BLACK EDGE (ピラフドリア )
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 第1話  【BLACK EDGE 其の1 盗賊】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第1話

 【BLACK EDGE 其の1 盗賊】

 

 

 

 

 村を出て、少し離れたところにある森。そこに一人の男がいた。

 

 

 

 男の姿は赤いコートを着ていて、茶髪である。男は剣を持っており、村で売られている安物の剣だ。

 そんな剣を持って、森を歩く男の前にあるのが現れた。

 

 

 

 それは武器を持った男たちが三人。かなり良い体つきをしており、男たちはニヤニヤしながら男のことを見た。

 

 

 

「おい、兄ちゃん、身ぐるみ全て置いていけ」

 

 

 

 男たちはそんなことを言う。

 

 

 

 彼らは盗賊だ。村に馴染むことができず、犯罪に手を染めたものたち。

 彼らは村から離れて、仲間を集めて行動している。

 

 

 

 そして見かけた人間を襲い、金目の物や身ぐるみを奪う。

 

 

 

 脅して手に入らない時は、攻撃をして殺してでも奪い取る。

 

 

 

 彼ら盗賊は王国の警備兵に追われている。しかし、彼らも武器を持ち武装しているため、騎士でも簡単には対処できない。

 

 

 

 警備兵のいないところでは盗賊はかなり危険な存在であり、旅人は盗賊の住処を避けて通るようにしている。

 

 

 

 しかし、彼は盗賊が現れても逃げなかった。

 

 

 

 盗賊から逃げることはしない。それは盗賊は恐れる存在ではないからだ。

 

 

 

 赤いコートの男は盗賊を睨む。

 

 

 

「あぁ?」

 

 

 

 男に睨まれたことで盗賊たちは一瞬怯むが、盗賊も軽い気持ちで盗賊家業をやっているわけではない。

 

 

 

「だから身ぐるみを置いていけって言ってるんだよ」

 

 

 

 コートの男は剣を持っているとはいえ、一人だ。三人で脅せば流石に降参すると思っていた。

 だが、男は、

 

 

 

「やろうってのか…………じゃあ、かかってこいよ」

 

 

 

 喧嘩腰に指でこいこいとやる。

 

 

 

 だが、この強気な男を見て、盗賊たちは警戒する。

 

 

 

 もしかしたらどこかに誰か隠れているのではないか。それか三人相手でも勝てる自信があるのか。

 

 

 

 盗賊がびびって一歩退いた時、痺れを切らしたコートの男は、

 

 

 

「ッチ、来ないんならこっちから言ってやるよ」

 

 

 

 盗賊に襲いかかった。

 

 

 

 盗賊たちは武器を取り、男に対抗する形になる。しかし、男は剣を抜かず、拳を振り上げて突っ込んでくる。

 

 

 

 盗賊の一人が剣でコートの男に斬りかかるが、コートの男は盗賊の攻撃を簡単に避けた。

 

 

 

 そしてカウンターのパンチで攻撃する。

 

 

 

 続いてもう一人の盗賊がパンチの隙を狙って攻撃を仕掛けるが、コートの男は素早く方向転換し、攻撃を躱すとその男の顔を鷲掴みにする。

 

 

 

「おらよ!!」

 

 

 

 そして掴んだ盗賊をもう一人の盗賊に向かって投げ飛ばした。

 

 

 

「ぐあ!!」

 

 

 

 盗賊は衝突して倒れる。投げたれた方とぶつけられた方は気絶。

 

 

 

「く、くそ……な、何者だ……」

 

 

 

 最初に殴った盗賊はまだ意識があった。しかし、すぐに放っておいても気を失うだろう。

 

 

 

 コートの男はそんな盗賊を踏みつける。

 

 

 

「俺か。……俺はブラッドだ」

 

 

 

 

 



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 第2話  【BLACK EDGE 其の2 出会い】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第2話

 【BLACK EDGE 其の2 出会い】

 

 

 

 

 ここはナルスィス村。湖に面した村であり、夕方になると夕日で湖が真っ赤に燃え上がることから有名な村だ。

 

 

 

 そんな村にある一人の男がやってきていた。男は赤いコートを羽織った茶髪の男。身長は高い方であり、筋肉はしっかりついているが無駄な筋肉はついていない。

 

 

 

 男が村を歩いていると、路地からフードを被った子供が倒れてくる。

 

 

 

 男の目の前で倒れた子供は、

 

 

 

「お腹すいたです〜」

 

 

 

 と小さな声でつぶやいた。

 

 

 

 男は無視しようと通り過ぎようとするが、子供に足を掴まれる。

 

 

 

「お腹すいたです〜」

 

 

 

 さっきも聞いた言葉だ。

 

 

 

 男は子供の方を向かずに、

 

 

 

「俺はお人好しじゃねぇ、別のやつに言え」

 

 

 

 男は子供を振り払って先に進もうとするが、子供の力は強く足から離れない。

 

 

 

「お腹が〜」

 

 

 

 

 

 

 男はその子供は凄い勢いで食べ物を貪る。よほど腹が減っていたのだろう。

 

 

 

 焦って食べるあまり、子供はむせる。その様子を見て男は水を渡した。

 子供は水を一気飲みしたあと、

 

 

 

「ぷはー! ありがとうございます。あなた良い人ですね」

 

 

 

 子供はそう言うとフードを取る。

 

 

 

 子供は女の子だった。金髪に青い瞳の少女。

 

 

 

「そうか…………じゃあな」

 

 

 

 男はそう言うと、子供を置いて店を出ようとする。子供はそんな男にしがみついた。

 

 

 

「ちょ、じゃあな、じゃないですよ!! 色々聞くべきことあるでしょ!! なんで女の子が一人でこんなところにいるとか!!」

 

 

 

 男はそれでも無理して前に進もうとする。

 

 

 

「なんですか!! なんで逃げるんですか!! 面倒ごとに巻き込まれたくないからですか!! まぁ、どう見ても面倒ごとですしね!! ちょ、ちょ、ほんも!! まってくださいよ! もう頼れる人がいないんです!! 薄情者! 臆病者!! 弱虫!!」

 

 

 

 色々言われた男はやっと足を止めた。

 

 

 

 ため息を吐くと、少女の方を向かずに言う。

 

 

 

「ここじゃ、迷惑がかかる。場所を変えるぞ」

 

 

 

 少女はしばらくポツンとしていたが、理解した途端元気よく。

 

 

 

「はい!」

 

 

 

 と、返事して男についていった。

 

 

 

 

 しばらく進んだあと、人気の少ない路地裏に入る。

 

 

 

 薄暗い路地はゴミが捨てられており、ネズミもいる。男は堂々としているが、少女は少し戸惑っていた。

 

 

 

 男は壁に寄っかかると、先に言う。

 

 

 

「一応言っておくが、俺も面倒ごとを持ってる。下手をすれば、お前も巻き込まれることになるぞ」

 

 

 

 男の顔は真剣であり、少女を心配していた。

 

 

 

 だが、それでも少女もこの男を頼るしかなかった。

 

 

 

「……大丈夫です」

 

 

 

 

 

 



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 第3話  【BLACK EDGE 其の3 頼る】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第3話

 【BLACK EDGE 其の3 頼る】

 

 

 

 

「一応言っておく。俺も事情持ちだ。下手をすればお前よりも危険だ。それでも俺を頼るのか?」

 

 

 

 男は少女を脅すようにそう言った。

 

 

 

 しかし、少女は臆することなく。

 

 

 

「いえ、私はあなたを頼ることしかできないんです。ブラッドさん」

 

 

 

 名前を呼ばれた男は少女を警戒する。

 

 

 

 奴らの仲間か? いや、それとも……。

 

 

 

 警戒するブラッドに少女は手をあげて何もしないとアピールする。

 

 

 

「安心してください。私はあなたと同じ…………ドラゴンの力を入れられた人間です」

 

 

 

「…………っ」

 

 

 

 それを聞いたブラッドは衝撃を受ける。

 

 

 

 ドラゴンとは神話上の生き物だ。存在しない生物。まずこの世界にはモンスターなどもいない。

 そんな世界にそんなドラゴンなんていう不思議な生き物がいるはずがない。

 

 

 

 だが、

 

 

 

 ブラッドは自分の右手を見る。

 

 

 

 ブラッドは赤いコートをいていて、手には黒い手袋を嵌めている。そんな腕を見て、

 

 

 

「そうか、お前も……名前はなんて言うんだ」

 

 

 

 そう少女に聞いた。

 

 

 

「私はフェア・ハイネス。フェアと呼んでください」

 

 

 

 フェアと名乗った少女にブラッドは聞く。

 

 

 

「フェア、お前はこいつをいつ入れられた?」

 

 

 

「…………私は、南にある森……そこの……」

 

 

 

 フェアがそこまで言いかけたところで、

 

 

 

「見つけたぞ……」

 

 

 

 突如、男の声が聞こえる。

 

 

 

「しまった!!」

 

 

 

 その声を聞いた少女は焦り出す。

 

 

 

 ブラッドは周りを見渡すが、誰もいない。

 

 

 

「奴らか……」

 

 

 

「はい、逃げ出した私を追ってきたのだと……」

 

 

 

 ブラッドの前にある影から白い仮面を被った男が現れる。男は影から出てくる時、まるで水から出てくるようにゆっくりと出てきた。

 

 

 

「ブラッドさん!! 逃げましょう!!」

 

 

 

 仮面の男は手に剣を持っている。ブラッドもフェアも素手だ。このままだと危険だと思ったフェアが逃げるように言った。

 

 

 

 しかし、ブラッドは仮面の男を見て笑った。

 

 

 

 そして右手で左手を包むと、骨をポキポキと鳴らす。

 

 

 

「ふ、逃げる? バカ言うな。こいつから奴らの情報を聞き出す。俺の目的はそれなんだからな」

 

 

 

 仮面の男は影からで終えると、剣を構えた。仮面の男は黒いフードを被っており、体格がわからない。

 

 

 

「さぁ、準備運動と行こうか!!」

 

 

 

 ブラッドは仮面の男に殴りかかった。

 

 

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 戦闘開始だ!! どのような戦闘シーンが繰り広げられるのか!?

 

 

 

 

 



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 第4話  【BLACK EDGE 其の4 襲撃者】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第4話

 【BLACK EDGE 其の4 襲撃者】

 

 

 

 

 仮面の男は剣を持ち構えた。男の剣は普通の剣よりも短い。

 マントのように大きな服を着ているため、男の体格がわからない。

 

 

 

 暗殺者。

 

 

 

「このガキを殺しに来たってことか」

 

 

 

 ブラッドはフェアの頭をグリグリと撫でる。かなり強く撫でているため、普通なら嫌がりそうなものだが、フェアは大人しく撫でられていた。

 

 

 

 仮面の男の姿は黒いマントのように大きなフードをかぶっており、中のサイズがわからない。仮面は白く、顔のマークが描かれている。

 持っている剣は短いが、かなり鋭く磨がれている。

 

 

 

 ブラッドを見た仮面の男は、

 

 

 

「……貴様は……そうか…………」

 

 

 

 ブラッドを見て何か知っているようだった。

 

 

 

 仮面の男は剣を構えて、ブラッドに向ける。

 

 

 

「邪魔をするなら貴様は殺す。私はその子供の捕獲命令しか受けていない」

 

 

 

「ほう、大事な試験体を殺してでも手に入れたい、このガキ…………少し興味が出るな」

 

 

 

 ブラッドはフェアに「お前はここにいろ」そう言って仮面の男の前に出る。

 

 

 

「何をする気?」

 

 

 

 フェアは心配そうに聞いた。

 

 

 

 ブラッドは右手で左手を包むと、骨を鳴らす。

 

 

 

「こいつをボコして情報を得る」

 

 

 

 ボコすと言われた仮面の男は失笑する。

 

 

 

 

「俺をボコす? 冗談を……」

 

 

 

 仮面の男は剣をブラッドに向けた。

 

 

 

「…………っ!?」

 

 

 

 次の瞬間、気がつくとすでにブラッドは仮面の男の懐にいた。

 

 

 

 ブラッドは左手で仮面の男の腹を殴る。

 

 

 

 しっかりと手応えはあり、仮面の男は殴られた衝撃で吹っ飛ぶ。

 

 

 

 吹っ飛ぶ先には壁がある。このまま壁にぶつかるかと思ったが、仮面の男は壁に当たると姿を消した。

 

 

 

「…………ッち、術師か」

 

 

 

 ブラッドは仮面の男の動きを見て、舌打ちをしながらそう言った。

 

 

 

「フェア、俺から離れるな」

 

 

 

 ブラッドはフェアを肩を掴んで引き寄せた。

 

 

 

 術師とは不思議な力を使う存在だ。

 

 

 

 この世界には魔法は存在しない。だが、それに近い力が存在する。それが術式を使用した魔法に近い特殊能力。

 

 

 

 だが、その力は一般的には広がっていない。

 

 

 

 その力を使えるのは特殊組織に所属する幹部のみ。その組織は術式を研究し、魔術を考慮する。

 

 

 

 魔術師の集団。

 

 

 

 その名をグリモワール。

 

 

 

 全ての元凶はその組織にある。そしてその組織にいるあいつが…………。

 

 

 

 

 

 燃える家。火事の中俺はあいつと出会った。

 

 

 

 紫色のフードを被った仮面の男。奴は黒いフードの仲間を何人も連れて、俺の前に現れたのだ。

 

 

 

 



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 第5話  【BLACK EDGE 其の5 術師】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第5話

 【BLACK EDGE 其の5 術師】

 

 

 

 

 ブラッドに殴られた仮面の男は殴られた衝撃で吹っ飛ぶが、壁にぶつかりそうになると、壁に吸収されるように溶けて壁の中へと入って消えた。

 

 

 

「術師か」

 

 

 

 ブラッドは警戒して、フェアを自分に近づける。

 

 

 

 仮面の男は壁の中に消えた。それは今だけのことではない。

 仮面の男が現れた時。奴は何もないところから、水から出るように這い上がってきたのだ。

 

 

 

 なんらかの能力を使っている。

 

 

 

 その能力がなんなのかはまだ分からないが、姿を消したことからかなり危険な状況なのがわかる。

 

 

 

 ブラッドが警戒していると、ブラッドの足元の地面が波を出し始める。

 それは地面が水のように揺れている。

 

 

 

 これは危険だと気づいたブラッドがフェアを連れてこの場から離れようとする。しかし、すでに時は遅く。

 

 

 

 地面から仮面の男が飛び出してきた。

 

 

 

 仮面の男は剣を振り上げて、ブラッドに攻撃を仕掛けてきた。

 

 

 

 ブラッドは避けていたことで直撃は避けたが攻撃が摩ってしまう。

 

 

 

「……このやろう!!」

 

 

 

 ブラッドは仮面の男に殴りかかる。しかし、ブラッドの拳が届く前に、仮面の男は壁に体をつけるとそのまま壁の中に消えていく。

 

 

 

「なんの能力だ……」

 

 

 

 ブラッドが攻撃しようとしても、敵は姿を消して逃げてしまう。ブラッドに敵を追うことはできない。

 

 

 

 だが、今の攻撃で分かったことが一つある。

 

 

 

「攻撃は姿を現さないとできないってことだな」

 

 

 

 仮面の男は攻撃のタイミングには必ず姿を表す。つまりは姿を消したままでは攻撃ができないということだ。

 

 

 

 それにもう一つ。仮面の男は壁や地面から現れる。逃げる時には必ず何か必要ということだ。

 

 

 

 詳しい条件はわからない。だが、この狭い路地では確実に不利になるだろう。

 

 

 

「フェア、場所を変えるぞ」

 

 

 

 ブラッドはフェアを抱き抱える。フェアの背中に手を回して、お姫様抱っこでフェアを連れて走り出す。

 

 

 

 フェアは大人しくブラッドに抱っこされると、ブラッドの方を見上げて、

 

 

 

「どこに逃げるの?」

 

 

 

 と聞いた。ブラッドは走りながらのため、フェアの方を向くことはできないが一度だけ目線を向けた後、

 

 

 

「もう少し見晴らしの良い場所で戦う。奴の能力が分からない以上、あのまま戦うのは不利だ」

 

 

 

 走って良い場所を探すブラッドに、フェアは、

 

 

 

「逃げないの?」

 

 

 

 と問う。しかし、ブラッドは、

 

 

 

 

「逃げてどうこうなる相手じゃない。またいつ襲われるかわかんないからな。今のうちに潰しておいた方がいい」

 

 

 

 



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 第6話  【BLACK EDGE 其の6 副作用】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第6話

 【BLACK EDGE 其の6 副作用】

 

 

 

 ブラッドはフェアを連れて、街の開けた場所に行く。着いたのは、噴水のある広場。

 

 

 

 街の住民は少しいるが、ここでなら対抗できるはずだ。

 

 

 

 時刻は昼。太陽はブラッド達の真上から照らしてくる。

 

 

 

「きませんね……」

 

 

 

 フェアはそう言った時、太陽が雲に隠れた。

 

 

 

 太陽が雲に隠れたことで影ができる。それと同時に、

 

 

 

「っ!?」

 

 

 

 ブラッドの背後から仮面の男が現れる。

 

 

 

「ブラッド!?」

 

 

 

 後ろに仮面の男が現れたことに気づいたブラッドは、急いで後ろを向く。

 

 

 

 仮面の男は剣を振り下ろしており、ブラッドは咄嗟に防ぐが、左腕に大きな傷ができてしまう。

 

 

 

 ブラッドの左腕からは血が垂れる。左腕は上がらない。ダメージを受けすぎた。

 

 

 

 ブラッドは右腕で殴りかかる。

 

 

 

 しかし、仮面の男は地面に落ちるように潜って消えてしまった。

 

 

 

「また姿を消したか……」

 

 

 

 ブラッドが周りを見渡して、仮面の男を探していると、

 

 

 

「ブラッド!!」

 

 

 

 フェアが悲鳴をあげる。フェアの方を向くと、仮面の男がフェアの背後に立って、フェアの首に剣を当てていた。

 

 

 

 仮面の男はフェアを捕まえると、ブラッドに言う。

 

 

 

「今回はこいつを捕まえろという命令だ。お前はそこで次の迎えが来るのを待ってるんだな」

 

 

 

 ブラッドがフェアを助けに行くよりも、仮面の男がフェアを傷つける方が早いだろう。

 

 

 

 仮面の男の目的はフェアの回収だ。だから殺す気はないのはわかっている。

 

 

 

 しかし、それでもブラッドは動くことができなかった。

 

 

 

 仮面の男がフェアを連れて逃げようとした時、雲に隠れていた太陽が姿を現す。

 

 

 

 そしてブラッド達を強い日光が照らした。

 

 

 

 すると、仮面の男は苦しみ出す。

 

 

 

「ひ、光ィ!? いぎゃあーー!!」

 

 

 

 仮面の男は頭を押さえて暴れる。

 

 

 

 剣は地面に落ちて、フェアは解放された。

 

 

 

 この隙にフェアはブラッドの元へと駆け寄る。

 

 

 

 フェアはブラッドのコートの端を掴む。泣いたりすることはなく冷静でいたが、怖かったのだろう。

 

 

 

 太陽の光に当たった仮面の男は未だに苦しんでいる。

 

 

 

「あれはどういうことだ」

 

 

 

 ブラッドは仮面の男の苦しんでいる姿を見て、疑問に思う。

 

 

 

「あれは術師になった副作用。おそらくは光に弱くなったんだと思う」

 

 

 

 フェアは仮面の男を見ながらそう答えた。

 

 

 

 ブラッドが空を見上げると、また太陽に雲が近づいてる。

 

 

 

「時間はねぇな」

 

 

 

 ブラッドはコートを掴むフェアの手を掴んで優しく離させる。

 

 

 

「決着をつけてくる」

 

 

 

 ブラッドはそう言うと、仮面の男の方へ走り出した。

 

 

 

 

 



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 第7話  【BLACK EDGE 其の7 決着】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第7話

 【BLACK EDGE 其の7 決着】

 

 

 

「決着をつけてくる」

 

 

 

 ブラッドはそうフェアに言う。それは守ってやるから安心してここにいろという意味でもあった。

 

 

 

 ブラッドは仮面の男の方へと走り出した。

 

 

 

 左腕は動かない。そのため不恰好な走り方だ。でも、フェアにはそんな後ろ姿がカッコよく見えた。

 

 

 

 仮面の男は苦しみながらもブラッドが近づいてくるのに気付くと、落ちた剣を拾いブラッドに斬りかかる。

 

 

 

 しかし、そんな大振りの剣は当たることなく、ブラッドに躱されてしまう。

 

 

 

 ブラッドは右腕に力を込める。

 

 

 

 すると、ブラッドの右腕に黒いオーラのようなものが溢れ出した。

 

 

 

 そしてそのオーラはまるで龍ようになり、ブラッドの腕を覆う。拳の先端にはうっすらと龍の顔のようなものも見える。

 

 

 

「くらえ!!」

 

 

 

 ブラッドはその腕で仮面の男を殴った。

 

 

 

 その時のパワーはさっきの数倍。仮面の男は上空に殴り飛ばされた。

 

 

 

 宙を飛ぶ仮面の男は回転しながら、ブラッドの身長の五倍ほどの高さまで吹き飛ぶ。

 

 

 

 そして仮面の男は地面に落下した。

 

 

 

 倒れた仮面の男の前でブラッドは一度体をふらつかせる。

 

 

 

「うっ…………」

 

 

 

「ブラッド!!」

 

 

 

 そんなブラッドの様子を見て、フェアが駆け寄ってきた。

 

 

 

 斬られたダメージもあるだろう。しかし、それ以上に黒いオーラを出したことによる疲れの方が、ブラッドには来ていた。

 

 

 

 仮面の男は死んだわけではない。しかし、これだけのダメージを喰らえばしばらく追ってくることはないだろう。

 

 

 

 フェアは仮面の男が動けないことがわかると、ブラッドに傷ついた腕を見せるように言う。

 

 

 

「腕を見せて」

 

 

 

 ブラッドは何をするか分からなかったが、言われた通りにフェアに剣で切られた腕を見せた。

 かなり深い傷だ骨まで達しているだろう。

 

 

 

 フェアはその腕の前で両手を出すと、

 

 

 

「……私には白龍の力がある。それで傷を癒す」

 

 

 

 フェアの手のひらが光ると、その光がブラッドの腕を包む。そして三秒後にはブラッドの腕は治っていた。

 

 

 

「完治ではないから無茶をすればまた傷口が開く。包帯を巻くから待って」

 

 

 

 フェアはせっせとブラッドの腕に包帯を巻き始める。ブラッドはフェアに礼を言うタイミングを逃してしまった。

 

 

 

 そうしていると、太陽が一度雲に隠れる。

 

 

 

 その時、仮面の男が首だけを動かした。

 

 

 

「俺はやられたのか……だが、これで終わりだと思うなよ。貴様ら二人は、必ず俺の手で……」

 

 

 

 そう言いながら仮面の男は地面の中に潜って消えていった。

 

 

 

 仮面の男は一度撤退したのだ。あの傷だからしばらくは追って来れない。来るとしたら傷が癒えてからか、それとも別の刺客がやってくるかだ。

 

 

 

 

 

 

 

 



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 第8話  【BLACK EDGE 其の8 宿】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第8話

 【BLACK EDGE 其の8 宿】

 

 

 

 仮面の男を撃退したブラッド達は、身体を休めるために宿にやってきていた。

 

 

 

 小さな宿だ。木造でかなり古い。店主は髪の毛がなくなっており、スキンヘッドになっている。

 そんな店だが、ブラッドはここを気に入って使っている。

 

 

 

 その理由はここの店主は客の詮索をしないということだ。そのため訳ありの客も多い、犯罪者みたいな奴も多く見かけるが、訳ありのブラッドにはこの宿が居心地が良い。

 

 

 

 それにここなら組織の人間に襲撃されたとしても、それぞれが自衛の術を持っている。他の人間を巻き込むことは少ない。

 

 

 

 店主もかなりの手練れで前に喧嘩したことがあったが、その時は手酷くやられた。

 

 

 

 ブラッドはそんな宿の二階を借りると、部屋へ向かう。

 お金を持っていないと言うのでフェアの分の部屋も借りて、荷物整理をし終わったら、一度部屋に来てもらい、事情を聞くことにした。

 

 

 

 ブラッドとフェアは似た力を持っている。そしてそれはある組織が関係している。その名をグリモワール。

 その組織が二人の能力と関係している。

 

 

 

 

 ブラッドは長い間、グリモワールを追ってきた。自分にこの力を押し付けた存在、そしてあの事件の引き金。

 

 

 

 ブラッドの目的は組織を壊滅させること。そのためにはどんな情報でも欲しい。

 

 

 

 フェアがその組織と関係あるのなら、情報をもらう。そしてこれ以上、組織による被害が出ないよう、フェアを保護しながら他の被害者を助ける。

 

 

 

 しばらく待っていると、フェアがやってきた。

 

 

 

 フード付きの服を脱いで、動きやすい服に着替えたようだ。

 

 

 

「ブラッドさん、来ましたよ」

 

 

 

 フェアには後で部屋に来てくれとしか伝えていない。しかし、真剣な表情だ。

 

 

 

 フェアは組織に追われて、ブラッドも元まで逃げてきた。それは助けに来たのだ。

 

 

 

 ブラッドはフェアに会うまで幾つかの組織の施設を壊してきた。そのため組織内でも噂になっていたのだろう。

 そして組織と敵対するブラッドの元にやってきた。

 

 

 

 だから、ブラッドが話したい内容にも気づいたようだ。だからこんなに真剣な顔で来てくれた。

 

 

 

「フェア、お前に何があったのか教えてくれ。グリモワールと何があった?」

 

 

 

 ブラッドが聞くと、フェアは答える。

 

 

 

「私はグリモワールも実験体の一人。白龍の力を融合されました。…………そして逃げ出したんです」

 

 

 

 フェアはそうブラッドに伝える。

 

 

 

 グリモワールから逃げ出した。だから追われていた。

 

 

 

 

 

 



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 第9話  【BLACK EDGE 其の9 炎】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第9話

 【BLACK EDGE 其の9 炎】

 

 

 

 

 小さな村があった。そこは山奥にある村であり、人々は協力しながらのどかに暮らしていた。

 

 

 

 そんな村に一人の少年がいた。

 

 

 

 少年は村から少し離れた丘にある家に暮らしていた。少年には妹と弟がおり、三人の兄弟は仲良く暮らしている。

 母親はおらず、父親が一人で育ててくれており、そんな父親のことを少年は尊敬していた。

 

 

 

 それは赤い月の日のことだった。

 

 

 

 もう寝ようかと準備をしていると、村の方で騒ぎが起きていた。

 

 

 

 村の方を見ると、村は真っ赤に燃え上がっていた。大火事だ。

 

 

 

 こんなことは初めて見た。そしてこれはかなりやばい状況だと気づいた。

 

 

 

 父親は少年についてくるように言うと、妹と弟を家に置いて、村へと向かう。

 

 

 

 村に着くと、そこは悲惨な状況だった。家事だけじゃない。村人が殺されていたのだ。

 

 

 

 父親は死体に近づくと、

 

 

 

「これは刃物だな。誰の仕業なんだ……」

 

 

 

 盗賊の仕業か、それとも別の何者かによる犯行か。しかし、村人は殺されて、村は燃やされていた。

 

 

 

「これは家も危ないな。急いで戻るぞ」

 

 

 

 少年は父親に連れられて、家に帰ろうとする。しかし、家に帰る前に、

 

 

 

「っ!?」

 

 

 

 黒いフードに白い仮面を被った集団が現れた。

 彼らは少年たちを囲むと、剣を取り出す。

 

 

 

 彼らも殺す気だ。

 

 

 

 それに気づいた父親は、

 

 

 

「お前だけでも逃げろ。ここは俺がどうにかする」

 

 

 

 そう言って仮面の男の一人を押し倒した。それにより包囲に一箇所だけ穴ができる。

 

 

 

「行けー!!」

 

 

 

 少年は父親を置いて走り出した。振り返ることはできない。後ろで何が起きているか、想像できるから、だから振り返らずにただひたすら走った。

 

 

 

 丘を登り切り、家に着くとすでに家に火をつけられていた。燃える家の中、少年は家に入る。

 

 

 

 誰もいない。

 

 

 

 悪臭だけが漂う。そんな中、黒焦げになった物と紫色のフードに白い仮面の男と出会う。

 

 

 

 男は少年に気づくと、

 

 

 

「遅いな……」

 

 

 

 と言った。その声はどこかで聞いたことがある声に似ているが、分からない。

 だが、少年はその男が炎を放ったと気づいた。

 

 

 

「あああぁぁぁ!!」

 

 

 

 少年は訳もわからず、仮面の男に殴りかかる。しかし、少年の拳は簡単に受け止められてしまう。

 

 

 

 この感覚は昔にもあった。だが、おかしい。そうなるとこの男は……。

 

 

 

 少年が考える暇もなく、仮面の男に腹を蹴られる。そして少年は薄らと消えゆく意識の中、仮面の男の声を聞いた。

 

 

 

「あいつらの代わりにお前が犠牲になってくれ」

 

 

 

 



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 第10話  【BLACK EDGE 其の10 犠牲】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第10話

 【BLACK EDGE 其の10 犠牲】

 

 

 

 フェアは両親に捨てられて、孤児院で育った。施設の職員は優しく、フェアはそこで育った。

 

 

 

 しかし、ある時、変わった集団が来た。彼らは孤児院の子供たちに検査を行った。

 

 

 

 詳しい内容はわからない。しかし、健康診断と言い、フェア達に様々な検査を行った。それから数日後、フェアを引き取りたいと言ってきた。

 

 

 

 孤児院の職員達は話し合った後、フェアを引き取ってもらうことにした。

 

 

 

 その時はまだ分からなかった。これからどんなことが起こるのか。

 

 

 

 引き取られたフェアはある施設に送られた。それは強固なセキュリティで守られた、鉄壁の施設。

 

 

 

 そこにはフェアと同じように多くの施設から連れてこられた子供達がいた。同じ境遇の子もここでも出会うことができたフェアは嬉しかった。

 

 

 

 そしてそこで友達もできた。フェアはそんな鉄壁の施設でしばらく暮らすことになる。

 

 

 

 だが、平和な時間は長く続かなかった。

 

 

 

 ある日、フェア達に実験が行われた。今までは検査だけだったのだが、その日は初めての実験だった。

 

 

 

 フェア達は大人達に連れられて、実験室に向かう。すると、先に実験室に行った子の悲鳴が聞こえた。

 

 

 

 フェア達は怯える。しかし、それでも大人達はフェア達を連れて行く。

 

 

 

 次々と子供達は実験室へと連れて行かれる。そしてフェアの番が来る。

 

 

 

 フェアが実験室に入ると、そこには血だらけの机と床。そして血を浴びた作業員がいた。

 

 

 

「なに、これ」

 

 

 

 そしてフェアは見てしまった。奥の部屋で乱雑に置かれた子供達の死体。その中にはフェアの友達もいた。

 

 

 

 フェアは逃げようとする。しかし、大人達に捕まり、逃げることができない。

 

 

 

 フェアは机に寝させられると、

 

 

 

 

 

 そこから先の記憶はない。しばらくすると見たことない部屋のベッドで寝ていた。

 そのあと、起きたことが伝わったのか、人が歩いてきた。

 

 

 

 そして扉を開けて入ってくる。

 

 

 

 それは黄色のフードを被った仮面の男。

 

 

 

 黄色フードの男は黒いフードに仮面を被ったものたちを数人連れてやってきた。そしてフェアに言う。

 

 

 

「おめでとう。君は適合者だ」

 

 

 

 それからフェアに宿った力の説明を受けた。

 

 

 

 フェアに与えられたのは白龍の力。

 

 

 

 そして、フェアの力は多くの犠牲の上に宿ったことを教えられた。

 

 

 

 強力な力には犠牲が必要だ。そう言って笑った。だが、フェアはそれに納得できなかった。

 

 

 

 しかし、黄色フードは言う。

 

 

 

「消えたものは元には戻らない。なら、得たものは何をすべきだと思う?」

 

 

 

 

 



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 第11話  【BLACK EDGE 其の11 償い】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第11話

 【BLACK EDGE 其の11 償い】

 

 

 

 フェアは与えられた力を組織のために使うように言われた。

 

 

 

 それが力を得たフェアに出来ることだと。そしてそのために犠牲になったもの達のためにできることだと。

 

 

 

 そしてフェアにはそうするしかなかった。

 

 

 

 どうしたら償えるのか。何が出来るのか分からなかった。だから、そうするしかなかった。

 

 

 

 そしてもし、フェアが逃げたのなら……。

 

 

 

 フェアに適合したことで実験は終わった。そのため残った子供達はまだ保護されている。

 

 

 

 同じ龍はこの世に二匹は存在しないのだ。そのためフェアがその力を持つ限り、他の子供達が危険に晒されることはない。

 

 

 

 そのためフェアは残った子供達の安全を条件に組織の命令を聞くことにした。

 

 

 

 白龍には傷を治す力がある。それは治癒力を強化する力であり、動物の傷を瞬時に回復させられる。

 病気や治癒の関係しない部分などには効果はないが、負傷した組織の人間を治すことを行なってきた。

 

 

 

 だが、そんなある時、フェアは組織の人間がある話をしているのを聞いた。それは組織を潰そうとする存在。

 

 

 

 同じようにドラゴンの力を持つが組織と対立し、いく先々で組織の基地を潰しているらしい。

 

 

 

 その人間はこう呼ばれているブラッド。

 

 

 

 それが本名ではない。だが、彼らはその人物を恐れてそう呼んでいた。

 

 

 

 ブラッドの噂は子供達の中でも流行っていた。もしもこの施設に彼が来たのなら助かるかもしれない。

 それだけじゃないフェアも助けることができる。

 

 

 

 だが、ブラッドはそう都合良くは現れてくれなかった。

 

 

 

 そんな中、一人の子供が言った。来ないのなら呼べばいい。そして子供達の中でもブラッドを連れてこようという話になった。

 

 

 

 どんな人物かわからない。だが、組織を潰す人間。組織に恨みがあるから動いている。簡単に手伝ってはくれないだろうが、利害を一致させれば誘導できる。

 

 

 

 だが、誰が行くのか。フェア以外の子供達は余り物、またはフェアが使えなくなったときの予備だ。

 子供達が脱走すれば、組織の人間は容赦なく殺す。ならば、殺されない人間が行けばいい。

 

 

 

 フェアは組織にとって重要なキーだ。簡単に殺すわけにはいかない。

 それにフェアの捕獲を諦めたとしても、フェアを殺すまでは子供達を殺すわけにもいかない。それはフェアの後継となれる子供が誰なのかわからないからだ。

 

 

 

 そしてフェアが脱走することにした。

 

 

 

 子供だけでこの作戦は成功しない。組織内に一人協力者がいた。その人がこの作戦を提案してくれたのだ。そしてフェアを外に逃した。

 

 

 

 

 



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 第12話  【BLACK EDGE 其の12 予想外】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第12話

 【BLACK EDGE 其の12 予想外】

 

 

 

 ブラッドはフェアの話を聞くと、

 

 

 

「よし分かった。お前の友達を助けに行こうじゃないか」

 

 

 

 そう言ってくれた。それを聞いたフェアは驚く。

 

 

 

 驚くフェアを見て、ブラッドは不思議な顔をする。

 

 

 

「どうした?」

 

 

 

「いや、そんな簡単に手伝ってくれるとは思ってなかったから……」

 

 

 

 フェアの中ではブラッドは未知の存在だった。噂だけで聞いた人物。それに組織を一人で潰しまわっている存在だ。

 怖い印象しかなかった。まともに話ができるとは思っていなかったし、こんなに協力的だと思ってなかった。

 

 

 見た目も少し怖いし……。

 

 

 

 ブラッドは答える。

 

 

 

「俺は奴らに苦しめられている人たちを見たくないんだ。俺はいろんなもんを奪われた。だからこれ以上奪われる人を見たくない」

 

 

 

 それを聞いたフェアは、

 

 

 

「なんか、びっくり。でも、ありがとう」

 

 

 

 少し安心した。

 

 

 

 

 それからフェアは逃げ出してきた施設を教えた。場所はここから西。しばらく進んだ山の奥だ。

 

 

 

「それでその施設内にいる協力者ってどんなやつなんだ?」

 

 

 

 ブラッドは協力者について聞く。

 

 

 

 フェア達には大人の協力者がいる。フェタ達に作戦を作り、フェアを外に逃した。

 ブラッドはそれが誰なのか知っておく必要がある。それはそこに侵入した時に攻撃しないように、そしてもしかしたら協力を得られるかもしれないからだ。

 

 

 

「顔は分からない。黒いフードに仮面だったから……でも、女の人。声を聞けばわかる」

 

 

 

 グリモワールは組織の人間にフードと仮面をつけさせている。そのため顔が分からないようだ。

 ヒントは女。フェアはその女の声をわかるみたいだが、それ以外はわからないらしい。

 

 

 

「協力者なのに、顔を見せてくれなかったのか?」

 

 

 

「どこから漏れるか分からないって……。でも、信用はできる」

 

 

 

 かなり慎重な人物らしい。フェアは信用できると言っているが本当だろうか。だが、フェアを逃したのは事実だ。

 だとすると、何が目的なのか。他の組織のスパイなのか?

 

 

 

「分かった。じゃあ、きょうはもう寝ろ。明日出発する」

 

 

 

 ブラッドはそう言うとフェアを部屋に返した。

 

 

 

「あ、部屋には鍵をしっかりかけろよ。この宿やばいやつしかいないぞ」

 

 

 

「わかったー」

 

 

 

 フェアは部屋に戻っていく。

 

 

 

 行動を起こすなら早いほうがいい。組織もブラッドもフェアが接触したことを知れば、すぐに対策を考えるだろう。

 フェアの目的はバレていると考えたほうがいい。

 

 

 

「厳しい戦いになりそうだな」

 

 

 

 

 



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 第13話  【BLACK EDGE 其の13 移動】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第13話

 【BLACK EDGE 其の13 移動】

 

 

 

 準備を終えたブラッド達は出発の準備をしていた。

 

 

 

 ブラッドを組織の施設を壊すために旅をしていたため、多くのところを行ったり来たりしていたが、なんだかんだで最近はここが拠点しなっていた。

 

 

 

 この宿ともお別れになる。ブラッドは宿の店主に別れを言う。しかし、宿の店主は何も答えてくれない。

 ブラッドにとっては短い間だったが、思い出深い宿だった。少し寂しいと思いながら出て行くブラッドに店主は一言。

 

 

 

「また、来ることがあったら泊まりな」

 

 

 

 それだけ言った。

 

 

 

 ブラッドは「ああ」と返すと出て行った。

 

 

 

 

 村を出る時にブラッドはフェアに持っている剣を渡す。

 

 

 

「これはお前が持っとけ」

 

 

 

「え、でも?」

 

 

 

「俺は大丈夫だ。どうせ使わないし。貰い物だ」

 

 

 

 ブラッドは昨日の戦闘ではこの剣を持ってなかった。それに剣を使わなくても戦える。

 フェアには一応、もしもの時のために剣を持たせることにした。

 

 

 

 施設がある場所までは近くの村までは行商人の馬車に乗せてもらい、村に着いたら徒歩で向かう。

 馬車は借りずに密かに乗せてもらう。ブラッドの持つ金ではあまり乗せてくれる人も少ないが、どうにか協力してくれる行商人がいて、村まで移動することができた。

 

 

 

 フェアが施設から逃げ出して、三日かけて到達したブラッドと出会った村。馬車なら一日もかからずに施設の近くの村まで着くことができる。

 

 

 

 そしてブラッドとフェアは何もなく無事に村に着くことができた。

 協力してくれた行商人と別れたブラッド達は早速、施設の方へと向かう。

 村を出発したのは朝だが、馬車での移動ですでに夕方。もうすぐ日が落ちる。

 しかし、夜になれば施設に侵入しやすくなる。子供達も逃しやすくなる。

 

 

 

 宿などで泊まれば見つかってしまうかもしれない。馬車の中では荷台にずっと隠れていた。そのため組織の中ではブラッド達はまだ最初の村にいることになっているはずだ。

 

 

 

 森の中で隠れながら身体を休める。そして夜になるのを待った。

 

 

 

 そして時間が経ち夜になる。その日は雲が多く月が隠れている。これなら暗くて隠れやすい。

 

 

 

 ブラッドはフェアと共に暗闇の中を移動する。

 

 

 

「フェア、絶対に離れるなよ」

 

 

 

「はい」

 

 

 

 襲撃にはフェアも同行する。一緒にいたほうが危険かもしれないが、協力者を知りたいし、子供達の居場所も知る必要がある。

 それに子供達を安心させるためにもフェアは必要だ。

 

 

 

「よし、準備はいいな、行くぞ」

 

 

 

 

 

 



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 第14話  【BLACK EDGE 其の14 襲撃】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第14話

 【BLACK EDGE 其の14 襲撃】

 

 

 

 月もない真っ暗な夜。気がつくと窓の外に赤いコートを着た男がいた。

 

 

 

「ん、なんだ?」

 

 

 

 巡回の一人が男の方に視線を向ける。

 

 

 

「どうした?」

 

 

 

「いや、あそこに誰か」

 

 

 

 一緒に行動していた巡回にコートの男を見た窓の方を見せようとすると、その扉が割れて男が突入してきた。

 

 

 

「し、侵入者だー!!」

 

 

 

 巡回の一人が叫ぶと同時にもう一人の巡回は殴り飛ばされ、叫んだ巡回は武器を取ろうとしたが間に合わずブラッドに殴り倒された。

 

 

 

「フェア、早く来い」

 

 

 

 窓を割って入ったブラッドを追いかけてフェアも到着する。

 

 

 

「騒ぎを起こして大丈夫なの?」

 

 

 

「ああ、だが、騒ぎの中心は俺だ。俺が奴らを惹きつけているうちにお前は子供達を解放しろ」

 

 

 

 ブラッドが囮になり、フェアが子供達を連れて脱出する作戦だ。

 協力者も騒ぎを起こせば、ブラッドがやってきたことに気づく。そうすればフェアかブラッドのどちらかに接触してくるはずだ。

 

 

 

「ある程度混乱させたら俺もそっちに行く。任せたぞ」

 

 

 

 ブラッドはそう言うと多くの足音の聞こえる方へと走って行く。ブラッドはなるべく敵を惹きつけて、多くの敵を倒す。

 

 

 

 早速ブラッドの向かった先には多くの警備員がいた。

 

 

 

 さっきの巡回の警備員もそうだが、このグリモワールは不思議な技術を持っている。そのため外の兵士とは違う装備をしている。

 

 

 

 王国などでは鎧を着た兵士などが基本だ。剣や弓を武器にしている。しかし、グリモワールも武器は違う。

 

 

 

 銃と呼ばれる鉄の弾丸を飛ばす武器を所持している。その武器は弓よりも高性能であり、人間の身体を簡単に貫通することができる。

 

 

 

 だが、大量生産はできないのと敵組織に渡ることを恐れてなのか、グリモワールは銃を取引には使わず、組織の人間のみに持たせている。

 

 

 

 警備員はその中でも威力もコストも安い小型の銃を所持している。手のひらサイズでコンパクト。

 だが、両手で持つタイプの大型の武器よりは威力は劣る。

 

 

 

 ブラッドの前に立ち塞がったのは三人の警備員。さっきは奇襲だったため、簡単に倒すことができたが、銃を持っている相手を倒すのはブラッドでも難しい。

 

 

 

 三人の警備員はブラッドに向けて発砲する。ブラッドは丁度横に扉があったのでそこに入って弾丸を避けた。

 

 

 

 入った部屋は小さな部屋だ。物置らしい。箱が並べられており、中には日用品が入っている。

 

 

 

 外からはまだ銃を撃っている音がする。

 

 

 

 警備員も銃は支給されているが、扱いにはなれていないのだろう。弾を無駄に撃ち続けている。

 

 

 

「弾切れのタイミングを狙うか」

 

 

 

 ブラッドは部屋の中でタイミングを見計らって飛び出すことにした。

 

 

 

 

 

 



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 第15話  【BLACK EDGE 其の15 トラウマ】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第15話

 【BLACK EDGE 其の15 トラウマ】

 

 

 

 

 ブラッドが囮になってくれている間に、フェアは見つからないように移動して、子供達のいる場所へと向かう。

 

 

 

 警備員はブラッドが暴れていることで騒ぎの方へと向かって行く。

 ブラッドのおかげで順調に救出に向かえそうだ。

 

 

 

 フェアは長い廊下を進んでいると、先の通路から足音が聞こえる。

 この先は九十度に曲がっており、こっちからも向こうからも見えない。しかし、向こうは数人の足音が聞こえる。おそらく警備員だ。

 

 

 

 フェアは近くに隠れる場所はないか探す。施設は研究所であり、白い廊下にいくつもの部屋がある。フェアは近くの部屋の扉を開けるとそっと閉めてその部屋に隠れた。

 

 

 

 足音は近づくと、

 

 

 

「侵入者だ! 急げ!!」

 

 

 

 そんな声と共に数名の大人達が走っている。フェアはどうにか見つからずにやり過ごすことができた。

 

 

 

 フェアは警備員がいなくなってから、冷静になって自分の隠れた部屋を見渡してみた。

 

 

 

 その部屋はフェアの入った扉ともう一つ奥の部屋に続け扉がある。

 そして真ん中には人を一人押せることができるテーブルと、そのテーブルの上を照らすことができる大きなライト。

 

 

 

 それを見たフェアは思い出す。

 

 

 

「ここは……」

 

 

 

 フェアの身体は震える。両腕で全身を抑える。しかし、震えが止まらない。

 

 

 

 この部屋は……。

 

 

 

「あの部屋だ……」

 

 

 

 ここはフェアが白龍の力を手に入れた研究室。多くの子供達が死んでいた部屋であり、フェアにとってのトラウマの部屋だ。

 

 

 

 施設の間取りは覚えていた。組織に協力して力を使っているときから、この施設はいろんなところを歩き回った。そんな中でも、この場所だけは避け続けていた。

 

 

 

 しかし、子供たちを救えるかもしれないということで油断していた。施設の人間が前から来たことで焦ってしまった。

 

 

 

 そして運悪くこの部屋に入ってしまった。

 

 

 

「…………なんで、よりにもよってこの部屋なの……」

 

 

 

 フェアの脳裏に焼き付く。あの光景。あの時の恐怖。友達の死、龍の力、多くのことが走馬灯のように脳を巡る。

 

 

 

 身体が動かない。急がないといけないのに、身体がいうことをきかない。

 

 

 

 私が白龍の力を所持している限り、残りの子達には危険はない。組織の人間は手を出すことができないはずだ。

 

 

 

 だから大丈夫なはずだ。大丈夫なはずなのに……。怖くなってしまう。

 

 

 

 もう部屋には血はついていない。悲鳴も聞こえない。そのはずなのにフェアにはまるでまた新しい実験が行われたような想像をしてしまう。

 

 

 

 そんなはずはない。

 

 

 

 フェアは無理矢理にでも身体を動かす。

 

 

 

「……絶対に助ける」

 

 

 

 

 

 

 

 



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 第16話  【BLACK EDGE 其の16 時間を稼ぐ】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第16話

 【BLACK EDGE 其の16 時間を稼ぐ】

 

 

 

 

 フェアのある反対方向のフロアでは、ブラッドが警備員と戦闘をしていた。

 

 

 

 龍の力を持ってブラッドは、銃を持っている兵士とも戦うことができる。しかし、

 

 

 

「数が増えてきたな……」

 

 

 

 襲撃から数分。施設内にいる警備員達が集まりつつあった。

 

 

 

 あとどれくらいで時間を稼ぐ必要があるだろうか。

 

 

 

 グリモワールの製造している銃という武器は強力だ。遠距離から身体を貫通することができるほどの鉄の塊を飛ばす。

 

 

 

 警備員の中には司令を出す隊長のような人間も現れた。連携の取れていない集団ならまだしも、連携の取れる集団になるとすぐに包囲される可能性がある。

 

 

 

「先にあいつを潰すか……」

 

 

 

 司令を出せる人間は何人もいる。だが、全員ができるわけではない。まずは隊長格を倒すことで時間を稼ぐ。

 

 

 

 ブラッドが今いるのは広い倉庫だ。後ろには今まで倒してきた警備員が転がっている。前にはいくつかの入り口があり、上には倉庫の周りを一周するように通路もある。

 

 

 

「指示を出しているのはあいつか……」

 

 

 

 警備員と連絡をとりながら、警備員を配置している人間を見つけた。それは倉庫の二階部分にある一周周れるスペースだ。

 

 

 

「やるしかないか」

 

 

 

 ブラッドはその警備員がいる方向へと走り出す。近くにいる警備員がブラッドに向かって発砲する。

 

 

 

 ブラッドはまっすぐ走って、その弾丸が当たるよりも早く前へと進む。

 

 

 

 そして高くジャンプした。

 

 

 

 通常の人間ならジャンプしても建物の2階までは届かない。だから、ブラッドは倉庫に設置された箱を足場にして登る。

 

 

 

 ジグザグに登ることになるし、動きが読まれやすく撃たれる可能性が上がる。しかし、このまま逃げ回っていてもいつかはやられる。なら、戦力になっていそうな敵を減らしたほうがいい。

 

 

 

 登っている最中にブラッドの肩を弾丸は掠めるが、この程度で済んだ。

 

 

 

 ブラッドは登り切ると、右拳に力を込める。すると、右拳に黒いオーラが現れる。

 

 

 

 指示を出していた警備員は逃げずにブラッドに銃口を向けるが、間に合わない!!

 

 

 

 ブラッドの拳が銃を粉砕して、そのまま警備員の顔を殴る。そして警備員を壁の向こうまで殴り飛ばした。

 

 

 

 殴られた警備員はその衝撃で飛んでいき、壁に大きな凹みを作りながらぶつかった。

 

 

 

 しかし、

 

 

 

「まだ出てくるか」

 

 

 

 ブラッドを捕らえようと警備員は次々と集まってくる。ブラッドの体力にも限界が近かった。

 

 

 



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 第17話  【BLACK EDGE 其の17 消えた子供達】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第17話

 【BLACK EDGE 其の17 消えた子供達】

 

 

 

 

 フェアはトラウマの部屋から出て、震える身体を押さえながら先に進む。

 

 

 

 フェアがしばらく進むと、ついに子供達がいる部屋に近づいていた。

 

 

 

 そこは施設の渡り廊下を通過した先にある場所。その先に鉄の扉があり、そこに子供達の暮らすエリアがある。

 

 

 

 渡り廊下は二階にあり、一階からはその施設には入れない。すでに二階に上がっていたフェアはその渡り廊下についた。

 窓で見渡しの良い場所だ。この先にあるエリアが子供達のいるエリアであり、子供達はそのエリアから出ることは基本的に許されていない。

 出ることができるのは緊急時や検査の時だけだ。

 

 

 

 渡り廊下の先を見ると、鉄扉の前に二つの椅子が置かれている。普段ならあそこに警備員がいて、見張りをしている。

 しかし、今回は見張りがいない。

 

 

 

 これがブラッドの影響なのか、それとも別なのかわからない。しかし、今がチャンスだと判断したフェアは急いで扉へと向かった。

 

 

 

 扉はパスワードで開く扉だ。そのパスワードはフェアには教えられている。それは組織の仕事を手伝っていたため、いろんなエリアの移動を許可されていたからだ。

 

 

 

 扉を開ける。騒ぎを聞きつけていれば、扉の前にいると思っていた。しかし、扉が開いてもその先には誰もいなかった。

 

 

 

 そこは広い空間。入り口は広場になっており、テーブルやソファーの置かれた休憩スペースなのだが、誰もいない。

 

 

 

 もしかしたら奥にいるのかもしれないと、奥の小部屋や食堂にも向かってみるが、誰一人見つからない。

 

 

 

「どうして……」

 

 

 

 フェアは子供達を助けるためにここに戻ってきた。しかし、誰もいないのだ。

 

 

 

 先に逃げたのかもしれない。

 

 

 

 そう考えたフェアはそのエリアから出て、施設の中を走り回る。ブラッドが騒ぎを起こしていることで、こんなに走り回っても警備員には簡単には見つからなかった。

 

 

 

 そんな中、さっき入った部屋を思い出す。フェアが白龍の力を得た部屋。そして多くの者が死んだ部屋。しかし、あそこで実験が行われた痕跡はなかった。なのにフェアは想像してしまう。

 

 

 

 フェアが絶望感に押し潰されそうになっている時、

 

 

 

「何者だ」

 

 

 

 一人の警備員に見つかった。ブラッドの方へ向かおうとしていた警備員だろう。しかし、その途中でフェアを見つけたのだ。

 

 

 

 フェアはブラッドからもらった剣を抜いた。

 

 

 

「っ!」

 

 

 

 それを見た警備員も銃を手にする。

 

 

 

「侵入者か……」

 

 

 

 警備員が近づいてくる。このままでは……。その時、

 

 

 

「待ちなさい……」

 

 

 

 警備員の後ろから女の人の声がした。

 

 

 

 

 



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 第18話  【BLACK EDGE 其の18 協力者】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第18話

 【BLACK EDGE 其の18 協力者】

 

 

 

「待ちなさい」

 

 

 

 警備員の後ろから声がする。警備員が警戒しながら後ろを向くと、そこには黒いフードに仮面を被った人物がいた。

 

 

 

「あ、すみません!!」

 

 

 

 警備員は銃を下ろす。警備員は組織の中でも下っ端。フードの人物の方が位が上になる。

 

 

 

 しかし、組織の人間がきたということは、フェアの正体がバレる可能性がある。

 

 

 

 フェアは捕まるわけにはいかない。子供達を探す必要がある。

 

 

 

 フェアは剣を手に警備員に襲いかかる。警備員は驚きフェアに銃口を向けるが……。

 

 

 

 誰よりも早く仮面の人物が動く。そして二人の間に入ると、

 

 

 

 フェアの前に足を出して転ばせた。フェアは転び、剣をその場に落とす。

 

 

 

 警備員は銃を撃つギリギリであったが、撃たずに済んだ。

 

 

 

「すまない。子供を一人回収し損ねていたようだ」

 

 

 

 仮面の人物はそう言うと、フェアの落とした剣を拾った。

 仮面の人物はそれを持つと手元でクルクルと回転させる。そしてその短剣を持って何かに気づいたようだ。

 

 

 

 フェアは転んだまま動けない。このままでは捕まる。そう思った。しかし、

 

 

 

 仮面の人物は警備員の方に近づく。警備員は銃をしまうと、

 

 

 

「この子供はどうしましょうか?」

 

 

 

 と聞いた。仮面の人物は警備員のすぐ横に立つと、警備員の首を剣で切り、警備員を殺した。

 

 

 

「この子供は私達が預かる」

 

 

 

 死体がその場で崩れるように倒れる。

 

 

 

 フェアが驚いていると、仮面の人物は仮面を取った。

 仮面の人物の正体は女。それも黒髪の美人だ。

 

 

 

「久しぶりね。フェア」

 

 

 

 その女はそう言う。そしてフェアは理解した。この人物が協力者の女性。

 

 

 

「メテオラ!!」

 

 

 

 メテオラは子供達の計画を考えてくれたり、フェアを外に逃したりと協力してくれた。

 

 

 

「ほら、立ちなさい」

 

 

 

 メテオラはフェアに手を差し出す。フェアがそれを掴むと立ち上がるのを手伝ってくれた。

 

 

 

「メテオラ、子供達が誰もいないの!!」

 

 

 

 心配そうに聞くフェアにメテオラは、

 

 

 

「大丈夫。みんな無事だ。でも、ここにはいない。他の施設に連れて行かれた」

 

 

 

 それを聞いたフェアはショックを受ける。これで助けられると思っていた。だが、またそれが遠くなってしまったからだ。

 

 

 

 もしかしたらフェアが逃げたことで異動をさせることになってしまったのかもしれない。ブラッドとの接触が良くなかったのか。原因はわからない。

 

 

 

「どこに!!」

 

 

 

 焦っているフェアにメテオラは短剣を返す。

 

 

 

「それは後で話す。それよりもまずはあなたの相棒を助けないとね」

 

 

 

 

 

 

 

 



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 第19話  【BLACK EDGE 其の19 弟子】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第19話

 【BLACK EDGE 其の19 弟子】

 

 

 

 

 フェアが子供達を逃している間に時間稼ぎをしているブラッドだが、警備員の数が増えてブラッドは気がつけば包囲されていた。

 

 

 

 警備員は白い服を着ており、作業員という感じの服だ。そして白い帽子をかぶっている。武器は銃を持っており、ハンドガンを持つ兵もいれば、マシンガンを持つ兵もいる。

 

 

 

 ブラッドの周りを円を作るように警備員が包囲している。ブラッドは身動きが取れなくなり、手を挙げて降参した。

 

 

 

 そんな中、奥の部屋から黒いフードに仮面を被った人物が現れる。その人物は手に杖を持っており、身体が不自由なのか杖をつきながら現れた。

 

 

 

「お主がブラッドか……」

 

 

 

 声を聞く感じ男だ。それに老人だ。

 

 

 

「お主がフェアと接触したことはすでにシャドーから聞いておる」

 

 

 

 シャドー。それが誰なのか分からないがフェアといたことがバレているということはそれを知っているのは最初に襲撃してきた仮面の男の名がシャドーということだろうか。

 

 

 

「お主の目的は子供達の解放じゃろう。じゃが、その目的は失敗じゃ」

 

 

 

「なんだと……」

 

 

 

「子供達はすでに別の施設に移した。ここでどれだけ時間を稼ごうと子供達は解放されない……。それにフェアを捕らえるためにすでに他の部隊を動かした」

 

 

 

 子供達をすでに移動させているだと……。

 

 

 

 ブラッドは衝撃を受ける。それはフェアとの警戒がバレてしまったということ。ここまで早く行動を起こすとは……。

 

 

 

「黒き龍。あのお方はお主に思い入れがあるようじゃが、適合者ならまた探せば良い…………」

 

 

 

 仮面の男が手を挙げると、警備員は一斉にブラッドに銃口を向けた。

 

 

 

「ワシの名はプロフェシー。お主に滅びを与えるものじゃ」

 

 

 

 プロフェシーがそう言い、発泡の合図を出そうとした時、突然プロフェシーのいる近くの壁が壊れた。

 

 

 

 そしてそこから黒髪の女性とフェアが現れた。

 

 

 

「な、なんじゃ!?」

 

 

 

 壁を突き破って現れた女性はそのままの勢いでプロフェシーの顔を掴むと、そのままプロフェシーの首を回転させて首を折った。

 

 

 

「プロフェシー様!!」

 

 

 

 プロフェシーは首を折られその場に倒れる。

 

 

 

 そしてブラッドは黒髪の女性を見て、激しく汗をかいた。

 

 

 

「ま、まさか、メテオラ師匠……」

 

 

 

 ブラッドを囲む警備員は一斉にメテオラの方に銃口を向ける。しかし、

 

 

 

 メテオラが右足を上げて強く地面を踏みつけると、その衝撃でメテオラが踏んだ地面が膨れ上がる。

 その衝撃はまるで線を描くように、地面を進んでいき、ブラッドを囲む警備員の足場は砕けて地割れのようになった。

 

 

 

 警備員の悲鳴が響く中、ブラッドはメテオラを見ながら嫌な予感を感じ取った。

 メテオラはブラッドの方を向く。

 

 

 

「可愛い私の弟子よ。久しぶりだな」

 

 

 

 

 

 



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 第20話  【BLACK EDGE 其の20 師弟】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第20話

 【BLACK EDGE 其の20 師弟】

 

 

 

 ブラッドを囲む警備員を倒したメテオラは腕を組むと、ブラッドの方を向いた。

 

 

 

「久しぶりだな。可愛い弟子よ」

 

 

 

 そしてブラッドに向かってそう言った。

 

 

 

 ブラッドは身体を震わせてメテオラに姿勢を正して立つ。

 

 

 

 そんな二人の様子を見てフェアは驚く。まさかフェアの協力者がブラッドの師匠だったとは……。

 

 

 

 ブラッドはメテオラに頭を下げる。

 

 

 

「助けてくださり、ありがとうございます」

 

 

 

 警備員に囲まれてブラッドはかなり厳しい状況だった。メテオラが現れなければヤバかっただろう。

 

 

 

「そうね。…………今はブラッドと呼ばれてるのよね。なら、ブラッド、…………」

 

 

 

 そう言うとメテオラはブラッドに近づく。

 

 

 

 そしてブラッドに抱きついた。そのままブラッドの顔を見上げると、メテオラは甘えた声で、

 

 

 

「私の弟子よ〜!! 久しぶりねーー!!」

 

 

 

 メテオラは嬉しそうにブラッドに顔を埋める。ブラッドは恥ずかしそうにフェアに助けを求めた。

 

 

 

 しかし、フェアにはどうすることもできない。

 

 

 

 というよりもフェアが想像していた状況と違う。

 

 

 

 ここに辿り着くまでフェアはメテオラと行動していた。真っ直ぐこの場所に向かっていたのだが、その道中に何人もの敵が現れた。しかし、メテオラは彼らを簡単に倒して、どんどん先に進んでいく。

 

 

 

 メテオラは恐ろしいほど強い。そんなメテオラがブラッドの元にたどり着くと、ブラッドがやられていた。

 

 

 

 しかし、そんなブラッドをメテオラは簡単に倒してしまったのだ。それも一撃でだ。

 そしてメテオラとブラッドは師弟関係らしい。

 

 

 

 それを知ったフェアはブラッドが怒られるのかと思った。

 

 

 

 ブラッドはメテオラに出会うと怯えていたし、それにブラッドは敵に捕まりそうになっていた。

 

 

 

 メテオラが一撃で倒す敵にやられていたブラッドを情けないと言い、叱るのかと思ったら抱きついたのだ。びっくりだ。

 

 

 

 

 ブラッドはメテオラに抱きつかれながら、周りを見渡す。そしてフェアに聞く。

 

 

 

「子供達はどうした?」

 

 

 

 そう、今回の襲撃の目的は子供達の奪還。しかし、フェアは子供達と一緒にいなかった。

 

 

 

 フェアは下を向くと、

 

 

 

「いなかった」

 

 

 

 と一言言った。

 

 

 

 それを聞いたブラッドは衝撃を受ける。

 

 

 

「いなかった……だと…………。どういうことだ」

 

 

 

 ブラッドは詳しい状況を聞こうとする。しかし、フェアが答えるよりも早く。メテオラが答えた。

 

 

 

「……すでに別の施設に移動されたんだ」

 

 

 

 そう真面目な顔で答えた。

 

 

 

 真面目な話をするなら、離れてくれ……。

 

 

 

 

 

 



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 第21話  【BLACK EDGE 其の21 状況】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第21話

 【BLACK EDGE 其の21 状況】

 

 

 

 ブラッド達は崩壊した施設の中でいた。警備員達はすでに倒れており、制圧は完了した。しかし、目的である子供達の解放は成功できなかった。

 

 

 

「いなかった……だと、どういうことだ」

 

 

 

 ブラッドが聞くとメテオラは抱きついたまま答えた。

 

 

 

「すでに別の施設に移動されたんだ」

 

 

 

 真面目な話になったのでブラッドはメテオラを突き放す。メテオラは頬を膨らまして寂しそうにしているが、それを無視して話を進める。

 

 

 

「……とりあえず、フェアの協力者はメテオラ師匠だったんだな」

 

 

 

 ブラッドは確認のために聞く。メテオラも真面目なモードになると、服の埃を叩いて飛ばしながら答える。

 

 

 

「そういうこと……。こちらもブラッドがお前だったとはびっくりだ」

 

 

 

 メテオラが服の埃を払っていたのを見て、ブラッドが自分の服を見るとメテオラが抱きついたことで埃まみれになっていることに気づいた。

 

 

 

 これが師匠が弟子にやることなのか……と、呆れながら埃を落とす。

 

 

 

「侵入してたんなら俺の噂でなんとなく予想はついてたでしょう」

 

 

 

 ブラッドはそうメテオラに質問する。

 

 

 

「えぇ、でもグリモワール内でも龍の詳しい情報はトップシークレットらしくてね。ブラッドが龍の適正者だとわかってもどの龍の使い手かは分からなかった」

 

 

 

 メテオラはグリモワールに侵入して様々な情報を入手していた。しかし、龍の情報は得るのは難しいらしい。

 

 

 

 二人ともここで出会うとは思っていなかったようだ。

 

 

 

「それで子供達についてだけど……」

 

 

 

 ついにメテオラが子供達について喋り出す。

 

 

 

 フェアもこの情報はとても気になる。ブラッド達の近くに行く。メテオラはフェアが来るとブラッドに伝えるというよりもフェアに伝えるようにフェアの方を向く。

 

 

 

「フェアが施設を出てすぐに上層部がやってきて、巨大な馬車に乗せて連れて行ってしまったんだ」

 

 

 

 それを聞いたフェアはショックを受ける。

 

 

 

「じゃあ、私が逃げたから……」

 

 

 

 しかし、メテオラはフェアの頭に手を置いて優しく撫でると首を振った。

 

 

 

「違う。すでに予定されてたんだ。……それも上層部だけで……。これはその情報を得られなかった私の責任だ。フェアは悪くない」

 

 

 

 それでもフェアは納得がいかない。それは助けると約束したのに間に合わなかったのだ。

 そんな悲しそうな顔をしているフェアにメテオラは顔を近づけて言う。

 

 

 

「それに諦める気はないんだろ」

 

 

 

「諦めたりはしない」

 

 

 

「なら、上出来だ」

 

 

 

 

 

 

 



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 第22話  【BLACK EDGE 其の22 諦めない】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第22話

 【BLACK EDGE 其の22 諦めない】

 

 

 

「諦めないんなら上出来だ」

 

 

 

 メテオラはそう言うと、施設の外の方を見る。

 

 

 

「一度外に出るか。そろそろ応援が来るかもしれない」

 

 

 

 こうして施設を脱出することになった。

 

 

 

 三人は施設を脱出するために静かになった組織を移動していた。

 施設内はブラッド達の戦闘でボロボロであり、穴が空いていたり、瓦礫が散っていたりする。

 

 

 

 そんな施設を脱出したブラッド達は道から村に戻るのではなく、少し迂回するルートで村に向かうことにした。

 

 

 

 森の中を移動する最中、メテオラが思い出したように剣を取り出した。

 それはフェアが転んだ時に落とした剣だ。

 

 

 

「あ、これ私があげた剣だろ。まだ持っててくれたんだな」

 

 

 

 メテオラはそう言うと、剣をブラッドに渡す。

 

 

 

 その剣を受け取ったブラッドはそれを大切そうに受け取った。

 

 

 

「はい。大事にしてます。この剣には何度も助けられましたから……」

 

 

 

 そしてその受け取った剣をそのままフェアに渡す。

 フェアは少しその剣を受け取るのを躊躇う。

 

 

 

 フェアはこの剣がどんなものなのか知らない。事情を知らなかったからさっきまでは受け取っていたが、師匠から貰ったものを受け取って良いのか、困ってしまった。

 

 

 

 しかし、

 

 

 

「そして今も大切なものを守るために。そのために使わせてもらっています。俺はいつも師匠に助けられている」

 

 

 

 それを聞いたフェアは恥ずかしそうに剣を受け取った。

 

 

 

 ブラッドの言葉が嬉しかったのだ。自分を大切なものと言ってくれたことが……。

 

 

 

 メテオラはそれを見て、

 

 

 

「そうか。お前はまだ私を頼ってくれるのだな……」

 

 

 

 そう、言った。しかし、その顔はどこか寂しそうな表情にも感じる。

 

 

 

「はい。師匠は師匠です。これからも……」

 

 

 

 そう答えたブラッドにメテオラは抱きつく。

 

 

 

「嬉しいこと言ってくれるじゃないの〜!! この一番弟子〜!!」

 

 

 

「…………っ!」

 

 

 

 ブラッドは恥ずかしそうに抵抗する。

 

 

 

 そんな中、フェアは嬉しそうに剣を見つめていた。

 

 

 

 なんやかんなあったが、誰にも見つからずに村に到着することができて、宿に泊まることになった。

 

 

 

 すでに夜が明けようとしている。こんな時間に新しく宿を借りることはできないが、メテオラが潜入の際にもしもの避難所の一つとして借りていた宿に泊まることになった。

 

 

 

 そして宿の部屋を借りた三人は話し合いの続きをする。

 

 

 

 それは子供達がどこに連れて行かれたのか。そしてどうやって救出するのか。

 

 

 

 



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 第23話  【BLACK EDGE 其の23 情報を得て】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第23話

 【BLACK EDGE 其の23 情報を得て】

 

 

 

「子供達の行方を知るのは上層部のみ。グリモワールの幹部しかこの情報を知らない」

 

 

 

 メテオラは自分の知っている情報を二人に提供する。

 

 

 

 だが、子供達の行方に関する情報は得られない。

 

 

 

「子供達が連れ去られる前に師匠が逃すことはできなかったのか?」

 

 

 

 これを聞いたところでどうにかなるわけじゃない。しかし、少し疑問に思ったからブラッドは聞いてみることにした。

 

 

 

 メテオラはブラッドやフェアと同じく龍の適正者だ。地龍の適合者であり、その実力はブラッド以上。それだけの実力者なら子供達を守りながらも戦うことはできる。

 

 

 

 しかし、メテオラは首を振った。

 

 

 

「子供達の側にはいつも幹部が二人以上いた。そいつらの力は私と同等かそれ以上、一体二では勝ち目がない」

 

 

 

 グリモワールの幹部が二人以上。それを同時に相手にするのは難しい。

 だが、今の話を聞いて疑問に思うことがあった。

 

 

 

「なんで子供達にそこまで警備をつけるんだ? 適合者探しはそんなに難しいのか?」

 

 

 

 そんなブラッドの疑問にメテオラは答える。

 

 

 

「ああ、フェアが逃げ出したからというのもあるだろうが。白龍の適合者は他の龍よりも適合者を見つけるのが難しいんだ。それで組織は各地から適合者になりそうな人材を連れてきた。まぁ、フェアが逃げ出してからはフェアを捕らえるためだと思うがな。丁度良い餌だ」

 

 

 

 白龍の適合者は珍しいものらしい。そのためフェアを組織はどうにかして捕らえたいのだろう。

 

 

 

 子供達はフェアを捕らえるための餌になる。子供達の居場所を教えれば、そこに現れる可能性が高いからだ。

 

 

 

 そしてフェアに何かあった時は白龍を回収して、他の子に白龍を移す。

 

 

 

 フェアは話し合いの結果。

 

 

 

「ということは近いうちに私達に情報が来る可能性がある?」

 

 

 

 と言った。それはフェアを捕らえたい組織が取るであろう行動。

 フェアのいる場所に現れて襲ってくるというのもあるが、子供達の情報をちらつかせて、罠を貼る可能性もある。

 

 

 

 メテオラはベッドに腰をかけて座ると、足を交差させる。

 

 

 

「どちらにしろ。こちらも行動は起こしたほうがいい」

 

 

 

 そう言ったメテオラは懐から一枚の紙切れを取り出した。

 

 

 

「私の得た情報で面白い話がある。それを試してみるのもいいかもしれない」

 

 

 

 そしてメテオラはフェアにその紙を渡した。そこには地図が書いてある。

 

 

 

「魔女に会いなさい」

 

 

 

 

 



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 第24話  【BLACK EDGE 其の24 新たな旅立ち】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第24話

 【BLACK EDGE 其の24 新たな旅立ち】

 

 

 

 メテオラに紹介されたのは、この村からさらに南西に行った先にある村。そこに住んでいる魔女に会うことを提案された。

 

 

 

 その村の名前はフリジア村。その村に屋敷があり、そこに魔女と呼ばれる人物が住んでいるという。

 

 

 

 その魔女は不思議な力を使うことができるという噂があり、その人物の力を借りることができれば、もしかしたら子供達の居場所を調べることができるかもしれない。

 

 

 

 そんなことをメテオラから提案された。

 

 

 

 現在のフェア達には子供達を探す手がかりはなく、手当たり次第に探しても時間と労力の無駄になってしまう。ならば、そういう噂の人物を頼ってみるのも一つの手である。

 

 

 

「分かった。そこに向かってみよう」

 

 

 

 ブラッドとフェアはそのフリジア村に向かうことを決定した。

 

 

 

 しかし、メテオラはこれからまだやることがあるということでここで別れることになった。

 

 

 

「そうですか。師匠、久しぶりに会えて嬉しかったです」

 

 

 

 ブラッドはメテオラとかなり久しぶりに出会った。

 久しぶりに会ったのだが、こんなに早く別れが来るとは……。

 

 

 

 ブラッドの寂しそうな顔を見て、メテオラは目をうるうるさせる。

 

 

 

「うう〜、弟子が師匠との別れを悲しんでくれている。なんと可愛い弟子なんだぁ〜」

 

 

 

 次にフェアがメテオラに礼を言った。

 

 

 

「メテオラさん、助けてくれてありがとうございました。施設でのことは忘れません」

 

 

 

 メテオラはフェアの頭を優しく撫でる。

 

 

 

「私も君には助けられた。……君の白龍の力に救われたんだよ。…………最後まで力になれなくてすまんな」

 

 

 

「いえ、おかげで次の目的地が決まりました。ありがとうございます」

 

 

 

「君は本当にいい子だ。…………ブラッドのことを頼んだよ」

 

 

 

「はい!」

 

 

 

 こうしてメテオラと別れることになった。

 

 

 

 翌日、メテオラを見送った後、ブラッド達も早速フリジア村に向けて旅を始めた。

 

 

 

 旅は目的地は少し離れた場所だ。気長な旅になるだろう。

 

 

 

「よし、行くぞ」

 

 

 

 村で旅のアイテムを集めた二人は早速村を出た。馬車はないので歩いて進むことになる。山を越え、谷を越える大変な旅だ。

 

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 さて物語はここから大きく動くことになります。

 

 

 

 フェア達は子供達を救うことができるのか?

 フリジア村にいる魔女とは何者なのか?

 

 

 

 今後の話もお楽しみにください!!

 

 

 

 そういえばメテオラにとってブラッドは初めての弟子であり、たった一人の可愛い弟子です。なので可愛がってしまう。

 

 

 

 メテオラの目的も気になるかな!!

 

 

 

 

 

 



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 第25話  【BLACK EDGE 其の25 過去】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第25話

 【BLACK EDGE 其の25 過去】

 

 

 

 

「ブラッドはメテオラさんとどう出会ったの?」

 

 

 

 旅の途中、森を歩いている時にフェアがそんなことを聞いてきた。

 聞かれたブラッドは、頭を鼻の上を掻きながら思い出す。

 

 

 

「あ〜、そうだな〜師匠は俺にとっての命の恩人なんだ」

 

 

 

 

 

 少年はグリモワールの襲撃を受けたことで家を焼かれ、家族を失った。

 少年の暮らす家の近くにあった村もグリモワールに襲われたことで、村は灰となった。

 

 

 

 あれから一日。少年は黒焦げになった家の前で下を向いて座っていた。

 

 

 

 泣きたくても泣けない。少年には悲しむよりもあの燃える炎の中出会った仮面を憎んでいた。

 

 

 

 全ての元凶はあいつだ。あいつが俺から全てを奪ったんだ。

 

 

 

 そんな少年の前に馬に乗った男が現れた。銀色の鎧に身を包んだ騎士だ。

 騎士の男は少年を見つけると、丘の下にいる仲間を呼んだ。

 

 

 

「隊長! 子供だ!! 子供がいたぞ!!」

 

 

 

 騎士の声に呼ばれて、馬に乗った騎士が丘を登ってくる。

 

 

 

 現れたのは五人の騎士団だ。鎧を着込み、馬にも鎧を着せている。立派な騎士達だ。

 

 

 

 ブラッドを見てその中の一人の騎士が馬を降りた。

 鎧に身を包んでいて顔には兜をつけている。

 

 

 

 その騎士は腰に付けた剣を取ると地面に置いた。それを見ていた仲間の騎士達は、

 

 

 

「隊長!?」

 

 

 

 と驚く。

 

 

 

 しかし、その人物は剣を置いたまま、今度は兜を外した。

 

 

 

 その人物は女性だった。黒髪の女性。

 その女性は美しく、少年が今まで見てきた人間の中で一番美を感じる人物であった。

 

 

 

「少年、何があった」

 

 

 

 女性は無理に近づこうとはせず、数歩離れた場所で座り込む少年の目線に合わせるようにしゃがんだ。

 

 

 

 鎧を着ているため、しゃがむと鎧が身体にめり込んでいたい。しかし、そんなことは表情に出さず少年に優しく喋りかけた。

 

 

 

 少年は小さな声で答える。

 

 

 

「襲われた……」

 

 

 

「誰に?」

 

 

 

「仮面の集団に……」

 

 

 

 それを聞いた騎士達はお互いを見て頷きあった。

 

 

 

「私達はその仮面の集団を追っている。そしてその集団に襲われた者達を救助している。一緒に来てくれないか?」

 

 

 

 女騎士は少年を驚かせないようにゆっくりと近づくと、手を差し伸べた。

 

 

 

 少年は一瞬戸惑った。昨日のことがあり、人間を怖くなっていたのだ。

 誰を信じたらいいのかわからない。それに仮面の人物の中でも、少年の家を燃やした人間は少年の知り合いかもしれない。

 

 

 

 少年は怯えながらも女騎士の顔を見てみた。それは真剣な顔であり、人のことを思ってくれている顔だった。

 そしてその女騎士の部下の顔も同じように、少年を必死に助けようとしていた。

 

 

 

 それを見た少年は手を掴んだ。

 

 

 

「少年、名前は?」

 

 

 

「マルク……」

 

 

 

「そうか、マルク。君は私達が守る」

 

 

 

 

 

 



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 第26話  【BLACK EDGE 其の26 救い】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第26話

 【BLACK EDGE 其の26 救い】

 

 

 

 

 マルクは騎士に拾われた。村を焼かれ、家を失い、家族を失った彼にはこれがどれほどの救いになっただろう。

 

 

 

 村を出て騎士達は馬を走らせる。マルクはこれがどこに向かうのか分からなかった。

 マルクを乗せているのは一番後ろにいる騎士だ。

 

 

 

 そして前にいる騎士達は後ろの少年に聞こえないように喋っていた。

 

 

 

「隊長、大丈夫なんですか? あの少年……」

 

 

 

 部隊の副隊長を務める真面目そうな男騎士が聞いた。それに隊長である女騎士は答える。

 

 

 

「それは今考えることじゃない。それに……今は彼を守ることが先決だ」

 

 

 

 そしてしばらく馬を進めると、砦についた。岩山の上にある砦で石レンガで作られた塔が立っている。

 

 

 

 騎士達が帰ると仲間の兵士たちが出迎えてくれた。

 

 

 

「隊長、お疲れ様です」

 

 

 

 並ぶ兵士の前に立ち、挨拶をして出迎えたのは白と水色の中間の色の髪のおっとりした感じの女性。しかし、鎧を着ているため彼女も騎士なのだろう。

 

 

 

 それも騎士団を出迎えている他の騎士よりも位が高そうだ。

 

 

 

「クロエ、問題はなかったか?」

 

 

 

「はい。こちらは……それと、そちらの少年は?」

 

 

 

「マルクだ。奴らの襲撃にあった村の生き残りだ」

 

 

 

 こうして少年は騎士に保護された。

 

 

 

 彼女達は王国に属する騎士であるが、表立って戦う騎士ではない。

 王国の護衛や戦争に参加することはなく、彼女達の役割は闇組織と戦うこと。

 

 

 

 ここ数年で急激に拡大した犯罪組織。彼らを捕らえるのが仕事である。地方の各地に基地があり、隠れて活動をしている。

 

 

 

「ほら、食事だ。好きに食え」

 

 

 

 騎士に保護されたマルクは服を借りて、ある部屋に連れてこられていた。

 

 

 

 そこは塔の中にある小さな一部屋。真ん中に事務用の机があり、そこに肘をつけてマルクに手を差し伸べた女性が座っている。

 

 

 

 その机の先には木箱が置かれており、パンとスープが置かれている。

 

 

 

 騎士の人に着替えた後ここに連れてこられたが、連れてきてくれた騎士はマルクをこの部屋に入れると出て行ってしまった。今はこの部屋には二人しかおらず、その女騎士と向き合っている状態だ。

 

 

 

 マルクが食べていいのかわからず遠慮していると、

 

 

 

「……飯を食ってるときの方が私は腹を割って話せると思っている。だから用意させたんだが……無理はしなくていい」

 

 

 

 なんらかの話を持ちかけたいようだが、この女性なりの話しやすい状況を作ろうとしていたようだ。

 腹は減っていたので、マルクは食事をいただくことにする。

 

 

 

 マルクが食べ終わるのを見守った後、女騎士は喋り出した。

 

 

 

「私の名はメテオラという。早速だが私の弟子にならないか?」

 

 

 

 

 

 



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 第27話  【BLACK EDGE 其の27 弟子にならないか?】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第27話

 【BLACK EDGE 其の27 弟子にならないか?】

 

 

 

 

 唐突な提案であった。マルクは仮面の集団について聞き出そうとしていると思っていたので予想外のことだった。

 

 

 

「弟子……? …………ですか?」

 

 

 

 マルクが聞き直すと、メテオラは目を逸らして、

 

 

 

「そ、そうだ。弟子だ。弟子!」

 

 

 

 なぜかメテオラは顔を赤くして恥ずかしがっている。何が恥ずかしいのかはわからないが、動揺しているようだ。

 

 

 

 マルクは何がしたいのかわからず首を傾げる。そんなマルクにメテオラは、

 

 

 

「君は本当にあれが仮面の集団による襲撃だと思っているのか?」

 

 

 

 そう聞いてきた。さっきまでの動揺している感じとは違い、凛々しい真面目な雰囲気だ。

 

 

 

「違うんですか?」

 

 

 

「ああ、違う。己の胸に手を当てて思い出してみろ」

 

 

 

 マルクは言われるがまま、あの時のことを思い出す。

 

 

 

 村が騒ぎになっていて、村に行くと村は崩壊していて、そこで仮面の集団が現れる。

 どうにか逃げて家に帰ったら、家も…………。

 

 

 

 いや、

 

 

 

 俺は騒ぎになる前の村にいた。そしてみんな俺から逃げていくんだ。

 俺は小さな家を潰して、逃げゆく村人を…………。

 

 

 

 

 

 何かがマルクの奥から湧き上がってくる。思い出そうとした途端、底から這い上がってこようとする。

 

 

 

 突然、マルクは倒れて両手を地面につける。

 それを見ていたメテオラは立ち上がる。

 

 

 

「俺は…………俺は!!」

 

 

 

 

 

 

 塔の外では騎士達がクロエの指揮のもと剣の稽古をしていた。

 剣を振り、素振りをするものや、組み手をするものといろんなもの達がいる。

 そんな中、突然塔の中間くらいにある部屋の窓が割れ、ガラスと共に少年が降ってきた。

 

 

 

 高さ的には三回くらいの高さだろう。そんな高さから少年が降ってきて下にいたもの達はびっくりする。

 

 

 

 だが、それだけの高さから落ちたというのに、少年はほぼ無傷だった。

 そして少年はうつ伏せになると、地面を見つめたまま、

 

 

 

「おれは……俺は……!!」

 

 

 

 周りの騎士達が訳が分からず見守る中、塔の中からメテオラが出てきた。

 メテオラは手を叩いて埃を払う。

 

 

 

「逃げるな! 現実を受け止めろ! それがお前だ、お前が全てやったんだ」

 

 

 

 そしてメテオラはうつ伏せになっている少年を蹴り飛ばす。

 蹴り飛ばされた少年は地面を転がり、少し先で止まった。

 

 

 

「立て、少年!! お前が何者か、自分で示して見せろ!! 人間か、それとも黒龍か!!」

 

 

 

 メテオラはそう言うと腰にかけた剣を抜き、少年に向けた。

 

 

 

 

 

 

 



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 第28話  【BLACK EDGE 其の28 黒龍】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第28話

 【BLACK EDGE 其の28 黒龍】

 

 

 

 

「立て! お前は何者だ!! 人か、それとも龍か!!」

 

 

 

 メテオラはそう言うとマルクに向かって剣を向けた。

 周りの騎士達は何もできずに立ち尽くしている。

 

 

 

 そんな中、マルクは立ち上がる。

 

 

 

「俺は人間だ」

 

 

 

 マルクは地面に唾を吐くと、口についた血を腕で拭う。

 

 

 

「じゃあ、その記憶はなんだ!!」

 

 

 

 メテオラは詰問を続ける。マルクは少し困った後、

 

 

 

「あれも……俺だ」

 

 

 

 と、答えた。それを聞いたメテオラは剣をしまった。

 

 

 

「理解しているのならよろしい」

 

 

 

 メテオラはそう言うと頷いた。そしてマルクの方へ歩き出す。

 

 

 

「お前は人間だ。そして化け物だ。あの事件はグリモワールがお前を利用して起こったもの。だが、奴らもこうなるとは想定していなかっただろう」

 

 

 

 メテオラはマルクの目の前に立つと、向かい合った。マルクの身長はメテオラは半分くらいまでだ。

 メテオラは見下ろし、マルクは見上げる体制になる。

 

 

 

 メテオラはマルクの肩を掴む。両手でがっしりと、マルクは何をするのかわからず、ただ見上げることしかできなかった。

 

 

 

「っ!!」

 

 

 

 肩を掴んだメテオラが突然マルクの腹を肘で蹴った。その衝撃でマルクは口から液体を吐く。

 それでもメテオラはマルクを掴んだままだ。

 

 

 

「奴らが想定外だったのはお前を回収する前に、私達が現れたことだ。そして私はお前を育てることができる」

 

 

 

 メテオラはそう言うと、近くにいた騎士にマルクを投げ渡した。

 

 

 

「明日からビシビシ鍛えてやる。覚悟しておけ」

 

 

 

 マルクはもう自分で立つこともできない。それほどのダメージを受けた。

 それなのにメテオラは気にすることなく、塔へと戻っていく。

 

 

 

 そんなメテオラにクロエが駆け寄った。

 

 

 

「やりすぎじゃない?」

 

 

 

「今のは私の部屋の窓を割った分だ。部屋の家具もボロボロだ。今日はお前の部屋に泊めてくれ」

 

 

 

 

「はいはい、それで、あの子とあなた、どっちの方が龍の力が強いの?」

 

 

 

 

 それを言われたメテオラは足を止めた。

 

 

 

「今は私だ。だが鍛えれば、私など足元にも及ばなくなる。……奴らの天敵になれるだろう。私はそう確信した」

 

 

 

 そしてメテオラは唐の中へと戻っていった。クロエはメテオラを見送った後、マルクを投げられた騎士に命令する。

 

 

 

「その子を救護班に渡して、まぁ、今日の怪我なんて大したことないって思えるほど、明日は辛いものになるでしょうけど」

 

 

 

 命令を受けた騎士はマルクを背中に乗せると、運んで行った。

 

 

 

 

 

 

 



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 第29話  【BLACK EDGE 其の29 野宿】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第29話

 【BLACK EDGE 其の29 野宿】

 

 

 

 

 フェアとブラッドは山を進んでいる。一日中歩き続けたが、まだ村に着く気配はない。

 そして日が落ち始めた。

 

 

 

「これ以上進むのは危険だな。今日はここで野宿するぞ」

 

 

 

「はーい!」

 

 

 

 森の夜は危険だ。何が現れるか分からない。そのため今日は森の中で野宿することにした。

 

 

 

「俺は薪を集めてくる。お前はここで待っててくれ」

 

 

 

 ブラッドはそう言い薪を探してこようとするが、フェアが止めた。

 

 

 

「ここは私が探してくるよ。ブラッドは他にやることやっといて!」

 

 

 

 フェアはそう言うと森の中に走っていった。

 

 

 

 フェアはとても良い子だ。一日中歩いたというのに文句一つ言わない。それにこうしてブラッドの手伝いをしてくれるのだ。

 

 

 

 子供たちを救いたいというのもあるが、フェアの性格もあるのだろう。人のために手伝いたい、何かをやりたい。そう思って動ける。

 

 

 

 白龍は神聖な龍であり、適正者は簡単に見つからない。そんな白龍に認められるほど綺麗な心を持った子なのだ。

 

 

 

 だが、逆にブラッドからはそんなフェアが心配になる。なんでも背負い込んでしまうフェアはいつか辛い思いをしないだろうか。

 

 

 

 

 

 

 ブラッドが野宿の準備をしていると、フェアが薪を持って戻ってきてくれた。

 

 

 

「拾ってきたよ!」

 

 

 

「おう、ありがとな!」

 

 

 

 礼を言われたフェアは嬉しそうだ。

 

 

 

「こっちもフェアのおかげで良いもんを捕まえてこれた」

 

 

 

 ブラッドはそう言うと大きな魚を見せた。

 

 

 

 フェアが薪を拾ってきてくれていたので、時間に少し余裕ができたので近くの川で魚を捕まえてきたのだ。

 

 

 

 全部ブラッドが準備しようとしていたため、持ち運び用の食料で済ませようとしていたが、フェアのおかげで天然の大きな飯が手に入った。

 

 

 

 ブラッド達は火を起こすと、魚を焼いて夕食を食べる。

 村で買ってきた保存用食料と一緒に食べることになり、かなり腹が膨れた。

 

 

 

 空を見上げれば、星が輝いている。星はどこから見ても同じだ。いつも変わらない。

 

 

 

 そうやってのんびりしていると、

 

 

 

 

「…………」

 

 

 

 近くの草むらから気配を感じる。何かがいる、それも何人もだ。

 

 

 

「フェア、こっちに来い」

 

 

 

 ブラッドは警戒してフェアを呼ぶ。フェアは最初はなんで呼ばれたのか分からなかったが、ブラッドの表情を見てこれは緊急事態だと分かった。

 

 

 

「……何者だ。隠れてないで出て来い」

 

 

 

 ブラッドは気配の感じる草むらにそう呼びかける。すると、

 

 

 

 布に顔を隠した者達が次々と草むらから出てきた。

 

 

 

 

 

 

 



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 第30話  【BLACK EDGE 其の30 腹ペコ盗賊】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第30話

 【BLACK EDGE 其の30 腹ペコ盗賊】

 

 

 

 

「……何者だ! 隠れてないで出て来い!!」

 

 

 

 ブラッドはフェアを近くに呼ぶと、気配のする方にそう叫んだ。

 

 

 

 フェアは怯えてブラッドの服の裾を掴んでいる。

 

 

 

 ブラッドの呼びかけに答えてか。草むらから布に顔を包んだ者達が次々と出てくる。

 その数は十人程度。男の中には女も混ざっている。

 

 

 

 顔を隠していて、それぞれが武器を持っていた。見た目からして盗賊だろう。

 盗賊は武器を手に持つと、それを地面に置く。そして、

 

 

 

「ご飯を恵んでください!!」

 

 

 

 そう言って額を地面につけて、土下座した。

 

 

 

 ブラッド達は訳が分からず、その場で固まってしまう。

 そんな中、先頭に立って土下座をした盗賊が顔を隠している布を外した。

 

 

 

 それは紫髪の短髪の女性。

 

 

 

「た、頼む!! もう三日も飯を食ってないんだ!!」

 

 

 

 そう言って頭を地面に擦る。それを見ていたブラッドとフェアはなんだか可哀想に思えてきて、残っていたご飯を分け与えることにした。

 

 

 

 2人分の食料だったため、十人いると一人分で考えると少ない。しかし、そんな量であっても盗賊達は嬉しそうに食べた。

 

 

 

 ご飯を食べた盗賊達は、満足気にしている。そんな盗賊を見たブラッドが疑問を持ち聞く。

 

 

 

「お前ら盗賊だろ。なんで襲わなかったんだ?」

 

 

 

 盗賊なら武器を持っているし、襲撃することだってできた。まぁ、ブラッドなら余裕で勝てるのなら他の人間なら食料程度盗めたはずだ。

 

 

 

 それにさっきの紫髪の少女が答えた。

 

 

 

 この少女はこの盗賊のリーダーらしく、仲間達にはお頭と呼ばれている。

 

 

 

「腹が減っては戦はできぬ、だろ」

 

 

 

 紫髪の盗賊はそう自慢気に言った。そして、

 

 

 

「腹が満たされた今なら、お前達を襲ってやっても良いぞ」

 

 

 

 紫髪の女はそう言って近くにあった短刀を手に取った。しかし、少し警戒したブラッドに笑って返す。

 

 

 

「ないない。お前達は命の恩人だ。襲ったりはしないよ」

 

 

 

 そう言った後、

 

 

 

「私の名前はロザリー。お前らは?」

 

 

 

「俺はブラッド。こいつはフェアだ」

 

 

 

 ブラッドは自己紹介ついでにフェアの頭を撫でる。フェアは嬉しそうに撫でられる。

 

 

 

 ロザリーは立ち上がると、仲間を集める。腹は満たされたのでどこかに行くようだ。拠点に戻るのか、それともどこかに行くのか。

 

 

 

 ロザリーは背を向けた後、ブラッドに伝えた。

 

 

 

「この辺りは私の縄張りだ。何かあれば私を頼ってくれても構わない」

 

 

 

 こうしてロザリー達は離れていった。

 

 

 

 

 

 



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 第31話  【BLACK EDGE 其の31 村に到着】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第31話

 【BLACK EDGE 其の31 村に到着】

 

 

 

 

 

 森を抜けたブラッドとフェアはついに目的地であるフリジア村に着いた。

 

 

 

 この村は小さな村であるが、活気あふれている。人々は一生懸命働いており、村人達は支え合って過ごしている。

 

 

 

 村に着いたブラッドは近くを歩いている村人に話を聞くことにした。

 

 

 

「あ、すみません。この村に魔女がいるって噂を聞いてきたんですけど」

 

 

 

 ブラッドがそう聞くと、村人はあー、あいつか〜。と言い、村にある大きな屋敷を指差した。

 

 

 

 

「アリエルならあそこにいるよ。だが、どんな噂を聞いてきたんだか知らないが、あいつには関わらない方がいい」

 

 

 

 村人はブラッドに忠告する。

 

 

 

「なんでだ?」

 

 

 

「あの子がなぜ魔女と呼ばれているか、知っているか?」

 

 

 

 二人は首を振る。それもそのはずだ。ブラッドとフェアはメテオラに魔女の噂を伝えられてやってきたのだ。

 メテオラも噂程度で聞いただけであり、詳しいことは知らなかった。だが、今はそんな噂でも頼るしかない。

 

 

 

 それに噂では不思議な力を使うと言われている。魔法の存在しないこの世界で、そんな力を持つからこそ魔女と呼ばれていると思っていた。

 

 

 

 村人は説明してくれる。

 

 

 

「彼女は目的のためならなんでもする魔女なんだよ。彼女と関わって行方不明になった者はもう十二人もいる」

 

 

 

 何があったのかは分からないが、魔女のアリエルはこの村では好かれていない様子だ。

 

 

 

「行くなら止めないが、彼女には期待しない方がいいよ」

 

 

 

 そう言って村人は近くのお店に入っていった。買い物中だったらしくそれを呼び止めていた。

 

 

 

 だが、魔女に関わり、行方不明が十二人。

 なんだか恐ろしくもあるが、面白そうでもある。

 

 

 

 それにそれが魔女の仕業なら本当になんらかの力があるのかもしれない。

 

 

 

 ブラッドはフェアに聞く。

 

 

 

「お前は来るか?」

 

 

 

「当たり前よ。これは私の問題なんだから」

 

 

 

 この話を聞いてフェアが怯えていないか心配だったが、問題なさそうだ。

 

 

 

 本心では怯えているのかもしれないが、子供達の方が優先なのだろう。

 

 

 

 ブラッド達は魔女の家に向かった。家に着くと扉を叩く。

 

 

 

 すると中から声が聞こえた。

 

 

 

「鍵空いてるんで、ご自由にどうぞ〜」

 

 

 

 言われた通り、扉を開いてみると鍵は空いており中に入れた。

 

 

 

 中は広いが掃除をしていないのか蜘蛛の巣が張っている。埃だらけで物も乱雑に置かれていた。

 

 

 

 ブラッド達が声の主を探そうと、あたりを見渡すが誰もいない。

 

 

 

 上から物音が聞こえた。それも大量に何かが落ちる音だ。

 

 

 

 何かあったのかと、ブラッド達は急いで上の階へと上がる。2階は階段で登れたが3階は屋根裏らしく梯子で登った。

 

 

 

 登った先では、本に埋もれた人間がいた。

 

 

 

 

 



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 第32話  【BLACK EDGE 其の32 魔女】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第32話

 【BLACK EDGE 其の32 魔女】

 

 

 

 ブラッド達はメテオラの提案でフリジア村という村にいると言われる魔女に会いに行くことになった。

 村に着いたブラッドは村人に魔女について聞くと、村にある一番大きな館に住んでいるアリエルという女性が魔女だと説明された。

 

 

 

 だが、村人は彼女に対していい印象を持っておらず、行くことを勧められなかった。

 それもアリエルに関わった人間が十二人も行方不明になっているということがあるからだ。

 

 

 

 

 しかし、フェアとブラッドの目的はグリモワールに連れて行かれた子供達の行方を知ること。そのためには今はここを頼るしかなかった。

 

 

 

 ブラッドとフェアが屋敷に入ると、そこは物が乱雑に放置されている。埃も溜まっており蜘蛛の巣も張っている。本当にこんなところに人が住んでいるのだろうか。

 

 

 

「誰かいるか?」

 

 

 

 ブラッドは屋敷に誰かいないか探していると、上の階から物音が聞こえた。それは何かが倒れる音だ。

 

 

 

「上だな。何かあったのかもしれない」

 

 

 

 ブラッド達は階段を登り二階に行く。しかし、そこには人の姿はない。あたりを見渡すと階段の側に屋根裏に続く梯子があった。

 

 

 

「こっちだな」

 

 

 

 ブラッドはフェアを先に登らせて、落ちても助けられるようにして、その後自分も登る。

 

 

 

 登った先には本の山に埋もれて、人の手が埋まっている。

 

 

 

「…………た、たすけて」

 

 

 

 本の山から声がする。

 

 

 

 一瞬理解できずに固まっていた二人だったが、すぐに本の山をどかして埋もれていた人間を助けた。

 

 

 

「ふー、助かったぁ」

 

 

 

 中から出てきたのは茶髪の長髪に紫色のローブを着た女性。身長はかなり高くブラッドと同じくらいの身長である。そして胸も大きい。

 

 

 

「あなたがアリエルさんですか?」

 

 

 

 フェアはアリエルにそう聞く。すると、アリエルは本の山から紫色のとんがり帽子を探してきて、埃を叩いて落としてから被った。

 

 

 

「そうよ。私がアリエル。でも、ここに来る客人は大抵魔女に用があって来るんでしょうけど……。あなた達もそうなんでしょ」

 

 

 

 アリエルの問いにブラッド達は頷く。その言い方に違和感を覚えたブラッドは、

 

 

 

「じゃあ、お前は魔女じゃないのか?」

 

 

 

 と聞いてみた。

 

 

 

 アリエルはこの女性だが、この女性の言い方的に魔女に用があっても私には用がないみたいな言い方だった。

 

 

 

「いいえ、私が魔女よ。というか、服装的にそうでしょ」

 

 

 

「そうだな。すまなかった」

 

 

 

「良いのよ。もっと威厳がありそうなのを想像してたんでしょ。私も期待に応えられなくてごめんさないね」

 

 

 

 

 

 



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 第33話  【BLACK EDGE 其の33 紅茶】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第33話

 【BLACK EDGE 其の33 紅茶】

 

 

 

 

 ブラッドとフェアはアリエルに紅茶を渡される。

 

 

 

「どうも……」

 

 

 

 本を片付けた後、話を聞くために一階にあるリビングに案内された。真ん中にある大きなテーブルに座らされると、アリエルが紅茶を持ってきてくれたのだが……。

 

 

 

 テーブルの上は本や物だかけ、それに床にもいろんなものが散らかっており椅子に座るだけでも一苦労だった。

 

 

 

 そしてアリエルに出してもらった紅茶だが……。コップが汚い。何度も使ったコップをそのまま洗わずに使った感じだ。それに臭い。

 

 

 

 ブラッドが飲むのを躊躇していると、横で啜る音がする。

 

 

 

「フェア…………」

 

 

 

 隣を見るとフェアは平然と飲んでいた。ブラッドはフェアの耳元で話しかける。

 

 

 

「お、おい。これ飲んで大丈夫なのか? 腹壊したりしないか?」

 

 

 

 目の前ではアリエルがニコニコとコチラを見ている。紅茶を美味しいと言ってほしい感じだ。

 

 

 

 フェアはひっそりと答える。

 

 

 

「バレない程度に私の方に寄せて」

 

 

 

 ブラッドはフェアに言われた通り、紅茶の入ったコップを違和感がない程度、フェアの方に近づける。

 

 

 

 すると、紅茶の中からほんの少し、アリエルにバレない程度光った。

 

 

 

「白龍の力で毒は浄化した。とりあえずこれで飲みなさい」

 

 

 

 ブラッドがコップを手に持って中を見てみると、それでも汚い感じだ。

 

 

 

 しかし、フェアが龍の力を使っていたのは確かだ……ってことは、あのまま飲んでたら毒があったの!?

 

 

 

 アリエルは紅茶を飲むまで話を切り出そうとはしない様子だ。というかこちらの飲む様子をガン見している。

 

 

 

 もう、こうなったら飲んでやるよぉ!!

 

 

 

 ブラッドは紅茶を一気飲みする。マズイ。正直言ってマズイ。しかし、

 

 

 

「な、なかなか美味しいですね」

 

 

 

「でしょ〜、お気に入りなのよ」

 

 

 

 そう答えるとアリエルも汚れたコップで紅茶を飲んだ。

 

 

 

 この人は一体何者なんだろうか。いや、魔女か、……魔女だ。

 

 

 

 だが、とりあえずは紅茶を飲んだことだし……。

 

 

 

「それで、フリジアの魔女。俺達はお前の噂を聞いてここにきた。本当に不思議な力があるのか?」

 

 

 

 本題を切り出すことにした。

 

 

 

 ブラッド達の目的は子供たちの捜索だ。そして救出すること。ここでヒントを得られなければ、今のところは手がかりはない。

 

 

 

 ブラッドの問いにアリエルは紅茶をテーブルに置いた。

 

 

 

「不思議な力……ね…………」

 

 

 

 そう言うと雰囲気が変わった。さっきまでののんびりとした感じから、突然ブラッドは寒気を感じる。それはフェアも同じだったようだ。

 

 

 

 テーブルの下では隣にいるブラッドの服を掴んでいる。

 

 

 

「……アンタたちは何を求めるの?」

 

 

 

 

 

 

 



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 第34話  【BLACK EDGE 其の34 等価】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第34話

 【BLACK EDGE 其の34 等価】

 

 

 

 突然雰囲気が変わった。それを感じ取ったのはブラッドだけではないフェアもだ。

 フェアは怯えるようにフェアの服を掴む。

 

 

 

 感じるのは恐怖。

 生物の生死がアリエルの意志で左右してしまう。心臓を握られているような感覚。

 

 

 

 ブラッドとフェアがその場で動けずに固まっていると、アリエルが突然笑い出した。

 

 

 

「ごめんね。魔女だからってなんでも頼みに来る人たちがいるのよ。だからこうやって追い返してるの」

 

 

 

 アリエルがそう言うと、雰囲気がさっきまでのまったりした感じに戻った。

 

 

 

 ほっとする二人。しかし、今のはなんだったんだろうか。

 

 

 

 何度か修羅場を超えてきたブラッドでもこの感覚は初めてだった。圧倒的な強者に睨まれている気持ち。

 あれだけの不気味な感覚を感じれば、逃げるか闘うか、なんらかの行動を取っただろう。だが、ブラッドの身体は動けなかった。

 

 

 

 それがなぜなのか。だが、考える暇はなかった。

 

 

 

 

「何ができるのか? だっけ、そうね。大抵のことはできるよ」

 

 

 

 それを聞いたフェアはテーブルから身を乗り出す。

 

 

 

「本当!!」

 

 

 

「ええ、でも、力を使うには代償が必要。私の力は等価交換で成り立つの……」

 

 

 

 そう言うとアリエルは立ち上がる。

 

 

 

 そして紅茶の入ったコップを持つと、コップを大きく振り中の紅茶を振り撒いた。

 

 

 

 左から右へ大きく移動したコップは紅茶を吐き出す。紅茶は粒状になり空中を舞う。しかし、

 

 

 

「…………っ!!」

 

 

 

 宙を待っていた紅茶が空中で静止した。まるで時が止まったかのように動きを止めたのである。

 

 

 

「こ、これは…………」

 

 

 

 本当に不思議な力だ。まるで魔法。本物の魔法だ。こんな力が現実で存在するとは……。

 

 

 

 アリエルはコップをテーブルに置くと椅子に座る。すると、静止していた紅茶は線を作り、まるで動く絵のように動き出す。

 そして円を作り出した。

 

 

 

「これはほんの力の一部。この屋敷の中だけという条件を除けば、万能な力よ」

 

 

 

 そんな凄い力が本当に存在していたなんて……。

 

 

 

 アリエルが指を動かすと、近くにあった本が浮かび上がっていた。

 そしてアリエルはそれを掴む。

 

 

 

「私は今、十二の魔導書を持っている。それ単体では効力はないけど特殊な装置に埋め込むことで私の身体とリンクして力を使えるの」

 

 

 

 そんな力を目の当たりにしたフェアは身を乗り出した。

 

 

 

「じゃ、じゃあ、お願いしたいことがあるの!!」

 

 

 

 そう、ブラッドたちがここにきた目的は、

 

 

 

「子供たちの行方を教えてほしい!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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 第35話  【BLACK EDGE 其の35 二十の魔導書】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第35話

 【BLACK EDGE 其の35 二十の魔導書】

 

 

 

 

 フェア達の目的は、

 

 

 

「子供達の居場所を探してほしい!!」

 

 

 

 

 フェアはアリエルに頼む。すると、アリエルはニヤリと口元を緩ませた。

 

 

 

「良いよ。それくらい」

 

 

 

 案外簡単に手伝ってもらえた。

 

 

 

 話を聞いた村人は彼女のことを怖がっていた。しかし、実際に会ってみると良い人だ。

 行方不明者が十二人も出ていると言っていたが、それは村人達の勘違いなのではないだろうか。

 

 

 

「ありがとう!!」

 

 

 

 フェアは喜ぶ。これで子供達を探すヒントを手に入れられたのだ。

 だが、

 

 

 

 アリエルは指を立てた。

 

 

 

「さっきも言ったけど、物事は全てが等価交換だ。得るためには何かを失わなければならない。それが世界の理だ」

 

 

 

 ブラッドはアリエルに聞く。

 

 

 

「何を出せっていうんだ」

 

 

 

 これでも魔女と呼ばれる人物だ。ただでは手伝ってはくれないらしい。

 

 

 

 すると、アリエルはテーブルに一枚の紙を置く。

 

 

 

「私の究極の魔導書作りを手伝って欲しい」

 

 

 

 ブラッドは置かれた紙を受け取る。しかし、その紙は白紙である。

 

 

 

「なんだこれは?」

 

 

 

「これを西東の雪山に住むクリステルという女性に渡して欲しい」

 

 

 

「この白紙の紙をか?」

 

 

 

 ブラッドの疑問にアリエルは答えることなく。彼女なら分かるとだけ教えた。

 

 

 

 それが子供達を探す条件ならとブラッドは紙を受け取る。

 

 

 

「それで? 子供達はどうやって探すんだ?」

 

 

 

 ブラッドがそう聞くと、アリエルはやれやれという表情で答えた。

 

 

 

「でも残念。まだ人探しの魔導書は持ってないの」

 

 

 

 少し雲行きが怪しくなってきたか?

 

 

 

 ブラッドは立ち上がる。なんだかこのままいいように使われて終わる予感がしたからだ。

 少し魔女を舐めていたと思った。

 

 

 

 期待をさせて落とされた気分だ。だが、この言い方だとできないわけではない。

 そしてこちらは彼女を頼るしかない。

 

 

 

 しかし、アリエルは手で座れと合図してきた。仕方なくブラッドは座る。

 

 

 

「私があの屋敷に行ってもどうせ弾かれる。でも、彼女なら良い魔導書が作れる。そう思うのよ」

 

 

 

「それで俺たちにこの紙を渡させて、魔導書を持ち帰れと?」

 

 

 

「ま、なんとなくはそんな感じね。違う部分もあるけど……」

 

 

 

「違う部分?」

 

 

 

「それは行ってみればわかる」

 

 

 

 だが、今はこの胡散臭い魔女を頼るしかない。期待はしていなかった。しかし、不思議な力を見せられて、探す手段があると言われた。

 そしたら条件を飲んでやるしかない。

 

 

 

「分かった。こいつを届ければ良いんだな」

 

 

 

 こうしてブラッドとフェアは北西の雪山へ向かうことになった。

 

 

 

 

 

 

 

 



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 第36話  【BLACK EDGE 其の36 兄弟】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第36話

 【BLACK EDGE 其の36 兄弟】

 

 

 

 

 アリエルの条件に従い北西の雪山地帯に向かうことにしたブラッド達は旅に備えて村で旅立ちの準備をしていた。

 

 

 

 北西の雪山地帯そこにたどり着くまでには、数日かかる。かなり長い旅になってしまう。途中では王都によることにもなるし、大きな森を抜けることになる。

 

 

 

 そのため必要なものを手に入れるために、村で色々と購入していた。

 食料に衣服。そして馬車を手に入れた。

 

 

 

「よし、こんなもんだな」

 

 

 

 これで旅には十分なアイテムを手に入れた。そして出発しようとしていた時、

 

 

 

 ブラッドは村である少女を見かけた。その少女の見た目にブラッドは衝撃を受ける。

 

 

 

 それはあの事件の時からどこに行ったのかわからなくなっていた兄弟に似ていた。

 歳も今ならこのくらいの大きさになっているだろうという大きさ。

 

 

 

 そしてそれだけ成長していても面影がある。ブラッドはかつて離れ離れになった妹に似た人物を見かけたのである。

 

 

 

「っ!?」

 

 

 

 ブラッドは驚いてその女性を追いかける。しかし、角を曲がったところで見失ってしまった。

 

 

 

「あれは…………」

 

 

 

 ブラッドはその少女を見失ってしまった。

 

 

 

 その少女が本当にブラッドの妹だったのかはわからない。だが、もしも生きていたのだとしたら…………。

 

 

 

 ブラッドはあの時に家族はみんな死んでしまったと思っていた。だが、あの時にはっきりと死体を見たわけではない。

 

 

 

 だから、もしかしたら生きていてもおかしくはない。

 

 

 

「ブラッド、どうしたの?」

 

 

 

 そうしてブラッドが辺りをキョロキョロしていると、フェアがやってきた。

 

 

 

「…………いや、なんでもない」

 

 

 

 ブラッドは今あったことをフェアには伝えなかった。いや、伝える必要はないと思ったからだ。

 

 

 

 今回のことはフェアには関係ない。それに今は早く子供達の居場所を知る必要がある。そのためにもこの旅を急がなければ……。

 

 

 

 だから、このことはフェアには黙っておくことにした。

 

 

 

 もしも言ってしまえば、フェアはこのことを気になってしまう。もしかしたらフェアなら少しだけならこれに時間を使ってくれるかもしれない。

 だが、そんなことをしている時間はない。

 

 

 

 俺たちの旅は急ぐ旅だ。早く子供達を助け出す。それが目的なのだ。

 

 

 

「フェア、行くぞ」

 

 

 

「はい」

 

 

 

 ブラッドとフェアは馬車に乗り込んだ。そしてブラッドは馬を操る。

 

 

 

 馬の操作は修行時代に習っている。そのため馬車の動かし方もわかる。

 

 

 

 こうしてブラッド達の旅は始まったのであった。

 

 

 

 

 

 

 



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 第37話  【BLACK EDGE 其の37 再開】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第37話

 【BLACK EDGE 其の37 再開】

 

 

 

 

 それは私が買い物に行った時のことであった。

 

 

 

 私は出会ってしまったのだ……。あの男と……。

 

 

 

 

 私は小さな頃に拾われた。それは丘にある小さな家であり、そこには二人の兄がいた。その二人も孤児であり、そこに住む男に拾われた子供達であった。

 

 

 

 そこの子供達と私は仲良く。兄弟として育ってきた。しかし、ある時、お父さんが私と一人の兄を連れて王都の貴族の家に来た。

 しばらく経って、私とその兄はそこの養子になることになった。

 

 

 

 そしてそれから数年後。今度は私達は王の養子になることになった。最初からこの予定だったらしいが、孤児を王の子供にするわけにもいかず、貴族を経由して貴族の子供とし、それから王族になったのだ。

 

 

 

 すべては大人達の行い。私達は訳もわからず、ただそれに従うようにしていた。

 

 

 

 だが、不思議だったのは……。

 

 

 

 どこに行っても私達は不自由なく暮らせたことである。今も一度親になってくれた貴族との交流はあるし、最初に拾ってくれた男も遊びに来る。

 王である今のお父様も可愛がってくれている。

 

 

 

 だが、一つだけ疑問がある。それはもう一人いたはずの兄に会っていない。

 

 

 

「リナ……」

 

 

 

「お兄様」

 

 

 

 今いるのは一緒に連れてこられた兄だけだ。もう一人の兄は行方がわからない。

 

 

 

 今、お兄様はその兄を探すために騎士と共に各地をまわっている。しかし、それでもその兄は見つからなかった。

 

 

 

 

 私は今、お父様の許しを得て一人暮らしをさせてもらっている。王女であることを伏せて、村の近くの一軒家で暮らしている。

 私は世間的には王都にいることになっている。全てはお父様が用意してくれた。

 

 

 

 近くの村に買い物に行くと、私は見てしまった。

 

 

 

「あれは……お、お兄ちゃん……」

 

 

 

 そしてそこで見てしまった。しばらく会えていなかった兄だ。だが、その人物がこちらを向くと、私は走って逃げてしまった。

 

 

 

 なぜ会いたかったはずなのに逃げてしまったのだろう。言いたいことも話したいこともあった。

 それなのになぜか、私は背を向けてしまった。

 

 

 

「…………」

 

 

 

 走って逃げた後、振り向くとその人物は追いかけてきていた。だが、私は角に隠れたので見失ってしまったようだった。

 

 

 

 少し落ち着いた。今なら話せる。私が彼の元に行こうとした時、

 

 

 

「ブラッド、どうしたの?」

 

 

 

 彼の元に少女が現れた。少女と少し話した後、彼はその場から姿を消した。

 

 

 

 だが、私には追いかける勇気がなかった。

 

 

 

 

 

 



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 第39話  【BLACK EDGE 其の39 到着王都ガルデニア】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第39話

 【BLACK EDGE 其の39 到着王都ガルデニア】

 

 

 

 

 そしてついに馬車は王都ガルデニアに着いた。

 

 

 

 王都の周りは大きな壁で囲まれており、中に入るためには門を潜る必要がある。門では見張りがおり、犯罪者などの侵入を防ぐために身分証明を行う。

 

 

 

 門で確認をしてもらうためにブラッドが並んでいると、フェアが焦ります。

 

 

 

「え、え!! 大丈夫なの?」

 

 

 

 何を焦っているのだろうか。ブラッドは無言でポケットからカードを取り出す。それは写真付きの証明写真。

 

 

 

「ぎ、ギルドカード?」

 

 

 

「そうだ。俺はギルドで賞金首なんかを捕まえて生活してるからな。俺は公認の賞金稼ぎなんだ」

 

 

 

 フェアはちょっと驚いた様子だ。俺のことを犯罪者だと思っていたのだろうか。

 

 

 

 そりゃ、グリモワールの中だと有名な人物だ。しかし、グリモワールは裏組織。犯罪組織だ。それを懲らしめることは職業的に許される。

 

 

 

「でも、私はどうするの? 私何も証明するものなんてないよ」

 

 

 

 今度は自分のことでソワソワし出す。

 

 

 

「大丈夫だ。俺の付き添いってことで通れる。そこまで厳しいものじゃないし、俺たちは悪いやつじゃない」

 

 

 

 ブラッドがそういうとフェアは安心する。

 

 

 

「そ、そうよね。私達は悪じゃない!! どっちかっていうと正義よね!!」

 

 

 

 なんだか、それも間違っていなくもないが……何か違う気もする。子供達を救いたいというのはあるが、それはグリモワールに関係しているからだ。

 正義っていうのはもっと自分に無関係な人でも助ける奴のことを言う。ちょっとそこからは外れている気もする。

 

 

 

 そしてブラッドはギルドカードを門番に見せる。すると、門番の人は、

 

 

 

「あ、あなたですか、お久しぶりです」

 

 

 

 顔見知りだったようだ。しかし、ブラッドは覚えていない。

 

 

 

「あー、覚えてないですか〜。私特徴ないですしね……」

 

 

 

 そう言うとその門番は落ち込む。

 

 

 

「い、いや、そんなことないですよ……」

 

 

 

「じゃあ、思い出しました?」

 

 

 

「…………」

 

 

 

 門番は肩を落とす。

 

 

 

「あなたが昔、超巨大の賞金首を捕らえてきたことあるでしょ。その時門から先、運ぶの手伝った門番です」

 

 

 

 それを説明したブラッドは思い出した。確かにそんなこともあった。

 

 

 

「あー、あの時は助かった」

 

 

 

「やっと思い出しましたか……。あ、そういえば…………」

 

 

 

 そう言うと門番はフェアを見て言う。

 

 

 

「いつの間に結婚して子供できてたんですか?」

 

 

 

「違うわ!!」

 

 

 

 まぁ、そんな感じで門を超えると、その先は大きな道がずっと続く大きな街。王都ガルデニアに着いた。

 

 

 

 

 



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 第40話  【BLACK EDGE 其の40 殴りと握手】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第40話

 【BLACK EDGE 其の40 殴りと握手】

 

 

 

 

 王都ガルデニアに到着したブラッドとフェアは王都を探索していた。予定よりも早く着くことができた。

 ここで必要なものを購入してさらに先に進む。

 

 

 

 今から出ても次の村までは日が出ている間にはつかないので、今回は王都に泊まる。そのための宿も探していた。

 

 

 

「ねー、ねー、あそこなんでどう?」

 

 

 

 フェアは初めての王都に興奮気味だ。走り回って王都をキョロキョロしているフェアはちょっとお高そうな宿を指差した。

 ブラッドはその宿を見るが、少し悩んだ後、

 

 

 

「そこはちょっと高いな。もう少し安いところで頼む」

 

 

 

 ブラッドがそう言うとフェアはまたキョロキョロした後、今度はボロボロな宿を指差した。王都の中でも特にボロい宿だ。今にも崩れそうな見た目をしている。

 

 

 

「そこまで安くなくて良い……。金はそこそこあるから……」

 

 

 

「えー、面白そうなのにー」

 

 

 

 何が面白いのだろうか。極端すぎるフェアだが、楽しんでいるのだからとブラッドはやれやれと様子を見守る。

 

 

 

 その後もいろんな宿をくるくると周り、良い宿を見つけることができた。

 

 

 

「ここは?」

 

 

 

「ま、ここなら良いか。早速部屋を取ってくる。その後は買い出しに行くぞ」

 

 

 

 部屋を借りるために宿の中に入り、店主にお金を払う。部屋を二つ借りて、ブラッドとフェアが荷物を置いて外に出ようとすると……。

 

 

 

 入口から大柄な男が入ってきた。ツンツン頭の背中に大剣を背負っている男。

 

 

 

 その男とブラッドは顔を合わせると、

 

 

 

「「あ……」」

 

 

 

 と二人して腑抜けた声を出した。

 

 

 

 しばらく二人は何も言わずに睨み合う。それを見ていたフェアはおどおどしだす。

 この男が何者なのか知らない。ブラッドの知り合いなのだろうか。

 何か因縁のある相手なのだろうか。

 

 

 

 二人は睨み合った後、二人とも右手でお互いの顔を殴った。

 

 

 

 何も分からないフェアは悲鳴をあげる。

 

 

 

 ブラッドは店の中に吹っ飛び、男は店の外まで吹っ飛んだ。

 倒れていた二人だが、二人同時に笑い出した。

 

 

 

 二人とも顔を抑えて爆笑する。その様子を見てキョトンとしているフェア。

 

 

 

 笑い合った後、男は立ち上がった。

 

 

 

「久しぶりだな。ブラッド。元気そうだな」

 

 

 

 ブラッドも立ち上がる。

 

 

 

「ああ、お前もな。ヒューグ」

 

 

 

 二人は立ち上がった後、近づいて熱い握手をする。

 

 

 

 二人の握手は凄い力が入っているようで、にこにこしているが握りつぶそうとしているのがわかる。

 

 

 

「また会うことがあるとはな。王都になんのようだ?」

 

 

 

「立ち寄っただけだ」

 

 

 

 

 

 

 



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 第41話  【BLACK EDGE 其の41 再会の相棒】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第41話

 【BLACK EDGE 其の41 再会の相棒】

 

 

 

 

 ヒューグも宿に部屋を借りにきていたようで、部屋を借りると買い出しを手伝ってくれた。

 

 

 

 最初の殴り合いにはびっくりしたが、その後は二人とも仲良くしている。

 

 

 

「ブラッド、ヒューグさんとはどんな関係なの?」

 

 

 

 古くからの知り合いらしく、話についていけなかったフェアはブラッドに聞いた。

 

 

 

「ああ、ヒューグとはギルド仲間だ。王都で賞金稼ぎをやっていた頃にタッグを組んで荒稼ぎしてた」

 

 

 

 フェアへの説明を聞いていたヒューグが話に入ってくる。

 

 

 

「オレたちは王都じゃ敵なしだったんだ。……またギルドに戻ってくる気はないのか?」

 

 

 

 ヒューグはブラッドにそんなことを聞く。さっきから何度も戻ってこないかと勧誘している。

 

 

 

「俺には今やることがある。それが終わったらな」

 

 

 

「あー、あれか…………」

 

 

 

 ヒューグはフェアの方を見る。

 

 

 

「子育てか?」

 

 

 

「だから俺の子じゃねーよ!!」

 

 

 

 王都に来てからこの勘違いをされる。なんでそうなるんだろうか。

 

 

 

 ブラッドはヒューグに、

 

 

 

「お前には前に説明したことがあるだろ。俺はある組織を追ってるんだ」

 

 

 

「あー、あれか…………」

 

 

 

 ヒューグはあまりを見渡す。そしてある看板を見つけた。

 

 

 

「豚の角煮か」

 

 

 

「どうしてそうなるんだよ!! お前忘れてるだろ!! 今そこの看板見て言っただろ!!」

 

 

 

 ブラッドはヒューグにもう一度説明した。

 

 

 

 グリモワールという組織を追っていること。そしてフェアと一緒に子供たちを探していること。

 

 

 

 ヒューグは一応理解したみたいだが、またすぐ忘れそうだ。

 

 

 

 買い出しを終えたブラッド達は荷物を宿に置くと、外食に行くことにした。

 王都にはいろんな店がある。日も落ちて夕食どきになったことで、王都内ではすごく美味しそうな匂いがしてた。

 

 

 

「どこで食べる?」

 

 

 

「じゃあ、あそこ!!」

 

 

 

 フェアが指差したのは子連れの客もいる店だ。

 その店に入ることにしたブラッド達にヒューグが言う。

 

 

 

「今日は久しぶりだしな。俺が奢ってやるよ」

 

 

 

 店に入り席に着く。メニューを見た後、フェアはハンバーグ。ブラッドはパスタ。ヒューグはステーキを頼んだ。

 

 

 

 料理を待っている間、フェアは少し気になったことを聞いてみた。

 

 

 

「ヒューグさんは強いんですか?」

 

 

 

 龍の力を持ってブラッドとタッグを組んでいたほどだ。かなりの実力があるのだろう。

 

 

 

「ああ、俺は強いぜ。龍の首を真っ二つにするほどな!!」

 

 

 

 それを聞いたフェアは固まる。そんなフェアにブラッドが横から伝える。

 

 

 

「例え話だ。冗談だから気にするな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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 第42話  【BLACK EDGE 其の42 二人の襲撃者】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第42話

 【BLACK EDGE 其の42 二人の襲撃者】

 

 

 

 

 ブラッドは王都でギルドで賞金稼ぎをしていた頃に一緒に活動していたヒューグと再開した。

 

 

 

 

 ブラッド、フェア、ヒューグの三人は夜ご飯を一緒に食べていた。

 

 

 

「ヒューグさんって強いんですか?」

 

 

 

 ふとフェアが疑問に思って聞いてみた。

 

 

 

 龍の力を持ってブラッドとタッグを組めるほどの実力者。だが、ヒューグが龍の力の持ち主だという話は出なかった。

 

 

 

 するとヒューグはニヤリと笑った。

 

 

 

「ああ、強いぜ。龍なら一振りで真っ二つにできる」

 

 

 

 ヒューグがそう言うとフェアはハンバーグを食べていた手を止めた。そして固まる。

 

 

 

 フェアも龍だ。自分を真っ二つと言われて、気分の良い人間はいない。

 

 

 

 怯えているフェアにブラッドが耳元で伝える。

 

 

 

「冗談だよ。ただの例え話だ」

 

 

 

 それを聞いたフェアはホッとする。そして再び食べ始めた。

 

 

 

 そんな感じで三人が食べ終わる。料理を食べ終わったところで、ヒューグの表情が変わった。

 

 

 

「おい、お前ら。お前らの他に仲間でもいるのか?」

 

 

 

 ブラッドは答える。

 

 

 

「いや、いないが……何かいるのか?」

 

 

 

「ああ……」

 

 

 

 すると、ヒューグは顔を向けずに後ろを指差す。

 

 

 

「その先の席だ。怪しい動きをしてる奴がいる」

 

 

 

 ブラッドもフェアも分からなかった。だが、ヒューグの話をブラッドは真面目に聞く。

 

 

 

 不思議そうな表情をしているフェアにブラッドが説明した。

 

 

 

「ヒューグは普通の人の数倍の感覚が鋭いんだ。それにやって人の気配を強く感じる」

 

 

 

 ブラッドはヒューグをかなり信頼しているようだ。

 

 

 

 ヒューグはブラッドに言う。

 

 

 

「こっちから先に仕掛けるか?」

 

 

 

 それに対してブラッドは首を振った。

 

 

 

「いや、ここで戦闘になれば他の人の迷惑になる。一旦出るぞ」

 

 

 

 三人は金を払うと外に出た。そして王都を歩くが、

 

 

 

「つけられてるな」

 

 

 

 ヒューグはそう言った。

 

 

 

 敵が何者かは分からない。だが、戦闘は避けられないのかもしれない。

 

 

 

「どこにいるんだ?」

 

 

 

「後ろに二人。二人とも武器を持ってる」

 

 

 

「人気の少ないところで相手するか」

 

 

 

 ブラッド、フェア、ヒューグは三人で人の少ない路地へと向かう。

 

 

 

 そして路地でその二人を迎え撃つように振り返った。

 

 

 

 すると、そこには黒いフードを被った仮面の人物が二人いた。

 

 

 

「グリモワール!?」

 

 

 

 フェアは二人を見て叫ぶ。それを聞いたヒューグが聞く。

 

 

 

「あれがお前達の追っている?」

 

 

 

 ブラッドは戦闘の構えになった。

 

 

 

「ああ、だが、これは好都合。奴らから情報を聞くな」

 

 

 

 

 

 

 



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 第43話  【BLACK EDGE 其の43 王都での追跡者】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第43話

 【BLACK EDGE 其の43 王都での追跡者】

 

 

 

 

 ブラッド達は路地裏で振り向く。すると、そこには仮面をつけたフードの人物が二人いた。

 

 

 

「あれがお前達の追ってる連中か?」

 

 

 

 ヒューグの問いにブラッドが答える。

 

 

 

「ああ、そうだ。だが、これは好都合。この二人を捕まえれば情報を聞き出すチャンスだ」

 

 

 

 グリモワールの目的はフェアを捕らえることだ。白龍の適合者は少ない。そのためフェアは貴重な人材だ。

 

 

 

 そのため二人を履行して襲ってきたのだろう。しかし、こうして姿を表してくれたのはブラッド達にとっても好都合。

 

 

 

 ブラッドとフェアは子供達を追っている。グリモワールに連れて行かれた子供達だ。しかし、その子供達の行方がわからず、捜索手段を探す状態だ。

 

 

 

 だが、もしもこの二人を拘束して情報を聞き出すことができたのなら、子供達の居場所がわかるかもしれない。

 

 

 

 それを聞いたヒューグは背中にある大剣に手をかけた。

 

 

 

「そういうことが。じゃあ、手を貸すぜ。……二人もと捕らえた方がいいか?」

 

 

 

 ブラッドも拳を握ると、戦闘の構えを取る。

 

 

 

「そうだな。二人いた方が情報を照らし合わせられる」

 

 

 

 フェアはブラッドの背中に隠れる。

 

 

 

 戦闘体制の二人を見て、仮面の二人組も構えた。

 

 

 

 二人とも短剣を持っている。

 

 

 

 ヒューグがブラッドに聞く。

 

 

 

「右と左、どっちをやる?」

 

 

 

「どっちでもいいぜ」

 

 

 

「じゃあ、…………」

 

 

 

 ヒューグが走り出す。そして右にいた仮面の人物に大剣を振り下ろした。

 仮面の人物は後ろに退がり、その攻撃を回避する。

 

 

 

「俺はこっちだ!!」

 

 

 

 ヒューグの大剣は地面に突き刺さり、地面を抉った。

 

 

 

 ブラッドももう一人の仮面の人物に向かって走り出した。

 そして左手で殴りつける。

 

 

 

「っ!!」

 

 

 

 大剣の攻撃で気を取られていたのか、もう一人の仮面の人物はブラッドの攻撃を喰らう。

 そしてそのまま路地にあるゴミ箱に突っ込んだ。

 

 

 

 仲間がやられたのを見てか。ヒューグの攻撃を躱した仮面の人物は、背中を見せて逃げる。

 

 

 

「おい、待て!!」

 

 

 

 ヒューグはそれを追おうと走り出した。それを見たブラッドが、

 

 

 

「無理をするな。奴らは術師だ。奇妙な技を使うぞ」

 

 

 

「ああ、任せとけ。そっちは任せる」

 

 

 

 そう言ってヒューグは仮面の人物を追ってどこかに消えていった。

 

 

 

 そしてヒューグが去った後、ゴミ箱に突っ込んだ仮面の人物も立ち上がった。

 

 

 

 フラフラとしながら立ち上がる。

 

 

 

「いてぇ〜なぁ、かなり良いの食らっちまった」

 

 

 

 仮面の声は男だ。仮面の男は殴られた時に落とした短剣を拾う。

 

 

 

「俺様はグリム・リーパー。この痛み、倍にして返してやるぜ」

 

 

 

 

 



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 第44話  【BLACK EDGE 其の44 グリム・リーパー】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第44話

 【BLACK EDGE 其の44 グリム・リーパー】

 

 

 

 

「俺様はグリム・リーパー。この痛み、倍にして返してやるぜ」

 

 

 

 グリムは短剣を逆手で持つ。すると、グリムの持つ剣が不思議なオーラを放ち始めた。

 

 

 

「ブラッド!! 気をつけて!!」

 

 

 

「分かってる!!」

 

 

 

 グリモワールの隊員は不思議な術を使う。魔術と言われる術であり、彼らは術師だ。

 

 

 

 それぞれが固有の能力を持っており、その能力を活かして戦闘をしてくる。

 だが、万能というわけではなく。力を得るのとは引き換えに、何かしらのデメリットも存在している。

 

 

 

 

 それに誰もが使えるというわけでもないのが、魔術の厄介なところだ。だが、これはグリモワールも持つ銃などの技術と同じで、世間的には広められておらず。闇組織が独占している状態だ。

 

 

 

 

「ブラッド、お前の噂は聞いているぜ」

 

 

 

 グリムはブラッドに喋りかけてくる。

 

 

 

「グリモワールの支部を潰し周っているらしいな。それでついた名前がブラッド…………だが、俺はグリム・リーパー、死神だ。お前を死の国へ導く者だ」

 

 

 

「俺を倒すつもりか?」

 

 

 

「ああ、その通り。お前が強ければ強いほど、俺は強くなる」

 

 

 

 すると、ブラッドはグリムの背後に不思議なオーラを感じた。何人のも怨霊がついているような、不思議な感覚だ。

 

 

 

「フェア、お前は下がれ」

 

 

 

 ブラッドはフェアを後ろに隠して、敵に狙われないようにする。

 それを見たグリムは、

 

 

 

「グリモワールからの指令はその子供を捕らえてくることだ。だが、俺はその子供よりもお前の方が興味ある。その子供はお前を倒してから捕まえる。戦闘中はそっちから手を出してこない限り、手を出さないから安心しろ」

 

 

 

 ブラッドはグリムが本心で言っていると感じた。

 

 

 

 ブラッドを優先して戦闘中はフェアには手を出さない。それは本当のことだろう。

 

 

 

「なら、俺も遠慮なく戦える」

 

 

 

「さぁ、殺し合おうかァ!!」

 

 

 

 ブラッドとグリムはお互いに走り出す。そして中央で二人はぶつかる。

 

 

 

 グリムは短剣を振って攻撃をしてくるが、ブラッドはそれを避ける。そして攻撃を避けたブラッドはグリムに殴りかかる。

 

 

 

 グリムはブラッドの攻撃を避けることができず、腹に強い衝撃を受ける。殴られたことでグリムは口から液体を吐きながら、ヨロヨロと後ろに下がる。

 

 

 

 ブラッドは追撃をしようと、グリムを追うが、

 

 

 

「待て」

 

 

 

 グリムが手を前に出して、ブラッドを止める。

 

 

 

「お前は今まで俺を二回殴ったよな」

 

 

 

 そう言ってニヤリと笑った。

 

 

 

 

 

 



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 第45話  【BLACK EDGE 其の45 死神】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第45話

 【BLACK EDGE 其の45 死神】

 

 

 

 

 殴られたグリムは腹を押さえながら、フラフラと後ろに下がる。そのグリムに追撃を加えようとブラッドは追うが、

 

 

 

 グリムが手を前に出して、ブラッドの動きを止めた。

 

 

 

 グリムはニヤリと笑う。

 

 

 

「お前は最初の一回。そして今ので二回。俺を殴ったな……」

 

 

 

 次の瞬間、ブラッドの腹に衝撃が走る。

 

 

 

 グリムはまだ射程距離外だ。それにグリムが動いた様子はない。だが、まるで殴られたような感覚をブラッドを襲った。

 

 

 

 ブラッドは腹を押さえて、地面に手をつける。

 

 

 

「何をしやがった」

 

 

 

 ブラッドはグリムを睨みつける。グリムは地面に手をついたブラッドを見て嬉しそうにする。

 

 

 

「これが俺の術だ。…………なかなか面白い術だろ?」

 

 

 

 グリムが攻撃のために体を動かしたり様子はなかった。なら、体を動かさなくても術を使えるのか、それとも事前に攻撃の術が発動していたのか……。

 

 

 

 だが、グリムは二回殴ったと言った。殴った回数が関係しているのだろうか。

 

 

 

「さてと、まだやれるよなァ、ブラッド?」

 

 

 

 グリムは短剣を振り回す。そしてブラッドを見下ろしてきた。

 ブラッドは立ち上がる。

 

 

 

 ダメージはでかい。だが、まだまだ動ける。

 

 

 

「ああ、死神。テメーをぶっ飛ばすまではな」

 

 

 

 ブラッドはグリムに殴りかかる。グリムはブラッドの攻撃を躱して、ブラッドに短剣を振り下ろす。

 

 

 

 しかし、グリムの剣がブラッドに届く前に、ブラッドはグリムに蹴りで攻撃した。

 グリムは腹を蹴られて、その勢いで吹っ飛ばされる。

 

 

 

 グリムは地面を転がりながら、かなり離れたところまで吹っ飛んでいった。

 

 

 

「今回は……何もない…………か」

 

 

 

 さっきは攻撃した直後に反撃された。だが、今回はグリムからの反撃はない。

 ブラッドは謎の攻撃を受けなかったのだ。

 

 

 

「怖いだろ。……怖いよなァ、見えない攻撃は……」

 

 

 

 グリムは地面に手をついて、ゆっくりと立ち上がる。

 

 

 

 グリムの攻撃はどういうものなのか、まだ分からない。だから、どのような攻撃が来るのか分からないし、ブラッドはそれを防御することもできない。

 

 

 

「少し威力を弱めたな。……俺の術の可能性にビビったか」

 

 

 

 ブラッドは攻撃を弱めたつもりはなかった。だが、グリムが言うということは本当のことなのだろう。

 

 

 

 ダメージを喰らったとはいえ、ブラッドの攻撃を三回も受けたのだ。グリムはかなりタフだ。

 

 

 

 そしてそのタフさから、ある能力の可能性を考えていた。

 

 

 

 受けたダメージを与えた相手に返す能力。

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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 第46話  【BLACK EDGE 其の46 見えない攻撃】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第46話

 【BLACK EDGE 其の46 見えない攻撃】

 

 

 

 

 グリムの攻撃はブラッドが攻撃した後にあった。

 

 

 

 一回目は反撃なし、二回目に反撃。そして三回目の反撃なしだ。

 

 

 

 全体的な戦闘能力ならブラッドのほうが上だ。普通ならブラッドに負ける要素はない。

 

 

 

 グリムは戦闘センスがないわけではないが、ブラッドに攻撃を見切られて、グリムからの攻撃は一度も当たっていない。

 だが、もしもグリムがわざと攻撃を食らっているのならどうだろうか。

 

 

 

 グリムの術が分からない以上、グリムの力が分からない。戦術が分からないため、自分からの攻撃を与えず、相手の攻撃を受けることが術の効果発動の条件かもしれない。

 

 

 

 そしてブラッドが考えたのが……。

 

 

 

 グリムの術は、相手に与えられたダメージを、相手に任意に返すことができるという力。

 

 

 

 これならグリムがわざとダメージを受けているということにもなるし、グリムが攻撃できない理由もわかる。

 

 

 

 グリムがブラッドに攻撃すれば、自分にダメージが返ってくるのかもしれない。そういう術であれば、グリムがブラッドを攻撃できないのがわかる。

 

 

 

 だが、理解できない点がある。それは二回目の攻撃しか反撃していないという点だ。

 

 

 

 術の条件で反射する条件があるのか。それともわざとか。だが、まだ一度しかブラッドはダメージを受けていない。

 

 

 

 グリムは立ち上がると、ブラッドを挑発してきた。

 

 

 

「どうした? 攻撃してこいよ……。そういないと俺は倒せないぜ」

 

 

 

 そしてグリムはブラッドを挑発する。

 

 

 

「っ…………」

 

 

 

 ブラッドは攻撃を戸惑う。もしもグリムを攻撃すれば、ブラッドは術によるダメージを受けるかもしれない。

 

 

 

 本当に予想通りの攻撃だったのなら、ここで攻撃するのはどうなのか。

 

 

 

 反撃でダメージを喰らう。それを耐え切れるか?

