性奴隷堕ちした獣耳騎士と、変わってしまった彼女を抱くかつての部下の話 (春風れっさー)
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性奴隷堕ちした獣耳騎士と、変わってしまった彼女を抱くかつての部下の話

 あれは、小さな砦を守っていた時のことだった。

 敵はこちらを遙かに超える五千の軍勢。

 砦に詰める兵士は僅かに五百。怪我人ばかりが多数。救援の見込み無し。逃亡も間に合わない。

 誰もが絶望するような状況でも、貴女は笑っていた。

 

「ふふん、見てよ敵の兵隊。たくさんいすぎてまるでアリンコだ」

 

 城壁の縁に座って、艶やかな桃色の長髪と獣耳人(ランクス)特有の耳を揺らす貴女は、まるで普段通りで。

 

「あれを撃退したなら、さぞ王都で持て囃されるだろうね! そしたら報奨金で大金持ちだ!」

 

 その頃は既に獣耳人への迫害が過激になり始めていて、騎士団長である貴女がこんな辺鄙な場所の防衛を任されたのは明らかな左遷で。それでも貴女は自分の前途を信じ続けていた。

 隣にいた俺はそれほど鷹揚に構えてはいられなかったが、

 

「金持ちですか。その前に相手の手柄になっちまいそうですけどね」

「怖かったら逃げてもいいんだよ、リゲルくん」

「ははは、団長を置いて逃げるような副団長は、それこそ王都で人気者になるでしょうね」

 

 貴女に流し目で煽るように言われたら、強がるしか無かった。

 例えそれが死に近づく行為だったとしても、格好つけたかった。

 

「……そっか。うん」

 

 ぴょんと立ち上がった貴女はクルクル踊るように歩いたかと思うと、ピタリと止まって俺を振り返り、無邪気な笑顔を浮かべた。

 

「ならリゲルくん、団長さんに続きたまえ!」

「はい。ファリン騎士団長閣下」

 

 どんな剣技よりも破壊力のあるその笑顔に、俺はずっと憧れて、惚れていたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……それが今じゃ、このザマか」

「ひぃっ♡ ひぃんっ♡ ごめんなしゃい、ご主人さまぁ♡」

 

 記憶にある彼女と、今俺の上で跨がっているファリンはまるで別人だった。

 軽装だが凜としていた鎧姿を全て剥ぎ取られた裸身。無邪気だった笑みは媚びた淫蕩なものに変わり、尻肉に刻まれた数字は騎士団長では無く奴隷の身分を示していた。

 何を言われたのかも理解していないのに謝罪の言葉を口にし、細い腰を振って許しを乞う。

 彼女はもう、騎士団長では無い。俺の奴隷だ。

 

「おい、ファリン」

「はいぃ♡ ご主人さまぁ♡」

 

 俺が声をかければ、嬉しそうに返事する。頬に手をやれば、スリスリと子猫のように甘えてくる。

 そこにあの奔放でありながらも毅然としていた面影は、無い。

 

「出すぞ」

「! はいっ♡ 出してください♡ ファリンの卑しい奴隷おまんこに、ご主人さまの子種を恵んでください♡♡」

 

 恥も外聞も無く淫語を口にし、大ぶりな胸を揺らして精子をねだるのは一匹の雌だ。

 今まで正反対の思想を抱いていても、その姿見ればふと思ってしまう。

 やはり、獣耳人は人間未満の卑しいケダモノなのだと。

 

「んんっ♡ はぁっ、んあああっ♡♡♡」

 

 ファリンは体を仰け反らせ、達した。

 きゅっと締め付けられた膣奥へと、俺は無遠慮に射精する。脈打つ肉棒から熱い迸りが発射され、女の秘奥を汚す。逆流は無い。俺の肉棒に心底から媚びた子宮は、吐き出した精液を一滴残らず飲み干した。

 

「はぁ、はひっ♡ ふあぁっ♡」

 

 ふるふる、ひくひくと俺の腹の上で身体を震わせるファリンは、恍惚とした笑みを浮かべ、潤んだ鳶色の瞳から涙を一筋零した。

 俺は心のどこかで、それが屈辱や哀愁から来るものだと思いたかった。騎士の矜持はまだどこかで失っていないのだと。

 しかしどう贔屓目に見ても、それは歓喜の涙であることは疑いようも無かった。

 

「ご主人さまぁ♡ しゅきぃ……♡」

 

 蕩けた声で俺への愛を囁くファリンの頭を撫でてやる。ふわふわとした髪の手触りと、少しだけ固い三角耳の感触を感じる。

 俺は心の中で嘆息した。

 

 ……この耳さえなければ、こんなことにはならなかったのに。

 

 

 

 

 

 

 砦での死線を越えた二年後、戦争が終結し、平和が訪れた。

 俺は素直に喜んだ。それでこそ救援が来るまでの地獄を耐え抜いた甲斐があったというものだ。

 だがファリンたち獣耳人にとっては平和こそが敵だった。

 

 それから一年の間に、獣耳人への差別は加速度的に増していった。

 国王の政策だった。戦争で荒れた国を立て直すまでの不満を、獣耳人へ向けることで王朝への批判を逸らす目的だった。

 それ以前に、国王が獣耳人嫌いだったというのもあるだろうが……。

 税の増加。居住区の限定。特定の職に就くことの禁止。次々と獣耳人たちは自由を奪われていった。

 騎士団長であったファリンも例外では無い。

 退職金も無しに唐突に騎士を辞めさせられた彼女は、それでも去り際笑っていた。

 

