トップギア〜紅き風の名はマルゼンスキー (ゆっくりカワウソ)
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第1走 元神童、トレセン学園に行く^o^
鬼滅でも手を出しているのに…これは泥沼化間違い無しですね(白目)
夏頃から始めたウマ娘、それがこうやって書きたい衝動に駆られるとは……歴史は繰り返すものですね(Fateだったりアマガミに手を出した前科ありw)
さて、今回は自信はないけど実は有能な元神童が主人公の物語!
ウマ娘と恋したり、楽しんだり、勝ち進んだり…時々ダークになったりとカオスなハッピーエンドものにするつもりです^_^
楽しんで読んでいただければ幸いです^ - ^
〜現在より約7年前、とあるテレビの放送〜
「日本最難関と言われる中央トレセンのトレーナー資格を14歳の中学生が会得したと本日中央トレセン学園より発表がありました。」
「最年少記録を更新した
「トレセン学園はこのように未成年のトレーナーも就学しながらトレーナーができる体制をー。」
「突如中央トレセンのトレーナー資格会得最年少記録を更新した少年は中学校を卒業後、消息を断ちました。同級生や周囲の人間からの話によるとー。」
「あの人は今!かつて日本国内最難関資格会得の最年少記録を更新したー。」
少しだけ…遠回りをさせてくれ。何、心の傷が癒えるまでだけどな…。
_____________________
ウマ娘、古来より人間と共に歴史を歩んできたケモ耳と尻尾を持ち、走ることに命をかける乙女たちの総称である。ちなみに顔は美形で女の子ばかりと言うのも特徴であることも付け加えよう。
え?ざっくりしすぎだって?間違いじゃないでしょ?(・・?)
まぁ、おふざけはここまでとして。ウマ娘は現在の世界において我々の良き隣人であり、人間同様に美味しいものを食べ、喜び、泣き、共に幸せを分かち合う存在である。現代日本ではウマ娘たちが活躍するURAの舞台やばんえいウマ娘、モデルにアイドル、はたまたウマ娘をURAの舞台で活躍させるトレーナー職に付く変わり種のウマ娘もいる、いわば我々人類同等の存在であり、良きパートナーともいえよう。
抜きん出た身体能力や若干出てくる本能的な行動を除けば、人と変わらない生態の彼女達に惹かれ、ライブやレース、はたまた結婚し、子供と共にスローライフを送るなんてことも…ふざけんなマジでー、おっと失敬。…俺の病んだ過去が溢れてしまった。これについては追々話すので話を進めよう。
さて、こんなことを語る俺のことについて話そう。先ほども名前が出たが俺の名前は仙水寺櫻弥、21歳の独身で日本ウマ娘トレーニングセンター学園スクール、通称中央トレセンのトレーナー資格会得の最年少記録を持つ男である。とある一件で俺はトレセン学園に行かず、カナダトロント*1にて飛び級で大学に進学し、大学院で教育、健康、スポーツ医学などを学びながら、アメフト・ホッケー選手やバスケ選手、北米リーグのウマ娘たちのマネジメントやパーソナルトレーナーで銭を稼ぐ暮らしをしていた。…それなりに稼げているのはここだけの話。
そんなある日、俺がいつものように研究室でスポーツ工学のレポートを読み漁っていたところ教授から、中央トレセンのお偉いさんが俺にご用だと研究室を追い出されてしまう。お偉いさんがいる学内のカフェテリアに向かうとそこには…幼女と緑色のウマ娘(?)みたいな女性がいた。
「邂逅!!君が仙水寺櫻弥さんか?!」
「久々に日本語を聞きましたよ。えぇ、私が仙水寺ですが…、あなたは?」
とりあえず見た目は幼女だがお偉いさんなのでとりあえず下手に…。年齢相応であってもかなり出来そうだと言う印象を持つ。
「はじめまして!私はこの度日本ウマ娘トレーニングセンター学園スクール理事長に就任した秋川やよいだ!こっちにいるのが秘書の早川たづなだ!」
「はぁ、それは遠路はるばるここにお越しいただきお疲れ様です。…それで私に何か御用で?」
「理事長、私から。…早川です。7年ぶり…でしょうか?」
「そういえば会いましたね、ウマ娘みたいなお姉さん。」
「だからあれほど私はウマ娘ではないと、…ごほん。単刀直入に言います、私たちはあなたをスカウトしに来ました。」
簡潔かつわかりやすい提案がたづなさんの口から出てきた。
「…。」
「あなたの気持ちはわかります。7年前、我々大人があなたを好奇の目に晒してしまったこと…それを守れなかったこと…本当に申し訳ー。」
「早川さん。」
「!」
「私が日本から消えたのはそんな理由じゃない。…もっと子供っぽくて、惨めなものなんだ。…アマノリュウセイ*2ってウマ娘は覚えてますか?」
「!えぇ、覚えていますよ。ガラスの天の川の異名は今でも忘れません。」
「……幼馴染で私の…好きな人でした。」
「!!」
「驚愕!?…どうして日本から姿を消したのか説明を願おう。」
「私が子供だったからですよ。あのトレーナーが彼女の心を射止めた、それに私が耐えられなかっただけの話です。」
コーヒーを一口飲みながら話を続ける。
「あんな口約束を間に受けて、一方的に裏切られたと思ったままこっちで7年ほど過ごしてきました。…自由気ままにできる今の環境を作り上げ、多くの経験ができたので皮肉にも結果はあのままトレセンにいるよりは幾分かマシだとは思いますよ。まぁ、2度とあの2人には会いたくはないですけど。」
「そう…ですか。」
「ですが、先ほどの提案の話、引き受けます。」
「驚愕、疑問!何故引き受けてくれるのか教えてほしい!」
「まぁ、環境の変化を求めてですね。私がいなくても研究は誰かしら進めますし、…それに小さい頃から叶えたい夢があるのです。」
「質問。叶えたい夢とは?」
一息つけ、自分の本音を告げる
「中央トレセン学園の最強のトレーナーになることです。…かなり遠回りしましたが…、私はウマ娘が好きだから…またこの夢を叶えたいと思い、今回のスカウトを受けようと思いました。」
「…激熱!!私はあなたのような人材は大歓迎だ!あなたのその熱意に満ちた顔、経歴、全て私たちが中央トレセン学園に求めていた条件に当てはまっているのだ!」
「…良いのですか?今、スポーツ工学…特にウマ娘の蹄鉄の素材の研究が佳境に差し掛かっているとお聞きしましたが…。」
「先ほども述べましたが、私がいなくても彼らだけで研究は続けますし、私なんかがいなくてもさして問題はないと言うはずです。」
「そう…ですか。…ですがその前に発言を一つ訂正してください。」
「?なんでしょう?」
早川さんが真面目な顔で…なおかつ優しくこう述べた。
「あなたは自分を卑下しすぎです。…あなたがいなければここの研究室と論文が注目されなかったことを私たちは知っています。」
「同感。私たちはあなただからこそスカウトしたいのだ。」
「…そうですか。……そう言っていただけるとありがたいです。」
彼女たちは笑わず、俺の目を逸らさずに見つめる。その顔は熱意と俺の全てを認めてくれている……久方ぶりだ。……あの頃のまっさらな気持ちでこの思いに応えよう。夢と共に走り抜く乙女を支える最高の栄誉に!
