ポケモンエンジョイ勢がレジェンズアルセウスの世界に迷い込んだようです。 (つちのこ。)
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◇ある男の日記
○○年△月✕日
ようやく落ち着いてきたのでこれから国語のノートを日記代わりに俺の生きていたという軌跡を記していこうと思う。すぐ死んでしまうかもしれないし、誰かこの日記を見つけたら埋葬してください。
まず何が起きたのかというと学校に向かう途中、突然目眩がしたと思ったらなぜか見知らぬ世界にいたのだ。山奥ではあったものの、幸い川も近く動物も見当たらない。暫くは食料以外困らなさそうだ。
△月〇日
昨日は疲れ果てて眠ってしまったが、なんとこの世界、ポケモンがいる世界だった。川にいたコイキングを見て俺は大興奮した。そりゃそうだろう元々ポケモンのゲームを全種類やっていた俺だ。興奮しないわけが無い。それでも俺は棒切れでなんとか槍を作って心苦しいながらもコイキングを殺した。生きるためだ。身は余さずちゃんと全部食べた。ありがとうそしてごめんねコイキング。
△月□日
コイキングのおかげで食料に困らなくなったため、余裕が出来た俺は周囲の探索を始めた。よくよく探索してみると俺が今暮らしている川の周囲には色んなポケモンがいるというのが分かった。キャタピーやトランセル、コクーンやパラスなどゲームでは弱いキャラとして扱われているようなポケモンがたくさんいた。刺激しなければ襲われることはなさそう。
△月✕✕日
現地の住人とであった。何者だと問われて旅人と答えると頑張れって言われた。ありがたい。その人はなぜかモンスターボールに似たボールを俺にくれた。曰く試作品だから色んな人に使ってもらいたいとの事。ありがたく貰うことにする。
△月〇□日
ミュウを捕まえた。なぜ幻がこんなところに...。とも思ったがこれも異世界転移した俺のために神が贈ってくれたと思うことにする。これからコイツと旅に出ることにする。楽しみだなぁ...。
□✕年〇月✕□日
ミュウが瀕死になった。あの目が真っ赤な知らない斧のような手を持つポケモンにやられた。俺を守るために犠牲になった。ゲームの世界ではどんなに酷くても死ぬことはない。だけどこの世界はリアル。コイキングのように死ぬこともある。だけどミュウは、ミュウは死んでない。眠っただけ。俺が起こす。...いつか起こしてやるから、待っててな。ポケモンセンターなんてこの世界にはまだ無いみたいだから...。クソが。
...ごめんなミュウ。
〇✕年✕月〇〇日
あれから俺は研究を始めた。ミュウが瀕死になってからはや10年。研究は思ったより上手くいかない。げんきのかけらやげんきのかたまりを探そうにもどこにあるか、どのように生成されるか何一つ分からない。薬草を組み合わせてみたりして自作のキズぐすりを与えたりしたがやはり目を覚ましてくれない。
✕□年〇月□□日
この世界に迷い込んで実に44年。ついに成功した。ミュウを生き返らせるのが不可能だと気づいてから俺は新たに体を作り、そこにミュウの魂を埋め込むことにした。5年以上探し求めた伝説のポケモンであるギラティナに土下座し、彼の協力の元、なんとか形になった。それと、どうせならと俺はミュウの新たな体を改造した。世界で最も強く、誰にも負けない。最強のポケモンを作り出した。後にXYの舞台になるカロス地方に渡りミュウツーナイトXとYの両方を手に入れ、サンムーンのアローラ地方にも赴いてネクロズマを手に入れた。これも全部ギラティナのおかげだ。本当に感謝している。なぜここまで手伝ってくれたのか聞いてみたが彼の言葉は俺には分からない。気まぐれだと思うことにしている。
〇月□✕日
もとの地方(10年目にシンオウ地方だと気づいた)に帰ってきた俺は手に入れたミュウツーナイトXYを解析し、合体させた。これをミュウツーナイトZと名付けた。これを新たな体に埋め込み、俺のメガリングと連動させた。メガシンカが可能かどうかは目が覚めてから実験することにする。
そして手に入れたネクロズマはギラティナや他のポケモン達の協力の元無理やり新たな体の材料とさせてもらった。ルナアーラやソルガレオと合体できるのだから素質はあると思ったのだ。実験は成功。頭部の右半分と右腕がネクロズマに侵食された。これで強くなる。
〇月□〇日
色々と調整した結果タイプはフェアリーとエスパーとドラゴンの三種複合タイプとなった。エスパーはミュウの、エスパードラゴンはネクロズマのタイプとなっている。フェアリータイプなのはフェアリーのプレートを改造して体に馴染ませたからだと思う。タイプばかりはこれ以上弄れなかった。
そしてついに最強の体を持つミュウが誕生する。
その名は...『ミュウスリー』
種族値は92/50/130/220/130/150の合計772。これが俺の調整の限界だった。
△月□日
ミュウスリーが目覚めない。調べてみるとミュウの魂の存在が薄くなりすぎていた。他の魂を混ぜるしかない。
レジェンドアルセウスクリアしたら多分投稿します。
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○第1話 ミュウツー(?)に転生した女
「いやぁ...色違い出ないなぁ...。」
もうかれこれ3時間は粘ってるんだけどヒノアラシの色違いがでない。仕事が忙しくてあんまりポケモンGOやれなかったからあれだけどこんなに出ないものなのか...。
...あ、どうも。社畜のOL、
帰ったら両親に仕送りしなきゃな〜。いつも私のために頑張ってくれた両親だから今はゆっくり休んで欲しい。まぁ私は休めないんだけど。ハッハッハ。
「...ん?...はぁ!?アルセウス!?な、なんで!?」
私さっきまでポケモンGOやってたよね?なんで目の前にまだ実装されてないアルセウス色違いが出てる訳!?というか背景なに!?天空じゃん!
というかボールとか投げられないし...。え、なんのイベント...?隠し要素か何かなの...?
と暫く画面の中のアルセウスと睨めっこしていると、そのアルセウスが逃げ出した。これは逃がしたらもう会えないと思った私は画面にアルセウスを捉えたまま追いかける。
──スッ...
そのアルセウスがピタリと止まったので私も立ち止まり、画面を注視する。
『...心優しき者よ...。どうか彼を救って下さい...。』
「はい?え、喋った?えぇぇええ!?!!?というかどういうこと!?」
──シュゥゥ...
アルセウスはそう言うと消えてしまった。そして、私が今いる所は...
───キキィィィイィイイイイイイッッ!!!!!!
『ニュースです。昨日午後2時頃、〇〇県在住の柵美羽さんがスリップしたトラックに轢かれ、死亡しました。現場には轢かれる直前まで美羽さんが持っていたスマートフォンが発見され、美羽さんがポケモンGOをしていたことが判明しました。そしてトラックの運転手も同じくポケモンGOをしており、両者のながらスマホによる事故と警察側は発表しています。これに対し、専門家は・・・───』
───────────
─────────
『 ミュウ... リーよ...。目覚め...くれ...。 』
んぅ...?誰...?てか私ってトラックに轢かれたよね...?痛みは感じなかったんだけど...まさか生きてる...?てかミュウて。私の名前は美羽だよ。私に外国人の友達はいないはず...いないよね?
じゃあ貴方だれ?
『目覚めてくれミュウスリーよ。』
「ミュ...ゥ...」
????
声が...綺麗!じゃなくて!なんでミュウしか言えないの!?それに目が開かない...。あと私はなんか水の中にいるみたい。
左手を伸ばしてみて私の状況を確認す...
───パリンッ!!
「...?」
「おぉぉぉ!!!ミュウ...!!ついに目覚めたか!」
目が開くようになったので開けてみると、そこには自分が伸ばした、
あれ?私ミュウツー?映画版なら喋れるっけ...。ならあの有名なセリフももしかしたら...。さっきはみゅうしか言えないと言ったけど、たぶん自分と声帯が違うからだと思う。慣れれば話せるようになるかな?まぁ夢だろうからなんでもいいよね。
よし...
「誰が、生めと...頼んだ?誰が作ってくれと...願った?
私は私を生んだ全てを恨む。
だからこれは、攻撃でもなく宣戦布告でもなく、
私を生んだお前達への、逆襲だ!」
はいバッチリ。ドヤァ...。
まぁ2つほど言うとしたら...映画版ミュウツーの声優さんと私の声が違うことと、目の前にいるのがフジ博士じゃないことだね。
夢の中だと思い込んでいる主人公ちゃんと突然愛するポケモンにキレられた転移者。
あ、なんかこういうの書いて欲しいとかリクエストがあれば脚色して書くかもしれません。(見切り発車だからね(しょうがないよね))
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○第2話 特性と特性と特性、特性...それと特性。
「...そのセリフはミュウツーの...やはり世界の修正力が働いているとでも言うのか...!いやしかし、これは想定していたこと...。」
「?」
このおじいちゃん何言ってるの?ミュウツーのセリフって言ったよね?この人もしかして...
「あの───」
「『パワーダウン:1%』」
「──ァガァアッッ!?!!?」
視界がボヤける。上げていた手に負荷が掛かり、ダラりと下ろしてしまう。そして、地面に倒れたのを感じながら
───────────
──転移者side
「...すまないミュウよ。私は
もしもの為にミュウスリーの体内に用意していた『パワーコントロール装置』。これはゲームでのシステムを参考に作らせてもらった装置だ。ゲーム内では有名どころで言えば『にらみつける』や『つるぎのまい』等のステータスを下降、上昇させる効果を持つ技がある。ゲーム内では各ステータス最大で六段階まで下げたり上げたりすることができるが、この装置は10段階まで下げることが可能となっている。
そして現在、ミュウスリーのステータスは全てのステータスが10段階下がっている。
「...魂は純白な
万が一暴走しても良いようにこの装置を作ったが、まさか本当に使うことになるとは思わなかった。...しばらくミュウ...ミュウスリーには眠っていてもらお──
「...おい」
「っ!?」
「そろそろ...目を覚ませ...───よ...!」
「ミュウ...ミュウなのか...?」
「今の私はミュウではない。様々な魂が混ざりあった紛い物...。これがお前が望んでいた
「っ!...そ、それ、は......くっ...そ、そもそもなぜ動けるのだ!
「お前は私の特性を知らんのか?ならば教えてやる。私の特性は『プリズムボディ』だ。」
「プリズム...ボディ...?聞いたことの無い特性だ...。ネクロズマのプリズムアーマーなら分かるが...。」
「言っただろう。私は様々な魂が混ざりあった紛い物だと。特性も混ざり合った結果『状態異常を全て反射し、怯まなくなる、そして効果抜群の技の受けるダメージが4分の3になる』特性に進化した。」
「なっ!!そんな
「考えろ。
...私に状態異常は効かない。」
「...。」
まずい。何がまずいって?言わなくても分かるだろう。暴走される。...しかし、パワーコントロール装置があればレベル1のポケモンよりも弱い...そこまで焦らなくても良いはずだ...。なのに...なぜここまで...冷や汗が止まらないのか...。
「...ここまで落ちぶれたか。あの頃の純粋だったお前はもう居ない。」
「...。」
「そういえば言い忘れていた。」
「...?」
「
「は...────」
────グヂャッッッ!!!!
こうして私は愛するポケモンの手によってこの世界を去った。
シンクロで相手を状態異常にし、ふみんがシンクロと合わさることで状態異常が跳ね返される。そこにふくつのこころが合わさって『怯むとすばやさランクが1上がる』から『怯み無効化』へ。そこにプリズムアーマーが合わさって効果抜群技を4分の3に。
それプラス主人公ちゃんの性格あまのじゃくを引き継いださいきょーぽけもん。
ちなみに特性は『プリズムボディ』と『あまのじゃく』で切り替え式です。
これから弟とレジェンズアルセウス楽しんできます。
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☯第3話 絶望と希望
「うっ......。」
浮遊感と共に目が覚める。私は確か知らないおじいちゃんと話していたはず...。
「え...?」
はず。なのに。
「ぇ...ぇ...どう、したの...?なんで...ねぇ!」
当のおじいちゃんは...
「夢でしょ!?なんで!こんな胸糞悪い夢を見せられなきゃいけないのよ!!」
胸に大きな穴を開けて倒れていた。
気付きたくなかった。おじいちゃんの胸から垂れ流れる真っ赤な血と彼を揺する私の手が真っ赤であること。そこから導かれる
「夢...でしょう...?」
何度目を閉じても変わらない。
「ねぇ...誰か...夢って言ってよ...。」
何度自分の頬を叩いても夢は覚めない。
「......ねぇ...。」
─────────────
──────────
何をやっても夢から覚めない。すべて夢じゃなかった。意識がなかった私は何も知らない。だからと言っておじいちゃんを殺したという事実は変わらない。
まだ割り切れた訳じゃない。でも私はポケモンになってしまった。そして人を殺した。
やるせない気持ちになりながらも、せめてとおじいちゃんを埋めてお墓を造った。
建物の外に出ると、そこは鬱蒼とした森の中だった。重い足取りで歩く...というよりは浮いていると小川を見つけたのでもう固まっている血を洗い流す。
「...。」
あぁ...私...ポケモンですらなかったか...。
川に映る私はミュウツーではなくそれに似た
「...人殺しの化け物。ははっ...。」
私は
────────────────
「ふんふふんふふ〜ん。」
「あら?どうしたの凛。」
「今日はね〜アルセウスの発売日なんだ〜!」
「そうなの?」
「うん!今からお店行ってくる!」
「そう?気をつけてね?」
「はーい!」
今日は待ちに待ったポケモンレジェンズアルセウスの発売日。今作は今までと違った感じで楽しみにしてたんだよね〜。多分お姉ちゃんも楽しみにしてると思う。お姉ちゃんも私と同じポケモンファンだからね。
──ティロリンッ♪
「ん?お母さん?」
『すぐに帰ってきなさい。』
「えー?」
『なんで?』
『話は後で。私もどうしたらいいか分からないから。』
「むぅ...。」
『分かったよ。』
『ありがとう凛。』
お母さんの慌てっぷりがよく分かる文面だったので言われた通り急いで帰ることにした。お母さんはいつも冷静沈着で慌てることなんて滅多にないからね。
「アルセウスはお預けか〜...。ん...?」
ガッカリしながら、来た道を戻ろうとした瞬間、なせか道に大きな穴が空いた。それもピンポイントで私の真下に。
「うわぁぁああああ!!?!?!!?!?」
なすすべもなく落ちていく。真っ暗な世界をただ落ちていく。
「わ、私のスマホ...!」
ポケットからこぼれ落ちたスマホを掴もうとするも、もう既に届かない所に飛んでいってしまう。
すると...
──キラッ...キラキラキラッッ...!!
突然私を囲うように何かが煌めく。その光は飛んで行った私のスマホの奥に向かっていき、集結する。
「ぇ、あ、アルセウス...?」
その姿はポケモンを知っている者ならば誰でも知っているポケモンだった。...なんかの構文みたい。じゃなくて。
「...え、なに...これ?」
「...。」
そして、私のスマホも輝き出す。なぜ?あ、返してくれるんですね....。
あ、ちょっとまって吸い込まな──────
絶望に落ちる主人公ともう1人の主人公ちゃん。...タグ追加しとくか。
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●第4話 ゲームと現実
───ke up...!
─Wake up!!」
うぅぅん...あと5分...。
「生きていますか!?」
「うっ...?」
寝ぼけ眼に映るのは三体のポケモン。左からヒノアラシ、モクロー、ミジュマル...。ってえぇぇえっっ!?なんでポケモン!?
そしてポケモンたちの後ろにいる白衣を着た謎の男の人。
え?どういう状況?てかここどこ...?
「空から落ちてきて驚きましたが...良かった。生きていますね。」
「あ、あの...貴方は誰ですか...?」
「それはこちらのセリフです。空から落ちてくるなんて一体どこの誰だというのです...。」
そりゃそうだ。てか私って空から落ちてきたの?この...砂浜に?
「それにして...なんともいえない不思議な格好をしていますが...この辺りに知り合いはいるのですか?」
「.....................さぁ?」
だって見たことない場所なんだもん。誰がいるとか分からないし...。てかポケモンがいる世界ってことは私がいた世界ではない訳だし...。
「なるほど...大変ですね。...では行く宛てはあるのですか?」
「...ありません。」
だって見た事ない場所(以下略)
「知り合いもおらず、寝場所もない...とてもお困りのようですが、そもそも生きていけるのでしょうか?」
「...どうしよ...。」
いきなり異世界...しかも大好きなポケモンの世界に転移?してしまった訳だけど、名前の知らないこの...博士みたいな人の言う通り、そもそも衣はともかく、食住がないから生きていけるか分からない。
どうしてこうなったんだろう...。私はただアルセウスを買いに行っただけなのに...。
そう思って俯いていると、目線の先にいた3匹のポケモン達が私の顔を心配そうに見上げていた。
「うーん.........分かりました!困っている人を見捨てる訳にはいかないのです!」
「くぽぉ〜!」
「プシュッ!」
「ぴちゃちゃ!」
「そうでした!このコたち、逃げたポケモンを追いかけてきたら...おっとソーリー。ボクはラベンです!ポケモン博士をしているのです!ポケモン達のことを詳しく知るため、あれこれしている研究家なのです!」
「そうなんですね...。」
やっぱり博士だった。しかもポケモンの。ポケモン博士といえばゲーム内では御三家をくれる人と図鑑を埋めて欲しいって頼む人...っていうイメージしかない。というかこの御三家って世代バラバラじゃない?どうなってるの?
「今はこのコたちをォォオ!?可愛いポケモンたち!どうして逃げ出したりするのです!?逃げたポケモンたちを追いかけるのです!」
「は、はい...!」
な、なんか流されちゃったけどとりあえず追いかければいいんだよね?
ポケモン達が走っていった方向にラベン博士と一緒に向かうと途中でスマホらしきものを拾った。形もなんかアルセウスみたいになってるから恐らく私のスマホがあの光で変化させられたのかもしれない...。それにアルセウスに改造されただけあってなんか不思議な力も感じる...。
「ん?」
『アルセウスフォンと使命を託す。「全てのポケモンと出会え」』
「えぇ......。」
唐突すぎない?何もかもが唐突なんだけど...。てかこのスマホアルセウスフォンって名前なんだね。
「落し物ですか?」
「あ、そうですね。私のものです。」
「そうでしたか。それで話は戻りますが、ポケモンを捕まえるためにいくつもボールを投げましたが、ぜんぜんダメなのです...。」
確かに...今までやってきたゲームでは勝手にボールを投げてくれるから気にしてなかったけど、リアルになると普通に難しそう。
「はい!モンスターボールです!」
「え...?」
「これを投げてポケモンを捕まえるのです!」
「えぇ...。」
自分ができないからって押し付けるのも違うんじゃない...?いややってみるけど...まぁできるかは分からないけどね。
って50個は無理よ。
「とりあえず10個渡しておきます。無くなったらまた取りに来てください!」
「あ、分かりました。」
10個も一度に持つと結構キツいけどね。
「おっとソーリー!渡すだけでは説明不足ですね!いいですか?ポケモンは不思議な生き物と言いました。」
「はい。」
「では、何が不思議なのでしょうか?」
「えっと...」
正直、物理的に存在が不思議な生き物だと思うんだけど...。
「それは、どのポケモンも小さくなる習性を持っているのです!そしてモンスターボールです!最近開発されたばかりのボールをポケモンに投げると...!」
「ボールに入る...?」
「なんとポケモンは小さくなって...あ、そうですモンスターボールに収まります...。つまり捕獲できるというわけです。」
まぁモンスターボールと聞いて捕獲用のボールだと思わない人はいないんじゃないかな...?
「他に頼る人はいません!逃げた3匹の捕獲をお願いするのです!捕獲するにはポケモンをよく狙ってボールを投げる!とてもシンプルです!.....ボクには狙った所に投げる才能はありませんからね...。」
「は、はぁ...。」
頼みましたよとにっこり笑って見守るラベン博士を尻目に私はまずそこら辺の岩の後ろ辺りを探してみた。
「プシュッ?」
すると、そこには細い目をこちらに向けて頭にはてなマークを浮かべているヒノアラシを見つけた。か、可愛い...!なんて可愛いの!
「ふへ...へへへ...。可愛いでちゅねぇ...」
「プシュッ!?」
「あっ...に、逃げちゃった...。」
あ、そういえば捕まえないといけないね...。ヒノアラシが逃げる時に威嚇してきたけど可愛かった。でも背中に火を灯していたから普通に危ない。...リアルになるとこんなにも小さなポケモンでも人の命を奪えてしまうということをハッキリと理解させられるね...。
よし...頑張って捕まえますか...。
凛ちゃんの方はゲーム内のストーリーに沿って進行する感じです。
次回は書く気が起きたら書きます()
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●第5話 この世界は
モンスターボールを手の上で軽くポンポンと投げて重さを確認する。というかこの世界のモンスターボールってなんか...手作り感が凄い。所々凹んでるし。あ、でもこのボールは軽いから良いね。
「よし...。やぁっ!」
──ぽーんっ!
私の投げたボールはなんと狙ってもいない上空に飛んで行った。そのままy = -x^2の放物線を描くようにしてそのまま「なにやってんだアイツ...」みたいな顔をしているヒノアラシに当たった。なんかクリティカルヒットみたいな音を立てたけど大丈夫かな...?
──ぽーんっ...パンッ!
ヒノアラシが入ったボールは1回だけ跳ねて、その後になぜかちっちゃい花火が出た。これが捕獲エフェクトなのかな?私の知ってるモンスターボールとやっぱり違うのかな?名前は一緒だけどデザインは違うし...。
「オー!素晴らしいです!ポケモンを捕まえましたね!凛君!ポケモンを捕まえる才能はここで生きていくのに有用です!」
「そうなんですね。」
「はい!逃げたポケモンはあと2匹です!...それにしてもキミは珍しいことにポケモンを恐れていないようですね。」
「まぁ...可愛いですし...。」
そう言って私は次にミジュマルのいる水場にコソコソと近づいていった。
「ミジュマルも可愛いなぁ...。」
「みじゅっ!!」
「さっきはまぐれだったけど...今度こそはっ!あれぇ?」
──ぽーんっ!...ボヂャンッ!
さっきよりはまともになったけど、それでも結構な山なりで飛んで行ったボール。それはミジュマルの頭上を通り越して水場に落ちた。
「む、難しいなぁ...。」
「頑張ってください!」
「あ、ありがとうございます。」
「みじゅ?」
「行くよミジュマル!」
「みじゅっ!」
なぜか私の掛け声に応えてくれたミジュマルにモンスターボールを投げる。今度はしっかりまっすぐ...とは言わないものの、歴代の主人公が投げたボールと同じような軌道を描いてミジュマルの頭に当たった。
──ぽーんっ...ポンポンポーンッ!...パンッ!
ミジュマルの入ったモンスターボールはヒノアラシの時とは違い、今度は3回跳ねてちっちゃい花火が出た。何が違うんだろう?
「凛君!凄いです!世の中にはポケモンを捕まえるどころか近づくことすら恐れる人もいるのに...あと1匹ですね。さぁ探しましょう!捕まえましょう!!」
「あ、はい。」
ポケモンを捕まえるどころか近づくことすら恐れる人もいる...か...。確かにこの子達御三家はまだ可愛いから私でも大丈夫。でも大きいポケモンとかを目の前にしたらどうなっちゃうんだろう...。それこそ強いポケモンとかと出会ったらまず死ぬしかない...。
「え、あのそんなに気負わないでくださいね?」
「あぁいえ、大丈夫です。」
「そうですか?」
まずはモクローを捕まえよう。
モクローは木の根元付近で寛いでいた。そして、私に気がつくと木の後ろに隠れた。
「...怯えてるのも可愛い...。じゃなくて。」
ボールを構えてゆっくり木の後ろに回り込む。そして...
「えいっ!」
──シュッ!!...ぽーんっ!...パカンッ!!
「あぁ...。」
1度も跳ねることもせず出てきてしまったモクローは走って逃げていった。
「あぁ...そうです...。モンスターボールで100%捕獲できる訳では無いのです...。もう一度ボールを投げてください!」
「はい!」
まぁモンスターボールだしね。伝説のポケモンとかモンスターボールで捕まえるの大変だったりするしそこら辺はちゃんと分かってるよ。
「今度こそ...。」
「ほ〜?」
私を試しているかのような視線をこちらに向けるモクローに私も真剣な視線を返す。そのままボールを構えて...
「えぇい!」
────シュッッ!!...ぽーんっ...パンッ!
「やったっ!」
「やりましたね!ありがとうございます!いやぁ助かりましたよ!いいですか?キミに捕まえてもらった3匹のポケモンは調査のためにムラに運ばれてきたばかりで誰の言うことも聞かないのですよ...。」
「え?」
「さっきも言ったようにキミの落下を分かっていたかのようにムラを飛び出してしまうし...。それにしても凛君!キミのボールさばきには驚きです!ここに来たばかりなのになぜそんなにうまくボールを投げられるのですか...?」
「私は普通だと思いますけど...逆に博士が下手なだけでは...?」
「うっ...痛いところ突きますね...。ま、まぁキミの出現には何かしらの意味があるように思えるのです...。」
「...逸らした。」
「...。」
「あ、そうだ。これ...アルセウスフォンって言うんですけど...」
「ん?『全てのポケモンとであえ』...?へぇ...アルセウスフォン......不思議な代物ですね。まるでキミを導くかのようです。気になりますが、また後で話しましょう。」
「そうですね。」
「いきなりですがいいですか?」
「はい?」
「ボクの夢はこの地方
「初めて...?」
「分かりますか?ポケモン図鑑!あらゆるポケモンを記録していくとても先進的で素晴らしい研究です!」
「先進的...。」
この世界って...ポケモン図鑑がまだ無かったの...?それってこの世界がまだ発展してない...みたいな...。
「ただ...ポケモンを記録するには、ポケモンを捕まえる必要があります...。ですがモンスターボールは開発されたばかりでうまくポケモンを捕まえる人は少ないのです...。」
「...。」
モンスターボールが開発されたばかり...。やっぱりこの世界...。
「そこに登場したのがキミ...。ポケモンを捕獲する才能の持ち主...。」
「え、いや...たまたまです...。」
「そんな謙遜はいいですよ!それで、全てのポケモンとであうキミとあらゆるポケモンを捕まえて欲しいボク...。そう!お互い協力しあえるのです!どうでしょうか?助け合うというのは!」
「...。」
確かにラベン博士の言う通り、互いに助け合った方がwin-winの関係だろう。それに食料とかも分けてもらえるかもしれない。
「...分かりました。私協力します!」
「良かったです!断られたらどうしようかと...。」
「あはは...。」
「それではコトブキムラに向かいましょう!」
「はい!.........コトブキムラ...?」
ボールの捕獲した時の音がよく分からない笑
ちなみに、凛ちゃんはレジェンズアルセウスの事前情報を何も知りません。転移前は徹底的に情報統制していました。
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●第6話 異世界での1日
「門番さんいつもお疲れ様です。」
「どうもラベン博士。そちらは?」
「凛君です。こちらはボクとポケモンの恩人ですのでムラに招き入れますよ。」
「凛さんですね。了解です。ようこそコトブキムラへ。」
「は、はい。よろしくお願いします。」
昔の格好をした門番さんに会釈をして門を潜る。その先にはこれまた昔の日本みたいな街並み...村並み?が広がっていた。
「こちらですよ。ボクに着いてきてください!」
「はい。」
「コトブキムラは
「ぎ、ギンガ団...。」
ギンガ団ってあれだよね?ダイヤモンド・パールにいた組織だよね?
