86−エイティシックス 戦争が生んだものとは (梅輪メンコ)
しおりを挟む

人物紹介

人物と作品に出てくるものの紹介です。一部ネタバレを含みます。嫌な方はブライウザバックを


リチャード・スミス

年齢:20

出身:アルガニア連邦

人種:翠緑種

性格:しっかり者で温厚。優しい性格

 

第235特務部隊の隊長をしており、人を纏めることが得意。作戦能力も高く部隊のメンバーから慕われている。

 

搭乗機:46式超重量級 『ビートル』

 

 

 

ジル・スミス

年齢:19

出身:アルガニア連邦

人種:翠緑種

性格:明るく時に暴走してしまう性格

 

第235部隊の副隊長をしており、リチャードとは兄妹の関係。操縦スキルは部隊内一の能力を持っている。しかし、機体に搭乗すると戦闘の興奮の余り敵陣に突入をしてしまうこともある。過去にあった事故で5歳までの記憶を失っている

 

搭乗機:47式軽量級 『コルーチク』

 

 

 

ジョージ・アンダーソン

年齢:22

出身:サンマグノリア共和国

人種:青玉種

性格:部隊の中で一番の年長者で珍しい国外出身者。敵の分析が得意

 

部隊の中でも珍しい国外出身者。生まれて間もない頃に両親がアルガニア連邦に移住をし、アルガニア連邦で過ごしていたがレギオンの侵攻で軍に入る事を志願。部隊内で一番料理が上手である。戦場ではレギオンの動きを見て二手三手先の事を読める

 

搭乗機:45式中量級 『コブラ』

 

 

 

セシル・シルバー

年齢:18

出身:アルガニア連邦

人種:黒珀種

性格:アグレッシブな性格

 

部隊では屈指のスナイパーとして有名。過去に配属された部隊で20km離れた場所からディノザウリアを撃破した記録が残っている

 

搭乗機:45式中量級長距離狙撃特化型 『コブラ改参型』

 

 

 

ルミエル・チェレンコフ

年齢:15

出身:アルガニア連邦

人種:月白種

性格:おっとりとしているが戦闘となると真面目な性格に変わる

 

部隊では一番のメカオタクそして最年少。彼女の作った謹製のレーダーは『アインタークスフリーゲ』の影響を受けずにレギオンの居場所と種類を判別できる。そして彼女の考案した兵器の殆どはアルガニア連邦防衛に使われている。本来なら本国研究所にいるはずの優秀な人物だが、本人の強い希望で第235特務部隊に配属された。なお、戦闘時以外はやる気のない表情をしており、二重人格なのではと思うほど戦闘時と通常時の性格が変わる

 

搭乗機:45式中量級探知特化型 『コブラ改特型』

 

 

 

ジャスミン・レイ

年齢:20

出身:サンマグノリア共和国

人種:白銀種

性格:大人しく。礼儀正しい性格で常に落ち着いている

 

両親の影響でアルガニア連邦に移住してきて。後に両親がサンマグノリア共和国から亡命した事を聞かされ、アルガニア連邦で暮らしている。作法に厳しく、メンバーからは『お袋』と呼ばれている。メンバー1面倒見のいい人

 

搭乗機:45式中量級 『コブラ改弐型』

 

トーマス・スミス

年齢:43

出身:ギアーデ帝国

人種:翠緑種

性格:常に自分の信念を貫く性格

 

幼い頃に帝国から迫害され一家全員で連邦に亡命し、アルガニア連邦軍司令部で中将をしている。接しやすい性格で司令部内でも好意的に見られている。幼い頃に両親を亡くなったリチャード達の親代わりで育ててきた。リチャードとジルの叔父にあたる

 

 

 

 

 

46式超重力級 『ビートル』

 

武装

45口径183mm砲 一門

25口径88mm砲 二門

12.7mm重機関銃 四門

ウインチランチャー 三門

 

大きさ

全長33.8m

横幅11.7m

高さ8.4m

 

セシルが仕留め、連邦が鹵獲したディノザウリアを元に設計した戦闘機械。五対十本の脚で今まで使われた重量級と違い、巨体となった機体を使って作戦指揮車と『コルーチク』の中継基地として機能している。なお機体下部に47式軽量級を一機格納出来るスペースがある。そして、怪我やコルーチクを撃破された際に人員を回収して治療するスペースもある。装甲は電磁装甲に平均180mm最大300mmの装甲圧を持っており、これのせいで動きと加速力が鈍い

 

 

 

47式軽量級 『コルーチク』

 

武装

75口径75mm滑空砲 一門

7.7mm重機関銃 二門

ウインチランチャー 一門

 

大きさ

全長5.8m

横幅1.2m

高さ2.5m

 

三対六本の脚を持ち、偵察と運動性を重視した機体。機体が小さい為ビートルにある格納庫に収まるように設計されている。なお機体を軽くした影響でバッテリー容量が少ないためビートルの格納庫で普段は充電されている。二重核に覆われており、撃破されても搭乗者には負担がないよう防護されている

 

 

 

45式中量級 『コブラ』

武装

15口径120mm砲 一門

9口径75mm砲 一門

12.7mm重機関銃 二門

ウインチランチャー 二門

 

四対八本の脚を持ち、バランスの取れた機体。バランスが取れている為様々な改造型がある

 

改壱型 装甲特化型

改弐型 ロケットランチャー搭載型

改参型 狙撃特化型

改特型 探知特化型

 

壱型は走行を強化し、白兵戦に特化型に特化した機体。弐型は砲塔をロケットランチャーに変え、遠くからの広範囲攻撃に特化した機体。参型は狙撃特化型の為、砲身部分が長く柔軟性を補うために通常よりも走行が薄くなっている機体。特型はルミが開発した謹製レーダーを搭載した機体。アルガニア連邦では数少ない機体でレギオンの影響を受けずに敵の居場所や種類を判別可能。コブラ波形の中では一番高価な機体

 

 

 

 

第235特務部隊

リチャードを筆頭に結成されたアルガニア連邦の特務部隊。普段は国境沿いの警備を行なっているが、特別な任務などを行う時に司令部から命令を受諾するレギオン撃破率の高いプロ集団の事

 

 

 

アルガニア連邦

「我ら世界を導く先導者たらんとす」という国是を掲げる五つの州と一つの特別州で構成された民主主義国家。過去からここは交通の要所であった為様々な人種が暮らしている。しかし星暦2130年、突如国家間高速鉄道を閉鎖。同時に諸外国との国交と断絶。諸外国からは『閉ざされた国』と言われ内情が一切わからない国となっている。国民は特に不自由なく暮らしている為アルガニア連邦からの亡命者は今まで一人としていないが、諸外国はこれは亡命しようとする人物を抹殺しているものだと思っている。サンマグノリア共和国方面の北部戦線とギアーデ帝国方面の北西戦線とヴァルト盟約同盟方面の東部戦線に分かれている。それぞれに二個方面軍を配置し、後方要員でそれぞれ一個方面軍を配置。北部、北西部戦線は山脈に囲まれており、レギオンはなかなか突破できないでいて、もう時期掃討が終わる。東部戦線は大河の為なかなか掃討に手こずっている状態

 

 

 

国土はおよそロシア連邦ほど。国民の数は大体30億人の為、人員に困ることは無く資源も豊富な為いつでも侵攻に備えられる体制が整っている

 

海軍

第一から第十まで存在しているが全て空中艦隊となっている。今後新たに五個艦隊が新設予定。水上艦艇は旧式艦として他国に格安で売られている

 

空中艦隊

アルガニア連邦が国境封鎖を行った主な理由。このことが諸外国に漏れれば大戦となってしまうと感じた時のアルガニア連邦政府は情報統制を行うために国境封鎖を行った。国境封鎖の後、空中艦隊は国の象徴となり、国家の安全を守るために東部戦線に導入されたが、あまりにも強力な武装に一時解体を進言されたくらい強力なものであった



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

人物紹介2

今回は旅団メンバーの紹介です。それと兵器紹介があります(旅団メンバーは師団になると旧235部隊メンバーは部隊長になっています)
最後の方はガッツリネタバレ。見たくない人は途中でブラウザバックを。)


ビートル砲撃隊

リチャード・スミス大佐

搭乗機:ビートル改弍型

 

ジーク・ドリトン大尉

搭乗機:ビートル改壱型

 

トミー・クラシコ中尉

搭乗機:ビートル改壱型

 

 

偵察部隊

ジル・スミス中佐

搭乗機:コルーチク改壱型

 

カークス・クドウ大尉

搭乗機:コルーチク改弍型

 

クルシュ・エミリー少尉

搭乗機コルーチク改壱型

 

 

近接戦闘部隊

ジョージ・アンダーソン少佐

搭乗機:コブラ改壱型

 

カミーユ・ルシア大尉

搭乗機:コブラ改壱型

 

レオン・フォン・ブリッツァ中尉

搭乗機:コブラ改壱型

 

エミリア・ファルナー中尉

搭乗機:コブラ改壱型

 

 

遠距離砲撃部隊

セシル・シルバー少佐

搭乗機:コブラ改弍型

 

ベン・ロバート大尉

搭乗機:コブラ改弍型

 

ピーター・フォード中尉

搭乗機:コブラ改弍型

 

 

情報収集部隊

ルミエル・チェレンコフ中佐

搭乗機:コブラ改特型

 

ルルーシュ・バルト中尉

搭乗機:コブラ改特型

 

 

ミサイル攻撃部隊

ジャスミン・レイ少佐

搭乗機:コブラ改参型

 

エリザベート・クルシュ大尉

搭乗機:コブラ改参型

 

ヴェルナー・アルフォート大尉

搭乗機:コブラ改参型

 

 

 

 

 

兵器紹介

コルーチク改弍型

武装

20mm機関砲 二門

12.7mm機関銃 二門

電磁ブレード 二個

 

コルーチクの近接特化型。口径を小さくした砲を二つ乗せ、速射性を高めたもの。これは壱型同様バッテリー容量増加に加え回生ブレーキが追加されている

 

ビートル改壱型

武装

45口径203mm砲 一門

25口径88mm砲 一門

30mmバルカン砲 二門

ウインチランチャー 二門

 

ビートルの主砲換装タイプ。見た目の変化はほぼ無い

 

 

 

こっからネタバレ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

波動エンジン実験艦『ギンガ』

 

武装

45口径48cm三連装砲陽電子砲 四基

55口径20.3cm三連装陽電子砲 二基

30mmパルスレーザー連装砲 三十基

25口径15.5cm単装砲 十基

48式爆雷投射機 二基

ミサイル発射機 三十基(艦首六門、艦尾六門、左舷九門、右舷九門)

試製波動エンジン直結型圧縮エネルギー砲 一基

 

主機

49式波動エンジン

 

大きさ

全長:400m

全幅:39m

全高:42m

 

艦載機

VB=97『アリゲーター』

 

 

ジルが艦長となり乗艦する実験艦。ブルーベルの特性を最大限に活かし動かしている艦艇、そのため砲術などの戦術要員をほとんど必要とせず。実際、常に艦に乗っている人員は機関科とジルのみ。なお、この艦はリチャードが指揮をとる第1遠征師団の移動基地も兼ねている。元々が建造予定であったヤマト型超弩級戦闘艦四番艦『キイ』であるため。非常に戦闘能力は高い。試製波動エンジン直結型圧縮エネルギー砲はいわゆる『波動砲』です。名前は東方諸国の星の言い方から来ている。ちなみに見た目は言わずと知れた『宇宙戦艦ヤ○ト2202』の波動実験艦『銀河』です

 

 

 

 

 

VB=97『アリゲーター』

 

武装

12.7mm機銃 四丁

30mm機関砲 一門

 

主翼下に対地、対空、対艦ミサイルの付け替えが可能。エンジンの吸気口を必要としないためアインタークスフリーゲの影響下でも空中戦闘が可能。見た目は『宇宙戦艦ヤ○ト2199』に出てくるコスモゼロ

 

 

 

第一遠征師団

リチャードが率いる戦車師団。実験艦『ギンガ』を中心に活動するアルガニア連邦軍初の遠征師団。他国からの要請で出動し、援護や救援を行う



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

登場兵器

今回はこの作品出ててくる兵器全般を書いていきます。かなり被るところばかりなので飛ばしてもらっても構いません
(作者の趣味全開な話です)


アルガニア連邦兵器一覧

 

アルガニア連邦陸軍

戦闘機械(フェルドレス)

 

38式軽量級『パミス』

 

武装

75口径75mm滑空砲

7.7mm機銃

ウインチランチャー二門

 

大きさ

全長8.9m

全幅1.8m

全高2.5m

 

アルガニア連邦軍の第二世代軽量級フェルドレス。今では旧式だが、レギオン戦争開戦時初期に活躍を見せたフェルドレスである。このパミスの実戦のよる弱点をもとにコルーチクが設計された。なお、今は州都警備隊などが使っている場合が多い。軽量級の割には電磁装甲などの新技術を取り入れていた為、大型になってしまった。そのため一部メディアはこれを中量級と表す場合がある

 

 

 

 

 

47式軽量級 『コルーチク』

 

武装

75口径75mm滑空砲 一門 改型からは75口径88mmライフル砲

7.7mm重機関銃 二門

ウインチランチャー 一門

 

大きさ

全長5.8m

横幅1.2m

高さ2.5m

 

アルガニア連邦軍第三世代フェルドレス。三対六本の脚を持ち、パミスの欠点を改良しながら偵察と運動性を重視した機体。機体が小さい為ビートルにある格納庫に収まるように設計されている。なお機体を軽くした影響でバッテリー容量が少ないためビートルの格納庫で普段は充電されている。二重核に覆われており、撃破されても搭乗者には負担がないよう防護されている。なお、コルーチクの欠点を元に幾つかの派生系がある

 

改壱型 バッテリー容量強化型

改弍型 エネルギーパック型

改参型 ステルス型

 

壱型はバッテリーを大型のものに交換した機体。弍型はエネルギーパック方式にエンジンを変更し、長期的に動けるようにした物。参型は不足を最低限にし、極限までレーダーに映らないようにした機体。派生系の中で一番高価な機体だが一番需要のない機体である(そもそもこの機体自体研究者達の暴走で完成した代物)

 

 

 

 

 

45式中量級 『コブラ』

武装

15口径120mm砲 一門

9口径75mm砲 一門

12.7mm重機関銃 二門

ウインチランチャー 二門

 

四対八本の脚を持ち、バランスの取れた機体。バランスが取れている為様々な改造型がある

 

改壱型 装甲特化型

改弐型 ロケットランチャー搭載型

改参型 狙撃特化型

改特型 探知特化型

 

壱型は走行を強化し、白兵戦に特化型に特化した機体。弐型は砲塔をロケットランチャーに変え、遠くからの広範囲攻撃に特化した機体。参型は狙撃特化型の為、砲身部分が長く柔軟性を補うために通常よりも走行が薄くなっている機体。特型はルミが開発した謹製レーダーを搭載した機体。アルガニア連邦では数少ない機体でレギオンの影響を受けずに敵の居場所や種類を判別可能。コブラ波形の中では一番高価な機体

 

 

 

 

 

46式超重力級 『ビートル』

 

武装

45口径183mm砲 一門

25口径88mm砲 二門

12.7mm重機関銃 四門

ウインチランチャー 三門

 

大きさ

全長33.8m

横幅11.7m

高さ8.4m

 

連邦が鹵獲したディノザウリアを元に設計した戦闘機械。五対十本の脚で今まで使われた重量級と違い、巨体となった機体を使って作戦指揮車と『コルーチク』の中継基地として機能している。なお機体下部に47式軽量級を一機格納出来るスペースがある。そして、怪我やコルーチクを撃破された際に人員を回収して治療するスペースもある。装甲は電磁装甲に平均180mm最大300mmの装甲圧を持っており、これのせいで動きと加速力が鈍い(しかしT95駆逐戦車(鈍足カチカチ重戦車)が時速100kmほどで動いているようなもの)波形系は少ない

 

改壱型 183mm連装砲型

改弍型 203mm連装砲型

改参型 203mm砲型

 

壱型と弍型はそれぞれ空中艦の主砲を乗っけるだけだったため、単装砲よりも早く派生系が生まれた

 

 

 

 

試製50式重量級艦上戦闘機械

 

武装

試製88mm陽電子ビーム砲 一門

30mmバルカン砲 四門

 

陽電子ビーム砲を試験的に乗せたビートル。機体の7割を冷却装置やエネルギー生成装置に埋め尽くされ、一発撃つと60秒の冷却時間が必要な機体。履帯も装着され、通常戦車のように走ることも可能

 

 

 

 

 

支援車両

 

360mm自走榴弾砲

 

武装

33口径360mm砲 一門

12.7mm重機関銃 二門

対空迎撃ミサイル8本又は対地ミサイル4本

 

 

旧式の履帯式戦車をエンジン強化などを施して後方支援用に回した機体。ロア=グレギア連合王国での第一遠征師団の戦果で徐々に配備が行われて初めている。イメージは99式155mm自走榴弾砲

 

 

 

 

 

 

アルガニア連邦航空海軍

空中艦編

 

ジョージア級駆逐艦

 

武装

主砲:45口径203mm連装電磁両用加速砲 八門(左舷二門、右舷二門、下部四門)

副砲:32連装ミサイルポッド 十六基(上部四基、左舷四基、右舷四基、下部四基)

 

主機

三十二年式反重力装置

四十四年式トリウム核融合炉

 

空中艦隊の中で第一世代に当たる初代空中駆逐艦、そして世界初の量産型空中艦。ビートル改弍型の主砲はこの艦艇のと同じ物

 

 

 

ヤマト型超弩級戦闘艦

 

武装

45口径48cm3連装電磁エネルギー砲 三基

55口径20.3cm3連装電磁エネルギー砲 二基

8連装大型ミサイル発射機 16基(下部4基、前部4基、後部4基、上部4基)

対地対空電磁エネルギーバルカン砲 84基

12.7mm4連装対地対空機銃 24基

48式爆雷投射機 二基

 

 

大きさ

全長:380m

全幅:39m

全高:42m

 

主機

45式波動エンジン

 

艦載機

VB=97『アリゲーター』十六機

 

 

第二世代の空中艦でアルガニア連邦初の本格的空中戦闘艦。今までの中で最大口径の砲に、無数のバルカン砲に無数の機銃。多数のミサイル発射機を備え、アルガニア連邦最強の戦闘艦となっている。アルガニア連邦最新鋭波動エンジンを搭載し、膨大なエネルギーを使った新技術のエネルギー砲を搭載した最新鋭艦。同型艦に『ムサシ』『シナノ』がいる。名前は旧アルガニア連合王国の州名から来ている。見た目は『宇宙戦艦ヤ◯ト2199』のヤ◯トです

 

 

 

 

 

 

波動エンジン実験艦『ギンガ』第二次改装型

 

武装

45口径48cm三連装砲陽電子砲 四基

55口径20.3cm三連装陽電子砲 二基

格納式30mmパルスレーザー連装砲 三十基

格納式25口径15.5cm単装砲 十基

48式爆雷投射機 二基

ミサイル発射機 三十基(艦首六門、艦尾六門、左舷九門、右舷九門)

波動エンジン圧縮放射器 一基

 

主機

49式波動エンジン

 

大きさ

全長:400m

全幅:39m

全高:42m

 

艦載機

VB=97『アリゲーター』25機

 

 

ジルが艦長となり最初に乗艦する実験艦。メートヒェンの特性を最大限に活かし動かしている実験艦、そのため砲術などの戦術要員をほとんど必要とせず。実際、常に艦に乗っている人員は機関科とジルのみ。なお、この艦はリチャードが指揮をとる第1遠征師団の移動基地も兼ねている。元々が建造予定であったヤマト型超弩級戦闘艦四番艦『キイ』であるため。非常に戦闘能力は高い。第二次改装でステルス化を図る為に対空砲などを全て格納式にしてスリムな船体に変化した。波動エネルギー圧縮放射器はいわゆる『波動砲』です。ただし、原作よりも威力はだいぶ低いです。名前は東方諸国の星の言い方から来ている。ちなみに見た目は言わずと知れた『宇宙戦艦ヤ○ト2202』の波動実験艦『銀河』です

 

 

 

 

 

アルフレッド型超弩級戦闘空母

 

武装

主砲:50口径51cm四連装圧縮型衝撃波砲塔 6基(前部二基、後部二基、下部二基)

副砲:45口径35cm四連装圧縮型衝撃波砲塔 8基(上部二基、右舷二基、左舷二基、下部二基)

30.5cm三連装圧縮型衝撃波砲塔 12基 (艦橋両舷八基、艦底両舷四基)

30mm四連装陽電子対空砲 104基

60mm三連装陽電子高射砲 88基

12.7mm連装速射砲 64基

近接防御ミサイルポッド 48基

ミサイル発射機 48門(前部八門、後部八門、上部八門、下部十門、右舷七門、左舷七門)

垂直式ミサイル発射機 24基 (艦橋後部に十二基ずつ左右に分割)

48式爆雷投射機 四基

波動エネルギー圧縮放射器 三基

重力子スプレッド発射装置 四基 (艦首二基、艦尾二基)

 

主機

49式波動エンジン 二基

 

副機

K機関 十二基

45年式反重力装置 十六基

 

大きさ

全長:600m

全幅:196m

全高:160m

 

艦載機

VB=88-A2『ホーク3』 100機+(予備機10機)

VB=97『アリゲーター』100機+(予備機10機)

AC=55-C3『ランドエアー』30機+(予備機3機)

 

艦載艇

46式中型内火艇 八艇

 

アルガニア連邦の最新鋭第四世代空中艦で、波動エンジンを複数搭載した第四世代艦艇で有り余るエネルギーを利用した強力な主砲や対空火器に波動砲を三基も搭載した最強の空中艦。艦艇の両舷に搭載されている二本の滑走路と四本のカタパルトから艦載機を多数発艦可能。イメージは春蘭です

 

 

 

 

 

カブール級主力戦艦

 

武装

主砲:30.5cm三連装圧縮型衝撃波砲塔 四基(前部二基、後部二基)

ミサイル発射口 12基(艦首両舷六基、艦尾両舷六基)

垂直ミサイル発射口 18基(中央上部両舷九基、中央下部両舷九基)

20mm四連装対空パルスレーザー 8基(艦橋四基、艦橋基部四基)

60mm対空三連装対空拡散パルスレーザー 10基(前甲板四基、後部甲板四基、中央甲板二基)

48式爆雷投射機 二基

64連装近接防御ミサイルポッド 16基(前部四基、後部四基、中央八基)

波動エネルギー圧縮放射器 一基

 

主機

49式波動エンジン 一基

 

副機

K機関 四基

 

大きさ

全長:280m

全幅:65m

全高:102m

 

艦載機

ホーク3 20機

 

艦載艇

46式中型内火艇 二艇

 

アルガニア連邦軍第四世代艦艇。時間断層にて研究を完了させたK機関を搭載し、新型砲塔を搭載した量産型戦艦。ドレッドノート級を元に圧倒的な正面火力を残しながらさまざまな状況に対応できるように多様な装備を搭載している

 

 

 

 

 

アルガニア連邦空軍

 

艦上攻撃機VB=97『アリゲーター』

 

武装

12.7mm機銃 四丁

30mm機関砲 一門

 

ミサイル

対地ミサイル 4発

対空ミサイル 8発

 

主翼下に対地、対空、対艦ミサイルの付け替えが可能。エンジンの吸気口を必要としないためアインタークスフリーゲの影響下でも空中戦闘が可能。見た目は『宇宙戦艦ヤ○ト2199』に出てくるコスモゼロ

 

 

 

 

 

多目的艦上戦闘機VA=88『ホーク3』

武装

30mm機関砲 四門

12.7mm機関銃 八門

 

ミサイル

対地艦上ミサイル 6発

対空艦上ミサイル 10発

 

レギオン戦争前に開発された機体。レギオン戦争後は吸気口の改修をし、対レギオン改装型としてアルガニア連邦空中艦隊艦載機として活躍している。見た目は『コスモタイガーⅡ』

 

 

 

 

 

多目的艦上中型輸送機AC=55『ランドエアー』

 

武装

30mmバルカン砲 二門

 

ミサイル

対地ミサイル 2発

対空ミサイル 4発

 

レギオン戦争前に開発された機体。レギオン戦争後は改装を受け輸送機の役割を担っている。機体にはフロートが取り付けられ、水上機としても使われている。空挺部隊が降下する場合もこの機体を使う場合が有る。見た目は『コスモシーガル』

 

 

 

 

 

VA=82 ツインマスタングⅡ

固定武装

12.7mmパルスレーザー機関砲 6門

 

ミサイル

空対空ミサイル 6発

空対地ミサイル 4発

 

爆弾

500kg爆弾 4発

誘導爆弾 3発

 

ガンポッド

12.7mm24連装ガンポッド 1基

20mm12連装ガンポッド 1基

 

概要

アルガニア空軍の長距離全天候型重戦闘機。特徴的な双胴式戦闘機で元は戦略爆撃機護衛のために開発された。レギオン戦争前に開発されたこの機体は対レギオン用に改修を受けた後。空中艦用に着艦フックを取り付け、艦載機として運用可能にした機体。

 

 

 

 

 

VA=114 スーパートムキャット

固定武装

20mmパルスレーザー機関砲 6門

 

ミサイル

空対地ミサイル 6発

空対空ミサイル 8発

 

爆弾

80kg通常爆弾 6発

燃料気化爆弾 3発

誘導爆弾 2発

 

機銃

20mm十二連装ガンポッド 2基

 

概要

武装量が過剰で運動性が悪化したホーク3を踏まえ。武装を減らし、運動性能を上げた可変翼機体。レギオン戦争後に設計された機体でアリゲーターと同じ吸気口のない仕組みでエンジンを動かしている。また、ホーク3に比べて爆弾装の種類が豊富となった(投稿主が流行りのトップなガンの映画見て影響された機体)。

 

 

 

 

 

XQ=05 ストライクワイバーン

武装

空対空ミサイル 6発

空対地ミサイル 3発

100kg通常爆弾 1発

20mm12連装ガンポッド 1基

 

XQ−00の小型化させたような機体。コックピットはなく、アルガニア初の完全無人独立戦闘攻撃機である。




補足説明
K機関
ケルビン機関のこと。ケルビン機関は波動エンジンで余った熱を使い、半永久的に稼働するエンジン


思っていたよりも文字数が増えとった


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

サンマグノリア共和国編
任務


どうも、メンコでございます。前に活動報告で書こうと思っていた作品を決めましたので早速書いてみました。誤字報告などよろしくお願いします!!


アルガニア連邦

民主主義国家でギアーデ帝国とサンマグノリア共和国と国境を接している国。ギアーデ、サンマグノリア両国国境付近には山脈が、南側には海を有している。そしてこの国は周辺国よりも優れた科学力を有し、周辺国はその恩恵を授かっていた時期もあった。しかしこの国は星暦2130年に突如、国家間高速鉄道を閉鎖を宣言、さらに周辺各国との国交を断絶。いわゆる鎖国状態となった。国境には二重の柵と分厚く高いコンクリート壁に張り巡らされた武装、それに見張り台が敷かれ常に監視の目が届いていた。しかし鎖国から二十年近く経った今でもアルガニア連邦から亡命をした人物はだれ1人もいなかった。そして星暦2139年アルガニア連邦はギアーデ帝国より宣戦布告を受けた。しかし、アルガニア連邦は優秀な科学力を使い連邦立特別艦隊 通称“空中艦隊”を結成、これによって押されていた戦線はすぐに取り返すことに成功。勢い付いた連邦政府は領土拡張を目論み、ある命令を発した

 

 

 

 

 

 

とある日、アルガニア連邦国境付近では数機の有人戦闘機械が空軍基地にて待機していた

 

「あぁ〜、こういう時は伸び伸びするに限るねぇ〜」

 

そう言って有人戦闘機械から翠緑種の女性が腕を上げて伸びをしているとそこに同じ翠緑種の男性が両手にコーヒカップを持ってやってきた

 

「ジル、コーヒーだ。お前の好きなジークス産のコーヒ豆だぞ」

 

「ありがとう兄上」

 

そう言ってジルと呼ばれた女性はコーヒーカップを受け取ると少し息を吹きかけ、冷ましてからコーヒーを飲みはじめた

 

「ふぅ、やっぱりジークス産のコーヒーは美味しいね」

 

「ああ、そうだな」

 

そう言って二人はコーヒーを飲みながら空を見ていると遠くからエンジンの様なものの音が聞こえた

 

「あれ?今日来るなんて珍しいね、兄上」

 

「ああ、何かあったのか?」

 

そう言って空から降りてくる”空中艦隊“を見てそう言うと空中艦隊は空軍基地の横に着陸し、そこから軍服を着た数人の人物が降りてきた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして空軍基地の司令室に呼ばれた男性は敬礼をした

 

「リチャード・スミス少佐。ただいま参りました」

 

「ああ、すまないねいきなり押し掛けて」

 

「いえ、大丈夫であります。トーマス・スミス中将殿」

 

そう言うとトーマスは少し笑うと

 

「なに、親戚なんだ少しくらい緩くてもいいじゃないか?」

 

「いえ、ここは軍です。いくら叔父上でもそれはいけません」

 

「はぁ、相変わらずだな。まぁ、今日きたのは司令部からの新しい命令だ。まぁ、正直に言って私はあまり乗り気ではないのだが・・・」

 

そう言ってトーマスは紙を渡すとリチャードは内容を見て驚いていた

 

「これは・・・もう決定された事なのですか?」

 

「・・・ああ、司令部で決定された」

 

そう言ってリチャードは再び紙に目を通した。そこには『特務命令:アルガニア連邦外地域の遠征偵察を行え。なお、この作戦は重要度Aと判断し、第235特務部隊には最大限のバックアップを行う』

 

「しかし中将殿、この作戦は非常に危険と判断します。まともな地図も分からないまま外に出るのは味方との連携がしにくくなります。それに今はレギオンが徘徊をしています。なぜ今更そんな事を」

 

「いや、地図に関しては問題ない。それに過去、軍と政府はレギオンとの戦闘に関しては問題ないと見ている。そうだろ?」

 

「そ、そうですが・・・それでも外はどうなっているか分かりません」

 

そう言ったがトーマスはこの命令は政府の決定事項で動かすことはできないと言った

 

「そうですか・・・わかりました、私は軍人です。命令を受領しました」

 

「すまない・・・また面倒な事を押し付けてしまって」

 

「いえ、ジルがいれば大丈夫です」

 

「そうか・・・気を付けろよ。今度は水入らずで会える事を願っている。それに今回は新しい機体での出撃だ、楽しみにしてくれ」

 

「分かりました叔父上」

 

そう言うとリチャードは司令室を出た

 

 

 

 

 

「兄上〜!」

 

「ジル!」

 

「兄上、さっき叔父上が来ていましたが何か新しい命令ですか?」

 

「ああ、新しい命令は連邦の外の様子を見る任務だよ」

 

「本当ですか!嬉しい、初めて外の世界を知ることができるわ」

 

「ははっ、そうはしゃぐな。まずはみんなの所に行って報告をするよ」

 

「分かった。兄上」

 

そう言うと二人は部隊の全員を集めた

 

「どうしましたか隊長」

 

「また新しい命令ですか?」

 

そう言って青玉種のジョージ・アンダーソンと黒珀種のセシル・シルバーの二人がそう聞くと

 

「ああ、そうだ。新たな命令が下った。我々は連邦外地域の偵察を行う事となった」

 

その言葉に全員が驚いていた

 

「なんと!」

 

「では、あの壁を越えるのですか!?」

 

「凄いぞ、そんな事があるのか」

 

などと言って騒然とした場をリチャードは抑えると続けてこう言った

 

「ああ、みんなが思っている通り、今回は壁を越える。それに、長期にわたる作戦になる。それに外はレギオンの支配下だ、油断せずに行くぞ」

 

「「了解!!」

 

そう言って徐々に部屋から人が出ていく中、月白種の眠たそうな顔をした女性が近づいてきた

 

「あれ、ルミ。どうしたの?」

 

「隊長、外に出たら『アインタークスフリーゲ』が居ると思われますが。私謹製のレーダーを持っていきますかぁ?」

 

「ああ、それが無いと敵の場所がわからなくなるからな。持っていく事前提だったぞ」

 

「分かりましたぁ。それじゃあ積み込んでおきますぅ」

 

そう言って眠たそうな声で部屋を去って行った

 

「よし、それじゃあ俺たちも準備をしようか」

 

「はい、兄上」

 

そう言って二人は外に出ると駐機している有人戦闘機械に集まっている様子を見て

 

「やっぱりみんな初めての事だからワクワクしているみたいだね」

 

「それはそうですよ、なんせ連邦は二十年ほど前に外交を閉じて外との連絡を途絶したのですから」

 

「まぁ、空中艦隊なんて代物が出来たら、そうなるか」

 

「はい、私も正直に言うと嬉しいです。今まで外の世界は資料などでしか分かりませんでしたから」

 

「ああ、そうだな」

 

そう言って二人は歩いていると並んでいた機体の中で一番大きな機体の前で足を止めた

 

「これが新しい機体『ビートル』か・・・」

 

そう言って目の前にある深緑色に塗られた巨大な機体を見てそう言った。するとジルは送られてきた資料を読んだ

 

「46式超重量級 ビートル・・・武装は45口径183mm、副砲に25口径88mm砲と12.7mm重機関銃二丁・・・と重武装ですね」

 

「ああ、それに装甲も桁違いに大きい。正面からなら抜かれることはないんじゃ無いか?よっぽどの砲じゃ無い限りは」

 

「はい、前面装甲は電磁装甲も加えて一番分厚いと300mmですからね。相当なものだと思いますよ」

 

「これを動かすのか・・・」

 

「はい、私も前の機体から新しくなって足が速いやつになりましたよ」

 

「だからって無理に行っちゃダメだぞ」

 

「分かっていますよ。兄上」

 

そう言うとジルは隣に止まっているビートルより遥かに小さい機体に乗り込むと六本の足が立ち上がり、軽く動かしていた

 

「ジル、どうだい?」

 

「ええ、やっぱり最新のコルーチクは凄いわ。動きが遅く無い」

 

「それは良かった、なんせ“ビートルに搭載”出来るからな」

 

「え!そうなんですか?」

 

「ああ、だから普段は一緒に乗るんだよ」

 

そう言うとジルは兄と一緒に入れることに喜んだ

 

「じゃあ兄上と一緒に入れるんですね」

 

「ああ、そうだよ」

 

そう言って喜んでいるとリチャードは後ろから声をかけられた

 

「あの、隊長」

 

「ん?どうしたジョージ」

 

「いえ・・・今回の作戦・・なんか不思議に思えて・・・」

 

「何処がだ?」

 

「なぜ二十年近く鎖国をしていた政府はいきなり偵察をすると言い出したのかと思いまして・・・」

 

「ああ、そう言うことか。うーん、正直言ってわからんが政府はレギオンを押し返した勢いで領土を増やすつもりなんじゃ無いか?」

 

「だとしてもなんか火事場泥棒みたいで嫌ですね」

 

「まぁ、そう言うな。この偵察は周辺諸国がまだ生きている事を確かめるのも入っている。もしかすると新しい文化を観れるかもしれんぞ」

 

そう言うとジョージは少しモヤモヤした様子で去って行った

 

「・・・さて、こっちも準備をしないとね」

 

そう言ってリチャードは準備をした

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数日後、リチャード達第235特務部隊はアルガニア連邦国境の壁を超えて周辺国家の偵察任務の旅を始めた




兵器紹介
46式超重量級 ビートル
武装
45口径183mm砲
25口径88mm砲
12.7mm重機関銃
ウインチランチャー

大きさ
全長43.8m
横幅11.7m
高さ8.4m

特徴
鹵獲したレギオンのディノザウリアを元に開発した機体。五対十本の脚を持ち、後ろ側には47式軽量級コルーチクを格納する場所がある。装甲には電磁装甲に最大300mmの装甲圧となっている。なおこの装甲のせいで動きと加速率が悪い(それでも時速100km程出る)

47式軽量級 コルーチク
武装
75口径75mm滑空砲
7.7mm重機関銃
電磁波ブレード
ウインチランチャー

大きさ
全長5.8m
横幅1.2m
高さ2.5m

特徴
三対六本の脚を持ち、ビートルとは打って違いこの機体は主に偵察を意識しているので機体自体が小さく、装甲は他機に比べると薄い(しかし、ジャガーノートと比べると装甲は数倍分厚い)。なお、機体は軽くバッテリー容量が少ないため。ビートルに搭載をしながら充電をし。必要な時に切り離しを行い、先に偵察などに向かわせる


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

接触

第235部隊がアルガニア連邦国境の壁を越えてから数日が経過した。その間に235部隊は道中レギオン部隊との戦闘となったがジルのコルーチクの偵察情報とルミのレーダーによって大きな戦闘なく旧国家間高速鉄道を進んでいた

 

「うーん、そろそろサンマグノリア共和国だと思うんだけどなぁ〜」

 

「ええ、地図だとそうなっていますが・・・」

 

「まさか道間違えたとか無いよね」

 

「それはないぞ副長」

 

そう言っているとリチャードが何かに気づいた

 

「あれ?これって足跡じゃないか?」

 

「え?あれ、そう見たいですね」

 

「じゃあ当たりってことで賭けは俺の勝ちだな」

 

「くっそー、やられた」

 

「とりあえず行きましょ。もしかするといい発見があるかも」

 

「それじゃあ、全車前進」

 

リチャードがそういうと五機の戦闘機体は線路沿いに進んでいった

 

 

 

 

 

そして少し進むとサンマグノリア共和国旧市街地では戦闘が行われていた

 

ドンっ!ドンっ!ドドドン!!

 

無数の砲撃音に無数の金属に当たる音に上空には多数のアインタークスフリーゲが飛んでいた

 

「おーおー、あんなにも飛んでら。それに戦闘が起こっているよ」

 

「・・・ジル、お願いできるか?」

 

「任せんさい!!兄上、観てくるよ」

 

「頼んだ」

 

そういうとビートル下部の扉が開くとそこから小型のコルーチクが降ろされ、部隊と映像同機を行うとジルは市街地へと向かって行った

 

「レーダーで確認した限りだとほとんどが近接猟兵型と斥候型、それで数機の戦車型と多数の未確認機・・・おそらくサンマグノリアの機体だと思う」

 

「了解、砲撃には気をつけるよ」

 

「ええ、分かっています」

 

そう言って同期した映像から流れてきたのはボロボロの廃墟とかした街に多数のレギオンにボロボロのサンマグノリア共和国の機体と思われる白色の機体であった

 

「なるほど、状況はわかった。とりあえずジルはそこに居て着弾地点の誘導をジャスと俺は砲撃とミサイルで攻撃。標準はジルに任せる」

 

「「了解!」」

 

そう言ってリチャードはトリガーに手を掛けると画面にはジルから届いた着弾誘導のマークがあった

 

「標準固定完了、撃て!」

 

そう号令した瞬間、ビートルとコブラ改弐型からそれぞれ砲弾とミサイルが撃ち込まれ、レギオンの反応が消えた

 

「目標全滅、後続のレギオンは後退を開始」

 

「了解、それじゃあサンマグノリア共和国の部隊の接触を図ってみますか」

 

そう言った瞬間であった。偵察をしていたジルから報告があった

 

「兄上!助けて!」

 

「ジル!どうした!」

 

「偵察していたら共和国の機体に敵と間違われているよ〜!」

 

「何!と、取り敢えずこっちに来て!なんとか出来るかもしれなから!!」

 

「わ、分かった!」

 

そう言って通信が切れるとリチャードは考えた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時は少し遡り、ジルがレギオン部隊を捕捉し、殲滅した直後に遡る

 

「総員、配置につき次第撃て」

 

「「了解!」」

 

そう言ってスピアヘッド部隊が配置についた

 

「レギオン部隊接近中・・」

 

「・・・うt・・っ!」

 

撃てと言おうとした瞬間であった。突如上から砲弾とミサイルが飛んでくる感覚があった

 

「総員退避、上からくるぞ!!」

 

「何!?」

 

そう言って次の瞬間であった。頭上から数発の砲弾と複数のミサイルがレギオン部隊を殲滅していた

 

「あぶねっ!」

 

「何だ!」

 

そう言って爆発が収まるとレギオン部隊と戦車型は跡形もなく消し飛んでいた。すると通信が入った

 

「アンダーテイガー、現状を報告してください!何があったんですか!!」

 

「いえ、待ち伏せをしていたらレギオン部隊目掛けて砲弾が飛んできました」

 

「何ですって!それじゃあ近くに大型レギオンが・・・」

 

そう言ってレーナが大型レギオンの可能性を考えたが、シンがそれは違うと言った

 

「いえ、あれはレギオンではありません。レギオンなら俺らも撃つはずです。ですが今の砲撃はレギオン部隊を直接狙っていました。おかげでこっちは無傷です」

 

「そうでしたか・・・でも一体誰が。近くにそんな攻撃力を持ったのなんて居ませんしレーダーにも映っていません」

 

「そうですか、では一体誰が・・・っ!ふっ、そう言うことか」

 

「どうしましたか、アンダーテイガー?」

 

「いえ、意外とその理由は分かりそうですよ。見た事ない機体を見つけました」

 

「何ですって!新しいレギオンですか!!」

 

「いえ、レギオンではない機体でした」

 

「何ですって!?」

 

「正体を確かめます」

 

そう言ってシンはビルを降りると先ほど見つけた初めて見た機体の追跡を開始した

 

「見つけた!」

 

そう言って追跡を解したシンは先ほどの機体を街の市街地の裏道で見つけた

 

「アンダーテイガー、報告をお願いできますか?」

 

そう言ってレーナは追跡している機体のことを聞いた

 

「分かりました、ジャガーノートと似た形をした六本脚の機体で色は深緑色。武装は滑空砲一門しか見えません」

 

「分かりました。アンダーテイガーはそのまま追跡を行ってください。他のメンバーは機体を追い詰めるように御願いします」

 

「「了解」」

 

そう言ってスピアヘッド隊は未確認の機体を追い詰めるために行動を起こした

 

「あ〜!もう、どうしてこうなったの〜!」

 

ジルはそう言いながら街中を逃げていた、そしてジルは街中をスピアヘッド隊に追われながら逃げ回っていた

 

 

 

 

 

「どうします、隊長?」

 

「うーん、街に入ってもいいけど確実にレギオンと間違われないかな?」

 

「うーん、隊長の機体は重戦車型を元に作っていますからね。間違われる気が・・・」

 

「うーん、取り敢えず全員街に向かって。自分は取り敢えずここにいて状況を見ていくよ」

 

「「了解!」」

 

そう言うとリチャード以外の機体は街に向かって進んでいった

 

 

 

 

 

「わ〜ん!!兄上〜!ジャス〜!助けて〜!!」

 

そう言いながらジルは街中を逃げ渡っていた

 

「くそっ!ちょこまかとに回りやがって!!」

 

「いつになったら終わるのよ!!」

 

「あ、くそっ!またダメだった!!」

 

そう言ってちょこまかと逃げ回っている機体の捕縛になかなか成功しないことにスピアヘッド部隊のメンバーにほ苛立ちの様子が見えはじめた

 

「ねぇシン!これいつまで続けなきゃいけないの!!!」

 

「・・・来る」

 

「え?何が」

 

そうカイエが言った瞬間であった。突如追跡していた機体はスピードが落ちて止まった

 

「い、今だ!!」

 

止まったことに驚いたスピアヘッド部隊であったが咄嗟に機体に向けて全員が砲を向けていた

 

「何ですって!電池切れ!?」

 

ジルは地図を逃げ回っていたがこの機体の弱点であるバッテリーの少なさが仇となった

 

「くっそー!やられた、これじゃあ蜂の巣じゃないか!!何て事だ!!」

 

そう言って絶望していた時だった、突如機体に何かを叩きつける音がした

 

「おい、今すぐ機体から降りろ。正直に降りてきたら危害は加えない」

 

そう言って男と思われる声が聞こえたと思うとジルは諦めて機体のハッチを開けた

 

ガキンッ!

 

そう言う音が聞こえた。咄嗟に機体を囲んでいたスピアヘッド隊員は持っていたライフルをハッチの方に銃を向けた。すると中から声が聞こえた

 

「はぁ、何でこんなことに・・・」

 

「女?」

 

そう言ってハッチが開ききると、そこから自分達と同じくらいの歳と思われる翠緑種の女が顔を出した

 

ガチャ

 

出てきた女性に四方八方から銃口を突き付けられていた。すると女は

 

「あの・・・取り敢えず銃を下げてもらえませんか?」

 

そう言ってその女は銃を下げることを要求したが仲間は容赦しなかった。すると女は

 

「あの・・・下げてもらった方が落ち着けるんですけど・・・」

 

「ふん、そんなこと聞けるかよ。ちょこまかと逃げやがって」

 

「ったく、面倒なことをしてくれたもんだよ」

 

「はぁ、何でこんなことに・・・」

 

そう言って仲間がそれぞれ言っている中、女はため息を吐いていた。そして俺は聞いた

 

「お前、レギオンか?」

 

すると女は即答で

 

「いいえ、違いますよ。しかし、サンマグノリアの軍人は礼儀を知らないんですか?まずはそちらの所属をいうべきでしょうに」

 

「貴様!」

 

「やめておけ」

 

「だがシン!!」

 

そう言ってライデンが言ったが俺は言った

 

「部下がすまない、俺はサンマグリア共和国東部戦線第一線区第一防衛戦隊『スピアヘッド』戦隊長シンエイ・ノウゼン大尉だ。貴官は?」

 

そういうと女は言った

 

「私はアルガニア連邦軍第235特務部隊副隊長 ジル・スミス大尉だ」



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

アルガニア連邦という国

「私はアルガニア連邦軍第235特務部隊副長 ジル・スミス大尉だ」

 

シンが捕まえた見たことない機体から出てきた翠緑種の女は自己紹介をした

 

「アルガニア連邦?」

 

聞いたことない国名にクレナは国を傾げた。そして、聞いていたレーナは驚きの表情を見せた

 

「アルガニア連邦、閉ざされた国が何故ここに!?」

 

「アルガニア連邦、指揮官。何処だか知っているんですか?」

 

「はい、アルガニア連邦は二十年ほど前に国境を閉じた国で中の状況は不明だったんです。それが何故こんな所に・・・と、取り敢えずその人を”保護して下さい“」

 

「・・・拘束ではないのですか?」

 

「はい、保護でお願いします」

 

「分かりました。では大尉此方に来てもらっても?」

 

そう言うとジルは

 

「あ、もし保護をするのであれば仲間も一緒に保護をしてもらっていいですか?」

 

「仲間だと?」

 

「ええ、もうすぐ来ると思うので」

 

そう言っていると遠くから機械音が聞こえ、道の角から四台の戦闘機械がやってきた

 

「あれは・・・うちの部隊の仲間です。あれ、兄上は来ていないのか・・・」

 

そう言っていると近くで戦闘機械は止まり、ハッチから人が出てきた

 

「副長、大丈夫ですか!?」

 

「ええ、大丈夫よ。それよりもこの人達が保護するってさ」

 

「え、そうなんですか?じゃあ隊長も呼ばないと・・・」

 

「でも、ここじゃ入らないよ」

 

「・・・取り敢えず隊長とやらには通信できるか?」

 

「え?ええ、出来るわよ」

 

そう言ってジルは耳につけていたイヤホンのようなものに手を当てると保護をする件を話すと、後で合流することが決まった

 

「それじゃあ行くぞ、ついて来い」

 

そう言ってシン達についていく事となったジル達は指示された場所で合流する事となった。途中、リチャードと合流した

 

「あれは・・・」

 

「わ、デッカ!」

 

「あんなに大きな奴がいたのかよ!!」

 

「こりゃさっきの砲撃はこいつだな」

 

そう言って全員がビートルに驚いているとジョージの牽引していたコルーチクがビートルの中に収容されていた

 

「え、あれって格納出来るの!」

 

「装甲もとても硬いだろうし、なんか勝てない気がする・・・」

 

「アルガニア連邦ってそんなにスゴイ国なの?」

 

「さあ?そもそも、初めて聞いた国だからな。どんなのかも想像つかねぇな」

 

そう言って格納が終わったビートルを見てスピアヘッドと235部隊は前線基地へと入っていった

 

 

 

 

 

 

次の日、ジルとリチャードはシンによって事情聴取されていた

 

「さて、まずはなんであんな所にいたのかを聞かせて欲しい」

 

そう聞くとリチャードはあそこにいた理由を話した

 

「まず、我がアルガニア連邦はギアーデ帝国方面の北西戦線の一角で大規模な攻撃がありました。しかし、山脈であったために人的損害は有りませんでしたが巨大なクレーターと共に近くにいたレギオン部隊が消失していました。我々はその原因を調査すべく周辺地域の捜索を行なっていました」

 

「成程、それであんな所に・・・」

 

するとリチャードは

 

「そして安全を考慮していたとはいえ貴官達の部隊を危険に晒した事をお詫びしたい」

 

そう言ってリチャードとジルは頭を下げた

 

 

 

 

 

同じ頃、格納庫では

 

「ほぅ、これがアルガニア連邦の主力戦闘機械か・・・」

 

「はい、これは45式中量級『コブラ』ですね」

 

「ヘェ〜、強そうだなぁ」

 

「このコブラはバランスを重視した機体ですから、色々な派生系があるんですよ」

 

「成程、だからこんなに色々な形があるんだな」

 

「ええ、ですがやっぱりアレと比べると色々と劣ってしまいますね」

 

「そりゃそうだろう。あんなデカ物、うちの機体でも勝てないと思うぞ」

 

「だろうね、シンでもギリギリだと思うよ」

 

そう言って四人が見ていたのは格納庫に入り切らず、外に置かれることとなったビートルであった

 

「まぁ、あれは鹵獲したディノザウルスをもとに設計したそうなのでそれはデカイですよ」

 

「そりゃウチのと同じくらいの大きさの機械を丸々入れられるんだから」

 

そう言ってセオが言っているとリチャードは

 

「良かったら見ていくかい?コルーチクを」

 

「いいのか?」

 

「ああ、外からだったら問題ないさ」

 

そう言ってリチャードはビートルに乗り込むと格納庫のハッチが開いてコルーチクが下された

 

「おお、硬そうだな」

 

「ね、スゴイ硬そうだよ」

 

「それに比べてウチときたら・・・」

 

そう言ってセオは格納庫にあるジャガーノートを見てため息をついた

 

「いや、正直言って自分も驚いたよ。まさかあんな欠陥機が前線を張っているなんて」

 

「はぁ、どうしてここまで差があるんだろう。羨ましいわ」

 

そう言ってセオはビートルを見上げながらそう言った

 

 

 

 

 

同じ頃、食堂では

 

「ごめんなさいね、手伝わせちゃって」

 

「大丈夫ですよ、これくらいは容易いものです」

 

そう言ってジョージはアンジュの手伝いをしていた

 

「しかし、驚いたわ。白銀種が部隊にいるなんて」

 

「珍しいのか?」

 

「ええ、この国の白銀種は安全なところに居るからね・・・」

 

「そうか・・・すまないな、辛いだろ?」

 

「いえ、大丈夫よ」

 

そう言って始まった食事であったが。案の定、白銀種のジャスはスピアヘッド戦隊から視線を集めていた

 

「おお、すごい視線だな」

 

「まぁ、仕方ないと思うよ。この国の白銀種は安全な檻の中にいるんだから」

 

そう言っているとライデンがジャスに声をかけた

 

「その姿・・・お前は共和国出身か?」

 

「ええ、でも両親が人種差別反対で迫害をされてアルガニアに亡命したのよ」

 

「そうか・・・すまない、ここにいるメンバーは全員白銀種に警戒をしているんだ」

 

「ええ、分かっているわ」

 

そうして食事が終わるとシンはアルガニア連邦について聞くためにリチャードを執務室に呼んだ

 

「じゃあ聞かせて欲しい、アルガニア連邦はどんな国なんだ?」

 

そういうとリチャードは端末を取り出すと

 

「じゃあ、これを見てください。そうしたら大方分かると思いますよ」

 

そう言って見せたのはアルガニア連邦の広報動画であった

 

無数の高い建築物に高度な技術、それに強力な軍事力と国内の豊かさを示す動画が其処にはあった

 

「はぁ、ウチとはえらい違いだ」

 

「はい、アルガニア連邦は発展しているんですね」

 

そう言って隣にいたカイエがメモを取っていた

 

「じゃあ次は戦況を聞きたい」

 

「分かりました」

 

そういうと今度はジルがアルガニア連邦の戦況説明をした

 

「まず我々には北部戦線、北西戦線、東部戦線の三つがあり、北部戦線と北西戦線には山脈を利用した要塞を使ってレギオンの掃討を行なっており、間も無く掃討完了との報告があります。東部戦線に関しては大河と要塞によってレギオンは抑えています」

 

「そうか・・・ありがとう。よく知れたよ」

 

そう言って二人を部屋から出すとシンカイエは驚いていた

 

「驚いたな。まさかレギオンの掃討なんて言葉が出るなんて」

 

「はい、しかも空軍が使えると言うことはアインタークスフリーゲの影響がないってことですよね」

 

「ああ、そうだ。だがまずはこの事を指揮官に報告しないとな」

 

そう言ってシンは先程のことをレーナに伝えた

 

「成程、分かりました。ではこのことは司令部に報告しておきます」

 

そう言って通信を切ったレーナはその足でサンマグノリア共和国軍司令部のカールシュタール准将の部屋まで向かった

 

「では、報告を聞こうか」

 

「はい、アルガニア連邦の戦況は・・・」

 

そう言って先程入って事を伝えた

 

「・・・なる程、戦況は良いのか・・・わかった、取り敢えずアルガニア連邦の部隊の監視を怠るなよ」

 

「分かっています」

 

そう言うとレーナは部屋を出ていった



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

便利なレーダー

次の日、ジル達はレーナからある機械を渡されていた

 

「ほーん、これがパラレイドって言うやつ?」

 

「はい、これがあれば通信妨害があっても知覚を共有することができます」

 

「へぇ、これで通信を」

 

「ハンドラーより235部隊。聞こえますか?」

 

「OK、ちゃんと聞こえているよ〜」

 

「分かりました。ではこれからは通信はこう言った形で行きます。補給に関しても共和国から送られて来ることになりました」

 

「分かりました。色々と有難うございます」

 

「いえ、こちらも強い味方が来てくれて嬉しいです」

 

そう言ってレーナとの通信が切れると、リチャードはビートルに乗り込んで本国に連絡を取った

 

「ビートルワンより本国に報告、ただいま我が部隊はサンマグノリア共和国軍に保護を受けた。よってしばらくの間補給の必要はなし、情報は追って連絡する」

 

すると返事があった

 

「了解、こちら本国。235部隊はそのままサンマグノリア共和国周辺の探索と情報収集をせよ。補給は中止、次の補給の連絡は一ヶ月後とする。他国に向かった部隊との連絡は今夜2100とする」

 

「ビートルワン了解」

 

そう言って通信が切れ、リチャードはビートルから降りた

 

 

 

 

 

同じ頃、格納庫内ではミルがジャガーノートの機体をマジマジと見ていた

 

「嬢ちゃん、どうだい。この機体は」

 

「うーん、この機体はまず薄すぎる装甲に華奢で接地圧の高い脚、それに弱すぎる主砲に確実に頭の吹っ飛ぶコックピット。この機体の悪いところをあげたらキリがない」

 

「やっぱりそう思うか」

 

「でも、こういうのは改造のしがいがあって良いかもしれない」

 

そう言うとミルは徐に自分のところから持ってきた工具箱を開けてジャガーノートの脚部を外し始めた

 

「おいおい、何してるんだよ!」

 

脚部を分解しているミルを見てアルドレヒトは思わず声を上げた。しかしミルは分解した脚部を見つめ、部品を見つめると工具箱の中にあるネジと交換して元に戻していた

 

「嬢ちゃん、あんた一体何をしてんだ!?」

 

アルドレヒトはミルにそう聞くと

 

「この機体を使っている人は脚部に相当な圧力をかけている、その上に脚部のネジが脆い素材でできている。私はそこを変えただけ、これでもう少し脚は丈夫になるはずよ」

 

「あ、ああ。そうか、それは済まなかったな」

 

「いいえ、こう言うのを見ると改造したくなるのが癖なんだよねぇ」

 

そう言ってミルは同じような改造を他の三対にも施していた。その時のミルの目は職人の様であった

 

「ははっ、これは参ったな。シンのやつ脚が壊れにくくなって驚くんじゃないか」

 

そう言ってアルドレヒトは笑いながらミルの手伝いをした

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さらに基地の近くの小川ではジルとスピアヘッド戦隊の女性陣が水遊びをしていた。するとクレナが徐にジルにアルガニア連邦の事を聞いた

 

「ねえねえ、ジルのいたアルガニア連邦ってどんな国なの?」

 

「こら、クレナ。いきなりそう言うのは聞いちゃダメでしょ!」

 

「いいよ、別に」

 

「本当!」

 

「ええ、アルガニア連邦って言う国はね昔から周辺の国より進んだ科学力を持った国だったの。その科学力を使って豊かになったアルガニア連邦はその科学力の一部を周辺の国に提供したの、サンマグノリア共和国もその一つだったのよ」

 

「そうだったんだ」

 

「知らなかったわ」

 

「ええ、そうなの。でもアルガニア連邦は技術を提供するときにある条件を言ったの」

 

「どんなの?」

 

クレナがそう聞くとジルは

 

「その条件ってね“アルガニア連邦の慣習に倣い種族による差別を一切行わない事。それが出来なければ該当国家は侵攻させてもらう”って言う条件」

 

そう言うと女性陣は驚きに包まれた。まさか共和国が今行っていることが思い切り要件を破っていたからだ

 

「それじゃあ、アルガニア連邦はサンマグノリア共和国に宣戦布告するの?」

 

そうがアンジュが聞くと

 

「いえ、その条件は今は通用しない。だからアルガニア連邦はサンマグノリア共和国に宣戦布告はしないの」

 

「それはどうして?」

 

カイエが理由を聞くと

 

「アルガニア連邦は十八年前に国境を封鎖しているの。それでその条件も破棄される形になったのよ、だからアルガニア連邦はサンマグノリア共和国と戦争をする気はないの」

 

「そうなんだ」

 

するとジルはこう言った

 

「でも、貴方達を見てこの事を本国に帰ったら政府に伝えようと思っているわ」

 

「それって・・・」

 

「ええ、最悪サンマグノリア共和国はアルガニア連邦の侵攻を受けるかもしれないわね」

 

「もしそうなったら・・・」

 

「ええ、隊長の乗っている機体がうじゃうじゃやってくでしょうね」

 

その言葉に女性陣は絶望の表情を示した。シンくらいしか相手にできないだろう機体が何十機も侵攻すれば自分たちに勝ち目はないのではないかと思った

 

「でも大丈夫。もし侵攻するとなってもレギオンの戦闘が終わったあとだろうけどね」

 

そう言うと女性陣はその頃には自分たちは生きていないだろうと思った

 

「まぁ、取り敢えず私達は少しここで過ごしてから帰ると思うわ」

 

「じゃあ、それまでは一緒に過ごせるね」

 

「ええ、そうね」

 

そう言って女性陣は水遊びを楽しんだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の日、ジル達はスピアヘッド戦隊について行き偵察の手伝いを行った

 

「じゃあ今日の偵察はミルに行ってもらっていい?」

 

「私ですかぁ?」

 

「ええ、ここら辺の詳しい地形も欲しいし。お願いできるかい?」

 

「分かりましたぁ」

 

「じゃあミルの護衛でジョージとジャスで」

 

「「了解!」」

 

そう言うと三人は各々自分の機体に乗り込んで偵察を開始した

 

 

 

 

 

そして小高い丘に到着したコブラ隊と二機のジャガーノートはミルの護衛をしていた

 

「車両固定、レーダー探索開始。同時に地形読み込みを開始」

 

そう言って操作版を動かすとミルのコブラの後ろ側からアンテナが伸びて回転し、周囲の探索と地形の読み込みを始めた

 

「へぇ〜、スゴイわね」

 

それを見ていたレッカがそう言うとジャスミンはミルに聞いた

 

「どう?反応は」

 

「うーん、特に反応はない。地形の読み込みは半分くらいが終わった。機器同調で地形の形を読み込みながら送るね」

 

「ええ、お願い」

 

そう言ってミルはジャガーノートに載っているレッカとライデンに映像に送った

 

「ほぇ〜、こんなに鮮明に映るんだな」

 

「そっちの機体は古いから情報共有するのは簡単だった。むしろ情報量の多さにヒートアップしないかが心配」

 

「ははっ、それは面白いな」

 

「それは流石にないと思うわよ」

 

「いや、どうだろう。意外とあるかもしれない」

 

そう言っているとジョージは

 

「しかし、ミルのレーダーは凄いな。アインタークスフリーゲの影響を受けずに敵の情報を知れるんだから」

 

「本当だな」

 

「その代わりレーダが大きいからかなりスペースを圧迫している」

 

「そうだろうな。そんなけ大きなアンテナがあればねぇ」

 

そう言った時だった。突如レーダーに反方があった

 

「レーダーに反応!」

 

「ちっ、お出ましかよ!」

 

そう言って空には無数のアインタークスフリーゲが空を覆い尽くす様に近づいてきた

 

「うわぁ、あれは酷いな」

 

「ね、特にここは国境よりもひどいね。隊長ので足りるかな?」

 

すると通信機に連絡が入った

 

「三人とも、見えているかい」

 

「はい、隊長。バッチリ映っています」

 

「よし、じゃあ送ってくれこっちから撃つ」

 

「了解、編成は斥候型と近接猟兵型と数機の戦車型」

 

「よくあんな距離でわかるわね」

 

「それがアルガニア連邦の強みですから」

 

「そうかい、それじゃあ行くか!」

 

そう言ってジャガーノートは丘を降りていった

 

 

 

 

 

同じ頃、スピアヘッド戦隊基地では235部隊の残ったメンバーがそれぞれ機体に乗り込んでいた

 

「兄上、ミルと同機完了。敵部隊の数、種類を確認」

 

「了解、あっちにも送ってくれないか?」

 

「了解しました、兄上は撃つことだけに集中してください」

 

そう言ってジルはスピアヘッド戦隊に情報を送ると基地を出撃していった



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

235部隊の戦い

ルミが捉えたレギオン部隊を迎え撃つために235部隊が基地を出撃している頃、基地格納庫ではシンが号令をかけて状況を説明した

 

「状況を説明する、235部隊からの通報で敵総数300、菱形陣形四つで進軍中、ポイント304で235部隊と六個小隊で迎える。今回は戦車型が多いと言う報告だ、気を抜くな」

 

「「了解!」」

 

そう言ってスピアヘッド戦隊はジャガーノートに乗り込んだ

 

 

 

 

サンマグノリア共和国東部旧市街地

 

レギオンによって荒廃した市街地にスピアヘッド戦隊と235部隊は展開し敵を待ち受けた

 

「ふぅ、やっぱりボロいよね」

 

「え、ああ機体の話?」

 

「そうね、装甲は紙同然で主砲も弱々。おまけに機動性も悪いときた」

 

そう言って敵が来るまでの時間、スピアヘッド戦隊のメンバーはジャガーノートの愚痴を言っていた

 

「欠陥しかないわね・・・この機体」

 

「そう言えばそっちの機体はどうなの?」

 

そう言ってカイエがリチャード達に聞くと

 

「ああ、自慢になるかもしれないけど快適よ。コルーチクでも装甲はまあまあ、脚は最高。武装は丁度いい感じだね」

 

「いいなぁ、その大きさで斥候型を意識しなくてもいいもんね。おまけにビートルは戦車型の砲撃を正面から弾けるし・・・」

 

「コブラも近接猟兵型までなら問題ないもんね」

 

「羨ましいなぁ」

 

「それにビートルには治療スペースに食料庫まであるんでしょ?まるで基地だね」

 

「まぁ、ビートルの最初の設計思想はコルーチクの中継基地を考えていたらしいですからね」

 

「なんで国が違うだけでこんなにも違うんだろう」

 

「本当、同じ人が住んでいるのにね」

 

そう言ってリチャード達の機体を羨ましく見ていると報告があった

 

「ハンドラーワンよりスピアヘッド各隊、敵部隊が進行中です。状況を報告してください」

 

「アンダーテイガーよりハンドラーワン。現在、ポイント304にて展開済みです」

 

「早いですね・・・流石です。今回は戦車型が多いです、注意して下さい」

 

「了解です」

 

「よし、じゃあ切り離すから着弾指示頼む」

 

「了解、一番槍行ってきます」

 

「怪我しないでよ」

 

「分かっていますって兄上」

 

そう言ってジルはビートル下部から飛び出すと街に入り、敵の居場所を随時伝え始めた

 

「いいよねぇ、隊長とセルとジャスは。遠くから撃つだけでさ」

 

「あら、じゃあ貴方も参型にすれば良かったじゃないの」

 

「俺は狙撃が苦手なの」

 

「じゃあダメよこっちに来ないと」

 

「ちぇ、副長はいいなぁ。敵を見ているだけでいいんだからさぁ」

 

「バカ言うんじゃないよ、副長は着弾指示をするってことは砲撃を至近距離で浴びる事なんだよ。吹っ飛ばされるかも知れないのよ」

 

「分かってるってば、お袋」

 

「その言い方はやめろと言っているでしょうが」

 

「ジャス、ジョー。五月蝿いよ」

 

そう言って進行してくるレギオン部隊を見ながらそう言って何も知らないレギオン部隊は荒廃した街を進んでいた。そして所定の位置に入ったところでシンが号令をした

 

「撃て」

 

ドドドドドォォォン!!!

 

号令と共にジャガーノートの57mm滑空砲は最後尾にいる戦車型を撃った、そして235部隊も120mm対レギオン用炸裂弾を発射し斥候型と近接猟兵型十数機を一気に破壊した

 

「ジョー、次はAPFSDSを装填」

 

「了解!!」

 

ジルの命令でジョージは戦車型の装甲を撃ち抜き、戦車型一機を沈黙させた。レギオンも負けじと近接猟兵型のミサイルランチャーをジャガーノートに向けて放ったがジャガーノートはワイヤーアンカーを巧みに使い地上に降りた

 

「標準固定完了。アンダーテイガー達に通信。こちら準備完了、散開せよ」

 

「了解した。各小隊に告ぐ、もうすぐ砲撃が飛んでくる。各自散開せよ」

 

そう言った瞬間であった、頭上から飛んできたミサイルと砲弾によって付近のレギオン部隊は全滅した

 

「次、後方のレギオン部隊。距離300、400、500標準固定完了」

 

「了解、こちらも確認した、いつでも行けるぞ」

 

「撃て」

 

ドーンッ!ドーンッ!ドーンッ!

 

そうして放たれた三つの砲弾はそれぞれ指定した場所に着弾した

 

「おーおー、これだと簡単に片付きそうだな」

 

「どちらかと言うと一方的な蹂躙・・・」

 

「どんだけな威力なんだよ・・・」

 

そう言って着弾した砲弾の爆発具合を見て、スピアヘッド戦隊は唖然としていると

 

「ヴェアヴォルフ、そろそろ給弾しておいた方がいいんじゃない?」

 

「けっ、よく言うぜ。そっちは着弾観測しているってのによ」

 

「怪我はしてないんで大丈夫よ」

 

「ふっ、取り敢えず感謝するぜ」

 

「宛235部隊、北東方面から新たな部隊接近、処理を任せる」

 

「了解。二人とも行くよ」

 

「「了解!!」」

 

そう言うとコルーチクと二機のコブラは北東方面に向かった

 

 

 

ドンッ!ドンッ!

 

北東方面から来たレギオンは突っ込んできたコルーチクに標準を定めたが、コルーチクは砲弾を回避しながら突っ込んで斥候型を何台も破壊した。そしてコルーチクに気を取られていると一気に十機ほどの近接猟兵型と斥候が吹き飛んだ。ふと見るとさっきより大きい機体が硝煙を吐いていた。そして北東方面から侵攻したレギオン部隊は三機の戦闘機械によって全滅した

 

 

 

 

 

その日の夜、無事に作戦を終えた235部隊とスピアヘッド戦隊は宿舎に戻って各々好きな時間を過ごしていた。そんな中、リチャードはビートルに乗り込み、報告をしていた

 

「・・・という感じでサンマグノリア共和国はエイティシックスと呼ばれる元々サンマグノリア共和国に住んでいた有色種を強制収容所に収容し、ジャガーノートと呼ばれる欠陥機を無理矢理使ってレギオンとの戦闘を行っているようです」

 

「何と!」

 

「そんな事が!?」

 

「実に遺憾だ」

 

「これは協議すべき事案だ!」

 

などと言って少し荒れた様子となった会議室をトーマスが宥めた

 

「というような報告でありましたが。取り敢えず言えることは政府としてエイティシックスは看過できない事柄であります。よって此処にエイティシックスに対する有効な手段を考えたいと思います」

 

そう言ってトーマスは会議を順調に進め、会議自体は2時間ほどで終わった

 

 

 

 

「ふぅ、取り敢えず会議は何とか叔父上が収めてくださった。しかし、この後の政府討論会議では揉めるだろうな」

 

そう言ってビートルを降りるとジルが下で待っていた

 

「ジル、みんなは何処にいったんだ?」

 

「みんなは中でゆっくりしています。私のやっていたゲームに夢中になっています」

 

「そうか・・・じゃあ僕たちも行こうか」

 

「はい、兄上」

 

そう言って二人は宿舎へと向かっていった

 

 

 

 

 

「おい!次は俺だろ!」

 

「まだ終わってないもん!」

 

「それ三回目だろうが!!」

 

「こらこら喧嘩しない」

 

宿舎の中ではクレナがジルから借りた端末を使ってゲームをしていたがダイヤがなかなか順番が回って来ないのでクレナの端末を取ろうとしていた

 

「あはは・・・よっぽど気に入っているみたいだね」

 

「そうみたいだな」

 

「あ、ジル!ちょっとダイヤを止めてよ」

 

「そうだジル、こいつがなかなか貸してくれないんだ。そっちから言ってくれよ」

 

「はいはい、分かったからちょっと待ってて」

 

そう言ってジルは自分の機体からもう一つ端末を持ってくるとそれをダイヤに貸した

 

「はい、これでいいでしょ?」

 

「ありがと〜、ジル」

 

そういっれダイヤはゲームをやり始めた

 

「ねえねえ、アルガニアだとこう言うのは普通なの?」

 

そう言ってアンジュが聞いてきた

 

「ええ、そうだよ。連邦だと暇な時間は結構そう言う端末ゲームしている事が多いよ」

 

「「へぇ〜」」

 

「他にもゲームセンターなんていうそれよりも大きなゲーム機械があったりする場所とか海水浴場なんかもあるよ」

 

「海水浴場か・・・共和国って内陸だから海がないんだよねぇ」

 

「ああ、確かに」

 

「そもそも海水浴場に行った事がない」

 

「それは言えてる」

 

そう言ってスピアヘッド戦隊と235部隊は楽しい時間を過ごしていた



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

窮地

リチャード達がスピアヘッド戦隊に来てから数週間が経ったある日、ジルはビートルの上で寝そべっていた

 

「あー、暇だなー。ゲーム持ってかれちゃったし。何しようかな」

 

そう言ってのんびりしていると、本国の方の通信機から連絡があった

 

「どうされましたか。中将殿」

 

「叔父でいい、ジル喜べ北西戦線の戦闘が終わったぞ」

 

「本当ですか!!」

 

「ああ本当だ、第三方面軍がレギオンの最後の部隊を倒し、第四方面軍が北西方面の地域の占領をおこなっている。そしてギアーデ帝国領に進撃をしている」

 

「そうですか、今兄上は居ませんので後で伝えておきます」

 

「よろしく頼んだぞ。それで北西戦線が終わったことで第三方面軍が北部戦線に加わることになった」

 

「そうですか、ではその事も兄上に伝えておきます」

 

「ああ、じゃあ通信を切ってもいいか。そこら辺はまだ妨害電波が強いのでな」

 

「はい、大丈夫です」

 

そう言うと通信が切れた。するとジルはすぐさま宿舎に居るリチャードに先ほどのことを伝えるとリチャードも喜び、他のメンバーも同じ様に喜び、その日は終わった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の日、リチャード達は密林地帯で戦闘を行なっていた。リチャード達が加わってからスピアヘッド戦隊は撃破率と生存率は格段に良くなっていた

 

「おー、相変わらずいっぱいいるねー」

 

そう言って空を埋め尽くすほどのアインタークスフリーゲを見てジルがそう言うと

 

「じゃあ、撃ち落とすから目瞑っててよ」

 

「「了解」」

 

そう言うとリチャードは砲身を上にあげて砲弾を放った

 

「特殊気化弾発射」

 

ドォォン!!

 

発射をし、上空に砲弾が向かうと閃光と共にアインタークスフリーゲは消し飛んでいた

 

「おー、相変わらず派手だな」

 

「空が綺麗になったわね」

 

「明るいわ」

 

「レーダー回復、敵の総数、種類。全てわかりましたポイント478で迎撃して下さい」

 

「アンダーテイガー、了解しました」

 

「よし、それじゃあ始めますか」

 

そう言ってジルは操縦桿を持つと偵察のために走り始めた。235部隊の参戦でレーナの仕事は部品と弾薬の補給を効率的に行うのが仕事となっていた。地図の制作に関してもミルの地形把握で細かく知ることができた、そしてレーナはアルガニア連邦の科学力に舌を巻いた

 

「アンダーテイガー、ガンスリンガーにコブラ。配置についたよ」

 

「ラフィングフォックスよりアンダーテイガー、第三小隊も同じく」

 

「46式よりアンダーテイガー。こちらも配置完了」

 

そう言って配置が完了するとレーナは

 

「アンダーテイガー、ガンスリンガーとコブラ改弐型の配置をガンスリンガーから三時方向距離500に移動して下さい。そこからだと隠れますが高台があるはずです。稜線射撃になりますし射線が広がると思います」

 

そう言ってレーナは昨日見つけた過去の地図とミルから送られてきた資料を元にセシルとクレナに指示を出した

 

「確認します。ガンスリンガー、コブラ弐型。その位置から見えるか?」

 

「待って、十秒ちょうだい・・・うん、確かにある。移動するよ」

 

「こちらも確認した、ガンスリンガーに続きます」

 

「主攻である第一小隊とはほぼ逆の位置取りになります。錯乱からの各個撃破に際し、戦闘序盤の反対位置の欺瞞にも繋がるかと・・・」

 

「やけに地形に詳しいな。又地図を見つけたのか?」

 

「ええ、後で転送しましょうか?」

 

「いいのか、敵性市民や他国に軍事機密の地図なんか渡して」

 

ライデンがそう言うとレーナはキッパリと言った

 

「大丈夫です。最悪バレてもいくらか積めば見逃してもらえます。むしろアルガニア連邦の科学力に舌を巻いたくらいです」

 

「oh・・・札束ビンタですかい」

 

そう言ってリチャード達は共和国の内情を聞いた時のことを思い出していた。共和国出身でレーナと同じ白銀種のジャスミンが盛大なため息を吐き

 

「やっぱりお母さんの言った通り、上は馬鹿しかいないのね」

 

そう吐き捨てるとリチャード達の無ならずシン達も苦笑いをしていた事を思い出していた。すると偵察をしていたジルから報告が上がった

 

「コルーチクより報告。間も無く敵射程圏内、砲撃用意」

 

「了解した・・・撃て」

 

ドドドドドォォォン!!!

 

シンの号令と共に砲撃が開始された

 

「よし、今ので殆どやれたぞ」

 

「では第四小隊は戦車型を叩く」

 

「戦車型?・・・っ!キルシュブルーテ、そっちはダメです!!」

 

「え?」

 

そう言った瞬間であった。カイエの乗る機体は湿地の泥にはまってしまった

 

「っ・・・湿地!?」

 

そしてシンはあることに気づいた

 

「カイエ!そこから直ぐにに離れろ!!」

 

「え・・・あ・・・」

 

そう言ってカイエの目の前には戦車型が立っていた。まるで獲物を見るけたときの虎のように

 

「嫌だ・・・・・死にたくない」

 

そして戦車型はゆっくり動き、近づいてきた

 

「死にたくない・・・死にたくない」

 

そう願いながらも近づいてくる戦車型に絶望をした。そして、戦車型が腕を上げた時だった

 

ドンッ!バァァァァン!!

