栃木県の那須湯本温泉付近に存在するとある石。殺生石と呼ばれるそれは、平安時代に討伐されたという九尾の狐の化身「玉藻の前」が姿を変えたものとされる。その石を1人の少女がじっと見つめていた。
名を、「赤司九重」。桃色の長髪と物憂げな瞳が特徴の女性で、来月から高校生になる。彼女は中学の卒業旅行で単身、この地に赴いていた。石の前に膝を突き、両手を合わせる。自身の先祖に、高校生という人生の一つの節目を迎えられたことを報告するために。
しかしその時だった。目の前の殺生石の縄が解け、人1人分の大きさがある石が真っ二つに割れた。思いがけない事態を目にして九重の思考が真っ白になり、身体が固まる。理解が追いつかない九重を置き去りに、真っ黒なオーラと獣の唸り声のような不快音と共に、地面から「ズズッ……」と右腕が現れた。手のひらで地面を掴み、ソレはゆっくりと起き上がる。
余談だが、九重は幼少期から人ならざる存在が見える体質だった。他の人には知覚できないソレを、彼女は明確に視認出来ていたが、自分には関係のないものと断じて見て見ぬふりをして過ごしてきた。だが、今目の前で蘇ろうとしているものは、これまで彼女が目にしてきたものの中で段違いに邪悪で、恐ろしく、異質な存在だった。
九重はここで、生まれて初めて明確な“死”を予感した。彼女の直感が、身体中の細胞が自身に「逃げろ」と警鐘を鳴らすが、九重は動けない。
ゆっくりと立ち上がった目の前の怨霊は腕を真上に伸ばして「んん〜〜っ」と伸びると腕をダランと下ろして脱力し、
「はぁぁぁ〜〜〜〜〜やっっっっっっと目覚めることが出来ました!玉藻ちゃん完全復かぁぁーーーーーーーつ!!」
柔和で色気のある女性の声。先程までの、こちらを押しつぶさんばかりのプレッシャーは何処へやら、蘇ったその霊は首をグリグリと回すと九重の方に視線を移す。青い着物に桃色の髪、頭部に生えた2対の狐耳と大きな尻尾が目を引く女性がそこにいた。
「むむ?おやおやそちらの御方。驚かせてごめんなさいね、って……」
九重の方に気づいた妖狐の女性は「んん〜〜〜???」と何やら訝しんだ表情で顎に手をかけながら彼女の方に近づいていく。そのまま至近距離で九重を吟味するように見回し、「すんすん」と匂いも嗅いで見定める。数十秒ほど九重を見定めた彼女は「なるほど?」と首を傾げながら再び離れて黄色い瞳を向ける。
「ふむふむ、何やら懐かしい気配がすると思えば……貴女、もしや私の関係者だったり、あるいは末裔とかだったりします???」
「え、えっ……と……」
ここまで目にした事態に全く理解が追いついていない九重は妖狐からの問いにもうまく答えられずにいた。
「ああ。驚くのも無理はございませんよね。いきなり目の前に良妻賢母が現れたら固まっちゃうのも当然の事」
「は、はあ……」
「そうですね、改めて言うこともないでしょうが自己紹介を」
と言いかけたところで、乱入者が現れた。
「失礼、お嬢さんたち」
彼女らの隣で男性の声が響く。2人が揃ってその方を見ると、長身の男性が彼女らを見下ろして立っていた。両目を覆い隠す目隠しと、それによって逆立った銀髪が特徴の男だった。
「むむむっ!これは耳にこーん!と来ました♪その面貌、立ち姿、隠しきれない圧倒的強者のオーラ……間違いなく、貴方は数ある人間の中でも頂点に立つお方!」
「ははっ、君なかなか見る目あるねぇ。そう、僕は呪術師最強の五条悟。ちょっと色々あってこの場所に来てたんだけど……どうやら手遅れだったみたいだね」
五条悟が呪術師と名乗った瞬間、妖狐の雰囲気が一瞬強張る。その表情には、警戒と怒り、そして僅かに恐怖も混じっていた。
「私を……祓いに来たのですか?」
「まあ、ハッキリ言って仕舞えばそうなるかな。何せ特級仮想怨霊、化身玉藻前の封印が解けるとなると、僕らとしても放ってはおけないし。ただねえ……」
