ半泣き状態で心が折れていたようだった。

「さてと、貴女は何処のどなた?」

百由は追い打ちをかけるように聞いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

______________第8話 [完]




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第9話 アホと百合とチョークスリーパー

遅くなりました、申し訳ないです!


「それで、私に下手くそな技をかけてきた貴女、何処の何方なの?」

百由は、「痛てててて……」と腕を振りながら飛び込んできた何者かに問いかける。

「黙秘権を行使します!」

どうやら、相手は黙りを決め込むつもりらしい。

「あっそ、じゃあ、喋ってくれるまで……」

百由は、何者かの後ろに回りこみ、首に腕を通した。

「えっ、ちょ待っ……、むぐっ!?」

何者かは暴れ出すが、暴れるのをやめさせるように

「そんなに早く死にたいの?暴れれば、暴れるだけ貴女の体内の酸素を奪っていくわよ?」

その瞬間、何かを悟ったように、何者かは暴れるのを辞めた。

「いい子ね、それじゃあまず、貴女の名前を教えてもらえるかしら」

詰目草(つめぐさ) 黒羽(くろは)、その子、美夢の守護天……」

「違います。嘘つかないでください」

「へぇ〜、嘘付いてたんだ〜!」

「ちょっと待って!さっきよりも強く、そして私を本気で殺しに来て、むぐっ!?」

百由は、先程よりも締め上げる力を強くした。

「私、人体改造と裏切りの次くらいに嘘が嫌いなのよね〜」

「よく言うわい、日頃嘘しか付いておらんのは、百由様じゃろうが……」

「グロっぴ、それは少し違うわ!私は、人に言ってないことが多いだけっ!」

「ちょ!?マジで締まってるって!鶴紗先生、助け……」

黒羽の顔は、もう既に真っ赤で、今にも泡を吹きそうになっている。

「あー、百由様、本当にそろそろ勘弁していただけませんか?ウチのエースが、人の手によって死んだとか、洒落にならないので……」

「鶴紗ちゃんが言うなら、仕方ないわね〜」

百由は、チョークスリーパーを解除した。

「本当に死んだかと思った。この人、ヒュージよりも人類の脅威になりそう……」

「そりゃあ、貴女にはないけれど、私にはある乳圧で勝ったのは、悪いと1ミリも思ってないわ!」

「わ、私だって、Bはあるから!あと、乳圧になんて負けてないから!羨ましいとかこれっぽっちも思ってないんだから〜!」

「そんなこと言っちゃて〜、最初の軽く締めてた時に昇天しかけてたのは、何処の何方かしら〜!」

「ムキーっ!私、貴女の事は、好きになれそうにありません!」

「あら残念、私、チャームをイジるのだけは、一流なのよ、だから、貴女のチャームにイタズラしようかしら」

「それをやったら、私が百由様を殺りますよ!」

鶴紗は少し睨み付けながら、百由に殺意を向ける。

「おっと、それは怖い。鶴紗ちゃんはブースデッドリリィだから、私でも勝てないわ」

百由は両腕を上げ、「降参降参〜!」と手を振った。

「まあでも、これで、5人揃ったな。メンバー」

「え、この子も入れるの?」

「儂は喧嘩だけは勘弁じゃぞ。出来るなら、百由様の愚痴に付き合うのも……」

「まあまあ、2人とも、これから仲良くなっていきましょうよ!」

「私のチャームは、美夢に整備してもらうわ」

「まあ、私が勝手に整備しちゃった時は、覚悟しておいてね!」

「美夢、絶対にお前が整備しろよ!」

「あはははは〜……」

こうして、美夢のレギオンが完成した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

______________第9話 [完]




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第10話 ズィーベンヴェルト戦術①

今週の更新分です!
よろしくお願いします


「さてと、レギオンが完成したのはいいが、まずはお互いの実力を知る必要があるな」

鶴紗は、そう切り出した。

「それじゃあ、こういう時は訓練ね!」

百由は何を考えて言ったのかわからないが、ドヤ顔で言い放った。

「でも、訓練って何をやるのよ。私は美夢の事はなんでも知ってるわ、ぐへへへへ……」

と言いながら、黒羽の顔が変質者のようになっていた。

「気持ち悪いので百由様の実験台になって死んでください」

「おっふ辛辣!でも、そういうサイコパス気質な美夢も好きだわ!私たち相性がいいから、シュッツエンゲルになりましょう!」

「何処がよ!まず、私達同級生で、しかも私の方が誕生日11ヶ月早いでしょ!なるとしても、貴女が私のシルトになって、面倒見ずに捨てるわよ!なので、私と貴女は2000000%シュッツエンゲルの契りを交わしません、以上!」

「美夢ぅぅぅぅ、そこまで拒否する必要ないじゃないぃぃぃ!」

ついに黒羽は泣き出してしまった。

「美夢、お主も中々容赦がないのぅ……」

ミリアムは、「うわぁ……」という表情をしていた。

「大丈夫ですよ、その女、すぐに……」

美夢は、再度エプロンを着用し、術式を入れ込む作業に戻ろうとしていた。

「どう!騙された!騙されたのなら、美夢、私のお姉様になって!」

「そういうの募集してないから、あと、私とはシュッツエンゲルの契りは、交わしては行けないとなっているの」

「そうなの?」

百由は不思議そうに鶴紗に尋ねた。

「まあ、アイツは特殊で、アイツのレアスキルが、周りの人間に対して害をなすから、ダメだ。しかも、アイツは自分がレアスキルを発動していることに気が付いていない」

「最悪と言うよりも、これはどうしようも出来ないわね……、ちなみに、レアスキルって?」

「アイツのレアスキルは……、いや、()()は本当にレアスキルと言えるのか……」

「どういう事?」

「アイツは多分……、いや、この話はやめよう。ところで百由様、話を戻すが訓練って何をするんだ?」

「そんなの、ノインヴェルト戦術の練習に決まってるじゃない!」

「「ノインヴェルト?」」

「なるほど、そういう事ね。いいかアホ2人組。ノインヴェルトとは、ドイツ語で9つの世界という意味がある。つまり、私たちのやっているズィーベンヴェルト戦術の9人版だ」

「待って、鶴紗ちゃん。私ズィーベンヴェルト戦術って知らないんだけど?」

「儂もじゃ」

ミリアムと百由は、首を傾げる。

「ズィーベンって、ドイツ語で7って意味よね……つまり、7人でやるノインヴェルト戦術のこと!?」

「まあ、簡単に言うとそうだな。基本的には、レギオン単位でやるから、時々5人とかでやってるやつらもいるな」

「ちょっと待って!マギ消費量とチャームの損傷率幾つなのよ!」

「一概にこうっていう数値は無いが、基本的にはリリィもチャームもほぼ限界になるな。まさに必殺の一撃……」

「つまり、失敗すれば負けが確定する諸刃の剣と言ったところじゃのぅ」

「いや、そうでも無いのが現実だ。なんと!ズィーベンヴェルト戦術の成功率は驚異の98%!残りの2%はマギ不足で出来ないということくらいだな。」

「なるほどね。この世界のリリィ達は、かなりタフでドMだということがわかったわ……」

百由は、少し頭を抱えながら言った。

「でも、ノインヴェルトの弾丸は、あと1発しかないから、良かったわ。それじゃあ早速、実践あるのみよ!」

百由は、かなり張り切っているようだが、残りのメンバーは、あまり乗る気では無い。

「百由様、今何時だと思っとる……」

「え?まだ1時じゃない!まだまだ時間なら沢山あるでしょ?」

「戦闘後に徹夜で訓練するリリィが何処におるのじゃ!」

「いやいやいや、戦闘後は徹夜するのが一般的でしょうが!大体、今ヒュージが攻めてきたら、私達の連携がないから、確実に死ぬでしょ!」

「眠かったら正常な判断が出来なくて、瞬殺されるに決まっておるじゃろが!」

「あ、それもそうね」

「それじゃあ、今日はお開きという事でいいか?」

「そうね。じゃあ、明日から!特訓開始よ!」

こうして、即席レギオンは活動がはじまったのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

___________続く

 




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ズィーベンヴェルト戦術②

今週の更新です!
遅くなりました


「はぁぁぁあ!」

カーンッ!

チャームとチャームが激しくぶつかり合う金属音が訓練場に鳴り響く。

「美夢、また腕が上がった?この間よりも攻撃が重くなってるわ!」

「うるさいですよ、黒羽さん。今は訓練なので、多少の殺意を向けても怒られないと思ったので、マギで三重強化してますので、弾かれたことに驚いてます」

黒羽と美夢は、それぞれ体制を整えながら、会話を交わしている。

「あんた、本当に容赦がないのね……」

「私は貴女達と違って、でっかいチャームを使えないんです。マギで強化入れてようやく同じくらいなのです!」

美夢は、「Do you understand?」と言わんばかりの表情をしていた。

「とりあえず、あの二人は今のリリィの中では1番と2番の実力を秘めているが、やはり、あの二人は愛が一方通行のような気がする……」

「ええ、そうね。例えるなら……」

「入学したての梨璃と夢結様のようじゃのう!」

「「たしかに〜」」

激しくぶつかり合う二人を見ながら鶴紗、百由、ミリアムは、雑談と情報共有を始めた。

「ところで、あの二人のレアスキルは?」

「判明してるのは、黒羽のみ。レアスキルは、成長の余地がある()()()()

「なんですって!?」

「つまり、梨璃のラプラスに匹敵するほどのカリスマというわけかのう?」

「もしかすると、ラプラスをも凌駕するかもしれないが……」

「ラプラスを!?カリスマの新しい派生か何かなのかしら?」

「いや、カリスマも、梨璃みたいな無茶苦茶なものもあれば、本当に普通のカリスマもある。ただ、黒羽の()()だけは、別物だ」

「どういう意味かしら?」

「あのカリスマは、まるで、チャームの術式を書き換える程の支配力、つまり、川添美鈴様と同等のカリスマを最近まで発現していなかった……」

「一体、何があったのじゃ?」

「アイツのレギオンが、変異種のヒュージとの戦闘の際に、ほぼ全滅したが、そこから、全員が生存した状態で帰ってきた」

「つまり、仲間を守りたい。必ず生きて帰るっていう意思が彼女をつき動かしたという訳ね」

「感情で発言したレアスキル、という訳じゃな……」

「そうね、でも、自ら覚醒したレアスキルは、勝手に発言したレアスキルとは別格の強さを持っているのよ。ところで鶴紗ちゃん、美夢のレアスキルは、何なの?」

鶴紗は、その話を切り出されると、いつも決まって少し暗い表情をする。

そして、覚悟を決めた表情で、

「……少し二人きりで話しませんか、百由様?」

その表情で察したように、

「ええ、構わないわ。グロっぴ、少し席を外すけど、あの二人の監視、よろしくね!」

そう言うと、鶴紗と百由は、訓練場のすぐ側にある休憩室に入った。

「全く、儂にも話してくれたってええじゃろが……」

ミリアムは、少し文句を言いながら、黒羽と美夢の戦闘を見ているのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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ズィーベンヴェルト戦術③

今週はもう一本!


「さてと、そろそろ教えてくれないかしら、鶴紗ちゃん。あの子、一体何なの?」

誰もいない休憩所、そして、不必要な気がする防音室であるこの部屋は、秘密の会談をするのにピッタリの場所である。

「とりあえず、飲み物でも飲みながら話しましょうよ。奢りますから……」

「じゃあ、エナジードリンクをお願いするわね!」

「分かりました」

ピッという音がして、『ログインカクニンデキマシタ、アンドウタズササン、ノミモノヲセンタクシテクダサイ』という音声ガイドが鳴った。

「この世界の自販機は喋るようになったのね〜、これには私も驚きだわ!」

「珍しいですね、百由様は何があっても理不尽にキレるか、調べ尽くすかのどちらかだと思ったんですが……」

「本当に私のことを何だと思ってるの、貴女達は……」

百由は、少しガッカリとした表情をした。

「まあ、私もこの技術については、少しだけ研究して、あと一歩まで行ったんだけど、最後にAIが暴走したおかげで、全てパーよ!」

「なるほど、だから驚きだったんですね。これ、BEASTです。どうぞ」

「ありがとう、と言うよりもこの世界にもBEASTがあったのね、私は徹夜する度のこれに助けられているわ」

「ちゃんと寝てくださいよ」

「グロっぴが入学して来てからは、ちゃんと寝てるわよ、私!」

「そうなんですね、私からしたらもっと休んだ方がいいと思いますが、そんな事言ってもどうせ寝ないでしょ?」

「あら、わかってるじゃない!私は寝てる時間すら勿体ないから、寝てないだけよ!」

「まあ、死なない程度に無理してください。それでは、本題に入ります」

「そうね、美夢のレアスキルについてだったわね。教えてくれるかしら?」

百由は、近くのソファーに腰掛けた。

「じゃあ、私も失礼して……」

鶴紗は、百由の対面に座った。

「まずは、何故美夢が百由様達と出会った時に倒れていたのかについて」

「大体検討はつくけど、彼女がマギ切れで倒れることなんてあるのかしら?」

「確かに、あいつのマギの量は、他を凌駕、いや他を寄せ付けないほどに成長していて、尚且つ()()()()()()()()()()()()

「待って、どういうことか全くもって分からないのだけど!?」

「つまるところ、あの二人は対極なんです。仲間を守るための覚醒したカリスマが黒羽、()()()()()()()()()()()()()()()()()のが美夢なんですよ」

「マギを引継ぐ?一体どういうこと!?」

「そのままですよ、あの子が1人でズィーベンヴェルト戦術を行える理由がそれです。仮ではありますが、私は彼女のレアスキルに名前を付けました。()()()()()()()()と……」

「なるほど、ドイツ語で引き継ぐとか、譲り受けるとか、引き受けるという意味ね。それこそ、その力の名前に相応しいわね」

「それでも、リリィ達は皆、彼女の事がいいとは思っていません。『死体を漁る墓場荒らし』と呼ばれ、罵られ、1人で工房に引きこもってる。だけど本当は、アイツは、誰よりも他人を思ってやれる心優しいいい子なんだ!美鈴様が命を懸け、夢結様が全身全霊で育て、梨璃が最後まで守り通した。3人のリリィの魂の炎が引き継がれた正しく優しく強いリリィに、あの子は育ったんだ。だから、アイツはもっと仲間に、誰かと明日を生きるために戦って欲しい……」

「なるほどね、大体は理解出来たわ。一つ質問していいかしら?」

「ど、どうぞ」

「やっぱりどう考えてもマギの複数持ちは無理だと思うのよ。体内でマギ同士がぶつかり合って、本人の体がボロボロになるだけなんだとと思う……」

「それは、本人から直接聞いてください。でも、大体検討はついてるんでしょ?」

「まあ、そうね。これ以外考えられないけど……」

「じゃあ、戻りますか?」

「そうね、あまり長時間グロっぴを放置すると、あの子、糖分不足で更に可愛く小さくなってしまうわ〜」

「それじゃあ、戻りましょうか」

鶴紗は立ち上がり、ゴミ箱に飲んでいた紅茶のベットボトルを捨てた。

百由も、残っていたエナジードリンクを一気に飲み干し、ゴミ箱に入れ、鶴紗の後ろについて行くようなかたちで休憩室を出た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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ズィーベンヴェルト戦術④

今週の更新分です!
ゴールデンウィークは、更新間に合いませんでした。
申し訳ありません。


「さっきから黙って聞いていれば好き勝手言いやがって!」

百由と鶴紗が訓練場の中に戻ってきたら、美夢が数人に怒鳴り、声が響いていた。

「好き勝手?私たちは客観的な事実を述べただけだわ。黒羽、悪いことは言わないから、ウチのレギオンに戻ってきなさい。」

「そ、そうですよ!そんな誰かも分からないチンチクリンがいるレギオンにいても成長ができません!」

「誰がチンチクリンじゃ!」

ミリアムが否定すると、「ひいっ!」と言いながら、取り囲んでいる連中のリーダーらしき人物の背後に気弱そうな少女は隠れた。

「それに、()()()()()と同じレギオンなんて、自殺行為ですよ!」

「私って、そんな厨二臭い二つ名が存在してたんだ……」

「傷付くところそこなの!?あと、美夢は死神なんかじゃないから!」

「でも、皆から嫌われているのは確かなことでしょ?」

「ッ……」

黒羽は、反論出来なかった。

「もう一度だけ忠告するわ、黒羽、私達のレギオンに戻ってきなさい。貴女のレアスキルの覚醒は、私達との絆のはずよ!それがわかっているのなら……」

「……嫌です」

「今何と言ったの?」

「だから、私は美夢と一緒のレギオンで世界を守るって決めたんです。だから、ありもしない噂を流して陥れた貴女達とは、関わりを絶ったんです!もうこれ以上、私の大切な友達を傷付けないで!」

その場が静まり返り、黒羽の声だけが響いた。

「なら、黒羽さんを賭けてレギオン対抗戦と行きましょうか!」

百由は、唐突に言った。

「レギオンマッチと言っても、今はそんなの昔あったこととしか記録されてないし、何をやるんだよ、百由様」

「ズィーベンヴェルト戦術用の訓練弾ってあるかしら?」

「まあ、ありますけど……」

「それを使うのよ!」

「なるほど、そういう事ですか!」

「ルールは簡単、先に相手の陣地に設置してあるコアにズィーベンヴェルト戦術を決めた方の勝ち。ズィーベンヴェルトは、奪ってもいいし、跳ね返すのもあり。まあ詰まるところ、最後にコアを壊した方が勝ちって事よ!」

百由は、ドヤ顔でそう言った。

「それでいいわよね、そちらの、えっと?」

「私達は、アルフヘイムだ。そして、私はリーダーの水無月光(みなずきひかり)よ!」

「わかったわ、水無月さん。ルールはさっきのでよかったかしら?」

「ええ、構わないわ。負けても、文句を言わないでくださいよ」

こうして、美夢のレギオンとアルフヘイムのレギオン対抗戦を行うことになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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第11話 レギオン対抗戦

今週の更新分です!
よろしくお願いします!


「それじゃあ、再度ルールを確認するわね!

まずは、今回使用していい攻撃手段は、ズィーベンヴェルト戦術のみ。マギのチャージが完了したら、そうね……、お互いの拠点としている的に当てる。そして、先に相手の的を壊した方の勝ちって言うのでどうかしら?」

「開始の合図はどうするのよ?」

「私が行おう」

1人の生徒が私達の前に歩いて来た。

「百由様、初めまして。生徒会長の天草志帆(あまくさしほ)です。以後お見知りおきを」

「天草ちゃんね、うん、私忘れっぽいけど、覚えておくわね!」

「天草会長、また業務を抜け出してきたんですか?」

「人聞きの悪い事を言うな、月光。今日はちゃんと終わらせてきたんだ!」

「なるほどね……、じゃあ、天草ちゃん。合図は貴女に任せるわ。ルールは……」

「聴いていましたので、大丈夫です。それでは、試合前にお互いのチャームを出してください」

光咲は、チャームを出した。

それを真似して、百由もチャームを出す。

「お互い、チャームを交えて!」

お互いチャームの刃を合わせる。

「これから行う対抗戦に勝利した方の意向に合わせる」

「マギに誓います」

百由は少し反応に遅れたが、

「……マギに誓う」

そう言った。

「それでは、作戦会議時間とする。試合開始は、5分後です。それでは、お互い自分の陣地へ」

そう言うと、百由と光咲は、お互いの拠点前に下がった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

________アルフヘイムside

「リーダー、今回の作戦は?」

「いつも通り攻めながら、ズィーベンを貯める。そして、至近距離まで行って、叩き込むわ」

「本当に大丈夫でしょうか……」

「相手はまだ出来たばかりのレギオンよ。そこまでのパス精度は無いはずよ。だから、互いに距離をとる戦術で狙ってくるはずだから、ガラ空きの所を突っ走るわよ!」

「「「「「「了解っ!」」」」」」

 

 

 

 

 

 

 

________美夢隊side

「さてと、作戦よね!」

「それよりも、私達は練習と息を合わせるのは出来てない。どうやって勝つつもりなんだよ、百由様」

「儂はなんとしてでも勝たないといけないのじゃ、あのチンチクリンといった小娘に痛い目を見せておかねば……」

「私情はいいから、勝つための作戦としては、ズィーベンの繋げ方よね!」

「そうですね、私は百由さんとミリアムさんの実力を知らないですし、まず、今のままズィーベンが繋がる可能性は、低いと思っています」

「そうよね、でも、絶対に失敗しない大型戦術のやり方があるの!ね、グロっぴ!」

「じゃな、マギスフィアを()()()()()()()()、フィニッシュ担当に回す。因みに、フィニッシュは……」

「美夢、貴女がやりなさい」

百由は、美夢の目を真っ直ぐ見る。

「私でいいんですか?」

「これは、貴女の戦いでもあるのよ。貴女についている汚名を返上するチャンスなの!貴女が最後決めなさい」

「……わかりました。足りない2名分のマギは、私のマギで代用します。そして、皆さんのマギを私が叩き込みます!」

「それじゃあ、次にフィニッシュに回す人の順番よね……」

「ミリアム、百由様、私、黒羽、美夢の順番でいいだろ?」

「確かに、お主らは連携は出来ないが、お互いにパスを読むことくらい出来るだろ?」

「わかりました、それでは、よろしくお願いします!」

「それじゃあ、勝ちに行くわよ!」

百由は、拳を突き上げる。

「オー」

それに合わせて鶴紗は、やる気のない声で拳を突き上げる。

「なのじゃぁ!」

ミリアムは、元気な声で拳を突き上げる。

「はいっ!」

美夢は、少し不安を交えた震える声で拳を突き上げる。

「絶対に勝ちましょう!」

黒羽は、自信に満ち溢れた声で拳を突き上げる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お互い、作戦が決まったみたいだな……」

志帆は少しニヤつき、

「それでは、対抗戦を始めます。お互い、定位置に着いて……」

少し間が空く。

 

「それでは、対抗戦始め!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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レギオン対抗戦②

今週の更新分です!
よろしくお願いします!