 

砲撃音がしたと思うと目の前にいた戦車型は撃破され、沈黙をしていた

 

「あれ・・・え・・・私、生きている」

 

カイエは自分が生きていることに驚くと共に通信が入って

 

「カイエ!大丈夫!!」

 

「カイエ、無事か?」

 

「え、ええ。大丈夫、こちらキルシュブルーテ。何とか無事です」

 

「良かった・・・」

 

「安心したぜ・・・」

 

そう言って安心している中、カイエの近くに一機のコブラが近づいた。声の主はジョージであった

 

「カイエ、大丈夫かい?」

 

「ええ、だけど抜け出すのは難しいわ」

 

「分かった。取り敢えず引っ張るから」

 

そう言ってコブラに付いているウインチランチャーでカイエの機体を括り付けると沼地から引っ張り上げた

 

「ほいよ、ちょっと壊れたかも知れないけど。近くにレギオンがいる、気を緩めるな」

 

「あ、ああ」

 

そう言ってカイエは自分を助けたジョージに何とも言えない感情が湧いた。そしてその後、戦隊は大勢を立て直し、レギオン部隊の殲滅を行った

 

 

 

 

 

その日の夜、スピアヘッド宿舎ではカイエを助けたジョージが賞賛を受けていた

 

「よくやったなぁ!」

 

「ありがとうな!」

 

「いや、お礼ならミリーゼ少佐に言ってくれ」

 

「「!?」」

 

しかしジョージの言葉にスピアヘッド戦隊は驚きの声に変わった

 

「あの時、ミリーゼ少佐が言ってくれなかったら俺はカイエの事を気づけなかったんだ」

 

「そ、そんな事・・・ありません・・・私はただ気づいた事を言っただけで・・・」

 

そう言って恥ずかしそうに言った

 

「おや、少佐はこういう雰囲気は慣れていないみたいだね」

 

「クァwせdrftgyふじこlp!!!」

 

ジルに突然言われたことにレーナは言葉にならないような声で何かを言っていた。それを聞いていたスピアヘッド戦隊のメンバーは少し笑っていた

 

「ははっ、これは面白かった」

 

そうライデンが言うとジョージは

 

「だから少佐にはあの時のことを感謝させてほしい。ありがとう」

 

そう言うとレーナは恥ずかしそうに

 

「わ、私には・・・これくらいしか出来ませんから・・・」

 

そう言っているとリチャードはスピアヘッド戦隊のメンバーと少佐の距離が近づいていると思った

 

『こんな状況もあるんだな。やっぱりミリーゼ少佐は指揮官としていい人物かもしれないな。是非会ってみたいものだ』

 

そう思いながらリチャードはビートルから取り出したジュースをこっそり飲んでいた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カイエが窮地に陥った戦闘から数日が経過した。その日、リチャード達235部隊は偵察のために外に出ていた

 

「うーん、反方はないか・・・」

 

そう言ってジルの偵察とミルのレーダーでレギオンを確認していた時だった。突如パラレイドからレーナの声が聞こえた

 

「235部隊、聞こえますか?」

 

「はいはい、感度良好」

 

するとレーナは深刻そうな声色で

 

「・・・実は話さなければいけない事があります」

 

そう言ってレーナはある事を話した



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

急襲

レーナから通信を受け取ったリチャード達は衝撃の話を聞いた

 

「共和国軍があなた達の有人機体を盗み、あなた達を抹殺しようとしています」

 

そう言うとリチャード達は落ち着いた様子で返事をした

 

「へぇ〜」

 

「そうなんだ」

 

「それ言っても大丈夫なの?軍規違反にならない?」

 

そう言った焦った雰囲気がないことにレーナは驚いていた

 

「焦らないのですか?」

 

そう言うとリチャードは

 

「いや、そのくらいは想定していたよ。共和国の現状を見てアルガニア連邦の技術力は喉から手が出る程欲しいだろうからね。それにあの機体は君達には動かせないさ」

 

「何故ですか?」

 

「それはね・・・」

 

そう言ってリチャードが動かせない理由を言うとレーナは納得した表情であった

 

「成程、それだったら確かに動かせませんね」

 

「でしょ、だから盗もうとするなんて無理なのさ」

 

「でも、あなた達はどうするんですか?」

 

そう言うとリチャードは

 

「なに、策なら色々あるさ」

 

そう言って偵察から帰ったリチャード達は早速何かを部屋で作っていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日の夜中、スピアヘッド宿舎の端では数人の集団が集まっていた

 

「クソッ!どうして俺らがこんな所に」

 

「落ち着け、俺らの任務はアルガニア連邦の装備の奪取と人員の抹殺だ。それを忘れるな、行くぞ」

 

そう言って宿舎と格納庫に行く部隊と二つに分かれると宿舎の部隊は部屋で寝ているリチャード達を確認するとこっそり窓を開け、全員が配置につくと一斉にベットにナイフを刺した。しかし、刺した途端部屋に何かが転がってきて爆発をすると眩い閃光が共和国の集団を襲った

 

「グア!」

 

「ま、眩しい!」

 

その瞬間であった、部屋に入ってきた六人全員はリチャード達によって全員が倒された

 

「よし、取り敢えず襲ってきた馬鹿者達はこれで終わりかな?」

 

「ええ、これで終わりね。全く、なに馬鹿なことしているのやら」

 

そう言って呆れていると騒ぎを聞きつけたシン達が降りてきた

 

「どうした・・・これは?」

 

「ああ、ちょっと汚物を消毒に・・・」

 

「大丈夫・・・ってどうして白豚が!?」

 

「何よ夜中に騒いで、レギオンの襲来?」

 

そう言って出てきた面々は倒れている白銀種の身包みを剥いだ後、ロープで縛り上げた

 

「ローズ・アンリテット少尉・・・共和国軍軍司令部直属部隊所属・・・か」

 

「リチャード、こいつらどうする?炙ってもいいか?」

 

「やめとけ、こいつらには・・・炙るよりも怖い事をさせるだけだ」

 

そう言ってリチャードの”イイ笑み”を浮かべながら言った言葉にセオはとてつもない恐怖を感じた。するとリチャードはスピアヘッド戦隊の全員を集めると

 

「ああ、さっきの事なんだけどごめんね。まず最初に言っておく、このことはミリーゼ少佐は一切関わっていない。だから少佐は信用できる人物だと言う事、だから嫌いにならないでほしい。このことはミリーゼ少佐が最初に教えてくれた事なんだ」

 

そう言ってリチャードは先程、共和国軍の急襲を受けた事を話した。当然、スピアヘッド戦隊のメンバーは白銀種の事を悪く言っていたが、意外にもレーナに対する悪評が無かった事に驚いたがリチャードは

 

「取り敢えず、この馬鹿どもは猿轡にして放っておこう。問題は機体だ、汚れていないといいけど・・・」

 

そう言ってリチャード達は格納庫にある235部隊の機体のハッチを開けると、そこに手足を拘束され頭にはリチャード達が戦闘時に付けているヘッドマウントディスプレイのような物が取り付けられ、口から軽く血が出ている白銀種の遺体であった

 

「あーあ、言わんこっちゃない。そっちはどう?」

 

「うーん、こっちも同じく。白目剥いているよ」

 

「そりゃそうか・・・取り敢えず、運び出して朝に考えようか」

 

そう言ってコックピットから遺体を取り出し、下に置くとリチャード達は眠りについた

 

 

 

 

 

朝になり、リチャード達はパラレイドでレーナに通信をとった

 

「ミリーゼ少佐、昨晩襲撃した白銀種のメンバーは六名拘束、もう六名は機体の安全セキュリティに引っかかり全員感電死しました」

 

「そうですか・・・申し訳ありません。私からも何回も言っているのですが・・・」

 

そう言ってレーナが申し訳なさそうに言うと

 

「大丈夫です、こっちの人的被害はありませんでしたし。むしろ安全装置の威力がわかりました。一応、いつ来るか分からないですが本国には報告はさせてもらいます。それと遺体の方は一応遺体袋に入れておきました」

 

「そうですか・・・」

 

「・・・少佐、同じ階級ですのでリチャードでいいですよ。その方が話しやすいでしょうし」

 

「それじゃあ、私もレーナと言って下さい・・・リチャード、今回の一件で連邦政府はどう出るとお考えですか」

 

そう言うとリチャードは少し考えて

 

「・・・おそらく、報告を受けたら連邦は激怒するでしょうね。上官が抑えてくれるとは思いますが・・・いつまで持つか・・・」

 

「侵攻・・・ですか?」

 

そう言うとリチャードは溜息をつきながら

 

「はい、そうなると思います」

 

「はぁ、最悪ですね」

 

「でも、侵攻もレギオンが片付いてからでしょうね」

 

「それでも十分最悪です。寿命が少し伸びただけですから」

 

「でも、連邦はもうすぐ周辺のレギオンの掃討を終わらせるでしょう。そうなったら共和国に侵攻するかも知れません」

 

「さすがはギアーデ帝国より優れた科学力を持った国ですね」

 

「あまり褒められたものではありませんね」

 

そう言ってりは頭を掻くと

 

「もしかすると帰還命令が来るかもしれません」

 

「そうなったら・・・寂しくなりますね・・・」

 

そう言って二人は話していた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同じ頃、アルガニア連邦幕僚会議では報告が行われていた

 

「・・・と言うことで先のユジーエ山脈要塞に砲撃されたクレーターの原因は新型レギオンと思われる機体が砲撃したものと思われます。射程距離は推定400km 口径は推定800mm。射程距離を除けば『ケラウノス』と同等の威力と思われます」

 

「ケラウノスか・・・」

 

「前線を押されたらキツイな。砲撃が飛んで来るかもしれない」

 

「少なくとも、北西のアブラニア州の殆どが射程圏内だぞ」

 

「どうする、一旦避難させるか?」

 

「だがあそこはギアーデ連邦との国境があるぞ」

 

そう言って幕僚達が意見を言っている中、トーマス・スミスは質問をした

 

「・・・すまないが、その新型レギオンとやらの砲弾は今までに何発撃ち込まれた」

 

そう言うと報告官は

 

「はい、今までに砲撃された数は丁度40発。いずれも一日に2発ずつ、山脈に打ち続けています。今のところ軽傷者しかおりませんが、このままだと山脈全体にダメージが響いていますので重傷者が出始めるかもしれません」

 

「そうなるまでの時間は?」

 

トーマスがそう聞くと

 

「このままの量で撃たれていればあと四年ほど、倍の量で撃たれれば三年ほどかと・・・」

 

そう言うと幕僚達は唸り声をあげていた。するとトーマスはさらに質問をした

 

「そのモルフォの予想発射地点は何処だ?」

 

「恐らく、ケラウノスと同じ威力と考えますと山脈にできたクレーターの大きさからして、レギオン支配域の奥地の此処と推定されています」

 

そう言って報告官が指した場所はレギオン支配域の中心部の旧ギアーデ帝国の都市であった

 

「本当に真ん中だな」

 

「だがどうする、あそこまで行くのに何層ものレギオン部隊の突破をしなければならないぞ」

 

「空軍があそこでは使えない・・・内陸だから海軍も使えない・・・とすると陸軍での進軍となりますが・・・」

 

「ギアーデ連邦からは連合軍を結成し、レギオン部隊の注意を引いているうちに少数人数の部隊を潜り込ませることを提案してきましたが・・・」

 

「しかし正確な位置がわからない限り突入させるのは危険なのでは?」

 

そう言って会議が難航を示した頃、会議室にある通信が入った

 

ザザッ・・「こちら第235特務部隊、こちら第235特務部隊。緊急連絡をしに参りました」

 

「リチャード・スミス少佐か。こちらレナ・ナハート大将だ」

 

「大将閣下でありますか!」

 

「ああ、そうだ。それよりもリチャードくん、緊急の用とは何だね」

 

そう聞くとリチャードから驚きの報告だった

 

「昨晩、我が235特務部隊はサンマグノリア共和国軍の急襲を受けました」

 

この報告に幕僚達は驚きと怒りの声が上がった




兵器紹介
ケラウノス
武装
42年式5口径800mm電磁加速速射砲 一門
40mm対空バルカン砲 十門
25口径150mm高射砲 八門

大きさ
全長:52m
全幅:7.1m
全高:12.4m

最大射程
射程720km(通常弾頭)550km(特殊気化弾)

国内にある列車砲の中で最大級の電磁加速砲。元々は連邦各州に二基ずつ配備されていたが新型の列車砲の投入により殆どが首都に集まり、十二基あるうちの八基が首都を囲う様に配備されている。射程が長いので首都から600km離れた北部戦線と東部戦線に砲弾を放っている。高出力の電源が必要なので列車砲用にトリウム核融合炉が設置されている。名前はギリシャ神話の神の持っている武器から来ている。見た目は列車砲ドーラ


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

撤退指示

幕僚会議で山脈要塞に撃ち込まれていたモルフォと呼ばれるレギオンについて話し合っている頃、リチャードの緊急報告を受けた

 

「昨晩、我が第235特務部隊はサンマグノリア共和国軍の急襲を受けました」

 

その報告に幕僚会議は騒然とした雰囲気に包まれた

 

「なんだと!?」

 

「そんな事が許されると思っているのか!?」

 

「これは十分抗議する案件だ、大体我が国の兵器を盗もうなど・・・」

 

そう言って騒然とした雰囲気をレナ・ナハート大将は宥めて、リチャードに詳しい経緯を聞いた

 

「はい、まず初めにサンマグノリア共和国の士官から内部告発という形で報告を受けました。それで確認と準備をしたのち、その日の夜にサンマグノリア共和国軍の急襲を受けました」

 

「それで、結果はどうなった」

 

そう聞くとリチャードは淡々と言った

 

「急襲した十二人のうち、六名を拘束。また残りの六名は機体内でセキュリティーに引っかかり全員感電死しました」

 

「そうか・・・」

 

そうすると他の幕僚達から

 

「そんな所に部隊を置いておくわけにはいかない。即時撤退だ!」

 

「そうだ、そんな急襲をして我が国の兵器を盗もうなどと考える国は直ぐに撤退した方が身のためだ」

 

と言って第235特務部隊の即時撤退を進言した。そんな中、レナ・ナハート大将は少し考えると

 

「・・・たしかに、サンマグノリア共和国の実態と生存は確認した」

 

「では」

 

「ああ、私から第235特務部隊のサンマグノリア共和国からの撤退指示をする」

 

そう言うとリチャードは

 

「・・・分かりました。では準備が出来次第、即座に撤退をします」

 

「ああ、出来れば早めに来てくれ。帰ってきたら報告がある」

 

「了解しました」

 

そう言ってリチャードからの通信が切れた

 

「・・・さて、かなり長引いてしまいましたな。少し此処らで休憩を取りたいと思います」

 

そう言って幕僚会議は少しの休憩に入った。結局、この幕僚会議は公式記録では過去最長の16時間と言う長丁場の会議となった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

通信を切ったリチャードはビートルから降りると早速235部隊のメンバーを集めた

 

「隊長、どうしましたか?」

 

「ああ、早速だが・・・本国から帰還命令が出た」

 

「そうですか・・・」

 

「やっぱりあんな事があってはねぇ」

 

「いつ出発ですか?」

 

「早く帰ってきてほしいと言っていたから・・・大体夕方くらいには出たいと思う」

 

「分かりました、取り敢えずシン達には伝えておきましょうか」

 

「ああ、そうしてくれ」

 

そう言うとそれぞれお世話になった場所に行って此処を出ていくことを話した。するとやはりスピアヘッドのメンバーは残念がってはいたが昨晩の事件で止めるものはいなかった

 

「そうか・・・帰ってしまうのか・・・」

 

「まぁ、無事に帰れるとはわからないけどね」

 

「まぁ、でも寂しくはなるな」

 

そう言って他のメンバーと別れを言うとジルはクレナとダイヤの所に向かった

 

「じゃあジルからゲームも借りられないか・・・」

 

「そうだな、まあ楽しかったぜ。ありがとな」

 

そう言うとジルは何かを考えた顔でクレナに端末を渡した

 

「これは?」

 

「ゲームの入った端末、あげるから使って」

 

「いいの?私たちはどうせ・・・」

 

するとジルはクレナの言葉を遮る形で

 

「いいの、その代わり死ぬまでこれで遊んでて。それがこれを渡す条件よ」

 

そう言うとクレナとダイヤはお礼をして別れの挨拶をした。同じ頃、リチャードはシンとライデンのいる部屋に入っていた

 

「そうか・・・」

 

「もうちょっと言葉ってのがあるだろ、シン・・まぁ、短かったけどありがとよ」

 

「ああ、こっちもありがとう」

 

するとリチャードは部屋を去る直前、シン達に聞いた

 

「なぁ、シン・・・連邦に亡命する気はないか?」

 

「「・・・」」

 

リチャードの意見にシン達は少し間を置くと返事をした

 

「・・・有難いが、お断りさせてもらう」

 

「何故?君たちはこの生活を続けて居られるのかい?まともな教育も受けないで無理やり戦争をさせられて、死んでしまうのに・・・本当に良いのかい?」

 

「ああ、構わない」

 

「・・・そうか・・・ありがとう。分かったよ。じゃあ、今までありがとう」

 

そう言うとリチャードは部屋を後にした。この時、リチャードの表情がどんなものだったのか。シン達は分からなかった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして他の面々もそれぞれお別れの挨拶をし、リチャード達は各々準備をしていた時だった。リチャードのいるビートルの所にシンがやってきた

 

「あれ?シン、どうしたの?」

 

そう言うとシンは無言で一枚の紙を渡した

 

「これは?」

 

「・・・今までの礼だ」

 

そう言って渡された紙を見ると其処にはレギオンの羊飼いや黒羊の事が書かれていた

 

「・・・ありがとう、活用させてもらうよ」

 

紙を貰った事にリチャードは感謝をするとシンは何も言わずに去って行った

 

「・・・ありがとう・・・シン」

 

去って行くシンを見たリチャードは紙をビートル内にある金庫に入れるとそこにライデンがやってきた

 

「珍しいな、アイツがあんな事をするなんて。まぁ、アイツなりの感謝なんだろうな」

 

「そうなのかい?」

 

リチャードがそう言うとライデンは少し嬉しそうに言った

 

「ああ、アイツがそんな事をするなんて思っていなかった。それだけシンにとってリチャードは話せる友人と言えたんだろうな」

 

そう言うとライデンは

 

「ありがとよ」

 

それだけ言うと去って行った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そしてリチャード達の準備が終わるとリチャード達の見送りにスピアヘッド戦隊のメンバーが来ていた

 

「いよいよ戦場か・・・気を抜くなよ」

 

「ええ、分かっているわ」

 

「楽しかったなぁ」

 

「色々と面白い場所だった」

 

「また会えると良いな」

 

「いつか会えるわよ」

 

そう言うとリチャード達は戦闘機械を起動させると一台ずつ動き出した。それを見送るスピアヘッド戦隊、そしてビートルの後ろのハッチからジルが顔を出して手を振るとスピアヘッド戦隊のメンバーも同じように手を振って見送っていた。そんな中シンも少し微笑むと他のスピアヘッド戦隊のメンバーと同じ様に手を振っていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

リチャード達第235特務部隊は基地を出ると夜の月に照らされた平原を猛スピードで進んでいた

 

「あ〜あ、帰還か・・・」

 

「仕方ないわよ、あんな事があったら」

 

「それに連絡をした後に直ぐに帰って来いって言ってたからね」

 

「中将がですか?」

 

「いや、大将」

 

「「大将閣下!?」」

 

その言葉に235特務部隊のメンバーはとても驚いていた

 

「大将閣下に連絡をしたんですか!?」

 

「いや、丁度通信をしたら幕僚会議をしていたんだ」

 

「ああ、そう言う事ですか」

 

「ああ、あの後の会議は相当荒れただろうな」

 

「ははっ、元々うちの部隊を作るときでさえ揉めたらしいからね」

 

そう言って235特務部隊は笑い合っていると上空に巨大な影が見えた

 

「お、もう来たのか」

 

「早かったですね」

 

「そうだな」

 

そう言って巨大な影の正体である空中艦が地上近くに降り立つと下のタラップが降りるとそこに235特務部隊はタラップを伝って艦内に乗って行った

 

「「お疲れ様です!」」

 

そう言って艦内に乗り込んだリチャード達は艦内の乗員から挨拶を受けた

 

「ああ、ありがとう。艦長は?」

 

すると一人の兵士が

 

「は!こちらに」

 

そう言って兵士がリチャードを連れて艦長室と書かれた部屋に連れて行くと部屋に通された

 

「第235特務部隊隊長リチャード・スミス少佐。只今特務任務より緊急帰還致しました!」

 

そう言うと空中艦の艦長は

 

「ああ、ありがとう。報告は聞いている、本国に着くまでゆっくりしていると良い。今は出発してユジーエ山脈要塞上空を通っているところだ」

 

「有難うございます」

 

そう言うとリチャードは艦長室を出るとそのまま他のメンバーのいる駆逐艦の兵員室に向かった

 

「みんなは・・・寝てしまったか」

 

そう言って兵員室でぐっすり寝てしまっているジルを見てリチャードは頭を優しく撫でていた。するとジルは寝言で

 

「うーん・・・クレア・・・」

 

そう言った事にリチャードは内心嬉しかった

 

『母上が亡くなってからいつも自分から離れなかった妹がこうして友達を作れたとは・・・嬉しいな』

 

そう思うとリチャードも睡眠についた



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

アルガニア連邦編
帰還


空中艦に回収されてから一日が経った、リチャード達を乗せた駆逐艦はアルガニア連邦首都『サン・デ・レグリアレスタ』の空中艦隊地上基地に到着した

 

「着いた〜!!」

 

「やっぱり艦の中は狭いねぇ〜」

 

そう言ってジャスが伸びをしながら駆逐艦を降りてくると出迎えにジルとリチャードの叔父であるトーマス・スミスが来ていた

 

「ジル、リチャード」

 

「叔父上・・・第235特務部隊は只今特務任務より帰還しました」

 

「ああ、お疲れ様。さあ、早速だが本部に来てくれ。閣僚達が話を聞きたがっている。それと、パラレイドは回収させてもらうぞ」

 

「「はっ!」」

 

そう言って三人は基地の前に泊まっていた車に乗り込むとそのまま車はアルガニア連邦大統領府に向かった

 

 

 

 

 

 

「リチャード・スミス少佐、ただいま参りました」

 

「同じくジル・スミス大尉、ただいま参りました」

 

そう言ってトーマスについて行くとそのまま二人は第一会議室と書かれた部屋に入った。そこには大統領と他の五州の知事が集まっていた

 

「いきなり呼び出してすまない。早速だが詳しい話を聞かせてくれ」

 

「「はっ!」」

 

そう言って二人はサンマグノリア共和国で起こっている実態とエイティシックスの事を事細かに話した

 

「・・・成程、有色種を排除して使い捨ての駒扱い・・・か」

 

「民主主義国家としてはありえん事だ!」

 

「我がアージリア州は大統領府にサンマグノリア共和国に居るエイティシックスの救助を進言します!!」

 

「ユーロテック州も同じ意見だ」

 

そう言って報告を聞いて少し荒れた会議室を大統領が抑えた

 

「取り敢えず状況は理解した。我々は民主主義を掲げる国家としてサンマグノリア共和国の実態は見過ごせない物である。取り敢えずリチャード少佐とジル大尉は下がって貰って下さい」

 

そう言うと二人は部屋を後にした

 

 

 

 

 

会議室から出た二人はそのまま別室で待機していたトーマスと合流をしてそのまま二人が住んでいるトーマスの自宅へと向かった

 

「あら、お帰りなさい」

 

「帰りました、叔母上」

 

「ふふっ、叔母さんでいいわよ」

 

「いえ、育ててくれた恩がありますので」

 

「そうね、でもまずはお姉様達に挨拶してらっしゃい」

 

「はい・・・」

 

そう言うと二人は花屋で花を買い、小高い丘にある墓地へと向かった

 

「只今。お母さん、お父さん」

 

「今回も無事に帰ってこれました」

 

そう言って買ってきた花を墓石に手向け、手を合わせた。墓跡には『レン・スミス』と『トミー・スミス』と書かれていた

 

『母上と父上が亡くなってからもう八年か・・・』

 

そう思ってリチャードはレギオンの襲撃で亡くなった父と母を思い出していた。その時、トーマスの家に遊びにに来ていたリチャード達はレギオンの襲撃に合わなかったが両親の遺体はレギオンの砲撃で落ちてきた瓦礫に押し潰される形で亡くなっていた。そして母は"首から上が無くなった状態で死亡が確認された"。両親が亡くなった時、二人は両親が亡くなった事の意味が分からずその意味を理解したのは二年後のことであった

 

「・・・さあ、行こうか」

 

「はい、兄上」

 

そう言って二人は墓地を後にした

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

墓地を後にし、トーマス邸に帰ってきたリチャード達はトーマスから今後の予定を聞かされた

 

「取り敢えず第235特務部隊の次の任務はユジーエ山脈要塞ユーロテック方面の警備だ、ジルにはすまないが『コルーチク改壱型』に乗ってもらう」

 

「壱型・・・と言うことはバッテリー容量が増えたあれですか?」

 

「ああ、ジルは嬉しいだろ」

 

「はい、コルーチクの欠点が解消されるのは嬉しいことです」

 

そう言って内心とても喜んでいるジルを見てトーマスは今度はリチャードの方を向き

 

「リチャード、君も同様に『ビートル改弍型』に乗ってもらう」

 

「分かりました、明日に基地に行って確認してきます」

 

「別に明後日でも良いんじゃないのか?」

 

「いえ、特に予定もありませんし。明日向かいたいと思います、それで良いかい?ジル」

 

「はい、大丈夫です!!」

 

そう言って少し興奮気味のジルを見てリチャードとトーマスはいつも通り元気だと思うとその日は興奮するジルを抑えるのに少し苦労した

 

 

 

 

 

 

 

次の日、連邦軍サン・デ・レグリアレスタ総合基地に出向いた。そこには無数の戦闘機械と無数の航空機に数隻の空中艦隊ジョージア級駆逐艦が停泊をしていた

 

「相変わらず大きいですね、兄上」

 

「ああ、だけどまずは新しい機体を見て行くよ」

 

「はい」

 

そう言って多数の軍人が行き交っているがその中で唯一二十歳に満たしていないリチャード達は基地の中でも目立っていた

 

「・・・早く行くぞ」

 

「はい、兄上」

 

そう言って二人は第235特務部隊の拠点となっている基地の一角にある部屋に入ると、そこには既にスミス兄妹以外のメンバーが寛いでいた

 

「あ、隊長。休暇は明後日までじゃないんですか?」

 

「ああ、ちょっと新しい機体が来るらしい。それを見にな」

 

「「そうなんですか!?」」

 

そう言って部隊メンバーは驚いていた

 

「ああ、その為に今日は来たんだ」

 

「じゃあついて行ってもイイですか?」

 

そうジョージが暇だったのでそう言うと他のメンバーも同じように付いてくる事になり、一行は外に出ると其処には輸送機Sa=65『グスタフ』から下ろされる駆逐艦の砲塔のような物がついた大型のビートルであった

 

「「おぉ!!」」

 

その砲塔の大きさにメンバーは驚きながら下ろされる新型ビートルを見ていた

 

「まさか連装砲とは・・・」

 

「しかも前の砲塔よりもどちらかと言うと空中艦の砲塔みたいね」

 

「まぁ、砲塔は駆逐艦のと同じらしいからな。しかし上にある88mm砲が何だかクマに見えないか?」

 

「あぁ、確かに」

 

「言われるとそう見えますね」

 

「クマか・・・」

 

そう言って新型ビートルに夢中になっていると後ろからさらに後ろから下ろされる機体を見てジルが興奮した様子で見ていた

 

「あ!私の新しい機体!」

 

「おぉ、あれが新しいコルーチクですか・・・」

 

「見た目はあまり変わらないんですね」

 

そう言って下ろされるコルーチクを見てメンバーは先ほどのビートルとは打って変わってあまり驚くような様子は無かった

 

「さぁ、早速動かそう。ジル、説明書は読んだかい?」

 

「勿論です。兄上」

 

そう言って二人は機体に乗り込むと早速機体の起動をした

 

「システムオールクリーン、起動準備良し、コルーチク改壱型、起動」

 

するとコルーチクのセンサーが起動し、正面のライトが光ると脚が浮き上がり脚が動いた

 

「おぉ、副長。変わった新しい機体はどうですか?」

 

「ええ、とても使いやすいわ」

 

そう言ってジルは前後に機体を動かすとハッチを開けてジルは満足そうに機体を降りた

 

「こっちは大丈夫そう。兄上の方も・・・大丈夫そうね」

 

そう言って新型ビートルを動かして周囲の兵士を湧き上がらせているのを見て安心した様子であった。するとジルは空を見ながら

 

「ふぅ、クレナ達は元気にしているかな・・・・」

 

「どうでしょう・・・きっと元気にしていますよ」

 

そう言って他のメンバーも同じように空を見て無事に過ごせている事を願った




兵器紹介
ビートル改弍型
武装
45口径203mm連装砲 一門
25口径88mm砲 二門
30mmバルカン砲 四門
ウインチランチャー 四門

ビートルの武装強化型。主砲が二連装となり、88mm砲が砲塔の上の前後に付いてそれを囲う様にバルカン砲がついている。砲塔のイメージは試作超重戦車ラーテ



コルーチク改壱型
武装
75口径88mmライフル砲 一門
7.7mm重機関銃 二問
ウインチランチャー 一門
電磁ブレード 二本

コルーチクの最大の欠点のバッテリー容量を大幅に増やし、緊急時には太陽光充電と回生ブレーキを使った発電もできる。なお、古くなった初期型コルーチクはアルガニア連邦とギアーデ連邦の国交樹立記念に設計図を贈った



ジョージア級駆逐艦
武装
主砲:45口径203mm連装電磁両用加速砲 八門(左舷二門、右舷二門、下部四門)
副砲:32連装ミサイルポッド 十六基(上部四基、左舷四基、右舷四基、下部四基)

主機
三十二年式反重力装置
四十四年式トリウム核融合炉

空中艦隊の中で第一世代に当たる初代空中駆逐艦、そして世界初の量産型空中艦。ビートル改弍型の主砲はこの艦艇のと同じ物

Sa=65『グスタフ』
連邦最大級の大型輸送機。元々はただの貨物機として開発されたものを軍用に改造したもの、最大積載量は200t。見た目はAn225ムリーヤ


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

再編成

新しい機体が来てから二ヶ月が経った、その間第235特務部隊はユジーエ山脈要塞で各部隊の救援のために動いていた。この日はユジーエ山脈要塞北部方面で発生したレギオン部隊の迎撃を行っていた

 

「こちら235特務部隊、侵攻してきたレギオン部隊の殲滅完了。その他の敵影は見当たりません」

 

「了解した、第235特務部隊は直ちに帰還し修理をされたし」

 

「235特務部隊了解した。これより帰還す」

 

そう言って通信が切れると235特務部隊はユジーエ山脈要塞にある基地に行くと235特務部隊は機体を降りた

 

「おぉ、随分と派手にやった様だな」

 

「いつもすいません」

 

「大丈夫だってよ、これくらいは慣れているさ」

 

そう言って帰ってきた機体を見て整備班長がそう言うとリチャードはそのまま機体を見ながら歩いていた、すると整備班長から

 

「ああ、そういえばさっきあんたに連絡があったよ。明後日に山脈鉄道に乗って本部に来いってよ」

 

「山脈鉄道・・・と言う事はビートルは持って行くんですか?」

 

「ああ、そういう風に貨物の手配もある」

 

「分かりました、あとはお願いしても良いですか?」

 

「おう、任せときな」

 

そう言うとリチャード達は基地の休憩室でゆっくりしていた

 

「はぁ、今日も雑魚ばっかりだったなぁ」

 

「仕方ないよ、ここら辺のレギオンは要塞砲で殆どやられるんだ。俺たちの仕事は取りこぼしの制圧だけだな」

 

「まだ東部戦線の方が良いわね」

 

「そうだな、あそこはレギオンがけっこう上陸して激しい戦いになるからな」

 

「それでも最近は取りこぼし戦闘になってきてたけどね」

 

「それもそうだな、それにシンのくれたあの情報で研究が行われている」

 

「ああ、亡霊の声ね。あんなのがずっと聴こえているなんてシンはよく気が滅入らなかったわね」

 

「本人は慣れたって言ってたけどね」

 

「いや、あれは慣れちゃダメなやつでしょ」

 

そう言ってシンの異能で話しているとリチャードはふと

 

「はぁ、シンはお兄さんの事。見つけられたのかな」

 

そう言ってシンが探しているシンの兄の取り込まれている機体の事を言うと

 

「見つけられているんじゃない」

 

「そうだな、レギオンは沢山いるからな。きっと出会っているだろ」

 

「シンの兄上はレギオンできっと苦しい思いをしているでしょうしね」

 

「早く成仏出来ると良いね」

 

「そうだな」

 

そう言って時だった、突如休憩室全体が地震が起こったかの様に揺れた

 

「なんだ!」

 

すると休憩室に整備班長が入ってくると

 

「新型レギオンの攻撃だ、お前達は山脈鉄道の駅に行け。機体はそこに置いてある、今直ぐ出て行ったほうがいい」

 

「でもここは大丈夫なんですか?」

 

「ああ、砲撃は一日二回だけだ。それに揺れはこれだけだ、だが工場にヒビが入るかもしれん直ぐに行け!!」

 

そう言うとリチャード達は揺れている中を山脈鉄道のホームに向かい、列車に乗り込むと貨物列車は長いトンネルを走り始めた

 

 

 

 

 

 

 

 

列車が走り出してから少しすると揺れはおさまっていたが、リチャード達はさっきの揺れがレギオンの攻撃であると言うことに驚きを受けた

 

「・・・まさか新型レギオンがあんな威力だったとは・・・」

 

「一応、首都からケラウノスが来るって言ってたけど・・・」

 

「そもそもケラウノスって山脈鉄道のトンネルに入るの?」

 

「ビートルはギリギリ入るように設計されているけど・・・」

 

「それでも複線運用だよね」

 

「ああ、だから山脈鉄道じゃあ一杯一杯の大きさなんだよなぁ」

 

「でもケラウノスって山脈の内側から高高度砲撃で砲撃するんでしょ?」

 

「ああ、これで北部戦線は大分押せるだろうな」

 

そう言うと山脈鉄道トンネル区間が終わり、外の景色と共に空高く聳える山脈の姿があった

 

「やっぱりあの山脈はいつ見ても大きいねぇ」

 

「確か9000mだっけ?」

 

セシルがそう言うとジャスが

 

「正確には9642m。大陸最高峰の山ね」

 

そう言ってユジーエ山脈で一番大きい山のユジーエ山をリチャード達は見ていた

 

「・・・レギオン達はここを超えて来たりするのかな?」

 

「さぁ、まだ分からないが。いずれ空を飛ぶレギオンが出てくるかもな」

 

「そうなったらここら辺も安全とは言えなくなりますね」

 

「そうだな・・・」

 

そう言って山脈鉄道は途中、駅で機関車の入れ替えを行うと専用の軍用軌道に乗り入れ、首都にある連邦軍本部まで列車は進んでいった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の日、首都に着いた部隊はリチャード以外はサン・デ・レグリアレスタ連邦軍総合基地に向かい、リチャードは一人連邦軍司令部のトーマスのいる部屋に入った

 

「失礼します」

 

「ああ、丁度良かった。リチャード、丁度軍で再編成がされていたんだ。これが新しい編成だ。お前ならきっと驚くだろうな」

 

「拝見させていただきます・・・っ!!??」

 

リチャードは紙に書かれていた言葉に言葉が出なかった。そこにはこう記されていた

 

『第二十四次連邦軍再編成要項

 

連邦軍司令部直属第235特務部隊隊長リチャード・スミスを連邦軍第476号法令に基づき以下の人物の階級を昇格し、該当部隊を再編成し連邦軍司令部直属部隊第32特別旅団とし、この旅団の旅団長に任命する。昇格する人員と併合する部隊に関しては以下の通りである

 

リチャード・スミス少佐→大佐

所属:連邦軍直属第32特別旅団 旅団長兼ビートル砲撃隊隊長

 

ジル・スミス大尉→中佐

所属:連邦軍直属第32特別旅団 副旅団長兼偵察部隊隊長

 

ジョージ・アンダーソン大尉→少佐

所属:連邦軍直属第32特別旅団 近接戦闘戦部隊隊長

 

セシル・シルバー大尉→少佐

所属:連邦軍直属第32特別旅団 遠距離砲撃部隊隊長

 

ルミエル・チェレンコフ少佐→中佐

所属:連邦軍直属第32特別旅団 情報収集部隊隊長

 

ジャスミン・レイ大尉→少佐

所属:連邦軍直属第32特別旅団 ミサイル攻撃部隊隊長

 

再編成該当部隊

 

第165特務部隊

第235特務部隊

第276特務部隊

第277特務部隊

第301特務部隊

 

以上を持って連邦軍第二十四次軍備再編成要項を終える。なお旅団は明日の正午から適応される

 

連邦軍総司令官ユーゴ・スラッド元帥』

 

紙を読み終えたリチャードは手が震えていた

 

「お、叔父上・・・これって・・・」

 

「ああ、そうだ。お前はもう旅団長だ」

 

「か、階級は・・・二階級昇進は戦死以外ではなかったはずでは?」

 

「それも特例だ、君たちが特務部隊の中では最古参の部類だ。だから君達が部隊の部隊長なんだ。それに他の特務部隊も同じ様に合併されている」

 

「そ、そうなんですね。じゃ、じゃあ新しい機体が早く来たのも・・・」

 

リチャードが震えながら言うと

 

「ああ、お前が旅団長になるからだ」

 

「・・・やっぱりそうですか・・・」

 

そう言ってリチャードはこれが夢ではない事を認識すると溜息を吐いた

 

「第32旅団はまだ新設されたばかりだ。だが実戦経験はどこの部隊よりもある」

 

「つまり、レギオン戦闘に慣れた部隊という事ですか?」

 

「そう言うことだ、この再編成で他の部隊も編成を行い一部は正規軍に入りそれぞれの方面軍に編入している」

 

「そうですか・・・」

 

「でもまずは顔合わせだ、メンバーは既に第六会議室にいる」

 

「分かりました」

 

そう言ってリチャードは部屋を出て第32旅団メンバーのいる会議室に向かった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日の夜、トーマス邸にてベットにダイブしたリチャードは明らかに疲れた様子であった

 

「お疲れ様です。兄上」

 

「あー、忙しかった」

 

そう言ってリチャードがベットで寝そべってゆっくりし、ジルが再び部屋に戻ってきた時にはリチャードはぐっすりと眠っていた。ジルはリチャードの隣に行くと

 

「兄上は立派です。お父様やお母様が亡くなった時でも私のことを心配してくれました。兄上が大佐になったのも当然だと思います」

 

ジルばそう言うと寝ているリチャードをじっと見て呟いた

 

「兄上、私は十分自分と見直すことができました。だからこれからは自分だけの人生を歩んでください。私はクレナという友人ができたんですから・・・」

 

そう言って今までジルは両親が亡くなった影響でリチャードから離れることができず今までリチャードなりの人生を歩ませられなかったことを謝すると部屋を出ていった。それは全てリチャードに聞かれているとも知らずに・・・



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

東部戦線

リチャードが第32旅団に配属されてから数週間が経った、その間にリチャード達は他の第32特別旅団のメンバーと挨拶をして演習場で合同訓練を行うとすぐさま任務が与えられた

 

「今度は東部戦線の応援ですか・・・全く、便利屋じゃないんだから・・・」

 

「まあまあ、そう文句を言うな。それだけ期待されていると言う事だ」

 

「取り敢えず、命令は判りました。すぐに向かいたいと思います」

 

「ああ、頼んだ」

 

そう言ってリチャードは部屋を出て行った

 

「・・・ふぅ、リチャードももう19になるか・・・兄に今の逞しい姿を見せたかったな・・・」

 

そう言ってトーマスは机の引き出しを引くと、そこには一枚の写真があった。そこには若い頃のリチャードにジルと二人に似た顔立ちをした翠緑種と青玉種の男女。その隣にいるのは若い姿をしたトーマスと妻のレイリーが映っていた。トーマスはその写真を手に取り、懐かしむ様に見るとそのまま写真を引き出しにしまった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

命令を受けた第32特別旅団は東部戦線の支援のために軍用貨物列車に乗っていた

 

「はぁ〜。貨物乗ってからどのくらい経った?」

 

「うーん、大体二日?」

 

すると旅団メンバーのジーク・ドリトンがそう言うとジルは文句を言った

 

「だからって北部戦線から東部戦線ってほとんど対角線の移動じゃん!!」

 

「そりゃ高速線を使っても三日の距離ですからね。でも軍規で連邦軍は取り違いを防止するために機体と共に行動するのが原則ですからね」

 

「面倒だなぁ」

 

そう言って貨物に繋がれている客車で文句を言っているジルを横目にリチャードは補給目録と命令を確認していたすると席の後ろから焔紅種の女性が顔を出した

 

「旅団長、何を見ているんですか?」

 

「ああ、ルルーか。ちょっと命令をね」

 

「ああ、今回は東部戦線の応援でしたね」

 

「ああ、東部戦線は連邦の中では拮抗しているところだからね。ちょっと地形を見ておこうかと、ミルは?」

 

「ああ、隊長なら寝ていますよ。ほら」

 

そう言ってルルーと呼ばれた女性が指さした方を見ると客車のベットで寝ているミルを見てリチャードは軽いため息を吐いた

 

「はぁ、ミルは相変わらずだな」

 

「ええ、でも隊長は先頭になると人が変わったかの様に動きますもんね」

 

「まぁ、いつもの事だがな」

 

そう言って寝ているミルを見てリチャードは見ていた端末を閉じた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の日、リチャード達第32特別旅団を乗せた貨物列車は無事に東部戦線最前線の駅に着くと止めてあった多脚戦車を下ろしていた

 

「何とか到着しましたね」

 

「ああ、三日間の列車の旅・・・か意外と短く感じたな」

 

「そうですね、兄上」

 

そう言って下されて行く多脚戦車を見てそう言うと二人の隣に軍服を着た白銀種の男性がやって来た

 

「遅れてしまった申し訳ありません」

 

「貴方は?」

 

「は、私はタロンガ要塞司令のヤン・ジェフ少将です」

 

そう言うと二人は敬礼をし、ヤンは早速東部戦線の詳しい状況を話した

 

「まずは戦況ですが・・・今のところ、タロンガ河を渡ってくるレギオンは第五方面軍と第四航空師団。第二、第三空中艦隊で抑えています」

 

するとリチャードは

 

「分かりました、では第32特別旅団は命令通り東部戦線タロンガ河第163守備隊の援護を行います」

 

「よろしくお願いします。あそこはレギオンの数は少ないですが守備隊しかいないのであそこを抜かれると一気に前線が崩壊する危険がありますので・・・」

 

そう言うとヤンは出来るだけ早く来て欲しいとだけ言うと去って行った

 

「・・・さぁ、荷物を下ろしたら行くよ」

 

「分かりました」

 

そう言って貨物から多脚戦車が下されると第32特別旅団は早速第163守備隊の応援に向かった

 

 

 

 

 

「お待ちしていましたリチャード大佐」

 

「今日からお世話になります」

 

「ええ、ここに戦車が来てくれるだけで指揮は上がりますよ。では此方へ」

 

そう言って第32特別旅団が案内されたのは少し古びた宿舎であった

 

「・・・なんかあの時を思い出すな」

 

「ええ、あそこにはお世話になったわね」

 

そう言って元第235特務部隊のメンバーはエイティシックスに保護をされていた時を思い出していた。するとメンバーの一人のジョンソン・カーターが寄って来て

 

「そう言えば隊長達ってサンマグノリア共和国に行っていたんですよね。どんな感じでした?」

 

そう言うと守備隊の中で共和国出身であった者達も同じようにリチャード達に聞いて来た。しかしリチャードは答えに悩んでいた

 

『うーん、どうしようかな。本当の事を言った方がいいかな。でもそれを聞くと確実に悲しむよね」

 

そう言ってリチャードは視線をジル達に向けると。目線で『本当の事を言っておいた方がいい』と語りかけていたので正直に話すことにした

 

 

 

 

 

 

 

 

 

サンマグノリア共和国の現状を聞いた守備隊の中でも古参と思われる人はやはり真実を知って悲しそうな表情を浮かべた

 

「そうか・・・有色種を・・・」

 

「隔離して無理矢理なんて・・・」

 

「あまりにも酷すぎる!!」

 

そう言って話を聞いたメンバーは怒っていた。そして守備隊の人達もサンマグノリア共和国の実態を知って怒るものといずれそうなるのではと思っていたと言うような表情をしたものと言った感じに分かれた

 

「・・・さぁ、水臭い話はやめだ。明日に備えるために寝るぞ」

 

そう言ってメンバーはそそくさと宿舎に入って明日に備えた

 

 

 

 

 

 

 

次の日、第32特別旅団は第163守備隊と共に警備地域の巡回をした

 

「成程、ここが突破されると後ろに回られるか・・・」

 

「ええ、それに最近はレギオンの数も増えて来ますからね。せいぜい斥候型を倒すくらいですよ」

 

そう言って守備隊のメンバーが苦笑いをしているとミルが報告をした

 

「レーダーに反応あり、数百。それぞれ菱形陣形で移動中!!」

 

「ちっ、早速お出ましかよ!」

 

「守備隊は塹壕に避難!!ビートル砲撃隊は各自ロックオンして砲撃開始!その間にコルーチクを発進!狙撃部隊、ミサイル部隊は各自判断して砲撃開始!!コルーチク隊は近接戦闘部隊と合わせて攻撃と共に射撃指示を!!」

 

「「了解!!」」

 

リチャードがそう言うと各々行動を始めた。ジル率いるコルーチク隊は侵攻してくるレギオンに向かって突撃を開始し、ジョージ率いる近接戦闘部隊もジルの後ろについて行く形でレギオンに戦闘を挑んだ

 

「コブラ1!こっちは右から行く、そっちは左をお願い!」

 

「了解、引き受けたぞ。そっちは砲撃に巻き込まれるなよ!」

 

「分かってる、ちゅーの!!」

 

そう言ってジル達コルーチク隊は一斉に砲撃を開始し斥候型を一気に蹴散らした

 

 

 

 

 

「ほらほら、遅いぞ。こっちはまだ遊び足りんぞ!!」

 

戦闘が始まってから数十分が経った頃、ジル達は近接猟兵型を撃ち抜いていた

 

「おやぁ、新しく来たみたいだねぇ」

 

そう言ってコルーチクの画面に新たにやって来たレギオンの部隊を見てニヤケ顔をした

 

「さぁ、もっと楽しませてくれよ!!」

 

そう言ってジルはビートルの砲撃のある中、追加でやって来た部隊に突っ込んでいった

 

「これは・・・ジル!戻れ!それ以上は危ない!!戻るんだ!!」

 

戦闘状況を見てリチャードはジルに異変が起こっていることに気がついた。しかし、ジルはリチャードの声は聞こえていなかった

 

「隊長、副隊長がどうかしましたか?」

 

リチャードの声に同じくビートル砲撃隊のジェーン・ロックが少し驚いた様子で聞くと

 

「ジルの・・・ジルの同調率が・・・」

 

「まさか!!」

 

リチャードの言葉にジェーンはその意味を理解した。そして叫んだ

 

「副隊長!副隊長!今すぐ帰還してください!機械との同調率が危険値に達しています!!」

 

その言葉に他のメンバーもおど驚いていた

 

「何だって!!」

 

「今すぐ止めないと!!」

 

「だけどどうするんだ。副隊長だけ引っ張るのは無理だぞ!!」

 

「副隊長!副隊長!だめだ聞こえていない」

 

「くそっ!どうする、このままだと副隊長が“機械に取り込まれるぞ!!”」

 

そう言ってメンバーはレギオンを倒しながら副隊長の異常に対策を考えた

 

「クソッ!次から次へと・・・クソやろうが!!」

 

そう言ってジョージはウインチアンカーで近接猟兵型を振り回してレギオンを吹っ飛ばしていた。その頃、ジルの表情は不気味な笑みを浮かべていた

 

「へへっ・・・さぁ、もっと楽しまセテクレヨ・・・レギオン・・・」

 

そう言ってジルは戦車型に接近して電磁ブレードで戦車型の脚を切り落としていた。その目の色は緑色から蒼色に変わっていた




第32特別旅団のメンバーについてはまた別の機会に紹介したいを思います

要所紹介
高速線
アルガニア連邦の国内を網羅している高架型線路。元々は国家内高速鉄道のために使われていたが需要が航空機にとって変わられ、今は軍用貨物列車が毎日行き交っている。線路は複々線(四本線)

軍用貨物列車
高速線を使い、国内を走り回っている貨物列車。列車自体が複線専用なので大型の荷物を運んだりしている、完全自動運転な為、機関車に人はいない。最高時速は時速240kmで機関車の見た目はGEエボリューション・シリーズ


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

緊急事態

東部戦線で戦闘を開始した第32特別旅団、そこでは通常より増えた数で侵攻して来たレギオンに第32特別旅団は対応していた。しかし戦闘の途中、リチャードはジルがコルーチクとの機械の同調率が危険値に達している事を指摘し、他のメンバーも急いでジルに対して驚きの表情を見せた

 

「サァ、モット・・・モットアソボウヨ」

 

「不味いわ、副隊長の同調率が上がっている」

 

「このままだと本当に副隊長が“人形になる!!”」

 

「チッ!ジルを止めるにはどうする」

 

「機械を止めるか」

 

「それだとレギオンにやられる!!」

 

「ワイヤーで捕まえて引っ張るか?」

 

「動きが速すぎて無理だ!!」

 

「クソッ!邪魔なんだよ!!」

 

そう言って各々が考えていると上空から砲撃が飛んできた

 

「うぉ!た、隊長!?」

 

「・・・ジルを止める。総員・・退避」

 

「嘘でしょ、隊長!」

 

「それだと副隊長にも危険が!!」

 

メンバーはリチャードがレギオンの迎撃とジルの暴走を止める方法として付近一体に砲撃を仕掛ける事を言った。それに対してメンバーは余りにも危険な方法に反対をした

 

「・・・火薬の量を減らす・・・そうすればレギオンも撤退するはず・・・」

 

「ですが・・・!」

 

「ルルーッ!」

 

「チッ!」

 

しかし方法がそれしかない真実を認めるしか無かった

 

「死なないで下さい・・・副隊長・・・」

 

そう言い残すとジル以外のメンバーは一旦離れた位置に移動し、砲弾の直撃を避けた

 

「ハハハ・・・モット・・・モットダ。レギオン・・・モットアソンデヨ!!」

 

戦闘の興奮で正気を失っているジルは自分が危険値に達しているアラート音も聞こえずにレギオンを倒していた

 

「ヨワイネェー、デモイッパイイルカラタノシイ」

 

そう言った時だった、突如頭上から大量の砲弾が降り注いだ

 

「エッ・・・アッ・・・」

 

戦闘の興奮でレギオンしか見ていなかったジルは砲撃に晒され、土煙の中へと消えた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・あれ、此処は?」

 

次にジルが目覚めたのは白い天井の部屋であった

 

「っ!よかった・・・目を覚ました・・・」

 

すると隣では"蒼い眼となった"ジルが目を覚ましたことに喜んでいるリチャードの姿があった

 

「あ・・・に・・・う・・え?」

 

「よかった・・・無事でよかった・・・」

 

そう言ってリチャードはジルの手を掴んで泣いて喜んでいた

 

「どうしたの?兄上・・・此処はどこ?」

 

「軍の病院だよ、ジルは東部戦線で同調率が危険値に達していたんだ」

 

「そう・・・なの・・・ごめん・・なさい・・・」

 

そう言うとリチャードは泣き顔で

 

「良いんだ・・・良いんだ・・・戻って来てくれた・・・」

 

そう言って泣いていると部屋にトーマスが飛んできた

 

「ジル!大丈夫か!!」

 

「お・・・じう・・え・・・」

 

トーマスはジルの様子に安堵していた。そして後ろから看護師が駆けつけ、病室に入ると看護師は心底驚いた顔で慌てた様子で医者を呼びに行っていた

 

「良かった・・・同調率が90を超えたと聞いて心配したぞ」

 

「そう・・なんですか?」

 

「ああ、でも良かった。目を覚まして・・・本当に・・・」

 

そう言うとリチャードは倒れてしまった

 

「兄上!イッタタタ」

 

「動かない方がいい。大丈夫だ、リチャードは疲れが来ただけだ」

 

そう言ってトーマスはリチャードが目を覚ますまでの三日間に一度も寝ていない事を聞いた

 

「そうだったんですか・・・」

 

そう言って悲しげな表情を浮かべるとトーマスは

 

「そうせめなくていい。リチャードは君が帰ってきた事に一番喜んでいるんだから」

 

「・・・」

 

ジルは自分のせいで部隊に迷惑をかけたことを悔やんだ

 

 

 

 

 

 

それからの1週間は検査の日々であった。今までに機械との危険値までの同調で目を覚ました者はいなかったからだ

 

「ジル、お疲れ様」

 

「兄上!」

 

「もぅ、大丈夫そうだな」

 

「はい、ご迷惑をかけました叔父上」

 

「何、時間はある。少し休もうか」

 

「はい」

 

そう言うとジルは守備隊のことを聞いたが、あそこに一師団が置かれることを聞いてホッとしていた

 

「さぁ、まずはしっかり休むことだ」

 

「はい」

 

そしてジル達は一旦トーマス邸に帰り、休養をとった

 

 

 

 

 

その日の夜、トーマスは家にある端末を開くと。そこには連邦の重鎮が写っていた。すると連邦政府大統領セルジオ・ローズヴェルトが話し始めた

 

「さて、トーマス君も来たことだ。では今からジル・スミス中佐の今後のことで話し合おうじゃないか」

 

そう言ってセルジオはジルの検査結果を元に軍と政府で話し合った

 

 

 

 

 

 

 

「・・・つまりだ、貴官ジル・スミス中佐の意見を尊重して再び軍属に就かせると?」

 

「そんなことが許されるとでも思っているのか!!」

 

「そうだ、今回の一件で彼女は機械に取り込まれそうになったんだ。もしまた同じことがあれば今度は確実に目を覚まさないぞ!」

 

「だからと言って彼女は自分の口で軍属を希望している。彼女の意志を踏みにじるつもりか!!」

 

「そうだ、一人の意志すら尊重できないのはこの国のポリシーに反することだ!!」

 

そう言って会議では荒れに荒れた。政府としてはジルを再び軍属に就かせるのは危険極まりないと言って反対し、軍部としてはジルの検査結果で"過去を見る異能"と言う彼女にしか無い独自の異能とジルのコルーチクにインプットされていた"ジル専用の独立戦闘用AI"を手放すのは惜しいという意見で対立していた

 

「貴様達武官は未成年の少女をしかも一度死に掛けている少女をだ。もう一回軍部に就かせて死亡した場合に責任は誰が取ると思っている!!」

 

「そもそも彼女達には事前に聞いてある!辞退したい時は自由だ、その証拠に見てみろ。今までに特務部隊から正規兵になった兵は半分にも満たないだろうが!!」

 

そう言って荒れている会議をセルジオは一旦会議の休憩を入れいるとトーマスに個人で通信をして来た

 

「どうした、セル」

 

「トーマス・・・今回の一件の軍部はどう思う」

 

そう言うとトーマスは少し考えると

 

「・・・正直に言うと軍部はジルのコルーチクにインプットされた謎の戦闘用AIを使って戦死して行く兵の数を減らしたいと考えている」

 

「そうか・・・お前はどう思っているんだ」

 

「・・・俺はジルが強く軍属に戻りたがっているのは分かっている。だが私は軍部がジルを不当に扱う可能性がある限り、反対の意見だ」

 

「分かった・・・取り敢えず政府としては確かに彼女の持っている物は惜しいものがある。だから俺自身としては“政府と軍部の両方で彼女を守る”と言う考えだ」

 

「お前ならそう考えると思っていたが・・・」

 

「ああ、正直に言って彼女の持つ物は危険だ。彼女が何らかの拍子で連邦に歯向かうことがあれば・・・」

 

そう言ってセルジオは心配したがリチャードがキッパリと言った

 

「それは大丈夫だ、彼女はリチャードが居る。クーデターなんかは心配ないさ」

 

「そう言えばそうだったな。いらぬ心配だったか」

 

「ああ」

 

そう言って結局、何時間にも及ぶ会議の末。ジルは再び第32特別旅団に戻る事となった

 

「兄上!」

 

「ジル、良いのかい?」

 

「ええ、自分で決めた事だし」

 

そう言って二人は総合基地に着くと旅団メンバーから心配されていた

 

「良かった」

 

「心配したんだよ〜!」

 

「ありがとう、もう大丈夫よ」

 

そう言って心配してくれていた事に感謝をするとジルは今までの勘を取り戻すために再び第32特別旅団と共に行動をした

 

「それじゃあ、早速命令だ。今から旅団はギアーデ連邦にある大使館の駐留軍の所に行く。暫く本国には戻らないから荷物を纏めておいてくれ」

 

「「了解!」」

 

そう言って第32特別旅団メンバーは各々準備を始めた

 

「さぁ、俺たちも行くぞ」

 

「はい、兄上」

 

そう言うと二人はいつも通り数少ない荷物と一枚の家族写真と共にビートルに乗り込んだ




事後報告書
星歴2139年8月25日に起こったジル・スミス中佐の同調率事件の発生後、事故調査委員会は直ちに中佐の乗るコルーチクの検査を行った。しかし結果は安全装置は確実に働いており、シャットダウンしていたと言うことがわかった。しかし、安全装置が働いた瞬間。貴機は戦闘を行なっていたことは他機の映像でも確認。おそらく何者かがシステムにハッキングをし、貴官の機体を暴走させたものと考える





ジル・スミス中佐の乗るコルーチクをさらに調べると驚きの結果が分かった。貴官の乗る機体に独自の独立戦闘用AIが搭載されていた。戦闘用AIは何故かジル・スミス中佐にしか反応を示さず、又この戦闘用AIは恐るべき事に一台で数千もの戦闘機械を稼働可能と言うことが判明。事故調査委員会は事故原因をさらに詳しく調べる




????
『対象者にインプット完了。作戦の第一段階完了』


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ギアーデ連邦編
新しい土地


機械の事故で目が蒼色となり、過去を見ることができる異能を獲得したジルは第32特別旅団の命令でギアーデ連邦大使館にいる駐留部隊の入れ替えのために国境のあるアブラニア州行きの軍用貨物列車に乗っていた

 

「アブラニアで降りてそこからは地上か・・・」

 

「まぁ、仕方ないんじゃない?」

 

「そうですね、まだ国家間高速鉄道も走っていませんし」

 

「本来なら輸送艦が送るはずだったけど。まさか輸送艦の準備が間に合わないなんてねぇ」

 

「でも変に動かして墜落するよりは良いと思いますけどね」

 

「そうだな。さ、もうすぐ着くぞ、降りる準備だ」

 

「ほーい」

 

そう言って列車が駅に到着すると旅団は一路、ギアーデ連邦へと向かった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ギアーデ連邦へ向かう途中、旅団はビートルの取り付けた追従タイプの大型カーゴの中を開けて今晩の料理を作っていた

 

「しかし、いくらコルーチクが格納されているからってウチらが料理番だなんてねぇ」

 

「そこは仕方ないわよ、他のみんなは格納されているわけじゃないし」

 

「そうですね、それにコルーチクはいくらバッテリーが改良されたからって言っても激しい動きはすぐに電池切れになってしまいますからね」

 

「仕方ないかぁ」

 

「ほら、さっさと準備するよ。今日は野宿なんだから」

 

そう言って移動中のカーゴの中で準備しているジル達は予定していたギアーデ連邦の廃墟と化した街で機体を止めた

 

「ふぅ〜、取り敢えず目的の町に着いたぞ」

 

「あぁ〜、此処まで遠かったねぇ」

 

「みんな〜、夕食ができたぞ〜!」

 

そう言うと旅団メンバーは嬉しそうに食事を取っていった

 

「はぁぁぁ。うめぇ〜」

 

「本当、美味しいわね」

 

「そうだね、このカレーは誰が作ったんだ?」

 

そう言ってメンバーのカークス・クドウがそう聞くと

 

「ああ、今日のカレーは副隊長のだよ」

 

「へぇ、これが副隊長のですか・・・」

 

そう言ってカークスはカレーを食べながら少し驚いた様子でジルを見ていた

 

「なんか副隊長が料理って意外ですね」

 

「あら、そうかしら。これでも料理はできる方よ」

 

「なんかいつもの副隊長の様子を見ていると料理っていう単語が浮かばないんですよね」

 

そう言うとメンバーは笑いながらカレーを美味しそうに食べるとメンバーは就寝についた

 

 

 

 

そして就寝についてから数時間が経った頃、ふと目を覚ましたリチャードはジルがいない事に気づいた

 

「・・・どこに行ったんだ・・・」

 

そう言ってジルと思われる足跡をついて行くとジルが街中で寝巻き姿で歩いていた

 

「ジル!どこ行っているんだ、危ないだろ」

 

そう言ってジルの腕を掴むとジルの蒼い眼が淡く青白く光っていた

 

「ジル?どうしたんだ」

 

そう言うとジルは指を差しながら

 

「あっち・・・人が歩いていた跡がある・・・ウッ!」

 

そう言ってジルは頭を抱えて痛そうにした

 

「大丈夫か!!ジル!」

 

「痛い・・・うぅ、痛い・・・うぅ・・・」

 

「と、取り敢えず戻るぞ。大丈夫か?」

 

「うん・・・大丈夫、兄上。でも明日の朝に見に行っておきたい」

 

そう言って頭痛がしたジルを抱えてリチャードはカーゴにジルを乗せるとジルを見守りながら就寝についた

 

 

 

 

 

翌日、ジルの言っていた痕跡の内容を確認する為に旅団はジルを先頭に進んだ

 

「副隊長が何かに気づいていたけど何だろうね」

 

「昨日の夜に気付いたんでしょ?」

 

「驚きだねぇ」

 

そう言って行き着いた先はギアーデ帝国時代に作られた動物園であった

 

「ほーん、動物園か・・・」

 

「みんな餓死してしまったのかしら」

 

そう言ってジルについて行くと、そこには一機のレギオンがいた

 

「っ!せ、戦闘用意!!」

 

レギオンに驚いたリチャードはすぐさま砲撃しようとしたが

 

「待って、あの機体は。動いていない。近づいても大丈夫」

 

そう言ってレギオンをよく見ると近づいても微動だにせず、少し灰色に染まった機体があった

 

「そうか・・・だが気をつけろよ」

 

「分かってるわよ」

 

そう言ってジルの乗るコルーチクはレギオンに近づいた。そして近づいてコルーチクのハッチを開けてレギオンに触った

 

「・・・この機体は数ヶ月前に砲撃でボロボロになった後に最後は拳銃で撃たれている・・・これは・・・シン?」

 

そう言って機体に触ったジルは機体の過去を見ると最後にシンによって介錯された所で記憶が途切れた

 

「如何だった」

 

「・・・シンが映っていた」

 

「何!?」

 

シンを知っている面々は驚きの表情を見せた

 

「シンが来ていたのか・・・って事はここに来ていたのか・・・」

 

そう言ってリチャードは少し考えた様子を見せると、時間が迫っていることに気づき一時的にシンの事を頭の隅に追いやった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ようこそ、ギアーデ連邦へ!!」

 

ギアーデ連邦の国境の検問所に着くといきなり盛大な歓迎を受けた

 

「あの・・・どなた様でしょうか・・・?」

 

そう言ってリチャードは困惑していると黒珀種の男は面白そうにリチャード達を見ると自己紹介をした

 

「ああ、済まないね。私はエルンスト・ツィーマン ギアーデ連邦暫定大統領だ。よろしく」

 

そう言って手を差し伸べてきたのでリチャードは握手をするとエルンストは

 

「君達のことは既に聞いているよ。後日、アルガニアから物資を積んだ輸送艦が来るそうだ。まずは大使館に行って仕事の引き継ぎをしてほしいと言っていたよ。それじゃあ私は仕事があるから」

 

そう言ってエルンストは車に乗って去って行った

 

「なんか・・・風のような人ですね」

 

「あ、あぁ・・・そうだな」

 

そう言うと第32特別旅団はギアーデ連邦にあるアルガニア連邦大使館に向かうと大使館駐留部隊と合流し、軽い説明を受けるとリチャードは大使館の通信機で連邦軍本部に連絡を取り無事を報告し、そこから数日は仕事の引き継ぎて忙しい日々を送っていた

 

「はぁ、忙しいな」

 

「それは仕方ないと思いますよ。兄上」

 

駐留部隊詰所でお茶を飲んでいるリチャードはそう呟くとジルは優しい表情で話していた

 

「でもある程度の仕事は分かった。後は資料の整理だな・・・」

 

すると詰所の電話が鳴り、電話に出ると相手はエルンストであった

 

「おー、リチャード君かい?」

 

「初日に会っただけなのにどうしてそんなにも軽いんですか?」

 

そう言って皮肉をこめて言うとエルンストは苦笑いした様子で要件を言った

 

「実は一月ほど前に重戦車型で捕まっていた外人を見つけてね。ちょうど今日に退院するんだ」

 

「・・・どうしてここに来てまだ二週間しか経っていない自分を呼んだんですか?」

 

そうイラついた様子でリチャードは言うと

 

「まあまあ、そうイライラしないで。それでた、退院記念にウチに来ないか?」

 

そう言うとリチャードはキッパリと

 

「お断りします!」

 

そう言ったがエルンストはリチャードに強くお願いした

 

「頼むよ〜、他の所のお願いしたんだけどみんな予定があってダメだったんだよ〜、どうしてかな?」

 

「それは貴方ご自身に聞いて下さい。第一、見ず知らずの人の退院なんか素直に祝えませんよ」

 

「そこを何とか!!頼むよ〜、最後の頼みなんだ」

 

そう言ってエルンストは言うとリチャードは溜息をついた

 

「はぁ・・・分かりました。ですがすぐに帰ってもいいのであれば、と言う条件をつけて下さい。そうじゃ無いと絶対に行きません!!」

 

そう言うとエルンストは満足そうな声で

 

「ありがとう〜、必ず満足させられると思うよ。それじゃあ後で迎えに行くから」

 

「あ!ちょっと!!」

 

ツーツー

 

「ちっ、切りやがった」

 

そう言って毒吐いているとジルが内容を予想できたのかため息を吐いていた

 

「あの人からですか?」

 

「ああ、あの“お天気役人”だ、パーティーに来いってよ」

 

「じゃあ服を準備しますね」

 

そう言ってジルはリチャードに外用の服を着せるとリチャードはエルンストの出迎えを受けて大使館を出て行った




解説
アルガニア連邦の機体には機体同調と言う精神と機械を繋ぐ部分があり、自分の精神とリンクする事で敵を楽に倒すことができる反面、精神をリンクさせるので同調率が上がりすぎると精神が機械の部品のパーツになる可能性が有る。そうならない為に本来は同調率が危険値に達すると安全装置が働き、自動的にシャットダウンされる設定となっている



事故後、改めてジルの機体を確認したが特に問題が見られず、安全装置も働いていたことになっており。同調率の安全装置は外すことができない為、どうしてあのような事になったのか真相は謎のままとなった


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

再会

ギアーデ連邦暫定大統領エルンスト・ツィーマンに呼ばれてリチャードはエルンストの私邸に来ていた

 

「じゃあ、私はこれから外人の出迎えに行ってくるから。」

 

「あ、ちょっとまだ説明を・・・」

 

リチャードを家の中に入れるとエルンストは足早に出て行った

 

「・・・ったくあのお天気役人が」

 

そう言ってリチャードが毒吐いていると

 

「お主は誰じゃ!?」

 

そう言ってリチャードは声のした方を向くと、其処には一人の少女がいた

 

「・・・君は?」

 

そう名前を聞くと少女は少し不満そうに名乗った

 

「我はフレデリカ・ローゼンフォルトだ。お主の名は?」

 

「あ、あぁ。俺はリチャード・スミス。あのお天気役人に呼ばれて此処に来た」

 

そう言うとフレデリカは何かを察したようでリチャードを慰めていた

 

「・・・大変じゃったな」

 

「察してくれると助かるよ」

 

そう言ってリチャードは何処か遠い目をするとフレデリカは

 

「しかし、この後に来る共和国の者はどんな者なのか・・・遊び相手になろうかの。ちと手伝ってくれ」

 

「え?何をするの?」

 

そう言うとリチャードは共和国と言う言葉に不思議に思ったがフレデリカに連れられ何故か机とライトを玄関に運ばされていた

 

「もう少し威厳ある感じにするのじゃぞ」

 

「はいはい、分かりましたよ」

 

そう言ってフレデリカが何をするのかを察するとリチャードはライトをせっせと準備し終えるとリビングで待ち人を待っていた

 

 

 

 

 

そしてゆっくりしていると扉に開く音がし、フレデリカが何かを言っていたのは確認できた。エルンストからなるべく部屋から出ないで欲しいと言われていたので、リチャードは渡されたコーヒーを飲んでいた。するとフレデリカが大きな声で

 

「誰がこんな木端役人の娘であるか!!」

 

「ブッ!」

 

その言葉にリチャードはコーヒーを吹き出しかけた。そして少しするとリビングにフレデリカと共に六人の人物が入ってきた。入ってきた人物はリチャードにとってはとっくに亡くなていたと思っていた人物たちであった。六人を見たリチャードは思わず、飲んでいたカップを落としてしまった

 

「シン・・・!!??」

 

「リチャード・・・如何してここに・・・!?」

 

そう言ってリチャードは部屋に入ってきたシン達を見て驚きと喜びでどう反応すれば良いのかわからなかった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シンと再開したことにリチャードは喜んでいるとシン達はここまでの経緯を言った

 

「・・・そうか、生き残ったのはここにいるのだけなんだな。すまない、辛かっただろ」

 

「いや、俺はもう一回会えるなんて思って居なかった。それだけで十分だ」

 

「正直俺も驚いたよ」

 

そう言って驚いているとクレナが聞いてきた

 

「ねえねえ、リチャードがいるって事はジルもいるの?」

 

「え、ああ。大使館にいるよ。今は大使館の駐留部隊をやっている」

 

「そうなんだ、じゃあジルに会えるかな?」

 

「ああ、大使館に来たら会えると思うぞ」

 

「本当!!」

 

そう言ってクレナは嬉しそうに言うとエルンストの囁きでそのまま夕食を取ることになったが食事中はシン達は久々の再会に話に花を咲かせていた

 

 

 

 

 

そして夕食を取り終えるとシン達はリチャードと別れ、帰路に着いた

 

「シン達が生きていたなんて・・・ジルはきっと喜ぶだろうな」

 

そう言ってリチャードはギアーデ連邦で出会ったシン達のことを伝えようと少しウキウキしながら帰っていった

 

 

 

 

 

大使館に戻るとリチャードは早速シン達にであったことを話すと。驚きの表情をした

 

「シンが!!と言うことはクレナもいるんですか!!」

 

「ああ、さっき会ったぞ」

 

「じゃ、じゃあ会いに行っても良いですか!!」

 

「ああ、だが今日はもう寝ているだろう。また今度な」

 

「はい」

 

そう言うと二人は大使館にある宿舎に入って行った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1ヶ月後

 

その日、ジルはギアーデ連邦のメインストリートで待ち合わせをしていた

 

「おーい!ジルー!」

 

「クレナ!」

 

「待ったー?」

 

「丁度だよ」

 

そう言うとジルとクレナの二人は買い物を楽しんだ。最初は目の色が蒼くなっていた事に驚きはしたが、事情を説明すると納得していた

 

「クレナ、これ似合うんじゃない?」

 

「え、でも・・お金が・・・」

 

「大丈夫、大丈夫。今日は目一杯楽しむ日だよ。これ下さ〜い!!」

 

「あ、ちょっと!!」

 

そう言って服屋で何着かの服を買った

 

「さて、クレナ。次はどこに行く?」

 

「え・・・でも・・・」

 

「ほらほら、今日はパレードなんだし。せっかくだからパレードの見れる場所に行くよ!!」

 

そう言って二人はメインストリートの見えるカフェでゆっくりしていた

 

「ふぅ、ねえクレナ。あそこに書かれている数って今までに亡くなった人の数なんだって」

 

「そうなんだ・・・」

 

「でも連邦も同じ感じだねぇ」

 

「そうなの?」

 

「ええ、毎日速報が流れて、戦死者数が報告されて・・・戦線の状況を報告して・・・」

 

そう言ってパレードで進んでいるヴァナルガンドを見てそう言うとジルは少し悲しい表情を浮かべ

 

「ねぇ、やっぱりクレナは戻るの?」

 

「え?」

 

そう言うとクレナは何のことかを察すると頷いた

 

「やっぱりそうなるのね・・・」

 

「他のみんなも同じだと思う」

 

「そう・・・じゃあまた」

 

「うん、じゃあね・・・」

 

そう言ってジルは先にカフェを出ると会計をして出ていった

 

「・・・ジルには分かってたんだ」

 

残ったクレナは一人紅茶を飲み終えると足早に帰って行った。その日の夜、シン達はエルンストに軍に入りたいと言ってエルンストを驚かせていた

 

 

 

 

「そうか・・・シン達は軍属に入りたいと言ったのか・・・」

 

「そうじゃ、エルンストの奴は反対しておったがの」

 

「まぁ、そうでしょうね。彼等は戦場しか知らない物達だ、エルンストには普通ので生活を送って欲しかったんだろうが・・・」

 

そう言って電話の相手であるフレデリカと話していた(どちらもエルンスト関係で何かが通じて仲良くなった)するとそこにジョージが帰ってきた

 

「戻りました〜」

 

「お、帰ってきた。どうだった、”デート”は?」

 

「デートじゃないですよ。ただ呼ばれて行っただけです」

 

「それはもうデートじゃないか」

 

「違います!!」

 

ジョージはそう言っているが本当の所、ジョージはカイエから告白を受けていた。ジョージはこう言った事例に耐性が無く。告白された後は顔を真っ赤にしていた。その事を旅団メンバーに話すと男性メンバーから締め上げられ大使館の屋上から丸一日吊し上げられていた

 

「告白もされて、羨ましいねぇ〜」

 

「それはあまり言わないでください・・・また吊るされるので・・・」

 

「分かっているよ」

 

そう言って現に後ろの扉からは目が死んでいる男性メンバーがジョージのことを見ていた

 

「さて、取り敢えず命令が来たからみんなの所に行くぞ」

 

「はい」

 

そう言って蔑ろにしていたフレデリカとの電話を切るとリチャードは全員のいる遊戯室へと向かった

 

 

 

 

 

「みんな集まったな?」

 

「はい、第32特別旅団全18名おります」

 

「了解、じゃあ命令を言う。本国にギアーデ連邦からの要請で第32特別旅団に西方方面軍の援助要請があった。これに伴い我々は明朝6時に大使館を出て前線基地へと向かう」

 

「「了解!!」」

 

そう言うと旅団は早速準備をし、翌日の朝に大使館を出撃すると第32旅団は西方方面軍司令部まで向かった

 

 

 

 

 

 

西方方面軍司令部に着いたリチャード達は司令部の部屋に入って挨拶をした

 

「アルガニア連邦第32旅団、要請に基づき只今出頭いたしました」

 

「ああ・・・宜しく。私はギアーデ連邦西方方面軍第117機甲師団リヒャルト少将だ、君達には早速だが西方方面軍の防衛を頼みたい。詳しことは隣にいるグレーテ・ヴェンツェル中佐に聞いてくれ」

 

「分かりました」

 

そう言うとグレーテが前に出て挨拶をするとリチャードは早速情報を聞いた

 

「さっきも紹介されたけど、グレーテ・ヴェンツェル中佐です。宜しく”大佐殿”」

 

「リチャードで良いです。あまりそう言うのは慣れていないので」

 

「じゃあ、リチャード君で良いかしら?」

 

「はい、それで大丈夫です」

 

「それじゃあ詳しいことを話すわ」

 

そう言うとグレーテはリチャードに状況を話すとリチャード達の配属する場所を言うとリチャードは了解し、現場に向かった




補足説明
アルガニア連邦の民主化は他国と違い、革命ではなく。時のアルガニア王国国王が生活と絶対的な安全を保障させる事を条件に議会を開設させた。その為、アルガニア連邦は国王は存在するがあくまでも国の象徴的立ち位置にある


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

配属

ここはとあるギアーデ連邦の森の中、普段は静かな森では

 

ドーンッ!ドーンッ!ドーンッ!

 

とけたたましく鳴り響く砲撃音と爆発音が響いていた

 

「こちらコルーチク1、着弾予定地点に着弾。レギオンは撤退を開始、これより帰投する」

 

「了解した、コルーチク1。帰投を許可する。直ちに戻り、充電とリロードを行え」

 

「了解」

 

そう言って爆発音があった近くではジルの乗るコルーチクが弾着観測を行いながらレギオンに砲撃を行っていた

 

「こちらミサイル攻撃隊、コルーチク2の着弾指示より攻撃終了。被害皆無」

 

「了解した。ミサイル攻撃隊はそのまま後退して狙撃部隊と交代。コルーチク3の着弾指示に従い各自狙撃を開始せよ」

 

「「了解!!」」

 

そう言うとコブラ改弐型が後退をし、代わりに出てくる形でコブラ改参型が前に出るとコブラ改弐型が装填をしている間に狙撃部隊は前進してくるレギオンの近接猟兵型部隊を狙撃していた

 

ドドドドォォォン!!

