SDガンダムフルカラー幻想郷劇場(SDガンダムフルカラー劇場×東方Project) (たくらまかん)
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紅魔郷with一年戦争編
え、ボンボン終わったの!? フルカラーも!?


ガンダム
「みんなー元気ー?」

シャア(ザクII)
「もうガシャポンは回してくれたか?」

ガンダム
「記念すべき第一段のラインナップはーー、えぇ!?」

シャア
「どうした?」

ガンダム
「とっくの昔にSDガンダムフルカラーの企画終わってるんだって」

シャア
「な、何ぃ!?」

???
「大丈夫、諦めないで」

ガンダム
「き、キミは!? しかも真○みき風!」

シャア
「ふっる!?」


「お初にお目にかかります。私は八雲紫という妖怪ですわ」

シャア
「よ、妖怪だと!?」

ガンダム
「ヘイ、何かYOUKAIってギャー!?」スキマオクリ

シャア
「何だアレは!」


「なんかスゴイ、イラっとしたわ」ガンダムヲスキマカラモドシ

ガンダム
「何かすっごいキモかった。目がいっぱいーーおえぇぇ!」オモイダシテゲロゲロ

シャア
「うわ汚ねえ!」エンガチョ


☆忘れさられても……★

 

 いつものオープニングトークに突如として現れた可愛らしい金髪の少女からガンダムとシャアはある提案を持ち込まれた。

 

「幻想郷に移り住む……か」

 

 幻想郷とは、世間から忘れさられてしまった自然が行き着く場所らしく、八雲紫と言った少女の管理する世界だという。そこには妖怪や幽霊などファンタジーに溢れたものがありふれているらしい。普通なら信じがたいハナシだが、先ほどのキモイ空間を思い出す限りは彼女が妖怪なのは確かなのだろう。

 紫曰く、フルカラー劇場の住人達は幻想郷にうってつけだとのことである。

 

「オレは別に良いかな」

 

 ガンダムの言葉にシャアは思案することもなく合意する。まさか、気づかないうちにSDガンダムフルカラーが終了してたとは思わなかった。しかし幻想郷にはあのガシャポンがあるという。ならばこのフルカラー劇場をいろんな読者に見ていただけるなら幸いなことはない。つまり商品自体なけりゃ、

 

「「タイアップマンガやってても意味ねー!」」である。

 

「!? ど、どうしたの急に?」

 

 思いの丈をユニゾンして叫んだ瞬間、目の前にいた紫が身体を強張らせて様子を伺った。

 

「あ、スマンスマン。とりあえず叫んでおきたかったのだ。まあ移住の件は問題ないな」

 

「あ、シャアもそう思う?」

 

「当たり前田のクラッカーだ」

 

「古っ!?」

 

 何処へ行こうとフルカラー劇場の住人なら、ただあるがままでいれば良い。目の前で漫才を繰り出す彼らの姿に頼もしさを感じ、紫は提案者として胸を撫で下ろした。思えば彼らを知ったのは、ふとした暇つぶしにスキマを開けた時である。彼らの世界の宇宙にはコロニーや小惑星を改造した住居があり、地上と地下、果てには水底にも要塞が散らばっていたりと、幻想郷よりははるかに進んだ文明を築いている。

 しかしながら、どういうわけかそこに住まう住人たちは敵も味方もなく穏やかで自然を愛し、軍事兵器もただの喧嘩道具ーー幻想郷に置き換えれば弾幕ごっこのスペルカードに等しい。そしてそこに行き着く者を分け隔てなく受け入れている。その在り方はまさしく幻想郷と同じである。瞬く間に紫の心は惹かれた。

 彼らのような者がいる世界と自分達の幻想郷が融合したら、どの様な化学反応が起きるのだろうか。とそんな考えが頭をよぎった。忘れさられてた存在というのなら、是非とも招待したい。幻想郷の宇宙(そら)にコロニーがあったらそれはそれで面白いだろう。 まだれんぽーとじおんしか居ないがこの先、面白い新参者が現れてくれることを願うばかりだ。

 

「紫、これからよろしくね!」

 

「ええ。少佐も、よろしくお願いしますわ」

 

「ま、新しい舞台に期待しよう」

 

「退屈はさせないわ。フルカラー劇場(あなたたち)と幻想郷(わたしたち)の世界なのだから」

 

「へー……。でもさ」

 

 紫の能力によって、瞬く間に目の前に幻想郷の風景が広がる。そこは博麗の社にホワイトベース、紅き洋館にムサイとそれぞれお隣さん状態であり、紫の思惑を受け取った様相をそのままに呈していた。

 

「すっごいシュールなんだけど。あそこのヒト達に怒られない?」

 

「大丈夫よ」

 

「なんというか、カレーライスにナポリタンが乗っかってるみたいな光景だな」

 

「あらぁいっけなーい、てへぺろ♪ ーーってぇ、ふたりとも何バズーカを構えてるのよ!?」

 

「いやなんか」

「イラっとした」

 

 その異様な世界にまだ見ぬ賑やかな暁を望み、引き気味のふたりに対して、管理者は慌てつつ扇で口元を隠し微笑むのだった。

 

ーSDガンダムフルカラー幻想郷劇場、開幕ー

 

☆抑えてよ★

 

 シャアと別れ、一旦ホワイトベースに向かったガンダムはそこから仲間を伴い、お隣へ挨拶に伺うことにした。

 

「紫が言うにはここからが入り口らしいけど……」

 

「なんかぎょうぎわるーい」

 

 ガンタンクの言葉にガンダムは苦笑して頷く。何故なら一行が踏み入れたお隣というのは神社であり、それも鳥居からではなく神社の側面から出てくる形になったからだ。

 

「何か鳥居から向こうはオトナの事情で回れないらしいし。そうなんだよね詳しいヒト!?」

 

「誰に言ってるんだ。とりま賽銭入れるか」

 

 境内の砂利を踏みしめてガンキャノンが拝殿へと足を向け、ガンダム達もそれに続く。博麗神社ーー、それがここの名前だと紫から教えてもらった。来てみると特別大きいということもないがなんとなく威風がある。賽銭箱を前にしたところでガンダム達はガマ口のおサイフを取り出し、それぞれ金子を賽銭箱へと投じた。 蓋の返し部分で跳ね返り箱の底へと落ちる。独特の音が際立って響き、三人は瞑目合掌する。

 

(……なあガンダム)

(どったの)

 

(ガンタンクから禍々しいオーラを感じるんだが)

 

(言ったらぶっ飛ばされそうだからソッとしておこ)

 

(いっぱいぶっとばせるように)

 

(あぁ、うん。そだな)

 

 それぞれ願いを掛けていると、神社の中から足音が慌ただしく立ち、やがてその主がガンダムの前に躍り出た。紅白の変わった服を着た少女を見てガンダム達は察した。

 

「今お賽銭入れてくれたの?」

 

「うん。てーと君がここの巫女さんだよね。オレれんぽーのガンダム」

 

「オレはガンキャノン」

 

「ぼくガンタンクー」

 

「そ。ええ、そうよ。この博麗神社の巫女、博麗霊夢よ」

 

「膨れレモネード?」

 

「違うから」

 

 賽銭箱の蓋を開け、七百円が入れられていることを確認して小銭を拾う。だが、そこで改めて霊夢はガンダム達の異様な身なりに気づく。

 

「というか、あんた達何者よ? 見たところというかまんま妖怪でもなさそうだし……」

 

 固そうな身体の彼らは今まで見たこともない。誰かの傀儡人形であろうか。しかし、傀儡人形にしては表情が明るくよく出来ている。訝しげにガンダム、ガンキャノンの順に注視し、

「じろじろみないの」ガンタンクへと霊夢の視線が移った瞬間、彼にそんな注意をされる。その時、

 

「え」

「「ちょおmーー」」

 

 背後にそびえていた二対の大砲が稼動し、霊夢へ向けられ、ガンダム達の制止の言葉が言い切られることもなく爆ぜた。

 神社上空へと打ち上げられ状況判断もままならない。悲鳴をあげる中、巻き添えを食らったのか隣で吹き飛ばされているふたりの姿が視界に入るものの、霊夢の意識はそこでぷつりと途絶えるのだった。




レミリア
「どうかした?」

シャア
「悲鳴が聞こえた気がしたんだが」

レミリア
「空耳じゃないか? 咲夜は聞こえたか?」

咲夜
「いえ、私も何も」フルフル

シャア
「ま、いいや。さあ紅魔館をシャア専用にさせてもらう件で同意を得たワケだが」

レミリア
「してないから!」ハツミミナンダケド‼︎

シャア
「いやもう待った無しだろ」

レミリア
「もうちょっと、もうちょっと待ちなさいよ!」オネガイ

咲夜
「少佐……いくらなんでもそれは」ジトー

レミリア
「!? そうよ咲夜からも言ってやって!」

咲夜
「お嬢様がチェスで負けているからって! それも十五回も十五敗も! 結果三十戦連敗なんてあんまりです!」

レミリア
「グハァっ!」ヤガグッサリ

シャア
「あ」

咲夜
「お、お嬢様!? あんまりです少佐!」

シャア
「オマエだオマエ」


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ご近所あいさつは慎重に。れんぽー編

〜博麗神社・客間〜

霊夢
「……」ブッスー

ガ&キャ
「「ほんっっとにごめんなさい(ボロッ」」ドゲザー

霊夢
「……まぁあ? ジッと見ちゃった“私 も” 悪 い し」ネチネチ

ガンタンク
「……」ガシャコッ

霊夢
「ああっ!? ウっソです私が悪いでーす!」イッケナーイキャハッ

ガ&キャ
((ああ……犠牲者増えちゃった))ホロリ


☆投擲は慎重に★

 

 

 ガンダム達から明らかにされたことは霊夢にとって未知なる情報だった。曰く、モビルスーツとは生物であり、機械の身体を持っているが実態は自分たち人間と変わらない。先ほどのように吹き飛ばされれば痛みを感じ、蚊に刺される事も多々あるらしい。

 

「え、機械の肌を刺す蚊なんているの?」

 

 ふと感じた疑問を口にすると、

「ヒント、オトナの事情」

「は、はい」笑顔にも関わらず、やけに凄みを効かせるガンダムを前に気押されてしまう。きっとその辺りのことは禁句なのだろうと霊夢は悟る。蚊ってそんなヤバい生き物だっけ?

 

「でさ、今日からここの隣に住むことになったんだ」

 

「は? 隣?」

 

 ガンキャノンから今日訪れた用件を説明され、途端に霊夢の表情が困惑に染まる。彼の真意が分からない。ここの近辺に建物というのが理解不能である。そして、辺りを見回したところで霊夢はガンタンクが縁側で手招きをしていることに気がつく。

(……まさか、いやそんな)そう思ったと同時に嫌な汗が湧き上がる。是非とも杞憂であってほしいと願いながら、霊夢はぎこちなくそちらへ赴いた。そして、ガンタンクの隣に並び、彼が得意気に指し示す方向へ視線を向けーー、絶句した。

 博麗神社とは、この幻想郷と外界の境界である。その重要なところに、あろうことか大きな建造物がそびえているのだ。木馬を模したデザインにトリコロールの配色と、まるで玩具のようだがこの視界を遮る物体は決して子どもだましではない。

 

「あれがぼくたちれんぽーのおうち」

「へ、へえー……ずいぶんオシャレね。紫ー!  紫ー!?  居るんでしょ出て説明しなさいよ!」

 

 もはや我慢ならない。ガンダムの話を聞く限り、紫は承諾済みとのことだがここは本人が出て来て事情を教えるのが当然である。青筋を立てながら霊夢が辺りを見回してその名を叫ぶと、ガンタンクとの空間に切れ目が入り、そこからこの事態の元凶が良い笑顔で姿を現す。

 

「もう、そんなに怒らなくても出て来るわよ」

 

 呑気にそんなことを言う彼女に対し、霊夢はすかさず封魔針を投げつけるが、紫は何事もなくスキマへ潜り込む。

「「あ」」

「チッ、一体全体どういう事なの!  れんぽーって何?  アレは何よ!?」

 

「何もないわ。あれはホワイトベースと言っ、て……ひぅ!?」

 部屋の方へ向き直り、スキマを移して上半身を出していた紫を続けて問い詰めた霊夢だったが、小さく悲鳴を上げた紫に動揺する。こちらの怒りに対してであろうか、その顔はすっかり青ざめている。しかしこのスキマ妖怪がそんなことで取り乱すような玉ではないことは重々承知である。紫の表情を計り兼ねていると、

「霊夢、霊夢」小声で名を呼ぶ声がした。振り向くとそこには危険に怯えるガンダムの姿があった。その意味深な態度に霊夢は思わず不機嫌になる。

 

「 な、何よ。私は今こいつと……」

「となりとなり!」

 

 今度はガンキャノンが隣を見るように促す。一体何だというのか。すると正面に居る紫でさえも自分の隣を指し、ガンキャノンの言葉に頷いている。

 ーーその直後、ガチャコッ!  と先ほど自分を襲ったアレの音が三たび霊夢の耳に入ってしまう。

「……!?」

 背中に悪寒が走る。まさか、そのまさかである。先ほどの封魔針の件をようやく思い起こし、霊夢は油の切れた機械のように鈍い動きで隣に顔を向けた。そこには案の定“赤い針”がブッスリと頭に刺さったガンタンクが涙を滲ませながら恨めしそうに霊夢を睨んでいたのである。それも背中のキャノンを降ろして……。

 

「いたいよう」

 

「ごめんなsーー」

 

 至極当然な言葉とともに、再び霊夢達を弾頭が襲った。

 

 

 

 

☆オレ達れんぽー★

 

 他人の諫言とは負い目の時にこそ効力を発揮するものである。目の前で正座させられ、ガンタンクに説教をされている霊夢と紫を見ながらガンダムはしみじみと思った。

 

「何で私まで「もういっぱつぶっtーー」いいえ私も悪いです!」

 

「たんく、たんくもうその辺で」

 

 不平を漏らす紫をおどーーもとい注意するガンタンクをガンダムはそこで説教を打ち止めにするように促す。とりあえずは先ほどの話を進めなければならない。その影響を受けて“二回”も吹き飛ばされた霊夢が哀れであった。

 

「マダフキトバシタイノニ「ええと、ふたりとも楽にして。足が辛いでしょ? 」

 

 仲間が何か不穏な一言を口にするが、ガンダム一切聞こえないことにした。

 

「とりあえずさっきの霊夢の質問に答えると“れんぽー”ていうのがオレ達の所属する組織の名前なんだ」

 

「?  組織ってどういう組織なのよ」

「それは……」

「それは?」

「……オトナの事情だからわかんない」

 

 考えうる全てをそう決算して出した答えに霊夢はかるくずっこけた。

 

「あ、あんたね〜」

「だって仕方ないじゃん!?  やったんですよ必死に!」

 

「ガンダムそれ違うコの台詞よ」

 紫からツッコミを入れられ、言葉に詰まる。良いじゃん!  言ってみたかったんだから!   恨めがましくこちらを見遣る霊夢にガンダムはこうべを垂れて謝った。たしかにああ言ったものの無理矢理な回答には違いない。肩すかしも良いところだが、やがて小さなため息の後、霊夢から言葉が発せられた。

 

「良いわ、“トクベツ”に隣に住むことを認めるわ。改めて三人ともよろしくね」

 

 特別を強調して言った霊夢の眼は一瞬だけ紫を捉えていた。やはり、あの場所は住むのにはよろしくないらしい。だが今は霊夢に対しての感謝の気持ちを述べることが優先だった。

 

「ありがとー、いやホントにあそこで良いのって紫に聞いたんだけどうやむやにされて不安だったんだー!」

 

「それ初耳なんだけど。ていうかやっぱりあんたなのね」

 

 ガンダムの裏情報に霊夢の鋭い視線が再び紫を捉えるも彼女はどこ吹く風である。扇子を片手に佇んでいる姿は何というか、出会って間もない関係だが手強い印象を抱く。まあ、れんぽーじおんをまとめて幻想郷に移住させること自体まともではない。

 

「霊夢ありがとな」

「同情するならお賽銭ちょうだいよ」

「ふふふふ、よろしくね」

「う!?  あ、あんまり吹き飛ばすのはやめてよね」

 ガンキャノンには項垂れて軽口を叩けているも、ガンタンクを前にしては動揺する霊夢が少し気掛かりである。ご近所付き合いを深めていけば慣れてくれるかもしれないが、とりあえずは改善してあげたい部分だ。後残る心配は同じくこの幻想郷にやってきた連中のことである。

 

「ね、紫ー」

「なあにガンダム」

 

「言っておきたいんだけど、オレ達とじおん交戦中なの知ってるの?」

 

 思えば宇宙から地球に移り、グフとバトルした後に紫に出会ったのだ。彼女の中で自分とシャアが仲良しこよしならそれは認識を改めて貰わなければならない。

 

「ええ、それも込みで呼び寄せたの。あちらはあちらで環境を変えていけるでしょ?」

 

「え、あぁ。う、うん」

 

 思い過ごしだったことにガンダムは安堵する。それにしても紫の言うとおり確かにあの赤いヤツなら少しばかりの困難に直面してもずる賢いやり方で乗り越えるだろう。

 

「ウウン。たぶんこっちよりかは揉めるよ。あんなたらこ色ザクボロゾーキンの如くボコボコにされるよされたら良いなむしろゆかりん殺っちゃえ」

 

「あ、あなた達ほんとうに外面だけで内面では嫌いなのね」

「あたりまえじゃん」

 

「うわすんごい笑顔」

 

 それは互いに争った仲でもシャアがそこそこやるヤツなのは充分わかることだが、何気に紫に期待されてる感がライバルとして気に食わなかった。ひまわりが咲いたかのようなベストスマイルで即答するガンダムに対し、紫はほんの少しれんぽー&じおんの関係が気掛かりになった。

 




ガンダム
「ところで霊夢、記念にガシャポン置いてみない?」SDガンダムフルカラーヲズイッ

霊夢
「はあ?  ってコレあなた達の人形じゃないの」ヨクデキテルワネ

ガンダム
「コレを神社におけば参拝客がとりあえず百円入れて回してくれるよー回収した百円をお賽銭にすれば霊夢もウハウハラインナップを紹介出来るオレ達もウハウハだー!」イェーイ

霊夢
「!?  なるほどソレは良い考えね!  とりあえず五百円で売るわよ、増税よ増税!」ウッヒャッヒャ

ガ&れ
「「増税イェーイ」」

キャ&タ
「「イェーイじゃねぇ」」キャノンダブルショット

ガ&れ
「「ギャー」」


「あ、またグフ」ガシャガシャポンッ


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ご近所あいさつは慎重に。じおん編

〜紅魔館・大図書館〜

ギャン
「すごいなこの蔵書の数は」

パチュリー
「そお? あ、次はこの山を片付けて」

小悪魔
「はい」コアー

ギャン
「うむ。ひとつひとつ価値のあるものばかりだ」マドウショミナガラ

パチュリー
「褒めたって何も出ないわよ」テレテレ

ギャン
「わたしの本も読んでみるか?」

パチュリー
「何々、[五歳でも作れるソーラ・レイ]ーーこれ借りて良いかしら?」ムキューッ!

ギャン
「お、ついでに[おさるでも出来るIフィールドの作り方]も借りるか」

パチュリー
「ありがとう、この図書館の防御力を強化出来るわ」パチューッ!

小悪魔
(こ、 これ、図書館消し飛ぶんじゃ)ガクブル



☆襲来、モノアイ軍団!★

 

 博麗神社にガンダム一行が訪れた同時刻、霧の湖の畔に建つ洋館においてひとつの騒動が起きていた……。紅色の威厳、その横手に突如として昆虫を模した様な形状、緑色で塗装された建造物が現れたのである。

 その一際異彩を放つ存在が館の住人達に見つかるのは必然のことと言えた。

 

「咲夜さん!? あ、アレって何でしょうか!?」

「みすずちん餅つきなさささい」

(咲夜さーんッ!? それ違うゲームのコです!)

 

 洋館の門前から建造物を見据えながら、クールに自分より動揺していた上司を目の当たりにし、門番はこの状況が異常事態だと確信する。

 

☆★☆★

 

 皆さんこんにちは、紅魔館のメイド長を務めています十六夜咲夜です。率直に今起きているありのままを説明します。

「咲夜さん誰に仰っているんですか?」

 うるさい。

「いダイッ!?」

 あまりの異常事態に少し取り乱してしまった。そうこうしているうちにあの昆虫の様な建物から、これまで見たことないような者達が現れ、この紅魔館に出向いてきたのです。ツノ飾りをつけた赤がひとりと、ツノのない緑がふたり、色は違えど単眼であることや纏っている甲冑はまったく同じでした。人間でなければ妖怪でもない。時を止め、触ってみるとそれは理解できました。

 

「よっ、はじめまして。私はシャア少佐だ」

「「部下のザクIIです」」

 

 ツノを生やした赤い傀儡は気さくに名を明かし、緑もそれぞれザクIIと名乗った。しょうさ、とは階級のことかしら?

 

「これはご丁寧に、私はこの紅魔館のメイドをしております十六夜咲夜と申しますわ」

「わ、私は門番の紅美鈴と言います」

 

「咲夜に、美鈴か。よく覚えておこう」

 

 少佐は何故かそこで美鈴に視線を向ける。どうしたのだろう。ザクII達も同じく美鈴をジィっと見上げていた。

 私にあって美鈴にあるもの……、はっ!?

