アメリカ弱風味の日本国召喚 (現代国家)
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先進11カ国会議
ふと、思い立って現代国家群やそれに近い国々がいる日本国召喚を読みたいなと思って探したのですがなかったので作りました。
感想と高評価よろしくお願いします!
近いうちに設定集とか出します。
先進11カ国会議
中央暦1642年4月22日 神聖ミリシアル帝国 カルトアルパス港
港町であるカルトアルパスには世界有数の広大な湾岸施設が存在する。
先進11カ国会議では各国大使を乗せた船だけではなく、護衛の最新鋭艦も来航するためその全てを収容できるようこのカルトアルパスが毎回開催地に選ばれていた。
そしてそのカルトアルパス港管理責任者であるブロントは管理施設の巨大な窓からその光景を眺める。
ブロントは大の軍艦マニアであるため、この催し物はお祭りのようなものであった。
『第1文明圏トルキア王国海軍到着しました!巡洋艦1隻、小型艦4隻、客船1の計6隻。』
高性能魔導通信通称魔信から監視員の声が届く。
『了解、第1文明圏エリアの指定された区域へ誘導せよ。』
「アガルタ法国とほぼ同じか……。ここに第零式魔道艦隊さえあればなぁ。」
自国の最新鋭艦が集う艦隊を他国に見せられないのは残念ではあるが、ブロントは胸を躍らせていた。
西の列強レイフォルを倒したグラ・バルカス帝国と第3文明圏の列強パーパルディア皇国を事実上解体した日本国。
来るであろう巨大な軍艦にブロントの胸の高鳴りは治らなかった。
『なんて船だ!』『デカすぎる……!』
『こちらカルトアルパス港管理局、どうした?』
『グラ・バルカス帝国の国旗を掲げた巨大な戦艦?がそちらに向かっています。』
「あれか……!」
暫くすると、巨大で城郭のような戦艦が朝靄に包まれながら現れた。
「グラ・バルカス帝国到着、戦艦1隻だけです。」
「分かった。しかしなんて大きさだ!」
彼らが驚くにも無理はなかった。
彼らの中での最新鋭巨大戦艦はミスリル級戦艦という全長242mという大きさなのだがグラ・バルカス帝国の戦艦は目測でも260mを超えていたからであった。
45口径46cm3連装砲という戦艦大和擬きに恥じないその巨大な主砲は
第1文明圏から第2文明圏では最大だった。第3文明圏のとある島国を除いて。
「ーー長!ブロント局長!日本国の到着です!巨大戦艦1隻、客船1隻!」
報告する部下の言葉が心なしか上ずっている。それを不思議に思いながらも双眼鏡を覗くとブロントは今日2回目の驚愕を行った。
「おぉぉおっ!!」
日本国海上自衛隊所属戦艦「やまと」は転移前の旧世界でその能力の陳腐化から退役の声が出ていたが、異世界転移という超現象によりその退役を望む声は掻き消えた。
やまと型戦艦
全長270m
幅42m
速力31ノット
満載排水量8万トン
基準排水量7万8千トン
FCS-3X
兵装
62口径48cm連装砲2基(前部)
Mk 41VLS64セル(後部64セル)対空ミサイル、対艦ミサイル、対潜ミサイル搭載
05式60口径127ミリ単装速射砲8基(前部1基、後部1基、両舷6基)
76ミリ連装速射砲6基(両舷)
40ミリ単装機関砲4基(両舷)
20ミリCIWS4基(両舷)
チャフ発射機
短魚雷発射機
艦載機
常時:哨戒ヘリ2機、最大6機
その他
旧世界のミサイルは電子妨害の状況下では全く使えない。そして、ミサイルが使えない状況下では砲撃戦しか選択肢がないという1989年に発生したアメリカ海軍とソビエト連邦海軍の偶発的な衝突により判明したその事実は戦艦が新たに建造されるきっかけとなった。
各国では再び戦艦建造競争が行われ、2006年、随分と遅れながらも日本も戦艦を1隻だけ建造したのであった。
しかし、2020年代ともなるとやはりミサイルの有用性が再び謳われ、電子戦でミサイルが使えないなんていう事例は2010年に発生した中東での偶発海戦で存在しなかったのである。
そして、転移までの6年間やまとは前世の大和の時と同じく金食い虫だの現代版やまとホテルなどとそれはそれは散々の言われようで、辛酸を舐めてきた。しかし!異世界転移という超現象で瞬く間にやまとの新存在意義が生まれたのである!新世界は、一部列強を除く全てが1920年代から1940年代であったため、ミサイルの使用はコスト的に問題視されていた。しかし、艦砲なら比較的安いためジャンジャン使われていたとさ。
艦載機は後部VLS後方にあるヘリ発着甲板の後ろの艦載機格納エレベーターを使用し、格納庫へ格納される。