 

「チッ!相変わらず数が多いね!」

 

「だけど倒しがいがあるってもんよ」

 

「それに白兵戦と偵察部隊よりはあっさりだと思うよ」

 

「それは言えてる」

 

「また副隊長が暴走しないと良いけど・・・」

 

「まぁ無いんじゃない?」

 

「それってエリの直感?」

 

「そうそう」

 

「じゃあ大丈夫だ。エリの予感は大体当たるし」

 

「そうだな、おっと。ミサイル部隊が準備出来たらしいぞ」

 

「じゃあ伝えないとね。コルーチク、今からミサイルが飛んで来るから退散して」

 

「了解、急いで退散する」

 

そう言うと狙撃部隊の後ろからミサイルの発射音が聞こえると森の奥の方が一気に炎に包まれた

 

「前進したレギオン部隊全滅。こちらの損傷は皆無。これより帰投する」

 

そう言うとビートル部隊はコルーチクを回収すると本拠地にしている基地に向かうとグレーテが出迎えた

 

「お疲れ様。今日も損害はないのね・・・」

 

「ええ、今回もいつも通りでした。コルーチクで偵察をし、情報収集部隊の情報を元に砲撃要請をして。ミサイル攻撃部隊で広範囲攻撃をして狙撃部隊と白兵戦部隊で飽和攻撃を潜り抜けたレギオンを攻撃する。いつも通りですね」

 

「やっぱりアルガニアの科学力は目を見張るものがあるわね」

 

「そう言われると嬉しいですね」

 

そう言って基地で話しているとグレーテは

 

「それにしてもビートルはいつ見ても大きいわね」

 

そう言ってリチャードの降りてきたビートルを見てそういうとグレーテは興味津々に見ていた

 

「だからと言って乗らないでくださいね。安全装置が働いて頭に4000ボルトの電流が流れますよ」

 

「分かっているわよ。死んでまであの機体を見たくはないわ。命が惜しいもの」

 

そう言ってグレーテはそう言うとリチャードの元から去っていった

 

 

 

 

 

 

その日の夜、リチャードはグレーテに呼ばれて司令室に入った

 

「お呼びでしょうか。グレーテ中佐」

 

そう言うとグレーテは話し始めた

 

「ええ、実は明後日から私が監督する『ノルトリヒト戦隊』が来るのよ」

 

「あぁ、あの棺桶ですか?」

 

「棺桶とは心外ね」

 

そう言ってリチャードは試験部隊に配属される新型機を思い出すとグレーテは不満そうに返事をした

 

「でも、今度来るのはあなた達も知っている人物よ」

 

「もしかして・・・シン達ですか?」

 

そう言うとグレーテは少し笑みを浮かべると

 

「ええ、今度来るのは元86の子達よ」

 

「そうですか・・・でもノルトリヒト戦隊は第32旅団の管轄外だと思われますが・・・」

 

「ええ、確かに管轄外よ。そもそも、あなた達はアルガニア連邦の軍人であって、ギアーデ連邦の軍人では無いから私はただ報告を聞いていているだけよ」

 

「そう言えばそうでしたね」

 

そう言うと二人は少し笑うとグレーテはあることを話し始めた

 

「そのことなんだけど・・・これは大統領から言われたことなんだけど。ノルトリヒト戦隊はギアーデ、アルガニア両国から支援を受ける事になったのよ。アルガニア連邦からは支援する代わりにノルトリヒト戦隊の指揮権の一部が第32旅団に渡される事になったのよ」

 

そうグレーテが不敵な笑みで言うとリチャードは驚いた顔でつぶやいた

 

「驚きました。そんな事、聞いていませんでしたよ」

 

「それはそうでしょうね。なんせこれはついでに言って欲しいって言っていたんですから」

 

「ははっ、これはやられましたね」

 

そう言うとグレーテは少し嬉しそうな表情を浮かべ、窓の外を見た

 

「では、私は補給がありますので今日は失礼します」

 

「ああ、そう言えば明後日だったわね」

 

「ええ、久しぶりに補給がきますよ」

 

そう言うとリチャードは部屋を出て行った

 

 

 

 

 

2日後、リチャードが外に出ているとそこに知っている顔がやってきた

 

「あれ、リチャードじゃねえか。ここに居たのか」

 

「ああ、前からここに居たぞ。それよりもよく来たな」

 

「ああ、新しい機体でな」

 

そうライデンと話しているとクレナが早速聞いていた

 

「ねえねえ、ジルはどこにいるの!?」

 

「ああ、ジルならあそこに・・・おーい、ジル〜。クレナが来たぞ〜!」

 

そう言うとビートルの上で寝そべっていたジルは体を起き上がらせるとクレナに気づいて手を振るとビートルから飛び降りてクレナと共に話に花を咲かせていた。それを見ていたライデンは

 

「しかし驚いたな。ジルの眼が蒼くなるなんてよ」

 

「ああ、俺も正直に言って驚いたよ。事故の後に検査をしても特に異常はなかったのが幸いかなぁ」

 

「でも変な異能が手に入ったんだろ?」

 

「ああ、過去を見る異能だな。物とか生き物に触れたりするとその記憶を”視る”事ができたり、過去の痕跡を見れたりする異能だな」

 

「へぇ、そんな異能なのかい。フレデリカに似ているな」

 

「ああ、それでギアーデ連邦に来る途中に立ち寄った街でレギオンの記憶の中にシンが写っていると聞いた時は心底うれしかったよ」

 

「レギオン・・・あぁ、あの時のな」

 

そう言うとシンも思い出したのか少し懐かしんでいるように見えた

 

「しかし、まぁ。今日から世話になるわ」

 

「ああ、宜しく」

 

そう言うとリチャードとライデンは握手をし、その後は話に花を咲かせていた

 

 

 

 

 

 

クレナと再開したジルはあの後の事を聞いた

 

「・・・なるほど。あの端末は壊れちゃったんだ・・・」

 

「うん、あの後もずっと遊んでいたら壊れちゃって・・・」

 

「そう・・・でもダイヤもいい思い出だったでしょ?」

 

「うん、ダイヤが最期に言ってたんだ『端末、ありがとう』って」

 

「そう・・・最期に・・・良かったわ。そう言う事を言ってもらえて」

 

「うん、ダイヤもきっと喜んでいると思うよ」

 

そう言って二人は空を見上げた

 

「・・・さて、せっかく助かった命だ。無駄にするなよ〜」

 

「・・・分かってるわよ」

 

そう言うとジルはクレナに基地の紹介をした

 

 

 

 

 

話に花を咲かせていたリチャードはふと時計を見ると

 

「・・・そろそろかな?」

 

その言葉にライデンは不思議がったが。その理由はすぐに解決した、突如暗くなったと思い、上を見上げるとそこには空を覆い尽くすほどの大きな船体が見えた

 

「なんだあれは!!」

 

そう言ってライデンとシンが驚いているとリチャードは淡々と答えた

 

「あれはアルガニア連邦最大の発明・・・空中艦だよ・・・」

 

そう言って頭上に浮かぶ艦艇を見て基地にいた全員は外に出て驚きの表情を見せていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

輸送艦が着陸をするとタラップが開いてそこから数人の人物が降りてきた。リチャードは走ってそこに行くと敬礼をした

 

「お疲れ様です!」

 

「ああ、ありがとう。早速だが補給物資の確認をお願いしたい。それと運んできた機体だが・・・」

 

「分かりました。まずは補給物資の確認をします。その後に機体を順次降ろして行ってください」

 

「了解した。ではまずは補給の方だが・・・」

 

そう言って輸送艦の艦長とリチャードは補給目録を確認すると荷下ろしを始めた



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

準備

前線基地でシン達と再会したリチャードはアルガニア連邦からの補給でやって来た空中輸送艦に驚いていた

 

「すげーな、あんなデカイものが浮かんでやがったぜ」

 

「ああ、SF小説に出てきた物みたいだ」

 

「お前・・・意外とそう言うとあったんだな」

 

「そうか?」

 

そう言って下されている荷物の多さを見てライデン達はアルガニア連邦の資源の豊富さを実感した

 

「しかし、アルガニア連邦ってのは俺たちの想像以上に裕福な国なんだな・・・」

 

そう言って物資の豊富さと技術力の高さに舌を巻いていた

 

「共和国はあんな国に喧嘩を売ったのか・・・」

 

「あぁ、そう言えばそうだったな・・・」

 

そう言ってライデンは共和国の兵士がリチャード達の機体を強奪しようとしていたことを思い出していた

 

「あの後すぐに遺体袋を回収していったったよな」

 

「あぁ・・・」

 

そう言ってシンはいつも通り高圧的だった共和国軍人を思い出していた

 

 

 

 

 

輸送艦で補給目録に目を通しているリチャードは輸送艦か艦長から質問を受けた

 

「あらためて荷物を確認しましたが・・・弾薬が殆どなんですね」

 

「ええ、この弾薬の一部はノルトリヒト戦隊の弾薬ですしね」

 

「それに何故旧式の38式軽量級なんかを運ばせたんでしょうか」

 

「あぁ、それはジルのAIで操る様の機体だって言われましたよ」

 

「そうなんですか?」

 

「ええ、連邦は旧式の機体だったら余るほどあるから処分ついでに動かすんでしょう」

 

「まぁ、解体費用だけでもすごい金額になりますからね」

 

そう言って荷下ろし中の機体を見てそう言うと二人はギアーデ連邦について話していた

 

「この国は如何ですか?」

 

「・・・少なくとも共和国と比べると格段にいい国だと思う。人々は自由に暮らし、一応国としては成り立っている。まぁ、まだ格差の問題は残っているがな」

 

「そうですか・・・本国と比べると如何ですか?」

 

「生活の質に関しては殆ど変わらない。国民の戦争に対する意識も本国と同じくらいで物資は本国ほどではないが食っていけるくらいはある。ただ格差に関しては本国の方が断然マシだ」

 

「そうですか・・・」

 

そう言うと輸送艦の艦長は荷下ろしを終え、敬礼をすると離陸をして行った

 

「さて、まずは機体の同調からだな。ジル、いけるか?」

 

そう言って通信装置を起動してジルを呼び出すとジルは飛んで来た

 

「お呼びですか兄上」

 

「ああ、ついでだからこの機体とのリンクをしておいてくれないかと思ってね」

 

「了解しました」

 

そう言うとジルは機体に乗り、彼女専用の独立戦闘用AI『アイラ』は起動し、荷下ろしされた十機の軽量級とのリンクを行なった

 

「システムリンク、対象。周辺の38式軽量級。リンクスタート」

 

そう言うとコルーチクが起動し、それに同調するかのように38式軽量級は機体を浮かべ、同期を完了させた

 

「兄上、終わりました」

 

「ああ、意外と早かったな」

 

「はい、コードを繋げてボタンを押すだけですから」

 

そう言ってコルーチクから降りるとライデンが驚いた表情を見せた

 

「こりゃ驚いた。それが言っていた謎のAIか?」

 

「ああ、事故の後に誰かがジルの機体に埋め込んだ彼女しか使えない戦闘用AI。その威力はアルガニア連邦の研究所を驚かせたものさ」

 

「ほぇ〜」

 

そう言ってライデンは興味津々に見ているとジルはやって来たアンジュに連れられその場を去っていった

 

「ふぅ、取り敢えず明日から忙しくなるぞ。覚悟しておけよ」

 

「ああ、わかっている」

 

リチャードはそう言うとシンと拳を合わせた

 

 

 

 

 

翌日からは忙しい毎日であった、毎日津波のように迫ってくるレギオンを相手に第32特別旅団とノルトリヒト戦隊は平原戦、防衛戦、市街地戦と多くの戦場を駆け回った

 

「今日はポイント147で昨日は254。かーっ!忙しいね〜」

 

「ジョージ、そうカッカしないの」

 

「お袋・・・」

 

「お袋言うな!!」

 

「はいはい、五月蝿いよ」

 

そう言ってジョージとジャスとカーチスが話していると食堂でギアーデ連邦軍の軍人がヒソヒソと自分達のことで話しているのがわかった

 

自分達を集団で狩りをする狼のように喩える者や、恐れる者。それぞれ反応は別々であったがあまり誉められたものはなかった

 

「はぁ、これなら機体で携行食糧にしとけば良かったかな?」

 

「いや、あれは緊急時用だよ。今食べたらまずいでしょ」

 

「そうそう、それに今のうちにしっかり休養はとっておいたほうがいいだろうし」

 

そう言って三人は食事を摂りながら話しているとそこにリチャードがやって来た

 

「お前ら、ちょっと来てくれ。大事な話だ」

 

そう言うと三人は唯ならぬ雰囲気にリチャードについて行く形で間借りしている第32特別旅団の詰所に行くとそこには第32特別旅団全員が既に集まっていた

 

「休憩中に済まないが本国から緊急連絡があった」

 

緊急連絡という言葉に旅団メンバーに緊張が走った。するとジルが説明をした

 

「緊急電の内容は『近々、レギオンの大攻勢有り。数は予想を大いに上回る可能性があるため、連邦軍は第四から第六方面軍、並びに第五、第六空中艦隊をユジーエ山脈要塞前線基地に集結させ、第一から第三方面軍、第三、第四空中艦隊はタロンガ河要塞に集結し大攻勢に備える』という報告です」

 

その報告に旅団メンバーは驚きの声を発した

 

「各戦線に三個方面軍と二個艦隊を集結ですか!?」

 

「それは本国も大分警戒している証だぞ」

 

するとジルは続けて言った

 

「なお、第32特別旅団はノルトリヒト戦隊と合同でギアーデ連邦方面の大攻勢に備えよ。だそうです」

 

「何だって!?」

 

「本当ですか!?」

 

その言葉に旅団メンバーは驚きを露わにした

 

「ああ、本当だ。だから今回はシン達との合同だ、気を抜くなよ」

 

「「了解!!」」

 

そう言って旅団メンバーは大攻勢に備えて物資並びに弾薬の数の確認をした

 

 

 

 

 

 

 

 

同じ頃、アルガニア連邦軍司令部ではレギオンの大攻勢に際する対策会議がなされていた

 

「・・・という事で、ユジーエ山脈要塞には第四から第六方面軍と第五、第六艦隊。タロンガ河要塞には第一から第三方面軍と第三、第四艦隊を配置し、それぞれに列車砲ケラウノスを五基ずつ配備し、援護射撃を行います」

 

報告官がそういうと幕僚達はアルガニア連邦軍戦力の六割を使って行うレギオンの大攻勢に驚きと心配の声が上がった。するとトーマスは報告官にあることを聞いた

 

「済まないが、今の現状と大攻勢があったときの損耗率を聞かせてほしい」

 

「わかりました」

 

すると報告官は深刻そうな顔を浮かべると

 

「まず、北部戦線に関しましてはユジーエ山脈要塞に新型レギオンが投入されれば損耗率は最大10%、新型レギオンの投入がなければ6%。東部戦線は7%と思われます」

 

その言葉に幕僚達は唸った。大攻勢があった場合の損耗率の数値は低いにしても、人員の数はとても多い為。慎重になっていた

 

「大攻勢があった時の防御は如何なっている」

 

「はっ!山脈要塞に関しては山頂からの砲撃と山脈内側からのケラウノス砲撃隊による気特殊化弾の砲撃を行い、補足に関しては山頂からのレーダーサイトにて最新鋭のデルタシステムを使い随時報告をします。東部戦線も同様にレーダーサイトで捕捉次第、ケラウノス砲撃隊で砲撃。空中艦隊を使ってケラウノス砲撃隊と合わせて攻撃をします」

 

そう言うと幕僚達は納得した表情でいた。すると報告官は驚きの発言をした

 

「なお、今回の大攻勢に先立ち。今回は最新鋭第二世代型主力戦闘艦『ヤマト』と『ムサシ』がそれぞれ北部戦線と東部戦線に導入されることが決定しました」

 

その言葉に幕僚達は驚きの声が上がった




兵器紹介
戦闘用AI『アイラ』
ジルしか扱えない戦闘用AI。事故の際にインプットされていたものにジルがわかりやすいように名前をつけたもの。名前の理由はジル昔飼っていた犬の名前からきている

ヤマト型超弩級戦闘艦
武装
45口径48cm3連装電磁エネルギー砲 三基
55口径20.3cm3連装電磁エネルギー砲 二基
8連装大型ミサイル発射機 16基(下部4基、前部4基、後部4基、上部4基)
対地対空電磁エネルギーバルカン砲 84基
12.7mm4連装対地対空機銃 24基
48式爆雷投射機 二基


大きさ
全長:380m
全幅:39m
全高:42m

主機
49式波動エンジン

艦載機
VB=97『アリゲーター』十六機


アルガニア連邦史上最大の空中戦闘艦。今までの中で最大口径の砲に、無数のバルカン砲に無数の機銃。多数のミサイル発射機を備え、アルガニア連邦最強の戦闘艦となっている。アルガニア連邦最新鋭波動エンジンを搭載し、膨大なエネルギーを使った新技術のエネルギー砲を搭載した最新鋭艦。同型艦に『ムサシ』『シナノ』がいる。名前は旧アルガニア連合王国の州名から来ている。見た目は『宇宙戦艦ヤ◯ト2199』のヤ◯トです


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

大攻勢

リチャード達第32特別旅団が大攻勢の報告があってから数日が経過した。その間に第32特別旅団はノルトリヒト戦隊と合流して大攻勢に備えた

 

 

 

 

ある日の夜、平原で停車しているレギオンがいた

 

『ノゥ・フェイスより第一広域ネットワーク』

 

『これより掃討作戦を開始する』

 

『当該ネットワークの全レギオンは待機を解除』

 

『繰り返す、これより掃討作戦を開始する』

 

『目標、東部戦域、ギアーデ連邦』

 

『北部戦域、ロア=グレギア連合王国』

 

『南部戦域、ヴァルト盟約同盟とアルガニア連邦』

 

『西部戦域、サンマグノリア共和国』

 

『該当ネットワーク所属の全レギオンに次ぐ』

 

『直ちに撃滅を開始せよ』

 

そう言って数多のレギオンが侵攻を開始した

 

 

 

 

 

同時刻、ギアーデ連邦西部方面軍第177師団ノルトリヒト戦隊隊舎ではある士官が叩き起こしていた

 

「ん?如何したんだシン。叩かなくてもいいじゃないか」

 

「そんな場合じゃない」

 

シンの声色にリチャードは何事かを察した

 

「来たのか?」

 

「ああ、それも分けると思っていた兵団の一部を西部戦線に持って来ている」

 

「それは大したことだ・・・如何する」

 

するとシンの表情が悪いことに気づくとリチャードはその意味を理解した

 

「分かった、叩き起こしてくる。そっちは?」

 

そう言うとシンは介錯用に使っていた自動拳銃のホルダーを叩いた

 

「分かった、こっちは任せろ」

 

「ああ、頼んだ」

 

そう言うと基地に警戒のアラームが鳴り響いた

 

 

 

 

 

同時刻、アルガニア連邦ユジーエ山脈要塞のレーダーサイトでは

 

「・・・っ!レーダーに感!数多数レギオンの大攻勢です!レーダーがレギオンで埋め尽くされています!!!」

 

するとユジーエ山脈要塞全体に警報アラームが鳴り響き、各基地から数多のフェルドレスと空中艦艇が発進していった

 

「状況は?」

 

報告を受けて要塞で待機していたトーマスは状況を聞いた

 

「ハッ!レーダーサイト13よりレギオンの大攻勢を確認。現在第75戦車師団、並びに第四空中艦隊が発進。ケラウノス砲撃隊が砲撃を開始しました」

 

「了解、出撃した部隊はなるべく最低限の損耗となるように指示をしておいてくれ。それとケラウノス砲撃隊と山脈砲台の砲撃に巻き込まれないように注意を促してくれ」

 

「了解しました」

 

そう言って副官が部屋を出るとトーマスは神妙な顔持ちで画面を見ていた

 

「・・・いよいよ始まったか・・・無事に帰ってこいよ・・・ジル、リチャード・・・」

 

そう言って他国の状況を写した画面を見ながらそういった

 

 

 

 

 

「砲撃用意!!距離50000、方位350。弾種特殊気化弾。撃て!!」

 

ドーン!!!ドーン!!!ドーン!!!ドーン!!!ドーン!!!

 

山脈内側にあるケラウノス砲撃隊本拠地では五基のケラウノスが砲撃を行った

 

 

 

 

同じ頃、レギオンと接敵した連邦軍第75戦車師団は砲撃を行なっていた

 

「総員、敵との射程距離をとって砲撃し、徐々に後退せよ!このまま山脈砲台のところまで持っていけ!!!」

 

そう言って第75戦車師団は後退をしながら砲撃を開始した。そしてある程度まで後退した戦車師団は

 

「総員撤退!!!砲撃に巻き込まれるぞ!!」

 

そう言って全車が一斉に撤退を開始した。そして頭上から無数の砲弾が降り注ぎ、付近一体にいたレギオンが消し飛んだ

 

「よし、こちら第75戦車師団、ケラウノス砲撃隊に連絡。『レギオンは壊滅せり。後方の部隊は艦隊に任せる』」

 

「了解、こちら第四艦隊旗艦ヤマト。後方のレギオンに対し砲撃を行う」

 

バババババァァァァァンンン!!

 

そして、放たれた電磁エネルギー砲は後方に控えヤマトに標準をしていたレギオンを吹き飛ばした

 

「こちらヤマト、侵攻してきたレギオンは撤退を開始。これより帰投す」

 

「了解、ヤマト。ご苦労であった」

 

そう言って通信が切れるとヤマトは山脈内側の基地へと帰投した。東部戦線も同じ様に空中艦隊とケラウノス砲撃隊によって大攻勢は防ぐことができた。東部戦線ではさらにい良い事にレギオンの追撃を行うとヴァルト盟約同盟領内に進撃、東部戦線の戦闘が終了した

 

「取り敢えず大攻勢は防げましたね」

 

「ああ、だが問題はギアーデ連邦とサンマグノリア共和国だ」

 

「連邦はともかく、サンマグノリア共和国を如何して心配されるのですか?」

 

そう副官が言うとトーマスは

 

「ああ、リチャードから聞いたんだ。共和国に中にもエイティシックスの事をよく考えている良い司令官がいると言うね・・・ぜひ、その様な人にあってみたいと思っていたんだ」

 

「成程、そう言うことでしたか」

 

そう言うと副官は持っていた端末に来た報告を見て驚いていた

 

「司令、これを・・・」

 

そう言って副官が見せた報告を見るとトーマスは驚いた様子で直ちに空中艦隊に発進指示を出していた

 

 

 

 

 

時は少し遡り、大攻勢が始まった頃に戻り。基地で出撃準備をしていたリチャード達は緊張した様子であった

 

「・・・大丈夫か?」

 

「ああ、取り敢えず出撃するぞ」

 

「分かった」

 

そう言って少し緊張した顔をしたリチャードはジョージから心配をされたがリチャードはビートルにハッチを閉めて出撃して行った

 

 

 

 

その頃前線では幾つもの塹壕に潜んでいた歩兵が津波のように襲い掛かってくるレギオンを見て驚きの表情を浮かべた

 

「あれが・・・全てレギオンなのか・・・」

 

すると後方に長距離砲兵型の155mm砲弾が着弾した。すると歩兵隊長が叫んだ

 

「効力射がくるぞぉぉぉぉ!!!」

 

そう言った瞬間であった。突如頭上に届いた砲弾が分散し塹壕内にいた兵士を切り裂いた

 

「ちっ、無事な兵士は武器をかき集めろ!死んでもここを死守するんだ!!!」

 

そう言って後方に控えていた砲兵からの砲撃の煙と共に現れたのは恐竜型であった

 

 

 

 

 

 

サイレンを聞いた士官達は急いで進行してきたレギオンの編成と総数を聞いて青ざめた

 

「まさか、西部戦線全体が大規模攻撃を受けているというの!?」

 

そう言ってスクリーンに映し出されたレギオンの数を見てグレーテは呻いていた

 

 

 

 

 

そしてレギオンの多さに驚いていると格納庫から通信が入った

 

「中佐」

 

「ノウゼン少尉・・・状況は?出られる?」

 

「いつでも、既に第32特別旅団は出撃し、前線に向かっています。ノルトリヒト戦隊も出撃準備完了です」

 

「分かったわ。あなた達のことは庇ってあげるから、リチャード大佐と共に何としても前線を張って頂戴」

 

「了解」

 

そう言ってノルトリヒト戦隊は出撃していった

 

 

 

 

 

ギアーデ連邦のとる街では装甲歩兵師団が走っていた。すると突如石壁から砲弾が飛び出し、歩兵師団を壊滅させた

 

「隊長!!」

 

「だめだ、あれじゃあもう助からん」

 

そう言うと崩れた石壁から戦車型の砲塔が現れ、生き残った装甲歩兵に砲身を向けていた。歩兵もここまでかと思った時だった。突如歩兵達の上空を飛び越えた白い影が戦車型の上面から砲弾を叩き込み戦車型を沈黙させていた

 

「あれは・・・」

 

「レギン・・レイブ・・・」

 

その機体を見た歩兵達は首のない骸骨にシャベルを持ったマークの機体を見て唖然としていた。そしてその機体から生き残りを聞かれたことでハッと現実に帰った

 

「生き残りはいない、我々が最後だ!他はもう・・・屑鉄にやられた・・・」

 

そう言うと機体から後退して体勢を整えるよう言われると歩兵達はシンの乗っているレギンレイブに守られて後退をした

 

 

 

「さて、久々の大仕事だ。気合い入れていくぞ!!」

 

「「押忍!!」」

 

街中ではノルトリヒト戦隊と合流した第32特別旅団は街中で侵攻して来たレギオンに砲撃を開始した




お願い
今作で重戦車型を恐竜型と書いてある場合があります。もし見つけたら誤字報告で報告をお願いします


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

大攻勢2

すいません、今回はすごい微妙なところで切っちゃいました


レギオンの大攻勢に苦戦するギアーデ連邦。そんな中西部戦線のとある街では数多の砲撃音とミサイルの飛び交う音が聞こえていた

 

「スノウウィッチ、次の座標送るよ!!」

 

「了解、任せて」

 

「ガンスリンガー、次の照準が来たぞ。狙撃部隊と合同で当たれ!!」

 

「OK、一撃必中よ!!援護お願い!!」

 

「「了解!!」」

 

そう言って狙撃部隊の周りにいるレギオンはジョージ達近接戦闘部隊とライデンのヴェアヴォルフとカイエのキルシュブルーテが片づけていた

 

「ビートル隊、こちらは準備完了。コルーチク、状況は如何だ?」

 

「こっちは照準完了。いつでも撃って」

 

「了解した。各機に次ぐ、所定の場所にて砲撃開始!!」

 

ドーンッ!ドーンッ!ドーンッ!

 

ババババババババババババァァァァン!!

 

そして砲撃が収まる頃、ビートルの砲撃していた地点にヴァナルガンドが停車した

 

「黒色の大型戦闘機械・・・貴官が旅団長か?」

 

「はい・・・アルガニア連邦軍第32特別旅団旅団長。リチャード・スミス大佐です・・・状況は?」

 

そう聞くと駆けつけた第67戦隊戦隊長のサムエル・ルツ大尉は第一陣は撃退に成功したことを伝えると下がって補給を受けるべきと言うとリチャードは通信機に手を当て

 

「・・・了解した。お言葉ですが大尉、先の第一陣よりも第二陣の方が本隊です。今下がるとこの戦区は陥落します」

 

そう言うとサムエルから笑みが消えるとリチャードは言った

 

「我々32特別旅団とノルトリヒト戦隊は本隊の迎撃を行う。先頭を叩けば勢いは治ると思うので。ついでに本国から一個艦隊の応援を呼びました。そうしたらこの戦いは乗り切れると思います」

 

「大佐殿、それだと・・・」

 

そう言うがリチャードはお構いなしに通信を切った

 

「総員、聞いてたな?行くぞ」

 

そう言うとリチャード達とシン達は戦場に入って行った

 

 

 

 

 

迎撃を開始したリチャード達は只々レギオンを倒していく怪物の様であった。ビートルは戦車型の砲撃を物ともせず放った砲弾で元の恐竜型ですら正面から爆散し、ミサイル部隊の飽和攻撃によって後方のレギオン部隊は真っ赤な炎と爆発で吹き飛び、また狙撃部隊もミサイルの飽和攻撃から逃れたレギオン達を駆逐するかの様に砲弾を放っていた。シンの乗る機体はまるで凶器に満ちたかの様に敵に突っ込んでいた

 

 

 

 

 

 

そして戦闘から暫く経ち、シンが狂気に満ち溢れている表情をしていることに気づいたフレデリカは驚きを露わにしていた

 

「こちらビートル1。各員に次ぐ、直ちに合流して補給を行え」

 

「「了解!!」」

 

そう言って第32特別旅団はノルトリヒト戦隊と合流をするとビートルによってレギンレイブの補給をしていた

 

「しかしビックリだね」

 

「ええ、まさかビートルで補給ができるなんて」

 

「まぁ、補給ていっても最低限の補給しかできないでどね」

 

そう言ってビートルから伸びるクレーンによってレギンレイブに砲弾が追加された

 

「よし、もうちょっとで艦隊が来るな」

 

「「艦隊?」」

 

リチャードの言った言葉にノルトリヒト戦隊は不思議の思ったがそれは直ぐに払拭した。突如上空に多数の大きな影ができ、上を向くとそこには無数の空中艦が上空に待機していた

 

「うお!これは驚いたぜ」

 

「ああ、あれは何だ?」

 

そう言ってライデンとカイエが聞くとリチャードは答えた

 

「ああ、あれはアルガニア連邦の空中艦隊。多分第四艦隊くらいだと思う」

 

そう言うと空中にいた全ての艦が砲撃を開始した

 

「目標戦域に到着。レーダーに多数のレギオン反応」

 

「了解、全艦取舵回頭。砲撃用意、弾種エネルギー弾。方位九時方向、距離5000撃て!!!」

 

ドドドドドォォォォォォン!!!

 

そうして無数の光線と共にレギオンは壊滅した。その様子をモニター越して見ていたギアーデ連邦はアルガニア連邦の科学力に改めて恐れ慄いた

 

 

 

 

 

 

 

 

大攻勢を凌いだ各国、しかしそれは決して大きくない損耗と星に還った命の数と引き換えに・・・

 

 

 

 

「よくやったぞ、リチャード」

 

「フレデリカ・・・・はぁ」

 

基地に帰るとフレデリカに小さな体でバシバシ腰のところを叩かれた

 

「まぁ、実際の所ジルの偵察とかでこっちはだいぶ楽に戦えたけどね」

 

「ああ、そうだな」

 

「だが、あの空中艦隊とやらは凄かったの。アレのおかげで前線を後退させることができたと木っ端役人が喜んでおったぞ」

 

「そうですか・・・」

 

そう言ってリチャードは少し浮かない顔をしたが、フレデリカはその理由を察すると言った

 

「何、貴国の艦隊が駆け付けてくれたから被害が広がらなかった。それだけでも連邦としては感謝しかないぞ」

 

そう言うとリチャードは少し気が楽になったのか顔色は少し良くなった

 

「ああ、ありがとう・・・」

 

そう言ってゆっくりしていた時だった。突如窓の外が光ったかと思うととてつもない衝撃が走った

 

「うわぁ!」

 

咄嗟にシンはフレデリカをリチャードはジルを庇うと割れたガラスの破片が飛んできた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「イッテテテ。ハッ!みんな、大丈夫か!!」

 

そう言って崩落した隊舎でセシルがそう叫ぶと所々から返事をした声がした

 

「こっちは大丈夫。ただ、この状況はひどいわね」

 

そう言って青空が見える瓦礫の山と化した隊舎を見て騒然としていた

 

「これは・・・酷いわね」

 

「あぁ、それよりも団長たちは大丈夫か?」

 

そう言って瓦礫の中を進んでいるとリチャードがボロボロの服装で立っていた

 

「団長!!」

 

「ん?ああ、セル、ジャス・・・無事だったか」

 

「団長こそ大丈夫でしたか?」

 

「ああ、この通り。ジルも無事だ。さて、他の生存者を探すぞ。手伝ってくれ」

 

「はい・・・」

 

そう言ってリチャード達は瓦礫の山や、声のする方などを探して救助などを行った

 

 

 

 

 

 

 

あれから数時間が経ち、幸いにも第32特別旅団のメンバーに死者は居なかったが。軽症者八名重症者三名と十一人の隊員が怪我をした。重症者はギアーデ連邦軍病院で手当をしたのち、本国に帰国した

 

「取り敢えず死者が居なかったのが幸いだな」

 

「ええ、ちょうど隊員達が休憩していた隊舎は着弾地点から離れた所でしたしね」

 

そう言って破壊された基地を見てリチャードとジルは悲惨さに黙祷を捧げるとグレーテが被害を伝えに来た

 

「・・・それで、他の基地にも砲撃されて総合で20049人・・・甚大な被害ですね」

 

「ええ、それで多数の前線基地がやられたわ」

 

「・・・前線崩壊の危険・・・ですか?」

 

「ええ、だから大統領は人類側の大規模侵攻を提案しているわ」

 

「そうですか・・・」

 

そう言ってリチャードは瓦礫の山と化した基地を見ていた

 

 

 

 

 

新型レギオンの攻撃を受けたギアーデ連邦は緊急でロア=グレギア連合王国、ヴァルト盟約同盟、アルガニア連邦の首脳と会談をしていた

 

「・・・という事で今日、砲撃された威力を考えますと。新型レギオンはユジーエ山脈要塞に砲撃されていたものと同じものと思われます。主砲口径は800mm。射程距離はおよそ400kmと思われ、個体名を『モルフォ』とし、砲撃直後に巡航ミサイルによる攻撃を行いました」

 

『それは此方でも確認している。浸透させた我が連合王国の自動機械がモルフォの観測に成功している。直撃こそしなかったが大破には持ち込んだ様だ』

 

そう言ってロア=グレギア連合王国王太子ザファル・イディナロークがそう言うと老齢の女性将校のヴァルト盟約同盟のベル=アイギス中将が言った

 

『それだけ接近出来たのならモルフォの除去も貴国の自動機械に実施していただけるので?』

 

そう言うと王太子ができなかった訳を言った

 

「生憎と小型なのでねそこまでの積載重量は無いんでね。まぁ、か弱い女性の様なものさ』

 

そう言うとベルはフンッ!と鼻を鳴らすと。各国首脳の会議は始まった




補足説明
リチャードの乗るビートル改壱型は塗装を通常の深緑色からカーボンブラック色になっている。また、他の隊長達も同じように塗装を変えている

ジルのブルーベルは一機の同調にかかる負荷を考えると最大で約500機の旧式機を運用可能であると考えられる







???
『作戦を第二段階に移行。個体名『バルグレイ』に第二データ送信を行え。おそらく近日中に反抗作戦があるものと思われる。その際に再び『バルグレイ』を孤立させ、データを強制ロードさせる』


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

作戦準備

新型レギオン『モルフォ』の一件で会議は進んでいた。しかし、モルフォの射程距離に収まる該当地域は各国の首都が含まれており、首脳達は畝っていた

 

「それで、対抗手段はあるのかい?」

 

エルンストが分析官にそう聞くと分析官は気まずそうに

 

「今の所・・・この超高速・超長距離の砲撃に対する有効な対処法はありません」

 

「そういえば貴国の列車砲はどうなのだ。同程度の威力と聞いておるが?」

 

そう言ってザファルはセルジオに聞くと

 

「ケラウノスに関しては今までの砲撃の負担で砲身寿命がきてしまいましてな。少なくとも後二ヶ月は使えない状況なのです」

 

「それじゃあ、ギリギリか・・・」

 

「それに、砲身交換した後も調整などの時間でさらに二週間は使えません」

 

「それじゃあレギオンの砲身交換に到底間に合わない」

 

そう言って他国の首脳はあるガニアの科学力に少し期待したが残念な表情を浮かべた。するとベルは

 

「それじゃあ貴国の空中艦隊はどうなんだ」

 

「それはアインタークスフリーゲの影響下では難しいです。まずは彼らを焼き払うところからですが、ミサイル発射口から侵入され、誤爆する可能性があるので厳しいです」

 

「そうか・・・」

 

そう言ってベルは上を向くと眉間を摘んでいた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

先の攻撃で負傷した兵は連邦首都の病院に運ばれたが。溢れてしまった負傷者はちょうどきていたアルガニア連邦軍の空中病院船に載せられ、処置を受けていた

 

「しかし、ひどい損害だな。これは・・・」

 

そう言ってリチャードは駆けつけていた病院船の中を見てそう言った。するとリチャードに近づく一人の影があった

 

「全く、どうやったらこんなにもひどい損害が出るのよ」

 

「おお、来ていたのか。マリア」

 

「ええ、久しぶり。リチャード」

 

そう言って陽金種の女性が立っていた。彼女の名はマリア・グラード、連邦の旧伯爵家の一人娘でリチャードの恋人でもある

 

「こっちに来ていたんだな」

 

「そりゃもちろん。これでも医者の卵よ」

 

「と言うことは・・・飛び級か?」

 

「正解〜!」

 

「頑張ったんだな」

 

「ええ、リチャードの為だもの。それは頑張れるわ」

 

そう言って二人は怪我人で埋め尽くされている通路を抜けながら外に出た

 

「大丈夫なのか?こんな所で歩いていて」

 

そう言ってリチャードは心配したがマリアは

 

「ええ、大丈夫。今の所運ばれてきた患者のほとんどの処置は終わったわ。あとは経過観察だけよ」

 

「そうか・・・」

 

そう言って空を見ているとマリアは

 

「ねぇ、久々に会えたんだしさ。何処か行けないかな」

 

「うーん、どうだろう。もうすぐ大規模な侵攻を考えているって言ってたけど・・・」

 

「・・・やっぱり心配?」

 

そう言ってマリアはリチャードの声色と表情でそう言うとリチャードは重い口を開いた

 

「・・・心配は心配かな。新型レギオンの射程距離は400km、これはアブラニア州の州都が射程距離に入る。今は湯ジーエ山脈要塞で抑えているけど。これが陥落すれば連邦は第二防衛地点に移動するけどそれでもジリ貧になる。ここで新型レギオンを潰せれば連邦は安心して戦闘に集中出来る」

 

そう言うとマリアはリチャードの手を握ると

 

「大丈夫、きっと上手くいくわ。戦争が終われば一緒にアルバカーキで一緒に過ごそ」

 

「ああ、そうだな」

 

そう言って恋人繋ぎをすると二人はこの時間を楽しんだ

 

 

 

 

 

その日の夜、第32特別旅団はトーマスから作戦概要を聞いていた

 

「今回の作戦の最大目標は旧高速ターミナルに潜伏中のモルフォの排除だ」

 

そう言って映し出された映像には西部戦線全域と南北にある連合王国、アルガニア連邦、ヴァルト盟約同盟の戦況地図であった

 

「第二目標は街道回廊の奪還。これは再びモルフォの運用をさせないための対策だ」

 

そう言って地図が点滅した場所を写した

 

「そして、今回に作戦に乗じてアルガニア連邦軍は北部戦線を押し上げ、ロバーリ・デルタ川を超える事になった」

 

「了解しました」

 

そう言ってリチャード達は敬礼をすると

 

「ああ。そうだ。君たちはこの作戦において西部戦線の押し上げの援護を頼むぞ」

 

「「了解しました!!」」

 

そう言うと特別旅団は作戦に備えて準備を始めた

 

 

 

 

 

 

 

通信を終えたトーマスは椅子にもたれると目を瞑りこう言った

 

「いよいよ人類最大の作戦が始まる。今回の作戦で投入されるアルガニア連邦軍は第一から第四方面軍に第一から第四空中艦隊。それに最新鋭ヤマト型超弩級戦闘艦二隻。軍の六割を使う最大の共同作戦・・・おそらく大攻勢の時よりも熾烈な戦いとなる可能性が有る・・・」

 

そう言ってトーマスは昔のリチャード達を思い出していた

 

「あの頃の二人は両親が亡くなった事を信じられていなかった。それ故に二人は本当の意味での悲しいと言う感情が分からなくなってしまった。だが、今の二人はちゃんと向き合うことができ、毎日を生きている。素晴らしいことだな・・・」

 

そう言ってトーマスは机に置かれた紙を見た

 

「・・・少年少女で構成された部隊。あの子達のそろそろ決める頃合いかな?」

 

そう言うとトーマスは地図を見ていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

通信を終えたリチャードはジルを見ると

 

「ジル、今回の作戦は危険だ。もしかすると前のように暴走してしまうかも知れない、だから今すぐにでも・・・」

 

本国に帰還しろと言おうとしたが。その言葉はジルの一言で途切れた

 

「嫌です。私は戦います」

 

「っ!だが、前みたいになったらどうするんだ」

 

「それでも行きます」

 

譲らないジルにリチャードは必死に説得をしたが、ジルは聞く耳を持たなかった。そしてリチャードは頭を掻くと

 

「はぁ、聞き分けの悪い妹だ・・・だけどこれだけは言っておく。”必ず近くにいる事”此れだけは絶対に守る事。そうじゃなければジルを無理矢理でも本国に送る。それが条件だ」

 

「分かっています」

 

そう言うとリチャードはジルの頭を少し叩くと部屋を出ていった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

最後に部屋を出たジルはクレナの元に行くとノルトリヒト戦隊の作戦を聞いた

 

「・・・そう、敵の真っ只中に突入する・・・すごい重要な作戦だね」

 

「うん、でも誰かがやらなくちゃいけないから・・・」

 

そう言うとクレナは夜空を見ながらいった。するとジルはクレナにあるものを渡した

 

「クレナ・・・これ、渡しておく」

 

「これは・・・」

 

そう言って渡されたロケットを開くと、そこにはこの前の休暇で一緒に撮った写真が収められていた。しかし、その中に入った写真は半分に切れられて入れられていた

 

「半分は私が持っている。もう半分はクレナが持っていて、帰ってきたらまたくっつけよう」

 

そう言うとクレナはロケットを首から下げると

 

「分かった・・・必ずここで会おう」

 

そう言って二人はお互いに見つめ合うと笑みを浮かべた。その時の星空はまるで応援をするかのように輝いていた




人物紹介
マリア・グラード
アルガニア連邦の旧伯爵家の一人娘。どんな人物にも優しい性格で人に好かれやすい。リチャードとは幼い頃に父親に連れられて遊びに行ったのが始まり。その時、リチャードは両親を亡くしたばかりで暗い雰囲気であったが、マリアの性格のおかげで立ち直ることができた。そして何回か出会っているうちに恋人同士の関係となっていた。アルガニア連邦大学で飛び級で医師となった後、病院船『ブリタニア』に乗り込みリチャードに会いにきた。ジルからは姉上と呼ばれている

セルジオ・ローズヴェルト
アルガニア連邦大統領でトーマスとは士官学校の同期。リチャードが幼い頃によく遊びに来ていた。緋鋼種で大胆だが地道に計算された考えを持つ政治家であだ名は『赤狼』


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

作戦開始

あれから数ヶ月が経った。その間、リチャード達第32特別旅団は作戦準備のためにノルトリヒト戦隊をより確実により安全に送るための方法を考えていた

 

「少なくとも、一番安全に送るには釣り出すしかないか・・・」

 

「そうですね、少なくとも此処の地域に釣り出した方がいいとは思いますけどね」

 

そう言って指さした場所は小高い丘で囲まれた場所であった

 

「ああ、じゃあ我々はそこに布陣しようか」

 

「「了解!!」」

 

そう言って隊員達はそのための準備を始めた

 

 

 

 

 

そう言って各隊員が部屋を出ていく中、ジルは何かを見つけたかのようにジッと立っていた

 

「ん?どうしたジル」

 

「・・・兄上、今母上の声が・・・」

 

「!?」

 

突如言われたことにリチャードは驚きを露わにした

 

「それって・・・」

 

「はい、確かに今『ジル・・・』と言う懐かしい声が・・・」

 

そう言って涙が不意に溢れてきていた

 

「・・・やっぱり『羊飼い』になっていたのか・・・」

 

そう言うと二人は必ずその機体を見つけて送り届けてあげようと思うと二人同時に小さく頷いた

 

 

 

 

 

 

 

そして迎えた作戦当日。リチャード達はアルガニア連邦本部と通信をしていた。すると通信が入り、大統領のセルジオが言葉を紡ぎ始めた

 

「今日、この戦闘に参加する戦士諸君」

 

そう堂々たる声色に隊員達に緊張が走った

 

「今日、我々アルガニア連邦は北部戦線を押し上げ、奪われた領土を再び我らの手に取り戻すために奮励努力せよ。武運は我らにあり」

 

演説を行うセルジオの言葉に兵士の緊張は最高峰に達した

 

「六星旗の名の下に死力を尽くせ!!」

 

そう言うと作戦準備の最終段階へと突入し、アルガニア連邦北部戦線は緊張に包まれた

 

「いくぞ、お前達。我々の釣り出しで今後の戦況が変わってくるぞ!!」

 

「「押忍!!」」

 

そう言って各部隊の士気が上がり、各部隊から吠えるように声が上がっていた

 

作戦開始まであと10秒・・・9・・・8・・・7・・・

 

画面越しで状況を見ているトーマスは考えていた

 

「今回の進行作戦が成功すれば連邦は領土拡大への大きな一歩となる・・・」

 

6・・・5・・・4・・・

 

「まずは陥落した共和国の占領からかな?・・・」

 

3・・・2・・・1・・・

 

「だが、まずはモルフォの撃破からだな・・・」

 

・・・0

 

「作戦開始」

 

「全砲台撃てぇぇぇ!!」

 

号令と共に要塞から雷の如く砲撃音が轟、それに続く形で戦車師団、歩兵師団、トラック師団などの部隊が一斉に進軍を開始した

 

「撃て撃て、我ら砲兵師団も先見した奴らに遅れをとるな!!砲撃撃てぇぇ!!」

 

ドドドドォォォォン!!

 

そう言って先に出て行った機甲師団を援護する形で後ろに控えていた自走砲師団や長距離ロケット砲師団は砲撃を開始した

 

 

 

 

 

同じ頃、ギアーデ連邦西部方面軍では同じようにレギオン支配域に進軍を開始していた

 

「っ!釣り出せました。作戦第二フェーズに移行!!」

 

「『ナハツェーラ』発進せよ!!」

 

そう言って地中格納庫から地面効果翼機が一気に飛び出していくと『ナハツェーラ』は地上数メートルを勢いよく進んでいた。作戦開始を画面越しで見ていたマリアはリチャードから貰ったロケットを握りながらリチャードの無事を祈った

 

 

 

 

 

「第32特別旅団、砲撃開始!歩兵部隊の援護を行え!!」

 

「「了解!!」」

 

そうリチャードが号令をかけると全機体は一斉に攻撃を開始した

 

ドドドドドォォォォォン!

 

そうしてあたり一面が赤い炎に包まれ、迎撃に向かってきたレギオンは無惨にも吹き飛ばされた。それを見ていた歩兵部隊は一旦は啞然となったもののすぐに進撃を開始した

 

「よし、全軍突撃!!一気に進むぞ!!道はアルガニア連邦の連中が開けてくれた。進め進め!!」

 

そう言って歩兵部隊は進撃を開始した

 

「よし、俺たちも進むぞ」

 

「「了解!!」」

 

そう言って切り離されたコルーチクを先頭に第32特別旅団は予定地点まで進んで行った

 

「そういえばノルトリヒト戦隊は大丈夫でしょうか」

 

ジョージが不意にそう言うとセシルは

 

「おやおや、カイエとの関係をどうやら認めたようだねぇ」

 

「う、うるさい!!」

 

そう言って顔を真っ赤にしてそう言っていることを想像しながら隊員達は笑っていた

 

「さぁ、今からは気を引き締めていくぞ」

 

「「了解!!」」

 

そう言って旅団隊員はレギオン部隊との交戦に入った

 

 

 

 

 

『敵補足。識別名『バルグレイ』と確認。これより作戦第二段階に入る、作戦成功時と共に。この作戦は完遂とする』

 

レギオンの中で不穏な雰囲気がある中。第32特別旅団はレギオンとの戦闘に入った

 

「コルーチク1、右からレギオンが来ている。注意して」

 

「OK、出迎えしてくる」

 

そう言って出てきたレギオンをジルが対処していた

 

「ビートル1、援護頼む」

 

「了解した。コルーチク1、気を付けろ」

 

ドーンッ!ドーンッ!

 

そして着弾した砲弾はジルの目の前にいたレギオンは吹き飛んだ。するとジャスがあることに気づいた

 

「っ!団長!副長との距離が離れています!!」

 

「何だって!?くそッ!嵌められたか」

 

そう言って急いで救援に向かおうとしたが。無数のレギオンがジルの元に行くのを拒んでいた

 

「チッ!あくまでも狙いはジルか!!」

 

そう言ってジルを助けるために隊員達はレギオンの群れを薙ぎ倒していたが。続々とやってくるレギオンに苦戦をしていた

 

 

 

 

 

同じ頃、ジルは目の間にやってきた斥候型と近接猟兵型に対処しているとジャスと同じように舞台から離れていることに気がついた

 

「まずい部隊から離れて居る。急いでもどらないと・・・っ!」

 

そう言って戻ろうとした時、突如目の部分が痛くなり、思わず喚いてしまった

 

「ああぁぁぁぁぁぁ・・・・!!!痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛イ痛イイタイイタイイタイイタイイタイ・・・・」

 

あまりの痛みにジルは目の部分を覆うと操縦桿を離してしまった

 

「タス・・・ケテ・・・」

 

そう最後に残すとジルの記憶は途切れた

 

「ジル!!」

 

「だめだ、通信が切れている。ここを突破するもの時間がかかる!急がないとレギオンにやられる!!」

 

そう言ってビートルの砲撃でレギオンの軍勢に穴が開くと、そこに一気に隊員達は突入をするとジルの最後に確認された場所に向かって走って行った

 

「ジル!!」

 

「「副長!!」」

 

そう言って駆けつけた隊員が見たものは想像を絶する光景であった。無数のレギオンの軍勢に単騎でボコボコにしている一機のコルーチクであった

 

「あれが・・・ジルなのか・・・?」

 

「あれは・・・」

 

「あの時と一緒だ・・・」

 

そう言って元235特務部隊のメンバーであった隊員は今のジルが東部戦線の時の同調率が上がった時の動きと同じになっている事に顔が青ざめた

 

「っ、取り敢えず。ジルと押さえるぞ、総員ウインチランチャー発射!!」

 

「団長!」

 

「本気ですか!?」

 

「あぁ、これしか今考えられる中で最善の方法だ」

 

「・・・分かりました」

 

「総員、コルーチク1を囲え・・・発射!!」

 

そう言うとジルの乗る機体は無数のワイヤーによって固定され、動けなくなった

 

「ジル!!」

 

リチャードは慌てて機体を降りるとロックを解除するとグッテリと倒れているジルがいた

 

「ジル!!大丈夫か!!」

 

そう言って肩を揺らすとジルは目をうっすらと開けた

 

「あ・・に・・うえ?」

 

「ジル!良かった・・・」

 

そう言って抱き締めるとジルはリチャードの頭を撫でていた。他のメンバーもジルが無事であった事にホッとしていた

 

「良かった・・・」

 

「ええ、無事で何よりだわ」

 

「取り敢えず病院案件じゃない事を喜ぼう」

 

そう言って第32特別旅団は後から来たギアーデ連邦軍に後を任せると一時後退をした




補足説明
六星旗
アルガニア連邦の国旗。上から順に白、黒、金、赤、青、緑、紫の順にストライプの色が入り、真ん中に五つの小さな星に囲まれ、中央に大きな星の入った国旗。その下には二羽の白い鳩が葉っぱを挟んでいる絵があしらわれている。ストライプの色に案しては民族の色を表しており、星はアルガニア連邦にある州を表している。






???
『作戦の第二段階終了。これにて作戦ガンマを終了。これより経過観察を行う』
???
『了解、いい結果になる事を祈っているわ』


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

合流

第32特別旅団が交代して補給を受けている頃。モルフォ討伐に向かったシン達ノルトリヒト戦隊はターミナルにいたモルフォが偽物であると察知した途端。別所にいたモルフォからの砲撃を受けた

 

「っ!ノルトリヒト戦隊の安否不明」

 

その言葉に司令部は騒然とした。そしてモルフォのいたクロイツベック市周辺の観測機が軒並み信号喪失に切り替わった

 

「巡航ミサイルの許可を・・・」

 

「無駄だよ」

 

エルンストの言葉に将官達の視線が集まった

 

「巡航ミサイルなんてどこに撃つんだい。モルフォはどこから撃ってきた?」

 

その言葉に将官達は言葉に詰まってしまった

 

「そもそも今まで巡航ミサイルはレーダーポイントあってこその照準だ。モルフォのいる場所はましてや敵陣の真っ只中だ」

 

そう言ってエルンストは将官の言った発言にキッパリと巡航ミサイルの発射許可は出さなかった。すると一人の将官は

 

「では・・・アルガニアの空中艦隊は・・・」

 

するとそれもエルンストは許可をしなかった

 

「だめだよ、確かにあの国の科学力は素晴らしいものがある。だがあの国は今まで空中艦隊の存在を隠すために鎖国をした国だ。あの国は今は同じレギオンという共通の敵を持つがもしそれがいなくなったらどうなる。もしかするとあの空中艦隊を使ってここを攻めてくるかもしれない。だから依存しないためにもあの国の科学力に頼るのはいけない」

 

そう言うとエルンストがなぜアルガニア連邦の駐留部隊の派遣は認めても、駐留軍の提案は保留にした理由がわかった

 

「あの国はいずれこの大陸全てを支配しようと考えているだろう。それは何としても避けないと・・・」

 

そう言うと一人の将官がきいた

 

「どうしてそこまでしてもあの国にこだわるのですか・・・」

 

そう言うとエルンストは少し黙ると口を開いた

 

「・・・恐らく、あの国の目的は・・・”全世界の支配者になる”・・・私はそう考えている」

 

そう言うと司令部は騒然に包まれた

 

「ですが・・・いくら何でもそんなことは・・・」

 

するとエルンストは答えた

 

「いや、彼らの科学力だったらできるだろ?」

 

「それは・・どうしてですか?」

 

そうヴィレムが効いたがエルンストは後で話すと言うと戦闘にまた集中した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同じ頃、補給を受けていた第32特別旅団はシン達ノルトリヒト戦隊との通信が切れたことに驚きを露わにしていた

 

「シン達が!?」

 

「ああ、モルフォの砲撃されて安否は不明・・・ちょっと待て、通信があった」

 

シン達と通信が切れてリチャードは焦ってビートルに向かおうとしたが、補給をおこなっていた整備班長から待ったがかかった

 

「・・・そうか、喜べ。ノルトリヒト戦隊は無事だ、今モルフォの排除に当たっている」

 

「そうか・・・良かった・・・」

 

そう言ってホッとしていると整備班長は

 

「うし、お前たちも行け。ノルトリヒト戦隊の応援なんだろ?」

 

そう言われたリチャードは驚いたがすぐさま行動に移った

 

「ありがとうございます。旅団隊員たちはすぐに出発だ!行くぞ!!」

 

「「了解!!」」

 

そう言って隊員達は修理や整備の終わった機体に乗っていくとすぐさま前線へと向かっていった

 

 

 

 

 

同じ頃、ノルトリヒト戦隊はモルフォからの砲撃を受けたが、辛うじて無事であった

 

「戦隊各位。目標変更、方位二八〇、距離五〇〇〇弾種HEAT。撃て」

 

そう言ってクレナやセオがまるでムカデのようだなどと言って文句を言う中、戦隊はモルフォに対して砲撃を開始した。そして砲撃を囮にシンはモルフォに接近を行った

 

「・・・浅いか・・・」

 

そう言ってモルフォに当てた弾丸が装甲に阻まれ、貫通していないと察すると突如モルフォは撤退を始めた

 

「・・・逃すか」

 

そう言って操縦桿を握った途端

 

「シン!!」

 

そう言って飛んできたライデンの声に我に帰った。するとライデンは

 

「どうする、追うのか?」

 

そう聞かれ、今回の作戦目標を思い出していた

 

 

今回の目標はクロイツベック市に駐屯するモルフォの撃破。それより奥に行く想定はしていなかった

 

「あぁ、追撃する」

 

すると戦隊先任軍曹のベルノルトが驚きの声を上げたが、ライデンは無言で承諾した。そして少しの沈黙があった後、ベルノルトは答えた

 

「あぁ、くそっ!全員揃ってりゃ本体到着まで持ち堪えるだけってのによくそんな命懸けになれるな!!」

 

そう言ってベルノルトは自身の部隊を回答させると最後にこう言った

 

「ガキの足手纏いなんかごめんだ・・・ご武運を」

 

それだけを言うとシン達はモルフォ追撃を始めた

 

 

 

 

 

そしてベルノルトが守りを始めてから二時間ほどが経った頃、一つの部隊が街にやってきた

 

「おや・・・あれは・・・」

 

ベルノルトがそう言うと思わず笑ってしまった。てっきり本体が到着したのかと思えばその正体は同じ基地で共に食事を摂った中の戦友であったからだ

 

「その声はベルノルト軍曹ですか?」

 

「ああ、俺だ・・・しかし何でここに来たんだ?」

 

「そりゃ応援ですよ。彼等の」

 

そう言うとベルノルトは

 

「あぁ、アイツらなら先に行っちまったぞ」

 

「そうですか・・・それじゃあお先に失礼します」

 

そう言うとリチャード達第32特別旅団はベルノルト達にそれだけ言うと街を後にした。それを見たベルノルトは

 

「ははっ・・・これは一本取られた」

 

そう言うと去って行った第32特別旅団を見送るとベルノルト達は本体との合流を果たした

 

 

 

 

 

ノルトリヒト戦隊に追いつくために街を後にした第32特別旅団は一行、シン達のいる森の中へと入っていった

 

「良かったんですか?命令の範疇を超えていますよ」

 

「あぁ、これくらいなら謹慎だけで済むだろう」

 

「ふふっ、そうですね。それに多分我々はこの作戦が終わったら本国に帰還でしょうしね」

 

「だろうな」

 

「あ〜、もうそんな時期か・・・」

 

「軍に入るか、それとも別の職に着くか・・・」

 

そう言って旅団隊員はそう話して乗るとリヒト戦隊との合流を目指した

 

 

 

 

 

同じ頃、シン達ノルトリヒト戦隊は知らない男性から現状を聞いていた

 

「・・とりあえず今回の作戦の第二目標である街道回廊の奪取は成功した。だが第一目標のモルフォの撃破には至っていない。そして君達がいるのは西方方面軍から70km西方に居る。君たちの少勢と軍団では進撃速度がまるで違う。第32特別旅団が追っているとはいえ距離はさらに開くだろう」

 

「特別旅団が来ているんですか?」

 

シンがそう問うと男性は

 

「あぁ、君たちと合流するためにそっちに向かっているよ」

 

「そうですか・・・」

 

そう言うとシンは通信してきた将官に死ぬ覚悟で追撃を行う旨を伝えると、了解したとだけ言って通信が切れた

 

「・・・リチャード達がくるか・・・ふっ、あいつらも命知らずだな」

 

そう言ってシンは少し笑った表情を見せるとシンはライデンに近づきリチャード達かくる旨を言った

 

「マジかよ!あいつらここまでくるのか!?」

 

「あぁ、それにもうすぐ来るらしいぞ」

 

「おいおい、勘弁してくれよ。あんなデカブツが来るのかよ」

 

そう言ってライデンは肩を下げていると突如、ライデンの肩を誰かが掴んだ

 

「誰だ!?」

 

そう言って咄嗟に銃を構えるとそこにいたのはリチャードであった

 

「おーおー。俺だよ」

 

「何だリチャードかよ。驚かすなよ・・・というか機体は?」

 

そう言ってライデンはビートルの場所を聞くと

 

「あぁ、この裏さ。今来たとこだよ」

 

そう言って二人を今いる廃棄され古びた倉庫の裏側に行くと、そこには何もなかった

 

「おい、機体は何処なんだよ」

 

そう言ってライデンは不思議に思うと

 

「あぁ、機体なら・・・ここだよ」

 

そう言ってリチャードはポケットからリモコンを出すと目の前にいきなりビートルが現れた

 

「うお!びっくりした!!」

 

そう言ってライデンと同じようにシンもいきなり現れたビートルの機体に驚いていた。するとリチャードは

 

「何、こういう時に使う光学迷彩さ。他の機体も既に周りにいるさ」

 

「そうなのか?」

 

「嘘をつく必要があると思う?」

 

「そうだな」

 

そう言って空中からいきなり人が現れるとノルトリヒト戦隊と第32特別旅団は合流を果たした



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

世間話

ノルトリヒト戦隊と合流した第32特別旅団は作戦内容を再確認していた

 

「・・・という事でおそらくモルフォは旧国家間鉄道の軌道を使ってここら辺にいると?」

 

「あぁ、ここら辺で声がする」

 

そう言ってシンは地図を指差していた

 

「うーん、そうか・・・どうした、シン?」

 

「あぁ、ちょっとな」

 

そう言って立つとノルトリヒト戦隊のメンバーはファイドのコンテナに近づき、コンテナをじっと見ると中から鳴いている猫の声が聞こえコンテナを開けるとそこにはフレデリカがいた。それを見ていた全員は思わず全員が同じ発言をした

 

「「「「「馬鹿か!?」」」」」

 

そう言ってセオに首根っこを掴まれ猫のようになっているフレデリカを見て

 

「帰れないかもしれないっているのに何でついてきているんだよ!!何かあったら死ぬ羽目になるってわからないのか!!」

 

そう怒声をあげるとフレデリカは

 

「その根性が気に食わんのじゃ。戯けどもが!!」

 

そう言うとフレデリカは両腕を組んでいった

 

「ソナタらはいったいいつまで必ず死ぬと定められた。いつまで86区のことを引きずっておるのじゃ。そもそもあやつらがここまで追ってきたのもソナタらを死なせないため。そうじゃろ!!」

 

そう言ってフレデリカはリチャードの方を向いて言った

 

「あぁ、確かに今回の最大命令はノルトリヒト戦隊の帰路の確保と支援だ」

 

そう言うとフレデリカは作り笑みを浮かべると

 

「ほれ、ソナタらは決して死ぬためにこの作戦に投入されたわけじゃないぞ」

 

そう言ってなぜか勝ち誇ったかのような雰囲気となっていた。するとシンは

 

「・・・ライデン、リチャード。こいつを連れて帰れるか?」

 

そう言って聞いてきた

 

「無茶言うな、んなことできんのお前くらいだろ」

 

「こっちも無理、せいぜい安全なところに入れておくので精一杯だよ」

 

そりゃそうである、ここは本体から西方七〇km、そこの間にあるレギオンの網をくぐり抜けるのは至難の業。第32特別旅団がここまで来れたのもルミのレーダーあっての事。しかもレーダーで分かったことはレギオンの大群が近づいていると言うおまけ付き

 

「仕方ない。ここはリチャードのビートルに乗せるか・・・」

 

するとフレデリカはノルトリヒト戦隊の機体しか乗らないと駄々を捏ねたので諦めてライデンノ機体に乗る事となった

 

「すまぬ」

 

「いいよいいよ。ここまできちゃったんだ、後戻りはできないさ」

 

そう言ってフレデリカをライデンの機体に乗る事が決まるとシンはフレデリカに今までたくさんの仲間を介錯した拳銃を渡した

 

「良いのか?其方らやユージンにとどめを刺した拳銃であろ」

 

「目を開くなと言っただろ」

 

「たわけ、見えたのは記憶じゃ」

 

そう言って受け取っだ拳銃を胸にもつと基地に帰ったら突き返すと言って一行はそのまま早いが食事を摂ることにした

 

「なんかさ、こう言う時ってワクワクするよね」

 

「わかるわねぇ、その気持ち」

 

そう言ってコンパクトに食事の取れる緑色のパッケージをしたアルガニア連邦の戦闘糧食をビートルのコンテナから取り出すと旅団隊員達は温め始めた

 

「さぁ、今回は何だろうね」

 

「前回は肉メインだったわね」

 

「あ、俺は魚だった」

 

「私は野菜だったなぁ」

 

そう言ってジャス、ルミ、セシルの三人は封をきると中にはそれぞれ野菜、肉、魚メインの料理が入っていた

 

「お、今回は魚だ」

 

「私は肉よ」

 

「私は野菜だった」

 

そう言ってワイワイしている中、ジョージとカイエの二人は共に倉庫の端でお互いに戦闘糧食を交換しあって食べていた

 

「うん、こっちはこっちで味付けが濃いんだね」

 

「ええ、でもこっちの方が食べやすくていいかな。そっちみたいに味が濃くなくて」

 

そう言ってお互いに少し笑みを浮かべるとおたがに戦闘糧食を食べ始めた

 

 

 

 

 

また別所ではフレデリカがセオと交換してもらった鱒のクリーム煮を食べて硬直していた

 

「お姫様には美味しくないでしょ」

 

「・・・うむ」

 

そう言って進まないスプーンを見てリチャードが近づいて

 

「よかったら交換するかい?」

 

「良いのか?」

 

「あぁ、口はつけていないし。こっちの方が食べやすいとは思うぞ」

 

「じゃ、じゃあもらおうかの」

 

そう言って交換してもらった料理は先ほどと同じく魚をメインに使った料理であったが、先ほどのとは打って違い保存料の匂いはせず。むしろ香ばしいいい匂いがした。恐る恐るフレデリカは口に運んだが。食べた途端驚いた様子を見せた

 

「これ・・・本当に戦闘糧食か?」

 

「ん?そうだけど」

 

そう言うとフレデリカは

 

「これは美味いぞ。いつも食べている食事と変わらない味だぞ」

 

そう言って夢中に食べていた。それを見ていたノルトリヒト戦隊は

 

「そんなに美味いんだな」

 

「ねぇ、まだそれって余ってる?」

 

「ん?ああ、コンテナにいっぱいあるぞ。余分に持ってきたからな」

 

そう言ってリチャードは五つの戦闘糧食を持ってくるとそれぞれ配った

 

「中には多種類の料理が入っているよ」

 

「へぇ、そこは同じなんだ」

 

そう言って封を切ってそれぞれ分けて食べ始めるとそれぞれ驚きの様子を浮かべた

 

「「美味しい!!」」

 

「アルガニアってすげぇな」

 

「いつも食べているやつと殆ど味変わらないじゃん!!」

 

そう言うと五人は今までの戦闘糧食とは違い味付けもちょうど良く、保存料の匂いが濃くないそれに夢中になっていた

 

 

 

 

そして戦闘糧食を食べ終え、それぞれ出発準備を始めた

 

「それで、シン達はそのまま直行するとして。俺たちは回り込む形で行くぞ」

 

「あぁ、その方がこちらとしても有難い」

 

「じゃあ、こっちは支援しかできないが。よろしく頼んだぞ」

 

「あぁ、まかせろ」

 

そう言ってリチャードとシンは拳を合わせ。それぞれ別れた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ノルトリヒト戦隊を別れた第32特別旅団は今後のことで話し合っていた

 

「はぁ、もう選択の時期かぁ」

 

「むしろ私たちの年だと今まで無かったのがおかしいくらいよ」

 

「そうだな」

 

そう言ってジョージとジャスがそう言っていると不意にルルーがリチャードとジルに聞いた

 

「そういえば隊長達ってどうするか決めたんですか?」

 

「え?うーん、一応決まって入るよ」

 

「副長はどっちに行くんですか?」

 

「私はこのまま軍に行く予定」

 

そう言うとルルーは納得した表情を浮かべていた

 

「やっぱり副長はそうなんですね」

 

「もちろん兄上もですよ」

 

そう言って進むこと数時間。リチャード達は合流予定地点の廃村へと入った

 

「おー、来たきた」

 

「間に合ったようね」

 

「ええ、どうにかね」

 

そう言ってアンジュ達と合流した旅団は夜まで休憩を行った。その間に、シンとライデンが駅の歩道橋の上でシンに怒っているのを見て、アンジュ達が何か考えた様子を見せるとそれを見ていたジルはレーナの共和国の事を思い出していた

 

 

 

 

 

 

そして夜となり、一行はモルフォ撃破のために道を走っていた。するとフレデリカがリチャード達にふとこんなことを言い出した

 

「・・・其方達は海を見たことはあるのか?」

 

「え?海?」

 

「うーん、最近は行けてないかな」

 

「そういえば懐かしいね」

 

「最後に行ったのいつだっけ?」

 

「準備学校の永遠水泳大会」

 

「あれキツかったな」

 

そう言って話で沸いていると

 

「海に行きたい。海水浴とやらがしてみたいぞ。エルンストの新婚旅行の写真でみたのじゃアルガニア連邦の海で撮ったと言っておったぞ。さぞかし楽しいのだろうな」

 

そう言ってフレデリカは羨ましそうに言った

 

「海か・・・そっか共和国と連邦にはないのか・・・」

 

「ああ、せいぜい湖で泳ぐぐらいだったな」

 

そう言って全員が話していると

 

「海か・・・いつか行ってみたいなぁ」

 

「海はいいとこだよ、珊瑚礁に白い砂浜、それに椰子の木」

 

「北の海だと今度は海の上を歩けるらしいけどね」

 

「面白そう」

 

「みんなも本国に来たら海にいつでもいけるよ」

 

「「へぇ〜」」

 

そう言って一行は世間話をしながら行群をしていた




補足説明
リチャード達特務部隊はまずは13歳から入れるアルガニア連邦軍士官準備学校を出た後、16歳から実戦を開始し、20歳くらいになると司令部から軍に入るのか、それとも退役して他の職に着くのかを選択する機会が与えられる。軍に入る場合は最初から大佐、または准将として入ることができ、準備学校の授業で陸、海、空の戦術に関して叩き込まれるのでどこに軍にも所属ができる。また退役する場合は国営企業への就職か、もしくは国の推薦する企業に入ることができる。また、準備学校に入るためには厳しい訓練と難しい授業の付いていかなければならないため。最初の頃は2000人ほど入学する内、卒業できるのはわずか200人ほどしかいない


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

作戦終了

今回かなりすっ飛ばす所があります


モルフォ撃破のために行軍をしている第32特別旅団とノルトリヒト戦隊は途中の都市で一夜を取ることとなった

 

「ふぅ、ようやく着いたねぇ」

 

「そうだね、でもジルの話を聞いた時はビックリしたけどね」

 

「本当だよ。しかも痛すぎて気絶しちゃってたし」

 

そう言ってジルはアンジュとクレナと共に空を見ながらそう言った

 

「ねえねえ、もしかして新しい機能とかあったりするのかな?」

 

「『アイラ』に?」

 

「そうそう」

 

そう言ってクレナが少し目をキラキラさせながら聞いてきた

 

「うーん、如何だろう。今はわからないな」

 

「そっかー」

 

そう言って三人は疲れていたのかぐっすりと寝てしまった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の日、物資の関係上探索最終日となるこの日。早速一行は都市に滑り出ていた。すると上空から何かが飛んできて弾けると土煙から炎が立ち上がった

 

「「焼夷弾!?」」

 

そして森の梢が一瞬にして燃え盛った

 

「ちっ!炙り出す気か!」

 

そう言っているとさらに砲弾が飛んできて移動進路を悉く燃やされた

 

「行くしかないようだ。総員戦闘用意、これより第一陣と接触する」

 

すると長距離砲型の砲撃でナパーム弾が飛んで来て付近一帯が一瞬にして炎の海と化し、間一髪で街の外に部隊は飛び出した

 

「っ!しまった!!」

 

そう言って遠い水平線の近くで斥候型のセンサーが反応し、直後にクレナが砲撃するも間に合わずに一斉にレギオンが湧いて出てきた

 

「なんちゅう数だ、虫みたいにウジャウジャと・・・」

 

「それだけモルフォは大事だと言うことだろう。取り敢えず薄い左翼に最大速度で突破するぞ」

 

「「了解」」

 

そう言って旅団隊員達は森の中を突き進み、ノルトリヒト戦隊の護衛を行いながら崖の上の部分を進んでいた

 

「相変わらず鬱陶しい。吹っ飛ばすぞ!!」

 

そう言ってビートル砲撃隊が一斉に追撃すると大きな爆音ともにレギオンが吹き飛んでいた

 

「よっしゃ、近くにいるヤツは吹き飛んだぞ」

 

そう言ったのも束の間。戦車型の砲撃でアンジュの乗る機体が崖から落ちてしまった

 

「大丈夫か!?」

 

咄嗟にそう叫ぶとリチャードはここに近接戦闘部隊のレオンとエミリアを置くと言うと先に進んでいった

 

 

 

 

 

 

途中、街に出た一行は足止めをするためにセオ、カイエと共に一斉射撃を開始し。シン、ライデン、クレナの三人は先に進んだ

 

「セオ、こっちから照準送るから行ける?」

 

「あぁ、任せときな!!」

 

「砲撃初め!!」

 

そう言うと旅団メンバーは一気に自由射撃を開始し、迫ってくるレギオン相手に吹き飛ばしていた

 

「撃て撃て!!ヒャッハー!!最高だぜー!!」

 

「やばい、隊長がおかしくなった」

 

「何、いつもの事さ。コルーチク、バッテリーは大丈夫か?」

 

ルミの様子を見ながらリチャードはジル達偵察部隊のバッテリー残量を確認しながら砲撃を続けた

 

「こっちは大丈夫。ただ如何せん敵の数が多すぎるわ」

 

「分かった、今からそっちにミサイルを送る。衝撃に注意しろ」

 

「「了解!!」」

 

そう言うとジャス率いるミサイル攻撃部隊が一斉に攻撃を開始するとジルの近くにいたレギオンは一気に消滅した

 

「助かった。今からそっちに行くリロードをする」

 

「了解」

 

そう言って戦闘を続ける事数時間。突如シン達の向かった方で大きな爆発音があったと思い後ろを振り向くと、其処には大きな爆炎と共に散っていくモルフォの姿が見えた。」それと共に接近していたレギオンの掃討が終わり、急いで旅団隊員達はシン達の向かった方へ走って行った

 

 

 

 

 

そしてシン達の方へ急いで進む中、ルミのレーダーに反応があった

 

「む、これは・・・団長。レーダーに感。大きさからして多分『ジャガーノート』」

 

「そうか・・・そういえばここは共和国領だったな」

 

「思いっきり領土侵犯ですね」

 

「何、バレなきゃ犯罪じゃ無い」

 

そう言っていると上空に超低空で飛ぶ攻撃ヘリと輸送ヘリが飛んでいき、真の機体の近くに着陸をした

 

「おーおー、後はギアーデ連邦に任せるかねぇ」

 

「でも一応出ておいた方がいいと思いますよ」

 

「そうか・・・じゃあ出ていくとしますか」

 

そう言ってヘリに便乗する形でリチャード達も出ていくと。其処には共和国軍服を着た一人の軍人と一機のジャガーノートが一機のレギンレイブと対峙していた。そしてリチャードは通信機を使ってシンに

 

「ノウゼン中尉、我々は当初の作戦の完遂を確認した為本国に帰投します」

 

そう言い残すとリチャード達はそそくさとアンジュの護衛に就かせた二人を回収し、撤収して行った



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

サンマグノリア共和国救出編
転属


先の作戦から数日が経った。その感、リチャード達第32特別旅団全員が本国への帰還命令が降り一行はサン・デ・レグリアレスタ総合基地にある旅団の詰所にいた

 

「しかしいきなり帰還命令とは驚きましたね」

 

「全くだ、まさか一度大使館に戻ってからだと思っていたのが。そのまま直行でくるなんて・・・」

 

「あーあ。今頃団長達は報告書でヒーヒーしているのかな?」

 

「いや、中将閣下に呼ばれていたから別のことでしょ」

 

そう言ってジャスとセシルの二人はポーカーをしている中。ジョージだけは部屋の隅で暗い雰囲気を放っていた

 

「ジョージは・・・まぁ、ドンマイとしか言いようが無いよね」

 

「まぁ、流石に可哀想よね。恋人に別れも言えずに帰ってきちゃったから」

 

そう言ってジョージはメールで一応急遽本国に帰ることになった旨を伝えたが。やはり直接言えなかったことが心に響いていた

 

「ジョージ、まだメール交換できただけいいじゃないか」

 

「そうそう、メールで一応伝えられたんだからさ」

 

そう言って励ましているつもりのようだがむしろ傷を抉っていることに二人は気づいていなかった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同じ頃、リチャードとジルの二人は先の作戦中に気絶した事を伝えるとトーマスは驚いたが、ジルが少し気絶しただけであることに安堵していた

 

「良かった・・・取り敢えず元帥閣下だけにはこっそりと伝えておくよ」

 

「分かりました」

 

そう言ってトーマスは机の棚から二枚の紙をそれぞれ二人に渡した

 

「さて、ちょうどいい所だ。二人にはこれを書いてもらうよ」

 

そう言って差し出された紙には

 

『第32特別旅団の選択に関する書類』

 

と書かれた紙があった

 

「叔父上、今ここで書いても?」

 

「ああ、書いたら私に持ってきてくれ」

 

「はい、分かりました」

 

そう言って二人は紙に軍に入るか、それとも退役して一般企業に就職するのかの二択の紙を書き終えるとトーマスの前に持ってきた

 

「叔父上、これでいいですか?」

 

そう言って見せた紙には二人とも軍に入ることが明記されていた

 

「・・・分かった。取り敢えずこれで受領させてもらう。ジルは少しここに待ってもらっていいかい?」

 

「分かりました」

 

そう言ってリチャードだけが退室するとトーマスはジルと向き合ってあることを話した

 

「ジルは確か準備学校の海軍シュミレーションで学年一位だったか?」

 

「はい、私は確かに一番でしたが・・・それが何か?」

 

そう言うとトーマスは少し笑うと

 

「実は海軍の艦艇に空きがあってな。其処の艦長席が空いているんだ。どうだい、やってみないか?」

 

そう言うろジルは少し考えて言った

 

「私は・・・兄上とできれば一緒の所にいたいですし。それに海軍だと『アイラ』が使えないので・・・・」

 

そう言おうとした時、トーマスはジルに発言を中断する形で言った

 

「あぁ、そこら辺は大丈夫だ。リチャードとも一緒にいられるし『アイラ』も大いに使う」

 

その言葉にジルは思わず不思議に思った

 

「え?どう言うことですか?」

 

「これはまだ正式な決定じゃ無いんだがな・・・・」

 

そう言って小声でジルに言うとジルは驚いた様子でトーマスを見た

 

「それは本当なんですか!?」

 

「あぁ、まだ正式では無いがな。それに、君が艦長になれば一緒に行動ができるし、『アイラ』も活躍する」

 

「確かにそれだと一緒に行動できますし、兄上のお手伝いができますね」

 

「あぁ、だからどうかなと思ったんだが」

 

そう言うとジルは

 

「是非やらせてもらいます」

 

そう言うとトーマスは笑みを浮かべ

 

「君ならそう言ってくれると思ったよ。それじゃあ期待している」

 

「はい!」

 

そう言って部屋を出て行った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

部屋に残ったトーマスは一人考え事をしていた

 

『今回の作戦で連邦はロバー・リデルタ川まで押し上げることに成功、そして共和国南部地区の奪還に成功・・・』

 

そう思いながら先の作戦結果を思い出していた

 

『その時のこちらの損耗は僅かであったがギアーデ連邦は西部方面軍の六割を失ったと言う。こちらからの物資を送れられるが、流石に人員を割くことは難しい。いくらなんでも北部戦線が押し上げられたとは言えこれ以上の戦闘は国民の負担が大きくなってしまう・・・どうにかせねば』

 

そう思いながらトーマスは早速ジルの返事を元に電話を掛けた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そしてあれから月日は流れ、第32特別旅団は解体、編入がなされた

 

「あぁ、しっかし新しい部隊とはなんだろうね」

 

「さぁ?取り敢えず俺とお袋が一緒なのは驚きだな」

 

「お袋じゃ無いっての・・・まぁ、確かにこれに関しては同感ね」

 

そう言って集合場所となっていた会議室のドアを開けた。すると其処には第32特別旅団の時と変わらないメンバーが其処にはいた

 

「あれ?どうして団長が?」

 

「それにみんなも」

 

そう言ってセシルとジャスの二人は困惑しながら席に座ると最後にトーマスが入ってきて全員が立ち上がって敬礼をした

 

「ああ、座ってくれ」

 

「「は!」」

 

そう言って隊員達は座るとトーマスは徐に話し始めた

 

「さて、今日此処に君たちを読んだのは他でもない。新しい部隊の創設のためだ」

 

そう言うとジョージが質問をした

 

「中将殿、一つよろしいでしょうか」

 

「なんだね?」

 

そうトーマスが聞くとジョージは

 

「ではお聞かせ願います。どうしてジル・スミス中佐の軍服が”海軍”の物なのでしょうか」

 

そう言うと一斉に隊員達はジルの方を向いた。確かにジルの今来ている制服は陸軍の深緑を基調とした物ではなく、海軍の黒と紺色を基調とした士官服を来ていた

 

「まぁ、そうだな。まずはそのことから話すとするか。この度、ジル・スミス中佐は大佐へと昇進し、波動エンジン実験艦『ギンガ』艦長に就任する事になった」

 

そういうと会議室は一時騒然としたが、リチャードがそれを抑えた

 

「さて、転属の件も言った事だし。今度は君達の所属する部隊だな」

 

そういうと会議室に少しばかりの緊張が走った

 

「君たちには想像しているものもいるかも知れないが今度新しく創設される第一遠征師団に編入してもらう事になった」

 

するとジョージが質問をした

 

「中将閣下、その”第一遠征師団”とは何でしょうか」

 

そう言うとトーマスは淡々と答えた

 

「遠征師団というものは国からの要請で派遣されるいわば傭兵みたいなものだな」

 

そう言うとジョージは納得した表情で席に座った。そしてトーマスは

 

「さて、もうお分かりだろう。此処にいるメンバー全員が第一遠征師団のメンバーだ」

 

そう言うとジャスが質問をした

 

「中将閣下、では何故海軍に転属したジル・スミス大佐が此処にいるのでしょうか?」

 

「あぁ、それは・・・」

 

そう言って説明しようとしたが。ジル自ら答えると言ってジルは説明をした

 

「それは何故かと言いますと。私の着任する実験艦『ギンガ』は第一遠征師団の移動基地の代わりを務めるからです」

 

「・・・詳しく聞かせても?」

 

そう言ってジャスはジルから詳しい話を聞いた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・と言うことで、私が此処にいる理由はこう言うわけです」

 

そう言うとジャスは納得した様子で頷いていた

 

「さて、今回の一件でリチャード・スミス大佐は准将に昇格。ジル・スミス中佐も海軍大佐に転属と昇格だ。他の各々の昇進に関しては今から配る封筒に書いてある目を通しておいてくれ。では解散」

 

そう言って部屋を出ていく中。ジャスはジルに近づくと

 

「すごいな〜!海軍に転属に加えいきなり艦長とな」

 

そう言ってジルの紙をわしゃわしゃしていると汁はくすぐったそうに言った

 

「ジャス、これは『アイラ』の影響なだけで別に自分は・・・」

 

「いいや、アイラなしでもアンタは十分艦長になれる素質はあったと思うよ。じゃないとトーマス中将がわざわざ艦長を推薦したりしないって」

 

そう言うとジルは少し自信がついたのかジルは元気のある返事で返事をすると会議室を後にした




補足説明
ジルは士官準備学校の海軍シュミレーターで学内一位をとり、海軍戦術に強かったがリチャードと一緒に居たかったが為に無理やり陸軍の方に入った(それでも時々海軍の方で勤務はしていた)

ちなみに、第32特別旅団のメンバー全員に選択の紙が渡され、奇跡的に全員が軍につくことを決めた





本来、陸軍から海軍に編入することなんてあまりないの思うのですが・・・


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

新しい拠点

ジルが実験艦『ギンガ』の艦長の報告とリチャード達の新しい部隊の発表がされた翌日。リチャード達はアルガニア連邦海軍ロット・ヴェルタ海軍工廠に来ていた

 

「おお、これが・・・『ギンガ』・・・」

 

そう言って眼前のドックに浮かんでいる一隻の艦を見て驚いていた

 

「そうだ、今日から君達の新しい家になる場所だ。さて、君たちの機体は既に格納庫に入れてある、まずは艦内を探索して場所を覚えてもらわないとな」

 

「「了解」」

 

そう言ってタラップを伝い中に入り先に乗っていたジルと合流し、艦内の説明を始めた

 

「・・・と言うことで、管制装置はアイラが全部やってくれるから砲術員とか入らないんだ」

 

「「はぇ〜」」

 

「じゃあ、次は格納庫。第一遠征師団の機体を入れておくところだね」

 

そう言って自動扉が開くとそこには広い空間に自分達の乗っているフェルドレスがいた

 

「「おぉ〜!」」

 

そう言って驚いているとジルは端末を持ちながら次が最後だと言って着いた先には『航空機格納庫』と書かれていた

 

「これは・・・」

 

「あぁ、書いてある通りだよ」

 

そう言って扉を開けると、そこには八機の航空機がそこに鎮座していた

 

「空中艦隊搭載航空機『アリゲーター』、これはアイラによって自動化されている」

 

「これが・・・アリゲーター・・・」

 

「初めて見た・・・」

 

そう言って各々驚いている中、トーマスは

 

「それじゃあ、そろそろ出港だ。私は此処で降りるぞ、後は頑張ってくれ」

 

「「了解しました!」」

 

そう言ってトーマスはタラップを降りて行った

 

「・・・よし、出港用意!錨を上げー!!」

 

そう言うと第一遠征師団メンバーは艦内にある部屋に入り、ジルは艦橋に向かった

 

「出港準備よし、フライホイール接続。波動エンジン起動完了。いつでも行けますよ!」

 

そう言って報告をしたのは機関長であるアネット・トクガワがそう言うとジルは

 

「了解、『ギンガ』出港。微速前進、方位150。沖合に出たと同時に離陸開始」

 

「微速前進了解」

 

そう言ってジルは艦長席に置かれたタッチパネルを触り、艦内にエンジン音が響くとドックをゆっくりと進み始めた

 

「おぉ、動き出したみたいだな」

 

「あぁ、そうだな・・・」

 

そう言って少し揺れた部屋を見てセシルがそう言うとリチャードは少し心配であったがそんな不安はすぐに払拭された

 

「・・・主翼展開、離陸開始。離陸後、安定しだい上空からの降下訓練を行う」

 

そう言うとギンガの船体部から翼が飛び出すとエンジンが畝り、ギンガは空へと飛び立った。その様子を見ていたトーマスは

 

「・・・頑張ってこい」

 

それだけを言うと海軍工廠を去って行った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから数ヶ月が経った、その間。リチャード達はギンガとの訓練を行い、訓練にも慣れてきた頃であった。その日、リチャードとジルの二人はトーマスに呼び出されトーマスが使っている部屋に来ていた

 

「リチャード・スミス准将、並びにジル・スミス大佐。ただいま参りました」

 

そう言って扉を開けると、其処には目眼をかけて紙に目を通していた

 

「あぁ、きたな。では早速だが君たちには再びギアーデ連邦に行ってもらう」

 

「「え!?」」

 

突然言われてことに二人は変な声をあげてしまった

 

「何、そのままの意味だ。第86独立機動打撃群の設立にあたってアルガニア連邦は支援をするのと君たちを送る事が決まった。まぁ、君たちはエルンスト暫定大統領から直接名指しで呼ばれていたんだ」

 

「チッ、あのお天気役人が・・・・」

 

そう言ってリチャードはエルンストの表情を想像すると無性に苛立ちが湧いた

 

「まぁ、そう言うことだ。そうカッカするな、お前の親友にも会えるんだぞ?」

 

「でもその前にあのお天気役人にペンキをぶっかけたいですよ」

 

そう言うとトーマスは若干苦笑いを浮かべると

 

「ははっ、まあそう言うことだ。近日中に出撃して行ってくれ、入国審査は向こうでしてくれるそうだ」

 

「「了解しました!!」」

 

そう言って部屋を出て行った

 

 

 

 

 

 

トーマスは二人を見送ると懐かしむように窓の外を見ていた

 

「リチャードが師団長・・・か。兄が生きていればさぞかし喜んだだろうな。それにやっぱりああ言うまっすぐなところも兄そっくりだ」

 

そう言ってトーマスは兄のトミーと似た真っ直ぐな性格を思い出すと懐かしく思えた

 

 

「ジルも、義姉のように正直で優しい子に育った。まるであの二人を見ているようだ・・・」

 

そう言うと不意にトーマスの目から涙がこぼれた。そして視線の先には司令部を出て車に乗り込む二人の姿があった

 

 

 

 

 

 

「・・・ドウイウコト?」

 

帰ってきたジルが目の当たりにしたのは画面に写った自分に似た人物であった

 

『私はアイラと言う者です』

 

「え?」

 

『私は多目的AI『アイラ』であります』

 

「え?え?」

 

そう言ってジルが困惑している中、アイラは淡々と話した

 

『私は多目的AIとして主人様のAIの中に生成された人格であります』

 

「その主人様って・・・私?」

 

『その通りでございます』

 

「つまり貴方は私の名付けた『アイラ』って事?」

 

『わかりやすく言うとそんな感じです』

 

そう言うとジルは眉間をおさえて何かを考えると

 

「とりあえずわかりやすく言うと貴方はあのAIで作られた人格で私に使えていると?」

 

『そう言う事です。主人様』

 

「うーん、取り敢えず私じゃ手に余るな。兄上を読んでくるか・・・」

 

そう言ってリチャードに事情を説明すると苦笑いを浮かべた様子でこう言った

 

「そうか・・・取り敢えずこの件は叔父上だけに伝えて。後はこっちで何とかしよう」

 

「わ、分かりました」

 

そう言って艦橋に戻るとアイラは不思議そうにジルを見ていた

 

『どうかされましたか?主人様』

 

「うーん、なんか不可解な事がありすぎてね・・・」

 

『?』

 

そう言ってアイラは不思議に思っているとジルはあることを聞いた

 

「ねぇ、アイラはどんな事ができるの?」

 

そう聞くとアイラは淡々と答えた

 

「基本的に元々繋げていたこの艦艇の火器管制などは自由に動かせます。ただ、人の体はないので主人様の身の回りのお手伝いはできませんが・・・」

 