 

「何をおっぱい見t「何で美鈴の額にナイフ刺さってるんだ」ああー」

 

 少佐の指摘を受け、私と美鈴はお互いを見合わせて微笑む。何だ、そんなことですか。

「「何時ものことです。ねー♪」」

「オマエらの日常どんなんじゃい」

 

 少佐は目を凹ませながらすかさずツッコミを入れてくれる。傍らのザクII達すらも美鈴の有様に分かりやすく引いている。それにしても、この方々は目で感情を表現するのかしら……。

 

 

☆★☆★

 

 あの後、咲夜さんは少佐殿を連れて紅魔館の中へ入っていった。お嬢様からすでに彼を招くよう仰られていたらしい。流石お嬢様。で、門前にはーー、

 

「なー美鈴」

「何?」

「野球やろっか」

「いやいや。咲夜さんに刺されるから! 見たでしょ!? あれになるのよ!?」

「その時ゃオレ達迷わず美鈴の責任にするから」

「よろしくな」

「ちょ、ここに外道がいるんですけど!?」

 

 少佐殿と共に来たザクII達が残っていた。押しかけたお詫びに、との彼のご温情である。最初のうちは断ろうとも考えたけど、本音は彼らに話を聞きたかったから結局門番を手伝ってもらうことにしたのだ。一応、ふたりにはアポリー、ロベルトという名前があるのだけど見た目が一緒過ぎて分からないでいる。

 

「それにしても本当にあなた達見分けがつかないわね」

 

 失礼とは自覚しつつも私は思っていたことを口にする。けれど、彼らは互いを見合わせ、相槌を打って私に言った。

 

「まー、オレらでもわからないからな。だからいちおー主武装で見分けるようにしてる。例えばオレならヒートホーク」

 

 アポリーが手斧を取る。うわ、あっつい!? 側にいるこっちにも熱が伝わっちゃう。

 

「なんと今ならヘアアイロンとしても! さあそこにお座り娘さんっ!」

「いや落ちるから(首が)! 髪どころのハナシじゃないから!」

「あべッ!?」

 

 私の背後に回り込もうとするアポリーを蹴り飛ばし、今度はロベルトの武装について尋ねた。もうここまで来たら暇つぶしに付き合ってもらおうじゃないの。

 

「オレはマシンガンだ。近づいたところをヒートホークで!」

「結局あなたもヒートホーク使うんかーい」

「あた」

 

 最初に持ってたマシンガンの存在意義はあったのか。すかさず私はロベルトの頭を手の甲で軽く叩いた。

 アレ、何となく楽しいな。このやり取りでツッコミ役に徹している自分の頬が綻んでいることを実感する。何故だろう。不思議そうに見上げてるロベルトを視界に収めつつ、ってなんか可愛いわね!? 手を引き、彼のまるっこい頭を撫でながら私はこの心に湧き立つほんわかとした何かについて思考する。

 そして、その答えは辺りに小うるさい上司が居ないことで浮き彫りになった。

 

「あ、ツッコミ入れても咲夜さんから理不尽なナイフが飛んでこない!」

「そんなまさーー、いやあったな」

「でしょ?! ほんっとーに咲夜さんは理不尽すぎるのよ! 何かあったらプスプス刺してさぁ! あれじゃきっとお嫁さんの貰いてなんかないわ」

「ふーん」

「あ」

 

 そうだそうだ。何か安心感もあると思ったらアポリーもロベルトも普通だからだ。

 

「咲夜さんはバイオレンス過ぎるー!」

「ふーん」

「ロベルトーニゲレー」

「バカダロコイツ」

 

「咲夜さんのパッドチョー!」

「ふーん」

 

 って、気のない返事ね。咲夜さんの問題点を挙げているのにふたつ目辺りから適当な相槌を打たれていることに気づき、私は目の前のロベル、ト、にってアレ?

 さっきまでこっちを見ていたザクの姿は無く、そこにはエプロンを巻いたスカートから伸びる二本の脚があった。アレ、妖精メイドさんに入れ替わったのかーー、

 

「なアっ!?」

 

 ふと顔を確認しようと視線の高さを調整すると、そこには先ほど行かれたはずのお方が優しい笑顔を浮かべながら腕組みをしていた。

 

「アポリーさん、ロベルトさん」

「「はっ!」」

 

 私から一切視線を逸らさず咲夜さんが名を呼ぶ。その刹那にはふたりは敬礼しており、見るからに仕事してましたオーラを発していた。

 

「この面白いことをほざく物体はち ゃ あ ん と、仕事しテおリまシたカシラ?」

 

 ヒイィっ!? 咲夜さんから言い知れぬ殺意が暴威となって辺りを覆い、すぐさま私は彼らと同じ形をとった。ふ、ふふフフンっ、甘いわね。私は拳法は少々自慢なの。それしかないの! 悪い!?

 敬礼ぐらいかんたんかんたん。右手を額の右前まで掲げ、私は顔から脂汗が滲み出ていることを感じつつアポリー達にウィンクをする。

 

(た す け て ッ☆)

 パチ パチ パチ バチコーンッ☆

 

「「いえ! 勝手に空中に向かって咲夜メイド長の悪口を言い始めましたであります!」」

「    」

 

 目の前が真っ白に染まった。その後何が起きたか分からない。分からないけど、無数の刃がその冷徹な意志に則って私の周りに浮かんでいた気がする。

 

 

 

 

 

「咲夜メイド長。だ、大丈夫だって!(ア」

「あんたみたいなべっぴんならお嫁に行けるって!(ロ」

 

「うぅ、本当ですか?」

 

「マジマジ! このじおんの制服着たらモテモテだぜ?(ロ」

「しかも総帥府(モニクさん)仕様だ! さあコレ着てオレ達を叱ってくれ! あんたは今から特務大尉だぜ!(ア」

 

「あ、かっこいいですね」

 

 

☆★☆★

 

 咲夜に案内され、辿りついたのは洋館の最上階であり、通された場所が館主レミリア・スカーレットの部屋だった。

 しかし、あの場所からムサイを見た時から思ったが、この洋館のなんと赤いこと。外観だけと踏んでいたが内装まで真っ赤なのだ。私も赤い彗星と称された男だが、これには感服するばかりである。

 

「赤い、赤過ぎる! モノアイに痛い!」

「お前が言うな」

 

 テーブルで相対するレミリアにツッコミを入れられた。存外、若いんだよな。うちの中将みたいなの想像していた。

 

「今失礼なこと考えたな?」

「いや、帽子が牛乳ビンのビニールキャップすぎて牛乳飲みたくなってな」

「十分失礼だりょ!」

「だりょ?」

「うるさい黙れ赤いの」

 

 彼女曰く、半世紀以上を生きる吸血鬼だとのこと。紫から妖怪が居ると聞いていたがまさか、吸血鬼も居るとは考えてすらいなかった。

 

「それにしても、外の世界にお前のような生き物が居るなんてね」それは、お互い様なようである。

 

 はじめ顔を合わせた時は鎧を脱げと辛辣に言われたが、自分が如何なる存在かを明言すると彼女はすんなりこちらの言い分を理解した。

 

「信じてくれるとはありがたいな」

「お前も私を疑ってはいまい?」

 

 モノアイからウロコである。レミリアの返事に思わず笑ってしまった。趣味が重なると相手の思惑も読みやすいというのだろうか。

 

「ム、失望したか」

「いや、ぶっちゃけ赤とは良い色だなっとな」

「当然さ」

 

 咲夜の淹れてくれた茶が美味い。テーブルに置かれた自分のティーカップを口づけ、それぞれこの時間を愉しむ。そういえば「用事を思い出しましたので少し外します」と言って消えてしばらく経つが、従者はレミリアの傍に居なくて良いのだろうか。

 そんな事を考えていると、

 

「それで? お前達、じおんとやらが隣人になることのどこにメリットがあるのだ?」紅茶を手に持った受け皿へ下ろしたところでレミリアから話が切り出された。

 まだ、何も言っていないのに用向きを晒されてしまい、思わず茶を吹きそうになる。

 

「きゃっ!? 汚いわnーーな!」

 

「げっほ、うぇっほ! ほ、本当に吸血鬼というのは恐ろしいな。つか口調ムリするなよ?」

 

「うっさい! フン、私の能力をもってお前達が来た理由を覗いたに過ぎないよ」

「このエッチ!」

「は、はぁ!? 何でよ!」

 

 顔を赤くしながら怒るとは年齢は関係なく、見た目通り子どもなようだ。だが当たり前である。運命を操る能力がソレだとこいつは言うが、モビルスーツには逆立ちしても無理な術だ。そんなモンで私の運命を覗き見するなどエッチ以外の何者でもない。

 

「まあ、そうだな。隣に住むの許してくれたら洗濯洗剤二個付けようっ!」

「いらないわよ」

「そんなのアリ○ール!?」

「あー!? 粉洗剤ばさけてるから! ああっ爽やかな香りが部屋に広がるうゥッ!」

 

 そんなバカなことがあり得るというのか。即答でバッサリ切り捨てられてしまい、あまりのショックに私の手は力を失う。辺りを浄化の粉塵が立ち込める中、レミリアがあたふたしていた。

 

「ちょっ! げほっげほっ、おえぇ、口に入っちゃったぁ……。どうするのよコレぇ!? 咲夜が来たら激おこなんだからね!」

「な、マジか!?」

「あったりまえじゃない! は、はは早くなんとかなさいよ!」

 

 徐々に口調が女の子らしくなっていくレミリアの反応を見るに、あの咲夜が怒ったらとんでもないらしいというのは確たることなのだろう。となればさっさと証拠隠滅するわけだが……、

 

「……」

「……」

「……ねえその、正直に謝ったら許してくれるわ?」

「ナゼ疑問系?」だがレミリアの言葉に同意するしかない。小細工を弄したところであの咲夜には見抜かれてしまいそうだし、あの門番の二の舞はごめんである。ここは彼女が来た瞬間にジャンピング土下座しよう。

 

「お待たせしましたお嬢様、少し着替え、を……」

「「ひっ!?」」

 

 噂をすればガンタンク。先ほどとは逆に咲夜は突然そこに現れる。つーか何故、うちの総帥府の制服を着て居るんだ。

 

「そこに直れ、痴れ者共!」

「はいすいません!」

 

「さ、咲夜? そのカッコ……どしたの?」

「直れと言ったのが聞こえなかったか!?」

「ハイごめんなさい!」

 

 これはレミリアの言うこと最もだ。正直怖い。何よりあのいけ好かない小娘の制服を着ているからか、さっきのメイド服よりキツい人間に見える。目の前で腕組みをする咲夜の視線はナイフのように鋭く、気をつけの体勢で席を立った私たちを厳格に見据えている。

 まなじりを吊り上げ、きりりと鋭く凛々しい雰囲気が辺りを覆っていた。そんな中、私は声量を絞り、隣で涙ぐんでいるレミリアに思ったことを述べた。

 

「さすが紅魔館のメイド長と言ったところか。咲夜はいつもこんななのか?」

「ち、違うわよ! 何時もだったらちょこっと怒るだけよ!」

「バカっ、声が大きい」

 

「誰が発言を許可したか!?」

「「はい、ごめんなさい!」」

 

 言わんこっちゃない。咲夜から再び怒号が飛び、私たちは即座に姿勢を正した。それはもう背中が伸びる思いで軽挙妄動を封じる。

 

「返事はサーイエッサーだけだ、それ以外は受け付けない」

「「サーイエッサー!」」

 

「サーイエッサー!」

「「サーイエッサー!」」

 

「サーイエッサー!」

「「サーイエッサー!」」

 

「サーっ、イエッ、ぷふ、サー!」

「「サーイエッサー!」」

 

「サーイe「いい加減にしろ!」がはっ!」

 

 若干、咲夜の頬が緩み、口の端がピクピクしてきたところで自分の中で何かが勢いよく音を立てて切れた。感情に火が灯ると共にブーストし、私は咲夜に飛び蹴りをかました。

 その直後、レミリアがこちらに親指を立てて笑っていたのは言うまでもない。

 

 

 

 

☆ほんの少し先、でもちょっと違う★

 

 いつものを着るよう命じると、咲夜は気恥ずかしそうに能力を使い、あの赤い制服からメイド服に着替えて現れた。ついでに部屋に散らばった粉洗剤も片付けてくれた。流石咲夜である。

 それがあなたの制服なのだから恥ずかしいなら、あんなの着るなと言いたい。が、若干私も着てみたかったりするのは内緒である。

 

「さて、もうこの辺りにしておいてやろう。シャア」

 

 盤上にならぶピースももはや全て地に伏した。その光景を目端に捉え、

「お前チェス弱すぎ」シャアは呆れながらに言う。

 

「うるさいわね! だかた待ってって命令したじゃない!」

 

 そりゃ、紅魔館の主としての威厳に満ち溢れた結果にしたかったわよ。でも、

 

「お嬢様、大丈夫です。まだ五十六連敗ですから元気出してください!」

「出せるかァー!」これはないわ。ないない。

 あ、アレ? 目から熱い何かが溢れてくる。威厳じゃなくて無様な雫が頬を伝ってる……。勝っていれば格好のつく話である。

 

「元気だせ、スカーレットだかた」

「噛んだだけよ! ジャパネッ○たかたみたく言うな!」

 

 それでこの赤はまったく容赦しないし。

 紆余曲折を経て、結局私はシャア及び、じおんが隣に居座ることを許してあげた。れんぽーとやらと敵対関係にあるらしく、そういった部分はあちらはあちらで処理するとのことだ。

 しかし、そうはいかない。能力を使ってみたら、私が成そうとすることにじおんの戦力が加わればソレが達成するようなのだ。ただ、

ーー過程が全く見えないというのは一体どういうことなのだろう。

 

「お嬢様、どうかされましたか?」

「ん、この私としたことが初めてチェスで負けるとは思いもよらなかったのだ」

 

「お嬢様」

 

「慰めはいらないよ。お前は主の顔も“紅く”させたいか?」

「“紅”魔館だけにか?」

「シャアうっさい」

 

「申し訳ありません、お嬢様」

「ムぅ、何か可笑しいか?」

「いいえ」

 

 まったく、顔が楽しそうなの隠せてないじゃない。シャアもニヤニヤすんな! そのザク? 顔で笑われるのすっごい勘に障るわ。だって、

 

こいつを交えた私の運命に、

 

私が、

 

あの子が、

 

太陽の下で何事も無く普通に笑って遊んでいる結果しか見えないなんて腹立たしいわ。

 

「シャア、勝手に紅魔館にツノつけないでよ」

「チッ、バレたか」

 

「……私たちを、助けてね?」

 

「何か言ったか?」

 

「え? あ、うん。言ったわよ?」

 

 異なる世界の住人なのに、なんだか親近感湧くのよね。

 

 認めたくなんかないけどっ。

 

「ばーか、って」

 

「!?」

「おや、惚れてしまったか? 私も罪なオンナだなぁーうんうん」

 

「バカはオマエだこの五十六連敗!」

「    」

 

「お嬢様、流石に今の自画像はどうかと」

 

「咲夜、それを言うなら自画自賛な」

「    」

 

「主従揃ってバカだろ?」

 

 いろいろ台無しなんですけど……。

 




〜紅魔館・地下〜

シャア
「ここにレミリアの妹が居るのか」

レミリア
「そ、私じゃフラン抑えきれないから」

シャア
「まあ、私達が来たからには問題ない」

咲夜(じおん制服)
「あ、あのお嬢様、少佐? これを着る意味があるのですか?」カオマッカ

シャ&レ
「「あるある、ちょーある」」スッゴイコワカッタモン

フラン
「あ、お姉様! 咲夜! 遊ボウヨッ!」アトダレソコノアカイノ

シャ&レ
「「行け咲夜」」

咲夜
「は、はあ。そこに直れ小娘ェーッ!」

フラン
「は、ハイィッ!」ビクウッ、キヲツケ

シャ&レ
「「ほら」」シャアナニモシテナイ、ウッサイ

咲夜
(うわぁ、ふくざつー)モウオヨメニイケナイ



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フラン、ムサイに住む!

シャア
「フランをムサイに住まわせてみないか?」

咲夜
「え」

フラン
「ムサイってあの変なの?」

レミリア
「ダメだ!」

シャア
「やっぱりか」

咲夜
「それはそうですわ」

レミリア
「フランをあんな“むさい”ところに置けるかー! なんつって」ドヤァ

シャア
「さむっ!」

レミリア
「あれ?」

咲夜
「ドン引きです」

レミリア
「え?」

フラン
「もう金輪際話し掛けないでレミパン」

レミリア
「あれぇ?」



 お姉様が地下に顔を見せたことはどれほど久しぶりだろうか。

 私が力の比べっこで勝った辺りからだから、もうかなり前になる。懐かしいなんて姉妹の間で言うことじゃないのは分かっているけど、この瞳に映るその姿は、焼きつくほどに懐かしく思えた。

 あの後、私達はすぐ地上に上がり、お姉様の部屋へ場所を移したところで、お姉様からあらためてシャアやじおんのことを教えてもらったのだ。

 

「へー。さっきから思ってたけど赤くてかっこいいね! 紅魔館みたい」

 

「お、分かるか?」

 

「うん!」

 

 甲冑を着ているのかな。ツノとか左の肩のトゲトゲがなんかかっこいいしかわいい。シャアを触ってみると、身体は鉄のようにすごく堅い。だけどまんまるのお手々はもちもちしてて触り心地が良かった。

 

「妹様、彼らはこういう顔であり、こういう身体なんだそうです」

 

「おぉー」

 

 咲夜がそう教えてくれて、私は素直にすごいと思った。だってこの世の中にこんな不思議な妖怪ーー、じゃなかった。もびるすーつなんて生き物が居るなんて知らなかったもの。

 

「それで、シャア。フランをムサイに住まわせるなんてどういうことだ。ことと次第によっては容赦しないぞ」

 

 そう言い、お姉様はさっき地下でシャアが発言した内容を指摘する。その表情は敵を見るかのように険しいものだ。しかし同時に疑問が浮かぶ。そう言ってくれるなら何でフランと会ってくれなかったんだろう。何故ずっと私と会ってくれなかったんだろう。姉を眺めていると、胸の奥でぐるぐるともやもやした気持ちが蠢く。

 その時、

「うむ、その前にレミリアーー」お姉様に向けられていたシャアの丸いピンクの目が一瞬だけ私を捉え、再びお姉様へと動く。何故彼がこちらを見たのか分からない。でもなんとなく、まかせておけって言ったような気がする。

 

「何よ?」

 

「地下に置いた理由をちゃんと妹に教えてやれ」

 

 心が跳ねた。ちょっと目を合わせただけなのに彼は私の言いたかったことを代弁してくれたのだ。そしてシャアの手がお姉様の両手を掴み、強制的に私の方へと身体を向ける。

 

「ちょ、何するのよ? まず私の質問に「五十六連pーー」分かったわよ言うわよ!」

 

 意味不明な言葉を言いかけた途端、お姉様は掴まれていた手を振りほどき、渋々といった感じに私に視線を合わせた。そこには私の知る強いお姉様は居なかった。

 

「フラン、あのね。聞いてもらえる?」

 

「う、うん」

 

 叱られることに怯える子供のような弱々しい顔で尋ねるお姉様に、私は喉を鳴らす。気づくと胸は高鳴っていた。もしかしたら、嫌われているかもしれない。

 お姉様はそのことを明かそうというのだろうか。だから私はずっと地上に出られなかったんだ。怖い、……怖いよ。

 でも、お姉様の口から出た言葉は予想もしていなかった内容をだった。

 

「ぶっちゃけて言うと。あなたは正直私より強いの」

 

「うん」

 それは知ってる。

 肩透かしをくらい、その意見に肯定すると発言した本人は勢いよくずっこける。

「えぇ!? 否定してよ!」と両手で上半身を起こしながらお姉様がこんなはずではなかったような顔で私を見る。

 いやー、だいたいはそんなんだったよ?

 

「だって昔っからお姉様なにやっても弱かったんだもん」

 

「そ、そんなことは……あ、あるわね」

 

 お姉様との勝負を思い返し、私は視線の先に両手を広げ、記憶の片隅から指を折って数えていく。

 

「じゃんけんに、キャッチボールにトランプにゴム跳び。お姉様全部弱かったじゃない」

 

「そ、それも理由のうちよ。だから、姉としてあなたを抑える自信がなかったの。力加減の出来ないあなたを地上に置いていたらメイド達が怪我をするわ」

 

「は?」

 

 お姉様からそんな事を聞かされ、私は両手を力いっぱい握った。瞬間、お姉様の部屋の何かが大きな音を立てて爆ぜる。

 

「ぎゃー、私のクローゼットがー!」

 

「何よソレ! 自分の力くらい自分でなんとか出来るもん!」

 

「出来てないじゃない! 現に! 私の部屋で! 今ここで爆発したわ!」

 

 無意識に能力を使ってしまったらしいが、今はそんな心配はどうでも良い。そうなってしまったのもお姉様がふざけた理由を話した為だ。

 納得できず、私はお姉様を罵る。

「お姉様のバカ!」

 

「バカって言った方がバカよ!」

 傍にシャアと咲夜が居ることを意識せず、私達はひたすら互いを罵りあう。

 

「おいそろそろーー」

 

「「シャアは黙ってて!」」

 

 いくら私の気持ちを分かってくれたとはいえ、今水を差されるわけにはいかない。止めに入ったシャアを振り払い、私はふつふつと滾る熱に乗った。

 

「お姉様の悪魔!」

 

「フランの吸血鬼!」

 

「アホかオマエら!」

「……これはフォローのしようがありませんわ」

 

 

☆★☆★

 

 困ったことになった。私の想定通りなら、レミリアがフランに理由を説明する(そこそこ深刻な理由)→フラン納得→姉妹わかりあう→で私がカッコ良くあの提案の意図を明かすつもりが和解どころか喧嘩になってしまった。

 それも向き合う上でのひとつの形だが、先ほどの爆発がフランの能力ならば悠長に構えているわけにもいかない。最悪の結果になる前に咲夜に手伝ってもらおうか。思い立った私は傍で控えている咲夜を呼ぶ。

 

「咲夜」

 

「は、はい」

 

 私は彼女に三たびあの制服を着て事態を収拾することを提案する。真っ先に思い浮かぶ解決策であり、現段階では必勝の手段である。様になっていたし、受けてくれる姿は想像に難くなかった。

 しかし、その案を聞いた咲夜の表情は曇天に急変する。

「うっ……、またアレですか」

 

「嫌そうにすんな。最初に着たのはオマエだろ」

 

「そ、それはアポリーさん達がモテモテになるって」

 

 なるほどあいつらがそんな事を言ったのか。つーかモテモテって古いな。頬を赤く染めて俯く彼女を励まし、すかさずあの姿で臨むことの意味を説く。

 

「えぇい! 似合っててカッコ良かったんだ。レミリアの為に妹の為にあの服を纏え、勝負する時を逃すな!」

 

「え、あぁ。く、分かりました!」

 

 心が決まれば早いものである。いがみ合うスカーレット姉妹を鋭く見据え、咲夜は空間に姿を消す。そして、

「お待たせしました少佐!」

 メイド服からじおんの制服へと着替えを済ました彼女が再び現れた。これでことは成る。

 

「行け咲夜!」

 

「了解です。すぅ〜、……気を付けえェいっ!」

 

「「っ!?」」

 

 見事である。咲夜の叱咤が飛ぶや、火花を散らして罵りあっていた少女達は即座に姿勢を正した。先ほど彼女があの制服を着て現れた時はアポリーとロベルトを恨んだが、今はあいつらに感謝しなければならない。

 

「これから少佐よりお言葉がある。小娘ども心して聞け!」

 

「さ、ささ咲夜? 私、今「何か言ったか?」ごめんなさい黙ります!」

 

「咲夜、さっきもだけど時々様子が「あぁん?」ご、ごめんなさい!」

 

 けしかけておいてアレだが、すまん。

 叱られ、涙目でビクビクと怯えながら背筋を正す紅魔の姉妹に罪悪感を抱きながら、私は先に申し出た案について改めて口にする。

 

「で、さっきの続kーー「少佐が喋ると言ったァー!」咲夜はいポーズ」

 

「ピースって、何撮っているんですか少佐ァー!?」

 

☆★☆★

 