「秋川さん、早川さん。約7年と遠回りをしましたが、よろしくお願いします。」
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「さて、あらかた荷物も送ったし、明日のフライト前にトロント観光しますか!」
季節は春前、まだ凍てつく寒さが続くトロントのダウンタウンを練り歩く。もうかれこれ観光のために出歩くなんてことはなかったので久々の感覚だ。…ハイスクールに在籍していた頃、当時飛び級で大学入学の前に行ったプチトロントツアーをしていたのを思い出す。コリアタウンやチャイナタウン・リトルイタリーでの食倒れツアー、教会巡りにトロントアイランド*3の探索…どれも日本にいた頃とは違う風景に心を躍らせていた。
「…あの頃は…荒んでいたな。……けど…この風景やこの街の人たちやウマ娘たちが……思い出させてくれたんだ。俺の……あの頃の夢を。」
幼い頃に描いたきっかけ、…レース場やステージで輝く彼女たちへの憧れが心に炎を灯す。一息つけ、タバコに火を灯し、ゆっくりと紫煙を吸い込み吐き出す。
「こいつともしばらくはお預けだな…、そうなるとあのカフェのピザ食わんとな。…久々に行ってみるか。」
あの頃から変わらないリトルイタリーの行きつけのカフェで、しばらく帰れないトロントでの最後の晩餐と気の知れた店員との雑談に花を咲かせるのであった。
_____________________
桜が咲き乱れる春、ここ東京都府中市にあるトレセン学園は入学と新学期の季節である。まだ初々しい学生たちや進級する未来のスターたちがトレセン学園の体育館に集まっている。…そんな中俺は…非常に緊張していた。
(あの理事長マジ泣かすぞ…、なんで新人トレーナー代表に俺を選んだんだよ!あぁぁああ、緊張で吐き気が…)
そんな様子を見たベテラン(?)トレーナーがこんな陰口を叩く。俺はそいつに鳴かず飛ばずな印象を持つ。(偏見)
「こんなのが中央に来たのかよ、上は何を考えてるんだか。」
……明らかに理事長たちに向けての不満も含んだ侮蔑に少しカチンと来た。俺に向けるのはいいが俺に期待してくれたあの人たちの悪口は頂けない。
「年食ったからって実績に繋がるわけじゃないんだな。担当されるウマ娘たちがかわいそうだ。」
少し声を大きめに言うと何やらフジコフジコしてるようだがスルーして舞台袖へと向かう。少し吹っ切れた…。自信はないが俺は……思いの丈を伝える。
「では新人トレーナー代表である仙水寺櫻弥さんより答辞をいただきます。登壇をお願いします。」
一歩ずつマイクの方へと向かう。7年前にここにいるはずだったのだと考えると少し感慨深くもようやくスタートラインに立ったといったような気持ちになる。
「新人トレーナー代表、仙水寺櫻弥です。カナダのトロントでスポーツ医学や工学の研究をしておりましたが、今回私はトレセン学園の新人トレーナーとしてご挨拶させていただきます。」
皆が静かにこちらに注目する中で俺の意志と口上を述べる。
「皆さん、ここの学校のモットーをご存知でしょうか?…Eclipse first, the rest nowhere. 和訳すると唯一抜きん出て並ぶ者なし。まさにここ中央トレセン学園を体現した言葉です。あなたたちは全国各地から集められた、いわば最強のウマ娘たちであり、この言葉の体現者なのだと私は思います。…ですが加えて2つほど別の意味もあるのではと私は思うのです。」
少しざわめく群衆に人差し指を口に当てるとすっと静かになる。流石日本だ。
「まず1つ、常に自分の夢の先を目指し、研鑽すること。恐らくこの先多くの困難が待ち受けるはずです。自分の描いた夢に届かない、夢が破れてしまうことが沢山あるかと思います。……けれども…その夢に進んだ道筋は消えない…無駄ではないのです。その研鑽は君たちの描いた夢のかけら、歩んだ道は誰にも並ぶこともできない景色があると私は思うのです。…そして夢の先に辿り着いた時、あなたたちが笑って後悔しない道を走り抜いてください。」
14歳の頃には出なかった思いを皆に伝える。
「そして2つ目、自分の得意を伸ばすこと。唯一抜きん出るとは1番になることでもありますが、オンリーワンであることもこれに当てはまります。唯一の自分の得意を見つけてください。…これら2つの意味も含めて唯一抜きん出て並ぶ者なし…だとおもうのです。」
少し間を開け、俺はこの学園と生徒に誓いを立てる。
「今ここで私たち新人トレーナーは生徒たちの夢を支え、どんな時も君たちの味方であり、人バ一体を体現することをここで誓います!また、本日お越しの皆様並びに在校生、新入生、そして先輩トレーナーの皆様、至らぬことがあると思いますがご指導ご鞭撻のほどをよろしくお願い致します。話が長くなりましたが、以上で答辞を締めさせていただきます。」
一礼し、頭を上げると生徒やお偉いさん方から拍手を受け、ビビりながらもステージ裾へと向かう。…ようやくスタートができる…。
さぁ、俺の夢はこれからだ!
…フラグじゃないからね、ね?
なんとなくそんなことを思いながら春風に吹かれながら、青空に舞う桜を見上げるのであった。
今日のトレーナー行動録
・14歳の神童現る〜日本最難関資格最年少記録
・神童の消息発見〜日本が産んだトロントの天才研究者(?)
・理事長とウマ娘疑惑秘書来訪
・7年越しのスカウト
・最後の晩餐と旅〜一時のお別れ、さらばトロント
・桜舞い散る入学式〜とある新人トレーナーの長話
・夢のスタートライン〜フラグじゃないよ?
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第2走 元神童、担当が決まる^o^
私の友人が転職で地元から離れるとのことで掃除や荷造りを手伝ったり、職場のキャンペーンのせいで忙しかったりと気付けば3月も折り返し地点…。これはやばいです(危機)。
さて今回は主人公のメインパートナーが決まる回です^o^
アンケートに答えてくれた方、誠にありがとうございます!
引き続き、一緒に物語を作っていただければかと思います^o^
また鬼滅の刃の二次創作も書いているので、暇つぶしに見ていただければ幸いですw
入学式の次の日、俺たち新人トレーナーは先輩トレーナーたちの元で実務研修を行う…はずだったのだが生憎と、
「お前に教えることなんてなんもねぇよ。」
「…は?」
「お前、カナダでトレーナーみたいなことやってたんだろ?なら必要ないだろ?」
件の嫌味の言ったトレーナーやその一派から絶賛嫌がらせを受けている最中にだ。
「…なるほどな。ならあんたらからは聞かない。」
「なっ!?お前何言ってんだよ!」
「早川さんに聞くよ。あんたらからは学ぶ価値もない。…メンツだけでこんなパワハラするとか頭沸いてんじゃない?だから日本は馬鹿にされんだよ。」
「テメェ…!」
俺につかみかかるがここで一言脅しておこう…。
「殴ってもいいが日本の刑法の傷害罪に値するぞ?ここに俺のスマホで録画してある。殴れば豚箱と失職と担当ウマ娘を路頭に迷わす3連コンボになる。そうなれば…わかるよな?」
「!!…覚えてー。」
「あぁ、そうそう言うの忘れてたな。…もし俺の担当するウマ娘や俺、及びその関係者に手を出した時は君の人生を壊すからそのつもりで。具代的に言えば怖いお兄さん方と旅行することになるからお忘れなく(ガチ)。」
ちなみに怖いお兄さん方とはガチ●モの昏睡レ●パーやとある調教師たちのことである。いやぁ、人脈っていいよね^o^。唇を噛み、悔しそうに去ってゆく。
「懸命な判断だ。…たくっ、中央の人間のくせにこうまで頭悪いのはいただけんな。地方でもこんな奴いないと思うしw。」
置いてけぼりにされたのでたづなさんの元に向かおうとしたが、彼女の気配がしたので少しからかい半分で呟く。
「さて、ボチボチウマ娘秘書さんのところにー。」
「訂正できないのですかあなたは…。」
「おや、早川秘書。ちょうどいいところにー。」
「…スルーなんですね。」
「すんません、形式美的なものを感じたので。」
「そんな形式美は必要ないですよ!」
ぷんぷん怒る美人も乙なものだ…、失敬。
「いやぁ、すみませんついついやっちゃいました。…見てましたよね?…申し訳ないですが、色々と簡潔に教えてください。」
「…わかりました。本来なら先輩トレーナーに従ってもらいますが…、特別ですよ?」
「いやぁ、助かります。ありがとうございます。」
空き教室で色々と説明を受ける。
まず俺たち新人トレーナーは先輩トレーナーの下、雑務やトレーナーとしての基礎業務を実務を通して覚える。その後はチームやトレーナーの下、サブトレーナーとして経験を積み、ウマ娘の担当を取り、業務に従事すると言ったプロセスがある。そこから先のキャリアアップはそのままトレセンのトレーナーとして活躍やレース解説、トレーナー養成所の講師、個人トレーナーと個人の裁量次第な世界。ウマ娘よりもキャリアアップの場が限られるのは否めない…、一度なると潰しが効かない感が否めないがその代わりに莫大な給料を得ることができる職種である。
「仙水寺さんはプライベートトレーナーとして場数を踏んできているので、トレーナーとしてのキャリアは恐らく10年程経験を積んだ中央トレーナー以上と認識しています。…ですが細かいルールや衣装業者の確認、マニュアルなどについて説明しますね。」
たずなさんの説明は非常にわかりやすく、そのデータをきちんとメールに送るという安心かつ丁寧なアフターフォロー…できる女はやっぱりすごいね!…ウマ娘っぽそうだけどー。
「今余計なこと考えましたか?」
「いえ、さすが早川さんだと感心していました。やはり中央トレセンの理事長の秘書、私のような有象無象とはちがう。」
「…あなたは本当にそう思ってますか?」
「えぇ。…私は出来損ない、その結果はアスリートがやったこと。少し手伝いをしただけです。」
「…。あなたの経歴から見て私はそうは思えないです。…トロントラプターズやブルージェイズ*1の特別契約トレーナー、アメリカHGRA*2公認、アメリカ・カナダトレセン学園外部コーチ、そしてカナダ発の新興企業でありながら世界のシェアを伸ばしているスポーツメーカー「E-Motions(エモーションズ)*3の創業者であり研究者。更には大学と提携しつつ多くの論文や技術を発表…、周囲の環境を考慮してもすごい経歴です。」
「そう言ってもらえるのはありがたい。…ただ俺だけじゃなく、あくまでも俺が繋いできた縁がこの結果になっただけです。」
ついつい胸のポケットに手を突っ込み、タバコを探そうとするが…禁煙しているのを思い出した。それに気付いたたずなさんはこちらに質問をする。
「…おタバコ、吸うんですか?」
「やめましたよ。…この仕事をしているのでVapeやノンニコチンの電子タバコに変えました。あとは飴とかで代用します。」
「…お心遣い感謝いたします。」
ウマ娘は臭いや音に敏感で、特にタバコは彼女達にストレスや心肺機能の低下の恐れがあるので彼女達と仕事をする時は極力吸わないようにしている。ただ今回は長期での仕事、タバコ断ちをしなければいけないのが正直辛い(ToT)。
「ではここまでで何かご不明な点はございますか?」
「いえ、特には。またわからないことがあればお聞きしても?もちろん、お時間のよろしい時に。」
「構いませんよ。ではデータを送っておきますので私は失礼いたしますね。午後からはトレーナーさんのトレーナー室の方を案内するので、それまではご自由にお過ごしください。」
「ありがとうございます。また会いましょ。」
たずなさんが去ってゆくのを眺めつつ、校内の探索へと出かけるのであった。
_____________________
「……広すぎるだろ…。」
日本最高のウマ娘の養成機関、敷地の広さも設備も流石と言ったところ…だが正直移動がクソめんどくさい。ため息をしながら煙の出ないレモンメンソールの禁煙パイポを吸い、校舎の窓から外を眺める。広いグラウンドにダート・芝のトラック。まだ午前中は授業のためウマ娘はいないが、用務員が念入りに整備している様子を見るにかなり手厚く整備しているように見える。
「あ、あの!」
「…ん?」
後ろから声をかけられ、振り返るとそこには小柄なハーフアップの髪型の女の子のトレーナーともう1人は…なんかよくわからない男のトレーナーがいた。…よくわからないって表現に疑問を持つだろう……俺もだよ。だって…顔の認識が出来ないし、顔がTなのだ。
……文字通りTだ。…ふざけてやがる…。
「その…新人トレーナー代表の方ですよね?」
少し緊張した面持ちでこちらに問いかける。
「…そうですが…あなたたちは?」
「俺はT山T一郎!Tって呼んでくれ!」
(いや名前もかよ!?)