「そう・・・」

 

そう言ってジルはアイラのできる範囲を大方把握すると

 

「じゃあ、アイラは端末を移動できたりするの?」

 

そう聞くとアイラは答えた

 

「一度繋いだ端末なら自由に移動ができます」

 

「なるほど・・・じゃあこれと繋いでおくか」

 

そう言うとジルは持っていた携帯を繋げると、アイラの映像が艦橋の画面からジルの携帯に映った

 

「これでよし、そっちは大丈夫?」

 

『はい、少し窮屈ですが大丈夫です』

 

「OK、それじゃあ。また戻って」

 

そう言うと今度は艦橋の画面にアイラが映った

 

「よし、それじゃあ出航しようか」

 

『畏まりました。直ぐに準備を行います』

 

「あれ?機関も行けるの?」

 

そう言ってネットには繋いでいないはずの機関部を動かすような発言にアイラは

 

『はい、人格が形成された際にこの艦の人員名簿。それに機関の調整補助機能も追加されていました』

 

そう言うとジルは驚きの声と乾いた笑い声を上げた

 

「ははっ・・・こりゃ参った。まさか機関まで動かせるとは・・・」

 

『はい、それにこれでもまだまだ容量は余っています。艦内にある機体も簡単に動かせますよ』

 

そう言って少し誇らしげに言うと

 

「ほぇ〜、そんなことまで出来るの。じゃあ人型ロボットなんか与えたら本当になんでも出来ちゃうね」

 

『はい、主人様のためならなんでもこなしますよ。そもそも私の人格の元は主人様なんですから』

 

「え?そうなの?」

 

そう言ってジルは驚くと

 

『はい、私はもともと人格なんかないただの機械だったのが、前の大規模戦闘で主人様の人格がコピーされて生まれののが私です』

 

そう言うとジルは心当たりがあった

 

「あぁ、あの気絶した時か・・・・」

 

『はい、その時に。主人様の性格、容姿がAIのネット上に映されたのです』

 

そう言うとジルは取り敢えずギンガを出港させ、ギアーデ連邦第86独立機動打撃群本拠地のリュストカマー基地へと進路を取った




補足説明
艦載機のアリゲーターは本来は20機配備予定だったが生産が間に合わず、八機しか配備出来なかった。なので後から順次追加されていく

ちなみに、ジルの乗っていたコルーチクは機体の精密機械部分を抜きとった後は分解され、中のデータを艦艇のネットワークに繋ぎ、火器管制、隔壁操作、艦載機運用、情報処理システムをアイラに任せて動かしている

機関を動かしているアネット・トクガワはジルと士官準備学校の同期で仲良し





???
『送信した追加データの影響で内部に新たな人格が形成された模様。引き続き観察を続ける』


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

再びの来訪

ジルのAIに『アイラ』と言う人格が形成された事で一騒動あったがギンガは今回の目的地であるリュストカマー基地へと進路を取っていた。そしてジルから『アイラ』内部に人格が形成されていた事をトーマスに極秘通信で伝えていた

 

「・・・と言うわけでジルのAIに『アイラ』と名乗る人格が形成されていました」

 

そう言うとトーマスは信じられないような表情を浮かべ、そして困惑していた

 

「つまりそれは・・・あのAIが感情を持った。と言うことか?」

 

「感情があるかは分かりませんが。少なくともAIの中に人格が形成され、この艦を操っているのは事実です」

 

「・・・その人格に反乱の危険性は?」

 

そう聞くとリチャードはキッパリといった

 

「反乱の危険性は極めて低いものと思われます。そもそもその人格はジルの感情や性格を元に作られたものだと言うことです。それにその人格・・・言いにくので『アイラ』はジルが絶対的な主人と登録されているようで、氾濫する可能性は極めて少ないかと・・・」

 

そう言うとトーマスは眉間を摘むと

 

「分かった、取り敢えず。今回の一件も私から直接元帥閣下に伝えておく。まぁ、研究所に連れていかれないようにだな。この前の一件でも驚いていたが、今回の一件は腰を抜かすだろうな」

 

「『鉄仮面』の元帥閣下がですか?」

 

「あぁ、ジルの一件では驚いているよ。それじゃあ、早速行ってくるよ」

 

そう言って通信が切れた

 

「アイラか・・・」

 

通信が切れ、部屋でに戻る途中。リチャードはジルのAIに生まれたジルに人格をコピーして作られた人格になんとも言えない感情が湧いていた

 

「ジルの容姿と性格を元に作られた人格・・・なんか妹が二人いるみたいだな」

 

そう言いながら艦橋に向かうとジルとアイラが楽しそうに話をしていた

 

「・・・そうか・・・同じ人格だから話が合うのか・・・」

 

そう言って話に花を咲かせているところに最中に自分んが割り込むのは悪いと思うと第一遠征師団の使っている休憩室に入るとセシルが早速聞いてきた

 

「あ、リチャード。ジルのAIに人格ができたって本当?」

 

「もう広まっているのか。そのことは口外無用だぞ」

 

「分かっています。変に広まって研究所の変人の研究材料にさせるのは嫌ですから」

 

セシルがそう言うとリチャードはアイラのことを詳しく話した

 

「・・・なるほど、ジルの性格、容姿、声帯。全て同じAIですか・・・」

 

「なんか双子みたいな感じね」

 

「あぁ、全くだ。そのせいかさっきからずっとアイラと話しているよ」

 

「あー、それはどんまいって感じですね」

 

そう言ってセシル、ジャス、リチャードの三人はアイラとジルの事で話していると休憩室の画面にアイラが写り

 

『みなさん、現在ギンガはギアーデ連邦領内に入りました。そろそろ準備をお願いします』

 

そう言って通信が切れるとセシル達はやはり驚いていた

 

「やっぱりコピーしただけあって本人が言っているみたいだな」

 

「あぁ、そうだな。さて、降りる準備だ」

 

「「了解〜」」

 

そう言うと三人は格納庫へと向かった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、リュストカマー基地ではシン、レーナ、ライデンの三人が連絡を受けて外の滑走路で待機していた

 

「しかし驚いたな。いきなり連絡があった時はよ」

 

「ええ、確かに驚きましたね」

 

「おそらくあの役人が仕組んだ事だろ」

 

「相変わらず容赦ねえな・・・」

 

そう言って外で待っていると不意にライデンが

 

「そう言や、今日来るのって誰か知っているか?」

 

そう言って確かに誰が来るのかすら聞いていなかった事に二人はハッとした

 

「そう言えば言われませんでしたね」

 

「・・・別に誰がきても変わらないだろ」

 

「シン・・・もしお偉いさんだったらどうするんだよ。その口調で言ったら確実にキレれられるぞ」

 

そう言ってライデンが呆れていると遠くからエンジンのような音が聞こえ、ついにきたかと思うと上空に巨大な艦影が見え、滑走路に着陸をした

 

「おいおい、マジかよ」

 

「あれは一体何なんですか!?」

 

そう言ってライデンはアルガニア連邦海軍がきた事に驚き、レーナは初めて見た空中艦に驚いていた

 

「大佐。あれはアルガニア連邦の空中艦と言われるものです。初めてでしたか?」

 

「はい・・・空中艦・・・聞いてはいましたけど圧感ですね」

 

そう言って着陸した艦艇からタイヤが降ろされ、入り口が開いて二人の人物が降りてきた

 

「来たぞ・・・」

 

そして近づいてきた二人に三人は敬礼をすると共に挨拶をした

 

「初めまして、私は第86独立機動打撃群所属ヴラディレーナ・ミリーゼ大佐です」

 

「同じく第86独立機動打撃群所属シンエイ・ノウゼン大尉です」

 

「同じく第86独立機動打撃群ライデン・シュガ中尉です」

 

そう言うと降りてきた二人の自己紹介をした

 

「初めまして、私はアルガニア連邦陸軍第一遠征師団師団長リチャード・スミス准将です」

 

「私はアルガニア連邦海軍波動エンジン実験艦『ギンガ』艦長ジル・スミス大佐です」

 

そう言うとさん人は驚きの表情を浮かべ、リチャードとジルの二人は上手くいったような表情を浮かべると

 

「よ、久しぶり。シン、ライデン」

 

「そして直接会うのは初めてですねミリーゼ”少佐”」

 

そう言うとレーナは驚きのあまり固まっていた

 

「久しぶりだなリチャード!!何ヶ月ぶりだ?」

 

「何、半年くらいじゃないか」

 

「でもよかったぜ。あの時いきなり帰ったからクレナが泣いて大変だったんだぞ」

 

「え?そうなの?」

 

そう言ってライデンがジルにそう言うとギンガの着陸の様子を見てワラワラと人が集まってきていた

 

「まぁ、此処じゃあなんだ。中に入って話そうじゃないか」

 

「いいのか?国家機密に乗っても」

 

「何、立ち入り禁止区域じゃなければ入っても大丈夫だ」

 

そう言って三人を艦内に入れると艦内の休憩室で三人はソファーに座った

 

「しかし、いきなり帰ったと思ったら今度はこんな大層なもので帰って来るなんてな」

 

「何、今は正式な軍人だ。それにジルは海軍所属になっただけだ」

 

「あの時は軍人じゃなかったのか?」

 

「うーん、まあ正確にはあの時は研修期間みたいな感じ」

 

「あれが研修期間なのか?」

 

「そんな感じ」

 

そう言っているとリチャードは本題を持ち出した

 

「さて、今日俺が此処にきたのは第86独立機動打撃群の物資の補給と応援。その為に”これ”出来たんだ」

 

「この艦艇か?」

 

そう言うとリチャードは頷いた

 

「さて、ミリーゼ大佐。あなたにお土産ですよ」

 

「お土産?」

 

そう言ってレーナは不思議がっているとリチャードは後で紹介するというとリチャードはシン達を外に出すと、そこにはすごい人数の第86独立機動打撃群の隊員達が写真を撮ってワイワイしていた

 

「おーおー、これがこれは凄い人数だな」

 

「そ、そうですね」

 

「これじゃあ荷下ろしができんな」

 

「え!じゃ、じゃあすぐに場所を開けさせます!!」

 

そう言ってレーナが場所を取るとリチャードはジルに通信をしてギンガの格納庫を開けさせて、そこから大量の物資と一台の装甲車が降ろされた

 

「もしかして、お土産ってあれですか?」

 

そう言ってレーナは降ろされた装甲車を見てそう聞くと

 

「えぇ、あなたが使う専用指揮車ですよ」

 

そう言うとレーナは驚きの様子を見せていた

 

「でもあれって・・・」

 

「そう、元々はウチのやつですが改造して持ってきたんです。そもそもギアーデ連邦との取り決めで一部の物資と資金に関しては本国が関わっているんですよ」

 

「そうなんですか?」

 

そう言ってレーナは聞くと

 

「ええ、だから今回我々が派遣されたんですよ」

 

そう言うとリチャードとレーナは降ろされていく物資の確認をしていた




補足説明
第一遠征師団には戦車部隊、歩兵部隊の二つがあり。さらに戦車部隊はビートル隊、遠距離砲撃隊、ミサイル攻撃隊、近接戦闘隊、レーダー隊、偵察隊に分かれている。なお戦車部隊の編成は第32特別旅団の時と変わらない。歩兵部隊は五人一組の四分隊に分かれており、それぞれの分隊に一台の装甲車と一人ずつに装甲甲冑が渡されている。なお歩兵部隊隊長はドラゴ・ノル少佐でリチャードと同期


ジルが持ってきた指揮戦闘車は89式装甲戦闘車です


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

状況報告

リチャード達が荷下ろしをしている頃、ジルは艦を降りてクレナと再会していた

 

「クレナ〜!」

 

「あ、ジル!来ていたんだ」

 

「ええ、ちょうど任務で此処にいる事になったの」

 

「そうなんだ、良かった〜。いきなり帰ったから驚いちゃった」

 

「いや〜、流石にあの時は私も驚いたよ。まさかすぐに帰って来いだなんてさ」

 

「そうだったんだ」

 

そう言うとそこにアンジュとカイエがやってきた

 

「クレナ〜・・・あれ?ジル?」

 

「よ、久しぶり〜。カイエ、ジョージならあそこだよ」

 

「そうか・・・ありがとう」

 

そう言って早速ジルに言われジョージの居場所を知ったカイエはジョージに近づいて話しかけていた

 

「・・・さて、どうだい。ここは?」

 

そう言ってジルは此処の居心地を聞くと

 

「うーん、どうだろう。でも結構いい場所だよ」

 

「そうなんだ」

 

「でも一昨日のあれは面白かったなぁ」

 

「一昨日のあれ?」

 

そう言ってジルは頭に?マークが生まれるとアンジュがその話をした

 

「一昨日に少佐が来たんだけど、その時に一緒にやって来たシデン・イーダって言う人がシンに喧嘩を打って負けたのよ」

 

「ホーン、そのシデンって言うひとはどんな人だったの?」

 

そう言ってジルはアンジュに聞くと

 

「あぁ、それは・・・」

 

そう言うとアンジュの後ろから

 

「シデンは私だよ」

 

「あ、シデン。此処にいたのね」

 

「あぁ、それでそこにいる女性は誰なんだい?」

 

そう言ってシデンはジルのことを聞くとジルは自己紹介をした

 

「あぁ、私はアルガニア連邦海軍のジル・スミス大佐よ。よろしく」

 

「あぁ、よろしく」

 

そう言って二人は握手をし、シデンは用があるからとその場を去って行った

 

「なんか・・・おっきいですね・・・”ナニ”とは言いませんが・・・」

 

「そう・・・ねえ・・・」

 

「うん・・・おっきいよ・・・」

 

そう言ってジル、クレナ、アンジュの三人はシデンのある部分を見て感想を述べた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

リュストカマー基地に到着したジルは到着した事の報告と本国の共和国奪還状況を報告するためにグレーテ大佐と共にギンガに搭載されたアリゲーターに乗った

 

「しかし驚いたわ、まさかアルガニア連邦が空中艦を持って来るなんて・・・」

 

「まぁ、今回私たちが来たのは共和国奪還作戦の詳しい内容と現状報告ですからね」

 

「それでも十分よ」

 

「さて、これからカタパルトなんで大丈夫ですか?」

 

「これでも元空軍よ。舐めないで頂戴」

 

「分かりました、では行きましょうか」

 

「分かったわ。私も最新機に乗れるのが嬉しいわね」

 

「いかにも研究者らしい一言ですね」

 

「そうかしら?」

 

そう言ってジルとグレーテの二人は格納庫に入り、アリゲーターに乗り込むと機体が船体後部にあるカタパルトに接続された

 

『カタパルト準備よし、発艦!』

 

シュゴォォォォォ!!

 

金属の擦れる音とともにアリゲーターはわずか2秒で一気に時速200kmまで加速し、空を舞った

 

「久々に此処まで高い所を飛んだわ」

 

「そうなんですか?」

 

「ええ、モルフォの時は地面効果翼機だったから此処まで高くは飛ばなかったのよ」

 

「そうだったんですね」

 

そう言ってアリゲーターはグレーテの指示のもと西部方面軍司令部まで向かった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ジル・スミス大佐。ただいま参りました」

 

そう言って入った部屋は参謀長のいる部屋であった

 

「あぁ、来てくれたか」

 

「ええ、お久しぶりです。まぁ、あの時とは階級も所属も違いますが」

 

そう言うとヴィレムは少し笑ってジルを席に掛けさせると、早速報告を聞いた

 

「現在、我がアルガニア連邦軍は共和国南部地域の奪還に成功、一部の軍隊は貴国の軍と会合したと言う報告を受けました」

 

「それはこっちでも受けている。さて、ジル大佐。貴官は第86独立機動打撃群と共に北部地域奪還の為に副都シャリテ市地下中央制圧作戦を行うと聞いているが・・・」

 

「はい、その通りです」

 

そう言うとヴィレムは

 

「はぁ、あの子達を楽しませようと遊び心で此処に呼んだのだがな。ちっとも可愛げが無かったよ」

 

「それをシン達に望むのは間違っていると思いますよ」

 

「貴官もそう言うか」

 

そう言うとジルは一通りのことを言い終えるとヴィレムのいた部屋を去り、アリゲーターに乗って去って行った

 

 

 

 

 

アリゲーターに乗って基地に帰還したジルは滑走路の三分の一を埋めているギンガを見て改めてその大きさに声を出すと共にレギンレイブの格納庫付近に人が集まっているのを確認した

 

「どうしたの?」

 

そして機体から降り、アリゲーターをしまったジルは人だかりの所に行くと、そこにはリチャードとシデンが対峙してやり合っていた

 

「あ、艦長」

 

「ジーク、何があったの?」

 

「ああ、シデンが団長に試合を申し込んで絶賛12連敗中」

 

「おぉ、さすがは兄上だね」

 

「むしろ師団長に勝てる人がいるのかが気になりますけどね」

 

そう言ってシデンは果敢にリチャードに突っ込むがリチャードはスッと横に抜けてシデンの手を後ろで組んで敗北に追いやった

 

「あ、13連敗目」

 

「いつまでやるんだろう」

 

「そう言われてもねぇ」

 

そう言ってシデンはこれに疲れたのかフラフラな足取りで宿舎に戻っていった

 

 

 

 

 

 

その日の夜、久々に出会ったシン達と共に食事を摂ったリチャード達は寝床として使う艦内の士官室でゆっくりしていると。そこにギンガの船医として乗艦しているマリアがやってきた

 

「マリア・・・」

 

「リチャード。少し疲れているんじゃない?」

 

「そうか?」

 

「これでも人を見るのは得意なのよ」

 

そう言ってマリアはリチャードの隣に座ると

 

「・・・ふぅ、リチャード。あなた、妹のことでいつも考えちゃっているでしょ」

 

そう言うと図星だったのかリチャードは黙ってしまった

 

「・・・あまり妹のことを心配しすぎないほうがいいわよ。あの子も自分から独立したいって、言っていているんだから。あなたがそれを拒んでどうするのよ」

 

「・・・」

 

「とりあえず、あまり気を病まないでよ”旦那さん”」

 

「それはよしてくれ。まだ正式に婚約なんて決めていないんだから」

 

「でも、もう両親はやる気だったわよ」

 

「・・・はぁ」

 

そう言ってリチャードはため息を吐くとマリアは

 

「それじゃあ、今日はこの後どうする?」

 

「ゆっくり酒でも飲もうかな」

 

「あら、良いわね。じゃあ甲板に上がって飲みましょ」

 

「分かった、バーから良いの持ってくる」

 

そう言うとリチャードか艦内にあるバーからワインボトルを一本持ってきて甲板に用意したテーブルの上に置くとグラスに注いで

 

「それじゃあ、この戦争が無事に終わることを祈って」

 

「ああ」

 

「「乾杯」」

 

そう言うと二人はつまみの代わりに持って来たチーズと共に美しい夜空の下でワインを嗜んだ

 

 

 

 

 

 

 

 

同じ頃、寝れない為艦橋に来ていたジルはアイラを起動すると他愛もない話をしていた

 

「それでアイラ。クレナがさー・・・」

 

『なるほど、それは大変でしたね』

 

「でしょ?だからさーもう少しあの幼さがどうにかならないかなって」

 

『でも”姉様”。それはシンが居るからそうなっているのでは?』

 

そう言ってアイラは言うと

 

「うーん、如何なんだろう」

 

『姉様、クレナにとってシンは戦友というよりも兄として扱ってほしいんじゃありませんか?』

 

「それは違うと思う」

 

そう言うとアイラは悩んでいた。人格を形成する際にジルの一部の記憶までもコピーをしたことでこのような話ができている

 

「まぁ、少なくとも明日からはシン達と訓練だ。気合い入れていこう!!」

 

『はい、姉様』

 

そう言ってジルは夜遅くなり眠たくなった為。睡眠についた




補足説明
セシルとジャスは本国に帰還した後、婚約を果たした。婚約をした理由は元々二人は仲が良くその勢いで婚約至った感じ、挙式をするつもりはない。だが、婚約をしたと言ったときは隊員全員から驚きの声が上がった




アイラの主人呼びはジルが嫌がり、公的な場面では艦長。私的な場面では姉様という風になっている


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

合同訓練

翌日、第86独立機動打撃群と第一遠征師団との合同訓練が始まった

 

「予定地点に到着。歩兵部隊は降下開始せよ」

 

「「了解!!」」

 

そう言って空中に浮いたギンガの格納庫から順次装甲車が降下され、装甲車からパラシュートが開き。装甲車は森の演習場を進んでいた。それを見ていたシン達は驚いていた

 

「ははっ、あんな高え所から投下かよ」

 

「この前の作戦でもあんな高く無かったわよ」

 

そう言っているとシン達の機体に反応があった

 

「くるぞ、各自散開」

 

するとシン達の元いた場所に模擬弾が着弾した

 

「チッ、早速居場所割れかよ。さすがアルガニアの科学力と言ったところか」

 

そう言うとパラレイド越しでレーナが指示を出した

 

「スピアヘッド戦隊。大丈夫ですか?」

 

「ええ、こちらの被害はありません。ただ次の砲弾が飛んできて此方からは敵の詳しい居場所は分かりません」

 

するとシンの近くにも模擬弾が着弾し、レギンレイブの白い機体が模擬弾の赤色のペイントに塗られていた

 

 

 

 

 

結果として模擬戦は引き分けとなった。途中までコルーチクの着弾指示の元優勢に立っていた遠征師団戦車部隊であったがシンがコルーチクを発見した途端、シンがコルーチクと接近戦を試み。それに追う形でライデン達はコブラに一斉にかかり、一進一退となり結果はシンとリチャードが相打ちで引き分けとなった

 

「ったく模擬戦でこんな壊したわね」

 

「模擬戦がより実戦に近かっただけです」

 

「ふんっ、まぁいいわ。こう言うほうが直し甲斐があるからな」

 

そう言って整備班長のセーヤがそう言うと

 

「いや〜惜しかったねぇ」

 

「あぁ、こっちがやられなければなぁ」

 

そう言って戦車部隊が格納庫にやってきた

 

「ふぅ、如何だい。そっちの損害は」

 

「あぁ、みっちり壊れているぜ」

 

「やっぱりそうかい」

 

そう言ってリチャードは機体をジロジロと見ると

 

「あぁ、やっぱりココのネジだルミの言った通りだな」

 

そう言って足回りの一本のネジを取り外すとポケットから取り出したネジと付け替えるとスパナを使ってしっかりと止めた

 

「よし、取り敢えずまたこれを使ってみてよ。そしたら足回りは壊れにくいはずだ」

 

そう言ってシンは感謝だけをするとリチャードは去って行った

 

 

 

 

 

格納庫から帰ったリチャードはジルからボードで頭を叩かれた

 

「兄上、如何やったらこうなるまで壊すんですか!!」

 

「痛い痛い、悪かったって」

 

「全く、如何やったら下のフレームが割れるんですか!!」

 

そう言ってリチャードの乗るカーボンブラックのビートルは格納庫のクレーンによって分解され、つけ直しが行われていた

 

「ふう、取り敢えず。今度これやったら承知しませんよ。ただでさえフレームの予備は少ないって言うのに・・・」

 

そう言ってジルは文句を言っているとアイラがジルに聞いた

 

『艦長、この機体の修理は終わりました〜』

 

「ありがとう。それじゃあこのバカ兄貴の壊した機体はどう?どれくらい掛かる?」

 

『うーん、大体夜くらいですかね。なんせここまでの損傷はなかなか無いので』

 

そう言うとジルはリチャードを睨むと格納庫を去って行った。それをみていたリチャードはジルが怖くなっていた事に驚いていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして第86独立機動打撃群との合同訓練を行ってから数ヶ月、星暦二一五〇年四月。連邦救援派遣軍は共和国北部奪回作戦を開始した。これに伴い第86独立機動打撃群は旧共和国首都のリベルテ・エト・エガリテの救援派遣軍本部駐屯地にに派遣された。しかし彼らを出迎えたのは

 

『エイティシックスは八十六区に帰れ』

 

『誇るべき純白の国土を人間の手に取り戻せ』

 

と書かれた弾幕であった

 

「おーおー、聞いてはいたが酷いねぇ」

 

「こんなことをする暇があるんなら国家再建に真面目に努めれば良いのに・・・」

 

そう言ってセシルとジャスは書かれている弾幕を見てそう言うと隣にライデンが来た

 

「おぉ、お前らか。”洗濯洗剤”が如何したんだ?」

 

「「洗濯洗剤?」」

 

そう言ってライデンの言った言葉に不思議に思っていると

 

「純白を取り戻す」

 

「ブッ!」

 

「アハハッ!」

 

そう言ってその意味を知った二人は思わず吹いてしまった。確かにそこだけを取り除くと洗剤の広告文句であったからだ

 

「なにそれ、おもしろ!!」

 

「いや〜、良いセンスしてるわ。それ考えたやつ」

 

そう言って笑っていると上空に大きな影ができ、上空にはギンガが止まった

 

「お、艦長が帰ってきた」

 

「あぁ、そういえば今日だったな」

 

「お前ら何言ってんだ?」

 

そう言って慌てた様子で駐屯地に向かった二人を追う形でライデンは追いかけると着陸したギンガから大量の物資が下されていた

 

「今回は入っているかな?」

 

「お、あったぞあれだ!!」

 

そう言って送られてくる木箱とは違い、真っ黒な鉄製の箱に二人は近づくとライデンは不思議がった

 

「一体何が入ってるんだ?」

 

そう言ってライデンが聞くと

 

「あぁ、ライデンは知らないのか。これだよ、”新しい砲弾”さ」

 

「へ?」

 

そう言って不思議に思いながら箱の中を見ると、そこにはゲージいっぱいに詰まった砲弾が入っていた

 

「うお!マジで砲弾じゃねえか」

 

「だから言ったじゃん」

 

そう言って黒い箱は歩兵部隊によって慎重に運ばれ、駐屯地内にあるアルガニア連邦軍救援軍北部支部に運ばれた

 

「へぇ、思ったよりも早く来たんだね」

 

「はい、新型”エネルギー砲弾”ですよ〜」

 

 

そう言って新しい砲弾には『エネルギー充填式砲弾』と書かれていた

 

「でも流石にバンバン撃てはしないかな」

 

「そうですね」

 

「まぁバコバコ撃ったら砲身が溶けちゃいますよ」

 

そう言ってこの砲弾は必要な時以外はギンガ格納庫にしまっておく事をジルに言っておくとそのまま砲弾は格納庫内の弾薬庫に入れらる事になった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日の夜、第一遠征師団は外に出て食事を取っていた

 

「なんか久しぶりだなぁ〜、外で食べるなんて」

 

「確かに、最近はずっと艦内の食堂だったもんね」

 

「そうそう」

 

「たまには良いねぇ。こう言うのも」

 

そう言って食事を取り終え特にする事の無い隊員達はおもむろに歌い出していた

 

「〜♪」

 

「「♬〜♪〜」」

 

それはギアーデ連邦には馴染み深い歌で近くを通りかかったギアーデ連邦軍兵士もリチャード達に同調するかのように歌い始め、最終的にはかなりの人数が共に歌っていた

 

「「「♪〜♬〜〜」」」

 

そして共に歌っているうちに共に酒やつまみなどを持ってきておもむろ自分のことを話したりと遠征師団だけであったのが連邦軍人も入って来てお互いに交流を深めていた

 

「ア〜、ハッハッハッ!!」

 

「いや〜、この前よ。女房から手紙があったんだよ」

 

「おい、これ見てみろよ。俺の娘だ、可愛いだろ」

 

「何言ってんだ俺の子のほうが可愛いに決まってんだろうが」

 

「何を言うか!!」

 

そう言ってワイワイとしている空間はとても戦争でピリピリしていたとは思えないほど賑やかなものであった。そんな中、リチャード達も同様に連邦軍人との交流を深めていた

 

 

 

 

 

 

 

そしてギアーデ連邦兵士との交流を深めたリチャードはいつも寝床に使っている士官室で寝ていると扉が開いてそこにメアリが入ってきた

 

「ん、メアリか・・・」

 

「ねえ、ちょっと良いかしら」

 

「ん?如何した」

 

そう言ってメアリに連れ出され、少し肌寒く感じる外に出るとメアリは空を見ながら

 

「ねぇ、今日は流星群がやってくる日なの」

 

「そうだったのか」

 

「ほら、あれを見て」

 

そう言って指さした先に見えたのは無数に流れる流れ星の数々であった

 

「おぉ〜これはすごいな」

 

そう言ってリチャードは空を見上げていると不意にメアリがリチャードの手を握ると

 

「ねぇ、星が綺麗だと思わない?」

 

「え、あぁ。確かにそうだな」

 

するとメアリは徐に語り出した

 

「あの流れ星って長い長い月日をかけてこの空に綺麗な景色を見せてくれるんですって」

 

「そう・・・なんだな」

 

するとリチャードは何を言いたいのかわかったが、まさか彼女の口から出るとは思っていなかった

 

「それで・・・私たちも長い付き合いじゃん。だからそろそろ良いんじゃ無いかなって思っているんだ」

 

そう言って甲板の上に座ると

 

「ねぇ、リチャード・・・」

 

そう言うとリチャードは

 

「俺は陸軍の軍人だ。だから生きて帰って来るかはわからないぞ」

 

「それでも良いわ、私はずっとあなたを愛しているんだから・・・」

 

そう言うとリチャードは軽くため息をつくと

 

「はぁ・・まさかマリアから来るとは思わなかったよ」

 

そう言うとリチャードは不意にきていた上着のポケットから小さな箱を取り出すと

 

「まさか君から来るとは思って居なかった。順番は普通と違う気がするけどね」

 

そう言って箱を開けるとそこには銀色にダイヤモンドのついた指輪があった

 

「本当はこの作戦が終わってからにしようと思って居たんだけどね」

 

そう言うとメアリとリチャードは抱き合っていた。夜空はそれを祝福するかのように流れ星が輝いていた




ちなみに歌っていた歌は私の一番好きな歌の『パンツァーリート』です。

兵器紹介
エネルギー充填式砲弾

波動エンジンから抽出されるエネルギーの一部を充填し、擬似的な陽電子砲を作り出す砲弾。一応アルガニア連邦軍のフェルドレスの砲身はエネルギー砲弾を発射できるよう設計はされているが、それでも大量に撃つと砲身が熱によって溶けてしまう可能性がある


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

迷宮制圧開始

リチャードがメアリから告白を受けた翌日、二人は籍を入れると同時にマリアの両親に籍を入れることを伝えると二人とも喜んでいた

 

「おお!ついに決めたか!!」

 

「それじゃあお祝いをしないとね」

 

「お母さん、まだ早いよ。そう言うのは帰ってからにしてよ」

 

「何言っているのこう言うのは早くしないと」

 

そう言って通信が盛り上がっている中、マリアの父は

 

「そういえばトーマスには伝えたのか?」

 

「いえ、まだ伝えていません」

 

そう言うとマリアの父は

 

「じゃあ、こっちから言っておくよ。今からリチャード君は会議だろ?」

 

「すみませんお義父さん」

 

「何、これくらい容易いさ。それじゃあ」

 

そう言って通信が切れた

 

「・・・さて、今から俺は作戦会議だ。言ってくるよ」

 

「ええ、行ってらっしゃい」

 

そう言ってリチャードは部屋を出るとそのままギンガの統合作戦室に向かうと駐屯地の状況説明室と繋がっており、レーナが話し始めた

 

「では作戦の説明をします」

 

そう言うと今回の作戦に参加する部隊の紹介をした

 

「参加戦力はスピアヘッド、ブリジンガメン、ノルトリヒト、リュカオン、サンダーボルト、ファランクス、クレイモアの計七個戦隊と第一遠征師団に実験艦『ギンガ』この戦力を持って作戦にあたります」

 

そう言ってレーナは詳しい話をした

 

「今回の戦闘域は旧シャリテ市中央駅地下ターミナル。およびその周辺施設です」

 

そう言ってホログラムに3D地図が映し出された。そこには地下7階、最大深度105m。東西5kmの地下空間が映し出された。そ知れ蜘蛛の巣のように張り巡らされた通路とホーム。それに採光用のシャフトもそれぞれの階層で分かれており、まさに悪名高きシャリテ地下迷宮を体現したような地図であった

 

「うお・・・コレは酷いな・・・」

 

「細かすぎて全部把握するのは不可能に近いぞ・・・」

 

そう言って隊員達が畝っているとレーナは分担を言った

 

「施設への侵入はスピアヘッド戦隊とクレイモア戦隊にコルーチク偵察隊、メインシャフトにはノルトヒト戦隊とクレイモア戦隊にミサイル攻撃部隊、第一階層南部ブロックに繋がる地下鉄トンネルには帰路の確保として狙撃部隊と近接戦闘部隊をそのトンネルから同時に侵入します。スピアヘッド戦隊、ノルトリヒト戦隊が突入を担当し、クレイモア、コルーチク偵察隊、サンダーボルトはバックアップを」

 

「了解」

 

「ブリジンガメン戦隊とビートル隊は作戦本部の直衛、リュカオン戦隊は予備控置となり、ファランクス戦隊は・・・」

 

「私が借りるってことで良いのね」

 

そう言ってアネットは別途任務の為に作戦に参加した

 

「ええ・・・なお、作戦域はレギオンの支配下です。この作戦に先立ち、『ギンガ』と救援派遣軍に遠征師団歩兵部隊が半径10kmの制圧を行います封鎖限界は八時間。その間に目標を撃破してください」

 

そう言ってジルは了解をすると

 

「施設の通信に関しては遠征師団のレーダー隊と救援軍から派遣される装甲歩兵部隊に任せます、後方連絡線に関しては安心して下さい・・・作戦は以上です。何か質問は?」

 

そう言うとシンとリチャードが手を挙げた

 

「ではまずノウゼン大尉から」

 

「大佐。本作戦中は俺の索敵はあてにしないでください。遠征師団のレーダー隊の情報を元に作戦を練って下さい」

 

「了解しました・・・ですがなぜ?」

 

レーナがそう聞くとシンは三次元の把握については慣れていないと言ってレーナは了解した

 

「では准将閣下」

 

そう言ってレーナは今度、通信しているリチャードに聞いた

 

「ではひとつ質問を。その地図は”誰”から渡されたものですか?」

 

そう言うとレーナは共和国臨時政府からだと答えるとシン達は何かに気づいた様子だった

 

「そうですか・・・ではミリーゼ大佐。その地図は信用できない、本国から地図を取り寄せます」

 

「なぜでs・・・まさか!!」

 

レーナはリチャードの言った言葉に顔が青ざめた

 

「そう、共和国臨時政府には”洗濯洗剤”が紛れています。大佐、この地図と本国にあるデータと照らし合わせましょう」

 

「わ、分かりました。それは直ぐにできますか?」

 

「ええ、今見つけましたので送ります」

 

そう言って送られたデータと照らし合わせると矛盾している場所が赤く表示された

 

「これは・・・!!」

 

「やっぱり書き換えていたか・・・バカが・・・」

 

そう吐き捨てるとほとんどの人は怒りを通り越して呆れていた。そこまでしてこの国から有色種を排除したいのかと

 

「コレで決定しましたね」

 

「あぁ、少なくともコレで無駄な時間を使わなくて済むな」

 

そう言うと参加メンバーは作戦案を練り直していた。そんな中、クレナがある提案をした

 

「ねえ、確かバンカーバルターだっけ?あの地面に突き刺さって爆発するやつ」

 

そう言うとレーナは

 

「あれは高高度から落とし、その運動エネルギーを持って掩蔽壕を貫通させる爆弾です。今はレギオンに支配されている現状、そこまで高高度を飛べる爆撃機がありません」

 

「ついでに言うとにギンガもそこまでの高度になると投下途中に邪魔をされる」

 

そう言うとクレナが困惑しており、ライデンがわかりやすく解説を入れると納得していた

 

「それでは、先にギンガで付近一帯の掃討を行います。その後に”あなた達全員”を送ります」

 

「了解しました。それでおそらくここにいる埋伏したレギオンに関しては・・・」

 

「「了解!!」」

 

そう言うと早速作戦が始まった

 

 

 

 

 

 

 

そしてギンガの格納庫に詰め込まれていく戦隊各員。彼らは初めての空中艦の格納庫に少し興奮気味であった

 

「じゃあ、出港するよ。シートベルトはしっかりね」

 

そう言うとギンガは離陸をし、作戦域まで進路をとった

 

「・・・アイラ。戦闘用意、波動砲以外の全砲門開いて攻撃開始。航空隊も発艦して頂戴」

 

『了解しました艦長』

 

そう言うと戦隊が少し傾き、目標を捉えると砲撃を開始した

 

「砲撃開始、目標中央駅地下ターミナル周辺にいる全レギオン。撃てぇ!!」

 

キィィィィン!!

 

シュゴォォォォォ!!

 

ババババババババ!!

 

そうして始まったギンガからの砲撃を映像で見ていた格納庫にいるレーナ達はアルガニアの科学力に舌を巻いていた

 

「重戦車型があんなに簡単に・・・」

 

「恐ろしいわね」

 

「あぁ、これは”蹂躙”っていう言葉が似合っているな」

 

そう言って各々戦闘の様子に感想を言っていると砲撃が止み、ジルが言った

 

「それじゃあ、制圧は終わったから今から”落とすね”」

 

そう言うとクレナはある単語に引っ掛かった

 

「ちょっと待って。今落とすって言った?」

 

そう言うとジルは

 

「何か問題でも?」

 

そうケロッとした様子で言った

 

「嘘でしょ!?この高さから!?」

 

そう言って表示されていた高度は140mと書かれていた

 

「大丈夫、アインタークスフリーゲはほとんど焼き払ったよ」

 

「そう言う問題じゃ・・・」

 

するとジルは

 

「それじゃ、行ってら〜」

 

ガシャン!!

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

そう言って格納庫の扉が開き、各戦隊事に機体が投下されていった。クレナと同じように空中投下を初めて経験する他の戦隊員達は悲鳴をあげていた

 

「うわぁ、なかなか高い高度から落とすんですね」

 

「まぁ、ビルが邪魔で此処からじゃ無いと落とせないのよ」

 

「あぁ、そう言うことですか」

 

そう言って最後にベルノルト達ノルトリヒト戦隊も投下完了し、あとはレーナの乗る戦闘指揮車のみとなった

 

「そっちは大丈夫?いけるかい?」

 

「う・・うむ・・・」

 

「え、ええ・・・大丈夫・・・」

 

「それじゃあ落とすよ」

 

そう言うと指揮車は加速をし、空中に飛ばされた

 

「うわぁぁぁぁ!!怖い、怖いのじゃ!!」

 

「ヒエェェェェ!!高い高い高い!!」

 

そう言ってのも束の間、途中でパラシュートが開いたのか速度がゆっくりとなり

 

ガンッ!

 

と言う衝撃と共に地面に着地したのだと認識した

 

「あぁ〜、二度とやりたくないのう」

 

「えぇ、全くです。まさか空中投下とは・・・」

 

そう言ってフレデリカとレーナはぐったりとして居たが。作戦はまだ始まったばかりであった




ちなみに、リチャードとメアリの婚約はジルにすら話しておらず。作戦が完了し次第、報告を入れる予定

補足説明
ちなみに、ギンガに不死身の第三艦橋はありません


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

迷宮制圧

すいません、今回はかなりすっ飛ばします


ギンガによって空中投下された第86独立機動打撃群。今回の作戦にあたり、レーナは侵入経路の一つである線路のレギオンの排除のためにある作戦をとった

 

 

 

 

 

 

ここは環状七番線内回りの線路、そこに居る埋伏された戦車型のレギオンは警戒任務を行なっていた。するとそこに激しい振動と轟音が聞こえ、洗車型のセンサーが捉えたのは・・・

 

 

 

 

ロケットブースターを使い、こちらに突っ込んでくる中に瓦礫と廃材のたっぷり詰まったアルミ合金製の列車であった

 

ドゴォーン!!!

 

そして衝突をし、一瞬にして警戒をして居た戦車型は一瞬にして巨大な質量に押しつぶされた

 

「こちらトンネル入り口、全地下鉄質量弾投入完了。線路上の障害を一掃完了。ミリーゼ大佐。準備完了です」

 

「了解しましたではヴァナヴィースHQより全機。突入を開始して下さい」

 

「了解しました」

 

そう言うとスピアヘッド戦隊はレーナの変わり具合に驚きつつも中に突入を始めた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シン達が突入を始めた頃、ギンガのレーダーにはレギオン部隊の反応があった

 

「おやおや、もう来たんだ。全砲門開いて応戦、攻撃開始」

 

『了解!!全砲塔、全ミサイル発射!!』

 

そう言うとギンガの船体が横を向き、一斉に砲撃と対空砲によってレギオンの部隊は壊滅していた

 

「よし、後はついげk・・・ッ!!」

 

追撃を開始しようとしたジルであったが。突如自分を呼ぶ声がし、それが自分の母のものであると認識すると

 

「母上!!」

 

そう言いながらその声のした方を向くと、そこには一機の恐竜型がいた。そこから自分の名前を呼ぶ声が響いていた

 

「母上・・・」

 

そう言うとリチャードに秘匿通信で母がいたことを伝えると

 

「ジル・・・行って来い。母上はきっと君に成仏されたがっているはずだ」

 

そう言って内心嬉しいのか悲しいのか分からなかったがジルはギンガの主砲をその恐竜型に向けるとその恐竜型は銀河に砲撃することも無く、近くにいたレギオンを撤退させてただ死を望んでいるように思えた

 

「アイラ・・・引き金は私が引くわ」

 

『了解しました艦長・・・』

 

そう言って画面にその恐竜型を入れ、ロックオンするとジルは涙を浮かべながら引き金を引いた

 

「母上・・・さようなら・・・」

 

そう言って引き金を引くと主砲からレーザーが飛び出すとそのまま恐竜型に刺さり、燃え上がった。するとジルはある夢を見た

 

「ジル・・・」

 

「母上!!」

 

そこには自分の母のレンと幼くなった自分が向かい合わせに立って居た

 

「ジル・・・」

 

「母上!!」

 

そう言ってジルはレンに近づいて再会を果たした

 

「ジル・・・久しぶりね」

 

「母上も久しぶりです」

 

するとレンは

 

「ジル・・・大きくなったわね」

 

「はい・・・」

 

そう言うと今までの話をした。その時のジルは子供のようであった

 

 

 

 

 

 

「・・・そう、お友達ができたの・・・」

 

「うん、クレナとアイラって言うの!!」

 

そう言うとレンは嬉しそうにジルの頭を撫でると

 

「あんなに泣き虫だった子がこんなに逞しくなってねぇ」

 

「母上!私はもう子供じゃないんですよ」

 

「ふふっ、そうね。もう子供じゃなかったわね」

 

そう言うとレンは

 

「じゃあ、そろそろ行かないと」

 

「え!?」

 

レンの言ったことにジルは少し固まると

 

「何言ってるの、私はあっちの人間なのよ。そろそろ時間が来ちゃっだだけよ」

 

「そんな・・・母上・・・」

 

「そう言ってジルは慌ててレンの手を取るがすり抜けてしまった」

 

「ジル・・・最後に言っておくわ」

 

そう言ってレンは体が徐々に透けていく中、最後にジルに言った

 

「ジル、私はいつでも見守っているわ。だからあなたは強く生きなさい」

 

「母上、待って!!」

 

そして最後にボソリと

 

「良かった・・・私がが与えたのは間違って居なかったわね・・・」

 

そう呟くとレンは笑みを浮かべてジルとの最後の別れを言った

 

「ありがとう・・・」

 

それだけを言い残すとレンは星に還っていった

 

 

 

 

 

 

 

「・・・ル!」

 

「・・・ジル!!」

 

目が覚めて飛び込んできたのはリチャードの声であった

 

「兄上?」

 

「あぁ、やっと繋がった。ジル、緊急事態だシン達が『羊飼い』に止められているそっちから援護できるか?」

 

「分かった、やってみる」

 

そう言うとジルは画面を見ながらロックオン出来る範囲で開始した

 

『母上、いつまでも見守って居てください。母上に誇れるくらい強くなってあなたの所に行きます』

 

そう思いながらジルはミサイルを発射した。その時、ジルの肌身離さず持っているロケットペンダントが光った気がした

 

 

 

 

 

そして情報を集めたジルは整理をした

 

作戦状況は発電プラント型、自動工場型ともに制圧完了、そして制圧途中に共和国市民の大量に死体を発見。これにより、レギオンは量産型の『羊飼い』を得た。そして新型レギオンによりファランクス戦隊が全滅。そしてその時にアンリエッタ少佐が行方不明となりレギオンの実験室とも割れる場所にて発見。ギンガには着陸出来そうな場所を探し、フェルドレスの順次回収を頼まれた

 

「了解、近くの大通りは着陸ができるからそこで回収をするわ」

 

「分かりました。でも気をつけてください、もしかすると新型レギオンがいるかもしれませんから」

 

「了解」

 

そう言ってジルはギンガを大通りに着陸させるとレーナから現状を聞いた

 

「・・・成程、つまりギンガからミサイル攻撃が出来ないかと?」

 

「そう言うことです」

 

「うーん、出来なくはないけど・・・どちらかと言うと航空隊を使って攻撃した方がいいかな」

 

「航空隊をですか?」

 

そう言ってレーナは不思議に思っていると

 

「ええ、航空機を発艦して攻撃を加える。それでいいかしら?」

 

「え、ええ・・・お願いします」

 

「了解、それじゃあ航空機隊は発艦」

 

『了解しました』

 

そう言うと格納庫からアリゲーターはカタパルトに載せられるとギンガから発艦し、ミサイル攻撃を加えた

 

『こちらアルファ1目標の撃破に成功。これより帰投する』

 

そう機械音が聞こえると航空機隊は帰投をした。この時、羊飼いの迎撃をしていた戦隊は危うく巻き込まれる所だったと文句を言っていた

 

「よし、取り敢えずコレで良いかしら?」

 

「はい、有難うございます」

 

「よし、でもまずは攻撃をするよ。大佐達は車をこっちに寄せて、ついでに載せるから」

 

「分かりました」

 

そう言ってレーナの乗る戦闘指揮車はギンガの格納庫に収納されると、直衛を行なって居たノルトリヒト戦隊の半分をリュカリオン戦隊に回し、残りの小隊はギンガ周りの護衛を始め、遠征師団戦車部隊も同様に集まって来るとギンガの護衛を始めた

 

「チッ!こっちから援護したいが・・・」

 

「こっからじゃ難しすぎる」

 

そう言ってセシルやリチャードがそう言っていると通信があった

 

「おい!リチャードはいるか!!」

 

「ああ、ここに」

 

するとライデンは

 

「そっちから部隊を送ってくれ!今から殲滅をする!!」

 

そう言うとリチャードは納得して近接戦闘部隊を派遣した

 

 

 

 

 

そして戦闘が始まり、シンがファランクス戦隊を全滅させた高機動戦型と接敵し、戦闘を行なっていた

 

「制圧!」

 

そうしてライデンとシデンの二人は制圧をしながらシンのいる場所へと向かっていた。すると通信があった

 

「ライデン、来たけどどうすればいい?」

 

「あぁ、レギオンの掃討を手伝ってくれ」

 

「了解〜、じゃあ避けてよ」

 

そう言ってコブラが砲撃を開始すると一気にレギオンの軍勢が吹き飛んだ

 

「ありがとうよ、それじゃあ行くぞ」

 

「了解」

 

そう言ってライデンとシデンの二人は先へと進んで行った

 

 

 

 

 

 

そして、レギオンの掃討が終わり。地上に戻ってきたシンは念の為ギンガの医務室で診療をし、作戦は完遂した

 

「ふぅ、取り敢えずミリーゼ大佐。作戦室に来てもらって大丈夫ですか?」

 

「え!?は、はい。分かりました」

 

そう言ってレーナを作戦室に呼び出したリチャードは今回の作戦であった『羊飼い』の一件で話をしていた

 

「・・・と言うことで我々コルーチク偵察隊とスピアヘッド戦隊が見つけた遺体は旧共和国市民の物で数はおよそ一千万人ほどと思われます」

 

「そうですか・・・」

 

そう言って二人はため息をついていた



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ロア=グレギア連合王国編
第一遠征戦隊


先の作戦から二週間ほどが経った。この日、ギンガと第一遠征師団は休暇を兼ねてアルガニア連邦のとある避暑地のホテルに来てゆっくりしていた

 

「ふぅ・・・取り敢えず先の作戦がうまく行って良かったな」

 

「だな、共同作戦だったとはいえ自動工場の一つを潰せたんだ。連邦からすればこれほど嬉しいことはないだろう」

 

「ですね、最近は『放牧犬』の影響でだいぶ苦戦をしているって聞きましたしね」

 

「それでも徐々に戦線は押し上げているがな」

 

「そうですね。軍としては大きな結果が欲しかったんでしょう。それで名前は伏せては居ますが我々を盛大に讃えて居ますよね」

 

「そうだな」

 

そう言って端末に書かれた記事には『我が遠征師団がレギオンの工場を叩いた!!』などの文字が目に入っていた

 

「それにしても・・・まさかジルが昇進をするなんてな」

 

「本当ですよ、いくら戦時だから階級がおかしくなるって言ったって僅か半年くらいで准将とかおかしいでしょうが!!」

 

「まあまあ、それだけ認められた証左だろ。良いことじゃないか」

 

「そ、そうですが・・・」

 

「それに帰ったらギンガの改装も終わっているだろう」

 

「えぇ、確か波動砲を改良して・・・えっと”波動防壁”でしたっけ?新しい装甲が入るんですよね?」

 

するとマリアがやってきて

 

「ええ、そうよ。波動防壁、波動エンジンのエネルギーの一部を使って物理的攻撃、エネルギー弾攻撃を展開中は無効化する防壁。それにもう一つ、これは超極秘事項で”ワープ機能”」

 

「「!!??」」

 

ワープという言葉に全員が驚いていた

 

「あぁ、大声はダメだよ。聞こえちゃうから」

 

すると隊員達は驚きを表すと共にあのワープかというとメアリは頷いていた

 

「そ、そうなんだ〜」

 

「なんか自分の国って発展してるんだね・・・」

 

「そうだな・・・」

 

そう言ってセシル達は苦笑いをしていた

 

「あっ!そういえばさ。今度ヤマトにも波動砲が取り付けられるんでしょ?」

 

「ん?あぁ、そういえばそうだったな」

 

「それに”量産型戦艦”なんていうおかしいのも建造されているしさ」

 

「確かドレッドノートだっけ?」

 

「そうそう、元はうちの戦艦だった名前をとったらしいけど・・・」

 

「それでも今はたくさん配備され始めているんでしょ?」

 

「しかも頭おかしいくらいに」

 

「えっと・・・今就役しているのが・・・」

 

「87隻、しかも全部の艦隊に配属されている。第一世代空中艦なんかお古よ」

 

「まぁ、あれは就役してから二十年近く経って居ますからね」

 

「波動エンジンができてからだいぶ羽振がいいよね。うちの国」

 

「そういえばそれ不思議に思ってたんだよね〜。どうしてそんなにも空中艦がポンポン作れるんだろうって」

 

「そう言えばなんででしょうね」

 

そう言って不思議の思う中、第一遠征師団の休暇は終わった

 

 

 

 

 

 

 

 

休暇から帰ってきたギンガ乗員と第一遠征師団は改装を受けたギンガの受け渡しをすると早速試験を行う為に暫しの処女航海と試験的な運用を行い、無事にギンガは運用に入った。

 

 

 

 

 

 

ギンガでの小さな任務を行っていたある日、ジルはトーマスに呼ばれ。部屋に来ていた

 

「お呼びでしょうか叔父上」

 

「あぁ、来てくれたか。まぁ、手短に話そう。これを見てくれ」

 

そう言って渡された紙には

 

『第一遠征戦隊編成要項

 

波動エンジン実験艦『ギンガ』並びに以下の艦艇は編成を行い第一遠征艦隊としてその職務を全うせよ編成する艦隊は以下の通りである

 

波動エンジン実験艦『ギンガ』

 

ドレッドノート級改空母型『エセックス』

 

ドレッドノート級改補給艦型『ネバダ』

 

以上三隻の艦艇は明日の○六〇〇にサン・デ・レグリアレスタ総合基地第43バースに集合せよ。なお各艦艇艦長人員は以下のとおりである

 

波動エンジン実験艦『ギンガ』

 

艦長兼第一遠征戦隊隊長

ジル・スミス准将

 

ドレッドノート級改空母型『エセックス』

 

艦長

ダニエル・マクロン大佐

 

ドレッドノート級改補給艦型『ネバダ』

 

艦長

アミ・ルーザ大佐

 

以下の人員は今夜二二〇〇に総合基地第33会議室に集合を行え』

 

そう書かれていた

 

「叔父上・・・これは・・・」

 

「あぁ、お前はもう戦隊長だ」

 

そういうとジルの昇進はこの為であると認識すると

 

「確かこの二人の艦長はお前の同期だったか?」

 

「えぇ、学校ではよく競い合って居ましたよ」

 

そう言ってジルは懐かしむように言うと

 

「まぁ、久々の同期の再会だ。楽しみにしていろよ」

 

「はい」

 

そう言ってジルは部屋を出て行った

 

 

 

 

 

 

残ったトーマスは椅子に座ると何かを考えるように目を瞑っていた

 

『連邦は”アレ”を発見し、それを使って大量の空中艦の建造を始めた・・・本当に政府は世界を掌握する気なのか?』

 

そう思うながら上空を飛んでいるドレッドノート級量産型戦艦を見ながらそう思っていた

 

 

 

 

 

その日の夜、ジルは総合基地の第33会議室に向かうとそこには金晶種の男性と朱緋種の女性の二人がジルを見た

 

「おぉ〜、学年一位様が来たぞ」

 

「うるせえよ、三位が」

 

「何だと!?」

 

「はいはい喧嘩しない」

 

そう言ってダニエルにジルはきつい言葉をかけるとアミが押さえていた

 

「まぁ、いきなり御大層な挨拶を受けたけど。まぁ自己紹介はいいか」

 

「そうねぇ、元々同期だし」

 

「要らねえだろ」

 

そう言って三人は世間話で盛り上がっていた

 

「しかし、ジルが海軍に戻って来るとは思ってなかったなぁ」

 

「本当ね。あの時は必死にジルを説得して居たのが懐かしいわ〜」

 

「まぁ、あの時は兄上にベッタリだったからねぇ」

 

「それ自分で言うか?」

 

「さぁ?どうでしょう」

 

「まぁ、久々に会ったんだ沢山語ろうじゃん。お土産もあるよ〜」

 

そう言ってジルは懐からビール缶を取り出すと

 

「ふっ、相変わらず根回しがいいねぇ」

 

「最終研修を思い出すわね」

 

「あぁ、ジルがこっそり持ってきた食材で楽しんだアレな」

 

「懐かしいねぇ〜」

 

そう言って持ってきたビール瓶を飲み始めると

 

「しかし、明日からジルが司令の艦隊か・・・」

 

「なんか全部が久し振りね・・・こんな再会をして、一緒に艦を動かすなんて」

 

「いくら『メートヒェン』があるとは言ってもやっぱり心配になるな」

 

「そうね・・・」

 

そう言ってダニエルとアミの二人は少し心配そうな表情をすると

 

「何言ってんだい。先に使っている私が良かったって言っているんだ。心配はいらんさ」

 

「そうか・・・そうだな」

 

「そうか、ジルは試験的に使って居たのよね。そう言えばそうだったわね」

 

「そりゃ”実験艦”ですもの。安全が確認された装置から実践に使えるかどうかの試験運用をしているのよ」

 

「じゃなければワープ機能とか波動防壁なんかの最新設備が付いてねえからな」

 

「そう言う事〜」

 

「ま、うちらの艦艇にも搭載されているけどね」

 

そう言ってダニエルとアミがジルに言われて少しだけ自信がついたのか先程より明るくなった二人を見てジルは

 

「さぁ、明日からはうちの第一遠征師団とのご挨拶でもあるぞ。とっとと寝るよ!!」

 

そう言ってジルは先に部屋を出ていくとダニエルとアミの二人はその様子を見て準備学校時代と変わらない元気さに懐かしく思えた

 

「なんだか懐かしいわね。この感じ」

 

「だな、夜遅くまで航海術の勉強をして・・・」

 

「分からないところをジルに聞いて・・・」

 

「ある程度まで行くとジルが『夜遅くまで勉強をすると明日に響く』って言って・・・」

 

「そそくさと私達を寝かせて・・・」

 

「そしたら自分が最後に寝る・・・」

 

「初めは物静かな子だと思って居たのにね・・・」

 

「ああ、本当のあいつを見たときは初めの雰囲気と全然違って驚いたよな」

 

「そうねぇ〜」

 

そう言って懐かしんでいると

 

「さぁ、俺たちも怒られないうちに寝るか」

 

「そうね、明日はいよいよ私たちの乗員の紹介もあるしね」

 

「俺は航空隊の紹介だな」

 

そう言うと二人は基地にある自分の部屋で睡眠をとった




補足説明
作戦が終了し、マリアと婚約することを伝えたリチャードは休暇中に挙式をし、隊員達などから祝福を受け、シン達リチャードの事知っているメンバーからもお祝いのものなどが送られていた。なお結婚式にトーマスの誘いでユーゴ・スラッド元帥ら軍の重鎮が来ており。一時、結婚式場が騒然となった、このほかにも急用で来れなかったセルジオからもこっそりと祝電が来ていた




第一遠征戦隊はいわゆる『宇宙戦艦ヤ○ト2205』の第65護衛隊と同じ感じです




兵器紹介
艦艇運用独立AI『メートヒェン』

ジルの人格ができる前のアイラを元にコピーする形で生まれた自立AI。ただし、アイラのように人格は無い。名前はドイツ語の『従者』から来ている。アイラは情報保護のために同じ『メートフェン』として数えられている


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

派遣

翌日、集合場所である第43バースに行くと。そこには三隻の艦艇が並んでいた

 

「よし、とりあえず挨拶といきますか」

 

そう言ってジルとリチャードは新たに本拠地として与えられた総合基地第43バースの休憩所に行くとそこにはすでに昨晩あった二人とその後ろに控えている極東国種と黒鉄種の二人は言ってきた二人に敬礼をした

 

「とりあえず始めまして、今日からここの戦隊長のジル・スミスです。それで此方は第一遠征師団師団長のリチャード・スミス」

 

「よろしく」

 

そう言うと後ろに立って居た二人も自己紹介をした

 

「始めまして。私は第243航空隊長を務めているフミアキ・アバカロフ中佐です」

 

そう言って極東国種のフミアキが敬礼をすると今度は黒鉄種の女性が

 

「始めまして、私は第117空挺部隊隊長のアデリナ・アッカーマン大尉です。よろしく」

 

「ええ、此方こそ」

 

そう言って挨拶を済ませるとジルは早速命令を行った

 

「では早速だが。今日から二ヶ月の訓練を行なった後。我々第一遠征戦隊はロア=グレキア連合王国の応援に向かう。それまでに各部隊間の歩調を合わせるぞ」

 

「「了解!!」」

 

「では、早速訓練を行う。場所は北部第一演習場。訓練内容は空挺部隊と航空隊による対レギオン訓練と対艦訓練だ。短い期間でしか訓練ができないが。そこは許してくれ。では了解次第、各自出航準備をなせ」

 

そう言うと各艦艇に乗り込んだ乗員達はそれぞれ出港準備をした

 

 

 

 

 

「あ、そう言えば艦長は司令と同期でしたよね?」

 

ネバダが出港準備中にアデリナが聞いてきた

 

「え?そうだけど・・・それがどうかしたの?」

 

そう言ってアミは聞くと

 

「いや、良かったら艦長に指令がどんな人なのかを聞こうと思ったので・・・」

 

そう言うとアミは

 

「うーん、わかりやすく言うと真っ直ぐな性格で指揮官としてはこれほどいい人材は居ないくらいかな」

 

「作戦とかはどんな感じなんですか?」

 

そうアデリナは聞くと

 

「えっとね・・・大胆だけど、精密に考えていて。尚且つ損耗を出さない様に確実な方法を攻める感じかな?」

 

「そうなんですね。いや、前に聞いたときはブラコンブラコンって言ってましたから。意外と違くて・・・」

 

そう言ってアデリアは想像と違う雰囲気に少し驚いていた

 

「まぁ、準備学校時代はね。でも今は違うかな、なんか前あった時よりも精神面では強くなっている感じがしたんだよね〜」

 

「そうだったんですか」

 

「ええ・・・お、準備出来たみたい。さて、出港するよ」

 

「了解」

 

そう言って第一遠征戦隊は第43バースを出撃し、北部第一演習場に向かった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

演習場に到着すると早速訓練が始まった

 

「ギンガより各部隊。各部隊は予定位置に降下したのち、航空隊と共に進撃を開始せよ」

 

そう言うとエセックスから発艦したフミアキ率いる航空隊がアリゲーターに乗ってレギオンの代わりの的を援護攻撃をすると地上に降りた戦車部隊が攻撃をし、空挺部隊と歩兵部隊は共に装甲車で敵陣の攻撃を行っていた

 

「・・・やっぱり此処に来る前に戦って来ているから連携もなっているね」

 

『艦長、我が航空隊とエセックス航空隊が帰投しました』

 

「ん、わかった。しかし大丈夫?艦載機が一杯の20機になったけど」

 

『はい、全然大丈夫ですよ。改装の時にコンピューターを強化してくれましたので』

 

「そう・・・それじゃあ連携とかも大丈夫ね」

 

『はい、バッチリです艦長』

 

そう言うとアイラは格納庫に帰投する艦載機を見て了解をすると、対艦戦闘訓練を行なった

 

「対艦戦闘用意!!」

 

『対艦戦闘用意!!全砲門回頭、方位200。目標ネバダ、弾種模擬弾。撃てぇ!!』

 

キィィィィン!!

 

ドォォォン!!

 

そして、毎日のように行われた訓練は他にも対レギオン戦闘訓練やワープ訓練などの多種多様な訓練を行い、そこからの二か月間は訓練漬けの毎日であった

 

 

 

 

 

そうして訓練をすること二か月。慣れた訓練に黙々と取り組んでいた第一遠征戦隊はいよいよロア=グレギア連合王国に出撃する日となった

 

「・・・じゃあ、アイラ。あの二人を呼び出してもらえる?」

 

『了解しました艦長』

 

そう言うと画面にダニエルとアミが映り、ジルが作戦内容を伝えた

 

「じゃあ、二人とも。作戦内容を伝える。今回の作戦はギアーデ連邦第86独立機動打撃群と合同で当たる。作戦内容は先の作戦でシンエイ・ノウゼン大尉が見たと言う謎の女性がロア=グレギア連合王国の『無慈悲な女王』の可能性があるとして我々に下された命令はこの無慈悲な女王の拿捕。そして竜牙大山拠点の制圧。これが主任務となる。我々第一遠征戦隊はこれより出撃をする。戦隊の補給状態は如何だ?」

 

「はっ!全艦補給完了、いつでも行けます」

 

「人員も全員搭乗完了」

 

「了解、では第一遠征戦隊は直ちに出撃。ポイント706にてワープに入る」

 

「「了解!!」」

 

そう言うと第43バースから第一遠征戦隊は出撃をして行った

 

 

 

 

 

 

 

出撃をしてから二時間ほど経った頃、戦隊は予定ポイントに到達した

 

『艦長、ポイント706に到達しました』

 

「よし、ワープに入れ」

 

『了解、ワープに入ります。それと同時に光学迷彩を起動し、観測機の目を誤魔化します』

 

そう言ってジルはレバーを前に倒すと艦橋からの景色が一気に黒の空間に変わり、次に見得た景色は白銀の雪の降る世界であった

 

『ワープ終了。誤差00 13 14』

 

「了解、他の艦は?」

 

『全て予定位置に到着しました』

 

「了解、それじゃあこのまま指定された空軍基地に行くよ」

 

『了解致しました。艦長』

 

そう言って第一遠征戦隊は指定された基地まで進んで行った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時は少し遡り、シン達は第86独立機動打撃群はロア=グレギア連合王国ローグヴォドロ市ターミナルに到着し、荷物の入れ替えをおこなっていた

 

「しかし、リチャードの奴ら如何やって来るんだ?」

 

そう言ってライデンが積み替えをしているレギンレイブを見ながらそう言うと

 

「さあ?あの主砲使って無理やり来るんじゃない?」

 

そう言ってクレナが前の作戦でジルが砲撃をしてレギオンやアインタークスフリーゲを焼き払っていたのを思い出すとそう答えた

 

「そうだな、無理やり来るんだろうな・・・」

 

そうして荷物の積み替えが終わり、シン達は王都に向かう列車の途中。窓の外を見ていたライデンはあることに気づいた

 

「なぁ、雷ってあんな風だったか?」

 

「ライデン、何を言ってるんだ?」

 

そうシンが言うとライデンは外を指差した、そしてシン達が外を見るとそこには空中に浮かんだ稲妻であった

 

「何ですかあれは!?」

 

「いや、俺も初めて見たものだ」

 

そう言っていると雷は治った

 

「あ、治りましたよ」

 

「何だったんだ・・・」

 

そう言ってシンは不思議に思うと列車は王都に到着した

 

 

 

 

 

そして列車が王都に到着するとシン達はある部屋に通され、そこには先にリチャードとジルが座っていた

 

「おぉ、先に来て居たのか」

 

「あぁ、さっきな。そっちは?」

 

「こっちもさっき着いたんだ」

 

「そうか・・正装か?」

 

「まぁ、今から会うのは王族だからな。そっちも正装じゃないか」

 

そう言って二人の着ている軍服も式典などで使う大礼服を着ていた

 

「しかし、そなたらの服は豪華であるな」

 

そう言って出て来たのはフレデリカであった

 

「あれ、お姫さんが出て来てもいいのかい?」

 

「何、我をアウグスタと思わぬやろう」

 

「まぁ、そうか」

 

そう言っているとフレデリカは

 

「そう言えばそなたの大礼服とやらはなぜそんなにも豪華なんだ?」

 

そう言って本題に戻した

 

「あぁ、これは”王族”の式典の時とかに使うからだよ」

 

王族という言葉にシン達は驚いていた

 

「王族がまだ存続しているのか?」

 

「でもアルガニア連邦って共和制だよね」

 

そういうとリチャードはあるガニア連邦の王族について話した

 

「アルガニア王族は二百八十年前に生活の絶対的な補償と引き換えに王と貴族が口出しをしない民主制政治を許可すると言ったんだ。全ては王族の血を絶やさない様に考えた時のアルガニア王国グスタフ17世が考えた通称無血革命と言われている出来事だね」

 

そう言うとシン達、主にフレデリカは驚いて居た

 

「其方らの王は未来のことまで考えておったのだな」

 

「どこかのお姫様とは大違いだな」

 

ライデンがそういうとフレデリカはムッとしていた

 

「それで今のアルガニア連邦の王はアルベルト44世なんだ」

 

「「へぇ〜」」

 

そう言って驚いていると

 

「おや、今は代替わりをしたのか?私が聞いたのはヨルムス65世だったんだがな」

 

そう言って話に割り込んできたのは10代後半の見た目をした紫瑛種の男であった




人物紹介
フミアキ・アバカロフ

極東国種

エセックス航空隊の航空隊長を務めている。



アデリナ・アッカーマン

黒鉄種

ネバダの第117空挺部隊隊長。





兵器紹介
ドレッドノート級改空母型『エセックス』

武装
30.5cm三連装陽電子砲 二基
12.7cm四連対空パルスレーザー 十六基
48式爆雷投射機 二基
波動砲 一門

艦載機
多目的艦上攻撃機VB=97『アリゲーター』 三十二機(予備機八機)
多目的艦上戦闘機VA=88『ホーク3』対レギオン改装型 三十二機(予備機八機)
多目的艦上中型輸送機AC=55『ランドエアー』対レギオン改装型 四機(予備機一機)

主機
49式波動エンジン

ドレッドノート級量産型戦艦の空母改装。見た目は2205の『ヒュ○ガ』




ドレッドノート級改補給艦型『ネバダ』

武装
30.5cm三連装陽電子砲 二基
12.7mm四連対空パルスレーザー 二十基
48式爆雷投射機 二基
波動砲 一門

艦載機
中型多目的ヘリコプター『シーホーク』 二機
大型輸送ヘリコプター『チヌーク』 二機
多目的中型輸送機AC=55『ランドエアー』 二機

主機
49式波動エンジン

ドレッドノート級量産型戦艦の補給艦改装型。見た目は2205の『ア○カ』





波動エンジン実験艦『ギンガ』第一次改装型

武装
45口径48cm三連装陽電子砲 四基
55口径20.3cm三連装陽電子砲 二基
12.7mm四連パルスレーザー 三十基
25口径15.5cm単装陽電子砲 十基
48式爆雷投射機 二基
ミサイル発射機 四十二基(前部六基、後部六機、左舷九基、右舷九基、下部一二基)
波動砲 一門

艦載機
多目的艦上攻撃機VB=97『アリゲーター』 二十機
多目的中型輸送機AC=55『ランドエアー』対レギオン改装型 二機

主機
49式波動エンジン

補機
46式大型タービン 八機

ギンガの第一次改装型、下部にミサイル発射機と輸送機発艦所を備え。艦載機が目一杯詰め込まれた機体。試験的だった波動砲を正式なものに付け替え、更にワープ航法と波動防壁機能を追加し作戦範囲を広げたもの



補足説明
本来ワープの手順は全部手動なのだが。アイラはジルの人格をコピーした影響でワープのタイミング以外は全て自動で行える


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

雪合戦

ロア=グレギア連合王国に到着したリチャード達は待たされた部屋で待っていると王族の話で盛り上がっていると

 

「おや、代替わりをしたのか?私が聞いたのはヨルムス65世だったんだがな」

 

そう言って入って来た紫瑛種の男が部屋に入ってきた

 

「「?」」

 

全員が入ってきた男に不思議がっているとその男は自己紹介をした

 

「待たせたな諸君。私はヴィークトル・イディナローク。今日から卿らの同僚だ。・・・まずはようこそ、我らが一角獣の居城へ」

 

そう言ってヴィークトルの秀麗な顔立ちに相反して身に馴染んだ軍装の威圧と謹厳。思わずレーナは取るべき礼も忘れて見つめていた

 

「本当に王子殿下・・・自らなのですね」

 

そう言うとヴィークトルは片眉をあげると

 

「うちの弱みは握っているはずだがな・・・連合王国は『レギオン』の元となった『マリアーナ・モデル』の開発元だ。『レギオン』の戦争が終わっても周辺諸国から面倒な目で見られる可能性が高い」

 

確かに人類というものは災禍があると何かしら原因を求める。それが例え飛躍していようとも他人に理不尽をなすりつけるために、誰かのせいにして責めるために

 

「レギオンを作った帝国の後進の連邦よりかはマシだろうが。責任を問わせぬために”誠意”は見せておくべきだろう。自国民を守れぬ政府よりは救援の手を差し伸べた他国に民草はなびく物でもある」

 

そう言って一連の動作を見て居たリチャードはヴィークトルの仕草が王族らしくないと思っていた

 

「それで王族自らドサ回りだ。連邦もそうだろう。第86独立機動打撃群。他国救援を任とする少年少女ばかりの精鋭部隊同じことをむくつけき男どもがやっても絵にも美談にもならんが、悲劇的なルーツを持ついたいけな少年兵ともなれば話は別だ」

 

「!?」

 

その言葉にレーナは驚きを露わにした。まさかか彼らが外交の道具として彼らを運用していると思っているとレーナは口を開いた

 

「殿下・・・ですがそれは・・・」

 

するとヴィークトルは

 

「ヴィーカでいい。敬称も虚礼も不要だ。軍では時間の無駄になるこちらも卿らのことは家名で呼ぶ。それが非礼になるのであれば改めるからそう言ってくれ」

 

そういうとリチャードが聞いた

 

「では私と妹はどうなるのでしょうか。私たちは兄妹ですが」

 

そういうとヴィーカは

 

「何を申すか、卿の事は”グラード”と呼ばせてもらうぞ。既に卿のことはアルガニアから来ている資料で読ませてもらっておる」

 

そういうとシン達は一斉にリチャードの方を向くと

 

「お前・・・名前変えてなかったのかよ・・・」

 

そういうとリチャードは帰る手続きが面倒だからやって居ないと言った

 

「・・・ま、交流としては非礼の部類だがそれほど余裕もない。そう思って許してくれ。何しろ・・・」

 

そう言ってヴィーカは窓の外を見ると

 

「見ての通り、我が連合王国は非常に危険な立ち位置にいるのだからな」

 

そう言ってみた外の世界は銀の雲に覆われた空模様であった”晩春”にもかかわらずハラハラと降る白い雪。アルガニアでは薔薇が咲く時期だというのにまるで真冬のような景色であった。そして見上げた先には銀色の光を弾き調の羽ばたきの様に舞っている物がいた

 

「アインタークスフリーゲ・・・」

 

「ああ。いくら王国が白喪の女神に愛されているとはいえ。流石にこの季節まで彼女のヴェールに閉ざされる事はない」

 

そう言って笑って居ない目でそう言うと

 

「あのアインタークスフリーゲの超重層展開によって王国は急速に寒冷化している」

 

そう言うとレーナはいつ頃から始まったのかと問うとちょうど春先からだと言ってちょうど『放牧犬』が主力化した時期と同じであった

 

「南部の穀倉地帯はこのままだと壊滅らしい。今はアルガニア連邦からの食糧の輸入で賄えているがこの状態が続けば来年の春には我が国は存在しないだろうな」

 

そう言ってヴィーカは3Dホログラムを展開するとレーナは

 

「同じ手を使えば国土の広い大国はともかく、それ以外の国家は持たないと?」

 

「ああ。だから連合王国を試験場しているのだろう。今ここで奴らの目論みを挫く。幸い三国の目的は同じだ。卿らが求める『無慈悲な女王』はレギオン梯団奥、アインタークスフリーゲの生産拠点である竜牙大山内部に存在している」

 

そう言ってホログラムに映されたのは竜骸山脈奥深く。直近の戦線からの距離と敵総数の推定が表示された

 

「竜牙大山の挺進及び制圧。それに伴う『無慈悲な女王』の鹵獲が、この共同作戦の目標という事ですね」

 

「その通りだ”鮮血の女王”。卿らには月を射落してもらう」

 

するとリチャードとジルの通信機に緊急電が届いた

 

「殿下」

 

「ヴィーカでいい。グラード」

 

「失礼、ヴィーカ。今すぐにザファル・イディナローク殿下にお話はできますでしょうか?」

 

「兄上にか?」

 

そう聞き返すと

 

「はい、本国から重要な話があるとのことで」

 

そう言うとヴィーカは

 

「・・・分かった。すぐにお願いしてみる」

 

そう言ってヴィーカは二人をザファルのいる部屋までメイドに案内させた

 

 

 

 

 

メイドに連れられ入ったのは煌びやかな部屋であった。そして後から入って来たのはヴィーカの兄でこの国の第一皇子であるザファル・イディナロークであった

 

「我を呼び出すとは。それほど大事な話何かな?アルガニアの諸君」

 

そう言うとリチャードが話し始めた

 

「殿下、これは本国から届いた内容です。直接見せるよう承りました」

 

そう言って持っていたタブレットの画面をザファルに見せると。ザファルは驚いた様子を見せた

 

「これは・・・実に魅力的ではあるが・・・」

 

そう言ってザファルは言うと端末に書かれていた内容にはこう書かれていた

 

『アルガニア連合軍派遣駐留軍についての提案』

 

「うむ、確かに魅力的ではあるがこの提案はお断りさせてもらおう。第一君達の優秀さは来ている。それだけでも我が軍は士気が上がると言うものだ」

 

そう言うと二人は了解した上でザファルに連れられ幕僚達の会食に連れ出された

 

 

 

 

 

同じ頃、アミ達第一遠征戦隊のメンバーは着陸した連合王国空軍基地で一堂に集まってゆっくりしていた

 

「はぁ・・・」

 

「どうしたアミ、ため息なんかついて」

 

そう言ってため息を吐いたアミをダニエルが理由を聞くと

 

「いや、早くジルが帰ってこないかなって」

 

「まぁ、暇だよな」

 

そう言って二人はエセックスの飛行甲板に上がると

 

「なぁ、雪が綺麗だぞ」

 

「ね、本当・・・」

 

そう言って降っている雪を見てそう言うと

 

「なぁ、久々に雪合戦するか」

 

「そうね、暇だしみんな呼ぼう」

 

そう言っエセックス甲板では二人が始めた雪合戦が始まった

 

 

 

 

 

 

 

 

数日後、第一遠征戦隊は新たに再編された遠征第一師団を抱えたままレーヴィチ観測基地近くの開けた土地に着陸をした

 

「すまない、整備がまだ整って居なくて・・・」

 

「大丈夫ですよ、そのために着陸装置があるんですから」

 

そう言って着陸する際に船体下部から直径2mのタイヤを引き出すと、第一遠征戦隊は着陸を行った

 

「さて、私たちは今日からここを拠点として活動をします」

 

そう言うとヴィーカは

 

「いいのか?本当に基地にいなくても」

 

「ええ、我々はこっちの方が慣れて居ますし。そもそも慣れない場所はむしろ邪魔になると思うので」

 

ジルがそう言うとヴィーカは納得した様子で少し考えていた

 

「・・・なぁ、卿らはパラレイドは使うのか?」

 

いきなり聞かれたことにジルは

 

「え?まぁ、たまに・・・大体はこの通信機を使いますからね」

 

そう言ってジルは耳に付けているイヤホンのようなものを指差すと

 

「この通信機・・・『ボルト』はパラレイドをもとに開発した負担軽減型の通信機ですね」

 

そう言うとヴィーカは

 

「やはり、アルガニア連邦の科学力は私を楽しませてくれるの」

 

そう言って感心した様子であった




兵器紹介
多目的艦上戦闘機VA=88『ホーク3』
武装
30mmレーザー機関砲 四門
12.7mm機関銃 八門

ミサイル
対地艦上ミサイル 6発
対空艦上ミサイル 10発

レギオン戦争前に開発された機体。レギオン戦争後は吸気口の改修をし、対レギオン改装型としてアルガニア連邦空中艦隊艦載機として活躍している。見た目は『コスモタイガーⅡ』





多目的艦上中型輸送機AC=55『ランドエアー』

武装
30mmバルカン砲 二門

ミサイル
対地ミサイル 2発
対空ミサイル 4発

レギオン戦争前に開発された機体。レギオン戦争後は改装を受け輸送機の役割を担っている。空挺部隊が降下する場合もこの機体を使う場合が有る。見た目は『コスモシーガル』


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

要塞奪還

ジル達第一遠征戦隊レーヴィチ基地の裏手に着陸した翌日、ジル達は作戦を聞いていた

 

「・・・なるほど。つまり私たちの艦隊で大きな揺動と・・・」

 

「そう言うことです」

 

「OK、そう言うのは大得意よ」

 

そう言ってジルはピースをするとシン達は少し呆れていたがダニエル達は通常運転のジルにもはや何も言わなかった

 

「さて、今から行くよ。こっちの全部隊は各自集合して点呼と作戦確認。航空隊は該当戦域に到着次第発艦を開始。いつも通り、対空砲に迎撃されるなよ。”命を大事に”これがうちに第一原則だ」

 

「「了解!!」」

 

リチャードがそう言うと遠征師団は点呼と作戦内容を説明するとそのまま艦内に乗り込み、第一遠征戦隊は離陸をして行った

 

「相変らずすげえこった」

 

「本当だよね。アルガニア連邦に行ってみたいわ。どんな暮らししてるんだろう」

 

そう言ってライデンとセオが離陸して行った戦隊を見てそう言うと早速スピアヘッド戦隊も出撃をして行った

 

 

 

 

 

先に出撃した第一遠征戦隊は目標地点で戦車部隊の投下を行うと戦車部隊は各自所定の位置について砲撃準備を行なった

 

「では次に砲兵部隊を降ろします」

 

「あぁ、今じゃ珍しい履帯だが行ってくるぜ」

 

そう言ってギンガ格納庫から360mm自走榴弾砲が降ろされると砲兵部隊はちょうど丘で隠れる場所に白色迷彩を施し、雪原仕様に改装した戦車部隊も同じように白色に塗装をし、雪国仕様に改装していた

 

「じゃあ、航空隊は発艦。各自所定の場所にミサイルを打ち込んで下さい」

 

「ラジャー、アルファ1了解」

 

そしてカタパルトにフミアキの乗るアリゲーターが接続されると

 

『カタパルト準備良し。Good luck』

 

そう言うと一気に加速し、航空隊は発艦を開始した

 

「よし、うちらの航空隊も発艦」

 

『了解しました。艦長』

 

そう言うとギンガのカタパルト二基と下部の艦載機格納ハッチからアリゲーターが発艦を開始した

 

 

 

 

 

 

一方先に発艦したフミアキ率いる航空隊は攻撃を開始、機体に搭載された対地ミサイルが大きな爆発と共にレギオンの注意を引いた

 

「こちらアルファ1。第一次攻撃は成功。これより帰投する」

 

「了解、アルファ隊はそのまま周囲の警戒を行え。次はギンガ航空隊が攻撃を仕掛ける」

 

「了解、アルファ隊はこれより周囲の警戒にあたる」

 

そう言ってフミアキは通信を終えると戦隊の周りを周回し、警戒を始めた

 

「・・・レーダーに感。多数のレギオンがこちらに進行中」

 

「了解、総員に次ぐ。久々の大仕事だ。気合い入れるぞ!!」

 

「「押忍!!」」

 

「砲撃・・・開始!!」

 

リチャードの号令とともに一斉に火を吹く戦車部隊と砲兵部隊。それらの着弾指示をする歩兵部隊。後方からやって来るレギオンに砲撃を行うジル達空中艦。それを援護するかのように攻撃を行う航空隊、その様子はまるで白い大地に咲く紅い花のようであった

 

 

 

 

 

「・・・目標レギオン。全砲塔は砲撃を開始」

 

キィィィィィン!!