『ふふん、これで身軽な一匹狼だ。そろそろ騎士団長が窮屈だったからね。丁度良かった』

『団長……』

『今はボクじゃなく、君が団長だろ? リゲルくん』

 

 繰り上がって得た団長の徽章を苦々しく思いながら厩舎を去る団長を見送った。

 

『……ご武運を』

『あはは、もう騎士じゃないってば』

 

 ほとんど身分を剥奪された彼女は、それでもいつも通り笑っていた。

 その時は悲しくもあったが、ほとんど心配もせずにいた。

 あの人ならどこであっても奔放にやっていくのだろうと、そう思っていたから。

 だからこそ次に会った時に受けた衝撃は、筆舌に尽くしがたいものだった。

 

 獣耳人居住区の見回りの任務を受けた時のことだった。

 副団長気質の抜けきらなかった俺は団長になっても任務に参加した。今は……それを後悔している。

 あの時そこに見回りに参加しなければ、一生知ることは無かっただろうから。

 

『酷いものだな』

『はい。獣耳人は最貧民ですから』

 

 税ばかりが重くまともな職に就けない獣耳人は、その居住区も最悪だった。立て板ばりの家々に、溢れかえる程の乞食。そして鼻につく異臭。

 そんな通りを部下と共に見回っていた俺は、見覚えのある色を見咎めて足を止めた。

 

『ん? ……まさか』

 

 信じられなかった。信じたくなかった。

 通りに転がる襤褸を纏った集団の中に、憧れたあの人が混じっているなんて。

 

『団長? ……ファリン団長ですか?』

 

 近づいて声をかけてみても、反応は無い。見間違いかと安堵が湧いたが、それでも一応確認するために目の前でしゃがみ込んだ。

 そして絶望した。

 

『うぅ……』

『団、長……』

 

 そこにいたのは紛れもなくファリンだった。

 ただ、無邪気な笑みの面影はどこにもない。

 虚ろな目の下にクッキリとした隈をつくり、痩せこけたその姿は乞食そのものだった。

 そして漂ってくる臭いの正体を俺は知っていた。

 麻薬。

 

『団長、団長!』

 

 薬に酩酊するファリンの目を覚まさせる為、俺は肩を揺さぶった。

 その甲斐あってファリンの虚ろだった目の焦点が合い、俺との視線が合った。

 

『団長、よかっ……』

『ひっ、ひぃっ! ごめんなさい!』

『え……』

 

 正気に戻った青色の瞳はすぐに驚愕に見開かれ、怯えたものへと変わった。さながら童女が恐ろしい化け物を見上げたかのような、ひたすらに怖れ、揺れる眼差し。端には薄らと涙を浮かべ、唇は戦慄いている。あの団長がそんな表情をしているなんて、信じられなくて。

 呆然とする俺を前にして、彼女はカタカタと震え泣きじゃくるように頭を抱えた。

 

『ごめんなさい、ごめんなさい! もう許してぇ!』

『団、長……』

 

 俺のことなんか、分からないくらいに取り乱していた。俺もまた、大きく戸惑っていた。

 酷い変わり様だ。まるで根底から覆されてしまったかのように……元の人格を信じられなくなってしまう程に、ファリンは様変わりしていた。

 そうして俺が呆けている内に彼女はパッと立ち上がり、より入り組んだ路地へ逃げ出した。

 

『あ、おい!』

 

 気付いて呼び止めようと手を伸ばしても、後の祭り。小さな背中はあっという間に消え、残ったのは空を切った掌だけだった。

 

『団長……?』

 

 幻。そうとしか思えない。

 だってあの団長が……いつだって強かで凜としていたファリン団長が、まさか麻薬に溺れ、襤褸を纏って浮浪者の仲間入りしているだなんて。

 蜃気楼を見たとしか、思えなかった。

 

 

 

 

 

 

 そして俺が次に彼女を見かけたのは、全獣耳族の奴隷化が決定してからだった。

 あり得ない法律だ。だが、それが罷り通ってしまった。

 それだけ獣耳族への差別は深刻化していた。最早、後戻り出来ないほどに。

 

 その日俺は国が先達して執り行う奴隷オークションに、客として出席していた。

 無論、獣耳族の奴隷化に賛同した訳ではない。だが、一介の騎士に出来ることは左程無い。政治的に人類平等を叫ぶことは勿論、ましてや部下を率いてクーデターを起こすだけの人望も無かった。部下の多くは、奴隷化に賛成なのだ。

 忸怩たる思いを抱え、それでも何か出来ることは無いかと考えた末に俺は、奴隷を買うことを思いついた。

 俺に獣耳族全員を救う力は無い。ならば、せめて一人二人でも買い取って人間扱いすれば……救われる人は、いるんじゃないかと。居住区で見た光景を思い出していた。白昼夢のように思いつつも、頭から離れなかったその風景が、俺の背中を後押しした。

 偽善だ。なんの根本的な解決にもならない。なんなら情けなくすらある。だが当時の俺はそんな安易な考えを本気で信じ、よかれと思って会場に混ざっていた。

 そしてその考えは、すぐに甘かったと思い知らされる。

 

『それでは33番の出品です!』

 

 出品され並べられる奴隷は基本、衣服を着せられていなかった。男だろうが女だろうが、首輪手枷と下げられた木札以外は全裸だ。そしてその日出品される奴隷は、女性が多かった。