「今歩いているのはミオ通りです。」
「見ない格好ね...。」
「どこからきたの...?」
「調査隊の新人か?」
歩いていると門番さんみたいに昔の格好をしている方達がチラチラと私を見ている。私の格好は普通だと思ったんだけど、この世界では奇妙な服装なんだろうね...。
「ムラができて2年ばかり...まだまだ人手不足なのですよ...。」
「大変ですね...。」
「えぇ。ポケモンを調査しないとムラの外にと出づらいですし...」
「奇妙な風体じゃ...。」
「しっ!聞こえるじゃろ...!」
「あ、奥にそびえるのがギンガ団本部ですね!」
「えっ...!?」
「どうかしましたか?」
「い、いえ...。」
ギンガ団が外部から助けてくれたんじゃなくてここがギンガ団本部なの...?でも私の知るギンガ団はハイテクだったような...。このムラの風景といい、今までのラベン博士との会話といい...この世界...昔のポケモン世界なんじゃ...?
「博士の後ろ誰だ...?」
「さぁ...?」
「おっと忘れていました!逃げたポケモン達について報告をしないといけないのでした!キミは食堂で待っていてくれますか?」
「はい。...どこにありますか?」
「あぁ、橋を渡ってすぐ左の建物が食堂、イモヅル亭です。」
そういうや否やラベン博士はギンガ団本部へ走って行った。
───ピリリリリッ...
「ん?」
ポケットからアルセウスフォンが鳴ったので確認してみると、なぜか目的地が示されていた。なぜ??いや、何も分からないこの世界ではすっごい助かるんだけどね?あと地図が見れるようになったのはすごい嬉しい。
まぁイモヅル亭はすぐそこだから今は大丈夫だよね。
言われた通り、橋を渡ってすぐそこにあったイモヅル亭に近づく。すると...
「...胡乱な奴よのう。」
「え?」
「イモヅル亭はな!ギンガ団のための店!余所者は帰った帰った!!」
「ひっ!」
───カタンッ!!
勢いよく戸を閉められ、その場には私1人残された。...いや博士...先に言っておいてもろて...。
「なんだお前?かぶいた格好をしてるけど。そんな薄着だとポケモンに襲われたらイチコロだろ?」
「え?」
「でも、ムラにいるってことは誰かが許可をもらったのか。」
「え、はい...。」
なんか急に同年代っぽい男の子に話しかけられた。どう返していいか分からないので曖昧になっていると
「なぁラベン博士って知っているか?遠方からやってきた博士だけど。ポケモンに逃げられたりして、てんで頼りにならないんだぜ!」
「は、はぁ...。」
「でんきショックなんてポケモンの技を浴びて寝込まなければ3匹を逃がさなかったのに...。」
「それはご愁傷さま...?」
でんきショック...どんなポケモンだろう...。
「そうなのですよテル君。合わせる顔がないのです...。」
「うわっ!?」
「ですがもう大丈夫です!こちらの凛君がボク達の力となるのです!」
「えっ?もしかして調査隊に入れるってことですか?また適当なことを...こんな変なやつ仲間にできませんよ...。」
「...。」
むっ。変とは失礼な。というかこの男の子テル君って言うんだ...。
「───許可する。」
「うわぁっ!?!?」
「もっとも、調査隊に相応しい実力を持つならば...だが。...ギンガ団調査隊。隊長のシマボシだ。」
また新しくやってきたのはアカギに似ているシマボシさん。両腕を後ろに回し、ビシッと立っている様はとてもかっこよかった。
「...ラベン博士から話は聞いた。逃げたポケモンを確保した能力を役立てる代わりに衣食住の提供を求めているとか。...見たところ15歳ぐらいか。」
「は、はい。」
「であれば一人前の大人として働くのは当然。...だが、素性も知れぬ人間をおいそれと雇う訳にはいかない。」
「そう、ですよね...。」
「明日、試験を受けてもらう。」
「なるほど!フェアな提案ですね!どうです隊長も一緒に?食べながら聞きたいこともあるのでは?」
「遠慮する。料理と真剣に向き合うために、邪魔されず1人で味わいたい。」
そう言ってシマボシさんはイモヅル亭に入っていった。
「相変わらずストイックなお方です...。では!ボク達は食べながら詳しい話をするとしましょう!」
「はーい。」
「は、はい。」
「ムベさん!いつものイモモチ!今日は3人前プリーズです!!」
そうしてラベン博士とテル君は和風の傘が立ててある外のテーブル席に座った。私も彼らの対面に座る。
「へいお待ち!」
「ムベさんサンキューです!最高のイモモチですよ!!」
「はっはっは!そうだろうそうだろう!」
「ラベン博士!こちらの流れ者どこで拾ってきたんですか?」
「あぁ、そうでしたね。空に穴がありますよね?あの『時空の裂け目』と呼んでいる...あそこから落ちてきたんです。」
「.........本当ですか?」
それを聞いたテル君は顰め顔をする。そりゃにわかには信じがたい出来事だよね。私も今初めて知ったし。空から落ちてきたとは聞いたけどあの空の禍々しい裂け目から落ちてきたとは思わなかったよ。
「...ボクは科学者です。観測した事実にどのようなルールがあるのか確認していくのが仕事です!ボクには事実が全てです!!」
「科学者だから嘘はつかないと?」
「そう!ボク達がいる
「ヒスイ...地方...?」
「居ますねぇ。草むらや森、海などあちこちに...。」
ヒスイ地方...すごく聞き覚えがある。それは...
───レジェンズアルセウスの舞台だから。
逆に徹底的に情報統制していた私が知っている要素というのがこのヒスイ地方という名前のみ。本当なら地方名も知りたくなかったんだけど、お姉ちゃんがRINEで『早くヒスイ地方に行きたーい!』とかほざいたせいで知ることになったのだ。
...ということはここはレジェンズアルセウスの世界...?
「──て、調査隊はポケモンがどんな生き物か調べるのが任務です。」
「うん。...ポケモンは怖い生き物です...!どのような能力を秘めていて、どういった不思議なことができるのか...さっぱり解明されていないのですよ...。」
「うんうん...。」
「そこで凛君なのです!」
「ふぇ?」
「...お前イモモチに見蕩れてて聞いてなかっただろ...。」
「はははっ!イモモチ美味しそうですもんね!それで、ポケモンを3匹も捕まえました!いいですか?3匹もですよ!?これほどの捕獲の天才はギンガ団にはいないのです!!ようやくポケモンの調査ができるのです!!」
「さ、3匹も......それはすごい...みんな野生のポケモンに襲われながら1匹捕まえるのがやっとなのに...。」
「あ、はは...。」
天才と言われて悪い気はしない。けど、ゲームじゃ...というより未来かな?未来のポケモンの世界だと当たり前になってくるんだと思うから喜ぶに喜べない...なんだろうこの複雑な気持ち...。
「まぁ浜に逃げたポケモンは襲ってはきませんでしたが...ポケモンを恐れていないからこそ、近づき、よく狙ってボールを投げられるのです。」
「...調査隊の連中よ。おかしな人間を連れてきて呑気に食ってる場合か?隊長なんて中でイモモチを10人前も...。ポケモン図鑑の完成が程遠いとはいえ、やけ食いにも程があるぞ...。」
「ふっふっふ...シマボシ隊長のやけ食いの日々も終わります!さぁ凛君もどうぞ!空から落ちてきたキミもギンガ団に入れば食事も寝るところも安心ですよ!」
「そ、うですかね...?」
「そうですよ!さぁ今日は食べまくりますよー!」
─────────
───────
夜も更けて...
「...いやぁデリシャスでしたね...!」
「呑気だな...いいですか?凛は試験に受からないと調査隊になれませんよ?」
「凛君の実力でしたら大丈夫!合格間違いなしです!!」
「だといいな。凛とやら...今夜はあちらの宿舎を提供する。」
イモヅル亭の前で話をしていると、シマボシさんがイモヅル亭から出てきた。彼女によるとギンガ団の本部から見て左側、イモヅル亭の右斜め奥に宿舎があり、そちらを提供していただくことになった。
「...だが、試験に受からねば明日からはムラの外で生活。最悪、野垂れ死に...だな。」
そう言い捨ててシマボシさんは本部に入っていった。
「...シマボシ隊長とヒスイ地方...厳しいって意味で似ているよな...。」
「ボク達を守るためにも強く振舞っているんですよ!」
「...。」
そっかぁ...この世界は厳しいんだね...。
「空から落ちてきた人!布団からは落ちないですよね?それではグッドナイトです!」
「ちゃんと寝ろよ?...それにしても空から落ちてきたって...お前、何者なんだ...?まぁいいや。また明日な。」
「うん。」
そうして2人もそれぞれ帰路についた。
「...疲れたな。」
今日は色々あって疲れた。結局レジェンズアルセウスは買えなかったし、お母さんの話も聞けずポケモン世界に転移しちゃったし、その世界は私が買う予定だったレジェンズアルセウスの世界だったし...。
明日は試験...。しっかり休もう...。
────────
────
皆が寝静まった夜...
───バヂッ...バヂヂヂッ...
巨大な大木の上空に大きな亀裂が入る。そして...
───ズドォォォォオオオンンッッ!!!
次回は絶望主人公ちゃんsideです。
とりあえずこっちのストーリーは一旦区切ります。
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○第7話 人間との遭遇
「...ミュゥ...。」
ふとした時に出るため息でさえ全て元の私のものとは違う。やっぱり私は死んだ。痛みもなくこの世界で目覚めたから実感が湧かなかったけど...それでもあのスリップしていたトラックが猛スピードで私の所まで来たのだから生き残れるとは到底思えない。
「...私は...これからどうすれば...。」
────グゥゥ...
「...お腹...空いた。」
日本ではありふれたお惣菜とかがあったからお金さえあれば飢えは簡単に凌げていた。しかし、この世界での私は何も無い。なんならミュウツーの如く造られた、意識がない内に人を殺すような化け物だ。人に助けを求める事など不可能に近い。もしこの喋れる力を活かして人に助けを求めても実験体にされるのが落ちだと思う。
「この周りを探索してみよう...。」
もし巨大なクマとかが現れたら何もでき...でき.........も、もしかしたらミュウツーのようになにか特出した力を持ってたりしないかな...?
ミュウツーといえばサイコブレイク...やってみる...?
さっきおじいちゃんを揺すった時に気づいたのだが、私の右腕がなぜか真っ黒な結晶のような手になっていた。どことなくネクロズマを連想させるその右手を近場の木に向けて、技名を唱えてみると...
「...サイコブレイク」
───プワワワッ...ズガガガガガァァァァンッッ!!!
木の周囲に紫色の塊がたくさん浮かび、それが一斉に木に集結した。ぶつかった木は木っ端微塵となり、後にはボロボロの切り株...切ってないから株?が残された。
「...。」
やばくない?...本当にミュウツーみたいな力持っちゃったよ...。あ、他にもできるかな?私ミュウツーじゃない別の化け物だし違うポケモンの技とか...。例えば......
「...ネクロズマ専用技...。」
さっきの右腕を見てもしかしたらと思ったんだけど、できるかな...。
「...フォトンゲイザー」
またも恥ずかしいからという理由で控えめに技を唱えてみる。
───ジュヴィヴィウィンッ......ヒュンッ......ズドォォォォオオオオオンンッッ!!!
残された株に向けられた手のひらに黒いボールができ、それが発射されて株にぶつかると巨大な光の柱ができた。そして、技が当たった株どころか周囲の直径10mの地面諸共吹き飛ばされた。
「おぉぅ...。」
「...なんだいこの有様は。」
「ウチラの拠点から近いところで爆破音がなったと思いきや...。」
「...姉上。この謎のポケモンどうしましょう。」
「......誰?」
「「「っ!?」」」
「あ、貴方話せるの...!?」
「姉上、と、とりあえず名乗りましょう...。」
「そうね...。...常盤木と呼ばれる松のようにいつまでも若く美しい長女のオマツ!」
「枯れるどころか次々と新芽を咲かせ、繁栄を体現する次女、オタケ!」
「寒い冬に春の訪れを知らせる可憐にして気高さの象徴、三女のオウメ!」
「「「あたくしたち野盗三姉妹!その名もショウチクバイ!!」」」
「...。」
ビシッと決めた3人は何も感じていないようだが、私はなぜか恥ずかしさを感じた。そんな彼女たちがなぜこんな所に?
「その不思議そうな顔はやめなさい。あたくしたちの縄張りに入ったが最後...どんなポケモンであろうと生きては帰さないわ!」
「そーよ!姉上、ここは私にお任せを。かるーく捻ってやりますゆえ。」
「頼んだわよ。」
「はい。...さあドクロッグ!毒まみれにしてやりな!」
「ワワワウィーギャギャギャッ!!」
「...本物の、ポケモン。」
「はぁ?何言ってんだ...?アンタもポケモンだろ?」
「...。」
「ドクロッグ!ベノムショック!!」
「ギャギャッッ!!」
───ベヂャッッッ!!!
口から吐き出されるソレを私は見てから回避する。あれだけは食らいたくない。...だってなんか、ね...生理的に受け付けないから...。
「サイコブレイク」
「ギャッ!?」
───プワワワッ...ズガガガガガァァァァンッッ!!!
「なん、と...。」
「オウメ。次はウチよ...!ゆけユキノオー!
───ヒュォォォオオオオオオ!!!!!
「ミュッ...。」
ん?ふぶきと聞いて思わず身構えちゃったけど、あまり痛くない...?これならいくらでも受けられる...。
「もう一度!
───ビュォォオオオオオオオオオオッッッッ!!!
「ミュゥッッ...!!」
今度は凄まじい火力のふぶきが飛んできた。というか早業といい、力業といい、この世界のポケモンはどうなってるんだ...。
とりあえずこのふぶきを何度も食らったらさすがに死んでしまうのでミュウツーが技レコードで覚えられるだいもんじを安心と信頼の右手から発動する。
───ボッ.........ドゴォオオオオ!!!!
ほのおタイプの技なら4倍弱点でしょ?
「ノォォオッッ!?ノォォ...ォォ...。」
「戻れユキノオー...!!くっ...なんて強さなんだ...!」
「中々やるようね...。貴方見た感じお腹が減っているようね。どう?私たちと一緒に来ないかしら?」
「「え?」」
「ちょちょっ!?姉上!?コイツは侵入者ですよ!?」
「そーですよ!ボッコボコにしなくていいんですか!?」
「ふふっ。私もそう思ったけれど、さすがにあのポケモンにサイドンでは太刀打ちできないと思ったのよ。事実貴女達も傷1つ与えられなかったでしょう?」
「そ、それは...」
「う、そうだけど...。」
「そういう訳よ。食料を提供する代わりに、私たちに協力しなさい。」
...魅力的な提案だ。だけどね。
「...いらない。」
「なぜ?」
「施しなんて、要らない...!」
私は天邪鬼。皆からもそう言われてるし自分でもそう思ってる。素直じゃないなんて言われるけどそんなのはどうでもいい。自分本位であれば何事も上手くいく。だからショウチクバイの目的なんて私には関係ない。精々自分たちで頑張ればいい。
「ふふっ...そう...。なら好きにすればいいわ。」
「「え?」」
「さっきも言ったけど私たちは貴方に敵わない。殺すとなればもちろん抵抗するけれどそれ以外は自由にしなさい。」
「...。」
思ったのと違う反応が返ってきてビックリ。でもさっきこの人たちの縄張りとか言ってたよね。じゃあ出ていく。あわよくば私を盾にしようとか思ってるだろうし。
そう思って私はこの地を飛び去った。とりあえず大きい山の方に向かおうかな。木の実とかありそうだし。...オボンのみとか食べてみたいんだよね。
──────────────
「...。行ってしまったわね。」
「そう、ですね...。ですがあのポケモン...見たことがありません...。」
「ウチも見たことないわ...。」
「ふふっ...。」
「どうしたのですか?」
「いいえ?なんでもないわ。」
「...いつか捕まえますわ。」
この私を精神的に膝まづかせたあの名も知らぬポケモンを次は私が膝まづかせてやる。
凛ちゃんの方の御三家どうしよう...。アンケート取っても票集まらなさそうですし...やるだけやってみようかな。集まらなければ私が選んだ御三家で進みます笑
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○第8話 ヒスイ地方
「大きい...。」
あれからしばらく飛んで、この世界で私が見える限りでは一番大きい山の近くまでやってきた。その山の頂上には何やら大きな神殿があるようで、そこに行くための洞窟の入口には門番みたいな人が立っていた。
なにやら危険そうな感じがしたので山頂から離れ、中腹あたりまで降りていくと、またもや古びた祭壇のようなものを発見した。その祭壇の奥には広場があり、巨木が1本立っている。その周りには朽ちた遺跡の残骸だと思われる柱が円状に立っていた。
「...美味しそうな木の実...あるかな。」
ここに来る途中でも木の実のなる木を沢山見つけた。しかし、どの木の実もなんだか食欲が失せてしまうような物ばかりで未だにお腹が空いている。
「...誰もいないよね?」
恐る恐る大きな木の元へ向かう。すると...
───ガサ...ガサガサガサッッ!!
──ポロポロポロポロ...トトトトンッッ!
「?」
木の実...じゃなくてモンスターボールらしき玉が落ちてきた。それらは若干動いているようだ。私がさらに少し近づくと、それらは一斉にこちらを振り向いた。
「...ヒスイ...ビリリ、ダマ...?」
振り向いた彼らはなんとレジェンズアルセウスで登場予定だったヒスイビリリダマだった。
「え、ここってヒスイ地方だっ────」
───ズドォォオオオオンンッッ!!!
「っ!?」
混乱している私を追い討ちするかのようにまたもや木の上から今度は巨大なモンスターボールらしき玉が落ちてきた。もしかしなくてもヒスイマルマインだったり...するよね。
ゴロンと転がったヒスイマルマインは私の何倍もの大きさを誇っており、その巨大な顔を強ばらせていた。しかもなんか金色に光ってるし。というかマルマインってこんなに大きいポケモンだったっけ?
「...それになんだか...苦しそう...?」
「...ゴァァァアアアアアア!!!!!!」
───バヂヂヂヂヂヂッッ!!!
マルマインは急に叫んで電気の玉を出てきた。動きはゆっくりだが、威力は十分にありそうだ。
「!」
動きがゆっくりだから避けるのは簡単だった。しかし、その弾道は急に折れ曲がり私を追尾してくる。しかも避けても避けてもずっと着いてくる。
「ゴァァア!!!」
───バヂヂヂヂヂヂッッ!!!
───ヒュゥゥゥ......ドゴォォォンッッ!!
「また...!」
しかし、今度は爆弾も私の周囲に落としてきた。
電気の玉はいつまで経っても消えないので避けつつもこちらから攻撃することにする。
「ビリリダマがくさ・でんきタイプなのは...分かってる。」
「ゴァァァァァア!!!」
「食らえ...だいもんじ」
──ボッ......ゴォォオオオオオオオオ!!!!!!
「ゴァァアアアアアア!?!!?!?」
瞬く間に全身に燃え移った火を消そうとゴロゴロと暴れ回るマルマイン。
「こ、殺したい訳じゃ...」
大きいから少し弱点突こうかなって思っただけなんだけど、まさかここまでの反応が返ってくるとは...。
ミュウツーって水タイプの技覚えるっけ...
「み、みずのはどう...!」
いつも通り右手を翳して水タイプで結構序盤によく見るみずのはどうを撃つ。するとちゃんと手のひらから水が出てきた。
「ゴァァアア...ァァァ...ァァ?」
「...?...落ち着いた?」
先程まで暴れていたのに、借りてきた猫のように大人しくなった。それに、先程まで纏っていた金色のオーラも無くなっている。
「
「...どういたしまして。」
あれ?なんか普通に会話できてる...?ちょっと試してみようかな...
「...ねぇ、美味しい木の実とかここら辺にあったりする?」
「
「1つ貰ってもいい?」
「
「...ありがとう。」
やっぱりちゃんと会話ができる。ポケモンと会話ができるって...すごく、夢があるよね...。
それにしてもオレンのみかぁ...青色だけど美味しいのかな...?
「ゴァッ!」
──ドスンッ!!
マルマインがその場でジャンプし、地面を揺らす。するとその振動で木が揺れて私の真上からオレンのみがたくさん落ちてきた。
「サイコキネシス」
その全てをサイコキネシスで受け止め、一つだけ手に取る。
───かしゅっ...!!
「っ!...美味...しい...。」
「
「...またここに来てもいい?」
「
「ふふっ...ありがとう。また来るよ。」
そう言って私は上空に
...オレンのみ...美味しかった。
また食べに来よ。ありがとうマルマイン達。
こちらもレジェンズアルセウスの世界に来たことに気づきました。
アンケート取ったばかりの時はミジュマルが優勢だったのに今じゃヒノアラシが優勢かな...。締切は恐らく明日、明後日になるかと思います。
というかモクローの人気があまりない...気がする...。ジュナイパーもカッコイイんだけどね〜...。
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○第9話 出会い
「...これから、どうしようか。」
食料は何とかなった。オレンのみはとても美味しいし、サイコキネシスでマルマインから貰ったオレンのみを纏めて持ってきているからしばらく飢えに苦しむことはない。
...逆に言えば衣食住の食だけ解決しただけなんだよね。まぁ言ってしまえば今の私は...一応、ポケモンなのだから衣はいらない。消去法であとは暮らすところを探すだけだ。
「...それにいつまでもサイコキネシスで運んでられないし。」
私の背後に浮かぶ大量のオレンのみ。できれば保存が効く場所に住みたいところだ。であれば寒いところ?...でもそうなるとオレンのみの収穫ができなくなる...。
雪原と平原の境目。そこら辺を目指してみようかな。丁度木の実も生えていて、保存もしやすい気候のところ。...私には地図がないから自分で探すしかない。...スローライフ目指してもう少し頑張るか。
「でも...その前に...」
自分のスペックを確認したい。いくら私がミュウツーみたいに強く、たくさん技も放てると言ってもさすがに限度があるはずだ。
しばらくは洞穴とかで出せる技の種類や連続で何回出せるのか、あとはどの技をどれほど私は耐えられるのか、とかを検証していこうかな。
あ、そうだった。私のタイプも調べたいよね。どのタイプが弱点でどのタイプに強いのかしっかり知っておかないといけない。これで死亡率をぐっと下げられるはず。
───────────
「...お邪魔します。」
「「「「ギャァッギャァァッッ!!」」」」
───バサバサバサッッ!!
手頃な洞穴に入ってみると、人の手が入っていないからすごく暗いしズバット、またはゴルバットらしきポケモンとかがたくさん蔓延っていた。
「...。」
さすがにぽっと出のやつが洞穴を占拠するのも違うか。諦めて他のところを探そう。
「クルルッ?」
「ムクッ!!」
「...。」
そこのムクバードムックル親子。なに「お母さんあれなにー?」「しっ!見ちゃダメよ!」みたいな雰囲気出してるんだよ。可愛いだけだぞ。
「仕方ない...。小屋でも建ててみるか。」
日本人だった頃はもちろん建築士ではなかったから建築なんてできなかった。だけど、今ならサイコカッターとかサイコキネシスで木材を切って運んで組み立てられると思う。
「場所はどうしよう...。」
私としては絶対不味いと思っていたオレンのみが美味しかったので色んな種類の木の実を食べてみたい。それらをすぐに収穫できるような場所に建てたい。
強いて言うならばいろんな気候の地帯の境目みたいなところがいいな。それなら違う育ち方をする木の実も少し場所を変えるだけで収穫できるから。
「頑張って探すぞー。」
─────────────
──────────
───────
あれから数日後。
「ここだ...。」
ようやく見つけた。山岳に近く、雪原に近く、湿地にも近い。さらには暖かそうな海が近い土地...。険しい崖もなく、ここならば最高の立地だろう。
「...。」
「ここに家を建てるのかえ?」
「...。コクッ」
「そうかい。わしの良き隣人としてこれからよろしくたのむぞ。」
「...。」
そこに先人がいなければ。
彼女の名前はコギト。喪服っぽい黒いドレスと帽子、白髪の美人である彼女は私がようやく見つけた土地で既に暮らしていた。
まぁ本人の家は少し遠いところにあるみたいだけど。私が見つけた時は散歩中だったらしいし。でもここに私の家を建てるとコギトが来そう。
「それではの。わしに手伝えることなんてないし、終わったらここから近くにある緑色のテントまで参るといい。茶くらい持て成してやろう。」
「...。」
そう言ってコギトは自分の家があるだろう方向に帰って行った。...あとで偵察に行ってみようか。
ちなみになぜ話さないのかというとなんかめんどくさくなったからだ。前世ではわざわざ人の態度に気を使ってペコペコ頭を下げていた。だから今度は関わらなければいい。私はミュウツーみたいな存在だ。面倒事も多そうだし、関わらなければ木の実を食っちゃ寝のスローライフをおくることができるはず。
「...サイコカッターサイコキネシス」
やっと帰ってくれたので木を切ることにした。辺りを更地にして切り株を燃やす。できた木材は余さず建築材料として使わせてもらう。
まずは枠組みからだよね。
「...ん...んん.........ふぅ......難しい...。」
四隅に木の柱を埋め込んで横にも柱を組んでみようとしたが、難しい。それはそうだ。だって初めてなんだもん。
「...やはりそなたは1人でやろうとしておったな。」
「っ!」
私が枠組みを組むのに四苦八苦していると、後ろからため息混じりの呆れ声が聞こえてきた。振り向いてみると、そこにはつい先程別れたばかりのコギトがなぜか4体のゴーリキーを連れて立っていた。
「そなたはポケモンじゃろ?ポケモンにも得意不得意があるもんじゃ。そういう時こそその分野が得意なポケモンに頼ればいい。のうゴーリキー達。」
「「「「ゴー!リキーー!!」」」」
「...。」
コギトがゴーリキー達に声を掛けると後ろに立っていたゴーリキー達が準備運動をし始めた。そして、私の切り出した木の柱を軽々と組み始めていった。
「...ミュゥ...。」
「...そなたは人間っぽいな。野性味をまるで感じない。」
「...。」
まぁ元人間ですし。
「完成までは少なくとも2時間はかかるじゃろうし、その間暇じゃろ?」
「...ミュウ。」
「じゃあわしの茶に付き合え。」
「...。」
お礼の意を込めて私は渋々コギトについて行くことにした。別に絆されたって訳じゃない。断る理由がなかったたけだ。
アンケートは明日のお昼頃...私が起きてたら締め切ります。
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○第10話 タイプ相性
主人公ちゃんのパートナーはヒノアラシになりましたが、ちゃんとモクロー、ミジュマルにも役目は作る予定です。
「...ふむ。弱点タイプはこおり・どく・ゴースト・はがね・フェアリーの5つと多いな。いまひとつなのが6つ、無効が1つ...。ふむぅ...。」
「...。」
「......というかそなた全タイプの技を使えるのじゃな。そうなると弱点が多いが全てのポケモンの弱点を突けるポケモン...という訳か...。」
今、私は新築の家で自分の弱点タイプを探っていた。調べ方は至って簡単。自分で自分の手に異なるタイプの攻撃技を当てて反応を確かめるものだ。過剰反応ならば弱点タイプ、普通に痛いだけなら等倍タイプ、痛みが少なければ有利タイプ。そして痛みが完全になければ無効タイプ。どうやら私は弱点タイプが多かったようだ。
「ミュゥ。」
「そうじゃったな。そなたのタイプじゃが...なんと前代未聞の3種複合タイプじゃ。」
「!」
「わしも俄には信じ難いが、実際目の前におるからの。弱点タイプと有利タイプ、これらを加味してそなたのタイプはエスパー・ドラゴン・フェアリーじゃな。」
「...ミュゥ...。」
「エスパー・ドラゴンタイプのポケモンですら聞いたことがないのじゃがな...。ましてやドラゴン・フェアリーなど矛盾タイプと来たか...。ゾロア、ゾロアークのノーマル・ゴーストと似たようなものを感じるな。」
「...。」
...そのゾロアとゾロアークって絶対ヒスイの姿だよね。
「わしも色々と神話を調べておるが、3種複合タイプは聞いたことも無い。これは興味深いのう...。」
「...。」
目を細めてうっとりとするコギト。なにやら危ない雰囲気を感じる。流石に実験体は嫌だよ。タイプを判別してくれたのは助かったけど。自分で考えるのめんどくさかったからね。
「のうそな───」
「やだ。」
「...そうか。残念じゃな。............ん?」
しょぼんとするコギト。美人なのも相まって実に様になっている。それと今私は勢いで言葉遣いを間違えた。
「い、今そなた喋らなかったか...?」
「ミュ、ミュゥウ?」
...き、気のせいだよ。
「わしの聞き間違いか...。」
「ミュゥ。」
そうそう。私は人工的に造られた人殺しの一般ポケモンダヨー。...人工的に造られたし人殺しだから一般じゃないか。それにしてもなんで私にフェアリータイプが入ってるんだろう...。エスパー・ドラゴンは恐らくミュウツーとネクロズマのタイプなんだろうけど...。
「ますます興味深い存在じゃなそなたは。」
「ミュゥ...。」
あーこれは粘着するね...。分かるよ私には。昔嫌いな妹に粘着質なストーカーがいたからよく分かるよ。あの時はストーカーしてる現場をストーカーして動画撮って、それを見せつけたら二度と来なくなったけど。
「これからそなたはどうするのじゃ?」
「ミュ...。」
しばらくはのんびりしていたい。転生してから色々あったしね。しばらく休んでも文句は言われないでしょ。
──コクリ...
