碧と交差する創造の軌跡 (桐那谷透)
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序章第一節

ガラガラガラ…

 

人気の無い倉庫の扉が開かれる

 

「ゲホッゲホッ!なんだよここ!埃だらけじゃねーか!」

 

扉を開けた茶髪の男が顔の前を払いながら言う。男の横を通り黒髪の男が入ってくる。

 

「それくらい我慢しろー。戸籍もない金もない俺たちが屋根のある拠点に住めることだけでも感謝しろよ。俺に。」

 

黒髪の男、桐生戦兎(きりゅうせんと)は手近なテーブルの上を払う。

 

「何でお前になんだよ!この倉庫を第・六・感!で見つけたの俺だぞ!」

 

「その後持ち主と交渉したり機械修理で当面の資金工面したのはてぇんさい物理学者の俺だからな。バカのお前には到底不可能だ。」

 

「誰が馬鹿だよ!せめて筋肉つけろよ!」

 

茶髪の男、万丈龍我(ばんじょうりゅうが)は戦兎の胸ぐらを掴み体を揺さぶる。

 

「わかった!わかったから揺らすな!埃が…ゲホッゲホッ!」

 

「ゲホッゲホッ!」

 

二人が暴れたことで倉庫内に埃が舞い上がる。

 

「はぁ、とりあえずは掃除だな。全部は無理でもせめて寝るところの確保だけでもしないと。」

 

そう言って戦兎は懐から取り出した白いパネルの他様々な機械をテーブルに置いていく。

 

「あ。そういえばあれあるだろ。ほら太陽トレーナーだったか何だったか。」

 

「太陽トレーナー?あぁ、ライオンクリーナーか。確かにあれ使えば早いな。」

 

「…お前自分で使ったもんくらい把握しとけよ。」

 

「把握してるよ!いっぱいあるから思いつくのに時間かかってるだけだし!」

 

そう言って戦兎は先程テーブルに置いた機械に手を伸ばす。

 

「よし!そうと決まれば…」

 

 

『…………ケテ…』

 

 

「ん?」

 

歯車とレバーのついた黒い機械を手に取ったとき、戦兎の耳にどこからか声が聞こえる。

 

「?万丈何か聞こえたか?」

 

「あん?何かって何だよ?」

 

 

『…………ケテ…』

 

 

「お?」

 

「…聞こえたみたいだな。一体どこから…」

 

辺りを見回す戦兎はテーブルに置いた白いパネルに目をつける。

 

「これからか?」

 

戦兎がパネルを手に取ると急にパネルから強烈な閃光が放たれ周囲が光に包まれる。

 

「うおっ!何したんだよ戦兎!」

 

「何もしてねぇよ!けど、前にも似たようなことが…」

 

光が消えたときには戦兎と万丈、テーブルにあった機械も白いパネルも消えていた。

 

 

 

「ええっ!?」

 

ゼムリア大陸クロスベル自治州駅前通りの階段を降りた先にある扉の前。そこに5人の人間が集まっていた。

驚きの声を上げた茶髪の青年、ロイド・バニングス。

 

「も、潜るって……」

 

腰ほどまであるプラチナブロンドの長髪のどこか品の良さを感じさせる女性、エリィ・マクダエル。

 

「おいおい。どういうことッスか?」

 

長い赤髪を、首の後ろで束ねた男性、ランディ・オルランド。

 

そして青い長髪を、ツインテールにした少女ティオ・プラトー。

 

「お前たちの総合能力、および実戦テストのためだ。」

 

その四人に向かい合う壮年の男性、セルゲイ・ロウ。

 

「ジオフロント内部はそれほど手強くはないが魔獣のたぐいが徘徊している。それらを掃討しながら一番奥まで行ってもらおう。」

 

彼らはクロスベル警察の新設される部署、特務支援課のメンバーである。

 

 

「この『特務支援課』がどんな仕事をするのか、これから素敵な場所でじっくりと教えてやろう。」

 

そう言って連れてこられたのがここ、ジオフロントへの入口であった。

魔獣の掃討は捜査官の仕事ではないのではないか?

警察学校を卒業し、難関の捜査官の資格も取得しているロイドが疑問を口にするが、セルゲイは特務支援課は違うと言いロイド達に携帯端末のようなものを渡す。

 

「これは…」

 

「新型の戦術オーブメント?」

 

「へえ……ずいぶん洒落たデザインだな。」

 

「第5世代戦術オーブメント、通称『ENIGMA』……ようやく実戦配備ですか。」

 

「ああ、財団の方から先日届いたばかりの新品だ。お前たちの適性に合わせてすでに調整もされている。」

 

セルゲイはENIGMAの使い方のレクチャーをティオに頼むとロイドに入り口の鍵を渡す。

 

「それじゃあ、一通り魔獣を掃討したら本部に戻ってこい。細かい話はその後してやろう。」

 

それだけ言ってセルゲイは本部に戻ろうとする。

 

「ちょ、ちょっと課長!」

 

「ああ、それとロイド。」

 

ロイドが呼び止めるとセルゲイは思い出したように振り向き、

 

「とりあえずお前、リーダーな。」

 

「えっ。」

 

「今の所、捜査官としての正式な資格を持っているのはお前だけなんだよ。そんじゃ任せたぞ。」

 

固まるロイドをよそにセルゲイはそのまま去ってしまう。

 

「ハッハッハ。押し付けられちまったなぁ?」

 

「ふふ、でも捜査官の資格を持っている人がいて心強いです。ロイドさん、よろしくおねがいしますね。」

 

「あ……いや、呼び捨てでいいよ。見たところ、歳も近いみたいだし」

 

ランディとエリィに声をかけられようやく動きだすロイド。

「そう?ちなみに私は18だけど?」

 

「ああそれなら同い年だ。えっとあなたたちは?」

 

「俺は21だが、堅苦しいからタメ口でいいぜ。よろしくな、ロイド、エリィ。」

 

「ええ、こちらこそ。」

 

「ああ、よろしく頼むよ。」

 

そして最後の一人に目を向けるロイド。

 

「……えっと……それで、君の方は……?」

 

「…14ですが、問題が?」

 

少し不満げに答えるティオ。

 

「い、いや〜。別に問題があるわけじゃ……って、14歳ッ!?」

 

