艦隊これくしょん 〜最新鋭の護衛艦は何を見るのか?〜 (三坂)
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序章
第一話 遭遇


ー彼女はなぜこの世界に招かれたのか…?そしてこの世界で思うこととは…ー


2020年8月15日

 

 

 

ーはは…、一杯くわされたな…ー

 

 

暗闇につつまれた石垣島周辺海域、そんな暗闇を照らすように一隻の船が炎を上空に巻き上げつつ燃えているのが確認出来た。民間船にないような大きな艦橋、艦首付近の甲板に備え付けられた単走砲が視界に映り、艦首横には119という艦番号がチラリと見える。

  

そう、第2世代DDでありながら19DD(あきづき型)の発展型でもある汎用型護衛艦「あさひ」である。海上自衛隊最新鋭の護衛艦として、そしてあきづきよりもさらにバランスが取れた艦艇として名を轟かせた彼女であった…、…が今はそんな誇りは微塵もなくただ音を立てて燃えている鉄の塊でしかない。

 

マストで風によって靡いていた旭日旗も、炎上によって燃え尽きており散りカスとして上空に巻き上げられて、その旭日旗を掲げていたマストも炎上により、じわじわと折れていき海中へと火の塊として落下していく。

 

 

 

ーまさか…こうしたのも私達をおびき出すためにだったとはね……ー

 

 

 

所属不明潜水艦による領海侵入の一報を受けて近隣を航行していた「あさひ」以下乗組員達は上層部からの指示を受けて現場に直行することに。だが所属不明だとしても検討はついており上層部や乗組員のほとんどが中国潜水艦による領海侵犯だとれ疑われ、またいつもの挑発行為だろうと思われていた。

 

…が今回は訳が違ったようだ…。潜水艦の出現している海域付近に近づいた直後、突如してレーダーに数発のミサイル接近を知らせる表示が示されたのだ。これを受けて「あさひ」は直ちに対空戦闘を開始、接近する対艦ミサイルの迎撃を試みる。

 

 

最初の数発はなんとか防げたものの、運悪く一発の対艦ミサイルが艦橋に直撃して爆発。これによって艦橋にいた艦長含む乗組員のほとんどが戦死、レーダーも破壊されたことによって精密な迎撃が困難になってしまうという事態に陥ってしまった。

 

そんな彼女に追い打ちをかけるように次々とミサイルや魚雷が襲いかかってくる。なんとか近接火器などで耐え凌ごうとしたが、レーダーを破壊されたことによって防衛能力が落ちた状態では満足に迎撃が出来るはずがなく次々と対艦ミサイルや魚雷が船体に命中していき、今に至る。

 

 

 

ー完全に油断してた…。ははっ…これじゃ護衛艦として失格かもね…。国民を護る以前に…彼らを護ることが出来なかった…よ…ー

 

 

 

船であるため、感情などはないはずなのだが人には聞こえないような声で燃え盛るあさひからふとそんな声が聞こえてくる。攻撃を受けて息絶えた乗組員が手にした家族写真が燃えていくのを見ながら諦めたような雰囲気を見せる。

 

 

 

ーごめんね…、…しらぬい…あきづき先輩…みんな…。私…ここまでだから…、日本の未来は…頼んだよ…ー

 

 

 

ポツリと呟いたその直後、艦内の砲弾やミサイルなどに引火したのか閃光を放つように大きな轟音を上げつつ派手に爆発。周囲に火の方や破片を飛び散らせながらゆっくりと海の底へと沈んでいくのであった。

 

   

 

 

 

 

2020年8月15日

護衛艦「あさひ」

石垣島周辺海域にて轟沈

乗組員全員戦死

 

 

 

 

 

 

 

  

 

 

それとは別世界

2020年8月15日

石垣島周辺海域

 

 

ダダダダダ!!!

 

 

静寂な海の音を遮るように激しい対空砲火が青空にむけて打ち上げられていた。その弾幕を縫うように黒い塗装を施されたアメリカ軍の艦上爆撃機「SBD ドーントレス」を彷彿とさせるような機体、いわゆる「深海棲艦」と思われる飛行物体が飛び交っており、弾幕を展開している主、輸送船を護衛している艦隊に襲いかかってるらしい。

 

 

 

?「っは……、くっ…」

 

 

その中の一隻、船団中央で航行している船は、旧帝国海軍の空母を連想させるような船体をしている航空母艦が敵の激しい爆撃を受けたせいでかなりボロボロで満身創痍になっているようだ。

 

 

? 機銃妖精「撃て撃て!!なんとしてでもこの瑞鳳を落とすわけにはいかんぞ!!」

 

 

?? 砲術妖精「おら!弾もってこい!!使えなくなった高角砲からも引っ張り出すんだ!!」

 

 

 

艦橋では航空母艦の一人でこの船の操艦をしている艦娘の軽空母「瑞鳳」のようだ。攻撃を受けすぎて満身創痍の状態になりつつもなんとか踏ん張りながら乗組員である妖精達とともに爆撃を凌いでいる。

 

 

 

皐月「瑞鳳さん!!待ってて今行くか…(ドドド!!)きゃぁぁぁ!?」

 

 

皐月 見張り妖精「くそ!!3番砲塔付近に被弾したぞ!!」

 

 

皐月 修理妖精「おまけに火も出来てます…!砲塔は使い物になりませんぞこりゃ!ひとまず消火よ消火!」

 

 

 

船団右舷で対空戦闘を行って、瑞鳳から一番近かった皐月が援護を行うため取舵で船団を左にきって接近しようとする。しかしその直後に爆撃を受けてしまいそれどころじゃなくなってしまう。

 

 

 

ーいつもこう…私が旗艦のときは必ずって言っていいほど空襲に見舞われる…。どんなに頑張っても…毎回被弾してみんなに負担をかけちゃう…。ー

 

 

 

陽炎「瑞鳳さん!!直上!!」

 

 

 

そんなことを思っていたその時、左舷側で戦闘を行っていた陽炎から悲鳴とも見て取れる無線が飛び込んでくる。それにつられてふと上空へと視線を移すと対空砲火の合間を縫ってきたドーントレスがお腹に500lbsの爆弾を抱えながら急降下してくるのが見えた。

 

 

 

瑞鳳「…ぁ…。」

 

 

曙「なにやってるのよ!早く回避しなさいよ…!!」

 

 

 

駆逐艦曙から早く退避しろという声が耳に入ってくるが満身創痍な彼女にそんな余力は全く無く、それにこのタイミングで回避したとしてもほとんど間に合う見込みはない。それを知っているのか瑞鳳は諦めたような笑みを浮かべてへたり込む。 

 

 

 

瑞鳳「……ごめんね…。…みんな…提督…」

 

 

 

すべてを受入れてそのまま没むのか…、残された者たちに申しわけないという気持ちを見せながらただただ爆弾が投下されていく瞬間を待っていた。周囲にいた仲間も慌てて援護しようと試みるが、敵の攻撃が強すぎる影響のため上手く対空砲火を集中出来ない。

 

 

 

瑞鳳「……っ…」

 

 

 

このままやられるんだ…そんな表情を浮かべていた彼女は思わず口をキュッと引き締めてしまう。ドーントレスも瑞鳳に狙いを定めて懸架していた500lbs爆弾を投下しようとするが……、…いや…女神様はそんな気分じゃなかったようだ。

 

   

 

ドゴォォォォォォン!!!

 

 

瑞鳳「……ぇ…?」

 

 

 

突如として轟音とともに、爆弾を投下しようとしたドーントレスに横からミサイルがぶっ刺さり激しい爆風に包まれる。何が起こったのか分からない瑞鳳はあ然とし、開いた口が塞がらない状態になっていた。

 

 

 

涼風「てやんでぃ…!?何なんだいまのは!?」

 

 

敷波「いやアタシに言われても…!なんか横から飛んできたもんがあの艦爆に当たったくらいしか…!!」

 

 

 

何が起こったのか理解が追いついていないのは瑞鳳だけでなくこの場にいた艦娘や妖精達も同様らしい。それもそうだあんな後ろから火を吹きつつ飛んでくる物体など自分たちでは知る由もないからだ。

 

 

 

阿武隈「っ!電探に新たな反応…!!」

 

 

皐月「もしかして新手…!?ただでさえこっちは精一杯なのに…!!」

 

 

阿武隈「いっいえ…!それが…、どうやら単艦で動いているらしくて…!むしろ…、あの艦爆を撃ち落とした飛翔物体の飛来方向です!!」

 

 

陽炎「っ…!?」

 

 

 

その直後、輸送船の後方に展開していた軽巡洋艦阿武隈の電探に新たな反応が映り込む。最初は新手かと思われたが単艦で行動しているのと、なによりあの飛翔物体の飛来方向のためそれは違うという結論が一瞬で打ち出される。

 

  

 

曙「はぁ…!?ならなんだっていうのよ!!味方にしてもこんな攻撃が出来る船なんて私知らないわよ…!」

 

 

 

瑞鳳「一体……何が……?」

 

 

 

 

 

 

 

あさひ「目標…撃破…?。なんか気づいたら撃っちゃったけど…、大丈夫…かな…?」

 

 

 

輸送船団から少し離れた先、そこには沈んだはずの護衛艦「あさひ」の姿がなぜかあった。しかし、艦内に乗っているのは人間ではなく、瑞鳳達と同じ妖精。そうなれば彼女達と同様に艦橋上部には一人の艦娘の姿が…。

 

その見た目は薄いピンクツインテール髪で白のセーラー服と緑色のスカート、胸元に赤色のリボンを纏って艤装をつけている少女はどこか瑞鳳達と同じような雰囲気を見せている。だがそんな状況を考える前にCICから無線が入って、報告が入る。

 

 

 

 

OPY-1妖精「新たな目標探知!!襲撃していた船団から狙いをこちらに変えた模様です!!」

 

 

あさひ「っ!数は!!」

 

 

OPY-1妖精「数は20機ほど!!先ほどの艦隊を襲っていた機体のようです!!種類は不明!ですが、攻撃機の可能性あり!!」

 

 

意識が戻った直後にいきなり戦闘に巻き込まれた彼女、そして気づけばシースパロー(ESSM)を発射して、瑞鳳に止めを刺そうとしていた機体を撃墜してしまったことに大丈夫なのかと不安な表情を浮かべていた。

 

しかしそんな考える暇を与えないと言わんばかりにCICの妖精から敵機接近との一報が飛び込む。慌てるように視線を向けた視線の先、微かではあるが黒い点々の粒が複数ほどこちらに向かってくるのが確認出来る。

 

 

 

あさひ 見張り妖精「あさひさん!ご命令を…!どうされますか!!」

 

 

あさひ「とりあえず状況把握したいけど…こうなったら流石に確認は無理か……。仕方ない…(スゥ)総員対空戦闘用意!!」

 

 

砲術妖精「了解!!対空戦闘用意!!」

 

 

 

あさひの命令を受けて艦内にいる妖精達が慌ただしく動き回って配置についていく。自分が知っている人間ではないので少々戸惑いを隠せなかったが今はそれを気にする余裕がなく速やかに指示を下しつつ艦内状況を確認していく。

 

 

 

砲術妖精「主砲、短SAM対空戦闘用意よし!!」

 

 

あさひ「了解…!!右対空戦闘!!CIC指示の目標!!」

 

 

砲術妖精「右対空戦闘!!CIC指示の目標!!」

 

 

あさひ「ESSM(発展型シースパロー)攻撃始め!!」

 

 

砲術妖精「前部VLS!!発射!!サルボー!!」

 

 

 

対空戦 妖精がミサイルの発射ボタンを勢い良く押すと艦橋前部にあるVLSの蓋が開いて、轟音とともに艦対空ミサイルが炎を拭き上げつつ撃ち出される。

 

打ち上げられた艦対空ミサイルは進路を接近する敵機に進路を変えて向かっていく。最初は勢い良く接近をしていたが突如として敵艦から打ち上げられ、こちらに向かってくる謎の物体に怖気づいたのか慌てるように進路を変えて回避を試みているようだ。

 

しかしイルミネーターに誘導されている対空ミサイルから逃げることはほぼ困難。必死で回避を試みている敵機もあっという間に追いつかれていきバタバタと落とされていく。

 

 

 

ー…!!ー

 

 

 

敵機も何が起こったのか理解が追いついていないが、自分たちの撃破すべき優先目標だというのには変わりなくミサイルの迎撃を合い間縫って接近を試みる。

 

 

 

レーダー妖精「トラックナンバー01から012撃墜!!ですが013から020が更に接近!!」

 

 

あさひ「主砲砲撃始め!!敵を近寄らせないで!!」

 

 

主砲妖精「了解!!CIC指示の目標!!撃ちぃ方始め!!」

 

 

 

ミサイルの雨をなんとか凌いだ敵機に対して今度は62口径5インチ単装砲による精密な砲撃が襲いかかってる。たかが1基の主砲なのにもかかわらずそれを凌駕するような正確さでまるでハエたたきを連想させるかのようにはたき落とす。

 

 

 

見張り妖精「主砲の猛攻を抜けた機体がさらに接近!!」

 

 

あさひ「CIWS!!AAW(対空戦)オート!!」

 

 

 

辛うじて近づけた敵機も近接防御火器である2基のCIWS(ファランクス20mmバルカン砲)の猛攻を受けたことで蜂の巣状態になりながら墜落していくのであった。

 

 

 

 

陽炎「凄い……」  

 

 

 

あれだけいた敵機は見る影もなくなっており、阿武隈達はあ然とした表情で空を眺めていた。それもそうだろう、艦艇にとって最も脅威になりうる存在とも言える航空機がまるで赤子のように呆気なく落とされているのだ。

 

 

 

曙「なっ何者なの…、って報告の艦艇、左舷側に視認!!」

 

 

 

同じように呆気に取られていた曙であったが見張り妖精からの報告を受けて慌てるように一同は視線をそちらに向ける。どうやら戦闘をしていた関係か接近するような航路に変更にていたようで、あさひの全貌が明らかになってきた。

 

 

皐月「あんな艦橋、私の知る限りじゃ見たことも聞いたこともないよ……。というか見る限り主砲1基しか見えない…本当にあれで敵機のほとんどを撃墜したっていうの…?」

 

 

敷波「でも他に反応はないし…、あの船なのは間違いはないはずだよ…。ほら、能ある鷹は爪を隠すっていうじゃん。もしかしたら隠すように強力な武装載せてるのかも…。」

 

 

涼風「というかあの船は何者なんでぇ?雰囲気的にはアタシらと同じ艦娘みたいじゃない…。」

 

 

阿武隈「とりあえず呼びかけみよっか、接触しないと始まらないし…。っとその前に、瑞鳳さん大丈夫ですか…?けっこう攻撃受けてたけど…。」

 

 

瑞鳳「ふぇ…!?あっうっうん!飛行甲板とか対空火器はけっこうやられちゃったけど…積載物はなんとか無事だよ…!すくなめに載せてたのが良かったみたい…、それと機関は多少やられたから全力運転は難しいかな…!」

 

 

 

みんなが思い思いの感想を述べている時、神妙そうな表情を浮かべていた瑞鳳に気づいたのか阿武隈が心配そうな顔をしながら声をかける。一瞬驚いた瑞鳳であったが、彼女に感づかれないように作り笑顔を作ってなんとか誤魔化す。

 

 

 

阿武隈「そうですか…(ホッ)、もし瑞鳳さんにもしものことがあったら提督に私顔合わせ出来なくなるところだったよ…。」

 

 

瑞鳳「ごめんねぇ…(汗)心配かけちゃって…。」

 

 

阿武隈「ううん…!大丈夫…!瑞鳳さんも大切な仲間ですから…♪かけがえのない…ですね!」

 

 

瑞鳳「うん…♪(……(少し思いつめる。))」

 

 

阿武隈「…(瑞鳳さん…)。それじゃ…繋ぎますね…。(スゥ)こちらは日本海軍パラオ泊地所属、軽巡洋艦阿武隈です。そちらの艦名と所属をお聞きできますか?」

 

 

 

笑みに隠れるように思い詰めるような顔を一瞬見せた瑞鳳に対して少し気になったようだが、ひとまずは相手の確認を急ぐために無線によって不明艦によびかけていくのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『こちらは日本海軍パラオ泊地所属、軽巡洋艦阿武隈です。そちらの艦名と所属をお聞きできますか?』

 

 

 

あさひ「日本海軍…パラオ泊地…?それに軽巡洋艦阿武隈って……。」

 

 

 

敵機を撃墜し終わり対空戦闘用具を収めていたその時、少し雑音が混じりながらも恐らく襲撃を受けていた船団の船舶から無線が入り、こちらの艦名と所属を明かすように問われる。

 

 

 

ーどうゆうこと……?日本海軍は太平洋戦争で敗戦したときに完全に解体されているはず……、パラオ泊地だって今はパラオ共和国の独立によって無くなってる…。ー

 

ーそれに阿武隈という船舶は海上自衛隊にはあるけど…それなら護衛艦と言うはず……、たぶん旧日本海軍の軽巡洋艦なんだろうけど…、そんな船のほとんどは現存してない…。おまけにこの声の主は私と同じ女性…考えるほどわからなくなってくる…。ー

 

 

 

だが日本海軍やパラオ泊地、さらには軽巡洋艦阿武隈という単語を聞いて思わず首を傾げてしまう。日本海軍は太平洋戦争で敗戦した際にGHQによって完全に解体されており、パラオ泊地だって今は存在していない。

 

おまけに軽巡洋艦という艦種は彼女時代にはほとんど聞かない言葉であり、そもそも阿武隈は史実では太平洋戦争末期の1944年10月26日にネグロス島沖でアメリカ軍の爆撃を受けて沈没しているため、そんなことがあり得るはずがないのだ。おまけにこの阿武隈と名乗っている主は、声からして女性なのは確定。そのためあさひの頭は少しこんがらがりかけているようだ。

 

 

 

ー私が知ってる世界とは違う…そもそもここは私がかつていた世界線なの…?……いや…今は…ー

 

 

 

考えれば考えるほどわからなくなってくるが、ひとまずそれを考えるのは後にするか向こうと接触してからにしよう。そう踏んだ彼女は無線に手を伸ばす。

 

 

 

あさひ「申し遅れました…!私…日本国海上自衛隊佐世保基地所属、第2護衛隊群第2護衛隊の汎用型護衛艦『あさひ』と言います…!!」

 

 

 

 

 

 

 

海上自衛隊最新鋭の護衛艦として名を響かせた『あさひ』。彼女は『深海棲艦』というかつて自分のいた場所では存在し得なかった敵と人類唯一の希望として戦っている『艦娘』が存在しているこの世界で、何を思い、何のために戦っていくのか…?

 

 

 

 

 

 

 

 

これは…最新鋭の汎用型護衛艦でありながらも艦娘として目覚めた一人の少女が…戦う意味、そして自分の与えられた役目を全うするために奮闘する物語である…。

 

 

 

 

艦隊これくしょん

〜最新鋭の護衛艦は何を見るのか?〜    

 

 

 

OP アンサイズニア(ONE OK ROCKより)

 

ED  remembrance(幼女戦記 劇場版より)




第二話 パラオ泊地


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第二話 パラオ泊地 

突如としてこの世界に迷い込み艦娘として新たな物語を歩むことになった「あさひ」。


彼女はこれからどうなってしまうのか?


同時刻

 

日本海軍

パラオ泊地にて 

 

 

 

 

 

かつて大日本帝国海軍の重要な活動拠点として機能していたパラオ泊地。一時は独立したパラオ共和国となったが深海棲艦との戦争勃発によって再び日本海軍の活動拠点として、艦娘の反抗拠点として機能していた。

 

そのため沿岸には多数の艦艇が停泊しており、それは航空母艦クラスや戦艦クラスの大型艦を始めとして、巡洋艦や駆逐艦、更には基地への補給物資を運搬する輸送船も泊地の港に見を寄せている。

 

もちろんこれだけの艦艇となれば設備や施設は充実してなければいけないため、沿岸にはメンテナンスやある程度の修理を行うドッグや工廠が置かれ、内地には艦艇や航空機の燃料を貯蔵するタンクや資材を保管する倉庫。はたまた広大な滑走路や格納庫が置かれている。その関係か時折、訓練を行う戦闘機や偵察を行っている哨戒機が離着陸をしているようだ。

 

 

 

 

 

 

 

パラオ泊地

 

提督執務室にて

 

 

 

 

?「……」

 

 

 

とある建物の一室。扉に提督執務室と書かれている部屋の中では、黒髪短髪でいかにも若そうな男性が白い海軍士官の制服に見を包んで提督席に座っている。

 

彼の名は秋山賢太、ここパラオ泊地の提督であり海軍階級は中将。見た目の通り年齢は25歳という若さながら冷静な指揮や判断力、そして部下を思いやる心の持ち主でここの泊地に所属している艦娘達や海軍上層部からかなり厚い信頼を得ているようだ。

 

そんな彼であるが、黙々と報告書の整理を行っているようで机とにらめっこをしていた。いつもなら彼の秘書艦である瑞鳳が手伝ってくれるのだが、しばらくは輸送船団護衛のため留守のためなのと、そこまで書類が多くないため一人で作業を行っている。

  

 

 

秋山「さてと…報告書はこれでひとまず終わりだな…。瑞鳳が帰ってきたら休めるようにって思って一人でやってみたが…、流石に堪えたな…。とりあえず、気晴らしに散歩でもいくか。」

 

 

 

書類の整理をなんとか終えて、少し腕を回して方を解しながら外の景色に視線をむけて一休みしながら気晴らしに散歩でも出かけようと席を立とうとしたが…その前にどうやら来訪者が来たようだ。

 

 

 

コンコン

?「提督、霧島です。輸送船団からの報告が来ましたのでお伝えに参りました。」

 

 

秋山「おっ、霧島かー。丁度いいタイミングだな…。いいぞー、入ってこい。」

 

 

霧島「では、失礼します(ガチャン)。」

 

 

秋山の許可が降りたのを確認すると扉がゆっくりと開いて、このパラオ泊地で数少ない戦艦である霧島がメガネをクイッと上げつつ書類を片手に執務室へ入ってくる。

 

 

 

秋山「それで、なんかあったのか?」

 

 

霧島「そうですね…少しばかりあったようで…。まず、石垣島周辺海域で輸送船団が空襲に遭遇。これにより旗艦の瑞鳳さんが大破寸前までいき、皐月さんが小破したようです。ですが輸送船団は無事とのこと。」

 

 

秋山「マジかよ…。あの海域で空襲か…。潜水艦警戒のために瑞鳳を組み込んだんだが…それが裏目に出たな…。」

 

 

霧島「報告によればかなり激しい空襲だったようで…、脱落艦が出なかったのが幸いでしたね…。」

 

 

秋山「最悪本土に逆戻りだっただろうなぁ…。とりあえず帰ってきたら二人はまず入渠させないとな…。瑞鳳に関しては報告だけさせてしっかり休ませるか…。」

 

 

霧島「ふふ…♪相変わらず、秘書艦の瑞鳳さんには甘々ですね…♪おしどり夫婦って言われるのがわかる気がします…♪」

 

 

秋山「うっうるせぇ…。霧島まで言うようになったのかよ…。秘書艦なんだから心配して当然だろ?というかどの艦娘でもそうだし…、あとおしどり夫婦じゃないからな?」   

 

 

霧島「はいはい…♪」    

 

 

秋山「ってコイツ…わかってないだろ…(汗)。」

 

 

 

この雰囲気から見て通り、瑞鳳と秋山は他の艦娘よりも距離が一層近く、お互いを信頼していることが見て取れる。それもそうだろう、瑞鳳はこのパラオ泊地で秋山の秘書艦を務めており、いつも彼の側についてサポートをしている関係であるため、彼の部下である艦娘達や妖精達からは『おしどり夫婦』と呼ばれているようだ(当の本人たちは否定しているが)。

 

ちなみにこうやって瑞鳳が任務などで留守の場合は、大抵の場合霧島や重巡洋艦である鳥海が担当することが多い。やはり艦隊の頭脳である二人はこういった役職が得意なのだろう。相変わらずの提督からかい(パラオ泊地恒例行事)をしていた霧島であったが話が脱線仕掛けたことに気づいて話を流れるように戻していく。

 

 

 

霧島「って脱線話ししてる場合じゃなかったですね…(汗)。それと提督、もう一つ報告があるんですが…少し変なことが…。」 

 

 

秋山「変なこと…?そりゃどうしたっていうんだ…?」

 

 

霧島「それが…その空襲を受けた石垣島周辺海域で所属不明艦と遭遇したと…。現在は一応輸送船団で保護という形で同行させているようで…、どうすればいいのかという報告ですね…。」

 

 

秋山「所属不明艦…?どこの鎮守府所属かわからないのか?」

 

 

霧島「一応、阿武隈さんの問いかけには応じて艦名と所属を答えてくれたそうですが…。彼女達ではさっぱりわからないとのことで…」

   

 

秋山「わからない…?所属を答えているのにか?」

 

 

 

霧島の報告を聞いてどうゆうことだという表情を浮かべながら秋山は首を傾げる。本来であればどこの鎮守府や警備府か答えればだいたいの艦娘は把握できるはず、なのにそれを聞いていてわからないとなればかなり不自然だ。

 

 

 

秋山「ちなみになんて答えたんだ?」

 

 

霧島「無線の周波数が少し違うのか雑音混じりですが…『日本国海上自衛隊佐世保基地所属、第2護衛隊群第2護衛隊』とはっきり答えたそうです。」

 

 

秋山「佐世保基地は恐らく今の佐世保鎮守府だとして…、海上自衛隊はすでに解体されて国防海軍か日本海軍に名称は変わっている…。艦娘であるなら本来であれば日本海軍と答えるのが普通だが…。」

 

 

霧島「一応佐世保鎮守府の現在の艦隊を確認したのですけど…第2護衛隊群第2護衛隊という名前は一つもありませんでした…。」

 

 

秋山「ふむぅ……、ちなみに艦名も答えたんだろ?なんて言ってたのか?」

 

 

霧島「汎用型護衛艦『あさひ』と答えたようです。部隊名と艦名以外ではこちらの輸送船団とコンタクトが取れるためなのと深海棲艦と交戦していたことから敵の可能性はほぼ低いかと…。それよりも…」 

 

 

秋山「汎用型護衛艦……、その艦種が引っかかるな…。かつて存在した海上自衛隊では聞いたことがあるが…、艦娘でそんな種類は聞いたことがないぞ…。普通なら駆逐艦や巡洋艦などと答えるはず…。」    

 

 

 

艦娘でそんな艦種を聞いたことない秋山の頭にははてなマークが次々と出てくる。それもそのはず、彼の言うとおり艦娘の種類には汎用型護衛艦という名前はなく、ほとんどが戦艦や巡洋艦、駆逐艦などいうかつて大日本帝国海軍で存在したものとなっている。

 

 

 

霧島「ひとまずどうされますか…?特に抵抗する素振りは見せていませんし同じ艦娘なのは確かですから…。」

 

 

秋山「すぐに返答だ。その艦娘はうちで預かろう、上には俺から伝えておく。とりあえずみんなには今のところは黙ってておいてくれ。」

 

 

霧島「了解です。あっそれと忘れてましたがもう一つ…!これは阿武隈さんの推測なのですが…、恐らくその艦娘は防空型の軽巡(排水量5000t級の艦影:見た目が軽巡クラス)ではないかと言っています。」

 

 

秋山「防空型軽巡?そりゃまたピンポイントな推測出してきたな…。なんでそう言い切れるんだ…?」

 

 

霧島「それが…その輸送船団を襲撃した深海棲艦の攻撃機は通商破壊用の攻撃隊で合計30機ほどの編隊だったのですが…、そのうちの20機近い機体がその艦娘一人によって一瞬にして壊滅させられたと…。(ちなみに残りの10機は瑞鳳に載せられていた数少ない制空隊が迎撃)」

 

 

秋山「…は?まてまて…!!20機近い敵機を一瞬で…!!?秋月型でもそれくらいの航空機をはたき落とすのにいくら練度あってもそんなすぐには無理だぞ…!!」

 

 

 

まさかの衝撃的事実が霧島から発せられたことに、先ほどまで落ち着いていた秋山の顔が一瞬にして驚愕の表情に切り替わり思わず声が大きくなってしまう。いくら練度の高い秋月型のような防空駆逐艦でもそれだけの機数を全滅させるためにはかなりの時間がかかるし、なによりも単艦では難易度がかなり高い。それだけ、艦艇にとって航空機は脅威でありまともな戦闘機による護衛がなければ戦艦でさえも沈められてしまうというのは過去の対戦で日本が嫌というほど経験させられた事実でもある。

 

だがその「あさひ」という艦娘は一瞬にして敵航空隊の攻撃を蹴散らしてしかも自分に襲いかかった艦載機を返り討ちにしているのだ。水上艦艇として最も脅威とされている航空攻撃をほぼ無傷で…。

 

 

 

秋山「…ますますわからなくなってくるな…。霧島、先ほどの話は変更だ。念の為に陸戦隊に待機命令を出しておけ、それと基地航空隊にも即応体制、みんなには俺から説明する。」

 

 

霧島「わっ分かりました…!でも相手は艦娘というのは分かっておりますし…基地航空隊はともかく陸戦隊は必要ないのでは…?」

 

 

秋山「安心しろ、別に煮て焼くわけじゃないからな。一応さ、艦娘なのかそうじゃないかはさておき…資料や報告にない艤装…、いろいろ確かめたいことがあるからな…。」

 

 

霧島「その件も承知しました。基地航空隊と陸戦隊には待機命令と即応体制を出しておきます…!それと空いている艦娘を会議室に集める感じでいいですかね…?」

 

 

秋山「あぁ、それで頼む。俺はちょっと上と話してくるから。」

 

 

霧島「了解です…!」

 

 

 

霧島にテキパキと指示を出した秋山は軍帽を被りながら席を立ち、彼女に敬礼をしながら部屋を足早に出ていく。それを確認しつつ、霧島自身も与えられた役目を果たすために執務室でいろいろと準備に取り掛かるのであった。

 

 

 

 

 

 

瑞鳳「……と言うことです。」

 

 

 

それから数時間後、日が傾き始めオレンジ色になりかけている水平線を背に輸送船団はパラオ泊地へと進路を改めて取りつつ霧島からの指示を瑞鳳が読み上げていた。その間にも甲板応急処置が妖精によって行われていく。

 

 

 

阿武隈『つまり…可能な限り彼女の様子を観察しつつ何かあれば情報を送ればいいってことかな?』

 

 

敷波『んー、そうなんじゃない?実際あの子のことは分からないことだらけだし…。ついでに話とか聞くのもありだと思う。パラオに到着するまでに提督も情報が欲しいのかも、いろいろとねー。』

 

 

 

もちろん、船団の前方で阿武隈と並走しているあさひには聞こえないように違う周波数を使いながら会話をしている。実際彼女のことは分からないことだらけだしそもそも艦娘とは思えないような兵装やレーダーなども気になるのは彼女たちも同じ意見のようだ。

 

 

 

 

曙『とりあえず、今後はパラオ泊地に予定通り戻るってことでいいのかしら?』

 

 

涼風『それが無難っていうもんじゃねぇか?あとついでに話しながら情報を得たりとか。』

 

 

陽炎『まっそれが私達に出来ることじゃない?一応は警戒しておいて損はないけどおんなじ艦娘なんだし。』  

 

 

皐月『だね…!ボクとしてもその提案は賛成だよ…!!』

 

 

 

謎に包まれているあさひに対していろいろ聞きたいことがあるが、ひとまずは彼女を自分たちの司令官のいるパラオ泊地に連れて行くことで話が纏まる。そんな瑞鳳達が話し込んでいるのを知らずに一人艦橋上部に寄りかかりながら座っており神妙な表情で考えごとしていた。    

 

 

 

ー深海棲艦…そして艦娘……。明らかに私がいたかつての世界とは根本的に何かが違う…、確かに私は石垣島周辺海域で轟沈したはずだしこんな人間みたいな姿じゃなかった…。ー

 

ー…けど意識が戻って気づけば沈んだはずの私の船があるどころか女の子になってるし…おまけに艤装が乗っかってる…。阿武隈さん…?って子からは詳しいことはわからないけど…私達と同じ艦娘かもしれないって言われたけど…、正直ピンとこない…。ー

 

 

 

自分がいた世界では聞いたことがない希望の証である少女達『艦娘』、そして人物の敵であり世界を支配しようとする滅びの存在『深海棲艦』。この2つの単語だけでも彼女の頭はこんがらがりかけていた。しかも存在しないはずの日本海軍やパラオ泊地などのかつての連合艦隊の港としてかつてあった施設がなぜか存在しているということ。

 

 

 

ー最初はタイムスリップしたんじゃないかって思ってたけど……ー

 

 

 

明らかにかつていた世界ではないのは確か、なら過去の別世界にでも迷い込んだのではないかと最初は思っていたのだが、艦内の電子時計を見ても日付は2020年8月15日と表示されていた。時計が狂ってないことは確認済みなのでタイムスリップしたわけではない。なら彼女の頭に咄嗟に浮かんだ考察は一つ。

 

 

 

ー前、私の乗組員が本を読んでたときに話していた別世界のことなのかな…?いわゆるパラレルワールドみたいな感じで…ー

 

 

 

パラレルワールド…、それはある世界(時空)から分岐し、それに並行して存在する別の世界(時空)を指す。いわゆる並行世界と言ったほうがいいだろう。聞き慣れない言葉に加えて聞いたことのある地名や名前があることからあさひはそうじゃないかと踏んでいた。

 

 

 

ーいや…絶対そうだ…。というかそれしかない…!他に何があるっていうの…!じゃなきゃこんな現象の説明がつかない…!それにこの姿だって…!ー

 

 

 

瑞鳳『――あの…!あさひさん!』

 

 

あさひ「ひゃい…!?あっえっと…どうされましたか…?」(アワアワ)

 

 

 

推測に浸かりかけていたあさひであったが、瑞鳳の呼びかけでハッと我に戻って少しおどおどしつつもどうしたかと尋ねる。

 

 

 

瑞鳳『自己紹介…まだでしたよね?私航空母艦の瑞鳳です♪阿武隈さんと同じパラオ泊地所属でこの輸送船団旗艦を務めています…!先ほどは助けて頂いてありがとうございます…!』

 

 

あさひ「そっそんな…(汗)。あれは気づいてたら撃ってたから別に大したことじゃ…」

 

 

曙『なーに言ってるの、そんなところで遠慮してどうすんのよ…。実際旗艦や輸送船団を救うっていう功績残してるじゃない…。あ、私は吹雪型駆逐艦18番艦の曙よ、そこの旗艦と同じパラオ泊地所属だからよろしくね。』

 

 

敷波『アタシは綾波型駆逐艦の2番艦、敷波だよー。まっこれからしばらくよろしく頼むよー。』

 

 

陽炎『陽炎型駆逐艦のネームシップ、陽炎よ…!とりあえずよろしくね…!』

 

 

皐月『睦月型駆逐艦、その5番艦の皐月だよ…!旧式だけど水雷戦と船団護衛は任せて…!』

 

 

涼風『白露型駆逐艦10番艦の涼風でぃ!!いろいろ不安かもしれないが困ったときはなんでも聞いてくれよな…!!』

 

 

阿武隈『最後は私かな…!改めて紹介するね…!長良型軽巡洋艦の6番艦…!阿武隈だよ…!この船団では瑞鳳のサポート役をしてるわ…!』

 

 

あさひ「あさひ型汎用護衛艦のネームシップ…あさひと言います…!えっと…私はこれからどうなるんでしょうか…?」

 

 

 

瑞鳳に続く形で、それぞれが自己紹介を簡単にすませていく。もちろんあさひも改める形で自己紹介を再びして今後の動向がどうなるのかを彼女達に尋ねる。

 

 

 

瑞鳳『えーっとですね…、とりあえずあさひさんには私達とともにパラオ泊地までご同行して貰います。先ほど言った通り、あそこがこの輸送船団の目的地ですし、なにより私達の所属する泊地で司令もいますから。』

 

 

あさひ「はっはぁ…。」

 

 

曙『あっ問題はないと思うけど変な行動はナシね?まあ、深海棲艦と交戦してるしあの件もあるから問題はないと思うけど…一応ね?』

 

 

涼風『まあでもそんな畏まらなくていいってことよ…!!なんかあれば遠慮なく言ってくれ…!お互い知らないことだらけなんだしな…!』

 

 

あさひ「あっありがとうございます…!」

 

 

 

今後はひとまず彼女達の提督がいるパラオ泊地に向かうという説明を受けたり、念の為に変な行動はしないようにというアドバイスを聞きながらあさひは真剣な表情を浮かべつつ頷いている。その様子を見ながらも陽炎と阿武隈が彼女と並走しつつ船体を事細かに見ていく。

 

 

 

陽炎「みたところ…、武装は単装の艦砲が一門と対空機銃らしきやつが2つしか見えないね…。後部の大きな箱型は航空機の格納庫…、その後ろにあるのが飛行甲板なんだろうけど…。」

 

 

阿武隈「あれじゃ航空機の運用は流石に無理があるよ…。さっき瑞鳳さんに確認したけど同じ答えだったし…、あの短さじゃ旧式の戦闘機でも離着陸は不可能に近いって言ってた…。」

 

 

陽炎「だよね…、戦闘機じゃないなら水上機かと思ったけど…。カタパルトはないし回収用のクレーンが確認出来ないところを見るにそれもあり得ない…。一体何を載せてるんだ…?」

 

 

敷波「見た目じゃとても強そうには見えないのは確かだろうねー。けどあんなのを見せられたら信じるしかないと思うけどなー。」

 

 

陽炎「…けどこんなことどうやって提督や上層部に説明するのさ…、提督は問題ないとしても上の人達が簡単に信じてくれるか……。」

 

 

阿武隈「そこはあの司令ならなんとかしそうだけどね…(汗)。でもびっくりしたよ…まさか輸送船団の護衛中にあんな子と遭遇するなんて……。」

 

 

敷波「アタシもだよー、しかもそれだけじゃなくて深海棲艦の攻撃隊をフルボッコしてるんだしー…。一体どんな艤装積んでるんだろ…。」

 

 

皐月「んー…それはやっぱ向こうについてからじゃないとわからないなー…。見て理解出来るかって言われたら微妙だし…。」

 

 

 

とりあえず観察はしているが、やはり見るのと一瞬の出来事では充分に把握出来ないようで細かいことはパラオ泊地についてから考えようという感じで話していた。そんな中、ふと皐月が気になったのかこんなことを口にする。

 

 

 

皐月「ところでさ、汎用型護衛艦ってどんな意味なんだろうねー?」

 

 

敷波「言われてみれば…、駆逐艦とか巡洋艦みたいな感じの名前じゃないからね…。見た目的には海防艦とかに近いような気がするけど…。」

 

 

陽炎「見ただけの武装じゃそうかもしれないけど…、大きさ的に海防艦は無理があるんじゃないかしら?私からすれば彼女は駆逐艦よりも一回り大きいっぽいし軽巡洋艦に近いんじゃない?」

 

 

阿武隈「確かに全長ではアタシ達軽巡に近いけど…、あそこまで武装は少なくないし艦橋も大きくないよ…?それにあの子みたいな隠し武装がついてるわけじゃないから…。」

 

 

陽炎「やっぱそっかー…そりゃそうだよね…。…こりゃかなり謎な子を拾ってきちゃったなー…(汗)。」

 

 

 

所属を聞いてもハッキリとはわからないし、艦種や艦名を聞いてもぱっとしない。それよりも自分たちにはない武装を戦闘で見せられたら余計に謎に包まれてしまう。そのため阿武隈達の頭の中にははてなマークが次々と浮かび上がっているのであった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー目標確認…、忌々シキ艦娘ノ輸送船団ダ。(ピピ)コチラ偵察中ノ潜水カ級ダ。輸送船団ヲ発見シタ。ー

 

 

ー了解シタ、合流スルマデ追尾監視セヨ。見ツカラナイヨウニナ。ー

 

 

ー了解(ピピ)。ー

 

  

 

だがそんな暗闇に包まれかけている海上を航行している輸送船団を密かに追尾しつつ潜望鏡を上げている潜水艦の姿が…。その姿はかつてアメリカ海軍の潜水艦であったガトー級と酷似した見た目をしているが塗装も完全に違う上に、どこか憎悪の雰囲気を密かに漂わせていた。

 

 

 

ーニシテモ呑気ニ航行トハナ。愚カナモノダ、見タトコロ空母モイルヨウダ…。今夜ハゴ馳走ニナルダロウ…フフフ…。ー

 

 

 

深海棲艦の潜水艦であるカ級、その哨戒に最悪なタイミングで引っかかってしまった瑞鳳達の輸送船団。彼らの魔の手が密かに迫る中彼女らは一体どうなってしまうのか…?

 

 

 

そして、あさひのさらなる……   

 

いや…本当の能力や真の実力が明らかになっていきます…!!

 

 

 




第三話 アスロック 攻撃始め





そういえばあさひについての設定載せていませんでしたね…(汗)。ということでこちらに書いておきます。
 


あさひ
髪色:ピンク
髪型:ショートヘアーでツインテール
瞳色:灰色
体型:スタイルはいいが、胸部装甲は駆逐艦並。(本人のコンプレックスだったりする)
身長:神風型とおんなじくらい
性格:大人しめで控え目、しかし戦闘となればそれが嘘のようにテキパキと動く。
モデルキャラ:kaoru様の春風実装前オリジナルキャラクターから、艦これ海上護衛戦記(ニコニコより) ミ62船団編より)



あさひ型護衛艦のネームシップ。海上自衛隊で最新鋭ともいえる汎用型護衛艦で、あきづき型を元に対潜戦闘を更に強化している。しかし対空、対艦戦闘も可能であり非常にバランスが取れている艦艇だ。

もちろん、それは艦娘として生まれ変わっても健在で強力な武装や装備を生かしてのちにパラオ泊地の救世主ともいえる存在になることを彼女はまだ知らない。


性格としては控え目で大人しめ、だが戦闘となればそんな彼女がまるで嘘のように、自分の利点を生かした戦闘を得意としつつ戦う。

ちなみに好きな食べ物は意外にも佐世保バーガーでそれを食べている時の彼女はかなり幸せそうに見える。


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第三話 アスロック 攻撃始め

  


パラオ泊地を目指して航行している瑞鳳達、そしてあさひを含む輸送船団御一行。
     







しかし…それを狙う悪魔の影が……


あさひ

CIC(戦闘指揮所)

 

 

 

OQQ-24妖精「…しかし…暇っすねー…。」

 

 

 

外であさひが瑞鳳達と話している中、艦内のCICではそれぞれの妖精達が持ち場の席に座りながら警戒任務に当たっていた。そんな中、対潜水艦警戒に当たっていた一人の妖精がそんなことをつぶやく。

 

 

 

攻撃指揮官妖精「こらそこ…!そんなこと呟く暇があるなら海中の警戒をしっかりしてなさい!ただでさえこの辺の海中データ不足してるんだから…!!」

 

 

OQQ-24妖精「了解っすー…(再び聞こえてくる反響音に耳を傾ける)。」

 

 

 

だがその呟きを聞かれていたのか、戦闘指揮所内を見て回っていた攻撃指揮官の妖精に注意されてしまう。しぶしぶと答えながらも再び真剣な表情で聞こえてくる反響音に耳を傾ける。

 

 

 

砲術妖精「いつの時代っていうのも、潜水艦は脅威なんだよなー…。」   

 

 

対潜妖精「当たり前っすよ、しかもこの世代の艦船魚雷は誘導システムがついてないからジャマーで誤魔化しが効きませんからね…。相手が熟練なら平気で遠距離から当てて来ますから…。」

 

 

OPY-1妖精「やっぱ時代が変わっていい兵器ができたとしても最終的には俺たちの練度で変わるってことだろ。」

 

 

対空担当妖精「でも航空機は正直いってカモですね、相手が相当な策士じゃなければ主砲と艦対空ミサイル、近接火器をうまく使えば航空母艦一隻分の艦載機を壊滅させることはできますぞ。」

 

 

OQQ-24妖精「…(お前らはいいよなー…、画面見ながら話せるんだし…俺はこうやって音とにらめっこだよコンチクs…)ん?」

 

 

みんなはそんなことを話せていいなーっと思いながら反響音を聞きつつスクリーンとにらめっこしていたOQQ-24妖精であったが一瞬画面に映り込んだ反応に気づいて首を傾げる。

 

 

 

OQQ-24妖精「…(何だ今の…一瞬だがなんか映ったぞ…?恐らく海中の渓谷みたいなところに身を隠してるっぽいが…、位置からして艦隊右舷側…この状況なら味方の可能性はないな…となれば…)(ビー!!ビー!!)!?」

 

 

 

一体何が映ったのか、そんなことを考えていた矢先にCIC内全体に響き渡るアラーム音が鳴り響き先ほどまであった何気ない雑談が一瞬にして緊迫した雰囲気に切り替わる。

 

 

 

攻撃指揮官妖精「OQQ-24妖精!!報告を…!!」

 

 

OQQ-24妖精「はっ!先ほどソナーに複数の聴音を探知!!水上艦艇ではないところをみると…!!恐らく潜水艦です!!」

 

 

攻撃指揮官妖精「この状況なら味方の可能性は低い…!それに仮に味方だとしても僚艦から報告が入るはず…!となればこれは間違いなく奴らの潜水艦ね…!しかも複数となれば…」

 

 

対潜妖精「ウルフ・パック戦術の可能性が高いってことか…!!こりゃ本格的な通商破壊部隊だな…!!というかやっこさんがなんでドイツ海軍が生み出した戦術知ってるんだ…!」

 

 

砲術妖精「そりゃ!アイツらはかつての世界大戦で戦死した兵士や船舶、その怨念の塊だからな…!!知ってて当然だろ…!」

 

 

攻撃指揮官妖精「直ぐにあさひさんにこのことを…「敵潜水艦群!!魚雷を発射していた模様です…!!数は4本…いや6本です!!右舷側から放射状に撃ってきました!!」もう…!?というかなんで発射を探知出来てないの…!!」

 

 

OQQ-24妖精「すっすみません…!なにせこの辺の海域データが不足してまして…」

 

 

攻撃指揮官妖精「それは貴方の訓練不足よ…!!直ちにこのことをあさひさんに伝えなさい…!!今すぐに…!!」

 

 

   

 

 

 

 

 

阿武隈「制空隊の回収、終わりました。」

 

 

瑞鳳「ありがとう阿武隈さん、みんな…♪やっぱ飛行甲板やられたのが痛かったですね…、けどなんとか日没までに回収終わったから結果オーライってやつかな……。」

 

 

 

あさひの対潜ソナーが潜水艦を探知する少し前、艦隊では制空隊の収容作業に追われていた。本来であれば瑞鳳に着艦させて収容させるのだがあいにく飛行甲板が破壊されて大破直前の損傷を被ったため戦闘機を海上に着水させて搭乗員妖精をそれぞれの艦艇で回収する作業を先ほどまでしていたようだ。

 

 

 

陽炎「ここからが本場ってやつなのよねー…。夜は潜水艦の連中にとって狩りをするには絶好のタイミング…。」

 

 

皐月「ただでさえこっちは輸送船団と瑞鳳の軽空母がいるから深海棲艦の奴らにとっては絶好の獲物だから気を抜かないようにしないと…。」

 

 

曙「喋る暇があるならしっかり警戒しなさいよ。もうすでに現れて私達を尾行してるかもしれないんだし。」

 

 

阿武隈「怖いこと言わないでよー…、曙さん…。」

 

 

あさひ「…(…夜か…、なんか好かないのよねぇ…。元々夜の海は好きじゃないっていうのもあるけど……なりより石垣島周辺海域でのあの出来g…)。…っ!」

 

 

 

瑞鳳達が潜水艦に対していろいろと話しているのを聞いていたあさひはふと自分が沈められたあの戦闘を思い出して眉を細めていた。一体あれはなんだったのか…、それを考えていた矢先、何かを感じ取ったのか慌てるように艦内に指示を出していく。

 

 

 

あさひ「機関第三戦速!!面舵一杯!!」

 

 

涼風「てやんでぃ!?あさひさんどうしたって言うんだぃ…!!」  

 

 

皐月「しっしかもあの短時間で加速って…、あさひさんどんなエンジン積んでるのさ…!!」

 

 

 

先ほどまでは並走するように足並みを揃えていたあさひが突如として速力を上げて面舵を取ったことに涼風が驚いて声を上げる。更に、自分達とは比べ物にならないほどの機関出力の瞬発力に皐月は思わず驚きの表情を浮かべていた。

 

 

 

あさひ「先ほど対潜ソナーに複数隻で船団に接近する潜水艦を確認!!しかも右舷側から魚雷を数発撃ってきてきます…!!」

 

 

阿武隈「っ…!?(まだこっちの対潜ソナーには引っかかってないのに……速すぎる……。)それは本当なのですね…!!」

 

 

あさひ「はい!間違いなくこちらのソナーに引っかかっています…!!しかも右舷側から放射状に…!」

 

 

瑞鳳「……分かりました!!艦隊面舵一杯!!接近するであろう魚雷と正対する形に…!相手は放射状に撃ってきているのですれ違う際には要注意を…!」

 

 

曙「ってちょ瑞鳳…!!いくら同じ艦娘だからってあんた初対面の相手の言うことを信用するっていうの…!?」

 

 

 

あさひの返答を聞いていた瑞鳳は少し考えてからすぐさま艦隊に回避運動を指示したことに曙が思わず声を上げてしまう。確かにあって数時間しか経ってない相手をいきなり信用するというのは流石に無理があるのだろう。それが例え、同じ艦娘であったとしても…。

 

 

 

瑞鳳「確かに曙さんの言うとおりいくらなんでもあって数時間でしかも見慣れない艦娘の言うことを信じるのは無理があるのかもしれない…。」

 

 

曙「なら尚更…!!」

  

 

瑞鳳「けど!だからこそ信用していいと思うの…!!だって…あのとき私を救ってくれた…なら…!」

 

 

陽炎「瑞鳳さん…。」

 

 

瑞鳳「艦隊一斉面舵!!僚艦との衝突には充分留意して!!それと魚雷の予測進路にも…!!駆逐艦の皆さんは対潜戦闘の用意を…!!」

 

 

「「はい!」」   

 

 

 

輸送船団は瑞鳳の指示で面舵を開始、来るであろう魚雷の進路から逸れる形で正対するよつに進路を調整する。その間にも駆逐艦のメンバー対潜戦闘の準備に取り掛かるために爆雷の用意に入る。 

 

 

 

あさひ「見張り妖精!すれ違う時に魚雷の種類を確認して…!!米海軍がかつて使ってた通常魚雷なら気泡が確認出来るはず…!!」

 

 

右舷見張り妖精「了解です…!!おまかせを!!」

 

 

左舷見張り妖精「しっかり見開いて隅々まで確認しますよ…!見張り妖精の視力を舐めないでくださいね…!」

 

 

 

船団が回避運動に入ったことを確認しつつ、見張り妖精に魚雷の種類を確認するように伝える。それに妖精が答えた直後、あさひの両舷を通過するように魚雷らしき物体が海中を横切っていくのが微かに見えた。

 

 

 

右舷見張り妖精「魚雷らしき物体を確認しました!!気泡は確認出来ず…!!恐らくはかつてドイツ軍が使用していた電気式魚雷、もしくは大日本帝国海軍が使用していた酸素魚雷のどちらかと思われます…!!」

 

 

左舷見張り妖精「こちらも同様です…!!気泡は確認出来ず…!他の魚雷も同様と思われる…!!」

 

 

あさひ「陽炎さん…!この魚雷は酸素魚雷か電気式魚雷のどっちですか!」

 

 

 

魚雷らしき物体が両舷を横切っていくのを確認しつつ、あさひは陽炎にこの魚雷はどちらのかと言うのを尋ねる。自身の左右を丁度通過していくのを確認しながら、陽炎は素早く妖精に確認を取る。

 

 

 

陽炎「水雷妖精!!この魚雷はどっちなのか分かる…!?」

 

 

水雷妖精「はっ!報告通り雷跡は確認出来ませんが…!!我が軍の酸素魚雷にしては速度が遅すぎます…!!ですからこの魚雷は電気式魚雷で間違いありません…!!」

 

 

陽炎「だって…!この魚雷は電気式魚雷だそうよ…!!」

 

 

あさひ「分かりました…!!ありがとうございます…!」

 

 

曙「というかなんであんたが頭にいるの!!相手は複数隻いんのよ…!!ここは私達に任せて下がってなさい…!!」

 

 

 

陽炎からの返答に答えている間にも、曙が自分たちよりも前衛に出ていることに思わずツッコんでしまう。いくら航空機を壊滅させたとしても相手は複数隻の潜水艦集団、単艦で尚且慣れない海域でまともに対抗出来るはずががない。

 

 

 

皐月「そうだよ…!もしなにかあってもいけないし…!!それに君爆雷投射機積んでないでしょ!」

 

 

あさひ「ええ…!確かに爆雷投射機はついてないですから爆雷攻撃は出来ないです…!」

 

 

涼風「なら尚更下がってたほうがいいってことだぜ…!!」

 

 

あさひ「いえ…!今転舵しては余計に対潜戦闘の陣形を乱します…、ならこのまま本艦は戦闘に突入したほうがいいかと…!」

 

 

曙「はぁ!?アンタさっきの話聞いてたの…!!いくら自信があったところで攻撃手段がなければ……。」

 

 

あさひ「…別に対抗手段がないとは言ってませんよ…!!」

 

 

敷波「それってどうゆう…。」

 

 

あさひ「まあ見ててください…!きっとこれを見れば私の実力が分かると思いますから…!」

 

 

 

彼女の言っていることがよくわからないのだろう、首を傾げている敷波に対して見ててと答えながら、あさひはCICに素早く的確な指示を出していく。

 

 

 

あさひ「対潜戦闘用意!!」

 

 

攻撃指揮官妖精「了解!!対潜戦闘用意!!」

 

 

対潜妖精「アスロック及び短魚雷発射用意完了!!いつでもいけます…!!」

 

 

OQQ-24妖精「魚雷発射反応は6つ!!それぞれ一発放ったところを見るに恐らく敵潜水艦は6隻いると思われます!!」

 

 

あさひ「敵潜水艦反応をターゲットAからターゲットFに設定!!AからBは短魚雷、残りはアスロックで仕留めます!!」

 

 

対潜妖精「了解!!アスロック及び短魚雷指定目標にセット!!」

 

 

OPY-1妖精「味方船団!全艦回避成功した模様です…!!現在脱落艦は一隻も確認されておりません!!」

 

 

あさひ「了解です…!!(スゥ)対潜戦闘!!目標前方に展開中の敵潜水艦群!!短魚雷及びアスロック 攻撃始め!!」

 

 

対潜妖精「発射用意…!!てぇ!!」カチ

 

 

 

あさひの攻撃始めという合図を受けて対潜妖精が発射ボタンを勢い良く押す。直後あさひの艦後部、格納庫より少し手前にある左右の隔壁が開いて彼女の対潜兵装である3連装短魚雷発射管がにょきっと姿を表していく。

 

 

シュパ!!

 

 

発射管が姿を現した直後、片舷1発ずつの両舷合計2発が音を立てつつ放たれてそのまま海中へと突っ込んでいく。海中に潜り込んだ短魚雷はスクリューの推力で動きながら本艦からの誘導に従ってそれぞれの目標へと突き進む。

 

短魚雷が放たれた直後に今度はVLSハッチが4セルほどが音を立てつつ開くと、轟音を響かせながら海上自衛隊版アスロック(07式垂直発射魚雷投射ロケット)がブースターを点火しつつ打ち上げられて散るように相次いで放たれていく。

 

 

 

涼風「なっなんでぃ…!?また噴進弾を打ち上げたぞ!」

 

 

曙「無茶よ!航空機を撃ち落とした奴じゃ潜水艦は撃沈できないわ…!!そもそも海中に届かないもの…!」

 

 

瑞鳳「けどあさひさんは何か策略があるんだよきっと…!!とりあえずはいつでもサポート出来る体制を維持しつつ船団や彼女を護ろう…!」

 

 

皐月「了解…!!」

 

 

 

今度は何をしているのか、そもそも艦娘達の装備にロケットで運ばれる対潜魚雷というものがないため混乱を隠せない一同。だが流石旗艦である瑞鳳は落ち着いた表情で僚艦に指示を出しながら陣形の再変更を行う。

 

 

 

瑞鳳「私と阿武隈さんは船団とともに退避…!駆逐艦の皆さんはあさひさんの支援をしつついつでも対潜戦闘を出来るようにお願いします…!!」

 

 

敷波「おーけ!駆逐艦の本領見せちゃおっかな!!」

 

 

陽炎「雷装型駆逐艦だってやれば出来るんだからね…!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー…回避…サレタ…ダト…?ソレニ…アレハナンダ…?ー

 

 

 

察知されにくい電気式魚雷を使用したのにも関わらずあっさりと回避されたことに驚きを隠せないカ級。それと同時にあさひから放たれた謎の飛行物体に首を傾げる。

 

 

 

ー被弾シタ…ワケデハナサソウダナ…。ー

 

 

ーマサカ 艦娘ドモの新型兵器カ…?ダガ爆雷デナイ限リ我々ヲ倒スコトハ困難ダ。ー

 

 

 

その間にもしばらく上空を飛行していた飛行物体であったが目標海域周辺に到達すると後部のロケットブースターが切り離され、超音速からパラシュートを展開し減速しつつ海中へとアスロックがゆっくりと落下していく。

 

 

 

ーパラシュート…?ナゼロケットノヨウナモノカラソンナモノガ……。ー

 

 

 

自分達が見たことがないような光景に思わず混乱の表情を隠せずにいるカ級達。パラシュートを切り離しつつもアスロックが海中に突入し、先端部から探心音を放ちつつ潜水艦群へと突き進む。

 

 

 

ー…探信音ダト?マサカ対潜ソナーカ…?ダガ…ナゼ探信音ガサラニ接近シテ…マサカ…!!ー

 

 

 

アスロックが海中に突入したとほぼ同じタイミングで聴音器に探信音が響いて来ることに気づいたようだ。その探信音が放ちつつも接近するかのような動きを見せていることに疑問を抱いていたカ級であったがすぐに血相を変えて仲間の潜水艦に指示を出す。

 

 

 

ー急速潜航…!!モーター全開イソゲ!!ー

 

 

 

異変を感じていたのはこのカ級だけでなく、他のカ級も同様に察していたらしく慌てるように急速潜航しつつモーター全開での逃亡を試みる。どうやらあのパラシュートで降下していた物体が対潜兵装ということを感じ取ったらしい。

 

キュィィィン!!!