________アルフヘイムside

「皆、行くわよ!」

その掛け声で、アルフヘイムメンバーは全員走り出した。

メンバーは慣れた手際でマギスフィアを回して行く。

「まあ、所詮出来たばかりのレギオンで大した連携は出来ないわよね!」

ファーストショットを打った後、防衛のため自陣に残っていたメンバーが、前線に行こうとした瞬間、その隣を美夢が通り過ぎた。

「なんて速さ!?でも、マギスフィアが繋がってなければそれも無意味……」

ようやく前線に来た時に気が付いた。

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()ではないことに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

________美夢隊side

「さてと、今回やる方法なんだけど、グロっぴは1番知っているんじゃない?」

「百由様、本気で言っておるのか?あれはある種の賭けになるぞ?」

「いや、ここは賭けないとダメよ!早く説明するのよ!」

「横暴な……、でも、それしか方法がないなら仕方あるまい!今回はマギスフィアをゼロ距離で渡してから、最後にお主ら2人の連携を信じる戦法じゃ」

ミリアムは、美夢と黒羽を指差しながら言った。

「最後って、フィニッシュショットを繋げるための最後のパスですよね。経験の多い鶴紗先生の方がいいんじゃ……」

黒羽は、少し抗議するように言う。

「私は中間でのパスが得意なんだよ。何より、フィニッシュ前は連携以上に絆が大事になる。最後に託す思いが強ければ強い程、撃破が確実になるとも言われているからな」

「わかりました。ところで、私はこの場合何をしたらいいんでしょうか?」

美夢は、首を傾げる。

「簡単な事じゃ。お主は敵陣に突っ込んでパスが来るのを待っていればいいのじゃ!」

ドドンっと言う音が聞こえそうな程なドヤ顔で言った。

「それじゃあ、グロっぴ、ファーストショット頼んだわよ!」

百由は、ミリアムのチャームに弾丸をリロードする。

「いつでもいいわよ!」

「じゃあ、作戦開始なのじゃ!」

ミリアムは百由に向けてマギスフィアを打ち出した。

「ナイスパス!じゃあ、鶴紗ちゃん。構えて!」

鶴紗は、チャームを構える。

「それじゃあ、行くわよ!」

百由は、構えたチャームに向かってマギスフィアを押し付けた。

「もう少し加減を……、相手も待ってはくれないという訳ですか。黒羽、行くぞ!」

「ちょっと待ってください!」

黒羽は、急いでチャームを構える。

「あとは頼むぞ!」

そう言うと、鶴紗は黒羽のチャームにマギスフィアを押し当てる。

「おっとと、これ、思ったより受け取った時に反動があるのね……」

体勢を整えながら、黒羽は呟いた。

「美夢、届けるわよ!」

チャームをシューティングモードに切り替えた。

「させ無い!」

そう言いながら、目の前にアルフヘイムのメンバーの1人が、立ち塞がる形でチャームを構える。

「そうは行かないぞ!」

鶴紗は、そのままチャームを交えて応戦する。

「黒羽、早く行け!」

「ありがとうございます!」

黒羽はそう言うと走り出し、邪魔されない位置で美夢を見つける。

「後は頼むわよ、美夢!」

そう言って、マギスフィアを打ち出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

________会長side

「やはり、優勢なのはアルフヘイムか……」

天草はパスの繋げ方を見ながらそう呟いた。

「そうでもありませんよ」

「双葉先生!?」

「驚かせてしまってごめんなさい」

「い、いえ。でも、何故そう思われるのですか?」

「よく繋ぎ方を見なさい。パスで繋げているアルフヘイムに対して、美夢隊は物理的に繋げて失敗の確率をほぼゼロに押えて、あの二人の絆に賭ける。Theリリィって感じの戦術よね!」

「確かに、ズィーベンヴェルト戦術は、無理に繋げたマギスフィアを相手に向けて打ち込んだのが始まりと言われてますが、本当にそんな事有り得るのでしょうか?」

「そうね、でも、こればかりは経験よ。あんな風に直接マギスフィアを受け取る時に皆の思いや、願いがわかるの。だから、私はズィーベンヴェルト戦術が好きなの」

双葉は、天草に笑いかける。

「そろそろ決着が着くわ。しっかりと生徒会長として見届けなさい!」

「は、はい。わかりました」

返答を聞くと、双葉はその場を立ち去った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

________続く




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レギオン対抗戦③

続きを書きたくなったので、書きました。
よろしくお願いします!


カンカンっ!

チャーム同士がぶつかり合う音が至る所で聞こえる。

「まだよ!まだフィニッシュショットは撃たせるわけにはいかないの!」

「執拗いですね、とっととくたばりやがれください!」

美夢は、リボルバーを構える。

「ッ!?」

美夢の相手をしていたリリィはチャームを防御の構えに持ち替える。

それを見て、美夢はニヤリとする。

「そこが、ガラ空きなんですよ!」

美夢は、ガラ空きになっている横腹に回し蹴りを叩き込む。

「くハっ!」

そのまま、10メートルほど吹き飛び、そのままダウンしてしまった。

「後は頼むわよ、美夢!」

そのタイミングで、美夢にパスが飛んでくる。

「受け取ったよ、皆の想い!」

美夢は、2本のナイフ型チャームを電脳(サイコキネシス)でマギスフィアを支えながら走り始めた。

敵陣のコアまで来た時、まさかの人物とぶつかった。

「流石、最優(さいゆう)のリリィだけあって体術まで強いとは、少し君への評価を改める必要があるみたいね。」

「それはどうも。改めてくださるのなら、そこをどいてコアを破壊させてくださいよ」

「ん〜、それは断るわ。私だって、この戦いは負ける訳には行かないのよ」

「そう簡単に勝利を掴めるなんて思ってませんよ!」

美夢は3本のナイフ型チャームとリボルバー型チャームで応戦を始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

美夢隊 拠点

「中々衰えないものなんですね、鶴紗先生!」

「まあな、これでもブーステッドリリィだからな!」

鶴紗は、相手のリリィと少し距離をとる。

「さてと、ここからが、本番だぞ。《ファンタズム》!」

鶴紗はレアスキルを発動した。

「行くぞ!」

相手リリィは、構えるが追いつけなかった。

勝負は一瞬、構えようとしたチャームを鶴紗が弾いて奪ったのである。

「降参降参、チャームがないなら戦えないって!」

「まだまだ鍛錬が足りてないな。これからも頑張れよ」

そう言うと、鶴紗はチャームを2本握ったまま、自陣の応戦中の仲間の元へ戻った。

こうして更に1人脱落した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そろそろマギスフィアが繋がり終える頃だろう。まあ、最後は……」

月光は、チャームを上に向ける。

それと同時に、

「月光様、受け取ってください!」

マギスフィアが飛んできた。

「マズイわね、このままじゃごり押されて負けちゃうわね……」

「百由様、()()、やってみるのはどうじゃ?」

「そうね、やってみるだけの価値はあるわね!」

ミリアムと百由は互いに頷き、月光を見る。

「作戦会議は終わりましたか?それじゃあ、私達の勝ちですね」

月光は飛び上がり、

「《ルナティックトランサー》!」

レアスキルを発動した。

「これで、終わりです!」

マギスフィアをコアに打ち込む。

「グロっぴ!」「百由様っ!」

2人はチャームをマギスフィアに向かって振る。

「ッ!?なんて重さなのよ、このマギスフィア!」

「あの時のやつに比べたら、大したことなんてないじゃろが!」

「私は戦えるけど、非戦闘員なのよ!」

「そんな事言ってる暇があるのなら、打ち返す事だけに集中するのじゃ!」

2人は深呼吸した。

「《フェイズトランセンデンス》!」「《この世の理》!」

2人は同時にレアスキルを発動した。

「「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!」」

マギスフィアを打ち返し、それは美夢のいるはずの敵陣のコアの方向に飛んでいく。

「打ち返した!?」

「まさかの展開ね!」

「明日の表紙はこれですね!」

「何なの、あの二人。アーセナルじゃなかったの?」

など、会場はザワついていた。

「グロっぴ、上手く行ったわね!」

「お陰で儂はもうクタクタじゃ……」

「はっはっは、まさか本当に成功するなんて思っていなかったけどね!」

「百由様、そのノリには後で乗るから、少し休憩させてくれ……」

「そうね……」

百由は、ミリアムの頭の近くに座る。

そのまま、ミリアムの頭を持ち上げ、自身の太腿の上に乗せる。

「ゆっくり休んで」

「恩に着るのじゃ……」

ミリアムは、そのまま目を瞑った。

「まさか、マギスフィアを打ち返されるとは思っていなかったよ」

「まあ、ヒュージからマギスフィアを弾かれた事があるから、それを参考にさせてもらったのよ!」

「失敗までも自分たちの実力とするか……、やはり、すごいな、貴女達は」

「貴女の方こそ、まさか翼を見ることが出来たのは、本当に久し振りだったわ。すごいマギの量なのね!」

「まあ、たまには見せておかないと、舐められるんでね!」

百由と月光は、お互いに笑いあった。

「さてと、あの子が()()()()()()に勝てるのかだな……」

「貴女達のマギスフィアで隙を作ったわ、その瞬間にうち抜けば、どうにかなるとは思うけど……」

「まあ、最悪引き分けで両成敗かな」

「まあ、勝った時にはどうなるかなんて知らないけど……」

「ところで、貴女のシルト、寝てる時は可愛いわよね……」

「ダメよ、グロっぴは私のだから!」

ミリアムを抱き寄せる百由を見て、

「あ〜、尊い!これを見ることが出来ただけで昇天出来る!」

月光は、限界化してしまっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

________アルフヘイム陣地

「さてと、そろそろ限界なんじゃないのかな?」

美夢は、少し離れた位置にマギスフィアを2本のナイフ型チャームで浮かしいているため、そちらにもマギを持っていかれている。

「いや、まだ私は出来る!アンタを倒すまでは、絶対に諦めたりしない!」

リボルバーを構える。

相手は、少し笑みを浮かべる。

「いいだろう、圧倒的な力の前に敗北したら良い!」

相手は突っ込んで来ようとした。

何故離れたか、それは、

「美夢、左に避けて!」

と言う黒羽の声が聞こえたからである。

「チッ、余計な事をしやがる。さてと……、黒羽!少しチャーム、借りるぞ!」

そう言うと、

電脳(サイコキネシス)!!」

そして、黒羽の握っているチャームが震え出した。

「な、何!?」

そのまま、チャームが美夢の方へ飛んで行った。

「さてと、チャーム(お前)、私を信用しな!《ラプラス》!」

レアスキルを発動すると、チャームは起動した。

「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!」

美夢は、マギスフィアをチャームで受け取った。

「コイツをくらいなぁ!」

マギスフィアをそのまま相手のチャームに向けて叩き付ける。

「何!?」

そのままマギスフィアが直撃し、そのまま吹き飛んだ。

「これで、誰も私を邪魔出来ない!」

美夢は、マギスフィアを抱えているチャームをコアの前に出す。

「お願い、美鈴お母さん、夢結お母さん。私に力を貸して!」

その瞬間、ナイフ型チャームから、リリィ2人分のマギが注入された。

「行きます!」

リボルバーのトリガーを引く。

マギスフィアはそのままの軌道を維持したまま、直撃しコアが砕けた。

そして、

「そこまで!勝者 美夢隊!」

レギオン対抗戦は、天草の美夢隊勝利宣言により、終わりを迎えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

________________第11話[完]

 

 




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第12話 色々あったけど

今週の更新分です!
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「いや〜、何とか勝つ事は出来たみたいね!」

百由は笑顔で言った。

「そうですね、みんな無茶し過ぎましたが……」

鶴紗は、百由の横に座った。

「まさか、マギスフィアを打ち返されるとは思いませんでしたよ、ところで、その子少しだけ吸っても?」

「やめなさい。グロっぴは、私のだから、他の誰にも渡さないわよ」

「これでこのくだり何回目なのじゃ……」

ミリアムは、起き上がった。

「もう!百由さんのせいで、せっかくのチャンスが!」

「チャンスもクソも無いわよ!何私の大事なシルトを傷物にしようとしてるのよ!」

「傷はつけませんよ!優しく抱きしめながら深呼吸するだけです!」

月光は、少し鼻息を荒らげながら言った。

「百由様、儂は今、人生において1番恐怖を感じているかもしれん……」

「大丈夫よ、グロっぴ。私が守ってあげるからね」

百由はミリアムを膝の上に乗せながら言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

________アルフヘイム拠点

「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……」

美夢は、息を荒らげながら、その場に倒れ込んでいた。

「美夢、お疲れ様」

黒羽は、美夢にスポーツドリンクを渡す。

「ありがとう、黒羽……」

美夢は、500mLのペットボトルのスポーツドリンクを一気に飲み干した。

「ぷはぁ〜、生き返った〜!」

美夢は立ち上がった。

「それじゃあ、生き返ってもらったところで、教えてもらいましょうか、私のチャームに何を仕込んでいたのか」

「教えても、理解出来るの?」

「理論ではなく、簡単に」

「付け加えてから言ってね!じゃあ、簡単に説明するね。私が仕込んでいたのは、いざと言う時の保険だったの」

「勝てない敵と戦う為の?」

「そう、みんな目に見えている武器にしか目が行かない。だから、黒羽のチャームに電脳(サイコキネシス)を仕込んでおいて、ナイフだけじゃ勝てないと悟った時に使えるようにしてたの」

「なるほど、だからいきなりチャームが飛んできたのか……」

「はい、そうですね……って!何で黒羽の隣で感心しながら聞いてるんですか!ここは講義をする場所じゃないんですが!」

「いやいや、2人が面白そうな話をしていたから、つい、聞き入ってしまっていた。続きをどうぞ」

最優のリリィは掌を上に向けながら言った。

「じゃあ、続けますね。チャームは、契約者が触れることで起動するのですが、術式自体は起動していれば、起動することが出来ますが、私が握ったところで、契約者では無いので、起動しません。ですが、チャームの意思を乗っ取って起動させてしまえば問題はないんです」

「なるほど、だから美夢は、あの時チャームを使うことが出来たのね……」

「実に見事だ」

2人は揃って拍手をしていた。

「ところで、先ほど戦闘にてチャームの刀身がヘシ曲がってしまったのだが、アーセナルなら、治せるだろ?」

最優のリリィは、チャームを見せる。

やはり、マギスフィアが直撃した部分が負荷に耐えきれず、曲がってしまっていた。

「はい、出来ますが、私でいいんですか?」

「ああ、私は私よりも強いやつか信頼出来る奴にしか頼まないし、君の使っている電脳?だったかな、アレにも興味がある。私のチャームに組み込んでくれないか?」

「出来ないことは無いですが、先輩のマギの量によります。スキラー数値はどのくらいですか?」

「私は、87くらいだったはず……」

「あ、ギリギリ足りませんね。私が初めて電脳が使えたのが、90の時だったので、術式を書き込んでいても、起動してくれませんね……」

「君、本当に化け物だね……」

「褒め言葉ですよ、それ。言うならば、とち狂ってるやつとでも呼んでやってください」

「どっちも十分傷付いてるから!」

少し泣き顔になっている美夢が突っ込んだ。

「なるほど、いじられるのは苦手で、泣き顔がめちゃくちゃ可愛いという訳ですね、先輩」

「本当に、食べちゃいたくなるくらい可愛いわ」

「ダメですよ、食べるのは私が先です」

「関係ないわよ、早い者勝ちだから……」

そう言いながら、最優のリリィは美夢の顎を軽く持ち上げた。

「あ、え、あの、そう言うのは……」

「大丈夫、私、これでも結構一途なタイプなの。貴女を裏切ったりしないわ……」

「……」

美夢は少し照れたような表情をしている。

「ちょっと待てぇぇぇ!」

そう言いながら黒羽は、2人の間を引き裂いた。

「何よ、せっかくいいところだったのに……」

「だから、ダメだって言ってるでしょうが、先輩!美夢も、少しは抵抗したら……」

「///////」

美夢は、両手を顔に当てて、真っ赤になった顔を隠していた。

「あんた、内心満更でもなかったんでしょ!」

「そ、そんな事ないよ?」

「嘘下手か!少し顎クイされただけで落ちるなんて、あんた、どんだけチョロインよ!」

「チョロイン言うな〜!」

美夢は、少し頬を膨らまして言った。

「ところで、先輩の名前を伺っていませんでしたね。自己紹介お願いします」

「唐突だな、まあいいや。私の名前は刃井原(やいはら)帆波(ほなみ)。今は2年で、アンタら2人の先輩にあたる人物で、今のところ、日本一強いリリィと呼ばれている。でも、それも今日までかな。私よりも強いリリィがここにいるから……」

帆波は、美夢を見つめる。

「わ、私!?」

「逆に聞くけど、あんた以外誰が居んのよ!」

「それもそうか!」

美夢は、以外にもあっさり納得した。

「ところで、美夢。私のシルトに……」

「お断りします!」

美夢は深々と頭を下げてその場を急いで離れていったのだった。

「あ!待ちなさいよ、美夢!!あ、先輩本当にあのアホがごめんなさい!」

黒羽も同様に頭を下げその場を離れた。

「あれ?私って嫌われてるのか……」

「そんな事ないわよ!」

「うわ〜ん!天草ぁぁぁあ!我が親友よ〜」

天草会長は、抱きつこうとした帆波を足で撃退した。

「抱きつきたかったら、まずは風呂に入れ!」

そういうと、大人しく帆波は大浴場に向かったのであった。

「いい物を見せてもらったよ、美夢」

天草はそう言うと、その場を去った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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第13話 私が守らなきゃ……

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「あら、朝は早い方なのね。おはよう、美夢」

百由は、ラボの扉を開いて、美夢が居ることを確認して言った。

「おはようございます、百由様。寝心地とかって大丈夫でしたか?」

美夢は、チャームの修復をしながら答えた。

「ええ、バッチリよ!ここ2、3日まともに寝てなかったから、しっかり眠ることが出来たわ!お陰で調子もとてもいいわ!」

百由は、肩を回す動作をする。

「それは、良かったです。ところで、何故早朝から私のラボに?」

「そうね、ちょっと機材を貸してもらおうと思ってね……、その、チャームを1本修理しないといけなくて」

「どんなチャームですか?」

「大きさは、普通のチャーム6本分くらいで、私とグロっぴのチャームを収納出来るように設計したから、実質8本か。まあ、この世界に移動してしまった原因のチャームね」

「なるほど、次元の穴を開けられる程の強力な出力を叩き出す化け物チャームを作ったんですね。アホなのか天才なのか、わからなくなってきましたよ……」

「ハッハッハー、私にとってはそんなの日常茶飯事のことなのよ!誰もしなかったことを、私がして、学校の設備を吹き飛ばして、怒られたり、何度も失敗して、時には後悔して……、それでも、リリィ一人一人の犠牲を減らして、少しでもたくさんの女の子達に笑って生きて欲しい。それが私が戦う、そして研究をする理由と言うところかしら。と言ってもそんな事聞いてないか……」

「アハハハ」と百由は、少し寂しそうな笑顔を見せる。

そのことを察したのか、美夢は、

「私は、もう誰もいなくなって欲しくない。どんなに私を嫌っていても、私にたくさんの愛をくれる人も、誰一人死んで欲しくないんです。その為なら、私は何度だってこの命を賭けることが出来る。でも、それでも、私はアーセナルで、リリィで、そして、嫌われ者だから、私が駆け付ける時は、いつも1歩遅くれていて、誰かのないている戦場だから……」