 

「続いてミサイル発射!!」

 

そう言って偵察隊の指示の元。ミサイルが一斉に発射し、一面が真っ赤な炎に包まれレギオンは吹き飛んでいた。すると突如上空を飛んでいた斥候型のレギオンを確認した

 

「っ!!斥候型が飛んでるぞ!攻撃開始!!」

 

ダダダダダダダダダダダダァン!!

 

そう言うと戦隊のパルスレーザーが火を吹き、飛んで歩兵部隊に接近を試みた斥候型や自走地雷は尽くが春巣レーザーによって空中で爆散していた

 

「よし、取り敢えず掃討したのかな?」

 

「はい、レーダーに反応はありません」

 

そう言うとジルは

 

「よし、これから私はここを離れる。もしなんかあればすぐに連絡を。私は他の部隊の援護に回る」

 

「「了解!!」」

 

そう言うとギンガは担当地域を離れ、隣の戦域に移動すると援護を開始した

 

「おぉ、来てくれたのか。ありがたい」

 

「いえ、大丈夫です。それよりもまだまだ来ますよ」

 

そう言うと砲撃が行われ砲身からレーザーが撃たれると遠くの方で大爆発が起こり、次に戦隊の至る所からミサイルが飛び出すと接近してきたレギオンが一斉に炎に包まれて吹き飛んだ

 

「・・・これでだいぶ戦線は楽になるでしょう。それでは私は他の戦線の応援に行きます」

 

「ああ、よろしく頼んだ」

 

そう言うとギンガは進路を着た場所に回頭するとエンジン出力を上げて遠くに消えた

 

 

 

 

 

 

 

そしていくつかの戦線を応援しているとヴィーカから通信があった

 

「すまぬ、レーヴィチ基地が陥落した」

 

「何ですって!?」

 

そう驚くとヴィーカは現状を伝えた

 

「正確には基地機能を奪取された。地上区画全区と地下区画8割が敵制圧下。こちらが掌握して居るのは司令棟と最下層の第八格納庫だけだ」

 

するとジルは悔しんだ

 

「チッ!報告にあった電磁射出機型だと高機動型も飛ばせることに気づけばよかった!!」

 

「今は取り敢えず籠城をして居るが・・・」

 

そう言ってヴィーカが暫くは空挺部隊は電磁射出機型を砲兵隊によって壊滅させたと言ってついでに侵攻した陽動部隊はギンガの砲撃した後に大量にやってきた恐竜型と戦車型によって壊滅させられ、逆に進行してきたレギオンを残った軍団で迎撃をしているとのこと

 

「卿の部隊はどうなっているのだ?」

 

そう聞かれるとジルは

 

「今の所、戦隊と合流し艦載機は全機格納。光学迷彩を展開しつつ、現在は要塞に向かっています」

 

「では卿も合流するのか?」

 

「えぇ、今は最大船速で進んでいます。あ、下にいたレギオンが風圧で吹っ飛ばされた」

 

そう言ってレーダーを見ると自分の進んでいる場所に居たレギオンが真っ直ぐ一本線のように綺麗に消えていた

 

「相変わらずアルガニアの科学力は目を見張るものがあるな」

 

そう言って軽々式行った発言にヴィーカはもはや呆れているとジルは聞いた

 

「ヴィーカ。あとどの位そっちは持つ?」

 

「心配は無用・・・と言いたいだ何とか持たせる」

 

そう言うとヴィーカは

 

「なんかノウゼンも似たようなことを言っておったの」

 

そう言うとジルは光学迷彩を展開したまま合流を果たした

 

「・・・取り敢えず。追加で来るのは八千の重機甲部隊・・・本隊が来るのは最低でも5日・・・」

 

「でもその前に敵の増援が来る・・・」

 

「そちらの戦艦の砲撃ではダメですか?」

 

そうレーナが聞くと

 

「うーん、それれでも良いんだけどどうせまた増援を送って来るでしょ」

 

「そうだな、恐らく”糠に釘”と言うやつだ」

 

「なにそれ?」

 

シンの言った聞きなれない言葉にクレナが不思議がると

 

「東方の言葉でそれをやっても意味がないことを意味する言葉だよ」

 

とリチャードが解説を入れた

 

「しかし二正面の攻撃は避けたいですね」

 

「しかしどうするよ」

 

そう言って悩んでいるとレーナは

 

「敵の目的はこの基地の制圧です。つまりこの周辺地域の制圧を行い増援を送っている・・・つまり目的を阻止すれば良いのです」

 

そう言うとセオが言った

 

「つまりその要塞の僕達が攻めろと?」

 

「リッカ少尉。そう言うことです」

 

そう言ってレーナは今度、ジルに聞いた

 

「そちらから砲撃で城壁の破壊はできますか?」

 

「うーん、できることはできるけど・・・」

 

「威力が高すぎて貴方達のいる場所が確実に崩落するのと・・・」

 

「そもそも砲弾自体がさっきの戦闘でほとんど使っちゃった事。残った砲弾だけだとあの城壁を壊すのは無理かな、あれは硬いからもしやるなら陽電子砲でぶち抜いた後に中に砲弾を叩き込むけど・・・」

 

「炸薬を減らすのは?」

 

そう言ってレーナは炸薬を減らし、衝撃を少なくすることを提案したが

 

「それも無理だね。ギンガに積んである砲弾は炸薬の調整が難しいんだ。ちょっとでも間違えるとここら一帯が吹っ飛んじまう」

 

「よくそんな危ないのを積んできましたね」

 

「まぁ、こうなるなんて思ってなかったからさ。広範囲にダメージが行くようにこれを持ってきたんだけど・・・」

 

「見事にアダになったわね」

 

「と言うことは・・・」

 

「・・・強襲しかないですね」

 

「そうなるか・・・」

 

そう言って出た結論にジルとリチャードはため息を吐いた




補足説明
リチャード率いる第一遠征師団は戦車部隊と砲兵部隊、空挺歩兵部隊の三つに再編成され。それぞれ作戦にあたり、レギオンの揺動を開始した



兵器紹介
360mm自走榴弾砲

武装
33口径360mm砲 一門
12.7mm重機関銃 二門
対空迎撃ミサイル 八本

今では珍しい履帯式の自走砲。旧式ではあるが威力が絶大な為。エンジンを強化し、後方支援用に使われている。必要人員は一人、遠征第一師団しか今の所は使われていない


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

要塞奪還2

レーヴィチ基地が制圧されたと同時に敵中に取り残された第一遠征戦隊と第86独立機動打撃群のメンバー。基地の奪還は強襲しか残っておらず。ため息を吐いていた

 

「仕方ない、弾薬はネバダにある分も殆ど使っちゃったから残っているウチの分を全部移してくれる?」

 

「了解、砲弾は補給しておく。でもこれで最後よ」

 

「分かった、気をつけて使うよ」

 

そう言うとネバダからギンガにアームが伸びると砲弾が次々と砲塔に補給されていった

 

「ふぅ、取り敢えず何かいい案は・・・」

 

そう言ってジルはギンガを見るとあることを思いついた

 

「あ!こう言う作戦はダメ?」

 

「・・・どんな作戦ですか?」

 

「えっとね、わかりやすく言うと戦艦砲で上の岩盤を落として地上にいるレギオンを一掃する」

 

そう言ってジルは思いついた作戦を話すとレーナは畝った

 

「うーん、確かにそれは良いかもしれませんが・・・」

 

「それだと衝撃波で機体がぶっ壊れない?」

 

「そうかも」

 

「じゃあ何でやるのよ」

 

そう言ってクレナが言っているとヴィーカは

 

「俺はそれでも良いと思うが・・・」

 

「でも基地の一部が崩れ落ちますよ?」

 

「あー、そうだったな」

 

「それにどうやって岩盤を落とした後に地下の入り口を探すのよ」

 

「「あ・・・」」

 

クレナの一言に全員が固まった

 

「うーんやっぱり壁伝いの強襲か・・・」

 

「でもどうやってあそこまで行く?」

 

そう言って氷で覆われた崖を見ながら言うと

 

「空中艦は?」

 

セオがそう言うと

 

「だめだ、外にいると光学迷彩がお前達には適応されないから砲撃を喰らう」

 

「じゃあ、どうしよう・・・」

 

そう言って悩んでいるとシンは

 

「まず、要塞を置いて逃げるのは論外。増援部隊は遅滞戦闘で時間を稼ぐ」

 

「ええ」

 

「では、砲兵大隊を含めてジャガーノートの半分を空中艦隊に預ける」

 

「まぁ、そうなるでしょうな」

 

そうベルノルトが言うと

 

「5日、救援が来るまで稼ぐつもりでいい。間違っても撃滅しようとするな」

 

「分かっているわ。でもそっちも死なないでよ」

 

「分かっている」

 

そう言って第一遠征戦隊は補給を終えると作戦の為の準備を開始した

 

 

 

 

 

 

そして各々が準備をする中、シンはヴィーカとリチャードに聞いた

 

「二人は攻城戦を知っているのか?俺は正直戦史でしか見たことがないんだが・・・」

 

「あぁ、そういえば卿は特士士官であったな。確かにそれでは知るよしもないか・・・」

 

そう言ってヴィーカは慣れた手つきで20mm対戦車ライフル砲の動作確認をしていた。そしてそれを二門近衞に渡すと発令所に繋がる通路へ向かうのを見届けると続けた

 

「確かに卿より体系的に学んでいるだけで攻城戦の経験はないぞ。巣篭もりの経験は嫌ほどあるが」

 

「俺も、航空機の影響で攻城戦なんかやったことない。せいぜい歩兵部隊が要塞制圧訓練をみっちり扱かれているくらいだ」

 

するとシンは

 

「それじゃあ、その歩兵部隊は経験はあるのか?」

 

「うーん、どっちかと言うと要塞制圧。見知らぬ場所でも柔軟に対応できるように訓練はされている・・・シン、まさかだけど・・・」

 

そう言うとシンは少し笑みを浮かべて

 

「あぁ、その歩兵部隊を使って偵察と上にいる奴らの排除はできるか?」

 

そう言うとリチャードは少し考えると

 

「・・・多分行けるけど、大きな揺動をしないと・・・」

 

「じゃあ、良い考えがある」

 

そう言ってシンはリチャードに提案をした

 

「はぁ、シンは俺の部隊を殺す気か?」

 

「それ以外に方法はあるか?」

 

「・・・まぁ、やるしかないか」

 

そう言うとリチャードはギンガに乗り込むとギンガは光学迷彩を展開したままシン達のいる場所とは反対側の陸地へと向かった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ギンガは戦車部隊をおろすと今度は空挺歩兵部隊を要塞上にある岩盤の上に下ろした

 

「空挺部隊はこのまま上からレギオンの偵察を行え、我々戦車部隊と砲兵部隊は北部占領域を攻撃し、本隊との合流を狙う」

 

「「了解!!」」

 

そう言うと今度はジルが

 

「では我々航空隊は順次発艦を開始し、戦車部隊の援護を行う。各砲塔は各自指定された地域に飽和攻撃」

 

「「了解」」

 

そう言ってエセックスとギンガから航空機が発艦し、遠くで爆発音と共に炎が上がっていた

 

「よし、通信。我、攻撃を開始。武運を祈る」

 

そう言うと返事があった

 

「こちらアンダーテイカー。要塞に長距離砲型を確認。恐らく隔壁を破壊するものかと・・・」

 

「歩兵部隊を降下させる?」

 

「いや、ハンドラー達が迎撃をするらしい」

 

「・・・ごめん、ちょっとこっちは手が離せなくなった」

 

「如何した?」

 

シンはジルに聞くと

 

「レーダーに大量のレギオン反応。恐らく捨て身戦法だと思う、これが片付いたら北部戦域は本隊と合流しやすくなるかも」

 

「分かった、よろしく頼んだ」

 

そう言って通信が切れた

 

「よし、砲撃開始。目標、敵レギオン。撃てぇ!!」

 

キィィィィィン!!

 

ドドドドドドォォォォン!!

 

無数の砲撃音に陽電子砲から放たれるレーザーに無数のミサイル。そして着弾と同時に立ち上る炎は陽の落ちた夜空を紅色に染め上げていた

 

「撃て撃て!!注意を引いて掃討をしやすくするぞ!!」

 

そう言い砲撃を行っている中、ギンガは基地南部のセオの応援を行なっていた

 

「次目標、距離7000。方位140、撃てぇ!!」

 

キィィィィィィン!!

 

「全ミサイル発射!!」

 

シュゴォォォォォ!!

 

そして着弾と同時に巨大な爆炎と共に増援にきたレギオンは吹き飛んだ

 

「助かった」

 

「これならレギオンなんか圧倒できるぞ!!」

 

「やっぱアルガニアってすごいな」

 

そう言って先の飽和攻撃で生き残ったレギオンだけを片付けた部隊がそう言うと

 

「まだまだ来ます、さらに重機甲部隊接近。数400」

 

「チッ、まだ来てるのかよ」

 

そう言ってベルノルトは毒吐いたが

 

「ノルトリヒトは一旦後退。あとは我々がする」

 

そう言ってジルが攻撃を加えながら言うと

 

「・・・分かった。一旦後退する」

 

それだけを言ってベルノルトは後退をし、今度はギンガの航空隊が遠くの方で大規模な爆発を行い、雪崩を起こしてやってきたレギオンの後続部隊を途絶させた

 

「これで暫く増援は無理なはずだ。よし後はここら一体に来た奴らを片付けるぞ。砲撃開始、全砲門はレギオン後方を撃て!!」

 

キィィィィィィン!!

 

そうして放たれた砲撃は真っ赤な炎と共に吹き飛んでいた。その光景は陽が登っても多数の煙と共に広がっていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌朝、城壁を突破するために何とシリン達が肉壁ならぬ機械壁を行い、崖一帯にアルカノストを敷き。その上をシン達エイティシックス達は進んでいた。その様子を岩盤上から双眼鏡越しに見ていた歩兵部隊は

 

「おいおい・・・嘘だろ・・・」

 

「いくら機械だからって・・・」

 

「余りにも酷い・・・」

 

そう言って唖然としている中、アデリナは

 

「あんた達、折角シリン達が身を挺してでも作ったチャンスだ。失敗したらはっ倒すぞ!!」

 

「「押忍!!」」

 

そう言うと歩兵部隊はワイヤーアンカーを打ち込み、城壁上にいたレギオンに持ってきた充電式電磁エネルギー機関銃を撃ち、レギオンを黙らせると一気にワイヤーを伝って降下した。そしてアデリナはシンの乗るレギンレイブと合流をした

 

「歩兵部隊の方ですか?」

 

「ええ、アデリナ・アッカーマンです」

 

「分かりました、では我々はこのまま地下に向かいます」

 

「了解した。これより歩兵部隊は地上区画のレギオンの掃討を行います」

 

「分かりました。気をつけてください、高機動型もいる可能性があります」

 

「分かった、注意をしておく。総員、装甲車に乗車し掃討を開始する」

 

「「了解!!」」

 

そう言って正面から突撃をかまし、アデリアの前にやってきた装甲車は空挺歩兵部隊と合流すると装甲車を走り回して装備されている88mm方で砲撃をしていた

 

「撃て撃て、ここにいるのは雑兵だ!!」

 

そう言って地上区画は歩兵部隊が一掃をした



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

無慈悲な女王

占領された要塞攻略のために動いた歩兵部隊。彼らが地上区画を一掃した頃、ジルは波動エンジンから送られるエネルギーを使い砲撃を続行していた

 

「・・・そろそろシン達は要塞に突入した頃かな?」

 

そう言って砲撃をしているとアイラがレーダーに映ったある物に驚いていた

 

『艦長、あれ!!』

 

「ん?あれは・・・!!!」

 

そう言って向けた視線の先にはボロボロに白い斥候型が周りに重戦車型を連れて佇んでいた

 

「無慈悲の女王・・・」

 

そう言うとその斥候型は蝶の群が集まるのを確認すると去って行った。何事かと思っているとレーナから通信があり、要塞は無事に奪還できたとの情報が入り、同時に主力部隊も去って行ったのを確認しギンガは遠征師団回収のために要塞近くに着陸をした

 

「ふぅ、とりあえず怪我人だけで済んでよかった・・・」

 

そう言って回収した戦車部隊の内、3名が打撲や骨折などでギンガの医務室で治療を受けていた

 

「それに損耗した機体も午後に来るってさ」

 

「早いわね」

 

「それに弾薬の補給もついでに行うそうよ」

 

「忙しいわね」

 

そう言うとマリアは

 

「そうね。ま、さっきの作戦で船体にもダメージが入ったものね」

 

「ですね」

 

そう入ってジルとマリアは重戦車型の攻撃で破壊されたパルスレーザー砲群を見てそう言った

 

「損傷したところは修復作業を行なって明日には使えるそうです」

 

そう言って端末を見ながら言うと

 

「しかし便利ね、『アイラ』は」

 

「ええ、基本的になんでもやってくれますからね」

 

そう入ってアイラが損傷した部位の修理を船体アームで直していた

 

「しかし、リチャードも可哀想よね」

 

そう入ってマリアはリチャードが現在連合王国の作戦会議に無理やり出席させられていることを言った

 

「まぁ、そこは仕方ないと思いますよ姉上」

 

「そうねぇ・・・」

 

そう言って二人は艦内の食堂でコーヒーを入れているとそこにリチャードが帰ってきた

 

「ただいま〜」

 

「お帰りなさい。如何なったんですか兄上?」

 

そう言ってジルは早速結果を聞くと

 

「ああ、ジルの予想通り竜牙大山攻略が決まったよ」

 

「やっぱり、そうですか・・・」

 

そう言うとリチャードは

 

「今回の作戦だとお前が作戦の需要なキーになるかもしれんぞ」

 

「え?如何言うことです?」

 

そう言うとリチャードは今回の作戦に第一遠征戦隊を使っての敵中降下の可能性があるといった

 

「ですが兄上。それは早期警戒型に見つかるのでは?」

 

「何、まだ詳しくは決まっていないさ。さて、新しい陣地に移動だ。場所は送ってある」

 

「了解しました。兄上」

 

そう言うと第一遠征戦隊は今まで使っていた空軍基地を離陸し、新たに指定された際に戦線のとある基地まで移動した

 

 

 

 

 

そうして基地に着陸するとそこには先客が居た

 

「おお、お前らもここなのか」

 

「ああ、そう見たいだな」

 

そう言って基地でシン達と出会ったリチャード達は久々の合同の会食を楽しんだ

 

「じゃあ後はよろしく」

 

「了解」

 

そして会食を行った翌日、リチャード達は早速任務のためにレギオンの部隊に攻撃を始めた

 

「あーあ、暇だな〜」

 

「ま、仕方ないな」

 

「そうそう、こう言う時はゆっくりしているのに限る」

 

そう言って艦艇で来ているジルはギンガの食堂にダニエルとアミを呼ぶと細かい挙動が出来ない艦艇では足手まといになると言うことで基地に残って暇を持て余していた

 

「こう言う時ってフェルドレスはいいよね〜。ちょっとした迎撃とかに出動できるから」

 

「あぁ、そうだね」

 

「確かに言えてるな」

 

そう言ってふとジルはテレビ(回線を無理やり本国から繋げたモノ)を見るとそこには新型艦が映っていた

 

「てか、一気に十隻が就役とか。おかしいわよね」

 

「え?ああ、ドレッドノートの事ね」

 

「えっと・・・確かもう百隻は超えているよな、就役した艦艇って」

 

ダニエルがそう言うとアミは

 

「正確には百八隻、今日のを含めると百十八隻。頭おかしいんじゃないかって思う」

 

「いずれここにも来るのかな?」

 

「さあ?少なくとも編成されている遠征十師団は全部要請があってそれぞれに向かっているみたいよ」

 

「むしろそれでも足りないくらいらしいぞ」

 

「忙しいのね」

 

「まあ、新たに西部戦線が出来たらしいし・・・」

 

「忙しいねぇ〜」

 

そう言って就役した艦艇のニュースを見ながらそう言うとジルは

 

「はぁ、帰ったらまた別の場所に行くのかな?」

 

そう言って机に突っ伏していると

 

「いや、その前にまずは休暇でしょ」

 

「この短い期間でも?」

 

そう言ってアミの言った言葉にジルは不思議の思うと

 

「だって遠征隊は危険が多い分、普通の部隊よりも多めに休暇が出るのよ。そう言ってたじゃない」

 

そう言うとジルは力無く

 

「あぁ、そうだったかも・・・」

 

そう答えるとダニエルは

 

「しかし何してんだい。司令ともあろうものが、こんな場所でお寝んねなんてよ」

 

「うるせえ、こちとら今までが忙しかった分。こう言った時に何すんのかわかんねえんだよ!!」

 

そう言うとダニエルは

 

「じゃあ、模擬戦でもすっか?あん時みたいに」

 

「お、いいねえ。そう言うの、私も混ざろうかしら」

 

そう言って二人が盛り上がっている中、ジルは

 

「うーん、腕が落ちてないといいけど」

 

そう言って三人はエセックスに向かい。予備機のホーク3を準備させた

 

「こちらホーク1、準備完了」

 

そう言うと他の二人も準備完了と連絡があり、3機は発艦をすると上空で空中戦を始めた。それを見ていたフミアキは

 

「おぉ、これは見事なもんだ。おいお前ら、司令達が模擬戦やってるぞ。滅多にない機会だぞ」

 

そう言うと甲板に飛行隊のメンバーが出てくると上空で行われている空中戦を見て驚いていた

 

「おぉ、これは・・・」

 

「中々やるじゃないか」

 

「航空機を見事に操っているな」

 

「これなら実戦でも問題くらいだ」

 

そう言って上空で行われている空中戦を見てそれぞれ感想を言っていた。その頃、空中戦をしているジル達は・・・

 

「チッ、相変わらず巻き返しがうまいなダニエルは・・・」

 

「準備学校でやられた分を返すチャンスだ」

 

「ふふっ、これも懐かしいわね」

 

そう言って3機は激しい空中戦を行なっていた。そして空中戦が行われてから数分、ジルはアミの航空機を軸線にとらえた

 

「・・・撃て」

 

バババババァン!!

 

そして放たれた銃弾はアミの機体に命中し、アミは撃墜判定となった

 

「あ〜、やられた。やっぱりあの二人の一騎打ちね」

 

そう言ってエセックス着艦をしたアミは上空で切り広げられている空中戦を見ながらそう言うと

 

「いや、あなも我々からすると十分素晴らしかったですよ。さすがは準備学校卒業生ですね」

 

「いや〜、あれに比べちゃダメだよ。あそこは流石にもう行きたくないわ」

 

そう言うと上空で行われていた空中戦はダニエルの勝ちとなり、二機は着艦をした

 

「くっそ〜、後ちょっとだったのに・・・」

 

「よっしゃ!!ようやく勝てたぞ!!」

 

そう言って着艦した二人はそう言うとアミがスポーツドリンクの入ったボトルを投げつけ、さっきの感想を言っていた

 

「さっきはだいぶ接戦だったわね。ジル、腕落ちた?」

 

「そうだね〜。ここ最近、航空機には乗って無かったからね〜」

 

そう言っていると基地に帰ってきたリチャードは基地がざわついていたのでその理由を聞くと納得した様子でエセックスを見ていた。ちなみに、さっきの模擬戦を見ていたレーナとフレデリカは驚きと興奮で空中戦の様子を見ていた。シン達はただその興奮した声だけを聞いていたので後で詳しい話を聞こうと思っていた




補足説明
ジル達の乗っていく艦艇は全般的に光学迷彩が取り付けられており、視認される事なく的に近づくことができる。また、ステルス性能も上がっている為。斥候型に気づかれる事なく接近ができる


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

秘匿兵器

ジル達が基地に来てから半月が経った。その間、第86独立機動打撃群と第一遠征師団はレギオンの迎撃などを行っていた

 

「しかし、今日もいっぱいだねぇ」

 

「ああ、あいつらが持ってきてくれるんだ」

 

そう言ってジルの目の前にあるシン達が持ってきたレギオンは実に数十機にも昇る

 

「しかし、大事な部分は燃えているな」

 

「ですね・・・」

 

そう言って重要な制御部分が焼けたレギオンの機体を見ると隣にいたグレン・アキノ軍曹は

 

「しかし、こう言ったのは今度の作戦には有効に使えますね」

 

「ああ・・・」

 

するとグレンは

 

「しかし、あのおチビが今は戦隊長か・・・」

 

そう言って懐かしむように言うと

 

「シンを知っているんですか?」

 

そう言うとグレンは

 

「ああ、七年くらい前だ。あの時はまだ兄に殺されかけたのが自分のせいだと思っていた頃さ。アイツは自分の贖罪だと思って戦っていたんだ」

 

「そうだったんですね」

 

そう言うとグレンは

 

「ああ、あの時から声も身長も色々な事が変わったと思う。だが危なっかしいのは変わらねえよ、いつも部品を壊して帰ってくる。そんな戦い方をしているさ」

 

そう言って格納庫を歩くとジルは

 

「では、私はこれから修理なので失礼しますね」

 

「ああ、じゃあな」

 

そう言うとジルはギンガ格納庫にて戦車部隊の修理をしていた

 

「よし・・・とりあえずこれで良いかな。後でルミに見てもらお」

 

そう言うとジルは修理を完了したコブラを見ると隣にヴェルナーがやってきた

 

「艦長、師団長が呼んでいましたよ」

 

「分かった、すぐ行く」

 

そう言うとジルはリチャードに呼ばれ士官室に入った

 

「お呼びですか兄上?」

 

そう言って部屋に入るとリチャードは

 

「ああ、ちょっとシンがな」

 

「シンがどうかしましたか?」

 

そう言うとリチャードは

 

「いや・・・なんか最近のシンは”焦っている”ような気がしてな」

 

「ああ、確かに最近のシンは何かをずっと考えている感じがしますね」

 

そう言って二人は話しているとそこにアミが慌てた様子で部屋に飛んできた

 

「司令!!」

 

「如何したんだ?」

 

するとアミはシンが怪我をして病院に搬送されたと言った

 

 

 

 

 

 

 

シンの様子を見に二人は慌ててシンのいる病院に向かうと、レーナが目に涙を浮かべながら病院を後にしていた。そしてシンと出会うとシンはヴァーカに何か言われていた

 

「よ、馬鹿野郎が」

 

「いきなり大層な挨拶だな」

 

そう言ってリチャードは部屋に入るとシンはどこか不満そうにリチャードを見ていた

 

「おや、卿も俺と同じようなことを言うか」

 

「当たり前だ、女の子を泣かせやがって。ジルだったらパンチが飛んでいただろうな」

 

「それはごめんだ、あいつのパンチはもう受けたくない」

 

そう言うとヴァーカが一体どんな威力なのかを聞くと

 

「だいたいコンクリにヒビが入るくらい」

 

そう言うとヴァーカは冷や汗をかいていた

 

「それは・・・恐ろしいな・・・」

 

そう言うと取り敢えずリチャードはシンに説教をした

 

 

 

 

 

 

 

同じ頃、レーナを車に乗せたジルはこうなった経緯を聞くと

 

「なるほど、つまりシンと喧嘩したと?」

 

「はい・・・そんな感じです・・・」

 

そう言うと同乗していたグレーテと共にジルは大笑いしてしまった

 

「あはは!!何言ってんだよ。そんくらい良いじゃねえか」

 

「でも・・・司令官が部下の前で泣くなんて・・・」

 

そう言うとグレーテは

 

「良いのよ、むしろあなたは司令官としては歳が若すぎる」

 

「そうそう、普通なら貴方くらいなら青春を謳歌してるくらいなんだから」

 

「それは貴方も同じでしょ?」

 

「まあ、そうだけどさ」

 

そう言って車の中でそう言っているとジルは

 

「まあ、今のうちは喧嘩とかすれ違いはたくさんある。喧嘩して、仲直りができるなら今のうちにたくさん経験した方が良いってもんよ」

 

そう言うとジルは悲しそうな顔を浮かべると

 

「死んでしまったらそう言うこともできないんだから・・・」

 

そう言うと車は基地に到着し、三人は車を降りた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日の夜、ジルは艦橋でアイラと世話話をしていた

 

「今日は大変だったなぁ」

 

『どんな事があったんですか姉様?』

 

「実はね・・・」

 

そう言ってジルはシンとレーナのことを話すとアイラは

 

『あ〜、そう言うことですか。そう言うのははっきりと言ったほうがいいのでは?』

 

「それも出来ないんだと思うよ。アイツ、恋に関しては鈍いからな」

 

『そうでしたね』

 

そう言うとアイラとジルは夜遅くまでこう言った話で盛り上がっていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夜明けに近いこの日、アインタークスフリーゲはいつも通り夜明けと共に竜骸山脈を越え、重々しい銀色の羽を伸ばしながらロア=グレギア連合王国に進出した。夜明けの朝日が銀の羽に反射し全天を血の真紅に染め上げていた。すると突如アインタークスフリーゲ”全て”が巨大な青白い光と共に跡形も無く消え去った。其れと同時に山を通り越して”ナニカ”が飛んできた

 

「・・・”波動砲”砲撃終了。以後我が戦隊は作戦域へに進出を行い、レギオンの陽動を開始する」

 

「了解した、貴戦隊はお疲れであった。見事なり」

 

そう言うとジルはつけていたゴーグルを外すと回頭をし、空に舞い上がっていった。それを見ていたヴィーカは

 

「これが・・・アルガニアの秘匿兵器『波動砲』・・・恐ろしい威力だ・・・」

 

そう言って周りにいた全員も同様にジルから渡されていたゴーグルを取ると唖然としていた。あれ程空を埋め尽くしていたアインタークスフリーゲが一瞬で吹き飛び、青い空が綺麗に映っていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時は遡り、作戦開始前二週間。その日、ジルは司令部の幕僚会議に出席していた

 

「・・・と言うことで今回の作戦に対し。第一遠征戦隊、並びに第一遠征師団は第86独立機動打撃群と共同し、竜牙大山拠点攻略を行います。我々第一遠征戦隊はこれに伴い『波動砲』の使用許可を頂きたく。今日は参りました」

 

そう言うと幕僚達は驚きと共に波動砲の危険性を考えると危険では?と言う反応であった

 

「しかし、波動砲の威力は絶大だ。確かに今回の作戦にはうってつけであるが・・・」

 

「何せ、試験的に上空に試験砲撃をした時はその絶大な威力に科学会から直ちに実験を終了させようと言う意見があった位だ」

 

「だが、実戦でのデータは今のところは無い」

 

「波動砲は本当に必要かどうかもこの際に検討するのにはいいのではないか?」

 

そう言って幕僚達が意見を言っている中、ユーゴスラッド元帥は

 

「・・・確かにこの際に波動砲は本当に我が国・・・いや、人類に必要なのかを検討する必要はある・・・」

 

「では・・・」

 

「ああ、私から。ジル・スミス准将に波動砲の使用を許可する」

 

「ありがとうございます、元帥閣下」

 

そう言って通信を切ったジルはリチャードに結果を報告した

 

「そうか・・・波動砲の使用許可が降りたのか・・・」

 

「はい、今回の作戦で本当に必要かどうかの確認を行う為に実戦での記録を取るそうです」

 

そう言うとレーナに波動砲の使用許可が降りた事を伝えた

 

「そうですか、秘匿兵器の使用許可が出たんですか!」

 

「ええ、だけどこの秘匿兵器は極めて激しい光と衝撃波を伴います。なのであなた方には砲撃の際、何か物陰に隠れて渡すゴーグルを必ず装着してください。じゃ無いと目がやられます」

 

「分かりました、作戦時は全員に装着させます」

 

「よろしく頼みます」

 

それを言うとジルは部屋を出ていった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして迎えた作戦当日、第一遠征戦隊は波動砲発射のために準備を開始した

 

「波動砲発射用意。各艦艇は波動発射用意につき艦内の電源を再起動時に備え、非常用に変更」

 

そう言うと艦内の電気は非常灯に変わり艦橋は暗くなった

 

「目標、全てのアインタークスフリーゲ。波動砲の回路を開け」

 

「回路開きます。非常弁、全閉鎖。強制注入機作動」

 

そう言って艦橋に上がってきたアネットは機関室の操作板を操作した

 

「安全装置を解除。それと同時に周囲に退避勧告。地下に避難させろ」

 

『了解、周囲に退避勧告。サイレンを鳴らします』

 

そう言うと三隻から一斉にサイレンが鳴り響き、近くにいる全兵士は建物の地下に避難を開始した

 

「強制注入機作動を確認。最終セーフティー解除」

 

その様子を地下から映像で見ていたレーナはただならぬ雰囲気に冷や汗をかいていた

 

「ターゲットスコープ、オープン」

 

そう言ってジル、並びにダニエルとアミの艦長席の前にある発射レバーの前に画面が飛び出すと一斉にロックオンをした

 

「エネルギー充填80・・・90・・・100%を突破、薬室内圧力上昇」

 

「目標、全てのアインタークスフリーゲ。距離140000。波動砲発射完了。対ショック、対閃光防御」

 

そう言うと艦橋窓に透明装甲板が降ろされジルはゴーグルを被った

 

「電影クロスゲージ、明度20。照準固定」

 

「発射10秒前9・・8・・7・・6・・5・・」

 

そう言って発射するまでの最終の秒読みへと入った

 

「4・・3・・2・・1・・」

 

「発射!!」

 

それと同時にジルは発射レバーの引き金を引いたそして三隻から閃光と共に波動砲が発射された

 

キィィィィィン!!!

 

発射された波動砲は眼前にあるアインタークスフリーゲを一瞬にして焼き払い、山脈の一部を吹き飛ばしながら付近にいたレギオン達も爆風と波動砲の熱によって吹き飛ばされていた。波動砲発射はギアーデ連邦を越え、アルガニア連邦でもその光線が確認された

 

「・・・目標全滅・・・波動砲発射完了」

 

そう言うとジルとアネットはゴーグルを外し、上空に広がる青空を見た




補足説明
今作に出てくる波動砲は本家のよりは威力は低いですがそれでも強い兵器です


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

拠点制圧開始

竜牙大山攻略のためにジル率いる第一遠征戦隊は侵攻してくるアインタークスフリーゲを波動砲で吹き飛ばし、ついでに竜骸山脈の一部と付近にいたレギオンを巻き込んだ

 

「これが・・・波動砲・・・」

 

「なんとも恐ろしい威力だ。あんな距離なのに建物が破壊されている」

 

そう言って波動砲の衝撃で破壊された基地の建物を見ながらそう言うと連合王国軍の兵士はハッと我にかえると

 

「っ、総員『スロゥネ』を射出!!」

 

そう言うと鹵獲した電磁射出型からパンジャンドラムのような見た目をした特攻兵器が射出され、山脈を超えてその後に爆発をした

 

「しかし、アルガニアは俺の考えた奴よりも恐ろしい兵器を作ったな」

 

「そうだな、リチャードの話ではアレは数発打てば星を破壊出来る威力らしいぞ」

 

「それは恐ろしいな。たった数発で・・・」

 

そう言ってアルガニア連邦の科学力の恐れ慄くと共にヴィーカはそれだけのエネルギーが作れる空中艦のエンジンに少し興味が湧いた

 

「さて、そろそろかな?」

 

そうヴィーカが言うと大規模な爆発音を確認した

 

 

 

 

 

作戦の始まる少し前、作戦室には100名近くの人が集まっていた

 

「作戦目標は前回同様、拠点内の発電プラント型、並びに自動工場型の破壊。次いで当該拠点指揮官機『無慈悲な女王』の鹵獲」

 

そう言いながらレーナはシンの方を見た。アレ以降必要な事以外は話せていないレーナはお互いに距離を置いてしまっている事に言い知れない感覚に陥っていた

 

「なお、今回の作戦に参加するのは機動打撃群、ヴィークトル殿下の直営連隊、並びに第一遠征戦隊と第一遠征師団。以上四隊を持って竜牙大山拠点の制圧、制圧中の作戦域の封鎖、進撃開始から撤退完了までのその全てを行います・・・」

 

そう言うと連合王国の援助がない事に静かにどよめきが走るとシンが二つ確認をした

 

「大佐、二つ確認が。連合王国軍の支援は全く得られない。そう言うわけではありませんね。もう一つ、今の説明は進路啓開が攻略部隊の行動に含まれていませんでしたが・・・」

 

そう言うとレーナは

 

「無論、レギオンに対する前線の圧迫、および小規模な揺動は作戦中、常時行われます。これは連合王国軍の戦争です。レギオンの前線部隊を引き付けるのは当然。次に進路啓開ですが、これについては別部隊が実行します」

 

そう言って説明が終わり、それぞれ準備に入った

 

 

 

 

 

「・・・それで?なんでまたギンガの格納庫に?」

 

そう言ってギンガの格納庫で進発命令を待つ中、ライデンが恐る恐る聞くと

 

「そりゃ私が作戦域まで届けるためよ」

 

そう言ってジルが少し嬉しそうに言うと

 

「・・・また落とすのか?」

 

「あったりまえじゃん」

 

そう言うとライデンは肩をガックリ落とした。ちなみに今回の作戦でクレナは後方で射撃統制をしていた為降下をしなくてよくなり大層安心していた。だが、思考支援デバイスの『ツィカーダ』を切る羽目になり。しかもその姿を他人に見られたことで思わず発狂していた

 

「はぁ、またかよ・・・」

 

「大丈夫だって、前より高度は低いから」

 

「そう言う問題じゃないと思うがな」

 

そう言うとライデンはため息をついた

 

「・・・そろそろかな?」

 

「ん?航空隊か?」

 

「ああ、そろそろだと思う」

 

そう言うと報告があった

 

「こちらアルファ1、爆弾投下終了。これより帰投する」

 

「了解」

 

そう言って通信が切れるとヴィーカが話しかけてきた

 

「しかし驚いたな、貴国の航空機はレギオンの影響を受けぬのだな」

 

そう言うとジルは

 

「あぁ、アインタークスフリーゲは最初に波動砲でぶっ飛ばしたでしょ?それに、本国はアインタークスフリーゲの対策で吸気口をアインタークスフリーゲでも入れないくらい吸気口を小さくしてしまえば良いって言うことで吸気口を小さくした機体を開発したりしたのよ」

 

そう言うとヴィーカは納得した表情で

 

「しかし、言って良いのか?それは機密事項になるんじゃないか?」

 

「いいえ、そもそもこの機構はライセンスで売っているしギアーデ連邦だとそろそろ生産が始まっているんじゃないかな?」

 

「なるほど、そう言うことか・・・」

 

そう言うと進路啓開のための爆撃が終わった事を知らせる通達があると第一遠征戦隊は一斉に離陸をした

 

「よし、それじゃあ出航。このまま最大船速で目標地点に移動する」

 

そう言って三隻は一斉にレバーを下げると戦隊は一気に加速をした

 

「うおっ!」

 

「マジかよ、いきなりか!」

 

そう言ってもろにGを喰らう格納庫では急加速したギンガに驚いていた

 

「このまま突入と同時に格納庫ハッチ展開。一気に全員降ろすよ!!衝撃に備え!!」

 

そう言うと船体が傾き、開いたハッチに次々とフェルドレスが降ろされた

 

ガキンッ!

 

そして投下されたフェルドレスは無事に所定位置へと落下し、シン達とヴィーカ達は着陸をした

 

「ってぇ〜、おい!今度は低いんじゃなかったのかよ!!」

 

ライデンは落ちた衝撃が前とさほど変わっていない事に文句を言うと

 

「何言ってんのよ、前より勢いよく落ちていったんだから当たり前でしょ?大体こっちは山脈に突撃するギリギリで落としたんだから文句言わないの」

 

そう言うとジル達は今度は退路確保のために後方にいるレギオンに砲撃を開始した

 

「あんた達は先行ってな、こっちは後方をやる・・・死ぬなよ・・・」

 

そう言って降下した第一遠征師団と遠征戦隊はシン達攻略部隊を見送った

 

「・・・よし、ミリーゼ大佐に連絡。贈り物は無事に届けた、あとは帰り道を作る」

 

「了解しました。退路確保はお願いします」

 

「ああ、分かった」

 

そう言うとエセックスから発艦した航空隊はレギオンに向け爆撃と機銃掃射を行い次々にレギオンを倒していた

 

「よし、こっちも航空隊を発艦次第飽和攻撃を行う。一・三番、二・四番砲塔で交互射撃。副砲は気化弾を放て」

 

キィィィィン!!

 

ドーンッ!ドーンッ!

 

エネルギー弾と気化弾の爆発で辺り一面が真っ赤な炎に包まれ、後方にいたレギオンは全滅した

 

「・・・よし、兄上。あとは任せて拠点の中に入ってください」

 

「分かった、行ってくる」

 

「ご武運を」

 

そう言うとリチャード達は拠点内に侵入を行うとシン達に追い付く行く形で中に侵入をした

 

「しかし、師団長のビートルでも入れる拠点なんですね」

 

侵入している中、クルシュがビートルでも余裕で入れるトンネルの大きさに驚いていると

 

「っ!上から来るぞ!!」

 

そう言っ上から幼児型の自走地雷が落ちてきて爆発をしたが、出てきたのはとても濃い白煙であった

 

「チッ、チャフか!!」

 

そう言って爆発した白煙の影響でレーダーが真っ白になった戦車部隊は咄嗟に緊急用で持ってきていた放水銃を周りに撒き散らし、白煙を消し去った

 

「しかし、これは・・・」

 

そう言って進む中、ジョージは機体に映る画面のある場所を見ると顔を顰めた

 

「外気温が高いせいで燃料の減りが早い。これは長くは居られないな」

 

そう言うとリチャードは全員の画面にタイマーをつけると

 

「このタイマーが切れたら撤退するぞ。じゃないとここで焼け死ぬ」

 

「「了解!!」」

 

そう言ってリチャード達は侵入した拠点を進み、シン達の援護を開始した

 

「よ、援護きたぜ」

 

「ああ、ようやくか」

 

「ずいぶんと卿らは遅かったじゃないか」

 

「ちょっと邪魔が入ってな」

 

そう言って近くにいた斥候型が一瞬にして吹き飛んだのを目の当たりにしたシン達は飛んで来た方を見るとそこにはカーボンブラックのビートルが佇んでいた

 

「そっちのは・・・大丈夫そうだな」

 

「ああ、こっちは無傷だ」

 

するとシンはある事に気づいた

 

「・・・来たか?」

 

「ああ、高機動型だ」

 

そう言ってシンは今高機動型のいる場所が丁度ジル達のいる真下で、パルスレーザーの攻撃を受けつつも回避して突撃を行っていた

 

「これは・・・まさか!!」

 

高機動型の進路を見てシンはこの高機動型がどこを目指しているのが分かった

 

「レーナ!警戒を、高機動型は”発令所に向かっています”!!」

 

そう言うとレーナは疑念を、リチャードは驚きの声をあげた




本編だと確か数日をかけて行軍をしていた気がしますが。今回はその距離を一気にギンガで詰めたので行軍している時の描写は有りません


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

鹵獲

竜牙大山拠点攻略の途中、出てきた高機動型が発令所に向かっていることに気づいたシンはレーナに通信を入れるとレーナは疑念が浮かんだ

 

「高機動型がこの発令所に?どうして・・・?」

 

本来対処するべきは侵入をしたであり、予備陣地にいる発令所に単騎で向かって来るのは不思議に思ったが。ジルのパルスレーザーの攻撃を避けて突入をしたと言う報告を聞いてすぐに迎撃させた

 

「シデン!」

 

「おうよ!」

 

そう言うとシデンは接近して来る高機動型の迎撃を開始した。元々ジルのパルルスレーザーにより偽装は剥がされており、撃破は簡単であった。するとシンは息を詰め、シデンは総毛立った

 

「各機、警戒しろ!まだ死んでいない!!」

 

「っ!」

 

そう言うと直後に黒い機体が踏襲はチェインブレードを使いキュプクロスの装甲を削ぎ落とした

 

「高機動型!!」

 

そして咄嗟に砲弾を放つが瞬時に移動したのかチェインブレードで僚機が真上から切り付けられていた

 

「どう言う事だ・・・?」

 

その光景は発令所にも届いていた

 

「どう言う事じゃ・・・?」

 

「速度が、前よりも速くなっている?それもと複数機?」

 

そう言って考えを巡らせているとグレーテがパラレイド越しに叫んだ

 

「ダミーよ!攻撃して来ている奴が本体。それ以外は外だけのダミーよ」

 

そう言って移された画面をよく見るとシデンが四散させたのは”銀色”の流体装甲が映っていた。それに気づいたレーナは目を見張った

 

「本体とダミーが交互に光学迷彩を点滅させて移動しているように見せているの」

 

そう言うとレーナは高機動型の一連の行動を思い出すとある考えが浮かんだ

 

「まさか・・・暴走?」

 

そう言うと一連の行動にも説明がついた

 

「高機動型は誤った学習をして・・・シンの異能を把握して・・・だからこの発令所に・・・」

 

そう言うとレーナは自分を囮にするといった

 

「チッ、ふざけんなよ女王陛下!!」

 

「ちょっとレーナ!!」

 

「大佐・・・本気ですか?」

 

そう言ってシデン、セオ、ジルの三人が言うもレーナは制止した。そして拠点内に侵入していたシンは

 

「・・・悪い、ライデン、リチャード」

 

そう言ってシンの機体が後ろに下がると

 

「任せる」

 

そう言ってシデンと共に高機動型を撃破するために目を閉じると正確な情報を集めた

 

「・・・っ!新たな部隊接近!!数多数!!」

 

「ああ、分かっている」

 

そう言ってリチャードとライデンの二人は出てきた重戦車型に砲撃を行い、それぞれ撃破をしていた

 

「しかし、よくその砲撃でここも崩れねえよな」

 

「それだけ頑丈なんでしょ。ここは」

 

そう言って203mm連装砲を一度に砲撃し、重戦車型を撃破したビートルはびくともしない拠点の頑丈さに驚いていた。すると通信が入った

 

「兄上、そっちに高機動型が向っています。気をつけて!!」

 

「了解、ありがとう」

 

そう言ってリチャードは警戒をしていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

無慈悲な女王は敵陣の映像に嘆息をしていると独断専行で突撃をした高機動型の暴走。と侵攻してきた軍を見て驚いていた

 

『まさか船を持って来るなんて・・・予想外だわ』

 

そう言って本来攻撃するはずだった部隊が空中艦の砲撃で全滅したのを確認すると

 

『これじゃあ侵入して来た挺進部隊の殲滅は難しいわね』

 

そう言って徐々に近づいて来るスピアヘッド戦隊と一部の戦車部隊を確認しながらそういった

 

 

 

 

 

「・・・来る」

 

「何?」

 

そう言うとベルノルトが報告を入れた

 

「大尉!そっちに行きました!!最短経路で300秒!!」

 

「来るぞ!!」

 

そう言うとビートルの下をものすごい勢いで通過した高機動型はシンの機体を狙っていた。本来、戦車は上面が弱いため上から狙うつもりだったが、ビートルが通路のほとんどを塞いでいた為、高機動型はビートル下部にある隙間からシンの機体を狙うしか無かった。その為シンはすぐに高機動型の対処に当たることができた。そして高機動型は自前の早さを利用し攻撃を行ったがシンは異能を使い攻撃を予測し。攻撃を交わしながらHEATを放ち、高機動型を撃破しようとしたが、高機動型は突如光学迷彩を起動した。シンは今か何をするのかを察すると

 

「各機、遮蔽物に退避!!」

 

「チッ、全員後ろに隠れろ!!」

 

そう言うと追加された流体装甲が変形をし、槍となってフェルドレスに降り注いだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・チッ、駆動系がイカれている。修理は・・・時間がかかるな」

 

そう言ってリチャードは画面に写っている機体の状況を把握した

 

「脚三本が故障。第一砲門大破・・・副砲は・・・無事か・・・」

 

そう言うとリチャードはビートルの現状を把握すると

 

「シン・・・すまない、これから先は時間が掛かりそうだ」

 

「分かった・・・」

 

そう言ってシンは高機動型を追った

 

「必ず帰れよ・・・シン」

 

そう言うとリチャードは別で動いていたジョージから発電プラント型と自動工場型の制圧完了の報告を受け、駆けつけた歩兵部隊と共に緊急の修理を開始した

 

「どうやら卿らの任務はまだ終わっていないようだな」

 

そう言ってヴィーカからの通信が入った

 

「ああ、こっちは高機動型の攻撃で脚がやられた」

 

「そうか・・・」

 

「すまない」

 

「ない、作戦に予想外は当たり前だ。心配することは・・・」

 

するとライデンが何かに気づいた

 

「おい、リチャード。あれ・・・」

 

そう言ってライデンが光学センサーを向けると、そこには古びた斥候型が岩陰に立っていた

 

「あれは・・・っ!!」

 

そうして佇んでいたのは白く本来あるはずの7.6mm機銃や14mm重機関銃もない非武装の斥候型。そして装甲に書かれた月のマーク、それを見たリチャード含め修理をしていた歩兵部隊も一緒にいたライデンとセオも声が出なかった。なぜここにコイツがいるのか。すると無慈悲な女王は視線を外し、そのままにを翻すと岩壁の陰、自然の起伏に半ば隠れる道に消えた

 

「・・・行ってくれ」

 

「ああ、分かった」

 

咄嗟にリチャードの言った言葉の意味をライデンは理解するとセオが驚いていた

 

「まずはシンを探さないと!」

 

「コイツがいたのはあの壁よりも下だったろ」

 

そう言うとセオは理解をした。シンは無慈悲の女王は動いてないと言っていた。そしてそこは高機動型とシンが戦闘をしている場所は此処の下の場所。つまり

 

「コイツが来た道が迂回路だ!!」

 

そう言うとライデンとセオは迂回路を進んだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、外で待機していたジルは追加できたレギオンに砲撃をしていた

 

「チッ、数が少し多い・・・」

 

そう言うと何処かに重戦車型の砲弾が当たり、艦内に小さな振動が響いた

 

「・・・現状を報告!」

 

『現在、ギンガは左舷対空砲の一部と前部兵員室に被弾。それ以外は問題無し』

 

「他の艦艇は?」

 

『現在、エセックス航空隊は爆撃を続行。歩兵部隊は拠点内部に侵入したビートルの緊急修理中』

 

「現在の作戦状況は?」

 

そう言って艦橋ではジルが今の状況を聞いていた

 

『現在、発電プラント型、並びに自動工場型の制圧は完了。残りは無慈悲の女王の鹵獲のみです』

 

そう言うとジルは了解し、作戦の成功を祈った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同じ頃、リチャードは歩兵部隊の緊急修理が終わった

 

「よし、歩兵部隊はこのまま後退して退路の確保。それとギンガにフェルドレスに乗せる準備を」

 

「「了解」」

 

そう言ってリチャードは迂回路を通りライデン達の跡を追った

 

「シン・・・」

 

その頃シンは高機動型を溶岩に突き落とし、通路にポツンと残されていた

 

「これは・・・死んだかもな・・・」

 

そう言ってシンは自分の機体を見て言った、両ワイヤーアンカーは喪失、脚部は足を引き摺りながらがやっとで落ちた10mの高さすら登れない状況であった

 

「・・・言わなきゃよかった・・・」

 

そう言ってシンはパラレイドも使えず、フレデリカの探査も難しいこの場所に落ち、このまま死ぬ可能性が高いことにレーナと交わした約束を思い出していた

 

「レーナ・・・悪い・・・」

 

そう言って諦めて外に出ていたシンはそう零していた。すると目の前に一気の古い斥候型がいつの間にか佇んでいた

 

「!!!」

 

認識した時には頭が真っ白になるくらいの衝撃を受けた。いくら斥候型が弱いと言ってもそれはフェルドレスに乗っている場合のみだ。ましてや今のほとんど丸腰での状態では斥候型の脚で潰されるか千切れてしまう

 

死にたくない。

 

咄嗟に斥候型が近づくたびにシンは後ろに後退する

 

死にたくない。

 

レギオンに取り込まれれば壊れるまでずっと彼女の名前を呼んでしまう

 

泣かせたくない。

 

必ず帰ると言ったのにそれを果たすことができない上にもし声を聞いてしまったら・・・

 

 

 

 

 

 

俺は彼女に笑っていてほしい・・・

 

 

 

 

 

 

 

その時だった突如岩壁から100km近い速度でファイドが突っ込み、斥候型を突き飛ばした。斥候型は横に倒れ、ファイドの自重を使い白色の装甲を割った

 

「ファイド、退け!!」

 

「シン、そこを動かないでよ!!」

 

そう言って轟く砲声、放たれた砲弾は斥候型の六本の脚を吹き飛ばした

 

「シン!大丈夫か!?」

 

そう言ってセオが聞くとシンは

 

「・・・耳が痛い」

 

「そう軽口が言えるなら大丈夫そうだな」

 

「どこから出てきたんだ?」

 

「ん?ああ、そうかここじゃ影になって見えねえか。俺の後ろあたりに道があるんだ。こんなところに何の用で作ったかは分からんが」

 

「ああ・・・」

 

そう言って少し空気を吸ってしまい、咳き込んでしまった

 

「喉やられるぞ、アンダーテイカーが動かないって?今行く」

 

「悪い」

 

「喋んなって。ファイド、アンダーテイカーの回収頼む。そっちの斥候型は・・・」

 

「ピッ!」

 

「もうすぐビートルが来るそうだ」

 

「何で今ので分かんだよ。まあ、あいつが来るなら救急室に乗せてもらえ」

 

そう言って後から駆けつけた架橋用スカベンジャーが橋をかけ、ファイドがアンダーテイカーを回収をすると後から来たビートルが鹵獲した無慈悲の女王を格納庫に入れ、シンを救急室に乗せて拠点より帰還した



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

アルガニア連邦編Ⅱ
輸送


シンを救出し、無慈悲な女王を鹵獲した報告を受けたジルは早速アルガニア連邦軍司令部に報告をしていた

 

「そうか・・・無慈悲な女王の鹵獲に成功したか!!」

 

「はい、今はリチャード・スミス准将搭乗のビートル格納庫に格納され、こちらに向かっているとのことです」

 

「了解した。では格納庫に収容した後。こちらに来てくれ」

 

「了解しました」

 

そう言って通信が切れた

 

「・・・ふぅ、作戦はうまくいったか・・・」

 

そう言うと作戦の最後に行う拠点内発破を音が聞こえ、作戦終了となった

 

 

 

 

 

 

そして竜牙大山拠点狭略部隊が帰還し、各々のフェルドレスは格納庫に入れられた

 

「お疲れ〜」

 

「ああ、帰ったぞ」

 

そう言って救急室で熱中症となっていたシンに軽い治療を行い格納庫から無慈悲の女王を下ろすと動き出さないように厳重に固定し、電波を完全に遮断する特性のコンテナに無慈悲の女王を格納し、格納庫にそのコンテナを置いた

 

「よし、準備が完了次第離陸を開始するからちゃっちゃと乗せちゃって」

 

そう言ってフェルドレスをそれぞれ空中艦に載せ離陸を開始した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして離陸を開始してから数時間、第一遠征戦隊は予備陣地の前線基地に着陸をすると作戦の成功を確信し兵士たちが湧いている中。リチャード達は無慈悲の女王を格納しているコンテナを見ていた

 

「しかし、これをそのまま本国にか・・・」

 

「そうだね、えっと確かこのまま運ぶんだっけ?」

 

「ああ、このまま元エイティシックスのレギンレイブは本国に運ぶ予定だよ」

 

「ま、ノルトリヒト戦隊は此処で降すけどね」

 

そう言うとジルはアインタークスフリーゲが居なくなり青くなった空を見上げると

 

「綺麗だな〜」

 

「ああ、王国の空も綺麗だな」

 

そう言って基地の遠くから雪解け水の流れる音が聞こえたかのように思うと遠くでシンとレーナが何かを話しているのを見かけた

 

「お、仲直りしたっぽいわね」

 

「だな」

 

そう言って二人はその微笑ましい光景を見ていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

作戦終了より数日後、この日は第86独立機動打撃群と第一遠征戦隊は帰国の路につくために準備をしていた

 

「マジで!!帰りはこれに乗るの!?」

 

「ああ、これで送る予定だったしな」

 

そう言って空中艦ですぐに帰れることにクレナは驚いているとジルは

 

「さ、もうすぐ離陸するから早く乗ってな」

 

「了解!」

 

そう言ってクレナは艦内の格納庫に入るとジルは艦橋に登った

 

「・・・ふぅ、波動エンジン起動」

 

「了解、波動エンジン起動。第一、第二フライホイール起動」

 

『全通信回路起動。艦内システムオールクリーン』

 

そう言って艦橋ではアネットとアイラが準備を始めた

 

『エセックス、ネバダ共に出航準備完了』

 

「了解、全艦発進せよ。なお、離陸安定次第、ワープ開始」

 

キィィィィン!!

 

そうして離陸した第一遠征戦隊は上空に上がるとジルはワープ準備をした

 

「全艦ワープ準備」

 

『了解、ワープ座標固定』

 

「波動エンジン準備完了」

 

「了解、全艦ワープ開始」

 

そう言うと空中に三つの黒い穴が出現し、その中に三隻が入ると第一遠征戦隊はワープを開始した

 

 

 

 

 

 

ワープが終了し、次に見えた景色はサン・デ・レグリアレスタ総合基地であった。すると三隻の近くに誘導船が近づき、総合基地第21番バースに着陸をした

 

「みんな、到着したよ」

 

「ああ、ちょっと待ってくれ。クレナとヴィーカがワープ酔いだ」

 

「ああ〜、分かった。こっちは荷物おろしておくから」

 

「分かった」

 

そう言ってやってきて重装甲輸送車に無慈悲な女王を入れたコンテナを積み込んだ

 

 

 

 

 

荷物の運び出しが終わり、入国審査を終えたシン達は基地に到着したバスに乗り込んだ

 

「しかしすげえな、こんなにでかい基地なんてよ」

 

そう言ってライデンが大きさに驚いていると他の面々も基地の大きさに同じように驚いていた。するとバスの前に座っていたジルは

 

「さあ、今日から二ヶ月。君達は休暇でここで過ごすよ」

 

「「マジで!?」」

 

そう言って驚いているとバスは広大な草原の一角にあるホテルへと到着した

 

「さ、今日から二ヶ月間。君たちが泊まるホテルさ。ま、存分に休暇を楽しんでおきな」

 

そう言うとジルはホテルから去り司令部まで向かった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ジル・スミス准将。ただいま帰還しました」

 

そう言うとジルはトーマスに無慈悲の女王の現状を聞いた

 

「今、無慈悲の女王は連邦軍の地下収容施設に入れてギアーデ連邦、ロア=グレギア連合王国、ヴァルト盟約同盟を含めた四カ国で尋問を開始している」

 

「ギアーデ連邦と連合王国は分かりますが。なぜヴァルト盟約同盟が?」

 

そう言って不思議に思っているとトーマスは

 

「何、中立的な国家この場合は価値になるからだ。レギオンを生み出したギアーデ帝国と同じ場所にある連邦。マリアーナ・モデルを開発した連合王国。両国にAI技術を与えた本国。情報開示するとしてこの三国で行うよりも中立国のヴァルト盟約同盟が加わっている方が信憑性が増すと言うものだ」

 

そう言うとジルは納得した上でトーマスから頼まれごとを受けた

 

「それで何だが、ジルにちょっと出迎えをお願いしたい」

 

「出迎え?」

 

「ああ、ヴァルト盟約同盟から彼等に荷物があってな。それを積み込んだら君も休暇だ」

 

そう言うとジルは軽いため息を吐くと

 

「はぁ、シン達に文句言われることはないと思いますが・・・」

 

「ま、そう言うことだ。頼んだぞ」

 

「了解しました」

 

そう言うとジルはギンガに乗り込みヴァルト盟約同盟方面に向かった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そしてヴァルト盟約同盟に着いたジルは早速頼まれごとの荷物を乗せると共に”モノ”の指導教官との挨拶をした

 

「初めまして、オリヴィア・アイギス大尉です」

 

「初めまして、ジル・スミス准将です」

 

そう言って二人は敬礼をすると

 

「ああ、敬語は不要ですよオリヴィア大尉。私よりもあなたの方が従軍経験は長いでしょうから」

 

「そうですか・・・では、ジル准将。私はこのまま”コレ”に乗るのでいいですか?」

 

「ええ、ギンガの休憩室でゆっくりしていて下さい」

 

「ああ、荷物の搬入を確認したらそうさせてもらうよ」

 

そう言ってオリヴィアはギンガの格納庫に搬入されているレギンレイブの新装備を見た

 

「えっと・・・確か『アルメ・フュリウーズ』でしたっけ?」

 

「ああ、それを貴国の空中艦が運んでくれると聞いているぞ」

 

「ええ、その予定です。あ、積み込みが終わりましたね」

 

「じゃあ、行くか」

 

そう言って二人は艦内に入った

 

「おや?ジル准将は艦橋に行かなくても良いのかい?」

 

そう言って一緒に食堂についてきたジルにオリヴィアは不思議に思うと

 

「ああ、大丈夫ですよ」

 

そう言ってタブレットを取り出すと艦内にエンジン音が響いた

 

「コレは・・・さすがアルガニア連邦、と言ったところだな」

 

「まあ、そう言われるのはあまり嬉しくないですけどね」

 

そう言って離陸したギンガは最大船速でアルガニア連邦へと向かった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

総合基地に到着したギンガはオリヴィアと共に下艦をし、オリヴィアはその大きさに驚いていた

 

「おお、アルガニアには初めてきたが・・・発展しているな・・・」

 

「まあ、それに関しては同感ですね。さて、オリヴィア大尉。貴方もしばらくはここで休養をとると聞いていますが?」

 

「ああ、予約したホテルにな」

 

「でしたらお送りいたしますよ」

 

「良いのか?」

 

「ええ、配車サービスを使えば」

 

そう言ってジルは端末を起動し、オリヴィアと共に基地の外にでると。そこには一台の車が停まっていた

 

「コレは、驚いた。まさか自動で送ってくれるとは・・・」

 

「まあ、コレくらいは普通ですよ」

 

そう言ってオリヴィアが自動配車サービスに驚いていると車はホテルに着いた

 

「じゃあ、私かこれで。また今度」

 

「ああ、それじゃあ」

 

そう言ってジルとオリヴィアは別れるとジルはそのまま駅へと向かった



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

休養

ジルが無慈悲の女王の輸送を行なってから一ヶ月ほど経ったある日。その日、ジル達は休養の為にあるホテル(リゾートホテルで貸し切っている状態)に来ていた

 

「よ、遊びに来たぞ〜」

 

「お、来た来た」

 

「待ってたよ〜!」

 

そう言ってジルはホテルに行くとシンとレーナの姿がいない事に気づいた

 

「あれ?シンとレーナは?」

 

「ああ、あの二人なら今は下の街にいるよ」

 

「ああ、そう言う事」

 

「まあ、予定の時間までに帰ってくるだろうけどな」

 

そう言ってライデンが言うと二人の声が入り口から聞こえ、振り向くと予想通り。シンとレーナが楽しげに会話をしていた

 

「よし、コレで全員だね」

 

「ああ、それで?今日はどこに連れてってくれるんだ?」

 

「何、前から言ってるじゃないか。ミステリーツアーだって」

 

そう言って全員はジルについていく形でターミナルへと向かうと、そこには一本の列車が停まっており、行き先表示には『貸切』と書かれてあった

 

「さあ、コレに乗っていくよ」

 

「「マジで!?」」

 

そう言って丸々貸し切った列車を見て驚いているとジルはそそくさと全員を列車に乗せ、ミステリーツアーが始まった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同じ頃、リチャードはトーマスより、無慈悲な女王の尋問について話を聞いていた

 

「・・・成程、この一ヶ月で進捗は無しですか・・・」

 

「ああ、一切の反応がなかった」

 

そう言って端末を見ながらリチャードはそう言うとトーマスは

 

「彼女の生前の名前すら聞き出すことができなかった・・・」

 

「まあ、相手は機械ですから痛覚とかもないですからね」

 

するとトーマスは

 

「そこで明日にノウゼン大尉とイディナローク中佐に協力を仰ぐようグレーテ大佐にお願いをした」

 

「・・・分かりました。明日、二人を迎えに行きます」

 

「ああ、頼んだ」

 

そう言うとリチャードは部屋を出ていった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ミステリーツアー用に貸切をした列車はアルガニア連邦首都のサン・デ・レグリアレスタ中央ターミナル駅に着き、各々街の観光を始めた

 

「しかしすげえな」

 

「ああ、まるで未来都市にいるみたいだ」

 

そう言って街に繰り出した一行は街が活気付いている事に気づくとジルが説明をした

 

「ああ、それはもう直ぐ”建国祭”があるからさ」

 

そう言うとジルは建国祭について説明をした

 

「建国祭って言うのはアルガニアが成立した時のことを祝って行われる祭りでちょうど今年は建国2800年記念でいつもより派手な演出なんだよ」

 

「「はぇ〜」」

 

そう言って驚いているとレーナは自国の革命祭よりも派手な建国祭にこの国の豊かさを実感した

 

「ま、今日はまずパレードを見るから、ついてきて」

 

そう言ってジルが連れ出したのは片側5車線の大きな通りであった

 

「大きいな」

 

「まあ、ここが連邦でも一番大きな通りだからね」

 

そう言っていると音楽が始まり、続々と小銃を持った歩兵部隊が歩き、次にミサイル搭載車、コルーチク、コブラ、ビートルの順に行進を開始し。それを見ていたレーナはアルガニア連邦の軍事力に舌を巻いていた。すると上空では今では珍しい航空隊が空を飛び、そしてこの国の象徴とも言える空中艦が大量に飛んでいた

 

「これは・・・」

 

そう言ってレーナは空中艦の数の多さに驚くと共に共和国はこのような国に喧嘩を打ったのかと思うと思わず鳥肌が立った。その隣ではジルは

 

『こんな短期間でこんな大量に空中艦が建造できるものなのか?いくら量産型とは言え幾ら何でもこの数は・・・』

 

そう言って眼前に映る百隻はいるであろう空中艦の建造量にジルは不思議に思っていた

 

『今、ギンガは新しく下部に砲塔を追加する改装をしているが、それも二ヶ月で終わると言うのも不思議だ。本来そう言う大規模改装は一年ほどかかると言うのに・・・』

 

そう言って現在ギンガが行っている改装について不思議に思っているとジルはある考えが浮かんだ

 

『もしかして連邦は、”ナニカ”隠している?』

 

そう思ったがとりあえずシン達を案内するために頭の片隅に追いやった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日の夜、シン達を案内し終わったジルは司令部に呼ばれていた

 

「お呼びでしょうか。叔父上」

 

「ああ、来たか。すまんな休暇中に」

 

そう言ってトーマスは眼鏡を外すと

 

「実はな、お前の第一遠征戦隊に新たに艦を配属する事になった」

 

「!?」

 

いきなり言われた事にジルは驚いた

 

「まあ、これはさっき決まった事だからな。いきなりで済まない」

 

そう言ってトーマスから言われてことにジルはどうしても気になることがあり、トーマスに聞いた

 

「叔父上・・・」

 

「ん?何だ」

 

「叔父上、連邦は・・・連邦は・・・”ナニカ”隠しているのではありませんか?」

 

「・・・どう言うことだ?」

 

「・・・現在、空中艦隊は全部で230隻が就役して居ます。しかもこの二年で就役した艦艇はその内の200隻もいます。これはいくら連邦にある全工廠を使っても数が合いません・・・連邦はどうしたら二年で200隻の空中艦を建造したのですか?」

 

そう言うとトーマスは少し黙ると

 

「ジルにやはり隠し事はできんか・・・」

 

そう言うとトーマスは着けていた眼鏡を外すと

 

「・・・ジル、お前はこの国の”闇”を見る覚悟はあるか?」

 

そう言うとジルはトーマスの迫力に少し気圧されるが

 

「・・・ええ」

 

そう答えるとトーマスは

 

「・・・分かった、ついてくるといい」

 

そう言ってジルと共に車に乗り込んだ




建国祭のパレードのイメージはロシア対独戦勝利パレードです

街のイメージは第3新東京市です


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

アルガニア連邦の感想

今回は間話みたいな感じです


リチャード・スミス、それが彼の名前だ。初めて会った時は不思議な少年と思っていた

 

二年前に会った時は軍人らしからぬ雰囲気を持っていて、とても軍人をやっているとは思えなかった。しかし共に戦闘を行った時に実感した。損耗を出さないように緻密に計算された戦闘、偵察との情報を合わせて瞬時にその場の状況を判断する。司令官としては相応しい人物だった。それに俺の亡霊の話を言っても気味悪がらずむしろ興味が湧くといって不思議な奴だと思った。そしてリチャードと話している内に段々と毎日が楽しく感じていた。そして共和国のシロ豚共が彼らのフェルドレスを盗もうとして、逆に死んでいた時は思わず清清した気分になってしまった。しかしそれが原因で彼らは帰国命令が出てしまった。帰るまでの間に彼らの祖国のアルガニア連邦と言う国について色々と聞いていると科学が発展し、豊かな国であると聞いて。前に読んでいた本に”転生”と言う言葉を思うかべ、もしそんな事があれば今度はアルガニア連邦に生まれて見たい。そう強く思いながら一生の別れを言った・・・がその数ヶ月後、俺たちはギアーデ連邦に保護をされた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次に出会ったのはギアーデ連邦に保護をされ、書類上の父であるエルンストの家に行った時であった。その時、リチャードは飲んでいたカップを落として驚いていた

 

「シン・・・!!??」

 

そう言って驚きと嬉しさで固まっていたリチャードは俺たちとの再会を喜んでいた。それからの数ヶ月、俺たちは再会したリチャード達と共に少し休憩と言った様子で会話を楽しんでいた。後から聞いたがあの時、リチャード達はエルンストから俺たちに普通の生活といったものを教えておいて欲しいと言われていたそうだ。そしてその間にカイエとジョージが何故か一緒にいる時間が増えている事に気付き、リチャードに訳を聞くと

 

「ああ、それはあの二人”イイ”関係になったからな」

 

その理由を聞いてもリチャードは

 

「ま、後々君にもわかるさ」

 

そういって理由は聞けなかった、そしてリチャードに軍に行こうと思っていることを伝えると

 

「ふーん、やっぱりか・・・そう言うと思っていたよ」

 

そういってリチャードは俺が軍に入ることに反対しなかったことに少し驚いたが、リチャードは

 

「何、君の事だから無理矢理でも軍に入るでしょ?」

 

そう言うと先に戦場で待っているとだけ言って去って行った。それからの数ヶ月、俺はまたリチャードに会うために訓練に励んだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次に出会ったのは配属された基地であった先に基地に来ていたリチャード達はどうやら連邦の要請でレギオンの応援に来ていたらしい。その時、俺はリチャードの乗る機体が共和国の時とは違っており。その理由を聞くとなんと昇進して今は旅団長をしているのだと言った。そうして話していると突如上空に巨大な影が生まれ、上空を見るとそこには今まで見た事ない大きさの”船”が浮かんでいた。それに驚いているとリチャードは

 

「あれはアルガニア連邦最大の発明・・・空中艦だよ」

 

そう言って空中艦が着陸をしたが、俺は昔読んだ本に出てくる宇宙船の様なな見た目をしており、これは一瞬夢なのかと思った。そして空中艦から下ろされる荷物を見て俺はアルガニア連邦は他国にこれだけの物資を輸送できるくらい裕福なのかと思うとレギオンすらまともに戦えない共和国のシロ豚共いや、同じエイティシックスでもこの国には負ける。そう思った・・・

 

 

 

 

 

そしてリチャードと共に大攻勢の時はレギオンを退けていたが、ここでも俺はアルガニアの技術力を目の当たりにした。何故なら、元にしたという重戦車型の砲弾ですら塗装が剥がれる程度の損傷しか受けていなかったのである。そしてリチャードが呼んだという最新鋭空中艦隊は一撃にしてレギオンの大群をまるで蜘蛛の子を蹴散らすか如く真っ赤な炎と共に重戦車型は空高く吹き飛ばされていた

 

 

 

 

 

そしてその次に行われたモルフォ討伐作戦ではリチャード達は俺たちを確実に送るために護衛を行なっていたがそこで食べていた戦闘糧食も連邦の味付けが濃く、保存料の強い匂いがせず、とても食べやすいそれに本当に規定量のカロリーは有るのかと思っていたが食べ終わると不意に満腹感が生まれ、本当に規定量のカロリーが有るのだと実感した。こう言った細かいところでも兵士の士気の向上をしているのだと思うとアルガニアという国はどれだけ裕福で優れているのかがよく分かった。しかし、討伐が終わり基地に帰るとどこにもリチャード達の姿が見当たらないので中佐に聞くと彼等なら本国の指令で帰ったと聞き別れが言えなかったのは少し寂しかった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次に再開したのは第86独立機動部隊の本拠地のリュストカマー基地であった。その日の朝にいきなりあの役人から

 

『今日、君達のところにお届け物を届けにアルガニアからお客様が来るからね〜。後よろしく〜』

 

そう言っていつも通りの軽い口調で言うと言うだけ言って通信が切れた。その時は本当にあの役人にペンキをぶっ掛けたいと思っていたがそんな事はやってきた空中艦を見て忘れてしまった。そこから降りて来たリチャードに驚く中、リチャードの妹であるジル・スミスはクレナと友達といえるあいだがらとなっており、それのお陰かクレナの幼さが消えているかのように思えた。そして合同で訓練を行った時は空中艦から歩兵部隊が降下しているのを見て驚くと共にジルの乗っている実験艦ギンガからレーナに贈り物で重装甲指揮車を見た時はアルガニアは如何してこんなにも俺たちの支援を行っているのかが気になった

 

 

 

 

 

そして行われた自動工場型と発電プラント型の制圧作戦。その時の作戦の第一段階でギンガから放たれたレーザー砲は本当のSF小説に出て来そうな攻撃で、付近一体ににいたレギオンを一瞬で蹴散らすと俺たちを格納庫から落とした。その時にクレナが悲鳴を上げていた時は少し面白かった

 

 

 

 

そして無事作戦を終え、リュストカマー基地に帰投した後。リチャード達は作戦成功した為、本国へと帰還して行った。その時、リチャードに

 

「なあ、シン・・・良い加減理解したらどうだ?」

 

それだけを言い残すとギンガに乗ってさって行った。その言葉の意味がわからず思わずライデンに聞くと

 

「ああ・・・まぁ、確かにあいつがそう言う理由がわかる気がするぜ」

 

それだけ言うとライデンは少し笑みを浮かべるとそのまま去って行った。それから数日後、リチャードが結婚をする事を聞いた時は心底驚いた。だが、今からじゃアルガニアには行けない為、こう言う時はどうすれば良いのかを不本意ながらエルンストに聞くと

 

「そう言う時はセット物の何かを送るのが良いよ」

 

そう言われ、見つけたセットのコップを贈ったりした。そしたらライデンも同じようにエルンストに聞いてセットのティーセットを送ったと言うと思わず二人して笑ってしまった

 

 

 

 

 

 

 

 

そして次出会ったのはロア=グレギア連合王国に俺が高機動型を倒した時に確認した無慈悲な女王を追いかけて行った時だった。その時、既にロア=グレギア連合王国に到着していたリチャードの服装に少し気になった物のすぐに作戦の事でその事は忘れてしまっていた

 

 

 

 

 

 

 

 

そして作戦が始まり、俺はリチャード達の作戦域の状況を見ると、明らかにそこの場所だけレギオンの声が少ない事に思わず苦笑いが出てしまった。要塞が奪われた時もリチャードはなるべく被害を出さずにレーナを助ける方法を考えていた。その時の俺の表情を見るとリチャードは何かを見た様子で少しニヤけ顔を浮かべるとライデンと共に”ナニカ”を話していた

 

 

 

 

そして要塞の奪還も終わり、本格的に作戦を始めた時。ジル率いる第一遠征戦隊が秘匿兵器を使い、その秘匿兵器は巨大な光線と共に上空に展開したアインタークスフリーゲが一気に消え去り、空には蒼空が広がっていた。そこれ改めて俺はアルガニア連邦のおそろしさを実感した

 

 

 

そして作戦が終わり、無事に無慈悲な女王を鹵獲した俺たちはそのままなんとアルガニア連邦に行く事となった。その途中何故が急加速をすると途端にクレナとヴィーカが突然気持ち悪くなったと言いトイレに駆け込んでいた。一体何故かを聞いたがリチャードは分からないと言って何か隠しているような気がしたが着陸して外に出ると、そこにはまるで未来都市に来たのかと思うほど巨大な基地があった

 

 

 

 

 

そこからは驚きの連続であった、まず驚いたのが着陸した基地の大きさだ。見える範囲は全てコンクリートの床で覆われており、航空機や空中艦がひっきりなしに飛んでおり、本当にSF小説に出てくるような様相を呈していた。バスに乗った俺たちであったがそこから見えた景色は圧巻の一言であった。俺たちがついたホテルは湖畔に佇むリゾートホテルであったが俺たちが止まる為に貸し切ったのだという。そしてそこで一ヶ月程休養を取る事となった



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

時間断層

今回モチベが途中で吹っ飛んでいったのでめっちゃ短めです


トーマスに明らかにおかしい建造数の空中艦の事を聞くとそのまま車に乗せられ郊外にある連邦軍の基地に向かった

 

「叔父上・・・」

 

「なんだ?」

 

車中でジルはトーマスに質問をした

 

「叔父上・・・今からどこへ・・・?」

 

「・・・この国最大の秘密の場所だ。これは連邦軍軍規第132条が適応される」

 

「132条・・・国家重要機密情報に関する情報漏洩を一切許さない条文・・・」

 

そう言うとジルは今から向かう所はたとえ自分の兄のリチャードにも言ってはならない事だと把握すると緊張が走った

 

 

 

 

 

 

 

そして車は首都郊外にある基地に到着をすると中にある施設で特殊な装甲防護服に着替えさせられ、厳重な警備を進むと地下に伸びる長いエレベーターに乗り、地下深くに到着するとそこには回転する機械がある通路であった

 

『叔父上、これは・・・』

 

『・・・ついて来い』

 

そう言ってトーマスに付いて行く形で通路を渡るとそこには巨大な建艦所に無数のドレッドノート級量産型戦艦と最新鋭アンドロメダ級超弩級戦艦に、この前発表された新型波動砲搭載艦アルフレッド型超弩級戦艦数隻が鎮座していた

 

『これは・・・』

 

そう言ってジルが驚いているとトーマスは

 

『これが・・・連邦最大の秘密・・・”時間断層”だ・・・』

 

そう言ってトーマスは絶賛建造が進んで居る艦艇を見ながらそう言った

 

『時間・・・断層・・・』

 

そう言ってジルは思わず息を呑むと

 

『ああ、此処は時間断層。波動エンジンの実験中に発見された異空間。此処では時間の流れが異なっており、一年で十年分の時が流れる場所』

 

『一年で・・・十年分が・・・』

 

そう言って驚いているとトーマスは

 

『本当はジルにはもう少し階級が上がってから言おうと思っていたのだが・・・まあ、この際は仕方ない』

 

そう言ってジルに空中艦の大量生産ができている訳はこの時間断層が関わっている事を伝えた

 

『なるほど・・・そう言う事でしたか・・・』

 

『ああ、だからお前のギンガもあそこにいるぞ』

 

そう言って指さした先にはドックに鎮座しているギンガの姿があった

 

『ギンガが・・・此処に・・・』

 

そう言ってギンガの下部に無砲身の砲塔が取り付けられているのを見てじっと見ているとトーマスは

 

『さて、これがお前の質問の答えだ。どうだ、分かってくれたか』

 

『ええ・・・ですがこれは・・・』

 

『ああ、俺が初めに聞いた時も同じ様だった』

 

そう言ってトーマス今のジルと同じような表情をしたと言うとジルは

 

『叔父上・・・じゃあ連邦はなぜこんなにも空中艦の建造を行なっているのですか?作りすぎても乗る人間が居ませんよ?』

 

そう言うとトーマスは少し黙ると口を開いた

 

『・・・そうだな、確かに乗る人間はいなくなってしまう。だが、我々にはメートヒェンがある』

 

『それは・・・確かにそうですが・・・』

 

そう言ってジルは言葉を紡いでいるとトーマスは

 

『まあ、これは我々連邦の選択の結果だ。時間断層を使った軍拡、レギオンに対抗する為にはこの方法しかないと判断した』

 

『レギオンに・・・対抗・・・』

 

ジルは時間断層建造所から出て行く空中艦を見ながらそう呟いた

 

『さて、これで君もこの秘密を知った一人だ。帰るぞ』

 

そう言って二人は再びエレベーターに乗り込み、地上に戻るとトーマスは

 

「いいか、これは他言無用だ。無論リチャードにも伝えるな。これが最重要事項だ」

 

「はい・・・分かっています」

 

そう言って車に乗って戻る中、ジルはある事を考えていた

 

『連邦はあんなに大量の空中艦を使って何をするつもりなんでしょう』

 

そう思っているとジルはある考えが浮かんだ

 

『もしや連邦は・・・いや、でもまさか・・・』

 

そう考えていると車は司令部に到着し、ジルはそのまま家に戻って行った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

家に戻るとリチャードが無慈悲の女王に関しての情報を伝えに来た

 

「ジル!シンがついに無慈悲の女王との会話を成功させたぞ!!」

 

「本当ですか!!」

 

「ああ、シンが異能を使った影響でな」

 

「そ、そうなんですね」

 

そうジルは返事をしたがやはり先程の時間断層のことが頭から離れず、そっちの方ばかり気にしてしまった

 

 

 

 

 

 

 

ジルに時間断層の一件を話したトーマスは部屋の電気を消して、先程の驚いた様子のジルを思い出していた

 

『先程のジルは何かを考えていた表情だった・・・もしかするともう既に察しているかも知れないな』

 

そう言ってトーマスは目の前の冊子に目を落とした。そこには

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『極秘 サンマグノリア共和国侵攻作戦計画概要』

 

と書かれていた・・・




しばらくは休憩も兼ねて更新は進まないと思います

兵器解説
アルフレッド型超弩級戦艦
武装
主砲:50口径51cm三連装陽電子砲 六基(前部二基、後部二基、下部二基)
副砲:45口径35cm三連装陽電子砲 八基(上部二基、右舷二基、左舷二基、下部二基)
30mm四連装陽電子高角砲 三十基
60mm三連装陽電子高射砲 二八基
12.7mm連装速射砲 十四基
近接防御ミサイルポッド 三六基
ミサイル発射機 四八門(前部八門、後部八門、上部八門、下部十門、右舷七門、左舷七門)
48式爆雷投射機
波動エネルギー圧縮放射器 三基
重力子スプレッド発射装置 四基

主機
49式波動エンジン 三基

副機
K機関 六基

大きさ
全長:600m
全幅:196m
全高:160m

艦載機
VB=88-A2『ホーク3』 100機
VB=97『アリゲーター』100機
AC=55-C3『ランドエアー』30機

艦載艇
46式中型内火艇 八艇

アルガニア連邦の最新鋭空中艦で、波動エンジンを複数搭載した第四世代艦艇で有り余るエネルギーを利用した強力な主砲や対空火器に波動砲を三基も搭載した最強の空中艦。艦艇の両舷に搭載されている二本の滑走路と四本のカタパルトから艦載機を多数発艦可能。イメージは春蘭です


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

疑惑

お久しぶりです!!亀投稿だと思いますが続いていきます!!