ちなみに、どこかの旧帝国海軍の戦艦と違い小口径群の大砲や機関砲の砲塔が無人化されているので、主砲射撃中に甲板に出て機銃座に取り付くなんて芸当は存在しない。ちなみのちなみに主砲の装填は無人機械化されているため10秒に1発と大口径砲にしては異例の速度を誇る。
現在、新世界での必要性から2番艦むさしが進水している。
さて、日本国政府は先進11カ国会議が開催されるにあたって外務大臣及び外交官たちが登場する客船の護衛として海上保安庁の大型巡視船を随伴させることを検討していた。しかし、神聖ミリシアル帝国から外務大臣の道中の護衛と規模は任意でよろしいと連絡を受けていた。しかし、偵察衛星がグラ・バルカス帝国の大艦隊が出港する様子を捉えたため、空母打撃群を護衛として派遣した方が良いのではないのかという意見が出たが、仮にも国際会議に艦隊を引き連れて行くのは無礼と思われるのではという意見により却下された。しかし、万が一ということもあるので戦艦やまとを護衛として派遣することで落ち着いた。やまとならば、日本が下に見られることはない。そして念の為とはいえ仮にグラ・バルカス帝国が邪やな考えを抱き攻撃されたとなれば打たれ強くかつ強力な兵装を持つ「やまと」ならば問題ないだろうという意見により決定された。
神聖ミリシアル帝国港町カルトアルパス 国際会議場
神聖ミリシアル帝国の帝都ルーンポリスに次ぐ発展度合いのこの港町はパーパルディアや他の文明圏外国家群と比べ我が国に似ているなと外交官近藤と井上は思った。
「魔法文明国の建造物は円形などが基調とされるそうです。」
「成る程、道理で丸っこいのが多いわけだ。」
「日本も最近は円形型も増えていますが東京などのオフィスビルは直方体が多いですからね。」
「我々からすると少し新鮮だな。そういえば、ミリシアルは地球世界では1980年代年代ですか……。」
「えぇ、そしてムーは1960年代。グラ・バルカスは1990年代……。歪な発展形態をしていますね。」
「列強の優位性を守るためだろう。文明圏外国は1番遅れている国で1900年代か……。我が国の登場で今後は縮まって行くんだろうな。」
『間もなく先進11カ国会議を開催いたします。関係者の方々はご入場ください。』
「時間か……。」
「では、行きましょう!」
世界の扉は開かれた。
先進11カ国会議
数分前まで会議が古の魔法帝国が復活するとの議題でエモールVSグラ・バルカス帝国で紛糾していたのだがスタッフのおかげか、乱闘にまでは発展しなかった。
「では次の議題です。ムー代表団方どうぞ。」
挙手をしたムー代表団率いる外交官カルマ・オーレンが喋り始める。
「我がムーはこの先進11カ国会議という場においてグラ・バルカス帝国に対し非難声明案を提示します。理由は同国のパガンダはまだ理解できるが、レイフォルやイルネティアへの度重なる侵略行為です。」
事前に機会があれば日本もグラ・バルカスを非難しろという指示を受けていた近藤たちも挙手をする。
「我が国からも。日本国もグラ・バルカスに対し非難決議案を支持致します。このまま野放しにしておくと世界秩序を崩壊させてしまいます。」
東の新列強日本国の追い打ちに議場がどよめく。
「確かにグラ・バルカス帝国は世界情勢を悪化させすぎだ。このまま第2文明圏を侵攻し続けるのならば懲罰攻撃もあり得る。」
明確な脅しーー。世界最強を誇る国の警告は新世界各国ならば、すぐに謝り撤退するだろう。しかし、転移国家グラ・バルカス帝国には意味がなかった。
「皆、勘違いをしているだな。我らは国際協調などと生ぬるいことのためにこんなど田舎に来たわけではない!」
「何だと……!」
ど田舎と侮辱されたミリシアル代表団が眉を吊り上げる。
「グラ・バルカス帝国帝王たるグラ・ルークスの名において宣言する!我らは全世界に対し宣戦を布告する!甚大な被害を被りたくなければ今すぐに降伏せよ!」
息を呑む音ーー。絶句が会場を支配した。
「なんて馬鹿なことを言うんだ?」「何の冗談だ?」「蛮族のくせに!」
批判と糾弾が飛び交う。
「我が国の力を知らしめた後でも構わない。レイフォル行政府で良い返事を待っている!最もその頃にはあまりの被害に首を垂れてつくばうことになっているだろうがな。」
グラ・バルカス帝国の代表団は途中退席し、巨大戦艦「グレードアトラスター」に乗ってカルトアルパス港からも去っていたのであった。
更新間隔は大体1週間に1回か2回ぐらいです。
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マグドラ沖海戦
感想と高評価を何卒!