美夢は、自身の胸に手を当てる。

「それでも、何があっても前に進まないといけない。私には、()()()()()()()()()()()()()()()()、ただひたすら前に進むしか道がないんです。たとえ死神や殺人鬼と言われたとしても……」

「……」

百由は、絶句した。

彼女の覚悟を、自身の気持ちが熱くなって行って、気持ちが高ぶっているのが分かる。

「美夢、あまり思い詰めたらダメよ。貴女が壊れてしまう。必ずいつか限界が来て、自分が自分で無くなる瞬間が貴女にも来てしまう。だから、思い詰めたらダメ……」

百由は、美夢を優しく抱きしめる。

優しく、そして熱烈な抱擁をする。

「百由、様……」

それを美夢は、抱きしめ返す。

『この子は、私が守らないと……』百由は、心の中でそう思っていた。

 

 

 

 

数分間2人は熱い抱擁をして、

「気持ちは、収まった?」

百由は、美夢に聞く。

「はい、落ち着きました」

美夢は、百由から離れた。

2人は少しよそよそしかったが、そのよそよそしさを打ち消すように、美夢のお腹の音が鳴った。

「まずは、お腹をいっぱいにしないとね!」

「そ、そうですね!朝ごはん、行きましょうか……」

美夢は、着ていたエプロンを脱ぎ、制服へ着替える

あたふたしているのを見て、百由は後ろに回り、

「ほらっ、じっとして……」

手馴れた手つきで着付けていく。

数分後、

「出来上がり!」

「あ、ありがとうございます!ただ……」

「何かしら?」

「この編み込みは何でしょうか?」

「そんなの決まってるじゃない!オシャレよ!」

ドヤァとした顔をしながら、百由は言い切った。

「ま、まあ、可愛いですが、私には似合いませんよ……」

少し恥ずかしそうに編み込みの先端をくねくねさせる美夢。

「貴女、自覚していないようだから言うけど」

百由は、美夢の頬に手を当て、顔を耳元に近づけた。

「とても可愛らしい顔をしているわよ」

と囁くように言った。

「なっ!?」

耳を抑えながら、美夢は百由から離れた。

「も、もう!からかわないでください!」

「ハッハッハー、ごめんごめん。あまりにも可愛らしい反応をするから少し意地悪しちゃった!」

「ごめんね」と言いながら、百由はドアの前にたった。

「さてと、朝ごはんは何処で食べられるのかしら?」

「食堂ですよ!まあ、道なんて知らないと思いますから、案内しますよ」

「ええ、お願いするわ!」

「かしこまりました!」

こうして2人は、朝食を摂る為に食堂へ向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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私が守らなきゃ……②

今週の更新分です!
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「あ、百由様!儂を助けてくれぬか?」

百由と美夢が食堂につくと、ミリアムが満腹のご様子だった。

「あらグロっぴ、そんなに満腹そうにして珍しいわね。皆からデーザト貰ったとか?」

「そうなのじゃ、それに、この食堂のご飯は、量が多いのじゃ……」

「そうですかね?私は長い間食べてますが、そうは感じませんね……」

「お主はどんだけ食うのじゃ……」

ミリアムは少し引き攣った笑顔をした。

「それじゃあ、私達も朝食を摂りましょうか」

美夢は、食券を2枚買うと、1枚を百由に渡す。

「そうね、ちゃんとした朝食を摂るのは、実に2ヶ月ぶりだけど、たまには栄養のあるものを食べないとね!」

「百由様はもう少し休んだ方がいいのじゃ……」

「ハッハッハー」とドヤ顔をしながら笑う百由を見ながらミリアムは、言った。

「さてと、今日の朝食は……」

百由が食券を受け取ろうとした時、

"ドォォォォン!"

という音と地響きがした。

「タイミングが悪いわね、どうするの?」

「私は、行きますが、お2人はここで待機してもらった方がいいでしょうね。仮にもお2人は一応お客様なので……」

美夢は、それだけ言うと音のなった方向へ走って行った。

「百由様、これはマズイのでは無いのか?」

「そうね、でも、先に食事を摂ってから追いかけるわ。グロっぴは、先に追いかけていいわよ」

「じゃあ、先に行って来るのじゃ!」

ミリアムは、美夢を追いかけるように走り出した。

「さてと、私は理事長代行に話を聞きに行くとしますか……」

百由は、急いで食事を摂り、理事長代行室に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「絶対、絶対アイツだ!このマギの気配は、あの日、私から大切な人を奪ったアイツは、絶対に許したりなんてしない……」

美夢は、ナイフ型チャームを握った。

その姿は、目の奥に殺意の光を宿し、そして、髪は、少し白くなっていた。

「アイツだけは、絶対に私が殺すわ!」

美夢は、チャームを電脳(サイコキネシス)を使用し浮いて、空中を走り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「チッ、何だよ、このヒュージ!私達からマギを吸っているの……か?」

1人のリリィが、膝を地面に着いた。

「なんなんだよ、それに、何で、こんなに硬いんだ……」

最後の力を振り絞り、別のリリィがヒュージの身体にチャームの斬撃を与えるが、全くもって、ダメージにならなかった。

「これじゃあ、もう、私達人類は、もう滅ぶしかないじゃない……」

諦めて泣き出してしまったリリィの前を白い何かが通り過ぎた。

「くそっ、援軍はまだなのか!」

「私達では太刀打ち出来ないわ、この場を離脱して報告を……」

「嫌です!」

「ッ!?」

「私は何があっても諦めない!ここで諦めたら、たくさんの人が悲しむ事になる!そんなの!そんな事私は許さない!」

「……」

レギオンのリーダーらしきリリィは言葉を失ったが、それ以上にチャームをひたすらに振り続けるリリィに同調するようにチャームを降り始めた。

「仕方ないわね、貴女のシュッツエンゲルとして、一緒に死んであげるわよ!」

「ありがとうございます、お姉様!」

2人は再びチャームを構える。

「「はぁぁぁぁぁあ!」」

2人は同じ場所を×印を描くように切り裂いた。

「ギュィィィィィィィィィイッ!」

ヒュージは、ダメージを受けたのか、唸り声のような鳴き声を上げる。

しかし、攻撃の反動で動けない2人のリリィに対して腕を振り下ろした。

「ここで終わりみたいね、貴女は、最高の妹だったわ」

「お姉様の方こそ、最高のお姉様でしたよ!私はお姉様のシルトになれて、幸せでした……」

2人はお互いの手を握り合い、額を寄せ合い、目を瞑り、死を受け入れようとしていた。

しかし、いつまで経っても降りてこない足を不思議に思い、頭上に目を向ける。

足は、頭上1mの位置で止まっていた。

正確には、たくさんのナイフ型チャームが、盾になり、ヒュージの足を防いでいた。

「こ、これはあの子の絶対防御で名高い扶郎花(ふろうか)!?」

「まさか、あの状況から間に合ったの!?」

「とにかく、今は動くわよ!」

「は、はい!」

2人は、足の範囲外に出て後退し、空を見上げる。

2人が後退し終えたと同時にナイフ型チャームの盾は姿を消した。

そして、ズドーンっ!という地響きが鳴り響いた。

「お、お姉様、空を見上げてみて下さい!」

「え……」

空には、何千万いや、何億本のナイフ型チャームが構えられていた。

「降り注げ」

そう美夢は、呟く。

そして、空中で固定されていたナイフ型チャームが、ヒュージに向かって降り注ぐ。

ヒュージは、美夢に向かって飛び上がったが、遅かった。

ヒュージが飛び上がったことにより、ほんの少しだけ早くナイフが当たる。そして、全てが電脳(レプリカ)の為、当たった瞬間に消える。

「な、何なんだ、あのリリィは……」

「無茶苦茶だが、味方である限りは大丈夫だろう……、それよりも、我々の隊は退いて現在の状況を早く学園に持ち帰るぞ!」

「でも!」

「これは、隊長命令だ。ここにいても、あの子の邪魔になるだけだ!」

「わかり、ました……」

そう呟くと、そのリリィも大人しく拠点である学園まで後退した。

「これで、巻き込まないで済む……」

そう呟き、美夢はニヤリと笑う。

そして、

「なあ、お前私の事を覚えてるよな!1年前のあの日!夢結お母さんを私から奪ったアンタだけは絶対に許さないって決めてたんだよ!今度は、私がアンタを八つ裂きにしてあげるよ……、《ルナティックトランサー》!」

そう言って、レアスキルを発動させ、ヒュージの下に回り込む。

「はぁぁぁぁぁ!」

と叫びながら、ヒュージを蹴り上げる。

ヒュージは、空中で無防備になる。

そして、

「《縮地》!《この世の理》!《ヘリオスフィア》!」

3種類のレアスキルを更に発動させ、

「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

と叫びながら、片手にナイフ型チャームを持ち、突進しながら切り裂く。

美夢が通り過ぎる度に、ヒュージは、傷を負う。

そして、ヒュージの下から上に向かって切り裂き、最も高い位置に到達した。

「これで、お終いっ!」

足の裏に電脳(サイコキネシス)でナイフを固定し、先程のリリィ達が付けた×印の位置から真っ直ぐ貫く。

反対側から出てきた時、美夢は、一本の錆びれたチャームを握り締め、その勢いのまま、地面に衝突するが、衝撃を最小にして、着地した。

そして、宙に浮いていたヒュージは、爆散し、その肉片と血液は戦場に降り注いだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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第14話 力の真実と美夢のマギ①

今週の更新分です!
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________理事長代行室

「さてと、話していただけませんか、美夢ちゃんの力について」

「はて、何を話すにしても、もう君が知っている通りの力なのだよ。まぁ、以前よりも強くなってるのは確かなのじゃがな……」

理事長代行は、百由にそう答えた。

「リリィのマギを引き継ぐ事が出来る力、つまり、レアスキルもその対象になるということなのじゃよ」

「そんなの、そのうち1人で抱えすぎて最後は彼女の中でマギ同士がぶつかり合って、爆発するだけじゃ……」

「そこで彼女自身がそれを望んだのか、はたまた彼女が無意識のうちに発現したのかは不明じゃが、やはり、その対応策としての彼女自身のスキルが、マギの暴走を抑えているという訳じゃよ……」

「レアスキル ユーバーネーメン、鶴紗ちゃんが言っていたアレね……」

「そうじゃな、だが、儂としては、レアスキルの名などどうでも良い。ただ彼女がその力のせいで傷付いていく姿が見ていられなのじゃ……」

理事長代行の表情が少し曇った。

「彼女の心に傷が付くのを理解している。しかし、彼女自身の願いが、私への決断をさせていたのじゃ。1人でも多くのリリィを救うとな……」

「理事長代行なりの優しい決断だったんですね……」

百由は、少し悲しそうな理事長代行を見ながら言った。

「百由君、君には彼女を、彼女が今後正しく力を使う事が出来るように支えて欲しい。君達に残されている時間がどのくらい残っているのかはわからんが、最後の瞬間までに、決断出来るくらいの、傷付かない彼女になれるよう、どうか、頼む……」

理事長代行は、そう言うと頭を下げた。

「私は、アーセナルですが、リリィでもあります。彼女も同じくアーセナルであり、リリィです。それなら、私とグロっぴで最後の決断をさせないといけないことくらい、この世界であの子と出会ってから、わかっていますから、理事長代行は、親のように見守ってくださればいいですよ!」

百由は、ニシシと笑う。

それを見た理事長代行は、目を大きく見開き、

「ありがとう、本当にありがとう……」

と連呼し、涙を流していた。

「それじゃあ、私は美夢ちゃんの回収に行ってきます」

「君も、無理しないようにな、百由君」

涙拭いながら理事長代行は、言った。

「ありがとうございます」とだけ言って、百由は、理事長代行室を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

________戦場

美夢は、地面に止まったまま動かない。

いや、マギが切れてしまって、動けないのである。

レアスキルの多重発動により、完全に動けない上に、かなりの高さから直下したので、足への負荷は相当なものになるだろう……

「美夢、お主、まだ動けるか?」

美夢を追いかけて、ようやく追い付いたミリアムは、問いかけるが、無反応である。

「おい美夢!?マギ切れで、気絶しているのか……」

ミリアムは、優しく身体を横たわらせ、頭を自らの太腿の上に乗せた。

「良く、頑張ったのう……」

優しく頭を撫でながら、ミリアムは呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

________森林内

「まさか、私まで駆り出されるとは思っていなかったよ。後で事情を説明していただきますからね、百由様!」

「ハッハッハー、細かいことは気にしないの!」

百由と鶴紗は、森林を走りながら会話をしている。

「今回はただ、少し、本当に少しだけなのだけれど、何か違和感を感じるのよね、あの子の目が、朝から少し変な感じがしたから……」

「目?」

「ええ、目よ。あの目は、全てを抱え込んで、今にもパンクしそうになってる夢結を思い出したわ。だから、無茶をしてないといいのだけど……」

「百由様、まるで親ですね……」

「そうね、親に近いのかもね。だって、あの二人が命を懸けて守った子をあの二人の元に送ったら、こちらの世界のあの二人に、顔見せ出来ないもの!」

「そうですね。それじゃあ、速度上げてください」

「これ以上は、朝食が全部出てきちゃうから、勘弁してぇぇぇぇぇ……」

そう言いながら、加速して、美夢の元へ2人は急いだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

________戦場

「美夢ちゃん!」

百由は、戦場に着くなり美夢の名を叫んだ。

「おー、百由様!いい所に来た!美夢なら、まだ寝てるぞ」

「何だ、ミリアムも居たのか」

「鶴紗、お主は相変わらず猫の近くにおったようじゃのう……」

「な、何故わかった!?」

「そんなの、マタタビと猫缶の匂いがするからじゃ!」

「グロっぴ、もしかして、前世は猫?」

「かもしれんのじゃ……」

「なら、ミリアムをにゃんにゃんしたら、猫をにゃんにゃんした事に……」

「ならんのじゃ!いきなり何を言い出すと思えば、儂を吸う気か!?」

「まあ、それは置いておいて……」

「百由様、見捨てるな〜!」

そう言うミリアムを放置し、話を始めた。

「一体何故こんな有様になってるのよ、美夢は……」

「それが、こやつが、一人で今日攻めてきたヒュージを倒したからじゃ……」

「なん、ですって!?」

百由は、言葉に詰まり、1人でブツブツ言い始めた。

「ミリアム、使っていたレアスキルは?」

鶴紗は、焦ったように問いかける。

「『ルナティックトランサー』『縮地』『この世の理』『ヘリオスフィア』の4つだったと思うのじゃが、空間のマギが、どんどん美夢に吸い込まれておったぞ!」

「そうか、やはり……」

鶴紗も考え込んでしまったが、

「とにかく1度学園に戻って考えよう」

と言って、美夢を持ち上げる。

「……、これは?」

鶴紗が、錆びれたチャームを持ち上げる。

「それは、あのヒュージを貫通して出てきた時に美夢が、持っていたのじゃ。何か妙な感じがするから、1度持ち帰って調べたいのじゃが……」

「私が持って行くわ」

百由は、地面からチャームを引っこ抜く。

そして4人は学園に戻った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

________________続く




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力の真実と美夢のマギ②

今週の更新分です!
遅くなりました!
よろしくお願いします!


「……なんだ、また保健室か」

天井を見上げ、ここが保健室であること、自分が戦闘中に倒れたことを理解したが、自分が倒れた理由がわかっていないようだ。

「こんな所で寝てる暇なんてない、早くあのチャームを……」

「まだ動いちゃダメよ!」

美夢がベッドを出ようとしていると、保健室の先生がその動作を制止した。

「定盛先生、また私を無理やり休ませるんですね……」

「ヒメヒメ先生でしょ!まあ、貴方はすぐ無理をするので、ゆっくり休んで、1度回復してください!」

姫歌は、頬を膨らませながら言う。

「流石に30の大人がそんな事したら、恥ずかしいと思います」

「失礼な!まだこれでも27だから、あと3年は猶予があるわよ!」

「今年で28ですよね?何が3年猶予あるですって?」

「も〜!またそうやって姫歌を苛めて!姫歌だって、怒る時は怒るんだからね!」

顔を真っ赤にしながら、姫歌は美夢に言い放つ。

「でも、事実ですよね?」

「うぐっ……」

美夢の的確すぎる指摘により、姫歌は何も言い返すことが出来なくなった。

「まあ、冗談はこの辺にしておいて……」

「その歳でまだアイドルの振る舞いをされるのは、冗談でもキツイです」

「も〜!!!また私をバカにして……、ほら、貴女の大尊敬している百由様ですよ!」

そう言うと、カーテンを思い切り開く。

ベッドの前の机の後ろに座っていたのは、もちろん百由だった。

「やあやあやあやあ、2人とも仲が良さそうで何よりだよ!」

「「どこがですか!」」

「そういう所よ……」

百由は、少し引き気味に言った。

「じゃあ、少し美夢と2人で話をしたいから、姫歌さんは、少しだけ外に出ていてくれる?」

「は、はい。分かりました……」

姫歌は、保健室の外に出た。

「さてと、美夢ちゃん。私と少し話をしましょうか?」

「改まって、何でしょうか、百由様……」

「貴女、私に隠していることあるでしょ?」

「ッ!?」

美夢は、核心を突かれたのか、無言になった。

「いや、貴女のレアスキルについてはもう知っているのだけど、それよりも、()()()()()()()()()()()()()()使()()()()?」

百由は、目を真っ直ぐ見て、美夢に迫る。

「ちょっ、近いっ……」

美夢は、後ろへたじろいだが、もう既に壁であった。

「ちょ、百由様?一度話し合いましょう?」

「何を言ってるの?私は()()()()をもっと調べないといけないの!さあ、早く、早く見せて、貴女のマギを全て!」

百由は、美夢をベッドに押し倒し服を脱がす。

「本当にスベスベな肌で、いい肉付きしてるわね……」

「ひゃぁっ!?」

美夢は、少し色っぽい声を出した。

「でも、マギの色は、濁っているわね。たくさんの色が混ざって、混沌のような色をしているわ……」

「え……」

美夢は、言葉を失った。

そしてそのまま両腕で百由の首を掴んだ。

「アンタに!アンタに何がわかるってんだ!」

百由は、美夢に首を掴まれながら、押し倒された。

その表情は、憎しみ、悲しみが混ざり、そこに怒りという負の感情が、目の奥にあった。

「何もかも失って、挙句の果てには、目の前で仲間を失う!そして呪いのようにまとわりつく!こんな力、好きで身につけたわけないでしょ!」

そう言った瞬間、

パチンッ!

という鈍い音と、

バタンッ!

という美夢がベッドから落ちる音がした。

「甘ったれるなよ、クソガキ」

その一言で、美夢が豆鉄砲を食らった鳩のようにキョトンとしていた。

「誰かの優しさに甘えるのは辞めなさい。何事も自分だけが苦しいなんて思うな!貴女は、リリィであり、アーセナルなのよ!誰かを守り、誰かを救うためのチャームを開発する。苦しくないわけが無いの!それを何も見えてないのに、苦しいと勘違いするとは、本当に子供じゃないの!」

美夢は、目を大きく見開いたまま、唖然としていた。

そして、一筋の雫が頬を落ちた。

「あれ、何でだろう……」

美夢は涙を拭くが、その度に何度も溢れかえっていた。

「うっ、ぐぅっ……」

止まらなくなった涙が、想いが、何もかもが溢れ出した。

「え、あ、ちょっと!?ごめんなさい、そんなに強く言っていたつもりは無かったんだけど……」

百由は、あわあわしながらそう言った。

「ずっと、ずっとそうだったんです!いつも同情されるか、蔑まれて、嫌われるかのどちらかでしか無かった!そのせいで、自分の中にも負の感情が溜まっていって、いつの間にか、そんなじぶんがきらいだった……、でも、百由様は、そんな私を叱ってくれた。私を、私の甘えてた部分をちゃんと叱ってくれた!」

美夢は、「ありがとう、ございます」と涙を流しながら言った。

「迷っていた旅路は、やっと道が見えたようね」

百由は、嬉しそうに言った。

それに同調するように、

「はい!」

と笑顔で答える美夢だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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力の真実と美夢のマギ③

今週の更新分です!
遅くなりました!
よろしくお願いします!