「私は桐生院葵です。よろしくお願いします!」
(…桐生院…言わずもがな名門中の名門一族。ウマ娘のトレーナーにおいてはメジロ同様にURAに多大な影響を与えるほどの家系だな…。…彼女はその一員ってわけか。)
「あの名門の桐生院家のご令嬢とは…まさか俺の代にいるとは思いませんでした。それにTさんも。」
「ん?俺か?」
「えぇ。…ウマ娘とトレーナーはコミュニケーションが大切。すでに他のトレーナーとコミュニケーションが取れているのはさすがだと思います。」
「そ、そうか?照れるぜっ。」
T字で頬を赤らめるTトレーナー。…シュールだ(・Д・)。こうしている間に桐生院トレーナーが戦線布告をする、……この娘…ひょっとして箱入り娘…なのか?
「あの!…私…負けませんから!今はこうして差はありますけど!必ずあなたを追い抜いて見せます!」
かなり過大評価されているようだが、売られた喧嘩は買う主義なので返してみる。
「やれるもんなら…やってみな!」
某銀行員の敵役のように言ったら2人ともびっくりしたような顔をした。まぁ、元々敵は作りたくないので心情をすぐに打ち明ける。
「…とまぁ言ったけど、俺たちは同期でライバルで仲間だ。年齢や性別関係なく程よい関係でいようぜ?」
「…随分と演技派だな。素はそっちになんだな。」
「まぁね。…ただTさん、さっき言ったことは本当だよ。…俺はウマ娘のためなら協力は惜しまないさ。…もっとも愛バは優先するけどね。」
「…さすがだな…。最年少資格会得者は違うな!」
「…なんのこと?」
「わかってるよ、俺も桐生院トレーナーも。……俺もあんたのニュースでウマ娘の世界にどっぷりハマってトレーナーを目指した口なんだ。…一緒に仕事ができるのが光栄だよ、仙水寺トレーナー。」
「…こちらこそ。」
…青春ってものを感じた時間だった。
_____________________
2人と別れてからカフェテリアで昼飯を食べていた。やっぱり中央トレセン、飯もうまい。(´∀`=)
「失礼、仙水寺トレーナー。少しお時間をいただきたい。」
飯を食っている時に1人の生徒が俺に声を掛けた。…その生徒は中等部時代から数々の伝説を作る皇帝、シンボリルドルフだ。そして付き添いでいるもう1人はその卓越したスピードから「スーパーカー」と呼ばれる美女、マルゼンスキー。…いやぁ、美人を間近で見るのっていいよねって考えながらも話を切り出す。
「……!まさかあの皇帝とスーパーカーが俺のところに来るとは!それで俺になんのようだい?」
「その…皇帝というのはこそばゆいのでやめていただきたいが…。」
少し頬を掻きながら恥ずかしそうに言う。
「あら、ルドルフ。そんなかっこいい名前なのに恥ずかしがるなんてチョベリバよ!(^_−)−☆」
(…いや言葉のチョイス!古いよっ!?)
栗毛の髪に高校生離れしたスタイルの良さ、柔和で優しく素敵な女の子…だったのが急に80年代のワンレンボディコンを匂わせる発言に少しだけがっくり来る。
けれどもその容姿と雰囲気に魅かれ、じっと彼女を見つめてしまった。
「あ、あの…トレーナー君?」
「…失礼。あまりにも美しい人だと思ってね。ガン見してしまったよ。」
「あらあら、お上手ね(^_−)−☆。」
ウィンクをする様も美しい…というのが俺の感想であった。少し置いてけぼりを喰らっていたルドルフが少し困惑した顔をしたので、咳払いをして用件を聞く。
「すまない。それで用件はなんだろう。」
「…気遣いに感謝する、仙水寺トレーナー。貴方たちの相性もなかなか良いから良かったよ。…貴方にはここにいるマルゼンスキーのトレーナーになって欲しい。」
「……それは君の命令か?マルゼンスキーは了承してるのか?」
この一言に気圧されたのか少し困ったような顔をする。
「怖い顔しちゃノンノン^o^。理事長からの打診よ。私も貴方に興味があるからOKしちゃったわ!」
楽しそうにそう言って俺の眉間の皺に人差し指にツンと触れる。…この子、本当に高校に入学したばかりなのかと疑問が生まれる。……不覚にもドキッとしちゃったよ…。
「…すまなかったよ。…それなら構わない。…午後は空いているか?これからのことを相談したい。」
「問題ナッシングよ!後これ、私の番号ね!」
電話番号の紙を渡され、そのまま去っていった。
「…少し私からも。…貴方はマルゼンスキーのトレーナーになった…で合ってるかな?」
「あぁ、そうだ。」
「…なら良かった。…それと仙水寺トレーナー、これは生徒会として貴方にお願いしたいことがある。」
「なんだい?…俺ができる範囲ならありがたいが。」
「……トレーナーのいないウマ娘のトレーニングや勉強を時々で良い、見てはもらえないだろうか?」
「…なぜ俺に頼む?君、俺が敏腕でベテランなトレーナーだと思ってるのか?」
「ふふっ。貴方は面白い人だ。……すでにこちらで調べている。…バロンルージュ*4、ベラフランスキー*5とコンタクトを取らせてもらった。その時の君の評価は非常に高く、2人とも君を「ウマ娘の魔術師」って言ってたよ。」
「…まったく、あいつら何勘違いしてんだ。…俺はきっかけを作っただけだ。」
「貴方がそう思っても…だ。ベラフランスキーに至っては君のおかげで生涯の伴侶を見つけたって喜んでたよ。」
「…フランの奴、…一生幸せでいればいい。」
「…貴方のそう言うところが好感を持ったと言っていたよ。…現に私もそう思っている。」
「…そうかい、お嬢さん。」
目を丸くさせ、驚くそぶりを見せたが笑顔になり言葉を発する。
「…ふふふっ。貴方は本当に面白い!……マルゼンスキーや先ほどの件をよろしく頼むよ、仙水寺トレーナー。」
「…あぁ、任されたよ。……ついでに理事長にも報告しといてくれ。」
「もちろんだとも、そうさせて頂こう。ではトレーナーさん、また会おう。」
「それじゃあね、トレーナー君!アデュー!(^з^)-☆」
そう言って食堂から出ていった。
食後、たずなさんに案内されたトレーナー室はかなり広く、同時にかなりの年月が経っているのだろう、かなりボロボロである。
「あの…これで…いいんですよね?」
「もちろん。注文通りです。…ここなら色々弄っていいんですよね?」
「問題ないですよ。業者を呼んでも構いませんし、魔改造しても大丈夫です。」
トレーナー室のある棟の外れにあるこのトレーナー室は旧新人トレーナー詰所で今のトレーナー室の棟ができると使われなくなった場所でもある。電気や水道が通ってはいるが、ネット環境や補修工事、更には冷暖房の工事も必要、逆に解体するにしてもお金が掛かるとトレセンにとっては非常に厄介な建造物である。
だが、これは俺にとっては好都合。他のトレーナー室とは違い、約10倍の広さに好き勝手に改造できる要素満載。更には水道や電気は通っている。DIYや業者を呼ぶにしても最低限のインフラはある。
「いやぁ、まさか希望していたトレーナー室が物件ごとあるとは思ってませんでしたよ!一応ここって事故物件じゃないですよね?」
「恐れ入ります。ここは曰くやそう言った話は出ていないですが老朽化や設備系統が古く、今現在は仙水寺さん以外は立ち入れない状態になっています。」
「なるほど。…曰く無しなら問題ないですね。」
「では、私はこれで。マルゼンスキーさんや他のウマ娘の方々への件、私からもよろしくお願いします。詳しいことは後ほどメールにて送付します。」
「ありがとうございます。」
たずなさんが去った後、俺はすぐさま知り合いの工務店に連絡した。
「オッスひろちゃん、今暇かい?」
「!櫻弥か!?」
「そうだよー。つい先日帰ってきたって感じだよ!」
「オメェヨォ!帰ってきたら連絡しろっつてんだよ!心配すんじゃねぇか!」
「悪い悪い。何せ今トレセン学園に就職したばっかでゴタゴタしてたんだよ。」
「マジか…。…克服したのか?」
「さぁね。本人たちがいないからよかったけど。…そんなことよりひろちゃん、依頼したいんだけどいい?」
「馬鹿野郎おめぇ、ンな他人行儀に頼まんでもお前の依頼の一つや2つは受けるに決まってんだろ!電気に水道にガス、ネットにリフォーム工事、なんでもござれってんだ!」
「流石ひろちゃん。…今言ったこと全部してもらうことになるけど大丈夫?」
「…期待していいんだなぁ?」
「もち、ひろちゃんとこの技術はどれをとっても最高。いくらでも出す。」
「馬鹿野郎、オメェ!褒めすぎだろ!…金は友人割引するぜ!なんだってオメェは俺のダチだからな!」
電話先でガテン系な話し方をしているのは俺の友人で谷口ベースエンジニアリング(工務店)の店主の谷口ヒロキである。年は10歳以上と離れているが、幼い頃から付き合いがあり、多摩在住時代から可愛がってもらっている。こんな話し方だが1級建築士の資格を持ち、大手ゼネコンが敵に回したくない最強の工務店と呼ばれるほどの技術力、なんでもできるマルチ性、アクは強いが腕のいい職人を束ねる強者だ。ちなみに名前の由来は世田谷なベースやアルプスなエンジニアリングから取っている、と本人談。
「んじゃ、明日の午前中にトレセンに行くよ!ちゃんと許可証とか手配しろよ!」
「あんがと!そこは任せろ!」