「あっはっは。そうかいそうかい。大変だったのじゃな。ここら辺に生息するポケモンも少ないからとことんのんびりするといい。」
そういう意を込めて紅茶を飲むと察してくれたコギトは前のめりだった体を背もたれに押し付け、笑った。
...なんだかこの人とのお茶も中々いいモノだと分かった。
「最近は物騒じゃからな。...ウォロのやつも裏で色々と動いておるようじゃし。これからが楽しみじゃな。くくくっ...。」
これからを想像したらしいコギトはお年寄りなのに乙女チックだった。
「のうそなた。今変なこと考えなかったか?」
「ミュゥー。」
「はぁ...向こうの言葉が分からないのは難儀じゃな...。」
まぁポケモンですから。
2倍弱点:5つ、0.5倍いまひとつ:5つ、0.25倍いまひとつ:1つ、無効:1つ
逆に相手ポケモンには全種類の技を使えるので抜群は取れるようです。
というかレジェンズアルセウスで特性が無くなってるからミュウスリーの特性がチート化してる件。
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●第11話 君に決めた!
翌日。
慣れない場所で寝たせいで少しだけ寝不足だけど、ダルい体に鞭打ってなんとか布団から起き上がる。
──トントントンッ!
「おーい!起きているか?昨日すごい雷があったよな。早く来ないと知らないぞー。」
そう言われたので眠い眼を擦って外に出ると、そこには元気ハツラツとしたテルくんが立っていた。
「知らない土地だろうけど...ぐっすり眠れたか?」
「いえ...ちょっと眠たいです...。」
「...今日の試験大丈夫か?まぁいいや。ほら。本部に急げよ?シマボシ隊長を待たせるな。」
「うん。」
そういうや否やそそくさと歩いていったテルくんを追いかける。
──ガチャッ...
「...来たな。ここがギンガ団本部だぜ。こんな広い建物知ってるか?」
「えっと...。」
日本にはありふれてるけど言わない方がいいよね...。それにこの昔の時代ならば大した事なのだろう。
「──しっかりしてください!!」
「野生のポケモン達に.........襲われた.........。相棒のポケモンも繰り出したが、群れ相手では多勢に無勢だな......。」
「遠くまで出かけるからです...!!医療隊が治療しますから...!」
「.........聞いたよな?」
「う、うん。」
「お前試験に受からないとムラの外で死ぬかもな...。それ以前に試験を受けるにしても相棒がいないとやっぱ死ぬかもな...。」
「...。」
焦り声と苦痛に悶える声を聞き、私はこの世界の厳しさを改めて知った。
「...シマボシ隊長!凛です!」
「許可する。入れ。」
大量の書類に囲まれているシマボシさんが立ち上がり、机の前まで移動してくる。私とテルくんは並んでシマボシさんの話を聞く姿勢をとった。
「説明する。入団試験だが、黒曜の原野にてビッパ、ムックル、コリンクという3種類のポケモンを捕まえてもらう。」
「い、いきなりポケモンを3種類も捕獲!?そんなことできた人なんていないのに!?」
「昨日も3匹捕獲したのだろう?ラベン博士が言っていたことが事実であれば容易いことだ。...私たちギンガ団にはタダ飯を食わせる余裕がない。キミが役に立つ人間だとみなに知らしめる必要がある。」
そこで話を区切ったシマボシさんが私に近づき、小さなカバンをくれた。
「...貸与する。調査隊専用のポーチだ。付けてみなさい。」
「はい。」
言われるがまま腰に付けてみる。...私の服装とぜんっぜん合わない。
「...ヘンテコな格好にポーチは似合わないな...。」
「むぅ...。」
ヘンテコじゃないもん。日本じゃ普通の服装なんだから!
「さぁゆけ!テル。何かあれば助けよ。」
「はい!」
「が、頑張ります!」
気持ちは千と千○の神隠しの主人公。今は死なないようになんとか食らいついていかないと...!
「はい凛くん!ボクの出番ですね!」
「ラベン博士?」
「とりあえずここでは何ですので入口で話しましょうか!それではシマボシ隊長!失礼します!」
「失礼します!」
「し、失礼します。」
部屋を出たラベン博士について行く。
「やあ皆さん!改めてグッモーニンです!」
「博士...どうしたんだよ急に...。」
「ふふ。ポケモン図鑑完成のために...そしてここで生きていくために凛くんには是非とも合格してもらわねばなりません!」
「はぁ...?」
「そのために博士であるボクがサポートできることといえば......ハイ!!」
ラベン博士が急にモンスターボールを3つ取り出したと思うと、それを地面に投げた。3つのモンスターボールが地面に当たるとそこから3匹のポケモン達が飛び出してきた。...昨日私が捕まえたヒノアラシ、ミジュマル、モクローだ。
「くぽー!!」
「プシュッ!!」
「みじゅっ!!」
「ぐうかわ。」
「なんて?」
「う、ううんなんでもない...。」
「さぁ凛くん!気になるポケモンをキミの相棒に選ぶのです!!相棒ポケモンがいれば野生のポケモンとも戦えますからね!貴重なポケモンたちですが、この子達は皆キミに興味があるようですし!...さぁどの子を相棒にするのですか?」
「......んぶ...」
「凛くん...?」
「...全部はダメなんですか?」
「えぇぇえ!?だ、ダメですよぅ...ポケモンも生き物です...軽はずみに抱え込むとお世話も大変ですから!......それにボクの癒しが...。」
「うぅ...。」
リアルなのだから1匹に縛られることなんてないと思ったんだけどなぁ...やっぱりダメだった...。
「...どの子にしようかな...。」
「じっくり悩んでもいいんですよ!相棒になるポケモンですから!」
「...それじゃあ遠慮なく...。」
───30分後───
「......おい。まだ決まらないのか...?」
「ちょっと待ってね...あとちょっと考えさせて...。」
どのポケモンも可愛い。最終進化形の三体もどれもカッコよくて好き。...どうしよう...。本当にどうしよう...。
「んんんんんん.........君に、決めた...!」
「プシュウッ!!」
私がヒノアラシを抱き上げるとこの子も両手を挙げて喜んでくれた。ここまで好かれると嬉しいね。
「初めての相棒はヒノアラシにするのですか?」
「はい!」
「始まりの浜でキミが捕まえたポケモンが仲間になりましたね!ではヒノアラシが入っているモンスターボールをお渡しします!」
「はい。ありがとうございます!」
「いえいえ!ちなみにポケモンが入っているモンスターボールを『ポケモンボール』と呼ぶのです!」
「くぽぉ〜!」
「みーじゅっ!」
「残りの2匹...選ばれたヒノアラシを応援しているみたいだな。」
「うん...。」
やっぱり引き取りたいよ...。
「凛と一緒に調査したかったのか?」
「そうですね...空から落ちてきた時、ムラから取り出したぐらいですからね。」
「ですがキミ達!まずはボクの調査を手伝ってください!」
「くぽぉ〜」
「みじゅ〜」
「...ちなみに試験ではどのようなポケモン達を捕まえるのですか?」
「黒曜の原野っていうところにいるビッパとムックルとコリンクを捕まえます。」
「なるほど!黒曜の原野にいるポケモンを3種類捕まえるのですね!では試験で使用するモンスターボールをどうぞ!」
ラベン博士からモンスターボールを20個もらった。早速もらったばかりのポーチにしまい込んだ。
「ありがとうございます!」
「手作りのモンスターボールですが、捕獲性能は確認済みですよね!キミなら大丈夫です!」
「...いよいよだな。試験の場、黒曜の原野には本部を出て左の門から行くんだぜ!」
そう言ってテルくんは本部を出ていった。
これから私の試験が始まるのか...楽しみでもあるけど失敗したらと思うと怖くもある。頑張らないと...。
アンケート締め切ったんですけど締め切り後に見に来てくださった方の好きな御三家とか気になるのでまた投票可能にしておきました。
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●第12話
テルくんの言う通りに本部を出て左の方へ歩いていくと大きな木製の門があった。私がこのムラに来た時のと同じ門だ。
「...キテレツな身なりですね!アナタ面白いです!」
「えっと...?シロナ...さん...?」
「シロナ?いいえ、自分はウォロ。イチョウ商会の者です!アナタの噂は聞いていますよ!空から落ちてきたとか...!自分としては気になって気になって!...なんと!ポケモンもお持ちとは!実に興味深い...!」
「は、はい...。」
「珍しいヒト・モノ・コトを確かめるのは商人の性!どうです?お互いのポケモンで腕くらべするというのは!」
「えっと...」
「いいんだぜ断っても...。これから試験だしな。」
このシロナさん似のウォロさんに勝負を持ちかけられた。歴代のポケモンで言えば最初のライバル戦だろう。なればやるしかない。
「いえ、やります...!」
「...そうか。頑張れよ。」
「はい!」
「ますます好ましい!アナタとても面白いです!!」
「は、はぁ...?」
「試験のことは小耳に挟みました!ポケモンの体力が無くなったら負けですよ!では景気づけに腕くらべ開始〜!」
そう言うとウォロさんはモンスターボール...ポケモンボールを構えた。それと同時に巻き込まれないようテルくんを含む野次馬達も距離をとる。
「出てこいトゲピー!」
「チョゲプリィィィッ!」
「な、生の鳴き声...。いや今はそれどころじゃないか。...初陣だよヒノアラシ。えいっ!」
「プシュッ...!!」
背中から火を出し、トゲピーを威嚇するヒノアラシ。思えば覚えている技とか分からないんだけど私どうすればいいのかな...?
「...ぷしゅ?」
「...ヒノアラシ...覚えてる技で攻撃して!」
「プシュッ!!」
どうすればいいか分からなかったからとりあえず自分で攻撃させることにした。するとヒノアラシがその場から消えた。
「えっ...は、はや...!」
「プシュウッ!!」
──ドゴッッ!!
「ピィィッッ!!」
一瞬でトゲピーとの距離を詰めたヒノアラシの体当たり...というよりでんこうせっか?はトゲピーを大きく仰け反らせた。
「トゲピー体当たりだ!」
「チョゲッップリィィィッ!!」
───ドスッッ!!
「プシュゥゥ...!」
「ヒノアラシ!でんこうせっか!」
「プシュッ!!」
───ヒュッ...ドゴッッ!!
「トゲピー反撃だ!!」
「ピィィッッ!!」
「でんこうせっかで避けて攻撃!」
「なっ!?」
「プシュッ!」
───シュッッ!!ドゴンッッ!!
相手の早いたいあたりを同じく早いでんこうせっかで横に避けて攻撃するヒノアラシ。
「ピィィィ...ィ...。」
「くっ...戻れトゲピー...。」
「...ポケモンの技!道具!使いこなせば世界は広がるでしょう!」
目を回して倒れたトゲピーをウォロさんがボールに戻し、バトルは終わった。
今回の対戦でアニメで見たような戦い方ができると分かったけれど、技が見れないのはキツい。リアルなのだから当たり前なんだろうけど...なんだか縛ってるみたい。
「ポケモンを競わせるのは楽しいです!競わせて育てればさらに技も覚えて強くなります!......ですが、ポケモンを連れている人間はあまりいないですから...。皆さんボールを使えばいいのに...。...それではお互いのポケモンを元気にしましょう!」
「あ、ありがとうございます。」
「空から落ちてきた人!お礼にキズぐすりもどうぞ!」
「ありがとうございます...。」
「ポケモンが弱ったらキズぐすりをお使いください!試験......ジブンは応援しますよ!ギンガ団員が増えるということはお客様が増えることですからね!」
にこやかにそう言って去っていったウォロさん。それを見届けたテルくんがこちらに近寄ってきた。
「試験はポケモンの捕獲だけどそれだけ戦えるなら心配無用だな。」
「そうかな...?」
「ああ。さぁ黒曜の原野に出発だ!」
「はい!」
「コトブキムラから出る時は地図で行き先を選んで門番のデンスケさんにも教えておくんだ。何かあった時助けてもらうためにも。.........受かるといいな。」
「...そうですね。」
とりあえずデンスケさんという方に話してみよう...。
「あの...。」
「先程の戦い、素晴らしかったですね。あっと凛さんですね。話は聞いています。入団試験を行うのはムラの外...命を大事になさってください。」
「は、はい。とりあえず黒曜の原野に行きます。」
「分かりました。警備隊を同行させます。それではお気をつけて。」
「...はい。」
────────
─────
──暫く歩き続けて...。テントが張ってある場所までやって来れた。そしてその先には朝日の照らす広大な大地が広がっている。
「...うわぁ...!」
「ここがベースキャンプ。調査などの最前線だな。ん?あぁ...いい眺めだよな。俺もここが好きだぜ。...よし。試験の内容を再確認するぞ。」
「うん...!」
「試験の内容は3種類のポケモンを捕まえること。捕まえるポケモンはビッパ、ムックル、コリンクだったな。博士の話が本当か俺もしっかり見届けてやる。」
「わかった。」
「...って博士?どうしたんですか?」
「え?」
「あの後隊長に言われたのです...。『確認する。あの者に何かあれば貴方が責任を取るのですね』と...。」
「厳しいですね......。博士に何ができるのかと...。」
「ボクが何かをする必要はありません。凛くんの実力は本物ですから。」
「ははっ...俺...責任重大だな...。そういうの苦手なんだけど...。まぁ凛なら大丈夫だろ!さぁ試験を始めよう!」
「うん!」
そうして私たちはたくさんのポケモン達が自由気ままに生活する平原に降り立った。
トゲピーといえば。
戦闘シーンがこんなんでいいのか...。試行錯誤中ですがガンバリマス。次回ようやく入団試験です。長すぎ。
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●第13話 3匹の捕獲
「...改めて見るとすごい景色...。」
「...大志坂だ。」
「...ビバ〜!」
「おっ!ビッパだ!いきなり捕まえるポケモンが出てきたな。」
「可愛い...。」
「かわ...?...お前は捕獲の天才らしいが一応シマボシ隊長から教わったことを伝えておくぞ。」
「うん。」
「ビッパは温厚なポケモンだからあまり逃げたりはしない。しっかり狙ってモンスターボールを投げるといい。」
「わかった。」
「ビバ〜?」
「か、可愛い...!で、でも捕まえないとね...。それっ!」
──ヒュッ!...ポーンッ...パンッ!
「やった...!」
「ビッパ捕獲成功!まずは1匹目!よし次だ次!」
「う、うん...。」
ビッパを捕まえた私よりも興奮してるテルくんは走っていった。向かった先にはムックルが呑気に歩いている。
「...ヒノアラシも鍛えたい所だけどどうしよう...。あ、そうだ。」
恐らくだが、ヒノアラシのレベルは5ぐらいだろう。博士から貰うポケモンというのは全部レベル5だと相場が決まっている。
そして先程捕まえたビッパは言っちゃ悪いけど弱そう。ゲームで言えば序盤も序盤なのだから当然と言えばそうなんだけどね。だからヒノアラシと野生のポケモンの実力には差はないと思う。
「出てきてヒノアラシ。ビッパも。」
「ぷしゅう?」
「ビバ〜!」
「そこら辺のビッパ達と遊んで来てもいいよ。あ、私の近くならね。」
「プシュッ!!」
「ビバー!」
ヒノアラシはとても活発な感じだ。ビッパも目を輝かせて他のビッパに飛び込んでいっている。
「ビバー!?」
「ビバ〜!」
「プシュッ!」
「ビバッ!?」
...ビッパが遊んでいるのに対してヒノアラシはビッパを燃やしている。ひのこ持ってたんだ...。じゃなくて!ちょっとちょっとヒノアラシさん!?
「ぷしゅ?」
「うーん...野生だから倒しちゃっても...でも...いや...この世界は過酷だから...うーん...。」
「ビバー!!!!」
「プシュッ!?!」
私がヒノアラシを呼び止めて考え事をしているとビッパの叫び声とヒノアラシの悲鳴が聞こえてきた。
「ひ、ヒノアラシ!」
「プ、シュッ!」
背中の火が弱々しくなっている。先程ビッパは前転しながらヒノアラシにたいあたりをしていたので恐らくころがるだろう。...私のせいだ。ほのおタイプにいわ技は効果抜群。野生は野生。きっちりと弁えないと...ダメだった。
「ごめんヒノアラシ...ひのこ!」
「プシュッ!!!」
───ボォゥゥッ!!
「ビバァァッッ!?」
目を回して倒れたビッパ。私が罪悪感に苛まれているとそのビッパが起き上がってキョロキョロと当たりを見回した。そして私たちを見るなりどこかへ走り去っていってしまった。
「ぷしゅっ!」
「ふふ...ごめんねヒノアラシ。痛かったよね。」
「おーい!何やってるんだー!?」
「ごめんねすぐ行く!」
後で野生のポケモン達と戦おう。それでヒノアラシ達を鍛える。...それと同時に私のメンタルも鍛えないと。ゲームであればバンバン効果抜群技を撃っていたがリアルにもなると技を受けたポケモンの苦痛めいた顔が脳裏から離れなくなる。
「やっと来たな。...次はムックルだな。アイツらはすぐ逃げるポケモンなんだ。」
「くるる?」
「でも大丈夫。草むらでしゃがむなりしてれば気づかれないから。そのまま近づけばいい。」
「わかったやってみる...。」
──ガサガサ...
テルくんの指し示した草むらに身を潜め、ムックルがそっぽ向いたタイミングで近づいていく。
──カサ...カサ......
「...えい......!」
「むっ!?」
───ポンポンポーンッ...パンッ!
「よしっ!」
「お、おぉ...!ムックルも捕獲成功だ...なるほど...お前凄いかもな!それじゃ先に行ってるぜ。」
「うん。」
「おっと!センパイとして教えておくことがあった。ポケモンボールの投げ方だ。まぁモンスターボールと似たような感じで投げればいい。重さが違うから気をつけるんだぞ。」
「うん。」
「まともに投げられるようになったら木や岩に投げてみるといい。木の実とか取ってくれるぞ!...いよいよ相棒の出番だな。」
「う、うん。」
さっきビッパと戦わせたけどね。
「さぁ次は最後の難関。コリンクの捕獲だな。今度こそ先に行ってるぜ。」
「うん。」
テルくんがそう言い残したので私は早速近くにあった木の実がなっている木の近くにヒノアラシのボールを投げた。
「プシュッ!」
──ドンッッ!!......ボロボロボロッ...!
任せろ!と言わんばかりにこちらを見て木にたいあたりをするヒノアラシ。可愛い。
たいあたりした木からたくさんの青色の木の実が落ちてきた。...こ、これがかの有名なオレンのみ...。
「た、食べてみる?」
「ぷしゅっ!かぷっ...。キュゥゥッ...!」
「うわかわよ...。じゃなくてそんなに美味しいの...?」
「ぷしゅぷしゅっ!!」
「そっか...じゃあビッパにもあげないとね。」
その後ビッパにもあげた後、私はテルくんの待つ川沿いまでやって来た。案の定ビッパも美味しそうに食べていた。可愛かった。
「キュオォッ!!」
「...来たな。あれがコリンクだ。気性が荒いのが分かるか?」
「う、うん...。」
「流石だな。俺なんか注目しないと分からないのに。」
「...結構分かりやすいと思うんですけどね ...。」
コリンクはずっとこちらを見て威嚇してきている。見るからに気性が荒い。
「でだ、気性が荒く、興奮しているポケモンはボールを弾くんだ。」
「なるほど...。」
でもそれだとボール投げる意味無くない?
「案ずるな。俺がいいことを教えるから。」
「...相棒...。」
「そう。勝負をしかけるんだ!勝負の最中にボールを投げればポケモンを捕まえられる!さっきポケモンボールの説明をしただろ?それを捕まえたいポケモンに向かって投げるんだ。」
「う、うん。」
「ウォロさんとの勝負が練習になったな!さぁ最後の1匹!捕まえてこい!」
「わかった!」
つまるところ歴代のポケモンと同じようにダメージを与えて体力を減らしてからモンスターボールを投げろって事だよね。
「キュォォオオ!!」
「出てきてヒノアラシ!!でんこうせっか!」
「プシュッ!!」
───ドゴッッ!!!
「キュゥゥッ!?キュッ!!」
「避けてひのこ!」
「プシュッ!」
──ボォォゥッ!!
「キュゥゥッ!?」
「これぐらいでしょ...えいっ!」
───ポーンッ...パンッ!
「ふぅ...。疲れた...ヒノアラシもお疲れ様。」
「ぷしゅっ!」
「おお?おおお!本当に3種類も捕まえるなんて...お前......ポケモン捕獲の天才だな...!!」
「あはは...ありがとうございます...。」
なんだかこういうのって照れちゃうね。御三家3匹を捕まえる時に慣れといて良かった。
「ラベン博士驚いただろうな。空から落ちてきた人間が逃げ出したポケモンを次々と捕まえたなんて...。俺もこの目で見るまで博士の話を信じていなかったよ。」
「そ、そんなにですか...。」
「あぁ!3種類のポケモンを捕まえた!試験は合格だよな!」
「そうですね!」
そういえばまだお昼前だ。帰る前にヒノアラシ達と戯れたいなぁ...。
「帰るぞー。」
「デスヨネ。」
────────────────
「合格間違いなしです!と言った言葉が事実となりましたね!何はともあれ、凛くんおめでとう!『全てのポケモンにであえ』の第1歩です!記念に1枚撮りましょう!!」
そう言ってカメラを取り出したラベン博士に私は笑顔を向けた。
──パシャッ!
「...凛の才能は...本物です。認めるよ。」
「シマボシ隊長に報告ですね!さあコトブキムラに帰りましょう!」
「「はい!」」
そうして私達は警備隊と共に黒曜の原野を後にした。
この後の手持ちどうしよう...。ブイゼルとか入れとこうかな...。あとアゲハントとか。
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●第14話 こっち視点全然進まねぇ...
「で、捕まえたポケモンはいずれ放牧場で預かって貰える。ちなみに連れて行けるポケモンは最大6匹なんだ。」
「そうなの?」
「そりゃそうだぜ。何せポケモンボールをポーチの紐に固定できるのが6つまでだからな。それ以上持つと落としてしまう。」
「なるほど...。」
「それに1匹1匹の世話もしなければならないからな。6匹ともなれば大変だぞ?まぁ6匹連れてる凄いヤツいないけど。」
「確かに...そうだね...。」
ゲームだと6匹でも普通に旅はできた。所謂旅パというやつだけど、タイプ相性とか考えて6匹連れて行けるのに使うポケモンは大抵固定されちゃう。レベルが1番高いポケモンをメインで、次点でストーリーで1番タイプ相性が合うポケモン達を使う。
タイプ一致とかそんなのは対戦とかでしか私は重視しなかった。だってストーリーをクリアするぐらいならレベル差があれば大抵なんとかなるからね。...まぁでもダイパリメイクのトレーナーは皆強かったけど...。
っとそんなこと言っているうちにようやくコトブキムラに辿り着いた。
「さあ本部のシマボシ隊長に報告です!」
「さすがのシマボシ隊長もたまげた顔を見せるよな!」
「そうかな...?」
「そうだぜ!もっと自信持てよ!」
「う、うん。」
...それでもゲームで言えば序盤も序盤。これから私は調査隊の一員としてこの世界で生きなければならない。過酷なものになりそう...。
いつの間にか本部に向かっていた博士たちを追いかけ、本部に入った。
「......どうやら野垂れ死にせずに済むようだな。」
「おかげさまで...。」
「ふん。...祝福する。試験は合格。貸したポーチはそのまま使うがいい。」
「ありがとうございます...隊長。」
「っ...。...それにしても感心した。異端なキミを試すため無理難題を出したのにこなすとはな。」
「テルくんが教えてくれたおかげです。」
「...そうか。...授与する。調査隊の制服だ。」
「ありがとうございます!」
シマボシ隊長から私の体に合いそうなサイズ感の制服と...草履?を貰った。
「昨夜泊まった宿舎にて着替え、本部3階にある団長室に急げ。」
「わ、分かりました!」
「調査隊としての最初の任務だ。制服を着用し、団長に挨拶せよ!」
「はい!」
そうして私は走って宿舎まで戻ったのであった。
「...ふんふふんふふ〜ん...。ふむ...これテルくんのと一緒だね。...カッコイイかも。」
あとは草履みたいなのを履くだけ。ポーチを着けた時は似合わなさ過ぎて不安になったけど、いざ制服を着るとそれなりに見えるようになった。
「挨拶かぁ...なんだか職員室の先生...どころか校長先生に会いに行くみたい。」
まぁ会ったことないけどね。
─────────────
「おっ!来たな。調査隊の制服だと仲間!って感じがするよな!それにしても団長...いつから制服の準備をしていたんだ?」
「確かに...。」
言われてみれば確かにそうだ。さっき着替えた時は余りにもピッタリすぎて気にならなかったが、なぜピッタリなのか。私誰にもサイズ伝えてないんだけど...。
「...着替えたか。」
「シマボシ隊長!」
「昨日提供した部屋だが、今後も使うといい。」
「あ、ありがとうございます。」
これで衣食住が完璧になった。その分頑張って働かなきゃ...!