 

 

モーター音を響かせながらも深海棲艦の潜水艦群は散るように潜航しつつ回避を試みようとする。しかし、アスロックや短魚雷から放たれた12式魚雷には、現代戦の基本とも言える誘導装置が組み込まれている。現代の潜水艦ですら沈められる対潜魚雷相手に、二次大戦の潜水艦が逃げ切れる訳がない。 

 

 

 

ークソ!!ナゼニゲキレナイ…!!ー

 

 

ーダメダ!!ドンナニニゲテモニゲテモ追イカケテクルゾ!!ドウナッテイルンダ…!!ー

 

 

 

一生懸命逃げようと下へ潜りつつ左右に動いているカ級を嘲笑うかのように12式魚雷はその距離をどんどん詰めてくる。探信音を放ちながら迫ってくる異質な魚雷となればいくら深海棲艦とはいえどかなりの恐怖だろう。

 

 

 

ー…ナニガ…ワレワレノナニガ間違ッテイタノカ…!!完璧ダッタハズ…!!…マサカ…、ワレワレハトンデモナイ相手ト闘ッテイr……ー

ドゴォォォォォォン!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

見張り妖精「6つの水柱確認!!恐らく命中は確実です…!!」

 

 

あさひ「CIC!!敵潜水艦の反応はどうなってる…!?」

 

 

 

アスロックや短魚雷が敵潜水艦に接近した正しくその直後に、海上に命中した際に発生する爆発反応を示す水柱が少し離れた先に6つほど姿を現す。見張り妖精からの報告を受けたあさひはすぐにCICに状況確認を行う。

 

 

 

OQQ-24妖精「少々お待ちを……出ました!!先ほどの潜水艦群の反応はなし…!!推進音も聞こえてきませんから…撃沈確実です!!」

 

 

あさひ「間違いはないんですね…!!」

 

 

OQQ-24妖精「はっ!!これは確定かと…!!」

 

 

あさひ「……対潜戦闘用具収め…!!」

 

 

攻撃指揮官妖精「了解…!!対潜戦闘用具収めます…!!」

 

 

皐月「敵潜水艦…反応無し…。それにあの水柱は…たぶん撃沈したみたい…。」

  

 

曙「……嘘でしょ…、あれだけいた潜水艦を一瞬で……。」

 

 

敷波「こりゃー…、一枚やられちゃったねー…。あの子の能力は予想以上なのかもしれないのかも…。」

 

 

 

少し離れた海域の海面から相次いで水柱が上がっていくのを見つつも皐月達は何が起こったのか理解が追いついていないようだ。それもそうだろう、軽巡洋艦や駆逐艦でも潜水艦一隻を倒すのにはかなりのリスクがいる。それは下手をすれば自身も撃沈されしまう可能性があるほど…、これが複数隻となれば一筋縄ではいかないはずなのだが……。

 

 

 

阿武隈「……呆気なく……敵潜水艦集団が……。」

  

   

 

だが現実はどうだろう?阿武隈のポツリと溢した言葉の通り、水上艦艇の最も脅威な存在である潜水艦集団があさひ単艦によってあっさりと壊滅されているではないか。敵潜水艦はほとんど反撃する暇もなく、奇襲されたのにも関わらず逆に返り討ちに合うという今までにないような展開。そりゃこうなるのも無理はないだろう。

 

 

 

瑞鳳「……ねぇ…あさひさん…」

 

 

あさひ「はい?どうされましたか…?」

 

 

 

驚きのあまり震える口調をなんとか抑えつつ瑞鳳が話しかけてくる。丁度対潜戦闘用具を収めたタイミングだったため周囲警戒を妖精に任せつつ瑞鳳の問いかけに答える。

 

 

 

瑞鳳「あさひさんって……一体……。」

 

 

あさひ「……。」

 

 

 

まさかそんな質問が飛んでくるとは思わなかったようで少しまいったような表情を浮かべつつも少し考え込んでいたあさひだったがすぐに顔上げて口を開く。

 

   

 

あさひ「んー……そうですね……私は……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あさひ「……私は海上自衛隊の最新鋭護衛艦「あさひ」、そして護るべきものを護るために戦う艦艇です…!!例え…どんな場所であっても…!!それが…かつていた自衛隊の役目でもありますからね…♪」

 

 

 

 

 

 

 

 

 







第四話 ようこそ パラオへ


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第四話 ようこそ パラオへ

深海棲艦の通商破壊部隊による襲撃を受けた輸送船団。


だが襲撃をものともせずにあさひは得意の対潜戦闘であっという間にその通商破壊部隊の潜水艦全隻を沈めて返り討ちにしてしまう。



これには一部始終を見ていた瑞鳳達は本当に彼女は艦娘なのかという衝撃をただただ受けるしかなかったのであった…。


8月18日

 

パラオ諸島近海 

 

 

 

阿武隈「間もなくパラオ航空隊の活動範囲に入ります。あと少しすれば味方戦闘機の直援を受けられるかと。」

 

 

瑞鳳「ありがとう阿武隈さん…♪(ふぅ…)これで制空権の問題はなさそうかな……。」

 

 

皐月「瑞鳳さんが派手にやられちゃったからねー。帰ったら提督にめっちゃ心配されそうー(ニヤニヤ)。」

 

 

瑞鳳「ちょ…///皐月さん何なんですかそのニヤニヤは…///」

 

 

皐月「別にー(ニヤニヤ)。」

 

 

敷波「そうじゃなくても長い間留守にしてたんだから二人でゆっくりしなよー。」 

 

 

瑞鳳「あぅ…///」

 

 

あさひ「……?ってレーダーに機影確認…!ってこれは…さっきまでとは違う……?」

 

 

 

あれから襲撃を受けることなく輸送船団を護衛していた瑞鳳達はようやくパラオ諸島近海まで帰ってくることに成功する。やはり本土からパラオの往復となればそれなりに時間や距離があるものなのだろう。

 

あと少しすれば味方防空圏に入り、味方戦闘機の直接援護が受けられるという安心感からか瑞鳳がふぅというため息を思わず溢してしまう。それは彼女だけでなく、他の子も同様のようで皐月と敷波がパラオ泊地恒例の行事である弄りタイムに入ってしまう。

 

弄られまくり、恥ずかしそうに頬を赤らめている様子を見て一体何の話だろうか…、という雰囲気を見せていたあさひであったがレーダーに映り込んだ複数の機影に思わず声を上げるが、今までの反応とは何かが違うようで思わず首を傾げる。

 

 

 

曙「あー、別に警戒する必要はないわよ。たぶん貴方のレーダーにはもう映ってるでしょうけど、それは敵じゃないから…♪(ドヤ)」

 

 

あさひ「…というと…?」

 

 

右舷見張り妖精「…!先ほど反応のあった機影、目視距離に入りました…!ってあれは…」

 

 

 

曙のドヤりながらの返答に思わず?を浮かべていると、見張り妖精が接近する機影を目視で確認したため速やかに報告を行う。それを受けて妖精とともに視線をそちらに向けたあさひの視線の先には、濃い緑色の塗装が施され機体には見慣れた日の丸マークをつけたレシプロ戦闘機が数機ほど編隊を組んでやってきていた。

 

 

 

右舷側見張り妖精「マジか…!!零戦が居がるぞ…!!生で見たのは初めてだぜ!!」

 

 

左舷側見張り妖精「こっちも確認した…!!すげぇ!マジもんの零戦だ…!!しかもあんなに飛んでいるなんて…!!」

 

 

手空きの妖精「「俺たちにも見せろよ…!!」」

 

 

あさひ「凄い……、ジェット機とはまた違った雰囲気というか…なんか新鮮ですね…。」

 

 

 

やはり生で零戦が見れることがよほど嬉しいのだろう、報告を聞くなり手空きの妖精が我先へと見張り台や甲板に飛び出てはしゃぎながら上空を通過していく編隊を見物している。もちろん、あさひも初めて見るため興味津々で眺めていた。

 

 

 

?制空隊 第一中隊 中隊長機「こちら大鳳制空隊、これより輸送船団の上空援護に当たります…!」

 

 

 

瑞鳳制空隊 第一中隊 中隊長「おぉ!大鳳の連中か!助かるぜ…!!あいにくこっちの瑞鳳は甲板をやられてしまってな…!」

 

 

大鳳制空隊 第一中隊 2番機「話は聞いてますよ!なにやら派手にやられてしまったみたいですね…!でもあとは私達に任せてください…!それと、提督さんが瑞鳳さんの分の艦載機新たに補充したそうですよ…!んで補充するならって新型の艦載機に切り替えるそうです!」

 

 

瑞鳳 攻撃隊 第二中隊 3番機「マジですかい!?提督太っ腹ですね…!!これは有り難いってものだわ…!!」

 

 

 

どうやら上空援護にやってきた機体は瑞鳳達と同じパラオ泊地所属で唯一の装甲空母といわれる大鳳、その艦娘の艦載機のようだ。零式艦上戦闘機52型、通称零戦とも言われるこの戦闘機は4機編隊で上空を周回しつつ周囲警戒に当たっている。

 

 

 

太鳳 制空隊 第一中隊 3番機「にしてもあれが太鳳さんの言ってた艦艇ですかね。船団護衛中に遭遇したっていう所属不明艦って。」

 

 

 

周囲しながらふと3番機の妖精がそう呟きながら向けた視線の先、そこには陽炎や皐月に左右を挟まれるように航行しているあさひの姿があった。やはり上空からというのもあるが、特徴的な艦橋や武装などで判別がしやすいのだろう。

 

 

 

大鳳 制空隊 第一中隊 4番機「ですね。特徴的だからすぐに分かりますって大鳳さん言ってましたけど、正しくその通りですよ。」

 

 

大鳳 制空隊 第一中隊 2番機「けっこう独特な艦橋ですよね…。それに武装もあまり無さそうですし…、本当にあれで20機近い敵機を返り討ちにしたのでしょうか…?」

 

 

大鳳 制空隊 第一中隊 中隊長機「このパラオ泊地で歴戦の瑞鳳さんが生で見たっていうんだ、確かだろうよ。それにこれは何人も目撃してるんだからな。しかし、こりゃ少し面白いことになったってもんだ。」

 

 

 

水上艦艇の脅威とも言える航空機、その集団による空襲の際に単艦で半数以上の敵機を叩き落とした艦娘。やはりそう聞かされれば気になるようで中隊長妖精も僚機とともに興味深そうに見物していた。大鳳の制空隊の援護を受けつつ輸送船団は平穏な時間を過ごしながら航路を進んでいると、今度は水平線の向こうから3隻ほどの艦艇が姿を現す。

 

 

 

鳥海「上空援護と並行して私、鳥海を含む3隻も本時刻より船団護衛に加わります…!パラオまではあと少しですから最後まで頑張りましょう…!」

 

 

瑞鳳「鳥海さん…!お久しぶりです…!護衛ありがとうございますね…♪」

 

 

睦月「やっほー♪睦月もいるにゃしよー♪」

 

 

皐月「睦月姉さん…!」

 

 

五十鈴「任務お疲れ様、阿武隈ー。いろいろたいへんだったでしょー?」

 

 

阿武隈「五十鈴姉さん…!うんー…大変だったよー…(汗)。帰ったらゆっくりしたい気分…(汗)。」

 

 

あさひ「えっと…、この方達は皆さんのお仲間…って感じですかね…?」

 

 

 

それぞれ久しぶりの再開で喜び合っている中、唯一話が追いつけていないあさひは不思議そうな表情を浮かべながら瑞鳳達に鳥海達のことを尋ねる。

 

 

 

鳥海「そういえば、貴方とは初めてでしたね…!高雄型重巡洋艦、その4番艦鳥海です…♪ようこそ、我がパラオ泊地へ…!」

 

 

睦月「睦月型駆逐艦、そのネームシップの睦月ですー♪よろしくねーあさひさん♪」

 

 

五十鈴「長良型軽巡洋艦2番艦の五十鈴よ。貴方が提督さんの言っていた艦娘さんね?あっ、自己紹介は大丈夫よ。名前は伺ってるからー。」   

 

 

陽炎「あさひさんには黙ってたんだけど、貴方のことで分かる範囲はみんなには伝えてたからねー。まっ変なことは伝えてないから安心して…♪」

 

 

あさひ「はっはい…」

 

 

 

そんなこんな話していると水平線の手前側に輸送船団の目的地であるパラオ泊地が姿を現す。やはり南太平洋の活動拠点だけあるようでかなりの港湾整備や工廠、水上機の格納庫やその奥に滑走路であるアイライ飛行場がチラリと確認出来き、湾内や湾外近郊には多数の艦艇が身を寄せるように停泊していた。

 

 

 

あさひ「ここが…パラオ泊地……。」

 

 

 

かつて日本海軍が保有していたパラオ泊地、それをこうやって生で見れることなどそうそうなかったためあさひは周囲を見渡して建物や艦船を一通り見て回っていた。そんなことをしている間にも輸送船団はパラオ湾内へと入っていく。

 

 

 

鳥海「輸送船団の皆さんは所定の港へお願いします。資材や燃料などの揚陸もありますからね。それには敷波さん、曙さん、涼風さんも同行してください。」

 

 

敷波「んー了解ー。」    

 

 

曙「わかったわ。」

 

 

涼風「がってんでぃ!」

 

 

鳥海「瑞鳳さんと皐月さんはドッグ入りを、お二方は損傷していますからね。特に瑞鳳さんは航空隊ともに消耗されていますからドッグ入り+機体補充ついでに新型機への更新のため、搭乗員の皆さんには太鳳さんの妖精に指導に入ってもらいます。」

 

 

皐月「おっけー!」

 

 

瑞鳳「了解です…!ですが…それだと報告とかは……?」

 

 

鳥海「流石に大破し掛けている艦娘を無理に来させるわけにはいかないっていう提督さんの配慮で、瑞鳳さんにはドッグでしっかりと休んでもらいます…♪代わりに報告は阿武隈さんにするように言われてるので。」

 

 

阿武隈「分かりました♪瑞鳳さん、後は私に任せてゆっくり休んでください…!」

 

 

瑞鳳「ありがとう、阿武隈さん…♪うん、お願いするね…!私は提督のご好意に甘えさせてもらうよ…♪あっそれと…あさひさんはどうされますか?」

 

 

 

一通り話を聞いたところで、ふと瑞鳳があさひのことはどうするのかと首を傾げながら鳥海に尋ねる。もちろん、それについても秋山から指示を受けているため頷きながら鳥海が再び口を開く。

 

 

 

鳥海「その件についても司令から指示は受けています、あさひさんに関しては阿武隈さんに同行してもらって執務室に行ってもらうことになりますね。詳しいことは向こうについてからになりますが…、」

 

 

あさひ「了解しました…!」

 

 

五十鈴「あっそれと念の為に貴方の艦内に陸戦隊の同行と乗船許可は貰えないかしら?ついでに技術妖精とか艦娘も…」

 

 

あさひ「その件についても了解です。こちらの乗組員には予め伝えておきますね。」

 

 

五十鈴「話が早くて助かるわ…♪船はドッグのある港にお願いね?後で提督が乗船したいそうだから。」

 

 

あさひ「そちらも継いで伝えておきます。っとそれでこちらからもお願いが……」

 

 

五十鈴「ん?何かしらー、不確定な兵装の弾薬を除いて食料とかは手配してるけど…?」

 

 

あさひ「あっいえ、先ほどこちらに来るときに、飛行場があったのがチラリと見えたので…、航空機の整備をしたいので着陸用と駐機のスペースだけをお借りしたくて…。」

 

 

五十鈴「ん?着陸用と駐機のスペースだけ?滑走路はいいのかしら?」

 

 

あさひ「はい、着陸用のスペースと駐機さえ確保していただければ問題ありません。」

 

 

五十鈴「…?んー…なんか気になるけど了解したわ。その件も提督と話したときに伝えてみて、あの人なら許可は出ると思うわよ。」

 

 

あさひ「ありがとうございます(ペコリ)。そういえば乗組員の下船許可はいつ頃出ますかね…?流石に艦内にずっと居させるわけには行きませんから…」

 

 

鳥海「ひとまず提督と話してみないとどうなるのかはわかりませんが…、問題がなければすぐにでも下りると思いますよ…♪」

 

 

 

いろいろと手続きについての話をしているうちに輸送船団はパラオ湾内に入港する。湾内には何隻もの戦闘艦が停泊しており、荷降ろし場には別の輸送船が丁度資材の揚陸を行っているようだ。ちなみに湾内に係留している艦船の間を縫うように小型艇が忙しく行ったり来たりしているのが確認できる。

 

 

 

あさひ 右舷見張り妖精 「これから俺たちどうなっちまうんだ?」

 

 

あさひ 左舷見張り妖精 「俺に言われても分かんねぇよ…、とりあえず、あさひさんに任せるしかあるまい…。」

 

 

 

あさひ乗組員の妖精達もこれからどうなるのかと不安な表情で一杯のようだ。今までは戦闘や警戒でそんなことを考える余裕がなかったのでそれが気分転換みたいな感じになっていた。しかしそれが無くなってしまえば、紛らわすものがないため不安になるのも無理はない。

  

 

 

あさひ 左舷見張り妖精 「ったく…ちとこりゃ凄いことになりそうだぜ…。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あさひ「接岸用意!!右舷側に接岸用クッションを展開してください…!」

 

 

あさひ 修理妖精「おっしゃ!野郎ども!モタモタするんじゃねぇぞ!コイツは新鋭艦なんだから傷つけるなよ!」

 

 

あさひ 修理妖精一同「了解!!(はい!!)」

 

 

あさひ 水雷妖精「私達も手伝うわよ!!手の開いてる人員は接岸作業に取り掛かって!残りは自分の配置を…!」

 

 

 

艦内や甲板では手空きの妖精達が慌ただしく行ったり来たりしていた。どうやらドッグのある埠頭に接岸するためのクッションを右舷に展開中のようで、船体横には大きめのクッションが等間隔で設けられている。その間にもあさひは徐々に埠頭へと接近、ゆっくりと接岸場所に停船することに成功する。

 

 

 

あさひ「とりあえず乗組員は全員船内待機、上陸許可が降りればそのつど伝えていくわ。航空隊も許可が出しだい離陸、飛行場にヘリを移動させる感じでお願い出来るかしら?」

 

 

あさひ 攻撃指揮官妖精 「了解したわ…!それと確か陸戦隊の乗船許可もあったわよね?そっちも問題はないわよ。」

 

 

あさひ「話が早くて助かるわ…♪でも異国の地みたいなもんだからみんなにはいい子にするように伝えて。」

 

 

あさひ 攻撃指揮官妖精 「そちらも問題はないです…!あさひさんも気をつけてね?まだここがどんな感じがわからないし。」 

 

 

あさひ「ありがとう…♪それじゃ、ちょっとの間艦を任せます…!」

 

 

 

攻撃指揮官妖精に臨時の指揮を委ねつつ、敬礼をしたあさひはタラップを利用してゆっくりと船から降りていく。降りていった視線の先、そこには霧島と秋山の姿と話のあった陸戦隊の妖精が…。もちろん彼もあさひの姿を確認しており相手が警戒しないようにいつもの優しい口調と笑みで語りかける。

 

 

 

秋山「あさひさんようこそ、我がパラオ泊地へ…!俺はここの提督をやっている秋山賢太っていうものだ。階級は中将だからお見知りおきを…!(手を差し出し)」

 

 

あさひ「はっはい…。よろしくです…。秋山…提督さん…?」

 

 

秋山「あっいやそんなに畏まらなくていいよ…!気軽に提督とか司令って呼んでくれたほうがこっちもやりやすいかな。それとこちらが…」

 

 

霧島「パラオ泊地所属、金剛型戦艦4番艦の霧島です…♪艦隊の頭脳として日々戦っております…!以後お見知りおきを♪それでこちらが今回乗船予定の陸戦隊の妖精さんたちです。」

 

 

パラオ泊地所属 陸戦隊第一中隊長「どうも、パラオ泊地所属の陸戦隊 第一中隊長です…!今回は念の為の乗船警備をさせていただきますね…!」

 

 

 

秋山と霧島が自己紹介を済ませ、乗船予定の陸戦隊の妖精との挨拶が終わったタイミングでドッグに入渠予定の瑞鳳と代理報告を行う阿武隈、その付き添いで敷波と鳥海も続いてやってくる。

 

 

 

瑞鳳「提督…!瑞鳳以下輸送船団、ただいま戻りました…!!(敬礼)。」

 

 

秋山「おう、ご苦労さんだな…♪しっかし派手にやられたもんだなー…(汗)。」

 

 

瑞鳳「ごめんね…提督…?私がもっとしっかりしてたらこんなことには…っわわ…!?」(頭に手を置かれる)

 

 

秋山「そんな暗い表情をするもんじゃないぞ?せっかくかわいい顔が台無しだしな…!それに今回ばかりは俺の計画ミスだから気にしなくていいぞ…(汗)。完全に制海権取れてるからって油断していた…。」

 

 

瑞鳳「てっ提督は悪くはないよ…!私が…(頭を優しく撫でられて大人しくなる)。」

 

 

秋山「とにかく…!この話はおしまいだ…♪ゆっくりやすんで直してこいよ…!また瑞鳳の卵焼き食べたいしな…♪」

 

 

瑞鳳「…えへへ…♪(提督の手…温かい…)」

 

 

霧島「コホン…!」

 

 

瑞鳳・秋山「「あっ…。」」

 

 

 

いい感じの雰囲気になってきたタイミングで引き戻すように霧島が少し大きめの咳払いをして、それに気づいた二人は一瞬目が点になった後に少し恥ずかしそうに慌てて距離を取る。

 

 

 

霧島「おしどり夫婦をするのは構いませんが、今はお客さん的な子がいるんですから慎むようにお願いしますねー?」

 

 

瑞鳳・秋山「「おしどり夫婦じゃない(ありません)!!」」

 

 

阿武隈「……(否定してるけど、そんな息ピッタリで言われても説得力のかけらもないんだけどなぁ…(汗))。」

  

 

あさひ「…?(何のことでしょうか…?)」

 

 

 

霧島の言葉に思わず反射的に否定した二人であったが、息ピッタリの返答のため説得力のかけらも微塵もなくそんな否定じゃ無理なんじゃないのかな…?…とそんなことを阿武隈はポツリと思うのであった。なんとか立て直した秋山は落ち向かせながら話を再開指せる。

 

 

 

秋山「とりあえず、瑞鳳と皐月はドッグでしっかり休んで直して来るんだぞ?輸送船団の報告は阿武隈と陽炎に任せておけ…!」

 

 

瑞鳳「…うん♪しっかり休んでくるね…♪(提督っていっつも優しい…、どんなに被弾しても笑顔で出迎えてくれて心配してくれる…。…だからこそ私は…いや…何考えているんだろ…///)」

 

 

皐月「おっけー…!!」

 

 

秋山「んじゃ、あさひさんは私達と泊地司令部の方へお願いします。いろいろとお聞きしたいこととかありますし、鳥海その間の事務は任せた。」

 

 

鳥海「了解いたしました…♪」

 

 

秋山「あぁ、頼む。それではこちらにどうぞ。」

 

 

あさひ「はっはい…!!」

 

 

 

こうしてなんとか瑞鳳達の泊地であるパラオに到着したあさひ。そこで彼女達の提督である秋山賢太と接触し、慣れない地に多少の困惑をしつつも彼についていき泊地司令部へ向かうのであった…。

 

 

彼女のいたかつての場所とは全く違って見えるこの世界、しかしそれは秋山達からすれば同様であり謎に包まれ高い戦闘力を有しているあさひのベールがいよいよ剥がれます…!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同時刻

パラオ諸島近海にて

 

 

 

?「んー…ここはどこかしら…?気がつけば横須賀のドッグじゃなくて洋上…しかも見慣れない姿…そしてまだ搭載していないはずの艦載機がありますし…。」

 

 

 

あさひがパラオ泊地の司令部と接触した頃と同時刻、パラオ諸島近海では単艦で航行している一隻の船の姿があった……。広い甲板を持っていることから航空母艦に見える船体、そして旧帝国海軍の空母かがとほぼ同じ全長を有してはいるが明らかに普通の空母とは違った甲板や艦橋を有している。更に艦首側の甲板には上空から識別出来る「83」とちう文字が…。

 

こちらもあさひと同様で見れない対空火器が甲板や船体の端っこ、艦橋前に置かれており甲板には零戦や紫電、烈風とは明らかに色も形も違いステルス塗装が施され日の丸マークがつけられたジェット機が何機か駐機されている。。

 

 

その艦橋上部には寄りかかるように茶髪ボブショートの少女がおり、服装は中折れ帽(色は赤と黒)と黒いトップスの上からピンクのチュニック風ワンピースを中に着て、上から背中の大きく開いた袖なしの赤いロングカーディガンを羽織っている。首元には青いリボンを身に着けており、黒のニーハイソックスで靴は灰色のブーツを履いているようで、中折帽のよこには「JASDE DDH183」という文字と海上自衛隊の表記が書かれており、耳にはイヤホンジャックをつけているのが確認出来た。

 

 

 

?「えっと…とりあえず太平洋上にいるのは地図で確認済みでして…、この辺から近いところといえば…パラオ諸島ですか…。」

 

 

 

航海士妖精から送られてきた情報を確認しつつここが太平洋上なら近くに島がないかと確認したところ、どうやらパラオ諸島があるらしい。このまま放浪してても埒があかないため、覚悟を決めたように彼女は真剣な表情を見せる。   

 

 

 

?「止む得ないけど…仕方ないね…!取舵一杯!!進路をパラオ諸島に向けます!!周囲警戒を厳にせよ!!」

 

 

 

彼女の指示に答えるように、取舵一杯で進路を変えてパラオ諸島へと進路を変えていくのであった……。

 

 

 

 

新たな出会いや迷い込んだこの世界…、そして懐かしき仲間との再会があることも知る由もなく…。




第五話 もう一つの世界


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第五話 もう一つの世界

瑞鳳達に同行する形でパラオ泊地に到着し、そこの司令官である秋山提督と接触することに成功したあさひ。


かつていた自分の世界とはどう違うのか…、そして彼女の進むべき道はどうなるのか…?




では「第五話 もう一つの世界」をどうぞ


パラオ泊地司令部

執務室にて

 

 

ガチャ

秋山「ささっ、入って入って…!」 

 

 

あさひ「おっお邪魔します…!」

 

 

 

秋山に案内される形で彼の執務室へとやってきたあさひ。扉を開けてもらい中に足を踏み入れた先には、少しオシャレそうなソファーがテーブルを挟む形で置かれており左手には書類を保管する棚が置かれている。そして、部屋の奥にはいかにも泊地司令官が座って作業をしていそうな席と机がが置かれているのが視界に入り込む。

 

 

 

あさひ「……(昔の日本海軍のお偉いさんが座ってそうな席だなぁ…。部屋の間取りとか物とかもそのまんまだし…)。」

 

 

阿武隈「あっ、あさひさんこちらに座ってください…♪」

 

 

あさひ「あっえっ…と…(アワアワ)。そっそれじゃお言葉に甘えて…(少し落ち着かないような様子で)。」

 

 

陽炎「んじゃ私はお茶入れてくるね…♪(戦闘の時は凄くハキハキしてたけど…そうじゃないとこんな感じなんだねー…。なんか別人みたい(汗)。)」

 

 

 

戦闘の時とはまた違った彼女の一面にお茶とかを用意しつつそんなことを陽炎は思ってた。こんなアワアワしている子が戦闘となれば想像以上の実力を発揮するなんて、あれを見なければ簡単には思えないだろう。

 

そんなこんなしているうちにあさひは少し慣れなさそうに腰をかけ、隣の席に阿武隈が座る。二人と正対する形でテーブルを挟んだ側に秋山と霧島がゆっくりと座り、陽炎が用意したお茶を受け取りながら本題のお話に入る。

 

 

 

秋山「それじゃ本題に入ろうか…。阿武隈、報告を。」

 

 

阿武隈「分かりました、まず今回の輸送船団の護衛任務結果について詳細の説明をさせていただきますね…!」

 

 

 

秋山に促される形で、阿武隈が頷きつつ詳細を纏めた書類片手に読みながら今回の輸送船団の詳細結果を説明していき、その話の内容を秋山は真剣な表情で聞いていた。

 

 

 

阿武隈「まず、今回の輸送船団の積載物に関してですが…。航空機用燃料及び艦艇用重油を始めとして、鋼材などを含む各資材、補充用の航空機といった感じです。燃料などに関してはこれでしばらくは大丈夫かと、航空機は量産体制の確立した零戦や天山、彗星を始めとしています。」

 

 

秋山「ふむ…、近いうちに大規模作戦を展開する予定は今のところないがあるに越したことはないだろう。それで、護衛艦隊の戦闘結果及び被害はどうだ?」

 

 

阿武隈「はい、今回の護衛については深海棲艦の通商破壊部隊の空母艦載機及び、潜水艦部隊による2つの襲撃を受けました…。被害は主に空母艦載機による空襲の方が多く…、瑞鳳さんが大破直前の被害を受けて多くの艦載機を喪失…、皐月さんも第三砲塔を大破させられて小破となっています。」

 

 

秋山「やはり空襲の被害が大きいか…、対潜用の航空機に振りすぎたのが響いたな…。ところで潜水艦部隊の襲撃も受けたのか?」

 

 

阿武隈「はい…空襲が終わったその日の夜…、提督宛に報告を済ませて、瑞鳳さんの制空隊の回収が終わった後に。合計で6隻の潜水艦による通商破壊部隊でした。」

 

 

霧島「潜水艦部隊の襲撃まで受けていたんですね…、全く…本土の制海権と制空権はどうなっているんですか…(ため息)。」

 

 

 

どうやら潜水艦部隊の襲撃を受けていたことは初耳のようで、そうだったのかという表情を秋山は浮かべていた。その隣では霧島が完全に確保されている本土近海で空襲と襲撃を立て続けに受けていることについて、一体上層部は何をしているのかという呆れた表情を浮かべているようだ。

 

 

 

秋山「このことは海軍上層部と大本営に直ぐに報告だな…。にしてもよく6隻の潜水艦から攻撃されて脱落艦が出なかったなぁ…。あっいや…みんなを信用していない訳ではないんだが…。」

 

 

陽炎「あー…そのことなんだけど…。非常に凄く言いづらくて……。落ち着いて聞いてくださいね…?」

 

 

秋山「なんだ?そんかかしこまった言い方で…、別に20機近い艦載機はたき落とした報告聴いてるから特に驚きはしn…「その襲撃してきた潜水艦隊はあさひさん単艦によって6隻すべて撃沈させられました…。あっちなみに私は手出しをしていません…」……は?(思考停止)」

 

 

 

陽炎が少し苦笑いの表情を浮かべつつ進言している様子を見ていた秋山はもうこれ以上驚くことはないと言わんばかりの雰囲気を見せながら身構えていた。…が…彼女の口から斜め上を通り越した報告を聞いて思考が一瞬停止してフリーズしかける。

 

 

 

秋山「…すっすまない…。この頃働き過ぎて疲れているようだ…、聞き間違いかもしれないからもう一回頼めるか…?」

 

 

陽炎「えっとですね…、先ほども申し上げた通り襲撃を仕掛けてきた潜水艦6隻の通商破壊部隊をあさひさん単艦で一瞬のうちに返り討ちにして撃沈しました…。確認は取れているので間違いはないかと…。」

 

 

秋山「……(開いた口が塞がらない)。」

 

 

霧島「てっ…敵潜水艦6隻を追い払った訳でけはなく…すべて撃沈……ですか…?しかも一瞬で……(これは潜水艦撃破記録更新ですね……)。」

 

 

あさひ「えっえっと…提督さん大丈夫ですか…?」←元凶

 

 

阿武隈「司令ー…霧島さーん…戻ってきてー…(汗)。」

 

 

陽炎「……(やっぱこうなるよねー…(汗))。」

 

 

 

あまりにも衝撃的事実のためか、秋山だけでなく霧島も似たような状況になってしまう。それを見て心配そうに声をかけるあさひ(←あなたがその原因ですよ)を横目で見ながら阿武隈や陽炎がなんとか再起動させてこちらに呼び戻すことに成功する。

 

 

 

秋山「…はっ!いやはや…これは失敬……、まさかとは思いましたが…ここまでとは…。流石というかなんというか…。」

 

 

霧島「本当に艦娘とは思えない実力ですね…。今の貴方を見てるとそうは思えないですけど…。」

 

 

陽炎「生で見た私達だって最初は何が起こってるのかわからなかったよ…。ただ気づいたら6隻全部の敵潜水艦が吹き飛んでただけだし…。」

 

 

あさひ「いや〜…(汗)。相手が旧大戦の潜水艦だから出来た芸当ですよ…、現代の潜水艦ならこうも行きませんし…。」

 

 

秋山「……そういえば貴方は彼女達と遭遇したときに【海上自衛隊】と答えていましたな…?(その言い方…まさかとは思うが…いや…そんなはずは…、だが前に本で読んだことがある…。もしやすると…)」

 

 

あさひ「はっはい…!そうですけど…ってそういえば私も遭遇して声かけられたときに阿武隈さんが言っていた【日本海軍】というのは…。そもそも、海上自衛隊は…いや日本はどうなって…。」

 

 

 

あさひから発せられた言葉、それを聞いていた秋山はふと士官学校時代に本で読んだことのあるとある内容を思い出す。一瞬それを否定するように首を振るがまさかという表情になりながら彼女にこんなことを問いかけた。もちろんその問いにあさひは答えたのだが、会話内容で日本海軍という単語を思い出して海上自衛隊…いやこの世界の日本はどうなっているのかということを尋ねる。

 

 

 

秋山「海上自衛隊は存在はしていたよ…かつてはね…。」

 

 

あさひ「かつて…って…どうゆうことですか…?」

 

 

秋山「…(ビンゴだな…、こりゃ当たりだ)。本当に艦娘や深海棲艦などを知らないのですね?」

 

 

あさひ「えっえぇ…、私がいた世界ではそんな敵勢力はいませんでしたし…艦娘だって存在は……。それに私は就役してからずっと海上自衛隊に所属していました…。」

 

 

秋山「……あさひさん、貴方は恐らくかつての貴方はこの世界の存在ではなく別世界…いや並行世界から来た艦艇ですな?」

 

 

あさひ「……っ…!?」

 

 

阿武隈「てっ提督!?どうゆうことですか…!?あさひさんがこの世界の艦ではないって…!」

 

 

 

彼の口から発せられた言葉がビンゴだったのか少し不安そうに先ほどまで聞いていたあさひの表情が一瞬にして張り詰める。やはりそうゆうことだったたかという秋山の考えに対して、話が追いつけてない阿武隈は慌てるようにどうゆうことか勢い良く秋山に問い詰める。

 

 

 

秋山「まあそう焦るな阿武隈…(汗)。簡単な話だ、もう存在しないはずの海上自衛隊を名乗っていること…、日本という地名は知っているのにこちらと話が噛み合わないところが何箇所もある…。」

 

 

陽炎「つまり何が言いたいのよ…?司令。」

 

 

秋山「艦娘でありながら見慣れない装備に武装システム…、だがかつて海上自衛隊が保有していた艦艇に酷似した塗装や見た目…、今までの話からしてそうじゃなければ説明がつかん……。そうですよね?あさひさん」

 

 

あさひ「まっまあ…、私も同じような意見ではありますね…。瑞鳳さんたちと遭遇した時から…、それと…先ほど海上自衛隊はかつて存在していたと話していましたが……もしかして……。」

 

 

秋山「……(フゥ…)、海上自衛隊は深海棲艦との戦闘によって壊滅的打撃を受けて組織としての活動を完全に停止…。以降は残存部隊は日本海軍や国防軍に吸収合併という形で消滅した…、もう20年前もの出来事ですが…。」

 

 

あさひ「……そう…ですか…。」

 

 

阿武隈「あさひさん……」

 

 

 

秋山の口から衝撃的な事実を話されたことを受けて、あさひは少し悲しそうな表情を浮かべつつ俯いてしまう。その隣では、阿武隈や陽炎が心配そうな顔で見守っており、霧島はメガネを少し上げてなんとも言えないような雰囲気を見せていた。

 

 

 

あさひ「……(それだけ激戦だった…ってことかな…。でも…日本の誇りである自衛隊が存在していないのは…少し悲しい…よ…。)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

秋山「…とりあえず俺たちが話せるのはここまでだ。こうして俺がパラオ泊地で提督をしてるのも先人たちの血の滲むような闘いや努力のお陰ってことさ…。」   

 

 

あさひ「そうだったんですか…。」

 

 

 

それから少しして落ち着きを取り戻したあさひは秋山から一通りこの世界の今に至るまでの話を聞いていたが、なんとも言えないような表情を浮かべてており、こみ上げてきた感情をなんとか抑えながら差し出されたお茶を勢い良く飲み干して落ち着かせる。それを見ていた霧島はそんな気分を紛らわすためだろう、話を少し変えて逆に今度はこちらから質問をしかえす。

 

 

 

霧島「そういえば、あさひさんは阿武隈さんたちの問いに答える際に汎用型護衛艦と答えたそうですが…。私達の艦種ではどの部類に入るのですかね…?」

 

 

あさひ「部類…ですが…、DDという英語を訳せばデストロイヤーになるのと…、私達汎用型護衛艦は主に護衛任務を主軸にしているので護衛駆逐艦……といった感じですかね…?」

 

 

陽炎「くっ駆逐艦って……、私よりも船体長くて軽巡洋艦クラスのサイズなのに…(汗)。」

 

 

阿武隈「あれで駆逐艦なんだ…、航空機を一瞬で蹴散らして潜水艦集団を全部撃沈してるのに…あれで……。」

 

 

秋山「深海棲艦が現れなかった世界では…船の技術は更に進化しているようですな…。それで、ここから本題なのですが…。あさひさん、我が日本海軍に所属してもらえないだろうか?」

 

 

あさひ「え…?私が日本海軍に所属…ですか?」

 

 

秋山「えぇ、実はあさひさんが瑞鳳達と遭遇した直後に連絡を貰いまして。すぐに海軍省や海軍上層部に折り合っていろいろと話してたんです。…まあ最初頭の硬い上層部はなかなか信用しなかったんですが…、偶然にも石垣島守備隊が目撃していたことからなんとか信じて貰えた形ですね…(汗)」

 

 

あさひ「なるほど…(まっ私が例に見ない艦娘だから仕方ないとはいえど……、やっぱどの世界でも上層部って頭が固いんですね…(苦笑い))。」

 

 

 

話を聞いているだけでもかなり苦労しているのがひしひしと伝わってくることから、あさひはなんかややこしいことにさせちゃったなという申し訳ない気持ちになりつつもどの世界でも上層部は頭の固い連中が多いことに改めて実感するのであった。

 

 

 

秋山「それで本来であれば、上層部に直接パラオ泊地に来てもらうかこちらから本土に出向く必要があるのですが…。生憎現在そのような余裕がなくてですね…。」

 

 

あさひ「余裕がない…ですか?確か制海権や制空権は掌握しているはずでは……。」

 

 

霧島「残念だけど現状そんな余裕がないの…、最初こそイケイケどんどんだったんだけど…深海棲艦側に今までよりも練度の高い連中が現れたことで各方面も手一杯な状況ってことかしら…。近いうちに大規模攻勢があるかもって話もあるみたいだし…。」

 

 

秋山「そんなところってことだ…。なにせここパラオはショートランドやラバウルと並ぶ前線泊地、いずれここも激しい激戦地になる可能性がある以上戦力を裂くのは得策ではないという上層部の判断だろう。だからしばらくはパラオ泊地で預かってくれとのことだ。だがもちろんただではなく日本海軍に所属させろという条件付きたがな…。」

 

 

あさひ「…つまり、パラオ泊地で預かる以上日本海軍に所属して貰ったほうがいろいろと都合が宜しいって…ことですね?」

 

 

霧島「そう思ってくれればいいわよ。あっでも無理にとは言わないわ…、じっくり考えてからでも…」

 

 

あさひ「…分かりました…!その提案…乗ります…!!」

 

 

阿武隈「そっ即答…!?」

 

 

陽炎「なんかいろいろと凄い子だね…(汗)。」

 

 

 

いきなり異国に飛ばされた上にいろいろと把握しきれていないため、慎重な答えが帰ってくると思っていた秋山達だったがまさかの即答に阿武隈と陽炎は思わず驚きの表情を浮かべてしまう。

 

 

 

あさひ「元の世界にはどっちにしろ戻れないでしょうし、お世話になる以上何もしないわけにはいきません…!何より妖精さんたちの不安を取り除く必要がありますからね…♪それに、日本海軍に所属したほうがいろいろな面で手続きとかがスムーズになるでしょうから…!」

 

 

秋山「君は思った以上に思い切りがいい性格なんだな…♪だがその心意気はしっかりと受け取ったよ……!では改めて…ようこそ…!パラオ泊地へ…!汎用型護衛艦「あさひ」…!我々は歓迎します…!」

 

 

あさひ「はっはい…!いろいろとお手間とかおかけするかもしれませんが…よろしくお願いいたします…!提督…!」

  

 

霧島「それではこれから本腰を入れなければなりませんね…!あさひさんに関する書類をあれこれ作成しなければなりません…!…というわけで提督…!今日は残業ですよ?」

 

 

秋山「ゑ…?」

  

 

阿武隈「あっ、提督がこの世の終わりみたいな顔してる…(汗)。」

 

 

陽炎「霧島さんって案外スパルタだからねぇ(汗)。」

 

 

あさひ「えっ…えっと…、なんかいろいろと申し訳ないです…(苦笑い)。」

 

 

こうしてなんやかんやありながらも暫定的であり正式という形ではないがパラオ泊地に、そして日本海軍に所属することになったあさひ。厚い握手を交わした先、彼女にはどんな未来が待っているのだろうか…?

 

 

そして…前回の最後に出てきたDDH−183表記の艦娘は何者なのだろう……?

 

 

 

 

 

そして…この世界であさひはどんな思いで生き抜いていくのか

…。





第六話 束の間の休息(ストーリー進展の関係でタイトルを変更しました)


(書いていた時系列についてですが
専用の回で新しく投稿します)


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第六話 束の間の休息

なんやかんやでパラオ泊地でお世話になることになったあさひ。

不安なことは多少なりともあるものの、ひとまずは海上を放浪しなくて良くなったためある程度一安心だろう…。



だが自分と同じようにこの世界に迷い込んだ艦娘がいること……


そして、パラオ泊地は秋山がゆう通り深海棲艦との最前線基地の一つ、のちに彼女はその洗礼を受けることになることを知る由もなかった。


8月20日 

パラオ泊地

湾内にて

 

 

赤道を超えたあたりにパラオ諸島は位置しているためか、暑い日差しが泊地全体を照らしつつある。そんな中でも定期的に輸送船団が港を出入りしており、時には対潜哨戒の艦隊なども出港しているようだ。そんな中、あさひはドッグにて定期メンテナンスを行っているようだが……。

 

 

 

あさひ 見張り妖精「よっしゃぁぁ!!久しぶりの陸地だぁぁぁ!!!」

 

 

あさひ 一部乗組員妖精「「おぉぉぉぉ!!!」」

 

 

あさひ 攻撃指揮官妖精「やかましいわよアンタ達!!はしゃぐのはいいけどもう少し節度を弁えなさい!!」

 

 

瑞鳳「だっ…大丈夫なんでしょうか…?(汗)」

 

 

あさひ「あはは……(汗)。久しぶりの陸地だから燥いでるんだと思うの……かな(汗)。」

 

 

 

あれから提督が霧島にみっちり残業させられた形ではあるものの、乗船許可などの様々な書類を作ってもらったため数日ぶりの下船許可があさひ乗組員に下りる。その影響か、今までの不安を吹き飛ばすかのように彼女の乗組員妖精達がはしゃぐように声を上げて攻撃指揮官妖精に思いっきり注意される光景がそこにあった。

 

本当にこれは大丈夫なのかいう瑞鳳の少し不安そうな表情にあさひは苦笑いしつつ眺めるしかできずにいたのだ。こんな感じではあるものの現在はメンテナンスと並行してあさひの搭載している武装についてのチェック、はたまた現時点で補給な可能な弾薬の確認を復帰した瑞鳳や工廠妖精とともに行っている最中らしい。

 

 

 

工廠妖精「とりあえず、あさひさん。貴方が搭載している武装についての確認をお願いできますか?」

 

 

あさひ「あっはい…!分かりました…!砲術妖精、例の書類を。」

 

 

砲術妖精「合点承知の助です!あさひさんに頼まれた書類は万全に用意いたしましたですぞ!」

 

 

あさひ「ありがとう…♪(受け取り)一応私が乗せている兵装や装備はこちらにすべて載っているのでご確認を。」

 

 

工廠妖精「了解です…!ご確認させていただきますね?」

 

 

 

CICの妖精達が作成した武装や装備についての書類を砲術妖精から受け取ったあさひはそのまま工廠妖精に手渡しで渡していく。それを受け取ると工廠妖精は真剣な表情で書類を一枚一枚確認して照らし合わせており、隣では瑞鳳が興味深そうに覗き込んでいた。

 

ちなみに書類には先ほど話した通りあさひが搭載している武装や装備などのスペックが書かれており内容は以下の通りとなっている。

 

武装

62口径5インチ単装砲(127ミリ)×1基

高性能20mm機関砲(CIWS)×2基

Mk.41 mod.9 VLS(32セル)×1基

搭載兵器

ESSM短SAM(発展型シー・スパロー)

07式SUM(07式垂直発射魚雷投射ロケット)

【32セルの内訳としては

ESSMが64発

07式SUMが16発】

90式SSM 4連装発射筒×2基(90式艦対艦誘導弾)

324mm3連装短魚雷発射管×2基

機関銃架(12.7mm重機関銃M2等などの銃架用)

 

 

各種レーダー

レーダー

OPY-1 多機能型×1基

OPS-48 対水上用×1基

OPS-20 航海用×1基

 

ソナー

OQQ-24

(艦首装備式+OQR-4 曳航式)

 

電子戦・

対抗手段

NOLQ-3D-2電波探知妨害装置

Mk.137 6連装デコイ発射機×4基

曳航具4型 対魚雷デコイ×1基

投射型静止式ジャマー (FAJ)×1基

自走式デコイ (MOD)×1基

 

SH-60K(哨戒ヘリコプター)など

 

 

 

 

工廠妖精「ふむ……、やはり見たことがない装備ばっかりですね…。ここまでの兵装は私も初めて見ましたよ…。これでもかなり長く本土で工廠妖精やっていましたが…。」

 

 

瑞鳳「ベテランの妖精さんでもわからないなんて…。それだけ特殊な兵装ってことなんだろうけど…。」

 

 

工廠妖精「でも彼女は間違いなく艦娘なのは確かですな。どこから現れたのかは不明ですが…妖精が乗っているのがその証拠ですし、なにより艦娘と同じ見た目をしています。」

 

 

砲術妖精「当たり前っすよ、あさひさんのこの姿を見て信用するなという方が無理ですし。それにこの人は嘘をつくことはしませんからな…!(ドヤ)」

 

 

あさひ「ちょ…砲術妖精さん…そんなドヤらないでぇ…。なんか凄くプレッシャー…ってん?」

 

 

 

工廠妖精の驚きを含む発言にドヤ顔を浮かべながら話している砲術妖精に対してアワアワするように視線を動かしていたあさひであったが、そのキョロキョロしている視界の中にこちらにやってくる秋山と霧島の姿が映り込んでいることに気づく。

 

 

 

瑞鳳「あっ提督…!」

 

 

 

あさひが気づいた後に瑞鳳も気づいたようで笑みを浮かべながら秋山のもとに駆け寄っていく。彼も彼女達に気づいたのか笑みを浮かべながら霧島とともに書類を片手にやってくる。

 

 

 

工廠妖精「おぉ、パラオ提督じゃないですかー。どうでしたか?彼女について調べるためにわざわざ本土からかつて海上自衛隊が保有していた艦船の書類を取り寄せたそうですが。」

 

 

秋山「あぁ、調べてみたところ当たりだったよ。何個か見たことない兵装があるが一部合致する名前があった。彼女がかっていたところ、つまり深海棲艦が現れなかった世界ではあさひのような最新鋭艦艇が作られていたんだろうな。」

 

 

工廠妖精「なるほど、信じがたい事実ではありますが…こんなのを見せられたら信じるしかありませんな。」

 

 

瑞鳳「深海棲艦が現れなかった世界線からあさひさんは……、これはもしかして何かの運命なのですかね…?」

 

 

あさひ「どうなのでしょう…(でもどうして私がこの世界に呼ばれたのかな…。誰がなんの目的で…)。」

 

 

攻撃指揮官妖精「あの、お取り込み中失礼していいですかね?」

 

 

霧島「ん?どうされましたか?」

 

 

 

いろいろと話している最中、ふと気になったことがあったのだろう?少しばかり黙って聞いていた攻撃指揮官妖精が口を開きながら質問を投げかける。一体誰がなんの目的でこの世界に招き入れたのか考え込んでいたあさひであったがその質問によって忘れてしまう。

 

 

 

攻撃指揮官妖精「糧食や燃料の補給は問題ないとしてでも…砲弾や誘導兵器の補充などはどうなるんですかい?聞いたところ艦娘優先で本土のほとんどの工場を稼働させているようだし、今の状況だと高価な兵器を研究開発する余裕はなさそうですよ?」

 

 

あさひ「あっそっか…!言われて見ればそうですね…、完全に忘れていました…。その辺とかはどうなんですかね提督さん…?」

 

 

秋山「まあそこの妖精の言うとおりだな…。本土の工場ではこういった太平洋各地の泊地や本土の鎮守府、警備府に所属する海軍や陸軍用の武器弾薬、航空機の生産で手一杯ってところか…。」

 

 

霧島「一応、本土に国防軍用の兵器工場はあるのはあるんですが…。現代兵器が効かないとなれば、どうしても艦娘などや軍用の兵器の生産が優先されるので…そちらに回ってくる資材とはは不定期なんですよ…。」

 

 

砲術妖精「やはりか……、まあ仕方ないといえば仕方ないですよ…。我々が登場するまでは現代兵器は悪く言えば使えない武器ですからな…。それにあさひさんが搭載している兵装の一部はこの世界ではまだ開発されてない奴も含まれていますから…。」

 

 

秋山「一応は上層部に話してはいるんだが…、やはり厳しいようだな…。だが国防軍の連中に護衛艦がかつて搭載していた誘導兵器の在庫をなんとか譲って貰ってこちらに運ぶ手筈を模索しているそうだが…。」

 

 

あさひ「そうですか…、やはり戦況が戦況ですからそうなるのも無理はないですよね…。」

 

 

 

やはり戦況が戦況のため、高価な現代兵器までに生産の余力を回すことはかなり難しいようだ。それに深海棲艦との戦争が始まってから効果のない通常兵器の生産はかなり減らされている関係か誘導兵器などの弾薬確保はかなりの難儀となっている。(そもそも今まであさひのような艦娘が現れなかったことも影響していたりするのかもしれない)

 

 

 

秋山「ひとまず今補給可能なのは高性能20ミリ機関砲…。これも同じタイプの機関砲弾はないから代用品で合わせるしかない…、燃料や糧食は問題なく出来そうだ。…だが肝心の誘導兵器はしばらく待ってもらう形にはなるだろうな…。」

 

 

あさひ「そんな申し訳なさそうな表情をしないでください…(汗)。突然のようなものですから無理はないですよ…、それでも用意出来るものはしっかりとしてくれてるんですから…!私としてはそれだけでも充分ありがたいです…!」

 

 

秋山「ははっ…(汗)。顔に出てたか…、こりゃ俺は隠し事が出来ないタイプだろうな。っとそういえばこのあと予定とか開いてるかい?」

 

 

あさひ「えっあっはい…!しばらくは補給やレーダー類のメンテナンスなので船は動かせないでしょうし…」

   

 

霧島「それなら、せっかくですし皆さんと顔合わせをしませんか?今丁度パラオ泊地所属の艦娘の皆さんが揃っていますから…♪」

  

 

瑞鳳「私とは別に護衛任務に出ていたこも昨日戻ってきていますからね♪それにみんなあさひさんのこと気になってるようですし…!」

 

 

提督「そうゆうこった、せっかくだし顔合わせといかないか?」

 

 

あさひ「そうですね…(少し考えてから)。確かにそれもいいかもしれません…♪これからお世話になるわけですし…♪」

 

 

提督「なら、決まりだな…!あっでも汎用型護衛艦って名前はみんなが覚えにくいよな…、そうなるとみんなが親しみやすい艦種にすべきだが…。」

 

 

霧島「ふむぅ…、部類的には護衛駆逐艦ですから【あさひ型駆逐艦】とかどうでしょうか?」

 

 

 

ひとまずみんなに紹介するなら、聞き慣れた艦種にするべきではないかと秋山は思っているようで何がいいか考えていると霧島がふと思い出したかのように考えながら【護衛駆逐艦】がいいのではないかと答える。確かに、あさひ型は部類的には護衛駆逐艦に該当する(実際潜水艦からの攻撃を想定した対潜任務や護衛任務を主軸として設計されている)ためそれが一番妥当であり、他の艦娘の子もそれが聞き慣れているから大丈夫なはずだ。

  

 

 

瑞鳳「それが一番しっくり来ますかね…?軽巡洋艦にするのは少し無理がありますし…雰囲気的に考えれば私も駆逐艦がいいと思います…!」

 

 

秋山「確かにそうだな。どうだあさひ、それでいいかい?」

 

 

あさひ「それで問題ありません…♪私もその言い方けっこう大好きですよ…♪」

 

 

秋山「よし…!なら本日一〇〇〇づけで君の名前は【あさひ型駆逐艦一番艦あさひ】(正式名称あさひ型護衛駆逐艦)と命名させて貰う…!」

 

 

あさひ「分かりました…!本日一〇〇〇づけで【あさひ型駆逐艦一番艦あさひ】という命名を授かりました…!」

 

 

瑞鳳「ふふ…♪なかなかいいと思いますよ♪流石霧島さん…!」

 

 

霧島「ふふっ…!瑞鳳さんにはお呼びませんがこれでも艦隊の頭脳ですから…!(ドヤ)」

 

 

秋山「よし、名前も決まったことだしそろそろいこうか…!早くみんなに顔を合わせたいからな…♪」

 

 

あさひ「はい…!」   

 

 

 

こうしてこちらの世界に合わせた艦種が無事決まったあと、あさひは秋山達とともにメンテナンスや補給の間を利用してパラオ泊地に所属する艦娘達の顔わせに向かうのであった。将来の激戦地とも謳われるパラオ泊地、一体どんな艦娘達がいるのかという期待を膨らませつつその足取りを進めるのであった。

 

 

 

 

 

同時刻 

パラオ諸島近海

 

 

少し雲に包まれてはいるものの、相変わらず空は晴天に包まれており時折日差しが差し込んでくる。そんな中、日差しに照らされながらも太平洋をただ一隻でパラオ諸島に向けて航行しているあの船の姿が……。

 

 

 

?「羅針盤妖精、進路に間違いはないわね?」

 

 

?羅針盤妖精「はっ!問題はありません…!報告通りであればあと少しでパラオ諸島に到着するはずですが。」

 

 

?「おっけ!ありがとう…!もう2日近く放浪してるからね…。燃料とか糧食なんかのいろんななものの余裕はあるけどいつまでもっていかないし…」

 

 

?羅針盤妖精「しかし、気づいたら太平洋にいるってどうゆうことなんですかね…?いずもさん」 

 

 

いずも「それは私に聞かれてもわからないよ…。本来なら空母改修のためにドッグにいるはずだったのに…気がつけばこんなところにいるし…、おまけに終わっていないはずの空母改修(甲板の耐熱化は終わっており、当時は艦首付近の甲板拡張工事の最中であった)が済んてて艦載機が全振りで搭載されてるなんて…。」

 

 

 

いずも型護衛艦のネームシップであるいずも、それが彼女の名前である。ヘリコプター搭載護衛艦(DDH)として就役し前身のひゅうが型から更に大型化し、兵装を簡素化しつつ航空運用機能や多用途性を強化したものとなっているのが特徴だ。

 

現実では更なる航空機運用能力を高めるために【いずも】、【かが】の2隻は空母化に向けた改修を現在進行系で行っており、のちに垂直離着陸が可能なF-35Bを搭載する計画となっている。この世界でも同様のようで、史実よりも少し早い形ではあるものの2018年から甲板の耐熱化塗装と飛行甲板の拡張工場が並行して行われていたらしい。

 

 

しかし本来であれば横須賀のドッグにいた彼女であるものの、気づけば太平洋上におり終わっていないはずの空母化改修や載せてすらいないF-35Bなどの艦載機が搭載されているということ。更には見慣れない自分の姿や妖精達をみていずもは首を傾げてる。

 

 

 

いずも「一体何が起こったっていうかしら……、突然の太平洋に終わっていないはずの改修…。そしてこの姿…、考えれば考えるほど分からなくなる…。」

 

 

 

どうしてこうなっているのかいろいろと考えているいずもであったがどんなに考えても答えが見つからないままになっていた。しばらくその状態ではあったものの、いつまでもこつきている訳にはいかずひとまず艦内の状況を確認することに。

  

 

 

いずも「いずもより艦内各員、状況を報告してくれる?」

 

 

いずも 見張り妖精「こちら見張り員…!両舷ともに艦影や機影ととになし…!むしろかなり穏やかな天候過ぎるくらいです。」

 

 

戦闘指揮妖精「CICも問題はありません…!レーダーやソナーに反応はなし。ですが引き継き警戒をするようにCIC各員には伝えておきます……!」

 

 

航空管制妖精「戦闘機隊は即時離陸可能…!ご命令があればすぐにでも出せます…!」

 

 

いずも「了解、何一つたりとも異変は見逃さないで。ここが太平洋とは言えど何が違うから…!」

 

 

「「了解(はい)!!」」

 

 

 

 

それから一時間ほど経過

 

いずも

CICにて

 

 

攻撃指揮官妖精「CIC各員、どう?あれから何か変化あったかしら?」

 

 

OPS-50妖精「いえ、特に変化はありません…。レーダーには自艦の反応しかないですからオールクリアってやつですかねぇ…。」

 

 

OPS-28妖精「こちらも同様です。機影、艦影ともに反応なし、ソナーはどうだ、なんかあるか?」

 

 

OQQ-23妖精「んにゃ、なにもないな…。海面データが不足しているとはいえなにかあればすぐに反応するんだが…。なんにも映っちゃいねぇ…。」

 

 

 

あれからずっと周囲警戒をしているレーダー、ソナー担当の妖精達。しかし特になにか映るわけでもなくむしろ平穏な時間がいずも艦内では流れていた。とは言ってもここがかつて自分達がいたところではないのは全員が直感で思っており、いつどこから何がが来るか分からないため、ひとまず警戒体制は緩めずにいるのである。

 

 

 

攻撃指揮官妖精「航空管制、航空隊の状況は?」

 

 

航空管制妖精「制空隊第一中隊所属の6機は即時発艦待機中。命令があればすぐにでも出せます。予備として待機させている第二中隊の攻撃隊も対艦ミサイル及び空対空ミサイルの準備は出来ているので換装作業が終われば随時出せるたのこと。」

 

 

攻撃指揮官妖精「にしても驚いたわ…。Fー35B用の武装が格納庫の武装スペースに置いてあるなんてね…しかもかなり数があるし…」

 

 

航空管制妖精「空対空ミサイルであるAIM-120C-7を始めとして…25mm機関砲ポッド及びその弾薬等々。しかもさっき整備班の連中に確認させたらハープーン(対艦ミサイル)もあったそうですよ…(汗)」 

 

 

OPS-50妖精「マジかよ…、空対空ミサイルはまだ分かるとして…なんでハープーンがいずもに載せてあるんだ…。あれまだうちのFー35Bには配備されてないだろ?まあ載せようと思えば載せられるが…」

 

 

OPS-28妖精「というかパイロットの練度とか大丈夫なんか?ある程度訓練はかつて本土にいたとき積んでたそうだが……、発着艦訓練はしてないだろ?(そもそもかつていた世界でのいずもは空母化に向けた改修の最中)」

 

 

航空管制妖精「一応は可能とのことですが…アメ公のような操縦技術があるかというとそれほどではないそうです。」

 

 

攻撃指揮官妖精「まあ発着艦が出来れば大丈夫だ。いざとなれば艦載機総上げで対処するしかあるまい。全部で12機しかいないが…。」

 

 

空中管制妖精「全機にガンポッドと空対空ミサイルをガン積みさせればなんとかなるでしょうな。ほとんどの実戦初めての処女ですが…」

 

 

OQQ-23妖精「それって大丈夫なのか…?まあそれをいっても仕方ないですし何事もなくパラオにつけることを祈るのみですが…」

 

 

OPS-50妖精「ここがかつていた世界なら気にすることはないんだが…どうも違うっぽいしなんか胸騒ぎが…ってん?」

 

 

攻撃指揮官妖精「OPS-50妖精どうしたのかしら?何か見つけたの?」

 

 

 

いろいろと話ながらもレーダースクリーンを見ていた各妖精達であったがその中で対空兼水上警戒を行っていたOPS-50妖精がなにか写り込んだ機影に気づいて首を傾げ、それに気づいた攻撃指揮官妖精がどうしたのかと尋ねる。

 

 

 

OPS-50妖精「レーダーに機影あり、方位は本艦からみて南東側、高度はおよそ9千メートル、速度284キロでかなりの大編隊が飛行中です。数にしておよそ24機、4機編隊が6小隊の可能性があります。」

 

 

攻撃指揮官妖精「24機……?民間機にしてはおかしい…けど軍用機だとしてもジェット機で284キロは遅すぎる…。ということはレシプロ機…?特定は出来るか?」

 

 

OPS-50妖精「駄目です…!。この艦に登録されているデータで該当するものはなし…!いずれもUnknown反応ばっかりd……」 

 

 

通信妖精「…!!ミクロネシア連邦に展開している軍と思われるの無線を傍受…!!しっしかも日本語ですよこれ!昔の日本軍が使ってた…!」

 

 

攻撃指揮官妖精「はい!?バカ言わないで頂戴!!今は2020年よ!日本軍なんてとっくのとうに解体され…「ミクロネシア連邦から緊急電!我激しい爆撃を受けつつあり!深海棲艦の爆撃隊はパラオへ向かうとのこと!」…あぁもう!何がどうなって…!とりあえずいずもさんに報告するわよ!」

 

 

 

 

 

艦橋にて

 

 

 

いずも「敵爆撃隊がパラオに向けて進行中…!?」

 

 

通信妖精「はっ…!先ほどCICから報告がありました…!本艦のレーダーに反応があった所属不明の機体、それはどうやら深海棲艦の重爆隊のようで合計24機がパラオへ向けて進行中とのことです…!ミクロネシア連邦にあるレーダー基地からの無線傍受で判明しました…!」

 

 

いずも「…(深海棲艦…?そんな名前は聞いたことないし…なによりパラオ泊地はすでになくなって存在してないはず…。でもミクロネシア連邦のレーダー基地っていうのも…いや…それよりも…)」

 

 

 

CICからの報告はすぐさまいずもの耳へと伝わり、通信妖精からの報告を聞いて驚きの表情を隠せずにいる。その理由はやはり、存在していないパラオ泊地の名前があるのか、そしてなぜミクロネシア連邦に守備隊がいるのかということらしい。いや、それだけでなく深海棲艦という聞き慣れない名前も気にしているが、ひとまず詳細な情報を聞くことに集中することに。

 

 

 

いずも「他に情報は?」

 

 

通信妖精「その編隊は最初見つけた時はunknown表記たったのですが…ミクロネシア連邦守備隊からの無線を傍受した直後に敵の反応を示す表記に切り替わったとのこと…!」

 

 

いずも「つまりその深海棲艦っていうのは敵の可能性が一気に高くなったことか…(どうする…敵だとしてもこっちは状況把握が出来てない…無理に対応しないか…、それに上からの命令なしで勝手に戦闘するっていうのも……)」

 

 

攻撃指揮官妖精『いずもさん…!どうされますか!?このままでは敵の民間施設への攻撃を見逃すことに…!』

 

 

 

敵という可能性が高くなったとは言えど今ここで動くべきなのか、それとも無理に動かないほうがいいのかという狭間でいずもは迷っているようだ。いつもの見慣れた海ではないという状況にあるはずもない泊地の存在、おまけに深海棲艦という敵?というかつて彼女がいた世界では全く聞いたことがない言葉を何個も聞けばそうなるのも無理はない。それに彼女は日本国海上自衛隊の所属だ、無造作に戦闘などに突っ込める立場ではない。

 

しかしだからと言って放っておけるかといえば話は変わってくる仮に相手はレシプロ機といってもあの重爆撃機の集団、かなりの高度で飛行しているとなると他に迎撃出来る機体がない以上今ちらから戦闘機を出さなければ間に合わなく可能性がある。

 

無線から聞こえてくる攻撃指揮官妖精の焦りの声を聞いて止む得ないという表情を浮かべて口元につけていたインカムに手を伸ばして艦内に繋ぐ。

 

 

 

いずも「…(止む終えないか…)総員戦闘配置…!!即時発艦待機中の戦闘機隊は直ちに発進!!待機中の部隊はすぐさま空対空ミサイル及びガンポッド装備!!」

 

 

攻撃指揮官妖精「了解!!総員戦闘配置!!繰り返す!!総員戦闘配置!!これは訓練ではないぞ!!気合いいれてかかれ…!!」

 

 

OPS-50妖精「目標編隊はさらにパラオへ接近中!!数及び速度に変化なし…!!奴ら見つかっても悠遊と飛んでます…!」

 

 

攻撃指揮官妖精「恐らく見つかってもこのタイミングでの迎撃は間に合わないことを知っているんでしょう…!航空管制!戦闘機隊の状況は…!」

 

 

航空管制妖精「現在即時発艦待機中の戦闘機隊に発艦許可を出しています…!待機中の機体にも武装の換装を下令!現在整備妖精による作業が急ピッチで行われています!」

 

 

 

 

いずも飛行甲板

 

 

 

いずも 制空隊 第一中隊 中隊長機「急げ急げ!!モタモタするんじゃないぞ…!敵は待ってくれないからな…!!」

 

 

いずも 制空隊 第一中隊 2番機「中隊長!!発艦の順番はどうしますか…!!やはり訓練通り…」

 

 

いずも 制空隊 第一中隊 中隊長機「いや!順番は問わない…!直ぐに出れるやつから随時発艦だ…!!いずも上空にて集合、そこから敵重爆隊のいる空域に向かう…!各機!!ガンポッドと空対空ミサイルは積んでるな…!」

 

 

いずも 制空隊 第一中隊 3番機「はっ!各機ガンポッド及び空対空ミサイル6発ほど搭載しています…!」

 

 

いずも 制空隊 第一中隊 中隊長機「よし!今回が初めての実戦のようなもんだ…!!しかも相手は俺たちの知ってる敵じゃないことを頭に叩き込んでおけ!いいか…!落とすことより落とされないことを優先するんだぞ…!!」 

 

 

いずも 制空隊 第一中隊 各機「「了解!!」」

 

 

 

いずもから戦闘配置の指示が出されたと同じタイミング、飛行甲板では搭乗員妖精達が慌ただしく駐機しているFー35Bに飛び乗っていき、近くでは整備妖精が機体の間を行ったり来たりして最終チェックに追われているようだ。

 

 

 

いずも 整備妖精「最終チェックが終わり次第出れるやつから発艦しろ!!飛行甲板を開けるんだ…!!」

 

 

いずも 航空管制妖精「制空隊第一中隊はすぐさま発艦!離陸後は上空にて待機、全機集合次第空中管制の指示に従って戦闘空域へと向かってください!」

 

 

いずも 制空隊 第一中隊 2番機「こちら第一中隊2番機!!これより発艦します…!発艦後は上空にて待機…!!」

 

 

 

あちこちから指示が入り乱れるように飛び交う中、準備が整ったのか第一中隊の2番機であるFー35Bが滑走路へとゆっくりと移動していく。それが終わり発艦可能状態になると後部のジェットエンジンを最大出力で点火してトラムライン(滑走のためのセンターライン)を元に加速していき、ショート・テイクオフ・ラインを超えるとともに推力ノズルを下方に下げ機体上下のドアが開くとともにリフトファンの推力を得ながら離陸していく。

 

いずもは改装なとで飛行甲板の面積が多少大きくなっているもののそれでも他国の空母に比べるとかなり小柄な部類に入る。カタパルトもない、短い滑走路でもこうやって発着艦出来るのもFー35BのSTOVL機タイプ(短距離離陸・垂直着陸)といった性能のお陰であったりもする。

 

 

 

その間にも等間隔に次々と制空隊所属のFー35B戦闘機が発艦していき、いずも上空に集合すると少し不慣れだがまぁまぁの編隊を組みつつ空中管制の指示の下目標空域へとジェットエンジンの出力を上げつつ高度を上げていく。

 

 

 

空中管制妖精「現在敵重爆隊は速度284キロの速度で編隊を組みつつ南東側をパラオ方面へ飛行中、レーダーや傍受した無線からするに護衛の戦闘機はいないが接触の際は注意せよ。」

 

 

いずも 制空隊 第一中隊 中隊長機「もし接触して攻撃された場合は正当防衛で射撃しても構わないですよね…!」

 

 

空中管制妖精「えぇ、いずもさんからは許可が降りています…!もし攻撃されたら正当防衛で撃破、または撃墜しても構いません…!奴らの目的が爆撃ならなんとしてでもパラオに被害が出る前に…!」

 

 

いずも 制空隊 第一中隊 中隊長機「問題ない…!!俺たちに任せておけ…!!第二中隊…!いざとなれば2番槍として頼むぜ…!!」

 

 

いずも 攻撃隊 第二中隊 中隊長機「お任せを…!!空対空ミサイルはすでにガン積みですからご命令があれば…!」

 

 

 

 

 

空中管制妖精の指示や第二中隊の中隊長機の妖精などと話ながらも制空隊はパラオ泊地に向けて進行中の重爆隊の迎撃に向かうのであるのだった。

 

 

 

 

…だがいずもやその乗組員、搭乗員達は知らないであろう…。ここがかつていた世界ではないこと、そして同じように迷い込んだ艦船がいることも…。

 

 

この重爆隊が深海棲艦の侵攻の前段階だということや自分達がとんでもないことに巻き込まれるこることも知る由がなかったのである…。




第6話 パラオ大空襲



(いずもが搭載予定のFー35Bが搭載する武装などについてですが、今現在ではこれだという情報が入ってきていないため計画で上がっている案やアメリカ海軍が艦載機として使っている機体の武装を元にしました。そのため少しリアルとは異なりますがご了承ください)


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第七話 パラオ大空襲

平穏な時間を過ごそうとしていた時、ついに深海棲艦によるパラオ泊地への脅威が迫りつつあった。

これに遭遇したいずも、彼女は何を思い戦っていくのか…!!

