アカギ「ふーん…私立百花王学園か…」 (しゅれでぃんがー)
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第一話 百花王学園に降り立った天才

安岡「そうだ。創立122年を迎える伝統と格式を誇る私立百花王学園って所があるんだが」

 

安岡「そこでは学園内で学生同士の賭博、つまりギャンブルが常日頃行われている…」

 

安岡「1億なんて賭場がしょっちゅうあるんだが、どうだ?アカギも行ってみないか?」

 

アカギ「所詮はガキのする博打……ただの真似事…」

 

アカギ「ギャンブルができると聞いて来てみたものの、大したこと無さそうだな」

 

安岡「まあそう言うな、アカギ」

 

安岡「実銃でロシアンルーレットをしてる生徒もいるみたいだぞ」

 

安岡「お前が期待できるくらいの奴らはいると保証しておこう」

 

アカギ「ククク……なるほど、それなら話は別だ」

 

アカギ「行こうじゃないか……その私立百花王学園とやらに……!」

 

安岡「その意気だアカギ、じゃあ入学の手続きなどは俺の方で済ませておく。2、3日したらまた連絡するからな」

 

アカギ「ククク……楽しみにしておくよ……」

 

一週間後 百花王学園

 

先生「先週お伝えしたとおり、今日は転校生を紹介します」

 

アカギ「赤木…赤木しげる……」

 

先生「そ、それだけ?」

 

アカギ「……」

 

ざわ…ざわ……

 

先生「まぁいいわ、鈴井くん、彼に校舎を案内してあげてくれるかしら」

 

鈴井「あっはい」

 

鈴井「じゃあ行こうか、赤木くん」

 

アカギ「あぁ……」

 

 

芽亜里「……」

 

 

 

アカギ「ふーん…ずいぶんでかい学校なんだな…」

 

鈴井「あのさ…アカギくんはギャンブル出来る?」

 

アカギ「ああ……」

 

鈴井「そっか…」

 

鈴井「うちの学校じゃずっと前から⋯『伝統』みたいにギャンプルが流行っててさ」

 

鈴井「放課後ともなれば学園の至る所で賭場が立つんだ」

 

鈴井「近い内にアカギくんも誘われると思うからその辺気をつけて…」

 

アカギ「…ふーん………」

 

鈴井(ほんとに分かってるのかなあ…)

 

アカギ「…1ついいか?」

 

鈴井「どうしたの?」

 

アカギ「その『ポチ』ってのは何なんだ?」

 

鈴井「!! こ、これは……」

 

鈴井「……まずこの学校の事を話さないといけないね……」

 

アカギ「……」

 

 

 

アカギ「つまりお前はギャンブルで借金作ってポチになったって事か」

 

鈴井「う、うん……」

 

アカギ「ふーん…」

 

鈴井「………」

 

アカギ「……なぁ」

 

鈴井「な、なに?」

 

アカギ「灰皿持ってるか……?」

 

鈴井「アカギくん!?なんで煙草吸ってんの!?」

 

アカギ「……」

 

鈴井「校内は禁煙だよ!ていうか未成年だよね!?」

 

アカギ「ククク…そういうことにしておこう……」

 

鈴井「え?と、とにかく早く捨てて! 先生にバレたら大変だから!」

 

アカギ「あらら」

 

鈴井(なんなんだ全く……僕がギャンブルの事話しても何も感じてなさそうだったし……)

 

鈴井「……アカギくん」

 

アカギ「なんだ……?」

 

鈴井「とにかく気を付けて。アカギくんもすぐ誘われると思うから」

 

アカギ「ククク……それは楽しみだ……」

 

鈴井(あれ…今笑った?)

 

鈴井「……じゃあそろそろ戻ろうか」

 

アカギ「ああ……」

 

 

 

そして放課後…

 

芽亜里「初めまして! 私、早乙女芽亜里!」

 

アカギ「……ん?」

 

芽亜里「よろしくね、アカギくん」

 

アカギ「……あぁ」

 

芽亜里「アカギくんはこのあと暇?」

 

アカギ「あぁ」

 

芽亜里「それじゃあ私とギャンブルしない?」

 

鈴井(……!)

 

アカギ「ギャンブル……?」

 

芽亜里「そ、ギャンブル」

 

芽亜里ちゃんが転校生とギャンブル……?

 

「もしかして『アレ』か……?」

 

 

ざわ… ざわ…

 

アカギ「何をするんだ……?」

 

芽亜里「『投票ジャンケン』っていう華組オリジナルのゲームなんだけど」

 

鈴井「ちょ、ちょっと待って!」

 

芽亜里「……は?」

 

鈴井「えっと、いきなりそれは流石に……ルールの把握とか大変じゃ…」

 

芽亜里「なに?文句あんの?」

 

鈴井「うっ……」

 

芽亜里「ポチは大人しくお座りしてなさい」

 

アカギ「……俺は構わない……」

 

鈴井「あ、アカギくん! せめてルールを聞いてからでも!」

 

芽亜里「お座りって言ったでしょ?」

 

鈴井「……は、はい……」

 

芽亜里「じゃあルールを説明するわね」

 

 

~略~

 

 

芽亜里「…ってことなんだけど、分かったかしら?」

 

アカギ「あぁ……」

 

芽亜里「そうこなくっちゃ! ……ポチ、さっさとチップ持ってきて!」

 

鈴井「は、はい……」

 

アカギ「……」

 

芽亜里「チップは1枚1万円。とりあえず100枚用意しておいたから」

 

アカギ「……」

 

芽亜里「何か質問はある?」

 

アカギ「いや……」

 

芽亜里「ベット額は毎回アカギくんが決めていいわ」

 

アカギ「……」

 

鈴井(グーチョキパーがランダムで3枚配られる……カードが偏ることなんて日常茶飯事だ)

 

芽亜里「決まった?」

 

アカギ「あぁ」

 

芽亜里「何枚賭ける?」

 

アカギ「……3枚だ」

 

芽亜里「分かったわ。じゃあ勝負ね!」

 

芽亜里「合図で一緒に出してね? じゃんけん……」

 

 

芽亜里「ぽん」スッ

 

アカギ「……」

 

芽亜里 チョキ

アカギ グー

 

芽亜里「まずはアカギくんの一勝ね。おめでとう」

 

 

アカギ「……」

 

 

芽亜里:チップ97枚

 

アカギ:チップ103枚

 

 

芽亜里「これで要領は分かったでしょ? どんどん行きましょう」

 

アカギ「あぁ……」

 

鈴井(アカギくんも来ていきなりこんなことやらされて大変だな…)

 

芽亜里「次は何枚賭ける?」

 

アカギ「……103枚」

 

芽亜里「!?」

 

ざわ… ざわ…

 

「ひゃ、103枚……!?」

 

「ほ、本気なのかあいつ!?」

 

 

ざわ… ざわ…

 

 

 

芽亜里「…アカギくんって、勝負師なのね」

 

アカギ「……」

 

芽亜里(何よコイツ…!勝ったからって全賭け?)

 

芽亜里(だからと言って浮かれてる様子は無い…それどころか表情一つ変えないなんてどういうこと?)

 

芽亜里(持ち分全部賭けてなんでそんな平然としてられるの!?)

 

アカギ「そういや…あんたの減った分はどうするんだ……?」

 

芽亜里「問題ないわ。追加するから」ジャラ

 

アカギ「ククク……そうこなくちゃな……」

 

 

 

 

芽亜里(…こうなったら……)チラッ

 

鈴井(……!)

 

芽亜里(分かってるわね、ポチ)

 

鈴井(…………)コクッ…

 

芽亜里(……)ニヤリ

 

 

アカギ「……」

 

 

芽亜里(クラスメイト30人の内、私の『奴隷』が21人……)

 

芽亜里(その21人をパー10枚・グー11枚に分けて偏らせた投票をさせる!)

 

芽亜里(とにかく私はパーを出しておけば負ける確率を徹底的に減らせる……!)

 

 

 

芽亜里 手札 <グー、パー、パー>

 

 

芽亜里(……来た!この手札を待っていた!)

 

芽亜里(浮かれて持ち分全額全額賭けるからだよ!転校生の分際で!)

 

 

アカギ「じゃん……けん……」

 

 

 

アカギ「ぽん……!」

 

芽亜里「……」

 

アカギ:パー

芽亜里:パー

 

 

芽亜里(チッ……パーを持ってたか。だがもう一枚のパーで..!)

 

 

 

芽亜里「じゃん!けん!ぽん!!」

 

 

アカギ:パー

 

芽亜里:パー

 

 

 

芽亜里(何ッ……!!)

 

芽亜里(二連続パー……!? まずい、もし奴がパーを3枚引いていたら……!!)

 

 

アカギ「ククク……どうした……?」

 

芽亜里「な、何が?」

 

アカギ「もう三回戦目なんだ。最後のカードを出すだけだろ……?」

 

芽亜里「!! ……わ、分かってるわ」

 

アカギ「……」

 

芽亜里(何なのこいつ……なんでそんな冷静でいられるの?)

 

アカギ「じゃん……けん……ぽん……!」

 

芽亜里(お願い……! チョキを出して……!)

 

 

 

 

芽亜里:グー

 

アカギ:グー

 

 

 

 

芽亜里(……!)

 

芽亜里(よ、良かった……取り敢えずは引き分けで次戦だ……)ホッ

 

アカギ「次のベットは……チップ1000枚だ...」

 

芽亜里「...はぁぁぁぁ!?」

 

アカギ「俺が決めて良いんだろ? 1000枚だ」

 

芽亜里「1000……って! そんな金どこにあるのよ!即金でない限り認めないわ!」

 

アカギ「ククク……金ならあるさ……!」

 

札束< ドサドサッ

 

芽亜里(なっ……!!)

 

芽亜里(1000万どころか……2000万はある……!?)

 

芽亜里「……わ、分かったわ。勝負続行ね……」

 

芽亜里(……まさか転校生と初日でこんな勝負するとは……)

 

芽亜里(1000万の差し勝負……負けられない……絶対に……!)

 

 

 

芽亜里 手札<パー、パー、チョキ>

 

 

芽亜里(……よ、よし! パーが2枚! しかも数少ないチョキも引いた!)

 

芽亜里(アカギは……?)チラッ

 

アカギ「……」

 

芽亜里(……表情からは何も読み取れない……!)

 

アカギ「まず1枚目……」スッ

 

 

芽亜里「じゃん、けん……ぽん!」

 

 

 

芽亜里:パー

 

アカギ:パー

 

 

 

芽亜里(あいこ……やっぱりパーを持ってたか。でも問題は次からね)

 

 

芽亜里(『パー+同じカード2枚』の状態からパーを先に切り出すとは考えにくい)

 

 

芽亜里(2回戦と3回戦の事を考えたらできれば選択肢は多い方がいいもの)

 

 

芽亜里(つまりアカギはパーを2枚以上持ってる可能性が高い……極端な話、3枚全部パーって事もある)

 

 

<パー、チョキ>

 

 

芽亜里(ならここでチョキを出すべき……?)

 

芽亜里(……いえ、パーを複数枚持ってたからと言って連続でパーを出すとは限らない)

 

芽亜里(むしろ人間の心理からすると同じカードは連続して出したがらないもの)

 

芽亜里(なら、次に来るのはグーかチョキ……枚数を考えるとグーの可能性が高い)

 

芽亜里(つまりパーを出しておけば……!)