 恥ずかしい。

 誘導されてまたあの制服を着用し、お嬢様達にご静聴たまわったのだけど、あろうことかノリにノっているところを少佐に写真を撮られてしまった。能力を使って写真機を破壊出来たから良いものの。思わずカワイイポーズで写ろうとした自分を思い返すと歯がゆくて仕方ない。

 

「あ、少佐お帰りなさい」

 

「おーう」

 

「お疲れ様です」

 

「お疲れー」

 

「あぁ、彼女達がお隣の」

 

「うむ。良いとこのお嬢様達だ」

 

 私の恥はともかく、あの後に少佐は妹様を預かる旨についてあらためて説明してくださりました。そして今、私達は件のムサイを案内してもらったのだけど、入ってみると艦内はアポリーさんやロベルトさんと同じザクさんがたくさん居る。

 ザクさんがたくさん……。ザクさんがザクさん。ざくさん。

「ぶふっ!」

「うわ、何いきなり笑っているのよ咲夜!?」

 いけないいけない。自分でもつまらないと思った瞬間、こう……気持ちが昂ぶってしまった。何事かとこちらを振り向く少佐と妹様の視線を浴びながらお嬢様に頭を下げ、私達は最上階のブリッジへと到着する。

 それにしてもお風呂やキッチンはもちろん、ベランダで菜園を行っていたり、紅魔館までとはいかないけど充実していたのは不思議な感覚である。これが宇宙船だとつい先ほど少佐に聞いた時は信じ難かった。

 

「どうだムサイは」

 

「ほ、本当に宇宙に行けるの?」

 

「行ける。行けるが今はなんでか戦艦の調子が悪くてな。動けるようになったら乗せて宇宙を見せてやるよ」

 

 信じ難い。信じ難いけど、宇宙なんて想像もできないから素直に行ってみたい。お嬢様達も私の意見と同じらしく、瞳を輝かせて少佐を見ている。なんだか微笑ましい光景ね。

 

「まぁ、さっきの話だが。フランはこれからな感じはする。自己制御は出来るだろ」

 

「っ、シャアもそう思うよね!?」

 

「な、何を根拠にそんなことが言えるのよ?」

 

 少佐の言葉に姉妹がそれぞれ異なる反応をするも、彼は妹様に微笑むこともなく、お嬢様に不遜な態度を取ることもなく淡々とその心意を答える。

 

「だってな。さっきレミリアと言い合いした時に能力だっけか? そいつで爆発させたろ」

 

「あ……うん」

 

 途端に妹様は表情を曇らせてしまう。そんな彼女の手を取り、少佐は上目遣いに優しい声で想いを綴った。

 

「それでレミリアと言い合いしてた時にお姉様がーって言ってたろ? それで、ああこの娘は出来ないことを野放しにせず、ちゃんと制御したいって思っているとピンときた」

 

「……でも気分がこう、ブワーってなるといつも能力を使ってて。でもでも自分で使いこなしたいの!」

 

「なら、後は人付き合いをやれば良いーー」

 

 少佐が教えて下さったことは私では考え及ぶことのなかった領域だった。

 妹様を成長させる為にムサイへと一時的に居を移すこと、モビルスーツならば妹様の遊び相手に足る者も多く暇を持て余すこともない。それに家族だけではない者たちと暮らすことで妹様にとっても良い体験となるのだと、私達に説明してくれた。

 それも一時的にと前提に明言しているから配慮も欠かしていない。初対面にしてはお人好し過ぎる気もする。何で少佐はそこまでしてくれるのだろう。

 

「オマエらに聞くが、このムサイに来てザク達に会ってどうだった。無礼を働く奴は居たか?」

 

「居なかったわ」

 

「みんな声を掛けてくれたよっ!」

 

 確かにみんな気さくだったし働き者だった。掃除とかもキチンと手を休めず受け答えしていたし、話はじめたら世間話の止まらないウチのメイド達に見習わせたいほどである。

 

「居候なら大歓迎だぞ」

 

「お姉様、私ここで暮らしてみたい! ザク達と遊びたい!」

 

「でも、あいつらがあなたの遊びについてこれるか!」

 

「いいんじゃないか? ぶっ飛ばされるなんてのは日常茶飯事だし」

 

「っ! ど、どんな日常送っているのよあなた達」

 

 しれっと答えた少佐に真剣な雰囲気をぶち壊され、かるくずっこけながらお嬢様がツッコミを入れた。たしかにあんなにも気さくな彼らが吹き飛ばされる姿を想像すると、そのお気持ちは同意できるわ。

 

「じゃー、さっそく遊んでくるね!」

 

「妹様、今は彼らに安寧をあげてください」

 

 

 

☆★☆★

 

 何故彼はこうも世話を焼いてくれるのだろうか。ついさっき知り合ったばかりだというのに。

 

「心配ならレミリアも様子を見に来たらどうだ」

 

「ふうん。ありがたい話ね」

 

 ザク達の反応を鑑みてここの住人に不安はない。能力を行使するまでもなくこいつらはおひとよしだし、私達と仲良くしてくれるだろう。というより、門番を手伝っていたアポリー達が良い見本である。

 

「分かった。フランのことお願いするわ」

 

「え!? お姉様良いの?」

 

 何を聞き返すことがあるか。住みたいと願ったのはあなたじゃない。

 そう思った時、私の口からは自然と笑みがこぼれていた。

 

「フラン。今まで、その……ごめんなさい」

 

「え、お姉様。や、やめてよ。らしくないよ」

 

 自分でもそう思う。でも、心を尽くしてくれているシャアを前にすると、私も姉でなくてはと考えてしまう。本当に不思議な奴ね。

「そんな不安そうにしないの。私は私よ。あなたには何もしてこれなかったけどーー」

 少し泣きそうな顔を見せる妹の頭を撫でながら私はもう片方の手の親指でシャアを指す。

 

「これからはこの私と赤い彗星が、姉として兄としてあなたを導いてみせるから、喜びなさい」

 

「っ。うん!」

 

「おい待て。私にはもう妹が居る」

 

 思わずため息が出る。

 せっかくフランが笑ったというのに水を差さないでほしいものである。というよりもシャアに妹が居たというのは初耳だった。だから私達の扱いが上手なのかもしれない。

 

「でも、ここまで世話焼きが過ぎると流石に兄的な存在を感じてしまうわよ兄さん?」

 

「うん、これからよろしくね。お兄様」

 

「いや話を聞け」

 

 ノリが良いのはスカーレット家の誇るべきところである。私の言葉から心を汲み取るフランに私は嬉しくなる。この気持ちはそれも一因だが、やはり一番の理由はやっと、久しぶりに姉妹で揃って立てたということだろう。

 シャアめ。姉妹が揃ったら無敵だと知らないのかしら。

 

「咲夜、今夜はさっそくフランと泊まるわ」

 

「こちらに」

 

 返事と共に荷物は用意されており、咲夜が私達に鞄を譲渡してくれた。中身を確認すると、パジャマに歯ブラシに石鹸にと装備は充実している。流石は我が従者である。

 

「咲夜良くやったわ」

「良くやったー」

 

「紅魔館のメイドとして当然ですわ」

 

「はぁ。別に世話焼きは否定しないが兄はやめてくれ。アルテイシアに何を言われるか」

 

「あら、兄さんは妹の願いも聞いてくれないそうよ。フラン」

ー 神槍「スピア・ザ・グングニル」ー

 

「おっけー」

ー禁忌「レーヴァティン」ー

 

 真紅の槍を掴む私の目配せを受け、フランは花の咲いたような笑みを浮かべ、その手にS字状に湾曲した黒杖を握る。辺りにピリピリとした妖力の余波が広がる。流石にモビルスーツにも効くのか、シャアはその顔を蒼くして狼狽した。

 

「やめろ! 分かったからその手に出した武器しまえ!」

 

「それで良いのよ。シャア」

 

 まあ、所詮は冗談だしね。彼の慌てようを楽しんだところで私達はそれぞれの得物を霧消する。まったく、あの咲夜をけしかけたお返しなんだから。身の安全に安堵の表情を見せる彼を視界に収めながら、私は嬉しそうに微笑む妹の手を密かに握る。

 

「あ、お姉様」

 

 ぴくりと手を震わせ、驚いた表情で見返す妹に私は途端に焦燥感を抱く。これまでの今日でさすがに馴れ馴れしかっただろうか。でも、

 

「握りっこするの、久しぶりだね。お姉様」

 

「うん」

 慈愛の顔を見せてくれたフランのおかげで私の胸に渦巻いていた不安はすべて払拭された。お父様、お母様。今ほどこの子と姉妹であれたことを嬉しかった日はないわ。




フラン
「えーい!」
ー禁忌「レーヴァティン」ー

ザクII部隊
「GYAAAA!」

シャア
「おー、やってるな」

グフ
「うむ。これなら部下共にとって良い訓練になるだろう」

シャア
「ほー」

グフ
「よし、今日からフランには頑張ってもらおう」

フラン
「じゃー次これね♪」
ー禁忌「フォーオブアカインド」ー

ザクIIその1
「負けるかー!」

ザクIIその2
「オマエらへこたれるなー!」

ザクII部隊
「おー!」

レミリア
「なんか、大丈夫そうね」

咲夜
「そうですね。だからといって参加しないで下さいね」サスガニカワイソウナノデ

レミリア
「し、しないわよー。やーねーさくやったら」セナカニグングニル


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登場、黒い三連星

〜博麗神社・境内〜

???
「おい霊夢!」トンデキタゼ!

霊夢
「何って魔理沙じゃない。おはよ」

魔理沙
「おーおはよっ。っと、それより何だあの隣の!?」

霊夢
「あー、お隣さんよ。ホワイトベースって船らしいわ」

魔理沙
「へー、ってずいぶん普通じゃないか。なんかあったのか?」

霊夢
「ハッ、そりゃ何発も吹き飛ばされれば諦めもつくわよ!?」ナミダブワッ、カタバシバシ

魔理沙
「え、あ、うん。すまん」イタイイタイ



☆オッス、オラ〜じゃないから★

 

 友人から事の仔細を聞いた途端、意識は対象に向いていた。普通の魔法使いこと霧雨魔理沙は箒に跨り、ただ一直線に飛んだ。ーーとは言うものの、目的地は隣であり、接近するのに十秒と経たなかった。

 

「近くで見てもヘンテコだな」

 

 白馬のような角張った風体と、トリコロールの色調はかなり目立っている。速度を落とし、船の周りをはじめはゆっくりと下降しながら回る。

 こんなモンにいったいどんなヤツらが住んでいるというんだ。霊夢からもびるすーつって奴がいると聞いたがピンとこない。曰く傀儡人形のようなナリをしているとかも。

 勝手知ったるこの地に現れた異なる存在に、魔理沙の心は次第に躍っていく。地上へと降り立ち、新たな角度から船を見上げる。そこで目の前の船が船らしき船の姿でないことに彼女は気づく。何故なら水の上を滑る為の船底は湾曲しておらず、また船にとって命である竜骨もない。本で船というものを知る自分の目にはこの船はやはり珍しい。

 もしかして、私の持つ本にはこの類は載っていないんじゃ……よし! ならもう少し調べてみよう。

 次に魔理沙の視線が捉えたのは白馬船の船首部分であった。再び箒に乗り、次の目標地点へ飛行を試みたその時ーー、

 

「ふしんしゃはっけん。どろぼうめ、おちろ」聞き覚えのない声がどこからか聞こえてきた直後、二つの弾頭が魔理沙を目掛けて直撃するのだった。

 

 

 

 

「ひ、ヒイィっ!? 私今日は何も悪いことしてないわよ! ってあっちか……、まぁ魔理沙だし」

 一方、神社であの砲撃の轟音を聞いた巫女が動揺していたのは秘密である。

 

「おーい、霊夢」

 

「あらガンキャノン。入れ違いね」

 

 

 

 

 

☆★☆★

 

 たくっ、何だってんだ。魔理沙だぜ。今私はすっごい機嫌が悪い。何故かって? そりゃ原因は目の前のガンタンクってヤツにある。

 

「ごめんねー」

 

「ヒドいだろ。私はただ新参者に挨拶しにきてやっただけなのに」

 

 あの出来事の後、ガンタンクは私を気絶させておきながら森の中で放置していたんだ。

 

「せめて、お前がこの中へ運べよ! こっちはねずみやカラスに身体突っつかれてたんだぜ!? もうびっくらこきまりさちゃんだぜ」

 

「ごめん魔理沙、言っている意味がわからない」

 

「びっくらこきますたーすぱーく」

「いや言い方変えてってコトじゃないから。むしろすっげぇ意味わかんない」

 

 ノリが良いじゃないか。私のボケに対してタイミングの良いツッコミを入れてくれるのが、気絶していた私を見つけ、ホワイトベースの中へ運んでくれたガンダムである。

 

「まぁでも、確かにヒトん家をジロジロ見たのは悪かった。でも吹き飛ばすことはないだろ!」

「うん、それはホントにごめんね」

「まりさちゃんふきとばしがいがあるね」

 

 そう言って微笑むガンタンクに私は背筋が凍りつくような冷気を感じた。こ、こいつは反省しないのだろうか。ふと恐怖感から傍のガンダムに、小さく絞った声で助け舟を出す。

 

「が、ガンダム」

「ナニ魔理沙?」

「こいつ怖いぜ」

「ウンっ! 慣れて♪」

 

「    」

 

 たすけぶね……、うけいれてくんない。ベストスマイルで私の救援要請は跳ね除けられ、尚且つエールも貰っちゃったので何も言えなくなってしまった。

 

「あ、ところで聞きたいことがあるんだけど」

 

「うふふ、なーにガンダム?」

 

「魔理沙ってオッスオラ〜のヒトなの?」

 

「オモテ出ろやーっ!」

 

「え、何怒ってるの!?」

「うるせー! 誰が七つの玉集めるか!?」

 そいつは禁句である。過去の過ちを封印し、新たにキャラクターを確立している私にはとくに頭にクる発言だった。

 

「見せてやるぜ、こいつが私の! マスターかめはm「いうなばか」

 

「こらたんくウチの中で砲撃すんなー!」

 

 再びキツい一発がお見舞いされる。砲弾が私の背後で炸裂し、激しい衝撃がその場を襲う。意識を一瞬で奪われそうな灼熱の暴風の中、巻き添えを食ったガンダムの姿に心を満たされるのだった。

 

 ふ、ふふ、どうだ、これがたすけぶねをあしらわれたおとめのいじだぜっ。

 

 まりさ、ごめん。

 

 

 

 

☆挨拶だけ、だって迷惑だろbyグフ★

 

 陽が真上に登り、西へ徐々に傾きだした頃、ガンキャノンは霊夢に連れられて人里へ買い物に来ていた。流石に最初は目立っていたが博麗の巫女と挨拶回りを行った為、情報も行き渡り、徐々に騒ぎも治まっていった。ちなみに人里へ来た目的は今日のおやつの材料の調達である。

 

「へー、ホントにレトロな雰囲気だな」

 

「あら、ガンキャノン達が居た世界はもっと進んでたの?」

 

 瓦屋根、木造建築だがトタンや街灯のある風景、味のある町並みは一応オレ達の居た世界にもあったがもはやコロニーに行かなければお目にかかることはない。地球は大きなビルが軒を連ねるばかりである。自分の居た世界について説明すると、途中で霊夢から手で制止される。

 

「待った。頭が痛くなるからもうやめて」

 

「あー、うん」

 

 実はこの幻想郷の宇宙にコロニーがある。なんてとても言えないな。事実もやがて明らかになるだろうと考え、霊夢と砂糖問屋へ急いだ。

 今日はサーターアンダギーでも作ろうかな。プレーンは買い置きで十分だが、味の種類もあった方がガンダム達も喜ぶだろう。とりあえずは黒糖を買い、そのあとに八百屋でニンジンと紫芋をゲットしよう。人通りを行く道中、おやつのバリエーションを考案しながらふと前を向いた瞬間、ある一群に目が行く。そして、向かい側から歩を進めていた集団もモノアイを光らせてこちらを認識した。

 

「れんぽー。此処に居たか」

 

 距離が縮まり、白兵戦の間合いで相手、量産型を引き連れている青いモビルスーツがモノアイを鋭くしてそう言った。ーー途端に同伴していた霊夢が表情を強張らせ、囁くように聞いてきた。

 

「こいつは?」

 

「ああ、じおんのモビルスーツ。このツノ付きがグフ。後ろの連中がザクIIだ」

 

 数は四機、ザクだけなら自分でも何とか捌けるが、今隊長として立っているのは青い巨星、タクラマカン砂漠で交戦した強敵中の強敵である。周りの町人達もこちらの動向に足を止めて眺めている。流石にここでバトルはマズイ。

 場所を移ろうと提案しようとした時、

 

「安心しろ。今回は挨拶だけだ」グフのほうから不戦の意志が上がる。その言葉に偽りが無いことをザク達も両手を挙げて証左とした。

 

「小娘、そう怖い顔をするな。やがてそちらの神社に出向く。それまで力は温存しておけ」

 

「あら、怖じ気づいたのかしら? 今場所を変えてでも構わないわよ?」

 

 グフの威圧感に目の色を変えて霊夢は交戦を提案する。しかし、やはりグフにその気はないらしく、不敵に笑みを浮かべるだけである。

 

「血気旺盛も悪くないがその意気は後日見せてもらおう。行くぞ、我々もお使いの途中だ」

 

 隊長機がそう言い残し、すれ違う形で歩き始めると部下も後に続いていく。事の成り行きに、見守っていた人々から安堵の声が出ている。ああ良かった。なんとか今回は戦いに発展しなかったことを感謝しなければならない。

 しかし、霊夢の表情は穏やかなものでなく、その鋭く細められた目はいまだグフの後ろ姿を捉えて離さないままである。

 

「フン、大人ぶっちゃってさ」

「まあ、愛人も居るし」

 

 それも人間の美人さんである。その点は自分やガンダムも羨ましい限りであることは否定しない。思いのたけを口にするや、霊夢から返ってきたのは呆れだった。

 

「関係ないじゃない……」

「仕方ないじゃんキレイなんだし! こんど会った時に会わせてもらいなって思ったぐらいなんだ!」

 

 彼女こそがオトナの女だろう。とグフの愛人さんについて熱くつづってみるも、霊夢の視線は刺々しさを増すばかりである。そんな時、

 

「あ、お使いの内容忘れた!? 何買うんだっけ!」遠く離れたところからグフの声が響く。結果、隣から腹の底からひねり出したようなため息が出るのであった。

 

「あのさ。本気になってた私ってナニ?」

 

「ナニって霊夢じゃん。それにオレら敵対って言ってもこんなんだから」

 

 浅くもなく深くもない、実際の敵対関係をざっくばらんに説明すると霊夢の顔がしだいに赤みを帯びていく。そして彼女はその頭を抱え込んで悶絶した。

 

「……あーもー!」

「うわびっくりした!?」

 

「恥ずかしい恥ずかしい、恥ずかし〜い!」

 

 ひとりシリアスな雰囲気であったことを後悔しているらしい。オレとしては別に恥じることではないと思ったが、年相応の感情をあらわにする少女の姿にほんの少し罪悪感を抱くのであった。

 

 

 

 

☆爆裂! 吸血鬼な妹★

 

 ある日、紅魔館は変わった。何が変わったかと言えば、外は……お隣さんが出来たこと。中は妖精メイドに入り混じり、じおんのモビルスーツが働くようになったことだ。そして最大の変化がある。それが、

 

「お兄様、おはよー♪」紅魔館の主、レミリア・スカーレットから許可が下り、妹のフランドールがシャアの計らいによってムサイで暮らすようになったことである。

 

「おう、おはよって今まで寝てたのか。もう昼だぞ」

 

「あはは。昨日の枕投げが楽しくて」

 

「淑女は夜更かしない」

 

「あた。ごめんなさいお兄様。ねね、今日はお兄様も遊ぼうよー!」

「うげぇ、オマエは今日も暴れたいのか?」

 

 自分の部屋に入ってくるや何時ものノリである。別に遊び相手を務めるのは苦にならないが、レミリアと違ってフランは身体を使わないと満足しない辺りもう少し治っていかないものか。

 あの時は咲夜が一喝してくれたおかげもあり、レミリアとフランの話し合いはスムーズに事を運ぶことができた。結局は相手を思いやるが為に相手を檻に入れていたワケだが、シャアとしては子供っぽい発想としか言いようがなく。とりあえずはちょっとづつで良いからフランに自由を与え、自分やレミリア達で教えていけばいいと問うたのである。

 フランをここに置いた理由は、紅魔館以外の面子と暮らしていけば一助になると考えたからだ。当初は危ういものがあったが、グフ達と接していくにつれてその表情は次第に柔らかくなっていった。どうもハモンのような母性が特に効力があったようだ。おかげで今ではちょくちょく紅魔館へ帰るまでになり、姉妹の関係も回復しつつあるらしい。逆にレミリア達もちょくちょく様子を見に来ては一緒に遊んでいる。

 

「どうしたの? ボーってしちゃって」

 

「ああ。そういう粘る辺りはやはり姉妹だなって」

 

「もー。お姉様のこと考えてたの? 私が居るのに」

 

 至極最もである。信じられないと言わんばかりに睨まれて、自慢のツノを摘ままれてしまう。

 

「悪い悪い。だから摘まむな折れる折れる」

 

「じゃ、罰として遊んでよ。 ね、ね? キュっとしてドカンとするだけだから」

 

「コロス気か! 分かった今日は後でレミリアも来るだろうからちょっとガマンな」

 

「えー」

「特務大尉を呼ぶぞ」

 

「わ、わわ! 我慢するからそれはやめて!」

 

 あの時以来、私もスカーレット姉妹も赤い軍服仕様の咲夜ーー、通称:特務大尉が恐くて仕方ない存在になってしまった。普段のメイド服なら優しくて何ともないが、あの軍服を着た途端にピリピリとした雰囲気を発せられ、目尻がキリッと持ち上がるのだ。言うことを聞かずにはいられなくなるし。流石メイド長、有能である。

 

(まさか、いつの間にか来てないよな)

 

 背筋をピンと伸ばし、辺りを事細かに注視する。どうやら特務大尉は居ないようだ。安堵していると急に背後からか細い両手が回され、そのまま抱え上げられてしまう。

 今この場にふたりしかいないし、こういうことを積極的にやるのはフランしかいない。

 

「おいコラ、私はぬいぐるみじゃないんだぞ?」

 

「ふーんだ。ピンク色の彗星のくせにー!」

 

 降ろすよう促したが、フランは聞く耳を持たない。私のパーソナルカラーイジりをしながら、抱き締めている腕にめいっぱい力を入れはじめたのだ。

 

「ぐえ!? 締まる締まる!」

 

「たらこ色ー!」

 

「イダダ! やめっ離っ痛い痛い! 力強っ!?」

 

「お兄様ー!」

「いやもう、妹居るってイテぇー!」

 

 もはやコレは兄としてというよりぬいぐるみ扱いである。アルテイシアに見せたくない光景だ。

 

「おお、フランか。こんにちは」

「あら、こんにちはフランちゃん」

 