「玉藻の、前……?」
信じ難いと言う表情で九重は目の前の妖狐を見る。玉藻の前の伝承は九重自身もある程度知っている。平安時代に鳥羽上皇に仕え、最期は巨大な毒石、すなわち殺生石となって討伐されたと言う。その伝説上の人物が今こうして顕現している事実に、九重は戸惑いを隠せない。
五条は玉藻前と九重を見つめて一瞬言葉を止め、ゆっくりと息を吐いて続ける。
「気が変わった。君を祓うのはいったん止めようと思う」
「私が言うのも何ですが、呪術師ともあろう方がそれでいいのですか?」
ジト目で問いかける玉藻の前に対し、五条は「うん」とあっさり頷く。
「だって、君から邪念とか怨念とかそう言うの一切感じないし。もし君が本当に特級仮想怨霊だったならそこの女の子もとっくに殺されてただろうしね」
「お心遣い感謝いたしますわ、五条悟様」
五条に対して丁寧にお辞儀をする玉藻の前。彼も満足げな様子で頷くと、
「うーん、とは言えいくら何でも、君を野放しに帰るってわけにも行かないからなぁ。悪いんだけどこの後ちょっと付き合ってくれるかな?あ、そこの君も一緒に来てくれると助かる」
それに対して玉藻の前は「もちろんです」と即答。
「君も、それで異論はない?」
「あ……はい。大丈夫です」
流されるように九重も了承し、2人は揃ってその場から歩き出した。玉藻の前が優しく九重の右手を包んだ。
お読みいただきありがとうございます。
とりあえず現時点での解説。この玉藻の前は一応呪霊ですが中身はFateの玉藻の前です。能力などは追々明らかにしていきたいと思います。
そして本作のオリキャラであり主人公である赤司九重ちゃんですが、見た目のイメージは原神の八重神子で、能力なども大まかに頭に浮かんでます。
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1
五条悟の手引きで栃木県から東京へと移動した九重と玉藻の2人。郊外から離れた山奥にある古びた学校へと招かれた。
東京都立呪術高等専門学校、日本に2校しかない呪術専門の学校であり、同時に各地で活動する呪術師の拠点でもある。東京から郊外の山奥に建設され、表向きは宗教の私立学校という体をとっている。九重と玉藻はとりあえずは学生寮の空き部屋に倒され、しばらくは抑留と言う形となった。八畳ほどの広さがある一室に据えられたベッドで九重と玉藻が並んで座る。少し気まずそうに俯く九重と、室内に置かれた冷蔵庫やクーラー、水道などといった現代の設備を物珍しそうに眺め、いじっていた。玉藻が家電をいじる雑音が流れ続ける時間が数分間続いた。
「あの……」
不意に九重が重い口を開く。
「貴女は……本当にあの玉藻の前、さんなんですか?」
「ええ。如何にも私は玉藻の前その人でございます」
玉藻は九重の問いに静かに頷く。
「恨んでは……いないんですか?私たちのこと」
「恨む、ですか?いいえ全く。もう過ぎた話ですから気にしてません。それに、貴女を恨むのはお門違いというやつです」
「そんな風に、割り切れるものなんですね」
「ええ。それに、貴女からは何か特別な匂いがしますし。せっかく千年越しに出会えた方にそんな無碍なこと致しません!」
「ありがとう、ございます……」
九重は少し申し訳なさそうに目を伏せる。
「〜〜〜〜〜ハイッ!辛気臭い話はこれで終了です!それより貴女……いつまでも貴女という呼び方イヤですね。お名前は?」
「あ、赤司九重です」
「じゃあ九重様!どうせなら現代のこと私に教えてくださいます?蘇ったはいいのにこの時代の知識がまるで無いのですよ」
「私でよければ……」
その日は部屋に設置された家電や世間話、玉藻の前が過ごした時代よりも後の歴史を簡単に話し、2人は一夜漬けで語り明かした。