「ハハ、なんだ。見た通りの歳ってわけか。」

 

「驚いた……そんな若くて警察に入れるものなのね。」

 

「いやいや!どう考えてもおかしいから!確か一般の警察官でも16歳以上だったはずだし……」

 

勘違いしそうになるエリィに訂正しロイドは訪ねる。

 

「日曜学校も卒業していない子がどうして警察なんかに…」

 

「……正確に言うとわたしは警察官ではないです。エプスタイン財団から出向要員ですので。」

 

当然の疑問だろうと答えるティオに3人は驚く。

 

「ええっ!」

 

「エプスタインっていやあ、さっきの戦術オーブメントの……」

 

「そう……なるほどね。ここ数年、クロスベル市が財団と協力して大規模な計画を進めているのは聞いていたけど……」

 

「『導力ネットワーク計画』ですね。そちらにも少しは関わっていますがわたしの出向目的は別にあります。これです。」

 

そう言ってティオは機械でできた杖のようなものを取り出す。

 

「それは……」

 

「機械仕掛けの……杖?」

 

疑問を浮かべる二人にティオは説明する。

 

「『魔導杖(オーバルスタッフ)』といいます。この新武装の実戦テストのためわたしは財団から出向しました。……ロイドさん。ご理解いただけましたか?」

 

「ちょ、ちょっと待ってくれ!」

 

聞いてくるティオにロイドはさらに質問する。

 

「もしかして……その杖を使って君も戦うのか?」

 

「……捜査官の資格があるのにずいぶん察しが悪いんですね。」

 

子供を戦わせられない、ある意味当然の考えで聞くロイドに少しジトッとした目をしながらティオは答える。

 

「『実戦』テストのために出向したと言いましたが?」

 

「うっ…」

 

「まあまあ。ここでモメても仕方ないぜ。」

 

たじろぐロイドの肩を叩きランディが言う。

 

「この先のジオフロントってのがどれだけ危険かは知らないが……まずは、あのオッサンが押し付けてきた任務をクリアする事を考えようや。」

 

そう言って入口の扉に目を向けるランディ。

 

「そうね……納得できない事も多いけど。」

 

「………分かった。すまない、ティオ。気分を悪くしたなら謝るよ。」

 

二人に言われたロイドはティオに謝る。

「別に……あなたの反応は常識的だとは思いますから。ところで、」

 

魔導杖をしまいながら皆に聞くティオ。

「わたしの武装はこの『魔導杖』ですが……皆さんの武装は何ですか?」

 

「ああ、それじゃ…俺の得物は、これだよ。」

 

そう言ってロイドは両手に武器を手にする。

 

「それは、警棒の一種……?」

 

初めて見る武器に疑問を浮かべるエリィに、ランディが答える。

 

「トンファーか。東方で使われる武具だな。殺傷力よりも防御と制圧力に優れているらしいが…」

 

「なるほど。警察官らしい装備ね。」

 

「色々試してみたんだけど、これが一番しっくり来てね。」

 

そう言ってトンファーをしまうロイド。

 

「で、エリィとランディの得物は?」

 

「私は、これね。」

 

そう言ってエリィが取り出したのは銀色の銃。

 

「導力銃……少し古いタイプですね。」

 

「ずいぶん綺麗な銃だな……」

 

「競技用に特別にカスタムしてもらったものよ。旧式だけど、狙いの正確さは期待してくれてもいいと思う。」

 

「おっ、自信満々だねぇ。そんじゃあ、俺はコイツだ。」

 

そして最後にランディが巨大なそれを取り出す。鉄の棒の先端に機械と斧の刃のような形のパーツがついている。

 

「それは…ずいぶん大きな武器だな。」

 

「中世の騎士が使ったていたハルバードみたいな形ね…」

 

「…財団の武器工房で見かけたことがあります。導力を衝撃に変換するユニットがついていますね。」

 

「ああ、スタンハルバードだ。ちょいと重くて扱いにくいが一撃の威力は中々のもんだぜ。」

 

「なるほど。ティオの杖がどういうものかは判らないけど…魔獣との戦闘になったらバランスよく戦えそうだな。」

 

全員の得物を見たロイドがそう分析する。

 

「確かに…」

 

「ま、そのあたりも考えて俺たちを集めたのかもしれんな。あのオッサン、とぼけた顔して結構したたかそうだったし。」

 

「…そうですね。わたしの魔導杖の性能はおいおい説明するとして…先ほど支給された、戦術オーブメントの性能を説明しましょうか。」

 

「それじゃあ、とにかく中に入ってみよう。まずは安全に気をつけて進んだ方が良さそうだ。」

 

「ええ、そうね。」

 

「…了解です。」

 

「んじゃ、行くとしますか。」

 

戦術オーブメントの使い方を把握した四人はジオフロントに足を踏み入れる。

 

 

 

「はあ!」

 

ロイドのトンファーによる一撃がコウモリのような魔獣を壁まで吹き飛ばす。勢いよく壁に叩きつけられた魔獣はそのまま動かなくなる。

 

「ふぅ」

 

「おつかれさん。中々やるじゃないの。」

 

「ああ。そっちこそ凄いパワーだな。」

 

ジオフロント内部をロイド達は道中の魔獣を退治しながら順調に進んでいた。

 

「俺とロイドが前衛、お嬢さん二人が後ろから援護。まあ即席のチームならよく出来てる方だろ。」

 

「そうだな。戦闘に問題は無い。あとは早いとこもう一人を探さないとな。」

 

そう言ってロイドが視線を向けた先にはエリィの側にいる男の子がいた。

 

ジオフロントの探索を進めていたロイド達は途中、中央広場のマンホールから迷い込んだ男の子、アンリを発見する。すぐに保護した四人だったが、アンリから友達、リュウが一緒に入ったことを聞く。魔獣から逃げる時にはぐれたらしい。ロイド達は一刻も早くリュウを見つけるためアンリを連れたままリュウを探すことにする。

 

「しっかしそれなりに進んだがどこにいるのやら。」

 

「魔獣から逃げていたならアンリみたいにどこかに隠れているかもしれない。声が聞こえないか気にしながら進もう。」

 

より警戒を強めながらロイド達は扉をくぐる。

扉の先には広めの通路の先に一際大きな扉があった。おそらく一番奥の部屋への扉だろうがそれよりも先に5人の目にとまったのは通路の真ん中に倒れている黒髪の男性の姿だった。