「あー、お父様お母様こんにちは」

 

「あ、オイ!? 見てないで助けろ! ってドコ行く!?」

 

 そこへ通りかかったグフとハモンが開けっ放しだった入り口から挨拶をしてきたのだが、何故か止まることなくそのまま通り過ぎていこうとする。

 

「ちょっと買い物にな。さっき行ったときに買い物リストを忘れたのだ」

「あなたったらもう。そうだわ、フランちゃんも一緒に行く?」

「えっ? 良いの!?」

「おおっ行け行け! 色んなモン見て勉強しろ」

 

 外へ出るなら日傘を持たせば良い。傍らにあのふたりがいるなら心配もない。何より昇進したばかりの身としてこの扱いはない。離してほしいのも本音だったりする。

 

「う〜」

 

 フランは彼女と胸の中の私を何度も見比べては声を唸らせる。ハモンの誘いを聞き、何を迷うことがあるのだろうか。外へ出られるというのにだ。

 すると、心が決まったのか今の今まで締めつけていた腕の力が緩まり、程よい加減となった。そして、フランは穏やかな声でハモン達に答える。

 

「今日はお兄様と遊ぶからいい。でも誘ってくれてありがとう」

 

「そう。悔しいけど、後はよろしくお願いしますわ中佐」

 

「うむ」

 

 そう言いながらもハモン達は優しい眼差しであった。フランの気持ちは察していたのだろうか。改めて買い物に向かうふたりの背中を見つめながらフランに問うた。

 

「良いのか?」

 

「うん。だってお兄様と約束したし。それに一緒に居たらまたお姉様が来てくれるでしょ? あとコレは特務大尉なんて脅かしたお返し」

 

 そう良い。顎でヒトの頭頂部をグリグリ刺激する。

「ツノ邪魔ー、あむ」

「ムリ言うな口に含むな」

 抱えられている態勢が態勢なだけにフランがどんな顔をしているかは確認できないが、先ほどから彼女の言葉は何とも慈しみが篭った色に変化していた。

 

「今日はトランプでババ抜きでもするか」

 

「あ、じゃあお姉様がババを抜いたらおババ様って呼ぼうよ」

 

「オマエホントはレミリア嫌いだろ」

 

 

 

 

☆初モビルスーツ戦★

 

 ホワイトベースでしばらく居るとガンキャノンがおやつの材料を買って戻ってきた。ついでに隣の神社から珍しく霊夢も遊びに来ているのだ。聞けば、彼を人里へ案内し、同伴するままにホワイトベースに来たという。魔理沙としては関心の薄い霊夢がこうやって来ているのが不思議でならなかった。

 

「お前ホントに霊夢か?」

 

「何よ失礼ね。空飛ぶこそ泥のくせに」

 

「私は借りているだけだぜ!」

 

 こそ泥って言うな。言うに事欠く辺りはやはり博麗霊夢である。彼女らしいところがあるところに魔理沙は少し安堵する。

 

「ふたりともトモダチだったんだ」

 

「んー、友達っていうか腐れ縁か」

「犯罪者と縁なんてないわ」

 

 目線を他所へ向け、鼻で笑いながらコメントする霊夢に流石に勘にクる。ったく、ガンダムとはえらい違いだぜ。ガンキャノンは私と霊夢のぶんもさあたああんだぎとかいうお菓子を作ってくれているし。ガンタンクも……イイコト思いついた。ガンダムの隣に居るガンタンクを視界に収めながら、私はこの無関心な巫女に泡を食わせてやりたくなった。

 

「ガンタンク、こんな失礼な奴は吹っ飛ばしてやろうぜ」

 

「ちょっおま!? ーーハンっ! それを言うならガンタンク、こいつなんかこの間私の箒借りてくぜって言ってソレ使っているのよ!? これこそ吹っ飛ばしてやりましょうよ!」

 

「お、おい!? いやガンタンクこっちだ!」

 

 確かに今使ってる箒は神社から失kーーもとい借りているものだが、今ほじくることではない。途端に私と霊夢の視線がぶつかり、チカチカと火花が散らせる。

 

「んー、ガンタンク」

 

「ガンダム、あなたからも言ってやってよ!」

「な、ずるいぜ霊夢!」

 

 何か考えていたらしく、おもむろに意見を口にしようとしたガンダムを私達は競って味方に抱き込もうとしたが、彼の次の言葉でそれは夢想に終わった。

 

「このコら仲良くしんないからサーターアンダギーふたりでわけようか」

 

「やったー」

 

「ガンキャノンー! 霊夢と魔理沙喧嘩してるから「箒返すぜーごめんなー」

 

「ううん、良いの良いの。新しいの頂いたばかりだからーあげるわよ」

「ありがとー」

 

 

 いけないいけない。ガンキャノンがおやつを作ってくれているのだ。ある意味吹っ飛ばされるよか残酷である。それにしてもガンダムめ、若干お腹を空かせた乙女達に絶食を強いるとか何て策士だ。

 

「ブットバセルトオモッタノニ・・・・・・」

 

「霊夢、何か不吉な声が聞こえなかったか?」

「黙れ黙れば黙るときよ魔理沙」

 

☆★☆★

 

 さあたああんだぎをご馳走になった後、私はホワイトベースを後にした。霊夢は食べた後、そのまま昼寝を始めたのだが、巫女が神社をカラにしていて良いのだろうか。仕方なく私は博麗神社の留守番をすることにした。したのだが。面倒なことが起きた……、

 

「ケホっ、お前らもモビルスーツって奴か?」

 

「おう、我らじおん所属のモビルスーツ、ガイア!」

「オルテガ!」

「マッシュ!」

 

「「「我ら黒い三連星、トリプルドムよ」」」

 

 突然、神社をゴム毬ほどの大きい砲弾が襲ったのだ。箒で打ち返したから“神社”は直撃を免れた。おかげで可憐な乙女の肌がススだらけである。恰幅の良い身体は黒・紫と配色が施されており、大筒をそれぞれ片手に持っていた。アレで撃って来たのだろう。それに同じモビルスーツでもガンダム達と違い、目がひとつなのは驚いた。妖怪以外でも単眼って居るモンなんだな。

 

「おい、何だってあんなモン撃った?」

 

「オマエが木馬から出て来たのを見た」

「つまりはれんぽーの仲間」

「じおんの敵だ!」

 

「単純過ぎるだろ!」

 

 あまりの単純さに私は思わずミニ八卦炉を前に突き出し、そのまま気持ちを魔力として込めてぶっ放した。大木のような極太の光が、相手を圧する奔流となってドム達に走る。外見相応の汚らしい悲鳴が聞こえたが、それも一瞬であった。

 

「じおんなんて案外たわい「よくも弟達を!」ーー!?」

 

 ガイアと名乗ったドムがその手に黄色に発光する棒を振りかぶって肉迫していた。咄嗟にその場を跳び、自分の居た空間が焼き斬られる音を耳にしながら私はガイアのアタマを踏む。

 

「こ、このオレを踏み台にした!?」

 

 そして私は足場を利用し、さらに跳び、ガイアへ振り向きざまにスペカを構えた。箒でかっこ良くチャンバラも悪くないが今は私らしくこいつを倒す!

 

「墜ちろ!」

ー 魔符「スダーダストレヴァリエ」ー

 

 辺りに小さな星を無数に生み出し、機関砲のようにガイア目掛けてぶつけた……。

 

「はぁー、チビるかと思ったぜ」

 

 自分でも乙女らしからぬ発言だが、油断をしていたところへこいつに棒を持って出て来られた時は心臓が飛び出すぐらいに驚いたものだ。星のチリが積もり、盛り土のようにガイアを埋めている。

 

「今の聞いてない、よな」

 

 返事がない、ただの屍のようだ。ホッと胸を撫で下ろし、頬が熱くなっているのを感じながらドムの上に座るのだった。

 

「おぅっ!? お、重い」

 

「って起きてるんじゃないか!? イヤッ恥ずかしいぜ!」

 

「いや、だったらオレから降りろ」

 

「この変態黒紫!」

「ふざけんな白黒!」

 

 

 

 




〜紅魔館・門前〜

美鈴
「嬉しいですよ、じおんに拳法をお使いになる御仁が居たなんて」メイリンキック

旧ザク
「まだまだ若いモンには負けんわい」ヨケータックル

パチュリー
「あのモビルスーツやるわね……」サンポチュリー・ノーレッジ

ギャン
「旧ザクじいさんだな。確か昨日通信講座で八極拳を始めたとか」

美&パ
「通信講座!? 昨日!?」

旧ザク
「照れるわい」ポリポリ


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同盟締結、じおんと紅魔館。そして新兵登場!

キシリア(LIVE中継)
『紅魔館との共同戦線。総帥からも許可は下りた』

ギャン
「ありがとうございますキシリア様」

----

キシリア
『アッザム』

アッザム
「ははっ」

キシリア
『ギャンから紅魔館と図書館を献上すると聞いたが、私は要らぬぞ? レミリア嬢に悪いではないか』

アッザム
「あー、はい」ヤッパリカー

キシリア
『では、宇宙で待っておると彼女らによろしくな』

アッザム
「……どうしよ」ギャンオチコムシ





☆来訪、未来有望な後輩★

〜ホワイトベース〜

 

 その日、久しく会っていなかった顔なじみがホワイトベースの補充兵として来てくれた。れんぽーに所属して日も浅いがオレにとっては自慢の後輩である。

 

「お久し、ぶり、ッス先、輩!」

 

「うん、リッキー久しぶり。元気そうだね」

 

 陸戦型ガンダム、通称リッキー。ソレが彼の名前である。ボールだったのが、いつの間にかモビルスーツに成長を遂げているからビックリだ。しかも姿が自分に少し似た雰囲気を醸し出している。でも微笑ましいことに、何にでも一生懸命なところは相変わらずなようだ。

 

「ハァ、はいッス! 元、気がっ、取り柄、すぅはぁ、ッスから!」

 

「みたいだね。ってかさ、ソレ置いて良いよ?」

 

 ただ、ガショガショと見た目にも耳にも重そうなバックパックばかりに視線がいってしまい。思い切って指摘するも彼は勢いよく顔を横に振る。

 

「い、いえ! 修行ッスりゃ!」

 

 噛んだ。もうダメだコレ。

 

「はいはい置こう置こう」

「あぁ!? 先輩、やめ、あー! 軽い! 背中が軽くなるぅ!」

 

 もう強制的に外すことにした。お隣にも紹介するつもりだが多分、このまま会っても彼女も同じ反応を示すだろう。修行が修行がと駄々をこねる後輩を引っ張り、オレは戦艦を後にした。

 

「ガンキャノンー、隣行くわ」

 

「おー、りょーかい」

 

「わー! 背中が軽いよ、うわあぁん!」

 

 

 

☆★☆★

〜博麗神社・境内〜

 

 神社が襲われたと聞いたのはホワイトベースでお昼寝をした後だった。帰ったところで魔理沙が犯人を縛り上げていてくれたのだけど、それは人里で会った奴らと同じ組織のモビルスーツだった。

 

「魔理沙の尊い犠牲は忘れないわ」

 

「勝手に殺すな」

 

 尋問するとホワイトベースの関わりから魔理沙を襲ったとのことだ。結局は人里でのガンキャノンの言葉を踏まえて、ドムは逃がしたのだが去り際に「また来るわ」と手を振って言われた時は不思議な感覚になった。

 何というか。彼らの戦闘というには私達でいう弾幕ごっこの役割を担っているような感覚だ。

 

「で、モビルスーツとの弾幕ごっこはどうだったのよ」

 

「うーん。弾幕ごっこと言うには微妙だな。でもあのジャイアント・バズって大砲も衝撃はあるが怪我しないし」

 

 それに加えグフ達にしろ、あのドムにしろ親近感が湧くのだ。れんぽーの敵対勢力って言っていてもそこまで剣呑な雰囲気でもないし。うーん、変なの……。

 魔理沙と話し込む中、ひとりで思案しているところへ、件に関わる者の声が私の耳に届いた。

 

「ガンダムじゃないか。あれ、はじめて見る奴も居るな」

 

 先に振り返っていた魔理沙の声に視線を這わせると、ガンダムがもうひとり知らないモビルスーツを連れてうちとホワイトベースを隔てる森から出て来ていた。見た目の雰囲気はガンダムと似ているが、よく見ると違う姿をしている。そう思いながらも私は先ほどのことについて話を切り出す。

 

「いらっしゃい。って言ってもさっきは長居しちゃったわね、ごめん」

 

「ううん。ホントだったら起こしてあげようとしたんだけど、たんくが「ねかせてあげて」って言ったんだ。枕も押入れから出してたし」

 

「え? ああ。そう……」

 

「へー、ガンタンクも良いところあるじゃないか」

 

 途端に胸がきゅうんっと高鳴る。意外だった。起きた時、使った記憶のないタオルケットを掛けてくれていたり、枕を置いてくれていたのをてっきりガンダムだと思ってお礼を言ったのだが、まさか彼だったとは思わなかった。

 だっていつもぶっ飛ばされたりぶっ飛ばされたり、ぶっ飛ばされたりしてるからそんな……。ってアレ、思い返してもロクなことされてないじゃない。

 

「ところでそっちの奴は誰だ? さっきホワイトベースにゃいなかったけど」

 

「そ、そうよ。はじめて見るけどガンダムの弟なの?」

 

 熱くなっていた頬を両手で軽く叩き、ガンダムの隣に居るモビルスーツへ意識を切り替えて問いただす。何やら緊張しているのか、背筋をピンと伸ばして立っている。

 

「このコはオレの後輩で今ホワイトベースに到着したところなんだ。せっかくだから紹介にね」

 

「はじめまして! オレは陸戦型ガンダム、れんぽーに入ってまだまだのひよっこッス! よろしくお願いしまス!」

 

「よろしくな。私は霧雨魔理沙、普通の魔法使いだぜ」

 

「私はこの博麗神社の巫女、博麗霊夢よ。こちらこそよろしくね」

 

 真面目さが全面に現れているわね。嫌いではないが、もう少しくだけていってほしいものである。いや、ガンダム達がくだけすぎているのかもしれない。

 

「ホワイトベースに到着ってことはしばらく居るのか?」

 

「はい。補充兵として配属されたッス!」

 

 あー、このコ真面目ね。魔理沙の質問に敬礼して答える姿が、何というかガンダム達とギャップがあって面白く感じる。笑ったら可哀想だから我慢しているものの、目の前の友人は堪えられなかったらしく、苦笑いを漏らしている。

 

「まったく。堅いな、堅いぜお前」

 

「リッキー、緊張し過ぎだって」

 

「これが自分ッス!」

 

 可愛いなぁ。先輩のフォローにも胸を張って敬礼している姿が可笑しくて仕方ない。すると、魔理沙の眼が怪しく光った。まさか、いや今の彼にはソレが良いかもしれない。

 魔理沙。まだガンダム達にも見せていない、幻想郷のルールを教えてあげて。

 

「幻想郷には弾幕ごっこってルールがある」

 

「「弾幕ごっこ?」」

 

 幻想郷にて起こる交渉をこの弾幕ごっこで決裁すること、ルールとしてはその場で使用するスペルカードの枚数を提示して交互に発動、勝負とすること。それらを私達はガンダムとリッキーに教える。

 

「リッキー、魔理沙と弾幕ごっこしてあげて」

 

「オレっすか!?」

 

「せっかくだからあなた達モビルスーツの戦い方を見ておきたいの」

 

「了解ッス!」

 

「おー、やる気満々だな」

 

 嫌がるかなと思ったが、逆に良い返事が返ってきた為に私はキョトンとするも傍にいたガンダムから彼が修行好きと聞き、ようやくリッキーの性格に納得がいく。

 

 

「あ、ガンダムもやるのよ?」

 

「えぇぇ!? 誰、魔理沙と!?」

 

 こちらは明らかに嫌そうな顔をされた。さすがに勘にくるものがある。リッキーを見習いなさいよまったく……。不満も込め、皮肉たっぷりに私は自分の中で最大級の笑顔を作り、自分を指して言った。

 

「わ た し とっ♪」

「イヤだっ!」

 

「即答された!?」

 

 

 

 

☆作戦会議★

〜紅魔館・客間〜

 

 緊張が走っていた。今、この場には館の住人とじおんの有力者が相対して席に着いていた。紅魔館からは私レミリアはもちろん、頭脳である親友のパチュリー、特m「お嬢様、怒りますよ」傍に佇むメイドの咲夜様の三人だ。

 そしてじおんからはシャアとギャンのふたりが出ている。何故彼らを交えているかというと、これから私がことを起こすために必要であるからだ。それが、幻想郷を私達紅魔の郷とする計画なのだ。

 

「ではシャア、じおんの返答を聞かせてもらおうか?」

 

 吸血鬼が自由に外へ出るには太陽が邪魔だ。ただそれだけ、太陽さえ隠すことが出来ればフランをより自由な環境で勉強させられる。この話は既にパチュリー達へ通してある。あとは彼らの組織が計画に手を貸してくれるかどうかの是非にかかっていた。

 口元のカップを降ろし、シャアが私達に言葉を発する。

 

「じおんとしても、れんぽーを打倒出来れば問題はない。オマエらの計画にも無論賛同しよう。ギャン、キシリアからは?」

 

「キサマ……閣下と呼べ。キシリア様からも許可は下りた。これよりじおんのモビルスーツ、モビルアーマー全ては紅魔館の作戦に惜しみなく協力する姿勢だ。感謝してもらおうか」

 

「ああ、ありがたいよ」

 

 ある運命を覗いた時、シャア達の戦力が加わることでフランを幸せにしてあげられることを知った。それは現にムサイに住まわせたことで妹は自分というものを制御出来るまでに成長を遂げている。あと一押し、あと一押しで彼女に自由をあげられる……。

 ひとつの問題が解消したところで私は目の前の紅茶を口に含む。しかし、その味はまだ味気ないものだった。別に咲夜が悪いわけではない。ただ、

 

「しかし、レミリア殿。太陽の光を遮るなど、れんぽーは黙っていまい。乗り込んでくると考えるべきだぞ」そう、原因はそれだ。

 ギャンが指摘した点はそう看過していいモノではない。最初はそんな連中など取るに足らないと高を括っていたものの。れんぽーにも猛者が多いとシャアやグフに知らされてから、そのことが心に引っかかっている。特にガンタンクはムリだと全員が口を揃えて拒否反応を示している。

 

「あなた達がそこまで言うなんて、ガンタンクってどんな奴なのだ?」

 

 ティーカップを片手にそう尋ねると、モビルスーツ達は揃って口を開く。彼らの口ってどこなのかしら。

 

「「砲律独弾個人事務所、絶対ぶっ飛ばしてやる!」」

 

「何それカッコイイんだけど!?」

「「!?」」

 

 何というか紅い悪魔よりも心がシビれる響きである。同意を得ようと親友と従者を一瞥するも私の感想に驚愕の表情を浮かべていた。

 あ、アレ。かっこ良くないの?

 感性を理解されていない現実を疑問に思っていると、目の前のシャアが咳払いをして意見を出す。

 

「ま、まあガンタンクのことは置いといて、ともかくホワイトベースは脅威だ」

 

「ふうん。舐められたものね」

 

 確か、戦力はたったの三人だ。面白い、ついでにそのガンタンクとやらも味見してやろうではないか。未だ見ぬ挑戦者に興味を示していると、隣のパチュリーから小さく手が挙がる。

 

「報告があるの。良いかしら?」

「報告……? いいわ、教えてもらおう」

 

「幻想郷には博麗神社があるということも忘れてはならないわ。先に戦闘を仕掛けたガイア大尉が見たそうだけど、そのホワイトベース、神社のお隣だそうよ。間違いnーー」

 

 手で制し、パチュリーの声を遮る。私の考えを察してくれたらしく、彼女からそれ以上の発言はなく、ただ私の眼をジイっと見て視線を離さない。口にしなくても理解できるさ。どれだけ友をやっているというのだ。

 つまりは博麗の巫女とホワイトベース隊が揃って私に楯突くということだ。

 

「面白い、止められるというのなら止めてみろ。シャア」

 

「何だ?」

 

「準備が整い次第、宇宙にあがりたい」

 

「了解だ」

 

 ムサイが大気圏外に出るにはまだ時間が掛かるらしいが、必ずじおんの要塞ア・バオア・クーに渡り、宇宙からこの地上に紅い霧を発生させる。これならば地上で行うよりも邪魔者達に対して長期戦を強いることができる。それに一度、宇宙というものを経験しておきたいし、皆にも味わせてあげたい欲もある。

 

「お嬢様……」

 

 心配そうにしている咲夜を手で制し、おかわりを要求すると、彼女は直ぐにポットを持ってカップへと紅茶を注ぐ。紅みがかった琥珀色の液体がアーチを描き、白い吐息をと共に私の前に現れた。それに口を付けた瞬間、ようやく至福のひと時を得た気がする。

 私はこれを渇望していた。ふと下ろした視線の先、器の中の水面にフランの笑顔を映し込む。

 

「もう、仕方ないわ。咲夜、諦めましょう」

 

 親友のため息の混じった一言を耳にし、辺りを見回すと咲夜もパチュリーも吹っ切った表情で私を見ていた。ふたりならではの思うところがあるのだろう。でも心配は要らないわ。運命は私が握っているんだから。言い知れない期待が胸の奥底で、紅茶の湯気のように湧き上がっている。大丈夫、大丈夫よ、絶対。

 

「シャア」

 

「何だ?」

 

「私達を助けてね?」

 

「当たり前田のクラッカー」

 

 そんなちっとも面白くないシャレを言い、シャアは赤く凸の突起物がついた球を差し出してきた。持てというのか。何となく受け取った私はそこで、笑い声をあげてしまった。こんな時に下らないことをしている。そう思った瞬間、憂いのなくなったこの状況が可笑しくて仕方がない。

 私は再びお茶を口にする。安心感が調味料となっているのか、今のお茶がやはり美味しく感じる。

 片方の手で持っていた球に添えていた人差し指を少しズラし、複数あるうちのひとつの凸の上に乗せた。ふとポチりと小さくノックしてしまった直後、

 

「あ」シャアから意味深な声があがる。

 

「なあにシャア」

 

「そのクラッカーな。今オマエが抑えた指が起爆スイッチだから」

 

「え? ちょぇうえっ!?」

 

「シャア、ギャン逃げるわよ。咲夜!」

 

「了解です。お嬢様、ご無事で」

 

「では一度キシリア様に報告するか」

 

 

「コラぁー!? お前達逃げるなー! あ」

 

 意識などしていなかった。叫んだと同時に手からクラッカーを滑らせてしまう。テーブルに赤い球体が硬質特有の音を立てて転がって破裂する。直後目の前が真っ白に発光し、私の意識はそこで途絶えてしまった。

 

 

☆★☆★

 