ブツっと向こうが切ったのでとりあえず明日以降の段取りを済ませに事務局に許可を取りに行き、マルゼンスキーとの約束を果たすために再度カフェテリアへと行く。まだいなかったので5分ほど待っていると、
「ヤッホー、トレーナー君!待った?」
とドラマで見るような登場をする。
「いや、今来たところだ。用事とかは大丈夫か?」
「もちのロン、フリーよ!」
「そうか。…改めて自己紹介しよう。俺は仙水寺櫻弥、この春からトレセン学園で勤務する新人トレーナーだ。一応トレーナー経験は海外で積んできたが、まだ若輩者だ。……まさか君のような日本トップレベルの担当になるとは思ってなかったが…よろしく頼む。」
「よろしくね、トレーナー君^o^。私はマルゼンスキー、ルドルフ同様高等部の一年よ。好きなものはナタデココとタッちゃんよ!」
「た、タッちゃん?」
「あら、ごめんなさい!タッちゃんは車よ!…ランボルギーニカウンタックだからタッちゃん。まだ免許がないから実家にあるけど取ったら乗るのが夢よ!」
「ら、ランボルギーニ!?…君の家はお金持ちなのか?!」
「うーん、ないと言ったら嘘になるわね…ってそれは今はいいの!ねぇねぇ、海外の生活とかってどうだったの!私にも教えてくれないかしら?」
「そうだな。…今後の話をしながら教えるよ。」
カナダにいた頃の話や担当した海外のウマ娘の話、さらには今後の俺たちの拠点やカリキュラムについて触れてゆく。
「俺は実践主義でね、模擬レースを何度か行ってもらうよ。そこから君の強みや弱み、さらには技術の習得なんかも炙り出して行こう。…それに楽しまなきゃな。」
カバンからタブレットを出し、とある動画を見せる。…これは今まで育てたウマ娘たちの走りを切り抜いた動画を見せる。
「俺たちが目指す先はー。」
俺たちが今後目指す目標を告げると彼女は目を輝かせながら、俺の手を握り嬉しそうに語る。
「最っ高よ!なら行きましょう、夢の果てまで!」
今はまだ未完成の夢だけれども、前へと進む。この娘となら…、あの頃に置いて行った心の熱を取り戻せるような気がした。
今日のトレーナー行動録( ◠‿◠ )
・一触即発の雰囲気〜目をつけられた元神童
・ウマ娘疑惑の秘書さんと研修
・新興スポーツメーカーの創業者特定
・暇つぶしの邂逅〜桐生院とTトレ
・皇帝とスーパーカー〜初の生徒との接触
・一目惚れ?マルゼンスキーの美貌
・担当決定!〜マルゼンスキー
・トレーナー経験アリマスネェ!〜ヨーロッパ勢のコネクション
・お前んち(トレーナー室)オッバケやーしき!〜不良債権引き取ります^o^
・リフォーム受注〜コネクションは使う物!
・アイスブレイク〜自己紹介は親交の基本
・心に灯るは優しき夢の炎
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第3走 嵐を呼ぶ!模擬レースで駆け抜けろ!前編^o^
私かわうそ、昼と夜の温度差やストレス、疲労などなどで体調を崩しておりましたw
春は過ごしやすい温度になる反面、体調を崩しやすかったり新年度のため人事異動や配置転換と環境の適応に苦労する季節でもあります。ご自愛くださいませ(*´ー`*)
さて今作は3部に分けてお送りします^o^
鬼滅の料理人は今週か来週あたりに投稿予定でございます。お時間がございましたら、是非読んでいただけたらと思います。
「おうおう、櫻弥!オメェのベースの執務室の方は完成したぞ!」
「ほんとか、さすがひろちゃん!」
カフェテリアで書類の作成やマルゼンスキーのデーターを俺が管理する評価管理システムに落とし込んでいたところに、工務店のひろちゃんから執務室の完成を告げられた。
「まずはオメェが見てから水回りやネット回線、他の部屋の工事もするぜ!やっぱり使うやつがみないと始まらねぇからな!」
「それはありがたい。」
〜元神童、移動中〜
外観はまだ塗装中であるが、中に入ると広々としたトレーナー室が出迎える。
「中は光を取り込む為に大きめの窓と木そのものの良さを活かした部屋だ。冬でも大丈夫な床暖房付き、エアコンも完備。どちらかと言うと白い家具を置くイメージをした執務室だが…。」
「問題ないどころか最高だよ!あとはお願いした調理室、更衣室、合宿ができるような宿泊室、トレーニング室にスタジオとかも依頼書通りに頼むよ!」
「おうっ!任せとけ!…ところでヨォ、なんかここ最近、更にトレセン学内が浮き足立つような雰囲気を出してんだが…一体何があったんだ?」
「あぁ、それなら俺主催で模擬レースを開催するからだよ。実はー。」
〜現在より2週間ほど前〜
「……参ったな。」
俺が創業したスポーツメーカー、E-Motionsから日本のウマ娘のデーターが欲しいとの要望メールが届いた。
「あら?トレーナー君、どったの?そんなしょぼくれた顔して…まるでバブルが弾けた顔しているわよ?」
「え、何その例えはっ…?…実は俺がいた会社からメールが届いてな。どうやら日本のウマ娘たちの運動データーが欲しいって内容なんだ。」
「…ちょっと待っち、トレーナー君って21よね?ルドルフからそう聞いていたけど…。」
「ん?あぁ、そのことな。俺、カナダで飛び級して大学入ってから仲間たちと企業を作ったんだよ。名前はE-Motionsってー。」
「E-Motions!?あの超大手の?!冗談はよしこちゃんにー。」
無言で社員証(役員)と名刺、更には日本法人のホームページを見せる。一応俺の役職は本社商品開発部門統率リーダー(役員職)兼日本支部副支部長と大それたものだ。……マジでこんな仰々しいのは勘弁…。まぁ、頑張ったからね。
「電話もしてみるわね。」
電話で俺の名前を出すと…「うちの役員になにか?」と言われ、挙げ句の果てには俺の携帯にオペレーターから連絡が来る始末。その様子に目を点にさせてオペレーターとの会話に勤しむ。
「後で急な調査依頼はやめろってクリスに怒っておいて。…え、できない?わかったよ、ただ文句は言わせてもらうことは伝えといてよ。こっちだって色々と許可を取らんといかんからな。」
電話を切り、一息つけるとマルゼンスキーが信じられないと言った顔をしながらこちらを見つめる。
「…どうしたんだマルゼンスキー?そんな信じられないって顔をして。」
「いや、トレーナー君。…もう一度聞くね、…トレーナー君は中央トレセンのトレーナー資格最年少記録を持っていて、大卒で新興大企業の開発チーフで役員…、それで私のトレーナー…なんだよね?」
「そうだな…、正確にいうとトレーナー、会社役員兼株主、准教授、商品開発チーフだ。あと俺は大学院卒になるな。」
「OH…、マイッチング!」
「…恐らくここまではルドルフも知らない情報だ。…とまぁ、俺の話はどうでもいい。許可は理事長達に取るとして…問題はこの実証に付き合ってもらうウマ娘がいるかだ。…なぁマルゼンスキー、何かいいアイディアはないか?経費は向こうでの落せりるからいいけど…。」
「んー、そうねー。…この時期って模擬レースをするのが一般的よ。私も中等部の頃、リギルって言うチームに入った時もこのレースをしてスカウトしてもらったの。」
「リギル…なるほどあの東条トレーナーのチームか。…よく移籍できたな。」
「まぁね!ちょうど新しい環境に挑戦したかったし、おハナさんも良いって言ってたからまさにグッドタイミングだったわ!」
「…なるほど、これは東条トレーナーに沖野トレーナーあたりに弄られそうだ。…模擬レースか。…なら参加賞やご褒美が必要だな。」
「…ちょ待って、ご褒美?参加賞?」
「そうだ。データーを取らせてもらうんだ、それなりに報酬は必要だ。」
「そ、そうだけど。」
「というより、日本はなんでも無償でやらせすぎだ。きっちり払うべき所を払わない、報酬を与えないのはモチベーションにも関わる。……無償の奉仕なんてまっぴらごめんだ。」
「…。」
少し困った顔をするマルゼンスキー。…少し居心地が悪くなった。
「すまない、空気を悪くした。これから許可を取りに行く。今日はこれで解散だ。…明日の放課後、またここで。」
男としては落第点だが、その場を離れるしかなかった。……こんな意気地なしですまないな…、マルゼンスキー。
ー理事長室ー
「了承!君の所属する企業からも資金を流してくれるなんて思っても見なかったぞ!」
「データーをくれって言ったのはあいつらですよ。それくらい出さないようで有れば俺の方が切り捨てますよ。」
「うむ…。君はかなりドライな性格だな。アマノリュウセイから聞いていた話とは違うようだが…。」
「…あいつは勘違いしています。あのトレーナー同様、人を見る目がない。…俺は…縁が切れたらそれまでって思ってますから。…だからこうして理事長やたづなさんが俺を覚えていてくれたことやトレーナーとして採用してくれたのに感謝しています。」
「悪い気はしない…が、君は人を信頼してみるべきだ。…君より幼い私が言うのはどうかと思うが…。」
「…理事長、俺は人よりも自分を信頼してないんですよ。……これも全て夢で実は何もない、トレーナーでもない社畜なんじゃないかってね。……人よりも…自分が信じられないのですよ。…あの頃から。」
