リンカーウィッチ (Pz.III)
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ブレイブ・ウィッチーズ
レスキュー・ブレイク


不快にならない方だけご覧ください。


「ヒカリ、カンノ、そっちにいった!」

 

「はい!」

 

「おう!」

 

通信の盗み聞きとは、悪趣味な趣味を持っているよなと、自分でも思う。だけれど、これがなかなか楽しいのでやめられない。

 

「管野さん、上です!!」

 

「任せろ!」

 

この感じなら、助けなくていいかな。なんて考えてるけど、()()()()ウィッチの三人組に、何も無いはずもない……と、思うけれど。

 

「剣、一閃! 」

 

閃光、ネウロイが光の破片となって離散した。アニメで見るよりキレイだな、なんて。あ、雲がかかって見えなくなっちゃった。

 

「やりましたね、管野さん。流石です!!」

 

「やったねカンノ」

 

「へんっ!どんなもんよ」

 

お、何もなかった。流石にあれぐらいのネウロイ相手には何も起きないのか、アニメだと毎回毎回トラブルを起こしてた気がするんだけど。俺がトラブルメーカーになったほうがいいのかな、なんて。あ、雲が晴れてきた。さっさと輸送機のエスコートに戻るかな……と、どうもそうは行かないみたい。

 

「うわっ!」

 

「ニパさん!」

 

3人で集まっていたところにネウロイの数発のビームが放たれる。そのうちの一発がカタヤイネン曹長のユニットに直撃、急に片肺になりバランスを崩し、曹長が緑と白の斑模様に引かれていく。雁淵軍曹が曹長のフォローに回った。その二人をネウロイのビームから守る為に管野中尉がシールドを張る。

 

「クソッ、まだいたのかよ!」

 

「ニパさん、大丈夫ですか?」

 

「イタタ……大丈夫だよ。私はいいから、カンノの援護に行ってあげて」

 

「わかりました」

 

敵は中型1。普通なら苦戦しないだろうが、すでに一体撃破して、中尉は弾切れ、曹長は木がクッションになり無事だが、もう飛べないようだ。軍曹もほぼ弾切れなようだし。あんまりネウロイと戦いたくは無いのだけれど、これは助けねばならないかな。なんて、高みの見物を続けていると、どうも管野中尉の様子がおかしいことに気がついた。

 

「っち、こんな時に故障かよ!」

 

中尉の高度が少しづつおちてきている。そのことに気がついたのか、ネウロイがビームの数を増やした。流石に不味いかも。

 

固有魔法で変えた空気の性質をもとに戻し、俺が周りに認識できるようにした。固有魔法に回していた分の魔法力をエンジンにまわし、回転数を上げる。よし、行ける。

 

「クソッ、シールドがっ!」

 

「カンノ!」

 

「管野さん!」

 

耐えられなくなった中尉のシールドが消え、次のビームが中尉に向かう。直撃ルートだ、軍曹がフォローに入ろうとするが、間に合わない……けど!

 

中尉の前に飛び込み、腕にシールドを展開する。ネウロイのビームは中尉に当たらず、シールドで弾かれた。

 

「こちら滋、ここは俺に任せて下がれ!」

 

「あ、あぁ……」

 

MG42を構え、ネウロイに突撃する。固有魔法を使い、自分に向かってくるビームを曲げる。有効射程まで飛び込み、ネウロイに7.92mm弾を撃ち込む。

 

「行ける!」

 

魔法力が込められた弾丸がネウロイの装甲を壊していく、コアを探し出すのは骨が折れるが、やっぱりMG42(こいつ)の連射速度ならその作業も楽だ。

 

「コアは……見つけた!」

 

赤々と光るコアが装甲から顔を出した。銃身をコアに向け、残りを全弾打ち込む。数発コアに着弾、コアが眩しく光り、同時にネウロイがコアと同様、光りながらバラバラに砕けた。

 

「ネウロイ撃墜、502の帰還を支援しつつ、目的地に向かう。輸送機(トプシー)は予定通り目的地に向かってくれ」

 

ふぅ……疲れた。固有魔法はあまり使わなかったのだけれど、ちょっと張り切りすぎたのかも。

 

「おい、そこのウィッチ!」

 

「管野中尉、無事だったのか。ユニットの調子はどうだ?」

 

「大丈夫だよ。それより、別に助けてもらえなくたって倒せたっていうのに」

 

「そう言わないでくれ、中尉は弾切れだったんだろ。どうやって倒そうとしていたんだ?」

 

「俺にはこの()があるんだよ!」

 

「さっきやってたあれか?」

 

「あぁ、だからアンタが助けに入らなくたって……」

 

ム……あんた呼ばわりか……

 

「助ける時に名前言ったじゃん。『アンタ』じゃないんだけど……?」

 

「あぁ?」

 

「オオ、コワイコワイ……ナンテ」

 

正直、中尉は小さい。凄まれてもあまり怖くない。

 

「滋さんでしたよね?」

 

「お、雁淵軍曹は覚えていてくれたんだ……」

 

さすが主人公。人の名前はさっさと覚えるな……俺の苦手な分野だ。と、一人忘れてた。

 

「まぁそれはいいんだけど。いいの、放置したままで?」

 

「放置?」

 

「うん。いいの、彼女放置してて」

 

そう言って下の方を指差す。そこには、待ちくたびれた顔をしたカタヤイネン曹長が居た。




管野のキャラがうまく掴めてない。


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ハロー・ブレイブ

あのあとすぐにカタヤイネン曹長を救出し、502JFW(ブレイブウィッチーズ)の基地へと戻る。輸送機はすでに到着しており、荷下ろしもすでに始まっていた。

 

「とりあえず、物資は無事かな。ユニットの調子は良かったし、ブレイクのみんなも無事みたいだ」

 

「滋中尉、お疲れ様です」

 

「城野少尉もお疲れ様」

 

彼女は城野 清子(しろの きよこ)少尉。俺の副官という名の相方だ。俺の相方にするにはもったいないほどの技術と判断力を持った、頼もしいウィッチだ。おまけにナイスバディの黒髪ポニーテール美少女ときた。もともと男だった俺には刺激が強すぎる。俺は身長はそこそこ(当者比)だが、いろいろと貧相な体してるし、そういう意味では羨ましいというか、なんというか。

 

「トプシーの護衛を任せきりにしてしまった、申し訳ない」

 

「慣れていますから。あなたが仕事ほったらかして別のことをしだすのは、よくあることですし」

 

「ま、それもそうか」

 

彼女の目つきが鋭くなる。そんなに睨まんでくれ、君が怒るとそこそこ怖いし。

 

しばらくすると彼女の目元は元に戻り、いつも通り冷静な声で話し始めた。

 

「……今後の予定ですが、今日中にグンドュラ少佐に到着の報告を行っておいてください。補給物資の受け渡しを明日行い、明後日から基地の監査を行います。書類の提出命令は行っていますが、一応、あなたからも提出の催促をしておいてください」

 

「わかった。ウィッチに対する監査は俺がやるから、お金や物資に関連することは君に頼む。最前線だし、ただでさえ補給が少ないオラーシャなんだ。いつも通り、多少の不正は大目に見といてくれ」

 

「了解しました……とは言いたくないですが、その分あなたが()()()()()をこなしてくださるなら、その命令に従いましょう」

 

「わかってるよ。これからグンドュラ少佐に挨拶をしてくる。君はここを頼む」

 

「了解しました」

 

彼女の敬礼を一瞥すると、俺は格納庫を出てグンドュラ少佐のところへ向かった。

 

-----

 

目の前の大きな木製の扉を3度ノックする。

 

「入れ」

 

この基地の隊長である、グンドュラ・ラル少佐の声が聞こえてきた。アニメで聞いた声と同じ、クールな声だ。

 

「失礼します。扶桑海軍魔女監査部第四課実働部隊所属、滋 武美(しげる たけみ)中尉であります。本日は扶桑を含めた各国から監査の命令を受けると同時に、補給物資の輸送のため着任いたしました」

 

敬語はどうもなれないな、なんて考えながらグンドュラ少佐に敬礼をする。

 

「君が武美中尉か。話は聞いている、楽にしてくれ」

 

「はっ!」

 

敬礼をやめ、楽な姿勢になる。

 

「監査か……別に不正などしてはいないが」

 

「疑っているわけではありませんよ。定期監査とは別に、抜き打ちの監査をしなければならなくなっただけです。会計書類と補給書類の提出をお願いします」

 

「わかった。てっきり昔の悪事がばれてしまったのかと思った」

 

「冗談はよしてください」

 

「そういやこの人、スツーカ大佐にJU87横流ししてなかったか?」なんてことを思い出し、危うく吹き出しそうになるのをこらえる。

 

「書類はサーシャに渡してある、あとで受け取っておいてくれ。滞在はどのくらいの期間だ?」

 

「3週間を予定しています。人数分の物資は持参してきました」

 

「わかった。部屋は用意してある。あとで隊員に案内させよう」

 

「ご配慮感謝いたします」

 

「なに、これくらいなら問題ない。むしろもっと長くいてほしいくらいだ。二パから聞いたが、なかなかの腕を持っているみたいじゃないか」

 

お、スカウトか。人手不足だしな、監査部とかなんかにいるより、前線にいてくれた方が嬉しい気持ちは大いに理解できるが、そういうわけにはいかないんだな、これが。

 

「お褒めに預かり光栄です。しかし、私には私の仕事がありますゆえ」

 

「そうか。それならば仕方ない」

 

なんて言ってるけど、目は仕方ないなんて全く思っていないように見える。

 

「その代わりと言っては何ですが、滞在期間中の戦闘の支援と、模擬戦なら行えます……というより、ウィッチの戦闘能力も監査対象ですから、模擬戦という形で行っていただけると正確なデータが取れるので嬉しいのです」

 

「わかった。3週間よろしく頼む」

 

とりあえず、用件はすべて伝えられたかな。

 

「えぇ、こちらこそ。それでは失礼します」

 

敬礼、すぐに後ろを向きドアの前に立ち少佐のほうに向かいなおす。

 

「失礼しました」

 

とだけ言ってドアを開け、格納庫に戻った。




グンドュラ少佐ってこんな感じであってる?