 

「っ!大丈夫ですか!」

 

声をかけながらロイド達は男性に駆け寄る。

 

魔獣に襲われたのかと心配したが、目立った外傷はないことに少しホッとする。そうしていると男性がゆっくりと目を開ける。

 

「ん……ここは…」

 

目を覚ました男性が体を起こす。

 

「大丈夫ですか?どこか痛いところとかは。」

 

ロイドが声をかけると周りに人がいることに気づいていなかったのか少し驚く。

 

「うおっ。あ、ああ。とりあえずは大丈夫だ。」

 

そう言うと男性は服をはたきながら立ち上がる。

 

「えっと、あんた達は?」

 

困惑を浮かべながら尋ねてくる男性にロイドが代表して答える。

 

「自分たちはクロスベル警察の特務支援課のもので、自分はロイド・バニングスといいます。あなたは?」

 

男性は聞き覚えのない単語にハテナマークを浮かべながらも答える。

 

「俺は戦兎。桐生戦兎だ。」

 

いまここに特務支援課と愛と平和を守るヒーローの軌跡が交差する。

 




今回が初投稿になります。
自分で見たいのは自分で書けの精神で始めました。
一応2話の投稿は1月中の予定です。まだかけてませんが。
評価もらえたらやる気がアップ…するかも?


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序章第二節

2話できました!
前回のお気に入り、感想、ありがとうございます!
しっかりと更新を続けていけるよう頑張ります!


「俺はランディってんだ。」

 

「…ティオです。」

 

「わたしはエリィよ。この子はジオフロントに迷い込んだ子でアンリっていうの。」

 

「こんにちは。」

 

「おう。こんにちは。」

 

ロイドに続いて挨拶を交わす面々。

 

「戦兎さん。あなたはどうしてここに倒れていたんですか?ここは立ち入り禁止になっているはずですが。」

 

「あー、俺もよくわからないんだよ。急に気を失って気が付いたらここに倒れてたから。」

 

ロイドの質問に頭をかきながら答える戦兎。

とりあえず嘘をついているようには見えない。そう判断したロイド。

「そうですか。本当ならすぐに外に連れていきたいところですが、実は今この子と一緒に迷い込んだ友達を探しているんです。このジオフロントには魔獣も徘徊しているので急いで探しているんです。」

 

「魔獣?」

 

ロイドの話を聞いた戦兎が思わず聞き返す。

 

「?ええ。ジオフロントに住みついている魔獣達です。ここに来るまでにもできる限り倒して来ましたが、もしその子が襲われたら大変ですから。」

 

(魔獣?そんなものがいるのかこの施設には。ジオフロントって言っていたけど何かの研究施設か?

いや、話し方からして危険ではあるがそう珍しいことではないみたいだな。そんなものが珍しくない国があるのか?

それにさっき言ってたクロスベル警察、クロスベルなんて地名聞いたことがない。いったいここは…)

 

ブツブツとつぶやきながら深く考え込む戦兎にロイドが声をかける。

 

「あの、ホントに大丈夫ですか?気分が悪いとか…」

 

「んっ、ああ!悪い悪い。ホントに大丈夫だ。体はなんともないよ。」

 

「それならいいのですが。それで子供を探している間、私達に付いてきてください。なるべく戦力を分散したくありませんし、あなたを一人で帰らせるわけにも行きませんので。同行している間は私達でお守りしますので。」

 

「もちろんかまわない。早いとこ子供を見つけてやるのが第一だからな。それに自分の身くらいはある程度守れるからその子の方を守ってやってくれ。」

 

ロイドの提案を快く受け入れる戦兎。戦兎の返事に頷くロイドは皆に指示を出す。

 

「よしそれじゃあ捜索を再開する。きっとその扉の奥が最深部だ。もしそこにいなかったら来た道を引き返しながらリュウくんを探そう。

どこかですれ違ったりしているかもしれない。アンリくんと戦兎さんは俺たちの後ろを離れないように。」

 

「りょーかい。」

 

「了解しました。」

 

「ええ。わかったわ。」

 

「は、はい!」

 

「おう。了解だ。」

 

 

 

 

 

「く、くるなよ〜っ!うわあん、助けてぇっ!女神さま〜っ!」

 

扉をくぐった6人の耳に飛び込んできたのは少年なものと思しき悲鳴だった。

正面の階段を登った先に見えたのは5体のスライムようなの魔獣に囲まれた男の子。

 

「あっ!」

 

「リュウっ!」

 

アンリの叫びで彼が探していたリュウくんだとわかった。

 

(くっ!どうすべきだ!このまま背後から奇襲すべきか、それともこちらに注意を引き付けるのが先か!ここは…)

 

「エリィ!奴らの注意を引き付けてくれ!」

 

「分かった!」

 

階段を駆け上がったエリィは抜き放った銃で魔獣達に発砲する。ダメージはそれほど無いだろうが注意を引き付けるには充分だったようで、魔獣達はロイド達に寄ってくる。

 

「何とか注意を逸らせたみたいです。」

 

「よし、片付け…っ!まずい!」

 

近づいてくる魔獣たちを倒そうとするロイドだったが、攻撃を受けたにもかかわらずリュウに一番近かった魔獣はこちらに向かわずリュウへ近づいていく。

 

「くっ!間に合うか!」

 

強引に魔獣たちの間を通り抜けてリュウを助けに行こうとするロイドだったが

 

 

シャカシャカシャカ…

 

 

何かを振るような音が聞こえたかと思うと、ロイドの後ろから何かが飛び出していく。それは魔獣たちを飛び越えてリュウの前に着地する。

 

「お前の相手は向こうだよっと!」

 

飛び出した影、戦兎はいつの間にか取り出したドリルのような武器で魔獣を無理やりロイドたちの方へふっ飛ばす。

 

「後は頼むぞ!」

 

「…っ!分かった!ありがとう!」

 

一瞬呆けていたロイドだがすぐに切り替えて魔獣たちと戦い始める。

 

 

 

戦闘自体はすぐに終わった。物理攻撃が効きにくい魔獣たちだったため、ロイドとランディが引き付けて後方からエリィとティオがアーツで狙い打つ。

 