「こちらも使え。」
「へ?わひゃっ!?」
「な、何をそんなに恐れている。」
「い、いえ...すみませんわざわざ。」
「気にしなくても良い。」
シマボシ隊長が私に頭巾を被せてきた。なんだかお母さんみたいになったかも。あ、あとスーパーの店員さんも頭巾被ってるよね。
それにしてもシマボシ隊長の唇...ぷるぷるだったなぁ...。離れてみると威圧感があって顔もまともに見れないけれど、近くで見ると端正な顔つきで控えめに言って美しい。宝塚とかに出てそう。
「...団長に挨拶せよ!」
「はいっ!」
ビシッと警察官がよくやる敬礼を決めて私は階段を上る。敬礼をした時に不思議そうな顔をされたんだけどこの世界に敬礼ってないのか...。
「この上か...。」
2階の真ん中にある大きな階段を更に上っていく。するとそこには毛量の多い人が目を瞑って待っていた。
「───待ちかねたぞ!」
「っ!」
急に大きな声を出したので驚いてしまったが、よく見ると誰かに似ている...ような気がする。
「ギンガ団団長!デンボクであるっ!!うむぅ...お前が凛だな...?」
「は、はい!!」
「うむう!時空の裂け目から落ちてきたことを含め大凡の話は聞いている。さて。どれほどのものか確かめさせてもらうぞ!」
「はい!......はい?」
「立ち会えッッ!!!」
「うぇ、えぇええ!?」
あの構えは...まさか...!Japanese相撲!?小さい頃お父さんがよくやってたやつだから私にはよく分かる...。まさか私に飛び込めと...?
「...えぇい!!」
──ガシッッ!!
「でやぁっっ!!」
──ゴロゴロゴロ...!
「うむう!血気盛んである!相撲はまだまだだが、見所はありそうだな!」
「うぅ...いててて.........。」
「空から落ちてきたお前を不気味だと思う者もいるだろう!人によっては災いを招くものだと考える迷信深い者もいるやもしれぬ!」
「...。」
「だが入団試験に合格したのだ!お前が面妖なやつでもコトブキムラの仲間として受け入れよう!!」
「...ありがとうございます...!」
「ギンガ団の仕事に忠勤し、ポケモン図鑑を完成させよ!!」
「了解ですっ!!」
「うむう!凛よ。ポケモンとは恐ろしい生き物!心して調査に励め!」
「はいっ!!」
無事(?)挨拶を済ませた私はシマボシ隊長の部屋へ向かった。
「団長に認められたな。」
「はい!」
「...キミのギンガ団団員としてのランクは『ゼロボシ』となる。調査隊員として活躍をすればキミのランクも上がる。」
「団員ランクを上げるにはポケモン図鑑の完成度を上げましょう!そして図鑑の完成度を上げることは『全てのポケモンとであえ』というキミの使命を達成することに繋がるのです!!」
「なるほど...。」
「これも与える。クラフトに必要なレシピだ。」
「あ、ありがとうございます。」
丸まった紙を貰ったので開いてみると、そこには材料とクラフト方法、必要な道具、そしてモンスターボールの完成系が載っていた。とりあえずこれはモンスターボールのレシピって事だね。
「それと3000円だ。材料を買うといい。」
「あ、はい。」
単位は円なんだ...。金銭感覚は日本にいた時と同じで良さそうだね。...知らないものしかないから相場とか何も知らないけど。
「テル。クラフト名人のキミに命じる。凛にクラフトを指導せよ。」
「了解です!凛。クラフトについて教えるぞ。俺に任せろよ!」
「う、うん!」
「クラフトとは手作業のこと!そう!ギンガ団は調査に使う道具を自分たちで作るんだ!雑貨屋でも買えるけれど自給自足の精神が大事だからな。」
「うん。」
「ポケモンを捕まえるためのモンスターボールも作れるぜ!まぁ説明よりも実践するのが1番だな!クラフト屋に行くぞ!それでは隊長失礼します!」
「それじゃあボクも研究に戻りますね。」
「あぁ。凛。クラフトを習得せよ。」
「はい!失礼します!!」
テルくんに置いていかれないように早く行かなきゃね...。
誤字指摘頂きました。ありがとうございます。ボール投げる時の放物線を描くうんたらこうたらのくだりでy=−2xって書いたんだけどこれ右肩下がりの直線ですね。これじゃあいつまで経ってもボール落ちてこないですね。...私疲れてるのかな。
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◇第15話 ラベン博士と調査隊
凛くん達を見送り、ボクは研究室に戻る。
ボクはラベン。拠点としているコトブキムラでポケモンについて研究しているしがない研究家です。...とよくある始まりだけど実際その通りだからね。
そんなボクが最近驚かされる出来事が起きたんだ。みんなも分かるよね。そう、凛くんの出現だ。
彼女はボクが必死こいて各地方から連れてきたヒノアラシ、モクロー、ミジュマルの3匹がムラから逃げ出した時に現れた。時空の裂け目から落ちてきたのを見た時は肝が冷えたよ...。
「ラベン博士。」
「隊長?どうしたんです?」
「凛のことで話がある。」
「凛くんですか?分かりました。どうぞお座り下さい。」
「感謝する。それでラベン博士は凛のことをどう思う?」
「...そうですね。未来、ですかね。」
「ほう?」
「彼女の目はいつも未来を見ているような目でした。それにボクが様々な説明をしても既知なのか曖昧な表情を見せるのです。ボクが想像する未来の人間は彼女のような人ですし...まぁ全てボクの勘でしかないですけど。」
「なるほど。確かに彼女は不思議だ。私もまだ会って間もないが、この世界の人々と彼女の考え方...というか在り方が違うと思っている。」
「確かにそうですね。」
そこで話が終わった。シマボシ隊長は難しい顔で何かを考えている。凛くんの事だろうけどいくら考えても結論は出ないだろう。彼女は未知を体現した子。英雄気質を持ち合わせ、「全てのポケモンとであえ」という使命を持っている。
彼女は何かを成し遂げそうだ。それがこの世界にとっていい事なのか悪いことなのか。それは分からないけれどボクは彼女を拾った以上できるだけ手助けしたいと思ってる。
「そういえばラベン博士。」
「はい?」
「調査の程はどうだ?」
「うぐっ...あ、ははは...。」
「誤魔化しは無用。答えたまえ。」
「...まだ準備中でございます...。」
「そうか。期待はしている。」
「はい...。」
そう。今はまだ準備中だ。凛くんがここの生活にも慣れ、1人でも十分調査できるようになってからボクはある依頼を出そうと思ってる。
「それではな。失礼した。」
「はい!お仕事頑張ってください!」
「ラベン博士こそ。」
「はい...。」
そういってシマボシ隊長は自室に帰って行った。
「...キミたちには重要な任務を与えるつもりなんだ。」
「ほ〜?」
「み〜じゅ?」
「これをつけて欲しい。」
「ほ〜!」
「みじゅっ!」
ボクがモクロー達渡したのはバンダナ。それぞれ緑色と青色の物だが、彼らの首に巻いてもらった。
「キミたちにはポケモン調査隊を結成してもらうよ。」
「ほ?」
「みじゅ?」
「6匹1チームとして2チーム結成するつもり。そのチームのリーダーがキミたちだ。」
「ほっほ〜?」
「みじゅっ。」
「キミたちはまだ弱い。そうだなぁ...しばらくはボクと一緒に野生ポケモンを倒そう。進化したら本格的に調査隊として頑張ってもらうよ!」
「ほっほー!!」
「みじゅじゅっ!!」
両手を目いっぱい広げ、キリッとした顔つきになった彼ら。今はまだ癒しだけどいつか生物として強い見た目になるのだろう。それが進化なのだから。
「あ、もちろん凛くんには内緒だよ?できるだけバレないようにね。」
「ほ〜?」
「ふふっ...だってそうしないとキミたちも凛くんに着いていっちゃうからね。18匹でゾロゾロ動いても野生ポケモン達が逃げちゃうでしょ?」
「ほ〜。」
「みじゅじゅ。」
頷く彼ら。理解してくれたようで何よりだね。あ、そうだ。
「これイチョウ商会で買ったんだけどキミたち食べる?」
「ほ!」
「みじゅっ!」
綺麗な包装の飴を剥いて口に放り込んであげる。青色の飴だけどこれが美味しいんだよね。イモモチには及ばないけれど。
「ほっ!!」
「みじゅっ!!」
「なんだかキミたち元気になったね?また売ってたら買ってくるよ。」
凛くんは今頃クラフト習得中かな。テルくん教えるの上手だから心配はしていない。そろそろ凛くんの
これが後のポケダンである。(大嘘)
てかポケダンで首に巻いてるのってバンダナ...?スカーフ...?違いがよく分からない...。
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●第16話 ようやく自由になった彼女。
「さて凛くん。ポケモン図鑑を完成させるには図鑑タスクをこなす必要があります!ポケモン図鑑にボクが調べて欲しいことを書きましたのであとで確認してみて下さい!」
「はい。」
私は今再び黒曜の原野に来ていた。クラフトはどうなったのか、だって?当然上手く行きました!ぼんぐりの硬い殻に合わせて打つだけだからね。それと呉服屋さんの人に道着を貰った。まだ着てないけど道場に行った時に着ようかな。で、スグルさんっていう本部の前の人にケムッソを捕獲してきて欲しいって言われた。お駄賃貰えるならやるよ。黒曜の原野のどこかにいるでしょ。
「ポケモンを捕まえたり、ポケモンと戦ったり...図鑑タスクをこなしてポケモン図鑑を完成させるのです!」
「よし!凛。大事なことを教える!」
「うん。」
「野生のポケモンはお前を襲うだろう...そんな時は回避だ!」
「う、うん...?」
なんかそのまま...?いやでも回避ってすっごい大事なことだよね。
「いいからよく見ろ!そして俺の動きを盗め!」
「うん!」
「行くぞっっ!!」
───ヒュッ...ゴロンッ!バッ!
「見たか!これが回避だ!」
「お、おぉお...。」
ドヤ顔のテルくん...同年代っぽいけど弟みたいで可愛いかも。
「素早く回避すればポケモンの技を避けられる。ポケモンの技は強烈だからな...。何発も喰らうと気絶するぞ...。」
「そう、だよね...。」
「コリンクのでんきショックで気絶した時も警備隊の人に助けられたんだ...。まぁ心配するなよ。俺が色々と教えてやるから。だってセンパイだからな!」
「うん。お願いねテルくん。」
「お、おう。任せとけ。」
やっぱりテルくんのドヤ顔は微笑ましい。それにしてもポケモンの技を回避、か...。アニメとかで見てるとやっぱり早すぎて私なんかが避けられるのか不安になるなぁ...。頑張って受け身を取れるようにしないとね。
「それじゃあビッパのいるところで待ってるぜ!」
「うん!」
そう言ってテルくんは走り出していった。
私は今から何をするのかというと...
「頑張れ凛くん!」
「はい!ふっ...!」
──くるりんっ...くるりんっ...!
前転の練習だ。学校でマットを背中に感じながら前転するのと外で大自然を背中に感じながら前転するのとでは圧倒的に後者の方がキツい。石がゴロゴロと転がっている地では前転したら背中が死ぬ。だから前転を完璧にしてできる限り負荷がかからないようにするのだ。
「ぷしゅっ!ぷしゅっ!」
「うん!がんばる!!」
ヒノアラシも横で応援してくれている。これは頑張らないとね。
「その...凛くん?」
「はい!」
「もう夕暮れなんだけど...テルくんのところに行かなくてもいいのですか?」
「あっ...。」
─────────────
「...遅いぞ。」
「ご、ごめんなさい...。」
「まぁいい...。ビッパの図鑑タスクには『捕まえた数』と言うのがあるだろ?」
「ちょっと待ってね......うん。たしかに。」
「1匹捕まえて終わりではなく、2匹、4匹とどんどん捕まえるんだ!」
「それは...なんで?」
「それは...あれだよ...。ラベン博士曰く...対象が多ければ多いほど...調査が捗る?」
「なんで疑問形なのよ...。」
「うっ...だって難しい話だし...。そ、それはいいだろ!?さ、早速色々と試してみなよ!じゃあ俺は先で待ってるぜ!」
「逃げた。」
「うっさい!」
逃げ出したテルくんを横目に私は目の前で見上げてくるビッパにモンスターボールを投げた。モンスターボールは1回跳ねて花火が出た。無事に捕まったようだね。
「図鑑は...あと1匹で1つクリア?」
図鑑タスクの『捕まえた数』という欄には順番に1、3、6、12、25匹と書いてある。私が捕まえたのは2匹だからあと1匹捕まえればより良い調査ができるんじゃないかな?
「んー...。」
「ビバ〜?」
「君に決めた!それっ!」
───ポンポンポーンッ...パンッ!
三度跳ね、無事に捕まったビッパ。次のタスクは〜...『重いサイズを捕まえた数』...?難しいなぁ...。大きいのを捕まえれば良いってことでしょ?でもそんな子はここら辺にいないし...。次次!
「『倒した数』...。」
やっぱりあるんだね...こういうタスクも...。でも、この世界の住人にとってはビッパでさえも怪物とかに見えちゃうのかな。倒し方とかどのポケモンとの相性が良いのかとかそういうのも求められるんだろうね。
「...出てきてヒノアラシ。」
「ぷしゅーっ!」
「こうなったらヤケだよ!倒しまくるぞー!」
その日、黒曜の原野の一角でビッパの断末魔が飛び交ったという...。
少しずつ自由になっていきますねー...。というか最近忙しすぎワロエナイ...。
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●第17話 ステータス
「頑張れーヒノアラシー!んしょっ!」
「ぷしゅっ!」
───ドゴッッ...ボォゥッ!!!
遠くで跳び前転を練習しながら私はヒノアラシの戦闘を応援していた。ヒノアラシはでんこうせっかでビッパに体当たりしてから至近距離でひのこを吐いた。
「おぉー!今のカッコイイね!!」
この一連の流れが本当にカッコいい。あれからしばらくビッパを倒し続けてたんだけど、最初はでんこうせっかをした後、大抵ビッパに反撃されていた。素早さとかそういう関係なんだろうね。でも倒し続けてレベルが上がったからかなぜかヒノアラシが2回行動できるようになったのだ。
「ぷしゅ......。」
「ぇ、ど、どうしたのヒノアラシ...。どこか怪我した...??」
「ぷしゅっ!」
首を横に振って私を見つめるヒノアラシ。可愛い...じゃなくて。一体どうしたのかな...?
───ティロン...♪
「ん?」
私のスマホ...今はアルセウスフォンに通知が来た。えーっと...って私の手持ちが写ってる!?
「まじか...。」
「ぷしゅ?」
今までヒノアラシのレベルや覚えている技とか能力値とか何一つ分からなかった。でもそれら全てがアルセウスフォンに載っていたのだ。
「...進化、可能?」
アルセウスフォンによるとヒノアラシのレベルは既にレベル17。他にも手持ちのビッパ、ムックル、コリンク達も遊ばせていたのでレベル14だ。そんな中でヒノアラシとムックルに進化可能という文字が記載されていた。
「...。」
「ぷしゅう?」
「進化...する?」
「ぷしゅっ!ぷしゅっ!!」
「分かった!じゃあ進化して!!」
───ブワッッッ!!!
突如黒い霧がヒノアラシを包み込む。それはグルグルとヒノアラシを囲むように渦巻いていき...
「マグッッ!!」
───ブワァッッ!!
霧が晴れるとそこには大きくなったヒノアラシ...じゃなくてマグマラシがいた。くぅ...可愛い...!
「かぁいいなぁマグマラシぃ...。」
「まぐ?」
マグマラシになった事でいつもしゃがんで頭を撫でていたのが、中腰で撫でれるようになった。これは大きな1歩だ。それにしても進化エフェクトカッコよすぎる...。
黒い霧が晴れる前にマグマラシのキリッとした目が一瞬だけ見えた気がしたんだけど、あれはカッコよかったなぁ...。
「っとそうだった...次はムックルだね。」
「くるっ!」
「進化しちゃって!」
───ブワッッッ!!!
──ブワァッッ!!
「ムクッッ!!」
「うーん可愛い...。まだ可愛いねぇ...。よしよし...。」
「おい...。」
「ひゃいっ!?ってテルくん?どうしたの?」
「どうしたの...だって...?お前早く来いよっ!?俺ずっっと待ってたんだが!?」
「あっ...ご、ごめんね?」
「...はぁ...。もういいよ。早く来いよな?」
「う、うん...。」
「...というかもう進化したのか?」
「え?うん。なんか進化しちゃった。」
「いつまでも来ないから何してるかと思って来てみれば...。」
「あ、あはは..。」
「次はムックルだな。ムックルの図鑑には『見つからずに捕獲』ってのがあるだろ?」
「.........うん。あるね。」
「草むらに隠れて捕まえるとこなせるからやってみるといいんじゃないか?」
「分かった。やってみるね。」
「じゃああっちで待っているからな。タスクをこなしたらこいよ?...本当にこなしたらこいよ?」
「わ、分かったから...。」
さすがにレベル上げ紛いなことはもうしないよ...。まだ教わってる立場だしね。ちゃんと1人で調査隊員として働けるようになったらレベル上げはするつもり。
「ムックルはすぐ逃げちゃうからねぇ...。」
キョロキョロと辺りを見渡してそそくさと移動するムックル達。私は草むらに伏せてほふく前進でギリギリまで近づいた。
「...これ以上は無理かな。」
さすがに音が聞こえるだろうからここから投げるべきだ。
「...それ...!」
───ポーンッ...パンッ!
よし...捕まえた...。...でもなんでこんなタスクがあるのかな?不意をつける距離とかそういうのを調べる為?
ゲームのタスクとリアルのタスク...合わせようとするとなぜこれを...みたいな物あるよね。あぁ難しい...。
それとポケモンのステータスとか見れるようにしました。凛ちゃん自らがステータスの検証をするってのも良かったんだけどめんど──
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○第18話 スローライフ
「んん...。みゅぅ...。」
いつも通り、決まった時間に目が覚める。これは社会人だった頃と変わらず身についてしまったものだ。この体になってからは本当は眠らなくても問題ないんだけどやっぱり精神的に疲れるから寝ちゃうんだよね。
ふわりと浮き上がり、毛布をサイコキネシスで畳んでおく。
「木の実...。」
朝昼晩、毎食私は木の実を食べている。特にオレンのみ。これがすごく美味しい。夜ご飯に毎日食べてる。
「...そういえば無かったんだっけ。」
しかし、毎日食べている木の実だが籠には無かった。昨日食べきっちゃって明日取りに行こうって寝たんだった。
「はちみつも欲しい。」
そう。木の実にははちみつが合うのだ。それも最近切らしてしまっている。めんどくさくて取りに行ってなかったのだけど、今日はついでに取りに行くことにする。
───カチャッ...。
扉を開けて外に出る。まだ明け方だからか、横から目に入る陽の光が眩しい。
はちみつと言えばミツハニーやビークイン。今日は彼女たちがいる湿地帯に赴くことにしよう。あ、その為には対価が必要だ。
ビークイン達が好むのはそこら辺に生えている稲穂のような物とモッチモチのキノコ、あとはマメとかだ。家に在庫があるからそれらを持っていくとしよう。あとははちみつを回収するための瓶だね。
──ふわっ...
サイコキネシスでそれらを持ち上げてから遥か上空まで浮き上がり、家から南に飛んでいく。湿地帯は泥だらけであんまり好きじゃないけれど様々なポケモン達が生き生きとしている様子を見るのは好き。
「ミュゥ...。」
あ、いたいた。あの超巨大なビークイン率いる軍団。ミツハニーも大量にいてはちみつ取り放題なのだ。まぁ女王様であるビークインの大きさが桁違いなのと目が赤く光っていること以外は普通の軍団だね。
「ビークイン。はちみつ分けてもらえるかな?」
「
「うん。いつもありがとう。また来るよ。」
「
この後はどこかでポケモンの観察でもしようかな。ゲームをやっていた時はポケモンの暮らしがよく分からなかった。ポケモンの観察はゲームの裏側を見てるみたいでとても面白い。
「例えば...」
あそこにいるヒポポタス。親なのだろうカバルドンに追いつこうと沼を頑張って泳いでいたりはぐれてキョロキョロお辺りを見渡していたり。あとは育児放棄されている子もいたりする。人間の世界と変わらないポケモンの世界を見て私は面白いと感じる。
「ミュゥ。」
その中でもあの目が赤く光っている巨大なカバルドン。遠くにいる私をジッと見つめる彼?はとても警戒心が強い。きっと彼の群れを護る立ち位置にいるのだろうね。言わば沼のトップだ。
「次は...モンジャラ」
沼地から少し離れ、小山を挟んだ向こう側。そこにはモジャンボ一家が暮らしている。これまた目が赤く光っている巨大なモジャンボが近くにいるモンジャラ達の頭を優しく撫でている。
「...そろそろ帰ろうかな。」
まだまだこのエリアに生息するポケモン達の観察は終わっていない。時間ならたくさんあるのだからこれからゆっくりやっていく予定だ。
それに近くには人が良く使っているキャンプ場がある。スボミーとかロゼリア、夜にはゴースとかはそのキャンプ場近くに生息しているから観察したいんだけどやっぱり人には見つかりたくない。
帰る際に木になっていた木の実を採ってきたので早速齧る。眠気なんて私には無縁なのだけどカゴのみを食べるとなんだか気分がシャキッとする。
「...お昼まで寝ようかな。」
働かなくても良くなってから私は寝る時間が増えた。食っちゃ寝しても体調に問題はないし太ったりもしない。ナンテスバラシイカラダナンダ。
「
──トントンッ
「入るぞー。」
...また来たのかコギト。
コギトさんは知らないポケモンに興味津々のようです。
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◇第19話 だーれだ!
──────────キラリンッ...♪
その日。新たなる命がヒスイの地に産まれた...。
──────
───
『──貴女は私たちのお姫様...。早く元気に育ってね...。』
『お前の名前は...サキラ。元気に育ってくれ。』
お母様...お父様...。
私の記憶はここから始まった。
───────────────
『姫様。今日の朝食です。』
『ありがとう。今日は何をするの?』
『今日はサイコキネシスの練習です。』
いつも通りの朝。いつも通り朝食を食べ、お母様の元に向かう。今日は何やら嫌な雰囲気が漂っている。それだけが気がかりではあるがサイコキネシスの練習を放っておく事などできない。
『お待たせ致しましたお母様。』
『よく来たわねサキラ。それじゃあ早速始めましょう。ねんりきはもう完璧に出力できるのでしょう?』
『はい。』
『サイコキネシスはねんりきをいくつも組み合わせたものだと思えばいいのよ。ねんりきよりも力を多く出してやってみなさい。』
『はい!サイコキネシス!!』
────ブワワワンッッッ!!!
近くにあった切り株に向かって技を撃つ。しかし、やっぱり少し空間が歪むだけでそれが切り株まで影響することは無かった。
『まだまだねぇ...。』
『ごめんなさいお母様...。』
『良いのよ!まだ子供なんだから!』
『それでも私...早く覚えたいです!』
『そうねぇ...。でも焦りは禁物よ?』
『...分かっています。』
私が焦っている理由はたった一つ。同世代の子供たちはもう既にサイコキネシスを使えるようになっているからだ。逆に言えば同世代でサイコキネシスを使えないのは私だけ。焦るなと言われても焦ってしまう。
『エル様のお帰りだ!!』
『お帰りなさいませ!』
『今日の成果はどうでした!?』
『ひっ...な、なんて酷い怪我...。』
『医療者を呼べ!』
『あら?お父様が帰ってきましたわね。』
『お父様はどこへ行っていたのですか?』
『ふふっ...今日は新たな居住地を探してくるって言ってたわよ。』
『そうなんですね。何やら騒がしいようですけど...。』
『何かあったのでしょうか...?』
『ただいま...戻った...。』
『っ!?貴方!?酷い傷...誰にやられたのです!?』
『お父様...。』
いつも私たち一家だけでなく集落のみんなを守っているお父様。群れで1番強いとされるお父様がこんな大怪我をなさるなんて...。
やっぱり朝から感じていた嫌な予感は当たった...。
と一息つく間もなく...
『───逃げろッッ!!!!!!!』
「ガァァギャァアッッ!!!」
『ウォーグルだァァァァッッッ!!!』
仲間たちがみんな一目散に逃げていく。木や岩の裏、草むらに身を潜める。そういう私もお母様に連れられて大きな木の中にテレポートした。
『クソが...私を追いかけてここまで来たかッ!!!』
『お父様も逃げて!!!』
「ガァァガァァッッ!!」
辺りは既に誰もいない。閑散とした広場にウォーグルが降り立つ。ウォーグルは私たちの天敵。あの巨大な生物に食べられてしまった仲間は多い。私の友達も過去に食べられてしまった。
「ギャァァアギャァァッ!!」
『私の命に代えてでも群れの平和を守るッ!!!』
傷だらけで満身創痍のお父様。対するウォーグルはお父様の何倍も大きく無傷のウォーグル。どちらが勝つかなんて逃げた皆も分かりきっていたことだった。だけど...
『頑張ってくれ旦那!!』
『頑張ってくださいエル様!!』
『勝って!!』
『───頑張ってお父様...!!!』
『っ...!』
それが応援しない理由にはならなかった。
『うぉおおおおおおおお!!!!』
「ギャァァァァアッッ!!!!」
お父様渾身のつるぎのまいをしてかられいとうパンチ。対するウォーグルは全身に光を纏っての体当たり。
────ドゴォオオオオオオオオンンッッッ!!!!
『すまない......みんな......すまない............サキラ。』
『貴方ッッッ!!!!!』
「──ギャァァァァアッッ!!!!」
お父様は...そこで死んでしまった。残された者たちはみな未だ元気なウォーグルに啄まれていく。
『サキラ...貴女だけでも逃げなさい。』
『それじゃあお母様が──!!!』
『──私は無理よ。』
『なん、で...?』
『きっとあのウォーグルは空からの探知に優れているわ。隠れるのが上手だった私の旦那様でも追いつかれてしまった。もう分かるでしょう?』
『で、でも!それだったら私だって!!』
『貴女は大丈夫...。貴女は...サキラは自然に溶け込む色をしているから。』
『お母様...。』
私は生まれながらにして姿の違いを実感していた。白い景色しかないこの場所と私の青い髪、白い体。自然に溶け込む色をしている。...そして、私と同じ色を持つ仲間はいない。
『お母様...!!』
『早く行きなさいッ!!!』
『っ!!』
お母様の初めて聞くその怒声に私は体が弾かれるようにテレポートで逃げ出した。
────────────────
─────────────
─────────
どれほど経っただろうか。あの忌々しい事件が起きてから私はずっと1人で歩き続けていた。
───くぅぅ......