 屈強な男はほとんど、国や大貴族や一括で買い取ってしまったからだ。鉱山奴隷や使い捨ての兵士などに扱うらしい。胸糞が悪くなる話だが、目の前で繰り広げられる光景も酷いものだった。

 うら若き女がその尊厳を剥ぎ取られ、衆目へ屈辱的に晒されるのだ。中には顔を赤らめ涙目で下を見下ろす少女もいた。腸が煮える風景だ。だがより印象に残ったのは、出品された奴隷のほとんどが全てを諦めた絶望の表情をしていたことだった。

 もう何をしても意味が無いことを悟った、光の無い瞳。それを目撃する度、彼女たちがどれほどの目に遭ってきたのか察してしまう。

 彼女も、そんな眼差しを湛えていた。

 

 華のように鮮やかな桃色の髪を見た時、俺はやはり目を疑った。

 あの時の出会いをやはり、幻だったのだとどこかで思っていたから。自分の知っている彼女はこんな現実になど負けず、今も飄々と振る舞っているのだと、そう思い込んでいて。いや、そう思い込みたかったのだ、きっと。

 

 33番と銘打たれた彼女の姿は、酷い物だった。

 艶やかだった桃色の髪は荒れてボサボサの枝毛だらけ。白い肌にはいくつもの擦り傷。引き締められていた肉体は面影も無い程に弛み、とてもかつて騎士だったとは思えなかった。

 そして何よりも、その瞳。

 蒼穹のように青く輝いていたその双眸は、まるで深海の如く絶望に濁りきっていた。

 

『この33番は娼婦として働かされていました。自分の面倒を見切れず、身を売ったという訳ですね!』

 

 娼婦。司会のその言葉に衝撃を受ける。

 そんなところとは、遠く離れた場所にいる女性だったのに。

 

『今回定められた法律においては、娼館はそのまま継続して彼女を奴隷とすることが出来ました。しかし既に薬物濫用と度を超えた調教によって精神に異常を来していたコレ(・・)を留めていく意味はないと判断したとのことで、今回のオークションへ出品されました』

 

 何も、知らなかった。

 知らなかった彼女の遍歴が詳らかにされる。そして一方で、自分の知っている彼女の経歴は一切語られない。

 まるで彼女の栄光こそが、幻であったかのようで。

 

『しかしこれご覧の通り、娼婦として働いていたが故に獣耳人には珍しく程よく肉付いております』

 

 そう言って司会が手を伸ばし、言葉通りに大きく育った乳房を乱雑に握っても、怒りは湧かなかった。

 何故だろうか。尊敬した上官が見世物にされているのだ。普通なら、ここで憤慨してもおかしくないのに。

 

『……んあっ♡』

 

 むしろ彼女が、その表情が――女の反応をして。

 俺の中の、何かが壊れた。

 

『勿論獣耳族なので、何をしても構いません! それでは、10万から!』

『11万!』

『12万!』

『――100万』

『ひゃ、100万!? ほ、他には……ら、落札、落札です!』

 

 そして俺はいつの間にか、自分に出せる最高額で彼女を落札していた。

 

 

 

 

 

「お帰りなさいませ、ご主人さま」

 

 オークションからしばらく経った、現在。

 帰宅した俺をそう言って迎え、玄関で土下座するファリンは、当然全裸であった。法律によって奴隷は基本全裸で、寒い時であっても襤褸布以上を着ることは許されていない。

 サラリと床に流れる桃色の髪は、大分艶めきを取り戻していた。晒される生白い背中も傷ついてはいない。プルンと突き出された尻たぶは、むしろ落札時より肉付いていた。だが纏う退廃的な色香は変わらなかった。

 その谷間から飛び出た尻尾が揺れているのを見ながら、俺は彼女の横を通り過ぎる。しかし行き過ぎても顔を上げる気配が無かったファリンに、振り返って低い声で命じた。

 

「おい、もういい」

「はい……♡」

 

 上げられた顔は、媚びた雌の表情をしていた。

 青い瞳は、オークションの時のように暗くは無かった。だが溌剌と輝いているかというと、それも違う。例えるなら煮詰まった泥めいていた。何もかもを綯い交ぜにしてくつくつと火に当てたように、ドロドロに濁っている。そして今もなお鍋で炙られ続けているかのように、熱を持って蕩け潤んでいた。

 情欲に溺れ、浮上することが出来なくなった者のみが持ちうる目だ。

 

「身体を洗う。湯を沸かせ」

「はい。……お手伝いは……♡」

「……あぁ」

「……♡」

 

 俺が頷くと、明らかに昂ぶった様子を見せるファリン。そのまま立ち上がり、湯を沸かす為に風呂場へ向かう。立つ際に胸に抱えた二つの膨らみ大きくが揺れる。たぽんという音すら聞こえてきそうな質感に育ったそれは、弄られすぎてぷっくりした乳首を突き出しながら歩く度にゆさゆさと上下する。全身が性の為に変えられてしまった彼女とすれ違いつつ、フリフリと振られる尻に刻印された33という数字が遠ざかっていく。

 それを見て、嘆息した。

 俺は何をしているのだろうか。

 

 引き取ったファリンは確かに聞いたとおり、娼婦として……否、性奴隷として調教されていた。

 性奉仕を仕込まれ、常に男へ媚びるよう躾けられてしまっていた。手練手管で人の裡に住まう雄を引き出し、悦ばせるような調教の数々。だが人間の娼婦が多少なりとも男を弄ぼうとする強かさを持ち合わせているのに対し、ファリンはひたすら遜ることしか出来ないようにされていた。