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グラーフ・ウィッチ

格納庫に戻ると、先ほどに比べて人の数が増えている。中には502JFW(ここ)のウィッチもいるみたいだ。その中に一人、目立つ女性が一人。褐色なおっぱいを付けた金髪イケメン、ヴァルトルート・クルピンスキー中尉だ。女たらし伯爵というのはアニメの中だけではないらしい。

 

「新しい扶桑のカワイ子ちゃんかーいいね、今晩暇?おいしいぶどうジュースがあるんだけど」

 

「生憎先約がいますから、ね、滋中尉」

 

そう言って城野少尉がこちらに顔を向けてくる。一歩遅れてクルピンスキー中尉がこちらを向き、獲物を狙う顔になったことを確認した。

 

「やめてくれ、それって俺に君の仕事を手伝わせるつもりだろ?」

 

「バレましたか」

 

城野はかなりの美人だ、ナンパされることも多いもんで、その度に俺が引き合いに出される。

 

「君は……あぁ!三人を助けた子か!こっちは小さくて、めでたくなるなぁ!」

 

「初めましてクルピンスキー中尉」

 

実際あってみたかった人物だし、せっかくなら握手しようと思い、手を前に出す。

 

「よろしく、カワイ子ちゃん」

 

うん、イケメン。このおっぱいとこの言動に揺さぶられないウィッチは相当強い心の持ち主だろう。と、ここで俺の嗜虐心が刺激された。たまにはこういういたずらしても、バチは当たらんだろう、なんて。本音を言えば、釘を刺したいだけなんだよね。

 

「俺ならお誘い受けますよ。100パーセントぶどうジュース(ぶどうジュース)は好きですし」

 

「え、ホントにいいの?」

 

「あぁ、でも一つだけ……」

 

彼女の手をこちら側に引っ張り、俺の口元を彼女の耳元に近づける。そして小声で一言。

 

「そんなに誰彼構わず誘っていいのか?先生がかわいそうじゃないか、なんて」

 

「え……!?」

 

お、効いてる。俺に向かって「なんでそのことを知っているんだ」と、目を丸くして、かなり驚いてる。恋人を大切にしない奴はパインサラダさえ作ってもらえずに死んでしまうぞ、なんて。俺はこの人たちにそうなってほしくないんでね。

 

「ま、そんなこと関係なしに、俺も城野少尉も君たちウィッチの監査役だから、身の振り方に気を付けたほうがいいですよ」

 

「う、うん」

 

そういうと、なにかバツが悪そうに格納庫を出ていった。クルピンスキー中尉らしくない態度を見れただけでも満足か。ナンパされることも無くなるだろうし?あのおっぱいを間近に見る機会が減るのは悲しいがね、なんて。

 

「何を言ったんです?」

 

城野少尉が近寄ってきて、耳元でつぶやく。

 

「いや、特に何も。ただ、ちょっとくぎを刺したでけだ。なんせこっちには情報()がある。何より、女好き(ああいう)タイプの人は、恋人を置いて先に死ぬっていうのが相場だし」

 

「本命がいるんですか?」

 

「うん、多分本命だと思う。しかも、この基地の中にいる。何なら彼女と本命さんは原隊まで同じ」

 

「……どっちです?」

 

あ、そっか。JG52出身者は二人いるのか。

 

「さあねぇ」

 

「知っているなら教えてください」

 

「断る」

 

ここで教えなくても、城野少尉のことだしどうせ気付くだろう。何より、弾は全弾吐かない方が戦いやすいしね。何と戦っているというわけでもないけどさ。

 

「自分で探れと?」

 

「そ、どうせ見てればわかるよ」

 

「そうですか……どこからそういう情報()を手に入れられるのですか?」

 

「さあね、俺は君と違って独自の供給源があるからね」

 

「いつも聞いてますけど……誰なんです?」

 

「教えないよ。大事な仕事道具だもん」

 

独自の供給源。協力関係にある民間人とか軍人は各国にいるし、何ならこの基地の中にも数人いるけど、なかなかプライベートな情報っていうのは手に入らないもので。俺が持ってるプライベートな情報が前世で手に入れたものとは言えないしな……いやいっそ前世の記憶って言ってみようか。どうせ信じてくれないだろうしね、なんて。

 

「話を変えよう。今日の予定はとりあえず済ませたし、模擬戦の約束も取り付けた。その代わり、対ネウロイ戦闘の支援を頼まれた。協力してもらうんだし、こちらも協力しよう。外面上は仲良く……な」

 

「了解しました。ネウロイ相手はお任せください」

 

「おう、頼む。俺はもう寝ることにするよ、戦闘後の魔力消費が多くてね、魔法力の回復が遅いって体質は困るな」

 

俺の魔法力は『底は深いがポンプの出力が弱い』ってだけなんだが、一戦するだけで一日寝込まないと戦闘できるまで回復できないことがある上に、場合によっては高熱を出すくらい魔法力関係の効率が悪い。固有魔法もドカドカ魔法力を使うものなので、周りに迷惑かけることも多い。正直、申し訳ない時もあるが、少なくとも城野少尉に理解してもらってるから、多少気分は楽だ。

 

「毎度ながら大丈夫ですか?場合によっては模擬戦まで私が引き受けますが……」

 

「いいや、大丈夫。あれは俺の『仕事』だ。君が言ったんだろう、『()()()()()をしてくれ』って」

 

そう、ウィッチとの模擬戦、戦闘力の査定は俺の仕事。なるべくなら自分でやりたいものなんだ。

 

「……わかりました。あなたは明日は出てこれないでしょうし、誰かにあなたがいない理由を聞かれたら『仕事をしている』とでも言います」

 

「ありがとう、それじゃ、おやすみ」

 

「はい、おやすみなさい。お疲れ様です」

 

彼女のねぎらいの言葉を聴きながら、俺は格納庫を出た。




時間を空けて書くのは微妙な出来になるから、もうしない。


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ミニマム・ライク

「どうしよう……」

 

と、格納庫を出たのはいいものの、そういえばどこに俺の部屋があるかは知らないなと、立ち尽くしてしまった。

 

「ふむ……とりあえず色々と歩き回ってみるかな」

 

グンドュラ少佐には「後で隊員達に案内させる」と言って言われたが……もしかしてクルピンスキー中尉が案内役だったのかな。まさかね、流石にないでしょ。

 

「あの〜滋武美中尉、ですか?」

 

急な少女の声で、俺の万に一つもない考えが頭から消えた。

 

「あ、うん、そうだけど。君は……下原定子少尉か」

 

声の方向にいたのは、扶桑皇国のウィッチ、下原定子少尉だ。

 

「はい、グンドュラ少佐から……基地の案内を……任されまして、探していたんです」

 

なにか、彼女の体がウズウズしてるような動きをしている気がする。なんか、嫌な予感が。気のせいか?

 

「そうか、俺も部屋に行って寝たかったんだが、自分の部屋がわからなかったもんで、困っていたんだ」

 

「そう…だったんですか」

 

なんだか体を隅々見られてる気がする。気がするだけなのか、なんだか忘れているような……

 

「どうしたんだ、さっきからどうも様子がおかしいが」

 

心配な顔をして彼女に近づく。が、その判断が不味かった。

 

「ああ!!もう我慢できません!!」

 

彼女がそういった瞬間、目の前が真っ暗になった。同時に呼吸がしづらくなる。

 

「アアァァアアア⤴⤴幸せえぇ!!」

 

そうだった、彼女は「ちいさくてカワイイもの」に目がないんだった。俺の身長は自分では「そこそこ」だとお思っているのだが、どうも彼女には「ちいさくてカワイイもの」と思われているらしい。

 

「ああもう武美さん!!カワイイです!!小さいです!!」

 

ほらね。

 

「ごめんなさい!!本当は話しかける前からずっとこうしたかったんです!!」

 

締め付けが強くなった。こ、呼吸ができない……

 

「ちょ、やめ、息……できない……離して……」

 

「後生です!もう少し、もう少しだけこの可愛さを堪能させてくださーい!!」

 

「ちょ、マジで……苦しい、やめて、死んじゃう……」

 

「そんな!!あと5分だけ!!」

 

(あぁ……もう……ダメ……)

 

疲れと睡魔、更に呼吸しづらいこの状況で意識を保つ方が辛いというものだ。

 

目の前が本当に真っ暗になると同時に、彼女の声が遠のいていったーーー

 

ーーーーー

 

「もう朝か?」

 

目に光が飛び込んでくる。体をムクリと起き上がらせ、窓の外を見る。そこには、顔を見せ始めている太陽があった。

 

「ここは……確か昨日、疲れて寝ようとしたら下原少尉に襲われて……」

 

特別編でロスマン先生と菅野中尉が言ってたが、かなり「くる」な、あれ。なんだか大切なものを奪われたような……はぁ……

 