言い忘れていましたが自分面倒くさがりなもんで、ロウリア編とパーパルディア編は飛ばします。ごめんちゃい
気が向いたら上の2編は書きます。(多分)
マグドラ沖海戦
中央暦1642年4月22日 マクドラ群島近海 第零式魔導艦隊
神聖ミリシアル帝国海軍の精鋭中の精鋭たる第零式魔導艦隊は先進11カ国会議参加諸国を威圧しないためにマクドラ群島近海で訓練を行おうとしていた。第零式魔導艦隊は戦艦1隻、防空艦4隻、巡洋艦2隻からで構成される。
第零式魔導艦隊編成
ミスリル級戦艦
全長242m
幅35m
速力30ノット
満載排水量6万3000トン
MDL-01式魔導電磁レーダー
多機能射撃管制装置
主機:オイシン魔導機関3型
兵装
39.5cm3連装霊式魔導砲3基(前部2基、後部2基)
125ミリ連装速射魔導砲6基(両舷)
77ミリ単装速射魔導砲6基(両舷)
連装対空誘導魔光弾発射基2基(2番砲塔後部、3番砲塔後ろ)
12連装対艦誘導魔光弾垂直発射機(艦中部)
25ミリアトラタテス砲4基(前部、後部、両舷)
神聖ミリシアル帝国が誇る最新鋭式戦艦。当初は戦艦は時代遅れという意見があったが、文明圏外国との戦争には有利なため、各種ミサイルなどを多数搭載している。また、最新の魔道電磁レーダーを搭載しているため魔力がない日本人や少ししかないグラ・バルカス帝国を捕捉することができるようになっている。(ステルス機は映らない)
第零式魔導艦隊所属艦:コールブラント
エナティーン級防空艦
全長194m
幅28m
速力30ノット
満載排水量1万6000トン
MDL-01式魔導電磁レーダー
高機能射撃管制装置
主機:イノア魔導機関11型
兵装
16cm連装霊式魔導砲3基(前部2基、後部1基)
125ミリ連装速射魔導砲4基(両舷)
連装対空誘導魔光弾発射機3基(2番砲塔後方、中部高場所、後部)
元来は古の魔法帝国の発掘兵器を解析し、実戦配備していたが、これに独自の装備を貼り付け新たに国産防空艦として建造したのが本艦である。
第零式魔導艦隊所属艦:ガラティーン、アルティーン、
サラティーン、パナティーン
アルナンド級巡洋艦
全長201m
幅27m
速力31ノット
満載排水量1万5000トン
ML-15式魔導レーダー
射撃管制装置35型
主機:イノア魔導機関09型
兵装
21cm連装霊式魔導砲3基(前部2基、後部1基)
125ミリ連装速射魔導砲6基(両舷)
単装対空誘導魔光弾発射機2基(2番砲塔後方、後部)
6連装対艦誘導魔光弾垂直発射機6基(中部)
25ミリアトラタテス砲2基(前部、後部)
就役から10年が経つ中堅艦であり、同型艦の2隻が第零式魔導艦隊所属艦であるため魔道電磁レーダーの搭載がその2隻のみに検討されている。
また、同艦は対艦攻撃の主力を担う存在であり対艦誘導魔光弾36基も搭載している。
第零式魔導艦隊所属艦:エルナンド、ヘルナンド
再びマクドラ群島近海ーー
「こ、これは!」
艦隊に近づく不審な輝点を発見したレーダー員を発見した。
「対水上レーダーに感あり!10時の方向より近づく艦隊を探知!速力25ノット、距離102km。反応度合いからし、巡洋艦3隻、小型艦2隻の計5隻!あっ!速力30ノットまで上がりました。」
驚いた上官がやって来る。