「ところで、結局貴女の力は、一体何なの?」

百由は、疑問を投げ掛ける。

「私の力は、呪われているようなものです……」

美夢は、そう切り出した。

「私には、元々マギを空間からたくさん補給できる体質だっただけでした。でも、ゲヘナは、それをいいことに私を捕らえ、実験の為にたくさんの負のマギを吸収させられ続けた。それによって、私はとあるレアスキルに近いブーステッドスキルを手に入れることが出来たのです」

美夢は、暗い表情と暗い声色で語り始めた。

「それが、消えそうなマギを持ち主から引き継ぐことが出来るという、自分でもあまり好きになれないスキルが発現し、私は戦場の死体漁りや、死神と呼ばれるようになったのです……」

「……」

百由は、言葉が出なかった。

正しくは、言葉にしていいことがひとつもなかった。

彼女が生きてきた人生は、少女達10数歳の子が体験してきた人生の中で最も濃いものとなっており、そして、もう二度と経験したくもない人生なのである。

「そして、実験を受けていたある日、私はふとこういうことを思った。『もし、ここにヒュージが攻めてきたら、私もこの苦しみが楽になれるのかな?』と思った時、研究所の防壁内にケイブが発生したのです」

「防壁内に!?どうして……」

「まあ、そこもこれから話します。それにより、研究所では、何故いきなり防壁内にケイブが発生したのか、わかりませんでしたが、結論は、その時が世界初の変異種のヒュージ、EXTRAヒュージが生まれました。そして、私の実験室にも入って来て、研究員は沢山殺されました。私は、実験中だったため、私は気がついていなかったのですが、ヒュージが、実験機器を破壊したことにより、私に負荷が安全装置無しでかかってしまい、私は、身体を動かすことが出来なくなりました……」

「絶体絶命ね……」

百由は、いつの間にかベットの上に座っていた。

「そこに、助けに来てくれたのは、川添美鈴というリリィでした」

「美鈴様が!?」

「知っているのですか?」

「あの人は、昔、夢結のシュッツエンゲルだったのよ!」

「そうだったんですね……」

「あら、知らなかったの?」

「はい、恥ずかしながら……」

少し恥ずかしそうに美夢は俯いた。

「話を続けて?」

「分かりました、それでは続けますね。

それで、美鈴様が助けに入った時に、双葉先生もそこに加勢しました。2人を相手にしていても、余裕でチャームを捌くヒュージに対して、2人は両サイドから攻める作戦に移行したのです。でも、その時に、美鈴様にヒュージの大振りの腕が直撃し、10mほど後方に吹き飛びました。その際に、内臓が潰れたのか、美鈴様が様は血を大量に吐き出しました。私は美鈴様の元に駆け寄りました。『美夢、君は逃げるんだ。この場にいても、傷付いている君が出来ることなんて、何も……』そして更に血を吐き、倒れました。その時、何かが私の中に入ってきたんです。暖かいけど、冷たい。でも、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()は、わかったのです。そして、美鈴様を見ると、息を引き取った後だったのです。私は、何を考えたのか、美鈴様のダインスレイフを握っていた。指輪は、実験の時は強制的に付けさせられているので、私は、チャームと強制的に契約した。そこからの記憶は朧気で覚えていません」

「やはり、マギを吸収しすぎて、記憶に障害が生まれているのでしょう。でも、ある程度見えてきたわ」

百由は立ち上がり、服を整えた。

「さてと、それじゃあ貴女が持ち帰ったチャームの解析をしますか!」

「もう、私の事はいいんですか?」

「そうね、私としてはこの事は、特に私の中でしまっておいて問題ないことがわかったし!それじゃあ、早く着替えて!」

「はい、わかりました……」

そう言うと、美夢は枕元に用意されていた制服に着替えた。

「あ、そうだ!言い忘れてたけど、一つだけ貴女に伝える事があったんだったわ、形式上のお説教ってやつよ!」

「はい!何でしょうか?」

美夢は、着替えるのを1度止めて、百由の方を向いた。

「あんまり、一人で抱え込まなくていいのよ。貴女には、貴女の信念があってそうしてるのかもしれないけど、命あるものは必ず最後には死ぬのよ。だから、貴女も死に対して責任を持つ必要は無いの!」

その瞬間、美夢の表情が一瞬でハッとなり、無言で涙を流していた。

「あ、あれ?なんでだろう、涙が……」

「それが、貴女の心の在り方なのよ。貴女は強くない。むしろ弱いくらいなの。だから、仲間を頼りなさい。それが、レギオンであり、仲間であり、友達であるのよ!」

そう言うと、美夢はその場に泣き崩れ、更に泣いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数十分後、泣き止んだ美夢の顔は何かが吹っ切れたような顔をしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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力の真実と美夢のマギ③

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「ところで、結局貴女の力は、一体何なの?」

百由は、疑問を投げ掛ける。

「私の力は、呪われているようなものです……」

美夢は、そう切り出した。

「私には、元々マギを空間からたくさん補給できる体質だっただけでした。でも、ゲヘナは、それをいいことに私を捕らえ、実験の為にたくさんの負のマギを吸収させられ続けた。それによって、私はとあるレアスキルに近いブーステッドスキルを手に入れることが出来たのです」

美夢は、暗い表情と暗い声色で語り始めた。

「それが、消えそうなマギを持ち主から引き継ぐことが出来るという、自分でもあまり好きになれないスキルが発現し、私は戦場の死体漁りや、死神と呼ばれるようになったのです……」

「……」

百由は、言葉が出なかった。

正しくは、言葉にしていいことがひとつもなかった。

彼女が生きてきた人生は、少女達10数歳の子が体験してきた人生の中で最も濃いものとなっており、そして、もう二度と経験したくもない人生なのである。

「そして、実験を受けていたある日、私はふとこういうことを思った。『もし、ここにヒュージが攻めてきたら、私もこの苦しみが楽になれるのかな?』と思った時、研究所の防壁内にケイブが発生したのです」

「防壁内に!?どうして……」

「まあ、そこもこれから話します。それにより、研究所では、何故いきなり防壁内にケイブが発生したのか、わかりませんでしたが、結論は、その時が世界初の変異種のヒュージ、EXTRAヒュージが生まれました。そして、私の実験室にも入って来て、研究員は沢山殺されました。私は、実験中だったため、私は気がついていなかったのですが、ヒュージが、実験機器を破壊したことにより、私に負荷が安全装置無しでかかってしまい、私は、身体を動かすことが出来なくなりました……」

「絶体絶命ね……」

百由は、いつの間にかベットの上に座っていた。

「そこに、助けに来てくれたのは、川添美鈴というリリィでした」

「美鈴様が!?」

「知っているのですか?」

「あの人は、昔、夢結のシュッツエンゲルだったのよ!」

「そうだったんですね……」

「あら、知らなかったの?」

「はい、恥ずかしながら……」

少し恥ずかしそうに美夢は俯いた。

「話を続けて?」

「分かりました、それでは続けますね。

それで、美鈴様が助けに入った時に、双葉先生もそこに加勢しました。2人を相手にしていても、余裕でチャームを捌くヒュージに対して、2人は両サイドから攻める作戦に移行したのです。でも、その時に、美鈴様にヒュージの大振りの腕が直撃し、10mほど後方に吹き飛びました。その際に、内臓が潰れたのか、美鈴様が様は血を大量に吐き出しました。私は美鈴様の元に駆け寄りました。『美夢、君は逃げるんだ。この場にいても、傷付いている君が出来ることなんて、何も……』そして更に血を吐き、倒れました。その時、何かが私の中に入ってきたんです。暖かいけど、冷たい。でも、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()は、わかったのです。そして、美鈴様を見ると、息を引き取った後だったのです。私は、何を考えたのか、美鈴様のダインスレイフを握っていた。指輪は、実験の時は強制的に付けさせられているので、私は、チャームと強制的に契約した。そこからの記憶は朧気で覚えていません」

「やはり、マギを吸収しすぎて、記憶に障害が生まれているのでしょう。でも、ある程度見えてきたわ」

百由は立ち上がり、服を整えた。

「さてと、それじゃあ貴女が持ち帰ったチャームの解析をしますか!」

「もう、私の事はいいんですか?」

「そうね、私としてはこの事は、特に私の中でしまっておいて問題ないことがわかったし!それじゃあ、早く着替えて!」

「はい、わかりました……」

そう言うと、美夢は枕元に用意されていた制服に着替えた。

「あ、そうだ!言い忘れてたけど、一つだけ貴女に伝える事があったんだったわ、形式上のお説教ってやつよ!」

「はい!何でしょうか?」

美夢は、着替えるのを1度止めて、百由の方を向いた。

「あんまり、一人で抱え込まなくていいのよ。貴女には、貴女の信念があってそうしてるのかもしれないけど、命あるものは必ず最後には死ぬのよ。だから、貴女も死に対して責任を持つ必要は無いの!」

その瞬間、美夢の表情が一瞬でハッとなり、無言で涙を流していた。

「あ、あれ?なんでだろう、涙が……」

「それが、貴女の心の在り方なのよ。貴女は強くない。むしろ弱いくらいなの。だから、仲間を頼りなさい。それが、レギオンであり、仲間であり、友達であるのよ!」

そう言うと、美夢はその場に泣き崩れ、更に泣いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数十分後、泣き止んだ美夢の顔は何かが吹っ切れたような顔をしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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第15話 灰色の約束

お待たせいたしました、今週の更新分です。
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「とりあえず、錆は落ちたわね……」

百由は、背伸びをしながら美夢に言う。

「そうですね、やっぱり()()()()だったんだ……」

美夢は、チャームの刀身を撫でながら一言呟いた。

「マギが入ってないと、やっぱり灰色の刀身になるんだ……、先生との、約束の色。少しくすんだけど、絶対に色褪せないオリジナルカラーのグレー、こんな所で再会出来た、いや、ようやく反逆の狼煙を上げる条件が揃ったってところか!」

そう言いながら、刀身と柄の接合部分に目を向けると、1つのロゴが描かれていることがわかった。

朱、蒼、翠の剣が交わり、中心が白く輝いている。

これは、この世界においてのアーセナルならば、知らない者のいない昔から伝わるチャームの、日本のとある場所でしか作れなかった、世界に3本、しかもそれぞれ違う性質を持つ幻のチャームに付いている紋章だった。

「これは、まさか()()()()()()……」

「何その厨二全開の加護名?」

百由は、初めて聞く単語に困惑の色を示していた。

「世界に3本、いや、正確には三振りの刀型のチャームを製造したとされているチャーム工房の名前です。マギを吸い、呪いのチャームとしても、そして、人類を救うための救済のチャームでもあるとされています。1本は西洋に外征している鬼切丸(おにきりまる)(たずな)の所持している、翠刀『大地』。次が東南アジアへ外征している千賀崎(ちがさき)(みつ)の所有する蒼剣『海原』。最後に、花火(はなひ)未夢叶(みゆか)の私有している朱印刀『朝日』の3本になりますが、いずれも日本に帰ってくることも無く、そして、使用していたリリィも最後を知る人がいないという……」

美夢は、そう言いながら紋章に触れる。

そして、その違和感に気付いた。

「そんな国の重要文化財になりそうなチャームをよく振れるものよね、その子たち……」

「ええ、そうですね。でも、アレだけは他のリリィが使えない代物ですので、多分彼女たちと共に消えたことによって、ほとんどのリリィが救われたと言っても過言では無いですが……」

「何か隠してない?」

百由は美夢の顔を覗き込む。

「何も隠してないですよ、でも、まだ言ってないだけです」

「なるほど、そういう事ね!」

そう言うと、百由は灰色のチャームを持ち上げる。

が、持ち上げた瞬間にその場に落としてしまった。

「何なの、このチャーム……。あと、なんか、身体に怠けがしてきた」

「どうやら、空腹だったコイツに思いきりマギを持っていかれてしまったみたいですね!」

美夢は、嬉しそうに言う。

「このチャーム、起動してないのに自我があるんです!これが日本の封印の技術です!実は、ここには、日本に落ちてきた最初のヒュージの4体の一体が封されているんです!本来は必要ないのですが、封印して、ヤツらにマギを与えてチャームとして使うことにより、通常のチャームでは絶対に出せないような火力を出せたり、ギガント級ヒュージのレーザーすらも跳ね返す程のマギリフレクターを使用出来たりと、いいことが多いんです。但し、欠点があります。それは、膨大のマギが必要になることです。なんと!その量は、スキラー数値が90以上のリリィでも、4日分は必要なくらいなのですよ!」

美夢は、ドヤ顔でそう言うが、百由は半分は寝ている様子である。

「お〜い、美夢と百由様おるか〜?」

そこに工房のドアを開いてミリアムが入室してきた。

「およ!?百由様、寝ておるな、調度良いし久しぶりに、膝枕をしてやろう……」

ミリアムは、そう言うと百由の頭を上げ、頭の位置に太腿が来るように座った。

「相変わらずお2人は仲がいいですね」

「そうか?」

「そうですよ!見てて微笑ましい光景です」

「儂からするとあまりにも親子と煽られるから少し嬉しいのじゃ」

ここぞとばかりに、百由様の頬を啄くミリアム。

少し百由の表情が曇ったが、その後頭を撫でると、ご機嫌になった。

「さてと、そのチャーム、少し嫌な感じがするな。ヒュージを見ているような感覚じゃ……」

「ええ、でもこのチャームには、ヒュージ化した()()が入っているんです。」

「なんじゃと!?」

「普通のアーセナルならわかりませんが、私には分かります。このマギとこの懐かしい感覚は先生なんです。きっと、ここに、梨璃ちゃんの元に戻ってきて、最後に力を貸したいって思いがきっと……」

「それ少し違うよ!」

工房のドアが開くと同時に、梨璃が部屋に入ってきた。

「美夢ちゃん、私だってそこまで鈍感じゃないんだよ!確かに、蒼伊が帰ってきてくれたことは嬉しいよ。でもね、蒼伊は私のためじゃなくて、美夢ちゃんの為に帰ってきたんだよ!だって、貴女は、たった1人の弟子なんだから……」

そう言うと、チャームを拾い上げ、梨璃の髪がピンク色から紫に変わった。

「ラプラスで、マギを吸収されるのを防いでいるんですね……」

「そうね、でも、そんなに長くは続かないけど……」

そう言いながら、チャームを抱き締めたい。

「やっと、やっと会えた。もう二度と会えないと思っていたから!あの日から、もう何年経ったのか覚えていないけど、やっと、やっと……」

そう言うと、大粒の涙をチャームの核部分、そして、刀身に落ちる。

涙内のマギを感知してか、チャームが一瞬起動したが、チャームを抱きしめていた梨璃以外は気が付いていなかった。

「じゃあ、私はもう行くから、貴方も無理しないようにね……」

梨璃は、台座の上にチャームを乗せ、ラプラスを解除した。

「もう、いいんですか?」

「うん、言いたいことも聞きたいことも全部聞けた。だから、貴女も頑張ってね。私の大事な妹兼生徒なんだから!」

「梨璃ちゃんは、魔道力学の教員じゃ無いでしょ!」

笑いながら美夢は答える。

「うん、やっぱり百由様と貴女が出会ったことはいい事だったのかもしれない……」

「どうして?」

「だって、貴女今までよりも笑うようになったから」

「そう、かな?」

「うん、その笑顔を忘れないでね!」

そう言うと、梨璃は部屋から出て行った。

「そんじゃ、儂も行くとするかの〜!」

そう言うと、ミリアムは百由を揺さぶって、

「百由様〜、行くぞい!」

と言い、百由を起こした。

「あれ、私寝てた?」

「おう、よう寝ておったぞ!」

「そっか……、それじゃあ、後のことは美夢に任せて、理事長代行に会いに行くわ、グロっぴもついてきなさい」

「言われなくとも、そんなフラフラしている百由様を1人では行かせぬ。そんじゃ、美夢。あとは任せたぞい!」

そう言うと、百由を連れてミリアムは部屋を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜美夢の内心〜

一人きりの部屋が寂しいと思ったのは、今が初めてだ。

百由様に出会って、レギオンを組んで、レギオン対抗戦をやって、それから、みんなでご飯食べたり、百由様に叱って貰えたりとたくさんの事があった。

1人でもできることは沢山あるかもしれないけど、いつか必ず限界が来て、潰れちゃうかもしれない。

なら、頼れる、支えてくれる仲間と一緒に前に進むことも、

 

「少しくらい、頼ってもいいよね」

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

この日、少女は仲間の大切さ、自分の弱さに気が付く事ができ、仲間を頼ることの大切さを知り、仲間の捉え方を変え、少しだけ、前に進むことが出来たのであろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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灰色の約束②

お待たせいたしました、今週の更新分です。
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勝利の剣を手に入れてから数週間後、美夢は、工房にて最後の仕上げ、術式の書き込みを始めた。

キッ、キキッという金属同士の引き裂く音だけが朝の工房内に響き渡る。

『皆の思い出と戦った記憶、そして、今日までのたくさんの出来事、それを護るためにも、書き上げるんだ!私が、私を忘れないため。そして、先生が愛したこの世界を護るためにも……』

少しだけ術式を書き込む手の力が強くなるが、マギを注ぐ量が一層増える。

 

 

 

 

 

「これで、完成だな……」

数時間後、術式を書き込み終えた美夢が小さく呟く。

チャームの刀身をひと撫でし、チャームの鞘を手に取る。

カチンッ……

静かな工房に納刀する音が響き、消えていく。

「この刀にはまだ名前はないけど、いつの日にか必ずこの刃がみんなの行く手を照らす優しい朝日のように輝いてくれることを祈るばかりだな……」

ここで、美夢は部屋の入口付近に添え付けてある時計を見る。

06:37

を表示していた。

「マズイ、食堂がそろそろ開く時間だ!一昨日みたいに遅刻して怒られないようにしないと……」

そう言いながら、エプロンを脱ぎ、制服のワイシャツを手に取る。

袖を通し、ボタンを下から留めていく。

胸のところで少し時間がかかるが、モノの数十秒で、ボタンを留め終える。

その後、スカートを手に取り、ハーフパンツの上から着る。

スカートのホック留め、ファスナーを1番上まで上げる。

そして、中に着ているハーフパンツを脱ぐ。

「さてと、少し改良した、こいつを付けるとするか……」

そう言うと、いつも腰に付けているチャームケースを、腰に回し付ける。

そして、左にリボルバー型、右に6本のナイフ、そして、1番上の面にもう1つチャームを差込口があった。

「少し、重量が増えるけど、まあ、仕方ないわね」

そう言うと、最後の差込口に刀型チャームを差し込み、少し不安定そうにした。

「少し、不安定だな……、やっぱり付けるか」

制服の上着であるブレザーを着用し、刀型チャームの鞘の下部分に付いている紐を括り付ける部分に肩ベルトの端の紐を通す。そして、鞘の上部分にも同じような部分があるため、そこにも、紐を通す。

肩ベルトを上着の内側に通るように付ける。

そして、ブレザーのボタンを上だけ留める。

髪の毛を軽く櫛で整え、

「これで良し!」

そう言うと工房を出て食堂へ向かう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

美夢が食堂に到着すると、ミリアムが周りを見て自分が座れる席を探していた。

「ミリアムさん、おはようございます!」

「おう、おはようなのじゃ、美夢。なんか、今日は大荷物じゃのう?」

「そう、ですかね?いつもよりも1本多いですが、それ以外は何も……」

そう言うと、ミリアムは美夢の周りをぐるりと回った。

「ついに完成したんじゃな、白銀刀(はくぎんとう)日導(みちびき)〉が」

「それって?」

「そのチャームの名じゃ。名前の無いチャームなど、チャームでは無いのじゃからな、今見て付けてみたんじゃが、何か気に食わなかったか?」

「いえ、このチャームを見て、その名前をつけてくださったお陰で、私としては、悩みが一つなくなりました」

「そりゃあ、良かったのう。ところで、百由様を見ておらんか?昨日の夜からどこにもおらんのじゃ……」

「いえ、私は見ていませんが……」

「おやおやグロっぴ、私が居なくて寂しかったの?」

美夢の後ろから、百由がミリアムに問いかける。

「わっ!?百由様、驚かさないでくださいよ」

「ごめん、ごめんっ!ところで、今日は大荷物ね、美夢」

「百由様、それ、さっき儂も言ったぞ……」

「えっ!?そうなの?ならグロっぴ、説明よろしくね!」

「仕方ないのぅ……」

ミリアムは、事の経緯を全て話した。

チャームの名前も。

「なるほどね、理解したわ。ところで、そんな大荷物でごはん食べずらいんじゃないの?」

「いえ、今日はお弁当を取りに来ただけなので、何も心配はいりませんよ!」

「と言うと?」

百由は、少し首を傾げる。

「つまり、飯を食う時間すら勿体ないくらい早くそのチャームを試したいということかな?」

コツン、コツンと聞こえのいい足音をたてながら1人のリリィが近付いて来た。

「あ、貴女は!?誰だっけ?」

「おや、百由様とミリアムさんには初めましてだったかな?私の名前は桜崎(おうさき) 秋那(あきな)、又の名を最優のリリィだ!」

「オーケー、あきなちゃんね、今覚えたわ、まあ、忘れそうだけど」

「百由様は、忘れっぽいからのう。秋那様、よろしく頼むぞ。儂も、ミリアムでもグロピウスでも好きなように呼ぶと良いのじゃ」

「じゃあ、ミリリンとでも呼ぼう。ちなみに、由来はミリアムとちんちくりんの足し合わせだ」

「百由様、こやつシバいても構わぬか?」

「グロっぴ、やめておきなさい。返り討ちにされてしまうだけよ」

「儂に我慢しろということか!」

「そうに決まってるじゃない、事実を言われたからってムキにならないの、だいたい、牛乳飲めば大きくなるなんて信じてるから、いつまでたってもちんちくりんなのよ!」

「百由様の方こそ、睡眠もろくにとらないでずっと作業してるのに、どうしてそんなにナイスバディ〜なのじゃ!少しくらい儂にもわけてくれてもいいんじゃぞ!」

「あらあら、やっぱり自分でちんちくりんって認めてるじゃない。偉いわね、グロっぴ!」

「くぅ〜っ!いつか覚えておれよ、見返してみせるわい!」

「あら奇遇ね、私はいつまでたってもグロっぴはちんちくりん……」

百由とミリアムは、言い争いを始めてしまった。

「美夢、私も今日は弁当なんだ、一緒にどうだ?」

「その後の訓練にも付き合ってくださることが条件ですよ、秋那様」

「お手柔らかに……」

少し不安そうな笑みを浮かべながら、秋那は言った。

2人は弁当を受け取り、

「さてと、喧嘩してるふたりは置いて、行こうか、美夢」

「そうですね、秋那様!」

「やっぱり私達シュッツエンゲ……」

「お断りします!」

「ありゃりゃ〜、また振られちった!」

「懲りませんね、秋那様も」

2人は雑談をしながら訓練場に向かうのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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灰色の約束③

お待たせいたしました、今週の更新分です。
良かったら、最後まで読んでください!
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カーンッ!!

