えっ、自分ステイゴールド産駒なんすか? (えびんす)
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キャラクター紹介etc.
番外編【アプリのウッドストック】


詰まった!!

息抜きしよ!!

アプリウッドのことでも妄想すっか!!!


そんな自棄で出来上がったのがこちらですご査収ください。


 

 

ウマ娘プリティーダービー

キャラクター紹介

 

 

 

「あたしの走り、よく見ときなよ。心が燃え滾るような、熱い夢を魅せてあげる」

 

【I will ROCK YOU!!!】

ウッドストック  ☆☆☆

 

 

キャッチコピー:レースも音楽も全力全開!世界を揺るがす"ロックスター"

自己紹介:あたしはウッドストック。音楽とレースが大好きなウマ娘さ。あたしとアンタの名前、世界に轟かせてやろうぜ!

学年:高等部

所属:栗東寮

 

 音楽とレースをこよなく愛するウマ娘。休日は駅前でストリートミュージシャンをしている姿を目撃される。

 

 男勝りな口調とパンクな姿から誤解されがちだが、本人は温厚で世話焼き、成績も優秀。ギャップにやられた後輩ウマ娘たちに慕われている。

 

 ゴールドシップやトーセンジョーダンと仲がよく、そのためかよく二人の喧嘩に巻き込まれている。

 

誕生日:4月15日

身長:167cm

体重:増減なし

スリーサイズ:B86 W60 H84

 

毛色:鹿毛、右目よりの流星あり

耳飾り:右側、黄色い羽根飾り

髪型:セミロングのウルフカット。流星に沿うように黄色のメッシュを入れている

容姿:切れ長つり目、美人系の顔立ち。リョテッとしている

勝負服:ゴスパンク系、ショートデニム、ニーハイブーツ

私服:シンプルな白シャツとグレーのジャケット、デニムパンツ

 

得意なこと:ギター、料理

苦手なこと:道を覚えること

耳のこと:毛が柔らかいのが自慢

尻尾のこと:意外と丁寧にケアしている

足のサイズ:両足とも25.5cm

家族のこと:ガサツなのは母譲りらしい

 

ウッドストックのヒミツ その①

・実はものすごい方向音痴。

ウッドストックのヒミツ その②

・実はオーディオ機器にはかなりこだわりがある。

 

ウッドストックの一コマ

・【中庭ライブ!】中庭のベンチで楽しげにアコギを弾き語るウッドストック。モブウマ娘が黄色い悲鳴をあげている。

 

 

【ボイス】

 

ホーム画面

 

「トレーナー、ネクタイが曲がってるぜ。姿見を見る時間ぐらい作ったほうがいいぞ……ほら、これでよし。あたしの相棒らしくなった」

 

「昨日、フラッシュに洋菓子の作り方教わったんだけど、つい作りすぎてさ。苦手じゃなかったら、トレーナーも食べるの手伝ってくれよ」

 

「今日は駅前でストリートライブやるんだ。暇だったら来てくれ。あたしの演奏、特等席で聴かせてやるよ……演奏者側としてな! ギター忘れんなよ!」

 

「フジ寮長が「悪いポニーちゃんだね」って顎クイしながら言ってきたからさ、「なんだ、キスでもしてあたしを良い子にしてくれるのか?」って抱き寄せたら周りのウマ娘が失神しちまったよ。寮長も顔真っ赤にしてて面白かったなぁ」

 

 

親愛度高め

 

「……そんな呆れた目で見ないでくれよ。遠征先と逆方向の快速列車に乗っちまったのは本当に悪かったって! あたしだって好きで方向音痴な訳じゃないんだよ!」

 

「ピサとダムール、目を離すとすぐ口喧嘩になるんだ。何が大変かって、どっちの言い分が正しいか毎回あたしに聞いてくるんだよ……」

 

「ルドルフ会長、ちょくちょくダジャレ飛ばしては自分で笑うの微笑ましいよな。まあその隣でエアグルーヴが頭抱えてるのが一番面白いんだけどさ……んくっ! お、思い出したらまた笑えて……っ!」

 

「トレーナー、今度あたしの好きなバンドのライブに行きたいんだけどさ、それに付き合ってくれないか? なんでって……一人だと遠征先に行けるか怪しいからだよ!」

 

「ロック以外のジャンル? もちろん聴くぞ。ジャズとかクラシックとか、なんなら演歌に歌謡曲も網羅してるな。今度オススメ持ってこようか?」

 

「生まれ変わるなら何がいいか? 金持ちの家の犬か猫。せめて鳥だな」

 

 

春ボイス

 

「いい天気だなぁ、絶好のトレーニング日和だ。それともこれから花見でも行くか? お酌してやるよ」

 

「春は出会いと別れの季節。新入生と卒業生の対比が、桜の淡い儚さと合わさってエモいよな……ん、今ならいい曲が出来そうだ。ちょっと書き留めたいからペン貸してくれ」

 

夏ボイス

 

「暑っちぃ~……こう暑い日が続くと嫌になってくるな……トレーナー、部屋の冷房、少し強めにしといてくれないか……?」

 

「早朝の夏の空気は好きだな。そこまで暑くもなく、爽やかで。まあ朝練から帰ってきたら汗だくでそれどころじゃないが……今透けてるからあんま見るなよ!」

 

秋ボイス

 

「食欲の秋、スポーツの秋、読書の秋……トレーナーにとって秋はどんな季節だ? あたしはもちろん、芸術の秋さ」

 

「封筒ぎんなんって知ってるか? 殻付きのぎんなんを封筒に入れて、レンジで温めるだけ。あたしの秋の風物詩といえばこれだな。……おっさんくさい? ほっとけ」

 

冬ボイス

 

「お、雪降ってきたな。明日には積もってるかな? 積もったらスペ達と雪だるま作ろうぜ!」

 

「トレーナー、手が真っ赤じゃないか。しょうがねーな、手ぇ貸してみろ。あたしが握って暖めてやるから……うっわ冷てぇ! やっぱやめた! ストーブに当たってこい!」

 

ハロウィンボイス

 

「トリック・"アンド"・トリート……トレーナー、お菓子やるからイタズラさせてくれよ」

 

クリスマスボイス

 

「クリスマスは家族と過ごそうかな。そのまま正月三が日まで…………なんだよ、寂しそうな顔して。冗談だよ、トレーニングはサボらないさ」

 

バレンタインボイス

 

「毎年この季節になると、色んな子からチョコをもらうんだ。嬉しいけど、口の中が甘ったるくなって仕方なくてさ……カフェにコーヒー貰いに行こうかな……」

 

七夕ボイス

 

「織姫と彦星が年に一度、天の川を渡って逢瀬を交わす……あたしが織姫なら、そのまま彦星と一緒に遠くへ逃げるね。トレーナーと年に一度しか会えないなんて耐えられないからな」

 

 

 

 

支援絵ご紹介

 

灰夢さん

 

【挿絵表示】

 

 

ありがとうございますイケメンですメスになりますしゅきー(昇天)




後々ボイスとか追加するかもしれません。

薄々勘づいてる方もおられるかと思いますがレース描写クッソ苦手です。なかなか更新しないときは「ああレース運び悩んでんだな」と思って気長にお待ちください。


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本編
馬になったわね(ガチ)


【THE WINNER】

 

 

 2010年、ジャパンカップ。

 

 

 その馬の逆転劇に、人は夢を見た。

 

 

 反骨心溢れる豪脚に、誰もが打ち震えた。

 

 

 大外から全てを抜き去った、伝説の3ハロン。

 

 

【かっこいいっていうのは、こういうことだ。】

 

 

 その馬の名は―――――

 

 

 

 

 

 

 

 

(どうして)

 

 

 とある牧場で、俺は黄昏れていた。

 

 

 別に傷心して動物に癒されに来たわけではない。元々特別動物が好きなわけでもなかったから。

 

 

 ならなぜ俺が牧場にいるかというと、単純明快。

 

 

 

(どうして)

 

 

 俺がその牧場で生まれた、馬そのものだからだ。

 

 

 そもそも俺はほんのちょっと前まで、確かに人間として生きていた。普通の家庭に生まれ、普通の学校に行き、それなりの大学を出て、そこそこの企業に就職したごく一般的なサラリーマン。

 

 当時結婚を考えてた彼女もいたし、会社での仕事ぶりも悪くなかった。平々凡々、ごくごく普通の生活を送っていた青年だった。

 

 

 それがある日、信号無視してきた車から彼女を庇って、代わりに俺が撥ねられて。十数メートル吹っ飛ばされた挙句、運悪くガードレールに頭を強打して即死。あの勢いだ、多分俺の仏さんは直視できないグロテスクな有り様になっていただろう。

 

 

 んで、なんでかしばらくして、意識を取り戻したはいいのだが。

 

 

(なんで生まれ変わった先が馬畜生なんですか?)

 

 

 神様、俺何か罰が当たるようなことしましたかね? まさかの畜生道だ。こういうのって普通アレじゃない? なんか剣と魔法のファンタジーなとこに転生して無双して俺ツエーみたいなことするのがお決まりじゃないの?

 

 いや百歩譲って動物に生まれ変わるとしても、なんでよりによって馬なの? 出来ることなら犬や猫になりたかった。せめて鳥。

 

 

 ……なってしまったものは仕方ない。どうしてこんなことになったかはもう考えないようにしよう。今はしっかりと人生……馬生? を全うして大往生してやる。それが当面の目的。

 

 

 とはいうものの、果たして俺はどういう馬として生まれてきたのだろうか。馬だけに。寒いなこれ。

 

 

 

「おー、しっかり立ててるなぁ」

 

 

 と、現れたのは壮年の白髪が目立ち始めているおっちゃん。ツナギと長靴という出で立ちから見るに、多分俺……というか俺の隣にいる、今世での俺の母親である馬の世話係だろう。

 

 確か、えーっと……厩務員って言うんだったか。前世で上司や先輩の影響で競馬を嗜んでいたから、それに合わせてそんな知識は中途半端にあった。

 

 

「ん、母子ともに健康そうだな。お前はあのステイゴールドが父親だ、もしかしたらすげえ競走馬になるかもなぁ」

 

 

 ……なんて言った? ステイゴールド?

 

 

 えっ、自分ステイゴールド産駒なんすか?




早くもタイトル回収


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お名前、決まりました。

私は競馬に関してはど素人です。


 

 

 自分が馬になって衝撃を受けたのも、すでに一年前。今は親離れもして、自分の部屋……馬房というんだったか、を用意してもらい、そこで念願の一人暮らしだ。まあメシとかに人間さんのお世話がいるんで、一人暮らしっていうのはまた違うけど。

 

 

 今日も今日とて藁を貪る。もっしゃもっしゃと口の中で藁の擦れる音と触感が心地よい。

 

 

 いやまあ今はこんななりですけど、元々は人間で、その記憶がバッチリあるものですから、最初は藁食うのにものっすごい抵抗あったんですけどね。

 

 覚悟決めて食ってみるとこれがなんともない。何というか、この馬の身体が求めているというか、食べてみると自然と、(ああ、これがメシなんだな)と、妙に心が納得したので不思議なもんだ。

 

 

 あとはまあ人参とかの野菜。出されたもんは残さず食べる。

 

 厩務員のおっちゃんも好き嫌いなくて手がかからないよ、って鼻先を撫でてくれた。まあ中身はいい年した大人だし、前世でも特に食べ物の好き嫌いはなかったしな。

 

 

 ただそれはあくまで人間の時の話。今現在は馬、馬というのは草食動物であるので……当然肉や魚などは出てこない。

 

 あと確か、野菜でも馬が食べちゃダメなやつがあったな。ブロッコリーとかキャベツとか。キャベツ好きだったからちょっとショックだ。

 

 

 

 

 さて、現在一歳馬となった俺であるが、実は名前がまだない。

 

 

 というのも、俺はあの競走馬で、大種牡馬としても大成した「ステイゴールド」を父として生まれてきたので、おそらく俺も競走馬として走る運命にあるのだと思う。

 

 その競走馬としての名前がまだないのである。どうやら名付け親が相当悩んでいるようで、未だに幼いころからのあだ名……幼名で呼ばれているのだ。

 

 

 聞いて驚け見て笑え、我が幼名は「ポケ」。とにかく大人しくて、いつもポケーっと何を考えているのか分からないからという、なんともあんまりな名前だ。

 

 厩務員のおっちゃんは「ポケットに入りそうな小さい馬、みたいな付けられ方じゃなくてよかったじゃないか」と慰めにもならないことを言っていたが、そっちの方が可愛らしさがあって俺的にはマシである。

 

 

 そんな俺ことポケであるが、あまりにも大人しすぎて「コイツ本当にステゴの子供か?」と関係者各位にしきりに首を捻られる。あの暴れん坊で俺様気質なステイゴールドの子供とはとても思えないとかなんとか、時折厩舎の中でも話していた。

 

 そりゃあ、ねえ。中身元人間だもん。人間さんの言葉バッチリ理解できるもん。何だったら芸でも仕込むかい? その場で三回回ってヒヒンと嘶いてみようか?

 

 

 引綱なしでも厩務員のおっちゃんの後ついていくし、放牧でも運動不足にならない程度に走って、あとは見学に来た一般の人たちに愛想振りまいてるし。特に子供には人気だね、鼻先叩かれようが痛くないので気にしない。何よりかわいい。

 

 

 あ、写真撮影ももちろんオッケーよ。あ、懐かし、ガラケーじゃん。そっかステゴが種牡馬してたのって、ガラケー全盛期の時からか。ならステゴが種牡馬になって割とすぐの時なのかな。

 

 真正面だとアレだからちょっと斜めに立とう。んで気持ち首を上げて、キリっと真面目に。せっかくだからカッコよく撮ってもらいたいしね。

 

 あー待って待って、フラッシュはやめて、眩しいから。顔背けてアピールしたら分かるかな。あ、分かってくれたわ。そうそう、俺だからまだいいけど馬ビックリするからね、やめたげてね。

 

 

 ん? なんだいおチビちゃん。おっ、人参くれるの? あらーありがとねーおんまさん嬉しいわ。ありがたく頂戴するね。お礼にお顔舐めたろ。あらあらキャッキャしてお可愛いこと。

 

 

 

 とその時、突然俺の耳に爆音が聞こえてきた。

 

 

「うわっ、やっべマナーモードしてなかった」

 

「バッカ、お馬さんビックリするじゃん!」

 

「ごめんって……あれ、全然動じないな」

 

 

 

 こ、この曲は……。

 

 あの、往年のロックスターの……。

 

 超伝説的シングル……。

 

 

 

 ふ、ふふ、ふお、

 

 

 

 ふおおおおわあああああ!! テンション上がってきたぜえええええええええ!!!

 

 

 

 

「うわあっ!? なんだ、どうした急に!?」

 

「すっごい勢いで首振ってる……な、なんかやっちゃった!?」

 

「と、とにかく止めないと……!」

 

 

 

 ふおおおおおおおお…………。

 

 

 あ、切っちゃったの? もう終わりか……。

 

 

 まあ、いきなりあんなことしたらそりゃあビックリするよな……でも、もうちょい聴いていたかった。

 

 

 俺、元々人間だったときはとにかく音楽が好きだったんだよ。特にロックとかメタルとか、そういう激しい感じの。

 

 新旧問わず、ロックだのメタルだの付く音楽は手あたり次第に聴いてきた。なんなら一時期はバンドに憧れてギターやベースを齧ったこともある。

 

 でもこの体になって、音楽なんてものには一切触れてこなかった。当たり前だ、馬なんてちょっとした物音でもビビるような超臆病動物なのに、音楽なんてもってのほかだ。

 

 

 あぁ、だけど、もうちょっと、あとほんのちょっとだけ、聴かせてくれないかなぁ……。

 

 

 

 

「……な、なんかすごいこっち見てくるな」

 

「…………もしかして、聴きたいんじゃない? さっきの」

 

「えぇ? ……いや流石にそれは」

 

「……も、もう一回だけやってみる?」

 

「…………」

 

 

 

 お、なんか近づいてきた。なんか画面操作してる……えっ、もしかしてもっかい再生してくれるのか?

 

 マジで? いいの? というか俺が人間だったら兄ちゃんと酒飲みたいんだけど。いい音楽の趣味してんね?

 

 

「……い、いくよ?」

 

 

 おお! いいよ! やって! もう待ちきれねぇ!

 

 

 お、おお! きた! きた! きたぁ!

 

 

 この重厚なサウンド! 腹に響くような重低音! 痺れるようなリードギター! 稲妻のごときシャウトと中高音の歌声!!

 

 

 ああ! いい! いいぞ!! やはり音楽は良い!!

 

 

 俺の身体が! 足が! 耳が!! 脳が!! 魂が!!!

 

 

 打ち震える!! 揺さぶられる!! 心が!!

 

 

 ロックに!! すべてはロック!! 俺こそがロック!!!

 

 

 ああ、ああ、身体が、勝手に、リズムを刻んで、ふ、ふひ、ふひひゃ、

 

 

 

 ヒイイイヤッハアアアアアアアア!!!

 

 

 ルォックンロオオオオオオオオオルゥゥ!!!

 

 

 

 

 

 

「うわぁ……」

 

「馬が……ヘドバンしてる……」

 

「馬って音楽聴いたらヘドバンするのか……?」

 

「知らないよそんなの……」

 

 

 

 

 

 

 後日、この騒動を聞いた厩務員が馬主に報告したところ、馬主は俺に競走馬としての名前を付けてくれた。

 

 

「お前の名前は、『ウッドストック』だ。昔アメリカで行われたロックフェスの名前から取ったんだと」

 

 

 厩務員のおっちゃんは、俺にそう説明してくれた。「お前が理解してるかは分からんがな」と鼻を撫でて、笑いながら。

 

 

 ウッドストック。あの伝説的祭典、『ウッドストック・ロックフェス』。それが俺の名前。

 

 

 うん、十中八九あのヘドバン騒動が原因だろう。あの後兄ちゃんたち厩務員のおっちゃんに怒られてたし。ごめんな兄ちゃん。

 

 

 

 

 だけど、うん。

 

 ウッドストックか。馬主もいい名前を付けてくれたな。ちょっと馬主んとこ行ってきていい? 絶対あのバンドとかこのバンドとかの名盤持ってるでしょ。

 

 

 ウッドストック、か。

 

 

 俺は、ウッドストック。

 

 

 おっちゃん。俺、絶対いい競走馬になるよ。世界に名を轟かせるような、伝説的な馬に。

 

 

 そんでおっちゃんとこに、優勝レイを一杯送ってやるからな。

 

 

 それが俺の、今の目標だ。

 

 

「……で、だ。ウッドストック。今ここにウォークマンがあるんだが……ちょっとだけ聴くか?」

 

 

 マジかよ。おっちゃんすき。抱いて。

 

 

 

 

 その日、厩舎の片隅で往年のフォークソングが流れ、俺は名曲の数々に思わず涙を流した。

 

 

 あとでおっちゃんは怒られた。ごめんなおっちゃん。

 

 

 




何やこの馬(ドン引き)


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例えるならエロ本見てるのを親に見つかった時のような

 私なら殺してくれと懇願します。

 追記:実在の人物名に関して修正しました。ご指摘ありがとうございました。


 

 

 春が過ぎて、夏を過ごし、そろそろ秋が来るかという頃。俺ことウッドストックさんは、いよいよレースに向けての調教が始まった。

 

 

 が、初めて見るはずの鞍やらなんやら、人間さんが乗るのに必要な馬具一式を初日の一発で付けられたことで、やはり首を捻られる。

 

 通常の馬ならばもっと嫌がったり怖がったりするらしいが、ハミも普通に受け入れる、鞍を乗せても動じず、なんなら蹄鉄付けるときは職人さんに負担が掛からないよう、なるべく体重を乗せないようにしてたぐらいだ。

 

 あんまりにもされるがままにされていたもんだから、厩務員のおっちゃんですら「こいつ本当に競走馬になれるのか?」と不安な様子。すまんな、中身人間なせいで。馬として常軌を逸しているのは自覚してるよ。

 

 

 で、一通り付け終わって、今は鞍上に乗る騎手の人を待ってるんだが。

 

 

 果たして俺に乗ってくれるような物好きは居るのだろうか。腐ってもあの暴れん坊「ステイゴールド」の子供である。

 

 どんな気性難に乗せられるのか、向こうからすれば戦々恐々だろう。俺が騎手だったら絶対嫌だもん。

 

 

 なんてことを考えていると、こちらに歩いてくる騎手らしき人間さん。はてなんか見たことのある顔のような。

 

 

「おはようございます。こいつがそうですか?」

 

「ええ。まあ今のところは親に似ず大人しいし賢い奴なんで、あまり気負わずに」

 

「任せてください! よーし、よろしくなウッドストック」

 

 

 と、俺の首筋を叩きながら笑いかける騎手の人。やっぱり見たことあるぞこの人。

 

 

 

 

「まああのデュランダルもドリームジャーニーも乗りこなしたんですし、あんまり心配はしてませんがね」

 

「あはは、勘弁してくださいよー!」

 

 

 デュランダル? ドリームジャーニー?

 

 

 …………あっ!? もしや池谷殿か!?

 

 

 やっぱりそうだ、気性難の駆け込み寺とか言われてた池谷騎手じゃないか。なるほど、俺がステゴ産駒だからまあもれなく気性難だろうからという判断なんだろうな。

 

 

 ま、時には気性難じゃない馬に乗るのもいいんじゃないですかね。自分で言うのもなんだけど、俺めっちゃいい子よ?

 

 というわけではい、どうぞ乗ってくださいな。大丈夫だって暴れないって。

 

 

「…………えっ、ぜんぜん暴れない」

 

「でしょう? えらく大人しいんですよコイツ」

 

「ジャーニーと全然違うなあ……お前本当にステイゴールドの子?」

 

 

 そうですけど、という意を込めてヒヒッと鳴いてみる。

 

 

「今返事した?」

 

「多分人間の言葉はある程度分かるんだと思います。ここら辺は親父譲りっぽいですね」

 

「ほー……とりあえず軽く走ろうか」

 

 

 あいよ。細かい指示は任せるわ。

 

 

 

 

 

 

 

 それから半日ほど、馬なりに走って調教を終える。ふいー、やっぱ人背負ってると走りにも影響してくるな。

 

 

 ちなみにだが最初から最後まで池谷殿は不思議そうな顔をしていた。まあ初めての調教でここまで素直にいうこと聞く馬も珍しいのだろう。アイツの子なら尚更といった感じか。

 

 終わり際には「何から何までステゴ産駒っぽくない」と厩務員のおっちゃんに話していた。「でも、コイツも走りますよ」とまで。誉めるなよ照れるぜ。

 

 

 で、馬房に戻っては来たんだが、何故かおっちゃんに加えて、池谷殿も一緒。なに? スキンシップでもするのけ?

 

 

 と、厩務員のおっちゃんが取り出したのは、以前俺にフォークソングを聴かせてくれたときのウォークマン。え、もしかしてやるんすか? この人の前で?

 

 

「本当に音楽好きなんですか? 普通ビビりますよ」

 

「それがコイツ本当に動じないんですよ。ちょっと見てて下さい」

 

 

 ええー? 本当にやるんでござるかぁー? あれちょっと初めての人に見られるの恥ずかしいんですけど。

 

 お? 次は何を取り出して……あ、イヤホン? 耳に引っ掛けて挟んで固定するタイプのやつ? あ、他の馬に迷惑だから?

 

 あ、はい、じゃあ付けてください。馬の耳だとイヤホンめちゃくちゃちっちゃいけど、馬用イヤホンなんてあるわけもないから我慢我慢。

 

 

「いきますよー」

 

 

 おっ、流れてきた……あ、これヤバイ奴だ、超テンション上がるハードロックだ。

 

 あ、あ、待って、そんな、

 

 よりにもよってこんな激しいの、この人の前でそんな、

 

 初めてなのに、せめてもっと優しいのっ、あっ、

 

 待っ、

 

 だっ、

 

 

 

 だめええええ身体が勝手に動いちゃうのおほおおおおおお!!!!!

 

 

 

 

「うわぁ……マジでヘドバンしてる……」

 

「ビックリでしょ? しかもちゃんとリズムとって首振ってるんですよ」

 

「いやあこれは……違う意味でステイゴールドの子ですね……」

 

「まあ他の奴に比べれば可愛いもんでしょう……」

 

「確かにそうですが……えぇ…………」

 

 

 

 ひゃっほおおおおお止まらねぇぜええええええ!!!!

 

 

 DON'T STOP ME NOOOOOOOW!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 しばらくして我に返った俺は、呆然としている池谷殿と目があって。

 

 

(見ないで頂戴ッ!!)

 

 

 恥ずかしさの余り馬房の隅に引っ込んで悶絶していた。なんかもう、すんごい恥ずかしい。

 

 

「あらら、拗ねちまった」

 

「流石に恥ずかしかったんスかね?」

 

「まあ変に人間くさいやつですからね。もしかしたらそうかもしれません」

 

「ハハハ……変なとこで親父に似てるな」

 

 

 本人の前でそんな話やめて頂戴ッ! アタイもうお嫁に行けないわッ!

 

 

 




 言うまでもないがコイツ牡馬なのでお嫁には行かないです。


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出会いは突然すぎて準備できるものではない

 細かい設定とか整合性なんて決めてないに決まってるでしょ(唐突)


「いいぞウッドストック! もっとだ! もっと鋭く!」

 

「ヒヒッ!(おうよ!)」

 

 

 

 池谷殿とともにレース調教をこなすようになって、早くも半年が過ぎ、季節は冬から春となっていた。この厩舎の周りでも桜の木が鮮やかに色づき、見る目に楽しい。

 

 

 ここ最近のトレーニングで分かったことだが、どうやら俺は走れる距離が幅広いらしい。マイルから長距離までは難なくこなせるようで。

 

 今の方針としては、長距離を走るステイヤー向けの持久トレーニングを中心に、単純な走力と馬群を抜け出す力強さ、つまるところスピードとパワーを鍛えている。

 

 特に持久力、スタミナを鍛えるのにはプールと坂路が効果覿面。泳げば全身運動になるし、心肺機能が向上する。坂道を走ればパワーもつくし、根性も鍛えられて一石二鳥だ。

 

 

 走力に関しては、他の馬と併走あるのみだ。馬によってどういう走り方をするのかはまるで違う。

 

 とにかく相手の前に出たがる馬もいれば、後ろに張り付いてプレッシャーをかけてくる馬もいるし、最後の直線での競り合いに強い馬もいる。

 

 それぞれにどう対処すべきか、どう走りを合わせ、どんな駆け引きをして、どこで抜け出すか。そういったことを走りながら考えなければ、強い競走馬にはなれない。

 

 

 そうでなきゃ、ジャーニーやフェスタといった俺の兄貴たちに申し訳が立たない。

 

 ジャーニーはステゴ産駒の強さを証明した孝行息子、フェスタはのちに凱旋門で戦う正真正銘の猛者。それに続かなければ嘘というものだ。

 

 

 といってもまあ、駆け引きに関しては素人考えだ。その道のプロである池谷殿に大部分お任せするつもりで、俺は自分の身体をいじめ抜くのみである。

 

 

「よーしよし、休憩しようかウッドストック」

 

「ブルルッ(分かった)」

 

「ハハハッ、お前は本当に賢いな。本当に俺の言うことが分かってるみたいだ」

 

「ヒヒンッ(分かるさ)」

 

 

 俺がいちいち返事をするように鳴いたり鼻息を荒くすると、池谷殿は嬉しそうに笑う。笑って鞍上から俺の鼻先を撫で、首を軽く叩き、そして撫でる。

 

 俺はこのスキンシップが嫌いじゃなかった。単純に誉めてくれているのが明確に分かるからね。

 

 人間だった頃は、子供の時誉められていたことが大人だと出来て当たり前になって、そのうち誰も誉めてくれなくなる。大人なら出来て当たり前なことばかりになるから。

 

 

 でも馬になって、人と容易に意志疎通が取れなくなってからは、毎日が誉められることばかり。そりゃそうだ、馬にしては賢すぎるもん。

 

 それでもいいさ。毎日たくさん誉めてくれる生活というのは存外嬉しいもんだ。大人だっていっぱい誉めてほしいんだ、それに甘んじて何が悪い。

 

 

 さて、背中の池谷殿に従って一度馬房へ戻ることにしよう。水を飲んでたまに岩塩舐めて、そんでちょっと昼寝するという最近の日課をこなすため、かっぽかっぽと歩いているとだ。

 

 ふと視界の端で、なにやら一悶着起こっているのを見てしまった。

 

 

「ありゃ、追いかけられてんなぁあの馬……」

 

 

 池谷殿が呟く。よく見ると、どうも幼駒の放牧地で、他と比べても体躯の小さい栗毛の馬が、他の馬に追い回されているようだった。ありゃあいじめだな、可哀想に……。

 

 

 そう思ったと同時、俺はそちらへ向かって歩いていった。

 

 

「おっ? おい、ウッドストック?」

 

 

 背中で池谷殿が慌てているが、ちょっとだけ堪忍やで。

 

 

 

 

(ひいい! たすけて!)

 

 

 追い回されている栗毛の馬が必死に嘶いている。追い回しているのは……なるほど、如何にもな悪ガキだ。

 

 

 俺は放牧地の柵の側まで近付くと、悪ガキ馬が近くに来るのを見計らい、大きく息を吸って、

 

 

 

 

「ブゥルルヒヒヒィィイインッ!!!!(やめろクソガキ共ォッ!!!!)」

 

 

 と思いっきり嘶く、というか吼える。

 

 

 当然いじめられっ子共々悪ガキ共が慌てて俺の前で足を止めた。間髪いれずさらに吼える。

 

 

(みっともねぇ真似してんじゃねぇッ! 同じ馬だろうがッ! 仲間は守れ莫迦野郎ッ!!)

 

 

 

 

 いじめっ子達は暫く呆然としていたが、俺が(返事ィッ!!)ともう一度短く吼えたことで再起動。

 

 

(ごめんなさいいぃぃぃ!)

 

(もうしないですぅぅぅ!)

 

 

 と蜘蛛の子を散らすように逃げていってしまった。

 

 

 うーん、良心が咎めたとはいえ、子供にあんな剣幕で怒鳴ったのは我ながら大人げなかったな。反省。

 

 

「お前、いじめを止めてやったのか……すげぇな」

 

 

 と鞍上の池谷殿。よせやい、誉めてもヘドバンしか出ねえぜ。

 

 

 おや。いじめられっ子がまだ目の前で硬直してる。ほれ、もう行きな。おせっかいのおっちゃんはもう帰るから。

 

 

(あ、ありがとう!)

 

 

 おっと、ちゃんとお礼を言えたのはえらいねえ。まっすぐいい子に育つんだよ。

 

 

(お兄ちゃん、名前は?)

 

(俺かい? ウッドストックだ)

 

(ぼくオルフェーヴル!)

 

 

 

 

 なんだって?

 

 

 お前さん、あのオルフェーヴルなのか!?

 

 

 

 

 

 

 

 

「アイツ多分ボス馬になりますよ。幼駒たちのいじめ止めましたもん」

 

「へぇ……責任感が強いのかもしれませんね。つくづく頭のいい奴だ」

 

「ええ。それに、偶然かもしれませんが…………アイツが助けた子馬、オルフェーヴルなんですよ」

 

「へえ? じゃあアイツ、自分の弟を助けたって訳か。なるほど、偶然か否か、いい兄弟愛じゃないですか」

 

「まったくです。その証拠にウッドストックのやつ、ちょくちょくオルフェーヴルの様子を見に行ってるんですよ。心配性みたいで」

 

「ハッハッハッハッ!! 本当にアイツは人間くさいなあ!」

 

 

 

 あの、毎回言うようですけど、それ本人がいる前で話すようなことですかね、おっちゃん。あんまりひどいとまた拗ねちゃうぞ。

 

 

 

 

「ああそうだ、池谷さん。ウッドストックのデビュー戦、決まりましたよ」

 

「ついにですか」

 

「ええ、今年の6月。いよいよ新馬戦ですね」

 

 

 …………そうか。

 

 ついに、俺が走るのか。

 

 

 

 俺は、ウッドストック。

 

 

 親父の、兄貴たちの名を背負ったサラブレッド。

 

 

 やってやるさ。ああ、やってやるとも。

 

 

 

 

 競馬狂い共の、度肝を抜いてやる。

 

 

 お前たちの脳を焼ききってやる。

 

 

 嵐のように、蹂躙してやる。

 

 

 ここから俺の、ウッドストックの伝説が始まるんだ。

 

 

 




 詰め込みすぎかも?

 書きたいように書いてるので許し亭許して


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デビュー戦は鮮烈に

 桜が散り、梅雨も半ば、もうすぐ本格的な夏が来ようとしていた。厩舎にも連日雨が降り続き、訓練用のコースもぬかるみ、調教に影響が出ている。

 

 

 まったく梅雨ってのはどうにも気が滅入っていかん。夏みたいにギラギラと日が照りつけて暑いのは一番嫌だが、雨が好きな訳でもない。傘も差せないこの身ではただ耐えることしか出来ぬのだ。

 

 

 現に今も厩務員のおっちゃんに、馬房で世話をしてもらいながら、窓の外で降りしきる雨を眺めているわけで。

 

 

「今日もよく降るなぁポケ」

 

「ブルルッ(そうだねぇ)」

 

 

 ウッドストックという名を貰った俺だが、おっちゃんと二人の時は未だに幼名で呼ばれる。まあ今となっちゃすっかり呼び慣れた名前だし、俺自身嫌なわけではないから好きに呼んでくれていいんだけども。

 

 

「はあ……さむ」

 

 

 それよか今大変なのはおっちゃんだ。今日は雨合羽を柵の釘にひっかけたらしく、右肩から背中にかけて大きく合羽が裂け、びしょ濡れになったまま作業をしている。時期的に特別寒い訳ではないが、そのままでは風邪をひきかねん。

 

 なのにおっちゃんは、「まあこんな日もあるさ」と俺の世話を優先するんだよな。そりゃあおっちゃんだけじゃなく厩舎にいる全員が馬第一の人達だし、合羽破けたのはおっちゃんの不注意だから仕方ないけど、体調管理も大事やで?

 

 ほらおっちゃん、身体貸してやるよ。ちょっとくっついて暖まろうぜ。

 

 

「どうした、暖めてくれるのか? はははっ、優しいなあポケ」

 

 

 うっわおっちゃんの手ぇ冷てぇなあ。

 

 

「ありがとうな。あったけえなお前……ほれ、顔の横掻かれるの好きだろ」

 

 

 あぁ~~そこ気持ちいいわぁ、自分で掻けないから至福。

 

 

 

 

 

 

 

「調子はどうだ、ウッドストック」

 

「ブルルッ(最高)」

 

「ははっ、そうか!」

 

 

 時間は進んで、6月。二歳馬になった俺は、いよいよ今日、競走馬としてデビューする。

 

 

 コースとしては芝1600mの右回り。途中で坂を上るマイルコースだな。俺は走る幅が広いから中距離とマイルでかなり迷ったらしいが、どちらにせよ全力を尽くすだけだ。

 

 

 まあ競走馬とは言うが、相手は皆当然俺と同じ新米ばかり。レース前にしてはいまいち落ち着きがないというか、どことなく浮き足立っている。

 

 

(今日はここにいるやつと走るのか?)

 

(人間いっぱいいる……こわ)

 

(うるっせえなあ)

 

 

 そんな感じの馬たち。これは……貰ったな、このレース。

 

 

 

 

 

 

『さあ最終コーナー回って各馬鞭が入る! 先頭は依然変わらず4番ウッドストック! これを3番チリペッパーと5番プラトニックラブが追いかける展開!』

 

 

(くそっ、速い!)

 

(追い付けないよー!)

 

 

 後ろから聞こえる悔しそうな声。悪いがこのデビュー戦、この俺が貰うぜ。

 

 おっ、坂があるな。だが坂路で鍛え上げた我が筋肉はものともしないぞや。

 

 さらに言えばこちとら中身は人間。どう脚を使えば登りやすいか、普段の坂路で散々模索してきた。この程度、普段のトレーニングに比べれば大したことはない。

 

 さて、仕掛けるならここか?

 

 スタミナはまだ十分残っている。

 

 手綱を噛んで、池谷殿に合図する。行くか? と。

 

 

「よし! 行け!」

 

 

 池谷殿から鞭が入る。

 

 いいんだな? もういいんだな?

 

 よっしゃ。ぶっちぎってやる。

 

 

 

 

『ウッドストックすごい勢いで坂を駆け上がる! 脚色は衰えない! 後ろの馬はもう追い付けないか!? 二馬身三馬身と後続を突き放していきますウッドストック強い! これはセーフティリード!』

 

 

 なんて清々しいんだ。

 

 

 耳を切る風の音。横を見れば後ろに飛んでいくラチ。踏みしめる度に俺の脚を跳ね返す芝。

 

 

 全身で受ける風が、心地いい。

 

 

 そうか、これが。これが馬としての、走る喜び。

 

 

 そうさ。俺はサラブレッド。俺はウッドストック!

 

 

 俺はステイゴールドの息子! 偉大なる親父の血を受け継ぐ者!

 

 

 さあ人間共よ、俺を見ろ! 先頭に立ってやったんだ、よく見えるだろう!?

 

 

 刮目しろ! その目に焼き付けろ!

 

 

 俺の名を! 姿を!! 勝利を!!!

 

 

 俺の名は!! 芝を駆けるロックスター!!

 

 

 キング・オブ・ロック!!!

 

 

 ウッドストックだ!!!!