「ふぅ。」

 

「何とか片付いたわね。」

 

「最初は肝が冷えたけどな。」

 

「……疲れました。」

 

「戦兎さんも、先程はありがとうございました。」

 

「気にすんな。あれくらいこのてぇんさい物理学者にかかればちよろいもんさ。」

 

「て、てんさい?」

 

「…自分で言うんですか。」

 

「び、びっくりしたぁ…!」

 

「リュウ、大丈夫!?ケガとかしてない!?」

 

「う、うん……ぜんぜんヘーキだぜ。それよりオマエも無事でホントーによかったぜ!」

 

魔獣達が退治されると心配そうにリュウに駆け寄るアンリ。

 

「オマエ、どんくさいからな〜。オレが頑張って助けてやんないと魔獣に喰われちまうと思ってさぁ。」

 

「よ、よく言うよ。自分だって魔獣に食べられそうになってたくせに…だいたい今度だってリュウが入ろうって強引に…」

 

「な、なに言ってんだよ!」

 

「最初に『じおふろんと』の話をし始めたのはオマエの方だろー!?」

 

「だ、だからって本当に入るとか言い出すなんて……!」

 

最初は互いを心配していたのがいつの間にか言い争いな発展してしまう。

 

「はいはい。言い争いはそこまでだ。」

 

そこで二人ははっとしてロイドに向きなおる。

 

「ご、ごめんなさい。」

 

「へ〜、兄ちゃんたち、初めて見るカオだね。」

 

素直に謝るアンリと違い、ロイド達を興味深そうに見つめるリュウ。

 

「けっこう強いみたいだけど新人のヒトたち?」

 

「へ……」

 

「ったく、調子のいいガキンチョだな。助けられたんだったらまずはお礼を言うのが先だろ?」

 

「へへっ、まぁ助かったよ。」

 

ランディの注意に笑顔を浮かべて礼を言うリュウ。

 

「危ない所もあったけどオレもカスリ傷ひとつ無かったし。割と手際がいいんじゃね?」

 

「そりゃどうも………って、ホント調子いいなぁ。」

 

「まあ怪我が無いならいいさ。」

 

「ふふ、ホントに無事で良かった。とにかく一度、外に出るとしましょうか。」

 

「そうですね。どうやら終点みたいですし。一応、セルゲイ課長の課題もクリアしたことになりますね。」

 

「ま、こんなハプニングがあるとは思ってもなかったけどな。そんじゃ、ガキどもを送ったら警察本部に戻るとするか。」

 

「ああ。そうだ、戦兎さんも警察までご同行してもらっていいですか?一応詳しく話しを聞きたいので。」

 

「まあ子供の迷子ならともかく、経緯がわからないとわいえ不法侵入だからな。仕方ないか。」

 

「………」

 

「ん?どうしたんだ?」

 

「あのさ……兄ちゃんたち。兄ちゃん達ってやっぱり新人なんだよな?」

 

「あ、ああ……そうだけど。しかしよく分かるな?制服だって着てないのに。」

 

「せ、制服?兄ちゃんたち……ギルドの人じゃないの?」

 

「えっ」

 

「ギルドって……遊撃士協会のこと?」

 

「ギルドって言ったら他にあるわけがないじゃん。え、なに!?本当に遊撃士じゃないの!?」

 

「あ、リュウこの人達は、」

 

「俺たちは、クロスベル警察に入ったばかりの新人だけど……」

 

「あっ、俺は違うぞ。」

 

「ケーサツの人間っ!?うっそだぁ!どうしてケーサツのお巡りがこんなところにいるんだよ!?」

 

「あ、ああ……ちょっと事情があってさ。任務の途中だ君たちを見つけたって訳なんだけど。…でも、そんなに不思議なことか?」

 

「だってさあ!ケーサツのお巡りっていったら腰抜けって有名じゃんか!」

 

「え゛。」

 

リュウの言葉に固まる四人。

 

「態度もオーヘイなわりに何の手助けもしてくれないって父ちゃんが言ってたぞ。いざという時は遊撃士の方が何十倍も頼りになるって。」

 

「……………」

 

「……やっぱり……」

 

(んっ?あの子どうしたんだ?)

 

絶句するロイド。その時戦兎は少し悲しそうな顔をするエリィに気づいた。

 

「リュ、リュウ、失礼だよ。いくら警察のヒトだってボクたちを助けてくれたんだし。」

 

「そ、そうだけどさ〜。せっかくギルドの新人に助けてもらったと思ったのに…。」

 

「ふーん?色々とあるみたいだな。……って……」

 

何かに気づいたランディの顔が険しくなる。

 

「おい、マズイぞ!?」

 

「え……」

 

「っ!?」

 

「上!?」

 

その言葉にロイドたち3人も入口の上に目を向ける。

 

「うっ!?」

 

「うわあっ!?」

 

「くっ!?」

 

「なんだコイツは!?」

 

「こいつも魔獣なのか?」

 

「な、なんて大きさ…」

 

上から落ちてきた魔獣はさっきの魔獣の十倍はあろうかという大きさだった。無数の触手をうねらせてこちらに戦意を向ける。その姿からかなりの戦闘力を持っていることが予想されるが、一番大きな問題は

 

「まずいです。背後の扉はロックされています!」

 

魔獣の位置が唯一の出口の前であることだった。

 

「くっ…このままじゃ!」

 

「おい、どうするつもりだ!?まともにやっても今の装備じゃ勝ち目はねぇぞ!?」

 

「分かってる!」

 

「ここは俺が引き付けるからみんなは何とか脱出してくれ!」

 

ロイドの提案に驚愕する5人。

 

「ちょ、ちょっと!?」

 

「正気ですか…?」

 

「この状況じゃそれしか方法はない!ランディと戦兎さん!その子たちを抱きかかえてとにかく隙をついて逃げてください!」

 

「ちっ…それしかねぇか…!?」

 

渋々ながらもロイドの言うとおりだと納得するランディ

 

「そ、そんな……」

 

「に、兄ちゃん……」

 

 

 

リュウ達が怯える中、覚悟を決めるロイドの肩に手が置かれる。

 

「かっこいいじゃないの。でもここはこの天才物理学者に任せておきな。」

 

そう言って戦兎は魔獣の前へと進み出る。

 