そしてあさひやパラオ泊地はどう切り抜けるのだろうか? 


それでは、第七話 パラオ大空襲
をご覧ください…!!


同時刻

パラオ泊地

 

 

 

ウゥゥゥゥゥ!!!

 

 

 

小鳥のさえずりや工廠での作業音が聞こえていた平穏なひと時が一瞬にして崩れ去る。泊地全体にけたたましく響き渡る空襲警報、それを聞いた途端に雰囲気が一変する。

 

 

 

秋山「ったく…!!こんなときに限って空襲警報かよ…!!瑞鳳…!!状況は…!!」

 

 

瑞鳳「先ほど東側にあるミクロネシア島守備隊の警戒レーダーからの報告です…!!こちらに向けて深海棲艦の重爆隊が接近中とのこと…!!数は20機前後…かなりの大編隊です…!!」

 

 

秋山「全く…!!いよいよ本格的に来始めたか連中…!!霧島!!今日の当直艦は…!!」

 

 

霧島「榛名・阿武隈・陽炎の三隻です…!!先ほどチラリとですが出港及び戦闘配置についているのを確認しました…!!第一及び第二アイライ飛行場からも警急機が発進しているはずです…!!」

 

 

 

耳を遮りたくなるように辺り一帯響き渡る空襲警報を聞きながらも秋山達は駆け足で埠頭を急ぐように走っていた。上空にはすでに発進したと思われる警急機の零戦21型が数機ほど通過していくのが見える。

 

 

 

 

あさひ「びっくりしました…空襲警報なんて私がいた頃は滅多になかったですから…。」

 

 

秋山「まさか新入り来てそうそうこれとはな…!!歓迎会かなんかか…!?」

 

 

瑞鳳「ジョークなんて言ってる場合じゃありませんよ…!!提督ご命令を…!!」

 

 

秋山「泊地全体に戦闘配置を下令…!!稼働機はすべて上空に上げろ…!!ここには一発も爆弾の雨を降らすな…!!」

 

 

瑞鳳・霧島「了解…!!」

 

 

秋山「すまないなあさひ…!せっかくみんなを紹介出来ると思ったのだが……!こんな形で洗礼を受けるなんてな…!」

 

 

あさひ「いえ…!!洗礼ならすでに何回も経験していますから…!!それより…!私はどうすればいいですか…!!」

 

 

秋山「君も直ちに戦闘配置…!!可能なら出港して榛名達と敵機の迎撃を頼む…!!ここまで重爆隊を投入するぐらい本気なら他にもいるはずだ…!」 

 

 

あさひ「了解しました…!!本艦も迎撃戦闘に参加します…!!」

 

 

瑞鳳「ここは私達にまかせて提督は早く防空壕に…!!」

 

 

秋山「分かってる…!!あとは任せたぞ…!!」

 

 

霧島「はっ…!!」

 

 

 

防空壕に退避していく秋山を確認しつつ、霧島と分かれた瑞鳳とあさひは自分達が停泊しているドッグに急いで向かっていた。その中であさひはインカムのスイッチを起動して、本艦に無線をつないで細かな指示を伝えていく。

 

 

 

あさひ「あさひよりCIC!!そっちの状況は…!!」

 

 

攻撃指揮官妖精『機関はすでに始動!!いつでも出港出来ます…!!レーダー類のメンテナンスはまだ終わってませんがOPY-1ならなんとか…!!』

 

 

あさひ「それで充分…!!私が戻ったらすぐさま出港…!!パラオ湾外にて敵機を迎撃します…!!それと総員戦闘配置…!!」

 

 

攻撃指揮官妖精『了解…!!総員戦闘配置…!!それぞれの持ち場に付け…!今回は先の空襲よりも比べ物にならないから気を引き締めなさい…!!』

 

 

 

 

 

 

 

大鳳「空襲警戒警報発令、空襲警報警報発令!!深海棲艦による大規模空襲の恐れあり…!!大規模空襲時の規定に従って配置についてください…!!繰り返します…!!」

 

 

 

艦娘で唯一の装甲空母と言われ、パラオ泊地所属の大鳳が空襲時の迎撃管制を担当しているため泊地全体に戦闘配置を命じ、その隣では当直艦である榛名以下三隻が出港していく。

 

 

 

榛名「榛名、全力で参ります!」

 

 

阿武隈「阿武隈、ご期待に応えます!」

 

 

陽炎「いよいよ、私の出番ね!」

 

 

 

湾内といえどそこそこ広いパラオ湾のため、右から榛名・阿武隈・陽炎の横陣の陣形で三隻は湾外へと出港、外へと出ながらも榛名は二人とともに対空戦闘の再確認を行う。

 

 

 

榛名「現時点での敵機は現在東側の高高度から接近中の重爆隊のみですが、太鳳さんからは恐らく更に追加で増える可能性があるとのことです…!なので周囲警戒は厳にしてください…!!かなりの大規模空襲と思われます…!」

 

 

陽炎「オッケー!!パラオには指一本触れさせないよ…!!」

 

 

阿武隈「了解です…!!」

 

 

 

 

 

 

 

第一アイライ飛行場 管制塔妖精「警急機及び稼働機は直ちに離陸してください…!!追って大鳳から指示があります…!!」

 

 

大鳳 制空隊 第一中隊 8番機「くっそ!このタイミングでか…!!ゆっくり出来るかと思ったのによ!!」

 

 

大鳳 制空隊 第一中隊 9番機「とりあえず離陸しましょう…!!指示は追ってあるようですが相手は重爆隊です…!今のうちに高度を取らないと…!!」

 

 

大鳳 制空隊 第一中隊 10番機「だがこのタイミングでの迎撃って間に合うのか…!?相手は高高度を飛んでるんだろ…!零戦じゃ厳しいモンがあるぜ…!!」

 

 

大鳳 制空隊 第一中隊 7番機「第二アイライ飛行場から陸軍の三式飛燕や屠龍も迎撃に出ているのである程度は問題ないかと…!ですがそれでも間に合うかは…」

 

 

 

海軍の飛行場となっている第一アイライ飛行場、そこからは警急機である零戦21型を初めとして稼働中であったり機種転換中だった零戦52型や96式艦戦という最新鋭機や旧式戦闘機が入り乱れるように離陸していく。少し離れた先、陸軍飛行場となっている第二アイライ飛行場からは一式戦「隼」や二式戦「鍾馗」・三式戦「飛燕」が飛び立っており、中には配備されて間もない複座戦闘機である二式「屠龍」も混じっているようだ。

 

 

 

大鳳 制空隊第一中隊 8番機「とりあえず高度を取るぞ…!!それからどうするかは大鳳からの指示が来てからだ…!!」

 

 

 

だがうだうだ言っててもどうしようもないためひとまず高度を取ることにした大鳳制空隊所属の零戦隊は警急機や陸軍機と合流しつつ高度を取っていくのである。もちろん、そうなれば第一アイライ飛行場の駐機スペースに止まっていたあさひ所属のSH-60Kも例外ではなくお披露目に向けて準備していた作業を慌てて中断して機内に滑り込むように乗り込んでいく。

 

 

 

あさひ 哨戒ヘリ パイロット 「ったく!久しぶりの陸地でゆっくり出来るし思う存分整備出来ると思ったのによ!早速手荒い挨拶なこった…!」

 

 

あさひ 哨戒ヘリ 機長 「そんなこと言う暇あるなら離陸の用意だ!!陸地でやられるのはゴメンなんでな…!あさひ所属の哨戒ヘリより第一アイライ飛行場管制塔!!離陸の許可を…!!」    

 

 

第一アイライ飛行場 管制塔妖精 「離陸を許可します!!離陸後は周辺海域に退避後、撃墜されたパイロットの救助をお願いできますか…!」

 

 

あさひ 哨戒ヘリ 機長 「おやすい御用だ…!こいつじゃ空戦は出来ないからな…!裏方に回らせて貰おう…!(無線を終えて)離陸許可が出たぞ…!!」

 

 

あさひ 哨戒ヘリ パイロット「了解です…!!間もなく離陸を開始します…!!整備班の方は退避を…!!」

 

 

あさひ 航空整備班長「あいよ!気をつけろよ…!!整備したての機体なんだから壊すんじゃないぞ…!」

 

 

あさひ 哨戒ヘリ 機長 「そんなこと言われなくても分かっていますよ班長…!!離陸後は周辺海域に退避しつつ搭乗員の救助活動だ…!!その際は頼んだぜ救助妖精!」

 

 

あさひ 哨戒ヘリ 救助妖精「おまかせを…!!救助任務なら何度も経験していますから自信あります…!!お任せを…!!」

 

 

あさひ 哨戒ヘリ 機長「それと空襲となれば退避したとしても安全な場所ない…!コイツで敵機に襲われたらそれこそひとたまりもないからな…!おまえも気引き締めろよ…!!」

 

 

あさひ 哨戒ヘリ 電探妖精「分かっていますよ…!!相手よりも倍の速さで見つけてやります…!!」

 

 

 

機内で機長があれこれ指示を飛ばしている中でも準備が出来たSH-60Kがローター音を響かせながら、地面に風圧を叩きつけながらゆっくりと地面から離れて離陸していく。丁度そのタイミングで瑞鳳の制空隊の迎撃機が飛び立っており搭乗員妖精達が離陸している様子を眺めている。

 

 

 

瑞鳳 制空隊 第一中隊 3番機「あれがヘリコプターっていう航空機か…、なんか零戦より大きいプロペラが上に一つと後ろの尾翼にも小さいのが付いてるな…。」

 

 

瑞鳳 制空隊 第一中隊 4番機「最初見たときはあんなので飛べるのかと思っていましたが…、滑走路なしで飛び立てるなんて…。ありゃいろんなところに降りれますね、戦闘機よりも場合によっては使い勝手は良さそうですぞ…。」

 

 

瑞鳳 制空隊 第一中隊 中隊長「それもそうだが、今は迎撃に集中しろよ。…といってもこのタイミングでの迎撃でギリギリ間に合うかどうかだが…。」

 

 

瑞鳳 制空隊 第一中隊 2番機「詳しいことは大鳳さんから指示が追って来るでしょうからとりあえずは高度を取りましょう。この島に来るのが重爆だけとは限りませんから…。」

 

 

 

高高度からの重爆撃隊の接近、いくらレーダーで見つけたとはいえこのタイミングでの迎撃で本当に間に合うのかという不安そうな表情を浮かべている瑞鳳の戦闘機隊妖精であったがひとまず指示に従って高度を取りつつ迎撃管制を担当している大鳳の指示を待つことにするのであった。

 

 

   

 

 

 

 

 

あさひ「機関始動!!緊急出港!!それと対空戦闘用意!!」  

 

 

あさひ 機関妖精「了解!!機関始動緊急出港だ!回せるだけぶん回せ!!現代艦の瞬発力をみせつけてやれ!!」

 

 

攻撃指揮官妖精「OPY-1妖精!!レーダーの方はどうなの!」

 

 

あさひ OPY-1妖精「少々お待ちを…!!……レーダー作動確認!特に問題なし!報告通り敵の重爆撃機の一群を捉えています!」

 

 

攻撃指揮官妖精「他に敵機はいないかしら…!?」

 

 

 

ドックから緊急出港をするために機関最大全速であさひが飛び出すように湾内を全速で航行しつつ停泊している艦艇を縫うように航行しているのが確認出来る。その艦内では乗組員

が慌ただしい表情を浮かべながら隔壁閉鎖や配置についたりと動いている。

   

 

もちろん艦内あちこちがそうならCICも例外ではなく、なんとかメンテナンスを間に合わせたOPY-1を作動さえて確認されている敵機と新たに映し出された機影の確認をしていた。

 

 

 

 

あさひ OPY-1妖精「やはりあちらさんの予想通り重爆隊とは別の反応を確認!!機数からして70機程度!!数からして敵の基地航空隊と思われます!高度3000mほどを南西側から接近中、距離はまだあります…!」

 

 

攻撃指揮官妖精「すぐさまこの情報をあさひさんに伝えて…!!共有出来る情報は多いほうがいいから…!!」

 

 

あさひ OPY-1妖精「了解です…!!すぐさま報告します…!!おい通信妖精!!パラオ泊地の迎撃管制は大鳳っていう艦娘が担当しているそうだからそっちに繋げ!!」

 

 

あさひ 通信妖精「分かりました!すぐさま準備に取り掛かります…!!」

 

 

あさひ OPY-1妖精「あぁ!頼んだぞ…!ってん…?これは……」

 

 

 

 

 

 

あさひ「…これは…」

 

 

 

CICからの報告を受けたあさひは迎撃管制を担当している大鳳に新たに捕捉された敵機の集団を報告しつつ、それとは別に重爆隊の後方から接近しているとおもわれる複数の機影の反応に眉を細める。

 

 

 

あさひ「報告によれば重爆隊の護衛はなしなのは確認済み…。仮にそうだとしてもレシプロ戦闘機にしては速すぎる…。それにパラオ側のレーダーにはこの機影は映ってないみたいだし…、この周波数は…」

 

 

大鳳『榛名さん…!機影はあさひさんの報告通りですか!』

 

 

榛名『はい…!高高度に敵の重爆、低空に敵艦載機なのは変わらず…!!重爆に関しては護衛がいないと思われます…!』

 

 

 

無線越しに飛び込んでくるパラオ泊地艦隊の通信を聞きつつ今も映し出されている深海棲艦とはまた違い、どこか見慣れた周波数を見せる複数の機影の反応へ視線を戻す。これが敵機なら榛名達などの大型艦艇が装備している電探に反応するはず、なのに気づいてないとなればこれは敵機の可能性はありえない。

 

だがあさひのレーダーにはくっきりと映し出され、なんならUnknownではなく機影としてレーダーに表示されている。となればこれは普通の戦闘機ではなくステルス塗装を施された機体ということになるが…

 

 

 

あさひ「…(この時代の戦闘機にはそんな技術はないし…、レシプロ機にしては明らかに速度が違いすぎる……。おまけにこの見慣れた識別反応……試して見る価値はあるかも…)。」

 

 

 

しばらくその反応をマジマジとみていたあさひだったが覚悟を決めた表情浮かべながらインカムに手を伸ばして迎撃管制を担当している大鳳に無線を繋ぐ。

 

 

 

あさひ「大鳳さん、敵機の迎撃に関して進言があるのですが…よろしいでしょうか…?」

 

 

大鳳「別に構いませんが…、どうされましたか?あさひさん。」

 

 

あさひ「敵の重爆隊はかなりの高高度を飛行しています。今からの迎撃だと投弾前に間に合うかどうか…、それに低空からも来ているとなれば多くない迎撃機を分散するのは得策ではありません。ですから…」

 

 

 

まさか彼女から進言があるとは思っていなかったようで、大鳳は少し驚きながらもすぐに真剣な表情に切り替わり受け答える。それを確認したあさひは迎撃に関する状況を簡単に話して、一つ深呼吸をしたと思った直後にとんでもない発言を切り出す。

 

 

 

あさひ「ですから、高高度の重爆隊は無視で全在航空機及び艦艇を持って低空から接近する敵艦載機を叩きます…!!」

 

 

一同『『はぁ…!??』』 

 

 

 

まさか彼女の口からそんな言葉が出てくるとは思っていなかったのか(そりゃそうだ)提督を除く艦娘すべてがこれまた息ぴったりで声を上げている。だがその反応が当たり前と言ってもいい、低空から接近する敵艦載機に対して全戦力をぶつけるということは高高度の重爆隊を見逃すということになるのだ。

 

 

 

 

曙『ちょあんた何言ってんのよ!!そんなことしたらパラオが火の海になるわよ!!あんた仲間を見殺しにしたいわけ…!?』

 

 

瑞鳳『ちょっ曙さん落ち着いて…!!あさひさんだって好きで思ってそんなこと言ってるんじゃ……』

 

 

曙『そんなこと言っても黙れるわけがないじゃない…!!だって高高度の敵を無視とかわけわかんないこと言ってんのよ…!!しかも来て間もない新人のくせにしてしゃしゃり出てて…!』 

 

 

 

少し声を荒げる曙をなんとか宥めようとする瑞鳳。少し強めの言い方だが彼女が間違ってるわけではない、むしろそれが普通の答えだろう。このまま重爆隊を見逃せば間違いなくパラオ泊地は甚大な被害ができるに決まっている。空飛ぶ要塞とも言われる大型爆撃機、その搭載している爆弾の量は計り知れないものでそんなものがパラオに落とされればどうなるかなど用意に想像出来、最悪犠牲者が出かねない。

 

 

 

曙『あんたは黙って指示を聞いてればいいのよ…!!アイツらを2度も蹴散らしたからって調子に乗っt…』   

 

 

あさひ「だからなんですか…!!そんな考えに固着している方こそ却って犠牲者を出しかねませんよ…!!過去の太平洋戦争でなにを学んだんですか…!!」

 

 

曙「っ…!?」

  

 

 

パラオ泊地所属の艦娘で何かと気が強い曙、そんな彼女の強い言葉に負けない更に上の強い言葉で返されたことに思わず口を塞いでしまう。確かにあさひはこの世界では新人のような立ち位置の艦娘だ。そんな彼女が変にしゃしゃり出るのはあまり良くないが、逆に曙のような発言を聞かずに切り捨てるような発言も返って最悪な状況を生み出してしまうこともある。

 

過去の太平洋戦争でも部下の進言を退けたことでその後の戦局を大きく変えてしまった戦いを日本海軍は痛いほど経験している。ミッドウエー海戦やセイロン沖海戦、真珠湾攻撃などもそのようなことが起こらなければかなり変わった戦いと言われてており、それはもちろん曙も知っていることなのであさひの反論に言い返せずにいたのだ。

 

 

 

あさひ「大丈夫です…!私だってみなさんをむざむざ見殺しにしたりなんかしません…!!必ず御守りします…!!」

 

 

陽炎『あさひさん…。』

 

 

瑞鳳『…分かりました…!大鳳さん!あさひさんの進言を詳しく聞いてそちらの作戦に切り替えましょう…!!』

 

 

曙『へ…!?』

 

 

大鳳『りっ了解しました…!!』

 

 

阿武隈『ずっ瑞鳳さん…!?』

 

 

 

最初こそ驚いてはいたものの、それから黙って聞いていた瑞鳳が無線で大鳳に指示を出していく。それには曙も嘘でしょという表情になるが、それでも先ほどのように言い返さないところを見るになんだかんだいって瑞鳳の指示に従っているようだ。阿武隈などもびっくりしている中、少し困惑しつつも大鳳は速やかに彼女の指示に答える。

 

 

 

あさひ「ありがとうございます…!!無茶なお願いを聞いてくださって…!!それでは先ほどの会話を更に詳しく説明します、これなら先ほどよりも納得してくださるはず――。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

パラオ諸島の上空からさほど遠くない空域、そには晴天に包まれている青空の彼方を密集編隊を組んで飛行している複数の機体の姿が……。どこかの陸上基地から飛び立ったと思われる黒色のB−17爆撃機、そう深海棲艦の重爆撃隊が我が物顔でパラオ泊地までの空路を優雅に飛行していた。

 

 

 

ーマモナクパラオ泊地上空、進路上ニ敵迎撃機ノ姿ハナシー

 

 

ー了解、ダガ気ハ抜クナヨ。コノ高度デモオレタチ重爆隊ヲミスミス見逃スヨウナ連中ジャナイ、必ズ来ルハズダ。ー

 

 

ー大丈夫ダ、ドッチニシロ相手ハ奇襲デホトンドノ迎撃機ヲ出セテイナイ。カリニダセタトシテモ高高度、低高度カラノ同時攻撃ハ捌ケマイ。後ハコノママ泊地機能ヲウバエバ…ー

 

 

 

特に迎撃がなく、仮にあったとしてもそれはそれでこちらの思う壺のようなものという感じでほぼ深海棲艦側からすればパラオ泊地は詰んだとも言っていいような状態に近い。あとはこのまま数の暴力で泊地の機能を奪うだけだと思われたが……

 

 

 

ドゴォォォ!!!

 

 

ーナッナンダ…!?ー

 

 

 

突如として爆発音が響き渡ったと思えば先ほどまで後方を飛行していた数機のB−17爆撃機が空中分解や黒煙を拭き上げつつ墜落していくのが僚機から確認された。なんの拍子もなく突然と起こった事態にキレイに組んでいた編隊が一瞬乱れてしまう。

 

 

 

ーコッ後方ヲ飛行シテイタ六機ホドガ落トサレタ…!!敵襲カ…!?ー

 

 

ーバカナ…!周囲ニ敵影ハ確認サレテイナイゾ…!!ソレニ敵航空隊ドモノ攻撃ダトシテモコンナ攻撃方法ハアリエナイ…!!ー

 

 

ーナッナラ一体……何ガ起コッテイルンダ!?ー

 

 

 

 

 

 

いずも 制空隊 第一中隊 3番機『空対空ミサイル全弾命中確認…!!6機ほどの撃墜確実…!!空中分解や燃えながら墜落していってます…!!』

 

 

いずも 制空隊 第一中隊 6番機『どうよ…!!ただでさえデカい図体でミサイル直撃はキツいだろ…!!』

 

 

 

空対空ミサイルが飛来してきた方向、重爆編隊から少し離れれる形ではあるもののそこには編隊を組みつつ飛行しつつ接近を試みているいずも所属のF−35B編隊の姿が…。

 

 

 

いずも 制空隊 第一中隊 2番機『敵重爆編隊!!隊列を乱しています…!!あの感じだとこちらを捕捉出来ていません…!!』

 

 

いずも 制空隊 第一中隊 中隊長機『このまま畳み掛けるぞ…!!なんで旧大戦の爆撃機が飛んでるかは気になるところだが…敵であるなら仕留めない手はない…!!』

 

 

いずも 制空隊 第一中隊 4番機『敵にはこちらのヅラを拝ませる前に全機叩き落としておきましょう…!!』

 

 

いずも 制空隊 第一中隊 5番機『えぇ!我々だって戦闘機乗りです…!!旧式とはいえ爆撃機なんぞに遅れは取りませんぞ…!!』

 

 

 

ほとんど初めてと言ってもいい実戦だが、パイロット達の士気はかなりあるようで先ほどよりもキレイな編隊を組みつつ重爆編隊に接近、攻撃陣形に切り替える。

 

 

 

いずも 制空隊 第一中隊 中隊長機『よぉし攻撃体制に移行するぞ!!全機目標をロックオンしろ…!!』

 

 

 

中隊長の指示で、攻撃体制に移行しつつそれぞれのパイロット達はEOTS(電子・光学式照準システム)の空対空モードで前方を飛行している重爆撃機の編隊に狙いを定める。先ほどの攻撃で動揺しているはずだが密集陣形に戻る様子からすると爆撃機の搭乗員はかなりの練度のようだ。

 

 

 

いずも 制空隊 第一中隊 2番機『2番機ロックオン完了!!』

 

 

いずも 制空隊 第一中隊 3番機『同じく3番機もロックオンしました!!』

  

 

いずも 制空隊 第一中隊 4番機『4番機も同様にロックオンしました…!いつでもいけます…!!』

 

 

いずも 制空隊 第一中隊 5番機『5番機ステンバイ…!!へへっ、某空戦ゲームのセリフがここで言えるとな…!!』

 

 

いずも 制空隊 第一中隊 6番機『中隊長!!全機発射用意完了しています!!攻撃命令を…!!』

  

 

いずも 制空隊 第一中隊 中隊長機『全機攻撃始め!!FOX2!!』

 

 

シュパ!!

 

 

 

中隊長の号令の元、射撃位置についた全機が二度目の空対空ミサイルによる一斉射撃を開始。放たれたミサイルは誘導されながらも迷いなくB−17編隊に襲いかかってくるが、流石に同じ手は喰らわないと言わんばかりに重爆編隊から防御砲火が放たれる。

 

 

 

ーオトセ!!ナンテシテデモオトスンダ!!ー

 

 

ーダメダ!!ハヤスギテアタラナイ…!?イッタイドレホドソクドガデテイルンダ…!!ー

 

 

ークッ!!コノズウタイデハヨケレナイ…!!ナンナンダアイツラハ(ドゴォォォン!!)ー

 

 

ーオノレ…!!ドウシテワレワレガコンナメニ…!!(ドゴォォォ!!)ー

 

 

 

だがレシプロ戦闘機よりも遥かに高速に飛行する物体相手に二次大戦の爆撃機の銃座では落とすことは到底不可能。そもそも艦娘相手の兵器でミサイルを見たことがない彼らでは太刀打ちなどできるわけがない。深海棲艦による必死の抵抗も虚しく次々とハエたたきのようにはたき落とされていくだけであった。

 

 

 

いずも 制空隊 第一中隊 2番機『敵重爆編隊!!半数近くを撃墜!!奴さんたち爆撃任務どころじゃなくなりましたね…!!』

 

 

いずも 制空隊 第一中隊 4番機『編隊が乱れています…!!あれではパラオ爆撃の目標は崩れ去りましたね…!!』

 

 

いずも 制空隊 第一中隊 中隊長機『このまま押し切るぞ…!!我々に捕捉されたことを後悔するんだな…!!』

 

 

いずも 制空隊 第一中隊 5番機『これこそ…!!海上自衛隊版暗殺者…ですな…!!敵はこちらを見ることなく落とされるでしょう…!!』

 

 

 

いくら練度が高くてもどこからされたのかわからない攻撃を何度も受けば冷静にいるほうが無理というもの。編隊はパニック状態になってしまい陣形があっという間に乱れてしまう。だが制空隊のパイロットからすればそれはチャンスというもの、中隊長からの指示で控えめしていたジェットエンジンのアフターバーナーが一気に点火されて飛び出すように中隊は重爆隊にさらなる追い打ちをかけるため、追撃をかけていく。

 

 

 

 

 

 

ークックソ…!!セメテ…セメテ…〇〇サマニハコノコトヲツタエk……ドゴォォォォンン!!ー

 

 

 

 

 

だが撃墜される直前、重爆隊の中隊長機とも思われるB−17では深海棲艦の搭乗員がどこかにモールス信号で伝える。その直後、F−35Bから再び放たれたミサイルのうち一発が命中。爆弾槽に搭載されていた500lb爆弾に引火、轟音とともに空中爆発を起こすのであったのだった。

 

 

 





第八話 『神の盾』


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第八話 『神の盾』


ついにいずももこの世界に本格的に絡むことに。

あさひとは違い神隠しのような形でやってきた彼女はなにを目撃しどんなことを思うのか……?

そしてこの大空襲をあさひたちはどう切り抜けるのでしょうか…!?



(今回は物語の関係上かなり長くなってしまいました。なので時間をしっかり確保のうえお読みください。)


同時刻…

パラオ諸島

近海空域にて

 

 

あたり一面広がる海や青空、それに挟み込まれる形で黒い点々の粒が埋め尽くすほどではないものの綺麗な編隊を組みながら飛行しているのが確認出来る。

 

どうやら…深海棲艦の基地航空隊らしい、総数は70機にも登り見慣れたドーントレスやアヴェンジャー、A36A(ノースアメリカン)、B-25といった爆装を施した攻撃隊50機始めとして、カーチスP40ウォーホークやP51B(ノースアメリカンマスタング)、F4F ワイルドキャットなどの主力戦闘機、そして少数ではあるがP-38 ライトニングといった双発戦闘機を含む直援戦闘機20機の合計70機に及ぶ攻撃隊が飛行していた。

 

 

深海棲艦側としては高度と低高度で攻撃隊を分けることにより敵の戦闘機を分散させ、泊地攻撃への成功率をあげようという考えがあるらしい。ここでパラオ泊地の設備を破壊出来れば大規模の艦隊が展開することが困難になり、相手の活動範囲に大幅な制限がかけられる。…それはつまり自分たちが動きやすくなり本土への侵攻や制海権の奪取が容易になる。

 

この日のために大規模な戦闘を控え通商破壊に注力して戦力の温存を測り、年密な空襲計画を練ったというものだ。パラオを含む太平洋側、ソロモン諸島の各泊地や基地への攻撃が成功すれば人類側は南方方面で大幅な後退をせざる負えない。

 

 

 

ー……ー    

 

 

 

いくら強い艦隊を保有していたといえど、それを支える泊地や港がなければま意味がない。あとはこのまま敵の迎撃機を蹴散らして泊地への航路、その突破口を作るだけなのだが……

 

 

 

ーコチラ深海棲艦重爆隊 攻撃ヲウケテイル…!!敵ノ戦闘機d……(ザザザー!!)。ー

 

 

ー……?ー

 

 

 

だがそんな僅かながらの平穏な時間を遮るように高高度を飛んで先方として突入予定の重爆隊から非常通信が迷い込んでいる。内容からして敵戦闘機隊の迎撃を受けたようだが、何事かと尋ねる前に通信が途切れてしまう。どうしたのかと訪ねようとした攻撃隊隊長機であったが直後、自分達が飛び立った飛行場姫から無線が飛び込んできたため口を紡ぐ。 

 

 

 

ー(ピピッ)報告ヨ、重爆隊ガ敵ノ戦闘機隊ニヨル襲撃ヲ受ケタワ。損害及ビ状況ハ不明、ケド奴ラガ重爆隊ノ迎撃ヲ優先シタナラ、恐ラク泊地ニハワズカナ迎撃機シカイナイハズ。ソノママ引導ヲ渡シテヤリナサイー 

 

 

ー了解…ー

 

 

 

飛行場姫からの無線によれば、高高度を飛行していた重爆隊が敵の迎撃機の襲撃を受けて音信不通になったようだ。通信が途切れるほどの戦闘なら敵機のほとんどが高高度にいったということになり、それはつまり低空が無防備ということになるため僅かな襲撃だけで泊地への攻撃が可能となる。いくら艦艇や陣地の対空砲火や防御砲火がつよくてもこれだけの敵機を捌ききれるかと言われればそれは怪しい。仮にそうだとしても戦闘機が引き付けてその間に攻撃隊を四方八方から送り込んでねじ伏せればいい。

 

 

 

ーダガ重爆隊ト音信不通ニナルホドノ攻撃能力ガヤツラニアッタノカ……?……イヤ…イマハ任務ニ集中シナケレバ…。ー

 

 

 

だが攻撃隊の中隊長はいくらなんでもそれはおかしいのではないかという表情を浮かべていた。それもそのはず、今回パラオ泊地空襲に投入された重爆隊の搭乗員はかなりの練度でちょっとやそっとでは落とされるような連中ではない。それに今回使われているB−17は別名『空の要塞』と呼ばれており、銃座や防弾性能がかなり強力で多少の被弾ではものともしない。

 

仮に全力迎撃を受けたとしても報告出来る多少の余裕はあるははずだが今はあの最後の無線とともに途絶えてそれすら聞こえなくなっていた。そのことが聞かがりではあるものの、ひとまず与えられた任務をこなすために気持ちを切り替えて各機に指示を出そうとしたその時…。

 

 

 

ダダダダダ!!!!

 

 

ー…ナニ…!!?ー

 

 

 

突如として先陣を斬っていた複数の戦闘機小隊が上空からの機銃掃射を受けて何機が火を吹きながらコントロールを失い墜落していく。辛うじて生き残った機体も退避しようとするだ立て続けに襲いかかってくる機銃掃射をモロに受けてそのまま息絶える。

 

慌てるように戦闘機隊は散開、すぐさま迎撃位置につこうとして攻撃隊も小隊ごとに分かれて狙いを分散させようとする。

 

 

 

ブォォォン!!!

 

  

 

だが散開した直後に編隊の間を突っ切るように数機の航空機が勢いよく上から下へ通過していく。それは彼らが見慣れた忌々しき日の丸をつけ自分たちよりも高機動に動ける機体…、そうパラオの飛行場から飛び立った基地航空隊や空母艦載機の戦闘機妖精達だ。

 

 

 

 

 

瑞鳳 制空隊 第一中隊 2番機(零戦52型)『よっしゃ!奇襲成功だ…!!やっこさんめ…!火を吹きながら落ちてやがるぞ…!!』

 

 

瑞鳳 制空隊 第一中隊 3番機『チャンスだ!!このまま畳み掛けるぞ…!!奴らに立て直す時間は与えるな!!迎撃戦の利点をいかして戦うんだ!!』

 

 

第七航空隊 特設戦闘第二中隊 6番機(零戦21型)『よし!今回の迎撃戦で戦果上げまくって悲願の第一中隊昇格を目指してやる…!!』

 

 

第五十五飛行戦隊 第一中隊 中隊長機(三式飛燕)『そう焦るな若造、それでは落とすよりも先に落とされてしまうぞ?空戦の基本は落とすよりも落とされないこと、生き延びることが大切だ。生き残ればチャンスなどいくらでもやってくるからな。』

 

 

第七航空隊 特設戦闘第二中隊 6番機『えっあっはい…!!陸軍とはいえど…ありがたいお言葉…!!肝に命じておきます…!!』

 

 

大鳳 制空隊 第一中隊 8番機『おしゃべりはそこまでだ…!!敵が来るぞ…!!乱戦なる以上空中衝突や背後には気をつけろ…!!』

 

 

 

奇襲攻撃をしかけた戦闘機隊に続くように次々とパラオ泊地の飛行場から飛び立った迎撃機が敵攻撃隊に群がるように襲いかかっていく。もちろん、それから護るためにあるのが護衛機というものであるため深海棲艦の戦闘機隊も負けじまいと空戦に突入する。

 

70機にも及ぶ深海棲艦の攻撃隊に対してパラオ泊地から飛び立ったのは30機近くほど。それも出せる奴を片っ端から出したため新旧の戦闘機という寄せ集め、それでも高高度の重爆隊に割く分をこちらに集中出来たため各機万全の状態で防空戦に突入するのであった。

 

 

 

 

 

瑞鳳 通信妖精「瑞鳳制空隊より通信!!我敵戦爆連合と接敵!!これより戦闘に入るとのことです!!」

 

 

瑞鳳「あさひさんの言った通りだね…流石は最新鋭のレーダー…!!」

 

 

大鳳「迎撃に上がった各戦闘機隊に通達…!!最悪撃墜しなくてもいいから爆弾を投棄させればそれでいいわ…!!相手はこちらの倍の戦力…!いちいち構っていたらキリがない…!」

 

 

大鳳 通信妖精「了解しました…!!各迎撃機にはそう伝達しておきます…!!」

 

 

 

泊地湾内で停泊している瑞鳳と大鳳艦内では迎撃に上がった戦闘機隊からの報告が無線で相次いで飛びこんで来ておりその対処に二人は追われていた。

 

 

 

大鳳「でも最初こそあさひさんの発言には驚きましたが……彼女の言った通りでしたね……。」

 

 

 

そんな中ふと思い出したかのように大鳳がそんなことを呟く。まさか来て早々の艦娘から意見の進言があるとは思わず、更にはその内容で『高高度の重爆隊を無視してください』どいう発言で場の空気が一気に変わるほどであった。もちろんはいそうですかと言えるはずもなく、曙などからは厳しい意見が上がり突っかかれる始末。

 

というのも大鳳はパラオ泊地基地航空隊・艦載機の要撃管制担当となっているため通常の場合あさひの意見具申は越権行為になりかねない問題なのだ。本来であればそのまま跳ねのけられるはずなのだが、彼女の予想以上の反論と話を聞いていた艦隊旗艦の瑞鳳による判断で特例として意見具申が許されたのだ(もちろんこのことは秋山にも報告済みで彼からも許可は降りている)。

 

 

 

皐月『まさかあさひさんがあんなことをグイグイ言えるとは思いもしなかったよ…(汗)。』

 

 

鳥海『といっても今回の発言はかなりグレーゾーンですからね…。提督のお陰でそこまで問題にならなかったようなものですから…。』

 

 

五十鈴『それはあとでいくらでも話せるとして…、気になるのはレーダーに映らない戦闘機…そしてその主の艦娘よ…、仮にあさひさんの言ってた通りなら彼女に続いてもう一人この世界にやってきたってことになるわ…。』

 

 

敷波『だとしても重爆隊全機を撃墜するなんて聞いたことないよ……。しかもあさひさんがそう説明した直後に高高度の爆撃機の反応が一瞬で消失したらしいし…。』

 

 

涼風『ウチの泊地は別世界の子を招き入れる現象でもあるんかいな?じゃなきゃそんなの説明つかねぇでい。』

 

 

 

湾内で対空戦闘の用意をしている艦娘達は先ほどの話でかなり持ちきりのようだ。あさひの越権行為になりかねない意見具申やまさかの提案、更にはそれを受け入れたと思ったら高高度の重爆隊が突如として逃げるような動きを見せたと思ったその直後に次々と落とされ、今まで感じてきた中ではまずあり得ないような現象がこの数日で起こりに起こっている。

 

あさひという艦娘との遭遇を始めとして、今回の大空襲で判明したもう一人の迷い込んだまだ見ぬ新たな艦娘といった状況がこの泊地関連で連続して起こっているとなればパラオ自体に何か別世界から引き寄せる何があるのではないかと一同は考えているようだ。

 

 

 

?『おしゃべりはそこまでや…!そろそろこっちに来るで…!!』

 

 

 

だがそんな会話を遮るようにパラオ泊地所属の軽空母龍驤が今まで静かにしていた口を開く。どうやら彼女の制空隊の搭乗員妖精から緊急の無線が飛び込んできたらしく雰囲気からしてかなり緊迫しているらしい。

 

 

 

霧島『どうされましたか…!!龍驤さん…!』

 

 

龍驤『ウチの戦闘機隊から緊急入電や!!敵攻撃隊の一部が防衛ラインを突破!!あと少しで当直の子達が展開しているラインまで来るそうやで!!』

 

 

大鳳『流石に全部は抑えきれなったですね…泊地全体に対空戦闘用意を下令!!高射砲要員及び機銃要員はいつでも射撃出来るように待機してください…!!』

 

 

瑞鳳『瑞鳳の戦闘機からも入電!!接近中よ敵戦爆連合の数は40機ほど…!!榛名さん達と接敵まで推測あと15分!!たぶんあさひさんのレーダーにはもう出てると思う!』

 

 

曙『さてどうなることかしら…、前よりも襲撃機数は多い……。それにミサイル?っていう兵装の補給が限られてる分あの子がどれだけ戦えるか…、お手並み拝見といこうじゃない…!』

 

 

大鳳『私も正直気になるところです。パラオ歴戦の瑞鳳さんがあそこまでいうほどの実力……近くで見れないのが残念ですが…。拝見するには丁度いい機会です…!』

 

 

霧島『こちらからすれば未来に近い艦娘……、どれほどの実力を彼女が有しているか…この霧島が見定めてあげましょう!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

榛名「大鳳さんから入電!!敵戦爆連合の一部が迎撃機を突破してこちらに接近中とのことです!!数は40機ほど…!あと15分で接敵します!!」

 

 

阿武隈「総員対空見張り厳にしてください…!敵はかなりの数です!!」

  

 

陽炎「対空戦闘用意!!ここからが正念場!少しでも泊地に向かう攻撃隊を減らすよ!」

 

 

 

同時刻、パラオ泊地湾外のバベルダオブ島前面海域に展開していた榛名含む当直艦3隻+あさひを含む4隻が対空戦闘に備えて単縦陣へと移行しているようだ。その間にもあさひのOPY-1(艦載武器システム、または対空武器システム)が接近する機影をキャッチする。

 

 

 

あさひ OPY-1妖精「レーダー探知!!対空目標40機確認!速度463キロで右舷側から本艦隊に接近中!!接敵まであと15分!!」

 

 

あさひ 砲術妖精「主砲、短SAM対空戦闘用意よし!!」

 

 

あさひ 修理妖精「被雷時に備えて隔壁閉鎖!!最悪の事態には備えておけ!!俺たちはいつでも動けるように準備しておくぞ!!」

 

 

あさひ 右舷側見張り妖精「こちら右舷側見張り!現時点で対空目標確認出来ず!!ですが間もなく接敵の可能性あり!」

 

 

あさひ「各員対空戦闘用意!!前回とは状況が違います…!心してかかりなさい…!!」

 

 

あさひ 全乗組員妖精「「了解!!」」

 

 

 

それと同時にあさひ艦内では彼女からの指示を受けた乗組員妖精が慌ただしく持ち場につくために艦内通路をいったり来たりしていた。その後持ち場についたことを確認すると被雷時に備えて隔壁閉鎖を各ブロックで行いダメコン担当としての修理妖精が待機する。

 

 

 

あさひ「……(といっても今回の敵機は40機…、先の空襲みたいにバカスカ艦対空ミサイルは撃つことが出来ない以上…自動目標ロックだとその辺の調整が出来ない…)。」   

 

 

あさひ OPY-1妖精「目標に変化あり!恐らく動きが活発なのが戦闘機と思われます…!攻撃隊らしき編隊は速度ともに変わらず…!ですが我々を攻撃するには高度が足りません!相手が爆装ということになれば…!」

 

 

あさひ 砲術妖精「連中の狙いはやはり泊地の機能をダウンさせることか…!!」

 

 

あさひ「……(先の戦闘ではESSMを12発消費…、残りは54発でまだ余力はある…けどこのペースでいけば間違いなく補給が来る前に撃ち尽くしちゃう…。かといってケチって味方に被害を出すわけにはいかない…なら…!)」

 

 

あさひ 対潜妖精「…(さぁ…あさひさんはどう出るのか…?イージスシステムより劣るとはいえどコイツのレーダーなら充分に捕捉は可能…、普通に行えば一瞬で終わるが…)。」

 

 

あさひ「あさひよりCIC!!ミサイルノーマッド、脅威度の高い4機に照準!!発射管制については手動で行います…!!」

 

 

あさひ 攻撃指揮官妖精「発射管制!!手動に変更します!!」

 

 

あさひ 対潜妖精「…(マニュアルで…4発だけ…?)。」

 

 

 

対潜能力に特化した分、イージスシステムや前身のあきづき型に劣るとはいえどあさひ型も充分な迎撃システムを有している。ミサイルでも追尾可能なレーダーなら相手がレシプロ機だろうとあっという間に蹴散らせることが可能だ。…しかしあさひは発射管制を手動に変更するように指示を出したことに対潜妖精が驚きを顕にする。

 

 

 

あさひ 対潜妖精「…(いや…そうゆうことか…!ミサイルの補給が出来るかどうか分からない現状、無駄撃ちは出来ない。けどケチれば逆に艦隊に被害が出ることを考えるとこの判断は妥当…!)」

 

あさひ 対潜妖精「…(それにいくら本艦に劣るとはいえど見る限り僚艦の対空砲は増強されている。本艦がすべて引き受ける必要がないんだ…!流石あさひさん…、戦闘になれば嘘のように頼りになる…!!)」

  

 

榛名『あさひさんは脅威度の高い敵機の迎撃をお願いします…!!そうしてくれればあとはこちらでなんとかしますので…!』

 

 

あさひ「了解しました…!!」

 

 

阿武隈『さっきのこともあるけど…、無理はしないようにね…!!何かあっちゃいけないし…!』

 

 

陽炎『んで!何か言いたいことがあればまずは私達に言って…!そっから瑞鳳さんや大鳳さんに伝えていくから…!』

 

 

あさひ「もちろんです…!先ほどは少し突発過ぎましたし…以後は気をつけます…(汗)!」

  

 

榛名 右舷側 見張り妖精「目標視認!!あぁ!えらく数がいます…!まるで視界を埋め尽くすように…!!」

 

 

 

榛名達とあさひがいろいろと話していると、榛名の見張り妖精から悲鳴のような報告が飛び込んでくる。それと同時に各艦の見張り妖精からも相次いで敵機発見の一報が入ってきたため、そちらに視線を向けるとそこには報告通りおびただしいほどの敵機が群がるようにこちらにやってくるのが彼女達の視界に入り込んできた。

 

 

 

阿武隈「パラオに配属されてこれでもけっこう時間経つけど…ここまでの空襲は初めてです…!!」

 

 

陽炎「連中がどれだけここが邪魔かって思ってるのが容易に想像出来るね…!でも…!無傷で通れるとは思わないでよ…!!」

 

 

榛名「ですが…!ここを通すわけにはいきません!!主砲!三式弾!砲撃始め…!!」ゴォォォォン!!!

 

 

榛名 砲術妖精「パラオへの勝手は許しませんぞ…!!撃ちまくれ!!」

 

 

 

自分たちでも経験したことないような大規模空襲、しかし榛名は臆することなく主砲を右舷に旋回させつつ仰角を上げて迫りくる敵機に照準した直後に発砲。轟音とともに全砲門から放たれた8発の三式弾は編隊の真ん中に飛び込むように飛来して内部で散りばめられるように炸裂、何機かダメージを受けたのか黒煙を拭き上げているようだ。対空射撃をしてきたことを確認するや否や、敵戦爆連合の攻撃隊は小隊ごとに散開し攻撃を回避しながら榛名達の迎撃を突破しようと試みる。

 

 

 

あさひ「私達も行きます…!右対空戦闘!!CIC指示の目標!!主砲!!撃ち方始め!!」

 

 

あさひ 主砲妖精「了解!!CIC指示の目標!!撃ちぃ方始め!!」

 

 

 

他艦の射撃開始に遅れないようにあさひの62口径5インチ単装砲が素早く旋回、接近してくる敵機に狙いを定めて発砲。放たれた砲弾は空中を切り裂くように飛来して、爆撃機に突き刺さるように命中する。127ミリクラスの砲弾、それが直撃をすればひとたまりもない。直撃を喰らったドーントレスは空中で轟音とともに爆発四散、残骸が海面へと重力に沿って落下していく。

 

 

ボフッ!カラァン!ボフッ!カラァン!ボフッ!

 

 

 

決して速いとは言えないが、それでもこの時代の駆逐艦が使用している単走砲に比べればその射撃速度には圧倒的な差が現れる。毎分16-20発の発射レートを誇るこの主砲は独特な発砲音や薬莢の排莢音を響かせながら敵機に対して的確な射撃を撃ち続け、次々と敵攻撃機をはたき落とす。

 

 

 

あさひ 主砲妖精「トラックナンバー2610から2620撃墜!!」

 

 

攻撃指揮官妖精「新たな目標!!210度!!」

 

 

あさひ「ESSMも攻撃始め!!もっとも脅威度の高い敵機を優先して撃破して…!!」

 

 

あさひ 砲術妖精「全部VLS!!発射用意……てぇ!!(カチ)パーズアウェイ(発射)!!」

  

 

 

主砲が敵機を志向して射撃しているその後ろでは、VLSのハッチが1セルほど音を立てて順番に開いていくのが確認出来、その直後に音を立てながら4発のESSM(発展型シー・スパロー)が上空へと打ち上げられて手動で照準した目標に向かってロケットブースターを点火しつつ向かっていく。

 

 

 

ーナッナンダ!?コッチニクルゾ…!!ー

 

 

ーヒダンシタ…ワケジャナイ……?ッ!!総員散開!!回避シロ!!ー

 

 

 

最初こそこれが何なのか分かっていなかった攻撃隊のとある小隊であったが、戦場の勘というものを感じ取ったのだろうか…?慌てるように各機分散して回避機動を行い、こちらに向かってくる謎の物体から逃げようとする…。しかし相手はイルミネーターに誘導されている艦対空ミサイル、回避手段がなく速度でも圧倒的な差が生じている深海棲艦の攻撃機が逃げ切れるはずがなくあっという間に差が埋まってしまう。 

 

 

 

ーナンナンダコレハ…!!ニゲテモニゲテモオイカケテクルゾ!!オレハユメデモミテイルノカ…!!ー

 

 

ーダメダ!!ソクドサガ アリスギテフリキレナイ!!ムコウガハヤイゾ!!ー

 

 

ーダレダヨ…!!パラオノクウシュウ ナンテスグニ オワルッテ イッタヤツハ!!ー

 

 

ーオノレ…!オノレ イマイマシキ カンムスメェェェ!!(ザ―――ッ!!)

 

 

あさひ 砲術妖精「インターセプトまで5秒!!用意…!!マークインターセプト!!」

 

 

OPY-1妖精「全弾命中確認!!敵重爆撃機4機の撃墜を確認!!」

 

 

 

深海棲艦機が声にならない絶叫を叫んだ直後、艦対空ミサイルが立て続けに着弾していき4機全部が空中で爆発四散してしまう。レーダーでもそれは探知しておりOPY-1妖精が素早く報告を行い、同じ頃その様子を目撃していた榛名は驚きを隠せずにいるようだ。

 

 

 

榛名「凄い……あれだけいた敵機を短時間で14機も……、瑞鳳さんの言っていた通りですね…。」

 

 

榛名 機銃妖精「俺たちだって負けてられねぇぞ…!!新入りの子が頑張っているんだ!!どんどん弾もってこい!!」 

 

 

榛名 高角砲妖精「信管設定間違えないでね…!!あっちは単装砲でかなり撃墜してるわよ…!!こっちの方が砲門は多い…!撃ち負けないで…!!」

 

 

阿武隈「瑞鳳さんには及びませんが…私達だってパラオ歴戦の艦娘です…!!来たばっかりのあさひさんばかりに負担はかけられません…!」

 

 

陽炎「えぇ!!それは私だって同じです…!!いつまでも借りを作るわけにもいかないからね…!!」

 

 

 

彼女が頑張っているのに自分達が出遅れてどうするのか、そう思っていた榛名の対空要員や阿武隈・陽炎は気合を入れて激しい弾幕を上空に打ち上げていく。あさひほどではないとしてもかなりの弾幕で、敵機の何機か上空を通過しようとしては黒煙を吹いたり被弾によって爆弾を投棄する機体が続出するほど厚い対空砲火になっていた。

 

 

 

あさひ「……(行ける…これなら…!!)「レーダーに新たな反応!!南側から新たに70機接近!!数からして敵空母艦載機です!!」なっ…!?」

 

 

 

このままいけると思っていたあさひであったが、CICから新たな敵機の反応をキャッチしたとの報告が飛び込んできた途端急に焦りの表情に変わってしまう。それもそのはず自分たちが相手している機数よりも遥かに多い、迎撃機がすべて自分たちが相手をしている戦爆連合に対応してるのもあるだろうがそれでもこの数はおかしい…。そこから生み出される答えは…

 

 

 

あさひ「まさか…!この攻撃隊は迎撃機と出港可能な艦艇を誘引するための囮…!!?(不味い…、流石にこれ以上の艦対空ミサイルの消費は…けど…そうすればパラオに被害が……ひとまず…報告しないと…!」

 

 

 

まさかの深海棲艦の陽動作戦に驚きを隠せず焦りを見せていたあさひであったがひとまず落ち着かせようと速やかな報告を行うとする。だがレーダーには映り込む6機の機影が新たに捕捉された敵攻撃隊に向けて飛行しているのが表示されていることに彼女は知る由もなかったのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

瑞鳳『っ!榛名さんより緊急入電!!南より別の攻撃隊が接近中とのこと!!数からして敵の空母艦載機と思われます…!!機数は75機!!あと5分で目視距離です!』

 

 

大鳳「総員対空戦闘用意!!いつでも撃てるようにしてください!!」

 

 

霧島「三段に分けた敵攻撃隊ですか…、にしても数がおかしすぎます…!!今までこれほどの空襲なんて経験が……!」

 

 

皐月「いよいよ連中も本気になったってこと…!?前提督が言っていた深海棲艦の大規模侵攻って…」

 

 

曙「そんなこと考えるのは後!!とりあえず今は敵攻撃隊の迎撃が優先よ!!…まさか迎撃機が出払ってるタイミングで現れるなんて…、あの子がいてくれたらから奇襲は防げそうだけど…。」

 

 

 

一瞬平穏な時間が流れかけていた泊地全体に再び緊迫した雰囲気が覆いかぶさる。迎撃機や当直艦隊が出払ってるタイミングでの襲来、出せる戦闘機はほとんど第二波攻撃隊に差し向けてしまったため停泊している艦艇や対空陣地のみで対抗しなければならない。

 

もちろんそれでも対抗出来ないわけではないものの、それでもかなりの数がいる攻撃隊を抑えられるかと言われればそれも怪しい。どんなに善戦してもやはり限界というものがあり、最悪泊地に被害が出ることは承知する必要がある。

 

 

 

皐月「やるしかなさそうだね…!!絶対にパラオには手を出させないよ…!!睦月型の底力…見せてあげる…!!」

 

 

皐月 機銃妖精「来るなら来やがれ…!ここに来たことを後悔させてやろうじゃねぇか…!」

 

  

第四十三対空陣地 高射砲妖精「この日のために月月火水木金金のハードスケジュールで訓練してきたんだ…!!今それを生かさないでどうするってんだ…!」

 

 

皐月 右舷見張り妖精「目標視認!!かなりの大編隊です…!視界いっぱいに広がっています…!」

 

 

 

艦娘や妖精達の士気は充分に高く、来るならいつでも来いという雰囲気を見せていた。そんな中、皐月の見張り妖精から敵機視認の一報が舞い込んでくる。そう言われ、そちらに視線を向けるとワイルドキャットやアヴェンジャー、ドーントレスといった空母艦載機がまるで獲物に群がるハチのように密集しながら迫りくる様子が遠くではあるものの確認出来た。

 

 

 

大鳳「総員対空戦闘用意!!敵機を泊地に近づけさせないで…!!射撃開s…(ゴォォォン)。」 

 

 

 

目視距離に入ったということは高角砲や主砲の射程圏内に入り込んでいるため、大鳳が対空射撃開始の号令をかけようとしたその直後…、こちらに迫っていた敵機の何機がなんの拍子もなく相次いで爆発。

 

それを受けて回避機動をするためかあれだけ密集していた編隊がまるで戦闘機に襲われたかのように散り散りになっていく。

 

 

 

龍驤「なっ…何が起こったんや…!?いきなり敵機が爆発四散なんて…!」

 

 

五十鈴「わっ私もわからないわよ…!!」

 

 

敷波「もしかしてあさひさんが…?」

 

 

あさひ「いっいえ…!そちらの編隊にはまだ攻撃すらしていませんが……。」

 

 

曙「はぁ!?なら誰だっていうのよ…!!」

 

 

なんの拍子もなく敵機が爆発四散したため、混乱を隠せない一同。それもそうだろう、ちょっと前までは何事もなくこちらにやってきていた敵攻撃隊が突如として攻撃?を受けて墜落しているのだから…。

 

五十鈴がもしかしてあさひさんの攻撃ではないかと予想するがそれもあっさりと彼女に否定されてしまったためその予想も崩れ落ちる。じゃあ一体誰なのか…、そう思った矢先重巡洋艦である古鷹が何かに気づいたのか声を上げつつ上空を指差す。

 

 

 

古鷹「みんな…!!あれ…!!」

 

 

 

そう言って指さした先には乱れた敵攻撃隊の合間を縫うように明らかに速度が違う黒い物体がすり抜けるように降下していくのが見えた。遠目からでもわかる自分たちが見慣れた機体とはまた違った独特な形やカラーリング。おまけにレシプロ戦闘機とは比べ物にならない機動力をいかして、逃げ惑う深海棲艦機をあざ笑うかのように追いかけていくその光景は…もはやこの世のものとは思えないものであった。

 

 

 

瑞鳳「一体……このパラオ泊地周辺で何が……」

 

 

 

 

 

 

 

 

いずも 攻撃隊 第二中隊 7番機(中隊長)『こっちも奇襲成功…!見た限り連中だいぶ焦ってるみたいのようね…!』

 

 

いずも 攻撃隊 第二中隊 8番機『ですが本当に大丈夫なのですかね…!いくらなんでもレーダーには敵機表示されていたとはいえ…』

 

   

いずも 攻撃隊 第二中隊 7番機(中隊長)『そんなの気にしてられるような状況じゃないのは貴方も分かっているでしょう?大丈夫、敵機表示なら交戦していいっていずもさんからは許可下りているから…!』

 

 

 

深海棲艦のパラオ空襲、その第三波攻撃隊に奇襲の形で上空から攻撃をしかけたいずも所属の第二中隊。そのF−35Bの機内では燃えながら墜落していく機と回避行動に映る編隊を見上げつつドヤ顔を浮かべる中隊長妖精。

 

しかし、それとは対称的にいきなり攻撃を仕掛けて大丈夫なのかという不安な表情を浮かべながら話しかける配下の妖精に対して問題ないという返答を返す。

 

 

 

いずも 攻撃隊 第二中隊 9番機『それにコイツらの目的がパラオの空襲なのも把握済み、本来であればこんなにポンポン介入してはいけませんが…、明らかに元いた世界とは違いますからね。』

 

 

いずも 攻撃隊 第二中隊 10番機『それに目の間にこれから空襲しようっていう所属不明機編隊がいるのに指くわえてみるなんて性に合わねぇ』

 

 

いずも 攻撃隊 第二中隊 11番機『今回ばかりは状況が異なりますからね…!敵の所属が分からない…けど攻撃の意思があるなら…やるしかないよな…!』

 

 

いずも 攻撃隊 第二中隊 12番機『おしゃべりはそこまでにしましょう…!敵の護衛機がこちらに向かってきていますわ…!ようやく気づいたようですね…!』

 

 

 

中隊長に続くように問題ないとそれぞれ付け加えるように答えている最中、一人の搭乗員妖精がこちらに気付いて降下してくる護衛の戦闘機隊に気付いて注意を促す。急降下していた影響かF−35B編隊が減速し速度を落としていたこともありなんとか射程圏内に収めるとワイルドキャットの主武装である12.7mm機銃6挺が一斉に火を吹き、第二中隊へと襲いかかる。

 

…がそんなことはお見通しだったのか、中隊は難なく機銃掃射を散開して回避し速度差で再び差を開きながら攻撃隊へと進路を変えて狙いを定めていく。

 

 

 

いずも 攻撃隊 第二中隊 7番機(中隊長)『全機に告ぐ!!ここからが正念場よ…!!敵の戦闘機はどっちにしろこっちの速度には追いつけない…!!速度差で振り切りつつ爆撃機や雷撃機を優先して攻撃しなさい!!』

 

 

いずも 攻撃隊 第二中隊 全機『『了解!!』』

  

 

 

中隊長の指示に一糸乱れぬ返答を返した各機搭乗員妖精達は、護衛機の位置に注意しつつ敵攻撃隊へと襲いかかっていくのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

あさひ「…凄い…」 

 

 

 

なんとか自分たちが相手をしていた敵攻撃隊を撃墜し終わり周りを見る余裕が出来たため少し離れた空域で深海棲艦艦載機と戦闘を繰り広げるいずも航空隊を凄いという雰囲気であさひは眺めていた。いや彼女だけではない、榛名達も同様で同じように空を眺めているようだ。

 

 

 

榛名「遠くからでも何故かはっきりと伝わってきます…。報告によればかなりの敵機のようですが…。」

 

 

陽炎「それを感じさせない接戦…、って今なんか凄い機動してたよ…。あれ本当に戦闘機なの…?」  

 

 

阿武隈「なんか私達が知ってるような戦闘機でもないし…、動きもほとんど違う…。あれが…深海棲艦の現れなかった世界の技術なのかな…?」

 

 

陽炎「……深海棲艦の現れなかった…世界…か…」

 

 

 

自分たちが今いるこの世界とは違い深海棲艦の現れなかった世界線、20年という中で現代兵器の発展というのは目まぐるしくそれはかつて自衛官を勤めていた人間でも驚くものだろう。だがそれと同時にこのような先の分からない上、勝利出来るかも怪しい戦争がないことも意味する。それを聞いた陽炎はどこか複雑な表情を浮かべて少し思い詰めたような雰囲気を浮かべていた。

 

 

 

陽炎「不思議なもんだよ…、アイツらが存在しなかったら私達のような艦娘が現れることがなかった。…けど、それって多くの人達が当たり前の日常を過ごしてたって意味…。」

 

 

阿武隈「……うん…、こうやってアタシ達が再び出会うこともなかったし…それに…提督だって今頃は普通の生活…過ごしてたんだろうね…。」

 

 

榛名「………」

 

 

 

 

 

 

 

  

 

 

 

 

ーオッオノレ コウモブザマニ カンムスドモニ ヤラレルトハ ダガコレデオワリデハナイゾ。セメテイッシムクイネバ…ー

 

 

 

レーダーに引っかかりにくい低空を飛行し、敵の迎撃から辛うじて逃げ延びた1機のドーントレス。そのパイロットはこのままやられるわけにはいかないという表情を浮かべており、それは徐々に憎悪の雰囲気に変わりつつあった。

 

 

 

ー……アイツサエ……アイツサエシズメレバ……アイツサエイナケレバ…ー

 

 

 

憎しみの表情を浮かべながら向けた視線の先、そこには榛名達とともに航行しているあさひの姿があった…。彼女が敵攻撃隊の半数近くを撃墜していたことも知っているし、なんなら隣で僚機が落とされた光景を目にしている。

 

 

 

ーオソラク アイツハカンムスノナカデハシンエイカンダ…アノフネガ イタカラ…ワレワレハコンナミジメナ マケカタヲシテシマッタ…。ヤツサエ…ヤツサエガイナケレバ…!!ー

 

 

完全にあさひをロックオンしたドーントレスはエンジンをフルスロットルまで回転数を上げて巡航から徐々に速度を上げ、海面スレスレを飛行していく。明らかにレシプロ機でやるような動きではないはずなのだが…そんなことはお構いなしのような機動で決死の肉薄攻撃を仕掛けようとしていた。

 

 

 

ーヤツハ ナニガナンデモ シズメル ゼッタイニダ! ワレワレノ ケイカクヲ トンザサセタツミハ オモイゾ…!ー 

 

 

 

 

 

 

あさひ 右舷見張り妖精「……ん?」

 

 

あさひ「どうかしましたか…?見張り妖精。」

 

 

 

新たに敵機がいないか周辺警戒をしている中、海面スレスレの空域を見ていた見張り妖精が何かに気付いて首を傾げていた。その際一度降ろした双眼鏡を上げて再び覗き込んで何度も確認し、それに気づいたあさひがどうしたのかと様子を見つつ尋ねる。

 

 

 

あさひ 右舷見張り妖精「いえ…先ほど海面スレスレを何かが飛んでいたような気がして……気の所為かな…?」

 

 

あさひ「んー…、(カチ)あさひよりCIC、本艦周辺に友軍艦以外の反応はありますか?」

 

 

 

見張り妖精の言っていることが気になったのか、少し考えた後にあさひはイヤホンジャックを起動してCICに味方以外の反応がないかと確認の無線を入れる。

 

 

 

あさひ OPY-1妖精『いえ、僚艦以外には反応はありません。近くでは空自の戦闘機隊が敵攻撃隊と交戦していますがそちらから離反は確認できませんし……というかどうしていきなりそんなことを…?』

 

 

あさひ「いえ、ちょっと見張り妖精が海面スレスレに何k……「本艦左後方!!2時の方向からドーントレス急速接近!!」…!?」

 

 

 

特に反応がないため、気のせいかと思っていた矢先見張りを続けていた妖精から突如として声が張り上がる。慌てるようにそちらに視線を向けると、そこには先ほどの編隊の生き残りだろうか…?海面スレスレで接近してくる1機のドーントレスの姿があった。

   

 

 

あさひ「嘘…っ!!対空戦闘用意!!目標は艦右後方から接近してくるドーントレス!!なんとしてでも撃ち落として!!それと面舵一杯!!」

 

 

いくらレーダーの死角と言われる海面スレスレだとしても、最新鋭の護衛艦の対空レーダーに引っかからなかったことに驚きを隠せないあさひ。しかしそんなショックを受けている余裕はないためすぐさま対空戦闘用意を下令して、取舵で進路を変更する。

   

 

 

 

 

あさひ

CIC

 

 

あさひ 攻撃指揮官妖精「どうゆうことよ!?レーダーよりも見張りからの報告が先って…!!」

 

 

あさひ OPY-1妖精「どうやら海面スレスレをかなりの速度で飛行していたようですが……なぜ映らなかったのか我々でも全くわかりません…!!」

 

 

 

同時刻、CICでも同じような状況になっており海面スレスレとはいえ敵機をギリギリまで探知出来なかったことに一同は驚きを隠せずにいた。いくら前身のあきづき型よりも防空レーダーが劣るとはいえ、ミサイルでさえも探知可能なレーダーを持ってさえドーントレスといった旧式の爆撃機を護衛艦で捕捉出来ないというのはあり得ない状況なのだ。 

  

 

 

あさひ 対潜妖精「まさか爆撃機のパイロットにそれほどの技量が……」

 

 

あさひ 攻撃指揮官妖精「その推測は後!!ひとまず今は奴を叩き落とすわよ…!!500ldの爆弾なんてこのうすペラい船体で受けたら…!!」 

 

 

あさひ 砲術妖精「しかし…!この距離ではESSMでの迎撃は間に合いませんぞ…!!」

 

 

あさひ 主砲妖精「こっちも駄目だ!!アイツ上手いこと艦後方の死角に潜り込んでやがる…!!これじゃ主砲での撃破は無理だ…!!」 

 

 

あさひ 攻撃指揮官妖精「……(主砲もミサイルも駄目……ならあとはあれしかない…)CIWS!!AAW(対空戦)オート!!」

 

 

 

 

ウィィィン!!!