『...。お腹、すいた...。』
何も無い場所を歩き続けた。当然お腹も減る。見つけた木の実のなる木は大抵他の生物に取られた後だったり、全て地面に落ちていたり。
『もう、ダメかも。』
意識が朦朧としてくる。
ウォーグルからは逃れられた。
だけど、死からは逃れられないのか。
それが最後の記憶...
になるはずだった。
「ミュゥ」
最初のキラリンッ♪で色違いだと気づけた人は果たしているのだろうか。
さぁ...このポケモンはだーれだ!
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○第20話 上から見たプリン!!(大嘘)
「ら、るぅ...。」
「...ミュゥ。」
これは一体どういう状況...?
木の実を集めようと雪原まで来た私の目の前には今にも消えてしまいそうなほど薄い鳴き声を上げる倒れ伏した色違いのラルトス。
──きゅるる...
「お腹空いてるの...?」
「......。」
そんなラルトスだが、もはや鳴き声すら聞こえなくなった。ここ数日間何も飲まず食わずだったのか私の知るラルトスよりもほっそりしているように見える。
「...齧るのも無理そうだよね。」
近寄って意識の有無を確認したけど、やっぱり気を失っている。とりあえず回復効果のある安心と信頼のオレンのみを潰してジュースにしてみようかな。...さすがに飲ませることはできるはず。
「サイコキネシス」
──グヂャッッ!!
「らるぅ...?」
「ほら飲んで。」
「んくっ...んくっ......。......すぅ....すぅ......。」
「えぇ......。」
オレンジュースを飲ませた途端眠ったラルトス。ほっそりとした体だし足もボロボロになってるからきっと数日間歩き続けたのだろう。群れからはぐれたのかな?
「すぅ......すぅ.........。」
「...どうしよ。」
とりあえずこの子どうしよう...。
───────────────
とは言ったものの、やっぱりオレンジュース飲ませてあとはそのまま放っておくのも変だから私の家に連れてきた。今は私がいつも使ってるベッドに眠らせてるけど起きたら驚きそうだよね。最悪焦って逃げちゃうかも。ラルトスって確かテレポートとか覚えられるよね。
「...とりあえずご飯作ってみるか。」
何日飲まず食わずで歩き続けたのか分からない以上木の実をそのまま食べさせると胃への負担を考えなければいけない。とりあえず木の実を潰して茹でてみる。なんかそういう料理?ダイパリメイクとかであったよね。あんまりやらなかったからレシピとか全く知らないけどオレンのみとかオボンのみ入れとけば何とかなるでしょ。
...最悪死んでも私は知らない。色違いだろうと今の私は同じく...一応同じくポケモンだ。トレーナーじゃないから捕まえられないし、監禁しても今の私にメリットなんてないし。だって「色違い捕まえた!」って誰に自慢するの?
「...だからあの子が死んでもどうでもいい。」
──カタッ...
小さな物音が聞こえたので振り向いて見るとそこには先程まで寝ていたはずのラルトスがいた。私の独り言が聞こえてたかもしれない。...まぁ事実だから別にいいけど。
「...起きたんだね。」
「ら、
「これ。食べられる?」
「
──くぅぅ...
「
「...冷めないうちに食べちゃって。はいスプーン。」
「
ちょうどできたドロドロになった木の実スープを木製のボウルに入れて渡す。
手渡ししたら若干逃げ腰になられたからよっぽど警戒しているのだろう。近寄るのも怖がらせそうだからサイコキネシスでスプーンをラルトスに渡してあげる。
「...私しばらく部屋にいるから何かあったら言ってね。あと食べ終わったらそれ適当に置いといて。」
「...
──カチャッ...パタン...
「...食べ終わったら帰るのかな。」
私は自室に戻り、窓辺に腰をかける。やっぱりここら辺は季節が入り交じって面白いなぁ...。
「...
「...。」
沈黙の中に木霊する幼き子の嘆きとそれをただ黙って聞く化け物。
...これはしばらく戻れなさそうだね。
皆大好きラルトスちゃんでした!鳴き声はアニメ版となっております。可愛いよね。
さて...この子はどうしてくれようか...()
もう既に路線は決まってますが皆の性癖ゲフンゲフン意見が気になりましたのでアンケートとることにしました。
追記
なんかアンケート取れないんだけど...()
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○第21話 スパルタレベル上げ
「...落ち着いた?」
「
「そう。」
そこで沈黙の時間が訪れた。私は基本コミュ障だ。知らない人とあんまり話したくはない。...まぁ相手はポケモンだけど。
「
「なに?」
「
「ん...あぁそうだね。」
確かに木の実を潰す時とか調理器具を運ぶ時とかにサイコキネシスは使った。だけどそれがなんだと言うのか。
「
「はぁ?」
何を言っているのかこの子は。見ず知らずの
「
「...理由は言わなくてもいいよ。何となく分かるから。」
さっきまで泣きながら嘆いていたでしょ。きっとこの子以外の仲間は死んでしまった。こんなにも小さい子が親を亡くすなんてね。やっぱりポケモンの世界も残酷だ。
「...分かった。」
「
「...但し。」
「
いや、そんなに落ち込まなくても...。私は別に鬼畜じゃないよ。化け物だけど。
「...これから私のご飯作って。」
「
拍子抜けの顔をするラルトス。...顔見えないけど雰囲気は分かる。
何気にさっき初めて作った料理モドキがその...結構美味しかったんだよね。自分で作っておいてなんだけど。だからあれをこの子が作れるようになって、毎食作ってくれたら最高じゃない?
「
「うん。その心意気だ。」
これで料理が上達してくれれば私は楽に美味しいものを食べられる。最高だね。
「それじゃあ早速やろうか。」
「
先程までの恐れは何処へやら。今は気合いしか感じない。この子の親もサイコキネシスについて教えてたのかな。少しだけ練度があれば楽なんだけどなぁ...。
─────────
「...とりあえずレベル上げだよね。」
「
「簡単に言えば強くなるってこと。」
「?」
イマイチピンと来てない顔をするラルトス。まぁとりあえず着いておいで。
「
「いいからいいから。」
そう言って私はラルトスの頭に触れてテレポートした。テレポート先は目が赤い巨大なラッキーがいる小島。
───ザザァァンッ...
今日はちょっと風が強いみたいだけどまぁ大丈夫だよね。
「
「死なないようにはするから自分で頑張ってね。」
「
私は有無を言わせずラルトスをラッキーの前に放り込んだ。
───────────────────
──サキラside
『え?どういうこと?え?』
「あーいっ!」
目の前にいる巨大な生物からの鋭い眼光を浴びた私は思わず尻もちを突いてしまう。
『わ、私死ぬの...?』
サイコキネシスを教えてくれると言っていたのに...。あれは嘘だったの...?
『や、やだ...来ないで...!』
「あーう?あぁー!」
え...どこに行っ───
───ズガァァァァンッッッ!!!
余りの音に思わず目を閉じてしまったが、再び目を開けるとそこにはサイコキネシスを教えてくれる方が左腕を軽く上げて自分の何倍もの大きさの生物の体当たりを受け止めていた。あの方の左手の前には何か白い膜のようなものが見える。あれで防いでいるようだ。
「何ボサっとしてるの。攻撃してよ。」
『え?え??』
「死にたいの?」
『っ!?ね、ねんりきっ!』
私は今できる最大の力を振り絞ってねんりきを放った。しかし、あの巨大な生物にはあまり効いていないみたい。
『うぅ...。』
「ほらほら頑張って。攻撃はいくらでも受け止めてあげるから。」
「あ〜い〜〜っっっ!!!!!!」
──ズガンッズガガンッッズガンッッ!!!
お、怒ってるけど大丈夫だよね...?
『ねんりきっ!ねんりきっ!!ねんりきっっ!!!』
いつあの方の防御が崩れるか分からないため、出来るだけ早く終わるように全て全力でねんりきを放っていく。でも、私の力は当然無限ではない。暫くするとついに私の力が尽きてしまった。
「はいヒメリのみ。食べたらもう1回やってね。」
『は、はぃ...。』
力尽きた私に追い討ちをかけるようにそう言うあの方は未だに余裕そうだ。これを食べたところで力が戻る訳でも...
『あ、あれ...?使える?』
「ほら早く早く。」
『は、はい!ねんりきっ!!ねんりきっっ!!』
──────────────
───────────
───────
どれほどたっただろうか。ねんりきを放って力尽きてはヒメリのみという木の実を齧り、木の実を齧ってはねんりきを放ち力尽きる。私が何も飲まず食わずで歩いていた時よりも長いような時間を感じながらも、あの方も頑張っているからと無理やり体を動かす。
そしてついに...
「あぁ...ぃ......。」
───ドスゥゥゥンッッ......。
巨大なピンク色の生物が地に倒れる。その直後、私はとんでもないほどの頭痛を感じて、私も倒れてしまう。でも、心做しか体がすっごい軽い気がする...。意識も朦朧としてるし、夢かもしれないけど...。
「...よく頑張ったね。ラッキーは経験値高いから大分レベルは上がったと思うけど...。」
『うぅん...。』
あの方が何かを言っている。あ、聞こえなくなった...。
もうだめ...
また意識が無くな...っちゃ、う...。
特防が高いLv.51の親分ラッキーをレベルが10ぐらいのラルトスが倒そうとするととんでもなく時間がかかるでしょうね...。ちなみにハピナスにしようとしたけれど流石に過労死しそうなんでこうしました。
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○第22話 二面性と進化
なぜか気絶しちゃったラルトス...いや、今はキルリアか。キルリアを私のベッドにテレポートさせる。体力的に問題はないと思うんだけどな...。精神的な疲労...?
「この子の今のレベルがどのくらいか...。」
恐らくレベル20は超えているはずだ。なにせラルトスからキルリアに進化しているのだから。キルリアへの進化条件って確かレベル20だったよね。
「...暇になった。」
それはそうとしてキルリアが気絶してるため起きるまで暇になった。どうしよう。
「...寝るか。」
娯楽という娯楽も特にないこの世界。いや、人間界にあるにはあるかもしれないけど私はポケモンだ。寝て時間を過ごすしかやることが無い。唯一ポケモンの観察があるけれどキルリアを置いて外には出れない。...別にキルリアが心配って訳じゃないよ。...家を勝手に荒らされたくないだけ。
「おやすみ...。」
私の部屋には当然ベッドは1つしか置いていない。...邪魔する形にはなるけど元々私のベッドだし隣で寝てもいいよね。
薄暗い部屋の中、私はキルリアに掛けていた毛布を自分の体にも被せたのだった。
──────────────
──サキラside
『ん、うぅ...。』
ここは...?
あぁ...あの方の部屋か...。私がお腹を空かせて気絶した時もここで目覚めましたね...。どうして気絶したんでしたっけ...。
『れべるあげ...。』
そうでした。あの方の言っていた『れべるあげ』というものをやって気絶した。あの生物として格上のピンク色の生物をなんとか倒したところで気絶したはず...。というか眠ったからか体がすごい軽い...。ピンク色の生物と戦う前よりも力が溢れてくるような気がします...。
そういえばあの方はどこにい、る...ん───
『え...?』
「すぅ.........すぅ.........」
起き上がってふと隣を見ると私がいる寝床にあの方もいらっしゃいました。この寝床があるぐらいだから寝るというのは分かるはずなのだけれども、なぜかこの方だけは寝なくても大丈夫なのでは?という感じがあります。いや今はそんなことを考えている場合じゃありませんでした...。
『...綺麗、ですね...。』
私にご飯を与えてくださった時もピンク色の生物と戦った時もそうだったのですが、この方には謎の威圧感があってまともに顔が見れませんでした。しかし、こうして眠っていると意外と綺麗な顔立ちをしています。あくまで私たちの種族から見ての話だけれども。
『...コクリ...。』
やってはいけないと分かっていてもついついそのご尊顔に恐る恐る手を伸ばしてしまう。
そして...あと少しで...
───ガシッッ!!
『ぐゥッ!?』
「私に...触るな。」
凄まじい殺気と共に左手で首を絞められる。この方は本当に私を助けてくれた方...?どことなく...違う雰囲気を感じます...。
『く、くるし...!』
「私はお前を認めない。美羽がお前を気に入っているみたいだからこれ以上何もしないが...安易に触れるな。」
『ぐっ...は、はぃ...。』
最後にジロリと念押しするように睨まれた私はようやく解放された。ミウって誰ですか...?私を気に入っている?
「...ん?なんで痣ついてるの?」
『ぇ...?ぁ、ぁぁ...えっと...。』
さっきと打って変わってピタリと殺気を感じなくなった。この方はちゃんと私を助けてくれた方...ですよね...?なんだかよく分からなくなってきました...。
「...いやしのはどう」
『っ!?』
首に走っていたズキズキとした痛みが治まっていく。怪我を治す技も持っているのですね...。
「...おはよう。進化したけど体に違和感は?」
『しんか?違和感は...ありません...。』
しんかとはなんでしょう...?
「...ピンと来てない顔...。これ見れば早いかな。」
そう言って見せられたのは何かの銀色の板?そこにはこの部屋を反転させて寝床の上に青い髪の子が座り込んでいる絵が描いてありました。その子は私の動きと連動しているかのように動いています。
ここまで来れば言わずとも分かります...。この子が私なのですよね。私の同年代の子達とは姿が違っています。仲間のお姉様達に似た姿に私がなっています。これが『しんか』なのでしょうか?
てっきり歳と共に成長するものだと思っていたのですけれどまさか生まれてすぐの私がお姉様達と同じ姿になるなんて...。
『これがれべるあげというものの産物ですか?』
「そうだね。さ、もう元気になったよね。」
『え?は、はい。』
「それじゃあ料理教えるから早く来てね。」
『え、えぇ...?』
返事をする前にあの方はご飯を食べる場所に行ってしまった。そういえば名前をお聞きしてなかった。なんてお呼びすればいいのでしょうか...。
とりあえずサイコキネシスを覚えるために『りょうり』というものを何としてでも習得してみせましょう!
急激な成長で口調が劇的に変わりました。
ちなみに主人公ちゃん視点だと鳴き声が「らるらるぅ」から「きるきるぅ」になってます。
次回は凛ちゃんsideです。
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●第23話 レベル差の暴力
テルくんからの教えを受け、私は少し成長した...気がする。認められたお祝いというかクラフトキットとキズぐすりのレシピを貰った。これでいつでもマグマラシ達を癒すことが出来るね!ちなみに必要素材は『オレンのみ』と『クスリそう』だってさ。
あとポケモン達を捕獲したり、図鑑タスクを埋めたりすると報酬が貰えるみたいでラベン博士から2000円弱もらえた。やっぱりお小遣いは嬉しいね。
それと今の私の手持ちはマグマラシをはじめとするビーダル、ルクシオ、ムクバード、ブイゼル、そしてイーブイの6匹になった。まさかイーブイがここら辺に生息しているなんて思ってもなかったよ。もふもふは正義。
最後にラベン博士から団員ポイントみたいなのが貯まったからシマボシ隊長に報告してって言われたので黒曜の原野から帰ってきてギンガ団本部に向かっているところだ。
頭の上にマグマラシを乗せてるんだけど、流石に進化して重くなったから結構キツい。バクフーンになったらもう私よりも大きくなるだろうからね...。乗り納めだよマグマラシ。
「まぐ?」
「ふふっなんでもないよ。」
────────
「凛か。確認する。図鑑を見せたまえ。」
「はい!」
私は自分が調査した結果が細かく記された図鑑をシマボシ隊長に渡す。ビッパの調査は簡単だったけどすぐ逃げちゃうムックル、ケムッソ、イーブイや好戦的なコリンク、ブイゼル、ポニータとかは大変だった。
そんな感じで感傷に浸っているとシマボシ隊長が図鑑から目を離し、私の方を向いた。
「よく出来ているな。承認する!ランクアップの手続きだ。」
「はい!」
「キミのギンガ団団員としてのランクは『ヒトツボシ』に上がった。これらも渡す。クラフトに必要なレシピだ。」
「あ、ありがとうございます。」
なんかよく分からないけど無事にランクアップしたようだ。こうやって図鑑を完成させていくと団員ランクというのが上がっていくんだね。最高ランクまで頑張ろう!
それとヘビーボールとげんきのかけらのレシピを貰った。基本的にモンスターボールと似たような感じだけど、必要素材が『たまいし』から『くろいろたまいし』に変わっている。作り方が同じだから簡単かな?
げんきのかけらの方は『ゲンキノツボミ』と『クスリそう』がいるらしい。こっちは抽出というものをしないといけないそうだから大変かな...。
「確認は済んだか。」
「はい。」
「...空から落ちてきた異端者がまだ生きているのはキミの才覚と努力の結果である。いいか?多くの人は分かりやすいものを好む。団員ランクを上げれば空から落ちてきた怪しい人間も受け入れてもらえるだろう。」
「そう、ですかね...。」
まだ不安はある。ムラの人々との壁もまだ厚いし、無意識に避けられることもある。ちょっと悲しいよね。
「あぁ。ここで生きていくなら団員ランクをあげろ。あげることで使えるボールの種類も得られる報酬も増える。」
「はい!」
「今日はイモヅル亭で食事を取り、休息するがいい。」
「分かりました。それでは失礼します!」
「あぁ。励みたまえ。」
「はい!」
───────────
夕暮れ時...
「凛くん!団員ランクがあがったお祝いです!」
「いい事があるといつものイモモチも上手く感じるな!」
「うん!」
「そういえばお前。スグルさんの依頼、引き受けたのか?コトブキムラのみんな、ポケモンに詳しくないだろ?だからゴタゴタが起きる度に調査隊が調べることになるんだ。ようするにポケモン万屋だな。」
「皆さんのお話を聞いたり、ボクの研究室にある黒板に貼られた依頼メモを見ることで請け負えますよ!」
「そうなんですねぇ...。」
調査隊はそういう事もするんだ...。
「ちなみにテルくんが頼まれたのはどのような内容ですか?」
「あれは...凛向きかなぁ...。ポケモンを戦わせるのが上手くないと依頼をこなせそうにないからなぁ。それに凛ならヒノアラシ...進化したマグマラシがいるじゃないか。」
「え、もう進化したんですか?」
「一応...はい。出てきてマグマラシ。」
「ま〜ぐ!」
「おぉ!これはこれはまだヒノアラシの頃の面影が残っていますね!これはこれで癒し...。」
「おい依頼の話だろ!?」
「おっとそうでしたね。...それで、テルくんの依頼主はたしか...コンゴウ団のヨネさんですね。コンゴウ団の方々はボク達ギンガ団よりも前からヒスイ地方で暮らしています。上手く交流できればポケモンのことも色々教えて貰えそうですが...。とにかく話は明日聞くとして、今夜はゆっくり休むのです!」
「そうだな!」
「そうですね。」
コンゴウ団のヨネさん...。どんな人なんだろう...。それにコンゴウって金剛だよね?金剛石となにか関係があるのかなぁ?
今日はラベン博士の言う通り、ゆっくり休もう...。沢山前転して疲れたからね...。
────────
「おはよう凛。突然だがヨネさんに会う前にお前の腕前を試していいか?」
「いいよ。」
「...正直マグマラシがいるから実力の差は分かってるけど一応な。」
「うん。」
「それじゃあ訓練場で待ってるぞ。ポケモンを沢山捕まえていたら放牧場で入れ替えるのもいいかもな。」
「分かった。」
そう言ってテルくんは訓練場方面に走っていった。私は別に入れ替えることもしなくていいからそのままついて行く。
「あれ?もう来たのか。ふぅ......正直に言うぜ。ポケモンを戦わせるなんて無理だろ!いや、俺だって調査隊だし相棒はいるけどさ...。」
「相棒いるの?」
「あぁ見せてやるよ俺の相棒を!」
「ぴーかっ!」
「かぁいい...!本物のピカチュウだ...!」
「ぴかちゅー!」
「おい何和んでるんだよ...。相棒のピカチュウだ。コリンクに襲われた時もこいつと共に戦えば良かったんだけど頭が真っ白になってな...。それに正直ポケモンって怖いだろ。なんでこいつエレキを出せるんだよ...!」
「ぴかぴーか!」
「だけど図鑑タスクをこなすお前を見ていたら相棒と力を合わせないと調査隊の仕事もままならないなって...。」
「そっか...。」
「だから俺が1歩踏み出すために勝負だ!」
「望むところだよ!」
──────────
「行けピカチュウ!」
「頑張ってねマグマラシ!」
「「でんこうせっか!!」」
ほぼ同時にポケモンを繰り出し、ほぼ同時に同じ技を繰り出す。だけど今のマグマラシはレベル21だ。この世界はジム戦なんて当然ないからあれだけど、序盤でこのレベルは結構上げた方じゃない?自画自賛だけど。
「マグッ!!」
──ドゴンッッ!!
「ピカァッッ!?」
ピカチュウよりも格段に速い動きでマグマラシは左に動き、ピカチュウの横腹に頭突きをする。ピカチュウも空中で体勢を整えて綺麗に着地するも、苦痛に悶えている。
「ピカチュウでんきショック!!」
「ひのこで打ち消してかえんぐるま!!」
レベル差の暴力?ごめんね。相手から見たらひのこですらもかえんほうしゃに見えるのかもね...。所謂「今のはメラゾーマではない、メラだ」状態。
マグマラシは言われた通り、でんきショックをひのこで打ち消し、体に炎を纏って転がる。まるでス○ブラのソ○ックみたいに凄まじい速さでピカチュウにぶつかるマグマラシは容赦がなかった。
吹き飛ばされたピカチュウは目をグルグルとさせて気絶した。
「びぃ......がぁ...。」
「戻れピカチュウ...!お前とポケモン...心が通いあってるみたいだな!」
「そうかな?」
「あぁ。普通打ち消せって言われてもできないだろ?いやまぁ俺が言うのもあれだけどさ。」
通いあってる、か。そうだといいなぁ...。
このゲームレベル差あっても負けやすいからね...(目逸らし)
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●第24話 警備隊隊長ペリーラさん
「...それにしてもすごいよな。お前と相棒の戦い方...戦うことを恐れていない感じだ。」
「そうかな?」
「自覚ないのか?」
戦いを恐れる...言われてみればたしかに恐いかもしれない。今までは人が死ぬとかがあまりないポケモンの世界だからって甘く見ていたところがあったかもしれない。でもリアルだとそうもいかないのはマグマラシを見て知ったはず。
「...たしかにそうかもね。」
改めてこの世界が恐くなった。調査隊に入ったのもゲームだったら入るイベントだろうと思って何も考えずに入ったけどこれも調査隊も遊びじゃない。
「何か気づいたみたいだな。...それはそうとして、俺達も頑張っていこうな。頼むぜピカチュウ。」
「ぴーかっ!」
そう言われたピカチュウはそっぽを向いた。どうやらテルくんはピカチュウに嫌われているみたいだ。
「...そうだった。こいつもすぐ襲ってくるからボールに入れっぱなしだったんだ...。」
「あはは...頑張ってね...。」
「うん...頑張るぜ。まずは仲良くなるところから始めないとなぁ...。あ、そうだ!博士が教えてくれたけどポケモンにはタイプってのがあって、勝負の有利不利に関わるらしいぜ。ちなみに俺のピカチュウはでんきタイプらしいんだ。」
「うんうん。」
タイプ云々はもうゲームをやってれば分かってくるからね。そこら辺はバッチリだよ!
「...あんただね。噂の新人は。」
訓練場から向かって右側からゆっくり歩いてきたのは大柄な赤髪の女性。お胸が大きくて羨ま...じゃなくてこれまた綺麗な人だなぁ...。
「私は私はペリーラ。警備隊の隊長だよ。」
「警備隊の隊長さん、ですか?」
「あぁ。アンタの戦い、中々に筋がいい!ちょいと指南したくなってね。」
「ペリーラさんはポケモンを戦わせる古武道の師範でもあるんだ。」
「そうなんですね...。」
警備隊の隊長兼師範...。すごい方だねぇ...。
「ポケモンは使う技を究めると技の質を変えることができるんだ!」
「そんなものが...?」
「ひとつは力業。技を繰り出すのは遅くなるが、その分威力は増す。もうひとつは早業。こっちは威力は下がるが、早く行動できるようになる。場合によっては相手が行動する前に2回攻撃できるかもな。」
「へぇーそれはすごいですね!」
力業に早業...あの時ビッパに2回攻撃できたのってマグマラシがでんこうせっかを早業で打ったからなのかな?私特に指示はしてないんだけど...。
「あはは!それは単にマグマラシが速かっただけさ。もしマグマラシがでんこうせっかを早業で使ったら...3回攻撃も可能かもな。」
「おぉ...!」
それは是非とも試してみたい!
「まぁざっと特徴は挙げたけど、普通の技との違いはいつもよりパワーを消費するところだな。」
「パワー、ですか?」
「あぁ。普通の技でもたくさん使ったらポケモンは疲れ果てちまうだろう?それが力業、早業になると消費スピードが2倍になるんだ。」
「なるほど...。」
つまり、ゲームで言うとパワーはPPで力業、早業はPP消費量が2ってことかな?
「あとポケモンに強い技を伝授したいなら私に声をかけてくれ!」
「ヨネさんに会う前にいい事を教わったな!昨日イモヅル亭で話しただろ?ヨネさんの依頼を受けに行くんだ。ヨネさんとは大志坂の先で会うからお前も用意してきてくれよ?」
「うん。」
そう言ってテルくんはまた走っていった。テルくんに言われた通り、私も用意しますかね。
「ペリーラさん。」
「技の伝授かい?」
「はい。マグマラシに何か強い技を覚えさせたいんですけど...。」
「そうだな...マグマラシなら...アイアンテール、つばめがえし、かえんほうしゃ、いわくだき、あとはスピードスターとねむる、ワイルドボルトぐらいか?」
「結構あるんですね。そうだな。でもただで覚えさせるわけにゃいかん。技の伝授も大変なもんでね。」
「そうですよねー...。うーん...かえんほうしゃとかは何円なんですか?」
「かえんほうしゃだと3000円でどうだい?」
「!」
3000円はたしかに高い...だけどここでケチってマグマラシを危険な目に合わせる訳にはいかない...!今の手持ちは4000円だから払えないことも無い...よし...伝授してもらおう!
「お願いします!」
「ほいきた!そんじゃマグマラシを出しておくれ。」
「はい。出てきてマグマラシ!」
「まぐま〜ぐ!」
「ほぅ?中々育ってるじゃないか。これはすぐに終わりそうだね。」
「まぐ?」
「そんじゃ早速始めるよ。さぁマグマラシ!ひのこを強火で吐いてくれ!」
「ま、まぐ〜!」
─────────────
しばらくして...
ひのこをたくさん吐いたマグマラシはぐったりしていた。ペリーラさんはやっぱりスパルタだった。ごめんねマグマラシ。でも無事にかえんほうしゃ覚えられたね!