 

 

 

『ウッドストック強い! ウッドストック強い! 二位以下を大きく突き放して今ゴールイン!! 影をも踏ませぬ力強い走り!! これは将来が楽しみな馬が出てきました!!』

 

 

 

 

 

 あー走った走った。本気で走るとすっごい疲れるけど、それ以上に気持ちがいい。

 

 ついテンション上がっちゃって、頭のなかで恥ずかしいこと叫んでしまった。これは黒歴史確定。夜な夜な思い出して悶絶しそう。

 

 

 ま、今回のはあくまでデビュー戦。ゆくゆくはクラシックも古馬路線も走りたいところだが、そこらへんはオーナー馬主ら上の人間が判断するところ。俺は全力でレースを勝ちにいくだけだ。

 

 

 お、池谷殿が鞍上でガッツポーズしてる。いいけど落ちないでね。まああんた後々オルフェに振り落とされること知らないでしょうけど。

 

 

 

 

 

「お疲れ様、池谷さん。まずは勝ちましたね」

 

「ええ、なんとか。いやあすごい馬だアイツは」

 

「ほう、そんなにですか?」

 

「調教の時から思ってましたけど、アイツ競馬を理解してますよ。こっちの指示もしっかり伝わりますし、自分でコースをある程度選ぶ頭もある」

 

「ほうほう」

 

「それにアイツ、自分のペースを一定に保ちますけど、最後の辺り。仕掛けようとしたときに、アイツ手綱を噛んだんですよ。『ここか?』って。まるで仕掛けどころが分かったかのようで」

 

「…………俺達が思っているより、すごい馬になるかもな」

 

「なりますよ。させてみせます」

 

「こりゃあ頼もしい。これからもよろしくお願いしますよ」

 

「ええ、任せてください」

 

 

 




 レースの描写ってこんなんでいいのかしら


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つかの間のひととき

 

 デビュー戦から数日。俺は馬房でのんびりと寛いでいた。窓から燦々と射し込む日の光がなんとも心地よく、ついうたた寝してしまう。

 

 

 レースから少しの間は調教も馬なりというか、軽めのもので済ませてくれるようで、脚が鈍らない程度に身体を動かす、ぐらいの気持ちで行えた。脚の調子を見ながら、どう走れば負担が少なくなるか考えて。

 

 

 そうしている間に気づいたことだが、どうやら俺はとにかく脚の回転を上げて、スピードを出すやりかたが走りやすいっぽい。ピッチ走法だかなんだか言ったっけ?

 

 確かステイゴールドもそんな感じだったような。この得意不得意はやはり遺伝なのかもしれない。

 

 まあ走りやすさってのは足元が芝かダートか、その日の天気によっても変わってくる。地面の状態によって、走りやすいフォームを模索して身体に覚えさせる日々だ。

 

 

 調教が済めば、あとはのんびりと過ごす。メシ食ったり、昼寝したり、たまに放牧に出たら見学の一般人に愛想振る舞ってみたり。最近俺のことが噂になってるようで、地元以外にも遠くから遠征してきたらしい人間さんを時々見かける。

 

 おっちゃんに見せて貰ったが、「音楽が大好きな馬」としてそれなりの知名度らしい競馬誌に載ってたんだよね。そういやなんでか放牧中に、おっちゃんにウォークマンでメタル聴かせてもらって、ノリノリだったところをでっかい一眼レフで写真撮られてた時があったなあ。

 

 少し前から見学客が増え始めたなー、なんてのんきに思ってたけど、アレが原因なのだとしたら納得いく。俺は変わらずお出迎えして愛想振る舞うだけだが。

 

 

 あ、時々オルフェーヴルの様子も見てるな。なんというかこう、アイツみてるとすげえ心配なんだよ。

 

 

 ちょっと前に俺の馬房の近くに移ってきたんだが、アイツはどうも人一倍……馬一倍? 臆病なようで。

 

 俺を世話してくれる厩務員のおっちゃんが、オルフェの坊主も担当しているんだが……心を開く様子がまるでないらしい。俺にブラッシングしてた時にぽろっとこぼしてたから気になってしょうがない。

 

 

(世話してくれてるんだから慣れな?)

 

(無理、人間怖い……顔ゴシゴシされるの怖い)

 

(綺麗に拭いてくれてるだけだよ)

 

(あと他の馬もいじめるから怖い)

 

(俺も馬だけど?)

 

(助けてくれたから好き)

 

(さいで)

 

 

 こんな調子で、懐いているといえば俺ぐらいのもん。本当に競走馬になれるんだろうかコイツ。俺が言えた口じゃないけど。

 

 将来的には三冠獲る奴だったからそこまで心配はしていないが……いややっぱり不安だ。

 

 

(オルフェお前、人が乗っても振り落としたりするなよ?)

 

(……………………がんばる)

 

(長い沈黙だったな……)

 

 

 今からでもこの坊主の鞍上になるであろう池谷殿の無事を祈っておいたほうが良いだろうか? 人参でなんとか聞き届けてくれたりしないかしら。

 

 

 

 

 

 

 雨足が遠退き、太陽がギラギラと照りつけ、夏真っ盛りという頃。俺は最近、プール調教がメインになっていた。

 

 

 プールって言っても、脚が全く付かないぐらい深さはある。溺れたらひとたまりもないだろう。そんなだからプール調教を嫌がる馬は多いと聞く。

 

 まあ俺は平気で楽しんで泳ぐし、途中で素潜りとかするけど。だって気持ちいいんだもん。これからの季節ちょうど良いし。

 

 ただ最初のころは、潜ったら人間さんが慌てて引き揚げようとしてこっちも驚いた。

 

 後から人間さん話してたけど、馬って普通潜ったりしないのね。溺れたと思って引き揚げようとしてくれたんね。知らんかったとはいえ悪いことした。

 

 ただやっぱ潜るの気持ちいいから潜らして。思いっきり頭を水に浸して泳いだら、これがまた気持ちいいのなんの。潜りつつ泳ぎつつ規定の数を周回して、プールから上がった直後にブルブルと全身の水気を飛ばす! これがまた気持ちがいい!

 

 

「うわっ、こら! やめろウッドストック!」

 

「ヒヒンッ(へへっ)」

 

「今笑ったな? このやんちゃ坊主め!」

 

「ブルルッ(ごめんって)」

 

 

 こんな感じでプール担当の調教師の兄ちゃんともふざけあう。まあ俺が一方的にイタズラしてるだけだが。

 

 調教師の兄ちゃんもまあ、口では怒るが満更でもないっぽい。「アイツ俺相手だとめっちゃ生意気なんすよー」と半笑いで厩務員のおっちゃんに愚痴ってた。誉めてもヘドバンしか出ねーぜ。

 

 

「ただ、やっぱり自分の意思で潜ってますね。長いと一分は潜ってるんで、自主トレのつもりなんでしょうか」

 

「まあ肺を鍛えるに越したことはねえが……お前つくづく変なやっちゃなあ」

 

 

 なんだよ、誉めるか貶すかどっちかにしてくれよ。貶したら首筋に唇で甘噛みするけど。

 

 

「よかったなウッドストック、お前唯一無二だとよ……あっ!? ちょ、なんだよ!」

 

「ハハハハッ! お前の皮肉なんざお見通しだとよ!」

 

「笑ってないで助けてくださいよー! おいやめろって! 悪かったってば!」

 

 

 うるせえ、一言多いんだよお前。そんなんだから彼女出来ないんだぞ。

 

 

「そいつが無闇に噛む馬じゃなくて良かったな。まあ馬にも嘗められてるようじゃ彼女なんて出来やしねえわな!」

 

「あっ! 言っちゃダメなこと言ったっすね!?」

 

「そういやこないだのコンパどうだったんだ」

 

「聞かないでください!!」

 

 

 なんだ不発だったのか。お気の毒様。

 

 

「……今鼻で笑ったかお前?」

 

 

 おっと失敬。

 

 

 



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迷いと、覚悟

 感想、ご指摘いつもありがとうございます。


『さあこの辺りで中団からじわりじわりと伸びてきます2番ウッドストック! 先頭から最後方までおよそ八馬身と言ったところ、隊列ややぎゅっと詰まってコーナーを回ります!』

 

 

 冬の足音が着々と近づいてくるのを感じる11月のとある日。俺は何度目かのレースに出ていた。

 

 今回は芝2000m、「京都2歳ステークス」。後に「ラジオNIKKEI杯京都2歳ステークス」とかいう長ったらしい名前に変更され、さらにGⅢの重賞レースに格上げされるこのレースは、GⅢの「ラジオNIKKEI杯2歳ステークス」、後のGⅠ「ホープフルステークス」のステップレースとして指定されている。

 

 ラジオNIKKEI杯とかいう言葉がやたらと出てくるので混乱してしまうが、俺が今走っているのは京都2歳ステークス、恐らくこのレースを勝って次に走るのがラジオNIKKEI杯2歳ステークスだ。つまりこの特別競走を勝てば、次の重賞レースに優先出場権が得られる。

 

 このレースで中距離を走れるかどうか、そして重賞を勝てるのか。ゆくゆくは長距離も視野に入れるかをこのレースから見極めるつもりなのだろう。

 

 上等だ。ここからが本番といったところ。

 

 こう言っては傲慢となじられるかも知れないが、むしろ今までのレースは正直つまらなかったんだ。

 

 骨のある奴がいなかった。食らいつく奴がいなかった。俺に追い付く奴が、競ってくる奴が、競り勝つ奴が、差し抜く奴が、ぶっちぎる奴がいなかった。

 

 だけど。今度なら、きっと。グレードレースに出場できたなら、きっといるんだ。

 

 俺が本気を出しても敵わないだろう奴が。強い奴が。化け物のような奴が。

 

 そこでなら、俺はもっともっと輝けるんだ。全力を出せるんだ。

 

 だって俺は、ステイゴールドの息子。ドリームジャーニー、ナカヤマフェスタの弟。オルフェーヴル、ゴールドシップの兄貴。

 

 競馬史をいろんな意味で引っ掻き回した、あの暴れん坊の血を確かに受け継いでいる馬。

 

 

 俺は、ウッドストックなのだから。

 

 

 

 

 まあレース中の細かい指示は相変わらず鞍上の池谷殿にお任せである。気性難に振り回されっぱなしのイメージだけど、彼だってプロのジョッキーだ。当たり前だが俺のような素人よりレース運びは断然上手い。

 

 俺は彼の指示に合わせて脚を抑えたり馬群をすり抜けたりするぐらいだ。おっ、ちょうどねじ込めそうな隙間あるじゃーん、ちょっと後ろから失礼するゾ~。

 

 

(うおっ!?)

 

(マジかよ!)

 

(お先)

 

 

 そのままするするっと馬群を抜け出しまして。おやおや、丁度先頭と2番手が見える位置まで来たか、いつの間に。やっぱ池谷殿コース取りが上手いわ。

 

 

『スルリスルリと馬群を抜けてウッドストック3番手に躍り出る! 現在も先頭は変わらず7番クロイツティーゲル! その後ろ一馬身離れて二位に6番ツブラナヒトミですがそれに並びかけるように外からウッドストック上がってくる!』

 

 

 さてそろそろコーナーの出口だけど、そろそろ仕掛けるのかい池谷殿?

 

 

「行けっ!」

 

 

 任せろ。おーおー、鞭まで入って気合い乗ってんねぇ!

 

 

 

 

 

『さあウッドストック上がってツブラナヒトミを躱す! ヒトミ上がらないか!? 上がらないか!? 上がらない! ここで二番手に躍り出たウッドストック! 前のティーゲルを差せるか!?』

 

 

(アタシの前に出るなぁ!)

 

 

 俺が追い抜いた馬が後ろから嘶くが、出るなと言われて出ない競走馬がいるか。悔しかったら差し返してみろ。

 

 

(よう)

 

(…………!)

 

 

 そして外から先頭の馬の斜め後ろに付く。こっちをチラッと伺って僅かに焦りが顔に浮かんだのが分かった。

 

 コイツは見たところまだ脚を残してるっぽいが、さほど余裕があるわけでもなさそうだ。少しでも油断すれば差される、そんな顔だな。

 

 だが向こうの鞍上もみすみす勝ちを譲ってはくれない。こちらの動きにフェイントで牽制を入れてくる。こりゃあ相当の手練れだ、よほど馬と息があってなけりゃ出来ん芸当だな。

 

 

(行かせない!)

 

(出来るかな?)

 

 

 だが俺と池谷殿だって負けてないぜ。なんてったってこっちは人間の頭脳二人分だからな。

 

 一人が指示を出す! 一人がその通りに走る! そこらの馬に負けるわけがなかろうて。

 

 

 そうだろ池谷殿! …………池谷殿?

 

 

「……………………っ!」

 

 

 あ、ヤバい。池谷殿大分苦戦してる顔してるぞ。ここからの差し筋が見えてないっぽい。

 

 マジか。池谷殿が手も足も出ないか。参ったなこりゃ。気性難乗りこなしてきた君がそれということは、相手は一枚も二枚も上手だということか。

 

 いや、逆に俺だからか? キミもしかして気性難の馬じゃないとあんまりパフォーマンスにバフかからないタイプ? いやそんなバカな。気性難じゃなくても実績残してたでしょキミ。……いや、あながち否定できないかもしれん。

 

 ちょ、え? マジ? これワンチャン勝てるでしょ。行こうよ池谷殿。あ、行かない? ていうか行けない? 行けないのね?

 

 

 

 

 分かった。()()()()()()

 

 

 

 

 

 

『さあぴったりクロイツティーゲルに付くウッドストック! しかし抜けないか!? 伸びないか!? 残りは300m!』

 

 

「ウッドストック!?」

 

「ヒヒッ!(落とされるなよ!)」

 

 

 突然俺が暴走を始めたと思ったのか、必死に手綱を絞る池谷殿。大丈夫、俺は冷静だから心配するな。

 

 ただちょっと、アンタに()()使()()()を教えるだけだからさ。何度でもやるから、しっかり身体で覚えてくれよ。

 

 

 

『逃げきるか!? クロイツティーゲル逃げきるか!?

 

 

 ……いや! 来た! 来た! 伸びてきた伸びてきたウッドストック伸びてきた! 先程よりさらに大外に回ってなお伸びる! これは驚異的な末脚だ!!』

 

 

(バカな……!?)

 

(悪りぃな)

 

 

 お前さんが目の前で愉快にケツ振って邪魔するんなら、『邪魔できないところから抜く』。単純明快にして最適解よ。

 

 

 普通なら出来たもんじゃない。前の馬より外に回る分、十数mは余分に走ることになってしまう。大したことないように聞こえるが、レースの世界では致命的に長いコース取り。

 

 

 だが、嘗めるなよ。俺は人間の記憶と頭脳を持つ馬。自分のスタミナの限界は自分が一番よく分かっている。だからこそ今回のレースに向けて、綿密にペース配分を計算してきた。

 

 それに、最初のレースよりも心肺機能が格段に鍛えられているのが分かる。あの遊びでやっていた素潜りが功を奏したのかもしれないな。

 

 デビュー戦より長いのに、あの頃よりも息が続いている。このスタミナを全力で短距離に使ったらどうなるかなー、などと考える余裕すらあった。

 

 翻ってお前はどうだ、クロイツティーゲル。もう足腰も心臓も限界が近いだろう? 汗が滲んでるのが分かるぜ。

 

 

(なんだ……なんなんだお前!!)

 

(お前を負かす馬だよ)

 

(ふざけやがって!!)

 

 

 ふざけてなどいないさ。これでも真剣に……。

 

 

 

『ウッドストック追い抜いた! 追い抜いた! 懸命に差し返そうとするクロイツティーゲルしかし苦しいか!? それを尻目にウッドストックさらに加速する! ウッドストック強い強い! 二馬身! 三馬身! まだまだ突き放していく!!』

 

 

 

 

 あと、()()()()()()()()()()()()()、考えてるんだよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やったなウッドストック!! お前すげえなあ!!」

 

 

 ゴール板を通りすぎた直後、鞍上から池谷殿が首を叩いてくる。おだてても勝利しか出ねえぜ。ヘドバンも出るか。

 

 

 クールダウンを兼ねたウイニングラン。観客席からは歓声、悲鳴、怒号と悲喜交々(ひきこもごも)の熱狂的な叫び声が聞こえてくる。

 

 

 見たかよお前ら。これで分かったろう、俺は決してフロックではないと。

 

 

 俺に賭けた奴には脳を焦がすような熱い夢を。賭けなかった奴には身を凍らせるような悪夢を。

 

 俺は、ウッドストック。

 

 ターフで夢を魅せる、ロックスターだ。

 

 

 

 

 

 

「見ました? コイツ俺に自分の使い方教えてきたんですよ」

 

「見ましたよ。大外から差すなんて、あなたらしくない競馬だった」

 

「ええ。ウッドストック、とんでもない馬ですよ。競馬を理解してますし、自分のスペックが分かっている。自分がどういう馬か、どんな使い方が出来るか、俺にプレゼンしてみせる。これで普段は大人しいってのがますます信じられない。本当にステイゴールド産駒なのか」

 

「これで三冠でも獲った日にゃあお祭り騒ぎだろうな」

 

「獲ります。コイツとなら獲れる、そんな気がするんです」

 

 

 馬房に戻って水を飲んでると、目の前でおっちゃんと池谷殿がそんな話をしていた。

 

 三冠か。皐月賞、東京優駿、菊花賞の三つだよな。

 

 でも俺が知ってる競馬史だと、獲ったのはオルフェの坊主と池谷殿なんだよなあ。俺というか、ウッドストックなんて馬は見たことがない。少なくとも俺は。

 

 これあれだよな。本当に俺に出来るかどうかはおいといて、もし俺が三冠になったら、歴史が変わるってやつだよな。

 

 いいんだろうか、本当に。

 

 もちろん三冠獲れる、なんて絶対的な自信がある訳じゃない。そもそも三冠全部に出るかも分からない。

 

 だけど。人間だった俺が馬になったのも、わざわざ二十年も前の過去に逆行したのも、このためだとしたら?

 

 

『ウッドストックという馬が、三冠を獲る』。そのことに、何らかの意味があるのだとしたら?

 

 

そのために、『俺がウッドストックという馬になる必要があった』のだとしたら?

 

 

 ……神様が居るかどうかも知らないが、居るのだとしたらきっと一生、いや何度生まれ変わっても奴と話が合うことはないだろうな。まさに神の悪戯だ。

 

 俺は、どうしたいんだ? 俺は…………。

 

 

 

 

「…………どうしたポケ? また考え事か?」

 

 

 いつの間にか、ボーッとしていたらしい。おっちゃんが俺の鼻先を撫でた。

 

 ふと見れば、池谷殿はいつの間にか居なくなっていた。だから幼名で呼ばれたのか。

 

 

「……まあ、お前がどんなレースに出るのかなんて、頭悩ませるのは俺達人間の仕事だ。お前はただ、無事に、怪我なく走ってくれりゃあいい」

 

 

 おっちゃんのその言葉。

 

 なんてことのない、純粋に馬を気遣うその言葉には。

 

 なんだか、言霊というか。見えない力があるような、そんな気がした。

 

 

 

 

「おっ? ハハハッ! こら、舐めるなって」

 

 

 

 

 おっちゃん。俺、走るよ。

 

 三冠だろうが、古馬だろうが。海外だって。

 

 出るレース、全部勝ってやる。

 

 おっちゃんが後々、「あんなすごい馬を世話したんだな」って、一生自慢できるような馬になるよ。

 

 俺にも走る理由はあるよ。俺、おっちゃんのしわくちゃな笑顔が好きなんだよな。

 

 その笑顔が見れるなら、歴史なんて知ったことか。何の因果か知らないが、競走馬になったのなら全力で馬生を駆け抜けてやるさ。

 

 

 だって俺は、ウッドストックだ。

 

 

 

「……さて、ポケ。今日はポップスなんてどうだ?」

 

「ヒヒッ! ブルルルッ!(おっちゃん好き! 抱いて!)」

 

 

 

 音楽大好きな、競走馬なんだ。

 

 




 未だにレースの描写はこんな感じでいいのか悩んでます。


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幕間~とある掲示板のスレ~

お茶濁し

追記
前話までの文章を修正しました。
これでもまだ問題がある気がしてなりません。お気付きになられたことありましたら、都度ご指摘いただけますと幸いです。


【競走馬】ウッドストックとかいう馬について語ろうぜ【ステゴ産駒】

 

1: ID:rhHnr/O1u

競馬詳しくないワイでも名前は知ってる馬やけどどんなやつなん?

 

2: ID:TxIFfBCPF

性格やべーやつから産まれた戦績やべーやつ

 

3: ID:8skkhrJzW

ステイゴールド産駒で文句無しの孝行息子やぞ

 

4: ID:dhooxIswO

親父に似てるけど親父に似てない

 

5: ID:IojK1ehtF

哲学かな?

 

6: ID:wQGtKG/FQ

親父のステイゴールドはクッソ気性難、超俺様気質の暴れん坊

ステゴの親も気性難と気性難のやべー配合で子供達ももれなく気性難揃いなのにウッドストックだけやたら大人しいから「本当にアイツの子供か?」って関係者が皆首を傾げたそう

 

7: ID:6uZd3RYxG

オルフェーヴルも大人しいんだっけ?

 

8: ID:sHSLq7Jhv

オルフェは大人しいは大人しいけど臆病なとこがあるし、調教もそんなに好きじゃない

ウッドストックはビビらないし調教も普通にこなすし見学客にめっちゃ愛想振る舞う

そんでレースはクッソ強い

 

9: ID:edXpmdbSq

厩務員曰くめちゃくちゃ賢いらしい

シンボリルドルフみたいなタイプの賢さだったとか

 

10: ID:wez1pSUQq

なんかテレビのインタビューでやってたな

人の言葉をちゃんと理解してるし、返事もするとか

 

11: ID:TmCJGdDNR

人間の言葉に相槌打ってた

調教師がウッドストックの皮肉を言ったら服を引っ張って抗議した

人間の挨拶を見てお辞儀を覚えた

文字も理解してる節があった

鏡に映った自分を理解してた

カメラも理解してた、なんなら決めポーズもしてた

これでも一部やで、アイツガチで賢い

 

12: ID:pg+70w/Vj

マ?中に人間入っとんのか

 

13: ID:e2buJzlIz

実際そう言われるぐらい賢かったみたい

前世は人間かもしれない

 

14: ID:nZ7BxqA87

そりゃ人間並みの知能持っててレース嫌がらず勝ちにいく馬とか強いに決まってるわ

 

15: ID:CzLfXfsIb

池谷「あいつの乗り方をあいつに教えてもらった」

 

16: ID:/sbvPDLAe

どういうことや?

 

17: ID:cug9t5yHl

あるレースでウッドストックに乗った池谷は、池谷らしくない大外からの差しで勝利

インタビューでそれを聞かれると、「最後の直線で攻めあぐねた時、あいつが突然大外に出て、そのまま差しきった。自分の乗り方を僕に教えてきた」って答えたんや

 

18: ID:Ib6bHdGuV

屋根に競馬教えるとかほんまに皇帝みたいやな

 

19: ID:0Im1DmvvT

ルドルフは気性難やけどウッドストックは大人しいから似てるようで違うぞ

 

20: ID:JL1sUmAhF

皇帝は外面きっちりしてて厩舎だとライオン呼ばわりされる暴君

ウッドはイタズラ好きなぐらいで大人しいし人間にも愛想いい

 

21: ID:i8YsfuwiE

皇帝は威圧感で周りが萎縮するタイプのボス

ウッドは周りの面倒見てたから慕われてたタイプのボス

 

22: ID:DQtujn9vu

ウッドストックボス馬なんか

 

23: ID:dZzGMbt+G

ウッドは名君って言われてた

喧嘩仲裁して悩み相談していじめも止めてってしてた

それが積み重なって自然と慕われてボスになった

ちないじめを止めたときにいじめられてたのがオルフェな

 

24: ID:VPwNHoEsM

マ?弟助けたんか

 

25: ID:VbCIq1A3v

せや、だから馬にも人間にもビビるオルフェもウッドには懐いてた

もしウッドがいなかったらオルフェの性格も今より酷かったかもしれん

池谷振り落としとったかも

 

26: ID:+x8NKv0ye

はえーウッドくんファインプレーだったんすね

 

27: ID:PDiE71syo

あと栗東のボスだったトーセンジョーダンとも仲良し

最初ジョーダンがウッドに威嚇したけどウッドも怯まず応戦

そんでしばらく睨みあったあとジョーダンがウッドを気に入った

ウッドに懐いてたオルフェも可愛がってた

 

28: ID:7CafK/ck8

ゴルシとも仲良いぞ

同じ厩舎で馬房も近かった二頭

ゴルシが喧嘩売るけどウッドも応戦

最終的に仲良くなった

ついでにジャスタウェイとも仲良くなった

 

29: ID:gsyDCr3NT

なおオルフェとジャスタウェイは仲悪い

ジョーダンとゴルシも仲悪い

ウッドは板挟みで振り回されてた

 

30: ID:xdb5oeQrz

かわいい

 

31: ID:yYdNfP+sJ

かわいそうだけどかわいい

 

32: ID:FNF9jn5Dz

まるで中間管理職みたいだぁ……

 

33: ID:mAHhIEQMA

でもやっぱウッドストックといえば音楽大好きなとこだよな

 

34: ID:wIIgnrvMA

どういうことや?

 

35: ID:FqejpzqhB

文字通り音楽大好きなんやで

ロック聞かせたらヘドバンするんや

 

36: ID:1b3pMykeT

マ?

 

37: ID:cKkDsekpr

いくらなんでも嘘やろ

 

38: ID:sSStdLlmX

今すぐウッドストック ヘドバンで調べろ

 

39: ID:MBwC8RC3n

マジやんけ草

 

40: ID:i1iaSn+P3

キ○クリでヘドバンしてて草なんだ

 

41: ID:lIWvT4Vw+

ウッソだろお前

 

42: ID:opTj0L938

ファーwwwwwww

 

43: ID:QUGzN39il

よくよくみたらちゃんとリズムに合わせて振ってて大草原

 

44: ID:ft0ufiq5L

馬ってこんな大音量で音楽聴かせたら普通ビビるやろ

ファンファーレとかは抜きにしても

 

45: ID:/EI1Ne9Bq

だから珍しいんやで

 

46: ID:fegrbiBsY

しかもただ音楽が鳴るとヘドバンする訳じゃなくてジャンルや曲調の違いを理解してる

ロックでもBPM低い曲とかポップス、ソウルだとヘドバンじゃなくて単にリズム取ってるだけの振り方だし

 

47: ID:yJ5GQKwNs

エモい曲とか往年の名曲だと涙流すぞ

 

48: ID:Te6jWPP1f

感性がガチの人間で草

 

49: ID:UhaYbrahr

なんなら最近ステップ踏むのも覚えたぞ

新○島のMV見せたらボックスステップ習得した

 

50: ID:KzA9B2YSK

俺より賢くて草

やっぱ中身人間やろコイツ

 

51: ID:01vxbsBP1

全く別方向でステイゴールドの子供ですね……

 

52: ID:DmlhhTEQ+

ステゴ産駒にあるまじき突然変異かと思ったけどやっぱアイツの子供だったわ

 

53: ID:ab3h4rtO6

お気に入りはリ○キン、レッ○リ、ポ○スらしい

あと○飢魔II

 

54: ID:BTeFMqqAA

俺と好みが丸被りで草

一緒にヘドバンかましたい

 

55: ID:EWmnliI/r

牧場に許可取ったらええで

ウッドの世話してる厩務員が音楽流してヘドバンしてるとこ見せてくれるぞ

 

56: ID:+W90wQDmu

マ?ちょっと有給とって動画撮ってくるわ

ここにうpするやで

 

57: ID:/22wQkMup

待っとるで

一緒にヘドバンしてきてくれ

 

58: ID:APreXA6Ag

バズ動画間違いなしやん

 

59: ID:rrs7DpnWe

馬とヘドバンかますとかいうパワーワード

 

60: ID:mHp8UmnM0

コイツおもしれー馬やな

ファンになったわ

 

 




まだ書いてもない設定生えまくって芝
なんやこの馬(ドン引き)


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幕間2 ウッドストックがウマ娘になったら

多分こんな娘。

なんか原作にウマ娘入れてたのが検索妨害云々と運営様に言われてしまったので対策に。短め。


『ウマ娘』

 

 人とは異なる耳と尻尾を持ち、人間を軽く凌駕する身体能力を持った、謎の多い種族。

 

 この世界とは異なる、別世界のウマの魂を持って生まれてくると言われている彼女たちは、太古の遥か昔から、途方もない時間を人間と共に過ごし、交わってきた。

 

 彼女たちは、走るために生まれてくるという。いつの頃からか、人々はウマ娘が競い、走る姿に熱狂するようになっていた。それは現代においても変わることなく、むしろより熱い娯楽として洗練されていった。

 

 

 トレセン学園。正式名称「日本ウマ娘トレーニングセンター学園」。

 

 全寮制中高一貫、URA主催『トゥインクル・シリーズ』と呼ばれるウマ娘レースで活躍することを夢見る、2000人以上のウマ娘が在籍するマンモス校である。

 

 

 

 

 

「はぁ…………はぁ…………」

 

 

 校内では()()()()()()()。そんなトレセン学園独特の校則も、中庭を律儀に校則に則って静かに走るこのウマ娘には、今だけはもどかしく思うのだ。

 

 

 

「はぁ……はぁ……もおー、どこにいるんだろう……教室に忘れ物って言っても、20分もかからないはずなのに……」

 

 

 人探し、もといウマ娘探しをしているらしい彼女は、トレーニング直前で「忘れ物」を取りに教室へ戻っていったきり、いつまでも帰ってこないチームメイトを連れ戻すようトレーナーから言われており、トレーニング時間のロスを少しでも短くするために奔走していたのだ。

 

 

 外にはいない。もしかしたら、まだ教室で探し物をしているのだろうか。件の尋ね人は高等部なので、中等部である彼女はあまり立ち入らない。少々緊張するが、人探しのため、ひいては自分の為だ。

 

 ウマ探し中のウマ娘は、丁寧に靴の泥を落としてから高等部の校舎へ入っていった。

 

 

 

 

 階段を二段飛ばしで軽快に駆け上がる。ウマ娘である彼女の脚力をもってすれば、平地を駆けるのとさほど変わりない。

 

 

「そんなに見付けにくいものなのかなあ…………んっ?」

 

 

 不意に、彼女のウマ耳がピクリと動く。人間よりも優秀なウマ娘の聴力が、遠くで微かに聞こえる何かを拾った。

 

 

 

「これは…………人の声? それも沢山…………もしかして」

 

 

 彼女はその複数の声が聞こえる方へ向かって、先程よりも速度を上げて走り出す。三段、いや四段飛ばしで階段を駆け上がるパワーとスピードは、筆舌に尽くしがたい。

 

 声のする方向は四階。探しているウマ娘の教室がある階だ。やはり間違いない、あの人は()()人だかりに囲まれているのだ。

 

 

「もーっ、昨日も気を付けてくださいねって言ったのに……まああの人だから仕方ないのかな……」

 

 

 その面倒見のよさから後輩たちに慕われているあの人のことだ。きっとプレゼントだのサインだのせがまれて断りきれずにいるのだろう。

 

 彼女が曲がり角を曲がってすぐに視界に飛び込んできた光景は、果たして彼女の予想通りの結果だった。教室の廊下、その一角にウマ娘の人だかりができている。

 

 

「やっぱり!」

 

 

 半分呆れ顔になった彼女は、小さくため息をついた後、大きく息を吸い、人混みに向かって大声を出した。

 

 

 

 

「ウッドストックさーーん!!」

 

 

 

 

 突然の大声に人混みから声が消え、代わりに彼女へ一斉に視線を向ける。彼女は気にせず、もう一度大声で探し人――ウッドストックというらしい――に呼び掛けた。

 

 

「トレーニングの開始時間、とっくに過ぎちゃいましたよーー!? 早く行きましょうよーー!!」

 

「おおー! ごめんなスペーー!! すぐに行くよーー!!」

 

 

 その声に間を置かず、ウッドストックらしき中性的な返事が返ってきた。ややあって、人混みの隙間を縫うように一人のウマ娘が出てくる。

 

 端正な顔立ちに、鹿毛と流星、さらには黄色いメッシュの入ったセミロングの髪。右耳には黄色い羽根飾り。

 

 すらりと長い手足を縺れさせながら、スペと呼ばれたウマ娘に駆け寄っていく。

 

 

「もー、気を付けてくださいねって言ったじゃないですかー! ウッドさん、押しに弱いんですから!」

 

「ははは、スペに言われちゃ世話ないな……」

 

「な、なに言うべ!? 私そこまで押しに弱くないですっ! ウッドさん反省してるんですか!?」

 

「ゴメンって、反省してるって……なぁ~機嫌直してくれよ~あたしのかわいいスペシャルウィーク~」

 

「かわっ…………もう! 早くトレーニング行きましょう! トレーナーさんも怒ってましたよ!」

 

「おっと、そりゃあ不味いな。あいつ意外とねちっこいんだよなぁ怒り方…………つーわけで悪いな皆、また今度な」

 

 

 えーっ、という取り巻き達のブーイングを背に、ウッドストックとスペ――スペシャルウィークというらしい――はトラックへ向けて歩き出す。

 

 

「……相変わらずモテモテですね、ウッドさん。クッキーいっぱい」

 

「有り難いことだよ。ただ、あたし一人じゃ食べきれないから、後でチームのみんなで手伝って欲しいな」

 

「えっ、いいんですか!? で、でもくれた人に悪いんじゃ……」

 

「多分近いうちにまた貰うことになるだろうし、腐らせちまうのも勿体ないからさ。頼むよ」

 

 

 ウッドストックの言葉に、そういうことなら、いやでも、としばし唸った後、スペシャルウィークが口を開いた。

 

「……い、一応! 一応チームの皆にも確認しましょう!」

 

「ふふ、やっぱり食べたいんだ。目が食べたいって言ってたもんな」

 

「そ、そんなこと……」

 

「スペ、よだれ」

 

「えっうそ」

 

「うそだよ」

 

「…………っもう!! ウッドさんなんて知りません!」

 

「あっ、ちょ、スペー! ゴメンってば、置いていかないでくれよーー!!」

 

 

 とうとう顔を真っ赤にしてスペシャルウィークが走り出し、ウッドストックが後を追いかける。その顔は二人とも、どこか楽しそうだった。

 

 トレセン学園きっての実力派、かつ癖の強いウマ娘が集まる、チーム『スピカ』のなんということはない日常である。

 

 

 

 

 

 

【キャラクター紹介】

 

 

 ウッドストック

 

 誕生日 4月15日

 

 身長 167cm

 

 体重 増減なし

 

 スリーサイズ B86 W60 H84

 

 鹿毛、右目よりの流星あり

 

 耳飾り 右側、黄色い羽根飾り

 

 髪型 セミロングのウルフカット。流星に沿うように黄色のメッシュを入れている

 

 容姿 切れ長つり目、美人系の顔立ち。リョテッとしている

 

 勝負服 ゴスパンク系、ショートデニム、ニーハイブーツ

 

 私服 シンプルな白シャツとグレーのジャケット、デニムパンツ

 

 

 音楽とレースをこよなく愛するウマ娘。休日は駅前でストリートミュージシャンをしている姿を目撃される。

 

 男勝りな口調とパンクな姿から誤解されがちだが、本人は温厚で世話焼き、成績も優秀。ギャップにやられた後輩ウマ娘たちに慕われている。

 

 ゴールドシップやトーセンジョーダンと仲がよく、そのためかよく二人の喧嘩に巻き込まれている。

 

 

「あたしの走り、よく見ときなよ。心が燃え滾るような、熱い夢を魅せてあげる」

 

 

 




ウマ娘要素、ヨシ!

アプリに実装されたら即夢女製造機認定されそう


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弟と

 ウッドストックはオルフェーヴルの一歳上の全兄という設定。今さらですけど。


 

 

 前回のレースから数日。例によってしばらくの間、俺は馬なりの調教で調整を行っていた。ここの人たちは馬を馬とも思わないような人畜でなくて本当によかったと思う。

 

 特に脚回りを気にしてくれている。まあかなり脚使ってぶっちぎったから心配されるのも当然か。

 

 

 馬って言うと、一般的に俺のようなサラブレッドをイメージしがちだが、これはレース用により速く改良を施してきた歪な進化だ。馬という種族全体で見れば競走馬は大きさに対して病的なほど痩せているらしい。

 

 特に脚回りはスピード特化しすぎて、時に「ガラスの脚」と揶揄されるほど脆い。なので競走馬にとって脚の怪我は死活問題だ。

 

 なにせ血液を循環させるためにも、心臓だけでは足りず脚を使うのだ、馬というのは。脚を動かすことでポンプのような役割を果たし、全身に血液が行き届く。

 

 脚が動かないというのは、血液が巡らない、つまりやがて訪れるのは死だ。脚が生命線である馬にとって、脚を酷使する競走馬は文字通り生きるか死ぬか。

 

 故障や怪我をして引退した馬がどうなるかなど想像もしたくない。乗馬になるならまだいいほう、最悪は馬肉かミンチにされて家畜の飼料だ。

 

 進むも地獄、引くも地獄。脚が壊れるか勇退して種牡馬入りかのチキンレースだ。

 

 

 まあ、未来のことなどどうなるか分からん。俺はただ、レースの一つ一つに真正面から挑んでいくだけ。馬畜生になったことに少しでも意味を持たせたいだけだ。

 

 

 

 

「おーおー、向こうは大変だな……」

 

 ある日いつものように馬具を付けてもらっていると、近くの馬房が騒がしいことに気付いた。方向からしてオルフェーヴルの坊主の馬房だ。

 

 そういや今日はオルフェと一緒に走るんだっけ? 併せ馬というか、アイツに競馬の手本を見せるような感じになりそうだが。

 

 気になって調教師の兄ちゃんに見に行きたいと、兄ちゃんと騒がしい馬房の方を交互に見て伝える。最近は俺に関してかなり頭がいい馬だという認識が関係者間で浸透しているので、このぐらいのジェスチャーでも伝わることが多い。

 

 

「見に行きたいのか? いいけどお前まで騒ぐなよ」

 

 

 失敬な。よっぽどのことがない限り騒ぎませんよ。俺をなんだと思ってるんですか。馬ですかそうですか。そうです私が変なお馬さんです。

 

 

 兄ちゃんの言葉に若干ムッとして鼻先で小突く。「いてて、悪い悪い」とそこまで悪びれていない様子で俺の引き綱を持って歩き出した。俺だからいいけど女性にまでそんなこと言ってんじゃないでしょうねあーた。

 

 にしてもアイツ、何を暴れてるんだ?

 

 

 

(やだ! やだー! 行きたくない!)

 

 

 予想通り騒いでいたのはオルフェーヴルだった。俺の引き綱を引いてきた兄ちゃんとは別の調教師の人が必死に抑えている。

 

 

「どうした?」

 

「コイツ今日は機嫌が悪いみたいで……頭絡着けようとしたら暴れだしたんスよ」

 

「なるほどな、こりゃー見事な暴れっぷりだ」

 

 

 どうやら調教に嫌気が差したようだ。怪我させないように暴れてる辺り器用なやっちゃ。

 

 

 しゃーない。ここは俺が一肌脱ぎますかね。

 

 

「あっ、おいウッド! 危ないぞ!」

 

 

 兄ちゃんの制止を振り切ってオルフェの馬房の前まで近寄る。大丈夫、喧嘩する訳じゃないから。

 

 

(オルフェ!)