「本当か!?」
「本当です!識別信号は……グラ・バルカス帝国と判明!」
「遂に来たか、蛮族どもめ……。」
「目標転舵!これは……!」
「どうした?」
「対艦誘導魔光弾の発射準備の陣形に似ています!」
「対艦誘導魔光弾?文明圏外国がそんなものを持つわけないだろう。」
「しかし……!っ!敵艦隊、誘導魔光弾いや、誘導弾発射を確認!数は12発です。」
『レーダーより艦橋へ!敵艦隊、誘導魔光弾に酷似した誘導弾発射を確認!対応をー!』
旗艦コールブラント艦橋
広い艦橋には多数のモニターが設置されていた。そう、ミリシアル海軍はCICとFICの能力を艦橋近辺に能力を全て集合させているのである。
さて、そのミリシアル海軍第零式魔導艦隊旗艦コールブラントの艦橋は忙しかった。
「対空戦闘!目標敵誘導弾群、対空誘導魔光弾発射始め!」
防空艦より連装対空誘導魔光弾発射機が敵ミサイルの方向を指向すると同時に次々と放たれて行く。
防空艦は日本のようなイージス・システムを持たないため同時対処能力が限られる。ミリシアルでは防空艦で一隻当たり3発だ。とはいえ敵ミサイルは12発、防空艦は4隻いるので充分だ。
「敵誘導弾全基撃墜!」
「反撃するぞ!全艦対艦誘導魔光弾発射始め!」
艦隊司令バッティスタが叫ぶ。
防空艦を除く各艦の垂直発射装置から計36発が放たれる。
まずは敵艦隊の防空網がどれくらいか確認しないと、誘導魔光弾の無駄になってしまうからだ。
グラ・バルカス帝国海軍第11機動戦隊 旗艦ベテルギウス
編成:ミサイル巡洋艦1隻、巡洋艦2隻、ミサイル駆逐艦2隻
オリオン級ミサイル巡洋艦の8番艦であるベテルギウス艦橋は緊張に包まれていた。
「対空戦闘!目標、敵ミサイル全36基!各艦発射始め!」
シュパーン!シュパーン!シュパーン!
割り振られた目標群に対し旗艦ベテルギウスも垂直発射装置から艦対空ミサイル「ラスターⅡ」を発射する。
そもそも、オリオン級ミサイル巡洋艦とは、空母を保有しない艦隊、戦隊の中核及び防空を担う艦として建造された艦のことだ。現代日本人が見れば、タイコンデロガ級ミサイル巡洋艦に酷似している。
オリオン級ミサイル巡洋艦
全長191m
幅23m
速力30ノット
満載排水量1万4500トン
GL-03レーダー
21式防空システム
高性能射撃管制装置改
主機:マア32型ガスタービン
兵装
130ミリ単装速射砲2基(前部、後部)
24ミリ自動式対空機関砲4基(両舷)
32発ミサイル垂直発射型装置2基(前部、後部)
10連装対艦ミサイル発射機4基(艦中部、艦後部)
連装短魚雷発射管2基
単装長魚雷発射管2基
再びベテルギウスーー
「敵ミサイル撃墜っ!」
「よしっ!」
敵ミサイル全機撃墜の報に艦橋が喜びの空気に包まれる。
「お仕置きが必要なようだな。艦長!」
「はっ!何でありましょう?」
艦長バーダンが答える。
「対艦ミサイル全基発射!」
司令、アルカイドの命令を受け全艦にミサイル全弾発射せよという号令が下された。
「『了解です、全艦対艦ミサイル発射始め!」』
ミサイルの発射炎で艦隊が白煙に包まれる。
58発もの圧倒的なミサイル群は一直線にミリシアル艦隊へと向かっていたーー。
神聖ミリシアル帝国海軍 第零式魔導艦隊