 

芽亜里「じゃん……! けん……!」

 

 

アカギ「……」

 

 

芽亜里「ぽん……!」

 

アカギ「……」

 

芽亜里:パー

アカギ:パー

 

 

芽亜里「!!」

 

芽亜里(チョキをだしていれば勝っていたのに……!!)ギリッ

 

アカギ「ククク……」

 

芽亜里「な、何が可笑しいのよ! さっきから澄ました面して!」

 

ざわ… ざわ…

 

 

「芽亜里ちゃんがあんなに感情的になるなんて……」

 

「次で決まる……」

 

 

 

 

鈴井(早乙女……)

 

芽亜里(…っ! やばいやばいやばい……!!)

 

芽亜里(私の残るカードはチョキ……一番枚数が少ないチョキ……)

 

芽亜里(枚数が少ないって事は……アカギが引いた確率も低いって事……)

 

芽亜里(つまり……グーかパーを出してくる可能性が……次で勝負が決まる可能性が極めて高い……!)

 

芽亜里(……)ハァ…ハァ…

 

芽亜里(……こいつがパーを3枚引いてた事に賭けるしかない……!!)

 

アカギ「……」

 

芽亜里(なんなのこいつ……なんで微動だにしないの……!? 1000万の勝負だってのに!!)

 

 

アカギ「……3枚目……」スッ

 

 

 

芽亜里(お願い……! せめて引き分けて……!!)

 

パサッ…

 

 

芽亜里:チョキ

 

アカギ:チョキ

 

 

 

芽亜里(引き分け……よ、良かった……)ハァ…

 

 

芽亜里(それにしても……こんな賭け方してくる奴なんて初めてだわ……)

 

 

芽亜里(いくら私が有利だとしても、二連続で引き分けとなると嫌な予感がする)

 

 

芽亜里(ここらでお開きに..)

 

 

アカギ「次は2000…倍プッシュだ…」

 

 

 

芽亜里(!?)

 

 

鈴井(えっ!?)

 

 

 

ざわ… ざわ…

 

芽亜里「あ、あんたバカなの!?」

 

 

アカギ「え……?」

 

 

芽亜里「ただのジャンケンに2000万って……!正気じゃない!!」

 

芽亜里「そんな馬鹿な真似できるわけが..!」

 

 

アカギ「ククク…馬鹿な真似ほど…狂気の沙汰ほど面白い…!」

 

 

芽亜里「……つ、付き合ってらんないわ」

 

アカギ「自信がないのか…?」

 

芽亜里「っ……!自信はあるわよ…!」

 

アカギ「ククク…なら続行だな…」

 

芽亜里(……)

 

鈴井(な、何考えてるんだアカギくん……!これ以上やる必要があるのか…!? )

 

 

 

アカギ「なぁに……無論……タダでとは言わない……」

 

芽亜里「……え?」

 

アカギ「2000万の差し勝負……受けるなら……」

 

アカギ「…俺の手持ちを…開示しよう……!」

 

芽亜里「はぁ……!?」

 

鈴井(なっ……!!)

 

 

芽亜里「やっぱあんたバカでしょ!?そんな事してあんたに何の得があるのよ!」

 

アカギ「もともと損得で勝負事をしたことない…ただ勝った負けたをしてその結果、無意味に人が死んだりする…そっちのほうが望ましい……!」

 

芽亜里(こいつ……やっぱり狂ってる……!!)ゾワッ

 

芽亜里(……)

 

芽亜里(でも……今言った通り手持ちのカードを見せてから勝負するなら……)

 

芽亜里(それなら……勝率が更に上がる……!)

 

芽亜里(2000万……っ)ゴクッ…

 

 

 

芽亜里「わ、分かった。受けるわ」

 

 

ざわ… ざわ…

 

 

 

芽亜里(最低でもパーを引かなければ話にならない……! 来い……!来い……!!)

 

 

 

芽亜里 手札<グー、チョキ、パー>

 

 

芽亜里(来たっ…三種類……! あとはアカギの手持ち次第……)

 

 

芽亜里「……早くあんたのカード見せなさいよ」

 

 

 

アカギ「……」パラッ…

 

アカギ 手札<パー、パー、グー>

 

 

 

芽亜里(パーが2枚、グーが1枚か……)

 

 

アカギ「じゃあ1枚目……」スッ

 

 

芽亜里(!! も、もう決めたの……!?)

 

 

芽亜里「ま、待ちなさい、私はまだ決めてないから」

 

 

アカギ「あぁ……」

 

芽亜里(どうする……?)

 

 

芽亜里(今までのこいつの傾向からして、あれはパーの確率が高い。グーを切って手元にパー2枚を残すのは愚行……)

 

芽亜里(手持ちから考えると私はパーを出しておけば少なくとも負ける事はない)

 

芽亜里(最初は様子見でパーを出すか……?)スッ…

 

芽亜里(……いや。でも最初に『負ける事はない』パーを消費すると次戦が苦しくなる)

 

芽亜里(いっそのこと……初手でチョキを出す……?)

 

芽亜里(でも、もしあのカードがグーだったら……その時点で私は破滅する……!)

 

芽亜里(くっ……なんで私がこんな勝負しなきゃならない!!)

 

芽亜里(こんな事になるなら30人全員奴隷しとくんだった!!)

 

 

芽亜里(…………)

 

 

芽亜里「き、決まったわ……」スッ…

 

 

アカギ「じゃん……けん……ぽん……!」

 

 

 

芽亜里:パー

 

アカギ:パー

 

 

 

芽亜里(!!)

 

 

 

「あいこか……!」

 

「すげぇ緊張感だ……!」

 

 

ざわ… ざわ…

 

 

 

芽亜里(くそっ! やっぱりチョキを出すべきだった……!!)

 

 

アカギ「2枚目……」スッ

 

 

芽亜里(相変わらず能面みたいな顔しやがって……!まるで読めない……!!)

 

芽亜里(残ったアカギのカードはグーとパー……対して私はグーとチョキ……)

 

芽亜里(……こいつは前々回ではパー→パー→グー、前回はパー→パー→チョキと出していた)

 

芽亜里(……確率で言えば次もパーを出してくる。それならここでチョキを……)

 

芽亜里(……で、でも……っ)

 

芽亜里(もしグーを出してきたら私は……)

 

芽亜里(……それなら……ここはグーを出してあいこを狙って……)

 

芽亜里(そ、そうすれば……あいこになれば私の勝ちは確定する……!)

 

芽亜里(……)

 

芽亜里(……)スッ…

 

アカギ「随分と悩んでるみたいだが…」

 

芽亜里「うる……さい……」ハァ…ハァ…

 

芽亜里「じゃん……けん……っ」

 

 

アカギ「……」

 

 

芽亜里「ぽん……!」

 

芽亜里:グー

 

 

 

アカギ「……」

 

 

 

芽亜里(お願い……!グーを出して……!!あいこにして……!!)

 

 

 

アカギ「ククク」

 

芽亜里「!!」ビクッ

 

アカギ「残念だったな……」

 

芽亜里「え…っ……?」

 

 

 

 

パラッ…

 

アカギ:パー

 

 

 

 

芽亜里「……そんなっ……!!」

 

 

芽亜里「う、うそ……うそだ……」

 

 

芽亜里「こんなこと……!」

 

 

ガタッ!

 

 

鈴井「さ、早乙女っ……!」ガシッ

 

 

 

 

アカギ「ククク……」

 

 

芽亜里「…」

 

 

アカギ「後半、あんたは必死になってあいこにしようとしていた……」

 

 

芽亜里「……!!」

 

 

アカギ「勝つ意志が感じられない……勝ち切ろうとせずに負けない手を選んでいた」

 

 

アカギ「致命的さ……その弛み……! この博打においては……!」

 

 

芽亜里「ぅ、ぅうああぁぁぁぁぁぁっ!!!!」

 

 

「転入初日で2000万円勝ち……!?」

 

「あ、あの芽亜里ちゃんがここまで……」

 

 

ざわ… ざわ…

 

 

 

鈴井「……という訳で、今この場で2000万円は払えない」

 

アカギ「……」

 

鈴井「数日待って欲しいんだ。取り敢えず今日はここでお開きにしてほしい」

 

アカギ「…なにズレたこと言ってんだよ……」

 

鈴井「えっ」

 

芽亜里(……!)

 

ざわ… ざわ…

 

アカギ「まだだ……まだ終わらせない……」

 

芽亜里「!!」

 

鈴井「な、何を……」

 

芽亜里「……こ、これ以上毟ろうっての……!?」

 

アカギ「……金は要らない」

 

芽亜里「え……?」

 

アカギ「あんたが勝ったら、あんたの負け分は全部チャラにしよう」

 

アカギ「その代わりあんたが負けたら……」

 

アカギ「腕一本だ…」

 

芽亜里「……え…?」

 

芽亜里「腕って…何言ってるの……?」

 

アカギ「勝てば金、負ければ腕。それだけだ」

 

鈴井「う、腕なんか貰って何の意味が!?」

 

芽亜里(!! ポチ……)

 

アカギ「意味なんて無い。ただ、無意味に身体や命を失う……その方が博打の本質である理不尽だし」

 

アカギ「その淵に近づける…」

 

 

芽亜里「…………」

 

アカギ「どうする……?」

 

芽亜里「……そ、そんなの……受けられる訳ない……ッ」

 

 

アカギ「……」

 

 

 

アカギ「……そうか」

 

 

アカギ「……」スタスタ…

 

 

 

バタン…

 

 

 

鈴井「……」

 

 

芽亜里(……)カタカタ…

 

 

シーン…

 

 

「あいつ……狂ってるぜ……」

 

「でも桁違いに強いわ……!」

 

「あいつなら生徒会長に勝てるんじゃ…」

 

 

 

 

鈴井「……っ!」ダッ

 

 

タッタッタッ…

 

鈴井「アカギくんっ!」

 

アカギ「ん?」

 

鈴井「あ、あの……その……」

 

アカギ「……」

 

鈴井「僕、君に謝らないといけない事が……」

 

アカギ「ククク……あの程度じゃハンデにもならねぇさ。お前の他にも仲間がいたんだろう」

 

鈴井「―――えっ?」

 

アカギ「通しを使っていたからこそあの女は土壇場になっても慢心を消さなかった」

 

鈴井「……」

 

アカギ「……いや、消せなかったんだろう。『カードの偏りを操作している分自分が有利だ』、という理を」

 

鈴井「……」

 

アカギ「リスク無しで大金せしめようなんて、図々しいんだよ…」

 

鈴井「……アカギくん、本当にごめん」

 

アカギ「あ……?」

 

鈴井「転入生をこんな危ない目に合わせて……しかもグルになって嵌めようと……」

 

アカギ「さっきの女に対してもだったが……随分お人好しだな、あんた」

 

鈴井「えっ?」

 

アカギ「俺もお前の通しを逆に利用したようなもんだ。お互い様だろ」フゥー

 

鈴井「でも……」

 

アカギ「……ほら、使用料だ」

 

鈴井「え!? ちょ、ちょっと待ってよ! 」

 

アカギ「ククク……」

 

 

鈴井「あ! 札束投げないでよ!」

 

鈴井「あーもう散らばっちゃったじゃないか!拾わないと……!」

 

鈴井「っしょっと……」

 

 

鈴井「……ほら、アカギくんも!」

 

 

鈴井「……」

 

 

鈴井「……アカギくん?」チラッ

 

 

 

鈴井(―――い、いない!!)