「だめだ戦兎!民間人を囮になんてできない!下がっててくれ!」

 

自分が行く。そう言って戦兎を呼び止めるロイドの前で戦兎は懐から歯車とレバーのついた機械を取り出す。

 

「囮になる訳じゃないよ。」

 

取り出した機械を腰にあてると黄色の帯が巻き付き機械が腰に固定されベルトになる。

 

「言ったろ?任せとけって」

 

次に取り出したのは赤と青の小さな筒のようなもの。

 

「さあ、実験を始めようか。」

 

そう言った戦兎が両手それぞれに持った筒を振り始める。

 

 

シャカシャカシャカ…

 

 

さっき戦兎が飛び出した時に聞こえた音が聞こえてくると、ロイド達の後ろから空中を数式が流れていく。

 

「うわぁ!なんだこれ!」

 

「…何かの数式でしょうか?」

 

「どっから来たんだこれ?」

 

困惑するロイド達をよそに戦兎は筒、『フルボトル』を機械、『ビルドドライバー』にセットする。

 

 

ラビット!

タンク!

ベストマッチ!!

 

 

ベルトから響く声と軽快な音楽。戦兎がベルトのレバーを回し始めるとベルトからパイプのようなものが伸び、戦兎の前後に四角く展開される。前方の四角の中には赤いアーマーが、後ろの四角には青いアーマーがそれぞれ半分づつ形成される。そして再びベルトから声が響く。

 

 

「Are you ready?」

 

 

ベルトからの問いかけに格闘技のような構えを取りながら戦兎は答える。その言葉を。

 

 

「変身!」

 

 

戦兎が叫ぶと同時前後のアーマーが戦兎を挟み込む。

 

 

鋼のムーンサルト!

ラビットタンク!イェイ!!

 

 

そして現れたのは赤と青が螺旋を描くアーマーに身を包んだ姿。

 

「戦兎?その姿はいったい?」

 

ロイドの口からこぼれた疑問に戦兎は名乗りを上げる。

 

「ビルド。仮面ライダービルド。作る、創造するって意味のビルド。以後、お見知りおきを。」

 

これから多くの困難が待つこの街に仮面ライダーが現れた瞬間である。




ついに変身です。
次回は戦闘シーン、ものすごく不安です。
できれば来週中に投稿したいと思います。


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序章第三節

腰を落としたビルドは赤い装甲に覆われた左足で飛び上がる。先の魔物を飛び越した時以上のスピードで接近するビルド。

魔獣は触手を伸ばして迎撃しようとするが、巧みなステップでそれをくぐり抜ける。

懐に飛び込んだビルドは勢いのまま青い装甲の左拳を叩きつけるが、ブヨンとした感触に跳ね返される。

 

「うおっと。打撃は効きにくいんだったな。」

 

魔獣の体当たりを横に飛んで回避しながらビルドは腰のベルトに手をかざす。

するとベルトから細いパイプのようなものが伸び、先程使っていたドリルに取手がついたような武器が現れる。

 

「はあっ!」

 

手に取ったそれで魔獣の体を斬りつけるビルド。しかしわずかながら切り飛ばしたゼリーのような体もすぐに元通りになる。

 

「斬撃も効果無しっと。」

 

確認するように呟くビルドは再びの体当たりを大きくバックステップで避ける。

距離の開いたビルドに触手が放たれるが、ビルドは武器のドリル部分を取り外し逆さまにしてつけ直す。

そしてまるで銃のように構えると迫る触手を撃ち落としていく。

 

「あの武器、遠距離にも対応してんのか。」

 

流れ弾などが子供に向かわないように警戒しながら言うランディ。そのままビルドの銃弾が触手をすり抜け魔獣の体に着弾するが、やはり大したダメージを与えられない。

 

「戦兎!その魔獣にはアーツが有効だ!戦術オーブメントは持ってないのか!?」

 

「戦術オーブメント?悪いが持ってない!」

 

戦兎に弱点を伝えるロイドだったが戦兎の答えに難しい顔になる。戦いに慣れている様子だったのでもしかしたらと持っているのではと思ったのだが違ったようだ。

 

「くっ!俺たちも加勢する!俺が前衛に加わるからティオ。後方からアーツで」

 

「大丈夫だって。」

 

加勢しょうとするロイドを遮るビルド。

 

「任せろって言ったろ?ヒーローの見せ場を取るんじゃないよ。それに」

 

そう言ってビルドは新しく鳥のようなレリーフが施された赤いボトルを取り出す。

 

「俺にも他の攻撃手段はある!」

 

軽く振ったボトルを武器の取手のスロットに差し込む。

 

Ready go!

 

武器から音声が鳴り、ビルドはその銃口を魔獣に向ける。

 

ボルテックブレイク!!

 

銃口から放たれたのはこれまでのエネルギー弾のようなものではなく、高温の炎だった。

アーツの気配もなく放たれた炎に虚を突かれたのか、もろに炎を浴びる魔獣。炎がおさまると全身から煙をあげ苦しそうに体をくねらせていた。

 

「よし!勝利の法則は決まった!」

 

そう言いながら右手で頭部のアンテナのような部分をなぞり手を開くビルド。彼が再びベルトのレバーを回し始めるとまたもや彼の背後から数式が流れていく。

 

Ready go!

 

数式が消えると流れる音声に合わせ飛び上がるビルド。するとどこからともなく白い曲線グラフのようなものが現れ、その一番下の部分で魔獣を挟み込み動きを封じる。

 

ボルテックフィニッシュ!!イェーイ!!

 

グラフの頂点から飛び蹴りを放つビルド。その体はグラフに沿って加速しながら魔獣に激突する。

突き出された青い右足の裏の戦車の履帯型のパーツが魔獣のゼリー状の体をえぐり飛ばしながら突き進み核と思しき球体に激突。

 

一瞬の抵抗のあと、突き抜けていくビルド。

華麗に着地を決める彼の背後で致命傷を受けた魔獣が爆発を起こす。

爆発が収まった場所には魔獣の姿は欠片も残っていなかった。

確実に倒したことを確認したビルドがベルトから2つのボトルを抜き取ると元の戦兎の姿に戻る。

 

「す、すごい…」

 

「本当に一人で倒しちまいやがった…」

 

「まっ、このてぇんさいに任せておけばざっとこんなもんさ。」

 

笑顔を浮かべた戦兎がみんなのところに行こうとすると、

 

ズズゥゥン!