その翌日、2人は学内の応接室に通され五条悟と向き合って座った。
「すまないね九重。せっかくの旅行だったのにこんなところに連れ込んじゃって」
「い、いえ。こんな事態ですから」
先に五条が不可抗力であったとは言え、貴重な卒業旅行を中断させてしまったことを詫びるが、九重もここに来るまでに今回の事態がどれだけ重い状況なのかを彼から説明され理解していたため、納得した。その隣で玉藻が物珍しそうに辺りを見回している。道中でも、玉藻は現代の日本に驚いてばかりで、特に街を走る自動車を見て大きくはしゃいでいた。
五条も九重の返事に「ありがとう」と答えると、早速説明を始めた。
「じゃあ、先ずは2人の処遇について。結論から言わせてもらうと……2人とも高専に入ってもらう事になった」
五条の報告に九重と玉藻は「やはりか」と心の中で呟く。
「ちなみに、拒否権は」
「無い。悪いけど、これは強制なんだ」
九重の問いに五条はバッサリと答えた。その言葉に九重は少し俯く。
「もちろんちゃんと理由も説明するよ。順を追って話そうか、まず今の玉藻の状態なんだけど……どうも玉藻が九重に憑依してるに近い、言い換えると玉藻が九重を依代にしてるんだ」
呪霊とはそもそも人々の負の感情が蓄積されて顕現する存在である。そして玉藻の前は特級仮想怨霊、人間が作り出す共通の負のイメージを元に作り出され顕現する呪霊である。そして彼女も、本来であれば単独で顕現できる筈であった。しかし、五条の分析によると、どうやら今回玉藻が出現するにあたり1つ問題があったらしい。
「今の玉藻ってさ、不完全な状態だよね?」
本来、玉藻の前は九尾の狐である。しかし今の彼女は三尾、すなわち本来よりもかなり弱体化していると言うのだ。
「本来なら玉藻だけで顕現できるはずが、不完全故に現世の人間と一種の“つながり”がないと存在を維持できない状態にあるんだよ。わかりやすく例えると、パーツが足りなくて動かない車って言えばいいかな?」
特級仮想怨霊は人の負のイメージが蓄積されて出現する。今回の玉藻も、人々のイメージの蓄積が満ちた為に殺生石の封印が解かれ、出現に至った。しかし玉藻の前にはこのようなエピソードがある、「南北朝時代、会津の元現寺を開いた玄翁和尚が殺生石を破壊し、破壊された殺生石は各地へと飛散した」と言うものだ。この逸話から、蓄積された玉藻の前のイメージの中に「今の玉藻の前は不完全なのでは無いか?」と言うものが含まれた為に、今の彼女は九尾ではなく三尾しかない状態で顕現してしまったのでは無いかと言うのが五条の見解だ。
「だからあの時の玉藻は、ほっとけばそのうち消えてたんじゃ無いかな。しかし幸か不幸か、その場に彼女と縁が深い人物がいた。それが君だ」
そう言って五条は九重を指差す。あの日、玉藻の封印が解かれ権限する際に九重が居合わせた事で彼女を依代にし、現世とのつながりを得たことで玉藻は顕現に成功できたのだ。
「君の家系を調べさせてもらったんだけど、どうやら君の家系って元を辿ると玉藻の前に行き着くみたいなんだ。つまり君は、玉藻の子孫という事になる」
彼の言葉を聞いて九重は目を見開いて玉藻を見る。
「存在自体が弱くても、そこに何かしら縁があれば呪霊は存在を確立できる。あの場に玉藻の血を引く九重が居たから、玉藻はこうして顕現できているんだ」
「ああ、やはりそういう事でしたか……どうりで九重様か懐かしい匂いがするわけですね」
玉藻はゆっくりとため息をつきながら呟く。そんな彼女を他所に、五条は「続けるね」と話を始める。
「ここからが問題。弱体化してる、と言っても玉藻の存在はあまりにも脅威だ。これを放っておくとなると周りが煩くてね。『玉藻を消せ』ってみんな言うんだけど、玉藻だけ祓えば万事解決かと言うとそうもいかないみたいでね……」