 

演習場にチャーム同士がぶつかった鈍い音が響く。

美夢と秋那は、一定の距離に離れた。

「流石だね、美夢。本当にチャームを握っていないのに、握って振っているように感じるよ」

「秋那様こそ、今の日本にいるリリィで最強だということが本当に分かります。それじゃあ、そろそろ本気で行きますよ!」

そう言うと、美夢は背中から太刀を引き抜く。そして、両手で1本ずつ握っていたナイフを宙に投げる。

「4本でも手強かったのに、6本に増えるのか……」

「いえ、正解は12本ですよ!電脳(レプリカ)!!!」

宙で舞っているナイフ型チャームは、それぞれが2本に分身し、12本になった。

「それでは、最優の称号、頂きます!」

「ちょっとそれは困るかな、仕方ないけど、本気で行くよ、美夢!!《ヘリオスフィア》!!!」

秋那は、レアスキルを発動する。

先程までとの動きが全くの別物のように速く、一撃一撃が重たい。

12本のチャームのうち、電脳(レプリカ)チャームは、全て砕け散った。

「さてと、あとは合計8本のチャームを相手すればいいのかな?」

「本当に化け物じみた強さですね……、でも、私も負けたくないんで!」

「おっ、負けず嫌いか……、嫌いじゃないよ、その精神は!」

秋那は、距離を一気に詰める。

10メートルほどあった感覚は、5メートルほどまで一瞬にして縮まった。

「本当に化け物ですね……、でも、()()()()()()()()()()()()()()?」

美夢の使っている電脳(サイコキネシス)状態のチャームは、使用者とチャームの間隔が近ければ近いほど精度は跳ね上がる。

つまり、近付けば近付くほど美夢は強くなる。

「近付かないと、私の攻撃も当たらないでしょ!」

秋那は、自身のチャームで6本のナイフ型チャームを振り払い、さらに距離を詰める。

カーンッ!!

またしてもチャームとチャームのぶつかり合う音が響いた、が今回は少し違った。

「参りました、降参です」

「今回も、私の勝ちのようだね。でも、まさか刃が折れるとは思わなかったよ……」

美夢のチャームの刃の根元を切り上げ、手から離れさせた。

今は、刃のサイズが半分になった状態で美夢の首元にチャームが当たっている。

「チャーム、後で治しますよ」

「ありがとう、助かるよ」

「それにしても、お腹空きましたね……」

「そうだな、かれこれ1時間はやってたからな。そろそろ弁当たべるか?」

「そうですね、あと、チャームの方も修理しないと、出撃出来なくなっちゃいますから……」

演習場の端にはあるベンチに腰掛けながら2人は話している。

「と言うよりも、美夢。君が弁当を食べてるなんて、珍しい事もあるんだね。普段は食堂のご飯すら食べないのに……」

「失礼ですね、私を何と勘違いしていらっしゃるのですか、秋那様は。私だって健康には気を付けますよ。チューブゼリーばかりじゃ身体を壊しかねないので」

「意外だね、私としては、普段カロリーブロックか何かだけで生きていると思ったけど、少しは女の子らしいところもあるんだな。驚いたが、嬉しいよ」

「そうですね、でも、お弁当に入っているブロッコリーは食べませんからね!」

弁当を開き、美夢は食べ始める前に秋那に伝えた。

「どうして!?去年までは嬉しそうに食べてたのに!!この1年で何があったのか、()()の私に教えてよ〜!!」

「そんなの、()()()()が野菜嫌いを治さないからでしょ!!」

そう、この2人は、元シュッツエンゲルだった。

何故シュッツエンゲルを解消したのかは、単純であった。

2人の関係が中学生と高校生に離れてしまったからである。

だが、普通一貫校のシュッツエンゲルは解消しないが、この2人はすれ違う頻度が上がるから、なくなく解消せざる負えなかったのであったのだ。

「でも、何故高校に上がってシュッツエンゲルに戻らなかったんだい?」

「あの時にはもう、噂が広がっていたじゃないですか……」

「あぁ、そうだったね。《戦場の死神》の厨二臭い二つ名がついていたね、つい最近まで」

「本当に秋那様は意地悪ですね。罰として私の人参食べてください」

「かなり長い間の付き合いだけど、人参が嫌いなのは初耳だね。案外可愛いところもあるんだね……、

って何故人参以外にもブロッコリーとカリフラワーを入れてるんだ!!」

「そんなの、秋那様の好き嫌いを治してあげましょうと言う、元妹の優しさですよ!」

「私、そんな妹に育てた覚えはないわ……、まさか、あの腹黒羽の影響ね!あの子、今度会ったら……」

「誰が腹黒羽ですか!!本当に昔からその口の悪さだけは治りませんね、先輩。だから美夢にブロッコリーが嫌いだってバレてるんですよ!」

「やっぱりアンタだったのか……、今ここで決着を、と思ったけど、今はチャームが壊れてるんだった……」

「私はプロレスでも構いませ……、そんな闘志を顕にしないでくださいよ、だって、私後輩で……」

「アンタにはフローリングの硬さを頭に叩き込んでやるわ!!」

「ギャフっ!!」

そう言うと、オ○ダ・カズチカ並のドロップキックを黒羽の顔に叩き込む。

「何するんですか!私の可愛い顔に傷がついてしまうじゃないですか!」

身体を少し起き上がらせながら秋那に文句を言う。

「1発で終わらせてもらえるわけ、無いでしょ?」

そう言うと黒羽の背後にまわり、腕をとる。

見る人が見れば何をするのかわかる。

「ちょ、待ってください秋那様。これってまさか……」

「二年振りだね、黒羽。歯ぁ食いしばれぇぇぇ!!」

「いやぁぁぁぁぁぁっ!」

秋那は、見事なジャーマンスープレックスを披露した。

レフリーがいれば、スリーカウントをしっかりと取りそうだった。

「よっと、黒羽もこれで私の恐ろしさを思い出しただろう。さてと、美夢。そろそろチャームの修理をしてくれよ」

「わ、分かりました……」

そう言うと、美夢と秋那は2人で美夢の工房へ向かった。

「あっ、ああっ……、助けて」

「おやおや、黒羽ちゃんはアホなんやな……」

そう言いながら黒羽の身体を起こす。

「さて、ワイも美夢ちゃんに仲間にしてもらわんとな!」

そう言いながら、謎の少女は怪しい笑顔を浮かべていた。

『おいナレーター!ワイは美少女やぞ!』

失礼しました、謎の美少女は、怪しい笑顔を浮かべていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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第16話 チャームと絆と謎の美少女?

お待たせいたしました、今週の更新分です。
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「さてさて、秋那様。チャームを出してください」

美夢は、秋那にチャームを見せるように言う。

「はい、君が折ってくれた私の大切なチャームだよ」

そう言うと、背負っていたチャームを作業台の上に置いた。

チャームの刃は真っ二つになっていたが、他の部分は特に異常は無かった。

「とりあえず、刃を交換します。何か欲しい術式とかあります?」

「そうだね、私としては電脳(サイコキネシス)が欲しい所ではあるが、とりあえず、普通に戦って壊れない刃が欲しいかな」

「やっぱり電脳システム欲しかったんですね……、でも、電脳(サイコキネシス)くらいなら、もしかしたら付けられるかもしれませんよ!」

そう言うと、美夢は秋那に腰に装備いたナイフを2本ほど渡した。

「これを片方投げて、片方で操作してみてください。動かせたら、電脳(サイコキネシス)を実装出来ます」

美夢は、ナイフを投げて空中で操作して見せた。

「なるほど、私もやってみるよ……」

秋那は、右手に1本ナイフを握り、マギを纏わせる。

そして、左手に握っているナイフを上に投げ、美夢と同じ様に操作を始める。

だが、美夢ほど滑らかに操作することは出来ず、少しぎこちない。

「まあ、武器を手元まで引っ張ってくるだけなら、使用出来そうに無いですね……、でも、ギリギリ合格ラインではありますね」

「じゃあ、電脳(サイコキネシス)の実装、頼むよ」

「はい、分かりました!」

そう言うと、美夢は、既に何枚も生成されているチャームの刃を1本取り出し、術式を書き込んでいく。

1つずつ丁寧に書き込まれていく術式には、電脳システムが組み込まれている。

 

 

 

 

 

 

 

 

数十分後、

「後は、火入れして書き込んだ術式が安定するのを待ちます」

そう言うと、刃に火入れをするための炉に突っ込んだ。タイミングを測りながら刃を奥に入れたり、手前まで持ってきたり、裏返したりしている。

秋那は、後ろからその様子を見ていた。

「動きが洗礼されていて、尚且つ一つ一つの工程が丁寧だ……、美しい」

だが、その声は美夢の耳には届いてはいなかった。

火の入る音一つ一つを聞き逃さぬように、聞き耳を立てている。

炉の中が一瞬だけ蒼く光る。

チャームに術式が安定した証拠である。

「ここからはスピード勝負です。秋那様、そこのチャーム刃用の冷却水を手前に出してください!」

「あ、うん、わかった……」

美夢は、刃の端にロボットアームの手を取り付ける。

「行きます、せーのっ!」

ロボットアームのボタンを押し、アームを動かす。

ロボットアームによって取り出された刃は、すぐさま冷却水に沈められる。

ジューッ

という音が水面からなっている。

「ここで刃が割れなければ、完成です」

音が無くなり、水から刃を取り出す。

刃は少し虹色がかっていた。

「割れたりしてない、よし!完成です!!」

「本当か!?やったな、美夢!!」

美夢と秋那は互いに抱き合う。

「秋那様が手伝ってくださったお陰です!やはりチャームの契約者が手伝ってくだされば成功率が上がるのかもしれませんね!」

「いやいや、美夢。君が今まで培ってきた技術が幸をそうしたんだよ。さすがだ、とても美しかった!」

二人は互いを褒め合いいい感じの雰囲気になっていた。

「いい感じになっとるとこ悪いんやが、邪魔させてもらうわ!」

来訪者は、雰囲気をぶち壊しながら返答も無しに美夢の工房に入ってきた。

「おやおや、丁度いい所だったか。それは悪いことしちゃったな〜、じゃあ出直すわ」

そう言うと、工房を出ようとしたが、

「ちょちょちょ、ちょっと待ってください!!」

「何を逃げようとしているのかな?こんな現場を見られて、逃がす訳ないよね!」

出て行こうとしている謎の美少女の前に秋那が立ち塞がった。

「流石ですね、最優のリリィ。私よりも速いとは……」

「こんな現場を見られたんです、最低限ここ数週間の記憶を消させてもらいますね?」

美夢は、謎の美少女の頭を確実に仕留める勢いでハンマーを振る。

「危ないな〜、美夢ちゃんはホンマにおっかないわ〜」

ハンマーを躱し、ハンマーの上に足を置き攻撃をさらに続けることが出来ないようにしている。

「ほんなら、自己紹介から行かせていただきます。アタシの名前は、猿飛緋色(さるとびひいろ)と言います。以後お見知り置きを」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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チャームと絆と謎の美少女?②

最近リアルと他活動が忙しかったのと、なかなかストーリーを構成する時間が無く、更新出来てませんでした!
久しぶりの更新です、よろしくお願いします!!


「では、猿飛さん。何故逃げようとしたのか教えていただけるかしら?」

秋那は、椅子に縛り付けられている緋色に問いかける。

「どうやら、秋那様は何か誤解をしていらっしゃるようで……」

「美夢、例の()()あるかしら?」

「はい、もちろんここに……」

美夢は、運んで来たものを地面に置いた。

ズドンッ!!

と大きい物音を立てているそれは、厚さ100mmのいかにも拷問等の錘として使われる鉄板である。

「それ、どう使うか教えていただけたりって……」

「そんなの、今から味わうんですから、別に説明も何も要りませんよね?」

「あ、あの、なるべく、なるべくでいいので優しく……」

「つべこべ言わない!行くわよ!!」

秋那は、緋色の太腿に1枚目を置く。

「重っ!!!???待って、足が、足がちぎれちゃうから!!」

「早く本当の事を話した方が身のためよ。さあ、その口を割っちゃいなさいな……」

秋那は、無言で更に1枚を乗せる。

「ふぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!!!!」

緋色は、凄い声量で叫んだが、美夢の工房は地下にある為か防音性能は、他の部屋と比べ物にならないレベルであった。

「緋色さん、叫んでも無駄なので、そろそろ話してくださいませんか?」

「……」

「因みに、ここに黙秘権なんてないですよ!!」

「なら今すぐに拘束を解けぇぇぇ!!!!!!!」

全力のツッコミに呆気を取られ、美夢は拘束を解いた。

「全く、人の話を聞かないカップリングだな!そこに正座!」

「で、でも……」

「つべこべ言わずに、する!」

「「は、はい!!」」

2人は工房の冷たい床に正座した。

「大体、私は君たち2人とは初対面だろ?」

緋色は、近くにあった椅子を引き寄せて、そこに足を組んで座った。

その表情は、とてつもなく怒った顔をしていた。

「は、はい……」

「……そう、ですね」

「ならまずは名乗り会うのがセオリーだろ!!」

「は、はぃぃぃぃ!!」

「ご、ごめんなさいぃぃぃ!!」

美夢と秋那は、頭を下げて、土下座の体勢になった。

「私は意外にも寛大だ……」

そう言うと、緋色は靴と靴下を脱ぐ。

次の瞬間、秋那の頭を素足で踏みつけた。

ゴツンっ!!

という少し鈍い音がしたが、お構い無しに緋色は秋那の頭を足でグリグリし始めた。

「こう見えても私は、復学したばかりと言えど秋那と同じ学年だ。休学していた都合上、1つ下だが……、この意味、分かるよね秋那?いや、秋ちゃんって呼べばいいかな?」

緋色は、とても笑顔だった。とてもいい笑顔なのだが、笑っているのは顔だけだ。

それに引替え、秋那は額、いや頭部の全毛穴からダラダラと脂汗が流れ落ちる。

美夢は、隣で床を汗まみれにしていた。

「やっぱり、()()()()()()()()()()()()()のが、うちのルールよね?」

「そ、そうですね……」

「それじゃあ……」

緋色は秋那の頭を足でポンポンとし始めた。

「寛大な私は、貴女の奢りで日替わりフルコースディナーで許してあげるわ!」

「そ、それはその……、高すぎると言いますか……

「あぁ?」

ずっと閉じていた目を開く。

そこに、目の光はなかった。

「は、はい!!喜んでお支払い致します!!」

「よろしい!」

そう言うと、緋色はまた笑顔になった。

「それじゃあ、美夢ちゃん!私の事、下級生の間ではどんな噂が流れてるのかな?」

「い、いえ、特に噂とかは……」

「秋ちゃん、踵でいいかな?」

「美夢の馬鹿っ!!素直に答えなさ……」

その瞬間、緋色の踵が秋那の頭を直撃し、

ゴツンっ!!

という鈍い音がした。

「痛っいぃぃぃぃぃぃぃぃぃい!!!!」

秋那は、その場で悶絶していた。

「後頭部はヤバイ!マジで一瞬意識飛んだ!」

「妹の責任は姉がとるものよ。さてと、美夢ちゃん。正直に話していいから、教えてね?私は、同級生よりも下の子達から何って呼ばれてるのかしら?」

既に美夢は、涙目になっていた。

緋色は目を大きく見開いているが、その目には確かな殺意のみが見えるのだ。

恐怖が美夢を支配しているのだ、無理も無い。

「……の鮮血姫」

「よく聞こえないわね、もう少し大きな声で言って貰えないかしら?」

「夕暮の鮮血姫です!」

「何その厨二臭いセンスは!一体何処のどいつがそんな通り名付けたのかしら!」

笑いながら更に秋那の頭を踏みつける。

あまり力は入っていないが、秋那の頭は気持ちばかし地面にめり込んでいた。

「まあ、説教はこの辺にして……、さてと、美夢。私のチャーム整備してもらえるわよね?」

先程秋那に向けた笑顔と同じものを美夢に向ける緋色。

表情は怯え声はガクガクになっている状態で、

「は、はい……、承りました」

と答える。

「よろしい、それでは頼んだ」

と言いながら美夢にチャームを渡す緋色。

そして美夢は、チャームを受け取ると、颯爽と作業を始めだした。

最早、この空間は緋色の独裁状態になっていた。

「さてと、とりあえずフルコース食べて来るまでには終わるかしら?」

「はい、今触った感じだと、使用してない期間でグリスが切れてるのと刃の交換ですので、そのくらいに終わるかと……」

「それじゃあ、秋那と一緒に食べて来るから、あとはよろしく!」

「美夢!!!!私を見捨てないで〜!!!!ゴふッ……」

抵抗は虚しく、秋那は緋色に連れて行かれてしまった。

緋色が去ったことにより、工房内には平和が訪れたが、秋那が戻って来る時、どうなっているかは、知る由もなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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チャームと絆と謎の美少女?③

一ヶ月近く音沙汰無しで申し訳ありません!!
書くのに時間がかかっていたのと、本職が忙し過ぎたので、御容赦ください!
それでは最新話、よろしくお願いします!!