「あの時、気絶した気がするんだけど……誰か運んでくれたのか?」

 

あたりを見回す。とりあえず、部屋には俺一人。荷物はなにもない。服は着てるな。

 

「……とりあえず、シャワーでも浴びるかな」

 

思い立ったが吉日。昨日シャワー浴びてないのは事実だし、魔法力の回復があり出来てないようで、まだまだ体調もすぐれないけれど、この後、また寝て、2日体を洗わないことになるのはいくらなんでも不潔だしな。

 

「寒いな……オラーシャの大地は……」

 

ベットから降りた瞬間、寒さが足の裏から脳天まで伝わってくるような気がした。

 

「……廊下、もっと寒いかな。靴は……あった」

 

ベットの横に、二足揃えてピッタリ置いてあった。

 

「この感じだと、俺を連れてきたのは、城野少尉か下原少尉だな。二人共、根は真面目だしな」

 

靴を履き、寒い寒いと言いながら廊下に出る。結局、昨日は案内を受けられなかったが、まぁ、基地の中を見て回りたいし、丁度いいや。迷いながら、シャワールームを探そう。途中で誰かに合えば、その子に聞けばいい、それだけのことだ。

 

シャワーを浴びたら、仕事と言って、部屋で休養を取ろう、魔法力を回復しきれないと満足に模擬戦もできないだろうから、なるべく回復させとかないとな。

 

廊下から、なんとなく外の景色を見る。朝が早いのもあるかもしれない。サンクトペテルブルクは、他の街に比べて、まだ、静かなままだ。

 

「リトヴャク中尉が言ってたが、寂しい街だな」

 

ベルリン奪還で、ヨーロッパに入ってくる人の数は増えたが、まだ人類が失った土地をすべて取り返せていないというのが現状だ。

 

「今が、1946年11月か。前世なら、丁度日本国憲法が公布された時期だな……」

 

この世界の日本……扶桑皇国は、ある意味ネウロイに助けられたようなものだと思う。少なくとも、敗戦国と言われた国の体制は、前世の第二次世界大戦前に比べても格段に良かったと言える。

 

ドイツ(カールスラント)は、帝政を続け、ヒトラーと、ファシズムの台頭を許さなかった。何より、一次大戦が人同士の戦いではなく、ネウロイとの戦いであったのが功を奏したのだろう。ファシズムが台頭するほど、情勢が悪くならなかったのだ。以前、気になってこの世界のヒトラーに当たる人物を調べてみたが、画家兼建築家兼音響家とかいう、色々な肩書で名を馳せているようだし。ある意味前世よりも良い道を歩んでいた。これも、カールスラントにはよくはたらいたのだと思う。

 

イタリア(ロマーニャ)は立憲君主制国家として、国土は前世より小さくなってはいるものの、こちらもファシズムの台頭を良しとせず(そもそもネウロイ相手に人類同士で争っている暇などなかったのだろうが)、君主が居続けたことにより、安定を保てた。

 

「いかん、もの思いにふけりすぎたな……シャワールームを探しに行こう」

 

窓から目を話し、歩を進める。白い息が、俺の横を通り過ぎていった。




ちょっと自分の考えを詰め込みすぎたかも。反省。


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シャワー・ウィッチーズ

今いる4階は、宿舎のようだし、ここにシャワールームはないだろうと思い、とりあえず一階まで降りた。

 

「しらみつぶしに行くか。それとも、館内図を探すか」

 

大抵、案内板やら何かしらあるのがのがこういう建物の常だ。そっちの方が効率はいいだろう。

 

「たいていそういうのは玄関か階段の部分にあるはず……あった」

 

当たった、玄関部分に館内図があった。ふむ、シャワールームは二階か。位置は覚えた、さっき降りてきた階段の方に向かい、階段を昇る。

 

「まだ誰も起きてきていないみたいだし、少しぐらい気を抜いてシャワーを浴びてもいいかな、なんて」

 

個人的には、お風呂につかるよりもシャワーを浴びる方が好きだ。考え事をするときなんかは、湯船に浸かりたいと思うけれど、それ以外の時はシャワーのほうが好きだ。パパっと浴びて、体をきれいにできれば、そこまでこだわる必要がないと思っている。風呂は確かに娯楽だが、風呂に入る時間を別の時間に回した方が人生を楽しむことができると思っている。お風呂が嫌いというのは、女性としてどうなんだと思うが、俺はもともと男だし。そこは割り切るものかなと。

 

階段を昇り切り、シャワールームへ歩を進める。女性隊員が多い統合戦闘航空団のシャワー室はほかの基地に比べて質が良いと聞く、はてさてどの程度かな。

 

 

脱衣所に入ると、まず広い。そして清掃が他より行き届いているような気がする。ここ、ペテルブルグ基地は建物が古く、破損個所も多いが、この部屋にはあまりその破損個所がない、というか壊れた個所はすぐに修理しているようだ。

 

「ふむ、ここの基地は予算のやりくりに苦労していると聞くし、誰かが私財を通して直してたりするのかな」

 

「発進します」でポクリュイーシュキン大尉が予算のやりくりに困っているという話があったし、ま、ありえない話じゃないよな。

 

「服は……バスケットに入れときゃいいか」

 

服を脱ぐ、うん、寒い。この時期のオラーシャは寒さが厳しい。今日は気温が高い方みたいで、まだ耐えられる方だ。脱衣所からシャワールームにつながる扉を開け中を見る。見た目は今まで見た基地のシャワールームより広いということ以外は変わりない。

 

「ま、そんなもんだよねー……ん?」

 

シャーと、水の音が聞こえてくる。どうやら俺より早くシャワーを浴びに来た人間がいるらしい。

 

「誰だ……て、西住大尉」

 

「その声は……滋中尉殿でありますか?」

 

彼女は西住 美智子(にしずみ みちこ)大尉。あだ名は「背高ノッポ」、「サトガラ」とか。あだ名の通り、かなり背が高い。それに見合った大きさの胸もある。学業も優秀だったと聞くし、軍人としても優秀な人、文武両道、容姿端麗ってやつだ。俺や城野と違い、陸軍出身の陸戦ウィッチで、主に着任地での陸上支援及び陸上ウィッチの戦闘能力監査、ストライカーユニットの回収、現地での聞き取り等々……いろいろとやってくれている監査部所属のウィッチだ。荷下ろしの時にはいなかったが、すでに色々現地調査とかでもやっていたのだろうか。

 

「昨日はお疲れさまでした、中尉殿。昨日は戦闘後見かけませんでしたが、どうしてでありますか?」

 

「あぁ……うん。その……下原少尉に……いろいろとやられまして」

 

「そういえば、彼女は小さいもの好きと、中尉から聞いた覚えがありますな」

 

そういや、彼女にも自分の知っていることは伝えて支障がないところだけ伝えたっけ。

 

「西住大尉は何故今頃シャワーを?」

 

「昨夜、街に行っていたのでありますが、帰りが遅くなってしまったのであります。なので、基地に帰ってすぐに寝てしまったのであります」

 

「なるほどね。お疲れ様」

 

「いえいえ、中尉こそ。空中にいるネウロイ相手に私は戦えないでありますから」

 

嬉しいこと言ってくれるね。シャワーの蛇口をひねり、お湯を出す。ほどほどあったかい。体の表面が暖かくなるのを感じる。

 

「私は先に上がるであります。私はこの後ここのウィッチと朝食を作ろうかと考えているのでありますが、一緒にどうでありますか?」

 

「うーん……シャワー浴びたら寝ようと思ってたんだけど、まだ顔を合わせていないウィッチもいるし、食べ物を食べておいた方が魔法力の回復も早まるしな……俺も行こうかな食べる専門だけど、いい?」

 

「はい、喜んで作らせていただくであります!」

 

彼女のご飯は美味しい、それに彼女はご飯を作るのが好きだからか、いつも笑顔で作ってくれる。今も笑顔で脱衣所に向かっていった。




新キャラ登場!
寝起きなのに睡魔が襲ってくるという状況で書いたので、文章が微妙でござる。


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グッドモーニング・ブレイク

「ふぅ……気持ちよかった」

 

シャワーを浴び終わり、体をふき、服を着る。もうすでに西住大尉はいない。

 

「食堂の場所は……格納庫のある棟か。外を一度通らなければならないから、部屋に戻って厚着するか。あ、部屋にまだ荷物ないんだった……はぁ……結局この寒い格好で外に出なきゃいけないのか」

 

知っての通り、この世界の女性は一般的にズボンという名のパンツを丸出し、もしくは上にタイツを着る程度。もともとこの世界の人間じゃない俺にはかなり抵抗感がある服装だ。なにより、あの格好は寒いのだ。冷え性で寒さが嫌いな俺に、あの格好は苦痛でしかない。だから俺は、普段から男性用の長ズボンを履いている。よく他のウィッチに疑問を持たれるが、「男装が趣味」で押し通していたりする。そのくらいには頑なに長ズボンをはいているのだが、今は履いていない。理由は簡単、昨日はタイツを履いたまま就寝してしまったからだ。長ズボンはストライカーユニット装着時に邪魔になるから、戦闘時にはタイツに履き替える。昨日は戦闘後にズボンに履き替える時間がなく、後回しにした結果がこれだ。

 

「取りに行くか……」

 

昨日の自分を恨みながら、脱衣所を出る。刺さるような寒さが、温まった体を急速に冷ましていった。

 

-----

 

「お、あったあった!」

 