そこで彼は一呼吸置き、続ける。
「少し話を戻すけど、九重は玉藻の一族って話はさっきしたよね?つまり、君は呪術師の家系なんだ。そこでさらに調べた結果、またとんでもないことがわかっちゃってね……九重は自分だと気づいてないだろうけど、呪術師の家系だけあって君の呪力量は人並みはずれてるんだ。それこそ呪霊一体分に相当するくらいの。で、何が言いたいかというと……九重がいる限り玉藻は消えないって事が判明したんだ」
解説すると、玉藻が九重を依代にした事で玉藻の呪力が九重の呪力に混じったのだという。これによって、玉藻が消滅しても玉藻の呪力のカケラが九重の呪力を食らって復活できる。つまり九重がいる限り玉藻は何度でも蘇るのだ。
「そんなわけで、上は九重を秘匿死刑にしろとか言い出す始末だ」
「し、死刑……?」
五条はやれやれとため息をつきながら告げ、九重は声を震わせた。
「ふ、ふざけないでくださいます!?九重様を死刑だなんて、そんなの認められません!!」
玉藻が立ち上がって眉間に皺を寄せて叫ぶと、五条は「当たり前だ」と唸るような声で同調した。
「そんな事僕がさせない。だから上に対してこう言ったんだ、『玉藻が完全復活したら赤司九重諸共消す、それまでは呪術高専で監視及び管理する』とね」
「そ、それって……」
玉藻が完全復活するまでの先延ばし、ではあるがこれは実質無期限の執行猶予である。
「それともう一つ、九重を高専に置きたい理由がある。それは九重の持つ生得術式だ」
呪術に関してまだ何も知識がない九重は首を傾げるが、五条は「その話はまた今度話すね」と前置きし、そのまま続けた。
「君の持つ術式は“気象操術”って言う、数ある術式の中でもぶっちぎりですごい能力の一つなんだ」
「気象、操術……?」
「分かりやすく言うと『天気を操れる』。まあ君の代だとかなり衰えてはいるみたいだけど、それでも力は折り紙付きだ。近いうちに間違いなく僕を超える術師になれる。呪術師ってさあ、人手不足が常で大変で大変で……そんな時にこんな貴重な存在を捨て置くのは僕にはできないよ」
彼の説明を聞いても終始困惑していた九重だったが、不意に問いかける。
「私も、皆さんの役に立てるって事ですか?」
「立てる立てる!なんなら君がいれば世の中一変するよ!」
少し考え込む九重だったが、やがて意を決した表情で五条を見る。
「分かりました、どのみち拒否権も無いんですよね……」
一呼吸置き、力強い口調で告げる。
「私は、呪術高専に入ります」
お読みいただきありがとうございます。今回の九重の呪術は完全オリジナル術式(の、つもり)です。詳細な技なんかは追々やっていきます。
感想などありましたら是非。
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3
九重の呪術高専への転入手続きは思いの外順調に進んだ。彼女の両親は呪術に関してある程度知識と心得があったらしく、「いつか九重には話そうと思っていた」らしい。荷物を纏めて出発する直前、母親が九重を呼び止めて家の蔵の中から一枚の丸い鏡を渡した。「これから貴女を守るもの」として託した一品。
「驚いたね……」
いつもの正装ではなくラフな私服姿の五条が思わずつぶやいた。サングラス越しに見るその瞳は驚愕に染まる。
「それは呪具“八咫の鏡”、そのオリジナルだ」
八咫の鏡とは3種の神器として天皇家が保管している一品だが、彼の話によるとあちらはレプリカらしく、本物は長い歴史の中で行方知らずとなっていたらしい。どうやら九重の家系が大切に秘蔵していたようだ。八咫の鏡は“万象の盾”とも言われ、あらゆる呪いを弾く効果があるらしく、階級は数ある呪具の中でも別格の特級に分類される。