 

(へっ? あっ、兄貴!?)

 

 

 よっぽど調教に行きたくないらしい。必死で暴れていたから俺にも気付かなかったようで、俺が声をかけたら驚いてピタリと動きを止めた。

 

 というか最近は兄貴って呼ばれるんだけど慣れないから勘弁してくれないかな。以前はお兄ちゃんお兄ちゃんって可愛げがあったのに。

 

 

「おお? 止まった」

 

「ウッドが止めたのか?」

 

 

(兄貴助けて! 外行きたくない!)

 

(そんなこと言ったってしょうがないだろ、お前も俺も走るのが仕事なんだから)

 

(やだよ! まだ外暗いよ!? 熊とか出てきたらどうするのさ!!)

 

(野山じゃねーんだから出てこねえよ……)

 

 

 コイツのビビりっぷりも筋金入りだな。

 

 

(お前そんなわがまま言ってるともう構ってやんねーぞ?)

 

(うぐ……それも嫌だ……)

 

(それにいいのか? あんまり駄々こねてたら)

 

(こ、こねてたら……?)

 

 

 

(お前最悪ミンチにされて豚の餌だぞ)

 

(ひぃいい!?)

 

 

 

 

 

 

 

「いやー助かったぞウッド」

 

「ブルルッ(おう)」

 

「ヒィン……(兄貴ひどい……)」

 

 

 俺の脅しがよほど効いたらしく、その後オルフェはビックリするほど大人しくなって馬具一式を身に付け、俺と一緒にトラックへ歩いていく。

 

 

(兄貴の鬼……)

 

(失礼な)

 

 

 俺も本当に体調が悪そうだとか、そういうのだったら兄ちゃん達の方を止めてたさ。でも今回はオルフェのワガママだから容赦しません。

 

 

「よし、行くか。ウッド、軽く走るぞ」

 

「ヒヒッ(あいよ)」

 

 

 まずはウォームアップだ。これは本当に大事。筋肉も準備させないといらん怪我するからね。

 

 

(行くぞオルフェ。俺の真似して付いてこい)

 

(分かった)

 

 

 いつまでも落ち込む暇なんて与えんぞ。俺と走るからにゃ馬視点からもビシビシしごいてやる。

 

 

 

 

「その調子だ」

 

「ブモッ(おう)」

 

 

 風が気持ちいい。ウッドチップの感触を確かめながら筋肉を温める。

 

 ちら、と後ろを見る。オルフェは…………付いてきているな。

 

 

(ヨレてるぞ! まっすぐ走れ!)

 

(押忍!)

 

 

 こうしてみると、若駒としてのオルフェーヴルはやはりいい馬だ。粗削りだが、力強い走りをする。

 

 さすが、俺の知っている歴史で三冠を獲った馬だ。ネタ要素も強いけど、それ以上に強い馬だ。俺のような中身人間の馬もどきとは違う。

 

 

(鞍上の指示を待つだけじゃ駄目だ! 自分でも考えて走れ!)

 

(お、押忍!!)

 

 

 だから、俺の存在意義を少しでも増やす。今はまだダイヤの原石であるオルフェーヴルを、馬の視点からも鍛え上げる。

 

 そうすれば、万が一俺が怪我で走れなくなったとしても、俺が教えたことをオルフェが覚えていてくれるはずだ。

 

 未来の三冠馬に、俺と言う存在を刻み付けたい。

 

 俺が、ウッドストックという馬として生きた意味を、少しでも多く、この世界に。

 

 

 

 

 ……ちょっと独り善がりが過ぎるか。反省。

 

 

「よし、一杯だ! いくぞ!」

 

「ヒヒッ! ブルルルッ!(おう! オルフェ、全力だ!)」

 

「ブモッ!(押忍ッ!!)」

 

 

 今はまあ、この弟との時間を大事にすごそう。

 

 将来、ライバルになるだろう、この強い弟と共に。勝負もなにも関係なく走った時間を心に刻み付けよう。

 

 

(ハハハッ! 楽しいなオルフェ!)

 

(余裕かよ! 僕もういっぱいいっぱいだよ!)

 

 

 

 

 

「今日のオルフェーヴル、すごく大人しかったッスね」

 

「やっぱウッドストックと居ると素直だよな……」

 

「……これからも、優先的に併せてくれませんか? 多分あの二頭なら相性もいいし、仮にオルフェが暴れてもウッドが抑えてくれるでしょうし……」

 

「あー…………まあ、上に掛け合ってみるよ。許可が出るかは分からんが」

 

 




 ウッドストック流調教術初お披露目です。今後同じようなシーンがあるかは存じ上げません。


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初めての重賞レース

 まさか新ウマ娘にアストンマーチャンが来るとはこの海のリハクの(ry

 エアジハード君にも期待していいんですかね? 個人的にはバブルガムフェロー君とかマメちん期待してるんですけど。


 レース展開ですが史実とは大幅に変わってると思います。


『抜けるような青空に恵まれました中山競馬場、ターフも絶好の良馬場。GⅢ【ラジオNIKKEI杯2歳ステークス】、間もなくスタートいたします』

 

 

 

「頑張ろうな」

 

「ブルルルッ(おうとも)」

 

 

 冷たい風が吹き荒ぶ競馬場。俺ことウッドストックさんは、いよいよ2歳馬として最後のレースに挑む。

 

 初めての重賞レース、GⅢだよ。これ走れるだけでも相当の上澄みですよ。そんなレースをまさか当事者、しかも馬として走ることになるとは果たして誰が予想しただろうか。前世の俺に言っても鼻で笑われるな。

 

 

 いやー何度か走ってきて慣れてきたかと思ってたけど、流石にグレードレースってなると緊張してしまう。今まで無敗で走ってきたけど、ここからは多分そう簡単にはいかないだろう。

 

 なにせ、今日の一番人気は……。

 

 

 

『さあ本日の一番人気です、大武騎乗、ヴィクトワールピサ。馬体も艶がよく、しっかりと仕上がっているのが実況席からでも分かります』

 

『単勝1.6倍ですからね、皆彼らがどのように勝ち上がるか楽しみにしていると思いますよ』

 

 

 前世でも名馬として有名だったヴィクトワールピサと、それを駆るレジェンド、大武。

 

 このペアを差せるかどうか……池谷殿と俺の息がぴったり合わないと難しい。

 

 あの二人にどうやって対抗するか……なんてことを考えていると、ふと目に留まる一頭の馬。

 

 あれに見えるは件のヴィクトワールピサじゃあないか。挨拶しとこうかな。

 

 

(どうも、よろしく)

 

(……ああ、よろしく)

 

 

 お、ちょっと無愛想だけど返事してくれた。

 

 

(……今日は俺が勝つ)

 

 

 おおう、ちょっと威圧されちゃったぞ。随分とストイックな御方のようで。

 

 だけど同時に、この自信のありようも納得だ。見てくださいよこのつやっつやの身体。堂々とした眼。強者のオーラが滲み出てますよ。

 

 なるほどなるほど、こりゃ参ったな。

 

 

 

 ()()()()()()()

 

 

 

(負けるつもりはない)

 

(……そうでなくては困る)

 

(ハハッ……じゃあレースで)

 

(……ああ)

 

 

 お互いに決して長くない会話を交わし別れる。

 

 

 なるほど、これが。これが強者か。

 

 ああ、疼く。楽しみで仕方がない。

 

 

「…………やるぞ、ウッド」

 

「……ヒヒッ!(ああ!)」

 

 

 池谷殿も火が着いたようだ。それでこそだ、相棒。

 

 

 見せつけようぜ。

 

 

 強いのはお前だけじゃないと。

 

 

 

 

 

 

『さあ第三コーナーに入って先頭からしんがりまでおおよそ十二馬身といったところか、先頭はダノンシャンティまだ変わりません、続いてアドマイヤテンクウ、コスモファントム、サクラエルドールと続いて一番人気ヴィクトワールピサはその内、一馬身後ろからヒルノダムール、半馬身離れてタニノエポレット、アドマイヤプリンスと続く。そしてここまで無敗の注目馬ウッドストック、最後方で不気味に脚を溜めています』

 

『今まで差しの競馬をしてきましたが今回は追い込みなのでしょうか、はたまたこのレースは流すつもりか、気になりますね』

 

 

 うーむ、今回の池谷殿は俺に追い込みをさせるつもりらしい。

 

 いつものように差しの位置取りでスタートしたはいいが、池谷殿が突然手綱を絞ったので困惑してしまった。

 

 

「まだだ……まだ抑えろ」

 

 

 俺に言い聞かせるように、はたまた自分に言い聞かせるように呟く池谷殿。ピサとはまともにやりあわず最後方から捲る作戦かね? 追い込みなんてぶっつけ本番だけど上手いこといくかなあ? やれと言われりゃまあやってはみますけど。

 

 仕掛けどころは恐らくこの第三コーナーの出口あたり。ピサは中団やや後ろといったところか。じわじわ脚を使って上がっていってるのが見える。

 

 ……さて、池谷殿。そろそろかい?

 

 

「…………行け!」

 

 

 おっ、手綱を弛めたな。んじゃあ上がっていくとしますかね。

 

 えーっと、内ラチで順位争いが苛烈してるな。この場合は外から行くのが正解かね。それじゃ、ちょいと失礼しまして。

 

 

 

 

『さあ第四コーナーに入ったところでヴィクトワールピサ上がっていく! 内からねじ込むようにぐんぐんと順位を上げてきた! それに続きますコスモファントム! 未だにハナを進みますダノンシャンティ逃げ切るスタミナは残っているでしょうか!?』

 

 

 

 ピサが上がっていくか。その後ろには……コスモファントムがつけてる。おーおー二頭揃って力付くで馬群を抜けるか。

 

 俺もそろそろ脚使っていくか。幸い外はしっかり空いてる、邪魔するやつは居ない。

 

 

「行け!」

 

 

 池谷殿から鞭も入ったことだし、気合い入れて飛ばしますか。

 

 

 

 

『さあ最後の直線だヴィクトワールピサがダノンシャンティを躱して先頭に立った! その後ろをコスモファントムが追いかける! 二頭の叩き合いになるか!? ダノンは伸びない! その後ろからヒルノダムールも来た!』

 

 

(俺が勝つ!)

 

(いいや俺だ!)

 

(待ちやがれ!)

 

 

 

 うは、すげえな前の方。ガチンコ勝負じゃん。あんなとこに突っ込みたくねぇなあ。

 

 

「ウッド、外だ!」

 

「ブモッ(了解)」

 

 

 池谷殿も同じ考えなのか、手綱を外ラチ方向に引っ張る。このまま大外からちぎれってか。

 

 いいぜ、やってやろうじゃん。ぶっちぎってやる。

 

 

 

 

『残り2ハロンで熾烈な戦いだ! ピサか!? コスモか!? それともダムールか!?

 

 

 …………いや!? 外から!! さらに大外からもう一頭突っ込んできた!! ウッドストックだ!! ウッドストック猛烈な勢いで突っ込んでくる!! 最後方からすさまじい剛脚!! あっという間にダムールを躱して先頭の二頭に迫る!! 残りは200m!!』

 

 

(嘘だろ!?)

 

 

 躱したダムールが驚愕したように嘶くが俺は意に介さない。目標は目の前のピサだ。

 

 内にピサ、外にファントム。そしてその大外から俺、さてさて向こうはどう出るか。

 

 

(……お前!)

 

(よう)

 

(なっ、誰だ!?)

 

 

 あんたとはお初だなファントムさんよ。だが挨拶もそこそこにちぎらせてもらうぜ。俺はピサに用があるんでな。

 

 

(クソッ、冗談だろ!?)

 

 

 必死で首を下げて前へ前へ走っているが、ファントムはもう保たない。最後の最後でペースを乱されりゃ余計な体力も使うだろう。ズルズルと後ろに下がっていくのが見えた。

 

 さあピサ、決闘と洒落込もうぜ。俺とあんた、どっちが勝つか根性比べだ。

 

 

(……やるな!)

 

(あんたこそ!)

 

(だが負けない……!)

 

(差す!!)

 

 

 このまま差せるかと思ったがピサめ、ここに来てさらに伸びるかよ。ファントムはもう下がったのにすげえ根性だ。

 

 だけど……。

 

 

 

『ファントムは伸びない!! ウッドストックかヴィクトワールピサか!? 大武か!? 池谷か!? どちらも譲らない!! 大接戦だ!! 両者鞭が飛ぶ!! ウッドか!? ピサか!? どっちだ!?』

 

 

 

 

 舐めて貰っちゃ困るんだよ!! こちとら元人間、ここでバテるような莫迦な走り方はしてねぇ!! 脚は十分に残ってる!!

 

 さあ人間共俺を見ろ!! その目に焼き付けろ!!

 

 そして刻み付けろ!! 俺の名を!!

 

 

(くっ…………!?)

 

 

 

 俺の名は!!

 

 

 

 ウッドストック!!

 

 

 

 芝を駆けるロックスター!!!

 

 

 

 ウッドストックだ!!!!

 

 

 

 

『ウッドだ!! ウッドストック躱した!! ウッドストック躱して前に出た!! そのままゴールイン!!

 

 

 凄まじいまでの剛脚!! 最後方から全て撫で斬ったぁ!! これはとんでもない馬が出てきた! GⅢラジオNIKKEI杯2歳ステークス! 制したのはウッドストック!! 二着クビ差でヴィクトワールピサ、三着コスモファントムです!』

 

『これはクラシックレースが楽しみですね! 私も興奮してしまいました!』

 

 

 

 

「やったなウッド!」

 

「ヒヒンッ!(おう!)」

 

 

 いやー今回ばかりは疲れたぜ。全力も全力で長いこと走ったからもー疲労困憊。しばらくは走りたくねえなぁ。

 

 

 ウイニングランもそこそこに息を整えよう。なんだい池谷殿、もうちょい走れって? 無理無理、もう全力だったから脚ガックガクだもん。

 

 

(…………ウッドストック)

 

(んお? ピサ)

 

 

 池谷殿とわちゃわちゃしていると、後ろから走ってきたピサが俺と歩幅を併せて声をかけてきた。正直あの無愛想ぶりからして向こうから話し掛けてくるとは思ってなかったよ。

 

 

(……お前、強いな)

 

(そっちこそ。一瞬負けも覚悟した)

 

 

 特にあの最後の伸びはビビった。お前まだそこから伸びる脚があるのかと。負けん気は相当らしい。

 

 しかも俺が全力疾走して今にも脚がくずおれそうなのに対して、向こうはまだ余力がありそうな感じ。これが本物の化け物馬か。こりゃうかうかしてたらあっという間に埋もれるぞ俺。

 

 

(……次は負けない)

 

(……また勝負しようぜ)

 

(ああ……)

 

 

 そう言ってピサは離れていった。なんだろう、えらい馬に目をつけられた気がするぞ?

 

 

(やい! やいテメエ!)

 

(うおっ、なんじゃ!?)

 

 

 後ろからいきなり嘶かれてビックリした。振り返るとヒルノダムールがぷりぷりしたご様子で近付いてきて、その後ろからはコスモファントムが付いてきている。え、なにこれ。俺カツアゲでもされちゃうの?

 

 

(この俺を簡単に追い抜きやがって! 次はこうはいかねえからなチキショーめ!)

 

(お、おう…………)

 

(なんだその目ェ! 莫迦にしてんのかテメーこの野郎スットコドッコイ!)

 

(なんだお前面白ぇな)

 

 

 ダムールお前そんなキャラだったのか。

 

 

(お前さんやるな。後ろからこられてビビった)

 

(ファントム。あんたもいい走りだった)

 

(そう言ってくれて嬉しい。ウッド、次は負けないぜ)

 

(ああ、またやろう)

 

 

 ファントムはなんだか爽やかなやつだな。ああいう手合いは話していて気持ちがいいから好きだ。

 

 

(オイ聞いてんのかテメーウッドストックこんにゃろーめ! これで勝ったと思うなよテメーバーローチキショーめ!)

 

(落ち着けって)

 

(コイツこれでも褒めてるんだよ。分かりにくいけど)

 

(うるせー余計なこと言うんじゃねえファントムてやんでえこの野郎!)

 

(これは照れてる)

 

(難儀なやっちゃなあ…….)

 

 

 こっちはなんかめんどくさいやつだ。端から見てる分にはいいが相手するとなると疲れるんだな。俺馬になってから学ぶことが増えた気がする。

 

 

 

 

 

「ウッド、お前モテモテだな」

 

「ヒィン……(皮肉かそれ)」

 

 

 絶対面白がってるでしょ池谷殿。証拠に顔がニヤニヤしてるもん。

 

 それに牡馬ばっかりにモテても嬉しくねーし。どっちかといやライバルだし。せめて牝馬にモテてーよ池谷殿。

 

 

「……ま、これからもよろしくな。相棒」

 

「…………ブルルッ(おう)」

 

 

 

 来年からは3歳馬…………いよいよクラシックレースが始まる。

 

 俺の人生、もとい馬生は多分このクラシックのためなのだろう。きっと。

 

 三冠獲ったら燃え尽きるかもしれんな。

 

 

 

 

 

「……あ、帰ったらはちみつあるってさ」

 

「ヒヒッ! ブモッブモッ!!(マジか! おい早く帰ろうぜ池谷殿!!)」

 

「あっ、こらウッド! 落ち着けって!!」

 

 




 キャラ濃いなこの馬ども(ドン引き)


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ウッドストック、やらかす。

 ウッドストックは流されやすい。


「ほーれいくぞウッド、ほい再生」

 

 

 

YEEEEEAAAAAHHHHH!!

 

音楽最高おおおおおおおお!!!

 

 

 

 

 

 

 

 ……はい、のっけからすみませんウッドストックです。

 

 

 最後のレースからまた数日経ちまして、年が明けました。とうとう2010年代ですよ。今年もよろしくお願いします。

 

 で、なんでいきなりテンション爆アゲでヘドバンかましてるかといいますとですね。

 

 

 

「うわ、本当にノリノリですね!?」

 

「すごいでしょう? コイツ本当に音楽大好きなんですよ」

 

 

 

 はい、ただいまテレビの取材を受けてるんですよね。どうも俺の「音楽聴かせたらヘドバンする」っていう奇行がメディアにも伝わったらしく、ローカルの放送局の取材のオファーが来たんですよ。

 

 いま俺の放牧エリアの外、柵の向こう側にテレビクルーと女性アナウンサーがいらっしゃる訳なんですけども。俺の行動に素で驚いたらしく、スタッフからも笑い声が聞こえてくる。

 

 なんだいなんだい、こっちは三度の飯より音楽が好きで好きでたまらないだけのただのお馬さんですよってに。

 

 あんたたち人間さんだって十人十色の個性があるわけなんだから、馬にだって色んな奴がいますよ? 音楽好きなぐらいで珍しくもなかろう。人語を喋るわけでもなし。

 

 

 まあ別に撮りたいんだったら撮ればいいんですけど。ええんか? こんなもん地上波に流して視聴率とれるんか? まあとれるでしょうね。前世の俺ならテレビの前で大爆笑してる自信あるわ。

 

 

「折角ですしおやつあげてみます?」

 

「え、いいんですか?」

 

「賢い子ですから。噛んだりはしませんよ」

 

 

 そうやね、指食っても美味しくないもの。

 

 

 冗談はさておいて、だ。おやつくれるのかい?

 

 

「じ、じゃあせっかくなので……」

 

「ハイこれ、人参スティックね。慣れてないのも分かりますから、いきなり動いたりはしないですよ」

 

「は、はい!」

 

 

 明るく返事を返して、慣れない手付きで人参を差し出すアナウンサーのお姉さん。やっぱり怖いのかちょっと手が震えている。

 

 いやこれアレかな? さっきのヘドバンで怖がらせた可能性が無きにしもあらずでは? でもこれ取材したいって言ったのそっちだから俺は悪くないぞよ。

 

 

 まあどうでもいいや、気持ちゆっくり首を動かして人参スティックに近付けて、唇で人参くわえて持っていくと。

 

 

「おお~…………人参あげれましたね」

 

「お客さんは不慣れなのが分かってるので、ゆっくり動いてたんですよ。僕があげるとこんな感じ」

 

 

 はい今度はいつもの早さで人参をパクッと。

 

 

「えっ、早い!?」

 

「これがいつものペースですねえ」

 

 

 テンポよく差し出される人参をひょいパクひょいパクと。

 

 

「本当に賢いんですね!」

 

「人懐っこいし優しい子ですよ。見学に来てくれる人にも愛想がいいですね」

 

「これでレースではすごく強いんですよね」

 

「いやー手前味噌になりますけど、コイツなら三冠も夢じゃないなって思ってますね」

 

 

 お、なんだいおっちゃん俺に三冠獲って欲しいのか? GⅠレース三冠欲しいのか! 三冠! いやしんぼめ! ってか。

 

 

 おっちゃんが喜ぶなら、俺頑張ってもぎ取ってくるぞ?

 

 

「三冠、獲ってきてくれるか?」

 

「ヒヒッ!(おう!)」

 

「おお~、お返事するんですねえ」

 

「コイツ多分人間の言葉分かってるっぽいんですよ。例えば……ウッド」

 

 

 おん? なんぞや?

 

 

 

 

「3+4は?」

 

 

 

 

 …………えっ、答えろと?

 

 

 え、えーと、まあ7ですよね? じゃあえーっと、どう伝えるかな……あ、脚で壁を軽く叩くか? コンコンコンっと。

 

 

「…………おお~!?」

 

「頭いいでしょ? もう一個いくぞウッド、8÷2は?」

 

 

 今度は割り算かよ。えー、4だから4回叩けばいいな。

 

 

「またまた正解ですね! 普段からやられてるんですか?」

 

「いや、いま初めてやりました」

 

「ええっ!?」

 

「まあコイツなら出来てもおかしくないって思ってましたからね。あまりにも賢いので」

 

 

 いや、咄嗟に計算して答えちゃったけど、これ今、とんでもないことやっちゃったんじゃないのか俺……?

 

 やったことない四則計算が出来る馬って、それだけで神馬かすわ妖怪かってなりませんかこれ。

 

 

「まあこんだけ頭がよけりゃあ、そりゃあレースでも強いってなもんですよ。僕にも分けて貰いたいねえこの賢さ、ハッハッハ!!」

 

「あ、あははは……」

 

 

 いやおっちゃん楽天的すぎるでしょ、お姉さんも取材陣も引いちゃってるよ。

 

 これ、世に知れたらえらいことになるんじゃ……。

 

 

 

 

 

「迂闊すぎますよ!! これで研究所に入れられて一生研究漬け、みたいなことになったらどうするんですか!!」

 

「いや、申し訳ない……」

 

 

 あの後、おっちゃん(と俺)がやらかしたことに関して、オーナーの人から物凄い叱られた。

 

 当たり前だよな、繰り返し教え込んだならまだしも、やったこともない四則計算をやって答えられる馬なんて前代未聞だ。

 

 

「あのシーンはカットして貰うよう頭下げて頼み込みましたけど、多分資料としてずっと残りますよ!? 出回ったら大変なことになりますよ!」

 

「弁解のしようもございません……」

 

「ああ、せめて引退まで世に出ないでくれ……」

 

 

 うーん、確かにおっちゃんの楽観さが原因とはいえ、咄嗟に答えてしまった俺も悪いよな。分かんないふりして無視すればよかったんだし。

 

 オーナーさん、本当にすまん。俺からも頭下げるから、おっちゃんばかり責めないでやってくれ。

 

 

「お、おいウッドどうした?」

 

「急に座り込みましたね……頭下げて…………土下座、のつもりですかね?」

 

「……俺を庇ってくれるのかい?」

 

 

 庇うというか、やらかした責任は俺にもあるし。連帯責任ってことでここは一つ。

 

 

「…………コイツも、事の大変さが分かるのでしょうか」

 

「……今までの事を考えると、それもおかしくありませんな」

 

「……今回は彼に免じて、これ以上は言いません。ですが、今後はくれぐれも気をつけてくださいね」

 

「はい、大変ご迷惑をおかけして……」

 

 

 どうにかオーナーさんが矛を納めてくれて助かった。

 

 

 …………マジで流出させないでくれよテレビの人。あぁ、本当の意味で黒歴史じゃねぇか。

 

 

 

「ブモッ、ブモッ(ヘヘッ、兄貴でもやらかすことあるんだな)」

 

「ブゥウルルルヒヒィィンッ!!(なに笑ってんだオルフェてめえ蹴り飛ばすぞ!)」

 

「ヒィィン!(八つ当たり反対!)」

 

 

 

 

 後日放送されたVTRでは、問題のシーンはきちんとカットされていた。

 

 




 なお引退後に発掘されるもよう。


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馬体艶々のやべーやつ

 ローテとしては多分間違っている気がしなくもないです。

 どうでもいいですけどみんなうどん食いた過ぎでしょ。


『晴天に恵まれました中山競馬場。真冬の冷たい風に晒され、よく乾いた固い芝は果たして馬にとって吉と出るか、凶と出るか。中山競馬場、芝2000m。GⅢ【京成杯】が始まろうとしています』

 

 

 

 うん、今日もいい天気だ。絶好のレース日和じゃないかね。

 

 どうもウッドストックさんです。今日はGⅢの京成杯に出場するよ。前回のNIKKEI杯からまだそんなに経ってないけど、競走馬のローテーションってこんなもんなのかね?

 

 まあ相変わらず俺としては一戦一戦を大事に、真剣に、全力で走るだけさ。壊れたらその時よ。

 

 

「どうだウッド?」

 

「ブルルッ(平気だよ)」

 

 

 鞍上の池谷殿には強気に返したけど、どうなるかは俺にも分からん。脚に痛みとかもないけど。むしろ絶好調だけど。

 

 

 さて、今回はどの馬がライバルになり得そうかなっと…………んお、すげぇピッカピカの馬がいらっしゃる。調子が良さそうだなあ。

 

 

『本日の一番人気、横田騎乗エイシンフラッシュ。実況席からでも分かる馬体の艶、かなり仕上がっていますね』

 

『これは走りにも期待できますよ。一番人気に推されるのも納得です』

 

『二番人気をご紹介しましょう、池谷騎乗ウッドストック。こちらも落ち着いていますね。返し馬でも軽やかな走りを見せてくれました』

 

『ここまで無敗ですのでこちらも期待が高まります。横田操るエイシンフラッシュに池谷はどう仕掛けるでしょうか』

 

 

 へえ、俺二番人気か。随分と期待されてるんですのね。

 

 ま、何番人気でも俺がやることは変わらん。ただゴール目指して走り抜くのみ。

 

 

(よーう、そこのあんちゃん)

 

(ん?)

 

 

 レースに向けて集中力高めとこうかな、などと思っていると、例のピッカピカなお馬さんに話しかけられてしまった。

 

 改めてみると本当に毛艶がいいな。並のお馬さんならたじろぎそうなぐらいキラキラしてる。

 

 

(今日はよろしくな。自分エイシンフラッシュっての)

 

(ウッドストックだ。よろしく)

 

(あんちゃん最近イケイケらしいじゃん? 自分の厩舎でもあんたの噂で持ちきりなんだぜ)

 

(マジで? 最近くしゃみよく出ると思ったわ)

 

(風邪じゃなくて良かったな)

 

(まったくだ。こんなくしゃみなら大歓迎だよ)

 

 

 最初に見た印象とは随分と違って、なんだか調子の軽い奴のようだ。こちらも軽く冗談を返しておこう。

 

 

(まあお互い頑張ろうぜ)

 

(ああ、それじゃあレースで)

 

(おう。ただまあ……)

 

 

 

 だが、こういう奴ほど油断ならないんだよな。

 

 

 

(…………勝つのは俺だぜ?)

 

 

 

 ほらな。

 

 

 

 最後の最後で俺を射抜くように睨み付けるエイシンフラッシュ。なるほど、そっちが本性か。

 

 

 おちゃらけた雰囲気が鳴りを潜め、その目の奥に燃える闘志が俺にプレッシャーをかける。こりゃあ、確かに強者だ。

 

 

 だからこそ、滾る。

 

 

 

(俺が勝つさ)

 

 

 

 ああ、楽しみだ。血が熱く煮えているかと錯覚するほどに、興奮している。

 

 

 

(…………)

 

(…………)

 

 

 

 

 最後はお互い無言で睨みあったまま、どちらからともなく離れた。

 

 おお、こわいこわい。血走った目で物凄く睨まれちった。お前は俺に親でも殺されたんかと。

 

 

 

 

『……いまようやく離れました。エイシンフラッシュとウッドストック、レース前の返し馬で勃発しました激しい睨み合い。勝負に勝つのは自分だと、互いに主張して譲らないかのようでした』

 

『お互いを強烈にライバル視しているかのようでしたね。喧嘩になってしまうかと思いましたが、大事にならず済んでホッとしています』

 

『観客スタンドからはこの二頭に対して割れんばかりの歓声と野次が飛んでおります。一番人気と二番人気の睨み合いから始まりました京成杯、波乱の予感をひしひしと感じます』

 

 

「…………大丈夫かウッド」

 

「ヒヒッ(大丈夫)」

 

 

 池谷殿が心配そうに俺の首を撫でてきた。どうやら相当な時間睨みあっていたらしい。いやー最近の若いもんは血の気が多くていかんね。俺もか。

 

 ……さて、あの漆黒の牙城、どう崩していこうかね。

 

 

 

 

 

『第三コーナー回った、ここで順位をもう一度。先頭はアドマイヤテンクウ、その後ろにログ。一番人気エイシンフラッシュは三番手、続いてフラガラッハ、タイムチェイサー、アースステップ三頭並び立てる。半馬身離れてブルーソックス、外からローグランド、トーセンマリーンもここ。この辺りからウッドストックじわりじわりと上がってきているか? 最後方はブルーグラス、フーガフューグとなっています』

 

『注目のウッドストックですが差し、追い込みが得意とのことで、勝負を仕掛けるならコーナー回ってすぐでしょうか』

 

 

 さてさて、どうするつもりですかね池谷殿は。そろそろ上がっていかないと追い付けないぜ?

 

 

「……いくぞ」

 

 

 あいよ。前は三頭で争ってるがどう行こうかしら……おっ、今回は内から? ちょっと膨らんでるから内を突けと。了解。

 

 

(げっ!?)

 

(じゃあの)

 

 

 追い抜こうとしてるのは、タイムチェイサーか。後ろから追い抜かれる気分はどうだ、追跡者さんよ。

 

 

 その次は、おっ? フラッシュくんじゃないか。折角だ、挨拶がてら後ろから圧掛けてやろ。

 

 

(はろー)

 

(…………!)

 

 

 ビックリした? ねえねえビックリした? あらやだそんな怖い目で睨まないでよーフラッシュくんこわーい。

 

 

(行かさねえ……)

 

(ほう?)

 

 

 鞍上の横田氏もこちらを牽制しているのか、少し内ラチに寄せてくる。内からは抜かせないと。

 

 そりゃあ内一杯なら走る距離が結果的に少なくて済むからな。誰だってそうする。俺だってそうする。

 

 

でもな。

 

 

 

『さあ最終コーナーを回る馬群、先頭は変わらずアドマイヤテンクウ、後ろにログと付けてエイシンフラッシュとウッドストックが三位争い! ウッドストック抜け出すかエイシンフラッシュ抑え込むか!?』

 

 

 多分池谷殿は最終コーナー出口で仕掛けるつもりだろう。以前にもやったからな。

 

 

「……いいか? ウッド」

 

 

 返事代わりにハミを噛んで伝える。嘶いて返事する余裕は流石にねぇ。競いあってる相手は化け物揃いだから、気を抜いたらあっという間に後ろに沈む。

 

 

 さあ、もうすぐだ……おっ、横田氏が鞭を入れた。フラッシュが一気に加速して先頭争いに突っ込んでいく。

 

 

「今だ!」

 

 

 こっちも鞭が入ったな! よっしゃやってやるぜ!

 

 

 

 

『さあ最後の直線だ! 中山の直線は短いぞ! 先頭はアドマイヤテンクウ、後ろからログを躱してエイシンフラッシュ! さらに出口から大外回ってウッドストック飛び出した! ログは4位に後退、後ろからタイムチェイサーとフラガラッハも上がってくるが!? 決着は先頭の三頭になるか!?』

 

 

 

 

(来たか!)

 

 

 大外から思いっきりブン回して、誰にも邪魔できないコースで一気に加速する。池谷殿と調教で何度も何度も練習したこの位置取り。

 

 斜め前でフラッシュがまた睨み付けてくる。テンクウとよろしくやっててくれ、俺はこのまま抜け出すから。

 

 

(させねえ!!)

 

(邪魔するな!!)

 

 

 おっと、流石に許しちゃくれねえか。テンクウもフラッシュもさらに伸びていく。特にテンクウは掛かってんじゃないかと思うほどの脚の回転。フラッシュも負けちゃいない。

 

 

 流石だ。どいつもこいつも化け物ばっかりだ。GⅢでこれなら、GⅠはどうなっちまうんだ? 今から武者震いしちまいそうだ。

 

 

 

 

『伸びる伸びるまだ伸びる! アドマイヤテンクウ必死に逃げるがエイシンフラッシュ躱して先頭! しかしウッドストックが!? ウッドストックが大外からかっ飛んできた! NIKKEI杯で魅せた剛脚が炸裂する!!』

 

 

 

 

(ウッドォォォォ!!)

 

(フラッシュゥゥゥゥ!!)

 

 

 互いに限界まで脚を回す。根元がちぎれそうだし、肺が酸素を求めて痛いし心臓が破裂しそうだ。

 

 だけど、だけどよ。それがどうした。

 

 

 

 こういうのを求めてたんだよ俺は!! 強者と鎬を削るデッドヒートをよ!!

 

 お前も、お前もそうだろフラッシュ!! キツいよなぁ!? 死にそうだよなあ!?

 

 だけどそれ以上に!!

 

 

 

((勝つのは俺だッ!!!!))

 

 

 

 

 ()()()()()()()()、仕方がねえんだよなぁ!!?

 

 

 

 

『壮絶なデッドヒート!! エイシンフラッシュか!? ウッドストックか!? 鞭が飛ぶ!! 後ろからテンクウもう一度迫るが!? 前は既に三馬身以上!! 芝を抉って駆け抜けるッ!! ウッドか!? フラッシュか!? どっちだ!? どっちだ!? 互いに譲らず二頭並んでゴールインッ!!!

 

 これがGⅢのレースで良いのでしょうか!? 白熱の死闘を繰り広げました二頭に、歓声が巻き起こっています!!』

 

『これは写真判定ですね……どっちが勝ってもおかしくありませんよ』

 

 

 

 

(ゼェッ……ゼェッ……!!)

 

 

 くっそ……しんどッ…………フラッシュめ、なんて奴だ。全力で走ってたのに引き離せなかった。

 

 ああくそ、肺が熱い……酸素が、酸素が足りねえ……!

 

 

(ハアッ……ハアッ……)

 

 

 横を見ると、俺と同じく疲労困憊といった様子のフラッシュ。目の焦点も合ってるんだかいないんだか分からん。

 

 

(や、やるじゃねえかウッド……)

 

(あんたもな…………)

 

(あーもうダメだ、しばらく走りたくねえ)

 

(同じく)

 

 

 この時ばかりは意見が一致する俺たち。あー池谷殿、そこ、そう首の後ろあたり擦ってて。なんとなく回復しそう。

 

 …………で、これ多分写真判定だよな? 俺から見てもフラッシュと同時にゴールしてたように見えたし。

 

 

(あー、これは俺の負けかなあ)

 

 

 横でフラッシュがそんなことを呟く。

 

 

(なんだ、弱気だな?)

 

(いや、なんとなく、勘だけどさ。俺、最後の最後で競り負けた気がするんだよなー)

 

(ほう)

 

 

 

 

『…………確定ランプが灯りました! 一着はウッドストック!! ウッドストックです!! 二着はエイシンフラッシュ、その差は……2cm!! ハナ差2cmの決着!! 大接戦です!!』

 

 

 

 

(ほらな)

 

(ホントだ)

 

 

 いい勘してるなフラッシュ。しかし2cmって、本当にギリッギリじゃねえか。こりゃ皐月賞までにもっと鍛え直す必要があるな。

 

 

(いやー負けた負けた! お前本当に強いなあ)

 

(あんたもめちゃくちゃ強かったよ。正直次は当たりたくないね)

 

(つれないこと言うなよーまた走ろうぜー)

 

(冗談だって、あーもう鼻を擦り付けなさんな)

 

 

 

 

『ウッドストックにエイシンフラッシュが鼻を擦り付けていますね』

 

『健闘を称え合っているんでしょうか、馬も競った後に友情が芽生えるのかもしれませんね』

 

『往年の少年漫画のような、思わず胸が熱くなる光景ですね。観客席からは惜しみ無い拍手が送られています』

 

 

 

 

「やっぱりモテるなウッド」

 

「ブルルッ(うるせーやい)」

 

 

 名馬に癖ありとは言うが、馬になってからこっちその言葉が身に染みるよ。どいつもこいつもホントキャラが濃いわ。俺? 今更つまんねーこと聞くなよ、元人間だぞ濃いに決まってるだろ。

 

 

「お前とならどこまでも走れる気がするよ」

 

「ヒヒッ(おう)」

 

 

 心配しなくても、どこまでも乗せていってやんよ。俺の鞍上はあんただけだ。

 

 

 そうだろ、相棒。

 

 

「今日のご褒美はリンゴだってさ」

 

「ヒヒッ! ブモッブモッ(やったぜ! さっさと帰るぞ相棒!)」

 

「あっこら慌てるなって! 前にもやったぞこれ!」



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厩舎のボスは誰?