 小規模の爆発音と悲鳴を聴きながら紅魔館の客間を退室し、私は直ちに館外へ出た。門で職務を遂行している小娘とザクIIに声をかけ、ただひたすらにその場から距離を開ける。そして、あるモビルアーマーの前までやって来たところで私は後ろを振り返った。

 

「大丈夫だろう。ここの連中は詰めの甘い小娘ばかりだ」

 

 趣味全開の建築物は手のひらにすっぽり収まるまで遠く、こちらを視認することは不可能である。背後に立つ部下へと向き直り、今回の話し合いの顛末を述べた。

 

「ーーと、レミリアをはじめ館の者達は完全に我々に信頼を寄せているものと見て間違いはないだろう。アッザム」

 

「じゃあこれからどうする?」

 

「ただの友人を装っておればよい。機会が訪れれば奪取することも容易だ」

 

 シャア達はあの連中と親しげにしており、何やらその付き合いもおおいにしていこうとしているが私にはあんな小娘のことなど、はっきり言ってどうでもよかったが、あの紅魔館自体や図書館はなかなか興味深い代物である。

 ここは是非とも、レミリア達を宇宙へ行かせた後で接収したいものだ。そして、

 

「献上品として持ち帰ればキシリア様もたいそうお喜びになるであろう」これこそが私がこの作戦に手を貸す真の目的である。

 館を手土産に持参し、帰還する未来を頭に描くだけで笑いがこみ上げてくる。

 

「キシリア様、いやそんなお褒めにならなくとも〜」

 

(キシリア様、アレに興味無いって言ってたって教えたら傷つくかな……)

 

 そうとなれば、一日でも早く大気圏外突入用ブースターを完成させなくてはならない。敬愛する上司への想いを再確認しながら、私はアッザムと共にムサイへと向かうのだった。

 

 

 

 

☆これが弾幕ごっこ?★

 

 

 博麗神社では多彩な種類の弾が豪雨のように飛び交っていた。霊夢と魔理沙はお札や星形ミサイルと、幻想郷ならではのショットを放ち。それぞれの相手を務める白いモビルスーツ達は幻想郷でおよそ見ることのない得物で、文字通り“ショット”していた。

 

「ひとつ!」

 重い一撃を走らせるビームライフル、

 

「そこッス!」

 速連射によって取り回しの良さを発揮するマシンガンと、

 

 彼らは持ち前の武器を多用していた。

 霊夢と魔理沙はスペルカードを持たないふたりに対し、はじめのうちに自由に戦ってみることを説いた。その上でビームライフルならばこう、バズーカならああして、ハンマーだったらとそれぞれ試しながら練習を行っているのだが、その汎用性の高さはまったくの予想外だったようだ。

 

「あやや、光る弾を放つ銃にお抱えの大筒。あっちは砲身の長い銃や機関銃……。ダメ、アタマ痛くなりそう」

 

「これが基本的なモビルスーツの得物と戦法よ。しっかりメモして後で取材しなさい」

 

 傍でモビルスーツ達の扱う武器を指折り数えている烏天狗こと、射命丸文に対し、私は目の前で繰り広げられている二組の攻防が誇らしく思えた。

 彼女にはガンダム達モビルスーツと幻想郷の住人達の弾幕ごっこを、モビルスーツとは如何なる存在かを知り、新聞で広めてもらえば郷中に知れ渡ることは容易である。

 

 私が姿を晒して堂々と観戦するようにしたのは弾幕ごっこが始まって少し後のこと、そこへ新聞のネタ探しに烏天狗が来たのである。隣の戦艦とこの状況を見て飛び込んできたことは、……言うまでもないわね。

 

「でや!」

 

「ちょ、ちょっと!? ーーああっ!?」

 

 ふいに盾を前に構え、封魔針を蛇行して避け迫撃するガンダムに霊夢は幣でもって薙ぎ払おうとしたのだけど盾の奥から現れた桃色に光る刃によって焼き斬られてしまう。彼女の手に残ったのは根元部分だけの幣、いやもうあれはただの木材である。

 

「ガンダム! あんた何てモノ私に使うのよ!」

 

 その目尻に涙を滲ませ、炭素化した幣の切断面を突きつけて激昂する。まあアレは私でも泣くだろう。

 

「ご、ごめーん、最近使ってなかったからスイッチフルパワーにしてた! 弁償するよ、うちのハタキあげるから!」

 

「ハタキじゃないからコレ?! もう怒ったわよ!」

ー霊符「夢想封印」ー

 

「ホントごめんねー!」

 

 紅白の陰陽玉が頭上から降り注ぎ、そのまま彼を下敷きにした。なんというか、押し潰される寸前で謝罪というのをはじめて見た気がする。ふと隣へ振り向くと文はあの様子を眺め苦笑していた。

 

「紫さん、面白いヒト達ですね。ガンダムさんもそうですけど、あっちもーー」

 

「ええ、そうね」

 

 彼女が促したのは魔理沙と交戦しているリッキーのことである。リッキーはガンダムと違い、最初からガチガチに緊張しており、マシンガンやバズーカも取り出すたびに手を滑らせて地面へと落としている。流石の魔理沙も呆れ、掲げたスペカを下ろし、親切に落とした武器を渡してあげていた。

 

「慌て過ぎだ。何か見てて心配になるぜ?」

 

 そう言い、恭しく礼を述べるリッキーを前にしつつ、魔理沙はこちらへ顔を向けて同意を求めてくる。まあ気づいていても不思議ではないが、とりあえず私と文は魔理沙の意見に賛同する。

 

「何というか、魔理沙さんや霊夢さんの技が綺麗なんで見とれてたッス!」

 

「そ、そうか? なーんだリッキーも分かっているじゃないか!」

 

 ずっごいッス! と全身で驚きを表現し、尊敬の眼差しを向けるリッキーに魔理沙は途端に嬉しそうに頭を掻き、彼の肩を叩きはじめた。単純ねー。

 

「っと、さっさと続きしようぜ! まだお前にとっておきを見せてないんだ」

 

「ホントッスか!? よろしくお願いします!」

 

 リッキーの言葉をきっかけに弾幕ごっこは再開され、魔理沙から箒の一振りが袈裟に繰り出された。距離を開ける為だろう。もちろん、リッキーも新兵だというらしいが流石に状況判断は素早い。ガンダムの物とは違う、小さな盾を構え難なく防ぐ。魔理沙はリッキーにバルカン砲が無いと思っているのかそのまま近接攻撃を続ける。確かに見るところ、彼の頭にはそれらしき銃口は無い。

 

「あの光る剣も持ってるんだろうがこうもやられては抜けないだろ!」

 

「使わずとも大丈夫ッス!」

 

 装填される独特の金属音が鳴る。その直後、彼の胸部から速射が魔理沙を目掛けて走った。

「え」油断大敵である。想定外の事態に咄嗟の行動を起こすことが出来ず、彼女は成されるがままにリッキーの銃弾の餌食となる。

 

「いだだだだ! 痛い痛い痛い痛い!」

 

「今ッス!」

 

 胸部の射撃を続けながら、これまでのものと形状の異なる銃器を手に添えて魔理沙へ向けて引き金を引く。

 

「……リッキーさん容赦ないですね」

「あの性格だから一生懸命さは伝わるわ」

 

「痛ちょ!? 痛いうわっ! 網ぃ?!」

 

「ネットガンッス! 銃身が焼けつくまで撃つッス!」

 

「痛い、!? ま、待って! 痛い! いい加減にしろ!」

ー恋符「マスタースパーク」ー

 

 なんだかんだ言っているうちに勝負は決まる。帽子を盾に着弾の衝撃を和らげミニ八卦炉を手にした。直後、魔力の砲が鮮やかに美しく境内で弾ける。

 光の奔流が走った石畳には薄汚れた姿のモビルスーツが伏していた。少し間を置けど立ち上がる様子もない。彼へ駆け寄り、涙目で拳を天に掲げる魔理沙のそぶりから、勝ったのは彼女のようだった。

 

「一応メモはしましたし、取材はあらためて明日行います」

 

「そうね。それが良いと思うわ」

 

 なんとなく、新聞に載ると聞いて良い意味で騒ぐ彼らの姿が目に浮かぶ。

離れた場所からガンダムとリッキーの姿を写真に収め、翼をはためかせて飛び立つ文をながし目に私は再び四人へ視線を送るのだった。何となしに彼らには踏ん張ってもらいたかった気持ちも少しあったが、今は内緒である。

 

 

 




魔理沙
「ほんっとーに、怖かったんだからなっ!」プンスカ

リッキー
「すいませんでした。オレに出来る範囲でお詫びするッス!」フカブカー

魔理沙
「!? よーし、ならお前の武器全部くれ」

リッキー
「えぇ!? それだけで良いんスか!」ハイ

魔理沙
「ちょ、マジか!?」ジョウダンダゼ

霊夢
「充分大盤振る舞いじゃない」ガンダムニヒザマクラチュウ

ガンダム
「まー、補給入るし。ワンセットなら」カオマッカ

霊夢
「……ホイホイ貸さないでよ?」アブナイシ

ガンダム
「とりま魔理沙には貸さない」ロクナコトニナンナイシ


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オレ達人気者!?


「はい、という訳で突如幻想郷に住むことになったホワイトベースの皆様にインタビューを行います!」

ガンダム
「うわびっくりした!?」


「私は文々。新聞の烏天狗、射命丸文です。よろしくお願いします!」

ガンダム
「へー新聞かぁー」ピシャッ


「ちょっ、閉めないで!」

ガンダム
「ウチ、セールスおとこわりなの! あと朝ごはんまだだから帰って!」


「押し売りじゃありませんし言えてませんよっ!? ていうか本音はそっちですか!」ジドウドアヲシュドウデシメタ!?





☆でまはだめだよ?★

 

「いやー、朝食前とは知らず。すいませんねー。しかもお呼ばれになっちゃって」

 

 結局、文も朝食に誘うことにしたのである。なんだかんだで彼女も幻想郷の先輩だ。ご近所付き合いは良く接して然るべきだろう。取材に関して拒む気持ちもない。

 

 

「ガンダムもこんなの相手しなくていいのよ?」

 

「いやー、あはは……」

 

 傍に居た霊夢がうっとおしそうに言ってきた。何が起きたらこんな顔を出来るというのだ。

 仲悪いのだろうか? すこし心配になりつつもオレは心の壁を張る彼女を宥めた。

 

「まー、食べるぶんは一緒だし」

 

「そうだけどさー「文句あるなら」良いんじゃない? 食べるぶんは一緒だし」

 

「ところで霊夢さんは何でここに?」

 

「? フフンっ。決まってんじゃない。ご飯食べに」

 

「っ! 胸張って言うことじゃないです」

 

 けろっと即答するお隣さんに文が小さくずっこけた。霊夢は文が来る数分前に寝ぼけ眼でホワイトベースを訪ねてきたのだ。

 オレ達が神社へ行くこともあるが、霊夢のほうから顔を出す機会も多かったりする。

 

「もう取材する?」

 

 ブリッジにガンキャノン達が顔を出した。狡いことにオシャレしたのかみんなボディの照りが増している。

 

「あやや、積極的なお方ですね。良い取材対象です」

 

 さてと、と付け加え彼女は佇まいをあらため、オレ達に向き直った。まさにれんぽーのモビルスーツが勢ぞろいしたところである。

 

「まずお名前を伺いましょう。ではあなたから!」

 

 シュバっと擬音が聞こえるほどの動きを見せ、文はマジックをマイク代わりにオレに向けた。何かペースを全部持っていかれそうな勢いである。

 

「オレ達はれんぽーのモビルスーツなんだ。で、オレがガンダム」

 

「ガンキャノンだ。よろー」

 

「ぼく、がんたんく」

 

「つい最近、補充兵として着任したばかりの陸戦型ガンダムっス。よろしくお願いします!」

 

「私が博麗霊「あなたはいらないです」何よ感じ悪いわね」

 

 もちろん、最後の彼のあだ名を付け加えることも忘れない。って、あーこらこら女の子同士で睨まない喧嘩しない。

 仲裁するも、霊夢と意味深な視線を交え続けながら文はオレ達ひとりひとりの名前を手元のメモに残していく。

 

「最近幻想郷に来たとのことですが、理由はあるのですか?」

 

「うーん。それは「ぶっ飛ばしがいのあるやつを探しにきたのっ」ちょ、たんく何言ってんの!? ぜんぜん違うじゃん!」

 

「ほほう!?」

 

 ガンタンクのコメントを耳にするや嬉々とした表情でペン走らせる文に嫌な予感しか湧かない。きっと今のを曲解してより複雑曲解電撃イラ○ラ棒な内容を記事にするはずである。

 

「違うから書かないでよンなこと!」

 

「大丈夫ですって色なんか足しませんからー」

 

「嘘八百九百!?」

 

 ニヤニヤしながら言っても説得力は皆無だった。頭に手を当て、ため息をつく霊夢の姿を眺めたところで不思議と文の人となりーー、もとい烏天狗となりが分かってきた気がする。あらためてモビルスーツが如何なる生き物かを補足し、オレはあらためて本来の事情を明言する。

 

「ホントはね。外の世界でオレ達の存在が忘れられてきたからなんだ」

 

 もちろん紫に連れられてというきっかけも添える事を忘れない。じおんのことも言っておこうかと考えたけど、そのうち彼女もあいつらにも会うだろうから言うのは野暮かもしれない。騒動を起こす可能性もあるがたいそうなことはしないだろう。

 

「では幻想郷のこともそれほど詳しくないんですね」

 

「うん。人里へ行っただけ」

 

「あー。あそこなー霊夢に連れられて行ったけど、すごい視線だったぞ」

 

「ご神体でも連れてた気分だったわ」

 

 ガンキャノン、霊夢の感想にオレと文はそりゃそうだと頷く。といってもふたりの間で意味は少し違う気がする。

 そんな意見も踏まえたところで、オレは今回の取材にある見込みをつけた。もしかしたら今の問題もこれでなんとかなるかもしれない。そのことをガンキャノン共々、彼女に話してみることにした。

 

「さっきのガンタンクの暴言はともかく、文に新聞を書いてくれた内容が良かったら人里のみんなと仲良くなれるきっかけになるかも」

 

「……はえー」

 

「どったの?」

 

 何か変なこと言っちゃったかな。文は目を見開いてオレの言葉を受けた。ガンキャノンとリッキーに顔を向けてもふたりは小首を傾げるばかり。再び文に視線を戻すと、キョトンとした表情から一転して彼女は頬を和らげていた。

 

「ガンダムさんはお優しいですね」

 

「せっかくだし、この郷のヒト達とは友達になりたいなって思うんだ。ね?」

 

「だな」

 

「ともだちひゃくにんつくるー」

 

「ガンタンク先輩、百人以上できるっスよ! もち、オレも色々と修行するっス! うさぎ跳びしながら挨拶するっス!」

 

「リッキー、修行から離れなさいって」

 

 言わずもがな。霊夢も修行狂なリッキーに引いているが、オレ達の意見は概ね一緒である。

 

「みんなはうさぎ跳びは身体に良くないからやんないでね?」

 

「ガンダムさん誰に話しているんですか?」

 

「んー、誰だろ?」

 

 もち、大事な読者達にである。ちょっとしたツッコミを躱し、あたたかい眼差しで文に振り返ったところでふと彼女の履物が視界に入った。靴なのにそこから下駄の歯のようなものが一本伸びて床に立っている。

 ずいぶん履きづらそうな靴だ。

 

「そういえば文の靴って不思議だね。下駄みたいな」

 

「あやや、この一品に気がつきましたかー。これはですね。なんと、巷で有名なガラスの靴なんです!」

 

「へーそっかー」

 

「はい、凄いでしょう?」

 

「うん……。舐めんな」

 

「ごめんなさい。ウソです調子に乗りました」

 

 明らかガラスでもなさそうなモノをよりによって堂々とラブストーリーのアイテムだとか吐かした。ウソにしても下手くそである。

 

「こ、これがあの有名なガラスの靴っスか!? ってことは文さんは十二時にヘボい女の子になるんスね!」

 

「違う違う、つか口悪いなキミ!?」

 

 あーあ。信じちゃってるよ。ガンキャノンにツッコミを入れられている純粋な後輩を視線に収め、苦笑いしながら頬を掻く元凶に、オレと霊夢は文句の孕んだ眼を向けた。

 これはもうアレしても良いような。

 

「文ちゃんうそついちゃめっ」

 

「やっちゃいなさい!」

「霊夢憂さ晴らししない!」

 

 考えるまでもなく。聞き慣れた砲の稼働音が際立って鳴り響く。そしてこちらの被害範囲も考えないまま、裁き(ツッコミ)の火はオレ達も巻き込んで着弾するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

☆★☆★

数日後〜マヨイガ〜

 

 視界に広がる活字に胸がぽかぽかと温まる。彼らを幻想郷に招致して、ずいぶんと日にちが経った。

 立場が立場であるため、彼らが幻想郷に馴染むか気が気でなかったのだが、

「ふふ。あの娘も味わったのね。あの砲撃を」どうやらその心配も杞憂であったらしい。

 モビルスーツとはいかなる種族か、れんぽーとはいかなる括りか、住居のホワイトベースが聖なる白馬だなどと書かれている。最後の誤報は途中から霊夢がごり押ししたのだろう。文の襟元を掴んで凄む姿が眼に浮かぶ。

 そんなこととは関係なく、にっこり顔でポーズをとるガンダム達の写真が私には微笑ましくて仕方がなかった。

 さらに文章を追っていくと、インタビュー記事の中でガンダムもガンキャノンもガンタンクもリッキーも、それぞれ質問に個性的なコメントを返している。そして最後には四人一丸となって「郷の住人と仲良くなりたい」とコメントしてくれている。

 この部分が私の心を大きく揺さぶる。

 郷の賢者としてこれ以上ないくらいの嬉しい言葉だった。それに加え、

『ただお話しているだけでぽかぽかとさせてくれる。春の太陽のような連中ね。恐らく彼らに人間も妖怪もないのよ。ある意味私より浮いているわ。』最後の霊夢が寄せた推薦文は、ガンダム達のひととなりを表す最高の評価である。

 全部閲覧したが新聞の内容は思っていたより普通の構成となっている。この新聞は郷中に行き届く。そうなればガンダム達のことが広範囲で知られるだろう。

 今はただ、少しでも彼らが幻想郷に馴染んでくれることを願うばかりである。

 

「紫様、本当によろしいのですか?」

 

 新聞を読み終え、折りたたんでいるところに私の式神ーー藍が是非を尋ねてくる。彼女の言いたいことは、いろいろとあるだろう。

 

「じおんのみんなも大それたことは出来ないわ。いずれあなたも分かるわよ」

 

「はぁ」

 

 納得しかねると言ったところかその表情は険しいものだった。あと、彼女の胸中で燻る心配事は新しくなった幻想郷のことだ。

 何せ、ガンダム達の世界と融合した為に幻想郷にジャブローや海が含まれているのだ。

 

「紫様がそうお考えなら何も言いません」

 

「せっかくだし。行く?」

 

 海など中々行こうとも考えなかったが、行き来できる距離というのであれば赴くのも一興である。

 私の誘いに藍は今の発言もあるからか、返答に少し渋るも、傍らに寄り添っていた燈の一言で意を決した。

 

「海のお魚見てみたいですっ」

 

「……そうだな。私も見たことないし。紫様、行きましょう」

 

「そうこなくっちゃね」

 

 意見が纏まったところでふたりを連れ添い、私はスキマを開いて海岸へと繋げる。太陽の下で宝石のように輝く砂浜と紺碧の海が広がっていた。

 やはりこの絶景を前にしたらあの言葉が脳裏によぎる。

 

「じぇじぇじぇ!」

「紫様。もう旬は過ぎています」

 

「じぇじぇじぇ!」

「燈、マネしないの」

 

「では、八雲藍による。潮騒のマー○イド、お聞き下さい!」

 

「藍様そこそこじぇじぇじぇじぇじぇー」

 

「来〜て〜よ、って歌いません! 燈も意味が分からないぞ!?」

 

 

 

 

 

 

 

☆予想外★

 

 文々。新聞は普段読んでいるかぎりそれほど面白くない。購読者はたくさん居るとの彼女談だが、信じてもいないどころか興味もなかった。

 けれどそんな関心とは逆に、新聞が配達されるやたった二、三日でガンダム達は人里に名を知らしめてしまったのである。

 

「ガンダムさんこんにちは」

「こんにちはー、良い日差しだねー」

 

「こんにちは、今日はお買い物かい?」

「ううん。町雰囲気を味わいに来たんだ」

 

「お、白い坊や。お茶飲んでいきな!」

「ありがとう霧雨さん」

 

 町ですれ違う人、ひとりひとり挨拶しては軽く話も交わしている姿は頭が下がるばかりである。たまたまお買い物に人里へとやって来たところで私の前を彼が歩いていたのだ。白に青、赤と黄色、その色は否が応でも彼だと分かる。

 

「やあ霊夢」

 

「ん? ああ」

 

 背後から呼びかけられ、振り向くとそこにはこの人里で寺子屋を開いている女性、上白沢慧音が手をひらひらさせて立っている。

 

「こんにちは。何か用?」

 

「はぁ、相変わらずだな。別に用は無いが、博麗の巫女を見かけたのだ。声ぐらいはかけるだろ?」

 

「そうかしら? 私が慧音の立場だったら素通りするわ」

 

 わざわざそんな事で興味を持つなんて奇特なヒトである。ため息をつきたいのはこちらだと雰囲気を放ちつつ私がそう言うと慧音は苦笑して肩を浮かせる。

 

「しかし、彼らは不思議だな」

 

「え?」

 

 慧音がそう言いながら私の後ろを見た。彼ら、一瞬何を言っているのか解することが出来なかったものの、彼女の視線を這わせたところで納得する。

 

「ガンダムだー」

「うわーかっこいい」

 

「おっとっっちょ!? サーベルに触んないで危ないから」

 

 少し離れたところで町の子ども達がガンダムに集っているのだ。

 あーあ、良いようにやられちゃってるわね。

 好奇心のあるがまま声を掛けたり、肩車させられたりともみくちゃにされているガンダムの姿に私は思わず笑ってしまう。

 

「私も新聞を読んでね、昨日ガンタンクとリッキーがこちらに来ていたから声を掛けたんだが、あの記事通りだよ。何というか、至極親しみやすい」

 

「そ」

 

「あのお前がああも絶賛したんだ。納得出来るよ」

 

「う、うるさいわね」

 

 慧音の言葉にあの時の感情が浮上し、いっきに顔が熱くなる。推薦文など感じていたことを率直に書いただけである。絶賛などした覚えなんかない。

 なのに、彼らときたら読み終わるやわざわざ神社までお礼を言いに来た。

 

「あんなに嬉しそうにされちゃたまらないわよ……」

 

「ん? 何か言ったか」

 

「何にもないわ」

 

 思っていたつもりが口に出していたみたいだ。まだまだうら若い乙女だと言うのに……。これは後で晩ご飯ご馳走させてくれなきゃわりに合わないわよ、ガンダム?