 

 

 

 だが、

 

 

 

「…………どっちにしろ。やるしかないか」

 

 

 

 ブラッドはグリムに向かって走り出した。

 

 

 

 ここでビビっていてもどうにもならない。だとしたら一か八かでやるしかない。

 ブラッドの攻撃はグリムにも当たっている。そしてしっかりとダメージを受けている。

 

 

 

 なら、ブラッドは怖気付く必要はない。

 

 

 

 走ってくるブラッドを見て、グリムは、

 

 

 

「俺の術をわかってるのか?」

 

 

 

 そう言ってきた。それに対してブラッドは、

 

 

 

「分かってる。だからこそ、ここはどっちが先に倒れるかに持ち込む!!」

 

 

 

 それを聞いたグリムは嬉しそうに笑った。

 

 

 

 そして、

 

 

 

「合格だ。お前を俺の敵として認めてやる!!」

 

 

 

 そう言うと、グリムは短剣を宙に投げる。

 

 

 

「いでよ。死神!!」

 

 

 

 そして空中で探検は止まった。

 

 

 

 

 

 



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 第47話  【BLACK EDGE 其の47 命を刈り取る者】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第47話

 【BLACK EDGE 其の47 命を刈り取る者】

 

 

 

 

 

「お前を俺の敵と認めてやる!!」

 

 

 

 グリムはそう言うと短剣を宙に投げた。そして空中で回転する剣は、グリムの頭の上で突然止まった。

 

 

 

 それを見たブラッドは足を止める。

 

 

 

「っ!?」

 

 

 

 これは反射じゃない。グリムの術の正体は……。

 

 

 

 グリムの後ろに半透明な男が現れた。

 

 

 

 それはフードを被った骸骨の姿。まるで死神だ。

 

 

 

「お前の覚悟。そいつを認めてやる。だから俺の本当の能力を教えてやる」

 

 

 

 ブラッドはその死神を見て一歩後ろに下がる。

 

 

 

「こいつがお前の術か……」

 

 

 

 ブラッドの問いにグリムは答える。

 

 

 

「そう、俺は術を偽り。俺と戦うべき相手と認めた者には真の能力で戦う。……喜べ、こいつを見たことができたのは、お前で三人目だ」

 

 

 

 つまりグリムは手加減をしていたということか。

 

 

 

 グリムは自分の術を、自分が受けたダメージを相手に返す術だと思い込ませた。しかし、実際は違かった。

 

 

 

 今、グリムの後ろには死神がおり、その死神がグリムの術なのだろう。だとすると、グリムは術を騙していた。

 

 

 

 そしてその目的は……。

 

 

 

 相手が自分の敵として相応しいかを判断するため。

 

 

 

 グリムは自分の術を相手に教え、そして戦うのに相応しい相手なのか。そうやって騙して判断していた。

 

 

 

 そしてブラッドはそれに合格したのだ。

 

 

 

「そうか、相手に見えない攻撃。その死神で見えないうちに攻撃を行い術を誤魔化していたのか」

 

 

 

「そういうことだ」

 

 

 

 そしてグリムのタフさの理由も分かった。ブラッドの攻撃をこいつがガードしていた。

それによりブラッドの攻撃を何度も耐えていたのだ。

 

 

 

 だが、弱点も分かった。

 

 

 

「その術。射程距離があるな」

 

 

 

 どれほどの距離かはわからないが、死神の行動距離には制限がある。そのため遠くにいるときは、反撃ができなかった。

 

 

 

「そこまでバレたか」

 

 

 

 グリムはそう言って頭を掻く。そんなグリムにブラッドは問いかけた。

 

 

 

「なぜ、能力をバラした。教えなければ、騙して俺を倒せただろう。いや、そんなことをしなくても勝てていただろう」

 

 

 

 その問いにグリムは首を振った。

 

 

 

「それじゃァつまらない。俺様は俺と張り合える敵を探してるんだ。俺様は刺激ある戦いがしたい!!」

 

 

 

 グリムは楽しそうに語る。ブラッドはグリムの考えが理解できなかった。

 

 

 

 だが、

 

 

 

「刺激ある戦いか。俺はそんなものには興味ない。だが、戦ってやるよ!!」

 

 

 

 ブラッドはグリムの真の能力との戦いを挑むことになった。

 

 

 

 

 

 

 

 



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 第48話  【BLACK EDGE 其の48 師匠の技】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第48話

 【BLACK EDGE 其の48 師匠の技】

 

 

 

 ブラッドとグリムはお互いに睨み合う。ここからが本当の戦いだ。

 

 

 

 グリムの後ろには半透明の死神がいる。それがグリムの術だ。

 

 

 

 ブラッドはグリムとの距離をゆっくりと積める。

 

 

 

 グリムは術を騙していた。それはグリムにとって本当に戦うに相応しい敵が判断するためである。

 最初は能力は受けたダメージを返す能力だと思っていた。だが、それを偽装していたのは、あの死神だ。

 

 

 

「…………どうしたブラッド。来ないのか?」

 

 

 

 距離を積めるのを戸惑っていたブラッドにグリムはそう言って挑発してきた。

 

 

 

 あの死神には射程距離がある。だが、その有効範囲が分からない以上、下手に距離を積めることができない。

 

 

 

 それにあの死神は透明になることができる。その能力がある以上、近づいても接近戦では不利になる。

 

 

 

 だが…………

 

 

 

「…………ああ、これくらいの距離が丁度いい……」

 

 

 

「……?」

 

 

 

 ブラッドはそう言うと右足を高くあげる。

 

 

 

「近づけないなら、近づかなければいい」

 

 

 

 そして強く地面を踏みつけた。その勢いで地面は割れて、その衝撃が地面を伝ってグリムの方へ行く。

 

 

 

「メテオラ師匠、直伝の地割れ攻撃だ」

 

 

 

「なにっ!?」

 

 

 

 メテオラの攻撃に比べれば威力は下がる。しかし、黒龍の力を上乗せすることでメテオラの技を再現した。

 

 

 

 地面はでこぼこになり、グリムを襲う。

 

 

 

 メテオラならこれで人を吹き飛ばすことができる。だが、ブラッドの力だと大ダメージを与えるには少し足りない。

 

 

 

「俺を守れ!!」

 

 

 

 グリムは死神にそう指示する。すると、グリムの周りを飛ぶチリを死神が払う。

 そしてグリムの後ろ首の服を掴むと、そのまま高くジャンプした。

 

 

 

「空中に逃げた……だと!?」

 

 

 

 ブラッドの攻撃は空中には効果がない。グリムは死神に連れられて空中に逃げたのだ。

 そして、

 

 

 

「死神には射程距離がある。だが、逆にこれを使えば……」

 

 

 

 死神はグリムを空中で掴んだまま、体制を変える。それはグリムを投げる体制。

 その標的は……。

 

 

 

「何をする気だ……」

 

 

 

 ブラッドだ。

 

 

 

 グリムは死神に投げられて、風を斬るようなスピードでブラッドに目掛けて飛んでいく。

 グリムの顔は風にぶつかりぶるぶると振動する。

 

 

 

 そしてそれに引っ張られるように、死神もグリムについてきた。

 

 

 

 死神はグリムから二メートル程度しか離れなれないのだろう。それ以上彼らが離れることはない。

 

 

 

 だが、死神は大きく、二メートル近く離れているというのに、グリムを覆うことができるほどの大きさだ。

 

 

 

 死神はブラッドに剣を振る。

 

 

 

 

 

 

 



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 第49話  【BLACK EDGE 其の49 死神と龍】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第49話

 【BLACK EDGE 其の49 死神と龍】

 

 

 

 

 グリムは死神に投げられる。そしてその投票はブラッドだ。そしてグリムと死神の射程距離は二メートル。

 それ以上離れることができないため、グリムに死神は引っ張られる。

 

 

 

 そして落下と投げられたスピードをプラスした状態で、死神はブラッドに短剣を振ってきた。

 

 

 

 ブラッドは右腕に力を込める。すると、ブラッドの腕に黒いオーラが出てきた。それを見たグリムは、

 

 

 

「それが龍の力か……」

 

 

 

 ブラッドは腕で死神の剣を受け止めた。ブラッドは殴る形で拳で剣を止める。

 

 

 

 死神の剣とブラッドの拳がぶつかり合うと、激しい音が出る。それはまるで大砲のような音。

 そして二人の武器がぶつかり合った場所は小さく黒いイナズマがバチバチとしており、二人の威力が大きいことと、異形な者のぶつかり合いを表していた。

 

 

 

 だが、ぶつかり合いはあっけなく終わった。

 

 

 

「っ!!」

 

 

 

 死神の持っていた短剣が折れてしまったのだ。

 

 

 

 グリムは素早くブラッドから距離をとる。ブラッドは折れた瞬間に死神に攻撃しようとするが、グリムが退がったことにより死神の後ろに退がった。

 

 

 

 グリムは死神から短剣を受け取ると、

 

 

 

「やはりこの程度の獲物じゃダメだな」

 

 

 

 そう言って短剣を投げ捨てた。

 

 

 

 ブラッドは今がチャンスと追撃をしようと走るが、死神が素早くグリムを投げ飛ばし、グリムは屋根の上に登った。

 

 

 

「よっと、なかなか面白い戦いだった。今回の所は退いてやる。だが、次は死ぬ覚悟をしろよ」

 

 

 

 そう言うとグリムは屋根の上を伝って逃げていく。

 

 

 

「待て!!」

 

 

 

 ブラッドはグリムを追おうとするがグリムは素早く。ブラッドには追うことができない。

 

 

 

 大事な手がかりだ。逃がすわけにはいかない。

 

 

 

 ブラッドはどうにか追いかけようとするが、

 

 

 

「ブラッド、待って」

 

 

 

 フェアに止められた。

 

 

 

「どうして止める……」

 

 

 

「今追っても追いつけない。あの能力で本気で逃げに回れば、追いつくのは不可能」

 

 

 

 フェアの言う通りだ。

 

 

 

「それに手がかりならまだもう一つある」

 

 

 

「…………そうだな。ヒューグの方に行こう」

 

 

 

 フェアとブラッドは敵を追いかけていったヒューグを探しに王国を走り出した。

 

 

 

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 今回の戦いはどうだったでしょうか。グリムは今後も出てきそうですね。

 グリムの術の名前を考えたいと思ったんですけど、いい名前が思いつきませんでした。

 名前を叫びながら、行動したらカッコ良さそうですよね。

 

 

 

 

 

 

 



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 第50話  【BLACK EDGE 其の50 ヒューグ】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第50話

 【BLACK EDGE 其の50 ヒューグ】

 

 

 

 ヒューグは逃げて行った仮面の人物を追っていた。

 

 

 

「待て!! どこまで逃げる気だ!!」

 

 

 

 逃げ足の早いやつだ。全力で追いかけているのに追いつける気がしない。

 

 

 

 だが、しばらく経ったところで仮面の人物は息を切らしながら止まった。

 

 

 

「はぁはぁ、どうした? 疲れたのか?」

 

 

 

 ヒューグも息を切らしている。そして足を止めた仮面の人物はヒューグの方を振り向いた。

 

 

 

「これくらい温まれば良いか……あとは、お前でウォーミングアップとするか」

 

 

 

 仮面の声は女だ。だが、そんなことはどうでも良い。

 

 

 

「俺をウォーミングアップだと……?」

 

 

 

 ヒューグは仮面の女の言葉に怒りを表す。

 

 

 

「そうだとも……私の目的はフェア。貴様には要はない」

 

 

 

「ふ、尻巻いて逃げた奴が何を言いやがる」

 

 

 

 ヒューグはそう言い、仮面の女に大剣を向けた。

 

 

 

 ヒューグに敵う力の持ち主は王都にはいない。こうやってヒューグは軽々しく大剣を振り回しているが、ヒューグぐらいだろう。

 

 

 

 仮面の女は左手を服から出す。フードで体全身を隠している大きな服の隙間から手を出す。

 だが、その手は不思議だ。

 

 

 

「煙?」

 

 

 

 仮面の女の手のひらからは煙が出ていた。

 

 

 

「私の力はグリムの奴とは違い少々厄介でな……」

 

 

 

 そう言いながら仮面の女は構えた。姿勢を低くして、左手を奥にひく。左手で攻撃するのだろうか。

 

 

 

 ヒューグは念のため防御の体制になる。大剣を前にして盾のように使う。

 

 

 

 次の瞬間…………。

 

 

 

 仮面の女は再び逃げた。

 

 

 

「あ!! おい待て!!」

 

 

 

 ヒューグは女を追う。

 

 

 

「さっきは準備満タン的なこと言ってなかったか!?」

 

 

 

 追いかけながらヒューグが言うと、女は全力で走りながら、

 

 

 

「まだ無理だーー!! そんなでっかい武器持ってる相手に、今の音頭じゃ勝てなーい!!」

 

 

 

 そう叫んで逃げ続ける。

 

 

 

 このまま追い続けても埒があかない。

 

 

 

「こうなったら!!」

 

 

 

 ヒューグは大剣を投げた。大剣は空中を飛んで、仮面の女の頭を通過。仮面の女の目の前に落ちて地面に突き刺さった。

 

 

 

「っ!?」

 

 

 

 仮面の女は一瞬びっくりして足を止めた。この間にヒューグは追いつく。

 

 

 

「とらえた!!」

 

 

 

 ヒューグは両腰にあるナイフ程度の大きさの短剣を取り出すと、両手で一つずつ持つ。

 

 

 

「二刀流!?」

 

 

 

 ヒューグは女に攻撃を仕掛けるが、女はヒューグの攻撃を躱す。

 ヒューグは女だと思い、手加減はしていたが、それでも避けられるとは思っていなかった。

 

 

 

 完全に二本の剣を見切っている。そのまま女は蹴りで反撃してくる。ヒューグはそれを肘で受け止めて、続いての攻撃をしようとするが、その前に、

 

 

 

「っ!?」

 

 

 

 女の左手がヒューグの右手を掴んだ。

 

 

 

「熱っつぅぅ!?」

 

 

 

 

 

 



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 第51話  【BLACK EDGE 其の51 ウォーミングアップ】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第51話

 【BLACK EDGE 其の51 ウォーミングアップ】

 

 

 

 ヒューグは仮面の女の左腕を振り払う。

 

 

 

 その左手はまるで熱湯のように熱かった。

 

 

 

 ヒューグは振り払ってすぐに仮面の女を蹴り飛ばす。女の身体は少し後ろに飛ぶが、蹴りを両腕でガードしたためダメージは少ないようだ。

 

 

 

 ヒューグは左手で大剣を取る。そして仮面の女と距離を取った。

 

 

 

 まだ掴まれた腕が痛い。火傷したようだ。

 

 

 

 仮面の女は蹴りを防いだ両腕を痛そうに振っている。

 

 

 

「これがお前の術か? 意外と大したことないんだな……」

 

 

 

 ヒューグは腕が痛いが強がってみる。すると、仮面の女は腕を振るのをやめた。

 

 

 

「……大したことないか…………その言葉、後で後悔することになるよ」

 

 

 

 そして仮面の女は再び構えた。同じ構えだ。姿勢を低くして左手をひいて構える。

 まるで弓を引くような構え。その左手がまるで矢のように。

 

 

 

 ヒューグは左手で大剣を持つと、大剣を右肩に乗せた。これで前から来たら、そのタイミングに合わせて剣を振れる。

 どんな攻撃だろうと、大剣の一撃で真っ二つだ。

 

 

 

 仮面の女が突っ込んでくる。左手を前に出して真っ直ぐと進む。

 ヒューグは仮面の女が近づいてきたタイミングに合わせて、大剣を振った。

 

 

 

 剣は横に大きな線を作って振られる。だが、大剣は仮面の女の左手に触れるとその瞬間に溶けていった。

 

 

 

「なに!?」

 

 

 

 大剣は半分に溶けて、その間を仮面の女は進んだ。そしてヒューグの腹に張り手をした。

 

 

 

 仮面の女よりも大きなヒューグの身体が吹っ飛ぶ。そして先にある壁にぶつかった。

 

 

 

「ぐ、…………これ……は……」

 

 

 

 ヒューグの腹には女の手形がついている。そして焼けるように熱い。

 

 

 

 仮面の女は近くが近くにある壁に左手を触れると、そこから壁は溶けていく。

 

 

 

 

「だから言ったでしょ。私の術は少々厄介……でも、準備さえ整えば、グリムよりも圧倒的に破壊力のある術になる」

 

 

 

 仮面の女の左手に触れたものは溶けていく。大剣だろうと壁だろうと。

 

 

 

「私の名はヒート。この左はまだまだ温度を上げる。あなたに私を止められるかしら?」

 

 

 

 ヒートの能力は左手に熱をためることができる能力。運動をすることで急激に温度を高めることのできるヒートは、その熱を左手に集めることができる。

 

 

 

「…………止める……だと……面白い、お前の熱程度、俺に止められないと思うなよ」

 

 

 

 ヒューグは立ち上がる。すでに大剣は溶けて半分になってしまった。残っている武器は腰にある短剣だ。

 

 

 

 ヒューグは大剣を捨てて、両手に短剣を持った。

 両手に短剣を持って二刀流だ。

 

 

 

「「ここからが本番だ」」

 

 

 

 

 

 



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 第52話  【BLACK EDGE 其の52 火炎の左】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第52話

 【BLACK EDGE 其の52 火炎の左】

 

 

 

 ヒューグはヒートに攻撃を仕掛ける。両手に持った短剣で斬りかかるが、なかなか攻めきれない。

 

 

 

 それもヒートの左手を警戒しているからだ。ヒートの左手はすでに鉄すら溶かしてしまう高温になっている。

 

 

 

 もしも再び掴まれるようなことがあれば、今度は腕が溶かされてしまうだろう。

 

 

 

 だが、このままではヒートを倒すことができない。

 

 

 戦闘中ヒートが喋りかけてきた。

 

 

 

「なぜ、お前が戦う。我々とは無関係だろう」

 

 

 

 ヒートの言う通りだ。ヒューグはグリモワールとは無関係だ。

 何もヒートと戦う必要なんてないのだ。それもこんな命をかけた戦いなんて……。

 

 

 

 だが、

 

 

 

「そんなの決まってるだろ。友のためだ。俺は仲間のために命を命を張る男なんだよ!!」

 

 

 

 ヒューグの答えにヒートは「暑苦しい」と答える。

 

 

 

「熱いのはお前だろ」

 

 

 

 ヒューグは日本の剣をクロスさせるように斬りかかる。しかし、ヒートが左手で防御してくるため、剣を当てる前に引っ込める。

 

 

 

「どうした? この左手の強さに気づいたか?」

 

 

 

 ヒートは調子に乗って左手でどんどん攻めてくる。だが、なかなか隙がない。

 

 

 

 こうやって左手だけに警戒していても、ヒートは倒せない。ヒートはかなりの体術使いだ。

 身体を捻り、どんな体勢からでも反撃してくる。

 

 

 

 蹴りもパンチも全てが鍛えられたもの。術だけに頼ったものではない。

 

 

 

 しかし、このままではヒートの左手にいつかは捕まる。ならば、こっちから行動を起こして、倒すしかない。根性を見せるしかない!!

 

 

 

 ヒューグは両手に持っていた短剣を捨てる。そして、

 

 

 

「来い!!」

 

 

 

 と素手で構える。ヒートは遠慮なく左手でヒューグに攻撃する。

 

 

 

 ヒートの左手がヒューグを襲う。ヒューグはヒートの左手を右手で防いだ。

 

 

 

 手のひらを合わせてがっちりと掴む。

 

 

 

「なにぃ!?」

 

 

 

 予想外の行動にヒートは驚く。まさか高熱の手を握られるとは思っていなかった。

 

 

 

「こうしてしまえば、条件は同じだよなァ!!」

 

 

 

 ヒューグは左足で蹴りで攻撃する。しかし、ヒートは右足で攻撃を防いだ。

 

 

 

「同じ条件だと……私の方が有利だ!!」

 

 

 

 ヒートは残っている右腕でヒューグの顔を殴ろうとする。しかし、ヒューグはその拳を左手で掴んで止めた。

 両手で握り合い、お互いが睨み合っている状況。

 

 

 

「さぁ、力比べだ!!」

 

 

 

 ヒューグは力一杯にヒートを持ち上げる。ヒューグの力にはヒートも敵わず持ち上がられてしまった。

 

 

 

「なんだとーー!!」

 

 

 

 そしてヒートはヒューグの頭上を反時計回りに三十回転させられた後、地面に叩きつけられた。

 

 

 

「ぐぁ!!」

 

 

 

 

 



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 第53話  【BLACK EDGE 其の53 親友】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第53話

 【BLACK EDGE 其の53 親友】

 

 

 

 ヒートを倒したヒューグ。しかし、ヒューグは右手を大怪我し、大剣も溶けてしまった。

 

 

 

 ヒートは地面に強く叩きつけられたことで気を失っている。

 

 

 

「ブラッドの奴は無事だろうな……」

 

 

 

 ヒューグは倒れているヒートに近づき、拘束しようとした時、

 

 

 

 屋根の上から人が降ってきた。それは仮面の人物だ。それもブラッドと戦っていたはずの仮面。

 

 

 

「ブラッドはどうした!」

 

 

 

「貴様……ヒートを…………」

 

 

 

 仮面の人物が近づくと、見えなに何かに殴られる。三発、いや、五発だ。

 訳もわからないうちに攻撃されたヒューグが後ろにふらつく。

 

 

 

 その隙に仮面の人物は、ヒートを担ぐ。

 

 

 

「この借りはいつか返す」

 

 

 

 その時、ブラッドとフェアが走ってきた。

 グリムを追いかけてきていた。

 

 

 

「くっ!?」

 

 

 

 グリムはヒートを担いですぐに逃げていく。

 

 

 

「しまった!! 逃げられた」

 

 

 

 ヒューグは短剣で攻撃しようとするが、すでに二人は屋根の上に登り消えていた。

 

 

 

「ヒューグ、大丈夫か?」

 

 

 

 ブラッドとフェアが駆けつけてくる。

 

 

 

「右手をやられたが、問題ない。そっちも大丈夫そうでよかった」

 

 

 

「ああ、だが、俺が逃しちまった。お前にも迷惑をかけたすまねぇ」

 

 

 

 ブラッドが謝ると、ヒューグは笑う。

 

 

 

「良いってことよ。その代わり今度奢れよ!!」

 

 

 

 その後はヒューグの傷をフェアに治してもらった。

 ヒューグはフェアの力に驚いていた。そしてことが終わったら、俺たち三人でパーティを組もうとまで言い出した。

 

 

 

 戦闘が終わり、宿に戻る。すでにヒューグは自分の部屋で寝ている。

 

 

 

 ブラッドも寝ようとしていると、扉が叩かれた。

 

 

 

「ブラッド、起きてる?」

 

 

 

 フェアの声だ。

 

 

 

「ああ、起きてるぞ」

 

 

 

 フェアは入ってくると、早速本題を話し始めた。

 

 

 

「ヒューグさんも旅に同行してもらえないかな。実力もあるし、頼りになる。なんか明日お別れって寂しそうだし」

 

 

 

 ヒューグはブラッドのことを親友だと言っている。ブラッドもそう思っている。

 明日出発することを告げたら、応援してくれたがとても寂しそうだった。

 

 

 

 フェアは今回、二人だけでは勝てない相手だったと考えている。その通りだ。ヒューグがいなければ負けていただろう。しかし、

 

 

 

「あいつは連れていけない」

 

 

 

「なんで?」

 

 

 

「あいつが断るからだよ。あいつにはこの王都でやるべきことがある。それをやるまではこの王都を出るわけにはいかないんだ」

 

 

 

 ブラッドはそうフェアに伝えた。

 

 

 

 

 

 



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 第54話  【BLACK EDGE 其の54 王都を出て】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第54話

 【BLACK EDGE 其の54 王都を出て】

 

 

 

 ブラッドとフェアは王都を出発した。王都を旅立つ時、ヒューグは見送ってくれた。

 

 

 

 去る時にヒューグはフェアに服を買ってくれた。今までは施設で使っていた服をそのまま使っていたが、ヒューグから貰った服は動きやすく、それでいて可愛かったので早速来ている。

 

 

 

 そして馬車は北西にある雪山の地を目指して進む。

 

 

 

「ねぇ、ブラッド。この先にある森の噂知ってる?」

 

 

 

 馬車を進めているとフェアがそんなことを言ってきた。

 

 

 

「噂? いや、知らないな」

 

 

 

 この先にはプロタゴニストと呼ばれる森が存在する。その森には不思議な植物があり、鏡の性質を持った木や草が存在している。

 しかし、その植物はプロタゴニストでしか生息することはできず、この森を抜けてしまうとすぐに枯れてしまうのだ。

 

 

 

 だが、鏡の性質を持つその植物は美しく、光を反射することで虹色の森とも呼ばれている。

 

 

 

「プロタゴニストのある木には人の悪意を写す木があるんだって、そこに自分の姿が写るとその人物が鏡から出てきて本物を襲うらしいよ」

 

 

 

 フェアはワクワクしながらそんなことを説明する。

 

 

 

「…………そうなのか」

 

 

 

 ブラッドはフェアの方を振り向かずにただ真っ直ぐと先を見つめている。

 

 

 

「ねぇ、ブラッド…………もしかして……」

 

 

 

「怖がってないぞ!!」

 

 

 

 フェアが言うよりも先にブラッドが言った。しかし、ブラッドの腕は震えている。

 

 

 

「もしかして…………ブラッド……」

 

 

 

 フェアは面白そうにブラッドのことを見つめる。

 

 

 

「おい、バカなことは考えるなよ……」

 

 

 

「…………」

 

 

 

「おい、なんで喋らないんだ。お、おい! おーい!!」

 

 

 

 突然喋らなくなったフェアに怖がるブラッド。恐る恐る振り返ろうとした時、後ろから背中を叩かれた。

 

 

 

「っ!!」

 

 

 

 ブラッドはびっくりする。その後、フェアが大笑いした。

 

 

 

「へぇ〜、そうなんだ〜、へぇ〜」

 

 

 

「もうやめろ!!」

 

 

 

 そんなことがありながらも馬車は進む。向かうは西北の雪山だ。そこにある館に住む人物にある紙を渡す。

 そしてアリエルに子供達の行方を調べてもらう。

 

 

 

 そのためにはプロタゴニストという森を越える必要がある。やがてブラッド達の前に森が見え始めた。

 

 

 

 森の上空にはいくつもの虹が現れている。それだけ光を反射しているのだ。

 

 

 

「さぁ、さっさと森を抜けて、目的地に向かうぞ」

 

 

 

「そうね。急ぐよ〜!」

 

 

 

 ブラッドとフェアは森に入るのであった。

 

 

 

 

 



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 第55話  【BLACK EDGE 其の55 プロタゴニスト】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第55話

 【BLACK EDGE 其の55 プロタゴニスト】

 

 

 

 プロタゴニスト。そこは鏡の性質を持つ不思議な植物の生息する森である。

 ブラッド達は目的地に行くためにこの森を越える必要があるのだ。

 

 

 

 そして今、その森に入ったのであった。

 

 

 

 森は木に覆われているというのに明るい。それはこの森にある特殊な植物が光を反射しているからだ。

 

 

 

「わー! ブラッド、見て見て!!」

 

 

 

 馬車を進むていると、フェアが馬車の中から手を出した。

 フェアが指差したのは、森にある花だった。しかし、その花は、

 

 

 

「虹色だ……」

 

 

 

 ブラッドは驚いた。

 

 

 

 そこには虹色に光る花があったのだ。

 

 

 

 この森にある植物は特殊な性質を持つ。それは鏡のような性質であり、光を反射する。だが、正確には違う。

 この森の植物が反射するのは光だけではない。

 

 

 

 この森の植物は世界に存在するあらゆる物質を反射している。光だけではなく、放射線や他にも様々なものを反射している。それにより不思議な現象が起こるのだ。

 

 

 

 人間には視覚できない色が存在する。それすらも反射するこの森は実際にはもっと美しいのかもしれない。

 

 

 

 ブラッド達は先に進む。そんな中、フェアがポツリと言う。

 

 

 

「あれ、持っていきたかったなぁ」

 

 

 

 しかし、ブラッドが首を振った。

 

 

 

「それは無理だな。この森の植物はこの森でしか効力を発揮しない。持って行ったとしてもあの花はすぐに枯れてしまう」

 

 

 

 プロタゴニストにある植物はこの森を出てしまうとすぐに枯れてしまう。どんなに美しくてもこの森だけの美しさなのだ。

 

 

 

 そのまましばらく馬車を進めていると、湖のある場所にたどり着いた。森に囲まれて湖と、虹の花の花畑。そしてその花畑の真ん中に一本の木があった。

 

 

 

 そしてさらに進む先に一台の馬車が止まっていた。

 

 

 

「なんだろうな……」

 

 

 

 馬車の横を通り過ぎようとした時、馬車に人が乗っていた。

 

 

 

「待っていたぞ。貴様ら……」

 

 

 

 それは黒いフードを着た仮面の男。仮面の男はブラッド達の馬車に飛び移った。

 

 

 

 飛び移ってきた仮面の男はフードの中から剣を取り出す。

 

 

 

「久しぶりだな」

 

 

 

 馬車の荷台には仮面の男とフェア。そして馬を操作しているのはブラッドだ。

 ブラッドは馬を操作しているため動けない。

 

 

 

 フェアはブラッドから貰った剣を抜いて仮面の男に剣を向ける。

 

 

 

「久しぶり……? あなたは何者?」

 

 

 

 フェアが聞くと仮面の男は答える。

 

 

 

「俺の名前はシャドー。お前達に一度敗れた暗殺者だ」

 

 

 

 

 

 

 

 



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 第56話  【BLACK EDGE 其の56 リベンジ】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第56話

 【BLACK EDGE 其の56 リベンジ】

 

 

 

「俺の名前はシャドー。お前達に一度敗れた暗殺者だ」

 

 

 

 そう答えた仮面の男。その男は馬車の中でフェアに向けて短剣を向けた。

 

 

 

 ブラッドは馬車を動かしているため、何もできない。

 

 

 

 ブラッドは馬車の中を見ることができず、振り返らずに聞く。

 

 

 

「シャドーだと?」

 

 

 

 シャドー。そんな名前の人物はブラッドは知らない。しかし、この服装からしてグリモワールの関係者なのだろう。

 

 

 

 どちらにしろ。この状況はまずい。

 

 

 

「そうか、あの時は名乗ってなかったな」

 

 

 

 馬車の中でシャドーは短剣を抜くと、ゆっくりとフェアの方に近づく。

 フェアもブラッドからもらった剣を手にしているが、手を震わせてシャドーが近づいてくるたびに、少しずつ後ろに下がっていく。

 

 

 

「怖がるなよ。俺はお前を回収しに来ただけだ。…………二度目の失敗はしない!!」

 

 

 

 シャドーはフェアに襲いかかる。フェアは後ろに下がろうとするが、もう後ろは馬車の壁だ。

 背中が壁についてこれ以上下がることができない。

 

 

 

「っ!!」

 

 

 

 その時、ブラッドが馬車を暴走される。馬車を動かしている馬を驚かせて、馬車を強く揺らしたのだ。

 

 

 

 シャドーは揺れる中バランスを取ろうと必死になる。それによりフェアに近づくことができずに、その場で止まる。

 

 

 

 フェアは揺れで転びそうになったが、

 

 

 

「ブラッド……」

 

 

 

 それをブラッドが受け止めた。

 

 

 

「一旦逃げるぞ」

 

 

 

「うん」

 

 

 

 ブラッドはフェアを抱き抱えると、馬車の出口の方へと向かう。

 

 

 

「待て、この野郎ー」

 

 

 

 シャドーはブラッドを追いかけようと走ろうとしたが、それと同時に馬車が倒れる。

 ブラッドは馬を暴走させた後、そのまま馬を放置してこの馬車を捨てる気だった。

 

 

 

 馬車が倒れる前にブラッドは馬車から飛び降りる。シャドーは馬車が倒れる衝撃で馬車の中で転んでしまい、ブラッドを追うことができずに馬車に取り残された。

 

 

 

 ブラッドは馬車からジャンプしたあと、地面に着地する。

 その直後、馬車は横転して草原のど真ん中で馬車は止まった。

 

 

 

「フェア、怪我はないか?」

 

 

 

 ブラッドはフェアを下ろす。

 

 

 

「うん、でも、馬車が…………」

 

 

 

 そう言い、フェアは馬車の方を見る。もう馬車は壊れてしまって、走ることはできそうにない。

 

 

 

 まだまだ目的地は遠いというのに…………。

 

 

 

 そんな中、ブラッドは、

 

 

 

「問題ない」

 

 

 

 と言った。そしてさっき通った道を見る。

 そこには花畑の横の道に馬車が置かれている。

 

 

 

「奴が乗って来た馬車だ。あれを借りよう」

 

 

 

 

 

 

 

 



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 第57話  【BLACK EDGE 其の57 花畑】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第57話

 【BLACK EDGE 其の57 花畑】

 

 

 

 

 ブラッドとフェアはシャドーの乗って来た馬車の方へと向かう。

 花畑の横を歩いて、馬車へと向かって歩く。

 

 

 

 フェアは後ろを振り返り、

 

 

 

「あの人大丈夫かな?」

 

 

 

 そう言ってシャドーのことを心配する。

 

 

 

 それに対してブラッドは振り向かずに答えた。

 

 

 

「大丈夫だろ。あいつも術師だ。あの程度じゃ死なない。それにまた襲ってくるかもしれない。下手に近づかない方がいいだろう」

 

 

 

 そう言いながら二人は進む。そして花畑の真ん中にある一本の木を横切った時、ブラッドは不思議なものを見た。

 

 

 

「どうしたの? ブラッド」

 

 

 

「…………いや、今あそこの木に映った俺がわらった気がして……」

 

 

 

 ブラッドはそう言って花畑にある一本の木を指差した。

 

 

 

 この森の植物は鏡の性質を持っており、近くの風景を反射している。だから、ブラッドが映っているのだが……。

 

 

 

「もしかして、さっきした噂本当だと思った?」

 

 

 

 フェアは森に入る時にした話を思い出す。

 

 

 

「いや、まぁ、そうなんだけど…………本当に…………」

 

 

 

 ブラッドはもう一度同じ木を見るが、そこには不自然な様子はない。

 花畑とその奥にある森、そして端には少しだけ湖も映っている。そしてフェアの姿と…………。

 

 

 

「俺がいない!!」

 

 

 

「ブラッドがいない!!」

 

 

 

 二人が鏡を見ると、そこにはブラッドの姿がない。どういうことだ……。

 

 

 

 二人は道から外れて、花畑を通りその一本木へと向かう。近づいてもブラッドの姿は見えない。

 どういうことなのだろうか。

 

 

 

 その時だった。

 

 

 

 シャドーが乗って来ていた馬車が突然動き出した。

 

 

 

 その馬車にはシャドー以外見当たらなかった。隠れていたのか、それともシャドーが術を使い馬車に乗り込んだのか。

 

 

 

 馬車は道を進み、ブラッド達がいる花畑の真横を通る。その時、馬車を動かす人物が見えた。

 

 

 

 全体的に少し黒っぽい色になっているが、体格、服装、そして顔のパーツまで全てがまるで、

 

 

 

「俺!?」

 

 

 

 ブラッドだった。

 

 

 

 ブラッドが馬車を操作して花畑の道を進んでいく。

 

 

 

「ブラッドが二人!?」

 

 

 

「違う!! あれは偽物だ!!」

 

 

 

 馬車は横転している馬車を追い越して花畑を抜けていく。

 

 

 

「このままだと馬車が奪われる。追うぞ!!」

 

 

 

 ブラッドとフェアはその馬車を追うことにした。全速力で進む馬車、それを走って追う二人、花畑を超えて森の中に入ると視界も悪くなり、やがて馬車を見失った。

 

 

 

「…………なんだったんだ」

 

 

 

 

 

 

 



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 第58話  【BLACK EDGE 其の58 そういえば……】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第58話

 【BLACK EDGE 其の58 そういえば……】

 

 

 

 

 花畑にある一本の木。そこに映っていたはずのブラッドの姿が消えた。そして馬車が突然動き出し、そこに乗っていたのはブラッドにそっくりな人物であった。

 

 

 

 ブラッドとフェアはその馬車を追いかけるが、森に入ったところで見失ってしまったのであった。

 

 

 

「…………くそ、見失ったか……」

 

 

 

 この森は広い。手当たり次第捜索しても見つからないだろう。しかし、先に進むだけでなく戻るにしても距離がある。

 

 

 

 あの馬車を手に入れる必要がある。

 

 

 

「ブラッドどっか行っちゃった」

 

 

 

「俺はいるけどな」

 

 

 

「あのブラッドなんて呼んだらいいかな?」

 

 

 

「とりあえず、コピーとでも呼んでおくか」

 

 

 

 こうしてブラッドとフェアは偽ブラッドをコピーと呼ぶことにした。そしてコピーを探して森を探索する。

 

 

 

「しかし、あれは何者なんだ……?」

 

 

 

 ブラッドは探索しながら考える。

 

 

 

 フェアはブラッドを怖がらせようと、

 

 

 

「やっぱり噂通り、偽物が本物を襲って、本物になり変わるのかも……」

 

 

 

 それを聞いたブラッドはビクッと肩を震わせる。そんなブラッドを見てフェアはくすくすと笑う。

 

 

 

「でも、実際に噂通りにブラッドの偽物が現れた。何かあるかもね」

 

 

 

「俺は何もないで欲しいけどな……」

 

 

 

 ブラッドはフェアにビビらされて、肩をがくりと落とす。少し疲れてきたみたいだ。

 

 

 

 そんなブラッドにフェアは、

 

 

 

「でも、私たちは龍の力を持ってるわけだし、偽物になんて負けないよ」

 

 

 

 と少し自信を持たせようとした。

 

 

 

 実際に龍の力は強力だ。この世の力とは反している。だが、ブラッドの想像するお化けみたいな存在はそれすら通用しないのだ。

 だから、ブラッドはそういうオカルト的な存在が苦手だ。

 

 

 

 しかし、それでも馬車は必要。馬車を手に入れなければ、移動ができなくなる。

 

 

 

 この森は近くの村に行くのでも馬車で一日近くかかる。そうなると、馬車を使用していないとどれくらい時間が必要になるかわからない。

 

 

 

 この旅は急ぎの旅だ。子供達を助けるために、その居場所を知りたい。

 

 

 

 追っ手から聞くという手もあったが………………ん?

 

 

 

「そういえば…………」

 

 

 

「ブラッド、どうした?」

 

 

 

「あいつから情報を聞き出すか……」

 

 

 

 さっき現れたシャドーという男。彼もグリモワールの関係者だ。子供達の行方を知っているかもしれない。

 ならば、奴から力ずくで情報を聞き出せば良い。

 

 

 

「フェア、一旦戻るぞ」

 

 

 

 ブラッドとフェアは馬車が倒れたところに戻ることになった。

 

 

 

 

 

 



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 第59話  【BLACK EDGE 其の59 偽物】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第59話

 【BLACK EDGE 其の59 偽物】

 

 

 

 

 馬車が倒れた瞬間、シャドーは術を咄嗟に使った。シャドーの術は影移動。

 

 

 

 影の中に入り込み、その中を自由に移動できる。光に弱いという弱点はあるが、かなり便利な力だ。

 

 

 

「……くそ、まさか馬車をひっくり返すとは…………」

 

 

 

 シャドーは馬車が倒れる瞬間に咄嗟に術を使い、影の中に避難した。それにより馬車が倒れた後、無事だったのだが…………。

 

 

 

「ここしか、影はないか」

 

 

 

 シャドーは影の中から顔を出すと、ひっくり返った馬車の中だった。シャドーはどうにか馬車の中から這い出る。

 

 

 

 ひっくり返った馬車の中からやっとの思いでシャドーは出ることができた。

 

 

 

「…………もういないか」

 

 

 

 シャドーは周りを見渡すが、ブラッドとフェアの姿はない。

 

 

 

 彼らを追ってきたのだが、逃げられてしまった。

 

 

 

 シャドーの術は影を移動する。しかし、離れた影には行くことができない。必ず繋がっている影を移動するのだ。

 

 

 

 そのため森の植物により明かりの多いこの森では能力は使いにくい。

 

 

 

「一旦戻るか……」

 

 

 

 シャドーは自分が乗ってきた馬車に戻り、体制を立て直そうとする。しかし、

 

 

 

「ば、馬車がない…………」

 

 

 

 シャドーが乗ってきたはずの馬車がなくなっていた。

 

 

 

「どうして…………」

 

 

 

 まぁ、可能性としてはブラッドとフェアが馬車を奪って行ってしまったということだ。その可能性が高いだろう、というかそれしか考えられない。

 

 

 

「……………………どうしよう」

 

 

 

 この森から近くの村まではかなりの距離がある。歩いて村まで向かうにしてもかなりの時間がかかる。

 

 

 

 シャドーはその場でどうしようかと考える。

 

 

 

 だが、良い考えが浮かばない。今から追いかけて間に合うだろうか。

 

 

 

 そうしていると、足音が聞こえた。後ろからだ。

 

 

 

「っ!!」

 

 

 

 シャドーか振り返ると、そこにはブラッドがいた。少し色が黒い気もするが、そこにいたのはブラッドだ。

 

 

 

「…………ブラッド!!」

 

 

 

 シャドーはそのブラッドに驚いて、短剣を抜いて武器を構える。

 

 

 

 しかし、そのブラッドは反応することはない。

 

 

 

 シャドーはブラッドが攻撃してくると思って構えていたが、ブラッドは動かない。

 

 

 

 しかし、異変が起きる。ブラッドの身体が突然グニャグニャと変形し出す。

 

 

 

「な、なんだ!?」

 

 

 

 そして気づくとブラッドの姿はシャドーの姿に変わる。

 

 

 

「お、俺だと!?」

 

 

 

 シャドーは驚く。突然目の前にいたはずのブラッドが人物の姿に変わったのだ。

 

 

 

 

 



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 第60話  【BLACK EDGE 其の60 森の鏡】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第60話

 【BLACK EDGE 其の60 森の鏡】

 

 

 

 

 ブラッドとフェアはコピーを探していた。しかし、なかなか見つからなかった。

 

 

 

 そんな中、捜索を一旦止めて、グリモワールからの追っ手であるシャドーから子供達の行方について聞き出すことにしたのであった。

 

 

 

 森を出て花畑に戻る。そこには壊れた馬車しかない。やはりシャドーが乗って来た馬車はコピーに盗まれたままだ。

 

 

 

 壊れた馬車を見るがシャドーの姿はない。もう逃げたのか。この森で逃げられたとなれば、コピーと同じく探し出すのは難しい。

 

 

 

「すまん、俺がもっと早く気づいてれば……」

 

 

 

 ブラッドはフェアに謝る。だが、フェアは首を振った。

 

 

 

「私も馬車の件で焦ってた。それに目的地につけば情報を得られるかもしれないし、まだ手がかりがないわけじゃないよ」

 

 

 

 そうだ。ブラッド達は雪山にある館に向かっていたのだ。そこにいる主人にある紙を渡せば、子供達について情報を得られるかもしれない。

 

 

 

 しかし、

 

 

 

「ここから目的地まではまだ距離がある。馬車なしは厳しいな」

 

 

 

 そうなると、近くの村に向かって馬車を調達するしかない。そう考えていた時、

 

 

 

 森の奥から何かが走ってくる。それは馬車だ。

 

 

 

 しかもそれはシャドーの乗っていた馬車。

 

 

 

「戻ってきた!? でも、なぜ?」

 

 

 

 ブラッド達が不思議に思っていると、馬車は二人の前で止まった。

 

 

 

「…………なんとつもりだ……コピー」

 

 

 

 馬車が止まると、中きらブラッドと同じ姿をしたコピーが出てきた。コピーは馬車から降りると、

 

 

 

「…………違う。私はリナリア……」

 

 

 

 そこ声はブラッドのものだ。

 

 

 

 自分の声を聞くという行為がここまで気持ち悪いものとは……。

 ブラッドが自分の声に少し嫌な感覚になっていると、フェアはリナリアと言ったブラッドの偽物に話しかけた。

 

 

 

「あなたはリナリアと言うの?」

 

 

 

 するとリナリアは答える。そしてフェアの方を向くと、リナリアの身体は変形する。そして、

 

 

 

「わ、私!?」

 

 

 

 フェアに変身した。

 

 

 

 リナリアはフェアのことをじっと見つめている。

 

 

 

 何か攻撃を仕掛けてきたりする気配はない。敵対しているわけではないようだ。

 だが、目的もわからない。

 

 

 

「……リナリアと言ったな。お前は何がしたいんだ?」

 

 

 

 ブラッドはリナリアに聞く。すると、リナリアはフェアの姿のまま答えた。

 

 

 

「…………森を守ってほしい」

 

 

 

 それは本当に助けを求めている声だった。そしてそれを聞いたフェアはブラッドの方を見る。

 

 

 

 二人のフェアに見つめられる不思議な状況だ。

 

 

 

 まぁ、馬車を取り戻すためだ。

 

 

 

「事情を聞かせてくれ」

 

 

 

 

 

 

 



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 第61話  【BLACK EDGE 其の61 リナリア】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第61話

 【BLACK EDGE 其の61 リナリア】

 

 

 

 

 ブラッドとフェアはリナリアの森を守ってほしい。という言葉を聞き、それがどんな意味なのか。

 そしてどんな事情を抱えているのか。それを知るためにリナリアについて行くことにした。

 

 

 

 馬車はその花畑に置いて行き、三人は森の中を進む。そしてしばらく進むと、不思議なものを発見した。

 

 

 

「こ、これは…………」

 

 

 

 そこには森の木が倒され、草は踏み荒らされている。この美しい森に何があったのか。

 

 

 

 フェアはリナリアに聞く。

 

 

 

「何があったの?」

 

 

 

 すると、リナリアは少し前に進み、先を指差した。ブラッド達はリナリアが示した方を見ると、そこには大きな足跡があった。

 

 

 

 それは大きさだけでも大人の人間と同じくらいの大きさがある。そして足の指は三本。

 

 

 

 こいつは…………

 

 

 

 それを見たブラッドは驚く。そして呟いた。

 

 

 

「…………龍か……」

 

 

 

 リナリアは頷く。

 

 

 

 ブラッドは過去にこの足跡を見たことがある。大きさは違うが、この形は確かに龍のものだ。

 

 

 

 ブラッドは警戒する。この足跡が龍のものだとすると、追っ手はシャドーだけではない可能性がある。

 

 

 

 今のブラッドとフェアはグリモワールと敵対している。それはグリモワールが龍の力を持つ人間を集めて何かをしようとしているからだ。

 

 

 

 そして龍の力は強力であり、グリモワールはその力を使って他にもいろんなことをしている。

 フェアも白龍の力を使わされていた。

 

 

 

 そのため同じように龍の力の持ち主がグリモワールに利用されて、追っ手になっていてもおかしくない。

 

 

 

 この足跡とブラッドの発言を聞いたフェアは不思議そうな顔をする。

 まぁ、フェアは見たことがなくてもおかしくない。

 

 

 

 そうしていると、突然地面が揺れだす。大きな音を立てながら何かが近づいてきている。

 

 

 

「…………来た。助けて……」

 

 

 

 リナリアはそう言うとブラッドの後ろに隠れる。フェアも揺れと音にビビってブラッドの後ろに隠れている。

 

 

 

 二人のフェアがこうして一緒にいると、まるで兄弟のようだ。まぁ、フェアだから安心していられる。

 自分の姿だったらちょっと気分が悪い。

 

 

 

 そしてどんどん音が近づいてくる。

 

 

 

「っ!!」

 

 

 

 何かが空から飛んできた。そしてブラッド達の前に着地する。

 

 

 

 そこに現れたのは緑髪の少女。着地した少女はドレスを着ており、目を瞑っている。

 

 

 

「あれが音の正体?」

 

 

 

 フェアが恐る恐るブラッドの後ろから顔を出そうとする。しかし、それをリナリアが止める。

 

 

 

「…………あれ、危険…………」

 

 

 

 それを聞いたブラッドは、この少女が例の龍だと確信した。

 

 

 

 

 

 

 



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 第62話  【BLACK EDGE 其の62 緑髪の少女】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第62話

 【BLACK EDGE 其の62 緑髪の少女】

 

 

 

 

 ブラッド達の前に現れた緑髪の少女。彼女が着地した場所には龍の足跡が大きく残っている。

 足跡は一つだが、少女の身体からは想像できない大きさだ。

 

 

 

 だが、龍の力とはそんなものだ。

 

 

 

 ブラッドは知っている。この力は人の肉体を超えた力。そのため、力のコントロールがうまくできないことがある。

 

 

 

 ブラッドは過去に同じようなことになったことがあった。

 

 

 

「フェア、リナリア。お前達は下がってろ」

 

 

 

 ブラッドはそう言うと一人で前に出て、少女に近づく。そして少女の目の前まで来た。

 

 

 

 だが、ブラッドが近づいてきたというのに少女は何も反応しない。

 

 

 

「おい…………」

 

 

 

 ブラッドが話しかけても返事をする様子もない。ただ下を向いて地面を見つめている。心ここに在らずという感じだ。

 

 

 

 その時、少女の後ろの森の奥に人影が見えた。

 

 

 

「誰か、いるのか?」

 

 

 

 ブラッドがその存在に気づいた時、その人影がいた方から声が聞こえた。

 

 

 

「やれ」

 

 

 

 少女が動き出した。緑髪の少女は拳を握るとブラッドに殴りかかる。

 

 

 

 ブラッドを腕をクロスさせてガードするが、少女の攻撃とは思えないほど重い一撃でブラッドの身体は浮く。

 

 

 

「っ!?」

 

 

 

 浮いたブラッドの身体は少し後ろに押し込まれ、三歩分離れた場所でブラッドは着地した。

 

 

 

「こいつ…………」

 

 

 

 少女は再びブラッドに攻撃を仕掛けてくる。

 

 

 

 少女は左足でブラッドのことを蹴る。左から右へ横に蹴る形だった蹴りをブラッドは左手で受け止めた。

 

 

 

 その蹴りの威力も高く、ブラッドは吹っ飛ばされないように堪えたため、その場で受け止めることができたが、蹴りの衝撃で風が発生して、森の木が揺れる。

 

 

 受け止められると少女は次の攻撃を仕掛けてくる。今度は右手によるパンチだ。少女はジャンプするとブラッドの顔に向かって拳を放つ。

 

 

 

 ブラッドは体を反らせて少女のパンチを避ける。そしてその体制のまま、少女の腕を両手で掴んだ。

 

 

 

「…………そろそろ大人しくしろよ」

 

 

 

 ブラッドは少女の腕を掴むと、そのまま少女を地面に倒して拘束した。

 

 

 

 

「…………お前も龍だな。……なんで攻撃してくる」

 

 

 

 ブラッドは少女を押さえつけると少女に聞く。しかし、少女は答えない。

 

 

 

 それどころか少女は無理矢理ブラッドの拘束を抜けようとする。

 

 

 

「おい、無理するな」

 

 

 

 ブラッドは少女を拘束する手を緩めてしまう。このまま少女を捕まえていると少女の身体が壊れてしまう。

 

 

 

 少女はブラッドの拘束から抜け出した。

 

 

 

 

 

 

 

 



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 第63話  【BLACK EDGE 其の63 守れ】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第63話

 【BLACK EDGE 其の63 守れ】

 

 

 

 

 ブラッドの拘束を抜け出した少女は、立ち上がる瞬間にブラッドのことを蹴り上げる。

 

 

 

 蹴られたブラッドの身体はブラッドの身体半分くらいの高さまで飛び上がり、地面に転がった。

 

 

 

 

「ブラッド!!」

 

 

 

 フェアが駆け寄ってこようとするが、ブラッドが手を突き出して止めた。

 

 

 

「待て……こいつ、様子がおかしい…………」

 

 

 

 そう言うとブラッドは地面に転がった時に顔についた泥を腕で拭いながら立ち上がる。

 

 

 

「何かされてるな…………」

 

 

 

 さっき見えた人影。あれが何か関係しているとブラッドは考えた。

 

 

 

 

 だが、目的がわからない。目的がわからない以上、フェアを近づけるのは危険だ。

 

 

 

 しかし、この少女をこのままにしておくわけにもいかない。

 

 

 

「…………けど、どうすっかな……」

 

 

 

 立ち上がったブラッドに少女は再び攻撃を仕掛けてくる。それをブラッドはどうにか躱す。

 

 

 

 この少女は龍の適応者で間違いない。足跡やこのパワー、その辺りからこの少女だと考えられる。

 

 

 

 だとしたら、さっき隠れた人影はグリモワールの関係者か。その可能性が高い。

 

 

 

 そうだとするのなら、先にそっちを狙った方が手っ取り早い。グリモワールの関係者にこの少女が何かされているのなら、その人影をどうにかしたほうがいい。

 

 

 

 しかし、

 

 

 

 ブラッドは少女の攻撃を喰らう。

 

 

 

「ぐっ…………」

 

 

 

 この少女は手強い。パワーもスピードもテクニックもブラッド以上の実力だ。

 ブラッドが少女への攻撃を避けているというのがあるが、それを抜いたとしてもブラッドよりも強い。

 

 

 

 人影を追うとしてもこの少女を放置するのは厳しい。フェアやリナリアに危険が及ぶ可能性もあるし、人影が応戦してくれば二対一では勝ち目はない。

 

 

 

 ブラッドがどうにか策はないかと考えていると、森の奥から誰かが顔を出した。

 

 

 

「…………チクショウ……森を守れって言われても何をすれば良いんだよ…………」

 

 

 

 とそこに現れたのは仮面にフードの男。シャドーだ。

 

 

 

「て、テメーは!? シャドー!!」

 

 

 

 シャドーを見つけてブラッドが驚くとシャドーもブラッドを見つけて驚く。

 

 

 

「ブラッド!? なぜお前がここに!?」

 

 

 

 ブラッドは少女の攻撃を避けながらシャドーに言う。

 

 

 

「この少女を操ってるのはテメーか!!」

 

 

 

 シャドーを攻撃したくてもブラッドは少女の攻撃を避けるので精一杯だ。

 

 

 

「あぁ? そんなガキ知らねぇよ」

 

 

 

「知らないだと……?」

 

 

 

 シャドーはここ少女のことを知らないと答えた。

 

 

 

 

 

 

 



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 第64話  【BLACK EDGE 其の64 影の暗殺者】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第64話

 【BLACK EDGE 其の64 影の暗殺者】

 

 

 

 

 少女からの攻撃を避けているとシャドーが現れた。しかし、シャドーのこの少女のことは知らないと言う。

 

 

 

「そんなガキは知らねぇよ。なんで襲われてんだ?」

 

 

 

 シャドーはブラッドのことを笑う。

 

 

 

「知らないんならどっか行きやがれ、今テメェに構ってる暇はねぇんだよ」

 

 

 

 ブラッドは少女の攻撃を避けながらそう言う。するとシャドーは、

 

 

 

「それはちょうど良い。今ならそこのガキを連れて帰るチャンスじゃないか」

 

 

 

 そう言ってフェアの方を見た。

 

 

 

「おい、やめろ!!」

 

 

 

 ブラッドはどうにかしたいが、攻撃を避けるだけで精一杯だ。シャドーに近づくことができない。

 そんな中、シャドーはフェアの方へと歩いていく。そして目の前に立った。

 

 

 

「さてと、一緒に来てもらおうか」

 

 

 

 シャドーはそう言いながらフェアへと手を伸ばした時、フェアの姿が変わった。それはリナリアだったのだ。

 

 

 

 リナリアはシャドーの姿に変身する。それを見たシャドーは驚く。

 

 

 

「お前はさっきの!?」

 

 

 

 それに対してリナリアは頷いた。

 

 

 

 そしてシャドーの動きが止まる。そのままの体制で固まった。そんなシャドーにリナリアは言う。

 

 

 

「…………一緒に戦ってほしい」

 

 

 

 それを聞いたシャドーは少し考えた後、

 

 

 

 リナリアとフェアを掴むと近くの影に飛び込んだ。シャドーと一緒に二人の姿も影に消える。

 

 

 

「フェア!! リナリア!!」

 

 

 

 ブラッドは助けに行きたくてもいけない。どうしようとない状況であったが、

 

 

 

「ブラッド!!」

 

 

 

 すぐにシャドーは戻ってきた。

 

 

 

 シャドーの手には薄い板がある。それは正方形の1メートルずつの長さのある板で、太さはないほとんどなく軽そうだ。

 

 

 

 シャドーはそれをブラッドの頭上に投げる。そしてそれと同時にブラッドの方へと走り出した。

 

 

 

 そしてその板はブラッド達の真上に来て、ブラッドの下に影ができる。

 

 

 

 ブラッドは動揺する。二人に同時に攻撃される。そうなってしまっては防げない。

 

 

 

 しかし、シャドーは少女を突き飛ばすと、ブラッドの腕を掴んで影の中にブラッドの連れて沈んだ。

 

 

 

「な!?」

 

 

 

 シャドーの術でブラッドは影の中に入り込む。そこは真っ暗で何もない世界だ。

 

 

 

 そんな世界に降り立ったブラッドは周りを見渡す。するとそこにはフェアとリナリアがいる。

 二人に駆け寄って無事なのを確認する。

 

 

 

 そんなことをしている中、シャドーは三人に近づいてきた。ブラッドは戦闘体制を取る。

 しかし、シャドーは両手を上げた。

 

 

 

「安心しろ。……手を貸してやる」

 

 

 

 

 

 



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 第65話  【BLACK EDGE 其の65 影の協力者】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第65話

 【BLACK EDGE 其の65 影の協力者】

 

 

 

 影の世界。そこは真っ暗で何もない。そんな世界に閉じ込められた三人。

 

 

 

 ブラッドは近づいてきたシャドーに戦闘体制を取るが、シャドーは両手を上げた。

 

 

 

「安心……俺はお前達に手を貸してやる」

 

 

 

「なんだと?」

 

 

 

 突然の発言にフェアとブラッドは驚く。

 

 

 

 今までフェアを奪還しようと襲ってきていたシャドーが突然そんなことを言ってきたのだ。

 

 

 

「なんのつもりだ?」

 

 

 

 ブラッドが聞くとシャドーはリナリアを指差した。今は色は違うがシャドーの姿だ。

 

 

 

「ソイツに頼まれたんだよ。この森を守ってくれってな」

 

 

 

 フェアとブラッドがリナリアに確認すると、リナリアは頷く。

 

 

 

「…………頼んだ」

 

 

 

 シャドーは頭を掻きながら、

 

 

 

「俺の姿で頼まれたんじゃ断りずれぇよ。それに俺は、ああ、やって自然を荒らす野郎が許せないんだ」

 

 

 

 そしてシャドーはブラッドの方を向くと、

 

 

 

「だから手を貸してやる。信用してもらう気はない。だから、こっちもそっちも自由にやれ」

 

 

 

 確かにシャドーを信用することはできない。だが、手が足りていないのも確かだ。

 

 

 

「そうか。なら、自由にやるよ」

 

 

 

 シャドーブラッドに背を向ける。そして、

 

 

 

「俺は何をすれば良い……」

 

 

 

 そう聞いてきた。

 

 

 

「あの少女を止めてくれ。そうすれば俺がなんとかする」

 

 

 

「信用して良いのか?」

 

 

 

「お前が言うか?」

 

 

 

「それもそうだな」

 

 

 

 そう言うと三人の足元が突然明るくなる。そして、三人は徐々に光に飲まれていく。

 

 

 

 そんな中、シャドーは振り返ることなく。

 

 

 

「今回だけだ」

 

 

 

 そう言うと三人よりも先に光の中に消えていった。

 

 

 

 ブラッド達は目の前が突然眩しくなり目を閉じる。そしてやっと目を開けると、そこはさっきまでいた森の戻ってきていた。

 

 

 

 そして近くでは戦闘している音が聞こえる。そっち方を見るとシャドーが少女と戦っていた。

 

 

 

 ブラッドは少女を傷つけないようにするように伝えようとしたが、その前に気づいた。シャドーは少女のことを攻撃する様子はない。

 手には武器を持っておらず、ずっと少女の近くでは攻撃を回避し続けている。

 

 

 

「…………とりあえず、本当に時間は稼いでくれてるみたいだな」

 

 

 

 シャドーがこうして少女を惹きつけているうちに……。

 

 

 

「フェア、リナリア。俺達はあの少女を操っている人を探すぞ。近くにいるはずだ」

 

 

 

 三人で少女を操る。存在を探すことにした。

 

 

 

 シャドーの能力は影を移動する。そう簡単には少女には負けないだろう。だが、長い時間は持たない。

 

 

 

「急ぐぞ!」

 

 

 

 

 

 

 



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 第66話  【BLACK EDGE 其の66 探し出せ】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第66話

 【BLACK EDGE 其の66 探し出せ】

 

 

 

 

 シャドーが少女を足止めしている隙にブラッド達は少女を操作していると考えられる人物を探しにいく。

 

 

 

「フェア、リナリア、お前達無事なのか?」

 

 

 

 シャドーは探しながら二人に聞くと二人は頷く。

 

 

 

「大丈夫だよ」

 

 

 

 シャドーはブラッドだけではなく二人も解放した。あのまま影の世界に閉じ込めておくこともできたのかもしれない。

 それをしなかったのは、ブラッドを安心させて行動しやすくするためなのか。それとも能力的に限界があったのか。

 

 

 

「どっちにしろ。考えてる暇はないな」

 

 

 

 ブラッド達が森を走り回っていると、途中で人影を見つけた。それはブラッド達が近くに来ると驚いたのか。逃げていく。

 

 

 

「逃げた!!」

 

 

 

 フェアはその人影が逃げた方を指さす。ブラッド達はその方向へと走っていく。

 

 

 

 しばらくその人影は逃げ回る。走るスピードが速く追いつくのが難しい。

 

 

 

「早いな……。こうなったら!!」

 

 

 

 ブラッドは立ち止まると右手に力を込める。

 

 

 

 

「うぉおおおおおお!!」

 

 

 

 ブラッドの右手に黒いオーラが現れ、それは腕のサイズの龍の顔になる。

 

 

 

「龍の牙(ドラゴンファング)」

 

 

 

 ブラッドは人影に向かって拳を突く。すると龍の顔のオーラは首を伸ばして飛んでいく。

 

 

 

 龍のオーラは森を突き抜けて、

 

 

 

「っ!?」

 

 

 

 人影に衝突した。

 

 

 

 龍のオーラは人影に齧り付くと、そのまま人影を移動させて先にあった木に押し付けた。

 

 

 

 木に衝突すると龍のオーラは消える。人影はダメージを喰らい、地面に膝をついた。

 

 

 

 

「追いついたぞ」

 

 

 

 ブラッド達が追いつくと、そこにいたのは褐色の肌をした女性。

 

 

 

「貴様も龍の力の持ち主か…………」

 

 

 

 仮面は被ってはいない。そのことからグリモワールの人間ではないのだろうか。

 

 

 

「お前は何者だ」

 

 

 

 ブラッドが聞くと女性は唾を吐いた。

 

 

 

「答えるかよ。クソが……」

 

 

 

 そう言った後、女性は地面に右手を触れる。すると、ブラッド達の足元にあった草がまるで生き物のように動き出した。

 

 

 

「これは、魔術!?」

 

 

 

 フェアがそう言った時、植物はフェアの足を絡め取り拘束した。

 

 

 

「フェア!!」

 

 

 

 ブラッドがフェアの元に行こうとするが、フェアだけじゃない。リナリアも捕まっている。

 

 

 

 残ったブラッドにも植物が襲いかかる。ブラッドはそれをどうにか避けた。

 

 

 

 

「お前もグリモワールの関係者か?」

 

 

 

 ブラッドがそう聞くと、女性は鼻で笑う。

 

 

 

「あんなチンケな組織には興味ねぇよ。俺達はブルーバードだ」

 

 

 

 

 

 

 



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 第67話  【BLACK EDGE 其の67 ブルーバード】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第67話

 【BLACK EDGE 其の67 ブルーバード】

 

 

 

 

「ブルーバードだと…………?」

 

 

 

 グリモワールではなくブルーバード。ではこの能力は?

 

 

 

 ブラッドが考えていると、植物は死角からブラッドの脚をとらえた。

 

 

 

「なに!?」

 

 

 

 ブラッドも捕まってしまった。

 

 

 

 女性は植物を操作して、ブラッド達を並べる。

 

 

 

「よくも俺の計画の邪魔をしてくれたな」

 

 

 

 女性はそう言うと植物で鞭を作る。そしてそれを手に持つと、リナリアのことを叩いた。

 

 

 

「リナリア!!」

 

 

 

 何度も何度も叩く。

 

 

 

「邪魔邪魔邪魔!!」

 

 

 

 リナリアは途中でその女性の姿に変身する。変身することで攻撃しづらくしたのだが、女性は関係なく攻撃してきた。

 

 

 

「……馬鹿にしてるのか? 俺をその程度で止められると? 俺はなぁ、そんなんで終われないんだよ!!」

 

 

 

 そして何度も叩く。フェアは見ていられず目を瞑り、ブラッドは叫ぶ。

 

 

 

「やめろ!!」

 

 

 

 だが、二人には何もできない。ただその光景を見守ることしかできなかった。

 

 

 

 

 何もできないこの状況。ブラッドはどうにかできないか。

 

 

 

 龍の力は使うことができる。だが、コントロールが難しい。こうやって拘束された状態ではうまく力を使いこなせない。

 そうなると龍の力が暴走してしまう可能性がある。

 

 

 

 だが、だとしてもだ……。このまま放っておくことはできない。

 

 

 

「フェア、頼みがある…………」

 

 

 

 ブラッドは小さな声でフェアに伝える。

 

 

 

「え…………」

 

 

 

 フェアはブラッドの話の内容を聞いて驚いた。しかし、

 

 

 

「分かった。それでリナリアを助けられるのなら……」

 

 

 

 フェアはそう言った。

 

 

 

「助かるよ……」

 

 

 

 チャンスは一回だ。それも成功する保証はない。だが、それに賭けるしかない。

 

 

 

 ブラッドは右腕に力をためる。すると右腕に黒いオーラが現れた。

 

 

 

「お前、何してる」

 

 

 

 それは女性に見つかってしまう。だが、問題ない。もう何をやろうと間に合わない。

 

 

 

 ブラッドは叫んだ。

 

 

 

「解放!!」

 

 

 

 ブラッドの右腕から黒いオーラが放たれる。それは上空に飛び、ブラッドの頭上のはるか上へと飛んでいった。

 

 

 

「ドラゴンインストール」

 

 

 

 ブラッドの頭上を飛んでいた黒いオーラは空を飛んだ後、落下してきた。

 そしてそれは落下中に龍へと変貌する。

 

 

 

「な、なんだ!?」

 

 

 

 そして龍は落下して、ブラッドに直撃した。龍がブラッドに直撃すると、大きな爆発音が響く。

 そしてブラッドの周囲にバチバチと電気が発生した。風が吹き、ブラッドから発生した風は周囲に吹き荒れる。

 

 

 

「…………何だその姿は……」

 

 

 

 ブラッドは脱出した。

 

 

 

 

 

 

 



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 第68話  【BLACK EDGE 其の68 ドラゴンインストール】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第68話

 【BLACK EDGE 其の68 ドラゴンインストール】

 

 

 

 龍がブラッドに直撃すると爆発する。そして土煙がなくなると、ブラッドは植物による拘束から脱出していた。

 

 

 

「な、なんだと…………」

 

 

 

 女性は脱出されたことを驚く。そしてブラッドの姿に異変が起きていることに気づいた。

 

 

 

 ブラッドのあまりにバチバチと雷が発生している。そしてブラッドの身体全体から黒いオーラが漏れ出している。

 

 

 

「…………めんどくさいことを……」

 

 

 

 女性は近くにある木に触れると、その木の根っこを通して地面に、そして森にあるあらゆる植物を操作した。

 

 

 

 植物がブラッドを襲う。しかし、ブラッドは植物に攻撃されるよりも早く動く。そして、

 

 

 

 

「っ!!」

 

 

 

 気がつくとすでにブラッドは女性の目の前にいた。

 

 

 

 ブラッドは女性の顔面を殴る。それにより女性の身体は吹っ飛び、森を割りながらずぅーーっと先まで吹っ飛んでいった。

 

 

 

 ブラッドに異変が起きた時の衝撃で、植物の拘束から脱出することができたフェア。

 ブラッドが戦闘している間に、リナリアに近づくと拘束している植物に手を当てた。

 

 

 

 すると、フェアの手が光り、植物の力が弱まる。それによりリナリアは脱出することができた。

 

 

 

「今治すから」

 

 

 

 フェアはリナリアに近づく。そして白龍の力でリナリアの傷を回復させた。

 フェアは時間を早めて身体の回復を早めることができる。

 

 

 

 回復したリナリアは目を開けた。

 

 

 

 そしてフェアを見るとフェアに変身した後、

 

 

 

「何が…………起きたの?」

 

 

 

 突然の出来事。ブラッドの腕から黒いオーラが飛び出し、戻ってくるとブラッドに変化が起きた。

 

 

 

 敵を圧倒して倒した。しかし、様子がおかしい。

 

 

 

「あまり騒がないで……私たちも危険だから……」

 

 

 

 

「…………危険?」

 

 

 

「今ブラッドは暴走状態なの。下手をするとこっちまで危ない」

 

 

 

 それを聞いたリナリアは驚いた。ブラッドが暴走状態?

 

 

 

「大丈夫なの?」

 

 

 

 リナリアはフェアに聞く。それに対してフェアは答える。

 

 

 

「……大丈夫。だから任せよ。ブラッドに……」

 

 

 

 ブラッドは女性を吹っ飛ばした後、その場で動かずに止まっていた。何をするわけでもなくその場に立っている。

 

 

 

 そんな中、女性が戻ってきた。身体はボロボロで足元もおぼつかない。

 

 

 

「よくもこの俺を……。だが、もう許さん。…………名前を聞きたがってたな。クレイン、それが俺の名だ。そしてその名を聞いたものは生きて帰ったものはいない」

 

 

 

 クレインは近くにある木に手をつける。すると、周りにある植物がクレインに集まる。

 

 

 

「見せてやろう。俺の最高の魔術を!!」

 

 

 

 そして集まった植物はクレインを包む。そしてクレインの鎧となった。

 

 

 

 

 

 

 



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 第69話  【BLACK EDGE 其の69 自然の騎士】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第69話

 【BLACK EDGE 其の69 自然の騎士】

 

 

 

 クレインの身体を植物が包む。するとそれは形を構成し、鎧となった。そして植物の一つはクレインの手に集まると剣となる。

 

 

 

「植物の騎士(グリーンナイト)」

 

 

 

 クレインは植物の鎧と植物の剣を装備した。植物であるから弱そうと思うかもしれないが、そうではない。

 

 

 

 クレインは術で植物を急激に成長させて操ることができる。だが、それ以外にも能力がある。それは進化である。

 

 

 

 植物を成長させることで次の世代を誕生させる。そしてその進化を自由に操作できる。それにより植物はクレインの思うがままの進化をさせられる。

 

 

 

 そのためクレインの鎧も今も進化し続ける。時間が経つにつれて、強度も鋭さも増している。

 

 

 

「もう容赦はしない。すぐに殺してやる」

 

 

 

 クレインはブラッドに向かい走り出す。クレインの身体はさっきまでよりも重いのか、逃げていた時よりも動きが遅い。

 

 

 

 クレインはブラッドに近づくと、植物で作った剣を振り下ろす。しかし、ブラッドはその振り下ろすスピードよりも速く移動し、クレインの背後に回り込んだ。

 

 

 

「なに!?」

 

 

 

 ブラッドがクレインの背中を蹴る。その威力は鎧で重たくなっていたクレインの身体を浮かすほどだ。

 

 

 

 だが、一撃ではやられない。クレインはすぐに体制を立て直して、ブラッドに切りかかる。だが、ブラッドはそれの避けると正面からクレインの腹を殴った。

 

 

 

 鎧の上からの攻撃だというのにクレインはダメージを受ける。そしてその攻撃は一撃では終わることなく、何発も繰り返される。

 

 

 

 クレインの植物の鎧は凹みだらけになり、クレインはダメージで剣を手から離す。

 

 

 

 そしてクレインの剣が地面に落ちたと同時、ブラッドは最後の一撃をクレインに喰らわせた。

 

 

 

「ガハァー!!」

 

 

 

 クレインの身体は森の奥まで吹っ飛ぶ。木を押し倒し、ずっと先まで飛んで行った。

 

 

 

 クレインが吹っ飛んでいき、それを見たフェアはブラッドを呼ぶ。

 

 

 

「ブラッド!!」

 

 

 

 それに返事するようにブラッドは振り向く。しかし、意識がない。反応をしたわけではなく、声の聞こえる方を振り向いただけだ。

 

 

 

 そしてフェアに向かってブラッドは襲いかかる。しかし、

 

 

 

 フェアが手を突き出してブラッドに向ける。そして光を放つと、ブラッドの動きが止まった。

 

 

 

 それから五秒くらい同じ体勢が続いた後、ブラッドが意識を戻した。

 

 

 

「っ! …………終わったのか?」

 

 

 

 ブラッドはクラッとして倒れそうになるがどうにか踏ん張る。

 

 

 

 そして周りを見渡す。戦闘の跡が残っている。それを見たブラッドは、

 

 

 

「ありがとな。フェア。止めてくれて」

 

 

 

「うん!!」

 

 

 

 

 

 

 



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 第70話  【BLACK EDGE 其の70 終わらない】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第70話

 【BLACK EDGE 其の70 終わらない】

 

 

 

 

「助かった。フェア…………」

 

 

 

 正気を取り戻したブラッドがフェアに言う。フェアは両手を腰に当てるとドヤっと自慢げな顔をした。

 

 

 

「約束したもん!」

 

 

 

 ブラッドは周りの様子を見渡す。そこは戦闘により荒れた状態だ。木も倒れ、地面も抉れている。

 ブラッドはリナリアの方を向くと、

 

 

 

「すまない。やりすぎた……」

 

 

 

 と頭を下げた。しかし、リナリアは首を振る。

 

 

 

「…………助けてくれなかったら、私がやられてた」

 

 

 

 森の一部は荒れてしまったが、ブラッドが戦闘をしなければリナリアがやられていた。

 しかし、クレインの目的はなんだったのか?

 

 

 

「リナリア、あいつも目的は分かるか?」

 

 

 

 ブラッドは聞く。しかし、リナリアは首を振った。

 

 

 

「……分からない。でも、森を破壊しながら何かを探してる感じだった」

 

 

 

 何かを探している。その目的のものとはなんなのか。

 

 

 

 だが、これで倒せたのならばシャドーが足止めをしている少女も解放されたかもしれない。

 

 

 

 そうしたらそうしたでシャドーとの戦闘になるかもしれないが…………。

 

 

 

 そんなことを考えていると、森の奥から何かが飛んでくる。そして吹き飛ばされてきたその物体は転がり止まった。

 

 

 

 それは黒いフードに身を包んだ。人間……。

 

 

 

「シャドー!?」

 

 

 

 ブラッドがシャドーの名前を呼ぶと、倒れていたシャドーがピクリと動いた。だが、かなりのダメージを食らっているようだ。

 立ち上がるがまとめには立てていない。

 

 

 

 シャドーの仮面は割れており、顔の半分が見えている。割れている部分に片目があるが、その上を頭から流れる血が垂れており、目を瞑っている。

 

 

 

「…………ブラッドか……。まだ…………終わらねぇのか……?」

 

 

 

 シャドーはボロボロの身体でブラッドに言った。それを聞いたブラッドは驚く。クレインは倒した。

 しかし、少女とシャドーの戦闘は続いている?

 

 

 

 そしてシャドーが転がってきた方から少女も姿を現した。だが、やはりまだ正気には戻っていない様子だ。

 

 

 

 となると、クレインを倒せていない? それともクレインが少女を操っているわけではないということなのか。

 

 

 

 クレインは植物を操作していた。だが、人を操作している様子はなかった。そうなると植物にのみ操作ができる?

 

 

 

 だが、他に隠れているような存在は見当たらない。

 

 

 

「……あの女は倒したはず……」

 

 

 

 その時だった。森の奥からクレインが歩いてきた。植物の鎧に身を包み。ボロボロの状態でやってきた。

 

 

 

「この俺が…………やられたと……?」

 

 

 

 

 

 

 

 



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 第71話  【BLACK EDGE 其の71 クレイン】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第71話

 【BLACK EDGE 其の71 クレイン】

 

 

 

 

「……この俺が…………やられたと……?」

 

 

 

 

 森の奥から現れたのはクレインだ。右手で左手を抑え、壁に寄りながらブラッド達の前に現れた。

 

 

 

「…………やれてなかったのか」

 

 

 

 ブラッドは戦闘体制を取る。だが、もう一度ドラゴンインストールは使えない。

 

 

 

 あれは肉体への負担もデカいが、それに以上に精神を乗っ取られる可能性がある。下手をすればもう二度とブラッドが戻ってくることは難しい。

 

 

 

 さっき一度使ったのはフェアの力をストッパーとして使ったからだ。

 フェアの力は少しだけ時間を操作する。傷口の時間を早くすることで回復を早めたりすることができる。

 

 

 

 それを使い、ブラッドの中にいる黒龍とブラッドの時間をずらした。黒龍の時間を一瞬だけ早くすることでブラッドとのリンクをずらし、その隙にブラッドが抑え込んだのだ。

 

 

 

 だが、この作戦はもう一度使うのは難しい。龍も生きている。古来より生きてきた存在である龍。彼らを身体に入れることができる適合者。

 油断をすればいつでも身体を乗っ取ろうとしている。

 

 

 

 そして龍も考えている。だからこそ、同じ手は二度と通用しない。

 

 

 

 クレインはふらついた状態で植物の剣を握る。

 

 

 

「どうした。またあの黒いモヤは纏わないのか?」

 

 

 

 ドラゴンインストールのことを言っているのだろう。だが、今はそれを頼れない。

 

 

 

「ああ、 もう使わない」

 

 

 

 ブラッドは拳を握り構えた。

 

 

 

 龍の力を使うには龍ともリンクが必要だ。

 

 

 

 同じ目的を持ち、同じ心を持つ。同じ生物、同じ精神が二つ、一つの体に存在している。

 龍の力は龍と適合者のリンクが必要だ。

 

 

 

「ブラッド……」

 

 

 

 フェアが心配そうに見てくる。

 

 

 

 フェアの力を使ったことで乗っ取られるのは回避できたが、その分リンクが外れている。その状態では龍の力は使えない。

 

 

 

 ブラッドの身体能力のみでの戦闘となる。

 

 

 

 しかし、やるしかない。

 

 

 

 シャドーもボロボロの状態で少女のことを足止めしてくれている。ならば、ここで決着をつける。

 

 

 

 クレインは植物の剣を振り上げながらブラッドに向かって走り出す。ブラッドも拳を握るとクレインの方へと走り出した。

 

 

 

「うぉおおおおお!!」

 

 

 

 クレインが剣を振り下ろす。だが、ブラッドはそれを身体を横にずらして躱した。

 

 

 

 そして拳でクレインの鎧を殴った。だが、植物の鎧は硬くブラッドの拳は鎧に弾かれた。

 

 

 

「どうした、さっきまでの力はないのか!?」

 

 

 

 クレインが剣を振ってくる。

 

 

 

 

 

 

 



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 第72話  【BLACK EDGE 其の72 龍対森】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第72話

 【BLACK EDGE 其の72 龍対森】

 

 

 

 

 ブラッドはクレインの攻撃を避ける。そしてクレインの鎧に拳で殴りかかるが効果がない。

 

 

 

 やはり龍の力無しではクレインの鎧を突破するのは難しい。だが、龍の力を使うことはできない。

 

 

 

 これ以上は身体を龍の乗っ取られてしまう可能性がある。だからこそ、ここは使うことはできない。

 

 

 

 ブラッドはクレインの攻撃を避け続ける。一方的に責められている状態だ。

 

 

 

 このままではキツイ。

 

 

 

 その時、

 

 

 

「ブラッド!!」

 

 

 

 フェアが走ってきた。そして少し離れたところで二人に手を伸ばす。

 

 

 

「フェア、何をする気だ!」

 

 

 

「大丈夫。離れて援護するだけ!!」

 

 

 

 そう言うとフェアの手のひらが光る。するとクレインの鎧に異変が起きた。

 

 

 

 

「っ!! なに!?」

 

 

 

 クレインの包んでいた植物がクレインの制御から解放されて、力を弱めたのである。

 

 

 

「今だ!!」

 

 

 

 ブラッドは防御の弱まったクレインの鎧を攻撃する。鎧はブラッドの拳を弾くことはできず、鎧にめり込む。

 それによりクレインの腹にブラッドの拳がめり込んだ。

 

 

 

「ぐっ!!」

 

 

 

 手応えがあった。クレインはふらつきながら後ろに下がる。そして再び植物を操作すると頑丈な鎧にした。

 

 

 

「なにが起きた…………あのガキ、あいつが関係しているな」

 

 

 

 クレインはブラッドを無視してフェアの方へと走っていく。

 

 

 

「フェア、逃げろ!!」

 

 

 

 ブラッドはクレインを追いかける。

 

 

 

 フェアはクレインが近づいてくるが、逃げずにクレインに向けて力を使った。

 

 

 

 クレインの鎧が再び弱くなる。そんなクレインの腕をブラッドは掴むと、自分の方へと引き寄せる。

 

 

 

「行かせるかよ」

 

 

 

「……邪魔しやがって」

 

 

 

 クレインは

 

 

 剣でブラッドを攻撃しようとするが、それよりも早くフェアが力を使い剣を通常の植物に戻した。

 

 

 

 ブラッドの肩を葉っぱや蔓が落ちる。

 

 

 

 ブラッドはクレインのことを蹴り飛ばした。クレインは蹴りの衝撃で地面に叩きつけられる。

 

 

 

 だが、地面に落ちる前に植物を操作して、その時のダメージは軽減した。しかし、フェアとブラッドのコンビネーション攻撃は防ぐことができない。

 

 

 

 どうにかしてフェアの動きを封じなければ、鎧の効果が発揮できない。鎧が使えれば、ブラッドの攻撃は効かず、問題なく倒すことができる。

 

 

 

 なら、どうするべきなのか……。

 

 

 

 その時、クレインの視線にシャドーと少女が戦う姿が見えた。

 

 

 

 そしてそれを見たクレインは、

 

 

 

「レイラ!! さっさとそいつを殺し、そこのガキを殺せ!!」

 

 

 

 

 

 

 



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 第73話  【BLACK EDGE 其の73 レイラ】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第73話

 【BLACK EDGE 其の73 レイラ】

 

 

 

 

「レイラ!! さっさとそいつを始末して、こっちに加勢しろ!!」

 

 

 

 クレインはシャドーと戦う少女にそう言う。それを聞いたレイラは、

 

 

 

「了解しました」

 

 

 

 と言った後、シャドーに一瞬のうちに近づく。そのスピードにシャドーは影に逃げる暇もなく、レイラに捕まってしまった。

 

 

 

 レイラはシャドーの腕を掴むと、シャドーを投げ飛ばす。遥か上空に飛ばされたシャドーは、木よりも高い高さから落下した。

 

 

 

 シャドーは地面に倒れる。レイラはシャドーが倒れると今度はフェアに向かって走り出した。

 

 

 

 このままではフェアが危険だ。だが、クレインが攻撃を仕掛けてくるためブラッドは動けない。

 

 

 

 レイラがフェアに走っている途中、レイラの身体が突然沈んだ。地面の中に沈んでいく。まるで沼に浸かるように。

 

 

 

「シャドー!」

 

 

 

 シャドーはまだ意識があった。そしてその技は今までブラッドが見たことがない技。

 

 

 

 シャドーの影が動いて伸びた。そしてレイラの足元まで続いていたのだ。

 

 

 

「これは……」

 

 

 

 シャドーは倒れた状態で喋る。

 

 

 

「こいつはあまり長い時間発動できない。それにすぐに影の世界に行けるわけじゃない。…………だが、こういう足止めはできる」

 

 

 

 シャドーはブラッドに叫ぶ。

 

 

 

「今だ。やっちまえ!!」

 

 

 

 それを聞いたブラッドはクレインに殴りかかる。フェアはシャドーがレイラを止めているため力を使える。

 

 

 

 防御力の弱くなった鎧の上からブラッドは拳を握り、クレインを殴り飛ばした。

 

 

 

 その一撃でクレインは力を緩めたのか、植物の操作がなくなり、鎧もなくなる。

 

 

 

 だが……

 

 

 

「レイラァァァ!! 私を連れて逃げろ!!」

 

 

 

 倒れる前にクレインはレイラにそう叫ぶ。それと同時にシャドーの影はシャドーの元に戻っていく。

 能力の限界だったのだろう。

 

 

 

 解放されたレイラは素早く移動してクレインの元へ行く。そしてクレインを抱き抱えると、高く飛び上がり逃げて行った。

 

 

 

 

 

 

 戦いを終え、シャドーが目を覚ますと、フェアが力を使ってシャドーの傷を癒してくれていた。

 

 

 

「なぜ、俺を…………」

 

 

 

 シャドーが聞くとフェアは、

 

 

 

「一緒に戦ってくれたから」

 

 

 

 と答えた。シャドーは立ち上がる。

 

 

 

「今回は見逃してやる。今度会った時は……必ず捕らえる」

 

 

 

 シャドーはそう言うとその場から立ち去ろうとする。そんなシャドーにフェアが聞く。

 

 

 

「あの子たちはどこに……?」

 

 

 

 それはフェアたちが追っている子供たちの行方。だが、

 

 

 

「俺も知らない。だが、殺されてはいないはずだ。…………そういう命令だからな」

 

 

 

 シャドーは森へと消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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 第74話  【BLACK EDGE 其の74 森を抜けて】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第74話

 【BLACK EDGE 其の74 森を抜けて】

 

 

 

 クレインとの一件を終えたブラッド達は、先を急ぐため馬車のある花畑に戻った。

 

 

 

 シャドーから情報を聞き出すことはできなかったが、雪山の屋敷に行けば何かヒントが得られるかもしれない。

 

 

 

「よし、早速行くか」

 

 

 

 ブラッド達が倒れた馬車からシャドーが乗ってきていた馬車に荷物を入れ替えていると、リナリアが寂しそうに見ていた。

 

 

 

「リナリア、あなたも来る?」

 

 

 

 そんなリナリアの姿を見てフェアが聞いた。それに続いてブラッドも言う。

 

 

 

「森は守れた。お前の目的は達成したんだろ。しばらくはあいつらも現れないぜ」

 

 

 

 

 クレインはかなりの傷を負った。だから、簡単には戻ってくることはないだろう。

 しかし、クレインと一緒にいた少女のことが心配だ。レイラと呼ばれていたが、あの子は龍の適応者だ。どんな龍の適応者なのかはわからないが、暴走しているのは確かだ。

 それにクレインに操られている感じだった。

 

 

 

 だが、だからこそ、簡単には戻ってこられない。クレインの傷とレイラの状態。その二つを考えれば、この森にはしばらくは現れないだろう。

 

 

 

 しかし、リナリアは首を振った。

 

 

 

「私は行けない……」

 

 

 

 それを聞いたフェアは寂しそうに、

 

 

 

「なぜ?」

 

 

 

 と聞く。フェアと同じ姿をしたリナリアは答える。

 

 

 

「私はこの森。この森そのもの。だからここから離れることはできない」

 

 

 

 リナリアは普通の人間ではない。人の姿に変身する力を持っている。

 

 

 

「そうか。分かった」

 

 

 

 ブラッドはそう言うと荷物を次々と乗せていく。しかし、フェアは納得していないようだ。

 

 

 

 ブラッドが荷物を入れている間にフェアとリナリアは話を続ける。

 

 

 

「一緒に行きたくないの?」

 

 

 

「私も一緒に行きたい。でも、行けない……」

 

 

 

 そう喋った後、リナリアは懐から何かを取り出した。それはネックレスだ。シンプルなデザインだが、光の角度によっては綺麗な光を放つ。

 

 

 

「これをあげる。……それは私のオリジナルの物」

 

 

 

 それを受け取ったフェアはそれをぎゅっと握りしめた。

 

 

 

「私はそれでついていく。だから寂しくはない」

 

 

 

「…………分かった」

 

 

 

 そして荷物が詰め終わり、出発することになる。

 

 

 

「じゃあな」

 

 

 

「またね」

 

 

 

 こうしてブラッド達は森を抜けたのであった。

 

 

 

 

 森を出た後、フェアは後ろを振り返る。

 

 

 

「リナリア、大丈夫かな?」

 

 

 

「大丈夫だ。……それにあいつにはまだやることがあるみたいだしな」

 

 

 

 

 

 戦闘が終わった時、ブラッドはリナリアに聞いていた。

 

 

 

 なぜ、この森を奴らが襲ったのか。

 

 

 

 この森とブルーバードという組織の関係。

 この森の秘密を……。

 

 

 

 

 



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 第75話  【BLACK EDGE 其の75 ナンフェア村】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第75話

 【BLACK EDGE 其の75 ナンフェア村】

 

 

 

 

 プロタゴニストの森を抜けたブラッドとフェアは遂に、北西にある雪山が見えてきた。

 

 

 

 雪山が近づいてくるにつれて、温度も下がっているような気がする。

 

 

 

 そして雪山に入る前に、その雪山の直前にある村に立ち寄ることになった。

 

 

 

 その村の名前はナンフェア村。雪山の大地と自然の広がる森の境にある川沿いに栄えている村で、雪山の大地に行くためにはここで船を借りて川を渡る必要がある。

 

 

 

 川は深く広く、この辺りでは一番大きく長い川だ。橋ではなく船でなくては渡れない。

 

 

 

 最近では橋の建設を計画していたりもするらしいが、川は向こうの岸で叫んでも声が聞こえないくらい離れている。

 そんな川に橋をかけようとすると何十年かかるか分からない。

 

 

 

 ブラッドは馬車を止めると、フェアに馬車で待ってもらい、船の運行情報を調べる。

 船着場では多くの船が停まっており、向こうの岸とこっちの岸を行き来している。

 

 

 

 二人分のチケットを買ったブラッドはフェアの元に戻った。

 

 

 

「チケットは買えた。後はこの馬車をどうするかだな……」

 

 

 

 流石に馬車を向こうの岸に持っていくことはできない。だから置いていくことになるのだが……。

 

 

 

「ここに置いていくか……?」

 

 

 

 ここに馬車を置いて行って誰かに馬の面倒を見てもらうという手もある。それかこの馬車を売って戻ってきた時にまた新しいのを買うか。

 

 

 

 どちらにしろ。雪山での移動用で向こうの岸ではまた馬車を買わなければならない。

 

 

 

 そんな時である。

 

 

 

「よぉ、そこのにぃちゃん」

 

 

 

 景気の良い声で話しかけられた。そこには赤毛の少女がいた。歳はフェアより少し上くらいか。だが、まだ子供だ。

 

 

 

「なんだ……」

 

 

 

 ブラッドが振り向くと同時にその少女はブラッドの顔を見てビクッとする。

 

 

 

「あんた、結構イケメンだが……顔怖いな」

 

 

 

 初対面で何を言っているんだか……。

 

 

 

「それでなんなんだ?」

 

 

 

「ああ、その馬車、要らないなら私にくれないか?」

 

 

 

 少女はそんなことを言ってきた。ブラッドは腕を組む。

 

 

 

「いくらだ?」

 

 

 

 馬車は中古であっても、子供の購入できるものじゃない。遊びで買えるほど安い物じゃないのだ。

 

 

 

 ブラッドは賞金稼ぎ時代の金も余っているため、金には余裕はある。だが、ただで私たらこの子供のためにならない。

 

 

 

 すると少女は短パンの裾をくいっと持ち上げる。

 

 

 

 色仕掛け? だが、子供だ。それにブラッドはそんなものに興味はない。

 

 

 

 だが、違った。

 

 

 

 少女のズボンの中からいくつかの財布が落ちてくる。

 

 

 

「これだけあれば足りるか?」

 

 

 

 

 

 



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 第76話  【BLACK EDGE 其の76 馬車を買いたい】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第76話

 【BLACK EDGE 其の76 馬車を買いたい】

 

 

 

 

 

「これで足りるか?」

 

 

 

 赤毛の少女が短パンの裾を上げると、そこから十個ほどの財布がポロポロと出てきた。

 

 

 

 その財布は色も素材も違い、統一感のない財布だ。この全部の財布がこの少女の財布だとは考えにくい。

 

 

 

「この財布はなんだ?」

 

 

 

 ブラッドが聞くと少女はニヤリと笑う。

 

 

 

「落ちてたのを拾った。…………それでこれで足りるのか?」

 

 

 

 ブラッドは少女を睨む。

 

 

 

「足りる足りないの問題じゃない。……拾っただと? これだけの財布をか?」

 

 

 

 ブラッドが怒ると少女はやれやれという顔をした。

 

 

 

「そんな怖い顔をするんじゃねぇよ。俺はそいつが欲しいだけ。あんたらには金は払う。それで良いだろ」

 

 

 

「その金は正当なものじゃねぇだろ」

 

 

 

 この少女は拾ったと言っている。しかし、どう考えても盗んだものだ。

 

 

 

 ブラッドは賞金稼ぎをやっていたことはある。荒っぽい仕事ではあるが、犯罪者を捕まえていた立場だ。

 

 

 

 こんな汚い金を受け取るわけにはいかない。

 

 

 

 少女はしゃがむと財布を拾う。

 

 

 

「はいはい、そうかいそうかい。受けたらねぇか……」

 

 

 

 そして財布を拾うとズボンの中にしまった。

 

 

 

 そしてその後、

 

 

 

「なら、こいつは貰ってくぜ」

 

 

 

 気がつくとブラッドが手に持っていた船のチケットがない。

 

 

 

「っ!?」

 

 

 

 そしてその二人分のチケットをその少女が持っていた。

 

 

 

「いつの間に……」

 

 

 

 ブラッドは取り返そうと少女を捕まえようとするが、少女は素早くてなかなか捕まらない。

 

 

 

「ほらほら、こっちだよ〜、こっちこっち〜」

 

 

 

 少女はブラッドから逃げながら煽り出す。

 

 

 

「おしりぺんぺん、捕まえられるなら捕まえてごらん!!」

 

 

 

 そして少女は自分のお尻を叩くとそのままチケットを持って村の路地へと消えていく。

 

 

 

「あのやろ〜!!」

 

 

 

 チケットくらいなら買うことはできる。無理して取り返しに行く必要はない。だが、ここまで馬鹿にされて、我慢することはできない。

 

 

 

「フェア、お前はそこで待っててくれ」

 

 

 

 馬車の中で休んでいたフェアに、その場で待っていることを任せると、ブラッドはさっきの赤毛の少女を追うために走り出した。

 

 

 

 さっき少女が消えた路地に入ると、少女はブラッドのことを待っていた。

 

 

 

「ほらほら〜、こっちだよ〜っだ!!」

 

 

 

 少女はベロを出してそう言った後、また走って逃げていく。

 

 

 

「待て!!」

 

 

 

 ブラッドもその少女のことを追いかける。だが、全力で逃げている感じじゃない。なんだか誘導されている感じだ?

 

 

 

 

 

 

 



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 第26話  【剣の声】

 世界最強の兵器はここに!?26

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第26話

 【剣の声】

 

 

 

 凍えるほどの低温。壁や天井には氷が張り付き、至る所に氷柱が出来ている。

 薄暗い倉庫にパトとヤマブキは閉じ込められていた。

 

 

 

 倉庫は長く両脇には牢屋が設置されている。パト達のいる入り口は氷の壁により出ることは不可能。

 残りはアングレラ帝国で唯一魔法を使うことを許された賢者の役職を与えられた特別な人物。クリスタ・L・リードレアームが立つ倉庫の奥に存在する。

 

 

 

「ヤマブキさんはここで待っててください」

 

 

 

 パトはヤマブキに着ていた上着を被せる。上着を貰ったヤマブキは何も言わずにそれを頭から羽織った。

 

 

 

 上着を脱いだことにより、半袖になり身体が震える。それでも気合いで剣を握った。

 

 

 

 クリスタが身体を動かすたびに冷気が発せられ、温度がみるみるうちに下がっていく。

 長期戦になればなるほど不利になる。しかし、パトは戦闘用の魔法を使うことはできない。武器になるのは手に持つこの剣だけだ。

 

 

 

 パトはクリスタに向き合うが、相手との距離はかなり離れている。数字にすると約20メートルくらいだろうか。

 それだけ離れた距離がある状況、相手からしても冷気は届いているが、それ以外に攻撃をする手段はないだろう。パトはそう考えていた。しかし、

 

 

 

 クリスタが扇で小さな円を描くと、そこに白い粉が線を作って集まり、やがてツララが出来上がった。

 

 

 

 ツララは縦に伸びているのではなく、パトに向けて槍のような方向に伸びている。

 

 

 

「さぁ踊れェ!」

 

 

 

 扇を振るとツララがパトへ目掛けて一直線に飛んでくる。

 

 

 

 速度は速いわけではない。それに一直線に飛んでくるということもあって、簡単に避けることができた。

 

 

 

 遠距離攻撃があることには驚いた。しかし、避けられない攻撃ではない。どうにか距離を詰めて、攻撃、出来ることなら無傷で捕縛したい。

 そう考えていたパトであったが、その考えはすぐに不可能であったということを知らしめられる。

 

 

 

 クリスタが扇で円を描くと、続々とツララが出来上がる。そしてそれをパトに向けて連続で放ってきた。

 

 

 

 一発一発の速度が遅くても、数が多くなれば避けるのが難しくなる。パトは近づくことすらできず、入り口のそばでツララを避けるので精一杯になってしまう。

 

 

 

 身体を上下左右に動かして、必死にツララを避け続ける。倉庫の温度も下がりつつある。これ以上長期戦になるのは危険だ。

 

 

 

 パトに焦り見え始める。しかし、それはクリスタも同様であった。

 

 

 

 クリスタはこの倉庫周辺の奴隷の管理を任せられた人物である。

 上司であるジェイのから奴隷を解放している人物がいると報告受けて、見回りを兼ねてこの倉庫にやってきた。そこで奴隷を解放する反逆者に出会ったのだ。

 

 

 

 鍵を持っていた侵入者はこの倉庫に閉じ込めた。鍵を取り戻し、事情を聞いたのちに他の奴隷も捕獲すれば良い。

 だが、そうではないことに今更気がつく。

 

 

 

 倉庫が暗く目が慣れるまで時間がかかったため、やっと侵入者の二人の姿や服装を見ることができた。

 そこで今戦っている人物の影に隠れ震えている女性。彼女の服装に見覚えを感じる。

 

 

 

 色やデザインは違う。しかし、珍しい服装という点が彼女の中である人物を連想させた。

 

 

 

 ──リュウガ様の側近の──

 

 

 

 フルート王国が存在した頃、クリスタは食糧を保存する冷凍保存場で働いていた。魔法で食料を凍らせて、長期間保存する。

 魔法の使用が制限される前の時代だ。社員も全員魔法を使って冷凍をしていた。そんな会社で一番優秀であったのがクリスタである。しかし、彼女は女性であるという理由から、出世が許されずにずっと冷凍の作業をやらされていた。

 

 

 

 だが、ある時王国が滅んだ。そしてクリスタの元に英雄が現れる。彼は新たな国の王を名乗り、自ら足を運んで各地で優秀な人材を集めた。

 その中にクリスタはいたのだ。

 

 

 

 初めて自分を認めてくれる人間。性別や種族では判断しない。彼こそこの国の王で相応しい。

 その彼の側近に似た服装の人物。彼の隣によくいる女。大賢者エンド。彼女の素性は謎だ。一つ分かるのはリュウガ様と共に王国にやってきたということ。

 

 

 

 リュウガ様は彼女を大いに信頼していると聞く。しかし、彼女が反旗を起こそうと考えていたらどうだろうか。

 確証はない。しかし、服装が似ている。そのことがクリスタにとって最悪な事態を想像させた。

 

 

 

 

 ──そんなはずはないはずじゃ。じゃが──

 

 

 

 帝国では奴隷の使用が認められている。しかし、奴隷にも最低限の衣食住を与える事が義務付けられており、奴隷に危害を加えることは許されていない。

 それは帝国が魔法を失ったから代わりに人力に貸した権利。

 

 

 

 クリスタはアングレラ帝国で唯一魔法の使用を許された人物。彼女が賢者になったのは奴隷を守るため、そしてリュウガの正義を信じたため。

 リュウガは人間は人間である。それを最低限守っている。だから、侵入者以外は傷つけないように倉庫の外に出した。そして戦意のない相手には攻撃をしない。

 

 

 

 この戦闘において、クリスタは一度もヤマブキを狙うことはなかった。

 だが、服装を見た時彼女の手元が狂った。一発のツララが真っ直ぐに無防備な状態のヤマブキへと飛んでいく。

 

 

 

 狙ったわけではない。もしもエンドと関係があるなら捕らえてから事情を吐かせれば良い。しかし、一つ彼女には心の揺らぎがあった。

 帝国の王であるリュウガは、どれだけ出世しようと遠い存在だ。彼女にとっては自分を認めてくれた人物。憧れと尊敬がある。

 だが、それと同時に常にあのお方の近くにいるあの女が憎く感じていた。

 

 

 

 顔も声にも出さない。心の奥に秘めた気持ち。だが、この戦闘のほんの一瞬にその感情が牙を剥いた。

 

 

 

 クリスタは小さく「あ……」と声を溢すが、飛ばしてしまったツララは彼女にはどうすることもできない。

 

 

 

 賢者になってから彼女は好みの男性を捕まえて、ちょっとした悪戯をすることが多かった。若い男や体つきの良い男に意地悪をするのが彼女に密かな楽しみだ。

 だが、他の侵入者や盗賊と戦闘になることは何度もあった。それでも殺人はしたことはなかった。

 

 

 

 剣を持つ少年を狙ったツララだって、急所は狙っていない。足や腕を中心に狙い、動きを封じるのが狙いである。

 だが、青髪の少女に放たれたツララは身体の中心である胸を目掛けて飛んでいった。

 丁度そこには少女は蒼の宝石を付けている。

 

 

 

 そのツララが当たったのならば、宝石は砕け散り、少女の身体にツララは刺さるだろう。

 

 

 

 

 クリスタは胸を締め付けられるような、苦しい感覚に陥る。

 

 

 

 ツララの一つがヤマブキに向かって飛んでいくことに気がついたパトは、自身を狙うツララのことすら忘れ、ヤマブキを庇おうと動いた。

 

 

 

 

 

 パトはお人好しである。だが、無条件で人を助けるヒーローではない。

 彼にだって、助ける優先順位が存在する。

 

 

 

 家族や友人、村の人々。彼にとって何よりも大事なものだ。

 

 

 

 そしてヤマブキはすでに彼の中で仲間であり、同じ村に住む住民である。

 彼にとって助ける存在だ。それは自分を犠牲にしたとしても……。

 

 

 

 鞘から出した剣を振り、向かう途中に飛んでくるツララを弾いていく。完璧には防ぎ切れず、彼の身体に破片が刺さるがそんなことは関係ない。

 急いでヤマブキの元へと向かう。

 

 

 

 ヤマブキとの距離はあと少し。だが、ツララはもうそこまで来ていた。

 あと一歩、だが、この一歩を踏み出す余裕がない。

 

 

 

 パトは剣を振り、一か八かツララを破壊しようとする。しかし、剣は届くことはなく。ツララに剣先が当たったのみで砕くことができなかった。

 

 

 

 パトの汗が凍りつく。その時、パトの頭の中に聞き覚えのない女性の声が聞こえてくる。

 それは音として聞こえると言うよりも、直接頭の中に語りかけてくるような感覚。

 

 

 

 ──諦めないで、まだ助けられる──

 

 

 

 その声はその言葉だけ。だが、その声が頭の中で再生されている間。ほんの一瞬、時間が止まったような感覚がした。

 

 

 

 声の直後。剣から突如の刃に異変が起きる。

 突如として熱気を発し出し、剣先の当たったツララは一瞬にして水へと変換される。

 

 

 

 急激な温度の変化で倉庫の中は蒸気に覆われる。白い煙が倉庫一帯を包み込み、冷たく凍えるような状態であった倉庫は、外とさほど変わらない温度へと変化した。

 

 

 

 これを引き起こしたのは、オルガから貰った剣。

 剣は熱を発し、倉庫の温度を急激に上げた。だが、それだけの高温でありながら、パトやヤマブキは火傷などはしていない。

 

 

 

 しかし、ひとつだけ理解したことがある。

 

 

 

 ヤマブキが無傷なことを確認したパトは剣を握りしめて、クリスタと向かい合った。

 

 

 

「これなら魔法に対抗できる」

 

 

 

 理由は分からないし、どんな力なのかも分からない。魔法なのか、それとも別の力なのか。

 だが、この剣の力があれば村人を救うことができる。

 

 

 

 辺りの氷も溶け、身体も温まり始めた。

 パトは剣を手にクリスタへと走り出す。

 

 

 

 温度が上がったとはいえ、扉の氷は溶けていない。この倉庫から脱出するためにはクリスタを倒し、奥にある扉から外に出る必要がある。

 

 

 

 突然の温度の変化に驚いていたクリスタだが、パトが近づいてきていることに気づく。

 あの少年にはこれだけの力はないと予想していた。しかし、現状を引き起こしたのならば、近づかれるのはまずい。

 

 

 

 クリスタは扇を振り、大量のツララを生成すると、パトに向かって次々と飛ばしていく。

 パトは剣を振り、ツララを払っていく。だが、ツララを切ったり砕いているのとは違う。ツララは県にぶつかると同時に溶けて消えている。

 

 

 

 

 クリスタは自身の攻撃が全く効いていないことに気づき、焦りを見せ始める。

 それをチャンスとばかりに一気に距離を詰め、ついに倉庫の反対側のクリスタの元へと辿り着いた。

 

 

 

「なんなんじゃ……何が起こっておるんじゃァァァ!」

 

 

 

 クリスタは焦り叫ぶが、パトにもこの剣の力について理解できていない。説明をすることはできない。

 

 

 

 ついに間合いに入ったパトは力一杯に剣を振る。

 横薙ぎに振られた剣の刃はクリスタを目の前にとらえる。しかし、もう少しでクリスタの身体に当たるというところで剣の動きが止まった。

 いや、正確には止められた。

 

 

 

「氷の巨壁(ファレーズ・グラース)」

 

 

 

 クリスタは寸前で氷の壁を生成に剣を防いだ。急いでいたと言うこともあり、分厚い壁ではない。しかし、クリスタの全身全霊の魔力を込めたことで、熱を帯びた剣であっても簡単に溶けることはなかった。

 

 

 

 剣は氷の壁に突き刺さり、ピクリとも動かなくなる。パトは剣を振った体制のまま、その場に固まる。

 

 

 

 氷の壁に剣が挟まり動けなくなったパトを見て、クリスタがニヤリと笑った。

 

 

 

「こ、小ネズミが……。妾を驚かせおって……」

 

 

 

 そしてクリスタはパトを囲むようにツララを生成する。四方八方を氷の槍に覆われたパトにはもう逃げ場がない。

 

 

 

「じゃが、ここまでの功績は認めよう。お主は特別に妾直属の奴隷にしてやろうぞ。感謝するが良い」

 

 

 

 十本以上のツララがパトに向かって発射される。ほぼゼロ距離からの攻撃。どこに逃げようが避けることはできない。そう、逃げようとするのなら……。

 

 

 

 ──逃げるな。前に進め! ──

 

 

 

 今度は頭の中に直接、男の人の声が聞こえてくる。

 その声の持ち主は優しい声をしている。しかし、その声のイメージとは裏腹に怒っているような、そんなイメージを持つ言い方をした。

 

 

 

 パトは声に後押しされるように剣を強く握る。そして氷の壁にさらに剣を捻じ曲げるように力を入れた。

 

 

 

 分厚い氷の壁は今まで通りならびくともしなかっただろう。

 だが、剣に変化が起きる。

 

 

 

 熱を帯びていた剣の温度がさらに高まり、剣の先に火花が散り始める。そして辺りの氷を溶かしながら、剣は真っ赤な炎を帯びた。

 

 

 

 剣は分厚かった氷の壁すらも溶かす。氷の壁が溶けたことで切断され、クリスタとパトは対面する。

 

 

 

「小ネズミがァァァ!」

 

 

 

 焦ったクリスタはパトの周囲に生成したツララを発射させるが、パトは燃える剣を手に身体を回転させて、向かってくるツララを溶かした。

 

 

 

 そしてその勢いのまま、クリスタへと切りかかる。しかし、刃がクリスタへと接触しようとした時、剣先が爆発し、二人はお互いに反対方向へと吹っ飛ばされる。

 吹っ飛ばされた二人は壁に激突し、背中を強打。パトがどうにか意識を失うことはなかったが、壁に激闘したときの衝撃で、景色がくらくらする。

 

 

 

 同じように吹っ飛ばされたクリスタは反対側の壁で意識を失いぐったりしている。

 爆発した剣の先は、何事もなかったかのように無事である。何が起きたのか理解はできないが、とりあえずは危機を脱することができたようだ。

 

 

 

 クリスタが意識を失った影響か、倉庫の冷気は消えて、入り口を塞いでいた氷の壁はなくなる。

 

 

 

 

 

 

 



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 第77話  【BLACK EDGE 其の77 チケットを取り戻す】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第77話

 【BLACK EDGE 其の77 チケットを取り戻す】

 

 

 

 

 ブラッドはチケットを盗んだ少女を追いかける。だが、その少女はかなり素早く、なかなか追いつけない。

 

 

 

 それに追いついたとしても、まるで動きを読んでいるかのような動きで逃げられてしまう。

 なんだかウナギを捕まえようとしている気分だ。

 

 

 

 

 そんな感じで村の中を走り回る。だが、少女は全力で逃げている感じではない。ブラッドが見失いそうになると姿を現し、挑発をしてまた逃げる。

 

 

 

 そしてブラッドをどこかに誘導しているような感じだ。

 

 

 

 そしてしばらく追いかけた後、ブラッドと少女は村の端にある水車がある建物の近くについた。

 そこは人通りが少なく、少し坂になっているため村からはこちらの様子がよく見えない場所だ。

 

 

 

 少女はそこに着くと足を止めた。

 

 

 

「…………ここまで俺を連れてきて、なんのつもりだ?」

 

 

 

 ブラッドがそう言うと、少女は振り向かずに言う。

 

 

 

「気づいていたのか……」

 

 

 

「バレバレだ…………」

 

 

 

 少女は振り返ると髪を結ぶ。そして、

 

 

 

「私はクロウ。……このチケット返して欲しい?」

 

 

 

 少女はそう言うとチケットを手に持って見せびらかす。

 

 

 

「ああ、そうだな。そいつがないと向こう岸に渡れないんでな」

 

 

 

 ブラッドがそう言うと、クロウはチケットを服の中にしまう。

 

 

 

「あの馬車を私に渡せ。そうすればさっきのチケットは返してやる」

 

 

 

「なぜ、そこまで馬車が必要なんだ?」

 

 

 

 ブラッドの問いにクロウは答える。

 

 

 

「…………私には行かなければならない場所がある。そこに行くためだ」

 

 

 

「それは盗みをしてまですることなのか?」

 

 

 

 クロウは頷く。

 

 

 

「ああ、私の命に変えても行かなければならないのだ」

 

 

 

 クロウの覚悟は分かった。だが、だとしても馬車を無条件で渡して良いものなのだろうか。

 

 

 

「…………それなら事情を話してくれ。場合によっては力になれるかもしれない」

 

 

 

 ブラッドの言葉にクロウは首を振った。

 

 

 

「これは人に話して良いものではない。秘密事項だからな。だが、一つだけ教えるなら…………世界平和のためだな!!」

 

 

 

 ブラッドへクロウの言っている意味がわからない。だからこそ、無条件であげるのはどうかと思う。

 

 

 

 それにこのままやられっぱなしもあまり気分が良いものじゃない。

 

 

 

「……そうか、事情は分からないが、馬車は譲れないな。諦めろ」

 

 

 

 ブラッドはそう言うと右手に力を込めた。すると、黒いモヤがブラッドの右手を包む。

 

 

 

 ブラッドが腕を横に振ると、黒いモヤは人のように伸びて、クロウの元まで伸びる。そしてその黒いモヤがクロウが持っていたチケットを掴むと、ブラッドの元までキャッチした。

 

 

 

 

 

 

 

 



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 第78話  【BLACK EDGE 其の78 クロウ】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第78話

 【BLACK EDGE 其の78 クロウ】

 

 

 

 

 ブラッドは黒龍の力を右手にためると、それを鞭のように使い、クロウの持っていたチケットを取り返した。

 

 

 

「な!? 私のチケットを!!」

 

 

 

 鞭を縮めてブラッドはチケットを手に取る。

 

 

 

「これは俺たちのものだ。お前のもんじゃないぞ」

 

 

 

 ブラッドはそのチケットを見せつける。それをみたクロウは悔しがる。

 

 

 

「何よ。また取り返してやる!!」

 

 

 

 クロウはそう言うとブラッドの元へと走り出す。

 

 

 

 そのスピードは早く。子供の走るスピードとは思えない速さだ。そのスピードのまま、ブラッドの持ったチケットに飛びかかる。

 

 

 

 しかし、ブラッドは身体を少しずらすだけで、クロウからチケットを避けた。

 クロウはチケットを掴み取る気でいたが、掴めやがったことに驚く。

 

 

 

「な、なに!? なんで…………」

 

 

 

 スピードではクロウの方が優っていた。ブラッドがクロウのスピードについて来られるはずがない。

 

 

 

 クロウが驚いていると、ブラッドが説明する。

 

 

 

「…………簡単なことだ。標的の分かっているのなら、先に行動を読める。なら、予測して先に動かせば良い」

 

 

 

 クロウは再びチケットを取ろうとする。しかし、ブラッドがまたしても少しずらすだけでチケットを取れなかった。

 

 

 

「なんでよ!!」

 

 

 

 クロウは何度も何度もチケットを手に入れようと飛びかかる。しかし、そのどれもが空振りに終わってしまった。

 

 

 

「それにお前は動きに無駄がありすぎる。一度取り返してしまえば、もう二度と取られない」

 

 

 

 ブラッドは身体を少しずらすだけで、ほとんど動かずにクロウからチケットを守っている。

 それはクロウの狙いがチケットなのと、動きが単純だからだ。

 

 

 

 一度理解してしまえば、ブラッドには避けられないものではない。しかもそれは攻撃ではなくチケットを狙っている。

 

 

 

 こんな小さな的をクロウから遠ざけるだけならば、簡単にできてしまう。

 

 

 

 確かにクロウのスピードは一級品だ。このスピードは大人でもとらえられない。

 もしもクロウが油断していなければ、取り返すこともできなかっただろう。

 

 

 

 やがてクロウは疲れたのか、チケットを奪いにこなくなった。

 そんなクロウにブラッドはある提案をした。

 

 

 

「汚い金で馬車を売るつもりはない。…………だが、正当な金なら馬車を売ってやっても構わない」

 

 

 

 ブラッドはチケットをしまうと、

 

 

 

「ついてこい」

 

 

 

 と言うと歩き出した。

 

 

 

 クロウは悔しかったが、ここで逃げ出すこともできず。ついて行くことにした。

 

 

 

 

 

 

 



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 第78話  【BLACK EDGE 其の78 正当な金】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第78話

 【BLACK EDGE 其の78 正当な金】

 

 

 

 

 ブラッドはクロウを連れて村に戻った。

 

 

 

 そしてフェアの待つ馬車のところに着くと、クロウの方を向いた。

 

 

 

「まだ荷物の整理が終わってない。それを手伝ってくれ」

 

 

 

 クロウにそう言った。それに対してクロウは怒る。

 

 

 

「なぜ、私がそんなことをしなければならないんだ!!」

 

 

 

「…………とにかく手伝え」

 

 

 

 ブラッドはクロウの意見も聞かずに、クロウに荷物を投げる。

 

 

 

 クロウは仕方がなくブラッドの荷物整理を手伝うことにした。

 

 

 

 船に乗せることができるのは木箱に入る程度の荷物だ。あまり多くは持っていけない。

 そのためほとんどの物はここに残して行くことになる。

 

 

 

 残っていたフェアはここで売り払うものと、船で向こう岸に持って行くものを分けていた。

 ブラッドとクロウはその分けられたものを馬車から下ろしたり、船に乗せる箱に積んだりしていた。

 

 

 

 そしてある程度分けると、

 

 

 

「フェアはここで待っててくれ。…………クロウ、お前は手伝え」

 

 

 

 ブラッドはクロウを連れていらなくなったものを売り払う。そしてなんだかんだで荷物整理が終わった。

 