 

「…はぁっ?!」

 

「嘘でしょ!」

 

「…二体目!」

 

「まずい!」

 

「「兄ちゃんにげてー!」」

 

戦兎の後ろに落ちてきたのは今倒したのと同じ魔獣。仲間を倒されて怒っているのかすぐさま戦兎に触手を振りかぶる。

 

「やっべっ!」

 

流石に変身している暇はないのか両腕で上半身を庇い少しでもダメージを減らそうとする戦兎。そこに魔獣の触手が振り下ろされる瞬間、

 

「やれやれ。中々の力を持つようだが、倒してすぐ警戒を解くのはいただけないな。」

 

突如上から聞こえてきた言葉に皆の視線が上を向く。

 

「なっ…」

 

声の主は一瞬で魔獣に接近したかと思うと瞬く間に魔獣を切り刻み細切れにしてしまった。

 

「マ、マジかよ…!?」

 

「し、信じられない…」

 

「……見えませんでした。」

 

「お、俺の見せ場が……」

 

皆が驚きの声を上げるなか、約1名変なところで落ち込んでいるが、

 

「すっ、スッゲー!」

 

現れた男に走り寄るリュウとアンリ

 

「すげーっ!さっきの兄ちゃんもすごかったけど、すごすぎるよ、アリオスさんっ!

 うっわ〜っ!いいもんみちゃったなぁ!」

 

「あ、ありがとう、アリオスさん!でも、どうしてここに…?」

 

「ああ、広場のマンホールに子供が入っていくのを見たという報せがあってな。」

 

武器をしまいながら話すアリオス。

 

「しかし無茶をする。もしものことがあったらどうするつもりだ?」

 

「ううっ……ごめんなさい。」

 

「その……悪かったよ。」

 

気を落とす二人に薄く笑みを浮かべながら声をかけるアリオス。

 

「フ……まあ、無事ならそれでいい。

 もう夕方だ。とっとと出て家に帰るぞ。」

 

「うんっ!」

 

「わ、わかりました!」

 

元気よく返事をする二人を連れて戻ろうとするアリオス。ふと気づいたように固まったままの5人に体を向ける。

 

「どうした?お前たちは戻らないのか?」

 

「え、ああ……」

 

アリオスの声にようやく動き出す5人。

 

「そうですね。一緒に戻らせてもらいます。」

 

「なら、グズグズするな。先程のようなこともある。

 最後まで気を抜かないことだ。」

 

そう言って二人を連れてあるき出すアリオス。

 

「……………」

 

「かあ〜っ!なんていうオッサンだよ?

 まとってるオーラが尋常じゃないというが……」

 

「ああ、半端ない人だったな。」

 

「……腕前の方も普通ではありませんでした。

 いったい何者何でしょう?」

 

「そう、あの人が…」

 

一人、彼のことを知っている様子を見せるエリィ

 

「お嬢、知っているのか?」

 

「名前くらいだけどね。

 というか、何で私をそんな風に呼ぶのかしら?」

 

「いや、何となくノリで。」

 

「ああ、何となくわかるかも。」

 

ハハハと笑いながら返すランディに同意する戦兎。

 

「それで何者なんだよ、あの凄まじいオッサンは。」

 

「ええ、多分ー」

 

「ーアリオス・マクレイン。」

 

エリィの言葉を引き継ぐロイドに四人の視線が向く。

 

「クロスベルタイムズで何度か読んだことがある。

 遊撃士協会・クロスベル支部に所属する最強のA級遊撃士。」

 

皆に背を向けながら話すロイド。

 

「どんな依頼も完璧にこなし、市民から絶大な信頼を得ているクロスベルの真の守護者…

 《風の剣聖》アリオス・マクレインだ。」

 

 

 

先に戻った3人の後を追って出口から出た5人はアリオスを撮影している女性に気付く。

 

「なんだ?」

 

「いや〜、アリオスさん!またしてもお手柄でしたねぇ!」

 

角度を変え撮影を続けながら話す女性。

 

「ずさんな市の施設管理の下、危機に陥ってしまった少年たちを鮮やかに救出した手際のよさ!

 最新号にバッチリスクープさせてもらいますから!」

 

どうやら記者らしい女性の話にテンションを上げるリュウ。

 

「すっげぇぇ!オレたち雑誌に載っちゃうの!?」

 

「で、でもそれって、なんかうれしくないような…」

 

逆にアンリは少々呆れた様子。

 

「グレイス。あまり騒ぎ立てないでくれ。」

 

女性、グレイスを知っているらしいアリオスが窘める。

 

「確かに市の管理も問題だがこの子たちの行動にも問題がある。

 偏った記事には感心しないぞ。」

 

「いえいえ、あくまで読者のニーズに応えているだけですから♪

 それに今回は面白いゲストもいるみたいですし。」

 

アリオスの注意も軽く受け流すグレイス。そして視線を今出てきた5人に向ける。

 

「!?」

 

グレイスはアリオスの横を通り抜け5人たちの姿も写真に納める。

 

「クロスベル警察の未来を背負う『特務支援課』初めての出動!

 しかし力及ばず、いつもと同じように遊撃士に手柄を奪われるのだった!

 ああ、未熟さを痛感した若者達は果たしてこの先に待ち受ける数々の試練を乗り越えられるのか!?」

 

芝居がかった口調で言うグレイス。

 

「な、なにを…」

 

(おいおい…いったいなんだってんだ?)

 

(マスコミの人間みたいですけど…)

 

(どうやら《クロスベルタイムズ》の記者みたいね。)

 

(記者…かぁ)

 

戦兎の頭には仲間の一人が浮かんでいた。

 

「彼らに関しても決めつけはあまり感心しない。」

 

困ったようなロンドたちに助け舟を出すアリオス。

 

「一応、この子達を最初に助けたのは彼らだ。

 まあ、ツメは甘かったようだが。」

 

「!!」

 

「なにおう!」

 

「あらら、やっぱりそうなんだ。」

 

次の一言に顔を険しくするロイドと抗議の声を上げる戦兎。どこか納得したようなグレイス。

 

「ま、記事で色々書くと思うけどあんまり気にしないでね?