 なんかえらい筆が乗った。


 

「そうだ、もっと踏み込め!」

 

「ブルルッ!(おう!)」

 

 

 1月ももうすぐ終わり。寒さは未だ厳しく、吐く息は真っ白。

 

 雪もはらはらと舞うそんな中、俺はひたすら坂路を駆け上がっていた。

 

 

 京成杯を走った後判明した俺の弱点。それはラストスパートで底をついた持久力。ゲーム風に言えば「スタミナが足りない」状態だ。

 

 俺の持ち味は調教師の兄ちゃん曰く、「自分である程度考えて走れる賢さと、最後の直線で活きる圧倒的な剛脚」だという。

 

 その脚を活かすために必要なのは、純粋なスピードと、最後の直線まで維持できるスタミナ。俺に足りないのは持久力だ。

 

 実際、京成杯は走り慣れた距離のレースであるにも関わらず、終わってみれば俺はヘトヘト、汗だらだらの脚ガックガクというなんとも情けない姿を晒した。

 

 考えられる原因としては、最後にエイシンフラッシュと競り合ったこと。それ以前までは競り合いにならずすぐに抜き去ってしまっていたので、競り合った経験がない。

 

 そこに根性とスタミナで勝負を仕掛けてきたフラッシュと叩き合いになったことで無意識に掛かってしまい、ペースが乱れ、スタミナを削られてしまった…………というのが兄ちゃんの見解だった。

 

 実際当たっていた。フラッシュと競り合いになったとき、俺は「俺についてくるやつがいる! 勝負できる奴がいる!」と嬉しくなっていた。

 

 あの、命までも削り取るような熾烈なデッドヒート。俺が望んでいた、強力なライバルとの根性比べ。とうとうそれを叶えてくれる馬と出会って、俺は嬉しさのあまり全力どころか力みすぎた走りをしてしまった。

 

 

 余計な力が入った走りは体力をより消耗させる。理性を飛ばした走りは端から見れば強いが、それはただの「暴走」であって、俺の純粋な実力ではない。

 

 

 兄ちゃんは言及しなかったが、俺に求められるのはスタミナだけではない。

 

 どんな状況でも自分のペースを崩さず走る『冷静さ』、そして兄ちゃんの言う剛脚を最大限活かせる『スピード』。馬である俺が馬なりに考えて出した結論。俺が俺自身に課した課題。

 

 

 例え上り坂だろうが重馬場だろうが変わらない脚を。どんな場面でも俯瞰して分析できる冷静さを。それを支える、強靭な心肺を。

 

 その一心で、坂路を駆け上がる。ただひたすら強く、速く。もっともっと、どこまでも走りたい。まだ見ぬライバルたちと鎬を削るレースをするために、自分の身体を徹底的にいじめ抜くんだ。

 

 

 

「あ、ウッド! 待て、ストップだ!」

 

「ブモッ?(へっ?)」

 

「もう坂路のノルマは終わったぞ! 休憩だ!」

 

「…………ヒヒッ(ウッス)」

 

 

 

 まあこうして気持ちが空回りしてるうちはまだまだですがね。集中しすぎてて気づかなかったわ。

 

 

 

 

(…………)

 

(…………)

 

 

 で、厩舎に戻る途中で見慣れないお馬さんにものっすごく睨まれているわけなんですけども。なに? 俺自分でも気づかん間に恨み買ってるの?

 

 

 多分違う厩舎の馬なんだろう。今まで会わなかったのは単純に時間が被らなかったからかな。

 

 それにしたってすごい形相ですよあなた、視線でダメージ入るならすでに致死量じゃありませんかね。

 

 

 

 

(…………オイ)

 

(あ、はいなんでしょう)

 

(初対面の相手にはまず挨拶だろうが……)

 

 

 どう接したものか悩んでるうちに向こうから話しかけられたと思ったら、ものすごいドスの効いた声で正論言われてしまった。それはまあそうなんですけどそんな怒ること?

 

 

(ウッドストックだ。あんたは?)

 

(トーセンジョーダン)

 

 

 トーセンジョーダン? あ、見たことあるぞ! ゴールドシップとクッソ仲悪くて会うたびに絡まれてたあの馬か!

 

 そういや栗東トレセンのボス馬だったってなんかで見たけど、そうかそうか今まさにボス馬全盛期か!

 

 確か自分で喧嘩売ることはない、みたいな話も聞いた気がするんだよな。今回は挨拶がなかったからボスとして怒ってるわけね。

 

 

(ジョーダン、まずは挨拶しなかった非礼を謝る。次のレースのことで頭が一杯だったんだ)

 

(……まあ、俺も似た経験はある。そこまでうるさく言うつもりはねえ)

 

(あ、嘘でも「あんたからの熱い視線でドキドキして言葉に詰まった」って言えばよかったかな)

 

(…………謝るのか喧嘩売るのかどっちかにしろ)

 

(いや悪い、こういうギスギスしたのは苦手なんだ。目を瞑ってくれると助かる)

 

(…………お前おかしな奴だな)

 

 

 まあ馬としておかしいのは自覚してるが、性格はそんなに悪くないはずだぞ。これでも同じ厩舎の馬とはそれなりに仲良くやってんだ。

 

 オルフェ? 愛ゆえの厳しさだよ。

 

 

(別に喧嘩売るとかもしないし、ボス云々にも興味はねえんだ。ただ仲良くしてくれると嬉しいなって)

 

(今までいろんな奴を見てきたが、お前みたいなことを言う馬は居なかったな)

 

(まあ、アンタを見てビビる奴は多いだろうな)

 

 

 なにしろオーラというか圧がすごい。ボスとしての風格というか、俺とジョーダンどっちがボスっぽい? って十人に聞いたら十二人くらいがジョーダンって答えるぐらい。

 

 俺は別にボス争いとか興味はないし、やりたい奴は勝手にやってくれ、ぐらいの認識でしかない。せっかく同じ競走馬なんだから、レース以外のときぐらい和気藹々としてても良いじゃない、ぐらいの価値観だからな俺は。

 

 

(俺にとっちゃ、あんたは強面なだけで普通の馬だよ、ジョーダン)

 

(……なに?)

 

(好きでボスやってます、って面構えでもないしな。あんたにだってボス云々抜きで仲の良い奴はいるだろ? その仲に俺も入れてくれないかなって)

 

(…………)

 

(嫌なら良いんだ、無理にとは言わない)

 

(…………ハァ)

 

 

 ちょっとちょっと、なにその溜め息は。鋼通り越してヒヒイロカネの心を持つウッドさんでもちょっと傷つきますことよ?

 

 

(…………ウッドストックだったか)

 

(ん? ああ)

 

(…………機会があれば顔を見せに来い。雑談ぐらいならしてやる)

 

(……マジで!? 行く行く絶対近いうちに顔見せるわ! 俺の馬的に滑らない話が火を噴くぜ!?)

 

(……普通は脅しって思われるんだがな。お前本当に変な奴だな)

 

 

 なんかジョーダンが小声で言ってるけど別にいいや! あの栗東の大物ボスと友達とか孫の代まで自慢できるぜ! いや俺って今はお馬さんだから下手すると玄孫にも自慢してるか?

 

 

(よろしくなジョーダーン!)

 

(あっ、おいやめろすり寄るんじゃねえ! お前俺がボスって思ってないだろ!?)

 

 

 後でオルフェに自慢してやろっと。

 

 

 

 

「……………………」

 

「池谷さん、どうしました? うどん食いながら難しい顔して」

 

「…………ウッドがトーセンジョーダン号と一瞬で仲良くなりました」

 

「…………トーセンジョーダン号と? 舎弟になったということで?」

 

「そのわりにはなんだか距離が近くて、どちらかというと友達と言った方が近いような……」

 

「…………アイツ本当になんなんだ? 栗東の大ボスだぞ」

 

「俺、最近ウッドストックが大物なのか底抜けのバカなのか解らなくなってきました」

 

「癖馬乗りの池谷さんが言うなら相当ですね…………」

 

 

 

 

 

 後にオルフェにこの事を自慢したら、「兄貴寝ぼけて夢でも見たの?」とか宣いやがったので顔面に尻尾をぶち当てておいた。




 私もこの馬のことが解らなくなってきました。


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Side pretty Ep.00 ー『あたし』はウッドストックー

 しばらくウマ娘パートは書かないつもりだったんですが筆が乗ってしまったので仕方ありません。


(どうして)

 

 

 どうも皆さん、なぜか競走馬になってしまった元人間のウッドストックです。今日も今日とて大変よいお天気。雲一つない、抜けるような青空に燦然と輝く太陽が眩しいです。

 

 

(どうして)

 

 

 そんな俺が今どうしているかというと、現在日の光差し込む実家のベッドの上でごろ寝しております。

 

 え? 実家のベッドって言うけど厩舎の寝藁のことだろって? いやいや本来の用途で使われる正真正銘の人間用のベッドでございますよ。

 

 馬なのにベッドで寝れるのかって? いやいや、実は馬ではないんだな今の俺。人間だったころと同じように二足歩行で手も使えて、肉も魚も問題なく食せますよ?

 

 

 

 

(ウマ娘ってなんだよ…………)

 

 

 

 純粋な意味での人間ではないんですがね。人間の身体に馬の耳と尻尾が付いたような、いわゆる「擬人化」のような形で馬から生まれ変わってました。そんでさっき前世と前前世を思い出しました。

 

 なんなん? ウマ娘ってなに?

 

 

 ああいや待て、そういや俺に競馬を教えた先輩と上司がウマ娘だなんだって言ってたような覚えがあるぞ? 競馬談義の合間にチラッと出た程度だから完全に記憶から抜けてたが。

 

 なるほどこれがウマ娘ちゃんですか? 確かにウマで女の子で、読んで字のごとくウマ娘と。ほほーなるほど、確かにこりゃあ分かりやすいなってやかましいわ。なんで普通に人間にしてくれなかったんだよ。もう馬関係のあれやこれやはしばらく腹一杯だよ。

 

 しかも女の子だぞ? 俺人間時代も馬時代も男だったんですけど? 牡馬も牝馬も関係なしかよ、生まれ変わったら訳あって女の子ってか、最高に笑えねえ冗談だぜこんちくしょう。

 

 

「はあ…………」

 

 

 声に出して溜め息でも吐きゃあ自分の物とは思えん高い声だしよぉ。いかんちょっと泣けてきた。

 

 なんなの? 神様が居るかは知らんが、居たとして一人の人間の人生をこんなに弄んで何がしたいの?

 

 何かしら意味があるのか? それとも暇潰しか? はたまた愉悦に浸りたいがだけに俺をこんな目に遭わせてるのか? どういう理由にせよ地獄に堕ちても構わんから一発顔面ぶん殴らせてくれ。

 

 

 

 

 ……でも、今のこの姿にほぼ違和感がない自分が居るのも確かなんだよなあ。魂が過去を思い出したとしても、この身体でそれなりの年月を過ごしてきたから馴染んでしまったのかもしれない。

 

 

「よいしょ」

 

 

 ベッドから起き上がり、部屋を見回す。そこまで広くはないが綺麗に整頓されている。自分がキレイ好きなのが半分、今世の母上の腕が半分。手が届かないところは母上の独壇場だ。

 

 勉強机の横には、6歳の誕生日に買って貰ったギター。当時は何故か解らなかったが、漠然とギターを弾いてみたいという欲求が出てきて、父上に無理をお願いして買って貰ったものだ。

 

 今なら解る。人間の男だった時にかじった事と、音楽大好きだった事が無意識に影響したんだろう。今でも大事に手入れして、時間を見つけては練習している。

 

 

 部屋の入り口には、壁に掛けられた大きな姿見。立ち上がって姿見の前に立つと、映るのは小学生ぐらいのかわいらしい女の子。記憶では今は11歳。

 

 どちらかというと美人系の顔立ちだろうか。切れ長のつり目と右曲がりの流星が、年齢の割に高めの身長と相まって、どこか大人っぽさを感じさせる。

 

 

「…………はぁ」

 

 

 これが今の俺かあ……いや不細工に生まれるよりは全然いいし、事実人間の頃よりも顔立ちは整ってはいるんだが、如何せん女の子なんだよなあ……。

 

 

 なんだっけ、確かこの世界だとJRAならぬURAっていう組織があって、そこが俺の記憶にある競馬に相当する「トゥインクルシリーズ」っていうウマ娘レースがあるんだよな。

 

 こんな姿に生まれ変わったっつーことは、アレか? 四足歩行の時にも思い浮かんだ、「この姿になった意味」を模索する系のアレなのか?

 

 つまりトレセン学園に行けと? そこで走れと? 己が存在する意義を走って走って見つけ出せと?

 

 

「……………………だるいけどやるかあ」

 

 

 こうしてウマ娘として生まれ変わっちまったからには、やっぱり俺の想像の及ばんところで何かしらの意味があるんだろう。

 

 そのためには、とりあえず勉強だな。トレセン学園ってそれなりに偏差値高いらしいし、今の学力だとちょっと心許ないし。

 

 あ、その前に母上に許可を貰うのが先か。こんな大事なこと子供の俺だけで完結して良い問題じゃないしな。

 

 

 

 

 

 

「ポケちゃんのやりたいようにやんなさい」

 

「はあ」

 

 

 秒でOKが出た。

 

 

 いやいや母上、もうちょっときちんと話し合おうよ。トレセンだよ? レースだよ? 子供の将来を左右する超重要事項だよ? 

 

 一歩間違えたら放任主義通り越して子供に興味ない親みたいな感じになるじゃんもっと一杯お話ししようよ。あといい加減ポケちゃんって呼ぶのやめて。

 

 

「子供の行く道は親が決めるものじゃないからね。ポケちゃんがやりたい、やってみたいと思った夢が、親である私の夢よ」

 

「お母さん……」

 

 

 前世の母上もまあまあ豪快な性格だったけど、今世の母上はなんというかそれに輪を掛けて肝っ玉が据わっている。

 

 母上自身はレースに出てた訳じゃなく、普通に就職して普通に恋愛結婚した普通のウマ娘だ。走るよりもやりたい夢があったとかなんとか言ってたけど深くは聞かなかった。

 

 そんな人だけど、競争の世界は甘くないってことは重々承知だろう。それなのに娘をこんな気持ちよく送り出せるのか。

 

 

「…………響子」

 

 

 母上が俺の名前を優しく呼ぶ。競走馬の名前でも、幼名でもない、今世での俺の本名を。

 

 

「あなたが何を思ってレースに出たいと思ったのか。何を目標にしているのか。お母さん深くは聞かないわ。その夢を真に理解できるのはきっと、あなた自身しかいないでしょうから」

 

「…………」

 

「……今までずっと無気力で、将来の夢もなにもないなんて言ってた子が。初めてやりたいことを言ってくれたんですもの。嬉しくないわけないじゃない」

 

 

 母上は、ただ優しく、柔和に笑った。心の底から、本当に嬉しそうに。

 

 ああ、放任主義だなんて、そんなわけがない。この人は、何よりも自分の子供の幸せを一心に願っている。

 

 どこまでも、この人は「母」なんだ。

 

 

「…………ウッドストック」

 

「……えっ?」

 

「さっき()()()()()の。あたしの名前」

 

 

 ウマ娘は、遠いどこかの世界に生きた生物の魂を宿して産まれてくると言われ、その自身の魂に刻まれた名前を、ある日突然雷に打たれたように思い出すのだという。

 

 俺の場合前世と前前世の記憶つきだからちょっと特殊だけど、こうして実際に思い出したんだからまあ正解と言って差し支えないだろう。

 

 

「そう、ウッドストック…………良い名前ね」

 

「うん」

 

「……やるなら悔いは残さないように。大人になって、「もっとああしていれば、こうしていれば」なんて悩まないように、胸張って全力でやったんだって自慢できるようになんなさい」

 

「……うん」

 

 

 母上が俺の頭を優しく撫でる。

 

 その顔に浮かんだ笑みは、どこまでも優しくて……少し、寂しそうでもあって。

 

 そういえば、最初は厩務員のおっちゃんの笑顔が見たくて頑張ったんだよなあ、なんて四足歩行時代の事を思い出したりして。

 

 今世でも、頑張ろうって。今度は、母上が笑顔で、自慢の娘だって言ってくれるように頑張ろうって思えた。

 

 

 

 

「…………とりあえず勉強ね。あそこかなり偏差値高いから死ぬ気で頑張んないと受からないわよ」

 

「はい…………」

 

 

 問題は俺自身の学力なんですけどね。まさか精神年齢おっさんになってから勉強に悩むとは思いもしなかったよ。

 

 

 

 

 

 

 それから数年が経ち、俺…………いや、()()()は、中央トレセン学園の校舎の前に立っていた。

 

 もう、すんごい大変だった。勉強は一度通った道だからなんとかなるかと思ったら全っ然覚えてないし、試験当日になって道に迷うし。受験票忘れなかっただけ偉いと思いたい。

 

 

 いやーしかしホントでけえなこの学園。JRAは公営、つまり国が資金出してるから分かるんだが、URAはどこから資金捻出してるんだろうな。

 

 ウマ娘レースは賭博禁止とされてはいるけど、それじゃあチケット代とグッズ代で諸々の運用費賄ってることになる。学費も食堂も無料とか絶対金足りないだろ。ただでさえよく食うウマ娘が2000人は集まってるんだぞ。

 

 

 ……一生徒のあたしが考えても仕方ないか。この事は深く考えないようにしよう。

 

 

「…………さて、行くか」

 

 

 今日からあたしは、トレセン学園の生徒として、トゥインクルシリーズを走る。

 

 なんの因果か知らないが、ウマ娘なんてものになっちまったからには、その意味を模索してみるのも一興だ。なあに、四足歩行の時に一回通った道だ、探すことには慣れてるさ。

 

 

 

 

「…………なあ、君!」

 

「ん?」

 

「突然すまない、少しトモを触らせてくれないか!?」

 

「ナンパならもっと発言考えた方がいいぞ」

 

 

 少なくともこの変質者紛いの男に脚を触らせるのが運命、なんてのは御免だが。

 

 

 

 

 これが、あたしと、チーム「スピカ」のトレーナーとの出会い。

 

 この男と共にレースに臨むことになるとは、この時のあたしは思っちゃいなかった。

 

 

 




 沖Tってウマ娘に蹴られたい疑惑ありますよね。
 正直私もカレンチャンにゴミを見るような目つきで踏まれたいです。


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幕間3~とある掲示板のスレその2~

ご感想、誤字報告ありがとうございます。
皆さんが沖Tをどう思ってるのか良く分かります。

追記
文章の一部に違和感を感じたので修正しました


【競走馬】ウッドストックについて語るスレ【3スレ目】

 

 

1:芝駆ける名無し ID:rSRUY3wU0

 

こちらは競走馬ウッドストックについて語るスレです

 

荒らし行為及びそれに反応する事はご遠慮願います

 

 

 

2:芝駆ける名無し ID:9dYVn0BLi

 

立て乙やで

 

3:芝駆ける名無し ID:ayjg+ixAJ

 

このスレも3スレ目か

早いもんやな

 

4:芝駆ける名無し ID:ifrYyGTRI

 

ウッドくんの可愛さに気づき始めた馬ビギナーが集まり出したからな

 

5:芝駆ける名無し ID:C3/LcAI4h

 

まあしゃーないウッドくんやし

 

6:芝駆ける名無し ID:oMcSZAvjB

 

いろんな引退馬動画Wetubeとかsnsで漁ってるけど

やっぱ人間に愛想の良い馬ってのはどうしたって人気出るもんや

 

7:芝駆ける名無し ID:mpBAWt0R0

 

種牡馬って普通気性荒くなるから一般人近づけんのに

普通にふれあいコーナーやってたウッド色々とおかしいよ

 

8:芝駆ける名無し ID:Mk2GP9RZu

 

あいつに馬の常識を求める方が間違っとる

 

9:芝駆ける名無し ID:zXBDO/rar

 

音楽聴かせたらヘドバンする奴やぞ今更よ

 

10:芝駆ける名無し ID:rHfrbfGyY

 

ほんとそこが一番の謎

なんでアイツヘドバンするんだ

 

11:芝駆ける名無し ID:uCKLq9n9s

 

ロックを愛してるからや

 

12:芝駆ける名無し ID:Cfi+rwATX

 

答えになってないけど納得感あって草

 

13:芝駆ける名無し ID:/gwzEle3M

 

そもそもなんでヘドバンし始めたんだ

きっかけがなきゃ馬にロック聴かせるなんて思い付かんぞ

 

14:芝駆ける名無し ID:PCr4V68Pl

 

デビュー前の放牧で見学客がケータイをマナーモードにしてなかった

鳴り出した着メロが偶然ハードロックだった

ウッド、覚醒してヘドバン開始

厩務員が面白がって色々聴かせた

音楽大好きになった。あとオーナーに怒られた

一連の事件を聞いた馬主が「ウッドストック」と名付けた

 

15:芝駆ける名無し ID:KABkB5nZU

 

 

16:芝駆ける名無し ID:Jtgwe1h3F

 

厩務員なにしてんだよww

 

17:芝駆ける名無し ID:xGbhyhPsg

 

見学客もマナー違反なんだけどそれがなかったら今こうして俺らが話の種にしてない可能性もあるからなあ

 

18:芝駆ける名無し ID:aA5s6Q0RN

 

実際ウッドにとってはアレが運命を決めた瞬間やろなあ

 

19:芝駆ける名無し ID:H+08VNvpO

 

結果論だが本人が楽しいならヨシ!

 

20:芝駆ける名無し ID:TNjy3Iymm

 

実際めちゃくちゃ楽しんでるよな音楽

 

21:芝駆ける名無し ID:s/HzFnY42

 

多分下手に知識付けた人間より純粋に楽しんでる

 

22:芝駆ける名無し ID:8W+ZPN60c

 

疑問なんだがあれ厩舎で聴かせようってなった時どうしてんだ?

他の馬がビビるのでは?

 

23:芝駆ける名無し ID:ZxyI4Xx0f

 

ヘッドホン付けて聴いてるぞ

ロック聴かせてもヘドバンせず大人しくしてる

 

24:芝駆ける名無し ID:ZPMDexKc/

 

時と場合を弁えてるのか……

 

25:芝駆ける名無し ID:DLpcCSBIt

 

ウッドくんは本当に頭が良いなあ

 

26:芝駆ける名無し ID:kozjMbak1

 

ちょっと待った、馬の耳でヘッドホンって付けられるのか?

骨伝導にしたって使いにくくね?

 

27:芝駆ける名無し ID:PZs+gz5eh

 

馬の頭と耳に合わせたウッド専用のヘッドホンがオーディオメーカーからプレゼントされたんやで

特注一点モノや

 

28:芝駆ける名無し ID:lLpwt797n

 

マジかすげえなウッド

 

29:芝駆ける名無し ID:7SyECJsr2

 

それ実質ウッドストックしか使わないからプレミア付くの確実じゃん

他の馬は音楽なんて聴かねえしな

 

30:芝駆ける名無し ID:4ChduUlCV

 

せやで

だからウッドが使い終わったらJRAで展示されることがもう決まっとるんや

 

31:芝駆ける名無し ID:gI8l+LubO

 

馬用ヘッドホンとか世界で一つだけの珍品やな

そらコレクターには喉から手が出るほど欲しいし寄贈された方がよっぽどええわ

 

32:芝駆ける名無し ID:gYG2tGofR

 

ゴタゴタで壊れましたーってなるより全然良いわ

JRAも大事に扱うやろ

 

33:芝駆ける名無し ID:uGejpLUGT

 

ちなみに昔はウォークマンとiPod使ってたけど

今は馬房の壁にiPad掛けられててウッドがタッチペン使って自分で曲選んでるやで

ヘッドホンだけは厩務員に付けてもらわんとあかんけど

 

34:芝駆ける名無し ID:5BNr1IbJL

 

いやいやいくらなんでも頭良すぎちゃうか?

曲選ぶってつまりお気に入りの曲とか曲名覚えとるってことやろ?

つまり文字理解しとるってことやんけ

 

35:芝駆ける名無し ID:xCmJbyUxe

 

ジャケットも見れるやろしそっちで覚えとる可能性もあるぞ、シングルで購入しとる場合やけど

アルバムでまとめて購入してるとかだったらマジで文字理解してるかもしれん

 

36:芝駆ける名無し ID:RU8oKBM1y

 

ウッドくんは多分マジで文字も読めるぞ

 

37:芝駆ける名無し ID:oxhWWY7Y2

 

算数も出来るから文字理解しててもおかしくない

 

38:芝駆ける名無し ID:MIGrNE5VJ

 

ちょっと待った算数出来るってなに?

 

39:芝駆ける名無し ID:EGP2phnwj

 

Wetubeにアップされとる動画見てみろ

現役時代に地方テレビ局の取材で四則演算してるシーンがあるぞ

厩務員曰く「今初めてやった」らしいけどそれはさすがに眉唾って言われてる

 

40:芝駆ける名無し ID:b5404Wc2M

 

ええ…………もはや妖怪やんけ

それか中身ガチで人間やん

 

41:芝駆ける名無し ID:PTZKoxtyT

 

実際そのシーンは公開されたら色々問題になるからってオーナー馬主がカットするよう頼み込んだらしい

で厩務員はめっちゃ怒られた

 

42:芝駆ける名無し ID:uhJf8m5TQ

 

残当

 

43:芝駆ける名無し ID:96wLPxPEi

 

見てきたけどいやおっちゃんなにわろてんねん

楽観的っていうか大雑把というか

 

44:芝駆ける名無し ID:N2PiB1dFO

 

しかもこれウッドも戸惑ってないか?

なんか問題言われて一瞬固まって、「えっ、答えろと?」って言いたげな顔してるように見える

 

45:芝駆ける名無し ID:iDWZ6fLao

 

反応がマジで人間くさいわ

しかもそのあと「いや分かるけどどう答え伝えんねん」って周りキョロキョロしてる

 

46:芝駆ける名無し ID:K57zIoDb+

 

おずおずと脚で壁叩いてるの可愛い

 

47:芝駆ける名無し ID:JHVpMektl

 

割り算も!?引き算じゃなくて!?

 

48:芝駆ける名無し ID:9jLDNfYNq

 

これ絶対仕込んどったやろって思ったけど

それならウッドの反応が不自然やな

 

49:芝駆ける名無し ID:88INcGOL8

 

マジで困惑してるよな

しかもそのあと「これヤバイんじゃねえの?」って不安げにおっちゃん見つめてる気がするんだが

 

50:芝駆ける名無し ID:YAiJC28tQ

 

馬ですらやらかしたことの重大さが分かるのにおっちゃんときたら……

 

51:芝駆ける名無し ID:lLI8R6xH2

 

そら怒られますわ

こんなん当時に放映されとったら事件やで

 

52:芝駆ける名無し ID:JK0QT3Pjx

 

今の姿見るにカットしてもらったのは英断やったな

オーナー馬主有能

 

53:芝駆ける名無し ID:hy/kGpnka

 

でもウッドもそんなおっちゃん大好きやしな

基本人間に愛想いいけどおっちゃんにだけ甘えかたが違う

 

54:芝駆ける名無し ID:l9eVtcUwU

 

馬房の掃除してると隅っこで大人しくしてるのに

終わった途端顔なめたり服引っ張って遊びに誘ったりする

 

55:芝駆ける名無し ID:s86WrzSGM

 

なんだそれかわいい

 

56:芝駆ける名無し ID:xKwl6ZyI8

 

想像したらかわいすぎて悶絶した

 

57:芝駆ける名無し ID:a6ytLvD3p

 

しかも仕事自体は邪魔してないんだよな……

 

58:芝駆ける名無し ID:8oriCWFow

 

「あっ、部屋きれいにしてくれるんやな、大人しくしとこ」

「終わった?終わったよな?じゃあ遊ぼうぜ!」

 

かわいい

 

59:芝駆ける名無し ID:n+N3k8ACc

 

クッソかわいい

 

60:芝駆ける名無し ID:1uPSOMYR9

 

子供にも優しい

座って目線合わせたりする

 

61:芝駆ける名無し ID:YDQ9YAdUT

 

友達もライバルも多いしな

 

62:芝駆ける名無し ID:aKsLjCo6i

 

そんないるの?

 

63:芝駆ける名無し ID:8LrvOOUPY

 

オルフェーヴル→弟、いつも一緒

ジョーダン→ボス同士だけど仲良し

ヴィクトワールピサ→超仲良し

エイシンフラッシュ→めっちゃ仲良し

シロイアレ→なんだかんだ仲良し

ジャスタウェイ→芦毛じゃないけど仲良し

これでも一部

 

64:芝駆ける名無し ID:PGHYXHHJ6

 

少年漫画の主人公みたいなことしてんな

 

65:芝駆ける名無し ID:nswvOiClE

 

戦った後に芽生えた友情多くて草

 

66:芝駆ける名無し ID:nFL0emD8V

 

ガチの陽キャやん

ドトウさんレベルや

 

67:芝駆ける名無し ID:NIIPbLU1n

 

ドトウも穏やかでどこでも友達作れる陽キャやけど

ウッドはもう友達多いってレベルじゃない

 

68:芝駆ける名無し ID:lFJ8PFFoP

 

強そうな奴は大体友達な馬

 

69:芝駆ける名無し ID:7l8Sn/CJr

 

強キャラ過ぎない?

 

70:芝駆ける名無し ID:1BCO94zTJ

 

なお子供の頃はいつもボーッと空を見て何を考えてるか分からないので幼名は「ポケちゃん」

 

71:芝駆ける名無し ID:Cq5A98BZ5

 

ポケちゃんwwwwwww

 

72:芝駆ける名無し ID:SNArOye5h

 

ポケちゃんかわいい

 

73:芝駆ける名無し ID:c8TPWg3jB

 

なにそれかわいい

 

74:芝駆ける名無し ID:RWVMxmD1D

 

厩務員のおっちゃん未だに幼名で呼ぶらしい

 

75:芝駆ける名無し ID:aAUX1GB2G

 

馬界のロックスターがポケちゃんとかギャップすげえ

 

76:芝駆ける名無し ID:xDRqZUZAi

 

ちなみにヘドバンし過ぎて柵に顎ぶつけて怪我したこともある

ぶつけた後の悶絶っぷりがかわいそうだけどめちゃくちゃ笑える

 

77:芝駆ける名無し ID:mFJqosGtf

 

見てきたけどマヌケすぎて草

 

78:芝駆ける名無し ID:YXTsDCji5

 

顎打った後ブモブモ言いながらゴロンゴロンするのが完全にタンスの角に足打った時の俺でメチャクチャ笑う

 

79:芝駆ける名無し ID:UOnoUgNhU

 

なおその後しばらくヘドバンしないように音楽聴かせないようにしたら明らかに調子落ちたので仕方なく聴かせた

流石に禁止が効いたのかヘドバンはウッドがしばらく自重したらしい

 

80:芝駆ける名無し ID:4XjQHkXTs

 

聞けば聞くほど面白いエピソード出てきてホンマ飽きんわ

やっぱこの馬面白い

 

 




まーた勢いに任せて設定生やしてるよコイツ(呆れ)


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GⅡ、再会

すごい難産でした。


 

 

 雨か。この時期には少し堪えるな。

 

 自分に降り掛かる冷たい雫を浴びながら、これから温まるからちょうど良いかと思い直す。

 

 

 京成杯からしばらく経った今日。いよいよGⅡ『弥生賞』へ挑む。

 

 来る皐月賞に向けて、ひたすらに身体を鍛えた。弱点だったスタミナとパワーを鍛えるため、坂路とプール調教がメインになった。

 

 それをこなしていくたび、より純粋なスピードへと直結していくのが分かって、楽しくなった。楽しいからもっと調教に身が入り、さらに速くなり……。

 

 結果、自分でも満足いく素晴らしい仕上がりになりましたわ。見てこのパッツンパッツンのハムストリング! ケツから腿にかけてのぶっとさ! 水も滴る艶々の毛並み!! あちこちの牝馬から人間の嬢ちゃんまでキャーキャー黄色い悲鳴が聞こえてくるようだ! 幻聴だけど。

 

 だが手に入れたこの強さと代償に、併せ馬ではより馬体がでかくなった俺に相手が萎縮してしまい、まともに付き合える奴がほぼいなくなってしまった。例外はオルフェとジョーダンぐらい。

 

 そのため、競り合いになった際無意識に掛かってしまう癖は対策しきれなかった。オルフェとジョーダン相手だと余計に力入ってしまうから上手く出来なかったし。

 

 どうも見知った相手というか、仲良くなった奴とだと余計に負けたくない気持ちが出て力んでしまうらしい。自分のことなのにコントロールが効かないっていうのは嫌になってしまうな。

 

 

 その上初めての雨天レース。纏わりつくような芝の感触に辟易してしまう。いやもうホント馬の立場になって分かったわ、わざわざ雨ん中レースとかしたくねえわ人間鬼か?

 

 どうすんのこれ、一歩踏み出すたびにぬるぐちょの芝の感触が気色悪いし、しかも意外と脚が沈むから引き抜こうとするのも大変だし。こんなコンディション最悪の場所で走れって? マジでふざけんじゃないわよ馬だからって莫迦にしてんじゃないわよ、まあ走れって言われたら走りますけどね仕事ですから。

 

 

「寒いなあ」

 

「ヒィン(せやなあ)」

 

 

 大変なのは俺ら馬だけじゃないけど。そら騎手だってこんな雨のなか走りたくねえよなあ。どうしたって薄着になっちゃうから、気温も相まってクッソ寒いだろうし。

 

 はやく終わらせて帰ろう。池谷殿も寒さでブルブル震えてるのが鞍越しに伝わってくる。俺の相棒が風邪でも引いたらJRAはどう責任とってくれるのかね。

 

 

 ……ともかく初めての重馬場なわけだが、うん、いつもよりぬるぐちょな芝に脚突っ込んでぬるぐちょな芝から脚引っこ抜かなきゃならんのだ。脚をとられないよう注意していこう。しょーもない怪我するよりは流した方がいい。

 

 

 さーて、返し馬再開…………ん? あそこにいるのは……。

 

 んん?

 

 

 んんん!?

 

 

 

 

 

 

『前日から降り続きました冷たい雨。太陽を望む声も空しく、灰色の分厚い雲が中山の芝を重く湿らせます。馬には厳しい重馬場、脚に纏わりつく泥のような芝をどう攻略するか? クラシックレースの前哨戦、狭き門。ここを勝ち抜く馬は一体どの馬か? GⅡ芝2000m『報知杯弥生賞』、13頭立てです』

 

『今回注目なのはやはりヴィクトワールピサとウッドストックの再戦でしょうか。ピサが前回の雪辱を晴らすのか、それともウッドが無敗記録を更新するのか。注目のレース…………なんですが』

 

 

 

 

(ピサ~~~~~~!!!!)

 

(おい……)

 

(久しぶりじゃねーかピサ!! 会いたかったぜピサ!! 元気だったかピサ!! ちょっと痩せたかピサ!? 飯食ってるかピサ!?)

 

(おい、ウッド……)

 

(んほおぉ~~~~ピサの鬣モフモフであったかいナリィ~~~~)

 

(怒るぞ)

 

(ごめん)

 

 

 

 

『え~…………ウッドストックがヴィクトワールピサに……なんでしょうね、勢い良く駆けていったと思ったら激しく馬体を擦り付けていますね』

 

『久し振りに会って嬉しいんでしょうかね……? ピサの方は若干引いている、ようにも見えますが……』

 

『あー騎手もこれには双方苦笑いですね。まあ馬同士仲が良いに越したことはないですけども、今回は競争相手、ライバルですからね。レースに影響しないことを祈ります』

 

 

 

 

 いかんいかん、久々にピサと会ったもんだからテンション上がってしまった。落ち着け俺。

 

 

(……お前、そんなキャラだったか?)

 

(いや嬉しくてつい)

 

(……牡に求愛されたくない)

 

(失敬だな親愛だよ)

 

(礼儀ありきだろ……)

 

 

 む、ピサの言う通りだ。親しき仲にもって言うもんな、確かにこれは俺が悪い。反省。

 

 

(……それはそれとして、ウッド)

 

(ん? おう)

 

(…………今日はリベンジさせてもらう)

 

 

 嗚呼、このピサの圧を感じる視線、久々だ。

 

 そうだ、お前はそうでなくちゃな。

 

 無愛想だけどクールな眼。その眼の奥で「勝利」を渇望する炎が燃えている。それでこそお前だ、ピサ。

 

 

(かかってこい)

 

 

 だがタダで勝ちを譲る俺じゃねえ。人間から馬なんて数奇な生まれ方したなあと自分でも思うが、それでも競走馬として半年以上走ってきた。未だに無敗なのも相まってそれなりに勝利への欲求もプライドもある。

 

 弥生賞。クラシック三冠へ向けて、ここでさらに勝ちを重ねておきたい。

 

 

 お前には負けないぞピサ。

 

 

 

 

 

『ベストブルーム、スマートジェネシス揃ってコーナーを回ります。半馬身離れてコスモヘレノス、内にマコトヴォイジャー、そのすぐ後ろにアドマイヤテンクウ。少し開きまして外にヴィクトワールピサ、内にウッドストック、間に挟まれるアースステップちょっと落ち着かないか? ダイワバーバリアンその後ろ、殿でダイワファルコン、ミッションモード、ビッグバンが連なっています』

 

 

 

 

 ううむピサの奴め、外側にピッタリ付いていやがる。俺が大外からぶっちぎるのを牽制して、内に留めとくつもりか?

 

 前は開いていない、というほどでもないが、抜け出すのは容易じゃねえ。

 

 おまけにこの泥もかくやと言った芝が重苦しいこと! 前を走る馬どもが散々に荒らしてくれたせいで走りにくい。うっかり脚を滑らせでもしたら大惨事だ。俺だけじゃなく背中の池谷殿も無事では済まない。

 

 こりゃ厳しいぞ。足元に気を配りつつ抜け出すタイミングを伺わなくてはならん。

 

 

 池谷殿は……………絞っている手綱を弛める様子はない。まだ仕掛けるつもりはないようだ。

 

 にしたってなあ……このままだと本当に抜け出せなくなるぞ。おまけに……。

 

 

(ひえええ! 内も外も怖い! やべーやついて怖い!!)

 

 

 俺とピサの間に挟まれてるアースステップくんがどうにも落ち着かない様子。

 

 まあこんなガチムチの牡馬二頭に挟まれちゃ焦るのも仕方ないけど、頼むからビビって斜行してぶつかるとかは勘弁してくれよ。パニックになった奴ほど何するか分からないからな。

 

 特に内ラチにいる俺にぶつかられると、池谷殿が弾かれてラチに激突する可能性もある。そうなったら最悪内臓破裂も有り得るぞ。頼むから落ち着いてくれよ。

 

 

 

 

 

『さあヴィクトワールピサ動いた! 先頭集団に向かって突き進む! ウッドストックまだ抑えたままだがどこで仕掛けるのか!? 間もなく最終コーナーに向かいます!』

 

 

 

 

 

 おいおい悠長にしてたらピサが行っちまったぞ。こっちはアースステップくんが邪魔で外側に行けねえってのに。

 

 これもピサ、というか鞍上の作戦か? いや流石にアースくんがこの位置で挟まれていたのは偶然だと思いたいが。

 

 で、どうすんだい池谷殿。このままだと着争いにも入れないぜ?