 

 

 荷物整理を終えて、馬車の元に戻る。

 

 

 

「二人とも〜、お疲れ様〜」

 

 

 

 フェアが待っていた。

 

 

 

 クロウはヘトヘトであり、ブラッドのことを睨む。

 

 

 

「なぜ、私にこんなことをさせるんだよ」

 

 

 

 それに対してブラッドは答えた。

 

 

 

「それは正当な金のためだよ」

 

 

 

 そう言うとブラッドはクロウに荷物を売った時に手に入れた金を渡した。

 

 

 

 それを受け取ったクロウは驚く。

 

 

 

 金額はまんまの金だ。それに中にはかなりの金が入っている。

 

 

 

「そいつはやるよ」

 

 

 

 ブラッドの言葉を聞いてクロウは、

 

 

 

「な!?」

 

 

 

 と驚いた。

 

 

 

「それは今回手伝ってくれたお礼だ。そして馬車代のつりだ」

 

 

 

 明らかに金額がおかしい。

 

 

 

「おい、こんなに…………」

 

 

 

 クロウはこれだけの金を手に入れたことはなかった。だからこそ、

 

 

 

「良いんだよ。受け取っておけ。…………それにそれだけの仕事をしたってことだ」

 

 

 

 荷物の移動だけじゃない。フェアとも遊んでくれていたし、荷物の手入れもしてくれていた。

 ブラッドはクロウはそれだけの仕事をしたと考えた。だからこそ、それだけの金額を渡したのだ。

 

 

 

「もう盗みはするんじゃねーぞ」

 

 

 

 クロウが盗んでいた財布もブラッドと共に一緒に返しに行った。村の人たちは心優しく許してくれた。

 

 

 

「ああ、分かったよ」

 

 

 

 クロウは馬車に乗ると、王都に向かって消えて行った。

 

 

 

 

 

 

 



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 第79話  【BLACK EDGE 其の79 思い出】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第79話

 【BLACK EDGE 其の79 思い出】

 

 

 

 クロウに馬車を渡したブラッド達は、雪山のある大地に向けて川を越えるため船に乗り込んだ。

 

 

 

 船は木製であるが、かなり大きく五十人は乗っている。そんな船で向こう岸の大陸を目指す。

 

 

 

 そんな船にブラッドとフェアは乗って、向こう岸を目指していた。

 

 

 

 船が発進して、フェアはブラッドと甲板から港を見ていた。

 

 

 

「どんどん小さくなる!!」

 

 

 

 船が岸から離れると港が小さくなって行く。

 

 

 

 フェアは離れて行く村を見ながら、

 

 

 

「向こうまでどれくらいかかるの?」

 

 

 

 と隣にいるブラッドに聞いた。

 

 

 

「そうだな。半日くらいかな」

 

 

 

 出発は昼だ。だから向こう岸に着く頃には陽は落ちているだろう。

 

 

 

「結構かかるんだね!」

 

 

 

「まぁ、この川は世界一の大きさとも言われてるからな」

 

 

 

 この川の大きさは本当にでかい。岸から岸まで渡るのだってかなりの時間がかかる。

 

 

 

「もうすぐだね…………」

 

 

 

「ああ、そうだな」

 

 

 

 

 フリジア村でアリエルから雪山の館に行くように指示されて、王都ガルデニアで元ブラッドの仕事仲間であるヒューグと再開。そしてグリモワールからの追っ手を撃退した。

 プロタゴニストという森ではリナリアと出会い、グリモワールからの追っ手であったシャドーの助けもあり、ブルーバードという組織から森を守った。

 そしてナンフェア村では馬車を買いたいという少女クロウに馬車を譲り、港から出発して川を渡った。

 

 

 

 ブラッドはフェアの頭に手を置くと強く撫でる。

 

 

 

「長い旅だった。だが、まだ終わりじゃない。…………ここから先が本番だ。そうだろ?」

 

 

 

 フェアはブラッドの顔を見る。身長差から見上げる形になっている。

 

 

 

「うん、あともう少しだから待っててね……」

 

 

 

 フェアは白龍の適応者として共に組織に捕らえられた子供達を追っている。子供達を解放することがこの旅の目的だ。

 

 

 

「絶対に助けるから……」

 

 

 

 アリエルからは雪山にある館の主に、この紙を渡せと渡された。

 その紙はブラッドとフェアから見たら白紙である。だが、館の主には見せるだけでわかると言っていた。

 

 

 

 アリエルはそこで子供達の居場所がわかると教えてくれた。本当かどうかはわからない。だが、今はそれを頼りにするしかない。

 

 

 

 船が岸から離れてしばらく経ち、そろそろ船内に戻ろうとした時のことである。

 

 

 

 船内からある女性が出てきた。白と水色の中間の髪色をしており、おっとりとした顔立ちの淑やかな女性。

 

 

 

「……ん、あら、マルクじゃない」

 

 

 

「……クロエさん?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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 第80話  【BLACK EDGE 其の80 川を渡る】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第80話

 【BLACK EDGE 其の80 川を渡る】

 

 

 

 

 船が出港してしばらく経ち、そろそろ船内に戻ろうとした時。

 

 

 

「…………ブラッド?」

 

 

 

 船内から水色と白の中間の髪色をした女性が出てきた。その女性はブラッドを見ると驚く。

 そしてまたブラッドも驚いた。

 

 

 

「クロエさん?」

 

 

 

 

 クロエ。彼女はブラッドの師匠であるメテオラの部下の騎士である。

 ブラッドはメテオラの元で修行をしている時代に、何度もお世話になっており、稽古をつけてもらったこともある。

 

 

 

「知り合いなんですか?」

 

 

 

 フェアはブラッドに聞くとブラッドはフェアにクロエについて説明する。

 

 

 

 フェアはクロエには出会ったことがなかったみたいだが、メテオラには施設の脱出の時などで世話になっていた。

 

 

 

「なんであなたがここに?」

 

 

 

 ブラッドはクロエに聞いてみる。

 

 

 

 クロエは騎士だ。しかし、今は鎧を着ていない。腰には剣を下げているが、ドレスのようなスタート姿の私服である。

 

 

 

 しかし、メテオラの騎士団は秘密組織と対峙するのが基本的であり、表立った騎士の仕事は行わない。

 そのため侵入任務などもあるため、鎧を着ていなくても任務という可能性はある。

 

 

 

 するとクロエは人差し指を立てた。それをブラッドとフェアはじっと見つめる。

 そしてクロエはゆっくりと口を開く。

 

 

 

 任務ならば言えないという場合もある。無理に首を突っ込む必要はない。

 真面目の雰囲気の中、

 

 

 

「オフです」

 

 

 

 ちょっと緊張して聞いてしまったのが馬鹿馬鹿しかった。

 

 

 

「オフでしたか……」

 

 

 

 ブラッドは苦笑いをする。

 

 

 

 まぁ、実際にこの川は名所としても有名だ。これだけ広い川はなかなかない。

 それにこの川は美しく、人魚がいるという噂まであるほどだ。

 

 

 

「あなた達は、なんでここまで?」

 

 

 

 今度はクロエが質問してきた。

 

 

 

「はい。俺たちは…………」

 

 

 

 ブラッドは今までの出来事をクロエに説明した。メテオラといた時までの情報は彼女にも入っていたらしいが、アリエルからの助言や、王都やプロタゴニストでの出来事は知らなかったようだ。

 

 

 

「そう、そういうことがあったのね……」

 

 

 

 クロエはそう言ったあと少し考える。そして

 

 

 

「少し気になることがあるわ。…………そのプロタゴニストの森で出会った女の子とブルーバードという組織について……」

 

 

 

 クロエはそう言うと、

 

 

 

「ここじゃあれね。少し場所を移動しましょう」

 

 

 

 そう言って二人を連れて、船内へと入っていった。

 

 

 

 船内にはいくつかの施設があり、そこでくつろぐことができる。そのうちの人の少ない休憩スペースで座る。

 

 

 

「…………あなた達が出会った龍の適応者。もしかしたら私達が奪還できなかった子かもしれない」

 

 

 

 

 

 



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 第81話  【BLACK EDGE 其の81 組織の思惑】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第81話

 【BLACK EDGE 其の81 組織の思惑】

 

 

 

 

 雪山の大地に向けて川を渡るため船に乗ったブラッドとフェア。そんな二人はメテオラの部下であるクロエと出会った。

 

 

 

 休暇中だったクロエであったが、ブラッド達の話を聞いたあと、話したいことがあると言うと人の少ない休憩所へと向かったのであった。

 

 

 

 そこは船内であるが、ちょっと薄暗いためあまり人が通らない休憩所。そこにやってきた三人は、椅子に座ると早速話を始めた。

 

 

 

「クロエ、その奪還できなかった龍の適応者ってなんのことですか?」

 

 

 

 ブラッドが聞くとクロエが説明を始めた。

 

 

 

「先日、メテオラ隊長の部隊はグリモワールが龍の適応者を発見したという情報を得て、その人物を回収に向かっていた」

 

 

 

 メテオラはグリモワールなどの秘密組織に対抗する騎士団である。グリモワールの目的は分からないが、龍の適応者を各地で攫っている。

 

 

 

「しかし、グリモワールの部隊もほぼ同時期にその現場に現れて、戦闘になったんだ。だが、どうにかそこをメテオラ隊長は切り抜けた。私はそこで脱落したからここからは聞いた話になる」

 

 

 

 クロエがやられた。それだけ大きな戦いだったということか。

 

 

 

「いち早くその龍の適応者を保護したメテオラ隊長だったが、私達を倒したグリモワールが合流。…………適応者を回収されてしまった。……私がもっと止められていれば!!」

 

 

 

 クロエはそう悔しそうに言う。

 

 

 

 だが、まだブラッドには分からないことがある。

 

 

 

「その適応者と俺たちがプロタゴニストの森で出会った少女と何か関係が?」

 

 

 

「その適応者は緑髪の少女だった。そして少女を連れ去ったグリモワールもまた、その後にその少女を別の組織に攫われている」

 

 

 

「それがブルーバードですか」

 

 

 

「そういうことだ……」

 

 

 

 少し話がややこしくなりそうだが、メテオラ隊長の部隊とグリモワール、そしてブルーバードが少女を狙い抗争。少女を奪い取ったのはブルーバードというわけだ。

 

 

 

 そしてその少女レイラは、ブルーバードのクレインと共にプロタゴニストの森で何かをしていた。

 

 

 

 ブラッドはリナリアからプロタゴニストの森でブルーバードが何をしていたのかを聞いた。

 それは、

 

 

 

「時空間ゲート……」

 

 

 

 それを聞いたクロエは驚く。

 

 

 

「何か知っているのか?」

 

 

 

「まぁ、確信ではないです。でも、私は友人から聞いた話なのですが、ブルーバードは龍の力とプロタゴニストの森を使って、別次元へ干渉する力を得ようとしていたと…………」

 

 

 

「なんだそれは……」

 

 

 

 

 

 



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 第82話  【BLACK EDGE 其の82 時空間ゲート】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第82話

 【BLACK EDGE 其の82 時空間ゲート】

 

 

 

 

 プロタゴニストの森を出発する前に、ブラッドはリナリアと二人になると、今回の騒動について聞いた。

 

 

 

 二人になったリナリアはブラッドの姿に変身する。しかし、そんなことは関係なしに、ブラッドは聞いた。

 

 

 

「それでブルーバードの目的はなんだったんだ? 今回は追い払えた。しばらくは奴らは来ないだろうが……。原因を無くせたわけじゃない。また来る可能性もある」

 

 

 

 それを聞いたリナリアはブラッドの顔を見た。そして本気で心配してくれているブラッドに感謝すると、

 

 

 

「…………これはこの森の秘密にも関わる」

 

 

 

 プロタゴニストの森は不思議な森だ。植物が鏡のような性質を持っている。しかし、正確には鏡ではない。鏡以上の性質を持っているのだ。

 

 

 

 光だけでは無く、どんなものですら反射する。それはこの世の物質じゃなかったとしても、その効果は例外じゃない。

 

 

 

「プロタゴニストの森には特殊な植物がある。それが…………」

 

 

 

 そう言うとリナリアは花畑にある一本の木を見た。

 

 

 

「あれがか?」

 

 

 

「……そう、あれはこの世に二つと存在しない不思議な鏡。あれに映されたものはこの世への存在が確定する」

 

 

 

「ん? どういうことだ?」

 

 

 

 ブラッドにはリナリアの言っていることが理解できなかった。この世への存在が確定する。何を言っているのだろうか。

 

 

 

「この森の他の植物はこの世に無いものは映せない」

 

 

 

 それは当然のことだ。あらゆるものを反射するとしても、存在しないものを反射することはできない。

 

 

 

 それは存在しないからだ。存在しないものを反射して映すことなんてできないのだ。だが、それを可能にするのがあの鏡だと言う。

 

 

 

「つまりはあれはこの世に存在しないものを映せて、実体化させられるっていうのか?」

 

 

 

「そういうこと…………」

 

 

 

「俄には信じられないが……」

 

 

 

 するとリナリアは姿をうねうねと変形させる。しかし、大きく体が変化するわけではない。

 

 

 

 今はブラッドの身体が気持ち悪いくらい波打ってる状態だ。人の姿でそんな動きをしないでほしい。

 

 

 

「…………私もあの鏡で映された存在」

 

 

 

 それを聞いたブラッドは驚く。だが、それと同時になぜか納得もできる。

 

 

 

 このリナリアの能力は不思議な力だ。龍と力でも魔術でもない。そんな力を目前にしたのなら、そういうことを言われても理解するしかない。

 

 

 

「だが、なぜそれをブルーバードが狙うことになる?」

 

 

 

「彼らの目的は空間に穴をあけること。そのためにあの鏡を使おうとしている」

 

 

 

 

 

 



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 第83話  【BLACK EDGE 其の83 空間への干渉】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第83話

 【BLACK EDGE 其の83 空間への干渉】

 

 

 

 

「ブルーバードが空間に穴を開けようとしている?」

 

 

 

 それを聞いたブラッドは首をかしげる。

 

 

 

「世界にはあと他に二つの世界が存在している……」

 

 

 

 リナリアは説明を始めた。

 

 

 

 仮に世界をこの世界をA、残り二つの世界をBとCと名づける。それぞれの世界には特有の文明が進んでいて、その世界には世界のルールが存在する。

 

 

 

 でも、もしもその世界のルールから外れた存在が、その世界に現れたのなら……。それは別の力を持った特殊な存在となる。

 

 

 

 でも、ブルーバードの目的は、その存在になることではない。

 

 

 

 ブルーバードの目的は黒を出現させること。

 

 

 

 そこまで説明を聞いていたブラッドは自分の右手を見る。

 

 

 

 ブラッドには黒龍という存在が住み着いている。それは村を滅ぼすほどの力を持っているが、使いこなせば仲間を守れる武器になる。

 

 

 

 ブラッドの様子を見ていたリナリアは、ブラッドの右手を掴んだ。自分に自分の手を握られると、なんだか気持ち悪い。

 

 

 

「黒龍もまた黒の存在。だからこそ惹かれ合う。…………ブラッドもいつか出会うかもしれない。だから聞いてほしい。黒の恐ろしさを……」

 

 

 

 リナリアの説明ではABCのそれぞれの世界には特有の色が存在しているという。どの世界がどの色に対応しているかは分からないが、赤、青、緑で世界を分けることができる。

 

 

 

 そしてもしも、その色が混ざり合った時に黒が発生する。

 

 

 

 黒は全ての飲み込む。どの色よりも強い、この世界にあるものでは黒には飲み込まれるだけであり、打ち勝つことは不可能である。それが黒という存在だ。

 

 

 

 その黒をブルーバードを出現させるつもりなのだ。その黒を出現させるためには、二つの世界から同じ存在を引き寄せる必要がある。

 

 

 

 ABCの全ての世界で同じ存在が一箇所にそろえば、そこに黒が出現する。それがブルーバードの狙いなのだ。

 

 

 

 ブルーバードがなぜ、黒を狙っているのかはわからない。だが、空間に開ける方法がプロタゴニストの花畑に一本木なのだ。

 

 

 

 存在しないものを実体化させることができる。それを使い、空間に穴をあけようとしているのだ。

 

 

 

 空間に穴をあける方法はどういう手段なのか、リナリアにも分からない。だが、リナリアは奴らが黒を狙っているという話を聞いてしまった。

 

 

 

 そしてブルーバードが森の鏡を探していた。それから森を守ろうとブラッド達に助けを求めたのだ。

 

 

 

 



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 第84話  【BLACK EDGE 其の84 ブルーバードの目的】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第84話

 【BLACK EDGE 其の84 ブルーバードの目的】

 

 

 

「ブルーバードの目的は黒を呼び出すことです。そのためにプロタゴニストの鏡と龍の力を使おうとしてる。そういうことです」

 

 

 

 ブラッドの説明を聞いたクロエは考える。

 

 

 

「そうね。……うーむ」

 

 

 

 まぁ、信じられない話だが、信じないわけにもいかない。ブラッドが本当に龍の適応者に出会い、そこにブルーバードの関係者がいたのならば、そのことが本当なのかもしれない。

 

 

 

 話を聞き終わったクロエは立ち上がる。

 

 

 

「話は理解したわ。戻ったらメテオラ隊長に報告しておくわ」

 

 

 

 ブラッドとフェアはクロエがすぐに休暇をやめて帰るのかと思った。しかし、

 

 

 

「よし、ならそれまで残りの休暇は全力で休みましょー!!」

 

 

 

「え!?」

 

 

 

 二人は驚いて声を出す。そんな二人を見てクロエは言う。

 

 

 

「だってここ船の上だもの」

 

 

 

 それはその通りだ。

 

 

 

 

 

 それから三人で船が到着するまで話していることになった。船の上で寝てしまっても良いのだが、向こうについてからすぐに出発できるわけではない。

 向こうの岸にある村の宿で夜を越すつもりだ。そのため船で寝てしまうと寝れなくなってしまいそうだ。だから寝るわけにもいかなかった。

 

 

 

 船の甲板で久しぶりに再開したクロエとブラッドは懐かしい話をする。それを一緒にフェアも聞いていた。

 

 

 

「まぁ、まさか休暇中にマルクに会えるなんてね」

 

 

 

「俺も久しぶりでびっくりしました」

 

 

 

 ブラッドとクロエが前にあったのは、メテオラの元でブラッドが修行をしていた時代である。

 クロエはメテオラからブラッドの話を聞いていたが、実際に会うのは久しぶりだ。そして、

 

 

 

「フェア、あなたもと会えてよかったわ」

 

 

 

 クロエはそう言うとフェアの頭をなでなでした。

 

 

 

 フェアについてもメテオラから話を聞いていた。しかし、会ったことはなかった。

 

 

 

「クロエさんって、メテオラさんとは違った雰囲気ですよね」

 

 

 

 フェアはクロエを見てそう言った。

 

 

 

 メテオラはかなりキリッとしているが、クロエは少しおっとりとしたところがある。だが、焦って空回りすることの多いメテオラと違い、クロエは周りを見て判断するのが得意だったりする。

 

 

 

「もうすぐつきそうだな。そろそろ準備するぞ」

 

 

 

 ブラッドはそう言うと船内に戻っていく。船から荷物を下ろす必要があるのだ。

 

 

 

「私も手伝う」

 

 

 

 フェアもブラッドの後をついていった。クロエはそんな二人の後ろ姿を見て、

 

 

 

「また今度はゆっくり会いたいな……」

 

 

 

 

 

 



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 第85話  【BLACK EDGE 其の85 待機命令】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第85話

 【BLACK EDGE 其の85 待機命令】

 

 

 

 王都ガルデニア。そこにある食堂に二人の男女が集まっていた。

 

 

 

 身長が低く、黒髪に短髪の男性は注文したコーヒーが運ばれてくると、それにミルクを入れる。

 女性は黒髪で短髪。鼻にばんそうこうを貼っていて、男性に比べて活発的に見える。

 

 

 

 二人とも普段着を着ている。

 

 

 

 女性は運ばれてきたパフェを目を輝かせながら見ている。男性はそんな女性に喋りかける。

 

 

 

「なぁ、姉ちゃん。俺達はブラッドを追わなくて良いのかな」

 

 

 

 男性がそう言うとヒートは機嫌を悪そうにパフェの入ったコップをスプーンで二回ほど叩く。

 

 

 

「今は任務街とはいえ、私達は秘密結社の一員なのよ。コードネームで呼びなさい」

 

 

 

「………………」

 

 

 

 男性はため息を吐く。

 

 

 

「なぁ、ヒート。俺たちはなんで王都で待機なんだ?」

 

 

 

 ヒートはパフェの入っているコップをスプーンで叩いて音を鳴らす。

 

 

 

「そうね。ここで任務があるってことじゃないかしら」

 

 

 

 グリムとヒートはブラッドとの戦いに負けた後、そのまま王都に残るようにグリモワールの上司から連絡があった。

 

 

 

 この王都で他に任務があるということだろうか。しかし、あれからまだ連絡が来ていない。

 組織に見捨てられたわけじゃないかと、グリムは少し不安になっていた。

 

 

 

「しかし、まさか姉ちゃんが負けるなんてな……」

 

 

 

 ブラッドと戦ったのはグリムだ。しかし、武器が壊れてしまい撤退した。そして撤退の最中に敵にやられたヒートを発見したのだ。

 

 

 

 コードネームではなくまた姉ちゃんと呼ばれたヒートはグリムを睨む。だが、グリムがビビると、呆れた様子で訂正はしなかった。

 

 

 

「そうね。……予想以上の実力者だった」

 

 

 

 ヒートはそう言うと戦闘のことを思い出す。敵の武器の一つを破壊したが、接近戦に持ち込まれ、敵は予想外の行動をしてきた。

 敵はヒートの攻撃手段である左手を掴んだのだ。

 

 

 

 ヒートはあの時のことを思い出して、左手を見る。

 

 

 

 まさか手を握られるとは思ってなかった。……弟以外の異性に手を握られるなんて初めてだ。

 組織に入ってからは仕事三昧。この手で何人もの敵を葬ってきた。

 

 

 

 その手をあの男は掴んで離さなかったのだ。

 

 

 

「…………」

 

 

 

「おーい、姉ちゃん、姉ちゃーーん!!」

 

 

 

 ヒートはふと我に帰る。テーブルの向かい側ではグリムが呼んでいる。

 

 

 

「どうしたんだよ。姉ちゃん、顔赤くして?」

 

 

 

 私はテーブルを叩く。

 

 

 

「だから姉ちゃんと呼ぶな!! せめて姉貴にしろ!!」

 

 

 

「そこ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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 第86話  【BLACK EDGE 其の86 王都に集結】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第86話

 【BLACK EDGE 其の86 王都に集結】

 

 

 

 

 グリムとヒートの元に任務の知らせが届いた。任務の内容はシャドーと合流することだ。

 

 

 

 連絡があったことでホッとはしたが、ブラッドを追うのではなく、同じくブラッドに負けた同僚に合流しろという命令が来るとは……。

 

 

 

「まさか、敗者を集めて一気に消すつもりなんじゃ……」

 

 

 

 グリムは少しビビりながら言う。それを聞いていたヒートが少し揶揄う。

 

 

 

「そうかもね。弱者は用済み。それが組織ってものだしね……」

 

 

 

 グリムは唾を飲む。だが、そんな様子を見ていたヒートが続ける。

 

 

 

「でも、私達は諦めるないでしょ……あの人に再会するまでは……」

 

 

 

 それを聞いたグリムはほんの少し元気を取り戻した。

 

 

 

「……そうだな。あの人に再会するまでは、絶対に諦めない」

 

 

 

 グリムとヒートには会いたい人がいる。そのためにはまだ組織を頼るしかない。

 

 

 

 そして二人は王都にある噴水。そこでシャドーを待つ。ここが組織が提示した合流ポイントだ。

 

 

 

 しばらく待っていると、シャドーがやってきた。

 

 

 

「おう、お前ら久しぶりだな」

 

 

 

 金髪碧眼で長髪の男。今回は戦闘ではなく合流であるため普段着で会うことになっている。

 

 

 

 フードと仮面で街中を歩けば逆に目立ってしまうからだ。あれは正体を隠すためのものである。

 

 

 

「……お前、そんな顔だったのか」

 

 

 

 シャドーの顔を見たグリムは驚く。

 

 

 

 組織のメンバーは顔を隠して行動する。裏切り者がいる可能性もあり、なるべく正体を隠す必要があるからだ。

 

 

 

 だが、中には正体を知っている者たちもいる。隠すことが義務ではない。だが、晒すことも義務ではない。

 

 

 

 彼ら三人は組織の中では下っ端だ。それに彼らは交流があるからこそ、お互いの正体を知っている。

 

 

 

 グリムとヒートはシャドーに素顔を見せる機会があった。しかし、二人はシャドーの素顔を見るのは初めてだ。

 

 

 

「どうだ。なかなかかっこいいだろ?」

 

 

 

 シャドーは自慢するように顔を見せびらかす。だが、二人は興味ない顔をした。

 

 

 

「おい、なんだよその顔は、悲しくなるじゃねーか」

 

 

 

 三人が集結した。もしも組織の連中が任務を失敗した三人を始末するにはちょうどいいタイミングだろう。

 

 

 

 だが、それらしき存在はいない。

 

 

 

 始末なんてされないのか、それとも人気のところに移動してからなのか。

 

 

 

 その時、風水にいた老人の一人が近づいてきた。関係のない人だ。話を聞かれても困るため、遠ざかろうとした時、

 

 

 

「シャドー、ヒート、グリム・リーパー。待ちたまえ」

 

 

 

 話しかけてきた。

 

 

 

 

 

 

 



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 第87話  【BLACK EDGE 其の87 新たな任務】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第87話

 【BLACK EDGE 其の87 新たな任務】

 

 

 

 シャドーと合流したグリムとヒート。そんな三人の前に一人の老人が現れた。

 

 

 

「シャドー、ヒート、グリム・リーパー。待ちたまえ……」

 

 

 

 名前を呼ばれた三人は立ち止まる。コードネームを知っているということは、グリモワールの関係者ということだ。

 

 

 

「あなたは…………」

 

 

 

 ヒートが老人に聞く。すると、老人の帽子を深く被る。

 

 

 

 老人は白い髭を生やしたシルクハット姿である。

 

 

 

「そうですね。シルフィーユとでも名乗りましょうか」

 

 

 

 シルフィーユ。聞いたことがない名だ。だが、グリモワールの関係者なのは確かだろう。

 

 

 

「それで俺たちに何のようだ?」

 

 

 

 シャドーがシルフィーユを睨みながら聞く。

 

 

 

 プロタゴニストの森で馬車を失ったシャドーはそこから一日かけて近くの森まで歩いた。そして馬車を手に入れてブラッドを追いかけようとしたところで、集結命令があったのだ。

 

 

 

 すぐにでもブラッドを追いかけるつもりだったが、命令なのでしょうがなく戻ってきた。

 

 

 

 プロタゴニストの一件から、シャドーのブラッドに対する評価は少し変わり始めていた。

 最初はただのターゲットの護衛だった。しかし、森で戦ってからはライバルのような気持ちになっていた。

 

 

 

 またすぐにでもリベンジをしたい。そう思っていたのだが、その時に命令で王都まで戻らされたのだ。それによりシャドーは少し機嫌が悪かった。

 

 

 

 シルフィーユは胸ポケットから一枚の紙を取り出した。そしてそれをシャドーに渡す。

 

 

 

 

「アルム様からの直接の命令でございます」

 

 

 

 アルム様。それはこのグリモワールの頂点に立つ人物である。組織のボスというべき存在。

 

 

 

 今の組織は彼の命令に従って行動している。彼に気に入られることができれば、グリモワールも幹部になる可能性もある。

 

 

 

 そんな人物からの直接の指令。それを聞いた三人は驚いた。

 

 

 

「アルム様から!?」

 

 

 

「シャドー、そいつを見せなさい!!」

 

 

 

 ヒートがシャドーから指令の書かれた紙を取り上げようとする。しかし、シャドーはヒートに取られまいと逃げる。

 

 

 

「これは俺にきた指令だ。お前たちには渡さん!!」

 

 

 

「私たち三人の指令でしょ!! さっさと渡しなさいよ!!」

 

 

 

 ヒートのシャドーが紙の取り合いをしている。そんな中、グリムはシルフィーユに聞く。

 

 

 

「どういった内容なんですか?」

 

 

 

 まぁ、指令書があるということはこの老人は知らないのだろう。しかし、念のため聞いてみた。

 

 

 

「王都に潜伏している敵組織ブルーバードの幹部を仕留めろとの指令でございます」

 

 

 

 シルフィーユの言葉を聞いたヒートのシャドーは固まった。

 

 

 

「いや、あんた知ってるんかい!!」

 

 

 

 老人はホホホと笑った。

 

 

 

 

 



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 第88話  【BLACK EDGE 其の88 適応者の奪い合い】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第88話

 【BLACK EDGE 其の88 適応者の奪い合い】

 

 

 

 

 アルムからの命令を受けた三人。内容は王都に潜伏している敵組織ブルーバードの幹部を捕らえろというミッションだった。

 

 

 

 グリモワールとブルーバードは敵対関係にある組織だ。両組織とも裏で暗躍する組織であり、目的を持って動いている。

 

 

 

 力も均衡しているし、活動場所も近いということから、組織同士で争いが起きることも頻繁にある。

 

 

 

「ブルーバードか……そういえば、先日も揉めていたらしいな」

 

 

 

 グリムは歩きながら言う。今はブルーバードの幹部を探す前に、支度をするために拠点に戻っているところだ。

 

 

 

「そうなのか。俺は聞いてないな」

 

 

 

 グリムの言葉を聞いたシャドーが反応した。それに対してヒートが返す。

 

 

 

「あなたはブラッドを追っていたしね。……ついこの前のことよ」

 

 

 

 そう言うとヒートが説明を始めた。

 

 

 

 それはグリムとヒートがブラッドと戦闘になる前日のことらしい。

 

 

 

 この王都ガルデニアよりも東にある地で龍の適応者をめぐる戦闘が起きたらしい。

 グリモワールは幹部の一人が指揮を取り、対抗していたのはメテオラが率いる騎士団だった。

 

 

 

 龍の適応者をめぐる戦闘は激しさを増していき、多くの犠牲者を出しながらもグリモワールは適応者を確保することに成功した。

 

 

 

 適応者の名はレイラ。緑髪の少女であった。

 

 

 

 だが、適応者を確保したグリモワールであったが、帰還中にブルーバードの奇襲にあってしまう。

 

 

 

 それによりグリモワールは龍の適応者のレイラを奪われてしまった。

 

 

 

 その話を聞いていたシャドーはビクッとした。それを見たグリムが聞く。

 

 

 

「どうした? シャドー」

 

 

 

「いや、そのな…………」

 

 

 

 シャドーは横目で答えた。

 

 

 

「俺、その適応者にあったかもしれない」

 

 

 

 それを聞いたグリムとヒートは驚く。

 

 

 

「な、本当か!?」

 

 

 

「ああ、ブルーバードと一緒にいたしな……。おそらくそうだ」

 

 

 

 シャドーがその龍の適応者と思しき人物と出会ったのは、プロタゴニストの森である。

 ブルーバードのクレインと共に森に現れて暴れていた。

 

 

 

 その時は気づかなかったが、あの力は龍の力だからこそ出せるパワーだ。

 

 

 

 しかし、レイラはクレインと共に消えてしまった。今はどこにいるかわからない。

 

 

 

「そっか。だけど、龍の適応者を狙ってる。つまりはいつかは対峙するってことよね」

 

 

 

 ヒートはそう言う。

 

 

 

 そう、敵対組織である以上、どこかでは戦うことになるのだ。

 またクレインやレイラとは戦うことになるだろう。

 

 

 

「そうだな。だが、今は今回の任務に集中だ」

 

 

 

 ブルーバードの幹部。それがクレインである可能性もあるが、それ以外の可能性もある。今回は今回の仕事をやるだけだ。

 

 

 

 

 

 



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 第89話  【BLACK EDGE 其の89 技術力】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第89話

 【BLACK EDGE 其の89 技術力】

 

 

 

 

 シャドー、ヒート、グリムの三人はアルム様からの任務を行うために準備をしに、拠点に戻った。

 

 

 

 王都ガルデニアにあるグリモワールの拠点は、地下道にある。そこに武器などを保管している。

 

 

 

 それに王都にある拠点は武器開発の施設の一つでもある。

 

 

 

 この国には存在しない銃などの技術を使い、それで武器を作っている。

 

 

 

「ブルーバードの幹部か……。しかし、王都になんで来るんだろうな」

 

 

 

 シャドーは手を頭の後ろにしながらそんなことを言った。

 

 

 

 今は地下道を歩いて拠点に向かっているところだ。

 

 

 

「そんなの決まってるでしょ、ここを潰すためよ」

 

 

 

 ヒートがシャドーを馬鹿にするように言う。グリムは腕を組む。

 

 

 

「まぁ、その可能性が一番高いな。敵対組織の武器工場。その一つを破壊できれば、かなりの戦力ダウンになる」

 

 

 

 ブルーバードはグリモワールとの戦闘で武器に苦戦することが多い。こちらにある技術をブルーバードはなかなか再現できないというのもあるだろう。

 

 

 

「そりゃーそうか……」

 

 

 

 シャドーはそう言うと立ち止まった。そして三人の前に鉄の扉が現れた。扉の横にあるボタンを順番に押すと、扉が開き始めた。

 三人は扉の中に入り進んでいく。

 

 

 

 武器がない状態でグリモワールとブルーバードの力関係は均衡している。それはあちらの魔術の方がレベルが高いというのがある。

 

 

 

 魔術は魔法のように思うこともあるかもしれないが、そんなに便利なものではない。

 

 

 

 術師になるためには特殊な儀式を行う必要がある。その儀式を乗り越えることができたものは、魔術を使うことができる。

 

 

 

 だが、魔術は便利なものではない。その術ごとに制約が存在するのだ。

 例えばシャドーの魔術は影を移動することができる。しかし、光に対する免疫がなくなってしまう。そして能力使用時に光に当たると激痛に見舞われるのだ。

 

 

 

 だが、一度術を手に入れれば、変更することはできない。それに一人につき一つしか能力を得ることができないため、術師になることはリスクがあるのだ。

 

 

 

 中には術師にはなれたが、その力に飲み込まれて精神を破壊されてしまったものも存在する。それだけ危険なものなのだ。

 

 

 

 だが、どういうことか、グリモワールに比べてブルーバードは術師のレベルが高い。

 副作用も少なければ、能力の力も数倍あるのだ。

 

 

 

 どうしてそのようなことができているのか不明だ。だが、その技術はグリモワールも欲しいところではある。

 

 

 

「やぁ、おかえり、君たち」

 

 

 

 シャドー達が施設に入ると、白衣を着た少女が出迎えてきた。

 

 

 

 

 

 

 

 



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 第90話  【BLACK EDGE 其の90 白衣の少女】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第90話

 【BLACK EDGE 其の90 白衣の少女】

 

 

 

「やぁ、久しぶりだね、君たち!」

 

 

 

 シャドー達が施設に入ると、奥から不思議な機会に乗った白衣の少女が現れた。

 

 

 

 二つのタイヤがついており、Tの字のハンドルがその上にある。白衣の少女が身体を前に倒したり、後ろに倒したりすることで前や後ろに移動ができている。

 

 

 

「相変わらず変なもんに乗ってんなァ」

 

 

 

 シャドーが少女が乗っているものを見て、呆れた様子で言う。それを言われた少女は頬を膨らました。

 

 

 

「この中村3号を馬鹿にするとは、良い度胸をしているな!!」

 

 

 

 少女はそう言って乗り物に乗ったままシャドーに近づき、シャドーの凄い近くで睨みつける。

 シャドーも姿勢を低くして同じ目線で睨み返した。

 

 

 

「なんだやるのかァ?」

 

 

 

「ああ、やってやるともこの伊藤5号がな!」

 

 

 

「いや、さっきと名前変わってるんだが……」

 

 

 

 そうやって二人が睨み合っている中、ヒートが少女に訪ねた。

 

 

 

「博士はどこなの?」

 

 

 

 施設の中は真っ白い壁に囲まれた広い空間だ。奥には通路があり、右に行けば生活スペース、左に行けば開発スペースがある。

 

 

 

「あー、父さんならまだ帰ってきてないよ」

 

 

 

 少女はシャドーに乗り物を渡して、白衣を伸ばしてシワをなくす。

 

 

 

 黒髪に黒目の少女。身長はシャドーの半分くらいであり、白衣の裾は地面に擦れるギリギルのところだ。

 

 

 

「まだ帰ってないの……。一体何をしてるのよ」

 

 

 

「まぁ、あの人研究好きだから、よくあることだよ」

 

 

 

 ヒートが前に来た時からその人物は帰ってきていない。組織では重要人物なのだが、ちょくちょく行方がわからなくなる。

 

 

 

「おーい、アルファ!! これ意外と楽しいな!」

 

 

 

 シャドーはさっきまで少女が乗っていた乗り物に乗って遊んでいる。

 それを見て楽しいと言われた少女は嬉しそうに返す。

 

 

 

「そうだろ、そうだろ。その宮崎2号はなかなか凄いだろ!!」

 

 

 

「いや、また名前変わってる!!」

 

 

 

 彼女の名前はアルファ。この施設の管理をしている。組織で武器を開発している赤崎博士の子供の一人であり、博士がいない間は彼女が武器を開発してグリモワールに渡している。

 

 

 

 組織の重要人である彼女は組織では幹部扱いだ。黒フードの三人と違い、アルファは白のフードを任務では着る。

 シャドー達とは任務の関係でよく顔を合わせることも多く、上司と部下という関係のはずなのだが、今ではこうしてかなり仲が良い。

 

 

 

「それで君たち、今回はなんのようかな?」

 

 

 

 



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 第91話  【BLACK EDGE 其の91 新武器】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第91話

 【BLACK EDGE 其の91 新武器】

 

 

 

 

 

「それで今回はなんのようなのかな?」

 

 

 

 アルファは本題に入る。この三人が来たということは何か用事があってきたということだ。

 

 

 

 するとグリムは懐から短剣を取り出す。そしてそれをアルファに渡した。

 

 

 

 アルファはそれを受け取ると、剣を抜いてみる。すると剣は途中で折れていた。

 

 

 

「折れてるじゃないか」

 

 

 

「暗殺用ということで短剣だったが、やはり強度が足りん」

 

 

 

 グリムは腕を組んで今回の戦闘で何があったのか説明した。それを聞いたアルファは、

 

 

 

「分かった。じゃあ、新しい武器を用意するよ」

 

 

 

 そう言うと折れた短剣をしまった。

 

 

 

「でも、まだ新しい物を用意するまでは時間がかかる。だからこいつを使ってくれ」

 

 

 

 アルファはそう言うと奥の部屋から短剣を持ってきた。長さはさっきのものと殆ど変わらない。

 だが、アルファはその剣を抜いてグリムに見せた。

 

 

 

「まだ試作品なんだけど、君の死神の能力に合わせて作ったんだ」

 

 

 

 アルファが持つ剣は刃がない。鞘から抜くとその先が何もついていなかった。

 

 

 

 アルファはさっきの折れた剣を取り出すと、それを空中に投げた。そしてそれを刃の部分がない剣を振って切るような動きをする。

 

 

 

 だが、それは何もついていないのだ。普通だったら切れるはずがない。しかし、折れた剣はさらに半分に切れた。

 

 

 

「どういうことだ?」

 

 

 

 グリムが聞くとアルファは答える。

 

 

 

「この剣。一見ここから先がついていないように見えるだろ?」

 

 

 

 アルファはそう言うと剣の何もついていない部分を指差す。

 

 

 

「何かあるのか?」

 

 

 

「いや、実際にないよ」

 

 

 

「………………」

 

 

 

「でもね。これは空気を発射してるんだ」

 

 

 

 アルファはグリムに剣の普段なら刃がある部分を見せる。そこには小さな穴が空いていた。

 

 

 

「ここから空気を発射する。空気は高密度に凝縮されて発射されており、空気の剣が出来上がってるんだ」

 

 

 

 アルファはその短剣をグリムに渡す。それを受け取ったグリムは死神に持たせてみる。

 

 

 

「まぁ、これなら強度の問題はないのか……」

 

 

 

 この剣なら通常の剣よりも切れ味がいいかもしれない。

 

 

 

「それに君の死神は姿を消すことができる。この剣と死神を組み合わせれば、見えない攻撃のリーチをさらに伸ばすことができる」

 

 

 

 確かにアルファの言う通りだ。だが、見えない攻撃と言っているが、一個だけ気になる点があった。

 

 

 

「この部分は見えてるよな」

 

 

 

 グリムはそう言い、短剣の手で持つ部分を見せる。

 

 

 

「そうだね」

 

 

 

 アルファは適当に返事した。

 

 

 

 死神の姿を消していても、装備は消えない。剣の本体だけ見えているという不思議な武器になるわけだ。

 

 

 

「まぁ、ありがたくもらっとくよ」

 

 

 

 

 

 

 

 



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 第92話  【BLACK EDGE 其の92 飴玉】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第92話

 【BLACK EDGE 其の92 飴玉】

 

 

 

 

 

 グリムに新しい武器を渡したアルファは残りの二人にも聞いてみる。

 

 

 

「君たちは新しい武器いらないの?」

 

 

 

 するとシャドーとヒートは、

 

 

 

「いらない」

 

 

 

 と答えた。ヒートが続ける。

 

 

 

「私の場合、能力的に武器は使えないしね」

 

 

 

 ヒートはそう言って左手を見る。

 

 

 

 ヒートの術は左手に熱をためる能力だ。運動をすればするほどその温度は増していき、強力になっていく。

 

 

 

 しかし、ヒートの左手はその能力の特性上、武器を持つことは難しい。それにヒートのメインとなる武器は素手での戦闘だ。

 

 

 

「まぁまぁ、せっかく作ったんだから見ていってよ」

 

 

 

 アルファはそう言うと奥から何かを持ってきた。

 

 

 

 それはカラフルな紙に包まれた丸い玉。アルファはそれをヒートに渡した。

 

 

 

「これは?」

 

 

 

「これもまだ試作段階なんだが、ヒート能力をカバーするものだ」

 

 

 

 ヒートは試しに一つ袋を開けてみる。すると中から出てきたのは、赤色の飴玉。

 

 

 

「君の能力は効果を発揮するまでに時間がかかる。だからそれをカバーできるようにした。試しに舐めてみてくれ」

 

 

 

 アルファはヒートに飴玉を舐めるように進める。ヒートは飴玉を口に入れてみる。舐めてしばらくするとヒートの左手に変化が起きた。

 

 

 

「これは……温度が上がってる?」

 

 

 

「そう、この飴玉で温度を急激を上げることができる」

 

 

 

 ヒートの能力は熱を左手にためる能力だ。しかし、その能力を発動するためには体温を上げる必要がある。

 そのためヒートは戦闘を行う前に激しい運動を行わなければならないのだ。

 後半になればなるほど強いヒートの能力だが、前半で温度が上がるまで何もできないのは厳しい。

 

 

 

 だからこの飴玉で一気に温度を上げられるようにした。

 

 

 

「これは使えるな」

 

 

 

 ヒートは嬉しそうに飴玉をポケットにしまう。だが、そんなヒートにアルファは忠告する。

 

 

 

「便利なアイテムだが、まだ分からないことが多い。使用は一つずつにして欲しい。それ以上舐めるとこちらからは補償できない」

 

 

 

 つまりは一つずつしか舐められないということだ。だが、それでも十分だ。今の左手の温度は百度ある。一度にこれだけ上がれば十分に戦える。

 

 

 

「分かった。使わせてもらう」

 

 

 

 グリムとヒートは新しい武器を貰った。そんな様子を見ていたシャドーはさっきはいらないと言ったのだが、少しだけ期待してしまう。

 

 

 

「なぁ、アルファ、俺には武器は……?」

 

 

 

 するとアルファは笑顔で答えた。

 

 

 

「ないよ。シャドーのは間に合わなかった」

 

 

 

 シャドーの動きは固まった。

 

 

 

 



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 第93話  【BLACK EDGE 其の93 任務を手伝う】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第93話

 【BLACK EDGE 其の93 任務を手伝う】

 

 

 

 

 アルファから新しいアイテムを貰ったグリムとヒート。シャドーには用意が間に合わなかった。

 

 

 

 そして今回はその装備で任務を行うことにした。

 

 

 

「それで今回の任務はなんなんだい?」

 

 

 

 アルファが三人に聞く。それにグリムが答える。

 

 

 

「ああ、王都に潜伏しているブルーバードの幹部を捕らえるのが今回の任務だ」

 

 

 

 それを聞いたアルファは三人に聞く。

 

 

 

「その幹部の居場所はわかってるの?」

 

 

 

 三人は下を向いてしょげた。そして同時に答えた。

 

 

 

「分からない……」

 

 

 

「そうなんだね…………」

 

 

 

 アルファは苦笑いした後、あることを提案した。

 

 

 

「それじゃあ、僕がその潜伏中のターゲットを見つけてあげようか!」

 

 

 

「そんなのことができるの?」

 

 

 

 ヒートが尋ねると、アルファは頷いた。そして奥からあるアイテムを持ってきた。

 

 

 

「ああ、可能だとも!! その代わり僕の願いを聞いてくれるかい?」

 

 

 

 こうしてアルファが今回の任務を手伝ってくれることになった。

 

 

 

 

 潜伏中の敵を見つけるために外に出ることになったのだが、そこで問題が起きた。

 

 

 

 ブルーバードの狙いはこの施設の可能性がある。そのため一人はここに残らないといけなかった。

 

 

 

「それで誰が残るかだ」

 

 

 

 グリムは腕を組む。

 

 

 

 アルファはここの兵器開発の重要人物である。彼女を守ることはこの施設を守ることと同じ価値がある。だが、外にいる間に敵がここに攻めてきて、入れ違いになる可能性もあった。

 

 

 

 そのためアルファの護衛を二人。残りの一人がここで施設を守るという形になった。

 

 

 

「私は嫌よ。暇だもの」

 

 

 

「俺もだ」

 

 

 

 ヒートのシャドーは残るのを否定する。そして一斉にグリムの方を見た。グリムはため息を吐くと、

 

 

 

「分かったよ。俺がやるよ、俺が……」

 

 

 

 グリムが施設を守る役をやることになった。二人は適当に感謝する。

 

 

 

「サンキュー、我が弟よ!」

 

 

 

「流石は頼りになるなぁ、弟君は……」

 

 

 

 グリムは眉間に皺を寄せる。

 

 

 

「お前らなぁ」

 

 

 

 だが、ここで怒っても体力を使うだけなのでグリムは諦めた。そしてアルファ、ヒート、シャドーの三人は施設を出ることになる。

 

 

 

 そんな三人をグリムは見送る。

 

 

 

「お前らアルファをしっかりと守れよ」

 

 

 

 グリムは二人にアルファをしっかりと守るように言う。二人は当然だと言うと、扉を開けた。

 そして扉が閉まる直前。

 

 

 

「あと姉ちゃんもあんまり無茶するなよ。この前負けたばっかりだし!!」

 

 

 

「姉ちゃんって呼ぶな!! あと負けたことも言うな!!」

 

 

 

 

 

 



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 第94話  【BLACK EDGE 其の94 捜索】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第94話

 【BLACK EDGE 其の94 捜索】

 

 

 

 

 施設を出たヒート、シャドー、アルファの三人は敵を探すために王都を歩いていた。黒いフードを被り、なるべく人のいないところを歩く。

 

 

 

「おーー!! ここが外の世界か!!」

 

 

 

 アルファは嬉しそうに周りを見渡す。

 

 

 

 アルファは敵の捜索に協力する代わりに提示した条件は、外に出るというものだった。

 武器開発のため施設内に篭りっぱなしのアルファは外に出たことがなかった。そのため外の世界というものがどのようなものなのか、見るのが初めてだった。

 

 

 

 アルファは外の世界を見て興奮していた。そんなアルファはシャドーは優しい目で見守る。

 

 

 

「あんたキモいよ」

 

 

 

「はぁ!? 俺は優しい目で見守ってあげてるんだよ!!」

 

 

 

「どこがよ! 不審な目じゃない!!」

 

 

 

「俺はアルファを妹のように思ってるんだ!! そんな目で見るか!!」

 

 

 

「それなら私が妹のようにアルファを思ってる!! あんたはどっか行ってなさい!!」

 

 

 

「これは任務だろ! どっかに行けるか!!」

 

 

 

 そんなやりとりをしながらも王都を進む。ヒートはアルファに聞いてみた。

 

 

 

「それでどうやって潜伏している敵を探すの?」

 

 

 

 それを聞くとアルファはポケットの中から二本の棒を取り出した。

 

 

 

「この佐藤7号を使うのさ!!」

 

 

 

 アルファが取り出した棒は鉄製で先っちょが直角に曲がっている。大きさは三十センチ程度だ。

 

 

 

 それを見たシャドーは小さな声で

 

 

 

「また名前が変わるんだろうなぁ〜」

 

 

 

 と言ったがアルファはそれを無視して説明を始める。

 

 

 

「この中村は敵の居場所を発見してくれるのさ!!」

 

 

 

 まぁ、その説明は適当で本当にできるのかは怪しい。

 シャドーはやはり名前が変わったと思いながら聞いていた。

 

 

 

「早速使ってみよう!!」

 

 

 

 アルファはそう言うと棒を縦にして軽く握った。すると棒は左右に揺れて先っぽの曲がっているところが、アルファ達から南側を示した。

 

 

 

「こっちだね!」

 

 

 

 アルファはそう言うと棒の示した方へと進んでいった。

 

 

 

 そんな後ろをヒートとシャドーがついていく。しばらく進んだところでアルファは再び棒を使って西へ南へとどんどん進んでいった。

 

 

 

 そういう感じで王都を進んで、しばらく経ったところである建物にたどり着いた。そこは王都にある廃墟の建物だ。

 

 

 

 前に住んでいた持ち主が問題を起こしたことにより、今では使われていない建物。

 

 

 

「ここにいるはずだよ」

 

 

 

 アルファはそう言い、中に入っていった。二人もその後を続く。

 

 

 

 そして二階に上がった時、

 

 

 

「なんだお前達?」

 

 

 

「本当にいた!?」

 

 

 



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 第95話  【BLACK EDGE 其の95 ブルーバードからの刺客】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第95話

 【BLACK EDGE 其の95 ブルーバードからの刺客】

 

 

 

 

 

「本当にいた!?」

 

 

 

 王都にある廃墟。そこの二階に行った時、そこには青い髪の男がいた。男はかなり身体つきがよく、ヒートはその体格からこの前に戦った男を連想する。

 

 

 

 男は床に寝っ転がって休んでいたが、三人が現れると座って聞いてきた。

 

 

 

「なんだ、お前達?」

 

 

 

 男はそう言うと三人を警戒する。本当にこの男がブルーバードの幹部なのだろうか。

 

 

 

 しかし、廃墟で寝ていたということは普通ではない気もする。

 

 

 

 どうやって聞き出そうか。ヒートとシャドーが考えていると、アルファが元気よく言った。

 

 

 

「なぁ、アンタはブルーバードの関係者かい?」

 

 

 

 度直球すぎる。幹部ならば答えないだろうし、関係者じゃなければそれはそれで問題だ。

 

 

 

 すると男はアルファの方を向いて答えた。

 

 

 

「ああ、そうだが……。俺はフェザント。ブルーバードの三鳥の一人だ」

 

 

 

 あっさり答えた。それも何者なのか分からない人物に……。

 

 

 

 ヒートとシャドーは驚いて止まる。アルファは答えてくれたことで満足みたいだ。

 

 

 

 ヒートはフェザントに聞く。

 

 

 

「いや、闇の組織がそんな簡単に名乗って良いの!?」

 

 

 

 それに対してフェザントはめんどくさそうに頭を掻きながら答えた。

 

 

 

「いや、下手に詮索しあっても面倒だろ。だったら最初から腹を割って話した方が楽だ」

 

 

 

 この男は本当に闇の組織の人間なのだろうか。

 

 

 

 そんなことを考えていると、フェザントはヒートに聞いてくる。

 

 

 

「ということはお前達もそういう口か。…………何の用なんだ?」

 

 

 

 ここは素直に言った方がいいのだろうか。だが、嘘をついて隙を狙うという手もある。

 

 

 

 しかし、そんな計画をアルファが全て無意味にした。

 

 

 

「フェザントくん、この二人は君を捕獲しにきたんだよ!」

 

 

 

 アルファは全て喋ってしまった。これでは油断させることができない。ヒート達はそう考えた。しかし、

 

 

 

「…………あ、そうなの……」

 

 

 

 フェザントはそう言うとまた地面に寝っ転がった。捕獲しにきた敵組織の人間と思しき人たちがいるのに、この態度はどういうことなのだろうか。

 

 

 

 油断なのか、それともただ単にやる気がないだけなのか。

 

 

 

 しかし、こんな舐めた態度を取られて、ヒート達が冷静でいられるはずもなかった。

 

 

 

 ヒートとシャドーは戦闘体制になる。ヒートはその場で足踏みをして温度を高める。シャドーはフードの中から短剣を取り出した。

 

 

 

 最初にシャドーが動いた。シャドーはフェザントに向かって走り出す。

 

 

 

 そして短剣をフェザントに振り下ろした。

 

 

 

 

 

 

 



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 第96話  【BLACK EDGE 其の96 フェザント】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第96話

 【BLACK EDGE 其の96 フェザント】

 

 

 

 

 

 シャドーは短剣を振り下ろす。それは寝っ転がっているフェザントに向かって動き出すが、フェザントは動く気配がない。

 

 

 

 だが、シャドーの剣がフェザントの皮膚を掠めた時。

 

 

 

「っ!!」

 

 

 

 フェザントはシャドーの後ろにいた。

 

 

 

 気づくよりも早く。フェザントは目に見えないスピードで移動して、シャドーの後ろに回り込んでいたのだ。

 

 

 

「なに!?」

 

 

 

 さっきまで回り込んでいたはずの相手が気づいた時には背後を取っていたことを知ったシャドーは驚く。そして焦って剣をフェザントに向けて振る。

 

 

 

 だが、再びフェザントはシャドーの攻撃に当たることはなく。またしてもシャドーの背後に回り込んでいた。

 

 

 

「ど、どういうことだ!?」

 

 

 

 シャドーは理解が追いつかず動揺する。

 

 

 

 フェザントは後ろからシャドーの両手を掴んで動きを止めた。

 

 

 

「昼寝の邪魔をしやがって……よ!!」

 

 

 

 そして両手を後ろに曲げさせると右足でシャドーの背中を蹴りつける。

 

 

 

「ぐっ!!」

 

 

 

 シャドーは抵抗することができず、そのまま蹴り飛ばされる。蹴った後フェザントはシャドーの腕を離し、シャドーを突き放した。

 

 

 

「…………な、何が起きたんだ……」

 

 

 

 蹴り飛ばされたシャドーは地面に倒れたが、すぐに立ち上がる。だが、蹴り飛ばされる際に腕を強く引っ張られたため、腕へのダメージが大きい。

 

 

 

 フェザントはシャドーを見下ろす。

 

 

 

「お前らなぁ、俺は眠いんだよ。喧嘩なら後にしてくれ」

 

 

 

 フェザントは耳をほじりながら言う。

 

 

 

 やはりブルーバードの目的はグリモワールの武器工場だった。と言うことはこの幹部を倒してしまえば、それを阻止できるわけだ。

 もしも他にも部下がいたとしても施設にはグリムがいる。

 

 

 

「ヒート、早速あれを使ってみてくれ」

 

 

 

 シャドーがやられた様子を見てアルファが言う。

 

 

 

 あれとはアルファが作った飴玉のことだろう。

 

 

 

 シャドーがあっさりとやられてしまったが、ヒートが加勢したくてもまだ左手の温度が上がらない。

 そのため戦闘に参加できないのだ。

 

 

 

 だが、その飴玉を舐めれば、急激に温度を上昇させることができる。

 

 

 

「そうね…………」

 

 

 

 ヒートは飴玉を取り出すと、一つ口の中に入れる。すると、みるみるうちに左手に熱が溜まってくる。

 

 

 

「なかなか良いもの作ったのね」

 

 

 

「当たり前だろ。僕なんだから……」

 

 

 

「……そうね」

 

 

 

 ヒートはフェザントに向かって走り出した。

 

 

 

 

 

 

 



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 第97話  【BLACK EDGE 其の97 幹部の力】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第97話

 【BLACK EDGE 其の97 幹部の力】

 

 

 

 

 ヒートが飴玉を舐めると左手の温度が上がる。そしてヒートはフェザントに向かって走り出す。

 

 

 

 フェザントは倒れたシャドーにとどめを刺すことなく、その場でヒートが戦闘に参加してくるのを待っている。

 

 

 

 ヒートは左手でフェザントに攻撃する。しかし、フェザントはヒートの左手で攻撃をしてくると、後ろに退いて素早く躱した。

 

 

 

 ヒートは諦めずに何度も左手で攻撃しようとする。しかし、フェザントはヒートの攻撃を簡単に躱してしまう。

 

 

 

 フェザントは一度は後ろに退がったが、その後はヒートの右へ左へと身体をずらして、攻撃を避ける。

 

 

 

 シャドーがやられたことでヒートは焦ってしまっていた。どんな力を持っているか分からない。だが、シャドーが一瞬でやられてしまったのだ。

 

 

 

 だからすぐにでも倒そうと左手でばかり攻撃してしまう。それによりヒートの左手をフェザントは警戒した。

 

 

 

「その左手、何かあるな……」

 

 

 

「っ!!」

 

 

 

 ヒートの能力は左手のみに熱をためる。それにより急激に温度を高めた手で相手に触ることでダメージを与える。だが、それ以外は普通の人間と変わらない。

 

 

 

 身体能力は高く。接近戦の能力のため武術も使える。だが、ヒートの武術は能力をカバーするもの。

 

 

 

 能力の効果が出る前に敵に倒されないようにするための防御術でしかない。

 

 

 

 ヒートの武術では実力者や能力者には敵わないのだ。だからこそ、この左手を警戒されてしまった状況はマズイ。

 

 

 

 ヒートがどれだけ左手で攻撃しようとも、フェザントはそれを避けるだろう。そうなるとヒートにフェザントにダメージを与える方法がなくなる。

 

 

 

 だが、まだ能力を理解したわけではない。

 

 

 

 ヒートは一旦フェザントから距離を取る。

 

 

 

 フェザントはまだヒートの能力を理解したわけではない。左手を警戒しているだけだ。まだ攻撃手段がなくなったわけではない。

 

 

 

 しかし、こうなってしまったら、簡単には攻撃を命中させることはできないだろう。だから、ここは……。

 

 

 

 

「シャドー、起きろ……」

 

 

 

 ヒートが退がったのはシャドーが倒れているところだ。敵にバレないようにシャドーに喋りかける。

 

 

 

「…………作戦か?」

 

 

 

 シャドーも大きく動かず、小さな声で答えた。

 

 

 

 まだシャドーの能力もフェザントにはバレていない。ならば、シャドーとヒートで協力する必要がある。

 

 

 

 個々の能力で敵わないのなら、力を合わせるしかない。

 

 

 

「ああ、だが、勝負は一瞬だ」

 

 

 

 

 

 

 



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 第98話  【BLACK EDGE 其の98 協力】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第98話

 【BLACK EDGE 其の98 協力】

 

 

 

 ヒートはシャドーの倒れているところまで行き、フェザントにバレないように喋る。

 

 

 

「シャドー、意識はあるか?」

 

 

 

 シャドーは身体を動かさず、声だけで答えた。

 

 

 

「ああ、…………だが、どうする。まだ奴の能力も分かっていない。……何かではあるのか?」

 

 

 

 ヒート達はまだフェザントの能力がどんな能力なのか見れていない。だが、それはあちらも同じだ。

 

 

 

「まだ私たちの能力もバレてはいない。………………チャンスは一度だけだが、乗るか?」

 

 

 

「どんな作戦だ……」

 

 

 

「作戦は単純。お前の能力で私を運べ。私の左手は警戒されてるが、奇襲ならどうにかできるはずだ」

 

 

 

 シャドーは考える。確かにヒートの左手は既に警戒されてしまった。このまま戦闘してもフェザントを捕まえることはできないだろう。

 

 

 

 だが、シャドーの能力を使えば、影から影へと移動ができる。まだシャドーの能力はバレていないため、奇襲を仕掛けることはできる。

 

 

 

 奇襲で攻撃するなら、シャドーが短剣で斬りつけるよりもヒートの左手でフェザントに攻撃した方が有効だ。

 

 

 

「分かった。タイミングは……?」

 

 

 

 

「私が奴に攻撃を仕掛ける。避けた瞬間に移動させろ」

 

 

 

「了解……」

 

 

 

 シャドーは倒れたまま作戦があることがバレないようにする。ヒートは左手を前に突き出しながらフェザントへと走り出した。

 

 

 

「一旦退いたのにまだやるのか? 懲りないなぁ」

 

 

 

 フェザントはヒートが走ってくると構える。武器は持ってない。フェザントは素手だ。

 

 

 

 構えたのはヒートの左手を警戒してだろう。ヒートの武術はフェザントには効かない。だが、武術を織り交ぜての攻撃はフェザントでも少し厄介だった。

 

 

 

 そしてヒートの左手の力が分からない以上。警戒を怠るわけにはいかない。もしも左手に触れてしまえば、その時点で戦闘不能にされてしまう可能性もある。

 

 

 

 この行動からも一発逆転を狙ってきている。そうフェザントからは見える。そしてその切り札が左手なのだ。

 

 

 

 ヒートは左手を突き出し攻撃する。だが、フェザントはそれを後ろに退がって躱した。だが、それは分かっていた。

 

 

 

 ヒートの足共にシャドーの手が現れる。

 

 

 

 この建物は屋内だ。そのため影しかない。この空間内ならシャドーはいつどこでも移動ができる。

 ヒートが走り出してすぐ、フェザントの目がヒートに注目した瞬間に、シャドーはすでに影の中に潜んでいた。

 

 

 

 そしてこの時を狙っていた。

 

 

 

 シャドーはヒートの足に手を振れる。するとヒートの身体は影の中に沈んでいった。

 

 

 

 何が起きたのか分からないフェザント。その背後からヒートは現れた。

 

 

 

「っ!?」

 

 

 

 フフェザントの背後の影からヒートは姿を現すとフェザントを左手で掴もうとした。

 

 

 

 

 



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 第99話  【BLACK EDGE 其の99 フェザントの術】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第99話

 【BLACK EDGE 其の99 フェザントの術】

 

 

 

 

 ヒートはシャドーの能力で影を移動すると、フェザントの背後に現れた。そして左手でフェザントを掴もうと手を伸ばす。

 

 

 

 あと少し、あともう少しのところだった。

 

 

 

 しかし、ヒートの左手はフェザントに届くことはなかった。

 

 

 

 フェザントに届く目前でヒートの視界からフェザントが消えたのだ。

 そして気がつくとヒートの右側に立っていた。

 

 

 

 ヒートは急いで方向転換してフェザントに攻撃をしようとするが、フェザントはヒートの服を掴むと、影の中から引っ張り出して、そのまま投げ飛ばした。

 

 

 

 ヒートは地面を転がり、さっきまでシャドーが倒れていたところで止まる。

 

 

 

 フェザントは頭を掻きながら周りを見渡す。

 

 

 

「今のはさっきの奴の能力か? 瞬間移動? いや、違うな…………」

 

 

 

 今のだけではシャドーの能力を理解することはできないようだ。だが、これでシャドーの能力も警戒されることになる。

 

 

 

 もう奇襲は効果がないだろう。

 

 

 

 しかし、ヒートは不思議に思う。

 

 

 

 シャドーの時も今回もフェザントの攻撃には殺意がない。

 敵を殺そうとしてこないのだ。

 

 

 

 敵組織の人間だということは気づいているだろう。だが、なぜ、手加減をしているのか。

 

 

 

 フェザントは周りを見渡して、さっきから姿を消しているシャドーを探しているようだ。

 

 

 

「姿も見えない。隠れているのか…………」

 

 

 

 フェザントの力ならヒートを投げ飛ばすのではなく地面に叩きつけて追撃を加えたほうがいい。

 シャドーを倒した時もだ。ヒートが攻撃してくるまで待つ必要はない。その前にシャドーにトドメを刺すことができたはずだ。

 

 

 

 だが、どちらにも必要以上に攻撃を仕掛けてくることはなかった。

 

 

 

 今もそうだ。シャドーが姿を現さないのに、ヒートやアルファを攻撃する様子はない。能力が分からないのなら対処しやすい相手を人質にとってしまえば、有利に進めるのにそんなことはしない。

 

 

 

 ヒートは影の世界にいるシャドーにも聞こえるように大きな声で言う。

 

 

 

「お前はなぜ、王都に潜伏している?」

 

 

 

 ヒートはフェザントに敵意がないように感じた。

 

 

 

 今までの行動も攻撃されたから攻撃を仕掛けしたという感じだ。

 

 

 

 アルム様からの命令では王都に潜伏中のブルーバードの幹部を捕らえろという命令しか来ていない。

 

 

 

 つまりはブルーバードの目的は伝えられていないのだ。

 

 

 

 そしてフェザントと戦闘し、ヒートはブルーバードの目的はなんなのか、そこに疑問を持った。

 

 

 

 すると、フェザントは答える。

 

 

 

「この国王子のブレイドの捜索だ」

 

 

 

 

 

 



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 第100話  【BLACK EDGE 其の100 ブルーバードの目的】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第100話

 【BLACK EDGE 其の100 ブルーバードの目的】

 

 

 

「王子?」

 

 

 

 ヒートはそれを聞いても何もピンとこない。

 

 

 

 

 王都ガルデニア。そこには王城がありそこに王様が住んでいる。その王様は一代で王国を作り上げた王様である。

 

 

 

 そしてそんな王様の跡取り。次代王様として有名なのが王子ブレイドである。

 

 

 

 今は騎士団と共に王国中を回りながら治安の維持を行なっているという話を聞いたことがある。

 

 

 

 王子の妹、リナは旅には同行せず、城で帰りを待っているらしい。

 

 

 

「なぜ、そこで王子が出てくるんだ?」

 

 

 

 うちの組織と王子はなんの関係もない。いや、ヒート達が知らないだけで上層部は何か繋がりがあるのだろうか。だとしてもヒートには分からない。

 

 

 

「さぁな。俺の任務は王子ブレイドの捕獲だ。……ま、お前達が邪魔をしてくるなんて思ってなかったけどな」

 

 

 

 ブルーバードの目的はグリモワールの武器製造場ではなかった。となるとなぜ、アルム様はこの男の捕獲を命じたのだろうか。

 

 

 

 ブルーバードの目的を知っているのか? それとも知らないのか?

 

 

 

 ヒートが迷っていた時だった。

 

 

 

 フェザントの足元が突然沼のようになる。そして足首まで地面に埋まってしまった。いや、地面ではない影だ。

 

 

 

 シャドーは姿を現すことはなく声がだけが聞こえる。

 

 

 

「なぜ王子なのか、俺たちの組織と関係もわからない。だが、一つだけ俺たちがやるべきことがある」

 

 

 

 シャドーの能力でフェザントは足が影に埋まってしまい、身動きが取れない。

 

 

 

「任務は絶対だ」

 

 

 

 フェザントは腰まで影に浸かってしまう。

 

 

 

「なんだこれ……」

 

 

 

 部屋全体は薄暗い。そのためシャドーの能力が影限定なのは、フェザントからは分からないらしい。

 

 

 

「地面を移動してるのか……。俺も引き摺り込むつもりか」

 

 

 

 フェザントは足を動かして足を掴んでいるシャドーを蹴りつける。だが、シャドーは踏ん張ってそれを耐える。

 

 

 

 シャドーの能力は触れていないと、相手にも効果はない。そのためシャドーが手を離してしまえば、フェザントは再び自由になる。

 

 

 

「ヒート、今だ!! 」

 

 

 

 シャドーは影の中からヒートに叫ぶ。何度も蹴られて傷だらけになりながらもフェザントの動きを止め続ける。

 

 

 

「シャドー、よくやった!!」

 

 

 

 ヒートはフェザントに攻撃を仕掛ける。腕しか使えないフェザントよりもヒートの方が有利だ。ヒートの攻撃を捌ききれず、フェザントの顔面にヒートの蹴りが入る。

 

 

 そしてフェザントが怯んだところに、ヒートが右手を伸ばした。

 

 

 

 

 



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 第101話  【BLACK EDGE 其の101 決着?】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第101話

 【BLACK EDGE 其の101 決着?】

 

 

 

 

 ヒートがフェザントを左手で掴もうとした時、

 

 

 

「待て!!」

 

 

 

 ヒートは突然の声に動きを止めた。その声はヒートの左右から聞こえた。二人が同時に叫んだのだ。

 

 

 

 だが、その声はヒートやフェザント、ましてやシャドーとアルファのものではなかった。

 

 

 

 フェザントとヒートは同時に声の聞こえた方を見る。ヒートとフェザントはお互いが見た方の反対を見る。

 

 

 

 ヒートの視界には白い服に白いスカートを履いた長身の男が、フェザントの視界には紫色のフードに仮面を被った男がいた。

 

 

 

 さっきまでいなかったはずの二人の登場にフェザントとヒートは動揺する。そしてお互いに戦闘体制になった。

 

 

 

 しかし、

 

 

 

「やめろ、ヒート」

 

 

 

「止まれ、フェザント」

 

 

 

 お互いの反対側にいる人物が二人を止める。

 

 

 

 フェザントは白い服の男に止められると手を下げる。ヒートは紫フードの言葉を聞いて、動きを止めた。

 

 

 

「スワン様。なぜあなたがここに…………」

 

 

 

 フェザントはスワンと呼ばれた人物に止められると、腰を低くした。

 

 

 

 ヒートは紫フードの男を見て驚く。

 

 

 

 色付きのフードは組織にとっての幹部を表す色である。そして紫色はグリモワールのトップのフードである。

 

 

 

 つまりは今回の命令を下したアルム様である。

 

 

 

「アルム様……」

 

 

 

 ヒートも姿勢を低くして頭を下げる。

 

 

 

 シャドーもヒートが頭を下げたタイミングで理解が追いついたのか、ヒートの隣に現れると頭を下げる。アルファはアルムが登場した時にすでに姿勢を低くしていた。

 

 

 

 アルムはこの場の全員に向けて話す。

 

 

 

「命令は中断だ。今回は俺とスワンで話がついた……」

 

 

 

 そしてそう告げた。

 

 

 

 命令は中断。ということはブルーバードの幹部を捕まえるという命令は終わったということだ。

 

 

 

 ヒートとシャドーは動揺する。そしてヒートがアルムに聞いた。

 

 

 

「何故ですか……」

 

 

 

 理由を聞いて良いのか分からなかった。しかし、突然の中断に納得がいかない。

 

 

 

 するとアルムが答えた。

 

 

 

「それは教えられない。今回の件は多く語れない問題だからな。…………だが、一つだけ理解してほしいことがある」

 

 

 

 アルムはそう言うと姿勢を下げている二人と同じように姿勢を低くして目線を合わせた。

 

 

 

「私はお前達を信用した。あの男と戦ったお前達だからだ……。だから今回の任務を任せたんだ」

 

 

 

 アルムは立ち上がると、

 

 

 

「次の任務を任せたい。アルファを連れて先に施設に戻っていてくれ」

 

 

 

 

 

 

 

 



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 第102話  【BLACK EDGE 其の102 取引】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第102話

 【BLACK EDGE 其の102 取引】

 

 

 

 

 アルムはヒートとシャドーにアルファを連れて行かせて先に戻らせた。

 そして残ったのはアルムとスワン、そしてフェザントだ。

 

 

 

 アルムが話していた内容と同様に、スワンがフェザントに話していたのは任務の中断だった。

 

 

 

 フェザントの任務は王子を捕獲だ。それはブルーバードのボスであるスワンからの命令だった。

 しかし、今度はその任務をやめるように指示された。

 

 

 

「あー、そうですか……」

 

 

 

 事情は分からないがフェザントは命令に従う。今回の任務はフェザントには理由が分からなかった。

 なんのために王子を捕らえる必要があるのか。

 

 

 

 それにグリモワールからの襲撃もあり、この命令がどんな意味を持つのかさらに意味がわからなくなった。

 

 

 

 国家にダメージを与えるためなのか。ならなぜグリモワールが関係してくるのか。

 しかし、フェザントは深く追求することはなかった。

 

 

 

「それじゃあ、あなたも先に戻ってて」

 

 

 

「……ほい」

 

 

 

 フェザントはスワンの命令を聞くとその場から離れていった。そして残ったのはアルムとスワンだ。

 

 

 

「これで今回の件は終わりよね?」

 

 

 

 スワンはアルムに聞く。するとアルムは頷いた。

 

 

 

「ああ、それで構わない」

 

 

 

「約束は守ってもらうわよ。アルムちゃん」

 

 

 

 スワンとアルムの間で何かの取引があったようだ。

 アルムはスワンに小さな箱を投げた。手のひらサイズの箱で、スワンは箱を開けて中身を確認すると満足そうな顔をした。

 

 

 

「あらあら、本当に渡してくれるなんて…………。よっぽどブレイドちゃんのことが大事なのね」

 

 

 

 アルムは答えることはない。

 

 

 

「分かったわ。今回はこれで手を引きましょう。もうブレイドちゃんには私たちは手を出さない。……それで良いわね」

 

 

 

「同じことを言わせるな」

 

 

 

 スワンは箱をポケットの中にしまう。そしてそのまま立ち去ろうとするが、その前に一度歩くのを止めて振り向かずにアルムに言う。

 

 

 

「そうそう、あなたの部下なかなか強いのね。まさかフェザントちゃんがやられそうになってるなんて思わなかったわ」

 

 

 

 スワンとアルムがここに辿り着いたのはさっきのことだ。そのため戦況がどうなっていたのかは分からない。だが、ついた瞬間にフェザントがやられそうだったのは確かだった。

 

 

 

「また会いましょ〜」

 

 

 

 スワンはそう言うと建物から出ていった。アルムはスワンとは反対の出口から建物から姿を消したのであった。

 

 

 

 

 

 



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 第103話  【BLACK EDGE 其の103 雪山の大陸】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第103話

 【BLACK EDGE 其の103 雪山の大陸】

 

 

 

 船を降りたブラッドとフェア。二人がたどり着いたのは雪山の大陸コスモスにあるジャスマンという村であった。

 

 

 

 船であったクロエとはここで別れ、二人は雪山へ向かうため村で準備をすることにした。

 

 

 

 村の横には雪が降る山があり、村にも粉雪が降っている。

 

 

 

 

「ううぅ、ブラッド…………寒い」

 

 

 

 フェアはブラッドからコートを貰ってそれを着ているが、それでも寒さで震えている。ブラッドはコートもなく薄着だがどうにか堪えている状態だ。

 

 

 

 ブラッドは船に乗る前に買っておけば良かったと後悔している。

 

 

 

「まずは防寒具を買うか……」

 

 

 

 最初は寒さをどうにかするために、防寒具を買うことにした。

 

 

 

 これから雪山へと向かうのだ。かなりの装備が必要なはずだ。

 

 

 

 そして苦戦しながらもどうにか防寒具を購入し、それから他にも必要なものを揃えた。

 

 

 

 ブラッドの格好は赤と黒の厚着のコートに黒い手袋。そして長靴だ。黒いマフラーを巻いて、首元も暖めている。

 

 

 

 フェアは白と桃色のコートに白い手袋。耳にはもふもふの耳を暖めるものをつけて、白いマフラーを巻いている。長靴は桃色のものだ。

 

 

 

「他にも必要なものは買ったし、後はソリだな」

 

 

 

「ソリ?」

 

 

 

 フェアは首を傾げる。そんなフェアにブラッドは説明する。

 

 

 

「ここは雪の影響で馬車ではうまく移動できないんだ。だから、雪山専用のソリがある」

 

 

 

「面白そう!!」

 

 

 

 フェアは目を輝かせて期待に満ちた表情をする。そんなフェアを見てブラッドはやれやれという表情だ。

 

 

 

 しかし、ブラッドもソリでの移動が楽しみなのは同じだ。いつもの馬車とはまた違っと乗り心地がある。

 

 

 

 だが、問題もある。

 

 

 

「フェア。ソリは確かに面白い。だが、欠点もある……」

 

 

 

 ブラッドがそう言うとフェアは不思議そうな顔をした。

 

 

 

「そのソリを引くのは馬じゃない。…………犬なんだ……」

 

 

 

 ブラッドは怖い顔をして説明した。しかし、フェアは首をかしげる。

 

 

 

「犬? 犬が一緒に旅してくれるの!!」

 

 

 

 フェアは嬉しそうだ。だが、今回はブラッドはテンションは上がらない。なぜか、その理由は…………。

 

 

 

 ブラッドはフェアを連れて、ソリを販売しているお店へ向かう。そしてそこには何匹もの犬も一緒にいた。

 

 

 

「あれを見ても喜べるか?」

 

 

 

 そこにいた犬はまるで狼のように大きく、鋭い牙と爪を持った極悪そうな犬達だ。彼らはこの雪山でのみ生息している犬種で、ブラッドは過去に襲われたことから、その犬が苦手だった。

 

 

 

 それにこの犬種は表情が恐いことからも有名だ。そんな犬を見て喜べるわけが…………。

 

 

 

「え、何が怖いのよ? 可愛いじゃない」

 

 

 

 

 

 

 



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 第104話  【BLACK EDGE 其の104 犬とブラッド】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第104話

 【BLACK EDGE 其の104 犬とブラッド】

 

 

 

 

 ブラッドはソリを購入し、二匹の犬をレンタルした。

 

 

 

 この雪山にしか生息しない特殊な犬。彼らの名をホワイトウルフ。狼と犬の中間的な動物であり、力は狼のように強く頭も良い、そして人間に懐き言うことを聞く。

 それがホワイトウルフだ。

 

 

 

 しかし、問題は顔が怖いという点だ。狼の目つきで睨みつけてくるため、慣れていない人間は恐れてしまう。

 

 

 

「ほら、これがホワイトウルフだ。怖いだろ?」

 

 

 

 ブラッドはフェアにレンタルしてきたホワイトウルフを見せびらかす。

 しかし、フェアは臆することなく、ホワイトウルフを撫で始めた。

 

 

 

 ホワイトウルフもフェアにすぐに懐いて、フェアにベトベトだ。

 

 

 

「まじか〜」

 

 

 

 ブラッドは遠くからそんな光景を見ている。そんなブラッドを見てフェアが、

 

 

 

「ほら、ブラッドも! 怖くないから!」

 

 

 

 とこっちに来るように指示した。ホワイトウルフもブラッドに怖がられているのが分かっているのか、ブラッドが近づくとあまり激しい動きはしないようにしている。

 

 

 

 ブラッドはビビりながらホワイトウルフに近づいた。そしてゆっくりと頭を撫でようとする。

 

 

 

 そーっと、そーっと…………。しかし、そんなゆっくりなブラッドに一匹のホワイトウルフがイラついたのか。

 わざと自分から頭を近づけてくる。

 

 

 

 ホワイトウルフは親切心でやったことだったのだが、ブラッドはびびってしまい手を引っ込めてしまった。

 

 

 

「あーあー」

 

 

 

 フェアはブラッドに撫でてもらえなかったホワイトウルフを撫でてあげる。

 しょげるホワイトウルフ。そんな様子を見てブラッドは、

 

 

 

「…………すまん」

 

 

 

 と小さな声で謝った。

 

 

 

 そしてついに出発の時、宿で一泊して翌朝の出発であった。

 

 

 

 ブラッドが出発の準備をしていると、フェアとホワイトウルフ達はさらに仲良くなっていた。ブラッドのそばで走り回って遊んでいる。

 

 

 

「あ! ねぇ、ブラッド!!」

 

 

 

 準備している最中、フェアが話しかけてきた。

 

 

 

「ん? なんだ?」

 

 

 

「この子達の名前知ってる?」

 

 

 

「いや、知らないな」

 

 

 

「私知ってるよ! 朝聞いてきたの!!」

 

 

 

 フェアは嬉しそうに言った。朝早くに出かけていたと思ったら、犬を借りた店まで行って名前を聞いてきていたらしい。

 

 

 

「右から順番に、ジャック、ロデー、デューク」

 

 

 

 フェアに名前を呼ばれると、その順番に返事をするように吠えた。

 

 

 

「…………そうなのか……」

 

 

 

 しかし、ブラッドには分からないことがあった。

 

 

 

 誰がどれなのか、見分けがつかないのである。

 

 

 

 

 

 



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 第105話  【BLACK EDGE 其の105 雪山の旅】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第105話

 【BLACK EDGE 其の105 雪山の旅】

 

 

 

 ソリに乗ったブラッドとフェアはジャスマン村を出発した。

 

 

 

 これから向かうのは雪山の村、リス村。ジャスマン村では館に関する情報を得られなかった。アリエルは雪山にある館に行けと言っていたが、どこにあるかまでの詳しい情報は教えてくれなかったのだ。

 

 

 

 そしてジャスマン村で情報収集をしていると、リスという村を紹介された。そこにはこの雪山の大地コスモスに詳しい老人が住んでいるのだという。

 雪山のありとあらゆる場所を旅して、まだ謎の多いこの地を知り尽くしていると言われる人物だ。

 

 

 

 その老人に会えば、館について情報を得られるかもしれない。そのためまずはリス村を目指すことになった。

 

 

 

「ねぇ、ブラッド、もうあんなに村が遠いよ」

 

 

 

 フェアはそう言って後ろを振り返る。ブラッドも後ろを見ると、まだ出発から5分しか経っていないというのに、もう村が小さく見える。

 

 

 

「ああ、こうこんなに進んでるとはな……。これならすぐに村につけそうだ」

 

 

 

 雪山の天候は危険だ。吹雪になれば、自分の位置もわからなくなるし、体温も下がる。

 だが、今日は快晴だ。遠くにある村もはっきりと見えるほどだ。

 

 

 

 天候が変わる前に早いところ目的地に着きたいと思っていたが、これなら問題ないだろう。

 

 

 

 だが、ブラッド達が進み村が見えなくなってきた頃であった。

 

 

 

 後ろから何かが近づいてくる音がする。雪を掻き分けながら猛スピードでブラッド達の後ろを追ってくる。

 

 

 

「何あれ?」

 

 

 

 フェアは後ろを見るが、まだ距離があるため、はっきりとは見えないがソリに乗った人たちが猛スピードで追っかけてきている。

 

 

 

「ブラッド、誰かが来てる!!」

 

 

 

 フェアはブラッドに教える。

 

 

 

「ああ、追っ手か…………。フェア捕まれ」

 

 

 

 ブラッドはフェアにしがみつくように指示をする。そしてソリのスピードを上げる。

 

 

 

 グリモワールの追っ手がここまでやってきたのだろうか。

 

 

 

 ブラッドはソリのスピードを上げたが、スピードはあちらの方が早い。徐々に距離を詰められている。

 

 

 

 もうすぐ後ろまで来ている。フェアが追っ手を確認すると、それはフードを被った人たちではない。

 

 

 

「ブラッド、グリモワールじゃない!!」

 

 

 

「なんだと!?」

 

 

 

 水色の長髪の男と、水色の髪をした少女の二人組だ。

 グリモワールの関係者なら大抵はフードを被って仮面をしているはずだ。しかし、そんな姿ではない。

 

 

 

 そしてブラッドは男の方に面識がある。

 

 

 

「あいつは…………」

 

 

 

「久しぶりだな。賞金稼ぎブラッド……」

 

 

 

「キース!!」

 

 

 

 

 

 

 



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 第106話  【BLACK EDGE 其の106 賞金稼ぎ】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第106話

 【BLACK EDGE 其の106 賞金稼ぎ】

 

 

 

「…………あいつは……キースか……」

 

 

 

 ブラッドを追ってくる男を見て言う。

 

 

 

「知り合いなの?」

 

 

 

「ああ、昔のな…………。賞金稼ぎ時代の同業者だ」

 

 

 

「じゃあ、賞金稼ぎってこと?」

 

 

 

 フェアが聞くとブラッドは頷いた。

 

 

 

「そうだ。だが、なぜか、俺とヒューグをライバル視してて、事あるごとにちょっかいを出してくるんだ」

 

 

 

 キースの乗るソリはブラッド達の乗るソリに追いつくと、横に並ぶ。

 

 

 

「ブラッド!! 久しぶりの再会だってのに、なんで逃げるんだよ」

 

 

 

「お前はいつも勝負を仕掛けてくるからな。今は忙しいんだよ!!」

 

 

 

「なんだと…………俺よりも大事なことがあるのか!!」

 

 

 

 キースはソリを横に動かして体当たりしてくる。ブラッド達の乗るソリは大きく揺れる。

 

 

 

「何しやがる!!」

 

 

 

「俺と決闘しろ!!」

 

 

 

「またか!! 俺は今忙しいんだよ!!」

 

 

 

 ブラッドはソリを操作して逃げようとするが、キースは逃がさない。すぐにブラッドの横にソリをつけると、再び体当たりしてきた。

 

 

 

「きゃ!」

 

 

 フェアが落ちそうになるが、ブラッドが咄嗟に掴んでソリに戻す。

 

 

 

 その様子を見ていたキースの後ろに乗っている少女はキースの肩を叩く。

 

 

 

「あ? なんだ?」

 

 

 

「突然興奮してどうしたの? この人たちに絡むのはやめなよ」

 

 

 

 どうやらキースを止めているようだ。少女に言われたキースの表情は少し大人しくなる。

 

 

 

「分かった。今回だけは見逃してやる」

 

 

 

 キースはソリを操作してブラッド達から離れようとする。ブラッドもキースが諦めてホッとした。

 しかし、

 

 

 

「あっ」

 

 

 

 ブラッドはキースから逃げようと必死で、キースはブラッドを追いかけようと必死にソリを操作していた。

 そのせいでソリはかなりのスピードを出ていた。

 

 

 

 そして前方の確認が少し遅れたのだ。

 

 

 

 四人残るソリは雪の膨らみを登ってしまい、ソリは大きくジャンプする。

 

 

 

 その影響でソリに乗っていた人たちは空中に飛ばされそうになる。

 

 

 

 操作をしていたブラッドとキースは大丈夫だったが、フェアとキースの後ろに乗っていた少女はその衝撃で宙を待ってしまう。

 

 

 

 ブラッドとキースはソリの操作をやめると、ジャンプする。そしてブラッドはフェアを、キースは水色の髪の少女をキャッチした。

 

 

 

「無事か、フェア」

 

 

 

「ありがとう、ブラッド」

 

 

 

 ブラッドとフェアは無事に着地する。そしてキース達の方を見ると二人も無事に着地できたみたいだ。

 

 

 

 



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 第107話  【BLACK EDGE 其の107 キースの娘】

 BLACK EDGE


 著者:pirafu doria
 作画:pirafu doria


 第107話
 【BLACK EDGE 其の107 キースの娘】




「うちの馬鹿が迷惑をかけました……」



 水色髪の少女は深々と頭を下げる。



「いやいや、いつものことだし…………」



 ブラッドはやれやれと言う表情だ。しかし、ブラッドには気になることがあった。



「君はキースの仲間か? あのキースが意外だな…………」



 ブラッドが過去にキースあった時は一人で仕事をしていた。孤高の賞金稼ぎという感じだったのだ。それが今は仲間がいるとは驚いた。



 しかし、水色髪の少女はほっぺたを掻く。



「まぁ、そうなんですが……」



 するとキースがため息を吐く。



「こいつは俺の娘だよ……」



「え? 今なんて……?」



「二度も言わせるな!!」



 ブラッドは口を開けてめっちゃ驚いた。



「驚きすぎだ……」



「いや、お前結婚してたのか……」



 ブラッドは予想外の展開に固まってしまう。



 フェアが少女に名前を聞く。すると少女は、



「スカイです」



 少女はスカイと名乗った。



 キースの子供とは思えないほど可愛い娘だ。



 だが、キースは腕を組む。



「てか、お前も結婚してたんだな」



 そう言いながらフェアの方を見た。



「違うわ!!」



 フェアのことは冒険仲間だと説明し、今は賞金稼ぎではないとキースに伝えた。



「そうか。賞金稼ぎをやめたのか……」



「キース。お前はどうなんだ?」



「俺は現役だ。まだバリバリの賞金稼ぎだ!」



 キースはそう言って自慢する。



 家族がいるのにそんな仕事をしてて良いのだろうか。収入も安定しないし、危険な仕事だ。恨みをもたれることだってある。



 だが、そんなキースをスカイは自慢する。



 フェアよりは歳上ぽいが、めっちゃお父さん好きなのが伝わってくる。



「私もパパみたいに賞金稼ぎになりたいんです」



 そして悪い方に影響も受けているらしい。



 どうやら今回二人で行動していたのは、仕事の見習いとしてらしい。賞金稼ぎとしてどんな仕事をしているのか、どんな危険な仕事なのかを近くで見せるためだったらしい。



 そして今は賞金稼ぎを捕まえて村に連行。次の標的を探しているところだった。



 キースはブラッドの耳元でコソコソと相談する。



「なぁ、ぶっちゃけ俺って強い方だよな…………」



 キースは不安げにそんなことを聞いてきた。



 龍の適応者のブラッドや馬鹿力のヒューグに張り合っていたんだ。弱いはずがない。



「何言ってんだよ……お前らしくない……」



「スカイの奴…………俺より強い。天才かもしれん」



 本当なのか嘘なのか。だが、なんだか親バカ臭を感じ取ったブラッドだった。








 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第107話

 【BLACK EDGE 其の107 キースの娘】

 

 

 

 

「うちの馬鹿が迷惑をかけました……」

 

 

 

 水色髪の少女は深々と頭を下げる。

 

 

 

「いやいや、いつものことだし…………」

 

 

 

 ブラッドはやれやれと言う表情だ。しかし、ブラッドには気になることがあった。

 

 

 

「君はキースの仲間か? あのキースが意外だな…………」

 

 

 

 ブラッドが過去にキースあった時は一人で仕事をしていた。孤高の賞金稼ぎという感じだったのだ。それが今は仲間がいるとは驚いた。

 

 

 

 しかし、水色髪の少女はほっぺたを掻く。

 

 

 

「まぁ、そうなんですが……」

 

 

 

 するとキースがため息を吐く。

 

 

 

「こいつは俺の娘だよ……」

 

 

 

「え? 今なんて……?」

 

 

 

「二度も言わせるな!!」

 

 

 

 ブラッドは口を開けてめっちゃ驚いた。

 

 

 

「驚きすぎだ……」

 

 

 

「いや、お前結婚してたのか……」

 

 

 

 ブラッドは予想外の展開に固まってしまう。

 

 

 

 フェアが少女に名前を聞く。すると少女は、

 

 

 

「スカイです」

 

 

 

 少女はスカイと名乗った。

 

 

 

 キースの子供とは思えないほど可愛い娘だ。

 

 

 

 だが、キースは腕を組む。

 

 

 

「てか、お前も結婚してたんだな」

 

 

 

 そう言いながらフェアの方を見た。

 

 

 

「違うわ!!」

 

 

 

 フェアのことは冒険仲間だと説明し、今は賞金稼ぎではないとキースに伝えた。

 

 

 

「そうか。賞金稼ぎをやめたのか……」

 

 

 

「キース。お前はどうなんだ?」

 

 

 

「俺は現役だ。まだバリバリの賞金稼ぎだ!」

 

 

 

 キースはそう言って自慢する。

 

 

 

 家族がいるのにそんな仕事をしてて良いのだろうか。収入も安定しないし、危険な仕事だ。恨みをもたれることだってある。

 

 

 

 だが、そんなキースをスカイは自慢する。

 

 

 

 フェアよりは歳上ぽいが、めっちゃお父さん好きなのが伝わってくる。

 

 

 

「私もパパみたいに賞金稼ぎになりたいんです」

 

 

 

 そして悪い方に影響も受けているらしい。

 

 

 

 どうやら今回二人で行動していたのは、仕事の見習いとしてらしい。賞金稼ぎとしてどんな仕事をしているのか、どんな危険な仕事なのかを近くで見せるためだったらしい。

 

 

 

 そして今は賞金稼ぎを捕まえて村に連行。次の標的を探しているところだった。

 

 

 

 キースはブラッドの耳元でコソコソと相談する。

 

 

 

「なぁ、ぶっちゃけ俺って強い方だよな…………」

 

 

 

 キースは不安げにそんなことを聞いてきた。

 

 

 

 龍の適応者のブラッドや馬鹿力のヒューグに張り合っていたんだ。弱いはずがない。

 

 

 

「何言ってんだよ……お前らしくない……」

 

 

 

「スカイの奴…………俺より強い。天才かもしれん」

 

 

 

 本当なのか嘘なのか。だが、なんだか親バカ臭を感じ取ったブラッドだった。

 

 

 

 

 

 



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 第108話  【BLACK EDGE 其の108 賞金稼ぎとその娘】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第108話

 【BLACK EDGE 其の108 賞金稼ぎとその娘】

 

 

 

 

 

 雪山を移動中、ブラッドとフェアが出会ったのは、ブラッドが賞金稼ぎ時代に同業者だったキース、そしてその娘のスカイだった。

 

 

 

「じゃあ、俺たちはそろそろ行くから……」

 

 

 

 雪でひっくり返ったはソリを元に戻したブラッドは先を急ごうとする。しかし、

 

 

 

「いや、待て!!」

 

 

 

 ソリに乗ったブラッドとフェアの進行方向にキースが立ち塞がった。

 

 

 

「俺と勝負しろ!!」

 

 

 

「まだ言うか!!」

 

 

 

 まさか娘に止められたのにまだ言ってくるとは……。

 

 

 

「パパ、どうしたの? ブラッドさん達を見つけてから変だよ」

 

 

 

 いつもと違うキースの様子にスカイも驚いている。

 

 

 

「俺はこいつと決着をつけないといけないんだ!!」

 

 

 

 普段は冷静なキースだが、ブラッドとヒューグと出会うと、猫にまたたびを見せた時みたいに興奮してしまう。

 

 

 

「ブラッドさんと一体何があったの?」

 

 

 

 スカイはキースに聞く。

 

 

 

「ブラッド……キースさんと何があったの?」

 

 

 

 フェアも気になって聞く。

 

 

 

 二人は説明を始めた。

 

 

 

 あれは王都ガルデニアでの出来事だ。

 

 

 

 賞金稼ぎであったブラッドとヒューグがギルドに行くと、そこでは騒ぎが起きていた。

 

 

 

 それは大物賞金首ジガンデルが王都に潜伏しているという噂があったからだ。

 

 

 

 だが、ジガンデルは多くの賞金首を返り討ちにしてきた凶悪犯であり、騎士ですら対抗できていなかった。

 そんな相手を捕まえようとする連中は珍しい。

 

 

 

「ヒューグ、どうする?」

 

 

 

「当たり前だろ。やるに決まってる」

 

 

 

 ヒューグとブラッドはその賞金首を捕らえることにした。だが、狙う賞金稼ぎは他にもいる。

 

 

 

「……お前達もジガンデルを捕らえるつもりなのか?」

 

 

 

 そこに現れたのはキースだった。キースは当時王都を中心に活動していた。

 そして賞金首の間では、キース、ブラッド、ヒューグの三人には遭遇してはならないという噂になるほどの、実力者であった。

 

 

 

「そのつもりだが、キース。お前もやるのか? お前みたいなへなちょこには無理だ」

 

 

 

 ヒューグが挑発する。それに対してキースも反撃。

 

 

 

「お前の方が無理だろ。まず潜伏先なんて見つけられないだろ?」

 

 

 

 こうやって喧嘩を始めて、なんやかんやで誰が最初に捕らえられるかの勝負になった。そしてブラッドも巻き込まれた。

 

 

 

 だが、事態は悪化する。誰かが討伐すれば、それで決着がついたのだが……。

 

 

 潜伏先を見つけたのはキース。ダメージを与えたのはヒューグ。そしてブラッドが最後の一撃で捕まえてしまった。

 

 

 

 それからキースはまだこの勝負を根に持っているのであった。

 

 

 

 

 

 

 



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 第109話  【BLACK EDGE 其の109 過去の因縁】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第109話

 【BLACK EDGE 其の109 過去の因縁】

 

 

 

 

「いや、何よそれ?」

 

 

 

 くだらないとスカイとフェアが言う。ブラッドも頷くが、キースは熱く語る。

 

 

 

「これは大事なことなんだ!!」

 

 

 

 ブラッドは諦めてソリから降りた。

 

 

 

「ちょっとだけだぞ」

 

 

 

 そして戦闘の構えをする。キースからの挑戦を受けることにした。

 

 

 

「そうこなくっちゃな」

 

 

 

 キースは嬉しそうに剣を抜いた。

 

 

 

 子供の前で子供のようにはしゃぐキース。

 

 

 

「タイミングは?」

 

 

 

「いつでも来い!」

 

 

 

 ブラッドが聞くとキースは答えた。

 

 

 

「分かった」

 

 

 

 するとブラッドはキースに向かい走り出した。真っ直ぐとキースの方に走る。

 

 

 

 しかし、足元が雪のためいつものようなスピードが出せない。

 

 

 

 キースは剣を両手で持ち、ブラッドを待ち構える体制だ。

 

 

 

 ブラッドは飛び上がる。そしてキースに向かいジャンプしながらキックをした。

 

 

 

 だが、雪のため高くは飛び上がれていない。足場が不安定なのがブラッドの機動力を下げていた。

 

 

 

 キースは派手に動くことはなく、身体を少しだけずらす。そしてブラッドの蹴りを避けた。

 

 

 

 そして避けたタイミングでブラッドに剣を振り下ろす。

 

 

 

 着地したブラッドはギリギリのところでキースの剣を受け止めた。右腕でキースの剣を掴んで防ぐ。

 

 

 

 刃の部分には触れないようにして、剣を端を指で掴んだ。少しでもタイミングがずれていれば、ブラッドの手は真っ二つになっていただろう。

 

 

 

 ブラッドはそのままキースの剣を握り引っ張る。キースは剣を持っていかれないように、踏ん張るがブラッドの力は強くキースの身体は剣に引っ張られてしまう。

 

 

 

 キースの身体がブラッドにより、ブラッドの周りを半回する。

 

 

 

 そしてブラッドはキースを攻撃しやすい角度に誘導すると、残った左手でキースの顔面を殴ろうとした。

 

 

 

 だが、キースは上半身だけを動かし、ブラッドの攻撃を躱す。剣は固定されているためキースの動きは制限されているというのに、最低限の動きで回避した。

 

 

 

 だが、キースは剣を持っているため、両手が塞がっている。そして反撃ができない。

 

 

 

 もう一度ブラッドがキースを攻撃する。今度はキースの腹を殴る。

 

 

 

 今度はキースは腹に力を入れてブラッドのパンチを受け止める。

 

 

 

 ブラッドの拳がキースの腹を直撃する。だが、ブラッドの拳はキースの筋肉に弾かれた。

 

 

 

 驚くブラッドは剣をつかむ腕の力を緩めてしまう。その隙にキースは剣を動かしてブラッドから剣を離させた。

 

 

 

 そしてキースはブラッドを蹴り飛ばして距離を取る。

 

 

 

 



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 第110話  【BLACK EDGE 其の110 対決の行方】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第110話

 【BLACK EDGE 其の110 対決の行方】

 

 

 

 

 ブラッドはキースの剣を離してしまう。それと同時にキースはブラッドのことを蹴り飛ばし、ブラッドから距離を取った。

 

 

 

 キースの蹴りで少し後ろに下がったブラッド。だが、蹴りは突き飛ばすための攻撃。大きなダメージはない。

 

 

 

 再びキースは剣を構えて、ブラッドが攻撃を仕掛けてくるのを待つ構えだ。

 

 

 

 この足場のためキースは大きく動かないことを選択したのだろう。だから相手の攻撃に合わせて、カウンターを取る作戦にした。

 

 

 

 ブラッドも雪により足場が悪いのだから、そうするのも一つの手だろう。しかし、ブラッドにはそんな考えはない。

 

 

 

 どんな状況だろうと、真正面から戦うのがブラッドのやり方だ。

 

 

 

 ブラッドはまたキースに向かい走り出した。

 

 

 

 だが、今度はさっきとは違う。ブラッドは姿勢を低くして、キースの足元を蹴る。

 

 

 

 足を狙われたキースは足を動かして避ける。ブラッドの蹴りが届かないように後ろに一歩下がる。

 

 

 

 キースは一歩退いたあと、すぐにブラッドに剣を振り下ろす。しかし、ブラッドは蹴りと同時に雪も蹴り飛ばしていた。

 

 

 

 その雪が宙を舞い、キースの視界を塞ぐ。

 

 

 

 キースは剣を振るが、ブラッドに当たることはなかった。

 

 

 

 ブラッドはキースの剣を避けて、キースに接近する。そしてキースの服を掴むと、引っ張り投げ飛ばす。

 

 

 

 キースは投げ飛ばされて地上から空中へと移動する。そして空中で一回転する。

 

 

 

 だが、剣を握り続け、落下しながらブラッドを狙う。

 

 

 

 ブラッドも落下してくるキースを狙うように拳を握った。

 

 

 

 キースが落下して二人は近づく。そして、

 

 

 

 二人の武器がぶつかり合った。剣と拳がぶつかり、大きな音を鳴らす。その衝撃で周囲の雪は波打つように膨らむ、周囲を白く包む。

 

 

 

 散った雪は視界を白く包み込み、二人の姿を隠す。

 

 

 

 そして雪が全て落ちて、二人の姿が見えてきた。

 

 

 

「……………………俺の勝ちだ」

 

 

 

 ブラッドの首に剣を向けるキース。ブラッドは手を上げて倒れてきた。

 

 

 

 ブラッドが負けたのだ。

 

 

 

「ああ、俺の負けだ。これで良いんだろ」

 

 

 

 キースは満足したのか剣をしまう。

 

 

 

「そうだ。これで良い。俺の方が強いということがわかったからな!!」

 

 

 

 キースは腕を組むと自慢げにそう言った。

 

 

 

 大人気ない。

 

 

 

「そうかい、そうだな」

 

 

 

 ブラッドは適当に返す。そして立ち上がると倒れた時についた雪を払う。

 

 

 

 しかし、これだけの力を持つキースよりも強いかもしれないというスカイはどれだけの力を持っているのだろうか。

 

 

 

 機会があれば、二人の仕事を見学してみたいと思うブラッドであった。

 

 

 

 

 

 

 

 



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 第111話  【BLACK EDGE 其の111 また会おう!】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第111話

 【BLACK EDGE 其の111 また会おう!】

 

 

 

 

「それじゃあ、またな。キース」

 

 

 

「おう、俺の方が強いからな!! じゃあな!!」

 

 

 

 去り際にそんなことを言うキースを後ろに乗っているスカイが頭を叩く。

 

 

 

 スカイはキースを叩いた後、笑顔でこっちをみた。

 

 

 

「また会いましょう! 次は父無しで!!」

 

 

 

 そして手を振る。

 

 

 

「おい、あんな男は俺は許さんぞ」

 

 

 

「そういうことじゃないよ。バカ!」

 

 

 

 またキースに殴られるスカイ。

 

 

 

「フェアちゃんもまたね!!」

 

 

 

「うん!!」

 

 

 

 そしてそれぞれは出発した。ブラッド達の目指すのは雪山にある村、リス村だ。

 

 

 

 キース達は既に反対側にソリを進めている。

 

 

 

 ブラッドにとってはキースはヒューグと共に賞金稼ぎをしていた仲間のような存在だ。

 

 

 

 キースもそう思っているのだろう。だからこそ、久しぶりに見かけて追ってきてくれたのだ。

 めんどくさいやつではあるが、また会うことがあると良い。

 

 

 

 ブラッド達のソリも雪山を進んでいく。

 

 

 

 そしてついに見えてきた。

 

 

 

「ブラッド、村だよ!!」

 

 

 

 フェアはそう言って前方を指差す。そこにあるのは煉瓦造りの家の立ち並ぶ小さな村だ。

 

 

 

「ああ、着いたな。ここがリス村だ」

 

 

 

 ブラッドとフェアは遂にリス村に着いたのであった。

 

 

 

 ブラッド達の目的はリス村でアリエルから指示のあった屋敷を見つけるためだ。

 

 

 

 雪山にはたどり着いたがその屋敷がどこにあるのかが分からなかった。そのためリス村にいると言う、この雪山の地理に詳しい老人に聞きにきたのだ。

 

 

 

 早速村に着いた二人はソリを止めると、その老人を探すために村を散策する。

 

 

 

 村人に話を聞き、その老人はダレオという名前ということと、どこに住んでいるのかわかった。

 

 

 

 そして二人でその老人のいる家に向かったのだが…………。

 

 

 

「すみません、ダレオさん、いますか?」

 

 

 

 ブラッドが扉を叩くが返事がない。どこかに出かけているのだろうか。

 

 

 

 その時、後ろからホワイトウルフがやってきた。

 

 

 

 ブラッドを押し退けて前に行くと、扉を頭を押し付ける。

 

 

 

 このホワイトウルフはブラッド達がソリを動かすためにレンタルした犬だ。その中の一匹がブラッド達を追いかけてきていた。

 

 

 

「ロデー!!」

 

 

 

 フェアは犬の名前を呼ぶ。ブラッドにはどの犬がどれだか見分けがつかないが、フェアにはわかるらしい。

 

 

 

 ロデーが押すと扉は開く。そして中へと入って行ってしまった。

 

 

 

「おい、戻ってこい。犬!」

 

 

 

 ブラッドとフェアも追いかけるように中へと入る。

 

 

 

 すると、中には倒れた老人の上にいるロデーがいた。

 

 

 

 

 



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 第112話  【BLACK EDGE 其の112 雪山のダレオ】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第112話

 【BLACK EDGE 其の112 雪山のダレオ】

 

 

 

 

 ブラッドとフェアが中に入ると、老人が倒れておりその上にロデーがいた。

 

 

 

「ダレオさん!!」

 

 

 

 ブラッドはその老人に駆け寄る。すると笑顔で顔を舐められる老人がいた。

 

 

 

「おー、よしよし、久しぶりだな。ロデー」

 

 

 

 かなりロデーに好かれているようだ。

 

 

 

「ダレオさん?」

 

 

 

 ブラッドが呼ぶとダレオはキリッと目つきを変えて、鬼のような形相でこちらをみてきた。

 

 

 

「なんだお前は」

 

 

 

「さっきから呼びかけてたんですが…………」

 

 

 

「ふん、お前らみたいな。借金取りに返す金はない!!」

 

 

 

 ダレオはそう言うとそっぽを向く。

 

 

 

 借金取り? なんのことを言っているのだろうか。

 

 

 

「いや、俺たち借金取りじゃないですよ」

 

 

 

 ブラッドがそう言うとダレオはクルッと顔の向きを変えてこっちを向いた。

 

 

 

「本当か?」

 

 

 

「本当です」

 

 

 

「じゃあ、何のようじゃ」

 

 

 

「雪山にある屋敷について話を聞きにきたんです」

 

 

 

 

 どうにかダレオからの誤解も解けて、話を聞けるようになった。

 

 

 

 三人は椅子に座る。木製の椅子でブラッドとフェアが隣同士、その向かいにダレオとロデーが座った。

 

 

 

「雪山の館? ………………まさか幻想館のことか?」

 

 

 

 名前までは聞かされていない。ブラッド達が答えるのに困っていると、ダレオが続ける。

 

 

 

「いや、館のいったらあそこしかないしな」

 

 

 

 ダレオの表情は厳しくなる。

 

 

 

「悪い事は言わない。あの屋敷には近づくな」

 

 

 

 とダレオは忠告をしてきた。それを聞いたブラッドは聞く。

 

 

 

「どういうことですか?」

 

 

 

「あの屋敷には猛獣がいる。白い猛獣さ…………」

 

 

 

 するとダレオは立ち上がった。

 

 

 

 そして部屋の中にある箱を取り出してきた。それはそしてその中から、手のひらサイズの鉄の塊を取り出すとそれを机に置いた。

 

 

 

「俺は昔、このロデーとその屋敷に近づいたことがある。その時のことだ。奴に出会ったのは…………」

 

 

 

 ブラッドは机に置かれた鉄の塊を見る。フェアもそれを見るがこれが何なのかわからない。

 

 

 

「それは俺が使っていた剣だ。元々は大きな剣だった」

 

 

 

 よく見ると色が混ざっている。

 

 

 

「俺は吹雪の中、奴に出会ったんだ。そして剣で奴と戦った。だが、俺の剣は奴の手で潰されてしまった。俺は何もできずに逃げることしかできなかったんだ」

 

 

 

「なんなんですか。奴って?」

 

 

 

「イエティさ。白い怪物。それが奴の呼ばれている名だ。そしてこの雪山の主だ」

 

 

 

 ダレオはそう説明すると怯えていた。

 

 

 

 

 

 

 



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 第113話  【BLACK EDGE 其の113 迂回】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第113話

 【BLACK EDGE 其の113 迂回】

 

 

 

 

 

 ダレオから説明を受けたブラッドとフェアだが、どんな怪物が住んでいようとそこに向かうしかない。

 

 

 

 子供達の行方を知るために、ここまでやってきたのだ。怪物がいるからと諦めるわけにはいかない。

 

 

 

「それでも俺たちはいかないといけないんです」

 

 

 

 二人の顔を見るダレオ。その二人の真剣な表情を見て、ダレオも覚悟を決めた。

 

 

 

「分かった。教えよう」

 

 

 

 ダレオは地図を取り出すと、テーブルの真ん中に置いた。

 

 

 

 そして地図の右下を指差す。

 

 

 

「俺たちがいるのは今ここだ。ここからさらに北に向かった先、そこに幻想館がある」

 

 

 

 ダレオは現在地から左に指を動かして目的地を示す。

 

 

 

「だが、真っ直ぐ向かうルートはお勧めできない」

 

 

 

「なぜ?」

 

 

 

 するとダレオは腕を組んだ。

 

 

 

「そこは森なんだ…………」

 

 

 

「森?」

 

 

 

「ああ、あの森は年中吹雪が降っている。この辺りとは比較にならないほど危険なんだ」

 

 

 

 するとダレオはペンで真っ直ぐではなく迂回するルートを書く。

 

 

 

「行くのならこういうルートの方が良いだろう」

 

 

 

 ブラッドとフェアは顔を合わせる。

 

 

 

「フェア、どうする?」

 

 

 

「私は急ぎたい。でも、迂回した方が良いと思う」

 

 

 

 フェアの言葉を聞いたダレオは頷く。

 

 

 

「その通りだ。急ぐ旅ならなおさら迂回した方が良い。吹雪では視界も悪くなる。下手をすれば、一生抜け出す事はできないからな」

 

 

 

 こうして俺たちは迂回するルートで幻想館に向かうことになった。

 

 

 

 ダレオは地図に細かい情報を書き込むと、教えてくれる。

 

 

 

「もしもこのルートから外れて、例の森に入ってしまった時は、ここを目指すと良い」

 

 

 

 ダレオは避けたルートに印をつけた。

 

 

 

「ここには洞窟があり、雪から身を守ることができる。俺が昔、遭難した時もそこに避難した」

 

 

 

 一通りルートを教えてもらった後、ブラッド達は早速向かうために準備を始めた。

 

 

 

 すると、ダレオは寂しそうにロデーを撫で始めた。

 

 

 

「ロデー。こいつらを守ってやってくれ。あの時の俺のように…………」

 

 

 

 それを聞いたフェアは不思議に思いダレオに聞く。

 

 

 

「ダレオさん、ロデーのことを知ってるみたいですけど、どういった関係なんですか?」

 

 

 

 するとダレオは語り出した。

 

 

 

「ああ、こいつとは俺が雪山探検家の時の相棒でな。その時に何度も助けてもらったんだ」

 

 

 

 

 ロデーは嬉しそうにダレオに撫でられる。

 

 

 

「さっき教えた洞窟。俺がロデーに助けられた洞窟なんだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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 第114話  【BLACK EDGE 其の114 思い出】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第114話

 【BLACK EDGE 其の114 思い出】

 

 

 

 ダレオは昔、この雪山の主に活動する探検家だった。まだ未開の地が多い雪山であるこの地方を、自ら歩いて開拓していた。

 

 

 

 そんな中、ダレオは建物にたどり着いた。そこは噂でしか聞いたことがなかった幻想館という館だ。

 

 

 

 白い雪の山の頂上に、木造の大きな建物がある。

 

 

 

 これだけ大きな建物だというのに誰も辿り着いたことがないというのが不思議なくらい大きく、そして存在感のある建物だった。

 

 

 

 だが、ここに着いたダレオには、この館にたどり着く難しさが分かっていた。

 

 

 

 通常のルートでは辿り着くことのできない場所だ。その理由は森も吹雪が方向感覚を狂わせるからだ。

 

 

 

 今回ダレオがこの館にたどり着けたのは、奇跡にも近い。特定のルートを辿って辿り着けたのだ。

 存在する位置が分かってしまえば、ダレオなら他のルートからの行き方もわかるが、簡単な場所ではないだろう。

 

 

 

 ダレオはそんな館にどんな人物が住んでいるのか、興味が湧いてきた。

 

 

 

 こんな森の中で大きな屋敷を作り暮らしているのだ。他の村に行くことも、誰かを呼ぶことも難しいだろう。

 なぜ、そんな場所で生活しているのか、興味を持った。

 

 

 

 ダレオは道案内として雇っていたロデーという犬と共にその館に近づいた。

 

 

 

 だが、その時だった。ロデーが後ろに向かって吠え始めた。

 

 

 

 ダレオが後ろを向くと、そこには熊よりも大きな身体を持つ白い毛皮の猛獣がいた。

 

 

 

「い、イエティ!」

 

 

 

 ダレオは剣を取る。

 

 

 

 この館と同じく噂だけの存在。都市伝説のような存在だったイエティだ。

 

 

 

 イエティはゆっくりとダレオに近づいてくる。

 

 

 

 襲われると思ったダレオは剣でイエティを攻撃した。しかし、ダレオの剣はイエティに掴まれてしまう。

 

 

 

 そして剣を奪われてしまった。

 

 

 

 イエティは剣を奪っただけでなく剣を見つめると、それを片手で潰して小さな球にしてしまう。

 

 

 

 イエティが片手で握りつぶした剣を拾い、ダレオは怯える。そして腰を抜かして動けなくなってしまう。

 

 

 

 そんな中、イエティはゆっくりと歩き出す。

 

 

 

 ダレオは動けずにいると、ロデーがイエティに向かって吠え始めた。

 

 

 

 ロデーが吠えたことでイエティの意識がロデーに行く。

 

 

 

 それによりダレオはどうにか逃げ出すことができた。

 

 

 

 だが、逃げ出したは良いが、方向を間違えてしまったのか、雪山で迷ってしまったのだ。

 

 

 

 吹雪の中、一人で迷っているとそこにロデーが現れた。同じくイエティから逃げてきたようだ。

 

 

 

 

 

 



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 第115話  【BLACK EDGE 其の115 雪山の洞窟】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第115話

 【BLACK EDGE 其の115 雪山の洞窟】

 

 

 

 

「お前も無事だったのか…………」

 

 

 

 ロデーと再開したダレオは、ロデーに近づいて抱きついた。

 

 

 

「すまない。お前に救われた…………」

 

 

 

 しかし、吹雪の中、ダレオとロデーは迷ってしまったのだ。

 ダレオであっても視界が悪い中、移動する事はできない。だが、吹雪の中を耐え抜くのは難しい。

 

 

 

「どこか、吹雪を防げるところを探さないとな」

 

 

 

 ダレオはロデーを連れて吹雪の中を歩く。すると、途中でロデーの動きが止まった。

 

 

 

 ダレオはロデーの向く方向を見ると、そこには洞窟があった。

 

 

 

「よくやったロデー」

 

 

 

 洞窟は深いものではないが、吹雪から身を守るにはちょうど良い大きさだった。

 

 

 

 こうしてダレオは風吹から身を守ることができたのだ。

 

 

 

 

 

 

「ロデーには二度も命を救われた。この子は優秀だ。雪山で迷ったらこの子を頼ると良い」

 

 

 

 ダレオはロデーを抱き締める。ロデーは苦しいみたいだがそれが感謝の気持ちとわかっているからか、抵抗する様子はない。

 

 

 

 

 そしてダレオから場所を聞いたブラッドとフェアは幻想館に向けて出発することにした。

 

 

 

「くれぐれも、道を間違えるなよ」

 

 

 

 去り際にダレオは念を教えくる。

 

 

 

 かなり難しいルートだ。だが、ダレオが言うにはこのルートではないと辿り着く事はできないと言っていた。

 

 

 

 ブラッドとフェアはダレオに感謝を言うと、ソリの場所に戻る。

 

 

 

 そしてダレオと別れて、ブラッド達は出発した。

 

 

 

 村を出ると真っ白な世界が広がっている。そんな世界をブラッド達は進んでいく。

 

 

 

 ダレオに教えてもらったルートはかなり難しい。だが、そのルートを通らなければ、目的地である幻想館に辿り着く事はできない。

 

 

 

 だから、ブラッドはダレオに教えてもらったルート通りに進むように気をつける。

 

 

 

 ロデーもブラッドが慎重に道を選んで進んでいるのを気づいて、他の二匹を誘導して正しい道を進んでいく。

 

 

 

 そのおかげで順調に進めていた。

 

 

 

 しかし、途中で事件が起きた。

 

 

 

「ブラッド!!」

 

 

 

「どうした?」

 

 

 

「あれを!!」

 

 

 

 それはダレオに教えてもらった道。そこに大きな雪の壁ができていたのだ。

 

 

 

 少し前に雪崩でもあったのだろう。しかし、そのせいで道が塞がれてしまっている。これではダレオに教えてもらった道通りに進むことができない。

 

 

 

 目的地まではもうすぐそこだ。今からダレオに道を聞き直しに戻るのも時間の無駄だ。ここまで来たのならどうにかして、ここを乗り越えたい。

 

 

 

「少しだけ道を変えるか」

 

 

 

 ブラッドは雪崩のあった道を避けて進むことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 



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 第116話  【BLACK EDGE 其の116 恐怖の雪】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第116話

 【BLACK EDGE 其の116 恐怖の雪】

 

 

 

 

 雪崩の影響でダレオから教えてもらった道が使えなかったブラッド達は、その道を少しズレたところを進み、目的地を目指すことにしていた。

 

 

 

「ブラッド? 大丈夫かな?」

 

 

 

「ああ、ダレオさんに教えてもらったルート通りにここまで来たんだ。あと少し、少しくらいなら問題ないだろう」

 

 

 

 ブラッドはそう言うとソリを進めていく。

 

 

 

 フェアもあと少しなら問題ないと思ったし、それはソリを動かしてくれている三匹の犬も同様だろう。

 

 

 

 ほんの少しのルート変え、それくらいのことだ。そう思っていた。しかし、事態は悪化する。

 

 

 

「雪だ…………」

 

 

 

 ルートを変えて進み始めた途端。雪が降り始めたのだ。

 

 

 

 さっきまで快晴で雲一つなかったはずなのに、こんなに急に天気が変わることがあるとは。

 ブラッド達は驚きながらもまだ小雪だからとそのまま進んでいた。

 

 

 

 しかし、どんどん事態は悪化していく。

 

 

 

「ブラッド、待って!」

 

 

 

 フェアに止められるとブラッドはソリの動きを止める。

 

 

 

「どうした?」

 

 

 

「この景色、見覚えがある気がする。同じところを通ってない?」

 

 

 

 フェアが不安になって聞く。だが、それはブラッドもなんとなく感じていたことだ。

 

 

 

 だが、ここで不安に負けてしまえば、さらに事態が悪化する。それにブラッドがフェアに弱気なところを見せるわけにはいかない。

 

 

 

「気のせいだよ。ここは似たような景色しかないしな。大丈夫だ。もうすぐ着く」

 

 

 

 ブラッドはフェアは心配させないようにそう言い聞かせる。そしてそれは自分に言い聞かせるものでもある。

 

 

 

 雪崩の影響で外れたコースを進み始めたのは、自分の責任であると感じている。

 このまま進めば着くはずだ。しかし、辿り着けない場合のことを考えてしまう。

 

 

 

 だが、ここで戻れば、さらに危険に晒される可能性もある。行ったり来たりを繰り返すうちに方向感覚を失ってしまうかもしれない。

 

 

 

 ならば、このまま突き進むしかない。

 

 

 

 だが、どんどん雪は強くなり視界も悪くなる。最終的には先が全然見えなくなってしまったのだ。

 

 

 

 そして視界が悪い中、フェアが何かを聞いた。

 

 

 

「何か音がする……」

 

 

 

「どうした?」

 

 

 

「何かが近づいてきてる」

 

 

 

 そしてブラッドにもその音が聞こえる。何か大きなものが雪を滑っている。だが、その大きさは山のようにでかい。

 

 

 

「これは…………」

 

 

 

 視界が悪くて見えないが、ブラッドは理解した。

 

 

 

「フェア!! 捕まれ!! ……雪崩がくるぞ!!」

 

 

 

 

 



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 第117話  【BLACK EDGE 其の117 雪崩】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第117話

 【BLACK EDGE 其の117 雪崩】

 

 

 

 

 

「フェア、捕まれ!!」

 

 

 

 雪が滑る音が聞こえたブラッドはそれが雪崩だと気づいた。

 

 

 

 ブラッドはフェアに捕まるように言うと、ソリを動かして雪崩から逃げようとする。

 

 

 

 しかし、雪崩のスピードは速くソリのスピードでは逃げきれない。

 

 

 

「ブラッド!!」

 

 

 

 フェアが後ろを見ると雪崩がすぐそばまで来ていた。

 

 

 

 ブラッドはソリを全力で動かすが、間に合わず。

 

 

 

「クソォォォ!! フェアァァァ!!」

 

 

 

「ブラッドォォォ!!」

 

 

 

 ブラッド達の乗るソリは雪崩に飲み込まれてしまった。

 

 

 

 視界が真っ白になる。ぐるぐると回転し、身体の自由が効かない。全身を冷たい雪が包み込んだ。

 

 

 

 ブラッドはフェアに手を伸ばす。雪に飲まれる中、フェアも手を伸ばし、二人の手は届く。

 

 

 

「ブラッド……」

 

 

 ブラッドはフェアを引っ張り引き寄せるとフェアは少し安心した表情を見せる。

 

 

 

 だが、このままでは二人とも雪に埋もれてしまう。せめてフェアだけでも……。

 

 

 

 ブラッドは雪で回転する中、方向を確認する。

 

 

 

 そして雪崩の中でどうにか上の方を見つけると、ブラッドはフェアのことを抱きしめた。

 

 

 

「……あとは任せたぞ」

 

 

 

「………………え」

 

 

 

 ブラッドの言葉を聞いたフェアは不安な顔をする。

 

 

 

 ブラッドはフェアを投げ飛ばすと、フェアは雪崩の外へと飛んでいき、ブラッドはさらに奥へと沈んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「………………ここは……」

 

 

 

 意識を取り戻すと、ブラッドは逆さだった。辺りは白く何も見えない。

 

 

 

 全身が冷たく、雪の中にいるみたいだ。

 

 

 

 ブラッドは体を動かして雪の中から抜け出そうとする。しかし、ブラッドの身体は雪の中から抜け出すことができない。

 

 

 

 フェアは無事だろうか。しかし、それを確認するためにも早くここから抜け出さないと。

 

 

 

 足は動くのだが、腰から下が雪に浸かっているようで全然自由が効かない。

 

 

 

「……どうしたら良いんだ」

 

 

 

 その時だった。雪の上に足音が聞こえ、何者かがいる気配を感じた。

 

 

 

 フェアか? と思ったが人間ではない。

 

 

 

「おい、誰でも良い、俺を引っ張り上げてくれ!!」

 

 

 

 ブラッドは雪の中から外にいる何者かに呼びかける。

 

 

 

 すると、………………ガブッ! と左足に激痛が走る。何かが左足に刺さった。いや、噛み付いたのか。

 

 

 

「痛ーーー!!」

 

 

 

 ブラッドが暴れると、その噛み付いた何かはゆっくりと離れる。しかし、どこかにいくわけではなく、周りをうろうろしている。

 

 

 

 

「もしかしてホワイトウルフか……」

 

 

 

 ブラッドがそう言うと返事をするように吠えた。

 

 

 

 

 

 

 

 



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 第118話  【BLACK EDGE 其の118 ロデーとブラッド】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第118話

 【BLACK EDGE 其の118 ロデーとブラッド】

 

 

 

 

 

「そこにいるのはホワイトウルフか?」

 

 

 

 ブラッドが言うと返事するように鳴き声が聞こえた。

 

 

 

 ということはさっき噛みつかれたのは、俺を助けるためだったのか。

 

 

 

 ブラッドは足を動かすのをやめると、

 

 

 

「すまん、俺を引っ張ってくれ」

 

 

 

 そう言った。

 

 

 

 すると再び噛みつかれる。だが、今回は大人しく噛みつかせて、引っ張ってもらう。

 

 

 

 ブラッドはどうにか引っ張り出せてもらえた。

 

 

 

 左足は噛まれたことで血だらけだ。結構痛い。まぁ、助けてもらったわけだから文句はないのだが…………。

 

 

 

 周りを見渡すと、そこは一面雪しかない。

 

 

 

 引っ張り出してくれたホワイトウルフが一匹いるだけで、残り二匹の姿とフェアの姿は見当たらなかった。

 

 

 

「なぁ、他の連中を知ってるか?」

 

 

 

 ブラッドが聞くと犬は首を振った。

 

 

 

「そうか……………」

 

 

 

 ブラッドは立ち上がる。

 

 

 

「探しにいくか」

 

 

 

 ブラッドに返事をするように犬は吠える。

 

 

 

 一人と一匹は雪の中を歩き出した。

 

 

 

 雪崩の中、ブラッドはフェアを上空に投げ飛ばした。これで雪崩からは抜け出せたと思うが、本当に無事かは分からない。

 

 

 

 さっきよりは雪は弱いがそれでも視界が狭い状況だ。簡単には出会えないだろう。

 

 

 

 ブラッドが少し不安になっていると、それを感じ取ったのか犬はブラッドの前に出る。

 

 

 

 そしてブラッドの目を見た。

 

 

 

「どうした?」

 

 

 

 ジーッと見つめてくる。しばらく見つめられたあと、再び歩き出した。

 

 

 

 ブラッドはそれに着いていくように歩く。

 

 

 

「諦めるなってことか?」

 

 

 

 すると小さな声で吠える。

 

 

 

「…………まさか、犬に元気付けられるとはな」

 

 

 

 ブラッドは軽く笑う。そのあと、

 

 

 

「そういえば、お前達名前があったよな。……お前は誰なんだ」

 

 

 

 それを聞かれた犬はちょっとしょげる。覚えられていないことがちょっとショックだったらしい。

 

 

 

「確か……ジャック? デューク? ロデー?」

 

 

 

 ブラッドは当てずっぽうに名前を呼んでみる。するとロデーという名前に反応して鳴いた。

 

 

 

「ロデーなのか?」

 

 

 

 ブラッドが確認で聞くと再び鳴く。

 

 

 

 ブラッドを雪の中から助けてくれたのはロデーだったようだ。

 

 

 

 ロデーといえば、ダレオさんと昔旅をした経験のあるホワイトウルフだ。

 

 

 

「すまないな。助かった」

 

 

 

 ブラッドが礼を言うと嬉しそうに尻尾を振る。

 

 

 

 ロデーとブラッドはフェア達を探すために雪の中を進んでいった。

 

 

 

「フェア、無事でいてくれ」

 

 

 

 

 

 

 

 



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 第119話  【BLACK EDGE 其の119 雪山の捜索】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第119話

 【BLACK EDGE 其の119 雪山の捜索】

 

 

 

 

 雪崩に巻き込まれたブラッドだったが、どうにか一命を取り留めた。そしてホワイトウルフのロデーと再開できたブラッドは、フェアを探しに雪山を彷徨うのであった。

 