 

 

 

スタスタ…

 

 

アカギ「もう少し楽しめると思ったが、所詮ガキの博打…」

 

アカギ「こんなもんか……」

 

コツ…コツ…

 

アカギ「……」

 

コツ…コツ…

 

綺羅莉「…」

 

 

コツ…コツ…

 

 

アカギ「……」

 

 

 

アカギ(なるほど……少しは楽しめそうだ……)

 

 

 

 



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第二話 神域の男

遅くなりました。少し書き方を変えてみます。
あと芽亜里ではなく早乙女と表記していきます。


―アカギが早乙女芽亜里との勝負に勝って翌日―

 

鈴井(一日経ったけど、まだ実感がないなぁ…)

 

鈴井(転校初日に2000万円賭けのギャンブルでクラス全体のイカサマを見抜き)

 

鈴井(逆にそれを利用して勝っちゃうなんて…)

 

鈴井(あ、あそこにいるのって…)

 

鈴井「おはようアカギ君」

 

アカギ「あぁ…」

 

鈴井「あー…、アカギ君には大きい借りが出来ちゃったね…」

 

鈴井「すぐには返せないけど、必ず返すから…」

 

アカギ「…言っただろ、お前の通しを逆に利用したようなもんだ」

 

アカギ「返す必要はない…」

 

鈴井「そうは言ってもさ…」ガラッ

 

鈴井「っ……!」

 

アカギ「…」

 

 

アカギと鈴井が教室に入った瞬間、目に入ったのは無残にも荒らされていた自身の机の

目の前に立ち尽くす早乙女とそれを惨たらしく笑うクラスの有様だった。

 

 

鈴井(なんだこれは…、この机は確か…)

 

アカギ「フッ…なんだこの教室」

 

アカギ「ろくでもないやつらばっかだな…」

 

早乙女「……うるッさいなぁ…」

 

早乙女「…あんたに負けたからこうなってんだよッ!」

 

アカギ「…」

 

鈴井(アカギ君…ちょっといいかい?)

 

鈴井「あれはこの学園の伝統なんだ」

 

アカギ「……」

 

鈴井「…百花王学園ではギャンブルの強さですべて決まるからさ」

 

鈴井「ギャンブルの強さで人の待遇や迫害が決まる」

 

鈴井「…といっても前まではここまでひどくなかったんだけどね」

 

鈴井「二年前に今の生徒会長が就任してからこんな風になっていったんだ」

 

アカギ「……」

 

鈴井「彼女は高等部で編入してきて一年生にして生徒会長になった」

 

鈴井「彼女が生徒会長に就任してから今のポチミケ制度や上納金が作られたんだ」

 

アカギ「…そいつはどうやって会長になったんだ…?」

 

鈴井「…当時の生徒会長とギャンブルをしたんだ」

 

鈴井「それで彼女が就任以降差別意識が激しくなっていったんだ…」

 

アカギ「…ククク…」

 

鈴井「?」

 

アカギ「ガキのギャンブルなんざ期待はしていなかったが、思ったより面白そうじゃないか…」

 

鈴井「…」

 

鈴井(…彼には、恐怖という感情は無いのか…?)

 

鈴井「アカギ君、君は一体…」

 

 

――ワーーー!!!!!――

 

鈴井「うお」

 

アカギ「…」

 

???「ストレート♪私の勝ちだね♪」

 

鈴井「あぁ…彼女は一年の皇伊月、多額の上納金を払って一年生ながら生徒会入りしたらしい」

 

鈴井「なんでも有名トイメーカーの社長令嬢で、ギャンブルの腕もたつ」

 

鈴井「特にトランプゲームでは無敗なんて話もあるんだ」

 

アカギ「ふーん…」

 

皇「アカギ先輩っ」

 

皇「はじめまして!いきなりですが、私とギャンブルしませんか!」

 

鈴井「な、なんだいきなり…」

 

皇「先輩のこと話題になってますよ~!」

 

皇「転校初日のギャンブルで早乙女先輩を完膚なきまで叩きのめしたとか…」

 

鈴井(もう広まっているのか…)

 

アカギが入学してからたった二日、すでにアカギの噂は広まっていた、無理もない。初日で早乙女に2000万もの負債を負わせたのだ。

 

皇「実は私もギャンブルには自信がありまして~、比べてみるのも面白いかなぁって」

 

アカギ「……」

 

鈴井「アカギ君!彼女はトランプで無敗を誇っている!そんな勝負で勝とうだなんて、綱渡りみたいなもんだよ!」

 

アカギ「ククク…いいだろう…渡ってみせよう…その綱…」

 

皇「で、ギャンブルの種目なんですケド、『ダブル神経衰弱』なんてどうですか?」

 

 ダブル神経衰弱の説明

 

 

・デッキを2つ使用する神経衰弱

・数字とマークが同じだった場合のみ、そのカードを取れる。

・カードを取ると連続してカードを開ける。

・JOKERを除く各マーク×13枚、合計104枚のカードの取得枚数で勝敗を決する。

・54枚(27組)を先に取った方が勝利。

 

皇「ってことなんですケド、わかりましたか?」

 

アカギ「あぁ…いいだろう…」

 

 

ざわ…ざわざわ…

 

生徒会の皇がギャンブルするんだって…

 

相手は? 

 

ほらあいつだよ。二年の早乙女を倒したってやつ…

 

 

鈴井(まだ転入二日目だぞ…、もう学園中の噂になっているのか…)

 

皇「じゃあ肝心の賭け金ですが、早乙女先輩とのギャンブルでは2000万賭けていたとか?」

 

皇「じゃあ、私は賭け金…4000万!どうです?ダブルアップってやつですよ」

 

 

4000万!?

 

マジかよ…

 

ざわ…ざわざわ…

 

アカギ「いいだろう…」

 

皇「先ほどの説明の通り新品のトランプを二つ用意します」

 

数分後…

 

皇「…とこれで準備完了。『ダブル神経衰弱』はじめましょう!」

 

皇「アカギ先輩から先に引いていいですよ」

 

アカギ「わかった…」

 

パラッ

 

アカギ一回目:ハートの3とスペードの3

 

アカギ「どちらも3だが、このルールだと当たりじゃないってことだな…」

 

皇「その通り」

 

鈴井(……やっぱりこの神経衰弱難しすぎないか?)

 

 

 難しい確率。当たりが一枚ということは引ける可能性は103分の1の確率しかない。      

 となれば、既出のカードを覚えるしかない、だが103枚の位置を覚えるのは至難の業。

 

皇「ダイヤの7にハートの2、ハズレー」

 

アカギ「スペードの2、クラブのA…」

 

鈴井(いくら場所が分かったとしても、こんだけあると何が何やら…)

 

アカギ「…ハートの3…」

 

鈴井(ハートの3は確か出たはず、だけど場所はどこだっけ…)

 

アカギ「…もう一枚は確か…」パラッ

 

鈴井(やった!まずは一組…)

 

皇「当たりなのでアカギ先輩が連続で引けます」

 

アカギ「ダイヤの9、ハートの2…」

 

皇「お、ハートの2は確かあの場所だったはずですねぇ…」

 

皇「確か…ここにっ…!」

 

鈴井(皇も負けてない、流石無敗の噂なだけはある…!)

 

 

数巡後…

 

鈴井(アカギ君が36枚、皇が40枚…)

 

鈴井(皇の次巡でアカギ君が上回ることが出来れば…!)

 

皇「流石アカギ先輩!まさかここまでいい勝負になるとは思いませんでした。流石早乙女先輩を倒しただけのことはありますねぇ~」

 

アカギ「…そりゃどうも…」

 

皇「私も負けてられないな…あっ、揃いました」

 

皇「で、次は…お、これも揃いましたねぇ」

 

 

え…?

 

おいおい…

 

ちょ…まじかよ…

 

皇「どうやら勝利の女神は私に微笑んでいるみたいですね」

 

皇「あ、外れかー…どーぞ、アカギ先輩の番ですよ♪」

 

 

皇「次外したら、ほぼ私の勝ちですねー♪頑張ってくださいねー♪」

 

 

皇は容赦なく10枚連続でカードを連取した。次巡アカギ…。

 

鈴井(アカギ君…)

 

アカギ「……外れだ」

 

鈴井(そんな…!あのアカギ君がそんなミスをするなんて…!)

 

皇「っと…当たりです!私の勝ちですね!」

 

 

 

ワー!

 

すげー勝負だったな!

 

どっちもすごかったな…

 

 

鈴井(確かにアカギ君は善戦した…、だが相手の記憶力と運が絡んだことが勝敗を分けた…)

 

鈴井(4000万の負け…アカギ君払えるのか…?)

 

アカギ「皇…だったな…」

 

アカギ「もう一度勝負しないか…?」

 

皇「ん?」

 

アカギ「生憎だが…、今持ち合わせがなくてな…」

 

アカギ「それに…負けたまま終わるのも癪だしな…」

 

皇「……あはっ」ゴソゴソ

 

皇「……実は私ネイルが趣味で、こんな風に一つ一つコレクションしてるんですよね」

 

鈴井(なんだいきなり…)

 

皇「しかもこれちょっとした秘密があってですね…」

 

 

皇「全部生爪なんです」

 

 

……え?

 

ざわ…ざわざわ…

 

皇「まぁほとんどはギャンブルで分捕ったものなんですケドネ」

 

皇「ってことでアカギ先輩が4000万賭けるなら」

 

 

皇「アカギ先輩のその爪、私欲しいなっ♪」

 

 

は……!?

 

爪を賭ける……!?

 

 

鈴井(やはり噂は本当だった…!1年で借金を負わせ更に爪を賭けさせる女がいるって…)

 

鈴井「アカギ君……こんなふざけた勝負受ける必要がないよ…」

 

アカギ「……いいだろう」

 

鈴井「アカギ君!?いくら君でも爪なんて賭けたら…!」

 

アカギ「ククク…大丈夫だって鈴井」

 

爪を賭けることはもちろん、肉体損傷が伴うギャンブルはこの学園といえど滅多にない

だが相手は日本の裏の世界で伝説を作った男、赤木しげるなのだ。

 

皇「あはっ、そうこなくっちゃ!」

 

皇「じゃあ新品のカード使いますね~」

 

 

カード準備後…

 

皇「では、はじめましょうか!賭け金は私が4000万円、アカギ先輩が手足の爪でいいですね?」

 

 

始まるぞ…

 

本当にやるのか…

 

 

鈴井(これだけ観客がいるんだ…冗談じゃすまないぞ…)

 

皇「では、アカギ先輩からどうぞ…」

 

アカギ「あぁ…」

 

鈴井(アカギ君…)

 

アカギ「…………」

 

 

一枚目から悩んでも仕方ないだろー

 

早く引けよなー

 

鈴井(無理だ…爪が賭かっているんだ…そんな簡単に引けるわけがない…)

 

皇(あはっ♪またコレクションが増えちゃった。私が絶対勝つもんね)

 

皇(伏せカードの半分52枚に細工してあるんだから負けるわけがないよね♪)

 

皇(まさか一定以上の温度で模様が浮かび上がるだなんて思いつかないでしょ♪)

 

皇「先輩どうしたんですかそんなにじっと見つめて…」

 

皇「カードが透けてくるとでも言うんですか?」

 

アカギ「そうさ…」

 

鈴井「!?」

 

観客「!?」

 

皇「はぁ…」

 

 

アカギ「それぐらいの感覚がなければ、この数年間…」

 

アカギ「とても生き残れなかった…」

 

 

皇「……」

 

アカギ一回目:ダイヤの6とダイヤの6

 

鈴井「やった!まずは一組目!」

 

 

その後アカギ、連続でカードを当て続ける。

 

皇「…」

 

皇(なんだこいつ、まさか気づいた…!?)

 

皇(こうなったら私の番で一気にカードを開いてすぐに回収して)

 

皇(普通のデッキと交換する…もうこれしかない…)

 

 

おい…あいつ…

 

なんで……?

 

う、噓でしょ…?

 

 

鈴井「ア、アカギ君…?」

 

 

皇「…!?」

 

アカギ「54枚…俺の勝ちだ…」

 

 

アカギ一回目で54枚総どり……!!

 

 

嘘だろ!?

 

一回目で54枚も取るなんて…!?