 人間の言いなりになること。

 どれだけの地獄があったのか。それが絶対の、この世の法則の如く徹底的に刷り込まれていた。

 

 そう理解した時の俺の感情は、筆舌に尽くしがたい。

 絶望はした。もう、あの頃の彼女には戻らないということに。

 だが一方で、淫蕩に育った憧れの女を前にして、当然の昂ぶりも滾らせていた。

 そうとも。いくら純な感情を抱いても、男と女である以上はそういう想像を巡らせることもある。漲った物を抜いた夜もあった。好きな女が自分の言いなりとなって尽くしてくれる。そんな男にとって都合の良すぎる妄想が、現実となるのだ。喜ばない方がおかしい。

 絶望と興奮。どちらの方が大きかったのかは……あまり、考えたくは無いが。

 

「ではご主人さま、失礼いたします……♡」

 

 湯船に浸かって濡れた身体を、ファリンに湯女として洗わせる。だが手拭いを使うようなことはしない。性奴隷なのだから、身体を使って奉仕してもらう。

 ファリンは石鹸を一欠片掴むと自らの手と身体で泡立たせる。柔らかな肢体をへこませて塗りつけながら、白い泡はモコモコと彼女を包む。

 

「えい♡」

 

 そうして肌をぬらぬらと玉虫色の光沢に包んだ彼女は、背中から抱きつくようにして身体を俺へ押しつけた。柔らかい物が二つ押し潰される感触と、肌を掻く二つの引っかかり。そしてそれらがぬるりと滑るこそばゆさを含んだ心地よさが、俺の背を洗う。

 自身の身体を手拭い代わりにして、ファリンは俺の全身を上下しながら這い回った。腕は双子の肉房で挟み込むように掻い潜らせ、腿は秘裂を当てながらつるりと滑り落ちる。自分の肢体を物同然として。そしてその度、小さく喘いだ。

 

「んあっ♡ んぅ♡」

 

 性感帯を押しつけているのだから、当然だ。そしてそんな淫らな声音を聞いて、俺の一物も昂ぶる。

 

「おい」

「! はい……♡」

「前も洗え」

「♡」

 

 俺のそんな言葉に待っていましたと言わんばかりに、ファリンは股の間に滑り込んだ。いきり立った俺の剛直へ、蕩けた眼差しがすぐ近くから注がれる。

 

「失礼します……♡」

 

 彼女の泡立った手が、肉槍を柔く握った。途端伝わる滑らかな感触と、生温かい手の温度。ぬるぬる、シコシコと上下し、俺の一物が扱かれる。あまりの気持ちよさに堪えきれず息が漏れた。

 

「ふぅ……!」

 

 俺はファリンを前にして、厳めしい態度を崩さない。最初はどうにか元通りの関係に戻れないものか模索した日々もあったが、無理だと分かって以来はずっとそうしてきた。

 やはりどこか、認めたくなかったのだ。『これ』が憧れの人だとは。

 顔や容姿がよく似た別人であると考えた方が、精神の均衡が保たれる。だから俺は彼女を一奴隷として扱うことでそう思い込もうとしている。

 

 しかし淫蕩に微笑み指で作った輪を肉茎へ潜らせる彼女は、やはり俺の惚れた人そのもので。

 

「ぐ、ふ……!」

 

 強がって我慢しようにも、気持ちよすぎてすぐに射精感が上ってきた。早い。それは彼女に仕込まれた手管による物も大きいが、やはりファリンがしているという事実も一助したことは否めなかった。

 

 石鹸とよく似た白い白濁が、剛直の先端から勢いよく噴き出した。それはそのすぐ下で蹲っていたファリンの顔へ掛かり、その端正な造形を汚す。

 

「は、う♡」

 

 俺の精液を受け止めた彼女の表情はまるで夢心地のように蕩けた。唇の周りに付いた白濁を、小さな舌がペロリと舐め取る。不意に見せた小悪魔的な仕草。それを見た俺は湧き上がってくる興奮を抑えられなかった。

 美しい物を汚したという背徳的な昂ぶり。

 そしてその汚物を嫌がりもせず自発的に口へ含んだ彼女の淫らな行動。

 

「おい」

「はい♡ なんでしょう♡」

「流せ」

「……はい♡」

 

 畏まって頷くファリンだが、赤らんだ頬と潤んだ瞳は隠せない。

 彼女も分かっているのだ。風呂から上がれば、次は寝所へ連れて行かれることが。

 

 

 

 

 

 

「はぁ、ん♡」

 

 ファリンをベッドの上へ押し倒した俺は、前戯を挟むことすら無く彼女の膣へ漲ったまま衰えない一物を刺し込んだ。

 彼女は変わらず裸のままだが身体は拭いてとっくに乾いている。にも関わらずその時は湿った音がした。

 薬物と調教によって作り替えられたファリンは常に淫らな衝動に身を悩ませている。そしてあんなご奉仕をすれば準備万端なのは、触って確かめるまでも無いことだった。

 

「んあっ♡ はっ♡ ひんっ♡」

 

 背中から俯せに押し倒されたファリンは背後から獣のように突き上げられながら高らかに喘ぐ。その声音には一切の不純物の無い、男に征服される雌の悦びだけが乗せられていた。

 