 

 

 しかし、雪が降っていることで視界は狭く、それに雪で足元が不安定なのでなかなか前に進めない。

 

 

 

「…………どうしたら良いんだ」

 

 

 

 フェアを探すにしてもこの雪の中を探すのは難しい。一度どこかで雪が止むのを待った方がいいかもしれない。

 

 

 

「ロデー、ダレオさんが教えてくれた洞窟は覚えてるか?」

 

 

 

 ブラッドが聞くとロデーは首を縦に振る。頷いているようだ。

 

 

 

「一旦そこに向かうぞ。フェアもいるかもしれないしな」

 

 

 

 ブラッドはダレオに教えてもらった洞窟に向かうことにした。

 

 

 

 その洞窟はかつて、ダレオが雪山で遭難した時に見つけたもので、ロデーと共にその洞窟で雪が止むのを待っていたらしい。

 

 

 

 ブラッドはロデーに道を案内してもらいながら、その洞窟を目指す。

 また雪は強くなっており、このままでは吹雪になるかもしれない。

 

 

 

 その前にはその洞窟に辿り着きたい。

 

 

 

 雪が強くなる中、ブラッドはどうにかその洞窟にたどり着いた。

 

 

 

「ブラッド!!」

 

 

 

 洞窟に入ると中にはフェアと残りの二匹の犬がいた。フェアはブラッドを見つけると抱きつく。

 

 

 

「フェア、無事で良かった」

 

 

 

 ブラッドも優しくフェアを抱きしめた。

 

 

 

「ブラッドが雪崩から助けてくれたから」

 

 

 

 雪崩に巻き込まれる中、ブラッドはフェアを投げ飛ばして雪崩の外へと投げた。

 それによりフェアは雪崩に巻き込まれなかったようだ。

 

 

 

 雪崩に巻き込まれたブラッドはかなり遠くの場所まで流されており、フェアにはどうすることもできなかった。

 

 

 

 そのため雪が止むのを待ち、それから助けを呼ぶ予定だったらしい。

 

 

 

「とにかく無事で何よりだ」

 

 

 

 ブラッドは洞窟に入ると荷物を確認する。もうほとんどの荷物は残っていない。

 

 

 

 ソリも雪崩により行方不明だし、それに乗せていた道具もすべて雪に埋もれてしまった。

 

 

 

 残っているのは手元にあるものだけだ。

 

 

 

「まだ雪は止みそうにないな」

 

 

 

 外を見ながらブラッドはそう言う。天候はどんどん悪くなっていく。もうしばらく天候が変わるまではかかるだろう。

 

 

 

 ブラッドは手元に何がある確認する。あまり大きなものはないが、ポケットにちょっとしたお菓子が一つ入っていた。

 

 

 

「フェア、これでも食ってろ」

 

 

 

 ブラッドはそれをフェアに渡す。

 

 

 

 食料はソリと共に雪の中。残っているのはそのお菓子だけだ。

 

 

 

「え、でも…………」

 

 

 

 とフェアは遠慮する。

 

 

 

「良いから、食える時に食っとけ」

 

 

 

 この吹雪はいつ止むかわからない。

 

 

 

 

 

 

 

 



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 第120話  【BLACK EDGE 其の120 吹雪】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第120話

 【BLACK EDGE 其の120 吹雪】

 

 

 

 

 洞窟で合流できたブラッドとフェアは吹雪が収まるのを待っていた。

 

 

 

 雪はどんどん強くなり、風も強くなっていく。洞窟の入り口から寒い風が入り込んできて、2人の体を震わせた。

 

 

 

「もう少し奥に行くか」

 

 

 

 ブラッドはフェアに寒さを耐えるために洞窟の奥に行くように言う。しかし、

 

 

 

「この洞窟、そこまでしかないよ」

 

 

 

 ちょっと進むとそこはもう行き止まりだった。

 

 

 

「仕方がないか……」

 

 

 

 ブラッドは奥に行くのを諦める。そしてフェアと入り口の間に座ると、フェアに少しでも冷たい風が当たらないようにした。

 

 

 

 

「しかし、そんなことになるとはな…………。俺がルートを変えたからだ。すまん」

 

 

 

 ブラッドが謝るとフェアは首を振った。

 

 

 

「うんん、私もあの時賛成してたし、あと少しだからって焦っちゃった」

 

 

 

 そう、目的地である幻想館まではもうすぐそこなのだ。ブラッドもこの旅の目的地が見えてきて焦っていた。

 

 

 

「急がば回れだな」

 

 

 

 ブラッド達はルートを変えたことで、ダレオが注意していた吹雪地帯に入ってしまっていたのだ。

 

 

 

 ブラッドとフェアはしばらく静かに雪を眺めながら時間を待っていた。そんな中、ブラッドが口を開いた。

 

 

 

「なぁ、フェア。お前は子供達を救ったあと、どうするんだ?」

 

 

 

 ふとブラッドが聞いた。そんな深いことを考えていたわけではない。だが、ブラッドは洞窟に入り込んだ雪が溶けていく様子を見て、そんなことを聞いてしまった。

 

 

 

「そーだなー。昔、みんなと話したことがあるの。もしもここから抜け出したら何をやりたい? って…………みんなバラバラだった。でも、そんなみんなが私は嬉しかった」

 

 

 

「そうなのか? やりたいことはバラバラなんだろ?」

 

 

 

「そう、でもね。みんな得意なことも違うの。だから、一つのお店でみんながやりたいことをできるようにできたら、面白いなーって!」

 

 

 

「それは楽しそうだな」

 

 

 

 ブラッドは笑って返す。そんなブラッドにフェアも聞いた。

 

 

 

「ブラッド、何をするの?」

 

 

 

「俺か…………俺は今まで通りさ…………。賞金首を捕まえて生活して、奴らの施設を破壊する。そんな感じかな」

 

 

 

 それを聞いたフェアはさらに聞く。

 

 

 

「それが終わったら?」

 

 

 

「終わったら………………それは………………」

 

 

 

 ブラッドは困る。ブラッドはずっとグリモワールを潰すことしか考えてこなかった。それ以外にやりたいこともなかったのだ。

 

 

 

 そんなブラッドにフェアは手を伸ばす。

 

 

 

「じょあ、一緒に………………」

 

 

 

 

 

 

 

 



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 第121話  【BLACK EDGE 其の121 幻想館】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第121話

 【BLACK EDGE 其の121 幻想館】

 

 

 

 しばらく洞窟で雪から身を守り、そして時間が経つと吹雪は収まった。

 

 

 

 さっきまでの雪がまるで嘘のように快晴だ。

 

 

 

「わーー!! 綺麗だよ!!」

 

 

 

 辺りに日が差し込み、白い地面を照らす。洞窟から出たフェアは嬉しそうに走り回った。

 

 

 

「あまりはしゃぐなよ。危ないぞー」

 

 

 

 ブラッドがそう言った時、すでにフェアの身体の半分は雪に積もっていた。

 

 

 

「助けて」

 

 

 

「おい!!」

 

 

 

 ブラッドは雪に埋まったフェアを引っ張り上げる。

 

 

 

 これからまた幻想館を目指すのだ。

 

 

 

 ソリが雪崩で雪に埋まってしまったため、ここからは徒歩で向かうことになる。だが、もうすぐそこだ。

 

 

 

 地図上では1時間もかからないうちに着く距離になる。しかし、この雪だ。そう簡単には進めない。

 

 

 

 雪で不安定な足場を慎重に二人は進んでいく。そして2時間後、ついに辿り着いた。

 

 

 

「ここが……幻想館……」

 

 

 

 雪山のど真ん中に聳え立つ木造の館。建物の大きさは王都の建物の数倍の大きさで、高さも広さも奥行きも全てが巨大である。

 

 

 

 これだけの建物だというのに、屋根の上には雪は一つ乗っておらず、建物の隣に大きな雪山ができている。

 

 

 

 これだけの館を管理している存在がいるということだ。

 

 

 

 だが、不思議なことに窓は全て閉じられており、カーテンが閉められている。こんな大きな屋敷だというのにどの窓も使われている感じがしない。

 

 

 

「行くか……」

 

 

 

 ブラッドはフェアと共に入り口に近づく。入り口は二枚の扉が左右に開くタイプであり、その大きさは普通のものよりもひと回り大きい。

 ブラッド達が使うのなら一つで足りる大きさだ。

 

 

 

 ロデー達、三匹の犬は外で座らせて、待たせることにした。三匹とも大人しく座って待っている。

 

 

 

 ブラッドは大きな扉を叩いた。

 

 

 

 静かな雪山で扉を叩く音が響く。

 

 

 

 屋敷の中にもその音が響いていく。だが、誰も出てくる気配がない。

 

 

 

 ブラッドはフェアと顔を合わせたあと、もう一度叩いた。

 

 

 

 すると、屋敷の中から何かが歩いてくる音が聞こえ出した。だが、それは普通の音ではない。巨大な何かが音を立てながら歩いてきている。

 

 

 

 それはゆっくりと扉の前まで近づくと、扉の鍵がゆっくりと開かれた。

 

 

 

 かちゃりという音を聞いたブラッド達は、扉が開くのを待つ。

 

 

 

 すると、扉はゆっくりと動き出し、そして薄暗い屋敷の中に光が差し込んだ。

 

 

 

 そして中にいたのは、白い毛を全身に生やした巨大な猿だった。

 

 

 

「い、イエティ!!!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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 第122話  【BLACK EDGE 其の122 イエティ】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第122話

 【BLACK EDGE 其の122 イエティ】

 

 

 

 扉がゆっくりと開く。薄暗い屋敷の中に光が差していく。

 

 

 

 扉の中から現れたのは、白い毛を全身に生やした3メートルほどある巨大な猿だった。

 

 

 

「い、イエティ!?」

 

 

 

 屋敷の中から現れたのはイエティ。ダレオから話を聞いていた怪物だ。

 

 

 

 ブラッドはフェアを庇うように前に出る。そしていつでも戦闘できるように拳を握った。

 

 

 

 イエティは頭を掻きながらブラッドのことを見下ろす。

 

 

 

 かなりの巨大でこの巨体のイエティが、屋敷に住んでいるのなら屋敷の扉がこんなにデカくても違和感はない。

 

 

 

 ダレオから聞いた話では、昔このイエティと出会い戦闘になったと言う。しかし、ダレオの剣は丸い鉄屑に変えられてしまい、ダレオは何もできなかった。

 

 

 

 ブラッド達はそんなイエティを警戒する。どんな攻撃を仕掛けてくるかわからない。

 

 

 

 そんな中、イエティはさっきまで頭を掻いていた手をブラッド達の方へと伸ばす。

 

 

 

 拳は握られているわけではなく、力を入れている感じではない。それを言っとブラッド達の方へと近づける。

 

 

 

 剣を握りつぶして、紙屑のようにしてしまう握力の持ち主だ。そんな相手に掴まれたら、それだけで死んでしまう。

 

 

 

 ブラッドは向かってくる手を払うと、イエティの顎に向かってアッパーを仕掛ける。

 

 

 

 顎を攻撃されたイエティはよろめきながら後ろへと下がる。更なる追撃を加えようと、前に出ようとしたブラッドを後ろにいたフェアが服を掴んで止めた。

 

 

 

「ブラッド、待って…………」

 

 

 

 ブラッドは一度止まり、イエティの方を見る。

 

 

 

 イエティは攻撃されたというのに怒る様子はなく。フラフラしながらも頭を掻いて困っている様子だ。

 

 

 

「どういうことだ…………」

 

 

 

 ブラッドとフェアがそんなイエティを見て戸惑っていると、屋敷の中から声がした。

 

 

 

「どうした、イエティ……」

 

 

 

 そして屋敷の入り口から真っ直ぐ行ったところにある大広間の階段。そこから女性が降りてきた。

 

 

 

 その女性はフェアよりは大きいがまだ幼さの残る少女。

 紫色のショートヘアーに赤いリボンをつけて、薄紫のワンピースを着ている。

 

 

 

 上品そうな仕草をしながらその少女は階段を降りてきた。

 

 

 

 その少女はブラッド達を見ると驚く。

 

 

 

「ほぉ、客人か…………珍しい」

 

 

 

 そして少女は階段を降りている途中で止まると、長いスカートをたくしあげる。

 

 

 

「よく来たな。龍の適応者…………私はクリステル。クリスと呼んでくれても構わん」

 

 

 

 

 

 

 



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 第123話  【BLACK EDGE 其の123 屋敷の少女】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第123話

 【BLACK EDGE 其の123 屋敷の少女】

 

 

 

 

「よく来たな。龍の適応者…………。私はクリステル。クリスと呼んでくれても構わん」

 

 

 

 そう言うとクリスは深く頭を下げた。

 

 

 

 ブラッド達が驚く中、クリスはゆっくりと顔を上げる。その時のクリスの目を見たフェアは怯えるようにブラッドの後ろに隠れた。

 

 

 

 ブラッドもフェアを庇う形で構える。

 

 

 

 クリスがどういう人物なのかはわからない。だが、ブラッド達が龍の適応者だと言った。

 

 

 

 なぜ、そのことを知っているのか。そして龍のことを知っているということは、グリモワールの関係者なのか。

 

 

 

 警戒するブラッドだが、クリスは顔を上げたあと笑みを浮かべながら階段を降りてきた。

 

 

 

「そう警戒するな。私はお前達には興味はない。……ただ今日ここに訪ねてくることを知っていただけだ。だから出迎えにイエティを行かせたのだが……うまく行かなかったようだな」

 

 

 

 クリスはそう言うと、イエティの方を見る。イエティは申し訳なさそうな顔をして、クリスに頭を下げた。

 

 

 

「まぁ、仕方がない。…………しかし」

 

 

 

 クリスは歩いて扉のところまで来ると、ブラッドの前に立つ。

 

 

 

 身長はブラッドの方が高い。ブラッドの方にクリスの頭があるくらいの身長差だ。

 

 

 

 ブラッドは警戒しながらクリスを見下ろす。

 

 

 

 その時だった。クリスが右手でブラッドの顔に向かい手を振ると引っ掻いて攻撃をしてきた。

 

 

 

「っ!?」

 

 

 

 ブラッドは警戒していたこともあり、クリスの爪が頬に当たるだけで避けることができ、そのままフェアを抱えると素早く後ろに下がる。

 

 

 

 雪で足場が悪いが、ブラッドはフェアを下ろすと戦闘体制を取った。

 

 

 

「やはりやる気か!?」

 

 

 

 ブラッドの頬からは血が流れる。その血が白い雪に落ちて赤く染まる。

 

 

 

 ブラッドは警戒していた。警戒していたのに攻撃を受けたのだ。それだけクリスの攻撃が早かったということ。もしも油断していたのなら首を刎ねられていてもおかしくない。

 

 

 

 クリスの首にはブラッドの血がついている。クリスはそれを口に持っていくと、ベロを出して舐めた。

 

 

 

「これは私の家族を殴った分よ…………」

 

 

 

 クリスはそう言って血を舐めたあと、扉を開き全開にする。

 

 

 

「さぁ、ようこそ、幻想館へ! あなた達を歓迎するわ!!」

 

 

 

 クリスは両腕を広げる。

 

 

 

 何が目的なのか、わからない。だが、ここで戦闘をする意思はないようだ。

 屋敷に向かい入れて、何をするつもりなのか。

 

 

 

 彼女の目的とは…………。

 

 

 

 

 

 

 



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 第124話  【BLACK EDGE 其の124 イエティの料理】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第124話

 【BLACK EDGE 其の124 イエティの料理】

 

 

 

 

 ブラッド達はクリスに案内されて屋敷の中へと入っていった。

 

 

 

「ブラッド…………大丈夫かな?」

 

 

 

 フェアが隣で心配そうに聞く。ブラッドはフェアの方を向くと、

 

 

 

「…………まだどうとも言えないが、ついていくしかないな。まだ紙を渡せたわけじゃないし」

 

 

 

 

 この屋敷に来たのはアリエルからこの屋敷に住む者にある紙を渡せと言われたからだ。

 それがクリステルなのか、それともイエティなのか。まだ奥に誰かがいるのかも分からない。

 

 

 

 とりあえずここはついていくしかない。

 

 

 

 不安そうなフェアの頭をブラッドは撫でる。

 

 

 

「安心しろ。何があっても守ってやる」

 

 

 

 それを聞いたフェアはブラッドにくっついた。

 

 

 

 しかし、本当に広い屋敷だ。大きな部屋がいくつも並んでおり、玄関は吹き抜けで二階もあった。

 

 

 

 こんな雪山の真ん中に、これだけ広い屋敷があるなんて驚きだ。

 

 

 

 クリステルに連れられた二人が辿り着いたのは、一階にある客室だ。

 

 

 

 部屋には高そうな家具がいくつも飾られており、真ん中にはテーブル、その隣にある椅子はふかふかだ。

 

 

 

 クリスは椅子に座ると、向かい側にある席を手で指す。

 

 

 

「まぁ、座れ。紅茶でも飲みながら話そうじゃないか」

 

 

 

 ブラッドとフェアは言われた通りに座る。しばらくしてからイエティはお盆を片手に三つの紅茶を運んできた。

 

 

 

 イエティがバンダナを巻いてエプロンをしている姿に驚いたが、それ以上に驚いたのは…………。

 

 

 

「美味しい…………」

 

 

 

 紅茶を一口飲んだ二人は思わず声に出してしまった。

 

 

 

 それを聞いたクリスは嬉しそうに紅茶を飲む。

 

 

 

「そうだろ。イエティが淹れた紅茶は格別に美味いんだ」

 

 

 

 お盆を持ったイエティが部屋の隅で立ちながら恥ずかしそうに頭を掻いている。

 

 

 

 この紅茶をあのバカでかいイエティが淹れたとは…………。こんな美味しい紅茶は生まれて初めて飲んだ。

 

 

 

 もう他の紅茶が飲めなくなってしまうぐらいの美味しさだ。

 

 

 

 美味しくて紅茶を飲む手が止まらなくなっているブラッドとフェアを見て、クリスはイエティの方を向くと、

 

 

 

「おい、あれも持ってきてやれ」

 

 

 

 そうやって指示をした。

 

 

 

 するとイエティはお盆をもって部屋を出て行く。そしてしばらく経ってまた戻ってきた。

 

 

 

 今度持ってきたのはクッキーだ。ブラッドとフェアはそれもいただくと、それもまた美味しい。

 

 

 

「美味い!!」

 

 

 

 なぜ、こんなに美味しいんだ!! 美味しそうに食べる二人を見ながらクリスとイエティは満足そうに微笑んできた。

 

 

 

 

 

 

 

 



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 第125話  【BLACK EDGE 其の125 謎多きクリステル】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第125話

 【BLACK EDGE 其の125 謎多きクリステル】

 

 

 

 

 美味しい紅茶とクッキーを召し上がっていると、クリスが紅茶を手に持ったまま本題に入った。

 

 

 

「それであなた達がここに来た理由……」

 

 

 

 ブラッドとフェアは美味しさのあまり夢中になって忘れていた。しかし、クリスの言葉を聞いて思い出した。

 

 

 

 二人は手を止める。そしてブラッドがクリスに問う。

 

 

 

「その前にだ。なぜ、あんたが龍について知っている?」

 

 

 

 そう、このクリスタルという少女は、ブラッドとフェアのことを龍の適応者と言った。

 

 

 

 つまりは龍について情報を持っているということだ。無警戒に出されたものを飲んだり食べたりしていたが、この少女が敵なのか、それとも味方なのか、未だに分かっていないのだ。

 

 

 

 クリスはティーカップをテーブルに置くと、イエティの方を向き、「あれを」と指示をした。イエティはクリスに言われると部屋を出て行く。

 

 

 

 そして戻ってくると、水晶を持って現れた。

 

 

 

 その水晶をクリスに渡す。クリスはテーブルに布を置き、水晶を転がらないように固定しておいた。

 

 

 

「説明するよりも見せた方が良いと思うわ。あなた達についてなぜ知っているのか…………」

 

 

 

 クリスは水晶に手をかざす。そして深呼吸をしたあと、翳している手に力を込めた。

 

 

 

 すると水晶が淡い光を放ち始める。

 

 

 

「これは!?」

 

 

 

 そしてそこに映し出されたのは、この部屋だ。だが、そこには三人の姿はなくイエティもいない。

 

 

 

 しかし、今のこの部屋から想像できないくらい、その水晶に映っている部屋は荒れていた。まるで戦闘があったかのようなあれようだ。

 

 

 

 それを見たクリスはため息を吐いた。

 

 

 

「はぁ、やっぱり。あなた達を向かい入れれば、こういうことになるのね」

 

 

 

 水晶を見ていたフェアが聞く。

 

 

 

「これは、どういうことですか?」

 

 

 

「簡単に言うとこれはあなた達の言う魔術よ。…………そして私の力は見通す力。未来と過去を見ることができる」

 

 

 

 それを聞いたフェアは驚く。

 

 

 

「じゃあ、今のは……?」

 

 

 

「近いうちの未来よ。あなた達を館に入れるまではこんな結果にはなってなかったけどね」

 

 

 

 クリスは屋敷が荒らされる様子を見て、落ち込んでいるようだ。

 

 

 

 そんなクリスにブラッドは問う。

 

 

「じゃあ、なぜ俺たちを入れた。龍の適応者だと知っていたなら厄介ごとになることも予想はついただろ」

 

 

 

 するとクリスは水晶に手をかざすのをやめる。そしてブラッドの方を向くと、

 

 

 

「退屈だったから。それ以上の理由はいらないわ」

 

 

 

 

 

 

 



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 第126話  【BLACK EDGE 其の126 水晶】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第126話

 【BLACK EDGE 其の126 水晶】

 

 

 

 

 

「退屈…………だと?」

 

 

 

 ブラッドが反応するとクリスは人差し指を立てる。

 

 

 

「そう、暇なの…………」

 

 

 

 フェアは窓の外を見る。そこは何もない雪が続く草原だ。

 

 

 

 確かにここは何なくて退屈なのかもしれない。

 

 

 

 ブラッドは水晶を指す。

 

 

 

「その水晶が特別な力を持っているというのは分かった。だが、それが本当に未来なのか、どうなのか、それを判断する方法がないじゃないか」

 

 

 

 そう、それがただの水晶ではないということは、光を放ってこの部屋が映された時点で分かった。しかし、この部屋が荒らされるというのが本当だと証明する方法がない。

 

 

 

 するとクリスはテーブルに肘をついて手に顎を乗せた。

 

 

 

「そうね。今の未来も確定しているのもとは言えないし…………。ごめんなさいね。今のは忘れてもらっても良いわ」

 

 

 

 フェアは立ち上がる。クリスに聞く。

 

 

 

「あなたは本当に私たちの敵じゃないんですか」

 

 

 

 ここまで来たんだ。ここで情報の整理に躓いているわけにはいかない。そう思ったフェアは立ち上がってクリスに聞いたのだ。

 

 

 

 やっとここまで辿り着いた。ならば、早く本題に入りたい。

 

 

 

「そうよ。あなた達と敵対する意思は。今はない」

 

 

 

 それを聞いたフェアは机に手をついて身を乗り出す。

 

 

 

「じゃあ、今は味方ってことよね」

 

 

 

 フェアの勢いに少し驚いたクリスは目を丸くしながら答える。

 

 

 

「え、ええ…………」

 

 

 

「クリスさんはアリエルさんと面識はありますか?」

 

 

 

 それを聞いたクリスの顔は真剣な表情になり、一気に雰囲気が変わる。

 

 

 

「アリエル。あなた、今そう言ったわね?」

 

 

 

「はい! アリエルさんです」

 

 

 

 クリスの姿勢を正す。 

 

 

 

「私の力は完璧じゃない。…………可能性の一つを見るだけ。それは過去も未来も同じ。今ここにいるあなた達はあの女に会ったのね」

 

 

 

 何があったのはアリエルの名前が出た途端。クリスの様子がおかしい。

 

 

 

 アリエルと会っていると何か都合が悪いのだろうか。

 

 

 

 クリスは頭を抱えた。

 

 

 

「そう、ならこの屋敷が襲撃される未来が見えてもおかしくない」

 

 

 

 それを聞いた二人は驚く。そしてブラッドが聞く。

 

 

 

「襲撃ってどういうことだ?」

 

 

 

「彼女は私を狙ってる。いえ、正確には私の力、魔術を狙っている。彼女の新しい魔導書に加えるためにね」

 

 

 

 ブラッドとフェアは状況が理解できず、その場で固まる。

 

 

 

 アリエルがクリステルを狙ってる? どういうことなのか分からない。

 

 

 

 そんな中、クリスは立ち上がった。

 

 

 

 

 

 



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 第127話  【BLACK EDGE 其の127 クリステルとアリエル】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第127話

 【BLACK EDGE 其の127 クリステルとアリエル】

 

 

 

 

「彼女は私を狙ってる。いえ、正確には私の力、魔術を狙っている。彼女の新しい魔導書に加えるためにね」

 

 

 

 その言葉を聞いたブラッドとフェアは理解できず固まってしまう。

 

 

 

 アリエルはこの屋敷に行けば子供達の行方がわかると言っていた。そのためにここに来たのだ。

 だが、アリエルがクリステルを狙っている? どういうことなのかわからない。

 

 

 

 それに魔導書に加えるというのも分からない。

 

 

 

 クリステルと魔導書に何の繋がりがあるのだろうか。

 

 

 

 そんな中、クリスは立ち上がる。そしてイエティに屋敷を警戒体制にするように伝える。

 

 

 

 イエティはクリスの言葉を聞くとすぐに部屋を出ていき、どこかに向かっていってしまった。

 

 

 

 そしてイエティが出て行ったあと、クリスはブラッドとフェアの方を向く。

 

 

 

「これからさっき見せた未来が現実のものになる。死にたくないなら戦いなさい」

 

 

 

 クリスはそう言ったあと、何かを出せというように手を差し伸ばす。

 

 

 

 ブラッドとフェアはわからずに顔を合わせるが、そんな二人にクリスは手を突き出したまま

 

 

 

「アリエルから何か受け取っているはずよ。それが今回の事件のキーになってる。早く出しなさい」

 

 

 

 と言ってきた。

 

 

 

 アリエルから受け取っているもの。二人はそれを聞いてあるものを思い出した。

 

 

 

 それはアリエルからこの屋敷に住む者に渡せと言われた紙切れだ。

 

 

 

 何も書いていない紙切れだが、それがあの水晶に映っていた光景の引き金になるのか?

 

 

 

 ブラッドは戸惑う。

 

 

 

 本当にクリステルがこの屋敷の人間なのかもわからない。ならば、あの紙を本当に渡すべきなのか。

 

 

 

 もしもクリステルがグリモワールの関係者なら、この紙を渡したことで不利益が起こるかもしれない。

 

 

 

 しかし、そんなブラッドにフェアは、

 

 

 

「渡して……」

 

 

 

 と告げる。

 

 

 

「いや、いいのか。こいつか敵なのか、まだ…………」

 

 

 

 ブラッドはまだ戸惑っていたが、フェアは首を振る。

 

 

 

「クリスさんは敵じゃないって言ってた。なら、今は信用しよ。それに何かあっても取り返せばいい」

 

 

 

 それを聞いたブラッドも覚悟を決める。

 

 

 

 そしてポケットの中からアリエルから貰った紙を取り出した。

 

 

 

「それがアリエルに渡されたものか……」

 

 

 

 クリスはブラッドから奪い取る。そしてその紙を広げた。

 

 

 

 そして紙を広げた。

 

 

 

「………………何も書いてない。……いや、違う!! 伏せて!!」

 

 

 

 次の瞬間、屋形が大きく揺れる。そしてクリスが受け取った紙は青い炎に包まれて燃えて消えた。

 

 

 

 

 

 

 

 



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 第128話  【BLACK EDGE 其の128 屋敷の襲撃者】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第128話

 【BLACK EDGE 其の128 屋敷の襲撃者】

 

 

 

 

 

「………………何も書いてない。……いや、違う!! 伏せて!!」

 

 

 

 次の瞬間、屋形が大きく揺れる。それはまるで爆発があったかのような大きな揺れだ。だが、その揺れは一瞬でありすぐに収まった。

 

 

 

「何が起きてるんだ……」

 

 

 

 フェアを庇っていたブラッドがクリスの方を見ると、クリスの持っていた紙は青い炎に包まれて燃えていく。そして紙は跡形もなく消滅した。

 

 

 

「どういうことだ」

 

 

 

 ブラッドがクリスに聞くと、クリスは答える。

 

 

 

「おそらくこの紙は私が触れれば発動されるようになっていた。今の揺れは奴らが召喚された影響で起きたもの、本番はこれからよ」

 

 

 

 クリスは残っていた紅茶を飲み干すと、テーブルに置いた。

 

 

 

 それと同時に、窓の外が暗くなる。突然雲が出てきたみたいで太陽が隠れたみたいだ。

 

 

 

「なんだ?」

 

 

 

 不穏な空気が流れ出す。そして部屋の床の至る所に黒い模様が浮かび出す。それは丸い陣になんなかの文字が大量に描かれているものだ。まるで魔法陣のような……。

 

 

 

 その魔法陣からビリビリと紫色の小さな電気が放たれると、その魔法陣の中から人の手が出てくる。

 

 

 

 その人の手は真っ黒であり、普通の人間とは思えないような色をしている。

 

 

 

 そんな手が床を掴むと、魔法陣から這い出るように力を入れる。そして魔法陣から顔を出す。

 

 

 

 その人間の目は白目剥いており、口は裂けている。そんな人間が魔法陣の中から次々と出てくるのだ。

 

 

 

「何こいつら!」

 

 

 

 フェアは怯えてブラッドの後ろに隠れる。だが、部屋の中央にあるテーブルを囲むように現れた魔法陣は、逃げ場をなくすようにそんな人間を出した。

 

 

 

「クリス、説明しろ」

 

 

 

 ブラッドはクリスに説明を求める。

 

 

 

「奴らは死人。…………アリエルの差し向けた刺客ということだ」

 

 

 

 クリスはそう言うと戦闘体制になる。鋭い爪を立てて、引っかきで攻撃するような体制だ。

 

 

 

 ブラッド達を囲むように現れた死人は、素手でブラッドを殴るように襲いかかる。

 

 

 

「危ねぇ」

 

 

 ブラッドは死人の攻撃を避けると、反撃で死人を殴る。

 

 

 

 死人はブラッドの攻撃で吹っ飛ばされるが、壁にぶつかったあとすぐに立ち上がり、攻撃の順番を待つように待機している。

 全く効いている感じはない。

 

 

 

「なんだと……」

 

 

 

「こいつらは死人だ。そんな攻撃じゃ倒せない」

 

 

 

 襲ってくる死人の攻撃を華麗に避けるクリス。

 

 

 

「じゃあ、どうしろって…………」

 

 

 

 ブラッドがそう聞くと、クリスは飛び上がる。

 

 

 

「こうやるのよ」

 

 

 

 

 

 

 



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 第129話  【BLACK EDGE 其の129 死人】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第129話

 【BLACK EDGE 其の129 死人】

 

 

 

 

「じゃあ、どうしろって…………」

 

 

 

 ブラッドが聞くとクリスは飛び上がる。

 

 

 

「こうやるのよ」

 

 

 

 そして空中で半回すると、一人の死人の前に立つ。そして腕を大きく振り、爪で死人を真っ二つに切断した。

 

 

 

 爪での引っ掻き攻撃で人間が真っ二つになるとは…………。

 

 

 

 

 だが、驚くのはクリステルの攻撃だけではない。

 

 

 

 真っ二つにされたはずの死人は、上半身と下半身に別れたというのに、それでも動いているのだ。

 

 

 

「ひっ!!」

 

 

 

 それを見たフェアは怯えてブラッドのことを強く掴む。だが、ビビっているのはフェアだけではない。

 

 

 

「…………」

 

 

 

 ブラッドの顔も青くなっていた。

 

 

 

 クリスは真っ二つにした死人の上半身を踏みつける。抵抗をしているが動きは早くないし、力もない。

 

 

 

 上半身しかないため、手をバタバタさせているだけだ。

 下半身だけの方は切られた衝撃で倒れてしまい、そこから立ち上がることもできていない。

 

 

 

「こいつらはどんな攻撃をしても死なない。一回死んでるからな。だから殺すんじゃなくて身動きを封じるんだ」

 

 

 

 クリスは踏んづけていた上半身を蹴り上げると、爪でさらに切断。さらに切られた身体は動いてはいるが、もう手をパタパタさせることしかできない。

 

 

 

 クリスは一匹を倒したが、死人は部屋中にいる。そして彼らはブラッド達に向かい襲いかかってきた。

 

 

 

 ブラッドは死人の攻撃を避けてカウンターで殴りつけるが、どんなに強烈な攻撃をしても死人は立ち上がってくる。

 

 

 

 クリスタルの言っている通り、どんな攻撃をしてもこいつらを倒すことはできないらしい。

 

 

 

 クリスは次々と襲いかかってくる死人を切り裂いて行く。クリスの動きはまるで踊っているようであり、そして的確に死人の動きを封じるように敵を攻撃している。

 

 

 

 ブラッドもフェアを守りながら戦うが、死人を殴り飛ばすだけで確実な攻撃はできていない。

 

 

 

 それはブラッドが死人に対して、敵として攻撃できていないというのもあった。

 

 

 

 死人の見た目は黒い見た目で白目を剥いていて、そして口も半開き、身体中に傷があり、人とは思えないような形で関節が曲がったりしている。

 

 

 

 だが、それでも人型であり、それぞれが個性を持っている。まるで元々人間だったかのように服も着ているし、大きさも顔つきも違う。そして声も違うのだ。

 

 

 

 ブラッドはそんな存在の身体を破壊するということを躊躇ってしまっていた。

 

 

 

 

 

 



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 第130話  【BLACK EDGE 其の130 覚悟】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第130話

 【BLACK EDGE 其の130 覚悟】

 

 

 

 

 次々と襲いかかってくる死人。それらをクリスは爪で切り裂き倒して行く。ブラッドは死人を殴り飛ばすことはするが、人間のような見た目をしていることから攻撃に手加減をしてしまっていた。

 

 

 

 そしてフェアを庇いながらもブラッドは死人の動きを封じることはできず、次々と襲いかかってくる死人に苦戦をしていた。

 

 

 

「くそ、どうしろってんだ……」

 

 

 

 ブラッドは襲ってくる死人を殴り飛ばす。だが、死人にはダメージはなくすぐに立ち上がってきた。

 

 

 

 そんなブラッドの様子を見てクリスが言う。

 

 

 

「おい、何をしている」

 

 

 

 クリスはブラッド達に襲いかかってくる死人の数を減らすために、ブラッド達のそばにいる敵も一緒に倒し始めた。

 

 

 

「まさか、こいつらへの攻撃を戸惑っているのか?」

 

 

 

 クリスは死人を倒しながらブラッドに聞いた。ブラッドは答えることはないが、死人を倒すことができていないということはそういうことだろう。

 

 

 

 それにブラッドが一人で戦うのならまだしも、フェアを守りながら戦っている。今のところはまだどうにか対抗できているが、いつやられてしまうか分からない状況だ。

 

 

 

 クリスは死人を倒しているが、数が多くなかなか減らせない。

 

 

 

「…………このままではまずいな」

 

 

 

 今の状況ではクリスが一人で戦っているような状況だ。このままではブラッドだけではなくクリスも危険である。

 

 

 

 そしてついにブラッドもフェアを庇って死人に捕まってしまう。一人に腕を掴まれて、それから連鎖的にブラッドへと死人が動きを封じようと掴んでくる。

 

 

 

「……くっ」

 

 

 

 死人の動きは遅いし単調だ。連携も完璧とはいえない。だが、この数の攻撃ではブラッドでも避けきれなかった。

 

 

 

 ブラッドを掴んでいる死人がブラッドの腕をかじる。

 

 

 

「ぐぁぁ」

 

 

 

 通常の人間と同じ程度の噛みつき攻撃だ。しかし、もしもこれを急所にやられれば、殺されてしまう。

 

 

 

 ブラッドはここまでかと諦めかけた時。

 

 

 

 ブラッドのことを掴んでいた死人の腕が一つ切り落とされた。

 

 

 

「ブラッド!!」

 

 

 

 それは剣を持ったフェア。ブラッドに守られ続けていたフェアが剣を抜いて、ブラッドを拘束していた死人の腕を切り落としたのだ。

 

 

 

「フェア、お前……」

 

 

 

「今助けるから!!」

 

 

 

 フェアは小さな身体で剣を振り、死人の腕を切っていく。

 だが、フェアはすぐに死人に捕まってしまう。

 

 

 

 フェアが剣を抜いてまで、頑張ってくれたんだ。ここで諦めるわけにはいかない。

 

 

 

 ブラッドは死人を振り払うと、フェアを捕まえた死人を殴り飛ばす。そしてフェアを救出した。

 

 

 

 

 

 

 

 



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 第131話  【BLACK EDGE 其の131 死人の攻略法】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第131話

 【BLACK EDGE 其の131 死人の攻略法】

 

 

 

 

 ブラッドはフェアを助けると、今度は強く拳を握った。

 

 

 

 フェアは子供達を助けるためにここまできた。だからこそ、こんなところで終わるわけにはいかない。だから剣を抜いたんだ。

 

 

 

 そんな姿を見せられたら、俺も覚悟を決めなければ!!

 

 

 

 敵がどんな存在か分からない。だが、こんなところで躓けない。

 

 

 

 ブラッドの右腕から黒いオーラが漏れ出す。

 

 

 

 それを見たフェアも剣を強く握りしめる。

 

 

 

「ブラッド、私もやる!!」

 

 

 

「ああ、ここを乗り越えるぞ」

 

 

 

 ブラッドとフェアは死人と戦闘を開始した。

 

 

 

 ブラッドは龍の力を使い、強化した身体で死人を殴りつける。通常の拳での攻撃と違い、強化された攻撃は普通の人間よりも強度の脆い死人の身体を貫く。

 

 

 

 フェアも死人の腕を中心に狙いながらどんどん攻撃していく。

 

 

 

 さっきまでの光景とは違い、死人を倒し始めた二人を見て、クリスは安心しながら戦闘を続けた。

 

 

 

 しかし、死人の数は減ることはなく。次々と魔法陣の中から現れる。

 

 

 

「また増えやがった。どうすればいいんだ……」

 

 

 

 ブラッドは増えていく死人を見て疲れたように言った。

 そんなブラッドにクリスは答える。

 

 

 

「おそらくこの術には核がある。その核を破壊すればこの攻撃を止められるかもしれない」

 

 

 

「術の核だと?」

 

 

 

「さっき私が触れた紙あったでしょ?」

 

 

 

 それはアリエルからクリステルに渡せと言われていた紙だ。

 

 

 

 それを渡した瞬間、その紙は青い炎に包まれて消えて、屋敷が屋敷が揺れ巨大な雲に覆われた。そして死人達が現れたのだ。

 

 

 

 

「その紙がどうしたんだ?」

 

 

 

 ブラッドは死人の攻撃を躱しながら聞く。

 

 

 

「あれがこの術の核。おそらくあの炎に包まれてこの屋敷のどこかに隠されてる。それを見つけて破壊すれば、この攻撃は収まるはずよ」

 

 

 

「ということはまず…………」

 

 

 

 ブラッドは死人を殴り飛ばした後、部屋の入り口の方を見る。

 

 

 

「この部屋から脱出しないといけないってことだな……」

 

 

 

「そういうこと……」

 

 

 

 入り口の前には大量の死人が待ち構えている。簡単には通す気はないようだ。

 

 

 

 ブラッドは右手に力をためる。

 

 

 

「俺が道を開く。その隙に行くぞ」

 

 

 

 そして黒いオーラを右手に集めると、それを入り口付近で待ち構える死人達に放つ。

 

 

 

 そのオーラは龍の顔になり、死人達を吹き飛ばした。

 

 

 

「フェア、掴まれ」

 

 

 

 ブラッドはフェアに手を伸ばす。フェアが手を掴むとフェアを引っ張って扉へと向かった。

 それを追いかけてクリスも扉へと向かう。

 

 

 

 そして客室を脱出して廊下に出たのだが……。

 

 

 

 

 

 



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 第132話  【BLACK EDGE 其の132 核を探せ】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第132話

 【BLACK EDGE 其の132 核を探せ】

 

 

 

 

 ブラッドは黒いオーラに包まれた腕を入り口に向かって突き飛ばす。すると、黒いオーラは飛んでいき、龍の顔の形になる。

 

 

 

 龍のオーラは入り口を守っていた死人達を吹き飛ばし、入り口までの一直線に道を作った。

 

 

 

 そして龍のオーラはドアを破壊して、そこで消滅した。

 

 

 

「ドアを壊すな!」

 

 

 

 横でクリスが文句を言う。

 

 

 

「今はそんな場合じゃないだろ」

 

 

 

 と言い、クリスに扉へと行かせる。ブラッドはフェアに手を伸ばす。

 

 

 

「掴まれ! フェア!!」

 

 

 

 ブラッドの背中を守るように戦っていたフェアはブラッドに手を伸ばされると、それに捕まる。ブラッドはフェアを引っ張ると、背中に乗せて扉へと走った。

 

 

 

 そして客室を脱出した。ブラッド達だが、まど終わらない。

 

 

 

「マジかよ…………予想はしていたが……」

 

 

 

 屋敷の廊下にも大量の死人達が屯っていた。彼らはブラッド達を発見すると、一斉に襲いかかってくる。

 

 

 

 客室にいた死人達も追うように扉の方へと向かってくる。

 

 

 

「止まってる暇はないな」

 

 

 

 ブラッドはフェアをおんぶした状態で、廊下を走り出した。クリスもその後ろをついていく。

 

 

 

「クリス。この屋敷の中に核があるのか?」

 

 

 

「そうよ。その核を破壊すればこの攻撃は終わるはずよ」

 

 

 

「分かった。ならついて来い。その核を破壊するぞ!」

 

 

 

「当然よ!!」

 

 

 

 ブラッドとクリスは協力しながら廊下を突き進む。廊下にいる敵を次々と薙ぎ払い、二人は玄関のある中央へと向かった。

 

 

 

 幻想館の中央。そこには二階と一階をつなぐ吹き抜けがあり、玄関を進んだ先には階段がある。

 玄関から右と左には長い廊下があり、二階も同様に廊下が続いている。

 

 

 

 ブラッド達が中央に着くと、やはりそこにも死人が大量にいる。

 

 

 

 さらに吹き抜けの二階から飛び降りてきた死人達がブラッド達に襲い掛かり、大きかぶさってくる。

 

 

 

「な!?」

 

 

 三人はそれぞれ死人に乗っかられて捕まってしまう。しかし、そこで多くの死人をタックルで吹き飛ばしながらイエティが現れた。

 

 

 

 イエティは三人に乗っかっている死人も吹き飛ばすと合流した。

 

 

 

「助かったよ。イエティ」

 

 

 

 クリスは死人に触られたところを叩きながらイエティに礼を言う。

 

 

 

「すまん、油断してた」

 

 

 

「ありがとう」

 

 

 

 ブラッドとフェアも礼を言うとイエティは恥ずかしそうに鼻上を掻く。

 

 

 

 イエティはさっきまでどこかに行っていたようで、何かをしてきていたらしい。しかし、核は見つけられていないようだ。

 

 

 

「さて、この広い屋敷でどうやって核を見つけるか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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 第133話  【BLACK EDGE 其の133 核を探せ】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第133話

 【BLACK EDGE 其の133 核を探せ】

 

 

 

 

 

「さて、この広い屋敷でどうやって核を見つけるか……」

 

 

 

 ブラッドは屋敷を見渡しながら言う。

 

 

 

 この屋敷は巨大であり、死人も次々と増えている。そんな中を探し回るなんてかなり大変だ。

 

 

 

「そうね。私の力を使うとしましょうか」

 

 

 

 そう言うとクリスは水晶を取り出した。

 

 

 

「未来を見るの?」

 

 

 

 フェアが聞くとクリスは首を振る。

 

 

 

「未来もは少し違う。特定のものの場所を探し出すの……」

 

 

 

 そしてクリスは水晶とは別にもう一つ小さな瓶を取り出した。指二本程度の大きさの瓶で中には赤い液体が入っている。

 

 

 

「なんだそれは?」

 

 

 

 それを見たブラッドが不思議に思う。

 

 

 

「血よ」

 

 

 

 クリスはそう答えると、その瓶を開けて中に入っている血を飲む。

 

 

 

 その様子を見たブラッドとフェアの表情は固まった。血だと言った赤い液体を飲んだのだ。驚かないはずがない。

 

 

 

「血を……飲んだ…………」

 

 

 

 そして血を飲み込んだクリスの身体からゆげのようなオーラが漏れ出す。龍の力とはまた違う、だが、なんらかの力……。

 

 

 

 クリスは手を広げてそのオーラを全身に流して巡らせる。

 

 

 

「あなた達、時間を稼ぎなさい」

 

 

 

 そんな中でも死人達は襲ってくる。

 

 

 

「え、今なんて……」

 

 

 

 血を飲んだクリスに驚いたブラッド達は反応に遅れてしまったが、死人達はクリス二階からクリスを襲うように飛び降りてくる。

 

 

 

 イエティはクリスの指示通り、襲ってくる死人達を腕を振って一掃した。

 

 

 

 イエティの一撃で二階から飛び降りてきていた死人は吹っ飛んで玄関の方で転がる。

 

 

 

 だが、それだけでは終わらない。廊下から次々と死人達が向かってくる。イエティは猪のように突撃して、腕を振って死人達を吹き飛ばしながら暴れ回る。

 

 

 

 しかし、イエティだけでは死人の量が多く、このままではクリスを守り切ることはできない。

 

 

 

「……わーたよ」

 

 

 

 それを見たブラッドもイエティの援護をする。

 

 

 

 イエティとは反対側の廊下からやってくる敵を対処する。

 

 

 

 フェアも剣でブラッドの隣に行って、襲いかかってくる死人と戦おうとしている。

 

 

 

 今までは戦闘には参加しようともフェアが、今回は頑張っている。

 

 

 

「どれくらい時間を稼げば良い?」

 

 

 

 ブラッドはクリスに聞く。すると、クリスは答える。

 

 

 

「三十秒だけ時間が必要よ。それまで稼ぎなさい」

 

 

 

「ああ、任せとけ! やるぞ、フェア!!」

 

 

 

 ブラッドとフェア、そしてイエティがクリスを守って玄関にある中央広場で戦った。

 

 

 

 

 

 

 



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 第134話  【BLACK EDGE 其の134 核のある部屋へ】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第134話

 【BLACK EDGE 其の134 核のある部屋へ】

 

 

 

 

 ブラッドとフェア、そしてイエティが死人と戦い、クリスが能力を使う時間を稼ぐ。

 

 

 

 そして数秒後、ついに能力が完了した。

 

 

 

「見つけた……」

 

 

 

 クリスはそう言うと二階を指差す。

 

 

 

「二階の奥にある部屋。そこに格がある!」

 

 

 

 クリスの力により核のある場所が分かった。これで核を破壊することができる。

 

 

 

 ブラッド達は早速二階への階段を登り、核のある部屋を目指そうとする。しかし、その時、

 

 

 

「っ!?」

 

 

 

 一匹の死人が凄い速さで近づいてきて、クリスに向かって剣を振り下ろしてきた。

 イエティはクリスを庇うように大きな背中を縦にして、その剣を防ぐ。

 

 

 

「イエティ!!」

 

 

 

 クリスはイエティに守られたことで無事であったが、イエティの傷は深く血を流しながら肘をついた。

 

 

 

 ブラッドはイエティが攻撃されたのに気づくと、素早く移動してその攻撃を仕掛けてきた死人に向かって殴りかかる。

 

 

 

 だが、その死人の移動速度は早く。ブラッドの攻撃は躱されてしまった。

 

 

 

「なんだあいつ…………他のと明らかに違う。……早いし、武器を持ってる……」

 

 

 

 だが、言葉も発することもないし、見た目も他の死人と変わりはない。違うのは戦闘能力だけだ。

 

 

 

 クリスは庇ってくれたイエティに近づき、傷を見る。イエティのダメージは大きいようで息も荒くなっている。

 

 

 

 動こうとするがイエティは立ち上がると、すぐにふらついて倒れてしまう。

 

 

 

「無理をするな。イエティ」

 

 

 

 しかし、この間にも死人達は増えて、集まってきている。

 このままでは囲まれてしまう。

 

 

 

「龍の適応者、君たちに頼みがある」

 

 

 

 イエティの傷を見たクリスはブラッド達の方には目を向けず、背を向けて頼む。

 

 

 

「核を破壊してきてくれ」

 

 

 

 イエティはダメージにより今は動くことができない。しかし、イエティをこのまま放置しておくことはクリスにはできなかった。

 

 

 

 もしもここで置いていけば、イエティは死人に囲まれてやられてしまう。だからブラッド達に頼んだのだ。核の破壊を。

 

 

 

 核を破壊すれば、死人達は消滅する。だからそれまでイエティを守り切ることをクリスは選択した。

 

 

 

「今傷を!」

 

 

 

 フェアはイエティの傷を治そうと向かおうとするが、さっきの剣を持った死人に邪魔される。

 

 

 

 死人が立ち塞がって向かうことができない。

 

 

 

「分かった。すぐに戻る。フェア行くぞ!」

 

 

 

「でも……」

 

 

 

「今は敵に邪魔される。なら核を急いで破壊して戻ってくるしかない」

 

 

 

 

 

 

 



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 第135話  【BLACK EDGE 其の135 廊下の奥へ】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第135話

 【BLACK EDGE 其の135 廊下の奥へ】

 

 

 

 

 フェアはイエティの傷を癒すために向かおうとするが、死人達が邪魔をしてくる。このままでは向かうことができない。

 

 

 

「フェア、行くぞ」

 

 

 

 そんなフェアを先へと行くように指示するブラッド。

 

 

 

「でも……」

 

 

 

「今は敵に邪魔される。なら早く核を壊したほうがいい」

 

 

 

 そう今傷を癒しにいったとしても囲まれてしまってはやられてしまう。なら、二人が先に行って核を壊しに進んだほうが良い。

 

 

 

「分かった。すぐ戻ります!」

 

 

 

 フェアとブラッドはクリスが示した二階の廊下へと進んでいく。

 

 

 

 その二人を追いかけようと剣を持った死人が動くが、その死人の前にクリスが立ち塞がった。

 

 

 

「私の家族に手を出したらどうなるか。見せてあげるわ」

 

 

 

 

 

 ブラッド達は廊下を進み核のある部屋を探していた。

 

 

 

 死人達は次々と増えてきていて、行く手を阻んでくる。そんな死人達を倒しながら奥へと進んでいった。

 

 

 

 そして廊下の奥にある最後の部屋を開けた時、そこにあった。

 

 

 

「ブラッド! あったよ!」

 

 

 

「よくやった、フェア!!」

 

 

 

 部屋は物置部屋のようで多くのものが箱にしまってある。そんな部屋の中央に青いガラスのような球体に包まれた一枚の紙があった。

 

 

 

 それは淡い光を放っており、おそらくそれがこの死人を召喚している術の書くなのだろう。

 

 

 

 核のある部屋には今のところ死人はおらず。真っ直ぐ行くだけで手が届く。

 

 

 

「急ぐぞ」

 

 

 

 ブラッドはフェアを連れて部屋の中に入る。しかし、

 

 

 

 部屋に入ったと同時に核の目の前に魔法陣が現れて、そこから一人の死人が現れた。

 

 

 

 その死人は剣と盾を装備している。ブラッド達の行手を阻むように現れると、その死人は切り掛かってくる。

 

 

 

「くっ!」

 

 

 

 ブラッドはフェアを抱き抱えると、そのまま後ろに飛び上がりその死人の攻撃を躱した。

 

 

 

「このタイミングで出てくるってことは……。見られてるのか?」

 

 

 

 さっきの剣を持った死人のように他の死人とは違い、戦闘能力が高いようだ。不意打ちができるほど、精密ではないようだが召喚の場所と時間を操作しているようだ。

 

 

 

「どうしよう。もうすぐそこなのに……」

 

 

 

「まだだ。俺が奴の動きを止める。その隙にフェア、お前があれを破壊してくれ」

 

 

 

 もしも敵が死人でないのなら、基本戦闘能力はブラッドのほうが高い。しかし、さっきまでの敵と同じく、この敵も疲れもなければダメージも感じないはずだ。

 

 

 

 そうなるとかなり厄介な敵ということだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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 第136話  【BLACK EDGE 其の136 武器持ち】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第136話

 【BLACK EDGE 其の136 武器持ち】

 

 

 

 

 

 ブラッドを先に行かせたクリスはイエティと共にいた。

 

 

 

 屋敷の玄関は一階と二階の吹き抜けがあり、中央に大きな階段がある。イエティはその階段の途中で身体を休めていた。

 

 

 

 イエティが動けない間、クリスが死人を引き避けせ戦闘をしている。

 

 

 

 敵の数は次々と増えていくが、クリスは丁寧に一人ずつ処理していた。

 

 

 

 クリステルの攻撃手段は爪だ。鋭い爪で敵を切り裂く、切り裂かれた相手はまるで剣で斬られたかのように切断されていく。

 

 

 

 クリスは踊るように華麗なステップで跳び、移動し、そして敵を倒す。

 

 

 

「まだなのかしら……こいつらの血じゃ、なんの効果もないから困るのよね」

 

 

 

 死人を倒すことでクリスの血は真っ赤に染め上がっているが、服には一滴の血もついていない。

 

 

 

 順調に倒している。しかし、

 

 

 

「っ!」

 

 

 

 剣を持った死人がクリスに切り掛かってきた。クリスはジャンプして後ろに下がり、攻撃を躱す。

 

 

 

「あなたは最後のつもりだったけど、もう消されたいの?」

 

 

 

 クリスは回転しながらジャンプすると、剣を持った死人の背後に回り込む。そしてその死人の首を落とそうとするが、死人は素早く剣を振ってそれを防いだ。

 

 

 

「私の爪と互角だなんて……それならイエティに傷を負わせたことも納得できる切れ味ね……」

 

 

 

 クリスは弾かれた衝撃のまま、身体を回転させて踊るように一回転すると、そのまま剣を持った死人に攻撃をする。

 

 

 

 それにより剣を持った死人の片方の腕は落とせた。死人の腕は地面に落下する。

 

 

 

 だが、この剣士は片手で剣を振っている。剣の持っていない腕を破壊できたといっても、まだ攻撃を仕掛けてくる。

 

 

 

 だが、片手を失った死人は腕を失ったことには反応せず、そのまま切り掛かってきた。

 

 

 

 だが、片手を失ったことで死人は重心が擦れたのか、バランスを崩してクリスへの攻撃が一瞬遅れる。

 

 

 

 それによりクリスは死人からの攻撃を避けて、今度は剣を持った腕を切り落とし、そしてそのまま首も破壊した。

 

 

 

 腕と首を失った死人は何もできずに、クリスが軽く足で蹴ると階段を転がって落ちていった。

 

 

 

 腕もなく足だけで立ち上がることはできないのか、足をバタバタさせている。

 

 

 

「もし、あなたが生前なら、今ので私に一撃を与えられたでしょう。でも今のあなたはただのゾンビ。今のあなたじゃ私は殺せない」

 

 

 

 クリスは指についた血を払うように腕を振った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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 第137話  【BLACK EDGE 其の137 勇気】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第137話

 【BLACK EDGE 其の137 勇気】

 

 

 

 

 

「俺が奴の動きを止める。その隙にフェア、お前があれを破壊してくれ」

 

 

 

「分かった!!」

 

 

 

 

 もう核がすぐそこにあるというのに、ブラッド達の行方を阻んだのは剣と盾を持った死人。

 

 

 

 この死人は先程玄関の広場で出会った剣持ちの死人と同じく、戦闘能力が高い。

 

 

 

 それに死人はダメージを受けることはない。痛覚がないようで、ダメージを与えても襲ってくる。そのため肉体を破壊するしか、動きを止める手段はない。

 

 

 

 だが、この武器持ちの死人を倒すのはかなり難しい。ならば、ブラッドが死人を引きつけて、フェアがこの術の核を破壊したほうが良いだろう。

 

 

 

 武器持ちの死人は二人との距離はじわじわと詰めてくる。

 

 

 

 その動きは他の死人とは違い、やはりこの死人は実力が高いということがわかる。

 

 

 

 まるでその死人は昔は剣士だったかのような動きだ。

 

 

 

 そして少し距離を積めると、死人が動いた。

 

 

 

 剣を振り上げて襲ってきた。狙う相手はフェアだ。

 

 

 

 フェアを狙って剣を振り下ろした死人の剣を、ブラッドはフェアの前に出ると受け止めて止めた。

 

 

 

 

「お前の相手は俺だ!!」

 

 

 

 ブラッドはそう言うと剣を弾く。

 

 

 

 そしてブラッドは弾いた後、拳を握って死人を攻撃しようとする。しかし、死人は盾で攻撃を防ぐ。

 

 

 

 死人はブラッドの攻撃で身体が少し浮くがダメージはないようだ。

 だが、これで動きを封じられた。

 

 

 

「いけ! フェア!!」

 

 

 

 ブラッドはそう言うとフェアを行かせる。

 

 

 

 フェアはブラッドに言われて急ぎで核の元へと向かおうとする。

 

 

 

 武器を持った死人はブラッドがさらに攻撃を加えて、動きを封じる。また盾で攻撃は防がれたが、これで死人はフェアの元に向かうことはできない。

 

 

 

 フェアが核の元に進む間、ブラッドはどんどん死人のことを攻撃して、攻撃を防がせる。

 死人の身体は地面に着くことなく、ブラッドの攻撃で何度も空中を浮き、数センチ浮いた足をバタバタさせている。

 

 

 

 フェアは足にそしてついに核の元へと辿り着いた。核は小さな紙であり、それを囲んで半透明な球体がある。

 

 

 

 フェアがその球体に手を突っ込むと、まるで火に手を突っ込んでいるように熱い。

 

 

 

「っ……」

 

 

 

 熱さで辛そうな顔をしたフェアを見て、死人を止めているブラッドが叫ぶ。

 

 

 

「大丈夫か?」

 

 

 

「大丈夫。これは私の役目だから…………この程度、あの子達の苦しみに比べれば、全然痛くない!!」

 

 

 

 フェアはそう言って手を突っ込んだ。

 

 

 

 

 

 



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 第138話  【BLACK EDGE 其の138 手を伸ばせ】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第138話

 【BLACK EDGE 其の138 手を伸ばせ】

 

 

 

 

 フェアは核である紙に向かって手を伸ばす。

 

 

 

 この術の核は紙を中心に掌サイズの半透明な丸い球体に包まれている。それが部屋の中心で浮いており、淡い光を放っていた。

 

 

 

 ブラッドが武器持ちの死人を足止めしてくれたことで、フェアは術の核である紙の目の前までやってくることができた。

 

 

 

 フェアは紙に向かって手を伸ばす。そして半透明な球体の中に手を突っ込んだ。

 

 

 

 すると球体の中は炎で燃えているかのように熱く。その熱さにフェアは苦しい表情をする。

 

 

 

 それを見たブラッドがフェアを心配するように叫んだ。

 

 

 

「大丈夫か!?」

 

 

 

 だが、フェアは手を退くことはなかった。炎の中に手を突っ込んでいる状態のように、フェアの手は火傷する。だが、それでも手を戻すことはない。

 

 

 

「大丈夫。これは私の役目だから…………この程度、あの子達の苦しみに比べれば、全然痛くない!!」

 

 

 

 フェアがずっと助けようとしてきたのは、フェアと同じ施設に捕まっていた子供達だ。

 

 

 

 子供達の多くは龍の適応者となるために実験をされたが、適応することはなく多くの者が命を落としてしまった。

 

 

 

 フェアはその白龍に適応して、龍の適応者になることはできた。

 

 

 

 その子供達のことを考えると、フェアにとってはこの程度の痛みはどうってことない。

 

 

 

 そしてまだ組織に捕まっている子供達を助けるために、フェアはこの術を破壊しなければならない。

 

 

 

 ここをどうにかすれば、子供達に会える気がする。会うための何かヒントを手に入れられる気がする。だから、ここを絶対に乗り越えるんだ。

 

 

 

 フェアは熱い球体の中から紙を取り出した。

 

 

 

 そしてフェアは紙を手に取ると、それを両手で掴み二つに破った。

 

 

 

 するとその紙は青い炎に焼かれて消滅する。

 

 

 

 それと同時にブラッドと戦っていた死人は苦しみ出すと、半透明になって消えていった。

 

 

 

 廊下にいた死人達も次々と消えていく。

 

 

 

 

「終わったのか……」

 

 

 

 雪山に現れた黒い雲も消えて、術は破壊されたようだ。

 

 

 

 こうしてアリエルが仕掛けた術は終わったのであった。

 

 

 

 

 二人が玄関に戻ると、イエティとクリスがいた。フェアはイエティの傷を治す。

 

 

 

 それを見たクリスが驚いた。

 

 

 

「これが龍の力なのか……」

 

 

 

 驚いているクリスを見てブラッドは聞く。

 

 

 

「ん? 知っていたわけじゃないのか?」

 

 

 

「私の力は万能じゃないからな。お前達が龍の適応者とは知っていたが、どんな力を持っているのかはしなかった」

 

 

 

 

 

 

 



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 第139話  【BLACK EDGE 其の139 魔術について】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第139話

 【BLACK EDGE 其の139 魔術について】

 

 

 

 

 

 死人からの襲撃を耐えたブラッド達は玄関で傷を負ったイエティの手当てをしていた。

 

 

 

 イエティは剣を持った死人の攻撃からクリスを守るために、二人の間に入り盾になった。それにより背中を切られて怪我を負ってしまったのだ。

 

 

 

「見せてください……」

 

 

 

 フェアがイエティに近づくと、傷を見せてもらう。イエティの傷は深く。今は激しく動けない状態だ。

 

 

 

 フェアは手を傷の方に向けると力を使う。フェアの手が光だし、その光で傷を照らす。

 

 

 するとイエティの傷は塞がっていく。

 

 

 

「…………これは……」

 

 

 

 それを見ているクリスが驚いた。そんな驚いているクリスにブラッドは説明する。

 

 

 

「これがフェアの龍の力だ。俺とは違い、フェアにあってる優しい力だろ」

 

 

 

 ブラッドは自慢げに言った。

 

 

 

 ブラッドの説明を聞いたクリスは納得していない部分もあるようだが、反論はしない。

 

 

 

 今度はブラッドが質問した。

 

 

 

「てか、お前は俺たちが龍の適応者って知ってたんなら、こういうことも出来ること知ってたんじゃないか?」

 

 

 

 だが、クリスは首を横に振った。

 

 

 

 

「私の力は万能じゃないからな。特殊な目であらゆる可能性を見ることができる。それだけなんだ……」

 

 

 

「あらゆる可能性? そうだ。お前の魔術はなんなんだ。未来が見れたり、核の場所を調べたり……?」

 

 

 

 魔術は龍の力とは違う。

 

 

 

 そして何人もの術師と戦ってきたブラッドには、クリスの力が少し他のものとは違うもののように感じていた。

 

 

 

 するとクリスはイエティの治療中がまだかかると思って、階段に腰をかけて座った。

 

 

 

「私の力は魔術の中でも異質だ。だからアリエルに狙われてる」

 

 

 

「そうだ。あの紙についても気になるんだ。なんだったのか、アリエルについても…………」

 

 

 

「質問は一つずつにしてくれないか?」

 

 

 

「あ、ああ、すまん」

 

 

 

 ブラッドもクリスの隣に座った。

 

 

 

「まず魔術について教えよう。君たちはどこまで知っている?」

 

 

 

「俺は全く知らない。グリモワールの幹部が使っているということしか……」

 

 

 

「そうか、ならまずそこからだな。魔術は人の核。魂みたいなものだ。そこにある力だ。それを引き出すためにある儀式を行う」

 

 

 

「儀式?」

 

 

 

「そう、その儀式を行うことでその核にある力を引き出すことができるようになる」

 

 

 

 ブラッドは自分の手を見る。

 

 

 

「俺にも出来るってことか?」

 

 

 

「出来はする。だが、おすすめはできない。あまり便利なものじゃないからな」

 

 

 

 

 



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 第140話  【BLACK EDGE 其の140 魔女と呼ばれる理由】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第140話

 【BLACK EDGE 其の140 魔女と呼ばれる理由】

 

 

 

 

「おすすめはしない……か、どつしただ?」

 

 

 

 ブラッドが質問するとクリスは答える。

 

 

 

「魔術は力を得る代わりに何かを失うことが多いの。必ずしも便利なものとは限らない」

 

 

 

 それを聞いたブラッドは今まで戦ってきた相手のことを思い出す。

 

 

 

 シャドーは能力発動中に光を浴びると痛みを感じるし、グリムはあの死神が一日中ついて回るということだ。

 

 

 

「じゃあ、クリス。お前の魔術にもそれが?」

 

 

 

「ええ、私のは……これよ」

 

 

 

 そう言ってクリスが取り出したのは、血の入った瓶だ。指程度の大きさしかない瓶に血が入れられていた。

 

 

 

 これは死人との戦闘中に核を発見するためにクリスが飲んでいたものと同じものだ。

 

 

 

「私の力は血を必要とする。発動するためには血が必要なの」

 

 

 

 それを聞いたブラッドは屋敷に訪れた最初の時を思い出した。

 

 

 

 イエティを攻撃したブラッドに仕返しだと、クリスが攻撃してきたをその時ブラッドの血をクリスは舐めていたのだ。

 

 

 

「じゃあ、最初の俺の血も……」

 

 

 

「そう、あれは客室でも水晶の時に使わせてもらったわ」

 

 

 

 客室に通されたブラッド達はクリスに未来を見せると言われて、水晶を取り出した。そしてそこに荒らされた屋敷の姿が写っていたのだ。

 

 

 

 だが、まだ疑問はある。

 

 

 

「お前の戦闘力は魔術は関係ないのか?」

 

 

 

 クリスは爪を剣のように使い、敵を切り裂いていた。その爪の一撃はブラッドの血を流すほど強力だ。

 

 

 

「あれもまぁ、副作用のようなものね……」

 

 

 

 クリスはそう言って誤魔化した。だが、ここからが本題だ。

 

 

 

「それでアリエルについてね」

 

 

 

 今はクリスの戦闘能力よりもアリエルの正体についての方が重要だ。

 

 

 

 この屋敷に来るように指示したのはアリエルだ。そして屋敷の主に紙を渡せと言われた。

 しかし、その紙を私は瞬間、死人が現れて襲われたのだ。

 

 

 

「アリエルの目的は私の魔術よ?」

 

 

 

「魔術が目的だと……?」

 

 

 

「ええ、アリエルがなんで呼ばれているか知ってる?」

 

 

 

 アリエルがなんで呼ばれていたのか。

 

 

 

「魔女だったか……それが関係しているのか?」

 

 

 

 するとクリスは頷いた。

 

 

 

「彼女がそう呼ばれているのは、彼女と関わった人間が行方不明になっているから。そしてその人間達は皆、彼女の魔導書にされてるのよ」

 

 

 

「な!? 魔導書に?」

 

 

 

 人間を魔導書に変える。意味がわからない。

 

 

 

「アリエルは術師を本にして、その力をストックしている。だから彼女はいくつもの力を持っている。そして次は私の力を狙っているの」

 

 

 

 

 

 



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 第141話  【BLACK EDGE 其の141 術師を本へ】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第141話

 【BLACK EDGE 其の141 術師を本へ】

 

 

 

 

「アリエルは術師を本にして、その力をストックしている。だから彼女はいくつもの力を持っている」

 

 

 

「術師を本にしている!?」

 

 

 

 ブラッドは驚く。術師を本にする。そんなことができるとは……。

 

 

 

「それが彼女の術なの。多くの術師を魔導書に閉じ込めることで他者の魔術をアリエルは使っている」

 

 

 

「じゃあ、さっきの死人も誰かの魔術ってことか……」

 

 

 

 死人は先程の襲撃の時に襲ってきたゾンビ達だ。紙を核として一定範囲に死人達が現れて襲ってきた。

 

 

 

「そういうこと……しかもアリエルは他者に術を無理矢理使わせているだけ、彼女自身にはリスクはない」

 

 

 

「そうか、だからあれだけ強力な術なのか……」

 

 

 

 魔術にはリスクがある。能力にはなんらかのリスクがあったりするのだ。だが、アリエルは魔導書に閉じ込めて術師に無理やり能力を使わせている。

 だからアリエルには魔術のリスクをなく能力を使うことができる。

 

 

 

 死人を操る能力はかなり強力な力だった。だが、それだけ強力な力だというのに範囲も広く、アリエルは離れた場所から発動できたのは、魔導書を使っているからだろう。

 

 

 

「それでその魔導書に加えるためにお前を狙っているのか」

 

 

 

「そういうこと……私の力を魔導書の一つにしようとしている」

 

 

 

 クリステルの力はかなり強力な力だ。未来と過去を見ることができる。

 

 

 

 ブラッドとフェアが龍の適応者だということを知っていたし、水晶を使って屋敷が荒らされる様子を見ることもできていた。

 そして死人の術の核がどこにあるのかを調べたりもしていた。

 

 

 

 そういうことができるかなり強力な力だ。

 

 

 

 だからその力をアリエルは狙っている。

 

 

 

 ブラッドとクリスが話している中、イエティの治療が終わったフェアがこっちにやってきた。

 

 

 

 イエティは傷が治ったことに驚いて、傷口をじっと見つめている。

 

 

 

 フェアは近づいてくると、クリスに頭を下げた。

 

 

 

「クリスさん、お願いがあります」

 

 

 

「何かしら……」

 

 

 

 フェアが近づいてくるとクリスは立ち上がった。ブラッドもそれにつられて立ち上がる。

 

 

 

 フェアは頭を下げたままお願いした。

 

 

 

「あなたの力を貸してください。私の友達を……子供達の居場所を教えてください!! 私はあの子達を助けたいんです!! そのために私はここに来たんです!!」

 

 

 

 フェアは力一杯に言った。そう、ここに来た目的はそのためだ。

 

 

 

 するとクリスは答える。

 

 

 

 

 

 

 

 



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 第142話  【BLACK EDGE 其の142 術師を本へ】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第142話

 【BLACK EDGE 其の142 術師を本へ】

 

 

 

「あなたの力を貸してください。私の友達を……子供達の居場所を教えてください!! 私はあの子達を助けたいんです!! そのために私はここに来たんです!!」

 

 

 

 フェアは頭を下げてお願いする。それを聞いたクリスは短い髪を手で触ると、

 

 

 

「そうね。あなたにはイエティの傷を治してもらったことだしね。良いでしょう、私の力を貸してあげる」

 

 

 

 そう言ってクリステルが力を貸してくれることになった。

 

 

 

 ブラッド、フェア、クリス、イエティの三人は屋敷の二階の部屋から隠し通路を使い、屋根裏部屋にやってきた。

 

 

 

 そこは不思議な雰囲気の漂う部屋であり、窓は一つもなく、蝋燭で灯りが灯されている。部屋の中央にはテーブルがあり、紫色の布がテーブルに引かれている。そしてその上に水晶が置いてあった。

 

 

 

 だが、他の部屋は死人が現れたことであれているというのに、この部屋は荒らされた形跡はなく。死人がやってきた様子はない。

 

 

 

「どうしてここは無事なんだ?」

 

 

 

 不思議に思ったブラッドが聞くと、

 

 

 

「襲撃が来ると分かってすぐ、ここに結界を張らせにイエティに行かせたからな」

 

 

 

 そういえば、死人が現れる前にクリスはイエティをどこかに向かわせていた。それがここだということか。

 

 

 

 だが、結界とはなんなのか。それもクリスの魔術なのだろうか。だが、クリスはブラッドが質問する前に、部屋の奥に行き、みんなと向かい合うように座る。

 

 

 

「さてと、それであなたの知りたいのは子供達の行方だっけ?」

 

 

 

「はい! そうです!!」

 

 

 

 フェアが元気よく返事すると、クリスはテーブルの下から注射器を取り出した。

 

 

 

 そしてそれをフェアに投げる。フェアはそれを受け取ると首を傾げた。

 

 

 

「これは…………?」

 

 

 

「あなたの血を渡しなさい。それを術に使う」

 

 

 

 それを聞いたブラッドは驚く。そしてクリスを怒った。

 

 

 

「おい、なぜ、クリスから血を抜く必要がある!! さっき持ってたみたいに、血は持ってないのか?」

 

 

 

 するとクリスはテーブルの下から箱に綺麗に入れられた血の入った瓶を取り出した。

 

 

 

「えぇ、血ならいっぱいあるわよ」

 

 

 

「じゃあなぜ!!」

 

 

 

「私はね。その子の覚悟が見たいの、血は注射一本分、大き量ではない。そんな血を抜く覚悟もないから、私の力は使ってあげる気はない」

 

 

 

「イエティを治しただろ」

 

 

 

「それはそれよ」

 

 

 

 ブラッドがクリスと話していると、フェアは注射を自分の腕に刺した。

 

 

 

「これくらい、あの子達のためなら!!」

 

 

 

 

 

 

 

 



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 第143話  【BLACK EDGE 其の143 血を抜いて】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第143話

 【BLACK EDGE 其の143 血を抜いて】

 

 

 

「これくらい、あの子達のためなら!!」

 

 

 

 フェアは自分の腕に注射器を刺すと、血を抜き取る。

 クリスが満足そうにしている中、ブラッドは心配そうに見守る。そしてすぐに血は抜き終わった。

 

 

 

「これで良いんでしょ!」

 

 

 

 フェアはクリスに血の入った注射器を渡す。クリスはそれを受け取ると、早速蓋を開けて、血を飲み出した。

 

 

 

 そして血を飲み終えたクリスは口元を拭くと、フェアに伝える。

 

 

 

「さっき覚悟を試すって言ったわね。あれは嘘よ」

 

 

 

 それを言われたフェアは驚く。ブラッドはクリスに怒鳴るがそんなことは無視してクリスは続ける。

 

 

 

「この雪山に来た時点で覚悟があることは分かってた。あなたは本当に子供達を助けたいのね」

 

 

 

 クリスに言われてフェアは頷く。

 

 

 

「はい!! 助けたいです!!」

 

 

 

 それを聞いたクリスは満足そうな顔をした。

 

 

 

「まぁ、あなたの血が必要だったのは、本当のことよ。あなたの血であることであなたに関係する人物を探す力がさらに増えるから」

 

 

 

 それを聞いてブラッドは大人しくなった。フェアをいじめるだけのために血を抜き取ったのかと思ったが、それにしっかりと意味があり安心した。

 

 

 

 クリステルの能力は見たい対象の関係する血を飲むことで能力を発動することができる。

 

 

 

 例えばブラッドの血を飲むことで、ブラッドの未来を見ることができた。それはブラッドだけを見るのではなく、ブラッドの周囲を見ることもできるため屋敷が荒れているという未来を見れた。

 

 

 

 そのような形でフェアの血を抜き取ったことにも意味があったのだ。

 

 

 

 そしてついにクリスは力を使う。クリスの身体から白い湯気が出てくる。そしてクリスはついに能力を発動させた。

 

 

 

「………………これは……」

 

 

 

 しばらく経ってクリスは能力で子供達の居場所がわかったのか、喋り出した。

 

 

 

「どこにいたんですか!!」

 

 

 

 フェアはクリスに顔を近づけて子供達の居場所を催促する。

 すると、クリスは答えた。

 

 

 

「王都の隣にある街、カメリアの地下室に子供達はいる」

 

 

 

「カメリア…………そこに子供達が…………」

 

 

 

「ええ、でも急いだ方がいい。子供達がいるカメリアという街に奇妙な連中が近づいている。何か危険な雰囲気だ……」

 

 

 

「き、危険ですか…………」

 

 

 

 フェアはついに子供達の居場所を知ることができた。これで子供達を助けることができる。だが、奇妙な連中が近づいている!?

 それとは一体!?

 

 

 

 

 

 

 

 



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 第144話  【BLACK EDGE 其の144 新たな旅立ちに向けて】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第144話

 【BLACK EDGE 其の144 新たな旅立ちに向けて】

 

 

 

 

 子供達の居場所をクリスの能力により、王都の隣にある街カメリアの地下であると知ったフェア達は早速カメリアに向かうために、準備をしていた。

 

 

 

「クリスさん、ソリを貸してくれてありがとうございます」

 

 

 

 フェアはクリスに礼を言う。

 

 

 

 ブラッド達は雪崩に巻き込まれた時にソリを失った。そして他にも様々なものを無くしてしまったのである。

 だが、今回はクリスが親切にソリや必要なものを提供してくれた。

 

 

 

「これもお礼だ。それに急ぐんだろ」

 

 

 

「はい!」

 

 

 

 クリスの能力で分かった情報はもう一つあり、子供達もの元に怪しい連中が向かっているというものだった。彼らが何者なのかは分からないが、急いで向かった方がいいのは確かだろう。

 

 

 

「フェア、荷物は積み終わったぞ」

 

 

 

 ソリに荷物を積んで準備をしていたブラッドが、フェアを呼ぶ。

 

 

 

「うん、それじゃあ、クリスさん、また!」

 

 

 

 フェアは手を振ってブラッドの方へ向かう。ブラッドは犬にソリをつけるとソリに乗った。

 フェアも乗ろうとするが向きのせいで足元が不安定で乗るのに苦戦していると、ブラッドが手を伸ばす。

 

 

 

「ほら」

 

 

 

 ブラッドの手を取ったフェアはソリに乗り込んだ。

 

 

 

 ブラッドはソリを動かす前に屋敷の入り口の方を見る。そこにはクリスとイエティが二人の旅立ちを見守っていた。

 

 

 

「また近くに来ることがあったら寄るぜ!」

 

 

 

 ブラッドはそう言うとソリを動かした。クリスは手を振ることなく腕を組んで見守っている。イエティは大きな腕を振りながら見送ってくれた。

 

 

 

 ここは雪山の奥。簡単に人が来れるような場所ではない。しかし、クリステルもイエティも人を嫌っているというわけではない。

 どうしてこんなところに住んでいるのかは分からないが、近くに来た時は来ようと思う。

 そうすれば二人も少しは寂しさから解放されるだろう。

 

 

 

 そしてソリは進んで山を下っていく。今回はルートを変えることなく順調に進んでいくことができた。

 

 

 

 そして屋敷が見えなくなった頃、フェアが心配そうにブラッドに聞いた。

 

 

 

「ねぇ、ブラッド…………」

 

 

 

「ん、なんだ?」

 

 

 

 ブラッドは振り返ることなく答える。

 

 

 

「私、本当にみんなのことを救えるのかな?」

 

 

 

 そしてフェアはそんなことを聞いてきた。それに対してブラッドは答える。

 

 

 

「ああ、救えるとも……いや、救うんだよ。今までも頑張ってきた。そしてこれからも頑張るんだろ」

 

 

 

 

 

 

 

 



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 第145話  【BLACK EDGE 其の145 雪山を超えて】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第145話

 【BLACK EDGE 其の145 雪山を超えて】

 

 

 

 

 雪山を降りたブラッド達はジャスマンという港町にたどり着いた。

 

 

 

 この村から出ている船に乗り、雪山の大陸コスモスから王都のある大陸に移動する。川を越えた向こう側にあるナンフェア村を目指す。

 

 

 

「じゃあ、船の予約をする前にこいつらを返すか」

 

 

 

 ブラッドはそう言って三匹の犬を見た。ソリを引いてくれていたホワイトウルフ達だ。

 

 

 

 雪山だけの短い旅だったが、雪崩から助けてもらったりと色んなことがあった。

 だが、彼らは借りた犬だ。

 

 

 

 本来の飼い主はお店の店主であり、今回はソリの移動を手伝ってもらうために同行してもらっていた。

 だから、彼らとはここでお別れなのだ。

 

 

 

「…………ジャック、ロデー、デューク……」

 

 

 

 フェアは三匹の犬に抱きつく。

 

 

 

  ホワイトウルフは顔が怖いと有名な犬なのだが、フェアはこの子達とかなり仲良くなっていたみたいで、別れを惜しんでいた。それは三匹も同じだ。

 

 

 

 抱きつくフェアを優しく舐めている。

 

 

 

 そんな様子をブラッドは遠くから見守っていた。

 

 

 

 すると、一匹の犬がフェアから離れて、ブラッドの方へ来た。そして短く吠える。

 

 

 

「なんだよ?」

 

 

 

 ジーッとブラッドのことを見ている。

 

 

 

「お前は…………ジャックか? ロデーか?」

 

 

 

 犬は返事することはない。

 

 

 

「デュークか?」

 

 

 

 最後の名前に反応して、犬は吠えた。

 

 

 

 デュークだったらしい。

 

 

 

「俺を応援してくれるのか?」

 

 

 

 ブラッドが聞くとデュークは吠える。

 

 

 

 デュークはダレオさんと雪山を探検したことがある犬で、ダレオさんは昔この犬に救われたことがあると言っていた。

 

 

 

 そして今回の旅でも雪崩にあった時、ブラッドを助けてくれたのはこの犬だ。

 

 

 

 ブラッドはズボンの裾を上げる。そして噛まれた傷を見せた。

 

 

 

「これがお前が助けてくれた時の傷だ」

 

 

 

 雪に埋まった時にデュークが俺を雪から出してくれた。デュークがブラッドの足を噛んで雪から救出してくれたんだ。

 

 

 

「この傷に誓って、必ずフェアを守り切ってやるさ」

 

 

 

 ブラッドがそう告げるとデュークは吠えずに、それでも納得したように帰っていった。

 

 

 

 そしてブラッド達は犬を返すと、船を予約して船に乗り川を渡り出す。

 

 

 

 ここまで来るのにはかなりの時間がかかったが、戻るのにはなぜか時間が早く感じた。

 実際に時間は同じ程度だ。しかし、なんだか全てが順調に進み、来た時よりも早く移動できているような感覚があった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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 第146話  【BLACK EDGE 其の146 兄を探して】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第146話

 【BLACK EDGE 其の146 兄を探して】

 

 

 

 

 いつからだろう。平民だった俺が王族になったのは…………。

 

 

 

 いつからだろう。俺が今こうしているのは…………。

 

 

 

 

 

「ブレイン様!!」

 

 

 

 馬で移動中、後ろにいる部下が近づいてきた。

 

 

 

「どうした?」

 

 

 

「国王からの帰還命令です」

 

 

 

「…………そうか」

 

 

 

 ブレインは部下が持ってきた手紙を読んだ後、馬を反転させる。

 

 

 

「これより王都ガルデニアに帰還する! 皆ついて来い!!」

 

 

 

 部下達は敬礼すると、ブレインを先頭にして馬を走らせた。

 

 

 

 

 

 

 俺は王族の血を引いているわけでもなんでもない。なのになぜ、王子になったのか……。

 

 

 

 捨て子だった俺をある男がひろい育ててくれた。そこは小さな家で兄弟と共に育った。平和な日々だったことを覚えている。

 

 

 

 しかし、ある時俺は妹と共に引き取られた。残る一人の兄弟を除いて…………。

 そこからはよく分からない。気づいた時には王族となっていた。何度も何度も貴族を経由して養子となり、それを繰り返した。

 

 

 

 引き取られてからは家に出ることはあまりできず、屋敷の中での生活が続いていたが、王族になってしばらく経ち、外に出ることがやっと許された。

 

 

 

 それから治安を守るという名目で兵を連れて、王国中を旅することが許された。

 外に出ることができるようになって、一番最初に向かったのは最初に住んでいた家とその近くの村だった。

 

 

 

 だが、俺はそこについて衝撃を受けた。

 

 

 

 その村は以前住んでいた面影はなく。家も何もかもなくなっていた。噂によれば盗賊に襲われたという話だったが本当はどうだったのか分からない。

 

 

 

 盗賊に襲われただけでここまで村が悲惨になるものだろうか。元々村があったはずの場所は、大きなクレーターができており、地形自体が変わってしまっていた。

 

 

 

 その足で住んでいたはずの、その家は火事で燃えたみたいで黒焦げになってしまっていた。

 

 

 

 そこにもしかしたらもう一人の兄弟がいるかもしれない。そう思ったのだが…………。

 

 

 

 兄は盗賊に襲われてしまったのか、それとも無事でどこかで暮らしているのか。

 

 

 

 旅が許されてから、兵を連れて多くの場所を見て回った。だが、それらしい人物は全然見つからなかった。

 

 

 

 結局のところ、今回の旅はこれで終わってしまいそうだ。王の命令には逆らえない。

 

 

 

 今はこの国の王が俺の父親だ。そして王は俺を次の王にしようと考えているらしい。

 

 

 

 反対する気はない。だが、なぜ俺なのだろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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 第147話  【BLACK EDGE 其の147 ガルデニア】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第147話

 【BLACK EDGE 其の147 ガルデニア】

 

 

 

 川を渡ったブラッドとフェアは馬車を手に入れて、プロタゴニストの森を超えた。

 

 

 

 そして王都ガルデニアまで戻ってきた。

 

 

 

「カメリアまでは後どれくらいかかるの?」

 

 

 

 検問を待っている間、フェアがブラッドに聞く。

 

 

 

「ああ、王都から北に進んで、半日で着くところにカメリアという街がある。目的地はそこだな」

 

 

 

 目指す街の名前はカメリアだ。その街の地下に子供達がいるとクリスが教えてくれた。

 

 

 

「でも、出発前にここで準備をしないとな」

 

 

 

 ブラッドはフェアと共に王都に入ると馬車を止めて、買い出しをすることにした。

 

 

 

 必要なものを買っていると、見覚えのある人物がやってきた。

 

 

 

「よぉ、ブラッドとフェアじゃないか」

 

 

 

「ヒューグか」

 

 

 

 そこにいたのは大剣を背負った男ヒューグだった。ヒューグはブラッド達を見つけて声をかけてきた。

 

 

 

「どうだった、子供達は助けられたのか?」

 

 

 

 ヒューグが聞くとフェアが答えた。

 

 

 

「これから助けに行くんです。やっと居場所が分かりましたから」

 

 

 

「そうか、頑張れよ」

 

 

 

 ヒューグはフェアの頭を強く撫でる。

 

 

 

 フェアは撫でられながらヒューグの方を見る。

 

 

 

「ヒューグさんも力を貸してくれませんか?」

 

 

 

 これからどんな相手と戦うことになるか分からない。仲間は多い方がいいだろう。それにヒューグはブラッドと同じくらいの戦闘能力を持っている。

 

 

 

 グリモワールが出てきたとしても、ヒューグなら戦うことができるだろう。

 

 

 

「俺が…………か」

 

 

 

「はい、ヒューグさんがいれば…………」

 

 

 

 しかし、フェアがそこまで言ったところでブラッドが止めた。

 

 

 

「すまんな。怪しい連中が近づいてるって聞いて、少し焦ってるんだ。だが、お前はここを離れるわけにはいかないしな」

 

 

 

 ブラッドが言うとヒューグは寂しい顔で頷いた。

 

 

 

「ああ、すまないな。フェア。俺は力になれないんだ……」

 

 

 

「いえ、私こそすみません…………事情も知らないのに……………」

 

 

 

 そうだ。ヒューグは王都でやることがあるためここに残っているんだ。フェア達の問題に巻き込むわけにはいかない。

 

 

 

 しばらく三人で話しながら買い出しをした後、ヒューグと別れて、ブラッド達は馬車に戻った。

 

 

 

 そしてカメリアに向けて再び出発した。

 

 

 

 ブラッドとフェアの二人だけでグリモワールの施設に潜入することになる。戦力がどれくらい集まっているかは分からないが、危険な戦いになるだろう。

 

 

 

 

 

 



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 第148話  【BLACK EDGE 其の148 カメリアへ向けて】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第148話

 【BLACK EDGE 其の148 カメリアへ向けて】

 

 

 

 

 王都ガルデニアを出発したブラッドとフェア。そんな二人が目指すのはカメリアという街だ。そこに子供達がいるとクリスが言っていた。

 その言葉を信じて先を急ぐ。

 

 

 

 そしてついに辿り着いた子供たちがいるという街カメリアだ。

 

 

 

「ここがカメリア……」

 

 

 

 そこは煉瓦造りの家が多く立ち並ぶ街で、3階建ての建築も多く並んでいる。建設途中の王都と比べるともしかしたらこっちの方が栄えているのかもしれない。

 

 

 

 そんなカメリアの街に着いたブラッド達だが問題があった。

 

 

 

 馬車を止めた二人は馬車の中で話し合う。

 

 

 

「カメリアには着いた。だが、それ以上の情報がないんだよな」

 

 

 

 そう、この街の地下に子供達がいるとクリスには教えられたが、それ以上の情報はクリスでも得ることができなかったのだ。

 

 

 

「まずは情報収集か……」

 

 

 

 そして二人は情報を得るために街を探索することにした。そして早速、

 

 

 

「お、よぉ!! お前ら久しぶりだな!!」

 

 

 

「ん、お前は……クロウか……」

 

 

 

 そこにいたのは赤毛の少女クロウ。

 

 

 

「馬車で来たかったのはこの街だったのか」

 

 

 

 彼女はナンフェア村でブラッド達と出会い、馬車を譲った人物だ。どこかに急いで向かう用事があったようだ。

 

 

 

 するとクロウは首を横に振る。

 

 

 

「いや、王都に行くのが目的だったんだけど、途中でその必要がなくなってな。それでここにいるんだ」

 

 

 

 クロウも何か事情があって旅をしていたようだ。知っているかは分からないが、一応クロウにも聞いてみることにした。

 

 

 

「なぁ、この街に地下ってあるか? 俺たちはそこを探しているんだが」

 

 

 

「地下……か。俺達もそこに用があって探してるんだ。どうせなら一緒に探さないか?」

 

 

 

 地下をクロウも探している?

 

 

 

「なんで地下を探してるんだ?」

 

 

 

 ブラッドが聞くと、横から男性が現れた。

 

 

 

「あ〜、まぁ、地下の調査ってやつかな」

 

 

 

 その男は青髪でかなり体格がいい。ヒューグと同じくらいの大きさだ。

 

 

 

「あなたは?」

 

 

 

 ブラッドが聞くとその男は頭を掻きながら答える。

 

 

 

「フェザントだ。ま、こいつの上司みたいなもんだ」

 

 

 

 フェザントはそう言うとクロウの肩に手を置いた。クロウは嫌そうに肩を動かしてフェザントの手を退ける。

 

 

 

「ま、あんたらも地下探してるんなら、一緒の方がいいんじゃないか?」

 

 

 

 フェザントはそう言ってくる。確かにそうだ。

 

 

 

「分かった。そうしよう」

 

 

 

 こうして一緒に地下を探すことになった。

 

 

 

 

 

 



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 第149話  【BLACK EDGE 其の149 地下を探そう】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第149話

 【BLACK EDGE 其の149 地下を探そう】

 

 

 

 

 ブラッドとフェアはカメリアでクロウ、そしてフェザントという人物と出会った。

 

 

 

 そして二人もカメリアにある地下を探すために入口を探していた。

 

 

 

 

「そーいえば、お前らはなんで地下を探してるんだ?」

 

 

 

 クロウが歩きながらブラッド達に聞く。それに対してフェアが答えた。

 

 

 

「私達は子供達を探してるんです?」

 

 

 

「子供達? 地下にか?」

 

 

 

 クロウは不思議そうに聞いた。それもそのはずだ。普通の考えて子供が地下にいるなんてことは考えられない。

 

 

 

「今は捕まってて、みんなを助けたいんです」

 

 

 

 フェアの言葉を聞いたフェザントが割り込んできた。

 

 

 

「ほぉ、なかなか仲間思いじゃねーか。ちっこいの」

 

 

 

 ちっこいのと言われてフェアは不満があるようだが、言い返すことはしない。

 

 

 

 フェザントは小さな声で呟く。

 

 

 

「あいつら、子供を誘拐してるのか……」

 

 

 

 その言葉には怒りを感じた。

 

 

 

「なんか言った? フェザント?」

 

 

 

 フェザントの独り言が聞こえたクロウが気になって聞き直す。

 

 

 

「いや、なんでもない……」

 

 

 

 だが、フェザントはそれに対して答えることはなかった。

 

 

 

「しかし、ここからどうやって探すか……」

 

 

 

 ブラッドはそう言って街を見渡す。

 

 

 

 地下を探している人を見つけて、力を貸してもらえるのはデカい。しかし、これだけ大きな街だ。そう簡単には見つかるとは考えられない。

 

 

 

 するとクロウが楽しそうにジャンプしながら言う。

 

 

 

「聞き込みだ! 聞き込み!! 探偵みたいな!!」

 

 

 

 それを聞いたフェザントはやれやれという表情だ。

 

 

 

「めんどーだなぁ〜」

 

 

 

 だが、今やれる手段はこれしかない。フェアは三人の前に出ると三人の方を向く。

 

 

 

「大変かもしれません。でも、それでも地下を見つけないといけないんです」

 

 

 

 ブラッドは頷く。

 

 

 

「ああ、そうだな。やろう」

 

 

 

 ブラッドはそうフェアに言う。

 

 

 

 クロウもやる気のようで、

 

 

 

「よーし! 馬車の時の恩もある!! 俺も全力で頑張るぜ!!」

 

 

 

 腰に手を当てて胸を張った。そこからは謎の自信で満ち溢れている。

 

 

 

 フェザントはめんどくさそうな顔をしているが、これしか手段がないと分かっているようで、素直に聞き込みを手伝ってくれるようだ。

 

 

 

「ま、それしかないしな」

 

 

 

 こうして四人で聞き込みを行うことになった。探す場所はカメリアにある地下。そこへ行くことができる入り口だ。

 

 

 

 四人はそれぞれ街を探索して聞き込みを行うことにした。

 

 

 

 



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 第150話  【BLACK EDGE 其の150 聞き込み大作戦】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第150話

 【BLACK EDGE 其の150 聞き込み大作戦】

 

 

 

 

 

 カメリアで地下へと行く入り口を探す三人は、情報を得るために聞き込みをすることにした。

 

 

 

 そして固まって聞き込みをしていても効果は薄いということで、二組に分かれることになった。

 

 

 

「じゃあ、何か分かったら教えてくれ」

 

 

 

 ブラッドはそう言いフェアを連れて別れる。

 

 

 

「ああ、そっちもなー!」

 

 

 

 クロウは手を振りながらフェザントと街のどこかへと向かっていった。

 

 

 

 クロウとフェザントがいなくなってから、ブラッドはフェアの方は向かずに喋りかける。

 

 

 

「フェア…………何か分かってもあいつらには何も教えるな……」

 

 

 

 それを聞いたフェアは不思議そうに聞き返してきた。

 

 

 

「え、なんで?」

 

 

 

「あいつら、怪しいぞ」

 

 

 

「怪しいって?」

 

 

 

 ブラッドは目立たない程度に周囲を見渡す。

 

 

 

「ついてはきてないか…………」

 

 

 

 そして再び歩き出した。

 

 

 

「あの二人も地下を目指してるって言ってたよな」

 

 

 

「うん、それは聞いたけど……」

 

 

 

「おそらく地下はグリモワールと関係のある場所だ」

 

 

 

「……ってことはグリモワールの刺客? でも、仮面は被ってなかったよ?」

 

 

 

 フェアは驚く。

 

 

 

「まだ分からない。グリモワールの刺客だとしたら俺たちを襲ってこないのはおかしいし、それに地下への入り口を探しているのもおかしい」

 

 

 

 そう、地下に子供達がいるということは、地下はグリモワールとなんらかの関係があるはずなのだ。

 

 

 

 だが、そんな場所を目指している二人は怪しすぎる。

 

 

 

 前にクロウとあった時のことを思い出しても、クロウは子供とは思えないほどの身体能力を持っていたし、馬車を手に入れてどこかに向かうことに強い使命感があった。

 

 

 

 二人がグリモワールの可能性もある。だが、そうとも言い切れない点もある。それは仮面と地下の入り口を知らないという点だ。

 

 

 

 ブラッドはグリモワールと対峙するときは大抵が仮面を被っている連中だ。しかし、二人は仮面を持っていなかった。

 それに地下への入り口を知らないというのも分からない点だ。

 

 

 

 それに…………

 

 

 

「あのクロウと一緒にいた男……」

 

 

 

「フェザントさんがどうしたの?」

 

 

 

「あいつはかなり強い。…………なんていうか……術師と何度も戦ってきたからこそわかるんだ。あのフェザントという男は只者じゃない……そんな感じがな…………」

 

 

 

 ブラッドの言葉を聞いたフェアは考えた後、

 

 

 

「分かった。あの二人には何か分かったとしても伝える情報には気をつけよう」

 

 

 

「ああ、そうした方が良さそうだ」

 

 

 

 

 

 



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 第151話  【BLACK EDGE 其の151 計画を実行】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第151話

 【BLACK EDGE 其の151 計画を実行】

 

 

 

 

「赤崎博士……よろしいですか?」

 

 

 

 真っ暗な部屋の中でモニターを見つめる白衣の男に、箒を持った女性が話しかけてきた。

 女性の姿は赤い髪にメイド服である。

 

 

 

「ああ、何かな?」

 

 

 

 男は振り返る。男の口にはスティックの飴が加えられており、喋るタイミングで手でスティックの部分を持つと飴を取り出してから喋った。そして喋り終えると口に戻す。

 

 

 

 メイドは頭を下げてから、ポケットの中から一枚の紙を取り出す。そしてそこには一人の男と少女の姿が写っていた。

 

 

 

「ターゲットを街で発見しました。これからどうしましょうか?」

 

 

 

 男はその写真を受け取ると、ジーッと見つめる。そしてしばらく考えた後、くるっと椅子を回転させて、モニターの方に顔を向けた。

 

 

 

「やっと到着したか…………街くたびれてしまいそうだったよ…………」

 

 

 

 男は口に入っている飴を歯で粉々にする。そして飴の無くなったスティックをテーブルの横にあるゴミ箱に吐き捨てた。

 

 

 

「ロジョン……これより計画を実行する。準備を進めろ」

 

 

 

「了解です」

 

 

 

 

 

 

 街を探索して聞き込みを進めていたブラッド達だが、なかなか有力な情報を得ることができなかった。

 

 

 

「まずこの街に地下があるのを知っていれば、グリモワールの関係者だから簡単には情報はないよな」

 

 

 

「でも、どうするの?」

 

 

 

 このままでは地下を探すにしても手がかりが一つもない。

 

 

 

「まぁ、後はあいつらから聞き出すしかないか」

 

 

 

「クロウとフェザントさん?」

 

 

 

 クロウとフェザントも地下を探している。だが、地下を知っているということはグリモワールとなんらかの関係があるということだ。

 

 

 

「でも、二人とも本当に知らなそうだったよ」

 

 

 

「そうだな。本気であの二人は知らないと思う。だが、手がかりは持っているはずだ……」

 

 

 

「手がかり?」

 

 

 

 フェアは首を傾げる。

 

 

 

「グリモワールと関係があって、地下を探しているということは、そこに目的があるということだ。どんな目的があって地下を探しているのかわかれば、地下の規模くらいは予想することができるかもしれない」

 

 

 

 今の段階ではブラッド達は地下がどれくらいの大きさなのかも分かっていない。しかし、地下の規模が分かれば、捜索範囲を絞れるかもしれない。

 

 

 

「一旦合流してみるか。あっちも何か情報を得てるかもしれないし、なかったとしても目的を問いただすだけでも情報になる」

 

 

 

 

 

 

 



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 第152話  【BLACK EDGE 其の152 案内人】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第152話

 【BLACK EDGE 其の152 案内人】

 

 

 

 

 

 ブラッドとフェアは何か情報を得るために、クロウとフェザントと合流を予定していた場所に戻ろうとしていた。

 

 

 

 合流場所は別れた場所であり、そこで一時間後に合流の予定だ。

 

 

 

 ブラッドとフェアはその場所を目指して歩いていると、突然前に女性が立ち塞がった。

 

 

 

 その女性は赤い髪にメイド姿をしており、手には箒を持っていた。

 

 

 

「お待ちしておりました。ブラッド様、そしてフェア様…………」

 

 

 

 そのメイドはそう言うと深く頭を下げた。

 

 

 

「あなたは?」

 

 

 

 フェアが聞くとメイドは答える。

 

 

 

「私は赤崎博士の助手兼メイドのロジョンと申します。あなた方を博士の元に案内しに来ました」

 

 

 

 ブラッドとフェアはお互いに顔を見る。

 

 

 

「赤崎博士……だったか。あんたの主人は何者だ? なぜ、俺たちについて知ってるんだ?」

 

 

 

 ブラッドが聞くとロジョンは答えた。

 

 

 

「グリモワールの科学者と言えば、分かりますか?」

 

 

 

 それを聞いたブラッドは戦闘体制を取り、フェアはブラッドの後ろに隠れる。しかし、ロジョンはそんな行動をとっても動揺する様子はなく。

 

 

 

「ご安心を……今の博士はグリモワールの命令ではなく、個人の考えで行動しております」

 

 

 

「どっちにしろ。グリモワールの関係者ってことだろ……安心しろって方が無理な話だ」

 

 

 

 するとロジョンは軽くため息を吐き、ポケットに手を突っ込む。

 

 

 

 それを見たブラッドは警戒するが、ロジョンのポケットから出てきたのは武器などではなく……。

 

 

 

「その紙は何だ……?」

 

 

 

 ブラッドは警戒しながら聞く。

 

 

 

 ロジョンが取り出したのは一枚の紙だ。その紙の大きさは十センチ程度でロジョンはその紙をブラッドとフェアに見えるように横にした。

 

 

 

「っ!?」

 

 

 

 そこに写っていたのは子供達の写真。均等に並べられたベッドで寝させられている子供達の姿だった。

 

 

 

「これで状況はお分かりになりましたか?」

 

 

 

 フェアとブラッドが見たのを知ると、ロジョンは写真をしまった。

 

 

 

「…………俺たちに何をしろと?」

 

 

 

 ブラッドが聞くとロジョンは答える。

 

 

 

「先程申した通り、赤崎博士があなた方をお待ちしております。ご案内いたしますので、ついて来てください」

 

 

 

 そう言うとロジョンは歩いていく。

 

 

 

 ブラッドとフェアはそんなロジョンの後ろをついていく。

 

 

 あの写真は脅しだ。逆らえば子供達に危害を加えるという風の警告と考えられる。そうなるとこれを無視することはできなかった。

 

 

 

 

 

 



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 第153話  【BLACK EDGE 其の153 目隠し】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第153話

 【BLACK EDGE 其の153 目隠し】

 

 

 

 ロジョンの後をついていくブラッドとフェア。二人がたどり着いたのはカメリアにある小さな宿だった。

 

 

 

 ロジョンが入ってくると、その宿の店主はロジョンを一瞬見た後、中へと通す。そして宿の一階にある一番奥の部屋に入った。

 

 

 

 部屋にブラッドとフェアも入ると、ロジョンは扉を閉める。

 

 

 

「さてと……ここから先はお二人にはお見せできません」

 

 

 

 それを聞いたブラッドは突っかかる。

 

 

 

「なんだと……」

 

 

 

 するとロジョンは箒をおくと、部屋の棚に置かれた目隠しを持って来た。

 

 

 

「これより先は組織の重要な拠点の一つになります。しかし、敵であるあなた方にその場所への行き方を教えるわけにはいきません」

 

 

 

 最もの理由だ。そしてロジョンが目隠しを持っているということは……。

 

 

 

「それで視界を塞げってことか」

 

 

 

 ブラッドが言うとロジョンは深くお辞儀をした。

 

 

 

「その通りでございます。お客様であるお二人をこのようなやり方でご招待することをお許しください」

 

 

 

「……客か…………何のつもりかはわからんが、これをつけろってことは、敵のままなのは変わらないってことだな」

 

 

 

 しかし、ブラッドとフェアは子供達の写真を見せられてここまで来た。二人にとって子供達は人質だ。

 

 

 

 それをチラつかされては抵抗することはできない。

 

 

 

 フェアはブラッドに

 

 

 

「ここは諦めよ。……子供達のためにも……」

 

 

 

 そう言って不安そうにブラッドの服の裾を掴んだ。

 

 

 

 ブラッドはロジョンに質問する。

 

 

 

「この目隠しをするのは拠点を分からなくするため……それだけだな?」

 

 

 

 するとロジョンは頷く。

 

 

 

「はい。私はその危険性がなくなれば、すぐに目隠しを外しても構いません」

 

 

 

 本当に信用して良いのだろうか……いや、信用して良いはずがない。グリモワールの関係者なのだから……。

 

 

 

 しかし、今はこのロジョンに抵抗することはできない。それは子供達がどうなっているのかがわからないからだ。

 

 

 

「分かった……」

 

 

 

 ブラッドはロジョンから目隠しを受け取る。そしてフェアの目につけてあげると、自分の目もそれで隠した。

 

 

 

 真っ暗で何も見えない。そんな中、フェアが手を握ったのが分かった。

 

 

 

 どこに連れて行かれるのか分からない現状。二人を違う場所に連れて行くということも考えられる。

 だが、こうして二人が一緒にいれば、離れさせられることもない。

 

 

 

 二人はこれからどこに連れて行かれるのか。暗闇の中恐怖していた。

 

 

 

 

 



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 第154話  【BLACK EDGE 其の154 地下へ】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第154話

 【BLACK EDGE 其の154 地下へ】

 

 

 

 

「それでは行きます」

 

 

 

 ロジョンがそう言うと、ブラッドとフェアの背中を押して、進んでいく。部屋の扉を開けて廊下に出たのは分かったが、それからしばらく進み、どこに進んだのかわからなくなるくらい。

 

 

 

 廊下を歩かされた。そしてどこかの扉を開くとその中へと入らされて、しばらく進んだところで止まると、何かが動く音がした。

 

 

 

 その音は機械音であり、しかし、ブラッドが今まで聞いて来た銃の音よりもさらに大きい、そして二人の乗っている床が揺れる。

 

 

 

 しばらく揺れた後、また二人は歩かされる。そしてしばらく進んだ後、ロジョンが言った。

 

 

 

「では目隠しを外しても構いません」

 

 

 

 二人はそれに従って目隠しを外す。真っ暗な世界から、明るい世界へと変わり二人は目を細める。

 

 

 

 そしてやがて目が慣れて来て目を開くと、そこは巨大な地下施設だった。

 

 

 

 壁や床は鉄でできており、おそらくはグリモワール以外の組織では再現できない技術だろう。

 これも銃などと同じように、他の組織では手に入らないような加工がされている。

 

 

 

 天井には光を発する機械が取り付けられており、それもグリモワール特有の技術だ。

 

 

 

「それではこちらでございます」

 

 

 

 ロジョンはそう言うと先へと歩いていく。

 

 

 

 この地下施設は巨大な道がずーっと先まで続いており、王都の大通りと同じくらいの幅の道が先が見えないほど続いている。

 

 

 

 それだけ巨大な施設だ。

 

 

 

 そんな施設を三人は進んでいく。

 

 

 

 この道は一体どこまで続いているのだろう。

 

 

 

 どこまでいくのかと考えていると、ロジョンは途中で足を止めた。

 

 

 

 そして二人の方を振り返る。

 

 

 

「ではもう少し私に近づいてください」

 

 

 

 ロジョンはブラッドとフェアにそう伝える。二人は理解できないまま、とりあえず言うことを聞くことにした。

 

 

 

 ブラッドとフェアはロジョンに近づくと、ロジョンはポケットの中からリモコンを取り出した。

 

 

 

「落下しますのでご注意ください」

 

 

 

「え……?」

 

 

 

 ロジョンはそう言った後、リモコンについたボタンを押した。すると、三人の乗っていた床は突然無くなって、三人は下へと落下する。

 

 

 

「もっと早く言えーーーー!!」

 

 

 

 三人は落下した後、ふかふかのマットの上に着地した。

 

 

 

 マットは埃ぽかったのか埃が舞う。

 

 

 

「ゴホゴホ、大丈夫か? フェア」

 

 

 

「なんとか……」

 

 

 

 ブラッドとフェアがお互いの無事を確かめ合っている中、誇りの待っている視界の向こうに人影が現れる。

 

 

 

「よく来たな。君たち!!」

 

 

 

 



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 第155話  【BLACK EDGE 其の155 赤崎】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第155話

 【BLACK EDGE 其の155 赤崎】

 

 

 

「よく来たな。君たち!!」

 

 

 

 埃が舞う中、奥に人影が現れる。その声とシルエットは男。そして埃が地面に落ちて視界が晴れると、そこに現れたのは白衣を着た黒髪の男だった。

 

 

 

「……お前が赤崎博士か……」

 

 

 

 赤崎は身体を動かして白衣を靡かせる。そして腕を組んで二人のことを見下ろした。

 

 

 

 

「そうだとも私が赤崎 圭一郎……。ようこそ、私のラボへ……ブラッド、そしてフェア」

 

 

 

 フェアは立ち上がると、赤崎を睨みつける。

 

 

 

「子供達はどこなの!!」

 

 

 

 それを聞いた赤崎はニヤリと口角が上がる。だが、答えることがない。

 

 

 

「答えて!!」

 

 

 

 そう言って今にも飛びかかりそうなフェアを止めるようにブラッドが前に立つ。

 

 

 

「…………俺たちをここに連れて来た目的は何だ……」

 

 

 

 ブラッドが聞くと、赤崎は二人に背を向ける。そして二人とは目を合わせずに喋り出した。

 

 

 

「私はある男を超えたいんだ…………。しかし、今となってはその夢は叶わない。……私はこちらの世界に来てしまったから……」

 

 

 

 赤崎は歩き出す。ゆっくりと前進する。

 

 

 

 部屋は狭く宿の部屋と同じ程度の空間だ。そんな空間の中、赤崎の前に広がっているのは、明るい光を放つ細く四角いもの。それはモニターだ。そしてそこには様々なものが映し出されている。ほとんどのものはブラッド達には理解できない。だが、一つだけわかるものが映し出されていた。

 

 

 

「……だが、この世界に来たことで私は強力な存在を見つけた……そう、それこそが…………」

 

 

 

 赤崎は身体を回転させて二人の方を振り向く。

 

 

 

「君たち、龍だ!!」

 

 

 

 そして赤崎は不敵に笑い出した。

 

 

 

 ブラッドはフェアを守るように近づける。

 

 

 

「目的は龍の力か…………」

 

 

 

 ブラッドの言葉に赤崎は答える。

 

 

 

「その通り、私は君たちを待っていた。そのためにグリモワールを出し抜いて、あの子供達を連れて来た」

 

 

 

「本当にあの子達はここにいるの!?」

 

 

 

 フェアが心配そうに叫ぶと、ロジョンは身体は動かさず腕だけを動かして後ろのモニターを操作する。そして操作が終わると身体を退けて画面を見せた。

 

 

 

「ああ、いるとも……」

 

 

 

「っ!?」

 

 

 

 そこに移されたのはベッドの上で寝させられている子供達の姿だ。

 

 

 

 だが、誰一人起きておらず、寝返りをうったりはしているが、大きな動きはない。

 

 

 

「…………何をしたの……?」

 

 

 

 フェアは赤崎を睨む。すると赤崎は楽しそうに答えた。

 

 

 

「少し実験に付き合ってもらっただけさ」

 

 

 

 

 



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 第156話  【BLACK EDGE 其の156 反撃】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第156話

 【BLACK EDGE 其の156 反撃】

 

 

 

 

「…………何をしたの……?」

 

 

 

 フェアが不安そうに聞くと、赤崎は不適な笑みを浮かべて答えた。

 

 

 

「少し実験に付き合ってもらっただけさ。…………グリモワールはあれだけの人材を確保しておきながら、君の予備だと言い、何もしなかった。とても勿体無いことだ」

 

 

 

 赤崎はモニターのそばにある椅子に座る。

 

 

 

「だから私はあれを有効利用しただけのことだ。君の残り物であるあれを……」

 

 

 

 それを聞いたフェアは怒る。そして赤崎に向かって叫んだ。

 

 

 

「あの子達は私の残り物なんかじゃない!!」

 

 

 

 そしてフェアがそう言ったとほぼ同時にブラッドも赤崎に向かって走り出していた。

 

 

 

 フェアだけじゃなかった。ブラッドも我慢できなかったのだ。

 

 

 

 ブラッドは赤崎のことを殴ろうとする。しかし、ブラッドの拳は赤崎に届く前に止められた。

 

 

 

 それはロジョンによって。

 

 

 

「なに!?」

 

 

 

 さっきまでブラッド達の後ろにいたはずのロジョンが、ブラッドよりも早く動いてそして箒でブラッドの拳を止めたのだ。

 

 

 

 ブラッドの拳はロジョンに止められたが、それによって発生した衝撃で風が生まれて、赤崎の髪を揺らす。

 

 

 

「…………危ないなぁ」

 

 

 

 赤崎はブラッドに殴られそうになったというのに、焦る様子もなく動揺している感じもない。

 

 

 

 ロジョンは箒を動かすとブラッドの拳を払う。ブラッドは後ろに飛んでフェアの元に戻った。

 

 

 

 赤崎は頭を掻く。

 

 

 

「私には予備はあるけど、数は限られてるんだ。手荒なことはしないでほしいなぁ」

 

 

 

 ブラッドは赤崎を睨む。

 

 

 

「何が目的なんだ」

 

 

 

「さっきも言っただろう。龍の力が欲しいと……」

 

 

 

「だが、龍の力は適当者しか……」

 

 

 

「そんなことは関係ない。適応者である君たちさえいれば、私はあれを起動することができるからね」

 

 

 

「あれだと……?」

 

 

 

 龍の力を使って起動する。なんのことなのだろあか。だが、どちらにしろ危険なものということは確実だ。

 

 

 

 どうにかして止めなくては……。そして子供達を救出しなくては……。

 

 

 

 ブラッドと赤崎が睨み合っている中、大きな爆発音と共に施設内が揺れる。

 

 

 

「な、なんだ!?」

 

 

 

 揺れた瞬間にブラッドはフェアに覆いかぶさるようにして守る。

 

 

 

「……なんだ、この揺れは……」

 

 

 

 赤崎はロジョンに調査するように言うと、ロジョンはモニターを操作した後、赤崎に伝える。

 

 

 

「侵入者です。上のフロアで暴れ回っている者がいます」

 

 

 

 



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 第157話  【BLACK EDGE 其の157 ロジョン】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第157話

 【BLACK EDGE 其の157 ロジョン】

 

 

 

 

 

 モニターに映っているのは仮面を被ったフードの三人組。三人が上にあった長い通路を走っている姿が映り出されていた。

 

 

 

「…………グリモワール?」

 

 

 

 フェアとブラッドは不思議そうにモニターを見つめた。

 

 

 

 赤崎は侵入者と言っていた。だが、グリモワールが侵入して破壊しているということは今は敵対関係にあるということなのだろうか。

 

 

 

 それも子供達に関係しているのだろうか。子供達を連れて来たという話の時に、グリモワールを出し抜いたと言っていた。つまりは騙したということだ。

 

 

 

 今はグリモワールと赤崎は友好関係ではないのかもしれない。

 

 

 

 赤崎はモニターに映るグリモワールの三人組を見た後、

 

 

 

「上はロジョン。お前に任せる。私はこの二人に実験の協力をさせよう」

 

 

 

 そしてモニターの置いてあるテーブルからリモコンを取り出した。

 ロジョンはお辞儀をした後、

 

 

 

「了解です」

 

 

 

 と返事をすると、ロジョンは部屋の端に行くと壁に設置されたボタンを順番に押す。

 

 

 

 そのボタンを押し終えると、何もなかったはずの壁が開いてその奥へとロジョンは消えていった。

 

 

 

 ロジョンがいなくなった後、赤崎はリモコンを持ちながらブラッドとフェアの方を向くと立ち上がった。

 

 

 

「さてと、でも、私の計画のために君達の力を貸してもらうとしよう」

 

 

 

 だが、そんなことをブラッド達がするはずもなく。

 

 

 

「計画だ? そんなものを手伝ってやるかよ!!」

 

 

 

 そう言ってブラッドは拳を握った。

 

 

 

 さっきのブラッドの攻撃はロジョンに止められてしまった。

 

 

 

 ブラッドの攻撃を止めることができる実力者。そのことからしてロジョンが残っていたらまずかっただろう。

 しかし、今は侵入者の影響でここには赤崎しかいない。

 

 

 赤崎がどんな力を持っているのかは分からないが、先ほどの攻撃を防ぐことも避けることも彼にはできなかっただろう。だからロジョンが守ったのだ。

 

 

 

 だとしたら、今の状況で有利なのはブラッド達だろう。この状況で赤崎が自信満々なのが不安要素だが、ブラッドには負ける気はしなかった。

 

 

 

「フェア、待ってろ。すぐに子供達を助け出してやる」

 

 

 

 そう言うとブラッドは赤崎に向かって走り出した。部屋は狭いためブラッドは一歩進む程度の気持ちで赤崎の目の前まで来た。

 

 

 

 そして赤崎のことを殴り飛ばそうと思いっきり振りかぶった。

 

 

 

「私のことを舐めてもらっちゃ困る」

 

 

 

 

 

 



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 第158話  【BLACK EDGE 其の158 兵器開発者】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第158話

 【BLACK EDGE 其の158 兵器開発者】

 

 

 

 

 

 ブラッドが赤崎を殴ろうと思いっきり振りかぶる。

 

 

 

 そして赤崎を殴ろうとするが……。

 

 

 

「私を舐めてもらっちゃ困る」

 

 

 

 赤崎はリモコンのボタンを押す。すると、赤崎の周りが一瞬だけ光を放ち、そして赤崎の周りに何かが現れた。

 

 

 

 そんなことを関係なしにブラッドは赤崎を攻撃する。しかし、ブラッドが赤崎を殴りつけると、その周りに現れた硬い鎧に弾かれて、ブラッドの攻撃は赤崎には効果はなかった。

 

 

 

「なに!?」

 

 

 

 ブラッドの拳は弾かれる。そしてブラッドの攻撃を耐えた赤崎はさっきまでリモコンを持っていたはずの手を動かす。

 

 

 

 そこには柄の部分だけがあり、そこから先がなく。剣の部分は青い炎で出来ている。そして風が噴き出すような音を発しており、近くにいるだけでもその剣が高温なのがわかる。

 

 

 

 赤崎はその剣でブラッドに斬りかかる。

 

 

 

「っ!!」

 

 

 

 ブラッドは身体を反らせて、赤崎の剣を避けた。

 

 

 

 赤崎の剣は振っている最中に長さを変えて長くなっていき、降り終えたところで部屋の壁を少しだけ溶かし切った。

 

 

 

「おっと、危ない危ない。殺してしまうところだった」

 

 

 

「嘘つけ。今のは殺す気で振っただろ」

 

 

 

 ブラッドは身体を反らせたまま、後ろに身体を捻りバク転しながらフェアの元まで戻った。

 

 

 

 そしてフェアに手を伸ばす。

 

 

 

「フェア、ここは一旦逃げるぞ」

 

 

 

 ブラッドがそう言うとフェアは、

 

 

 

「でも……」

 

 

 

 とさっきまで子供達が映っていたモニターを見た。そこには誰も映っていない通路が表示されているが、子供達のことを心配しているのがわかる。

 

 

 

「分かってる。必ず助けに戻る。でも、ここでお前が死んだら、あの子達が悲しむだろ」

 

 

 

 ブラッドがフェアにそう伝えると、フェアは少し考えた後、納得したようで、

 

 

 

「分かった。今は逃げよう」

 

 

 

 と言ってブラッドの手を取った。

 

 

 

 ブラッドはフェアを引っ張ると、背中に乗せる。そんな中、赤崎はゆっくりと歩いて来ていた。

 

 

 

 赤崎は鋼のプロテクターで全身が覆われており、ブラッドの攻撃が効かなかったのもその鎧があったからだ。

 

 

 

 そんなプロテクターは歩くたびに地面に音を鳴らす。この部屋の床とその鎧がぶつかるたびに高い音を出しながら近づいて来ていた。

 

 

 

「逃げるか……少し勘違いしているのが…………この施設に入った時点で君たちの運命は決まっているんだよ」

 

 

 

「そんなの知るかよ。お前の思い通りになってたまるか!」

 

 

 

 

 

 

 

 



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 第159話  【BLACK EDGE 其の159 逃げろ】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第159話

 【BLACK EDGE 其の159 逃げろ】

 

 

 

 

 赤崎はゆっくりと近づいてくる。

 

 

 

 ブラッドはフェアを背負うとどこか出口がないか部屋を見渡す。しかし、この部屋に出口らしいものは見当たらない。

 

 

 

 だが、入ってくる時に落ちた穴と、ロジョンが出て行った壁の扉があるはずだ。そのほかにも出入り口はあるかもしれない。

 

 

 

 ブラッドが出口を探している姿を見て、赤崎の歩くスピードは少しずつ上がる。そして赤崎の間合いに入った。

 

 

 

 さっきの攻撃から考えるにここまで近づくこともなく、赤崎の剣はブラッド達に届くだろう。だが、近づいてきたということはあれだけのリーチを出すためには何か条件があるということだ。

 

 

 

 さっきの剣の時は振り終わる時に長くなった。振れば振るほど長くなるのかもしれない。

 

 

 

 赤崎は射程距離に入ると剣を振って攻撃してくる。横に一直線に青い炎が二人を襲う。

 

 

 

 ブラッドはフェアを背負ったまま高く飛び上がると、天井を殴り天井を破った。それにより赤崎の攻撃は避けることができた。

 

 

 

 ブラッドが天井を突き破ると、そこには正方形の道が上に続いている。これはさっき二人が落ちて来た穴だ。

 

 

 

 ブラッドは壁を蹴ると、少しずつ飛び上がり、左右で攻撃壁を蹴り飛ばして上へと登っていく。

 

 

 

 かなりの脚力がないとできない技だが、ブラッドの身体能力に龍の力を上乗せしていることで、どうにか壁を登ることができた。

 

 

 

 だが…………

 

 

 

「ブラッド、大丈夫!?」

 

 

 

 ブラッドの辛そうな表情を見たフェアがそう言った。

 

 

 

 一回壁を蹴っ飛ばしても少しずつしか上昇できない。それをかなりの距離登っていくのだ。ブラッドでも疲れてしまう。

 

 

 

 それにフェアを乗せていることもあり、自分の体重にフェアの体重がプラスされている。

 

 

 

「ああ、こんなところで諦められるかよ……」

 

 

 

 どうにか登り切ったブラッドは上の長い通路の場所まで戻れた。

 

 

 

「はぁはぁはぁ…………フェア、無事か?」

 

 

 

「私は大丈夫だけど……ブラッドは休んでく?」

 

 

 

 息を荒くしているブラッドにフェアが聞く。しかし、ブラッドは首を振った。

 

 

 

「今座ったりしたら動けなくなる……それにあいつも追ってくるだろ……さっさと子供達を見つけて、とんずらしたほうがいい…………」

 

 

 

 しかし、この広い施設だ。こんな広い場所から子供達を本当に探し出せるのだろうか。

 

 

 

 そんな中、爆音と共にまた施設が揺れる。これはさっきの侵入者のせいだろう。

 

 

 

「…………悩んでる暇はないな……フェア、とりあえず進むぞ」

 

 

 

 ブラッドとフェアは長い通路を走り始めた。

 

 

 

 

 

 



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第160話  【BLACK EDGE 其の160 探せ】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

第160話

 【BLACK EDGE 其の160 探せ】

 

 

 

 

 赤崎から逃げたブラッドとフェアは長い通路まで戻って来た。しかし、戻って来たところで施設内に爆音が響くと同時に大きく揺れる。

 

 

 

「……っ」

 

 

 

 ブラッドは揺れで倒れそうになったフェアを支える。そして揺れが収まると周りを見渡した。

 

 

 

「結構派手に暴れてる奴らがいるな……」

 

 

 

 ここはカメリアの街の地下だ。そんなところでこれだけ暴れていれば、上でも騒ぎになるだろう。

 

 

 

 表立って行動することの少ない組織であるグリモワールがここまで行動を起こすのは珍しい。この施設はかなり重要ということなのか。

 

 

 

 赤崎の話だとグリモワールを裏切った赤崎を消しに来たという可能性があった。しかし、ここまで大きく暴れていることを考えると、それだけが目的とは思えない。

 

 

 

「このままじゃこの施設もいつまで持つのかもわからない。急いで子供達を救出するぞ」

 

 

 

「うん、急ごう!!」

 

 

 

 ブラッドとフェアは長い通路を進んでいく。しかし、この通路を進んでいるだけで本当に子供達のいる場所に行けるのだろうか……。

 

 

 

 ロジョンに案内された部屋は特定の行動をすることで穴が開いて、下の部屋へといくことができた。ということはそのような部屋がある可能性の方が高い。

 

 

 

 ブラッドがそう考えながらも進んでいると、道に変化が起きた。

 

 

 

 おそらく侵入者が暴れた後なのだろう。道が途中からボロボロに荒らされており、壁や天井は破壊されて、岩盤が剥き出しになっている。

 

 

 

「この先に侵入者がいるか……」

 

 

 

 この先ではロジョンと侵入者が戦っている可能性が高い。今の状況で二人が向かえば、三つ巴の戦いになるだろう。

 

 

 

 赤崎も追いついてくるだろうし、こちらにはフェアがいる。ブラッド達が不利なのは確かだろう。

 

 

 

「どうするフェア?」

 

 

 

 ブラッドがフェアに聞いた時、フェアが何かを見つけた。そして荒れた地下を進んでいく。

 

 

 

「ブラッド、ここ!!」

 

 

 

 フェアが向かった先には横に道が続いていた。おそらく通常の状態では見つけられなかった隠し通路だ。だが、侵入者が破壊してくれたおかげでその道が露わになっていた。

 

 

 

「きっと子供達はこの先にはいない。だったらこういう隠し通路の方が可能性がある」

 

 

 

 そう言うとフェアは通路に進んでいった。

 

 

 

「おい、一人で行くな」

 

 

 

 ブラッドもフェアを追いかけて隠し通路を進んでいく。

 

 

 

 フェアの言う通りこの道を進んでいても子供達に会える可能性は低い。なら、この隠し通路を進む方が可能性はある。

 

 

 

 

 



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 第161話  【BLACK EDGE 其の161 隠し通路】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第161話

 【BLACK EDGE 其の161 隠し通路】

 

 

 

 

 ブラッドとフェアは侵入者が暴れたことによって露わになった隠し通路を進んでいた。

 

 

 

 通路には明かりはついておらず、暗闇を進んでいく。

 

 

 

 暗くて前が見えない中を進んでいると、前方から足音が聞こえて来た。

 

 

 

 真っ暗闇の中、前に白い何かが見え出す。それは真っ白な仮面だ。

 最初は画面が浮いているのかと思ったが、全身を黒い服で覆っているので仮面しか見えていないだけだ。ということは……。

 

 

 

「……グリモワールか」

 

 

 

 ブラッドが言うとその足音の人物は足を止めた。

 

 

 

「その声は…………ブラッドか……」

 

 

 

 聞き覚えのある男の声……。

 

 

 

「お前はシャドー」

 

 

 

「久しぶりだな。……白龍の適応者もいるようだな……」

 

 

 

 ブラッドはフェアを守るような体制をとる。

 

 

 

「……プロタゴニストでは世話になったな」

 

 

 

 前にシャドーと出会ったのは雪山へと向かう途中のプロタゴニストの森だ。そこでは戦いになったが途中でブルーバードとの戦闘になり、共闘することになった。

 

 

 

「次に会ったらお前をやる。そう俺は言ったな」

 

 

 

「今やるつもりか?」

 

 

 

 赤崎の言っていた侵入者とはシャドーのことだったのだろうか。

 

 

 

 シャドーはフードの中から短剣を取り出す。そしてそれをブラッドに向けた。

 

 

 

「次こそはお前を殺す。確実にな!!」

 

 

 

 ブラッドは拳を握り構える。この狭い通路でどこまで戦闘できるだろうか。

 

 

 

 ここはブラッドが足止めをしてフェアに先に行かせるべきだろうか。

 