 淑女らしからぬ自分を恥じつつ、私は楽しそうに子ども達と接するモビルスーツの姿をしばらく眺めていた。

 

 

 

 

 

 

 




魔理沙
「おいーっす! ってあれ、ガンダム居ないじゃん」

ガンキャノン
「あー、今は人里だわ」

魔理沙
「なんだ人里か。霊夢も居ないし。あれ、ガンタンクとリッキーは?」

ガンキャノン
「リッキーの修行にガンタンクが付き合ってるわ」

魔理沙
「へー」


〜太陽の畑〜

ガンタンク
「しょうかいするね。かざみゆうかちゃん、ぼくの新しいおともだち」キャノンウチマクリ

幽香
「よろしく〜。嵐の〜中で輝いて〜その〜夢を〜諦めないで〜」ヨウリョクハウチマクリ

リッキー
「ギャー!」ニゲマクリ



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紅き曇天、襲撃する青と黒!

ガンダム
「霊夢霊夢ー!」

霊夢
「あによ、うるさいわね。ふ、あぁ。まだ明け方じゃない……」

ガンダム
「真っ赤な霧! 空! 洗濯物! おじゃん!」オソトガー

霊夢
「意味が分からないわよーー、いやあぁぁ!?」センタクモノマッカッカ






 霧が見渡す限りに満ちていた。宙に浮き、遠くを眺めども視界に映る景色は血で染まったように紅で覆われている。本来だったら人里が見えるのだけれど様子を伺うことも困難だった。昨日までの青は嘘だったというのか。

 石畳の上に降り立ち、隣でこちらを見上げている友人に私は幻想郷の状態を報告する。

 

「ダメ。本当だったら妖怪の山まで一望出来るんだけれど、紅くて見れたものじゃないわね」

 

「そっかー」

 

 状況を知ると眼に見える形でがくりと肩を落とすガンダムにつられて、私も気が滅入ってしまう。何せ、昨晩から庭の物干しに出していた巫女装束が霧のせいで紅一色に染まってしまったのだ。それに加えてこの騒動、自分が解決に乗り出さなければいけないという考えが頭をもたげていた。

 

「そういえばガンキャノン達は?」

 

「あー、魔理沙が来てて。服に付いた紅いのに苦戦してる」

 

 自分の家を親指で示してそう言うガンダムに促され、お隣へ視線を送ると白い馬は依然変わらず目立っている。 博麗神社にやってくる参拝客に、ホワイトベースを拝むと御利益が云々を伝えている為、私の服のように紅く染まってしまったのではと心配したがまったくの杞憂であった。

 

「さてと、紫? 居るんでしょ?」

 

 この異常事態だ。出てこないわけはないでしょ。思った通り、私の呼びかけに応じて目の前の空間に切れ目が走り、開くと同時にすかさず管理者が顔を出した。

 

「おはよう、ふたりとも」

 

「おはよー。久しぶりだね」

 

「そうね。元気そうで安心したわ」

 

 ガンダムと顔を合わせるや、普段の胡散臭さはなりを潜め、子どもを見守る母親のように穏やかな表情を見せる。

 不思議な感覚だわ、こいつもこんな顔をするんだ……。

 日頃見受けることのない知人の姿に関心を寄せていると、紫は視線を私に向けた。さてと、と言うや一瞬でその佇まいを厳格なものにあらためる。流石のガンダムも彼女の変わりように眼を見開いていた。

 

「今、幻想郷中は見てのとおり紅い霧で覆われているわ。人里も大混乱よ。そしてこの騒動を起こしているのはここから離れたところにある洋館が元凶らしいの」

 

「あっちって霧の湖がある方向よね?」

 

「ええそうよ。湖の畔に建っているわ。それも、ガンダム。あなた達と敵対しているじおんと手をくんで……ね」

 

「あー、って。ええ!?」

 

 紫から発せられた名に、私はガンダムと互いの顔を見合わせる。グフやザク、ガイアとか名乗ったドムが所属しているという組織が今回の異変の片棒を担いでいる。つまりは否が応でもれんぽーと彼らの競り合いは避けられなくなったということだ。

 そう来るわけね、上等じゃない。心配することはないわ。あんなガンダム達に負け劣らずのほほんとした連中など私が直ぐに懲らしめてやるんだから。

 

「良いわよ、紫。今すぐじおんなんかーーって、あれ?」

 

「紫ー!」

 

 振り向くと、そこに居たはずの話し相手がスキマもまとめて忽然と姿を消していた。ガンダムがあいつの名を叫ぼうとも辺りの空間に切れ目が生じることもない。

 何で? どうして!? 疑問を投げかけても答えは当然出てこない。紫はこんな大事な話の途中で居なくなるようなお巫山戯はしない。

 

「この異変を起こした奴らが原因よ。紫の能力すら阻害するような能力を使ったんだわ、きっとそう」

 

「……」

 

 私がそう言うも、ガンダムは何か思うところがあるのか眼をつぶって腕組みをする。考えに耽っているみたい。その思惑を知りたいといった衝動に駆られるけれど、なんとなく声をかけづらかった。そして、おもむろにガンダムの視線が私の方を向いた。

 

「そうだね。血ヘド吐くまでボコればきっと事情を説明してくれるよ」

 

「……ガンダム。あ、あなた意外に物騒よね」

 

「ちょ、失敬な!? ガンタンクじゃあるまいし」

 

 やだもー、と何の汚れもない澄んだ笑顔を目一杯に浮かべながら否定する彼に、私は背筋に冷たいものを感じてしまう。だって、今のガンダムってば砲撃する際のガンタンクみたいな威圧感があったんだもの。ちょっと泣きそうになったわ。

 

☆★

 

 我ながら謎を残した消え方をしたものだと思う。互いを見合うふたりを尻目に状況の説明において重要な部分を明かすくだりで私は逃げてきた。

 

「で、首尾はどうだ?」

 

「上々、といったところかしら。お久しぶりですわね。少佐ーーううん、今は中佐だったわね」

 

「まあな。今回の共同戦線に伴って友人のガルマが働きかけてくれたのでな」

 

「あら、良好な間柄ですこと」

 

 スキマの向こう側、ムサイのブリッジへと辿り着いたところで私は数日ぶりに赤いモビルスーツと再会した。何故このような異変の中、彼のもとを訪ねたかと言うと答えは明白である。

 

「見事に紅くしてくれたわねー」

 

「やり過ぎたか?」

 

 ブリッジの窓から真っ赤に霞む外の景色をふたりで眺め、シャアが頭を掻きながら反省するけど、私は顔を横に振って今回の異変にかける想いを明かす。

 

「気にしなくて良いわ。今回の異変は最近怠けている巫女の為でもあるの」

 

 あの子ってば今までも修行に意欲を示さないできたのだけれど、お隣にホワイトベースが来てから輪をかけて義務を怠るようになってしまったのだ。これは全くの予想外である。

 私の言葉に、あぁ、と声を漏らしてシャアは最初の時のことを持ち出す。

 

「ホワイトベースの行き着いた先か」

 

「ええ。ガンダム達と知り合ったはじめは彼らから神社へ、巫女がホワイトベースへって交互に行き来してて、これなら成長するだろうって思ったわ。でも最近じゃ朝起きたらまずホワイトベースに行っているのよ? 留守を他人任せの状況も一回あったし。このままじゃ巫女としての立場もぞんざいになるわ」

 

「分かった分かった。ストップな」

 

「え、あ……ごめんなさい」

 

 シャアに手を揺すられ、気づいた時には頬が熱くなっていた。モビルスーツとはいえ、男性の前だというのにはしたないわ。こういうところはガンダムと変わらず宥めるタイミングが上手く感じる。

 気持ちを落ち着かせていると、私を見上げていたシャアの眼が鈍い音を響かせた。

 

「フフ、ガンタンクならともかく。そこいらの小娘に我らじおんが負けることなどありえん。既にグフとガイア達を神社へ遣った」

 

「……そう、期待しているわ。でも簡単にやられないでよ? 霊夢には思い知ってもらわないと」

 

「適当に巫女とガンダム達を弄ってやるさ。幻想郷の連中には悪いがしばらくこの霧は晴らせん。これについては本当に構わんのだな?」

 

「あの子の、幻想郷のためよ」

 

 幻想郷に配慮をしながらもその自信を揺らがせることない彼に私は安堵する。幻想郷はそう脆くもない。だからこそ気にかけすぎて決着が容易くついてしまっては困るのだ。紅魔の思惑など知ったことではないが、この異変を利用しないわけにいかない。

 

「あとガンタンクだけは何とかしてくれ。つーか、ホントに何とかして」

 

「じゃ、武運を祈るわっ」

 

「おいコラmーー」

 

 急いでスキマに潜り込んだから彼の言葉ほぼ聞き取れることはない。それだけに今請われたことは難題なのである。あの子の砲撃だけ何でかスキマが通用しないのよねぇ。だから、シャアの依頼はやってあげたいけど出来ない。

 自分の織りなす力の空間を抜け、ムサイから神社へと戻った私はそこで繰り広げられている戦闘を目撃するのだった。

 

☆襲撃、じおんの四連星★

 

 こんなことが起きるんならさっさと応援を頼めばよかった。何故なら、紫の教えてくれた紅魔館ってところに行こうとした途端、じおんが神社にやってきたからだ。賽銭を入れたのは律儀だけど、もちろんこの状況でこいつらがここに来たのは別に目的があったからだ。

 その目的がーー、

「でえぇぇいっ!」オレ達の足止めだ。

 

「きゃ!? 何よあの刀、ガンダムのとは違う?」

 

「当然だ、ヒートサーベルだからな。お前達にはここで大人しくしていてもらうぞ。賽銭は大量に入れたから安心しろ、お嬢ちゃん!」

 

「ありがとおじさまっ!」

 

「霊夢!」

 

 グフの剣が熱を発して霊夢を襲う。そう、今回襲撃を仕掛けてきたのが青い巨星だ。一眼向けただけであいつは霊夢を標的とし、部下のザクII隊に命じてオレの周囲を封鎖している。

 

「足を止めてる場合か!」

 

「わわっ!?」

 

「タクラマカンでの借りはここで返すぜ、ガンダム!」

 

「うぉ!」

 

 何とか囲みを解き、霊夢と合流したいのにさっきからザクマシンガンとマゼラトップ砲がバララ、ドンドン飛んできて邪魔する。ムカッ腹が立つから先に墜とそうと距離を詰めたら逃げるし。

 

「コラー!」

 

「やべ、逃げるぞ!」

「おう!」

 

「あ、逃げんな! ってか足早っ!?」

 

「おっ、止まったぞ! 撃てー!」

「くたばれフランス国旗色!」

 

「ギャー痛ぇ! くっそ待て!」

 

「逃げまーす!」

「全速前進!」

 

「あんたら真面目にやんなさいよ!」

 

 ついに霊夢から怒られてしまった。とまあ、こんな感じでずっと神社の周りぐるぐる回ってたんだから怒られても仕方ないか。

 

「そうだぞガンダム。そんなザクIIごときに手間取っていたらホワイトベースもどうなるかな」

 

「っ、どういうことだ!」

 

 逃げ続けるザクに対し、ビームジャベリンを投げながら聞くとグフは隣の木々の間にそびえるウチを指した。

 

「簡単な話だ。ガンダムの留守を狙ってあちらに黒い三連星が「夢想封印!」ぎゃあぁぁ!?」

 

「あぁー!? 隊長!」

「あ、おい!? 今h「うっさい黙れ!」

 

 ふと見せた隙にチャンスが来たのだ。オレにモノアイを向けていたグフを霊夢が頭上から大玉をぶつけ、それに気を取られたザク達にオレはビームサーベルを振るった。

 

「霊夢ヒキョー」

「ガンダムひどー」

 

 互いの外道ぶりを指摘しつつ、オレ達は石畳の上に伏す三機を一瞥する。モノアイから光は灯っておらず、警戒しながらこいつらの身体をつっつくも動く気配がなかった。

 

「ふふん、グフもたいしたことないじゃない」

 

「つっても手も足も出てなかったじゃん」

 

「う、うるさいわね……」

 

 封魔針を投げても盾で払われ、いっきに間合いを取られていたのは焦った。霊夢も体術は出来るけど、グフの使う熱剣には避けることしか出来ていなかったのが事実だ。それにところどころ服が斬り裂かれており、軽傷とはいえ見ていて痕が生々しかった。

 

「ま、傷の手当てのついでにホワイトベース行こうか」

 

「え、ついで!?」

 

「大丈夫大丈夫。黒三なんかただの踏み台だもん」

 

「で、でもさー」

 

 グフからああ聞いた時は反射的に驚いちゃったけど、ホワイトベースに一番戦力残っているし、そうそう不安要素でもなかった。霊夢はオレの言葉に得心がいっていないみたい。でもその証拠はスグ目の前に現れることになった。

 

「ほらアレ」

「え?」

 

 視線の先に見えるホワイトベースを指し示すとやがてブリッジから二つの極太ビームが壁を突き破って紅空に走り、一瞬であるが青空が垣間見ることが出来た。続けて大規模な爆発が五つ続けて起こり、かすかに汚い悲鳴が神社まで響いた。

 

「ね?」

「あー、うん」

 

 目の前のグフ達に叩きつけられるように落下したドム三機を前に、霊夢はただただ頬を引きつらせるだけだった。

 

 

 

 

 




魔理沙
「左舷、弾幕薄いぜ。何やってんの!」

キャノン
「いやいや、充分濃かったろ」

タンク
「まだぶっとばしたりない」ブー

幽香
「というワケだから私達に付き合いなさい。リ ッ キ ー く ん?」ジャキッ

リッキー
「エェェェ!?」

魔理沙
「てか幽香居たのかよ?」

幽香
「この状況、花に良くないからねぇ」コマッタワー

魔理沙
「あぁ、なるほどな」

 


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いざ紅魔館へ、え!? 人里が!?

〜人里〜

????
「此処か」

慧音
「む? 何だ君達は? れんぽーのモビルスーツなのか?」

????
「ほう、れんぽーを知るか……。今よりこの人里は我らじおんが占拠する!」

慧音
「何!? (じおん、たしか新聞にはれんぽーの敵とあったな)簡単に行くと思うな!」

ザクII
「先生、社会の窓が開いてる」

慧音
「!? イヤ! って私はズボンなんかグハァ!」

????
「フフフ。ホワイトベース、博麗神社。そしてこの地さえ抑えれば幻想郷など取るに足らん」





〜ホワイトベース・ブリッジ〜

 

 難なくグフ隊を撃破することが出来た後、オレは霊夢にオレ達が今後取る方針を相談しつつ、連中プラス黒い三連星を縛って母艦へと帰宅したのだった。

 

「あイタタ! ちょっと、ガンキャノンもっと優しくしてよ!」

「その痛みが生きてるショーコ。ほいっ」

「ーーぎにゃあぁぁ!?」

 

 グフによって負った傷はたいしたことないんだけどなぁ。でも軽い怪我でも染みる時あるんだよねー。ガンキャノンがピンセットで脱脂綿に染み込ませたイ◯ジンを斬り傷のある肩へと当てがった刹那、ホワイトベースの窓が割れそうなほどの悲鳴が艦内に響き渡った。

 今、霊夢は上着を脱ぎ、サラシで胸元まで締められた姿でガンキャノンに傷の手当てをしてもらっている。本来女の子が肩を露出させてる姿って色気とかあるはずなんだけど、そんなものが無いのが不思議でなりません!

 

「シュッ!」

「うわ危なっ!?」

 

 いきなり赤く長い針がオレを襲った。シールドで受け止め、霊夢を見遣ると涙を滲ませた目は半月のように吊り上がってこっちを睨んでいた。

 

「今失礼なこと考えたでしょ!?」

「してないしてない! 霊夢ってかわいいなーってオモッテタンダヨー」

「ガンダムガンダム、棒読みだから」

「先輩、途中から無表情無感情で言ってまスよね!?」

 

 魔理沙とリッキーに指摘され、さすがに悪気があったことを感じた。再び霊夢に視線を向けるとガンキャノンに再び傷の消毒を受けて悶絶していた。

 

「まだ途中だろ!」

「も、もう無理ぃ〜!」

「我慢しろ!」

 

 放置しておこう。

 

「てか幽香さー」

「何かしら?」

 

「……何事もなく話進めてるな」

「魔理沙さん、アレが先輩っス」

 

 この状況である、太陽の畑が気がかりになったオレは泣き叫ぶ霊夢を見てニヤニヤしているドSにあの場所の状況を伺った。以前、ガンタンクに勧められて行ったことがある。凄い絶景で感動しただけに悪影響が出てないと良いけど。

 

「今のところはね。普通の向日葵とは違う種だから……、でも長くは持たないわよ?」

 

 最後の部分で意味深に微笑む幽香を前にした瞬間、背筋が凍りつくような寒気を感じる。何とかするわよね? いやしなさい。と眼で脅sーーもとい語り掛けているのだ。まー、あんな綺麗な向日葵畑を枯らしてしまうのはもったいなさ過ぎるし。その解決策を今からみんなに聞いて貰うつもりでいる。

 

「ところでそこでお寝んねしているひとつ目どもはどうするのかしら?」

 

「いたぶる」

「たんく名案」

 

「……う、うーん。ガンダムとたーちゃん? せめて捕虜は大事にしましょうよ。ね?」

 

「えー」

「みんなはどっちの味方?」

 

 

 殺気を放ってたはずが幽香は打って変わって不安そうな表情を浮かべる。彼女の言葉に対し、ガンキャノン達に弁護してもらおうと振り向くと、みんな一様に幽香の言に頷いており、手当ての完了した霊夢と魔理沙に至っては顔を青ざめていて頬を引きつらせていた。

 

「やめて! オレ達は善良なモビルスーツだから!」

「だったら彼らに向けているバルカン砲とか止めなさい」

 

 ただでさえややこしい状況だから、たんくとで気絶しているうちに再起不能にしておきたかったんだけど幽香に止められちゃった。まー今はこいつらに構っている時間もないし、さっさと話をしますか。霊夢に目配せをするとオレの意図するところを察してくれたらしく、

「あのね、紫から聞いたんだけどーー」彼女から話をしてくれた。さっき紫から聞いた郷の状況、そしてオレが考えた異変解決に対する案についてである。

 その案というのがまず、オレに霊夢、リッキーと魔理沙で霧の湖へ向かうことだ。

 

「お、オレっスか!? 頑張るっス!」

「へー。フフン。ガンダムも良く分かってるじゃないか〜」

 

 説明するや快諾してくれるふたりに、オレも良い気持ちに包まれる。

「このふたりなんだから断る姿想像出来ないでしょ?」

 安心しているところへ霊夢が苦笑しながら言い聞かせる。はじめこの話を持ちかけた時は別に私達で十分と突っぱねてたものの、じおんの存在がある以上は火力もサポート役も必要になってくるのだ。

 

「やっとドラ◯エらしくなってきた」

「みじんもねぇよ」

 

 たんくにぶっ飛ばされ、衝撃で気絶する間もなく続けざまに名前が挙がっていないコ達から、仔細の説明を求める声が掛けられることになった。それがーー、

 

「そうよ、私達が人選から外れた訳は説明してもらえるのよね?」

「いや、オレは別に構わないんだけどな」

 

 たんくと幽香、ガンキャノンの三人だ。

 特に幽香としては先述の件もある為、直接異変の犯人にお灸を据えたいのだろう。解決ウンヌンよかソッチ!? 微笑む彼女から余裕半分、残りが不機嫌さを感じる。

 ……すっごい怖えぇ!

 

(ちょっと、ガンダム!? 顔真っ青ーー白目向いているわよ!? しっかりしなさいよ!)

 

(あばばばば、レイム。霧の湖へは君が、は!?)

 

 綺麗なお花畑が目の前に広がっていたんだけど、霊夢に揺さぶられたことで目が覚めることが出来た。そうだ、オレはこんなことでリタイアしてる暇なんかないんだ。強く決意を固め、三人と視線を交わしたけれど視界に映る景色が突然ぐるぐる渦を巻き出しのだ。

 アレ、なん、だ、ろ? キ"モ"チ"ワ"る"く"な"ち"ゃ"っ"た"。

 

「実hーーおええ!」

「あぁ!? ゴメン揺すり過ぎちゃった! 魔理沙拭くもの拭くもの!」

「ちょっ、バカ巫女! 私のエプロンで拭くなァー!」

「先輩大丈夫っスか!?」

 

「……ガンキャノン、たーちゃん。こいつらぶっ飛ばすわよ」

「「おっけー」」

 

 友人達の騒がしくも賑やかな声が何処か遠くで聞こえてくるような感覚がおぼろげな心に響き渡る。そんな不思議な雰囲気の余韻を味わっているところを、通常の三倍の衝撃がオレ達を襲った。

 

☆★

 

 激しい目覚ましを受けた後、やっと事の仔細を打ち明けることが出来たんだけど、なかなか一筋縄じゃいかない。ガンキャノンはなるほどなと納得してくれたのに、たんくと幽香がまだ憮然としているのだ。その理由というのがやはり、

 

「この私とたーちゃんを守りに置いて面白いことしにいくなんて、ねぇ?」に尽きるのである。ガンタンクもそーだそーだと相槌を打ち、お出かけ組から漏れたことに不平さをアピールしている。

 

「いやさホントはたんくや幽香にこっちを頼もうとも思ったんだけどさ。あの黒い三連星を瞬殺? した光景見た途端に、ホワイトベースの留守をお願いしたいなーって」

 

 何せじおんは卑劣で顔も中身も最低な連中の集まりだし? お出かけ中にウチにちょっかい出された時なんか想像したら心配で心配で堪らない。

 

(あ、ガンキャノンを選んだのはふたりのサポートね)

(エェェ?)