 お姉さんからのエールだと思ってこれからも頑張ってちょうだい。」

 

励ましているのかどうなのかわからない言葉をかけるも、すぐにアリオスのほうに振り返るグレイス。

 

「それでアリオスさん。一度、独占インタビューをですねー」

 

「それに関しても前に断っているはずだが…」

 

少しうんざりしたようにため息をつきながら子供たちを連れていくアリオス。グレイスも彼を追いかけて行ってしまう。

 

「…何でしょう、今の。」

 

ジトッとした顔で言うティオ。

 

「俺たちのことをピエロに仕立てようってはらみてぇだが、結構好みのお姉さんだけどちょいとクセがありそうだなぁ。」

 

「まあ、記者ってのは一癖も二癖もあるやつばっかりだからな。」

 

「ふう、そんな問題じゃないでしょう。」

 

ランディと戦兎に呆れたようにするエリィ。そして動かないロイドに声をかける。

 

「それでロイド、どうするの?」

 

「あ、ああ…」

 

エリィに声をかけられ動き出すロイド。

 

「…セルゲイ課長が出した課題はクリアしたし、いったん警察本部に戻ろう。

 子供たちや戦兎さんの件についてもきちんと報告しないと…」

 

その時ロイドのポケットからピピピピという音がなる。

 

「これは…」

 

「んっ?携帯か?」

 

ロイドはポケットから音が鳴るものを取り出す。

 

「さっき貰った戦術オーブメント…もしかして通信が入ってきているのか?」

 

「ええ、そうみたいですね。」

 

ロイドの疑問に答えるティオ。

 

「そこの赤いボタンを押せば通信モードに切り替わります。」

 

「ああ、これか。」

 

ティオに教えられ、通信に出るロイド。

 

「えっと、ロイド・バニングスです。セルゲイ課長ですか?」

 

「あっ、ロイドさん!」

 

自分達がこのオーブメント持っているのを知っているのは課長ぐらいだと思ったロイドだが帰ってきた声は女性のものだった。

 

「あの、わたしです。先ほど受付でお会いした、」

 

「あ、さっきの…えっと一体どうしたんですか?」

 

相手が誰かを思い出し、要件を聞くロイド。

 

「えっと、それがですね…その、急いで警察本部に戻ってきていただけますか?なんでも副局長がお呼びみたいで…」

 

「ふ、副局長?」

 




大変遅くなりまして申し訳ありません。
戦闘シーンだけだと短いかなと思って序章終わらせようと思ったのですが事情説明がうまくかけない。このままだとヤバイと思いジオフロント脱出までで一旦投稿します。
あとは決闘者になったことが原因ですかね。はい、すいません。

次で序章終わらせます。来週、遅くても再来週までには何とか。

感想、閲覧ありがとうございます。失踪だけはしないように頑張ります。


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序章第四節

 

 

 

 

中央広場近くの階段を降りた先にあるビル。

警察署にて副局長からの小言を言われた後、セルゲイ課長からの通信で案内された特務支援課の拠点だ。

セルゲイ課長から特務支援課についての話しを聞いた四人は特務支援課で続けていくかどうか一晩考えることになった。

 

「ふぅ。」

 

夜、ビルの前でロイドは悩んでいた。このまま特務支援課で続けていくか。課長から聞いた話は遊撃士の真似事の人気取りのようなもの、自分の目標からは遠くなるのではないか。

他の三人に話しを聞いて見れば三人ともすでに心は決まっているようだった。

 

「よっ。悩んでるみたいだな。」

 

「戦兎さん。」

 

入口の扉を開け戦兎が出てくる。戦兎についても行くところはなく、時間も遅いということで今日はビルに止まってもらい、次の日に話しを聞くことになった。

戦兎はロイドの隣の手すりに背中からもたれかかる。

 

「詳しい事情は知らないけど、俺で良ければ相談に乗るぞ?」

 

この悩みは特務支援課としてのものなのであくまで部外者の戦兎には聞かなかったが、せっかくそう言ってくれるならと戦兎の言葉に甘えることにする。

 

「実は自分たちの特務支援課は新設された部署なのですが、その活動内容は市民の人気取りとしての側面が強いと課長に言われましてね。配属の辞退は可能だと言われたのですが、」

 

「どうしようか迷っていると。」

 

「………はい。すみません。こんな悩み聞かされても困ってしまいますよね。」

 

苦笑いするロイドに戦兎が言う。

 

「なぁ、そもそも何で警察官になりたいんだ?」

 

「何でなりたいか、ですか。…俺には目標になる人がいてその人みたいになりたいから、ですかね。」

 

「…なるほどな。」

 

「………」

 

しばらくの沈黙の後、戦兎が口を開く。

 

「その目標の人に近づくにはどこにいるかは重要なのか?」

 

「えっ?」

 

戦兎は続ける。

 

「俺には警察官のあれこれはわからないけど、別に目標の人みたいにってのは同じ地位になりたいわけじゃないんだろ?

 目標がはっきりしてるならどこにいてもどんな立場でもたどり着けると俺は思うけどな。」

 

「どんな立場でも………」

 

「それに他の三人は続けるんだろ?アイツらならいい仲間になれると思うぞ。」

 

戦兎の言葉に考え込むロイド。その時中央広場の方に目を向けた戦兎が何かに気付く。

 

「まっ、大事なことだからな。存分に悩むといいさ。もしかしたら答えはあの子達がくれるかもな。」

 

「あの子達?」

 

戦兎は手すりから背を離しおやすみーと言い残してビルに歩いていった。

 

 

 

 

「ふぁーあ。よく寝た。ベッドだけでもあって助かった。」

 

そして朝、遅めに起床した戦兎が一階に降りてくるとちょうどロイド達が奥の部屋から出てきたところだった。

 

「戦兎さんおはようございます。」

 

「おはようございます。」

 

「おはようさん。」

 

「おう、おはよう。

 いい顔になったな。その様子だと続けるみたいだな。」

 

「はい。昨夜はありがとうございました。」

 

「大したことはしてないさ。それに決め手はあの子達だろ?」

 

「お見通しですね。それでは遅くなりましたが戦兎さんのお話を聞かせてもらってもいいですか?」

 

「おう。こっちにも聞きたいことがあるしな。」

 