 

どうなってるんだ…!?

 

 

皇「な、なんで…!?」

 

皇「なんでカードを把握してるんだっ!?」

 

アカギ「…言っただろ、カードが透けてくるって…」

 

皇「はぁ…!?」

 

アカギ「…まぁ、この勝負は終わりだ。俺の4000万もチャラになったことだし次は何の勝負をするんだ……?」

 

皇「は…?い、いや、私はもう…」

 

アカギ「…何を言っている…」

 

アカギ「まだだ…まだ終わらせない…」

 

皇「ひ…」

 

アカギ「今の4000万の勝ちを載せて、8000万の勝負…」

 

アカギ「倍プッシュだ…」

 

皇「い、嫌だ…」

 

アカギ「ククク…そもそもお前が俺に吹っ掛けてきたギャンブルだ…」

 

アカギ「…断れると思っていたのか…?」

 

皇「そ、そんな…」

 

アカギ「……俺が負けたら、8000万の負債をすべて俺が背負う」

 

アカギ「…代わりに、俺が勝ったら…」

 

 

アカギ「お前の手足を全てもらう…」

 

皇「!?」

 

鈴井(!…アカギ君…)

 

 

ざわ…ざわざわ…

 

手足って、何言ってんだ……?

 

まじかよ…

 

 

鈴井「アカギ君!君はまたそんな…」

 

アカギ「いいから…」

 

鈴井「…」

 

アカギ「…で、どうするんだ…?」

 

皇「ひぐっ…、むっ無理です……」

 

皇「でっ…できません……勘弁してください…」

 

皇「ゆ…許してください……」

 

鈴井「アカギ君…こう言っているんだし…」

 

アカギ「……」スタスタ…

 

皇との勝負は終わった。アカギは皇に引かせることなく一回目で勝負をつけたのだ。

 

 

すげー勝負だったなー

 

手足を賭けた勝負も見たかったねー

 

 

???(へぇ…)

 

 

鈴井「アカギ君!」

 

アカギ「…鈴井か」スパー

 

鈴井「あぁ!また煙草吸って!」

 

アカギ「……」

 

鈴井「……それにしても、なんで54枚引けたんだい?」

 

アカギ「……奴のトランプには仕掛けがあった…」

 

鈴井「仕掛け?」

 

アカギ「恐らく、温度が上昇すると模様が浮き上がるんだろう…」

 

アカギ「奴は一戦目、その模様を頼りにカードを選んでいた…」

 

鈴井「じゃあ、アカギ君もその模様を頼りに…?」

 

アカギ「模様には一回目の勝負で気づいたが、とはいえ頼る程でもなかったがな…」

 

鈴井「…じゃあアカギ君は本当にカードが透けて…?」

 

アカギ「ククク…さぁな…」スパー

 

鈴井「…」

 

アカギ「…あんな奴とでは本当の勝負は出来ない」

 

鈴井「……?」

 

アカギ「あれでは足りぬ…」

 

鈴井「え…」

 

アカギ「……」スタスタ…

 

 

 

 

同時刻、生徒会室――

 

清華「……とのことでした」

 

???「キャハッ、転入早々皇ちゃんに勝つなんてスッゴイ子だねっ☆」

 

???「まあ、多額の上納金で生徒会に入っただけの方ですからね」

 

???「うへっ、雑魚に勝って調子こいてそぉ~」

 

???「あれ?推薦したのは誰だっけな?」

 

???「うるさい、黙れ」

 

???「……」

 

清華「さて、この赤木しげるですが、どう始末いたしましょうか…」

 

全員「……」

 

綺羅莉「面白いじゃない、ちょっかいだしてみましょうか♡」

 

綺羅莉(噂には聞いていたけど、まさかここにくるとはね……)

 

綺羅莉(赤木……しげる……)



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第三話 運命の対面

創作意欲が湧いてきたので、これからも頑張っていきます。
なんだかアカギらしくない気もしますが、温かい目で見てもらえれば幸いです。
それと、感想に書いてくれたら幸いですが、もしカイジを出すなら物語にいれるか、回想シーンの中で出してほしいか書いてくれたらありがたいです。


杏子「アカギ君すっごいギャンブル強いんですねー♪」

 

有架「色々話聞かせてよー、お茶とか飲みながらさー」

 

美鳥「アカギ君ってイケメンでギャンブル強いってすごーい♪」

 

アカギ「…………」

 

鈴井(…)

 

 

皇との勝負から、一週間後。二年華組はアカギを中心とし、「ミケ」になり下がった早乙女を下位として日が過ぎて行った。

 

ゴーン、ゴーン

 

鈴井「放課のチャイムか…」

 

アカギ「……」スタスタ…

 

アカギ「……鈴井」

 

鈴井「あ、アカギ君」

 

アカギ「この後、ちょっといいか…?」

 

鈴井「え、うん…」

 

三人組「えー、アカギくーん」「私たちと行こうよー」「ちぇー」

 

アカギ「行くぞ…」

 

鈴井「あ、うん」

 

 

バタン…

 

鈴井「アカギ君、よかったの…?」

 

アカギ「…この学園の事だ、一時の感情で俺に近づいてきているだけなんだろう…」

 

鈴井「……」

 

アカギ「それに…まだこの学園の事もよくわかってないしな…」

 

鈴井「そっか…」

 

アカギ「ククク…」

 

鈴井「…?」

 

 

―泰然庵―

 

鈴井「ここは茶道部が活動しているんだけど」

 

鈴井「放課後は『伝統文化研究会』が賭場を立てているんだ」

 

鈴井「丁半博打や花札が主にここで行われているんだ」

 

アカギ「ふーん…」

 

部員「伝統文化研究会へようこそ!」

 

部員「たった今公式戦が行われております。よろしかったらご観覧されてはいかがでしょうか?」

 

アカギ「…公式戦?」

 

鈴井「あ、そうかアカギ君はまだ知らないよね」

 

鈴井「公式戦ってのは、家畜に与えられた唯一の権利なんだ」

 

公式戦の説明

 

・家畜の生徒は一度だけ「公式戦」として誰にでもギャンブルを挑む権利がある。

・賭け金が常識の範囲内の場合、申し込まれた生徒は拒否することが許されない。

・慣例として生徒会役員は、青天井で挑戦を受けることになっている。

 

鈴井「ってことなんだ…」

 

部員「その通りです。そして今公式戦を受けてら…」

 

 

「っああああああッッ!!!」

 

 

部員「!」

 

鈴井「!?…なんだ!?」

 

アカギ「…」

 

 

鈴井とアカギが部員に通されて入った部屋には、生徒会役員であろう女性と、「ミケ」

の首輪をつけられていた女性が居た。そう、過去にアカギとの勝負に負けた早乙女芽亜里

である。

 

 

部員「早乙女様。他のお客様のご迷惑になりますので…」

 

早乙女「触るなッ!」

 

早乙女(クラスの馬鹿ども従えて面白おかしく学生生活を送り…)

 

早乙女(名門校の学歴と人脈で悠々自適な人生になるはずだったのに…)

 

早乙女(…こんな勝負するんじゃなかった…)

 

早乙女(元の人生を取り戻すなんて考えなければ…)

 

鈴井「さ、早乙女…」

 

早乙女「……」

 

早乙女(いや…、それよりも…)チラッ

 

アカギ「…」

 

 

早乙女(…赤木しげる……!こいつに関わったことが間違いだったんだ…!)

 

 

???「さて…赤木しげるさんですわね?」

 

西洞院「私の名は西洞院百合子」

 

西洞院「ようこそ、伝統文化研究会へ」

 

鈴井(もう生徒会にまで知られているのか…)

 

アカギ「…何をするんだ……?」

 

西洞院「あら、お察しが早いですね」

 

西洞院「このギャンブル、わたくしたちは『生か死か』と呼んでおりますが…」

 

西洞院「どうですか?わたくしと一戦」

 

アカギ「……いいだろう」

 

鈴井(あ、アカギ君…君はなんでそんなあっさりと…)

 

西洞院「では、熊楠さん、場を整えてくださいませ」

 

熊楠「かしこまりました」

 

 

生か死かのルール

 

・ルーレットや丁半博打のように「出目」を予想するゲーム

・壺に剣の形を模した駒を10本入れ、盤に振る。

・盤には1~30の番号の穴が空いていて、剣がどの穴に刺さるか予想しチップを賭ける。

・剣が上向きに刺されば「生」で倍率30倍、下向きなら「死」で倍率マイナス30倍。

・賭けるチップの枚数は毎回両者の合意で決定する。

・振り子が壺を振ってから10秒の間にチップを賭けたい目に置く

・賭けたチップは「生」なら勝ち分ともに手元に残るが、「死」は相手に渡る。

・ただし、両者外れた場合、チップは手元に戻る。

・どちらかのチップが0枚以下になったとき、その差額をもって決着金額とする。

 

 

西洞院「では、最後に賭け金を決めましょう、あまり小さい額では興冷めですから」

 

西洞院「…とりあえず、4000万円でいかがですか?」

 

アカギ「あぁ…、いいだろう…」

 

鈴井(転校初日から思っていたけど…、アカギ君はなんでそんなに平気であんな額を賭けれるんだ…?)

 

鈴井(ましてや、腕や手足を賭けるなんて…)

 

鈴井(アカギ君…君は何者なんだ…)

 

西洞院「そうだ…、賭け額が大きいので100万円のチップを使いませんか?」

 

アカギ「…あぁ」

 

鈴井(100万円チップ…40枚ってことは倍率30倍だから、最短2枚当たっただけで終わるのか…)

 

西洞院「アカギさんは『生か死か』は初めてですので、一つだけヒントを」

 

西洞院「一回で刺さる剣は平均2,3本というところですわ、なるべく多くの場所に賭けないとなかなか当たりは取れないでしょうね」

 

アカギ「ふーん…」

 

西洞院「さて、最初に賭ける枚数をアカギさんに決めていただきたいのですが…」

 

アカギ「…10枚だ」スッ…

 

鈴井(1000万…)

 

熊楠「両者よろしいですね?では10本入ります!」バンッ

 

熊楠「さぁーっ張った張った!」

 

熊楠「9…8…7…」

 

アカギ「…」

 

鈴井(何をしているんだ…?もう時間が…)

 

アカギ「……」チラッ

 

熊楠「…?」

 

鈴井(アカギ君…?今一瞬ディーラーの方を見ていたけど…)

 

熊楠「ゼロ!それまで! 賭け方出そろいました!」

 

アカギ:1,2,3,7,8,11,13,14,16,24

西洞院:16,19.20.21.22,23,24,25,27,29

 

西洞院「悩んでいたようでしたが何か意図でもお有りなのですか?」

 

アカギ「ククク…さぁな…」

 

西洞院「……」

 

熊楠「では参ります…、勝負!」

 

 

一回戦目:17の「生」30の「死」

 

鈴井(!…お互い一回目からひとつズレ…なんて勝負なんだ…)

 

西洞院「お互い外しましたので、チップの移動はありません」

 

西洞院「惜しい惜しい、さ、次に行きましょう」

 

鈴井「あ、アカギ君…もうやめよう、こんなギャンブル…」

 

西洞院「残念ながらそれは出来ませんわ、どちらかのチップが0以下にならない限り終わりませんので」

 

鈴井「そんな…」

 

アカギ「ククク…心配すんなって鈴井、まだ始まったばっかだ…」

 

アカギ「それに…たった一回の勝負でこんなにチップが移動するんだ…やめるにはもったいない…」

 

西洞院「そうでしょうとも…鈴井さんと仰いましたか?」

 

西洞院「アカギさんの言った通り、一回の壺振りで予想を超えた大金が動くこの感覚」

 