「ご主人さまっ♡ ご主人さまっ♡」

 

 性に狂いながら、何度も繰り返し俺を呼ぶファリン。しかし俺の名は呼ばれることは無い。奴隷が軽々しく主人の名前を唱える訳が無い。それが今の俺たちの関係性。

 怒りが湧く。何に対しての憤怒かは分からない。国か、国王か、獣耳人か、それとも何も出来ない自分自身にか。あるいはその全てかも知れないが、混沌としたその感情は自分でも整理が付かなくて。

 しかし振り下ろす矛先は、目の前に存在した。

 

「あっ♡ はっ♡ んああっ♡」

 

 何度も、何度も突き上げる。内に煮え滾る激しい感情に突き動かされた俺の抽挿は疲れることを知らなかった。力強く叩きつけられる尻たぶからは、小気味よい破裂音が幾度も響き渡る。

 女を労る気のない力任せの性交。しかしファリンはそれでも情欲に蕩けた声音を崩さない。恐怖や、痛みにブレるということが一切無い。恐らくそれは感じないというよりは、それすらも性感を高める一助にしかならないよう躾けられたからなのだ。

 それが更に、交合を激しくする。

 

「あ゛っ♡ んお゛っっ♡」

 

 最早叩きつけるというより、叩き潰すと言い換えられるような打ち付け。それでもなおファリンは受け入れた。いやむしろ、膣道をきゅんきゅんと蠢動させながら吸い付いてくる。尻をふりふりと揺らし、肉槍を根元まで飲み込もうとしてきた。

 

「あーっ、あーっ♡」

 

 忠節の騎士の如く従順に、そして鮫のように貪欲に。

 俺を奥へ奥へといざなうその腰付きに、抗う理由も特にない。

 その時が来たことを、ファリンの獣耳の元で伝える。

 

「ファリン、出すぞ」

「あ゛、はひっ♡ 出して、くだひゃいっっ♡♡ お゛っ、お゛ぐぅ、奥に゛っ、お情けを゛っ♡♡」

 

 囁いただけで、ファリンは一気に達したようだった。途切れ途切れに、目をチカチカとさせながら、俺の精を強請ってくる。

 俺も、堪えきれない。ビクビクと痙攣する膣奥へと無遠慮に射精する。

 

「あ゛♡ んあ゛ああぁぁっっ♡♡」

 

 亀頭から飛び出した奔流が、ドクドクと彼女へ流れ込む。その熱に自分の秘奥を焼かれ、ファリンの身体がより一層に跳ねる。ガクガクと連続絶頂しながらも彼女はしかし、俺の一物を咥えたまま、放すことは決してしなかった。

 そのまましばらく腰を柔らかな尻に沈めながら俺は長い射精を最後まで遂げた。途端ファリンの肢体がベッドの上に崩れ落ちる。

 

「お゛っ……♡ んお゛ぉ……♡」

 

 どうやら気をやってしまったらしい。焦点を失った眼差しは虚空を見つめ、突き上げていた腰は力を失って砕ける。

 俺はゆっくりと陰茎を引き抜いていく。吸い付くような抵抗。気を失ってまでなお食い付いてくるその貪婪な様に、俺は微かな哀愁を覚えた。無意識の本能の中でさえ、彼女は……。

 

 ぬぽんと粘着質な音を立てて引き抜かれた膣は、ヒクヒクとまだ物欲しげに震えていた。白い湯気を微かに漂わせながら、わななく貝口は垂らした涎を堪えることもない。

 濃厚な雌の色香を立ち上らせるそれを見ているだけで、再び俺の中で情欲の泉がこんこんと湧き出る。出したばかりの一物はその身を持ち上げ、雄としての臨戦態勢をもう一度取った。

 収まらない。俺は乱雑にファリンの尻を叩いた。

 

「おい、起きろ」

「んぅ……♡」

 

 余韻に浸る彼女は熱を持った涙を流しながら、身を微かに震わせる。だが、起きる気配は遠い。

 仕方ないので俺は、そのまま再開することにした。

 

 開いたままの割れ目へ、猛る剛直を突き入れた。何の抵抗も無く埋まっていく。一気にスパァン! と小気味よい音を鳴らしながら突き入れてやると、そこでようやくファリンは飛び起きた。

 

「んぎっ、ひああっ♡」

 

 びくんびくんと身体を上下させながら覚醒するファリン。驚きにピーンと尻尾を立てている。いきなり奥まで刺し込まれた性感に目を白黒させながら、彼女は身を貫く熱を感じて腰を持ち上げた。

 

「お゛っ……も、申し訳、ありません……♡」

 

 自分が絶頂して気を失っていたことを思い出したファリンはまず謝った。主人を気持ちよくすることが使命の性奴隷が先に気をやることは重篤な失敗だ。それが例え度重なる調教によって感度を高められた結果だとしても、非は全て奴隷にある。

 その謝罪を受け入れるか、否か。

 

「………」

「んあ゛あっ!♡」

 

 どうでもいい。

 俺は答えの代わりに前後運動を再開した。今はこの情動が晴れれば、どうだっていい。

 

「あ゛っ、ひっ♡ あ゛ーっ、あ゛ーっ♡」

 

 まだ先の絶頂の快感が抜けきっていないのだろう。さっき以上に身をくねらせながらファリンはよがった声を上げる。

 細い腰を掴んで逃がさないようにしながら俺は、容赦無い腰付きで狂うファリンを責め立てていく。

 