寒さに震えながら格納庫に入ると、入り口のあたりに俺の荷物が放置されている。何個かあるバッグの中から一番大きいバッグを開き、中にある男性用の長ズボンを取り出した。

 

「確かここに……あったあった。やっぱこれがないと」

 

一般に市販されている男性用の長ズボンが数着入っているバッグから、汚れが目立たない暗めの色を選んで取り出し履く。俺の身長では、いわゆるショートサイズでも裾が余る。なので、裾を店に頼んで裾上げをしてある。

 

「よし、ぴったりだ。もう西住大尉のご飯ももうすぐ作り終わるだろうし、食堂に行くかな」

 

先述した通り、西住大尉のご飯は美味しい。さらに、この基地には、美味しいご飯を作ってくれるウィッチがいる。下原少尉だ。下原少尉のご飯はブレイブ本編でも評判だったと記憶している。あれさえなければ、彼女は完璧なんだけどな……

 

「ふふふ……楽しみだな」

 

食事は兵士の文字道理の生命線であり、重要な娯楽の一つだ。食事の良し悪しは士気にかかわる。某機動戦士でも、コックの人が「塩が足りない」と嘆いているシーンがあるが、塩がなければ人は死ぬし、塩は味の決め手だ。塩分がなければ、前線の兵士は栄養的な意味でも、精神的な意味でも実力を発揮できない。まぁ、ありすぎても大味になるだけだが。つまり、「食事は大事」というわけである。

 

なんて考えていたら、俺の体は食堂の目の前にあった。食堂に入ると、厨房からは音がするが、席には誰もいなかった。適当な席に座り、誰かが来るのを待つ。

 

「あ、滋中尉、おはようございます」

 

直ぐに人が来た。城野少尉だ。

 

「おはよう、少尉。クマがあるけど……大丈夫?」

 

顔をよく見ると、薄くだが、クマが見える。遅くまで仕事をしていたのだろう。書類仕事が苦手な上司としては申し訳ないが、ねぎらい程度しかできないもんで。

 

「えぇ、大丈夫です。隣失礼します。それよりも……あなたこそ大丈夫ですか?」

 

「あぁ、うん。体は大丈夫。あ、隣なら全然開いてるしいいよ。それと、あの後、俺を運んでくれたのって、もしかして少尉だったりする?」

 

もしそうなら、お礼が言いたい。普段から迷惑をかけているのだし、礼儀ぐらいは尽くさねば。

 

「えぇ。中尉は軽いので運びやすかったです」

 

「そ、そう。ありがとう」

 

軽い、ねぇ……そんなに軽いのだろうか?

 

「あなたはもっと食べたほうがいいですよ」

 

「そうかな」

 

なんて話していると、廊下から数人の声が聞こえてくる。

 

「カンノたら、『あいつがいなくても倒せたって』言ってるんだよ」

 

「カンノちゃんらしいね~」

 

「うっせえ、事実を言ってるだけだ」

 

「でも、危なかったのは本当じゃないですか」

 

ブレイクの面々、カタヤイネン曹長、クルピンスキー中尉、管野中尉、雁淵軍曹だ。四人ともこちらに気が付いたのか、それぞれが別々の反応をする。どこか驚いているようなクルピンスキー中尉、バツが悪そうな管野中尉、そんな二人を不思議そうに見つめるカタヤイネン曹長。そんな三人のことなんてお構いなしにこちらによってくる雁淵軍曹。

 

「おはようございます、滋さん!」

 

「おはよう、雁淵軍曹」

 

元気がよいのはよろしいことだ。査定に書きやすい長所だね、なんて。

 

「隣にいるのは……?」

 

軍曹が不思議そうに少尉のほうを見つめる。

 

「あぁ、彼女は城野少尉。俺の部下で、腕の立つウィッチさ」

 

「初めまして、雁淵軍曹。あなたの活躍は聞いていますよ。短い期間ですが、よろしくお願いします」

 

少尉が立ち上がり、雁淵軍曹のほうに手を出す。

 

「はい!よろしくお願いします!」

 

軍曹は、少尉の手を握り、これまた元気よく挨拶をした。

 

「あの、隣いいですか?」

 

軍曹が少尉に聞く。

 

「えぇ、どうぞ」

 

少尉は快くその申し出を引き受けた。

 

「皆さんも近くに来てくださいよ!」

 

軍曹が突っ立ったままの三人をテーブルに誘う。

 

「じゃ、ワタシはシゲル中尉の前に座っちゃおうかな」

 

真っ先に反応したのはカタヤイネン曹長だった。

 

「どうぞどうぞ。それに、『シゲル』でいいよ」

 

「うん、わかった。よろしくね、シゲル」

 

小動物のような笑顔と同時に、その印象をかき消す巨乳が机に乗る。

 

「oh…」

 

思わず声が出てしまう。

 

「ニ、二パ君……」

 

クルピンスキー中尉も反応した。女性愛者の彼女にも大きな破壊力を持つあの巨乳……すさまじいな、なんて。

 

「どうしたの?」

 

曹長がこちらを怪訝な顔でこちらを見つめる。

 

「あ、いや、何でもない」

 

さすがにおっぱいに驚いてなんて言えるはずがない。

 

「そう?ならいいや。二人とも立ってないで座りなよ」

 

彼女に追及されずに済んでよかった、なんて思っていると、曹長は未だに立ったままの二人をこちらに呼んでいた。二人はしぶしぶといった顔で曹長の隣と、その隣に座った。

 

「おはよう、クルピンスキー中尉。管野中尉」

 

「あ、うん。おはよう、シゲル君」

 

「お、おう」

 

なんだかぎこちない。

 

「どうしたんだ、二人とも?」

 

ま、なんとなく察せるがね。こういうのは聞くのがマナーみたいなもんだし。

 

「いや……何でもないよ。そういえば、君も僕と同じ長ズボンなんだね」

 

まず反応があったのはクルピンスキー中尉。ぎこちなさの原因は俺だろうし、俺が直すべきか。

 

「あ、確かに。昨日は履いて無かったよね」

 

と、曹長。

 

「うん、普段は長ズボンなんだけどね。短いズボンとか、扶桑式の下着が好きじゃなくてさ」

 

「へーなんで?」

 

曹長が話を広げてくれる。こういうコミュニケーションが上手い人が一人いると、すぐにぎこちなさが消えるものだったりするので、ありがたい。

 

「ま、何個か理由を挙げるなら、寒いからとか、さっきも言ったけど、短いズボンが苦手だったり、あとは……趣味かな」

 

「趣味?」

 

次は菅野中尉が食いついてきた。よしよし、いいぞいいぞ。

 

「うん、男装というか、それらしい格好をするのが好きなんだよね」

 

と、いつものテンプレを話す。

 

「もしかしてお前、クルピンスキー(こいつ)と同類じゃねぇよな?」

 

「カ、カンノ君!?」

 

「そういえば、一人称も『ワタシ』じゃなくて『俺』だよね。カンノも『俺』だけど、口調まで男の人みたいだし」

 

と、管野中尉がよくないところをついてきた。それに曹長が追い打ちをかける。

 

「さあね。ま、少なくとも節操無しじゃないから、安心して」

 

「なんか歯切れの悪い言い方だな」

 

ま、管野中尉が言ったことは間違いじゃないけどね。でも、節操無しじゃないのは事実だし。

 

なんて、いい感じにコミュニケーションが取れるようになってきたころ、食堂に入り口からさらに人が入ってきた。




3000文字超えちゃった。作業用として聞いてたヒラサワのメドレー(訳50分)の総数が3とかいうのが笑える。


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ノット・ブレイク

「何事もなければ、昨日届いた補給物資で次の補給まで持ちそうです」

 

「そうか。何事もなければいいな」

 

「縁起でもないですね」

 

話しながら入ってきたのはグンドュラ・ラル少佐、アレクサンドラ・I・ポクルイーシキン大尉、そしてエディータ・ロスマン曹長。

 

「もう来ていたのか」

 

少佐が俺と城野少尉を向いて無愛想に話す。話している間に三人とも席に座った。

 

「えぇ、昨日は二食しか食べていないので。お腹と背中がくっつきそうです」

 

「下原の飯はうまいぞ。ジョゼがつまみ食いをやめないぐらい」

 

少佐の得意げな顔。自分のことでもないのに。飯が上手いことまで知っていてヘッドハンティングした……ありそうだな、なんて。となれば、不味いな。西住大尉が盗られたりしないだろうな。

 

「それに、二人と一緒に料理をしている奴がいるな」

 

げ、気づいちまった。やべ。

 

「あぁ、西住美智子大尉です。うちの陸戦ウィッチで、料理も上手なんだ」

 

と、こちらも得意げな顔。自分のことじゃないけどね。

 

「ほう……ストライカーの回収班に所属するウィッチがもう一人ほしかったんだ。どうだろうか、サーシャ」

 

「いいですけど……予算を増やさないと」

 

「そうか……」

 

いや、そうかじゃないが。心配は心配してる間が一番いいのに……杞憂で終わってほしかったな。

 

「あげませんよ?」

 

「ふっ……冗談だ」

 

この人の冗談は全く冗談に聞こえないから怖い。あの手この手で人を引き抜く様は、前世でも、現世でも見てきた。

 

「ご飯できましたよ!」

 

話が終わったタイミングでルマール少尉がご飯を運んできた。皿の上の食事を食べながら。

 

アニメで見た通りの食いしん坊だなと、ある意味感心してしまう。キッチンから出てきたということは、下原中尉の料理の味見でもしていたのだろう。その後ろから下原中尉が料理を持ってきた。

 