西洞院「一度味わわれてみればよろしいと思います。ね?アカギさん…」

 

アカギ「ククク…そうかもな…」

 

鈴井がおびえるのも無理はない。この「生か死か」というゲーム、一回の勝負で数千万という金が動くのだ。並の人間ではまず受けたがらない。

 

鈴井(…あまりにも場違いすぎる)

 

アカギ「それにしても…ずいぶん手の込んだことするんだな…あんた」

 

鈴井「…?」

 

西洞院「失礼…、今なんと…?」

 

鈴井「アカギ君…?」

 

アカギ「さっきの公式戦…どうせあんたから早乙女に持ち掛けたんだろう…」

 

西洞院「……」

 

アカギ「早乙女は自分の名誉挽回のために公式戦を受けたんだろうが…」

 

アカギ「あんたからしたら格好のカモ…」

 

アカギ「焼かれながらも人は、そこに希望があれば付いてくる…」

 

西洞院「…何が言いたいのですか?」

 

アカギ「あんたのギャンブルの強さは知らんが、やり口はその辺のヤーさんと大して変わらない…」

 

アカギ「生徒会役員だか知らないが、つまらないことするんだな…あんた」

 

鈴井「…!?あ、アカギ君」

 

熊楠「ぶ、無礼だぞ!百合子様、この者をたたき出して…」

 

 

西洞院「………」

 

 

熊楠「…ひっ」ビクッ

 

西洞院「よいのですよ、熊楠さん。ちょっとした、軽口ではありませんか」

 

熊楠「で、ですが…」

 

 

スパーッ

 

 

鈴井熊楠「!?」

 

西洞院「…………」

 

アカギ「…」スパーッ

 

アカギ「……」ジュッ

 

熊楠「!?」

 

鈴井「アカギ君!?なんてことを!こんなことして…!」

 

 

アカギ。剣振りの壺を灰皿代わりにする。これを見て熊楠は。

 

 

熊楠「き、貴様あぁぁぁぁ!なんてことを!」

 

西洞院「………」

 

熊楠「百合子様!こいつは……!」

 

西洞院「うふっ」

 

熊楠「……!」

 

西洞院「うふふふふふふふふふっ」

 

西洞院「面白い…」

 

西洞院「生徒会長の仰る通りですわね、貴方本当に面白い…」

 

アカギ「ククク…そりゃどうも…」

 

西洞院「さ、続けましょうか。賭け金はおいくらになさいます?」

 

アカギ「…残り40枚だ」

 

西洞院「…良い覚悟ですね」

 

鈴井(もう…何が何だか…)

 

熊楠「では、剣10本入ります。さぁー張った張った!」

 

西洞院(生徒会長は力を見るだけでよいとおっしゃっていましたが…)

 

西洞院(『生か死か』…文字通り…)

 

 

西洞院(殺して差し上げます)

 

西洞院:1,2,7,9,11,15,19,24

 

 

鈴井(5枚8か所…本気でアカギ君を潰す気だ…!)

 

アカギ「ククク…それにしても、あんた…」

 

熊楠「4…3…」

 

西洞院「…?」

 

アカギ「…随分と挑発に乗りやすいんだな…」

 

西洞院「えっ…?」

 

アカギ「ククク…」

 

西洞院「あっ…!?」

 

熊楠「ゼロ!賭け方出そろいま…」

 

熊楠「し、た…」

 

鈴井「40枚全部24…?」

 

 

アカギ、無法の24単騎

 

 

西洞院「ど、どうして…」

 

アカギ「ククク…さぁな…」

 

鈴井「アカギ君…」

 

アカギ「なぁ鈴井…さっきから気になっていたんだが…」

 

鈴井「…?」

 

アカギ「今のガキは…手に針かなんかを刺すのか…?」

 

西洞院「!!」

 

熊楠「!!」サッ

 

鈴井「え、どういうことだい…?」

 

アカギ「この女といい、さっき俺らをここに連れてきた女もだったが、右手に針が刺さっていた…」

 

アカギ「恐らく剣の中に磁石かなんかが仕込まれているんだろう…、そうすれば任意の位置に剣を落とすことが出来る…」

 

西洞院「ま、待ちなさい!あなたがこの場所に来てからわたくしは一回も剣の位置を当てていません、わたくしが関与する余地がないではありませんか!」

 

アカギ「それは、このイカサマの達の悪さみたいなところ…」

 

アカギ「他の剣が穴をふさいだり、上手くくっつかなかったりするのを考えれば、このイカサマはおそらく100%勝てるわけではない…」

 

アカギ「だから早乙女もイカサマを見抜けなかった…」

 

鈴井「じゃあ、あんなに賭け額を高くする必要はないんじゃ…?」

 

アカギ「逆だ。こいつは生徒会役員でもあり、この研究会とやらの会長でもある…」

 

アカギ「あれだけレートをあげても余裕そうだったのは、そういう事なんだろう…」

 

西洞院「くっ…!!」

 

アカギ「自分は莫大な資金に守られ、弱っているものを狙う…それがあんたのやり口」

 

アカギ「だがそれもここまで…」

 

熊楠(ゆ、百合子様…)

 

アカギ「もし俺の40枚…これが生に刺されば…」

 

アカギ「21億7000万円ってとこだな…」

 

アカギ「ククク…さぁ、早く開いてもらおうか…」

 

西洞院(21億7000万…払えなくはないか…?)

 

西洞院(こうなったら、伝文研全員の上納金に手を付けるしか…!)

 

西洞院(上納金を払えなければ、生徒会役員の地位が…)

 

西洞院(わたくしが役員であるから会を存続できるしこの子たちが家畜になることも防ぐことが出来る…)

 

西洞院(そうでなければ破滅…!!)

 

西洞院(じ、示談するしかない…)

 

西洞院が示談を持ちかけようとしたとき…ついにこの女が赤木しげると対面する…!

 

 

綺羅莉「お邪魔するわね」

 

 

西洞院「か、会長…!?」

 

鈴井(せ、生徒会長!?)

 

綺羅莉「なかなか面白いことになっているみたいね」

 

 

そう。この学園の支配者、私立百花王学園第百五代生徒会長こと桃喰綺羅莉である。その横に副会長桃喰リリカ。選挙管理委員長黄泉月るな。重役がわざわざ見に来たのである。

 

 

綺羅莉「賭け金も大きいようだし私が見届け人になってあげるわ」

 

西洞院「か、会長の手を煩わせるまでもありません…このくらいわたくしの方で…」グイッ

 

 

綺羅莉「いいから黙ってきけよ」ジロッ

 

 

西洞院「……」

 

熊楠「百合子様…」

 

アカギ「……」

 

黄泉月「にゃははは!百合子ちゃんの顔真っ青だけど大丈夫ー?」

 

熊楠「……では参ります…、勝負!」

 

西洞院「…」

 

鈴井「あっ!?」

 

結果。10の死と、7の生である。アカギ、まさかの敗北。

 

熊楠「百合子様が生に5枚的中なので、チップは百合子様195枚、アカギ様マイナス115枚」

 

熊楠「百合子様の3億1000万円勝ちで決着です!!」

 

鈴井(あ、アカギ君が、負けた…!?)

 

西洞院(なぜ…、一体どういうことなの?)

 

西洞院(まさか…)

 

綺羅莉「フフ…、まさか勝ってしまうとまで思わなかったわ」

 

綺羅莉「百合子貴方やるわね、見直したわ」

 

西洞院「会長…」

 

綺羅莉「さてと…」

 

アカギ「……」

 

綺羅莉「あなたが赤木しげるね…」

 

アカギ「……」

 

綺羅莉「フフ…まさか噂には聞いていた人物がここに来るだなんて…」

 

鈴井(なんだ…?会長はアカギ君の事を知っているのか…?)

 

アカギ「…」

 

綺羅莉「…『あの男』を倒したのはあなたでしょう…?」

 

アカギ「…」

 

鈴井(あの男…?誰の事だ…)

 

アカギ「ククク…なるほど…流石いいとこのお坊ちゃまお嬢様が通う学園だ…」

 

アカギ「余計なことまで知ってやがる…」

 

綺羅莉「ウフフ…気を悪くさせちゃったかしら…」

 

アカギ「フッ……」

 

鈴井(いったい何を話しているんだ…?)

 

アカギ「鈴井…帰るぞ」

 

鈴井「え、あ、うん…」

 

西洞院との勝負は終わった。アカギこの学園に来て初の敗北。

アカギ3億1000万の負債

 

鈴井「あ、アカギ君、その…返済するあては…」

 

アカギ「…この学園の事だ、またギャンブルするしかないだろう…」

 

鈴井「それにしても、さっきの勝負。残念だったね…」

 

アカギ「フッ…まぁあの生徒会長の事だ。事前に仕込んであったんだろう…」

 

鈴井「え…」

 

アカギ「恐らく…あの部屋の下に、誰かいたんだろう…」

 

アカギ「奴らは穴熊というイカサマをしていた…」

 

鈴井「え!?」

 

アカギ「下にいる人間が、磁石かなんかであの剣をずらしたんだろう…」

 

鈴井「そ、そんなことを…」

 

アカギ「ククク…」

 

鈴井「アカギ君?」

 

アカギ「これから…面白くなりそうだな…」

 

 

同時刻生徒会長室…

 

綺羅莉「ねぇ、リリカ…彼を生徒会に入れてみようと思うんだけどどうかしら?」

 

リリカ「…誰の事だ」

 

綺羅莉「彼しかいないじゃない、彼の事よ。」

 

 

 

綺羅莉「赤木…しげる」

 

 

 

 

 



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第四話 家畜になった神域の男

めっちゃ字数長くなった…申し訳ないです。生徒1、生徒2よ。あんな目に合わせてごめんよ…どうしてもあのシーンがやりたかったのだ…。今回は私の好きなキャラの一人、生志摩ちゃんが登場します。(本命は早乙女…♡)今回はアカギらしくない場面が多いですが、まぁ…そこは温かい目で…お願いします。


ねぇ、聞いた?赤木しげるの噂

 

あぁ、なんでも生徒会役員とギャンブルで負けたんだろ…

 

それで…いくら負けたの…?

 

なんでも「億」まで言ったらしいよ…

 

マジかよ!?

 

じゃああいつは「家畜」ってことか…?

 

 

―教室―

 

アカギ「……」ガラッ

 

鈴井(あ、アカギ君…)

 

おい、来たぞ…

 

噂をすれば…

 

アカギ「……」チラッ

 

アカギの机には沢山の罵詈雑言が書かれてあり、更には乱雑されたゴミが置かれていた。

 

アカギ「……」

 

杏子「あー、家畜になった人だ」クスクス

 

美鳥「あんだけかっこつけてたのにださーい」クスクス

 

有架「家畜は家畜らしくしてなさいよー?この飼い犬が!」クスクス

 

鈴井(あ。あいつら…!)