 

 

「…………ここだ」

 

 

 池谷殿が手綱を弛めたが、同時に内側へ手綱を引っ張った。おいおいこのまま内側から仕掛けるのか!? そんなことしたって前は馬群が…………。

 

 

 ()()()()()

 

 

 

 

 

『さあコーナーを回る! 前は変わらずベストブルームとスマートジェネシスが争っている! 三番手は変わってアドマイヤテンクウ、その後ろでマコトヴォイジャーコスモヘレノスの二頭だが! ヴィクトワールピサ上がってくる! ここからぐんぐんと上がってくる仕掛けてきた! 便乗とばかりに後ろへピッタリくっつくアースステップ! ウッドストックは遅れたか!?

 

 

 

 いや! 来ている! ウッドストック来ているぞ! なんと他が避けた内ラチ一杯から仕掛けてきた!! 大荒れの田んぼを一頭力強く駆け抜ける!! これがウッドストックの剛脚か!!』

 

 

 

 

 

「行け行け行けぇ!!」

 

「ヒヒッ!(っしゃあ!)」

 

 

 誰もいない内ラチをひた走る。横で馬も騎手もぎょっとした顔でこっちを見ているのが流れていく。

 

 池谷殿の狙いはこれか。確かにこの雨だ、普段なら必ずと言っていいほど馬が通る最内は、直前までのレースで大荒れ、こんなところに好き好んで突っ込みたがる奴はいないよな。

 

 だがあえて池谷殿はこの道を選んだ。()()()()、このコースを狙ったんだ。

 

 他の馬なら避けるだろうと。俺なら問題なく走り抜けるだろうと。そう確信を持って作戦を立てたんだ。

 

 

 言うて俺もこんな道得意じゃないけどね!? 普段より沈むしそのくせ滑るし! 転ばんように落とさんようにって余計に神経使うわ!!

 

 行くけどね!? 行きますよそりゃ池谷殿の指示だし池谷殿が俺なら行けるって信じてくれてんだし! 俺自身勝ちたいから行きますけどね!? こんなとこ突っ込ませるとか命知らずなの池谷殿は!?

 

 でも実際問題わりと走れてるんだよなあこれが! コース空けてくれて感謝だよ他のみんな! おかげで俺はみんなが避けていく道を走る羽目になっちまったぜ笑いたきゃ笑えよ!! ああもう芝じゃなくてもはやダートだよ感触気持ち悪りぃ!! 馬使いの荒い野郎だぜ恨むぞ池谷殿!!

 

 うわどうしよう段々ムカついてきた! なんでわざわざこんな田んぼ走って泥まみれになってんだ俺! 元はと言えばピサが外塞いだせいだなアイツ絶対ぇ許さねえ!!

 

 

あっ、いたいた見付けたぞピサ! この野郎涼しい顔して走りやがって!

 

 

(よおピサァ!!)

 

(…………ウッド!?)

 

(よくも内側に押し込めてくれたなあ!? おかげさまで見ろよこの泥だらけの有り様をよぉ!!)

 

(いや、それは……)

 

(言い訳無用!! このレース終わったらこの泥だらけの身体擦り付けてやっから覚悟しとけよ!?)

 

(やめろ!!!)

 

 

 あっ、ピサが加速した。流石にこの身体で近付かれるのは本気で嫌らしいな。

 

 いいぜぇ、それならマジで擦り付けに行ってやらぁ! 俺ってばこういう嫌がらせって前世から結構好きなんだよなあ!? 人の嫌がることを進んで実行しますってなぁ!!

 

 

 

 

 

『ヴィクトワールピサさらに加速!! ウッドストックも飛び出してさあ最終直線四頭が争う大激戦!! 弥生賞を掴むのはどの馬か!? 残りは400m!!』

 

 

 

 

 

(待てやピサァァアアア!!)

 

(やめろぉぉお!!?)

 

 

(なんじゃアイツら!?)

 

(ふざけた加速しやがる!!)

 

 

 ああん!? 誰だ失礼なこという奴は! こちとら真剣なんでい!

 

 いいや今は追い抜かした奴等のことなんざどうでもいい! このままピサを恐怖のズンドコ、じゃなかったどん底に陥れてやるぜ!! そらそらもっとスピード上げろォ!!

 

 

 

 

『ヴィクトワールピサ粘る粘る凄まじいスピード!! 重馬場であることを忘れてしまいそうな勢いで直線を駆ける!! その後ろからウッドストックも猛追!! ウッドストック猛追!! 荒れた芝を更に抉り飛ばしてグングンと加速!! 恐ろしいパワー!! その差は二馬身から一馬身へ!! あっという間に並んだ二頭最後の叩き合い!! 容赦ない扱きと鞭!! 残り200m!!』

 

 

 

 

 

(ピーサーくううん!! 一緒に泥んこ遊びしましょおおおおお!!!)

 

(ふざけんなやめろ莫迦!!!)

 

 

 

 

 

『ピサか!? ウッドか!? 大武か池谷か!? 後ろは三頭が迫るがもはや追い付けない!! 大激戦!! 大激戦だ!! 互いに譲らない!!

 

 

 いや!? 抜けた!! 抜けた抜けた抜けたウッドが抜けた!! ピサを躱してウッドが抜けた!! 池谷が先頭を奪った!! 弥生賞を制したのは!! ウッドストックだあああ!!』

 

 

 

 

 

 っしゃおらあああああ!!?

 

 

 あー危なかった!! マジで危なかった!! ギリッギリで差し切れたわ!!

 

 途中でピサが失速しなかったらワンチャン負けてたわ! 八つ当たり気味に嫌がらせしたけど意外と効力あったな!

 

 

「っし!」

 

 

 おーおー池谷殿もガッツポーズ決めちゃって! 泥まみれなのに笑顔が爽やかですこと、これがイケメンのみに許された笑顔ですか!

 

 あーしかしなんというか、やっぱりついつい掛かってしまうのはどうにも治らんなあ。これ本当にどうにかしたいな。

 

 

 

 

(ウッド…………)

 

(あっ)

 

(お前よくもやってくれたな……)

 

 

 やっべ、散々嫌がらせしたせいでピサくんがちょっとお怒りだ。作戦とはいえ八つ当たりしたのが不味かったかな。

 

 

(ごめんピサ)

 

(許さん)

 

(許してお願い)

 

(許さん)

 

 

 

 

 

『おっと、ウッドストックとヴィクトワールピサが……なんでしょう、なにやら喧嘩でしょうか?』

 

『相当競り合いましたからねえ、お互いに思うところがあるんでしょうか。それにしては勝ったウッドの方が謝っているようにも見えるのは気のせいでしょうか……?』

 

 

 

 

 

(ピサくんホントお願い次は真面目に勝負するから許して)

 

(許さん)

 

(お願い人参お裾分けするから)

 

(許さん)

 

(お願いだってばよお~この通りだからさあ~)

 

(うわっ、やめろ擦り付けるな泥を!!)

 

(許してくれるまでベットリ擦り付けるぞお~)

 

(わ、分かった分かった! 許すから! マジでやめろ!!)

 

(ホントに!? わーいピサしゅきい~~!!!)

 

(ぎゃああ!? 余計に擦り付けてるじゃねえかやめろ莫迦野郎!!!)

 

(ぴしゃ~~~!!!)

 

(やめろおおおお!!!)

 

 

 

 

 

『仲直りしたんですかね、ウッドがまたピサに身体を擦り付けていますね』

 

『というよりもピサに泥を擦り付けてますね、あの嫌がりっぷりから見てもそうでしょう』

 

『あー双方騎手も笑っていますね。観客席からも笑いが聞こえてきます』

 

『いやー面白いですねえ、ウッドストックという馬は。次はどんな姿を見せてくれるのか楽しみですね』

 

 

 

 

 

(んほおお~~~~ピサの身体ホッカホカであったかいナリィィ~~~~)

 

(助けてえええ!!)

 

 




こいつ回が進む毎に知能指数低下してないか?


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番外編 ウッドストックがアプリにいたら

なんすかショタウンスとドレスフジとシンボリ家とシャカシャカールって私を消し飛ばしに来てるじゃないですかありがとうございます思い残すことはありませんしゅきー(昇天)


【ウマ娘】ウッドストックについて語るスレ【アプリ】

 

 

 

 

36:芝駆ける名無し ID:deGvi35gT

 

無事メスにされました

 

37:芝駆ける名無し ID:55qdmqTHy

 

夢女キラーにメスにされるのが性癖のライゲ

 

38:芝駆ける名無し ID:m/IgXNmZd

 

ヤバい最推しになるかもしれん

 

39:芝駆ける名無し ID:tsLjNYXuH

 

イベントでいちいちこっちの心臓を破壊しに来るんですけど

 

40:芝駆ける名無し ID:nhq4l7xDP

 

男も女も関係なく脳と心臓を消し飛ばしに来る

 

41:芝駆ける名無し ID:5bJwalVlj

 

人たらしも大概にしろ

 

42:芝駆ける名無し ID:i2PHOpN/k

 

あまりにも顔がいいしメタル系バンギャとかカッコよすぎる

なのに穏やかで悪戯好きでたまに天然かますとか完全に殺しに来てるわ

 

43:芝駆ける名無し ID:4ffAhPTIF

 

モブ娘にめちゃくちゃモテてたけどそりゃこんな美人にイケメンムーヴされたら堕ちるわ

フジ寮長とは別ベクトルで危ない

 

44:芝駆ける名無し ID:Yy4JlUp7e

 

しかもオラオラ系から王子様まで幅広く演じ分けて堕とすからな

選択肢でリアルに30分ぐらい悩んだ

 

45:芝駆ける名無し ID:xxkGMWp+B

 

望んだシチュで夢魅せてくれるとか最高かよ

ちょっと女になってくるわ

 

46:芝駆ける名無し ID:Kp+u7iJc8

 

人生を左右する選択をゲームで決めるな

 

47:芝駆ける名無し ID:ywi4MTwF0

 

アプリトレーナーは性別自在だからヘーキヘーキ

 

48:芝駆ける名無し ID:m9TgTM3pC

 

あのトレーナー日毎に性別が変わってるのだ……

 

49:芝駆ける名無し ID:8teU9CZHG

 

この娘同室判明してないけど誰になるんだろう

 

50:芝駆ける名無し ID:zk2UNxohj

 

史実から考えると弟のオルフェか親友のピサやないか?

 

51:芝駆ける名無し ID:eRas5XUyN

 

分からんぞ、全く関係ないウマ娘かもしれん

 

52:芝駆ける名無し ID:f/fw8HRKU

 

ライゲは嘘つきだからな*1

 

53:芝駆ける名無し ID:U4Ki36qmt

 

まあウッドが出たってことはピサも近い内来るやろ

アイツ無しじゃ語れんし

 

54:芝駆ける名無し ID:8h2QRoFzJ

 

分からんぞジャスタが未だに実装されないしピサも来ない可能性はある

 

55:芝駆ける名無し ID:lQz7cbWP3

 

ライゲは嘘つきだからな

 

56:芝駆ける名無し ID:xJgw4SQNq

 

ピサのピの字も出てないから嘘も本当もないんだよなあ……

 

57:芝駆ける名無し ID:TMPnrGLGN

 

個別ストーリーで逆スカウトされて堕ちました

 

58:芝駆ける名無し ID:Sm9UTimrt

 

「あんたに夢を魅せたいんだ」ときて

「レースでもライブでも、最前列であたしを見ていてほしいんだ」からの

「あたしのトレーナーに……なってください」だからな

 

59:芝駆ける名無し ID:gdDNOzJv0

 

途中まで情熱的なイケメンだったのに最後の最後でしおらしいメスを出すなんて

 

60:芝駆ける名無し ID:0OwAPRHsP

 

かーっ卑しか女ばい!!

 

61:芝駆ける名無し ID:0LDVjdO1+

 

デジタル殿が尊みでまた爆発してしまう!

 

62:芝駆ける名無し ID:/84uqoWO2

 

TSのイベントでそのデジたんに悪戯しに行ってるんだよなあ

 

63:芝駆ける名無し ID:ZFrklsFHF

 

ウッドが出てくるイベント三つあるけど

デジタルの後ろから近付いて目隠しして「だーれだ?」ってするのが一番笑った

 

64:芝駆ける名無し ID:+QAMUuJvZ

 

当然デジたん気絶するんだけど慌てるでもなく腹抱えて笑ってるからなあ

「いやー噂には聞いてたけど本当なんだな!」って言う辺り確信犯やで

 

65:芝駆ける名無し ID:9SR9dMjj/

 

その後気が付いたデジタルがウッドの膝枕と耳元で「おはよう」のコンボでもう一回気絶して笑うと同時に羨ましいと思った

 

66:芝駆ける名無し ID:y1EVNUiNb

 

ゴルシがやべーやつ認定したデジタルを振り回すウッドが強すぎる

 

67:芝駆ける名無し ID:KmWBGew0/

 

俺も顔がいい女子に膝枕されて耳元でおはようって囁かれたい

 

68:芝駆ける名無し ID:GjiEYiqnv

 

やることなすことイケメン過ぎてもはや男子なんよ

 

69:芝駆ける名無し ID:4pA2UA7wZ

 

アニメでも面倒見良かったしイケメンだし仲間思いだしですごい人気だったよな

二期でちょっと天然入ったけど

 

70:芝駆ける名無し ID:QufnFCl2j

 

スペちゃん食い気味だったからしゃーない

 

71:芝駆ける名無し ID:cZ7kUuDNX

 

そのスペちゃんも二期で賢さナーフされてたんですがそれは

 

72:芝駆ける名無し ID:ut+p6oiC7

 

二期の主人公じゃないし……

 

73:芝駆ける名無し ID:mml4VrwcI

 

確かにそうだけど身も蓋もねえな

 

74:芝駆ける名無し ID:ex1SbAaqe

 

正直ウッド見てると男としての自信なくすよね

 

75:芝駆ける名無し ID:l3EmEAQjx

 

イケメンにしか許されんムーブだから気にするな

 

76:芝駆ける名無し ID:5//VcdX9x

 

それ暗にお前はブサメンだって言ってませんかね……

 

77:芝駆ける名無し ID:2TR1xP4fR

 

ブサメンでも心は女の子になれるからセーフ

 

78:芝駆ける名無し ID:8PfxXWfDf

 

ブサメンでオネエとかエグいわ

 

79:芝駆ける名無し ID:1Wgzq6FIT

 

お?ケンカか?

 

80:芝駆ける名無し ID:YPQGUSJRe

 

やめろやウッドの話せえ

 

81:芝駆ける名無し ID:i/GOj157e

 

二次元女子と自分比べて傷口に塩塗りあうとか一番みっともないやん

 

82:芝駆ける名無し ID:LhKteo1Vl

 

ウッドストックを巡ってオネエ同士で争うのか

 

83:芝駆ける名無し ID:p9R2GCo48

 

これがキャットファイトちゃんですか?

 

84:芝駆ける名無し ID:binrPpA9t

 

キャットどころかファットなんだが?

 

85:芝駆ける名無し ID:PRxZcnYA0

 

デブじゃねーし!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

364:芝駆ける名無し ID:CoRGualec

 

ウッド引けたから育ててみたけどすごいわ

 

365:芝駆ける名無し ID:pTcJjQzq+

 

スピード10%パワー20%だけど史実補正で賢さが初期130なの助かる

 

366:芝駆ける名無し ID:TDILAHqQR

 

まああの剛脚と賢さ考えたらそうなるわな

 

367:芝駆ける名無し ID:ffPTkW1WU

 

脚質

芝AダートG←わかる

短GマC中A長A←まだわかる

逃B先B差A追A←は?

 

368:芝駆ける名無し ID:CHqKd/5jn

 

脚質自在すぎて草

 

369:芝駆ける名無し ID:wXoE2AiF/

 

どんな脚してんだコイツ……

 

370:芝駆ける名無し ID:+ktovQHRn

 

史実なのでしゃーない

 

371:芝駆ける名無し ID:31gDnpJX3

 

史実ウッドヤバすぎやろ

逃げから追い込みまでなんでもこなすとか他の馬対策しようがないやん

 

372:芝駆ける名無し ID:nLQzqq7sB

 

メイクデビューも初手逃げで安定して勝てるからすげー楽

 

373:芝駆ける名無し ID:fjFppW4hP

 

イベント見てると心臓がおかしくなった

 

374:芝駆ける名無し ID:6A8VjCcW5

 

よくよく見たらトレーナーに激重感情抱いてる

 

375:芝駆ける名無し ID:x9Fe6MkPs

 

言うほど重いか?

全イベントメスにされたけどそこまでちゃうやろ

 

376:芝駆ける名無し ID:nFUB2D8KL

 

バレンタインにチョコ忘れて逆にトレーナーから貰ったからってホワイトデーでトレーナーにマカロンとキャンディ渡す女が重くないと?

 

377:芝駆ける名無し ID:dJZaWm7Pa

 

別に貰ったんだからお返しするのは普通では?

 

378:芝駆ける名無し ID:21rzRRxDS

 

マカロンは「あなたは特別な人」

キャンディは「あなたが好きです」って意味があるらしい

 

379:芝駆ける名無し ID:1+NH3vD6Q

 

ファーwwwwwwwwwwwwww

 

380:芝駆ける名無し ID:WWH5dC2ML

 

かーっ!卑しか女ばい!

 

381:芝駆ける名無し ID:bZjpFfaqY

 

しかもキャンディの味にも意味があるぞ

ウッドはリンゴ味のキャンディを渡してた

リンゴ味の意味は「運命の人」

 

382:芝駆ける名無し ID:BfFxHptZa

 

クッソ重い女で芝3200

 

383:芝駆ける名無し ID:MSPEr6+UB

 

あんなサバサバした性格しといてデレデレじゃねーか

 

384:芝駆ける名無し ID:1FsWq60z4

 

ヤバい急に愛しくなってきた

 

385:芝駆ける名無し ID:x+J8WCA83

 

夢女がぶっ倒れるわけだわ……

 

386:芝駆ける名無し ID:agvUyBqPc

 

姉もウマ娘やっててこないだウッド引いて育ててた時常に過呼吸気味だったのはそういうことか

 

387:芝駆ける名無し ID:N9drcRXqH

 

温泉でわざわざトレーナーの部屋に来てラブソング歌ってくる女

 

388:芝駆ける名無し ID:3j6UsHNGU

 

エンディングで海外のアーティストのライブ見にイギリス行くけどもちろんトレーナーも行くよな?してくる女

 

389:芝駆ける名無し ID:Vcim+6xTM

 

へぇ~、新婚旅行かよ

 

390:芝駆ける名無し ID:13lITKWnU

 

意外とやきもちやきなの最高にかわいい

 

391:芝駆ける名無し ID:QorbS51go

 

ギャルゲシナリオに現れた新星

 

392:芝駆ける名無し ID:AbC+73TFK

 

交友関係も広いどころじゃないし距離感もちょっとおかしい

 

393:芝駆ける名無し ID:7knawqQP0

 

基本的に顔近いしタイキのごとくハグしてくるしお前なんなの?(半ギレ)

 

394:芝駆ける名無し ID:mwK2U7wtT

 

史実で人懐っこかったからってこんな美人にそんなことされたら心のピルサドスキーが五本脚になっちまうよ!!

 

395:芝駆ける名無し ID:HO/M861o+

 

なのにレースの時はクッソカッコいいんだ……

 

396:芝駆ける名無し ID:ZMwKrEH66

 

レース中に突然ギターを掻き鳴らしてどや顔する女

 

397:芝駆ける名無し ID:Qn+YfzgvU

 

「お前らの視線、あたしに釘付けにしてやるよ!!」

はいなりました

 

398:芝駆ける名無し ID:uGV1yKS0i

 

紅茶グビグビですわさんと比べても全然カッコいい

 

399:芝駆ける名無し ID:yNHYN7CsA

 

どうしてですの!!私関係ありませんわ!!

 

400:芝駆ける名無し ID:Bi2OnLdFk

 

てかウッド追加されてからモーション地味に増えたよな?

 

401:芝駆ける名無し ID:uRjr8FQRz

 

ギター弾くモーションとかウッド以外に誰が使うの……

 

402:芝駆ける名無し ID:DBGWrOAMU

 

GⅠ勝利ポーズでメロイックサイン掲げた瞬間うおおおおってなった

 

403:芝駆ける名無し ID:9rMV16JzN

 

心の底からメタラーやな

 

404:芝駆ける名無し ID:rCfjHM+Th

 

まあ史実ウッドがメタラーの馬やからな

 

405:芝駆ける名無し ID:QC30WKP4K

 

メタラーの馬はパワーワード過ぎる

 

406:芝駆ける名無し ID:Vi2C0D/Nj

 

メタラーでレース強くてイケメンなのに子供には母性全開の顔するんだから脳が混乱する

 

407:芝駆ける名無し ID:J3BtR23pm

 

ウッドママー!!

 

408:芝駆ける名無し ID:zmLJl4JeO

 

男勝りでイケメンで乙女で卑しくてママでレースクッソ強くてメタラーとかちょっと属性盛り過ぎでしょ

 

409:芝駆ける名無し ID:Fm5s8wtvn

 

いいだろ?ウッドストックだぜ?

 

410:芝駆ける名無し ID:swnPDt0dJ

 

完璧か?

 

411:芝駆ける名無し ID:ffJO8XQvY

 

料理も上手いし家事もこなすしこの人逆になにが出来ないの?

 

412:芝駆ける名無し ID:CDAdVy10o

 

ウッドストックのヒミツ1「実は、とんでもない方向音痴」

ウッドストックのヒミツ2「実は、オーディオ機器にはかなりこだわりがある」

 

413:芝駆ける名無し ID:4HeiuIGq7

 

そうだこの人方向音痴だったw

 

414:芝駆ける名無し ID:mWXdvLJRL

 

アニメでも毎回スピカメンバーに「そっちじゃない」って引き留められるのがお約束だったよな

 

415:芝駆ける名無し ID:a1X6FLd6Z

 

まさか二期でガチの迷子になった挙げ句仕方ないから駅前でストリートライブやって見つけて貰うとかいう破天荒ぶりを見せられるとはこのリハクの目を(ry

 

416:芝駆ける名無し ID:DNPrcGSkx

 

やっぱあの辺はステゴの血が影響しとるんやろな……

 

417:芝駆ける名無し ID:ytYjKXzm2

 

駅前でガイナ立ちして自信たっぷりに「…………迷った!!」は笑った

 

418:芝駆ける名無し ID:tNjRNinq4

 

史実も基本大人しいとはいえ結構はっちゃけてるしな

 

419:芝駆ける名無し ID:k0mXXHLqg

 

それでも他の産駒に比べたら可愛いもんなんだからステゴ系はどいつもこいつもキャラが濃い

 

420:芝駆ける名無し ID:Z4QaE1EFb

 

ウッド「よし、早速行こうぜ!」

 

沖T「ウッドそっちじゃない」

スペ「ウッドストックさんそっちじゃないです!」

スズカ「ウッドさん、こっちよ……」

テイオー「ウッドコッチダッテヴァー!!」

マック「そっちじゃありませんわ!」

ウオダス「「先輩こっちです!」」

ゴルシ「ウッド、お前もう先頭歩くな」

 

421:芝駆ける名無し ID:4lWj4xrUu

 

ゴルシ一番辛辣だけどど正論で草生える

 

422:芝駆ける名無し ID:DzQ7lCjTU

 

ゴルシはまあ気の置けない仲っていうのがよく伝わった

ウッドと並んでスピカの屋台骨やし

 

423:芝駆ける名無し ID:RxfuAm3j7

 

一期でガチイケメンムーブして夢女を量産し

二期で天然ママみを散見させて夢女にトドメをさす完璧な采配

 

 

 

 

 

633:芝駆ける名無し ID:CmiF0ssRF

 

てかウッドの交友関係広すぎね?

 

634:芝駆ける名無し ID:J6GjcK1X9

 

アプリでもスピカの面々と関わりあるのは分かる

ギャル組とも仲いいのもジョーダン繋がりだし分かる

フラッシュとも仲いいのはまあ史実だから分かる

シャカールは音楽つながりやろし分かる

なんで生徒会というか女帝と接点あるの?

 

635:芝駆ける名無し ID:EYU+SA+pZ

 

多分直接の接点はバカ息子の方やろ

 

636:芝駆ける名無し ID:j4tFslXpo

 

ルーラーシップの方か

そういや同世代だったな……

 

637:芝駆ける名無し ID:rax2X2KNU

 

そのうちルーラーシップ実装されたらどう絡むのか楽しみ

 

638:芝駆ける名無し ID:nvHrv5BSh

 

その前にピサ実装してくれ

アイツがいないと話が膨らまん

 

639:芝駆ける名無し ID:P3UE/prcG

 

オルフェはもう仕方ないとしてせめてジャスタ来てくれ

 

640:芝駆ける名無し ID:Y3PCzcJS4

 

ブエナビスタ!ブエナビスタもお忘れなく!

 

641:芝駆ける名無し ID:sfLMPoYHY

 

カナロア君マダー?

 

642:芝駆ける名無し ID:EIZaCGyXd

 

ステゴとは違う意味でいろんな馬と絡みがあるからなあ

 

643:芝駆ける名無し ID:W3ujhs+AH

 

あっちこっちの馬に喧嘩腰で絡んだ親父

あっちこっちの馬に友達面で絡んだ息子

ほんとどうしてアイツからコイツが……ってなる

 

644:芝駆ける名無し ID:fS7TJx63a

 

ステゴ家の突然変異すぎる

 

645:芝駆ける名無し ID:nYcmzTuhW

 

ジョ○ョでいうジョセフみてーな奴

 

646:芝駆ける名無し ID:84oMeGT/b

 

わりとはっちゃけてる辺りアイツの子供なんやなって

 

647:芝駆ける名無し ID:VcMTvIgw3

 

血は争えんな

 

648:芝駆ける名無し ID:Xw/2hHzSA

 

でもゴルシのブレーキ役なのは間違いないじゃないですか!ウッドいなかったら今頃スピカえらいことになってますよ!

 

649:芝駆ける名無し ID:bpAK9u+pv

 

ゴルシもなんだかんだ大事なところでは真面目になるから……ウッドが適当なところでブレーキ踏むからボケに回るだけで

 

650:芝駆ける名無し ID:oYjRY3YX6

 

アイツもまとめ役なのは間違いないんだよな……

 

651:芝駆ける名無し ID:W1V0QZrYu

 

なんだかんだウッドだけだとスピカもワンチャン崩壊してた可能性ある

ガチでゴルシがファインプレーだった

 

652:芝駆ける名無し ID:j5TnsT1VP

 

あんなんでも精神的支柱なんだよな……

 

653:芝駆ける名無し ID:NTHOZm0bP

 

でもチームメンバー候補いきなり拉致ってくるのは許されないと思うの

 

654:芝駆ける名無し ID:vGyzt/3ld

 

あのぐらい適応できなかったらスピカに馴染めないし……

 

655:芝駆ける名無し ID:pSDB7u8jA

 

だから問題児ばっかり集まるんじゃないか(呆れ)

 

656:芝駆ける名無し ID:P9wT/ypzx

 

あれウッドも止めなかったの意外だったんだけどなんで?

 

657:芝駆ける名無し ID:ct/F4aVw1

 

「あたしはもう慣れた」って言ってるから多分裏を返せば「言っても聞かないから諦めた」ってことじゃね?

 

658:芝駆ける名無し ID:WbARmp3M8

 

ゴルシェ……

 

659:芝駆ける名無し ID:kgWnalhMa

 

ウッドが匙を投げるレベルはマジもんのヤバいやつやん

 

660:芝駆ける名無し ID:szkF1UD/h

 

そもそもゴルシのブレーキ役とか言ってるけど間違いやぞ

ゴルシには元々ブレーキなんぞついてないしウッドはいつ暴発するか分からんニトロや

なんやかんやウッドが悪ノリしたときのカオスっぷりは二乗三乗じゃきかん

 

661:芝駆ける名無し ID:OaD66svGO

 

言ってること酷すぎるけど否定も出来ねえ

 

662:芝駆ける名無し ID:Urybw6YVE

 

ウッドも穏健派なだけでステゴ組の若頭やしなあ……

 

663:芝駆ける名無し ID:H07iB1TGx

 

罪深きはステゴの血よ

 

664:芝駆ける名無し ID:2fJ9P6A2F

 

ステゴ「親父や叔父貴の方がヤバかったぞ」

 

665:芝駆ける名無し ID:V1N5s46qk

 

SS「なんでこんなに気性難だらけなんや」

ディクタス「なんでやろなあ」

ヘイロー「どうしてこうなった」

マックイーン「お前らのせいやろ」

 

666:芝駆ける名無し ID:HIJHzPLnH

 

お前もやぞマック

 

667:芝駆ける名無し ID:f8ToaIAQF

 

気性難だらけじゃねーか!!

 

668:芝駆ける名無し ID:thmMZlPYl

 

サラブレッドやってるやつにそうそう気性穏やかなやつはおらんぞ

 

669:芝駆ける名無し ID:JUweKD+Tt

 

デジタル「せやろか」

ブルボン「せやろか」

グラス「せやろか」

ライス「せやろか」

ネイチャ「せやろか」

 

670:芝駆ける名無し ID:+39uxAfKq

 

にんじんギャング交ざってますよ

 

671:芝駆ける名無し ID:qkEePwP6R

 

ウッドさんこうしてみるとホント親父に似てないなあ

 

672:芝駆ける名無し ID:UHurOoTdO

 

似てないけど似てるぞ

 

673:芝駆ける名無し ID:YwVpfWVI5

 

似てない(気性の荒さ的な意味で)けど似てる(変なやつ的な意味で)

 

674:芝駆ける名無し ID:kdH0Xag3B

 

こないだ有給使ってウッドに会いに行ったけどファンサ凄かったぞあの馬

普通に撫でさせてくれたしお家芸の二足歩行見せてくれたしヘドバン一緒にやってくれた

推しになるわ

 

675:芝駆ける名無し ID:uH2HeFFf+

 

マジかうらやま

 

676:芝駆ける名無し ID:Uhnh/lJQb

 

今ウマ娘ブームで予約全然とれへんのにラッキーやな

 

677:芝駆ける名無し ID:ZmXcXhV//

 

前にどっかのスレで一緒にヘドバンする言ってたニキか?

 

678:芝駆ける名無し ID:kdH0Xag3B

 

せや、覚えてくれとって嬉しいわ

たまたまキャンセル出てそこに捩じ込ませてもらったんや

近くのホテルも飯旨いし最高やったで

 

679:芝駆ける名無し ID:nzCoA9tbK

 

ええな、ワイも予約とってヘドバンしに行こう

 

680:芝駆ける名無し ID:RreZpBSTs

 

ヘドバン動画はよ

 

681:芝駆ける名無し ID:kdH0Xag3B

 

おうちょっと待っとってくれやで

 

682:芝駆ける名無し ID:xAioNTuIi

 

楽しみやな

 

 

*1
ライゲームスはいろんな意味でユーザーを裏切る事と、lie=嘘という英単語を組み合わせた定型文。




過去最高の文字数で芝4800

CVは誰とかは決めていません。強いて言うなら皆さんが想像する理想の歌声を持つ女性です。


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ウッドの父性?

大変お待たせいたしました。


(くぁ…………ねむ)

 

 

 激闘(?)の弥生賞から数日。今日は調教師の兄ちゃんとか池谷殿の予定の関係で完全な放牧日、オフだった。厩務員のおっちゃん以外の人には今日はまだ会ってない。

 

 寂しいと言う訳ではないが、なんだか落ち着かない。いつもならとっくに調教こなして飯食ってる時間なのに、こうしてつい先程起きてボーッとしているのは違和感がある。

 

 

 あートレーニングしたい。暇すぎてすんごくトレーニングしたい。プールで泳ぎてえなー、坂路でぶっ飛ばしてえなー。

 

 せめて走りたい。少しでも走ってフォームのセルフチェックがしたい。早く放牧の時間にならないかしら。

 

 

「ポケ」

 

(んぉ?)

 

 

 暇を持て余してボーッと窓の外を見ていたら、おっちゃんが俺を呼んだ。どしたー? 飯は食ってるぞー。

 

 

「今日は放牧の前にちょっとお仕事だ」

 

「ブモッ?(仕事?)」

 

 

 はて、お仕事とな? 馬である俺に仕事を選ぶ権利はないので行きますがね。

 

 おっちゃんに流れるように頭絡付けられてますけど、仕事とは一体なんでせう。

 

 

「まあ、行けば分かるさ」

 

「……ブルルッ(へぇい)」

 

 

 そう勿体付けなくてもいいじゃあないの。別に嫌がる訳でもなし。

 

 そんなこと思いつつ、おっちゃんに連れられて厩舎を出るのであった。

 

 

 

 

 

 

「おおー!」

 

「でっけー!!」

 

「かわいいー!!」

 

 

 ストレートに感想を叫びながら、俺の周りではしゃぐ子供たち。その目はどれも純粋で、キラキラと輝いている。

 

 

 仕事とはどうやら小学生の社会科見学だったらしい。馬の生態や写生、そんでふれあい等々の仕事に俺が選ばれたそうだ。

 

 そりゃまあ子供を相手するなら大人しい馬が選ばれるのは分かりますけども。こういうのって普通乗馬とかが選ばれるもんじゃないの?

 

 俺一応競走馬だよ? 公営とはいえ賭博に用いられる馬ですよ? これが切っ掛けで子供たちが競馬に目覚めたとかクレーム言われても責任とれませんことよあたしゃ。

 

 

「かわいいですねー。お名前はなんですか?」

 

「この子の名前はウッドストックといいます。普段は競走馬としてレースで頑張っているんですよ」

 

「レース……競馬のですか?」

 

「そうです。本来なら大人しい乗馬用の馬が来るはずだったんですが、体調不良で。他に都合がつくのがコイツしかいなかったんです」

 

 

 ああ、一応他に本命がいたのか。まあ体調不良なら仕方ないか。

 

 

「馬にも大人しい馬から気性の荒い馬まで色々いまして。競走馬はトレーニングしていると性格が荒くなるんですが、こいつは本当に大人しくて人懐っこいんで」

 

「へぇー……」

 

「触ってみます?」

 

「えっ、いいんですか?」

 

 

 いやおっちゃん、そんな気軽に。別に触らせるなとは言わんがもうちょっと俺の気持ちと言うものをだね、せめて一言でもだね。

 

 まあいいや、おっちゃんがこういうとこで大雑把なのは今に始まったことじゃないし。どっちみち俺に拒否権はないわけでしょ? なら喜んで、はいどうぞ。

 

 

「……お、おぉ~!? フカフカしてる……!」

 

「こいつね、顔の横のね……目の下辺り掻かれると気持ちいいんですよ」

 

「こ、こうですか?」

 

 

 ああ~いいっすねぇ~、引率のお姉さんなかなかのテクニシャンで。あ、もうちょっと右、あっそこそこ、そうそうそんな感じで、おほおお~~~~。

 

 

「気持ちいいかウッド」

 

「ブモッ(最高)」

 

「ハッハッハ! 先生上手ですってよ!」

 

「そう、ですかね……?」

 

 

 いやー、おっちゃんの荒々しい掻き方もいいけどお姉さんの繊細な指使いもたまらんね。善きかな善きかな、善きに計らえ。

 

 

「先生ずりー!」

 

「私も触りたーい!」

 

「アハハ……この子、子供でも大丈夫ですか?」

 

「大丈夫ですよ。ただ、基本的に馬の真後ろはうっかり蹴る可能性があるので注意してあげてください」

 

 

 そういうとおっちゃんは引き綱を引いて子供たちの前に歩き出す。間近で見ると本当に小さいな、低学年ぐらいか? うっかり踏んだり蹴ったりしないように気を付けないと。

 

 

「じゃあみんな、順番に並んで! いきなりみんなでわーっと来たらお馬さんビックリしちゃうから、順番だよ!」

 

 

 はーい! と先生の言葉に子供たちが素直に列を作る。最近の子は素直でえらいねえ、俺がガキの頃なんてルールもへったくれもない崩壊学級だったからな。主に俺が崩壊の中心だったけど。

 

 えーっとまずは? おー、いかにもガキ大将な勇ましい感じの元気な男子……と、ちょっと大人しい感じの女子か。二人一組なわけね? まあ一人ずつだと時間かかるか。

 

 お、意外にも女子の方から触ってきたね。男子はどう触っていいか分からん感じか?

 

 

「わぁ……!」

 

 

 おほほ、鼻筋撫でてきてちょっとくすぐったい。あーいいねいいね、お嬢ちゃん上手ですよ。坊っちゃんは触んないのかい? おっ、来たね来たねぇ顎来たねぇ、ぬはははっ、いいよいいよぉ。

 

 

「すっげぇ……!」

 

 

 

 

「本当に大人しいですね」

 

「怪我させたらダメだって分かってるんですよ。特に子供相手だと何をされても動じませんね」

 

「そうなんですか……賢いんですね」

 

「ええもう、今まで見てきた中でも一等賢いですよ」

 

 

 おっちゃんがなんかいい笑顔で俺のこと自慢してるけど、今はそんなことはどうだっていい。あーそこそこ、いいねぇ、こっちの嬢ちゃんもまた素晴らしい手管をお持ちで。あっ、坊っちゃんそんなとこ、そんなとこ撫でられたらお馬さんどうにかなっちゃうわ、お鼻がヒクヒクしちゃうの、あぁ~~およしになってぇ~~ぬほほほほっ。

 

 

「…………目がすごいことになってますけど大丈夫なんですか?」

 

「馬って大体気持ちいいとあんな顔になりますよ」

 

「はあ……」

 

 

 んほほお~~~~~~~~~~っ!

 

 

 

 

 

(取り乱した…………)

 

 

 まさかここまでとは。気持ちよすぎて我を忘れてしまった。子供といえど侮れん……末恐ろしい。

 

 

 一通りスキンシップした後は写生の時間。みんな思い思いに俺を画用紙に描いていく。

 

 懐かしいなあ。俺も課外授業で学校近くの山に登って、山頂からの景色を描いたっけ。今はどうなってるかね?