「んあ♡ ひぃ、ん♡ お゛っ、い、いぎましゅぅっ♡」

 

 カクカクと腰を揺らし、早くも絶頂の予兆に身体をわななかせるファリン。そんな彼女をベッドへ押しつけ、耳元で俺は無慈悲に命じた。

 

「イけ」

「お゛っ♡ お゛っ♡」

 

 体格差を活かして覆い被さった俺にむぎゅうっと柔らかな身体を仰け反らせ押し潰されたファリンは、衝撃を逃がすことも封じられた。

 

「イ゛ぐうぅぅぅ♡」

 

 俺の下で為す術無く絶頂するファリン。彼女の青い淀んだ瞳がパチパチと火花を散らしているのを眺めながら、しかし俺は前後運動を止めない。うねるファリンの膣襞が俺の一物を包む感触を感じながら、止めることを選ばなかった。

 これが例えば恋人だったなら、達する労って一度止め、頭を撫でてやるところだったのだろうが。

 しかし俺と彼女は主人と性奴隷。であるなら、こうして精子をコキ捨てる道具として使うのが正しい。

 正しいのだ。

 

 そう思いつつも俺は、彼女をベッドの上でひっくり返した。己の内を駆け巡る奔流に翻弄される彼女はその大ぶりな乳袋を惨めに跳ね上げながら、俺に淫らな表情を晒す。

 

「あ゛ーっ♡ ああ゛ーっ♡」

 

 だらしなく、蕩けた顔だ。頬は紅潮し、唇は開かれ舌を出している。ぐるんと裏返った瞳には何も映していない。性衝動に抗えず、脳味噌の中身を真っ白にして、ただただ快楽を甘受している顔だった。

 凜々しい面立ちなどどこにも残されていない。いや知っていたとしても、それが幻でなかったのか自分でも分からなくなってしまう。

 

「……本当に」

 

 俺はたぽたぽと揺れる乳房を無遠慮に鷲掴みする。柔らかい感触に指が沈んだ。掌に余るその大きさを揉みしだきながら、小さく零す。

 

「もう、ただの性奴隷だな」

「おひぃ♡ ちくびっ、お゛おっ♡」

 

 両方の乳首を一気に摘まみ上げられたファリンが悲鳴を上げた。ぷっくり膨れ上がった肉豆は丁度摘まみやすい大きさまで育っていて、感度も高い。軽く擦るだけでぎゅっと膣が締まる。これでは服を着て生活するのも厳しいだろうと言う程に。

 こうもなってしまえば、もう性奴隷として生きる方が楽なのだろう。

 

「雌肉にしか価値がないよう変えられて、主人に絶対に逆らえないように調教されて」

「ひぎっ♡ ひぃんっ♡」

 

 絶頂の余韻も冷めやらぬ内に乳首を捏ねくり回される彼女は快楽の拷問の中にいる。にも関わらず、その表情は幸せに蕩けている。

 

「どんな気分なんだ? プライドは何も無いのか?」

「お゛おうっ♡」

 

 ギッと強めに押し潰しても、彼女が零すのは気持ちよさそうな喘ぎ声だけだ。

 

「なあ、教えてくれよ。お前は……お前は!」

「お゛っ、お゛っ、お゛っ♡」

 

 怒りの情動に駆られた俺は、それを激しい抽挿に換えながらファリンへと叩き込む。理不尽な怒りだというのは自分でも分かっている。だが止められない。

 力の入れすぎで乳袋が水風船のように歪む。

 

「んぎぃっ♡」

 

 上がった悲鳴に流石に痛いかと過ぎったが、彼女の表情はそれでも悦楽に浸っていた。口の端からだらしなく一筋の涎を垂らす姿を見て、俺の怒りの箍は更に外れていく。

 

「お前が!! ……見せた、あの時の表情はっ!!」

「い゛っ、おお゛おおっ♡ お゛お゛お゛おおーっ!♡」

 

 射精。迸った激情が白濁ごと、ファリンの胎へと流し込まれる。同時に襲い来る幾度か目の絶頂に彼女は身を震わせ、注がれた熱量と合わせて腰が大きく跳ね上がった。押しつけ合う接合部。溢れた精液と愛蜜が混ざり合い、ファリンの尻を伝ってベッドの上に滴り落ちる。

 

「あーっ♡ お゛ーっ♡」

「はぁ、はぁ……なんで……」

 

 互いの吐息の中で、びくっ、びくっと打ち上げられた魚のように跳ねるファリンを下に敷いて。俺は、放精と共に抜けていった怒りと脱力感に、零すように呟く。

 

「あんな顔、俺に見せたんですか……団長……」

 

 あの砦の、あの時の顔が、忘れられなかった。

 飄々として、颯爽とした、涼しげな笑顔。あの輝かしい光景が、どうしても焼き付いて離れなかった。

 

「どうして……」

 

 答えを、期待していた訳じゃない。

 ファリンはあの頃のことを語ろうとはしなかった。ただ笑って遜るだけで、強めに問い質せば謝るしかしなかった。だから俺の夢想だったんじゃないかという思いは日に日に強くなっていく。それが今、口を突いて出てしまった。もう彼女はとっくに、情欲に狂ってしまったのだと分かっているのに。

 無益な問いに頭を抱える。後悔の念が苛む。きっとファリンはまた、何も言わずに……。

 

「……ごめん、ね」

 

 ふと、声が聞こえた。

 それは紛れもなく組み敷いた彼女の声で。

 