「さてと、受けてしまった以上仕事は放棄出来ないわよね!」

美夢は、手に取ったドライバーを駆使して刃をチャームから取り外した。

グリスを塗ってないせいか、ボルトを緩めるのに少し手間取っていた。

「しかし、どうしてここまでチャームの刃が劣化しているんだろう……、使ってないだけだったらそこまで劣化していないし、何よりも、この傷。多分、停学期間も1人で戦っていたんでしょうか……」

美夢は、刃の傷付いた箇所を撫でながら言った。

刃には、ヒュージとの戦闘による刃のえぐれやバレルの擦り減り、そして、チャームの長時間使用の際に発生するオーバーヒートによる溶解し、冷え固まった後……。

素人目にはわからないボロボロのチャームだが、

「死線を何度も乗り越えて来た戦士のチャームですね……、とてもじゃないですが、緋色様とチャームのマギが共鳴している事が見てわかります」

美夢は、思った言葉が口から出ていた。

「じゃあ、まずは刃の術式を複製するところからですね……」

美夢は、スキャナーの上にチャームを乗せた。

スキャナーは、チャームに残されている術式を読み取り、モニターに表示される。

「なるほど、なるほど。何故か少し術式が少ないと思ったら、チャージ・スラッシュとは……」

美夢は、咄嗟に何かを理解したのか術式の刻まれてないない刃を用意した。

「術式を刻印していきますか……」

何か怪しげな機械に、未刻印のチャーム刃を乗せた。

「ここをこうして、こう!」

ボタンを順番に押していくと、未刻印チャームにだんだんと刻印されていく。

「これが、私が開発した自動刻印装置なのです!」

誰もいないはずの工房内で可愛らしいドヤ顔をする美夢。

「なるほど、なるほど……。これは技術革新ですね。これを量産すれば長期戦になっても、多分これがあれば私達は勝てるでしょうね」

「そうでしょ、そうでしょ!私って凄いでしょ?天才でしょ!可愛すぎるでしょ!!」

悦に浸っている美夢は、大声とドヤ顔を崩さずそう叫んだ。

「ところで、貴女誰?」

「え?」

ここに来て美夢は、1度冷静になった。

一人しかいないはずの工房に、美夢の声以外の声があったからである。

その事に気付きはしたが、気にしていなかった。

そう、ただ調子に乗っていた為、ツッコミ忘れです。

「あっ!?そういえば自己紹介まだでしたね。私、宮本燐華(みやもとりんか)って言います。工廠科1年生です!」

燐華は、元気に返事をする。

隣で美夢は黙々と作業を続けるが、

「なんで無視するんですか、美夢さん!!!」

燐華は、美夢に抱き着いた。

「やっぱり、初めて見た時から、腹筋周りが引き締まってて、そんなに胸囲が無いのにカップ数も私よりも2つほど大きいし……、あ〜羨ましい!!」

そう言うと、エプロンの下に手を入れ美夢の腹筋周りを撫でまくった。

「ちょっ、燐華さん!作業しているから、やめっ……、ひゃぅ!?」

お腹周りを撫でていた燐華の手が、美夢の胸上のエプロン下に伸びていた。

「やっぱり、制服の上からじゃ分からないけど、かなりのサイズ……、Eいや、Fはありますね」

さらに胸を揉む燐華だったが、

電脳(サイコキネシス)!」

美夢が、チャームが訓練用の刃になっているナイフ型チャームを手に引き寄せていることに気が付いていなかった。

「ヤバイ、これは男に譲るくらいなら、私が嫁に欲しいくらいですね……」

燐華が胸に気を取られている隙に、

「そろそろいい加減にせえ!!」

「ぎゃふっ!!!!!」

ゴツンっ!という鈍い音が工房内に響き渡る。

「痛いじゃないですか!!」

「あなたは馬鹿ですか?作業中は、大人しくしてください!」

「ご、ごめん……、なさい……」

燐華は、飼い主に怒られた飼い犬のようにシュンとしている。

「貴女もアーセナルならわかるでしょ?」

「はい……、やりすぎました」

「わかればよろしい……、あっ、時間がもう無い!ちょっと、手伝ってください!」

こうして2人は、チャームの整備を始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

________【続く】




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チャームと絆と謎の美少女?④

最新話です!
よろしくお願いします!


「さてと、秋那。なんでまだシルトちゃんと仲直り出来てないの?」

席に着いた緋色は、秋那に問いかける。

「別に、シルトとシュッツエンゲルの関係が無くなっただけで、元から仲のいいアンタらがチグハグな関係性がものすごく気持ち悪くてさ、何かあったの?」

緋色は、水を1口飲んだ。

「仲が悪くなった訳じゃないわ……、ただ、あの子の心には私よりも大切なものが、私の代わりにあの子の心の支えになってるの。だから、もう今更私となんて……」

秋那も、水を1口飲んだ。

「……はぁ」

緋色は、椅子の背もたれに深く腰掛けた。

「あのさ、それってまた昔のアンタとあの子の関係性になってるじゃん」

そう言うと、足を組んだ。

「何を困っているのか知らないけど、アンタは、アンタしか居ないだろ?」

「……」

「まあ、その、なんと言うかさ、アンタは美夢にとっての何?姉でしょ!それは、たとえシュッエンゲルの契があるなし関係無しに、絆がある訳でしょ?」

「……そう、だけど、私はあの子の辛い時に守ってあげられなかったダメな姉だし、それに、私にはもうあの子の為に出来ることなんて……」

「……」

無言の時間が生まれた。

そこへ、

「すみません、お料理運んでもよろしいでしょうか?」

ウェイターさんが空気を感じ取っていないのか、そう切り出した。

「あぁ、はい。お願いします」

「承知致しました」

そう言うと、ウェイターはテキパキと料理を運び込んだ。

「それでは、ゆっくりとお楽しみください」

そう言うと、ウェイターは裏に入って行った。

「とりあえず、食べようか」

「そうね、料理が冷える前に」

2人は、運ばれてきた料理を食べ始めるが、無言である。

「まあ、なんというか」

ある程度食べたところで、緋色は口を開けた。

「アンタもまだまだ自分のシルトに甘いね〜」

「それって、1体どう言う……」

「アンタは、シルトが傷付く事よりも、シルトが笑顔でい続けるために自分が傷付けばいいと考えているんだ」

緋色は、メインディッシュの肉の最後の一欠片を頬張り、よく噛んで飲み込んだ。

「アンタは、もっと欲張りなよ。シュッツエンゲルとシルトは共依存関係が丁度いいくらいなのよ!」

そう言うと、残っていたスープを飲み干す。

「そうなのね……」

もう既に食べ終えていた秋那は、コップに入った水を飲み干す。

「そうだよ。だから、アンタはもっと欲張りなさい。話してみなよ」

そう言いながら、コップに入った水を飲み干す緋色。

「んじゃ、お会計よろしくね、秋那!」

そう言うと、席を立つ緋色。

「約束だからね……」

秋那もそれと同時に立ち上がった。

そして、2人は会計を済ませ店を後にし、美夢の工房に戻ることになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

________美夢の工房にて

「よし、これで交換完了!!」

「何とか、終わりましたね……」

美夢と燐華は、机の上に突っ伏していた。

「大体、私の体に貴女が興味を持つから、刃の交換に時間がかかったんでしょ!」

「やめてくださいよ、そうやって、私かいやらしい変態女みたいなこと言うの!大体、作業してる時もプルンプルン揺れるのが悪いんですよ!何回揉みたくなったか!」

「なんで私が怒られなきゃいけないのよ!それに、貴女だって充分なものでしょ!!」

「私は、Cしか無いので、貴女ほど恵まれてないんですぅー!!減るどころかおっきくなるんだから、別に揉ませてくれたっていいじゃない!!」

「おっきくなられると、私も困るの!」

2人は、何故か胸の揉ませろ揉むな論争を始めていたが、

「別に、燐華は小さくは無いし、いい形してるから、私専用の愛玩道具だ」

そう言いながら、緋色は燐華の胸を後ろから持ち上げながら揉む。

「やっぱり胸は下乳から揉むのが気持ちいいんよ!」

そう言いながら、更に揉む。

「ちょっと、緋色姉様////そんな、激しくされたら////」

「……」

この時、美夢は思った。

『なるほど、このシュッツエンゲルとシルトは、肉体関係から入ったタイプの姉妹なのか……』

と。

それを隣で悟ったのか、秋那は美夢の肩に手を置き、

「考えても感じてもダメよ、あんな関係の姉妹なんて、めちゃくちゃレアケースなのだから……」

そう耳元で囁いた。

「な、なるほど……、よくわかりませんが、よくわかりました秋那様……」

そう言うと、美夢は緋色のチャームをケースにしまう。

「緋色様、チャームの整備完了してます。御受領ください!」

そう言うと、チャームを緋色に渡した。

緋色は、燐華の胸を揉む手を止めて美夢の前に立った。

「うん、ありがとう!」

そう言って受け取り、チャームを起動する。

「おお〜、すごくマギが通りやすくなった。まるで身体の一部みたいだ!」

そう言い、チャームを軽く振る。

「美夢の整備は、他のアーセナルとは違った整備になるのよ〜!!」

「何故秋那が自信満々なの?」

緋色は、そうツッコミを入れる。

美夢は、『こんな日々が続いたらいいな』と考えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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第17話冬の寒空に散る花弁

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ずっと夢を見ていた。

「美夢、貴女には運命を呪う権利があるわ。ゲヘナの策略だとしても、本来であれば、貴女の力は覚醒することは無かったの……」

幼い日の私を、夢結は優しくも力強く抱き締める。

「お母さん、私は今の生活を捨てたくないよ?鶴紗ちゃんだけじゃなくて、梨璃ちゃんも優しいし……」

「そうね、貴女だけはこの世界の暗い部分の色に染まらないでいなさい。だから、私も、私も貴女に……」

夢結は、更に強い力で私を強く抱きしめる。

「あとね、お母さん。私、もう迷わないよ!みんなが、私に歩かなくては行けない道、絶対に進んだらダメな道を本気で教えてくれた。みんなが好きだし、今の居場所が大好きだから、私は運命を呪う事なんてしないよ!」

「そう、なのね……」

夢結は私から離れる。

「貴女は、私と違って強いのね。そこはお姉様に似ているのね……」

夢結は、私の肩に手を置いた。

「美夢、貴女は、貴女は必ず生きなさい。死んでもいいとか、死にそうになっても逃げなさい。仲間が必ず助けてくれる。悩んでも辛くても、必ずしも向き合う事だけが正しいことじゃないのよ」

そして、私の額に夢結は額を合わせる。

「だから、辛くて苦しくて向き合ってももう無理だって思ったら、逃げなさい。逃げて、泣いて、寝て、起きて、また向き合いなさい。最終的には、1人になっても、必ず貴女を信じてくれる人が、切っても切れない仲間との絆が、貴女を導いてくれるのだから」

それだけ言うと、夢結は私から離れて、歩き始めた。

「待って!行かないで!私をひとりにしないで!」

私は走り出していた。

けれども、夢結との距離は縮まらないどころか、どんどん離れていく。

もう追いつけないと思い、私は足を止めた。

その時、夢結が振り返り、

「美夢!!貴女、いい仲間に巡り会えたのね。大切にするのよ」

そう言うと、夢結は光の中に消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ッは!?」

美夢が目を覚ますと、そこは保健室だった。

「あれ、私……」

身体を起こし、左手に伝わる温もりに目を向けると、秋那が美夢の手を握っていた。

「どうして保健室に……」

そんなことを呟いた時、カーテンが開いた。

「あっ、起きたのね。全くもう、あれだけ無理はするなって言ったのに……、仕方ない子ね」

そこには、保健室の担当である定盛姫歌が居た。

「で、体調の方はどうなの?」

「どうもこうも普通ですよ、定盛先生」

「おい、ヒメヒメ先生と呼びなさい!」

「いや、もう30代中盤で結婚歴もない先生が、自分の事をヒメヒメ先生とか言うの、痛いですよ?」

「うぐっ……、それ中々刺さるから本当に困るのよ……」

「でしょうね」

そう言いながら、美夢は少し笑った。

「ところで、私は何故ここに運ばれてきたのですか?」

「そうね、工房でいきなり倒れたらしいのよ。そこで寝ているアンタの元お姉様曰く」

「ヒグッ!?」

そう言うと姫歌は秋那の脇腹を思い切り掴んだ。

「眠っていて完全に油断してるなんて、リリィとしてどうなのよ?」

「休息も大事なことくらい、定盛先生も分かるでしょ?」

「だ・か・ら!ヒメヒメ先生と呼びなさいって言ってるでしょうが!!!」

姫歌は、さらに強く秋那の脇腹を掴んだ。

「痛い、痛いって!!大体、アラサーがヒメヒメと呼んでとか、痛々しいだけだろ!!!」

姫歌の手が止まり、その場に膝から崩れ落ちた。

「また、生徒に30代の事を……」

姫歌の心が折れてしまった。

やはり、年齢を突かれるのはアイドルリリィにとって致命傷なのだろう。

「とにかく、もう大丈夫ですので、もう行きますね、姫歌先生!」

「う、うん……、わかったから、早く、いやもう二度と来ないで」

そう言いながら、涙ながらに姫歌は言った。

「それじゃあ、美夢。行くよ!」

「はい、秋那様!!」

秋那は、美夢の手を引きながら保健室を出た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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冬の寒空に散る花弁②

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その日、朝早くから学園の警報機全てに故障が見られていた。

理由は謎の電磁パルスの影響である。

この電磁パルスは、リリィ達にも影響があり、リリィの半数以上が体調不良で出撃不能状態であった。

「鶴紗ちゃん!」

梨璃は、いち早く鶴紗を見つけた。

「梨璃、やはりお前は動けるんだな……」

「うん、でも、目の色は完全にラプラスになってるみたい……」

「ともかく、今は生徒達の混濁してるマギを落ち着かせに行くぞ」

「うん、私のこの力があれば、何とかなるかも!」

梨璃と鶴紗は、体調不良を訴えるリリィの元へ駆け出した。

 

 

 

美夢の工房

「あらあら、おはよう美夢さん。今日は一段と早起きなのね」

百由は、美夢に欠伸をしながら声をかけた。

「百由様、おはようございます。何か嫌な予感がして、目が覚めちゃったんです」

「奇遇ね、私もそうなのよ。朝からグロっぴの様子がおかしくてね、まだ使ってないのに、フェイズトランセンデンスを使用した後みたいになってるのよ」

「マギが乱れてるんですかね?」

「かもしれないわね」

「ところで百由様、今、この世の理使用してますよね?」

「え?」

「だって、体からマギが溢れ出していますよ?多分、あと2分くらいで切れると思います」

「それって、一体どういうこと!?」

「そういえば、百由様には言ってませんでしたね。私、マギの動きが見えるんです。生まれつき」

美夢は、置いてある椅子に座った。

「だから、苦しんでる人の元にすぐに駆けつけたり、相手の急所が一瞬で分かるんです」

美夢のそれまで浮かべていた笑顔が、消えた。

「ほら、段々苦しくなって来たんじゃないんですか?」

百由を観察するように、美夢は見ている。

「何を言って……、ウグッ!?」

百由は、その瞬間その場に膝をついた。

「だんだん首が絞まっていくような感覚でしょ?どうなんですか?苦しいですか?助けて欲しいですか?」

美夢は椅子を飛び降り、百由の顔を持ち上げる。

「苦しいですよね?辛いですよね?助けが欲しいですよね?ほら?早く助けてって言ってくださいよ?早くしないと、マギが無くなっちゃいますよ?」

百由はようやく美夢の顔を、その目を見ることが出来た。

その目は青紫色になっており、やはり、レアスキル使用状態であることは明確であった。

「たす……けて……」

百由は、掠れていく景色の最後に一言だけ呟いた。

「やっと、言いましたね?分かりました。絶対に助けます」

そう言うと、美夢は百由の額に自分の額を合わせる。

「百由様、私のマギを額で感じてください。そのマギを拒まないで、自分の体内を巡るようにまた額まで戻してください。そうです、そんな感じです……」

その指示を聞きながら、百由は言われた通りにマギを操作する。

それを2、3回繰り返した。

すると、

「身体が、動くわ!!」

百由は、思い切り立ち上がった。

その拍子で、

"ゴツンっ!!"

と鈍い音が響いた。

「痛たたた……」

「ッ……!?」

百由は軽傷だったが、美夢は思い切り吹き飛ばされたため、後ろの椅子で頭を打ち、悶絶している。

「年上を煽りまくったから、天罰が下ったのよ」

百由は、美夢に手を伸ばす。

「それでも、いきなり立つ方も悪いと思いますよ……」

美夢は、伸ばされた手を掴んだ。

百由は掴んだことを確認し、思い切り美夢を持ち上げる。

「ところで、何なのこの力は?」

百由は、自身の体内を回るマギの違和感に何か覚えがあるような事を感じていた。

「これは梨璃ちゃ……、双葉先生のレアスキルのマギの流れを真似してみたのですが、他のカリスマとは全く違うのに、双葉先生はカリスマだって言い張るんですよね……」

美夢はミリアムの元へ駆け寄り、百由同様にマギの交換を行った。

「うぅ……、百由様。マギの調子が悪くて、身体が勝手にレアスキルを発動させておったみたいじゃ……」

「そうね、でも、今回のレアスキルの件は」

「ですね、今回のレアスキルの暴発の件は」

美夢と百由は、同じ見解に行き着いたようだ。

「「ヒュージによる攻撃だと思うわ(います)!」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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冬の寒空に散る花弁③

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「さてと、これからどうしよう……」

美夢は、椅子の上で少しへばっているミリアムと百由を見てそう呟いた。

「どうするも何も、鶴紗ちゃんや梨璃ちゃんと合流するのが優先だと、私は思うわよ。だって、美夢ちゃんのマギも無限という訳じゃないでしょ?」

「そうじゃな、本来ラプラス持ちの梨璃の方がこういう場合は向いておるじゃろ」

「そういう訳にはいかないんですよ。私が2人から離れてしまうと、効果が無くなるので、2人がまた地獄のようにマギが空っぽ状態になるんですよ」

「「なっ、なんですって(なんじゃと)!?」」

2人は思わず立ち上がった。

「でも、それって私たち3人で行動すれば解決するんじゃないかしら?」

「百由様、マギ空っぽの儂に歩けと言うのか?」

「大丈夫よ、グロっぴは私がおんぶしてあげるから!」

「それじゃと、誰かに見られたら恥ずかしいじゃろが!!」

「大丈夫よ!だってみんなダウンしてるんでしょ?なら、誰にも見られないわよ!!」

「そういう問題じゃないじゃろが!!」

「別に誰も見てないから問題無いでしょ!!」

「お2人とも、擬似ラプラス使うのやめて差し上げましょうか?」

「「ごめんなさい……」」

美夢は、このシュッツエンゲルとシルトの喧嘩を一瞬にして止めてしまった。

「とにかく、ミリアムさんは百由様におんぶしてもらってください。百由様は、まあ、着いてきてください。あと、チャームは持って行きましょう。何かあった時の護身用ですが……」

こうして3人は、それぞれチャームを持ち、ミリアムは百由におぶられ、百由は美夢の後ろをついて行く形で梨璃と鶴紗に合流することになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜管理棟 1階 保健室前

「次は姫歌ちゃんだね」

「アイツはしぶとく生きてるだろ?」

「あはは、そうだね……」

そう言うと、梨璃は保健室のドアを開けた。

「梨璃、危ない!」

保健室のドアが完全に開く一瞬のうちに、鶴紗は梨璃に覆いかぶさり、地面に押し倒した。

そして、鶴紗の背中の上をヒュージの腕が通り抜ける。

いや、正確にはヒュージ化しつつある姫歌の腕だった。

「うぐっ……、少し切れたか」

咄嗟の回避だったからか、鶴紗は左腕を負傷した。

「鶴紗ちゃん、大丈夫!?」

「ああ、私はすぐに治るから、大丈夫だけど……」

鶴紗は起き上がりながら、姫歌の方を向く。

「ダめ、来ちゃダメよ、鶴紗さン、梨璃サん」

「パラサイト型か、やはり()()が近くまで来ているのか!!」

「それよりも、今は姫歌さんを救うのが優先事項です」

「梨璃、あそこまでヒュージ化したら、流石に元に戻すなんて無理だ……」

「じゃあっ、どうするの!!」

「梨璃は何も見なくても、しなくてもいい。私が姫歌を切る。」

「それってどういう……」

「『アルケミートレース』、この罪は、私が背負ってこの先も生きていくよ……」

「鶴紗ちゃん!!」

鶴紗は姫歌に向かって飛び込んだ。

「姫歌、辛かったよな、痛いよな、苦しいよな!私が今、楽にしてや……」

その瞬間、鶴紗の前にナイフ型チャームが突き刺さった。

「鶴紗先生、私が今からやること、許してください!」

その声が聞こえたと同時に、天井から美夢が降ってきた。

「定盛先生、絶対に動いちゃダメですよ?」

「みユ!?」

美夢は、残りのナイフのうち4本でヒュージ化している腕を押さえつけ、残り1本で、姫歌の心臓を貫いた。

「くはっ……」

姫歌は、口から血を吐き出した。

しかし、その血は青かった。

「もう、姫歌先生の救える部分が、マギしかないんです。しょうがないので、先生の意思は私が引き継ぎます。だからもう休んでいいんですよ、姫歌先生……」

美夢は、リボルバーを姫歌の顬に突き付け、引き金を引いた。

その瞬間、姫歌の頭は跡形もなく吹き飛んだ。

「貴女の想いは、私が……」

美夢は、頭を撃ち抜いた弾丸を拾い上げ、焦げて黒く濁った色の弾丸を自分の胸に押し当てる。

「いつまでも、移り変わらない気持ちを私に……」

そう呟くと、弾丸の焦げて黒く濁った色は、美夢の服の隙間に入り込んで、弾丸は元の金属の色になった。

その色は、少しだけオレンジ色の光を帯びたあと、光が消えた。

「後は、お願いします……」

そう言うと、美夢はその場に倒れ込んだ。

「美夢!?」

「美夢ちゃん!!」

倒れ込んだ美夢を起き上がらせるために、梨璃と鶴紗は駆け寄った。

結局、この一件で約千人のリリィとまぎを操ることの出来るものが、身体を奪われ命を落とした。

そして、そのリリィ全員の命を奪ったのは、美夢だった。

戦場の悪魔という二つ名は二度と消えぬものとなった。

また、今回のヒュージは、パラサイト型という極めて稀のヒュージだが、このパラサイト型が出てくることは、その集落に命は残らないということが伝わっていた。

美夢は遠のいてく意識の中で、

「必ず、私はみんなを……、そして、ヒュージも一体残らずぶっ潰してやる」

そう言うと、地面に倒れ込んだ。

そして、梨璃と鶴紗はかろうじて頭を守ることは出来たようだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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第18話千の花と咲き誇る一輪の秋桜