第86独立機動打撃群が休暇でアルガニアにいる頃、ギアーデ連邦大統領府ではエルンストが報告を受けていた

 

「・・・なるほど。じゃあ、もうすぐ建設中のリニアモーターカーは完成する予定なんだね?」

 

「ええ、アルガニア連邦が開発したリニアモーターカーですが。来月には完成予定との事」

 

副官の報告にエルンストは視線を窓の外に向けた

 

「しかし、あの国の科学力には目を見張るものがあるね」

 

「ええ、あの国の技術力はいささか抜きん出ている節があります」

 

「それで、何か進展はあったかい?」

 

エルンストが副官にそう聞くと報告を入れた

 

「はっ、今の所は全く。空中艦に関する情報は一切つかめませんでした。それと、あの噂の情報も」

 

「時間断層・・・火のないところに煙は立たないと言うがもしそんなのがあったらどうしようかね。全く、あの国の秘密主義は悪い文化だと思わないかい?」

 

そう言って大統領府では暗雲が立ち込めていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ジルが時間断層の視察をしてから一週間後。この日、ジルは連邦軍の実験場に来ていた

 

「おぉ〜。あれが『アルメ・フュリウーズ』か」

 

「その様ですね。なんとも面白い装備だ。我々もあの解析を行なっているがなかなか面白いものだったぞ」

 

そう言って隣では連邦軍事研究所所長のトム・チャン大尉が双眼鏡越しにシン達が動かしている様子を見ていた

 

「試験結果は良好。盟約同盟から渡されたデータを超えているぞ」

 

「さすがだな」

 

そう言って研究所の研究員(マッドサイエンティスト)は興奮した様子で結果を見ていた。結局、この日のデータは後の研究に生かされる事となった

 

「さ、次はエイティシックスに我々のフェルドレスに乗ってもらう実験だな。どんな結果になるのかが楽しみだ」

 

そう言ってコルーチクに乗り込むクレナ達を見ながらジルは少し悲しい表情を浮かべた。試験の後、クレナ達が実感したコルーチクの感想は

 

『『相当頑丈な棺桶』』

 

と言う感想であった。コルーチクは電磁装甲と複合装甲を使用している影響でとても頑丈に作られているが、高機動型フェルドレス最大の弱点であるクラムシェル型コックピットを改善することは叶わなかった。だが、コックピットの正面装甲を一番分厚くしている影響で搭乗員の損耗率は格段に下がっていた

 

「すごいぞ!我々が行なった実験の時よりも30%も起動率が上がっている!!」

 

「やはり経験がものを言うのか・・・」

 

「よし、早速この結果をもとに新しい機体試作に取り掛かるぞ」

 

「まずは今回の実験で損傷の大きかったサスペンスの向上からだ」

 

そう言って興奮している研究者を横目にジルはクレナ達に先に謝っていた

 

「すまないね。君たちを実験に借りてしまって」

 

「いいよいいよ。コルーチク、初めて乗った機体だけどすごい良かった」

 

「そうだな、機動性に関しては問題なくて、装甲も硬い。重量と硬さが割にあっていないんだ。やっぱこの国はすげえわ」

 

そう言ってクレナとセオがコルーチクの感想を言うとジルは笑みを浮かべた

 

「じゃあ、後のことは任せて。うちらは()()の準備をするわよ」

 

そう言ってジルはクレナの手を引っ張った

 

「え、あ、ちょっと!」

 

そう言ってクレナは半ば拉致の様な形で車に乗り込むとそこには私服に着替えたレーナたち女子達が乗り込んでいた

 

「さ、今から買い物に行くわよ〜」

 

そう言ってジルはマイクロバスを走らせると街にある店に向かった

 

 

 

 

 

街に到着をすると女子達は一斉に買い物をし始めた。ジルとクレナもドレス服店にて商品を吟味していた

 

「うーん、やっぱりクレナにはこれが似合うかな」

 

「え、うーん。ど、どうなんだろう。でも結構いいかもしれない」

 

そう言って黄色を基調としたドレスを見せるとクレナも乗り気であった。それを見たジルはクレナがギアーで連邦に保護された時よりもイキイキとした表情を浮かべていたことに喜びを感じた。あの頃は戦場こそが自分を示す場所だと信じていた。だから、自らの命を捨てる様なまねを取った事をしていた。だが、今は明日への希望を感じ。日々何かを目標にしながら生きている。そんな成長にジルは心の中で喜んでいた。するとクレナがポツッと呟いた

 

「・・・はぁ、どうすればいいんだろう」

 

「ん?どうしたの?」

 

「ん?あ、いやいや。何でもないよ」

 

クレナは少し顔を赤くして驚いた様子を見せた。ジルはなぜクレナが顔を赤くしているのかがすぐに想像できてしまった

 

「分かった、シンのことでしょ。シンがレーナに取られちゃう。って思っているんでしょ?」

 

「ち、違うってば。シンと大佐が付き合うなんて・・・そんな事・・・無いって・・・」

 

そう言って顔を真っ赤にてクレナは頭を掻いていた。それを見たジルは思わず笑い声を上げてしまった

 

「あはは、正直じゃ無いな。クレナ、そう言う時は自分に正直になるの一番だよ」

 

そう言ってジルはクレナの肩を叩くとクレナは力が抜けたのかそのまま床にペタリと倒れてしまった。この後、買い物を終えた女性陣はホテルでジル達第一遠征師団の女性隊員達にお化粧講座を開いて本番の準備を始めていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

女性陣がホテルに戻った頃、ホテルの宴会場では男性隊員達が枕投げ大会をしていた。数日前にゼレーネと喧嘩?をしたシンはリチャード、ヴィーカの三人でその時のことを思い出していた

 

「失望して黙った。そんな感じがしないか?」

 

「ああ、俺もそう思った。今までの挑発と違い、彼女の素が出ていた様に見えた」

 

三人が話している横では枕があっちこっちに飛んで行っていた

 

「しかしあのメッセージは何なんだ」

 

「おそらく俺たちを試しているんだろうが・・・」

 

「条件は高機動型を撃破可能でレギオンを憎むこと?どう言うことだ?」

 

「思うにあれは、何も憎めない事が問題じゃないか?」

 

そう言って飛んできた枕を避けながらヴィーカは話した

 

「・・・チッ、失敗した」

 

「不意打ちしっぱーい。総隊長達も隙が多いと思ったんだけどな」

 

そう言って三人の少年兵が三人を煽っていたすると三人は無言で枕を投げてきた三人を見た。シンは死神の異名を、ヴィーカは腐り蛇の異名を、リチャードは策士の異名を持つ伝説級のプロセッサーだ。売られた喧嘩は倍にして返すのが性だと思っている者たちであった

 

「・・・良いだろう、相手をしてやる」

 

「こちとら二十歳だ。大人舐めんじゃねえぞ」

 

「そらかかって来い、有象無象」

 

そうして大乱闘が始まった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・で、何か言い分はありますか?」

 

「「いえ、滅相もございません」」

 

ジルの迫力ある怒顔に男性隊員達は全員が東方で説教をする時に使うという有名な”セイザ”をしていた。宴会場で暴れに暴れた隊員たちはあの後、風呂上がりという事もあり全員が枕が散らばった状態で寝ていたのである。その惨劇を見たジルが寝ていた全員を大声で叩き起こしたのだ

 

「起きんか野郎ども!!ここは部屋じゃねえんだぞ!!」

 

ジルの怒号で起きた全員は全員が正座をさせられ、説教を喰らっていた。なお、先にレーナによって起こされていたシンはこの難を逃れていた

 

 

 

 

 

 

 

翌日、ホテルに泊まっていたジルはレーナを呼んでいた

 

「さて、レーナさん。今日は全員でここに行きましょう」

 

そう言ってジルは持ってきたパンフレットを指差した

 

「宝石探し・・・ですか?」

 

そこにはデカデカと『ワクワク!ネヴァン鉱山で宝石探し!!』と書かれていた

 

「そう、今日はここに行くから。みんなを集めておいて」

 

ジルはそう言い残すと荷物を取りに部屋に戻って行った



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

宝石探し

パワポで六星旗作ろうとしたらパワポが使えんくなっとった(涙)


ジルの提案で宝石探しに向かう事になったレーナたちは会場であるトンブス鉱山跡地にきていた

 

「さぁ、ここは元々宝石が取れるネヴァン鉱山はさまざまな宝石が産出された事で有名なんだ。かつて、ネヴァンと呼ばれたカラスの神がここに逃げ込み、ネヴァンの集めた宝石がここで産出されたと言われているんだ」

 

そう言って鉱山の入り口に到着するとそこは大きなガラスのドームでできたホールであった。そこには今まで個々の鉱山で産出された鉱石が置いてあった

 

「それで、ここら辺にはまだ宝石が見つかると言われているんだ。近くにある河原の石なんかにもあるよ。もしかしたら大きな宝石が見つかるかもしれない。さあ、みんな探してごらん」

 

「・・・なぁ、水を差す様で悪いけど。流石に大きいのは無いんじゃ無いか?大きいのだと既に掘り尽くされているだろう」

 

「まあまあ、いくら鉱山が前に閉鎖されているからって取りこぼしがあるかも知れないじゃん」

 

そう言ってアンジュはウキウキでダスティンを引っ張って前を歩いていた。そして他のメンバーもそれぞれ理由をつけて脇道に逸れたり、河原の方を見に行ったりして別れて行った。そして進むにつれてエイティシックスたちは徐々に消えて、気づいたらレーナと一緒に歩いているのはシンだけであった

 

「あれ?他のみんなは?」

 

「全員、脇道に逸れたり、外の河原にいきました。さすがに、わざとらしいなと」

 

そう言うとレーナは首を傾げたが、シンは何でもないと首を振った

 

「この先にある旧鉱山鉄道駅には鉱山が最盛期の時の全体模型があるらしいですよ。そこまで行ったら河原に言って宝石探しをしましょう」

 

「そうですね。あまり時間はありませんし。それに、何だか帰れなくなりそうですし」

 

そう言って暗い坑道にレーナは思わず身震いしてシンの寄りかかっていた。するとシンはレーナの手を繋ぎ、先導するように半歩先に歩きだした

 

「お、行ったねぇ〜。これからどうなるんだろう」

 

「本当、ジルっていい性格しているよね」

 

「そうね、なんせあの二人には()()()()()()()()()を渡しているんだから」

 

「なかなかなことを考えるのぅ」

 

そう言ってアンジュ、セオ、ジル、フレデリカの四人は脇道の通路からこっそり顔を出していた。同じような事を別所でリチャード、ライデン、クレナ、シデン、マルセルにヴィーカ、アネット、カイエが男女に分かれ、身長順に頭を乗せて様子を見ていた

 

「あんなけ時間やったのに結局レーナからかよ。本当あのバカはバカだな」

 

「まあまあ、終わり良ければすべて良しって言うじゃ無いか」

 

「なんかムカつく」

 

そう言ってクレナが文句を言っていた

 

「奇遇じゃなクレナ。妾もじゃ」

 

「と言うかククミラ。卿はノウゼンの懸想を否定しないのか、そろそろはっきりさせたらどうだ」

 

「けそ・・・と、違うもん。私そんなんじゃ無いもん!」

 

「そう言うとこだぜククミラ」

 

「・・・殿下。その、一国の王子としてその発言は如何なものかと」

 

「ああもうみんな五月蝿い。静かにしないと気付かれちゃうでしょ」

 

「な!?それがしは殿下に諫言申し上げただけでみなさまのように除いてなど」

 

「色々五月蝿い」「黙れ七歳児」

 

「面目ござらぬ」

 

そう言って全員はことの次第を見ていたが。アネットがある事に気づいた

 

「あれ?そういえばダスティンは?」

 

「あれ本当だ。アンジュと一緒にいるんじゃなかったの?」

 

そう言ってアンジュの方を向くとアンジュが唇を噛んでいた

 

「実は・・・鉱山の宝石を見ていたら逸れちゃって・・・」

 

そう言ってアンジュは申し訳なさそうな表情を浮かべた

 

 

 

 

 

 

そしてこの後、うっかりシンとレーナの目の前に出てしまったダスティンはライデン達にボコボコにされていた

 

「ダスティン。お前なぁ〜」

 

「いい雰囲気だったのにさぁ」

 

「ぶち壊すんじゃねえよ。わざわざ、二人の通り道をパンフレットに書いてあるのによぅ」

 

「貴様、何が気にせず続けろだ。この不調法者が!!」

 

そう言ってヴィーカが思わず卿ではなく貴様と言うほどにキレ気味であった

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・すまない」

 

ダスティンは探していたアンジュに氷よりも冷たい目で見られていたことに本気で死を覚悟していた

 

「おい、ダスティンの処刑は後にして。先に外に出るよ。近道はこっちだ」

 

そう言ってジルは全員を駆け足で坑道の外に出すと。今度は宝石採集のできる河原の近くで全員は石を転がしながら探すふりをしていた

 

「よし、取り敢えずあの二人が来るまでは普通に探していな。ありそうな石を見つけたら私かリチャードのところに持ってきて」

 

そう言うと一斉に全員が散らばり。各々好きな場所で石を見始めた。そしてありそうな石を見つけ、ジル達に渡すとジロジロと見た上で判断できたものはすぐに捨てられ、ありそうな石はハンマーによって叩き割られ、鉱石を見つけたりしていた。そんな事をしていると坑道出口からシンとレーナが出て来た。その事に気づいたライデン達は石を探しながらシン達のことうっすらと視界に収めていた

 

「わぁ、もう全員が探していたんですね」

 

「そうですね。俺たちも早速探しましょう。どうやら見つけtらあの二人に渡せばいいようです」

 

そう言ってシンとレーナは早速河原の水辺近くの石を探し始めた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

石を探し始めて少し経った頃。シンとレーナは石を探しながら「なかなかそれっぽい石が見つからないですね」などの軽い会話しかしていなかった。二人ともいい石を見つけようと思っていて会話よりも探す方に集中してしまっていた。その事を理解したリチャード達は微笑ましく思っていた。なお、そう言った事をあまり理解していない若い連中はどうして会話をしないのだろうと不思議に思っていた。そして二人が水辺で探すと二人同時に良さそうな石を探し当てた。レーナは2cmほどの赤色の石、シンは2cmほどの白色の原石。二人はそれぞれジルとリチャードに持っていくと二人はまじまじと持って来た石を観察すると驚いた様子を見せた

 

「「おお、これはルビー(オパール)だ。こんな大きさは珍しいな(わ)!」」

 

そう言うと他の隊員達が驚きをあらわにした。まさか本当にあんな大きさの宝石を見つけた事への驚きと見つけた宝石の色が二人の瞳の色と一致したことへの驚きだった。さすがにこの事はジル達も予想していなかったのか。軽く固まった様子を見せていた

 

「すごいな。今どきこの大きさが取れるなんて」

 

「すごい運ねレーナさん。どうする?この石を磨いてから持ち帰る?」

 

「このまま持ち帰ることもできるぞ」

 

そう聞かれたシンとレーナは少し考えると同時に返事をして

 

「「磨いてもらえるか(もらってもいいかしら)?」」

 

そう言うと二人は早速持って来ていた機材のスイッチを入れると金属やすりで削り始めた。二人は趣味で集めた石を磨いて飾っていたことがあるらしく。研磨には慣れているとの事。そして研磨された二つの宝石は綺麗にファセットカットにされ、美しく輝いていた

 

「はい、これで研磨終了。あとは自由にしてね」

 

そう言って二人は削った宝石を赤色の宝石箱に入れ二人に渡した。この後、ライデンやシデンがそれぞれ琥珀とアメジストを見つけ。その他の隊員達は事前に用意された小さな水晶(ハズレ石)を受け取ってホテルに戻って行った。なお、ホテルに戻ったシンとレーナは研磨した宝石をネックレスにつけたとの事




本来、オパールとルビーは同じ場所で産出されないのですが。ここは二次創作ということで勘弁してつかぁーさい


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

真の目的

シン達が鉱山で宝石を持ち帰ってから数日後。シンの姿は研究所の拘束室にあった

 

『シンエイ・ノウゼン。回答を拒否すると、我は宣言したが』

 

「聞いた。でも、了解した思えはない」

 

そういうとゼレーネの金色の光学センサーが反応を示した。無機質だが、光の籠ったセンサーが。彼女は最初から何かを待ち侘びていた、その事に今更になって気付かされた。探しにこいと見知らぬ誰かに向けた時から

 

「どうしてレギオンを作ったのかと、以前に聞いたな。その答えを聞きたい」

 

シンはそう問いながらもある程度想像ができていた。そうだとしたら彼女のこれまでの言動と沈黙にも納得が行った。ファイド、父が研究していた人工知能が完成していれば、共和国は真実、戦死者ゼロの国防を実現できた。おそらく人類全員、人と人工知能のどちらかを犠牲にして戦力にしないといけないのならば。おそらくファイドを量産して戦場に送る道を選んでいたかもしてない。

 

同じようにゼレーネも。

 

生前の、レギオンを開発していた頃の彼女も。

 

 

帰ってきて欲しかった

 

今も聞こえる彼女の最後の思惟。

 

死に間際に聞こえた相手が、味方の誤爆で死んだという彼女の兄なら。

 

軍人だった兄に、最後の瞬間まで帰還を望むほどに死んでほしくなかったのならば・・・

 

「レギオンを造ったのは、人の代わりに戦わせるためか。帝国兵を、人間をそれ以上戦争で死なせないために」

 

するとゼレーネの光学センサーがシンを見た。壊れる事はあるが、死ぬ事はないレギオン。恐れず、厭わず、痛まないレギオン。戦場で幾千もの命の代わりをするレギオン。人を殺すのではなく、人を死なせないためのレギオン

 

「そして、今も死なせたくないから。あなたの抱える情報を迂闊に漏らして、万一にもレギオンの関連技術を他国侵略に利用させたくないから、そうやって情報を与える相手を見極めようとしているのか」

 

ファイドを開発したシンの父、死んだ母親を蘇らせたかったヴィーカ。その二人と交流を持ったゼレーネも・・・

 

「あなたは最初から、()()()()()()()()()()()()()

 

誰にも死んでほしくなかった。・・・自分と同じに

 

するとゼレーネはは少し沈黙をした。そして酷く罅割れた問いをした。冷笑を、冷徹を、取り繕うとして失敗したような

 

『・・・問う。だとしたら、どうする。赦すというか。レギオンを。エイティシックス、脆弱な、その多くが我らに殺されたエイティシックス。・・・お前の故郷を、家族を、同胞を奪った存在を。お前の家族をお前の敵にしたのが我等かも知れぬというのに』

 

ゼレーネの言葉に一瞬真は口を噤んだ。その時に込み上げて来た感情はなんと言えば良いのかわからなかった。だが、零れ落ちるように言葉が出ていった

 

「・・・ああ。それは・・・本当にそうだ」

 

自分の兄を機械仕掛けの亡霊にしたのは確かに目の前にいた斥候型の彼女であった

 

『再度問う。ならばなぜ怨恨を覚えない。我に、憎悪を覚えない、怨嗟を覚えない。そんなものには意味がない』

 

壊れている、確かにそうなのだろう。家族や故郷を奪われ、けれども相手を憎めない。おそらくまともな人間ではないと思っていた。だが、知っていた。どんなに白系種や世界、レギオンを恨もうとも一度いなくなった人間は帰ってこない。彼が味わった苦痛や憎悪に心を寄せる事もない。ただ虚しくなる。そうしたと事で意味はないと。()()()()()()()()()()()()それに・・・

 

「何かを恨んで、誰かを恨んで。そのせいで俺から何も奪った奴らと、同じ場所に堕ちたくはないから」

 

すると部屋の隅で祈るように手を合わせて見守っているレーナの姿があった。その時に気づいた気がした。

 

 

世界は冷酷だ

世界も人も、冷酷で残忍で・・・・

だが、冷酷と残忍と下劣こそが人として正しい、あるべき姿だとは思いたくなかった。下劣か高潔なら、高潔の方にいたかった

 

その願いをレーナは世界は美しくあるべきだろうと表現した

 

悪辣で冷徹なこの世界を。それが正しいとは思わない。追い詰める理想としてではなく己の矜持として。どんなに世界や人を信じられなくても屈しない気持ちは()()()()()()信じたい

 

だからこれも()()()()()()

 

「あなたも赦されたいわけじゃないだろう。ただ、今のこの世界が正しいとは思えなかったから。認めたくないから変えたいと、そう思ったから」

 

人が次々に死んでいく戦場。人と人が戦い合う戦場。彼女が守ろうとした人々が自分の開発したレギオンによって殺されていく世界は・・・

 

「人を死なせたくない。生前も、そして今も。それがあなたの望みだから。戦争を、そして今はレギオンを・・・

 

 

 

 

 

 

 

止めたいと思っているんじゃないか?」

 

 

 

 

長い沈黙が走った。その果てにゼレーネは、『無慈悲な女王』は応えた

 

『・・・ええ』

 

長く思い嘆息のように。初めて聞く人の言葉で

 

『ええ、そうよ。今となってはもう、過ち以外の何者でもないけれど。()()人を救いたかった』

 

その言葉はまるで懺悔のように、強化アクリル板を境に、告解室のように・・・

 

そして彼女は言った。この場にいるすべての軍人が待ち侘びた。その言葉を

 

『良いでしょう・・・応えましょう。私が知るすべてを。伝えかった情報を。ただし条件がある・・・シンエイ・ノウゼン。そして立会人にヴィークトル・イディナローク、ジル・スミス。この三人だけに教えるわ。他の人は出て行きなさい。すべての通信装置や記録、観測装置を切って』

 

関係のないジルがゼレーネに名指しで呼ばれた事に驚きを一部の人間は露わにしたが呼ばれた三人以外が退室をして行った

 

 

 

 

 

話の重要さの割に、時間は対してかからなかった。しかし、ヴィークトルマイクを切って首を小さく振った

 

「まさか・・・・・」

 

シンとヴィーカとジルの三人しかいない観察室に少し間が空いた。しかし、その間はヴィーカによって中断された

 

「まさか本当に()()()()()の停止手段とはな。だが・・・・」

 

シンの言葉にジルが答えた

 

「実行できないのでは意味がない。大体、下手にこの情報を公開すると人類側が内部崩壊する可能性がある」

 

ゼレーネから公開された情報の中には停止コードを発するために必要な拠点も書かれていたが。そこはレギオンの支配域深部にあるかつての砦の中。ただし、そのコードに必要なものが問題であった。それは()()()()()()()()()()()()()()()()であった。十年前に革命によって滅びてしまった帝国の血によって。この事にヴィーカとジルは本当にまずいと思った。苦い顔で嘆息し、かろうじてシンに考えを言った

 

「とりあえず、情報部にはとかの情報を提示させる。直近の作戦計画や生産拠点の位置情報でもあれば十分だろう。それでいいな、ノウゼン」

 

「ああ」

 

そう言ってシンは短く頷いた。するとゼレーネがジルに語りかけてきた

 

『あ、そう言えばまだあなたを呼んだ理由を言っていませんでしたね。ジル・スミスさん』

 

「ええ・・・確かに、私が呼ばれた理由はわかりません。ヴィーカとシンは確かゼレーネと接点がありましたが。私には何処にも・・・」

 

そう言ってジルはゼレーネに向かってそう言うとゼレーネはジルに言った

 

『そうですか。()()()何も覚えていないのですね。そうですね、この際ですから私の口から言わせてもらいましょう。お二人さん。もしこの子が倒れたら、後はよろしくお願いしますね』

 

ゼレーネの言葉にシンとヴィーカは不思議に思うと、不意にぜレーネが何か呪文のような物を語り出した

 

『我は願う、世界の平穏を。我は問う、七つの嘆きを』

 

それを聞いた瞬間、ジルの頭に()()()入ってくる感覚があった。あまりの情報の多さにジルは思わず倒れてしまった

 

「おい!どうした、何があった!!」

 

「いきなり倒れたぞ。取り敢えず、外に連れていくぞ」

 

「何があったんだ!?」

 

「わからん。だがあの言葉を聞いてから様子が変だったぞ」

 

そして、シンの声を最後に、ジルは目の前が真っ黒になった



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

無くした記憶

作品の関係上、人物紹介のジルのところに付け加えを行いました。まずはそれを確認してからこのお話を読んでください


ピッ・・・ピッ・・・ピッ・・・

 

聞こえて来たのは機械が発する音であった。周りを守るとそこは真っ白に塗装された病室であった。そして自分は酸素マスクをつけられ、腕にはさまざまなチューブ(医薬品)が投与されていた。いつもの光景だと思い再び目を閉じると病室の扉が開き、そこから白衣を着たレンが入って来た

 

「おはようジル」

 

「母上・・・」

 

そう言って優しい表情でジルの様子を見て来た

 

「どうやら体調は良さそうだね」

 

「はい・・・今日は調子がいいみたいです」

 

「そうか・・・それは良かった」

 

そう言ってジルは弱々しく返事をするとレンは少し考えるとジルに言った

 

「なあジル・・・もし外に行けると言ったら。どうする?」

 

その言葉にジルは少し弱々しくも興奮した様子を見せた

 

「外に・・・行けるのですか?」

 

「ああ、外に行く方法を考えたんだ。ただ、外に行くためには手術を受けなければいけない。それでも良いか?」

 

そう言うとジルは少し考えると首を小さく縦に振った

 

「うん、私も外に行って走り回ってみたいです」

 

「・・・分かった。直ぐにでも手術をしよう」

 

そう言うとレンはジルを麻酔薬で眠らせ、直ぐに緊急手術を行う事になった

 

「では、今から手術を行う。メスを」

 

そうしてレンはジルの手術を開始したその時、レンは必死な眼差しであった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ジルが倒れて担ぎ込まれている頃。連邦軍のコンピュータルームでは職員が走り回って対応に追われていた

 

「第三隔壁突破されました!!」

 

「クソッ!防御が間に合わない!!」

 

「一体何が起こっているんだ!?」

 

「分かりません、いきなりメインデータバンクにハッキングが始まって。どんどん情報が書き換えられています」

 

突如として起こった連邦軍メインデータバンクへのハッキング。世界最強の防御力を誇る零システムが意図も簡単に突破され、データの書き換えが行われていたのだ。すると一人の職員が驚きの声を上げた

 

「こ、これは・・・」

 

「どうした、一体何があった!?」

 

「これを見て下さい。書き換えられたデータが・・・」

 

そう言って職員が見せたデータを見た局長はその情報に唖然をした

 

「これは・・・システムが新しく構築されている?」

 

「はい、今までの零システムの何乗倍の厚みの防護システムが構築され、さらに人工知能のプロトタイプが勝手に構築されています。現在、侵入したデータはDブロックに到達。なお構築されたシステムのデータ量が大きい為。地下都市にある緊急用回線を繋いで対処しています」

 

「分かった。この事を直ぐに上に報告だ。直ぐにハッキングを開始した原因の捜索だ」

 

「はっ!」

 

そう言って部屋を後にした職員を見送ると局長は信じられない光景を眼にした

 

「な、何だこれは・・・」

 

目の前にあった量子スーパーコンピュータが青く光り輝いていた

 

 

 

 

 

 

 

 

「すまない・・・すまない・・・」

 

そう言ってレンが()()()()()ジルを抱きながら泣いて謝っていた。ジルは目に光が灯っておらず、ただずっと前を向いていた

 

「母・・・上・・・?」

 

その様子を()()姿()()()()が第三者視点で呆然と眺めていた

 

「すまない・・・私は・・・お前を救いたかったのに・・・すまない・・・」

 

そう言って泣き崩れたレンに寄り添う女性がいた。そしてその女性はレンに呼びかけた

 

「レン・・・お前は最善を尽くした。ジルちゃんだって意識を取り戻したじゃないか」

 

その声にジルは気覚えがあった。それはゼレーネの声であった。ゼレーネがレンの隣でレンの肩を叩いていた

 

「だが・・・私は失敗した。私は自分の娘を()()()()()()()()()。本当ならば、今頃笑いながら外を走っていた筈なのに・・・そう思っていた私が馬鹿だった・・・」

 

そう言うとレンにゼレーネが提案をした

 

「レン・・・手術前にこの子の記憶をデータ化した記録があった筈」

 

「ゼレーネ・・・まさかお前!」

 

レンは驚いた様子を見せていた。ゼレーネはただ無言で小さく頷いていた

 

「それしか方法がない。お前もわかる筈だ、半機械化したジルちゃんの記憶はまだ眠っているままだ。ならその記憶をそのまま封印する。それが今のところで一番、最善の方法だと思う」

 

「・・・分かった」

 

レンはそう言うとジルの頭にヘッドマウントディスプレイをつけてパソコンを触り、次にヘッドマウントディスプレイを取るとジルの目に光が灯っていた

 

「ん?あれ、母上。どうしたのですか?」

 

そう言ってさっき脳が嘘のようにジルは喋っていた。それを見たレンは泣きながら喜んでいた

 

「母上、どうしたのですか?」

 

そう言ってジルは驚いているがレンは泣きながらジルに抱きついていた

 

「よかった・・・良かった・・・戻って来てくれた・・・」

 

そう言ってレンはただただ泣いて喜んでいた。その様子を見ていたジルは過去の思い出を全て思い出した。記憶が無かった5歳の記憶を

 

 

 

思い出した

 

 

 

そして目を開けるとそこは自分の部屋のベットであった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ジルが倒れ、リチャード達に渡した後、シン達はゼレーネに問いただしていた

 

「ゼレーネ、今のは何だ。どうしてジルが倒れたんだ」

 

「彼女は過去に何があったんだ」

 

シンとヴィーカの問いにゼレーネは答えた

 

『それは目を覚ました後に彼女から聞くと良い、我が親友が過去にあの子を救う為に行った行為を』

 

そう言うとゼレーネは休憩に入るといって何も喋らなくなってしまった。突然のことに困惑するシン達であったが、まずはジルが目覚めるまで待つ事となった。結局、その日の晩にジルは目を覚ましたが、記憶が錯乱しているとの事で後日、ジルから話を聞くことになった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

トーマスは幕僚会議にて昼間にあった連邦軍メインデータハッキングに関する報告を聞いていた。しかし、報告を聞いて幕僚達は動揺の色が浮かんでいた

 

「それはつまり。侵入したデータは消滅してデータバンクは完全に作り替えられたと?」

 

「ええ・・・それに、万能型人工知能のモデルまで構築されていました。現在、調査をしていますが。原因はまだ分かっておりません。何せ、零システムは未だに完全解読できた訳ではない上に、解読不可な文章もあり、時間は掛かるものかと・・・」

 

そう言って冷や汗をかいた報告官に幕僚達は今回の事件に関して紛糾していた。原因がわからない以上対策しようがないのだ

 

「しかし、今回の事で分かったのは何者かが零システムに介入、システムの再構築に加え。万能型、それ即ち戦闘用にも使用可能な人工知能のモデル構築。はぁ、一体何が起こっているんだ」

 

そう言ってユーゴ・スラッド元帥ですら頭を抱えていた。そして会議は行き詰まり、解散となった後。トーマスはユーゴ・スラッド元帥を呼び止めた

 

「ユーゴ、少し良いか?」

 

「トーマスか・・・いいだろう、どうせお前の事だ、何か当てがあるんだろう」

 

そう言って二人は連邦軍省屋上に行くと月を見ながらトーマスはユーゴに言った

 

「実は、システムがハッキングされたと同時にジルが研究所で倒れた。その直前にゼレーネがジルに何かを言ったそうだ。無論、この事は私とお前しか知らない」

 

「それは・・・」

 

偶然が重なれば必然となるとはよく言ったものである。トーマスが入った()()にユーゴは絶句ををしてしまった

 

「ああ、正直。私も初めてこの情報を聞いた時は自分の目を疑ったさ。だが事実はある、まさかとは思ったさ」

 

「トーマス、まさかお前は今回のハッキングは・・・」

 

ユーゴの問いにトーマスは沈黙を貫いた。そしてユーゴは溜息を吐いた

 

「はぁ、また仕事が増えるな」

 

「いつも悪いな」

 

「何、軍学校の時よりはマシさ」

 

そう入ってユーゴは先に屋上を後にした。残ったトーマスはタバコに火をつけて外の灯りで光る街を見ていた

 

「ふぅ・・・零システム。義姉さん、まさか()()()()()()()零システムの鍵を入れたんですか」

 

そう呟きながら答えの返ってこない問いに頭を悩ませた




補足説明
零システム
連邦軍の根幹を成す量子スーパーコンピュータ。ジルの母親のレン・スミスが開発し、中に使われている技術は連邦の科学技術を結集しても未だ解読ができていない部分が多く、オーパーツの塊のようになっている


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

実験

今回長めです。試験的に4000字で投稿をしてみました。長いと感じたり、読みにくいなどありましたら感想欄に書いてください


連邦軍のメインシステムのハッキングや、ジルが研究所で倒れてから数日。ジルは自宅の部屋で本を読んでいるとそこにシンとヴィーカが入って来た

 

「入るぞ」

 

「ええ、どうぞシンにヴィーカ」

 

そう入って部屋に通された二人は早速研究所で倒れた事について聞いていた

 

「早速で悪いが、スミス殿。あの時ゼレーネの言っていた事はなんだ?」

 

そう聞かれ、ジルは持っていたカップから紅茶を飲むと話し始めた

 

「・・・ふう、そうですね。簡単に言えば私はレルヒェと似たような存在だった。と言うところかしらね」

 

「シリンと同じ?どう言う事だ?」

 

ヴィーカの疑問にジルは答えた

 

「簡単なことよ。私も半分は機械だったって言うこと」

 

「「!?」」

 

信じられない。そんな言葉が表情で伝わって来た。そしてジルはシンとヴィーカに自分の今までの事を話した

 

「シンは前に行ったかもしれないけど。私、5歳までの記憶がないって言ったでしょ。それで私はゼレーネの言葉で思い出したのよ。5歳までの記憶を」

 

そう言うとジルは懐かしそうに言った

 

「私は小さい時は病弱で碌に外に出られなかったの。それで私の母が外に行けるようにってある手術をしたのよ」

 

「手術・・・」

 

シンはその手術がどんな物なのかが気になったがジルの次の言葉に戦慄を覚えた

 

「その手術の名は『脳の半機械化による身体強化手術』。そう、私は頭の半分をコンピューターに繋いで、体への負荷を減らされた。私はその被験者第一号だったのよ」

 

ありえない。もしそんな事ができたとしてもいずれ体に限界が来る。するとジルはそれを見透かしたかのように言った

 

「そう、いずれ負荷が掛かって死ぬ可能性がある。だから、母はいずれ私に負荷実験をかけて記憶の解放を少しずつやろうとした」

 

そしてジルは紅茶を飲みながら言った

 

 

 

「だが、母はレギオンの攻勢で命を落とした」

 

 

 

そう言うとシンとヴィーカの二人は軽く固まった。記憶を解放する人間がいなければ一生記憶は封印されたままだった筈。だが、現に記憶の解放が行われた、ならば負荷実験はいつやったのか。負荷実験なしに記憶の解放をすれば死ぬ可能性だってあった。するとジルはある考えを呟いた

 

「だから私は思うの。おそらく、()()()()が負荷実験の代わりじゃなかったのか・・・ってね」

 

「事故・・・あの暴走した時のことか?」

 

シンは前にリチャードから聞いた暴走事故のことを思い出した。あの時、ジルの目の色が変わった事も。だとしたら筋書きが通った。ジルの負荷実験の為にレギオンと化したジルの母親がジルの機体に一気にデータを流し、記憶解放が出来るかどうかの耐久テストを行った。その副産物に『アイラ』が生まれた。そうすればすべての出来事に納得がいった

 

「ええ、だから私は明日もう一回研究所に行って話を聞こうと思っている」

 

そう言うとジルは被っていた毛布を下ろし、椅子を立った。その時のジルは前に出会った時よりも何処か機械っぽく感じた。そしてシンは不思議に思った。兄であるリチャードはどうだったのか。ジルの兄であるリチャードが手術のことやジルが病弱であった事などをを知らないはずが無かった。だが何故、彼はジルの過去を一切話していなかったのか。そのことが気になっていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日、ジルは軍服に着替えるとゼレーネのいる部屋に入り、部屋にいた人を外にやると早速交信を開始した

 

「おはようゼレーネさん」

 

『ええ、もう朝のようね・・・その様子だと全て思い出したのかしら?』

 

「・・・ええ、全て思い出しましたよ。私が半機械化の手術を受けたことも。それで私が一時()()()()()()事も」

 

そう言うとゼレーネは少し黙ると言葉を紡いだ

 

『そうか・・・ならば、私とレンの関係も知っているな?』

 

「ええ、ようやく分かりましたよ。私の母とゼレーネさんは()()()()()()()()()()()()()()なんてね」

 

そう言ってジルは思い出した記憶の一つを呟いた。鎖国をおこなっていたアルガニア連邦であったが実は国境の一部地域は警備が手薄なところがあり、そこではこっそりと人の行き来が行われていたのだ。亡命者0とは言っているが実状は何人かの人が国境を超えてアルガニアに入国をしていたのだ。ゼレーネもその一人だったと言う

 

『あの時は私もアルガニアに行く方法を探すのに必死だった。どうしてもアルガニアで科学の勉強をしたかったからね。アルガニアの()()()()()()()()()は切断されていなかったのが幸いだったんだ』

 

実はギアーデ帝国のパソコンでもアルガニア連邦のサーバーに入る事はできたのだ。ゼレーネはそれを使ってインターネットチャットでレンと知り合ったと言った

 

『初めはアルガニアに行く方法を聞いたんたけど。そしたら警備の薄い国境で出逢おうと言って自分が決死の覚悟で国境を越えると本当に彼女は来てくれていたんだ。見ず知らずの私のためにね』

 

そう言ってゼレーネはその後レンに匿われて偽の国籍の発効にゼレーネのために大学の入学を手伝ってくれた事を言った

 

『あの時は本当に嬉しかったさ。ネットで知り合っただけなのにこんなに優しくしてくれる事にね』

 

ゼレーネの思い出話にジルはなんとも母らしいと思っていた。するとジルが思い出したかのように呟いた

 

「あ、そう言えば今日ここに来た理由を思い出しましたよ。東部戦線の私の暴走は、あれは私への負荷実験だったんですか?」

 

ジルの言葉にゼレーネは少し沈黙をすると答えを言った

 

『・・・ええ』

 

ゼレーネの肯定の答えにジルはやはりと言った表情を浮かべた

 

「そうでしたか・・・じゃあ、その時のアイラは・・・」

 

『そう、あれは負荷実験の副産物。でも、まさか自我を持つなんて思いも寄らなかった』

 

ゼレーネのアイラが自我を持った事への衝撃は大きかったのだと言う。負荷実験に使ったのはレギオンの制御装置を簡略化したものだったが、簡略化した影響で自我を映し出す余裕があったのか。はたまた、ジルが半分は機械で出来ているからなのか。色々考えたが結局納得のいく結果は出なかったとの事

 

「そうですか・・・自我を持った事は予想外だったのか・・・」

 

そう言ってジルは少し考えた様子を見せるとゼレーネが答えた

 

『そう、データ3305・・・ジルちゃんの言うアイラがジルちゃんの記憶と容姿、性格をコピーしたことでただの余分だったデータが一気に戦術的に無視できない事になった。だけど私はこの情報を隠したのよ』

 

「それはまた・・・どうして?」

 

ジルの問いにゼレーネはすぐに答えた

 

『そりゃあ、親友の子供を危険に晒したく無かったからよ』

 

そう言うとジルは驚きをあらわにした。そしてその後、二人は知りたいことなどを軽く話していた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ジルがゼレーネに交信をしている頃、シンはリチャードに話を聞いていた

 

「・・・と言うことがあったんだ。この事は知っていたのか?」

 

シンの言葉にリチャードは沈黙をすると返答をした

 

「・・・正直に言うとジルが病弱だったのは知っていた。でもまさか脳を半機械化していたなんて知らなかった」

 

「そうか・・・じゃあ彼女の記憶が消えていた理由は?」

 

「病院からの帰り道に交通事故に遭ったと聞いていた」

 

リチャードの返答に嘘はないと確信するとシンはリチャードにさらに質問をした

 

「じゃあ次に、なぜジルの事故の事を言わなかったんだ?」

 

そう聞かれたリチャードは少し考えると返答をした

 

「・・・叔父に事故のショックを思い出し錯乱する可能性があるから事故のことは言うなと言われていた」

 

リチャードの返答にシンは少し考えているとリチャードは

 

「すまない、今から会場の打ち合わせに行かないといけないんだ」

 

「ああ、呼び止めてすまない」

 

そう言ってシンはリチャードと共に部屋を出るとおそらくリチャードの言っていた叔父。つまりトーマス・スミス中将が関係していると思いながら考えを巡らせていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

トーマス・スミスは連邦軍の執務室で葉巻を吸いながらこの数日で起こった出来事を思い出していた

 

「ゼレーネによるジルの負荷テストと記憶解放、それに零システムの覚醒。これだけのピースがそろえばもはや疑いようがないな」

 

そう言ってトーマスは煙を吐きながら呟いた

 

 

 

「ジルの記憶データが鍵だったとは・・・」

 

 

 

零システムは連邦随一の天才であったレンが作り上げた()()()量子スーパーコンピューター。その中はレン本人しか解読不可なところもあり内部構造は4割も解読出来ていない。だが、この零システムは連邦政府、ひいては連邦全土のネットシステムの根幹で、今ではこの零システムを使っていないネットなどないのではないかという程、この零システムは画期的であった。元々零システムは汎用型として設計されたがあまりの優秀さにレンの死後、連邦政府が零システムの研究を始めた。だが、零システムには見た事もない言語が使われており、解読が進まなかった。零システムの画期的なところはサイバー攻撃を喰らっても修復した部分の弱点を把握し、ハッカーを撃退しながら()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。汎用型として設計された零システムは軍事以外にもドローンの配達や車の配車サービスなどの技術革新を連邦にもたらした。一説ではレン・スミスは未来から来た人物なのではないかと疑われる程画期的なインターネットシステムを確立していた零システムであった。だが、何故か()()()()()()()()()()()()一切行わなかったのだ。そして人工知能の開発はギアーデ帝国が戦線を布告しても開発はされなかった。そこで我々は気付かされた。あまりにも連邦は零システムに癒着しすぎた・・・と。それ以来、連邦政府は零システムを使わない方針に転換をした。それから10年程、解読途中であった零システムの()()()()()()が一新され、全く新しいタイプのインターネット統括システムとなっていた。覚醒した零システムを研究員たちはこれをニュージェネラルインターネットシステム(次世代型統括インターネットシステム)と呼称をしていた。

 

「はぁ、まさかデータ化したジルの脳と零システムを繋げた・・・いや、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。その可能性が出てきたな・・・」

 

多くの考察をしていたトーマスは執務室の電話が鳴り、受話器を取ると相手はセルジオであった

 

「もしもし、こちらトーマスだ。いきなりどうした」

 

『ああ、トーマスだな。大事だ、零システムなんだが・・・』

 

次のセルジオの言葉にトーマスは戦慄をした

 

『如何やら、零システムの根幹が()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

この日からトーマスが常に胃薬を常備する事になった



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

舞踏会

ジルの記憶解放などの事件が落ち着いたこの日、ジルは車に乗って連邦サロベツク州都ペトロブルク郊外の大きな屋敷に来ていた

 

「ここに来るのも久々ね〜」

 

そう言って屋敷の表札にはグラード邸と書かれていた。今回の休暇の最終日に大規模な舞踏会を行おうと考えていたのだが、建国際の関係上大規模な会場が軒並み空いていなかったのである。するとマリアの父が

 

「どこも会場が空いていない?じゃあウチのを使いな。なあに滅多に使わないパーティー会場だ。物を壊さなかったらいくらでも使って構わんよ」

 

と言う鶴の一声とも言える言葉に会場がすぐに決まった。元々グラード家はアルガニア王国時代は運送産業で富を蓄えており、下手をすれば公爵家並みの財を蓄えていたと言う。その莫大な富を使ってグラード家にはパーティー会場を敷地内に作っていたのである。今回はそのパーティー会場をグラード家の好意によって借りていた。そんな事を思い出しているとジルは車を降りて屋敷に入った

 

「お久しぶりです。お義母様」

 

そう言ってジルは出迎えた義母に挨拶をした。すると義母は優しい口調でジルに言った

 

「ええ、わざわざ来てくれてありがとね。前に倒れちゃったのでしょう、あまり無理をしちゃダメよ」

 

「はい、お気遣いに感謝します」

 

そう言うとジルは突如後ろから抱きつかれた

 

「ジールっ!」

 

「わっ!ね、義姉さん・・・」

 

そう言って後ろからメアリが抱きついたことに驚きの声を出してしまった。後ろからいきなり抱きついた事に義母は注意を入れた

 

「メアリ、ジルちゃんはまだ病み上がりなのよ。そうやって驚かすのはやめなさい」

 

「そっか、そういえばジルはこの前倒れちゃったんだったね。ごめんごめん」

 

「いえ、十分治りましたよ。心配しなくても、今日の舞踏会くらいは元気に過ごせます」

 

ジルがそう言うとメアリは少し笑みを浮かべた

 

「そっか・・・もう無事なんだね・・・じゃあ、ついてきて」

 

そう言ってメアリはジルの手を引っ張ると廊下の奥に連れて行った。それを見た義母はため息を吐いていた

 

 

 

 

 

 

メアリによって連れられた部屋はグラード家の誇るドレスルームであった

 

「あの・・・これは一体・・・」

 

そう言ってジルが困惑をしているとメアリがジルの肩を掴んだ

 

「何言っているのよ。せっかくの舞踏会よ。そんな貧相なドレスじゃ舐められるわよ」

 

「え・・・だ、大丈夫ですよ。義姉さん、私は今日踊る予定なんてないし・・・」

 

「そんなんだからいい男が来ないのよ。さ、ちゃっちゃと着替えて。遅れるわよ」

 

そう言ってメアリにされるがままにジルは来ていたワイン色のドレスから緑を基調とした豪華なAラインのドレスに着替えさせられ。化粧も化粧師が一から塗り直していた

 

 

 

 

 

 

メアリによって化粧直しとドレスアップをされたジルは少し遅れて会場入りをした。するとそこには百人近いプロセッサーがワルツに乗って踊りを踊っていた。踊りに慣れていないプロセッサー達や、経験者であるヴィーカでさえも。このパティー会場の豪華さには目を大きく開けて驚いていた。所狭しと並べられた真っ白な大理石でできた床や柱に、巨大なシャンデリアがいくつも取り付けられ、壁には海をモチーフにした絵画やステンドグラスが散りばめてあり、柱には天使の彫刻が取り付けられていたさらに所々金細工もつけられ、宮殿にいる気分となっていた

 

「やっぱりここは落ち着かないわね」

 

そう言って煌びやかに輝いているパーティー会場を見てため息を吐いた。そして百人以上入ってもまだ余裕のある会場に改めてここの広さに感銘の声を上ながら2階にある椅子に腰をかけるとジルは会場全体を見た

 

豪華で色とりどりのドレス、ギアーデ連邦の黒い夜会服にアルガニア連邦の深緑色の夜会服。咲いた花のように広がる色とりどりのドレス。見ているだけで疲れてしまった

 

「はぁ・・・目が痛くなってきたわ」

 

そう言って目頭を触りながら上を向いていると自分に声をかけてきた人物がいた。声のした方を向くとそこにはリチャードがいた

 

「何しているんだよ。ジル」

 

「兄上・・・ちょっと疲れちゃってね」

 

「そうか・・・あまり無理はするなよ」

 

そう言ってリチャードはジルの隣に座った

 

「兄上こそ、義姉さんと踊らなくてよろしいのですか?」

 

「いや、もう沢山踊ってきたさ。今頃、別のペアを組んでいるさ」

 

「そうですか・・・」

 

ジルがそう言うとリチャードはジルに言った

 

「なあジル・・・」

 

「はい、なんでしょうか。兄上」

 

「ジル・・・お前、自分は半分が機械だから、自分は人じゃないから。だから本当は参加したくなかった。そう思っているだろう?」

 

「・・・」

 

「黙っていると言うことは肯定と一緒だ」

 

そう言うとリチャードはジルの方を見て言った

 

「ジル・・・お前がどう思っているが知らないが。お前の心臓は動いている、お前に血は流れている。人の心を持っている。だがレギオンはどうだ。心を持たず、心臓を持たず、血を持っていない。お前は正真正銘の人間なんだよ」

 

そう入ってリチャードはジルに優しい口調で励ましていた。両親が亡くなった時もリチャードはジルに同じように励ましの言葉をかけた。そのおかげで自分は自暴自棄にならずに済んだ。そして今回も、前の時と同じように兄に()()()()()。すると不意にジルは目頭が熱くなっており、思わずリチャードから顔を背けていた。するとリチャードは席を立ち

 

「じゃあ、下で待っている」

 

それだけを言い残すと階段を降りていった。席に一人残ったジルは小さく

 

「ありがとう・・・」

 

と言うとジルは2階から降り、パーティー会場に降りて行った

 

 

 

 

 

 

同じ頃、パーティー会場には少しギスギスしたペアが踊りを踊っていた

 

「しかし驚いたわ。噂では聞いていたけど。こんなにも豪華だったなんて」

 

「ああ、さすが連邦建築物100選に選ばれた天使の宮殿なだけあるな」

 

そう言って踊りの見本としてヴィレムとグレーテは柱に取り付けられている天使の彫刻を見ながらそう呟いた。今回のパーティにてリチャードが用意した天使の宮殿は民間で最も大きなパーティー会場として有名であった。その為、普段は観光用に開放されているのであった。だが、この日。エイティシックスのパーティーの為に丸一日閉鎖して準備を行っていた

 

「少なくともそう思うわ。これだけのパーティー会場が作れると言うことは。それだけ、アルガニア連邦の資金力を誇示しているようなものね」

 

「そうだな」

 

そう言って第86独立機動打撃群の資金がアルガニア連邦軍によって賄われている事を思い出していた。元々第86独立機動打撃群はギアーデ連邦とアルガニア連邦との条約によって資金はアルガニア連邦が、土地や武器の補完に関してはギアーデ連邦が行うことが決まっていた

 

「しかし、ここまでの資金力と科学力があれば。あの化け物(空中艦隊)を作ったのも頷けるな」

 

そう言ってヴィレムは空を見ながらアルガニア連邦の科学力に恐怖した。その意味を理解したグレーテは頷いた

 

「ええ、そうね。少なくとも、この国の国力は日々増大している。大統領もそのことを警戒している」

 

そう言って二人はアルガニア連邦の恐ろしさを理解しながらパーティーを楽しんだ

 

 

 

 

 

 

 

パーティー会場に降りたジルは何人かと踊るとワルツが終了し、ジルは人に酔い外のバラ園を歩いているとすでにそこに人がいた

 

「兄上・・・」

 

そう言って目の前にいたリチャードを呼ぶと、リチャードはジルの方を向いた

 

「よ、ジルも人に酔ったのかい?」

 

「ええ・・・まあ。そうですね」

 

そう言ってジルはリチャードの隣に立つとリチャードはジルに手を差し伸べた

 

「ちょうど曲が始まる。今回は二人きりで踊ろうじゃないか」

 

そう言うとジルは無言でリチャードの手を取った。そして曲が流れる音が響き始めると二人は手を取り合ってステップを踏み始めた。そして曲が終わるまでずっと二人は月夜の光る空の下で踊りをずっと踊っていた

 

 

 

 

 

 

曲が終わるとリチャードはジルの手を離すとジルはリチャードに言った

 

「自分はまだ・・・自立出来ていなかったんですね」

 

そう少し悲しげにジルは言うが、リチャードはジルを抱きしめながら言った

 

「何、人間必ず誰かに支えられて生きているんだ。完全な自立ができる人間なんてこの世にいると思いかい?それこそ本当の機械だけだ。だが、お前は誰かを頼って生きている。たとえ脳が機械だったとしても、そう言って人を頼っていると言う事はお前が人だと言う証だよ」

 

リチャードがそう言うとジルはリチャードの胸の中で小さく声を上げながら涙を流していた

 

 

 

 

 

そして少しばかり涙を流したジルはリチャードに連れられ会場に戻るとライデン達が会場の隅で食事をとっていた

 

「よ、どうだった。思い出はできたか?」

 

「ん?ああ、すげー良かったぜ」

 

「ああ、こんな豪華な会場に招待してもらって満足だったよ」

 

「そうだね、豪華な会場に沢山ある料理。満足でしかないよ」

 

そう言ってセオやクレナも同様に満足そうな感想を述べた。初めては豪華すぎる会場に緊張をしていたライデン達であったが時間が経つにつれて徐々に慣れてパーティーを楽しんでいた。その事にリチャードは少し嬉しく思うとジルがあることを聞いた

 

「あれ?そう言えばシンとレーナは?」

 

そう言うとライデン達は外にある庭園の方を指差したするとジルとリチャードは何が起こっているのかを察した

 

「成程、二人は“ワフウテイエン”の方に行ったのか」

 

ワフウテイエンとは何代か前のグラード家当主がはまりにハマった極東の文化をそのまま再現した庭園であった。大きな池を中心に自然を生かしながら作った庭園でわざわざ極東の国から庭園の専門の人を呼んで作ったのだと言う。アルガニアでも珍しい庭園として話題である

 

「ま、いいや。早速だけどこのパーティーのフィナーレを飾ろうか」

 

そう言ってリチャードは持っていたスイッチのついた機械をオンにするとワフウテイエンの奥から大量の花火が上がった。それを見たライデン達は二年前の放棄されたサッカー場で送られて来た花火に火をつけ、楽しんでいたことを思い出していた。なお、この時。シンとレーナは花火を見ながらシンがレーナに告白をしたと言う




補足説明
リチャードは現在メアリと婚姻をした為、グラード家に住んでいる。軍を退役すれば正式に家を継ぐ予定


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ゼレーネの過去

試験的に5000字にしてみました。長いと思ったら感想に書いて下さい


アルガニア連邦大統領府。そこはアルガニア連邦の中でも政治に関する事柄を決め、国家の政治方針を決める場所。そこでは目まぐるしい程の予定が詰まっており、大統領ともなれば。もっと過激な物となっていた。時の大統領、セルジオ・ローズヴェルトは語る

 

 

 

 

 

———戦争は時に人の倫理観を失わせてしまう魔力がある———

 

第82代アルガニア連邦大統領セルジオ・ローズヴェルト著『戦争の現実』より抜粋

 

 

 

 

 

アルガニア連邦大統領府ではセルジオが送られて来たデータを読みながら溜息をついていた

 

「はぁ・・・零システムの覚醒。その鍵はレン・スミスの娘ジル・スミスにあった可能性大・・・か。全く、トーマスの奴め俺に仕事を増やすなよ」

 

そう入って口をついていると副官が部屋に入って来た

 

「大統領閣下」

 

「何だ」

 

「は、情報部から零システムに関する報告です」

 

副官の報告にセルジオは目を細めた

 

「続けてくれ」

 

「はっ、報告によりますと。零システムは元々。レン・スミスの娘ジル・スミスに施した『脳の半機械化による身体強化手術』の脳データの保存用に設計された物だという事です。なお、その零システムの開発にはゼレーネも加わっていたとの事です」

 

セルジオは驚いた。鎖国状態であったアルガニア連邦に他国の人物が入国をしていたという事に。しかし、セルジオはどうやってゼレーネが入国したのかが想像ができた

 

「まさか・・・空白の国境線(ホワイトボーダー)か?」

 

セルジオの言葉に副官は首を縦に振った。空白の国境線は鎖国状態のアルガニア連邦国境にあった警備上の穴であった。鎖国中、他国から入国する際はこの空白の国境線から入国する事例が多数確認されていた。すると副官はさらに続きを報告した

 

「はい、空白の国境線から密入国をしたゼレーネはレン・スミスによってアルガニア連邦大学に偽名で編入を行なったとのことです」

 

そう入って副官の報告にセルジオは驚愕の連続であった。まさかゼレーネの密入国を手助けしたのはレン・スミスという事だった事に

 

「ゼレーネとレン・スミスとの関係は?」

 

「インターネットのチャットサイトによる出会いとのことです。今の所報告は以上となります」

 

「・・・分かった。取り敢えず下がってくれ」

 

そう言ってセルジオは副官を下がらせると執務室でセルジオはコーヒーを淹れて飲み始めた

 

「これで、12日連続徹夜だ。あと少ししたら俺・・・可笑しくなるんじゃねえか?」

 

そう言ってコーヒーを飲み干すとセルジオは椅子に深く座った

 

「はぁ・・・零システム・・・その実態は娘のデータバンクか・・・全く、天才と言うものは恐ろしいな・・・」

 

そう入ってレンがジルの為に零システムを構築したと思うと思わず身震いをしてしまった

 

「零システムの覚醒によってついに人工知能の開発が行われるようになった。そうすれば今までのメートヒェンとは打って違い。本格的に無人独立型の戦闘用AIが完成する。そうすれば無人空中艦隊が現実味を帯びてくる・・・そうすれば秘匿中のアイラはどうなるのだ。あれは、()()()()()()()()()()()()()()()()という情報もある・・・後どのくらい俺は寝れない日々が続くのだろうか・・・」

 

そう呟きながら大統領府では時間がすぎていった・・・

 

 

 

 

 

 

 

アルガニア連邦からギアーデ連邦行きの空港まで軍需物資を輸送する軍用貨物列車。その中の周りをアルミニウムで作られ、その他完全に電波をシャットアウトする装置を組み込んでで作られたコンテナ、その中にいるゼレーネは過去の思い出に浸っていた

 

『思えば私が初めてジルちゃんに出会ったのは生まれてすぐだったな・・・』

 

そう言ってゼレーネは赤ん坊だった頃のジルを思い出していた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

18年前

 

アルガニア連邦総合病院、この日。ゼレーネは親友の見舞いと出産祝いで病院に来ていた

 

「レン、出産おめでとう」

 

「ゼレーネ、ありがとう」

 

そう言ってゼレーネの見舞いに蓮は感謝をすると保育器の中に入っている赤ん坊を見た。ただ、その赤ん坊はよても弱々しく見えた

 

「どうだい、赤ん坊の様子は」

 

ゼレーネの問いにレンは少し暗い表情をした

 

「・・・無事に生まれてはくれたんだけど・・・どうやら未熟児だったみたいで。あまり健康ではないらしいの」

 

「そうか・・・すまないな余計な事を聞いて」

 

ゼレーネが申し訳なさそうにレンに言ったが、レンは首を横に振った

 

「いいわよ、この子が無事に生まれて来てくれただけだけでも。私は嬉しいから」

 

そう言って保育器の中で息をしている赤ん坊を見た

 

「そう言えば名前は決めているのか?」

 

「ええ、ジルにって名前にしたわ」

 

「そうか・・・ジルか・・・いい名前だな」

 

そう言ってゼレーネは保育器の中で小さく動いている赤ん坊を見ていた

 

「すまないな、去年の時は。少し忙しくてな」

 

「大丈夫よ、いずれリチャードにも合わせてあげるから」

 

そう言ってレンはゼレーネに今度長男のリチャードに合わせると約束をした。そしてその日、ゼレーネはレンの出産祝いをすると病院を後にした

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『今思えば、あの日からレンは()()()()()()()()()()()()()わね』

 

そう言って病院を退院した後も一向に体調の回復しないジルにレンは助ける方法を考え始めていた

 

『レンはあの時からただひたすらにジルちゃんを助ける事で頭がいっぱいになっていた。どうすればジルちゃんの体調が回復するか・・・どうすれば普通に人と変わらない生活を送れるようになるか・・・ただ娘を治したいと言う一つの願いのために・・・そしてその方法を発見するまでに5年も掛かっていた』

 

そうして確立した治療法はレンと自分が共同で開発していたコンピューターを使い。脳のデータをコンピューターと同調して体への負担を減らし、その間に体の強化手術を行なうと言うものであった。そしてレンはジルをその手術の被験者第一号にし、早速手術を開始した。まず手始めにジルの持っていた記憶をコンピューターに繋ぎ、データ化して保存を行う。次にジルの脳波をコンピューターと繋いでジルの脳とコンピューターを接続して体への負担を減らすことに成功した。元々猿での実験に成功していた為、この手術も成功するかのように思われた、だがここで悲劇が起こった。ジルの脳波を繋いだコンピューターが突如暴走を開始、同調したジルのデータを使って()()()コンピューターシステムを作り上げてしまった。慌ててジルとコンピューターの接続を切ったが間に合わず。ジルの脳のデータは作り上げられたコンピューターシステムの取り込まれてしまった。データを失ったジルの脳は完全に機構を停止し、ただ生きているだけの植物人間状態になってしまった。手術を中断した後、レンはひたすらに植物状態となったジルに謝っていた「すまない」と。

その時私はこの植物状態を治す方法を考えていた。その時、私はふと手術前に保存したジルの記憶データがあることに気づいた。幸い体の手術自体は終わっていたので、私はレンに植物人間のジルにその記憶データを()()()をする事を提案した。始めは驚いた様子を示したレンであったが、それしか道がないと悟るとレンと私は早速残っていた記憶情報をジルの脳に刷り込んだ。すると無事にジルは刷り込みではあっても植物状態から治り、失っていた目の光が再び光っていた。緊急の事態であったがジルが植物状態から帰還したことにより、レンは泣きながら喜んでいた。私はこの時、ようやく借りの一部を返すことができたと思っていた。初めはアルガニアの大学に進学したいと言う軽い気持ちで顔も知らなかったレンに送ったチャットのお陰で私はアルガニアに入国をし、コンピューター技術を学ぶことができた。レンはその手伝いをすっとしてくれていた為、これくらい借りを返した気分にもなっていなかった。しかしレンは私にずっと感謝をしてくれていた。刷り込みではあってもジルの記憶が帰って来た事は事実。それだけでもレンはゼレーネに感謝しきれないくらいであった。

 

 

 

 

その後、私はレンと共に手術の際に作り上げられたシステムを見て驚愕をした。それは従来のコンピューターとは言えないほど高度な超技術の類であった。そして私たちは恐れた、このコンピューターが悪用されないかどうかを。もしこれを使用すればデータの元となったジルに影響が出る恐れがあった。それに、このコンピューターシステムとジルはまだ繋がった状態であった。ジルの健康がまた脅かさせるのを恐れた私達はそのコンピューターに厳重なロックをかけた。そしてそのロックの解除キーを私とレンの間の二人で決め、そのコンピューターシステムを()()()()。封印した後、ジルは無事に病院を退院し、念願の外の世界を堪能していた。レンはジルが病院と退院すると同時に研究所を出ていった。自分の娘を危険に晒したことの責を追うためにだった。そして私もその年の冬にはギアーデ帝国に帰国し、研究所で自分の目標のために研究を行っていた。封印したデータはジルが大きくなり、体が耐えられるようになったらロックを解除すると言うことになった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから数年。肉体を捨て、機械の体になった私は驚きの再会を果たした。それはアルガニア連邦方面の指揮官機の声であった。それは紛れもなくレンの声であった

 

『こちら南方指揮官機フォッケウルフ。無慈悲な女王に援軍を乞う』

 

『っ!その声は!』

 

『まさか・・・ゼレーネ?』

 

思いがけない再会に私はただただ驚きしか生まれなかった。そして久々の再会に驚きはしたがレンは心底悔しそうにしていた。その理由を聞くと私は驚きの声しか出なかった

 

『・・・つまり、ジルちゃんの解放ができずにここに来てしまったと』

 

『・・・ええ、それだけが心残り。封印したデータはまだ残っている。おそらく今頃連邦政府に回収されているかも知れない』

 

もしそうなればジルの体に負担がかかり始めてしまう。そうなればジルに何が起こるか分からない。そうならない為には封印の解除が急務となったが、ここで問題が起きた。私達は機械の体と化しており、ジルとの接触は困難であった。そうして悩んでいると私はある提案を思いついた

 

『レン・・・こう言うのはどうだ?』

 

『ん?何かしら、いい案でも思いついた?』

 

『ええ、この体でも封印を解く方法を思いついたわ』

 

そうして思いついたのは自分がわざと人類側に捕まり、ジルの封印解除を行うと言う事であった、最初は危険なやり方にレンは反対していたが、最終的にそれしかないと言う事でレンの渋々納得していた。そして次の問題点はどうやってジルの負荷テストをするかだった。封印解放を行うにあたり、ジルの体に負荷がかかる事は明確だった為、あらかじめ負荷テストを行い、封印解放ができるかどうかのテストを行う必要があった。その為にとった方法が私たちの使っているデータを送り込んで脳が耐えられるかどうかのテストをすると言う方法であった。幸い、ジルは軍学校に入学した情報は掴めていた為、私達はノウ・フェイスにバレないように細工をしながらジルの乗る機体にデータを流し込み、負荷テストを行った。第一回の負荷テストではある程度までは耐える事ができていたがまだデータを解放するには時期早々と言う結論になった。それから一年近く経った頃、第二回の負荷テストを行った。その結果は封印を解除しても問題ない結果となっていた。そして負荷テストを終わらせると次に封印の言葉をいえば完了となったのだが、ここでレンは退場をする事になった。レン自体、機械の体になった事に違和感を覚えており、とっとと無駄に足掻いている人生を終わらせたいと言っていた。当然私は反対をした。だがレンは一向に意見を変えなかった

 

『最期くらい娘に看取ってもらいたいのさ。まぁ、私の我儘だよ』

 

そう言ってレンは今度ジルの出撃するシャリテに行く前、私にこう言ったのだ

 

『ジルの事・・・最後までお願いね』

 

その言葉に思わず私は

 

『・・・バカ』

 

と呟いてしまった。だが、親友に頼まれた以上。最後のピースをはめる為に私は北の国でただひたすらその時を待っていた。そして、私は心に決めていた事があった、それは『ノウ・フェイスを止める』親友すらいなくたった世界だ。もう私に未練は無かった。私の開発した制御システムで親友を巻き込んでしまった。親友の家族ですら分断をさせてしまった。親友が最後に私を頼み事をして先に逝ってしまった。今の私にできる事は親友から頼まれた事をこなし、あの子を見守る事であった。そして私は見事捕縛をされ、連邦の地にてジルの無事に封印を解く事ができた。しかし、その時。負荷テストで送ったデータが自我を持っている事には流石に驚きを隠す事はできなかった。どうやら送ったデータがジルの脳のデータをコピーし、自我の確立を行ったとの事だった。この時、私は人類の可能性にも脱帽せざるを得なかった。半機械となった人でも情報のコピーができるのだと思うと思わず笑いが込み上がってしまっていた。

 

『全てが懐かしく思えるわね。今でも鮮明に思い出せるわ』

 

そう呟いているとコンテナの扉が開き、着いた場所はどこかの研究所であった。見た目から察するに統合司令部の地下研究所だと推測していた

 

『さ、ここが新しい居場所ですか』

 

そう呟くとゼレーネの乗った台座が地面に固定をされた



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

レグギード征海船団国群編
第一遠征艦隊


第86独立機動打撃群の休暇が終わり一ヶ月。ジルは休暇が終わると同時に司令部から二隻のドレッドノート級主力建艦の受領を行った。このドレッドノートは覚醒した零システムの中に構築されていた独立()()()A()I()を試験的に搭載した艦艇である。その為、零システムの根幹となっているジルからすれば自分の手足を動かすのと同じようなものであった。後々判明したのは零システムとジルは繋がっている状態で、ジルが意識をすれば零システムにつながっているシステムを動かすことができるのが判明した。なお、ゼレーネからもたらされた零システム誕生の話はトーマスやセルジオ、ユーゴの三人の話し合いで連邦最大機密事項に当てはまる特一級秘匿情報として厳重に秘匿される事になった。なお、ジルの第一遠征戦隊は第一遠征艦隊と名称を変更し、ギンガはその第一遠征艦隊旗艦として次の任務に向かう事になった。艦隊とと共に行動する第一遠征師団はドレッドノートと同じく、零システムの独立汎用型AIを試験的に搭載した戦闘機械が一個大隊分がそれぞれの部隊に追加された

 

 

 

 

 

ドレッドノート2隻を受領したジルは第43番バースに出向いてそこに鎮座しているドレッドノートを見た

 

「・・・これが時間断層の副産物か・・・」

 

ジルはドレッドノートをじっと見ると隣にダニエルとアミがやってきた

 

「よう、これが新しい船か?」

 

「ええ、ドレッドノート級中期生産型。DMA-280とDMA-281番艦。この2隻が今後第一遠征艦隊に加わる事になる」

 

「ええ、そうね。これが新しく配属された完全無人型ドレッドノート・・・実験艦隊の私達にはピッタリね」

 

そう言ってアミがそう呟くと次に改装を加えたネバダを見た。ネバダは波動エネルギー圧縮放射器を取り外し、代わりに波動共鳴波装置を搭載している。ギンガも改装を加えられ対空砲などが格納式に改装され、見た目が大分スリムになっていた。なお、ドレッドノートは建造数が多い為一隻ずつの名前はなく、全て番号で管理されていた

 

「さ、今から出撃するよ。場所はリュストカマー基地だ。元々第一遠征艦隊は第86独立機動打撃群と契約を交わした影響で援助をしなければいけないからな」

 

そう呟いてジルはギンガに乗り込むと五隻は離陸を開始し、行き先をリュストカマー基地へと向けた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

連邦から帰国したシンは帰国と同時にエルンストにジルの母親について情報を集める様にお願いした。初めて頼まれごとを任されたエルンストはウキウキでジルの母親について調査させた

 

「・・・という事で、これがジル・スミスの母親。レン・スミスの情報だよ」

 

そう言われて渡された紙にはレン・スミスの出生に関して書いてあった

 

「生まれは孤児ですか・・・」

 

そこに書かれていた記録にはレン・スミス旧姓レン・アルバチェクは幼い頃に教会前に捨てられた孤児だったとの事。名前は捨てられていた赤ん坊と一緒に『この子の名前はレン、後を任せます』と書かれていた紙が添えられていたそうだ。そして引き取った教会の老夫婦に育てられたレンは驚きの頭脳を持っていた。7歳の時点でで連邦大学の問題を満点で合格。さらに15歳の時に連邦大学を飛び級で合格し、連邦総合研究所に入所、医療技術分野にて当時不可能とされた人造頭脳の開発に成功し、一躍注目を浴びた。その後彼女は人体とインターネットの融合に関する研究を数多く行い、当時研究所に軍務士官として勤務していたトミー・スミスと結婚。翌年、第一子でリチャード・スミスを出産。翌年には第二子のジル・スミスを出産したが。ジルは未熟児の状態で出産し、以後病院から出られない生活を送っていた。その事でレンは治療法を5年かけて開発、その第一被験者にジルを当てた。実験段階では100%の成功率を納めていたこの治療法は安全と評され、今後の医療に大きく貢献できると期待され一部医療業界では注目の手術であった。だが、治療中に事故が発生し、ジル・スミスは植物状態と化してしまった。その責を負う形でレンは研究所を辞職。その後はジルの治療の為に連邦北部の街で過ごす。その後、帝国の侵攻の際にレギオンに取り込まれ、シャリテにてその機体を破壊

 

「・・・」

 

報告を読んだシンは一息を吐いた、するとエルンストがさらに追加で紙を渡した

 

「これは?」

 

「レン・スミスの追加情報。彼女は研究所で働いていた時にゼレーネと会っていた証拠さ」

 

そう言われて驚きながら紙を見ると、そこにはゼレーネが国境を超えてアルガニアに入国をし、数年間レンの援助の元、大学に入学していたという情報であった。この情報にシンは疑問を抱いた。するとエルンストがそれを見透かしたかのように答えた

 

「君の疑問ももっともだ。なぜ国境を封鎖したはずのアルガニアを何故ゼレーネが行き来したか。そういう事だろう?」

 

「ええ、アルガニア連邦はこの時期国境を封鎖していたはずです。なのに何故、国境を越えたといえる情報があるのですか?」

 

「空白の国境線、アルガニア連邦ではそう呼んでいた国境警備隊の警備が十分じゃなかった地帯があったんだよ」

 

そう言ってエルンストは話すとシンは納得をした

 

「成程・・・それで彼女は空白の国境線を使ってアルガニアに入国ですか・・・しかし何故レンの援助を受けていたのでしょうか。接点はなさそうに見えまずが・・・」

 

するとエルンストはアルガニアのインターネットは鎖国後も接続ができていたと言い、そこで知り合ったと話した

 

「レン・スミスとの接点はそこですか・・・」

 

そう言うとエルンストはこれからももっと頼ってよと言い残すと仕事に向かった。残ったシンは渡された紙を吟味していた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第43番バースから出港した第一遠征艦隊は巡航速度のままリュストカマー基地に向かっていた。その間、ジルは艦内食堂でダニエルとアミを呼んでお茶会をしていた

 

「・・・成程、AI積んだ無人戦闘機械は無人ドレッドノートにってか」

 

そう言ってギンガと同じ軍艦色に白線塗装、遠征艦隊所属を示すEFの黒文字が艦首に刻まれたドレッドノートを見ながらダニエルがそう呟いた

 

「まぁ、仕方ないよ。うちらはどこも一杯一杯なんだから。それに、あの無人ドレッドノートの貨物室は空っぽだしね」

 

「そうそう、そもそも零システムの覚醒の影響で色々ごたついているんだから必要な物資が届いただけマシだと思うよ」

 

そう言ってジルはまだ零システムに覚醒から一ヶ月しか経っていないのに、零システムで作り上げられた汎用型人工知能の開発を本来搭載する予定であったアイラの改良型から全て変更したその早さに驚いていた。そんな事を思っているとそこにコーヒーを持ってきた茶髪に青い目をした軍服を着た女性が三人の前にコップを置いた

 

『どうぞ、コーヒーをお持ちしました』

 

「ありがとう()()()

 

そう言ってアミがその人物ことアイラに感謝をした。実は休暇中にトーマスが研究所にて殆ど完成段階に至っていた人型ロボットを持ってきてジルに渡したのだ。ロボットを受け取ったジルは早速艦内ネットワークにこの人形ロボットを繋げて、アイラのデータをこの人型ロボットに繋げたのだ。それからは艦内の給士などは全てアイラが行っていた。人型を手に入れた事で多くのことが出来るようになったアイラだったが、この期待にも欠点があった。それは重すぎる事だった。多くの部品が激し動きに耐えらる用に部品一個から頑丈にした影響で相対的に総重量200キロを超える重さとなっていた。その為、人の姿を手にいれた喜びでジルに飛びかかり、ジルが重みで気絶したのは記憶に新しかった

 

「しかし、ジルの人格をコピーしたからかコーヒーの味まで一緒だわ」

 

「ああ、この匂いを強くした味のコーヒーな。軍学校を思い出すぜ」

 

そう言ってコーヒーを飲みながらダニエルとアミはそう言った。するとジルは不服そうに二人に言った

 

「何よ、私のコーヒーがまずいって言っているの?」

 

「いやいや、匂いを意識しすぎてコーヒー自体の味が薄くなっていると言っているだけで、他は別に何も」

 

「それはまずいと言っているのと同じようなものなのよ」

 

そう言って三人はそうして笑いながら話していると航法装置が目的地付近である事を知らせた



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

大統領の一日

大理石を大量に使用し作られた大統領府。ここでは常に職員が書類や重要情報を持って走り回っていた。そんな一室、大統領執務室では第82代アルガニア連邦大統領セルジオ・ローズヴェルトが補佐官から報告を聞いていた

 

「・・・という事で。現在南ブルテンにて新型波力発電所が完成し、マイクロ波給電装置も成功とのことです」

 

「そうか・・・これで、アーセナルバード計画はもうすぐ完了だな」

 

セルジオの言葉に副官は頷いた

 

「ええ、アーセナルバードも現在アドール空軍工廠にて製造が完了し。間も無く離陸を開始するとの事です。第二アーセナルバードは現在ドルチェビク陸軍工廠にて現在調整中であります」

 

「そうか、もうすぐ空中要塞のアーセナルバードが空に飛び立つか」

 

「ええ、この前の零システムの覚醒によって戦闘用、索敵用AIが格段に進歩した影響で徐々に計画も遂行しつつあります。当然、()()()()()・・・」

 

副官の含みある言い方にセルジオは溜息をついた

 

「はぁ・・・『エギルの兜計画』か・・・全く、首都までに3重4重の防御陣地を敷いて遅滞戦術を持って時間断層にて生産された兵器を順次戦線投入・・・誰がかこんな馬鹿げた計画を考えたんだか」

 

そう呟くと副官も同様に疲れたような表情を浮かべた

 

「全くです。予算は有限だと言うのに・・・それに、新たに新型の列車砲を開発してしまうんですから・・・」

 

「例の1200mm列車砲か?」

 

「どちらかというと首都防衛用の要塞砲でしょう」

 

「ストーンヘンジか・・・」

 

そう呟くとセルジオは窓から見える巨大な建造物を見た

 

ストーンヘンジ・・・ケラウノスに変わり、新たにサン・デ・レグリアレスタの守り神として首都の周りに十二基建設されている首都防衛陣地である。1200mm砲を搭載したストーンヘンジは最大射程2100kmを誇り、サン・デ・レグリアレスタから端は大陸西端まで届く究極の電磁加速砲である。なお、ストーンヘンジ用の核融合炉を廃艦となった旧式空中艦から引っ張ってきていた

 

「ケラウノスは、製造から40年も経っているから。旧式化するのは自明の理ではあったが・・・いくら何でも大きすぎやしないか?」

 

セルジオは大統領府から見えるストーンヘンジの大きさに只々溜息しか出なかった

 

「仕方ないですよ。元々ユジーエ山脈要塞に電磁加速砲型の砲撃が始まる前から。新型列車砲の開発は行われていましたので、それは仕方ないかと・・・」

 

副官が苦笑しながらそう呟いた。セルジオはふとある事を思い出した

 

「そう言えば・・・例の機体のはどうなった?」

 

セルジオの言葉に副官はさっきから一転、緊張した様子を浮かべた

 

「はっ。現在、試製無人戦闘機XQ−00は現在、第一遠征艦隊に10機搭載済み。次の摩天貝楼攻略作戦にて情報収集と戦闘計測を行う予定です」

 

「そうか・・・あの実験艦隊に配備されたか・・・」

 

セルジオの呟きに副官は少し悲しげな声色となった

 

「しかし・・・何とも虚しいものです。我々の技術力は一人の軍人の犠牲によって成り立っているのですから。それもまだ正規軍人になって間もない女性軍人に・・・」

 

「・・・」

 

副官の言葉にセルジオは思わず声が出なかった。いくら本人が希望しているとは言え、人一人を犠牲にして戦線が成り立っていると考えると何も言葉が浮かばなかった

 

「・・・仕方あるまい。本人が望むなら、言う通りにしようじゃないか。我々は彼女のバックアップを最大限にすればいい」

 

「・・・ですが恐ろしいものです。たとえ肉体が滅んでも、機械という枠にはまっているから死ぬ事すら許されない。永遠に情報化された世界で過ごす、我々には想像すらできません」

 

「・・・そうだな」

 

副官の発言にセルジオは頷いてしまった零システムはゼレーネからの情報でジルの情報化された脳がベースとなっていると聞いた時は本気で零システムの停止を検討した。だが、ジルが「いえ、零システムは稼働させたままにしてください。それで連邦がレギオンに対抗出来るなら。私は大丈夫です」ジルの言葉にセルジオは深い後悔の念に駆られた。零システムを奪還した地域から発見したときは世紀の発見と思いこみ、すぐさま零システムを使った大規模改革、大規模軍拡。零システムの本質を知らなかった我々は零システムが神の作った産物に見えていた。だが実態は、過去の手術の失敗から生まれた偶然の産物であった事。そしてそれは自分の友人の従妹の脳情報が元になっていた事。一人の軍人を犠牲にして今の連邦は成り立っていると考えると悲しくなってしまった

 

「・・・少なくとも、周辺各国には情報を漏らすな。万が一にも情報漏洩があれば確実に世論は荒れる事になる。それにギアーデ連邦大統領が黙っちゃいないだろう」

 

「分かっております。現在、零システムは特一級秘匿情報として厳重に封鎖しております。この事を知っているのは我々とゼレーネと交信をしたシンエイ・ノウゼンとヴィークトル・イディナロークの二人だけであります。ですが、二人は零システムの詳しい話は聞いていない為。特に気にするほどでは無いかと」

 

「・・・分かった。取り敢えず下がってくれ。それと至急、トーマス・スミス中将とユーゴ・スラッド元帥を呼んでくれ」

 

「はっ!」

 

副官が部屋を後にし、セルジオが執務室横の仮眠室で久方ぶりの睡眠を取っていると自分を呼ぶ声が聞こえ、付けていたアイマスクを取るとそこにはトーマスが目覚めのコーヒーを持っていた

 

「起きろセルジオ」

 

「・・・すまない」

 

そう言ってセルジオはトーマスから目覚めのコーヒーを受け取るとそれを飲みながらトーマスがセルジオに言った

 

「隣でユーゴが待っている。お前もさっさと来い。わざわざ俺たちを呼んだんだ、待ちぼうけをさせるな」

 

そう言われて目覚めたセルジオは執務室に戻るとそこではユーゴが腕を組んで待っていた

 

「すまない、ここ最近寝ていなくてな」

 

「いや、構わんよ。ここ最近は色々とあったからな。お前の事だ、どうせ寝ていないんだろう?」

 

「そう言うところがお前の悪い癖だ。無理はするなよ」

 

「ああ、分かっているさ」

 

そう言ってセルジオは執務室の椅子に、トーマスとユーゴは執務室のソファーに座った

 

「さて、早速だが今日二人を呼んだのは共和国派遣軍の事だ。まずはこれを見てくれ」

 

そう言ってセルジオは二人にあるデータを見せたそれを見た二人は思わず顔を顰めてしまった

 

「二人がそう思うのも仕方がない。これは共和国派遣軍と共和国国民との騒動の件数だ。日に日に増加している。一部では連邦軍を共和国から撤退させろと言う意見もある。何の意味もない、只々奉仕しかしない場所にわざわざ軍を派遣する必要はないと」

 

「確かに、その話に一理あるが・・・」

 

「国家安保委員会はどう言った意見なんだ」

 

「概ね、共和国政府を躍らせてその間に連邦の領土にしようと言う意見が大多数だ。あそこは豊潤な地下資源がある。それに、共和国派遣軍が訓練をしているあの部隊の事もある」

 

「シルバー・ブレッド部隊・・・共和国内の志願兵で構成された部隊。その殆どが戦時特別治安維持法で家族や友人を失った白銀種の人間・・・けっ、共和国に人の血は通っているのか?」

 

「共和国は元々有色種を忌み嫌う風潮があったが、我々の技術供与が歯止めを掛ける形となっていたのは否めない」

 

トーマスの悪態にユーゴも同様に呆れた様子を浮かべた。共和国志願兵で構成されたシルバー・ブレッド部隊は規模としては一個大隊程で、五個中隊で構成され、全員に旧式の『パミス』を提供し、訓練を行なっていた。その中には家族と再会ができ、連邦に籍を移した者もいた

 

「全く、共和国国民は自分達が何年も分厚い殻に囲まれていたせいか倫理と言うものが欠けているんじゃないか?」

 

「トーマス、あまり言うな。自分の責任を他人に押し付けて自分が逃げ続けた結果があの大攻勢の結末だ。だが、それで学んだものもいない訳じゃない。それで学んだ人間は自ら戦おうとするのだから」

 

そう言って三人は共和国について話し合っているといつに間にか朝日が顔を覗かせていた

 

「おや、もうこんな時間か・・・」

 

「夜通し話し合っていたな」

 

「結局、共和国の問題だけで終わってしまったな」

 

そう言って気晴らしに外に出た三人は朝日を浴びながらコーヒーを飲んでいた

 

「さ、今日はストーンヘンジの四号砲台で試射だ。二人も来るんだろう」

 

「ああ、それはトーマスが見に行く手筈になっている。俺は国防省で新設する艦隊に関しての配置場所の会議さ」

 

そう言ってユーゴが手にコーヒーとハンバーガーを持ちながら車の行き交う街を見ながら朝食を取っていた

 

「さ、また忙しくなるな」

 

「ああ、そうだな」

 

そう言って三人はそれぞれ仕事に戻っていった



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

作戦目標

久々の投稿で文字数は少なめです。次回は多分再来週くらいと思います


実戦に勝る訓練はない

 

この言葉は一面の真理ではあるが、実を言えば実戦のみの部隊では能力はむしろ落ちてしまう。かといって訓練していない事は実践でもできない。そのため、適度な訓練と教育が必要になる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第86独立機動打撃群 リュストカマー基地

 

休暇を終え、基地に戻った隊員たちはこの一ヶ月間、勉学や今後の生活について考え始めていた。シン達を保護していた白銀種の補助教員達が基地内にある教室で授業をしていたりした

 

 

 

 

                   『戦争が終わる』

 

 

 

 

今まで思っても見なかった事だった。元々死ぬ運命だった頃からは考えられ無かった事だった。幼い頃から起きていた戦争が終わる可能性がある。それを聞いただけでも隊員達が興奮したのも無理は無かった。

 

「ライデンは何かしたい事でもありますか?戦争が終わった後・・・」

 

レーナの問いにライデンは懐かしむように呟いた

 

「・・・レーナが2年前にシンに聞いた時はよ」

 

『ーーさあ。考えた事もありません』

 

「あの時、あいつは本当に望みはなかったんだ。もう時期死ぬからだけじゃなくて。兄貴を葬ってやりたいって、それしか無かったから」

 

「・・・」

 

「そう言うシンが・・・この前あんたに海を見せたいと望んだのは、だから奇跡みたいなもんなんだ。あいつはあいつなりに腹ぁ括って言ったはずなんだがな。それをもう少しレーナも汲んであげれば良かったんだが・・・」

 

「どうして知っているんですか・・・」

 

穴があったら入りたい。レーナの気持ちはそれで埋まっていた。するとライデンは少し笑いながらレーナに言った

 

「そりゃレーナ・・・残念ながら大体全員にバレているからな」

 

そう言うとライデンは補修授業を受けるためにその場を後にした

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ライデンと別れたレーナはそのまま荷物を適当に部屋に置くとリュストカマー基地近くに建設された陸ドックに向かった。この陸ドックは遠征艦隊の補給基地として活用するために時折、空中艦が停泊することがあった。今日は第一遠征艦隊が次の作戦の為に停泊することが決まっており、レーナは少し緊張しながらドックに向かった

 

「・・・来ましたね」

 

レーナがそう呟きながら降りてくる空中艦を見た。見慣れた軍艦色に中央には白線が入り、艦首には遠征艦隊であることを示す『EF』の頭文字が。そして前回の時よりも二隻増えたその艦隊にレーナは改めてその国の造船能力に下を巻いていた。そしてその艦隊は陸ドックに着陸をすると貨物室のドアが開き、そこから一人の人物が降りてきた。階級はその人の方が上な為、レーナは敬礼をした

 

「お待ちしておりましたリチャード准将」

 

「ああ、これからまたよろしく頼むよ」

 

そう言って深緑色の軍服に身を包んだリチャードが敬礼をするとレーナは後ろでギンガから大きめのコンテナが艦内クレーンからトラックに荷下ろしされているのに気付いた。するとリチャードはそれに気づいて木箱の中身を伝えた

 

「ああ、あの荷物ですか。あれは制御基盤ですよ」

 

「制御基盤?」

 

「ええ、ケラウノスのね。全く、あんな高級品を買えるギアーデ連邦には驚くばかりです」

 

そう言うとレーナは忘れないうちにリチャードを基地内の執務室に案内した。ジルは艦内に残って荷物の搬入を行う為執務室にはこれないとの事

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ギンガから下ろされる荷物を見ながらジルはやって来たグレーテに挨拶をした

 

「お久しぶりです。グレーテ大佐」

 

「良いわよ、グレーテで。大体、あなたの方が階級は上ですし」

 

「でも、軍人経験はグレーテさんの方が長いと思われますがね」

 

「そうね・・・」

 

そう言いながらケラウノスの制御基盤と共に運ばれている木箱を見ながらグレーテは呟いた

 

「しかし、驚いたわ。まさか政府が人型ロボットの機体を買うなんてね・・・」

 

「ゼレーネに与えるのでしょうか?」

 

「分からないけど・・・多分そうじゃないかしら」

 

そう言いながら下ろされた荷物を見るとグレーテはジルの持ってきた書類に書き込むとトラックに乗って去って行った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ーーさて、まずは久しぶりノウゼン。ミリーゼ大佐」

 

リュストカマー基地の状況説明室ではシンの属する第一機甲グループの大隊長と副長、作戦指揮官であるレーナとその幕僚、同行するヴィーカと彼の幕僚。そして、第一遠征師団と第一遠征艦隊の長であるジルとリチャードの二人が部屋に詰めていた。その中で唯一、第二機甲グループに属する少年が楕円のテーブルの一角で笑った

ツイリ・シオン休暇中の第一機甲グループの代わりに作戦を受けていた第二機甲グループの戦隊総隊長だ

 

「連合王国以来だから、一ヶ月と少し、か・・・まだ通学期間じゃないのか、第二は」

 

「状況説明にって、今日は特別にね。第三のカナン達は作戦中で、あんた達の派遣先ーーレグキート征海船団国郡で戦ったのは今の基地には私たちしかいないから」

 

レグキート征海船団国郡

ギアーデ連邦の北、連合王国の東側に領土を持つ小国家群である。この10年を小国丸々一個を防衛陣地にしたことでこの闘いを凌いできた国だったが10年ぶりに連絡がつくや否や救援を求めて来ていた。それを受けてツイリ達が派遣され、三つあるレギオンの拠点うちの二つを制圧した。だが、三つ目は攻め込めずに一旦撤退をして来ていた

 

「あんた達が第一今回制圧するのはその残った三つ目の拠点・・・私たちの撤退の事情は聞いていると思うけど、まずは見てもらった方が早いわね」

 

そう言うとホロスクリーンが展開され、荒い光学映像が映し出された

 

全体を埋めるのは色気も深さもさまざまな青で、それは風の強い日の湖にも似た波立つ水の広がりだ。牙の様に尖った波濤の向こうに、金属製の建造物が聳え立っており、要塞と知れた

 

 

 

 

・・・次の目標は水上。7年の戦歴をもつシンですら経験した事の無いーー海上での戦闘だった



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

摩天貝楼拠点

予定より早く投稿できることに驚き(O_O)!!