ヴワァァァァァ!!!!

 

 

 

船体後部、ヘリコプター用の格納庫上に装備されているファランクスの20mm バルカン砲が敵機を素早く指向。狙いを定めた直後に射撃開始、毎分3,000-4,500発の高レートで銃身から放たれたタングステン弾(86式20mm機関砲用徹甲弾薬包)が急接近するドーントレスへと襲いかかっていく。

 

ミサイルから迎撃するための最後の砦といわれるファランクス。そのため発射レートは化け物じみた高レートであり、ドーントレスのようなレシプロ機で尚且爆弾を積んだ爆撃機なら一瞬で落とせる。…が、

 

 

 

 

ウィィィン……    

 

 

あさひ 機銃妖精「緊急報告!!後部CIWSがエラーで射撃停止!!復旧出来ません…!!」

 

 

あさひ「このタイミングで…!?(不味い…!これじゃ迎撃が出来ない…!)総員対ショック姿勢!!修理妖精…!!いつでも動けるようにして…!!」

 

 

あさひ 修理妖精「了解…!!」

 

 

 

まさかこのタイミングでエラーによる射撃不能という最悪な事態が起こってしまったのだ。これが艦前方なら仮にCIWSがエラーを起こして使用不能になっても艦砲で対処出来るのだが、艦後方はヘリコプターなどの格納スペースとなっているため武装がCIWS1基のみ。つまりこの1基が使用不能になれば艦後方に滑り込んだ敵機を迎撃することが出来ない。

 

 

  

あさひ 砲術妖精『くそ!こうもむざむざに滑り込まれるとはな…!!コイツは最新鋭の護衛艦なのによ…!!』

 

 

あさひ 攻撃指揮官妖精『そんなこと言ってる暇があるなら対ショック姿勢にさっさとなりなさい…!!後部CIWSはまだ復旧出来ないの!?』

 

 

あさひ 機銃妖精『ダメです!!エラーで復旧が困難です…!!現在修理妖精が直接修理を試みていますが…』

  

 

あさひ 攻撃指揮官妖精『そんなことやってたら被弾したときに巻き込まれるわよ!!修理は後回しでいい!!修理妖精の退避を…!!』

 

 

 

 

 

 

 

陽炎『榛名さん!!あさひさんの背後から生き残りと思われる爆撃機が急接近…!!たぶん体当たりする気だと思う…!!』

 

 

榛名『っ…!?いつの間に…!!(ヴワァァァァァ!!!!)あさんが応戦していますね…!私達も参戦します…!』

 

 

榛名 機銃妖精「駄目です!!僚艦に隠れるように敵機が接近しているため射撃が出来ません…!!クソったれ!!どこにいるか分からん…!!」      

 

 

もちろんこのことは榛名達にも伝わっており、レーダーに映らずに懐まで潜り込まれたことに最初こそは驚いていたものの、CIWSの射撃音を聞くなりすぐに自分たちも交戦するように指示を出す。…しかし、ドーントレスがいるのは丁度あさひの艦後方、最悪なことに被っているため射撃をすることが出来ない。そんなこんなしているうちにまた緊迫した無線が飛び込んでくる。

 

 

 

榛名 通信妖精「…!!あさひより緊急入電!!後部対空機銃が故障により沈黙!!迎撃困難のようです!!これより被弾に備えるとのこと…!!」

 

 

阿武隈「不味い…!このままじゃあさひさんが…!!」

 

 

阿武隈 機銃妖精「ですがどうやって…!!この位置では敵機を撃てないどころか僚機を蜂の巣にしかねませんよ…!!」

 

 

 

このままでは何も出来ずに彼女が被弾してしまう。しかも現代の水上戦闘艦は遠距離からのミサイル合戦を主軸としているため500ldクラスの爆弾を抱えた機からの攻撃を喰らえば致命傷になりかねない。

 

 

 

あさひ「舵そのまま…!!なんとしてでも被弾の損害抑えないと……(ドゴォォォン…!!)……ふぇ?」

 

 

 

最悪被弾しても問題ないような角度にするため敵機に対して艦後部を向けるように指示を出した直後、先ほどまで勢いよく接近を試みていたドーントレスが一瞬にして爆散、燃えながら飛び散った破片が海面へと落ちていく。

 

 

 

陽炎 見張り妖精「敵爆撃機…!!爆散して墜落しています…!!恐らく艦砲による対空射撃の可能性が…!!」

 

 

陽炎「また…!今度はなんなのよ…!?」

 

 

榛名「…!!電探妖精より入電…!!本艦隊の左側に艦影を確認…!!」

 

 

阿武隈「本艦の見張り妖精も目視で確認……間もなく全貌が見えるかと……!!」

 

 

 

今度はどこからか飛んできた艦砲射撃によって爆撃機が撃墜されたことに頭の整理が追いついていない陽炎であったが、榛名の電探にその主である反応が映り込む。それと同時に阿武隈の見張り妖精からも艦影視認という報告が飛び込んでくる。  

 

 

 

榛名「あれは……」

 

 

 

報告のあった方角には何故か霧が発生しておりその中からゆっくりとあさひを狙っていた爆撃機を撃墜した主が姿を現す。色はあさひの同じグレーの船体塗装ではあるものの、艦橋は高雄型クラスにも負けないほどの大型で特徴的なレーダーのような白いパネルみたいなものも確認出来る。

 

 

 

?『どうゆう状況なのかはわからないけど…、うちのかわいい後輩虐めて貰っちゃ困るのよねぇ。』   

 

 

 

姿を現しあさひと酷似しながらも少し違うような雰囲気を漂わせている艦艇……いや艦娘の操るイージス艦といった方がいいだろう…。その艦橋上部では黒髪ショートで髪の下側が白という組み合わせをし、衣装は濃い青のクラシックな軍服・ワンピース風な服装で白の上着を身にまといどこか大人びた雰囲気を見せていた。

 

 

 

あさひ「その声……もしかして…こんごうさん…?」

 

 

 

生前は艦娘ではなかっためお互いの容姿を見たことがないのにも関わらず聞き慣れた声やどこか落ち着くような声に思わずあさひからポツリとそんな言葉が漏れる。

 

 

 

こんごう『えぇ♪そうよ…!海上自衛隊所属…!最古参のイージス艦「こんごう」!!ここに見参です…!!』

 

 

陽炎「金剛さん…!?」

 

 

阿武隈「えっあっ…(困惑中)。」

 

 

榛名「…お姉さまと同じ名前……これは一体……」

 

 

 

突如として現れた新たなる艦娘、その登場に驚きを隠せない榛名達をよそに見慣れた仲間との再開にあさひは喜びを隠せずにいたのであった。

 

 

 

海上自衛隊所属であり発のイージスシステム搭載艦として就役、配備された最古参のイージス艦。

  

 

DDG-173『こんごう』、榛名や霧島の姉に当たりネームシップである戦艦金剛と同じ名前を持ちあさひやいずもと同じようにこの世界に招かれた彼女はなにを思うのか…

 

物語はさらなる段階に突入します…!!

     

 

 

    

 

 

 

  

第九話 嵐の前の静けさ

 

 

 

 

 

 

 

 

(秋山提督のプロフィールがなかったので載せておきます。)

 

 

秋山賢太

年齢:25歳

階級:中将

 

連合艦隊 第4艦隊所属第3根拠地隊

パラオ駐留艦隊司令官

 

 

25歳という若さながらここパラオ駐留艦隊司令官の「提督」として指揮している。元々海軍には興味があり士官学校に入学、その際優秀な実力が連合艦隊司令部の目に止まり23歳で中将としての階級を与えられ、南方の最前線の一つでもあるパラオ泊地の司令官として就任した。優秀な指揮力と冷静な判断、何より部下を第一にして動いているためパラオ泊地の艦娘や妖たちからは厚い信頼を得ている。かつて、連合艦隊司令長官 から目上に対しての対処についてのマナーをみっちり受けており海軍上層部や陸軍相手でも良好な関係を気づけている。

  

 

いろんな艦娘とも良好な関係を気づいているが、その中で軽空母でありながらパラオ泊地艦隊の総旗艦をつとめる瑞鳳とはより親密な関係を気づいているようで関係はかなり良好だ。そのため彼の部下である艦娘達や妖精達からは『おしどり夫婦』と呼ばれているらしい(当の本人たちは否定しているが)。

  

別世界から迷い込んだあさひたちに興味を示しつつも仲間として歓迎して受け入れているようだが、相次いで起こる異変を気にしており時折いろんな情報を本土から取り寄せているようだ。   

 

 

(いずもやこんごうについての紹介は次回やります)





危機一髪のところで難を逃れたあさひ
しかし自分を救ってくれた主の正体はまさかのイージス艦「こんごう」。彼女もまた同じようにこの世界に招かれた一人だったのだ……。   

 

一体…この世界で何が起こっているのか…
そして…何故彼女達は招かれたのか……謎は深まるばかりであった……。

(ちなみにいずもの空母化はこちらの動画を参照にしています
確認する際は下のURLを押してください。)
https://youtu.be/s-h2ZBXEb54


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あ号艦隊決戦
第九話 嵐の前の静けさ


まさかあさひ以外にもこんごうやいずもも同じように、この世界に迷い込んだことに驚きを隠せない一同。本来であれば起こり得ない状況

しかし、彼女達は知る由もなかった……彼女達が招かれた理由には大きな脅威が関係していることに……。


 

 

護衛艦『いずも』

 

髪色:茶髪

髪型:ボブショート

瞳色:濃い青と水色の混合

体型:見た目はスレンダーだがあさひよりも胸部装甲はあるらしい。

身長:150センチくらい

性格:穏やかで心優しい性格で、面倒見のいい性格。数少ない海上自衛隊の空母のため、新人パイロットの指導もお手の物。

モデルキャラ:ショートセレナ(アニポケ)

 

 

いずも型護衛艦のネームシップ。海上自衛隊最大とも言えるヘリコプター搭載型護衛艦として就役した彼女は前身の『いせ』型よりも対潜ヘリコプターの運用能力や艦隊としての指揮力が強化されている。近年ではいずもにさらなる航空機運用能力を付与するため空母化に向けた改修を行っており、この世界にやってきたいずもの全体像もその空母化された姿になっている。

 

ステルス戦闘機を12機運用出来、それを活かした高高度の重爆や敵母艦艦載機などの迎撃で真価を発揮した。

 

 

性格としては穏やかで心優しい性格で、面倒見のいい性格。ステルス戦闘機を活用した偵察や奇襲攻撃を得意としていることから戦闘機隊の運用能力はかなり高いようだ。

 

好きな食べ物は特にこれというのはないが、のちに瑞鳳の卵焼きの美味しさにほれてしまう。

 

 

 

護衛艦『こんごう』

 

髪色:黒髪と下側が白

髪型:ショートで後ろに髪をくくっている。

瞳色:赤と紫が混じってる。

体型:長良型軽巡洋艦と同じ

身長:160センチくらい

性格:真面目でしっかり者。しかし真面目過ぎて空回りしてしまうこともあり、どこか秋月に雰囲気が似ている。そのため同じ名前である戦艦金剛とは対称的。

モデルキャラ:護衛艦娘 イージス艦『みらい』(しろきつね様作)

 

 

こんごう型護衛艦のネームシップ。海自初のイージスシステム搭載ミサイル護衛艦にして、アメリカ海軍以外が初めて保有したイージス艦でもある。

 

高性能なイージスシステムを搭載、弾道ミサイル迎撃能力を有した彼女は長きにわたり海上自衛隊の最前線で活躍を続けきたため能力はかなり高い。

 

 

性格としては真面目でしっかり者、自信の経験をいかした指導などもしようと思えば出来るようだ。だが真面目過ぎて変なところで空回りしてしまうことがたまにキズ。

 

部隊は違えどあさひと同じ佐世保基地配属ということもあり、佐世保バーガーが大好物。というか長崎の名物はほとんど大好き。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

パラオ大空襲から

翌日

 

泊地司令部

会議室にて

 

 

 

 

秋山「さてと…パラオ大空襲に関しての会議と行きたいが………。」

 

 

 

なんとか敵攻撃隊の波状攻撃を凌いだパラオ泊地では秋山が主要な艦娘を集めて緊急の会議を開いていた。だが空襲の被害は皆無に等しいためぶっちゃけ会議の主な話とすれば秋山が向けた視線の先にいる『いずも』や『こんごう』のことだろう。

 

 

 

秋山「まさか…あさひと同じような状況になっていた艦娘がいるとはな……。とりあえず名前を改めて確認させて貰おうか?」

 

 

いずも「いずも型護衛艦のネームシップ、『いずも』です…!所属は横須賀基地…あっいや…、こっちでいうと横須賀鎮守府に当たるのかな…?」

  

 

こんごう「海上自衛隊所属 イージス艦『こんごう』です…!あさひさんがお世話になっています…!」

 

  

秋山「マジか…小さい頃、深海棲艦がまだ現れてない頃に一度本物のこんごうを見たことがあるが…。まかさこうやって別世界から迷い込んでくるとはな…。」

 

 

榛名「というか何でしょう…、お姉さまと同じ名前なのに雰囲気がほとんど違うというか……」

 

 

霧島「同じ金剛のハズなのに…、どうしてここまで性格に差があるのでしょう…(汗)。どことなく秋月さんと似ているように感じます。」

 

 

 

いずもに関しては秋山の世界ではまだ就役してないためわからないのは無理はないが、彼が小さい頃に横須賀に寄港したさいに見たイージス艦『こんごう』を艦娘として再び見ることになるとは思わなかったのか少し懐かしげに眺めていた。

 

 

 

大鳳「ひとまずお礼からですね…!我がパラオ泊地に襲来した敵機の迎撃をしてくださってありがとうございます。お陰で被害を出さずに済みました…!」

 

 

瑞鳳「私からもお礼を言わせてください…!ありがとうございます…!貴方たちからすれば見ず知らずの世界なのに戦闘に加わっていただいて…!」(頭を下げる

 

 

いずも「いやはや(汗)そんな頭を下げないでください。私もここが自分の知ってる世界じゃないのはわかっていましたし…、敵とわかればむざむざ見過ごすのもよくありませんでしたから…」

 

 

こんごう「私としてはあさひさんの反応がレーダーに写っていましたし…何より後輩がピンチだったので咄嗟にですが…(汗)」

 

 

 

まさか頭を下げられると思っていなかったのか、勢いよく下げた大鳳と瑞鳳をみて少し焦りながら慌てて弁明しつつ頭を上げるように説得を二人はしていた。そこからしばらくてんやわんやしていたがようやく落ち着いてきたため静かにしていた提督が口を開く。

 

 

 

秋山「ひとまず、二人はあさひと同じようにこのパラオ泊地配属になってもらう。今流石に本土からお偉いさんを呼ぶわけにもいかないからな…。ひとまずという形だが、問題なければこのままパラオ配属になるだろう。慣れたところの方がやりやすいだろうし、…他の鎮守府の提督が知れば欲しがりそうだが…(汗)」

 

 

龍驤「そこは提督の手腕が生きるところやでぇー。海軍司令部にいたころのコネが役立つやろー。」

 

 

秋山川「言ってくれるなー(汗)。まっそこをどうにかするのが俺の仕事だから当たり前か…。ひとまずこの話はまた後でじっくりするとして…、瑞鳳頼めるか?」

 

 

瑞鳳「わかりました…!それでは報告会を始めます…!!内容としては以下のとおりですね。」

 

 

 

 

 

来襲セル深海棲艦陸上機及ビ敵母艦艦載機ニヨル空襲二ツイテ

対空戦闘報告:大鳳

被害報告:瑞鳳

今後ノ対策提案:鳥海 

 

新タニ加ッタ護衛艦娘ノ艦種変更二ツイテ 

報告:霧島

 

 

第四艦隊ヨリ達セラレル指令二ツイテ

代読:瑞鳳

 

 

 

秋山「なるほど、それじゃまずは対空戦闘を指揮した大鳳。報告を頼めるか?」

 

 

大鳳「あっはい…!昨日、我がパラオ泊地は深海棲艦機、陸上機、述べ174機の攻撃を受けました。編成及び対空火器にのる撃墜数は以下の通りです。」

 

 

 

 

来襲セル敵機

 

 

第一波:重爆二十四機

第二波:重爆五機、軽爆撃機四十五機、陸上戦闘機二十機

第三波:雷撃機十五機、爆撃機四十五機、艦上戦闘機十五機(イズレモ空母艦載機)

合計:百七十四機

 

艦隊対空砲火ニヨル戦果:撃墜四十機 

 

 

 

秋山「この40機は当直艦娘とあさひの戦果だろうが…、やはり彼女の防空能力は目を見張るものがあるな…。後続から襲来した多方面奇襲を防げたのもあさひのレーダーのお陰だし…」

 

 

あさひ「そっそんな大したことありませんよ…///(てれてれ)自分の役割を全うしただけですから…///」

 

 

曙「でも、今後はあんまり無茶はしないようにしなさいよ。何かあればすぐに報告、これを徹底しなさい?それと不調起こしてた対空火器は直ったの?」

  

 

あさひ「わっわかりました…!!はい、CIWSについても修理妖精があのあと徹夜で直してくれました…♪どうやら弾づまりによるエラーだったみたいです…(汗)」

  

 

曙「ちゃんとメンテナンスはしてたんだろうけど…。今後は気をつけなさいよ?貴方の代わりはいないんだから…、最新鋭艦だからって油断は禁物だからね…!」

  

 

あさひ「ありがとうございます…♪その言葉はしっかりと肝に命じておきます…!!」  

 

 

皐月「…(なんだかんだいって曙ちゃんは心配性なんだねー♪)ヒソヒソ」

 

 

陽炎「…(確かに…♪表ではツンツンだけど案外あさひさんのこと気にかけてるのかも…♪)」

 

 

曙「こっこらそこ…!///ヒソヒソと私のこと話すな…!///」

 

 

陽炎・皐月「「はーい♪」」

  

 

 

なんだかんだいいながらあさひのことを気にかけている曙を横目に陽炎と皐月はヒソヒソと安心したような表情で話し込んでいた。その際にコソコソ話を聞かれたのか頬を赤らめた彼女から注意を受けて二人はニヤニヤしつつ返事を返しているのを見つつ秋山が大鳳に続くように説明を続ける。

 

 

 

秋山「それじゃ大鳳からは航空隊についての報告をお願いしようか。」

 

 

大鳳「それでは、航空隊については私から…!艦隊航空隊、基地航空隊、陸軍航空隊、合わせて30機といずも所属の航空隊12機が離陸発艦に成功。迎撃戦闘を行いました。」

 

 

秋山「やはり奇襲で多くの機が離陸出来なかったのが痛かったな…。防空網の構築が急務ってところか…。」

 

 

 

 

海軍航空隊ニヨル戦果

撃墜十ニ機、撃破四機

 

陸軍航空隊ニヨル戦果

撃破十一機、撃破三機

 

いずも航空隊ニヨル戦果

撃墜七十機、撃破ニ十機

 

 

合計:撃墜機九十三、撃破ニ十七機 

 

 

総合計:撃墜機百三十三、撃破ニ十七機

  

 

 

 

大鳳「航空隊の損失も追記しておきます。こちらの損害は自爆未帰還3機、搭乗員妖精はいずれも脱出しました。」

 

 

龍驤「こうしてみるとなぁ…、いずもはんの航空隊の撃墜数がえげつないなぁ…(汗)。ジェット機とレシプロ機の差があるとはいえど……。」 

 

 

いずも「あはは…(汗)。なんかこうしてみると私の部隊だけ撃墜数が浮いてるような…それにこれだけ見ると盛ってるように感じちゃいますね…(汗)。」

 

 

秋山「まあ君の性格ならそれはなさそうだけどなー、とりあえず次は被害報告か…。瑞鳳、頼む。」

 

 

瑞鳳「はい提督♪今回の大規模空襲についての被害報告ですが、ほとんどが泊地に到達する前にほぼすべての攻撃隊を迎撃出来たので特にこれといった被害はありません…(汗)。強いていうなら対空砲が1基機銃掃射で破壊されたくらいです…。」

 

 

秋山「あれだけの大空襲を受けて被害がこれだけとは…。全く…タイミングのいいときに君たちはここに来たもんだな…(汗)。」

 

 

あさひ「んー…(汗)タイミングいいんですかね…?」

 

 

いずも「まあ結果としては敵の大空襲を防げたんだしいいんじゃないかな?そうでしょ、こんごう?」

 

 

こんごう「確かにそうかもしれませんね…。私達がいなければここは間違いなく火の海になっていたでしょうし……。」

 

 

 

秋山の言うとおり、あさひ達がこのタイミングでパラオにやってきたというのは確かに良かったのかもしれない。結果としては深海棲艦のパラオ大空襲を頓挫させるだけでなく、攻撃隊の半数以上を撃墜し相手に致命的なダメージを与えたのだ。まさしく救世主と言っても過言ではないため、3隻は確かにという表情を浮かべながら頷く。

 

 

 

秋山「だがいつまでも君たちに頼りっぱなしなのもあれだ…。そういえば、鳥海から今後の対策について提案があるんだってな?」

 

 

鳥海「はい…!やはり今回の空襲ではミクロネシア連邦にあるレーダー基地で判明したため…やはり早期警戒網を構築するべきかと…。」

 

 

阿武隈「早期警戒網…?」

 

 

鳥海「近隣の島にレーダー基地及び哨所を設置、海上では哨戒艇や航空機による複層哨戒を行うようにすれば奇襲についてはかなり防げるようになるはずです。」    

 

 

秋山「もっと早く作ってれば良かったのだが…、気にしてても仕方ない。担当艦は龍驤、君に頼めるかな?」

 

 

龍驤「任せときーや!航空機対策ならうちの得意分野やで…!」

 

 

大鳳「基地航空隊の手配とかについては、私に相談してくださいね。」

 

 

瑞鳳「必要な人員、物資については私か霧島さんに言ってください…♪」

 

 

龍驤「了解したでー…!なんかあればよろしゅう頼むなー。」

 

 

秋山「それと鳥海には泊地の対空、防空設備の整備をやって貰おう。」

 

 

鳥海「了解しました…!鉄壁の守りと言えるように泊地の防空を強化いたしましょう…!!」

 

 

秋山「しっかりと頼むぞ…!…だがここまでの空襲…やはり敵の大規模侵攻が近い可能性があるな…。」

 

 

霧島「えぇ…ここまでの空襲はパラオ泊地創設以来ほとんどありませんでしたからね…。小規模の空襲なら何度かはありまりましたが…。」

 

 

皐月「前提督が言ってたことが本当になるかもしれないってことかな…?実際その話が上がってから少ししてこれだし…」

 

 

秋山「まだ確証はないが…、ひとまずは哨戒機の数と出撃回数を増やして索敵を強化するしかあるまいな…。」

 

 

 

突然ここまでの大規模空襲が始まったとなれば、前々から言われていた深海棲艦による侵攻の前段階の可能性が高い。まだ確証はないがそうでなければ一度にここまでの機数や波状攻撃をしかけることはない。…となれば近いうちに何らかのアクションを起こすのではないかと秋山は考えていた。…しかし今は空襲の被害報告などの話し合いのためこの件はあとで調べるとして、瑞鳳が次の話に入る。

 

 

 

瑞鳳「では、次の議題に入ります。新たに加わったいずもさんやこんごうさんについての艦種変更ですが…」

 

 

霧島「それについては私から、やはり今の名称では他艦隊と行動する際に連絡で支障をきたしますから艦種変更をするべきかと…、それとこんごうさんについては名前が被る艦があるのでそちらの変更もするべきでしょうね。」

 

 

いずも「まあ、こっちからすれば私は空母の分類なのに護衛艦って言われたらそりゃ困惑するよねー。」

 

 

こんごう「確かに今のままでは霧島さんのお姉さん?と一緒になった時に無線で交信するのには支障が思いっ切り出るでしょう…。私もその案には賛成です。」

 

 

霧島「それで艦種変更についての案ですが…。ひとまずいずもさんについては出雲型航空母艦で、こんごうさんについては艦隊指揮力や設備を考えて巡洋艦でいこうと思います。艦名についても川の名前を取って吉野級軽巡洋艦という感じはどうでしょう。」

 

 

いずも「私はそれでオッケーですよ♪なんかカッコ良さそうだし…!」

 

 

こんごう「私も問題ありません。軽巡洋艦という呼び名には慣れませんが…、私の船体で駆逐艦は無理がありますからね…それが妥当でしょう。」

 

 

霧島「了解しました…♪あさひさんに関しても朝日型駆逐艦というていで登録を行いますがよろしいでしょうか?」

 

 

あさひ「はい♪良さそうな呼び名ですから問題ありませんよ♪」

 

 

秋山「決まりだな。霧島、会議の後に泊地関連の登録手続きをお願いするよ。」

 

 

霧島「はい…!おまかせください…!」

 

 

 

ひとまずあさひ達の新しい呼び名も問題なく決まり、その名前で登録を行うことに。やはりこちらに合わせた呼び名の方が他鎮守府との作戦についての連携もしやすくなる。こんごうに関しても名前の変更で被らなくなったため、霧島や榛名の姉であるこんごうと一緒になってもこんがらなくなるのもかなり大きいだろう。

 

 

 

瑞鳳「では…!続いては第四艦隊からの命令についてです。」

 

瑞鳳「沖ノ島沖周辺に深海棲艦隊の出現が予測される。これに対する出撃準備及び警戒体制の強化を……(タッタッタッ!!)」

 

 

参謀妖精「会議中失礼します…!連合艦隊司令部より緊急の連絡です…!!」   

 

 

秋山「緊急連絡?構わんから教えてくれ。」

 

 

 

最後に第四艦隊から届いた命令書の代読を瑞鳳が始めようとしたその直後、滑り込むように参謀妖精が会議室に滑り込んでくる。様子からして緊急の可能性があるため会議中にも関わらず秋山は真剣な表情で話を続けるように命令する。

 

 

 

参謀妖精「『沖ノ島海域に出現した、有力な敵機動部隊を迎撃。全力出撃でこれを撃滅せよ』。主文は以上です…!現在、詳細電文を受信中です…!」

 

 

秋山「……わかった。瑞鳳、現在の艦隊状況を教えてくれ。」

 

 

瑞鳳「パラオ泊地に展開する全艦隊の出撃が可能です。提督…!」

 

 

秋山「敵の空襲目標が泊地機能、そして大規模空襲を凌げたのが大きかったな……艦隊、抜錨用意。明朝0600、連合艦隊編成で抜錨する。」

 

 

あさひ「あの、私達はどうすれば…。」

 

 

秋山「君たちにも出撃を命ずる。今回の相手はかなりの大規模の艦隊の可能性が高い…。今は少しでも戦力が欲しいからな…」

 

 

いずも「了解しました…!!航空隊には即時待機を命じておきます…!!」

 

 

こんごう「こちらも了解しました…!艦隊防空ならおまかせください…!」

 

 

秋山「恐らく厳しい戦いになるだろう。各員一層奮励努力せよ…!」

 

 

会議出席の全艦娘「「はい!!!」」

 

  

 

 

 

その日の夕方

パラオ泊地湾内にて

 

 

 

補給妖精「おら!燃料と弾薬ありったけ積み込め!!今回の戦いは長期戦必至だぞ…!!」 

 

 

給糧妖精「食料も積み込めるだけ積み込め!!長期戦は士気の高さが命運を左右する…!!乗員が喜びそうなものとすぐに腹ごしらえ出来るもんを用意しろ…!!」

 

 

工廠妖精「退いた退いた!!角材のお通りだ…!!」

 

 

 

日が傾き始めているのを背にパラオ泊地湾内では明日の抜錨に向けて慌ただしい出港準備に追われていた。給油艦や補給艦の輸送船を始めとし、哨戒艇や揚陸艦といった使える小型船などは片っ端から引っ張り出して艦艇への弾薬、燃料の補給や食料などの積み込み、応急修理用の角材や予備の部品などの積み込みがひっきりなしに行われていた。

 

 

 

秋山「よっ瑞鳳…♪出港準備の進捗はどうだ?」

 

 

瑞鳳「あっ提督…!(駆け寄って)ひとまず積み込み作業は順調に進んでるよ…!缶の圧力も問題なしだから予定通りの抜錨が出来るかな♪」

 

 

 

そんな中、作業の進捗状況を見に来た秋山は書類片手に積み込み作業の様子を見ていた瑞鳳のもとへやってくる。もちろん彼女もそれに気づき、嬉しそうな笑みを浮かべながらこちやに駆け寄ってきて報告を行っている。

 

 

 

秋山「ふむ、パーフェクトだな…♪流石はパラオ泊地艦隊総旗艦…!俺が見込んだことはあるぜ…♪」

 

 

瑞鳳「えへへ…♪ありがとう提督♪っとそういえば第一艦隊の旗艦私で良かったのかな…?指揮設備とかなら霧島さんとか大鳳さんが適任だと思うけど……?」

 

 

秋山「まあ確かに本来ならそうなんだろうけどな…(汗)。大鳳達も優秀だし艦隊指揮能力とかもかなり高い。大規模な作戦ならそっちを選ぶべきなんだろうが…」

 

 

瑞鳳「ならどうして……」

 

 

 

確かに、瑞鳳の言うとおりここまでの大規模作戦なら艦隊指揮力の高い大型艦艇を第一艦隊旗艦にするのが妥当だろう。このパラオなら戦艦霧島か榛名、正規空母である大鳳といった艦娘が旗艦になることが多い。それを知っていてどうして自分を選んだのか瑞鳳からすれば不思議なことであった。

 

 

 

秋山「やっぱこうゆう時だからこそ瑞鳳を旗艦にするべきだと思うんだよ。もちろん大鳳達も信頼はしているけど、やっぱ瑞鳳に乗ってるとどこか落ち着いて指揮が出来るからさ…(照れくさそうに)」

 

 

瑞鳳「……提督……(こみ上げてくる感情を抑えつつ)。」

 

 

秋山「まっ、それは建前で本当は久しぶりに瑞鳳に乗りたいのが一番の理由だな…♪」

 

 

瑞鳳「…ぷっ、何よそれ…♪ふふっ♪(本当、提督は優しいよね…。そんなに優しいと…私もっと好きになっちゃうよ…?)」

 

 

瑞鳳 砲術妖精「なーんか提督と瑞鳳さんが更に接近してますねー。まあ別に止めるつもりもありませんが…!」

 

 

瑞鳳 制空隊 第一中隊 中隊長機「瑞鳳さんに用事があって来たんだが…後にするか、いい雰囲気邪魔したくないし。」

 

 

 

二人がいい感じになっているのを建物の影から見ていた瑞鳳の砲術妖精と制空隊の中隊長妖精であったが邪魔をしないようにこっそりとその場を後にする。それに気づいていないのか少し話が弾みつつも秋山が艦隊の状況について尋ねる。

 

 

 

秋山「やっぱ瑞鳳はその笑顔がお似合いだよ♪とりあえず現状のパラオ泊地戦力及び出撃する連合艦隊編成を教えてくれないか?」

 

 

瑞鳳「はい…!!それでは、こちらがパラオ泊地に展開している艦隊の状況です…!」

 

 

 

 

パラオ泊地

在艦隊戦力

 

空母

大鳳、瑞鳳、龍驤、出雲(いずも)

以下四隻

 

戦艦

霧島、榛名

以下二隻

 

重巡洋艦

古鷹、鳥海、青葉

以下三隻

 

軽巡洋艦

阿武隈、五十鈴、阿賀野、吉野(旧こんごう)

以下四隻

 

駆逐艦

陽炎、曙、皐月、睦月、敷波、涼風、雪風、時津風、巻雲、朝日(あさひ)

以下十隻

 

 

計ニ十四隻

 

 

瑞鳳「以上がパラオ在海軍戦力です。続いて、今回出撃する連合艦隊編成についてはこちらに…!」

 

 

 

連合艦隊編成

 

第一艦隊

旗艦:瑞鳳

大鳳、龍驤、出雲、霧島、榛名、朝日

以下七隻

 

第二艦隊 

旗艦:鳥海

古鷹、青葉、吉野、雪風、敷波、時津風

以下七隻

 

第三艦隊

旗艦:阿賀野

阿武隈、巻雲、曙、涼風、皐月、睦月

以下七隻

 

 

計ニ十ニ隻  

 

泊地警備・運営:五十鈴、陽炎

以下二隻 

 

 

  

秋山「五十鈴と陽炎には泊地の運営及び警備のために残ってもらおう。本来であれば全艦抜錨させたいが…、流石に陸軍任せにするわけにもいかんからな。二人にはもう伝えてるな?」

 

 

瑞鳳「はい…!すでに伝達済みで、二人から了承は貰っています…!」

 

 

秋山「なら問題はなさそうだ…!明日の出撃は早い。作業が終わり次第出撃する子やその乗組員妖精のみんなにはしっかりと休むように伝えてくれ。」

 

 

瑞鳳「了解です♪提督も今日はしっかりと休んでくださいね…♪寝不足は艦隊指揮に影響が出ますから…!」

 

 

秋山「おう、ありがとうな…!瑞鳳♪そうさせて貰うよ…!」

 

 

瑞鳳「うん…♪」

 

 

 

 

その日の夜

埠頭にて

 

 

 

こんごう「……。(静かに夜空を眺めていた)」

 

 

いずも「あら、まだ起きてたのね?(声をかけつつ歩み寄り)」

 

 

こんごう「いずもさん…」

 

 

 

暗闇の中、月夜に照らされながらこんごうはどこか神妙な表情を浮かべながら何か考えているようだ。するとそこにいずもが何気なく歩み寄ってきて隣にしゃがみつつ視線をこちらに向ける。

 

 

 

いずも「考えることは悪いことじゃないけどあんまり遅くまで起きてると美容の天敵になるわよー?」

 

 

こんごう「それをいうならいずもさんも人のこと言えませんよ…(汗)。あさひさんは…」

 

 

いずも「あの子ならとっくのとうに寝てるわ。明日の作戦で寝不足はいけないだろうからだって♪本当、あの子らしいというか…♪」 

 

 

こんごう「こうやって艦娘になる前の自分たちの性格なんてわからないと思っていましたが…、案外見ただけで分かるものですね…。」

 

 

いずも「そうねぇ…、ところでさっき神妙な表情浮かべてたでしょ?もしかして今後のことで不安かしら。」

 

 

こんごう「ちが…くはないですね…。なんだかいずもさんには隠し事してもあっさりとバレちゃいますね…(汗)。」

 

 

いずも「当たり前でしょー?空母の私相手に隠し事はバレバレよー♪」

 

 

 

何やら考えていることを当てられて、一瞬否定しかけたこんごうであったがすぐに観念したような表情を浮かべて白状した。そんな彼女を見るなり自分の予想が的中したいずもは当たり前と言わんばかりにドヤ顔をしつつ笑みを浮かべる。

 

 

 

こんごう「…気づいたらこの世界に飛ばされて…、自分の知らない深海棲艦という敵や存在しないはずの日本海軍…。話を聞く限り終わりの見えない戦い…。」

 

 

いずも「こんごうはそれが不安なのでしょう?自分や私達がかつていた世界とは違い、深海棲艦という謎の勢力との戦争。自分はなんのために戦っているのかって……ね?」

 

 

こんごう「今は上官である秋山提督の命令でなんとか自分の目的を見つけてるけど……、もしかして将来なんのために戦っているのかが分からなくなるんじゃないかって……。」

 

 

いずも「……。」

 

 

こんごう「そうなったら私……ムグ…!?(人差し指で口を抑えられる。)」 

 

 

 

話していくうちにこんごうの表現が曇っていき、今は問題ない戦う目的が分からなくなったどうすればいいのか…。そう言いかけた直後にいずもから人差し指で口を抑えられたため一瞬目を見開く。

 

 

 

いずも「大丈夫、貴方ならその心配はないわ…♪だって海上自衛隊で歴戦のイージス艦よ?それに戦う目的はもう定まってるんじゃないかしら?気づいていないだけで…♪」 

 

 

こんごう「戦う目的……が……?」

 

 

いずも「そう♪だってこんごうさんは始めてこの世界に来たとき、後輩を護るために戦闘に加わったそうじゃない?それでも充分果たせてるわよ…♪」

 

 

こんごう「でっでも…、海上自衛隊としてそれでいいのかしら…?」

  

 

いずも「大丈夫よー♪それだけでもちゃんと目的として果たせてるし、先輩として後輩を護ることも立派な役目…♪自信を持っていいわ…!」

  

 

こんごう「……そう…ですね…♪ありがとうございますいずもさん(ペコリ)、お陰で少し楽になりました…!」

   

 

いずも「困ったときはお互い様でしょ?また何かあれば遠慮なくいって頂戴♪そうゆうのは得意だから…!」

   

 

 

いずもの励ましによって自分の目的に自身が持てたのか、気持ちが軽くなりこんごうの表現から笑みがこぼれ始めた。それを見るな否やいずもも満足そうな表現でウンウンと頷いている様子で、彼女が頭を下げているのを見て何かあればまた遠慮なく言ってくれといずもはそう告げつつふと空へと視線を向ける。

  

 

 

いずも「……にしても…空…キレイだね…♪」     

 

 

こんごう「…えぇ…♪なんか…光がない分星空がきれいに見えます…!佐世保じゃこうは行きませんから……(汗)」

 

 

いずも「横須賀でもおんなじことよ…♪やっばこういったところの特権ってやつかしら…!」

 

 

 

こんごう「はい…♪」

   

 

 

そう話していた二人は、そこからしばらくの間星空満点の夜空を二人揃って眺めているのであった…。彼女達からすればこちらにきて始めての大規模作戦…、一体どうなるのでしょうか…?

 

そして、パラオ泊地艦隊は深海棲艦の大規模侵攻を跳ねのけることが出来るのか…!?

 

 

 

 

   

 

 

第九話 あ号作戦発動

 

 

 

 

 

 

 





護衛艦娘の艦種変更及び艦名変更について

あさひ型護衛艦→朝日型駆逐艦
こんごう型護衛艦→吉野型軽巡洋艦
いずも型護衛艦→出雲型航空母艦

(こんごうについては戦艦金剛と名前が被るためと秘匿名称のために名前を変更。艦種も分類でいけばミサイル駆逐艦ではあるものの、船体の大きさ等から比較的近い軽巡洋艦に艦種を変更させていただきました。)       


それと今回の回では伍長が制作する艦これの二次創作ドラマ『艦これIL-2』よりMMD編 3機目 あ号艦隊決戦 4マス目の会話の一部を参考にさせていただきました。

ありがとうございます…!


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第十話 あ号作戦発動



敵の大規模空襲をなんとか凌げて一段落しかけたところに連合艦隊司令部から深海棲艦の機動艦隊が沖ノ島海域に向けて複数接近中との報告が飛び込んでくる。

これを受けて日本海軍は各泊地及び鎮守府、本土に展開している航空隊に向けて緊急出撃を命ずることに。
もちろんパラオ泊地も例外ではなく連合艦隊を即時に編成、すぐに抜錨する。


あさひ達はこの世界に迷い込んで来て初の大規模作戦で無事に戦い抜けるのだろうか…?そして深海棲艦の目論見を人類は打ち砕けるのか?


 

 

2020年8月22日

 

  

 

まだ日が昇り始めて間もないため、少し眩しいような朝日が沖ノ島海域を照らしていた。天候もかなり良さそうで青空が広がっている下を複数隻の艦艇、パラオ泊地所属艦艇で構成された連合艦隊機動部隊編成が第三警戒航行序列(輪陣形)で沖ノ島海域に向けて航行していた。

 

 

 

瑞鳳「はい提督…!いい感じの卵焼きが出来たよ♪食べて食べて♪」

 

 

秋山「うむ、流石は瑞鳳…!相変わらず別格な美味しさの卵焼きを作ってくれる…!」

 

 

瑞鳳「えへへ…♪そういって貰えると嬉しいよ…♪」

 

 

 

そんな中、輪陣形の中心で大鳳と並ぶように航行している第一艦隊旗艦(パラオ泊地提督座乗艦)瑞鳳艦内の司令長官室では彼女お手性の卵焼きを秋山が美味しそうに頬張っているのが確認出来る。瑞鳳もそんな彼をみて嬉しそうなのか机に手を付きつつ満面の表情を浮かべていた。

 

 

 

秋山「このダシが聞いた味噌汁もなかなか…っとと食レポしてる場合じゃなかったな…(汗)。瑞鳳、パラオ艦隊の陣容を改めて説明してもらえるか?」

 

 

瑞鳳「はい…!我がパラオ艦隊は連合艦隊機動部隊編成で出撃、現在沖ノ島近海まであと少しのところまで来ています。陣形は第三警戒航行序列、簡単に言えば輪陣形ですね。まずは第一艦隊の戦艦霧島さん、榛名さん。」   

 

 

霧島「さっ、早くご命令を。司令?」

 

 

榛名「榛名!全力で参ります!」

 

 

瑞鳳「続いては空母大鳳さん、龍驤さん、出雲さん…!艦載機に関しては変更なしでいいですかね?」

 

 

秋山「あぁ、それで構わないよ。どっちかに偏り過ぎたらあれだからな…。それに防空に関しては頼もしい子達がいるから心配はなさそうだ。」

 

 

大鳳「今日はいい風…。正規空母大鳳、出撃します!」

 

 

龍驤「空母機動艦隊、出撃するでー!」

 

 

出雲「え?艦載機が少ないって?その分性能は抜群にいいわよ…♪それにうちの子達は優秀なんですから…!」

 

 

瑞鳳「駆逐艦に関してですが、第一艦隊に朝日さんを配属。いざとなれば頼りになると思います…♪」

 

 

朝日「うぅー…、なかなかのプレッシャー…。けど…!護衛k…じゃなかった…駆逐艦としての本領発揮です…!」

 

 

瑞鳳「最後に私、航空母艦瑞鳳…!第一艦隊旗艦を務めさせて貰います…♪」

 

瑞鳳「尚、空母艦載機の搭載機についてですが以下の編成になっています…!」    

 

 

 

大鳳航空隊

 

制空隊 第一中隊 零式艦上戦闘機52型×12機

制空隊 第二中隊 零式艦上戦闘機52型×12機

爆撃隊 第一中隊 十三試艦上爆撃機(彗星11型)×11機

雷撃隊 第一中隊 十四試艦上攻撃機(天山11型)×17機

搭載機合計 52機

 

 

龍驤航空隊

 

制空隊 第一中隊 零式艦上戦闘機52型×12機

制空隊 第ニ中隊 零式艦上戦闘機52型×11機

爆撃隊 第一中隊 十三試艦上爆撃機(彗星11型)×5機

雷撃隊 第一中隊 十四試艦上攻撃機(天山11型)×5機

搭載機合計 33機

 

 

瑞鳳航空隊

 

制空隊 第一中隊 零式艦上戦闘機52型×11機

制空隊 第ニ中隊 零式艦上戦闘機52型×10機

雷撃隊 第一中隊 十四試艦上攻撃機(天山11型)×6機

爆撃隊 第一中隊 十三試艦上爆撃機(彗星11型)×3機

搭載機合計 30機

 

 

出雲航空隊

制空隊 第一中隊 F-35 ライトニング II(B型)×6機

攻撃隊 第ニ中隊 F-35 ライトニング II(B型)×6機

搭載機合計 12機

 

パラオ泊地母艦搭載機数 合計 127機

(戦艦、巡洋艦搭載の水上機は除く)

 

 

 

 

秋山「戦闘機が75機、攻撃用機が52機の合計127機か。やはり赤城と比べると大鳳は装甲空母だから搭載機数が少ないな…。」

 

 

瑞鳳「搭載機減らして甲板防御を強くしてるからね…、どうしても他の正規空母と比べると劣っちゃうのかも…。これに対して深海棲艦側は正規空母2隻だけでも160機、さらにそれが2隻プラスされたりすれば合計で360機近くの空母航空団になります。」

 

 

秋山「やはり深海棲艦の空母艦載機の数は化け物だな…。だがこれはあくまで正規空母が4隻だけの場合の推測…これが軽空母やさらに数が増えるとなれば…。」

 

 

瑞鳳「軽く400機は超えそうですね…。こちらも他の鎮守府から連合艦隊が抜錨してるとはいえ…全体的に劣勢になるかと…。」

 

 

秋山「…まあ気にしてても仕方ない…。とりあえず第二艦隊と第三艦隊の方はどうだ?」 

 

 

 

空母三隻を保有しているパラオ艦隊の母艦艦載機の総数よりも遥かに超える深海棲艦の母艦艦載機の数に思わずやれやレという表情を浮かべてしまう。いくら他の鎮守府や泊地から連合艦隊編成の部隊が抜錨しているとはいえ物量戦では圧倒的に不利になるだろうがそれを気にしてても仕方ないのでひとまず第二、第三艦隊の様子を確認することに。

 

 

 

瑞鳳「第二艦隊旗艦は重巡洋艦の鳥海さん…!重巡洋艦と駆逐艦を中心とした殴り込み艦隊の指揮を取ってもらいます…!」

 

 

鳥海「抜錨!鳥海、出撃します!」

 

 

瑞鳳「続いては同じく重巡洋艦の古鷹さん…!」

 

 

古鷹「重巡古鷹、出撃します!」

 

 

瑞鳳「こちらも同じく重巡洋艦の青葉さん…!」

 

 

青葉「…気になるんですかぁ?いい情報ありますよぉー♪」

 

 

瑞鳳「本作戦より加わったこんg…じゃなかった吉野さん…!!艦隊前方で朝日さんよりも強力な長距離レーダーを活かした索敵を担当してもらいます…!」

 

 

吉野「軽巡洋艦吉野です…!見た目の武装が貧弱そうだからって侮らないでください…!本気になれば遠距離から空母を倒せますよ…!」

 

 

瑞鳳「重巡洋艦及び空母部隊の護衛担当としてまずは駆逐艦雪風さん…!呉から転属になってから初めての出撃だけど実力は折り紙付き…!」

 

 

雪風「ここでも、守ります。抜錨、出撃!」

 

 

瑞鳳「第二艦隊の駆逐艦、2隻目は敷波さん…!護衛任務によく携わっているから本領発揮かな?」

 

 

敷波「結局、アタシの出番かー。」

 

 

瑞鳳「三隻目は時津風さん…!陽炎さんの分まで頑張るって気合い入れてたから期待だね…!」

 

 

時津風「陽炎型駆逐艦十番艦。時津風……出るよ!」

 

 

秋山「こうしてみるとうちの泊地は重巡洋艦がけっこういるんだな。こりゃ夜戦も駆逐艦の子達とともに期待が出来そうだ…!」

 

 

瑞鳳「はい♪では最後に第三艦隊の紹介ですね…!まずは旗艦の阿賀野さん…!最新鋭軽巡洋艦として駆逐艦の子達の指揮をして貰います…!」

 

 

阿賀野「いよいよ阿賀野の出番ね。えへへ、待ってたんだから♪」

 

 

瑞鳳「2隻目は阿武隈さん…!パラオ泊地ではかなりの歴戦の子で今回は阿賀野さんのサポートを担当して貰います…!」

 

 

阿武隈「やるときはやるんだから!」

 

 

瑞鳳「お次は巻雲さん…!艦隊型駆逐艦では新鋭として頑張ってくれるかな…!」

 

 

巻雲「司令官様、巻雲、お役に立ちますよ♪」

 

 

瑞鳳「第三艦隊所属の4隻目は曙さん…!いつもはツンツンしてるけど実戦では凄く頼りになります…♪」

 

 

曙「曙、出撃よ、蹴散らしてやるわ!」

 

 

瑞鳳「続いて5隻目は涼風さん…!いつも元気だから羨ましいです♪」

 

 

涼風「ちわ!涼風だよ。私が艦隊に加われば百人力さ!」

 

 

瑞鳳「6隻目は睦月さん…!駆逐艦の中では一番旧型だけど練度はピカイチ…!姉妹の皐月さんともに期待かな…!」

 

 

睦月「そんなに私のことが気になりますかぁー?うふふっ♪」

 

 

皐月「出撃だぁ! ボクのあとに、ついてきて!」

 

 

瑞鳳「以上、計ニ十ニ隻がパラオ連合艦隊で編成された艦娘達になります。尚、泊地防衛には陽炎さんや五十鈴さん、陸軍や基地航空隊が当たることになっています…!」

 

 

秋山「長い説明ご苦労だったな瑞鳳…♪しかりこうしてみればうちもなかなかの個性的な艦娘が揃ったもんだなぁ…。」

 

 

 

今回の連合艦隊編成で組み込まれた艦娘の自己紹介を瑞鳳から受けた秋山は長い説明お疲れ様という感じで彼女に労いの言葉をかけつつ改めて自分の指揮するパラオ泊地の艦娘達は個性的な子がたくさんいるなとしみじみに感じていた。ちなみに現在は輪陣形で沖ノ島近海に向かっているのだがその内訳はこんな感じ。

 

 

 

           吉野

 

       阿賀野    鳥海

 

    巻雲  霧島    瑞鳳  敷波

 

     曙  大鳳    龍驤  皐月

 

    雪風  出雲    榛名  涼風

 

   時津風 阿武隈    古鷹  

 

        青葉    睦月

 

           朝日

 

           

 

秋山「それじゃ作戦概要を改めて説明してくれ、旗艦らしく分かりやすく確実にな…!」  

 

 

瑞鳳「はっはい…!先のパラオ泊地大空襲の直後連合艦隊司令部より出撃命令が届きました。内容としては『沖ノ島海域に出現した、有力な敵機動部隊を迎撃。全力出撃でこれを撃滅せよ』というものです。」

 

 

 

パラオ泊地の連合艦隊編成の説明が終わったので今度は連合艦隊司令部に届いたあの緊急連絡及び出撃命令の内容を改めて詳しく教えるように瑞鳳に依頼し、それに答える形で彼女が詳細の説明を始める。その間にも上空を大鳳から発艦した上空警戒機の零戦数機が編隊を組みつつ周回して警戒に当たっていた。

 

 

 

瑞鳳「敵機動部隊の陣容は分かりませんが…、複数の空母や戦艦などを含む空母機動部隊や精鋭水雷戦隊が存在する可能性があるとのことです。」

  

 

秋山「やはりそうか…ということはパラオ泊地へのあの空襲はその作戦の前段階ってことなのは当たりのようだな。」

 

 

瑞鳳「つまり空母3隻、戦艦2隻を有するパラオ艦隊を無力化するために…ということですね…?」

 

 

秋山「まっその目論みも朝日達のお陰で事なきを得たわけだが…、取り敢えず続けてくれ。」

 

 

瑞鳳「連合艦隊司令部は来襲する敵機動部隊に対して、複数の泊地へ迎撃命令を発しました。佐世保や横須賀の鎮守府を始めとしてラバウルやショートランド、そして私達パラオがこの迎撃命令に応じて抜錨しました。他にも岩川、マリアナ諸島の基地航空隊もこの命令に応じて沖ノ島に展開したとのことです。」

 

 

秋山「基地航空隊も展開してるのか…。」

 

 

瑞鳳「第七六一海軍航空隊並びに第一三一航空隊ですね。陸攻は一式、九六式陸上攻撃機の二種類を中心にして、戦闘機は陸軍から一式戦「隼」、海軍からは零戦21型及び52型が護衛任務に当たるとのことです。」

 

 

瑞鳳「それに対し深海棲艦側は、現在までに少なくとも空母艦隊3、戦艦を中心とした打撃艦隊2が確認されています。」

 

 

秋山「やはり戦力では劣勢必須だな…。他の泊地も攻撃を受けたんだろ?」

 

 

瑞鳳「そうですね…、トラック泊地などは重爆を含む複数の攻撃隊による波状攻撃を受けたそうです…。場所によっては最初の爆撃で飛行場が破壊されて一方的にやられたとか…。」

 

 

秋山「そりゃそうだよな…。俺たちは運がよかった訳だし…、とはいえ迎撃用の戦闘機配備は急務だな…。」

 

 

瑞鳳「敵機動部隊には最近確認されているヲ級elite及びflagshipが確認されています。戦闘機も新たに確認された新型機らしいので…かなり相手も本気ですね…。」

 

 

瑞鳳 制空隊 第一中隊 中隊長「こっちも新型機揃いなんだ…!誰が来ようが零戦の敵じゃないぜ…!!」

 

 

 

やはりこれ程の規模の機動部隊を展開するということはいかに深海棲艦側がここを本気で落とそうとしているのは誰でも分かりきっており、戦闘機も最新鋭ということになれば性能も前よりも上がっていることに。…となれば数の劣る航空戦ではかなり劣勢になりうる。少し不安げに話す瑞鳳に対して制空隊の中隊長は士気高揚で意気込んでいるようだ。

 

 

 

秋山「ところで各泊地や鎮守府から抜錨した戦力はどんなものなんだ?」

 

 

瑞鳳「佐世保からは五航戦の空母翔鶴さん、瑞鶴さんを中核とし、同様に横須賀からも二航戦の飛龍さんや蒼龍さんを中心とした機動部隊が連合艦隊編成で出撃しました。」

 

 

秋山「五航戦と二航戦か…これは頼もしい戦力になりそうだ。」

 

 

瑞鳳「ラバウルからは中型空母の飛鷹さん、隼鷹さんが参加しているのが確認されました。ショートランドからは軽空母の龍鳳さん、正規空母の葛城さんを含む艦隊が抜錨したとのことです…!」

 

 

秋山「やはりショートランドは出来て間もないから新人空母が中心だな。だがそれでも充分期待は出来るだろう…。」

 

 

瑞鳳「なら歴戦のパラオ泊地艦隊としても負けられませんね…!!ベテラン軽空母の実力…見せてあげます…!」

 

 

 

 

 

 

テキ×3

瑞鳳 電信妖精「哨戒機より入電!!『敵空母ヲ含ム深海棲艦隊見ユ!』」

 

瑞鳳 電信妖精「さらに沖ノ島司令部より入電!『哨戒機、空母ヲ含ム新タナ深海棲艦隊発見セリ!!』」 

 

 

 

それからしばらくしてから沖ノ島より飛び立った哨戒機が空母を中心とした機動部隊を発見したとの報告が飛び込んでくる。それ受けて今次作戦の指揮を担っている沖ノ島司令部もそれに続くように通報していく。   

 

 

 

瑞鳳「今次作戦って沖ノ島の司令部が指揮してくれるんですか?変わりに通報してくれるのはありがたいですが……」

 

 

秋山「まあそれはそれでこっちとしては指揮に集中出来るから楽なんだがな。」

 

 

瑞鳳「確かにそうかもね…。今回の深海棲艦隊の数はかなり多い…正直一つの連合艦隊じゃカバーしきれないから…。」

 

 

秋山「だが呑気にはしてられないな…。大鳳達に打電、攻撃隊全機発艦用意…!いつでも出せるようにしておけ…!」

 

 

瑞鳳「了解しました…!電信妖精、お願いできる?」   

 

 

瑞鳳 電信妖精「もちろんです…!提督の指示をそのまま打電しておきますね…!」

 

 

瑞鳳「うん…!ありがとう…!私も取り掛からないと…!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

瑞鳳 電信妖精「沖ノ島司令部より入電…!!『偵察機ヨリ入電!敵深海棲艦ノ空母機動部隊ヲ新タニ発見。コレラニ対シパラオ艦隊ヘ攻撃ヲ命ズル』とのことです…!!」

 

 

秋山「来たか…!瑞鳳!各空母に打電!!攻撃隊発艦始め!!」

 

 

 

それからしばらくして、先程とは別の空母機動部隊と思われる深海棲艦隊発見との一報が飛び込んで来た。各艦隊の予想進路を照らし合わせた沖ノ島司令部はもっとも近いと思われるパラオ艦隊にこれらに対する攻撃を下令、それを受けて秋山は瑞鳳達に攻撃隊発艦を命じる。

 

 

 

瑞鳳「はい!旗艦瑞鳳より各空母宛に打電!!攻撃隊発艦始め!!目標は沖ノ島司令部よりあった空母機動部隊!!」

 

 

瑞鳳 電信妖精「了解!!直ちに打電します!!」

 

 

 

秋山の指示を受けて瑞鳳はパラオ艦隊の各空母宛に攻撃隊発艦を命ずる打電を打つように指示を出していく。それを受けて各空母の飛行甲板では待機中の攻撃機の間を縫うように整備妖精が慌ただしく動き出す。

 

 

 

瑞鳳 整備妖精「発動機回せ回せ!!敵がいつ来るかわからん!!1分も無駄にするじゃないぞ!!」  

 

 

瑞鳳 整備妖精「攻撃隊発艦が終わり次第戦闘機隊を上げろ!!効率よく作業を進めるんだ!!」

 

 

 

暖機運転をしていたため、整備妖精が発動機を回すとすぐにプロペラが回り始めてエンジンが震え上がりながら始動する。発艦作業が進められている横では搭乗員待機室から飛び出してきたパイロット妖精達が駆け足で愛機に飛び乗っていく。

 

 

 

瑞鳳 雷撃隊 第一中隊 中隊長機(天山)「敵は大物だぞ!!心してかかれ!どっちが空母機動部隊に相応しいか教えてやろうじゃねぇか!」

 

 

瑞鳳 爆撃隊 第一中隊 中隊長機(彗星)「うちらは全体で3機しかいない爆撃隊だが…、最強なのは我ら瑞鳳隊であることを証明するぞ!」

 

 

 

そうこうしているうちに搭乗員が全員愛機に乗り込み、飛行甲板では魚雷や爆弾を抱えた天山・彗星隊がプロペラを回し、唸りを上げながらながら発艦準備を整えた機が出撃を今か今かと待ち望んでいた。

 

 

 

瑞鳳「みんな!!準備はいい?いくよ!六五三空、発艦、始めてください!」 

 

 

瑞鳳 飛行甲板妖精「よぉしいくぞ!!雷撃隊一番機より発艦!!瑞鳳に搭載された新鋭雷撃機だ!!行って来い!!」

 

 

瑞鳳 雷撃隊 第一中隊 中隊長機「了解!!発艦する!!新鋭機の名に恥じない戦果を期待されたし!!」

 

 

瑞鳳 飛行甲板妖精「手空き総員!帽フレェェェ!!!」

 

 

 

瑞鳳と乗組員妖精達「「帽フレェェェ!!!」」

 

 

 

瑞鳳からの発艦指示が下されると、飛行甲板妖精が待機中の攻撃隊全機に合図を送り、それを受けて先頭にいた雷撃隊の一番機がエンジンを更に唸らせながら魚雷を抱えて動き出す。手空きの妖精達に帽フレで見送られながら一番機が発艦していくのを皮切りに2番機、3番機と続いていくように等間隔で発艦していく。

 

 

 

 

 

 

同時刻

大鳳飛行甲板

 

 

 

大鳳「さぁ、やるわ!第六〇一航空隊、発艦始め!」

 

 

大鳳 飛行甲板妖精「よぉし!行くぞ!!彗星隊発艦始め!!夜通し整備して機体は万全だ!存分に暴れてこい!!」

 

 

大鳳 爆撃隊 第一中隊 中隊長機「こちら彗星隊!!これより発艦する!!パラオに大鳳アリと教えてやりますよ!」

 

 

 

軽空母の倍もある飛行甲板では彗星や天山がびっしりと並べられており、発動機を回した状態で発艦準備を整えていた。瑞鳳から攻撃隊が発艦していくのとほぼ同じタイミングで爆撃隊の一番機が液冷エンジンを唸らせながら徐々に加速していく。その飛行甲板左右の退避スペースや対空銃座では、手空きの妖精達が総出で見送りをしていた。

 

 

 

大鳳 手空き乗組員妖精達「「帽フレェェェ!!!」」

 

 

 

瑞鳳よりも早い等間隔ペースで彗星隊が次々と発艦していき、最後の機が飛び立つといよいよ後方に待機している天山隊の番が回ってくる。

 

 

 

大鳳 雷撃隊 第一中隊 中隊長機「爆撃隊の連中に遅れを取らないで!!私達雷撃隊の勇猛さを見せつけてやりなさい!!」

 

 

大鳳 雷撃隊 第一中隊 全機妖精「「はっ!!我ら大鳳雷撃隊にお任せあれ!!」」    

  

 

 

雷撃隊の中隊長による訓示的なのが発せられる中、爆撃隊に続くように天山艦攻が魚雷の重さを物ともせずに瑞鳳よりも安定した動きで相次いで離陸していく。その間にも瑞鳳から敵機動部隊の詳細な情報が飛び込んでくる。

 

 

 

大鳳 電信妖精「旗艦瑞鳳より追加で入電!!『敵機動部隊ニハ空母ヲ級elite3隻、及ビ軽空母ヌ級elite4隻ヲ含ム空母機動部隊』とのことです!」

 

 

大鳳「合計7隻…流石は空母機動部隊ですね…!こちらの倍の戦力とは…!」

 

 

大鳳 電信妖精「尚、開幕航空攻撃は一度切りの全力攻撃に限るとのことです…!!優先目標はもちろん空母!ただし対空砲火が激しければ護衛艦艇に絞って攻撃しても構わないそうです!」

 

 

大鳳「恐らく秋山提督の指示ですね…!開幕航空攻撃が一度切りとはいえど…熟練パイロットを可能な限り温存したいのでしょう…!」

 

 

大鳳 整備妖精「本当司令らしいというかなんというか…!だがその心意気は気に入ってるぜ…!!」

 

 

 

 

 

 

 

龍驤「ウチらも遅れないようにせんとな!さぁ仕切るで! 攻撃隊、発進!」

 

 

龍驤 飛行甲板妖精「いいわね!他の空母に出遅れるんじゃないわよ!!雷撃隊一番機発艦始め!!いい獲物仕留めて来なさい!!」

 

 

龍驤 雷撃隊 第一中隊 中隊長機「了解!!雷撃隊一番機発艦する!!戦果を期待されたし!!」

 

 

 

龍驤の飛行甲板でも発艦準備を整えた天山艦攻の一番機が『護』エンジンの唸りを上げながらゆっくりと滑空していき、速度が乗った状態で飛行甲板から飛び立っていく。だがやはり魚雷を抱いているせいもあるのか飛び立った後一瞬沈むがすぐに高度を取り戻して旋回しつつ高度を上げる。(こちらでももちろん手空き妖精達による帽振れが行われて、盛大なお見送りの中次々と発艦する。)

 

 

 

龍驤 制空隊 第一中隊 中隊長機「雷撃隊、爆撃隊が出たらいよいよ俺らの番や!!気合い入れろよ!!今回の敵戦闘機の数はこっちより上だ!!」

 

 

龍驤 制空隊 第一中隊 2番機「うひゃー、こりゃ今日は忙しくなりそうやで。燃料はともかく弾薬足りるかいな?」

 

 

龍驤 制空隊 第一中隊 3番機「弾薬もそうだが、撃墜申請書も足りるかいなこれ?帰ったら龍驤はんにたくさん用意して貰わないと…。」

 

 

 

飛行甲板で次々と雷撃隊や爆撃隊所属の機が飛び立っていく中、格納庫では整備妖精によって暖機運転が行われている戦闘機の横で制空隊の中隊長が配下の搭乗員にテキパキと指示を出していた。やはり空母の数が多いと敵戦闘機の数も必然的に多くなる、そうなれば攻撃隊を守る直援機の役目はかなり重要になってしまうためかなり気合いを入れているのだろう。

 

 

 

龍驤 整備妖精「間もなく爆撃隊が発艦するぞ!!それが終わり次第戦闘機隊の発艦だ!!搭乗員はいつでも出れるようにしとけよ!!」

 

 

龍驤 制空隊 第一及び第二中隊 各機妖精「「了解!!」」

 

 

 

 

 

 

 

出雲 整備妖精「喜べ!!我が海上自衛隊の空母艦載機では初の対艦攻撃任務だ!!機体とハープーンの用意と整備は完璧なまで仕上げたぞ!!派手に暴れてこい!!」

 

 

出雲 制空隊 第一中隊 中隊長機「おうよ!!世界が違えど我ら出雲航空隊が最強だということを知らしめてやりますぞ!!」

 

 

 

出雲の飛行甲板では灰色で日の丸を翼につけたF-35Bが待機スペースに何機も駐機しておりその翼下の懸架場所にはアメリカの開発した対艦ミサイルであるRGM-84 ハープーンが全機に2発ずつ備え付けられていた。その周囲では整備妖精が慌ただしく動いており、その間を縫うように戦闘機のパイロットもかけられたハシゴをつたってコックピットへと乗り込んでいく。

 

 

 

出雲「発艦準備が整い次第一番機から随時発艦!!今回は空対空ミサイルじゃなくて空対艦ミサイルだから重いわ!!飛び立つときは気をつけて…!」

 

 

出雲 飛行甲板妖精「飛び立って早々海面とキスなんて洒落にならないからな…!!出雲航空隊として恥じない戦いを頼むぞ!!」

 

 

出雲 制空隊 第一中隊 中隊長機「そんなヘマするようじゃ出雲航空隊してやっていけないですよ…!!制空隊第一中隊、一番機発艦する!!初の対艦攻撃任務だがしっかりと戦果は上げて来ますよ…!!」

 

 

出雲「こっちの世界では発艦する機に対して手空き要員は帽振れを行うらしいわ…!!それにならって私達もやりますよ!!総員帽振れ!!」

 

 

出雲 手空き妖精「「総員帽振れェェェ!!!」」

 

 

 

出雲の号令で手空き妖精達がこちらの日本空母でのルールに沿って総員帽振れを行なう。盛大な見送りをされながらも一番機が飛行甲板を滑空していき飛び立っていくが、やはりカタパルトがない中ハープーン2発を搭載した状態で発艦するのはぎりぎりのようで一回沈んでから高度を上げていく。

 

だがそれ以外は特に問題なく発艦作業が行われてあっという間に12機全機が上空へと飛び立ってまたたく間に編隊を組みつつ先に発艦していったパラオ艦隊の開幕航空攻撃隊に遅れる形で後を追う。

  

 

 

出雲 攻撃隊 第二中隊 中隊長機「今回の任務は対艦攻撃だけど本当の任務は後続として突入予定の攻撃隊の突入支援なのを忘れないように…!!ステルス性能と高い速度を活かしたヒットアンドアウェイ戦法でいくわよ…!!」

 

 

出雲 制空隊 第一中隊 中隊長機「第二中隊中隊長の言うとおりだ!!俺たちの任務は艦攻や艦爆の突入支援!!それを見越して攻撃目標は駆逐艦や巡洋艦などの護衛艦!!そして対空砲火の強い戦艦がいればソイツにも一撃加えろ!!」

  

 

出雲 攻撃隊 第二中隊 中隊長機「忘れないでよ!私達の任務は攻撃隊の支援!!奴らに現代兵器の底力を見せてやりなさい!!」

  

 

出雲 制空隊・攻撃隊両搭乗員の妖精達「「了解!!我ら出雲航空隊の果敢さを見せてやりましょう…!!」」 

 

 

    

 

 

 

 

瑞鳳達の搭乗員妖精に負けない士気を見せながらジェットエンジンの出力を上げたF-35B隊がレシプロ機とは比べ物にならない速度で水平線の彼方に飛び立っていくのであった。   

 

 

 

 

 

 

 

 

    

 

 

 

 

 

 

 

第十一話 鋼の騎兵隊

 

 

 

 

 

   

     

 

 

 

 

      






(今回は物語の関係上主に瑞鳳や秋山の会話がメインになっちゃいましたね…(汗)。次回は開幕航空攻撃回なのでどちらかというと各空母のパイロット妖精達中心のお話になるかもなのでご了承ください。)
 


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第十一話 鋼の騎兵隊

(再投稿です)

深海棲艦による沖ノ島近海に対する大規模侵攻作戦、

これに対し連合艦隊司令部は抜錨可能な泊地及び鎮守府の全艦隊戦力を持ってこの侵攻してきた艦隊を撃滅する『あ号作戦』を発動。



これらの指示を受けてパラオ艦隊も連合艦隊編成で抜錨して沖ノ島近海へと進路を取っていた。その矢先に今作戦の指揮を執る沖ノ島司令部から発見した敵空母機動部隊に対する攻撃命令が下令されたため、新たに加わった出雲も含む4隻の空母は開幕航空攻撃を行うために艦載機の全力出撃を行うのであった。


果たして…この世界に迷い込み初の大規模作戦を朝日達はどう戦い抜くのか……?