「ま〜ぐ!」
「くぅぅ可愛いっ!ペリーラさんありがとうございました!」
「あぁ調査隊の仕事頑張れよ!」
「はい!」
ムラから出て、向かうのは黒曜の原野。ヨネさんどんな方なんだろう...。会うのが楽しみだなぁ...。
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●第25話 vs.ヨネさん
「あ、そうでした。ちょっといいですか?」
「ん?どうしたんだ博士?」
「いえ、ちょっと凛くんに依頼をお願いしたくて。」
「ふーん?なら俺は先に行ってるぜ。」
「わ、私にですか?」
「はい。ポケモン捕獲の依頼です。ビッパ、ムックル、コリンク、イーブイを2匹ずつお願いしたくて...。」
「分かりました。...というかもう既に捕まえてるので...。」
「良いんですか?ありがとうございます!あとで放牧場から引き取っておきますね!」
「はい。それじゃあ行ってきますね。」
「頑張ってください!」
そう言って私は博士の元を離れた。なぜラベン博士がポケモンを要求したのか分からないけれど、それが悪いことに繋がらなければそれでいい。調査に役立つのならば喜んで引き渡そう。
それにビッパもムックルもコリンクもそれぞれ10匹以上捕まえてるしね。イーブイに関してはあまり遭遇しないからまだ4匹しかいないけどいつかブイズを揃えたいよね。
「ヨネさんはこの橋の先かな?」
「橋の先に進むと強いポケモンが多く生息しており、危ないのだ!団員ランクがヒトツボシ以上なら...ってお前のランクなら進めるのか!」
「そうですね。今日シマボシ隊長にそう言われました。」
「うむ。だが油断するなよ!ピンチになれば安全な場所で休むのだ!」
そう言って橋の端に...駄洒落じゃないけど避けてくれた門番?橋番?さんに会釈して先に進む。木製の橋だからちょっと怖いけどまぁ大丈夫だよね。
橋を渡った先にはテルくんと話している美人さんと足元でウトウトしているゴンベが。ゴンベが可愛すぎる...!
「おい!こっちだ!」
「うん。お待たせしました。」
「凛だ。」
「へぇー新顔だね。まぁいいや。とにかく来たってことは相談に乗るってことなんだろ?あたしはコンゴウ団のキャプテン、ヨネ。」
「凛です。よろしくお願いします!」
「うん。コンゴウ団やキャプテンについてはいずれ説明するでいいよね。片付けてほしい要件があってね。さっさと話を進めたいのさ。」
そうやって腕を組むヨネさん。この人もとこかで見たような............マイちゃんか!めっちゃ似てるじゃんこの人!髪型はそのまんまだし!ウォロさんに続いてすごいところに来たなぁ...。
「あんた...自信はあるかい?」
「え?」
「ポケモンを戦わせる腕前の。」
「あ、あぁ...はい!」
「そりゃよかった!あんたのところの警備隊の若造では歯が立たなかったからさ!おっと...横にいるのは相棒のゴンベ。兄弟のように一緒に育った仲であんたらのようにおかしなボールで捕えなくても共に戦ってくれるよ!」
「ゴン!」
「へぇー!すごいですね!」
ボールを介さずに繋がっているこの2人...すごいなぁ...。
「さぁあんたのポケモンを出しな!」
「は、はい!行ってきてビーダル!」
今回はビーダルで行く事にする。今の私の手持ちで1番レベルが高いのはマグマラシのレベル23だ。他のポケモンも戦わせていかないとレベルの差が開くばかり。やっぱりみんなのレベルは均等にしたいよね。
それにみんなゴンベに対してこうかばつぐんの技を持っていない。ビーダルのころがるは弱点は突けないにしても何度も打てば威力が上がる。
「ゴンベ!ころがるだよ!」
「力業ころがるで迎え撃って!!」
力を溜め込む動作のせいで出だしは遅れたが、攻撃が相手に当たらないということはなくなった。
───ズガァァンッッ!!!
互いに岩がぶつかり合ったような音を立てながらぶつかり合い、弾き飛ばされる。でもうちのビーダルは耐久高めなんだからね!
弾き飛ばされた2匹はころがるをしたそうにピクピクしている。そんなところも可愛い...じゃなくて。
「ゴンベもう1回ころがる!」
「もう1回ころがる!」
相手とのレベル差がある...と思うから力業を打っても特に先制されず、もう一度同タイミングで打つことが出来た。
そしてころがるを連続使用したおかげか...
──ズガァァアアアアンッッ!!!
「ゴンっ...ぬぅ...!!」
「ビー...!」
頭を振って立つビーダルと目を回しながら倒れるゴンベ。耐久勝負は私のビーダルの勝利だね!
「...ゴンベに勝つなんて...あんた只者じゃないね。ゴンベもごくろうさん。」
「ごん!」
「ありがとうございます。ビーダルもお疲れ様。」
「びー!」
「さ、戦ったポケモンを元気にしてやるよ。」
ヨネさんがビーダルに近づくと、キズぐすりを塗ってくれた。ありがとうございますヨネさん。
「びー!!」
「どういたしまして。あといいものをあげるよ。あんたらクラフトといって材料からアレコレ作るんだろ?」
「これ...。」
「ゲンキノツボミさ。」
「ありがとうございます!」
ゲンキノツボミはたしかげんきのかけらを作るために必要な物だったよね。それを5個ももらった。大事に使わせてもらおう。...まぁ使う機会がなければいいんだけど...。
「あんたとポケモンが息を合わせて戦う姿がよかった!まるで英雄だな!小さい頃に昔話で聞いた伝説の英雄!」
「そ、それは言い過ぎじゃ?」
「ううん!決めた!あんたに依頼する!内容はシシの高台を荒らすオヤブンの退治さ!」
「オヤブン...?」
「オヤブンというのは...とにかくでっかいポケモンのこと。」
「説明放棄した...。」
「し、してないよ。それよりもシシの高台に来てくれるよね?」
「...分かりました。」
──ティロン♪
「あれ?あぁ...行先か。」
「お前の変なソレ...行き先を示しているのか。」
「あんたの地図洒落てるねえ!ギンガ団の技術ってやつ?たしかにあちらがシシの高台。その地図の通りだよ。」
「じゃあ任せたぜ!お前ならオヤブンも平気だって!」
「うん。」
「調査隊の新顔。大したもんだよね!」
「あ、ありがとうございます...。」
「ところであんた...シンオウさまはご存知かい?」
「しんおうさま...?シンオウさま...一応聞いたことはあります。」
どこかで聞いたことがあるけど詳しくは知らないかなぁ...?
「大したもんだよね。ただ本当の話が伝わっているか怪しいからね。ちょいと教えるよ。」
「お願いします。」
「うん。...シンオウさまは時間を操り、宇宙を創られたとされている。結果、ヒスイの大地が生まれ、ポケモンたちが暮らせるようになった。そんなすごいシンオウさまを崇めるため、海を越えヒスイ地方に集まり、定住し始めたのがコンゴウ団。」
「そうなんですね。」
「もっとも......シンオウさまははるか昔にお隠れになられ、滅多に姿を現さないとの話。だが、未だにシンオウさまにゆかりのあるポケモンたちはいる。そのお世話をするのが私たちキャプテンという訳。」
「そこでキャプテンの話が出てくるんですね。」
「そう。シシの高台に姿を見せるポケモンもシンオウさまの加護を得たポケモンの血を引いているんだよ。ちょっと長くなったね。...じゃあ先に行ってるよ。」
「あ、はい。」
シンオウさま...アルセウスだったりしない?でも時を操るポケモンって聞いたらディアルガとか...うーん...。とりあえず先に行こう...。
ついに動き出すラベン作戦。次回はラベン博士sideです。
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◇第26話
──ラベン博士side
「ミジュマル、モクロー出番だよ。」
「ほー!」
「みじゅっ!」
ポケモンボールを2つ投げ、ミジュマル達を外に出す。ここ最近は凛くんが冒険している間に外に出してあげて鍛えてたんだけど、今日は違うよ。
「ついさっき凛くんに依頼の件について話したけど、許可もらえたんだよ。」
「ほー?」
「みじゅー。」
「ほらみんな出てきて!」
「「びっぱ!」」
「「くる!」」
「「くぅん!」」
「「ぶい!」」
「ほー!」
「みーじゅ!」
若干の大きさの違いはあれど、それぞれ瓜二つの計8匹のポケモンたち。もう既に彼らの首には緑色と青色のバンダナを巻いてある。
「ミジュマル、モクロー。」
「みじゅ?」
「ほー?」
「この子達は君の仲間です。青色のバンダナはミジュマルの。緑色のバンダナはモクローの。今1番強いのはミジュマルとモクローです。一番最初に言ったの覚えてますか?君たちはポケモン調査隊のリーダーになってもらうって。」
「ほー!」
「みじゅ!」
「...うん。いい顔つきだね。本当ならば僕が直々に手伝ってあげたいんだけどね。如何せん研究の方が忙しくて。これから君たちには2つのチームに別れて調査してもらうけどくれぐれも危険な事はしないようにしてください。」
「ほっ!」
「みじゅっ!」
「みんなもミジュマルとモクローの言うことは聞いてあげてくださいね。」
「「びっぱ!」」
「「くる!」」
「「くぅ!」」
「「い〜ぶい!」」
「さすがに無一文で放り出すことはしないですよ。ほら、みんなで分けて食べるんですよ?」
緑の調査隊、青の調査隊それぞれに50個ずつの木の実を渡す。美味しくて腹持ちもして、尚且つ腐りにくいオボンのみだから早々無くなることはないはず。
「まだ君たちは弱いからね...1日探索してもらって、また明日ここに集まってもらえないかな?」
「ほー!」
「みーじゅ!」
任せてと言わんばかりに胸を叩くミジュマルとモクロー。未だに進化してないけど、きっと大丈夫だ。彼らならば調査隊としてやっていける。凛くんについて行きたがっていた気持ちを利用するのは気が引けてしまうけど、調査のために頑張ってほしい。
まぁよっぽどのことがない限り大丈夫でしょう。地図も渡してあるし、範囲も制限している。凛くんはきっと橋を渡った先で調査をしているから出会うことはないはずです。
オヤブンポケモンが出没する場所も印を打っているし、死ぬようなことはないはず。彼ら自身強くなりながら調査してほしいところです。
──────────────
そんな思いを抱えて眠った次の日...
いつも通り、探索に出かける凛くんを見送って暫くしたあと、たくさんの足音が聞こえてきた。僕が昨日から心配だった子達のものだ。
「ろー...!」
「ふたっ...!」
「よく頑張ってくれました...!」
ボロボロになりながらもなんとか帰ってきてくれた緑と青の調査隊。誰一人欠けることもなく、これといった大きな怪我もない。
しかもたった一晩で何があったのか、モクローがフクスローに、ミジュマルがフタチマルに進化していた。仲間たちもビーダルやムクバード、ルクシオに進化している。ポケモンは成長が早いとよく言われているけど、まさかここまでとは思わなかった...。
「ろー!」
「ふたっ!」
逞しくなった2匹を横目に、僕は唯一進化していないイーブイの2匹組に顔を向ける。
「...君たちの進化は底が知れないのですよ。」
「ぶい?」
「いぶーい?」
「不安がる必要はありません。きっと必要な場面がやってくるはずですから。その時まで頑張ってくださいね!」
「いーぶい!」
「ぶいぶい!」
「それじゃあ今日は休んでまた別の日に探索しましょう。」
「ろっ!」
「ふた!」
あとは凛くんが帰ってくるまで待つだけだね。
ラベン博士めっちゃ書きにくい。いつかフクスローsideやフタチマルside書きたいなぁ...。
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◇第�話 神の失敗
失敗した。
私は失敗を犯した。
全てのポケモンを平等に愛する男を殺してしまった。
『......。』
白色一色の何も無い空間に佇んで考える。私に失敗など無かった。男の願いを聞くのではなかった。彼奴の行動を見逃すべきではなかった。
『世界は終焉を...いえ、まだ決まった訳では...。』
私が転生させた柵美羽という人間。自我が強く、自制できると踏んでいた。しかし、結果はあの男の死であった。ポケモンという生物の発展にとあの男を連れてきたが...まさか
『...殺めるしかないのですか。』
元々人間とはいえ、さらに言えば人工的に創られたとはいえ、今は性質的にポケモンである。そんな彼女を殺してしまっても良いのだろうか。
『...未来が読めません。』
人間の言うパラレルワールド。時を未来に向けて飛ばすにつれその世界の数はねずみ算式に増えていく。そして辿り着く未来、その結末の半分以上が...
『柵美羽による世界の破滅...。』
...彼女の中には何がいるのでしょうか。彼女の自我をも超えてしまうような化け物でも棲んでいるのでしょうか。何はともあれ、今の私には見守ることしかできません...。
『しかし...望みは託されています。凛...貴女ならばきっと凄惨な未来を回避してくれるでしょう...。』
凛に託したのは「全てのポケモンとであえ」というもの。そのポケモンの中に、当然
あと少し...
あともう少しで歯車が動き出す。
考えうる中で最も最悪な未来に辿り着かぬよう...。
───────────────────
これはとある未来のお話...
「ギラティナ打破せよッ!!」
「ギュイィィイイイッッ!!!」
世界で最も高い山頂...そこにある神殿では今まさに凛とウォロによる最終決戦が始まろうとしていた。
「行ってきてバクフーン。」
「ばくっ!!!」
黒い霧を纏うギラティナ、紫色の炎を纏うバクフーン。その両者が睨み合う。しかし、バクフーンの方は先のウォロとの勝負で満身創痍となっている。それはバクフーンだけではない。凛の手持ちのみんながボロボロなのだ。
「ギラティナシャドーダイブ!」
───ゴゴゴゴ......!
ギラティナは霧に姿を隠し、闇の中からバクフーンを監視する。
「落ち着いてバクフーン。」
「ばく。」
「...今!早業かえんほうしゃ!」
「ばくっ!!!」
───ズォォオオッッ!!
───ゴォオウゥゥッッッ!!
「ギシャァァァッッ!!!」
背後から出てきたギラティナの攻撃を紙一重で回避したバクフーンは後ろを向いてかえんほうしゃを放つ。反撃されるとは思ってもみなかったギラティナは思わず仰け反る。そして、至近距離で食らったことにより火傷を負った。
「トドメのひゃっきやこう!」
「バグッ!!」
隙を逃さぬよう、背中の炎と同じ色の灯火をギラティナに放つ。効果抜群、タイプ一致、さらには状態異常で威力2倍となった高火力がギラティナを襲う。
「ギラティナ!!」
「ギシャ...ァァァッッ!!!」
通常フォルムからオリジンフォルムとなったギラティナは再び赤い眼光をバクフーンに向けた。先程よりも殺意が凄まじくなっている。
「変身した!?」
「バク!」
「...戻ってバクフーン。」
集中力が持たなくなったバクフーンをボールに戻した凛は次にサーナイトを繰り出した。
「よろしくサーナイト。」
「さーな!」
「サーナイト、早業ムーンフォース!」
「さー...なっ!!」
再びシャドーダイブを使われる前に先制してムーンフォースを放つ。
「何をしているギラティナ!シャドーダイブだ!!」
「シャァァッッ!!」
「...。」
しかし、かすり傷だけ与えてシャドーダイブを使われてしまった。
「サーナイト。サイコキネシスで周囲の歪みを探して。」
「さな!」
「いた!力業ムーンフォース!」
自分の周囲に結界を張るかのようにサイコキネシスを展開したサーナイト。不自然に揺れる空間を発見したサーナイトはそこに力業でムーンフォースを撃った。
──パリンッッ...!
「ギシャ、ァァァ...ァァ...!」
敗れたギラティナは自分の世界に帰っていく。その場で見ていたウォロは端正な顔を大きく歪ませ、凛を睨みつけた。
「ふふ...くくっ...アッハッハッハッハッ!!!役立たずのギラティナめが!!」
「...どうしたんですかウォロさん。」
「まだだ...まだ終わらないのさ...!!」
彼の手にあるモンスターボール。それは7個目のボールだった。
「ま、まだ手持ちがあったの...?」
「...出てこいミュウスリー。」
──ポワンッ...!
軽い音を立ててモンスターボールから出てきたのは1匹のポケモン。
「ミュウ、ツー...Y...?」
「さ、さな...さなっ!」
それは凛が知っているポケモンであるメガミュウツーYに似ているポケモンだった。顔の右半分と右腕が黒いプリズムに覆われていたり、何やら首輪のような機械が着いていたり、体の作りがどことなく龍っぽくなっているのを除けばだが。
そしてそのポケモンは空中に浮かびながら眠っているようだった。
サーナイトは同じポケモンとして何かを感じ取っているみたいだが、凛はそんなことに気づかない。
「起きろミュウスリー!ようやくお前の出番だ!」
狂ったように哂いながら両腕を広げるウォロ。そして...
「メガシンカ!!」
「え...?」
────ギュィィィィィイイイイイイッッッ!!!
凛にとって馴染みのあるフレーズが壊れた神殿に響く。白い繭に包まれたミュウスリーはどんどん形を変えていき、それは人間の女性特有の体つきになった。
「ミュウスリー...パワー:0%!全てを解放せよ!!」
「ぐっ...ギィァッ!ァァ、ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!!!」
「なんで...なんでここにいるの...?」
「グウゥゥヴヴウ゛ウ゛ウ゛ウ゛ウ゛ァ゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!」
───天焦がす滅亡の光───
「お───!」
─────────
──────
────
またひとつ世界が終焉を迎えた。
OKGoogle!メガミュウツーY 擬人化 で調べて!
とか言えば出るんちゃいます?知らんけど。イメージは多分そんな感じ。
それにしてもウォロさんやり過ぎ(呆れ)
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○第27話 1週間
「...今日も美味しかった。」
「
ここ1週間ずっとこのキルリア...ことサキラに
「...
「......ミュウスリーって言ったけど。」
「...
目を細めて疑ってくるサキラ。この子は1週間前に料理を教えると言った私の名前を聞いてきたのだ。普通に答えたはずなのになぜ1週間も問い詰めてくるのか。
と答えの出ない問題について考えていると...
───トントン
「邪魔するよ。暫く来なかったが元気で...やっ...て...?」
「...。」
「色違いの...キルリア?」
「
「みゅぅ」
コギトが突然家にやって来た。ノックせずに入ってきたらサイコキネシスで追い出す所だった。まぁノックから0.5秒後にドアを開けてきたけどね。
あーめんどくさ...。後で説明しなきゃなぁ...。
「...
「
「いつの間にキルリアを連れ込んだんだ...。って木の実のスープか?」
「みゅ」
サキラを指さして答える。この子が作ったからね。
「へぇ...キルリアが...料理...。面白い。」
「
コギトの獰猛な笑みにサキラが逃げ腰になる。人間に怯えるなんてまだまだレベルが低いなぁ...。...まぁ私もコギトの目が怖い時があるから
「おっとそうだった。お主に頼みがあって来たんじゃよ。」
「?」
「まな板を作ってくれんかの?あぁまな板というのは...」
「みゅっ」
「分かるのか?」
「...。」
まな板は前世で...と言ってもお母さんが使ってたぐらいで私は使ったことないんだけど存在は知ってる。薄い板でしょ?うん。
とりあえず作ろうか。
「ん?どこに行くんじゃ?」
「みゅう」
私は外に出て、未だ放置されている切り株まで移動した。そしてサイコカッターで断面を薄く切り、木の円盤を作り出す。あとはこれをよくあるまな板の形である長方形に整えれば完成だ。
「みゅ」
「ぉお!一瞬じゃな...!いやぁまな板はすぐ壊れてしまうから助かった!」
「みゅ、みゅう?」
あれ?まな板って消耗品だったっけ...?いや...すぐ壊れるとは言ってもコギトはもう歳もとってるから時間の流れが早く感じるだけでは?
「...のうお主...たまにお主が失礼なことを考えているように感じるのじゃが気のせいか?」
「...。」
当然ながら首を横に振っておく。失礼もなにも口に出てないし事実だしね。
「...まぁいい。何はともあれ助かった。また壊れてしまったら頼みたいが良いか?」
「みゅ」
「そうか!ありがとう。...それはそうとわしはあのキルリアに嫌われているのか?どうにも怯えられているように感じるのじゃが...。」
「...。」
これ...は...なんか結構落ち込んでるみたいだからまた首を横に振っておく。その探究心さえ無くなれば怯えられることはないでしょ。...私にも。
「1週間ぶりにお主の家でお茶を飲もうと思ったんじゃが、今日は止めておくべきかのう?」
「っ!みゅ!」
「ん?飲みたいのかえ?...仕方があるまい。キルリアもわしのお茶を飲んでくれたら良いのじゃが...。」
絶対飲ますから安心して。コギトの紅茶はすっごい美味しかった。舌が肥えている人でも絶賛するだろうぐらいには美味しかったからサキラもきっと気に入るはず。そう。別に私が紅茶に惹かれた訳では無い。サキラにも紅茶の美味しさを知って欲しかっただけ。これも勉強の一環だからね。
自分に言い訳をして部屋に戻ってくるとサキラが私の分のお皿を片付けてくれていた。いやぁ...ほんとにこの子は役に立つ...。もう嫁と言っても過言じゃない。もう嫁で良くない?良いよね?
「...やけに家庭的じゃな。」
「...みゅ」
「それじゃあティーセットも持ってきたからお茶でも嗜もうじゃないか。」
「...。」
サキラはちょっとコギトに対して警戒心を向けているけどじきに慣れると思う。あ、そういえば私の家に椅子は2脚しかないや。...まぁ私は浮けるしサキラとコギトに使わせればいいか。
「...できたぞ。ほれお主の分じゃ。」
「みゅう」
「...お主の分も当然あるぞ。」
「
───こくっ...
「...。」
「どうじゃ?」
「みゅう」
やはり美味しい。毎日飲みたいぐらい。コギトが毎日作ってくれればいいのに...。コギトが嫁ならワンチャン...
「っ!?」
「...?」
「い、いやなに...ただちょっと寒気がしただけじゃ。」
変なコギト。
気づけばもう1週間...。時間の流れは早いですなぁ...(121歳拳で)
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○第28話 力の変質
「
「...今日は散歩。」
「
「...まだ体が馴染んでないでしょ。」
私もそうだからね。この世界に来て急にこの体になったけど、未だに馴染んでない。なんと言うか...魂と体がまだ定着してないような...そんな感じ。サキラもたまにラルトスだった頃の感覚が抜けてないみたいでよく何も無い所で転んだりするしね。
ちなみにサキラが求めていたサイコキネシスの方はもう大丈夫だったりする。技として、高火力のサイコキネシスの名に恥じないようなサイコキネシスをサキラは覚えた。あとは力加減を覚えて、色んなことに使えるようになればマスターしたといっても過言じゃない。その練習だけはさせてる。
「...ここから見る景色が好きなんだ。」
「...
この島の南西に位置する場所。神聖な気配のする苔むした巨大な石がある森。ここから見えるこれまた大きな川を眺めるのが1番好きなのだ。
「
「
「
「...ミミロル。ここら辺に棲むポケモン。サキラが来る前からここによく散歩に来てたけど、なんか懐かれた。」
ネクロズマのような無骨すぎる右手ではなく、普通の左手でミミロル姉妹(いつも一緒にいるからとりあえず姉妹とした)の頭を交互に撫でてやる。
「
「
「はいはい。」
ミミロルはやっぱり可愛いな。サキラとはまた違った癒しだ。現代社会ではこういった癒しが無かったから...。いや、過ぎた昔のことを考えるのはやめよう。
「
「...そうだね。」
サキラがぺたぺたと苔むした巨大な石を触りながら話しかけてくる。神聖な気配がするのは分かるけど、私ならあそこまで遠慮なく触るようなことはしない。壊しそうなのはもちろんあるが、何より怖いのだ。神聖とは真逆な存在である
「
「へ、うわちょっとやめ────」
──ピタッ...
ボーッとしていたらいつの間にかサキラが私の手を取って石に手を当ててきた。慌てて手を離そうとしたがなぜか離れない。
「な、何これ...力が...抜けてく...?」
私の力が吸い込まれていくような感じがする?...いや、力が変質した?どういう事...?
「
「い、いや...別にいいけど。」
いつの間にか手は離れていて、私の左手にはなぜかピンク色の板が握られていた。
「
「体...?」
サキラに言われるがまま、自分の体を見てみるとミュウツーの尻尾の色が変わっていた。具体的にはピンク色からミュウツーの色違いのような緑色に。
「...目の色は何色から何色になった?」
「
「尻尾と同じか...。」
なんで色が変わったんだろう...?帰って色々と確認しなきゃ。...特に変質した力について。
「...帰るよ。」
「
申し訳なさそうな顔をしているサキラの頭に手を置いてテレポートした。
─────────────
────────
「...なに...あのポケモン...。色違いのキルリアと一緒にいたけど...。どことなくメガミュウツーYに似てたけど...新しい形態...?しかも喋ってたし...むぅ...新伝説なら分からないなぁ...。今の私じゃ挑んでも負けそう...鍛えなきゃ...。」
その一部始終を見ていた少女に気付かぬまま。
1週間...時が経つのは早いのぅ...(デジャブ)
苔むした巨大な石...リーフの石を使わずに進化できるあの場所ですね...。
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○第29話 プレート
「かえんほうしゃ」
──ゴォォオオオオオオ!!!!
「ハイドロポンプ」
──ズドォォオオンンッッ!!
「リーフストーム」
──ズババババッッッ!!!
「...。」
今、私はタイプの検証をしている。前にもコギトと一緒にやったが、昨日あの苔むした巨大な石を触った時に力が変質したのを感じたのだ。体の色も変わってるし無視はできない。
自分の左腕に全タイプの技を当てる。それだけだが、
「...草タイプはあんまり効かなくなった。逆に炎が等倍。」
他にも水タイプも無効とはいかずとも草タイプ同様に蚊にでも刺されたレベルで効かなくなった。逆にひこうタイプやらこおりタイプ、むしタイプなど今まで等倍だったものや抜群のものがさらに
「...今の私のタイプは...エスパー、ドラゴン、くさ...?」
炎タイプがいまひとつから等倍になったり氷2倍が4倍になったりと弱点が増えたような気もするが、水、草、電気が4分の1倍にと釣り合いは取れてるのかな?
先程のリーフストームも前のと比べて威力が段違いだしフェアリータイプが草タイプに変質したというので間違いはないだろう。
「...これ、どうしよ。」
「...