「あなたがルマール少尉ですね?」

 

城野中尉がルマール少尉に話しかける。ルマール少尉はもぐもぐと口に含んでいたものをよく噛んだ後、ゴクンと飲み込む。

 

「あなたは……昨日の夜にやってきた扶桑のウィッチさん?」

 

「えぇ、そうです。私が城野清子少尉、隣に座っているのが滋武美中尉です。キッチンにいるのが……」

 

城野少尉が手で示しながら説明していく。説明されているルマール少尉の後ろでちょっと申し訳なさそうに料理を持ったままの下原少尉。うん、昨日あんなことされたからね。

 

「ふふふーん~であります♪」

 

と、そんなキッチンから西住大尉が料理を持ってきた。瞬間、「ガタッ」と、椅子から立ち上がる音。音の方を見ると、そこにいたのは目をキラキラとさせたクルピンスキー中尉。

 

「デカいな……」

 

「……失礼ですよ」

 

と、ラル少佐とロスマン曹長。曹長の目は西住大尉の方というより、クルピンスキー中尉の方をにらんでいる気がする……気のせいかな、なんて。ほかの人を見てみると、俺と城野少尉とキッチンにいた二人以外、西住大尉の方を見ていた。そりゃそうだろう。なんせ、身長183㎝の高身長でバストは1m越え。のわりにスリムだし。扶桑人らしからぬボンキュッボンと言えば分かり易いか。高級軍人特有の気品良さがありながら、そのわりに無邪気に笑うから、モテるんだよなー、彼女。とか思ってると、クルピンスキー中尉が大尉に近寄ってゆく。

 

「君が西住大尉かい?」

 

「そうであります。あなたは確か……クルピンスキー中尉でありますね?」

 

「うん、そうだよ、名前を知ってくれているなんて嬉しいな!」

 

「身を寄せる基地の同僚の名前を覚えるぐらい、礼儀であります」

 

と、会話を弾ませながら、どんどん口説き文句を言っていく。よくやるね、中尉。でも、まぁ、無駄だと思うけどね。だって……

 

「どう、今夜一緒にお酒(美味しいジュース)飲まない?一緒に楽しい夜を過ごそうよ」

 

「よい提案ですが、お断りであります。戦争が終わるまでお酒(美味しいジュース)は断っているのであります。それに、私には亭主がいるのであります。そういうお誘いは受けられないのであります」

 

「えっ!!」

 

そう、西住大尉には夫がいる。入籍していないので法的に夫ではないものの、そういう関係にある人間がいるのは確かだった。

 

「さて、オチもついたことだ、食べようじゃないか」

 

ラル少佐が咳払いをしてから一言。それを合図に立っていた人が席に座り、食事を始めたのだった。

 

-----

 

「滋中尉」

 

食事が終わり部屋に戻ろうとすると、ラル少佐に呼び止められる。

 

「模擬戦の件だが、今日から頼めるだろうか」

 

あぁ、あの話か。

 

「すいません少佐、今日は仕事がありまして。明日からなら可能です」

 

「そうか、わかった。ロスマン先生に伝えておく」

 

「お願いします」

 

それだけ言って部屋に戻ろうとしたとき、言い忘れたことがあることに気が付いた。

 

「あ、一つ言い忘れたことが……」

 

「なんだ?」

 

同じく自分の部屋に戻ろうとした少尉がこちらの方を向く。

 

「『模擬戦は一日おきに二人ずつお願いします』と、伝えておいてください。仕事がありますから」

 

「わかった。それも伝えておこう」

 

それだけ言って、少佐は自分の部屋へと向かっていった。




日を跨いでかくなぁぁぁぁぁぁぁああああ!


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カンノ・デストロイヤー

「装備はどうするか……相手がだれかにもよるが」

 

翌朝、俺は戦闘用のコートを身にまとい、ブレイブウィッチーズの誰と戦うのだろうかと考えながら格納庫へと向かっていた。「一日おきに二人ずつ」とは言ったが、こちらから誰と戦いたいとは一言も伝えていなかった。おそらく、ロスマン曹長がもう決めてくれているか、格納庫でこちらから指名、もしくは自己推薦か。できれば管野中尉かクルピンスキー中尉と戦いたいんだが。

 

「…………です。気を抜かないように」

 

お、ロスマン先生の声が聞こえてきた。格納庫に入ると、そこにいたのはブレイクの面々。

 

「お早うございますロスマン曹長」

 

「お早う滋中尉。隊長から話は聞いたわ。この子たちのことよろしく頼むわね」

 

「了解しました」

 

「もう説明は済んでるわ。あとはお願いね」

 

そう言ってロスマン曹長は格納庫の出口の方へ向かっていった。仕事でもあるのだろうか、まあいいや。

 

「てことで、この基地でお世話になる間、模擬戦の相手を任された滋武美中尉です……って、知ってるか」

 

……話すことがない。てっきりロスマン曹長が誘導してくれると思ってたんだがな。

 

「先生から話は聞いてる、模擬戦だろ。まずは俺とやろうぜ!」

 

どう始めようかと思っていたところに管野少尉が我先にと手を上げる。

 

「な、カンノちゃんずるいよ。僕からだ」

 

「私も!」

 

「ワタシもやりたいな」

 

と、ほかのウィッチが菅野少尉に続く。ちょっとがやがやとした後、こちらに判断をゆだねるといわんばかりの目線……というか「私(オレ・僕)を指名して」という目が正しいかな。

 

「うーん……今日は管野中尉とクルピンスキー中尉とやろう。最初に管野中尉。次にクルピンスキー中尉。管野中尉には最初に出会った時、『助けは要らなかった』と言われたからな。本当に要らなかったのか、俺はそれを知りたいんだ。クルピンスキー中尉の戦闘は直接見ることができなかった。だから中尉の飛び方が気になる」

 

と、気になる二人を指名する。指名された二人は喜びの表情、一方残る二人は不満があるような表情。

 

「ま、しばらくこの基地に居るし、俺の戦い方を見てからのほうが戦いやすいだろ?それじゃ管野中尉、準備をしてきてくれ。『弾は演習用のペイント弾、固有魔法、シールドの使用を許可、先に被弾した方が負けとする。』でいいな」

 

「おう、実力を見せてやる」

 

そう言って管野中尉は自分のストライカーユニットの方へと向かった。

 

「ま、三人とも見といてくれよ。あんまり俺の動きは参考にならないかも知れないが……面白い模擬戦を見せるからさ、なんてね。あ、クルピンスキー中尉、開始の合図お願いね」

 

そう言って自分のストライカーユニットに向かった。

 

-----

 

「中尉は……紫電改か」

 

「そういうアンタはゼロ戦か。にしては形状が変じゃねぇか?」

 

上空、模擬戦前のならし飛行中。互いに相手の方を見ながら青空を白い飛行機雲で染めていく。管野中尉の紫電改は俺の零戦よりも旋回性が若干低い。が、その他の性能は零戦より良いと聞く。さらに、彼女の得意戦術は主にドッグファイト。なめてかかって相手のペースに乗せられたら勝つのは厳しいだろう。

 

「かもね。こいつは零戦の中でも最新型の六四型だからな」

 

と言いながらその場でクルリとロールして見せる。うん、さすがの機動性。

 

「……そろそろ温まって来たんじゃない?」

 

「だな……やるか」

 

こっちもあっちもイイカンジ。模擬戦の開始空域に向かって飛び、ホバリングする。両者が向かい合う。模擬戦前特有のピリピリした感じ……イイね、この空気感。

 

「開始前にちょっと時間をくれないか?」

 

「ならし飛行中に済ませときゃよかったじゃねぇか……まあいいぜ」

 

「ありがと。そんじゃお礼に一つ忠告しとくよ」

 

そう言って両手に構えていたMP40を上空に投げる。自分の手元に帰ってくる前に戦闘用のグローブを着けていく。

 

「君の使ってる固有魔法……たしか超硬シールドだっけ?」

 

「ああ、そうだ」

 

「あれ、自分だけの『技』だと思わない方がいいよ……と」

 

話し終えると同時に落ちてきたMP40をキャッチし、構える。

 

「さぁてと……行きますか!クルピンスキー中尉、合図よろしく!」

 

「オッケー……それじゃ、模擬戦はじめ!」

 

クルピンスキー中尉、の合図とともに二人とも距離をとる。ある程度距離が取れたら、両者ともに相手に向かって一気に速度を上げた。真の開始の合図は両機ともそれ違った瞬間。

 

「3、2、1、0!」

 

中尉の顔が横を通り抜ける。俺はすぐに体を上へとそり、上昇態勢をとった。中尉はというと、同じく上昇中。空戦は上をとる方が優位。が、上昇性能はあっちが有利か。ここで大技を使うかとも考えるが、その名の通りな大技。ピンチでもないのに使う必要はないなと思いなおす。上昇性能で勝てないのであれば、こちらから行かず、受け身な姿勢をとった方がいいだろうと考え、相手の動きを見る。こちらの上昇性能があちらに勝てないのに気づいたのだろう、口元をニヤリとさせると、上昇をやめ、早速撃ってきた。

 

「喰らいやがれ!」

 

「シールド展開!」

 

左腕を体の前に構え、シールドを展開する。普通のウィッチならば手を正面に構え、魔方陣を展開し防御態勢をとることが普通だが、俺の場合、魔法繊維で編まれたコートに魔力を流し込み、シールドを発生させている。あまり見ない方法だが、人型で飛ぶ戦闘機と言えば、個人的にはこっちの方がしっくりくる。なにより、この状態なら……