「……私は信じるぞ。君が、祖父が君に抱いたURAの未来を。そして担当のウマ娘とこの業界を盛り上げることを!」
「……ありがとうございます。」
その熱意と想いのこもった言葉は……深く心に突き刺さったのであった。
理事長室を後にした俺はこの模擬レースの準備を始めた。まず最初に電話したのは知り合いの食品会社だった。
「もしもし、うん。俺だよ俺。…オレオレ詐欺っていつの時代だよ。…うん、そうそう。今度模擬レースをやるんだけどさ、その参加賞に俺がブレンドしたにんじんドリンクを生産と卸して欲しいんだ。…味?もちろんあのグルメ野郎お墨付き。…わかった、明日の夜にそっちに行くよ。…じゃ。」
先ほどのグルメ野郎は知り合いの料理人で知る人ぞ知る料理評論家である。次に連絡をかけたのは俺が役員をしているE-Motions本社社長室。
「もしもし。…データの件は大丈夫だがいくら出すんだ?……それだけ?ふざけんじゃねーよ!今すぐE-Motionsを潰すぞ!…何?悪かった?なら最初から言うなよ。…うん。…なんでその予算なんだ?……役員会だと?まさかお前も…違う?ならよかった。……理由は?……アジアだからか?…今すぐ役員会議を準備しろ。ちょうどあの無能たちを追い出したいところだったんだ。…今日は随分と物分かりがいいなジョン。……なるほど、君もその意見には賛成なんだな。…あのジジイども、俺たちに取り繕った割には仕事しねぇし現場を蔑ろにするからダメなんだよ。…何、日本支部のデーター作成や保管事業を提唱したのがあいつらだと?んなもん新しい人事のやつに任せろ、丁度良い人材が本社にいるし。…あいつらには会社の経費で日本の土地すら踏ませるな、…そのつもり?ならいい。……もちろんだ、君と俺たちの夢は変わらない。人間とウマ娘たちのより良いスポーツと余暇を、忘れるはずないさ。んじゃ、会議の内容のメールもよろしくな。後試作品の件も日本支部に通達しとけよ。」
どうにか長い連絡を終えて、カフェテリアでウダウダしているといかにも女帝といったような雰囲気のウマ娘に声を掛けられる。
「…先ほどから商談みたいなことをしているが…、ここはそう言うところではないのだが。」
眉間に皺を寄せて、こちらを威嚇しながら問いかける。
「……そのアイシャドウにその雰囲気、女帝エアグルーヴだな?なるほど、それが君の目指す女帝か。…失礼、俺は先日トレーナーになったー。」
「知っている、仙水寺トレーナーだな。たわ…私のトレーナーがよく話題にしていた。異端児だとな。」
「ほう、異端児か。…面白い表現だな。…先程の電話とかで不快な思いさせたのは申し訳ないが流石に敵意を持たれる覚えはないぞ。」
「いや怪しいからだ。」
その一言でなんとなく合点してしまった。オレオレ詐欺みたいな語りにいきなり英語で怒ったりとしていた俺を怪しむのは無理もない。
「それは悪い。……トレーナー業務以外にも副業をしているからな。…それに君らにとっても面白い催しをするからその準備をしていたんだ。もちろん、理事長お墨付きでな。」
「…!」
エアグルーヴのケータイに着信が入る。
「多分、君の予想通りの内容だ。確認してみな。」
彼女がケータイを見るとそこには理事長秘書から全生徒に向けた一斉メールだ。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
TO:トレセン学園全生徒
FROM:トレセン学園事務局
本日より3週間後の水曜日から金曜日にE-Motions主催でトレセン学園模擬レース杯を開催いたします。参加者には主催者より豪華参加賞や商品を贈呈いたします。加えてレースのデータから評価なども送られる予定です。
詳しい内容につきましては今週中に説明会の開催や文書、ポスターなどを配布いたします。ご不明な点がございましたら、仙水寺トレーナーにお聞きください。
またレースに出場する生徒は予定や出走予定のレースを担当トレーナーと相談の上、ご参加をお願いします。
仙水寺トレーナーの連絡先
・sensuiji-sakura@c_toresen.com
早川たづな
・umausumejanai-tm@c_toresen.com
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
この内容を見て、エアグルーヴは驚いた様子で俺を見る。それと俺のメールボックスにはたずなさんから説明会やポスターの作成、人員などについての確認や作成要請が送られてきた。
「ゆっくりはしてられんな。…じゃあな、エアグルーヴ。担当トレーナーにもよろしくな。」
「!待て!仙水寺トレーナー!」
「待たないよ〜。少し忙しくなるし何かあればメールしてくれ。」
止める女帝を振り切り、静かに資料を作成できる図書館へと向かうのであった。
_____________________
「トレーナー君、すごいことするのね!」
マルゼンスキーは昨日のことを気にしていない様子で俺に声を掛ける。
「…まぁな。…昨日はすまない、ロクに練習も見れんかった。」
「別にいいわよ!…今日からスタートするんでしょ?コンディションはバッチグーよ!」
「お、おう。…とりあえず君の得意な距離、脚質を見せてもらおう。…今の全力でやってほしいが大丈夫か?」
「もちのろんよ!」
〜タイム計測中〜
彼女の得意な距離適性はマイル、脚質は逃げ。その速さは都会の華やかな道を駆け抜け、桜の花びらを散らしながら行きたいところへと自由に走り抜けてゆくスーパーカーが如し。美しくも速く、ターフを駆け抜けてゆく様に…見惚れていた。
「ふぅ!どう?私のタイムは?」
「あ、あぁ。」
タイムを見せると上々と言わんばかりの笑顔でこちらを見る。
「どう?私の走り、お眼鏡にかかったかしら?」
煌めく髪をかき上げて、少しバブリーではあるが腰に手をあてながら俺に問いかける。
「…最高だよ!…それに君に惚れたよ。君の魅力を最大限、それどころかダイヤの輝きなんて霞むほどの魅力を君に感じたよ!」
かなり臭いこと言ったのになぜかその言葉に目を大きく見開き、すごく嬉しそうな顔をしながらこちらを見つめる。
「ふふっ、私に釘付けってことね!なら目を離さないでね、いつの間にか走り去って行くから。」
そう言った彼女の表情は今まで見た景色や物、人の中で1番輝いて見えたのであった。
〜中編に続く〜
今日のトレーナー行動録
・トレセンベース進捗報告1〜トレーナー室
・浮き足立つトレセン学園〜大工も気になるその内容
・21歳、会社役員です(准教授兼研究員etc…)〜マルゼンスキーもおったまげ!
・仙水寺トレーナー、イエローカード
・コネクションは使う物
・お電話レ○プ!?不審者と化したトレーナー!〜怪しむ女帝
・開催決定!〜模擬レース、トレセンE-Motions杯
・華やぐ都会のスーパーカー〜マルゼンスキーの本気の走り
・口説き文句は億千万の輝き〜君に惚れた!
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第4走 嵐を呼ぶ!模擬レースで駆け抜けろ!中編(๑˃̵ᴗ˂̵)
今週からまた30度を超える天候が続くとのことで、皆様お気をつけてお過ごしください^o^
さて、今回は説明会andレース直前回( ^∀^)
あの黄金不沈艦も登場します!うまく彼女を表現できたか心配ですが、カワウソなりにできたと思います(゚o゚;;
生暖かい目で読んでいただければ幸いです^o^
〜トレセンベース、トレーナー室〜
「なるほどな!…それで着々と進んでいるんだな?」
「まぁね。近々ひろちゃんとこにイベント設営とかのお手伝いを頼みたい。もちろん費用はこっち持ち、職人さんたちのボーナスにも色つけるよ。」
「おいおい、そこまではやりすぎだぞ?」
「いや、それぐらい重要なんだよ。…ウマ娘のデータはスポーツ医療に科学、それに商品化…全てにおいて必要なんだ。ウマ娘に耐えられる構造でないとダメだからね。」
「なるほどな。」
「それにこのデータは人間のスポーツにも応用できる。製品を作る上で彼女たちのデータはお金にもなるし、独占すれば…考えればわかるよな?」
悪い笑顔をひろちゃんに向けると
「そりゃあ、おめぇ…。…お前もワルよのぉ。」
「そっちこそ。」
「へへへっ、そう考えりゃおもろしれぇ!…乗ったぜ、そのシノギ!」
「お、おう。じゃあ、頼んだぜ。」
悪い大人たちがやる模擬レース、嵐の予感が満載だ(二チャ顔)
_____________________
〜たずなさん一斉メール送信後、レース説明会〜
「ふぅ……。」
資料をまとめるのをひと段落し、説明会の会場である会議室を覗くと…予想以上に人数がいることにびっくりした。
皇帝シンボリルドルフを始め、エアグルーヴ、ナリタブライアン、サイレンススズカやシリウスシンボリとビッグネームも混じっている。その中にはマルゼンスキーもルドルフたちと共に待っているようだ。
俺の視線に気づいたのかマルゼンスキーはこちらにウィンクを送る。......知ってるか?彼女、高校生なんだぜ?こんな大人な女のウィンクをする10代の女の子なんて見たことないよ(^◇^;)。
おっと始まるな。さて…SHOW TIMEだ!!