「ん。」
とにかく硬いこのピンク色の板。無くなったフェアリータイプが恐らくこの板に凝縮してるのだろう。元のタイプに戻りたい時とかのために取っておくのもいいと思うけど、何度触っても私が元の姿に戻ることがない。サキラにあげようかとも思ったけど、意味なさそうだし。
「コギトにでもあげようかな。」
「
「ん。何かしらの研究材料になるでしょ。」
「
「気にしなくてもいいよ。」
何はともあれ、今の私はフェアリータイプじゃなくて草タイプ。野生のポケモンとかと対峙することがあればそれを忘れないようにしないとね。
「さて、と...。」
「?」
「そろそろレベル上げしないとね。」
「
急激なレベルアップで進化したサキラ。流石にもう体の違和はないだろう。次はあの赤目の巨大ハピナスでいいか。でも前のねんりきみたいにサイコキネシスだけで倒すとなると相当時間がかかる。
「...新しい技を1つ覚えさせようと思う。」
「
「ハピナスに効果抜群のはどうだんだよ。」
サキラはキルリアだ。現時点でかくとうタイプの物理技を覚えることはできない。ならば効果抜群のはどうだんを覚えさせればいいという訳だ。特防が異様に高いハピナスだからそれでも時間はかかるが、前よりは十分マシだろう。
「はどうだん覚えたら連れてってあげる。」
「
「ん。」
はどうだんねぇ...。はどうだんと言えば波導の勇者ルカリオだよね。はどうだんってなんかカッコイイよね。私もスマ〇ラみたいに体力減ったら技の威力上がるとかほしいなぁ。
そんな呑気なことを考えながら私ははどうだんを繰り出してサキラに見せたのだった。
コギトに無言でプレート渡す
↓
コギトはよく分からずまな板として使う
↓
凛ちゃん達がプレートを探し求める
↓
ウォロ「プレートじゃねぇかっ!!」
と繋がる訳ですね。
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●第30話 オヤブン
ヨネさんと別れた私はひとまず辺りの探索をする事にした。ここら辺には主にコロボーシがいて声の音色がとても綺麗だからかついつい追いかけてしまう。
「マグマラシでんこうせっか!」
「まぐっ!」
──ヒュッ...ダンッ!
「コロロッ!?」
どれぐらい体力が減っているのかが分からないからコロボーシを何度もでんこうせっかで倒してしまったが、流石に見極めはできるようになった。
自作のモンスターボールを投げてコロトックを捕まえる。捕まえたあとはボールから出してあげて、マグマラシ達と遊ばせる。私はその間、コロボーシを観察してスケッチをする。絵を描くのは好きだし結構得意なんだよね。
「んー!」
「ん?どうしたのビーダル?」
「んんっ!」
ニコニコしたビーダルが咥えてきたのは大きな石?
「え?くれるの?」
「だーる!」
ゴトンと結構重そうな石を落としたビーダルを撫でてあげる。ビーダルが持ってきた石は何やら奇妙な形をしていた。それと同時に既視感もある...。
「ごごっ!」
「うひゃぁっ!?」
石を色んな角度から見ようと回転させていたら急に動き出した。目がパッチリと開いており、コブのようだった両サイドの石は腕のように動かされている。そうイシツブテだ。
「えいっ!」
イシツブテは寝起きのようでキョロキョロ見渡している。それに対して私は慌ててしまい、モンスターボールを投げてしまった。
「ごごごっ!!!」
「お、怒ってるぅ...!ビーダルみずでっぽう!」
「びー!」
──ジャバンッッ!!
「ごご、ごっ...!」
「やぁっ!」
ビーダルが体力を減らしてくれたのでボールを投げる。しかし、ビーダルが強すぎて倒しちゃったせいでイシツブテは気絶しておりボールに入らなかった。
「ごーごご!!」
「あっ...。」
直ぐに立ち直ったイシツブテはゴロゴロと転がって山の方に逃げていった。
「...また次会ったら捕まえよっか。」
「だる!」
頑張ってくれたビーダルの頭を撫でて、ボールから出している子達みんなをボールに入れる。流石にそろそろ行かないとヨネさんに怒られちゃうよね。
──────────────
かなり険しい山...というか坂?を登って高台までやってきた。ヨネさんは既に待っており、広場みたいなところを隠れながら見ていた。
「...ヨネさん...何してるんですか?」
「ひゃっ...ちょっと耳元で話しかけるんじゃないよ...!」
「ご、ごめんなさい...。」
「まぁいいよ。それで...っとおや?アンタのとこの博士だね。」
「え?」
────タッタッタッタッタッ...
「はぁ......はぁ............間に合った、ようですね...!」
「博士?どうしたんですか?」
「あはは、ポケモンを研究する者として、どうしてもオヤブンを、観察したいのです!」
「なるほど...。」
オヤブンってそれほどレアなのかな?ヨネさんはすっごい大きいポケモンだって言ってたけどどうなんだろ...。
「まぁアンタの仕事なんだろ?邪魔しなければいいんじゃないか?」
「ありがとうございます!」
「...本題に入るよ。...ここはシシの高台。シンオウさまにゆかりのあったポケモンの子孫にお供えをしていた場所さ。」
「そうなんですね...」
「ディリリリリンォオオッ!!」
「...アイツじゃないよ。」
「うわぁ...大っきいですね...。」
広場に巨大なコロトック。ゲットしたコロボーシの進化系だが、その大きさはバグっているように思う。
「あれはちょっかいをだす厄介なポケモンさ。...凛!アイツを蹴散らしておくれよ!」
「...はい!」
広場の中央で佇む巨大なコロトック。赤い双眼をこちらに向けるコロトックにちょっとだけビビってしまうがこちらにも強いポケモンはいる。
「...よしっ...!勝負だよコロトック!」
「ディリリリリリンォオオッ!!」
「出てきてムクバード!早業でんこうせっか!!」
「むくっ!!」
出会い頭のように先制技をさらに速く放ち、距離を詰めるムクバード。
「そのまま決めちゃって!つばめがえし!!」
「むっ!」
───ギャリィィィィッッ!!!
ムクバードは1つ頷くと白く光らせた翼を側面からコロトックに叩きつけた。しかし、鎌のような部位で受け止められてしまい勢いが打ち消されてしまった。
「ディリリリ!!!」
「逃げて!!」
「むくっ!」
──スパパンッ!!
今度はコロトックの鎌が緑色に光ったので上に逃げさせた。その一瞬後にムクバードがいた場所に緑色の軌跡が1対流れた。
れんぞくぎりか何かかな?
「今度こそ力業つばめがえし!!」
「むっ...くぅっっ!!!」
真上に逃げていたムクバードは再度翼を光らせるとそのまま急下降し、コロトックの頭に翼を叩きつけた。真上から太陽の照らす今の時間帯。コロトックは逆光で防ぎきれずまともに受けてしまった。
「えい!」
すかさずモンスターボールを投げる。先程のイシツブテのようなヘマはしない。
───ぽんぽんぽーんっ...ぱんっ!
モンスターボールから捕まえた合図の小さな花火が出た。ちょっとヒヤッとしたなぁ...。それにしてもこのコロトック本当に大きかったな...。
※本来ならばこのオヤブンコロトックは捕まえられませんが現実なので制約などありません。
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●第31話 一人の少女として
春休み終わっちゃって大変だったという言い訳はしても良いですかね...?
「...大したもんだよね。オヤブンを捻っちまうなんてさ。それどころかその変なボールで捕まえるときた。まるで伝説の英雄みたいだ。」
「ありがとうございます...。」
「アンタのポケモン...は回復要らないか。」
オヤブンコロトックを捕まえた私の元に2人が歩み寄ってきた。伝説の英雄がどんな方なのかよく分からないけど多分違うと断言できる。私は少し運動ができる一般人だからね...。それとムクバードは確かにダメージを受けていないから回復はまだ大丈夫かな。翼が痛かったら言ってよね?
「むくっ!む?」
私の肩に乗って翼をビシッと曲げて敬礼のポーズをするムクバード。控えめに言って可愛い。そんなムクバードは何かの気配を感じ取ったのかキョロキョロと辺りを見回している。ちょっと気になったけど私はムクバードをボールに戻してヨネさんに話の続きを聞こうとした。
「 キュェエエエエンンッッッ!!! 」
「な、何事ですか!?」
その直後、この高台どころかこの広大な土地全土に響き渡るような嘶きが私たちの上から聞こえてきた。皆して鳴き声の聞こえた方を見ると高台の中でも1番高くそびえ立っている断崖。その上で白い鹿がこちらを見下ろしていた。
「アヤシシ様!!」
「あやししさま...?」
『あやししさま』と呼ばれたその鹿は断崖から飛び降り、私たちのいる広場にストンと着地すると悠々とこちらへ向かってきた。
「............。」
私たちの目の前までやってきた『あやししさま』は私の目をじっと見つめる。負けじと私も見つめ返すと『あやししさま』の目が優しくなったように感じた。そのまま『あやししさま』はどこかへ去っていった。何だったんだろう...?
「...良かったよね。アヤシシ様もあんたの事気に入ったようだよ。」
「あやししさまってなんですか...?」
「ふふっ...今から説明するさ。いいかい?アヤシシ様ってのは人を乗せ、ヒスイの大地を駆け抜けるありがたいポケモンなんだよね。」
「すごい...すごいですよアヤシシ!人を乗せるポケモン...まるでアローラのライドポケモンですね!」
「っ!」
アローラのライドポケモン...ちゃんとアローラ地方も存在してるのか...。いつか旅に出たいな...。私とポケモンたちだけで...。
「ラベン博士無事ですか!?」
「テルくん。僕は無事ですよ。」
「そうですか良かったです。...シマボシ隊長に言われたんだ。凛が依頼をこなせばベースキャンプ設営ができるだろうって。」
「そうでした。セキさんと団長で決めたことですが、ベースキャンプを増やしてもいいのですかね?」
「シンオウさまが創られたヒスイ地方はポケモンの大地。アンタらがポケモンと共生するなら使っても大丈夫だろうさ。...アヤシシ様も凛を気に入ったようだし。ありがとな凛!アンタの活躍はコンゴウ団の長にも伝えておくよ!改めてお礼にも行くからさ。」
「は、はい...。」
なぜか頭を撫でられた私。笑顔のヨネさんがどことなく...あ、だめ...。ちょっとだけ不器用なお姉ちゃんを思い出して目頭が熱くなっちゃったや...。
「?どうした凛?」
「い、いえ、なんでもない、です。」
「そうかい?じゃ、私はもう行くね。」
「はい。」
そう言ってヨネさんは去っていった。お姉ちゃん...お母さん......元気かなぁ...。私は...今のところ、元気でやってるよ...。
「...ポケモンと共存共栄か......。それにはポケモンを理解するため図鑑を完成させないと...。...もうすぐ建築隊が到着する頃だ。そうすればベースキャンプもできるな。」
しばらくして建築隊の人達が来て、道具を広げだしたので私たちは離れたところで見ている事になった。ラベン博士はベースキャンプ設営の指示を出している。あの人結構色んなことできるよね...。
とぼーっとしながら見ていると、隣に座っていたテルくんがこちらを見ずに話しかけてきた。
「なぁ凛。」
「...なに?」
「聞いちゃ悪いと思うけどさ。」
「......うん。」
「なんでさっき──いや、やっぱ何でもない。」
「.........そっか。」
きっと私が泣きそうになった理由を聞きたいのだろう。だけど聞くのを止めてしまったようだ。別に話してもいいんだけどねぇ...。
「「.......。」」
あちゃー...雰囲気最悪になっちゃったよ...。
────────────
夕暮れ頃、ようやくベースキャンプが出来たみたいで私はラベン博士やテルくんと一緒に焚き火を囲っていた。
「シシの高台でのベースキャンプ...名付けて高台ベースですね!」
「そのまんまですね。まぁ拠点が増えれば調査もしやすくなるよな。...いつも通りイモヅル亭にでも集まりますか!」
「賛成ですね!」
こうして私たちはコトブキムラに帰ることとなった。
「──ムベさんいつものイモモチ!今日もプリーズ3人前です!」
「はいよ。そういえば知っておるのか?今朝からウワサの荒ぶるバサギリの様子を見に行った団員が襲われ医療隊もてんてこ舞だぞ。」
「激しい雷に打たれおかしくなったとされるバサギリですよね......。いざとなれば調査隊が担当します。未知のポケモンを調べるには危険が付き物ですが調査隊には凛くんがいるのです!」
「...でもバサギリはオヤブンよりも遥かに強いって話ですよ?」
「どれほど強いのかを含めて調査をするのが僕達です!そして調査に重要なのは冴えた頭脳と強靭な肉体...そのためには睡眠も大事です!」
そう言ってラベン博士はガツガツとイモモチにかぶりついた。今日も色々あったなぁ...私の知らないオヤブンというポケモンやアヤシシさまにバサギリと呼ばれるポケモン...知らないことだらけで怖くないといえば嘘になっちゃう。
今日は早く寝よ...。
「...ちょっと疲れたので今日は早めに寝ますね...。」
「ん?そうでしたか!すみません凛くん。また明日会いましょう!」
「はい。それではおやすみなさい。」
「......。」
──────────────
『凛。コレ見てよ。』
『なぁにお姉ちゃん...ってきゃぁぁあっ!!!にゃ、にゃんでカエル!?』
『あっはっはっはっ!可愛いなぁ!!にゃあっ!だってさ!あっはっはっ!』
『ねぇ凛。何か悩んでるんだって?青春してるねぇ?』
『...うるさいよお姉ちゃん。あっち行って。』
『ふふふっ...。』
『ん。凛こっち寄って。』
『...どうしたのお姉ちゃん?』
『そっちは危ないでしょ。それともドM?』
『んなっ!なんでそうなるの!?』
『お姉ちゃんもう行っちゃうの...?』
『ん。仕事あるしね。凛も頑張ってね...情報統制。』
『はぁっ!?お姉ちゃんがRINE送らなければいい話ですぅ!』
─────────────
「っはぁ......はぁ...。」
目が覚めた私は寝ぼけている目を擦って体を起こす。目元がちょっと濡れていたけど悪夢でも見たのかな私。
「今日も...頑張ろ...。ね、マグマラシ。」
近くに置いていたボールを一撫でして私は着替え始めた。
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●第32話 時間と空間
「ふぁ...ぁ...んぅ...。」
体を伸ばしながら起き上がり、いつも通り支度をする。朝に木の実をよく食べる私は今日はオレンのみを食べた。甘酸っぱくて美味しいのだ。それで歯磨きをして準備完了。これが最近の私の朝のルーティーン。歯磨き粉がないからキツイけど磨かないよりはマシ...なはず。
──トントンッ...
「おーい凛!起きてるかー!?」
「うん起きてるよー。」
いつも呼びに来るテルくん。今日はいつもよりもちょっとだけ焦った様子だ。
「ボスが!デンボクさんがすぐさま団長室に来いってよ!!」
「え、デンボクさんが?わ、分かった!」
...確かにボスからの呼び出しは焦る。私何かやらかしたかな...?まだここに来て少しなんだけど...。っとそんな事考えてる暇はないね。
慌てて外に出ると、テルくんが穏やかな顔をしていた。あれ?さっき緊急みたいな感じじゃなかった...?
「ぐっすり眠れたか?」
「うん。いつもより早く寝たからね。」
「そりゃよかっ───」
「──よう!偽りのシンオウさまを崇めるのは時間の無駄と悟ったか!」
「なぁにが宇宙の時間を司るシンオウさまよ!宇宙と空間を生み出した私たちのシンオウさまこそが本物なのっ!!」
「フンッ!無限に空間があっても使いこなせねぇくせにようっ!!」
「おやぁ!?そちらは時間を有効に使っているとでも言いたそうな口ぶりだなぁ!?」
「ヘッ!約束の時間を守れたとは...感心じゃねぇかシンジュ団よォっ!!無駄に広い空間に弄ばれて迷子にでもなっているかと思ったぜ!」
「はぁぁ!?空間はシンオウさまが私たちシンジュ団にくださったもの!言わば世界の根幹!迷うわけない!!」
「...やめた!おめえとの無駄な口論こそ時間の無駄そのもの!シンオウさまに怒られるってな!さ、デンボクの旦那に会いに行くぜ!」
「はぁ?吹っかけてきたのはそちらだろう...!」
青と灰色の髪を持つ男の人と、これまた私と同年代っぽい金髪の女の子が口論しだしたと思えばそっぽ向いてギンガ団本部の方へと向かっていった。
呆然としているとテルくんの方から説明された。
「相変わらずだなぁ...今の2人、男は時間を大事にするコンゴウ団の長、セキ。少女は空間を世界の根幹とするシンジュ団の長、カイ。2人が会うとああやって張り合うのさ...。」
「ほぇー...。」
2人とも長なんだ...。あんなにも若いのに...カイさんに至っては私と同じぐらいの歳っぽいのに凄いなぁ...。
「...何しろ先代同士が争っていたって話だからなぁ...。」
「大変なんだね...。」
「まぁいいや凛。団長が呼んでいたぞ。早く団長室に行った方がいい。」
「そうだった!」
そうして私は喧嘩していた2人の後を追うように本部内に入った。団長室は3階にある。前に行った時は相撲のように投げられたけど今日はどうだろう...。
「───にも被害が出てる...。デンボクの旦那!バサギリはどうするんだい!?シンオウさまに仕え、戦っていたポケモンの子孫とはいえ、許し難い暴れっぷりだぜ...。」
「セキよ...いきなりだな。」
「時間は貴重。勿体ないことはできねぇ。」
「では、シンジュ団の大事なキングに対してどうせよと?」
「シンジュ団のキングだからな。俺たちコンゴウ団は手を出せねぇ。出したら先代の時みてえにまた争いになっちまうからよ。だけどよ...旦那のところも怪我人が出たんだろ?ほっといていいのかよ...!」
「では...シンジュ団が崇めるキングを私たちシンジュ団自身で倒せ......そう言いたいわけかコンゴウ団?」
「あん?思ってるけどよ。別に口に出して言ってないだろ。」
「一緒だバカ!
そもそもキングであるバサギリが荒ぶり暴れる理由が謎だからね。」
「...そりゃ俺も気になる。コンゴウ団の歴史でも初めてだからよ。」
「───うむぅ。来ていたのか。」
「へ?」
普通に入ってきたら話に夢中だったから待ってたんだけど...ここで私に触れるんですか...?
「凛だ。調査隊の新入りとなる。」
「その名前...!ヨネから聞いたぜ!アヤシシに好かれたってんだってな!そうか!アンタが時空の裂け目から落っこちてきたすげぇやつなのかよ!俺はセキ!コンゴウ団のリーダーのセキだ!...長ってのは古くせぇから勘弁な?」
「はい。凛です。よろしくお願いします。」
「時空の裂け目の向こう...!シンオウさまがいるやもしれない...!時空の裂け目から来たのか?私はカイ!シンジュ団を率いる深謀遠慮な長だ。...本当に裂け目を通ったのか?どうにも疑わしいのだけど...。」
なんか急に自己紹介始まったんだけど...。デンボクさんもうむうむみたいな感じだし...さっきまでの雰囲気どこ行ったの?
「どうだろう?まずはこの者にバサギリの調査をさせるというのは。」
「え?」
いや、おかしいでしょう?え、なんで?なんで私なの?まだ新入りだよって話じゃなかった?
「裂け目から落ちてきたという怪しい新入りにバサギリの調査を...?」
そうだそうだー新入りに任せる仕事じゃないぞー。
「...おめぇも長としては新人だろうが。」
「長として肝要なのは年数ではなく、広大なヒスイの大地を恐れぬ心だ!」
カイさんも新人だったのか...いやでもそうだよ!私に恐れぬ心なんて大層なもの持ってないですから...!もっと言って!
「だったらよ。新入りでもいいじゃねぇか。」
はぅあっ!ダメだった!
「いいぜ!デンボクの旦那。アンタの話に乗った!ボールでポケモンを捕らえるギンガ団のお手並み...拝見しようや。」
「それが気に入らない...!シンオウさまはポケモンが暮らすため、ヒスイの大地をお作りになられた!私たち人間はポケモンの友であり、上下の関係など不要なのだ...!!」
「...ギンガ団がボールを用いるのは支配ではなく共存のため。まずは任せていただきますぞ。───凛よ。任務だ。バサギリを調査せよ。」
「.........はい。」
...ここでの生活のために頑張りますか。はぁ...怪我人が出るほど暴れてるポケモン...か。せめて
「...空から落ちてきたお前を怪しむ者はそれなりにいる。信用を得るため粉骨砕身、働け。」
「はい。」
そう。私はこの村の人達から見ると怪しい人物だ。...分かりましたよ。頑張ってこの村の益となる人になりますよ...。
「おうよ!時は急げ!」
「森キング、バサギリは...シンオウさまより力を得たポケモンの子孫...。その強さは他のポケモンの比ではない...。それではな。」
ちょっぴり心配そうな目をカイさんに向けられた私は団長室に一人残された。
「...私たちギンガ団は後からヒスイ地方にやってきたよそ者だ。コンゴウ団、シンジュ団と揉めてはならぬ...分かるな?」
「...それは、はい。」
先輩に逆らうと大変ですよね。バレー部でも大変だったからなぁ...。
「凛。」
「ひゃわっ!?」
「...団長の任務について話す。調査隊室に来たまえ。」
「は、はい。」
びっくりしたぁ...急に後ろから話しかけないでくださいよシマボシ隊長...。
──────────
────────
試しに特殊タグを使ってみました。よく分からなかったから使わなかったけど面白いですねこれ...。
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●第33話 猛特訓
あの後私は黒曜の原野までやってきた。理由は単純でポケモンたちと私自身を鍛えるため。ポケモンたちは野生ポケモンたちと戦わせることで、私は回避や受け身をしっかりできるように鍛えていくつもり。
ちなみにシマボシ隊長との話の途中でコンゴウ団のリーダーであるセキさんとキャプテンのヨネさんが部屋に入ってきたんだけど、やっぱりお二人共優しかった。手を貸せないコンゴウ団の代わりにシンジュ団を助けてやってくれと頼み込んできたのだ。ここまでされたら頑張らない訳にはいかないよね...。
「よし...今の私は弱い...。ポケモンたちだけに頼ってたらダメ...!」
ほっぺたを強く叩き、気合を入れる。できれば今すぐにでもバサギリのいる場所に行きたいけど今日は鍛えたいから待っててほしい...。
「目指せバクフーン!」
「まぐっ!」
隣にいるマグマラシも炎を吹き上げて応える。今日はシシの高台付近でレベル上げしよう。そうと決まればまずはランニングからだね!
───────────
「ふぅ...ふぅ......。」
ポケモンたちみんなでランニングした後、高台のベースキャンプでしばらく休憩する。ここら辺は高低差が少しあったりするから平地で走るより2倍疲れた。日本にいた時はだいぶ体力ついてきたかなぁって思ってたんだけど、やっぱりまだまだだった。
「うーん...どうやって鍛えていこうか...。」
ポケモンは全部で6匹。効率よくレベル上げをするならどうしよう...。野生ポケモンを1匹倒したら交代で回していこうかな...?それとも1匹を徹底的に上げていくべき...?...いやそれだと疲れちゃうから交代しながら鍛えていこう。
「それじゃあまずはマグマラシからだね。」
「まーぐ!」
休憩も終わり、近場にいる野生ポケモンにマグマラシを向かわせる。やっぱりほのおタイプ抜群のコロボーシだと早く倒せていいね。...炎で焼かれてるのは見るに堪えないけど。
「次はビーダル!」
「だぁっ!」
ビーダルはノーマル・みずタイプ。いわタイプのイシツブテに有利だ。みずタイプの攻撃は見てて苦にはならないから良いよね。
「受け止めてみずのはどう!」
「るっ!!」
───ズガンッッ...ズバァァァッ!!!
「ゴ、ガァ...。」
イシツブテのたいあたりを両手を前に出して受け止めたビーダルは至近距離からみずのはどうを放つ。水圧で大きく吹き飛ばされたイシツブテはそのまま起き上がることはなかった。
「ムクバードの番だね!」
「むっく!」
相手はコロボーシ...にしようかなって思ったんだけど、大きな河辺...もはや海なんだけどそこら辺でコロトックの群れを見つけたからそっちにする。オヤブンコロトックとの戦いでも十分戦えてたからね。マグマラシもこっちで鍛えることにしよう。
「早業つばめがえし!」
「くるっ!!」
───ズバンッッ!!
「ディリリッッ!?」
うん。いい感じだね。この調子でルクシオやブイゼル、イーブイのレベルを上げていこう。ん...?
「なにあのポケモン...。」
河辺の向こう岸。森の中に2匹のポケモンがいる。1匹はなんと色違いのキルリア。もう1匹は...
「どことなくメガミュウツーYに似てたけど...新しい形態...?しかも喋ってたし...むぅ...新伝説なら分からないなぁ...。」
キルリアがぴょんぴょんと跳ね回って、それを宥めるようなミュウツーY(仮)。頭に手を乗せたと思ったら一瞬で消えてしまった。
何だったんだろう...。少なくとも今の私たちじゃ敵う相手でも無さそう...。
「もっと鍛えなきゃ...。」
「むくっ...!」
キリッとした顔で首肯するムクバード。そうだよね。私たちなら行けるよね。いつかこの世界で伝説のポケモンと戦うかもしれない。そうなってもいいようにこの子達を最も強く...最強にしてあげたいな。
「そうと決まればレベル上げだよ!」
「まぐっ!」
「だるっ!」
「くるっ!」
「がぅっ!」
「ぶぃぶぃ!」
「いーぶいっ!」
──────────────
あの後私たちは日が暮れるまで特訓した。その間、私も回避の特訓をしつつ、新しいポケモン達の捕獲や、スケッチ、技の確認等を同時並行でやった。
パラスが遠いところにいてもこちらを察知して来たのはちょっとビックリした...。
「じゃあそろそろベースキャンプに帰ろっか。」
「まーぐ!」
みんな傷だらけだけど、その顔は清々しいものだった。私も同じような顔をしてるんだろうなぁ。明日はバサギリのいる場所にいこう。
あ、ちなみにだけど特訓した結果ブイゼルがフローゼルに進化したよ!やったね!
「ぜる!」
「もふもふ...よしよし...可愛いねぇ...。」
◆マグマラシ♂Lv.23→30
性格:おっとり(特攻⤴︎防御⤵)
使える技
・でんこうせっか(皆伝)
・ひのこ(皆伝)
・ころがる(皆伝)
・かえんぐるま(皆伝)
・スピードスター
がんばレベル
・HP:0
・攻撃:1
・防御:0
・特攻:2
・特防:0
・素早さ:1
◇ビーダル♀Lv.19→27
性格:やんちゃ(攻撃⤴︎特防⤵)
使える技
・たいあたり(皆伝)
・ころがる(皆伝)
・かみつく(皆伝)
・ねむる(皆伝)
・みずのはどう(皆伝)
・かみくだく
・アクアテール
がんばレベル
・HP:0
・攻撃:1
・防御:1
・特攻:0
・特防:0
・素早さ:0
◆ルクシオ♂Lv.20→28
性格:ようき(素早さ⤴︎特攻⤵)
使える技
・でんこうせっか(皆伝)
・でんきショック(皆伝)
・かみつく(皆伝)
・かみなりのキバ(皆伝)
・でんじは
がんばレベル
・HP:0
・攻撃:1
・防御:1
・特攻:0
・特防:0
・素早さ:1
◆ムクバード♂Lv.21→30
性格:さみしがり(攻撃⤴︎防御⤵)
使える技
・かぜおこし(皆伝)
・でんこうせっか(皆伝)
・つばめがえし(皆伝)
・エアスラッシュ(皆伝)
・はねやすめ
・すてみタックル
がんばレベル
・HP:0
・攻撃:2
・防御:0
・特攻:0
・特防:0
・素早さ:1
◇フローゼル♀Lv.17→26
性格:うっかりや(特攻⤴︎特防⤵)
使える技
・でんこうせっか(皆伝)
・アクアジェット(皆伝)
・スピードスター(皆伝)
・みずのはどう
・ダブルアタック
がんばレベル
・HP:0
・攻撃:0
・防御:0
・特攻:1
・特防:0
・素早さ:2
◇イーブイ♀Lv.18→26
性格:おだやか(特防⤴︎攻撃⤵)
使える技
・たいあたり(皆伝)
・でんこうせっか(皆伝)
・スピードスター(皆伝)
・つぶらなひとみ
・ものまね
がんばレベル
・HP:0
・攻撃:0
・防御:0
・特攻:3
・特防:0
・素早さ:0
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○第34話 油断は禁物
なんか今年厄年みたいで(厄年じゃないはずなのに...)色々と不幸が重なって最近ずっとドタバタしてました...。今回はミュウスリーちゃんsideです。
「サキラ」
「
「これからは1匹でハピナス倒してね。」
「
「はぁ...もう1人で戦えるでしょ。」
「
キルリアだったサキラが進化してサーナイトとなった。最初は貧弱で赤目巨大ラッキーすら満足に倒せなかったサキラだったが、今では私の補助無しで赤目巨大ハピナスすらも倒せるようになった。
レベルも多分だけど、70は超えてるんじゃないかと思う。これでも低く見積もってる方だからあれだけどね。そういう私はどうなんだと...