 

 きゃっきゃとおしゃべりしながら描く子、真剣に黙々と描く子、テキトーに描いて早く遊びに行きたそうな子。俺が子供だった頃となんにも変わらない。子供っていつだって自分に正直というか純粋なんだよな。

 

 あーあの頃に戻りてぇなー、なんで馬なんだろうなーと足元の草を食みながら考えていると、ふと一人の子供が目についた。

 

 

「…………」

 

 

 一人、他の子とは明らかに距離をとって座っている男の子がいた。クラスに馴染めていないとかそんな感じなんだろうか。

 

 

 なんか、気になるな。

 

 

 

 

 

 

「それでは最後に、お馬さんに乗ってみましょう!」

 

 

 わー! と、歓声と拍手が起こる。そうだよな、馬に乗る機会なんてそうそうないもんな。そりゃあ楽しみだよな分かる分かる。

 

 つってもなあ、俺子供乗せるの初めてなんだが。大丈夫かしら、俺なんかの拍子に振り落としちゃったりしないかな。

 

 んー、まあおっちゃんが後ろに乗るだろうしいけるか? まさか子供だけ乗せるなんて愚行はいくらおっちゃんでもやんないだろ。

 

 

「ではおじさんがみんなをお馬さんに乗せますね。乗ったら、落ちないよう足でお馬さんの体をぎゅっと挟んでください。手綱は持つだけでいいですよ。おじさんがお馬さんを引っ張るので、乗っている感覚を楽しんでください」

 

 

 …………ちょっと待て。おっちゃん正気か?

 

 

 いやいやいや、流石に乗るのが子供だけって無理がないか? 操作しないっつっても相手素人ですよ? ましてや子供ですよ?

 

 ええ~、いいのか……? それでいいのか? 引率のお姉さんもなんにも言わないし……いやそうか、お姉さんも詳しくないから「そういうものなんだ」って納得しちゃってるのか。うっわいよいよ俺責任重大になってきたぞ。

 

 

「頼むぞポケ」

 

 

 頼むぞって、おっちゃんいくらなんでもそれはないぜ。せめてちゃんとリードしてくれよ? 子供がビビって落ちない感じで優しくだぞ? フリじゃないからな!?

 

 

 

 

 

 

「わっ、わっ! すごい!」

 

 

 俺の背中で子供がおっかなびっくり、それでも目を輝かせている。

 

 

 おっちゃんのリードの下、子供たちの乗馬体験は落馬などもなく順調に進んでいる、少なくとも今のところは。

 

 普段楽観的で変なところで大雑把なおっちゃんといえども、やはりそこはプロ。決して無理のないリードでつつがなく子供たちを喜ばせている。

 

 かく言う俺も、出来るだけ揺れが少なくなるよう気を付けていたりするんだが。馬って意外と揺れるからね。子供にはかなり怖い要素だと思う。

 

 しっかしおっちゃん上手いな。こんな繊細なリードも出来たのか。じゃあ普段が若干雑なのはアレか? 俺が大人しいから多少雑でも平気だろの精神か?

 

 いやまあ別にいいんだけどさ。俺は結局のところどこまでいっても馬だし。でもあんまりひどいと人畜無害な俺でももう怒っちゃうぞ? 服引っ張っちゃうぞ? いいのか? 我ウッドストックぞ?

 

 

「どうだい? 楽しいかい?」

 

「たのしー!!」

 

「ハッハッハッ! そうかいそうかい!」

 

 

 愉快に笑っていらっしゃいますけどもね、おっちゃん? 子供乗せてる身としてはけっこう神経使ってるんですことよこれ。

 

 その辺馬の扱いはプロでいらっしゃるあなたならばお分かりいただけているとは思いますけれどもね? それ故の余裕と俺への信頼から来る笑いだとは理解してますけれども?

 

 ええ分かってますよ。分かっていますけれどもね、あえて言わせて?

 

 

 なにわろてんねん。

 

 

 こちとら落とさんよう揺らさんようとめちゃくちゃ気ぃ遣っとんのになにを呑気に(わろ)うてけつかんのじゃい。人の命背負ってんねんぞ。人様の大事な大事なお子様の命預かっとんねやぞ。マジでおっちゃん能天気も大概にせえよホンマ。

 

 

 まあ愚痴垂れてもしゃーないねんけどな。所詮こちとら馬畜生や、この心中が一言一句伝わるわけもなく。大人しくこっちが精々骨を折りますよってに、はい。

 

 

 なんてことを胸中で思いながら長い長い乗馬体験を行っていると、なんとなく雰囲気が和らぐのを感じた。おっ、これで全員か?

 

 

「よし、これでみんな乗ったかな? まだ乗ってない子はいないかな?」

 

 

 ふー、どうにか終わったかな? やれやれと無意識に力んでいた身体を解すために伸びをする。あー身体がバッキバキだわ、こりゃあもう一日オフ貰わんと割に合わな…………。

 

 

 

 

 

 

 …………いや、違うな。()()()()()()()()()

 

 

 確か、そう。写生の時に一人離れて座っていた子がいた。俺の記憶が正しければ、その子だけまだ乗っていない筈だ。

 

 こっそり数えていたが、このクラスは24人。俺が背中に乗せた人数は、引率のお姉さんを含めて24人。うん、あの子一人だけ乗ってない、間違いない。

 

 

 辺りを見回すと……いた。あの子がクラスの集団から少し離れたところで、何か言いたげにもじもじしている。

 

 多分、まだ乗っていないと言いたいが、言い出せないのだろう。元々が引っ込み思案な性格なのだろうか。馴染めていなさそうなのも相まって、声を出すのを躊躇っているような、そんな雰囲気を感じる。

 

 

 

 …………しゃーない、一肌脱ぎますかね。

 

 

 

 

「いないかな? それじゃあ…………おっ? お、おいウッドどうした!?」

 

「ブルルッ(悪ぃ、こっちきて)」

 

「どうしたんだ! おい、ポケ!」

 

 

 おっちゃんが必死に引き綱を引いて止めようとするが、俺はむしろおっちゃんを半ば引きずるようにして歩みを進める。子供たちがにわかにざわめき始めるが、それも気にしない。

 

 俺が歩みを止めるのは、彼の前。恥ずかしそうに、だけど俺に乗りたいと言いたげな目をした、彼の前で。

 

 

「あ…………」

 

「ヒヒッ、ブルルルッ(ほら、乗りたいんだろ)」

 

 

 彼の目の前に顔を持っていって、そう問いかけるように鼻息を荒くする。

 

 彼はどうしたらいいのか分からない、といった様子で周りをキョロキョロと見回す。そりゃそうだ、いきなり目の前に馬が歩いてきたら俺だって困惑するわ。

 

 ほら、触ってみ? 馬の鼻先は触り心地がいいぞ? と男の子に頬擦りしてみせる。優しく、繊細に。

 

 

「…………わ」

 

 

 恐る恐る触りに来た彼。最初はぎこちなく頬を。やがて慣れてきたのか、少しずつ顎、頭、鼻先と。拙いながらも意外に豪快な撫で方で俺とスキンシップを楽しんでいく。

 

 

「…………そうか、その子がまだ乗ってないんだな?」

 

「ブモッ(ああ)」

 

「お前は相変わらず賢いなあ」

 

 

 おっちゃんも合点がいったようで、二、三度頷く。そして男の子と目線を合わせ、破顔して尋ねた。

 

 

「乗るかい?」

 

「…………っ、うん!!」

 

 

 男の子は大きく頷いた。

 

 

 



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幕間4~とある掲示板のスレ3~

みんな掲示板回好きねえ。



日刊ランキング15位とかマジ?
拙作を評価くださった皆様に深い感謝を。


【競走馬】ウッドストックのおかげで人生が変わった話

 

 

1:芝駆ける名無し ID:xEPBOvA5O

 

聞いてくれる奴いる?

 

2:芝駆ける名無し ID:akOhDcCln

 

聞こうじゃないか

 

3:芝駆ける名無し ID:T9jfycBiN

 

おるやでイッチ

 

4:芝駆ける名無し ID:0WcBNdqq8

 

ここにいるぞ

 

5:イッチ ID:xEPBOvA5O

 

おお、ありがとう

ちょっと長話になるけど聞いてくれ

 

6:芝駆ける名無し ID:LsAKeBDIt

 

ウッドストックの話なら歓迎やで

 

7:芝駆ける名無し ID:VibveFHQs

 

競馬界隈も盛り上がっとるしな

ウマ娘効果すごいわ

 

8:芝駆ける名無し ID:G9Z18BJsr

 

ネイチャのバードネも前年もう越えたんやろ?オタク君らはどこからそんな資金が出てくるんや

 

9:芝駆ける名無し ID:xfJSxNdaT

 

推しのためなら手段を選ばんからな

 

10:芝駆ける名無し ID:Wq+IIU6bH

 

せめて綺麗なお金入れてクレメンス……

 

11:イッチ ID:xEPBOvA5O

 

俺、子供の頃から引っ込み思案でな。人に自分の意見を言うとか、自分から発言するっていうのが苦手なんよ

一番酷かったのが小三ぐらいの時かな?その頃親の仕事の都合で東京から地方に移り住んだんだ

 

12:芝駆ける名無し ID:yJDtVDUa8

 

あー、仲良かった友達と離れるの辛いよな

 

13:芝駆ける名無し ID:4qyLgwTKW

 

俺も一番の友達が引っ越した時一日泣いたわ

 

14:芝駆ける名無し ID:ARZmQKsXB

 

わりい、やっぱつれえわ

 

15:イッチ ID:xEPBOvA5O

 

そう、右も左も分からん土地で一人ぼっちみたいな感覚でさ、元々の性格もあって新しいクラスに全然馴染めなかったんよ

休み時間もずっと本読んでたし、給食の時も机くっつけて食べなきゃいけなかったから一番嫌だった。何話していいかも分かんないレベルだったし、事実俺は居ないもの扱いだった

 

16:芝駆ける名無し ID:js4/ZrUpg

 

キッツいなーワイだったら耐えられんわ

 

17:芝駆ける名無し ID:NSeBxDEbo

 

子供って大人以上に残酷なときあるもんな

 

18:芝駆ける名無し ID:ST3fxkKKX

 

やめろ俺のトラウマを掘り起こすな

 

19:芝駆ける名無し ID:YhRxk4Tz4

 

トラウマニキ強く生きて

 

20:イッチ ID:xEPBOvA5O

 

トラウマニキすまんやで

 

で、一ヶ月ぐらい経った辺りで課外授業があってさ

近くに牧場があってそこで馬と触れあったり馬の写生とかする授業があって、当然俺も参加したんだよ

 

そしたらそこに当時現役バリバリのウッドストックがいたんよ

 

21:芝駆ける名無し ID:+YGvF3rVb

 

は?

 

22:芝駆ける名無し ID:P+sKhotIX

 

うせやろ?

 

23:芝駆ける名無し ID:xCeZW5Fi7

 

イッチ冗談きついで

 

24:芝駆ける名無し ID:zm9ITbxls

 

なんで競走馬が課外授業に出てくんだよ

 

25:イッチ ID:xEPBOvA5O

 

いやマジなんだよ

後から聞いた話だと、元々来るはずだった乗馬用の馬が体調不良かなんかで来れなくなって、他に都合がつくのが放牧中のウッドストックだけだったらしい

 

26:芝駆ける名無し ID:SDghF3pdP

 

現役のサラブレッドと触れ合えるとかクッソ贅沢な体験しとんな

 

27:芝駆ける名無し ID:BW+mnrEHF

 

馬主もよう許可出したな

 

28:イッチ ID:xEPBOvA5O

 

普通競走馬って調教で性格荒くなるのが普通らしいんだが、その時のウッドは全然そんなことなかった。とにかく大人しいし人懐っこかった

小学生のクソガキだった俺らが乱暴に触っても全然動じないし、なんなら撫でられて気持ちよかったのか白目剥いてアへってた

 

 

29:芝駆ける名無し ID:7eQyW/PX1

 

えぇ……(困惑)

 

30:芝駆ける名無し ID:bwosjuy5A

 

ウッドくんすごいないろんな意味で

 

31:イッチ ID:xEPBOvA5O

 

で、その後ウッドをモデルにしてお絵かきしてたんよ

当然馴染めてなかった俺は皆より離れた場所で一人黙々と描いてた

で、ふと目をあげたらウッドと目が合ったんだ

何が気になったのか、何故か俺のことをジーーーーッと見つめてきた

もしかして俺を哀れんでるのか?って子供心に思ったりもした

 

32:芝駆ける名無し ID:XkQk9jhvJ

 

ウッド「アイツずっと一人でおんな……ボッチか?」

 

33:芝駆ける名無し ID:BrCU+6BHJ

 

そうだけど言ってやるな

 

34:芝駆ける名無し ID:IYPUiNU4x

 

馬にすら馬鹿にされるイッチカアイソ

 

35:芝駆ける名無し ID:3T8nDoKfH

 

分かる自分以外のあらゆるものから見下されてる気がするよな

 

36:芝駆ける名無し ID:D+GXwhrCr

 

万物に見下されニキどんな人生送ってきたの……

 

37:イッチ ID:xEPBOvA5O

 

で、そのあと厩務員のおじさんの計らいで、一人ずつウッドに乗せて貰えることになったんだ

と言ってもおじさんがウッドを引っ張って、俺らは落ちないように乗ってるだけだったんだけど、それでもみんな初めての経験でテンション上がってた

しばらくして一通り乗ったかなーっておじさんが言うんだけど

 

お察しのとおり俺だけまだ乗ってなかったんだ

 

38:芝駆ける名無し ID:6MepMR0Pm

 

かわいそう

 

39:芝駆ける名無し ID:XsWEBGCxZ

 

ごめん流石に笑えなくなってきた

 

40:芝駆ける名無し ID:dAgG3/qFt

 

先生も気づいてないとか辛すぎる

 

41:イッチ ID:xEPBOvA5O

 

当然手を上げて「自分まだ乗ってないです」なんて言えない俺

でも馬には乗りたいし……って口を開きかけては閉じるを何回も繰り返してた

そしたら急にウッドストックが動いたんだ

おじさんが必死に止めても強引に歩き出して、他のみんながなんだなんだって騒ぎだしたと思ったら

 

俺の目の前で止まったんだ

 

42:芝駆ける名無し ID:iutDA8IAx

 

急 展 開

 

43:芝駆ける名無し ID:lOxQ9wWfd

 

ウッドウソだろお前

 

44:芝駆ける名無し ID:jnVCwUKLR

 

いくらなんでもイケメンムーブすぎる

 

45:芝駆ける名無し ID:BakS2qqoD

 

惚れた

 

46:イッチ ID:xEPBOvA5O

 

いきなりのことでえ?え?って困惑しっぱなしの俺

先生もクラスのみんなも固まってた

そしたらウッドが俺に向かってちっちゃく嘶いて、頬擦りしてきたんだよ

「お前まだ乗ってないだろ?」って言われてるみたいだった

ワケわかんないまま顔撫でたら目閉じて大人しく撫でられてるし

そしたらおじさんが「そうか、この子がまだ乗ってないって言いたいんだな?」ってウッドに話しかけた

そしたら返事でもするみたいにまた小さく嘶いて、俺をじっと見つめてきたんだよ

今だから言えるけど、あの目は普通の馬には出来ないな

あの時馬って生き物を初めて間近でみた俺でさえ、どこまでも優しい目をしてるなって心の奥底で思ったんだからな

 

47:芝駆ける名無し ID:GlYKv3aL+

 

やだ……イケメン……

 

48:芝駆ける名無し ID:xx+/uHGNP

 

子供(+担任)の顔を一人一人覚えててそれでいてまだイッチが乗ってないのに気づいて厩務員のおっちゃんに知らせるウッドは神の使いか何か?

 

49:芝駆ける名無し ID:HVUuae6/w

 

こんな賢くて優しい馬に乗せて貰えるとか一生ものの自慢話やんけ

しかもあのウッドストックに

 

50:芝駆ける名無し ID:V2eNMY3VV

 

俺もウッドに乗りたい

 

51:イッチ ID:xEPBOvA5O

 

その後乗せて貰ったんだけど、明らかにこっちを気遣ってるみたいで何度も背中越しに振り返って俺を見るし、サービスのつもりなのかちょっと早歩きしてくれるし、とにかく人間くさかった

人間で言ったら年の離れた優しい兄貴みたいな性格だったな

降ろして貰った後も、みんなの方に向かって鼻先で俺の背中を押したりするんだよ

「ほら、勇気出していってみろ」って言われてるみたいで、不思議と本当に勇気が湧いたな

そのお陰でクラスメイトと友達になれたし、今でも遊びに行ったり連絡取り合ったりしてる

 

52:芝駆ける名無し ID:0hDxM8DNo

 

イイハナシダナー

 

53:芝駆ける名無し ID:ZtZr+UVhJ

 

自分涙いいっすか?

 

54:芝駆ける名無し ID:mwQUhbhEa

 

この歳になると涙腺が緩くて敵わん

 

55:芝駆ける名無し ID:d4IGlRthV

 

こういう動物系の感動話弱いんや勘弁してくれ

 

56:芝駆ける名無し ID:jeJvQRi3N

 

つくづくウッドストックという馬の規格外の賢さに舌を巻くな

 

57:芝駆ける名無し ID:hn0783C97

 

アイツは馬じゃなくてUMAだってこの間結論が出ただろ!

 

58:芝駆ける名無し ID:wrFGih1y4

 

この間っていつどこでそんな結論出たんだよ!

 

59:芝駆ける名無し ID:6kCmtjR8E

 

まあ馬の枠に収まるような生き物じゃないからなあ……

 

60:芝駆ける名無し ID:JN5R1JcNy

 

中身人間やって言われても納得するわ

 

61:イッチ ID:xEPBOvA5O

 

そんなこんなで、今でもあの時に描いたウッドストックの絵は大事に飾ってあるし、皆で撮った写真も、ウッドストックとツーショットで撮った写真も大切に保管してます

俺ももうすぐ高校卒業するんですが、実は晴れて騎手学校に入校することになりました

夢はウッドストックにもう一度会うこと、そして彼の子供と一緒にGⅠレースで勝利することです

今の俺があるのもウッドストックのおかげです

長々とご清聴ありがとうございました

 

62:芝駆ける名無し ID:7I2OeTfzE

 

すげえ!!

 

63:芝駆ける名無し ID:Ll1ph7zGb

 

まさしくウッドが人生を変えたんやな乙

 

64:芝駆ける名無し ID:Fvt1gPt5A

 

大変やろうけど頑張ってな、応援してるで!

 

65:芝駆ける名無し ID:4nGzTuDsL

 

初勝利のときはウッドとの出会いの話してくれよ!見つけたら絶対推すからな!

 

66:芝駆ける名無し ID:9KyU5pPtg

 

なんて良い話なんだ

 

67:芝駆ける名無し ID:WatEqAgmk

 

ドラマチックすぎるやろ

ア○ビリ○ボーで流れてもおかしくないレベル

 

68:芝駆ける名無し ID:7JaOt2tCP

 

イッチがGⅠ勝ったらテレビも黙ってないやろ

 

69:芝駆ける名無し ID:Bsq7CIe7h

 

クラスメイトもきっと応援しに行くやろな

 

70:芝駆ける名無し ID:1+VMdkPbA

 

そら一緒に乗馬体験して今でも仲が良い同級生が騎手になってレース走るとか応援しに行かん理由ないやろ

 

71:芝駆ける名無し ID:/oMLLXtWG

 

これは良スレ

 

72:芝駆ける名無し ID:CsupSBtv9

 

短いけど良いスレやったわ また機会があったらスレ立ててクレメンス

 

73:芝駆ける名無し ID:wtUaTU4cu

 

騎手になってからの話も一杯聞かせてくれ

 

74:イッチ ID:xEPBOvA5O

 

みんなありがとう

もし競馬中継で「あれ、もしかしてコイツ……」って思ったら応援よろしくお願いします

今度こそ本当に落ちます

皆さんの競馬ライフに幸多からんことを

 

75:芝駆ける名無し ID:wegG8Nz7O

 

乙!

 

76:芝駆ける名無し ID:j8drIFAha

 

 

77:芝駆ける名無し ID:w5waE24UJ

 

乙やで

 

78:芝駆ける名無し ID:pFZE/KNh0

 

サンキューイッチ

またなイッチ

 

79:芝駆ける名無し ID:QHuhdw+UT

 

応援してるからな!!

 

80:芝駆ける名無し ID:zGFJSVrZp

 

頑張れー!

 

81:芝駆ける名無し ID:dcQdONpNi

 

カラダニキヲツケテネ!!

 

82:芝駆ける名無し ID:F8bSsOIl0

 

イッチのファンになったわ

 

83:芝駆ける名無し ID:EpRIO3vEL

 

後方スポンサー面おじさんなってもええか?

 

84:芝駆ける名無し ID:rnvAjESyM

 

スポンサー面じゃなくてスポンサーになれ

 

85:芝駆ける名無し ID:abHj4c04c

 

応援馬券は欠かさないからな

 

86:芝駆ける名無し ID:zpC19o0Oa

 

競馬ってやっぱりドラマなんやなって

 

87:芝駆ける名無し ID:hUlLQ7no4

 

今日はなんか良い夢見れそうや

 

88:芝駆ける名無し ID:JgaBu/M5U

 

イッチ乙!!俺らがついてるやで!頑張ってな!!

 

89:芝駆ける名無し ID:hjAftu/Mk

 

怪我しないようにな!元気にいつまでも走り続けろ!

 

 




その後彼は池谷騎手の弟子となり、癖馬ジョッキー二号として、ウッドストック産駒限界騎手としてみんなに愛される人になるのだがまだ先の話。

追記
日刊10位…………?ええ……すごく、すごいです…………


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幕間5~とある掲示板のスレ4~

ご無沙汰しております。
本編が難産極まっているのに加えてゴールデンウィークも何もかも関係なく多忙を極めておりました。休日出勤なんて悪しき制度は滅びてほしい。
まだ多忙が続きます。こんなお茶濁しで誤魔化そうとする私を御許しください。


【競走馬】ウッドストックとかいう芝のロックスターについて語ろうぜ【ウマ娘】

 

 

 

 

1:芝駆ける名無し ID:U+bPfH0Ok

馬もウマも関係なくお前らが好きなところを存分に語れ俺が許す

 

2:芝駆ける名無し ID:vhPN6rIl5

イケメン(馬)

 

3:芝駆ける名無し ID:IzEbGohIY

イケメン(ウマ娘)

 

4:芝駆ける名無し ID:9kegOvs91

イケメン(生き様)

 

5:芝駆ける名無し ID:CbJj6Mioi

イケメンしか出てこなくて芝

 

6:芝駆ける名無し ID:qIyMh1tO0

実際身も心も実馬もウマ娘もイケメンやししゃーない

 

7:芝駆ける名無し ID:PDWFBH8be

戦績もイケメンやぞ

 

8:芝駆ける名無し ID:+MHACai08

普段の生活もイケメンや

 

9:芝駆ける名無し ID:6WS9NKc3o

イケメンってことしか分からねーじゃねーか

 

10:芝駆ける名無し ID:ewjj6Ufif

誇張もなにも無しにイケメンやしなあ……

 

11:芝駆ける名無し ID:Hn2Kjif+m

この間会いに行ったけどマジでイケメンやった

飯食ってる最中だったのに俺が来たら「おっ、お客さん?」って感じで飼い葉桶から顔上げて触らせてくれた

その後もにんじんあげたり一緒にヘドバンしたり写真取らせてもらったりしてた、しかもその間途中だったご飯も食べようとしない

「そろそろ帰るよ」って言ったら首延ばして鼻で頬にキスしてくれて、勘違いかもしれないけどこっちに向けてウィンクまでしてくれた

ウッドストック様のファンです(メスの顔)

 

12:芝駆ける名無し ID:V7FRd2TNS

堕ちたな(確信)

 

13:芝駆ける名無し ID:r8nqUL6Er

人たらしが過ぎる

 

14:芝駆ける名無し ID:hCS2z3ZBx

ようこそウッドストック沼へ

 

15:芝駆ける名無し ID:v9PldRZp+

頭が良すぎるんよ

 

16:芝駆ける名無し ID:PIl1s8ku+

今までにも頭がいい馬は沢山話題になったけどウッドは馬の範疇に収まらんレベルで賢すぎる

 

17:芝駆ける名無し ID:VIgV7GPmI

仕草も何もかもがもはやジャ○ーズアイドルのそれ

 

18:芝駆ける名無し ID:d06jOPEUg

馬系ジ○ニーズか

 

19:芝駆ける名無し ID:KnXwVQWcV

ジャ○ーさんなら馬主やっててもおかしくなかったよな

 

20:芝駆ける名無し ID:I+CiEt1Br

購入基準が自分の事務所に入っても違和感ないレベルのイケメンかどうかで決まりそう

 

21:芝駆ける名無し ID:HKSSL1Hno

テイオーが基準になりそう

 

22:芝駆ける名無し ID:2rrNv+yjc

ウマ娘だとテイオーとかゴルシチがボーダーか?

 

23:芝駆ける名無し ID:6JtJ23w2O

シチーはまたベクトルが違うやろ

 

24:芝駆ける名無し ID:HQ6oLXyWG

ウマ娘でイケメンって考えるなら会長とかシリウスとかゴルシだよな

シャカールもそうか

 

25:芝駆ける名無し ID:Jiq/Yjrsb

そこにウッドストックも入れるべきですよ

顔立ちは確かにかわいい寄りですけどイケメンというか顔がいいウマ娘勢上位に間違いなく食い込んでくるでしょ

 

26:芝駆ける名無し ID:nERovVo7C

まあモチーフというか原案がかなりリョテイに似せてたから顔立ちがかなり整ってるのは理解できる

 

27:芝駆ける名無し ID:Z6ZvSQ8Cs

美人だけどどことなくかわいい顔なのは本人というか本馬の気性を反映した説

 

28:芝駆ける名無し ID:p2v7898fK

あの性格でステゴ産駒を名乗るのは無理でしょ

 

29:芝駆ける名無し ID:lAvmmQC89

ヘドバン要素は明らかにステゴ因子でしょ

 

30:芝駆ける名無し ID:CchXcbzUp

凄いしイケメンだけど変な馬なのも間違ってないぞ

 

31:芝駆ける名無し ID:+uSBGVYb1

気性が荒いわけでもないし

ちょっとイタズラ好きなだけで

 

32:芝駆ける名無し ID:6ZLtiZ30K

あのステゴの子供ってんだからどんな暴れん坊に育つかと思ったら人の言うことよく聞く人懐っこい人たらしになりました

 

33:芝駆ける名無し ID:CgiY5o3TF

どうしてこうなった

いや暴れん坊よりは全然いいんだけど

 

34:芝駆ける名無し ID:61eJjH2kE

たらし込むの全部狙ってやってるよな

 

35:芝駆ける名無し ID:/N2xoSWQv

同じように大人しいグラスはアブにキレてたけどウッドって怒ることあんのか?

 

36:芝駆ける名無し ID:VNQnezAu0

現役時の調教助手はウッドに皮肉言ったら「なんだとぉ」とでも言うみたいに服を引っ張られたってのは聞いた

 

37:芝駆ける名無し ID:B1O1GTCWc

皮肉も理解するのか……

 

38:芝駆ける名無し ID:180S5pH8G

一回池谷が怪我して騎乗が代わった時けっこうゴネたらしい

すぐに折り合いついたけど騎手曰く「なんだかやりにくそうにしていた」らしい

復帰した池谷はウッドに鼻で小突かれたとかなんとか

 

39:芝駆ける名無し ID:b+UnYJxOP

かわいい

 

40:芝駆ける名無し ID:q+ApzCfYT

池谷大好きかよ

 

41:芝駆ける名無し ID:mfcW6hagY

やーなの!いけやじゃないとやーやーなの!

 

42:芝駆ける名無し ID:Sqv/HGy6g

かわいい

 

43:芝駆ける名無し ID:p/ICZKR93

大人しいけど気が弱いわけでもないよな

 

44:芝駆ける名無し ID:7eUjHpET7

栗東の大ボスに睨まれてもケロッとしてたらしいしな

 

45:芝駆ける名無し ID:zdY1Ciyqj

どの牧場行ってもいつの間にかボスにされてて

移動になると他の馬皆寂しがる

 

46:芝駆ける名無し ID:SCQnj36gN

よっぽどカリスマあるんやろか

 

47:芝駆ける名無し ID:Dfz/CFU+X

どちらかというと世話焼き

 

48:芝駆ける名無し ID:ShfcQ7SyP

ゴリゴリのヤンキー馬が絡んできても一喝で黙らせる

そのあとベッタベタに甘やかす

ウッドの舎弟になる

 

49:芝駆ける名無し ID:1XBIl2Tb7

馬もたらし込んでる……

 

50:芝駆ける名無し ID:mAIYYUrEt

喧嘩止めていじめ止めて体調悪そうな馬のために人呼んでしてたらそらお前「兄貴……!」ってなるでしょ

 

51:芝駆ける名無し ID:uCN4Cta7U

牝馬にもモテモテだったんだっけ?

 

52:芝駆ける名無し ID:TCt6ftKTj

気性荒い牝馬もウッドの前だと急に大人しくなる

 

53:芝駆ける名無し ID:fPJnIOI+4

夢牝馬量産してたらしいな

 

54:芝駆ける名無し ID:oEwx1zi4Q

夢牝馬とかいうパワーワード

 

55:芝駆ける名無し ID:8UCPfwWWz

ブエナビスタと何回か繁殖やってるしな

 

56:芝駆ける名無し ID:VFwdua4Qf

種付け後に離そうとすると牝馬の方が嫌がるらしい

 

57:芝駆ける名無し ID:tkTijPRRm

クッソモテモテやん

 

58:芝駆ける名無し ID:N+B1/5cI5

馬ですらモテているというのにお前らと来たら

 

59:芝駆ける名無し ID:XACKt6tvX

なんでや俺ら関係ないやろ

 

60:芝駆ける名無し ID:9+9MOeTIa

二次元ならモテモテや

 

61:芝駆ける名無し ID:BJSwzk+HG

三次元に目を向けろ

 

62:芝駆ける名無し ID:VdJzPx8Zu

でもウッド様に釘付けにされてるし……

 

63:芝駆ける名無し ID:Y2UjN1EMY

ウッドが悪いな!!(開き直り)

 

64:芝駆ける名無し ID:bI8FmERyi

罪作りな馬だぜ!!

 

65:芝駆ける名無し ID:GuJ+f+9H/

こんなんだからモテないんやろなあ……

 

66:芝駆ける名無し ID:se/9+YDwY

だけどまあウッドに釘付けにされるのは同意

 

67:芝駆ける名無し ID:LW7iY1+Ey

顔がいいもんなあ

 

68:芝駆ける名無し ID:GJl7/irqN

あの紺碧の目に見つめられたらもうダメ、堕ちるだけよ

 

69:芝駆ける名無し ID:jSWc6wRbT

吸い込まれそうな目

 

70:芝駆ける名無し ID:rtyDXRJBl

壁ドンされて至近距離で見つめられてぇ~

 

71:芝駆ける名無し ID:Vw4IxGLd7

ウッド様の弟になって叱られたい

 

72:芝駆ける名無し ID:prkAQX71a

オルフェ「は?譲らんぞ」

 

73:芝駆ける名無し ID:em6mz3Y9V

朝寝してウッドに叩き起こされたい人生だった

 

74:芝駆ける名無し ID:eANloMiAu

いません!!

 

75:芝駆ける名無し ID:2u4d6vY9Y

今すぐガチャ回してこい

もしくは会いに行ってこい

 

76:芝駆ける名無し ID:dqUV76ABF

さらっと牧場行けとか言ってて芝ハードル高すぎやろ

 

 

 

 

232:芝駆ける名無し ID:5Yfg1bt+m

ウッドストックの育成難しくない?

 

233:芝駆ける名無し ID:bwnHL8I+Z

それはそう

 

234:芝駆ける名無し ID:sEQP1RATO

そら(同期殆どいないからってレジェンド馬ライバルにしたら)そう(難しくもなる)よ

 

235:芝駆ける名無し ID:0SZ1RMwQF

エイシンフラッシュぐらいだもんな同期

 

236:芝駆ける名無し ID:8tCdokyi4

ヴィクトワールピサもヒルノダムールもダノンシャンティもいないサミシイサミシイ

 

237:芝駆ける名無し ID:3JwXThIOb

だからってフラッシュバチクソ強化はやりすぎじゃないですかね!?

 

238:芝駆ける名無し ID:mgOGBmW+V

有馬とか確実にUGクラスは行ってるよな……

 

239:芝駆ける名無し ID:LOJ+ODVZV

スピパワ賢SSスタ根Sとか勝てるわけがない…ッ!!

 

240:芝駆ける名無し ID:B6uG9IgU2

絶対これ引退レースのオルフェだよ

 

241:芝駆ける名無し ID:9gDamWf85

怪物過ぎて上振れ前提じゃないとマジで勝てん

 

242:芝駆ける名無し ID:Tw77X3IDQ

この怪物フラッシュを作ったのは誰だぁっ!!

 

243:芝駆ける名無し ID:5SFX5oHNK

史実オルフェです

 

244:芝駆ける名無し ID:aWETuFiLm

ならば仕方ない……

 

245:芝駆ける名無し ID:n20RsOyKq

雄山もっと粘って

 

246:芝駆ける名無し ID:qdj5Jwu2Z

てか固有二つ名なんだよあれ

 

247:芝駆ける名無し ID:l7AMsOh9f

【KING of ROCK STAR】獲得条件エグすぎる

 

248:芝駆ける名無し ID:t1zudmy58

出るレース全部1着とか鬼畜じゃね?只でさえ育成目標のライバルやべーのに

 

249:芝駆ける名無し ID:chCyJepNG

任意で出るレースも全部1着縛りだもんな

何がヤバいってシニア有馬の怪物フラッシュが鬼門過ぎる

 

250:芝駆ける名無し ID:/2UJAGMFl

まあ元馬のウッドストックがあの戦績だったし納得しかないんだがそれはそれとしてもう少しこう手心というか……

 

251:芝駆ける名無し ID:TZmD6DBR+

この固有二つ名を作ったのは誰だぁっ!!

 

252:芝駆ける名無し ID:vT8xvD/eR

運営です

 

253:芝駆ける名無し ID:QEfB9tcaq

貴様はクビだぁっ!!

 

254:芝駆ける名無し ID:2Nu+jQhE2

でも元はといえば史実がそんな感じなので……

 

255:芝駆ける名無し ID:zJIWf5+jP

ならば仕方ない……

 

256:芝駆ける名無し ID:aLXlOt48G

雄山の押しが弱すぎる

 

257:芝駆ける名無し ID:rMffVgvc5

俺は早々に固有二つ名はしばらく諦めることにした

ウッド様に振り回されているだけでいいや

 

258:芝駆ける名無し ID:F0PZgDdHm

まあ必ずしも狙う必要はないしな

 

259:芝駆ける名無し ID:xJR4f/zDW

やり込みやしな

無理に行く必要はない

 

260:芝駆ける名無し ID:7XMb8EM6n

TSで連続出走させるじゃん?

「アンタの考えを否定するつもりはないが……ちゃんとあたしを見てくれてるか?」って言われるじゃん?

「あたしの目を見てくれ……トレーナー」って困り顔されるじゃん?

すごい心が痛むと同時になんか違う背徳感みたいなのが背中からこうゾクゾクと

 

261:芝駆ける名無し ID:+VES+2z+7

やベーぞ変態だ!!

 

262:芝駆ける名無し ID:XC2XoHWU7

ここからいなくなれ!

 

263:芝駆ける名無し ID:i2egiQaUk

そんなトレーナー修正してやる!

 

264:芝駆ける名無し ID:ePtjHetVi

辛辣で芝

 

265:芝駆ける名無し ID:SwdQin84k

でもいつも自信たっぷりなウッドが弱った姿を見せるのは申し訳ないと思うと同時にもっと見たい衝動にも駆られるのだ……心が二つあるのだ……

 

266:芝駆ける名無し ID:XZI4QBr0b

ヤミオチウインディちゃん来たな

 

267:芝駆ける名無し ID:FKKn1nHIe

メインシナリオであのウッドストックが人目も憚らず泣き崩れるシーンは心に来た

 

268:芝駆ける名無し ID:MqulOl82p

レジェンド馬を擬人化女体化させた挙げ句泣かせるゲームがあるらしい

 

269:芝駆ける名無し ID:wMlPuG/CI

アニメでも見たことない貴重なウッドの号泣シーン

 

270:芝駆ける名無し ID:af8XshWl3

確かに何度か見てると心の痛みよりも先に背徳感が来る

 

271:芝駆ける名無し ID:afOwo8bLd

心の底からの慟哭みたいな泣き方が心締め付けると同時に声優ってすげーわと思った

 

272:芝駆ける名無し ID:N/Y4Eg4ew

常にロックの精神を持ってたウッドが周りの妬み嫉み程度で動揺するのはアイデンティティが揺らぐのと同義だからな

それをトレーナーに指摘されて図星だから感情的になって反論したことに自己嫌悪して調子崩すんだぜ?

そういうところがいいんじゃあないか……(ねっとり)

 

273:芝駆ける名無し ID:IlU3IogfT

変態しかいねーぞこのスレ

 

274:芝駆ける名無し ID:D0P7w1oCP

どこもかしこもトレーナーは変態の巣窟よ

 

275:芝駆ける名無し ID:xzIvXGN89

ウッドトレはあんなに大人なのにな

 

276:芝駆ける名無し ID:Wqmy7M4W/

あの成熟した精神で新人名乗るのは無理でしょ

 

277:芝駆ける名無し ID:BDon6s5Oz

でも部屋は散らかってるぞウッドトレ

 

278:芝駆ける名無し ID:pSb/U5tAC

それは大体池谷のせい

 

279:芝駆ける名無し ID:eQPDHowq2

?「池谷の部屋汚いッス……」

 

280:芝駆ける名無し ID:ad+ISYquD

池谷そんなに汚部屋なの?

 

281:芝駆ける名無し ID:Xocs8JImd

宿入って一日目で一人暮らし三年目の男みたいな部屋になる

 

282:芝駆ける名無し ID:P7T22YpKx

えぇ……(ドン引き)

 

283:芝駆ける名無し ID:vjTMTgSM8

そのせいでウッドトレが汚部屋ネタを押し付けられるという事態に……

 

284:芝駆ける名無し ID:5jraCu6wF

まあそのぐらいのギャップがないと超人過ぎるしな……

 

285:芝駆ける名無し ID:zBakzHMmK

アレに関してだって仕事が忙しすぎるせいだし普段はちゃんとやってるっぽい

 

286:芝駆ける名無し ID:VcQzIwxsS

ウッドもそれで「あんたもちゃんと人間だったんだな」って安堵してたから結果オーライ

 

287:芝駆ける名無し ID:3bovhjdlj

つまり今まで人間と思われていなかった……?