 

 

 そうやって考えていると、足元に違和感を感じる。

 

 

 

「っ!?」

 

 

 

 フェアとブラッドの足が地面に埋まっていく。これは…………。

 

 

 

「しまった!! シャドーの術か!?」

 

 

 

 シャドーの能力はプロタゴニストの森で知っていた。影を利用して、影の世界へと移動する能力だ。

 

 

 

 ここで戦闘を挑んできたのは、シャドーが有利だったからか……。

 

 

 

 暗闇であれば、シャドーの能力はどこでも発動できる。この隠し通路には光はなく、影しかないのだ。そのためシャドーはこの隠し通路全体が能力の使用範囲ということだ。

 

 

 

「さぁ、一緒に来てもらうぜ!! 影の世界に!!」

 

 

 

 ブラッドとフェアは影に全身を飲み込まれる。そして気がつくと真っ暗な空間に放り出された。

 

 

 

 遅れてシャドーも影の世界にやってくる。ここで決着をつけるつもりなのか。

 

 

 

 ブラッドが構えると、シャドーは短剣をしまった。

 

 

 

「どうした?」

 

 

 

「今回はお預けだ。次こそはお前と決着をつける。だから今回だけは見逃してやる」

 

 

 

 

 

 



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 第162話  【BLACK EDGE 其の162 協力者】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第162話

 【BLACK EDGE 其の162 協力者】

 

 

 

 

「今回はお預けだ。次こそはお前と決着をつける。だから今回だけは見逃してやる」

 

 

 

「見逃す? なぜだ?」

 

 

 

 ブラッドが聞くとシャドーは地べたに座った。

 

 

 

「お前達がここに来た理由は察しが付く……。ガキどもだろ……?」

 

 

 

 フェアは頷く。

 

 

 

 グリモワールが子供達を移動させたのは、フェアとブラッドを誘導するためだと考えられる。

 だから、シャドーが知っていてもおかしくない。

 

 

 

「俺たちもその子供を確保するためにここに来たんだ」

 

 

 

 それを聞いたフェアはシャドーを睨んだ。

 

 

 

「そう睨むな……。俺達は子供達を守りに来たんだ……博士からな」

 

 

 

 グリモワールは元々子供達を白龍の依代にしようとしていた。それを赤崎博士に盗まれたということか。

 

 

 

「あなた達は信用できない」

 

 

 

 フェアはシャドーに言う。

 

 

 

 それもそのはずだ。龍の適応者にするために丁重に子供達を使って来ただけで、グリモワールの目的はそれだ。

 

 

 

 赤崎はまた別の目的で子供達を使っているが、グリモワールも子供達に酷いことをしてきた。

 多くの子ども達はグリモワールに殺されたのだ。

 

 

 

「信用できないか……ま、そうだよな。だが、お前が生きている限り、あの子達は危険には晒されない。今まではそうだった」

 

 

 

 今はフェアが白龍の適応者だ。そして今の子供達はその予備みたいなもの。フェアに何かあれば、白龍の力だけを取り出して、他の子供を適応者にする。

 

 

 

 だが、フェアが生きてさえいれば、白龍はフェアの元にあるし、他の子供達はその間はグリモワールが保護していることになる。

 

 

 

 フェアと共に連れてこられた子供達は白龍の適応者の可能性があると判断された子供達だ。他の龍では試されることはないだろう。

 

 

 

「だとしても自由はないのは確かよ!!」

 

 

 

 フェアはシャドーに怒鳴る。

 

 

 

 フェアと子供達の目的は自由になることだ。そのためにフェアは外に出た。

 危険はなくてもグリモワールにいる限り、自由はないのだ。

 

 

 

 するとシャドーは下を向いてため息を吐いた。

 

 

 

「まぁ、俺もそれには同感だ……。元々はプロフェシー様が始めた計画……しかし、奴が死んだ後、形だけ博士が引き継いで…………。こうやって問題になった」

 

 

 

 シャドーは二人の方を見る。

 

 

 

「俺はお前達に協力してやる。博士から子供達を解放する。その後のことはどうでも良い、お前達が守ってやれ、グリモワールは俺がどうにかする」

 

 

 

 

 



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 第163話  【BLACK EDGE 其の163 子供を探せ】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第163話

 【BLACK EDGE 其の163 子供を探せ】

 

 

 

 

 シャドーは子供達を助け出すのを手伝うと言った。しかし、本当に信用して良いのだろうか。

 

 

 

 そんな中、フェアの方へと歩き、シャドーに手を伸ばした。

 

 

 

「信用はしない。子供達の捜索、そこまで休戦なら良い」

 

 

 

 フェアの行動にブラッドは驚くが。今はシャドーと争うのは時間のロスになる。

 それに捜索は人数がいた方が良いのは確かだ。

 

 

 

 シャドーはフェアの手を握って握手する。

 

 

 

「ああ、それで構わない。捜索なら役に立ちそうな奴がいる」

 

 

 

 シャドーがそう言うと奥から何者かが歩いて来た。

 

 

 

「ヤッホー! 君達が噂の組織の敵、ブラッドとフェアだね」

 

 

 

 それは白衣を着た黒髪の少女。赤崎によく似た顔つきだが、性別も違うし、身長も小さい。

 

 

 

 影の世界の奥で隠れていたみたいだ。

 

 

 

「僕はアルファ、父さんのクローンみたいなものだよ。僕に任せてくれれば、サクッと見つかるよ!」

 

 

 

 アルファと名乗った少女は手を腰に当ててそう自慢げに言った。

 

 

 

 本当にこんな子供に任せて良いのだろうか。ブラッド達の疑いの目に気づいたのか、アルファはポケットからペンを取り出した。

 

 

 

「これ……普通のペンに見えるでしょ…………」

 

 

 

 アルファはそのペンの地面に向ける。そしてボタンを押すと、銃弾が発射された。

 

 

 

「これは僕の作った吉永10号だ。これを作れるのは僕の父さんか、兄弟達だけだよ」

 

 

 

 アルファがグリモワールにしか使えない武器を使っているのは分かった。だが、これで本当に作ったという証明にはなっていない。

 

 

 

 しかし、疑い続けていても何も始まらない。

 

 

 

「分かった。俺たちで子供達を探そう」

 

 

 

 ブラッドはみんなにそう言った。反論する者はいない。

 

 

 

 こうしてブラッドとフェアは、シャドーとアルファと協力して子供達を探すことにした。

 

 

 

「だが、どこから探す。赤崎も追ってきてるはずだぞ」

 

 

 

 ブラッドはアルファに聞くとアルファは少し考えた後、

 

 

 

「この施設のこの階層はドーナツ状に通路が作られていて、あらゆる場所に隠し通路が作られてる。でも、あれだけの子供達を管理する部屋となると、隠し通路だけじゃ狭いはず……」

 

 

 

 それを聞いたフェアは質問する。

 

 

 

「じゃあ、あの子達は隠し通路にはいないってこと?」

 

 

 

「ああ、隠し通路だとしてもここよりも大きな通路になっているはずだよ。グリモワールの施設から子供達を移動させる時、トラックで輸送したという情報を得てる。それだけ大きな通路がどこかにあるはずだよ」

 

 

 

 

 

 



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 第164話  【BLACK EDGE 其の164 大きめの通路】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第164話

 【BLACK EDGE 其の164 大きめの通路】

 

 

 

 ブラッド達は大きめの通路を探すために、まずはシャドーの能力の影の世界から脱出することにした。

 

 

 

 シャドーが影の世界で話し合いを行ったのは、どこで赤崎が覗いているか分からないからだ。

 今はまだブラッドとグリモワールが敵対関係だと思わせることで赤崎よりも一歩リードできるようにしたいと考えたからだ。

 

 

 

 シャドーが能力を解除するとブラッド達は順番に元いた暗がりの隠し通路に戻ってきた。

 そして全員戻ってきたところでシャドーが伝える。

 

 

 

「ヒートとグリムがメイン通路で暴れてるはずだ。もしも怪しい道があれば連絡をしてくれる。俺たちは別の場所を探すぞ」

 

 

 

 グリモワールはシャドーが一人で今回の作戦を行なっているわけではないらしい。協力者がいるようだ。グリムとヒート、二人の名前にも聞き覚えがある。

 

 

 

「そうなると、どこを探すんだ?」

 

 

 

 ブラッドが聞くとアルファは指で上を指した。

 

 

 

「ここは中間の層なんだ。そして下と上に一つずつフロアがある。下は小さな隠し通路でしか行けないけど、上のフロアにも大きな通路がある。僕たちはそっちを探索しよう」

 

 

 

 そしてブラッド達は隠し通路を進んでいく。目指すは一つ上の層だ。しかし、ブラッド達は目隠しをしてここに連れてこられたため、どこに上に通じる場所があるのか分からない。

 

 

 

「おい、ここはどこなんだ。俺たちはカメリアの宿からここに連れてこられたんだが。お前らはどこから侵入したんだ……」

 

 

 

 ブラッドが聞くとシャドーが答える。

 

 

 

「俺たちは王都の武器屋からだ」

 

 

 

 それを聞いたブラッドとフェアは驚く。

 

 

 

「王都!?」

 

 

 

 王都とカメリアはかなりの距離離れている。それなのに王都から侵入するなんてことが可能なのだろうか。

 

 

 

「驚くよな。この上のフロア。そこがカメリアと王都を繋ぐ一本のトンネルがあるんだ。何の目的でそんな巨大なトンネルを作ったのかはまだ分からないが、博士は俺たちグリモワールに内緒で何かをやろうとしてるのは確かだ」

 

 

 

 そんな巨大なトンネルがあるとは……。だが、そんなに巨大なトンネルがあるのなら、子供達がいるかもしれない。しかし、もう一つ疑問が出てきた。

 

 

 

「そういえば、この施設にトラックで運ばれたって言ってたよな。しかし、俺たちが入ってきたのは宿屋や武器屋だ。だが、トラックはどこから入ってくるんだ?」

 

 

 

 それに対してアルファが答えた。

 

 

 

「それがまだ見つけられてないんだよね。どこかには入口があると思うけど……」

 

 

 

 

 



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 第165話  【BLACK EDGE 其の165 王都へ繋がる通路】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第165話

 【BLACK EDGE 其の165 王都へ繋がる通路】

 

 

 

 

 シャドーとアルファの案内でブラッドとフェアは上のフロアへとたどり着いた。

 そこは一直線に伸びる地下通路。この道を進むと王都へ行くことができるらしい。

 

 

 

 下の階層も直線に感じたがあそこは緩やかなカーブであり、実際にはここが本当の直線だ。

 

 

 

「それで子供達がいるとしたらこのフロアか……」

 

 

 

 しかし、ここも下の階層と同じく直線が続くだけの地下通路。下に比べるとさらに巨大であり、何か大きなものを動かすためのレールも地面にはひかれている。

 

 

 

「……でも、これだけ大きいと探せるのかな……」

 

 

 

 フェアが不安そうに周りを見渡した。確かにここの通路は巨大だ。しかも王都からカメリアまで繋がっているらしい。そうなると手探りで探していては、何日もかかってしまう。

 

 

 

「そういう時のための僕なのさ!!」

 

 

 

 アルファは自信満々に前に出た。

 

 

 

「僕は父さんのクローンであり独立した存在だが、父さんの思考回路もしっかりと保存されている。父さんの作ったものなら大抵の構造は理解できる」

 

 

 

 アルファの言葉を聞いたシャドーは博士も作った機械の名前が変わっていることがあるのかと気になったが、今は聞かないことにした。

 

 

 

「つまりは赤崎の作ったこの施設の構造を想定して、行動できるってことか?」

 

 

 

 ブラッドが聞くとアルファは小さい身体で背伸びをして背筋を伸ばし、威張った。

 

 

 

「そういうことだ!!」

 

 

 

 そしてアルファは通路の壁の方へと移動すると、壁に手を当てる。

 

 

 

「例えばこういうところ、僕も父さんも模様を少し変えたところに…………」

 

 

 

 アルファは壁を押す。すると、壁にボタンがあったようでそれが押されると、隣にある壁が扉になり、そこに通路が現れた。

 

 

 

「隠し通路を作りたくなる」

 

 

 

 ブラッドとフェアはアルファを見て驚いた。確かに少し模様は違った。だが、そんなに大きな違いがあったわけではない。

 ここに隠しボタンがあると分かっていないと、押せない場所だ。

 

 

 

 そんなところにあるボタンを押したということは、本当にアルファは赤崎の考えを読んで行動しているのか、それとも元々分かっていたのか、ということしかあり得ない。

 

 

 

「まずはそこの隠し通路を調べてみるか」

 

 

 

 シャドーはそう言い、その隠し通路へと進んでいく。その後を追うアルファ、そしてブラッドとフェア。

 

 

 

 隠し通路は人間用の大きさの通路だ。本当にここにいるかは分からない。だが、行ってみる価値はあるだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 



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 第166話  【BLACK EDGE 其の166 隠し通路の探索】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第166話

 【BLACK EDGE 其の166 隠し通路の探索】

 

 

 

 ブラッド、フェア、シャドー、アルファの四人は隠し通路を発見して、その隠し通路を進んでいた。

 

 

 

 通路は人に反応して灯りがつくとか、四人が前に進むごとに先を照らしている。そして通り過ぎた通路の明かりは消えていく。

 

 

 

 そしてしばらく進んだ後、四人はその先にある部屋にたどり着いた。扉を開けるとそこは本の並べられた個室。真ん中には机があり、設計図のようなものが置かれている。

 

 

 

「ここは博士の部屋か……」

 

 

 

 シャドーは部屋を見てそう言った。そして部屋に入ると真ん中にある設計図を見始めた。

 ブラッドとフェア、アルファもそれぞれ部屋の中を探索する。

 

 

 

 ここには子供達は見当たらないが、何かヒントになるものがあるかもしれない。

 

 

 

 フェアは部屋の本棚を見る。そこにはこの世界でよく買える本が多く並べられていた。

 

 

 

 国での常識や文化の本。武器の製作などの本など。しかし、グリモワールで使われているような特殊な武器についての本はない。

 そんな中、龍に関する本を見つけた。

 

 

 

 一般的には龍は伝承上のものであり、実在しないおとぎ話だと思われている。本棚に並べられている本も同様に、上っ面だけの簡単な本だ。だが、伝承は書かれている。

 

 

 

 龍の正体や歴史がそこには書かれていた。

 

 

 

 フェアは昔にその本を読んだことがあったから、内容は知っていた。だからタイトルだけ見て内容を思い出したのだが、赤崎はこの本を読んで龍の力に興味を持ったのだろうか。

 

 

 

 シャドーはアルファに机にあった設計図を見せる。

 

 

 

「なぁ、これについて何かわかるか?」

 

 

 

 アルファはそれを受け取って見てみる。シャドーがそこから読み取れたのは、脚が八本ある機械の設計図だった。そしてその設計図の端にはエネルギータンクのようなものが書かれており、そこには龍のマークがあった。

 

 

 

「…………そんなことが……いや、不可能ではないか…………」

 

 

 

 その設計図を見たアルファは驚く。そして部屋を探索している三人に伝えた。

 

 

 

「子供達がいそうな場所の目星はついた……でも、急いだ方が良さそうだ。父さんの計画はもう完成に近い!!」

 

 

 

 アルファは焦るように言った。

 

 

 

 アルファがその設計図を見て何を理解したのかは分からない。しかし、この部屋に子供達のヒントがこれ以上ないなら、次の場所に移動したほうがいいだろう。

 

 

 

 ブラッド達は元いた通路の方へと戻った。

 

 

 

 

 

 



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 第167話  【BLACK EDGE 其の167 兵器の燃料】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第167話

 【BLACK EDGE 其の167 兵器の燃料】

 

 

 

 

 

 元の大きな通路に戻ったブラッド達はいる場所の予想がついたと言っていたアルファの後ろをついて歩いていた。

 

 

 

「どこに行くんだ?」

 

 

 

 シャドーが聞くとアルファは先頭を歩きながら答えた。

 

 

 

「これから向かうのはあの設計図の兵器のある場所。この通路の一番奥だ」

 

 

 

 四人が向かっているのは、通路の先だ。隠し通路などを探すのではなく、ずっと続く通路の奥を進んでいく。

 

 

 

「なんで、兵器の場所なの? そんなところにあの子達が…………」

 

 

 

 フェアが言うとアルファがすぐに答えた。

 

 

 

「いるんだよ。そこに………………」

 

 

 

 アルファは振り返ることなく説明を始めた。

 

 

 

「父さんの目的は子供を使ってのシステムの構築。今の子供達は……その兵器とリンクさせられてる……」

 

 

 

 それを聞いたブラッドが質問する。

 

 

 

「リンクだと? どういうことだ?」

 

 

 

「あの兵器の歩行を保護するプログラム。AIに子供の成長する思考をプラスして、どんな地形でも走行できるようにその兵器を作ってるんだ」

 

 

 

「じゃあ、子供達を解放すれば、赤崎の計画も失敗するってことか」

 

 

 

 ブラッドが言ったことにアルファは首を横に振った。

 

 

 

「もう今は歩行プログラムは出来上がっている。だから、兵器の燃料を父さんは求めてるんだ」

 

 

 

 それを聞いたフェアは子供達を心配する。利用価値がなくなったということは、どうなるか分からない。しかし、それは問題ないとアルファは言う。

 

 

 

「まだあの子供達には利用価値がある。それは燃料を誘き出す、重要な餌としての役割がね」

 

 

 

 それを聞いて設計図を見たシャドーが気づいた。

 

 

 

「龍の適応者……それが燃料だっていうのか……」

 

 

 

「そういうこと。龍の力は膨大なエネルギーの塊だ。それを利用すれば、大都市の数百年分のエネルギーを賄うことができる。父さんはそれを兵器に利用しようとしてる」

 

 

 

 それを聞いたブラッドとフェアは驚いた。まさか、龍の適応者を燃料にしようとしているとは…………。

 

 

 

 そんな中、ブラッド達は通路の奥までたどり着いた。

 

 

 

「この通路はその兵器の実験用に作られた通路。そしてこの扉の先にその兵器がある」

 

 

 

 奥にある扉が開く。そして広い空間にたどり着いた。

 

 

 

 そこには設計図にあった八本足の鉄の機械が置いてあった。そんな機械にいくつものパイプがつながっており、部屋中に繋がっていた。

 

 

 

 そしてその先の一本のパイプが奥の部屋へと続いている。

 

 

 

 

 

 

 



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 第168話  【BLACK EDGE 其の168 子供の行方】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第168話

 【BLACK EDGE 其の168 子供の行方】

 

 

 

 

 ブラッド達は通路を進み、巨大な通路の奥へと向かった。

 

 

 

 アルファの考えでは子供達は赤崎博士の作っている兵器の歩行プログラムの制作に利用されていると言っていた。

 

 

 

 そしてその兵器の燃料となるのが龍の適応者である。子供達を利用して歩行プログラムは既に完成している。しかし、ブラッド達を誘き寄せるために、赤崎博士は子供達を施設内に置いていた。

 

 

 

 ブラッド達が通路の奥へと辿り着き、巨大な扉を開ける。すると、そこには大きな部屋があり、そこは兵器開発の場所だった。

 

 

 

 そしてその部屋の真ん中には設計図に書いてあった八本足の兵器が既に完成していた。

 

 

 

「…………これが龍の力を利用する兵器か……」

 

 

 

 その兵器の大きさは建物よりも大きい。もしもこんな兵器が街で暴れ出したら、大変なことになる。

 

 

 

「ブラッド、あっち!!」

 

 

 

 部屋を見渡していたフェアがブラッドを呼ぶ。

 

 

 

 兵器につなげられたいくつものパイプ。その一本が隣の部屋へと伸びていた。

 ブラッドとフェアはそのパイプを辿ってその部屋の扉を開ける。

 

 

 

 すると、そこには子供達がいた。

 

 

 

「フェア!!」

 

 

 

 部屋には沢山のベッドが並べられており、子供達はそのベッドの下で隠れていた。

 そしてフェアを見つけるとみんな出てきて、フェアに近づいてきた。

 

 

 

「良かった。無事だったんだね。フェア」

 

 

 

「この人が、あのブラッド?」

 

 

 

「さっき大きく揺れてたけど、あれはフェア達なの?」

 

 

 

 子供達が一斉に近づいてきて、ブラッドは戸惑う。フェアはみんながいるのを確認すると安心した。

 

 

 

 シャドーとアルファも部屋を覗いて子供達を見た。子供達はシャドーを見て怯える。

 

 

 

 それもそのはずだ。仮面に黒いフード、グリモワールの服装なのだから……。

 

 

 

 そんな子供達にフェアが説明する。

 

 

 

「大丈夫。この人は今協力してくれてるから。でも、信頼はしちゃダメだよ」

 

 

 

 それを聞いたシャドーは

 

 

 

「いや、まぁ、間違ってないが!!」

 

 

 

 と言っているが、関係なしに話を進める。

 

 

 

「とりあえずここから出る必要があるね。さっき向こうでトラックを見つけた。それで脱出しよう」

 

 

 

 アルファはそう言って兵器のあった部屋の方を指す。

 それを聞いたブラッドが質問する。

 

 

 

「脱出って、出口があったのか?」

 

 

 

「ああ、ここがトラックの出入り口だ。位置から考えると、すぐに地上に出れるはずだよ」

 

 

 

 トラックでの出入り口が兵器のある部屋だったとは……。だが、それはそれで好都合だ。

 

 

 

「よし、さっさと脱出しよう」

 

 

 

 

 



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 第169話  【BLACK EDGE 其の169 子供を連れて】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第169話

 【BLACK EDGE 其の169 子供を連れて】

 

 

 

 

 地下にある施設の中から子供達を発見したブラッド達は、そこから脱出しようとしていた。

 

 

 

「これで全員か?」

 

 

 

 トラックに子供達を乗せ終えると、シャドーがフェアに聞いた。

 

 

 

「これで全員。あとは脱出するだけだけど…………」

 

 

 

 フェアはそう言うとトラックの進行方向を見る。トラックの進行方向にはシャッターがあり、その隣にある機械をアルファが操作していた。

 

 

 

 そしてしばらく経ってシャッターが開く。

 

 

 

「よし、これなら脱出できるな。しかし、この馬車はどうやって操作すればいいんだ?」

 

 

 

 ブラッドはそう言ってトラックのコンコンと叩く。

 

 

 

「君たちじゃ、これは操作できないだろうしね。僕が操作するよ」

 

 

 

 出口までのシャッターを操作したアルファがみんながいるところまで戻ってきながら言った。

 

 

 

「お前操作できるのか?」

 

 

 

 ブラッドが聞くとアルファは胸を張って答える。

 

 

 

「僕を誰だと思ってるのさ! あらゆる武器を開発できる天才博士のアルファ様だぞ!!」

 

 

 

 フェアと同程度の身長の子供が、そうやって威張っても何の威厳もない。

 だが、この子供がシャッターを操作して開けたり、この施設の機械について理解しているのは確かだ。

 

 

 

 そうなるとこのトラックを操作したことのない人間が操作するよりも、アルファに任せた方がいいかもしれない。

 

 

 

「分かった。それじゃあ、頼む」

 

 

 

 そして子供達を乗せたトラックに全員乗り込むと、アルファがトラックを操作し始めた。

 

 

 

 最初は運転席に座っても足や手が届かないからどうするのかと思ったが、手と足に機械を取り付けると、それを伸ばして操作した。

 

 

 

 トラックはシャッターが開き通れるようになった通路を使って、施設内を通っていく。

 

 

 

「もう少しで出口のはずだよ」

 

 

 

 アルファはそう言ってみんなに伝える。

 

 

 

 もう少しで脱出できる。そう思った時、施設内がまた大きく揺れた。

 

 

 

 トラックも揺れの影響で左右に蛇行する。しかし、アルファの運転技術でどうにか倒れることはなく持ち堪えることができた。

 

 

 

 だが、揺れがあったあと、トラックが止まった。

 

 

 

「やはり予想通りここを通ってきたようだね……」

 

 

 

 そして前方からある男の声が聞こえた。

 

 

 

「追ってきてると思ってたが、待ち伏せしてたとは…………」

 

 

 

 トラックのライトに照らされたプロテクターを前身に身につけた男。

 その男が前方を塞いでいた。

 

 

 

「赤崎博士…………」

 

 

 

 



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 第170話  【BLACK EDGE 其の170 行手を阻む】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第170話

 【BLACK EDGE 其の170 行手を阻む】

 

 

 

 

 トラックで地下施設からの脱出をしようと車を走らせていると、施設がまたしても大きく揺れた。

 

 

 

 トラックはどうにか倒れずに持ち堪えたが、前に人が現れてトラックが停まった。前にいたのはプロテクターを全身に身に纏った男。

 

 

 

「…………父さん」

 

 

 

 アルファはそのままトラックを停めてしまう。隣でシャドーが構うな進め! と言うがアルファはアクセルを踏めなかった。

 

 

 

 そんな中、ブラッドがトラックから降りる。

 

 

 

「…………追ってきてると思ったら、待ち伏せしてやがったんだな」

 

 

 

「当然だ。君たちが子供達を連れて逃げようとするのは予想がついていたからね。……まぁ、そこにそいつがいるとは思ってなかったがな……」

 

 

 

 赤崎はそう言ってトラックに乗っているアルファを見る。

 

 

 

「娘よ。なぜ、私に逆らう!! お前は私と同じ思考を持っているはずだ。グリモワールなどに縛られていても何も得られないことは分かってるだろ」

 

 

 

 アルファはハンドルを握る手は震えていた。

 

 

 

「……分かってる。僕は…………あなただから…………でも……………」

 

 

 

 アルファは赤崎の方を見る。

 

 

 

「僕は僕だ!! 僕の意志でここにいるんだ!!」

 

 

 

 アルファはアクセルを踏むと赤崎に突進する。

 

 

 

 しかし、赤崎は焦ることなく、冷静に剣先のない剣を取り出す。そしてボタンを押すとその剣は青い炎を放つ。

 

 

 

「そうか、トラックに乗っているのはお前らと子供達、そして白龍の適応者だな……」

 

 

 

 赤崎は剣を振り上げる。

 

 

 

「黒龍が一人残っていれば、それで十分。トラックごとゴミ処理だ」

 

 

 

 赤崎の剣が振り下ろされる。剣は凄まじい勢いで燃えて、トラックを切断可能な大きさになる。

 

 

 

 炎がトラックに当たりそうになった時、トラックが地面に埋まった。そしてギリギリのところで地面の中に消えた。

 

 

 

「これは!?」

 

 

 

 そして剣が振り下ろされた瞬間に、赤崎の背後にトラックが出現した。

 

 

 

 現れたトラックは急ブレーキをして止まる。そしてトラックの中からシャドーが顔を出した。

 

 

 

「乗れ、ブラッド!! 今はこいつに構う必要はねぇ。さっさとガキどもを安全なところに連れて行くぞ!!」

 

 

 

 ブラッドは急いでトラックへと向かう。

 

 

 

 しかし、赤崎が剣で攻撃を仕掛けてきて、それを躱す。邪魔をされてトラックの場所に辿り着けない。

 

 

 

「…………君は行かせないよ」

 

 

 

 赤崎が次々と攻撃を仕掛けてくる。攻撃を当てようではなく、行く手を阻む攻撃であるため、避けるのは容易いがトラックまでの道を塞がれる。

 

 

 

 

 

 



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 第171話  【BLACK EDGE 其の171 行手を阻む】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第171話

 【BLACK EDGE 其の171 行手を阻む】

 

 

 

 

 

 トラックで脱出をしようとしている途中で赤崎が現れた。シャドーの能力でどうにかトラックは攻撃を避けることができたのだが、ブラッドが赤崎に邪魔をされてトラックに戻れずにいた。

 

 

 

「っ!!」

 

 

 

 赤崎は燃える剣を横に振る。ブラッドは高く飛び上がり、その件の攻撃を躱す。

 赤崎の剣は通常の剣よりもリーチが長く、炎は何メートルにも伸びる。通常の状態でも長いのに剣を振るとその炎はさらに大きく伸びて襲ってくる。

 

 

 

 ブラッドは高く飛び上がったあと、着地すると赤崎には攻撃をせず、トラックへと向かおうとするが、赤崎がそんなことはさせない。

 

 

 

 剣を振ってブラッドの進行方向に攻撃を仕掛ける。それによりブラッドは後ろに下がることしかできず、トラックのところまで行けない。

 

 

 

「…………このままじゃまずいな……」

 

 

 

 ブラッドは赤崎の炎の剣を突破することができない。それに赤崎は大きく攻めてくるのではなく、ブラッドの移動を抑えるように行動している。

 そのため赤崎に攻撃をしても距離を取られ、剣で元の場所に戻される。

 

 

 

 すぐそこにトラックがあり、そこでみんなが待っているというのにそこに辿り着くことができない。

 

 

 

 ブラッドはトラックで待っているフェアに向けて言う。

 

 

 

「後で追いかける。お前達は先に行っててくれ!!」

 

 

 

 それを聞いたフェアは驚く。

 

 

 

「ブラッドを置いていくなんて…………」

 

 

 

「俺はこいつを倒してから行く。…………それにその子達を早く安全な場所に連れて行ったほうがいい」

 

 

 

 ここで子供達を残して、赤崎と戦ったとしても守れる保証はない。

 なら、早く安全な場所に連れて行ったほうがいい。

 

 

 

 フェアは分かっていた。ここに残っていても足手まといになるということを……。

 それでもブラッドを一人で置いていくということが心配だった。

 

 

 

 普段なら任せられる。だが、今回は嫌な予感があった。

 

 

 

 そしてそれは龍の力を利用しようとしているということが関係しているだろう。もしもブラッドに何かあったら…………。

 

 

 

 フェアは決断できずにいた。そんな時、シャドーがトラックから降りた。

 

 

 

「…………アルファ、そいつらを任せるぞ」

 

 

 

「シャドー、どうしたんだい?」

 

 

 

「俺はここに残る」

 

 

 

「え?」

 

 

 

「俺はあのやろーとの決着がついてないんだ。博士なんかにあいつを取られてたまるかよ」

 

 

 

 シャドーはフェアの方を見る。

 

 

 

「そういうことだ。白龍の適応者……。ブラッドは俺が倒す。だから先に行け」

 

 

 

 

 

 

 

 



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 第172話  【BLACK EDGE 其の172 共闘、影と黒】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第172話

 【BLACK EDGE 其の172 共闘、影と黒】

 

 

 

 

 

 トラックはブラッドとシャドーを置いて地上を目指す。

 

 

 

 そのトラックを見ながら赤崎はシャドーに言う。

 

 

 

「君が残る必要はなかったんじゃないかな?」

 

 

 

 シャドーはフードの中から短剣を取り出した。

 

 

 

「さっきも言っただろ。ブラッドを倒すのは俺だ。お前にはくれてやんねぇよ」

 

 

 

 ブラッドとシャドーが赤崎を挟み撃ちするような体制になる。

 

 

 

 通路はトラックが一台通れる程度の大きさ。幅は広くはない。そのため挟み撃ちできている現状はかなり有利なはずだ。

 

 

 

 赤崎も流石に二対一の現状は厳しいのか、さっきとは違い警戒している様子だ。

 

 

 

 赤崎は二人を警戒しながらゆっくりと左の壁の方へと退がっていく。

 二人を前方に入れたいのだろう。真ん中から端っこへと移動する。

 

 

 

 このままでは挟み撃ちにした意味がない。二人は近づこうとするが、赤崎が横に剣を振って二人を近づけない。

 

 

 

 赤崎の炎の剣は余裕で壁の反対側まで届いてしまう。そのため簡単には近づけない。

 

 

 

 このままではブラッドとシャドーは攻撃ができない。

 

 

 

 シャドーは能力を使って、赤崎の背後に回り込みたいのだが、赤崎の剣が光を発していることで影は赤崎とは反対側に伸びてしまっている。

 そのため影の中を移動しても、赤崎には近づくことができない。

 

 

 

 この状態で待っていても何もできないと感じたブラッドが動く。

 

 

 

 赤崎に向かって真っ直ぐ突進する。赤崎は剣を横に振り、ブラッドの接近を防ごうとするが、ブラッドは高くジャンプすると炎の剣を飛び越えた。

 

 

 

 そして今回狙っているのは赤崎だ。それに彼の背中は壁。これ以上距離を取ることはできない。

 

 

 

 着地したブラッドは赤崎の目の前まで近づけた。ブラッドは拳を握ると赤崎の腹を殴る。

 

 

 

 しかし、赤崎の身につけているプロテクターが強固であり、全然ダメージを与えられない。

 赤崎の身体はブラッドのパンチで宙に浮いたが、ダメージのない赤崎は殴られたと同時に剣を持っていない手でブラッドの胸ぐらを掴んだ。

 

 

 

 そしてブラッドを投げ飛ばす。赤崎の身体能力ではない。赤崎の身につけている機械がブラッドを投げる動作をしたときに、肘の部分から蒸気を発射して赤崎の動作を強化したのだ。

 

 

 

 それによりブラッドの身体はシャドーを通り過ぎて、通路を斜めに飛んでいき、赤崎のいる壁とは反対側の壁にぶつかった。

 

 

 

 ブラッドが当たった衝撃で壁に大きな痕が残る。

 

 

 

「ブラッド!!」

 

 

 

 シャドーがブラッドを心配する中、投げ飛ばした赤崎は投げ飛ばした手を汚いものを触ったように振る。

 

 

 

「少しやりすぎたか。大事な適応者を殺してしまっては意味がないな」

 

 

 



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 第173話  【BLACK EDGE 其の173 炎の剣】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第173話

 【BLACK EDGE 其の173 炎の剣】

 

 

 

 

 赤崎に投げ飛ばされたブラッドは壁にぶつかる。

 

 

 

「っ!!」

 

 

 

 シャドーは短剣を手に赤崎へと攻撃しようと近づこうとする。しかし、赤崎が炎の剣を振ることでシャドーは近づけずに、ジャンプして後ろに退がる。

 

 

 

 シャドーは赤崎に近づけずにいた。

 

 

 

 シャドーには自分の影を動かす技がある。それは光に関係なしに自分の影の堆積内であれば、それを操作できる。

 

 

 

 しかし、シャドーのその能力は長い間使えるわけではないし、それにその能力を使った時の身体への負担が大きい。そのためその技を使うのは本当のチャンスのみ。

 

 

 

「どうした。グリモワール…………術は使わないのか?」

 

 

 

 能力を発動させたのはトラックを移動させた一度だけ、赤崎はシャドーの能力が分かっていないため警戒している。

 

 

 

 だが、赤崎の炎の剣が光を発しているため、シャドーは能力を使って近づくこともできずにいた。

 

 

 

 そんな中、ブラッドがゆっくりと立ち上がる。

 

 

 

「ぐっ…………」

 

 

 

 ブラッドは赤崎に投げられて壁に当たった衝撃でフラフラだ。

 立ち上がったブラッドを見た赤崎は嬉しそうに言う。

 

 

 

「…………ほう、生きていたか……。危ない危ない。今度はもっと手加減をしないとな……」

 

 

 

 立ち上がったブラッドの近くにシャドーは退がる。

 

 

 

「あの剣が厄介だな……」

 

 

 

 シャドーが赤崎の剣を見ながらブラッドに呟く。

 

 

 

「ああ、近づけない。お前の術でどうにかできないのか?」

 

 

 

 ブラッドが聞くとシャドーは首を横に振る。

 

 

 

「無理だ。あの剣の光で影が博士の方に向いていない。影の中に入っても博士の近くに影ができない限り近づくことができない」

 

 

 

 シャドーの話を聞いたブラッドは考える。

 

 

 

「…………そうか。影の作れば良いんだな」

 

 

 

 ブラッドはそう言うと拳を握って構えた。

 

 

 

「あの剣を封じる。その間にシャドー、お前が接近しろ…………」

 

 

 

 ブラッドはそう言ってシャドーよりも前に出た。

 

 

 

「どうするつもりだ……。あの剣を封じるなんてことできるのか!?」

 

 

 

「自信があるからやるんだよ。…………失敗すんなよ。チャンスは一回だ」

 

 

 

 ブラッドはシャドーの方を振り向かずにそう言った。

 

 

 

 それを聞いたシャドーは覚悟を決める。

 

 

 

 何度か戦ってきたからこそ、そしてブラッドのことを認めているからこそ、敵であってもブラッドの言葉を信用することができた。

 

 

 

 そしてブラッドが任せてくれたからこそ、シャドーもそれに答えようと思えた。

 

 

 

「それはこっちのセリフだ。失敗するじゃねーぞ」

 

 

 

 

 

 

 

 



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 第174話  【BLACK EDGE 其の174 影を作れ】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第174話

 【BLACK EDGE 其の174 影を作れ】

 

 

 

 

 ブラッドが前に出ると赤崎は警戒する。

 

 

 

 龍の力について研究しているからこそ、その力の強大さを知っている。そして油断できないと分かっている。

 

 

 

「……さっさとそこのグリモワールの殺して、君を回収したいんだがね。…………その顔は何か策があるか……」

 

 

 

 そしてブラッドの表情を見て、何か作戦があると気づいた。

 

 

 

 赤崎は炎の剣の出力を上げる。

 

 

 

「そろそろ君たちに付き合うのも飽きた。……その作戦ごと燃やし尽くそう」

 

 

 

 赤崎は炎の剣を両手で握り構えた。

 

 

 

「良いのか、そんな攻撃をして……俺が死んじまうかとよ」

 

 

 

「そうはならないさ。……手加減はできてる。でも、それはそれで君にとっては満足のいく状態の保証はないがね。……私としては君の力を利用するだけなのだから」

 

 

 

「そうか……」

 

 

 

 ブラッドは右手を胸の高さに上げると、強く握りしめて力を込める。すると、黒いオーラが右手を包み込む。

 

 

 

「…………それが龍の力か……素晴らしいエネルギーだ。その力があれば、私の理想は完成できる」

 

 

 

「そうはさせないさ。この力はお前如きにどうにかなる代物じゃない」

 

 

 

 そして黒いオーラを溜めた拳を上に突き上げた。

 

 

 

「解放ッ!!」

 

 

 

 ブラッドの腕から黒いオーラが天高く飛んでいく。それは龍の姿になると、天井を突き壊して空へと飛んでいった。

 

 

 

 穴の空いた地下に太陽の光が差し込む。

 

 

 

 そんな中、天に飛んでいった龍が勢いよく戻ってくる。その龍はブラッドのことを食べるように飲み込むと、凄まじいエネルギーを周囲に放つ。

 

 

 

 地下の中に突風が吹く。シャドーはこの突風で立っているのがやっとの状況だ。赤崎は装備の力を利用して問題なく立っている。

 

 

 

「これは……」

 

 

 

 爆風が吹き終えると、シャドーはブラッドの姿を見て驚愕する。

 ブラッドの全身を黒いオーラが包んでおり、ブラッドの周囲にはバチバチと小さな電気が発生している。

 

 

 

「……ドラゴンインストール」

 

 

 

 ブラッドの姿を見た赤崎は嬉しそうに笑う。

 

 

 

「素晴らしい!! 良い!! 凄いぞ!! これが龍、本来の力か!! これだけのエネルギーを瞬間的とはいえ、引き出すことができるとは!!」

 

 

 

 そんな嬉しそうにしている赤崎に向かってブラッドは走り出す。

 

 

 

 

 赤崎はすぐに攻撃を仕掛けられると分かっていたのか、一秒もかからない間に近づいてくるブラッドに向けて剣を振る。

 

 

 

 しかし、ブラッドは高温の剣に切られたというのに、無傷のまま赤崎の前に現れた。

 

 

 

「っぐぁ!!」

 

 

 

 そして赤崎の顔面を殴りつける。

 

 

 

 

 

 



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 第175話  【BLACK EDGE 其の175 龍、本来の力】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第175話

 【BLACK EDGE 其の175 龍、本来の力】

 

 

 

 

 

「ドラゴンインストール…………」

 

 

 

 シャドーはブラッドの様子を見て驚く。

 

 

 

 ブラッドに強力なエネルギーが巡り、全身から溢れ出るエネルギーがブラッドの周囲に電気を発生させていた。

 

 

 

 ブラッドがこの形態になりすぐに攻撃してくるのを読んだ赤崎は炎の剣を振り、ブラッドよりも先に攻撃を仕掛ける。

 

 

 

 赤崎の予想通りブラッドは真っ直ぐ赤崎の方へと向かっていく。

 

 

 

 ブラッドの移動速度は速く。もしもブラッドが向かってくると分かってから行動していたら間に合わなかっただろう。

 

 

 

 赤崎の炎の剣がブラッドを包む。しかし、ブラッドの全身を覆う黒オーラがブラッドを炎が守った。

 

 

 

 ブラッドの黒いオーラは身体の全身に集まると盾のようになり、それでブラッドは炎で身体を焼かれることはなかった。

 

 

 

 そしてブラッドは赤崎の前に立つ。

 

 

 

「なにっ…………」

 

 

 

 ブラッドは握った拳で赤崎の顔面を上から下に向かって殴りつける。

 

 

 

 赤崎の身体はブラッドの攻撃を受け止めることができず、半回するように顔が下にいくにつれて下半身がその反動で上に上がってくる。

 

 

 

 そして赤崎が地面に叩きつけられると、バウンドして地面に倒れた。

 

 

 

 その様子を見ていたシャドーは思わず、

 

 

 

「俺……いらねぇんじゃねぇーよ……」

 

 

 

 と呟いた。

 

 

 

 しかし、硬いプロテクターで全身を覆われていた赤崎にはそんな強力な攻撃でも効果が薄かったようだ。

 

 

 

 赤崎は倒れた状態のまま、ブラッドを見上げる。

 

 

 

「……ああ、良い一撃だ……」

 

 

 

 赤崎の剣は手から離れてブラッドの足元に落ちている。赤崎が手を離したことで炎は消えて、周囲は薄暗くなる。

 

 

 

 赤崎は倒れた状態で

 

 

 

「……だが、まだこの程度が全力じゃないはずだ。…………少し興味が湧いた。もうちょっとだけ試してみることにしよう」

 

 

 

 そう言うと赤崎のプロテクターの肩の部分にある装置の穴が開く。その見た目はまるで何かの発射する装置のような…………。

 

 

 

「フリーズレイ!!」

 

 

 

 赤崎の肩から白いビームが発射される。そのビームがブラッドを狙う。

 

 

 

 ブラッドはどういうわけか避けようとしない。

 

 

 

 そんなブラッドに向けてビームが向かってくる。

 

 

 

「ブラッド!!」

 

 

 

 ブラッドの足元が地面に沈み、ブラッドはギリギリのところでビームを躱した。

 

 

 

「……これは。君の仕業か……」

 

 

 

 沈んでいくブラッドの身体。それと同じように……。

 

 

 

「ん、これは…………」

 

 

 

 赤崎の足も影の中に浸かり始めていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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 第176話  【BLACK EDGE 其の176 影の支配者】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第176話

 【BLACK EDGE 其の176 影の支配者】

 

 

 

 

 ブラッドに向かってくるビーム。避けようとしないブラッドを、シャドーが能力を利用してブラッドを影の世界に半分沈めて避けさせた。

 

 

 

「……何やってんだ…………」

 

 

 

 シャドーはブラッドに言うが、ブラッドは返事をするわけじゃない。

 

 

 

「…………これは……。君の仕業か……」

 

 

 

 ビームを避けたブラッドを見て、赤崎がシャドーに言った。

 

 

 

 トラックで避けた瞬間しかシャドーの能力を見ていない赤崎にとっては、シャドーの能力は未知の能力だ。

 

 

 

 そしてそれはブラッドだけではなく赤崎をも沈める。

 

 

 

 ブラッドは下半身が影の世界に沈んでおり、赤崎は足首まで影の世界に沈んでいる状態だ。

 

 

 

 シャドーの能力は影の世界と現実世界を行き来することができる。しかし、途中で侵入を止めれば、こうやってターゲットの動きを封じることができる。

 

 

 

 赤崎の剣は手を伸ばしても届かない位置にある。肩から出してきたビームもあるが、シャドーにとって厄介だったのは光を発する炎の剣だ。

 

 

 

 そのため現状はシャドーの方が有利だと考えていた。

 

 

 

 シャドーは短剣を握りゆっくりと赤崎の方へと歩いていく。

 

 

 

「これは……空間系の能力か……」

 

 

 

 足が動かなくなっている赤崎がシャドーの能力を分析する。だが、影で動きを封じたのだ。

 能力がバレても問題はない。

 

 

 

 シャドーが赤崎に向かって歩いている最中、ブラッドが叫び声を上げた。その声はまるで猛獣のような声だ。

 

 

 

「……ブラッド?」

 

 

 

 この時、ブラッドは影の世界に送ってしまっておけば良かった。

 

 

 

 ブラッドは影の世界から無理矢理下半身を抜け出す。そして全身を外に出した。

 

 

 

 そしてシャドーの方を向くと、襲いかかってきた。

 

 

 

「……おい、何のつもりだ」

 

 

 

 シャドーは影の中を移動してブラッドの攻撃を避ける。

 

 

 

 シャドーの声はブラッドには届いていない。そんな二人の様子を見て赤崎が笑った。

 

 

 

「そうか、それだけのエネルギーを一気に使えば、普通の人間じゃコントロールができないか」

 

 

 

 やっと赤崎から炎の剣を封じ、そして動きを抑えた。これがチャンスだというのに、ブラッドに邪魔をされる。

 

 

 

 シャドーがブラッドの攻撃を避けていると、施設に異変が起きる。

 

 

 

 天井が崩れ出したのだ。

 

 

 

 ブラッドが龍の力を解放した時に、空いた穴でバランスが崩れてしまったのだ。

 

 

 

 天井が砕けて、地下に光が差し込んでくる。

 

 

 

 すると、シャドーの影と繋がっていた影が分断されて、赤崎の拘束が溶けてしまう。

 

 

 

「……ふむ、光に弱いか……」

 

 

 

 赤崎が脱出してしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 



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 第177話  【BLACK EDGE 其の177 差し込む光】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第177話

 【BLACK EDGE 其の177 差し込む光】

 

 

 

 

 暴走したブラッドがシャドーに襲いかかる。シャドーはブラッドの攻撃を避けるので必死で、動きを封じた赤崎に何もすることができない。

 

 

 

 せっかく炎の剣を止めて、光を消すことに成功した。それにより赤崎をシャドーの能力で影の中に足だけを入れて、動けなくしたというのに……。

 

 

 

 シャドーが何もできずに、ブラッドの攻撃から避け続けていると、地下通路に変化が起きる。

 

 

 

 それはさっきブラッドが龍の力を解放した時に天井に空いた穴。それが崩れ出したのだ。

 

 

 

 天井が崩れ出したことで、地下通路に光が入り込む。その光は通路の真ん中を照らして、シャドーの影と赤崎を拘束している影を分離した。

 

 

 

 影が分離させられたことで、赤崎を拘束していた影はシャドーの支配下から解除される。それにより赤崎は影の拘束から抜け出すことができた。

 

 

 

「…………そうか、光か……」

 

 

 

 拘束の解けた赤崎はそれを観察しながら言った。

 

 

 

 赤崎が脱出してしまった。地下通路はほとんど崩れてしまい、もう青空が見える状況だ。

 

 

 

「……ブラッド、どうしたんだ!?」

 

 

 

 しかし、それでもブラッドは暴走した状態が続いており、シャドーはブラッドの攻撃をどうにか避け続ける。

 

 

 

 その様子を見ながら赤崎は地面に落ちていた炎の剣を拾った。

 

 

 

「力を無理矢理引き出すと、暴走するのか……」

 

 

 

 ブラッドの様子を赤崎は興味深そうにみる。

 

 

 

「…………暴走だと……」

 

 

 

 シャドーはブラッドの様子がおかしいことは分かっていた。しかし、暴走しているとは……。

 

 

 

「このやろう。暴走だと……なら…………」

 

 

 

 シャドーは壁にある影に触るとその影の中に入る。そして影の世界に隠れた。

 

 

 

 すると、シャドーを見失ったブラッドは周りを見渡す。そして赤崎を発見した。

 

 

 

「私とぶつけるということか……。確かに強力な技だ。だが、そのパワーはもう測定できた」

 

 

 

 赤崎に向かって襲いかかるブラッド。ブラッドは拳を握り、赤崎に攻撃を仕掛ける。しかし、赤崎はブラッドを冷静に引き寄せてから、

 

 

 

「っ!!」

 

 

 

 肩からビームを出してそれをブラッドに直撃させた。黒いオーラで覆われているブラッドは肉体的なダメージはなかったが、そのビームに押されて反対側にある壁まで吹っ飛んでいった。

 

 

 

 そしてブラッドの身体は壁にぶつかると、ビームの効果でビームの当たった場所から凍っていく。そして氷がブラッドの腹を凍らせて壁に貼り付けにした。

 

 

 

 

 

 

 

 



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 第178話  【BLACK EDGE 其の178 時間稼ぎ】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第178話

 【BLACK EDGE 其の178 時間稼ぎ】

 

 

 

 

 

 ビームの直撃したブラッドはビームが当たった部分が凍りつき、壁に貼り付けになった。

 

 

 

「…………とりあえず。確保だな……」

 

 

 

 そう言った赤崎は影の世界から姿を見せたシャドーの方を見た。そして炎の剣のスイッチを入れる。

 

 

 

「あとはグリモワール。君を排除するだけだな」

 

 

 

 シャドーは短剣を抜いて構えた。

 

 

 

 瓦礫だらけになった地下通路には細かく無数の影が繋がっている。今の状況ならシャドーの能力も使いやすい。

 

 

 

 しかし、ブラッドがやられてしまった今、どうするべきなのか……。

 

 

 

 シャドーの能力は影の世界を移動するだけだ。そのため攻撃力は彼の身体能力のみである。

 

 

 

 ブラッドの破壊力でも赤崎のプロテクターに傷を与えることはできなかった。そんなプロテクターをシャドーだけでどうにかできるのだろうか。

 

 

 

 シャドーは短剣を構えながら赤崎との間合いを取る。

 

 

 

「…………博士、なぜ、俺たちを裏切った」

 

 

 

 シャドーは赤崎に会話を始める。

 

 

 

「……裏切った……か。私は君達の仲間のつもりではなかったけどな」

 

 

 

「アルファは仲間だと言ってた。あんたは違うのか……」

 

 

 

「……あれは所詮は私の劣化品だ。バグは起こる。それは想定済みだ」

 

 

 

 赤崎は剣を両手で持つとシャドーに向けて攻撃できる形で構えた。

 

 

 

 いつでも攻撃できる体制だ。シャドーは会話をしてアルファとフェア、子供達が逃げる時間をもう少し作ろうとしたが、赤崎に会話をする気はないようだ。

 

 

 

「…………さようなら、グリモワールの殺し屋」

 

 

 

 赤崎はシャドーに向けて炎の剣を振る。炎は横に広がりシャドーに向かってくる。

 

 

 

 影の世界に逃げる。それは可能だ。影の世界に閉じ込める? しかし、影の世界からの脱出は簡単にできてしまう。

 

 

 

 どちらにしろ。この赤崎博士を倒さなければ、この男の計画は実行される。それを阻止しなければならない。

 

 

 

 なら……

 

 

 

 シャドーは短剣を捨てた。そして全身に力を込める。

 

 

 

 それは自身の影を動かす術の更なる進化系。今必要なのはその新技だ。

 

 

 

 影を動かすだけでも身体への負担は大きい。しかし、それを超えなければ、この男は倒せない。

 

 

 

 シャドーは影を動かした。そしてその影を赤崎のシャドーの間へと動かす。

 

 

 

 想像する。空間に壁があると……。この赤崎との間に透明な壁があり、そこに影が現れてもおかしくないと。

 

 

 

「影が……動いた……」

 

 

 

 シャドーの影は地面から浮き、影だけが空中に伸びる。そして影でできた壁が赤崎との間を塞いだ。

 

 

 

 

 

 



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 第179話  【BLACK EDGE 其の179 影の力】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第179話

 【BLACK EDGE 其の179 影の力】

 

 

 

 

 シャドーは自分の影を動かす。その動かした影は地面から離れて、空中に浮かび上がる。

 

 

 

 そしてシャドーを赤崎の炎の剣から守るように壁になった。

 

 

 

 シャドーの影に炎がぶつかると、炎は影に吸収されてシャドーの前から消えていく。炎は影の世界に転送されている。

 

 

 

 赤崎は剣を振り終えるが、シャドーには炎は届くことはなかった。

 

 

 

「……なんだ。この黒いのは…………」

 

 

 

 赤崎は突然目の前に現れた黒い物体を警戒する。

 

 

 

 シャドーは影を動かし、さらにはそれを空中に展開したことで、身体に疲労感が現れる。視界が不安定になり、足元もおぼつかない。

 

 

 

 しかし、これだけでは攻撃を防いだだけだ。

 

 

 

 赤崎の計画を止めるのがシャドーの役割だ。そしてブラッドを倒すのも…………。そのためにはこのまま逃げるだけでは意味がない。

 

 

 

 シャドーはさらに影を動かす。空中に張り付いていた影が空中で蛇のようにウネウネと動き出した。

 

 

 

 そしてそれは赤崎の方へと飛んでいく。

 

 

 

「……不思議な術だ」

 

 

 

 速度はゆっくり。蝶が飛ぶ速度だ。いや、蝶の方が早く、これでは蝶すら捕まえることができないだろう。

 

 

 

 シャドーの影が近づいてきて、赤崎は警戒する。後ろへと下がって距離を取る。これでは簡単に逃げられてしまう。赤崎を捕らえることはできない。

 

 

 

 いや、そんなことをする必要はない。もうすでにシャドーの作戦は完了した。

 

 

 

「くっ…………」

 

 

 

 力を使い果たしたシャドーは意識はあるが、体のいうことがきかず、足から崩れ落ちる。

 

 

 

 シャドーが地面に崩れると同時に、シャドーの影は消滅して元の場所へと戻ってくる。

 

 

 

 シャドーの影を警戒していた赤崎は、ホッとしたように胸を下ろす。その時だった。

 

 

 

「っ!? な、なぜ君が!? ………………」

 

 

 

 赤崎の前に現れるはずのない男が出てきた。その男は拳を握り赤崎に拳を振り下ろす。

 赤崎は顔面に食らう。

 

 

 

「………………ブラッドォォォォ!!」

 

 

 

 赤崎の前に現れたのはさっきまで赤崎の放ったビームにより、氷で拘束されていたはずのブラッドだった。ブラッドは自身の力では抜け出すことができずに、手足をバタバタさせて暴れていた。

 

 

 

 しかし、今、赤崎の前に現れて殴ってきたのは正真正銘のブラッドだ。どうやって抜け出してきたのか…………。

 

 

 

 赤崎は理解する前にブラッドに殴り飛ばされて、身体を回転させながら通路を吹き飛んでいく。そして地面に三回ほどバウンドした後、回転してそしてしばらく経って止まった。

 

 

 

 

 

 



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 第180話  【BLACK EDGE 其の180 龍の暴走】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第180話

 【BLACK EDGE 其の180 龍の暴走】

 

 

 

 

 

 殴り飛ばされた赤崎は地面を転がっ後、仰向けに倒れた。

 

 

 

 赤崎は寝っ転がったまま、しばらくその格好で考え込む。

 プロテクターによりダメージはなく、赤崎の計算通りならあの状態から抜け出すことは不可能だ。

 

 

 

 だとしたらどうやって抜け出してきたのか…………。

 

 

 

 その前に何があったか。そこから赤崎は思い出して考え始めた。

 

 

 

 シャドーから現れた黒い物体が、炎の剣を防ぎ、シャドーにダメージを与えることはできなかった。しかし、ダメージはないはずなのにシャドーはフラフラと今にも倒れそうな状況だった。

 

 

 

 しかし、そんな状況でもシャドーはその黒い物体を動かして赤崎の方へと向かわせてきた。速度は遅いが得体の知れない能力だ。

 赤崎はそれに気を取られた。そう、その時にシャドーが何かをしたのだ。

 

 

 

 ブラッドが脱出したのとシャドーが倒れたタイミングはほぼ同時。その可能性が高い。

 

 

 

 赤崎は剣を握って立ち上がる。

 

 

 

 シャドーは倒れたままだ。しかし、意識はあるようでこちらを睨んでいる。そして何か満足そうな表情だ。何かやったので間違いはない。

 

 

 

 

 

 実際にシャドーは能力を使ってブラッドを解放した。どうなるか分からない作戦ではあったが、今はそれしか手段がなかった。

 

 

 

 赤崎に空中を移動する影で意識をそれに集中させ、その間に枝分かれ式で地面を伝って、ブラッドの元に影を移動させていた。

 

 

 

 そしてその影でブラッドにくっついていた氷だけを影の世界に送ったのだ。そしてブラッドを解放した。

 

 

 

 しかし、ブラッドの様子がおかしいのは確かだ。さっきもシャドーはブラッドに襲われた。だから、解放したからといって赤崎を攻撃できるかは分からない。

 

 

 

 だが、それに賭けるしかなかったのだ。そしてブラッドは赤崎に襲いかかった。

 

 

 

 赤崎は剣を両手で握ると構える。赤崎の前にはブラッドが猛獣のような構えで狙っていた。

 

 

 

「…………なら、もう一度捕まえるだけだ」

 

 

 

 赤崎は炎の剣を横に振り、ブラッドを攻撃する。しかし、これはダメージを与えようとしたものではなく、ブラッドを空中へと誘導したもの。

 

 

 

 赤崎の予想通り、ブラッドは飛び上がり炎を避ける。そして空中から赤崎に向かって飛んでくる。

 

 

 

 そんなブラッドに向けて肩にある発射口からビームを放つ。それは空中にいるブラッドに向かって放たれるが、ブラッドは空中で身体をひねると、両肩から飛んできたビームを避けた。

 

 

 

 そして落下しながら赤崎に拳を振り下ろした。

 

 

 

 

 

 

 



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 第181話  【BLACK EDGE 其の181 美しい芸術】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第181話

 【BLACK EDGE 其の181 美しい芸術】

 

 

 

 ブラッドは空中で身体を捻り、ビームを避けると赤崎の顔面を地面に叩きつけるように殴りつけた。

 

 

 

 赤崎の身体はブラッドの攻撃を受け止めることができず、地面に叩きつけられる。だが、プロテクターにはヒビ一つ入らない。

 

 

 

 赤崎は地面に叩きつけられるが、今度は剣を右手だけで持つと左手をブラッドの方に向けた。

 そして左手の付け根の部分から、小さな穴が三つほど空いた部品が飛び出す。

 その穴から高密度に凝縮された水が発射された。

 

 

 

「ウォータービュレット」

 

 

 

 その水のビームはブラッドの肩を貫く。そしてブラッドの背後にあった壁を切断した。

 

 

 

 だが、ブラッドは怯むことなく殴りつけると、身体を回転させて地面から跳ね返ってバウンドしていた赤崎を後ろ蹴りする。

 

 

 

 赤崎は吹っ飛んだ後、瓦礫の山を貫通して壁に激突する。

 

 

 

 まだダメージはないが想定以上のダメージを食らっている。

 

 

 

「ダメージ覚悟の突撃…………いや、そんな考えももうない……ただ暴れているだけか」

 

 

 

 ブラッドは瓦礫の山を破壊しながら壁にぶつかった赤崎の方へと突撃してくる。

 このままじっくりと破壊してもいいが、この装備も無敵というわけではない。

 

 

 

「もう終わりにしよう」

 

 

 

 赤崎は壁に背中をつけたまま、剣を捨てると両手を前に突き出した。そしてその両腕を重ね合わせると、ブラッドに向けた。

 

 

 

「…………ブリリアントデトネーション」

 

 

 

 ブラッドが目の前まで接近した時、赤崎はその装置を起動させた。プロテクターにある電力をほぼ使い果たし、それで放つことができる大技。

 

 

 

 ブラッドと赤崎の全身を眩い光が包む。世界の色が一瞬失われるような感覚。そのあと、地下通路全体に響き渡る爆音と共に、周囲に大爆発を起こした。

 

 

 

 近くで倒れていたシャドーの身体は爆風で吹き飛び、壁に寄りかかる体制になる。そして爆発を目の当たりにする。

 

 

 

 大爆発が起きたあと、二人は煙に包まれる。シャドーが見たとは一人が立っている姿だった。

 

 

 

「…………龍の適応者は素晴らしいな。これをまともに食らってもまだ意識がある。殺してしまったら、逃げ出した適応者を追いかけなくてはならなかったからな。君も自身が犠牲になるなら、その方がいいのだろう」

 

 

 

 立っていたのは赤崎だ。そして赤崎は倒れているブラッドを見下ろしていた。

 

 

 

 ブラッドを包んでいた黒いオーラは薄くなっている。もうブラッドには立ち上がる力は残っていないだろう。

 

 

 

 

 

 



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 第182話  【BLACK EDGE 其の182 救世主】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第182話

 【BLACK EDGE 其の182 救世主】

 

 

 

 

 倒れたブラッドを赤崎は見下す。もうブラッドもシャドーも立ち上がる力すら残っていない。

 

 

 

 それに対して赤崎はダメージすら受けていない。もうここまでなのか…………。

 

 

 

 赤崎はブラッドを担ごうと手を伸ばした時、赤崎の目の前からブラッドが消えた。

 

 

 

 それは一瞬の出来事。高速で移動したとか、そういう感じではない。それにブラッドは抵抗する力も残っていなかった。

 

 

 

「よぉ、あんたが赤崎博士か?」

 

 

 

 赤崎の背後から声が聞こえる。振り返るとそこには青髪の男がいた。

 

 

 

 その男の右手にはシャドー、左手にはブラッドを持っていた。

 

 

 

「君は誰かな?」

 

 

 

 赤崎はその男に聞く。するとその男はめんどくさそうに答えた。

 

 

 

「フェザント。…………ブルーバードの………………ま、幹部的なやつだな」

 

 

 

 と適当に返事をした。それを聞いた赤崎は警戒する。

 

 

 

「…………ブルーバード……か……。なぜ、君達が彼らを助ける?」

 

 

 

 赤崎が聞くとやれやれという表情でフェザントは答えた。

 

 

 

「それはお前の計画を邪魔するためだろ……。俺は命令されてここに来たんだ。詳しいわけは知らねぇよ」

 

 

 

 グリモワール、ブラッド、そしてブルーバードはそれぞれ敵対関係だったはずだ。しかし、彼らが協力を始めたということは……。

 

 

 

「それだけ私の兵器が怖いかね?」

 

 

 

「さぁ、だが、そういうことなんだろ…………」

 

 

 

 赤崎は落ちていた剣を拾うと、炎の剣のスイッチを入れる。剣からは炎が出て、これでいつでも戦闘できる体制だ。

 

 

 

「…………彼を返してくれないか?」

 

 

 

「それは無理だな」

 

 

 

 フェザントが答えたあと、両手に持っていたはずの二人が消えた。フェザントの手には何もない。

 

 

 

 フェザントは崩れた地下通路から上を見上げる。

 

 

 

「後のことは頼んだぞ」

 

 

 

 上にいたのはそこにいたのは褐色の肌をした女性と、赤毛の少女。

 褐色肌の女性がブラッドとシャドーを担いでいた。

 

 

 

「あとは任せたぞ。クロウ、クレイン」

 

 

 

 二人は「了解」と答えるとブラッドとシャドーを連れてどこかへ消えていく。

 

 

 

「……行かせるか」

 

 

 

 赤崎は追おうとするが、その前にフェザントが立ち塞がった。

 

 

 

「行かせると思ってるのか? 博士さんよ」

 

 

 

 フェザントの手には武器はなく素手で戦うらしい。フェザントは拳を握って構えた。

 

 

 

 赤崎は炎の剣を振り上げる。

 

 

 

「邪魔をする気か……。ブルーバードはいつからグリモワールやブラッドと仲良くなった?」

 

 

 

「さぁな」

 

 

 

 

 

 



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 第183話  【BLACK EDGE 其の183 衝撃の膝枕】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第183話

 【BLACK EDGE 其の183 衝撃の膝枕】

 

 

 

 

 ブラッドが目を開けると目の前に褐色肌の女性がいた。下から見上げているような状況で、顔の全体ははっきりとは見えない。

 だが、それでも分かることがある。その女性は美しい。風が吹くと白い髪がサラサラと靡いている。

 

 

 

 風を煽られた髪を触った女性はふと下を見た。そしてブラッドと目があった。

 

 

 

 女性が見た時、ブラッドは思い出す。その女のことを…………。

 

 

 

 プロタゴニストの森で緑髪の少女を操り、森を荒らしていたクレインという女性だ。

 

 

 

 ブラッドは口を閉じるのを忘れて、目を見開いて驚く。だが、驚いているのはブラッドだけではない。

 

 

 

 クレインもブラッドが起きたことに気づくと、口を開いて驚いたあと、徐々に顔を赤めていく。

 

 

 

「お前は!!」

 

 

 

 ブラッドは思わず立ち上がる。すると、ブラッドと頭がクレインの頭にぶつかり、二人は頭を抑えて地面を転がった。

 

 

 

「痛ってーなぁ!! 何しやかんだ!! 黒龍の適応者!!」

 

 

 

「それはこっちのセリフだ!! なんでお前が…………あんなことしてんだよ!!」

 

 

 

 ブラッドが目覚めるとクレインに膝枕されていた。敵である女性に突然そんなことされたら恐怖でしかない。

 

 

 

 クレインは顔を赤くして怒る。

 

 

 

「しょーがねぇじゃねぇか!! そうしないと傷を治せないんだよ!!」

 

 

 

「傷を直せないだぁ!? ………………え、傷?」

 

 

 

 ブラッドは自分の体を見る。まだ肩などにあとは残っているが、傷が治っていた。

 

 

 

「まさか……お前が…………嘘だろ」

 

 

 

「嘘じゃねぇよ!! …………感謝しやがれってんだ!!」

 

 

 

 クレインはブラッドに目を合わせずにそう怒鳴る。

 

 

 

 周りを見渡すとそこはカメリアと王都を繋ぐ道から少し外れた森林。太陽の光が差し込む暖かい場所だ。

 

 

 

 近くにはシャドーが倒れており、傷は治っているが寝ているようだ。仮面とフードが外れているため、素顔が気になるが今は見ないであげよう。

 

 

 

「ふふふ、俺にも感謝するんだな!」

 

 

 

 そしてもう一人。赤毛の少女が偉そうに威張っていた。

 

 

 

「俺がいなければ、お前らは今頃死んでいたかもな!!」

 

 

 

 そんな威張っているクロウの頭をクレインが叩く。叩かれたクロウは痛そうに頭を摩った。

 

 

 

「何すんだよ!!」

 

 

 

「こいつら担いだのは私だし、治したもの私だ!! お前は殆ど何もしてないだろ!!」

 

 

 

 なぜ、クレインとクロウが一緒にいるのか。そしてなぜ助けてくれたのか、気になることは沢山ある。

 

 

 

 だが、それよりも先に。

 

 

 

「なぁ、フェア達は無事か?」

 

 

 

 

 

 



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 第184話  【BLACK EDGE 其の184 助けられた】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第184話

 【BLACK EDGE 其の184 助けられた】

 

 

 

 

「なぁ、フェア達は無事か?」

 

 

 

 ブラッドが聞くとクレインとクロウは顔を合わせる。そしてその後クレインが答えた。

 

 

 

「知るか…………と言いたいところだが、無事だ。そっちにはスワン様が直々に向かったと聞いている。問題はないはずだ」

 

 

 

 それを聞いたブラッドはホッとする。この情報を信じるべきかはわからない。それにクレインが言ったスワン様という人物についても不明だ。

 

 

 

 だが、赤崎に捕まったわけじゃないのなら、兵器のエネルギーとして使われてはないということだろう。

 

 

 

 そしてそうであるのなら、

 

 

 

「お前らをぶっ飛ばして、情報を聞き出せばいいってことだな!!」

 

 

 

 ブラッドはそう言って構えた。

 

 

 

 クレインとクロウが一緒にいるということは、二人はブルーバードの関係者なのだろう。そしてそうなるとフェザントという人物もそうだ。

 

 

 

 そしてスワンという人物はブルーバードの偉い人だ。フェアとそいつの居場所を吐かせて、そこに行けば良い。

 

 

 

 戦闘体制のブラッドを見てクロウは焦る。

 

 

 

「待て待て待て!! この流れでなんで戦おうとするの!? 休戦!! 休戦の流れでしょ!?」

 

 

 

 クロウは両手を上げて降参の体制だ。そんなクロウにブラッドは言う。

 

 

 

「お前らなんて信用できるかよ」

 

 

 

「それはその通りだけど!!」

 

 

 

 クロウが焦る中、クレインはブラッドの意見に頷く。

 

 

 

「同感だ」

 

 

 

「同感じゃないよ!!」

 

 

 

 クロウが今にも戦闘になりそうな二人を見て、足をバタバタさせて焦る。

 そんなクロウを見て、クレインはため息を吐いた後腕を組んだ。

 

 

 

「だが、利害が一致してるのは確かだ。……フェアと子供達はお前に返す。それなら休戦できるか?」

 

 

 

「本当だろうな……」

 

 

 

「嘘なら後で私を殺せば良い」

 

 

 

「……分かった。休戦だ」

 

 

 

 ブラッド達はどうにか戦闘になることなく終わった。そんな会話が終わった時、

 

 

 

「……ぅ、うるせえな」

 

 

 

 シャドーが起き上がった。そして仮面をかぶることなくブラッド達の方を見る。シャドーの顔は金髪碧眼で顔が整っておりかなりのイケメンだ。

 そんなシャドーの顔を見たブラッドは、

 

 

 

「お前、そんな顔だったのか……」

 

 

 

 と声を出した。その言葉を聞いたシャドーは、驚いた表情をした後、仮面が落ちているのを見つける。

 

 

 

「きゃ!」

 

 

 

 シャドーは変な声を出しながら顔を隠す。

 

 

 

「今お前、『きゃ!』って言わなかったか? なぁ、今言ったよな? なぁ?」

 

 

 

 変な声を出したシャドーをブラッドは揶揄う。シャドーは顔を手で隠したまま、地面に落ちている仮面を拾って顔を隠した。

 

 

 

「それ以上言うんじゃね! 今殺されてぇのか!!」

 

 

 

 そしてブラッドに短剣を向けた。

 

 

 

「やるか?」

 

 

 

 ブラッドも拳を握り戦う体制だ。しかし、そんな二人にクロウが割って入った。

 

 

 

「もうやめろーー!!」

 

 

 

 

 

 

 



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 第185話  【BLACK EDGE 其の185 ブルーバード】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第185話

 【BLACK EDGE 其の185 ブルーバード】

 

 

 

 

 シャドーも目覚め、林にブラッド、シャドーと、ブルーバードのクロウ、クレインが集まっていた。

 

 

 

 赤崎に負けたシャドーとブラッドをなぜ、ブルーバードが助けたのか。

 

 

 

 四人は各々の体制で話を始める。最初にブラッドが聞いた。

 

 

 

「何故俺たちを助けた」

 

 

 

 ブルーバードとは前に戦闘になったことがある。なぜ、そんな組織の人間が助けてくれたのか。

 

 

 

 その質問にクレインは腕を組んだ状態で木に寄っかかり答える。

 

 

 

「私達の目的はお前達と同じだからだ」

 

 

 

「それは赤崎の兵器を止めることか?」

 

 

 

「ああ、あの男が作ろうとしている兵器はブルーバードにも脅威になる。だからそれを止めに来た」

 

 

 

 するとシャドーが今度は質問する。

 

 

 

「なら俺を助ける必要はないだろ」

 

 

 

「ついでだよ。私はお前なんてほっとけって言ったんだが、フェザントのやろーがお前も寄越しやがったんだ」

 

 

 

 それを聞いたシャドーは驚く。

 

 

 

「フェザントだと…………」

 

 

 

「ん? 知ってるのか?」

 

 

 

「ああ、まぁな」

 

 

 

 シャドーはフェザントとは一度王都で戦闘になったことがある。あの時は決着がつかなかったが、かなりの使い手だ。

 

 

 

 しかし、あの戦闘の時も感じていたが、フェザントはかなりのお人好しだ。戦闘の時には手加減をしていたし、今回もシャドーを率先して救ってくれた。

 

 

 

「ということは、フェザントと……クロウ、お前もブルーバードなんだな」

 

 

 

 ブラッドがクロウの方を向くと頷いた。

 

 

 

「騙していたわけじゃないぜ。聞かれなかったから答えなかっただけだ」

 

 

 

 カメリアに来た時にフェザントとクロウが一緒におり、その二人にブラッドは出会っている。

 

 

 

 ブルーバードがブラッド達を助けたのは兵器を止めるためだ。そのため龍の適応者を赤崎に捕まらないようにしたのだ。

 

 

 

 だが、そうなると一つ気になることがある。

 

 

 

「クレイン、お前が前に連れていた龍の適応者……女の子はどうした?」

 

 

 

 クレインは前にレイラという緑髪の少女を連れていた。その少女は龍の適応者であり、クレインが操作してプロタゴニストの森で暴れていたのだ。

 

 

 

「レイラならスワン様と一緒だ」

 

 

 

 クレインはそう答えた。

 

 

 

「そのスワンって誰なんだ?」

 

 

 

 クレインの口からさっきからその人物の名前が何度か出ている。しかし、ブラッドはその人物が誰なのか知らない。

 ブラッドはクレインに質問すると、

 

 

 

「ブルーバードの頂点に君臨するお方、組織のトップだ」

 

 

 

 

 

 

 

 



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 第186話  【BLACK EDGE 其の186 共闘作戦】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第186話

 【BLACK EDGE 其の186 共闘作戦】

 

 

 

 

「それでフェアもそのスワンという奴のところにいるのか」

 

 

 

「そういうことだな」

 

 

 

 ブラッドの質問にクレインが答えた。

 

 

 

 フェアはスワンという奴と一緒にいると言っていた。ということはそこにはフェアと子供達、そしてアルファ、さらにスワンとレイラがいるということだ。

 

 

 

 スワンがどういう人間かは分からない。だが、ブラッド達を治療してくれたということは、本当に戦う気はないのだろう。

 

 

 

「じゃあ、そこに行こう」

 

 

 

 ブラッドはそう言ってカメリアのある方角を見る。

 

 

 

 ブラッドはフェア達が心配だった。だからこそ早く合流したい。

 

 

 

「そうだな。黒龍の適応者の回収に失敗したということは、そっちを狙う可能性もある。そちらに向かった方がいいだろう」

 

 

 

 クレインはそう言って賛同してくれた。クロウとシャドーも合流に賛成のようだ。

 

 

 

「龍の適応者が集まれば、敵もそこに誘導できるか。そこで敵を迎え撃つことができればいいがな」

 

 

 

 赤崎は強い。ブラッドとシャドーが二人で戦っても倒すことができなかった。

 

 

 

 だが、現れる場所が分かっているのなら対策をすることもできる。それにクレインやクロウ、そしてブルーバードのトップも集まるのだ。

 これだけの戦力が集まれば、赤崎でも辛いはずだ。

 

 

 

「それでフェア達はどこにいる?」

 

 

 

 ブラッドが聞くとクロウは

 

 

 

「ちょっと待ってて」

 

 

 

 と言った後、三人から少し離れると、手を上に伸ばした。すると空から黒い物体が飛んでくる。

 

 

 

 それは全身が黒い毛に覆われた鳥カラスだ。カラスはクロウの近くにある気に次々と並んで泊まっていく。

 

 

 

 そして林の枝に大量のカラスが集まってきた。

 

 

 

「スワン様の居場所を教えて」

 

 

 

 クロウがカラス達に向かってそう叫んだ。するとその中の一匹のカラスが空へと飛び立ち、どこかへ飛んでいった。

 

 

 

 そして数分後に戻ってくる。戻ってきたカラスは小さな板を加えており、それをクロウに渡す。それを受け取ったクロウはブラッド達に伝えた。

 

 

 

「カメリアにあるトレールという宿。そこにいるみたいだぜ」

 

 

 

 クロウの言葉を聞いた三人は頷いた後、四人で出発した。

 

 

 

 そして宿に着いたのだが、

 

 

 

「…………こ、これは……………………」

 

 

 

 宿は荒らされており、戦闘の跡がある。ブラッド達がたどり着く前に赤崎からの奇襲があったのだろうか。

 

 

 

 その時だった。ブラッド達は後ろから話しかけられる。

 

 

 

「生きていたのか、君たち…………」

 

 

 

 

 

 

 

 



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 第187話  【BLACK EDGE 其の187 狙われた】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第187話

 【BLACK EDGE 其の187 狙われた】

 

 

 

「良かった。君たちは無事だったか……」

 

 

 

 ブラッド達の後ろから声がする。四人が振り向くと、そこには白衣を着た少女と多くの子供達がいた。

 

 

 

「アルファ!!」

 

 

 

 シャドーがアルファの名前を呼んで無事だったことを喜ぶ。アルファの頭を凄い勢いで撫で始めた。

 

 

 

「ちょ、ちょ、激しい!!」

 

 

 

「無事だったか! 無事で良かった!」

 

 

 

 宿の状況を見てかなり心配していたようだ。

 

 

 

 グリモワールであるシャドーもここまで仲間を大切にしているとは……。

 

 

 

 後ろにいるのはフェアが助けたいと言っていた子供達だ。子供達は誰一人傷はない。しかし、

 

 

 

「フェアはどこだ?」

 

 

 

 そこにはフェアがいなかったのだ。一緒にいたはずのフェアが見当たらない。

 

 

 

 すると、アルファは下を向く。

 

 

 

「フェアは………………」

 

 

 

 だが、小さな声で喋っているためはっきりとは聞こえない。

 

 

 

「フェアは、フェアはどうした!?」

 

 

 

 ブラッドはアルファに強い口調で言う。

 

 

 

 フェアはどこに行ったのだ。ここにいると言っていたから来たのだ。しかし、フェアはここにいなかった。

 子供達はいるというのに…………。しかし、フェアだけがいない。

 

 

 

 アルファが答えられずにいると、

 

 

 

「白龍の適応者は攫われたわ」

 

 

 

 荒らされた宿の中から緑髪の少女レイラと、白いワンピースをきたマッチョのおっさんが出てきた。

 おっさんはブラッド達よりも大きく、そして全身が筋肉で覆われている。凄い強そうな男だ。

 

 

 

「…………お前がスワンか……。フェアが攫われたってどういうことだ」

 

 

 

 ブラッドはスワンのことを睨んだ。睨んだのだが…………。

 

 

 

「……どうして目をそらすの?」

 

 

 

 その男の格好が見るに堪えなくて、ブラッドは目をそらしてしまった。

 

 

 

 フェアが攫われたと聞いて大変なところなのに、なんでこんなおかしな格好のおっさんが現れるのだろうか。

 

 

 

 こんな変な格好がブルーバードのトップだというのか。

 

 

 

「…………ま、いいわ。…………君のところの白龍の適応者は赤崎に攫われた。おそらく例の兵器に使うつもりのようね」

 

 

 

 スワンはそう言った後、頭を下げた。

 

 

 

 そして大きな声で謝る。

 

 

 

「すまないわ。私の責任だわ。君の仲間を守ることができなかった」

 

 

 

 スワンが頭を下げた様子を見て、クレインやクロウは慌てている。組織のトップが敵に頭を下げたのだ。それは慌てるはずだ。

 

 

 

 実際ブラッドもシャドー達も驚いていた。

 

 

 

 そんな中、アルファが状況を説明し始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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 第188話  【BLACK EDGE 其の188 青い鳥】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第188話

 【BLACK EDGE 其の188 青い鳥】

 

 

 

 

 アルファの運転で地下施設から脱出することができたフェアと子供。彼らが外に出るとそこはカメリアの街の外れだった。

 

 

 

 林の中に地下へと続く建物があったとは……。これは街を探していても見つけられないはずだ。

 

 

 

 外へ出ることができて一安心。と思ったが、そんな彼らの前に五人の男女が現れた。

 

 

 

 フェアとアルファは各々面識のある人物達。

 

 

 

「君たちはブルーバードの!?」

 

 

 

 そこにいたのはブルーバードの人たち。

 

 

 

 クレイン、レイラ、クロウ、フェザント、そしてスワンだった。

 

 

 

 外で待ち伏せしていたブルーバードを警戒した。そんな彼らにブルーバードは戦意がないと言っていた。

 

 

 

 アルファとフェアはブルーバードから話を聞いた。するとブルーバードもグリモワールやフェア達と同じで赤崎と敵対しているらしい。

 そして地下施設への入り口をやっと見つけたところをフェア達が出てきたらしい。

 

 

 

 ブルーバード達はアルファとフェアに協力を提案してきた。最初はフェアは警戒していたのだが、アルファは条件を提示して協力をすることになった。

 

 

 

 アルファは提示した条件はブラッドとシャドーを助けに行くこと。それと私達の安全を保証すること。

 

 

 

 ブルーバードはその条件を飲んだ。そしてスワンが子供達とアルファ、フェアを守ることになった。

 

 

 

 フェアと子供達はスワンのことをビビっていたが…………。

 

 

 

 スワンは安全な宿があると言い、フェア達を案内した。そこはブルーバードが管理している宿であり、ここでブラッドとシャドーが来るまで待つことになった。

 

 

 

 護衛はブルーバードの下っ端とブルーバードのトップであるスワンだ。

 

 

 

 フェア達が部屋で待っていると、宿の外で騒ぎが起きる。

 

 

 

 フェア達は何事かと部屋から出る。すると廊下では赤い髪のメイドが箒を持って暴れていた。

 

 

 

 箒を振り回し、剣を持ったブルーバードの兵士たちを次々と張り倒していた。

 あのメイドは…………。

 

 

 

「ロジョン!!」

 

 

 

 メイドを見たフェアは名前を叫んだ。

 

 

 

 そのメイドは赤崎博士のところにいたメイドだ。ブラッドの攻撃を止められるほど、ロジョンは強い。

 そんなロジョンがこんなところまでやってきたのか。

 

 

 

 兵士たちを倒したロジョンは、フェアへと近づいてくる。

 

 

 

 フェアは子供達を守るために両手を広げた。

 

 

 

 狙っているのは子供達ではない。だが、それでも守らないとと身体が動いた。

 

 

 

 そんなフェアにロジョンは近づいてくる。

 

 

 

 ロジョンが手を伸ばした時、ロジョンの横にある廊下の壁が壊れて、そこから大きな拳が現れた。そしてそれがロジョンを殴り飛ばす。

 

 

 

 ロジョンは反対側にある壁にめり込み、宿の部屋の中に入っていった。

 

 

 

 ロジョンが拳の現れた方を見ると、壁を破壊しながら白いワンピースを着た男が現れた。

 

 

 

「私の部下をよくも倒してくれたわね。…………でも、ここまでよ。私がこの子達を守り抜くわ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 



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 第189話  【BLACK EDGE 其の189 美しき鳥】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第189話

 【BLACK EDGE 其の189 美しき鳥】

 

 

 

 

 

「あなたはブルーバードの総督スワンですね」

 

 

 

 ロジョンは殴り飛ばされた後、ゆっくりと立ち上がりながらスワンの方を見た。

 

 

 

「あら、私の名前を知ってるなんて、光栄よ」

 

 

 

 スワンは丸太のように太い腕を曲げると、自分のほっぺたを優しく撫でる。

 そして頬を赤くした。

 

 

 

 名前を呼んでもらえたのが嬉しかったのだろう。

 

 

 

 ロジョンは服についた埃を叩いて落とすと、落とした箒を拾った。

 

 

 

「赤崎博士は慎重なお方です。敵の情報は全て網羅しております」

 

 

 

 ロジョンは箒を持ったまま深く頭を下げた。

 

 

 

 スワンは腕を組むと、フェア達の方を向かずに伝える。

 

 

 

「約束よ。あなた達を守り抜く。そのために私が戦うわ。そこで待ってなさい」

 

 

 

 そしてスワンは腕を組んだまま、一歩前に出た。そして穴が空いた壁のところを真っ直ぐ立つ。これでロジョンはスワンをどうにかしなければ、フェアに触れることもできない。

 

 

 

「あなた方が協力することも赤崎博士の計算のうちです。そしてあなたがここで離脱することも…………」

 

 

 

 ロジョンの台詞を聞いたスワンは眉間に皺を寄せる。

 

 

 

「言ってくれるわね。ここで私が離脱だなんて…………傲慢よ」

 

 

 

「事実です」

 

 

 

「傲慢よ」

 

 

 

 ロジョンは箒を両手に持ち、スワンに近づく。

 

 

 

 そしてロジョンは箒の棒の部分でスワンの顔を殴った。

 ロジョンは箒を振る速度は素早く、まるで剣をするようなスピードだった。

 

 

 

 そしてその威力は岩石ですら破壊してしまいそうな破壊力。しかし、そんな攻撃を顔面に受けたというのに、スワンはピクリとも動かなかった。

 

 

 

「ほら、傲慢よ……」

 

 

 

 スワンは腕を組んだ状態で動くことはない。ないはずなのだが……フェア達はスワンの後ろ姿を見て、不思議な感覚に陥った。

 

 

 

 スワンの背中がまるでむき出しになった大地の壁のように巨大で、そして人の力では敵わない大自然の一部のように感じた。

 

 

 

 攻撃を受けたスワンの身体に異変が起きる。スワンは何もしていないというのに、スワンの身体が白い湯気が漏れ出している。

 

 

 

「……あなた、私の情報も網羅してるって言っていたわね。……じゃあ、私の術も知っていて当然よね」

 

 

 

 スワンの肉体は膨らみ出す。元々大きかった筋肉がさらに一段階大きくなった。

 

 

 

「…………私の術は受けたダメージを自分の力に変換する。……今の一撃で倒せなかったのはあなたの上司の計算ミス……そして今、あなたの敗北は確定した」

 

 

 

 

 



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 第190話  【BLACK EDGE 其の190 美しき鳥】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第190話

 【BLACK EDGE 其の190 美しき鳥】

 

 

 

 

 スワンはロジョンの攻撃を受けて、それにより術が発動。肉体が強化されたのだ。

 

 

 

「…………はい。あなたの能力は情報通りです」

 

 

 

 ロジョンはそう言うと、今度は三回連続で箒でスワンの顔面を殴る。左右から交互に殴り、そのどれもが一撃必殺の威力を持っていた。

 

 

 

 しかし、スワンはロジョンの攻撃を受けても、身体を動かすことはない。だが、一切ダメージがないわけではない。スワンの頬は赤く腫れており、口からは血も出ている。

 だが、それでもスワンは一歩も引かなかった。そして腕も組んだまま動かさなかった。

 

 

 

 ロジョンが三回攻撃した分、スワンの肉体は大きく膨れ上がる。さらに筋肉が大きくなり、スワンの着ていたワンピースはパツパツだ。

 

 

 

「…………分かっているのに攻撃するのね。舐められたものね。私も…………」

 

 

 

 ついにスワンが動いた。腕組みを止めて、右手を握り締めるとその手を天高く上げた。

 

 

 

「今までの分、お返しするわよ」

 

 

 

 スワンは太い拳を振り下ろした。狙うはロジョンの頭部。スワンの拳骨がロジョン目掛けて襲いかかる。

 

 

 

 ロジョンはスワンの振り下ろされる腕を見ると、身体を一歩後ろに後退させる。それは単純に退がったのではなく、スワンの拳をギリギリまで引き寄せて、それから避けたのだ。

 

 

 

「……その動きも想定範囲内です」

 

 

 

 スワンの拳はロジョンの鼻をスレスレで通過する。ロジョンが避けたと思った。しかし、

 

 

 

「っ!?」

 

 

 

 ロジョンが避けたと同時にロジョンの目の前から右手が消えた。そしてロジョンの腹にスワンの太い拳が突き刺さった。

 

 

 

 ロジョンはスワンの攻撃を喰らい、宿の天井に激突すると壁を突き破った後、一つ上の階で失速し、空いた穴から落下してきた。

 

 

 

 倒れたロジョンを見下す。

 

 

 

「私の力はパワーだけじゃないの。スピードも上昇するのよ。…………あなた達はそんな情報も知らなかったの?」

 

 

 

 ロジョンは倒れた状態のまま、落ちた箒に手を伸ばす。そして掴むとそれを引き寄せて、箒を杖代わりにして立ち上がる。

 

 

 

「……想定以上のスピード。赤崎博士の計算にミスがあるとは…………。しかし、これで新たに計測できました。もうあなたに負ける要素はありません」

 

 

 

 ロジョンは箒を握りしめて通常の立ちに戻る。簡単に治るような攻撃ではなかったはずだ。しかし、ロジョンはダメージを感じさせない立ち振る舞いをした。

 

 

 

「さぁ、あなたの削除を行いましょう」

 

 

 

 

 

 

 

 



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 第191話  【BLACK EDGE 其の191 最強メイド】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第191話

 【BLACK EDGE 其の191 最強メイド】

 

 

 

 

「まだやるのね。あなたの力じゃ私は倒せないわよ」

 

 

 

 スワンは拳を握りしめる。さっきの攻撃のダメージは残っているはずだ。だが、それでもロジョンは諦めていないようだ。

 

 

 

「そんなことはありません。計測結果はいまだに、私に敗北はあり得ません」

 

 

 

 ロジョンはそう言うと箒を回転させ始めた。それはまるで戦闘というよりも踊りだ。

 回転させた後、ロジョンは箒を背中の部分で横にして両手で持つ構えをした。

 

 

 

「何のつもりなの?」

 

 

 

 それを見たスワンは不思議そうにロジョンを見た。ロジョンは答えることなく、スワンの方へと近づいてくる。

 

 

 

 ロジョンの行動と発言から警戒心を強めたスワンは、早くロジョンを倒そうと右手を握り締めるとロジョンに向けて放った。

 

 

 

 しかし、ロジョンは素早く箒を動かすと、箒を横にしてスワンの攻撃を防いだ。

 だが、スワンの攻撃はこれで終わりじゃない。先程と同じ、いや、それよりもう一回増やし、右手を素早く引っ込めると、左手で攻撃する。と見せかけて、右手で攻撃した。

 

 

 

 だが、ロジョンはそれを全て箒で受け止めてしまった。

 

 

 

 スワンの攻撃は一瞬。とても目で追える速度ではなかった。しかし、そんな攻撃をロジョンは容易く防いだのだ。

 

 

 

 攻撃を防いだロジョンにスワンは驚く。さっきは攻撃に反応することができていなかったはずだ。

 そのはずなのに全ての攻撃をロジョンは防いだのだ。

 

 

 

 ロジョンは攻撃を防いだ後、箒を持ち替えると棒の部分を使いスワンの腹を三回連続で突く。蜂起のはずなのにその威力は槍で攻撃するような破壊力を持っている。

 

 

 

 スワンの腹筋でなければ腹を貫かれていただろう。

 

 

 

「ぐっ…………」

 

 

 

 スワンは腹を押さえて手を地面についた。先程まで見下ろしていたロジョンに見下ろされる状態だ。

 

 

 

「………………やるわね」

 

 

 

 スワンがロジョンにそう言うとロジョンは手を腰に当てて胸を張った。

 

 

 

「当然です」

 

 

 

「…………そう、あなたのことを私も舐めてたわ」

 

 

 

 スワンは大きく息を吸い、腹に空気を溜めた後吐き出す。そして深呼吸を終えると、ゆっくりと立ち上がった。

 

 

 

「…………傲慢だったのは私みたいね。ロジョンと言ったわね。あなたを私の敵として認めてあげる」

 

 

 

 スワンは両腕を広げると、拳を強く握りしめた。攻撃重視の構えだ。腕を広げているため、防御はできない。

 

 

 

「これからが本番よ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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 第192話  【BLACK EDGE 其の192 ロジョンvsスワン】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第192話

 【BLACK EDGE 其の192 ロジョンvsスワン】

 

 

 

 ロジョンは箒を背中にして構えている。スワンは両腕を広げた構えだ。

 

 

 

 二人は静かに睨み合う。そして最初に動いたのは…………。

 

 

 

 スワンだ。

 

 

 

「行くわよぉ〜!!」

 

 

 

 スワンは両腕で交互に殴り、ラッシュ攻撃を仕掛ける。

 スワンの巨体から放たれるパンチは、スピードと破壊力の両方を兼ね備えた最強の攻撃だ。

 

 

 

 しかし、そんなスワンの攻撃をロジョンは箒で受け止める。

 

 

 

 ロジョンの身体の前方で箒を回転させてスワンの攻撃を防いでいる。あれでスワンの攻撃を受け止められるのが不思議だが、実際に防いでいる。

 

 

 

 ロジョンの箒の扱いは戦闘というよりも踊りに近く。棒を使った芸のような動きだ。

 

 

 

 それに比べてスワンの攻撃は暴力による攻撃。圧倒的な力でねじ伏せようとしている。

 

 

 

 だが、スワンの攻撃は全くロジョンに当たることはない。さらにロジョンはスワンの攻撃を避けながらスワンに攻撃を始めた。

 

 

 

 防御で使っている箒の回転を利用し、それをスワンの身体に当てている。腹、足、肩、じわじわとスワンのダメージは溜まっていく。

 

 

 

 そして

 

 

 

「っ……」

 

 

 

 スワンがダメージにより動きが鈍くなったところを、

 

 

 

「しまった……」

 

 

 

 ロジョンが箒でスワンの顎を突いた。スワンの巨体が後ろに倒れる。

 

 

 

「ぐぅぅ……」

 

 

 

 スワンは仰向けに地面に突っ伏した。

 

 

 

 スワンは身体中が傷だらけだ。それに比べてロジョンは汗一つかいていない。

 

 

 

「さてと、後で邪魔をされても困るので、トドメを刺しますか」

 

 

 

 ロジョンはそう言うとスワンの身体に跨り、箒の棒の部分をスワンの首に当てた。

 スワンは呼吸を荒くして目を瞑っている。状況は分かっているのだろう。だが、目も開けられないほど弱っているのだ。

 

 

 

 ロジョンが箒を動かそうとした時、

 

 

 

「やめるんだ!」

 

 

 

 ロジョンの顔にペンが投げられた。

 

 

 

「…………これは」

 

 

 

 そのペンには赤崎という名前が彫られている。投げた人物は…………。

 

 

 

「なぜ邪魔をするんですか。アルファ……」

 

 

 

 白衣を着た少女だった。

 

 

 

「創造主である赤崎博士を裏切るつもりですか?」

 

 

 

「君はあれが本当に父さんのやりたいことだと思ってるのか」

 

 

 

「はい。それが博士のためならば……」

 

 

 

「……違う。あの兵器は父さんのためにはならない。あんなものであの人を超えても本当に超えたことにはならない!!」

 

 

 

「それでも博士は止まらない。なら、完成させるのが私の役目です」

 

 

 

 

 

 



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 第193話  【BLACK EDGE 其の193 蘇る鳥】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第193話

 【BLACK EDGE 其の193 蘇る鳥】

 

 

 

「……違う。あの兵器は父さんのためにはならない。あんなものであの人を超えても本当に超えたことにはならない!!」

 

 

 

 アルファはロジョンにそんなことを叫ぶ。それは誰のことなのだろうか。フェア達には分からなかった。

 

 

 

 だが、それが赤崎が兵器を作った理由なのだろう。

 

 

 

 ロジョンはアルファの方を向くことはなく、箒をスワンの首に当てていつでもトドメを刺せる状態だったが、

 

 

 

「それでも博士は止まらない。なら、完成させるのが私の役目です」

 

 

 

 そう言うとロジョンは手を緩めてアルファの方を見た。

 ロジョンの表情には迷いはなかった。迷いはなかったのだが、どこか寂しそうな目をしていた。

 

 

 

 そんな中、スワンが動く。ロジョンとアルファが会話していたことで時間が稼げて、少しだけ回復できたのだ。

 呼吸を整えると、全身に力を入れる。

 

 

 

 そしてロジョンが乗っかっているというのにそのまま立ち上がった。

 

 

 

 ロジョンはスワンに跨っていることが出来ず、振り落とされる前にスワンから離れた。

 スワンはロジョンが離れる前に右、左と順番に拳で軽い攻撃をする。

 

 

 

 だが、ロジョンは最初の攻撃を体をそらして避けて、次の攻撃は箒で防いだ。

 

 

 

 スワンから振り落とされたことでバランスが崩れていたはずなのに、攻撃を躱されたことを驚く。

 

 

 

 スワンは立ち上がると倒れた時に頭を打ったみたいで血が垂れてくる。頭から流れてきた血を舌で舐めた。

 

 

 

「本当に…………嫌になるわ……。こんな小さな子に打ち負けるなんて…………」

 

 

 

 スワンはロジョンを見下ろす。スワンとロジョンの体格差は倍以上だ。平均の女性よりも小さ目なロジョンに比べて、スワンは男性の中でも大きい部類だ。

 

 

 

 だが、そんなロジョンにスワンはパワー負けしたのだ。

 

 

 

 

「私じゃなかったら心もボロボロよ」

 

 

 

 スワンは再び拳を握りしめると、両腕を広げた構えをした。

 それを見たロジョンも箒を構える。

 

 

 

「私ね。実は部下よりも弱いのよ……。部下はもっと優秀で、私の能力なんて足元にも及ばない……」

 

 

 

 スワンの筋肉は攻撃を受けたわけではないのに膨らみ出す。

 

 

 

「でも、それでも私は彼らの上司なの……。あの子達に情けない姿は見せられない………………」

 

 

 

 スワンはゆっくりとロジョンへの近づく。筋肉量は上がったが、しかし、ロジョンはそれも想定済みなのだろう。動揺する様子はない。

 

 

 

「…………今度は負けないわ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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 第194話  【BLACK EDGE 其の194 根性】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第194話

 【BLACK EDGE 其の194 根性】

 

 

 

 

 スワンはロジョンに近づくと…………。

 

 

 

 再び両腕を交互に振り下ろし、ラッシュ攻撃を仕掛けた。右と左で交互に拳が振り下ろされて、ロジョンを襲う。

 

 

 

 しかし、先ほどと同じようにロジョンは箒を回転させて、スワンの攻撃を防いでいた。

 

 

 

 このままではさっきと変わらない。またやられるだけだ。

 

 

 

 ロジョンの箒はスワンの拳を止めた衝撃を利用し、そのままスワンに攻撃していく。

 

 

 

 フェア達から見れば、箒は回転しているように見える。だが、箒は実際には回転はしていない。

 

 

 

 ロジョンは箒の軸を作り、それで箒を操作している。スワンの右の攻撃を受けると箒は半回転し、その回転を利用して左の攻撃を止める。

 左の攻撃を受けると、反対側に回転が始まり、今度は右の攻撃を止める。

 

 

 

 箒は回転しているのではなく、途中で方向が変わっている。スワンの攻撃を利用して防御しているのだ。

 

 

 

 そして右の攻撃よりも左の攻撃が弱くなれば、相殺した後にまだ回転力が残っており、それをスワンの身体にぶつける。それでダメージを与えていた。

 

 

 

 そのため最初はスワンに攻撃はできないが、体力切れを起こし始めてペースが乱れれば、スワンを攻撃できるようになっていく。

 

 

 

 スワンはパワーやスピードは上がるが、その分持久力が下がっている。そのため疲労感から攻撃が乱れてしまう。

 

 

 

 ロジョンのパワーは本物だ。最初に受け止めた時やスワンより先に攻撃を仕掛けた時はロジョンの力だ。

 だが、力だけではなく、そのような技を使うことでさらにロジョンはスワンよりも強力な攻撃が可能になっているのだ。

 

 

 

 だが、そんなロジョンに変化が起こる。いや、ロジョンではないスワンに変化が起こった。

 

 

 

 スワンの攻撃が乱れることなく、どんどんパワーを増していくのだ。そしてロジョンは箒で防御するだけでスワンに攻撃できなくなっていく。

 

 

 

 すでに攻撃は十秒以上続いていた。そんな連続攻撃でもスワンは乱れなくなり始めたのだ。

 

 

 

「うおおおおおおおおおおお!! 根性おおおおおおおおよおおおおおおおおおお!!」

 

 

 

 ロジョンが動揺する中、スワンがそう叫びながら攻撃を続ける。

 

 

 

 本当にそんなもので攻撃が続けられるものなのだろうか。しかし、それが実現しているのが事実だ。

 

 

 

 スワンの能力ではない。スワンの意志がスワンの力をパワーアップさせていたのだ。

 

 

 

 やがてロジョンはスワンの攻撃を受け止めることができず、そして、

 

 

 

「フィニッシュ!!」

 

 

 

 スワンの激しいラッシュの後の右によるボディブローによりロジョンは吹き飛んだ。

 

 

 

 

 

 



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 第195話  【BLACK EDGE 其の195 踊るように】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第195話

 【BLACK EDGE 其の195 踊るように】

 

 

 

 スワンのボディブローをくらったロジョンは吹き飛ぶ。そして宿の天井を突き破ると、最初の時と同じように落下して戻ってきた。

 

 

 

「はぁはぁ、どうかしら…………流石にこれでも無傷だと私、泣いちゃうわ…………」

 

 

 

 スワンはそう言いながらロジョンを見る。落下してきたロジョンは地面に倒れている。

 

 

 

 だが、赤い血が流れているわけじゃない。ロジョンの身体からは黄色い液体が漏れており、そして破損したパーツからは電気が漏れていた。

 

 

 

「…………ま、まだです……」

 

 

 

 ロジョンはボロボロになりながらも立ち上がろうとする。

 

 

 

 ロジョンのダメージはかなりデカいようで、一度で立ち上がることが出来ず、何度かチャレンジしてやっと立ち上がることが出来た。

 

 

 

 そんなロジョンを見ながらもスワンはゆっくりと近づく。

 

 

 

「…………まだ元気なのね。もう泣いていいかしら」

 

 

 

 そしてロジョンの目の前に立つと、倒れそうになるロジョンを腕を出して支えた。

 

 

 

「………………ぇ」

 

 

 

 ロジョンは驚きながらスワンの顔を見る。

 

 

 

「私だって、あなたに一度倒されてるわ。まだ戦う意思があるなら。気が済むまで……やり合いましょう」

 

 

 

 スワンはロジョンの片腕を握り、ロジョンが倒れないようにする。そして残った拳を固めた。

 

 

 

「これが最後の戦いよ。この勝者が全ての権利を得る」

 

 

 

 スワンはそう言った後、掴んでいる別の腕でロジョンの腹を殴った。

 

 

 

「っ!!」

 

 

 

 ロジョンはどうにかスワンの攻撃を耐える。だが、ダメージがないというわけではなさそうだ。

 

 

 

 スワンは一度殴ったら拳を下ろした。そしてロジョンに言う。

 

 

 

「さぁ、次はあなたの番よ」

 

 

 

 それを聞いたロジョンは驚く。だが、言う通りにスワンの腹を殴った。

 

 

 

 スワンはロジョンの拳を喰らい、口から血を出しながらも耐える。

 

 

 

 今度はスワンがもう一度殴る。そしてその次にロジョンが。そのように交互に攻撃を続ける。

 

 

 

 そしてそれが五回ほど繰り返されたところで、

 

 

 

「………………」

 

 

 

 ロジョンがスワンの腹を殴った後、スワンは耐え切るがスワンが攻撃する前にロジョンは倒れた。

 攻撃で力を使い果たしたのだろうか。

 

 

 

 ロジョンは崩れ落ちた。スワンの支えがあってもロジョンは立っていられず、地面に突っ伏した。

 

 

 

「…………私の勝ちね」

 

 

 

 倒れたロジョンを見て、スワンはニヤリと笑った。そして倒れたロジョンのために少し楽な体勢で寝かせてあげようと、スワンがロジョンを持ち上げた時。

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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 第196話  【BLACK EDGE 其の196 裏切り】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第196話

 【BLACK EDGE 其の196 裏切り】

 

 

 

 倒れたロジョンを見て、スワンはニヤリと笑った。

 

 

 

 スワンは戦った相手であるロジョンに敬意を払うように向かい合ってしゃがむ。

 

 

 

 そして倒れたロジョンのために少し楽な体勢で寝かせてあげようと、スワンがロジョンを持ち上げた時。

 

 

 

 スワンの胸を光線が貫いた。黄色いビームがスワンの身体を貫通する。

 

 

 

 スワンはその攻撃を喰らい、白目を剥いてロジョンの上に倒れた。

 上に覆いかぶさったスワンをロジョンは払い退ける。

 

 

 

 ビームを放ったのはロジョンだ。倒されたはずのロジョンが肩からビームを出し、スワンのことを撃ち抜いたのだ。

 

 

 

「あなたの対処にここまで苦戦するとは…………。しかし、情報通りあなたは甘い」

 

 

 

 地面に転がったスワンをロジョンは蹴り飛ばす。意識のないスワンは抵抗することなく転がされた。

 

 

 

「私の目的は龍の適応者の確保…………。あなたは所詮は邪魔なだけ、どんな手段であれ消せればそれでよかった。………………まぁ、悪くはありませんでしたが……」

 

 

 

 スワンを倒したロジョンはフェアへと近づこうとゆっくりと歩く。敵の戦力はすでにここにはいない。

 

 

 

 あとは龍の適応者を確保するだけだ。

 

 

 

 ロジョンがフェアへと近づこうとする中、

 

 

 

「ま、待ちなさい…………」

 

 

 

 意識を失っていたはずのスワンが、意識を取り戻した。白目を剥きながら身体は動かないのに、手だけを伸ばしてロジョンを止めようとしている。

 

 

 

「あなたは負けたのです。くだらない信念のために。勝負に勝って、戦いに負けたのです」

 

 

 

 ロジョンはスワンの方を向くことはない。

 

 

 

 もうスワンが何もすることが出来ないと分かっているのだろう。

 

 

 

「……私は勝負は勝ったと…………?」

 

 

 

「今の私は非常用のシステムを起動しています。これを発動した時点であなたの勝ちです」

 

 

 

「…………そんな奥の手があったのね。…………でも、なら、あなたの勝ちだわ……。それも含めてあなたの力だもの」

 

 

 

 スワンは手を伸ばす力も失い、地面に倒れたままフェアに言った。

 

 

 

「ごめんなさいね。約束…………守れなかったわ」

 

 

 

 スワンはそう言った後、意識を失った。スワンが意識を取り戻している間、歩くのを止めていたロジョンは、再びフェアへと近づいてくる。

 

 

 

 フェアは逃げることはせず、子供達を守るために自分から前に出た。

 

 

 

「お、おい!」

 

 

 

 そんなフェアを見てアルファは止めようとする。でも、それでもフェアは進んだ。

 

 

 

「大丈夫だよ。絶対に助けに来てくれるから…………。ブラッドが…………」

 

 

 

 

 

 



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 第197話  【BLACK EDGE 其の197 救出へ】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第197話

 【BLACK EDGE 其の197 救出へ】

 

 

 

 アルファから何があったのかを知ったブラッドは、早速フェアを助けに行こうとする。だが、それをスワンに止められた。

 

 

 

「待ちなさい」

 

 

 

「なぜだ。早く行かないと!」

 

 

 

「もう遅いわ」

 

 

 

 スワンはそう言うと腕を組んだ。そして話を続ける。

 

 

 

「フェアちゃんが連れ去られたのは数分前。普通に追いかけても間に合わない」

 

 

 

「じゃあ、どうしろって!?」

 

 

 

 するとスワンは

 

 

 

「私の責任でフェアちゃんを攫われた。だから私が近道を作るわ」

 

 

 

 

 

 シャドーとアルファは子供達の保護のために残ってくれることになった。

 最初は不安だったが、シャドーは子供達に対しては優しく、意外な面もあり大丈夫そうだ。

 

 

 

 ブルーバードからはクロウとレイラが子供達の元に残ることになった。

 

 

 

 地下施設に向かうブラッドにはスワンとクレインが付いてくるということになった。

 

 

 

「それで近道を作るってどういうことだ?」

 

 

 

 ブラッドがスワンに聞くとスワンは下を指差した。

 

 

 

「地面をぶち抜くわ」

 

 

 

「はぁ?」

 

 

 

 さっきの話を聞いた感じ、スワンはかなりの重傷だった。傷はレイラが治したと言っていたが、何を考えているのだろうか。

 

 

 

 スワンは拳を上げるとそれを地面に向けて振り下ろす。地面は砕けで粉々になるが、一発で穴が開くわけではない。

 

 

 

 スワンは何度も何度も地面を叩き、少しずつ穴を開けていく。だが、びっくりすることにどんどん掘り進めているのだ。

 

 

 

 これだけの穴を開けるのに、シャベルやピッケルを使っても何ヶ月もかかるだろう。だが、そんなトンネルをスワンは素手で掘り始めた。

 

 

 

「なんてパワーだ…………」

 

 

 

「さぁ、行くぞ。スワン様に続け」

 

 

 

 クレインはスワンの掘った穴を進んでいく。ブラッドはこれが突然崩れたりしないか心配だったが、このスピードで掘り進めているのなら、近道になるのは確かだろう。

 

 

 

「…………行くしかないか」

 

 

 

 ブラッドもスワンの掘った穴を進んでいくことにした。

 

 

 

 人が一人やっと通れるトンネル。そんなトンネルがどんどん乗り進められ、やがてスワン達は地下施設へとたどり着いた。

 

 

 

 たどり着いたのは三メートルほどの幅の地下通路。ここはまだ来たことがない場所だ。そんな場所にたどり着いた。

 

 

 

「ここは…………?」

 

 

 

 ブラッドが分からない場所をブルーバードの2人がわかるはずもない。二人はまだ地下へやってきたことがないのだ。

 

 

 通路は右と左に続いている。一本道だが、どっちが王都まで続く巨大な通路と繋がっているのか分からない。

 

 

 

「…………これは手分けをしたほうが良さそうね」

 

 

 

 

 



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 第198話  【BLACK EDGE 其の198 地下】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第198話

 【BLACK EDGE 其の198 地下】

 

 

 

 地下へと突入したブラッドとクレイン、そしてスワンだったが、手分けして地下を探索することになった。

 

 

 

「じゃあ、どう分かれて、どっちに行くかだな……」

 

 

 

 ブラッド達は二手に分かれることになった。

 

 

 

 そして分け方は、

 

 

 

「…………なぜ、俺をこいつと一緒なんだ」

 

 

 

「それは私のセリフだ」

 

 

 

 ブラッドとクレインが右側へ、スワンが左側へ行くことになった。

 

 

 

 スワンは腕を組んで説明を始める。

 

 

 

「今は協力中とはいえ、敵なのよ。警戒して当然でしょ」

 

 

 

 ブラッドの監視のためにクレインを一緒に行かせるということか。まぁ、ブルーバードからしたらブラッドがいつ裏切るかはわからない。だが、それはお互い様だ。

 

 

 

 だが、ブラッドは諦めた。がクレインには納得いかない点があった。

 

 

 

「スワン様を一人にはできません」

 

 

 

 そう、組織のボスが一人で行動しようとしているのだ。いや、宿の件を考えると結構一人でのことが多そうだが、ここは敵陣、いつものように行動するのも危険だろう。

 

 

 

 だが、スワンはクレインの言い分を聞き入れずに、勝手に進んで行ってしまった。

 

 

 

 こうして仕方がなく、ブラッドとクレインは共に進むことになった。

 

 

 

「お前らのボス……クセ強いな」

 

 

 

 ブラッドがボソリと言うとクレインがブラッドを睨んだ。

 

 

 

「あぁ? 馬鹿にしてんのか?」

 

 

 

「いやいやいやいや」

 

 

 

 ここで戦闘になっても困る。そのためブラッドは誤魔化した。

 

 

 

 そんな感じで進んでいると、ブラッド達は再び、別れ見に出た。どっちが正解なのかは分からない。だが、

 

 

 

「ここも別々に行くか」

 

 

 

「そうだな。その方が私も嬉しい」

 

 

 

 ブラッドとクレインは分かれ道で別々で移動することになった。

 

 

 

 ブラッドもクレインもお互いを信用できていない。そのため一時的な共闘とはいえ、背中を預けることはできない。

 

 

 

 もしも敵が出てきて戦闘になれば、お互いに警戒しながら戦うことになる。そのためここでは別々に探索することにした。

 

 

 

 そして別々に地下通路を進み、地下にある兵器のある部屋を目指す。そこにフェアが捕らえられているはずだ。

 

 

 

 いや、ブルーバードのおかげでフェアがその部屋に辿り着く前に待ち伏せできるかもしれない。

 

 

 

 ブラッドは急いで地下通路を進むのであった。

 

 

 

 ブラッドは地下通路を進み、そしてしばらく進んだところである男に出会った。

 

 

 

 その男を見たブラッドは動きが止まる。

 

 

 

 その男とはブラッドは何年振りに出会ったのだろうか。

 

 

 

「お前は…………」

 

 

 

 

 

 

 

 



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 第199話  【BLACK EDGE 其の199 因縁の相手】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第199話

 【BLACK EDGE 其の199 因縁の相手】

 

 

 

 

 クレインと別々に探索することにしたブラッド。一人で地下通路を進んでいると、前に人影が見えた。

 

 

 

 その人物の姿は紫色のフードに白い仮面の男。

 

 

 

「お前は…………」

 

 

 

 その男を見たブラッドの動きは止まった。

 

 

 

 その男と会ったのは何年振りだろうか。そう、あれは龍の適応者となった時…………ブラッドの住んでいた家に現れたグリモワールの幹部。

 

 

 

 村から帰ったブラッドが目の当たりにしたのは燃える家。そしてその家の中でこの男と出会った。

 

 

 

 全ての元凶。ブラッドの目的であった男だ。

 

 

 

 男はブラッドを見ると、

 

 

 

「マルク…………。いや、ブラッドか」

 

 

 

 と言った後、ブラッドの方を向いた。

 

 

 

 彼はグリモワールの幹部のはずだ。しかし、なぜ、ここにいるのだろうか。

 敵の調査、シャドー達と同じように敵対している?

 それとも赤崎に協力しているのだろうか。

 

 

 

 だが、そんなことはどうでもいい。

 

 

 

 ブラッドの身体は考えるより先に動いていた。

 

 

 

「…………っ」

 

 

 

 出会った瞬間襲いかかってきたブラッドに男は驚く。ブラッドは拳を握りしめ、男を殴り飛ばそうと近づくが、ブラッドが近づくより前に男が動いた。

 

 

 

 仮面の男はフードの中から手を出すと、その手の上に紫色の炎を出した。

 

 

 

 男は手を横に振ると、その紫色の炎が広がり、ブラッドと男に紫炎の壁を作った。

 

 

 

「くっ…………」

 

 

 

 ブラッドは炎の壁により近づくことができない。そんな壁の向こうでは男がブラッドに向けて手のひらを向けた。

 

 

 

 すると、紫色の炎の弾がブラッドに向かって飛んでくる。

 

 

 

 連続で三発飛ばし、その紫炎がブラッドを襲う。ブラッドは二発を避けた後、残りの一発は右手に黒いオーラを纏わせてそれで弾いた。

 

 

 

 赤崎との戦闘でドラゴンインストールを使ってすぐだ。そのため龍の力が安定していない。

 ブラッドは右手に激痛が走る。

 

 

 

 だが、そんな痛みなど、目の前にいる相手を思い出せば、すぐに感じなくなる。

 

 

 

 ブラッドは壁に向かってジャンプすると、壁を蹴りさらに高く飛び上がる。普通に飛べば炎の壁は突破できないだろう。

 

 

 

 だが、壁を利用したことで通常以上のジャンプ力を発揮して、紫炎の壁を飛び越えた。

 

 

 

「やるな……」

 

 

 

「お前を倒すための15年だったからな!」

 

 

 

 ブラッドは落下しながら男を狙う。しかし、落下してくるブラッドに男は手を伸ばすと、その手を振る。

 

 

 

 すると降った軌道と同じ形を描き、紫炎が現れて空中にいるブラッドを焼いた。

 

 

 

「ぐあっぁ!」

 

 

 

 

 



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 第200話  【BLACK EDGE 其の200 紫炎】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第200話

 【BLACK EDGE 其の200 紫炎】

 

 

 

 ブラッドを空中で紫炎が焼く。ブラッドは焼かれた状態で落下して、地面をぶつかる。地面にぶつかった後、男が広げていた手を握ると、火が消えた。

 

 

 

「はぁはぁ、て、テメー…………」

 

 

 

 ブラッドは倒れた状態のまま、男のことを睨む。男はブラッドのことを見下ろしている。

 

 

 

「ブラッド、…………今回の目的は貴様ではない」

 

 

 

「…………お前に用がなくても、俺は用があるんだよ」

 

 

 

 ブラッドは焼かれた身体で立ち上がる。龍の力で咄嗟に防いだため、ダメージはそこまで大きくない。

 

 

 

 ブラッドは突っかかるが、男はブラッドに背を向けた。

 

 

 

「そうか、ならせめて私の名前だけでも覚えていけ…………」

 

 

 

 男はそう言うとブラッドとすれ違い、ブラッドが来た道を進んでいく。

 

 

 

「…………アルム。…………それが私の名だ。次にあった時はそう呼べ」

 

 

 

 アルムはそう言うと通路を進んでいく。ブラッドは逃さないように追いかけようとするが、紫炎の壁が現れて、行く手を塞いだ。

 

 

 

 さっきの壁よりも大きい。これではどうやっても飛び越えることはできない。

 

 

 

「お前は絶対俺が殺す!!」

 

 

 

 ブラッドは紫炎の炎の中に消えていくアルムを見ながら叫んだ。

 

 

 

 

 

 ブラッドと別れたクレインが道を進んでいると、ボロボロになった通路と繋がった。

 そこは穴だらけであり、通路というよりも穴だ。

 戦闘中に通路と通路が空いた感じだ。

 

 

 

 クレインはそんな道を進んでいると、途中である人を見つけた。

 

 

 

「…………クレイン……か」

 

 

 

 それは傷だらけになったフェザントだ。爆発を聞いた後、いち早く地下通路に向かったフェザントはシャドーとブラッドを助けた。

 そのあと、赤崎と戦闘をしていたはずだが…………。

 

 

 

「あんた、負けたのね」

 

 

 

「…………言うなよ」

 

 

 

 フェザントは瓦礫の山を背にして座っている。壁がなければすぐにでも倒れてしまいそうな状況だ。

 

 

 

 クレインはフェザントに近づくと、フェザントのことを担いだ。

 

 

 

「何があったか、説明しなさい」

 

 

 

 状況はなんとなく分かっていたが、フェザントを地上に運びながら情報を聞く。

 

 

 

 クレイン達がブラッド達を連れて逃げたあと、フェザントは赤崎と戦闘になった。

 最初は有利だったフェザントだが、赤崎に能力を理解されてしまい、対処されてしまったのだ。そのからは一方的にやられ始めた。

 

 

 

 そしてフェザントは赤崎に負けたのだった。

 

 

 

「すまないな……」

 

 

 

 

 

 



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 第201話  【BLACK EDGE 其の201 ハズレ】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第201話

 【BLACK EDGE 其の201 ハズレ】

 

 

 

 

 クレイン、ブラッドとは分かれて探索していたスワンは、ある部屋にたどり着いた。

 その扉を開くと、そこは小さな研究室だ。

 

 

 

 部屋にはガラクタが散らかっており、工具は雑に置かれていた。

 

 

 

 その部屋の真ん中にあるテーブルの裏から一人の少年が顔を出した。

 

 

 

「あれ、お客さん?」

 

 

 

 黒髪短髪の少年。白衣を着ていて顔付きは情報にあった赤崎に似ている。しかし、身長も年齢も違う。それに子供だ。

 

 

 

「…………赤崎……ではないわね」

 

 

 

 スワンは少しガッカリする。研究室にたどり着いたことで、もしかしたら赤崎を見つけられたと思った。しかし、ハズレのようだ。

 

 

 

 すると、テーブルに隠れていた少年はスワンに聞く。

 

 

 

「父さんに何か用ですか?」

 

 

 

 父さん?