 

アカギ「ククク…飼い犬か…」

 

三人組「は…?」

 

アカギ「フッ…その飼い犬に手をかまれたらお前らの方が家畜になるかもな…」

 

アカギ「ミケ猫達さん…?」

 

三人組「「「!?」」」

 

アカギ「俺は飼い犬なんだろ…、早く可愛がってくれよ…」

 

三人組「こ、こいつ…」「家畜の分際で…」「なめやがって…!」

 

アカギ「ククク…」タバコスパー

 

アカギ「……」ジュッ

 

クラス全員「「「!?」」」

 

 

アカギ、吸ってた煙草の火を自分の机で消す。

 

 

鈴井「アカギ君!みんなが見てる前でそんな…!」

 

三人組「な、なんなのこいつ…」「やっぱこいつ狂ってるよ…」「い、行こっ!」

 

アカギ「ククク…」

 

鈴井「あ、アカギ君!」

 

アカギ「…よぉ、鈴井」

 

鈴井「と、とにかくこっちへ!」グイッ

 

アカギ「あらら」

 

 

――教室付近の廊下――

 

鈴井「…あのさ、これ」

 

アカギ「ん…」

 

 

鈴井がアカギに渡したのは、100万円の封筒

 

 

鈴井「親から借りて、100万円用意したんだ…」

 

鈴井「アカギ君ならこれを元手に家畜から抜け出せると思うから…」

 

鈴井「転校初日に僕を助けてくれたからさ、恩返しってわけじゃないけど、使って欲しい…」

 

アカギ「いらねーよ、そんな金…」

 

鈴井「え、でも…」

 

アカギ「それに、生徒会とやらの返済の催促も来てないからな…」

 

鈴井「嘘だろ…?生徒会の容赦ない取り立ての噂なんかいくらでも聞くのに…」

 

アカギ「ただ…面白いものは届いてたがな…」

 

 

鈴井が渡されたのは赤木しげるの名前が書いてある人生計画表というノートだった。

 

 

鈴井「人生計画表?」

 

アカギ「あぁ…色々面白いことがあいてあったぜ…」

 

鈴井「…なんだこれ、何の冗談なんだこれ…」

 

アカギ「まぁ…あの生徒会長の事だ…、面白がってやっているんだろう…」

 

生徒1「なぁ、アカギちょっといいか?」

 

生徒1「椿組の木渡がアカギに用があるって、案内するからついてきてくんねー?」

 

鈴井(え、木渡って…)

 

アカギ「…いいだろう」

 

鈴井「ぼ、僕も一緒に行っていいかな…」

 

生徒1「は?アカギにようがあるって言ってんじゃん」

 

アカギ「フフッ…要件が済み次第戻ってくる…ま、30分だな…」

 

鈴井「アカギ君…」

 

――校舎裏――

 

木渡「よぉ、赤木しげる。お前家畜になり下がったらしいじゃん」

 

鈴井(木渡潤…僕をカツアゲしていた不良…。アカギ君に一体何の用だ…?)

 

木渡「家畜は一般生徒に絶対服従だ」

 

アカギ「…」

 

木渡「…前からお前のすました顔がムカついてたんだよッ!」バキッ

 

アカギ「…」

 

鈴井(あ、アカギ君!)

 

生徒2「おいおい、あんまりやりすぎるなよ…」

 

木渡「気にすることはねぇ、第一このふてぶてしい態度がムカつくんだよ!」ガッ

 

アカギ「……」

 

木渡「それに俺は県知事の息子だし未成年だ。こんなやつ殺したってかまわねえ!」

 

木渡「どうしたアカギ!かかってこいよ!」

 

鈴井「お、おいお前ら!」

 

生徒1「おーっと、邪魔すんじゃねーよ」

 

生徒2「わざわざ見に来やがったのかよこいつ」

 

鈴井「っ…、大丈夫かいアカギ君!?」

 

アカギ「ククク…」

 

アカギ「まだ…足りねえよ…」

 

木渡「あ…?何言ってやがる?」

 

アカギ「いくらこの学校が政界と繋がってるからって、三人も殺したとなればただじゃすまねぇ」

 

アカギ「正当防衛の言い訳が通用するくらいの傷は負いたいものさ」

 

木渡生徒12鈴井「……」ざわ…

 

木渡「なんて言ったんだ…?え…?」バキッ

 

生徒1「こんな野郎、ぶっ殺しちまえ!」ボコツ

 

生徒2「このぉ……!」ガッ

 

鈴井「アカギ君!」

 

アカギ「……」パァン

 

 

生徒2がアカギを殴ろうとした瞬間、とてつもなく大きい音が校内に響いた。

 

 

生徒2「あつっ……!」

 

木渡「…は?」

 

生徒1「う、嘘だろ……」

 

鈴井「あ、アカギ君……君は…なんてことを…」

 

大きい音がした瞬間、生徒2の太ももに風穴が空いており、大量の出血をしていた。

 

生徒1「け、拳銃だ…!拳銃…!」

 

木渡「ま、まさか…」ガクッ

 

アカギ「…」パァン

 

生徒1「ぐわぁっっ…!!」

 

生徒2「ひっ…助けて…」パァン

 

生徒2「うわぁぁ…」

 

アカギ「ククク…切れたセンはつながったかい…?」ズボッ

 

生徒2「う…」

 

木渡「……」

 

鈴井「………」

 

アカギ「こんな野郎殺しちまえってことは、自分も殺されても構わないってことだ」

 

アカギ「そうだろ……?」

 

生徒2「ひっ…!や、やめろ……!」

 

アカギ「動くなよ…指がトリガーにかかってるんだぜ…」

 

生徒2「う…」

 

アカギ「フフ…」

 

アカギ「…俺がまだ子供の頃…、虫をひねり殺した事がある……」

 

アカギ「…今……そんな気分だよ…」

 

生徒2「や…やめ…」

 

アカギ「………」カシィッ

 

生徒2「ひ…ぐ………」

 

アカギ「…まだだ…」

 

生徒2「え…?」

 

アカギ「ククク…」カシイッ

 

カシイッ…カシイッ

 

生徒「あ………」

 

カシイッ!

 

アカギ「…」スッ…

 

木渡生徒1鈴井「………」

 

アカギ「失せろ…」

 

アカギ「いらつくんだよ…てめえら…」

 

木渡生徒1「え…」

 

アカギ「殺すぞ…」

 

生徒12「う…うわぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

木渡「…お、覚えてろよ…」

 

アカギ「…」

 

鈴井「あ、アカギ…君」

 

鈴井「君は…」

 

アカギ「……鈴井、悪かったなこんな所見せて…」

 

???「ひゃひゃひゃひゃひゃひゃはァ!」

 

鈴井「!?……だ、誰だ!?」

 

???「あんた最高だよっ!アタシはお前みたいなやつを探していたっ!」

 

アカギ「…鈴井、こいつは…」

 

鈴井「生徒会役員で美化委員長の生志摩妄だよ…」

 

生志摩「お前最高だよっ!気に入ったッ!アタシにも撃ってくれ!」

 

鈴井「あ、アカギ君…関わらないほうが良いよ…この人は…」

 

生志摩「うるせぇ!いいから撃ってくれっ!」

 

アカギ「……悪いけど、今はそんな気分じゃない…」

 

生志摩「はぁぁぁぁああ!?ふざけんじゃねぇぞ!」

 

アカギ「……行くぞ、鈴井」スタスタ…

 

鈴井「…う、うん」

 

生志摩「ふっざけんなよあの野郎!!」

 

生志摩「……」

 

生志摩「赤木しげる……次にあったら覚えておけよ…♡」

 

――放課後、教室――

 

鈴井(さっきはひどかったな…、アカギ君がなんとかしたから良かったけど…)

 

鈴井(家畜としての立場上、また面倒ごとになったら大変だ。何とかしないと…)

 

鈴井「アカギ君、この後どっかの賭場にでも…、って何読んでるの?」

 

アカギ「あぁ…これか…」

 

 

アカギに渡された紙は、生徒会からのお知らせで「債務整理大集会のお知らせ」と書かれたものだった。

 

 

――同時刻、生徒会室――

 

豆生田「赤木しげる……、ああ前に西洞院との勝負で負けた生徒だな」

 

豆生田「借金総額は3億1000万円だ」

 

 

豆生田楓、生徒会会計で唯一の男子生徒である。

 

 

生志摩「3億…」

 

黄泉月「前に会長がちょっかい出すって言ってたじゃん!妄ちゃん話聞いてなさすぎー!」

 

豆生田「億単位の借金なんて生志摩だけだだと思っていたがな…」

 

生志摩「うっへへへへへへっ」

 

生志摩「ますます気に入ったぜ赤木しげる!億単位の借金抱えるやつなんかそうそういないからなぁ!」

 

黄泉月(また始まったよ…)

 

生志摩「なァ、そろそろだろ?大集会」

 

豆生田「あぁ、そうだが」

 

生志摩「楽しみだなァ、赤木しげるがこの大集会でどうなるのか…!」

 

――大集会の開催所、第三体育館――

 

ざわ…ざわ…

 

???「ご静粛に」

 

???「皆様ようこそ『債務整理大集会』へ!」

 

五十嵐「生徒会書記、五十嵐清華です」

 

五十嵐「我が学園ではギャンブルによる借金のため首が回らなくなる方が毎年発生します」

 

五十嵐「そこで生徒会が救済企画をご用意いたしました」

 

五十嵐「その名も『借金付け替えゲーム』!」

 

 

借金付け替えゲームのルール

・4人一組でゲームを行い、順位に応じて借金の額が入れ替わる。

・1位なら、グループで最も少ない人の額に。

・4位なら、グループで最も多い人の額に。

・最も借金が少ない人が1位なら借金免除。

・借金の金額はあくまで自己申告

・生徒同士の賭けで借金ができているパターンもあるので、生徒会が把握していない借金でも参加は可能。

 

 

五十嵐「さあ皆様再チャレンジです!このチャンスを是非つかんでください!」

 

 

うおー!

 

やるぞー!

 

ざわ…!ざわざわ…!

 

早乙女「チッ、偽善者が…」

 

アカギ「…ふーん、随分と気前がいいんだな…」

 

早乙女「あ、赤木しげる!」

 

アカギ「ふっ…早乙女か」

 

早乙女「気安く話しかけてこないでよ…誰のせいでこうなってるとおもってんの…」

 

アカギ「ククク…そういうなよ、一応同じクラスじゃないか…」

 

早乙女「…あんたでもそういうこと言うのね…」

 

早乙女(…この集会、一見生徒会には利のない企画だが…)

 

早乙女(しかし現実は生徒達から搾取した金を借金まみれの生徒に返しているだけ…)

 

早乙女(それに恐らく生徒会の真意は…)ギリッ

 

五十嵐「用紙を配りますので、ここに自分の借金先とその額を申告してください」

 

五十嵐「ここで申告した額が付け替えの対象となります」

 

五十嵐「皆様の中には多重債務者の方もいらっしゃると思われます」

 

五十嵐「このゲームを通して生徒会へ借金を一本化し『再チャレンジ』を目指しましょう!」

 

五十嵐「それでは組み分けを発表します。A班…」

 

早乙女(赤木しげる…3億1000万の借金らしいからな…)

 

早乙女(絶対同じ班になりたくないな…)

 

五十嵐「C班!二年椿組木渡潤、二年椿組蕾奈々美」

 

五十嵐「二年華組赤木しげる、二年華組早乙女芽亜里」

 

早乙女「!!…こいつとかよ…」

 

アカギ「あらら、よろしくな、早乙女さん…ククク…」

 

早乙女(私はこいつに呪われてんのか…?)

 

五十嵐「さて班決めは以上です。肝心なギャンブルの内容ですが…」

 

五十嵐「皆様にやってもらうのは『二枚インディアンポーカー!』

 

二枚インディアンポーカーのルール

 

ジョーカーと絵札を除いた40枚のカードを使用。

・1枚めは自分だけが内容を確認して手元に伏せる。

・2枚めは自分は内容を見ず、他者には見えるように頭上に掲げる。

・2枚のカードの役で勝負。 強い方から、「ペア(数字が同じ)」→「マーク(マークが同じ)」→「ブタ(どちらも違う)」。

・同じ役の場合は数字の合計が高い方が勝ち。

・チップは10枚。

・チップ1枚は自分の借金額の10分の1。

・勝負は10ターン。

・1ターンごとの参加費はチップ1枚。1度に賭けられるチップは5枚まで。

 

五十嵐「用紙と引き換えにこのようなボードをお渡ししますので、ゲーム中掲示してください」

 

早乙女(私の借金は5000万…ということはチップ1枚500万)

 

早乙女(この計算でいくと…アカギは1枚3100万円!)