「ではお父様、お母様。九重様は私にお任せくださいませ」
出発の時、玉藻が九重の両親に深々とお辞儀をし、先祖に対して慌てて腰を低くしている両親というシュールな絵面が出来た。
数時間後、高専に到着した彼らは校内のお堂のような建物に案内された。部屋は多くの愛らしいぬいぐるみで溢れかえり、最奥ではサングラスをかけた強面の男性が人形製作を行なっていた。
「遅いぞ悟、8分の遅刻だ。責めるほどでもない遅刻の癖を治せと何度も言った筈だぞ」
「責めるほどでもないなら責めないでくださいよ」
強面の風貌に相応しい威厳のある低い声が響く。夜蛾正道、呪術高専東京校の学長を務める傀儡術師だ。彼は今も人形製作をしており、そのどれもが彼の面貌には似合わない愛らしいデザインのぬいぐるみで、九重はそのギャップに衝撃を受けた。
「なるほど、呪骸ですか……しかしどれも良くできていますねえ」
その隣で、それらのぬいぐるみを一目見ただけで呪いのこもった呪骸と見抜いた玉藻が感心したように顎に手を当てながら呟く。
「その子たちが?」
「あ、はい……赤司九重です」
「お初にお目にかかります、玉藻の前と申します」
夜蛾が2人の方に視線を移し、彼女達は揃って自己紹介を行った。
「何をしに来た?」
突然投げかけられた問いに九重は「え?」と固まってしまう。
「君は何をしに、呪術高専に来た」
今一度、彼は九重に問いかけた。
「私が玉藻と出会ってしまったから、でしょうか」
「それで?」
「えっ……?」
次の瞬間、ぬいぐるみの一体が動き出して九重に飛び掛かる。間一髪のところで交わしたが、ぬいぐるみが壁に激突した瞬間に途轍もない衝撃が堂内に響く。
玉藻が牙を剥き出しにして応戦しようとしたが、五条が無言でその肩に手を触れ彼女を止めた。「これは必要なことだ」と目で訴え、玉藻も大人しく引き下がる。
「確かに、君が玉藻の前と出会い憑依されたことで、半ば無理やり呪術高専に引き込む形となった。それは事実だ。だがそれはきっかけでしかない、呪術高専に来ると決めたのは君自身の意志のはずだ」
「それは……」
「今一度問う。君は何をしに、呪術高専に来た」
九重はふと、過去を思い出していた。
幼い頃から、人ならざる存在が視える体質だった。友人にそれを何度も話したが、誰一人それを信じてくれず、いつしか彼女は孤立した存在となっていた。学校でも友達が居らず、教室の隅で本を読み、グループワークの班決めでは余り物になるのが当たり前。九重は周囲から浮いた存在となっており、誰一人友人と呼べる存在はいなかった。
だが、玉藻と出会って何かが変わった。初めて出来た、気軽に話せる同性の存在。これまで一人だった彼女にとって、既に玉藻は大きな存在となっていた。
「玉藻と、一緒に居たいから……」
「ほう?」
「玉藻は貴方達からすれば、祓うべき呪いなんですよね?でも、私にとってはそうじゃない。
やっと出来た、はじめての友達なんです!だから私は……玉藻とずっと一緒に居たい……!!」
決意と覚悟の決まった目で九重は宣った。その強い言葉は夜蛾の身体に芯まで響くものだった。
呪傀の臨戦態勢を解き、夜蛾は五条に2人を寮に案内するよう告げる。
「合格だ、ようこそ呪術高専へ」
差し出された手を、九重は両手で握りしめる。その背後で、玉藻は両目から大粒の涙を流して泣き崩れていた。
「こ゛ん゛な゛に゛も゛っ゛!私のこ゛と゛をおぼって下さ゛るなんでっっっ!嬉じくてなびだがとばりばぜんでずっっっ!!!」
そんな彼女に慌ててハンカチを差し出す九重。
「九重ざばっ!一生ついていぎまずっ!!」
「うん、うん。これからもよろしくね、玉藻」
ちょっと短めになりました、申し訳ない。
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