 

 

 

 スワンは少年の発言に興味を持つ。

 

 

 

 赤崎に子供がいたのかしら? だとしたらこの子から何か得られるものがあるかもしれないわね。

 

 

 

「……私は赤崎博士の助手よ。今回の兵器の資料を探しにきたの」

 

 

 

 スワンは助手と偽り、問題の兵器の資料を得ようとする。しかし、

 

 

 

「ははは〜、嘘はいけませんよ。スワンさん、あなたについてはすでに父さんから聞いたますから」

 

 

 

「あら、そうだったの…………」

 

 

 

 スワンの名前まで知られていた。と言うことはブルーバードも、目的もバレているということだろう。

 

 

 

 スワンはため息をついたあと、

 

 

 

「ねぇ、あなた名前は?」

 

 

 

 と今度はその少年について聞いた。兵器についての情報ではなかったのか、少年は普通に教えてくれた。

 

 

 

 テーブルから身体を出して、白衣を靡かせる。

 

 

 

「僕の名前はシータ。父さんの八番目のクローンです」

 

 

 

 シータはそう言って自己紹介をした。スワンからは聞きなれない単語があった。だが、赤崎と関係があるのは確かだ。

 

 

 

「そう、シータちゃんっていうのね」

 

 

 

 スワンはそう言うとゆっくりとシータに近づく。シータは近づいてくるスワンに怯える。

 

 

 

 近づいたスワンはしゃがむと、シータに目線を合わせた。

 

 

 

「ねぇ、あなた、私たちにつく気はない?」

 

 

 

 それを聞いたシータは首をかしげる。

 

 

 

「それは父さんを裏切って、ブルーバードの仲間になれってことですか?」

 

 

 

 スワンは頷く。

 

 

 

「そうよ。あなたとお父さんを裏切って私たちの仲間になるの、いつでも私たちの元を離れてもらって構わない。でも、グリモワールよりも良い待遇を与えることは保証するわ」

 

 

 

 シータはスワンから身体を逸らし、横を向く。そして腕を組むと…………。

 

 

 

 

 

 

 



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 第202話  【BLACK EDGE 其の202 フェアを救え】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第202話

 【BLACK EDGE 其の202 フェアを救え】

 

 

 

 

 ブラッドはフェアを探すために地下施設を走り回っていた。そしてついに王都とカメリアを繋ぐ巨大な地下通路へとたどり着いた。

 

 

 

 ここまでくれば、前に来た時と同じように兵器のある部屋を目指せば良い。

 

 

 

 ブルーバードの協力により大幅なショートカットができたはずだ。これならば、フェアが兵器のエネルギーにされる前に助け出せるかもしれない。

 

 

 

 ブラッドは兵器のあった部屋を目指し、地下通路を進んでいく。

 だが、走っている途中、頭上から何かが攻撃を仕掛けてきた。

 

 

 

 長い武器を持ちそれがブラッドの頭を狙う。ブラッドは咄嗟に腕を出してその棒を防ぐ。

 

 

 

 そしてその攻撃を払い退けた。攻撃を仕掛けてきた人物はブラッドの行く手を阻むように道の先に着地した。

 

 

 

「これ以上は行かせません」

 

 

 

 そこに現れたのは箒を持ったメイド、ロジョンだ。

 ロジョンは箒を回転させたあと、ブラッドと戦闘の構えを取った。

 

 

 

 ブラッドもロジョンを警戒して構える。

 

 

 

 ロジョンはブルーバードのトップであるスワンを倒してフェアを攫った人物だ。つまりはロジョンがここにいるということは、フェアはすでに奥の部屋にいるということだ。

 

 

 

 通常よりも早く着くことはできたが、アルムと遭遇したりと色々あった。その間に先を越されていたようだ。

 

 

 

 だが、ここでロジョンがブラッドを止めるということは、まだ終わったわけではないということ。

 ロジョンを急いでどうにかして、扉の奥に行けば、まだ間に合うかもしれない。

 

 

 

「時間はかけられない。素早く終わらせる」

 

 

 

 ブラッドはそう言うと右腕に力を込める。そして右腕を黒いオーラが包んだ。

 

 

 

 ブラッドはその腕でロジョンを殴ろうと走る。そして攻撃するが、ロジョンは箒でブラッドの攻撃を受け止めた。

 

 

 

「っ!!」

 

 

 

 ロジョンはブラッドの攻撃を受け止めると、箒をずらしてブラッド箒の棒の部分でブラッドの腹を勢いよく突いた。

 

 

 

「ぐっ」

 

 

 

 ブラッドは突かれた衝撃で後ろに吹っ飛び、通路を転がった。

 

 

 

「……想定以下……ですね」

 

 

 

 ブラッドは腹を押さえながら立ち上がった。

 

 

 

「…………強いな」

 

 

 

 ブラッドは焦るあまり忘れていた。このロジョンには前にも攻撃は防がれた。それにブルーバードのスワンが負けているのだ。

 

 

 

 簡単に勝てる相手ではない。逆にこっちが負けてしまう可能性だってあるのだ。

 

 

 

「……やるしかないか」

 

 

 

 

 

 

 



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 第203話  【BLACK EDGE 其の203 箒の武人】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第203話

 【BLACK EDGE 其の203 箒の武人】

 

 

 

 

 ブラッドは腹を押さえながらも立ち上がった。ロジョンは箒を回転させながらブラッドが立ち上がるのを待っている。

 

 

 

「今、トドメを指すチャンスだろ…………」

 

 

 

「必要ありません。赤崎博士には実験終了まで誰も入れるなどの命令です。あなたを殺す命令は受けてません」

 

 

 

「舐めやがって…………」

 

 

 

 ブラッドは呼吸を整えると、拳を握りもう一度構えた。さっきは焦って攻撃を仕掛けたため、すぐに反撃を食らってしまった。

 

 

 

 ロジョンはそんな焦った状態で勝てる相手ではない。

 

 

 

 ブラッドはゆっくりと足を滑らせながらロジョンに近づく。そしてブラッドは拳を前に突き出し、ロジョンを殴ろうとする。

 

 

 

 しかし、ブラッドの拳が届くよりも早くロジョンの箒がブラッドの腹に当たる。今度は突きではなく右から左に振られた箒がブラッドに当たり、そのまま壁まで吹っ飛んだ。

 

 

 

 壁に吹っ飛んだブラッドは壁にめり込む。だが、すぐに立ち上がり、再びロジョンに向かって走り出した。

 

 

 

 今度はブラッドはロジョンに近づくと、スライディングして姿勢を低くすると足元を狙う。蹴りでロジョンの脚を狙うが、ロジョンは飛び上がると空中で箒を振って、ゴミを飛ばすようにブラッドを吹っ飛ばした。

 

 

 

「ぐっ……」

 

 

 

 ブラッドは地面を転がる。

 

 

 

 ブラッドは止まると立ち上がる。ロジョンはさっきいた場所から一歩も動いていない。

 

 

 

 ロジョンの目的は時間稼ぎ。赤崎の実験が終わるまで中に入れないのが目的だ。

 

 

 

 ブラッドの足止めはするが、ブラッドを積極的には攻撃してこない。だが、それでもブラッドは全くロジョンに手が出せない。

 

 

 

「…………強すぎるだろ」

 

 

 

 予想以上にロジョンが強い。もしかしたら赤崎以上かもしれない。

 

 

 

 こうなったら奥の手を使いたいが、今力を使うのはなるべく避けたいところだ。

 まだ奥には赤崎がいる。だとしたら動けなくなる可能性のある技は使いたくはない。

 

 

 

 どうにかしてロジョンを倒さなければ…………。

 

 

 

 可能性があるとしたらロジョンがブラッドに積極的に攻撃してくることがないことだ。時間稼ぎが目的であるとして、ブラッドを殺すような攻撃はしてはいない。

 

 

 

 だとしたら、そこをどうにか利用できれば良いのだが…………。

 

 

 

 ブラッドはロジョンをどうにかする方法はないかと考える。

 

 

 

「…………そうするしかないか」

 

 

 

 そしてある方法を思いついた。

 

 

 

 ブラッドは拳を握って構える。

 

 

 

 

 

 



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 第204話  【BLACK EDGE 其の204 龍】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第204話

 【BLACK EDGE 其の204 龍】

 

 

 

 

 

 ロジョンと戦闘になったブラッドは、すぐそこにフェアと赤崎がいるはずだというのに、苦戦をしていた。

 

 

 

「…………こういうのは下手だったんだがな……。だが、やってみるしかないな」

 

 

 

 ブラッドは拳を握り構えた。ロジョンも箒を回転させると後ろに箒を持って構える。ブラッドが何かを仕掛けてくると分かったのだろう。

 

 

 

 ブラッドは深呼吸をして集中する。そして息を吐いたタイミングで強く地面を蹴り飛ばし、走り出した。

 

 

 

 ブラッドはロジョンに近づく。さっきまでと同じ光景だ。

 

 

 

 ロジョンは今まで通り対処しようとする。ブラッドは踏み込むとロジョンに左手でパンチを放つ。

 

 

 

 だが、それよりも早くロジョンの箒がブラッドに向かってくる。ブラッドはそれに気づくと攻撃の方向を変えた。狙うのは……箒だ。

 

 

 

 ブラッドは向かってくる箒に向かって拳を当てた。箒は軌道がズレてブラッドの横を通っていく。

 

 

 

 そしてブラッドはロジョンの懐に入った。

 

 

 

 ここでの一撃。それで倒さなければならない。だが、ロジョンはスワンの攻撃にも耐えたと言っていた。そのためいつものように龍の力で上乗せしただけの攻撃ではロジョンにはダメージを与えられない。

 

 

 

 ブラッドは右手に力を込める。そして強く踏み込む。

 

 

 

 

 

 

「おい! 弟子!! この程度でへばんじゃない!」

 

 

 

 岩山の頂上にある石レンガ塔。その塔の横で黒髪の女性が少年に剣を振るう。少年はどうにか剣で防御するが、少年の剣は女性の剣により飛ばされてしまった。

 

 

 

 剣は宙を舞い、地面に刺さる。剣を失った少年は女性に蹴り飛ばされて地面に転がった。

 

 

 

「もうここに来て半年だというのに、なぜ私に勝てない!」

 

 

 

「無茶言わないでください!! そんな短期間でメテオラ師匠に勝てるわけないじゃないですか!!」

 

 

 

 メテオラは剣をしまうと、マルクが落とした剣を拾う。そして地面に座っているマルクに剣を渡した。

 マルクは座ったまま剣を鞘にしまう。

 

 

 

「お前は世界一強くなるんだろ!」

 

 

 

「俺に何を求めてるんですか!?」

 

 

 

 メテオラはマルクに手を差し伸ばす。マルクはその手を伸ばすと、メテオラが引っ張ってマルクを立ち上がらせた。

 

 

 

「そもそも龍の力を教えてもらうために、弟子入りさせてもらったんです。なんで剣の修行をしないといけないんですか!」

 

 

 

 マルクがメテオラの弟子になって半年。龍の力を教えてくれると言っていたのだが、今まで一度も龍の力の訓練をしていない。

 

 

 

 マルクが頬を膨らませながら言うと、メテオラはやれやれと言う表情で答えた。

 

 

 

 

 

 



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 第205話  【BLACK EDGE 其の205 修行】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第205話

 【BLACK EDGE 其の205 修行】

 

 

 

「そもそも龍の力を教えてもらうために、弟子入りさせてもらったんです。なんで剣の修行をしないといけないんですか!」

 

 

 

 マルクがメテオラの元で弟子入りという名のサンドバッグになってから半年。マルクは未だに龍の力のコントロールについて教えてもらっていなかった。

 

 

 

 毎日、剣や槍、弓など様々な武器や武術を習わされ、軍の指揮やその他諸々まで授業させられた。

 というか、二四時間メテオラに監視されている。

 

 

 

 それも全てがメテオラが先生だ。しかも全てが一流。一体この人は何者なんだか…………。

 

 

 

 メテオラは腕を組むと、

 

 

 

「龍の力はそう簡単に操れるものじゃないんだ。それにその中でも最も凶暴と言われている黒龍をあなたは身体に入れている。それを操るよりも先に、それに耐えられるだけの身体を作ることが必要なの」

 

 

 

 マルクは納得していないようで、文句を言いたげに頬を膨らました。

 

 

 

 そんなマルクを見てメテオラはため息を吐いた。

 

 

 

「……はぁ、しょうがないな。じゃあ、基礎中の基礎だけを教えてあげる」

 

 

 

 そう言うとメテオラは近くにあった腰の高さまである岩に片手を手を触れる。

 

 

 

「まず龍は私たちの身体の中に入り、共存している。だから対話をして、その力を貸してもらう必要がある」

 

 

 

 メテオラは腕を動かしていないのに、触れている岩が粉々に砕けた。

 

 

 

 それを見たマルクは自分もやってみたいと、近くにある岩まで走り同じように手を置いたが何も起きない。

 

 

 

「龍は中で生きている。身体の一部だけを龍に貸す。その代わりに龍の力を借りる。それが龍の力のコントロールの仕方」

 

 

 

 うまくできずに何度もチャレンジしているマルクにメテオラはゆっくりと近づいてきた。

 

 

 

 マルクは助けを求めるようにメテオラの方を見る。

 

 

 

「そんな説明されても、分かりませんよ…………」

 

 

 

 言いたいことはわかる。というか何度もメテオラから説明を受けている。だが、そんな説明をされても、どうやったら貸し借りができるのかわからない。

 

 

 

 メテオラは泣きそうなマルクを見て、ニヤリと笑う。

 

 

 

「だって教える気…………ないもん」

 

 

 

 それを聞いたマルクは怒り、剣を抜いてメテオラに斬りかかる。本気で攻撃しているわけではないが、本気で攻撃してもメテオラには簡単に避けられてしまう。

 

 

 

「龍は身体の中にいる。日々の修行は龍にも効果がある。……ま、そのうち、分かるよ!」

 

 

 

 メテオラはマルクの剣を余裕で避けていた。

 

 

 

 

 

 

 

 



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 第206話  【BLACK EDGE 其の206 問題ない】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第206話

 【BLACK EDGE 其の206 問題ない】

 

 

 

 

 メテオラの弟子になって三年。結局一度もメテオラは龍の力の使い方を教えてくれなかった。

 

 

 

「ううぅ、我が弟子よ〜、本当に行ってしまうのか〜」

 

 

 

 マルクは王都ガルデニアにあるギルドで賞金首を捕まえて、資金調達をしながら、この龍の力を与え、故郷を滅ぼした仮面の集団を探すために、情報収集をすることとなった。

 

 

 

 メテオラはハンカチで涙を拭いた後、鼻もかむ。

 

 

 

「汚いな……」

 

 

 

「なんか言った?」

 

 

 

「いえ、何も〜」

 

 

 

 マルクはメテオラから目を逸らす。

 

 

 

 メテオラの他にもクロエや他の騎士達もマルクを見送ってくれていた。

 

 

 

「マルク君がいなくなると寂しくなるな」

 

 

 

 男性の騎士が腕を組みながらそう言った。

 

 

 

「しかし、なぜ突然?」

 

 

 

 男性の騎士の隣にいた女性騎士がマルクに聞く。

 

 

 

「前から考えてはいたんです。でも、師匠に止められていて…………でも、やっと許可をもらいまして」

 

 

 

 このメテオラの指揮する騎士団でもその組織を探している。そのためここにいても見つけることはできるかもしれない。

 

 

 

 だが、メテオラ達は人々のために組織と戦っている。しかし、マルクは過去の恨みでその組織を追う。

 そんな理由でこの騎士団には残れないと考えていた。

 

 

 

 本当なら弟子入りして、龍の力について知ってから行きたかった。だが、メテオラは教えてくれる様子はない。

 そのため行こうとしたが、ずっと止められていた。

 

 

 

 マルクはそろそろ出発しようと、馬車に乗ろうとしたら、

 

 

 

「待て、マルク」

 

 

 

 そう言ってメテオラがマルクを抱きしめた。みんなの前で突然抱きしめられたので恥ずかしい。

 だが、これもいつものことだ。

 

 

 

 メテオラはマルクが弟子になってから毎日これをやっている。

 そして抱きしめてしばらくなった後、

 

 

 

「…………うむ、問題はないな」

 

 

 

 そう言ってメテオラはマルクを離した。

 

 

 

 マルクは不思議に思う。昨日も同じことになった。

 

 

 

 いつも通り突然抱きしめられると、しばらくマルクの胸に耳を当ててそのあとメテオラは離す。

 そして昨日も「問題ない」と言った後、今まで許可していなかった旅立ちを許可したのだ。

 

 

 

「師匠、前から気になってたんですが、それは何なんですか?」

 

 

 

 マルクが聞くとメテオラは首を傾げる。

 

 

 

「あれ? 教えてなかったっけ?」

 

 

 

「聞いてないですよ! え、なんか意味あったんですかこれ!? メテオラ師匠が変態なだけだと!!」

 

 

 

「誰が変態だ!」

 

 

 

 マルクは殴られる。そしてその後、メテオラが説明を始めた。

 

 

 

 

 

 



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 第207話  【BLACK EDGE 其の207 龍のコントロール】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第207話

 【BLACK EDGE 其の207 龍のコントロール】

 

 

 

 

 メテオラは腕を組むと

 

 

 

「龍の力について今まで教えなかったのには理由がある」

 

 

 

「理由……ですか」

 

 

 

「そうだ。龍の力は、その龍とその適応者によって、その力のコントロール法が変わる。だからこそ、私のコントロールの仕方を下手に教えるわけにはいかなかった」

 

 

 

 確かに今まで教えてもらわなかったし、メテオラの真似をしても何も成功しなかった。

 

 

 

「じゃあ、今のは?」

 

 

 

 マルクはさっきの行動について聞く。いつも行っていたことだったが、それも龍に関係しているということなのだろうか。

 

 

 

「ああ、あれは私が龍と対話する方法。私は適応者の身体に耳を当てて、その龍と対話する」

 

 

 

「てことは、今のは俺の龍と…………?」

 

 

 

「ああ、そしてお前が龍をコントロールできると判断した。だからこそ、旅を認めたんだ」

 

 

 

 メテオラはそう説明した。

 

 

 

 これでメテオラの行動と突然旅を認めてくれた理由がわかった。

 

 

 

 説明を終えたメテオラは、

 

 

 

「じゃあ、ついでに最後の授業をしておこう」

 

 

 

 そう言うとメテオラは剣を抜いた。

 

 

 

「まさか…………」

 

 

 

 剣を抜いたメテオラは見て、マルクは嫌な予感がした。

 

 

 

「手合わせだ!」

 

 

 

「えぇーーーーー」

 

 

 

 せっかく王都に行くからと新しい服を着たのに、そんなことをしたら服が汚れてしまう。

 

 

 

 マルクは首を振って、

 

 

 

「せめて着替えてから!!」

 

 

 

 と言うが、メテオラは関係なしに剣を振ってきた。

 

 

 

「戦場ではそんな余裕はない!」

 

 

 

 マルクはどうにか剣を避けた。

 

 

 

「危ねぇ!?」

 

 

 

 避けたマルクを追って何度もメテオラは剣を振る。マルクはギリギリメテオラの剣を躱す。

 

 

 

「ちょちょちょ!?」

 

 

 

「早く構えろ! 最後くらいシャキッとしろ」

 

 

 

「いや、もぉー!!」

 

 

 

 止める気がなさそうなメテオラにマルクは諦めて、手合わせに応じることにした。

 

 

 

「分かりました。やればいいんでしょ、やれば!!」

 

 

 

 マルクはメテオラから距離を取るために大きく後ろに飛ぶ。メテオラは無理して追うことはなく、その場で足を止めて構えた。

 

 

 

 マルクは着地した後、拳を握って構える。

 

 

 

「…………っ」

 

 

 

 構えてすぐにメテオラに攻撃を仕掛けようとしていたマルクだったが、メテオラと向き合うと踏み込むことができなくなった。

 

 

 

 いつもとは違う。メテオラに近づくことを身体が拒否している。

 

 

 

 マルクは訳も分からずに、その場で固まってしまう。

 

 

 

「どうした、早く来い」

 

 

 

 

 

 

 



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 第208話  【BLACK EDGE 其の208 最後の授業】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第208話

 【BLACK EDGE 其の208 最後の授業】

 

 

 

 マルクはメテオラに一度も勝ったことがなかった。どんな武器を使っても、どんな状態であってもマルクはメテオラに勝てなかったのだ。

 

 

 

 そして今、マルクは素手でメテオラは剣を持っている。この状態では間合いに入るのすら難しいだろう。

 

 

 

 マルクは拳を握り構えるが、メテオラを向き合うと違和感を感じる。

 

 

 

 いつもとは違う。メテオラに近づけない。強い風が吹いているかのように、メテオラに近づくことすらできない。

 

 

 

「どうした、来ないのか?」

 

 

 

 マルクが近づけずにいると、メテオラはそう言ってゆっくりとマルクに近づいてくる。

 

 

 

「何をしたんですか……?」

 

 

 

 メテオラは頬を上げて悪い顔をしている。メテオラが何かをしたのは確かだ。

 

 

 

「少しだけ本気を出しただけだよ……。この程度で怖気付いてたら他の龍の適応者に出会ったら、死ぬぞ」

 

 

 

 気がつけばメテオラはもう目の前に来ていた。手を伸ばせば拳が届く距離。メテオラは剣を握ったまま、攻撃してくる様子はない。

 

 

 

 マルクはどうにか踏ん張って、身体を動かしてメテオラにパンチしようとした。身体は動いたが鈍かったためメテオラには避けられた。

 

 

 

「ほう、動けはしたか……。だが、まだまだもっと踏ん張りな。マルクとマルクの中の黒龍……」

 

 

 

 メテオラに言われるまま、マルクはまるで凍ったようだった身体を無理やり動かして、メテオラに攻撃を仕掛ける。メテオラは反撃をしてくることはなく、そのまま避け続ける。

 

 

 

「そのまま、そのまま。呼吸を合わせな」

 

 

 

 そしてマルクの身体がだいぶ動くようになってきたところで、メテオラは剣を使わずに蹴りで反撃をしてくるようになった。

 どうにか反応してマルクは避ける。

 

 

 

「だいぶ慣れてきたじゃん、…………じゃあ、そろそろ」

 

 

 

 そう言うとメテオラはマルクに剣を向けた。

 

 

 

「良いか? 龍に身体の一部を貸すんだ。そしてその代わりに龍の力を借りる。そうすれば、龍の力を扱える。やってみろ!!」

 

 

 

 マルクは無意識に龍の力を発動させる。すると、拳を黒いオーラが包み込む。

 

 

 

 その拳を振ると、剣を振ってきていたメテオラの剣と激突した。

 

 

 

 拳と剣がぶつかり合い、強い衝撃波を踏む。そしてその衝撃でマルクは吹き飛んで転がった。

 

 

 

 マルクが倒れた状態で見上げると、そこにはメテオラが立っていた。結局一度も勝てなかった。

 

 

 

 そんなマルクにメテオラは剣を鞘にしまうと、その剣を渡す。

 

 

 

 

 

 



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 第209話  【BLACK EDGE 其の209 プレゼント】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第209話

 【BLACK EDGE 其の209 プレゼント】

 

 

 

 

 倒れたマルクが見上げると、メテオラに見下ろされていた。倒れたマルクにメテオラは手を差し伸ばす。

 

 

 

「…………今のが……?」

 

 

 

 立ち上がりながらマルクが聞くと、メテオラは頷いた。

 

 

 

「そうだ。今のが龍の力だ。その感覚を忘れないように」

 

 

 

 そう言った後メテオラは使っていた剣をマルクに渡した。

 

 

 

「これを持っていきなさい」

 

 

 

「いや、でも、これは師匠の……」

 

 

 

 マルクは遠慮するがメテオラは無理矢理渡す。

 

 

 

「卒業祝いだ」

 

 

 

「卒業?」

 

 

 

「ああ、龍の力を使っている姿も見れた。これで満足だ。お前は私の一番弟子だ」

 

 

 

 こうしてマルクはメテオラの元から去った。

 

 

 

 

 あの時の龍の力の使い方。それをずっとブラッドは行ってきた。片腕だけに龍の力を使い、 拳を強化する。

 

 

 

 そして全身に龍の力を使う技がドラゴンインストールだ。

 

 

 

 ドラゴンインストールはパワーはあるが、その分リスクが大きい。そのため乱発はできない。そして片腕だけではロジョンを倒すことはできない。

 

 

 

 ならば、片腕だけでなく、攻撃に使う部位だけに龍の力を使う。

 

 

 

 片腕だけに力を入れていると、足や腰などはブラッドの肉体のものだ。そのためブラッドの身体能力で問題なく使える程度しか、龍の力も扱えない。

 

 

 

 そのため威力も下がってしまう。ドラゴンインストールはパワーの代わりに意識を奪われてしまう。そのため効率の良い攻撃ができない。

 

 

 

 

 ブラッドは拳だけでなく、腰や足、それぞれの部分的に龍の力を発動させる。

 

 

 

 そして強く踏み込まれた地面には穴が開く。だが、その踏み込んだパワーと、全身で強度がアップしたことでブラッドの攻撃力は増す。

 

 

 

「行くぞ、ロジョン!!」

 

 

 

 ブラッドの拳はロジョンの腹に当たる。今まで以上のパワーでブラッドはロジョンを殴り飛ばす。

 

 

 

 その威力にロジョンは耐え切ることができず、殴られた勢いで吹っ飛んでいった。そして通路を真っ直ぐ吹き飛ぶと、通路の奥にあった巨大な扉に激突。

 

 

 

 その鉄の扉すら破壊して、ロジョンは吹っ飛んでいった。扉は破壊されて、フェアと赤崎がいると思われる部屋への道が開けた。

 

 

 

 ブラッドはロジョンを追ってその部屋へと入る。そしてそこにいた。

 

 

 

「ブラッド!! ここ、ここだよ!!」

 

 

 

「フェア!!」

 

 

 

 部屋に入るとそこには例の八本足の兵器と、その中にあるタンク状の場所に閉じ込められたフェアがいた。

 

 

 

「待ってろ、今助ける」

 

 

 

 ブラッドがフェアの元に近づこうとした時、

 

 

 

 

 

 



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 第210話  【BLACK EDGE 其の210 救出へ】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第210話

 【BLACK EDGE 其の210 救出へ】

 

 

 

 

「待ってろ、今助ける!!」

 

 

 

 ブラッドがフェアの元に行こうとするが、その前に赤崎が立ち塞がった。

 

 

 

 扉が壊れた時点でプロテクターは装備していたのか、フル装備状態だ。

 

 

 

「行かせると?」

 

 

 

 赤崎は炎の剣を取り出すと、それを振ってブラッドが近づけないようにした。

 

 

 

 赤崎はブラッドを遠ざけると、ロジョンの方を向いて叫ぶ。

 

 

 

「おい、立て、ロジョン」

 

 

 

 赤崎の声を聞いてか、ロジョンは立ち上がる。

 

 

 

 あれだけの攻撃を受けたというのにまだ動けるのか……。

 

 

 

 立ち上がったロジョンに赤崎は指示をする。

 

 

 

「私がこの男を止める。その間に君が起動準備を進めろ」

 

 

 

「了解しました」

 

 

 

 ロジョンは兵器の元に行くと、近くにあるモニターを操作し始めた。

 

 

 

 ブラッドはそれをやめさせようとロジョンに近づこうとするが、赤崎が立ち塞がった。

 

 

 

「これ以上は邪魔はさせない」

 

 

 

 赤崎は炎の剣を振ってブラッドを攻撃する。炎の剣は鞭のように伸びてブラッドを襲う。ブラッドは後ろに飛んで赤崎の剣を避けた。

 

 

 

「……もうすぐそこだっていうのに……」

 

 

 

 

 フェアは目の前にいる。だが、赤崎の炎でブラッドは近づくことができない。

 

 

 

 ここでドラゴンインストールをするという手もある。だが、あの技を使っても赤崎には勝てなかった。それにフェアを巻き込む可能性もある。

 

 

 

 ブラッドは拳を握ると、

 

 

 

「あの技で倒すしかないか」

 

 

 

 それはロジョンに放った技。手応えはあった。ロジョンにもダメージはあるようで動きは鈍い。

 だが、あれは失敗だ。

 

 

 

 特定の部位に龍の力を発動する技。だが、ロジョンを攻撃する一瞬。龍の力のコントロールがズレた。それにより完璧な状態での技ではなかった。

 

 

 

 だが、そんな状態であってもあれだけのパワーを発揮したのだ。失敗でもドラゴンインストールと同等か、それ以上のパワーが出ていた。

 ならば、もしも完全にあの技を使いこなせるようになったのならば、赤崎のプロテクターも破壊できるかもしれない。

 

 

 

 ブラッドは赤崎に向かって走り出す。赤崎は剣を振ってブラッドが近づかないようにする。

 迫り来る炎をブラッドはスライディングで避けると、赤崎の目の前に着く。

 

 

 

 赤崎の攻撃はワンパターンだ。何度か戦っていれば、どんな強力な武器を使っていても予測して避けることができる。

 

 

 

 ブラッドは拳を握ると、ロジョンの時と同じ容量で赤崎を殴った。

 

 

 

 赤崎の身体は宙に浮く。しかし、今のも失敗だ。赤崎は着地しながらブラッドに攻撃を仕掛けてきた。

 

 

 

 ブラッドは後ろに退がり、赤崎の攻撃を避ける。

 

 

 

「うまくいかないな」

 

 

 

 

 



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 第211話  【BLACK EDGE 其の211 認めた】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第211話

 【BLACK EDGE 其の211 認めた】

 

 

 

 ブラッドは赤崎の攻撃を避ける。ロジョンの時と同じように攻撃したが、今回はあの時よりも威力が下がっている。

 

 

 

「うまくいかないな」

 

 

 

 時間もない。早くその技を成功させてフェアを助けたい。だが、まだ慣れない攻撃方法だ。そう簡単にはうまくいかない。

 

 

 

 だが、他の方法もない。

 

 

 

 ブラッドは拳を握りしめて、もう一度赤崎に向かって走り出す。

 

 

 

 赤崎は今度は肩からビームを放つ。だが、それももう何度も見た。同じ攻撃を何度も喰らうことはない。

 

 

 

 ブラッドは接近すると、赤崎に連続でパンチを放つ。その一撃一撃を意識して放っているが、どれも成功しない。

 

 

 

 そして途中で赤崎がブラッドを腕を掴んで止めた。

 

 

 

「何か作戦があるのか?」

 

 

 

 掴んだまま赤崎はブラッドを地面に叩きつけた。

 

 

 

「ぐっ……」

 

 

 

 ブラッドは地面に叩きつけられて、地面を跳ねる。そして地面に倒れたブラッドを狙って赤崎が炎の剣を振り下ろす。

 

 

 

 ブラッドは身体を転がして、炎の剣を避けた。しかし、赤崎は振り下ろした後、そのまま横に振って転がったブラッドを追いかける。

 

 

 

 炎がブラッドに迫る中、ブラッドは右手に黒いオーラを溜めると、それをムチ状にして赤崎の剣を持つ手に引っ掛ける。そしてそれを引っ張り赤崎の腕を動かす。

 

 

 

 それにより赤崎の剣は軌道をずれて、炎はブラッドに当たることなく横を通っていく。

 

 

 

 炎を避けることができたブラッドは立ち上がると、ブラッドは左足に力を込める。

 そして赤崎のことを蹴り飛ばした。

 

 

 

 赤崎は吹っ飛び、地面を転がる。だが、これも失敗だ。何度やってもうまくいかない。

 

 

 

 片腕だけでなく身体のあらゆる場所に集中して力をコントロールしないといけない。大雑把なブラッドにはかなり苦手な作業だ。

 

 

 

 赤崎は落とした剣を拾うと立ち上がった。

 

 

 

「ふむ、何かやろうとしているみたいだが、苦戦しているようだね」

 

 

 

 そして赤崎にもブラッドが新たな試みをしていることがバレた。警戒された状態でこの技を成功させるのは至難の業だ。

 

 

 

「チャレンジは嫌いじゃない。新しいことをやることは大事なことだ」

 

 

 

 立ち上がった赤崎はすぐに攻撃してくる訳でなく喋り出した。

 

 

 

「私がなぜ、この兵器を作ったか、君には教えよう」

 

 

 

 突然の発言にブラッドは疑問に思う。

 

 

 

「なぜそんなことを言う。時間稼ぎか?」

 

 

 

 近くではロジョンがモニターに向かって何かをしている。いつ準備が終わってもおかしくない。

 

 

 

「そうじゃない。私は君を認めたということさ」

 

 

 

 

 

 

 



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 第212話  【BLACK EDGE 其の212 赤崎】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第212話

 【BLACK EDGE 其の212 赤崎】

 

 

 

 

 

「そうじゃない。私が君を認めたということさ」

 

 

 

「そうかい!!」

 

 

 

 ブラッドは赤崎の話を聞く気はなく。赤崎に接近しようとする。赤崎も無抵抗というわけではなく、炎の剣を振りながら対抗してきた。

 

 

 

「私は元々この世界の人間ではない。別世界から来た。この世界に転移した人間だ」

 

 

 

 ブラッドは赤崎の炎をジャンプして避ける。そして落下しながら赤崎を狙う。だが、そんなブラッドを赤崎は肩から出るビームで狙う。

 

 

 

 ビームが発射されるが、ブラッドは身体をそらしてビームを避けた。そして赤崎の下に潜り込む。

 

 

 

「別世界ね。それがどうしたってんだ」

 

 

 

 ブラッドは拳を握りして、下から殴りつける。だが、これも失敗だ。やはり最後の最後でコントロールが失敗してしまう。

 

 

 

 赤崎は殴られた衝撃で空中に浮く。二メートルほど飛び上がるが、そこから先は落下してくる。落下先ではブラッドが待ち構えていた。

 

 

 

 だが、赤崎は落下することなく空中で静止する。赤崎のプロテクターの背中の部分から空気が発射されてそれで赤崎は浮いていた。

 

 

 

「元いた世界で俺は開発者だった。世界をより良くしようと様々なものを開発してきた。だが、そのどれもを岡島は認めなかった」

 

 

 

「岡島だ? 誰だそいつは」

 

 

 

 ブラッドは赤崎を追いかけてジャンプする。だが、赤崎は空中で空気の出る方向を変えると、移動してブラッドの攻撃を避ける。

 そして避けた後、空中で無防備になったブラッドにタックルした。

 

 

 

 空中での攻撃のためブラッドは防御することができず、赤崎のタックルを食らう。そしてタックルを受けたブラッドは吹っ飛び、壁に激突した。

 

 

 

「私の後輩さ、彼は私の作った兵器を全て否定した。そして新たなものに挑戦するということすら、彼は否定したんだ」

 

 

 

 赤崎はそう言いながら、空を飛び、そしてそのままブラッドに追撃を加える。壁にめり込んでいたブラッドに向けて、赤崎は炎の剣を振った。

 

 

 

「だから、そんなことを俺に喋って何になるってんだよ!」

 

 

 

 ブラッドはどうにかめり込んだ壁から抜け出して落下。地面に着地して炎を躱した。

 

 

 

 赤崎は空気の噴射を止めると地面に着地する。

 

 

 

「さっきも言っただろう。君を認めたと…………。グリモワールもブルーバードも私から見れば、過去に囚われた無能集団だ。彼らの目的など、人類のためにはならない」

 

 

 

「…………過去か、それなら俺の方が過去に囚われてるさ、そしてあんたもな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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 第213話  【BLACK EDGE 其の213 過去の鳥籠】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第213話

 【BLACK EDGE 其の213 過去の鳥籠】

 

 

 

 

 赤崎は地面に着地する。

 

 

 

「私も…………か。……そうだな。その通りだな」

 

 

 

 そう言い赤崎は笑った。

 

 

 

 そして炎の剣を頭の上で降り始めた。反時計回りに剣を回す。それにより赤崎の頭上に炎の渦が発生する。

 

 

 

「…………すまない。今までのことは忘れてくれ。兵器の完成が近づき、興奮してしまっていた」

 

 

 

「……そうか。ま、俺にはお前の言いたいことが分からなかったしな。構わねぇよ。だが、一つだけ教えてくれ」

 

 

 

 ブラッドはそう言って拳を強く握りしめて構える。ブラッドの右手と両足に黒いオーラが現れた。

 

 

 

「あの兵器で何をするつもりなんだ? 元いた世界への復讐か?」

 

 

 

 赤崎は首を振った。

 

 

「違う。私は世界を再構築する。そのために一度この世界を破壊する。グリモワールとブルーバードは別世界に干渉することが目的だ。だが、私は違う。三つある世界、その全てを新しくする」

 

 

 

 赤崎の頭上にあるの炎はどんどん大きくなっていく。

 

 

 

「過去じゃない。未来のために!! 新しい世界を作るんだ」

 

 

 

 赤崎はそう言った後、炎の大きくなった剣を振り下ろした。ブラッドもそれと同時に赤崎に向かって走り出した。

 

 

 

「そうか、あんたが何らかの考えを持ってることはわかった。だが、俺には関係ねぇ!!」

 

 

 

 ブラッドは振り下ろされる炎の剣に向かって拳を突き出す。

 

 

 

「龍の牙(ドラゴンファング)」

 

 

 

 ブラッドが突き出した腕から黒いオーラが飛び出して、それが龍の姿へと変化する。そしてその黒い龍は炎に激突した。

 

 

 

「っ!?」

 

 

 

 ブラッドの放った龍のオーラが炎を突き破る。だが、炎を消したことですでに威力は無くなっている。

 

 

 

 だが、炎がなくなり、そして赤崎へと近づく道ができた。

 

 

 

 ブラッドは赤崎の目の前に着くと、全身に力を入れる。そして赤崎の顔面に向かって拳を突きつけた。

 

 

 

 何度目の挑戦か。だが、ここで変化が起きた。その違いに気づいた時には、すでに拳を振り終わっていた。

 

 

 

 足から腕まで、同時に力が発動したのではない。一つ一つ、順番に力を入れるべき場所に、流れるように力が入った。

 

 

 

 そして全身を流れた龍がそのまま拳から放たれるような感覚。

 

 

 

 さっき炎を消すために放った技。それが成功の引き金となった。

 

 

 

 ブラッドの拳は赤崎のプロテクターを割った。

 

 

 

「なにっ!?」

 

 

 

 赤崎の顔が露わになる。だが、顔のパーツを破壊しただけで、他のパーツは残っている。

 だが、プロテクターの一部を破壊できた。

 

 

 

 

 

 



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 第214話  【BLACK EDGE 其の214 進化】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第214話

 【BLACK EDGE 其の214 進化】

 

 

 

 

 ブラッドに顔のプロテクターを破壊された赤崎は、空気を噴射して素早くブラッドから距離を取った。

 

 

 

 顔の部分は壊れたが、破壊されたのはそこだけ。まだ機能のほとんどは残っているようだ。

 

 

 

 だが、装備が破壊されたことで赤崎は警戒する。

 

 

 

「まさか…………この佐上四号を破壊されるとは…………」

 

 

 

 赤崎は驚いているが、ブラッドも驚いていた。何度も成功しなかった技が、ここで一度だけ成功したのだ。

 

 

 

 だが、喜んでいる暇はない。ブラッドは赤崎に追撃を加えようとする。

 

 

 

 しかし、その時、

 

 

 

「赤崎博士、準備が完了しました」

 

 

 

 ロジョンがそう言った。

 

 

 

 ブラッドはその声を聞き、フェアの方を見る。兵器にある円柱型の透明な装置。その中にいるフェアは力が入らないのか、座っていた。

 

 

 

「……………ブラ………………ド」

 

 

 

 まだ意識がある。だが、ロジョンが言っていた準備完了とはどういうことなのか。

 

 

 

 赤崎は背中の装置から空気を噴射して、兵器の上のある操縦席に乗った。

 

 

 

 飛んでいく赤崎をブラッドは攻撃しようとしたが、赤崎は肩からビームを発射してそれを阻止する。

 

 

 

「くっ…………」

 

 

 

 兵器に座った赤崎はブラッドの方を見て言う。

 

 

 

「安心しまえ、ブラッド。この兵器で世界を作り変えれば、白龍の適応者は解放してあげよう。…………生きていればな」

 

 

 

 赤崎は兵器を操作し始める。起動にはいくつかの操作が必要なのか、赤崎は操縦席で何かを打ち込んでいた。

 

 

 

「赤崎!」

 

 

 

 ブラッドは急いで兵器の元に行き、フェアを助け出そうとする。だが、その前にロジョンが立ち塞がった。

 

 

 

「これより先は行かせません」

 

 

 

 ロジョンの身体はボロボロだ。さっきの戦闘でのダメージがまだ残っている。だが、不思議だ。血が出ているわけではなく、身体から電気が出ており、血管ではなくパイプが剥き出しだ。

 普通の人間ではないということか。だからここまでダメージを受けても動けているのか。それとも赤崎への忠義で動いているのか。

 

 

 

「これ以上時間はかけられねぇんだよ」

 

 

 

 ブラッドはロジョンに向かって走り出すと、拳を振り上げる。ロジョンは箒を落とした状態のままのため、素手で応戦しようとする。

 

 

 

 だがその時、

 

 

 

「っ…………」

 

 

 

 足元が大きく揺れる。地震……いや、違う。赤崎の乗っている兵器が一歩前に進んだのだ。

 兵器が歩くだけで地面が揺れる。それだけ巨大であり、そして

 

 

 

 兵器の上半分が回転する。そしてブラッドとロジョンの方を向いた。

 

 

 

 兵器の正面には筒状の何かが取り付けられている。

 

 

 

「まさか…………」

 

 

 

 兵器の先端の部分から爆弾が発射された。そしてそれがブラッドとロジョンを吹き飛ばした。

 

 

 

 

 

 

 

 



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 第215話  【BLACK EDGE 其の215 爆発】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第215話

 【BLACK EDGE 其の215 爆発】

 

 

 

 

 兵器の正面がブラッドとロジョンの方を向く。兵器の正面には筒状の武器が取り付けられていた。それは…………。

 

 

 

「…………まさか」

 

 

 

 赤崎が兵器を操作すると、その先端から爆弾が発射される。そしてブラッドとロジョンは大爆発に巻き込まれた。

 

 

 

 

 

 

 瓦礫の山からブラッドは這い上がる。そして瓦礫の中から出ながら中から何かを引っ張る。

 

 

 

 ブラッドが中から引っ張り出したのはロジョンだ。瓦礫の中から出るとロジョンはゆっくりと目を開けた。

 

 

 

「なぜ、私を助けたんですか?」

 

 

 

 兵器からの砲撃の瞬間。ブラッドはロジョンのことを引っ張ると、爆発からロジョンを守った。そして落ちてくる瓦礫も身を盾にして防いだのだ。

 

 

 

「なぜ……か。深い理由はねぇよ」

 

 

 

 ブラッドは頭を掻きながら答えた。

 

 

 

「私はあなたの敵なんですよ」

 

 

 

「そうだな……」

 

 

 

 ロジョンは敵だ。赤崎の部下であり、ブラッドとも戦闘になったこともある。

 それなのにロジョンをブラッドは守ったのだ。

 

 

 

 なぜ、助けたのか。理由を聞かれても答えようがない。

 

 

 

 赤崎が兵器で二人を狙ったから、咄嗟に助けてしまった。敵であろうと何だろうと、近くにいるのに見殺しにするということがブラッドには出来なかった。

 

 

 

 まともな答えがないブラッドにロジョンは諦めたのか。理由を聞くのをやめた。

 

 

 

 ロジョンは瓦礫の上で座る。

 

 

 

「…………そう、答える気がないのならそれで構いません」

 

 

 

 もうこの部屋には兵器はない。そのため赤崎とフェアもいない。砲撃からどれくらいの時間が経ったか分からないが、兵器は動き出してしまったのだ。

 

 

 

 それでもブラッドは諦めない。

 

 

 

 兵器が動き出してもまだフェアは生きていた。まだ急げばフェアを救えるかもしれない。

 

 

 

 ブラッドは兵器を追おうと部屋の出口を探す。

 

 

 

 そんなブラッドにロジョンは話しかけてきた。

 

 

 

「まだ諦めないんですね」

 

 

 

 ブラッドは動きを止めた。そして振り返らずに言う。

 

 

 

「なんだ、俺を止める気か?」

 

 

 

「いえ、もう私の任務は終わりました。だから赤崎博士は私を殺そうとしたんです」

 

 

 

 施設内はもう跡形もなく崩壊していた。出入り口は瓦礫で塞がってしまっている。

 ブラッドは瓦礫を退かして地下施設から出ようとする。

 

 

 

「そうか、じゃあ、お前はどうしたいんだ。このままここで死ぬのを待つのか?」

 

 

 

「…………」

 

 

 

「お前がここで死のうがどうしようが、俺には関係ない。だが、俺はここから出る。フェアを助けるためにな」

 

 

 

 ブラッドはそう言いながら瓦礫を退ける。

 

 

 

 

 

 



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 第216話  【BLACK EDGE 其の216 瓦礫の中で】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第216話

 【BLACK EDGE 其の216 瓦礫の中で】

 

 

 

 

 

「そうか、じゃあ、お前はどうしたいんだ。このままここで死ぬのを待つのか?」

 

 

 

「…………」

 

 

 

「お前がここで死のうがどうしようが、俺には関係ない。だが、俺はここから出る。フェアを助けるためにな」

 

 

 

 ブラッドはそう言いながら瓦礫を退かす。

 

 

 

 兵器が起動し赤崎はブラッドとロジョンに向けて砲撃した。

 その砲撃からブラッドは咄嗟にロジョンを守った。敵であるブラッドに守られたロジョンは疑問に思ったが、ブラッドからしたら近くで見殺しにすることができずに助けただけだ。

 大きな理由はなかった。

 

 

 

 ブラッドの回答を聞いたロジョンは喋り出した。

 

 

 

「私は赤崎博士に作られました。………………私は赤崎博士に諦めて欲しくない」

 

 

 

 それを聞いたブラッドは聞く。

 

 

 

「何のことだ?」

 

 

 

「博士は昔、別世界から来ました。この世界にやってくる前は、開発者として様々なものを開発していたようです」

 

 

 

 その話はさっきも聞いた。赤崎もロジョンも聞いていないことをなぜ喋り出すのか。

 

 

 

「それはさっきも聞いたぞ。岡島に認められなかったとか、なんとか…………」

 

 

 

「そうです。赤崎博士は岡島とライバルでした。多くのものを開発し、どっちが優れているのかを競ってきた。でも、ある時博士は突然この世界にやってきていた」

 

 

 

「望んできたわけではないってことか」

 

 

 

「はい。岡島と開発競争も途中でこの世界に飛ばされてしまった。それでも赤崎博士は諦めずに、私やクローン、他にも様々なものを作ってきました。でも、そのどれも岡島には見せることができない」

 

 

 

「赤崎の本当の目的は岡島に、作ったもんを見せることか」

 

 

 

「もう博士はその目的も忘れてしまった。今はただ、優れた兵器を作ることだけが赤崎博士の目的です。そしてどんな兵器すら超えた究極の兵器、それは正しい兵器であると考えて、あの兵器を作ったんです」

 

 

 

「そうか、ま、関係ないけどな」

 

 

 

 ブラッドはそう言って瓦礫を退かし続ける。

 

 

 

 こんなことを話してロジョンが何をしたいのか。そして赤崎もさっきブラッドにああやって自分のことを語り出して何がしたかったのか。

 だが、そんな事はどうだっていい、ブラッドはフェアを助ける。そのためだけに今は動く。

 

 

 

 瓦礫を退かし続けていると、瓦礫の反対側から声が聞こえる。

 

 

 

「おい、そこに誰かいるのか?」

 

 

 

 ブラッドが声の聞こえる方に叫ぶと、

 

 

 

「その声はブラッドか?」

 

 

 

 男の声。そして聞き覚えのある声だ。

 

 

 

「その声はシャドーか」

 

 

 

 

 

 

 

 



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 第217話  【BLACK EDGE 其の217 合流】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第217話

 【BLACK EDGE 其の217 合流】

 

 

 

 

「その声は…………シャドーか?」

 

 

 

 瓦礫の奥から声がする。それはシャドーの声だ。

 

 

 

「ああ、…………やっぱりここにいやがったか。待ってろ、今出してやる」

 

 

 

 シャドーがそう言うと、瓦礫が崩れる音が近づいてくる。そして近くに来ると、瓦礫は地面に沈んだ。

 

 

 

 シャドーが瓦礫を影の世界に送り、瓦礫を無くしたのだ。

 

 

 

 瓦礫が無くなると黒いフードに仮面の男。シャドーと、同じ姿の人物がもう一人いた。

 

 

 

「お前は?」

 

 

 

 ブラッドがそいつに聞くと、そいつは

 

 

 

「あぁ、忘れたのか。私だ。私!!」

 

 

 

「いや、知らねぇよ」

 

 

 

「ヒートだ。王都でお前とデカブツと戦闘しただろ」

 

 

 

 ブラッドはそれを言われて思い出す。王都でグリモワールに襲われた時、二人いた。そのうちの一人がグリムで、もう一人はヒューグが倒した。

 

 

 

「…………いや、知らんわ!! お前とは一瞬しか会ってねーわ!!」

 

 

 

 この女はヒューグが戦闘したため、ブラッドはほぼ初対面だ。襲われた瞬間と撤退の時しか見ていない。

 

 

 

「…………しかし、まさか、グリモワールのお前達が助けに来てくれるとはな……」

 

 

 

 ブラッドがそう言うとシャドーが

 

 

 

「ふ、お前が負けるからだよ。例の兵器はカメリアから王都に向けて進行中だ。そいつを報告しに来てやったんだよ」

 

 

 

 報告しに…………か。なんだかんだでシャドーは悪い奴じゃない気がしてきた。子供達には優しいし、もしかしたら俺は死んでいたかもしれない。それなのにここに来てくれたのだ。

 まぁ、目的が一致しているからだろうが。

 

 

 

「そうか、…………だが、なぜ王都に向かってるんだ? 国を滅ぼすのが目的か?」

 

 

 

 ブラッドが聞くと、横からロジョンが歩いてきて喋り出した。

 

 

 

「いいえ、王都にある柱を破壊するのが目的です」

 

 

 

 さっきまで座っていたロジョンが近づいてきたことに驚く。そして情報までくれるとは。

 

 

 

 ロジョンの姿を見たヒートは警戒する。

 

 

 

「なぜ、貴様…………」

 

 

 

 ヒートは左手を出して警戒するが、ロジョンは戦闘体制にはならない。

 

 

 

「こいつはもう、敵でも……味方でもない。赤崎からの解放されてる」

 

 

 

 ブラッドはロジョンのことをヒートに伝える。ロジョンに戦闘の意思がないとヒートも分かったのか、左手を下げた。

 

 

 

「…………柱の破壊だと、なんのことだ?」

 

 

 

 シャドーがロジョンに聞く。するとロジョンは説明を続けた。

 

 

 

「世界を支える柱の一つです。その一つが王都にあります」

 

 

 

 

 

 

 



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 第218話  【BLACK EDGE 其の218 世界の柱】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第218話

 【BLACK EDGE 其の218 世界の柱】

 

 

 

「世界を支える柱の一つです。その一つが王都にあります」

 

 

 

「世界を支える柱? それが壊されたらどうなるんだ?」

 

 

 

 シャドーが聞くとロジョンは答える。

 

 

 

「この世界のバランスが壊れて崩れます。そしてそれは残り二つの世界にも影響を及ぼす」

 

 

 

 それを聞いたシャドーとヒートは焦り出す。

 

 

 

 ヒートはロジョンに確認する。

 

 

 

「つまりはその柱が破壊されれば、この世界だけじゃなく他の世界も壊れるってことか?」

 

 

 

「はい」

 

 

 

 赤崎は世界を作り直すと言っていた。そしてそのために一度壊すと。そのために王都でその柱を破壊するということか。

 

 

 

「…………ブラッド、貴様も手を貸せ」

 

 

 

 話を聞いたヒートがブラッドに話しかける。ブラッドがヒートの方を見ると、仮面とフードで隠れてはいるが、震えているのがわかった。

 

 

 

「兵器を破壊する。そういうことだな」

 

 

 

「ああ、ガキどもはグリムに任せてある。私たちでその兵器を止めるぞ」

 

 

 

 そう言うとヒートは真っ先に走っていった。

 

 

 

「そいつはどうする?」

 

 

 

 シャドーがロジョンの方を見て聞く。

 

 

 

 ロジョンはもう赤崎の計画から外された。しかし、ロジョンが破壊の邪魔をする可能性もある。

 ならば、

 

 

 

「…………俺と一緒に来てくれ。それで良いか?」

 

 

 

 ブラッドはロジョンにそう聞いた。

 

 

 

 ここに置いていっても良い。だが、そのあとロジョンがどうしているのか分からないのは危険だ。ならば、近くに居させて様子を見る方がいいだろう。

 

 

 

 ロジョンはコクリと頷く。

 

 

 

「シャドー、その兵器の場所へ案内してくれ」

 

 

 

 ブラッドがシャドーに言うと、シャドーは、

 

 

 

「ああ、当然だ」

 

 

 

 そう言って三人はヒートを追いかけて、地下施設を走り出した。

 

 

 

 しばらく経ってヒートに追いつく。

 

 

 

 追いついたブラッドがヒートに聞いてみた。

 

 

 

「世界が壊されるのはグリモワールにとっても不利なのか?」

 

 

 

 するとヒートは走りながら答える。

 

 

 

「ああ、私たちが消えるだけなら良い…………でも、私にはやることがある」

 

 

 

「別世界が消えたら不都合でもあんのか?」

 

 

 

「…………これ以上は言えるかよ」

 

 

 

「それもそうか」

 

 

 

 グリモワールもブルーバードもなんらかの目的をもって動いている。

 

 

 

 敵対している彼らであるが、今回だけは協力者だ。同じ敵と共に戦う。

 

 

 

 戦う敵は赤崎の作った兵器。それが王都に辿り着く前に決着をつけなければならない。

 

 

 

 ブラッド達は急いで地下施設から脱出を試みるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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 第219話  【BLACK EDGE 其の219 兵器を止めろ】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第219話

 【BLACK EDGE 其の219 兵器を止めろ】

 

 

 

 

 カメリアから少し外れた山上。そこに白いワンピースを着た男と、その部下達が居た。

 

 

 

 彼らの目線の先には八本足の巨大な兵器が王都に向けて侵攻していた。

 

 

 

 足は八本あり、左右に三つずつの足を使い歩いている。残りの二本は前方で手の役割をしており、歩行の邪魔にある岩や木を破壊している。

 

 

 

 その兵器が現れたのはカメリアと王都を繋ぐ道の外れだ。そこは地下通路と繋がっていた場所であり、兵器は地面を破壊しながら現れた。

 

 

 

 兵器は自然を破壊しながら王都へと近づいていた。

 

 

 

 その様子を見ていたスワンが苛立つ。

 

 

 

「………………酷いことするわ」

 

 

 

 スワンを中心に集まっていたブルーバードの近くに、カラスの群れがやって来た。

 

 

 

 クロウが前に出るとカラス達と対話する。そして得た情報をスワンに伝えた。

 

 

 

「赤崎の目的は王都にある破壊らしいです。それを破壊することで世界のバランスは崩壊するとか」

 

 

 

 カラス達はブラッドとシャドー達が喋っているところを遠くから見ていた。そして彼らの会話から得た情報をクロウがスワンに伝えた。

 

 

 

「グリモワールとブラッドは…………?」

 

 

 

 スワンが聞くとクロウはカラスに聞く。そして情報を得たクロウはそれをスワンに伝える。

 

 

 

「グリモワールとブラッドはあの兵器を破壊するために行動するらしいです」

 

 

 

「そう、それなら私たちがやるべき事は決まったわね」

 

 

 

 スワンはそう言うとブルーバードの部下達の方を向く。そして大きな声で指示を出した。

 

 

 

「あなた達!! これより任務を与えるわ!! あの兵器を全力で止めるわよ! ブラッド達が来るまで、絶対に王都には辿り着かせないわ!!」

 

 

 

 スワンが部下達にそう指示すると、部下達は大声を上げた。

 

 

 

 指示を出したスワンに傷の癒えたフェザントが近づいてきた。

 部下達は戦闘の準備をしているため、フェザントとスワンの会話は聞こえない。

 

 

 

「傷は大丈夫かしら? フェザントちゃん」

 

 

 

「ああ、クレインのおかげでな…………。スワン、聞いて良いか?」

 

 

 

「ええ、良いわよ」

 

 

 

 フェザントは兵器の方を見る。

 

 

 

「あいつを連中が倒せると思うか?」

 

 

 

 ブラッドとグリモワールが兵器の破壊のために動くという情報を得た。だが、それがどんな方法かはわからない。

 

 

 

 どれだけ時間を稼いでも成功する保証はない。

 

 

 

「ええ、破壊できるわよ」

 

 

 

 スワンは断言する。

 

 

 

「私は彼らを信じるわ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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 第220話  【BLACK EDGE 其の220 兵器の力】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第220話

 【BLACK EDGE 其の220 兵器の力】

 

 

 

 

 進む兵器の進行方向に二十五人の兵士達が立ち塞がった。

 

 

 

 王都周辺にいるブルーバードの兵力をかき集めて、一般兵二十名、術師五名。これが今のブルーバードに集められる限界の兵力だった。

 

 

 

 それで兵器が王都に進行するのを止める。

 

 

 

 ブルーバードの兵士達は剣や弓を持ち、武装している。そしてスワンの指示のもと、配置についた。

 

 

 

「たったこれだけの兵力で本当に止める気かい?」

 

 

 

 スワンの隣で黒髪の少年が聞いてきた。

 

 

 

 その少年はシータ。カメリアにあるグリモワールの支部の開発長であり、赤崎の八番目のクローン。

 地下施設で出会ったスワンはシータを勧誘して、シータもそれに応じた。

 

 

 

「ああ、そのつもりだとも…………私の組織は少数精鋭。これ以上は進ませないわ」

 

 

 

 シータは両腕を頭の後ろで組ませる。

 

 

 

「ま、組織が滅ばない程度に頑張りな。僕の居場所も無くなっちゃうからね」

 

 

 

「そうね。シータちゃんのためにも頑張るわよ。…………一応確認だけど、さっきの情報は本当よね?」

 

 

 

 スワンはシータに確認を取る。

 

 

 

「ああ、あの兵器の弱点は足と動力源である龍の適応者。まずは足を破壊して、動きを封じた後に動力源を取り出すのが効率が良いよ。というか、ちゃん付けはやめてくれないかい?」

 

 

 

「あら、ちゃん呼びは嫌い?」

 

 

 

「僕のことはシータ様と呼んでください」

 

 

 

「それは嫌よ。ボスは私だもの。ボスになりたいのなら、私をどうにかしてみなさい」

 

 

 

 スワンは冗談を言った後、兵士に指示をした。

 

 

 

「狙うのは足よ。作戦通りやれば良いわ! そうすれば、あの兵器は止められる」

 

 

 

 兵士達はスワンの指示に従い作戦を実行する。

 

 

 

 弓を持った八人の兵士が一箇所の足に向けて一掃に矢を放つ。

 

 

 

 だが、敵は巨大なメカだ。通常の弓や剣では刃が立たない。

 

 

 

 だから、弓も普通と弓ではない。弓には縄をつけてあり、兵器の前方の右足に絡みついた。弓兵以外の一般兵は弓兵の放った縄を一緒に掴み、二十人でその縄を引っ張った。

 

 

 

 兵器は前に進もうと足を上げるが、動かない。赤崎が下の方を見ると、そこでは兵士たちが縄を引っ掛けて引っ張っていた。

 

 

 

「……邪魔をするか」

 

 

 

 赤崎は兵器の上部分だけを動かして、方向転換。縄を引っ張る兵士に向けて、大砲を向けた。

 

 

 

 赤崎はボタンを押して砲撃する。だが、大砲の弾は突然大きく育ってきた植物に当たり、兵士たちに当たることはない。

 

 

 

「なんだと…………」

 

 

 

 

 

 

 



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 第221話  【BLACK EDGE 其の221 王都の騒ぎ】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第221話

 【BLACK EDGE 其の221 王都の騒ぎ】

 

 

 

 

 ブレインが兵士と共に王都ガルデニアに着くと、王国中がパニックになっていた。

 

 

 

 人々は焦り逃げ惑う。

 

 

 

「何があったんだ……」

 

 

 

 ブレインは一緒に戻った兵士に聞くが、

 

 

 

「わかりません」

 

 

 

 当然だ。ブレインと共に一緒に帰ってきたのだ。だが、怪しいことはある。

 

 

 

 王都に辿り着く前に何度か爆発音を聞いた。聞こえた方向はカメリアの方だったが、向こうの方で何かあったのだろうか。ブレインは情報を得るために城へと急いだ。

 

 

 

 

 

 

 ヒューグは騒ぎになっているカメリアへと続く門の方へと向かう。そこには野次馬が集まっており、ヒューグはそれをかき分けながら前に進んだ。

 

 

 

 道の奥では鳥達が騒いでいるのか。黒い鳥が群れを成してあちこちに飛んでいるのが見える。

 そしてまだ遠くて良くは見えないが巨大な何かが動いているのも見えた。

 

 

 

「ありゃー、なんだ……」

 

 

 

 騒ぎの中で何かが近づいてくるという話を聞いた。だとするとあの奥にある巨大な何かが近づいてくるということだろうか。

 

 

 

 

 

 王都が混乱に包まれる中、兵器の進行方向にブルーバードの兵隊達が集まっていた。総勢二十五名。たったこれだけの兵力で兵器を止める。

 

 

 

 弓兵が兵器の足の一本を狙い、弓を放ち縄を絡ませる。そして二十名の兵士でその縄を引っ張った。

 

 

 

 巨大なメカだ。そう簡単には止められない。だが、兵士達はこれだけの人数でどうにか兵器の足を止めた。

 

 

 

 だが、赤崎は兵器を操作して兵士たちに向けて砲台を向ける。そして大砲を撃った。だが、大砲は兵士たちに当たる前に急激に成長してきた植物にぶつかり防がれた。

 

 

 

「なに…………」

 

 

 

 植物により砲撃が防がれたことを赤崎は驚く。だが、この能力については知っている。

 

 

 

「ブルーバードか…………」

 

 

 

 赤崎はそう呟いた時、カラスの群れが赤崎の乗っている操縦席に襲いかかる。だが、操縦席はガラスで覆われているため、カラス達は攻撃はできない。

 

 

 

 だから、カラスが赤崎の視界を塞ぐ。

 

 

 

 赤崎がガラスにより周りが見えなくなっている隙に、ブルーバードが動いた。

 

 

 

 クレインは植物の剣を作ると、フェザントとスワンと共に兵士達が止めている足の前に来た。

 

 

 

「行くわよ」

 

 

 

「了解」

 

 

 

 三人は高く飛び上がる。そして一斉に同じ足を攻撃した。

 

 

 

「植物の騎士(グリーンナイト)」

 

 

 

「烏兎促進(タイムコラプス)」

 

 

 

「白鳥演舞(ジャスダキィ)」

 

 

 

 クレインは植物の剣で切り、フェザントとスワンは拳で兵器の足を攻撃した。

 

 

 

 

 

 

 

 



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 第222話  【BLACK EDGE 其の222 鳥】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第222話

 【BLACK EDGE 其の222 鳥】

 

 

 

 

 

 三人は高く飛び上がる。そして一斉に同じ足を攻撃した。

 

 

 

「植物の騎士(グリーンナイト)」

 

 

 

「烏兎促進(タイムコラプス)」

 

 

 

「白鳥演舞(ジャスダキィ)」

 

 

 

 クレインは植物の剣で切り、フェザントとスワンは拳で兵器の足を攻撃した。

 

 

 

 その攻撃で兵器はバランスを崩す。

 

 

 

「くっ、私を止める気か……。しかし、無駄だよ」

 

 

 

 赤崎が兵器を操作すると、操縦席の周りに機関銃がいくつも現れる。そしてそれがカラス達を撃ち始めた。

 

 

 

 カラスが攻撃を受けていることに気づいたクロウは、

 

 

 

「一旦退け!」

 

 

 

 カラスに撤退を指示する。カラス達が離れて赤崎は下の様子が見えた。

 

 

 

 下では兵士達が兵器の足を縄で引っ張り引きずっていた。クレイン、フェザント、スワンが攻撃しバランスを崩した足を、引っ張り転ばせようとしていた。

 

 

 

 だが、それに気づいた赤崎は兵器を操作して高くジャンプさせた。片足がずらされていたことで通常時よりも高く飛べなかったが、それでも木よりも高く飛び上がる。

 

 

 

 それにより縄も上空へ引っ張られて、放しそびれた兵士は縄と一緒に上空へと打ち上げられた。

 

 

 

 落下する兵士をクレインが植物で受け止める。だが、落下のタイミングで一部の兵士を踏みつけようと赤崎は兵器を動かす。

 

 

 

 兵士たちの頭上に巨大な兵器の足が落ちてくる。兵士達は逃げようとするが間に合わない。頭を抱えて諦めかけたが、

 

 

 

「スワン様!!」

 

 

 

 スワンが兵士を両腕で受け止めた。

 

 

 

 スワンの何百倍も重りがスワンにのしかかる。しかし、それをスワンは歯を食いしばりながら受け止めた。

 

 

 

「早く行きなさい」

 

 

 

 兵士達は急いで逃げる。どうにか兵士たちは無事に逃げ切れたが、

 

 

 

「…………これはキツイわね」

 

 

 

 スワンは支えるだけで精一杯。抜け出す力はない。

 

 

 

 このままでは押し潰されてしまう。

 

 

 

 潰されそうになった時、スワンは突然移動した。一瞬の出来事、兵器の足元にいたはずなのに、スワンは兵士達が逃げた場所と同じ場所にいた。

 

 

 

「…………助かったわ。フェザント」

 

 

 

 近くにはフェザントがいた。フェザントが能力を使い助けてくれたようだ。

 

 

 

「あまり無茶はしないでくださいよ。俺の能力も無限じゃないんですから」

 

 

 

 フェザントは頭を掻きながらスワンに言う。すでにフェザントの身体は全身汗まみれ、呼吸も荒くなっている。

 

 

 

「ええ、あなたも無茶はしちゃだめよ。私達の目的は、被害を抑えて、兵器を止めること。私達の中からも、一人だって犠牲を出してはいけないの」

 

 

 

 

 



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 第223話  【BLACK EDGE 其の223 鳥と兵器】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第223話

 【BLACK EDGE 其の223 鳥と兵器】

 

 

 

 王都へと侵攻する巨大兵器。それを止めるためにブルーバードが戦っていた。

 

 

 

 どうにか踏み潰されずに済んだスワンは今度は別の指示を部下に出す。

 

 

 

 片足には破壊できた。兵器の足は八本あり、そのうちの六本で進んでいる。一本壊したことで残り五本だ。

 

 

 

 次に狙うのは破壊した足の後ろにある真ん中の足だ。片方だけ破壊して、兵器のバランスを崩して移動できなくさせる作戦だ。

 

 

 

 さっきと同じように弓兵が矢に縄をつけて放とうとするが、赤崎がそれをさせない。

 兵器の側面から機関銃が現れる。そしてそれが弓兵達を狙って弾丸を撃ち始めた。

 

 

 

 クレインが植物を成長させてそれで防ごうとするが、威力が高く木を貫通してくる。

 

 

 

「……っ」

 

 

 

 弾丸の雨が弓兵とクレインに降り注ぐ。

 

 

 

「クレイン!!」

 

 

 

 クロウはクレインの方を見て叫ぶ。

 

 

 

 スワンは攻撃を止めるために高くジャンプする。そして兵器の足を登っていき、機関銃を殴り壊した。

 スワンが壊したことで攻撃は止む。

 

 

 

 着地したスワンはクレイン達の元へと向かう。

 

 

 

 そこではフェザントが能力を使い、途中からクレインと兵士たちを守っていたようだ。

 だが、フェザントが能力を使って防いだのは途中から、それまでは弾丸の雨が彼女達に降り注がれていた。

 

 

 

 何名もの兵士が負傷し、クレインも肩と足を撃たれている。

 

 

 

 そして…………。

 

 

 

「…………力を……使いすぎ……た」

 

 

 

 クレイン達を守っていたフェザントは力を使い切り、崩れ落ちる。そんなフェザントをスワンは太い腕でキャッチして支える。

 

 

 

「良くやってくれたわ。フェザント、クレイン、そしてあなた達も…………あとは私がやるわ」

 

 

 

 そう言った後、スワンはクロウにみんなの手当てを指揮する。

 

 

 

「スワン様は……?」

 

 

 

「私は後一本。絶対に破壊してやるわ。……あなた達が頑張ってくれた分も、私が背負う」

 

 

 

 スワンは部下達を残して兵器を追う。

 

 

 

 赤崎はブルーバードが攻撃を止めたら、ブルーバードには構うことなくそのまま兵器を王都に動かし始めた。

 

 

 

 スワンはそんな兵器に追いつくと、右の一番後ろにある足に飛びつく。右前方は破壊した。スワンはその足に抱きつくと動きを止めようと踏ん張る。

 

 

 

 だが、兵器はスワンの頑張りが無力かのように、どんどん王都へと進んでいく。

 

 

 

 王都までの距離はあと少しだ。このままでは王都に辿り着いてしまう。

 

 

 

 その時だった。

 

 

 

 兵器の左足が前と真ん中。日本が同時に破壊された。

 

 

 

「な、なに?」

 

 

 

 

 

 



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 第224話  【BLACK EDGE 其の224 王都からの援軍】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第224話

 【BLACK EDGE 其の224 王都からの援軍】

 

 

 

 

 スワンが兵器の右にある後方の足に抱きつき、動きを止めようとする。だが、スワンの力だけでは兵器を止めることはできず、兵器は王都へと近づく。

 

 

 

 その時だった。左側で爆発音が響く。

 

 

 

「な、なに?」

 

 

 

 兵器の左前方と左中央の脚が破壊された。

 

 

 

 スワンが破壊された足の方を見ると、大剣を持ったツンツン頭の筋肉質な男と、金髪碧眼の青いコートを羽織り、立派な剣を持った男が地面に着地していた。

 

 

 

「…………あの二人は……」

 

 

 

 スワンは二人を直接見るのは初めてだが、噂で聞いたことがある。

 

 

 

 大剣の男は王都で最強と呼ばれる賞金稼ぎヒューグ。そして金髪の剣士は次代国王であり、その美しい容姿から流星と呼ばれているブレイド」

 

 

 

「……うーん、遠くてよく見えないけど。どっちも好みね」

 

 

 

 どうやらヒューグとブレイドが左にある足を一本ずつ破壊してくれたようだ。兵器は大きくバランスを崩す。

 

 

 

 だが、動きは止まることなく王都へと進もうとする。

 

 

 

 ヒューグとブレイドはもう一本の足も破壊しようとするが、機関銃が現れて、二人は接近できない。

 

 

 

「…………くっ、このままでは近づけない」

 

 

 

 ブレイドは剣で弾丸を弾きながら後ろに飛んで避ける。

 

 

 

「…………ブラッドのヤローは何してんだ」

 

 

 

 ヒューグは文句を言いながら大剣を立て代わりに使い、弾丸を防ぐ。

 

 

 

 このままでは兵器が王都に侵入してしまう。

 

 

 

「龍の牙(ドラゴンファング)」

 

 

 

 地上から黒い龍が飛んでいき、スワンが抱きついていた足を破壊した。

 

 

 

 頭上で崩れる足からスワンは離れる。

 

 

 

 そして黒い龍が発射された方を見た。

 

 

 

「全く遅いわよ」

 

 

 

 そこにいたのは赤いコートを着た茶髪の男。

 

 

 

「お前らが止めてくれてるとはな……。だが、そのおかげで間に合ったぜ」

 

 

 

 そこにはブラッドとシャドー、ヒート、そしてロジョンがいた。

 

 

 

 残る足は左右で一本ずつ。それを破壊すれば、前方にある小さな足だけにある。そうすれば、移動はできないはずだ。

 

 

 

 だが、残りの足は破壊させまいと赤崎は兵器の側面から機関銃を出すと、足に近づく者達に弾丸を発射し始めた。

 

 

 

 弾丸を避ける中、スワンはブラッドに頼む。

 

 

 

「部下との約束なの。あの一本は私にちょうだい」

 

 

 

「…………しゃーねぇ、お前達がいなけりゃ、今頃王都だったろうしな」

 

 

 

 ブラッドはスワンの願いを聞くことにした。

 

 

 

「俺があのうざったい弾丸を止める。その隙にやれ」

 

 

 

「分かったわ」

 

 

 

 

 

 



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 第225話  【BLACK EDGE 其の225 最後の足】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第225話

 【BLACK EDGE 其の225 最後の足】

 

 

 

 

「俺があのうざったい弾丸を止める。その隙にやれ」

 

 

 

「分かったわ」

 

 

 

 ブラッドは崩れていく足の残骸を足場にして登っていく。

 そんなブラッドを追って機関銃が発射される。

 

 

 

 ブラッドは弾丸を避けて上へと進む。そして機関銃を次々と破壊する。

 

 

 

 そして機関銃が発射されなくなったところで、スワンは残った右中央の足に向かって飛び上がった。

 

 

 

 そして拳を握りしめる。

 

 

 

「行くわよ!! 白鳥演舞(ジャスダキィ)」

 

 

 

 

 スワンの拳が機械でできた足を貫く。そして兵器が右へと傾いた。

 

 

 

 

 

 反対側もその様子は見えていた。右側の足が全て破壊されたことが分かったヒューグは弾丸を防ぎながらブレイドに叫ぶ。

 

 

 

「向こうは終わったみたいだな……。おい、王子……手を貸せ!!」

 

 

 

 それを聞いたブレイドはヒューグに怒鳴る。

 

 

 

「僕に命令するな。賞金稼ぎ! ………………だが、君が僕を手伝うなら許そう」

 

 

 

「あぁ?」

 

 

 

 ヒューグが怒っている中、ヒューグの言葉には耳を貸さずにブレイドは近くで隠れていた愛馬を呼ぶ。

 

 

 

 それは白く毛皮の馬。ブレイドはその馬にまたがると、弾丸の雨の中を駆け抜ける。

 

 

 

 そして壊れた足の駆け上ると、剣で機関銃を破壊していく。

 

 

 

 弾丸が止まり、ヒューグは大剣を持って走り出した。

 

 

 

「…………調子に乗りやがって。だからテメーは嫌いなんだよ」

 

 

 

 ヒューグは大剣を構えた状態で飛び上がる。そして残っていた左後方の足を大剣で切断した。

 

 

 

 右に傾いていた兵器は両足を破壊されたことで、地面に落ちる。

 

 

 

 巨大な兵器が崩れ落ちたことで、兵器のそばに集まっていた者達に、倒れた時に発生した風が吹いた。

 

 

 

「止まった……か」

 

 

 

 シャドーが両足を失った兵器を見てそんなことを口にした。

 

 

 

 だが、

 

 

 

「これで私を止められると……?」

 

 

 

 赤崎のそんな声が聞こえると、兵器に残っていた二本の足が動き始める。そして壊れた足を切り離すと、左右に一本ずつ腕が生えた。

 

 

 

 そして兵器は前方を下にして、立ち上がる。二本の足に二本の手。まるで人間のような形になった兵器。

 

 

 

「この小林五十七号の真の姿はこっちだ。君達が破壊していたのは、繭の殻のようなもの。ここからが本番……………」

 

 

 

 赤崎がそう叫んだ時、紫色の炎がどこからか飛んでくる。

 

 

 

 二つの紫色の炎は兵器の足に当たると、爆発して兵器の足を破壊した。

 

 

 

「な…………嘘だろ……この足はさっきよりも頑丈なんだぞ……………」

 

 

 

 兵器はバランスを崩して、さっきまでと同じ場所に倒れた。

 

 

 

 

 



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 第226話  【BLACK EDGE 其の226 決戦】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第226話

 【BLACK EDGE 其の226 決戦】

 

 

 

 

 兵器は二本の足で立ち上がり、人型になるが紫色の炎が飛んできて、両足を破壊。兵器は足を失い再び倒れた。

 

 

 

「そんな…………一撃で破壊されるなんて…………」

 

 

 

 赤崎は兵器を動かして、両手だけでも進もうとする。だが、その両手も紫色の炎で爆破されてしまった。

 

 

 

「この能力は…………」

 

 

 

 ブラッドは紫炎の飛んできた方向を見る。そこには紫のフードに仮面を被った男がいた。

 少し離れた場所の丘の上からアルムが攻撃していた。

 

 

 

 兵器の両足、両手を破壊すると、アルムは背を向けてその場から離れていった。

 

 

 

 手足が破壊されたことで、兵器は動かなくなる。そんな中、操縦席から赤崎が姿を表した。

 

 

 

「……どこまでも邪魔をする。この兵器の重要性を分かってない」

 

 

 

 赤崎のプロテクターは顔の部分が壊れており、素顔が見えている。

 

 

 

 赤崎は炎の剣のスイッチを入れた。剣は燃えて、赤崎とその周囲を照らした。

 

 

 

「…………君達を消して、もう一度安藤七十三号を修理する。そして私は世界を修正する」

 

 

 

 叫んだ赤崎をブラッドは睨む。

 

 

 

「…………世界の修正だなんだには俺は興味はない。だが、フェアは返してもらう」

 

 

 

「ブラッド…………。君なら分かってくれると思ってた。だが、理解し合えないらしいな」

 

 

 

「当たり前だ……」

 

 

 

 赤崎は兵器から降りると、ブラッド達がいる地面に降りた。

 

 

 

 ここにはブラッドとスワン、そしてシャドー、ヒート、ロジュンがいた。

 

 

 

「まさか、君もここに来るとはね。ロジュン」

 

 

 

 赤崎はロジュンを見る。ロジュンは思わず目を逸らした。

 

 

 

「君が私を裏切るとは……」

 

 

 

 ロジュンは何も言い返さずにいるとブラッドが叫んだ。

 

 

 

「何言ってんだ。お前が先に撃ったんだろ」

 

 

 

「あれは君を撃ったんだよ。そこにいたロジュンが悪い」

 

 

 

「赤崎!!」

 

 

 

 ブラッドは赤崎に向かって走り出した。赤崎は炎の剣を振ってブラッドを攻撃するが、ブラッドはジャンプして赤崎の攻撃を避けた。

 

 

 

 ブラッドはプロテクターの壊れた部分に手を突っ込み、赤崎の顔を鷲掴みする。

 

 

 

「お前は仲間をなんだと思ってるんだ」

 

 

 

 赤崎は捕まれた状態のまま、

 

 

 

「道具さ……」

 

 

 

 そう答えると、肩からビームを発射した。だが、そのビームをブラッドは身体をずらして躱した。

 

 

 

 しかし、

 

 

 

「……っ」

 

 

 

 赤崎のビームはブラッドに当たらなかった。しかし、ブラッドの後ろにいたロジュンにあった。

 

 

 

 ビームはロジュンの腹を貫く。

 

 

 

「…………赤崎……博士……」

 

 

 

 

 

 

 

 



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 第227話  【BLACK EDGE 其の227 道具】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第227話

 【BLACK EDGE 其の227 道具】

 

 

 

 

 赤崎のビームをブラッドは躱す。しかし、ブラッドが避けたビームはそのまま飛んでいき、後ろにいたロジュンの腹を貫いた。

 

 

 

「…………赤崎……はか……せ…………」

 

 

 

 ロジュンは倒れる。

 

 

 

「…………な」

 

 

 

 その様子を見たブラッドは声も出せずに固まる。

 

 

 

「君が避けるからだ。だから、ロジュンに当たった。そうだろう」

 

 

 

 赤崎はブラッドに囁く。倒れたロジュンをシャドーがどうにか看病しようとする。そんな中、ヒートは飴玉を舐めながらブラッド達の元へと駆け寄る。

 

 

 

「貴様は許さん!!」

 

 

 

 ヒートはロジュンを信用していなかった。だから、ロジュンがやられてなぜ怒るのか。

 

 

 

 激情するヒートと固まっているブラッドにシャドーが叫ぶ。

 

 

 

「惑わされるな。奴の作戦だ!」

 

 

 

 だが、シャドーの声は届かない。

 

 

 

 赤崎は顔を鷲掴みしているブラッドの腕を両手で掴む。

 

 

 

「君たちは全員消す。グリモワールも、ブルーバードも、賞金稼ぎに王子、そして私自身もだ」

 

 

 

 赤崎は再び肩からビームを発射しようとする。ブラッドを狙っているが、もしブラッドが避ければ、次は誰に当たるかわからない。

 

 

 

 だが、赤崎はブラッドが避けた先のことも考えた方向に向けている。

 

 

 

 シャドーか、ヒートか、スワンか、それともフェアか。

 

 

 

 誰だか分からない状況。この状況で避ければ、どんな被害があるか分からない。

 

 

 

 赤崎の挑発はブラッドを避けさせないための罠だ。

 

 

 

 赤崎の肩からビームが発射される。

 

 

 

「ブラッド!!」

 

 

 

 シャドーが叫ぶ。だが、

 

 

 

「冷静じゃないのはあなたよ。シャドー」

 

 

 

 走っていたヒートがそう告げた。

 

 

 

 次の瞬間、ブラッドは赤崎のビームを避ける。そしてビームはその後ろにいたヒートへと向かっていく。

 

 

 

 だが、ヒートは左手を突き出すと、その手のひらをビームに当てた。すると、左手に当たったビームは溶けて消滅していく。

 

 

 

「これが私の術!! 私の左手は全てを燃やし溶かす!!」

 

 

 

 

 

 ブラッドとヒートは兵器の場所へと向かう途中、ある話をした。

 

 

 

「私達の目的については話せない。でも、私の能力については教えてやってもいい」

 

 

 

 走りながらヒートはブラッドに伝える。それを聞いていたシャドーは驚く。

 

 

 

「おい、何言ってんだヒート!? お前の能力は初見殺しだろ、そんなことしたら……」

 

 

 

「どうせ、王都の仲間からなんとなくは聞かされてるだろ」

 

 

 

 ブラッドは適当に頷く。

 

 

 

 実際には聞いていない。だが、話してくれるなら、それは嬉しい。

 

 

 

「私の術はな……」

 

 

 

 

 

 

 



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 第228話  【BLACK EDGE 其の228 冷静】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第228話

 【BLACK EDGE 其の228 冷静】

 

 

 

 

 ブラッドはヒートの能力を伝えられていた。だからこそ、赤崎のビームが冷気であると分かったヒートは突っ込んできたのだ。

 

 

 

 ヒートの激情する姿から冷静を失っていると思い、ヒートを狙うのは分かった。だからこそ、ブラッドは避けた。

 

 

 

 このビームはヒートなら受け止められる技だからだ。

 

 

 

 近づいたヒートは赤崎の腹に左手を触れる。ブラッドはヒートと交代し、赤崎から手を離した。

 

 

 

「さぁ、何度まで耐えられるか? お前の自慢の鎧はよぉ!」

 

 

 

 ヒートの左手は赤崎のプロテクターを貫き、赤崎の腹も焼く。

 

 

 

「ぐぁぁぁ!!」

 

 

 

 赤崎は焼けた腹を抑えながら怯えるように下がった。

 ヒートは赤崎を睨む。

 

 

 

「仲間を道具か……ふざけやがって…………地獄で後悔するんだな」

 

 

 

 ヒートは赤崎にトドメを刺そうと近づく。だが、

 

 

 

「……はぁはぁ、君は…………そうか、まだ彼女を探してるのか…………。無駄なことを…………」

 

 

 

「…………っ」

 

 

 

 ヒートが赤崎を捕まえようとするが、赤崎はプロテクターから風を噴射して空を飛ぶ。

 

 

 

 ヒートは赤崎を追おうとするが、空中ではどうしようもない。

 

 

 

 赤崎は空を飛び、そして壊れた兵器の元へと戻る。

 

 

 

 プロテクターは壊され、武器も当たらない。なら、当たるようにすればいい。

 

 

 

 兵器のタンクには白龍の適応者、フェアがいる。彼女を人質にとって、ブラッドを脅せば彼を利用して他の者達を始末できるかもしれない。

 

 

 

 赤崎はそう考えて、フェアを閉じ込めていた場所へと向かった。だが、そこには………。

 

 

 

「フェア、大丈夫か?」

 

 

 

「………………ブラッド……助けに来て、くれたんだ…………」

 

 

 

 すでにブラッドがおり、フェアを助け出していた。

 

 

 

「なぜ、君がここに…………」

 

 

 

 ブラッドはフェアを抱っこから下ろすと、赤崎の方を向いた。

 

 

 

「さっきも言っただろ。俺はテメーの計画には興味はない。…………フェアを助けるだけ、俺はそれだけだ」

 

 

 

 赤崎のプロテクターは限界が来たのか、空気の噴射が弱くなる。そのため赤崎は地面に着地すると、プロテクターを外した。

 

 

 

 白衣姿で赤崎は炎の剣を強く握りしめる。

 

 

 

「……まだやるってなら付き合う。だが、鎧がないお前には命の補償はできない」

 

 

 

「命……か。もう、とうの昔、この世界にやってきた時から捨てている」

 

 

 

 赤崎は炎の剣の出力を最大にする。プロテクターのない赤崎はその熱気で汗をかく。

 

 

 

「そうか……やるんだな」

 

 

 

 

 

 

 



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 第229話  【BLACK EDGE 其の229 終焉】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第229話

 【BLACK EDGE 其の229 終焉】

 

 

 

 赤崎はプロテクターを脱いで、炎の剣の出力を最大にした。

 炎の剣は周囲を照らす。

 

 

 

 プロテクターがなくなったことで、熱気で赤崎は汗を掻く。

 

 

 

 ブラッドは拳を握る。そして赤崎に向かって走り出した。

 

 

 

 赤崎は炎の剣を両手で握ると、それを大きく振る。炎は横に燃え上がり、走るブラッドを狙う。

 

 

 

 ブラッドは黒いオーラを身体の前方に集める。そしてそれを盾にして炎の中を突き進んだ。

 

 

 

 炎を抜けたブラッドは拳を振り上げる。そして赤崎を殴り飛ばした。

 

 

 

 殴られた赤崎はその勢いで吹っ飛んでいき、兵器の上から落ちていった。

 足がなくなったとはいえ、かなりの高さからの落下だ。

 

 

 

 赤崎はプロテクターもなく、剣も殴られた衝撃で飛んでいってしまう。そのまま落下したのであった。

 

 

 

 

 

 赤崎を倒した後、反対側にいた王都の関係者達が、こちらの方にやってきた。

 

 

 

 王国の兵士も次々と現れる。そして倒れた赤崎を包囲した。

 

 

 

 兵士が現れたことで、シャドー達グリモワールやスワンはその場から離れていく。

 

 

 

「ブラッド、これからどうする?」

 

 

 

 赤崎を確保している兵士たちを見下ろしながらフェアがブラッドに聞いた。

 

 

 

「そうだな。ま、賞金だけ貰って、さっさと帰ろう」

 

 

 

 ブラッドはそう言うとフェアを抱きかかえた。

 

 

 

 赤崎はグリモワールの幹部だ。金額がどうなっているかは分からないが、賞金はかけられているはずだ。

 

 

 

 下では兵士達が赤崎を倒したブラッド達を見上げている。そして何かを叫んでいる。

 

 

 

 ブラッドはフェアを抱えたまま、兵器から飛び降りる。そして兵士たちの前に降りると、

 

 

 

「ヒューグ、いるか?」

 

 

 

 ヒューグを呼ぶ。すると、兵士たちを避けながらヒューグが出てきた。

 

 

 

「ブラッド、やっぱり来てたか」

 

 

 

「まぁな。後のことは任せていいか?」

 

 

 

 ブラッドに言われたヒューグは疲れ切った表情のフェアを見て、

 

 

 

「分かった。賞金も後で俺から渡す」

 

 

 

「盗むなよ」

 

 

 

「分かってるよ」

 

 

 

 その場をヒューグに任せてブラッドはカメリアへと向かった。

 

 

 

 去り際に王国の兵士の中から一人の男が顔を出して、こちらを驚いた表情で見ていたが、今は構う気はない。

 

 

 

 

 

 ブラッドとフェアはカメリアへ戻った。

 

 

 

 カメリアのある宿に向かうと、子供達とアルファ、そしてグリムがいた。

 

 

 

 グリムとアルファはブラッド達が戻ってきたことに気づく。

 

 

 

「シャドーから聞いた。やるじゃねーか」

 

 

 

 グリムは腕を組みながらブラッドにそう言った。

 

 

 

「俺たちの任務もここまでだ。あとはお前らに任せるぞ」

 

 

 

 そしてグリムは子供達の方を向く。アルファはグリムとブラッドの中に入ると、

 

 

 

「僕たちはこの子達にはもう手を出さない。そういう約束だったはずだね」

 

 

 

 アルファはブラッドに抱えられたフェアを見た。ブラッドに喋りかけているというよりもフェアに話している。

 それが分かったからか、ブラッドはフェアを下ろし、フェアはブラッドから降りた。

 

 

 

「その約束だった。これは絶対よ」

 

 

 

 フェアはそう言ってアルファを睨む。アルファはフェアの目を見て話す。

 

 

 

「その約束を少し変えさせてほしい」

 

 

 

 

 

 

 

 



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 第230話  【BLACK EDGE 其の230 新たな約束】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第230話

 【BLACK EDGE 其の230 新たな約束】

 

 

 

 

 アルファが提示してきたのは、グリモワールからも子供達の支援をさせてほしいというものだった。

 

 

 

 白龍の適応者として確保されていた子供達。今から新しい親を探すのも、自立するのも簡単なことではない。

 そのため、それを手助けさせてほしいということだった。

 

 

 

 グリモワールからの資金援助と土地の提供。それで子供達に新たな親が見つかるか、または自立するまでの援助をする。

 

 

 

 

 

 そしてその約束通り、数日も経たないうちにカメリアの土地の提供と大量の資金が送られてきた。

 

 

 

 ブラッドも赤崎の賞金が渡され、それを子供達に渡した。メテオラにも連絡して、メテオラの騎士からも護衛をつけてくれることになった。

 

 

 

 約一週間程度、ブラッドは子供達と過ごし、平和な日々を送った。

 そして、

 

 

 

「…………そろそろ行こうと思う」

 

 

 

 ブラッドは子供達とフェアにそう告げた。

 

 

 

 ブラッドの旅の目的はグリモワールだ。奴らを倒し恨みを晴らすこと。

 そして今回の戦いで、全ての元凶と思われる人物とも出会った。

 

 

 

 だからこそ、ブラッドは旅を続けなければならなかった。

 

 

 

 子供達は泣いたり、怒ったり、たった一週間であったが、その間にできた絆は大きい。

 

 

 

 そしてブラッドはフェアの方を向くと、

 

 

 

「フェア、今までありがとな」

 

 

 

 フェアとは子供達を救うという目的で旅をしてきた。魔女に会ったり、王都へ行ったり、雪山にも行った。

 

 

 

「ブラッド、私も…………」

 

 

 

 フェアがそこまで言いかけたところでブラッドは首を振った。

 

 

 

「お前は残れ。ここから先は俺の旅だ。お前の目的はここで終わった」

 

 

 

 フェアの目的は子供達を救うこと。これ以上ブラッドの危ない旅に付き合う必要はないのだ。

 

 

 

 さらにブラッドは続ける。

 

 

 

「それにお前がいた方がこいつらも安心だろ」

 

 

 

 ここで一緒にいて分かったのは、フェアは子供達に慕われているということだ。

 

 

 

 だからこそ、施設を抜け出す時、フェアに任せたんだ。フェアなら任せられると思ったから。

 それだけフェアは子供達に頼りにされている。

 

 

 

 そんなフェアをブラッドが連れていくわけにはいかない。

 

 

 

「そういうわけだ」

 

 

 

 フェアは何も言わずに、ただ頷いた。

 

 

 

 そんな会話を終えたあと、子供の一人がブラッドに聞く。

 

 

 

「ねぇ、いつ行くの?」

 

 

 

「そうだな。明日の早朝には出発する」

 

 

 

 それを聞いた子供達は文句を言う。だが、もう決めたことだ。

 

 

 

 そして出発前の日の夜。ブラッドは馬車に荷物を詰め込んだ。

 荷物運びをフェアと数人の子供達が手伝ってくれたが、荷物運び中フェアは一度も話しかけてこようとしなかった。

 

 

 

 ブラッドが話しかけても適当に返事をされるだけだ。

 

 

 

 そんな感じで、夜が明けてブラッドは出発の時になった。

 

 

 

 メテオラの騎士や子供達は出迎えてくれるが、なぜかフェアは現れない。

 ブラッドが子供達に聞いても、ナイショと言われて教えてくれなかった。

 

 

 

 今まで一緒に旅をしてきた仲間だ。だからこそ別れるのが辛いのはわかる。だが、見送ってくれないのは少し寂しい。

 

 

 

 それでもここに残るわけにもいかないため、ブラッドは馬車に乗り込むと馬車を動かした。

 

 

 

 子供達は手を振り、騎士達も見送ってくれる。たまに戻ってきて、フェア達がどうしているのか、観に来るのもいいだろう。

 

 

 

 ブラッドの馬車がカメリアを出て、東に進んでいると、馬車の奥から物音が聞こえた。

 

 

 

 それは子供達が馬車に乗せた木箱だ。その中から何かがガタガタと動いている。

 

 

 

 それに気づいたブラッドは、何者かが侵入しているのかと馬車の中を警戒する。

 

 

 

「誰だ!!」

 

 

 

 ブラッドがそう叫び、馬車の中を覗いた時、その木箱が倒れた。

 そしてその倒れた木箱の中から、金髪の少女が転げ出てきた。

 

 

 

「痛てて…………」

 

 

 

「フェア!? なんでお前が!?」

 

 

 

 ブラッドがフェアが現れたことに驚く。

 

 

 

 フェアはカメリアにいるはずだった。

 

 

 

 子供達のためにカメリアに残ったと思っていた。そんなフェアが馬車に乗っていた。

 

 

 

 ブラッドは馬車を止める。

 

 

 

「なんでお前が…………」

 

 

 

 ブラッドがもう一度言うと、フェアは腰に手を当てて怒る。

 

 

 

「同じことを二回言わなくていい!」

 

 

 

 ブラッドは理解できずに頭を掻いて困る。そんなブラッドを見てフェアは断言する。

 

 

 

「私はブラッドについていく」

 

 

 

「子供達はどうするんだ」

 

 

 

「子供達、みんなが私が提案してくれたの。みんなが私に勇気をくれた」

 

 

 

 それで理解した。この木箱は子供達が早朝に新しく入れていた木箱だ。そしてその中にフェアが入っていた。

 

 

 

 そして子供達も、メテオラの騎士達もフェアがいると分かって見送ってくれたのだ。

 

 

 

「でも、お前の目的は…………」

 

 

 

「目的なんていらない!!」

 

 

 

 フェアは力強く言う。そして、

 

 

 

「だって私はあなたの仲間だもの。ついていくことに、一緒に旅することに理由なんていらない!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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 第231話  【BLACK EDGE 其の231 旅へ】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第231話

 【BLACK EDGE 其の231 旅へ】

 

 

 

 

 

 フェアと共に旅を続けることになったブラッド。

 

 

 

 王都を越えて、北東を目指していた。

 

 

 

「そういえば、次の目的地って決まってるの?」

 

 

 

 馬車の中からフェアがブラッドに聞く。ブラッドは馬車を操作しながら答えた。

 

 

 

「ああ、次の目的地はマルグリットという隣国の王都だ」

 

 

 

「ガルデニアとは違うの?」

 

 

 

「ああ、ガルデニアはまだ1代目だが、マルグリットはもう三百年近く続く王国で、都市も発展している」

 

 

 

 馬車を進めながら答えたブラッド。だが、まだ聞きたいことがあった。

 

 

 

「そのマルグリットに何しに行くの?」

 

 

 

「マルグリットである大会が開かれるんだ。そいつに参加する」

 

 

 

「大会?」

 

 

 

「そこで手に入る賞金がデカい! こいつに参加して金を手に入れるぞ」

 

 

 

 ブラッドはそう言ってワクワクしている。

 

 

 

 ブラッドは赤崎の賞金と今まで稼いだ金を全て子供達に渡した。そのため旅に必要な費用しか今は持っていない。

 

 

 

 そのためのお金稼ぎをしようということらしい。

 

 

 

「私も参加できる?」

 

 

 

 フェアはブラッドに聞いてみる。するとブラッドは首を傾げる。

 

 

 

「フェアにはちょっと厳しいかもな。ま、俺に任せとけ。稼ぎまくってやるからよ!」

 

 

 

 ブラッドは馬車を進める。そしてその馬車はある村にたどり着いた。

 

 

 

「ここに来るのも久しぶりだな」

 

 

 

 マルグリットまではまだまだ遠い。その途中ではいくつかの村を越えて旅をすることになる。

 

 

 

 たどり着いた村はフリジア村。前にも一度立ち寄ったことのある村だ。

 

 

 

 この村には大きな屋敷があり、そこにはアリエルという魔女が住んでいる。

 

 

 

 前にこの村に立ち寄った時は、そのアリエルに会い、クリスのいる雪山へ行くことを勧められた。

 だが、そのそのクリスとあった時、死人達の襲撃にあった。

 

 

 

「この前の件があるからな。……立ち寄ったついでだ、あいつを殴りに行くか」

 

 

 

 馬車を止めて宿の部屋を借りると、ブラッドはそのアリエルの住んでいる屋敷に向かうことにした。

 

 

 

「私も行く」

 

 

 

「お前はここにいろ。どんな危険な能力を使うかわからない」

 

 

 

 この前の死人達はかなりヤバかった。ダメージを与えても動き続けるため、簡単には倒せない。

 

 

 

「だからこそ、私も行くよ。どんな危険な能力を使うかわからないからこそ、一緒にいた方がいい」

 

 

 

 ブラッドはフェアに説得されて、結局一緒に屋敷に行くことになった。

 

 

 

 屋敷の扉を叩くがやはり返事はない。この前も同じ感じだった。

 

 

 

 扉を押してみると、鍵はかかっていないようで中に入れる。

 

 

 

「お邪魔しまーす」

 

 

 

 二人はそっと屋敷の中へと入った。屋敷は埃まみれであり、本も散らかっている。それに…………。

 

 

 

「これってこの前来た時のじゃない?」

 

 

 

 フェアはテーブルに置かれたティーカップを指差す。

 テーブルには三つ置かれており、その配置はこの前来た時と同じだ。

 

 

 

「洗わずに、放置してるのか…………」

 

 

 

 もうあれから何日も経っているというのに、使ったコップがそのまま放置されている。

 コップの中には埃が入り込んでおり、もう二度とここでお茶を出されても飲まないと二人は誓う。

 

 

 

「おい、アリエル、いるか?」

 

 

 

 ブラッドは屋敷の二階に向かって叫ぶ。だが、返事はない。

 

 

 

「また屋根裏にいるのかも?」

 

 

 

 フェアはそう言って上の階を指差す。

 

 

 

 アリエルと出会ったのは屋根裏にある部屋だ。そこで本に埋もれていた。また同じことになっているのかもしれないと、二人は用心しながらも上に登っていく。

 

 

 

「いないな……」

 

 

 

 2階の階段を登り、梯子で屋根裏へと登った二人は周りを見渡すがそこに人の姿はない。

 

 

 

「ねぇ、あれ何かな?」

 

 

 

 フェアは梯子を登り切ると、部屋の中央へと向かう。ブラッドも登ってそこにいくと、黒いテーブルの上に、本が浮いていた。

 

 

 

「どうなったんだこれは……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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 第232話  【BLACK EDGE 其の232 フリジア村】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第232話

 【BLACK EDGE 其の232 フリジア村】

 

 

 

 

 フリジア村に再び立ち寄ったブラッドとフェアは、アリエルの住んでいる屋敷に向かった。

 しかし、そこにアリエルはいなかった。だが、

 

 

 

「なにこれ?」

 

 

 

 屋根裏に行くと、そこには正方形の黒いテーブルがあり、その上に本が浮いていた。

 

 

 

 その本は風も吹いていないというのにページが変わる。そして半透明のオーラを放っている。

 

 

 

「これが魔導書ってことか…………」

 

 

 

 ブラッドはそれを見て言った。

 

 

 

 クリスからの話であるが、アリエルは魔導書を使い、それで魔術を複数使用するらしい。

 

 

 

 魔導書は元々魔術師であり、魔術師の力を本に閉じ込めることでアリエル自身は複数の魔術を使うことができる。

 

 

 

 雪山での攻撃もその魔術を使ったものであり、クリスを次の魔導書にしようと狙っていたらしい。

 

 

 

「じゃあ、これを破壊するの?」

 

 

 

「それはやめた方がいいな。クリスがいれば何か手段を知っているのかもしれないが…………」

 

 

 

 ここで下手にこれを破壊して、何が起こるのかわからない。魔術師の力を本に封じ込めているということもあり、ここには莫大な力が集まっているはずだ。

 

 

 

「…………今回は留守みたいだしな。次の機会にしよう」

 

 

 

 ブラッドはフェアと共に屋敷を出た。

 

 

 

 アリエルがいれば、アリエルをぶっ飛ばして、それから話を聞けば良いのだが、いないのならば何もできない。

 どこかに出かけているのか。

 

 

 

 まぁ、今はアリエルに構う必要もない。彼女は賞金首というわけでもないのだし……。

 

 

 

 ブラッド達は外に出た後、この村にある食堂に行くことにした。

 

 

 

 この村は小さく、食べ物屋さんは一軒しかない。この前この村に来た時も、その食堂で飯を食べた。

 

 

 

「いらっしゃい、あ、あなた達は」

 

 

 

「久しぶりです」

 

 

 

 食器を片付けながらこちらを見たのは、青髪短髪で赤いバンダナを巻いた女性。ガタイも良く力強い身体をしており、左目の下にあるほくろが特徴的な女性だ。

 

 

 

「また来たんだね。旅はどうだった?」

 

 

 

 彼女の名前はウティー。この店のオーナーであり、前に店に来た時もよそ者だというのに手厚く歓迎してくれた。

 

 

 

「王都の方から戻ってきたのかい?」

 

 

 

 時間的に店にはもう客は少なく、ウティーはブラッド達に料理を出すと片付けをしながら話しかけてきた。

 

 

 

 フェアとブラッドが頷くと、

 

 

 

「そりゃー大変だったでしょ〜、王都で大事件があったって聞いたよ〜」

 

 

 

 おそらく赤崎の件だろう。あれだけ大きな兵器が王都に向けて侵攻していたんだ。騒ぎになっていてもおかしくない。

 

 

 

「そうですね…………」

 

 

 

 ブラッドは苦笑いしながら返事をした。そんな中、フェアは店を見渡す。

 

 

 

 店にあるテーブルが前に来た時よりも増えている。それに出ている食器も前よりも多い。

 

 

 

 キョロキョロしているフェアに気づいたウティーは語る。

 

 

 

「そう、あんた達がこの村を出てすぐに新しい子を雇ったのよ。そしたらその子のおかげで繁盛繁盛、今は買い出しに行ってもらってるんだけど、本当、あの子には感謝してるわ」

 

 

 

「それは凄いですね」

 

 

 

 フェアはウティーのその子の自慢話を聞かされる。

 

 

 

 そして食事を終えた二人は店を出た。

 

 

 

「また来てね〜」

 

 

 

「ああ、今回もサンキューな」

 

 

 

 ウティーは旅人価格だと言って、かなりの割引をしてくれた。

 

 

 

 そして店を出た後、買い出しを終えた後なのだろう。フェアよりも少し年上の少女とすれ違った。

 

 

 

 

 

 翌朝、ブラッドとフェアは村を出発した。目指すと東北にある隣国マルグリットだ。

 

 

 

 森を抜けて、しばらく経つと、何者かの気配を感じる。

 

 

 

「フェア、誰かいるぞ」

 

 

 

「…………敵?」

 

 

 

「分からない。だが、馬車の奥に隠れろ」

 

 

 

 ブラッドの指示に従いフェアは馬車の奥に身を潜める。

 

 

 

 何者かがブラッド達の馬車を囲んでいる。その数は10以上。

 

 

 

 ブラッドは馬車を止めると、そいつらに向けて叫んだ。

 

 

 

「誰だ!! 隠れてないで出て来い!!」

 

 

 

 

 

 



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 第233話  【BLACK EDGE 其の233 再来腹ペコ盗賊】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第233話

 【BLACK EDGE 其の233 再来腹ペコ盗賊】

 

 

 

 

「誰だ!! 隠れてないで出て来い!!」

 

 

 

 ブラッドが叫ぶと、それに従い森の中からゾロゾロと見覚えのある服装の人たちが現れる。

 

 

 

 そしてやはりこの人物も現れた。それは紫髪の短髪の女性。

 

 

 

「お前は確か、ロザリーだったか……」

 

 

 

 ロザリーとその部下の盗賊達は武器を捨てる。そして土下座した。

 

 

 

「飯を!! 飯をください!!」

 

 

 

「またか!?」

 

 

 

「……………また? ん、あんたは……………」

 

 

 

 結局盗賊達に食料を分けることになった。

 

 

 

「いや〜、ありがとな!」

 

 

 

 月明かりの中、焚き火をして盗賊達は飯を食べる。ロザリーは肉を齧りながらブラッドとフェアに感謝を言った。

 

 

 

「なんでまた飢えてんだよ。お前ら盗賊だろ……」

 

 

 

「ふふふ、腹が減っては戦はできぬというだろ、腹が満たされた今なら…………」

 

 

 

「いや、やめとくよ」

 

 

 

 また同じような会話だ。

 

 

 

 だが、流石に同じ会話だけで終わるはずもなく、ロザリーはある話を始めた。

 

 

 

「そういえばお前ら知ってるか? この辺で出る骸骨の噂」

 

 

 

 骸骨という単語を聞いたブラッドは顔を青くする。そんなブラッドを見たロザリーは不思議そうな顔をする。

 

 

 

「どうした?」

 

 

 

「いや、なんでもない……」

 

 

 

「そうだよな。お前みたいな強そうな奴が骸骨程度でビビるはずないもんな!!」

 

 

 

 ロザリーが笑うとブラッドも笑う。だが、ブラッドはかなり無理して笑っている。

 

 

 

 骸骨…………。それはお化けと同じようなものだろう。死人ですら怖かったのに、それ以上の存在だと考えると、ブラッドは震える。

 

 

 

 だが、怖がっていると気づかれないように、震える体を笑って誤魔化す。

 

 

 

「いつまで笑ってんだ?」

 

 

 

「はは……………いや、なんでもない」

 

 

 

 ブラッドは動揺して話を進めようとしない。そんなブラッドに呆れてフェアが聞いた。

 

 

 

「その骸骨ってなんですか?」

 

 

 

「ああ、最近の辺りで白骨死体が動き回ってるんだとよ」

 

 

 

 ブラッドは怯える。

 

 

 

「その骸骨に見つかると死ぬまで追いかけてきて、寿命をとられるって話だ」

 

 

 

 ブラッドの動きは止まった。

 

 

 

「寿命取られちゃうんだって〜、ブラッド〜」

 

 

 

 フェアは悪い顔をしてブラッドの方を見る。しかし、

 

 

 

「あれ? ブラッド、ブラッドーーー?」

 

 

 

「おい、こいつ気絶してねぇか?」

 

 

 

 ブラッドは気絶していた。

 

 

 

 なんやかんやで意識を取り戻したブラッドはロザリー達、盗賊と別れると東北の隣国を目指してまた馬車を進めた。

 

 

 

 夜を越してそして、ブラッド達はある村にたどり着いた。そこは村の中央に広場があり、そこに噴水のある村。ミモザ村だ。

 

 

 

「ここは…………」

 

 

 

「ああ、懐かしいな」

 

 

 

 この村はブラッドとフェアが初めて会った村だ。

 

 

 

 

 



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 第234話  【BLACK EDGE 其の234 始まりの村と出会い】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第234話

 【BLACK EDGE 其の234 始まりの村と出会い】

 

 

 

 

 そこはブラッドとフェアが初めて会った村。ミモザ村だ。

 

 

 

 

 

 グリモワールを追っていたブラッドは、フェアと出会った。フェアはグリモワールに追われており、その時に襲撃してきたシャドーを追い払う。

 そして事情を聞いたブラッドはフェアと共に子供達を救うために施設に襲撃に行ったのだ。

 

 

 

 そんなブラッドとフェアの出会った村に立ち寄った二人は、宿を借りることにした。

 

 

 

「よぉ、久しぶりだな」

 

 

 

 ブラッドは店主に挨拶する。

 

 

 

 ここは村にある木造の古い宿だ。ここの店主はスキンヘッドで強面の顔の持ち主だ。

 この宿にはわけやりの客が多い、それぞれが自衛の術を持っている。そのためグリモワールなどから狙われる可能性のある二人にとっては、一般人を巻き込むことを考える必要のない場所だ。

 

 

 

 ここで騒ぎが起きても関わりたがろうとする人は一人もいない。

 

 

 

 そんな宿の部屋を借りて、部屋へと向かうブラッドとフェア。廊下を歩いていると、廊下で一人の少女が倒れていた。

 

 

 

 水色髪の長髪に腰には立派な剣をぶら下げている。年齢はフェアと同じくらいであり、この顔には見覚えがある。

 

 

 

「お前は確か、キースの娘の…………」

 

 

 

「スカイ?」

 

 

 

 スカイは名前を呼ばれて顔を上げる。そしてブラッドとフェアを見つけた。

 

 

 

「あ、あなた達は確か、雪山の…………」

 

 

 

 ブラッドはスカイを抱き上げて座らせる。

 

 

 

「何があったんだ…………」

 

 

 

「腹が減って……………」

 

 

 

「はぁ?」

 

 

 

 

 

 

 村にあるレストランで三人は食事をしていた。スカイは一人で五人分の食事を食べている。

 

 

 

「それで腹を空かせて倒れていたと…………」

 

 

 

 諸々の事情を聞いたブラッドは呆れる。

 

 

 

 

 父であるキースと共に賞金稼ぎとして旅をしていたスカイであったが、乗る馬車を間違えてはぐれてしまったらしい。

 それで急いで合流しようとはぐれた村に戻ったりしたが、キースと合流することができなかった。

 

 

 

 そのため一人で故郷を目指していたのだが、金が尽きて力尽きていたらしい。

 

 

 

 賞金首を捕まえてもギルド会員でないため賞金を貰うこともできず、父から貰った剣だけでどうにか暮らしてきたらしい。

 

 

 

「っで、馬車を間違えたのはどっちなんだ?」

 

 

 

「父です」

 

 

 

 ブラッドは頭を抱える。

 

 

 

「はぁ〜、あいつは何やってんだ…………」

 

 

 

 キースはブラッドやヒューグに比べると几帳面で生真面目な性格だ。だが、たまにネジが外れていることがある。

 

 

 

 賞金首と間違えてブラッドを拘束したことや、自分の武器と間違えてヒューグの大剣を持ち帰ろうとした時もあった。

 

 

 

「それで故郷はどこなんだ?」

 

 

 

 ブラッドはそう言いながら財布を取り出す。

 

 

 

 キースの娘だ。このまま放置しておくわけにもいかない。せめて帰れる程度の金は貸そう。

 金は父親から返してもらう。

 

 

 

 スカイは答える。

 

 

 

「マルグリットです」

 

 

 

 それを聞いたフェアは嬉しそうに

 

 

 

「本当ですか。今私たちもそこを目指してるんです」

 

 

 

 ブラッドはビクッと身体を震わせる。嫌な予感がする。

 

 

 

 金を貸す程度ならやってあげる。だが、相手はキースの娘だ。

 

 

 

 流石にスカイは大丈夫だと思うが、あのキースの娘だ。

 

 

 

 一緒にマルグリットに向けて旅なんてしたら何が起こるか分からない。

 

 

 

 さっきのキースの間違えは可愛いものだ。思い出したくないような嫌な思い出もある。

 

 

 

 それにスカイと一緒にいたなんてキースに知られたら、どうなるのか。

 

 

 

「え、フェアちゃん、マルグリットを目指してるの?」

 

 

 

「うん、一緒に行こ!」

 

 

 

「良いんですか? ブラッドさん?」

 

 

 

 ブラッドは笑顔を作る。

 

 

 

「あ、ああ、大丈夫だ」

 

 

 

 おい、キース! どこにいるんだよ!!

 

 

 

 

 

 



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 第235話  【BLACK EDGE 其の235 旅の始まり】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第235話

 【BLACK EDGE 其の235 旅の始まり】

 

 

 

 

 ブラッドとフェアの旅にスカイが加わることになった。

 

 

 

 父であるキースよりも母親に似ていることを願うしかない。

 

 

 

 だが、一緒に旅をすることになったんだ。故郷に帰す責任はしっかりと果たす。

 

 

 

 

 宿で一晩を越した三人は馬車に向かった。

 

 

 

 馬車に荷物を詰め込むと、早速マルグリットに向けて出発した。目指すは東北にある隣国だ。

 

 

 

 馬車を操作しながらブラッドはスカイに喋りかける。

 

 

 

「そういえば、お前達はマルグリット出身だったんだな。知らなかったよ」

 

 

 

「まぁ、パパは故郷があまり好きではないみたいですから……」

 

 

 

 そういえば、前にキースと喋っている時に故郷の文句を言っていることがあった。

 

 

 

 確かにキースは基本はガルデニアで生活していたし、故郷に帰っているところを見たことがない。

 

 

 

 嫁と娘がいるのに帰らないってどんだけなんだか…………。

 

 

 

「なんがあったのか?」

 

 

 

 ブラッドが聞くと、スカイは答える。

 

 

 

「叔父さんと問題があったみたいで…………。私とママは大丈夫なんですけど、父だけはやけに嫌っていて…………」

 

 

 

 キースの性格上、一度何かあるとずっと根に持っていそうだ。

 

 

 

「それでか……。ま、あいつのことだし、どうにかなるだろ。まずはお前を家に帰すよ」

 

 

 

 

「ありがとうございます」

 

 

 

 馬車は順調に進んでいく。馬車の左側には広大な湖が続いている。

 

 

 

 フェアとスカイはそんな湖を眺めている。

 

 

 

 ここの湖はブルジョネという名前であり、この辺りで最も大きな湖だ。

 この湖には巨大な怪物が住んでいるという噂があるが、それが本当かは定かではない。

 

 

 

 そんな怪物を神として祀っている宗教団体もおり、そこではその怪物を湖の神だとしているらしい。

 

 

 

「ねぇ、ブラッド」

 

 

 

 フェアが湖を見ながら話しかけてきた。

 

 

 

「どうした?」

 

 

 

「スカイが落ちた……」

 

 

 

「え!?」

 

 

 

 ブラッドが後ろを見るとスカイが地面を転がっている。

 

 

 

「何があったァァァァァ!?」

 

 

 

 ブラッドは馬車を止めて、スカイの元に駆け寄る。

 

 

 

「おい、大丈夫か?」

 

 

 

 何があったのかは分からないが、馬車から落ちたんだ。

 

 

 

 すると、スカイが目を開ける。

 

 

 

「ハッ!? 寝てました!!」

 

 

 

 そして目をキリッと見開いたスカイが言った。

 

 

 

 

「…………………え」

 

 

 

 どうやらフェアと共に湖を見ていたら眠たくなって眠ってしまったらしい。そして力が抜けて馬車から転げ落ちたと……………。

 

 

 

 

「どうしてそうなの!?」

 

 

 

 

 

 

 

 



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 第236話  【BLACK EDGE 其の236 キースの娘】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第236話

 【BLACK EDGE 其の236 キースの娘】

 

 

 

 

 キースの娘であるスカイ。彼女と最初に出会った時はキースとは違いかなりしっかりしている子だと思っていた。

 

 

 

 雪山で出会った時はキースを止めていたし、挨拶もできていた。

 

 

 

 だが、親子だ。

 

 

 

 真面目だ。確かにしっかりはしているのだが、やはりどこかおかしい。

 

 

 

 なんというかネジが一本外れている。

 

 

 

 馬車から落ちる。馬車の馬を逃す。ブラッドの服を間違えて着る。目的地の反対方向に行こうとする。

 

 

 

 てか、キースよりも酷いかもしれない。

 

 

 

 しかも普段はしっかりしているからこそ、やらかす時が目立つ。そしてスケールがでかい。

 

 

 

 馬車を止めて休憩中。フェアがスカイに聞こえないように聞いてきた。

 

 

 

「ブラッド……」

 

 

 

「なんだ」

 

 

 

「キースさんもあんな感じだったの」

 

 

 

「だった」

 

 

 

 そんな感じでハプニングだらけだったが、馬車の旅で数日後。巨大な木の聳え立つ場所にたどり着いた。

 

 

 

「暑くて蒸し蒸ししますね」

 

 

 

「ああ、ここはジャングルだからな」

 

 

 

 湖を越えてしばらく進んだ場所にあるジャングル地帯。グライユル。

 

 

 

 他の森よりもはるかに大きく成長した木が並び、蔦が生い茂るジャングル。湿気が多くそして温度が高い。

 

 

 

 マルグリットへといく方法の一つがこのジャングルを超える方法だ。

 

 

 

 湖の右と左のどちらを通るかで、このジャングルを通り過ぎるかが変わる。

 

 

 

 こちらは左のルートであり、時間がかかるしそれにジャングルを超える必要がある。

 だが、右のルートは今封鎖されており、こちらを使うしか方法がなかった。

 

 

 

「スカイはこのジャングルを通ったことはないのか?」

 

 

 

「私はないです……パパと来た時は別のルートから来ましたから」

 

 

 

 スカイはタオルで汗を拭く。フェアも暑さにやられて馬車の中で倒れている。

 

 

 

 フェアは倒れながら喋る。

 

 

 

「寒さなら厚着すれば大丈夫だけど…………暑いのはこれ以上、脱げない…………」

 

 

 

 雪山の時は何一つ文句を言わなかったフェアであるが、暑さにはやられている。

 

 

 

 それはブラッドも同じだ。

 

 

 

「すまん、タオルをとってくれ」

 

 

 

 ブラッドは後ろの二人にタオルを取るように頼む。フェアよりも早くスカイは立ち上がると、タオルを取ってブラッドに渡した。

 

 

 

「サンキュ」

 

 

 

 こういうところではスカイはかなりしっかりしている。それにフェアと違って、いつ何が起きても良いように、周りを警戒している。

 

 

 

 実力がキースを超えているというのも、本当なのかもしれない。

 

 

 

 そんな感じで三人は進んでいく。そんな中、

 

 

 

「…………何が狙ってますね」

 

 

 

 スカイが何かに気づいた。スカイに遅れてブラッドも気づく。後ろから何かの足音がする。

 

 

 

 

 

 

 



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 第237話  【BLACK EDGE 其の237 ジャングル】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第237話

 【BLACK EDGE 其の237 ジャングル】

 

 

 

 

 マルグリットへと向かう道中、ジャングルを抜けることにしたブラッド達であったが、後ろから何かが迫っていることに気づく。

 

 

 

 最初に気づいたのはスカイだ。そしてそれに続いてブラッドも気づいた。

 

 

 

「敵の数は…………三十です」

 

 

 

 スカイは馬車の中で剣を持って立ち上がるとそう言った。

 

 

 

「数まで分かったのか!?」

 

 

 

「はい。私はこういうことには長けてますから…………」

 

 

 

 ブラッドは馬車の速度を落とす。

 

 

 

「このまま戦う。操縦を任せられるか?」

 

 

 

「いえ、ここは私に任せてください」

 

 

 

 スカイはそう言うと馬車の屋根の上に登る。そして後ろを向いて剣を抜いた。

 

 

 

「大丈夫です。それに故郷まで送ってもらってるんです。これくらい働きます!」

 

 

 

 そして後ろで追ってきているものの正体が分かる。

 

 

 

 ジャングルの木を長い腕を利用して飛び移り、馬車を追ってきている。高い叫び声を上げて、現れたのは猿だ。

 

 

 

 それを見たフェアは驚く。

 

 

 

「あれは!?」

 

 

 

「あれはこのジャングルに住む獰猛な猿だ。人を襲い食料や武器を盗み、人も攫うことがある」

 

 

 

 ブラッドが馬車を操作しながら説明した。

 

 

 

 猿達の手には武器があり、各々が違う武器を持っている。剣を持っているものや斧を持っているもの、弓矢を持っている猿までいる。

 

 

 

 馬車はフルスピードであるというのに、それに余裕で追いついてくる猿。

 

 

 

 追いついた二匹の猿は馬車へと飛び移ろうとする。だが、そんな猿をスカイは切り落とした。

 

 

 

 スカイに切られた猿は地面を転がって、すぐに遠ざかり見えなくなった。

 仲間がやられたことに猿達は声を荒げて怒る。

 

 

 

 弓矢を持っていた猿はスカイに向けて矢を放つ。

 

 

 

「スカイ!」

 

 

 

 だが、そんな矢すらスカイは弾き飛ばした。

 

 

 

「問題ありません。この程度、パパに比べればまだまだです」

 

 

 

「…………お、おう」

 

 

 

 確かにスカイの実力はキース以上かもしれない。

 

 

 

 これだけの敵に囲まれているというのに冷静に剣を振るっている。

 

 

 

 スカイは次々と来る猿の群れを倒していく。スカイの剣は猿の血に染まる。

 

 

 

 猿達は仲間を切り殺していくスカイに怒りを表す。

 しかし、猿達もこのまま終わるはずがない。

 

 

 

 馬車が行く道をブラッドに気づかれない程度に誘導していた。

 

 

 

 そしてそれに気づいたのは目の前に食べが現れた時だった。

 

 

 

 ジャングルの先に崖の壁が現れて、道が急カーブになっていたのだ。

 

 

 

「なにぃぃぃ」

 

 

 

 このままの速度では曲がりきれない。

 

 

 

 

 

 

 

 



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 第238話  【BLACK EDGE 其の238 急カーブ】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第238話

 【BLACK EDGE 其の238 急カーブ】

 

 

 

 

 猿に襲われたブラッド達だが、スカイが馬車の屋根に乗り猿達を次々と倒していく。

 

 

 

 ブラッドは馬車を操作して、猿達から逃れようとするが、馬車は知らぬうちに猿によって誘導されていた。

 

 

 

「なに!?」

 

 

 

 馬車の前に現れたのは壁だ。岩盤の壁がブラッド達の前に立ち塞がる。

 

 

 

 そしてその崖を避けるように道は急カーブしていた。

 

 

 

 馬車の速度を落としてももう間に合わない。それに猿達はまだ追ってきている。ここで速度を落とせば、囲まれて不利になる。

 

 

 

「フェア!! 手を貸せ!!」

 

 

 

 ブラッドは馬車の中にいたフェアに叫ぶ。

 

 

 

「何をすれば良いの?」

 

 

 

 ブラッドに近づいてきたフェアにブラッドは馬の手綱を渡した。

 

 

 

「こいつを握ってろ。良いか? 決して離すんじゃねぇぞ」

 

 

 

 フェアに手綱を渡したブラッドは馬車の中に入ると、スカイに叫ぶ。

 

 

 

「スカイ、俺が合図したらどこでも良いから馬車にしがみつけ!」

 

 

 

「了解です!!」

 

 

 

 剣で猿と戦いながらスカイは答えた。

 

 

 

 馬車は壁に向かって速度を落とさずに近づいていく。

 このままでは曲がりきれない。

 

 

 

 馬はカーブしていくが、馬車の荷台は大きく円を描いて曲がる。馬車の側面が壁に当たりそうになった時、

 

 

 

「捕まれ!!」

 

 

 

 ブラッドは叫ぶと、馬車の右側の壁に体当たりをした。それは壁のある方とは反対側だ。

 ブラッドが体当たりをすると、馬車は傾いて左の車輪が浮く。

 

 

 

 傾いた馬車の左の車輪は壁に当たると、馬車は斜めの状態のまま走り出した。

 

 

 

「よっしゃ!」

 

 

 

 ブラッドはフェアと交代して手綱を持つ。そしてカーブを曲がり切ると、すぐに体制を立て直し、元の状態に戻した。

 

 

 

 屋根の上では驚いたスカイが屋根にしがみついた固まっていたが、馬車が元の状態に戻ると大笑いする。

 そして楽しそうにブラッドに叫ぶ。

 

 

 

「今見ましたか! 壁を走りました!! 走りましたよ!!」

 

 

 

「ああ、分かってるよ!! 俺だって初めてだ」

 

 

 

 スカイが笑い喜んでいる中でも、猿達は奇襲を仕掛けてくる。だが、スカイは笑いながらもそれを一振りで、その猿達を一掃する。

 

 

 

 ブラッドは馬車を操作するが、さっきよりも速度が出せない。それはカーブで無茶な操作をしたため、車輪が壊れてしまったのだ。

 

 

 

 このままでは猿達に追いつかれてしまう。崖を越えた馬車はジャングルの中を突き進む。

 

 

 

 そんな中、巨大な何かが近づいてくる音がした。

 

 

 

「っ!?」

 

 

 

 そしてそれはブラッド達の馬車のすぐ真横に現れた。巨大な猪だ。馬車と比べてもさほど大きさは変わらないほど巨大な猪。背中には猿を乗せており、猿に操られているようだ。そんな猪が馬車に突進してきたのだ。

 

 

 

「ぐっ…………」

 

 

 

 馬車は大破し、馬車から放り出される三人。ジャングルを転がる。

 

 

 

「……大丈夫か?」

 

 

 

 立ち上がったブラッドが二人に聞く。

 

 

 

「ま、まぁ……」

 

 

 

「大丈夫で……す」

 

 

 

 スカイとフェアもすぐに立ち上がった。しかし、馬車は壊されてしまったし、周りには猿の群れ。前方には巨大な猪が立ち塞がっている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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 第239話  【BLACK EDGE 其の239 ジャングル決戦】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第239話

 【BLACK EDGE 其の239 ジャングル決戦】

 

 

 

 

 

 馬車が破壊されてしまったブラッドとフェア、スカイはジャングルの中で放り出されてしまった。

 

 

 

 そして彼らを猿の群れと巨大な猪が囲んでいた。

 

 

 

 馬車は猪の突進を受けたことで大破しており、猿達は武器を構えて威嚇している。

 

 

 

「獰猛……とはいえ、ここまでするのかよ……」

 

 

 

 ブラッドは猿達を見て驚く。

 

 

 

 このジャングルの動物達はナワバリ意識が強く、敵と判断すると徹底的に攻撃する習性がある。

 だが、ここまでしつこく追い回し、攻撃してくるのは初めてだ。

 

 

 

 猿達は武器を手に飛び掛かってくる。ブラッドとスカイはフェアを守りながら戦闘を行う。

 

 

 

 猿が剣を振り飛び込んでくる。ブラッドは剣を避けると猿を殴り飛ばす。スカイも猿の剣を受け止めると斬り込んだ。

 

 

 

 次々と猿達を倒し、それに焦ったのか猪に乗った猿はブラッドに向かって突進してくる。

 

 

 

 かなりのスピードとパワーだ。だが、ブラッドは猪の突進を受け止めた。そして猪ごと猿を持ち上がる。

 

 

 

「おぉら!」

 

 

 

 ブラッドは猪を投げ飛ばす。回転しながら猪と猿は木にぶつかると気絶して倒れた。

 

 

 

 ブラッドは猪を倒したと同時にスカイも残っていた猿達を倒しきったらしい。

 

 

 

 スカイは剣についた血をハンカチで拭きながらブラッドに聞く。

 

 

 

「この猿達って年中こうなんですか?」

 

 

 

「いや、前に来た時はもう少し大人しかったんだがな……まぁ、ほんのちょっとだが…………」

 

 

 

 そう、前にここにいた時は二、三匹をぶっ飛ばすとビビって逃げて行っていた。しかし、今の猿達はここで負けられないかのように必死だった。

 

 

 

「ま、ここで考えても分かんないな。先行くぞ」

 

 

 

 ブラッドが歩いて先に進もうとした時、

 

 

 

「待って」

 

 

 

 フェアはブラッドを呼び止めた。

 

 

 

「少しやってみたいことがあるの」

 

 

 

 そう言うとフェアは壊れた馬車の元へと行く。

 

 

 

「私の力は傷を癒すんじゃなくて、時間を戻す。もしかしたらこの馬車も戻せるかなぁって」

 

 

 

 フェアは馬車を指差しながら言った。

 

 

 

 グリモワールで力を使わされている頃は、傷の治療を中心にやらされていた。

 だが、力のコントロールができる前は小物を戻す練習をさせられていた。

 

 

 

 もうしばらく物を直すことはやっていなかったが、もしかしたら馬車も直せるかもしれない。そう考えたのだ。

 

 

 

「そうだな。一回試してみるか」

 

 

 

 馬車が元に戻るのならば、その方が嬉しい。馬で移動する手があるが、馬車の方が荷物も運べるし楽になる。

 

 

 

 フェアは馬車に手を伸ばすと、力を使ってみる。すると…………。

 

 

 

 馬車は材料の木材に戻ってしまった。

 

 

 

「…………スカイ。馬は操れるか?」

 

 

 

 

 

 

 

 



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 第240話  【BLACK EDGE 其の240 ジャングルの奥へ】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第240話

 【BLACK EDGE 其の240 ジャングルの奥へ】

 

 

 

 

 馬車が壊れたことにより、ブラッド達は馬で移動することになった。ブラッドとスカイがそれぞれ一匹ずつ馬を操り、ブラッドの後ろにフェアが座る。

 

 

 

「…………ごめん。私、戻しすぎちゃったのかな……」

 

 

 

 フェアは馬車を戻せなかったことにショックを受けていた。

 

 

 

「しょうがない。また今度練習すれば良いさ」

 

 

 

 ブラッドはそんなショックを受けたフェアを宥める。

 

 

 

 そんな中、スカイがブラッドに聞く。

 

 

 

「もう猿達は襲ってこないんでしょうか?」

 

 

 

 ブラッドは腕を組む。

 

 

 

「分からん。だが、異常な状態ではあった。油断はできないな」

 

 

 

 三人はジャングルの中を進んでいく。

 

 

 

 しばらく進んでいると、ジャングルの奥に石煉瓦で出来た建物が現れる。そこそこ大きな建物で建物にはツヤが伸びており苔もある。

 

 

 

「なんだろう……」

 

 

 

「さぁな。だが、ここには用はないしな。先に行こう」

 

 

 

 ブラッド達が先に行こうとした時、その建物の上から、

 

 

 

「待てぇぇ!! 龍の適応者!!」

 

 

 

 男の声が響く。ブラッド達がその建物の方を振り返ると、屋根の上に黒いフードに身を包み、白い仮面をつけた男がいた。

 

 

 

「グリモワール!?」

 

 

 

 ブラッドとフェアはその男を警戒する。その様子を見て仮面の男が敵だと分かったスカイも剣をすぐに抜ける体勢になる。

 

 

 

「何の用だ!! グリモワール!!」

 

 

 

 ブラッドが仮面の男にそう叫ぶと、仮面の男は足をバタバタさせて怒る。

 

 

 

「グリモワール、グリモワール、呼ぶな!! 俺の名はポイズン!! 次からはそう呼べ!!」

 

 

 

 ポイズンはブラッドのことを指差す。なんだかイラっときたブラッドはわざと呟く。

 

 

 

「グリモワール…………」

 

 

 

「おい! ポイズンと呼べと言ってるだろ!!」

 

 

 

 テンションの高い男だ。頭が痛くなりそうなくらいテンションが高い。一緒にいるだけで疲れてしまう。

 

 

 

「それでなんの用なんだ? ポイポン」

 

 

 

「ポイズンだ!! ふふふ、俺は貴様らを捕まえに来たのだ。王都での一件は報告を受けている。だが!! お前達が龍の適応者である限り、我々に利用される運命なのだ!!」

 

 

 

 グリモワールは子供達には手を出さないと言った。しかし、ブラッド達は狙わないとは言ってなかった。

 

 

 

「ほう、運命か。なら、お前が打ちのめされるのも運命だな!!」

 

 

 

 ブラッドは拳を握りしめてポイズンを威嚇する。それを聞いたポイズンは鼻で笑うと、屋根の上から降りる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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 第241話  【BLACK EDGE 其の241 刺客ポイズン】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第241話

 【BLACK EDGE 其の241 刺客ポイズン】

 

 

 

 

 ジャングルを移動中。ブラッド達の前に現れた仮面の男。

 

 

 

 ポイズンは建物の屋根から降りる。

 

 

 

 グリモワールからの刺客ポイズン。彼の狙いはブラッドとフェアだ。龍の適応者を捕獲して、組織で利用する。

 

 

 

 ポイズンの目的は出来れば生捕り。それが難しい場合は殺して龍を入手すること。

 

 

 

 ポイズンは着地すると、両手を広げる。そしてその手のひらに紫色の水が発生した。

 

 

 

 ブラッド達は警戒する。どんな攻撃をしてくるのか。まだポイズンの攻撃が分からない。いや、名前でなんとなく想像はついているが…………。それでもポイズンの攻撃手段が不明のため慎重に様子を見る。

 

 

 

 ポイズンはその紫色の水をブラッドに向かって投げた。

 

 

 

 速度は普通の水を投げるのと変わらない。それに飛距離もだ。

 

 

 

 ブラッドが一歩下がると、その水は地面に落ちて当たることはなかった。

 

 

 

「なに!? 避けただと!?」

 

 

 

 そんなに驚かれても困る。それに名前からして避けないと危なそうだ。

 

 

 

 地面に落ちた水は、地面を溶かす。やはり毒だ。

 

 

 

 ポイズンは再び両手に毒の水を生成する。

 

 

 

 毒の水があるためブラッドはポイズンに近づけない。

 

 

 

 ポイズンはシャドーなんかに比べれば弱そうだ。だが、能力が厄介だ。毒の水を生成するため下手に近づくことができない。

 

 

 

 地面は溶かされたが、人体に触れればどんな効果があるのか分からない。

 

 

 

 ブラッドが近づけずにいると、ポイズンが動く。

 

 

 

「ふふふ、俺の能力は強いだろ!!」

 

 

 

 ポイズンはそう言うと連続で毒の水を投げつけてくる。標的はブラッドだけのようだ。

 

 

 

 フェアとスカイを狙うことはなくブラッドだけを徹底して狙っている。

 

 

 

 ブラッドは追ってくるポイズンから後ろにステップしながら逃げる。しかし、いつまでも逃げていては何もできない。

 

 

 

「くっ、こうなったら!!」

 

 

 

 ブラッドはポイズンから距離を取ると、右手に力を込める。ブラッドの右手を黒いオーラが包み込んだ。

 

 

 

「それは!? 龍の力か!!」

 

 

 

「そうだよ!!」

 

 

 

 いちいちリアクションがめんどくさいやつだ。だが、この技なら触れずに攻撃できる。

 

 

 

 今までは風を起こす程度の技で攻撃には使えなかった技だ。だが、クレインとの戦闘、そしてロジョンや赤崎との戦闘時の新技でこの技は進化した。

 

 

 

 前回使った時にはこの技は兵器の足を破壊できるレベルにはパワーアップしていた。

 

 

 

 ブラッドは右手をポイズンに向けて突きつけた。そしてそこから黒いオーラが飛び出す。

 その黒いオーラは龍の顔になり、ポイズンの元へと飛んでいく。

 

 

 

「な、なんじゃありゃー!!」

 

 

 

 

 

 

 

 



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 第242話  【BLACK EDGE 其の242 毒沼】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第242話

 【BLACK EDGE 其の242 毒沼】

 

 

 

 

 

 ブラッドが右手を突き出すとそこから黒いオーラが飛び出す。そしてそれは龍の顔になり、ポイズンへと向かって飛んでいく。

 

 

 

「龍の牙(ドラゴンファング)」

 

 

 

 龍のオーラは空を飛び、そして先にある建物にぶつかると消滅した。

 

 

 

 威力が下がってる?