「ん...。」
私も色々と出来ることを探している。前世で見たポケモンのゲームや設定、アニメ、ポケモン映画...ミュウ、ミュウツー、ネクロズマが出来ることを一通り試してみているのだ。
例えば...
「...クロスサンダー」
───ヂヂヂッヂヂッ...ヒュッッ...ドゴォオオオオオンッッ!!
手から放たれる青白い電気の塊が切り株を吹き飛ばし、更地どころかクレーターを作り出す。
全てのポケモンの遺伝子を持つとされ、これにより一部を除き全てのわざマシンやおしえわざを使って技を覚えることができる。ミュウはそんな感じの設定だったが、現実となった今文字通りこんな感じで私は全ての技を使うことができている。
...なんでクロスサンダーなのかというとゼクロムが好きだから。ちなみに妹はレシラムが可愛くて好きらしい。BW発売前にレシラムに惚れた妹は案の定ホワイトを買った。そのせいで私が買ったブラックと交換したのはいい思い出(?)
「
「...私もそう思う。」
やろうと思えばこの世界を壊すこともできちゃうのが怖い。映画だと町とかしょっちゅう崩壊してるよね。ポケモンの世界って怖いね。
「こんなのもできるよ。」
───ズドドドドドドドッッッ!!
サンムーンをやってた時にめっちゃ見たウルトラホールを切り株の周りに沢山召喚し、私の右腕を模した大量の力の塊をそのホールから召喚して切り株を殴りつける。
そう、フーパのいじげんラッシュ(ver.ネクロズマ)だ。
「
フーパのリングはウルトラホールと似たようなものだから試してみたんだけどいけちゃったよね。でもウルトラホールの中に入って何万光年先に行ったりとかは今の私にはできない。なぜか入ったと同時にホールが霧散しちゃうから。
まぁこの技はあんまり好きじゃないかな...。私は物理より特殊系が好きかも。
「
「ハピナス倒して。」
「
「──それ以上強くならなさそうなら、私が鍛えてあげる。」
「...
「ん。行ってら。」
サキラは興奮した様子でテレポートした。恐らくレベル上げのために赤目巨大ハピナスの元に向かったのだろう。1日に1回しか戦えないけどこの調子だと...1ヶ月もあればレベル100に到達するんじゃないかな?この世界の経験値システムがどうなってるか分からないけどね。
ちなみに赤目で巨大なポケモンは倒すと一時的に普通のポケモンに戻るんだよね。1日経つとまた体が大きくなって目が赤くなる。そういったポケモンは大抵群れのリーダーに多いから素質あるポケモンしか成れないんじゃないかなと思う。もしサキラが赤目巨大化したら...嫌だな。ただでさえサキラよりも小さい私がさらに惨めになる。私が成る分には良いのになぁ...。
「あぁ...暇...。」
「暇かい?」
「ん。」
そこら辺に落ちている小石をサイコキネシスで粉々にして風で飛ばす。これぐらいしかやることが無いんだよなぁ。って私は誰に返事、を...
「そうかい。───ところでお主喋れたんだねぇ?」
「あっ」
いつの間にか、切り株に座っている私は隣で寛いでいるコギトにジト目を向けられていた。
ご愁傷さまです。
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○第35話 遺跡巡りの旅?
「お主そういう奴だったんじゃなぁ?なぁ?」
「...うるさい。」
コギトと目が合わせられない。ニヤニヤしながらこちらの顔を覗き込もうとするコギトが鬱陶しくてついまた返事をしてしまった。もう言い逃れはできない。
「のうお主暇なんじゃろう?」
「...。」
「わしの趣味に付き合ってくれんか?」
「なんで私が──」
「──別に断ってもいいがわしはお主のこと嘘つきポケモンだと思うことにするぞ。」
「...。」
いや、別にそれはいいんだけど...なんというか...コギトにそう思われるのは癪に障るというか...。
「......趣味って?」
「おぉ付き合ってくれるんじゃな!」
「...聞くだけだし。」
「そうじゃな。実はわし各地の遺跡を巡っておるんじゃよ。」
「何のために?」
「前にも話したがわしは神話を調べておる。遺跡は神話時代の産物じゃからのぅ。」
「それで、私もその遺跡巡りに付き合えと?」
「その通り。お主の能力は万能じゃからな。是非とも手伝ってもらいたい。」
「...はあ...分かった。話はまた後で。」
「あぁ。楽しみにしておるよ。」
終始ニッコニコのコギトを帰し、椅子にどっかりと座る。本当にため息が止まらない。とりあえずサキラが帰ってくるまでは出かける準備でもしようかな...。はぁ〜めんどくさ。でも暇潰しにはなるかな?
「...久しぶりにスープでも作るか。」
準備と言っても外出先で食べる木の実を選ぶだけ。ちなみに今日の気分はオボンのみだ。これでサキラが帰ってくるまで暇になったのでスープを作ることにした。いつも通りオレンのみを磨り潰してスープに投入する。アクセントのクラボのみとキーのみは輪切りにして放り込む。あとはグルグル全体に火が通るように混ぜ合わせれば完成だ。
「
「...おかえり。とりあえずお昼ご飯。これ食べたら出かけるよ。」
「
すっかり大きくなっちゃって。私より胸あるんじゃないの...?それでもどんぐりの背比べだけど。
「
「...別に。」
...ジト目のサーナイトってpix○vで山ほど出てきそう。まぁそんな事はどうでもいいや。
「コギトに喋れることバレた。」
「
「大丈夫...でもないけど別にめんどくさくなるだけだから。それとこの後はコギトと一緒に遺跡巡り行くよ。」
「
「ん。昔の建物見て何が楽しいんだか。」
いまいちピンと来てないサキラはスープを啜った後、コトンと器を置いた。
「
「...気のせい。」
...思った以上にコギトにバレたのが効いているようだ。
「...そろそろ出かけるよ。」
「
「うっさい。」
サイコキネシスでサキラ自身を私の近くに寄せて頭にデコピンをする。
「
「なんでそんなに喜んでるの...。」
「
「...。」
「...
ドMサキラは置いといて先にコギトのところに向かうことにする。
「
「さぁね。」
「
私をからかった罰だよ。
────────────
「お?早かったのう?」
「テレポートですぐだし。」
「くくっそうかい。それにしても話し相手がいるっていうのはいいものじゃなぁ?」
「...ふん。」
コギトはいつまでこの事を弄るのか。それよりもその趣味とやらを早く終わらせよう。
「そんなに焦るな。向かうのは紅蓮の湿地じゃな。何度も向かっておるがなかなか面白くてのぅ...。」
「へー。」
「なんじゃその棒読みは。っとそういえば前にお主から貰ったあの板じゃが、まな板として役立っておるぞ。使ってて割れないから割と感動しておるんじゃ。」
「へ、へぇ...。」
あれをまな板にしたの...?え、まじで?私の体の一部だったんだけど...?私から出たものなんだけど...?
...深く考えるのはやめよう...。
「それじゃあテレポートしてくれ!」
「...はいはい。」
「
唐突に始まった遺跡巡りの旅!果たしていい結果を持ち帰ることができるのかっ!次回!ミュウスリー死す!デュ○ルスタンバイ!
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○第36話 あたま まっしろ いいてんき(?)
「着いた。」
「お、やはりテレポートは早くていいな。」
「
「ここで何するのさ。」
「ふふん。この遺跡はな、昔からあるんじゃが今だに最奥の文字が解読できんのじゃ。それをお主に手伝ってもらいたい。」
「はぁ...。」
ポケモンの世界での遺跡文字って大抵アンノーン文字とかそういう類いだよね。アルファベットそのままだし、もしアンノーン文字だったら読めそうだよね。
「ここじゃ。」
「っ...!」
「どうした?」
入口以外の全ての壁面にズラっと並ぶ文字列。そのどれもがアンノーン文字...ではなかった。
「漢文...みたい?」
「カンブン?まさかお主分かるのか?」
「...ちょっと、ね。」
高校生の時に古文の授業で習った覚えがある。それにしてもなぜこの世界で、しかも大昔に書かれたであろう字が漢文なのか。レ点とか送り仮名とか無いから読みずらいし...。というかまずこれは漢文なのか?
なになに...
「『時空、歪み?...拡大、赤、白、染まる...?』」
「お、おぉお!凄いじゃないか!」
「いや別に漢字読んだだけなんだけど...。」
「カンジ?」
「なるほど。」
どうやらこの世界には漢字というものがないみたいだ。普通に日本語喋ってるし文書く時には平仮名は使ってるんだろうか...。
「メモするから続けてくれ。」
「あ、はい。...『神、遣、う?...数多、救世者...』」
「ふむ...過去にアルセウスによって遣わされた者が多数存在したのだな...。それで?」
「『反物、一人、者達、時空...歪み...発?』」
「うぅむ...よく分からないのぅ...。」
「『時、空、揃う?時...暴走...赤...鎖、止まる?』」
「時と空間...ディアルガとパルキアじゃな。これは赤い鎖の神話そのものじゃ。」
「神話?」
「うむ。この話はまた後で。」
「まぁいいや。...『全、神秘、結晶...集、時...反物、姿現す?』」
「ふぅむ...?それで?」
「『全、生物、出会...時、神、姿現す...一人、課、使命...』」
───────
っと、そんな調子でコギトに伝えていった。まぁ漢字読むだけだから楽っちゃ楽だった。...サキラは部屋の反対側で何やらボーッと何かを見ている様子。
「ふぃー...ちと疲れたな。む?サーナイトは何をやっておるのじゃ?」
「何してるの?」
「...。」
珍しく私に返事をしないほど、ボーッとしているサキラ。その視線の先には1つの絵があった。
どこかの山の頂上...1人の少女?とポケモン?が浮遊しているポケモン?と対峙している絵。浮遊しているポケモンはまるでミュウツーのような体つきで少女達を見下ろしている。
いや、ミュウツーのようなではなく...
「...この絵のポケモン...お主とそっくりじゃな...。」
コギトが目を細めて絵を睨みつける。なぜこんな絵がここにあるのか。なぜ私が描かれているのか。この山はどこなのか。この少女達はなんなのか。疑問は尽きない。
「...近くの文読んでみる。」
「そうしてくれ。」
「『限界、超、える?人工、生命体...世界、終焉、向かう?...無限、力、溢れる?神、超える?莫大...力、奔流...世界、覆う?』」
「なんじゃその化け物は...。」
...人工、生命体、ねぇ...。
「『立ち、向かう、かな?...立ち向かう少女、六体、生物、為、術...無し...。世界、崩壊...。無数、世界、内...半...終焉、結末...』」
「...一応メモしておるが解読できるかのぅ...。」
ほんの一部しか言ってないけど分からないからなぁ...。
「...
「はぁ?」
やっと喋ったと思ったら変なことを言われた。私が消える?なぜ?あーもう意味分からん。
まぁ漢字そのままですけどね。
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◇第37話 カミナギの予言
「ふぅむ...これは困ったことになったな...。」
「どうなさいましたか?」
「いやちょっとな...。」
1人の荘厳な男が玉座にて頭を抱えていた。男の目線の先にあるのは禍々しい紫色をした水晶。元より透明だったそれはなんの影響か禍々しくなってしまっていた。
「各地の王に集まってくれと至急伝えよ。...これは全員に伝えねばならぬ。」
「っ...かしこまりました。」
未だ水晶の中で渦巻く黒く、紫色の雲は不吉な前兆として諦めたような目をする王の目に留まったのだった。
───────────
「良くぞこの地に集まってくれた。感謝する。」
「とんでもない。カミナギ殿の言うことなれば集まらぬ訳にはいかぬ。」
「そうですわ。一国の王としてカミナギ殿の予言は助かっておりますもの。」
各地の首領が集まり、杯を掲げて乾杯する。皆の視線はこの場の実質的なトップであるカミナギ王と呼ばれる男に向けられていた。
「...悪しき予言が出た。」
「なんとっ!」
「...それは本当か?」
「っ...!」
先程までの歓談はその一言で止まり、シンとした空気が漂う。カミナギ王は目を閉じ、深呼吸をしてから口を開いた。
「...1年後、世界が滅びる。」
「は?」
「え...?」
「か、カミナギ、殿?お戯れは...」
「冗談なものかッ!!」
「「「「っ!!」」」」
ドンッと大きな机を叩き、ざわめいた場を沈める。
「...世界を崩壊させる敵の名は、ギラティナ。」
「ギラティナ...聞いたことがありませんね...。」
「それもそのはず。奴はこの次元にはいないからな。」
「どういう...?」
カミナギ王の体が震える。水晶玉を覗き込んだ彼だからこそギラティナの恐ろしさを知ったのだろう。そして、ギラティナの棲む
「ど、どうにかならないのですか...!?」
「そ、そうですわ!私たちにはポケモンがいるじゃない!」
「無理だ。ギラティナはポケモンの範疇を超えておる...。格が違うのだよ...。」
「だが、何もしない...というのも癪に障る。」
「そ、そうだ!そんな輩に我らの世界を壊させてたまるものか!!」
「しかし!...うぅむ...1年後か...。」
カミナギ王は楽観的に聞いている各地の首領達に苛立つも、たしかに何もせずただ世界が滅びるのを待つというのにも癪に障るようで腕を組んで思案する。
「───各地の強いポケモン共を捕獲せよ。」
後に神話となる人とポケモンの大戦争。その火蓋が切って落とされようとしていた。
─────────
「ゴゴゴッゴゴッ!!!」
「グルルルッッ!!」
「ガァァァッッ!!!」
「ふむ...これだけいればギラティナとやらもなんとかなるのでは無いか?」
「ピュゥイイイインッッ!!」
「サーナッ!!」
「ピカピーカッ!!」
「そうね。カミナギ殿の予言は百発百中...しかし、どうにもギラティナが強いとは思えないわ...。」
「ふん!お主の集めてきたポケモンは弱そうじゃがな。」
「なんですって!?」
「ゴガァァァッッ!!!」
「ゴボッッ!!」
「ギャァァァッッ!!!」
「兵士共!逃げられぬようしっかり檻を見張っておけ!」
「「「「はっ!」」」」
1年かけて集めた大量のポケモン達。しっかり調教師によって調教されているのか言うことは聞くものの、野生特有の荒い気性はなりを潜めていない。檻のそばに立つ兵士達はいつ暴れ出すか気が気でない様子だが、各国の王たちはそんな事など気にも留めていない。
──ピシッッ!!バキンッッ!!!
「っ!来たぞ...!」
突如としてひび割れた空に浮かぶ超巨大な黒い影。巨大な翼を持つ何かが見下ろしている。その巨体は実に1000mを超えているだろうか。ポケモンの範疇を超えたその黒い影に人やポケモン...その場にいる生物全てが恐怖する。
「き、来たかギラティナ...!」
「う、嘘でしょ...あんなに大きいの...?」
「ギュイィィイイイッッ!!!」
───ビリビリビリッッ...!!
叫ぶだけで矮小な人間達は尻餅をつき、か弱いポケモン達は萎縮して戦意喪失する。もはやこれは戦争ですらなかった。...弱者を痛ぶるだけの暴力だった。
ズドオオオオオオオオオンッッ!!!!
地に落ちる一筋の黒い光線。それはけたたましい音を立てて何千何万もの死者を出した。たった一度の攻撃で折れかかっていた人間やポケモンの心がポッキリと折れてしまった。
「...やはり駄目だったか。」
この
そしてその地の各場所に王より授かった予言を壁面に書き記したのだった。
「一度目は終わった。」
「数千年後。...二度目の厄災が起きるだろう。どうか...気づいてくれ...。」
かくしてカミナギ人は王より授かりし予言を未来の人間たちに託したのであった。
完全なるオリジナルストーリー()
この頃のギラティナさんは「破れた世界」に追いやられたばかりでめっちゃ力有り余ってます。今のギラティナさんよりも数百倍大きくて世界に干渉できるぐらいの力がありました。...という設定()
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●第38話 決戦!B
授業の方が本格的にきつくなって来たので遅れました...。不定期タグ付いてるし別にい(殴
あれから何日か経って、バサギリの調査をしたら何故か私がバサギリを鎮めることになった。シズメダマと呼ばれるバサギリの好物で作られたものを投げることで興奮を抑えるらしい。なぜ私なのかって?...私の投げる技術が凄いからだってさ。
「頼みましたよ凛。」
「...うん。任せて。」
バサギリを世話するキャプテンであるキクイさんに背中を叩かれる。最初は私を敵視してて相棒のヌメラと共に私に勝負を挑んできたキクイさんが私を信頼してくれている。ん?ヌメラとの勝負はどうだったのかって?
───────
「行けヌメラ!」
「行ってきてフローゼル!」
「ヌメラ!あわ攻撃!」
「フローゼルれいとうパンチ!!」
両手に冷気を纏わせたフローゼルが素早い動きでヌメラが放ったあわを回避し、殴り掛かる。レベル差があったのか、呆気なく気絶したヌメラはキクイに抱き寄せられた。
「お前...強いな...。」
「鍛えたので。」
───────
って感じだった。キクイさんの引き攣った顔が印象的だったけど今は私の顔が引き攣ってる。だって調査の時にバサギリを遠くから見たんだけどあれはやばかった。
何がやばいのかというと、まず大きいところ。私は愚か昨日進化したバクフーンよりも二回りぐらい大きい体を持っているのだ。ちなみにバサギリを初めて見た時はストライクのヒスイの姿かと思った。ラベン博士にストライクの進化系だって教えてもらった。
タイプが分からないんだけどラベン博士に聞いても「?」って感じで頭にハテナが浮かんでた。この時代にはまだタイプという概念がないみたい。
───ジャリッ...
バサギリの生息範囲内に1歩踏み込む。すると...
───スタタタタッ...
「っ!?」
───ズバンッ!!!...ドゴォォオンッ!!
「ひゃっ!?」
「グシャァァァァッッ!!!!」
近くで木が倒れ、目の前に金色の光に包まれているバサギリが現れる。私はこの化け物と今から戦わなければならない。
「行くよビーダル...!」
「だるっ!!」
ビーダルのレベルは33。みんなで頑張ったから...その頑張りをバサギリにぶつけてみせる!
「グシャァッッ!!」
「受け止めて!!」
「だ、ルゥッッ!!!」
───ズガァァァァンッッッ!!!
左上からの手の斧による袈裟斬りをビーダルが両手で掴み取って受け止める。両足と尻尾を地面に押し付け、なんとかその勢いを殺すことに成功した。
「そのままみずのはどう!!」
「だぁっ!!」
片腕を掴まれているバサギリの顔にみずのはどうが当たる。大袈裟に仰け反るバサギリは首を振ってビーダルを明確の殺意を持って睨みつけた。
「素早さは負けてる...なら受け止めればいい...!ビーダル頑張って!!」
「だるっ!!!」
「グ、シャァァァァッッッ!!!」
──がんせきアックス──
ズドオォオオオオオオンッッ!!!!
「だ、...るぅ...ぅ...!」
「ビーダル!!」
「...。」
今度は両腕で回転斬りをしてきたバサギリ。あまりの高火力にビーダルが吹き飛ばされてしまった。そのまま気絶してしまったビーダルをモンスターボールにしまい、バクフーンを繰り出す。
「バクフーンかえんほうしゃ!」
「ばくっ!!」
──ゴォオオオオッッ!!
「あんまり聞いてない...?虫鋼タイプじゃない...?」
少し考えてみれば簡単に分かることだった。分岐進化系統のハッサムとバサギリが同じタイプのはずがない。炎タイプがあんまり効かないなら何タイプなんだ...?
「っ!?バクフーン避けて!!」
「ば、ぐっ!!」
バサギリの連続攻撃に1歩、2歩、右に左に避けてバクフーンは逆に懐に潜り込んだ。
「ドレインパンチ!!」
「ばぁ、クッッ!!!」
───ズ、ドォォォオンッッ!!!
バクフーンのアッパーがバサギリの顎に突き刺さり、頭を揺らされたことでバサギリが目を回す。その隙に籠いっぱいに詰め込まれたシズメダマをバサギリの顔目掛けて投げつけた。
───────────────
───────────
あれからどれほど経っただろうか。
シズメダマを投げつければ投げつけるほどバサギリは興奮し、暴走して見境なく攻撃してくる。バクフーンもそろそろ倒れそうなほど傷だらけでバサギリには早く倒れて欲しいと焦る一方で慎重にならないと私自身がバサギリの攻撃を受けて死んでしまう。
そう思いながら半分にまで減ってしまったシズメダマを構えて投げつける。解決方法はこれしかないのだ。
「はぁ...はぁ......えいっ!!」
──ヒュッ...パァンッ!
「グ、シャ、ァァァァ...」
さっきまで活発に動いていたバサギリがこの一撃で糸が切れたように倒れ込む。
「やっと...やっと...かてた...はぁ...んっ......はぁ......。」
「ばく...。」
「バクフーンも...お疲れ様...。」
「ばくっ!」
命の危険に晒され続けた私も緊張の糸が解けて崩れ落ちる。バクフーンが咄嗟に受け止めてくれたが、しばらく動くことができない。そこで私の意識はなくなった。
「 暖かい... 」
最後に残ったのは体全体で感じるバクフーンの背中の温かさだった。
ストーリー結構飛ばしたけどまぁ...いいよね(楽観)
それと別にライドポケモンはオドシシ達だけっていうルールはない()
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●第39話 報告と笛
「んん...。」
「ばくっ!」
「ばくふーん...?」
目が覚めるとまず知らない天井が目に映った。言ってみたかった言葉ってやつだね。バクフーンに支えられるがまま起き上がる。どうやらここはギンガ団本部にある保健室?だった。私は保健室のベッドに寝かされていたのか。
「ありがとうねバクフーン...。」
「ばく!」
目を細める(元から目が細いけど)バクフーンの頭を撫でてあげてからベッドから出る。長い間ベッドの上にいたのか、立ちくらみしちゃったけどまたバクフーンに助けられた。
「あら!もう起きたのですね?」
「あ...はい。ご迷惑をおかけしました。」
丁度いいタイミングでジョーイさん似のキネさんが心配そうに話しかけてきた。
「いいのよ。もう大人と言ってもまだまだなのだから。」
「大人...そう、ですね。」
この世界では私の年代だともう大人なんだった。違和感が凄すぎてつい吃ってしまった。って今はそんな事どうでもいいんだった。
「私はどうしてここに...?」
「ふふっ貴女のバクフーンがここまで運んできたのよ?すごい力持ちねぇ。」
「そうだったんですね...。」
バサギリとの戦闘後、たしかに私は気絶した。意識が無くなる直前にバクフーンに背負われたことは覚えている。しかし、まさかそのままここまで運んでくるとは思わなかった。だって私を警備隊の人に引き渡しても良かった訳でしょ?
「よっぽど貴女のことが好きみたいね。」
「そっか......そっかぁ...。」
「ばくっ!」
「ちなみに貴女がここに運ばれてからもう3日経ってるわよ。」
「へ...?」
「あ、団長への報告は近くで見ていたキクイ君がしてくれたみたいだから安心してね。」
「は、はぁ...。」
3日、3日も経っていたのか...。でも一応私からもシマボシ隊長や団長に報告した方がいいよね...。よし。すぐそこだし行きますか...!
「失礼します。」
「ん?あぁ凛か。よく来たな。」
「はい。」
「キクイからは全て聞いている。良くやってくれたな。」
「デレた...!」
「でれ...?」
シマボシ隊長に褒めて貰えた。しかも薄いけれど微笑み付きで!嬉しいなぁ...。
「いえ、なんでもありません。」
「そうか。ならば団長のところへ行くがいい。」
「はい!」
「...無事でよかった。」
「...ありがとうございます!」
シマボシ隊長の部屋から出て、階段を上る。上った先にある両開きの扉を潜るとそこにデンボク団長がいた。
「うむ。大儀であった。」
「はい。」
「話は全て聞いておる。見事荒ぶるバサギリを鎮め、皆の安全安心を取り戻したのだ。」
「ありがとうございます。」
「お前は空から落ちてきた得体の知れぬ者にも関わらずギンガ団のために働いた。多少は認めようではないか。」
「...はい。」
まだここに来てから2週間も経ってないしね。それにしても命が何個あっても足りないぐらいバサギリは怖かったなぁ...。
「だが、これで終わりではない。他のエリアでも荒ぶっているキング達がいるという...。」
「はあ...。」
「だからこそポケモンを調査せよ!コトブキムラの役に立て!...話は終わりだ。調査隊はイモヅル亭だな。お前も行くといい。」
「はい。失礼します。」
ふぅ...まだまだ完全に認められたというには程遠いけれどこれからも頑張っていかないとね。生き残るために...。
─────────────
「ムベさんいつものイモモチ3つください!」
「はいよ。...ココ最近お主の噂で持ち切りじゃな。あのバサギリを前にして無事でいられるとはな。」
「あはは、ありがとうございます...。」
「そうです!まさに努力の賜物によるビクトリーですね!」
たしかにレベル上げを努力というのであればそうなのかもしれない。それでもまだまだレベルは低い方だと思う。ペリーラさんにもっと鍛えてもらおう...。当然私自身も鍛えていかないとね。
お昼ご飯を食べたあとはまた黒曜の原野に向かうことにする。そういえば笛を貰ったことを忘れてたんだよね。セキさんからカミナギの笛ってやつを貰ったんだけど、吹いてみても変な音しか鳴らない...。ヨネさんは凄い上手だったんだけど、なんの違いがあるんだろう...?
目の前で聞いてたアヤシシさまも顰めっ面だったし...音楽2だった私だし笛の練習もしないとなぁ...。
ストーリー結構飛ばしたから笛のシーンも飛んでる件()
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