 

288:芝駆ける名無し ID:oFcjuDRZZ

そりゃ仕事ちゃんとこなして唐突に効果あるトレーニング閃いて楽器の練習も付き合ってくれて一緒にストリートライブもしてくれてメンタルケアもバッチリな超人トレーナー見たら人間か疑うのもやむなしやで

 

 

 

あれ?このトレーナーウッドが掛からない要素皆無では?

 

289:芝駆ける名無し ID:8z4c62QlQ

そら育成でギャルゲシナリオにもなりますわ

 

290:芝駆ける名無し ID:6ca+vkcch

相棒って言葉がこれ程似合うトレーナーもいない

 

291:芝駆ける名無し ID:P2p04fp/m

一心同体というか二人三脚で進んでいくストーリー

 

292:芝駆ける名無し ID:D1WYY/VEq

対等に隣で支え合うシナリオ

 

293:芝駆ける名無し ID:tuCebHLFr

こんな神物件逃がす方がおかしいわな……

 

294:芝駆ける名無し ID:Oo6rjm6SE

お互いにノーガードの殴り合いしてる

 

295:芝駆ける名無し ID:tzZwCXxKH

しかも全部お互いに多段クリティカルヒットよ

 

296:芝駆ける名無し ID:B9uLZT7DL

そんなことしてりゃギャルゲシナリオ言われてもおかしくないわな

 

297:芝駆ける名無し ID:xmk5Vgy6b

あの二人四六時中イチャイチャしてるのだ……

 

298:芝駆ける名無し ID:BWTjnH9kY

どっちが先に完墜ちさせるかのチキンレースだから命懸けやぞ

 

299:芝駆ける名無し ID:pp+81lgCh

壁ドンして囁きで誉め合うし互いに弁当交換してるし気が付けばそばにいるしなにお前ら新婚なの?

 

300:芝駆ける名無し ID:8bbbqSSM0

イチャついてるだけじゃねーか!!

 

301:芝駆ける名無し ID:9o+0AUKFZ

これで強いってんだから他の娘がかわいそうになってくる

 

302:芝駆ける名無し ID:klOKnC+Be

愛、愛ですよナナチ

 

303:芝駆ける名無し ID:krRwxltcL

なぜそこで愛っ!?

 

304:芝駆ける名無し ID:hVCuZQVMf

ただ自分にとってのスパダリ見つけて好きなことしてイチャついてたらなんか強くなってただけだよ

 

305:芝駆ける名無し ID:9mnKwlwlT

あれどうしよう急にこの二人にムカついてきた

 

306:芝駆ける名無し ID:X/YmoEnU5

好きなことして強くなれたら苦労しねーよ!

 

307:芝駆ける名無し ID:vOeHZ0Lxv

でも実際史実だとこんなだったしなあ……

 

308:芝駆ける名無し ID:i7tSUjbgm

ロック大好きで池谷大好きでレース後にいっつもイチャイチャしてたらなんか世界に挑んだしな……

 

309:芝駆ける名無し ID:iVAWRVL8E

エピローグで海外に行ったのもつまりそういうことだよな

 

310:芝駆ける名無し ID:XFr5YZEwr

ライブ鑑賞は建前で海外のレースにカチコミに行ったってこと?

 

311:芝駆ける名無し ID:1qnVpoCrF

推測だけどおそらくはそう

 

312:芝駆ける名無し ID:x+C/HZIt+

勝手に世界に羽ばたいてろ

 

313:芝駆ける名無し ID:zaWTYH44w

一生一緒にいやがれ

 

314:芝駆ける名無し ID:hF7crtWCy

孫ひ孫に囲まれて大往生するように毎晩祝ってやる

 

315:芝駆ける名無し ID:TJpI1SHZK

ツンデレ沸き出てきて芝4500

 

 

 

 

634:芝駆ける名無し ID:nRNSIYQc8

ワイウマ娘から競馬入った民でまだ全然詳しくないから教えてほしいんやが

ウマ娘のウッドストックってなんであんなにトレーナーに執着しとるんや?

 

635:芝駆ける名無し ID:EiTTf+YQe

恐らくウッドトレは現役当時の主戦騎手と厩務員がモデルと思われる

史実だとウッドストックは主戦騎手の池谷と厩務員のおっちゃんが好きだった

厩務員は普段からお世話してくれるから大好きだし、そもそもが人懐っこくて従順だった

そんでウッドストック自身が「中に人間が入ってる」と言われるほど頭のいい馬で、競馬の仕組みを理解していたと言われてる

しかも騎手の指示に素直に従い尚且つ自分から勝ちに行く馬だったので池谷のことは一緒に勝ちに行く相棒と思ってたのかもしれない

これがウマ娘に反映された結果ウッドストック特攻のスパダリが誕生した

 

636:芝駆ける名無し ID:FNbv8FpQm

はえー

 

637:芝駆ける名無し ID:LQcb5kNjz

鞍上代わるのクッソ嫌がるぐらいには池谷大好きやしな

 

638:芝駆ける名無し ID:xej0cP52O

引退レース後馬運車に乗せようとしたら池谷にすり寄ってボロボロ涙流してしばらく離れなかった話すこすこのすこ

 

639:芝駆ける名無し ID:POqgg9/x5

あれで池谷も周りのスタッフももらい泣きしたんよな

 

640:芝駆ける名無し ID:Ib37mJelq

もう池谷と走ることはないのが分かってたんやろなあ

 

641:芝駆ける名無し ID:S34a+bp5I

やっぱ中身人間やってアイツ

 

642:芝駆ける名無し ID:BwpQ9l28w

そのときの動画初めて見た時はマジで挙動が人間みたいやった

もちろんワイも泣いた

 

643:芝駆ける名無し ID:HSPQdt9x4

目にゴミが入ったとかそんなレベルじゃない泣き方

 

644:芝駆ける名無し ID:PJA0Cthz/

引退式後池谷と和やかに別れます

馬運車に乗せようとします

ウッド段々歩みが遅くなってやがて止まります

池谷を振り返ったと思ったら急に引き返して池谷にすり寄ります

ウッドが泣きます

池谷がつられてウッドに抱きついて泣きます

周りも泣きます

俺も泣きます

 

645:芝駆ける名無し ID:eux7uchO+

これ以上ないほどの青春エンドじゃん

 

646:芝駆ける名無し ID:OPnQSS8MJ

そら一緒に戦った相棒との別れは辛ぇでしょうよ

 

647:芝駆ける名無し ID:FEEq9vx+H

一緒に世界を飛び回って一緒に世界に挑んだからな

 

648:芝駆ける名無し ID:LdMOl9+IC

唯一無二の相棒

 

649:芝駆ける名無し ID:H9/0Fn3rm

チーム池谷の屋台骨

 

650:芝駆ける名無し ID:980d5SKpR

池谷の心に突き刺さって抜けない聖剣

池谷の癒しだった魔性の女

池谷にステゴ産駒の力を分からせた夢路

池谷と一緒に天に勝利を届けた金細工師

池谷を世界に連れていったロックスター

 

651:芝駆ける名無し ID:4xx5mj6Xd

池谷が癖馬と素直な馬の間に挟まれてて芝

 

652:芝駆ける名無し ID:QSL+l8T1N

なんでやメイケイエールも大人しいやろ

 

653:芝駆ける名無し ID:8ZaLAXTHj

肝心のレースで暴走するお嬢様はちょっと……

 

654:芝駆ける名無し ID:9ren5wQwH

カレンチャンとウッドストックが池谷の癒しすぎる

 

655:芝駆ける名無し ID:Vipl1XSZR

池谷の画像色々あるけど笑顔でメロイックサイン掲げてウッドストックと一緒に舌出して挑発してる写真が一番好き

 

656:芝駆ける名無し ID:9//O0Pa4a

あれホント好きすぎる

何がって多分ウッドがそういうのを求められてるのを理解してあの舌出しやってるのが伝わるのがすごい好き

 

657:芝駆ける名無し ID:0lfZw3TFv

よりにもよって海外の初戦でだもんなあw

 

658:芝駆ける名無し ID:9iEdwhp5Z

あれで次戦他の騎手に徹底マークされたんやろ?

 

659:芝駆ける名無し ID:KUbwkIdC4

せやで

それでもっかい叩き潰して鞍上でメロイックサインまた掲げてた

ウッドも舌出してた

 

660:芝駆ける名無し ID:edaKWZo++

クッソワロタ

 

661:芝駆ける名無し ID:my0m7wEu5

池谷もウッドも調子に乗りすぎやろ

 

662:芝駆ける名無し ID:Mf7SHQEsp

いやでもロックやメタルとメロイックは切っても切り離せんし……

 

663:芝駆ける名無し ID:/UIhwN18l

パフォーマンスの一種だから(震え声)

 

664:芝駆ける名無し ID:veoyUcgJ/

でもウッドも海外行っても全然へこたれないのすげえよな

 

665:芝駆ける名無し ID:apcEAv/gb

普通馬にとって長距離移動とかものすごいストレスかかるはずなのにな

 

666:芝駆ける名無し ID:hoRyUzdA5

ましてやクッソ五月蝿い飛行機で長時間狭いとこに入れられて移動や

人間でもそんなことされたら気が滅入る

 

667:芝駆ける名無し ID:O34fN38xY

ちょっとは疲れてたけど食欲もあるし渡航先の牧場の馬とすぐ仲良くなった挙げ句ボスになってるし何なんだあの陽キャ

 

668:芝駆ける名無し ID:oMQK2NwrZ

郷に入っては郷に従えって感じでその牧場の馬のルールとかにすぐ馴染んだらしい

 

669:芝駆ける名無し ID:Vaf7UrJX1

ボスなのに人懐っこいのはすごいよなカレンチャンしかり

 

670:芝駆ける名無し ID:O569PaBjY

ドリジャ「デレデレしやがって噛むぞ池谷ァ!」

オルフェ「なにニヤついてんだ蹴るぞ池谷ァ!」

 

671:芝駆ける名無し ID:pyxocTQXo

お前らはまず実装されろ定期

 

672:芝駆ける名無し ID:evialBSO9

(その二頭は)いやーキツいでしょ

 

673:芝駆ける名無し ID:w/L6lZ094

お前のお手馬やろがい!

 

674:芝駆ける名無し ID:lAxWyk7TP

池谷も苦労人なんだけどそれ以上にドラマ作りすぎててレジェンド大武の次によく名前聞くよな

 

675:芝駆ける名無し ID:DEztQTN5b

ネタが抜群に多いからな

 

676:芝駆ける名無し ID:WZZ8/+PQG

大体乗ってきた馬のせい

 

677:芝駆ける名無し ID:7+p4qdRPe

引退後気性荒くなりすぎて会いに行かない方がいいと言われたドリームジャーニー

池谷の言うこと絶対聞かないウーマンスイープトウショウ

メロメロのデレデレになって俺の女発言かましたカレンチャン

阪神大笑点はじめネタに事欠かないけど何だかんだ絆は強かった相棒その一オルフェーヴル

制御大変すぎて毎回レース終わると疲労困憊になるメイケイエール

後にも先にもこんな出会いはないだろうと誰もが言う一番の相棒その二ウッドストック

 

678:芝駆ける名無し ID:J2EkMPwax

ウッドとオルフェの相棒兄弟が強すぎて笑う

 

679:芝駆ける名無し ID:Hq+Pjqw7E

金細工師とロックスターに脳を焼かれた男

 

680:芝駆ける名無し ID:y9s9eRnV4

あの兄弟どっちも現役当時に人間の少年とのエピソードあるのが本当に出来すぎてる

 

681:芝駆ける名無し ID:HnawU+7V0

オルフェは普段クッソ人見知りで触られるの嫌がるのにその子にだけは大人しく撫でられてたのは馬なりになにか感じることがあったんかなって思うしその後の有馬の怪物っぷりは泣ける

ウッドに至ってはお前本当に馬かよってエピソードゴロゴロあるのにその中でも頭1つか2つ抜けてその少年との逸話が有り得なさすぎる

 

682:芝駆ける名無し ID:GQKO13+GQ

しかもウッドと少年の話の発端自体がもうおかしいからな

 

683:芝駆ける名無し ID:uqJaj6mxZ

いくら本来の乗用馬が来れなくなって都合よく予定空いてて大人しかったからって

当時バリバリの現役で無敗で重賞勝ってる競走馬代役にするとか最大限言葉選んでも頭おかしいとしか言いようがない

ましてやあの暴れ馬ステイゴールドの子供やぞ

万が一子供でもウッドでも怪我したら一大事や

 

684:芝駆ける名無し ID:sRSe4Mt0l

しかもあれ厩務員のおっちゃんが話を聞いて「じゃあうちのウッドストック号を代わりに行かせますよ」って言ったから起きたことらしい

馬主オーナーに話が来たのは事が全部終わってからとかなんとか

 

685:芝駆ける名無し ID:y1jna+Epk

ファッ!?

 

686:芝駆ける名無し ID:V9UfIOx1X

おっちゃんなに考えとんねん

 

687:芝駆ける名無し ID:TJ4w8S1Ja

独断?は、うせやろ?

 

688:芝駆ける名無し ID:N9mtBUDTl

よぉクビにならんかったな……

 

689:芝駆ける名無し ID:vu16ImpPl

まあ馬主オーナーとも旧知の仲で信頼されてたみたいで

ウッドを代役にするって決めたのも「せっかくの子供たちの楽しみをこちらの都合で無かったことにするのは可哀想だし、ウッドストック号は大人しく人懐っこく、子供との接し方も普段の見学客で慣れていたので適任だった」って取材で言ってたから無計画ではないらしい

何だかんだ馬のことはよく見てる人だから厳重注意で済んだみたい

それでも有り得んことしてるのは変わらんが

 

690:芝駆ける名無し ID:uSH5pqNcl

減俸とかじゃなくお説教で済ませてる辺りオーナー馬主のおっちゃんに対する信頼の厚さが分かるな

でもそれはそれとしておっちゃん破天荒すぎやろ

 

691:芝駆ける名無し ID:J4Fhf4T4N

ウッドストックも呆れてたろうな

 

692:芝駆ける名無し ID:zqxCoJ9/6

当時小学生の癖馬ジョッキー二号くんにも分かるぐらい気を遣って乗せてたみたいやしなウッドくん

 

693:芝駆ける名無し ID:9C9ZOV0aP

「ウッドストックのおかげでぼっちから脱出出来たし、今の自分がいる。僕にとって最高の兄貴です」って二号くん言ってたしな

 

694:芝駆ける名無し ID:UestSlybR

騎手になってウッドに会いに行ったら「久し振りやん、元気か?」って言うかのように短く嘶いて鼻先を擦り寄せたのが当時ぼっちだった自分に気づいて歩み寄ったときの反応と全く同じで声を上げて泣いた二号くんの話大好き

その後「俺も騎手になったよ」って報告したら「マジか!?頑張ったな~!凄い!偉い!」みたいな感じで顔をベロベロ舐められた話クッソ大好き

 

695:芝駆ける名無し ID:Vl4yXrlqR

厩務員のおっちゃんも「こういうイタズラはよっぽど親しい人間にしかしない。多分彼のことをちゃんと覚えてたんだと思います」って言ってたからウッドストックは本当に規格外に賢い馬

 

696:芝駆ける名無し ID:CjitoAHY+

二号くんの情緒と涙腺はもうボロボロ

 

697:芝駆ける名無し ID:VhpuYB4BB

引退後しばらくしてテレビの企画かなんかで池谷が会いに行ったら

「いけや!?いけやー!!」って叫ぶみたいに嘶きながら駆け寄っていって勢い余って鼻先でどついた話もホント好き

 

698:芝駆ける名無し ID:2ooTH6U5D

池谷が尻餅ついた瞬間「あっ」みたいな顔で固まるウッドと笑いながら立ち上がる池谷の対比がめっちゃ笑える

その後反省してるのかしてないのか池谷の顔をベロベロ舐め回すウッドと満更でもない池谷の絵面がもっと笑える

 

699:芝駆ける名無し ID:MjKInprSz

池谷「あっ、こら、ウッドやめろって!」ニコニコ

ウッド「ブモッブモッ」ベロベロ

池谷「俺はハチミツじゃないって、おいこら、っハハハハ!!」ニコニコ

 

700:芝駆ける名無し ID:cdYC5CzBP

和む

 

701:芝駆ける名無し ID:1iVi4HiYd

引退後も仲良しで尊い

 

702:芝駆ける名無し ID:WMKH9D2oZ

イケ×ウッド来たな……

 

703:芝駆ける名無し ID:KEMngHso0

は?ウッド×イケやぞ

 

704:芝駆ける名無し ID:IvdzxTHct

不毛なカプ談義はやめちくりー

 

705:芝駆ける名無し ID:lZma7xW4c

その後二人でヘドバンして池谷とメロイック舌出しやったのすこすこのすこ

 

706:芝駆ける名無し ID:E7cwnPAfs

最後に二人でビール飲むのもすごい……すごくすきです!

 

707:芝駆ける名無し ID:BUbsOTL7e

馬にビールっていいんだっけ?

 

708:芝駆ける名無し ID:UhPVurXEn

ゼニヤッタ「ビールを要求する!!」

 

709:芝駆ける名無し ID:ZCyTPF/2z

馬は元々アルコールに強いし、ビール酵母が一応整腸剤みたいな効果になるらしい

 

710:芝駆ける名無し ID:G89d10rU3

はえ~

 

711:芝駆ける名無し ID:Uh3eU2bE4

ビール片手に競馬中継見ながら自分の子供たちの活躍を応援するウッドの幻覚が見えた

 

712:芝駆ける名無し ID:IeW0QGPBY

完全に休日の親父やん

 

713:芝駆ける名無し ID:oxqm43Xb8

 

714:芝駆ける名無し ID:4y0LlEcNe

すっげぇ似合いそうw

畳の部屋でテレビの前で寝そべってうちわ扇ぎながらみてるやつなww

 

715:芝駆ける名無し ID:D8FN2nEec

容易に想像できて芝が生えまくり

 

716:芝駆ける名無し ID:p2zd7VjlV

ウマ娘のウッドストックもテレビの前でビール片手に娘の応援してるのはなんか想像できる

 

717:芝駆ける名無し ID:WHoaXlcP6

イケメンやけど肝っ玉母ちゃんやからな

 

718:芝駆ける名無し ID:HxzQ90crs

この馬知れば知るほど面白いわwww

もっと長生きしてネタ提供してくれwwwwwww

 

 




また最大文字数更新してて芝
マジでなんなんやこの馬もどき(ドン引き)


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GⅠ、波乱、好敵手共~前編~

大変ご無沙汰しておりました


 

 

「今日もやるぞ、ウッド」

 

「ヒヒッ(おう)」

 

 

 背中の相棒から掛けられた声にチラリと目配せ、嘶きで返す。それに相棒は満足そうに目を細め、俺の鬣を撫でた。

 

 

 2010年4月18日、中山競馬場。本日は晴天なれども馬場やや重し。

 

 日本競馬クラシック、GⅠレースの最初を飾る、桜舞う季節に熱狂の渦を巻き起こす怪物共の狂宴(バトル・ロワイアル)

 

『最も速い馬が勝つ』レース。

 

 

 GⅠ、『皐月賞』。三冠をその頭に頂く資格があるのはどの馬か。今日、それが決まる。

 

 

 

 

 

 

 なーんてカッコつけて心の中でナレーションなんか流してみましたけれどもね。レースに出る当事者である俺が他人事のようにモノローグ流してどうすんのよ。集中せえって話よね。はい返し馬やりまーす。

 

 

 とはいうものの、いつも通り俺の調子は厩舎のみんなが頑張ってくれたお陰で絶好調よ。見てこの毛艶! パドックでも俺以上に輝いてる奴は一頭除いて居なかったね!

 

 その一頭は誰かって? あそこで黒光りしてるエイシンフラッシュってお馬さんだよ久し振りだなアイツ。後でちょっかいかけに行ったろ。

 

 

 そして見てよこの全身に余すところなく鍛え上げられた俺の筋肉! ムッキムキのカッチカチやぞ! 特にこの爆乳と見紛う大胸筋! 肩周りも並みの馬なんぞ目でもないわ! ケツにちっちゃい重機載せてんのかい!?

 

 でもあそこで返し馬してるピサくんも俺とおんなじぐらいムキムキなんだよね。俺の見所さん全部被ってて存在感霞んじゃうじゃないのよもうちょっと痩せなさいよ。

 

 やっぱGⅠ出るような馬は違うなあ、どいつもこいつも化け物みてーな身体してやがるよ、仕上げてきてんねえ。俺もか。

 

 

 ちなみに鍛え上げまくったせいでオルフェから

 

(うわなにその身体……兄貴本当に馬かよ)

 

 ってドン引きされました。お兄ちゃんショックすぎて思わずアイツの顔面に尻尾ビンタ食らわせちゃったよ。

 

 だけど実際同厩の馬にもちょっと引かれてるんだよね。やっぱこの筋肉量は馬的に普通じゃないみたいで、近づくと一瞬後退りされてしまう。

 

 すぐに仲良くはなれるんだけど、他と比べてやっぱり半歩……いや一歩半ぐらい距離は置かれちゃう。そんだけこの身体が怖いらしい。お兄さん傷つくわぁ……。

 

 

 とはいえ課題だったスピードとスタミナも弥生賞の時と比べてかなり改善されてきたみたいだし、あとはどれだけ掛からず冷静に走れるかってところかな。この辺屋根の相棒には苦労かけてるっぽいから申し訳ないのよね、早いところ治したい。

 

 さあてもう少し返しをやってウォームアップは終りょ(やいやいやいやいやいやいウッドストックテメーこんにゃろう!!!)うわあすごく聞き覚えのある声がこっちに向かってくるなあ。

 

 

(よお、ダムール)

 

(久し振りじゃねーかウッドテメーバーローチキショーめ!! 今日は前みたいにぶっちぎれるとか思ってたら痛ぇ目に遭うぞ覚悟しやがれてやんでえこの野郎スットコドッコイめ!!!)

 

 

 俺にエセべらんめえ口調で嘶きながらドッカドッカと近付いてきたのはヒルノダムールだった。相変わらずテンション振りきれてるな、普段からあんな大声で喋ってて頭の血管切れたりしねーのかな?

 

 

(なんだ久々に会えて嬉しいのか。俺も嬉しいぞ)

 

(てやんでえ誰がテメーなんかに会えて嬉しいもんかバーロー!!)

 

(そのわりには尻尾ブンブンじゃん)

 

(あ゛ぁ!? 俺尻尾振ってたか!?)

 

(気付かんもんかねそういうの)

 

 

 いやあこの似非べらんめえキャラのダムールとも本当に久々だな。NIKKEI杯以来じゃないか?

 

 こんなだけどちゃんと名馬なんだよなあ。本当に信じられねえけど。

 

 

(なんだなんだ、騒がしいと思ったらまたご無沙汰な奴が居るじゃねえか)

 

(ダムールうるさい……静かに)

 

(よお、ピサ。フラッシュも久し振り)

 

(おうおう久々じゃねーかテメーら!! 前の借りは返させてもらうぞこんにゃろーめ!!)

 

 

 俺とダムールの騒ぎを聞き付けたのか、エイシンフラッシュとヴィクトワールピサが歩み寄ってくる。いやはや錚々(そうそう)たる面子じゃないの。この名馬揃いの集まりに俺が交ざってるっていうのが今でも不思議な気分だ。

 

 

(ダムールは前のめり過ぎだぜ。そんな調子でいて、スタートでずっこけても知らねーぞ)

 

(うるせーフラッシュ!! テメーこそ群れに呑まれてその無駄につやっつやの馬体が泥まみれに成っても慰めてやんねーぞバーロー!!)

 

(だからうるさい……)

 

(ピサも相変わらずクールだよなあ。そこが好き)

 

(すり付けるのやめろ!! 弥生賞以来トラウマなんだよ!!)

 

(い~いじゃんかよぉ~~~もっと仲良くしようぜぇ~~)

 

(やめろぉ!!)

 

(俺ピサがこんなに取り乱すの初めて見た)

 

(おう俺もだわ!! 珍しいもん見れたな!!)

 

 

 俺がピサにじゃれついてピサが逃げようとする。それをフラッシュとダムールが面白そうに眺める。ほのぼのしてるだろ? 皐月賞直前なんだぜこれ。

 

 もうウォームアップなんかそっちのけ、騎手も放ったらかしで馬同士でわちゃわちゃタイムよ。緊張感もあったもんじゃあない、こんなレース前代未聞だろ。

 

 

 とかなんとか言っていたら。

 

 

(いやーでもさあ、お前らちょっと腑抜け過ぎじゃね? 今回は俺が勝ったも同然だな)

 

 

 

 フラッシュが爆弾を投げつけた。

 

 

 

(……は? フラッシュお前何言ってんの? 今日も俺が勝つに決まってんじゃん)

 

(……いいや、俺が勝つ。最後に笑うのは俺だ)

 

 

 すぐに否定して勝利宣言し返すと、意外なことにピサも乗ってきた。いやでもコイツも負けず嫌いだし意外でもないか?

 

 

(おうおうおうてやんでえ俺が勝つっ()ってんだろーがよバーローこんちきしょーめ!! 俺抜きで勝手に盛り上がってんじゃねーぞボケナス共がよこんちくしょーが!!)

 

 

 ダムールがいっそ清々しいほどの喧しさでさらに勝利宣言を被せてくる。あ、ヤバいこれ止まらん奴だ。

 

 

 

(いやいや俺だって!)

 

(俺だよ勝つのはよ!)

 

(俺だ……!)

 

(てやんでえ俺に決まってんだろ!!!)

 

(おいおいおいお前ら俺の強さを知らんとは言わせねーよ!? そんなに煽っといて負けたら恥ずかしすぎて馬房から出て来れなくなるかもなぁ!?)

 

(はあー!? 俺に一度でも勝ってから言ってくれませんかねーそういうことー!? お前こそあんま強い言葉使ってたら逆に弱く見えちゃいますことよー!?)

 

(そうやって罵りあってろ……俺がぶっちぎる……!)

 

(俺を本気で怒らせねえ方がいいぞサンピン共!! 後で吠え面かくのはテメーらだからな!!!)

 

 

 ほほーん!? なるほど!?

 

 お前ら俺が目の前に居るってーのにそんなこと!?

 

 宣っちゃうわけねそうかーなるほどねーへーあっそー!?

 

 

(てめえら舐め腐んのも大概にしやがれよ!? まとめて潰してやるよ!! 特にウッド!! テメエだけはここでぶっ潰す!!)

 

(上等じゃねえかフラッシュこの野郎!! 今度はハナ差どころで済まねえようにしてやるわッ!! 今日は負けても慰めてやんねえからな!!?)

 

(うるせえんだよてめえら……特にダムールうるせえ蹴り飛ばすぞ……!!)

 

(これが標準の声量だバーロー!! 俺だってテメエのそのスカした面前々から気に入らねぇんだよ前歯ブチ折ってやろうかチキショーめ!!!)

 

 

 

 

((((お前らまとめてぶっ倒す!!))))

 

 

 

 

 

 

 

(君たちっ! やめ(たま)へっ!!)

 

((((あ゛ぁッ!?))))

 

 

 人が啖呵切ってる時に横から水差すような真似しやがってどこのどいつだこの野郎!?

 

 

(レース前に争うなどなんと醜い! 醜悪! 不粋! 君たちも競走馬なら黙ってレースで決着を付けるべきではないのかね!?)

 

 

(しかし君たちもつくづく運がない!! 何故ならば今回勝利するのはこの僕っ!)

 

 

(熱気冷めやらぬターフに咲く一輪の薔薇っ!!)

 

 

 

(僕の名はローズキングダムッ!! 美しき僕の華麗なる勝利を特等席で見届けさせてあげよう!! 君たちにはその権利があるっ!!)

 

 

 

 

 

 

 

 

(うるせえ引っ込んでろエセ劇団野郎)

 

(横からいきなりなんだテメエぶっ飛ばすぞ)

 

(仲裁に来たのか挑発に来たのかどっちだクソガキ……)

 

(そもそも初対面ならキチンと挨拶しろや常識知らずがこの野郎バカ野郎!!!)

 

(ヒィン…………このひとたちこわい…………)

 

 

 

 

 

 

『えー、GⅠ皐月賞ですが返し馬から大波乱です。ヒルノダムール、ウッドストック、エイシンフラッシュ、そしてヴィクトワールピサ。名だたる名馬四頭による顔を付き合わせてのにらみ合い嘶き合いが勃発しました』

 

『各鞍上必死に手綱を操りますが喧嘩が止まりませんね。先程まで仲良く並走していたのですが何があったのでしょうか』

 

『ひょっとすると誰が勝つかで揉めているのでしょうかね? あっ、ローズキングダムが近付いていきます、仲裁に入るのでしょうか』

 

『……あー、四頭に一喝されて大人しくなっちゃいましたね。さすがに多勢に無勢といったところですか』

 

『今年のクラシック戦線は大荒れになりそうですね。特に台風の目になるのは中心であろうウッドストックですか』

 

『彼はレース内外でも話題には事欠きませんからねえ、ここでGⅠを勝って勢いを増すのか、それともライバルが無敗記録にストップをかけるのか注目です』

 

 

 

 




まず投稿遅れてごめんなさい

次に今回馬どもの治安かなり悪くてごめんなさい、作者がシングレと東リベ読んでたせいだと思います

最後にまさかの分割です、計画性なくてごめんなさい。後編はもう少し待っていてください


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GⅠ、波乱、好敵手共~中編~

育成スイープにSSRサポタイキとか財布が死ぬんだが?
サイゲは人の心とかないんかなんだが?


 

 

(…………で、何であんなこと言ったわけよ?)

 

(というかまず名前なんだっけ?)

 

(確か…………ローズ、なんたら?)

 

(べらぼうめ前口上長ったらしいんだよもっと簡潔に言えバーローこんちきしょーめ!!!)

 

(ひいぃ……このひといちばんこわい……)

 

(だってよダムール)

 

(うっせー元から俺ぁこんなんだわ!! 悪かったなチキショーめ!!!)

 

 

 少しして、このローズなんとかのせいで毒気を抜かれた俺たち。改めてこのローズなにがしの話を聞くことにした。

 

 

 俺たち四頭で横並びに囲んで。ことと次第によっちゃ徹底的にわからせてやりますことよ。

 

 

(えっと、僕ローズキングダムって言います……喧嘩を止めようとしたのは本当なんです……)

 

(いやー俺らも熱くなってたからなあ。俺らしくもなかったねありゃ)

 

(元はと言えばフラッシュが悪いだろ。あんな爆弾投げられたら誰でもそうなるわ)

 

(あ?)

 

(お?)

 

(お前らもうやめろ……!)

 

(流石にしつけーぞ!!)

 

 

 チッ、一番喧嘩っ早いダムールにまで言われるのは釈然としないが、ピサに言われちゃしょうがねえな。

 

 

(あー…………それで……?)

 

(あ、はい。あの、止めようとしたのはいいんですけど……あの剣幕じゃないですか? ちょっとやそっとのことじゃ聞いてくれそうもないし、あのぐらいぶっ飛んだことしないと誰も止まらないかなって……目が血走ってて怖かったし……)

 

 

 なるほど、一応考えがあってのことなのね。そんで今のこいつが素なのか。それにしたってオペラ風になったのは何でだとしか言いようがないが。

 

 

(まあまあ、そーゆーことなら許したげようよ。そもそも俺らが喧嘩してんのが悪いしな)

 

(フラッシュが言うのがアレだがそだね)

 

(悪かったな……)

 

(俺も詫びる!!!)

 

(あー良かった……他の皆もめちゃくちゃ怖がってたんですよ。本当になんとかなって良かったあ……)

 

 

 あ、マジ? 俺らそんな周りに迷惑かけてた? 確かにちょっとヒートアップし過ぎた感はあるけどそんなにだったか。すまんかった。

 

 いつの間にかゲート入りの時間も迫ってるしそろそろ本格的に集中せんと。

 

 

(それじゃあ僕先に行きますね)

 

(ああ、重ね重ねすまんな)

 

(いえ…………あ、そうだ。皆に言っておかなくちゃ)

 

(ん? どうしたローズ)

 

 

 ふとそう言って立ち止まったローズが俺たちの方へ振り返る。

 

 

 

 

(喧嘩を止めに来たのは嘘じゃないですけど……)

 

 

 

 

 先程まで俺たちにビビっていたはずのローズ君は既に居なかった。

 

 

 

 

(勝ちにいくのも、本当ですよ?)

 

 

 

 目に野心と闘争心を宿した競走馬『ローズキングダム』がそこに居た。

 

 

 

(覚悟したまえ! 君達は目撃者だ!! 僕の華々しい勝利を誰よりも近くで刮目し、やがて(こうべ)を垂れてひれ伏すために存在するのだ!!!)

 

 

 

 ああ、そうだった。コイツも知識の浅い俺ですら知ってる馬だ。このGⅠの舞台にのしあがってきた化け物馬だった。

 

 

(光栄に思うがいい!!! 貴様ら纏めて、このローズキングダムが表彰台代わりに踏み潰してやる!!!!)

 

 

 ビリビリ、と。奴の低く唸るような、轟くような嘶きに、競馬場は一瞬しんと静まり返り、俺たちも例外なく一瞬押し黙った。

 

 

 

 

 

 そうか、それがお前の本性か。四頭相手にそれだけ啖呵を切れるのは、尚且つ全員を一瞬たじろがせてしまえるのは並大抵の根性じゃねえ。なるほど、お前はそういう馬なのか。

 

 

 そうか。

 

 そうかよ。

 

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

(……上等だ……かかってこい!!)

 

(受けて立つぜこの宝塚かぶれの(はな)垂れ小僧が!! お望み通り返り討ちにしてやる!!)

 

(口だけは達者らしいなべらぼうのクソガキがよ!!! 二度とその舐めた口利けなくしてやろうじゃねえかこのスカタンがてやんでえバーローチキショーめ!!!!)

 

 

 

 あーあー感化されて三頭ともまた燃え出したよ。ローズ君本当に仲裁したいのか喧嘩売りに来たのかどっちなのよ。どっちもか。

 

 

 まあ、

 

 

 

 俺も例外じゃあないけどな。

 

 

 

(嫌いじゃないぜ、そういう傲慢な態度……だが勝つのは俺だ……!!!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ウッド、ダメだろ!」

 

「ヒィン……(すんません……)」

 

 

 ちなみにゲート入り直前で池谷殿に怒られました。怒られて当然だが。

 

 

 

 

『……途中五頭寄り合って大喧嘩というハプニングはありましたが、各馬ようやく落ち着いたようです。続々とゲートに入っていきます』

 

『一時はどうなるかと思いましたが、なんとか出走できそうですね。ローズキングダムも最後は四頭に吠えていましたが、宣戦布告でしょうか』

 

『他四頭も負けじと吠えていましたねえ。これまでのレースを見るにどの馬も負けず嫌いですから、誰が一番強いか喧嘩するのも仕方ないかもしれません』

 

『果たしてこの一幕がどのような影響を及ぼすのでしょうか。実力でいえば誰が勝ってもおかしくないですし、伏兵に差される可能性も十分にあります』

 

『今年も波乱の幕開けとなる予感がしますクラシック戦線、間もなく戦いの火蓋が切られようとしています。GⅠ皐月賞、間もなく発走となります』

 

 

 

 

 俺の戦いは。

 

 

 

 

『さあゲートインから…………一斉にスタート!!!』

 

 

 

 ここから始まる。




ご愛読ありがとうございました!えびんす先生の次回作にご期待ください!!!













はい、やりたかっただけですごめんなさい。まさかの三分割ですごめんなさい。中編とか作者も予想してなかったですごめんなさい。

後編?もうちょっとだけ待っていてちょうだいな。


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GⅠ、波乱、好敵手共~後編~

お待たせしました!お待たせしすぎたのかもしれませんね!

いやもう本当にお待たせ致しました……前回の投稿から半年って…………

ようやくモチベ回復して投稿再開です。



 

 

 ガシャン、と一斉にゲートが開き、ほぼ横一直線に馬が飛び出す。

 

 俺ことウッドストックは二枠三番、内枠スタートだ。内枠っていうのはそれだけで距離的有利がある。別に大外でも構わんがまあ有利になるのならそれに越したことはない。

 

 

 とはいうものの、実は俺ってスタートはそこまで得意じゃないのよね。一年近くレースに出ておいてなんだが、未だにタイミングを合わせるのが苦手というか。

 

 ゲート自体は苦手じゃない。狭いとことか入ってても平気だしむしろ好き。だけど調教師の兄ちゃん曰く、「ゲートが苦手じゃないということは、相対的に早く出たいという気持ちがないんじゃないか」って言ってたから、スタートが下手なのはそのせいなのかもしれない。単に俺に反射神経がないからかもしれないが。

 

 ま、俺の戦術は基本差しか追込だからそこまで困らんがね。のんびりと全体を眺めさせてもらわぁ。

 

 

 

 

『さあ各馬ゲートインから一斉にスタート、ウッドストックちょっと出遅れましたがほぼ横並び、いや勢いよく飛び出していったヒルノダムールこちらは掛かっているのか?』

 

 

 

 

(どぉけどけどけどけバーローてやんでえコンチキショーめ!! チンタラ走ってンじゃねーぞ!!)

 

(うおわっ!?)

 

(なんだアイツ危ねえな!?)

 

 

 おいおいおい、ダムールのやつ頭に血が上って掛かりまくってんじゃんよ。下手したら斜行で失格だぞ。あーあー鞍上さんめっちゃ綱絞ってるじゃねーか、なにやってんだよアイツ。

 

 まあこれでスタミナ切れ起こして沈んでくれりゃこっちとしても助かりますけどね。あれはダムールの自業自得だし、ライバルが減るに越したことはないし。

 

 

 さて他の面々は……んー、ちょっと前にピサがいる……ってことは差しかな。フラッシュとローズ(なにがし)は前目につけて先行策か? まあ王道の作戦だな。

 

 さて池谷殿どうする? このままのんびりお散歩といくかい?