『っ!ミサイル全基撃墜されました!』
レーダー員の驚愕に包まれた声が届く。
「なにっ!?全基撃墜だと………?」
「そんな馬鹿な……!」
艦長クロムウェルも同じく驚愕に包まれた表情で呻く。
「どうやら敵は強いようだな……!誘導魔光弾全基発射!」
「司令!それでは、敵に別働隊がいた場合攻撃する手段がなくなります!」
「分かっておる。だが敵は……癪だが未開の蛮族にしては強大だ。こちらも本気を出さんと勝てん!復唱せよ!誘導魔光弾全基発射!」
「りょ、了解!聞こえたか?対艦誘導魔光弾全基発射だっ!」
「了解です。通信員、各艦に下令せよ。」
『旗艦コールブラントより全艦へ!対艦誘導魔光弾全基発射せよ!』
数瞬、間を置き各艦から誘導魔光弾が次々と発射されてゆく。
青白い光を纏いながら敵艦隊へ向かってゆく誘導魔光弾の光景は幻想的だった。
『敵誘導弾接近っ!』
レーダー員が叫ぶ。
「敵ミサイル58基接近!?防空艦の能力を超えています!」
「構うな!対空戦闘、目標敵誘導弾各艦攻撃開始!」
「っ!了解、敵誘導弾を撃墜せよ!」
「堕としてくれよ……!」
司令、バッティスタの願いは海上へと消えたーー。
「敵誘導弾、間もなく艦砲の射程に入ります!」
「全艦対空射撃用意……!」
「本艦射撃準備よし!」
「敵誘導弾、艦砲の射程内に入りました!」
「砲撃始めっ!!」
ドドドンッ!ドドドンッ!ドドドンッ!
ミサイルが飛んでくる右方向へ旋回した39.5cm3連装霊式魔導砲3基が対空射撃を行う。
「命中っ!敵誘導弾2基撃墜。残る44基来ます!」
既に誘導魔光弾による攻撃で12基を撃墜した。そして今さっきの攻撃で2基ーー。
間に合わないーーとバッティスタは悪い確信をしてしまった。
ダダン!ダダン!ダダン!ダダン!
すると、軽快な射撃音が聞こえてきた。
何事かと思い、艦橋から見落とすと右舷火力の全ての砲がただひたすらに撃ちまくっている。
小口径砲の射程に入ったので射撃を開始したのだ。
「司令、間に合いますかね……?」
訪ねた艦長クロムウェルも恐怖に怯えた顔をしている。
「分からん……。だが本艦は万が一被弾しても戦艦だから無事だろうが……防空艦や巡洋艦がな……。」
戦いが遠距離化した弊害だった。戦艦を除く全ての艦が装甲が薄いのである。大昔の巡洋艦級の装甲でも戦艦の主砲を生き延びるだけの装甲はあった。しかし、現在は恐ろしいほどに薄い。
「司令!先程発射した対艦誘導魔光弾が!」
「どうした!?」
レーダー員に駆け寄ると、そこには少しずつ輝点が消えてゆく様子が映し出されていた。
「これは……!?」
「敵に迎撃を受けています。誘導魔光弾の数が……!みるみると減って……。」
「敵は強いのか……!」
「司令!防空艦ガラティーンが!あぁなんてことだ!」
再び呼ばれ、振り向くとクロムウェルが更に顔を蒼白にさせ艦橋の外を指差している。
「なっ!?」
そこには被弾し寸前の神聖ミリシアル帝国海軍が誇る最新鋭防空艦の姿があった。
「報告!防空艦ガラティーン、敵誘導弾を弾薬庫付近に被弾し誘爆した模様です。エニーラ艦長は退艦指示を下令したとのこと!」
防空艦ガラティーンの艦長エニーラは艦をこよなく愛していた。死んでも退艦指示を出さないだろうと言われていたあのエニーラ艦長が……!