 

早乙女(この差がどう影響するのか…)

 

五十嵐「なお、最後に忠告しますが、我々はあなた方に一切の助言や手助けは一切行いません」

 

五十嵐「そしてそれは『イカサマ』も同じ…勝負の世界では騙される方が悪いのです」

 

五十嵐「特定して指摘されればその時点で止めますが」

 

五十嵐「その場合でも過去の行為まで遡及して無効にはしませんのでご注意してください」

 

五十嵐「説明は以上です。皆様のご検討をお祈りいたします」

 

アカギ「…」スタスタ…

 

早乙女(C班は木渡、蕾、アカギ…)

 

早乙女(これだけはやりたくなかったが…!!)

 

早乙女「アカギ君…話があるんだけど…」

 

アカギ「……」

 

―数十分後―

 

早乙女「…」ガラッ

 

蕾「…」

 

五十嵐「お待ちしておりました」

 

早乙女(なんでこいつが…)「あなたがディーラーなんですか?」

 

五十嵐「ええ、この卓は一番の高級卓…、間違いがあってはいけませんからね」

 

五十嵐「生徒会書記である私が、責任をもって務めさせていただきます」

 

早乙女(クソ…まったくついてないな…)

 

木渡「アカギ!」

 

アカギ「…」

 

木渡「…待ってたぜ、お前を…」

 

五十嵐「お二方、ボードを机に置きご着席ください」

 

アカギ「…」サッ

 

早乙女「…」サッ

 

木渡(3億1000万…、噂は本当だったのか…)

 

早乙女「木渡君…あなた家畜票はどうしたの…?」

 

木渡「聞いてなかったのか?借金は自ら申告って言ってただろ」

 

早乙女「うん…」

 

木渡「俺は家畜でもなんでもねーが、ダチに借金したことにしてあんだよ」

 

木渡「そうすれば、生徒会から肩代わりとしてダチに1000万払われる。この4人じゃ俺が一番少額だからな」

 

木渡「ここで勝って返済免除すれば丸儲けってわけだ」

 

早乙女「随分と余裕があるのね…」

 

木渡「はっ、この集会で似たような企画が何回もあった。そのうち俺は3回勝った」

 

木渡「てめーら家畜に負けるわけねー、俺にとっては落ちてる金を拾うようなもんさ」

 

早乙女(こいつ…生徒会の前で、こんなこと言って…)チラッ

 

五十嵐「……」

 

早乙女(スルーか、あくまで自己申告ってことか…例のイカサマ不遡及もあるしな…)

 

木渡「つーか、お前ら生きてて恥ずかしくねーの?」

 

早乙女「…!」

 

木渡「人間扱いされずに無能のまま生きてんだろ?」

 

木渡「俺なら自殺してるね」

 

早乙女「…」ビキィ

 

木渡「ま、家畜らしく人間様に搾取されてろよ」

 

早乙女「っさいな!」

 

早乙女「あんたらも悔しくないわけ!?こんなに言われて!」

 

蕾「…別に」

 

アカギ「ククク…その無能の家畜から泣きわめいて逃げたってことか…」

 

木渡「…アカギてめぇっっ!!」

 

早乙女(…何のことだ…?)

 

――――数分後――――

 

五十嵐「今配ったのがそれぞれのチップです」

 

五十嵐「価値は各々の借金額の10分の1」

 

五十嵐「ギャンブル中は勝ちに意味はありませんが最終的な順位はその合計額で決まります」

 

早乙女(借金額は…、木渡1000万蕾2000万か…)

 

早乙女(ってことは1枚100万と200万…これは誤差と考えればいいな…)

 

五十嵐「皆様準備はよろしですか?」

 

五十嵐「それでは…2枚インディアンポーカー、始めさせていただきます」

 

五十嵐「まずは参加費1枚をお支払いください」

 

五十嵐「その後1枚目のカードを配りますので確認し場に伏せてください」

 

五十嵐「2枚目を配ります。これはご自分では見ずに頭の中で掲げてください」

 

木渡:9

蕾:3

早乙女:8

アカギ7

 

五十嵐「全員カードを確認しましたね?では二枚目も場に伏せてください」

 

五十嵐「それでは親の木渡様から賭けてください」

 

木渡「さてどうすっかな…」

 

早乙女(単純なカードの強さでは木渡が一番強い…、しかしブタなら他にマークをそろえている奴が居たら負ける)

 

早乙女(次に強いのがアカギか私…)

 

木渡「最初から降りてもつまんねぇな、ベット、俺のチップ1枚」

 

蕾「…コール、蕾1枚」

 

早乙女(…まぁ当然だな、チップの額が低いってことはリスクが少ないから勝負するのが妥当だ)

 

早乙女(…だが私たちは…)

 

アカギ「…コール、アカギ1枚」

 

早乙女「は?何言ってんのあんた!自分のチップの額分かってんの?」

 

アカギ「ククク…別に何を賭けるかは自分次第だろ…」

 

早乙女(…やっぱりこいつの考えはわからない…)「…フォールド」

 

五十嵐「宣言終了です。全員手札を開示して下さい」

 

蕾「3.6のブタです」

 

アカギ「…2.7のマーク」

 

木渡「3.9のマークだ。俺の勝ちだな」

 

五十嵐「木渡様の勝ちですのでチップはすべて木渡様のものです」

 

早乙女(言わんこっちゃない…)

 

次巡、蕾の親

 

蕾「ベット、蕾1枚」

 

アカギ「…フォールド」

 

早乙女(流石に降りたか…)「…フォールド」

 

木渡「…レイズ、木渡4枚」

 

早乙女(!!…上限賭け…)

 

蕾「…フォールド」

 

五十嵐「全員フォールドですのでチップはすべて木渡様のものです」

 

木渡「お前らそんなんじゃ勝てねーぞ?」

 

木渡「だからいつまでたっても家畜なんだよ、雑魚ども」

 

早乙女(……)ピキィ

 

3ターン目

 

アカギ「……ベット、アカギ1枚」

 

木渡「木渡2枚」

 

アカギ「…ふーん、弱気なんだな…」

 

木渡「これでいい、これは戦略だ」

 

木渡「お前のチップは桁が違いからな、俺のチップが無くなってお前のチップを吐き出すことになったら目も当てられねぇからな」

 

早乙女(確かにそうだ…、自分のチップがある限り、常に100万で3100万を得られる可能性がある…)

 

木渡「アカギ、お前のチップは確保一択だ、放銃しねーよ」

 

アカギ「ククク…なるほど、凡夫だな」

 

木渡「は?」

 

アカギ「…レイズ、アカギ3枚」

 

早乙女「!」

 

木渡(正気か、こいつ…合計5枚…1億5500万だぞ!これに負ければ逆転はほぼ壊滅…だが…)

 

木渡「木渡2枚」

 

早乙女(!…勝負に来た…!)

 

アカギ「…」

 

木渡「2.5のマークだ」

 

早乙女「!」

 

アカギ「ククク…来たぜ…ぬるりと…!」

 

アカギ「7.8のマーク…」

 

木渡「なにぃ!」

 

五十嵐「同役なので数字の合計数でアカギ様の勝利です」

 

 

アカギのツキも乗ってアカギの勝利。勝負の振り子はゆっくりとアカギと早乙女に振れ始めていた。

 

 

次巡 早乙女の親

 

 

早乙女(チップは残り6枚…そろそろ動かないと…)

 

早乙女「!」

 

早乙女(ここでこのカード…今の流れを考えるとここで…)

 

早乙女「早乙女1枚」

 

木渡「コール木渡1枚」

 

蕾「…フォールド」

 

アカギ「コール木渡1枚」

 

五十嵐「早乙女様、宣言はどうされますか…?」

 

早乙女(あの人生計画表とかいう紙切れ…ここで負ければ私の人生はあの通りになる…)

 

早乙女(そんなもの…くそくらえだ!)

 

早乙女(私の人生は私のもの…誰にも渡さない!)

 

早乙女(私は!私の人生を取り戻す!)「レイズ、…早乙女3枚!」

 

五十嵐(ほう…)

 

木渡「ふっ…アカギの後なら、降りると思ったか?ここで俺が勝てばお前は残り2枚だ」

 

木渡「コール…」

 

木渡「するわけねえだろ」

 

早乙女「…」

 

木渡「アカギ、早乙女…お前らグルだろ?」

 

早乙女「!」

 

アカギ「…」

 

木渡「さっきのアカギの5枚賭けは、なんらかの通しがあったからだろ?」

 

木渡「俺に5枚賭けさせてアカギのチップを出さざるを得ない状況にしたかったんだろうが…」

 

木渡「家畜のやることなんざ、人間様にはお見通しなんだよ」

 

木渡「フォールドだ」

 

アカギ「…フォールド」

 

五十嵐「全員がフォールドしたので早乙女様の勝利です」

 

早乙女「目ざといね…あんた」

 

早乙女「何にせよ、勝負に出てよかった。これで整った…」

 

木渡「…何言ってんだよ」

 

 

早乙女「私の手はブタだよ!ばああ~~っか!!」

 

 

木渡「なんだと…ブタで500万のチップ5枚を賭けたっていたのか!?」

 

早乙女「くくっ、まーね。3ターン目のアカギの勝ちは露骨だから気づくと思ったよ」

 

早乙女「私にとっても苦しかった」

 

早乙女「私のチップは1枚500万、勝負をするにはリスクが高すぎる」

 

早乙女「かといっていつまでも勝負しなければ参加費だけで破産する、なのにいいカードが来ないもんだから焦ったよ…」

 

早乙女「ま、あんたが間抜けで助かった」

 

木渡「調子乗りやがって、まだ1回勝っただけだろ」

 

早乙女「くくっ、いいのこれで。賭ける弾さえあればお前みたいなやつに負けるわけがない」

 

木渡「なんだと…!?」ガタッ

 

五十嵐「いう事もないですが暴力行為は禁止ですので」

 

木渡「チッ…」

 

 

6ターン目 木渡の親

 

五十嵐「木渡様はご自身のチップが尽きましたので、次から蕾様のチップで参加費を押し支払いください」

 

木渡「…」

 

木渡(現状俺の手持ちは蕾と早乙女チップが2枚ずつ、アカギチップを賭けることになったら最悪だ)

 

早乙女「…ベット、木渡3枚」

 

木渡「クッ…フォールドだ」

 

早乙女「ん?降りちゃうの?」

 

早乙女「ラッキー♪ブタで勝っちゃった♡」

 

木渡「なにぃ!?」

 

木渡(読みやブラフだけでここまでやれるか…)

 

木渡(ま、まさか…!)

 

早乙女「やっと気づいたか、お前さーほんと馬鹿だね」

 

アカギ「ククク…蕾って言ったか、あんた…」

 

蕾「…?」

 

アカギ「…スペードが垂直、右に傾けるとクラブ、左でダイヤ…」

 

蕾「!」

 

アカギ「前に滑らせるとハート…」

 

アカギ「ククク…そんな通しに気づかないわけがないだろ…」

 

木渡(こ、こいつら…、完全に…!!)