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「……なんだ、私の工房か」

目覚めた美夢の第一声は、それだった。

「まあ、あんな状態の保健室に寝せる訳にもいかないだろ?」

鶴紗は、ソファーの傍に座り込んだ状態で話しかけて来た。

「鶴紗先生がそこに居ると言う事は、私の頭が乗っている太ももは……」

美夢が徐ろに左を向くと、

「スゥ……、スゥ……」

と寝息をたてて眠っている梨璃が居た。

「ところで、鶴紗先生。あれから何時間経ったのか教えてください」

「正確には、12時間しか経っていない。心配しなくても、まだ()()は現れてないから、落ち着いて」

「そうですよね、ありがとうございます。でも、本当に今回のヒュージ化の原因はパラサイト型だけなのでしょうか?」

美夢は、鶴紗に問いかける。

「何故そう思ったのか、聞いてもいいか?」

「はい、私、浄化する時にヒュージ達のマギを見たんです。その時、ヒュージ達は何かから逃げてきたみたいに怯えていたんです……」

「なん、だと!?だとしたら、確実に()()はこっちに向かってきてることになる!すぐに避難命令を……」

「いえ、その必要はありません」

美夢は、鶴紗の言葉を遮った。

「ここで私がヤツを()()()()()()()()は、ここで確実に倒します」

美夢は起き上がり、梨璃を抱き締めた。

「もう二度と会えなくなるかもしれない、梨璃ちゃん、ずっとお姉ちゃんだったよ。これからも、みんなが困って、立ち止まってしまった時は、道標になってみんなを導いてね」

美夢は、梨璃から離れる。

そして、鶴紗の元にむかい鶴紗に抱き着く。

「鶴紗先生、私は貴女が居たから強くなれた。貴女がどこまでも強く気高く、そして慈愛に満ち溢れたリリィだったから、私は貴女と歩めて幸せでした。これからも、みんなの目標であってください」

「まだ教え足りないことばかりだ、ちゃんと、生きて帰ってこいよ、美夢」

鶴紗は、美夢の背中を思いきり叩く。

たった一発、でも、それはこの地に生きる全ての人の思いだった。

「……痛ッ!!」

「これで気合いも入っただろう、勝てよ美夢!」

「はいっ!もう何も、失いたくないですから!!」

美夢は、チャームセットを装備すると、すぐに出撃するのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

百由&ミリアム

「百由様、まだ終わらんのか?」

「ちょっと待ってね、もう少しだから!」

百由はとあるチャームの最終調整を行っていた。

「出来たわ!これで私達は帰れて、美夢ちゃんのサポートが出来るわ!」

「百由様、ちなみにその引き金は誰が引くんじゃ?」

「もちろん、グロっぴ決まってるでしょ!」

「やはり儂なのか……」

「あ、ちゃんとフェイズトランセンデンスも使うのよ!」

「まさか百由様……」

「もう一度次元に穴を開けて、私達は帰るのよ。本来居るべき次元に……」

「みんなに別れを告げなくて良いのか?」

「ん〜、鶴紗ちゃんと梨璃ちゃんには、挨拶だけしておくわ」

そう言うと、百由は台車にチャームを乗せる。

「でも、ノインのマギスフィアはそのまま狙った方向に飛んで行くから、ちゃんと美夢ちゃんが合わせやすいところに撃つのよ!」

「でも、そのあとの儂らどうなるんじゃ?」

「理論上は戻れるはずだけど、ミスして別の次元に飛んでしまったら、また帰る手段を考えるだけよ!」

百由は「エヘヘ」と笑った。

「仕方ないから、付き合ってやるのじゃ。儂らはシュッツエンゲルの契りを交わしておるしのぅ……」

「たまには素直じゃない、グロっぴも!」

「儂はまだ素直なほうじゃ!!」

2人は梨璃と鶴紗の居る場所へ向かうのであった。




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千の花と咲き誇る一輪の秋桜②

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「さてと、梨璃。そろそろ起きなよ?マギを使い過ぎたとは言え、現役ほど使ってないでしょ?」

鶴紗は梨璃を揺すり、起きるように促す。

「……んっ、あ、鶴紗ちゃん、おはよぅ〜」

「おはよう梨璃、そろそろ起きなよ。ところで、スカートの裏地が思い切り見えてるよ。こんなところ、あの人には見せられないね」

寝ぼけていた梨璃は、「はっ」となり一瞬でスカートを直した。

「鶴紗ちゃん、わ、わわっ、私のパンツ見た!?」

「うん、見えてたよ。可愛い薄ピンクのね……」

「そこは嘘でも見てないって言うところでしょ!」

梨璃は、頬を膨らまし怒り始めたが、とある事に気が付きすぐに鶴紗に確認した。

「鶴紗ちゃん!美夢ちゃんは何処に行ったの?」

少し低い声に鶴紗は、「ヒッ」となったが、

「アイツなら、自分の、自分が越えなければいけない相手との戦いへ向かったよ」

「……んで」

「?」

「なんで止めなかったの!!」

梨璃は鶴紗に掴みかかり、そう訴えた。

「どうして!どうして無茶で無理な戦いに向かわせたの!何で!何で何で何で何で!!!」

「梨璃、落ち着……」

「こんな状況で落ち着いてなんて居られないよ!私はもう、仲間を失いたくないし、失って欲しくもない!!」

「聞け、梨璃!」

鶴紗は梨璃を思いきり引っ叩いた。

「いいか!定盛にチャームを突き立てたのは、私でも梨璃でも無い、美夢だ!美夢はもう覚悟が決まってたんだ。百由様とミリアムが次元を越えて現れてから、アイツは、アイツは変わったんだ、いい方に……」

鶴紗は梨璃の肩に手を置き、項垂れた。

そして、梨璃はよく分からない状態になり、鶴紗を抱き締めた。

「鶴紗ちゃん、私達も行こうよ。美夢ちゃんは、一人じゃまだダメだよ……」

「いや、アイツはもう一人で大丈夫だけど、一人では戦えない。だから、()()()()()!」

そう言うと、美夢の工房に秋那、黒羽、緋色、燐華がチャームを装備して入ってきた。

「まあ、なんや!あの子ったら、面白そうな事を独り占めしようとして、ズルちゃうか!」

「緋色様、落ち着いてください。どうせこの後向かうのですから、落ち着いてください!」

といつもの調子のふたりと、

「美夢ちゃんは、私と2人で1人です!だから、必ず生きて帰ってきます!双葉先生、心配しないでください!!」

ドヤ顔で黒羽は、秋那を煽るように言う。

秋那は鼻で笑い飛ばしながら、煽りを受け流す。

「双葉先生、私は()()()()()です。()()()()、あの子は護らなくていけません、それが、シュッツエンゲルなのですから!」

秋那は、堂々と宣言した。

「みんな……」

「もう、美夢はひとりじゃないんだ。孤独で孤高を掲げていたアイツも、もうアイツの1部であり、仲間が美夢の支えになっている。もう、心配することは無いんだ……」

梨璃は涙を流しながら、口を出で覆う。

「誰かが困っている時に、支え合えるのが人だ。人は一人で生きては行けない。私達は支え合える関係でありたいんです。笑って、ふざけて、時々悲しい事があっても、誰かがその傷を埋め合って、喧嘩だってするだろうし、何かの拍子に傷付け傷つけられて、でもそれすらも歩み寄って……、そんな仲間であるのが、レギオンであり、私達リリィ同士の関係です!」

秋那は梨璃に手を伸ばす。

「今もひとりで戦う美夢を助ける為にも、私達を信じてくれますか?」

梨璃は秋那の手を取り、立ち上がる。

「貴女達が、みんなで帰ってくる事をここを守りながら、待ってます!」

目には涙を浮かべながら、梨璃は笑顔で答えた。

「それじゃあ……」

そう言うと、秋那は梨璃の手を離した。

「「「「行ってきます!!!!!!!!!」」」」

そして、4人は美夢を追って走り始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜何処かの戦場〜

 

カンッ!!

ヒュージとチャームのぶつかり合う。

「チッ、このままではここも突破されてしまう……」

「どうにかして、倒せないものなのか……」

1人のリリィが言った時、少しの風が吹いたような気がした。

そして、音もなく目の前のヒュージは真っ二つになっていた。

『急がなきゃ、早く、もっと速く!!』

美夢は走り続ける。

目の前にいる敵を薙ぎ払いがら進むため、誰も気が付かないのだろう。

「何だったんだ、今の?」

1人のリリィがそう呟いた。

「まるで、嵐の前の静けさって感じだな……」

その言葉がピッタリになる事象がこの後待ち受けていることを、誰も知らなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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咲き誇る花と希望の祈手

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〜何処かの山中

「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……、んっはぁっ、はぁ、はぁ……」

美夢は約100kmほど走って、とある木の下で休憩していた。

「だいぶ近付いて来ている気はする……、この辺もかなり負のマギに侵食されてる、早く解放してあげなくちゃ……」

美夢は立ち上がり、再び走り始めた。

 

 

〜何処かの戦場

「これは……」

戦場には、ヒュージが一体もおらず、リリィ達が各々の傷の手当をおこなっていた。

「ヒュージが真っ二つか……、こんな事出来るのは美夢くらいだろう……」

「やっぱり強いのは、正義だな!1度お手合わせ願いたい!」

「燐華、落ち着きなさい。貴女はすぐに熱くなるんだから!!」

「あたっ……」

緋色は、燐華の頭を叩いた。

「奇妙ですね、でも……」

「そうね、あの子にしてはおかしい点が多すぎる。マギがどんどん溢れて止まらない状態みたいね」

「マギの暴走か……」

「いえ、それは無いはずよ。あの子は、あの子のレアスキルは、そんな事しなくても……」

秋那は、気が付いた。

何故美夢が、マギを放出しながら走っているのかを。

「これは、道標でもあり、リリィ達を護るためのマギリフレクターになってるわ!!」

「何ですって!?」

黒羽はびっくりしすぎて、思わず叫んでいた。

「黒羽、1度深呼吸して。はい吸って〜、吸って〜、もっと吸って〜!!!」

「私を殺す気ですか!!」

黒羽は、秋那に対してツッコミを入れる。

しかし、これは何かを護るためにと言うよりも、なるべく被害が出ないように広げているように感じられる。

「とりあえず、マギが濃い方へ行きましょう。そこに美夢がいるはずでしょう……」

「そうですね、このままマギを放出していれば、必ず暴走してしまいますわ」

「現状で暴走すれば、確実に力尽きて殺られるわ」

「それじゃあ、私達も急ぎましょう!!」

そして4人は、美夢を追って走り始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜何処かの旧神社

「ここ、負のマギが満ちている……。でも、それ以上にアイツの気配が強く感じる」

美夢は右手にリボルバー、左手にナイフ、電脳(サイコキネシス)で残りのナイフを構え、戦闘態勢に入る。

『何だ、進化する事を恐れる愚かな生物が何故ここにいる』

美夢の脳内に直接問い掛けてくる、カタストローフェは、美夢の使えない電脳(テレパシー)を使用している。

「あなたは、一体何者なんですか?どうして、この世界を壊そうとしているんですか!」

美夢は、社だったらしい残骸に向かって叫んだ。

『そうだな、一言で表すと、この星の侵略者で、元々住んでいたお前達地球上の生物が、邪魔と言うだけの話だ』

社の下から現れたのは、かつての戦いで戦死したはずの双葉蒼伊だった。

「せ、先生……」

『おや、お前はコイツを知っているのか。この身体はとても良い。何よりも、マギをコレを介するだけで増幅させることが出来るからな!』

そう言うと、自身の身体からチャームらしき武器を生成した。

『さあ、始めましょうか。人類とヒュージの最終決戦を!!』

カタストローフェは、美夢目掛けて突進し、斬りかかった。

カーンッ!!!

美夢は、左手のナイフと電脳状態のナイフ数本で斬撃を受け止める。

その攻撃は重たく、かつての蒼伊を彷彿とさせる何かがあった。

「やはり、この力は人間とは思えませんね。舐めてはいませんでしたが、計算違いかもしれません」

『所詮は人間、脆いお前達がどう足掻こうと、我には勝つことが出来まい』

「それは、どうなんでしょうね!!」

その瞬間、カタストローフェの背後から数本のナイフが飛んできて、武器を握っている腕を引き裂き、カタストローフェの腕を切り落とした。

「武器は奪いました、いい加減本来の姿になったらどうなんですか?」

『ほお、我の腕を切り落とすか。中々やるみたいだな……、しかし、お前は何か勘違いしてはおらんか?我はヒュージ、そんな一撃で勝ったつもりか!!!!!!』

カタストローフェは、本来の姿に変化した。

「ギュイイイイイイイイイイイイイィィィィイ!!」

本来のヒュージの姿になったカタストローフェは、禍々しくも、何処か苦しんでいるようなオーラを放っている。

『腕など、すぐに回復させられる。お前では、我に勝つことなど、出来ん!!』

そう言うと切り落とされた腕を吸収し、切り落としたはずの腕は元に戻った。

「やはり、一筋縄では行けないわよね……」

美夢は、再度チャームを構える。

が、気が付いた時には既にカタストローフェの斧状の腕が寸前まで飛んで来ていた。

カンッ!!!!

美夢は構えていたチャームと、電脳(サイコキネシス)で浮かせていたチャームを使用して、攻撃の威力を殺したが、吹き飛ばされた。

「痛っ……、防いだと思ったけど、深くは無いけど切られたか……」

『おやおや、流石に人間というのは脆いなぁ、早く逃げなければ、死んで……、何!?』

()()()()()()()()()()() リジェネーター。私のマギが切れるまで、私の傷は治り続ける」

美夢は立ち上がり、軽くジャンプしステップを踏む。

「出し惜しみなんて、している暇なさそうだな……」

美夢は自身のマギを全身に巡らせる。

(全神経を研ぎ澄ませ、私に、みんなから引き継いだマギを、願いと祈りの力を貸して!!)

その瞬間、美夢の髪の色がマギの具現化により、蒼くなった。

「進化していない訳じゃない、進化の形がヒュージと違っただけだ!」

その瞬間、美夢は数千本のナイフを電脳(レプリカ)した。

そして、その千本を盾のように集約させ、一方向限定のマギリフレクターにした。

「私は、私の限界を超える度に強くなり進化し続ける!前に進む事をもうやめない、誰にも止めさせない!!」

美夢はナイフ型チャームのオリジナルを全て電脳(サイコキネシス)を使用して、変形させた。

「今まで、お前の通った後には涙と後悔だけが残っていた。そんな涙は、もう流させたりしない。私が全部跡形もなく吹き飛ばしてあげるか!」

ナイフのオリジナルは、6本でマギスフィアが通るサイズのゲートに変形した。

美夢は、リボルバーにズィーべンヴェルトの弾を装填した。

『させてたまるか!!』

カタストローフェは、蔦のような形状に腕を変形させ、美夢のリボルバーを握る腕に絡ませ、ナイフリングの無い頭上に向けるように縛り上げた。

「クソっ、これじゃ撃っても私に帰ってくるじゃない……」

『それは昔1度だけくらったことがあるが、実に危険だった。まさか身体の大半を吹き飛ばされるとは思ってもいなかったさ』

「なら尚更跡形もなく吹き飛ばして差し上げますので、この腕離してくださいよ」

『貴様は馬鹿か?跡形もなく吹き飛ぶ可能性を考慮した上で……』

カタストローフェは、更に蔦を伸ばし美夢の全身を縛る。

縛ったことにより、美夢の太腿に蔦が食い込む。

「苦しっ……」

『そうだな、このまま絞め殺してやろう。残念だが、貴様1人では私に勝つことなど……』

そう言おうとしたのと同時に、美夢はニヤリと笑った。

そして、頭上で5本で作ったナイフリングに向かってマギスフィアを撃ち込んだ。

まっすぐ上に打ち上げたと同時に、美夢を縛っていた蔦が切り落とされた。

「全く、本当にアンタはいつも心配ばっかりかけさせて……」

声の先には、黒羽が居た。

「いや、来てくれるって信じてたから背中を任せたんだよ」

「御都合主義者め!!まあ、私以外にも来てるのが、その証拠ね……」

その瞬間、カタストローフェの両サイドに強烈な斬撃が叩き込まれた。

「燐華、油断したらダメよ。コイツ、内側にあるパワーを一切使ってないどころか、まだ蓄積させてるわ!」

「緋色様、なら私が一気にぶった斬ります!!《円環の御手》!!!」

「仕方ない子ね、私も付き合うわ!《ゼノンパラドキサ》!!!」

2人は同時にレアスキルを使用し、カタストローフェにたたみかける。

「「はぁぁぁぁぁあ!!」」

2人の斬撃がカタストローフェに直撃する。

一瞬怯んだ隙に、

「美夢、貴女の思い受け取ったわ!この一撃に、私の想いも乗せるわ!!」

秋那は、美夢の打ち上げていたマギスフィアを受け取り、自身のチャームと一体化させていた。

「ここで決める!!!」

秋那は、怯んでいるカタストローフェに最後の一撃を叩き込んだ。

その瞬間、カタストローフェの金属音のような叫び声が周辺の木々と美夢達を吹き飛ばした。

『マダダ……、マダ、マダシヌワケニハイカナイ』

カタストローフェは、周囲に満ち溢れる負のマギを一気に吸収し、更に大きくなった。

「マズイわね、みんな、1度下がっ……」

「私が盾で受けるので、皆さん、私の後ろへ!!」

美夢は、電脳(レプリカ)を使用して、1万本のナイフ型チャームを生成した。

『ホロボス……、コノヨノスベテノモノヲ……』

カタストローフェの内側にあったマギと吸ったマギを圧縮し、一直線に放つ。

美夢は、生成したチャームを空中で円形に配置し、盾の形を成した状態の上から、マギリフレクターを重ねた。

「みんなの重いと願いが、私に力を与えてくれる。何が何でも、守りきってみせる!()()()()()()()()

マギリフレクターとレーザーが衝突し、レーザーがリフレクターを破る。

「美夢、貴女なら、いや、貴女だからきっと出来るわ!」

1枚目の盾が突破される。それと同時に燐華が声をかける。

「自分を信じてるのと同じくらい、仲間も信じて!」

2、3、4枚目が破られると、緋色は、もう一度気合いを入れ直すように言った。

「例え貴女が悪魔と呼ばれても、英雄と呼ばれても、私が、私達が傍で支えるわ!!」

5、6、7枚目の盾が破られ、もう無理だと思っていた美夢に、黒羽はそう声をかけた。

「だから、私達を、私達が信じている貴女を、貴女自信が信じなさい!」

8、9枚目が破られ、もう後がない状況になった時、秋那がそう言いながら、背中に手を当てる。

「私は、もう諦めたりしない。それでも、時には間違えたり、迷ったり、落ち込んだりするかもしれないけど、もう、逃げたりなんてしない!」

最後の1枚になって、美夢の髪の色が灰色から銀色に変わった。

「擬似レアスキル()()()()!!」

その瞬間、一時的に周囲の負のマギが浄化された。

「この攻撃、そっくりそのままお返しします!」

そう言うと、ナイフは反時計回りに回り始めて、カタストローフェにレーザーを反射した。

『ナ、ナンダト!?』

反射されたレーザーは、カタストローフェの身体に風穴を開けた。

「さあ、反撃の狼煙を上げろ」

美夢は、自身のリボルバーを空に向け、1発の弾丸を打ち上げた。

それは、白い狼煙であった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〉学園

 

「百由様、美夢のやつ狼煙を上げよったぞ!」

「それじゃ、帰る前にもうひと仕事やるわよ、グロっぴ!」

百由は、試作チャーム改良版にノインヴェルト弾を装填した。

「お2人も帰ってしまうのですね……」

梨璃は、後ろから声をかけた。

「仕方ないだろ、2人はほんらいこの世界に来ては行けないのだから」

鶴紗も、梨璃の隣に立っていた。

「2人とも危険だから、離れててね!!」

百由は、2人に後ろに下がるように言った。

「百由様の実験に失敗と爆発とヒュージ脱走は付き物だからな」

鶴紗は、嫌味ったらしく言った。

「じゃあ、向こうでも頑張れよ、ミリアム」

「ああ、じゃがお主はすぐ無理をするから、無理するんじゃないぞ!」

「わかってるって……」

「あと、鶴紗ちゃんが無理しそうになったら私が止めます」

梨璃が鶴紗に、抱きついた。

「まあ、お主らは大丈夫そうじゃな!」

「グロっぴ、そろそろよ!」

百由様に呼ばれ、ミリアムは、試作チャームの引き金に手をかける。

「じゃあ、撃ちなさい!」

「アイアイサー!()()()()()()()()()()()()!!」

ミリアムがレアスキルを使用し、マギを全てノインヴェルト弾に注ぎ込んで射出した。

'バリンっ!!'