   
(書き直しての再投稿です)


 

沖ノ島近海上空

 

 

 

雲があるもののそれでも青空満点の空が辺り一帯に広がっていた。天候自体も良好のようで波も穏やかなところからまさに釣りや船の航行にはもってこいのタイミングだろう。

 

 

ブロロロロ!!!

 

 

 

だがそんな静寂さを打ち破るように、プロペラ音が周囲に響き渡ってきたと思ったら突如として空を埋めつくほどまではいかないものの日の丸が描かれた多数の航空機が編隊を組んで次々と通過していくのが見えた。どうやらパラオ機動艦隊から飛び立った開幕航空攻撃隊らしい。

 

 

 

瑞鳳 雷撃隊 第一中隊 中隊長機(全攻撃隊指揮担当)『沖ノ島から飛び立った偵察機が現在も触発を行っているそうだ。空母の数は報告にもあった通り合計7隻…!本格的な空母機動部隊だな…!』

 

 

瑞鳳 雷撃隊 第一中隊 2番機『そうなれば敵の数も多いということになりますね…。対空砲火が激しいことは覚悟せねばならんな…!雷撃機がこの程度でビビッてたら話になりませんし…!』

 

 

大鳳 爆撃隊 第一中隊 3番機『突入のタイミングとしては先に我々爆撃隊が突入して対空砲火を引き付け、その間に雷撃隊が突入するといった手筈ですかね?』

 

 

龍驤 制空隊 第一中隊 中隊長機『本来であればそうなんやが、ちぃと忘れておりませんかな?今回の攻撃隊には一番槍がいることにぃ。』 

 

 

大鳳 爆撃隊 第一中隊 5番機『一番槍?我々よりも先に突入する部隊がいるってことですかい、そりゃどこのどいつが…。(ゴォォォォン!!!)』

 

 

 

最終打ち合わせをしながら敵の空母機動部隊がいるとされる海域へと向かうパラオ攻撃隊。位置は逐次沖ノ島の触発機が定期的に暗号で報告してくれるため迷うことはない。突入の手筈についての話をしているとき、龍驤の制空隊中隊長が放った言葉に大鳳の爆撃機パイロットが首を傾げた直後、その疑問を打ち破るように攻撃隊編隊の上をジェット音を響かせながら黒い戦闘機が勢い良く追い越す。

 

 

 

出雲 制空隊 第一中隊 中隊長機『こちら出雲航空隊…!これよりそちらの指揮下に入る!』

 

 

瑞鳳 雷撃隊 第一中隊 中隊長機(全攻撃隊指揮担当)『パラオ攻撃隊指揮機より出雲航空隊、合流感謝する!一緒に戦えて光栄に思うよ!』

 

 

出雲 攻撃隊 第二中隊 中隊長機『それはこちらもそうよ…!!世界が違えど新旧の航空機による攻撃が出来るなんてね!!我々が先鋒として突入、対空砲火の分散や護衛の艦艇の排除を行うのでそちらは空母などを優先して攻撃してください…!!』

 

 

大鳳 爆撃隊 第一中隊 2番機『了解した…!!対空砲火の分散と護衛艦艇を減らしてくれるのはありがたい…!!だが本当に大丈夫なのかい?敵の対空砲火はかなりのもんだぞ?』

 

 

 

敵の対空砲火分散や護衛艦艇を減らしてくれるのはありがたいが、空母7隻を要する空母機動部隊となれば護衛の艦艇数もかなりのものでその分対空砲火はかなりのものになり得る。いくらこちらの航空機よりも性能がいいとはいえ、本当に大丈夫なのかという疑問がふと浮かぶ。

 

 

 

出雲 制空隊 第一中隊 2番機『なぁに…!その程度で落とされる俺たちじゃないぜ…!!こっちはステルス機だから先制攻撃は有利だし、なによりレシプロ機とじゃ全開の加速が比べ物にならない…!』

 

 

出雲 制空隊 第一中隊 3番機『いくら対空砲火が強くてもレシプロ機感覚の対空射撃じゃ無理があります…!速度を活かしたねじ伏せでやってやりますわ…!』

 

 

瑞鳳 制空隊 第一中隊 3番機『初の対艦攻撃任務だっていうのに気合い充分だな…!!だが油断して貴重な機体を落とすなよ…!!』

 

 

出雲 攻撃隊 第二中隊 7番機『当たり前よ…!!そんなことをすりゃ出雲さんの名が傷つくってもんです!!逆に敵艦沈めて轟かせてやりましょう…!!』

 

 

 

だがそんな大丈夫なのかという質問に出雲航空隊の各機からはそれを感じさせない雰囲気が無線機越しに漂っているようで特に問題はなさそうに感じられる。だがそれで油断して落とされては元も子もないためひとまずそれだけは気をつけるように指示を出しながらも、攻撃隊は敵空母機動部隊に向けてひたすら飛んでいた。

 

(ちなみにジェット機とレシプロ機では速度差があり過ぎるためパラオ攻撃隊に合わせる形で出雲のF-35B編隊が蛇行や失速しない程度に速度を落として飛行している)。

  

 

 

瑞鳳 雷撃隊 第一中隊 中隊長機(全攻撃隊指揮担当)『最終確認を行うぞ。まず出雲航空隊が一番槍として敵空母機動部隊に対しての攻撃を敢行、それによって護衛艦艇が減ったのと対空砲火の分散が確認され次第我々も突入する!』

 

『爆撃隊による強襲に合わせて雷撃隊も攻撃開始。恐らくこれで敵の狙いはかなり分散するはずだ…!』

 

 

瑞鳳 雷撃隊 第一中隊 2番機『つまり、本来よりも被害を抑えつつ敵を叩けるという算段ですな…!!』

 

 

瑞鳳 爆撃隊 第一中隊 2番機『だが油断は出来んな…!!なにせ相手はこちらの倍の戦力…!はいそうですかと通してくれるとは思えん…!』

 

 

 

確かに出雲航空隊による先制攻撃を行えば敵は見慣れない兵器の出現にパニックになって指揮系統が混乱するのは確定だ(というか瑞鳳たちや妖精も実際そうなってる)。そこに本命の攻撃隊をぶち当てればそれこそ少ない航空機で確実な戦果を上げられる。

 

しかし、F-35Bのようなステルス塗装が施された戦闘機ならいざ知らず。パラオ艦隊から飛び立ったこれだけの航空機を深海棲艦隊が見逃すはずもなく、レーダーで見つけられて逆手を取られる可能性もあるということだ。

 

 

 

瑞鳳 制空隊 第一中隊 中隊長機『そこは我々に任せてくださいな…!何機来ようが攻撃隊には一本の指も触れさせませんぞ!!』

 

 

龍驤 制空隊 第一中隊 中隊長機『せやで!!大船に乗ったつもりで安心してな…!』

 

 

 

だがそれは問題ないと言わんばかりに直掩の戦闘機隊からは敵の戦闘機を1機たりとも通さないという意気込みの無線が聞こえてくる。空母や艦載機では完全に向こうがうわまっており、しまいには新型の戦闘機も混じっていると来た。

 

しかし、対するこちらの直掩機隊も新型の零戦52型に全機更新されており各母艦のエリート揃いの第一中隊が集っているため相手の練度にもよるがほぼ劣らなし互角の実力を有していると言ってもいい。

 

 

瑞鳳 雷撃隊 第一中隊 中隊長機(全攻撃隊指揮担当)『そうだ…!我々には頼もしい味方がたくさんいるのだ…!!どちらが空母機動部隊に相応しいか叩き込んでやれ!!』

 

 

全機妖精『了解…!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

同時刻…

パラオ艦隊にて

吉野CIC  

 

 

吉野 AN/SPY-1D妖精「…スパイレーダー目標探知…!!対空目標1!!80度…!250マイル…!!あと60分で視認可能圏に入ります…!」

 

 

 

 

吉野CICでは各戦闘員がレーダーやスクリーン、ソナーなどを駆使して各持ち場で警戒任務に当たっていた。するとAN/SPY-1D妖精がレーダーに写り込んだ1機の反応に気づいてすぐさま攻撃指揮官妖精に報告する。

 

 

 

吉野 攻撃指揮官妖精『…単機なら攻撃機じゃない…。恐らくこいつは偵察機、問題は…味方か…敵か…。ひとまず吉野さんに報告…!詳しい指示はそこから司令に任せましょう…!』

 

 

吉野 AN/SPY-1D妖精『了解…!!直ちに報告します…!!』

 

 

 

 

瑞鳳

艦橋にて

 

 

 

瑞鳳「提督、吉野さんから通信です。所属不明の偵察機をレーダーにて捕捉、あと60分で目視圏に入るとのこと…!」

 

 

秋山「所属不明機……、沖ノ島から飛び立った哨戒機か…あるいは他艦隊の索敵機のどちらか…。」

 

 

 

それから少しして瑞鳳艦橋にて、吉野から送られてきた通信内容が纏められた書類片手に瑞鳳が秋山のもとに駆け寄ってきて報告を行う。艦隊では丁度直掩機隊の交代作業が行われておりそれを見ながら味方機の可能性を模索していた。

 

 

 

瑞鳳「いえ、沖ノ島の偵察機ならすでに敵艦隊と触発中です。味方艦隊のだとしても方向からしてそれは有りえないかと……。」

 

 

秋山「やはりか……、どっちにしろタイミングの悪いときに現れたもんだな…。直掩機隊は交代中だというのに…(報告書片手に)。」

 

 

 

だが瑞鳳からは沖ノ島や味方艦隊から飛び立った偵察機ではないという意見が出てくる。そうなれば残るのは敵空母機動部隊の偵察機だということになるがタイミングの悪いときに出てきたなという顔をしていた。本来であれば直掩機隊が対応するのだが、丁度交代中のため出せるには出せるがすぐには間に合わない可能性が出てくる。

 

 

 

秋山「…ならやることは1つだな。瑞鳳、吉野に打電。所属不明機の無線にに対して妨害電波をかけるように指示しろ。無線さえ使えなければ発見はされても報告は出来ないから時間はかせげるはずだ。」

 

 

瑞鳳「あっはい…!その通りに打電します…!(妨害電波…?そんなことが出来るんだ…。まだまだあの子達には秘密が多そう…)」

 

 

 

秋山は少し考えてからすぐさま瑞鳳に対して指示を出していく。どうやら所属不明機の無線に対しての妨害を吉野に行ってもらうらしく、あまり聞かない言葉のため一瞬首を傾げるがすぐに答えて打電を行う(秋山は吉野(旧こんごう型)についてのデータを持っていたため理解は出来ていた)。  

 

   

 

秋山「それと艦隊全体に対空警戒及び対空戦闘用意を下令…!直掩機も急ぎ上げるように…!」

 

 

瑞鳳「はい…!!」

 

  

 

吉野

CICにて 

 

 

吉野『吉野よりCIC宛!!接近中の不明機の無線にジャミングをかけて…!!』   

 

 

吉野 AN/SPY-1D妖精「機影尚も接近!!間もなく目視距離に入ります…!!」

 

 

 

瑞鳳経由で秋山からの指示を受けて吉野は接近中の所属不明機に対して無線のジャミングをかけるように指示を出す。味方機の可能性が低いため深海棲艦の艦載機だという確率が高いがまだその確証がないためひとまずはこのような処置になった。その間にも機影はどんどん接近してきてあと少しで目視距離に入るという報告が飛び込んでくる。

 

 

 

吉野 攻撃指揮官妖精『発見されても無線による報告は不可能…、時間は稼げるけど…。』

 

 

 

 

 

 

『『対空戦闘用意!!』』(艦内アラーム)

 

 

吉野 修理妖精「急げ急げ!!!」

 

 

吉野 砲術妖精「持ち場につけつけ!!ここから忙しくなるぞ!!」

 

 

 

狭い艦内にけたたましく鳴り響く警報音、それを聞いて飛び出すように乗組員達が行ったり来たりして持ち場へと慌てながら配置につく。それが終わり次第被弾に備えて隔壁閉鎖が行われ重厚な扉が音を立てて閉じられる。それは吉野以外でも同じく艦隊全体で対空戦闘用意のラッパやアラームが鳴り響いてくきていた。

 

 

 

吉野 右舷側見張り妖精「目標視認!!ドーントレスです!!右30度3000!!」

 

 

 

するとその直後に見張り妖精から目標視認という報告が飛び込んでくる。それを受けて吉野がそちらに視線を向けるとそこには対空砲を警戒してか艦隊周囲を周回している国籍マークがないドーントレス、深海棲艦の艦載機が飛行していた。

 

 

 

ー敵空母機動部隊ヲ発見 大至急攻撃隊ヲ送ラレタシ(ピーピピ)ー

 

 

 

深海棲艦側の偵察機でも敵の空母機動部隊を発見したため慌ただしく無線による報告を行いながら攻撃隊の派遣を要請していた。しかし、その無線も吉野のジャミングによって防がれているため漏れる心配はない。

 

 

 

ー陣形としては空母4せk……(ダダダダダ!!!)ー

 

 

 

届きもしない無線で敵空母機動部隊の編成を報告しようとした矢先に背後から機銃掃射のシャワーを突然受けて、そのまま燃料に引火したのか炎上しつつ墜落していく。その上空を少し周回するようになんとか飛び立てた大鳳所属の零戦が飛行して撃墜確認を行う。

 

 

 

大鳳 制空隊 第二中隊 3番機『こちら大鳳所属の直掩機!!報告にあった深海棲艦隊の偵察機を撃墜しました!これより任務に復帰します…!!』

  

 

 

炎上しながら墜落して、海面に突き刺さったのを確認しつつ大鳳制空隊の第二中隊所属の零戦52型丙搭乗員妖精は大鳳に報告しながら通常任務である上空警戒に戻るために艦隊上空へと戻っていく。

 

 

 

大鳳『了解です…!引き続き警戒はお願いします…!!提督…!!敵艦隊の偵察機を撃墜…!!なんとかこれで位置バレすることはなくなりました…!』

 

 

秋山「ご苦労大鳳、これで連中の目は潰せたからしばらくは一瞬の安泰だな。だがいつまでもこの状況が続くとは限らんか…。瑞鳳、待機中の機もすべて上げろ。恐らくはここからが正念場だ。」

 

 

瑞鳳『分かりました…!!旗艦より各空母宛…!!待機中の戦闘機隊を全機上げてください…!!これから先敵の空襲が予想されます…!!そう鳴る前に先手を…』

 

 

朝日『…いえ、それはもう遅いかと…。』

 

 

 

だが偵察機に見つかったということはいずれにせよ敵空母機動部隊に見つかるのも時間の問題ということを示しているため秋山は直ちに待機中の戦闘機全機を上げるように指示を出す。それを受けて瑞鳳が各艦に伝達しようとしたとき、朝日が遮るように口を開く。

 

 

 

曙『ちょっと…!それってどうゆう意味よ…!』

 

 

雪風『…まさか…』

 

 

 

朝日の言っていることがよく分からないのか曙は首を傾げながら少し声を荒げながら尋ねるが、呉では歴戦と言われパラオ泊地でもその実力は折り紙付きと言われた雪風は意味を理解したのか少し焦りの表情を見せていた。

 

 

 

朝日『目標探知!!大編隊です…!!80度!!距離120マイル!!速度250ノットで本艦隊に接近中!!目標は約200機!!』

 

     

 

 

 

 

 

 

 

 

 

沖ノ島 偵察中隊 1番機(一式陸攻)機長「間もなくパラオ航空隊とすれ違うはずだが……、そっちからは何か見えるか?」

 

 

 

下方が一面海に囲まれた洋上では沖ノ島飛行場から飛び立ったと思われる一式陸攻の偵察機が飛行している。先程まで気づかれないように敵空母機動部隊の触発を行っており燃料の関係か基地へと帰還している最中のようだ。

 

 

 

沖ノ島 偵察中隊 1番機 前部銃座「いえ…まだ見えません…!ですが時間的にはそろそろかと…!」

 

 

沖ノ島 偵察中隊 1番機 機長「なるほど…だが気を抜くなよ?どこに敵の戦闘機がいるか分からん。こんな図体でかい双発爆撃機じゃ襲われたらひとたまりもない。」 

 

 

沖ノ島 偵察中隊 1番機 副機長「監視中も対空砲火はありましが敵機自体は確認されませんでしたので問題はないとは思いますが…、あれはあれで不気味なので油断は出来ませんな…。」

 

 

沖ノ島 偵察中隊 1番機 上部銃座「……敵機視認!!例の新型機です!!」

 

 

 

いくら触発中に敵戦闘機からの攻撃を受けなかったからと言っても安全というわけでもなく、あれだけの空母機動部隊を有しているなら必ず何かある。そう踏んでいた一式陸攻の搭乗員は帰投中の今でも気を抜かずに周囲警戒を行っていた。

 

搭乗員からすれば今のように敵戦闘機からの攻撃を受けないほうがありがたいし本音ではそんな思いも伝わるはずもなく、警戒を行っていた上部銃座妖精から悲鳴のような報告が飛び込んでくる。

 

 

 

沖ノ島 偵察中隊 1番機 副機長「くそ!!一足向こうが早かったか…!!しかもよりによって新型機かよ…!銃座妖精射撃用意!!簡単に落とされてたまるか…!!」

 

 

沖ノ島 偵察中隊 1番機 機長「…いや…どうやらナイスタイミングのようだな…(ニヤリ)。」

 

 

 

 

声とともに向けた視線の先、そこには太陽を背に突入してくる深海棲艦所属のF6F ヘルキャットが4機編隊で襲いかかろうとしているのが見えた。副機長が焦りを見せながら射撃用意を指示するが機長は何故か落ち着いている。

 

本来であれば偵察機が敵機に襲われるということは死に直結する。ましてや双発爆撃機のような図体の大きい機体となれば尚更、副機長のように焦るのが普通なのだが……。

 

 

 

いや…どうやらその理由はすぐに分かったようだ……。

 

 

 

ダダダダダ!!!

 

 

 

突如として偵察機に襲いかかろうとしていたF6F ヘルキャットの戦闘機隊直上から雨のシャワーを思わせるような機銃掃射が降り注いでくる。その攻撃で運悪くエンジン部に被弾したのだろうか…?1機のヘルキャットが黒煙を拭き上げながら墜落していく。

 

僚機が落とされたことで偵察機を攻撃するどころではなくなったようで周囲の機が慌てるように散開すると、その直後に4機ほどの零戦が勢い良く間を通過していくのが見えた。…そう、パラオ連合艦隊から飛び立った攻撃隊、その直掩機隊が駆けつけてきたのだ。

 

 

 

大鳳 制空隊 第一中隊 中隊長機『こちらパラオ艦隊の大鳳所属の制空隊だ…!!待たせたな…!あとはこちらに任せてそちらは後退されたし…!』 

 

 

沖ノ島 偵察中隊 1番機 機長『支援感謝する…!!だが気をつけろ!!コイツら戦闘機は報告通りの新型戦闘機だ…!落とされるなよ…!』

 

 

瑞鳳 制空隊 第一中隊 12番機『心配ご無用!!我々の戦闘機も新型ですしなによりこちらはエース揃いだ…!!簡単に落とされるかよ…!!』

 

 

沖ノ島 偵察中隊 1番機 副機長『頼みますよ…!!敵空母機動部隊に痛いの一発ぶつけといてください…!!』

 

 

 

パラオ攻撃隊の直掩機隊からの支援が間に合ったことでなんとか落とされずに済んだ沖ノ島偵察機は、後のことを任せて戦域から全速力で離脱していく。味方が離脱したと同時に出雲航空隊から新手が来ているという報告が入ってくる。

 

 

 

出雲 制空隊 第一中隊 中隊長機『出雲航空隊より直掩機各機宛!!新手だ!!南西から新たに40機ほどの反応が確認された…!!識別番号からしてこちらも例の新型戦闘機かと思われる…!!注意されたし…!!』

 

 

龍驤 制空隊 第一中隊 5番機『りょーかいやで…!!こりゃ空戦のしがいがありそうやな…!!こっちは任せて攻撃隊は敵空母を頼んだで!!』

 

 

 

瑞鳳 雷撃隊 第一中隊 中隊長機(全攻撃隊指揮担当)『武運を祈るぞ…!!出雲航空隊各機!!先制攻撃は任せた!!我々の戦果や今後の海戦の運命は君たちの活躍にかかっているからな…!!』

 

 

出雲 第二中隊 攻撃隊 中隊長機『分かってるわよ…!!これより出雲航空隊の攻撃指揮は私が執るわ!!第一、ニ中隊による左舷側一斉攻撃を行い、空対艦ミサイルによる飽和攻撃を実施するわよ…!!』 

 

 

出雲 制空隊 第一中隊 中隊長機『了解した…!!対艦攻撃指揮はそちらに任せる!!第一中隊中隊長機より各機宛!!これより敵空母機動部隊に対しての飽和攻撃を実施する!!』

 

 

 

パラオ攻撃隊の指揮機からの合図を受けるなり、第二中隊中隊長機の指揮により速度を合わせて飛行していた出雲航空隊はアフターバーナーを一気に点火して編隊から離脱する。その際、レシプロ機ではありえないような加速力を見せつけながら空の彼方へとあっという間に飛び去ってしまう。

 

 

 

龍驤 雷撃隊 第一中隊 4番機『やはり未来?の技術は比べ物になりませんな…。あんな性能見せつけやれちゃ…味方なら頼もしいですが敵なら恐ろしいったらありゃしませんよ…。』

 

 

瑞鳳 爆撃隊 第一中隊 2番機『だなー…、なんせ話しによればあの半分の6機で深海棲艦の重爆撃機隊24全機を撃墜したそうですから…。』

 

 

瑞鳳 雷撃隊 第一中隊 中隊長機(全攻撃隊指揮担当)『お喋りはそこまで…!我々も突入用意に入る…!!全機…!!攻撃ポジションにつけ…!!』

 

 

大鳳 雷撃隊 第一中隊 中隊長機『了解…!!これより雷撃進路につく…!!高度200mまで降下!!』

 

 

 

自分たちのとは比べ物にならないような迫力に呆気を取られている搭乗員妖精達であったが全攻撃隊指揮担当妖精からの突入用意を受けて全機攻撃態勢に入る。雷撃隊は大鳳の雷撃隊中隊長機の指示を受けて(瑞鳳の雷撃隊中隊長は全体指揮に集中するため)雷撃機各機に降下合図を下し、龍驤隊・大鳳隊・瑞鳳隊の天山が一斉に高度を下げていく。

 

 

 

大鳳 爆撃隊 第一中隊 中隊長機『爆撃隊…!!雷撃隊に後れを取るな!!高度3000mまで上昇!!』

 

 

 

もちろん爆撃隊も遅れを取らまいと彗星各機が一斉に高度を上げる。敵空母直掩機と零戦隊の激しい空戦を横目にパラオ攻撃隊は目的の機動部隊に向けてまるで獲物に群がるようなハチのように向かっていくのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

パラオ艦隊からかなり離れてはいるものの航空隊の活動圏内が入る距離の海域を航行している大多数の艦隊。見た目は旧アメリカ海軍を模様しているが国の識別を示す国旗が掲げられておらず、それどころか普通の船舶とはまた違った雰囲気を漂わせている……。

 

どうやらこれが深海棲艦の空母機動部隊のようだ。正規空母ヲ級3隻(モデルとしてはヨークタウン級)や軽空母ヌ級(モデルはインディペンデンス級及びボーグ級)からなるまさに主力とも言って差し支えない航空母艦が輪陣形内部に佇んでむように航行している(もちろんどれもeliteクラス)。艦隊総数も空母を含めば軽く40隻以上にも及ぶ大艦隊であり数ともにパラオ艦隊を凌駕していた。

 

 

 

ー偵察機トハ通信ガ不可能…ヤラレタカ…、ダガヤラレタトコロデモウオ前達ノ居場所ハ分カッテイルー(ニヤリ)

 

 

 

旗艦を務めるヲ級ではどうやら偵察機が落とされたことは分かっていたようで少し眉を細めるような動作をしつつもまるで落とされることは想定済みと言わんばかりの笑みを浮かべている。

 

 

 

 

ー報告ニヨレバ 連中ハ空母ガ4隻シカイナイ…。シカモソノ半数ガ軽空母…、簡単ニ捻ジ伏セテ見セテアゲル…♪ー

 

 

 

それに相手は空母の数が少ないことは確認済み、どう頑張っても数で劣勢である敵空母部隊が勝てるわけがないとヲ級は踏んでおり笑みを浮かべていた……。

 

……がそんな油断が後に悪夢へと切り替わることを…彼女は知る由もなかった……。

 

 

 

 

 

 

近海

 

 

 

ゴォォォォ!!!

 

 

 

出雲 攻撃隊 第二中隊 中隊長機『全機攻撃態勢を取って!!敵は近いわよ!!』

 

 

出雲 攻撃隊 第二中隊 8番機『敵艦隊レーダーにて捕捉!!この先です…!!』

 

 

 

海面を分けるかのよう横隊で低空飛行している出雲航空隊のF35B編隊。アフターバーナーは全開で可能な限りレーダーや見張りに気づかれないように奇襲をしかけるためかなり高度を落としているらしい。

 

F35が搭載しているAN/AAQ-40 EOTS(赤外線とレーザーを使用した目標捕捉・照準装置)空対地モードの映像には画面を埋め尽くすかのように航行している深海棲艦の空母機動部隊の姿がくっきりと映し出されていた。

 

 

 

出雲 攻撃隊 第二中隊 中隊長機『まず第一波の空対艦ミサイルによる飽和攻撃を実施!!敵の駆逐艦を一掃、存在を悟らせます……!!その後に更に艦隊に接近!!こちらの姿を確認させながら今度は巡洋艦や戦艦に対する第二波攻撃を開始します!!これが上手く行けば…!!』

 

 

出雲 制空隊 第一中隊 4番機『後続にいる本命の攻撃隊が輪陣形内部に入り込めるということか…!!』

 

 

出雲 制空隊 第一中隊 6番機『そうゆうこった…!!まさに現代兵器じゃ出来ない芸当だぜ…!!』

 

 

出雲 攻撃隊 第二中隊 10番機『この方法なら味方の被害もかなり抑えられるってことね…!!見慣れない攻撃に対して困惑しているところに魚雷や爆弾の雨が降り注ぐといったところかしら…!』

 

 

出雲 制空隊 第一中隊 中隊長機『各機お喋りはそこまでだ…!!そろそろ攻撃ラインに到達するぞ!!それぞれの目標をロックしろ!!』

 

 

 

攻撃隊指揮機の話を聞きながらそれぞれ思っていたことを話している搭乗員妖精であったが、間もなく攻撃ラインに到達するぞという制空隊の中隊中隊長妖精からの指示を受けてそれぞれの目標をロックオンする。

 

 

 

出雲 制空隊 第一中隊 2番機『ターゲットロックオン!!目標!!駆逐イ級(ベンソン級)!!』

 

 

出雲 制空隊 第一中隊 4番機『4番機もロックオン完了!!いつでもいけます!!デカいのブチ込みましょう!!』

 

 

出雲 制空隊 第一中隊 中隊長機『第一中隊全機発射準備完了!!派手にやろうぜ!!』

 

 

出雲 攻撃隊 第二中隊 中隊長機『目標 敵空母部隊の左舷側護衛駆逐艦群!!…(スゥ)空対艦ミサイル発射始め!!』カチ

 

 

 

攻撃隊中隊長の発射命令とともに少し高度を上げて発射体制に入っていた全機が一斉に空対艦ミサイル(ハープーン)を一発ずつ解き放つ。放たれたミサイルは一瞬重力で降下するがすぐにロケットブースターが点火されて海面スレスレを飛行しつつ敵艦へと向っていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーン……?ー

 

 

 

同時刻、艦隊左舷側の一番外側で周辺警戒をしていた駆逐艦ロ級であったが一瞬遥か彼方の海面近くで何かが光ったような気がしたため首を傾げながらそちらへと視線を向ける。

 

 

 

ー気ノ所為……カ?ー

 

 

 

だが何度見てもとくに変わりがない、更にはレーダーや見張りなどで確認しても異常は見られないため気の所為かと思い気にせずに警戒任務に戻ろうとした。…しかし…同じように警戒任務にあたっていた仲間のロ級(フレッチャー級駆逐艦)から悲鳴のような報告が飛び込んでくる。

 

 

 

ーカッ艦隊左舷側カラ高速デ接近中ノ物体アリ!!航空機ニシテハ早スギル!!ー

 

 

ー……!!?ー

 

 

 

それを聞いた旗艦のヲ級は慌てるようにそちらに視線を向けると、海面スレスレを太陽の光に照らされる形で何個もの物体が航空機にしては考えられないような速度でこちらに突っ込んで来ていた。

 

 

 

ー全艦対空戦闘始メ!!ナントシテデモ撃チ落トセ!!ー

 

 

 

ヲ級の号令とともに全艦接近中の高速物体に向けて激しい対空砲火の雨を降らせるかのように射撃していく。しかしまそんな対空砲火の雨がまるでその物体を避けるかのよう…いや…飛翔速度が早すぎるため掠りもせずにはるか後方に飛んでいってしまう。

 

 

 

ー何ヲシテイル!!サッサト落トサンカ!!ー

 

 

ー駄目ダ!!早スギル!!戦闘機ヨリモ早スギテ射撃照準ガ全ク追ツカナイ!!ー

 

 

ーソンナコトハイイ!!早ク新シイ演算ヲ算出s…(ゴォォォォン!!!)ー

 

 

 

深海棲艦側もこのような兵器を見たことがないため慌てながらなんとかはたき落とそうと弾幕の雨をぶつける。しかし飛翔体には当たりもしなければ掠りすらしない、それどころかそのまま速度を落とさずに外縁部にいた駆逐艦ロ級やイ級に立て続けに着弾、轟音とともにその両艦が激しい爆発に包まれ船体が真っ二つに割れてしまう。  

 

 

 

ーナッ何ガ…、被害報告急ゲ…!!ー

 

 

ーカッ艦隊左舷側ニイタ駆逐艦ロ級及ビイ級12隻ガ飛翔体ノ直撃ヲ喰ラッテ轟沈…!!左舷側ガ無防備二…!!ー

 

 

 

味方の報告を聞きながらも、ヲ級はやられたという表情を浮かべながら艦隊左舷側を航行していたが今は鉄の塊となって燃えている12隻の深海棲艦駆逐艦の姿を眺めていた。更には艦隊左舷側の駆逐艦のほとんどが壊滅してしまったため艦隊左舷側の防空網がガラ空きになるというかなり不味い状態に陥っているようだ。

 

 

 

ーアノ一瞬デ……艦隊陣形変更急ゲ!!コノママデハ陣形ノ意味ガ…!!ー

 

 

 

 

 

 

出雲 攻撃隊 第二中隊 8番機『空対艦ミサイル12発全弾命中確認!!敵艦隊左舷側の駆逐艦に甚大な被害が発生しています!!』

 

 

出雲 制空隊 第一中隊 5番機『あれだけ火が噴いてれば大破は間違いない!!しっかしデカい花火だこと…!!』

 

 

出雲 制空隊 第一中隊 2番機『恐らく艦中央の魚雷に誘爆したのでしょう…!!船体も真っ二つに割れていますしあれでは長くは持ちません…!!』

 

 

 

AN/AAQ-40 EOTSの画面越しで大破炎上している駆逐艦を見ながら搭乗員妖精達は歓声を上げていた。攻撃隊から放たれたハープーン12発は、対空砲火によって落とされることもなく全弾狙い通りの駆逐艦に命中。艦中央の魚雷発射管付近に命中したことで搭載していた魚雷が誘爆したのか派手な爆発と黒煙が上がり船体が真っ二つに跳ね上がっていた。

 

足も止まっていることや延焼している状況を察すればダメージコントールが機能していないのは見ていても分かる。あれではそう長くは持たないだろう。

 

 

 

 

出雲 攻撃隊 第二中隊 中隊長機『チャンスよ!!相手は何が起こったのか理解が追いついていない…!!このまま畳み掛けるわ!!空対艦ミサイル第2射発射用意!!ギリギリまで引き付けて!!』

 

 

 

相手が混乱している状況に更なる追い打ちをかけるため攻撃隊の中隊長はハープーン攻撃第2射用意を配下の機に命じる。今度は敵艦が視認しやすい+空対艦ミサイルの発射可能限界距離までというかなりギリギリのタイミング。

 

この攻撃では戦艦や巡洋艦にそれぞれ2発ずつの空対艦ミサイルの攻撃を当てるという方法で行うようで、それぞれ2機のバディを組んで編隊を組み直す。というのも軽巡洋艦ならまだしも重巡洋艦や戦艦クラスとなればハープーン1発では火力不足で沈められない可能がある。

 

 

そのため、敵艦の撃沈というよりかは艦中央に集中している対空砲などにミサイルを当てて敵艦隊の対空砲火を弱めるという狙いが強い。重巡洋艦ならワンチャンあるかもしれないが、どっちにしろハープーンでは戦艦の厚い装甲は貫けないことは把握済みだ。 

 

 

出雲 制空隊 第一中隊 中隊長機『敵艦隊目視で視認!!やはり艦隊左舷側の駆逐艦が一掃されてるから穴あき状態だな…!!』

  

 

出雲 制空隊 第一中隊 4番機『敵艦から対空砲火を確認!!狙いはこちらのようです…!!ようやく気づいたか…!!』 

 

 

 

あれだけあった両者の距離も目視で確認出来るほどに接近しており、この距離ではステルス性能はハッキリ言って意味をなさない。eliteクラスの深海棲艦なら充分に出雲航空隊を目視可能な距離のためすぐさま手厚い対空砲火が襲いかかって来る。

 

 

 

出雲 攻撃隊 第二中隊 9番機『おうおう!!撃ってきた撃ってきた!!流石はelite級の深海棲艦…!!手厚い歓迎をしてくれるだこと…!』

 

 

出雲 攻撃隊 第二中隊 11番機『ですが狙いがかなり後方です…!!恐らく速度差がありすぎて対空砲が射撃指揮装置からの指示に追いついていない可能性があります…!!』

 

 

 

だが深海棲艦側から放たれてくる高角砲や主砲、対空機銃などの激しい弾幕のほとんどは出雲航空隊のかなり後方に着弾しており対空砲火の雨の割に未だほとんど掠りもしていなかった。恐らく出雲航空隊の速度が早すぎて射撃指揮装置からの指示に追いついていないのだろう。

 

それもそのはず、この時代のレシプロ機はだいたい500キロ前後ほどが一般的だ。早くても700キロを超える機体はある程度あるがそれでもレシプロ機で音速を超えられるものは艦娘の装備ではほとんど存在しなかった。

 

 

しかし、出雲が搭載きているF35Bはマッハ1.2(1481.76 キロ)での飛行が可能なスーパークルーズ機能を有しており空対艦ミサイル搭載によって多少速度は落ちるもののそれでもこの時代の航空機とは圧倒的な差が生じている。

 

 

 

ークソ!!コイツラモカ!!速スギテ落セナイ!!ー

 

 

ー射撃指揮装置ノ指示ニ追イツイテイナイダト…!?ソンナ馬鹿ナ!!ナントシテデモ追イツカセロ!!ー

 

 

 

先程の飛翔体の攻撃を受けたと思えば、今度は航空機のような機体に接近を許してしまっていることに深海棲艦達はかなりの焦りを見せていた。中にはなんとか無茶を言って間に合わせようとする艦もいるが、流石に音速を超えられる性能をもつ相手にそれはかなりの無理がある。おまけに見慣れない兵器からの攻撃のせいでかなりの混乱が発生しているのか、僚艦同士の連携に乱れが現れて来ていた。

   

 

 

出雲 攻撃隊 第二中隊 中隊長機『予想通り…!!相手は見慣れない攻撃でかなり混乱しているわ!!連中の連携が乱れてきてる!!』

 

 

出雲 攻撃隊 第一中隊 中隊長機『このまま連中に止めを刺すぞ!!この攻撃で立て直しは困難になるはず…!!そうなればあとは後続の連中が仕上げてくれるさ!!』

 

 

 

相手の連携が乱れてきてるとなればこのチャンスを見す見す見逃すはずもなく、出雲航空隊は楔を撃ち込むために空対艦ミサイルによる第二波攻撃準備に突入する。周囲を機銃や砲弾が通過していく中、各機落ち着いた様子で目標をロックオンし可能な限りギリギリまで引き付ける。

 

 

 

出雲 攻撃隊 第二中隊 12番機『攻撃準備完了!!いつでもいけます!!中隊長!!命令を…!!』

 

 

出雲 攻撃隊 第二中隊 中隊長機『目標!!重巡洋艦リ級(ペンサコーラ級)及び戦艦ル級(クイーンエリザベス級)!!狙いは敵対空砲の破壊及び戦闘力の低下!!』

 

 

出雲 制空隊 第一中隊 中隊長機『第一中隊全機攻撃準備完了!!残りのミサイルも盛大にぶつけますか!!』

 

 

出雲 攻撃隊 第二中隊 中隊長機『もちろんよ!!…空対艦ミサイル第2射!!攻撃始め!!』シュゴォォォ!!!

 

 

 

再度攻撃指示を受けて残りの空対艦ミサイル全弾を各機が発射、陣形を変更した関係で今度はハープーンが2発ずつのペアとなって固まり敵艦へと襲いかかっていく。もちろん深海棲艦側もただではやられまいと僚艦との連携が取れない中でもなんとか厚い対空弾幕を展開しようと試みていた。

 

しかし先程も話した通り二次大戦の対空砲で空対艦ミサイルを撃ち落とすことはほぼ困難。そもそも現代の近接火器でも100%の確率で撃ち落とせないのに深海棲艦の対空兵器が出来るはずがない。

 

 

 

ー何故ダ!!何故撃チ落トセナイ!!ー

 

 

ー向コウガ早スギルンダ!!コッチノ知ッテイル航空機ノ速度ジャナイ…!!ー

 

 

 

一生懸命落とそうと弾幕を展開していてもそれが当たらなければ意味がない、激しい対空砲火の雨をすり抜けたハープーンは次々と戦艦や巡洋艦に襲いかかるように立て続けに着弾していく。

 

  

 

ーヤラレタ!!対空砲ニ甚大ナ被害…!!ー 

 

 

ー後部高射砲ガ配線ノ破壊ニヨリ使用不能!!ー

 

 

ー浸水発生…!!機関部ノ一部ガヤラレタ関係デ速力低下…!!ー

 

 

ー後部砲塔ニ被弾…!!スグニ消火ニ…(ゴォォォォン!!)ー

 

 

ークソ!!3番艦ガヤラレタゾ!!ココマデ敵ノ攻撃ヲ許ストハ…!!ー 

 

 

 

左舷側の数隻が相次いでハープーン攻撃を受けて被弾し、対空砲や対空戦闘に大きな影響が出るような被害が続出している。…いやそれだけならまだいい方で、中には機関も損傷し速力が低下したり、酷いものは運悪く砲塔に被弾してそのまま爆沈してしまった艦もいるほどだ。

 

 

 

出雲 攻撃隊 第二中隊 中隊長機『全機反転離脱!!あとは味方に任せましょう!!落とされないようにね…!!』

 

 

出雲 攻撃隊 第二中隊 8番機『了解ー!!ひゅー、汚え花火だぜ…!!』

 

 

 

空対艦ミサイル全弾を打ち切り囮の役目は果たせたため出雲航空隊は役目を終えたため急制動からの反転して敵艦にお尻を向ける形で、全機離脱していく。もちろん深海棲艦も生きて返すわけにはいかないため、どうにか一矢報いようと試みるがすでに統率がボロボロの状態ではどうしようもならない。

 

あれだけ威厳のあった深海棲艦の空母機動部隊だが、今はその威厳は微塵も感じられずそれどころか随伴駆逐艦の半数を失いいろいろな意味で崩れ落ちかけている艦隊だけがそこにはあった……。 

 

 

 

ーオノレ…!!ヨヌモ…ヨヌモ…!!コノママデスムト思ウナヨ!!ー

 

 

 

好き放題されるように攻撃されて離脱していく出雲航空隊を見てヲ級は憎しみの表情を浮かべていた。このまま黙って見送るはずもなく、残存する艦艇に素早く指示を出す。

 

 

 

ー全艦隊ニ通達!!コレヨリ陣形変更後ニ第二次攻撃を発艦サセル!!待機中ノ全機ヲスベテ組ミ込メ!!奴ラニ我々ヲココマデ貶メタ報イヲ…!!ー

 

 

ー…ッ!?敵機直上!!急降下ァァ!!ー

 

 

現在待機中の二次攻撃隊に対して直ちに全機発艦を命じて、パラオ艦隊に対しての総攻撃を仕掛けようと目論んでいるようだが……。それはヌ級の悲鳴とも言える報告によってあっという間に消え失せた…。

 

 

 

瑞鳳 雷撃隊 第一中隊 中隊長機(全攻撃隊指揮担当)『全機突入!!突入セヨ!!彼らの作った突破口を無駄にするな!!引導を渡してやれ!!』

 

 

 

ー…ナッ……!?ー

 

   

 

 

 

 

出雲航空隊に注意を向けすぎたようで、どうやら注意が散漫になっていたらしい。その隙をついて本命のパラオ攻撃隊が攻撃隊指揮機指示の元、空母機動部隊に襲いかかったのだ…。低空からは魚雷を抱いた天山隊、高高度からは爆弾を爆弾倉に包んだ彗星隊が群がるように空母へと殺到していくのであった。

 

 

 

 

第十ニ話 あ号艦隊決戦 4マス目

 

 

 

 







第十二話 敵空母ヲ撃沈セヨ


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第十二話 敵空母ヲ撃沈セヨ

 
出雲攻撃隊による奇襲攻撃によって甚大な被害を受けた深海棲艦の空母機動部隊。だがこのままやられっぱなしになるわけにはいかず直ちに反撃を命じる旗艦の空母ヲ級であったのだが………。

そうはさせまいと言わんばかりのタイミングで本命のパラオ攻撃隊が敵艦隊に向けて開幕航空攻撃を仕掛けて行くのである。



 

だがそれと同時刻……、パラオ艦隊にもその脅威は着々と迫りつつあった……。


(今回は開幕航空攻撃隊の搭乗員妖精や深海棲艦目線の会話が中心です。次回あたりにパラオ艦隊や朝日達の会話が入るかも)


 

 

沖ノ島近海

敵空母機動部隊上空

 

 

 

 

瑞鳳 雷撃隊 第一中隊 中隊長機(全攻撃隊指揮官機)『敵空母機動部隊は出雲攻撃隊による左舷側一斉攻撃で陣形が乱れてる…!!このまま左右から挟撃するぞ!!』

 

 

大鳳 雷撃隊 第一中隊 中隊長機(右舷側攻撃隊指揮官機)『右舷側突入部隊の指揮は私が取ります…!!陣形が乱れているとはいえ右舷側もそれなりに敵艦がいます…!!対空砲火には注意してくださいね!』

 

 

大鳳 雷撃隊 第一中隊 2番機『問題ない…!!こっちは精鋭の集まりだ…!その程度では我々を止められない…!このまま敵空母の土手っ腹に一撃加えてやる…!』

 

 

 

出雲攻撃隊による空対艦ミサイルの飽和攻撃を受けて随伴駆逐艦の半数近くを喪失し、直衛の巡洋艦や戦艦もダメージを喰らい指揮系統が混乱している敵空母機動部隊に追い打ちをかけるように本命のパラオ攻撃隊が左右から挟撃するように襲いかかっていく。

 

深海棲艦側から見れば、低高度には雷撃機、高高度には爆撃機が左右から埋め尽くすように視界いっぱいに広がっておりまさに絶体絶命の状況と言っても過言ではない。

 

 

 

ークソ!!コイツラガ本命カ…!!対空戦闘始メ!!ナントシテデモ撃チ落トセ!!ー

 

 

ーデッデスガ…!現在陣形ノ変更中デ効力射ハ……ー

 

 

ーソンナコトハイイ!!サッサト撃チ落トサンカ!!ジャナケレバ我々ガ殺ラレルゾ!!ー

 

 

 

しかも丁度先程の空襲で空いた陣形を埋めるために陣形変更を行っているという最悪のタイミングで来たことに歯切りをするヲ級であったがすぐさま対空戦闘始めの号令を下令。満身状態になりかけている艦隊であったが、それを感じさせない手厚い対空砲火が攻撃隊へと襲いかかる。

 

 

 

龍驤 爆撃隊 第一中隊 2番機『おうおう…!!早速おいでなすったで!なかなか生きのいい対空砲火や…!!』

 

 

瑞鳳 爆撃隊 第一中隊 中隊長機『あれだけの攻撃を喰らってまだピンピンしてるとはな…!流石はeliteクラスの深海棲艦…!!…だが…、そうだとしてもその状態で俺たちは止められないぞ…?』

 

 

 

敵艦隊上空を飛行している彗星艦爆隊は高射砲や主砲などから放たれてくる対空弾が周囲で炸裂している中でも臆することなく突き進んでいる。各機のお腹には500キロ爆弾が完全格納式の爆弾倉に収められており、急降下ポイントまでジワジワと距離を詰めていた。

 

 

 

大鳳 爆撃隊 第一中隊 中隊長機『全機まもなく降下ポイントだ…!!最終チェックは怠るなよ…!!デカい獲物を仕留めようじゃないか…!!』

 

 

大鳳 爆撃隊 第一中隊 2番機『つまり美味しいタイミングってことですな…!!我々彗星艦爆隊が見事敵艦を沈めてご覧に入れましょう…!』

 

 

龍驤 爆撃隊 第一中隊 中隊長機『ほないきましょうか…!!降下したからには意地でも当てなはれよ!!』

 

 

大鳳 爆撃隊 第一中隊 中隊長機『爆撃隊全機降下セヨ!!繰り返す!!降下セヨ!!どちらが真の空母機動部隊か爆弾で刻んでやろうじゃないか…!!』

 

 

 

突入開始の号令のもと、編隊を組んで飛行していた彗星艦爆隊は爆弾倉を開きながら先頭の機に続くように急旋回からの急降下で次々と突入していく。もちろん深海棲艦側もやられまいと使える対空砲を片っ端から使用して阻止しようと試みるが、急降下で降りてくる爆撃機相手ではそう簡単に当てられるものではない。

  

 

 

大鳳 爆撃隊 第一中隊 中隊長機「まだだ……まだまだ…!!」

 

 

 

周囲に機銃や炸裂する高射砲の砲弾が掠める中、爆撃コースに入った大鳳爆撃隊の中隊長機は冷静に急降下していく機体を微調整しつつ軽空母ヌ級elite(インディペンデンス級)の一隻に狙いを定めてる。

 

そんな中少し離れた先、ヲ級に狙いを定めていた彗星の1機が対空砲火で被弾したのだろう…。エンジンから黒煙を拭き上げながらバランスを崩して小隊から外れてしまう。

 

 

 

 

 

大鳳爆撃隊 第一中隊 2番機「中隊長!!別の小隊の彗星が1機被弾!!コントロールが不能なため脱出するそうです!!」

 

 

大鳳爆撃隊 第一中隊 中隊長機「落下傘で脱出してるか!!どうだ!!」

 

 

 

大鳳爆撃隊 第一中隊 2番機「少々お待ちを…!…落下傘を2つほど確認しました!!搭乗員は無事の様子です…!!」

 

 

大鳳 爆撃隊 第一中隊 中隊長機「よし!この後離脱する際に艦隊に打電して救助を回して貰え!!ひとまず今は爆撃に集中だ…!」 

 

 

大鳳爆撃隊 第一中隊 2番機「了解です!!」

 

 

 

操縦不能になった機体から搭乗員が全員脱出出来たことを2番機に確認させながら自分は視線の先、照準器に名いっぱい広がっているヌ級の飛行甲板を睨みつけていた。急降下のためまたたく間に距離はぐんぐんと縮まっていき……

 

 

 

大鳳爆撃隊 第一中隊 中隊長機「よし!!ここだ!!投下!!引き上げるぞ!!」

 

 

 

ここだと言わんばかりのタイミングで投下スイッチを押しながら操縦桿を思いっきり手前に引いて引き上げる。ヌ級の直上で機体を引き上げた彗星からは500キロ爆弾が投下されていき、迷いもなく飛行甲板へと吸い込まれていく。

 

 

 

ーカッ回避……(ドゴォォォォン!!!)…………ー 

 

 

 

慌てて回避しようとしたヌ級であったがこんなタイミングで間に合うはずがもちろんあるわけもなく轟音とともに500キロ爆弾が飛行甲板へ突き刺さる。そこから少しして信管が作動したのか、とてつもない閃光とともに激しく爆発して黒煙を拭き上げていた。

 

 

 

大鳳爆撃隊 第一中隊 中隊長機『よぉし!手応えありだ!!小隊続け!!』

 

 

 

爆弾一発では運が悪くなければそう安安と軽空母とはいえ沈まないもののそれでもかなりの致命的なダメージを受けて黒煙を拭き上げるヌ級に対して追い打ちをかけるように、中隊長配下の3機が続くように絶え間なく500キロ爆弾を連続で投下していき離脱していく。

 

 

 

ドォォォン!!

ドォォォン!!

 

 

 

もはやオーバーキルレベルではないかというほどの爆撃に軽空母が耐えきれるはずもなく、4発の500キロ爆弾の直撃を喰らって艦内の可燃物に引火したのかド派手な大爆発とともに爆炎に包まれてしまう。

 

 

 

大鳳爆撃隊 第一中隊 4番機『全弾命中確認!!派手な爆発してますわ…!!恐らく艦内の可燃物に引火したかと…!!』

 

 

大鳳爆撃隊 第一中隊 3番機『あれなら放っておいても勝手に沈むでしょうね…!対空砲火も確認されないところを見るに機関もやられている可能性が…!』

 

 

大鳳爆撃隊 第一中隊 2番機『ったりめぇよ!4機の連続爆撃に軽空母が耐えられるわけがないぜ…!!これで一隻撃沈だ!!』

 

 

大鳳爆撃隊 第一中隊 中隊長機『よし!仕事は終わったからさっさと離脱するぞ!!帰り際の対空砲火には注意しとけとよ…!!』

 

 

 

まだまだ誘爆が止まらないヌ級をチラリと見ながら中隊長指揮下の列機は対空砲火の中、彗星の高速性を活かして離脱していく。その間にも他の小隊も同じようにそれぞれの目標に対して次々と爆弾を投下していき離脱していく。

 

 

 

ドゴォォォォン!!

ドゴォォォォン!!

 

 

 

その狙いは主に空母や敵戦艦が中心となっており、まともな装甲を持たない軽空母は爆撃だけで次々と火を拭き上げながら誘爆で船体が真っ二つになったり、浸水で傾斜したりとそのほとんどが活動を止めつつある。

 

戦艦ル級や空母ヲ級などはヌ級ほどではないものの次々と投下されていく500キロ爆弾のシャワーをモロに受けて、上部構造や飛行甲板がめちゃくちゃに破壊されまくって満身創痍になりつつあるようだ。

 

 

 

ークックソ!!ヌ級共ガホトンドヤラレタゾ!!反応ガナイ!!ー

 

 

ーコチラヲ級2番艦!!飛行甲板ニ爆弾3発被弾!!甲板ハモウ使イ物ニナラナイ!!ソレニ爆撃ノ影響デ一部区画ガ浸水中!!現在ダメージコントロールヲ試ミテイル!!ー

 

 

ー連中ノ練度ガ高過ギル……マサカアノ一瞬デコウナルトハ……!。タトエ陣形ガ乱レテイタトハイエ……!!ー

 

 

ーマダマダクルゾ!!左右カラ雷撃機急接近!!挟撃スルツモリダ…!!ー

 

 

ークソ!!コレ以上好キ勝手サセルナ!!ナントシテデモ残リノ空母ヲ守リ通セ…!!ー

 

 

 

 

だがそんな深海棲艦隊に追い打ちをかけるかのように海面より少し上の当たり、対空砲の合間を縫うようにパラオ攻撃隊の天山艦攻が複数機姿を現しながら航空機用魚雷を抱えながら突っ込んできているのが見えた。  

 

狙いは明らかに自分たち空母群なのは明白であるため、ヲ級はかなり焦った表情を見せながら接近してくる敵雷撃機を撃ち落とすように指示を出す。……が、ほとんどの対空砲火は高高度の爆撃隊に集中しており両者に対応するため分火しているのもあるのか、狙いが絞れずにいる。

 

 

 

大鳳雷撃隊 第一中隊 中隊長機(右舷側攻撃隊指揮官機)『全機突撃陣形を作りなさい!!敵の空母は大物よ…!!心してかかりなさい…!!』

 

 

大鳳雷撃機 第一中隊 2番機『よぉし…!!前回に続いて大金星上げてやる…!!ドデカイ空母の土手っ腹に魚雷ぶっこんでやりましょう…!!』

 

 

龍驤雷撃機 第一中隊 5番機『うぉぉぉ…!!初めての実戦こぇぇぇ…!!』

 

 

瑞鳳雷撃機 第一中隊 3番機『まあ落ち着け…!練習したとおりに確実にしっかりとやれば魚雷は当たるさ。だが投下して油断はするな…!帰るまでが戦闘だからな…!』

 

 

 

周辺で炸裂していく対空砲弾を気にしながらも天山艦攻隊は海面より少し上まで降下しつつ突撃陣形を形成しながら敵空母へと真っ直ぐと突き進んでいた。対空砲火が強いとは言えど、出雲航空隊、そしてパラオ艦隊の爆撃隊の攻撃によって艦隊はもはや機動部隊として機能してるかという怪しい状態。

 

そんな状態での対空戦など、もっと激しい攻撃を経験している雷撃隊パイロットからすれば怖いものなどないのであろう。うまいこと炸裂した弾幕をくぐり抜けながら雷撃コースに入り、あとは敵空母の土手っ腹に魚雷をぶつけるだけになっていた。

 

 

 

瑞鳳雷撃隊 第一中隊 中隊長機(全攻撃隊指揮官機)『我々の小隊は旗艦らしきヲ級をやる…!!コイツらさえ沈めればこっちのもんだ…!!』

 

 

瑞鳳雷撃隊 第一中隊 2番機『もちろんでっさ!!空母さえ沈めてしまえば連中は必然的に総崩れになる…!!攻めてきたことを後悔させてやりましょう…!!』

 

 

 

瑞鳳雷撃隊の第一中隊中隊長が指揮する小隊の天山艦攻は敵空母機動部隊の旗艦らしき空母ヲ級に狙いを定め、左舷から突入してくる別の小隊と挟撃する形で護衛艦艇群を突破していき、回避運動もままららない空母群に突っ込んでいく。

 

 

 

瑞鳳雷撃隊 第一中隊 中隊長(全攻撃隊指揮官機)

『距離近いぞ…!!進路修正急げ!!』

 

 

瑞鳳雷撃隊 第一中隊 2番機『中隊長!!2小隊の小隊長機が対空砲火によって落とされたとのことです…!!ですが海面スレスレのため不時着には成功とのこと…!』

 

 

瑞鳳雷撃隊 第一中隊 3番機『ひー…!!アイツらもけっこう必死なんだってことか…!これだけ攻撃受けてもまだピンピンしてやがる…!』

 

 

瑞鳳雷撃隊 第一中隊 中隊長(全攻撃隊指揮官機)

『怯むな…!!ここで敵空母を落とせればあとの戦いはかなり楽になるしそれ故他の味方艦隊の負担が軽くなるからな…!』

 

 

瑞鳳雷撃隊 第一中隊 3番機『っ…!!了解…!!』

  

 

 

隣で僚機が落とされるのを見て少し怯んでいた3番機であったが中隊長からの怯むなという声を聞いて自分を奮い立たせながら照準器一杯に広がるヲ級に睨みを聞かせている。そのヲ級からの側面からは全部ではないものの、5インチ単装砲などの高角砲や12.7mm重機関銃といった対空機銃の一部が全力で射撃をしていていた。

 

 

 

ーナニヲシトル!!サッサト落セコノヘタクソガ!!ー

 

 

 

爆撃機に比べて落としやすいはずの雷撃機をなかなか落とせないことに苛立ちを見せているのかヲ級は対空機銃要員を激昂するがそんなことをしてても落とせるはずもなくあっという間に距離を詰められる。

 

 

 

瑞鳳雷撃隊 第一中隊 中隊長(全攻撃隊指揮官機)

『1番機魚雷投下!!離脱する!!』

 

 

瑞鳳雷撃隊 第一中隊 2番機『2番機も魚雷投下します!!3番機!!魚雷の進路を確認しろ!!』 

 

 

瑞鳳雷撃隊 第一中隊 3番機『了解!!任せて下さいな…!!』

 

 

投下ポイントに差し掛かると同時にヲ級の予想進路上に向け、中隊長機の天山が航空機用魚雷を投下して左側を抜けるように進路を変更して離脱していく。後続の2機もそれに続くように魚雷を投下していき対空砲火の最中、旋回しながら魚雷の航路を確認しながら旋回する。

 

投下された魚雷はそのまま重力に沿って落下しながら一度海中に突っ込んでいき、その後は推進機によってすぐさま動き出して気泡を海面に出して敵艦へと向かっていく。

 

 

 

瑞鳳雷撃隊 第一中隊 3番機『全機の魚雷!正常に敵艦に向けて航行中!!コースもバッチシ…!!このまま行けば当たります!!』

 

 

ークソ!!魚雷ヲ投下サレタ…!!取舵一杯!!コノママ喰ラウワケニハ…!!ー

 

 

ーサッ左舷カラ雷撃機三機接近…!!ー

 

 

ー何…!?イツノマニ…!!ナントシテデモソイツラハ撃チ落トセ!!ソウジャナケレバコノ魚雷ヲ避ケラレナイゾ!!ー

 

 

 

左舷から接近してくる魚雷を取舵で躱そうとしたヲ級であったが見張り員から悲鳴のような報告を受けて慌てて視線を向けると、そこには右舷から大鳳隊の天山3機が海面ギリギリでこちらに接近して来るのが視界に映り込んできた。

 

このままでは不味いと判断したヲ級はこちらから接近してくる雷撃機はなんとしてでも落とすようにという指示を出すが、対空砲は完全に狙いが分散しているためか思うような迎撃が出来ずに敵機の接近を許してしまっている。

 

 

 

大鳳雷撃隊 第一中隊 4番機(小隊長)『チャンスよ!!敵空母は狙いが分散しすぎてこちらに火力を集中出来ていない…!!このまま瑞鳳隊と挟撃するわよ!!』

 

 

大鳳雷撃隊 第一中隊 5番機『了解ですぜ姉貴…!!敵空母に引導を渡してやりましょうや…!!』

 

 

大鳳雷撃隊 第一中隊 6番機『当たり前だぜ…!!連中にはここにやってきたこと後悔させてやりましょう…!!』

 

 

 

狙いが分散して疎らになっている対空砲火を横目に大鳳雷撃隊のある1小隊は瑞鳳雷撃隊と挟撃するために右舷側から敵空母目掛けて飛行していていた。それからだいぶ接近した辺りでようやく追いついたのか、徐々に周囲を機銃弾が掠めていく回数が多くなっていく。

 

 

 

大鳳雷撃隊 第一中隊 4番機(小隊長)『ここよ!魚雷投下!!去り際にやられないようにね…!!』

 

 

大鳳雷撃隊 第一中隊 5番機『もちろんでっせ!!この程度でやられるようじゃ雷撃機乗りは名乗れないですからな…!!』

 

 

大鳳雷撃隊 第一中隊 6番機『投下魚雷安定して航行中!!けっこう狙いはいいですよ!!』

 

 

 

だがそのタイミングで強くしても迎撃が間に合うはずもなく、小隊全機被弾することもなく次々と投下していき相次いで離脱していく。左右から六本の魚雷が海面を進みながら敵空母目掛けて迷いなく進んでいく光景は相手からすれば地獄以外の何者でもないだろう…。

 

回避しようにも左右から来られてはどちらかに舵を切っても必ず被雷してしまうのは目に見えており減速をして躱そうにもこのタイミングではもう間に合わない。

 

 

 

ー……ナゼ……ナゼ戦力デ圧倒シテイル我々ガコンナ惨メナ負ケ方ヲ……。奴ラニ一泡吹カセルツモリガ……ドコデ間違エタト言ウンダ……。ー

 

 

 

深海棲艦も走馬灯に近いことを見るようで今までの記憶が湧き上がりながらヲ級はあ然とした表現でこちらに向かってくる魚雷を見ながらブツブツと呟いていた。が…そんな脳裏にあることがふと思い浮かんで来る。

 

…そう、自分たちをここまで滅多滅多にしてくれた謎の飛行物体……そして報告にない艦娘の新兵器のことを……。

 

 

 

ーアイツダ……アノ変ナ兵器ガナケレバ我々ハコンナコト二ナラナカッタハズナンダ……。…コノママヤラレッパナシダト思ウナヨ……。必ズ一泡F……(ドゴォォォン!!)ー

 

 

 

このままやられっぱなしなど例え深海棲艦である自分たちでも許すはずもなくやられる前にどこかへ無線を飛ばしながら一泡吹かせてやろうとつぶやいた矢先……、轟音とともに旗艦のヲ級を包み込む水柱が次々と上がっていくのであった……。

 

正規空母だとは言えど、魚雷を六本喰らえば一溜まりもないはず。直撃を受けたヲ級は機関が停止のか、それにより艦内送電が止まったことによりあれだけ激しかった対空砲があっさりと沈黙してしまう。

 

 

 

瑞鳳雷撃隊 第一中隊 6番機

『敵空母機動部隊旗艦らしきヲ級の機関停止を確認!!対空砲も沈黙していることから撃沈確実です!!』

 

 

瑞鳳雷撃隊 第一中隊 5番機

『ザマァ見やがれ!!俺たちに勝とうなんざ100年早いぜ!!』

 

 

瑞鳳雷撃隊 第一中隊 中隊長(全攻撃隊指揮官機)

『まだ気を抜くな…!!敵艦隊は健在の上対空砲火も上がってる!!戦果確認と被害状況を各隊知らせ…!!』

 

 

 

次々と水柱に包まれ航行を停止したヲ級を上空から眺めながら次々と歓声を上げていく雷撃隊の一部搭乗員妖精たちであったが、全攻撃隊の指揮を担っている中隊長妖精は気を抜くなと注意しつつ攻撃隊の被害状況と敵艦隊の損害状況をすぐさま報告するように指示を出す。

 

まだまだ対空砲火が上がってはいるものの、旗艦を失った影響か先程よりも威力は衰えており散発的になりつつあった。そんな様子を見ながら左右の攻撃隊指揮官から次々と報告が上がってくる。

 

 

 

大鳳雷撃隊第一中隊 中隊長機(右舷側攻撃隊指揮官機)

『右舷攻撃隊の損害については雷撃機3機、爆撃機1機が対空砲火によって落とされました!!ですが落とされた機の搭乗員は全員無事に脱出したとのことです!!』

 

 

龍驤雷撃隊第一中隊 中隊長機(左舷側攻撃隊指揮官機)

『こちら左舷指揮官機!!味方の被害は雷撃機2機のみや!!それも全員脱出は確認済み…!!尚敵艦隊の被害状況については攻撃隊が軽空母ヌ級elite4隻及び空母ヲ級elite2隻を撃沈!!残る1隻も飛行甲板は使い物にならないかと…!!』

 

 

瑞鳳雷撃隊 第一中隊 中隊長(全攻撃隊指揮官機)

『それに出雲攻撃隊が沈めた重巡リ級elite1隻と駆逐艦ロ級及ビイ級12隻を含めれば19隻を沈めたことになる…。戦艦ル級や残りのリ級だってほとんどが無傷じゃない…。となれば機動部隊としての機能は完全に喪失したな…。』

 

 

 

先程までたくさんの艦艇がいた深海棲艦の空母機動部隊は、今やその影を見ることなく衰えており、あちこちから黒煙が吹き上がっている始末。 

 

瑞鳳雷撃隊の中隊長が言う通り艦隊の半数近い数を喪失しており、仮に撃沈を免れても傷つている船が大多数であった。これではこちらの艦隊を攻撃する余力はないに等しいとも言っていいだろう。

 

 

 

瑞鳳雷撃隊 第一中隊 中隊長(全攻撃隊指揮官機)

『ひとまず撃墜された搭乗員の救助を打電しろ…!!貴重なベテランをここで失うわけにはいかんからな…!!』

 

 

龍驤雷撃隊第一中隊 中隊長機(左舷側攻撃隊指揮官機)

『それな構わんけぇど、これだけの敵艦隊なら味方艦隊にも敵攻撃隊が向かっていてもおかしくありませんで…。仮に1次攻撃隊が放たれてたとしたら…この機動部隊なら余裕で100機は超えるかと……。』

 

 

 

確かに龍驤雷撃隊の中隊長妖精の言う通り、これだけの規模の空母機動部隊が放っていないはずがない。タイミング的にもそれは充分にあり得ることで、空母が7隻いるとなれば最低でも100機近い第一次攻撃隊を出せる。

 

そのため、もし放っていればその狙いはもちろんパラオ艦隊に向けられるのは誰だって容易に想像が出来るというものだ。

 

 

 

瑞鳳雷撃隊第一中隊 中隊長(全攻撃隊指揮官機)

『確かにそれはあり得る話だ。これだけの深海棲艦、そしてそのすべてがeliteクラスなら当たり前のことだろう。だが我々が気にしてても何も変わらないぞ?』

 

 

龍驤雷撃隊第一中隊 中隊長機(左舷側攻撃隊指揮官機)『でっですが……』

 

 

大鳳雷撃隊第一中隊 中隊長機(右舷側攻撃隊指揮官機)

『なに気にしなくても大鳳さんやみんななら切り抜けられるわよ…!なんたってうちらは横須賀や呉に負けないベテラン集いの艦隊なんですから…!』

 

 

瑞鳳雷撃隊 第一中隊 中隊長(全攻撃隊指揮官機)

『そうゆうこった…!例の子たちもいるし提督や瑞鳳さんたちならなんとかするはずだ。なら俺たちはその無事を祈りながら帰投するのが仕事ってことだ。あっちには第二中隊の直掩機隊が警戒してくれてる。ある程度は止めてくれるはずさ。』

 

 

 

だが自分たちが気にしてても何かが変わるわけでもない、ひとまずは艦隊が無事に切り抜けてくれることを祈るしか出来ないため艦娘や提督達の技量を信じるしか出来ずにいる搭乗員妖精達。だがそう簡単にやられるはずがないと自分に教え込みつつ操縦桿を握りながら攻撃隊は帰路につくのであった……。

 

 

 

それと同時刻……パラオ艦隊では深海棲艦の空母機動部隊が解き放った攻撃隊の脅威が迫りつつあった……。

 

…果たして、パラオ艦隊はこの最後槍とも見て取れる攻撃をどう切り抜けるのか……?…そして朝日達は自分たちの実力をどこまで試せるのか……。

 

 

 

 

 

 

一進一退の攻防戦が今……幕を開けます…!!!