 

早乙女「何が家畜のやることなんて見え透いてるだよ」

 

早乙女「お前のやってることなんてもっとあからさまじゃん」

 

早乙女「知ってるぞ。蕾奈々美がいじめの標的になってて、お前らのグループが小間使いにしてるってな!」

 

早乙女「だから、組分けの後にアカギに協力してもらったってワケ、あんたと蕾がグルになってることぐらい想像つくわよ」

 

木渡「…」

 

アカギ「フッ…肝心のお前が無能なんじゃ蕾って女も迷惑だろうな…」

 

木渡「うるせぇっ」

 

アカギ「…やるにしてももっと他にいい方法なんかあるだろ…例えば机の下で指でお互いに教えあうとかな…」

 

早乙女「馬鹿!敵に教えることなんかないだろ!」

 

アカギ「…ククク…、教えたところでこいつは無能なんだ…」

 

早乙女「…くくっ、それもそうね」

 

木渡「な、なめやがって…」

 

五十嵐「…どうやらこの卓にいる全員が何らかのイカサマを行っているようですね」

 

五十嵐「全員のイカサマが同時にバレる…というのは想定外ですね…」

 

アカギ「…お互いががイカサマを指摘しなければ止める理由はない…」

 

五十嵐「…なるぼど、イカサマ有の状況で続行する…という事ですね」

 

アカギ「ククク…そもそもこんな通しも読めないようじゃ、勝っても面白くないからな…」

 

木渡「上等だ…」

 

五十嵐(フフフ…この卓は嘘にまみれている、嘘を制した者が勝利をつかむでしょう…)

 

蕾「…」(マークの7.8、これは)

 

木渡「蕾、勝負しろ!」

 

蕾「は、はい。コー…」

 

木渡「馬鹿野郎!違るだろレイズだ!少しは頭を働かせろよ!」

 

アカギ「…ククク、馬鹿だなお前。自分から強い手を教えて…」

 

早乙女「ほんっと馬鹿ね、まぁこの様子じゃブラフじゃなさそうだし…」

 

アカギ早乙女「フォールド」

 

木渡「こ、この…」

 

8ターン目

 

早乙女「ベット、木渡1枚」

 

木渡「く…」(現在はアカギ1億4900万、俺が1億300万、早乙女が9600万、蕾が4200万…)

 

木渡(参加費の額は違うが、トップはアカギ)

 

木渡(1位でなければ万単位の借金、つまり家畜…)

 

木渡(俺は飼う側の人間だ…!)

 

木渡「コール早乙女1枚」

 

早乙女「ふーん、コールね。ここで勝負ってことは相当自信があるのかな…」

 

早乙女「…なんてね」

 

木渡「なっ…!!」

 

アカギ「ククク…本当に自信があるんなら、俺のチップを賭けるはずだ…」

 

アカギ「だがここで勝負するてことは、マークは出来てて合計値は7くらいか…」

 

木渡「……!う、うるせぇ!は、早く出せ…」

 

早乙女「はい、残ッ念ッ!」

 

 

早乙女:2のゾロ目

 

 

木渡(…ここでゾロ目だと、なんでこうも続くやつの豪運…)

 

9ターン

 

木渡(残り2ターン…、俺は現状3位、このまま順位が確定すれば俺が5000万…)

 

木渡「蕾!…アカギのチップを賭けろ」

 

蕾「えっ…でも…」

 

木渡「いいからやれ!」

 

木渡「アカギチップがないと俺が負けるんだよ!ここでお前のチップを俺に移せ!」

 

木渡「てめーどうせ4位確定だろうが!俺の足を引っ張りやがって…!」

 

アカギ「……」

 

蕾「は、はい。コール、アカギ1枚…」

 

早乙女「フォールド…」

 

アカギ「コール、木渡1枚」

 

五十嵐「宣言が終わったので、手札を開示してください」

 

アカギ「…6.4のマーク…」

 

木渡「…!7.5のマークだ!勝ったぞ!1位だ!」

 

木渡「ざまあみろ!家畜の分際で!俺の勝ちだ!」

 

アカギ「そうかな…」

 

木渡「え?」

 

アカギ「…まだ、わからない…」

 

10ターン目

 

早乙女「やっと10ターン、さっさと終わらそう」

 

アカギ「…早乙女」

 

早乙女「ん?何よ」

 

アカギ「…灰皿もってないか…」

 

早乙女「はぁ!?あるわけないでしょ!馬鹿なのあんた!」

 

アカギ「ククク…冗談だ…」

 

木渡(なんだこいつらのこの余裕…)

 

木渡(アカギが8600万…、早乙女が1億3400万、俺は1億6300万)

 

木渡(あ!?ま、まて!こ…これなら!)

 

木渡(早乙女にアカギチップを全て賭けさせたうえでアカギが勝てばいい…)

 

木渡(逆もそうだ…、奴らは3億1000万の4位さえ回避できればいいんだ…)

 

木渡(来い!勝てる手…!)

 

木渡「…」

 

木渡(蕾に9のゾロ目、勝った!)

 

アカギ「…コール、アカギ1枚」

 

木渡(あ?アカギ1枚…)

 

アカギ「…早乙女、この勝負、俺は蕾が勝つことに賭ける…」

 

早乙女「…は?」

 

木渡(何言ってんだこいつら)

 

アカギ「……」

 

早乙女「ちっ、わかったよ、レイスアカギ3枚」

 

木渡「!」(蕾は9のゾロ目!勝ったら1億7000万!俺を抜いちまう!)

 

木渡「蕾降りろ!俺に勝つなんて許さねぇぞ!」

 

蕾「は、はい…」

 

早乙女「…」チッ

 

アカギ「……あんた」

 

蕾「……?」

 

アカギ「逃げることばっかなんだな……」

 

蕾「…!」

 

アカギ「勝利とは、リスクと等価交換で手に入れるもの…、俺はずっとそう考えてきた…」

 

アカギ「せっかくの勝ちの目を自ら潰している時点で、自分から家畜になりたいと言ってるようなもんだ……」

 

アカギ「ククク…灰皿持ってきてくれないか?一生家畜の蕾さん……」

 

蕾「!」

 

蕾「…うるさい!何にも知らないくせに……!」

 

アカギ「ククク……、そうかい…」

 

早乙女(こいつ、ほんとに高校生……?)

 

蕾(木渡は県知事の息子…、金も地位も約束されている)

 

蕾(家畜の私を木渡に逆らってまで助けてくれる人は存在しない…)

 

蕾(かといって学園をやめることも出来ない、両親を裏切ることはできない)

 

蕾(逆らうことは不可能……、でも)

 

蕾(今……この瞬間、地獄にいる私に一本の糸が垂らされた……)

 

蕾(この男が作ったチャンス……私は……)

 

 

蕾(人間だ!)「こっ、コール!」

 

木渡「!!……蕾おまえ!」ガタッ

 

五十嵐「暴力行為は望むようお願いしたはずですが?」

 

木渡「くっ…」

 

五十嵐「それでは手札を開示してください…」

 

アカギ「2.3のブタ…」

 

蕾「9のペアです」

 

五十嵐「これにて10ターン終了です!皆様お疲れさまでした!」

 

木渡(ち…結局1位は蕾、二位が俺か…)

 

五十嵐「それでは結果発表です。栄えある1位は…」

 

 

五十嵐「早乙女芽亜里様、獲得金額は1億6600万円です」

 

 

木渡「…は?」

 

五十嵐「2位、9200万円蕾奈々美様、3位、7400万円赤木しげる様」

 

五十嵐「4位、5800万円…木渡潤様」

 

木渡「はあああああっ!?」

 

木渡「何言ってんだお前!」

 

五十嵐「結果に間違いはありません」

 

早乙女「ぷっ…、くっくく…」

 

アカギ「……」タバコスパー←灰皿は五十嵐が持ってきた

 

木渡「……!?」

 

早乙女「あーはっはっは!こんなにうまくいくとはね!」

 

木渡「あ……?」

 

早乙女「まだ気づかないワケ?さっきの額を計算してみなよ」

 

早乙女「額がそっくりそのまま入れ替わってるチップがあるっしょ?」

 

木渡「……?」

 

早乙女「計算おっせー、もういいよ」

 

 

早乙女「これ、私とアカギの逆だから♡」

 

 

そう。早乙女とアカギの借金表示札入れ替わっていたのだ。アカギのチップが500万円で早乙女のチップが3100万になっていた。

 

木渡「ばっ、馬鹿な…そんなこと」

 

 

借金額はあくまで自己申告制。このルールを逆手に早乙女とアカギは利用したのだ。

 

早乙女「うそつきはあんただけじゃなかったんだよ……♡」

 

木渡「おい…!」

 

五十嵐「自分の前に掲げなければならないとルールはありませんので、順位に問題はないです」

 

木渡「おかしいだろ!こんなことしてお前らになんのメリットがある!」

 

五十嵐「貴方のしったことではありませんね、我々は皆様に再チャレンジの機会を差し上げているだけですから…」

 

アカギ「ククク…、とことんずれてんだな、お前…」

 

木渡「な、なにぃ!」

 

アカギ「損得で勝負しているから、目先の金にしか目が行ってない…」

 

アカギ「だから足元を救われた……」

 

早乙女「あははっ、騙されてたお前がアホなの!」

 

木渡「てめぇええっ!」

 

五十嵐「…」バチッ

 

早乙女「はぐっ!」

 

五十嵐「暴力行為は禁止…3回目です」

 

五十嵐「そんなことより貴方は3億1000万の負債を負いました」

 

五十嵐「返せない場合、家畜となります」

 

木渡「うああああああああああああ!!!!!!!」

 

早乙女「あー、終わった終わった、帰っていいですか?」

 

五十嵐「はい、お疲れさまでした」

 

蕾「あ、あの!」

 

早乙女「…ん?」

 

蕾「アカギさん!」

 

アカギ「…」チラッ

 

蕾「ありがとうございました!」

 

アカギ「…」スタスタ…

 

早乙女「……」(なんか言えよ…)

 

五十嵐「…」

 

五十嵐(ゲームは終了した。)

 

五十嵐(本来この集会は生徒の借金を生徒会に集約し、生殺与奪を握るためのシステム…)

 

五十嵐(わざわざ木渡とアカギをぶつけ、どちらかを大敗させる予定で結果は成功した)

 

五十嵐(だが…これでよかったのか……?)

 

五十嵐(赤木しげるは金を行動原理としない、言わば狂人)

 

五十嵐(会長…赤木しげるをこのまま逃がしてよかったのでしょうか…)

 

―二年華組教室―

 

早乙女「…そういうわけだからさ…その小切手私たちに返してくれない…?」

 

早乙女(ここで鈴井が簡単に返してくれるかどうか…なにせ2億6000万だ…)

 

鈴井「ああ、そういうことだったんだ。なんの冗談かと思ってびっくりしたよ。はい」

 

アカギ「…ククク、お前ほんとお人よしだな」

 

鈴井「あはは。何はともあれ、おめでとうアカギ君」

 

早乙女「…」(馬鹿正直なやつだな)

 

早乙女「じゃ私はこれで…」

 

アカギ「…早乙女、鈴井」

 

鈴井「ん?なんだい」

 

早乙女「…何よ?」

 

アカギ「…このあと時間あるか…?」

 

早乙女「…まぁ」

 

鈴井「あるけど…?」

 

アカギ「…飯でも食いに行こう…」

 

早乙女「…」

 

鈴井「いいけど、今月厳しくて…」

 

アカギ「心配すんな…それぐらい出してやるさ…早乙女がな…」

 

早乙女「はぁぁあ!?…あんた私に出させる気!?」

 

アカギ「ククク…冗談さ…ガキの飯代くらい俺が出してやるさ…」

 

早乙女「ラッキー!それなら行くわ!」

 

鈴井「…なんか二人とも、仲良くなったね…」

 

アカギ「ハハ…友達だからな…」

 

早乙女「え、別に…//」

 

鈴井「…?」

 

早乙女「そ…そうね…//」

 

アカギ「さぁ…行くか…」

 

こうして長い債務整理大集会は終わった。しかし、早乙女とアカギに新たな事態が起きるのはこの翌日だった。



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