「それは……ボク、が……」

 

 法悦に上気しているものの、昔みたいな響きを感じた。目を合わせる。その瞳は相変わらず蕩けてはいたが、その濁りの中に煌めく物が垣間見えて。

 

「君の、前でかっこつけたかった、からだよ……」

「え……」

 

 呆けた俺を前にして、ファリンは繋がったまま身体を起こした。俺を座らせ、その膝の上で抱きつくようにして手足を絡める。鼻先が触れ合う程の近さで、彼女は語った。

 

「ボクは、本当はとても弱くて……辛いことも苦しいことも、責任も……ホントは、大嫌いで……」

 

 あの頃の口調で、しかし紡がれる言葉は、懺悔のようで。

 

「でも、君の前では……かっこつけたかったんだ、いつも」

「……それ、じゃあ」

 

 思い出す。あの砦のことを。それ以外も。

 俺に笑って振り返る団長。だけどあの時、本当は彼女も逃げ出したかったのでは?

 颯爽と去って行く後ろ姿。だけどあの時、本当は泣き言を言って縋りたかったのでは?

 だけどファリンは、そうしなかった。そう、しなかった理由は……。

 

「俺……なんですか。俺が、貴女を……強がらせた」

 

 本当はずっと、無理をしていたのだ。

 逃げたかったし、泣きたかったし、彼女は全然、強くも無かった。

 だから俺の前から姿を消した後は、強がることもしなかった。だから薬に溺れ、娼館に身をやつすことだってした。

 そっちの方が本当は、彼女にとっては楽だったのだ。

 

 居住区で逃げ出したのは、俺のことが分からなかったからじゃない。

 俺の前で、あの姿を見せたくはなかったのだ。

 本当の、姿を。

 

 ファリンは否定も、肯定もしなかった。

 その代わり、俺の唇を奪う。

 

 舐る舌触りは、心地よい。

 きっとこれも、仕込まれた技なのだろう。幾度も繰り返し、自分の知らない人間に明け渡してきた唇なのだろう。

 だが、どういう訳か。

 ようやっと渡せた純潔が、そこにある気がした。

 

「……ぷはっ」

 

 離される。微かな時間、二人の間には唾液の作った銀の糸が掛かった。

 口付けは、何度も交わした筈だ。

 だのに、今初めてした……そんな気分も湧き起こる。

 

「でも今は……もう、騎士じゃないから」

 

 そこに、彼女の想い全てが籠められていた。

 そうだ。ファリンはもう、騎士じゃ無い。

 強がる必要はない。だって蹲うことが奴隷の役目なのだから。

 戦う必要はない。惨めで弱々しい姿を晒したって、何も思われないのだから。

 そして……好きな人と、交わっても、いい。だって、その人の性奴隷なのだから。

 

「だから、このままで……いさせてください♡」

 

 そうして、再び騎士団長としてのファリンは姿を消した。

 目の前にいるのは、欲情した一匹の獣耳人だった。

 

「幸せ、なんです♡ だってご主人さまに、たくさん使ってもらえる♡ 何もかっこつけず、いっぱいご奉仕出来る♡ 大好きな人の腕の中で、甘えたって許される♡ だから幸せです♡ 幸せなんです♡」

 

 そう言ってファリンは、俺へ抱きついた。

 胸板で乳房がむにゅうっと潰れる。腰に回った脚が決して離すまいとがっちり掴む。挿入したままの一物が、ふわふわと柔らかな膣壁に包まれる。

 言葉だけじゃない。全身全霊で、俺へ媚びることの幸福を伝えてきた。

 

「……そう、か」

 

 晴れやかな気分だ。まるで心に積もった澱が剥がれ落ちたかのように。

 彼女はもう、幸せだったのだ。

 で、あるならば。

 俺もまた、主人に戻るべきだ。

 

「まったく、まだ精を強請るとは呆れた奴隷だよ」

「あん♡」

 

 返事の代わりに尻を揉みし抱く。ファリンは嬉しそうに甘く鳴いた。そうだ。俺とファリンは主人と性奴隷。だから、こうするのが正しい。こうしていいんだ。

 

「覚悟、出来てるんだよな?」

「……♡」

 

 陶酔した表情でファリンは、こくんと頷いた。

 色欲に濡れた、浅ましい表情で。

 

 風呂場も含めてもう三度も射精しているが、俺の一物は衰えるどころか猛りを増していた。

 

「おっ♡ おっ♡」

 

 乳房を潰して俺に抱きつくファリンの姿勢は変わらないが、俺はベッドから降りて立ち上がっていた。座ったままでは、俺の昂ぶりの全てをぶつけられる気がしなかったからだ。

 両手の指を尻肉に食い込ませ、腕と腰の力だけで持ち上げる。騎士と言えど人一人を持ち上げるのは本来重労働だが、ファリンが離さないと言わんばかりに抱きついているおかげで左程苦では無い。そのまま俺は、下から何度も突き上げる。

 

「おっ♡ おぅっ♡ んじゅっ、れろぉっ♡」

 

 どちゅどちゅと肉槍に貫かれながらファリンは、隙を狙って俺の唇をまた奪った。深くまで侵入した舌が俺の歯列を愛しそうに舐め取り、唾液を運んでは交換する。まるで俺の体液を少しでも多く取り入れようとしているように感じて、より一層の射精欲が湧く。

 

「ちゅぷ♡ んへぁ♡ おおうっ!♡」

 