 

 口元を手で隠し、幽香達に聞こえないように実際の役どころを話した途端、ゴーグルアイを歪ませたガンキャノンが小さく嫌そうな声をあげた。現状でふたりが最強なのは変わらないんだけど、反動でホワイトベースが無残な結果になりそうな予感がするのだ。こういう時ガンキャノンしか頼りにならないし。

 

「わーガンキャノンにお願いしたいなー」

 

 自分でも吐き気を催すぐらいに可愛い子ぶって言うと、ガンキャノンからは、たくっと言いつつも役割の承諾を得ることが出来た。これで心配の種がひとつ消えたことになる。

 

「……ガンキャノンはああだけど、ふたりはどうするんだよ?」

「私からもお願いするわ。じおんの連中ってば二回も神社を襲ったから、癪だけど心配なのよね」

 

 魔理沙、霊夢がオレの意図するところを代弁してふたりに説く。幽香もまだ不服な表情を浮かべていたんだけど、縛ってあるグフ達を一瞥した後、仕方ないと言いたげに小さなため息をついた。

 

「分かったわよ。留守番くらいはやってあげるから、このうっとおしい天気、さっさと晴らしてちょうだい」

「えー」

「たーちゃん、私達は必要とされているんだから。それに応えるのも淑女であり、紳士たりうるのよ」

「うーん、わかった。ガンダムのいうこときくね」

 

「ふたりともありがと」

 

 これで後ろを気にする必要もない。待望の結果を迎え、お出かけ組のみんなを見回すと霊夢達も胸のしこりが取れたようにホッとした笑みを浮かべてオレを見ていた。これで洋館に行ってさっさとこんな天気を終わらせてしまおう。じおんにはまだ手強い敵が残っているだろうけど、この三人とガンキャノン達の留守があれば何とかなるはずだ。不思議とそんな想いがオレの中で湧き上がってくる。

 

「霊夢!」

「準備は完了よ」

 

「魔理沙!」

「ミニ八卦炉の調子も悪くないぜ!」

 

「リッキー!」

「何処までもついていくっス!」

 

「よーし、行くz「助けてください!」?」

 

 その声は聞き覚えのあるものだった。戸を叩きながら必死に助けを求める声だ。それもひとりではない。

 

「人里が、んく、人里がじおんに!」

「お願い、このままじゃ!」

 

 間違いない。艦内に届く、か細くも悲痛な想いを響かせたのは稗田阿求ちゃんと本居小鈴ちゃんの声である。オレはランドセルのノズルに火を灯し、加速してホワイトベースの玄関へと赴いて扉を開けた。そこには服を傷めた彼女達が激しく肩で呼吸している姿がある。頭の中が真っ白だ。けど、くしゃくしゃに顔を歪めてすがるふたりを、オレはこの小さな身体でぐっと受け止めることは出来た。

 

「あれ、オレ今主人公らしいことしてる!?」

 

「ガンダムさん……」

「台無しですよぉ」

 

「う、ごめん」

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 それは突然の連続だった。窓から眺めたところで人里が紅い霧に覆われたいることを知り、店の外に出たところを、あの単眼のモビルスーツが大挙して押し寄せてきたのである。

 根拠はないけれど、直感的に彼らは敵だと思った。

 

「失礼」

「あ、あなた達!? まさかあなた達が空をこんなふうにしたの!?」

「それは上の命令だから、答えるわけにはいかん。やれ」

「よいしょっと」

「そんな、きゃあ!?」

 

 質問を一蹴するや、四人が受付に座っていた私に歩み寄り、あろうことか私の身体をひょいと担ぎだしたのだ。そしてそのまま店内を移動した彼らは玄関から外に出たところで私を下ろしてこう言ったの。

 

「店番はやっておくから、バイバイ」

 

 彼に続き、三人がバイバイと述べて手を振り、突然の連続に思考が追いついていかない私を置いまま、鈴奈庵に入っていくと玄関の扉を閉めてしまったの。み、店番って……。

 

「貸本業やったことあるの!?」

「え、ソコぉ!?」

 

 私の身に起きたありのままを雪の女王様ばりに説明したところでガンダムさんから行きついた着眼点にツッコミを入れられてしまった。

 

「だ、だって日付の書き方とか」

「いやいや、乗っ取られたとこ見ようよ」

「……え?」

「何で可哀想な者を見るような眼をされてるかなぁオレ。でソッチはどうだった?」

 

 めいっぱい納得いかないため息をつき、ガンダムさんが次にことの成り行きを聞いたのは私の傍で出されているお茶を飲む阿求だった。

 

「阿求、何のんびりとお茶飲んでいるの?」

「小鈴ちゃんは黙って」

「もがぶっ」

 

 何て傍若無人なっ! ガンダムさんの意図を汲んだらしい魔理沙さんに口元を塞がれてしまい、発言らしい発言は制限された。ってか、魔理沙さん締めてる首締めてる!

 

「私も概ね小鈴と同じです。突然、ザクさん達が家に押し寄せて、「お宅の管理はしておくから」って言われて抱えられて、気づいた時には外でポツンです。湯呑みぐらい戻したかったです」

 

「あー、だから湯呑み持ってるんだ」

「あー、まふぁふぁぐもふふぁっべっかむふぁおで」

「魔理沙、意味分かんないから放したげて」

「おっけ」

 

 お情けを貰い、私は再び発言の自由を得る。もちろん魔理沙さんを睨むのはやめない。一瞬だけ。それにしても阿求が羨ましい。湯呑みとはいえ、私物を持って来られたんだから。

 ふとその直後、私の中で何かとてつもない感覚が湧き上がる。忘れてはいけないことがあったのに。次第にもやもやしたものが込み上げてくる。

 ーー!? 頭の中で火花が散った。あの後、阿求とで目撃した衝撃的事実が鮮明に写し出された。それは彼女も同様で、気づいた時に私達は互いを見合わせていた。

 

「ガンダムさん!? 慧音さんが、慧音さんがじおんを名乗るモビルスーツに囚われています!」

「青いツノがついたひとつ目の!」

 

 それを伝えた瞬間、辺りが一気に静まり返った。特に人里の事情を知る霊夢さんと魔理沙さんは私達の報告に疑うような視線を向けた。

 

「っ、待て!」

 

 突如発せられた声は艶のある大人の男性だった。この面々でそのような者が居ただろうか。辺りを見回す私と阿求を他所に、ガンダムさん達の視線が部屋の隅に縛られたひとつ目のモビルスーツ達に注がれる。

 

「人里へこのオレを連れて行け! これは聞いていない!」

 

 青いツノのついたモビルスーツはどことなく慧音さんを捕らえたあの者と似ている。まさかーー、

 

「ガンダムさん、彼は!?」

「え、負け犬」

「     」

 

 あ、石になった。

 

 

 




幽香
「……で、どうするの?」

ガンダム
「うーん。まあ信じるよ」

グフ
「恩に着る」

ガンダム
「なら人選練り直しか。幽香とリッキーはグフ連れて阿求達と人里へ行ってー」

阿求
「案内します」

小鈴
「慧音さん、待っててください」

リッキー
「決まれば速攻っス!」

グフ
「ああ、誰の命令か確かめなければ」

幽香
「結局信じるしかない、のねぇ」

ガンダム
「ガンキャノン、リッキーの代わりに一緒に来て」

ガンキャノン
「おー、任されて」

ガンダム
「たんくは黒三とザクどもの監視。起きたら脅して良いから味方にして」

ガンタンク
「えー」

ガンダム
「いっぱいぶっ飛ばして良いから」

ガンタンク
「やったー」

霊夢
「……何か、気絶してるこいつらがかわいそうになってきたわ」

魔理沙
「偶然だな。私もだ(店、大丈夫かな」


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青と青、人里での微妙な邂逅

妹紅
「お前たちは一体何を企んでいる!?」

慧音
「妹紅!?」

ザクIIその1
「お、誰だ?」

妹紅
「慧音!? この、答えなさい!」

ザクIIその1
「答えろって言われてもーー」

ザクIIその2
「なあ?」

妹紅
「良いわ、あんた達なんかすぐ燃やしてやるわ!」ボッ!

慧音
「やめろ妹紅、今はーー」

子供A
「みんなはやく続きやろうよ」

子供B
「よーし今度こそ大富豪になってやる」

妹紅
「え? と、トランプ?」フシュゥッ

慧音
「皆で遊んでたんだ」

妹紅
「……真剣になった私が馬鹿みたいじゃない!」ハズカシイッ!

慧音
「その、すまない」





 ガンダム達と分かれ、現場へと急行した時には人里は人間とじおんのモビルスーツが入り乱れていた様子になっていた。

 案内役だった小娘達の話によれば、やや強引な方法でこの地を掌握したとのことだけれど……、

「はいいらっしゃいいらっしゃーい! 美味しい野菜ー!」

「お豆腐いかがですかー!」

「釣りたての魚ー魚ー」

「鋳物から竹材まで、生活用品を総ぞろい! 道具と言ったら霧雨! はじめての方は着て見て知って! 常連の方なら端から端までずずいっと見て行ってちょーだい! 霧雨道具店にいらっしゃいいらっしゃい!」

 

「これは、何?」軒を並べる店を眺めればそこらじゅう緑色のモビルスーツの姿が在り、愛想良く振る舞っているのよねえ。その上しばらく観察していると、どいつもこいつも人間と仲が良いのだから皆目見当がつかないしつくわけもない。空が紅いことは現段階も同じであるけど。

「ううむ。話を聞いた時は焦ったが、乱暴狼藉を働いていないのなら安心だ」

「私を置き去りにして勝手に納得しないでちょうだい。ホント、八つ当たりするわよ?」

 まったく。

 人となりを鑑みる分に、あの娘達は虚言を報ずるような性分ではないだろう。虚を装っていたのなら※放送禁止用語※すけど。

 許容し難い現実から傍に居る青いモビルスーツへと視線を送る。ちなみに小娘ら及びリッキーは寺子屋に向かわせたところである。

「それで、手伝ってくれるのよね?」

「ああ」

「なら、あいつらに話を通して頂戴。そちらの理由なんて知りたくないし、興味も湧かないから」

「了解した」

 こんな腑抜けた連中のせいで大事な花が被害に遭っていると考えただけで※放送禁止用語※したくなるけど、バカらしくなるわ。

 グフが近くの豆腐屋へと歩み寄る姿を眺め、ため息をついていると、ねじり鉢巻きをしたザクが彼の姿を目に留めるや激しく身体をぐらつかせた。

「な、グフ大尉!?」

「ほう、このオレを知るかよ。ならば答えろ。この人里の攻略を指揮する隊長は誰だ? 青い巨星を差し置くマネをさせる差し金を、答えろ!?」

「ひ、ひぃっ!?」

 ……驚いた。

 縛られていた姿が初見だったため、彼を取るに足らないと思っていたけれど。なかなかどうして、身体から発する闘志は見識以上だ。ピリッと心が痺れる。

「し、しかし。オレはアンタの部下じゃない!」

「……ふ。見上げた漢よ」

 すかさずグフの手がザクを掴み、激しく揺さぶる。上官に位置するらしく、ザクの態度は恭しいものだった。グフの追求の手は甘くなく、情けは微塵もない。辺りを見回すと、先ほどまで揚々と人の替わりを成していたザク共が一様に顔を青くさせて騒ついていた。

 ふうん、やる時はやるのね。

「答えろ! 答えねばヒートロッドで擽る! 電撃込みで!」

「ぎゃあぁぁ!?」

 何のことかさっぱりわからないけれど、そこそこキツいことな気がする。グフに詰め寄られている彼のみならず、周囲からも阿鼻叫喚が響く。ふふふ、良い音色ね、ゾクゾクするわ。

 頭を抱えて悶絶する彼から、あるモビルスーツの名が紡がれるのは間も無くのことだった。

「くらえ!」

「あばばば! し、痺れるぅ!?」

「フハハ、どうだ身体の隅々に電流が流れる感覚は」

「あ"ぁ"ぁ"ー気持ち良い〜」

「血流促進、疲労回復、奇々怪々だ!」

 

「え、何それやりたい」

 最近肩がパキパキなのよね。

☆★

 幽香さん達と別れた後、オレは阿求達のおかげで目標の寺子屋に到着することが出来た。途中、ザクII隊が進軍を妨害してきたのだけど、そこは新キャラのピクシーとで応戦、抵抗が激しいものだったがなんとかなった。

「ーーあれ、さらりと初登場を流された?」

「あー、うん。説明すると長くなるから」

「はじめまして稗田阿求と申します」

「私は本居小鈴、この人里にある貸本屋鈴奈庵の主です」

「あ、申し遅れた。れんぽーのピクシーと申します」

 阿求達の自己紹介を片耳にしながら、オレは目の前の木造家屋を見遣った。学び舎よろしくその玄関は広く、手前には子供達の下駄や靴などが揃えてある。数えてみればその数は二十、先生のみならず子供までもが人質にされていることになる。胸の辺りがくーッと熱くなるのを感じつつ、あらためてオレは突撃を決め、ピクシー達へ声をかける。

「ピクシー、君は白兵戦仕様だ。前方へ、オレは阿求達を守りながら後続する」

「承知仕った」

「リッキーさん、すみません」

「私達は弾幕ごっこは」

 仕方ない。彼女らはスペルカードを持たないのだから。ならばオレ達に出来ることはただ一つーー、

「はい、コレ」

「「 ゑ"っ 」」

 ピクシーとで手渡したモノにふたりから小汚い声があがり、オレ達を疑いのまなこで見た。何か変なことをしただろうか? 疑問を抱きながらもとりあえずオレは彼女らに“使い方”を説明することにした。

「オレからは100mmマシンガンとネットランチャーだ。こう構えてトリガーを引く。あ、こっちがそれぞれのマガジンな」

「吾からはビームダガーを授けよう。質量はこの柄の部分のみ、起動した際の扱いは慎重かつ大胆に行うが吉よ」

 取り扱いを説明し、ふたりに武器を譲渡する。銃、剣と重ねていくにつれて阿求達の顔から血の気が失われていく。

「あれ、重い?」

「女子でも扱いは容易、何を言うか」

「違います! 武器なんて持ったことないんですよこっちは!」

「いきなり過ぎてアタマが爆発しそうですよバカコンビ!」

 ムッとした表情でピクシーが不満そうにすると、女の子二人の叫びがこだました。

「「……あー」」

 すっかり戦闘要員の認識にあったことにオレ達はようやく間違いだったことに気づく。だけれど、こういう時だからこそオレやピクシーがフォローしなくちゃいけないんだ!

「良し行こう!」

「うむ! さあ主らが前方に回れい!」

「ちょっ、話聞いてないですよね!?」

「しかも、私達が前!? って押さないでイヤぁ!」

 文句を言いきられる前に戦場に巻き込む! 今オレ達がするべきことはーー、

「もおっ! ヤケよヤケ! !? ザクさん発見、墜ちて下さい!」

「あ、阿求!? あ、阿求!? えぇぇ!?」

 寺子屋内部に侵入するなり、マシンガンを乱射し、視界に飛び込む緑へ一足飛びにビームダガーで斬りかかる阿求にオレは感動を禁じ得なかった。

「な、何を見ているんですか!? 戦いませんよ!?」

「分かった分かった。じゃ、小鈴ちゃんは後ろに居てよ」

 友人の姿を見てもなお戦わない意志を貫く小鈴を守る為、ピクシーと共に廊下を進み、慧音先生が居るであろう教室へ向かう。でも簡単には行かない。

「れんぽーの新兵か!?」

「しかもガンダム系かよ!」

「人間も一緒か……。構わん、掛かれ!」

 

「阿求、撃て!」

「はい!」

「良い援護だ。吾はただ斬るのみよ!」

「……あ、阿求が遠くに行っちゃった」

 

 心強い味方が居ることもあって人質の発見は容易だった。ザクをあらかた撃退したところへ、寺子屋(ここ)の生徒達が物音を聞きつけて姿を見せた。

「リッキー! ザクさん達いじめちゃダメ!」

 ボロボロなってノされているザクの姿に目を吊り上げるものや、新兵の姿に興味を見せるもの、

「お兄ちゃん誰?」

「ピクシーだ。童子よ、よろしく頼む」

「あれ? 阿求ちゃん、小鈴ちゃん」そして、子供達にとってもっとも馴染みのある少女らの姿に緊張感が解れる様子と様々な表情を見せてくれた。

 しかし、関心なのはザク達も子供の遊び相手になっていたりと相変わらず人間相手には愛想が良いようである。

「阿求、小鈴ひとま「リッキーか!?」ーー先生!」

 それはまったくの予想外の展開だ。阿求達に避難を促したところにオレを呼ぶ先生の声が届いたかと思えば、その主は勢い良く廊下の奥の教室から飛び出してきたのだ。

「良かった! 外はどうなった!? 子供達は!? っ、何故ザクが倒れている!?」

「わわわ、せ、先生落ち着いてほしいっス!?」

 オレ達を見るなり、先生は近くに居たオレの肩を掴み、矢継ぎ早に質問をしながら揺さぶる。……まあ、空があんな状況の段階で冷静でいられるほうがどうかしているな。

「慧音、あなたがこんがらがってどうするの!」

 誰だろうか。慧音先生の後ろから出てきた白く長い髪の少女が先生の肩に手を置いて落ち着くことを促すと、先生もその言葉にようやく冷静さを取り戻した。言葉づかいから鑑みて知り合いなのだろう。

 あとひとつ、オレには疑問があった。理由は不可解だが、二人の手には今の状況にどうしても納得出来ないブツがあるのだ。なんでトランプの手札持ってんの?

「すまない皆」

「えーっと、あなた達は敵なの?」

 

☆★

 何というかホッとした。再会を果たした後、教室へと場所を移した私達は慧音さんから此処に至るまでの事を伺うことにした。

 あの青いモビルスーツは慧音さんを捉えたものの、直ぐに解放したらしい。邪魔をしないのであれば人里に攻撃は行わないと告げて立ち去ったとのことだ。

「ヤツは手を出すこともなくあの子達を残して行ったというわけだ。最初はどうかと思ったが、幸いザク達にも悪意は感じられん」

 慧音さんの意見は確かだ。人里におけるじおんの振る舞いはれんぽーの皆さんと等しく人畜無害だ。彼らもまた共存しようとしている。この郷中に漂う紅霧の原因は定かではないけれど、こんな出会いで無かったらとついぞ願ってしまう。

「うちのお店大丈夫かなぁ」

「ああ、あそこの貸本屋か。ならちゃんと管理してるから大丈夫だって」

「本当ですか?」

「ああ、綺麗な本屋だからな。何せブック○フでバイトしてたヤツらが占拠してるんだぜ」

「え、あーあぁ。何のことか分からないけれど、何ででしょう? 納得出来るのは」

 れんぽーの方々と同じようにあたたかい気持ちになる。つい先ほどお聞きしたのだけれど、私の家もダ○キンとやらで働いていたザクさん達が担当しているらしい。

 教室では慧音さん、妹紅さんに残留部隊の指揮官のザクさん、そしてリッキーさんと私、小鈴が生徒用の長机で相対している。ちなみにピクシーさんはすぐそこの庭で他のザク隊と一緒に生徒達の遊び相手をしていた。

「ほお、缶蹴りか。フル出力で」

「やめて! さっきサッカーで怪我人出ただろ!?」

「子供には当てぬ。貴様らは……殺!」

「ちょ!? やっぱじおん(オレら)を目の敵してるよ!」

「お兄ちゃん達早くやろうよー」

「童子どもも覚悟せい!」

「何で!?」

 およそそこに敵対関係があるように見えない。あ、慧音さんが鬼のような形相で飛び出していった。

「あなたがリッキーね? 私は藤原妹紅、慧音の友人よ」

「陸戦型ガンダムっス。リッキーは先輩がつけてくれたあだ名っス。よろしくお願いするっス」

 庭から悲鳴があがったけれど、私達は視線を逸らすことなく話を進める。今となってようやく妹紅さんとリッキーさんはちゃんと言葉を交わした。はじめ、妹紅さんは顔を合わせた瞬間から、リッキーさんとピクシーさんに対して警戒を強めていた。けれど私のほうからふたりがれんぽーのモビルスーツであることや新聞に載っていたことを明言すると、徐々に穏やかな物腰で接してくれた。まあ、こんな状況なら私も妹紅さんと同じように見ていたかもしれない。一言二言交わして和やかな雰囲気になったところで、私は意見を口にーーあ、慧音さん戻ってきた。

「はぁ、すまない。それで妹紅、彼なんだが「慧音それもう終わった」え、そ、そうk……」

「「「そこまで落ち込(む)みます!?」」」

 どこか心を弾ませた表情を浮かべたものの、すかさず妹紅さんから申し出無用を告げられ、項垂れて肩を落とす慧音さんに対し、私達は思わずツッコミを斉唱させていた。いや良いご友人だから紹介したい喜びは察して余りありますけど気を落としすぎなような……。気まずい空気が流れ、周りを見回すとくだんの妹紅さんは罰が悪そうに人差し指で頬を掻いている。

(どうします?)

(わ、私に聞かないでよ)

「ははは……、い、良いんだ。もう終わった、スン、なら、っぐ」

 ええぇ!? な、泣いてるうぅ!

 肩を震わせつつ、俯いたまましゃくり上げる慧音さんから光るものが落ちていた。衝撃的な現実を受け、一気に罪悪感がこみ上げる。

 そんな時、

「あの〜。慧音先生から妹紅さんの良いところ聞きたいっス」おもむろに丸い手が上に伸び、リッキーさんから意見が飛び出す。それに合わせて慧音さんも赤らんだ顔をあげ、涙ぐみながら、本当かと聞き返すや彼は穏やかに笑顔を浮かべる。

「はい。慧音先生みたいな良い先生のお友達なら良いヒトに間違いないっス」

「そうなんだ! 妹紅は良い奴でな。この間もうちの生徒がーー」

 良かった。リッキーさんの言葉にいつもの強さを取り戻した慧音さんは改めて妹紅さんの長所について語った。一方、当の本人はというと、

「ちょっと、何か恥ずかしいから!? やめてやめてー!」耳まで紅潮させて声を張り上げている。なんというか、異変の最中なのに日常へと溶け込むみんなが心強く思える。自分の在る環境に、ただただ笑うしか出来なかった。

 幽香さん達と合流するのにもう少しかかるかも……。

☆★

〜人里〜

 

 これは予想外である。豆腐屋専用ザクIIからこの地の指揮官が誰であるか炙り出していたところ、あるモビルスーツが立ちはだかった。

 このオレと同じく“青”をその身体に纏い、地上を己が戦場(いくさば)とする白兵戦仕様のモビルスーツ、その名をイフーー、

「ようやく顔出し出来たー!」イフリ、

「もー早く見つけろよなー!」イフリー、

「そんなんだから派生作品でバリエーション少ねーんだよ」

 こいつがイフリート、オレの腐れ縁の敵である。生まれた時からどちらが優れた剣士かを競ったことに始まり、今や同僚である。そんな奴とオレ達は人里の中でもひときわ外れたところに居た。

「落ち着いたらどうかしら? まったく、あんな奴の調子に乗せられるなんてね」

 イフリートを睨みつたままそう言った幽香にすまんと答え、気を引き締めて奴に相対する。聞き出すべきことは決まっているーー。

「答えろイフリート、ここの攻略を指示したのはギャンか!?」

「ふん。そ、そそそそんなわけないですぅ!」

「……」

「……」

 バレバレではないか。

 しかし、ギャンめ。オレが博麗神社の攻め手にいるにも拘らずこんな奴に人里を託すとは!