 

 






第十二話 対空戦闘用意


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第十三話 対空戦闘用意



瑞鳳達の放った攻撃は出雲航空隊による奇襲攻撃のお陰で開幕攻撃は大勝利に終わった。


だがそんな喜びもつかの間、深海棲艦の空母機動部隊が放っていた最後槍がパラオ艦隊へと着々と脅威として迫りつつあった……。






 

 

 

開幕航空攻撃隊による敵空母機動部隊への空襲と同時刻…

パラオ艦隊近海空域にて

 

 

 

ダダダダダダ!!!!

ブォォォン!!

 

 

 

快晴に包まれた青空を打ち破るように、当たり一帯には機関砲音が響き渡っており更にはそれに負けないのようなエンジン音が重なるようにひっきりなしなり続けている。上空に視線を向けると、そこにはかなりの数の黒い点のように航空機が入り乱れるように飛び合っていた。

 

深海棲艦の空母から飛び立った第一次攻撃隊、そしてそれを阻止しようとせんまいパラオ艦隊の直掩隊による激しい空中戦が繰り広げられているようだ。200機近い敵の艦載機に対し、僅か33機という数ではかなりの劣勢に近い。

 

だが開幕航空攻撃隊の直掩隊からの報告では、敵は新型機ではあるものの練度はそこまで高くないと聞いており全部を落とせなくてもある程度は抑えられると踏んでいた空母艦娘や搭乗員妖精であったが……。

 

 

 

瑞鳳制空隊 第二中隊 中隊長機『くそなんだコイツら!!動きが手慣れてやがる…!!』

 

 

 

だがいざ蓋を開けてみればそんなことは全くないようで、瑞鳳制空隊の中隊長妖精は思わず悪態をついている。先程から目の前を飛んでいるF6F ヘルキャットを撃墜しようとアタックをしているのだが…、まるで予知能力があるかのようにのらりくらりと機銃掃射を避けられてしまっているのだ。

 

 

 

瑞鳳制空隊 第二中隊 2番機『なんか話が違うぞ!?空母の護衛に当ててた敵戦闘機の練度はそこまで高くないって言ってなかったか!?』

 

 

大鳳制空隊 第二中隊 中隊長機『まさか連中空母の護りを捨ててまで攻撃に命賭けてんのか…!?(ダダダダダダ)くそ!危ねぇ!(慌てて回避する)』

 

 

 

敵艦隊へ攻撃に向かった攻撃隊を護衛していた制空隊からの情報では、敵は新型機のものの練度についてはそこまで高くないという情報が入ってきていた。…がしかし蓋を開けてみれば練度が高くないどろこか、第一中隊よりは劣るものの精鋭揃いの二中隊制空隊と互角の戦いを敵戦闘機は繰り広げている始末だ。

 

 

 

龍驤制空隊 第二中隊 3番機『そんなことあるわけないがな…!!大方空母の数で慢心してぇ攻撃隊の護衛にベテランパイロットを振り分けたんやろ!』

 

 

瑞鳳制空隊 第二中隊 6番機『舐められたもんだな…!!母艦の護衛を疎かにするとはeliteの名が泣くぜ…!!』

 

 

瑞鳳制空隊 第二中隊 10番機『んな呑気なこと言っとる場合か…!!6番機!!そっちに敵が行ったぞ!!』

 

 

瑞鳳制空隊 第二中隊 6番機『ウッソだろ!?さっきようやく敵落としたっていうの…(ダダダダダダ)ちっ!言ったそばからこれか…!!(操縦桿を左に切る)』

 

 

 

本来であれば空母の直掩を疎かにするようなことはないはずなのだが、恐らくこちらの空母の数で油断して練度の高いパイロットを攻撃隊に組み込ませたのだろうと龍驤制空隊のとある搭乗員妖精がそう呟く。

 

だがそんな最中でもお構いなしと言わんばかりに敵戦闘機が瑞鳳制空隊6番機の背後から奇襲する形で襲いかかってきた。だが僚機の警告のお陰ですぐに気づき、零戦お得意の急旋回で機銃掃射のシャワーをギリギリで避けて事なきを得る。

 

 

 

龍驤制空隊 第二中隊 9番機『でもどないすんねん!これじゃ敵攻撃隊を落とすどころの話じゃないで!!やっこはん直掩機としての役目をキチンとこなしてはる!』

 

 

大鳳制空隊 第二中隊 4番機『明らかに数が足りない上に練度も互角と来てます…!!これじゃ戦闘機を抑えるだけで精一杯…!(ダダダダダダ!!)キャァァ!?(ドォォン!!)』

 

 

大鳳制空隊 第二中隊 3番機『あぁ!!4番機がやられた!!クソッタレ!!うちのマドンナをよくも!!(ダダダダダダ!!)』

 

 

 

こちらの僚機の数が足りない上に敵の練度がほぼ互角となれば抑えるのは相当厳しい。だがそうは言ってもここである程度数を減らさなければ味方艦隊の被害拡大は必須。そのためなんとか敵を落とそうとしていた大鳳制空隊の4番機であった…、…が突然背後からの奇襲攻撃をモロにうけて黒煙を拭き上げながら墜落してしまう。

 

仲間(主にマドンナ)をやられた怒りか3番機がすぐさま僚機を撃墜したヘルキャットの上部に回り込んで20ミリと7,7ミリ機銃を叩き込んでいく。

 

 

 

ダダダダダダ!!!

 

 

 

前身のワイルドキャットよりも更に防弾性能が上がり、更にはエンジン出力もアップしたことにより空飛ぶ装甲戦闘機のような硬さを誇るヘルキャット。しかし荒振りながらも3番機はコックピットを的確に狙い、パイロットキルで敵戦闘機を仕留めてすぐに離脱する。

 

 

 

大鳳制空隊 第二中隊 2番機『4番機からパラシュート展開を確認!!どうやら無事のようです…!!』 

 

 

大鳳制空隊 第二中隊 5番機『ったく!相変わらず運がいいのか悪いのか!とりあえずすぐに救助要請だ!!マドンナ

を簡単にやらせるわけにはいかんからな…!』

 

 

瑞鳳制空隊 第二中隊 8番機『でもこのままじゃジリ貧になるわよ!?っ…!中隊長!!敵の攻撃隊が突破しかけてます!!このままじゃほとんど無傷で艦隊に…!』

 

 

瑞鳳制空隊 第二中隊 中隊長機『何!?くそ!いつの間にあんなところに…!!龍驤隊!!ここは俺たちと大鳳隊で受け持つ!敵の攻撃隊を頼んだぞ!!』

 

 

 

僚機の脱出を確認して一安心した矢先、別の機からの滑り込むような報告を受けて瑞鳳制空隊の中隊長妖精が慌てるように視線を向ける。するとその先にはこちらの乱戦状態を利用した敵攻撃隊が抜け出すように防空ラインを突破しようとしているのが確認出来た。

もちろん無傷で通すわけにはいかないというものですぐさま龍驤隊に追撃指示を出す。

 

 

 

龍驤制空隊 第二中隊 中隊長機『任されたで…!!龍驤隊中隊長より各機!!これより敵攻撃隊を追撃するで…!!ウチラの母艦には指一本触れさせるな…!!』

 

 

龍驤制空隊各機『『あい!!』』

 

 

 

追撃指示を受けた龍驤隊は中隊長の指示で素早く戦闘域から離脱しつつ、どさくさに紛れて突破しようとしている敵攻撃隊へと全速力で向かっていく。もちろんそれに気づかないような敵ではないためすぐさま数機ほどのヘルキャットが反応して、僚機を護るために迎撃しようとするが……

 

 

 

大鳳制空隊 第二中隊 3番機『おらおら!!どこ行こうとしとるんか…!!お前らの相手はワイらや!!』ダダダダダダ!!

 

 

 

だがその行動を待ってましたといのタイミングで上空から機銃のシャワーが襲いかかってきて、追撃をかけようとした敵機は慌てるように散開しつつ攻撃を往なそうとする。戦闘機の数や練度で手一杯な瑞鳳・大鳳の制空隊だがそれでも邪魔はさせんと言わんばかりの勢いで龍驤隊へ向かおうとする敵機の妨害をしていく。

 

 

 

龍驤制空隊 第二中隊 5番機『すまん!!恩にきるで!!』

 

 

龍驤制空隊 第二中隊 7番機『野郎どもいくで!!瑞鳳・大鳳隊の戦いを無駄にするんじゃないで!!一発ギャフンと言わせはるで…!!』

 

 

 

突破口を切り開いてくれた両隊の搭乗員に感謝しながらも龍驤隊は、味方艦隊に向かおうとする敵攻撃隊をなんとしてでも阻止するために発動機を唸らせながらフルスロットルで向かっていくのであった……。

 

 

 

瑞鳳制空隊 第二中隊 中隊長機『頼んだぞ…!!龍驤隊…!!俺達直掩機の意地を見せてくれ…!!』

 

 

 

 

 

龍驤制空隊11機

敵攻撃隊迎撃のため戦闘域から離脱

 

 

 

残存機

瑞鳳・大鳳制空隊計21機

敵機動部隊

攻撃隊直掩機

50機(全機Elite級)

 

敵攻撃隊

150機がパラオ艦隊に向けて飛行

 

 

 

 

 

 

同時刻パラオ艦隊

旗艦瑞鳳艦橋にて

 

 

ダッダッダッ!!

バァン!!

 

 

瑞鳳 電信妖精「瑞鳳さん、提督!!直掩機隊から緊急連絡です!!敵直掩隊の妨害を受けて敵攻撃隊のほとんどに抜けられたと…!!」

 

 

瑞鳳「そっそんな…!?二中隊の子達は以前の空母決戦で活躍した子達ばかりなのに…どうして…!」

 

 

秋山「落ち着け瑞鳳…!電信妖精、詳細を説明してくれるか?」

 

 

 

艦橋に滑り込むように飛び込んできた瑞鳳の電信妖精が、直掩機隊からの報告を纏めた書類片手に焦りの表情を見せながら報告を行う。それを聞くなり瑞鳳は驚きのあまり混乱したのか思わず問いただしてしまうが、それを秋山が宥めながら詳細の状況報告を求める。  

…というの今回空母直掩に当てられた戦闘機隊の搭乗員妖精達は半年前パラオ近海で発生したパラオ沖海戦にて数で勝る敵機のほとんどを迎撃したという一中隊に次ぐ歴戦の集いなのだ。そのため、今回の空襲も彼らがいればかなりの敵機を抑えられるのではないかと踏んで艦隊防空を任せたのだが…

 

 

 

瑞鳳 電信妖精「はっ!我が瑞鳳隊からの報告によれば敵戦闘機の練度はかなりのものとのことです…!!攻撃隊からの話とは全く異なるとことで…!!」

 

 

秋山「くそ…、奴さんめこっちの空母潰すためにベテラン搭乗員のほとんどを攻撃隊直掩に当てたな…面倒なことを…(頭を抱え)防空ラインを突破した敵機の数は?」

 

 

瑞鳳 電信妖精「敵攻撃隊約150機ほどが無傷で突破したそうです…!!こちらの迎撃機のほとんどが敵の直掩機50機ほどからの足止めを喰らっているそうで…、龍驤隊が追撃をかけているそうですが…間に合うかどうか…」

 

 

瑞鳳「提督……(過去のトラウマが蘇り不安そうな表情になる)」

 

 

秋山「安心しろ瑞鳳…、お前もみんなも誰だって沈ませはしない…!各艦に打電!!対空戦闘用意を下令!!ここが正念場だ…!気合い入れていけ…!!」

 

 

瑞鳳「はい…!!(そうだ…!旗艦の私がくよくよしてても何も始まらない…!!しっかりしないと…!!)」

 

 

 

電信妖精の報告を聞くにつれて過去のトラウマが蘇ったのか表情が少し曇って不安そうな表情を浮かべる瑞鳳。そんな彼女を見ながら安心させるように肩に片手を置きながら語りかけながらも、秋山は艦隊全体に対空戦闘用意を下令を命じてそれに答える形で瑞鳳は旗艦としての役目を果たすように各艦に指示を出していくのであった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

それとほぼ同時刻、各艦からは対空戦闘用意のラッパが相次いで鳴り響き乗組員妖精は慌てるように艦内を行ったり来たりして持ち場につこうとしていた。 

 

 

 

阿賀野 機銃妖精「急げ急げ!!敵はすぐそこだぞ…!!モタモタせずに配置につかんか!!!」

 

 

阿賀野 給弾妖精「どいてどいて!!機銃弾のお通りよ!!(間を縫うように台車を押していく)」

 

 

阿賀野「いい?最新鋭軽巡洋艦の実力をここでいかんなく発揮しちゃうわよ…!!護衛艦としての役目を果たしましょう!!」

 

 

阿賀野 全乗組員「あい!!」

 

 

時津風「よぉ〜し!味方をしっかりお守りするよ〜!妖精のみんな、お願いね〜!」

 

 

時津風 砲術妖精「お任せを!!雷装型駆逐艦が対空戦闘を出来ないと言われたのは昔話…!!我が時津風の弾幕で薙払って見せましょう…!!」

 

 

 

 

 

吉野 AN/SPY-1D妖精「敵編隊150機ほどが味方の防空ラインを突破!!あと40分で視認可能圏に入ります!!」

 

 

吉野 砲術妖精「150機ってマジかよ!!こっちのイージスシステムは128以上の目標は追尾出来るがミサイルや砲弾だってバカスカ打てん以上防ぎ切れるかどうか…!!」

 

 

吉野『それでもやるしかない…!!幸いこっちには僚艦が何隻もいる…!!敵機が侵入しにくいような対空弾幕を展開するしかないわよ…!!』

 

 

 

もちろん吉野CICでも乗組員が忙しく情報収集に言われていたのだが、レーダーを埋め尽くすレベルの反応にそれぞれ焦りを見せていた。というのも吉野の搭載しているイージス・システムは確かに理論的には128以上の目標を捕捉・追尾することが可能ではある、がそれはあくまで全力迎撃が出来た場合の話。もちろんミサイルや砲弾には限りがあるためそんな迎撃方法ではすぐに破綻してしまう。

 

 

 

吉野『砲身及び銃身冷却はしっかりとね!一個でもやられたら近接火器の弾幕は一気に半減するから…!!』

  

 

吉野 攻撃指揮官妖精「もちろんです!!CICより艦内各員!!ここが正念場よ!!死ぬ気でそれぞれの役目をこなしなさい!!」

 

 

 

CICにいる攻撃指揮官妖精が艦内スピーカーで各所に訓示に近い言葉をはっきりと透き通る声で指示を出していく。もちろんその指示に答えるかのように各所の妖精達は自分の役目をこなすために更に慌ただしくなる。

 

 

吉野 給糧班班長「アイツらが戦うように俺たちはここが戦場だ!!被弾しようが揺れようが決して指を止めるんじゃねぇぞ!!気合い入れて飯作れよ!!」

 

 

吉野 給糧員全妖精「「おうよ!!!」」 

 

 

 

 

 

 

吉野「ひとまずこっちは問題はない…。訓練とはイレギュラーなことばっかりだけど落ち着いてやれば…(インカムのスイッチを入れる)朝日さん…!そっちは大丈夫ですか…!」

 

 

 

ひとまず自艦の乗組員妖精に関しての士気は問題ないということを確認しつつCICから送られてきた情報を簡単に纏める。相変わらずレーダースクリーンを埋め尽くすような敵機の報告に眉を細めかけた吉野であったがすぐに切り替えてインカムのスイッチを入れつつ朝日に無線を繋ぐ

 

 

 

朝日『こっちも準備万端!いつでもいけるよ吉野さん…!』

 

 

吉野『大丈夫そうね…(一瞬笑みを零しかけて)コホン…!出雲さんのほうはどうですか?』

 

 

 

相変わらずいつも通りの明るそうな声とともに大丈夫だよという朝日からの元気いっぱいな返答が返ってくる。それを聞いて相変わらず活発な後輩だなっと思いながら一瞬笑みを零しかけた吉野であったが咳払いをしつつ切り替えて今度は出雲に無線をつないで尋ねる。

 

 

 

出雲『こっちも行けるって言いたいけど〜…、あいにく艦載機のみんなは出撃中だから近接火器しかないのよねぇ(汗)こうゆうとき、同じヘリ空母のいせちゃん達が搭載してるVLSが羨ましいのよねぇ〜…』

 

 

朝日『大丈夫♪私や吉野さん、みんなでしっかりと守ってあげますから♪出雲さんにしか出来ないこともきっとありますよ!』(フンス)

 

 

吉野『えぇ♪イージス艦としてしっかり艦隊を御守りさせていただきます…!!』

 

 

出雲『うぅ〜…(嬉し涙)二人共ありがとう〜いい後輩が出来たわねぇ〜…『龍驤制空隊の無線を傍受!!敵攻撃隊に対して強襲を仕掛けるようです!!』っとお喋りはここまでね…』

 

 

 

二人の励ましを受けて嬉し涙を流していた出雲であったが、それを遮るように自艦の電信妖精からの報告が飛び込んでくるや否や先程の表情が嘘かのように真剣そうな雰囲気に変わりインカムを全艦宛に切り替えて報告を行う。

 

 

 

出雲『出雲より各艦宛!!先程龍驤制空隊が敵攻撃隊に対して強襲を敢行!!現在進行系で交戦中と思われます!!』

 

 

龍驤『しめた!!ウチラの航空隊ならある程度は押さえてくれるはずやで!!これで各攻撃隊の突入タイミングをずらせば…!!』

 

 

霧島『こちらも電探で確認しています!龍驤隊が敵攻撃隊の最後尾から仕掛けてる模様です…!!』

 

 

秋山「龍驤の航空隊は瑞鳳や大鳳にも劣らないベテラン揃い…!全部を落とせなくても時間稼ぎは出来るはずだ…!!」

 

 

曙『なら私達はその間に備えないとね…!!ビビってる場合じゃないわよ…!!』

 

 

巻雲『もちろんです!!艦載機の皆さんが頑張ってるなら我々艦娘もやらなければ話になりませんからね…!!』

 

 

 

 

    

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

龍驤制空隊 第二中隊 中隊長機『攻撃や攻撃!!敵の後部銃座には注意しなはれよ!!最悪落とせなくても爆弾や魚雷を投棄されればえぇ!!』

 

 

 

防空ラインを突破した敵攻撃隊はそれぞれの攻撃位置につくため巡航用の陣形から突撃用の陣形に切り替えながらパラオ艦隊へ着々と差し迫っていた。だがただでは通すまいと言わんばかりの勢いで遅れながらも背後から龍驤制空隊所属の零戦が獲物に群がる猛獣のように強襲して襲いかかる。

 

 

 

ダダダダダダ!!!!

 

 

 

もちろん敵攻撃隊もそれは気づいており龍驤隊の強襲を受けた最後尾のドーントレスやアベンジャーの後部銃座が即座に反応。数の多さを利用した厚い対空弾幕を形成しつつなんとか追い払おうとする。

 

 

 

龍驤制空隊 第二中隊 2番機『そんな攻撃はお見通しやで!!こっち攻撃機の相手なんて腐るほどやってきたわい…!!』

 

 

 

だが後部銃座からの反撃が来るなど龍驤隊の搭乗員妖精からすればお見通りのパターンであったため敵攻撃機からの反撃を難なく交わしつつ銃座の死角へて零戦各機は滑り込むように入り込んでいく。

 

 

 

龍驤制空隊 第二中隊 4番機『20ミリの鉛玉だ!!喜んで受け取りやがれ!!』カチ!!

 

 

 

 

そんな中龍驤隊の4番機が敵編隊背後に付くと同時に照準器一杯に広がっている1機の雷撃機めがけて搭乗員妖精が発射レバーを勢い良く引く。直後機首の20ミリ機関砲と翼内に搭載されている7.7ミリ機銃が火を吹き、放たれた弾丸がまるで吸われるように機体のど真ん中へ連続して突き刺さる。

 

 

 

ダダダダダダ!!!

 

 

 

7.7ミリならいざ知らず、機関砲の中でも高威力で破壊力のある部類でもある20ミリクラス機関砲が貫通して内部で炸裂すれば耐えられるはずがない。そのため数発の攻撃を受けたアベンジャー雷撃機は魚雷を抱えたまま無様にも空中で爆発四散してしまう。

 

 

 

龍驤制空隊 第二中隊 8番機『おうおう!威勢がいいねぇ4番機!!こっちも負けられねぇぜ!』

 

 

 

そんな威勢のいい僚機を見てこっちも負けられないという雰囲気になったのか8番機も手頃な爆撃機を見つけて後部銃座からの反撃を躱しながらも背後について狙いを定める。だが彼が狙っているのは本体ではなく、どうやら尾翼を狙っているようだ。

 

 

 

龍驤制空隊 第二中隊 8番機『20ミリを使わなくても要は爆弾を投棄させりゃ攻撃機としての役目は果たせないってもんよ!!ならここ一点の集中攻撃や…!!』

 

 

 

狙いが定まると同時にここだと言わんばかりに発射レバーを勢いよく引いていき、尾翼目掛けて7.7ミリをばら撒くように叩きつけていく。零戦に比べて防弾性能のあるドーントレス、7.7ミリ機銃ではびくともしない機体だが流石に操縦に重要な尾翼を集中して狙われたらたまらないようで爆弾全弾を投棄しつつ急旋回で機銃掃射を避ける。

 

 

 

龍驤制空隊 第二中隊 8番機『これで撃破判定でいいよな…!!敵機の数が多い以上弾数の少ない20ミリは温存しておかないとな…!』

 

 

 

龍驤隊の予想外の奇襲を受けて混乱している最後尾の攻撃隊であったがそれ以外は特に問題なくパラオ艦隊へ向けて飛行しつつ攻撃位置へつこうとしているのであった……。

     

 

 

 

 

 

 

 

 

榛名『敵攻撃隊はあとどれくらいで来ますか!』

 

 

榛名 電探妖精『現在龍驤隊が強襲を仕掛けてますが…、このままのペースで来ればあと30分ほどで来ます!!』

 

 

 

同時刻、パラオ艦隊も敵攻撃隊をレーダーで補足しており対空電探の搭載している榛名では電探妖精が21号対空電探から送られてくる情報をもとに逐次報告していく。ちなみにこちらの電探でも敵の大編隊を示す反応が随時出ており直接見なくてもその圧倒的戦力差がひしひしと伝わってきた。

 

 

 

榛名『提督!あと、30分ほどでこちらにやってくるようです…!!龍驤隊が攻撃を仕掛けて遅滞させようとしていますが…!!』

 

 

龍驤『やっぱあの数じゃちとキツイか…!!こうなったらやるしかないで…!!全員持ち場につけや!(妖精に指示を出していく)』

 

 

秋山『流石にあれを完璧に遅滞させるのは難しいか…。だがこっちにも奥の手があるってもんだ…!(ガチャ)朝日、吉野!そっちは行けそうか…!!』

 

 

 

榛名からの報告を聞いて流石にあの数を抑えるのは厳しいかという表情を浮かべていた龍驤であったがすぐに切り替えて乗組員妖精に気合いを入れるように指示を出していく。その無線を聞きながらも秋山はこっちだってただでやられるわけにはいかないという表情を見せながら朝日や吉野に対して無線で行けるか尋ねる。

 

 

 

朝日『こっちはいつでもいけます司令!正直この数を迎撃するのは初めてですが…!!』

 

 

吉野『私も合図があればいつでも発射出来ます!!既に敵攻撃隊は対空ミサイルの射程に入ってますから…!!』

 

 

秋山『分かった…!戦闘に関してはそっちに任せるが可能な限りミサイルの温存頼む…!今回の戦闘は長期戦必須だからな…!』

 

 

朝日『もちろんですが…!それでは抜けてくる敵機もいるのではないでしょうか…?』

 

 

秋山『何…!こっちには優秀な子達もいるし前よりも艦艇の数は揃ってる、お互いカバーし合えれば行けるはずさ…!』

 

 

曙『ちょっと提督…!!ここで慢心するんじゃないわよ…!!』

 

 

秋山『慢心なぞしてないさ…!!曙も含めてみんなの実力を期待してるからこそ言える言葉だぞ…!!』

 

 

鳥海 見張り妖精『敵編隊先頭を視認!!左右に広がっています…!!恐らく囲い込む気かと…!!』

 

 

霧島 機銃妖精『来るなら来やがれ…!!仕掛けてきたことを後悔させてやる!!』

 

 

 

艦娘たちとなんやかんや話しているうちに各艦の見張り妖精から次々と敵攻撃隊をうっすらとではあるが視認したという報告が次々と入り込んでくる。それを聞くなり各艦の機銃妖精や高角砲妖精達は射角を調整しつつ射撃体制に入り、給弾妖精達も各銃座へ次々と弾倉を配分していく。

 

 

 

大鳳『大鳳より各艦宛!!対空戦闘に関しては私が指揮を取ります…!!射撃に関しては連合艦隊編成での個艦回避は衝突の危険があるため正面から受けて立ちます!!』

 

 

阿武隈『しょ正面から受けるんですか…あの攻撃隊からの攻撃を…、いや…!大鳳さんの言うことなら大丈夫…!私も頑張らないと…!』

 

 

阿武隈 見張り妖精『敵機更に接近!!10時の方向、高度3000。艦隊防空圏にまもなく入ります…!!』

 

 

 

艦隊防空を担う大鳳は、連合艦隊編成での個艦回避は衝突の危険があるという判断から回避は一切せずに真正面から迎え撃つように伝える。それを聞いた阿武隈は一瞬不安な表情になりかけるが大丈夫だと言い聞かせて戦闘に集中することに。だがそんな最中追加で見張り妖精から敵機の先方が艦隊防空圏に突入するとの報告が入ってきた。

 

 

 

秋山『いよいよ来たか…、朝日、出雲!対空射撃の先方は任せたぞ…!!』

 

 

吉野『分かりました…!!吉野よりCIC!!敵攻撃隊の動向はわかるかしら…!?』

 

 

吉野 AN/SPY-1D妖精『敵攻撃隊!!10時の方向から広がるように接近してきます!!恐らくは包囲するように数を活かして攻撃してくるつもりかと…!』

 

 

吉野『やっぱりこっちを確実に殺りに来てるか…。対空戦闘に関してですがミサイルの温存のため発射管制は手動にて行います…!!』

 

 

吉野 攻撃指揮官『発射管制!!手動に変更します!!』

 

 

 

秋山からの指示に答えながらも吉野はCICに敵攻撃隊の動向はどうなのかと確認取る。もちろん敵攻撃隊は対空砲の分散及び必中コースを狙ってかパラオ艦隊を包囲するかのように左右にどんどん広がっていた。それを見ながらも彼女は冷静な表情を浮かべており、弾薬の節約のため発射管制を手動(マニュアル)に変更するように指示を出していく。

 

 

 

ーミサイルの補給が今後出来るか怪しい以上…無駄撃ちは出来ないから手動管制で抑えたい…。けど抑え過ぎたら返って危険…ーカチ!

 

 

吉野『CIC、手動管制でどれくらい迎撃は可能かしら?』

 

 

吉野 攻撃指揮官妖精『砲術妖精!そのへんはどう?』

 

 

吉野 砲術妖精『手動管制で迎撃するとなればある程度は抑えることは可能ですが…、それでも自動管制と比べるとかなり劣るかと…!』

 

 

吉野『いえ、それで充分よ…!最悪迎撃対象を僚艦が防げない位置にいる敵機に絞れば…。』

 

 

吉野 AN/SPY-1D妖精『目標群更に接近…!!高高度からの敵爆撃機が先と思われます!!続いて低高度から雷撃機の二段構えで来ます…!!』

 

 

 

CICに手動管制でどれくらいの迎撃が可能かと尋ねている間にも敵機群は更に接近してきており、攻撃体制に入るためか爆撃機、雷撃機がそれぞれの攻撃位置についているのがレーダーで確認出来るほど明確になっていた。

 

 

 

吉野『高高度の爆撃機に関しては対空ミサイル…!!低空の雷撃機に関しては主砲で迎撃します…!!対空戦闘用意!!』

 

 

吉野 攻撃指揮官妖精『対空戦闘用意!!(艦内アラームを鳴らす)』

 

 

吉野 砲術妖精『主砲、短SAM対空戦闘用意よし!!』

 

 

吉野『了解…!!続いてVLSのロック解除…!!』

 

 

吉野 攻撃指揮官妖精『火器管制システム、最終安全装置解除!!』

 

 

吉野 砲術妖精『安全装置解除よし…!!』

 

 

 

吉野の指示を受けて火器管制システムを解除、音を立てながらも吉野の前後甲板に装備されているVLSのハッチが何個ゆっくりと立て続けに開いていく。同じタイミングで彼女の主砲である54口径127mm単装速射砲や近接火器(CIWS)が敵機の飛来方向にゆっくり砲口を向けて狙いを定める。

 

 

 

吉野 砲術妖精『主砲射撃用意よし!!』

 

 

吉野 砲術妖精『艦対空ミサイル発射準備完了…!!合図があればいつでもいけます…!!』

 

 

吉野『ミサイルノーマッド、最も脅威度の高い5機に照準…!!その後の発射タイミングはこちらから指示します…!!』

  

 

吉野 攻撃指揮官妖精『分かりました…!!』

 

 

吉野『右対空戦闘!!CIC指示の目標!!…(スゥ)対空戦闘始め!!』

 

 

吉野 砲術妖精『対空戦闘!!SM-2攻撃始め!!てぇぇ!!』カチ

 

 

 

吉野のよく透き通る戦闘開始の合図とともに対空戦担当の妖精が発射ボタンを勢い良く押すと、轟音とともに艦対空ミサイルが炎を拭き上げつつ数発上空に打ち上げられて敵機に向けて突き進んで行くのであった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(本来であればこの回で艦娘達の活躍を描く予定でしたがその前の話が予想以上にも長かったため次回に書いていこうと思います)

 

 






第十四話 最強の防空システム


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第十四話 最強の防空システム



いよいよ始まった深海棲艦の第一次攻撃隊によるパラオ艦隊への大空襲。延べ150機近い雷撃機や爆撃機からの猛攻撃を秋山や艦娘達はどう切り抜けていくのか?

そして朝日や吉野の最強とも言える防空システムの実力はいかに…!?






 

 

 

 

吉野『右対空戦闘!!CIC指示の目標!!…(スゥ)対空戦闘始め!!』

 

 

 

吉野 砲術妖精『対空戦闘!!SM-2攻撃始め!!てぇぇ!!』カチ

 

 

 

彼女の号令ともに対空戦担当の妖精がミサイルの発射ボタンを勢い良く押すとともに、前後甲板に装備されている2つのVLSから轟音や排煙とともに数発のSM−2が連続で打ち出されて次々と上空へと飛び立つ。そのまま飛んでいくのではないかというほどの迫力だが、自艦からの誘導に沿ってかすぐに方向転換して接近してくる敵爆撃隊へと迷いなく飛来していく。

 

 

 

吉野 見張り妖精『艦対空ミサイル!!全弾正常に飛行、目標へと接近中です…!!』

 

 

吉野『見せてあげる…!!最強の防空システムと言われたイージス艦の実力をね…!』

 

 

 

 

 

 

 

朝日 見張り妖精『吉野から艦対空ミサイル発射を確認!!全弾正常に飛行しています!!』

 

 

朝日『私達も行きましょう…!!発射管制は手動!!最も近い4機に照準…!!吉野さんと目標が被らないようにね…!次目標は追って指示を出します…!!』

 

 

朝日 攻撃指揮官妖精『発射管制手動に変更!!最も近い4機に照準して…!!今回は前回のことがないようにね…!!』

 

 

 

吉野から次々と打ち上げられる艦対空ミサイルを見ながらも朝日の見張り妖精からすぐさま報告が入ってくる。それを聞いてこちらも遅れまいと朝日は直ちに発射準備を下令、彼女と同じように発射管制を手動に変更しつつも前のような見落としがないようにしながらCICに指示を出す。

 

 

 

朝日 砲術妖精『主砲、短SAM対空戦闘用意よし!!』

 

 

朝日『了解…!!右対空戦闘!!目標、接近中の敵爆撃隊…!!ESSM(発展型シースパロー)攻撃始め!!』

 

 

朝日 砲術妖精『発射用意…てぇぇ!!』カチ

ゴォォォォォ!!

 

 

 

発射指示に少し遅れる形で朝日の前甲板のVLSが開いたと思った矢先、こちらも轟音を響かせながら艦対空ミサイルが連続で空中に放たれて同じような機動で敵爆撃隊へと向かっていく。もちろんその様子は爆撃機のパイロットも確認しており、見たことないような光景に思わず首を傾げていた。

 

 

 

ーナンダアレハ…?ー

 

 

ー被弾シタワケ…デハナイナ…。我々ハマダコウゲキもシテイナイハズダガ……ー

 

 

ーイヤマテ…、アノ飛行物体…コッチニキテナイカ…?ー

 

 

 

最初こそ被弾したのかと思ったのだがまだ攻撃すら始まってないのにそれはおかしいという意見が大半を占めた。じゃああれは何なのかと議論しようとしかけた搭乗員達であったが、一人のパイロットがあの飛行物体がこちらに向かってくることに気づいて指を指しながら尋ねる。

 

 

 

ーソンナワケアルカ…、艦娘ノ兵器デソンナコトハキイタコトガナイゾ…。カリニロケット系兵器ダトシテモ誘導ダナンテ…ー

 

 

ーイヤ…!!全機回避行動ヲトレ!!ナニカチガウゾ…!!ー

 

 

 

だが艦娘の兵器で誘導されるロケット兵器など聞いたこともないし、仮にあるだとすればそんな情報はすぐに入ってくるためとある深海棲艦搭乗員が軽くあしらう。…しかし爆撃隊を纏める隊長機は何か感じ取ったのか、咄嗟に僚機へ回避行動の指示を出す。

…流石はEliteクラスの搭乗員といったところのようだが…、今回ばかりは相手が悪かったようだ。

 

 

 

ドゴォォォォォンンン!!!!

 

 

ー…!???ー

 

 

ーナッナンダ!?一体何ガ…!ー

 

 

ー指揮官機モヤラレタゾ!!全機散開シロ!カタマッテタラオレタチモヤラレル…!!ー 

 

 

ーナンダアノ兵器ハ!?ミタコトナイゾ…!!マサカ艦娘の新兵器カ…!?ー

 

 

ーソンナコトハシルカ!!ソレヨリモヨケルコトニ集中シロ!!ー

 

 

 

先陣を斬るように飛行していたため、朝日と吉野から放たれた艦対空ミサイルの標的となった指揮官機含めるドーントレス数機が回避する前に初弾攻撃を受けて爆発炎上してしまう。目の前で僚機が見慣れない兵器にやられてしまうのを目撃した後続の機は半分混乱状態になりながら、逃げるように小隊ごとで散開する。

 

 

 

朝日 攻撃指揮官妖精『なかなかのやり手ね。見慣れない兵器からの攻撃で混乱しつつも大事なことはしっかりと出来てる…。…けど、私達の前じゃ無駄な足掻きね…(笑みを浮かべ)』

 

 

 

レーダーでもわかるほどの混乱を見せていた深海棲艦の爆撃隊であったが、すぐに散開しながら敵の攻撃を往なそうとしている様子を見ながら朝日の攻撃指揮官妖精は無駄な足掻きと言わんばかりの表情を浮かべていた。

それと同時に爆散した敵機の黒煙を突き抜けるように後続の艦対空ミサイルが次々と姿を現し、攻撃を避けようとしている爆撃隊へと襲いかかっていく。

 

 

 

ークソ!!コイツラオレノアトヲツイテクルゾ!!ドウナッテルンダ!!ー

 

 

ーオレ二キカレテモシルカ…!!コンナ兵器キイタコトモミタコトモナイゾ!!ー

 

 

ーダメダ!!ムコウノホウガハヤイ…!!コノママジャオイツカレルゾ!!ー

 

 

 

一生懸命の思いでなんとか振り切ろうとしている爆撃隊の搭乗員達であるが、ドーントレスの最高速度でSM-2やESSMを振り切るなどほぼ不可能に近い。必死の回避機動をしている敵機であるが、イルミネーターによって誘導されている艦対空ミサイルはそれをあざ笑うかのようにどんどん距離を詰めてきていた。

 

 

 

ークソ!!ミギニヨケテモヒダリニヨケテモオッテクル!!不気味ナンダヨ!!ー

 

 

ー悪夢ダ…!!コレハ悪夢以外ノナニモノジャナイ!!ー

 

 

ーマズイ…オイツカレル…!!タスケt……(ドゴォォォォォンンン)ー

 

 

 

一生懸命逃げようとする深海棲艦機、しかしどんなテクニックを持っていたとしても完全にロックオンされている状況から逃げることは出来ず次々と第二波の艦対空ミサイルが次々と着弾していく。もはやオーバーキルというレベルではないかという爆炎とともに直撃を喰らったドーントレスは相次いで爆発四散していき、汚い花火が打ち上がる。

 

 

 

吉野 AN/SPY-1D妖精『トラックナンバー0200〜0210撃墜…!!朝日との同時攻撃を含めれば合計14目標の沈黙を確認しました!!』 

 

 

吉野 見張り妖精『敵爆撃隊!!進路が乱れてます!!これでは半数近い敵機の突入進路を乱せたかと…!!』

 

 

吉野『よし…!これなら再度爆撃進路に付くまで時間を稼げる…!新たな目標の指定急いで…!ここからが忙しくなるわよ…!!』

 

 

吉野 攻撃指揮官妖精『了解!!無駄な目標に撃たないようにね!!こっちはミサイルに限りあるんだから…!!』

 

 

 

先頭集団が謎の対空兵器に撃ち落とされたことで後続の爆撃機の搭乗員ほとんどがそれに怖気づいたのか反射的に左右に散らばるように一時回避していく。その動きは吉野のAN/SPY-1Dレーダーにもしっかりと映し出されており、これでは当然爆撃進路につくには再度侵入するしかないため時間稼ぎとしては充分だ。

もちろんそれは他の艦娘もしっかりと見ているためそのチャンスをものにするためか次々と対空射撃を下令していく。

 

 

 

大鳳『全艦艦隊進路を維持しつつ対空戦闘!!輪形内部への侵入をさせないで…!!』

 

 

大鳳 高射妖精『お任せを!距離、仰角及び方位角の砲側伝達完了!九四式高射装置も同様に敵機を指向しています!』

 

 

大鳳 砲術妖精『射撃諸元の届いた砲より各個に射撃開始!高射装置からの修正指示に備えて!』

 

 

大鳳 高射妖精『的速ならびに進路修正、全砲塔へ修正値伝達を急げ!目標は多い、気を抜くんじゃないぞ…!!』

 

 

 

 

大鳳

対空射撃!!

長10cm高角砲(砲架)+九四式高射装置

 

 

 

大鳳の対空戦闘開始の合図とともに左舷側に備え付けられている秋月型と同様の長10cm連装高角砲が高射装置からの射撃諸元をもとに次々と狙いを上空の爆撃機に定めていく。それが終わり次第、順番問わず各個に射撃を開始していき、毎分15〜19発の高い発射レートで次々と砲弾を上空へと送り出す。

最新鋭の装甲空母ともいえる彼女はある程度の爆撃に耐えられる強力な飛行甲板に加え、あの秋月型と同様に長10cm連装高角砲が左右それぞれ3基搭載されている。更には機銃もハリネズミかのように増設されていることから、対空戦闘の際は性能故大鳳が指揮を取ることになっているようだ。

 

 

 

 

第一艦隊

戦艦霧島

 

 

霧島 三式弾妖精『四十五口径三十六糎砲三式焼霰弾装填よし!!』

 

 

霧島 砲術妖精『仰角ならびに方位角、射撃方位盤よりの指示に従って敵機を指向して!旋回急げ!!』

 

 

霧島 砲術妖精『副砲、並びに高角砲、射撃開始!!大鳳に負けない弾幕を形成するぞ!!』

 

 

 

同時刻霧島でも対空戦闘に向けた射撃準備に追われており、射撃方位盤からの指示を受けながら四基八門の四十五口径四一式35.6cm連装砲がゆっくりと仰角を上げながら左へと旋回する。その間にも霧島に装備されている片舷7門の15.2cm単装砲や2基の12.7cm連装高角砲が先立って射撃を開始して、大鳳にも負けないような弾幕を形成していく。

 

 

 

霧島 砲術妖精『戦艦が時代遅れだと言われたのはもう過去のお話だ!敵艦だろうが敵機だろうがこの大口径で粉砕してやる!』

 

 

霧島 高角砲妖精『片舷2基しかなくても発射速度なら劣らないぜ!撃って撃って撃ちまくれ!』

 

 

霧島 砲術妖精『対空値の設定はしっかりしておけよ!さもなければ霧島さんからの2時間補習コースが待ってるぞ!』

 

 

 

やはり副砲や高角砲の発射レートは大鳳の長10cm連装高角砲には及ばないものの、それでも巡洋艦などよりも圧倒的多い門数で補いながら敵機に向けて次々と砲弾を叩き込んでいく。主砲もその間にじわじわと旋回しながら重厚そうな砲身が上空へと向けられて射撃体制に入った。

 

 

 

霧島 砲術妖精『敵機捕捉!仰角、方位角、並びに信管秒時よし!射撃諸元すべて異常ありません!』

 

 

霧島『目標、敵爆撃編隊!!主砲、砲撃始め!!』ブー!

 

 

 

射撃装置及び主砲が敵爆撃編隊へ狙いを定めたのとほぼ同じタイミングで霧島がよく透きとおる声で砲撃指示を下す。直後外にいる乗組員に屋内退避を知らせる発砲ブザーがけたたましく鳴り響いたあと、轟音とともに霧島の35.6cm連装砲が一斉に火を吹き、砲身から三式弾が勢いよく解き放たれて爆撃隊目掛け飛んでいく。

 

 

 

榛名『主砲!攻撃始め!!』

 

 

 

もちろんそれは姉妹艦である榛名も同様で霧島の射撃を合図にこちらも全砲門による一斉射撃を開始し、2艦同時の対空射撃が敵機目掛けて襲いかかる。

 

 

 

秋山『さてと…、朝日と吉野の攻撃も気になるが三式弾の方はどうだ?戦艦2隻ぶんだが…、見張り妖精どうだ?』

 

 

瑞鳳 見張り妖精『朝日及び吉野の対空射撃に関して確認した限り10機以上の撃墜を確認してい…、あっ三式弾子弾!敵編隊前方で炸裂!敵数機ほど煙を拭きながら爆弾を投棄!2機ほど制御不能で墜落してます!』 

 

 

 

霧島、榛名の2艦から放たれた三式弾は爆撃進路を修正していた敵爆撃機編隊のど真ん中に飛び込んでいき、内部で相次いで炸裂。子弾が飛び散るように爆発していくとその周囲にいたドーントレスがダメージを負ったのか、何機か煙を吹き出しながら次々と爆弾を投棄していく。

しかしまだそれだけの状態ならいい方で、酷い機体は黒煙をエンジンから拭き上げつつコントロールを失い墜落するといった有様だ。

 

 

 

秋山『よしよし…!流石は戦艦の三式弾、2艦同時砲撃の威力は圧巻だな…!それに朝日と吉野の最新鋭の迎撃システムも見事なもんだが…。瑞鳳、空母の対空射撃はどうだ?』

 

 

 

見張り妖精からの報告を受けて流石は戦艦2隻の同時砲撃だと関心の表情を浮かべていた。もちろんそれだけでなく朝日や吉野の高性能の迎撃システムにも興味深げな顔をしていた秋山であったが、空母の対空射撃はどうかと隣にいた瑞鳳に尋ねる。

 

 

 

瑞鳳 砲術妖精『撃て撃て!片舷に高角砲が2基しかなくてもこちとらパラオ艦隊旗艦だ!こんな山場で被弾させるんじゃねぇぞ!』

 

 

瑞鳳 砲術妖精『砲弾を早くもってこい!給弾システムがなくてもバケツリレーでとっとと運んでこんか!』

 

 

瑞鳳『こっちは士気、射撃ともに問題ないよ提督!軽空母だからって弾幕が弱いなんて大間違いだがら…!』

 

 

 

瑞鳳に装備されている12.7センチ高角砲(正式名称四十口径八九式十二糎七高角砲)の周辺でバケツリレーをしながら砲弾を次々と装填して撃ち出している妖精達を横目に瑞鳳は自信満々の表情を浮かべて大丈夫と言わんばかりの表情を浮かべていた。

 

 

 

秋山『瑞鳳は大丈夫そうだな…!流石はパラオ艦隊総旗艦。その勢いで他の空母の状況確認も頼めるか?』

 

 

瑞鳳『もっちろん任せて…!旗艦瑞鳳より各空母艦娘宛、対空射撃については異常ないかな?』

 

 

龍驤『こっちは問題ないで!高角砲は全力射撃中や!』

 

 

龍驤 砲術妖精『撃て撃てぇ!瑞鳳の連中に遅れを取るんじゃないで!同じ2基でも違いを見せつけてやれ!』

 

 

龍驤 砲術妖精『あたぼうよ!ほらほら!砲弾早く持ってきなはれ!』

 

 

 

そんな旗艦の様子を確認しつつ、他の空母の状況はどうかと訪ねた秋山に対し、自信満々の表情を崩さずに指示に沿って無線を使い各空母に問いかける。すると真っ先に瑞鳳に負けない声で龍驤が真っ先に答えてきた。もちろんその背後では妖精たちの賑やかな声も聞こえており、この様子では問題なさそうに見える。

 

 

 

瑞鳳『龍驤さんは問題なさそうですね…!大鳳さんに関しては聞かなくてもあの迫力を見れば…(チラリと視線を向けて)流石は最新鋭の高角砲を載せているだけあります…!あとは…(無線を切り替えて)出雲さんの方はどうですか…!?』

 

 

 

大鳳に関しても同様で、あれほどの高角砲の発射レートを見れば対空戦闘に関しては異常がないことは見て取れるため聞かなくても問題なさそうだ(そもそも対空戦闘の指揮を任せられているほどの実力のため聞くまでもない)。チラリと視線を向けて確認した瑞鳳はすぐさま無線を切り替えて出雲に繋ぐ。

 

 

 

出雲 SeaRAM妖精『撃て撃て!こちとら防空担当の連中が主張中や!!つまり俺たちSeaRAMが遠距離防空を担うってことだ!出雲さんに1機たりとも近づけさせるな!』

 

 

出雲 SeaRAM妖精『補充要員はすぐに装填出来る体制とっとけよ!!コイツは対処能力や射程はファランクスよりも高いが装填の遅さがネックだ!それを俺たちで補うぞ!』

 

 

出雲『こっちも対空射撃に関してはなんとかやってるわ…!まさか近接防空ミサイルがこんな形で役に立つとはね…!とはいえどそんなに連射は出来ないけど…!』

 

 

 

出雲に関しては朝日や吉野を含め他の艦艇比べると長距離型の対空兵装をあまり装備していないため、弾幕のレベルで言えばあまり高いのは言えない。そのせいでこういった遠距離からの脅威に個艦で対処するにはSeaRAMによる近接ミサイル防衛に頼らざる負えない。

今の出雲なら制空用の戦闘機が載せられているためそれを使った方法もあるのだが、生憎彼女ご自慢の制空隊は敵艦隊殴り込みのために留守であり僚艦に護ってもらいながらこの空襲を切り抜けるしかない。

 

 

幸い、SeaRAMは独自の近接防衛システムではかなりの迎撃制度を誇り同時に複数の目標を追尾出来るためレシプロ機相手ならなんとか出来るのが唯一の救いだろうか。

 

 

 

瑞鳳『分かりました…!ですがあまり無理はしないようにお願いします…!そちらの兵器の弾薬は補充があまり効かないので…!』

 

 

出雲『りょーかい…!』

 

 

瑞鳳『提督…!各空母の対空射撃に関しては問題ありません…!全艦全力射撃中です!!』

 

 

秋山『よしわかった…!!ならその射撃を維持しつつ力の限り撃ちまくってくれ!!』

 

 

瑞鳳『もちろんです…!!敵はelite艦載機!!すべて叩き落として…!!』

 

 

瑞鳳 砲術妖精『もちろんでっさ!!どんどん撃ちまくれ!!そして弾込めろぉ!!』

 

 

 

秋山からの激励を受けて各艦からの対空射撃がさらに密度を上げた弾幕が敵機に対して襲いかかっていく。ミサイルや砲弾が入り乱れる中でも一瞬怖気づいた爆撃隊もそれに屈せずに再び爆撃コースに乗ろうとアタックを続けていた。

 

 

 

全艦の機銃妖精たち『『機銃の射程に入ってる!!撃てェェ!!撃ちまくれェェェ!!』』

 

 

 

そうこうしているうちに機銃の射程に入ったため、各艦から砲弾にプラスして曳光弾が入り乱れながら対空機銃による猛射撃が開始される。すべての艦艇が史実の太平洋戦争末期のように機銃がハリネズミのように増設されている訳ではないものの、それでも竣工当時よりもある程度増やされているため、高角砲に負けない弾幕の壁を形成しながら射撃を継続していく。

 

 

 

時津風 機銃妖精『オラオラ!発射ペダルベタふみでいけ!!補充要員はモタモタせずに弾もってこい!!』

 

 

敷波 機銃妖精『こっちは主砲が対空射撃に向いていない!!なら俺たち機銃妖精でその弱点は補っていくぞ!!撃って撃って撃ちまくれ!』

 

 

敷波 機銃妖精『装填だ装填!!んんん!?かてぇ!!熱で膨張してやがるなこの弾倉!クソッタレが!(無理やり引っこ抜く)』

 

 

阿武隈 機銃妖精『どいたどいた!!弾のお通りだ!!(機銃弾の入った弾倉を箱に入れて台車で運んでいく)』

 

 

青葉 機銃妖精『左、中、右ともに装填完了!!次弾弾倉も準備出来てます!!』

 

 

青葉 機銃妖精『目標榛名さんに接近中の爆撃機!!叩き落とせ!!撃ち方初め!!(ダダダダン!!)』

 

 

 

各銃座の機銃妖精達は射程に入るや否や猛射撃を相次いで開始していし、旋回させつつペダルベタふみで敵機に向けて機銃弾を送り込んでいく。対空機銃としては射程がやや劣り、弾倉の弾が少ないことがネックの25ミリ機銃ではあるがそれを感じさせないように次々と射撃、その後ろでは機銃弾の補充要員が台車で弾を運んでそれぞれの機銃座へ弾を給弾していく。

 

 

 

朝日 砲術妖精『敵爆撃機!!CIWS射程に入りました!!』

 

 

朝日『CIWS!!AAW(対空戦)オート!!主砲は低空の雷撃機に対処させるからここが堪え時です!!ミサイルの目標ロックも再度確認して!!』

 

 

朝日 砲術妖精『了解!!ミサイルのコース再確認だ!!他の艦艇も目標被るんじゃねぇぞ!!俺たちは味方が落とせない位置にいる敵機に対して攻撃だ!』

 

 

朝日 対空戦妖精『CIWS!!AAW(対空戦)オート!!補充要員はすぐにファランクスの弾を装填出来るように待機!!弾切れになったらすぐに再装填しろ!』

 

 

 

他の艦艇と同様に対空射撃を行っている朝日でもCIWSの射程に入ったため2基のファランクスによる迎撃を開始。毎分3,000-4,500発による厚い弾幕が敵機に対して襲いかかる。二次大戦の日本艦が搭載している対空機銃の25ミリ機銃よりは口径の小さい20ミリではあるが、それでもミサイルさえも迎撃可能な脅威の発射レートを誇っているためレシプロ攻撃機がその猛追から逃げられることも避けることも出来ない。

 

 

 

ブァァァァァァ!!!!

 

 

 

特徴的な射撃音とともに6本の銃砲身が素早く回転しタングステン弾を次々と敵機に向けて送り出していく。もちろん吉野や出雲でも同様にファランクスによる近接防御を行っておりジェット機やミサイルよりも遥かに遅いレシプロ機、それも爆弾を抱えて機動力が落ちているなら当てられないはずもなく、次々と高威力の発射レートで次々とドーントレスを粉微塵にしていく。

 

だが発射速度が早いということはすぐに弾切れを起こすことを意味していた。そもそもファランクスCIWS自体内部に装填されている弾数が1,550発となっているため毎分3,000-4,500発ではあっという間に弾倉が空になってしまう。

そのためすぐに弾倉に弾を補充しても射撃を再開したらすぐに空になってしまうの繰り返しになり、給弾要員の妖精達は対空射撃の最中でも懸命に機銃弾を装填したり、弾倉を運んだりなど忙しく動き回っていた。

 

 

 

吉野 機銃妖精『装填だ装填!!敵機はまってくれへんど!ボサッとせんでさっさとCIWSに弾腹いっぱい喰わせろ!!』

 

 

吉野 機銃妖精『もう弾切れかよ!?さっき装填したばっかだろっ…!って給弾用弾倉があと2つしかないぞ!さっきあれだけあったのに…!誰か給弾用弾倉を弾薬庫から何個か引っ張ってこい…!』

 

 

吉野 機銃妖精『ひー!?ミサイルの迎撃と比べるとまた別の意味で厄介だぜ…!!おいお前!とりあえず弾倉持ってくるから手伝ってくれ!』

 

 

吉野 機銃妖精『了解っ…!』

 

 

青葉『ほほーっ、これは面白い子達を瑞鳳ちゃんたちは拾ってきましたねー』

 

 

 

だがそれを含めても他の艦からすれば僅か2基しかない対空機銃のようなものでバッタバッタと敵機をはたき落としているという事実は変わらない、その様子を見ていた青葉は興味深げな表情を浮かべている。時折、ファランクスの射撃の合間を縫うように艦対空ミサイルがVLSから等間隔で打ち上げられて目標に向かっていくのもしっかりと見えるため、青葉以外の艦娘も同じような気持ちになっているらしい。

 

 

 

巻雲『話は霧島さんから聞いていましたが…、まさかここまでの防空能力を持っているとは思いませんでした…』

 

 

古鷹『朝日ちゃんもなかなか凄いけど…、吉野さんや出雲さんも眼を見張るものがありますね…。…これが現代兵器の実力…ってことかな…?』

 

 

雪風『こればっかりは私達で張り合うなんてことは出来ないですね…。近距離の撃ち合いなら勝てそうですが、遠距離となったら』

 

 

阿武隈『…これが味方だったから良かったけど…、敵には回したくないですね…(汗)』

 

 

曙『んなこと言ってる場合じゃないわよ…!!低空から雷撃隊接近!!おそらく爆撃隊と挟み撃ちにする気よ!!』

 

 

 

だが関心しているのもつかの間、そんな会話を遮るように曙から報告が飛び込んでくる。そう言われて慌てて視線を向けた三人の視線の先、海面の少し上を飛行しつつ雷撃陣形に移行しつつ接近してくるアヴェンジャー雷撃機の姿が…

 

 

 

青葉『おーおー、こりゃ大勢でいらして来ましたねー。どうやら爆撃隊の攻撃のどさくさに紛れて行うみたいですが…!』

 

 

阿武隈『貴方達の動きはお見通しなの…!こっちには最新鋭のレーダー搭載してる精鋭さんがいるんだから…!』

 

 

 

だが雷撃隊の動きは吉野のレーダーによってきっちりと映り込んでおり、その情報は大鳳や瑞鳳を経由して共有されているため特に混乱が起きている様子は全く見られなかった。それどころか同時攻撃を受けた際の対処法を既に考えていた大鳳がすぐさま指示を出す。

 

 

 

大鳳『大鳳より各艦宛!!高高度射撃可能な砲がある艦は引き続き優先して爆撃機を狙ってください…!!駆逐艦や軽巡洋艦などは低空の雷撃機をお願いします!』

 

 

皐月『まっかせてよ!妖精のみんな!!目標を低空の雷撃機編隊に変更!!空母に指一本触れさせないで…!!』

 

 

皐月 砲術妖精『お任せを!低空の敵機相手なら対空射撃が不向きなこの12cm砲でも連射速度を維持出来る…!!撃って撃って撃ちまくれ…!!』

 

 

皐月 機銃妖精『こっちも目標変更だ!!高高度は戦艦や巡洋艦に任せて俺たちは雷撃隊をやるぞ!!』

 

 

敷波『私の搭載してる12.7cm連装砲じゃ高高度の射撃は不向きだからねー。低空の雷撃機相手するほうが発射速度を維持出来るってもんだよ。…とはいえど流石に限度はあるからそろそろ追加の対空機銃増設を考える必要あるかなー』

 

 

敷波 砲術妖精『何を!まだまだ我々も航空機相手なら遅れを取りませんぞ!護衛のプロフェッショナルと言われた敷波の実力を見せてご覧にいれましょう…!』

 

 

霧島『聞きましたか…!私達はこのまま敵爆撃隊に対する射撃を継続します!準備出来次第各個の判断で攻撃してください!』

 

 

霧島 砲術妖精『了解!!準備出来次第順番問わず射撃開始しろ!!敵機を空母に近づけさせるな!!』 

 

 

霧島 砲術妖精『1、2番斉射開始!!3、4番も射撃用意完了次第順次撃て!!』ブー!!