 

 

 

 ブラッドは自分の技を見て衝撃を受ける。建物を破壊するつもりで放った。しかし、建物に当たるとそこで勢いは死んで消滅してしまった。

 

 

 

 だが、ポイズンには当たった。そう思っていた。しかし、

 

 

 

「あっぶなぁー!」

 

 

 

 ポイズンの声。そしてポイズンがさっきまで立っていた場所に人が一人入れる程度の穴が空いていた。

 

 

 

 そこからポイズンが這い上がってくる。

 

 

 

「ふぅ〜、強力な技だが、俺なら避けられるんだよな」

 

 

 

 ポイズンは毒を使い、地面を溶かしてそこに穴を作った。そしてそこに逃げ込んだのだ。

 

 

 

 それでブラッドの技を躱したのだ。

 

 

 

 穴から出てきたポイズンは両手を広げると再び毒を飛ばし始めた。

 

 

 

 ブラッドはポイズンの攻撃を避け続ける。

 

 

 

 今の攻撃で倒し切るつもりだったが、避けられてしまうとは……。だが、どうしたらあの毒を避けて攻撃できるか。

 

 

 

 攻撃を避け続けるブラッドを見て、スカイが剣を持ちながら叫ぶ。

 

 

 

「私も手を貸します」

 

 

 

「やめとけ。お前にこれをどうにかできるのか?」

 

 

 

「いや、それは……………」

 

 

 

「なら、俺に任せろ」

 

 

 

 なぜかは分からないが、今狙われているのはブラッドだけだ。

 

 

 

 なら、標的を変えさせるわけにはいかない。しかし、この毒をどうにかする手段をブラッドも持っているわけではない。

 

 

 

 ブラッドは攻撃を避けながら地面に落ちていた木の枝を拾うと、それをポイズンに向かって投げつける。

 

 

 

 だが、それはポイズンに当たる前に消滅した。

 

 

 

「そうなるか……」

 

 

 

 枝が消滅した。そうなると剣などで戦闘してもポイズンには当たらないということだ。

 

 

 

 素手でも剣でも攻撃は当たらない。当たりそうになったものといえば、龍のオーラだけだ。

 

 

 

 ブラッドはポイズンの攻撃を避け続けていたが、ブラッドが避ける先にポイズンは小さな穴を開けており、ブラッドはその穴に足を引っ掛けてしまう。

 

 

 

「しまった!!」

 

 

 

 ブラッドが体制を崩した時、ポイズンが毒を投げる。ブラッドは咄嗟に龍の力を毒の当たりそうな箇所に発動する。

 

 

 

 黒いオーラがブラッドの身を包む。すると、毒は黒いオーラに阻まれて、ブラッドに当たることはなかった。

 

 

 

「これは……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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 第243話  【BLACK EDGE 其の243 新技?】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第243話

 【BLACK EDGE 其の243 新技?】

 

 

 

 

 ポイズンの攻撃をブラッドは龍のオーラで防ぐ。すると、毒はブラッドに当たることなくオーラに遮られる。

 

 

 

「……これは」

 

 

 

 ブラッドは一旦ポイズンから距離を取る。

 

 

 

 確かにポイズンの攻撃は当たった。だが、ブラッドには効果はなかった。

 

 

 

 龍の力は龍の能力を借りることで引き出すことができる。そしてブラッドは龍の力を引き出す時に、身体に黒いオーラが現れる。

 

 

 

 それは龍のエネルギー。今までそれを龍の力の演出的なものだと思い込んでいたブラッドだが、それはしっかりとした龍の能力だった。

 

 

 

 黒龍はブラッドの腕に力を与えるのではなく、腕とその周囲にも影響を及ぼしていた。

 そして龍の力を使えば、ブラッドは龍の鎧を着たような状態ということだ。

 

 

 

 赤崎の炎もこの黒いオーラで防げていた。そうならば毒も防げる。

 しかし、龍には毒は効かなくてもブラッドには効果はある。そのためオーラだけで攻撃しなければならなくなる。

 

 

 

 オーラの具現化が必要だ。

 

 

 

 ポイズンは考えているブラッドに攻撃を仕掛ける。しかし、ポイズンの攻撃をブラッドは避けていく。

 

 

 

 ポイズンの攻撃は単調だ。そのため避けやすい。その避けている間にブラッドは新たな攻撃を考える。

 

 

 

 さっき放った技もオーラを具現化させた技だ。その他にも可能ではあった。しかし、少し前まではどれもが実戦で使えるような技ではない。

 

 

 

 最近使えるようになったものだ。

 

 

 

 しかし、そうやって具現化させられるということは、コントロールすれば攻撃にも活用できるということ。

 

 

 

 ブラッドは右手に龍の力を集める。そしてそのオーラを操るイメージをする。

 

 

 

「何をやる気だ!?」

 

 

 

 ポイズンはブラッドの様子に警戒して一度距離を取った。

 

 

 

「攻撃手段を考えた……。触れずに倒せる方法をな……」

 

 

 

 すると、ブラッドの手に集まった黒いオーラが少しずつ伸びていく。そして真っ直ぐ形を作ると、黒い剣になった。

 

 

 

「剣!?」

 

 

 

 上手く作れた。そう思った瞬間。その剣が粉々に砕け散る。

 

 

 

「な、なんで!?」

 

 

 

 壊れて驚く様子を見てポイズンは笑う。

 

 

 

「なんだ、それが攻撃手段か? ああ、確かに笑わされた。それに剣だって、溶けるぞ?」

 

 

 

 ポイズンはずっと笑っている。

 

 

 

 ブラッドが毒を防いだことを見ていなかったのだろうか。それとも忘れてしまったのか。

 

 

 

 だが、どちらにせよ。剣を作れなかった。何が悪かったのか。

 

 

 

「よーし、笑った笑った」

 

 

 

 

 

 

 



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 第244話  【BLACK EDGE 其の244 撃退】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第244話

 【BLACK EDGE 其の244 撃退】

 

 

 

 

 ポイズンへの攻撃手段を考えて、剣を作ったブラッドだったが、その剣が壊れてしまった。

 

 

 

 ポイズンはブラッドが黒いオーラで毒を防いだことを知らないようだ。

 

 

 

 ブラッドはもう一度作ろうとするが、今度は途中で壊れてしまう。

 

 

 

「なんだ、遊んでるのか?」

 

 

 

 ポイズンはそんなブラッドを見て笑う。

 

 

 

「さてと、笑い疲れたし、そろそろ終わらせますか!」

 

 

 

 ポイズンがブラッドに攻撃を仕掛けようとした時、二人の間にスカイが入ってきた。

 

 

 

 剣を抜いてポイズンを威嚇する。

 

 

 

「おい、待ってろって言っただろ」

 

 

 

「これ以上任せっきりにはできません。この人は強敵です。みんなで戦いましょう!」

 

 

 

 フェアも剣を持ってブラッドの側に近づいてきている。

 

 

 

 確かにブラッドだけでは厳しい。

 

 

 

「…………分かった」

 

 

 

 ブラッドはみんなで戦うことにした。

 

 

 

 しかし、ポイズンには剣も当たる前に溶かされてしまうだろう。接近するのも危険だ。

 こちらからの攻撃手段がない。

 

 

 

 そんな思っていると、ポイズンがため息を吐く。

 

 

 

「はぁ、これは困ったなぁ」

 

 

 

 そう言うとポイズンは後ろを向いた。そしてこの場から去ろうとする。

 

 

 

「どこへ行く!」

 

 

 

 スカイがポイズンに叫ぶと、ポイズンは

 

 

 

「女性と戦うつもりはありません。俺の標的はブラッドただ一人だった。しかし、あなた達が加勢するというのなら、俺はもう戦わん」

 

 

 

 そう言うとポイズンは逃げていった。

 

 

 

「なんだったんだあいつ…………」

 

 

 

 ブラッドは逃げていくポイズンを見て驚く。

 

 

 

 女性と戦わない。ポイズンはそう言って逃げていった。女性と戦うと何か悪いことがあるのだろうか。

 それともポイズンのポリシー的なものなのか。

 

 

 

 どちらにしろ。こちらはポイズンに対しての攻撃手段がなかった。だが、こんな感じであっても、戦闘が終わったのだから良かったのだろうか。

 

 

 

 ポイズンが逃げた後、ブラッド達は馬に乗りジャングルを抜けるために移動を開始した。

 

 

 

 ポイズンとの戦闘が終わってからは動物に襲われるなどのハプニングもなく。ジャングルを抜けることができた。

 

 

 

 しかし、ジャングルを越えると、一気に気候が変わる。

 

 

 

「さっむ!?」

 

 

 

 どこが境目だったのか。気付かぬうちに極寒の森へと変わっていた。

 

 

 

「こ、この寒さは……。もうすぐ着くってことですか」

 

 

 

「ああ、ジャングルを越えた先にあるこの極寒の森、それを越えればマルグリットだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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 第245話  【BLACK EDGE 其の245 極寒の森】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第245話

 【BLACK EDGE 其の245 極寒の森】

 

 

 

 

 ジャングルを抜けたブラッド達は極寒の森へと入っていた。

 

 

 

 ジャングルで馬車を失ったため最低限の荷物しか運べなかった。そのためこの寒さは結構きつい。

 

 

 

「まだ村まではもうもう数日かかります。それまで耐えられるでしょうか……」

 

 

 

 隣で別の馬に乗るスカイも寒そうだ。

 

 

 

「まぁ、耐えるしかないな……」

 

 

 

 寒さに耐えながらブラッド達が進んでいると、途中で木造の建物を見つけた。

 

 

 

 建物は一階建てであり、家の隣には馬車が五台ほど並んでいた。

 

 

 

「馬車を売ってもらえるかな」

 

 

 

 ブラッド達は建物の主に馬車を売ってもらおうと、建物に近づく。

 

 

 

 建物にはラクーン商店と書かれている。馬を止めて三人は建物の中に入る。

 

 

 

 そこには旅に必要な物から日用品まであらゆるものが売られていた。そして中から出てきたのは白髪の老人だ。

 

 

 

 その老人の顔はどこか見覚えがある。前にも雪の降る台地であったことがある。

 

 

 

「ダレオさん……?」

 

 

 

 ブラッドとフェアはその名前を呟く。

 

 

 

 北西にある雪山について最も詳しいと言う老人で、クリスの住む屋敷への行き方を教えてくれた老人、ダレオさんにそっくりだったのだ。

 

 

 

 二人の言葉を聞いた老人は反応する。

 

 

 

「…………ダレオ……だと?」

 

 

 

「ダレオさん、私です。北西のリス村でお会いしたフェアです」

 

 

 

 フェアが説明すると、その老人が首を振った。

 

 

 

「すまんな。わしはダレオじゃない。わしはガレオ、ダレオはわしの弟じゃ」

 

 

 

 ダレオではなくガレオと名乗った老人は、店の扉を閉めると、

 

 

 

「それでダレオのクソ野郎と友人のクソ野郎、わしになんのようじゃ?」

 

 

 

「………………」

 

 

 

 突然の言われように驚いて固まっているブラッドとフェア。そんな言葉に腹を立てたスカイが老人に突っかかった。

 

 

 

「なんなんですか。あなたは!! 初めて会った人にクソ野郎だなんて、礼儀がなってません、礼儀が!!」

 

 

 

 スカイがガレオを睨みつける。ガレオは腕を組むと、

 

 

 

「クソ野郎と言って何が悪い。わしはダレオの借金のせいでこんなところで商売をさせられてるんだ!! そのダレオの知り合いなんて、同じクソ野郎だろ!」

 

 

 

「そのダレオさんがどんな人なのか、私は知りません!! でも、ブラッドさんとフェアちゃんをそういうのは私は許しません!!」

 

 

 

 ガレオとスカイは額をぶつけ合うと、そのまま睨み合う。今にも殴り合いの喧嘩になりそうな状況だ。

 

 

 

 そんな中、店の奥から下駄を履いたお婆さんが出てくると、ガレオの頭を箒で殴った。

 

 

 

「痛い!! 何すんだよ、ナジムさん!!」

 

 

 

「お前が何してるんだい!! お客さんに喧嘩ふっかけるんじゃないよ!!」

 

 

 

 

 

 

 



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 第246話  【BLACK EDGE 其の246 ラクーン】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第246話

 【BLACK EDGE 其の246 ラクーン】

 

 

 

 

 ナジムというお婆さんが出てきて、ガレオを箒で殴ると喧嘩を止めた。

 

 

 

「お客さんに喧嘩をふっかけるんじゃないよ!!」

 

 

 

 ガレオは頭を掻きながらナジムに文句を言う。

 

 

 

「いや〜、しかし、ダレオの野郎のせいで〜」

 

 

 

「あんなの兄のことなんか知るかい! あんたは今ここで私に雇われてんだよ!! 森で倒れてるあんたを助けてやったのは誰だと思ってんだい!!」

 

 

 

「………………はい」

 

 

 

 ナジムに説教されたガレオは落ち込んで、店の恥でしゃがみ込む。そんなガレオを無視してナジムが話しかけてきた。

 

 

 

「あんたら旅人かい? よく来たね」

 

 

 

 ガレオは床に落ちている葉っぱを指で動かして拗ねている。

 

 

 

「良いんですか?」

 

 

 

 ブラッドが聞くとナジムはガレオに唾を吐く。

 

 

 

「良いんだよ。こいつはうちの店に住み着いた虫だ。それより何か買っていくかい?」

 

 

 

 ナジムは笑顔で接客する。

 

 

 

 まぁ、ガレオとは違い普通に商品を売ってくれそうだから、そのまま話を進める。

 

 

 

 馬車と防寒具。その他必要なものを売るように頼む。

 

 

 

 ナジムは素早く行動し、商品をまとめる。途中でガレオを蹴り飛ばすと、ガレオにも手伝わせた。

 

 

 

「こんなもんでどうだい!」

 

 

 

 5分もかからないうちに、商品をまとめて金額を提示してきた。

 

 

 

 値段を見たスカイは驚く。

 

 

 

「少し高くないですか?」

 

 

 

「ここは村から離れてるからね。少しくらい我慢しな!」

 

 

 

 値段が高くつくのは分かっていたブラッドは提示された金額を払う。

 

 

 

 この後の大会で賞金を手に入れれば、それで金は手に入る。これくらいの出費なら許せるだろう。

 

 

 

 金を払い終え、ブラッド達が出て行こうとした時、ガレオが前に立ち塞がった。

 

 

 

「待ちやがれ!! お前達!!」

 

 

 

 ガレオは扉を前で仁王立ちをして行く手を阻む。

 

 

 

「お前達に頼みたい仕事がある!! それをやってくれたらわしはお前達のことを許してやろう!!」

 

 

 

 ガレオはそう言って威張る。

 

 

 

 しかし、ブラッド達にとって、ガレオに許されようがどうしようが関係ないことだ。

 

 

 

「ま、どうでも良いんで、さようなら〜」

 

 

 

 ブラッド達が店を出ようとするとガレオはしがみつく。

 

 

 

「待ってくれ!! 頼む!! 待ってくれ!!」

 

 

 

「なんなんだよ」

 

 

 

「お願いだ!! わしの願いを聞いてくれーーー!!」

 

 

 

 ガレオはしつこく頼み込む。

 

 

 

「分かったよ。とりあえず何をやって欲しいだ。それを聞いてから考える」

 

 

 

 ガレオのしつこさに諦めたブラッドがガレオに聞く。

 

 

 

 

 

 

 

 



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 第247話  【BLACK EDGE 其の247 断れずに】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第247話

 【BLACK EDGE 其の247 断れずに】

 

 

 

 

「なんで私たちがこんなことしないといけないんですか……」

 

 

 

 スカイが文句を言いながらブラッドとフェアの後ろをついてくる。

 

 

 

 今、ブラッド達はガレオに頼まれて、極寒の森の中を歩いていた。

 

 

 

 ガレオに頼まれたのは森に住み着いた巨大な狼の討伐だ。巨大な狼に商品を運搬している馬車が襲われることがあるらしい。そして商品が入荷できないことがあるため、その対処をしたいようだ。

 

 

 

「頼まれたんだからやるしかないだろ」

 

 

 

 先を進むブラッドがそう呟くと、スカイは呆れた表情で、

 

 

「もしかして、頼まれたら断れないんですか?」

 

 

 

「………………」

 

 

 

 ブラッドは答えずに先を急ぐ。そんな中、フェアが

 

 

 

「まぁ、時間はあるんですし、良いじゃないですか」

 

 

 

 と言ってスカイを宥める。

 

 

 

 ブラッドが参加しようとしている大会の開催まではまだ日にちがある。少しくらい寄り道しても間に合う。

 

 

 

 フェアの言葉を聞いたスカイは腰に下げた剣に手をかけると、ブラッドとフェアよりも前に出て走る。そして二人の方を振り返りながら後ろ向きで歩き出した。

 

 

 

「しょうがないですね〜、フェアちゃんが言うから今回は許しましょう」

 

 

 

 何を許すのだろうか。というか何様のつもりなのか。

 

 

 

「なので今回は私に任せてください。あのポイズンとの戦闘はブラッドさんだけ戦ってましたからね! 私も役に立つってところを見せたいです!!」

 

 

 

 スカイはそう言いながらウキウキして先を進んでいく。

 

 

 

 さっきまでとは正反対にやる気満々という感じだ。どうしてそこまで切り替えられるのだろうか。

 

 

 

 しかし、やる気を出してくれたのならば嬉しい。

 

 

 

「ああ、今回はお前に任せるよ…………。けど、前を見ろよ〜、危ないぞ」

 

 

 

「大丈夫ですよ〜、転ぶわけないじゃないですか〜」

 

 

 

 後ろ向きで下がっていると、スカイは何かにぶつかる。それはモフモフした何かだ。

 

 

 

「あれ? 何かにぶつかっちゃいました〜、ん、ブラッドさんにフェアちゃん、何を驚いているんですか?」

 

 

 

 ブラッドとフェアはスカイがぶつかった何かを見て大きく口を開けて驚いていた。

 

 

 

「も〜、なんなんですか。そんなに変な顔をして………………」

 

 

 

 スカイが振り返るとそこには木と同じ大きさの白い毛皮の狼がいた。

 

 

 

「グルルルルゥ〜」

 

 

 

 その狼はスカイのことを見て唸り声を上げている。口からはよだれを垂らし、そのよだれは地面にポタポタと落ちる。

 

 

 

「…………こ、こんなにデカいの………………」

 

 

 

 

 

 

 

 



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 第248話  【BLACK EDGE 其の248 巨大狼】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第248話

 【BLACK EDGE 其の248 巨大狼】

 

 

 

「こ、こんなにデカいんですか…………」

 

 

 

 ブラッド達の前に現れたのは、木よりも大きな体を持った巨大狼であった。

 

 

 

「これじゃあ、ホワイトウルフなんて、子犬以下よ…………」

 

 

 

 ホワイトウルフと比較なんてしちゃダメだ。これではあの狼犬が可愛く見える。

 

 

 

 そんな巨大な狼が目の前に現れた。これがガレオの言っていた狼だろう。

 

 

 

 スカイは剣を抜くと構える。

 

 

 

「こ、この程度でビビっていたら、賞金首稼ぎにはなれません!」

 

 

 

 スカイは剣を横にすると、狼に向かって走る。そして高くジャンプして、狼の首を狙って剣を振る。

 

 

 

 しかし、狼はスカイの攻撃を避ける。

 

 

 

 攻撃は良かった。しかし、急所を狙うのをバレていた。

 

 

 

 狼は着地したスカイに向かって、爪で攻撃をしてくる。スカイはその攻撃を避ける。もう片方の手でも攻撃してくるが、それも避けた。

 そして狼に近づいたスカイは、狼の首をもう一度狙おうとするが、その前に狼に避けられてしまう。

 

 

 

 確かにスピードはキース以上だ。しかし、そのスピードを使いこなせていない。

 

 

 避けた狼は今度は着地する前にスカイのことを前足で殴る。スカイは剣でガードしたが、その勢いで後ろに飛ばされてしまう。

 

 

 

 地面を転がったスカイは立ち上がってすぐに戦闘に戻ろうとするが、狼はスカイのことを追いかけてきていた。

 

 

 

 立ち上がるよりもはなく、狼がスカイを攻撃する。スカイの防御が間に合わない。その時、

 

 

 

 狼が横方向に吹っ飛ぶ。狼は壁に激突すると、そのまま倒れた。

 

 

 

「大丈夫か?」

 

 

 

 狼を倒したのはブラッドだ。やられそうになったところにブラッドが助けに来て、狼を攻撃したのだ。

 

 

 

「なぜ助けたんですか……」

 

 

 

 倒された狼を見ながらスカイが言う。

 

 

 

「ピンチだっただろ?」

 

 

 

「今のは演技です!! やられそうになったところで一発逆転するところなんです!!」

 

 

 

「いや、嘘だろ!!」

 

 

 

 まぁ、こんなこともありながらも狼退治は終わった。狼だから群れでいるのかとも思ったが一匹で終わった。

 

 

 

 スカイが本当にまだあの状態からどうにかすることができたのかは分からない。それはそれでそのうちわかるかもしれないし、分からないかもしれない。

 

 

 

 ブラッド達は店に戻り、狼を倒したことをガレオに伝えると驚かれた。

 

 

 

 そしてお礼に飴玉を貰った。

 

 

 

 いや、あんなでっかい狼倒させて報酬が飴玉とはどういうことだろうか。

 そしてガレオは倒されるとは思っていなかったらしい。

 

 

 

 もしかしたら俺たちのことを殺そうとしていたのだろうか……。

 

 

 

 とりあえず、馬車を手に入れたブラッド達は先に進むのであった。

 

 

 

 

 

 

 



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 第249話  【BLACK EDGE 其の249 到着】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第249話

 【BLACK EDGE 其の249 到着】

 

 

 

 

「見えてきました!! 見えてきましたよ!!」

 

 

 

 馬車の中からスカイが顔を出して興奮している。フェアもその後ろでソワソワしている。

 

 

 

 馬車での数日の旅を超えて、ついにブラッド達は隣国マルグリットに到着した。

 

 

 

 森を越えた先には巨大な家が立ち並んでおり、都市の奥には大きな城も見える。

 都市の右側にはその城に並ぶ大きさの教会と、左側には闘技場がある。

 

 

 

 都市は三角形であり、王城、教会、闘技場の三つが端に存在している。

 門をくぐり国に入ると、そこはガルデニアよりも賑やかで栄えている。その人口差は約三倍であり、それだけ土地も多く建物も多い。

 

 

 

「スカイ、とりあえずお前を家まで送るぞ。どこだ?」

 

 

 

 ブラッドはスカイの家がどこにあるのか聞く。

 

 

 

「あ、そうでしたね。そこを曲がってください」

 

 

 

 スカイに案内されながらブラッドは馬車を進めていく。そしてしばらく進むと、

 

 

 

「ここが私の家です」

 

 

 

 スカイの家にたどり着いた。そしてブラッドとフェアはそれを見て固まる。

 

 

 

 都市にある家はどれも大きい。しかし、そのどれよりも大きく広い家だった。

 

 

 

「お、おい、本当にここがお前……キースの家なのか?」

 

 

 

「はい。そうですよ。パパは貴族ですから」

 

 

 

 スカイが家の門の前で立っていると、超スピードで老人が走ってくる。

 

 

 

「お嬢様〜!!」

 

 

 

「久しぶりです。爺……」

 

 

 

「お父様からはぐれたと聞いた時から、私は心配で、心配で。夜も寝れませんでした」

 

 

 

 現れたのは老人の目には隈がある。本当に寝れなかったのだろう。

 

 

 

「あの〜、そちらの方々は?」

 

 

 

 老人はブラッド達に疑問を持つ。するとスカイが説明した。

 

 

 

「私をここまで連れてきてくれたんです。パパの友人です」

 

 

 

「友人…………」

 

 

 

 友人と言われたことにブラッドは反論したくなったが、ここは我慢した。

 

 

 

「なんと、そうでしたか。こんなところではなんですから。どうぞ、中に入ってください」

 

 

 

 老人はスカイと共にブラッドとフェアも中へと案内する。

 

 

 

 大きなお屋敷だ。まさか、あのキースが貴族だったなんて……。想像できない、いや、想像もしたくない。

 

 

 

 しかし、目の前に広がる光景だ。本当のことなのだろう。というか、貴族なのにどうして賞金稼ぎなんてやってるんだ……。

 

 

 

 ブラッド達は客間へと案内された。そしてそこでしばらく待っていると、スカイが入ってきた。

 

 

 

 今までの動きやすい格好とは違い、お嬢様という感じの格好だ。それを見たフェアはその姿に憧れている感じだが、スカイは嫌そうな感じだ。

 

 

 

 

 



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 第250話  【BLACK EDGE 其の250 キースの屋敷】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第250話

 【BLACK EDGE 其の250 キースの屋敷】

 

 

 

 

 隣国の王都マルグリットに到着したブラッド達は、スカイの家に向かうことになった。そしてスカイの家にやってきたのだが、そこは大きな屋敷だった。

 

 

 

 中から出てきた執事に案内されて、ブラッド達は客室で待っているのであった。

 

 

 

 しばらくすると客室の扉が開き、そこからスカイが入ってきた。

 スカイは今まで着ていた服とは違い、白いドレス姿でお嬢様って感じの服装だ。

 

 

 

 そんな服装のスカイを見て、フェアは目を輝かせている。

 

 

 

 しかし、スカイはその服装が嫌なのか、嫌々着ている感じだ。

 

 

 

「まさか、本当にキースが貴族だったなんてな……」

 

 

 

 ブラッドが言うとスカイは

 

 

 

「まぁ、まだって感じですけどね……」

 

 

 

 と答えた。ブラッドがそれについて聞こうとすると、扉が開き今度は青髪の太った老人が入ってきた。

 

 

 

「ああ、あの馬鹿はもうすぐ死亡扱いになって、この家とは無関係になるのだからな」

 

 

 

 老人の言葉を聞いたブラッドは立ち上がる。そして怒った口調で

 

 

 

「どういうことだ?」

 

 

 

 と聞く。すると、その間にスカイが入ってきてブラッドを止めた。

 

 

 

「これはパパが望んだことなんです」

 

 

 

 

 事情を聞くと、キースが死亡するわけではなく。情報上は死亡扱いにして、この家の後継者から外すというものだった。

 

 

 

 本来は家の継ぐべきなのはキースなのだが、キースは昔からそれを嫌がっており、色々と問題を起こしてきた。

 

 

 

 キースの父親であるケイスはキースにどうにか家を継がせようと結婚させたり、手を尽くしたのだが、キースはどうやっても継ぐ気はないらしく、弟に継がせるためにそのような手段をとったらしい。

 

 

 

 キースの父のケイスは泣きながら

 

 

 

 

「あの馬鹿のせいで私はどれだけ苦労したことか……」

 

 

 

「お爺ちゃん……」

 

 

 

「ああ、可愛い孫娘よ!! この私を慰めてくれるのか!?」

 

 

 

 スカイは着ている服を持ち上げると、

 

 

 

「これ脱いで良い?」

 

 

 

「ええぇー!? せっかくスカイのために選んであげたのに!?」

 

 

 

「だって動きにくいよ」

 

 

 

「うーん、じゃ良いよ!」

 

 

 

 なんだこの家族は…………。

 

 

 

 スカイは服を破いて動きやすくする。それを見たケイスは唖然としていた。

 

 

 

 まぁ、それもそのはずだ。選んであげた服が目の前で破られたのだ。ショックを受けないはずがない。

 

 

 

 しかし、ケイスはスカイに向かって、

 

 

 

「少し見ないうちに立派になったなぁ。キースの奴と旅をしたのが良かったかぁ」

 

 

 

 と言い出した。

 

 

 

 うむ、この理解できない行動は遺伝していたのか。

 

 

 

 

 

 

 

 



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 第251話  【BLACK EDGE 其の251 大会へ】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第251話

 【BLACK EDGE 其の251 大会へ】

 

 

 

 

 キースの父親にスカイがブラッド達について説明し、ここまで送ってきたことを伝えると、この国に滞在している間は屋敷の部屋を貸してくれると言ってくれた。

 

 

 

 フェアは屋敷でスカイの服を借りて、遊んでいる。ケイスはまるで孫が増えたようだと言って喜んで服を次々と出してくる。

 

 

 

 どれだけ服を買い溜めていたのか。倉庫の中から大量の服が運ばれていく様子をブラッドは見た。

 

 

 

 そんな中、ブラッドは例の大会に参加するため、参加手続きのために屋敷を出た。

 

 

 

 大会が開催されるのは闘技場だ。ブラッドはそこまで歩いて移動する。

 

 

 

「ブラッドさん!!」

 

 

 

 するとブラッドを後ろから呼ぶ声がした。振り向くとそこにはスカイがいた。

 

 

 

「スカイか。……お前ついて来てたのか」

 

 

 

「はい。私も大会に参加しようと思って」

 

 

 

 それを聞いたブラッドは驚く。

 

 

 

「お前も出るのか」

 

 

 

「突然です。この大会は四年に一度開催されて、過去三回パパは優勝しているんです!! パパがまだ帰っていない限り、私が参加して優勝するんです!!」

 

 

 

 

 スカイはそう言ってブラッドについていく。

 

 

 

 まだキースは帰って来ていない。

 

 

 

 キースの代わりにスカイが大会に参加したいということだ。

 

 

 

 確かにスカイの戦闘能力だったら大会に参加しても問題ないだろう。

 

 

 

 それにもしかしたら本当にスカイなら優勝してしまうかもしれない。スカイはそれだけの能力は持っている。

 

 

 

「そうか。じゃあ、いいんじゃないか」

 

 

 

 ブラッドはスカイと共に大会への手続きをする。

 

 

 

 大会への手続きを終えて、帰ろうとしたブラッド達だが、ブラッドはある人の姿を見た。

 

 

 

「っ!?」

 

 

 

 それは黄色いフードに仮面をつけた男の姿。その姿はグリモワールのようだ。

 

 

 

 そしてグリモワールの幹部は黒いフードでなく、色のついたフードをかぶっている。

 

 

 

 ブラッドがその男を警戒していると、その男が近づいて来た。そしてブラッドの耳元へ囁く。

 

 

 

「よくも私も部下のポイズンをやってくれたな。……………今回の大会は私たちグリモワールが優勝する。貴様は私に当たる前にやられるなよ……」

 

 

 

 そう言うと黄色いフードの男は去っていった。

 

 

 

「どうしたんですか? ブラッドさん?」

 

 

 

 ブラッドは黄色い男が近づいて来た時、動けなかった。

 

 

 

 なぜかは分からないが、ブラッドがその男が目の前に来るまで身体が石のように重くなり、動くことができなかった。

 

 

 

「……………いや、なんでもない」

 

 

 

 

 

 

 

 



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 第252話  【BLACK EDGE 其の252 屋敷でご飯】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第252話

 【BLACK EDGE 其の252 屋敷でご飯】

 

 

 

 大会への手続きを終えたブラッド達は屋敷に帰った。

 

 

 

 屋敷に戻るとフェアがいろんなドレスを着て楽しんでいる。

 

 

 

「ブラッド〜!! どうかな!!」

 

 

 

 フェアはブラッドが帰ってくると着せてもらったドレスをブラッドに見せようと、身体をくるくるさせている。

 

 

 

「似合ってるな!」

 

 

 

 ブラッドはそんなフェアの姿を見て言うと、フェアは頬を赤くして喜ぶ。

 

 

 

 喜ぶフェアの姿を見たケイスは

 

 

 

「気に入ったのならそいつはくれてやるよ」

 

 

 

「良いんですか?」

 

 

 

「ああ、可愛い孫のためだ!」

 

 

 

 いつからフェアはこの人の孫になったのだろうか。

 

 

 

 フェアは喜んでその貰った服を身につけたままはしゃいでいる。

 

 

 

「おい、そんなに走ると転ぶぞ」

 

 

 

 ケイスがそう言った瞬間、フェアは盛大に転んだ。

 

 

 

 

 太陽は隠れ、月が天に輝く。屋敷の大部屋に料理が並べられる。

 

 

 

「す、すげー」

 

 

 

 ブラッドとフェアはその料理を見て衝撃を受ける。見たことがないものばかりだ。

 全てが高級なもので、二人は食べたことがないものばかりだ。

 

 

 

 そんな料理の並べられた食卓でスカイとケイスと共にもう一人の人物を待っていた。

 

 

 

 今、この家にはキースの妻がいる。

 

 

 

 キースの弟の家族は、今は別のところに住んでいる。仕事の都合上、この屋敷は職場から遠いため近いところに屋敷を立てて住んでいるらしい。

 

 

 

 そのため今この家にいるのは、キースの妻と娘、そして父親だけだ。

 

 

 

 しばらくすると、キースの妻がやってくる。

 

 

 

 キースの妻は部屋に入ってくると、周りを見渡す。

 

 

 

「スカイちゃーーーん!!」

 

 

 

 そしてスカイを見つけるとスカイに飛びついた。

 

 

 

「ママ……苦しい」

 

 

 

「久しぶりねぇーーー!! スカイちゃん!!」

 

 

 

 キースの妻はスカイに顔をすりすりさせる。

 

 

 

 そしてしばらく経って落ち着くと、また周りを見渡した。

 

 

 

「それとキースはどこなの?」

 

 

 

「まだ帰ってきてないよ」

 

 

 

 スカイがそう伝えると、肩を落としてショックを受ける。

 

 

 

 そしてまた周りを見ると今度はブラッドとフェアを見つけた。

 

 

 

 ブラッド達を見つけると、立ち上がりゆっくりと近づく。

 

 

 

「あ、その人達は……………」

 

 

 

 スカイがブラッド達について説明しようとした時、キースの妻はブラッドの目の前に立つと、両手でブラッドの肩をガシッと掴む。そしてブラッドの肩を引っ張ると腹目がけて膝で蹴った。

 

 

 

「うぐっっっ!?」

 

 

 

 ブラッドは腹を押さえて倒れる。

 

 

 

「誰よあんたァァァァァ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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 第253話  【BLACK EDGE 其の253 キースの妻】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第253話

 【BLACK EDGE 其の253 キースの妻】

 

 

 

 ブラッドは突然キースの妻に蹴られて腹を押さえて倒れた。

 

 

 

「あんた誰よォォォ」

 

 

 

 

 

 スカイがブラッドに事情を説明して、落ち着いたキースの妻、セイラは席についた。

 

 

 

「そうなのね。スカイをここまで送ってくださったの。ありがとうございます」

 

 

 

 セイラはブラッドとフェアに頭を下げる。

 

 

 

 そんなことよりも蹴ったことを謝ってほしい。

 

 

 

「それでキースはまだ帰らないのですか?」

 

 

 

 セイラは執事に聞くと、執事は答える。

 

 

 

「スカイ様が帰られた手紙を送りましたので、数日後には帰られると思われます」

 

 

 

「そう、それは良かったわ」

 

 

 

 セイラはそう言うと食事を始める。みんなも食べ始めるのだが……。

 

 

 

「ブラッドさん、どうしたのですか。もしかしてお口に合いませんでした?」

 

 

 

 セイラは全然食べないブラッドを見て言う。

 

 

 

「いや、そういうわけでは………………」

 

 

 

 あなたに蹴られたからだよ!!

 

 

 

 結局こんな豪華な料理をブラッドは全然食べることができなかった。

 

 

 

 というか、油断していたとはいえ、セイラの蹴りが強烈すぎる。

 何かの武術をやっていたのだろうか。

 

 

 

 セイラとキース。その娘のスカイの強さ。そして理解できなさ。全てに納得できた。

 

 

 

 突然蹴る……なんて……………。

 

 

 

 

 食事を終えたブラッド達はその場で会話を始めた。

 

 

 

「キースのお友達でしたの〜、それにスカイを送ってくださったのね」

 

 

 

「は、はい……」

 

 

 

 なぜ、あいつが友達なんだ。

 

 

 

「ガルデニアにいたころのキースについて、教えてくださる?」

 

 

 

 セイラが言うと、スカイもワクワクした顔で、

 

 

 

「私も気になります!!」

 

 

 

 と言ってきた。

 

 

 

 うーむ、妻と娘に言えるようなあいつの話…………。まぁ、少しくらい盛ってやろう。

 

 

 

 ブラッドはキースの家族に、ガルデニアでのキースやヒューグとの出来事を話す。

 

 

 

 フェアやケイスも楽しそうに話を聞いていた。

 

 

 

 

 

 

 王都ガルデニア。ブラッドは組織の情報収集と金を得るためにそこに来ていた。

 

 

 

 王都ではブラッドが来る前からヒューグが賞金稼ぎとして、活躍しており多くの犯罪者を捕まえていた。

 

 

 

 ブラッドもギルドを作り、賞金首を捕まえながら賞金を得ていた。

 

 

 

 ブラッドとヒューグが賞金稼ぎとして王都で知られ始めた頃。キースがやってきた。

 

 

 

 ブラッドやキースに比べると、身体も腕も細い。そんな男がギルドに入ってきた。

 

 

 

「たのもーう!!」

 

 

 

 しかも自信満々の表情で。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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 第254話  【BLACK EDGE 其の254 ガルデニアの思い出】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第254話

 【BLACK EDGE 其の254 ガルデニアの思い出】

 

 

 

 

 王都ガルデニア。ブラッドが賞金稼ぎをしていた時の話だ。

 

 

 

 ヒューグとブラッドが賞金稼ぎとして名前が王都でも知られ始めた頃。ギルドでブラッドが手配書を見ていると、一人の男が扉を勢いよく開けた。

 

 

 

「たのもーう!!」

 

 

 

 青い髪に腰には立派な剣を下げた。細身の身体の男。その男は大声を出すと、自信満々の顔で堂々とギルド内に入ってくる。

 

 

 

 周りの人たちはその男に注目し、ヒソヒソと話している。

 

 

 

 そんな中、その男はカウンターに行くと店員に話しかけた。

 

 

 

「ギルドカードを作ってくれ」

 

 

 

 男のその言葉を聞いた人達は大笑いする。

 

 

 

 立派な剣を持っているが身体は貧弱そうで、そんな人がギルドカードを作ろうとしたため笑ったのだ。

 

 

 

 ギルドの仕事は基本的に力仕事が多い。そして危険な仕事も多いことから、やる人は犯罪者ではないが、それと張り合えるような人物達だ。

 

 

 

 店員はその男のカードを作るために、名前などを聞く。そんなカードを作っている最中に、キースの後ろに大男が立った。

 

 

 

 その男は後ろに大剣を持っており、王都ではそこそこ名前を知られている人物だ。

 

 

 

「へぇ〜、キースって言うのか。お前、そんな貧弱そうな身体でここで働けるのか?」

 

 

 

 どうやらその男は酔っているようだ。顔も赤いし、フラフラしている。

 

 

 

 その男はヒューグ。ブラッドも前に何度か絡まれたことがある。

 

 

 

 キースは振り向くとヒューグのことを睨む。

 

 

 

「なんだ、貴様……」

 

 

 

 予想以上に怖い表情をされたヒューグは一瞬たじろぐが喧嘩腰になる。

 

 

 

 そんなヒューグを見てキースは腰にある剣に手を置いた。

 

 

 

「…………あの〜、カードの手続きの続きをしたいのですが…………」

 

 

 

 店員は睨み合っているキースにそう言う。

 

 

 

「ああ、すまない……」

 

 

 

 キースは手続きの続きをしようとするが、ヒューグがキースの肩を掴んで止めた。

 

 

 

「待てよ。逃げるのか?」

 

 

 

「逃げてはない。お前などに構う必要はないということだ」

 

 

 

「表に出ろ。この世界の辛さを俺が教えてやる」

 

 

 

 ヒューグはキースを連れて行こうとする。それを店員が止めようとするが、ヒューグが店員を脅してそのまま連れていってしまった。

 

 

 

 二人はギルドの裏にある空き地に行く。

 

 

 

 ヒューグはよく新人に絡むとこの空き地に連れてきて新人を脅す。確かに簡単にできる仕事ではない。だが、ここまでする必要はあるのだろうか。

 

 

 

 空き地には騒ぎを聞きつけたギルド会員や住民が見学に来ている。そんな中、キースとヒューグは向かい合った。

 

 

 

 

 

 



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 第255話  【BLACK EDGE 其の255 新人】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第255話

 【BLACK EDGE 其の255 新人】

 

 

 

 

 王都ガルデニア。ギルドの裏にある空き地でキースとヒューグが睨み合っていた。

 

 

 

 ギルドの関係者から王都の住民など野次馬が空き地を囲う。

 

 

 

「怖かったら逃げても良いんだぜ」

 

 

 

 ヒューグがキースを挑発する。しかし、キースは怖気付くことはなくヒューグを睨み返す。

 

 

 

「それはこっちの台詞だ。謝るんなら今のうちだぞ」

 

 

 

 キースの言葉にムカついたヒューグが背中に背負っている大剣を掴む。するとキースの腰の剣に手を置いた。

 

 

 

 二人ともすぐにでも剣を抜ける体制だ。合図があれば、今にでも戦闘を始めそうな感じだ。

 

 

 

「おい、君たち何やってるんだ!!」

 

 

 

 そんな中、空き地での騒ぎを聞きつけて、王都の警備兵がやってきた。

 

 

 

 警備兵は野次馬を退けながら空き地へと向かう。そして空き地で睨み合う二人を見つけた。

 

 

 

「またお前か……」

 

 

 

 ヒューグを見た警備兵は呆れたように言う。

 

 

 

 こんな決闘が王都内で起きていれば、止めに来るしかない。この警備兵はよくヒューグが騒ぎを起こすたびに駆けつける警備兵である。

 

 

 

 今にも戦闘を開始しそうな二人を止めようと、警備兵は空き地の中に入る。しかし、空き地に転がっている石に躓いて転んでしまう。

 

 

 

 そしてその警備兵が転んだのを合図に、二人の戦闘は始まった。

 

 

 

 ヒューグが大剣を抜き、それを右から左へと大きく振る。キースは剣を抜くとヒューグの大剣に軽く当てて、ほんの少しの力を加えて軌道をズラす。

 

 

 

 そして軌道が斜め上へと変わったため、キースは膝を曲げて姿勢を低くして大剣を躱す。

 

 

 

 それを見ていた野次馬は、ヒューグの剣をそのように避けるとは思っていなかったため、驚きの声をあげる。

 

 

 

 キースは低い体制のまま、ヒューグの懐に入る。そしてヒューグに向けて剣を振り上げる。だが、ヒューグはキースに避けられた時点で大剣を手放しており、素早く両腰につけてあった二本の短剣を抜くと、それでキースの攻撃を防ぐ。

 

 

 

 金属音を鳴らし、二人の武器はぶつかる。そして二人の刃は弾き合い、二人は同じ距離後ろに下がらされた。

 

 

 

 ヒューグの大剣は飛んでいき、空き地の隣にあったギルドの壁をぶち破って止まる。

 

 

 

 転んだ警備員は怖くて頭を抱えたまま動けずにいた。

 

 

 

「やるな……お前」

 

 

 

「ああ、お前こそな……」

 

 

 

 二人はそう言い合うと、お互いに武器をしまう。

 

 

 

 ヒューグはギルドの壁を破壊した大剣を手に持つと、

 

 

 

「今回は認めてやるよ。だが、この仕事を舐めるなよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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 第256話  【BLACK EDGE 其の256 王都】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第256話

 【BLACK EDGE 其の256 王都】

 

 

 

 

 キースがギルド会員になってから半年。今ではヒューグ、ブラッド、キースの三人は賞金首から恐れられる存在になっていた。

 

 

 

 賞金首達にとって、三人に出会うことは最悪の事態であり、王都でこの三人を知らないものはいないレベルになっていた。

 

 

 

 そんな時、ギルドである騒ぎが起きていた。

 

 

 

 それは大物賞金首ジガンデルが王都に潜伏しているという情報があったからだ。

 

 

 

 ジガンデルは犯罪組織ターマイトの親玉であり、コスモスという国の元騎士であったが国家を裏切り転覆を狙っていた。

 

 

 

 しかし、コスモスは大打撃を食らったが他国からの支援もあり、どうにかターマイトの弾圧に成功。

 残すはジガンデルの処刑だけであった。

 

 

 

 だが、処刑当日にジガンデルが脱走し、他国へと逃亡。それから何年もの間逃亡生活を続けている。

 

 

 

 多くの賞金稼ぎを返り討ちにしており、実力の高さと潜伏能力。そして国家が賞金を賭けているということもあり、かなりの高額である。

 

 

 

 そんなジガンデルが潜伏しているという情報を聞いたブラッドは隣にいるヒューグに聞く。

 

 

 

「こいつはやるか?」

 

 

 

「ああ、やろうぜ」

 

 

 

 ヒューグは即答する。

 

 

 

 この頃、ブラッドはヒューグとタッグで賞金稼ぎをしていた。

 

 

 

 ブラッドとしてもこのジガンデルの賞金が手に入ると嬉しい。

 

 

 

 グリモワールを追うために資金調達のために王都では賞金稼ぎをしていた。かなりの資金が溜まってきており、このジガンデルを捕らえれば目標額に一気に近づく。

 

 

 

 ブラッドとヒューグがジガンデルの手配書のコピーを貰うと、ギルドの端で同じように手配書のコピーを眺めている人物がいた。

 

 

 

「おい、キース。お前もこいつを狙うのか?」

 

 

 

 キースを見つけたヒューグが絡みに行く。

 

 

 

 なんだかんだでこの三人は会うことが多い。仲が良いか悪いかというと、どちらかというと悪い方だ。

 

 

 

 だが、この三人が協力すれば、どんな相手にも負けない気がするというもの事実だ。

 

 

 

「ああ、そのつもりだが…………お前らもか?」

 

 

 

「当然だ。こいつは俺の獲物だ」

 

 

 

「いいや、俺の獲物だ!!」

 

 

 

 キースとヒューグは睨み合う。

 

 

 

「よし、じゃあ、誰が一番早くこいつを捕まえられるか、勝負しようぜ!!」

 

 

 

 ヒューグがそんなことを言い出す。

 

 

 

「構わないぞ!! 勝つのは俺だからな!!」

 

 

 

 そういうと二人はブラッドを巻き込んで、ジガンデルを捕まえる勝負を始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 



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 第257話  【BLACK EDGE 其の257 ガルデニアの賞金稼ぎ】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第257話

 【BLACK EDGE 其の257 ガルデニアの賞金稼ぎ】

 

 

 

 

 王都ガルデニア。そこに大物賞金首ジガンデルが潜伏しているという情報が流れ、賞金稼ぎ達は各々がジガンデルの賞金を獲得しようと動いていた。

 

 

 

 そんな中にブラッド、ヒューグ、キースの三人もいた。

 

 

 

「それでどうやって探すつもりだ?」

 

 

 

 ブラッドさヒューグに聞く。

 

 

 

 ジガンデルは国に追われている身でありながら、ずっと逃げ続けている人物だ。簡単に見つけられるとは思えない。

 

 

 

「そうだな。とりあえず、空き家を回ってみるか」

 

 

 

 ヒューグの提案でブラッドとヒューグは使われていない空き家を見回ることにした。

 

 

 

 しかし、そんな簡単に見つかるはずもなく。ジガンデルは見当たらない。

 

 

 

 それでも王都を歩き回り、ジガンデルを探す。

 

 

 

 そんな中、キースが二人に話しかけてきた。

 

 

 

「困っているようだな!」

 

 

 

 見つけられずにいる二人を揶揄うようにキースは

 

 

 

「まだ見つけられないのか?」

 

 

 

 挑発する。その挑発にヒューグが喧嘩腰になるが、ブラッドが止めた。

 

 

 

 

「お前も見つけられてないんじゃないか?」

 

 

 

 するとキースは首を振る。

 

 

 

「いや、居そうな場所の目星はついた。でも、俺だけじゃ実力不足でな」

 

 

 

 キースだけじゃ実力不足?

 

 

 

 ブラッドは首を傾げる。

 

 

 

 キースの実力はヒューグやブラッドに並んでいる。王国の兵士を十人同時に相手できるほどの実力は持っている。

 

 

 

 だが、そんなキースが実力不足と言うとは……。

 

 

 

 首を傾げたブラッドに応えるようにキースは手に持っていた紙をブラッドに投げつけた。ブラッドはそれを受け取ると内容を見る。

 

 

 

 そこには有名な騎士や賞金稼ぎの名前が並んでいた。そのどれもが手練れであり、三人と張り合える実力者ばかりだ。

 

 

 

「こいつらはジガンデルの被害者だ」

 

 

 

 キースがそう言うとブラッドは驚く。

 

 

 

 ジガンデルはそれほどまでに実力が高いということなのか。

 だからキースがブラッド達に声をかけたのか。

 

 

 

「競争じゃなかったのか?」

 

 

 

 ヒューグがキースに聞く。するとキースは、

 

 

 

「そいつを逃したらそれは俺たちの責任になる。こんな犯罪者を自由にしておくわけにもいかないだろう」

 

 

 

「そうだな。じゃあ、競争はやめるってことか!」

 

 

 

 ブラッドが嬉しそうに言うと、キースは否定する。

 

 

 

 

「そんなわけはないだろ。続けるさ!! だが、ジガンデルを逃さない程度にだ!! 誰がジガンデルに最終的に捕らえるか、それが勝負だ!!」

 

 

 

 キースはそう言うと、ブラッド達を連れてある場所を目指すのであった。

 

 

 

 

 

 



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 第258話  【BLACK EDGE 其の258 捕まえろ】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第258話

 【BLACK EDGE 其の258 捕まえろ】

 

 

 

 

 

 キースに連れられてブラッドとヒューグは王都のある建物にやってきた。

 

 

 

 そこは王都にある武器屋の一つ。前にブラッド達もここで武器を購入したことがあった。

 

 

 

 そんな普段からある武器屋へと辿り着いたのだが、

 

 

 

「おい、なんでここなんだ?」

 

 

 

 ブラッドがキースに聞く。すると、キースは答えた。

 

 

 

「ここが一番怪しいんだ。ジガンデルはコスモスの反乱組織に所属していた。そしてその反乱組織の武器はどこで手に入れていたと思う?」

 

 

 

「他国か?」

 

 

 

「そう、その一つであった可能性があるのが、ここなんだ」

 

 

 

 キースの話ではジガンデルの設立していたターマイトという組織に武器を密かに流し込んでいる組織があったという。その情報をたどり、その可能性があった組織と関連性があるのがこの武器屋ということだ。

 

 

 

「それでここにジガンデルが潜伏していると考えたのか」

 

 

 

 ターマイトでの関係があった組織とまだ繋がりを持っているジガンデルは、逃亡を手助けしてもらっていたのだろう。

 

 

 

 そして再びターマイトが復活した時に、助けてもらった組織との繋がりを続けるということだ。

 

 

 

 それだけジガンデルが他の組織からも認められているということだ。そして必ず復活すると思われている。

 

 

 

 ブラッド達が扉を開けて武器屋に入ると、普段と変わった様子はない。だが、店員に止められる中、奥の部屋へと入るとそこには緑髪の男がいた。

 

 

 

 白いシャツを着て、前を開けて筋肉を見せびらかすように露出させている。顎には髭を生やしており、ブラッド達よりも少し歳上という感じだ。

 

 

 

「ん、…………誰だ、君たちは…………」

 

 

 

 男はブラッド達を見ると寝ていたのか、目を半分くらい開けて聞いてきた。

 

 

 

 この男がジガンデルで間違い無いだろう。手配書では髭はないが同じ顔の人物だ。

 

 

 

「俺たちは賞金稼ぎだ。最近王都で大物賞金首が潜伏してると聞いてな。そいつを捕まえにきた」

 

 

 

 ヒューグがジガンデルに言うと、ジガンデルはやれやれと言いながら立ち上がる。

 

 

 

 そして立ち上がる途中で倉庫の棚に置いてあった剣を手に取った。その剣は手配書にも写っており、ジガンデルの愛用している剣のようだ。

 

 

 

 柄のところには布が巻かれており、その布がヒラヒラと風に煽られる。

 

 

 

「俺を捕まえにきたか……その台詞を聞くのは何度目か…………」

 

 

 

 ジガンデルはめんどくさそうに剣を抜く。

 

 

 

「賞金稼ぎ、俺を捕まえるってことがどういうことだか、教えてやるよ」

 

 

 

 

 

 

 



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 第259話  【BLACK EDGE 其の259 ジガンデル】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第259話

 【BLACK EDGE 其の259 ジガンデル】

 

 

 

 

 

 武器屋の倉庫でジガンデルを発見したブラッド達。

 

 

 

 ジガンデルはブラッド達に見つかると、めんどくさそうに立ち上がり剣を抜いた。

 

 

 

 ブラッド達もジガンデルが武器を持ったことで構える。

 

 

 

「…………ここで三人同時は、ちょっぴり狭いな」

 

 

 

 ジガンデルはそう言うと武器を構えたまま後ろに飛ぶ。ブラッド達はジガンデルを追うが、ジガンデルは店の壁を剣で切ると四角い穴を開けた。

 

 

 

「…………あんな綺麗に切れるのかよ」

 

 

 

 ブラッドはそんなジガンデルを見て驚く。

 

 

 

 壁を破壊するくらいなら、普通の人ではできないが、ブラッドでもできる。

 

 

 

 しかし、あそこまで綺麗に穴を開けることはできない。それも音を抑えて壁を破壊した。店の外は人通りの少ない路地ではあるが、壁が破壊されれば普通なら人が駆けつける。

 

 

 

 だが、音をほとんど鳴らさずに切断したため、壁が破壊されたことに他の人は気づいてすらいない。

 

 

 

 それは騒ぎを起こさないようにして、他の警備兵や賞金稼ぎを呼ばないためだろう。

 

 

 

 つまりジガンデルはここでブラッド達を一人で相手して、勝つつもりでいるのだ。

 

 

 

「…………おい、お前ら同時に……」

 

 

 

 ブラッドがヒューグとキースに同時に攻撃することを提案しようてした時、二人は動いた。

 

 

 

 ヒューグは左からキースは右からジガンデルに襲いかかる。

 

 

 

 ヒューグは大剣を横に振る。しかし、ヒューグの剣をジガンデルが剣で受け止める。

 

 

 

 大剣と通常の剣だ。普通なら耐久力に差がある。だが、ヒューグの剣はジガンデルによりピッタリと止められてしまう。

 

 

 

「なに!?」

 

 

 

 だが、ジガンデルがヒューグの剣を止めている間に、キースはジガンデルに剣で攻撃する。

 

 

 

 だが、ヒューグの剣を受け止めていたはずの剣は素早く動き、キースの攻撃も防ぐ。そしてキースの剣を受け止めると、ジガンデルは防がれて無防備になったキースに蹴りで攻撃する。

 

 

 

 蹴られたキースは吹っ飛び、近くにあった木箱に突っ込む。

 

 

 

 大剣を止められたヒューグはキースが蹴ったジガンデルに拳を握り殴りかかる。

 

 

 

 だが、ジガンデルはヒューグの拳をギリギリで躱すと、ヒューグに蹴りで攻撃する。

 

 

 

 ヒューグは腹に一撃食らうが、それではやられず。ジガンデルの足を掴む。そしてジガンデルを持ち上げた。

 

 

 

「やれ!!」

 

 

 

 持ち上げられたジガンデルにブラッドが飛びかかる。

 

 

 

 そしてジガンデルの顔面に向かって、拳を振るった。

 

 

 

 

 

 

 



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 第260話  【BLACK EDGE 其の260 悔しかった】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第260話

 【BLACK EDGE 其の260 悔しかった】

 

 

 

 ブラッドの拳で顔面を殴られたジガンデルは地面に沈む。

 

 

 

「…………やったか?」

 

 

 

 ジガンデルを持ち上げていたヒューグは腹を押さえて膝をついた。

 

 

 

 ジガンデルの蹴りはキースを吹っ飛ばすほどの威力があった。それを堪えていたのだ。

 

 

 

 ブラッドほジガンデルを倒せたかどうか確かめようと近づく。

 

 

 

 ジガンデルは立ち上がることはなく、倒すことができた。

 

 

 

 こうして大物賞金首ジガンデルを捕らえることができたのであった。

 

 

 

 

 

 

 話を聞き終えたスカイは

 

 

 

「それがこの前の件の話ですか……」

 

 

 

 と呆れるように言った。

 

 

 

 そういえば、雪山でキースとスカイと会った時に、この話でキースから喧嘩を売られた。

 

 

 

「まぁ、あいつとしては戦闘が始まってすぐに気を失ったからな。悔しかったんだろうな」

 

 

 

 木箱に激突したキースは気絶していた。そして気絶している間に、ブラッド達はジガンデルを倒したのだ。

 

 

 

 それが悔しかったのだろう。自分がジガンデルの居場所を発見したのだが、何もできなかったのだ。

 

 

 

 キースの実力なら気絶さえしていなければ、ブラッドの代わりに倒していたかもしれないが、あの時は当たりどころが悪かった。

 

 

 

 そんな感じでスカイ達に他の話をして、終えたブラッドは部屋に戻って寝る準備をしていた。

 

 

 

 ここは大きな屋敷だ。一人用の部屋であっても広い。そしてベッドもふかふかだ。

 

 

 

 ブラッドは扉を少しだけ開けて、誰もいないのを確認すると、ゆっくりと扉を閉める。

 

 

 

 そしてベッドにお尻を乗せて座ると、少し跳ねてみた。ベッドはブラッドの身体を反発してバウンドする。

 

 

 

「…………」

 

 

 

 ブラッドは今までこんなベッドで寝たことがなかった。メテオラの元で修行している時代も固かったし、王都で賞金稼ぎをしている時も貯金のため安い宿で泊まっていた。

 

 

 

 ブラッドは子供時代に戻るように、ベッドで跳ねて遊んでいると、

 

 

 

「ブラッド〜」

 

 

 

 突然扉が開かれた。そしてそこから出てきたのはフェアだ。

 

 

 

 ベッドで跳ねて遊んでいたブラッドはフェアと目が合う。そして動きが固まった。

 

 

 

 めっちゃ恥ずかしい。

 

 

 

「な、なんだ……」

 

 

 

 ブラッドは遊んでいたことを誤魔化すようにフェアに言う。

 

 

 

 フェアに触れないでほしいというブラッドの気持ちが伝わったのか。フェアはブラッドは遊んでいたことには触れずに本題を始めた。

 

 

 

「ブラッド、なんか手紙が来てたんだけど…………」

 

 

 

 

 

 

 

 



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 第261話  【BLACK EDGE 其の261 王都で見かけた】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第261話

 【BLACK EDGE 其の261 王都で見かけた】

 

 

 

 フリジア村。そこから少し歩いたところにある一軒の家。そこに一人の女性が住んでいた。

 

 

 

「うーんと、これと、これと、これも入れちゃえ!!」

 

 

 

 鍋の中に次々と食材を入れていく。朝食の調理をしていると、玄関の扉が叩かれた。

 

 

 

 火を消してから玄関に向かう。扉を開けるとそこにいたのは、金髪碧眼に青いコートを着た男。

 

 

 

 

「ブレイド兄様!」

 

 

 

 それは王都ガルデニアにいるはずの兄だった。

 

 

 

「久しぶりです。ブレイド兄様…………」

 

 

 

 リナはブレイドがやってきたことを驚く。

 

 

 

 ブレイドがここに来るのは久しぶりだ。

 

 

 

「久しぶりだな。リナ……」

 

 

 

「どうしたのですか?」

 

 

 

 リナが聞くとブレイドは答えた。

 

 

 

「王都での騒ぎを知っているか?」

 

 

 

「はい。村でも噂になっていました。兄様が活躍なされたことも聞いております」

 

 

 

 あの事件はグリモワールという組織の赤崎という男が起こした事件だった。そしてそれを捕まえたのは王国兵ということになっている。

 

 

 

 その理由はグリモワールを大々的に世間に晒すことができないのと、グリモワールを倒した人物を隠すことになったからだ。

 なぜかは分からない。王都で過去に有名だった賞金稼ぎ。しかし、なぜそれを王国は隠すのか、そしてグリモワールも隠そうとするのか。

 

 

 

 だが、それ以外にブレイドは驚くことがその事件の時に起こっていた。

 

 

 

 

「俺はその事件の時、兄さんにあったかもしれない」

 

 

 

 ブレイドの言葉を聞いたリナは驚く。

 

 

 

「兄さんに!? 本当ですか!!」

 

 

 

「ああ、手紙では伝えたが、俺たちの故郷はすでに無くなっており、兄さんの行方も分からなかった。兵士と共に各地を歩き回ったが何の情報も得られなかった。だが、俺はあの事件の時に兄さんに会ったんだ」

 

 

 

 それを聞いたリナは喜ぶ。

 

 

 

 この前にリナもその人物に似た人に出会った。話しかけることはできず、遠くから見ただけだったが、もしかしたらそうだったのかもしれない。

 

 

 

 しかし、喜ぶリナに真剣な表情でブレイドが話しかけた。

 

 

 

「だが、決して兄さんを信用するな」

 

 

 

「どうしてですか? あの優しかった兄さんですよ?」

 

 

 

 ブレイドはあの時の戦いを思い出す。そして黒いオーラを纏い、巨大なゴーレムを倒す姿を思い出した。

 

 

 

「もしかしたらもう、兄さんは俺たちの知る存在じゃ無いのかもしれない。俺が見た兄さんは、俺の知る兄さんじゃなかった。だから、決して信用するな」

 

 

 

 

 

 

 



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 第262話  【BLACK EDGE 其の262 出会い】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第262話

 【BLACK EDGE 其の262 出会い】

 

 

 

 大会へのエントリーも済み、大会開始まで数日の様子があるブラッド達は、マルグリットにあるキースの屋敷でしばらく暮らすことになった。

 

 

 

 そしてブラッドはフェアと共にマルグリットの王都を散歩していた。

 

 

 

「あ! ブラッド、見てみて、これ初めて見るよ!!」

 

 

 

 フェアはそう言うと一軒の店に走っていく。そこはお菓子屋さんであり、そこにはガルデニアでは見ることができなかったお菓子が並んでいた。

 

 

 

 お菓子を見つけたフェアはジーッと見つめる。

 

 

 

 そんなフェアを見たブラッドは

 

 

 

「分かったよ。買ってやるよ」

 

 

 

 と言うと店に入った。お店の中にはクッキーやケーキ、様々なものが並べられている。

 

 

 

「何が良いかな?」

 

 

 

 フェアはそんなお菓子を見ながらブラッドに聞く。

 

 

 

「そうだな。これなんてどうだ?」

 

 

 

 

 ブラッドが指差したのはガルデニアではあまりなかったチョコの使われたクッキーだ。

 

 

 

 ガルデニアではチョコは輸入に頼っており、手に入る数も少ない。そのためお菓子で使われていても高かったり、ここまでガッツリ入っているものは珍しかった。

 

 

 

「うーん、じゃあ、これ!!」

 

 

 

 そう言ってフェアが指差したのはいちごのクッキーだ。

 

 

 

「いや、それはガルデニアでも買えるじゃん!」

 

 

 

 ブラッドが言うとフェアは頭を掻きながら、

 

 

 

「でも、今これが食べたい気分なんだよね〜」

 

 

 

 結局ブラッドはいちごのクッキーとチョコのクッキーを両方買った。というか自分でも食べたかったため、チョコのクッキーは買った。

 

 

 

 お店の近くにある公園のベンチでブラッド達は早速クッキーを食べてみた。袋に十個ほど詰められており、それを一つずつ取って食べる。

 

 

 

「いるか?」

 

 

 

 ブラッドはチョコのクッキーを食べながらフェアに聞く。しかし、フェアは首を振ると、

 

 

 

「大丈夫」

 

 

 

 と言って自分のいちごのクッキーを食べ進める。

 

 

 

 チョコのクッキーをひとつ食べ終わったところで、ブラッドはフェアに、

 

 

 

「一つ分けてくれ」

 

 

 

「これはガルデニアでも食えるって言ってたじゃん」

 

 

 

「…………食べたくなっちゃった」

 

 

 

 結局は慣れている味が一番なのかもしれない。

 

 

 

 そんな感じでフェアのクッキーを貰ったブラッドだが、

 

 

 

「私にも一つください」

 

 

 

 フェアのさらに隣から女の子の声がした。

 

 

 

「いいよ」

 

 

 

 フェアは何も言わずにクッキーを渡す。

 

 

 

 ブラッドはマルグリットに住んでいる子供かなと思い、その声の持ち主の方を見る。すると、

 

 

 

「っ!?」

 

 

 

 そこにはフェアがもう一人いた。

 

 

 

 

 

 

 

 



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 第263話  【BLACK EDGE 其の263 二人のフェア?】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第263話

 【BLACK EDGE 其の263 二人のフェア?】

 

 

 

 

 

 公園でクッキーを食べていると、フェアの隣にフェアと同じ顔の女の子が座っていた。

 

 

 

 ブラッドはそれを見て驚いて立ち上がる。

 

 

 

「お、おい、フェア……」

 

 

 

 ブラッドは二人になったフェアを見て驚く。

 

 

 

「え、なに?」

 

 

 

「なんですか?」

 

 

 

 二人のフェアはお互いを見ると、見つめ合ったまま固まった。そして、二人とも自分のほっぺたをつねる。

 

 

 

「私…………私!?」

 

 

 

 二人はお互いを見合って驚く。

 

 

 

 さっきまで一緒に行動していたフェアは、ケイスから貰ったドレスを着ている。

 逆にさっきクッキーを貰っていたフェアは、白いワンピースを着ており、頭には髪飾りをつけている。

 

 

 

「もしかして、リナリアか?」

 

 

 

 ブラッドは増えた方のフェアに聞く。しかし、それを聞いたフェアは首を傾げた。

 

 

 

 リナリアはプロタゴニストの森に行った時に出会った人物だ。特殊な森の力なのか、人の姿を真似ることができて、ブラッドやフェアの姿によく変身していた。

 

 

 

 だが、ここはプロタゴニストからかなり離れた場所にある。

 

 

 

 首を振ったフェアは立ち上がると、腰に手を当てて胸を張った。

 

 

 

「私は……」

 

 

 

 そこまで言いかけたところで、

 

 

 

「ルルシア様〜!!」

 

 

 

 公園の入り口から白髪の女性が走ってきた。

 

 

 

 ルルシア様……? その名前にはどこかで聞き覚えがある気がする。

 

 

 

 女性はルルシアと呼ばれた少女の元に駆け寄ると、

 

 

 

「突然いなくならないでくださいよ。びっくりします」

 

 

 

「ははは〜、すみません」

 

 

 

 ルルシアは笑って誤魔化す。

 

 

 

 ルルシアという名前に聞き覚えがあったブラッドが少し考えていると、ルルシアという名前について思い出した。

 

 

 

 ここ、マルグリットには王族がおり、今の王様には娘がいる。

 

 

 

 その娘の名前はルルシア。そう、このマルグリットの王女様、ルルシアだったのである。

 

 

 

「王女様!?」

 

 

 

 ブラッドが言うと、それを聞いたフェアも驚く。

 

 

 

 そしてブラッドの言葉を聞いた白髪の女性は、

 

 

 

「しまった!?」

 

 

 

 と言って自分の手で口を塞ぐ。

 

 

 

 今更口を塞いでも遅い。

 

 

 

 しかし、それ以上に、

 

 

 

「王女様が私とそっくり…………」

 

 

 

 フェアはルルシアの姿を見て驚く。だが、ルルシアもフェアの姿を見て驚いていた。

 

 

 

 そんな状態でお互いに驚いていると、公園の外から声が聞こえてきた。

 

 

 

「おい、今王女様がどうとか聞こえなかったか?」

 

 

 

 そして数人の住民達が公園に入ってくる。その姿を見た白髪の女性は、フェアの手を掴むと、

 

 

 

「行きますよ、ルルシア様!!」

 

 

 

 と言ってフェアを連れて走り出してしまう。

 

 

 

「お、おい、そっちは王女じゃねー!!」

 

 

 

 ブラッドはそう言うと、二人を追う。

 

 

 

「ま、待ってくださーい!!」

 

 

 

 ルルシアもその三人を追って走り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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 第264話  【BLACK EDGE 其の264 ルルシア】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第264話

 【BLACK EDGE 其の264 ルルシア】

 

 

 

 

 フェアを連れて行った白髪の女性は公園の奥の人の少ない場所まで行く。

 

 

 

「はぁはぁ、大丈夫ですか……。ルルシア様…………ルルシア様? ……じゃない!?」

 

 

 

 ルルシアだと思っていた人物がルルシアではなくフェアであることに驚く。

 

 

 

 そんな驚いている二人の元にブラッドとルルシアが走ってきた。

 

 

 

「おーい、フェア!!」

 

 

 

「ジーナス!!」

 

 

 

 二人は名前を叫びながら走る。それを見た白髪の女性は、

 

 

 

「ルルシア様!!」

 

 

 

 そう言ってルルシアの元へと走り出した。そしてブラッドを突き飛ばすと、ルルシアを抱き締める。

 

 

 

「良かった〜、ご無事でしたか」

 

 

 

「はい」

 

 

 

 ジーナスと呼ばれた女性はルルシアを抱きしめて、怪我をしていないか確認する。

 

 

 

 突き飛ばされたブラッドは転んで地面に尻をつく。

 

 

 

「大丈夫? ブラッド」

 

 

 

 そんなブラッドにフェアは駆け寄ってきた。

 

 

 

「ああ、大丈夫だ」

 

 

 

 ブラッドは立ち上がると、ジーナスはブラッドの方を向く。

 

 

 

「あなた達は何者ですか。…………もしやルルシア様を狙う暗殺者!? ルルシア様にそっくりな人を差し向けて、ルルシア様の命を!?」

 

 

 

 勝手に妄想を始めたジーナス。そしてどんどん熱が入っていく。

 

 

 

「まさか!? 命ではなくルルシア様の誘拐が目的か!! ルルシア様を誘拐して、身代金を……いや、王女様に何をする気だ!!」

 

 

 

 なんか変な方向にスイッチが入ったのか、ジーナスは体をモジモジさせて興奮し始める。

 

 

 

 なんだこの人はめっちゃ怖い。

 

 

 

「俺たちはそんなんじゃないですから……では俺たちはこれで…………」

 

 

 

 ブラッドはそう言うとフェアを連れてこの場から離れようとする。

 

 

 

 王女様ってだけでも大事の予感なのに、このジーナスという女性がさらにことを大きくしそうな雰囲気がある。

 

 

 

 ジーナスはブラッドの話など聞かずに勝手に自分の世界に入り込んでいく。

 

 

 

「そうか、王女様を使って国王を脅すのか!! そして国王にこう言う、娘を返して欲しければ、この国を渡すんだなっと!!」

 

 

 

 やばい。怖い。さっさと離れたい。

 

 

 

 ブラッドはフェアを連れて急いで離れようとする。だが、

 

 

 

「待ってください!」

 

 

 

 離れようとするブラッドをルルシアが止めた。

 

 

 

「な、なんのようですか?」

 

 

 

 まさか王女様も変なことを言い出して、俺たちのことを疑うのか。

 

 

 

 いや、偶然出会っただけとはいえ、怪しいのは怪しい。だが、本当に偶然、フェアが似ていただけだ。

 

 

 

「クッキーのお礼がまだです」

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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 第265話  【BLACK EDGE 其の265 お礼】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第265話

 【BLACK EDGE 其の265 お礼】

 

 

 

 

「お礼だなんて……大丈夫ですよ……」

 

 

 

 これ以上ここにいてめんどくさいことに巻き込まれたくはない。

 

 

 

 ブラッドは遠慮してこの場から離れようとするが、ルルシアはそんなブラッドを止める。

 

 

 

「ダメです! お母様との約束なんです。お礼はしっかりしなさいって」

 

 

 

 いや、そう言われても王女様からお礼をされる必要はないです。

 その辺で売ってるクッキーをフェアがあげただけですから!!

 

 

 

 しかし、ルルシアの後ろで変な妄想をしていたジーナスは冷静を取り戻すと、

 

 

 

「ルルシア様がお礼がしたいと言っているんだ!! これを受けないのは失礼だぞ!!」

 

 

 

 とか言い出した。

 

 

 

 ブラッドはため息を吐くと、

 

 

 

「分かったよ。それで何をしてくれるんですか?」

 

 

 

 

 

 フェアとブラッドは王城に招待された。いや、お礼のためだけに、しかもクッキーだよ!! クッキーごときでどれだけ大事にしてるんだよ!!

 その辺の石とか渡してくれれば、それで満足しますから!!

 

 

 

 とか思いつつも半ば強制連行の気持ちで王城へと入れられる。

 

 

 

 しかし、ルルシアとジーナスは正面から入るのではなく、王城の裏門からひっそりと中へと入る。

 

 

 

「おい、早く来い、兵士に見つかってしまうではないか!」

 

 

 

 隠れて進むジーナスが驚いているブラッドとフェアを急かす。

 

 

 

 なぜ隠れる必要があるのか。そんなことを思いつつも、ルルシアとジーナスについていく。

 

 

 

「ここは狭いですから、頭に気をつけてください」

 

 

 

 ルルシアは壁の下にある穴を匍匐前進で進んでいく。その後ろをジーナスとフェアもついていく。

 

 

 

「…………ここを通るのかよ」

 

 

 

 フェアは何も言わずにズブズブと進んでいくが、その汚れた服を見たらケイスはショックを受けるだろう。

 

 

 

 ブラッドも仕方なく匍匐前進で壁の下を進んでいく。

 

 

 

 先は真っ暗で何も見えない。

 

 

 

「痛!!」

 

 

 

 ブラッドは壁に頭をぶつける。…………なんだか今日はついてない気がする。

 

 

 

「だから気をつけてって言ったじゃないですか」

 

 

 

「そうだぞ。ルルシア様の忠告をしっかりと聞いていない貴様が悪い!」

 

 

 

「そうだよ! せっかく注意してくれたのに!!」

 

 

 

 いつからフェアはこいつらとそんなに仲良くなったんだ。

 

 

 

 流石にフェアにまで怒られると思っていなかったブラッドは、しょんぼりする。

 

 

 

 そんな中も進んでいくと、穴を抜けて茂みの中に出た。

 

 

 

「音は立てないでください! 見回りに見つかってしまいますから」

 

 

 

 本当にどうして王城に侵入することになってるんだ!?

 

 

 

 

 



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 第266話  【BLACK EDGE 其の266 王城へ訪問】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第266話

 【BLACK EDGE 其の266 王城へ訪問】

 

 

 

 ルルシアとジーナスに連れられて、ブラッドとフェアは王城に入ることになったのだが、まるで泥棒のようにひっそりと忍び込まされているのであった。

 

 

 

「これじゃ、不審者じゃねーか」

 

 

 

 城に忍び込んでいく中、ブラッドが呟く。

 

 

 

 ルルシアはここマルグリットの王女様だ。なのになぜ、こんなコソコソしないといけないんだ。

 こんなところをもしも警備兵にでも見つかれば、ブラッドとフェアは速攻連行されてしまう。

 

 

 

 お礼をしたいというからついてきたのに、もしもこれで捕まったら、どうしたら良いんだ。

 

 

 

 そんなブラッドの叫びを聞いてか。ルルシアは

 

 

 

「大丈夫です。もうすぐ着きますから」

 

 

 

 何が大丈夫なんだよ!?

 

 

 

 そう思いながらも今更帰るわけにもいかず、ついて行くしかない。

 

 

 

 結局ブラッドとフェアが連れてこられたのは、ルルシアの部屋だった。

 

 

 

「大丈夫、今は誰もいません」

 

 

 

 廊下の少しだけ開けて、周りを確認したジーナスがルルシアに言う。

 

 

 

 ルルシアはベッドに座ると、

 

 

 

「ドキドキしました〜!!」

 

 

 

 と満足そうに言った。そんなルルシアにブラッドは、

 

 

 

「いや、ドキドキどころじゃねーよ!!」

 

 

 

 と思わず王女様にツッコんでしまった。ルルシアは心配そうな顔でブラッドに言う。

 

 

 

「え、この程度じゃ、ドキドキしませんでした?」

 

 

 

「いや、だからドキドキどころじゃないって!!」

 

 

 

 そんな会話をしている中、フェアはルルシアに聞く。

 

 

 

「なんであんなにこっそり入るんですか? ここはルルシア様の城なんですよね?」

 

 

 

 それにはジーナスが答えた。

 

 

 

「ルルシア様は城のものには内緒で抜け出してますからね!」

 

 

 

 そう言ってジーナスはポーズを決める。なぜポーズを決めるのか、そして、

 

 

 

「いや、あんたはそれを許して良いのか!?」

 

 

 

「面白そうだから良いんです。それにルルシア様のお願いですから!!」

 

 

 

 うーむ、この人は一体なんなのか。

 

 

 

 格好や言動からはルルシアのメイドか側近なのだろう。しかし、そんなことを許すものが近くにいて良いのだろうか。

 てか、許すな!!

 

 

 

「あ、そうでした。お礼をしないと……」

 

 

 

 そう言うとルルシアは部屋にある机の引き出しを開ける。

 

 

 

 そう、そういえば、ここに来たのはお礼がしたいからと連れてこさせられたのだ。

 

 

 

 まぁ、クッキーをあげたくらいでお礼されるようなことでもないと思うが…………逃げられなかったので仕方がない。

 

 

 

 ルルシアは引き出しから、袋に詰められた何かを取り出した。

 

 

 

「では、こちらをどうぞ」

 

 

 

 そう言ってルルシアはフェアに渡す。それを見たブラッドは思わず。

 

 

 

「なにこれ」

 

 

 

 と言ってしまった。

 

 

 

 

 

 

 



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 第267話  【BLACK EDGE 其の267 お礼をプレゼント】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第267話

 【BLACK EDGE 其の267 お礼をプレゼント】

 

 

 

 

 ルルシアは机の引き出しから袋に詰められた何かを取り出す。そしてそれをフェアに渡した。

 それを見たブラッドは、

 

 

 

「なにこれ……」

 

 

 

 と声を出した。

 

 

 

 城に忍び込み、もしも見つかったのならどうなるか分からない状況。そんなことまでしてお礼としてもらったもの…………。それは…………。

 

 

 

「私の手作りクッキーです!!」

 

 

 

 まさかのクッキーだった。

 

 

 

 いや、確かにクッキーをあげたのだから、クッキーが返ってきて当然だろう。

 しかし、ここまで命懸けでやってきたのだ。それがまさかのクッキー。

 

 

 

 しかも王女様のお礼としてもらうものだ。

 

 

 

 もっと高価なものを貰えると期待していたブラッドは、軽くショックを受ける。

 だが、当然といえば、当然だ。

 

 

 

 クッキーのお返しなのだから…………。

 

 

 

 フェアは喜んでルルシアのクッキーを受け取った。

 

 

 

「ありがとうございます!!」

 

 

 

 フェアはルルシアから受け取ったクッキーをしまう。すると、

 

 

 

「では帰ってもらいますか」

 

 

 

 とジーナスが言い出した。

 

 

 

 確かに帰れって気持ちはわかる。だが、

 

 

 

「いや、どうやって帰ったら良いんですか!?」

 

 

 

 するとルルシアは答える。

 

 

 

「簡単です。正面から出れば良いんですよ」

 

 

 

「出れるの?」

 

 

 

 ブラッドが聞くとジーナスが首を振る。

 

 

 

「いえ、確実に捕まりますね」

 

 

 

「ですよねーーーーーー!!」

 

 

 

 ルルシアはベッドに座ると、

 

 

 

「まぁ、すぐに帰れっていうのは冗談です。…………実はあなた達をここに連れてきたのは理由があってですしね」

 

 

 

 と真剣に喋り出した。

 

 

 

「理由……ですか?」

 

 

 

 ブラッドが尋ねると、ルルシアは首を頷いた。

 

 

 

「はい、最近私そっくりな少女が街にいるって話を聞いて、その子に会いに行ったんです」

 

 

 

 そう言ってフェアをみんなは見る。

 

 

 

「え、私?」

 

 

 

 突然注目されて困惑している感じだ。

 

 

 

「実は私、行きたいところがあって、でも、こうやって抜け出せる時間も少なくて、それで…………」

 

 

 

 なんだか嫌な予感がしてきた。こうやって抜け出して遊んでいる王女様だ。

 なにを言い出してもおかしくない。

 

 

 

「私と一日だけ、入れ替わってください!!」

 

 

 

 ルルシアはフェアにそう告げた。

 

 

 

「わ、私と入れ替わる!?」

 

 

 

 フェアは自分のことを指差して驚いている。

 

 

 

 ブラッドは嫌な予感が的中したと思った。

 

 

 

「ど、どういうことですか?」

 

 

 

 フェアが聞くとジーナスが答えた。

 

 

 

「ルルシア様は毎日多くの習い事をなされております。それは王家に必要なこと、しかし、そのため時間も足りず、普段は外出も許されておりません」

 

 

 

 あんたは外出を許してるし、共犯だけどな。

 

 

 

「私と二人だけの時間なら、ああして抜け出すことができるのですが、ルルシア様の行きたい場所にはその短時間ではどうしても間に合わないのです」

 

 

 

 

 

 

 

 



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 第268話  【BLACK EDGE 其の268 お城を抜け出せ】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第268話

 【BLACK EDGE 其の268 お城を抜け出せ】

 

 

 

 

 結局、フェアはルルシアの願いを聞くことにした。しかし、今すぐに入れ替わるというわけにもいかず、今日は一旦帰り、明日また来るということになった。

 

 

 

 …………え!? 明日も!?

 

 

 

 そんな話を終えて、ブラッドとフェアは帰ることになった。

 

 

 

 しかし、もう太陽が沈み、来る時に使ったルートは暗すぎて使えない。

 そのためジーナスと共に別の方法で城から出ることになった。

 

 

 

 だが、その方法は…………。

 

 

 

「やぁ、ジーナス…………ど、どうしたんだ。その格好は………………」

 

 

 

 城の警備兵がジーナスに話しかける。

 

 

 

「いやー、さっき食べ過ぎちゃってな」

 

 

 

 ジーナスは笑顔を作ると、そのまま歩いて行く。

 

 

 

 警備兵は不自然だと思いながらも、逆に声がかけづらくそのまま通していく。

 

 

 

 ジーナスは白い布を首から下に巻いて、身体が異様に膨らんでいた。

 

 

 

 つまりは…………。

 

 

 

「フェアと言ったか。少し離れてくれないか、髪が当たってくすぐったい」

 

 

 

「あ、すみません」

 

 

 

 ジーナスの身体が突然横に伸びる。それを見ていた警備兵は目を丸くする。

 

 

 

「あ、あのジーナスさん!?」

 

 

 

「あはは〜、さっき食った分が突然来たみたいだな」

 

 

 

「そ、そうですか…………」

 

 

 

 どういうことだよ!?

 

 

 

 ブラッドは心の中でツッコむ。

 

 

 

 ブラッドとフェアは城を脱出するために、ジーナスの布に隠れていた。

 明らかにおかしいのだが、どうしてここの兵士たちはジーナスを問い詰めたりしないのだろうか。

 

 

 

 そんな感じでどうにか進んでいく。あと少しで出れると思った時、

 

 

 

「おい、ジーナス!!」

 

 

 

 突然後ろから呼び止められる。

 

 

 

「ん、ああ、パルスか」

 

 

 

 布で外の様子は見えないが、誰かが話しかけてきたらしい。

 

 

 

「おい、ジーナス、その姿はどうしたんだ?」

 

 

 

 どうやらジーナスの姿について不審に思った人がいたらしい。

 良かった、この城にもまともな人がいた……………良かったじゃない!?

 

 

 

 もしも怪しられて、布を剥がされたりしたら見つかってしまう。そうしたら城の関係者じゃないブラッドとフェア、そしてそれに加担したとしてジーナスもどうなるかわからない。

 

 

 

「ふふふ、パルス、貴様はこの姿に見覚えはないのか?」

 

 

 

 ジーナスは不敵に笑う。

 

 

 

「な、なんだ……」

 

 

 

 パルスはジーナスの言葉に動揺する。その膨らんだ身体がなんだというのか。

 

 

 

 ジーナスはブラッドのことを後ろ蹴りする。

 

 

 

「ぐっ!?」

 

 

 

 腹を蹴られたブラッドは下半身を沈める。そしてブラッドが動けずにいる隙にジーナスは一歩前に進んだ。そして、

 

 

 

「見ろ! 私はケンタウロスになったのだ!!」

 

 

 

 ジーナスが一歩前に出たことでうずくまっているブラッドが後ろに出てきて、ジーナスの身体は後ろに伸びた。その姿はまさにケンタウロス…………じゃねーよ!!

 

 

 

 パルスと呼ばれた人物は

 

 

 

「か、カッケー!!」

 

 

 

 と言うと、そのまま興奮してどっかに行ってしまった。

 

 

 

 なぜ、これで騙せるのか。というか騙せてはない。周りがおとなしい。なぜだ。

 ジーナスが何かしているのか?

 

 

 

 そしてブラッドとフェアは無事に城を抜けることができたのであった。

 

 

 

 

 



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 第269話  【BLACK EDGE 其の269 王女様クッキー】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第269話

 【BLACK EDGE 其の269 王女様クッキー】

 

 

 

 

 なんとか無事に城を抜け出すことができたブラッドとフェア、そしてジーナスは出会った公園で明日の話し合いをしていた。

 

 

 

「ということで、明日は頼んだぞ」

 

 

 

 ジーナスはブラッドとフェアにそう言う。

 

 

 

 王女様が行きたいところとはどこなのか。そのことについて疑問に思ったブラッドが聞く。

 

 

 

「ジーナスさん、それでルルシア様が行こうとしているところってどこですか?」

 

 

 

 するとジーナスは真剣な表情で答えた。

 

 

 

「ソンシティヴュ草原だ」

 

 

 

 ソンシティヴュ草原。どこかで聞いたことがある名前の場所だ。

 

 

 

 だが、そこは確か…………。

 

 

 

 そんな中、フェアが聞く。

 

 

 

「明日は私がルルシア様の代わりになるんですよね。本当に大丈夫ですか?」

 

 

 

「ああ、私が近くで指示するから、それに従ってくれれば、問題はない」

 

 

 

 王女様と入れ替わることになったのだ。心配のはずだ……。

 

 

 

 ブラッドはそう思いながらフェアの方を見ると、ワクワクして目を輝かせていた。

 

 

 

「頑張ります!」

 

 

 

 そうだ。こんな面倒ごとに首を突っ込むってことは、それを楽しんでるってことだ。

 王女様になれるなんて、そんなことは普通の人生ではあり得ない。

 

 

 

 フェアはだから引き受けたのか……。

 

 

 

「では、私はルルシア様のお世話があるのでな。帰るぞ」

 

 

 

 そう言うとジーナスは帰ってしまった。

 

 

 

「俺たちも戻るか」

 

 

 

「うん!」

 

 

 

 フェアとブラッドも屋敷に戻る。戻る最中にフェアは貰ったクッキーの袋を開ける。すると、めっちゃ臭い。

 

 

 

「なんだこの匂い……」

 

 

 

「腐ってるね……」

 

 

 

 そういえば、ルルシアは引き出しからクッキーを取り出した。そしていつ作ったものなのかも謎だ。

 

 

 

「流石にこいつは食わないほうがいいんじゃないか?」

 

 

 

 ブラッドはフェアに言う。

 

 

 

 前にアリエルにお茶を出された時も、こんな感じのやばい飲み物だった。

 あの時はアリエルが目の前にいたため飲んだが、今はルルシアが目の前にいるわけではない。

 

 

 

「でも、せっかく貰ったものだし…………」

 

 

 

 フェアはそう言うと、クッキーを一つ手に取り、匂いを嗅がないように素早く口の中に入れた。

 

 

 

「………………………どうだ?」

 

 

 

 ブラッドは心配そうに聞く。すると、フェアは近くにある壁まで走る。そして、

 

 

 

「ブハァッ!!」

 

 

 

 勢いよく吐き出した。腐っているとはいえ、そこまでなのか。

 

 

 

 ブラッドはフェアの様子を見て、そのクッキーに恐怖するのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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 第270話  【BLACK EDGE 其の270 入れ替われ!?】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第270話

 【BLACK EDGE 其の270 入れ替われ!?】

 

 

 

 

 翌朝、ブラッドとフェアは再び王城へ向かうことになった。とはいっても正面から入ることはできない。

 

 

 

 ブラッド達が城前を歩いてどうしようかと考えていると、路地の方から手を出てきて、来い来いと招いている。

 

 

 

 ブラッドとフェアはお互いを顔を見て首を傾げた後、

 

 

 

「行ってみるか……」

 

 

 

 とその路地へと入ってみることにしてみた。

 

 

 

 ブラッド達が中に入ると、そこには白い仮面を被った女性がいた。

 仮面には顔が描かれており、ふざけた表情をしている。

 

 

 

 一瞬、グリモワール!? と思ったが仮面を外すと、それはジーナスだった。

 

 

 

「待っていたぞ。お前たち」

 

 

 

「ジーナスさん……」

 

 

 

 グリモワールではなかったため、二人は安心する。そして路地の奥からは、

 

 

 

「昨日ぶりですね」

 

 

 

 ルルシアが現れた。今回は動きやすい服装を選んだのか、この前とは違う。少し目立ちそうな気もするが、街中を歩き回るわけではないのでこれで問題はないのだろう。

 

 

 

「ブラッドさん。ですよね。お願いします」

 

 

 

 ルルシアにそう言われてブラッドは驚く。

 

 

 

「え?」

 

 

 

 ジーナスはブラッドに伝える。

 

 

 

「ああ、そうだ。私はフェアの面倒を見なければならないからな。ルルシア様は任せたぞ」

 

 

 

「おい! 王女様を知らない男に任せていいのかよ!!」

 

 

 

 ブラッドがそう言うとジーナスはフェアの頭に手を置いて撫でた。

 

 

 

「こいつが人質みたいなもんだ。昨日の行動を見てれば、お前がこいつを大事にしてるのは分かった。こいつを放っておくことはないだろ」

 

 

 

 確かにフェアをそのままにするわけにはいかない。しかし、王女様をこうして預けるのはどうなのだろうか。

 

 

 

 こいつは本当に王女様を守る気があるのか……。自由にさせすぎな気がする。

 

 

 

「では私達は城に帰る。何かあったら連絡をくれ」

 

 

 

 ジーナスはフェアを連れて昨日の抜け道へと向かう。

 

 

 

「…………連絡って、どうするんだよ……」

 

 

 

 ブラッドが呟くとルルシアはポケットから何かを取り出す。そしてそれをブラッドに見せた。

 

 

 

「これです」

 

 

 

 それは小さな白い笛だ。そんな笛でなにをするのか。

 

 

 

 不思議そうな顔のブラッドに説明するように、ルルシアは、

 

 

 

「ついてきてください」

 

 

 

 と言うと昨日の公園へ行く。そしてその公園で笛を吹いた。

 

 

 

 すると城の方から一匹の白い鳥が飛んでくる。手のひらサイズの小さな鳥だ。

 

 

 

「私のペットのミルクです。伝えたいことがあったら紙に書いて、この子に持って行って貰えばいいんです」

 

 

 

 

 

 

 

 



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 第271話  【BLACK EDGE 其の271 草原へ】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第271話

 【BLACK EDGE 其の271 草原へ】

 

 

 

 

 フェア、ジーナスと分かれたブラッドはルルシアと共にソンシティヴュ草原を目指していた。

 

 

 

「ブラッドさんって、フェアさんのお兄さんなんですか?」

 

 

 

「いや、違うが」

 

 

 

 街を歩いている最中にルルシアが話しかけてきた。

 

 

 

「じゃあ、お父さんですか?」

 

 

 

 なぜそうなる。

 

 

 

 いつもそうだ。俺がフェアの親だと思われる。そこまで老けている訳ではないと思うが…………。

 最初はお兄さんと言われて安心したが、なんでそこからお父さんになるんだよ!!

 

 

 

「それも違うが……」

 

 

 

 ブラッドは怒るわけにもいかず。我慢して答える。すると今度は、

 

 

 

「ま、まさか、お母さん!?」

 

 

 

「なんでそうなるんだよ!! 流石に性別まで帰るなよ!!」

 

 

 

「じゃあ、なんなんですか?」

 

 

 

「普通に仲間だよ。旅のな」

 

 

 

「仲間…………ですか」

 

 

 

「ああ、そうだ」

 

 

 

 そして街を進んでいき、やがてマルグリットを出ると、そこは森。そこをしばらく進むと草原に着いた。

 

 

 

 ここがソンシティヴュ草原だ。

 

 

 

 緑の芝生が見えなくなるまで続いている。そんな草原だ。

 

 

 

 草原に着くと、ルルシアは草原の奥へと進む。そしてしばらく進んだところで足を止めた。

 

 

 

 風が吹く。風により草原の草が揺れる。

 

 

 

「…………兄様」

 

 

 

 ルルシアはそう言うとしゃがんで祈るような体制になった。

 

 

 

 それを見ていたブラッドは思い出す。この草原で起きた事件を…………。

 

 

 

 それは数年前。ルルシアの兄であるアシル王子がこの他国からの遠征からの帰り道であった。

 アシル王子の遠征帰りを狙い、盗賊に襲われたのである。

 

 

 

 遠征帰りであったとしても、アシル王子を護衛していた兵士達は精鋭ばかり、普通なら盗賊ごときに遅れを取るはずはなかった。

 

 

 

 だが、精鋭に勝てる者がいないのならばの話だ。

 

 

 

 その盗賊団には助っ人がいた。その人物は氷結と呼ばれる殺し屋フリーズ。

 

 

 

 フリーズは不思議な技を使い、どんな標的でも殺すと言われる殺し屋。

 噂通り不思議な技を使ったフリーズは兵士達を皆殺しにし、そして王子も殺した。

 

 

 

 盗賊の目的は王子を殺すことだった。かつてアシル王子に捕らえられた盗賊団であり、脱走をしたことから賞金もかけられていた。

 

 

 

 ルルシアは草原で死んだ兄に会いたかったのだろう。

 

 

 

 普段は忙しくてくることができない。だからフェアに代わってもらってまでここに来たかった。

 

 

 

 しばらくすると、ルルシアは立ち上がる。そして振り向くと、

 

 

 

「さぁ、満足です。帰りましょう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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 第272話  【BLACK EDGE 其の272 王女様フェア】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第272話

 【BLACK EDGE 其の272 王女様フェア】

 

 

 

 ジーナスと共にお城に侵入したフェアは、ルルシアの代わりに王女様をやることになった。

 

 

 

「ジーナスさん、私はなにをすればいいんですか?」

 

 

 

 フェアが聞くとジーナスは大量の本を持ってくる。

 

 

 

「もう少ししたら語学の先生が来て授業をすることになっている。……まぁ、適当に誤魔化してくれ」

 

 

 

 ジーナスといるだけの時間は自由にできるのだが、誰かが来る時にはどうしてもその授業を受けなければならない。

 

 

 

 適当に誤魔化せと言われたが…………。

 

 

 

 フェアは実際に授業を受けることになる。

 

 

 

 授業は他の生徒がいる訳ではないため、完全に先生と一対一だ。

 

 

 

「ルルシア様、今日はどうしたのですか? いつもより間違えが多いですよ」

 

 

 

 グリモワールに捕まっている時、頼めば最低限の教科書などは貰えた。勉強をしたいという子供もいたため、フェアは組織に頼んでいくつかの教科書をもらい、それで子供達と勉強をしたことがあった。

 

 

 

 しかし、独学では限界がある。

 

 

 

「…………も、もしかしたら風邪かもしれません」

 

 

 

 フェアは誤魔化すために風邪と言う。しかし、それが裏目に出る。

 

 

 

「風邪ですか!? 大変です!!」

 

 

 

 そう言うと驚いた表情で、授業をしていた先生が外へと飛び出していく。

 

 

 

 そして大勢の医者を連れて戻ってきた。

 

 

 

「ルルシア様!! 風邪ですと!? 今すぐに治療します!!」

 

 

 

 大勢の医者はベッドを運んでくると、そこにフェアを寝かす。

 

 

 

 いくらなんでも大事だ!?

 

 

 

「…………あ、もう治ったかも」

 

 

 

 フェアはこれ以上大事にしないように言うが、

 

 

 

「そうとは限りません。今から治療を始めます」

 

 

 

「え、ちょ、ちょ!?」

 

 

 

 なんやかんやあり、授業を受け終えた。

 しかし、その後も授業、授業、授業。ほとんどの時間が勉強だった。

 

 

 

 そして全てを終えたフェアはジーナスの元に戻った。

 

 

 

「つ、疲れた〜」

 

 

 

 ジーナスはそんなフェアを見て笑う。

 

 

 

「ははは、王女様も大変だろ!」

 

 

 

「はい、もっと優雅なものだと……」

 

 

 

 フェアのイメージでは紅茶を飲みながら城下町を見下ろしているイメージだった。

 

 

 

 フェアを座らせるとジーナスはフェアにお茶を出す。

 

 

 

「今日のスケジュールはカットできるところは減らしたからな。ルルシア様のスケジュールはこれ以上だ」

 

 

 

 それを聞いたフェアは驚く。そんな驚いているフェアにジーナスはさらに喋りかける。

 

 

 

「昨日のクッキーはどうしたか?」

 

 

 

 昨日のクッキー。確かそれはルルシアからお礼だと言われて渡されたものだ。

 

 

 

 確か、腐っていて一口食べたが、捨ててしまった。

 

 

 

「た、食べましたよ!! 一応…………」

 

 

 

「あれを食べたのか!?」

 

 

 

 食べたと言ったら驚かれた。

 

 

 

「あれは三年前にルルシア様が作ったものだ。忙しいスケジュールの中、合間に私と一緒に作ったんだ」

 

 

 

 三年前…………三年前!?

 

 

 

「そ、そんなものを…………」

 

 

 

「そう言うな。あれはルルシア様にとっての宝なんだ。お城中を駆け回り、城の関係者全員にあげた。…………でも、本当に食べて欲しい人には食べて貰えなかった」

 

 

 

 ジーナスはそう言うとクローゼットを開ける。フェアはジーナスが開けたクローゼットを覗き込むと、

 

 

 

「もう一つ食うか?」

 

 

 

 大量のクッキーが残っていた。

 

 

 

「もう要りません!!」

 

 

 

 

 

 



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 第273話  【BLACK EDGE 其の273 大会へ】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第273話

 【BLACK EDGE 其の273 大会へ】

 

 

 

 王女様との一件も終わり、数日が経った頃。

 ついに大会の当日になった。

 

 

 

 ブラッドは装備を整えると、出発の準備をする。

 

 

 

「ブラッドさーん!! まーだでーすかー!!」

 

 

 

 廊下ではスカイがウキウキしながら待っている。

 

 

 

 マルグリットで開かれる闘技大会。マルグリットだけでなく、周辺国からも猛者達が集まり、腕試しを行う。

 

 

 

 特定の重量未満ならば武器の使用も許可されており、闘技場から落ちる、または戦闘不能になることで勝敗が決まる。

 

 

 

 今回は例年よりも多く予選の参加者は300人。その予選は8ブロックに分けられて、そこから勝ち残れるのは一名ずつだ。そしてその勝ち残った8名でトーナメントを行う。

 

 

 

 予選は40人が同時に舞台に登り、そこで最後の一人になるまで戦う。

 

 

 

 準備を終えたブラッドが廊下に出る。

 

 

 

「待たせたな」

 

 

 

「あ、久しぶりだね。その格好」

 

 

 

 ブラッドの姿を見たフェアがそう言った。

 

 

 

 屋敷で過ごしている間、適当は私服を着ていたが今回は戦闘がある。

 そのため旅の時に来ていた赤いコートを着た。

 

 

 

 このコートは特別なものでそう簡単に破れることはない。そのため龍の力を使うこともできる。

 

 

 

「待ちくたびれましたよ」

 

 

 

 壁に寄っかかって座り、剣を磨いていたスカイは立ち上がる。

 

 

 

「では行きますよ。屋敷の外でお爺さま達が待ってます」

 

 

 

 スカイとブラッドは大会に参加する。フェアとケイス、セイラは観客席で二人を見守ることになった。

 

 

 

 外に出ると、ケイスとセイラが待っていた。

 

 

 

「全く遅いですよ」

 

 

 

 セイラが腹を立てる。黒いドレスに黒い日傘を差している。

 

 

 

「今回はキースが不在だなんて。残念ですわ」

 

 

 

 セイラがそう言うとスカイが

 

 

 

「任せてよ。ママ。私がパパの代わりに優勝するから!!」

 

 

 

 セイラは日傘を放り投げてセイラに抱きつく。ケイスはセイラが投げた日傘をうまくキャッチした。

 

 

 

「まぁぁぁぁ、なんてできた娘なの!! 大好きよ!! スカイ!!」

 

 

 

 セイラはスカイに顔をすりすりする。スカイはちょっと嫌そうだが抵抗する様子はない。

 しばらくセイラはスカイにすりすりした後、今度は抱きしめた。

 

 

 

「ママ……?」

 

 

 

 少し様子の違うセイラにスカイが違和感を感じる。

 

 

 

「でも、優勝なんてしなく良いのよ。…………怪我だけはしないでね」

 

 

 

 セイラは優しい声でスカイに言う。それを聞いたスカイもセイラを抱きしめる。

 

 

 

「うん、安心して。ママを悲しませたくはないもん」

 

 

 

 

 

 



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 第274話  【BLACK EDGE 其の274 準備】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第274話

 【BLACK EDGE 其の274 準備】

 

 

 

 

 

 会場に着いたブラッドとスカイはフェア達と別れて、闘技場の中へと入る。

 300人の参加者が大会の準備をする控室だ。

 

 

 

 そこでは武器の貸し出しもやっており、特定の重量未満ならば、武器や装備をつけることができる。

 

 

 

 スカイはすでに剣を持っているため、それ以上の装備をつける気もないらしく。すぐに重量を測り、参加を認められた。

 

 

 

「ブラッドさんは素手ですか?」

 

 

 

 スカイがブラッドに聞いてくる。

 

 

 

 ブラッドならば素手で戦い切ることもできる。だが、せっかくならば武器を借りてみるのもありだろう。

 

 

 

 ブラッドは武器を貸しているコーナーに行く。そしてそこで適当に剣を手に取ってどれが良いか見ていると、

 

 

 

「なんだい君、そんな汚らしい武器を持って」

 

 

 

 使い古された剣を手に取ったところで、後ろから話しかけられた。

 振り返ると白い服に立派な剣を腰に下げた長髪の男がいた。

 

 

 

「誰だよ……。お前には関係ないだろ」

 

 

 

 ブラッドが無視しようとすると、

 

 

 

「なぁ!? 僕のことを知らないのかい?」

 

 

 

 わざとらしく驚いて自己紹介を始めた。

 

 

 

「僕は美しき黄金の騎士団の団長、リトゥーンだよ!」

 

 

 

 リトゥーンは前髪をかき分けながら格好をつける。

 

 

 

「はいはい、そうかい。美しき天丼の騎士さんが俺になんのようだ?」

 

 

 

「黄金の騎士団だ!! わざとだろ! 今のは絶対わざとだろ!!」

 

 

 

 ブラッドが揶揄うとリトゥーンは怒る。

 

 

 

「はぁ、だから嫌なんだ。武器は心。僕のように美しい心の持ち主はこうして磨かれた武器しか使わない。……さっき君といた女の子、彼女が持っていた武器見たかい? あんなものを使っていたら、心まで腐ってしまうよ。さっさと捨てて仕舞えばいいのに」

 

 

 

 さっき一緒にいた女の子。スカイのことか。

 

 

 

 スカイの持っている剣は昔キースが使っていたものだ。賞金稼ぎ時代に使っていたもので、ブラッドもよくその武器を知っている。

 屋敷で生活している時に、その剣についてスカイは嬉しそうに語っていた。

 

 

 

 確かに長年使われていて、切れ味も悪くなっている。だが、そんな剣をスカイもキースもよく磨いて大切に使っていた。

 

 

 

 ブラッドは手に取っていた剣を審査員に見せる。

 

 

 

「こいつを借りるぞ」

 

 

 

 その剣は闘技場でよく使い古されていた武器なのか。かなり痛んでいる。

 だが、使う度に修復してきたのだろう。その様子が剣にはある。

 

 

 

「なんだい、そんな枝を使うのかい?」

 

 

 

 ブラッドはリトゥーンを睨む。

 

 

 

「ああ、武器は心って言ったよな。その本当の意味をお前に教えてやるよ」

 

 

 

 

 

 

 



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 第275話  【BLACK EDGE 其の275 予選】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第275話

 【BLACK EDGE 其の275 予選】

 

 

 

 

 選手達に番号が配られる。ブラッドとフェアもそれを番号を受け取る。

 

 

 

「ブラッドさんは何番ですか?」

 

 

 

「俺は169だな。お前はなんだ?」

 

 

 

「私は211です」

 

 

 

 二人が番号を確認し合っていると、掲示板に予選表が貼られる。

 

 

 

 予選はA〜Hブロックまであり、A、B、C、D、E、F、G、Hブロックで勝ち上がったものが、予選を突破することができる。

 

 

 

 掲示板に貼られた予選表を見るために選手達が掲示板へと駆け寄っていく。ブラッド達もその中に紛れて予選表を見た。

 

 

 

 見終わったブラッドとスカイは掲示板から離れる。人がどんどん来るため、出るのがなかなか大変だ。

 

 

 

「何ブロックでしたか?」

 

 

 

 フェアが聞くとブラッドは答える。

 

 

 

「俺はDブロックだ。スカイはどうだったんだ? 被ってなければ良いが」

 

 

 

「私はEブロックでした。良かった。ブラッドさんと同じじゃなくて……」

 

 

 

「まぁ、本戦で当たることになるだろうがな」

 

 

 

「そうですね。そしたら本気で倒しに行きますよ!!」

 

 

 

 そんな話をしていると、ブラッドとフェアの元に老人が歩いてきた。槍を持った白髪の老人だ。

 

 

 

 その老人を見た時、ブラッドは感じる。その老人から龍の気配を……。

 

 

 

「っ!」

 

 

 

 近づいてきた老人をブラッドが警戒すると、老人は笑顔で敵意がないことを表してきた。

 

 

 

「そう警戒するでない。同じ龍の適応者ではないか」

 

 

 

「……同じ龍の適応者が他にも参加しているとはな。何の用だ」

 

 

 

「なぁーんも用はないぞ。ただ同じ龍の適応者がこんなに集まっているとはと驚いていたんじゃよ」

 

 

 

 老人はそう言って笑う。

 

 

 

「こんなにも……集まっている? 他にもいるのか?」

 

 

 

「さぁな。お主も本戦まで勝ち上がればわかるじゃろ。わしは挨拶しにきただけじゃよ」

 

 

 

 そう言うと老人は手を振って去って行った。

 

 

 

 老人の言い方からすると、他にも龍の適応者がいるのだろうか。

 

 

 

 会場には300人の選手がいる。それらを全て確認することはできない。そうなるとやはり老人が言っていた通り、本戦まで勝ち上がり、そこにいたものが龍の適応者ということだ。

 

 

 

「結局は勝つしかないってことだな」

 

 

 

 そしてついに予選が始まるのであった。

 

 

 

 300人の実力者の集まった闘技大会。そこで勝ち上がるものは誰なのか。

 優勝者に渡されるのは大金だ。その大金を手にするものは誰なのか!!

 

 

 

 闘技場にアナウンスが流れる。

 

 

 

「これより予選を開始します。Aブロックの選手は集まってください」

 

 

 

 

 

 

 



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 第276話  【BLACK EDGE 其の276 予選開始】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第276話

 【BLACK EDGE 其の276 予選開始】

 

 

 

 

 Aブロックの選手達が次々と会場へ向かう。そんな中、

 

 

 

「それでは団長。私はAブロックですので……」

 

 

 

「ああ、勝ち残れよ」

 

 

 

「当然です」

 

 

 

 赤いバンダナを巻いた茶髪の男に言われた桃色髪の騎士は会場へと向かう。

 

 

 

「我々、リベリオンの資金を得るため。……優勝は我々がしてみせる」

 

 

 

 

 

 

 そしてついにAブロックの予選が始まった。

 

 

 

 ブラッドとスカイは控え室の窓からその様子を伺う。

 

 

 

「あ、ブラッド見てください、あそこ! さっきのお爺さんですよ!」

 

 

 

 スカイがそう言って会場を指差す。ブラッドがそこを見ると確かにそこには先ほどの老人の姿があった。

 

 

 

「……さっき龍の適応者って言ってましたけど、本当に強いんですか?」

 

 

 

「分からない。俺の知り合いには強い奴もいるが、フェアは戦闘向けの力じゃないしな。とりあえずはこれで実力は分かるはずだ」

 

 

 

 次々と選手が舞台に登り、司会が選手達を紹介する。全員を紹介しているわけではなく、有名人を紹介するだけだ。そこにはあの老人らしい名前はない。

 

 

 

「Aブロックの猛者達はこいつらだ。コスモスからやってきた賞金稼ぎジバ。引きこもり剣士箱娘シマール。孤島の守り人ヤンバイン」

 

 

 

 アナウンスを聞いたスカイはブラッドに聞く。

 

 

 

「今の紹介で知ってる人いましたか?」

 

 

 

「ああ、ジバはな」

 

 

 

「強いんですか?」

 

 

 

「並の賞金首じゃ一撃で捕まる。ジバから逃げられたのはジガンデルくらいだろうな」

 

 

 

 そしてついにAブロックの予選が始まった。

 

 

 

 次々と選手達が武器をぶつけ合って戦う。そんな中、目立っているのは、

 

 

 

「おーっと、あの美女、一撃で巨漢の男を3人も倒した!?」

 

 

 

 司会は桃色髪の女性を見て言った。

 

 

 

 確かにその辺の選手に比べて、実力が頭一つ飛び抜けている。

 

 

 

 司会が桃色髪の女性の解説を始める。

 

 

 

「メリッサ選手。情報は……ありませんね。しかし、強い!! 次々と選手達を倒していく!!」

 

 

 

 だが、目立つことで標的にもなる。

 

 

 

「おい、女、なかなかやるみたいだな」

 

 

 

 やって来たのはスキンヘッドの男。賞金稼ぎジバだ。

 

 

 

 ジバはメリッサに斬りかかる。ジバの剣とメリッサの剣がぶつかり合う。

 

 

 

 メリッサの実力は確かに高い。だが、それ以上にジバの力の方が上だ。

 

 

 

「っ!!」

 

 

 

 ジバは剣を力強く振ると、強引に剣を振る。それによりメリッサは後ろに飛ばされた。

 

 

 

 体制の崩れたメリッサは素早く立て直そうとするが、

 

 

 

「おせーよ!!」

 

 

 

 ジバに剣を飛ばされて、場外に蹴り飛ばされた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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 第277話  【BLACK EDGE 其の277 共闘】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第277話

 【BLACK EDGE 其の277 共闘】

 

 

 

 

 闘技大会のAブロック予選は続く。メリッサが脱落したと同時に、舞台に残る人数は半分になる。

 

 

 

 ここからが後半戦だ。

 

 

 

 舞台の上では先程ブラッドに話しかけて来た老人も戦っていた。

 

 

 

 だが、メリッサのように目立つような活躍をしているわけではなく。槍を使い相手の攻撃を避けながら、隙があれば攻撃して場外に落としている。

 

 

 

 目立っているわけではないが、陰ながら多くの選手を脱落させている。

 

 

 

 メリッサを倒したジバはそれに続き、Aブロック予選で最も多くの選手を落としている。

 

 

 

 ジガンデルにやられた賞金稼ぎであるが、その実力はやはり高い。噂通りの剛剣で選手を場外へと吹き飛ばす。

 

 

 

 だが、そんなジバを選手達が囲う。目立っていたメリッサを倒し、さらに目立っているのだ。狙われるのも当然だ。

 

 

 

 ジバを囲んだのは武器を持った男3人。

 

 

 

「賞金稼ぎジバだな……」

 

 

 

「ここでお前には脱落してもらうぜ」

 

 

 

 3人は同時に切り掛かる。

 

 

 

「3人同時か……舐めやがって……」

 

 

 

 しかし、ジバは剣を横に勢いよく振り、3人を同時に吹き飛ばした。

 

 

 

「この程度で俺様を止められると思うなよ!!」

 

 

 

 3人を同時に倒したジバはそのまま今度は近くで戦っていたシマールに斬りかかる。

 

 

 

 シマールは剣でジバの剣を受け止めた。

 

 

 

「さっきの雑魚どもはテメーの差金だな……。つまんねぇことをしやがる」

 

 

 

「………………」

 

 

 

 シマールとジバが剣をぶつけ合っていると、ジバの背後に忍び寄る陰。

 

 

 

「っ!?」

 

 

 

 斧を持った男がジバに切り掛かって来た。ジバは懐から小さなナイフを取り出すと、それでシマールの剣を止め、普通の剣で斧を止めた。

 

 

 

 斧を持った男はジバに喋る。

 

 

 

「共闘ではない。俺たちは捨て駒さ、…………勝ち残るのはシマールさんだけだからな!!」

 

 

 

「それも共闘って言うだろ!」

 

 

 

 ジバは両手に持った武器から一瞬だけ手を離す。そして腕をクロスさせると、さっきまで持っていた手とは反対の手で武器を持ち替えた。

 

 

 

「……まぁ、どっちでも良い。……どっちにしろ、この程度の人数じゃ、物足りないんだよ!!」

 

 

 

 ジバが両手に持った剣を同時に動かす。そして左右にいた二人を吹き飛ばした。

 

 

 

 斧の男とシマールは体制を崩す。

 

 

 

 ジバは最初に斧の男を切り捨てる。体制を立て直す隙も与えず、斧を持った男は倒された。

 

 

 

 斧の男がやられたと同時にシマールは体制を整え、ジバに斬りかかる。しかし、シマールの剣はジバに当たることはなく。避けられてしまう。

 

 

 

 そしてシマールは場外へと切り飛ばされた。

 

 

 

 

 

 

 



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 第278話  【BLACK EDGE 其の278 槍使いvs槍使い】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第278話

 【BLACK EDGE 其の278 槍使いvs槍使い】

 

 

 

 

 Aブロック予選も残る選手が少なくなり、もう10人もいなくなった。

 

 

 

 目立っているジバがシマールと戦闘をしている最中。槍を持った老人に一人の男が近づいて来た。

 

 

 

「なかなかやるな。老兵よ……」

 

 

 

 それは褐色の肌に白髪の男、ヤンバイン。老人と同じく槍を手に手に持っている。

 

 

 

「褒めたって何も出んぞ」

 

 

 

 老人はニヤニヤしながら言う。

 

 

 

「貴様、名はなんという?」

 

 

 

 ヤンバインが聞くと、

 

 

 

「ラック・レトバ」

 

 

 

 レトバはヤンバインに名を名乗った。それを聞いたヤンバインは満足そうに槍を構える。

 

 

 

「我が名はヤンバイン!! ラック・レトバ、我が槍と貴様の槍、どちらが上か、確かめさせてもらう!!」

 

 

 

「ああ、構わんよ……」

 

 

 

 ヤンバインは構えたがレトバは構えることはない。ヤンバインは槍を片手で持ち回転させると、レトバに向かって走り出した。

 

 

 

「手加減はせんぞ! 貴様がどれほどの実力を持っているのかは、先程まで見させてもらった!! 我が槍を受け止めてみよ!!」

 

 

 

 ヤンバインは回転させた槍を止めると、両手で槍を持ちそれでレトバに突きで攻撃する。

 

 

 

 レトバは槍を振り回すことはなく、後ろに下がったり、横に動いたりして槍を躱す。

 完全にヤンバインの動きを見抜いている。

 

 

 

「くっ、読まれるか……ならば!!」

 

 

 

 ヤンバインはレトバに攻撃が避けられると、今度は直接レトバを攻撃するのではなく違う方法で攻撃を試みる。

 

 

 

 ヤンバインは槍を回転させながら、右手から左手、左手から右手とまるで踊るように動かすと、今度は地面に向かって槍を放つ。

 

 

 

「…………っ」

 

 

 

 その槍は地面にぶつかると、角度をつけて曲がる。まるで鏡に反射した光のように曲がった槍は、レトバに向かっていく。

 

 

 

 しかし、その槍をレトバは片手で摘んで止めた。

 

 

 

「…………ほう、こういうこともできるのか、便利な槍じゃな」

 

 

 

 レトバは槍を摘んだまま引っ張る。その力でヤンバインは引っ張られる。

 

 

 

「…………なん、だと!?」

 

 

 

「ほれほれ〜、どうした? もう少し頑張らんか」

 

 

 

 レトバが挑発すると、それに怒ったヤンバインは槍を握ったまま、レトバに近づく。槍は変形し、180度の角度をつけて曲がる。

 

 

 

「しなる槍か……面白い武器じゃな〜」

 

 

 

 ヤンバインは片足を上げると、レトバに連続でキックする。しかし、レトバは槍から手を離すと、姿勢を低くする。

 

 

 

 そして片足で立っているヤンバインの下へと潜り込むと、その足に肩をぶつけて転ばせた。

 

 

 

「ぐっ…………」

 

 

 

 そして倒れるヤンバインの腕を掴むと、ヤンバインを場外へと投げ飛ばした。

 

 

 

 

 

 

 



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 第279話  【BLACK EDGE 其の279 実力】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第279話

 【BLACK EDGE 其の279 実力】

 

 

 

 

 Aブロック予選ももうすぐ終わる。残る選手は5人になった。残るはジバ、レトバ、斧を持った剣闘士ジーン、格闘家サバト、そして女剣士サミーシャだ。

 

 

 

 ジーンとサミーシャは今回の試合で一番目立っていたジバを警戒する。優勝候補として名前が上がるだけあり、他の選手からの警戒も強い。

 

 

 

 逆にここまで目立った動きのなかったレトバを警戒しているのがサバトだった。

 

 

 

「……俺は見た。あのヤンバインを容易く倒す姿を……本当に警戒すべきはあんただ……」

 

 

 

 もう会場は広い。そんな中、戦いの場は二つに分かれた。ジーンとサミーシャ、ジバは三つ巴の戦いへ。サバトとレトバはそこから少し離れた場所で戦闘に入る。

 

 

 

 サバトは白い道着を着て、裸足でゆっくりとレトバへと近づく。足を擦りながらゆっくり、距離を縮める。

 

 

 

 レトバはそんなサバトが近づいてくるのをゆっくりと待つ。

 

 

 

 サバトの射程距離内にレトバが入った。

 

 

 

「うぉぉりゃー!!」

 

 

 

 レトバに向かって蹴りをする。しかし、サバトの足がレトバに当たると同時にレトバの姿が霧状になり消える。

 

 

 

 そして

 

 

 

「こっちじゃよ」

 

 

 

「っ!?」

 

 

 

 気がつくとレトバが真後ろにいた。サバトは急いで後ろを向こうとするが、それよりも早くレトバは槍を横に振るとサバトの首の後ろを叩く。

 

 

 

 それによりサバトは気を失い、その場で力尽きて倒れた。

 

 

 

「そっちも終わったみてーだな。ジジイ……」

 

 

 

 サバトを倒したレトバにジバが話しかけてくる。

 

 

 

 ジバの足元にはジーンとサミーシャが倒れていた。

 

 

 

「おぉ、待っててくれたのか。優しいなぁ」

 

 

 

「ジジイに不意打ちをするほど、俺は腐ってないからな……。一瞬で終わらせる、安心しな」

 

 

 

 ジバは剣を両手で握ると、レトバに向かって斬りかかる。横に大きく振られる剣、だが、剣は空を切る。

 

 

 

「ここまで生き残ってるジジイだ。このくらい避けんのは分かってんだよ!!」

 

 

 

 避けたレトバに向かって剣を振ってすぐにジバは蹴りをする。しかし、その蹴りはレトバに片手で受け止められてしまった。

 

 

 

「どうした? この程度か?」

 

 

 

「そんなわけ、ねーだろーが!!」

 

 

 

 ジバは片足を掴まれた状態のまま剣を振り、地面に振り下ろす。ジバの一撃で舞台は割れて、瓦礫が飛び散る。

 

 

 

 さらに舞台が割れたことで足場が不安定になり、2人はグラつく。

 

 

 

「おっと…………」

 

 

 

 レトバはそんな足場にふらつく。だが、足を掴んだまま離すことはない。

 それでもジバは剣を振った。

 

 

 

 ジバの剣はレトバに向かって振り下ろされる。だが、

 

 

 

「なっ!?」

 

 

 

 ジバはレトバの足を掴んでいる腕を持ち上げる。それによりジバの身体が剣ごと持ち上げられる。

 

 

 

 そしてレトバはジバを場外へと投げ飛ばした。

 

 

 

 

 

 

 

 



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 第280話  【BLACK EDGE 其の280 Bブロック】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第280話

 【BLACK EDGE 其の280 Bブロック】

 

 

 

 

 Aブロックは槍使いの老人レトバが勝利した。予想外の選手の勝利に観客達は驚く。

 

 

 

 そしてそれはブラッドも同じだった。

 

 

 

「ブラッドさん、どうしました?」

 

 

 

「いや、さっきの試合だが。本当にあの場面でジバを持ち上げられるのかってな……」

 

 

 

「龍の力で強化していたとかじゃないんですか?」

 

 

 

「いや、そうだとしても足場が不安定な状況であそこまで肉体の力だけで持ち上げられるとは思えない。それにあの老体だ。龍の力を使い過ぎれば、身体に負担がかかりすぎる……」

 

 

 

「じゃあ、どうやって…………」

 

 

 

「分からない。だが、俺のように肉体を強化したのとは違う。別の方法で龍の力を使ったんだ」

 

 

 

 

 

 

 Aブロックの予選を終えた選手達が次々と戻ってくる。

 

 

 

「団長……すみません」

 

 

 

 メリッサは赤いバンダナを巻いた茶髪の男に頭を下げる。すると男は笑顔でメリッサの背中を叩いた。

 

 

 

「そう落ち込むなよ。あとは俺に任せとけって!」

 

 

 

 メリッサと茶髪の男の隣ではサバトがビクビクさながら控室へと戻っていた。

 

 

 

「師匠にみつからないよ〜に〜」

 

 

 

 しかし、

 

 

 

「おい、サバト……」

 

 

 

「師匠!?」

 

 

 

 サバトの背後には黒髪に白い道着を着た男が腕を組んで立っていた。

 

 

 

「なぜお前がここにいるんだ…………?」

 

 

 

「いや、その、あの…………」

 

 

 

「お前はまだ修行が足りないみたいだな。明日からは修行を倍にしてやる」

 

 

 

「ゆ、許してください!!」

 

 

 

 

 

 そしてAブロックの選手と交代するようにBブロックの選手達が舞台へと向かっていく。

 

 

 

「では団長……」

 

 

 

「ああ、行ってくる」

 

 

 

 メリッサに見送られて赤いバンダナを巻いた茶髪も舞台へと向かう。

 

 

 

 そしてついにBブロック予選が始まろうとしていた。

 

 

 

 司会が選手達の紹介を始める。

 

 

 

「さぁ、Bブロックの選手をご紹介しましょう。優勝候補はムスリカ帝国騎士団師団長ポラリス!! そして最強の蹴り技のみで前回も準々決勝まで勝ち残ったハード・ソンだ!!」

 

 

 

 そして選手達が全員の舞台に登ると、司会開始の合図がなった。

 選手達が武器を手に戦い始める。

 

 

 

 そして優勝候補のハードは一人、また一人と次々と選手を蹴り倒し場外させていく。

 

 

 

 だが、

 

 

 

「ぐっぁ!!」

 

 

 

 赤いバンダナを巻いた茶髪の男に蹴りで攻撃しようとした瞬間、背後に回り込まれて首に剣を立てられた。

 

 

 

 バンダナの男は二刀流で短めの剣を両手に持っていた。そして一本の剣でハードを捕まえると、

 

 

 

「死にたくなければ場外まで歩くんだな」

 

 

 

 ハードを脅した。ハードは場外の側まで歩くが、

 

 

 

「落ちるのはお前だ!」

 

 

 

 バンダナの不意をついて攻撃しようとする。だが、バンダナの男は攻撃を躱すとハードを突き落とした。

 

 

 

 

 

 

 



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 第281話  【BLACK EDGE 其の281 巨人】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第281話

 【BLACK EDGE 其の281 巨人】

 

 

 

 

 

 Bブロック予選。ハードを倒したバンダナの男を選手たちが囲う。

 

 

 

「おーっと、ギアム選手が囲まれた!!」

 

 

 

 司会がハードを倒したバンダナの選手を実況する。

 

 

 

 ハードを倒してから、かなり目立っていた選手だ。他の選手からすれば、強そうな選手は早めに倒したいためこうして共闘することもある。

 

 

 

 武器を持った5人の選手が同時に飛びかかる。しかし、ギアムは二本の短剣を持って構えると、それで襲いかかる5人の選手を次々と倒していく。

 

 

 

 ギアムの剣技は素早く、目に止まらぬ速さで踊るように振られる。

 選手達の剣は空を切るが、ギアムの剣は選手達を切り裂いた。

 

 

 

 そんなギアムとは反対側。そこではスキンヘッドの男が戦っていた。

 

 

 

 他の選手に比べても巨漢。2メートル以上はあるであろう身長に、岩のような体格。

 

 

 

 そんな大きさでその選手は、片手で他の選手を掴むと、そのまま場外まで投げ飛ばす。

 その選手の名前はマイケル・サムソン。

 

 

 

 サムソンはBブロック予選でサムソンの次に巨漢の選手すらも投げ飛ばしてしまった。

 そんな無双を続けるサムソンに一人の男が近づいてきた。

 

 

 

「おい、デカイの……貴様はここまでだ」

 

 

 

 サムソンの前に現れたのは、ムスリカ帝国騎士団師団長ポラリス。

 鎧を着ており、立派な剣を構えている。

 

 

 

「…………」

 

 

 

 サムソンは無言でポラリスの方を向く。

 

 

 

「……ほう、俺には興味はないか」

 

 

 

 しかし、ポラリスを一目見たあと目を逸らす。そんなことをされたポラリスは静かに怒る。

 

 

 

 そして剣を両手で持って構えると、サムソンに向かって切り掛かった。

 

 

 

 しかし、サムソンはポラリスの剣を片手で止めた。

 

 

 

「な、なんだと……」

 

 

 

 ほとんど身体を動かすことなく、簡単に剣を止められたことをポラリスは驚く。

 

 

 

「動かない……だと……」

 

 

 

 ポラリスは剣を引っ込めようとするが、剣は1ミリも動かない。サムソンのポラリスの剣を両手で掴むと、剣をクシャリと握りつぶした。

 

 

 

 剣の中間部分が曲げられてしまい、それを見たポラリスは驚いて声も出なくなる。そんなポラリスを置いてサムソンは他の選手の元へと行こうとするが、ポラリスもこのままでは終われない。

 

 

 

「ま、待ちやがれ……」

 

 

 

 ポラリスの声は震えていた。それでもポラリスはサムソンに立ち向かおうとする。

 

 

 

 剣を捨て今度は素手でサムソンに殴りかかる。だが、サムソンはその巨漢でありながらポラリスよりも早く動き、背後を取ると首を掴んで場外へと投げ飛ばした。

 

 

 

 

 

 

 

 



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 第282話  【BLACK EDGE 其の282 二刀流】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第282話

 【BLACK EDGE 其の282 二刀流】

 

 

 

 

 ギアムが次々と選手達を倒す中、サムソンを発見した。

 

 

 

 Bブロック予選も残る人数は半分を切った。

 

 

 

 選手を投げ飛ばすサムソンにギアムは近づく。

 

 

 

「その巨漢に強さ。……なぁ、お前、後で俺たちのところに来ないか?」

 

 

 

 選手を投げ飛ばしたサムソンをギアムは勧誘する。ギアムに話しかけられたサムソンはギアムの方へと振り向いた。

 

 

 

 頭を掻いて少し困ったような表情をした後、首を横に振った。

 

 

 

「そうか、無理か。そいつは残念だ……。お前みたいな強い奴が俺たちには必要なんだがな……」

 

 

 

 サムソンは巨体を曲げて頭を下げた。

 

 

 

「あー、良いよ良いよ。気にするな。お前にも事情があるんだろ。それに強さだけで勧誘しすぎると、後であいつから怒られるかもしれないしな」

 

 

 

 話を終えた二人はお互いに戦い体制になる。

 

 

 

「ま、勧誘は終わりってことで、早速戦いますか」

 

 

 

 ギアムがそう言うとサムソンは頷く。

 

 

 

 サムソンは巨体だが素手だ。ギアムはサムソンより小さいのは確かだが、他の選手に比べても身長は低い方。だが、両手には剣を持っていた。

 

 

 

「行くぜ」

 

 

 

 ギアムはサムソンに向かって走る。そして正面から走ってくるギアムにサムソンは巨体を活かしたビンタを放つ。

 

 

 

 だが、ギアムはそれをギリギリまで引き寄せてから躱す。そしてさらにサムソンに近づく。

 

 

 

 サムソンはポラリスよりも早く動く。それは一般の兵士のスピードを遥かに超えているということだ。だが、その更に上のスピードをギアムは出していた。

 

 

 

 そのスピードでサムソンに近づくと、ギアムはサムソンの腹に向かって二本の剣で攻撃する。だが、サムソンの筋肉によりギアムの剣は弾かれてしまった。

 

 

 

 攻撃が効かなかったことにより動揺しているギアムに向かって、サムソンはパンチで攻撃しようとする。だが、ギアムはサムソンのパンチを簡単に躱して距離を取った。

 

 

 

「普通の刃じゃ、傷すらつけられないか…………。変わった身体をしてるんだな」

 

 

 

 サムソンは頷く。

 

 

 

 刃を弾く身体。そんな身体が存在しているなんて驚くはずだ。だが、ギアムは冷静だった。

 

 

 

「…………なら、こっちも普通じゃないもんを使わせてもらうぜ」

 

 

 

 ギアムはそう言うと二つの剣をぶつけて音を鳴らす。

 

 

 

「……………」

 

 

 

 するとギアムの持っていた二本の剣は燃え出して、炎を纏う。燃える二本の剣を持って、ギアムは構えた。

 

 

 

「さてと、お前の身体と俺の剣、どっちが不思議か、勝負だな」

 

 

 

 

 

 



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 第283話  【BLACK EDGE 其の283 燃える剣】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第283話

 【BLACK EDGE 其の283 燃える剣】

 

 

 

 ギアムの持つ二本の剣は炎を魔導。どういった原理で燃えているのかは分からない。だが、それを見たサムソンはニヤリと笑った。

 

 

 

「こういう武器を見るのは初めてだろ?」

 

 

 

 ギアムが言うとサムソンは頷く。そのあとサムソンは自分の身体を見るように自分の掌を見つめた。

 

 

 

「特殊な力。確かにこの世界にはそんなものが存在する。だが、一般的には知られてないだけだ。……自分だけじゃなくて安心したか?」

 

 

 

「………………」

 

 

 

「さてと、じゃあ、そろそろ始めようか!!」

 

 

 

 ギアムは炎の剣を持ったまま、サムソンへと近づく。サムソンはさっきよりも更に早く動いてギアムを捕まえようとするが、ギアムは捕まることはない。

 

 

 

 ギアムの剣がサムソンの身体を切り裂く。さっきはダメージはなかったはずだが、今回はしっかりとダメージがあった。

 

 

 

 腹に十字の傷を負ったサムソンは手を地面につく。

 

 

 

「………………」

 

 

 

「……立てよ。この程度じゃないだろ」

 

 

 

 サムソンを見下ろすギアム。サムソンはしばらくギアムのことを睨んでいたが、

 

 

 

「………………」

 

 

 

 ダメージからか立ち上がることもできず。力尽きて倒れた。

 倒れたサムソンを見ていたギアムは、彼を抱き抱えると場外にいる治療班に舞台の上から渡す。

 

 

 

「…………後でこいつに言っておいてくれ。話があるってな」

 

 

 

 そう言った後、ギアムは戦いに戻るために舞台の中央へと行こうとするが、そんなギアムの前に一人の選手が立ち塞がった。

 

 

 

 どうやらこの選手が最後の生き残りのようだ。

 

 

 

「後はお前を倒せば、予選は俺の勝ちだ!!」

 

 

 

 残った選手は剣を持って、ギアムに斬りかかる。だが、ギアムはその剣を避けると、その選手を切り倒した。

 

 

 

 Bブロック予選の勝者はバンダナの男ギアムだ。

 

 

 

 

 

 Bブロック予選の終わる間際。Cブロックの準備をする選手達が会場の近くに集まってきていた。

 

 

 

「あのサムソンという男。負ける……」

 

 

 

 試合を陰ながら見ていた前髪で片目の隠れた男が、壁に背をつきながら言った。そして片目の男は隣にいる黄色いフードに仮面の男に喋りかける。

 

 

 

「なぁ、あんたも分かるんだろ?」

 

 

 

 それを言われた黄色いフードはその男の方を向くことはなく。

 

 

 

「…………俺に言ってんのか?」

 

 

 

 と聞いた。

 

 

 

「いや、…………なんでもないさ……」

 

 

 

 だが、片目の男は壁から離れると、

 

 

 

「そろそろBブロックも終わったみたいだな……。次は俺の番か……」

 

 

 

 黄色いフードの男から離れるように歩いて行った。

 

 

 

 

 

 

 

 



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 第284話  【BLACK EDGE 其の284 雷】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第284話

 【BLACK EDGE 其の284 雷】

 

 

 

 

「ブラッドさん、Bブロックも終わったみたいですよ」

 

 

 

 Aブロックでは龍の適応者の老人レトバがいた。その老人に興味があったブラッドはAブロックを見ていたのだが、Bブロックは途中から興味がなくなり見ていなかった。

 

 

 

 ベンチで寝ていたブラッドはスカイに起こされて立ち上がる。

 

 

 

「一応勝者くらい見ときましょうよ。本戦で戦うかもそれないんですから」

 

 

 

 スカイにそう言われてブラッドが会場を見ると、そこには赤いバンダナの男が勝利していた。

 

 

 

 見たところで試合を見ていないから、その実力が分かるわけではない。注意すべきは特殊な力を持つ龍の適応者と魔術師だ。もしも、あの黄色いフードの男が現れたのならば、奴の能力は把握しておいた方がいいだろう。

 

 

 

 そう考えながらCブロックの選手達を見ていると、早速現れた。

 

 

 

 黄色いフードの男だ。Cブロックだったらしい。なんのためにグリモワールがこの大会に出ているのかは分からない。だが、何かの目的があるから出ているのだろう。

 

 

 

 しかし、グリモワールが魔術をこんな大勢の前で堂々と見せるとも考えられない。使うとしても戦闘の補佐程度か。

 

 

 

 そして選手の紹介がされる。今回はブラッドが知っているような名前はなかった。

 だが、実力者が多いのは確かだろう。

 

 

 

 グリモワールでも魔術無しでは簡単には立てないはず……。

 

 

 

 そして試合開始のゴングが鳴らされる。ゴングが鳴ったと同時に黄色いフードの男が動く。

 

 

 

 身体から電気を放つと、そのまま状態のまま上空へと飛んでいく。

 

 

 

「な、なんだあれは……」

 

 

 

「どうなってんだ…………」

 

 

 

 Bブロックでのギアムとサムソンの戦闘は観客達は、手品かなんかだと考えているものがほとんどであり、驚いているものもいたがそこまで目立ってはいなかった。

 

 

 

 だが、今回は違う。突然人が電気を放ちながら空へと浮かんでいったのだ。

 

 

 

 そして舞台の全体を見下ろせるほど、上空に飛んだ黄色いフードの男は両手を舞台に向ける。

 

 

 

 舞台に雷が落ちる。雷は舞台にいる全選手を巻き込む。そして雷が落ちた舞台に埃が舞い、選手はフードの男以外は見えなくなる。

 

 

 

 フードの男はゆっくりと舞台に降りる。そして埃が晴れると、舞台で立っている人物は誰一人おらず。勝利したのは…………。

 

 

 

「勝者はフレッタだァァァ!!」

 

 

 

 フレッタと呼ばれた男は舞台から降りて、控え室へと戻っていった。

 

 

 

 観客達は何が起きたのか分からずにポカンとしているのがほとんどだった。

 

 

 

 

 

 



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 第285話  【BLACK EDGE 其の285 始まる予選】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第285話

 【BLACK EDGE 其の285 始まる予選】

 

 

 

 

 Cブロックの予選はフレッタが勝利した。

 

 

 

 黄色いフードに白い仮面をつけた男フレッタ。彼は不思議な能力を使い、身体から雷を放出してCブロックを勝ち上がった。

 

 

 

 フレッタの使った能力は魔術。そう、フレッタは魔術師なのだ。

 グリモワールの幹部。

 

 

 

 グリモワールはシャドーやヒートのように能力に関係したコードネームをつけることがある。しかし、フレッタの名前はコードネームとは違う感じだ。

 

 

 

 組織でのコードネームが別にあるのか。フレッタというのが彼の本当の名前なのか、それとも偽名なのか。

 

 

 

 そんな疑問はあるが、Dブロック。ついにブラッドの順番がやってきた。

 

 

 

「ブラッドさん、絶対買ってきてくださいね!!」

 

 

 

 控え室を出る時にスカイがブラッドに言う。

 

 

 

「ああ、任せとけ!」

 

 

 

 グリモワールがこの大会にいることは知っていた。フェアの護衛はケイス達に任せている。そのため、フェアに関しては無事だろう。

 

 

 

 そうならば、本戦で奴と戦い、目的を確かめるのが良いだろう。控え室で騒ぎを起こせば、問題行動として追い出されてしまう。

 目的が何かは分からないが、ここにグリモワールの幹部を閉じ込めておくことができるのならば、その方がいい。

 

 

 

 ブラッドはDブロックの会場へと向かう。

 

 

 

 会場にはすでに選手達が集まり始めていた。

 

 

 

「あれは…………」

 

 

 

 そしてその中に黒いフードに仮面をつけた人物がいた。今まで出会ったグリモワールの連中に比べて身長が低い。

 

 

 

 向こうとブラッドに気づくと近づいてきた。

 

 

 

「君がブラッドか……。スパーク様から話は聞いているよ……」

 

 

 

「……Dブロックにもグリモワールがいるとはな……」

 

 

 

「私もニキータとしてこの大会に参加している。貴様を倒して、この大会に勝たせてもらうぞ」

 

 

 

「お前達の目的はなんなんだ?」

 

 

 

「そんなの決まってるだろう…………私達の目的は…………」

 

 

 

 その時、

 

 

 

「なんだい、君達。そんなところで睨み合って。弱い犬ほどよく吠えると言うが、それは君たちのことかな?」

 

 

 

 二人の話に横から入ってきたのは、白い服に立派な剣を腰に下げた長髪の男。

 彼はブラッドが武器を借りようとしていた時に絡んできたリトゥーンだ。

 

 

 

「お前は甘党の騎士団ビターン?」

 

 

 

「美しき黄金の騎士団の団長、リトゥーンだ!! なんだよ!! わざとだろ!!」

 

 

 

 それを聞いたニキータもリトゥーンの方を向くと、

 

 

 

「なんのようだ? ピーマン」

 

 

 

「俺の名前はそんなに覚えにくいか!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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  第286話  【BLACK EDGE 其の286 強者達】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第286話

 【BLACK EDGE 其の286 強者達】

 

 

 

 

 リトゥーンはニキータとブラッドに挑発する。

 

 

 

「君達みたいな雑魚が争ったところで何も生まれない。勝つのは僕なのだからな!!」

 

 

 

 リトゥーンはどこから持ってきたのか分からないが、口に薔薇を咥える。

 

 

 

「まぁ、僕に挑むというのなら、優しく相手になってあげるけどね」

 

 

 

 リトゥーンはそう言いながら二人から離れていった。

 

 

 

 リトゥーンが離れたと同時に司会が選手達の紹介を始める。

 

 

 

「さぁ、Dブロックの優勝候補はこいつらだ!! A級探窟家でありオルビット遺跡の開拓者ハレット・マーベル!! 美剣の使い手で男すらも魅了する美しき黄金の騎士団の団長リトゥーン・バルド・ゲイザー!! そして帰ってきた初代チャンピオン、アイデン・ガーリィン・ドゥーン!!」

 

 

 

 アイデンが登場すると観客達は喜びの声を上げる。

 

 

 

 ブラッドも彼の名前は聞いたことがある。アイデン・ガーリィン・ドゥーン。この闘技大会の初代チャンピオンであり、圧倒的な強さで当時の選手達を倒していたという。

 

 

 

 しかし、連続優勝しているキースに負けてからは、しばらく闘技大会から姿を消していた。キースに負けて逃げたなどという噂もあったが、持病の悪化というのがこの前記事になっていた。

 

 

 

 だが、キースのいない闘技大会に参加してしまうとは……。逃げたというのが嘘だったとしたら可哀想だ。

 またしても一部の者からはキースのいないタイミングを見計らって参加したと言われてしまう。

 

 

 

 だが、アイデンと同じブロックか。

 

 

 

 その他にも気になる人物は何人かいる。

 

 

 

 そして試合開始のゴングが鳴らされた。Dブロック予選。開始だ!!