「では今回の模擬レースの責任者である仙水寺櫻弥トレーナーからご説明させていただきます。仙水寺トレーナー、お願いします。」
慣れた口調で俺に説明をバトンタッチする。
「お集まりの皆さん、お久しぶりです。今回の模擬レース責任者の仙水寺です。みなさんにもメールを送付させていただきましたが、今回のレースはE-Motionsが主催となっての模擬レースとなります。それにつきまして、主催者側は皆さんの走りのデータを計測と採取を3日間に分けておこないたいと思っております。」
皆はザワザワとなりだすが次の一言で静かになった。
「ですが、このデータを元に皆さんの走りの癖やタイム、そしてそれによって算出される皆さんの今現在の走りの評価や弱点などのフィードバックを皆さんにもお渡しします。。いわばこのレースはみなさんにとっての実力試し、模試と言ったようなものです。これからのレースの前哨戦、本番に向けての自分の立ち位置にも役立てると思います。」
驚いたように息を飲む音がする。
「もちろんそれだけではございません。このレースに出た生徒全員にはE-Motionsの発表前の新製品のスポーツウェアと「素の味」*1とE-Motions Japanがトレセン学園限定で販売するミックスにんじんドリンク「キャロベジフルα」2Lを参加賞としてお贈りします。また各距離と芝、ダートの部門ごとで最優秀タイムを残した生徒にはE-Motionsのオリジナルブランド「Craft Voyagers」*2のシューズ2足分の無料受注チケットを贈呈します。」
「「「「「!!?」」」」」
皆目の色が変わる。先ほどもびっくりしたような顔をしていたがCraft Voyagerの無料受注チケットに食いついてきた。
「…これは当然の対価です。色々とレースの予定のある生徒たちへの協力という形で走って頂くので 我々E-MotionsおよびE-Motions Japanが全力でバックアップさせていただきます!さらに!」
スクリーンを変えてみんなに見せたのはE-Motions直営のアンテナショップがトレセンにできるという告知だ。
「今回から我々がレースと同時に一部区間にE-Motios Students Store 略してESS*3を開店することになりました。購買部とも連携しており、購買部で買い物をするとESSのクーポンがもらえます!」
「「「「「え、えぇぇぇぇぇぇぇ!!?」」」」」
皆、目を飛び出しながら驚く。…美少女らしからぬ表情をする中、エアグルーヴとマルゼンスキー、シンボリルドルフだけは涼しげな顔をしていた。正確にはマルゼンスキーとシンボリルドルフは知っているためか驚かず、エアグルーヴは不信感からか苦い顔をしている。そのためかエアグルーヴは手を上げてこちらに問う。
「はい、エアグルーヴさん。何でしょうか?」
「…質問が何点かあります。まず仙水寺トレーナー、あなたは何者ですか?…先ほどから我々と言っていますが…。」
「ふむ、…そこからですか…ちょうどいい。たづなさん、もう少しお時間いただけませんか?」
「構いません。皆さんは大丈夫ですか?」
皆口々に大丈夫と同意したので自分のプロフィールを出す。
「改めて皆さん、私の名前は仙水寺櫻弥。トレーナー資格を持っていますが、同時に私はE-Motions創業者メンバーであり商品開発の役員です。またアメリカ・カナダのトレセン学園やフリーランスでトレーナー業もしていました。証拠にー。」
スライドでカナダ・アメリカのトレセンやフリーランス時代の集合写真、指導風景が映される。
「これはバロンルージュとその友達が俺の元に遠征に来た時のもの。これは私の住んでいたトロントにあったカナダ中央トレセン契約時のものです。」
皆、豆鉄砲に当たった鳩のように驚いた顔をしている。
「おや?皆さん反応がないですね…、エアグルーヴさんも。」
「…なるほど、噂に聞く異端児ぶり…納得の経歴です。」
「それはどうも…。さて、参加フォームは今配った用紙のQRコードを読み込んでから必要事項を入力して下さい。また、この模擬レースは必ず担当トレーナーに一声かけてください。」
「「「はい!!」」」
「では今回の説明はここまで。個別に質問がある場合はその用紙に書いてある連絡先かカフェテリアとかで声をかけてくれれば対応するのでその時にお願いします。それでは以上、解散。」
_____________________
「トレーナー君!」
「どうした、マルゼンスキー。」
「すごかったわよ!まるで社長みたいでカッコよかったわよ!」
「そ、そうか。…マルゼンスキーも参加するだろ?」
「もちのろんよ!だから声をかけようとしたの。」
「あぁ、なるほど。一応君もこの応募用紙のQRコードを読み込んでから申し込みをー。」
「それと…そのことなんだけどね…。実はー。」
彼女から言われたのは……スマホがうまく使えないとのことだった。加えてパソコン類もからきしとのこと。
「ま、まじか。ちなみに連絡手段は?」
「えーっと、ポケベルとぉ…固定電話?あ、あとすまほの通話なら大丈夫よ!(^◇^;)」
「…だめだこりゃ(・ω・`)」
これはトレーニングの他にスマホやPC操作の時間も入れないとな。
「とりあえず一緒に操作しような?」
「…オーキードーキー。」
↓
↓少女、元神童応募中
↓
「ふう…。さて、応募も終わったしトレーニング行くぞ!」
「イエイ^o^。」
その後はトレーニングをして終了。本番までは彼女の現在の走りの調整、スキルの確認をする。
「君の本気の走りの傾向はスタート時よりもスタートしてから約¼の距離らへんから加速している。さらにコーナリング時や加速の踏み込む時のパワーにスタミナは同年代、それこそシンボリルドルフにも引けを取らない。そして今回はメイクデビュー前の前哨戦、さらには君の本格化した体の調整という意味合いもある。」
「…どゆこと?」
「つまりだ、本格化したばかりの体を使うことに慣らすことと君はコーナリングの時と加速する時のパワーがすごいってことだ。今回のレースはこれをメインに鍛えようぜって意味だ。」
「わぉ、すごくわかりやすい。」
「まぁな、これでも経験はあるからな。…けど、専任で担当するってのは初めてかも。なんせサブだったり短期…そのウマ娘の能力改善がメインだったからな〜。」
「…弱点改善って、そっちの方がすごいんじゃ?」
「…いや、長期での経験は本当にないからな。……俺はあくまでもサブやセカンドオピニオン、つまり第三者の専門家という立ち位置でしかウマ娘たちのトレーニングを見ていないんだ。…それに関しては下手なトレーナーよりも自信はあるよ。」
「そうなのね。…でも無問題!だってあの夢を言ってる人だもの!問題ナッシング!それにー。」
「それに?」
「…なんでもないわ!」
一瞬懐かしそうな顔をしたが、いつもの輝くような笑顔で言い切った。
「…そうか。じゃあ、行こう。…君の走りを見せつけに行こうぜ?」
「アイアイサー!^o^」
_____________________
〜中央トレセンE-Motion杯、模擬レース当日〜
「うひぃ、まさかここまで集まるとは…。」
当日現れたウマ娘たちの数は…怪我やレース出場前、遠征中の生徒を除くほぼ全員…つまり…1500名超えの生徒が集まったのだ。工場、営業、日本支社に関係各社が総動員のこのイベントはトレーナーなのならず、ウマ娘ファンも参加しているイベントだ。つまりだ、……ビジネスチャンスもできるというわけだが…。
「へいらっしゃい!トレセン名物のゴールドシップ様の焼きそばはこちらだぜい!」
中央トレセンで有名な問題児、ゴールドシップが焼きそばの屋台で焼きそばを焼いていた。
「なんでお前がそこにいるんだよ…。」
「おっ、説明会の兄ちゃん。私の焼きそば食べるだろぉん?」
「いただこう。…じゃなくて、ゴールドシップ。君も選手だろ?なんで屋台なんてやってんだよ!」
「そりゃあ、おめぇ。稼ぎ時だからだぜ!こんな祭りをやるんだ、儲からないわけねぇだろ?!」
「そりゃそうだが、許可はー。」
「出したぞ。」
出店リストには「ゴルシちゃんの焼きそば屋」がちゃんと載っている。
「嘘だろ…。……いくらだ?」
「おう!ゴルシちゃんの屋台だからなぁ、564円だ!」
「語呂合わせもいいが端数もかよ…。端数のないカナダが懐かしいぜ…*4はいっ、564円ちょうどな。」
濃ゆいソースの香り、半熟の目玉焼きは食欲を沸かせるには十分であった。…てかこいつ、見た目の割に料理うまいのかよ…。
「毎度ありぃ!…なぁ、兄ちゃん。ゴルシちゃんはどんなんだい?」
「…君の実力のことかい?」
「あったりまえだろ!…で、どうだい?」
「……ほぉ、なるほど。…君の体のコンディションは完璧だな。筋力もしなやかで恵まれた体、鋭いピッチ走法ではなく、足のバネと体のしなやかさがパワーを生むストライド走法。…そして君の体格からして、スタミナとパワー勝負の中長距離が適正距離。多分走りの適性は追い込みだな。」
「…正確すぎてきもっ。(・ω・)」