 

 

「…………こっちだな」

 

 

 む、外に行って少しずつ上がれと。ドンケツはさすがに避けたいのかね、ほいほい。

 

 スルスルっと外に出て二、三頭ほど躱す。やけにあっさり譲ってくれたところをみるに、コイツらも多分中盤終わり辺りから勝負に出るつもりだな。ここでブロック策に出て余分な体力を消耗するのは避けたいようだ。

 

 

(先に行くぜ)

 

(どうぞ)

 

 

 ふむ、意に介さずと。流石にGⅠに出てくるような奴には煽ってもさほど意味がなさそうだ。ダムール? あいつアホだし。

 

 む、相棒が手綱を絞った。ということは今回は後方で様子見か。あいつらは……あ、ピサ俺の前にいるじゃん。

 

 

(よっ)

 

(……おう)

 

 

 軽く声をかけたら返事はしてくれた。こっちの方はほとんど見てないっぽいけど。やだもー寂しいじゃないの、ねーねーこっち向いてよぉ。

 

 ……チッ、一瞥もしやがらねぇ。まあええわ、それならそれで嫌でも意識せざるを得ないようにしてやる。

 

 

 

 

『さあ順位を見ていきます、先頭は変わらずヒルノダムール。鞍上藤川、必死に手綱を絞りますが掛かりっぱなし、これは厳しいか。暴走特急の後ろ続きますはアリゼオ、その更に後ろ、内からガルボ、ダイワファルコン、ゲシュタルトが三頭横並び。半馬身離れてエイシンフラッシュとローズキングダム、外からはハンソデバンド。リルタヴァル、レッドスパークル、バーディバーディと続いてヴィクトワールピサここにいた。その外から本日一番人気ウッドストック、ヴィクトワールピサの斜め後方にピッタリと付けている。二馬身離れましてサンディエゴシチー、シャインが争っている。その後ろレーヴドリアン、トーセンアレス、殿はネオヴァンドームとなっております』

 

 

 

 

(チッ…………)

 

 

 ピサの外側斜め後ろにピッタリと張り付き、外からは抜け出せないようブロックする。ピサはその筋肉モリモリマッチョマンな威圧感のある馬体と、それに違わぬ溢れんばかりのパワーの持ち主。その辺の奴らのブロックなら強引に抜け出して前に出ることも出来るんだろうが、相手が俺なら話は違ってくる。

 

 なぜなら俺はお前と同等の馬体とパワーがある。考えなしに外へ出ようもんなら逆に内側へ押し込めてやれる。

 

 当然そんなことすれば進路妨害となるだろうし、ピサの騎手も落馬しかねない。だから俺から手は出せないが……逆に言えば、ピサも下手な動きはできないと言うことだ。

 

 

(ピサくんビビってる~、ヘイヘイヘーイ)

 

(お前後で覚えてろよ……!)

 

(やだピサくんこわーい、そんな目くじら立てちゃイケメンが台無しよー)

 

(腹立つ……ッ!)

 

 

 そうだもっと怒れ、冷静さを欠け。それが隙になり、焦りになり、体力消耗に繋がる。そうなればお前は終わりだ。

 

 とは言うものの、実際この作戦は俺もきつい。こっちも妨害判定されない程度に張り付かなきゃいけないから、実は相手の動きを逐一把握する必要がある。

 

 ましてや相手は俺の知る史実でのGⅠ馬。鞍上も一流とくればその動きは予測が本当に難しい。ブラフやフェイントも織り交ぜてくるのだから、一瞬でも読み間違えばすぐに脱獄されてしまうだろう。

 

 まだ勝負は中盤。仕掛けどころまで、俺の領域(ゾーン)までじっと耐えるんだ。

 

 

 

 

 

 

 

『さあ各馬いよいよ最終コーナーに差し掛かるところで、先頭ヒルノダムールから変わりましてアリゼオ、その後ろピッタリとダイワファルコンつけている。クビ差でガルボ、外にゲシュタルト、ヒルノダムールはズルズルと下がってただいまこの位置。ローズキングダムとエイシンフラッシュはここが仕掛けどころでしょうか。一馬身離れてハンソデバンド、さあ外からヴィクトワールピサ上がってきた! ウッドストックも続いていく! ネオヴァンドームも最後方からじわりじわりと上がってきてこの位置! 後はトーセンアレス、サンディエゴシチー、シャイン、レーヴドリアンが団子状態! 各馬最終コーナーぐるりと回って最後の直線に入っていく!!』

 

 

 

 

「ここだ、いけ!」

 

「ブルルッ!(了解!)」

 

 

 相棒の合図である見せ鞭を見て、俺は溜めた脚を解放する。どうせ大外ブン回すんだ、綺麗なコーナリングだのなんだの知ったことか。ただひたすら脚を回して前に前に上がっていくだけよ。

 

 ただ誤算だったのは、

 

 

(ふん…………)

 

(ッ! ピサぁ!!)

 

 

 右斜め前でマークしていたピサも全く同じタイミングで加速し始めたことだった。

 

 向こうの騎手も俺たちが上がってくることを予想していたのか、池谷殿がまさに鞭を打とうとした瞬間こちらをちらりと見て、素早くピサに鞭を打ったのだ。全く同時に。

 

 おいおいいくら経験豊富で一枚も二枚も上手とはいえ、後ろの騎手に併せて同時にスパートかけるなんてとんでもねえ技術披露してくれんじゃん。おかげで一歩抜け出す作戦がおじゃんじゃねーか。

 

 こうなるとピサのパワーと圧でコースを抉じ開けられてしまうし、俺とピサのスピードはほぼ互角。そうなると半馬身ほど前を走るピサが有利だし、俺に逆転の目があるとすれば、脚をブッ壊す覚悟で限界越えて全力疾走しなきゃいけなくなるんだぜ、勘弁してくれよ。

 

 

 しかも今回の敵はピサだけじゃねえ、前にいるフラッシュもローズも続々とスパートをかけてる。化け物達がただゴールを目指してぶつかり合うんだぞ? こんなとこ恐ろしくて入っていけねーよ。ダムールは……まあ、うん、ドンマイ。

 

 

 だけどよぉ、ここで勝負投げて流すような根性なら、そもそもこのクラシックレースなんて最初から走ってねえんだよな。

 

 馬として生まれて早三年。何かに導かれるようにレースを走ってきた。俺が生まれた意味を、馬として生まれ変わった意味を知るために。

 

 俺が馬になった理由は今でも分からない。だけど、一つだけ分かることがある。

 

 それは。

 

 

 

 

「行くぞウッドぉ!!」

 

「ヒヒッ!!(応ッ!!)」

 

 

 

 

俺自身がどうしようもなく負けず嫌いだってことなんだよ!!!

 

 

 

 

『さあ最後の直線で上がってきた! エイシンフラッシュ、ローズキングダム! さらに後ろからヴィクトワールピサ、ウッドストックも猛追! この四頭が抜け出すか!? まだ勝負は分からない! 勝負は全く分からない!!』

 

 

 

 

(どうしたオペラかぶれェ! 啖呵切った割にスローペースじゃねぇのッ!?)

 

(喧しいなんちゃって伊達男ォ! 君こそ息が上がっているじゃあないかッ!!)

 

(あ゛ぁッ!?)

 

(お゛ぉッ!?)

 

 

 

 おーおー前で喧嘩しながら走ってらっしゃいますねえローズ君もフラッシュも!! 随分楽しそうじゃねぇの!?

 

 

 

(待てゴラァ……!!!)

 

(俺ら抜きで一位争いとか赦さねぇぞ!!!)

 

(げっ!? 面倒臭ぇのが来た!!)

 

(大人しく僕の背中を追っていれば良いものを!!)

 

 

 誰がそんなシャバい真似するか!! 自分で進む道ぐらい自分で決めらぁ!!

 

 

(お前ら引っ込んでろ!! 特にウッド並び立つな!!)

 

(なんだとフラッシュテメェこの野郎!? そっちこそ張り合って来んじゃねえ!!)

 

(僕の覇道を邪魔するな十把一絡げのモブ共ォ!!)

 

(黙れエセ宝塚……!! お前はお呼びじゃねえんだよ……!!)

 

 

 

 

 

 

(オウオウオウオウ俺を忘れてんじゃねーぞテメェらバーローてやんでぇチキショーめ!!! 俺が一番強ぇんだっ()ってんだろうがべらんめえクソッタレバーローコンチキショーめ!!!)

 

((((アイツ戻ってきやがった!?))))

 

 

 

 

 

『四頭縺れる大混戦!! 大本命ウッドストックかヴィクトワールピサか!? 対抗エイシンフラッシュ負けじと差し返す!! ローズキングダム負けていない!! その、外からもう一頭飛んできた!! ヒルノダムール!! ヒルノダムール!? ここにきてダムール復活の追い上げ!! 先頭争いはこの五頭だ!! 新緑香る季節に肌焦がす熱気!! 皐月賞の冠を手にするのは誰だ!?

 

 

 

 後ろから一際うるせえのが来たと思ったらダムールじゃねえか!? さっきスタミナ切れて下がっていったのはなんだったんだよ! ここにきて要らんド根性発揮しやがって!!

 

 

(ギャハハハハハッ!! さっきのはフリに決まってンだろバーローてやんでぇマヌケ共が!! 沈んだと思ってた奴にケツ追われる気分はどうだべらんめえスットコドッコイクソッタレバーローめ!!)

 

 

((((あの野郎腹立つ!!!))))

 

 

 よりにもよってダムールの野郎に後ろから煽られるとか屈辱以外の何物でもねえ! ああでも実際アイツとんでもねえ速度で追い上げてきてんだよなあ!? どうやらあの序盤の暴走はガチのブラフで、この展開はアイツの作戦通りだったらしい! 不本意だがちょっと見直したよダムール! 俺たちをまとめて騙してビビらせたんだからな!!

 

 

 だがよお?

 

 

 

(すっ込んでろ江戸っ子モドキ!!!)

 

(しゃしゃり出んな……!!!)

 

(お前は後ろで俺らのケツ見て大人しくしてろアホダムール!!!)

 

 

 その程度でビビってイモ引くほど俺らはお利口さんじゃあねえんだよ!!

 

 

(んだとゴルァ!? コンニャロー久々にトサカに来た!! お前らまとめて蹴っ飛ばしてやるから覚悟しろべらんめぇ共がよ!!!!)

 

 

 

 

(僕が言うのもなんだが君らいつもそんな調子なのかい?)

 

 

 

 

 

『五頭だ五頭だ! 五頭一直線横並び!! 青い芝を若き怪物達が踏み荒らす!! 各鞍上しなる鞭!! スタンドからは怒号と悲鳴!! 後ろも必死に追いすがるが追い付けない! 五頭飛び出して残りは蚊帳の外!! 誰が抜けるんだ!? 誰が差し切るんだ!? 誰だ!? 誰だ!? 退かない退かない誰も譲らない!! プライドとプライドがぶつかる叩き合いだ!! 意地と根性が五頭を突き動かす!! 皐月賞で!! 一冠目でこの熱狂!! 誰が勝つんだ!? 誰だ!? 勝ったのは誰だあああああ!!?』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 し、死ぬ…………。

 

 

 

 いやもう無理…………。死ぬってこれ……肺痛ぇ……酸素……酸素が足りない……。

 

 脚も気を抜いたら力が入らなくなりそう……今流して走れてるだけでもわりと奇跡に近いんだわ……いかん頭痛もしてきた……誰か酸素ボンベくれぇ……。

 

 

 

(ゼェッ……ゼェッ……こ、コンチキショーめ……何で誰も譲らねぇんだ……)

 

(れ、レースなんだから……当たり前だろ……っうぇ、吐きそ……)

 

(やめろフラッシュ…………絶対吐くな…………もらいゲロする…………)

 

(僕も……事故るかも…………)

 

(お前ら絶対やめろよ……特にフラッシュ……)

 

(なんで俺だけ責任重大なんだよ…………っうぉえ、マジで吐く)

 

((((マジでやめろ……!!))))

 

 

 

 ピサもどっかの芸人みたいなフラグ立てるなよ……。

 

 そ、それより着順……着順はどうなった……? 横並びで誰が勝ったかさっぱりなんだよな……。

 

 

 

 

『さあ一着はどの馬なのか。写真判定が中々終わりません』

 

『五頭でほぼ一直線の横並びですからねぇ。掲示板に収まる全ての馬の着順を決めなければなりませんから、慎重に判定しなければいけません』

 

『体勢では……若干ローズキングダムが後ろに居ますでしょうか……? 他はまさにハナ差、1cmが勝負を分ける世界ですがこれはかなり判定が難しいですね』

 

『スタンドは大歓声から一転、観客が馬券を握りしめ、固唾を飲んで結果を待っています。いやあ~ドキドキしますね!』

 

『大激戦でしたからねえ、私も年甲斐もなく興奮してしまいました。こんなレースを実況出来たというのは冥利に尽きますよ────おっと、着順が確定したようです! 皐月賞の栄冠を手にしたのはどの馬か! 掲示板!!』

 

 

 

 

 

 

『────ウッドストック!! 掲示板の一番上! 表示された数字は三番のウッドストックだ!! 二着にヴィクトワールピサ! なんとハナ差1cmでの決着です!! 三着ヒルノダムール、エイシンフラッシュ、ローズキングダムと続きます! 凄まじい大激戦!! 誰が勝ってもおかしくない名勝負!! 若き怪物達を抑え、冠を手にしたのはウッドストックです!! 鞍上池谷天高くガッツポーズ!!』

 

 

 

 

 

 

(…………俺の勝ちだな)

 

(クソッ…………またウッドに持っていかれた…………)

 

(まだ二着だからいいだろ。俺なんてよりによってダムールのバカに負けたんだぞ……)

 

(お゛ぉ!? 何だとフラッシュテメー!? 場外乱闘ならいつでも買うぞダボが!!)

 

(うるせえぞダムール……! フラッシュも煽るな……!)

 

(へーへーすみませんでしたねっと)

 

 

 

 

 いやあ、ついに俺もGⅠ馬か。しかもクラシック三冠の一つ、皐月賞。

 

 嬉しいねえ。このレースをコイツらと(しのぎ)削って掴み取ったんだ。もう嬉しいなんてもんじゃ表せねえ。

 

 相棒も背中で吼えてるねえ。あの大激戦で勝ったんだからそりゃあ嬉しいでしょうよ。

 

 ほら見てあの大歓声。俺らに賭けた奴が躍り狂って、賭けなかった奴は天を仰いで馬券の紙吹雪だ。歓喜、悲鳴、怒号、慟哭。色んな奴の叫びが俺の全身をブッ叩いてくるんだ。

 

 

(ケッ、一丁前に感傷に浸りやがって。次は俺が勝つからな)

 

(オイオイ俺だってんだ!! テメーだけはぜってーに潰すからなウッド!!)

 

(いいや俺だ…………!!!)

 

(ハッ! いつでもかかってこいよ! …………あれ、そういやローズ某は?)

 

 

 ふと気付いたらずーっと静かだから気になっちゃったよ。

 

 アイツは……あーいたいた後ろにいたわ。アイツ五着だから大健闘だったし、最後まで食らい付いてきた根性もあるし。スゲー馬なのは改めて分かったから労いの言葉でも……。

 

 

 

 

 

(負けたァ…………っ、えぐ、負けたぁぁ…………

 

 

ぶえええぇぇぇぇぇ!! 勝てなかったあああぁぁぁぁ!! 牧野さんごべえええええええん!!)

 

 

 あらやだ泣いちゃったわよあの子!?

 

 

 

(オイオイウッド悪い奴だなお前)

 

(ちょっと引くわ…………)

 

(泣かせるとかどうかと思うぞウッドべらんめぇ!!!)

 

(は!? ちょっと待て! 俺が悪いのかコレ!?)

 

 

 いやいやおかしいって! それを言うならローズの前にいたお前らも全員同罪だろ! なんでしれっと俺に全責任擦り付けてんの!?

 

 

(泣ーかしたー泣ーかしたー)

 

(オーナー馬主に言ってやろ…………)

 

(今すぐ謝ってこい!!!)

 

(テメーらまとめてドタマ蹴っ飛ばすぞ!!!)

 

 

 

 

 

 

『ローズキングダム、嘶きが止まりませんね』

 

『案外悔しくて泣いているのかもしれませんねえ』

 

『ハハハ……いやあしかし先ずは一冠、といったところでしょうか』

 

『これからのクラシック戦線に期待ですね。ウッドストックがこのまま三冠馬となるか、ライバルが意地を見せるか』

 

『いやあ楽しみですねえ…………あ、ウッドストックがローズキングダムに近付いて……顔の、鼻の横を擦り合わせてますね。宥めているのでしょうか』

 

『レース前の大喧嘩が嘘のようですね。闘いのあとの友情というものですかね』

 

『ドラマチックですねぇ』

 

 

 

 

 

 

(びぃぃあああああああ!!! おぎょぶいいいいい!!! ぜぼあああああああああああああ!!!!)

 

(いや泣き方の癖すげぇなお前!!!)

 

 

 

 

 結局宥めるのに10分ぐらいかかった。解せぬ。

 

 




本当に馬かお前ら(ドン引き)


アンケートの結果覇道路線になりましたが……
「この展開の方が面白いかもな……」と思ったら方針変えるかもしれません。その時はお伝えします。


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箸休め─ウッドストックと生徒会─

短い。


 

 

「会長」

 

「ん? どうかしたかい?」

 

 

 

 

「常識に欠ける上司、気に掛ける」

 

「んぐっ…………」

 

「…………」

 

「…………」

 

 

 

「ウッド」

 

「どうした? 会長」

 

 

 

「資料がなければ、知りようがない」

 

「フフッ…………」

 

「…………」

 

「…………」

 

 

 

「会長、しもやけになると痒くてイライラしないか?」

 

「ん? ああ、どうしてもな……それが?」

 

 

 

「今日しもやけになった教師もヤケになった」

 

「ふはっ…………!」

 

「…………」

 

「…………」

 

 

 

「ウッド、足湯に入ったことはあるか?」

 

「ああ、いいよなあれ。疲れが取れる」

 

「うむ。そう、まさに」

 

 

 

「足湯で疲れをフットバス」

 

「ぐっ、しまっ、ぶくくく……っ!」

 

「…………」

 

「…………」

 

 

 

「そういえば聞いてくれ会長」

 

「ん?」

 

「叔父が会社経営してるんだが、新卒の懇談会開いたけど誰も来なかったからクビにしたらしい」

 

「……それは厳しいな。だがなぜそんな話を……?」

 

 

 

「懇談会で会うと思ったが、来ん段階でアウト」

 

「ブフッ、んふふふふふっ…………!」

 

「…………」

 

「…………」

 

 

 

 

「そうだ、ウッド」

 

「なんだ?」

 

「ふと思い出したんだが、嘘か真か、佐賀県佐賀市にはイエス・キリストが晩年を過ごした家が今でも残っているそうだ」

 

「ほう? また眉唾な話だな」

 

「今度二人で行ってみないか」

 

「え、なんであたしと……?」

 

 

 

「佐賀市にあるかないか、捜しに歩かないか?」

 

「っ、んぐ、くくく…………ッ!」

 

「…………」

 

「…………」

 

 

 

 

「あの、会長……それとウッドストック」

 

「ああ、エアグルーヴ。どうしたんだい?」

 

 

 

「業務中にダジャレを言い合うのは止めてください。気が散ってしまいます」

 

「あ、ああ……済まない、つい夢中になってしまった」

 

「ウッドストックもだ。貴様わざとやっているだろう」

 

「ごめんごめん、つい」

 

「業務を手伝わないのなら帰れ、全く……」

 

「…………」

 

「…………」

 

 

 

ゴソゴソ…………

 

 

 

「…………べん、べん、べん」

 

「…………今度はなんだ、弁当箱なぞ叩いて」

 

「べん、べん、べん…………」

 

 

「ベントーベン」

 

「ぶくくっ…………!!」

 

「会長」

 

「…………済まない」

 

 

「……ウッドストック、貴様いい加減にしないと」

 

「…………あっ」パカッ

 

「…………?」

 

 

「からやん*1

 

「…………?」

 

 

 

「っ! そういうことか……くっ、ふふ……!」

 

「よっし、副会長陥落ぅ!」

 

「……え、あ、ウッド? い、今のはなにをかけたんだ……?」

 

「うわ会長ここまできてそれはないわ」

 

「え、えぇ……?」

 

 

 

「……仕事しないなら私は飯食いに行くぞ」

 

「すみま旋律」

 

「ん、くく……っ、だ、駄目だ、沸点が低くなって……っ」

 

「ゆるしてクレッシェンド」

 

「んふふふふふ……っ!」

 

「よし今日はエアグルーヴ弄る日だな! まだまだストックはあるぜぇウッドストックだけにな!」

 

「んっぐ……!」

 

「あははははははっ!!」

 

「…………帰る」

*1
オーストリアの指揮者ヘルベルト・フォン・カラヤンと弁当の中身空やん!をかけている






ウッド「この鶏肉取りにくいなぁ」

ブライアン「っ、くく……!」




エアグルーヴは多分音楽関係でボケると堕ちると思う
だから音楽に強いウッドストックをぶつける必要があったんですね


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馬主騒動─前編─


 またまたお待たせしました。大晦日からコロナに罹って後遺症で蓄膿症と頭痛に悩まされてメンタル死んでました。せっかくの長い正月休みが全部潰れましたコンチキショーめ。


 

 

 五月の初め。桜の花弁もすっかり散り、青々とした葉を伸ばす季節。

 

 燦々と光陽が大地を照らし、色とりどりの花が鮮やかに咲き誇る頃。

 

 

 

(あったけぇなぁ弟よ…………)

 

(そうだねぇ兄貴…………)

 

 

 俺は弟と同じ柵内に放牧され、のんびり草を食みながら日向ぼっこに興じていた。

 

 

 どうも、ウッドストックです。皐月賞から数日経って、現在完全オフです。

 

 いやーアテクシとうとうGⅠ馬になってしまいましてよ。元人間の馬もどきなアテクシが。クラシックの一冠目、皐月賞を勝ち取ってしまいましたわよ。あなた信じられます? アテクシはぜーんぜん実感ありませんことよ。

 

 おかげでうちのオーナー馬主は歓喜で踊り狂ったらしいけどね。そりゃ自分の馬がGⅠに勝ったんだもの、人間でいうとパトロンになった陸上選手が全国大会に優勝したレベルなんだから、お祭り騒ぎも仕方ないんだけどさ。

 

 言うて俺ちゃんことウッドストック様的には、明らかに待遇変わったとかそーゆーあからさまなゴマすりムーヴはなかったわけで。

 

 精々馬のマッサージ師さんが時々あん摩しにきてくれたり、おやつのりんごの味が変わったりしたぐらいかなぁ。多分あれ王林かふじのどっちかじゃね? リンゴの種類あんまり知らないけど俺はくわしいんだ。

 

 いや、アレだよね。姿形が変わってもマッサージっていいもんだよねって、俺はそう言いたいわけですよ。なんだっけ、身体の筋膜を剥がしてうんたらかんたら言ってなかったっけかな。多分そんな感じのこと厩務員のおっちゃんに言ってた気がしなくもない。

 

 俺はぶっちゃけマッサージが気持ちよすぎたのと、マッサージ師のお姉さんが美人だったから、そっちに気を取られて話聞いてなかったけど。

 

 はー俺が馬じゃなかったらなー! マジ一夜を共にしたいんだけどなー俺馬なんだよなー! っかー残念だわー! 俺のイケメンぶり(馬基準)だったらイチコロなんだけどなー馬だからなー! っかー残念だわー! っかー!

 

 

 

 

「この子本当に大人しいですねー」

 

「いやあまったくですね。私も色んな馬見てきましたがここまで素直なのは初めてですよ」

 

「おまけに人懐っこくて……アハハッ、鼻キスされちゃいました」

 

「ソイツ美人に目がないんですよ~」

 

「えぇ~? そうなのキミぃ~」

 

「ブモッ! ヒヒッ、ヒヒッ(その通り! お姉さん綺麗だね)」

 

 

 いやもう本当に美人さんなんだよね。なのに笑うとカワイイっていうか。マジお近づきになりたいわー。ねえねえお姉さんどこ住み? LINEやってる? 彼氏いるの? 納豆にネギいれるタイプ? てかLINEやってる? あ、まだLINEねーわこの時代。あっても俺馬だからスマホ出来ねーわ。くそぅ。

 

 

 

(兄貴ホントに人間好きだよね~……俺には分かんないや)

 

(人間はいいぞ。なにも言わんでも飯くれるし遊んでくれる)

 

(いい年なんだからメスにアピールでもしたら?)

 

(いやーキツいでしょ)

 

 

 うん、まあオルフェの言うことも間違っちゃいないんだけどさ。俺まだ現役で競走馬だし無理やん。メスにアピールしても交尾出来ないじゃん。そもそも俺前世人間って意識がハッキリしてるから、馬と交尾が出来るんかも怪しいじゃんアゼルバイジャン。

 

 俺個人の感覚からしたら馬と交尾って異種交配になるわけですよ。俺一応GⅠ馬になったから多分種牡馬的価値はあると思うし、そういうお仕事が回ってくるのはほぼ確定みたいなところありますけど。

 

 いざそういうことになったとして……下品なんですが、その……フフ…………息子が、臨戦態勢、とってくれるかどうかの問題が付きまとうわけですよ。

 

 いやー出来るかなぁ!? お馬さんとSEXY出来るかなぁ!? やれば出来る!? やかましいわ! いざとなったらひとりでできるもん!? 俺馬だから出来ねーっつってんだろバカタレがよ!!

 

 

 …………とまあ、最近はこんな風に引退後の種牡馬生活に関して頭を悩ませては現実から全力で目を背ける生活を続けてるわけですが。

 

 

(兄貴ってなんでそうメスに対して一歩引くのさ)

 

(どの馬にも縮こまるお前が言えた口かよ)

 

(別に他の奴といてなんか話す訳でもないし……)

 

(お前が積極的に絡みに行かないからだろ)

 

(うるさいなあ。人間に逃げてる兄貴に言われたくないし)

 

(言うようになったじゃねえかお前…………おん?)

 

 

 手の掛かる弟と何時ものように軽い口喧嘩をしている最中。

 

 見学者用の駐車スペースに、覚えのあるエンジン音が停まったのを聞いた。

 

 

 

 

 

 

───────────────────────────────

 

 

 

 

 

 

「さ、着いたぞ」

 

 

 目当ての場所に着いた私は、駐車場で車のサイドブレーキを引き、エンジンを止めた。

 

 

「……………………」

 

「…………ほら、降りよう」

 

 

 バックミラー越しに、後部座席に座った彼女を見るが、相変わらず聞こえているのかいないのか分からないほど、遠い目で窓の外を見てだんまりを決め込んでいた。

 

 いや、聞いてはいるのだろう。現にえらくゆっくりとではあるが、緩慢にシートベルトを外しているのだから。私に対して何も言わないのは、半ば当て付けというか、八つ当たりのようなものだろう。

 

 

 

 私は御簾納(みすの)高徳(たかのり)。とある企業の社長を務めている。

 

 先代であった父からこの企業を受け継ぎ、現在私で三代目だ。地域の隙間に上手いこと潜り込み、仕事に困ることはない。

 

 主な業務は現場作業の備品を仕入れ、販売する小売業だ。

 

 土木から医療、自動車整備に事務文房具までなんでもござれ。困った時はウチに聞いてください。痒いところに手が届く、そんな言葉をモットーに今まで誠実にやってきた。

 

 最近はPCパーツなども取り扱い始め、通販売上も快調に伸びている。時代と共にニーズを調べ、柔軟に対応したお陰で業績はここ数年右肩上がりだ。

 

 

 そんな私だが、最近馬主というものを始めた。この国では競走馬を購入、所有するのが一流企業経営者としての一種のステータスのようなところがある。

 

 が、手前味噌にもウチは一流とは言えないし、私自身競馬というものにこれといって興味はなかった。精々父が仕事の付き合いで少々金を落としていたぐらいだろうか。当然馬に関してはとんと知識がないし、所有すること自体に意味を見出だせもしなかった。

 

 

 何故そんな私が馬主になったか。言ってしまえば「流されて」だ。私の知人にも馬主に熱をあげる者は何人かいるが、その中の一人に日頃から世話になっている人がいたのだ。

 

 その人はとにかく馬という生き物が大好きで競馬も大好き。もはや馬主をやるために仕事をしているといっても過言ではないほどにノーホース・ノーライフな人である。特に私の二代前……つまり初代社長であり初代会長である私のお祖父さんとは、私の父と変わらぬ歳でありながら、互いに業績を競いあうライバルであり、酒を交わす友でもあった。その関係で彼とは家族ぐるみの付き合いがある。

 

 

 その彼に、一年前のある日突然「高徳君、馬主になってみる気はないか?」と言われたのだ。

 

 

 正直馬云々には興味がなかったが、普段からの付き合いもあり断りきれず、ひとまず一頭だけ所有するということになってしまった。

 

 当然だが審美眼……この場合相馬眼と言うのだったか。そんなものを持ち合わせているわけもなく、彼のアドバイスに従うがまま子馬を一頭購入した。

 

 

 

 

 そんな適当に買った…………後々聞いた奇行が面白く、その場のノリで付けた「ウッドストック」という名前の馬が、まさかGⅠレースを勝ってしまうとは、あの時はまったく思わなかった。

 

 

「ごめんください……」

 

「あーどうも御簾納さん、ご無沙汰しております」

 

「いやいやこちらこそ、ウッドが世話になってます。どうですかアイツは」

 

「弟のオルフェーヴル号と放牧に出してますよ。いやあ皐月賞は熱かったですねえ、あんな大激戦滅多にみれるもんじゃない」

 

「私も競馬はド素人ですが、あのレースは手に汗握りましたよ。少し面白さが分かってきました」

 

 

 

 ウッドストックを担当している厩務員の男性と出会い、言葉を交わす。面白さが分かって来たというのは本心だった。

 

 

 

「…………おや、そちらの子は?」

 

「娘の菜摘(なつみ)です。今年中学生になったばかりで……ホラ、挨拶しなさい」

 

「……………………」

 

 

 私が挨拶を促しても、彼女は無言のまま会釈したきり、一言も言葉を発しなかった。

 

 

「…………すみませんね、今ちょっと気むずかしくて」

 

「ハハハ……まああれぐらいの歳の子にはよくあることですよ。早速ウッドのとこに行きますか?」

 

「ええ、是非。ほら菜摘、行くぞ」

 

「……………………」

 

 

 

 返事はないか。気分転換になるかと思ったが、如何せん年頃の娘が何をすれば喜ぶのかなんて知らないからなあ。

 顧客の笑顔だったら今まで数えきれんほど見てきたというのに。一番見たいものが見れんとは皮肉なものだ。

 

 

 ……それも、今まで家族サービスを疎かにしてきた私への罰なのだろうか。

 

 妻を亡くした私には、母を亡くした娘の気持ちが分からない。

 

 

 

 

 

───────────────────────────────

 

 

 

 

 

「ブモ────ッ!!(タカノリ────ッ!!)」

 

 

「んぶぶっ、アハハハッ! こらウッド舐めない、やめなさいこーらっ、んぶぶ」

 

「ブモモモモモモモモ!(久しぶりじゃねーかタカノリ! 元気してたかタカノリ! 遊ぼうぜタカノリ! ちょっと痩せたかタカノリ!? 飯食ってるかタカノリ!?)」

 

「あててててっ、こら噛まない噛まない、アハハハハ」

 

「ボボボボボボボ(んほぉ~~~タカノリの頭皮柔らかいナリィ~~~~)」

 

 

 

「ブルッ……(兄貴ちょっと気持ち悪いよ……)」

 

「ブモッ(お前あとでケツ蹴り飛ばす)」

 

「ヒヒッ!?(理不尽すぎない!?)」

 

 

 

 誰かと思えば俺のオーナー馬主でいらっしゃるタカノリくんでねえのぉ。あんれまァ~まんずまんずよう来だなや、にんじん食っでぐかい?

 

 ここ数ヵ月ぐらい顔見せに来なかったから俺に飽きたのかと思ったじゃあないの、久々に顔みたら嬉しくて顔ベロからの頭甘噛み決めちまったぜ。なんか髪薄くなった?

 

 

「相変わらずだなぁお前は」

 

「本当に高徳さんにも懐いてますよねえ。ここ数日で一番テンション高いですよ」

 

「そうなんですか? お前かわいいなあホントに」

 

「ヒヒッ! ブモモッ!(おうとも! もっとめでるがよい!)」

 

 

 タカノリって俺の前世でいうモ○タロウみたいな会社経営してるんだっけ? そりゃあまあ忙しくなるときもあるよね。腐っても元社会人よ俺は、理解あるムーヴ出来ますよ。

 

 

 でもそれはそれとして寂しかったわ! もうちょっと会いに来る頻度増やしてくれてもいいんじゃないの!? あなた私と仕事どっちが大事なの!? 今年も海見に行くって! 映画もいっぱい見るって! 約束したじゃない! あなた約束したじゃない! した覚えねーけど! そもそも俺馬だから行けねーけど!

 

 あ、そこそこ、タカノリその目の下辺り掻いて。あぁ~至福。思わず唇めくれちゃうわ。

 

 

「ハハハッ、お前ホント変顔好きだなあ…………ほら、菜摘も触ってごらん」

 

 

 んお? そういやさっきから気になってたけど、そっちのお嬢ちゃんとは初めましてだね? ナツミちゃんっていうんだ。ブモブモッ、ボクわるいうまじゃないよ。

 

 

 

 

「……………………いい。別に馬とか好きじゃないし」

 

 

 

 

 ハハハそっかー別に好きじゃな別に馬とか好きじゃないし!!?!??!?

 

 

 

(マジか……兄貴がフラれんの初めて見た)

 

(好きじゃない……好きじゃない? え、なに俺好かれてないの? 実は皆嫌々俺に接してたの? 俺好かれない運命なの? 好かれなかったら俺の存在意義って何? は? 無理死のう)

 

(ショック受けすぎでしょ……)

 

 

 

 

「そうか……かわいいのにな」

 

「どうせギャンブルに使われるんでしょ……人間の都合で。かわいそうに」

 

「それは……まあ、そうだが…………」

 

「お母さんそっちのけで馬にばっかり構ってたんでしょ……」

 

「菜摘」

 

「本当のコトじゃん!! なに馬主って!? 私達はほっといて馬にばっかり構って!!」

 

「やめなさい!!」

 

「ッ、知らない!!」

 

「あっ、コラ菜摘!!」

 

 

 …………行ってしまった。なんか随分家庭内のことで問題抱えてらっしゃったのねタカノリ。

 

 あらら、タカノリも行っちまった。まあそりゃ年頃の娘さんがどっか行ったら心配にもなりますわな。しょうがねえっちゃしょうがねえけども。

 

 

「こりゃあ大変だ。立入禁止(タチキン)に入らなきゃいいが……ウッド、またあとでな」

 

「ヒヒッ(あいよ~)」

 

 

 おっちゃんも行っちまった。やれやれ人間ってのは忙しなくていけねえや。

 

 

(にしても変わった人間だったね。あれ隣の奴が父親でしょ? 随分反抗的じゃん)

 

(あの年頃の人間は色々と難しいらしいからな。てかそれに関しちゃお前はあの子の事言えないと思うぞ)

 

(えっ、普段の僕あんなだった?)

 

(いやあれより(タチ)悪い)

 

(ええ!?)

 

 

 なに驚いてんだこいつ……基本クソビビりで他の馬にもいじめられるし厩務員のおっちゃんにも心開かねえし調教は嫌がるし。今のところあの親父の息子で俺の全弟ってことでまだ期待されてるが、普段わりと大人しいこと以外あんま良いとこねえぞ。

 

 こんな調子で本当に未来の三冠馬になれるのかね? 史実じゃそうなったけど、俺という畜生道落ちの馬もどきがガッツリ関わってる時点でもう史実との解離は相当だろうし。大丈夫なのかしら、お兄さん心配だわ。

 

 

(なんで走りまで人間に指示されなきゃいけないんだよ……好きに走りたいのに)

 

(競走馬に生まれた時点で諦めろ。というかお前もうすぐゲート試験だろ? 今さらだよ)

 

(そうそうアレ何!? なんであんなクッソ狭いとこ入んなきゃなんないのさ!? 開く音もうるさいしさあ!? 合図でよーいドンじゃダメなの!?)

 

(俺も詳しくは知らねえが競馬ってそんなもんだしな……いやはや出来の悪い弟を持つと苦労するぜぇ)

 

(アレを一発で合格した兄貴の方がおかしいんだからね!? 僕と一緒にやってる奴ら大体僕と一緒ぐらいだからね!?)

 

(おやおや言い訳とはお見苦しい)

 

(その上から目線めちゃくちゃ腹立つ……)

 

(実際立場は上だもーん)

 

(マジでコイツだきゃア…………ッ!!)

 

 

 へへーんだ、悔しかったら一回でも併せ馬で俺に勝ってみやがれってんでぃ。まあデビューもまだのひよっことクラシックレース一冠獲って三冠馬予定のワガハイでは天と地ほどに差がありますがねぇガハハ!

 

 

(頭キた!! 蹴り飛ばしてやるから表出ろクソ兄貴!!)

 

(おやおやオルフェくんおこなの? ねえねえおこなの? ていうか今ここが表ですけどそんなのも分かんないぐらいおこおこぷんぷんなっちゃってんのぉ~??)

 

(えーえーそうですともぶちギレですともいいからはよついて来やがれ下さいクソボケ野郎!!)

 

(へいへい、そう殺気立つなよ)

 

(誰の所為だと…………!)

 

 

 まあ俺が煽り倒した所為ですよねごめんねオルフェくん。でもこのぐらいしないと君また調教イヤイヤするでしょ? 君もうデビューまであんまり時間ないんだから、俺なりに君の調教に協力して差し上げようというのだ。未来の三冠馬を俺も育てたいのだよ。そんであわよくば周りの馬に「アイツはワシが育てた」って後方師匠面したい。

 

 そんな俺の馬鹿馬鹿しい企みを知る由もない愛しの弟は(レース勝ちまくってるからって調子乗りすぎなんだよ……)とぶつぶつ文句を言いながら走りやすいところへ移動していく。それにしてもオルフェのやつこんな苛烈な性格だったっけ? いや俺の教育(イジリ)の賜物か。

 

 ま、強くなって欲しいってのは100%本音だしな。弟の為に一肌でも二肌でも脱いであげましょうとも。

 

 

 





唐突なんですけど皆さんウマ娘のウッドストックに言ってもらいたい台詞とか下の活動報告で募集しますんで気楽に落書きしていってくれさい。そのうち掲示板回とかで使うと思います。


https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=292525&uid=222126


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