次の作戦目標が海上であることに苦しさを覚えたスピアヘッドであったがツイリからさらに現実を突きつけた。それは海上要塞の最上階に存在するレギオンの中では珍しい黒い装甲。鬼火のように蒼い光学センサー。背に広がる銀糸を編んだ二対の放熱策の羽。

忘れる事はなかった、天に牙剥く槍のような砲身

血赤の目を掠め、シンは吐き捨てた。ゼレーネから聞いてはいたものの二度と戦いたい相手ではなかった

 

「ーー電磁加速砲」

 

一機を持って各国戦線を脅かした最強のレギオン

 

 

電磁加速砲型

 

 

沈黙が、ブリーフィングルームを支配した。直接対峙したのはシンだけだが、その脅威はここにいる全員が知っていた。根本から戦略を変えさせたそいつが、その海上要塞にはいた

 

「船団国群はこの拠点を摩天貝楼と命名したわ。位置はレギオン支配域となっている旧クレオ船団群の海岸から、直線距離で300キロの沖合。電磁加速砲型を確認した調査船は直後に砲撃で沈没。以降、防衛陣地などに砲撃が毎日実施されている」

 

領土の大半を湿地で埋める船団国群はレギオン支配域に接する海域の無数の小島に構築した砲陣地陣と軍艦だ。その為、船団国群はその成り行きからアルガニアと肩を並べるほどの強力な海軍力を有していた。この十年、湿地帯と射程100キロを超えるロケットランチャーで戦い抜いた船団国群だったが・・・

 

「海上砲陣地はこの一ヶ月で壊滅。軍艦の被害甚大で、何より陸上の第一列が半分近くレールガンの射程圏内。私たちが撤退すると同時に第二列まで後退。事実上の最終防衛線まで後退したわ」

 

するとヴィーカが淡々と口を開いた

 

「そして船団国群が陥落すれば大攻勢の再来か・・・泥濘地で重量級のフェルドレスを運用できない戦場が電磁加速砲の砲陣地となれば、連合王国も打つ手がない」

 

「こっちもだ、ビートルは確実に無理だ。下手をすればコブラ級でも危ないかもしれない」

 

電磁加速砲型の射程距離は400キロ。それは連合王国の国境を越え、ギアーデ連邦両国の東と北側の基地を叩ける。

 

するとリトが顔をしかめた

 

「・・・ひょっとして、連邦がもっかい俺たち出すの、本音は自分達が危ないから?」

 

「リト、あんたその思ったこと口にする癖改めなさいよ。あんただってたとえばここで、リトってば本当は泣き虫だって事言われたくないでしょう?」

 

「ちょ、やめてよツイリ兄!」

 

「あと私のことたまにお母さんて呼ぶみたいにノウゼン隊長って呼んだりとか」

 

「ちょっとやめてってば!」

 

「・・・シオン。リトはいいから続けてくれ」

 

シンのツッコミにツイリは肩をすくめると話を続けた

 

「ともかく・・・私たちの失態を押し付けるようで悪いけど。流石に400キロの超長距離砲相手に無用に突っ込むのは船団国群でも流石にできなくて」

 

「この一ヶ月、船団国群が最終防衛線に追い詰められながらも救援を急かさなかったのはその為です。彼らに準備とーー待つべき機があるからと」

 

そう言って連合王国の紫黒の軍服の着た少女の士官が喋った。彼女は船団国群ではヴィーカに変わりアルカノストを率いた副長の少女だった

 

「すなわち、電磁加速砲型の400キロ砲撃域の突破の準備です。まずはこちらをご覧下さい」

 

そう言ってホロウウィンドウに映る資料を見せた。その時、説明はザイシャとみんなが呼ぶ少女に変わった。画面には船団国群沿岸部とそこから広がる海図。その中央に赤く灯る摩天貝楼拠点のシンボルはその周囲に

 

「摩天貝楼拠点は先程のツイリ中尉の説明通り、レギオン支配域の沖合300キロに建造された要塞です。建造時期は不明、恐らく船団国群以外の沿岸国が陥落した後、その港から進出、建造した可能性が高いです」

 

現状、存続が判明している国は大陸中北部から西部、南部にかけての狭い範囲のみだけだった。現在、首都にあるストーンヘンジによる超長距離砲撃により、前線を押し上げてはいるが現状存続している国は未だ見つかっていなかった

 

「開戦以前、船団国群が採掘計画をしていた海底鉱脈の真上にあり、近くの海底火山もある事から恐らく工廠でしょう。そして、ご説明した通り。この拠点の周囲には海面より高いものが一切存在しません」

 

地図上にも摩天貝楼拠点の周囲には小島の一つもなかった。それはつまり、射程400キロの砲撃化から身を隠す場所がどこにもない事だった

 

「故に船団国群は嵐を待っています。船団国群では、この時期。夏の終わりに来たから大きな嵐が訪れる。その嵐に紛れる形で電磁加速砲型の砲撃域を突破するために」

 

ザイシャの言葉にレーナは聞いた。いくら嵐に紛れると、簡単に言ったが。

 

「ですがーー嵐を越えるには・・・」

 

「波の船では難しいでしょう。特にこの海域は沿岸から遠く、波が荒いため小型の船では嵐でなくとも負けるそうです。戦闘機でさえ、嵐の中を飛んで祈祷できる保証はないのだとか。つまり、波の船では嵐を越えられない、ならば破格の軍艦を出せば良い」

 

すると画面が変わり、少し特徴的な艦船が出てきた。その艦船はアイランド型と言われる特徴的な艦橋を有し、甲板には平たな飛行甲板と二列ずつ設置されたカタパルト。艦載機の邪魔にならないよう飛行甲板から一段下げて作られた二基四門の四〇センチ連装砲と艦橋最上部に掲げられた古風な女性像が淡い陽光を鈍く弾いていた

 

「征海艦ーー今作戦に置いて起動打撃群を運ぶ、原生海獣狩りの軍艦です」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ブリーフィングが終わった後、各々退室していく中、クレナは疑問に思っていた

 

「あれ?そう言えばジル達の船に乗って行かないの?」

 

そう疑問に思うとレーナが横で話しかけてきた。

 

「ああ、それは今回の作戦に使う新装備の影響で貨物室が埋まっている影響でレギンレイブを乗せるスペースがない。と言う事と、甲板上に全機体を置くスペースがないからだと言う事らしいですよ」

 

「ふーん」

 

クレナはそう言うと外に出て外の空気を吸いに行った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ブリーフィングルームを出たジル達は艦に戻ると独自の作戦案を立て始めた

 

「兄上、今回の作戦には先行してドレッドノート無人艦二隻を向かわせ、偵察を行わせようかと思うのですが・・・」

 

「ああ、それで構わない。なるべく人命の消耗は避けたいからな」

 

そう言って3D映像で摩天貝楼拠点の地図を映し出すと半径100キロの円を映し出し、拠点付近にドレッドノートを模した赤いマークが映し出されるとジルが計画案をCGモデルで映し出した

 

「兄上、今の所無人航空戦力としてアリゲーター三個小隊を四つ。合計十二機の偵察隊を拠点半径90キロの地点で旋回させます。最悪堕とされたとしても問題はないかと・・・ドレッドノートに関しては100キロ地点で待機。我々が到着するまで動きがないかの監視を行わせる方向でよろしいですか?」

 

「ああ、できれば拠点の様子を撮影出来れば良いのだが・・・」

 

そう呟くとリチャードは摩天貝楼拠点の映像を分かる範囲で具現化した物を見た。

 

「しかし、湿地帯となるとビートルでは確実に埋まってしまうな・・・」

 

「ですが、支援砲撃であれば地盤の安全した場所からレギオンを一掃することも可能かと・・・」

 

「こう言う時は履帯式戦車の方が走りやすいんだかなぁ」

 

そう言ってリチャードは腕を組むと上を向いて悩んでいた。フェルドレスの欠点は接地面が小さい影響で沼地などではハマりやすいところにあった。だが、履帯式は接地面が広い影響で沼などでも安全に走ることが可能だった。アルガニアの研究で履帯式とフェルドレスを混ぜたキメラ戦車があったと言うがあまりの非効率さからその試作戦車はお蔵入りになったらしい




補足説明
遠征第一師団の部隊構成

師団長(ビートル改弐型)→歩兵大隊→支援砲撃部隊
↓                →白兵戦支援部隊
↓                →工兵部隊



→フェルドレス部隊→ビートル砲撃隊(ビートル改参型)
         →白兵戦部隊(コブラ改壱型)
         →狙撃部隊(コブラ改参型)
         →ミサイル部隊(コブラ改弍型)
         →偵察部隊(コルーチク隊・コブラ改特型)


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

船団国群合同艦隊

意外と次も早く投稿できるかも?


重く暗い曇り空の下の、どんよりと黒い波立つ水面。ゴツゴツした暗色の色の荒磯。陰鬱な潮騒と、もの悲しげな海鳥の声。そして遠く、連なる小島のように累々と擱座する朽ちた軍艦

 

「・・・海だけど」

 

「違うのじゃ!こう言うのじゃないのじゃ!!」

 

初めて見た海にフレデリカが地団駄を踏んで叫んでいた

 

ーー海が見たい

 

フレデリカが思い浮かべていたのは、陽光の眩しい空の下、透き通る真っ青な海とか、珊瑚の死骸が砕けてできたと言う白い砂浜とか。光を弾いて散る波飛沫とか鮮やかな緑の椰子の木とか艶やかな花々とか、賑やかに鳴きかわすカモメの声とか。

ちなみに海が黒いのは曇りの天気だけでなく、海底の岩や砂が黒いせいで、晴れでもこの海は黒い。いつでも黒い。年中水温が低い為、泳げもしない

 

「それに何か、妙に生臭いのじゃ!何の匂いじゃこれは!」

 

「潮の匂い、とかじゃないか?知らないけど」

 

「・・・うう、せっかくの海だと言うのに、もはやどうしていいか分からぬ・・・!」

 

フレデリカは岩壁に派手に散る波を睨みながら涙目になっていた

 

「大体其方はこれでいいのか!意味を見せたいと、共に海を見たいとヴラディーナめに言った、その海はこう言うのではないのであろう!?」

 

「確かにこれは、見せたいのとは少し違うけど・・・これはこれでレーナ、嬉しそうだから」

 

そう言って少し離れたところにいるレーナを見た

 

「そなたら・・・ほんに全く・・・」

 

すると遠く、銀の細い笛の音のような『歌』が、波音を超えて微かに届いた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同じ頃、レグキードの港湾施設に停泊した遠征艦隊は錨を下ろすとジルは港に降りていた

 

「んーっ!予定通り着いたね」

 

「ああ・・・そうだな。しかし、噂では来ていたが・・・」

 

「こんなにも真っ黒なのね」

 

そう言ってダニエルとアミは海を覗きながら呟いた。そして次にエセックスの甲板を見た。エセックスの甲板には新型機が固定されていた。その機体はコックピットの代わりに高精度カメラが複数設置され、機体は無人機であることを示すカーボン塗装が施され、ステルス性を意識した曲線型の航空機だった

 

「XQ-00。有人機アリゲーターやホーク3の代わりとなり得る無人戦闘攻撃機・・・レギオンが航空機になったみたいだな」

 

「そうね・・・でも、この無人機が完成すれば連邦は強力な槍を得ることが出来る。それこそレギオンの完全駆逐も夢ではなくなる」

 

レギオンの停止手段を得た事を知らない二人はそんな事を話しているとジルが後ろから声をかけた

 

「二人とも〜!ちょっとこっちに来て手伝って」

 

「分かった」

 

「今行くわ」

 

そう言うと二人はジルに呼ばれて事務所に向かい今回の作戦の話し合いをしに向かった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

星暦以前より海洋をーー特に大陸とその沿岸の周りを茫漠と広がるその全域を支配してきた敵性海棲生物群。今なお海の覇権を握る海洋の支配者達だ。それを良しとしない集団がこの船団国群だった。

 

「そんでもって俺は今回、お前らと共同するレグキード征海船団国群合同海軍、征海艦隊『オーシャン・フリート』、旗艦『ステラマリス』艦長のイシュマル・アハヴだ。イシュマル艦長でもイシュマル大佐でも、イシュマル兄貴でも呼んでくれ。あ、アバヴ艦長はダメな。そいつは死んだ親父の・・・うちの艦隊司令だったおっさんの事だからよ」

 

原生海獣の駆逐と海の征服を掲げる戦闘艦の集団ーー征海船団を祖とする小国家群。かつて大陸沿岸全域に存在した征海氏族の、その最後の十一氏族を母体とする十一の船団国から成り、大陸で唯一遠洋への展開が可能な艦隊と原生海獣と渡り合うための専用の軍艦ーー征海艦を有する世界有数の海軍国だ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シンを含めた起動打撃群の面々は作戦の概要を聞くために原生海獣の骨のある博物館のホールに集まっていた。するとイシュマルの後ろにいた彼より幾らか年下の女性が口を開いた。彼女もまた船団国群の藍碧に深紅の裏地の海軍軍服を着ていた

 

()()、そろそろ無駄話は切り上げて作戦概要の説明に入らないと、起動打撃群の皆様が引いておられます」

 

「おっ、悪い悪い。まずはうちの可愛いニコルちゃんの紹介をと思っていてな・・・あ、このクールな美人は俺の妹で副長のエステル大佐だ。ぜひエステルちゃんって呼んで・・・とと」

 

エステル大佐に無言で睨まれるとイシュマルは首を縮めると後ろでは牡丹の花の刺青をした青年士官がホワイトボードを設置し、無言で去ってゆくとイシュマルは端的に作戦概要を説明した

 

「さて、じゃあ作戦概要だがーー俺たち征海艦隊が摩天貝楼拠点まで送るから、お前は要塞制圧して電磁加速砲型をぶっ倒してくれ。以上!」

 

「「・・・」」

 

あまりに端的な説明にエイティシックス達は大丈夫かこの人はと言うような視線を向けていた。するとレーナが補足をした

 

「摩天貝楼拠点は原生海獣の領域とのーー碧洋との境界線付近にあり、連邦にも連合王国にも現在、この海域に向かえる船はありません。ギリギリアルガニア連邦の遠征艦隊がついてこれるかどうかの範囲なため、征海艦とその艦隊に輸送と護衛をお任せすることになります」

 

先行して第一遠征艦隊が出撃し、その後に征海艦を中心とした艦隊が出撃。排水量一万トンの遠征艦と六千トンの破獣艦、対獣索敵に斥候艦と補給艦で艦隊を組み、原生海獣の支配する碧洋に乗り出すのが征海艦隊だ。『レギオン戦争』以前は各船団国に一つずつ、計十一の征海艦隊がこの北の海に存在していた

『レギオン戦争』からこの十年で征海艦隊所属艦も本土防衛に駆り出されーー多くが撃沈され残存艦は残りわずかとなってしまったそうだが・・・

ホワイトボードにマグネットを付けてエステル大佐が続けた。大半が海の青色の作戦図

 

「起動打撃群の輸送と往復路の護衛を船団国群海軍が担当します。この作戦に際してアルガニア遠征艦隊が先遣隊として出港し、拠点近くの監視任務を行う予定です。なお、ビートルは機体の重量の影響で陸地に残り支援砲撃を行うとの事です」

 

そう言うとシン達はビートルの大きさを思い出すと納得していた。元々重戦車型を元にさらに大型化した巨体は総重量150トン以上となっていた

 

「電磁加速法砲は現時点で400キロの射程を持つとされ、それに対し征海艦隊の侵攻速度は最大で30ノット」

 

「陸者の単位だとえっと・・・時速56キロだな」

 

「え、遅っ」

 

「誰だ今遅いっつった奴ぶっ飛ばすぞ。征海艦が何万トンと思ってんだ十トンそこそこの蚊トンボみてえなフェルドレスなんぞと違ぇんだぞてめぇ」

 

「でもアルガニアの船は100ノット出るよ?」

 

「馬鹿言え、あれはあの国の基準がおかしいからだ本来、うちより大きい船があんな速度出すのがおかしいんだ!」

 

「兄上、少し落ち着いてください。話が進みません」

 

「オリヤ少尉、失礼ですよ」

 

「悪い」

 

「ごめんなさい」

 

エステルとレーナの言われたイシュマルとリトは黙ると話は続けられた

 

「えっと・・・ああ、そうそう30ノット。つまり電磁加速砲型の砲撃域を突破し、摩天貝楼拠点に到達する為には直線距離だけでも七時間を要します。その間、電磁加速砲型の注意を引きつける為に、我らとは別に連合艦隊通常艦隊が二個、先見するアルガニア連邦艦隊と合流し、摩天貝楼の接近を試みます」

 

そう言うと作戦図に透明なカバーがかけられるとエステルが何かを書き込んでいた。一つはおそらく母校から最短経路で摩天貝楼に接近する航路、もう一つは一度北に向かい、そこで進路を変えて摩天貝楼に伸びる航路を。それぞれ書いていた

 

「本艦隊は陽動の出撃前に隠密裏に出港、砲撃域外縁に位置する北方、風切羽諸島にて待機し、陽動艦隊が交戦を開始した後、嵐に紛れる形で砲撃域を突破します。つまり本作戦は嵐の発生を待って実施される形となります」

 

「ちなみに、レギオンに海戦仕様はいねえからな。電磁加速砲型以外との戦闘は心配しなくていい・・・少なくとも、この10年、船団国群で海戦型が確認されたことはない」

 

「遺憾ながら我が国は小国です。大陸北部では我が国に有用でない海戦型よりも連合王国に対してリソースを割いているでしょう」

 

「事実、こうやって干上がっているわけだしな」

 

「・・・」

 

反応しずらい冗談で機動打撃群はまとめた

 

「ですが・・・海上にはいくつかのレギオンの小部隊が存在します。動きから哨戒中のレギオンと思われますが、それは?」

 

「あ?ああ・・・そうか。お前さんが噂の・・・そいつは海戦型じゃなくて先進観測機の母艦だ。電磁加速砲型にたいな大砲に観測機は必須だからな。まあ、その観測部隊も陽動艦隊が排除するから問題ねえ。つーか征海艦は絶対沈めないから」

 

そう言ってあっさりと答えたイシュマルは最後に言った

 

「あんたらエイティシックスが来てくれて、船団国群はホント助かった。だから・・・ステラマリスの名にかけて。お前達は生還させる」

 

そう言い残すとイシュマルは去って行った



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

各々の考え

やったー!この調子だと夏休み終わりくらいに船団国群編終わるかも


作戦室を後にしたイシュマルは次に港に停泊している遠征艦隊に足を向けた

 

「・・・やっぱあの国は凄えな。こんなデカブツを易々と作るのだから・・・」

 

そう言ってギンガを眺めると茶髪に青い瞳をした女性士官が案内をした

 

『こちらにどうぞ。イシュマル艦長』

 

「ああ、すまない」

 

そうってコーヒーを置かれたイシュマルはアイラと名乗った女性に謝礼をすると入ってきた反対側の部屋から翠緑種の女性が入ってきた

 

「お待たせして申し訳ありませんイシュマル艦長」

 

「いえ、構いません」

 

そう言うとイシュマルはコーヒーカップを飲むとジルが早速本題に入った

 

「では、我々は数日以内に連れてきた二隻を監視に向かわせます。貴艦隊は陽動艦隊に渡した装備の装着完了次第作戦準備完了とします」

 

「分かりました。現在、乗組員が渡された装備品の装着を行わせています。最短で二日後には終わるでしょう」

 

「よろしくお願いします」

 

「いえいえ、感謝はこちらからしたいです。私たちの仲間を守ってくれる貴方に」

 

イシュマルの言い方に疑問を感じたジルは少し疑問に思っているとイシュマルがその訳を言った

 

「話は聞いています。どうやら連邦科学局と大喧嘩したと・・・」

 

「ああ、その事ですか・・・いいですよ。いつもの事ですし」

 

そう言うとジルはコーヒーを飲み始めた。

 

「さて、我々は嵐が来る日まで待ちましょうか」

 

「ええ、その時まで」

 

そう言うとイシュマルとジルは作戦を合わせると艦を後にした

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

リチャードは機動打撃群の間借りしている大学の学生寮にやって来るとそこでシン達と出会った。

 

「シン、調子はどうだい」

 

「ああ、問題ない」

 

そう言うと二人は敷地内に入り、リチャードとシンと話しているとリチャードはシンの代わり様に少し喜んでいた

 

『海を見せたい・・・か。シンからそんなことを聞くなんてな』

 

そう言ってリチャードは2年前の共和国にいた頃を思い出していた。あの頃は絶望しかなく、どうせ死ぬのなら精々華麗に散るのが本望。と言った雰囲気を漂わせていたあの頃とは違い、86区からの絡みから一皮剥けた様な雰囲気を漂わせていた

 

『変わったな・・・シン』

 

そう思うとリチャードは寮にて世間話をしていた

 

「それよりシン。レーナからの返事はもらったのか?」

 

「・・・どうして知っている」

 

「そりゃ、会場は元はと言えば俺の嫁いだ家だ。知らぬ事はないさ」

 

そう言うとリチャードはケラケラ笑っていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

海上要塞の攻略作戦を前にエイティシックス達は海に遊びに行っていた。遊ぶと言っても海水浴ではなく、海中を除いて魚影を探したり、潮溜りでカニや小魚を釣ったりしていた。忙しさを背に聞きつつ、眼前に広がる海面を岩場の端に立って言葉もなくシンは眺めてた。同じ様に目を奪われていたライデンが感に堪えないと言う調子で唸った

 

「・・・すげぇな。これが本当に全部水なのか」

 

そう言うと何故か猫の様に泣き出す海鳥や海岸でリトやマルセルと共に釣りをしているファイドを見るとライデンが再び海を見ながら呟く

 

「しかもこんだけの水に味がついているとか。正直信じられねえな」

 

「舐めてみたのか?」

 

「普通に塩だよ・・・いや、ちっとばかしこう、なんか生臭かったな。あの、名産だって言う魚の卵の塩漬け、あれを薄くした感じの。つーかお前、あれ美味いって思ったか?俺は正直、生臭くてダメだったんだが」

 

ライデンは顔を顰めながらシンに言った。それは駐屯基地にトーストに付ける物として置かれていた朱い魚卵の塩漬け。船団国群伝統の保存食だといい物珍しさに多くのものが手を出していた。シンもそのうちの一人だった

 

「いや?特に苦手とは思わなかったな」

 

「・・・お前、本当舌バカだな・・・」

 

そう言うと近くで貝殻を拾っていたフレデリカが口を挟んだ

 

「シンエイめの味覚音痴についてはさておき、あれについては好みの問題であろ。少なくとも妾は好きじゃが」

 

「というか、トースト以外も山ほど食べていたな」

 

「レディになんと言うか!これは成長期なのじゃ!」

 

そう言って顔を赤くすると後ろから声をかける人物がいた

 

「シン、ライデン。海はどうだ、なかなか面白いだろ」

 

「リチャードか・・・ああ、なかなかな」

 

そう言いながらリチャードはフレデリカを肩車した。リチャードの身長は184センチと大きく、その分フレデリカに見える視線もだいぶ高かった

 

「おお!これは良いのじゃ。海がよく見えるぞ・・・と言っても、荒れた真っ黒な海しかないがのう・・・」

 

そう言うとフレデリカはいきなり肩車された事に驚くと共に水平線を見ていた

 

「ははっ。まあ、それは仕方ないさ。さ、どうだいお姫さんこれで海は満足したかい?」

 

「お主・・・分かって聞いておろうに」

 

そう言うとリチャードはフレデリカを下ろすと海岸線を歩き始めた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ギンガ艦内の情報室ではジルがアイラやダニエル、アミと共に情報をまとめていた

 

「しかし・・・明らかに戦死者数と戦闘の規模があっていないわね・・・」

 

「それだけ窮地に立たされていると言う事ですよ。船団国群は既にアルガニアの亡命政府案に賛同し、現在子供や老人の避難が始まっています」

 

「だが、この情報だけは不可解に思えるな・・・」

 

「本来後方支援の回収輸送型・・・それが前線で確認されるなんて・・・」

 

「方針転換でも行ったのかしら?」

 

今までのレギオンならあり得ないことが起こっている現状、ジル達三人は危機感を募らせていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「戦場の外の街は平和って思っていたのだけれど・・・」

 

そう言ってアンジュは基地の食堂のおばさんに言われて船姫の祭りが行われているという街に向かった。船姫の祭りは征海船団に属する船の艦首像に宿る精霊を祀る祭りでアルガニアでも造船所のある街で行われていると言う。アンジュは街を歩いた時に荒廃感を感じていた

土埃に傷んだ建物。割れた舗装に立ち枯れた回路樹、建物の機能としては成り立っているが、補修が行われていない様子だった。

走り回る子供達も繕いの古い服を着ており、祭りなのに乏しい出店とささやかな合成品の菓子類。

乱立する様に立ち並ぶ避難民のプレハブ住居。

10年にわたり生きながらえてきた船団国群の()()

 

「連邦や連合王国。アルガニアが特別なだけだったのね・・・他の国はもうとっくに限界で・・・」

 

そう言ってとことん切り詰めて生活している現実を知ったアンジュの隣でミチヒが呟いた

 

「ーーでも、お祭りはするんですね」

 

そう言って絶望の中、どこか必死に笑いながら営まれる民族の祭り

 

「ここにいる皆さんは羨ましいです。誰もがこんなに苦しくてもやらないといけないと思えるほどに、大切なものを持っている事に・・・」

 

 

 

大切なもの。何をおいても執着するものーー己の形を規定する何か

エイティシックスにはそれは唯一抱えた、戦い抜く誇り以外には、未だなかった

 

 

 

 

「既に、アルガニア連邦に亡命政府の設立と子供や老人などの避難が始まっているとのことです」

 

「そう・・・あの国が・・・」

 

レギオン戦争の中で最も被害が小さい国、アルガニア連邦。彼の国の持つ科学力はレギオンを圧倒しつつあった

 

空中艦隊

 

今まで苦境に立たされた各国の勢力図を一新するアルガニア連邦の科学力の神髄。アルガニアは持てる科学力を使い、レギオン戦争を優位に立たせていた。被害が少なかった事から存命が判明している国の亡命政府樹立と避難民の受け入れを無制限にする『レギオン戦争における緊急移民法(通称ワグナー法)』が制定されて以降。西方諸国に存命していた国々はその殆どの避難民をアルガニア連邦が受け入れていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一旦は海辺にいたが街に戻ったセオだったが身の置き所がなかった。小さな街なのに人はやたらと多く、その奥が自分やあの兄妹などと同じ翠緑種の血筋だった。元々大陸南部の沿岸地域にいた一部の翠緑種が原生海獣を追って移り住んだのが船団国群だった。だが、ここに血族や知己はいない。当然、この祭りも知らなかった

人の世界の外側ーー八六区と同じ、人でないものが支配する場所に

己と仲間だけを頼りに、戦場に生きる

それはつまり、己以外に拠り所がないと言う事だ

そのことは八六区を出た時に何度か自覚していたーーだが、なぜか痛かった

 

戦争を終わらせる手段があると知り、それが現実のものとなると意識させられたせいでもあると思う

だが、それ以上に最初にシンが、続いてライデンやリト、アンジュ、カイエまでもが未来を目指して進み始めていた。

 

 

怖い

 

 

何が自分にとっては希望なのか、それとも未来なのか。それすら分からないのに得られるとも思えず、どうして良いか分からなかった。自分を追いかけて来る影から逃げる様にフラフラと歩き回っているといつの間にか基地に戻って征海艦のドックに入り込んでいた




アニメを既に10回以上は見ているけど最後のシーンの作画が神すぎて泣ける!!(あとシンが電磁加速砲型を倒した後にレーナと画面越しに対面した時のシーン。あそこめちゃ良かった!!!)


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

デコイの艦艇

セオは征海艦のドックに入るとジャガーノートとは比べ物にならないほどの大きさの格納庫にキャットウォークと同じ高さにある艦橋に改めてその大きさを知った。遠征艦隊の艦船も同じ船ではあるがあっちとは違い、また別の何かを感じていた

 

アルガニアの空母という種類の艦船とこの征海艦はおそらく同じものだろうと予測し、船団国群のように原生海獣を倒すのか、など考えていると艦橋に掲げられた女性の像を見ていた人が振り返った。

金髪の髪と翠緑の双眸。藍碧の軍服に焔の鳥の刺青。イシュマルであった

 

「・・・あれ。坊主、機動打撃群の・・・・・・・・・・・・・・・・・えっと」

 

「僕の名前ならリッカだけど」

 

「おう、わるい。俺ら相手を刺青で見分けってから、顔だけだといまいち区別つかなくってな」

 

そう言われ、セオは刺青を見ていた。民族ごとに違う刺青。それを見ているとイシュマルはさらに声をかけた

 

「他の連中と一緒に海に行かねえの?共和国も連邦も今、海がねえって聞いているけど」

 

「行ったよ。でも・・・飽きちゃったから」

 

「街で祭りをやってるけど、そっちは?」

 

「・・・別に」

 

「お前さん、翠緑種だよな。どこの出なんだ?共和国に移民する前のご先祖は」

 

「・・・?厳密には色々混ざっているらしいけど」

 

「あー誤差誤差。そう言う純血なんかはお貴族様だけで充分だ」

 

「・・・エレクトラってとこ・・・二百年くらい前だと思う」

 

「じゃあ、俺らと似た感じか・・・ざっと1000年前だけど、おかえり坊主」

 

「ーーー」

 

思わず無言で反発をしてしてしまった。するとイシュマルは飄々と肩をすくめていた

 

「そう言うとこだぜ。どうにも、揶揄いたくなっちまうのはさ・・・毛逆立った猫みたいだぜ。お前さんに限らず、エイティシックスって奴はさ。仲間だけで固まって、壁作って片っ端から周りの人間弾いて・・・まあ、そうでない奴もいるがな」

 

そう言って笑うとイシュマルは突如手を振った。視線の先にはゆっくりと進み始めるドレッドノート級主力戦艦がいた

 

「あれは・・・何しているの?」

 

「先に拠点の監視のために出港して行くんだ。あの事故で目の変わったえっと・・・」

 

「ジル・スミス?」

 

「そうそう、ジル。あの娘が余計な人命を失わないようにって言って考えた作戦さ」

 

そう言うとイシュマルは出撃して行くドレッドノートを見ながら言った

 

「彼女は・・・ジルは初めの俺たちの考えた作戦に猛烈に反対したんだ。作戦のためとは言え、無駄に命を捨ててはならない。そう言って最初は彼女の艦隊だけで向かうと言っていたんだ。だけどそれじゃあ申し訳ないって思ってな。俺たちで話し合った結果、電磁加速砲型のヘイトと防衛は遠征艦隊が、拠点への攻撃が俺たち陽動艦隊の役目になったんだ。元々国一個を防衛陣地にする為に俺たちは最初に国を捨てた。そのうちの一つがクレオ船団国」

 

「・・・あ」

 

似ている。レギオンの侵攻時に国土の大半を放棄し、八六区という戦死者ゼロの戦場を作り出した共和国に・・・

するとイシュマルはパタパタと手を振った

 

「・・・そんな顔しなくても、お前らほどやばい事はされてねえよ。銃で脅されたわけでも、何も取り上げられちゃいねえ。持てるもんは持ってこれたし、逃げた先でも特に差別はなかった。まぁ、住むところは仮設だったが、苦しいのは同じだ・・・うちの艦隊司令なんか征海艦と艦隊一個、丸々持って逃げたわけだしな」

 

艦隊司令と言った人物は死んだ・・・おそらく戦死だろう。

持っているわけじゃなかった

自分達と同じだった。故郷も、家族も、伝統や文化も、何もかも奪われてしまった。自分達と

 

「ごめん・・・それと、その・・・ありがとう」

 

セオは自分の灯った明かりを目にしたような気分になった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大学の礼拝堂に集まったジル達は少し和やかな雰囲気となったところでホロウィンドウに映し出した

 

「これが摩天貝楼拠点の最新映像です」

 

そう言って3Dで映し出された地図は鉄骨の骨組みだけから成る、どこか生き物の死骸のような、それでいて巨大な海上の要塞

 

「最上部までの高さは推定120m七基の塔が中央に本塔が一つ、それを支える柱が六つ。内部は10から12ほどのフロアに分かれており、ここにジャガーノートの三個支隊を投入、攻略します」

 

ステラマリスに搭載可能なジャガーノートは150機ほど。残る戦力は陸上にて大きさ上むかえないビートル隊と共に残る事となった

 

「リト・オリヤ少尉、レキ・ミチヒ少尉。貴方達の隊は陸上にて遠征師団残留部隊と共に残ってください。拠点戦闘が開始されるとレギオンが攻勢に出る可能性があります」

 

「了解」

 

「了解なのです」

 

「任せてください」

 

「敵編成の変更がある可能性があります。即応できるよう備えておいてください」

 

「連邦に追加の弾種を頼んだのはそれでか。アルカノストもこの作戦では俺が指揮する斥候以外は防衛線配備だな?ザイシャを指揮官に残していくから、合わせて使ってくれ」

 

そしてシンが口を開いた

 

「目標となる羊飼いは聞き取れる限りでは二機。電磁加速砲型と、拠点が工廠だとーー自動工場型だというならその制御中枢と見て良いと思います。ここからは距離があるので数しかわかりませんが、近づけば正確な位置も知れる。レルヒェたちを斥候に、俺が先導するので問題ないかと」

 

「敵情分析の為に可能なら制御中枢を奪って来いと指示が出ていますが、無理はしないでください・・・優先度は低いと私は判断します」

 

無茶な指示にレーナが眉を顰めながら言った

 

「了解」

 

そういうと今度はリチャードが口を開いた

 

「現在、二隻のドレッドノート級が拠点沖合300キロの地点で、アリゲーター航空小隊が100キロ地点で監視を行なっています。現在、小隊は十二機のうち三分の一の四機が撃墜。ドレッドノートに気付いた様子はなく、両艦ともに被害なしです」

 

「分かりました・・・感謝します」

 

ここにいる殆どの人員はまだ知らないが現在出撃しているドレッドノート、アリゲーター共に無人である為、人的損害は皆無だった。だが、リチャードが戦死した人数を言わなかった為に、レーナ達は落とされたパイロット全員は生還していると勘違いをしていた。そして作戦会議が終わり、人が出ていく中。イシュマルがリチャードに声をかけた

 

「なあ、リチャード師団長」

 

「何でしょうか?」

 

「その、ジル司令に伝えておいてくれ。装置は全て設置完了と。探したんだが見つからなくてな」

 

「ああ、分かりましたよ。そうお伝えしておきます」

 

そう言うとリチャードは礼拝堂を去って行った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

作戦会議を終え、真っ先に礼拝堂を出たジルはシン達の運んできたコンテナのある一つの扉を開けた。

 

「お久しぶりです。ゼレーネさん」

 

そう言ってコンテナの先に座っている一台の人型ロボットを見るとロボットことゼレーネは閉じていた瞼を開けると喋り始めた

 

『あら、来てくれたのね。嬉しい限りだわ』

 

そう言って機械音の声を発しながらゼレーネはジルを空いていた隣の箱の上に座らせた

 

「お久しぶりです・・・と言っても一ヶ月ほどですが・・・」

 

「そうね、わたくしがギアーで連邦に運ばれて一ヶ月。この体もついこの前、渡されたもの」

 

そう言いながら自分の腕を動かしたゼレーネはアルガニアの生産力に舌を巻くとジルが早速本題に入った

 

「それで、今日私を呼んだのはなぜですか?」

 

『あら、気が早いのね』

 

「・・・すみません。どうしてもせっかちなもので・・・」

 

『良いわよ。そう言うところもレンに似ているわね』

 

そう言うとゼレーネは呼び出した理由を伝えた

 

『今日呼んだのは他でもない。零システムの話よ』

 

「零システムですか・・・?」

 

ジルは零システムと言う言葉に反応してしまった。ゼレーネはさらに話を続けた

 

『ええ、実の事を言うと零システムは私とレンが開発したものじゃないの』

 

「母やゼレーネさんが・・・作らなかった?」

 

ゼレーネの告白にジルは疑問に思うとゼレーネはその訳を話した

 

『そうよ、零システムはあなたが受けた身体強化手術中に偶然生まれた神の産物とも言うべき代物・・・私達が開発したものでは無いわ。それこそ、何兆分の一の確率で起こった()()

 

「それは・・・」

 

ゼレーネの告白にジルは唖然としているとゼレーネは注意を促した

 

『気を付けなさい。零システムは今の人類の手には余る力。いわば禁断の果実そのもの。零システムはあなたが支配していると言っても過言ではない。その気になればレギオンと同じ道を辿ることすらできるわ。そのことに注意しなさい』

 

「・・・分かりました」

 

ジルは少し遅れて返事をすると自分の持っている力の大きさに恐怖していた



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

陽動艦隊

作戦会議から数日後、ギンガ第三艦橋で天気図を見たジルは呟いた

 

「嵐が来る」

 

天気図に映った大規模な低気圧を確認すると次にイシュマルから連絡が入った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数時間後、港では今回の揺動に導入される二個艦隊が出撃準備を完了させた

 

『全員乗艦、配置完了。全艦出撃準備完了』

 

アイラの報告を聞いたジルは艦長席で頷くとアイラは命令を出した

 

『全艦出港せよ。陽動艦隊はポイント854にて集結。陽動作戦を開始する』

 

そう言うとギンガを含めた第一遠征艦隊、陽動第一、第二艦隊は港から出撃をしていった。出港して行く艦隊を陸に残るリチャード達や街にいる人々が手を振って見送っていた

 

「いよいよ始まりましたね」

 

出撃して行く艦隊を見ながらビートル隊のジークが言った

 

「・・・」

 

リチャードは今回陸地に残り、レギオンの対処を行う。心の中でギンガに乗艦している妻と妹の無事を祈っていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

出港した艦隊は予定地点にて集まるとジルが無線放送を通じて話し始めた。敢えて公開チャンネルにしてレギオンに盗聴させ、シン達から注意をそらす為に

 

「アルガニア連邦第一遠征艦隊司令官ジル・スミスです。今日、ここに集まったすべての人にまずは感謝の意を示します」

 

ジルはまず最初に挨拶をすると次に感謝をした

 

「今回我々はレギオンから奪われた領土を取り戻す為に出撃しました」

 

レギオン達に陽動艦隊が攻撃部隊だと思わせる為に作戦概要を伝える

 

「今回出撃に協力してくれた艦船はその持てる力を持って出来ることをやり遂げて下さい」

 

そして最後にジルはここにいるすべての乗組員に伝えた

 

「最後に、この作戦中に危険を感じれば逃げて下さい。熟練兵を失うことは国家の存亡にも関わります」

 

この言葉に全員が耳を傾けた。逃げると言う言葉に驚き、疑問を感じていた

 

「既に知っていると思われますが、アルガニア連邦は多くの国からの避難民を受け入れています。その中にはレグキート船団国群も含まれています」

 

ジルの発言に陽動艦隊乗組員全員が耳を傾けた

 

「ここにいる艦隊には既に連邦への座標が送られています。自分の命を投げ出すようなことはやめてください。レグキート船団国群のことを伝えられるのはレグキート船団国群で暮らしていた人しか伝えられないのですから」

 

ジルの言葉に乗組員達は少しの沈黙のうち、全員の間で同じ気持ちになりつつあった

 

「では、これより作戦を開始します」

 

ジルの号令と共に通信は切れた。そして艦隊は監視を行なっていたドレッドノート二隻を呼び寄せ、ネバダを中心に輪陣形の形でギンガが先行して艦隊を率いていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『では、作戦を開始します』

 

ある場所では人類側の通信を聞いていたあるレギオンはこれから大規模な作戦があると認識した

 

《こちら、ファミラ。敵が作戦行動に入った模様。迎撃をもと・・・》

 

暗号化された通信を入れようとした瞬間、通信を傍受した観測機母艦は光線と共に燃え上がった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『敵、観測機母艦轟沈。続いて方位14距離10000。弾種エネルギー弾。撃て』

 

「全艦、攻撃を開始せよ。おそらく先の通信傍受されていると仮定。電磁加速砲型の砲撃が来る思われる。ネバタに通達、これより作戦行動を行え」

 

ジルの通信を受けたアミは艦隊中央に布陣しているネバタの波動共鳴波装置を起動させた

 

「波動共鳴装置起動。さらにエネルギーブースター起動」

 

コンソロールを動かし、波動共鳴波装置が稼働すると共鳴波装置を起点に陽動艦隊全艦に波動防壁が展開された。陽動艦隊にはあらかじめ遠征艦隊から供与された波動コイルが装備されており、波動機関を搭載していない艦艇でも波動防壁が展開されていた

 

「「おぉ・・・」」

 

自分の艦の周りに最強の盾が展開された事に驚くと早速先行していたギンガに強い衝撃波が起こった

 

「電磁加速砲型の砲撃確認。残弾99」

 

弾速が早い為に、発砲とほぼ同時に800mm砲弾が着弾していた。これより、波動防壁がどれだけ電磁加速砲の砲撃を耐えられるかのチキンレースが始まった

 

「電磁加速砲型の注意を引きつける。これよりギンガは電磁加速砲型の有効射程圏内に突入する。陽動艦隊は現在の射程を維持したままロケットランチャー、並び対艦ミサイルによる攻撃、砲撃を行い、観測機母艦を撃沈されたし」

 

そう言うとギンガは陽動艦隊から離れ。拠点の方角に舵を切った。ギンガについて行こうとする艦もあったがジルが頑なに拒否をしていた

 

「貴女達は引き続き観測機母艦を撃破してください。ギンガの個艦戦闘能力は高いです。それに、ドレッドノート二隻を護衛につけます」

 

そう呟くとジルはアイラに指示を出して艦を動かした

 

「取り舵120、第一船速で拠点に進路変更。ネバダのエネルギーブースターの範囲限界地点まで接近」

 

『了解、ギンガを接近させます。残弾87』

 

「随時、残弾数の報告を。シン達が安心して拠点に入れるように徹底的に撃ち込むわよ。一・二番砲塔燃料気化弾装填。撃て!」

 

それぞれ観測機母艦に標準を合わせた砲塔はレーダーに写った反応を片っ端から撃ち抜いていた

 

ドゴォーン!!ドゴォーン!!

 

大規模な爆炎と共に海面が大きく盛り上がると観測機母艦は激しく轟沈していた。元が接収した貨物船がや漁船が多い為、簡単に沈めることができ。砲弾が一個でも当たれば爆沈。もしくは轟沈していた

 

「このまま、限界点を維持。狙って当たる範囲を・・・」

 

すると陽動艦隊の端を航行していたフリゲート艦の近くで海面で爆発が起こり水柱が上がった。幸い、防壁に守られ、フリゲート艦に傷一つなかった。だがジルの中で動揺が走った

 

『何故だ!?何故フリゲート艦に届くんだ・・・?っ!まさか!最大投射距離で撃っているのか!!だから榴弾を!』

 

勘違いを起こす場合が多いが無誘導兵器などでは射程=最大射程距離ではない。これは射手や砲手の人的要素にもより、飛翔経路にばらつきがあるため最大投射距離>有効射程となる場合が多い。そこれレギオンは最大射程で有効射程外にいる艦隊に砲撃をし、尚且つ広範囲に3000℃に熱せられる金属片を撒き散らす榴弾を使い砲撃をしていた

 

「だから榴弾を使ったのか。より広範囲を攻撃するために・・・小さくとも被害を出すために・・・放心に熱を持ちにくい電磁加速砲ならできる技・・・っ!何だ!?」

 

ギィン!!

 

そう呟いた次の瞬間だった。意識が一瞬だけ逸れた瞬間。金属音の擦れる音と共に、第二砲塔と第一副砲塔の間の部分に()()()つき刺さっていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ジルの無線は当然ステラマリスにも届いており、戦闘が始まった事を知らせた

 

「陽動艦隊が作戦を開始しました」

 

「ーー了解。聖エルモの加護あれ」

 

エステルは無線封鎖中で届かない祈りをひっそりと返した

 

「オーシャン・フリート各艦に通達。陽動艦隊が交戦開始、進攻を開始されたし」

 

同じ頃、船内ではツィカーダを着たレーナの姿を見たシンがそれを開発したヴィーカを殺しにかかろうとする珍事が起こっていた

 

「むっ、嫌な予感がする・・・」

 

「まさかあのエロスーツがシンにバレたとか?」

 

「それはまずいな。どこから漏れた?」

 

「いやあの、俺が言うわけないだろ!?うっかり口を滑らしたら俺がまずノウゼンに殺される。その上殿下にも殺されるんだぞ!」

 

「よく分かっているな、マルセル。実際、卿が口を滑らせたならノウゼンの手にかかった後、俺が直々に蘇生させてもらう一度頭から皮を剥いだ後でな」

 

「!?」

 

「殿下、『シリン』を設計なされた以上。冗談に聞こえませぬゆえ、控えられた方が・・・」

 

そう言ってレルヒェがヴィーカに呟いていた。クレナは機嫌が悪い猫のように言った

 

「で、今は王子殿下がステラマリスから蹴落とされるか。補修用で積んである斧で頭をかち割られる寸前見たいだけど・・・どうすんの殿下」

 

「何、問題はない。聖女のようなミリーゼが庇ってくれよう。ノウゼンもミリーゼに言われれば止まるだろうからな」

 

「王子殿下。次の作戦とかで誤射してもいい?」

 

ヴィーカの言葉にクレナは否定できないがために軽く死んでほしいと思っていた。そしてもう戦闘を始めている友人の無事を思っていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

二隻の斥候艦を戦闘に征海艦が中心となって輪陣形で進むオーシャン・フリートは、やがて嵐の勢力圏内に突入した。

厚く重い不吉な雲が空を覆い、叩きつけるような豪雨が視界を白くし、風はよく変わり、雨と共に装甲化された飛行甲板に打ち付けていた。うねる波が船体を上下に揺さぶり軋ませていた

 

摩天貝楼拠点まであと180km




電磁加速砲型が榴弾を使っている元ネタは日本海海戦で連合艦隊がバルチック艦隊に榴弾を放ち、艦橋にいたバルチック艦隊乗組員を全滅させたと言う古事記に基づく



ちなみに、作者は有効射程=最大射程と中3まで思い込んでいた人間です



問題
ヤマトに登場する突き刺さる兵器は何でしょう?(ヒントは2202です!)


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

女神

征海艦の艦橋は、航海の指揮と艦隊全体の戦闘の指揮を執るために統合艦橋が二階層をぶち抜く形で置かれ、操船要員と指揮系統の要員が詰め、更に今回の作戦では機動打撃群の指揮官であるレーナと管制要員が予備のスペースを使っていた

 

統合環境の窓は装甲板で防がれ。代わりに無数のホロスクリーンが外に映る嵐の様子を映し出していた。レーナはシンから借りたワンサイズ大きめの鋼色の軍服を着て少しふわふわとした頼りない足取りで入ってきたがホロスクリーンを見て銀の瞳が緊張感を取り戻した

 

「艦長。そろそろ最終ブリーフィングを」

 

「おー、了解・・・エステル。指揮をーー・・・」

 

「兄上!」

 

イシュマルの言葉を遮って蔓模様の通信士官が言った。予定にない通信にイシュマルのみならず艦橋にいた全員が緊張した様子を見せた

 

「・・・出してくれ」

 

「了解」

 

通信士官がコンソロールを操作し、陽動のミシア艦隊からの通信が統合艦橋に響いた。連邦が供与したレイドデバイスではなく。無線で

 

『アルシェ第八艦隊、聞こえるか!』

 

オーシャンフリートを隠すために敢えて同じ陽動艦隊の名前を使っているが。無線の声は焦った様子だった。無線を使ったのも、おそらくレイドデバイスを忘れさせるような出来事があったのだろう。そう予測しながら通信を聞いた

 

『こちらミシア第九艦隊旗艦エウロパ。ーー新型レギオンの攻撃でギンガ大破!その他艦艇に被害無し!そちらは今もフリゲート艦二、快速艇一のままか!?』

 

ギンガ大破。その言葉だけで艦橋は騒然とした。アルガニア最強を誇る空中艦。その最大の盾となる波動防壁を突破してギンガに攻撃が当たった事となる。どうやって波動防壁をくぐり抜けたのか。だが、そこは問題ではなかった。イシュマルは慌ててレイドデバイスに手を取ると慌てて確認を取った

 

「エウロパ。こちらステラマリス。状況を教えてくれ」

 

そう聞くと返ってきたのは拠点に近づき、電磁加速砲のヘイトを買っていたギンガが新型のレギオンと思われる兵器によって第二砲塔下部に突き刺さり弾薬庫に引火。燃え上がっているとの事

 

「船内要員の回収は?」

 

『はっ!現在、乗員の救助を行なっているとの事です』

 

「そうか・・・分かった。では、貴艦隊もその新型レギオンに注意されたし」

 

『了解』

 

レイドデバイスと通信が切れるとイシュマルは艦長席に深く座った

 

「はぁ・・・なんて事だ。何故よりにもよって貴女が・・・」

 

イシュマルの言い方にレーナは不思議に思うとイシュマルは告白した

 

「まぁ・・・この際言っても問題ないか。実はこの作戦、本当は陽動艦隊全滅を覚悟していたんだ」

 

「それは・・・」

 

イシュマルの告白にレーナは固まっていた。だが、確かにそうだった。去年の大攻勢でギアーデ連邦は大量の巡航ミサイルを駆使し、電磁加速砲型を大破に持ち込んだ。地面効果翼機を投入し、一個戦隊をその喉元まで送り込んだ。

高価な巡航ミサイルを保有する国力も。独力で地面効果翼機を開発する技術力もない小国が射程400kmの砲撃域を突破するには人血を持って争うしかない。

最初の案にレーナは俯くとイシュマルが声をかけた

 

「そんな顔をするな。それに、その計画に待ったをかけたのがあのジル司令だ」

 

そう言うとイシュマルはことの経緯を話した

 

「ジル司令はアルガニアに作った船団国群避難所に避難してきている人数の少なさに真っ先に連絡を取ってきてな。本当の事を明かすと電話越しで俺を怒鳴って何とかするからと言って。その後に、俺達に何かの装備を渡したんだ。名前は教えてくれなかったがおそらく例の波動エンジンとやらを使った兵器だろうと思ったさ。そしてジル司令は俺達に言ったんだ『貴女達はこれ以上誇りを捨てないで下さい。これ以上の誇りを捨てて仕舞えば何も残らなくなってしまう』ってな」

 

「・・・」

 

ジルの行動力に驚くと共にジルの意見に賛同できる所もあった。そしてイシュマルはその言葉に思わず戸惑ってしまったと言っていた

 

「本当、いい歳した大人が若い女性に怒られてしまったさ・・・でも、有り難かった。大切な家族を失わずに済んだのだから・・・」

 

イシュマルは帽子を少し深く被りながら話した

 

「だからこそ。俺たちは彼女の為にこの作戦に参加したんだ・・・なのに・・・」

 

そう呟くとイシュマルはレイドデバイスを起動するとマイクを手に取った。全長300mの艦隅々にまで届く艦内放送。知覚同調の対象は征海艦隊全構成艦の艦長と副長、通信士官に

 

「各位。こちらはステラマリス艦長、イシュマル・アバウだ」

 

返事はない。だが、征海艦を動かす血潮である乗員達の謹聴の気配

 

「本艦隊は現在、敵本拠まで直線距離一八〇キロの位置にある。陽動艦隊は敵砲と交戦中・・・残念なことにギンガは新型レギオンの攻撃で大破した。しかし、我らオーシャンフリートはギンガの救ってくれた命に報いる為に予定より早く戦端を切る」

 

ギンガが大破したことに驚愕した乗員達であったが。イシュマルはまず征海氏族でない彼らに声を掛けた

 

「エイティシックスたち。摩天貝楼拠点に着いてからがそっちの出番だ。しばらく揺れるが、ビビんなくていい。むしろ滅多にないアトラクションだと思ってくれ。征海艦はーーこの艦だけは、沈めない」

 

自国を守るために少年兵の力を借りてしまった。無論ギアーデ連邦が善意で機動打撃群を寄越したはずはない。けれど、自分達船団国群が、自国の失態に巻き込んでしまった子供達。

絶対に生きて帰さなければならない。何としても彼らだけは、無事に陸まで送り返す。

それが艦隊を守る守護神(波動防壁)を渡してくれたアルガニア連邦の見返りだから・・・

 

「最後の敵は屑鉄になってしまったが、先に逝っちまった艦隊司令達が悔しがるような航海としよう。俺たちを救ってくれた女神に恩返しをしよう。千年語り継がれるような勇猛と果敢を見せてやろうぜ・・・これこそが、」

 

千年後、子孫達は語るだろう

 

「我らが、()()()()()()征海艦隊ーーその最後の征海航海だったと言われるように」

 

最後という言葉にレーナはまるで征海艦隊がこの作戦で永遠に失われてしまう様な言い方に信じられなかったが。知覚同調越しに艦橋一階のフライト・コントローラールーム、そこにいるヴィーカが呟いた

 

『ーー航空母艦は・・・軍艦では最大の火力を誇るが、それ一隻では極めて脆弱な艦種だ。周囲を護衛と警戒、防空を担う駆逐艦と巡洋艦に固められて初めて制空戦闘に専念できる・・・護衛を失えば容易く撃沈される。征海艦隊でもそれは同じ、という事だろう』

 

イシュマルガ言うには征海艦隊はこの作戦後、アルガニア連邦に殆どの艦艇の売却と解体が決まっているとの事。売却で得た金で亡命政府の資金にするのだと言う。征海艦隊を失うという事は、それはレグキート征海船団国群の誇りもまた失われるという事だった。誇りを失っても祖国を生きながらえさせる為に。

 

小国故のーー力なき無惨

 

イシュマルはその事をまるで感じさせずに、楽しみにしていたハイキングのように言う

 

「お前達との戦いは俺が見届ける。俺とステラマリスが語り部となる。百年にわたって爺になっても、最後の息まで語ってやるさ。そんで千年後にはステラマリスが、彼女だけが征海艦隊と征海氏族の存在、船団国群のかつての誇りのありかを記念碑として証立ててくれるだろうよ。だから、派手な戦いにしようぜ」

 

そう言うとイシュマルはマイクを切った




原作9巻までの内容は《一応》毎週投稿の予定です(途中でやる気なくなって終わる可能性大)


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

誉れ

「・・・それで、見送りが」

 

艦載機の状況を把握する為の管理卓が中央に置かれた臨時のブリーフィングルーム。その室内でシンは沈鬱と呟いた。深夜の出航にも関わらず、街の人全員が出て来たかのように海岸に集い、いつまでも手を振っていた見送りの人々

彼ら、あるいは船団国群の国民全員が知っていたのだろう。

この作戦で征海艦隊は最後になると

船団国群の国号に冠した誉をーー今日を最後に、失うのだと

 

征海艦隊は無線封鎖中だが、この作戦では艦長、副長、通信士官が供与されたレイドデバイスを使用し、艦を隔てた通信を行っていた。イシュマルの言葉は周りにいる三隻の遠征艦と一回り小型の六隻の破獣艦、二隻の斥候艦にも伝えられる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

マイクを切ったイシュマルは艦長席を立った

 

「エステル、ブリーフィングの間指揮権を預ける・・・待たせたな、ミリーゼ大佐」

 

「了解、兄上」

 

「いえ・・・あの、イシュマル艦長、」

 

イシュマルは今にも泣きそうなレーナに苦笑をしていた

 

「だから、そんな顔をしなくていいさ。アルガニアに行けば亡命政府が設置してあるし、死んでいくわけじゃない」

 

ブリーフィングルームに行く為に廊下に出て歩きながら続けた

 

「元々ロクな産業もない小国がそれに見合わない無相応な征海艦隊なんて抱えてたんだ。戦争が長引けば何もかも苦しくなって維持できなくなるのは時間の問題だった」

 

軍艦特有の狭い階段を降りながらすれ違った乗員が敬礼をして道を開けていた

 

「それが今日だってだけの話で。最後って言ってもちゃんと役目を果たしての最後なんだからまあ、まだマシってもんさ」

 

「ーーマシなわけないでしょ」

 

そう言いながら少し息をしらしてセオが上がってきていた

 

「リッカ少尉・・・」

 

「故郷を取られて、本当の家族だってその後失くしたんでしょ。その上誇りまで棄てる事になってーーどうしてそれを受け入れられるのさ!?」

 

少なくとも自分ならできない。エイティシックスの誰もが出来ないはずだとセオは言った

帰るべき故郷もなく、守るべき家族もなく、受け継いだ文化もない。戦い抜く誇り以外に、自分の形を規定する物が何もない。

だからその誇りさえ奪われる事を何より嫌いーー恐れていた

 

それなのに

 

同じように故郷も家族も失い、その上征海という誇りさえ戦火に奪われようとしているイシュマルはーーーこの征海艦隊の乗員達は、どうしてそれを受け入れて

 

あまつさえ、笑って

 

「・・・そうだな」

 

イシュマルはセオの叫びを受け止めると少し考えて口を開いた

 

()()()は・・・あの原生海獣の骨は元々、俺の故郷の総督宮殿に飾ってあったんだ。戦争が始まって国土を放棄する事になった時、オヤジは征海艦隊に詰め込めるだけの避難民とどうにかニコルを積んで港を出た。戦争は多分、すぐには終わらねぇ。祖国には長い間帰れなくなるだろうから、だからニコルが・・・祖国の象徴が一つでも残っていれば皆の心の拠り所になるだろうって」

 

クレオ船団国群の征海艦隊は、象徴として残る事は出来ないだろうと、艦隊司令はその時には覚悟していた。旗艦ステラマリスも、艦隊に属する征海氏族の子供達さえ。

その予測は、残念ながら正しかった。十年にも渡るレギオンとの戦争で艦隊司令も、クレオ船団国群所属艦も海の底に沈んでしまった。

どうにか生き残ったステラマリスの乗員も去年の大攻勢で慣れない陸戦に駆り出され、散っていった

今やニコルとステラマリス、そしてクレオ征海艦隊唯一の生き残りのイシュマルだけが祖国の存在した証でーーステラマリスとイシュマルもこの作戦で役目を終える

その、喪失に、けれど

 

「今ニコルが置いてあるあのホールは、本当は彼女の為のものじゃない。元々あそこはあの街が代々受け継いできた魚雷艇の、その最後の竜骨が飾ってあったんだ・・・俺たちのために船団国群全体の為に自分たちの誇りを仕舞い込んで譲ってくれた。あの街も故郷。あの街が今は俺の故郷だーーそう、得られるんだ。たとえ何か失っちまっても、生きてりゃいつか、同じくらいに大切なものが。嘘でも拠り所になってくれる物が」

 

言葉とは裏腹。イシュマエルはどこか消えていくように、茫漠と広がる海に溶けて消えてしまいそうに、儚く笑った

 

「船団国群の歴史は、敗北の歴史だ。原生海獣だけじゃない、隣の二大国に侮られ、蔑ろにされて多少まともな土地は全部切り取られて、それでも残った国土と征海艦隊を生き残らせる為に媚び諂って生きてきた・・・負けて失ったとしても生きないといけない。元々それを知っているから。だから・・・また何か目指せば良いって事を知っているんだ」

 

「ーーそれで結局何も、得られないまま死んだらどうするのさ」

 

セオは駄々をこねる子供のように首を振って否定をした

 

「奪われてばかりで、失くしてばかりで・・・結局、代わりに何かなんて手に入らないまま死んだらーー何も報われないまま死んだらどうするのさ!?」

 

イシュマエルは笑う

 

「そんなちっぽけな国を大切にしてくれた国もあったのさ」

 

そう言うとイシュマエルはある方向を見た。その先にはアルガニア連邦があった

 

「アルガニアの連中はそんな俺たちを守ってくれた。俺たちの為に最初に自国の技術を売ってくれた。時には軍隊を駐留させて国を守ってもらった事もあった」

 

船団国群の歴史を語るとアルガニア連邦を深い関係にある事を知ったセオはそのまま黙って聞いていた

 

「だから俺たちの国はアルガニア連邦に昔っから助けられているんだ。そして今回も、アルガニアに助けられた・・・」

 

そう言うとイシュマエルは小さく笑った

 

「本当、アルガニア連邦には恩ばかりしかないさ。それなのに、俺たちはその恩を返すことすらできていない。アルガニアは俺たちの為に亡命政府と土地を作っているんだ。だから、今回は俺たちにとっても恩返しするチャンスなんだ。それに、征海艦隊はアルガニアに頼めば格安の価格で戦艦やら空母やらを売ってくれる。あの国の船は全部征海艦隊の船として使える物ばかりだ。だから失っても、征海艦隊はまた結成できる」

 

そう呟くとイシュマエルはエステルから報告を聞いた

 

『ーー兄上、指揮をお返しします。陽動艦隊は15分前に防壁臨界点到達の為、戦線を離脱。「残り三十発」との事です』

 

「了解・・・次は、俺たちの番だな」

 

そう呟くとイシュマエルは緊張に満ちた表情となった

 

 

 

摩天貝楼拠点まであと140km



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

合流

ギリギリまで作戦指揮官と状況を共有する為に戦隊総隊長であるシンとその副官であるライデン、ユートとその副長は艦橋5階フラッグブリッジで待機する

とは言え、分厚い対爆ガラスの窓の外は叩きつける雨粒でほとんど見えなかった。敵に見つからないために灯を消して暗い室内

窓の外では強烈な雷光が天地の色彩を純白に変えた。それは古代、天を征く竜と共に例えられたそのまま、どこかで神話の生き物にような有機的な軌跡で。黒い曇天に、高空の大気に走る罅の形状を持って

 

「・・・おい、」

 

ライデンの声で我に帰ったシンは外を見ていた。拠点まであと120キロの地点、外に見える雷の残光を見ているとレイドデバイスから自分達のよく知る声が響いた。その声の主にシン達は驚いた

 

『こちら、アルガニア連邦第一遠征艦隊旗艦ギンガ。ステラマリス、聞こえますか?』

 

「この声っ!・・・ジルか!」

 

「え!?何で!?大破したんじゃなかったの!?」

 

ライデンやクレナが少し驚いて返事をしていた。するとジルは訳を話した。元々の予定だとここら辺で陽動艦隊を無事に送り届けた後、遠征艦隊と合流する予定であったが。大破したギンガが来るとは思っていなかったのだった

 

『大丈夫よ、第二砲塔と第一副砲が吹っ飛んだだけで、機関部やその他兵装に問題ないわ』

 

そう言うとイシュマエルは『それは十分ダメなのでは?』と思いつつも窓の外を見るとそこには荒れ狂う波の上を航行する五隻の艦艇が浮かんでいた

 

『何とか間に合ったようね』

 

『司令、無理をしすぎと思われます』

 

『ああ、全くだ。よくこんだけ回して壊れないものだ』

 

そう言いながら男女のおそらく遠征艦隊所属艦艇の艦長と思われる二人から声が上がっていた。そして近づく艦影が見えてくると先頭を進んでいるギンガは中々の状態だった

まず、第二砲塔と第一副砲のあったと思われる場所は真っ黒に焼け焦げ、そこにはおそらく新型レギオンと思われる剣状の物体が付き刺さっていた

 

『その状態で本当に大丈夫なのか・・・?』

 

『大丈夫だ、問題ない』

 

『なんだか、心配になってきた・・・』

 

そう呟いてクレナは今のギンガの惨状に今にも沈むのではないかと思っていた。そして少し和やかになった雰囲気をジルが再び戻した

 

『さ、今から貴女達の盾を作るよ。気を引き締めるんだね』

 

そう言うと機動打撃群のメンバーは少し緊張した様子を見せるとジルは船内艦橋にて最終確認をしていた

 

「アミ。エネルギーブースターの様子は?」

 

『現在海水冷却80%完了。あと30秒で行けるわ』

 

「了解、冷却完了後直ぐに波動防壁展開。拠点からの攻撃に備えて。それと、無人戦闘部隊。有人機部隊は発艦準備。無人航空部隊は発艦準備完了次第発艦して」

 

『『了解』』

 

ダニエルとアミの返事が帰ってくると早速準備が始まった。ネバダ格納庫から有人機のコブラ改特型以外の改造型、コルーチク改弐型が上がっていた。ビートル隊とコブラ改特型、歩兵部隊は地上にてレギオンの相手をしていた。エセックスからは甲板上に試作無人戦闘機XQ-00全機が発艦作業に入った。無人ドレッドノートからは格納庫から無人戦闘機械が前甲板から外に出ていた。

その様子を見たシン達はいよいよ拠点が近づいていることを認識し、各々ジャガーノートに乗り込み始めた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

艦隊が110kmに到達した所で遠征艦隊とオーシャン・フリートの内、ギンガ、と破獣艦ホクラシモンとアルビレオ、斥候艦のアルタイル、ミラの五隻は電磁加速砲型の注意を引くために艦隊から離れた

 

「それじゃあ行ってくるわ」

 

『・・・気をつけてね。特にあの新型レギオンには』

 

「ええ、次まともに食らったら沈むからね。気をつけるわよ」

 

レイドデバイス越しでアミとジルはそう短く会話すると艦隊を離れて行った。ネバダの波動共鳴波装置なくとも。波動防壁は近くに波動エンジンを積んだ艦艇があれば数時間は続くようになっていた。そのため、ギンガを囲うように斥候艦が先行して海上を航行し、破獣艦二隻はギンガの後ろを航行していた。ステラマリスが見えなくなるとジルはレイドデバイスに手を当て、各艦の艦長、副長、砲術長に回線を繋いだ。

 

「こちら遠征艦隊旗艦ギンガ、これより陽動艦隊に目標指示を行います。拠点からの砲撃に注意しつつ盛大に打ち上げてください」

 

そう呟くとギンガは生き残っている全砲塔が旋回し、ミサイル、爆雷投射機は全て拠点方向に向いていた

 

「・・・撃ち方初め」

 

『撃ち〜方初め』

 

ジルの号令と共に陽動艦隊は砲撃を開始し、エセックスからは無人艦載機が発艦を始めていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ほとんど撃ち落とされた観測機の生き残りの一機が航空機と艦のレーダー波を観測した。観測を受けた摩天貝楼拠点最上階にいる電磁加速砲型はその巨体を旋回させた

 

《コーラレ・ワン了解、射撃をーー》

 

敵艦、あるいは敵艦隊から放たれた物体に電磁加速砲型は自前の対空火器を撃ち落とし始めた

 

《射撃キャンセル。対空防御・・・不可能と判断》

 

そうして放たれた砲弾とロケット弾数発がすり抜けると爆発を起こした。最初はギンガ、並びに遠征艦隊全艦で砲撃し、拠点を叩く案があったが。ギアーデ連邦が反対した為、使われているのは通常の炸薬弾だった。それでも48cm口径の砲弾は電磁加速砲型でも無視できない被害を受けていた

 

《コーラレ・ワンより観測機、指定座標へ》

 

砲撃してきた方角から座標を算出すると砲身を回転させた

 

《弾着観測を要請ーー砲撃開始》

 

そうして800mmの砲弾が射出された。だが、観測機から撃沈の報告は無かった

 

《敵艦の撃沈を確認できず。アルガニア艦艇を確認。別兵装の使用をされたし》

 

《了解、()()()()()()()()を使用する。再び弾着観測を要請》

 

そして少し時間をかけ、砲身に剣型の砲弾が装填されるとその特殊な砲弾はギンガに向けて発射された。秒速8000mの砲弾はほぼ同じ速度でギンガ船体を突き刺そうとした

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

陽動を行なっているギンガは通常の電磁加速砲型の装填速度より遅い事に先に砲撃を受けたあの特殊なレギオンの事を思い出した

 

「全艦、対空戦闘。次はおそらくあの新型レギオンの可能性大。可能であれば叩き落としてください」

 

指示を入れてすぐ、五隻は持てる対空火器をすべて拠点の電磁加速砲型のいる方向へ放っていた。すると最上階の部分が光ったかと思うと次の瞬間には波動防壁に例の新型砲弾が突っ込んでいた

 

キィィィィン!!