 この場に居ない上官に対し、苛立ちが募る。

「イフリートとやら、さっさと人里から手を引いてもらえるかしら?」

「妖怪、誰が引くものか! 逆に貴様らを追い出してやるぜ!」

 幽香の提案をショットガンを構えて跳ね除けるイフリートに対し、オレは幽香の前に飛び出しながら、射出したヒートロッドを全面に回転させて発砲された散弾を弾いた。

「お嬢さん、雨は被らなかったか」

「ええ。ありがとうございますわ、おじさま」

「撮った」

「「はっ?」」

 イフリートの一言にオレと幽香は同時に聞き返す。そして何やら聞き捨てのならない音が聞こえたのは気のせいだろうか。シャッターを切ったような人工的な……。そう思っていた矢先、イフリートが持っていたケータイを納めた。

「青い巨星、そうして余裕を見せていられるのも今のうちよ!」

「いったい何をーー」

 言われるや背中を冷たいものが走る。直後オレのケータイが振動して着信を報せた。視線を送り、イフリートの意味深な笑みを受けながらケータイを取り出したオレは恐る恐る画面を進める。そこに映る送信者の名はハモン、文面は何々『あなたこれはどういうことでしょうか』背筋が凍るとはまさにこのことであろう。

 全くの事実無根だが、誤解を招いてしまった以上ハモンに命乞いをしなくてはならない。焦燥から様々な事象が頭の中で浮き沈みし、幽香の声を聞きながらオレは目の前が真っ白になった。

「ちょっ!?  どうしたのよ、グフ!?」

「……ハモン、ごめん」

「グフー!?」

 何やらコンパクトのようなものを眺めた瞬間、あの雄々しい青い色はまっさらな白に染まってしまった。感情表現の豊かな単眼は闇に沈み、呼びかけながら身体を揺さぶってみても動く気配がない。どうやら気を失ったらしい。精神を攻めるとは、賢しいマネをしてくれる。

 グフから手を離し、私はこの身に流れる血潮が熱く滾るのを感じながら、歪みのない視線を青いモビルスーツへ向けた。ヤツもまた、すでに戦士としての表情だった。

「覚悟は出来ているのでしょうから殺すわ」

「ハンっ! 返り討ちにしてやるぜ」

 返答と同時にイフリートは飛び道具を発砲した。嫌いではないわ、こういうわかりやすいのは。

 すかさず日傘でもって着弾を防ぎ、ショットを目前へと撃った。当然直撃するはずもなく回避され、彼は腰の刀を抜いて一足飛びに間合いを詰めてくる。

「オレの本骨頂は接近戦でなぁ!」

「あら、そう。同感ね」

「ーーえ」

 刀の柄を両手で握り、確実に私を斬ろうとするが、それこそ願ってもないことだ。

「存分に痛ぶってアゲルワ!」

「ギャヒイィィ!?」

 イフリートを頭上から叩き伏せ、手を翳したまま私は躊躇いなく妖力を放出した。どうせこの程度で倒れはしないはず。拳を鳴らしながら彼を足で蹴り上げると、

「? あら」真っ黒に焦げたイフリートの単眼は闇の中に入っていた。途端に脱力感を覚えてしまう。

 ……本当であれば殺してしまうつもりでいたのだが、こうも簡単に倒せてしまうとは思ってもいなかった。

 取るに足らなさ過ぎてそんな気も失せるわ。でも、確か彼には聞かなければならないことがあったはず。

「はっ!? イフリートはどこだ!」

「もう終わりましてよ、青い巨星」

 ま、ゆっくりと聞くとしましょう。

 

 

 

 




レミリア
「……」ムッスー

シャア
「女の子がそんなツラすんな。どうしたんだ」

レミリア
「っ! どうしたもこうしたもないわよ! 何話も出番がなかったうえに“こんなところ”に拉致されて不満に思わないと思って!?」

シャア
「まあ紅魔館はパチュリーに任せて、お前もあっち(妹)みたく景色眺めてこい」

レミリア
「ぐぬぬ。ま、まあ良いわ。そこまで言うなら行ってあげようじゃない!」イソイソ

シャア
「楽しそうだなー」

レミリア
「う、うるさい。行ってきま〜す!」

咲夜
「あれが、海なのですね」

シャア
「お前もはじめてか」

咲夜
「はい。しかもまさか、サザ◯さん終焉の地に来られるなんて」ガクブル

シャア
「そこかい!?」ウソダカラアレ


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めざせ! 紅魔館

ガイア
「はっ!?」ガバッ

オルテガ
「ガイア兄ちゃん!?」

マッシュ
「やっと起きた」

ガイア
「悪い夢を見たぜ。ガンタンクに拉致されるなんてーー」

オルテガ
「いやいや。兄ちゃん兄ちゃん」ユビサシ

ガンタンク
「どやぁ」

ガイア
「きゃあああああ!」

オルテガ
「兄ちゃんが衣擦れのような悲鳴を!?」

マッシュ
「お前もあげたぜ」モチ、オレモ






 紅霧がいまだ郷を覆っていた。陽の光が差し込まないから、重装甲が自慢だけどけっこう寒い。

 異変を解決するため、目的地の霧の湖へと向かったオレらを待ち受けていたのは極太のビーム砲だった。霊夢と魔理沙に同行する形でオレとガンダムはGファイターに乗ってホワイトベースを出たんだが、空を飛んで間も無く湖らしきものが小さく森の向こうから現れた。そんな時に遥か彼方から煌めくものがあったんだ。戦艦の主砲と認識したのは、それがこちら目掛けて奔ってきた間際である。ムサイからぶっぱしたんだろう。

 そして、

「もしかしてもしなくても、はぐれたみたいね」

「おーい、ガンダム! 魔理沙ー!」気づいた時には傍に巫女さんしか居ないという事態に陥っていた……。

 

「魔理沙ー! 泥棒使いー! 借りる借りる詐欺ー! 居るなら出てらっしゃい!」

「普段のお前らの関係性がよくわかるよ……」

 霊夢がそんな事を叫んでも、周りからは気配や物音も立たない。こうなったら下手に動くのは避けたほうが良いだろうな。隣で友人を罵倒している霊夢を呼び止め、オレは現状を彼女に再確認する。

「とりあえず、オレ達はまだ森の中に居るんだよな?」

「ん? ええ、そういうことになるわね。避けたと思ったら目の前にあなた達が飛び込んできただけだし」

 ああ、だからおデコが赤いのか。なんでソコさすっているのかと気になっていたがぶちつけたらしい。一応、謝ると「あなた達は頑丈そうだし羨ましいわ」と皮肉られた。

 ……あ、誰か居るわ。

「って、何ビームライフル出してんのよ?! 冗談じゃない!」

「ああ、いや。センサーが誰かを察知してさ」

「え? あ……そ、そうね。妖精、ううん。これは妖怪だわ」

 そう遠くない距離にわずかな気配だ。何故か頬も赤くしている霊夢に目配せをしつつ歩を進める。環境の情報が不明確な今、オレ達はこの存在と真面目に向き合うしかない。木々や地面からむきだしている根を手探りで避けながら進んでいくと、ぼんやりとしていた存在感も形を確かなものになっていった。

 すると、

「何だコレ」

 霧が景色を遮断する中、視界に違和感が飛び込む。不自然にも一部分だけが闇に覆われているのだ。ふと霊夢に視線を移すと、彼女は円形状の闇を見た後、顔に手を当てがった。

「知ってんのか?」

「え、知らない」

「ウソつくな!」

「痛い!?」

 しれっと答えられた為、思わずツッコミを入れてしまった。つーか、あんだけ意味あり気に振る舞っておいて知らないは無いだろ。

「いたた、えーと。声掛けてみてよ。分かるから」

「声? うーんと。おーい、ってこうか「そこに居るのはだあれー?」ゑ!?」

 言われるがままにやってみれば、闇から女の子の声が返ってきた。反射的に隣へ顔を動かせば、そこにはドヤ顔でこちらを見る霊夢が居る。

 うわぁ、何か腹立つ。

「こいつは妖怪よ。闇を操る程度の能力しかないわ」

「へー、って事は……」

「あれー?」

 彼女の言うとおりなら、この真っ暗な中に女の子がいるのだ。そこにある景色だけが切り取られたかのように中を伺うこともできない。

 しかし、どこー? あれー? と言っているところを鑑みるに、妖怪は今だこちらの姿を探っているらしい。その声色から察するに霊夢よりひとまわり小さい子の予想がつく。

「あの子、こっちの事が見えてないのか?」

「もぉ〜、バカでしょう?」

「悪い奴だなお前」

 うわ、黒い笑顔。まるで自分の子どもを賞賛するかのように自慢しているが実質は逆である。

 的確なツッコミなのに霊夢はぶーたれてこちらを睨んだ。

「えーと、この紅い霧と関係あったりするか?」

「ないでしょ」

「えぇぇ」

 さっさと行くわよと付け加え、こちらの意見も聞くことなく霊夢は闇の脇を通ることを促す。まあ、事件と関係ないなら油を売る必要もないしな。流れに乗り、彼女の後に続ーー、

「おおっと、そうは問屋が下ろさんぞ!」

「喰らえ!」

 闇へと近づいた瞬間そこから男の声と共に大型の弾頭が、

「どうだ、大砲持ち!」

「我らじおんが居ることなど思ってもいまい!」

「居たのかー?」明後日の方向に飛び去っていった。

 ……もしかしなくともじおんもこの中に居るようだ。どうしようかなー。無関係と思ってたらがっつり仲間になってるから、女の子に話を聞かなければならない。次の行動の為に、オレは彼らに気取られないよう声量を落として霊夢に聞いた。

「霊夢、霊夢」

「何?」

「めんどーだけど、バトろう」

「ま、手がかりにはなるでしょ」

 言うまでもなかった。

 お札を放つ霊夢に合わせ、オレはビームライフルとキャノン砲の標準を真っ暗闇に固定、砲撃を行った。気持ちいいくらい大きな爆発が起こり、同時に三色の悲鳴も轟く。あ、たんくの気持ち分かるかも。

「……ちょっと、ガンキャノン。ガンタンクじゃないんだから、ツッコミにキャノン(ソレ)だけは使わないでよね? ねぇ!?」

「ボケの度が過ぎない限りなー」

「が、頑張る」

 霊夢がクッと拳を上げる。一応期待しておくか。そんなことより、今は敵対行動を取った彼女らについて詰問しなくてはならない。発生していた闇も晴れたところを鑑みるに直撃は成功したらしい。巫女を伴って闇のあったほうへ進むと、ボロボロのススだらけになった金髪の女の子とザクIIが二機、その場に転がっていた。

 

 

 

 

 さっきの極太レーザーはいったい何だったんだろう。

 空を飛んでいた時、紅い霧の彼方にきらりと光るものがあったから、とっさに太陽かとも思ったが、そいつが魔力による砲撃だと理解できたのは目の前まで迫った時だった。ーーあんな質量の攻撃が出来るなんて、かなりの魔法使い(手練れ)が居るに違いない。

「これが霧の湖かー、大きいね。あ、今は訳ありでプロトタイプガンダムでっす!」

「誰に言っているんだ? それは霧に覆われているからそう見えるんであって実際はたいしたことはないんだ」

「へー」

 叩き落とされたおかげで私達は目的地へと近付けたらしい。

「ガンダム、その紅魔館とやらへ行こうぜ」

「え、でも霊夢とガンキャノン探さないと。プロトタイプだから!」

 プロトタイプ関係ないだろ。

 確かにガンダムの言うことももっともだが、この紅く染まった郷を何とかすることが先決だ。私はその事も含めて彼に心配は要らないと説得した。

「それに、ガンキャノンだってそこそこやるヤツだろ?」

「あー」

「よし、さっさとーー」

「でもどうやってこーまかん探すの?」

「う"っ」

 分かってはいたが、改めて突きつけられると弱いぜ。周囲は未だに濃霧に覆われていて実際私達がどこに居るのかすらも分からなかったりする。

「ん? ねえ魔理魔理。あれって」

 魔理魔理っていうな。妙な呼び方を正しながら、ガンダムが遠くを指した。視線を戻して眺めればそこには、ぼんやりと建物のシルエットが浮かんでいる。距離はそう遠くない。途端に胸が熱く踊った。罠かもしれないが、この状況においてはアレが一番の判断材料なのだ。

 例の砲撃が気がかりだが、信じていくほかないぜ。

「でかした、えーとプロトタイプガンダム!」

「そ、それほどでも」

 可愛いらしく素直に照れるガンダムに思わず笑い声が漏れる。こういうところは霊夢じゃ出ない反応だなぁ。あいつだったら「当然でしょ」ってしれっと言うだろうし。

「ちょっとあんた達、私の縄張りで何やってんのよ!?」

 ーーそう思った矢先でコレだぜ。驚くガンダムの隣で、私は聞き覚えのある声に若干苛立ちながら湖の方を見遣った。

「チルノちゃんやめようよ……」

「何言ってるの大ちゃん! アンタね、白い?奴は!」

「でもチルノちゃん、あのヒト黒いよ?」

「白いところがあるから大丈夫!」

「え、オレ!?」

 威勢の良いのと優しいの。その両方が湖面上でこちらと対峙している。どうやら新聞の力もあって妖精達にもモビルスーツ達の情報は行き渡っているようだ。ガンダムが驚きつつ自分を指すと、氷精はより鋭い視線を向ける。

「聞いているわよ、アンタ達が空をこんな風にしたって!」

 待て待て!

 寝耳に水とはこのことだ。非難され、当の本人は激しく顔を横に振る。その気持ちは私だって同じだった。

「おいおい。お前は何を証拠にガンダムがこんなことしたって言えるんだ?」

「あいつらに聞いたわ!」

 チルノの手が、自身の後方を指差す。嫌な予感がするものの、こいつが指した方向へ視線を送ると、湖面に大きな氷塊がひとつだけぷっかりと浮かんでいた。気づかなかった……。しかし、それをよく見れば黄緑色のモビルスーツらしき姿がふたり、身動き取れずに中に閉じ込められている。

「なあ、ガンダム。あれって」

「え、ああ……うん」

 言わずもがな、ガンダム達の仲間ではなくドム三兄弟と同属だろう。

「あいつらが空をこんな風にしたって言ってたんだから間違いないわ!」

 あまりの単純さにアタマが痛くなる。

「でも、何でザクが凍っているんだ?」抱いた疑問を率直にふたりへ投げかけると、大妖精の方から呆れ気味に返事が来た。

「チルノちゃんが弾幕ごっこ仕掛けたから……」

「「ああー」」

 れんぽーと敵対しているからこいつらを利用したのは良いものの、バカに手を噛まれたということだ。自業自得すぎて同情なんて毛ほども起こらない。

「? だって私最強だから」

 不思議そうに言う。もう通常営業過ぎるぜ。

「魔理沙。あれはバカだ」

「朝までかからずそれ正解」

「……チルノ、さん? オレ達とこの紅い霧はぜんっぜん関係ないから! 悪いのそっちの凍ってる奴らだから! むしろチルノさんは悪い奴ら懲らしめている、エラい!」

 らちが明かないと思ったのだろう。急にチルノの太鼓を持つガンダムの姿が不審極まりない。

 お、おいおい。いくらチルノでもそんなあからさまな言葉に乗るわけがないだろう、これで信じたらバカだぜ。そう思いながらチルノへと視線を戻せば、

「ふふふふ。そりゃ私って天才だから!」信じる子が居た。

 ああ、こういう奴だったぜ。傍の大妖精もこちらに敵対心はないらしく、穏便な流れにホッと一息ついている。

「チルノさん! オレ達行きたいところあるからココ通らせてもらいたいんだけど良い!?」

「仕方ないわねー! よっし、許す!」

「ありがと! 魔理沙、早く行こう!」

「お、おう!」

 これ以上おかしい流れにならないうちに私達は急ぎ足で湖畔を周回した。チルノとのやり取りを思い起こしてみても不満しかない。時間の無駄ーーっていう程でもないか。じおんが絡んでいることが浮き彫りになったしな。今回の異変に対する認識の甘さを改めながらもそびえる紅い建物へ視線を送る。さっきのご砲撃(あいさつ)、誰がやってくれたのかお反しをしないとな。

 

 

「あれが噂の白いヤツ。そんな奴が逃げていくなんてやっぱり私ってば! 優勝ね!」

「バカの徒競走大会でね……」

「ん? 大ちゃん何か言った?」

「あ、ううん! 何ニモ」

 

 空は未だ紅い霧に覆われているものの、目の前には底が透けるほどに美しい碧が広がっている。まさか海に来るなどとはつゆほども思っていなかった。それもこの悪魔(わたし)が、だ。

「お嬢様、大佐がお越しです」

「ええ」

 従者が傍に現れ、客人が来たことを取り次いだ。つい昨日まで中佐だったのに。出世の早い男だこと。トントン拍子に昇格する同盟相手の登場に対し、私は何の迷いもなく振り向く。

「日焼け止めは効いているようだな」

「ダレだオマエ」あまりの衝撃的光景に、思わず下品な物言いをしてしまった。そこに居る物体が、私の知るシャアではなかったからだ。赤いのだけれどこう……ずんぐりとしている。

「お嬢様、大佐です」

「何であなたはそう対処出来るの」

「瀟洒ですから」

 さも当然とばかりに咲夜は突然蒼いフレームの眼鏡を掛け、クイっとあげる。その仕草はどこか出来る女を演出していた。瀟洒、瀟洒ってなんだったかしら。

「ダレだとは心外だな。まあ、少し太ってしまったから仕方ないか」

 私の眼前まで歩み寄ってきたシャアはひとりで勝手に納得する。いや、太ったとか以前に姿も違うし。

「という訳だから私は今日からシャア専用ズゴックだ! よろしくな」

「はい、何がという訳なのか理解できません」

 アタマが痛いわ。ある日突然、シャア達が海に行こうと言い出したのが現状の発端だ。最初はよく悪魔にそんなことを、と殺意を抱いたものだが海に興味もあった為、私たちはその提案に渋々乗ったのである。

「幻想郷の外へ出してくれたことは感謝している」

「は?」

「……え?」

「幻想郷だぞココも」

「……え?」

 何を言っているのだコイツは。確か、幻想郷に海はないというハナシだったはずだぞ。傍らに視線を送ると、咲夜ですらも唖然としている。思考が追いついていかない私達を余所にシャアは話を続ける。

「部下に調査をして貰ってな。幻想郷にも海があったのでお前達を連れて来ただけだ」

 あそこな。と指された方向の海にはフランを乗せて海を泳いでいる白青いズゴック達が居る。アレもザクだったって、ザクって太ったらああなるの!? 因みにギャンとパチュリーが共同で精製した塗り薬のおかげで姉妹(私達)は海を泳げるからさして問題はないらしい。別に怖くないけど子供でもないからまだ海には入らない。

「ソウネ。それで、紅魔館をどうするつもりだ?」

「一旦ガンダム達の目を向けさせておいて、私達はジャブローを陥落させる」

 兵力も残してきたと付け加えるが、そんな説得で妥協するほど私も子供ではない。パチュリーと門番が留守を守っているとはいえ……。

「壊れたらまた建ててやるから」

「あ、ちょ!? 持ち上げるな! 紅魔館は我がスカーレット家の宝、もし何かあったら容赦しないぞ!」

「それより、お前も泳げ泳げ」

「い、いや! いちおう例の薬は塗ったが私はまだ泳ぐなんてーーイヤっ、待って!」

 この赤いヤツは相変わらず私の話を聞くようで聞かない。いや聞かないようで聞いていたりと厄介である。って、ヒトをモノみたいに扱うな!

「お嬢様、大丈夫ですわ」

「咲夜!」

 ジタバタと暴れても、このサツマイモのような手は私を頑として離さない。なんて奴! 今の状況では咲夜の能力で解放させるしか手段がない。担ぎ上げられた状態から助けを求めたのだが、そこには薄ピンク色のワンピースを差し出す従者の姿があった。

「水着の準備は万端ですわ」

「え!? ちがうそうじゃない!」

「えいや」

「いや!? ちょはなすぶば!」

 従者にツッコミを入れた直後、シャアの掛け声とともに私は渇望していた自由をようやく得ることができた。叫びなど聞こうともしない、まったく。塩水に落ちるほんの僅かな開放感が、何というか虚しくて仕方がない。程なくして冷たい抱擁に乗り、水面から紅い空を仰ぎながら私はポツリと紡ぐ。

 つーか、飛べるじゃない。落ちる前に気づけ。私も。

 

 

 

 

 

 まさか、本当にアレだけの材料で撃てるなんて。……滅茶苦茶ね。呆れを通り越した別の感情がもやもやと残る。

「小悪魔、ソーラ・レイの状態はどうかしら?」

「確保しておいた太陽光を全部使ってしまったようです」

「そう……」

 ギャンに借りた書籍を元に、研究で得た知識でもって完成に至った砲、それがソーラ・レイである。長く切り離した大判の画用紙を筒状に丸め、魔法術式で留めた後は筒の両側面へ太陽光パネルを一枚づつ取り付けるといった作成手順だ。その精度がどれほどのものか、書籍の記述通りに動くのか。あらゆる疑問を胸に抱きながら、今居る館内中央にある円筒型の塔へと移動し、ザク達に設けてもらった砲門から試運転したところだった。

「結構、威力は大きいわね」

「はい、アレが私に向けられていたらと考えただけで」

 ソーラ・レイの感想を述べる小悪魔の目に光彩はない。いや、私も同じものだろう。とりあえずは完成といったところかしら……。思案に暮れていた矢先、廊下から慌ただしい足音が響き渡ってきた。

「パチュリー殿!」

「敵が来襲しました!」

「あなた達」

 姿を見せ、緊張の面持ちで報告するのは紅魔館の同盟関係にあたる“じおん”の兵・ザクII、デニムとスレンダーである。私は疑うこともなく、もたらされた情報の詳細を聞いた。まあ無理もないわ。先ほどソーラ・レイを使ったのだから場所を特定されても不思議じゃない。

「そこの湖の妖精ではないのよね?」

「違います! 黒白の服を着た魔法少女とれんぽーの白い奴、ガンダムです!」

「門前で旧ザクじいさんと紅美鈴が応戦中!」

「そう……」

「パチュリー様」

 小悪魔が冷静に私に目配せをしてきた。先ほどソーラ・レイの威力に震えていたというのに……、思わず笑ってしまう。そんな私の態度に当然、彼女は小首を傾げる。

「何でもないわ。戻りましょう。デニム、ジーンはザクII部隊に警戒令を出してちょうだい」

「「了解」」

 伝令に向かうふたりの姿を見送り、私は小悪魔を伴って踵を返した。美鈴と“じいや”が居る以上、門は任せるだけ……。私の成すべきことは侵入を許した時のための算段をしなくてはいけない。焦ることなく塔を降りていく。途中厳戒態勢を整えるザクII部隊に激励を行いながら廊下を進み、自分の居場所へと到着する。そこに待機していたモビルスーツに戦闘態勢を取らせるのに時間はかからない。

「ーーギャン、アッザム。手伝って」

 

「フフ、待っていたぞ」

 




ルーミア
「かくかくー」シバラレチュウ…

ザクIIその1
「しかじか」シバラレチュウ…

ザクIIその2
「ウンタラカンタラ」シバラレチュウ…

霊夢
「なるほどね! 急ぐわよガンキャノン! 紅魔館には危険が危ないらしいわ!」

ガンキャノン
「何が!? 今のでよく分かったな!?」


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