 

 

 

 試合開始と同時にブラッドはある男の元へと駆け寄ろうとする。一番警戒して早めに倒しておくべき相手。それは……術師であるグリモワールのニキータだ。

 

 

 

 どんな能力を持っているか分からない以上、消耗する前に戦っておきたい。だが、そんなブラッドの前に立ち塞がる女。

 

 

 

「久しぶりだな。ブラッド!!」

 

 

 

 巨大な身体を持った女性。ブラッドよりも身長は高く、長髪に美しい顔の持ち主。

 

 

 

「…………お前か……。アイヤナ!!」

 

 

 

「ガルデニアであった以来だな」

 

 

 

 彼女はブラッドがガルデニアで賞金稼ぎをやっている時代に知り合った女賞金稼ぎである。

 

 

 

「よくもあの時は私の求婚を断ってくれたな」

 

 

 

「……俺にはやることがあるんだよ。結婚はできない」

 

 

 

「まぁ、私を振っておいて女の子と旅をしているくせに!!」

 

 

 

 アイヤナは斧を両手で握りしめると、ブラッドに襲いかかってきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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 第287話  【BLACK EDGE 其の287 アイヤナ】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第287話

 【BLACK EDGE 其の287 アイヤナ】

 

 

 

 

 これは何年前の話だろう。ガルデニアで賞金稼ぎをしていた私は賞金首アフルを追って、ガルデニアから少し離れた森を探していた。

 

 

 

「確かここに逃げ込んだはずなんだけどな」

 

 

 

 この頃の私は強さだけじゃなく、ガルデニアの美女と言われるほど美しかった。

 

 

 

「ふふふ、まだ追ってきてやがったか……」

 

 

 

 アルフを追っていた私だが、気がつけば大勢の男に囲まれていた。

 

 

 

「くっ、仲間を呼んでいたのか……」

 

 

 

 そしてその中からアルフも出てくる。

 

 

 

「そうだよ。気づかなかったのか? 間抜けが……。ここまで追ってきたのが運の尽きだな……」

 

 

 

 完全に包囲されている。逃げ場はない。戦うしかないようだ。

 

 

 

 私は斧を両手で持ち構える。私を包囲している集団が一斉に襲いかかってくる。

 

 

 

 私は斧を振って抵抗するが、数には敵わず斧を取り上げられて倒された。

 私の腕をアルフは踏みつける。

 

 

 

「よくもまぁ追っかけ回してくれやがったな!!」

 

 

 

 アルフは私の腕を何度も踏みつける。

 

 

 

「しかし、勿体無いなァ、こんな美人を殺すことになるなんてな……」

 

 

 

 私を囲む男の一人がそう言った。

 

 

 

 私はその男に対して、

 

 

 

「じゃあ、逃してくれないかしら……?」

 

 

 

 と言ってみる。しかし、そんなことさせてもらえるはずもなく。

 

 

 

「逃すわけはないだろ」

 

 

 

 アルフは両足を私の左右の腕に乗せる。アルフの体重が全て腕にかかり、私は悲鳴を上げた。

 

 

 

 そして私の腕に乗ったアルフは私の顔を見ると、

 

 

 

「その顔……なんだよな。ムカつく……ムカつくんだよ!!」

 

 

 

 そう言って左足を上げると今度は顔を踏みつけようとしてきた。しかし、

 

 

 

「ぐぁぁ!!」

 

 

 

 アルフの後ろにいた男達の悲鳴が聞こえる。

 

 

 

「どうしたんだ。お前たち?」

 

 

 

 アルフが振り向くとそこにはアルフの仲間が転がっていた。そして赤いコートを着た茶髪の男。

 

 

 

「おい、そこまでにしろよ……」

 

 

 

 そこにいたのはブラッドだった。そこから先は一瞬の出来事だった。ブラッドに攻撃しようとしたアルフはブラッドに速攻で倒された。

 

 

 

「おい、立てるか?」

 

 

 

 そしてアルフを倒したブラッドは私に手を差し伸ばした。

 

 

 

「あんたに手を貸される必要はないよ」

 

 

 

 これが私と彼の出会いだった。

 

 

 

 

 

 

 アイヤナはブラッドに斧を振り回しながらそんな話をした。

 

 

 

「おい、そんなことあったか? 俺は覚えてないぞ」

 

 

 

「あったのよ!! 何よ!! 私のことなんてどうでも良いってことなの!!」

 

 

 

 アイヤナは高く斧を振り上げる。そして勢いよく振り下ろした。

 だが、ブラッドはその斧を片手で受け止めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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 第288話  【BLACK EDGE 其の288 修羅場】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第288話

 【BLACK EDGE 其の288 修羅場】

 

 

 

 

 ブラッドはアイヤナの斧を片手で受け止める。

 

 

 

「……まぁ、そんな話があったかどうかなんてどうでも良い。今回は勝たせてもらうぞ。アイヤナ」

 

 

 

 ブラッドが指に力を入れると斧にヒビが入る。

 

 

 

「相変わらずの馬鹿力ね。でも、私に振られてから力をつけたのよ!!」

 

 

 

 すると、アイヤナは斧から手を離す。そして今度は腰から二本の短剣を取り出した。

 

 

 

 その構えには見覚えがある。

 

 

 

「そうか、確かに実力を上げたようだな……」

 

 

 

 その構えを見ただけでブラッドはアイヤナが努力してきたことが分かった。

 

 

 

 ブラッドは斧から手を離す。斧は地面に落ちると大きな音を鳴らした。その音を合図にアイヤナはブラッドに攻撃を仕掛けてくる。

 

 

 

 アイヤナは交互にブラッドに短剣で攻撃する。ブラッドは攻撃を最小限の動きで避ける。

 

 

 

「な、これでも当たらないの!?」

 

 

 

 攻撃の当たらないアイヤナは徐々に疲れて、攻撃速度が落ちていく。そして勢いが落ちたところをブラッドはアイヤナの腕を掴み攻撃を止めた。

 

 

 

 そして腕を掴んだままアイヤナの背後に回り込み動きを封じる。アイヤナは痛くて短剣を落としてしまう。

 

 

 

「確かに努力したことは認めるよ……。だが、まだまだだ」

 

 

 

「くっ! この程度で…………」

 

 

 

 ブラッドはアイヤナを場外に連れて行こうとする。

 

 

 

 アイヤナは抵抗するが、ブラッドの拘束から抜け出すことができない。

 

 

 

 そしてアイヤナはブラッドにより場外に出された。

 

 

 

 

「そ、そんな……私が……………」

 

 

 

「気の強いお前が、ヒューグに教えを乞うなんて意外だったよ。まだ強くなる見込みはある」

 

 

 

 ブラッドはそう言うと戦場に戻っていった。

 

 

 

 アイヤナが現れたことでニキータを見失ってしまった。どこに行ってしまったのか。

 

 

 

 舞台の中央で周りを見渡していると、

 

 

 

「何をキョロキョロしてるのかな?」

 

 

 

 そう言ってブラッドに剣が振り下ろされる。

 

 

 

「っ!」

 

 

 

 躱したブラッドが攻撃してきた相手を見ると、そこにはリトゥーンがいた。

 

 

 

「またお前か…………」

 

 

 

「その反応はないだろ〜、僕みたいな有名人が話しかけてあげてるんだ。光栄に思いたまえ」

 

 

 

「お前なんて知らねーよ」

 

 

 

「………………」

 

 

 

 知らないと言われたことにリトゥーンはショックを受ける。

 

 

 

「……………ぼ、僕を知らない……。い、いや、そんなはずはない。これは僕を動揺させようとしてるんだ!!」

 

 

 

 そう言って首を振ったリトゥーンは腰に付けた剣を抜く。

 

 

 

「さてと、僕の美しい戦いを見せてあげようか」

 

 

 

「…………ああ、そうか。思い出した。……お前とは戦う約束をしてたな」

 

 

 

 そう言ったブラッドも腰にある剣を抜く。

 

 

 

「こいつでお前を倒す。そういう宣言をしてたんだった……」

 

 

 

 

 

 

 



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 第289話  【BLACK EDGE 其の289 美しき騎士団】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第289話

 【BLACK EDGE 其の289 美しき騎士団】

 

 

 

 

 ブラッドの前に現れたのはリトゥーン。ブラッドとリトゥーンはお互いに剣を抜く。

 

 

 

「その剣で僕に勝つと? 冗談がうまいなぁ、君は!!」

 

 

 

 ブラッドの剣を見たリトゥーンはそう言う。

 

 

 

 ブラッドの手にある剣は古びた使い古された剣だ。

 ボロボロで汚れており、それでも丁寧に手入れをされている。

 

 

 

 この剣は闘技場でレンタルされている武器の一つだ。

 

 

 

 この剣を使い、ブラッドはリトゥーンに勝利宣言をした。

 

 

 

「ああ、そのお前の自慢の剣をへし折ってな……」

 

 

 

「僕の剣をへし折る? はーはは!! 本当に面白い!!」

 

 

 

 リトゥーンは片手で剣を構えると、

 

 

 

「でも、そんなことは不可能だということを教えてやろう!」

 

 

 

 そう言うとリトゥーンは切り掛かってくる。ブラッドも剣を構えると、リトゥーンを迎え撃つ。

 

 

 

 リトゥーンの剣をブラッドは剣で弾いて防ぐ。

 

 

 

 それでもリトゥーンは何度も攻撃を仕掛けてくる。ブラッドは剣を両手で持つと、剣を振ってリトゥーンの剣を弾き返した。

 

 

 

「なっ!? ばかな、僕の剣技が敗れるなんて……」

 

 

 

 剣を弾かれたリトゥーンは驚くと、警戒してブラッドから距離を取るように後ろに下がった。

 

 

 

 ブラッドは追いかけて追撃を加えることもできたが、追いかけることはしない。

 

 

 

「よ、よくも僕に恥をかかせてくれたな」

 

 

 

 リトゥーンは怒ると、剣を構えを変える。片手で剣を握り、もう片方の手を前に出した。

 

 

 

「僕を怒らせたことを後悔するんだな……」

 

 

 

 リトゥーンは再びブラッドに斬りかかる。ブラッドは同じように攻撃を防ごうとするが、斬り付けようとした瞬間に、リトゥーンは拳を握る手を離す。

 

 

 

 そして反対の手で離した剣をキャッチすると、今度はそっちの手で攻撃を仕掛けてきた。

 

 

 

 突然、反対から攻撃されたことで、最初の剣を防ごうとしていたブラッドの剣は空ぶる。

 

 

 

 そしてそんなブラッドに向かうリトゥーンの剣。普通なら防げない攻撃。だが、ブラッドは倒れるように力を抜くことでリトゥーンの攻撃をどうにか躱した。

 

 

 

 躱すことができたブラッドだが、リトゥーンの剣を躱すために足の力を抜いて倒れたため、地面に転がる。

 

 

 

 そんなブラッドを追ってリトゥーンは剣を振り下ろす。倒れたブラッドにリトゥーンの剣が振り下ろされる。ブラッドは剣を横にしてリトゥーンの剣を受け止めた。

 

 

 

 リトゥーンはこのまま体重をかければ、ブラッドの剣を折ってブラッドに攻撃できる。

 

 

 

「僕の勝ちだな……」

 

 

 

 リトゥーンは勝ち誇る。しかし、

 

 

 

 

 

 

 



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 第290話  【BLACK EDGE 其の290 剣の歴史】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第290話

 【BLACK EDGE 其の290 剣の歴史】

 

 

 

 

 倒れたブラッドにリトゥーンの剣が襲い掛かる。ブラッドは剣を横にしてどうにか防ぐが、リトゥーンが体重をかければ、ブラッドの剣は折れてしまいそうだ。

 

 

 

「僕の勝ちだな……」

 

 

 

 そう言ってリトゥーンは勝ち誇る。しかし、そんなリトゥーンに、

 

 

 

「それはどうかな……」

 

 

 

 ブラッドはそう言うと転がった状態のまま、剣に力を入れる。

 

 

 

 無理矢理剣を押し込んできたことにリトゥーンは驚く。

 

 

 

 切れ味の違いからリトゥーンの剣の刃がブラッドの持つ剣にゆっくりと沈んでいく。

 このままではブラッドの剣は折られてしまう。

 

 

 

 それでもブラッドは剣を引っ込めることはなかった。

 

 

 

「くっ、……これ以上やっても無駄だ…………な、馬鹿な!?」

 

 

 

 途中までリトゥーンの剣に押し負けていたはずだが、突然リトゥーンの剣の方が刃こぼれし始めた。

 

 

 

「どうなってるんだ……」

 

 

 

「この剣は歴代の闘技者の捕まった剣だ。多くの者と戦い、そして大切に使われてきた。そんな熟練の剣が、赤ん坊の剣に負けるかよ」

 

 

 

 そしてブラッドは寝っ転がった状態のまま、リトゥーンの剣を切断した。

 

 

 

 切断された剣を見て、リトゥーンは涙目になる。

 

 

 

「そ、そんな、僕の剣が、僕が負けるなんて……」

 

 

 

 そして武器のなくなったリトゥーンはブラッドを恐れて、一歩二歩と下がっていく。

 そんな中、ブラッドは立ち上がった。

 

 

 

「さてと、お前の自慢の剣はなくなった。これからどうする?」

 

 

 

 ブラッドがそう聞くと、リトゥーンはビビり焦るようにして舞台から降りていった。

 

 

 

 リトゥーンを倒したブラッドだが、優勝候補を倒したことで、周りにいる選手から目をつけられてしまう。

 

 

 

 ブラッドは三人の選手に囲まれた。囲まれたブラッドは剣をしまうと、素手で戦おうとするが、襲いかかってこようとした選手達は突然地面に突っ伏した。

 

 

 

「な、なんだ……」

 

 

 

「身体が重い……」

 

 

 

 そしてそんな三人の選手の奥から、黒いフードを着た男が現れた。

 

 

 

「やっと出てきたな。ニキータ」

 

 

 

「待たせたな。……私も他の選手にちょっかいを出されてな。少し手こずった」

 

 

 

 ニキータは気を失っている大男を片手で引きずってきている。

 ニキータはその男を投げると、ブラッドを囲んでいた選手達にぶつけて、四人をまとめて場外に追い出した。

 

 

 

「おいおい、そんな堂々と術を使っていいのか?」

 

 

 

 ブラッドが聞くと、

 

 

 

「ああ、今回だけは特別だ。そういうスパーク様の命令だからな」

 

 

 

 

 

 

 

 



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 第291話  【BLACK EDGE 其の291 重力】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第291話

 【BLACK EDGE 其の291 重力】

 

 

 

 ニキータはブラッドを囲む選手を倒した後、ブラッドと向かい合った。

 

 

 

「黒龍の適応者。君の強さは聞いている。ガルデニアの件も報告を受けた。ポイズンの件もあるしな。ここで負けてもらうぞ」

 

 

 

 ニキータは武器を持っておらず素手だ。そんな状態で姿勢を低くして構えた。

 

 

 

 すると、突然ブラッドは何かに押しつぶされている感覚に陥る。

 

 

 

「な、なんだ……これ…………」

 

 

 

 ブラッドはその重さに負けて身体が沈む。そんなブラッドを見て、

 

 

 

「それが私の術だ」

 

 

 

 とニキータが自慢げに言った。

 

 

 

 ニキータは割れた舞台から石ころを拾うと、

 

 

 

「私の力は触れたものの重力を倍にする」

 

 

 

 ニキータは軽く石ころを投げる。最初はゆっくりと飛んでいた石だったが、ニキータが指を鳴らすと動きがおかしくなり、通常よりも落下が速くなる。

 小石程度じゃ変化は激しいものではないようだが、それでも投げた時の軌道が変わっていた。

 

 

 

 だが、ブラッドはその説明を聞いて、

 

 

 

「触れられた記憶はないけどな……」

 

 

 

 とニキータの説明を疑う。

 

 

 

 大会が始まってからブラッドはニキータに一度も触れられた記憶はない。

 まずニキータに近づきすぎないようにしていた。

 

 

 

「さっき君を囲んでいた選手は試合中に触れた。でも、君に触れるチャンスはいくらでもあった……」

 

 

 

「どういうことだ……」

 

 

 

「さぁ? 私の能力は触れたものに対して三日間有効とだけ伝えておこう。君はこの国での三日間の生活で、本当に誰にも触れられていないと言えるか?」

 

 

 

 つまりは大会が始まる前から目をつけていたということか。

 

 

 

「いつだ?」

 

 

 

「いつだろうな? 散歩中か、それとも屋敷で生活している時か?」

 

 

 

 この国に来てからキースの屋敷で暮らしていることがバレている。そこまで知られているとは……。

 

 

 

 大会のエントリーの時にグリモワールがいた。フェアとはなるべく一緒に行動するようにしていたから、大丈夫だと思っていたが、もっと警戒すべきだったか。

 

 

 

「さてと、そろそろ場外に落とすか……」

 

 

 

 ニキータはそう言いながらゆっくりとブラッドに近づいてくる。その時、ニキータを横から奇襲する人物が現れる。

 

 

 

 剣を持ちその剣をニキータに向かって振る。

 

 

 

 それに気づいたニキータはどうにか躱すが、剣が掠ったのか片手を抑える。そしてその腕から血が流れてきていた。

 

 

 

「勝利を確信した時、隙が生まれる。そこをついたつもりだったんだけどな……」

 

 

 

「このタイミングで邪魔をするか。アイデン」

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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 第292話  【BLACK EDGE 其の292 アイデン】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第292話

 【BLACK EDGE 其の292 アイデン】

 

 

 

 

 ブラッドに近づくニキータに奇襲を仕掛けたのはアイデンだった。

 

 

 

「よぉ、久しぶりだな。てめ〜」

 

 

 

 上半身半裸で紺色の髪をした男アイデンは、ニキータを知っているような口振りだった。

 

 

 

「知り合いなのか!? お前ら」

 

 

 

 その様子を見たブラッドが驚くように二人に聞くが二人は答えることはない。

 

 

 

 アイデンは剣を抜くと、ニキータに襲いかかった。

 

 

 

 ニキータはアイデンから距離を取ろうと後ろに下がる。だが、アイデンはそんなニキータを追いかけてすぐさま追いついた。

 

 

 

「っ!!」

 

 

 

 アイデンが剣を振る。ニキータはしゃがんでギリギリで避ける。そして避ける瞬間にアイデンの剣に触れた。

 

 

 

 それによりアイデンの剣は重くなる。だが、それでアイデンの動きが鈍くなることはなかった。

 

 

 

 その重たい状態のまま剣を振り、アイデンを攻撃する。重たくした後は攻撃されないと考えていたニキータは油断していたのか。

 アイデンの剣を避けるのが間に合わずに切られてしまう。

 

 

 

「がぁ!?」

 

 

 

 アイデンに切られたニキータは切られた腹を押さえながら地面に転がった。

 

 

 

「ぐっ、よくも……この私を……」

 

 

 

 切られたニキータはアイデンを睨む。

 

 

 

「貴様はこのまま殺しても良いが、ここは試合の場。今回だけは見逃してやる」

 

 

 

 ニキータはダメージからもう意識を保つのが限界だったのか。意識を失い倒れた。

 

 

 

 すると、ブラッドの身体は軽くなる。ニキータが意識を失ったことで術が解けたようだ。

 

 

 

 動けるようになったブラッドはアイデンに言う。

 

 

 

「助けてもらったってことで良いのか?」

 

 

 

 しかし、アイデンはブラッドを睨むと、

 

 

 

「そういうことではない。俺は俺の目的のために戦っただけだ。貴様とこいつの戦闘は良い隙だった。お前かあいつ、どちらを先に倒すかでお前を先に倒しただけだ」

 

 

 

 アイデンはブラッドにそう言った。

 

 

 

「そーかい。じゃあ、礼は言わないぞ」

 

 

 

「その必要はない。これからお前も俺が倒すんだからな」

 

 

 

 そう言ってアイデンは剣をブラッドに向けた。

 

 

 

 キースに負けたとはいえ、その実力は本物だ。ニキータをあのように倒してしまうのだから。

 

 

 

 ブラッドは拳を握りしめると、アイデンに向かって殴りかかった。

 

 

 

 向かってくるブラッドにアイデンは剣を振る。ブラッドはその剣を避け、アイデンの顔面を殴りつけるが、

 

 

 

「っ…………」

 

 

 

「この程度か」

 

 

 

 アイデンは顔を殴られたというのにダメージを感じさせない。殴った腕をアイデンは掴む。

 

 

 

 その腕力は凄まじく骨まで痛む。

 

 

 

 ブラッドは腕を掴まれた状態でアイデンに蹴りで攻撃する。だが、アイデンはその蹴りを受けても表情は変わらない。

 

 

 

 アイデンはブラッドを持ち上げると、場外に向けて投げ飛ばした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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 第293話  【BLACK EDGE 其の293 ブラッドvsアイデン】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第293話

 【BLACK EDGE 其の293 ブラッドvsアイデン】

 

 

 

 

 場外へと投げ飛ばされたブラッド。ブラッドは腕に龍の力を集めると、オーラを紐状にしてそれを飛ばした。

 

 

 

 その紐を場内にいる丈夫そうな選手の一人に引っ掛けると、それを引っ張り場内へと戻る。それにより紐のくっつけられた一人の選手は場外はと吹っ飛んだ。

 

 

 

「な、なんだこれりゃー!?」

 

 

 

 どうにか戻ってきたブラッド。そんなブラッドを見たアイデンは、

 

 

 

「お前もあいつと同じで不思議な力を使いやがるのか……」

 

 

 

 と睨みつけてきた。

 

 

 

 ニキータとは知り合いらしいが、龍の力については知らないのだろうか。どんな関係なのか気になるが、聞いても答えてくれそうにない。

 

 

 

 アイデンは剣を握りしめると、今度はアイデンから攻撃を仕掛けてきた。

 

 

 

 ブラッドはレンタルした剣を抜くと、その剣でアイデンの剣を受け止める。

 

 

 

 ブラッドとアイデンはお互いの剣をぶつけ合う。そしてお互いに弾き合った。

 二人の身体は後ろに下がる。だが、すぐに二人はまた剣をぶつけ合う。

 

 

 

 だが、何度か打ち合っていたが、アイデンの方が一枚上なのか。ブラッドは徐々に打ち負け始める。

 

 

 

「……くっ」

 

 

 

 このままではまずいと考えたブラッドは距離を取るために後ろに下がった。

 

 

 

 アイデンはそんなブラッドを追ってくる。

 

 

 

 このまま戦っていてもアイデンには勝てない。そう考えたブラッドは龍の力を使う。

 

 

 

 ブラッドは右手を握りしめると、そこに黒いオーラが現れる。

 

 

 

 黒いオーラを纏った腕でブラッドは剣を持つ。すると、その黒いオーラは剣にまで伝わっていく。

 

 

 

「本当に変わった力だな……」

 

 

 

 それを見たアイデンは警戒する。

 

 

 

 ブラッドは剣にオーラを纏わせると、その剣を両手で握りアイデンに向かう。

 

 

 

 黒いオーラを纏った剣はまるで黒い剣のようになる。ブラッドはアイデンに剣を振り下ろす。

 

 

 

 アイデンは剣を横にすると、ブラッドの剣を受け止める。しかし、ブラッドの剣はさっきの攻撃よりも強化されている。

 

 

 

 先程はアイデンに打ち負けたブラッドだったが、今回はアイデンに打ち勝った。そしてアイデンの剣を弾くと、アイデンを攻撃しようとする。

 

 

 

 だが、アイデンは逃げることはなく。ブラッドに逆に近づく。そして剣を持っていないもう片方の腕でブラッドの顔面を殴りつけた。

 

 

 

 しかし、ブラッドはアイデンに顔を殴られたがどうにか耐える。そして耐えたブラッドはアイデンに再び攻撃しようとする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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 第294話  【BLACK EDGE 其の294 黒い剣】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第294話

 【BLACK EDGE 其の294 黒い剣】

 

 

 

 ブラッドは黒い剣でアイデンに斬りかかる。ブラッドの剣はアイデンとぶつかる。

 だが、今回は今までとは違い、アイデンの剣にブラッドの剣が打ち勝つ。

 

 

 

 ブラッドの攻撃に弾かれたアイデンだが、すぐに立て直すと今度は拳でブラッドを殴る。アイデンの拳がブラッドの顔面に当たる。

 

 

 

 だが、それを耐えたブラッドは剣を振り上げると、再びアイデンに攻撃する。

 

 

 

 アイデンの剣がギリギリ間に合う。そしてブラッドの剣を受け止めた。

 

 

 

「なんだか分からんが、その黒いがお前を強くしたってことは分かった」

 

 

 

 アイデンはそう言うと、ブラッドの剣を逸らして退ける。そして今ブラッドの攻撃を避けたアイデンはブラッドから距離を取るため、後ろに飛んで下がった。

 

 

 

 ブラッドは追いかけようとしたが、アイデンの構えを見てやめた。

 

 

 

 アイデンは剣をしまうと、姿勢を低くして剣をいつでも抜ける体制になる。

 

 

 

 もしも不用意に近づけば、やられてしまう。ブラッドはそう感じ取った。

 

 

 

「ほう、この構えの危険性もわかるか。お前の本能は優秀だな」

 

 

 

 アイデンはその構えを続けた状態でブラッドにそう言った。

 

 

 

 ブラッドはその構えを見るのは初めてである。だが、無意識に危険だと感じ取ったのだ。

 

 

 

 ブラッドはアイデンの構えを警戒しながらゆっくりと距離を詰める。

 

 

 

「っ!!」

 

 

 

 アイデンとの距離が2メートルになったところでブラッドが動いた。ブラッドは剣を横にするとアイデンに斬りかかる。

 

 

 

 しかし、アイデンに攻撃を仕掛けたはずのブラッドの剣は

 

 

 

「な、なにが……」

 

 

 

 アイデンに近づいた瞬間に切断された。それを見たブラッドはアイデンへの攻撃を中断して一旦下がる。

 

 

 

 そして切断された剣を見た。その剣は綺麗に切られている。

 リトゥーンの剣にも勝った剣がこんな簡単に壊されるなんて……。

 

 

 

 ブラッドがアイデンの方を見ると、アイデンは剣を抜いていた。

 

 

 

 いつ抜いたのだろう。気がつくとアイデンの剣は鞘から抜けれていた。

 

 

 

「どうした、そんなに驚いたか?」

 

 

 

 アイデンはそう言うと鞘に剣を戻して再び同じ構えになった。近くには他の選手はいない。ということはやった人物は一人しか考えられない。

 

 

 

「これはお前の仕業か」

 

 

 

「ああ、お前の剣を折ったのは俺だ」

 

 

 

 ブラッドは折られた剣を鞘にしまうと、地面に優しく置く。

 

 

 

「すまんな。俺の力不足で……」

 

 

 

 ブラッドは剣に向かって小さくそう呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 



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 第295話  【BLACK EDGE 其の295 剣】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第295話

 【BLACK EDGE 其の295 剣】

 

 

 

 

 

 

 ブラッドはアイデンにより剣を折られてしまった。

 

 

 

 ブラッドは折られた剣を鞘に戻すと、地面に優しく置いた。

 

 

 

 そしてアイデンの方を向く。

 

 

 

 この剣はリトゥーンの剣にも打ち勝った剣だ。そして龍の力で強化もしていた。それなのにアイデンに折られてしまったのだ。

 

 

 

 それだけアイデンが強く、そして剣も強力だということだ。

 

 

 

 素手で戦ったとして、龍の力で強化したとしてもアイデンの剣に対抗できるだろうか。

 

 

 

 ブラッドは右手を前に突き出す。すると、黒いオーラを操って、それを剣の形にした。

 

 

 

 キースの屋敷で生活する間。余裕があれば、この技の特訓をしていた。

 

 

 

 ポイズンとの戦闘ではうまく使えなかったが、龍の力を外に出してそれで武器を作る。その特訓を続けていた。

 

 

 

 その成果もあり、ブラッドは剣の生成を短時間で行えるようになった。しかし、屋敷での特訓で剣の強度を確かめたが、どれだけやってもすぐに壊れてしまう。

 

 

 

 未だに剣として使える。そのレベルまでには到達していなかった。

 

 

 

 だが、だからこそ、この場でこの技を使おうと思ったのだ。

 

 

 

 ブラッドはメテオラに修行をつけられている時に、教えてもらったことがあった。それは日々の積み重ねも重要である、だが、それと同じくらい実践も必要である。というものである。

 

 

 

 実際に賞金稼ぎ時代に、賞金首と戦いながら龍の力のコントロールをできるようにしていき、ロジュンや赤崎との戦闘で龍の力の部分発動の連結もできるようになった。

 

 

 

 だからこそだ。この場が成長のチャンスであると考えたブラッドは、龍のオーラで剣を作り、それでアイデンと戦うことにしたのだ。

 

 

 

「そういう使い方もできるのか。便利だな」

 

 

 

 ブラッドの剣を見たアイデンがそう言う。

 

 

 

 アイデンはブラッドがこの技を使う姿を初めて見た。今まで使わなかったのに少し疑問を持ったが、まだ使いこなせていないことは分かっていない。

 

 

 

 ブラッドはオーラで作った剣を両手で握ると、それで構える。

 アイデンはずっと同じ構えで待っている。

 

 

 

 ブラッドはゆっくりと距離を詰める。

 

 

 

 アイデンの攻撃をさっきブラッドは見ることができなかった。気づいた時にはアイデンは剣に抜いており、ブラッドの剣を切り裂いていた。

 

 

 

 今回はそれを知る。そのためにブラッドはアイデンの剣を警戒しながらゆっくりと距離を詰める。そしてさっきと同じように距離を詰めたところで、ブラッドは剣を振って切り掛かった。

 

 

 

 

 

 



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 第296話  【BLACK EDGE 其の296 アイデンの技】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第296話

 【BLACK EDGE 其の296 アイデンの技】

 

 

 

 

 

 ゆっくりとブラッドはアイデンに近づく。

 

 

 

 アイデンの攻撃がさっきは見えなかった。それがどんな攻撃なのか、今度は確かめるためだ。

 

 

 

 そうやってゆっくりと近づくブラッドだが、そんなブラッドを見てアイデンは言う。

 

 

 

「一応警告しておく。それ以上は危険だ。……さっきは距離を測り違えたが、今回は間違えない。確実にお前の身体を真っ二つにする」

 

 

 

 それを聞いたブラッドだが、歩みを止めることはしない。

 

 

 

 アイデンの言っていることが本当なら、次に近づいた時にブラッドはやられる。それにどんな攻撃かは分からないが、アイデンの言い方からしてやられ方次第では重症になるかもしれない。

 

 

 

 だが、そうだとしてもここで退いてしまえば、このアイデンの技の攻略法を見つけることもできないし、それにブラッドの新技の進化もなくなるだろう。

 

 

 

 ブラッドはゆっくりと近づいて、そしてさっきより少し離れた場所で縦にする。そしてアイデンに向かって切り掛かった。

 

 

 

 だが、ブラッドがアイデンに剣を振り下ろすと同時に、アイデンの身体が少しだけ前に動いた。

 それを見たブラッドは咄嗟に剣から手を離す。

 

 

 

 次の瞬間、ブラッドの持っていた剣の刃は切断される。そしてアイデンの剣がブラッドに向かってくる。

 

 

 

 剣から手を離したブラッドは右肘と左膝に龍の力を発動する。それでどうにかアイデンの剣を挟んで止めた。

 

 

 

 それを見たアイデンは驚く。

 

 

 

「なんだと……」

 

 

 

 アイデンはブラッドに剣を止められたことに驚く。ブラッドは剣を受け止めると、その体制のまま先程手放した剣をキャッチする。

 

 

 

 その剣は刃の部分が途中から無くなっていたが、ブラッドが手に取ると黒いオーラが無くなった部分を補い、再び剣になる。

 

 

 

 そしてその剣をアイデンに向かって投げる。剣はアイデンの左脚に刺さり、アイデンはバランスを崩して剣を握る力が弱くなる。

 

 

 

 ブラッドはそんなアイデンの剣をアイデンから離させると、場外に飛ばした。

 剣を失ったアイデンは地面に手をつく。

 

 

 

 アイデンに刺さっていた剣は、アイデンに刺さるとすぐに黒いオーラになり消滅した。

 

 

 

「さてと、剣は無くなったがどうする?」

 

 

 

 ブラッドは地面に手をついたアイデンを見下ろす。すると、アイデンはブラッドの方を向くと、

 

 

 

「俺の負けだ。俺は剣士だ。剣がなくては戦えない」

 

 

 

 そう言ってアイデンは場外へと足を引き摺りながら出ていった。

 

 

 

 

 

 

 



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 第297話  【BLACK EDGE 其の297 Dブロック】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第297話

 【BLACK EDGE 其の297 Dブロック】

 

 

 

 

 Dブロック予選も残る選手は数人。アイデンを倒したブラッドは残りの選手達と戦っていた。

 

 

 

 それぞれの選手がここまで生き残った猛者ども、そう簡単には倒せないが、それでもブラッドは選手達を倒していく。

 

 

 

 そんな中、

 

 

 

「うおおぉらー!!」

 

 

 

 タックルで三人の選手を同時に倒す選手。

 

 

 

 三人の選手が同時に倒されたことで残りは五人。残りの選手の中でそのタックルをした選手が一番目立っていた。

 

 

 

 優勝候補であるA級探窟家でありオルビット遺跡の開拓者ハレット・マーベルや他にも有力選手を次々と倒してきた人物。

 それがこのマスタードだ。

 

 

 

 丸太のような筋肉に岩なような腹筋。Dブロックの中では最も巨大であり、強靭な肉体を持った人物だ。

 

 

 

 残った選手のうち、二人の選手は結託すると、同時にマスタードに剣で切り付けようとする。しかし、マスタードに当たった剣は、マスタードの剣に埋もれてしまい動かなくなる。

 

 

 

「な、なんだ!?」

 

 

 

「どういう身体してやがるんだ!?」

 

 

 

 マスタードに攻撃した二人は剣が刺さった状態で宙に浮く。マスタードはそんな二人を指で摘むと、場外まで投げ飛ばした。

 

 

 

 マスタードは残った選手の二人を見る。残っているのはブラッドと両手剣を持った男だ。

 

 

 

「俺の筋肉は無敵!! この俺の身体に傷をつけられるものなら、つけてみるがいい!!」

 

 

 

 マスタードはそう言うと二人に向かって走り出した。巨大からダッシュは迫力がある。

 

 

 

 両手剣を持っている人物は剣を構える。迎え撃つつもりらしい。ブラッドは構えることなく、何もすることはなく立ち尽くす。

 

 

 

 マスタードが近づいてきて、最初に動いたのは両手剣の選手だった。剣をクロスさせるとその状態で飛び上がる。

 

 

 

 そしてマスタードの首を狙って飛びかかった。

 

 

 

「クロススラッシャー!!」

 

 

 

 クロスした剣がマスタードを狙う。しかし、マスタードはタックルを止めることなく、剣を喰らってもダメージはない。

 

 

 

 そしてそのまま両手剣を持った人物をタックルで吹き飛ばした。吹き飛ばされた選手は場外へと飛んでいく。

 

 

 

 マスタードはそのまま最後の一人であるブラッドにもタックルで攻撃しようとする。

 

 

 

 ブラッドはマスタードが残り2メートルという距離になってから動いた。

 龍の力をコントロールし、足から腕へと順番に発動させる。それにより強力な攻撃を生み出す。

 

 

 

 ブラッドの拳はマスタードの腹へと突き刺さる。

 

 

 

 すると、マスタードのタックルは止まった。

 

 

 

 

 

 



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 第298話  【BLACK EDGE 其の298 次の予選へ】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第298話

 【BLACK EDGE 其の298 次の予選へ】

 

 

 

 

 

 ブラッドの拳はマスタードの腹へとぶつかる。すると、マスタードのタックルは止まった。

 

 

 

 タックルを止めたブラッドの肩に両手を置く。

 

 

 

「お前の筋肉……素晴らしい…………」

 

 

 

 マスタードはそう言うと倒れた。

 

 

 

 ブラッドは技を成功させた。しっかりと連続に龍の力をコントロールすることに成功したのだ。

 それによりマスタードの装甲を突破することができた。

 

 

 

 

 そして残った選手はブラッドのみ。

 

 

 

「Dブロック予選は、賞金稼ぎブラッドの勝利だーーーー!!!!」

 

 

 

 歓声が飛び交う。

 

 

 

 選手登録の時には詳細情報を書いてはいなかったが、まさか賞金稼ぎであったことが知られていたのは……。

 

 

 

 そしてDブロック予選はブラッドが勝利したのであった。

 

 

 

 Dブロックの選手たちが会場から離れて戻っていく。ブラッドも選手たちと共に戻っていく。

 

 

 

「ブラッドさん、おめでとうございます!!」

 

 

 

 出入り口では次の予選を待っていたスカイがいた。

 

 

 

「ああ、お前も頑張れよ!」

 

 

 

 スカイは胸を張ると、

 

 

 

「任せてください。私は必ず決勝であなたと戦います!!」

 

 

 

 スカイはそう言うとブラッドとすれ違って会場へと向かっていった。

 

 

 

 スカイと同じように会場には続々と選手たちが集まってくる。これから始まるのがEブロック予選。

 

 

 

 スカイは腰につけた付けた剣を撫でながらワクワクしている。

 

 

 

 ブラッドが控え室に戻り、窓からスカイの試合を身始めた頃。司会が選手たちの解説を始めた。

 

 

 

「さぁ、予選も後半戦だ!! Eブロックの実力者はこいつらだ!! 花の都の剣士エデン・イートゥル!! 武器開発者オズボルド・クルーガー!! そして連続優勝者であるキースの娘スカイ・カーティス!!」

 

 

 

 司会に紹介されたスカイは顔を赤くして恥ずかしがる。

 

 

 

 他にも紹介された選手以外に強そうな選手たちが多くいる。

 

 

 

 そして選手たちが集まり、ついにEブロック予選開始のゴングが鳴らされた。

 

 

 

 試合開始と同時に三人の選手が一斉にスカイを狙う。

 チャンピオンであるキースの娘、そこから警戒しなのか、それとも嫉妬したのか、一斉に狙われてしまった。

 

 

 スカイは腰につけた剣を抜くと剣を両手で握り構えた。

 

 

 

 そして一呼吸するうちに、三人を一振りで切りつけた。スカイに切られた選手は自分が切られてことにすら、気づかずスカイに攻撃しようとする。

 

 

 

 だが、スカイに剣を振り下ろした瞬間に、皆気を失って地面に倒れていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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 第299話  【BLACK EDGE 其の299 スカイ】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第299話

 【BLACK EDGE 其の299 スカイ】

 

 

 

 

 Eブロック予選が開始。コングと同時に三人に囲まれたスカイだったが、その三人を一振りで倒す。

 

 

 

 他の選手たちも各々戦いを始めた。

 

 

 

 そんな中、倒された三人の選手の一人を蹴り飛ばして、スカイに挑発する男が現れる。

 

 

 

「テメーがスカイかァ? キースの娘って聞いたから期待していたがァよォ、弱そうじゃねーかァ」

 

 

 

 その男は赤い髪にアフロの男。左手には長い剣を持っており、その男も二メートル半はある長身の男である。

 横幅はないが、身長の高さから威圧感がある。

 

 

 

「なんですか……あなたは……」

 

 

 

 弱そうと言われたスカイは怒りながらその男を睨む。

 男は長い剣を横にすると、その刃の部分を舐める。

 

 

 

「弱い奴に弱いって言ってないがいかないんだァ? スカイ、お前はここで敗れるんだよォォ」

 

 

 

 男はスカイに剣を振る。長い腕と長い剣からの超リーチ攻撃。スカイは剣を縦にして防ぐが、その超リーチ攻撃により先の方は威力が高く、スカイは剣を受け止めるが、その威力により身体が浮いて吹っ飛ばされてしまう。

 

 

 

 だが、運良く場外に出る前に剣を地面に刺して、どうにか踏ん張る。だが、少しでも後ろに下がれば落ちてしまうという場所に、アフロの男は追ってくる。

 

 

 

「さァ、選ぶんだな。俺に落とされるか。自分で落ちるかァ」

 

 

 

 しかし、スカイは諦めることはなく剣を両手で持って構えた。

 

 

 

「そうか、俺に落とされたいんだなァ!!」

 

 

 

 スカイの様子を見て諦める気がないと判断したアフロの男は剣を横にすると、再びスカイに剣を振る。

 

 

 

 さっきと同じだ。もしもこれを受け止められなければ、場外まで飛ばされてしまう。

 

 

 

 スカイは剣を握りしめて襲いくる剣にぶつける。だが、さっきとは違う。

 今度は剣を斜めにすると、剣の起動をずらして、その威力を外に逃した。

 

 

 

 アフロの剣はスカイの剣に当たると上にズレて!スカイの頭上を通る。そしてスカイは剣を避けると、アフロに近づいた。

 

 

 

「っな!? なァァァァァ!!」

 

 

 

 アフロは剣を振り切っており、戻すのが間に合わない。このままではスカイに切られる。

 

 

 

 スカイは剣を振る。そしてアフロの男を攻撃した。

 

 

 

「ぐぁぁ!?」

 

 

 

 アフロの男は腹とアフロの二か所を一瞬のうちに切られる。

 そしてアフロの男は気絶して倒れた。

 

 

 

 一回の振りで二回攻撃した。そう見えてしまうほどの超速の剣技。

 

 

 

 それでスカイはアフロを倒したのであった。

 

 

 

 

 

 

 



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 第300話  【BLACK EDGE 其の300 Eブロックの猛者】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第300話

 【BLACK EDGE 其の300 Eブロックの猛者】

 

 

 

 

 スカイがアフロと戦闘している中。そこから少し離れた場所では他の選手たちが戦っていた。

 

 

 

「アホーアホー」

 

 

 

「おい、バカやめろ!!」

 

 

 

 鳥を肩に乗せた男が騒ぐ。どうやら人の言葉を真似する鳥のようだが、このタイミングで喋ってほしいことじゃないことを喋り出したため焦っているようだ。

 

 

 

 そして男の心配通り、

 

 

 

「なんだとぉ」

 

 

 

「あぁ? いまなんつった?」

 

 

 

 男は他の選手に目をつけられる。

 

 

 

「い、いや、今のは俺じゃなくて……」

 

 

 

「お前以外に誰がいるんだよ」

 

 

 

 鳥を乗せた男は五人の選手に囲まれる。

 

 

 

 完全に標的にされてしまった。このままではまずいと考えた鳥を乗せた男は向かってくる選手を無視して逃げ出した。

 

 

 

「お、おい!! どこ行きやがる!!」

 

 

 

「五人相手なんて、できるかよ!!」

 

 

 

 逃げた男をを五人の選手が追う。だが、鳥を連れた男の逃げ足は早く、ドンドン距離が伸びていく。

 

 

 

「俺の逃げ足を舐めるなよ〜!! この俺の逃げ足はチーターからも逃げられるって言われたんだ!! そう簡単には追いつけるかよ!」

 

 

 

 しかし、

 

 

 

「痛っ!?」

 

 

 

 鳥を連れた男は何かにぶつかった。ぶつかった衝撃で肩に乗っていた鳥は驚いたのが羽ばたいて、男の頭上をくるくると舞う。

 

 

 

「…………なんだ、テメ〜」

 

 

 

 そして男がぶつかったのは……。

 

 

 

「あ、いや、その〜…………」

 

 

 

 ゆっくりと下がってぶつかった相手を見る。その相手は岩のような身体を持った巨漢。そしてめっちゃ怖い顔をしていた。

 

 

 

「なんだ、ぶつかっといて謝る気もないのか……」

 

 

 

 汗が滲み出る。

 

 

 

 巨漢の男は拳を握りしめると殴りかかってくる。鳥は慌てて飛び回る。

 

 

 

 後ろを見るとまだ追ってきている連中は追いついてきていない。男は腰につけた短剣を抜くと、

 

 

 

「…………あれ、どこに行ったんだ?」

 

 

 

 巨漢の男はぶつかってきた男を見失い。周りを見渡すと後ろにその男がいた。

 

 

 

「いつも間に……っ!?」

 

 

 

 巨漢の男の意識が遠のく。何もわからない間に、巨漢の男は倒れた。

 

 

 

 追いついた五人の選手はその様子を見て驚く。

 

 

 

「な、何が起きたんだ?」

 

 

 

「あいつがやったのか?」

 

 

 

「てめー、何者なんだ!!」

 

 

 

 男の肩に鳥が戻ってくる。男は剣を手元で回転させたあと、鞘に剣を戻した。

 

 

 

「俺は冒険家、ブライス・クーパーだ」

 

 

 

 ブライスと名乗った男は選手達を脅すように睨む。さっきまで追っかけてきていた選手達はびびって近づけずにいる。

 

 

 

 そんな中、ブライスは、

 

 

 

 良かったァァァァァ、どうにかなりそォォォォう!! と心の中で安堵していた。

 

 

 

 

 

 



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 第301話  【BLACK EDGE 其の301 スカイの実力】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第301話

 【BLACK EDGE 其の301 スカイの実力】

 

 

 

 Eブロック予選。スカイは剣を両手で握り、ある人物と向かい合っていた。

 

 

 

「……まさか、あなたが参加しているなんて……」

 

 

 

 スカイはそう言って驚く。そこにいるのは白髪の女性、

 

 

 

「久しぶりね。スカイ……大きくなったわね」

 

 

 

「ポーラさん、なんで……」

 

 

 

 ポーラという女性は剣をスカイに向ける。

 

 

 

「本当はキースが参加していると思って参加したんだけど…………彼は参加していないみたいね。残念」

 

 

 

「パパと戦う気なんですか」

 

 

 

「ええ、あの人こそが騎士長になるべきお人よ。賞金稼ぎなんていう遊びをしていないで、連れ戻すために来たの」

 

 

 

 ポーラはマルグリットの王国騎士だ。キースが騎士として働いている時に、何度かキースの屋敷にやってきてスカイにも剣の稽古をしてくれた。

 

 

 

 どうやら大会でキースを騎士に連れ戻すために参加してきたらしい。

 

 

 

「キースがいないのなら、それはそれで仕方がない。スカイ、あなたもよ、あんな父親を追っかけないで、騎士になりなさい」

 

 

 

「いやです。私はパパのようになりたい。そのために賞金稼ぎになるんです」

 

 

 

「あんなもののどこが良いのか……。分かったわ。あなたをここで躾けてあげる」

 

 

 

 ポーラはスカイに剣を振るってくる。スカイはステップを踏みながらポーラの剣を回避する。

 

 

 

「あなたに稽古をつけたのは私、でも、教えてないこともあるのよ」

 

 

 

 ポーラは右手で剣を振りながら、残った左手を懐に入れると、そこから鎖を取り出した。

 

 

 

 そしてその鎖を投げるとスカイの剣に引っ掛けた。鎖を引っ張り、スカイを引き寄せて動きを鈍らせる。

 

 

 

 そしてポーラは右手で持った剣でスカイに切り掛かった。だが、スカイは鎖に繋がれた剣を動かし、逆にポーラの身体を動かす。

 

 

 

 それによりポーラの剣はスカイの真横を通って当たることはなかった。

 

 

 

「な!?」

 

 

 

 回避されると思っていなかったのか、ポーラは驚く。そんなポーラにスカイは蹴りで攻撃する。

 

 

 

「っ!?」

 

 

 

 蹴られたポーラは剣と鎖を離して、地面に転がる。

 

 

 

「蹴りを使うなんて、卑怯な……」

 

 

 

 そして倒れた状態でポーラはスカイに言った。

 

 

 

「鎖を使った時点であなたの方が卑怯だと思いますけどね。……私が気づいていないと思ったたんですか、あなたの戦い方に」

 

 

 

「な、そんな……」

 

 

 

「稽古をつけてもらっている時から知ってました。あなたが片手で剣を振りもう片方をフリーにしてるのは、他の武器を使うためだって」

 

 

 

 

 

 

 



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 第302話  【BLACK EDGE 其の302 楽園】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第302話

 【BLACK EDGE 其の302 楽園】

 

 

 

 

 

 スカイに倒されたポーラは戦意を失い、舞台を降りていった。

 

 

 

 残りの選手も減ってきた。そんな中、スカイの前に緑髪の女性が立ち塞がった。

 頭には花の髪飾りをつけており、剣の先は五本に分かれている特殊な刃の形だ。

 

 

 

「あなたは…………」

 

 

 

「私の名はエデン・イートゥル」

 

 

 

 エデン・イートゥル。確か花の都の剣士だ。

 

 

 

 エデンは剣を構えると、

 

 

 

「あなたと一度戦ってみたかった」

 

 

 

 と言ってきた。それを聞いたスカイも剣を両手で握りしめる。

 

 

 

「それは光栄です」

 

 

 

 二人は二人のいる場所から中央を軸に反時計回りに歩いて、お互いに周りを取り合う。

 そしてタイミングを見計らって、スカイが最初に仕掛けた。

 

 

 

 スカイは剣を横にすると、大きく横に振る。それに対してエデンは高くジャンプすると、ジャンプしてスカイの剣を躱した。

 

 

 

 そして落下しながら剣を突き立てると、そのままスカイを狙う。スカイは両手で強く剣を握りしめて、落下してくるエデンに迎え撃つように剣を振った。

 

 

 

 二人の剣はぶつかり合う。そしてその落下してくるエデンの剣にスカイは剣を当て、それを振り切ると、エデンごと殴り飛ばした。

 

 

 

 落下中にスカイに剣で殴られたエデンは体制を崩しながら、スカイの横に落下する。

 転がり落ちたところにスカイはエデンに剣を向けた。

 

 

 

「私の勝ちですね」

 

 

 

 スカイが勝ち誇ったように言うと、スカイは首を振る。

 

 

 

「いや、まだだ!!」

 

 

 

 エデンはそう言うと、持っていた剣をスカイに向かって投げつけた。剣はスカイの顔めがけて飛んでくる。

 しかし、スカイはそれを顔を少し動かすだけで、簡単に躱してしまった。

 

 

 

 だが、エデンは降参する様子はない。逆に勝ち誇ったような表情をしていた。そして不敵に笑う。

 

 

 

「何がおかしいんですか」

 

 

 

「私が勝ったからだよ!!」

 

 

 

 エデンはそう言う。

 

 

 

 そして次の瞬間、エデンの投げた剣が回転しながら戻ってきた。

 それはまるでブーメランのように、剣は回転しながら投げた主人の元に戻ろうとしている。

 

 

 

 エデンはそれでスカイを倒せたと思った。しかし、

 

 

 

「っ!?」

 

 

 

 スカイは後ろから飛んできていた剣を、振り返りもせずに剣を軽く振って弾いた。

 

 

 

 剣の軌道は変わり、地面に落下して突き刺さる。

 

 

 

「そ、そんな、私の剣技が通用しないなんて……」

 

 

 

 エデンはショックを受けると、顔を地面に擦り付け始めた。

 

 

 

「確かに私はあなたの攻撃が分かっていました。でも、あなたの技もなかなかでしたよ」

 

 

 

「ほ、本当?」

 

 

 

「はい。私が保証します」

 

 

 

 

 

 



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 第303話  【BLACK EDGE 其の303 鳥籠】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第303話

 【BLACK EDGE 其の303 鳥籠】

 

 

 

 

 鳥を肩に乗せた男ブライスは舞台の上で逃げ回っていた。

 

 

 

「待てやオラー!」

 

 

 

「今なんて言いやがった!!」

 

 

 

 ブライスは三人の選手に追われていた。

 

 

 

「いや、ちょ、待って!? なんでこうなるの!?」

 

 

 

 またしても肩に乗せている鳥が他の選手を挑発したことで、こうやって追われている。

 

 

 

 ブライスが必死に逃げ回っていると、

 

 

 

「そこ退きな。にいちゃん」

 

 

 

 そう言ってブライスの横から筒状の何かを背負った男が現れた。

 男はブライスとすれ違うと、ブライスを追っていた三人の選手に背負っていた筒を向けた。

 

 

 

「くらえヤァ! 俺の新作兵器を!!」

 

 

 

 男はそう言うと引き金を引く。すると、筒から大砲が飛び出して、三人の選手を吹き飛ばした。

 

 

 

「な、なんだ!?」

 

 

 

 その様子を後ろから見ていたブライスは驚く。そんなブライスの方を男は向くと、

 

 

 

「いや〜、言い逃げっぷりだっから、手を貸してしまった!」

 

 

 

 と言いながらハンカチを取り出すとそれで額の汗を拭く。

 

 

 

「アンタは何者だ?」

 

 

 

「俺か? 俺はオズボルド・ハンバーガーってんだ。まぁ、オズとでも呼んでくれ。それで君は?」

 

 

 

 自己紹介をしたオズボルドにブライスは警戒しながらも

 

 

 

「俺はブライス・クーパーだ。それで、なぜ俺を助けたんだ?」

 

 

 

 自己紹介を返したブライスは、自分を助けたことを聞く。

 

 

 

 ここは闘技会場だ。ここでは助け合いではなく、蹴落とし合い。誰が強いかを競う大会だ。

 弱い者は踏み潰されて、強い者だけが残る。そんな大会で、追われていたブライスをなぜ助けたのか。それが疑問だった。

 

 

 

 すると、オズボルドは答える。

 

 

 

「理由は簡単!! 俺達はこの大会では最弱の選手だ。一人の力だけでは勝ち残ることはできない。だから、同じような仲間を探していた!!」

 

 

 

 オズボルドがそう言い始めると、二人の選手が近づいてくる。

 ブライスはその二人を警戒するが、オズボルドが大丈夫だと言い、紹介を始めた。

 

 

 

「こちらはアビアルさん、そしてこっちはクリィアさん、二人はこの予選で見つけた、俺達と同じ弱者であり、協力者だ」

 

 

 

 どうやらオズボルドはアビアルとクリィアの二人と共闘しており、それで予選の突破をしようとしているようだ。

 

 

 

「そんなことを説明して、俺にどうしろってんだ」

 

 

 

「君も俺たちと共闘しないか。そうすれば、この予選の最後まで生き残れることを約束しよう」

 

 

 

 オズボルドはそう言うとブライスに手を差し伸ばしてきた。

 

 

 

 しかし、ブライスはその手を払い除けた。

 

 

 

 

 

 

 



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 第304話  【BLACK EDGE 其の304 共闘】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第304話

 【BLACK EDGE 其の304 共闘】

 

 

 

 

 

 ブライスに手を払われたオズボルドは驚く。

 

 

 

 オズボルドの後ろにいるアビアルとクリィアも同じだ。

 

 

 

「な、なんで嫌がるんだ?」

 

 

 

「俺はそういう勝ち方には興味はないんだ」

 

 

 

「だが、君は他の選手に追われていただろう。このままだと、いつかは誰かにやられてしまう」

 

 

 

「だからと言って共闘するのは俺の心が許さない。だったら俺は負けた方がマシだ」

 

 

 

 ブライスはそう言ってオズボルド達に背を向ける。

 

 

 

 ブライスが仲間になる気はないと分かったオズボルド達は、

 

 

 

「そうか……」

 

 

 

 と残念そうに言うと、

 

 

 

「なら、ここで敗退だ!!」

 

 

 

 オズボルド達は三人同時に襲いかかってきた。だが、ブライスは冷静に、

 

 

 

「さよーならァァァァァ!!」

 

 

 

 全力ダッシュで逃げ出した。

 

 

 

 逃げたブライスをオズボルドは

 

 

 

「追え!! 今すぐあいつを倒すぞ!!」

 

 

 

 三人で一斉にブライスを追いかけ始めた。

 

 

 

 そんな追ってくるオズボルドにブライスは逃げながら、

 

 

 

「おい、弱い者同士で結託するんじゃなかったのか!? なんで俺を追いかけるんだよ!!」

 

 

 

「弱い者同士は手を取り合うべきだ。だが、協力を拒む者は排除しなければ今後に支障が出る!!」

 

 

 

「チクショー!! なんでまた追われることになるんだよ!!」

 

 

 

 ブライスが逃げ回っていると、

 

 

 

「そのまま走ってください」

 

 

 

 剣を持った少女とすれ違った。その少女は一振りでオズボルド達を切り付けると、気絶させて倒した。

 

 

 

「な!? ま、またこの展開か!? お前もあれか!? 共闘だなんだとか言いながら襲ってくんのか!?」

 

 

 

 ブライスは助けてくれた少女に向かってそう言う。すると、その少女は剣を鞘にしまいながら、

 

 

 

「そんなことしませんよ。さっきのやりとりを見て卑怯だと思ったから手を貸しただけです」

 

 

 

「ん、そうか。そうなのか……すまん。……俺はブライスってんだ。君名前は?」

 

 

 

「スカイです」

 

 

 

 名前を聞いたブライスは満足そうにスカイの方に向き直す。

 

 

 

「俺は一対一専門でな。多数で戦う者、襲われるのも得意じゃないんだ。お前なら俺と真面目に戦ってくれそうだ」

 

 

 

 ブライスは腰につけた短剣に手をかける。

 

 

 

 その様子を見てスカイも剣をいつでも抜ける体制になる。

 

 

 

「確かに。私も卑怯な戦いは嫌いです。一対一ですね。良いですよ、その戦い引き受けましょう!!」

 

 

 

 ブライスとスカイは向き合う。

 

 

 

 Eブロック予選。残る選手は六人。Eブロック予選も終盤に差し掛かっていた。

 

 

 

 

 

 



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 第305話  【BLACK EDGE 其の305 真剣勝負】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第305話

 【BLACK EDGE 其の305 真剣勝負】

 

 

 

 残る選手は六人。Eブロック予選も終わりが近づく中、スカイとブライスはお互いに剣を向けて、一対一の勝負を始めた。

 

 

 

 ブライスは腰にある短剣に手をかける。そしてゆっくりと歩みを進める。

 

 

 

 スカイは剣を抜くと、両手で剣を握りしめてブライスに向けて、近づいてくるブライスを警戒した。

 

 

 

 ブライスはスカイに近づき、その距離が2メートルに入った時、ブライスは動いた。

 

 

 

 

 ブライスは短剣を腰から抜くと、スカイに斬りかかる。横に振られる短剣。しかし、スカイはその剣を容易く躱して、カウンターで攻撃を仕掛けた。

 

 

 

 だが、スカイのカウンターは失敗する。スカイはブライスに剣を振ろうとするが、

 

 

 

「っ!?」

 

 

 

 スカイは突然後ろに下がって距離を取った。

 

 

 

 ブライスは短剣を振り終えた状態で、後ろに下がったスカイを見て目を丸くする。

 ブライスは振り終えた剣を自分の元に戻して、鞘にしまう。

 

 

 

 そして肩に乗せた鳥を指で撫でながらスカイに聞いた。

 

 

 

「どうして下がった? 今のはやれただろ?」

 

 

 

 そう言われたスカイは首を振る。

 

 

 

「いえ、今切り掛かっていれば、私がやられていました。……あと少し気付くのが遅れていたら、私が切られていた」

 

 

 

 スカイの言葉を聞いたブライスはやれやれという表情をすると、

 

 

 

「なかなか鋭いな。バレてたか」

 

 

 

 と言って再び腰にある剣に手をかけて構えた。

 

 

 

「次は確実に仕留める。覚悟しな、嬢ちゃん……」

 

 

 

 スカイも再び両手で剣を握り構える。

 

 

 

 今度はスカイとブライスへと近づく。ブライスも同じようにゆっくりと進んでいるため、二人の距離が近づくのはさっきよりも早かった。

 

 

 

 そしてすぐに二人の距離は、2メートルになる。その時、

 

 

 

「今だ!!!!」

 

 

 

「やっちまえ!!」

 

 

 

 ブライスとスカイはそれぞれ背後から奇襲をかけられる。

 

 

 

 それはEブロックで他に残っていた選手だ。

 

 

 

 二人が戦っている間に、残りの選手の数は四人になっており、そして勝負に集中している二人に奇襲をかけてきたのだ。

 

 

 

 しかし、二人はそんな奇襲をかけてきた選手を、剣を一振りするだけで簡単に倒す。そしてお互いに奇襲を仕掛けた選手が地面に倒れたと同時に、二人はお互いに剣を振り、攻撃を仕掛けた。

 

 

 

 ブライスはスカイに短剣を振り攻撃する。しかし、スカイは最小限の動きでブライスの剣を避ける。

 そして今度はブライスに向かって剣を放った。

 

 

 

 だが、ブライスはスカイの剣を身体をそって避ける。

 

 

 

 

 

 

 



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 第306話  【BLACK EDGE 其の306 決着】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第306話

 【BLACK EDGE 其の306 決着】

 

 

 

 ブライスの剣を避けたスカイはブライスに剣を振る。しかし、お互いの剣は宙を切り、お互いに当たることはなかった。

 

 

 

 気がつけば、残りの選手は二人だけだ。この戦いに勝利した人が本戦に進める。

 

 

 

 二人の戦いは攻撃を繰り返すうちに、どんどん早くなり、そして高度になっていく。

 

 

 

 スカイはステップを踏みながら3歩下がる。そして強く踏み込むと、下がった距離を一歩で進み、ブライスに剣を振った。

 

 

 

 ブライスは短剣の半回転させると、逆手に持ち方を変える。そしてそれでスカイの剣を受け止めた。

 二人の剣がぶつかり合うと、金属音が鳴り響く。

 

 

 

 そしてお互いの剣をぶつけ合うと、二人は弾かれ合ってお互いに後ろに少し押される。

 弾かれたあと、ブライスはすぐに体制を立て直すと、持ち方はそのままにしてスカイに斬りかかる。

 

 

 

 ブライスの剣がスカイに向かってくる。だが、スカイはギリギリのところでしゃがむと、ブライスの剣を避ける。

 そして避けたあと、スカイは立ち上がりながらブライスを切り付けた。

 

 

 

 初めてスカイの攻撃がブライスにヒットした。ブライスは腹を切られる前に反応して腕を出してそれで剣を防いだ。

 

 

 

 しかし、腕を切られたことで片方の腕が上がらなくなってしまった。だが、まだ戦うことができる。

 

 

 

 まだ戦闘を継続すると思ったスカイは構えるが、ブライスは短剣を落として両手を上げた。

 

 

 

「降参だ。俺の負けだよ……」

 

 

 

 ブライスは敗北を宣言した。

 

 

 

 それによりスカイがEブロックの予選を勝ち抜いたことになった。

 

 

 

 観客の拍手が鳴り響く中、スカイはブライスに聞く。

 

 

 

「なんで降参したんですか。あなたなら、片腕を失ったくらいじゃ問題なく戦えたでしょう」

 

 

 

 

「確かに戦うことはできる。だが、君は戦いの中で成長をしていた。俺の敵わない速度でな。このまま続けていても俺は勝てなかった」

 

 

 

 ブライスはそう言うと短剣を拾って鞘にしまう。

 

 

 

「俺に勝って本戦に進むんだ。決勝まで行けよ」

 

 

 

 ブライスはそう言うと舞台から降りて会場を去っていった。

 

 

 

 スカイも剣を鞘にしまうと、舞台から降りて控室へと戻った。

 戻ると、そこにはブラッドが待っていた。

 

 

 

「おう、スカイ、良い試合だったぜ」

 

 

 

「ブラッドさん、見たてくれたんですか」

 

 

 

「当然だ。あの鳥を乗せた男との戦い。なかなかだった。本戦にでお前と戦うことになったら、ヤバいかもな」

 

 

 

「ええ、私は勝ちますよ。あなたにも!」

 

 

 

 

 

 



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 第307話  【BLACK EDGE 其の307 格闘家】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第307話

 【BLACK EDGE 其の307 格闘家】

 

 

 

 

 Eブロック予選はスカイが勝利した。

 

 

 

 控え室に戻ったスカイはブラッドと共に窓から会場を見る。

 

 

 

 すでに舞台にはFブロックの参加者が集まりつつあった。

 

 

 

「ブラッドさん、見てください!! あの選手強そうですよ!!」

 

 

 

 それぞれの予選を勝ち上がったブラッドとスカイは勝ち上がってくる選手を研究するために、窓の外から参加者を見ていた。

 

 

 

 そんな中、スカイが注目したのは、眼帯をつけた選手だ。大剣を背中に背負っており、体格はヒューグと同じようにデカい。

 

 

 

「ああ、確かに強そうだな」

 

 

 

 ブラッドもその男を見て、実力者であると判断した。しかし、

 

 

 

「…………ん」

 

 

 

「どうしました?」

 

 

 

 ブラッドが選手達を見ていると、さっきの大剣を持った男の隣を通って行った白い道着を着た男。その男に惹かれた。

 

 

 

「あいつ、強いな」

 

 

 

 ブラッドは見ただけでわかった。その道着の男は強い。

 

 

 

「誰ですか?」

 

 

 

「あいつだ……」

 

 

 

 黒い髪に道着を着た男をブラッドはスカイに教える。しかし、スカイにはその男が強いようには見えないようで首を傾げた。

 

 

 

「そうですか? 私としては眼帯の剣士の方が強そうですけど」

 

 

 

「まぁ、俺も感だからな。確実ではない。……どっちにしろ、試合を見れば分かることだしな」

 

 

 

 そう、どの選手が強いのか。それはこのFブロックの試合が始まれば分かることだ。

 

 

 

 そして選手達が揃い出した頃、司会が選手達の解説を始めた。

 

 

 

「さぁ、Fブロック予選の実力者はこいつらだ!! 流離の剣士のオーバー・グイーズ!! 硬さなら誰にも負けない鉄壁の男マキシム・ヨルダン!! そしてリズムで戦う音楽戦士ラッセル!!」

 

 

 

 実力者達の紹介が終わる。しかし、ブラッドとスカイの注目している選手は呼ばれていないようだった。

 

 

 

 そしてFブロック予選の開始のゴングが鳴らされた。

 

 

 

 選手達はそれぞれ武器を持ち、戦いを始める。そんな中、眼帯の剣士は大剣を振って、五人の選手を選手を一度で落としていた。

 

 

 

「見ましたか!? 今の一撃!! 強かったですね!!」

 

 

 

 スカイは本戦になると戦うことになるのかもしれないのに、その選手の活躍を見て興奮する。

 そんな中、ブラッドはずっと道着を着た選手を注目していた。

 

 

 

「まだその人を見てるんですか? 見た感じ変わった様子はないですが……」

 

 

 

 スカイは派手な戦いをしないその男を見ながらそう言う。だが、

 

 

 

「いや、勝ち上がるのはあいつだ」

 

 

 

 ブラッドはその男の戦いを見てわかった。

 

 

 

 

「あいつ、他の選手と違って頭一つ抜けてやがる」

 

 

 

 

 

 



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 第308話  【BLACK EDGE 其の308 予想】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第308話

 【BLACK EDGE 其の308 予想】

 

 

 

 

 

 Fブロック予選が始まった。参加者達の戦いを見ながら、ブラッドはある選手に注目していた。

 

 

 

 それは白い道着を着た黒髪の選手。今のところは目立った動きはないが、それでもすでに数人の選手を倒している。

 

 

 

 だが、その選手の動きを見たブラッドは、それだけでこの選手が強いと理解した。

 

 

 

 最小限で敵の攻撃を躱し、そして敵の攻撃に合わせてほとんど身体を動かさずにカウンターをしている。そして狙うのは全て急所であり、自分から戦闘を仕掛けることはないが、攻撃されたら反撃をする。

 

 

 

 その調子で今のところ二人の選手を一撃で倒している。

 

 

 

 そんな道着を着た選手とは反対側で、スカイが注目している選手が派手に暴れていた。

 

 

 

 大剣を振り回し、その一撃でこちらもほぼ一回で敵を倒している。

 

 

 

 そんな大剣を持った眼帯の選手の目の前に盾を二つ持った筋肉質な男が現れた。彼は試合開始前に紹介された実力者の一人だ。

 

 

 

 名前はマキシム・ヨルダン。鉄壁の異名を持つ頑丈な男であり、転がる大岩に潰されても無傷で生還したという伝説のある男だ。

 

 

 

 そんなマキシムに向かって、眼帯の男は大剣を振り攻撃する。

 

 

 

 しかし、マキシムの攻撃に眼帯の男の大剣は弾き返されてしまった。

 大剣の攻撃ですら余裕で受け止めるマキシムの鉄壁の防御。

 

 

 

 このまま眼帯の男はマキシムに何もできずにやられてしまうのか。

 

 

 

 だが、そんなことはなかった。眼帯の男は眼帯を外す。

 

 

 

 眼帯をつけていたが目に傷があるということではないらしい。格好をつけているのか。

 

 

 

 だが、眼帯を外したあと、男は再びマキシムに大剣を振る。すると、今度の一撃はマキシムは受け止めきれなかったようで、マキシムは場外まで吹っ飛んで行ってしまった。

 

 

 

 マキシムを倒したあと、眼帯を付け直す。

 

 

 

 マキシムを倒した一撃。最初の攻撃は受け止められてしまったのに、なぜ、二回目の攻撃はマキシムに効果があったのか。

 

 

 

 上から見ていたブラッド達にはその理由がわからなかった。だが、眼帯を外した途端、マキシムを倒せるほどのパワーになったということだろう。

 

 

 

 そして試合は続いていく。眼帯を付け直した後も、次々と大剣を振り回し選手を倒す。

 反対側では攻撃をされれば、反撃するという形で道着を着た男も選手と戦闘をしていく。

 

 

 

 そして選手の数が半分になった時。ついにその二人が遭遇した。

 

 

 

 眼帯の男と道着を着た男。二人が舞台の中央で出会ったのだ。

 

 

 

 

 

 



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 第309話  【BLACK EDGE 其の309 大剣vs格闘】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第309話

 【BLACK EDGE 其の309 大剣vs格闘】

 

 

 

 

 

 ブラッドの注目していた道着を着た格闘家と、スカイの注目していた大剣を持った眼帯の男。

 その二人がついに対面した。

 

 

 

 二人は出会うと、眼帯の男が先に攻撃を仕掛けた。眼帯の男は大剣を高く上げると、道着を着た格闘家に向かって振り下ろす。

 

 

 

 道着を着た男はその大剣を片手で受け止めた。眼帯の男は大剣を動かそうとするが、道着の男の力が強く全く動かない。

 

 

 

 道着の男が指に力を入れると、大剣にヒビが入る。そして道着の男は大剣を持ち上げる。

 

 

 

 眼帯の男は手を離したため、大剣は道着の男に取り上げられてしまった。道着の男は大剣を場外に投げる。

 

 

 

 武器のなくなった眼帯の男だが、まだ戦う意志はあるようで素手で構えて、道着の男に襲い掛かった。

 

 

 

 素手でも眼帯の男は戦えるようで、一撃でも食らってしまえば、普通の人ならば立ち上がれないようなパンチを繰り返し放つ。

 

 

 

 しかし、道着の男に眼帯の男のパンチは当たることなく。ほとんど動かずに攻撃を躱されてしまう。

 そして眼帯の男が大振りで攻撃をしたタイミングで、道着の男は突きを放ち、一撃で眼帯の男を倒した。

 

 

 

 その試合の様子を見ていたスカイは驚く。

 

 

 

「眼帯の選手が……負けました」

 

 

 

「ああ、言った通りだな。あいつが勝ち上がってくる」

 

 

 

 そして試合は進んでいく。その後も道着の男は自分から仕掛けることはなかったが、攻撃をされるたびに戦闘を繰り返し、そして最後の選手を倒して、道着の男が予選を勝ち残った。

 

 

 

「Fブロック予選の勝者は格闘家アサギだ!!」

 

 

 

 ここでやっとブラッド達はその選手の名前が分かった。道着を着た選手の名前はアサギ。

 

 

 

 派手な戦いはしなかったが、戦闘になれば確実に敵の隙を狙い、一撃で倒す。

 基本的にはカウンターでの攻撃が多く、突きや蹴りなどで攻撃をしていた。

 

 

 

 アサギは舞台から降りると、控え室からサバトが出てきて、サバトはアサギに深く礼をしていた。

 

 

 

 Fブロック予選も終わり、次はGブロック予選が始まる。

 

 

 

 残る予選も二つ。ここから先勝ち上がってくる人物は誰なのか。

 

 

 

 だが、残り二つになったが、ブラッドは未だにレトバの言っていた。もう一人いるという龍の適応者に出会っていない。

 

 

 

 レトバが本当のことを言っているとは限らない。だが、もしもいるとしたら後残りの二試合のうち。どちらかでその龍の適応者が現れるということになる。

 

 

 

 ブラッドはGブロック予選の選手達を注目して、見ていた。すると、

 

 

 

「っ!? あいつは……」

 

 

 

 

 

 



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 第310話  【BLACK EDGE 其の310 あいつも】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第310話

 【BLACK EDGE 其の310 あいつも】

 

 

 

 

 ブラッドはレトバの言っていたもう一人の龍の適応者がいるかと注目してGブロックの選手を見ていると、そこにある男が現れた。

 

 

 

「あいつは……!?」

 

 

 

「どうしたんですか? ブラッドさん」

 

 

 

 ブラッドの言葉を聞いたスカイが不思議そうに聞いてくる。

 

 

 

「あいつは出ていたとはな……」

 

 

 

 ブラッドが見つけたのは、青髪の男。彼とはガルデニアでの騒動の時に出会った。

 

 

 

 最初は地下施設を探している時、そして二回目はドラゴンインストールを使っていたため意識が朦朧としているが、確かにあの時現れた。

 

 

 

 それはシャドーとブラッドで赤崎と戦闘で負けそうになった時に、彼が現れて救われたのだ。

 

 

 

 彼の名はフェザント。グリモワールと並ぶ裏組織ブルーバードの一人だ。

 

 

 

 ブラッドがスカイにフェザントについて説明をする。

 

 

 

「じゃあ、グリモワールもブルーバード。両組織がこの大会に参加してるってことですか!?」

 

 

 

「ああ、そうなるな……」

 

 

 

「一体なんで……」

 

 

 

「分からない。だが、なんらかの目的があるということだろう……。グリモワールは術まで使っていた。そこまでする必要があるということだ」

 

 

 

 そう、術を表立って使うことのないはずの組織が、こういう大会で人目の付く場所で術を使ったのだ。

 

 

 

 術を使ってまでやり遂げたい何かがこの大会にあるということだ。

 

 

 

 そんな中、Gブロック予選が始まる。

 

 

 

 だが、Cブロック予選のフレッタほど目立つ攻撃を使うわけではなく。フェザントは普通に体術で他の選手を倒していく。

 

 

 

 アサギと同じように攻撃されたら反撃する。そんな感じで他の選手を倒す。

 だが、アサギに比べると、やる気がない感じに適当に戦闘している感じであり、一撃で倒したりはしていない。

 

 

 

 なるべく舞台の端で攻撃してきた相手を転ばせて、場外させる。そんな感じで他の選手を倒していた。

 

 

 

 そしてフェザントは勝ち進んでいき、最終的にはGブロック予選を勝ち残った。

 

 

 

 ブラッドはまだフェザントの能力も、その実力も知らない。

 そのため、勝ち残ってくることを予想して、本戦で戦闘になった時のために術を知ろうとしていた。

 

 

 

 しかし、フェザントはフレッタのような派手な攻撃はなく、どんな術を使っているのか分からなかった。

 

 

 

 だが、おかしな点はあった。それがフェザントが一瞬で敵の背後に回っていることがあったのだ。

 

 

 

 上から見ていたため、それが本当に一瞬の出来事であったことが、ブラッド達には見えた。

 

 

 

 

 

 



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 第311話  【BLACK EDGE 其の311 最後の予選】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第311話

 【BLACK EDGE 其の311 最後の予選】

 

 

 

 

 フェザントがいたことに驚いていると、最終予選であるHブロックが始める。

 

 

 

 グリモワールにブルーバード。二つの組織の目的がなんなのか。そのことが気になり、考えていたブラッドは、龍の適応者のことについて忘れて、目的を考えながらHブロックの様子を見る。

 

 

 

 選手達が集まり、Hブロックの予選が始まる。

 ゴングが鳴り、試合が始まったと同時に、舞台の中央にいた紫髪の大男が叫んだ。

 

 

 

「ガァァァァァァ!!」

 

 

 

 その大声で会場は静かになる。そして考え事をしていたブラッドもその声に釣られて、予選の様子を見る。

 

 

 

 コングと同時に叫んだ男は大暴れを始めて、次々と選手達を殴り飛ばしていく。

 

 

 

 大笑いして楽しそうに選手達を殴り飛ばし、どの選手も一撃で倒していく。そしてその選手の全身を紫色のオーラが包んでいた。

 

 

 

 それを見たブラッドは

 

 

 

「あいつが、もう一人の龍の適応者……!?」

 

 

 

 Hブロックでついにレトバの言っていた。もう一人の龍の適応者が現れた。

 

 

 

 紫髪の男はあっという間に選手達を殴り倒して、Hブロックの予選を勝ち残った。

 

 

 

 龍の適応者とはいえ、こう簡単に勝ち上がれるものだろうか。だが、それが真実だ。

 

 

 勝ち上がった紫髪の選手。二メートル近くある身長に、肩幅が広い。そして上半身は上着を羽織っただけであり、腹筋を見せびらかすような格好をしている。

 

 

 

「Hブロックの勝者はシオン・ギース!!」

 

 

 

 シオンと呼ばれたHブロックの勝者は大笑いしながら舞台の中心で立っていた。

 シオンは予選を勝ち残った選手に向けて、大声で

 

 

 

「俺はこんなものでは満足できん!! もっと、もっとだ!! 俺を楽しませてくれよ!! お前ら!!」

 

 

 

 と叫ぶと舞台から降りていった。

 

 

 

 シオンの攻撃でやられた選手達は、皆場外まで吹っ飛んでおり、落ちるだけでなく舞台から数十メートル離れた施設の壁まで吹っ飛んでいたものがほとんどだった。

 

 

 

 この大会でナンバーワンのパワーを誇る選手。それがシオンだろう。

 

 

 

 そして全ての予選が終わった。勝ち残ったのはAブロックからレトバ、Bブロックからギアム、Cブロックからフレッタ(スパークの大会での名前)、Dブロックからブラッド、Eブロックからスカイ、Fブロックからアサギ、Gブロックからランス(フェザントの大会での名前)、そしてHブロックからシオンだ。

 

 

 

 その残った選手達でトーナメントを行う。

 

 

 

 この八人の中から誰が勝ち上がることになるのか!?

 

 

 

 

 

 

 



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 第312話  【BLACK EDGE 其の312 本戦開始】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第312話

 【BLACK EDGE 其の312 本戦開始】

 

 

 

 

 ついに闘技大会の予選が終わった。勝ち残った選手は、

 

 

 Aブロックからレトバ。

 槍を持った老人であり、龍の適応者。予選開始前にブラッドに話しかけてもう一人の龍の適応者がいることを伝えた。

 予選ではヤンバインやジバという実力者を撃破した。

 

 

 Bブロックからギアム。

 二本の短剣を持った二刀流の剣士。赤いバンダナが特徴的。剣は不思議な力を持っており、炎を纏うことが可能。それによりサムソンを撃破して本戦へと勝ち進んだ。

 

 

 Cブロックからフレッタ。

 グリモワールの術師であり、黄色いフードと仮面で素顔を隠した男。試合開始と同時に身体から電気を放出して、選手を一掃した。

 

 

 Dブロックからブラッド。

 元賞金稼ぎであり、グリモワールを追う旅人。黒龍の力を持っており、それにより肉体の強化などで戦う。ニキータやアイデンなどの実力者を倒して本戦へ進んだ。

 

 

 Eブロックからスカイ。

 前回優勝者であり、連続チャンピオンであるキースの娘であり、キースからは自分より強いのではないかと言われていた少女。

 エデンやブライスとの戦闘を勝利して勝ち残った。

 

 

 Fブロックからアサギ。

 辺境の地の格闘家であり、道場の師範である。弟子サバトが出場していることは知らなかった。

 積極的には戦闘には参加せず、それでも圧倒的な強さから最後まで生き残る。突きや蹴りを中心としており、組み技も行える。

 

 

 Gブロックからランス。

 その正体はブルーバードの幹部フェザントである。ブラッドとはガルデニアで遭遇しており、赤崎を一人で足止めしていた実力を持つ。

 術は今の所不明であり、予選でも派手に術を使う様子はなかった。

 

 

 Hブロックからシオン。

 正体不明の龍の適応者。圧倒的な強さで他の選手達を殴り倒し、予選を勝ち残った。

 龍の力で肉体を強化しているようだが、未だに分からない点が多い。

 

 

 

 この八名が今回の予選を勝ち残った選手達だ、そしてその選手達でトーナメントが行われる。

 

 

 

 

 

 Aレトバー

      |ー

 Bギアムー

 

        |ー

 

 Cフレッター

      |ー

 Dブラッドー

          |ー優勝

 

 Eスカイー

      |ー

 Fアサギー

 

        |ー

 

 Gランスー

      |ー

 Hシオンー

 

 

 

 

 第一試合レトバvsギアム。

 

 

 第二試合フレッタvsブラッド。

 

 

 第三試合スカイvsアサギ。

 

 

 第四試合ランスvsシオン。

 

 

 

 そして本線がいよいよ始まる。

 

 最初の試合はレトバvsギアム。

  龍の適応者と謎の二刀流使いだ。

 

 

 どちらが勝つのか!?

 

 

 

 

 



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 第313話  【BLACK EDGE 其の313 水槍】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第313話

 【BLACK EDGE 其の313 水槍】

 

 

 

 ついに闘技大会の本戦が始まる。第一試合はレトバvsギアム。

 

 

 

 ブラッドは第一試合をスカイと共に控え室から観戦していた。

 

 

 

 そんなブラッド達の元に一人の男がやってきた。

 

 

 

「やぁ、君達。予選突破おめでとう〜」

 

 

 

 白い服に長髪の男。

 

 

 

「お前は水測り工場長リットル!!」

 

 

 

「誰だよそれは!? リトゥーンだ!!」

 

 

 

 それはDブロックでブラッドと戦ったリトゥーン。

 ブラッドに剣を折られて脱落した騎士だ。

 

 

 

「それでなんのようだ?」

 

 

 

「君達は勝ち残ったから良いが敗者は暇なんだよね。どうせなら君たちと一緒に観戦しようと思ってね」

 

 

 

 それを聞いたスカイは質問する。

 

 

 

「暇? 外には出れないんですか?」

 

 

 

 それに対してリトゥーンが答えた。

 

 

 

「ああ、セキュリティの問題だとかで外に出してもらえないんだ。運営は何をやりたいんだか……。騎士である僕は暇じゃないのに……」

 

 

 

 暇じゃない騎士がなんでこんな大会に参加してるんだよ。

 

 

 

 だが、リトゥーンの言っている通り、この大会では全試合が終わるまで参加者を外に出さない。

 どんな理由があるかは分からないが、予選で負けたとしても会場からは出られないのだ。

 

 

 

「だから僕も一緒に見させてもらうよ!」

 

 

 

 リトゥーンはそう言って二人の間に割り込んでくる。

 

 

 

「おい、無理して入るなよ……」

 

 

 

 ブラッドがリトゥーンに文句を言っている中、リトゥーンは会場を見ていた。

 

 

 

 

 

 舞台にはすでにギアムが待っている。後はレトバの登場を待つだけだ。

 

 

 

「待たせたの」

 

 

 

 レトバは控え室から歩いてくる。そんなレトバを見てギアムは

 

 

 

「ああ、待ったぜ、爺さん……」

 

 

 

 舞台の高さは1メートルほど。レトバは舞台の上に手を置くと、

 

 

 

「よっこらしょ」

 

 

 

 ゆっくりと舞台の上に登った。

 

 

 

 そして登り終えたレトバにギアムに

 

 

 

「わしは年寄りだからな。お手柔らかに頼むぞ」

 

 

 

 と微笑んだ。

 そんなレトバをギアムは睨む。

 

 

 

「普通の年寄りが予選突破できるかよ」

 

 

 

 そして二人が舞台に現れると、試合が始まる。

 司会が二人の選手を軽く紹介した後、

 

 

 

 ゴングが鳴らされた。

 

 

 

 ギアムは両腰につけた短剣に手をかけて、いつでも抜ける状態になる。

 しかし、レトバはと言うと……。

 

 

 

「おい、爺さん、武器はどうしたんだ?」

 

 

 

 ギアムがレトバに聞く。レトバの手には武器がない。

 

 

 

「忘れたとは言わないよな?」

 

 

 

「ああ、忘れとらんよ。今から作るんじゃ」

 

 

 

 レトバはそう言うと右手を天に突き出す。すると、レトバの腕の周りに水分が集まり、それが形を成していく。

 

 

 

「……どうなってんだ」

 

 

 

 そしてレトバの腕に槍が作られて、それを握りしめた。

 

 

 

「さぁ、準備完了」

 

 

 

 

 

 

 



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 第314話  【BLACK EDGE 其の314 リベリオン】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第314話

 【BLACK EDGE 其の314 リベリオン】

 

 

 

 

 予選を勝ち残ったギアムは、本戦が始まる前に控え室でメリッサと話をしていた。

 

 

 

「すみません。私は予選で負けてしまって……」

 

 

 

 メリッサが下を向いて悔しがる。かなり責任を感じているようだ。

 

 

 

「仕方がないさ。Aブロックはかなりの猛者がいた」

 

 

 

 ギアムはそんなメリッサの肩を叩いて励ました。

 

 

 

「しかし、団長の相手はその猛者勝ちを倒して勝ち上がってきた人です。心配で……」

 

 

 

「俺が……か?」

 

 

 

 ギアムが聞くとメリッサは小さく頷いた。それを見たギアムは大笑いする。

 

 

 

「何心配してんだよ! 俺だぞ俺! お前達のリベリオンの団長だ!! 心配なんざいらねーよ!!」

 

 

 

 ギアムはメリッサの不安な気持ちを無くそうと笑うが、それでもメリッサはまだ深刻そうな顔をしている。

 

 

 

「俺が団長になる時に言っただろ。この国を変えるまで俺は負けないって!! 心配すな!!」

 

 

 

 ギアムがそう言ったところで、一回戦開始のアナウンスが流れる。

 

 

 

「それじゃ、ちょっくら行ってくっからよ」

 

 

 

 ギアムは赤いバンダナを頭に巻くと、テーブルに置いてあった二本の短剣を両腰につけた。

 

 

 

 そして部屋を出て行こうとする。そんなギアムにメリッサは、

 

 

 

「団長……無事に帰ってきてください」

 

 

 

 ギアムはメリッサの方は向くことなく。そして何も答えることなく、部屋を出ていった。

 

 

 

 

 

 

 

 一回戦がついに始まった。ゴングが鳴るとギアムは両腰にある短剣に手をかけていつでも戦闘できる体制になる。

 しかし、レトバが武器を持ってないことに気がついた。

 

 

 

「おい、爺さん。武器はどうしたんだ?」

 

 

 

 ギアムが聞くとレトバは答える。

 

 

 

「ああ、今から用意するんじゃよ」

 

 

 

 レトバはそう言うと右手を上に伸ばす。すると、レトバの伸ばした手の周囲に、半透明の物体が集まり出す。

 

 

 

「あれは……? 水か?」

 

 

 

 ギアムが驚いていると、その水は集まり形を形成していく。そして形も色も変わり、槍へと変形した。

 

 

 

 レトバはその槍を握ると、それを持って構えた。それを見ていたギアムは

 

 

 

「…………変わった技を使うな」

 

 

 

「お主も予選で不思議な力を使っておったじゃろ?」

 

 

 

 ギアムは予選で剣を燃やしていた。そのことをレトバは見ていたということか。

 

 

 

「そうか、あんたも普通じゃないってことが分かったよ。手加減はしてやらねーから、覚悟しな」

 

 

 

 ギアムは両腰の剣を抜いて構えた。

 

 

 

「手加減なしか……。まぁ、程々にの」

 

 

 

 

 

 

 



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 第315話  【BLACK EDGE 其の315 団結力】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第315話

 【BLACK EDGE 其の315 団結力】

 

 

 

 

 レトバは槍を作ると、それを持って構えた。ギアムも両腰の剣を抜いて構える。

 

 

 

 そして武器を構えたまま、両者は動きが止まった。

 

 

 

 

 

 

 その様子を見ていた控え室のリトゥーンは、それを見ながら左手で顎を触った。

 

 

 

「うむ、二人とも警戒しているようだね……」

 

 

 

 リトゥーンの言葉を聞いたスカイも同じように見えたのか。

 

 

 

「そう見たいですね」

 

 

 

 と反応した。だが、それに対してブラッドは、

 

 

 

「いや、違うな……」

 

 

 

 と言った。ブラッドの言葉を聞いたスカイとリトゥーンは驚く。そしてリトゥーンはブラッドに聞く。

 

 

 

「実力は互角。それにより二人とも様子を見合っているように見えるが……? 何が違うのかな?」

 

 

 

「確かに警戒している。だが、踏み込めずにいるんだ……。ギアムがな……」

 

 

 

 それを聞いたスカイは首を傾げた。

 

 

 

「ギアムが? ですか?」

 

 

 

「ああ、今回の試合の展開は……。レトバが支配するぞ」

 

 

 

 

 

 

 

 そしてブラッドの発言通り、ギアムは動けずにいた。

 

 

 

 …………なんだ、このプレッシャーは…………。この爺さん何者なんだ…………。

 

 

 

 レトバから感じるプレッシャーにギアムは進むことも下がることもできずにいた。

 

 

 

 ギアムは反乱軍のトップに立ってから、いくつかの修羅場を乗り越えてきた。

 そんなギアムであっても、ここまでのプレッシャーを感じたのは初めてだった。

 

 

 

 動けずに固まっているギアムを見て、レトバは

 

 

 

「なんじゃ……動けんのか?」

 

 

 

 そう言ってギアムを小馬鹿にするように言った。

 

 

 

 レトバはまだ何もしていない。それなのにギアムは動くことすらできない。

 

 

 

 そんな状況の中、ギアムはふとある時のことを思い出した。

 

 

 

 それはギアムがリベリオンに入ったばかりの時のこと。

 

 

 

 マルグリットの政治体制に不満を持った人々が集まった組織リベリオンは、反政府組織として国家に追われていた。

 

 

 

 そんな中、団員の数名が騎士団に捕らえられてしまった。

 

 

 

 リベリオンはまだ大きな組織ではない。捕まった仲間を助けにいく余裕はなかった。だが、それでもリベリオンは立ち上がった。

 

 

 

 数時間後、捕まった数人の仲間と共にギアムは助け出された。

 

 

 

 ギアムは助けが来るとは思ってなかった。だが、リベリオンの団結力は、ギアムの予想を超えた。

 

 

 

 

 

 

 ギアムは一度目を強く瞑る。そのあとキリッと開くと、足を一歩前に出した。

 そしてまた一歩と前に進んでいく。

 

 

 

「おぉ、進みおったか」

 

 

 

 歩いてくるギアムをレトバは嬉しそうに見守る。

 

 

 

「ああ、俺は仲間のためにもここで止まるわけにはいかないんでな」

 

 

 

 

 

 



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 第316話  【BLACK EDGE 其の316 槍と二本の剣】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第316話

 【BLACK EDGE 其の316 槍と二本の剣】

 

 

 

 

 

 

 ギアムは一歩。また一歩と歩き出した。

 

 

 

 さっきまでレトバのプレッシャーに負けて動けなかったギアムがついに動いた。そして最初は固かった動きも徐々に軽くなる。

 

 

 

 そうして軽くなっていくと、ギアムの進むスピードは速くなり始めた。

 

 

 

「もう克服したのか。若いのは良いのぉ」

 

 

 

 レトバはそんなギアムを見ながら感心する。そして槍を両手で握ると、身体を横にして構えた。

 

 

 

 レトバが構えを変えた時にはすでにギアムは走っていた。そしてレトバに近づく。

 

 

 

 距離が2メートル以内に入ったところで、ギアムは飛び上がった。その跳躍はギアムの脚がレトバの腰よりも高い位置になるほどの跳躍。

 

 

 

 そんなジャンプをしながらギアムは両手に握った短剣をクロスさせる。

 

 

 

「受けてみな。爺さん!!」

 

 

 

 それを見たレトバはギアムの攻撃を警戒する。

 

 

 

 決してギアムを格下と見ていたわけではない。だが、ギアムがプレッシャーに打ち勝ったこと、そしてこの技を見てレトバは力を使った。

 

 

 

 レトバの槍の周りに水分が集まり、透明な液体がドーナツ状になって槍の周りを回る。

 

 

 

 レトバはその槍を空中にいるギアムに向ける。すると、槍の周りを回っていた形を変えて、半透明の氷柱状になり、五つに分裂した。

 

 

 

 空中にいるギアムの剣も落下と同時に発火して、炎を纏う。

 

 

 

 落下してくるギアムに向けて、レトバは槍を突き刺す。ギアムはその槍に向かってクロスさせた剣を振った。

 

 

 

 二つの武器がぶつかり合う。そしてぶつかったと同時に爆発が起きた。

 

 

 

 二人を巻き込むほど大きな爆発。白い煙が舞台を包んだ。

 

 

 

 しばらくして煙が晴れると、二人の姿が見えた。二人とも無傷で立っている。

 

 

 

 そしてギアムはレトバの姿が確認できると、再びレトバに向かって走り出した。

 今度は炎を纏わせていない状態で、レトバに斬りかかる。右、左、右、左、左と左右の剣でフェイントを織り交ぜながら攻撃する。

 

 

 

 だが、レトバは身体を動かすことはなく。手首で槍を動かすだけでギアムの攻撃を防ぐ。

 

 

 

 そしてギアムが攻撃に疲れてきたタイミングで、レトバは槍を持ち替えると、今度はレトバの反撃が始まった。

 

 

 

 槍で突き刺してギアムを攻撃しようとする。しかし、ギアムはレトバの攻撃を身体を動かして躱した。

 

 

 

 そしてある程度攻撃を躱したあと、ギアムは二本の短剣で挟むようにしてレトバの槍を止めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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 第317話  【BLACK EDGE 其の317 捕まえた】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第317話

 【BLACK EDGE 其の317 捕まえた】

 

 

 

 レトバの槍を二本の剣で挟んだギアム。ギアムはそのまま槍を挟んで引っ張る。

 

 

 

 ギアムの力はレトバよりも強く。レトバはギアムに引っ張られてふらりと前によろける。

 

 

 

 そんなレトバのことをギアムは蹴る。だが、その蹴りは攻撃するというよりもレトバを支えるようなものだった。

 

 

 

 右足を前に突き出し、レトバの腹に当てた。それにより前にふらついたレトバは倒れることはなかった。

 

 

 

 そしてギアムは剣で挟んだ槍を引っ張り、レトバから奪い取った。

 

 

 

 だが、レトバの槍は作ったものだ。レトバの不思議な力で使ったもののため、また作られてしまう可能性がある。

 武器を奪い取ったところで効果があるかは分からない。

 

 

 

 だから、ギアムはレトバから槍を奪い取ったあと、すぐに攻撃に転じた。

 

 

 

 レトバの槍を投げ捨てると、接近戦のために前へと踏み込んだ。

 

 

 

 それはレトバの槍を作る瞬間を見ていたからこそできた。

 

 

 

 槍を作り出せることがわかっていても、その形成速度がわからなければ、そんな方法は取れなかった。だが、見ていたからこそ、槍を作るのに一瞬の隙ができると判断したのだ。

 

 

 

 レトバを支えていた足で少しレトバを押し、レトバの体制を元に戻す。

 

 

 

 レトバを蹴りで攻撃しても良かった。だが、ギアムは蹴りではレトバにダメージは与えられない気がしていた。

 だからこそ、この剣を使うことにした。

 

 

 

 ギアムはレトバの懐に入る。そしてギアムの剣は炎を纏った。

 

 

 

 この剣でなければ、レトバには効果がない。そう考えたのはサムソンとの戦闘時があったからだ。

 

 

 

 ギアムは前からサムソンの噂を聞いていた。その強靭な肉体は通常の刃を弾いてしまう。そして実際に会ってそれが本当だと分かった。

 

 

 

 それはこの剣と出会った時と同じ感覚だったからだ。そしてサムソンの肉体にダメージを与えられたのはこの剣だけだ。

 

 

 

 ならば、同じように特別な力を持ったレトバにもこの剣でなければ、ダメージが与えられないと考えた。

 

 

 

 レトバの懐に入り込んだギアムは、二本の短剣を揃えると、それを振りレトバを攻撃した。

 

 

 

「……っ!?」

 

 

 

 しかし、ギアムの攻撃は手応えがなかった。

 

 

 

 ギアムに切られたレトバの姿は半透明になると、霧のように溶けてその場から消えていった。

 

 

 

「な、何が起きて……」

 

 

 

 ギアムは何が起きたのかわからずに周りを見渡す。すると、周りの様子の違和感にも気づいた。

 

 

 

「これは……」

 

 

 

 ギアムの周囲を包む白い霧。ギアムは霧に囲まれていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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 第318話  【BLACK EDGE 其の318 霧】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第318話

 【BLACK EDGE 其の318 霧】

 

 

 

 

 気がつくとギアムは霧に囲まれていた。

 

 

 

「これは…………」

 

 

 

 そしてさっきまで目の前にいたはずのレトバの姿も霧の中へと消えていく。

 

 

 

 いつのタイミングからレトバは仕掛けていたのか……。

 

 

 

 ギアムは警戒しながら周りを見渡す。

 

 

 

 すると、霧の中から声が聞こえてくる。

 

 

 

「……ほほほ、お主は確実にこれから成長するだろう。じゃがまだわしには勝てない」

 

 

 

 霧の中から聞こえたレトバの声。そしてレトバの声が聞こえなくなると、霧の中から槍が現れてギアムを突き刺そうとしてきた。

 

 

 

 ギアムはギリギリでその槍を躱す。しかし、レトバの攻撃は一度で終わるはずもなく、360度様々なところから槍が現れてギアムを攻撃しようとしてくる。

 

 

 

 ギアムはどうにかその槍を避ける。突然現れる槍、これをギアムが避けられるのは、ギアムの身体能力の高さと勘の鋭さである。

 

 

 

 最初にレトバからプレッシャーを感じ取ったのもギアムの勘の良さである。そのため戦う前からギアムはレトバとの実力の差を感じ取った。

 

 

 

 だが、そのプレッシャーに勝ったからこそ今がある。実力の差はある。だが、そのプレッシャーを強く感じてしまうほどの感覚が、今のギアムを生かしていた。

 

 

 

 その力でギアムはレトバの槍を避け続ける。しかし、完璧に避けられているわけではなく、所々で擦り傷を負う。

 

 

 

 だが、致命傷でなければまだ動ける。

 

 

 

 ギアムはレトバの攻撃を避け続けていると、レトバの槍のスピードが落ちてくる。

 

 

 

 体力ではギアムのほうが上だ。

 

 

 

 速度の落ちた槍が引いていくところを、ギアムは掴んで止める。

 

 

 

「捕まえたぜ。こいつを辿っていけば……」

 

 

 

 ギアムは槍を辿ってレトバに攻撃しようとする。しかし、槍の先にはレトバはいなかった。

 

 

 

「っ!?」

 

 

 

 そしてレトバが背後に現れた。ギアムはそれに気づくと急いで振り向こうとする。

 

 

 

 しかし、レトバの方が早い。レトバは槍を横にするとそれを振って、ギアムの剣を払う。そしてそのままギアムの頸を殴りつけた。

 

 

 

「ぐっ……」

 

 

 

 ギアムは力が抜けて、両手に持っている短剣を落としてしまう。そして落とした後、膝が曲がり、ガクッと崩れ落ちた。

 

 

 

 ギアムが倒れたと同時に白い霧が晴れる。そしてやっと視界がひらけた。

 

 

 

 レトバはギアムに槍の先を向ける。

 

 

 

「さぁ、これで終わりかの」

 

 

 

 ギアムは意識を失わずに耐えたが、身体の力が抜けており、座った状態のまま立てない。

 

 

 

 しかし、

 

 

 

「…………ま、まだだ……」

 

 

 

 

 

 



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 第319話  【BLACK EDGE 其の319 立ち上がれ】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第319話

 【BLACK EDGE 其の319 立ち上がれ】

 

 

 

 

「…………ま、まだだ……」

 

 

 

 ギアムはそれでも立ち上がろうとする。

 

 

 

 そんなギアムに槍を向けたレトバは

 

 

 

「もうやめとけ。今のお主にはこれが限界じゃ」

 

 

 

 と言うが、ギアムはそんなレトバの言葉なんて聞こうとしない。

 

 

 

 ギアムはふらふらになりながらもゆっくりと立ち上がる。そんなギアムを見たレトバはため息を吐くと、槍を引っ込めた。

 

 

 

「分かった。お主がやるというのなら、わしも全力を出そう」

 

 

 

 そう言うとレトバはギアムから距離を取るために、後ろにジャンプする。

 

 

 

 ギアムは落とした短剣を拾い、レトバに攻撃するために近づく。

 

 

 

 レトバは槍を上に掲げると、その槍を回転させ始めた。

 

 

 

 そしてレトバが槍を回転させると、闘技会場の外から水が集まってくる。それは水が柱のようになり渦を巻きながら、空を蛇のようにウネウネと飛んできている。

 

 

 

 それが五つ舞台にいるレトバの頭上に集まる。そしてその水の体積はレトバの十倍もの大きさになっていた。

 

 

 

 ギアムはレトバに向かって腕を後ろに伸ばしながら走る。そしてそんな走っている最中にギアムの両手の剣が炎を纏った。

 

 

 

 炎を纏った剣はギアムが走っていることによって、ギアムが通った後に赤い線を二本の描くようになっていく。

 

 

 

 レトバが集めた水は一つに集まり、一本の巨大な水の柱となった。

 そしてレトバの槍と連携して動き、それは走ってくるギアムを狙う。

 

 

 

 ギアムは高くジャンプすると、レトバに向かって斬りかかろうとする。

 

 

 

 ジャンプしたギアムに向かって、レトバの集めた水が発射される。ギアムは炎の剣を振って、それに正面から対峙した。

 

 

 

 水の柱と炎の剣がぶつかる。

 

 

 

 炎の剣は水を蒸発させて、水の柱を突っ切ろうとする。だが、水の量は多く、半分まで進んだところで、ギアムを包むようと水が変形する。

 

 

 

「なっ!?」

 

 

 

 そして全ての方向から水に押しつぶされた。

 

 

 

 水と水がぶつかり合い、激しい音と共に水の柱が破裂する。

 

 

 

 会場全体に水が飛び散る中、意識を失ったギアムが舞台の中央に落ちた。

 

 

 

 

 

 そして試合終了のゴングが鳴らされる。この試合の勝者はレトバ。

 

 

 

 槍使いの老人レトバが勝利したのであった。

 

 

 

 倒れたギアムの元に控え室からメリッサが駆け寄ってくる。

 メリッサがギアムを抱き抱えると、ギアムは意識を取り戻した。

 

 

 

「メリッサ……俺は…………そうか、すまないな…………負けちまった」

 

 

 

 

「良いよ。団長が無事なら……」

 

 

 

 

 

 

 

 



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 第320話  【BLACK EDGE 其の320 試合に向けて】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第320話

 【BLACK EDGE 其の320 試合に向けて】

 

 

 

 

 

 一回戦の試合が終わった後、舞台を降りて控え室に戻ろうとするレトバにギアムは話しかける。

 

 

 

 ギアムはメリッサに肩を貸してもらって、それでやっと歩ける状態だ。

 

 

 

「あんた、全力を出すって言ったよな……」

 

 

 

 話しかけられたレトバは振り向かずに答える。

 

 

 

「ああ、言ったのう。あれが全力じゃよ」

 

 

 

 だが、ギアムは否定する。

 

 

 

「嘘言うなよ。あんたが本当に全力を出してたら、俺が生きてるはずがない…………」

 

 

 

 ギアムはレトバが手加減をしていたと考えた。

 

 

 

「どうかなのぉ、年寄りにあまり期待をせんでくれ……」

 

 

 

 レトバはそう言うと去っていった。

 

 

 

 

 一回戦の勝者はレトバ。そして次は二回戦だ。二回戦はフレッタとブラッドの試合。

 

 

 

 控え室ではブラッドが試合の準備をしていた。

 

 

 

「なんだい、その汚い服は?」

 

 

 

 リトゥーンが今度は服にまでいちゃもんをつけてきた。ブラッドがリトゥーンを睨むと、リトゥーンは変な声を出してビビる。だが、謝ることはなくそっぽを向いた。

 

 

 

 ブラッドは予選の時と同じく、赤いコートを着たいつもの旅衣装だ。レンタルしていた剣は壊れてしまったため、今回は剣は返して武器は無しで行くことにした。

 

 

 

 そしに敵はグリモワールの幹部。剣での戦闘よりも龍の力を使っての戦闘が中心になるはずだ。

 

 

 

 ブラッドはコートを羽織ると、拳を握ってその拳を見つめた。

 

 

 

 確かに龍の力は強力だ。一回戦でもレトバが龍の力を使い、強力な攻撃をしていた。

 

 

 

 だが、それ以上にフレッタの術は強い。

 

 

 

 フレッタは予選で術を使うと、一撃で他の選手を倒して予選を勝ち上がった。

 

 

 

 能力は分からないが電気? 雷を落としていた。そのことからそれに関係する術ではあると思う。

 しかし、ブラッドの龍の力でそのフレッタに張り合えるだろうか。

 

 

 

 ブラッドの姿を見たスカイは、ブラッドの背中を叩いた。

 

 

 

「ブラッドさんは強いです。自信を持ってください!! パパには勝てませんでしたが、他の人には負けませんよ!!」

 

 

 

 ブラッドの表情を見て自信をつけさせようとしたのだろうか。

 だが、そこでキースの話を出してくるのはどうかと思う。

 

 

 

 まぁ、だが、

 

 

 

「ああ、勝ってくるぜ」

 

 

 

 ブラッドはそう言うと控え室を出ていった。

 

 

 

 

 

 

 ブラッドが舞台に向かう途中、廊下を歩いていると黒いフードを被った仮面の男が壁に寄りかかっており、目の前を通った時に声をかけられた。

 

 

 

「待て、ブラッド……」

 

 

 

「お前は……ニキータか……」

 

 

 

 

 

 



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 第321話  【BLACK EDGE 其の321 ニキータ】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第321話

 【BLACK EDGE 其の321 ニキータ】

 

 

 

 

 

「お前は……ニキータか」

 

 

 

 フードの男の声を聞いてそれが誰か分かった。

 

 

 

「ポイズンを殺したお前は私の手で殺したかった。だが、それはスパーク様に任せるとしよう……」

 

 

 

 ポイズンを殺した? 何の話だろうか。

 

 

 

 ポイズンといえば、マルグリットに着く前の森で奇襲を仕掛けてきたグリモワールだ。

 だが、ポイズンはスカイが戦う意思を示したら、逃げて行ったはずだ。

 

 

 

「一つだけ、ヒントをくれてやる。私達はフェザントを追ってこの大会に参加した。私達の目的はブルーバードの目的を探ること……」

 

 

 

「ブルーバードの目的……」

 

 

 

 ニキータは壁から離れると、ブラッドの進む方向とは別の方へと歩いていく。

 

 

 

 そして去り際に

 

 

 

「そうだ。ブルーバード……特にフェザントには気をつけろ」

 

 

 

 

 

 

 ブラッドが廊下を抜けて会場へとたどり着くと、すでに舞台の上には黄色いフードに仮面をつけた男フレッタがいた。

 

 

 

「来たな。黒龍の適応者ブラッド……」

 

 

 

 フレッタは仁王立ちで堂々とブラッドの登場を待っていた。

 

 

 

 ブラッドはジャンプして舞台の上に登る。

 

 

 

 グリモワールでは術師の中でも下っ端は黒いフード。そして色のついたフードを着ているものは色付きと言われる幹部である。

 

 

 

 ブラッドが少年時代、そして赤崎を追っている時にはアルムという紫色のフードを着た幹部と出会った。

 

 

 

 アルムと戦闘した時には全く歯が立たなかった。それと同じ実力を持っているであろう黄色いフードの幹部。

 

 

 

「何年もグリモワールの施設を襲撃してきたが、色付きと戦うのは初めてだな」

 

 

 

「そうか、それはガッカリさせないように。実力の差という者を教え込ませないとな……」

 

 

 

 フレッタはリンゴを取り出す。そしてそれを空中に投げた。

 

 

 

 そのリンゴに向かってフレッタは手のひらを伸ばすと、そこから電撃が飛び、リンゴを粉々に破壊した。

 

 

 

「俺のグリモワールでのコードネームはスパーク。術師は術を隠すのが基本だが、俺はあえて教える。俺の能力は電撃だ。…………こうやって教えてやらないと、何も分からないうちに俺が勝ってしまうからな」

 

 

 

「それはありがてーな。だが、とっくに検討はついてたよ」

 

 

 

 そしてついに第二回戦。スパーク(フレッタ)とブラッドの大戦のゴングが鳴らされる。

 

 

 

 黒龍の力を持ってブラッドと電撃の術を持つスパーク。この二回戦はどちらが勝利することになるのだろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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 第322話  【BLACK EDGE 其の322 電撃】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第322話

 【BLACK EDGE 其の322 電撃】

 

 

 

 

 

 マルグリットで行われている闘技大会。その闘技大会本戦二回戦がついに始まろうとしていた。

 

 

 

 二回戦はブラッドとフレッタ。

 

 

 

 黒龍の適応者であるブラッドと電撃の術を持つフレッタの対戦となった。

 

 

 

 

 

 控え室では窓からスカイとリトゥーンが二人の様子を見ていた。

 

 

 

「リトゥーンさんはこの試合。どうなると思いますか?」

 

 

 

 スカイはリトゥーンに聞くと、リトゥーンは右手で自分の顎を触る。

 

 

 

「そうだね〜。フレッタは予選で使った大技がある。流石にそれをやられたら彼でもキツイんじゃないかい?」

 

 

 

 フレッタは予選で空中に飛ぶと、そこから雷のような電撃を落とし、選手達を一掃した。

 

 

 

 その技の攻撃範囲は舞台全体に及び、そして威力も強力だ。

 

 

 

「でも、ブラッドさんには龍の力があります」

 

 

 

「僕はその龍の力とやらが分からないが、それでフレッタの攻撃を防げそうなのかい?」

 

 

 

「…………」

 

 

 

 リトゥーンに言われてスカイは言葉が詰まる。

 

 

 

「まぁ、どうやってあの電撃を突破する気なのか。拝見させてもらおうじゃないか……」

 

 

 

 

 

 

 ブラッドとフレッタが向かい合っている中、ついにゴングが鳴らされた。

 

 

 

 ゴングと同時にブラッドは走る。真っ直ぐとフレッタに向かってだ。

 

 

 

 

 

 

 その様子を見た控え室ではリトゥーンが解説する。

 

 

 

「そうか。フレッタが上空に飛ぶ前に仕掛ける気なのか」

 

 

 

「フレッタに空中に行かれると攻撃ができないからですか」

 

 

 

「いや、それだけじゃぁない。フレッタの電撃は接近した状態では使えない」

 

 

 

「そうなんですか?」

 

 

 

「ああ、僕の予想だがね……。近くで電撃を放てば自分に被害が出る可能性がある。だから予選では上空に行ったし、リンゴも投げてから電撃を放った」

 

 

 

「じゃあ、近づいてしまえば、ブラッドさんが有利ということですね」

 

 

 

「近づければ……だがね。……そう簡単に近づかせてくれるとは思えない」

 

 

 

 

 

 

 

 走ってくるブラッドにフレッタは手のひらを向ける。

 

 

 

「近づかせると思うか」

 

 

 

 フレッタの手のひらから電撃が飛び、ブラッドへと電気が線を成して飛んでいく。

 

 

 

 ブラッドは走りながら両腕を前に出す。そして龍の力を使い、黒いオーラを集めると、それでブラッドの前に壁を作り出した。

 

 

 

 その壁は地面に突き刺さっており、フレッタの電撃は黒い壁にぶつかると地面へと流れていった。

 

 

 

 電撃を防ぎ終えると、黒い壁はオーラに戻り奥にあるブラッドの姿が見えた。

 

 

 

「龍の力で武器を作れるなら、こういうこともできるはずだ」

 

 

 

 

 

 

 



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 第323話  【BLACK EDGE 其の323 黒い壁】

 BLACK EDGE

 

 

 著者:pirafu doria

 作画:pirafu doria

 

 

 第323話

 【BLACK EDGE 其の323 黒い壁】

 

 

 

 

 

 フレッタの電撃をブラッドは龍の力を使い、壁を作ると電気を地面に逃して防いだ。

 

 

 

 電気を防ぎ終えると、壁はすぐにオーラに戻ってしまう。

 

 

 

 

 …………まだ長い時間の制御はできないか……。だけだ、少しずつ感覚は分かってきた。

 

 

 

 

 この技をブラッドはまだ完璧には使いこなせていない。しかし、フレッタの電撃を攻略するにはこの技が必要だ。

 

 

 

 長い時間はオーラの固定が出来ないため、フレッタが長時間電撃を放ってこないことを願うしかない。

 

 

 

 壁のなくなった後、ブラッドはフレッタに向かって再び走り出した。

 

 

 

 近づいてくるブラッドに対して、ブフレッタは後方に下がり出した。

 

 

 

 まだ二人の距離は五メートルほどある。しかし、フレッタは電撃でブラッドが近づかないように攻撃するのではなく、後ろに下がったのだ。

 

 

 

 そして数歩後ろに下がり、ブラッドとの距離を保つと、再びフレッタはブラッドに手のひらを向けた。

 

 

 

 後ろに下がったのはブラッドとの距離を近すぎないようにするためか、いや、それとも電撃を放つのにインターバルが必要なのだろうか。

 

 

 

 だが、そんなことを考えている暇はない。ブラッドはさっきと同じようにオーラを操作して前に黒い壁を作った。

 

 

 

 だが、ブラッドの前に黒い壁が現れてから、電撃が放たれる音がしない。

 そして役一秒後に黒い壁はオーラに戻り、目の前が見えるようになった。

 

 

 

 前にはフレッタの姿がない。ブラッドがフレッタの姿を見失い、周囲を見渡していると、突然下から腹に膝蹴りを食らう。

 

 

 

「っ……」

 

 

 

 フレッタは電撃を放つのではなく。電撃を放つフリをして、ブラッドが壁を作った瞬間に近づいた。

 

 

 

 ブラッドが壁を作れば、視界が悪くなりフレッタを一時的に見失う。それため壁が現れてすぐ近づき、しゃがんで潜んでいた。

 

 

 

 そして壁が解除されてから、ブラッドに膝で蹴りを入れてきたのだ。

 

 

 

 ブラッドは腹を蹴られるが、堪えて蹴られながらもフレッタの顔を殴ろうと拳を振るう。

 

 

 

 だが、左右で一回ずつ攻撃するが、フレッタは拳のタイミングに合わせて身体を反らせてブラッドの攻撃を躱した。

 

 

 

 攻撃を避けたフレッタは左手を大きく横に振ると、ブラッドの服を掴む。そしてそのまま腕を振りブラッドを投げ飛ばした。

 

 

 

 投げ飛ばされたブラッドは地面に叩きつけられる。

 

 

 

「ぐっ」

 

 

 

 叩きつけたブラッドを追撃しようと、フレッタは倒れたブラッドを蹴り飛ばした。

 

 

 

 

 

 

 

 



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