射出されたマギスフィアが、次元に穴を空けた。

「じゃあ、あとは頼んだわよ!!」

「またこの感覚なのじゃぁぁぁぁあ!!!」

百由とミリアムは、そのまま次元の穴に吸い込まれ、そのまま次元の穴は閉じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

決戦の地

「ぎゃふぅ……」

美夢はマギが空になったのか、その場に倒れてしまった。

「美夢、あとはそこで私達の連携を見てなさい……」

秋那は、美夢を大木の傍まで運び、座らせた。

『お前ら如きに、我が倒されると思われているとは、舐められたものだ……。全員吹き飛ばしてやるわ!!』

そう言うと、周囲のマギが掻き乱され、リリィが取得可能なマギが消えた。

「これじゃあ、私達のチャームが起動しない……」

それぞれの使用していたチャームが停止し、ただの金属の塊となってしまった。

『やはり、その程度のヤツらだ!!自分達の愚かさをその身に刻みながら滅んでしまえ!!』

そう言うと、カタストローフェは自身の腕を振り、4人を吹き飛ばした。

「なんで、なんでこんな時にガス欠になってんだよ、私!動けよ!負のマギだろうと関係ないだろ!早くマギを回復させて戦えよ!!浄化出来ないとしても、早く!早く!動けよ!!」

美夢は動かない自分の身体を無理やりにでも動かそうとする。

〈どうして滅びを受け入れない〉

背中から声が聞こえる。

「抗うことが人間の本質なんだ。だから、私は私が最後まで私である為に抗い続ける!!」

〈例えそれが無駄な抵抗だとしてもか?〉

「この世界に無駄なことなんて無いと私は思ってるから、無駄になんてならない!」

〈やはり、私の所持者は皆何かのためではなく、自分自身の存在のために戦う戦士だな。よかろう、私の吸収しているマギを半分くれてやる。その代わり、絶対に()()を倒せ〉

白銀刀〈日導〉のマギが美夢の身体に流れ込む。

美夢の髪が、再度銀色に輝きはじめたが、それは先程までのラプラス使用時の色ではなく、白金に近い銀色。

「マギスフィアが、あと30秒後にアイツの頭上に飛んでくる。狙うなら、そのタイミングね」

秋那は、美夢の背中に手を当てる。

「貴女は私達にとっての最後の希望。だから、私の、私達生きとし生けるものの思いを貴女に託す。()()()()!!」

そう言うと、美夢の吸っていた負のマギが全て浄化された。

「あとは、頼んだ……、わよ……」

秋那はマギ切れで、その場に倒れ込んだ。

『はっ、ははっ、はははははははっ!!まだお前はそんな力を持っていたのか、まだまだ楽しむことが出来そうだ!!』

「ここで貴方には死んでもらいます。私は皆の願いを、思いを受けながら、自分の存在の為に戦う戦士だ。この悲しみを、負の連鎖をここでぶった斬ってやる!!」

美夢は日導を鞘から抜き、進み始める。

自分の今までの思い出が、走馬灯のように流れる。

1歩ずつ確実な足取りで前に進む。

そして、加速する。

加速しだした瞬間から、カタストローフェの腕が飛んできたが、それも全て切りながら溶かしていく。

「このチャームは、他と違うのは一点だけ。切った部分が特殊な力で焼かれると言うところよ!」

溢れ出すマギは圧縮された斬撃としてカタストローフェにぶつかる。

「そろそろ、来る!!」

『小賢しい!!』

カタストローフェは、美夢に斧状の腕を4本叩きつけるが、美夢はその場で回避した。

そして、空中に飛び上がる美夢。

その背中にはマギが翼のようになっていた。

そして、日導を上に向けると丁度先端にマギスフィアが飛んできた。

「この一撃に全てを賭ける、少し痛いかもだけど我慢してね日導!!」

更に飛翔する美夢。

それは、夕暮れに浮かぶ一等星のように煌びやかに輝いていた。

「とても、綺麗だ……」

緋色は、一言零した。

そして、美夢は靴底に設計されている窪みに日導の持ち手の端を空中で足に付ける。

「これが、私のレアスキル。希望の祈手(きぼうのいのりて)!!」

美夢の背中のマギは、更に輝きを放った。

『そんな見せかけの姿で、我を倒せると思うなよ!!!!!!』

カタストローフェは、美夢に向かって腕を伸ばす。

「もう誰も、失いたくないす!!喰らえ、リリィ・キック!!!!!!!」

カタストローフェの腕を貫通して更に加速して脳天付近まで来た。

「今まで辛かったよね。もう、楽になっていいんだよ」

そして、カタストローフェにマギスフィアが直撃した。

〈やっぱり、私たちを使う人達はチャームの扱いが雑だね。でも、君のおかげで更に良い最後を迎えることが出来たよ。黒刀のことは、心配しなくても大丈夫だよ!アレは、扱いが可能な子を別の世界に見つけたから、その子に託した。それじゃあ、いつかまた転生した時に会おう我がマスター、川添美夢〉

カタストローフェを貫き終わる時、そう言い残し、白銀刀〈日導〉は跡形すら残らず消えた。

『アリガ……トウ……』

そう言うとカタストローフェは、爆散して消滅した。

「ありがとう、先生。先生のおかげで、勝てたよ」

カタストローフェを貫く時、身体の中心部で見つけたものを無意識に掴んでいた。

握りしめた拳の中から、1つの指輪が出てきた。

指輪には『RIRI&AOI』と刻印されており、2人の結婚した日が刻まれていた。

指輪をポケットにしまい、仲間の元へ駆け寄る美夢。

「あ、あれ?」

その瞬間、足元はおぼつかず、そして、視界が揺れるように地面が近付く。

美夢は、そのまま倒れてしまった。

「美夢っ!!」

途切れゆく意識の中で誰かが叫んでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おや、君とここで話すのは初めてだね」

何も無い、でも、そこはかつての学校の廃墟で、机や椅子がそのままにされている。

外は真っ暗だけど、月と星が輝いていた。

「貴女は?」

美夢は、目の前にいる1人の美少女に問いかける。

「僕かい?僕はかつて川添美鈴と呼ばれていたもの、まあ、君の母親とでも言うのが正確なのかもしれないね……」

美鈴がそう言った瞬間、美夢は美鈴に抱き着いた。

「おやおや、僕としては自分の娘から熱烈な愛情を受けるのは大歓迎だけど、こういうのは、慣れてなくて困る……」

「ずっと会いたかった……」

「そうか、僕も会いたかったよ」

「私、頑張ったよ」

「そうだね、見てたから知ってる」

「でも、それ以上にここまでだってのが、心残り……」

「美夢、君の今いるここは、決して死んだあとの世界では無い。言うなれば、ここは君の夢の世界なんだ」

「え?」

「だから、ここは、君の世界であり、君はまだ生きてる」

「そう……、なんだ……」

「君は限界を超えたことくらいで人が死ぬとでも思ってるのかい?」

「まだ、生きていたいって、この呼吸が完全に止まるまでは、私はリリィだって、そう信じています」

「なら、そろそろ目を覚ます時間だよ」

「うん、ありがとうお母さん」

「また、夢で会えることがあったら、また甘えてくれ」

「うん、じゃあまたね」

美夢が、美鈴の胸から離れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目が覚めると、美夢は学園内にある病室のベッドの上に寝かされていた。

「ここは……、秋那様、おはようございます」

「美夢、目を……覚ましたのね!!」

秋那は、急いで病室から出て、医師を呼びに行った。

「ここは、第2保健室なのかな?」

「そうだね、ここは第2保健室……、と言うよりは緊急時用の学園内の病院ね」

そう言うと、梨璃が部屋に入ってきた。

「ちゃんと帰って来てくれたね、美夢ちゃん」

「約束しただろ、ちゃんと生きて帰って来るって!ところで、()()受け取ってくれたか?」

「うん、あの人の形見だもん。もう手放したりしない」

「あっ……、形見で思い出したんだけど、日導、壊しちゃった……」

「ううん、いいんだよ。元々、あのチャームは最強の一撃を繰り出す代わりに、自身とチャームの限界を超えるから、耐えきれなければ自身の身を滅ぼすことになっていたはずなのに……、私は美夢ちゃんが生きて戻ってきてくれたことに、感謝しないと……」

梨璃は、無理やりだろうが、笑顔を作って見せた。

「とりあえず、カタストローフェは打ち倒したから、一時はアルトラ級も動きは無いと思う。でも、美夢ちゃんの能力の1つがゼロに戻っちゃったんだよね?」

「あぁ、別に祈手のスキル自体は、みんなのマギを保管する能力じゃないし、ある程度食べて寝て、適度に訓練すれば、またマギも戻って、1人でまた6人分の仕事が出来るようになるよ」

「そうだね、じゃあ、私は行くね?」

「はい、また授業してくださいね!」

会話が終わると梨璃は病室を出て、自身も現場を見る為に戦闘の行われた場所へ向かった。

その後医師が入って来て、美夢を軽く診察した。

「そう言えば、お腹が空きました。ご飯が食べたいです」

「そうですか、でも、時間が時間ですし……」

時刻は23:30を示しており、病室に沈黙が訪れた。

「そんな事もあると思って、ちゃんと作ってきたわよ」

緋色は、そう言いながら部屋に入ってきた。

「流石緋色様!そこにいる私のお姉様気取りの先輩とは違いますね!!」

「まあ、秋那は料理出来ないし、仕方ないね。」

「悪かったわね、不器用で……」

緋色は持参した3つのタッパーを美夢の前に出す。

「す、すごい量ですね……」

医師は思わず呟いた。

「でも、こんなの明日の朝までの繋ですよ、ほら、見ててくださいね、美夢食べていいよ」

「いただきますっ!!!!」

そう言うと美夢は、野球部男子が昼ご飯で食べてそうなサイズのタッパーを1つ、また1つ、そして、最後のひとつをあっさりと食べきった。

「はふぅ〜、ご馳走様でした!!緋色様、とても美味しかったです」

3分ってところね……、どうだった、今日のは自信作なのよ!」

「そうですね、ハンバーグは言わずもがな最高の出来で、焼き鮭は皮までパリッとしてましたし、唐揚げも私好みの竜田揚げ風でしたし、ご飯も絶妙なバランスの炊き方で固すぎず柔らかすぎず、でも、決定打は、やはりトンカツとチキンカツですね、流石と言わざるおえない最高の味でした」

「あの速度で食べて、何を食べたかまで理解してるのは……、最早凄いですね……」

「美夢はいつも美味しそうに食べてくれるから、作りがいがあるのよ。燐華もそのくらい食べてくれたら……」

「燐華は3杯しかご飯食べませんもんね……」

「「お前らの感覚はどうなってんだよ!!」」

思わず医師と秋那はツッコミを入れた。

それもそうだ、彼女達は今おかしい量の飯を食っているのに、全く太らないのである。

「そのうち病気になりそうだわ、美夢は……」

「私は死ぬまでリリィなので、例え80になってもこの量をペロリと完食します」

「何もカッコイイこと言ってないんだから、誇らしくドヤ顔するな!!」

かくして、美夢は目を覚まし、この世界は再生へと向かうのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日

日が昇ると同時に、美夢は病院を抜け出しとある場所へ向かった。

昨日、カタストローフェと戦った廃神社。

石段を上がっていくと、先客がいた。

「梨璃ちゃん、こんなところで何してるの?」

「あ、美夢。もう起き上がって大丈夫なの?」

「見ての通りバッチリよ!!」

美夢は、その場でマッスルポーズをとる。

「そう、良かったね……」

「梨璃ちゃん、マギが乱れてるよ」

「やっぱり、バレちゃうよね。あの人にもう一度会えないかなって思って、この場所に来たけど、もういないみたいね……」

「やっぱり……、来て正解だった」

「どうして?」

「今回の1件、仕組んだのは貴女ですよね、一柳梨璃」

「どうしてわかったの?」

「百由様とミリアムさんを見た時に見えた戸惑いと動揺、あとは、マギの濁りです」

「やっぱり、始めから見破られていたんだね……」

「でも、一つだけ分かりません。どうして報われている貴女がこんな事をやってくれたの……」

「強いて言うなら、愛した人に会うためかな?」

「そんなものですよね、動悸なんて……」

「我儘だったことくらい理解してる。でも、人類滅亡よりも、私はあの人に会いたかった……」

梨璃は俯いたまま言った。

「まあ、人間ですから、そんなの当たり前ですよ」

美夢は、昨日回収出来ていなかった7本目のナイフ型チャームを神社の片隅で見つけた。

くしくもその場所は、昨日美夢が、日導を砕き、着地した地点であった。

「梨璃、貴女の罪を私が背負います。その罰も私が受けます。だから、このことは2人だけのナイショの話にしてしまいます。誓いはここに、ズィーベンナイフ [日導]をたてます」

その時、梨璃の中にあったラプラスの覚醒を日導に封印した。

「ラプラスを封印しました。だから、貴女はもう何も出来ない。そして、私は擬似的にもラプラスを使用出来る。だから、今回は私の力の覚醒によるヒュージの襲来として片付けられるでしょう……」

美夢は、日導にマギを通し、電脳(サイコキネシス)で宙に浮かして、コントロールした。

「だから、もう二度と悪さしたらダメですよ!」

そう言うと、美夢は神社を後にした。

「全く、誰かさんと同じでとても優しくて、でも、強くてカッコよくて、誰よりも美しい……」

梨璃は、神社の鳥居の下に行く。

「あの子なら、きっとこの世界を守ってくれるでしょう、次会えるのは、いつになるかは分からないけど、また、会いに来るね!」

そう言うと、梨璃も鳥居をくぐり、神社を後にしたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こうして、天災級のヒュージを迎え撃ち、一時的な平和を手にした美夢達。

だが、これからも彼女達の戦いは続くのだが、それはまた、別のお話だ。

 

 

 

________________【続】




ご拝読ありがとうございました。
もしよろしければ、ブックマーク、作品の感想、小説の評価をよろしくお願いします。
また、今後も本作品をよろしくお願いします。
また、アンケートの方も投票していただけますと、今後の励みになりますので、よろしくお願いします。


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エピローグ

こちら、今作品のエピローグとなります。
約1年間の企画でしたが、とても個人的にも満足のいく作品になりました、ありがとうございました。
それでは、本編どうぞ!


「え〜、今回は、早朝からノインヴェルト弾を使用し、工房の壁に穴、それもかなりの大穴を空けてしまったことを反省します……」

百由とミリアムは、こちらの世界に戻ってきてから、工房での1件での反省文を書かされていた。

「なんだね、それとも寮で強制謹慎の方が良かったかのう?」

理事長代行にそう言われ、渋々今回の反省文となったのである。

「でもまさか、私達は寝不足でノインヴェルト弾を暴発させて、その場に倒れていただけになっているのね……」

「身体ごとは移動してはおらんかったららしいの……」

2人は、百由の研究室で倒れていたのを発見され、直ちに検査が行われたが、ただの睡眠不足とマギ切れによる一時的な気絶という診断が出て、つい先程目が覚め、ようやく反省文に取り掛かっていたのだ。

「まさか、未来の技術をこの目で拝めるとは、思わぬ収穫だったんじゃなかろうか、百由様は」

「いいえ、アレについての論文は、多分出してると思うわ。だけど、私の中の結論では実現不可能って言うのが結論だったはず……」

百由は反省文を書きながら、ミリアムの質問に答える。

「そうなんじゃな……、でも、ここってほぼ監禁部屋じゃな……」

「仕方ないでしょ、工房に私達を返したら、作業して反省文なんて二の次にしちゃうって思われてるんだから」

「主に百由様が原因じゃと思うのじゃがな……」

「グロっぴ、何か言ったかしら?早く書き終えて研究に戻らないといけないんだから、口を動かす前にまず手を動かしなさい」

「うぐっ……、わかっておるのじゃ」

ミリアムも反省文を書く手を走らせる。

 

 

数十分後

'プシューっ!!'

と言う部屋の自動ドアの開く音がした。

「百由様、ミーさん。お2人とも元気そうでなによりですね!」

「あら神琳さん、珍しいわねお1人なんて……」

「雨嘉は、どうしたのじゃ?」

ドアから入ってきたのは、神琳だったのだ。

「雨嘉さんは、今日は体調が悪いようでしたので、お部屋で休んでもらってます。梨璃さんや夢結様は、梅様・鶴紗と一緒に訓練しているみたいです。楓さんは、二水さんと一緒に買い物に行ってるみたいですね」

「なんか、今日は珍しく皆居ないんじゃな……」

「まあいいじゃないの、そっちの方が集中して反省文を書けて!」

「百由様、勘弁して欲しいのじゃ!そろそろ甘いものを……」

「そう言うと思って、持って来ましたよ。今日はカヌレですが……」

神琳はミリアムの横で、手に持っていた箱を開けて見せた。

「神琳、お主は儂の救世主なのじゃ……」

「それはなんでも大袈裟すぎるでしょ」

百由はミリアムのカヌレに目が行く様子を見て、嘲笑を浮かべながら言った。

「でも、このままタダで与えるのも面白くないので、そうですね、反省文はあと数枚ですか……、それが終わったら控え室でお茶まで出しますわ!」

「なんだか、やる気が湧いてきたのじゃ!!」

ミリアムは、反省文を書く速度を更に上がって、どんどん書き進めるが、百由は、現在最後の1枚を書いているようだった。

 

 

更に数分後

「おわったのじゃぁぁ!」

「お疲れ様です、ミーさん」

「あら、もう終わったの?思ってたよりも早く終わったのね、グロっぴ」

百由は、制服に着替えている途中だった。

「グロっぴも早く着替えなさい、ここを出る前に提出してしまうわよ!」

「わかったのじゃ〜!」

そう言うと、ミリアムも制服に着替えて、反省文をまとめた。

「さてと、じゃあ出るわよ」

「忘れ物はないかのう?」

「そうですね、まあ最悪忘れても、お2人は次回来た時に回収したらいいですもんね?」

「「もう反省文は勘弁して欲しいわ(のじゃ)!!」」

2人は、心からの嘆いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

平行世界

「美夢、ついにやったわね!」

「そうですね、ようやく、私たちの第一歩が届きましたね……」

美夢達のレギオンは、ついに日本を完全にヒュージから奪い返していた。

「ここが、かつての東京……」

東京は既に殆どの建物がボロボロで、何もかもが荒廃してしまった後だったが、

「地下施設と通信と電気は生きているみたいです」

燐華が、一通り調べ終えたのか、戻ってきた。

「じゃあ、ここから世界に声を……」

「そうね、さあ、始めましょう!」

秋那は、リュックサックを開き、アンテナらしき物を地面に突き刺し、電源に接続させ、機材類を配置し、美夢にマイクを渡した。

「準備完了、何時でも行けるわ!」

「ありがとうございます!」

美夢は、マイクを受け取る。

「じゃあ、今から周波数を利用して、全世界に言葉を届けます」

美夢は、秋那と燐華に伝えた。

秋那は頷き、機材類の電源を入れ、送り出す周波数を設定した。

 

『この世界で生きている皆さん、この声が届いたのなら少しだけ耳を傾けてください。私は、川添美夢と言います。日本のリリィであり、アーセナルです。今回、私達はカタストローフェに加え、日本国領土内のヒュージを一体残らず倒しました。これから、装備を整えたり、環境を整えたら、皆さんの助けになれるよう、世界中にそれぞれ分かれて戦うつもりです。でも、私達だけじゃ、全てを倒すことは不可能です。今戦ってる皆様に、私達〈リヒト〉は全身全霊を尽くして支えます。この声が聞こえる全ての人に希望の光がありますように……、その祈りを込めて、私の力で皆さんを照らします。〈希望の祈手〉!!!!!』

 

マギの乗った電波は世界に広がりをみせ、少しずつだが、人々を照らす光となるだろう。

きっと、この戦いもいつか終わり、再び世界は平和に辿り着くだろう。

だがそれは、また別の物語だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アサルトリリィThousandFlower [完]




皆様、こんにちはこんばんは、初めまして!
汐風波沙です。
この度は、アサルトリリィThousandFlowerを御拝読頂きまして、本当にありがとうございました。
一時ですが、更新出来ない月や、僕自身が小説を書けなくなっていた時期がありましたが、何とか完走することが出来ました。
本当にありがとうございました!!
また、再びアサルトリリィの二次創作作品を書く機会が出来ましたら、再び皆様に読んでいただけるよう頑張っていきたいと思います!
最後になりましたが、今後ともこの作品、そして、汐風が執筆している作品をよろしくお願いします!!
以上、汐風波沙でした!


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