 甘ったるい顔で幸せそうに口づけていたファリンだが、俺がより強く腰を突き上げると雷に打たれたかのように仰け反った。天を仰いで背筋を反り返し、ケダモノの如き鳴き声を上げる。

 ベッドの上から降りた今、ファリンを支えるのは互いの手足と具有するモノだけ。だから体重のほとんどが一点に掛かっている。彼女の、最奥へと。

 

「おっ♡ おほぉ♡ おぐっ、いぎゅっ♡」

「だらしないな、またイクのか。まったく類を見ない雑魚まんこだな」

「おひぃっ♡」

 

 獣耳のすぐ近くでそう罵倒してやれば、それだけで感じてぎゅうっと膣を締め付けてくる。俺の一挙手一投足が全て、愛おしくて堪らないという証左。何をしても彼女はきっと、情欲を滾らせるのだろう。それが今は、調教の果てだからでは無く彼女の望みだと分かる。

 

「ふぅうぅーっ♡ お、んぎぃ♡」

 

 目を白黒させながらも、ファリンは決して絡めた脚を解こうとはしなかった。むしろ縋り付くように力を強める。それはまるで無意識がそうさせているようにも思えた。

 俺を心の底から求めているその行為に、突き上げは更に激しくなる。

 

「おっ♡ おごっ♡ いぐいぐっ♡ いぐうぅぅーっ……♡」

 

 ファリンはまた、しかし前よりも幾分か静かに達した。だがそれは身を襲う快楽が弱いからではなく、より深い快感に苛まれ喘ぎ声すら禄に上げることが出来ないからだろう。その証拠に密着した駄肉はふるふると震え、膣穴は吸い付くように窄まった。額を文字通り付き合わせる程近い彼女の瞳には、悦楽の火花が散っていた。

 

「お、おおぅー……♡ お゛っ♡」

「一人で勝手にイってるんじゃねぇよ」

 

 いっそ辛いくらいの極楽に身を浸らせているファリンを待ってやる義理は無い。身勝手に上下運動を再開させ、悶える彼女の膣を掘削する。しかしむしろそれはファリンも望むところである筈だ。一人の人間としてあやされるよりも、性処理の道具という近さ(・・)こそが彼女の本望だ。

 

 だから俺はそれから何度も腕の中で絶頂するファリンを構わず、己の一物を扱き続けた。

 

「ごしゅじんさまっ♡ おっ♡ ごしゅじんさまっ♡」

「お゛ーっ♡ あ゛っ、ごれしゅごっ♡ お゛っ♡」

「あぎゅっ♡ ご、ごわれぢゃう♡ おまんこっ、こわりぇりゅ♡」

「あ゛ーっ♡ ひあ゛ーっ♡」

「おお゛お゛お゛お゛おおおおぉぉぉーーーっっ♡♡♡」

 

 俺へ本心を告げたことで今まで以上に箍が外れたのか、その日のファリンは今まで以上にイキやすかった。何度も何度もよがり狂いしがみつきながら果てる。気絶しているような気がした時もあったが、突き上げていれば勝手に起きるので構うこともしなかった。

 彼女が幾度も達したところで、ようやく俺も再発射の準備が整った。突き上げの速度を速めながら言う。

 

「ファリン、出すぞっ!」

「お゛っ♡ きてくだひゃいっ♡ だひてくだひゃいっ♡ ごしゅじんさま♡ いや――」

 

 微かに残った理性をかき集めて答えるファリン。

 濡れて、溺れて、翻弄されて。

 それでも青い瞳は、俺を捉えて。

 

「――リゲル♡」

「! おおおおぉぉっ!!」

 

 そう囁かれて俺は、一気に射精した。

 

 ――どぴゅっ、どぷっ! びゅるるるるるるーーーっっ!!

 

「あ、あ゛ああああああぁぁぁーーーっ♡♡♡ ♡♡♡♡♡」

 

 人生で一番勢いのある放精だった。四度目なのに、まったく薄まることの無い、いや今までで一番濃い自信のある精子たちが、絶頂するファリンの膣を駆け昇る。重力を物ともせず子宮へ流れ込んだ白濁は、しかし勢い余って溢れかえり逆流した。ガクガクと身を揺らして噴射する彼女の愛液と入り混ざり、床へと滝の如く流れ落ちる。ボタボタと重みのある音が、甘ったるい匂いに包まれた部屋に響いた。

 接合部から滴る混合液を肌で感じながら、開放感に包まれた俺は激しく痙攣したままのファリンの背を抱きしめる。

 

「ファリン……愛してるよ……」

「お゛……あぅ……♡」

 

 白目を剥いて完全に気絶したファリンは、それでも微かな力で抱き返した。

 

 

 

 

 

 

 それ以来俺は、表だって獣耳人差別へ何かを言うことを一切止めた。苦言を呈することすらもだ。流石に最近は行き過ぎた迫害に却って冷静になった民衆が異を唱える傾向になりつつあるが、俺にはもう関係が無かった。

 何故なら今の俺には、奴隷となったからこそ解放された女がいる。

 

「おかえりなさいませっ♡ ご主人さまっ♡」

「ああ、ただいま」

「はい♡ ……あっ、ご主人さま、玄関でなんて――♡」

「奴隷が意見するんじゃない」

「――はい♡」

 

 俺もまた罪悪から解き放たれ、彼女を愛し続ける。

 最愛の、性奴隷として。



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