 

新型レギオンの攻撃にジルは艦橋で冷や汗をかいていた

 

『頼む・・・持ち堪えてくれ・・・』

 

その願いが届いたのか。定かではないが波動防壁に突き刺さる新型レギオンは推力を失うと共に海中に落ちていった

 

「ふぅ・・・とりあえず安心ね」

 

そう安心したのも束の間、今度は通常の砲弾が飛来し、波動防壁の臨界点が近づいて来ていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ーー目標を視認、出番だ!準備しろガキども!!」

 

格納庫に響く怒声に似た声は甲板要因の操作のもと先陣を切って小隊六機が飛行甲板に上がった。その小隊の一機、アンダーテイカーの中でシンは猛烈な風の唸りと、もはや慣れしまった羊飼いの絶叫を見上げた。先ほどとは()()砲撃音に少し疑問に思ったものの10トンの重さのレギンレイブでさえ吹き飛ばされそうな嵐に半ば這うように甲板先端部に伏せるように待機。

真っ白に眩む視界。茫漠と広がる黒い海の轟音と圧迫感。一歩外に出れば息もできないであろう大質量の水と大気。

その向こうで天を摩して聳える鋼鉄の塔が霞みながら見えた。

頂上には鍵爪上に湾曲した天蓋から進み出た。蒼いセンサーを光らせ、一対の槍にも見える砲身を淡く紫電に灯らせ、傲然と見据えていた。

 

電磁加速砲型ーー

 

『残り距離五、敵残弾1!』

 

『最後の一発だ!踏ん張れ!』

 

レイドデバイスからはジルの声が聞こえていた。どうやら波動防壁の限界点が近いらしい。遠くで爆炎と轟音が響く中、今は視界の収まらぬその威容が統合艦橋から見てとれた。

水中から垂直に聳り立つ、それが一つのビルディングを数棟束ねた太さのコンクリートの柱。

六本のそれが六角形を描くその上に、その柱を頂点とする六角柱状の要塞が高く点を衝いて聳えている

鱗のように構造物の外周を覆うのは半透明の太陽光発電パネルで、打ち付ける雨の雫で真っ白に濁り、内部は見えない。全高は実に120m。そこか海に棲むと言う神話の巨龍を思わせるその形状。その要塞の基部、六本のコンクリート柱の一つに接近

操舵手はその持てる腕と度胸を持って柱に舷側を擦り付けるように。なおかつ、金属の悲鳴は聞こえず。おそるべき精密さで、切り立つコンクリートの断崖にーーー接岸した

 

ーー作戦開始

 

レーナの号令が飛ぶ。

 

『砲兵部隊は、射撃開始ーースピアヘッド戦隊、進出しなさい』

 

同タイミング、別の柱からはネバダ、エセックス、ドレッドノート二隻のカタパルトからコブラが射出された



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

拠点侵入

軍艦としても巨大な征海艦は飛行甲板までの高さは20m近い。鋼鉄の梁を格子に組んだ鋼鉄製の巨大な蜘蛛の巣

一口に鋼鉄といえどその一本の大きさもまた巨大で戦車型でも容易く通れるほどの大きさだった。

コブラ改弍型の飽和攻撃で最下層を火の海にし、先行して無人機のパミスとコルーチクを射出し、続いて有人機のコブラ隊が射出され、拠点内部に侵入を開始した

摩天貝楼拠点内部は幾つかの階層に分かれており、それぞれ三つのフロアに分け、階層AからEと呼称した

拠点に乗り込んだコブラ隊はその大きさに圧倒していた。正三角形の格子状の各フロアが重なり合ってレースの模様を黒々と刻んでいた。最上階にいる電磁加速砲型へ補給をする為か複々線程のレールが弧を描いて各フロアを貫いていた。そして亡霊の声と共にレギオン特有の影が無数に立ち上がった

 

「総員戦闘始め。無人機部隊が斥候を行う。砲弾は充填式エネルギー弾を使用。砲身温度が1200度を超えないよう注意せよ。優先して斥候型を撃破せよ」

 

今作戦の指揮を取るのは白兵戦部隊隊長のジョージであった。通信装置は本国で作られたボルトよりもレイドデバイスの方が使いやすい為、多くの兵士がレイドデバイスを使用していた。上陸部隊は無人機を先行させながら斥候型、戦車型を優先して砲撃をしていた。使用する砲弾は充填式エネルギー弾。本当はシャリテ攻略作戦時に使用する予定だったが、今作戦で用いられることとなった。砲身から放たれる赤色のレーザーは戦車型に搭載されている砲弾の火薬を誘爆させ、付近の斥候型や戦車型を巻き添えにしていた

 

『こりゃあ良い。一発撃てば他のも誤爆するぞ』

 

『ええ、狭いから通常砲弾でも爆風で巻き添えを喰らわせられるわ』

 

『撃て撃て!精魂はてるまで撃ち尽くせ!!』

 

『あの無人機が取りこぼしをやってくれるから後が楽だわ』

 

そう言いながらエネルギー弾を放っている遠距離狙撃部隊や白兵戦部隊は軽く興奮しながらレギオンを倒しながら上に登っていった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

揚陸を終えた艦隊は沖合10kmの地点で合流をし、砲撃を行っていた。無防備なステラマリスを狙いに定めた事を確認するとジルから通信が入った

 

「イシュマエル艦長。後はこちらが砲撃します」

 

『了解、後は任せます』

 

ジルは確認を取るとアミに命令をして砲撃をさせた

 

「目標、電磁加速砲型砲身。撃て!」

 

放たれた三本の光線は一本に纏まると、その光線は電磁加速砲型を真正面から金属を溶かしながら撃ち抜き、砲身をズタズタにしていた

 

「砲身の破壊を確認。やっぱり装弾数を増やしていたか・・・」

 

シンは第A層第二フロアの攻略を行いながら呟いた

 

「ええ。ですが声はまだ消えていないーーまだ撃破には至っていません。残弾を残している以上、砲身交換が完了次第、砲撃が再開される」

 

つまり、それまでの拠点の制圧を行わなければならない。

工廠と思われていた拠点であったが実際は空洞で二機目の羊飼いがなんなのかも分かっていない

 

「換装完了までの時間は?」

 

『この一ヶ月間での船団国群の砲撃のインターバルは最小で六時間・・・同程度と思ってください』

 

積載量の関係でヴィーカのデューカでアルカノストを完成しているヴィーカはめを眇めた。ジャガーノートのいなくなった格納庫で建設中の骨組みのような要塞を見ていた

 

『・・・建造の目的はなんだ?』

 

工廠のような設備は無く、出どころの分からないほど大量に投入された鋼材。ただの砲陣地ならばわざわざ遠洋に作る必要もない。ヴィーカは疑問に思いながらジルに通信を入れ、建物の全景を写させた。この通信が後の戦局を左右させる事態とは思わずに・・・

 

「・・・ミリーゼの予測。当たるかもしれんな」

 

大攻勢で成功した戦線ばかりではない。その事を思うとヴィーカは拠点を見上げた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

拠点内部を進む攻略組。知覚同調で絶叫にも似た声を聞くとジョージはワイヤーを使い、上層部を目指した。後方ではミサイル部隊が砲身排熱中の僚機を攻撃から守るためにミサイルポッドを放っていた。それを確認したジョージは第C層制圧を完了したタイミングで報告を入れた

 

「こちらコンバットコブラ1。現在第C層の制圧完了。そちらの状況を教えられたし」

 

『こちらアンダーテイカー。現在第B層第三フロア制圧中。先の到着できそうか?』

 

「了解、第E層に到着と同時に攻撃を仕掛ける。遅れるなよ」

 

『・・・了解』

 

通信を切ったジョージは上を眺めた。上にははっきりではないが光学パネル越しにネバダのレーダーから送られるレギオンの居場所を示す緑色の四角マークが多数映し出されていた

 

「まるで神話の塔だな・・・」

 

一人先行して拠点制圧を行ったジョージは後続が来るまでの間。拠点を見上げながら呟いた。

世界の果てにその塔はあると言う。螺旋状の階段を登るたびに感情や欲が消え、頂上に着く頃には全ての苦悩を切り捨てる。

そんな神話を彷彿とさせるような光景にジョージはどこかエイティシックスに重ねてしまう部分があった。本来人として生きるのに必要な事を切り捨てて生き続けたエイティシックス。唯一の誇りである戦い抜く事を捨てるとなったらどうなるのか。ジョージには想像がつかなかった。恋人のカイエやシン、ライデンやアンジュは守りたいと思えるものを見つけたように毎日を生きていた。他のメンバーも同じように大切なもの。守りたいものを見つけ始めかけていた

 

「人は感情を持ち、考えることのできる唯一の生物である。だからこそ、私達は毎日を大切に生き抜くことができる」

 

昔、父から聞かされた話を不意に思い出した。レギオン戦争初期の侵攻時に亡くなった父を・・・

 

「ははっ、まさかここで思い出すことになるなんてな・・・」

 

ジョージは目の間に指を当てると後続部隊の到着を確認し、束の間の休息を得た

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こぉん

 

海が鳴るような音にジョージが疑問に思うと通信を入れた

 

「司令・・・海の中に何かいませんか?」

 

『海の・・・中?』

 

今までで初めて聞く異質な音にジルは疑問に思いつつもイシュマエルに連絡を入れるとすぐに返事が来た

 

『スミス司令。原生海獣が歌っています。かなり遠いですが・・・どんぱちしてりゃ気にに触るかも知れねえが・・・今は来るんじゃねえぞ。頼むから』

 

「原生海獣、ですか?・・・ここまで?」

 

ジルは前に軍養成学校で学んだ原生海獣について情報を思い出していた。ここから数百キロも離れた彼方で発せられれば確かに歪な声に聞こえるのかも知れない

 

「ーー了解。全機に警戒を通達」

 

『了解、全機原生海獣に警戒せよ。強さがわからない上に、相手は生き物だ。レギオンと違って何を仕出すかわからないぞ』

 

『『了解』』

 

そう呟くと上がってきた全機は無人機を再び先行させて最上階を目指した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第四層に到着し、制圧し切った突入部隊はシン達と回線を開いた。

 

「アンダーテイカー。こちらコンバットコブラ1。全機突入準備完了」

 

『了解した。これより頂上階。電磁加速砲型の攻略に入る』

 

そして別々の柱から攻略隊は侵入を開始した



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

名案

敵部隊がついに眼下まで進出ーー敵部隊との交戦距離まで近づかれた

敵の航空機が蠅のように対空火器を避けながら小型ミサイルを発射し、自機の装甲はボロボロになりかけていた。一気を堕としたと思うと、その航空機は火を噴きながらこっちにまっすぐ突っ込み。大爆発を起こしていた。そしてそれが立て続けに4回起こると航空機は沖合に停泊する航空母艦に着艦ていた。そっちの対応に追われた事で敵部隊の侵入を許してしまっていた。

拠点の()()()()から避けるべきなのだが。()()()に破壊でもされたら元も子もない

 

《コーラレ・ワンよりコーラレ・シンセンスーー防衛機構を最小限使用》

 

機械から発せられた通信は拠点中に広まった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

視界の端の爆発ボルトが作動した。固定された鉄骨の梁が全て落ちる。

要塞頂上の一つ下。第D層第三フロアの床全てがーー

 

「なっ・・・!」

 

咄嗟にジョージはウインチランチャーを全て発射すると一つの梁に引っ掛け、柱に引っかかった状態で止まっていた。

第C層にいた狙撃部隊が慌てて場所を作るとそこに落ちてきた残りの白兵戦部隊機と無人機部隊が着地した。

着地した瞬間、ジョージは電磁加速砲型を見た。ネバダからの砲撃の為か、左半分の回転機関砲が折れた砲身によって押しつぶされ、発射できず。シン達の侵入した方角からは爆炎と爆風が起こっていた

 

「あれは・・・まずい、シン達が!」

 

そう叫んだのも束の間。ジョージ達に攻撃は入った

 

「チッ・・・攻撃子機型かよ・・・無人機、援護を。ミサイル部隊はポッド装填完了次第発射!」

 

『『了解』』

 

ジョージの指示通り、無人機はスピードを上げると確認できる攻撃子機型の光学迷彩を剥ぎ取るために火炎放射を始めた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「火炎放射器!?」

 

クレナは自分達のいる反対側から真っ赤な炎の線が出ていることに驚いていた。するとライデンやシンはその意図とに気づいた

 

『なるほど・・・炎で光学迷彩を剥ぎ取るってことか』

 

『さすがだが・・・このままじゃジリ貧だ。何か案はないのか・・・?』

 

そいう言ってレーナに聞くとレーナは外の嵐を見てある作戦を思いついた

 

「風・・・風!艦長、ご協力をいただきたく・・・ステラマリスの主砲を貸してください」

 

レーナの作戦を聞くとヴィーカが続けて言う<チャイカ>の光学センサーから記録される攻撃子機型の射撃パターンを自機のホロウィンドウに映して

 

「こちらの解析にはもう少しデータがいる。気をつけろ。こっちからでも頂上の炎を確認している。酸欠が起こる可能性があるぞ」

 

一応密閉されたコックピット内ではあるが外の様子から酸欠の可能性は薄々感じていた。だが、シンやユートも了解の返事もせずに動き始めた

 

『解析次第反撃に移ります。報告をーーシン、ユート』

 

『・・・先に回転機関砲と攻撃子機型を、でしょう』

 

『回避を優先しつつ、そのつもりで配置しておく』

 

『全員、俺らに燃やされないように注意しろ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

足場に注意しながら登攀し、ここまで上がってきた

退路を誤って射撃を喰らい、すぐ近くの僚機の存在を失念し衝突し。あるいは脚を踏み外して下層へと転落し、戦死者と負傷脱落者の数は積み上がっていた。その様子にガンスリンガーの中でクレナはきつく歯噛みをしていた

電磁加速砲型のような高価値目標を仕留めるために狙撃砲を装備するガンスリンガーに期待される役割でーーシンの傍らで戦い続ける為に自分が研いだ技能だったはずだ

それなのに、クレナは標準を合わせることですらできていない

 

気ばかりが焦る

 

見えない射撃が厄介だった。片側の殆どは折れた砲身のせいで大半は使えなくなっていたがそれでも生き残っている回転機関砲は射撃を行っていた。その中で攻撃子機型の熱戦までも発射され、なかなか反撃ができずにいた。

そんな中、シデンのキュプクロスに向けられていた回転機関砲の標準が静止していたガンスリンガーに向けられた。その黒い砲口に睨みつけられて、クレナは気づいた

 

「っ、ブラフ・・・!?」

 

回避は間に合わない。無意識に身を強ばらせた。

次の瞬間、88mmの砲号と共に回転機関砲の側面に着弾

撃ったのはアンダーテイカー。シン。

 

『大丈夫か?クレナ』

 

シンの声にクレナは安心位していた。

そうだ、どんなことだって、きっと今みたいに何とかなる。彼女の死神はこんな風にーー決して自分を見捨てないでくれる

 

だから、大丈夫

 

「うん!」

 

クレナの声を聞いてシンは小さく息をついた。彼の異能は物理的な音声ではない。レーダーのように共有できないのもどかしかった

エイティシックスが死ぬのは当たり前だとーーもう思いたくない

無茶だと分かっている

都合の良い奇跡を誰よりも願っているのは自分自身だ

叶うならば、誰も犠牲にならない道を選びたい

 

八六区をもう・・・自分達は出たのだから

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ジリジリを胸を焦がすような時間の果て、ヴィーカがついに解析を完了させ。データリンクを通じて各艦艇のホロスクリーンとフェルドレスに転送された

 

「ヴィーカ、火力拘束、および面制圧の指揮権を一時そちらに預けます」

 

『了解ーー該当する各機、聞いてたな。今送った通りに標準を設定しろ』

 

「シン、ユート。前衛の指揮はそのまま。突入のタイミングは任せます」

 

『了解』

 

「砲兵戦隊。次弾装填。弾種、対人散弾」

 

同じような命令をジルも発するとレーナは征海艦隊の指揮官を見た

 

「イシュマエル艦長」

 

「ああ、任せろ」

 

レーナは摩天貝楼拠点を見据え、レーナはその言葉を通信に乗せた

 

「ーー作戦開始」

 

レーナ達のいる遠くではこぉん、と鳴く音をかすかに捉えた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

凛とレーナは声を張った

 

「作戦開始ーーフェルドレスは全機退避」

 

「撃ぇっ!」

 

イシュマエルの号令でステラマリスの主砲40センチ連装砲四門が射撃

猛烈な衝撃波が飛行甲板を駆け抜けた。距離が近く、砲兵仕様のジャガーノートが悲鳴を上げた

砲弾はステラマリス艦首方向。摩天貝楼拠点の上方へと突き進む。秒速800mの高速を持ってほぼ真上に飛翔し、時限信管が作動。空中で分裂した原生海獣の装甲鱗を剥ぎ取るための爆雷が外装パネルに食らいついた。

爆雷の炸裂と共に一溜りもなく広範囲にわたってへし折られる

 

「ーー88mm榴弾は耐えられても。40センチ榴弾は耐えられない。そしてーー」

 

拠点内部を外の嵐から守っていた壁が消えた。

嵐の風がまともに吹き込む。一気に侵入した強烈な風に摩天貝楼拠点内の気圧が瞬間的に上がった

 

「この風圧の嵐ならーー内部から拭き飛ばせる!」

逃げ場を求めた風が第D層の全周に渡り、爆風にも似た威力で吹き飛ばした。その風に燃え上がった炎ですらも風圧で消し飛んでいた

砕けた青い破片が海に降る。阻電錯乱型の脆い羽根は吹き散らされた

その間隙をつくように

 

「砲兵戦隊、斉射!」

 

「撃ぇ!」

 

ステラマリスの甲板やネバダ甲板に固定された狙撃部隊が斉射。

対人散弾を内蔵したキャニスター弾は放物線を描いて要塞頂上、電磁加速砲型のいる最上階へと迫る。

空中で炸裂した霰のような散弾は40mm機関砲を通す鋼鉄の網目の隙間をすり抜けた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

フェルドレスですら貫通しない対人散弾。当然、電磁加速砲型に通用するはずがない。だが、装甲など持たない阻電錯乱型は衝撃波によって尽くを引きちぎられた。さらに下からの爆風で舞い戻る事も不可能だった

光学迷彩に隠れる無数の攻撃子機型が、生き残っている八門の回転機関砲がーーついに露見した



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

原生海獣の攻撃

「火力拘束、面制圧仕様各機、照準補正!」

 

続けてヴィーカの司令が飛ぶと。それぞれ指定された場所へと砲撃をし始めた。

タダでさえ小型な部類の攻撃子機型は熱線を打つ為に莫大なエネルギーが必要になる。エネルギーパックを交換する時間もない。その為、どこか有線でつながっているのだろう。その証拠に、火炎放射器で燃えている部分から攻撃子機型は離れていた。指定された場所にミサイルや砲撃が加わり、火炎放射で焼かれた攻撃子機型を続々と撃破していた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

火炎放射器の燃料が尽きかけた頃。ついに電磁加速砲型の回転機関砲がーー実に三対二十四基のガンマウントアームを剥き出しにした

それに気づいたジャガーノートは榴弾を放ち二対を、狙撃仕様のジャガーノートが格子の奥に潜む八基を吹き飛ばした

榴弾の炸裂にコブラのエネルギー弾、攻撃子機型の誘爆炎。

電磁加速砲型のセンサーは塞がれた。転瞬、その爆炎を抜けてアンダーテイカーが駆け抜けた。頂上階の底面を高周波ブレードで切り開くとついに頂上階に到達した

機械仕掛けの亡霊の断末魔は二つ。いずれも電磁加速砲型の中からだ。おそらくは制御中枢と、自由度の上がったガンマウントアームと回転機関砲。おそらくこの二つ用のサブのサブ中枢。

壊れたオルゴールのように鳴り響く思惟、その怨嗟と呪詛を繰り返していた

 

帝国万歳、帝国万歳、帝国万歳ーー・・・

 

エルンストの予想通り、旧帝国の帝室派の残党

切り開いて躍り上がった位置は電磁加速砲型の至近。30mもの砲身では例え砲が無事でも死角が存在する。砲塔の後ろに二対、天には向かうように広がる放熱索の翅が崩れる。バラりと解けて近接格闘用の導電ワイヤーと化し、先端の鍵爪を雪崩のように落とそうとする。

電磁加速砲型が自身を守るための最後の切り札

だが、一度見た攻撃はシンには通用しなかった

解けて直ぐ、天を突くように広がった形だ。アンダーテイカーとは少し距離があった。その距離を詰めるよりも先に砲兵やコルーチクの放った榴弾と火炎放射で燃え上がらせた。通電能力の失ったワイヤーはシンがブレードを当てて叩き落とし、メンテナンスハッチの上へと着地させる

 

一年前、フレデリカの騎士が潜んでいた場所に・・・

 

振り落とそうと暴れる姿はムカデが酸をかけられた時に似ていた。シンは兵装を57mmパイルドライバに変更、4基同時に爆発。激震に歯噛みしながらも兵装を今度は主砲に変更し。

 

トリガを引いた

 

悲鳴のように電磁加速砲型が仰け反り、一瞬硬直をすると一部が溶け落ちた砲身を旋回させた。

 

「チッ・・・」

 

シンはパイルをパージし、避けると電磁加速砲型かの背から飛び降りた

 

『外した・・・か』

 

シンはアンカーを引っ掛けながら電磁加速砲型を見た。

どうやら破壊したのはサブ中枢の方らしい。明るい空に嵐が去ったことを認識した。荒れ狂っていた波や風は一応の和らぎ、夜が明けていたと気付けるほどに薄くなった雲。

その空を背景に、電磁加速砲型は佇んでいた。

折れた砲身に流体金属が湧き出す。

上空の風は強いらしい。速度を緩めていた黒い雲が散り、青い色彩の鮮やかな紺碧が顔を覗かせていた

ジョージ達が残りの制御系の破壊を試みようとした時。その蒼穹が一変した

 

「っ!?」

 

その眩い光にギンガのスクリーンは一瞬真っ白になった。音もなく発せられたその光線は恐ろしく長く、けれど刹那の無音の後、唐突に光は消え、白くくらむ空が残っていた

鋼鉄で組まれた要塞の頂上。第E層丸ごと焼かれて陽炎が立ち上らせていた

 

『な・・・』

 

「電磁加速砲型がーー!」

 

「何だ、ありゃ・・・」

 

飴細工のように折れた砲身。爆発反応装甲も意味をなさずに脱落し、光学センサーも起動せずに擱座していた。当然嘆き声も聞こえなかった

 

「なーー・・・」

 

「砲光種・・・!よりにもよって!」

 

イシュマエルが呻いた。そしてレーナの問う目を見返す事なく独り言ともつかぬ口調で続ける

 

「原生海獣の中でも一番でかいやつだ。戦闘機でも爆撃機でも。ああやって、レーザーで撃ち落としちまう。レギオンだって真っ向に勝負できない化け物だ」

 

「原生海獣・・・これが」

 

何千年と大陸を脱する事を拒み続ける生き物

 

イシュマエルは歯噛みしながらもソナーを確認した。

 

「ソナーには・・・まだ映っていないか。だが、確実に近くにいる。縄張りを侵されて威嚇に来たのか・・・。嵐によって霧ですら吹き飛んだこの時に・・・」

 

レーザーは水で拡散する。隣で航行するギンガなどの空中艦は霧で拡散しない為に今回の射撃は通常弾を使っていた。電磁加速砲型の砲身を破壊する為に撃ったエネルギー弾は通常よりもエネルギを3倍にして放った物だった。だから海底火山によって起こっていたと思われた霧はこの為だと知った。こうすればレーザー攻撃を受けないからと

 

「嵐を・・・奴らも待っていたのか」

 

イシュマエルはレーザーの飛んできた方角を見ながら呟いていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ジョージ、大丈夫!?」

 

頂上階付近にいたジョージはギンガとつながっている生体反応が途絶え、まさかと考えていた。すると切れていた生体反応が復活すると返事があった

 

『司令・・・聞こえていますよ』

 

「ジョージ!良かった。無事なのね」

 

『ええ、直前に飛び降りて正解でした。じゃなければ吹き飛んでいましたよ』

 

そう言うと通信が切れた理由はレーザーは攻撃による強力な電磁波の影響だと説明すると少し満足そうな声色で言う。

 

『まだ自分は死ぬわけにはいきませんから』

 

そう言うとさっきの砲光種の攻撃と攻略中に無人機部隊の殆どが撃破された事を伝えるが、ジルは問題ないと言い。ジルは突入隊回収の為に僚艦のドレッドノート二隻と共に第D層にいるジョージ達の回収に向かった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「しかし、原生海獣があんな怪物だとは・・・」

 

回収の為にジルは飛行を開始した時。水平線上の、光学カメラにすら映らない遠い場所を見ていた。そして、第二の目標である制御中枢は恐らく焼け焦げたと思って良いだろう。そう思うと電磁加速砲型から銀色の流体金属が垂れていくのを確認した

 

 

 

 

 

 

 

「海に落ちた・・・墜落したのか?ーーいや」

 

知覚同調に絶叫が響く。機械仕掛けの亡霊の断末魔の声。

鉄色の巨影が浮上。一対の槍のような鋭い剣尖が海を割る。30mはあるであろうそれはグワリと伸びてジャガーノート達のいる第D層をーー()()()()()拠点に近づくドレッドノートを指す

滴り落ちた流体金属。30mの一対の槍状の砲身、要塞を登る最中に聞こえた声!

 

「司令!離れて!総員降りろ。下から来るぞ!」

 

 

転瞬。

()()()()()が咆哮した

 

 

視認など不可能な砲弾が駆け抜ける。800mm秒速8000mのエネルギーを持った砲弾は簡単にドレッドノートを中央から真っ二つにへし折った。

真っ二つに折れ、炎を撒き散らしながら堕ちていくドレッドノートにジルは驚愕していた

 

「何ですって!?」

 

『警告!ドレッドノート轟沈。反応無し。下からの攻撃です!』

 

「全艦、全速退避!波動防壁展開!直ちにこの場から離れる。突入隊。直ちに降りて!」

 

『了解』

 

ジルの司令にジョージは生体反応を確認し、生き残っている人を探し、コブラの予備席に乗せると全員が第一層に退却していた

刃のような艦首が飛び出す。空中に晒される艦底に、折り畳まれた脚。艦首近くに四対並んだ光学センサ満載排水量10万トン。ギンガに匹敵するほど巨大な巨軀が、次の瞬間海面へと雪崩れ落ち、猛烈な水柱と轟音を立てた。

装甲の鉄色に輝く上部甲板と舷側。一部は艦首と艦尾に、多くは装甲中央付近にずらりと砲身を煌めかせる40mm対空回転機関砲。両艦舷に並ぶ、155mm電磁加速速射砲。数基ずつの対空砲で速射砲を守りつつその射線を確保する為に階段状に折り重なって配される。

そして天守閣のように聳える二つの砲塔と、そこから伸びる一対の、全長30mもの槍状の砲身。この巨体の上にあってなお遠近感が狂って見えるーー

 

二門もの、800mmレールガン。

 

こちらも射線確保のためだろう。艦尾側と艦首側で15m程の差があった。海面から甲板までの高さはギンガと同じものの、艦橋最上階までの高さなら上回っていた

誰かが呻く。呆然と

 

『なに、これ・・・!?』

 

『まさかこいつもーーこの船もレギオンなのか・・・!?』

 

甲板上から海水が流れ落ちる。ざあ、と二門のレールガンの砲塔から銀糸が伸びる



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

壊滅的打撃

瞬く間に編み上げられ、翅脈だけで象られた蝶の翅の形状を作り出す。その全体に燐光を纏い、天を覆うようにばさりと翻って広げられる。

放熱索展開。レールガンのーー戦闘起動

全貌を現した巨艦は鯨波のように、産声のように。流体制御マシンの制御形に捕らえられた戦死者の断末魔を咆哮した

 

『ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!』

 

『っ、くぅ・・・!』

 

その断末魔にシンは思わず耳を塞いでしまった。その異様な説教にレーナや同調していたジルですら耳を塞いでしまった。その断末魔はまるで他人の脳を細切れにし、他の脳と繋げたような。混声合唱。

 

「この声は、一体・・・!?」

 

思わずレイドデバイスをむしりとり、一気に下がった血に軽い眩暈をしながらもホロスクリーンの映るそれを見た

 

「戦艦・・・!いや、」

 

戦艦なんと言う生やさしいものではない。

見える全ての兵装はレールガンだ。二十二門の155mmレールガンと五十基あまりの対空電磁機関砲

威力、射程においても火器を上回る

小国程度なら、一機で壊滅できる電磁加速砲型。それに浮上した時に見えた脚部。

 

 

ーー揚陸が可能だ

 

 

陸上までは無理だが、沿岸部までなら。

させてたまるか。

 

「ステラマリスより各位。不明艦を電磁砲艦型と呼称ーー・・・」

 

屑鉄なんかに泳がれてたまるものか。ここは人類の海だ

 

「敵性存在として処理ーーこの場で撃沈する」

 

レーナ叫ぶと二つのレールガンがそれぞれ旋回し、ドレッドノートとギンガに施行した

 

「ギンガが狙われている!」

 

レーナが叫んだ次の瞬間レールガンが咆哮した。そしてドレッドノートがギンガを庇うように二発の砲弾を受けると大爆発を起こして沈んでいった

 

「戦艦が・・・」

 

炎しか残っていない様子を見たレーナは呆然としていた。そしてドレッドノート一隻では守り切れなかったのかギンガの後部砲塔全てが吹き飛んでいた

 

『こちらギンガ。ステラマリス、聞こえますか!?』

 

「ええ、聞こえています。状況を・・・」

 

レーナが聴こうとした時、レールガンは次にネバダとエセックスの方へと旋回すると砲身の先端から根元にかけて大規模な剣状の砲弾を装填していた

 

「あれは・・・」

 

『来るぞ!』

 

アミはさっきギンガに突き刺さったものと同じと思った時、ダニエルの声で我に帰ると波動防壁を最大展開した。そして装填が完了したと同時に剣状の砲弾は二隻に向かって砲撃した

 

キィィィィン!

 

放たれた砲弾は二隻の波動防壁で淡い光と共に耐えたが、次に放たれた第二射でついに限界を迎えた。

 

ギィン!

 

金属の擦れる音と共に剣状の砲弾は艦首からザクリと貫くとエセックスからは火が上がっていた

 

「ネバダ、エセックス。状況を報告できますか!?」

 

レーナが聞くと返事が返ってきた

 

『こちらネバダ。全主砲使用不能。前方区画は殆どが全滅!』

 

『エセックスは格納庫に直撃、火災発生と共にカタパルト全滅。艦載機発艦不可能!!』

 

どうやら甲板上でミサイルを装填していた無人機に引火したらしい。甲板上の火災は格納庫には移っていないとのこと。だが、レーナは歯噛みしていた。カタパルトが壊れたと言うことは艦載機が発艦できない。つまり砲戦のみしかできなかった。するとさらにエセックスから報告が上がった

 

『エセックスは波動砲口から格納庫にかけて貫通。生き残っているのはミサイルしかない』

 

『ネバダ、損害集計完了。ほとんどの兵装がやられた。波動共鳴波装置全壊!第一兵員室火災発生!現在消化作業中』

 

続々と上がる被害報告にレールガンは第三射目を発射する為にまたさっきの砲弾を装填し始めた。だが、その特殊砲弾は波動防壁を貫通させる為なのか大型な為、装填に時間が掛かるようだった。するとジルの怒号のような声が響いた

 

『全艦、残った兵装を撃ち尽くせ!次の砲撃で弾薬庫に引火したら吹き飛ぶぞ!』

 

ジルの声に二人は体をビクッとさせるもすぐさま兵装を選択。アラートの鳴り響く艦橋で生き残ったミサイル発射口からミサイルが続々と発射された。船体内に格納されている火薬を減らしながら電磁砲艦型に攻撃を入れていた。雑な照準で発射されたミサイルは電磁砲艦型の至る所に着弾し、装甲を破壊しようとしていた。ギンガでも舷側にあるミサイル発射口、生き残っている第一砲塔から砲弾が連続して発射されていた。ギンガは構造上、前部砲塔しか砲弾を発射できないが。この時、ジルはとにかくあの特殊砲弾を撃たせない為に、ステラマリスに砲撃させない為に砲弾を放っていた。ギンガに呼応するように波獣艦や遠征艦も40センチ砲弾やロケット砲を放ち始めていた

 

『撃て撃て!弾薬庫を空するまで撃て!次にあの砲弾が刺されば沈むぞ!』

 

そうして夢中に砲弾を放ち尽くしながらジルは機関員に退艦準備をさせた。既にボロボロのギンガに全てのヘイトを向けさせ、可能であれば撃沈する。恐らくあの装甲圧ではエネルギー砲撃でも貫通は不可能。よくて装甲を破壊することしかできないだろう。波動砲を使えば周りの艦艇にも衝撃波で最悪沈んでしまう。大体、ギンガの機関は限界だった。機関長のアネット曰くいつ爆発してもおかしくないとのこと。そして機関員に負傷者が出ていたため、負傷者は移すことになった。他の艦艇も同じように負傷者から順にVTOL機もでもあるホーク3に乗せられ、順にステラマリスやネバダに移され始めていた。先の攻撃でエセックス、ギンガ共に医務室が崩壊、重傷者は設備の整っているステラマリスに、軽症者はネバダの医務室に送られていた

 

『全負傷者、移送完了。機関要員の退艦準備完了。エセックスも指揮官パイロットの避難完了』

 

今回の無人機に指示をする為にフミアキともう一人の航空士官がエセックス艦内で無人機の操縦を行なっていた。アイラの報告を聞いたジルは頷くと艦橋にアネットが入ってきた

 

「艦長、直ぐに出てください。機関がいつ爆発するか分かりません!」

 

アネットがそう言うもジルは

 

「私はまだ残るわ。アネットは先にネバダに行って」

 

「ですが・・・」

 

アネットはジルの固い決意にこれ以上は梃子でも動かないと察すると「気をつけて。機体はまだ格納庫に残っているから」と言い残して艦橋を去ると残っていた最後のランドエアーに乗り込み、ネバダに移った

 

「・・・さて、始めるわよ」

 

『はい、姉様』

 

ジルは装甲強化外骨格を着るとコンソロールを操し、ギンガを動かし始めた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同じ頃、陸上でも攻勢が始まっていた。レーナの予想通り、量産された高機動型。泥濘地帯に落ちる火の雨。空中で炸裂する360mm燃料気化弾と203mm榴弾は接近する高機動型を消し飛ばしていた

 

「ははははは、汚ない花火だ」

 

「しかし、よく燃えるな・・・燃料に引火でもしたか?」

 

「燃料気化弾で何もかも吹っ飛んでますからその残りじゃないんで?」

 

「そんな事より、奥のアイツをやるわよ」

 

「回収輸送型・・・後方のアイツがいると言うことは。首狩りの名も伊達じゃねえな」

 

「お前達、屑鉄に首持ってかれるんじゃないよ。女神に怒られるぞ」

 

「「了解」」

 

そう言って装甲強化外骨格。通称『スパルタニアン』を着た白兵戦支援部隊は片手に試作特大型ロケットランチャー『ファウストパトローネ』を担ぎ、発射するとロケット弾は勢いよく爆発し、回収輸送型を一撃で破壊していた

 

「おっしゃ!命中」

 

「やるじゃーん、それじゃあバンバン撃っていこうじゃん」

 

「うおおおおお!血が騒ぐぜ!」

 

塹壕に隠れながら歩兵大隊はファウストパトローネを発射していた。ファウストパトローネは一人が射撃、もう一人が装填を行う二人一組で攻撃を行う兵器である。ファウストパトローネはその威力の大きさからスパルタニアンの装着が義務付けられていた。ファウストパトローネの射撃に夢中になっていると通信が入った

 

『こちらビートル1。ガーディアン隊は一旦後退しろ。支援砲撃を行う』

 

「こちらガーディアン1了解した。お前たち、味方の効力射が飛んで来るぞ。隠れろ!」

 

そう叫び歩兵大隊は塹壕の奥に隠れると次の瞬間、飛んできた砲撃が辺り一面を真っ赤な炎に染めていた。その様子を見たミチヒとリトは唖然としていた

 

「これ・・・僕たち必要だった?」

 

『さあ?分からないのです。でも、高機動型は全滅したのでいいのです』

 

そう言うとミチヒはアルガニアの歩兵部隊によって蹂躙される戦場を見ていた。この時、まだ遠征艦隊が大打撃を受けたことは伝わっていなかった



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

死神の通信途絶

沈没2

 

大破1

 

中破1

 

小破1

 

遠征艦隊全艦が被害を被った。その現状にシンは驚愕しているとそれは光を欺瞞して母艦の砲身を駆け抜けて海上要塞へと飛び渡った。

真っ先にシンは気づいた。レーダには映らない。光学センサも欺瞞される。それでも耐えることなき、亡霊の声を常に聞くその異能は、そいつらの出現と接近を精確煮に捉える

 

「各機警戒を!光学迷彩機ーーおそらくは高機動型だ!」

 

すると蝶の翅の微細な羽ばたきと同じ光の揺らめきを纏う何かが要塞の外壁を駆け上がる。殆ど垂直の鉄骨を一直線に疾走する。蹴りつけられたパネルが脱落をする。数は四機

近くを通りかかる隙にジャガーノートが回頭し、88mm戦車砲で外壁パネルを叩き割り、ついで機関砲と散弾砲が進路上に弾幕を展開。三機は叩き落としたが残りの一機がすり抜けてなおも頂上へと走る

 

『またシンかーー好かれてんなお前!』

 

「しつこいバカに好かれてもな」

 

そう言いながらアンダーテイカーとヴェアヴォルフは会話をした。相変わらず敵の姿は見えないが、シンは()()事で敵の位置を把握した。敵はレギンレイブでも不可能な天井から疾走してアンダーテイカーへと迫りーー

 

「・・・予想していないとでも」

 

頭上に88mmと120mmキャニスター弾の一群が炸裂、対人散弾が雨霰と降り注ぐ。原生海獣とレールガンによって半ば消し飛んだ上層に鉄の驟雨として降り注ぐ対人散弾に高機動型は迷彩も、トカゲやコウモリのように華奢な機体を高周波ブレードが切り裂く。

絶叫と共に一機の銀の獣が光学センサを青く光らせ、起き上がる

 

「なーー・・・!?」

 

翼のように背に負う高周波ブレードが、叫喚を放って白熱する。機関砲弾の盾となり、引き裂かれた一機目を足場代わりに蹴り付け、二機目が迫る。

ライデンの擁護を予測し、追撃に向かおうとしていたアンダーテイカーはその突撃を避けきれない。

骨を磨いた純白と、流動する銀。ーー二機の機甲兵器が正面から衝突する

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その戦闘を第二層からセオは見る。

交差の瞬間、アンダーテイカーは身を捻り、高機動型の高周波ブレードからはコックピットを守ると同時に己のブレードを敵機に貫通させる。だが、この距離では慣性までは殺せない。突進の勢いでアンダーテイカーは激しく突き飛ばされる。

高周波ブレードを突き立てられた、高機動型はアンダーテイカーに絡め合うように組み付いたまま流体装甲が自爆、その衝撃波でアンダーテイカーは弾き出される。折れ飛んだブレードが甲高い音で宙に舞った。

 

『っ・・・・!』

 

それでもアンダーテイカーはかろうじて高機動型をーーその残骸を蹴り放し、左右両方のアンカーを射出。割れ落ちた外壁パネルの向こうの鉄骨に垂れ下がりーー

直後にレールガンの咆哮。第三層の一本の柱を掠めて彼方へと飛び去る。800mmのレールガンの衝撃波だけで鉄骨のワイヤーを揺らして外した。

アンダーテイカーが落ちる。それはまるで溶岩湖に落ちた高機動型のように

激震で脱落した鉄骨と外壁パネルに先行してーー

 

「ーーシン、」

 

シャベルを担ぐ首のない骸骨のパーソナルマークが、あっけなく暗い海に落ちた

 

知覚同調が切れる。同調相手に気が失ったかーーー戦死した時に途絶えるそれが

 

シンと同調している間は絶える事のないレギオンの絶叫が、その時ふつりと途絶えるーーそれきり無情な、静粛が降りた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・シン」

 

ギンガを動かしていたジルは映像を見ながら呆然とした。そして一瞬の呆然のうち、ジルはネバダに向けて叫んだ

 

「アミ!サーモグラフィー起動!生存者の救助にあたれ!ランドエアー全機発艦!艦載機もありったけ出せ!捜索を行え!」

 

『りょ、了解!さ、サーモグラフィー起動!動かせるカタパルトは全部動かして!ランドエアー発艦!救助を行って!』

 

アミはジルの命令に動揺しながら指示を出した。ジルは睨むように電磁加速法型をみると、今度は弾薬庫の砲弾の残弾を確認し、レイドレバイスで通達をした

 

「・・・全艦に通達。直ちに電磁砲艦型から離れなさい。攻撃を仕掛けます」

 

そう言って通信を切るとギンガは残った砲弾を叩き込みながら一気に加速を始めた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『攻撃を仕掛けます』

 

ジルの通信にレーナ達は疑問を持つと映し出されるギンガの行動に目を張った。突如進路を電磁砲艦型に向け、残った全兵装を惜しみなく発射し、全速力で突撃。艦首にはバルバスバウや波動砲口を覆うように波動防壁が展開される

 

「衝角!体当たりする気か!!」

 

イシュマエルの驚きにレーナはいまいちピンとこない言葉の連続にイシュマエルは軽く説明をした

 

「衝角ってのは体当たりのために艦首に付ける武器だ。彼女は突撃をする気だ!あんな速度でぶつかったら中にいる人間は吹っ飛んじまう!」

 

「なんですって!ギンガ、今直ぐ攻撃を中止してください!」

 

レーナの叫びに似た声はジルには届かず、最大船速で突撃を敢行するギンガはまるで狂気の沙汰だった。自殺行為にも近いこの攻撃に全員が唖然として、何も声が出せないでいた。

そして、400mもの船体を持つギンガが100ノット近くで急接近をすると膨大なエネルギーが生じるのは間違いない。そのことに気づいた電磁砲艦型は慌てて800mmレールガンを発射するもあまりにも早い速度に照準がまるで合わず、砲弾は遥か遠くへと飛んで行った

最後の手段に自衛火器を目一杯発射させるも、全て展開された波動防壁によって防がれていた。40mm対空回転機関砲は飛んでくる多量のミサイルの対処で手一杯だった。そして急速に接近してくるギンガが今、

 

 

 

 

 

ゴォン!

 

 

 

 

 

と言うとても重い金属音が当たる音の次に聞こえてきたのは金属が擦れて圧壊する音。400mの巨体が生み出すエネルギーは膨大だ、その衝撃波はステラマリスにも届き、衝撃の大きさを物語っていた

 

「こ、これは・・・」

 

レーナが見た光景は騒然だった。電磁砲艦型の中央部分に突っ込み、船首部分が完全にをめり込んでいるギンガと電磁砲艦型であった

 

「何と言う光景だ・・・」

 

しかも突撃したギンガは限界が近い波動機関を最大出力にして加速し、船体を動かしていた。レーナ達はジルが生きている事に安堵していた

 

「何をする気ですか・・・?」

 

レーナはギンガの行動に疑問を持つと旋回し始めた船体はやがて船腹を自分達のいる方へと向けていた。その意図に気づいたレーナとイシュマエルは砲撃命令を出した

 

「砲兵戦隊射撃用意!弾種焼夷弾、敵機の光学迷彩を無効化します!」

 

「全艦撃ちまくれ!問題ない、女神の船はあいつの砲身が盾になって当たらない。兎に角撃ちまくれ!!」

 

そしてステラマリスから弧が描かれ、電磁砲艦型へと降り注ぐ。すると内蔵するナパームに着火し、まさに甲板に乗りかかろうとするそれの存在に気付いた

 

「やっぱりいたか、高機動型・・・高角砲を撃って」

 

『了解。高角砲、射撃開始。レーダー破損につき、手動にて射撃を開始』

 

アイラが呼称するとパネルに映る映像からレバー操作で射撃を行なっていた。ジルは遠隔操作の対空パルスレーザーを放ち、接近してくる高機動型もろとも装甲を撃っていた。それにここはレールガンの死角。撃たれることも無く、安全に乗り込んでこようとする高機動型を撃ち抜いていた。だが、それをすり抜けて要塞に飛び込む機体もあった。その機体は要塞の第三層、最上層にいたライデンが俯瞰する形で見た

 

「ーーユート!高機動型の迎撃はこっちでやる!第三層にいる奴らを借りるぞ!」

 

そうしてライデンは指示を出した

 

『頼む。ーー第二層にいる各機。以降俺が指揮を執る。火力拘束機、面制圧は高機動型を警戒。戦車砲装備の前衛および狙撃手の護衛に当たれ。前衛と狙撃手は電磁砲艦型の機関砲、連装砲の排除を・・・ギンガの作った機会を無駄にするな』

 

突撃を敢行したギンガはスラスターを逆噴射させ、一旦船体から離れると次にロケットアンカーで艦首方向に怒りを突き刺し、次いで後部スラスターを当てて電磁砲艦型にピッタリと横付けすると最終に格納式のパルスレーザーを放ち、装甲へと射撃を開始した。ついでに遠征艦からの砲撃は虚しく弾かれていた

 

『何だと・・・!?』

 

『硬い・・・ッ!』

 

乗員が入らない分、重量を装甲に割いていた。左舷側の火器は殆どが沈黙。動力源である原子炉も衝撃によって緊急停止。一歩間違えれば水蒸気爆発を起こすと言う博打に出ていた事をジルはこの時に気づいた

 

「・・・あっぶな。これ間違えてたら私もみんな死んでたかも」

 

改めて自分の性格の難を考えているとギンガの甲板を伝うように狐のパーソナルマーク・・・セオの機体が電磁砲艦型に乗り込んでいた



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ギンガ轟沈

夏休み中に終わらなかった・・・・


第三層でクレナは立ち尽くしていた。

自分も援護しないと、と、頭の片隅では思うが動けない

ふらふらと定まらない視線に追従してHMD(ヘッドマウントディスプレイ)の中を飛び回るレティクルが、なんだかひどく目障りだ。カタカタと震えて力の入らない、操縦桿を握っている感覚すらない右手

 

 

シンが落ちた

 

 

彼だけはいなくならないと思っていた、思っていたのに・・・

 

「やだ・・・嫌だよ。置いていかないで・・・!」

 

思考が働かずに動かない。そのくせ手は震えて、視線は定まらず。砲弾がまともに当たる気がしない。

私はシンのように無くして奪われた兄の首を。たった一人で戦場を彷徨うなんて、こんな自分にはできない

居なくなってしまったシンを、ーー

自分はもう、見つけられない

すると、近く同町で繋がった誰かの怒声が聞こえた

 

『ガンスリンガー、撃てないなら射線の邪魔だ。下がれ』

 

遠距離砲撃部隊隊長のセシル・シルバーの声だった。第一層に居た彼らはギンガの突撃を見てここまで上がってきていた。セシルの容赦ない言葉に、少女は文字通り役立たずと化した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今は綺麗に横付けされているギンガに飛び乗る形でラフィングフォックスは電磁砲艦型の甲板に乗り移る。

先のギンガの突撃で電源が切れたのか、いまだにレールガンが復活する様子がない。だが、万全を期すためにレールガンの破壊を命じた。

直後にワイヤーアンカーを駆使してレルヒェのチャイカとユートのウルスラグナ、前衛担当の数機と生き残りのアルカノストがギンガの壊れた甲板に乗り移る。レールガンの死角のこの場所はついでにギンガの突撃で他の火器も破壊されており安全な場所だった。

セオの一番近くにいるチャイカが非難気に呟く

 

『貴殿も大概無茶をなさいますな、狐殿。そのような蛮勇は、死神度だけにしておいていただきたいのですが』

 

「その死神より無茶をした人がいるけどね」

 

そう呟くとおそらくその人物がいるであろうその船の艦橋を見た。艦橋、並びに殆どの主砲、副砲塔が焼け焦げ、中には跡形もなく吹き飛んでいる砲塔もあった。対空火器も高機動型の攻撃か殆どが沈黙し、今ではただ浮かんでいるだけであった

 

『何とも痛ましい光景です。新型の砲弾の攻撃でアルガニア最強の名も落ちてしまいましたな』

 

そう言って突き刺さっている剣状の砲弾を見ながら言うとギンガのぶち開けた穴の奥からごぉん、と言う音が聞こえるとレールガンが起動し、生き残ったわずかな対空火器がセオ達に狙いを定めた

 

「嘘でしょ!?」

 

『この音・・・もしやディーゼルエンジンか!』

 

チャイカがそう叫ぶと機関砲が回転し、銃撃を開始した。すでに殆どの武装が機能を停止しているギンガは40mm程度の銃弾を弾きながらそれでもタコのようにくっついていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

電磁砲艦型が復帰する少し前。ギンガ船内艦橋ではジルがレーナとダニエル、アミの三人に叱られていた

 

『このアホンダラが!!』

 

『何考えているのよ!ばっかじゃないの!?』

 

『今回は無事でしたが。今度からはやめてください。こっちの心臓が悪くなります!!』

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ごめん」

 

だが、ギンガの突撃で電磁砲艦型は機能を停止した。その間に征海艦隊の艦艇が接近し砲撃を開始、速射砲と対空機関砲の破壊を行っていた。特殊砲弾の攻撃で主砲の使えない空中艦はレールガンの射撃ができないため、征海艦隊がその任を担う事になっていた。そして接近し、速射砲を叩いた後。これからレールガンの排除のための砲撃を行おうと思った時。電磁砲艦に異変が起こる、轟音と共にセンサーに光が灯り、レールガンが起動した

 

『何だって!?』

 

『緊急!電磁砲艦型が再起動!』

 

「何だって!?」

 

すると次の瞬間。起動したレールガンは艦首方向に示唆をした。そこはギンガがロケットアンカーを繋いだ場所だった。そして再起動したレールガンが咆哮する。狙いはギンガの艦首。自身の艦首に突き刺さった鎖を艦首のセンサーを犠牲にしても撃ち抜いていた

 

「うわぁ!」

 

突然襲った強い衝撃にジルが転んでいた

 

『っ!レールガンが・・・ギンガを・・・』

 

レーナはその光景に一瞬唖然とすると電磁砲艦型の再起動を確認した高機動型の数機が電磁砲艦型に戻っているのを確認した。咄嗟にジルの左舷側の生きているパルスレーザー放射群によってその大体が落とされたものの、すり抜けた数機はセオの頭上に落ちてきた

 

「チッ」

 

セオは舌打ちをしながら接近してくる高機動型に機関銃を叩き込んだ。すると高機動型の逃げた先に一基の部品が落ちていた

 

「あれ・・・は、」

 

アンダーテイカーのーーー。おそらく高機動型で貫通させた時に抜け落ちたものだろう。八六区の中でも高周波ブレードを使うのはシンしか居なかった。そして、高機動型はその高周波ブレードを無造作に踏みつけようとした。

その時湧き上がったのは怒りではなくーー覚悟や決意と、呼ぶべきものだった。

 

「っ・・・!」

 

88mm砲を旋回させ、連射。高機動型を避けさせた後。その場所に飛ぶとファイドを呼びつけ、その高周波ブレードを蹴り上げた

 

「ーーファイド!確保していろ!ーー必ずお前が持ち帰れ!」

 

セオはそういうと周りにいた高機動型多数を相手に敵を撹乱させ、自身を犠牲にしながら仲間が作るべき隙を敵陣に作り続けた彼らの死神のように。セオはジャガーノートを動かしていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

追い立てるように散弾砲を連射し、逃げ足の速い高機動型の退路を狭め、シデンは摩天貝楼拠点、第三層を駆け抜ける。凛とどこか猛々しく、レーナの知覚同調が駆け抜ける

 

『砲兵戦隊、キャニスター弾装填ーー撃て!』

 

散弾の雨が高機動型をズタズタにした。立ち直ったレーナにシデンはそっと息をついた

 

「これで本当に死んでたら、地獄まで追っかけ回してぶっ殺してやるからな、色男」

 

シデンの言葉は誰にも届くことはなかった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「チッ・・・」

 

ヴィーカは船内に侵入させたシリン全機が排除された事に思わず舌打ちを零す。制御中枢の位置はある程度絞り込めて入るがいまだ明確ではなかった。あと少しと言うところだがーー情報取得の手段がもうない以上、完璧を期してはない。ステラマリス、遠征艦隊の残弾もそろそろ危ないだろう。せっかくギンガが身を挺してこじ開けたのに正確に絞れなかった事に不甲斐なさを感じながら通信をした

 

「ミリーゼ、艦長。現時点での制御中枢の位置予測を送る。候補は三箇所、これ以上の調査は不可能だ。半端ですまんが・・・」

 

二隻が轟沈した遠征艦隊は残った三隻のうち一隻は大破、中破と小破が一隻ずつ。エセックスも第二甲板からの発艦が可能となったらしいが、それでも発艦できる機体は数が知れているだろう。するとヴィーカは視界の端、格納庫の出入り口の向こうを過ぎる鋼色に、ん、と手を止めた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

最後の対空砲と高機動型が落ちる。800mm砲弾が遠征艦ベナトナシュ最後の主砲と交差する。40センチ砲弾は炸裂し、155mm速射砲を吹き飛ばす。一方でベナトナシュも砲弾を喰らい、艦尾が抉り取られる。スクリューまでも破壊され、すぐに停止。

 

ーー自走不能

 

スクリーンに映るは明後日の方角に映る速射砲と、厄介極まりない二門の主砲のみ。そしてその155mm速射砲も残弾の少ないエセックスからのミサイルによって今、破壊された

 

「現状はどうなっている」

 

イシュマエルは士官に聞いた。現状、ベナトナシュは自走不能。バシリコスは全主砲破壊。デネボラは火災発生中。破獣艦は二隻が轟沈、残りは二隻が中破、残りの二隻は損害なし。現在、救難艦とネバダが救助作業中とのこと

 

「破竜砲の発射準備はどうなっている」

 

「できております」

 

「ミリーゼ大佐、あんたは兵を連れて退艦準備を。救難艦とネバダが走り回っている、拠点にいるエイティシックス達も、この状況で救難艦を横付けさせるくらいなら何とかなる。レギンレイブは放棄になるがガキどもだけなら・・・機動打撃群の任務はーー拠点制圧と電磁加速法型の排除は完了した。あんたらはここまででいい。船団国群の、征海艦隊の戦争にこれ以上、付き合ってくれなくて大丈夫だ」

 

イシュマエルはジルとの約束を果たすためにレーナに言うが・・・

 

「いいえ」

 

レーナは首を横に振る。

それがイシュマエルの責任で矜持なら。

それがエイティシックス達にはこれが矜持で、その女王である自分の責任だ

 

「あなた達を見捨てて逃げることは、彼らの誇りを傷つける。それは私も同じです。彼らがまだ戦っているなら、私は同じ戦場に立たなければならないーー逃げる準備などできません」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

再起動したレールガンは始めに接近していた遠征艦を無力化すると今度はピッタリとくっついているアルガニアの空中艦に砲を向ける。相変わらず殆どは射線に入らないがギリギリ後ろのエンジンノズルがさっき艦首を撃ち抜いた時に動いたのか射線に入っていた。そしてレールガンはそこを見逃さずに撃ち抜いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして砲弾は見事にエンジンノズルを撃ち抜き。爆発を起こすと後ろに傾き始めた



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

動く巨艦

「そんな・・・ギンガが・・・」

 

レーナは震えるように呟く。艦首から持ち上がる船体、燃え上がり、沈んでゆく艦。

沈んでゆくギンガにネバダやエセックスにいた乗員は燃えながら沈んでゆくギンガを静かに見ていた。生体反応はある。アミはネバダを拠点まで回頭させ、ジルの回収に向かった。拠点では先に接岸しているエセックスが第一層でコブラ隊の回収を始めていた

巨艦が傾く。

800mmレールガンを旋回させながら

 

「くそっ・・・!」

 

咄嗟にアンカーを叩き込んで吊り下がっていたライデンはその場に止まらせる。右舷を通り過ぎる時、800mmレールガンが旋回する

 

「やらせるかよ!」

 

今は沈んだギンガが破壊し作った隙、それを不意にはしたくない。

 

「揺れなきゃいい・・・固定されてりゃ、いいんだろう」

 

兵装選択、切替

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

燃え盛る焔の波を切り裂き、電磁砲艦型が回頭する。

全弾打ち尽くしたミサイルポッドを投棄し、重機関銃での残弾を確認を確かめたことで急回転だ。甲板に残るわずかな僚機と共にワイヤーアンカーで自機を固定し<スノウウィッチ>の脚先が甲板から離れるほどの傾斜にアンジュも堪える

800mmレールガンの旋回は見えた。だが、重機関銃ではダメージを与えることは不可能

 

「どうすれば・・・」

 

アンジュは歯噛みすると前方の突き出た鉄骨にぶら下がる無人のアルカノストに気付く。

レギオンに情報を取れぬよう高性能爆薬を内蔵した。

近くで吊り下がるサギタリウスの中、ダスティンが言う。

即席の二機分隊を組み、お互いにフォローし合いながら高機動型を掃討し、・・・共に弾切れとなった彼。

スノウウィッチからはアルカノストまでは少し距離がある。より近くにいるサギタリウスだが、この芸当は日の浅いダスティンには不可能だ

 

『・・・アンジュ』

 

「ええ。でも・・・忘れないで」

 

前衛だからってーーいつも先陣を切っていたら生き方まで、立ち塞がるものを切り抜ける姿を、見せてくれた人が示した希望を。未来を。望むべき幸福と言うべきものを。

自分も、ダスティンも。

たとえその人がこの戦闘でこのまま、失われたとしても

 

『もちろん。ちゃんと覚えてる。俺はあんたを置いて先には死なない』

 

ダスティンは笑いながら言う

 

兵装選択切替。脚部対装甲パイルドライバ。四基同時起爆ーー撃発。

四基の57mm電磁パイルが装甲板に撃ち込まれてヴェアヴォルフを固定する。反動でアンカーが外れて弧を描くも構わずライデンは兵装を主砲に選択。わずかに旋回性能を持つ40mm機関砲。一度離したトリガをもう一度引く

 

「これならーーどうだっ!」

 

視線を追い、微動して照準を調整した機関砲が獣の唸りにも似た砲号をあげる。機関砲弾の驟雨が中を駆ける

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

サギタリウスが脚部パイルドライバを全基打ち込む。その機体が固定される

 

『今だアンジュ、行け!』

 

傾斜する甲板を無理やり飛び出したスノウウィッチがサギタリウスを足場にさらに跳躍。斜めに突き立つ鉄骨に着地し、重さに耐えかねてずり落ちるよりも先にアルカノストを渾身の力で蹴り飛ばす

 

「お願いーー届いて!」

 

ギンガの開けた大穴の捲れあがった装甲板に脚を引っ掛け、機関銃を放ったアンジュは祈るようにアルカノストを見た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ヴェアヴォルフの機関砲弾は艦尾側の800mmレールガンの砲口に着弾。砲身の破壊こそしなかったもののそのインパクトに内側の流体金属がガラスのように撒き散らす・

艦首側の800mmレールガンにアルカノストが落ちかかる。スノウウィッチの叩き込んだ機関銃弾が内蔵する高性能爆弾に誘爆。秒速8000mにも及ぶ爆轟が流体金属を砕け散らせる。

直後に発射された砲弾の弾道をーー掻き乱された電磁波が、ごくわずかにだが狂わせる。

現在の放線距離はおよそ十キロ。そこまでの距離となれば少しのズレも着弾時には大きなズレとなる。二発の魔弾はいずれもステラマリスを大外に外して海面へと突っ込む。

飛行甲板に大波がかかる。母艦は無事だった。けれど引き換えに。

猛烈な射撃の反動に、想定以上の負荷に10トン強のフェルドレスに飛び移られた装甲板が、異音と共に外れる。傾いた甲板をヴェアヴォルフ、スノウウィッチ、サギタリウスの三機が転げ落ちる。電磁砲艦型の舷側に水柱三つが立つ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

妨害できたのは800mmレールガンのみ、他の隠匿されていた兵装は遮られることなくステラマリスに疾走する。ステラマリスは皮肉にも800mm砲弾のうんだ大波によって弾道からわずかに船体を逸らす。そして砲弾は海面に着弾していた

だが、幸運はそれ以上続かなかった

 

「っ!二番スクリューに着弾ーー脱落した模様です!」

 

「水中弾ーーか。最後の最後に運のねぇ」

 

タタでさえ遅い船足を致命的に減じた

 

 

 

「ライデン!?ーーアンジュ」

 

三人の切れた知覚同調にセオは愕然と声を漏らす。

落ちたジャガーノートに意も解さずに電磁砲艦型は回頭を終えようとする。急角度に傾いていた船体が徐々に水平に戻る

 

「っーー!」

 

攻撃の機だ。ステラマリスも速射砲を避け切れなかったのか今足が止まった。しかも電磁砲艦型の真正面で!

セオは落ちた仲間達に犠牲にまるで突き動かされるようにラフィングフォックスを飛び出させようとする。

それを見越したかのようにその前に二機のフェルドレスが立ち塞がる。氷細工の蜘蛛のようなアルカノストと同じ磨いた骨の純白のレギンレイブ。レルヒェのチャイカ、それにユートのウルスラグナ

共に乗り移って、ついに甲板状にはこの二人しかいない二機

 

『敵砲は二基です、狐殿。お一人では倒せない』

 

『敵は狡猾だ・・・ここに来てまだ手を残してもいる』

 

人ならざる少女の冷徹な声が、無機質なまでに感情の薄い仲間の声色が、セオを冷静にさせた

 

「ごめん・・・ありがとう」

 

『主攻は任せる、リッカ・・・トドメはお前が、さしたいだろう』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

電磁砲艦型が回頭する。確実にステラマリスを仕留めるために。ネバダの共鳴波装置が破壊されたことでステラマリスは波動防壁を展開できない。なんとしてもここでやらなければいけなかった

 

「ウルスラグナより、要塞各機。敵主砲の破壊にかかる。艦首側をフリーダ。艦尾側をギセラと呼称。まずはフリーダを潰す・・・右舷速射砲の排除を頼む・・・レルヒェ」

 

『いつでも』

 

「ーー行くぞ」

 

ほとんど同時に吶喊。徐々に疾走が不可能な角度に近づく中。二機のフェルドレスは艦首側のレールガンを破壊するために獣のように小刻みに進路を変えながら疾走する。二機に施行し、発砲する砲塔はその殆どが要塞にいる僚機とネバダ、エセックスの対空砲によって破壊された。

至近距離の爆炎にも一切の怯懦なしにチャイカは駆け抜ける

800mmの主砲は破壊されるわけにはいかない。重々しい風を切る音を引き連れて艦首側のフリーダ、艦尾側のギセラ、二門のレールガンが二機のフェルドレスへと向ける

 

『ーーユート!ギセラは任せろ!』

 

無防備な艦尾に新たな船体が飛び移った。彼らと電磁砲艦型の間にはかなりの距離があったが、沈んだギンガの残骸を伝って飛んできていた。

先頭はシデンのキュクロプス。続いてここまでの戦闘で5機が脱落し、メジュリーヌを要塞上に残して十七機のブリジンガメン戦隊全機。

海賊さながらに飛び移った彼女達はすぐさま眼下の砲塔へと取り付く。50基を隠してあった10基全て破壊された対空機関砲と3基を残して破壊された速射砲。それが階段状に甲板中央に重なる。アンカーを打ち込み、よじ登る。

砲身の長さよりも内側に侵入した彼女達に、ギセラは砲身を振り回した。

数百トンは降らないだろうその砲身は大質量を持って不注意な一機を飛ばそうとした時、砲身に大爆発が生じる。砲撃の飛んだ方を見ると狙撃部隊以外の突入隊の回収を終えたエセックスが甲板状に大量のコブラを展開させて砲撃を行なっていた。ギセラ、フリーダ。共にエセックスに砲身が向く。その隙に一気にチャイカとキュクロプスがフリーダとギセラによじ登る。

二門のレールガンが断頭台のように放熱索のワイヤーを振り下ろす。自衛の最後の切り札。だが・・・

 

『・・・落ちろ』

 

要塞からセシルが120mm狙撃砲を放つとワイヤーを切り落とした。だが、爆発の影響でチャイカが擱座してしまった。千切れたワイヤーをすり抜けてウルスラグナが接近する。砲身まで20m、30mの砲身の死角。だが・・・

 

『やはり一歩足りないか・・・』

 

チャイカに向けられようとした砲身がそのままの勢いでウルスラグナを潰しにかかる。視界の端には砲塔背部、制御中枢があるだろう位置にはまだわずかに遠かった。

不意に思い出す。セオに話した塔の話。誇り以外の懊悩も感情も欲も願いも、ここでは切り捨てなくていのかもしれない。

薙ぎ払われるフリーダの砲身。

フリーダを破壊する為には黙らせるべき電導ワイヤーのーー蝶の翅が生え出る根元のような基部に88mm戦車砲の砲撃を叩き込んだ



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

最後の足掻き

「全機撤収しつつ後退。直ちにネバダに乗り込め。繰り返す、全機撤収せよ」

 

エセックス甲板から砲撃を行なっているジョージは知覚同調を通して通達をするとジョージは電磁砲艦型の主砲の内一基がキュクロプスによって破壊され、残りの一基はウルスラグナが基部を仕留め。弾き飛ばされていた。

 

「艦長」

 

『ああ、任せろ。司令の救助も終わっている。今すぐに救助に向かうさ』

 

「お願いします」

 

そう言うとエセックスは一旦砲撃を止めると救助作業を始めていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

海に落ちたウルスラグナが残した爆炎に隠れながらラフィングフォックスはフリーダ頭上に飛ぶ。

センサーには800mmの砲口が写る。できれば砲塔背部に向かいたいのだが。ここで妥協をし、照準を恐らく装填されているであろう800mm砲弾に合わせる。

 

撃発。

 

88mm砲が砲声を上げる。本来800mm砲弾が進む道を逆進して88mm砲はレール半ばまで進む。途中で電磁波を形成する流体を切り裂きながら。

信管が作動し炸裂。電磁場を形成した流体の一部が盛大に撒き散る。回路がショートし、電流が暴走。フリーダに装填された800mm散弾がレールの狭間で誤作動。

耳を弄する轟音で爆発。膨大なエネルギーが逃げ場を失い砲身を正反対に折る。

 

「ーーフリーダ撃破を確認」

 

ジョージは盛大に爆発をするフリーダを見ながら驚いていると自分達のよく知る声が聞こえた。

 

『ジョージ、聞こえるわね』

 

「ジル・・・司令、目を覚ましたんですね」

 

『ええ、でもまずは救助に行くわよ』

 

「はい」

 

そして救助に入ろうとした瞬間。ギセラの砲塔が内蔵された自爆装置によって吹き飛んでいた。

 

「なっ!?」

 

『しまった!自爆装置・・・。行けるわね』

 

ジルはダニエルに確認を取るとすぐに救助活動に入った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・嫌な予感がする」

 

「どうした、ジル」

 

エセックス艦橋でジルは折れた砲身を見ながら呟く。

 

 

何かが変、いつもとは違う何か・・・

 

 

「下に行くぞ・・・何かが起こる」

 

「・・・お前の予感はよく当たるからな。着いていくぜ」

 

二人はそう言うと艦橋エレベーターかたCICに向かい、艦橋には人がいなくなっていた

 

『レールガンは倒された・・・だが、いつもはシンがいたからこそ撃破を確認していた・・・』

 

ジルはするとあることに気づいた。

 

「っ!しまった!要塞にいる全機に連絡!砲撃がいくぞ!!」

 

映像を見ると流体金属が砲身を作り出していた。最後の足掻きとして照準は要塞にいるフェルドレスに砲撃をしようとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「全機撤退!吹っ飛ぶぞ!!」

 

通信を受けたセシルは怒鳴りながら叫ぶと要塞に残っている狙撃部隊と無人機部隊はすぐさま第三層から撤退を開始、その直後。レールガンが咆哮。さっきまで自分達のいた第三層を貫通。その余波が第二層にいた狙撃部隊3機にも伝わった。

 

『うわっ!』

 

『ぬおっ!』

 

コブラ改弐型三機は衝撃波でそのまま海に投げ出された。

 

「まずいっ!」

 

咄嗟にセシルは着水時の耐ショック姿勢をとる。第二層から海面までの高さはおよそ40m。コブラの重さから考えて着水時の衝撃はコンクリート以上の硬さとなる。その事を知っているセシルはそのまま大きな水柱と共に着水する。

 

「アミ!近くでセシル達が落ちた!急いで!要塞が崩れるわ!」

 

先の砲撃で軋む鉄骨の塊にジルは慌てた様子で叫ぶ。要塞は大きな音と共に軋み、崩れる。そんな中、要塞から飛んで行くレギンレイブを見た。

 

「あれは・・・セオ!」

 

レギンレイブのパーソナルマークを見てジルは驚いた。セオは最も()()()()()場所である制御系を撃ち抜こうと飛翔をしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ステラマリス甲板ではカタパルト要員が準備を完了し、照準を合わせていた。

 

「ーー幸せだなステラマリス。我らが初めての、最後の大母上・・・最後の戦で、破竜砲まで撃って終えられる」

 

甲板要員の誰かがそう呟く。イシュマエル最後の砲撃命令を聞きながら。

 

『照準そのまま。破竜砲ーー撃ぇ!』

 

甲板の蒸気カタパルトから水蒸気を上げてシャトルが動く。実に15トンにもなる錨を引き摺りながら。

カタパルトは30トンもある戦闘機をわずか2秒ほどで離陸速度まで加速させるエネルギーを持つ。そして時速300キロまで加速した錨はそのまま鏃のように投擲される。

 

破竜砲

 

砲光種を葬るためのステラマリス最後の兵装。

錨が飛ぶ。古代の弩砲と大差ない、原始的で乱暴な投擲方法で投げられた鏃が。レールガン、その予想される弾道と交差して。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

砲声が聞こえた気がした。

そんなはずはない。現代の交戦距離の長い戦争では砲声は弾着後に来る。

だが、セオはそんな砲声に促されるようにトリガーを引く。早退する155mm砲の砲声など聞こえなかった。

直上から叩き込まれた88mm高速徹甲弾はフリーダの制御部分を真上から貫通する。直後、砲身内部の電流が行き場を失い暴走。全身から稲妻を噴いて頽れる。直後に自爆装置が作動。彼方に800mm砲弾が飛んで行く。

ついでにステラマリスの砲弾が着弾。ギンガによって開けられた大穴に砲弾が入り込み、爆発を起こす。銀色の流体マイクロマシンが鮮血のように派手に散る。

鉄色の巨艦は津波のように海を割り、波の奥へとあっけなく海中へと沈む。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

知覚同調でまだ消えぬ電磁砲艦型の嘆き。まだ生きている事実にジルは歯噛みする。現在、生き残ったエセックス、ネバダ共に新型砲弾の影響で潜航はできない。対潜弾もおそらく届かないだろう。そんなことを考えていると突如画面に映ったものにジルのみならず全員が唖然となった。

それは中央に一つ、左右側面に一つずつ。眼球一つ一つに人間がそのまま埋まりそうな、あまりの巨体に凝視されているのにも関わらず。視線があったようには感じれない。そんな眼差し。

黒い瞳孔と周囲の虹彩、瞼はないが殆ど白目の部分は見えず、僅かに透き通る瞳孔の作りから人や獣との作りはそう大差ないと思われる。けれど円や紡錘ではなく鋭角的な菱形の連なる瞳孔と、金属光沢の、それでいて油膜の虹色にも似たでらりと輝く孔雀色の虹彩。

人ではない異形の。

摩天貝楼拠点からさらに数十キロ。海の色が変わる境。人の領域外との境目。

その境目を越えて一頭の原生海獣が浮上していた。

もたげられた長い首と尖った頭部。全てが鱗に覆われて、金属の鈍い煌めきの鎧のような尖った鱗を、水晶のように透明な、けれどクラゲのように柔らかな質感の皮膚がもう一枚厚く覆っている。後頭部から首の後ろ、背に相当する部分までずらりと生えた割れた水晶のような背鰭の器官。

印象は爬虫類のような、軟体生物のような印相だった。

全長は推定330mーー観測史上最大級の砲光種だった。

満身創痍の人類、もしこの世に神がいるなら、それはこういった眼差しをしているのかもしれない。

眼前、砲光種の尖った頭部で不意に、ガバリと口が開く。

転瞬、砲光種が咆哮した。

 

『ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!』

 

「ぐっ!」

 

「あぁっ!」

 

エセックスCICにも轟く高周波の大音響。音よりも衝撃波に近いそれは砲光種の警告だと理解した。

本能的に恐怖が思考を凍り付かせる。一体で自然の脅威そのものを表すようなその巨体に唖然とした。

開けたと同じくらいに再び口が閉じて砲光種が身を翻す。全長300m、生物とは信じ難いその巨体は、何も恐れない悠々たる動きでその長い巨体を海中へ没した。

 

 

人は誰一人として身じろぎさえできなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・・あー。びっくりした。あれが砲光種か」

 

静粛なCICで最初に声を上げたのはジルだった。すると徐々にCICでも落ち着きが戻ると次に始めたのは救助作業だった。

 

「生存確認を行え!現在の救助活動の状況を把握急げ!」

 

そして救助作業を始めるとネバダから報告が上がった。

 

『こちらネバダ。現在、要塞から転落した狙撃部隊の救助完了。あとは機動打撃群の救助にあたります』

 

「ああ、頼んだ」

 

そして通信が切れるとジルはCICの空いている椅子に座った。

 

「はぁ・・・疲れた」

 

「お疲れさん、ジル司令」

 

「いやー、まさか防壁を突破する砲弾を開発するなんて・・・」

 

「ああ、まず本国に連絡だ。なるべく急ぎ目で帰るぞ」

 

「ええ、でもまずは船団国群の避難からですけどね」

 

「次の避難艦隊はいつ来るんだ?」

 

「既に港に停泊して避難を開始しているわ」

 

「そうか・・・」

 

ジルはほとんど壊滅と言ってもいい遠征艦隊に顔を少し暗くしていた。そして帰還途中である報告を受ける。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

帰港

ノイリャナルセ聖教国編は本編からだいぶ離れます。オリジナル場面の方が多いです。楽しみにしていらっしゃった方には申し訳ありません。


それと、新刊出るまでお休みします。


「そう・・・セオが・・・」

 

帰港中のエセックス艦内でジルは報告を聞いていた。それはセオが電磁砲艦型の砲撃で左腕が吹き飛んでしまったと言う報告だった。

 

「義手は・・・無理ね、レギンレイブの激しい動きについて行けない」

 

「ええ、早速連絡をしたらしいが難しいらしいぜ」

 

そう言うとジルはエセックス艦橋を見ながら言う。艦橋は電磁砲艦型の最後の砲撃でレーダーや艦橋の窓ガラスが割れていた。

 

「この様子じゃ、しばらく動けなさそうね」

 

「ええ、ギンガもドレッドノートも沈んでしまいましたしね」

 

「今頃司令部は大慌てだろうね。レギオンが空中艦を撃沈する方法を編み出したんだから」

 

そう言って艦首から甲板にかけて突き刺さっている砲弾を見た。

 

「対空中艦専用砲弾・・・もう既に何隻かの船が沈んでいそうね」

 

ジルは砲弾を見ているとさらに報告が入ってきた。

 

「司令、報告します。ブリジンガメン戦隊の18人が戦死、もしくは戦闘中行方不明となったそうです」

 

「そう・・・ありがとう」

 

ジルは報告を受けると軽症の怪我人が屯している船内食堂に救助されたライデンが入ってきた。

 

「ジル・・・」

 

「ん?ああ、三人か。どうしたんだ。こんな場所に来て」

 

「え?あぁ、いや。なんとなくな。ちょっと隣に座らせてもらうさ」

 

そう言って空いていた席に座るとライデンは徐に話し始めた。

 

「セオの事・・・聞いたぜ・・・」

 

「そう・・・」

 

ライデンとジルはそのまま黙っているとジルが先に話始めた。

 

「すっかり忘れていたわ。そんな事もあるんだって・・・傷痍退役かな・・・?」

 

「いや、一応軍にはまだいるらしい。後方勤務になるって話だが」

 

「・・・」

 

ジルはライデンの話を聞くと黙ってしまった。ジルですらシン達の誰かが居なくなるとは思っていなかったのだ。今までの戦いを生き抜いてきた彼らが、欠けるとは思っていなかったのだ。

 

「まあ、命あっての物種って言うからな。生きていることは嬉しいさ。だが・・・」

 

「本人は辛いでしょうね・・・」

 

今まで生きがいとしていた戦いから離れざるを得ないから。そう言おうとしたところでジルは話すのをやめた。そしてジルは話題を変えようと自分の話をした。

 

「ああ、そうだ。これから私達は本国艦隊と合流してこのまま帰国になったわ。陸にいる兄上達は避難艦隊の輸送艦に乗り込んで帰国する事になったわ」

 

「そうか・・・そりゃそうか。旗艦が沈んじまったんだもんな。艦隊として機能しないか・・・」

 

そう言うとボロボロになったエセックスを見ながら呟く。現在、遠征艦隊の三隻が撃沈。残った二隻も兵装はボロボロ。まともに戦えるような状態ではなかった。

 

「この攻撃で今司令部は大慌てよ。連絡を入れてもまともに繋がらない。おそらく議会にも話が入っているでしょうね」

 

「そうか・・・今まで最強と思っていた盾を破る方法を見つけたんだものな・・・」

 

「ええ、今回の出来事は連邦の戦略を根本から見直さなければいけない。大事件ね」

 

「勝ちすぎる戦果はより強力な敵をも作り出す」

 

「ええ、まさにその通りね。既に実害も出ているのじゃないかしら?」

 

そう呟きながらジルは上を向いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして港に到着した艦隊は港に停泊するとそこにはリチャードが待っていた。ボロボロの二隻にあらためてレギオンの攻撃を認識すると共にジルとマリアの無事にホッとしていた。

 

「よかった。みんな無事なんだね」

 

「ええ、義姉さんも今は怪我をした隊員達の手当てをしています」

 

「そうか・・・」

 

リチャードはそう呟くとボロボロのエセックスとネバダを見た。

 

「しかし・・・結構派手にやられたな」

 

「ええ、まさか波動防壁を破壊するとは・・・」

 

そう言いながら砲弾を見た。

 

「・・・取り敢えず。俺たちは避難艦隊と共に来た輸送艦と共に一旦本国に帰る。出港は5日後の予定だ」

 

「そうですか・・・分かりました。じゃあ、それまで私は避難民の誘導を行います」

 

「ああ、頼む。本国に帰ったら二隻の修理と沈んだギンガの代わりの艦が渡されるそうだ」

 

「ギンガの・・・代わりですか・・・」

 

ジルは愛着のあったギンガを沈めてしまったことに暗い気持ちになっていた。初めて乗艦した艦は今は暗い海の底にいる。その事を思っているとリチャードがジルにカップを渡した。

 

「そんな暗い顔をするんじゃない。命があるからいいじゃないか。ギンガも本望だろうよ」

 

「でも・・・あれ一隻を作るのにどれだけの金額をするか・・・」

 

「あれは予想外の出来事だ。むしろあれで死者がいないことの方が奇跡だ。セシルも感謝していたよ。ジルの指示で生き残れたってね」

 

リチャードはコーヒーを飲みながらジルに言う。するとジルは少し元気ついたのかリチャードに感謝をするとその場を去っていった。

港に残ったリチャードはコーヒーを飲みながら破壊された砲塔を見た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから2日後、シン達が船団国群を離れる時。リチャードはレーナのある紙を渡していた。

 

「ミリーゼ大佐。これを」

 

「?何ですかこれは?」

 

そう言ってレーナが受け取ったのは数字の書かれた紙だった。レーナが疑問に思うとリチャードはこの数字について話した。

 

「ミリーゼ大佐。それは一種の御守りです。何か緊急事態になったらそれをヴァナディースに打ち込んで下さい」

 

「あ、はい。分かりました」

 

そう言いレーナは疑問に思いながらも紙を受け取るとシンと共にノイリャナルセ聖教国へと向かった。

レーナ達を見送ったリチャードは少し表情を険しくすると言う。

 

()()ノイリャナルセ聖教国・・・何か変なことでも起こらなければいいけど・・・」

 

リチャードは何も起きない事を祈りつつ港を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それからの数日は大忙しだった。避難民の誘導と必要な荷物の移送。その荷物の中にはニコルの姿もあった。征海艦隊のステラマリスは沖合に浮かんでいた。もうステラマリス直す余力すら残っていないレグキート船団国群はアルガニアからの避難艦隊を待つのみであった。

そんな忙しい日々に追われていたある日、ジルとリチャードは船団国群の病院に来ていた。そして病室の扉を開けるとそこにはセオがいた。セオの左腕は前半分がなく、包帯で巻かれていた。

 

「セオ、見舞いに来たよ」

 

「あ・・・ありがとう」

 

ジルは持ってきた花を窓辺に置くと話し始めた。

 

「セオ、大丈夫かい?」

 

「え、あ、うん・・・大丈夫。」

 

「・・・」

 

セオの声色にリチャードは見透かしたかのようにセオに言う。

 

「・・・辛いよな。こんな中途半端な終わり方で」

 

「・・・」

 

「・・・次の作戦も、行きたかったんだろう?」

 

「・・・」

 

セオはリチャードに思っていた事を言われ、不意に涙が出ていた。

 

「・・・そうだね。僕も最後まで戦いたかった・・・」

 

セオは涙を流すとリチャードが声をかけた。

 

「気長に次の何かを探そうぜ。考える時間はいっぱいあんだから」

 

「うん・・・そうだね」

 

そう言うと二人は今度は他愛もない話で盛り上がっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

セオの見舞いの翌日。避難艦隊の準備が完了したジル達はレグキート船団国群を離れる事となった。エセックスとネバダの二隻は新型砲弾のサンプル回収の為、港に到着した翌日に本国へと戻っていた。

三隻の避難艦隊は護衛のデモイン級空中巡洋艦二隻と共にアルガニアへと向かう。

 

「それじゃあ。また会いましょうイシュマエルさん」

 

「ああ、会えることが出来たらな」

 

そう言うとジルは避難艦隊旗艦ヘレナに乗り込むとジルはレグキート船団国群から帰国をした。




今回から話ごとに作品に登場する艦艇を書いていきたいと思います。(多分すぐにネタ切れとなるのでボツ案の空中艦も出す予定)


艦艇紹介

デモイン級空中巡洋艦

兵装
55口径20.3cm三連装陽電子砲塔 三基
38口径12.7cm連装パルスレーザー砲塔 六基
50口径76mm連装パルスレーザー砲塔 四基
40mmパルスレーザー機関砲 十二基
ミサイル発射機 十二基 (艦首6門、艦尾6門)

主機
49式波動エンジン 一基
45年式反重力装置 四基

大きさ
全長:218m
全幅:32m
全高:82m

艦載機
VB=97アリゲーター 4機

アルガニア連邦航空海軍の第二世代巡洋艦。非常にバランスの取れた艦艇で小規模な艦隊の旗艦など、さまざまな場所で活躍している


目次 感想へのリンク しおりを挟む




評価する
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10についてはそれぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に
評価する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。