挨拶を交わした特務支援課の面々と戦兎はロビーのテーブルに座る。

 

「さて、何が聞きたい?」

 

「そうですね。まずというか、一番聞きたいのは、あなたはいったい何者なんですか?」

 

「ま、当然の疑問だな。」

 

「あなたが嘘を言っているようには見えなかったので、気が付いたらあそこにいたと言うのは本当だと思います。でも魔獣やオーブメント自体を知らない様子も見られたのが気になって。」

 

「すごいなロイド。そんなこと気づいてたのか。」

 

感心するランディに笑みを向けるロイド。

 

「でも一番気になるのは魔獣と戦ったときのあの力です。」

 

「私もあんなものは見たことがないわ。」

 

「私もあんなことが可能な技術は聞いたこともありません。」

 

エリィとティオも昨日の戦闘を思い出しやはり心当たりがないと口にする。

 

「戦兎さんは何か悪事を働くような人には見えない。何か事情があるなら話してくれませんか?力になれるかも知れません。」

 

真剣な目で聞きかけるロイド。警察官として疑うよりもこちらを心配しているその様子を見て、戦兎はくしゃりと笑う。

 

「やっぱりあんたらいい奴だな。こんな見ず知らずの人を心配するなんて。」

 

「ありがとうございます。それじゃあ話してくれますか?」

 

「ああ。一部には俺の推測を交えた話になるけどな。それと、話す前に一つ確認したいんだが、」

 

 

「日本って国に聞き覚えはあるか?」

 

 

 

 

 

「………」

「………」

「………」

「………」

 

「おーい。大丈夫か?まあ信じられないのも無理はないが。」

 

一通り説明が終わると特務支援課の四人は沈黙したまま動かなくなっていた。

 

「いえ。信じない訳ではないのですが、ちょっと頭がパンクして……」

 

「まあ無理もねえさ。兄ちゃんの話は驚くばっかりだったからな。」

 

「ええ。信じられないというよりは理解しきれないというか、」

 

「そりゃそうですよ。まさか、」

 

「「「「別の世界から来たなんて…」」」」

 

 

 

「戦兎さんの持っていたこの通信端末もかなり高性能です。

 導力技術を使わずにここまでのものを作れる人をわたしは知りません。」

 

 

「それに端末に記録されていた写真の景色も見たとこがないわ。

 クロスベル以上に近代化が進んでいる町並みみたいだけどそんな所に心当たりもない。」

 

 

「えーと何だっけ?戦兎のいた国が日本って名前でパンドラボックスとかいうアーティファクトみたいなやつのせいで3つに別れたんだったか。」

 

 

「そしてそのうちの一つ、東都で時折現れる怪人、スマッシュと人知れず戦う正義のヒーローとして活動していた。

 そのための力が昨日の」

 

 

「そう。ライダーシステムで変身する仮面ライダービルドって訳だ。」

 

 

戦兎のだいぶ簡略化した話しを聞いた四人は話しを整理し直してようやく理解する。何とかぎりぎり飲み込んだといったところではあるが。

 

 

「そんで3つに別れた国をもとに戻して、スマッシュたちとの戦いが終わったあと」

 

「仲間の一人とともに光に包まれて気が付いたらあそこにいたと。」

 

「そうなんだよなぁ。ったく、どこいったんだあのバカ。」

 

 

机に突っ伏す戦兎。

ようやく落ち着いてきたロイドは気を取り直して話しを進める。

 

 

「とりあえず戦兎さんの事情はわかりました。それでこれからどうするつもり何ですか?」

 

「そうだなぁ。機械修理とかしてお金稼ぎながらあのバカ探すかな。俺がここにいるならそんな遠くには飛ばされてないと、思う、けど。」

 

体を起こしとりあえずのプランを話す戦兎。その時黙っていたセルゲイが口を開く。

 

「なら戦兎。お前、特務支援課に入らないか?」

 

「ええ?!」

 

セルゲイの提案に驚くロイド。

 

「それっていいのか?俺警察じゃないどころかこの世界の人でもないけど。」

 

「もともといろんな奴らがいるんだ。科学者兼正義のヒーローがいてもいいだろ。身分証明とかはこっちで何とかしてやるさ。」

 

「ええ…それいいんですか?」

 

「聞きようによっては身分の偽造ですけど…」

 

呆れたようなロイドとエリィ。

 

「何だお前ら嫌なのか?」

 

「嫌とは言いませんけど、なんでまた?」

 

質問するランディにセルゲイが答える。

 

「強いて言うなら面白そうだからかな。こいつなら色んなもんをぶっ壊して行きそうな予感がしてな。」

 

戦兎に向き直るセルゲイ。

 

「まあお前さん次第だ。別に今すぐ決めなくてもいいが、」

 

「いや、折角だしやらせてもらおうかな。」

 

「ほう。」

 

即答した戦兎にロイドが聞く。

 

「ちなみに理由は?」

 

「警察なら不審者とかであのバカの情報が入るかもしれないからな。」

 

「不審者なんですか?」

 

仲間がそれでいいのかというティオ。

それと、そう言いながらセルゲイを見る戦兎。

 

「面白そうだからな。」

 

「くくっ。そりゃ良かった。」

 

立ち上がった戦兎はいきなりのイベントに頭を抱えるロイドの前に立つ。

 

「というわけで、これからよろしくな。リーダー。」

 

ロイドも立ち上がり、戦兎が差し出した手を取る。

 

「状況についていくのに精一杯だけど、こちらこそよろしく。戦兎。」

 

 




大変遅くなりました。しかも序章終わってない。本当にすみません。
序章って特務支援課結成までじゃなかったんですね。大分記憶があやふやでした。2章書くときは一回章終わりまで通してから書き始めようと思います。
戦兎の説明ですが、細かいところは大分ぼかしてます。ライダーシステムの出どころとかラスボス周りとか。軌跡世界の宇宙の認識がどの程度かわかりませんがこの上宇宙人まで出てきたらロイド達はパンクしそうですし。
あと特務支援課への所属経緯がかなり無理矢理感あると思います。流してくれると助かります。
次回こそ序章終わりまで…いけるはず。3月中には次を上げるつもりです。気長にお待ち下さい。
それではまた次の機会に。



そういえばビルドのラスボスもメガネだな。仮の体だけど。


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