 

「そこだ!」

 

ダダダと、シールドの隙間から三連射。片腕が開いているからこそできる芸当だ。

 

「うぉっと」

 

ま、このくらいなら避けるよな……さすがはエース。が、避けたすきを見逃しはしない。シールドを解除し、MP40を二丁とも構え、撃つ。通常の二倍の弾が中尉へと向かっていく。

 

「うおっ!なかなかやるじゃねぇか」

 

一瞬驚いたようなそぶりを見せるが、するりとかわされる。その間にも未だに上を取られたままだが、距離が縮まっていく。相手に攻撃の隙を与えさすまいと連射してゆく。

 

「ここ!」

 

急加速。中尉の懐に飛び込む。が、しかし。

 

「させねぇ!」

 

「くっ!」

 

加速の隙を狙われ、回避のため勢いが殺されてしまう。

 

「さすがに手ごわいね、中尉」

 

「伊達に502のウィッチをやってるわけじゃないからな!」

 

「みたいだな……そんじゃこっちも……伊達に中尉をやってるわけじゃないんでね、本気を出そうじゃないか!」

 

両方のMP40の弾奏を外し、腰の弾奏ホルダーに給弾口を差し込み新しい弾を込めた。




お気に入り登録10件ありがとうございます。
ちまちま更新します。


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マジック・パンチ

菅野中尉の位置は俺の上、射程もあっちの方が長い。ストライカーの性能もあっちの方が高い。それに中尉はインファイトに強い。こっちの武器、MP40を有効的に使うのであれば、中尉の懐に飛び込まねばならない。かなり不利な状況だ。好きでこの状況を選んだとはいえ、ちょっと舐めてたかも。

 

「中尉の実力はなんとなくわかったし、見たいものを見るためにも近づくしかないか……」

 

中尉の射撃精度はさすがエースと言ったところで、避けるので精いっぱいというところ。というか現在進行形でそんな感じ。

 

「どうしようか……っと、あぶね」

 

「避けてばっかりでいいのかよ!」

 

本気出すといった手前、やるしかないか……きっと中尉なら受け止められるはずだし。

 

「そうだな、避けてっばかりじゃな!」

 

ストライカーユニットを前方に向け急停止、その勢いのまま頭を軸にその場で体の向きを180度上下に回転させる。予測位置に向けられていた中尉の射撃はすぐには俺の動きについては来れなかった。

 

「今ぁ!」

 

その隙を突き、中尉の方に向かって乱射しながら突撃してゆく。

 

「クソッ!」

 

最初こそ器用に避けながら射撃をしていたが、近づいていくとたまらず射撃をやめ、シールドを張る。攻撃が止まった今ならインファイトに持ち込めるかもしれない。

 

「いける!」

 

相手の反応が追いつかないうちに懐に飛び込む。右手のMPを上空に投げ捨て、魔法力と同時に「固くなる」というイメージを右手のグローブに込める。すると、魔法力がグローブの魔法繊維に流れ込んでいく。

 

「そこだぁ!」

 

中尉の真上まで飛び、右手を引く。一瞬、息を吐き、顔に向かって右手を振り下ろす。同時に、右手がタングステンのように固くなるイメージを込める。

 

「剣一閃、二式!!」

 

「なに!」

 

思いっきり振り抜く。が、中尉の顔には当たらずに、右手に止められていた。手は明るく輝いている。ということは、彼女も固有魔法を使ったわけだ。

 

「あぶねぇだろうが!」

 

「本気を出すと言った!!」

 

「だからって!それに、なんだよその名前!俺の真似してんじゃねぇ!」

 

「真似はしていない!二式と言った!」

 

「変わんねぇじゃねぇか!」

 

「仕組みが違う!」

 

そう、仕組みが違う。彼女の「剣一閃」は「圧縮式超硬度防御魔法陣」を展開させて殴る技。一言でいえば「凄く硬いシールドで殴る」技。一部の人間に分かり易い言い方をするのならば、YF-19とかYF-21の「ピンポイントバリアパンチ」。俺の「剣一閃二式」は俺の固有魔法「性質変化魔法」を使ったパンチ。この魔法は「魔法力が流れ込んでいる物質の性質を変化させる」魔法。この技の場合、魔法繊維が編み込んであるグローブに魔法力を流し込み、固くするイメージを込め、殴る。威力は剣一閃と変わらず、その代わり魔法力の消費が激しく、集中力がいるので隙が大きい、それにシールドとしての効果はあまりない。仕組みが違うので「二式」なわけだ。

 

「知るか!本物はなぁ、こうやるんだよ!」

 

そう言うと、中尉の左手が輝き、俺に繰り出される。

 

「うおぉっ!」

 

足を前に向け、左手のMPを向けながら後ろに下がる。目の前に、たった数ミリ前に彼女のパンチが繰り出される。

 

「チッ!避けられたか」

 

危ないというか、俺も同じことをしたが、あれはまともに喰らえば死ぬな。うん。

 

「これが本物の剣一閃か!これが見たかったんだ!」

 

「へ、そうかい!」

 

本気を出してよかった、という感じだなこれは。見たいものを見ることができてとても満足。

 

「見たいもの見れたよ、ありがと」

 

「なぁっ!」

 

そう一言言って、一歩引いた瞬間に向けていたMPを彼女に放つ。

 

「熱くなったときに相手のことがよく見えなくなるのが、中尉の悪いところだな」

 

ピンクのインクが中尉の衣服を染めた。

 

「ピンクは血の色、てね」

 

「てめぇ、卑怯じゃねぇか!!」

 

「卑怯も何も、模擬戦中だし」

 

「会話中だったじゃねぇか!」

 

その時ジジと、通信機にノイズが走る。次にボーイッシュな声、クルピンスキー中尉の声が聞こえて来る。

 

「模擬戦おわり~。二人とも降りてきな」

 

その言葉を聞き、俺は見たいものを見ることができたとすがすがしい気分で、中尉は不服そうな顔で地上へと降りて行った。




テスト前だったんです……許してください。一年程度忙しくなりますが、週一以上の頻度では投稿します。


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マジック・ブースト

一度目の模擬戦が終わり、一時間の休憩の後、俺は再び空へと上がった。

 

「それじゃあ始めようか!」

 

慣らしが終わった頃、通信が聞こえた。

 

今日二度目の模擬戦相手はカールスラントが誇るエースの一人、「ヴァルトルート・クルピンスキー」中尉。得意とする戦術は格闘戦、固有魔法はマジックブースト。使用するユニットは「メッサーシャルフ Bf109G-6」、使用武装は「MP43」。

 

対してこちらは管野中尉との模擬戦時とは違い、先日のネウロイ撃墜時に使用していた「J7W1 震電」のカスタムタイプ。こいつは宮藤芳佳曹長が使用している試作型以上の性能が出せるように、量産型に搭載されていたリミッターを取り払って、試作型に使用されたパーツを一部移植した非デチューン機。エンジンもカリカリにチューンしたもので、かなりのじゃじゃ馬と言える。かなりの魔法力が必要な機体だが、魔法力の量()()なら宮藤曹長と変わらない量あるので、問題はない。武装は「MG42」のウィッチ用カスタムタイプである「MG42S」にバイポッドをつけ、MG34同様、フォアグリップとして使用できるよう改修した物を一丁。それと、背中に「MP40」を一丁だけ装備している。

 

「あぁ、始め方はさっきと同様で」

 

「うん、そうしよう。それじゃあ、頼むよカンノちゃん」

 

今回の審判は管野中尉。

 

「あぁ……勝てよ、クルピンスキー」

 

「お、珍しくデレてくれた!」

 

「う、うっせーな!!模擬戦はじめ!」

 

恥ずかしさを誤魔化すように、かなり張った声の開始宣言をする管野中尉。同時に少し離れていた両者ともに相手に向かって一気に速度を上げていく。それ違った瞬間に始まる勝負。どんどん中尉の顔が近づいていく。あと、1000、900、800……いま!

 

中尉の顔が横を通り抜ける。さっきと同様、上昇姿勢を取ると、エンジンの回転数を上げ、限界まで出力を引き出す。必要以上の魔法力を放出し、固有魔法の性質変化を空気に使用し、空気の密度を変化させ、吸気口に空気を大量に送り込む。セオリー通り、相手の上を取るつもりだが……中尉の方を向くと、俺より若干低い高度にいる。ある程度上昇すると、水平飛行に移行し、中尉から距離を取った。警戒すべきは彼女の固有魔法、「マジックブースト」。魔法力を一気に開放し、機体に負荷を加える代わりに、とてつもない加速力を得る。近ければ後ろを取られ、離れれば間合いを一気に詰められる。

 

射程はこっちのほうが長いので、この距離なら固有魔法に注意しつつ、距離を保てばよいだろうか。MGを構える。予備弾倉含め、残弾は150発。そこそこあるが、今回の戦い方を考えると、無駄撃ちできる量じゃない。タイミングを見極め射撃するしかない。

 

「撃ってこないのかい?それじゃあ、こっちから行くよ!!」

 

そう言うと、中尉は距離と高度を詰めてくる。バイポッド左手でつかみ銃口を中尉に向け、引き絞り、当てられる当てられる距離まで引き付け……引き金を小刻みに引き数発ずつ射撃する。なるべく格闘戦に持ち込まれないよう距離を取りつつ、撃つ。が、見事に避けられる。さすがトップエースといったところか。

 

「やるっ」

 

「まだまだ、こんなものじゃないよ!!」

 