まだ高等部?*5ではないはずの彼女は俺の言っていることを簡単に理解しているようだ。真顔ではあるものの、そんな雰囲気を醸し出している。
「お前が聞きたいって言ったから言ったのに!?Σ(゚д゚lll)」
「……なんでわかんだよ。兄ちゃんに走りを見せたわけでも、コーチしてもらったわけでもねぇのに。」
「初歩的なことだ。…ゴルシと呼ばせてもらうぞ。まずは走り方の適性。お前の噂はかねがね聞いていた。色々と問題行動は起こしているが、一方で後輩や近隣の小学生には人気者。それに先程の会話から察するに、気分が上がらないことはやりたくない主義。ただし、燃えるようなシチュエーションは楽しむお祭り男気質。なら考えられるのは差しか追込み。スロースターターぽくてこう言った性格、さらにフラストレーションを一気に爆発させるなら間違いなく後者の追い込みって推測できる。次に距離適性。マルゼンスキーのように短距離やマイルも考えたが……それだとお前のフラストレーションはたまらない、そうだろ?」
「お、おう…。けどそのフラストレーションはー。」
「そう、レース前からその気持ちがないといけない。そしてレース中も求めるとなると駆け引きや追い抜く走り方が可能な中長距離が適性だと思う。最もゴルシの気分次第でパフォーマンスは変わるだろうし、お前はかなり気分屋なところがあると俺は思う。」
「…兄ちゃん、超能力者かなんかか?それかか悪魔の実とか。」
「まさか。俺はカナヅチじゃねぇよ。…お前はこの学園じゃ有名人だからな。…それにゴルシを見ればどんな能力かは想像しやすい。それが当たったまでの話だ。」
「ほーん。」
「ま、頭のいいお前ならそれを生かしたトレーニングとかするだろうな。」
「なるほどな。…兄ちゃん、トレーナーをトレーナーに育てるようなことしてただろ?大方ウマ娘の指導法を含めてのな。」
先ほどまでのおちゃらけた雰囲気から真剣な表情へと変えてこちらに問いかける。
「まぁな。……職業柄トレーニング法の開発にも携わっていた。だからこうしてウマ娘だけを見るのは初めてと言っていい。」
「ふーん。…ま、ゴルシちゃんには関係ねぇーけどよー。……大変だぜ、ウマ娘は。」
「百も承知だ。ゴルシのように気性難な学生も相手にしないといけないから。」
「手厳しいなっ!」
「…そろそろ時間だ。じゃあな、ゴルシ。また会おう。」
「おうっ!またなー!」
「マルゼンスキー。」
「あっ、トレーナーくん!」
「レース前だが調子はどうだ?どこか痛みとかないか?」
「全然!むしろ絶好調のバッチグーよ!( ^∀^)」
「そうか。…それはよかったよ。…なぁ、マルゼンスキー。」
「なぁに、トレーナーくん。」
「…。君が他の娘たちを圧倒する輝きを俺に見せてくれ。」
これは遠回しに勝てと言っている。他の追随を許さないスーパーカーと呼ばれる彼女の走りを…俺は見たいのだ。
「Wow!大胆なのは嫌いじゃないわ^o^。…ねぇ、トレーナーくん…私、誰よりも早く走るからだから…見逃さないでね。」
彼女は俺の手を握り、ダイヤモンドすら霞むような輝く笑顔でこう言った。
「…なら、私から目を離さないでね。あっという間にターフを駆け抜けるから!」
「もちろんだ。」
初の担当ウマ娘が走るレース、この時…マルゼンスキーの凄さを改めて思い知ることになったのであった。
今日のトレーナー行動録
・悪い顔お兄さんin工事中のトレセンベース
・元神童、説明会を覗く〜そうそうたるメンバー
・模擬レース説明会〜豪華参加賞と優秀賞
・エアグルーヴの質問〜異端児の経歴
・マルゼンスキーハイテク化計画始動(予定)
・君の強さの再確認〜スバリスト*1も唸るコーナリングとパワー
・ゴルシちゃん邂逅〜美味しいゴルシ焼きそば、はじめました^o^
・ゴルシの脚質〜初歩的なことだよ、ゴルシくん
・君の本気を見せてくれ〜見逃したらだめよ?
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第5走 嵐を呼ぶ!模擬レースで駆け抜けろ!後編(๑˃̵ᴗ˂̵)
たぬき小説も書いているのでそちらも是非読んでいただければかと思います(^^)
最近ではめっきり寒くなり、あったかいものが美味しい季節になりました。
あったかいものを食べて、体を温めホッとするこの季節を楽しもうと思う今日この頃。皆様もお身体にご自愛していただきながら、この季節でしか楽しめないことを味わって頂ければかと思います^o^
天翔ける龍が如く、文字通り空高く龍が舞い上がり自在に飛ぶ様を表した言葉である。名も知れない、とある小説家が書いた物語でこの言葉を体現したウマ娘がいた。アマノミコト、架空の存在でありながら俺の心に炎を宿し、夢を与えた存在であり…同時に…硝子の天の川と呼ばれた幼馴染のアマノリュウセイに恋心を抱いたきっかけでも…あったのだ。そして…彼女がアマノミコト以上のウマ娘なのだと信じきっていたのだ。
でもそれはこのレースを見るまでの話。…俺の担当、マルゼンスキーが簡単にそんな想いを吹っ飛ばしたのだ。そして俺の心の中にあったアマノミコトとアマノリュウセイの呪縛からも解き放つものだった。
レースは最初から最後まで…彼女の独壇場で一緒のレースであった絶頂期の先輩ウマ娘にも先頭を譲らなかった。まさに圧巻の一言だ。
「行けー!マルゼンスキー!走り抜けー!」
春の陽気はいつしか熱気になり、加熱するウマ娘たちのレースが更に心と体感温度を上げてゆく。流れる汗と共にマルゼンスキーへと叫んでいた。ハッとするが、彼女はこちらをチラリと見たような気がした。そして…ウィンクで返事をする。
ゴールを抜き去り、流す彼女の元に駆け寄るとー。
「はぁ、はぁ。トレーナーくん!」
彼女はこちらを抱きしめる。走ったばかりなのかドキドキと彼女の鼓動が伝わってくる。…おっすごいとなったのは内緒の話^o^。
「最高だったわ!トレーナーくんのトレーニングもだけど…あの時の応援、すっごい力が出たの!」
嬉しそうにそう言った彼女に頭を撫でて、タオルを掛ける。
「最高の走りだ。誰も君に追いつけないし、君に釘付けだったよ。」
「もうっ!トレーナーくんは私をキュン死にさせる気?!…でもありがとう!」
〜アナウンス
「本日の芝、マイル部門トップはマルゼンスキー選手。今大会最速記録をマーク、当社のアメリカ大陸学生記録のマイル5位、ヨーロッパ学生マイルランク20位にランクインしました。」
…嘘でしょ⁈初手でこの記録はスゴスギィ!(キャラ崩壊)
「Wow!凄いことになったわね!」
「…君の実力だよ(震え声)」
「トレーナーくん、アメリカ大陸学生記録ってやっぱり凄いの?」
「…もちろん。カナダやアメリカはもちろん、ラテンアメリカの学生たちの記録だ。かなり膨大ではある。
…ただ…ヨーロッパの方がレースの歴史が古く、レベルも高い。ヨーロッパ記録上位になるとそれこそE-Motionsを超えて世界ランクレベルになる。」
「…今更だけどトレーナー君が作った企業ってぶっ飛び企業ね。」
「…否定はできない。…それに俺もそれは思う。……俺よりも仕事仲間になってくれた奴らが天才だったからな。」
「もう、それはトレーナー君にも言えることよ?」
「…ありがとうな。」
君の言葉で俺は…救われるのだ。
〜それからレースと日にちが過ぎる〜
多くのレースを見る中でやはり突出した実力を持つのがシンボリルドルフやシリウスシンボリの中長距離適性組。短距離は何とまだ中等部のサクラバクシンオー。さらにダートはシンコウウインディ、スマートファルコンと言った中等部の生徒が活躍した。
そして…焼きそばを焼いていたゴルシが芝長距離部門の次点という結果であることに驚きを隠せない。
「イェーイ、ピスピース!v(´∀`=)v=v(=´∀`)v」
皆んなにピスピースと言いながらファンサをする。何故だろう、彼女の背後に変顔をしているUMAが見えるのは気のせいだと思いたい。
「…なるほど。…天性の肉体を生かした走りだな。マルゼンスキーとは違う、ストライド走法特有の歩幅の広さに後半の加速力。…ステイヤーに相応しい走り方だな。」
「ねぇ、トレーナー君。さっきの彼女の走りだけど…まるでワープしたみたいだったわね。」
「…良い観察眼だ、マルゼンスキー。ゴルシはコーナリングの時にあえて皆が走らない内側を走ったんだ。荒れているところを走るのはかなりのスタミナとパワーを使う。…ほぼゴリ押しのような戦法になるがコーナーでガラ空きになった内側は位置どりを狙える最高な穴場であり、いきなりワープしたように先頭へ躍り出ることができるんだよ。」
「おったまげ!常識を打ち破る感じ、嫌いじゃないわ!」
「…だな。…大変だな、彼女のトレーナーになる奴は。」
「?気まぐれってこと?」
「…それもそうだが…その…彼女を飽きさせないトレーニングや試合設定。加えて型破りな彼女に付き合えるバイタリティを持ち合わせていないと難しいな。独創性と体力に常識を破れるというのが最低限必要な要素だ。」