 

 

霧島 機銃妖精『主砲発砲で退避だと!?そんな寝言は寝ていえ!!何が何でも持ち場にしがみついて死守しろ!!』

 

 

 

艦隊決戦を目指して建造された最初の駆逐艦娘達のほとんどが、装備している主砲は砲撃戦を意識して設計されているため高高度を飛行する航空機に対する対空射撃は仰角が足りず打てない子もいるようだ。仮に撃てたとしても装填のたびに砲身を下げないといけないため非常に効率が悪く、このような防空戦は苦手としている子もそれなりにいるらしい。

そのため、連続して対空射撃が出来る駆逐艦といえばパラオ艦隊では巻雲しかいないため他の子が航空機に対抗するときの主武装は対空機銃が中心となっているようだ。

 

…だがそれは高高度の敵機に対してであり、低空から接近してくる雷撃機となれば話は別。仰角を気にする必要がないため、本来の発射速度を発揮しやすいため対艦重視の主砲でも戦える。大鳳からの指示を受けた駆逐艦や軽巡洋艦はすぐさま狙いを低空から接近してくる雷撃隊に変更して射撃を開始。それ以外、高高度射撃が可能な砲を装備してる艦艇は引き続き爆撃隊に対しての対空射撃を継続していく。

 

 

 

吉野 見張り妖精『敵雷撃隊目視で視認!報告通りアヴェンジャー雷撃機です!!突撃陣形でこちらに向けて接近中!奴ら上の爆撃隊の惨状見てないのか…!?』

 

 

吉野『それなら好都合です!!何も知らないなら身を持って教えてあげます…!!恐らくは武装の少なさで判断してるのでしょうけど、見た目で判断するとどうなるか…!!』

 

 

吉野 攻撃指揮官妖精『新たな目標!!低空から接近中の雷撃機!!トラックナンバー0300から0305と呼称!!主砲撃ち方用意!!』

 

 

 

あちこちに砲撃による水柱が相次いで立ち上っていく中、それでもお構いなしと言わんばかりに深海棲艦の雷撃隊は編隊を保ちながら艦隊へと接近していく。その中で先人を切っている小隊は狙いを吉野に定めたようで進路を変更しつつ近づいて来たことに見張り妖精が気づいて速やかに報告する。

 

だが上では爆撃隊の連中が彼女の高精度な誘導システムによる迎撃で被害をこおむっているのだが、それを知らないのか見た目で最初の獲物を吉野と定めて襲いかかろうとしているらしい。見張りからの報告を受けた彼女は見た目で舐めてかかるとどうなるかを身を持って教えてやるという表情を見せながら主砲の狙いを接近中の雷撃編隊に変えるように指示を出していく。

 

 

 

ータカガ一門ノ砲デナニガデキル…!アットイウマニ海ノ藻屑ニシテヤル…!ー

 

 

 

しかし深海棲艦の雷撃隊搭乗員はそんなことは知らんと言うばかりに吉野に対して狙いを定めて撃沈戦果をあげようと気合いを入れている有様だ。…が彼は知る由もなかっただろう…

 

今まで僚機が味わってきた恐怖をまさか自分が受けることなど…そしてこれが最後の任務になるとも知らずに……








第十五話 『主砲 砲撃始め!』






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第十五話 『主砲 砲撃始め!』



(今回はかなり長いです)


 

 

 

ー全機突入進路確保!アタックポイントマデ5マイル!ー

 

 

 

雷撃進路についたアベンジャー数機が横陣で展開しながらも海面ギリギリを飛行して、先頭を航行している吉野を狙いとしつつ急速接近していく。もちろんそれは彼女も察知しているため艦首の54口径127mm単装速射砲を素早く旋回させて接近してくる敵機を既に狙いを定める。 

 

 

 

ーヘッ!ソンナ貧弱ナ砲二ヤラレルホドオレタチハヤワジャナイゾ…!(フラグ)ー

 

 

 

吉野 攻撃指揮官妖精『目標小隊尚も接近…!狙いは本艦で間違いはありません…!』

 

 

吉野 砲術妖精『主砲、照準及び方位角、仰角よし…!レーダー異常ありません!いつでもいけます!』

 

 

吉野『目標、接近中の敵雷撃隊…!(スゥ)主砲 砲撃始め!』

 

 

吉野 主砲妖精『発射用意…てぇ!(カチ!)』

ドンドンドンドン!!!

 

 

射撃用意が完了し、いつでも撃てるという指示が送られてくると同時に吉野からよく透き通る声で攻撃始めの合図が送られてくる。それを受けた主砲妖精はデスクの下から発砲用のトリガー取り出しし人差し指で勢いよく引くと、少し遅れる形で砲身から発砲音や砲煙とともに発砲していく

…が単装砲でありながら秋月型の主砲を搭載している大鳳よりも発射レートは明らかに凌駕しており、毎分45発/分の手数暴力でモノを言わせながら射撃していた。

 

 

 

ー…!!?(ドォォォン!!)ー

 

 

 

放たれた砲弾はまるで吸い込まれるかのように正確に敵機に向けて空中を切り裂きながら飛翔する。当然攻撃してきたことには気づいていたが、まさかここまで真っ直ぐ飛んでくるとは思っていなかったようで回避する前に命中してしまう。当然、127ミリクラスの砲弾を真正面から喰らって耐えられるはずもないため、機体は粉々になりながら墜落していく。

 

 

 

ー隊長機がやられt…(ドォォォン!!)ー

 

 

 

一瞬にして隊長機がやられたことに驚きを顕にしていた僚機であったが、何が起こったのか考える前に吉野から速射で飛んできた次弾が手前で炸裂して機体が粉々になりながら落とされる。もちろん他の機、彼女を狙っていた雷撃小隊のほとんどが一門の主砲によってバッタバッタとなぎ倒されながら落とされているのだ。

 

 

 

吉野 AN/SPY-1D妖精『トラックナンバー0300〜0305 撃墜…!!』

 

 

吉野 攻撃指揮官妖精『新たなる目標!!306!』

 

 

吉野『主砲再度射撃開始!敵に仕掛けてきたことを後悔させてやりなさい!』

 

 

吉野 主砲妖精『てぇ!!』カチ!

 

 

 

最初の目標を全機撃墜したことを確認するや否や、攻撃指揮官妖精が素早い目標変更を指示する。これを受けて主砲妖精は砲身冷却を行いながら砲塔を速やかに旋回させて新しい目標に狙いを定める。

照準が完了するや否や再び主砲が連続して発砲煙を出しながら砲弾を絶え間なく打ち続けその際に排莢口から空薬莢が次々と飛び出て甲板に転がり落ちていく。

 

 

 

 

朝日 見張り妖精『吉野の敵機に対する射撃開始を確認!やっぱ対空戦闘に特化した主砲の発射レートは凄いや…!』

 

 

朝日『私達だって遅れるわけには行きません…!主砲砲撃用意!』

 

 

朝日 攻撃指揮官妖精『了解!主砲砲撃戦用意!』

 

 

朝日 砲術妖精『主砲射撃用意急げ!各種異常はないか!』

 

 

朝日 主砲妖精『砲塔各種異常ありません!発射命令と目標指示があればすぐにでもぶっ放せます!』

 

 

 

もちろんその様子は最後尾にいる朝日からも確認しており、自分たちも敵機を迎撃するために射撃用意を下令する。それを受けて各種砲撃用意との指示が出され、彼女の主砲である62口径5インチ単装砲の砲身がCICからの情報を受けて素早く敵機を指向する。

 

 

 

朝日 OPY-1妖精『敵機味方艦の対空砲火を受けながらも尚も接近中!目標からして大鳳狙いかと…!機数4!』

 

 

朝日 攻撃指揮官妖精『トラックナンバー0400から0404と呼称!絶対に魚雷を投下する前に仕留めなさい!』

 

 

朝日 主砲妖精『もちろんです!対艦重視として作られたコイツでも二次大戦の雷撃機など七面鳥も同然でっせ!』

 

 

朝日『対空戦闘用意!CIC指示の目標!!主砲撃ち方始めてください!』

 

 

朝日 主砲妖精『了解!CIC指示の目標!主砲発射用意!てぇ!!』カチ

 

 

 

砲撃始めの合図が出されると同時、既に敵機を指向していた5インチ単装砲が重低音を響かせながら等間隔で砲撃していく。もちろん対空重視で作られた吉野よりも発射レートは劣る朝日の主砲ではあるが、それでも射撃精度と射程は優れたもので的確に砲弾を敵機に対して投げつけるように射撃していた。

 

 

 

ボフッ!カラァン!ボフッ!カラァン!ボフッ!

 

 

 

周囲の射撃音に負けないほどの独特な発砲音や薬莢の排莢音を響かせながら次々と魚雷を抱えた雷撃機に砲弾を命中させる。もちろん航空機が直射で耐えられるわけもなく、その場で魚雷もろとも爆発四散しながら海面に突っ込むように燃えながら墜落していく。

口径的には駆逐艦の子たちが装備している主砲と一緒なのだが、たった一門で張り合えるのではないかというレベルで砲撃を叩き込んでいくその口径に各艦の砲術妖精達は驚きを見せていた。

 

 

 

曙 砲術妖精『マジかよ…、主砲一門の発射レートってレベルじゃないぞありゃ…!しかも口径は同じって聞いてたのにあの弾幕の高さは何なんだ…!?』

 

 

巻雲 高射妖精『それに一発一発が敵機に吸い込まれるように飛んでいくあの精度…、一体どんな射撃指揮装置を使っているのでしょうか…』

 

 

涼風 砲術妖精『だがそんなの俺らにゃ関係ないってもんや!兵器は違えど新入りに遅れとってたまるかってんだ!』

 

 

涼風『がってんでぃ!アタシ達ベテランの実力を見せて上げるってんだ!撃って撃って撃ちまくれぇい!』

 

 

 

だがいくら装備している武装が違って近代的な兵器を搭載していたとしてもここでは新入りに近い二人に劣るわけにはいかないと、涼風は気合いを入れるように妖精達に指示を出していく。もちろん彼らもそれに答えながらも主砲や機銃などで敵機に対して猛攻を加える。

 

 

 

曙『ほらほら!気合い入れて撃ちなさいよ!雷撃機相手なら私の主砲だって全力射撃出来るんだから!空母や戦艦を死ぬ気で護りなさい!』

 

 

曙 砲術妖精『ったりめぇだ!ほらそこぉ!ぼさっとせんで弾持ってこい!』

 

 

曙 機銃妖精『撃て撃て!発射ペダルはベタ踏みだ!まったく、最高の射撃位置だなこりゃ!修正する必要がないんだからな…!』

 

 

曙 給弾妖精『おぉい!弾持って来たぞ!(弾薬箱を載せた台車を押しながらやってくる)』

 

 

曙 給弾妖精『くひー!?就役したときよりも機銃が増えてるから運ぶので精一杯だ…!!弾運んでもすぐに新しい給弾箱持ってこないといかんし…!!』

 

 

曙 機銃妖精『泣き言いってる暇はないぞ!まだまだ戦いは始まったばっかり!気合い入れて弾運べぇ!』

 

 

 

もちろん涼風だけでなく曙もそれは同様で、妖精達に護衛艦としての役目を果たすようにテキパキと伝えていく。口が悪く時には秋山に『クソ提督』と言って罵倒することもある彼女だが、練度に関してはパラオ泊地内でかなり高い実力を持っているためこういったときはすごく頼りになる(そのため時には輸送艦隊などの旗艦を務めることも…)。

 

 

 

ゴォォォン!!

ダダダダン!!

 

 

 

朝日や吉野よりも分厚い弾幕を展開しながら艦隊は接近してくる雷撃隊や爆撃隊の全力迎撃を行っていた。やはり輪陣形や練度が高い、そして対空戦闘の際に出される的確な指示があってこそか攻撃を試みようとしている攻撃機のほとんどは近づく前に無惨にも落とされるといった有様であった。

…が…、いくら対空砲火が分厚くても相手は150機近い群れの攻撃隊、朝日や吉野がいたとしても彼女達は毎回全力を出せるという訳ではない。戦闘後半になればなるほど各艦の狙いはどうしても分散してしまう。

 

それをねらってか高角砲や機銃の猛追、その合間を縫うように1機のドーントレスがお腹に大きな爆弾を抱えながら艦隊上空に差し掛かろうとしていた。

 

 

 

吉野 AN/SPY-1D妖精『…!クッソやられた!1機敵爆撃機らしき反応あり!防御砲火を突破して爆撃進路につこうとしてます!本艦からして後方左舷側の上空!』

 

 

吉野『なっ!?(クソ…!やられた…、流石にこの数をミサイル制限しながら受け止めるのは厳しいか…)すぐに各艦に共有して!』

 

 

 

もちろん彼女のレーダーにしっかりと映っており、流石に抑えきれなかったと思わず悪態をつく吉野であったが素早く気持ちを切り替えて僚艦に共有するように指示を出す。情報が共有されたことによって他の艦艇もすぐに狙いをその爆撃機に変えて集中するように十字砲火を浴びせる。

 

 

 

大鳳『輪陣形内部に進入を許しました…!なんとしてでも爆弾を落とされる前に撃墜して!』

 

 

大鳳 機銃妖精『もちろんです!オラオラ!仰角もっと上げろ!』

 

 

大鳳 機銃妖精『下郎がぁぁぁ!!この大鳳の上を取ろうなど100年早いわ!撃て!撃てぇぇ!!』

 

 

秋山『不味いな…、あれだと狙いは大鳳か…?』

 

 

瑞鳳『敵機の進路からして恐らくは…!ですがこのままいかせるわけには行きません!妖精のみんな!頼んだよ!』

 

 

瑞鳳 砲術妖精『お任せを!ここで被弾を許すなど旗艦としてあるまじき行為!こちとら伊達に激戦くぐり抜けて来てるんだ!撃て!』

 

 

 

爆撃機の進路からして狙いは大鳳だということが判明し、それはもちろん瑞鳳や秋山も気づいてはいた(やはり空から見て大きな飛行甲板が狙いやすいのだろう)。だがこのまま黙って見過ごすような彼女たちではないため、真っ先に反応した大鳳や瑞鳳の防御砲火がその爆撃機に一斉に集中していく。 

2艦からの対空砲火を受け、更にはその片方の艦からは雨あられというレベルの機銃弾幕が周囲を掠める中でも進路を全く崩さないドーントレスはじわじわと大鳳直上へと突き進む。

…がこれだけの弾幕を受け無事で通れるはずもなく機銃弾の一発が左翼を捉えた。

 

 

 

大鳳 見張り妖精『爆撃機に命中弾!左翼から火が出てます!』

 

 

大鳳 機銃妖精『よぉし!これなら目標がしっかりと狙える!このまま叩き落とすぞ!』

 

 

大鳳 機銃妖精『装填だ装填!このチャンスを逃がすんじゃない!落とされる前にケリをつけてやる!』

 

 

 

命中弾を与え左翼から火が吹き出したことで更に目標を視認しやすくなったため機銃の狙いはどんどん正確になって来ていた。それでもなんとか降下体制につくためバランスを取っていたドーントレスであったが流石に狙いが定まって来た十字砲火に耐えられるはずもない。更には燃えていた左翼のダメージが蓄積したのかポッキリと折れてしまい、制御を失いつつ墜落していき大鳳の左舷側海面に激突する。

 

 

 

大鳳 見張り妖精『敵機左舷側に墜落!おまけに投棄された爆弾が至近弾です!』

 

 

大鳳『まだまだこれからです!なんとしでても輪陣形内部に入る前に落としてください!』

 

 

大鳳 砲術妖精『了解した!こっちも機銃に負けるんじゃないぞ!防空砲の実力を存分に発揮しろ!』

 

 

大鳳 高射妖精『修正値は逐次送信中だ!演算も全力でやってる!高角砲の能力最大限活かせるようにやれることはどんどんやるぞ!』

 

 

鳥海『最新鋭だからって大鳳さんに負けるわけには行きません!正確な射撃なら私だって負けません…!』

 

 

鳥海 砲術妖精『そりゃもちろん!艦隊の頭脳と言われた我々が遅れなんてとるわけがありません!そぉれ撃て撃てぃ!』

 

 

 

空母なのに戦艦かと思わせるような防御砲火を発揮している大鳳に遅れをとるわけにはいかないと鳥海も全火器の火力を最大限活用して接近を試みる敵機に対して全力の対空戦闘を僚艦とともに繰り広げている。もちろん艦内や甲板では妖精達が慌ただしく行ったり来たりして砲弾や機銃弾を運んでいた。だが案の定それだけでは人が足りないため、他の部署から応援として派遣された妖精達の姿も…。

 

 

 

鳥海 砲術妖精『せっかく高角砲が単装から連装、しかも八九式12.7cm高角砲になったんだ!武装強化された分相応の活躍をするぞ!てぇ!(ドォォォン!)』

 

 

鳥海 砲術妖精『三式弾の効果は昔の記録に書いてある通り抜群だ!戦艦の投射不足と駆逐艦や軽巡洋艦の火力不足を俺たちで補う!』

 

 

青葉『ほほー、鳥海さん張り切ってますねー(関心深そうに)』

 

 

古鷹『そうだね…!けどそれを気にしてばっかって訳にもいかないかも…!9時の方角から敵爆撃機!』

 

 

古鷹 機銃妖精『了解した!各銃座しっかりと目標捉えてます!撃って弾幕張り続けろ!近づく前に海へ突き落とせ!』

 

 

青葉 機銃妖精『同じ重巡洋艦に遅れを取るな!パラオに青葉アリと敵に教えてやれ!』

 

 

青葉 機銃妖精『おうよ!ペダルはベタ踏みでいけ!装填担当は弾倉交換をテキパキとしろ!弾倉が膨張して固くなったら無理やりでも蹴って引っこ抜け!それで壊れでもテヘペロすりゃいい!』

 

 

 

青葉や古鷹も鳥海に負けまいと、更に濃密な対空弾幕を敵機に対してぶつけるように全力射撃をしている。機銃座周辺には先程始めたばっかりなのにほう空の弾倉が積み重ねられており次々と台車や人力で弾丸の入った弾倉がバケツリレーかのように運び込まれているようだ。

 

 

 

吉野 見張り妖精『輪陣形内部に侵入した爆撃機、味方空母2隻の集中砲火で撃墜しました!その際爆弾の至近弾を受けましたが航行、戦闘に支障なしとのこと!』

 

 

吉野『ふぅ…流石の練度ですね。あの短時間で火力を集中出来るなんて…(驚きの表情を見せて)やっぱ実戦という修羅場を潜り抜けてるからってことか…』

 

 

 

輪陣形内部に侵入した爆撃機がコントロールを失い墜落していく様子を見た見張り妖精からの報告を受けながら流石の練度だなっと関心の表情を吉野は浮かべていた。あの僅かな時間で2艦の火力を瞬時に集中させられ、おまけに人力照準の機銃であそこまで正確に狙えるというのは誰にでもなかなか出来るわけではない。

ましてや海上自衛隊最古のイージス艦である彼女の誇る妖精達でも同じことが出来るかと言われたら怪しいだろう(そもそも兵器の性能や扱いが異なる)。

 

 

 

吉野『……私もあのときこれくらい力があったら護れたのかな……』

 

 

 

最初こそは関心深そうに眺めていた吉野であったがだんだんと複雑そうな表情に変わっていき、どこかその様子は少し悲しそうに見えた。この世界に来てからまだ誰にも見せたことないような雰囲気であり、何やら訳ありのような口調で何かを呟いていた。

放っておけばそのまま自分の世界に入り込みそうになっていた彼女であったがそれを遮るようにCICからの無線が飛び込んでくる。

 

 

 

吉野 攻撃指揮官妖精『吉野さん!新たな雷撃隊を見張りが視認しました!左舷から接近中とのことです!機数14!』

 

 

吉野『…っ!(我に戻る)敵の狙いは!』

 

 

吉野 攻撃指揮官妖精『この位置からして…間違いありません!狙いは出雲です!』

 

 

吉野『出雲さんが…!?(驚きの表情を見せて)くっ!すぐに各艦に情報共有!本艦の新たなる目標はその雷撃隊に設定してください!あぁそれと出雲さんにも伝えて!』

 

 

吉野 攻撃指揮官妖精『了解しました!主砲妖精!次目標を敵雷撃隊に!なんもしてでも投下前に仕留めて!』

 

 

吉野 主砲妖精『了解した!主砲砲撃始め!!』

 

 

 

CICからの報告によれば出雲に向けて敵雷撃隊十数機が接近しているらしく、そちらに視線を向けると砲弾の着弾によって出来た水柱の間を縫うように飛行する敵機の姿が…。もちろんただで通すわけにもいなかいためすぐさま吉野は迎撃指示を出して、砲身冷却が終わった単装速射砲が再び発砲煙とともに途轍もない発射スピードで砲弾を送り出していく。

 

 

 

朝日 電信妖精『吉野より緊急電!出雲に接近中の敵雷撃隊ありとのこと!機数は確認出来るところ14!』

 

 

朝日 OPY-1妖精『レーダーでも確認!間違いなく狙いは出雲かと!速度414km/hで尚も接近中!』

 

 

朝日『やっぱ変わった見た目してるから目立ちやすいか…!おまけに艦隊の配置的にも…CIC!その敵機の迎撃か可能!?』

 

 

 

もちろん吉野から各艦に発せられた報告は朝日にもしっかりと伝わっており、その報告を聞いた朝日はすぐさま今のところから迎撃は可能かとCICに折り返すように尋ねる。

 

 

 

朝日 攻撃指揮官妖精『可能です!…ですがこちらの位置関係と他戦闘に避けるほどの余力があるかどうか…!』

 

 

朝日『…やっぱりか…!ここに来て防空能力を平均的にしたのが響くなんて…!(思わず悪態をつく)』

 

 

 

攻撃指揮官妖精も可能とは答えながらも、自艦と周囲の防空戦闘で精一杯のため他に避けるほどの余力があるかどうかについては声を濁らせた。というのもあさひ型は全級のあきづき型に装備された僚艦防空能力が予算の関係や前級の4隻で数が足りていることから搭載されていない。

潜水艦に対する対潜能力は格段に上げられてはいるものの(3話の深海棲艦の潜水艦隊を壊滅が解りやすい例)この場合ではそれが逆に足を引っ張ってしまっている。

 

いくら他の艦娘よりも高い防空システムを保持しているとはいえイージス艦ほど幅広くカバー出来るかと言われればそうでもないのが現実。しかもミサイルの使用が制限されているとなれば尚更だ。

 

 

  

秋山『流石に彼女を被弾させるわけにはいかない…!なんとしてでも敵雷撃隊を撃墜しろ!出来なくても最悪魚雷を投棄されればそれで構わん!』

 

 

瑞鳳『でっでも…!各艦それぞれの戦闘で精一杯で対応しきれるk…『司令!この雪風に任せてください!』雪風ちゃん!?』

 

 

 

だがもし彼女がこのまま被弾してしまえば替えがあるかもわからない部品や船体を損傷させることになってしまいよくて一時的な戦線離脱、最悪は戦力ダウンになりかねない。もちろん秋山もそれは承知で各艦に接近してくる雷撃隊を撃墜するように指示するが瑞鳳からその余裕があるかどうか怪しいという返答が出されるが、それを遮るように雪風のハッキリとした声が割り込んで来る。

 

 

 

雪風『私の位置なら出雲さんを護るためには充分です!それに対空火力もそれなりに増強されてますし呉にいたときも対空戦闘なんて飽きるほど経験してますから!』

 

 

瑞鳳『そっそうだけど…、いくらなんでもあの数を雪風ちゃん一人で抑えたとしてももし何かあったら…』

 

 

出雲『それなら大丈夫!狙いは完全に私だしこっちには朝日ちゃん達ほどじゃなくても強力な近接防御火器があるから…!雪風さんと共闘すれば…!』

 

 

榛名『それに高高度の爆撃隊は榛名が担当すれば二人が低空に集中出来るはずです…!』

 

 

秋山『…わかった!榛名、雪風!彼女は任せたぞ!なんとしてでも護り通してくれ!』

 

 

雪風・榛名『『はい!!』』

 

 

 

雪風が雷撃隊を受け持つと聞いたとき、たしかに雪風がいる位置なら射撃に適しており出雲と共闘すれば接近してくる敵機は落とせるかもしれない。…がそうなれば今度は高高度からの脅威に対して無防備になってしまうがそこは榛名が補うと提案したことで秋山は二人に彼女の護衛を委ねることにした(そもそも榛名のいる位置では雷撃隊の攻撃を受けにくいし、周囲には護衛艦が複数いることから突破しずらい)。

 

 

 

出雲『次目標 敵雷撃隊!迎撃急いで!』

 

 

出雲 ファランクス妖精『任せてください!近接戦闘ならいせさんたちよりも最強です!おらどんどん撃ちまくれぇい!だが味方に当てないようにな!』

 

 

出雲 SeaRAM妖精『俺たちも続け!チャフを持たない敵機など防空ミサイルの餌食にしてやる…!てぇ!』

 

 

 

もちろん出雲の近接防御砲火もすぐさま狙いをこちらに向かってくる敵機編隊に対してすぐさま指向、SeaRAMやファランクスによる迎撃戦を開始する。だがSeaRAMに関しては先程まで別編隊を狙っていたため3、4発発射したらすぐに沈黙してしまった。

 

 

 

出雲 SeaRAM妖精『あぁクソ!このタイミングで弾切れかよ!タイミング悪すぎだろ!』

 

 

出雲 SeaRAM妖精『んなこと言っとる場合か!おい給弾妖精!さっさと次の箱を持ってこい!』

 

 

出雲 給弾妖精『了解しやした!おらさっさと運んでくるぞ!』

 

 

出雲 給弾妖精『はいっ!』

 

 

出雲『このタイミングでほとんどのSeaRAMが…っ!。けど嘆いてる暇は無さそうね…!SeaRAMの装填が終わるまでファランクスで凌ぎ切ります!』

 

 

出雲 ファランクス妖精『あいよ!ミサイルても落とせるコイツで敵機など木っ端微塵にしてやりますぞ!バルカン砲舐めんなよ!』

 

 

 

まさかこのタイミングでSeaRAMのほとんどが弾切れになってしまうというなんとも宜しくない状況に対して思わず焦りの表情を見せる出雲であったが、そんな嘆いている暇はないと言わんばかりに切り替えて装填が終わるまでファランクスを駆使して耐えるように指示を出す。近接防御ミサイルが一時的に使えなくなったため火力がガタ落ちしたように見えたがそれを感じさせないバルカン砲の弾幕が次々と襲いかかる。

 

もちろん弾倉の関係で長時間弾幕を張ることは出来ないがそれでも給弾妖精達は落ちた防空火力を補うために必死の思いでファランクスの装填作業を行っていく。

 

 

 

雪風『私だって歴戦の駆逐艦…!幸運の女神にかけてでも出雲さんをお守りします!』

 

 

雪風 砲術妖精『生き残れてるのも運がいいからというものではない!戦い抜いているからだ!全砲門ぶちかませ!』

 

 

雪風 機銃妖精『主砲の連中に遅れを取らないで!弾幕張り続けて!』

 

 

雪風 機銃妖精『あい!ほぉら発射べダルベタ踏みで照準そのままだ!この位置なら修正の必要もない!』

 

 

 

出雲の左舷側を航行していた雪風もここが踏ん張りどころと言わんばかりに全火力を投入出来るだけ投入し接近を試みる敵機に対しての厚い弾幕射撃を行っていた。彼女の主砲である50口径三年式12.7cm連装砲3基6門が一斉に火を拭きながら敵機前の水面を掃射するように断続的に砲撃していく。機銃も遅れを取らまいと新造時の時よりある程度増設された火器を活用した弾幕を形成している。

 

 

 

榛名『雪風ちゃんと出雲さんの上空は榛名が御守りします!全砲門開け!』

 

 

榛名 砲術妖精『全砲門一斉射!!密集してる連中に大口径砲をお見舞いしてやれぇ!』(ドォォォン!!)

 

 

 

もちろん榛名も2隻を援護するために上空から編隊を組んで接近してくる爆撃機を追い払うために全砲門を上空に向けて轟音とともに一斉射で射撃、8発の三式弾が機銃弾や高角砲弾に入り乱れるように敵機のど真ん中へ飛び込んでいく。そんな様子を見ながらも吉野もなんとか落とそうと主砲による射撃を試みているのだが…、

 

 

 

吉野 AN/SPY-1D妖精『トラックナンバー0355から58撃墜!ですがこれ以上は主砲の射角が…!!』

 

 

吉野『くっ…!前方警戒のために艦隊先頭になったことがここに来て仇となるなんて…!艦対空ミサイルはどう!?』

 

 

吉野 対空戦妖精『こっちも無理です!!爆撃機隊の迎撃でかなりのミサイルを使いましたし…!流石にこれ以上の消耗は…!』

 

 

吉野『…けどこのまま通させるわけにはいきません…!!ひとまずどうにか発射出来る数を撃って…!!』

 

 

吉野 対空戦妖精『でっですが!』

 

 

吉野『いいから…!!』

 

 

吉野 攻撃指揮官妖精『対空戦妖精!目標58から62の4機をロックオンして!吉野さんの指示通り艦対空ミサイルによる迎撃を行います!!』 

 

 

吉野 対空戦妖精『ふっ副長まで…あぁもう!了解しました!!目標3058から62までターゲットロック!SM-2攻撃始め!(カチ!)』

 

 

 

だが今いる位置からだと丁度主砲の死角に敵機が入り込んでしまうためこれでは迎撃が出来ない。となれば他にすることは一つしかなく吉野はCICに対して艦対空ミサイルによる迎撃指示を命令、それに対して対空戦担当の妖精が驚きの表情を露にしていた。

というのも既に爆撃機の迎撃でかなりの数の対空ミサイルを消耗したため更に撃てば今後の戦闘に響きかねない。だから流石にこれ以上撃つとなると補給の面もあるため極力控えたいのが本来の方針なのだが…。

 

まさかのイレギュラーな指示に思わず困惑しかけた妖精であったが副長ポジションである攻撃指揮官妖精が発射命令を出したことでどうにでもなれという感じて発射ボタンを勢いよく押す。直後後部VLSハッチから轟音や排煙とともに4発のSM-2が上空に打ち上げられてそのまま直で接近してくる雷撃隊に向けて進路を変えながら襲いかかった。

 

 

 

ドドドォォォォン!!

 

 

吉野 AN/SPY-1D妖精『トラックナンバー3058から62撃墜!全弾命中しました!!これで敵雷撃隊の半数近くを落としました!ですが速度方位ともに変わらず!』

 

 

吉野『流石にこの程度じゃ止められない…くっ艦ごと旋回させたいけどいまそれをしたら陣形に支障が出ちゃう…』

 

 

雪風『吉野さん援護ありがとうございます!あとは雪風にお任せください!』

 

 

出雲『大丈夫!!私が簡単にやられるわけがないじゃない!海自初の空母の底力見せてあげる!』

 

 

 

敵雷撃隊の半数近くをミサイルと砲撃で撃墜することは成功、がその程度ではやはり変わらないようで落とされた僚機の煙から飛び出すようにアベンジャー数機が勢いよく姿を現す。主砲の射角に入れるために旋回出来たらと思っていた吉野であったが、あとは任せてと言わんばかりに飛び込むように無線から雪風と出雲の声がはっきりと伝わって来る。

 

その間にも雪風と出雲の対空砲火は継続して行われていき主砲弾や機銃弾の入り乱れるような射撃に対して流石に機体が根を上げたのだろう、次々と雷撃機が黒煙を発動機から拭き上げつつ海面へと突っ込んでいく。

 

 

 

ーセッセメテ…一矢報イナケレバ……ー

 

 

 

仲間が次々と落とされていき最後に残ったアベンジャー雷撃機の搭乗員は、対空機銃によってボロボロになった愛機を見ながらも一撃加えようと必死の思いで操縦桿をしっかりと握っていた。発動機から黒煙や燃料を吹き出しながらも落ちないようになんとかバランスを取っていたが流石にこれだけ被弾してはどうしても限界が来てしまう。

 

魚雷投下ポイントまであと少しというところで燃料に火が付いたのか機体が一瞬にして炎の業火に包まれてしまう。それはまるで空を飛ぶ火球を連想させるような見た目で僚機と同じように海面へと墜落する。

 

…が炎に包まれている搭乗員は悔しむどころかどこか笑みをふと溢しているようにも感じた。

 

 

 

ートドカナカッタ…カ ダガオレタチノヤクメハ ハタサレタ…。タノンダ…ゾ……ー

 

 

 

吉野 見張り妖精『最後の敵機炎上しながら墜落していってます!魚雷の投下もなし!!迎撃成功です!』

 

 

吉野『…ふぅ…なんとか防ぎきれた……』

 

 

出雲『危なかったわねー…(汗)けっこうギリギリセーフだったかも?雪風ちゃんナイスプレー♪』

 

 

雪風『もちろんです♪皆さんを護ることが雪風の役目ですから…!』

 

 

秋山『流石は呉の雪風と言われただけあるな…。こりゃ改めてあそこの提督に感謝しないと…(汗)』

 

 

瑞鳳『まあでも『転属してくるなら、それ相応の活躍をさせろよ』、って呉の提督さん言ってたので、これはこれでいいんじゃないのかな♪』

 

 

秋山『だな…。だが今は戦闘に集中しなけれb『てっ…敵機直上!!急降下ぁぁぁぁぁ!!!』!?』

 

 

 

あれだけいた雷撃機のほとんどを撃墜することに成功し、狙われていた出雲も特に被害を受けていないという報告が入るや否や少し緊張が溶けたのか吉野が少しホッとした表情を浮かべている。それに対して出雲は、雪風のナイスプレーな戦闘を称賛しており雪風もどこか嬉しそうな笑みを浮かべていた。

 

そんな雪風を見ながら流石だなっという口調で話していた秋山であったが、直後見張り妖精から悲鳴とも見て取れるような声を聞いた途端にその表情は一変する。

 

 

 

秋山『一難去ってまた一難か…!状k…『提督伏せて!(瑞鳳)見張り妖精!!報告を!』』

 

 

瑞鳳 見張り妖精『ドーントレス6機!本艦直上で反転降下!すでに急降下爆撃体制に入ってます!』

 

 

瑞鳳『なんで輪陣形にそんな数の敵機が入り込んでるの…!!しかも私のいる場所艦隊のど真ん中よ!他の妖精達は!?』

 

 

瑞鳳 砲術妖精『すでに全火器で全力射撃中です!!ほらさっさと撃ちなさい!急降下だからってそれを言い訳にしない!!』

 

 

 

見張り妖精に何があったのか報告させようとした秋山であったが咄嗟の判断で瑞鳳が無理やり伏せさせながら変わって状況確認を行う。その間にも彼女の直上からはダイブブレーキを展開しながら急降下してくる6機のドーントレスが確認出来、瑞鳳の戦闘員達はなんとしてでも爆弾投下を阻止するために機銃や高角砲による必死の迎撃を試みていた。

 

 

 

龍驤『なんでこんなに爆撃機が侵入しとんか!レーダーはどないしとる!』

 

 

鳥海『すっすみません…!何せ敵機が乱戦状態になっていて各機の把握が…、』

 

 

龍驤『入り乱れる状態を利用されたか…!とりあえずさっさと撃ち落とすんや!旗艦と提督を護れ!』

 

 

阿武隈『分かってます!!妖精のみんな!大変だと思うけどここが踏ん張りどころだから頑張って!!』

 

 

 

敵機が入り乱れる状態を利用してこの爆撃機達は輪陣形内部に潜り込んだようで、まさかここまでの数を通されるとはという表情を見せながらジタバタした龍驤であったがすぐに切り替えて狙いを変更するように指示を出す。もちろんそれは他の子も同じであり、瑞鳳と秋山を護るために狙いを変更可の艦艇を中心に集中砲火を浴びせる。

 

 

 

ダダダダダダダ!!!

 

 

 

周囲に高角砲弾が炸裂し、機銃弾も掠めていく中でもほとんど乱れることなくドーントレスは次々と瑞鳳目掛けて機体をギシギシ言わせながら急降下をしている。その中の1機に乗っている搭乗員の視界には、照準器一杯に広がる敵軽空母の飛行甲板が映り込んでおり今はただそれに目掛けて突っ込むように操縦桿を握っていた。

 

 

 

ーライゲキタイノギセイハ…ケッシテムダニハシナイ…!!セメテオマエダケデモミチヅレ二シテヤロウ!!ハハッ…!!ー

 

 

 

瑞鳳 機銃妖精『何をしとる!さっさと落とせ!!このままじゃ226キロ爆弾をモロに喰らうことになるぞ!軽空母がそんなのもし…』

 

 

瑞鳳 機銃妖精『解っとるわそんなこと!!こんなところで退場なんて旗艦がすることじゃない!!提督も乗せてんだ!死ぬ気で撃ちまくれ!』

 

 

 

笑いながらも必死な思いで降下していく敵機に対してこちらも死ぬ気で撃ちまくりなんとか爆弾を投下される前に仕留めようと妖精たちも同じ状況らしい。周囲からの援護射撃もあり次々と炎を吹き出したり空中分解する敵機が増えていくが、そんなのお構いなしに残りの機が更に急速接近していく。

 

 

 

出雲『まだSeaRAMの装填は出来ないの!?』

 

 

出雲 SeaRAM妖精『そっそれが移送作業に手間取ってるらしくて…!何やらエレベーターが故障してるという報告が…』

 

 

出雲『なんでこんな土壇場で…ならファランクスでなんとか落として!!現代艦の意地を見せなさい!!』

 

 

吉野『というかなんでレーダーで捕捉出来なかったの…!あれだけの機数…!』

 

 

吉野 AN/SPY-1D妖精『分かりません!!レーダーには恐らく映ってはいましたが…!!乱戦状態のせいで確認出来なかったのが原因かと…!』

 

 

吉野『…(ここに来て実戦経験不足が響くなんて…それに流石にこの数を手動で捌くにはまだまだ練度が…くっ!)』

 

 

 

どうやら出雲や吉野も絶賛悪戦苦闘中らしく、焦りの表情を見せながらなんとか爆弾投下前に仕留めるように指示を出して近接火器で加勢する。そんな彼女達のお陰もあり急降下してくる敵機の数はどんどん減っていくのだが…、2機が完全に瑞鳳の飛行甲板を捉えた。

 

 

 

ークラエ!!(カチ!)ー

 

 

 

ここだと言わんばかりに目を開いたドーントレスの搭乗員は投下レバーを力の限り押し込んで切り離す。直後なんとか装填を終わらせた出雲のSeaRAMによるミサイル攻撃で撃墜したものの投下前に仕留めることが出来ず、解き放たれた226キロの爆弾2発が重力に沿って落下してくる。

 

 

 

瑞鳳 砲術妖精『うぉぉぉぉ!!?総員退避ぃぃ!!急げぇぇぇ!!』

 

 

秋山『まっ不味い…』

 

 

瑞鳳『っ……(せめて…提督は護らなきゃ…)』

 

 

 

震える手をなんとか抑えながらなんとか秋山を護ろうとしている瑞鳳、だがそんな彼女の必死な思いも虚しくしっかりと飛行甲板を捉えた爆弾は落下する速度を一切落とすことなく飛行甲板に突き刺さろうとしていた。

 

 

 

瑞鳳『そっ総員衝撃に備えて…っ!(覚悟を決める)』

 

 

 

2発ならやられることはないが軽空母の戦闘能力を奪うには充分、更には投下された爆弾は対艦用のため下手をすれば格納庫で炸裂しかねない。それがもし…艦橋に命中したら…

 

一瞬そのことが頭に過った瑞鳳であったがなんとか震える体を抑えて被弾の衝撃に備えようとした矢先……

 

 

 

ドゴォォォォォォ!!!

 

 

瑞鳳『……え…?』

 

 

 

命中まで秒読みとなっているのに被弾したような衝撃が何故か伝わってこない、それどころか直上で爆発したような轟音が響き渡って来たことに瑞鳳は思わず呆気に取られていた。直後ギリギリまで上空を見ていた見張り妖精から報告が飛び込んでくる。

 

 

 

瑞鳳 見張り妖精『ばっ爆弾本艦命中前に空中で爆発!!』

 

 

瑞鳳『ばっ爆発って…一体どうゆうこと…』

 

 

瑞鳳 見張り妖精『分かりません…!あまりにも突然過ぎて…』

 

 

秋山『どっどうなって…』

 

 

 

どうやら敵機から投下された爆弾が命中する前に空中で爆発したというのだ。何がなんだか分からない瑞鳳や秋山、しかしそれは見張り妖精も同じことらしく、混乱や衝撃を隠せない様子で報告を続けているが、…その原因は一本の無線ですぐに判明した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

朝日『ふぅ…なんとか間に合った……?』

 

 

 

 

 

艦隊最後尾には爆弾が空中爆発したと思われる位置に主砲の砲身を向け、砲煙を出しながら航行している朝日が安堵したような表情でへたり込むのであった……。

 

 

 

 

 

 






第十六話 新たな脅威
(次回の題名を変更しました)


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第十六話 新たな脅威




危うく重要な局面で旗艦が損傷退避してしまうところだったがなんとか朝日のファインプレーで事なきを得た瑞鳳と秋山。


だが山場はまだまだ超えておらずギリギリの攻防戦を繰り広げる



 

 

 

朝日『ふぅ…なんとか間に合った……?』  

 

 

阿武隈『まっ間に合ったって…もしかして爆弾を空中炸裂させたのって朝日さんですか…!?』

 

 

 

瑞鳳の直上で爆発した爆弾を眺めながら少し気が抜けたようで朝日は思わず艦橋でへたり込むようにヘロヘロと座り込んでしまう。無線から聞こえてきた声からすぐに爆弾を撃ち落とした張本人が彼女だとすぐに確信した阿武隈は驚きを隠せない様子で尋ねる。

 

 

 

朝日『まあ一応は……(汗)イチかバチかで主砲弾による射撃で2発ともなんとか落とせました…。ほぼ懸けみたいなものですが…』

 

 

霧島『おっ落としたって…主砲弾でしかも練習なしで撃ち落としたと言うんですか…!?』

 

 

朝日 主砲妖精『なんとか落とせたー…。朝日さんが爆弾を主砲弾で落とせっていう無茶振りが飛んできたときはどうなるかと思いましたよ…』

 

 

朝日 砲術妖精『ホントです…(汗)この作戦が終わったらなんか奢ってくださいよー。もはや無理難題ってくらい前代未聞なことさせられたんですからー…』

 

 

朝日『解ってるって…(汗)みんなにはけっこう無理な指示しちゃったし後で奢って…(ドォォォン!?)っとと…!?』

 

 

 

まさかの言葉が彼女の口から発せられたため霧島でさえも思わず取り乱してしまったらしく、喰い付くように問いただしていた。もちろん主砲弾で爆弾を落とせという無茶振りの指示を与えられた妖精達もそれは解っていたようで、練習なしでやり遂げたんだから後で奢ってくれという声が次々と上がってくる(傍からみればほぼやけくそみたいなけっこう無茶振りな作戦)。

朝日もそうなることは自分自身が一番理解していたためあとできちんと奢って上げると答えかけたその直後、近くに墜落きてきた敵機が投棄した爆弾が至近弾として着水、その衝撃で艦が揺れてしまう。

 

 

 

曙『あんた達ぼーっとしてる暇はないわよ!まだまだ敵攻撃隊の空襲は続くんだから…!!』

 

 

古鷹『敵雷撃機、及び爆撃機が再度侵入してきます!恐らくは朝日さんや吉野さんの攻撃で突入を一時断念せざる負えなかった編隊かと…!』

 

 

 

忘れかけていたが今は空襲の真っ最中、曙の注意と降り注ぐ至近弾によって一同は我に返る。そしてそのタイミングで古鷹から先程突入に失敗した敵編隊が再び突入してくるという報告が飛び込んできたためそちらへと視線を向けていく。

 

 

 

大鳳『大鳳より各艦宛!先程の敵編隊が再度突入してきます!銃身冷却や給弾が終わり次第射撃を開始してください…!』

 

 

吉野『流石に待ってはくれないか…、仕方ない…!とりあえずは戦闘に集中しましょう!朝日さんについては後で…!』

 

 

巻雲『はい!敵機は1機たりとも通させません…!』

 

 

巻雲 砲術妖精『もちろんです!ほら砲撃だ砲撃!敵機ぐらい落としてみせろ!こちとら高射装置は最新式だぞ…!』

 

 

巻雲 機銃妖精『ほら射撃だ射撃!呑気に近づいてきた敵機を蜂の巣にしてやれ!!』

 

 

 

もちろん古鷹の報告は大鳳にも届いており、直ちに新たなる目標をその敵編隊に変更するように指示を出しながらも自身の妖精達に射撃体制が整い次第攻撃を下す。朝日の件について気になることはあるがとりあえず目先のことを対処することにして艦隊は再び濃密な対空射撃を開始していく。

 

その射撃はこれ以上敵を寄せ付けてたまるかという強い意志が感じられるほどの弾幕で、二次大戦のアメリカ艦隊が放っていた対空砲火に近い何かを感じた。…がだとしても先程の影響はまだまだ続いており、旗艦を護るために防御砲火を集中させたのが返って仇となってしまう。

 

 

 

ドォォォンン!!

 

 

大鳳 見張り妖精『あぁ!!飛行甲板に2発被弾!繰り返す!2発被弾!』

 

 

大鳳 修理妖精『爆発の影響で火災も発生してる!消火だ消火!貫通してなくても温度上昇させたら可燃物が燃えるぞ!』

 

 

大鳳『はっ!ばっ、爆発!?燃料庫は?燃料は大丈夫!?』

 

 

 

ほとんどの艦艇の意識が瑞鳳に行っていたことを利用して雲の隙間をつたいながら密かに接近していたドーントレス爆撃機小隊の2機がタイミングを見計らい同時急降下。明後日の方向に狙いがいっていた大鳳目掛けて500lb爆弾を連続で投下して離脱していく。

機体から落とされた爆弾は真っ直ぐ吸い込まれるように2発とも彼女の飛行甲板をしっかりと捉えており、迷うことなくど真ん中に立て続けに命中、甲板上で立て続けに爆発してしまう。

 

これが通常の空母なら真っ先に飛行甲板は使用不可になってしまうのだが、大鳳に関しては装甲空母という名前の通り飛行甲板には最大500キロ爆弾の水平爆撃の直撃に耐えられる装甲板が張り巡らされているため内部まで貫かれることはない。…がそれでも爆発の影響で甲板では火災が発生しており、大鳳も過去の記憶か思わず取り乱していた。

 

 

 

秋山『落ち着け大鳳…!お前の飛行甲板なら貫通される心配はない!それよりも火災を早めに鎮火させるように妖精に指示を…!』

 

 

大鳳『…っ!はっはい!手空きの要員は直ちに消火活動の援護に…!対空要員はそのまま戦闘を継続してください…!』

 

 

大鳳 給糧妖精『了解しました!一部の連中はすぐに修理妖精達の支援にいけ!残りは持ち場を死ぬ気で護って飯つくれ!』

 

 

大鳳 飛行甲板妖精『消火だ消火!!帰ってきた連中がしっかり着艦出来るように早に火を消すぞ!』

 

 

 

だが落ち着けという秋山からの指示で我に戻った大鳳は仕切り直すように直ちに手空き要員総出で消火活動をするように指示を出していく。その間にも機銃や高角砲は引き続き対空戦闘を継続しており、甲板では妖精達が必死の消火活動に追われている。

 

 

 

大鳳 機銃妖精『こんにゃろぉ!よくも大鳳にいかがわしいもん投げてきたな!どこのどいつだ!』

 

 

大鳳 機銃妖精『アイツだ!アイツ!全速力で離脱してる手ぶらの爆撃機!恐らくあの2機がやりやがったんだ!』

 

 

大鳳 砲術妖精『クソッタレ!よくもやりやがったな!地獄の縁まで追いかけてはたき落としてやる!』

 

 

大鳳 見張り妖精『爆弾を投下して逃げてる敵機なんてほうっておけ!それよりもまだお腹に抱えてる奴を狙わんか…!』

 

 

時津風『よくも大鳳さんを〜!仇は絶対取るからねー!てぇー!』

 

 

阿賀野『まだ大鳳さん轟沈してないわよ!(汗)でも仲間に爆弾を当てるなら落とされる覚悟はできてるわよね…!海の底まで追っかけてあげるわ!』

 

 

朝日『これ以上味方に被害を出させないで!護衛艦として意地でも死守します!』

 

 

 

流石にこれ以上味方に被害を出させるわけにもいかないため、ここが正念場と言わんばかりに各艦は敵攻撃隊との死闘を繰り広げていく。時折至近弾が周囲に降り注ぐところを見るにパラオ艦隊側もかなりギリギリの戦いをしているようだが、それは敵機側も同じようでなんとか更に一撃を加えようと死ぬ気で対空砲火の中へと飛び込むといった一進一退の攻防戦を繰り広げていくのである…。

 

 

    

 

 

 

 

 

 

 

同日

1600にて

 

 

 

 

 

 

 

瑞鳳「提督、各艦の状況確認が終わったから報告するね?」

 

 

秋山「お疲れさん瑞鳳、んじゃお願いしようか」

 

 

 

あれから一時間近くほど経過して、敵空母機動部隊の攻撃隊からの大規模空襲をなんとか切り抜けた艦隊はカンカン照りの日差しに照らされながら航行していた。航空隊収容の関係で潜水艦警戒を行うためか輪陣形から対潜重視の第一警戒航行序列に変更していく僚艦を横目に瑞鳳は秋山に各艦の状況報告を行っていく。

 

 

 

瑞鳳「ひとまず被害状況としては大鳳さんが被弾、各艦ともに至近弾による損害が出ています。ですが全艦戦闘継続可能とのこと。大鳳さんも一時火災が発生しましたが今は鎮火して飛行甲板も使えるみたいです」

 

 

秋山「…やはりあれだけの攻撃隊だと被害は免れないが脱落艦が出なかったのは不幸中の幸いだろう…。大鳳に関しても少しヒヤヒヤしたが流石は新鋭の装甲空母。2発被弾してるのに飛行甲板は使用可とは…、彼女を引き込んで正解だったよ。…っとそういえば瑞鳳は本当に大丈夫なのか?けっこうあれ危なかったけど…」

 

 

瑞鳳「なんとか…(汗)また朝日さんに助けられちゃったけどあれが無かったらけっこう危なかったかも…。戦線離脱は避けられなかったのは確実だね…」

 

 

秋山「だよな…、けど念の為もしなんかあればすぐに報告するようにな?被弾はなくても直上で爆弾してる訳だし…、大鳳みたいに装甲板があるわけじゃないんだから」

 

 

瑞鳳「うん…♪分かってる…!(…やっぱり狙ってくる…よね。そのせいでみんなが…、…いや…!今は任務に集中集中…!)」

 

 

秋山「よしっ…!んじゃ次は現在の戦況についての説明を頼めるか?」

 

 

 

報告によればほとんどの艦が爆弾の至近弾などによる損傷を受けているようだが直接の被弾はないようで瑞鳳の口からは全艦戦闘可という言葉がハッキリと出てくる。それを聴いた秋山は150機近い敵機からの空襲を受けて脱落艦が出なかったことに少し安心したような表情を見せていた。

…だが危ない場面が何個かあったのは事実であり、朝日のお陰で被弾は免れたものの確実にやられていた瑞鳳に対して本当に大丈夫なのかと秋山は尋ねる。

 

一応は大丈夫と答えた彼女(彼に気づかれないようにしつつも少し思い詰めた表情を一瞬見せる)を見ながらもし何かあればすぐに報告するようにと秋山は伝えながら改めて話を続けるように促していく。

 

 

 

瑞鳳「分かりました。現在の状況としまして横須賀鎮守府の連合艦隊が敵空母機動部隊に、佐世保鎮守府の艦隊が戦艦を含む水上打撃艦隊に対しての空襲を敢行。かなりの打撃を与えたそうですが距離が距離のため追撃を断念したとのことです」

 

 

秋山「流石に精鋭の空母機動部隊でも距離があると追撃は厳しいか…。だが2つの敵艦隊を下がらせれたのはデカいな」

 

 

瑞鳳「ラバウル艦隊に関しては精鋭の水雷戦隊に対しての空襲を先程行い、今夜追撃をかけるために水上艦隊による殴り込みを実施するそうです」

 

 

秋山「相変わらずラバウルの提督は好戦的だな…(汗)まっそれでも戦闘に関しては一流だから問題はないはずだ」

 

 

瑞鳳「ショートランド艦隊は沖ノ島に展開した基地航空隊と共同で水上打撃艦隊に空襲を行って撤退させることには成功したとのことですが、航空機の損耗が大きいため一度偽装退却をしてから再突入させるとのこと」

 

 

秋山「流石相手の規模もあるし基地航空隊の援護があるとはいえ新人空母には荷が重いか…。でもアイツもきちんと提督らしいこと出来てそうで一安心だな♪」

 

 

瑞鳳「んー?知り合いなんですか?ショートランド泊地の司令と」

 

 

秋山「まあ、士官学校のときに世話してやったから顔なじみが深くてなー。アイツ気が弱い割には負けず嫌いだったのは懐かしい思い出だよ(汗)」

 

 

瑞鳳「なるほどー…(そういえばショートランドの提督って女性の人だったよね…。一度見たことあるけど若くて可愛くて…って戦闘中に何考えてんのよ私…///)」

 

 

秋山「どした瑞鳳?なんか顔赤いけど…熱でもあるのか?」

 

 

 

他の泊地や鎮守府の艦隊も順調に進撃しているようで現時点で敵の機動部隊や水上打撃艦隊などに有効な一撃を加えさせて後退させられているらしい。各艦隊の状況をウンウンと頷きながら聞いていた秋山であったが、どうやらショートランド泊地の提督と知り合いらしく懐かしげに士官学校時代を振り返っていた。

 

そんな秋山を見ていた瑞鳳であったが、確かあそこの提督は女性でしかもすごく可愛かったなということをふと思い出すや否や頬を赤らめてボソボソとなにやら呟いていた。もちろんそれに気づいた秋山はどうしたのかと首を傾げながら尋ねる。

 

 

 

瑞鳳「なっなんでもありません…!///それよりパラオ艦隊の状況に関しての報告がまだなのでさせて貰いますね…!///」

 

 

秋山「おっ?おっおう、それじゃお願いするよ(どうしたんだ?)」

 

 

 

だが頬を赤らめながらもなんでもありませんと答えられながら我に返った瑞鳳は引き続き報告を行うため(話を逸らすためともいう)話を続けていく。一体なんのことかと首を傾げた秋山であったがとりあえず話を聞くことに。

 

 

 

瑞鳳「私達パラオ艦隊に関してですが、沖ノ島司令部より攻撃命令が出された敵空母機動部隊に対しての開幕航空攻撃を敢行。敵艦隊に対して甚大な被害を与えることに成功しました…!」

 

 

秋山「空母を6隻落とせたのはかなりデカいぞ。やはり出雲隊の強襲で随伴駆逐艦を一掃出来たのが響いてるな、その後の敵艦隊の動向は?」

 

 

瑞鳳「空母6隻も落とされて艦隊としての機能を奪われたのが止めになったみたいで沖ノ島の偵察機によれば撤退を開始しているそうです。本来であれば追撃をかけたいですが…」

 

 

秋山「流石にこっちも手負いの艦隊を追いかけるほどの余裕はないからな…、まだまだ発見されていない敵艦隊もいるだろうしそっちに備えるのが一番だろう」

 

 

瑞鳳「ですね、私としてもそれが一番かと…。あっそれと味方航空隊の被害としては雷撃機が5機、爆撃機が1機、戦闘機が4機の合計10機が落とされたとのこと」

 

 

秋山「出雲航空隊の支援攻撃があったとはいえ無傷とはいかんか…落とされた搭乗員に関してはどうだ?」

 

 

瑞鳳「全員救助済みとのことです。朝日さんの航空隊にも協力して貰ったので回収作業はかなり早く進みました…♪」

 

 

 

 

 

大鳳

飛行甲板にて

 

 

 

朝日 哨戒ヘリ機長妖精『朝日哨戒ヘリより大鳳へ、これより貴艦搭乗員の搬送のため着艦許可をお願いします』

 

 

大鳳 電信妖精『大鳳通信員より朝日搭乗機宛、着艦を許可。着艦場所は指定しますが着艦誘導はそちらに一任させます』

 

 

朝日 哨戒ヘリ機長妖精『ノープロブレムだ、問題ない。これだけ広い飛行甲板ならお手の物さ(ピッ)』

 

 

大鳳制空隊 第二中隊 4番機『ほっ本当に大丈夫なんですか…?こっちの時代の空母に着艦するのって初めてだとお聞きしましたが…』

 

 

大鳳爆撃隊 第一中隊 10番機操縦手『うっぷ…、彗星とじゃ全く別物だから乗りなれねぇ…』

 

 

大鳳爆撃隊 第一中隊 10番機偵察手『ちょっとー、彗星であれだけの機動していた人が何言ってるんですかー(汗)。でも本当に誘導なしでいくんですかい?』

 

 

 

 

同時刻、搭乗員救助に向かうために朝日から発艦して捜索に当たっていたSH-60K(哨戒ヘリコプター)朝日機が大鳳搭乗員を救助して引き渡すために彼女の飛行甲板に着艦しようと現在ホバリングで上空を飛行している。…とは言えどこの時代の船に着艦など彼らが経験しているはずもなく、着艦誘導なしで大丈夫なのかと大鳳機の妖精達(一部除いて)が恐る恐る訪ねていた。

だが副機長とともにヘリの操作を任されている機長妖精は問題ないと言わんばかりで笑みを浮かべつつ問題ないと答えている。その間にもSH-60Kはホバリングで艦との相対速度を合わせながら着艦ポジションに調整しながら付いていく。

 

 

 

大鳳 修理妖精『とりあえず飛行甲板の応急修理は終わらせたから突き破ることはないとは思うが…、本当にあれで着艦出来るのか?』

 

 

大鳳 飛行甲板妖精『分かりませんよ。なんせあんな兵器は艦娘が持ってるやつでは見たことがありませんし…』

 

 

大鳳 整備妖精『頼むから間違っても甲板に突き刺さるんじゃないぞぉ…。そうなっちまったら他の連中が海水浴のハメになっちまう…』

 

 

大鳳『朝日さんの妖精さんたちですから…きっと大丈夫だと思います。今は信じて見守りましょう』

 

 

 

だが心配な表情を浮かべているのは他の妖精達も同じような状況らしく、待機スペースや艦橋から大丈夫なのかという雰囲気で見守っている。しかし大鳳だけはそんなに気にしてても仕方ないと言わんばかりに真剣な顔で信頼するかのように直上をホバリングする朝日機を眺めていた。

 

 

 

朝日 哨戒ヘリ機長妖精『これより着艦体制に入る。ホバリング体制維持、艦との速度を合わせろよ。昔の船と今の船じゃ感覚がちゃうからな』

 

 

朝日 哨戒ヘリ副機長妖精『解ってますよ。とは言えど飛行甲板は朝日さんよりも広いですし着艦は不可能ではないかと』

 

 

朝日 哨戒ヘリ機長妖精『まっお前の腕なら問題ないとは思うが気をつけてな?今日はお客さん乗せてんだから』

 

 

朝日 哨戒ヘリ副機長妖精『りょーかい。(パネルを操作しながら)これより着艦体制、現在地点を維持しながら降下開始します』

 

 

 

操縦席で一言二言話した機長と副機長妖精は一旦話を切り上げて真剣な表情を浮かべながら着艦するために窓から下方の様子を確認しながらゆっくりとヘリを降下させていく。二次大戦の艦艇に着艦するなど前代未聞とも言える試みだが飛行甲板の広さから言えば出雲やいせなどに近いため、それよりも狭い甲板での着艦を経験したことのある彼らからすればなんの問題もないのかもしれない。

 

 

 

大鳳 見張り妖精『おぉ…おぉ?あれ空中で浮遊しながら垂直に降りてんのか…?でも全く位置はズレてないし…』

   

 

大鳳 飛行甲板妖精『まさか艦の速度と合わせながら垂直に降りてんのか…?どんな技術だよあれ…』

 

 

大鳳 機銃妖精『あれなら滑走路もいりませんし、なんなら広いスペースがあれば空母以外にも降りれそうですね…』

 

 

 

艦娘の装備で垂直離着陸が可能な機体は存在しないだけでなく、プロペラみたいな羽(ロータ)が上向きにつけられているのに平然と飛行しているという現実に妖精達はざわめきを隠せずにいるらしい。ましてや艦の速度と合わせながらホバリングしつつ降下しているヘリを見て更に驚きを見せていた。

 

 

 

朝日 哨戒ヘリ副機長妖精『まもなく設置します。少し揺れますのでご注意くださいね』

 

 

大鳳制空隊 第二中隊 4番機『わっ分かりました…!』

 

 

朝日 哨戒ヘリ機長妖精『丁寧に着艦しろよ?レディに失礼ないようにな。朝日さんに降りるときとは少し違うぞ?』

 

 

朝日 哨戒ヘリ副機長妖精『言われなくてもちゃんとやりますよ。っと距離よし、機体角度及び安定性問題なし、着艦します』

 

 

 

とは言えどこれだけ広い甲板なら誘導員がいなくてもなんとか降りれるというもの(まあ本来であれば安全上必ず必要なのだが今回はそれが出来ない)。微調整を繰り返しながらもとくに大きく姿勢を崩すこともなくゆっくりと降下してきたのちタイヤを甲板に接地するように着艦していく。

安全が確認されるや否や哨戒ヘリの後部スライドが音を立てて開き、電信妖精とともに大鳳隊の搭乗員がゆっくりと甲板上に降り立って来る。

 

 

 

大鳳爆撃隊 第一中隊 10番機操縦手「なっなんとか耐えれた……にしてもきれいに着艦したな…(あたりを見渡して)」

 

 

大鳳制空隊 第二中隊 4番機「戦闘であの動きはすぐに落とされちゃいますけど、搭乗員の救助や潜水艦に対する哨戒任務には使えそうですよね」

 

 

大鳳爆撃隊 第一中隊 10番機操縦手「確かに、となりゃこいつがいれば船団護衛も捗るってもんだ。っとそろそろ離陸するぞ」

 

 

 

自分たちが乗っている航空機とは全く異なった動きを見せられた搭乗員妖精達は相変わらず少し混乱している表情を見せながらもパイロットの技量に関心しているらしい。というよりも、この兵器をうまく使えば対潜哨戒任務や救助任務にも使えるのではないかということにいち早く察知したようで、船団護衛もこれがあれば今までよりも捗るのではないかと思わせている。

そんな話をしていた三人であったが哨戒ヘリが発艦準備に入ったことを確認するや否や巻き込まれないために機体から少し距離を取りながら見守っていた。    

 

 

 

朝日 哨戒ヘリ機長妖精『朝日機より大鳳へ、搭乗員の搬送が終わったためこれより離陸します。さっさとどかないとそっちのパイロットに急かされますから』

 

 

大鳳 電信妖精『大鳳より朝日機へ、離陸を許可します。それと本艦の搭乗員救助に感謝いたしますね』

 

 

朝日 哨戒ヘリ機長妖精『なに、俺を言われるほどでもありませんよ。我々哨戒ヘリ部隊はこういった地道な任務が仕事ですから、それではまた(ピッ)』

 

 

朝日 哨戒ヘリ副機長妖精『各システム異常ありません。此れより離陸、母艦へ帰投します』

 

 

 

大鳳電信妖精と一言二言話して離陸許可が出されたことを確認すると、彼女の航空隊が帰ってきて詰まってしまう前にせっせと退散するかのように先程よりも手早く飛行甲板から飛び立ってホバリングしながら高度を上げていく。その後充分な高度まで上がったことを確認すると向きを変えてそのまま母艦である朝日の方角へと帰投していくのであった。

 

 

 

大鳳 整備妖精『行っちまったな…、なんか新鮮な雰囲気だぜ…』

 

 

大鳳 衛生妖精『…って呑気に眺めている暇はありませんな…!(駆け足で三人の元へと駆け寄り)三人ともお怪我はありませんな?』

 

 

大鳳制空隊 第二中隊 4番機『えっ?あっはい…特に問題はありませんが…、まあ少しの間海水に浸かってしまいましたが…』

 

 

大鳳爆撃隊 第一中隊 10番機偵察手『まあ…そうだな』

 

 

大鳳 衛生妖精『なるほど、とは言えど念の為検査をさせてもらいますので医務室の方へと来てください(連れて行く)』

 