ゾクッとする。瞬間、中尉が視界から消えた。一瞬だった。間違いない、「マジックブースト」だ。

 

「ここだよ!」

 

振り向くと、こちらへ銃口を向ける中尉がいた。とっさに左腕にシールドを展開する。その瞬間、シールドに当たった弾丸が弾け、黄色いインクが飛び散る。

 

「危なかった……一瞬でケリをつけられるところだった」

 

「やれたと思ったんだけどな〜久しぶりだよ、ボクのマジックブーストに対応できるなんて」

 

「管野中尉にも言ったけど、伊達に中尉はやってないんだ」

 

「みたいだね。流石だ」

 

互いに少し距離を取り、仕切り直す。

 

このまま再び距離を取るか、それとも、いっそ格闘戦に持ち込むか……機動性はこっちのほうが上だ。やれないことはないが、管野中尉と常に行動している中尉相手に剣一閃が刺さるとは思えない。となれば、別の手段を取るべきか。まだ()()は残しているし倒せるとは思うが、四強対策で考えついた技をここで使うわけにはいかない。

 

「なら、格闘戦に持ち込んで、あの技を使うか」

 

MGを構え直し、中尉との距離を詰める。




UA1500超ありがとうございます。


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グレーフィン・プンスキー

体の向きを変え彼女の方へと近づいてゆくと、中尉も俺の意図を察したのか、俺の方へと向かって飛んできた。注意するべきなのはさっき述べた通り、マッジク・ブーストを使用されて不意を突かれること。

 

「機動性はこっちが上、さっきは慎重になりすぎたもんな……こっちも不意を突いて……」

 

射程に入った。銃を構え、引き金に指を掛ける。よく引き付け、位置を予測して……一瞬だけ引き金を引く。

 

「おっと」

 

放たれた弾丸をするんと避けられる。その後も数発射撃するが、見事に全弾避けられるか、シールドに阻まれ手ごたえがない。が、その間に中尉の後ろをとることができた。

 

「やっぱりやるっ」

 

「次はこっちから行くよ!」

 

そういわれたとたん、中尉が進行方向を変えないまま体ごとMP43の銃口をこちらへと向けてきた。間髪入れずに牽制が飛んでくる。足を前へ向け空中で急停止、強烈なGが体を襲うと同時に弾丸が目の前の空を切った。

 

航空歩兵が航空歩兵である由縁は、その戦闘スタイルにある。脚部に装着されたユニットで進行方向を調整するため、通常の航空機に比べ機動性が高く、動きの自由度が高い。進行方向と逆に射撃することや空中停止、無理をするならば鋭角に近い機動などのトリッキーな軌道もできる。さらにはホバリングや垂直及び短距離離着陸など、後のヘリコプター、この時代で言うならばオートジャイロでのみ可能なことを変形等の準備無しで可能である。そのため戦略、戦術的な自由度も高く、単純な戦闘能力だけなら、航空機よりも有利である。

 

中尉も俺もその特性が理解できているからこそ、エースとして活躍でき、なおかつ生き残ることができているわけで。

 

だからと言って、空中にそのまま静止しているのはこの場合においては特性を生かせているとは言えない。実際、追い打ちをかけるように弾丸が飛んでくる。

 

「うぉ」

 

シールドを張りながら後退しつつ、銃口を中尉に向ける。しかし、なかなか照準が定まらない。いや、定まらないように中尉が動いている。にもかかわらず、あちらはこちらを見事にとらえ、当ててくる。

 

「いいぞ、クルピンスキー!そのまま押し切れ!」

 

管野中尉の声援が通信機を介して俺の耳に届く。同時にクルピンスキー中尉にも届いているのか、声援に呼応するように動きがよくなる。

 

「このままだと……本当に押し切られるな」

 

いずれシールドを展開できなくなるし、マジックブーストを使われ、隙をつかれた時が危ないか。

 

「やっぱり、まだ技能が足りないか」

 

状況を打開するため必死に狙いを定めるものの、ダメ。俺と中尉との間に技能の差を感じる。

 

「……あの技を使うには近づかないといけない……でも、自分から近づくのは厳しいだろうし」

 

こまめに回避軌道をとるものの、それさえ見越して射撃が来る。抜け出すのは難しいだろうし……飛びながら考える。マルチタスクは得意じゃないが、職務上、そうやすやすと負けるわけにはいかない。追い詰められた時こそ、逆に冷静になるべで……逆?

 

「……そうか、無理に自分から向かわなくたって」

 

こっちから近づけないのなら、あっちから近づいてもらえばいい。

 

「なら、こうすれば……」

 

わざと気が抜けた動きをする。些細な動きだがその動きを見抜いたのか、視界から中尉が消えた。

 

「来た!」

 

何も持っていない左手に魔法力を込める。最後に見えた位置から察するに……

 

「ここぉっ!」

 

「読まれた!」

 

シールドを解除、体をひねり予測位置に体を向ける。予想通りの位置に中尉が来た。しかし、位置的にMGで当てるにはつらい近距離だが、剣一閃が届かない距離。それも大体予想通り。やっぱり、この技を使うタイミングが来た。

 

グローブに魔法力を流し込み、グローブを構成している物質の光の反射率と屈折率を変える。そして左手を突き出し……

 

「シャイニングフィンガー!!」

 

手から一瞬だけ、シールドを展開させ、シールドの発光を一転に集め、中尉の顔に向けて放つ。

 

「うわ!」

 

まぶしい光が中尉を襲う。中尉は思わず目を覆った。

 

「この瞬間を待っていたんだ!」

 

背中に装備していたMP40を左手で構え、中尉に銃口を向けて、引き金を引く。

 

「あんまり正々堂々とした勝ち方じゃないけど……さすがトップエースだな……こうじゃなきゃ勝てなかった」

 

ピンク色のインクが、血のように中尉のコートを染めていた。



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ロータス・ツー

※警告
今回、以下の作品のネタバレを含みます。
・ガーリー・エアフォース
・劇場版ガンダム00
・マクロスF


シャーと音を立てながら、お湯が体の輪郭をなぞる。じんわりと体の表面が暖かくなっていくのが心地よい。

 

今日の模擬戦のやり方は……スマートじゃないとは思う。けれど、これが俺の戦い方だ。批判されようが変えるつもりはない。体格は普通だと思いたいが、実際のところロスマン曹長や管野中尉と変わらない。クルピンスキー中尉と真正面からやり合うと、流石に不利だと言わざる負えない。だから、ああいう戦い方を強いられる。

 

いっそロスマン曹長のように一撃離脱戦法を取ればとも思うが、一撃離脱の撃墜率がドッグファイトに比べると数割低く、なかなかやる気になれない。

 

「性に合ってるってことかな、たぶん」

 

自己解決。蛇口をひねりお湯を止める。脱衣所に入って体を拭き、寝間着を着る。時刻はもう10時、502に提出する模擬戦報告書や模擬戦相手の評価書、零戦六四型と震電の運用報告書等々……お昼すぎから書き始めて終わったのは今さっき。なかなか時間がかかったが、これでやっと寝ることができる。

 

ベッドに入り、目をつぶるが……寝れない。

 

「暗いな……飲み込まれて……一体化しそうで……集合的な……嫌だな、全く」

 

ふと、窓の外を見る。昨日の朝みたいに、明るいわけじゃない。降りてゆく雪は太陽の光を反射せず、灰色に色づいている。新月の夜。雲が厚く、星の光さえ届かない。街は灯火管制で光なく、基地の中で光がついているのはまだ仕事中であろう城野の部屋、あとはラル少佐の部屋の灯りは付いてるかも。

 

「灰……雪……嫌だな……本当。夜も含めて、嫌いだ」

 

前世のことを思い出す。雪、無音、窓辺からは光さえ入ってこない。今日と同じような、暗い夜。

 

「戦闘中は忘れられるけど、怖いな、本当。死にたくないはずなんだけどな」

 

幼い頃からそうだった。死ぬのが怖い。死にたくない。死後の世界が天国だろうが、地獄だろうが、怖い。もし、死後の世界が無いのなら、そこにあるのはただの闇。それを認知することどころか、寝ているときのように、夢さえ見ることができない。シナプスからシナプスへの神経伝達は途絶え、心臓は周期を刻むことなく、凍ってゆく。考えることも、夢見ることも。

 

死ねば、夢すら見れない壊れた機械。ハードコアなヴィジョンさえない。

 

集合的無意識が死後の世界だとして、自己が失われることが怖い。押し寄せられる他人の自己を、自分の自己と混ぜることが、怖い。

 

「考えるのも、嫌だな」

 

一度死んで、ここに……前世に好きだった、この世界、「ストライクウィッチーズ」の世界に転生して、敵はネウロイだけ、だと思ったら、俺は政府の犬。他国のウィッチと戦って、他国の戦力を測る。場合によっては他国の基地に潜り込んで、情報を盗む。戦後のイニシアチブを握るための戦略。選ぶすべはなかったとはいえ、解せない。

 

「なんで、俺は、マロニーみたいなことをしようとしてるんだろう」

 

この世界は、前世に比べ平和なのに。人類同士の現代戦もない、核も……今の所ない。

 

唯一、この仕事をしていて良いところは……様々な国のウィッチに出会えること。それと、色々な国を渡れること。

 

それに、前世でできなかったことを楽しんでるフシはある。なにより、この時代は……現代より、空気がいい。海もきれいだ。場所によっては現代より汚い都市もあるにはあるが、世界的な平均を調べれば、この時代のほうがきれいだと思う。

 