「お!マルゼンスキーのトレーナーの兄ちゃん!見てたか、あたしの走り!」
こっちに向けてブンブン手を振りながらやって来る。マルゼンスキーにも挨拶をして談笑をする。
「なぁ、どうだった?」
「…素晴らしいの一言だ。型破りな戦略ではあるが、ゴルシ自身の頭の良さと柔軟さ、加えてその身体能力…スカウトする人は多いだろうな。」
「そっかぁ!でも兄ちゃんのとこはいいな、なんか…しっくりこねぇかも。」
「おいおい、誘う前に断るなよ。…まぁ元より君をスカウトする予定がなかったからな。」
「兄ちゃんもひでぇな。」
じっと見つめ合ってるとつい笑ってしまった。
「「へへへ!」」
「しっくりこないのはわかるな。俺、お前みたいなタイプを育てたことあるが……な?」
「へへ、ゴルシちゃんつまんねーことは嫌だからな!」
「それに。」
そこにいたのは独り立ちしたばかりのトレーナー比嘉が近づいてきた。
「君は…。」
「…比嘉さん。何か御用で?」
彼や彼を指導した先輩トレーナーとは軋轢もない。ちょくちょく話すぐらいの関係性のトレーナーである。
「…彼女を勧誘してるのかい?」
「いえ。俺はマルゼンスキーが担当ですので。…比嘉さん、あなた…。」
「そのまさかだよ。…ゴールドシップ。」
「おっ?あ、比嘉ちん!どったんだよぉ!まさかぁー、あたしを勧誘しに来たんかー?」
彼女は比嘉さんとも面識があるらしくあだ名で彼の名を呼ぶ。
「うん。…改めてゴールドシップ、僕の担当になってくれないか?」
頭を下げて、手を差し出す。ゴルシはまじまじと見つめ、…手相を診始めた。
「おっ、比嘉ちん。運命線なげぇな!退屈しない、面白みばかりの人生になるでゴルシよ!(´-`)」
「あ。あの…ゴールドシップ?」
「比嘉ちんといると退屈しなさそうだな。いいぜ!一緒に宝探しにでも行こうぜ!」
「えっ、ちょっまー!」
比嘉さんを横脇に抱えながらどこかへと去る。……面識があり、ゴルシの感性にはどこか引っかかるところがあったのだろうか…彼を気に入ったようだ。
「南無…。」
連れてかれた彼の無事を祈る。…比嘉さん、ご愁傷様…。
「嵐みたいな娘ね〜、モーレツっ!(^_−)−☆」
「だな。さ、ちゃんとストレッチして上がろうか。今日は暇か?なんか奢ってやるよ。」
「あっと驚く為五郎!!私、イタ飯がいいわ!!」
「い、イタ飯?」
「もう、知らないの?イタリアンなご飯の略語よ〜。ナウでヤングな流行の言葉よ?」
「な、なうで…やんぐ?と、とにかくイタリア料理な?任せとけ、友人の店でうまいイタリア料理店開いてるやつがいるんだけどー。」
ちなみに従兄弟の話(平成生まれ)とネットを調べた結果によると……イタ飯ブームとナウでヤングという言葉は80年代に流行ったものだ。…彼女…生まれてないのに何故知っているんだろう…という言葉を飲み込みながら、店に電話を入れるのであった。
こうして、嵐のようなイベントは幕を閉じた。
…イベントの内容と結果はだって?1日目に芝短距離マイル、2日目が芝中長距離、3日目がダートというものである。物販や屋台、営業などで大賑わいに加えて、URAおよび全国トレセンのスポンサーが一気に増加し、お偉い連中もホクホクだったとのこと。
ちなみに予算に対して売り上げ達成率は驚異の200%超えだったと報告したら嬉しさのあまり理事長卒倒。資金不足が一時的ではあるが全国トレセンの予算が余剰になったのはここだけの話。
〜E-Motions日本支社、とある会議〜
「…さて、諸君。日本での第一段階は終了した。櫻弥が中央トレセンでトレーナーになったおかげで次のフェーズが予定よりも早くいけそうだ。」
流暢な日本語を扱うモニターに映る白人男性は日本支社の支社長に向けてにこやかに言葉を贈る。
「加えて、君たちの頑張りと日本のエンジニア、販売店スタッフたちの努力の賜物だと私は確信している。」
と、威厳がある感じに言ったはいいものの男には慣れないらしく、すぐにふっと表示してを和らげる。
「…と言ったけど僕らしくない言い方だね。」
「そんなことないですよ、社長。」
「櫻弥がトレーナーとして本腰入れちゃってるし…、これから大変になりそうだよ…。」
「…社長、私は副支部長のことをあまり知らないのですが…一体どんな方なんでしょうか?私を日本支社社長に推薦し、かなり評価していたみたいですが…。」
「え?君わからないの?よくエンジニアたちと白熱した商品会議をしていた日本人の彼だよ。同じ同郷なのに気づかなかったのかい?」
「…確かに日本人であるのはわかっていました。…ただ…年齢が…。」
「なるほどね。君は確か日本の大学に出てからカナダに来たもんね。」
「はい。…よく商品について教えていただいていましたが、まさか…。」
「彼は天才だよ。ウチの開発部門はものを作ることならピカイチだがいかんせん理論や研究がからきしだった。…けどね、そんな時に面白いことを言ったハイスクール生がいたんだ。…若干15歳で僕たちが作りあげた商品の改善点を一発で当てただけじゃ飽き足らず、経営、広告面でもその才能を発揮したんだ…。けどあいつのすごいところはそこじゃない。」
「…と言いますと?」
「あいつは人の特性を見抜くのがすごいんだ。当時からそれがすごくてね…。……僕なんて始めは営業をしてたんだけど…からっきしで。」
「…確かに社長、営業マンとしての実績皆無でしたよね。」
「そこは言わないでよ…。でも逆に経営や運営の才能を見出してくれた。…日本での彼のテレビの内容を見た時は…目を疑ったよ。彼、日本のトレーナー資格の最年少記録を持っているだよ。」
「……まさか、副支部長ってあの…。」
「そう、あのOhmi Snensuijiだよ。」
「……同姓同名かと思いました。」
「だよね。でも画像を見ると本人だってわかるよ。」
「……なるほど。」
「彼はね、この企業に縛られてちゃダメなんだ。垣根を越え、本来専門である育成で活躍して欲しいんだ。」
「…どうしてそんな人が…トロントに…。」
「……それは君にも言えないトップシークレットなのさ。」
画面の前でキメ顔をする本社社長にイラつきを覚えながら、自分を支社長に抜擢した仙水寺櫻弥がどんな人物かを探るために今まで見たウマ娘たちの経歴と今回のイベントの担当ウマ娘のデーターを見た。
「…なんだ…この実績は…。有名ウマ娘もさることながら、ダークホースとして現れた新星シガースモーク*1に至ってはレースレコードまで…。ははっ、ふざけている。」
「だよね。どうだい、彼は?」
「…ますます興味深いですよ。…コーヒーでも飲みながら対談でもしてみたいものです。」
「ふふっ、それは面白いかもね。」
2人は微笑みでこのミーティングは幕を閉じた。…支社長はミーティングソフトを閉じた後に仙水寺櫻弥についてリストアップする。
「……大学の専攻はスポーツ工学と教育学、研究室ではウマ娘の次世代の蹄鉄の研究……。その傍らにサブトレーナーやトロントラプターズ、ブルージェイズの契約専任トレーナー…さらには向こうのトレセンの非常勤講師……てんこ盛りな経歴だな。…ん?」
今日送られて来たイベントのマイル部門のデータのウマ娘とその担当名に戦慄した。
「な、…なんだこの記録。日本にこんな怪物が…。」
担当者名は仙水寺櫻弥、ウマ娘名はマルゼンスキー。2人が打ち出した記録はアメリカ大陸学生マイル記録の上位5位にランクイン、ヨーロッパ学生マイルランク20位というもの。
「本当に何者なんだ彼は…。」
マルゼンスキーというウマ娘はスーパーカーと呼ばれ、中等部時代からかなりの実力者。けれどもアメリカやヨーロッパ勢には敵わないと思えるような記録だった。そう……彼が担当になって早1ヶ月程度、この期間と本格化が関連していることだけは彼も分かっているようだ。
しかし、本格化したばかりのウマ娘は自分の今までとの能力とのギャップで調子を崩すことが多いというのが常識である。そのためトレーナーは本格化したウマ娘の調整をする際は必ず見極めやレースの日程の組み直しなんかもすることもザラではない。それを…調整した…短期間で…。
「中長距離のシンボリ家の令嬢たちも素晴らしいときた。これは日本のレース業界も捨てたもんじゃないな。」
そういう彼は楽しげであった。1人のスポーツ好きの男として今後の日本のウマ娘たちに期待といった感じであったのは言うまでもない。
「彼が台風の目になるか…、それとも。…ふっ、荒れるな。」
仕事に戻った彼はとても楽しげであった。
今日のトレーナー行動録
・アマノの呪縛〜打ち壊すは鹿毛の乙女
・覚醒!マルゼンスキー!〜レコード更新
・レースは閉幕〜モノノフたちの夢の跡
・黄金の不沈艦〜ゴルシちゃんの実力
・ゴルシトレ誕生!〜比嘉トレーナーの受難
・E-Motionsトップ会議〜日本支社の場合
・何者?〜謎のトレーナー、仙水寺
・その怪物と担当トレーナーの出現
・日本の夜明け〜世界よ、これが日本の競バの未来だ
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