バッティスタはただただ驚愕するのだった。
「あぁ!巡洋艦ヘルナンド轟沈!」
艦隊左翼を担うヘルナンドは海上から消えていた。
ヘルナンドがかつて存在した位置からはただ濛々と黒煙が上がっているのみ。
あっという間に轟沈したのだ。
「司令!我が方の誘導魔光弾が命中した模様です!」
「本当か!?」
「輝点が巡洋艦級のサイズの軍艦に命中した後、反応が消えました。恐らく轟沈です!」
「よしっ!我が方も負けとらん!勝負は互角だ。皆、心して事に当たれ!」
「「了解!」」
グラ・バルカス帝国海軍 空母カノープス航空隊
『全機!突入進路確保、攻撃地点まで後31秒!』
F-5タイガーによく似たジェット戦闘機が対艦ミサイルという物騒な槍を抱えて攻撃地点まで突き進む。
不安がないわけではなかった。魔法国家とはいえ敵はこれまでの敵とは違いミサイルなどの現代文明を持つ国。
既に、先に攻撃を行った第11機動戦隊は巡洋艦1隻を失い、ミサイル駆逐艦1隻が大破したという。
『全機攻撃開始っ!』
隊長機の命令により、機を操る「ウレン」少尉も発射ボタンを押し込んだ。
両翼に吊り下げられたミサイルは切り離され、点火し真っ直ぐ、ただ一直線に敵艦隊へと突き進むのであった。
神聖ミリシアル帝国海軍 第零式魔導艦隊
第零式魔導艦隊はかつてないほどのミサイルによる波状攻撃を受けていた。
「被弾っ!左舷77ミリ単装速射魔導砲大破!」
「被害甚大!死傷者現在50名以上!」
「なんてことだ!神聖ミリシアル帝国の最精鋭艦隊が……!」
次々と増え続ける被害にバッティスタは呻く。
だがその間も対空誘導魔光弾や速射魔導砲は射撃を続けていた。
ドォンッ!!
新たな衝撃が艦を揺さぶる。
「何事だ!?」
艦長、クロムウェルが恐怖のあまり叫ぶ。
「前部主砲群に被弾!装填済みの砲弾に引火した模様!」
「消化班を向かわせるんだ!」
「しかし!消化班がもう手一杯です!」
「なら、危険度が少ない所を消化している部隊を向かわせろ!それと暇なやつを集めて一緒に送り込め!」
「了解!」
『第4消化隊、直ちに持ち場を離れ前部主砲群の火災の鎮火にあたれ!』
『ーー第4消化隊了解。』
「それと、主砲の射撃を止めるんだ!でないとーーー」
ドッォォオン!!!
かつてないほどの衝撃が艦を襲った。
「今度は一体なんだ!?!?」
「う、右舷浸水!船体が急速に傾いています!」
「注排水システムを起動しろ!」
「起動していますが、浸水のスピードが途轍もなく速いです!」
彼らは知らなかったが、対空戦闘に気を取られすぎ海中を突き進んできた魚雷4発に気づかなかったのである。
巡洋艦ベテルギウスが発射した501ミリ長魚雷4発は寸分の狂いなく旗艦コールブラントに命中した。
戦艦コールブラントは右舷に40°傾き、沈没するのも目前だった。
「司令!退艦命令を出します!」
「っ!仕方がないか……!」
本国に通信を行おうとしたが度重なる被弾で壊れたらしい。脱出が順調に進んでいるのを確認すると、艦橋の外に出て、洋上を見渡した。
あれだけ威容を誇った第零式魔導艦隊はもういない。
僚艦も被弾により海中に没した。
残るのは手負いの本艦のみーー。
艦隊司令バッティスタの頰を何筋もの涙が通り過ぎた。
傾斜角度が50°以上になり、沈没も間近に迫った特だった。
「艦長!このままでは!このままでは魔砲燃料が荷崩れを起こして衝撃に晒されてしまいます!」
「なんだと!?司令!早く退避なさってください!お前らも逃げるんだ。急げ!」
「分かった。総員退艦急げ!」
魔砲燃料は非常に衝撃に弱い。魔砲燃料は砲撃時に砲弾に組み込む、科学文明国家群の使う装薬のようなものである。それは非常に脆く、大爆発を起こしやすい。
そのため厳重な管理が為されているがこれほどまでの傾斜は想定されていなかった。
刹那ーー
ドッオォォォォオオオンッ!
超大な大爆発が海を覆った。
魔砲燃料による誘爆により洋上はキラキラと瞬いていた。
これにより、神聖ミリシアル帝国海軍第零式魔導艦隊とグラ・バルカス帝国海軍第11機動戦隊及び空母機動部隊による大海戦が幕を閉じたのであった。
任務を終えたグラ・バルカス帝国海軍は東へ針路を取り、世界会議が開催されているカルトアルパスへ東進した。
近いうちに設定集出します。
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