「……不毛だな。生死観を考えたって、答えは出ないんだ。一回転生したからって、次があるとも限らない……これだけが事実だな。」

 

とはいえ、すぐに考えを止められれば苦労はしない。一つの議題に一旦の結論が出れば、次が来る。

 

俺たちが戦う相手、ネウロイとは、一体何なのだろうかと。

 

マクロスFのバジュラのような、敵対的に行動されることもあるが、対話もできる存在。

 

ガンダムダブルオーに出てきたELSのように、わかり合おうと人類の行動をオウム返ししてくる、対話を目的にした存在。

 

ガーリー・エアフォースのザイのように、一定数人類を殲滅し、地球環境を維持するために文明を滅ぼし、種の存続のみを目的にした存在。

 

すべてありえるだろう。バジュラがフォールドレセプターの歌を通じて人類とわかりあったように、リトヴャク中尉の歌に興味を示し、その歌を模倣した。ELSが人類の攻撃を対話の手段だと勘違いし、それを真似してモビルスーツの形を模倣し、攻撃したように、俺たち人類の兵器に類似した形状に変化したり、ウィッチと同様の姿を取ったり。ザイのようにガラス質で発光し、コアが人類に利用される。

 

もっと別のアプローチを取ってみよう。

 

炭素生物の巣窟である地球に住む、炭素生物である人類の「生物の定義」は、前提として主な構成物質が「炭素を含む有機物」であることがある。でなければ「自己増殖」「エネルギー変換」「自己と外界の隔壁」などの生物の定義を満たせない。しかし、例えばケイ素生物のような、人類の生物の定義にそぐわない生命体にとって、おそらく、人類は生命体として見られていないだろう。ケイ素生物にとっての生物の定義はきっと、前提として「ケイ素でできている」ことだろうから。

 

互いに生物として相手を見ていないのなら、無生物相手に容赦しないだろう。と思う。まぁ、ネウロイは人類相手に容赦していないように見えないがね。

 

「これも……不毛だな……ネウロイを……殲滅……すれば……わかるか……な…………」

 

体から力が抜け、視界が黒くなる。意識がすぅ……と途切れた。



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フソウ・ウィッチーズ

まばゆい光で目が覚める。服で保護されていない露出した肌に感じる冷たさが、俺の意識をさらに鮮明にさせた。

 

「朝か……」

 

時計を見ると、午前8時。体の疲れはある程度無くなっちゃいるが、魔法力はどうだろう。

 

四不象(スープーシャン)、起きてくれ。魔法を使う」

 

そばで眠っていた使い魔を起こし、魔法力を操作し、体外に放出するため、力を込める。すると、頭から鹿の角と耳のような物が生えてきて、尾てい骨のあたりからロバの尻尾のようなものが生えててくる。

 

「お、思ったより回復してる……これなら飛べそうだな……いいぞ四不象、戻ってくれ」

 

確認が終わったので、使い魔の四不象を戻す。四不象が使い魔なウィッチなど、おそらく俺ぐらいしかいないだろう。

 

四不象、一般的に『シフゾウ』と言われるシカ科の動物で、角がシカ、頸部がラクダ、蹄がウシ、尾がロバに似ているが、そのどれでもないと考えられていた動物で、それが名前の由来とされている。スープーシャンというのは中国語読みで、一般的には『封神演義』の主人公『太公望』の霊獣として知られている。ジャンプの漫画版封神演義に出てくるドラゴンをデフォルメしたような動物が有名だろうか。

 

「まったく……神様はどんな気持ちで俺の使い魔をこんなマイナーな動物にしたんだ……」

 

有名な話だが、この『ストライクウィッチーズ』の世界には中国と韓国(朝鮮半島)がない。初期設定ではわざわざその部分を削って、土地ごと存在しないことになっていたぐらいだ。そのため、本来中国語はこの世界にないし、四不象がいることがおかしいのだ。

 

「ま、それは俺も同じなのだけれど」

 

戦闘服に着替えながらつぶやく。俺はこの世界にいるはずがない存在なわけで、そんな俺の使い魔もこの世界にいるはずがない動物……もしかしたら大モンゴル帝国のあたりや、オラーシャの東部には存在するかもしれないが。まぁ、『スープーシャン』なんて読み方はこの世界にあるべきではない、イレギュラーなものだろうが。

 

「とりあえず食堂にでも行くか……腹が減っては戦はできぬとよく言うし」

 

服をすべて着終わると、すぐにドアを開け、廊下に飛び出した。

 

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「ふぅ……美味しかった」

 

多少足りないな、なんて思いながら食堂を出ると、今日はやることが全くないことに気づいた。普段なら、戦闘の翌日には部屋で寝ているのだが、思ったよりも疲れがなく、眠気も全くない。暇をつぶすための本も持ってきておらず、だからと言って本を買いに行こうにも、一人で行く気にもなれないし。何より下手に出歩くと仕事に関わるのだが……

 

「どうしようかな……飛べる程度に魔法力があるし……そうだ、せっかくなら城野少尉と一緒に……」

 

思い立ったが吉日、早速ラル少佐のところへと向かった。

 

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「明日の分の仕事まで終わらせたいのですが」

 

「ま、いいじゃない。仕事ばっかり根を詰めてても、うまくいかなくなるよ」

 

ラル少佐に「哨戒行きたい」と言ったら、「いいぞ」と一言。すぐに城野中尉を部屋から連れ出し、さっさと格納庫へと向かった。

 

「さてと……ユニットは震電でいいか……武装はMG42を、ボックスマガジンでいいかな。哨戒だし、それなりの弾数もっていかないとな。あとはMP40も」

 

装備を装着し、ユニットを履く。四不象のシカのような角とロバのようなしっぽが体から生えてくると同時に、魔法力がストライカーユニットへと向かってゆく。エンジンの回転数が増し、ユニットの固定具が外れる。

 

「先に飛んでるぞ、城野中尉」

 

そう言い残し、滑走路を百数メートル滑走後、離陸。やっぱり、空は怖いけど、飛んでる間隔は気持ちいいな。恐怖心より、快感や爽快感の方が高い。上空を数度旋回し、体を空に慣らす。その間に城野中尉が空へと上がってきた。

 

「お待たせしました、滋中尉」

 

「お、来た来た。んじゃまぁ、行こうか」

 

少尉のユニットは紫電改、装備はM1912ショットガン。空中戦で使うウィッチはほとんどいない、戦場で見るのは珍しい装備だ。

 

「哨戒ルートはそんなに長くないけど、自由に飛び回っていいと、許可はもらってる。たまには気晴らしもいいもんだろ?」

 

「……わかりました。付き合います。その代わり、明日、あの仕事。お願いします」

 

あの仕事、ね。ここに来た本来の目的……あの仕事は多分、それを指してるんだと思う。

 

「……わかった。サポートは頼むよ」

 

「わかっています」

 

「話は変わるが、6時から12時方向の警戒を頼む。俺は0時から6時の方向を見ておくから」

 

「了解しました。ネウロイを発見次第報告します」

 

それから、数十分たった時だった。

 

「中尉、10時の方向、下方に小型3です」

 

少尉が俺の横につき、報告してきた。言われた通り、10時の方に小型ネウロイが3機。

 

「少尉、一人でやらるか?」

 

「はい」

 

待ってましたと言わんばかりに目を輝かせる。

 

「では頼む。固有魔法の使用も許可する。存分に暴れてくれ」

 

そう言うと、少尉は少し口の端を上げ、

 

「了解」

 

と、短く返した。同時に彼女のストライカーのエンジン音が大きくなり、ネウロイに向かって全速力で降下していった。

 

「消しとべぇ!!」

 

普段の少尉からは考えられない言葉使いの後、ショットガンの弾丸が放たれる。その弾丸はまばゆい光を放ちながら散らばらずに3機のうち一機へと向かってゆく。

 

「早速使ったのか」

 

弾丸はネウロイに着弾しても砕けず、ネウロイを真っ二つに咲くほどの大穴を開けながら貫通した。

 

「さすがの破壊力だな……」

 

少尉の固有魔法、『斥力場生成』の威力を見たのは久しぶりだった。いわゆる力場を生成する魔法で、集中力を必要とするが、自由度は高く、弾丸にその力場を発生させると、着弾と同時に着弾個所を力場で引きちぎっていく。シールドと同じように盾として発動させれば、攻撃を完全に防ぎきることも可能だ。伝わる人に伝わるように言えば、アーバレストやレーバテインのラムダドライバ、と言ったところか。欠点は、この魔法の使用時に体内に高熱が発生することで、その放熱のために、髪をポニーテールにして、放熱網代わりにしているようだ。

 

ネウロイはコアを今の一撃でえぐられたようで、光のかけらになった。残りの二機のネウロイはその時点で少尉に気が付いたようで、ビームを少尉へ向けて連射しだした。

 

「遅い!」

 

少尉はそのビームの間をするすると縫うように避けていくと、ネウロイに肉薄し、通りざまに射撃。瞬間、ネウロイは跡形もなく消滅した。

 

「さすがだな……あの威力……大型でもひとたまりないのに、小型相手にあの距離で撃つと、破片すら残らないとは……」

 

残り一機は怖気づいたのか、少尉に目いっぱいビームを吐きながら距離をとっていく。

 

「逃がすかこの石ころ野郎!」

 

するするとビームを避け、立て続けに二発射撃する。一発目の光弾はネウロイの左側をもぎ取り、二発目が右側をもぎ取ったと同時に、コアがやられたのか、やや残った部分が光のかけらとなり消えていった。



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