 

大鳳 飛行甲板妖精『おら俺たちもボサッとしてないで仕事だ仕事!もうすぐ攻撃隊と直掩隊が帰ってくるから忙しくなるから気合い入れてけよ!』

 

 

大鳳 甲板及び格納庫妖精『『了解!!』』

 

 

 

 

 

瑞鳳『瑞鳳より各機へ、被弾したり燃料が少ない子を優先して着艦させて。余裕がある機体は上空待機をお願いできるかな?』

 

 

 

瑞鳳雷撃隊 第一中隊 中隊長機『了解した、雷撃隊中隊長より各機、被弾した奴や燃料が少ない奴を優先して着艦させろ。余裕のある機は順番待ちだ』

 

 

瑞鳳雷撃隊 第一中隊 2番機『ほいほーい、ならうちから着艦させてもらいましょうか。被弾したせいで発動機がそろそろ危ういですし』

 

 

 

それから少しし各空母の飛行甲板では帰投してきた航空隊を着艦させるための準備に慌ただしく追われていた。もちろん瑞鳳でも同様で、帰ってきた自分の航空隊に被弾したり燃料に余裕がない機体を優先して降ろすように指示を出していく。彼女からの指示に雷撃隊の中隊長が答えながら、配下の機に手順通りに降りるように伝えてその通りに各機ともに降りてくる。

 

 

 

瑞鳳 飛行甲板妖精『最初は天山だ!制動ワイヤーの調整間違えるんじゃないぞ!!』

 

 

瑞鳳 整備妖精『テンポよく行くぞ!空母は1分1秒も無駄に出来ない!もたもたしてると次が詰まっちまうぞ!』

 

 

瑞鳳雷撃隊 第一中隊 2番機『着艦姿勢よし…!距離及び位置も問題ないな。あとは後ろのフックをいい感じのワイヤーに引っ掛けるだけ…(ゴッ!)よし!』

 

 

 

ワイヤーなどの調整や着艦完了次第すぐに移動させるための準備が飛行甲板で行われている中、最初に着艦予定の天山艦攻が車輪を翼内から出しながらゆっくりと母艦目掛けて降りてきていた。どうやらこの機は発動機に被弾しているらしく時折ガタガタという音が聞こえてくるが、それ以外は特に問題ないようで綺麗な姿勢を維持しながら艦との位置を調整しつつ降りていく。

あとは着艦線に引っ掛けるだけと思った直後、前輪が甲板に足をつくと同時に後ろのフックが何本が張られているワイヤーうちの一つに綺麗にかかったのか音を立てながら短い距離で静止した。

 

 

 

瑞鳳 飛行甲板妖精『よぉし!すぐにエレベーターに運べ!格納庫にさっさと格納するぞ!すぐに2機目が来るからな!』

 

 

 

瑞鳳雷撃隊 第一中隊 2番機『あとは頼んだぜー。なんせかなり機体が消耗してるからな…!』

 

 

瑞鳳 整備妖精『ふっふっ!私達を誰だと思ってるんですかー、この程度徹夜すれば直せますよ…!!』

 

 

瑞鳳雷撃隊 第一中隊 2番機『ははっ、それなら期待しているぞ♪』   

 

 

瑞鳳『お疲れ様…♪そしておかえりなさい…!』

 

 

瑞鳳雷撃隊 第一中隊 2番機『おうよ!前回に引き続き深海棲艦の正規空母を撃沈てやったぜ!瑞鳳への手土産が出来てよかった…!』

 

 

瑞鳳『ふふっ♪そうなんだ…♪でも一番の手土産はみんなが帰ってきてくれたことかな…!今回は落とされた子もいるけど全員無事だったし…♪』

 

 

 

天山から折りた艦攻妖精は愛機のことを任せると飛行甲板妖精に手合図を送って退避スペースへと移動すると、そこには妖精達の帰りを待っていた瑞鳳が笑顔で出迎えてくれた。もちろん出迎えられた妖精も嬉しいのかすぐさま手土産話を楽しげに話している。

これが彼女の日課とも言っていいだろう。毎回攻撃隊や戦闘機隊が帰ってくるときはどんなに忙しくても必ずここで帰りを待って母艦搭乗員妖精達を明るい表情で出迎えている。例えどんなに帰るタイミングがバラバラでも…。

 

 

…が、今回のように毎回そうとは限らないのが現実。悪ければ攻撃隊の5機近くが未帰還になることも過去に経験しているため、長年ともにしてきた妖精達が帰ってこなかった時の彼女の表情といったら……。だからこそこうやって妖精達の時間を大切にしているのかもしれない、いつ落とされるか分からない空を飛び回っている彼らを…。

 

 

 

 

 

 

 

 

同時刻……

沖ノ島近海

パラオ艦隊からさほど遠くない位置

 

 

 

?『うーん…参ったのね……。見張り妖精、さっきの艦隊は見えそう?』

 

 

 

そんな中、パラオ艦隊がいる海域から少し離れた場所では1隻の潜水艦が浮上しながら海面を切り裂くように航行していた。『イ19』と艦橋横に書かれ、第六艦隊に所属している艦娘、伊一九(通称イク)はどうやら哨戒任務のために沖ノ島海域を彷徨っているようだがなにやら先程から探しているらしい。艦橋上部から周囲をキョロキョロしながらも隣にいた見張り妖精に何か見えないか尋ねる。

 

 

 

伊一九 見張り妖精『いえ…特にこれといっては……。先程の艦隊はおろか海面しか見えませんな……』

 

 

イク『不味いのね……、あの艦隊を見逃したら……』

 

 

伊一九 見張り妖精『あれは薄っすらとしか見えませんでしたが明らかに輸送船を擁護する艦隊なのは確実です…、けどなぜこの沖ノ島海域で輸送船団が…』

 

 

イク『それは分からないの…、でも何かたくらんでいるのは事実……。ひとまず電信妖精、沖ノ島司令部に打電するのね…!』

 

 

伊一九 電信妖精『了解!内容通り沖ノ島司令部に打電します…!!』

 

 

イク『それと潜航用意なの!!制空権は拮抗してるからいつ敵哨戒機が来るか分からないからなのね…!!』

 

 

伊一九 全乗組員妖精『『了解!!!』』

 

 

 

 

 

どうやら先程まで輸送船団を擁護した深海棲艦の艦隊を追跡していたようだが、距離が距離のため見失ってしまったようだ。しかしなぜこの海域に輸送船を含む艦隊が現れたのかという謎が残っていたイク達であったがとりあえず沖ノ島司令部に報告するために打電を行いながら再び哨戒任務に付くため潜航準備に取り掛かるのである……。

 

 

 

 

 

 






第十七話 索敵機発艦


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第十七話 索敵機発艦



深海棲艦の空母機動部隊に対して出雲などのお陰で決定的な一撃を与えることに成功したパラオ艦隊。しかしその反撃として敵攻撃隊からの激しい空襲を受けるがこれも朝日や吉野の協力もあり無事切抜けることに成功してつかの間の休息を過ごしていた。


全体の戦況も優勢に傾いていた矢先…、パラオ艦隊から少し離れた海域では味方潜水艦が謎の輸送船団を見失っていたのである……。  


(次回予告を変更しました)


 

 

 

1800

沖ノ島近海

パラオ艦隊にて

 

 

 

あれから航空隊の収容作業に追われていた艦隊であったがなんとか日が落ちる前に全機収容を終えることが出来たようで、今はこれから脅威になるであろう潜水艦などの奇襲に警戒しながら第一警戒航行序列で夕日に包まれている海域を穏やかに航行している。

今は各艦次の戦闘に備えて武装などの整備や弾薬補給、はたまた航空機の整備に追われており妖精達は少し忙しそうに駆け回っているようだ。

 

 

 

 

朝日艦内

CIC(戦闘指揮所)

  

 

 

朝日 電信妖精「……?これは…(機器を操作して)」

 

 

 

そんな中、味方艦隊の動向や敵艦隊の無線傍受を行うために耳を立てて真剣に聞いていた電信妖精だったがふと耳に入ってきた無線信号に気づいて機器を調整しつつ聞き逃すまいと聞いていく。しばらくどこからか発せられる無線の内容を解読していたが、それが確認し終わるや否やヘッドホンを外しながら席を立ち攻撃指揮官妖精の元へ向かう。

 

 

 

朝日 電信妖精「副長、先程味方潜水艦からと思われる無線送信を傍受しました。宛は内容からして沖ノ島にある司令部かと…」

 

 

朝日 攻撃指揮官妖精「…(渡された紙を眺めて)、我追尾中の敵艦隊をロスト…ね。内容からしてかなりの大規模な艦隊みたいだけど…、でもなんで輸送船団を擁護してんの…?」

 

 

朝日 電信妖精「分かりません、普通に考えれば制海権を掌握していないなら輸送船団が前面に出てくることは有りえませんし…更にいえば味方の艦隊が劣勢なら尚のことです…」

 

 

朝日 攻撃指揮官妖精「…輸送船団を含んでいるならこの艦隊の目標はどう考えても司令部のある沖ノ島しかない…。…けどなんでこのタイミング…」

 

 

 

どうやら傍受した内容は味方潜水艦である「イ19」と沖ノ島司令部の通信らしく、見失った敵艦隊についての報告が行われているようだ。渡された通信内容を一通り読んでいた攻撃指揮官妖精は味方艦が見失った艦隊である輸送船団の文字を見て思わず首を傾げてしまう。

というのも、現在接戦の続いているこの沖ノ島海域ではあるが戦況からしてこちらが有利なのは誰が見ても明らかな状況。制海権の確保が出来ていない海域で尚且戦闘中なら、輸送船団を擁護する艦隊が前面に出てくることなどまず有り得ない。

 

実際深海棲艦の沖ノ島侵攻部隊の指揮を担ってると思われる旗艦艦隊(敵侵攻中核艦隊)は捕捉された海域からほとんど移動しておらず静観を決め込んでいる。なのに輸送船団はズカズカと前に出てきており、本当にeliteクラスの敵艦隊がすることなのかと疑いの目を浮かべていた。

だが気にしてても始まらないため、ひとまずこのことを朝日などに報告するため電信妖精に対してすぐさま指示を出していく。

 

 

 

朝日 攻撃指揮官妖精「この情報をすぐに朝日さんに送って、そこから艦隊司令官さんにも共有して今後どうするか考えましょう」

 

 

朝日 電信妖精「はっ、了解しました」

 

 

 

 

 

 

 

 

それから少しして

瑞鳳

艦橋にて

 

 

 

秋山「ふむ…、まさか深海棲艦の連中が輸送船団を早々に前面へと押し出してくるとは……。こりゃ想定外なことが起こったな」

 

 

朝日『現在の戦況から考えても、輸送船団を含む艦隊が前面に出てくるとは到底考えられません。現に敵の侵攻中核艦隊は静観を決め込んでいますし…』

 

 

涼風『なんかおかしな話だよなー。普通に考えれば今の状況で輸送船団を前面に出しても足引っ張るだけだし、深海棲艦の連中はアホなのか?』

 

 

曙『そんなわけないでしょ、深海棲艦の連中がそんな単純な奴らだと思う?仮にもeliteクラスの艦隊、涼風ならそれは解ってることでしょ』

 

 

涼風『まあなー』

 

 

 

瑞鳳の艦橋にいた秋山は朝日から送られてきた例の情報がまとめられた電文を真剣に見つめながら、敵も意外なことをしてきたなという表情を浮かべていた。それに補足する形で朝日が本来であれば輸送船団を擁護する艦隊がこんな状況下で前面に出てくるなんて有り得ないと眉を細めながら説明していく。

彼女の言うとおり、制海権を確保しきれてないのに輸送船団を含む艦隊を押し出すのはかなりのリスクが生じる。現に敵の旗艦艦隊は戦況から察しているのか全く前面に出てくる気配はなく静観を決め込んでいるのに…。

 

そんな二人の会話を聞いていた涼風は、おかしな話だよなと言いながら連中はアホなのかと付け加えるように話す。しかし、曙から指摘された通り深海棲艦がそんな単純な奴らではないことは涼風自身が一番が理解していたためだよなという表情を浮かべる。

 

 

 

鳥海『ですがなぜこのタイミングで輸送船団を含む艦隊が前に……、ますます連中の動きが読めないです…。一体何をしたいのでしょうか…』  

 

 

睦月『でも輸送船団ってことは狙いは沖ノ島なんじゃないかな?ほら、あそこには司令部があるから劣勢の戦況を覆すために大将の首を捕ろうとしてたりー』

 

 

皐月『確かに睦月姉さんの言うとおりそれはあり得るかもしれないね。だってこの辺には深海棲艦の占領してる島はないから補給物資を載せた輸送船団がくるはずはないし』

 

 

青葉『つまりその輸送船団には沖ノ島を占領するための上陸部隊が乗っている…ということですね…!』

 

 

 

しかし何故輸送船団をこのタイミングで出してきたのか、鳥海でさえも深海棲艦の動きが読めないようで首を傾げながら唸るように考えていた。とそんな中で睦月が閃いたようにその輸送船団の狙いは沖ノ島ではないかという仮説を立てる。

確かに、現状を考えると艦隊戦では深海棲艦側に勝ち目はないが、かといってこちらが完全に優勢かと言われればそうでもない。だから敢えてその状況を狙い間を縫うように沖ノ島に強襲すれば司令部を陥落させることが可能。

そうなれば指揮系統が混乱して戦況が覆ってしまうというのも充分にあり得てしまう。そんな仮説を立てた睦月や皐月の考えに、手のひらをぽんっと叩きながら納得の表情を青葉は浮かべていた。確かにこれなら劣勢の状況で輸送船団が前に出てくる辻褄が合う。

 

 

 

霧島『とは言えどそうなればみすみす輸送船団を見逃すわけには行きませんね……。見つけて確実に仕留めなければ……。朝日さん、味方潜水艦が追尾していた艦隊の最終目撃地点は』

 

 

朝日『えっと…、最終目撃地点は沖ノ島海域からそれなりに離れていますが現在我が艦隊のいる海域の近くです』

 

 

秋山『俺たちの艦隊が一番近いみたいだな…、向かおうにも迎えるが……。…他の艦隊の動きは?』

 

 

瑞鳳『どの艦隊も状況からして手が空いていない可能性があります。流石にどこも余裕があるとは思えないですし…』

 

 

秋山『だよな…となれば俺たちが動くしかなさそうだな…。瑞鳳、航空隊の整備はどれ位かかる?』   

 

 

瑞鳳『ふぇ航空隊ですか…?稼働機全機の整備に関してはまだまだ時間が掛かりますが……』

 

 

 

霧島や朝日、はたまた瑞鳳の会話を聞いていた秋山は顎に手を当てながら少し考えているような雰囲気を一瞬浮かべていたがすぐに顔を上げて瑞鳳に航空隊の現時点で整備はどれ位かかるか尋ねていく。…が先程攻撃隊を収容したばかりのためまだまだ機体の整備には時間を要するため戸惑いながらも瑞鳳が答え、それに付け加えるように龍驤が秋山の発言に突っ込みを入れる。

 

 

 

龍驤『航空攻撃に関しては機体の損耗が激しいのは提督はんも知ってはるやろ。流石に空母機動部隊と同レベルの攻撃をやるなら一夜漬けで整備しても間に合わへんで』

 

 

大鳳『天山はともかく彗星に関しては整備に時間が掛かりますからね……。零戦ならなんとか一夜漬けのフル整備で半数以上出せますが…』

 

 

秋山『それはもちろん承知の上だ、だが別に輸送船団をさっきみたいに航空攻撃で蹴散らすとは考えてないぞ。可能な限り熟練パイロットは温存しておきたいからな』

 

 

瑞鳳『航空攻撃じゃないならあとは…あっ!(閃いた表情で)もしかして提督は消息を経っている敵輸送船団を索敵機で炙り出そうとしてませんか?』

 

 

秋山『そうゆうこった…!現状、その輸送船団の消息が不明で目的が司令部のある沖ノ島制圧という確定的な情報があったとしても輸送船団だけとは到底思えん』 

 

 

阿武隈『言われてみればそうかも…、この状況なら沖ノ島に来ることは確かだろうけどそれを決定づける情報が少なすぎますね…。その輸送船団だけとは限らないだろうし…』

 

 

 

龍驤に続いて大鳳もまだまだ航空攻撃レベルの機体整備には時間が掛かると眉を細めて発言していく。しかし秋山はそれでも構わないと答えて、攻撃ではなく索敵に使える機体可能な限り揃えるように三人に指示を出す。そんな提督の発言を聞いた瑞鳳はあっという声とともに彼が言いたいことが分かったらしく笑みを浮かべて、敵輸送船団をあぶり出すために使う気だというのを察して理解する。

そんな旗艦の表情を見てそうゆうことだと言わんばかりに首を縦に不利ながら話を続ける秋山。確かに現状の航路やその敵艦隊編成から察するに深海棲艦の目的は司令部のある沖ノ島への攻撃というのは誰でも想像出来てしまう。しかし仮にそうだとしてもまだそう決まったとは限らない。

 

 

 

 

 

霧島『確かに深海棲艦の現状戦力を考えてもこれだけとは思えませんね…。彼らは物量でモノを言わせて攻めてくるのは私達が一番知っていること…、輸送船団を敢えて囮にすることはあり得る話です』

 

 

榛名『それだけではなく提督としてはその輸送船団の編成を確認したいというのもあるのではないのでしょうか?現状敵艦隊の陣容が輸送船団を含むしか解っていません』

 

 

古鷹『流石に陣容が解らないのに待ち伏せで返り討ちにあったらそれこそ困るよね…、出来れば敵艦隊を把握してからしかけたいし…』

 

 

阿賀野『呑気に輸送船団待ち伏せしてて、その中に空母とかまさかのeliteで16インチ砲クラスの戦艦がいましたーってなったら流石に笑えないからねぇ…』

 

 

巻雲『やっ辞めてくださいよぉ阿賀野さん…(汗)縁起でもないことを…』

 

   

 

古鷹や榛名の言っていることも間違ってはおらず今時点では敵艦隊の陣容は輸送船団を含むとまでしか分かってないため護衛の艦艇などの編成確認が取れていない。そんな中で待ち伏せをしていて、実はその艦隊が強力な艦艇ばかりでしたとなれば笑えない所か返り討ちにあってしまう。一同の話を聞いていていた阿賀野がふとこんなことを口に出し、それがあまりにも縁起でもなかったため思わず巻雲が慌てながら突っ込みを入れていく。

 

 

 

雪風『とは言えどそれも有り得ないことではないですからね…相手はあの深海棲艦ですしどんな手を打ってくるか…』

 

 

大鳳『確かに…、分かりました…!明日までに索敵機に出せる機体の整備を可能な限り勧めておきます…!!』

 

 

龍驤『そうゆうことなら任せときーや!うちの整備班の連中は優秀やでな!他の艦隊の空母連中には遅れを取らへんで!』

 

 

瑞鳳『索敵を疎かになんて出来ないからね…!!提督の頼みならお安い御用だよ♪』 

 

 

秋山『しっかりと頼むぞ?あぁあと妖精達には無理はせずにできる範囲のことをやるように伝えてくれ。それと出雲、ちょっといいか?』

 

 

出雲『ふぇ?どうされましたか?』

 

 

 

瑞鳳達に一通り指示を出していった秋山はそれを確認するや否や先程まで静かに話を聞いていた出雲にいきなり振るように声をかける。この中では一応彼女も航空母艦なのだが先程の会話に含まれていないところを見るにどうやら出雲直接に対しての頼みが別件であるようだ。

 

 

 

秋山『君の航空隊の状況とかを確認したいんだ。機体の種類が瑞鳳達とは異なる上に状況次第でどう指示を出すか決めたくてね』

 

 

出雲『航空隊の状況ですか…?そうなると機体状態だけでなく弾薬などの状況も含まれる感じ…でしょうか?』

 

 

秋山『もちろん、可能な限り詳しく説明を頼む』

 

 

出雲『…なるほど、了解です…!ちょっと確認を取ってきますので少々お待ち下さい(そう言って無線を一旦切る)』

 

 

 

秋山の言うとおり、出雲が搭載しているF35Bなどのステルス戦闘機は瑞鳳達が搭載している零戦や彗星・天山などのレシプロ機とは天と地の差が生じるレベルで機体性能が異なる。それに搭載している兵器も違うため、それの確認を行うために直接彼女に確認を取ったというところだろう。秋山からの指示を受けた出雲は妖精達に確認を取るため少しお待ち下さいと伝えると一旦無線を切り、それから数分ほどして再び無線を繋ぎ直して書類片手に報告していく。

 

 

 

出雲『すみませんお待たせしました(繋ぎ直して)。とりあえず整備妖精の方に確認を取ってきましたが、空対艦ミサイル及び空対空ミサイルがあと全力出撃一回分しかないとのことです』

 

 

秋山『やはり誘導兵器の消耗が著しい…、パラオ空襲に敵艦隊強襲に全力迎撃を行ってもらったからな…。戦果を上げた分弾薬の消耗は激しい…か』

 

 

瑞鳳『今後の状況を踏まえるとタイミングを見極めた全力出撃も考えないといけませんね……』

 

 

出雲『はい……、あっでも戦闘機に関しての整備は明日までに終わらせるとのこと…!それに機関銃弾の残弾もまだまだ余力があります…!』

 

 

 

やはり彼女は現代戦では軽空母並に小柄の船体で更にはここまで全力攻撃を行うことを想定していない(どちらかというと基地から飛び立った機体の経由地に近い)ためミサイルの在庫もあまり余裕がないようだ。それ故パラオ空襲や敵空母機動部隊の攻撃でかなりの戦果を上げた分、弾薬の消費もそれなりにに激しいということは秋山も承知していたためやはりかという表情を浮かべる。

とは言えど、ミサイルなどの消費は激しいとは言えガンポッドの機関銃弾や機体の損耗はそこまで大した影響はないようで継続しての戦闘は行えるという報告を追加で笑みを浮かべながら出雲は続けていく。

 

 

 

秋山『あれだけの対空砲火で機体の損傷がないのか…やはり護衛の駆逐艦を一掃出来たことが響いているのかあるいは…速度に対応しきれてなかったのか…』

 

 

瑞鳳『どっちにしろ、出雲さんに出撃して貰うならここぞって時のタイミングで出す必要がありますね…。この戦闘もまだまだ続きそうですし…』

 

 

秋山『そうだな…、とは言えど今はその輸送船団を擁護する敵艦隊を見つけ出さなければ…。一体なんの目的で輸送船を含む艦隊を前面に……』

   

 

瑞鳳『だね…!……っととそれなら明日は忙しくなりそうだからそろそろ夕飯にしよっか♪お昼は戦闘の影響であまり食べられなかったし』

 

 

秋山『おぉもうそんな時間か…、そう言われれば腹減って来たな……』  

 

 

瑞鳳『ふふーん♪そうだと思ってもう作ってあるんだー♪しかも手軽に食べられて美味しいものにしてあるから♪』

  

 

秋山『そいつは楽しみだなー、瑞鳳の料理はシンプルだが味付けがよくて美味しいからな♪下手したら鳳翔さんにも張り合えるんじゃないか?』

 

 

瑞鳳『もっもう…提督ったら///(満更でもない)』

 

 

 

ひとまずはその輸送船団を含む艦隊を見つけ出す必要があるが今は機体の整備や日が暮れて来ているため航空隊の発艦は不可能になってしまうため明日へと持ち越しになることに。そのため各艦乗組員や艦娘はしばしの休息を得ることが出来たため早めの夕食や仮眠など、当番以外の妖精は各々の時間を過ごすのであった(瑞鳳と秋山に関しては相変わらずな雰囲気を見せてますね()羨ましいぜコンチクショー(作者の悲鳴))。

  

 

 

 

 

それから少しして

1900

吉野CICにて

 

 

 

吉野 OPS-28D妖精「……(対水上レーダーのスクリーンを真剣に眺めている)」

 

 

吉野 対空戦妖精「よお、今なら時間空いてるから戦闘糧食持ってきたぜ(トレーにのったおにぎりやコーヒーの入ったコップ(蓋付き)を持ちながらやってくる)」

 

 

吉野 OPS-28D妖精「おぉ、サンキュー助かるぜ(自分のを受け取り)」

 

 

 

吉野のCICではそれぞれ妖精達が持ち場について周辺海域の警戒をレーダーやソナーなどを駆使して行っているようらしく、それは対水上用レーダーの担当であるOPS-28D妖精も例外ではなく真剣な表情でスクリーンを眺めていた。しばらく画面とにらめっこしていると今夜の戦闘糧食であるおにぎりやコーヒーの入ったコップをトレイに載せながら対空戦妖精が運んでくる。

 

 

 

吉野 対空戦妖精「よっと…(隣の席に腰掛けながら)、さっきヘタれるぐらいの戦闘したっていうのに次は警戒かい…。そっちも大変だねぇ(おにぎりを頬張りながら)」

 

 

吉野 OPS-28D妖精「なあに…これも仕事のうちだから慣れてるもんだよ。とは言えど慣れん戦闘だから流石に答えたがな…」

 

 

吉野 対空戦妖精「まっそりゃそうか…、こっちもあの数を手動迎撃しろって吉野さんから言われたときは終わる頃まで伸びてないか心配で仕方なかったよ…(汗)」

 

 

吉野 OPS-28D妖精「お前なら大丈夫だろー、現にこうやっておにぎり美味そうに食ってんだし」

 

 

吉野 対空戦妖精「いやいや…、『腹が減っては戦はできぬ』っていうだろー?食えるときに食っとかないと体が持たないからかなー」

 

 

吉野 OPS-28D妖精「ははっ、違いない…!なら俺も食えるときにちゃちゃっと食べとくかー」

 

 

 

やはり慣れない世界や想定していないような場面での戦闘はかなり答えるようで少しお疲れな表情を見せながら雑談を挟みつつおにぎりを頬張っている。一応戦闘中に近い状況ではあるものの、時には休みを挟まないとやってられないようで少し楽しげな会話がCICに響いていくのであった。

 

 

 

 

 

 

 

吉野「……(モグモグ)『(ピピピッ!)えっと…?今いいかな吉野さん』むぐ、どうされましたか朝日さん?」

 

 

 

そんな楽しげなCICとは裏腹に艦橋では吉野が静かに黙々と給糧妖精から受け取った戦闘糧食であるおにぎりを口に頬張りながらお茶を啜っていた。しばらくそんな状況が続いたがそれを遮るようにインカムのスイッチが入ると同時に、戦闘中の雰囲気がまるで嘘かのように恐る恐るの声で朝日から無線(海自用の周波数)が入ってくる。

 

 

 

朝日『あっすみません…(汗)お食事中でしたか…?(アワアワ)』

 

 

吉野『いえ♪丁度食べ終わったところですから大丈夫ですよ♪それよりも何か聞きたそうな雰囲気見せてますが…』

  

 

朝日『あはは…、バレちゃったか…。実はそうなの、吉野さんにどうしても聞きたいことがあってさ』

 

 

吉野『聞きたいことですか…、まさか朝日さんから聞かれる日が来るとは思いもしませんでしたね…(汗)それで、聞きたいこととは……?』

 

 

朝日『えっとね……』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

朝日『吉野さんって、どうゆう経緯でこっちの世界に来たのかなって…?』

 

 

 

 

  

 

   

 

 

 

 

 

吉野『………え…?』

 

 

 

 

まさか朝日の口からそんな言葉が飛び出して来るとは思っていなった吉野は一瞬頭が真っ白になってしまい言葉が出ずじまいになっていた。更に言えば、自分が触れたくないような質問をここまで的確に当ててくるとも思っていなかったらしい。そんな吉野に気づいていないのか朝日はそのまま話を続けていく。

 

 

 

朝日『私は石垣島周辺海域で所属不明の潜水艦とやりあって撃沈されて…気づいたらここにいたんです。出雲さんに関してはドッグで改修工事を受けていて何故かこの世界に飛ばされてたって

聞いてますが…、そういえば吉野さんからは聞いてなかったなって思って…』

 

 

吉野『……それは……その……(少し言葉を詰らせて言いづらそうに)』

 

 

朝日『……?吉野……さん…?』

 

 

出雲『…朝日ちゃん、そこまでにしてあげて。吉野さんも話したくないことなんて一つや二つもあるわ』

 

 

吉野『出雲さん……』

 

 

 

どうやらあまり話したくない様子だが、朝日にどう説明したらいいのか分からずじまいな吉野は少し表情を曇らせながら言葉を詰らせていた。だがそれに気づいていない朝日はどうしたのかという顔で首を傾げていたが、それを見かねてか出雲が割り込むように無線で会話に加わる。 

 

 

 

朝日『えっあっ…!(汗)すっすみません吉野さん…!知らぬ間に失礼なことを…!(慌てて謝る)』

 

 

出雲『気になるのは分かるけどこうゆうときは触れてあげないのが気遣いってものよー?』

 

 

朝日『うぅ……、私もまだまだですね…。先輩の気遣いが出来ないなんて…(シュン)』

 

 

出雲『ふふっ♪まあ朝日ちゃんはこれからなんだしいろんなと学んでいけばいいわ…♪(そうゆう私達もなんだけど…ね(汗))』

 

 

吉野『……すみません出雲さん…、先輩として少々情けないところを見せてしまって……(ため息)』

 

 

出雲『いいのよ…♪時にはそんなときも誰にだってあるから(小声で)でもいずれかはちゃんと自分の口から話しなさいよ?』

 

 

吉野『はい…(ちゃんと…か…)』

 

 

 

今回は出雲のお陰で事なきを得たが、彼女から話したくないなら話さなくていいけどいずれはちゃんと話しなさいよ?っという言葉を告げられた吉野は複雑そうな顔をしながら夜空に包まれている空へと視線を映す。…果たして彼女はどういった経緯でこの世界にやってきたのか…?そして元いた世界で吉野の身に起こったこととは……? 

 

    

 

 

 

 

 

 

……それはまだ、誰も知る由もない……

 

 

 

 

 

   

 

 

 

 

翌日

2020年8月23日

0600

 

 

 

朝日が差し込んでくる中、登ってきた太陽の光に照らされた海面はキラキラと光ながら波揺らいる。だがそんな平穏な海面とは裏腹に海をかき分けながら突き進んでいるパラオ艦隊では朝っぱらから慌ただしく何やら準備に追われているらしい。

 

 

 

瑞鳳 整備妖精「ゆっくりだぞゆっくり!!間違っても艦載機壁にぶつけるんじゃないぞ!!」

 

 

瑞鳳 飛行甲板妖精「彗星を上げたら次は天山だ!効率よくいけよ!普段上げる機数よりも少ないんだからな!!」

 

 

龍驤 飛行甲板妖精「索敵隊第一陣が上がったら次は直掩機隊やで!艦隊防空任務に出る連中を待たせずにちゃっちゃと上げなはれ!」

 

 

大鳳「索敵第一陣格納庫作業完了!!あと20分で発艦可能です!!」

 

 

 

瑞鳳、大鳳・龍驤の三艦の飛行甲板や格納庫内では整備妖精や飛行甲板妖精が声を掛け合いながらせっせと作業に追われている。甲板上では点検作業を受けている天山や彗星などの攻撃機が爆弾や魚雷を搭載せずに駐機し、特に彗星に関しては増槽を右側の翼下に装備して暖気運転も終わらせているためいつでも発動機を動かせる状態で待機していた。

 

 

 

秋山『大鳳、索敵機を飛ばすならどんな陣容がいいか?』

 

 

大鳳『これだけ広い海域となると普通の索敵では見落としをしてしまう可能性があります。相手も常に動いていることを考えると二段索敵が妥当かと』

 

 

瑞鳳『現在稼働可能機体については私が彗星1機と天山3機の計4機が索敵に出せます…!』

 

 

龍驤『うちは天山4機と彗星2機の6機が出せるで…!』

 

 

大鳳『こちらちに関しては天山10機、彗星6機の計16機が発艦可能です…!』

 

 

秋山『天山と彗星合わせて合計26機か…、昨日から徹夜整備で揃えてもらったことを考えるとかなり揃ったか…。彗星に関してはこれよりも少なくなると踏んでいたが…整備妖精達には感謝しないとな…』

 

 

 

そんな中、秋山は瑞鳳、大鳳・龍驤の三人と索敵に関しての意見交換を行っており現在索敵機として発艦可能な機体の数などの確認作業に追われていた。ちなみに出雲は自分の出番がまだな関係か、この世界のやり方を学ぶために会話内容を真剣にメモを取りながら聞いているらしい。

 

 

 

大鳳『それで索敵陣容についてですが、まず第一陣として各空母から合計で13機を発艦させ、間に上空援護機を8機ほど飛ばしてから第二陣の13機という感じで行こうと思います』

 

 

秋山『13機ずつを二陣に分けての索敵線か、これなら一陣が仮に見落としても二陣の索敵機が見つけてくれるな。とは言えど早急に見つけなければならんからそんな悠長なことは言えんのだが……』

 

 

龍驤『せやなぁ…。…そういえば提督はん前に本土で新しく配備された新型偵察機の件はどうなったんや?確かパラオにも来るって話やったけど』

 

 

瑞鳳『その件なんだけど…、なんか新型偵察機の配備が遅れてるらしくてまだ各艦隊に行き渡ってないみたいだよ。だから近いうちに提督が直接本土に出向いて話をつけてくる予定だったんだけど…』

 

 

大鳳『…それが今回の大規模侵攻で予定が狂ったと…、というか提督本土まで直接出向く気だったんですか…(汗)』

 

 

秋山『ん?そりゃそうさ。うちは最前線なのに偵察機の配備が遅れるなんてことは言語道断、それに本土からの話じゃ生産体制は確率してるんだ。何、ちょっと捻ればすんなりくれるよ(悪笑)』

 

 

瑞鳳『すんなりって…(汗)どうせまた変なこと企んでる癖に、その顔でバレバレだよ(汗)』

 

 

龍驤『まあまあ、提督のコネは今に始まったことやないけどなぁ。とりあえず新型偵察機の件、期待してるでぇー』

 

 

出雲『…(…今に始まったことじゃないって…、この司令官どんだけコネ使ってるのよ…。しかも部下から期待されるって…(汗)』

 

 

 

索敵に関しての話をしているとふと思い出したかのように龍驤が本土で新しく配備された新型偵察機の受け取りはどうなっているのかと尋ねる。だがその偵察機の発動機がかなり複雑なためか、思うように生産が進んでいないようでまだまだ時間がかかるらしい。だがその件に関しては問題ないと言わんばかりに秋山が悪笑を浮かべながら答えて、何かしら策があることをほのめかすような雰囲気で話していた。

そんな相変わらずな提督に思わず苦笑いを浮かべる大鳳や瑞鳳に対して、慣れているのか龍驤は特に気にせずむしろ期待するような表情を浮かべている。

 

ちなみに話の一部始終を聞いていた出雲は、自分がいた世界ではあまり見ないような信頼される?コネを使いまくっている秋山に対してやれやれという表情を顔に見せるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

0620

 

 

 

それから少しして各空母の飛行甲板では発艦準備を整えた偵察隊所属の天山や彗星、また上空援護機を務める零戦隊が発動機の音を立てながらプロペラを回して待機していた。周辺では飛行甲板妖精が最終確認作業に追われており、その間を縫うように搭乗員妖精達が駆け足で愛機へと乗り込んでいく。

 

 

 

大鳳『こちら大鳳、偵察隊第一陣及び直援隊の発艦準備完了しました。二陣も同様で飛行甲板が開けばすぐにでも上げられます…!』

 

 

龍驤『うちも準備万端や!妖精たちの士気も問題あらへんで!!いつ指示を出されてもオッケーや!』

 

 

瑞鳳『私も二人と同様に準備が整ったよ提督!指示あればいつでもいけるよ…!』

 

 

秋山『…よし!大鳳と龍驤に打電しろ、索敵機発艦始め!なんとしてでも例の輸送船団を炙り出すぞ…!』

 

 

瑞鳳『はい…!!瑞鳳より各空母宛、索敵機発艦始め!いい?でっかい獲物を見つけ出しましょう!』

 

 

瑞鳳 飛行甲板妖精『索敵隊1番機発艦始め!ソイツは徹夜で整備した機体だ!間違ってもお釈迦にするんじゃないぞ!』

 

 

瑞鳳索敵隊 第一中隊 1番機(彗星)操縦手『当たり前だのクラッカーよ!偵察任務で機体なんぞお釈迦にしてたまるか!索敵隊1番機発艦する、でっかい獲物見つけてきますよ!』

 

 

 

各空母艦娘(出雲を除き)索敵隊や直援隊が発艦可能という報告が相次いで入ってくる中、それを静かに聞いていた秋山は待っていましたという感じで瑞鳳に発艦始めの合図を下す。もちろん提督の指示を聞いた彼女もほぼ同時に各航空隊に対して発艦命令を出していく。

発艦命令を受けた飛行甲板妖精が待機中の搭乗員達に発艦始めの号令をかけていき、先頭でプロペラを回しながら待機していた彗星が発動機を唸らせながら徐々に勢いつけて甲板上から飛び立つ。

 

 

 

瑞鳳 飛行甲板妖精『総員帽ふれぇぇぇぇ!!!』

 

 

瑞鳳 手空き妖精達『『帽ふれぇぇぇぇぇ!!!』』

 

 

瑞鳳『必ず帰ってきてねー!いい報告待ってるから!!』

 

 

 

瑞鳳や妖精達が見送る中、天山や彗星といった機体が次々と飛行甲板から飛び立っていく。大鳳や龍驤でもそれは同じようで妖精達などに見送られながらひっきりなしに離陸していくのが確認出来た。

 

 

 

大鳳 飛行甲板妖精『よっしゃおらぁ!次だ次!第一陣の索敵隊が全部発艦したら直援隊の番だ!それが終われば昇降機全部使って二陣の索敵隊を上げるぞ!』

 

 

龍驤 整備妖精『こっちは暖気運転終えたで!戦闘機隊が全部発艦すればいつでも二陣の索敵隊は出せる!』

 

 

 

だがいつまでも一陣の索敵隊を眺めているわけにもいかないため先程まで帽振れを行っていた妖精達はすぐさま次の発艦準備に取り掛かっていくのであった……。

敵空母機動部隊への強力な一撃を加え、激しい空襲もなんとか切り抜けたパラオ艦隊であったが新たに輸送船団発見との一報を受けるなどまだまだ予断を許さない状況が続いている。

もちろんそんな艦隊を逃すまいと秋山はすぐさま索敵機による捕捉と情報収集を瑞鳳達に指示して所在を炙り出すために探りを入れていくのであったが…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同時刻

伊19が見失った海域にて

 

 

 

 

ーフフ…、サァドコカラデモカカッテキナサイ…?ワタシガカワイガッテアソンデアゲルワ……♪ー

 

 

 

……この輸送船団には恐ろしい事実が隠されていることを……まだ彼女達は知らない……  

 

 

 

 

 

 




     


第十八話 隠れた刺客


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第十八話 隠れた刺客



敵空母機動部隊の置き土産をなんとか切り抜けたパラオ艦隊。しかしそんな安息の時間が続くはずもなく味方潜水艦の報告で近くの海域を彷徨く輸送船団がいるとの一報が飛び込む。
一体なぜこの海域に輸送船団を含む艦隊がいるかは不明だがこのまま放っておくわけにもいかず、すぐさ索敵隊による大捜索を開始するのであった…。




 

 

0700

沖ノ島近海

 

 

 

ブォォォォンン!!!

 

 

 

海鳥の囀りが聞こえくるほどの平和な海が広がり、現在進行系で沖ノ島を巡る日本海軍と深海棲艦による激しい戦闘が嘘かのような世界がそこにはあった。…がそんな平穏な空間を切り裂くように周囲にレシプロ機の音が響き渡っていく。ふと音のする上空に視線を向ければ、雲の合間を縫うように飛行する一つの黒い影が……

 

 

 

瑞鳳索敵隊 第一中隊 1番機 操縦手『こっちにはいないか…、そっちはどうだ?なんか見えるか?』

 

 

瑞鳳索敵隊 第一中隊 1番機 偵察手『いや、特に異常はないぜ。あるとすれば呑気に寛いでる海鳥が数匹いるくらいだな』

 

 

 

その黒い影の主である瑞鳳所属の偵察隊1番機である彗星が緑色の塗装と赤の日の丸をなびかせながら雲の合間を飛びながら周辺索敵を行っていた。この機の目的は例の輸送船団を含む艦隊であり、彼ら以外の偵察機もそれぞれの海域で同様に隈なく探しているだろう。

 

 

 

瑞鳳索敵隊 第一中隊 1番機 操縦手『しっかしなんで深海棲艦の連中は輸送船団含む艦隊を前面に押し出したのか…、これがまた動きが読めんことを来たよ…』

 

 

瑞鳳索敵隊 第一中隊 1番機 偵察手『動きが読めんのは今に始まったことじゃないだろう?…とは言えど輸送船団を引っ張り出すのは流石に想定外だったがな…、本当に沖ノ島が目的なのか…あるいは…』

 

 

瑞鳳索敵隊 第一中隊 1番機 操縦手『だがそんなのを俺たちが気にしてても仕方ない。そこは瑞鳳さんや提督がなんとかしてくれると信じて俺たちはその輸送船団を見つけ出すことに注力するぞ』

 

 

瑞鳳索敵隊 第一中隊 1番機 偵察手『りょーかい、見落としがないように隈なく海を見ておきますよっと』

 

 

 

 

その機内では操縦手と偵察手の妖精が周囲を警戒しながら報告にあった輸送船団についての話をしているようで、彼らもなんで輸送船団を拮抗している戦場に押し出したのか不思議で仕方ないらしい。だがそんなことを気にしててもどうにかなるという訳でもないので今はひとまずその艦隊を見つけ出すために注力するのであった。

 

 

 

 

 

 

同時刻 

パラオ艦隊にて

 

 

 

瑞鳳「まもなく一陣の索敵隊が索敵線に到達する頃ですが未だ報告はありません」

 

 

秋山「流石に艦隊の規模が大きくてもすぐには見つからんか…、向こうも偵察機に警戒しているということだろうが……」

 

 

 

艦橋のテーブルに広げられたパラオ艦隊近海の海図に三隻の空母から解き放たれた偵察機の模型を等間隔で配置しながら瑞鳳と秋山、そして妖精たちが索敵隊からの報告を待っていた。時間的には索敵線に差し掛かる頃だがやはり向こうも偵察機には常に警戒しているのか現時点でこれといって報告は入ってきていない。

 

 

 

瑞鳳 電信妖精「深海棲艦の無線傍受も試みてはいますが…、流石に傍受されるほど向こうも甘くはないですね…」

 

 

秋山「……(少し考えて)そういえば追尾していた時伊19はその輸送船団に捕捉されてないのか?」

 

 

瑞鳳「はい、沖ノ島からの報告によればそのようですが…。深海棲艦の動きも気づいたような反応は見られてないので…」

 

 

秋山「それもそうか…輸送船しか確認出来ない距離から追いかけてたんだからな…。それにこの報告によれば無線封鎖は徹底していたようだし…」 

 

 

 

索敵隊による哨戒線だけでなく深海棲艦隊の無線傍受でも何か得られないか試みているようだが流石にそこまで相手も甘くないようでこれといって情報は入ってこないようだ。そんな妖精たちの話を聞いていた秋山であったが少し考えて、味方の潜水艦(伊19)が追尾していたときの状況が気になったのか瑞鳳にふと尋ねる。

ここまで見つからないとなると、もしかしたらその輸送船団は潜水艦の追尾に気づいている可能性も充分あり得る。しかし追尾していた味方潜水艦娘は無線封鎖や無音航行などの完全隠密を徹底したという報告を聞くや否やその線も薄くなってしまう。

  

 

 

敷波『輸送船団がいるなら護衛の駆逐艦もいるだろうけど、流石に隠密行動を徹底する潜水艦を見つけるのは至難の業だね…』

 

 

雪風『呉にいたときに第六艦隊と演習をしたことがありますが…、隠密行動をしている潜水艦を探すのは複数隻でも骨が折れそうなぐらい見つけるのに苦労しました…』

 

 

阿賀野『まあ見つからないように追尾して戦力を把握するのか潜水艦の役目だしねぇ…。私達だって潜水艦からの情報でこうやって動けてるっていのもあるから…』

 

 

睦月『敵味方にとっても潜水艦の哨戒は欠かせないってことにゃしねぇ…』

 

 

皐月『うん…』

 

 

 

輸送船団がいるなら間違いなく護衛の駆逐艦なども含まれているのは確実だろうが、それでもまるで忍者のように追いかけてくる潜水艦を見つけるのは簡単ではない。現に護衛任務に長けている敷波や呉では歴戦と歌われた雪風の言う通り、攻撃などのアクションを起こさずにコソコソと追いかけてくる潜水艦を探し出すというのは仮に対潜哨戒機がいても骨が折れる作業だ。

 

 

 

霧島『ですがそれはあくまでこちらの予想に過ぎません、実際例の輸送船団が味方潜水艦に完全に気づいてないかと言われればそれは定かではないですし』

 

 

鳥海『私もそれには同意です。輸送船団に気づいてるけど敢えて泳がせていた可能性も捨てきれませんし…、ひとまずは索敵機からの情報を待ったほうがいいかと…』

 

 

榛名『確かにそうかもしれませんね…。現状を考えるならここは霧島の言う通り慎重に動いた方が得策です、提督』

 

 

秋山『確かに霧島たちの言う通りかもな…、そのために索敵機を放ったんだ。とりあえずは周辺警戒をしながら情報待ちか…』

 

 

 

 

 

  

  

 

 

それと

同時刻

 

 

 

大鳳索敵隊 第一中隊 5番機 操縦手『クソッタレ!コイツらどこから湧いて来やがった!?(ダダダ!!)うおっ危ね!(機銃掃射を紙一重で交わす)』

 

 

 

雲がある程度で静寂な海域だと思いかけた矢先、それを打ち破るように突然として機銃掃射音が響き渡る。直後、1機の天山が雲の合間を縫うように勢いよく突っ切ってまるで何かを振り切るように右へ左へと蛇行しつつ飛行していた。そんな索敵機を追いかけるようにその後を3機のヘルキャットが12.7ミリ機銃のシャワーを浴びせながら追随していく。

 

 

 

大鳳索敵隊 第一中隊 5番機 偵察手『この辺には島はないはず…!それにコイツはヘル猫ですから確実に空母から飛んできた奴です!』

 

 

大鳳索敵隊 第一中隊 5番機 操縦手『相変わらず物量だけは一人前だなこんちくしょう!あんだけ空母潰してもまだ艦載機飛ばせる奴がいるとはな…!』

 

 

大鳳索敵隊 第一中隊 5番機 機銃手『喋る暇あるなら操縦桿動かせ…!ってまた来やがった!来んな地獄猫!(ヘルキャットの愛称)』ダダダダ!!

 

 

 

どうやら例の輸送船団を探し待っているを時に運悪く哨戒任務をしていた戦闘機小隊と遭遇してしまい今に至るようだ。右へと左へと急旋回でなんとか振り切ろうとする天山に対してゴツい機体を飛ばすための大排気量発動機を唸らせながらもヘルキャットはしつこいほど追いかけ回していく。

もちろんただではやられまいと天山艦攻の機銃手が後部に備え付けられている7.7mm旋回機銃で決死の反撃を試みるが激しい旋回機動が続いているため思うように命中弾を与えられない。

 

 

 

大鳳索敵隊 第一中隊 5番機 操縦手『こりゃ簡単に諦めてくれなさそうだな…!!こうなったら雲を利用して振り切る!簡単に落とされてたまるっかてんだ!』

 

 

大鳳索敵隊 第一中隊 5番機 機銃手『おうよ!せっかくの新型機をおじゃんになんてしたくないしな!あと射点についたらコイツをまたぶっ放すぜ!』

 

 

大鳳索敵隊 第一中隊 5番機 操縦手『あぁ任せた!それと偵察妖精、大鳳に至急打電しろ!コイツが空母艦載機なら近くに空母を含む艦隊がいるかもしれねからな!』

 

 

大鳳索敵隊 第一中隊 5番機 偵察手『了解!直ちに打電します!!(無線機で大鳳へと打電していく)』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大鳳『提督!索敵に出ていた一陣の天山艦攻から緊急電です!現在沖ノ島北東海域で敵戦闘機からの追撃を受けているとのこと…!』

 

 

 

5番機の報告はすぐさま艦隊に伝わり、打電を受けた大鳳は急いで旗艦の瑞鳳に無線を繋いで少し焦りながらも正確そのまま情報を伝えていく。あの海域の近くに深海棲艦の基地は確認(そもそも深海棲艦に取られた島がない)されてないことを考えるにこの戦闘機は空母艦載機なのな確実、ということは…。

 

 

 

秋山『敵戦闘機か…、あの近くに島はないことを考えるにコイツらは恐らく空母艦載機…。問題はどこから来たかだが…』

 

 

龍驤『可能性として考えられるなら味方潜水艦が見つけたっていう輸送船団の護衛の空母か、また別の艦隊から飛ばされた艦載機のどっちかやろ。というかそれしか考えられへんし』

 

 

瑞鳳『龍驤さんの言う通りかもね、実際それしか考えられない…。けどそのどっちかでも少し厄介なことになりそうだけど……』

 

 

秋山『あれだけ空母を潰されてもまだ戦闘可能な空母を持つ艦隊がいるってことだからな…。続報待ちだが場合によって見直しも考えなければならんだろう…』

 

 

 

まだ直接発見したわけではないが、恐らくこの艦載機はまだ発見されていない新たな艦隊か輸送船団の護衛についている空母からのどちらかから飛び立ったのは間違いないだろう。しかし、仮にそれが判明したとしてもパラオ艦隊からすればどちらも厄介なことになりかねない。

というのも、もし新たな艦隊の空母から飛び立った艦載機の場合、現在存在が確認されている輸送船団の艦隊と同時に対処しなくればならなくなりより慎重にならざる終えなくなる。

そしてもう一つの可能性であるその輸送船団に空母がいた場合、相手は警戒機を飛ばせることを意味し、こちらの接近を把握出来き近づく前に逃げられてしまう。これでは撃破など到底難しいし、空からの反撃も覚悟しなければならない。

 

 

 

時津風『もし輸送船団に空母がいるならけっこうな数がいそうだね〜。だってその輸送船団もけっこうな数なんでしょ〜?』

 

 

巻雲『そうなった場合更に近づきにくくなりますね…。最低でも護衛空母、相手が本気で護衛してるなら正規空母を組み込んでいてもおかしくはないかと…』

 

 

吉野『あれだけ主力の空母艦隊に損害を与えているのにまだいるんですか……、なんか先の大戦でアメリカ軍が見せた物量作戦に近いものを感じます…』

 

 

曙『そんなもんじゃないわよ、深海棲艦の物量なんてそれを遥かに駕いでくるもの。もちろんそれだけじゃなくて質だって最近じゃ私達と張り合えて…いや下手すれば追い越されてる場合だってありえるわ…』

 

 

出雲『あっ貴方達を追い越してる場合って……そんなこと…』

  

 

阿武隈『…いえ…有り得ます…、アイツらなら…』

 

 

 

だがどっちにしても、深海棲艦がまだこれだけの空母戦力を沖ノ島海域侵攻作戦に投入しているという事実は変わらないため時津風や巻雲は少し眉を細めながら話を続けていた。その会話を聞いていた吉野からすれば、その光景はまるで先の大戦でアメリカが見せた物量作戦のようにも思えてしまう。

だが、深海棲艦と何度も戦っている曙からすればそれとは比べ物にはならないのは嫌というほど理解しているため吉野の発言を真っ向から否定する。

彼女のその発言を聞いてそんな馬鹿なという表情を浮かべた出雲に対して、阿武隈が深海棲艦なら充分あり得ると真剣な表情を浮かべながら口を開く。

 

 

 

阿武隈『私達と人類が反抗を始めた当初こそは確かに練度では明らかにこちらが上回っていました…。たった5年でここまでの海域や島を取り返せたのはそれが1番の要因ですから…、でも…』

 

 

曙『そんなイケイケムードは長くは続かなかったわ。その後はどんどん深海棲艦の連中も学習していって私達と張り合えるようになってきたの、戦力も戦術もね』

 

 

秋山『曙や阿武隈の言う通りだな…、それこそここ最近じゃ本土近海に潜水艦や通商破壊部隊が入り込んでくる状況が続いている。…厳重な警戒網を潜り抜けてこれるほどの練度を持った連中がな…』

 

 

 

深海棲艦への本格的な反撃が始まった最初こそ、艦娘の力を得た人類は瞬く間に奪われた海や島などを電撃的に次々と奪還。本土近海まで追い込まれていたのがまるで嘘のように押し返して破竹の勢いを想像させるような進撃で突き進んでいた。たった5年でここまでの海域を取り戻せたのも深海棲艦が艦娘の登場に混乱していた、そして練度面でのバックアップをしっかりとしていたのが1番の要因かもしれない。

しかし、戦争が続くにつれて深海棲艦の練度や作戦指揮能力もじわじわと高くなっていき気づけばこちらとほぼ互角に渡り合えるほどの進化を遂げてしまう。更には新しい艦種が増えたことによって各方面で行われていた反撃作戦は思うようにいかなくなり完全に膠着状態に陥ってしまった。

 

 

 

朝日『……つまり、私がここに来たときに起こったあの二度の戦闘も…』

 

 

曙『…貴方があのとき現れなければ今頃船団は壊滅的な状態になっていたでしょうね……。……何より下手すればうちの…』

 

 

皐月『曙ちゃんそこまで…瑞鳳さんが…』

 

 

瑞鳳『……(無線越しでもわかるなんとも言えないような雰囲気)』

 

 

曙『あっ……ごっごめん…』

 

 

 

秋山の言う通り安全だと思われていた本土近海でさえもここ最近は深海棲艦の潜水艦艦隊や航空機による通商破壊がじわじわと行われ、現状護衛艦隊に力を入れざる終えない状況になっている。それほど深海棲艦の練度が高くなっていることを意味ししており、まさに朝日が初めてこの世界に来たときに遭遇したあの戦闘こそがまさにいい例だろう。

阿武隈や秋山などの話で勢いよいをつけすぎてあまり触れてはいけないようなことに触れかけた曙であったが皐月の一言でハッと我に返ったのか普段の表情がまるで嘘かのように小声で謝る。

 

その謝罪の主で、皐月が会話を止めた理由である瑞鳳はどこか不安そうで怯えるような雰囲気を見せていたが秋山が切り替えるように話の話題を無理くり変えてなんとか逸らす。

 

 

 

秋山『とにかく…だ!その輸送船団を見つけて編成を確認しないことには話は始まらん。時間的には多少余裕があるし報告を待ってからも遅くはないしな』

 

 

古鷹『そうだね…!(秋山に合わせて)あまり焦ってもいいことはないし…、とは言えど場合によっては夜戦で直接殴り込む場合も考えないと…』

 

 

阿賀野『つまり、私達の出番ってことね…!それなら新鋭軽巡洋艦の阿賀野に任せなさい…!』

 

 

巻雲『私だって負けてられませんよ…!相手が誰であろうと土手っ腹に酸素魚雷を打ち込んであげます…!』

 

 

瑞鳳『……(ごめんね提督…、気を使うようなことしてくれて…)』

 

 

秋山『…(なぁに、困ったときはお互い様さ。曙だって悪気はないんだしな。…だが辛かったら俺やみんなを頼れよ?)』  

 

 

瑞鳳『…(うん…、ありがとう…♪)』

 

 

 

 

それから三十分後

パラオ艦隊の進行方向海域にて…

 

 

 

龍驤索敵隊 第二中隊 2番機 操縦手『んー…特にこれと言って…異変はないか……、おいそっちらはなんか見えるか?』 

 

 

雲と雲が点々と空に広がる中、その間をを縫うようにいた索敵隊第二陣の龍驤機である天山艦攻が飛んでおり操縦手席から操縦妖精が周囲を隈なく見たわしていた。しかし特にこれと言って…異変は見られないため一緒に乗っている偵察手と機銃手担当の妖精にそっちはどうかと尋ねる。

 

 

 

龍驤索敵隊 第二中隊 2番機 偵察手『こっちは何もねーぞ、海ばっかでたいくつしそうやな』

 

 

龍驤索敵隊 第二中隊 2番機 機銃手『うちもや、見えるやとしたら呑気に海を漂ってる海鳥ぐらいか。こっちは戦闘中やのにねぇ…』

 

 

龍驤索敵隊 第二中隊 2番機 操縦手『まあアイツらには関係ないことだしなぁ…、とは言えどそんな悠長なことは言えへん…、一体どこいったんや深海棲艦の連中は』

 

 

 

母艦から飛び立ってからかなりの時間が経って広大な海域をかれこれ飛んでいるが敵艦隊どろこか異変すら見受けられない状況に目を凝らしている搭乗員妖精の表情は少しあきれかけているようにも見える。それも無理はない、何しろさっきから見えるのは穏やかな青色の海しか見えずあるだとしても呑気に寛いでいる海鳥がチラホラいる位の比較的平和な状況だ。

  

 

 

龍驤索敵隊 第二中隊 2番機 機銃手『そんなもん沖ノ島に殴り込むためにコソコソ移動しとるやろ。大艦隊とはいえ堂々と進める艦隊やないんやし』

 

 

龍驤索敵隊 第二中隊 2番機 操縦手『とは言えど流石にそろそろ見つけなヤバい。相手に空母がいるなら先を越されてもおかしくないからへんな…、…って偵察妖精なにさっきから黙ってんだ?』

 

 

龍驤索敵隊 第二中隊 2番機 偵察手『……いや…、気の所為かもしれないんだけどさ…。さっきあっちの海域で複数の航跡っぽいもんが…』

 

 

龍驤索敵隊 第二中隊 2番機 操縦手『……偵察妖精、それを詳しく話せ。機銃妖精、周辺に敵機がいないか警戒してくれ』

 

 

 

だがそんな会話をしていた最中、先程まで会話に参加していた偵察妖精が喋らなくなったことに気づいた操縦妖精がどうしたのかと何気なく声をかけていく。…がそんな何気ない会話を戦場の空で永遠に続けられるハズもなく、偵察妖精が放った一言で機内の雰囲気は一変する。

 

 

 

龍驤索敵隊 第二中隊 2番機 偵察手『えっあっあぁ…、とは言えど雲の隙間からチラッと見えただけだからなんとも言えんが…あっちの海域でさっきも言った通り複数の航跡が見えたんだ…』 

 

 

龍驤索敵隊 第二中隊 2番機 操縦手『……複数の航跡……、たぶんそれは気の所為やないで…。恐らく提督はんが言ってた輸送船団を擁護しとる艦隊やな…』

 

 

龍驤索敵隊 第二中隊 2番機 機銃手『おいおいマジかいな…。気の所為とかやなくて?一瞬しか見てないんやろ?』  

 

 

龍驤索敵隊 第二中隊 2番機 操縦手『あほう、一瞬とは言えど複数の艦隊航跡を見間違えるわけあるかい。とりあえず接近して確認するけお前らしっかり周辺警戒してなはれよ?』

 

 

龍驤索敵隊 第二中隊 2番機 偵察手『りょっ了解しました…!』

 

 

龍驤索敵隊 第二中隊 2番機 機銃手『あいよ』

  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

偵察妖精が一瞬見たという複数の航跡が確認された海域、ぱっと見は雲に隠れて上空からは確認しづらいがよくよく目を凝らせば船らしき黒い影か何隻も陣形を組んで航行しているのが見えてくる。味方のようにも思えるが雰囲気からしてそれは全く違うというのはすぐに分かり禍々しいオーラを漂わせながら航行している艦隊、その正体であり秋山達が探しだそうとしている輸送船団が目的地である沖ノ島に向けて航行していた。

 

 

 

ーシカシ本当二ヨカッタノカ…?タノカンタイハカナリレッセイダガ…ー

 

 

 

そんな中輸送船団を護る形で陣形の左側を航行していた重巡リ級は艦隊旗艦である戦艦ル級に対して少し不安そうに尋ねる。というのも、複数の艦隊を持って侵攻を始めたこの沖ノ島侵攻作戦であったがいざ蓋を開けて見ればほとんどの方面で劣勢であり場所によれば押し返されてるところもあるくらいだ。そうなるのも無理はない…

 

 

 

ータシカニソウダガ、旗艦艦隊カラハ予定ドオリ作戦ヲススメヨトノオタッシダ…。マッタク…アノヒトハナニヲカンガエテイルノヤラ…ー

 

 

ー…デスナ…、イクラ彼女ガイルトハイエド輸送船団の我々を前二ダスナンテドウカシテマスヨ…(ため息)ー

 

 

ーアラ?ソンナ二私ッテ信頼サレテナイノカシラ〜、貴方達ノ指揮官ニハカナリキニイラレタケドネ〜ー

 

 

 

輸送船団の旗艦を務める戦艦ル級は不満そうに語るリ級を宥めながらも自分もどこか納得いかなさそうな表情を浮かべていた。実際、戦闘に特化している艦隊のほとんどが甚大な被害を喰らっているのに足手まといになりかねない自分たちが前に出たところで変化があるとは思えない。そんなことを愚痴っていると、どこからか声が聞こえるもともに陣形の外側を航行していた1隻の潜水艦?らしき深海棲艦がふと口を開く。

 

 

 

ーソリャソウダヨ…、我々ト同ジ深海棲艦トハイイキナリアラワレタノダゾ?シカモ見タコトノナイ艦種ナノニアッサリ信用ナンテデキルハズガナイダロ…ー

 

 

ーンモ〜、ツメタイワネェ〜。タシカニ貴方達深海棲艦デハミナイ姿ダケド雰囲気デソレクライワカルデショ?ー

 

 

ーダガナァ……(どこか納得以下なさそうに)ー

 

 

ーソレニ、ソンナ無駄話シテテイイノカシラ?フリキッタトハイエサッキマデ敵ノ潜水艦ニ追イカケラレテタノヨー

 

 

 

どうやらこの輸送船団が前面に出てきているのもこの潜水艦が原因のようだが…、深海棲艦独特な雰囲気を出しながらも明らかに見た目は二次大戦のアメリカ潜水艦とは異なっておりむしろ現代の潜水艦のような姿をしているのは気の所為だろうか…?

とはいえいくら指揮官が気に入っていとしてもこんなあっさりに信用していいものかと、納得いなさげな雰囲気のル級でたったが、その潜水艦は先程までのゆったりした口調を切り替わり真剣な口調で話し出していく。…どうやら先程まで追跡していた伊19の存在は既に悟られていたようだ。

 

 

 

ー貴方達ノ敵デアル 艦娘ノ潜水艦ヲ ミツケラレタノモ ワタシガイタオカゲナノヨ? モシイナケレバコノ艦隊ノ 情報ナンテダダモレダッタデショウネ(クスクス)ー

 

 

ークソムカツクイイカタダ… ケド実際ソウダカライイカエセナイ…(歯ぎしりしつつ)ー

 

 

ーマアマテ ココデ喧嘩シテテモナニモハジマラン 連中ニミラレタトイウコトハ バレルノハ時間ノ問題ダ シャベル暇ガアルナラ…ー

 

 

ー艦隊右舷ガワ 雲ノ隙間カラ敵機ラシキ影ヲ確認シタト ロ級ヨリ報告ガ  方位180  距離2万 高度800ー

 

 

 

どうやら話の内容から新種?の深海棲艦らしく、伊19を捕捉したのも彼女のようだがちょっと性格は小悪魔のようで時折リ級と小競り合いをしているようだ(まあ言っているとこは間違いないのだが)。そんな二人を旗艦のル級が宥めたその直後…、艦隊外縁を航行していた1隻のロ級が敵機らしき影を見つけたと空母ヲ級からの報告が飛び込んでくる。

 

 

 

 

ーアラアラ〜モウオイデナスッタミタイネ〜 ソレジャワタシハミラレル前ニ隠レルカラアトハヨロシク〜(そう言ってそそくさと隠れるように潜航する)ー

 

 

ーアッチョマテ普級…!……クソ、自分ダケノコノコㇳカクレオッテ……ー

  

 

ーソノキモチハワカランワケデモナイガ 喧嘩シタイナラ戦闘ガオワッテカラニシロ ヒトマズハ目先ノ対処ダー

 

 

ーッ…!了解……(舌打ち)ー

 

 

 

  

 

 

 

 

 

 

同時刻

輸送船団を含む深海棲艦隊上空にて

 

 

 

龍驤索敵隊 第二中隊 2番機 偵察手『見えました…!!やはりさっきのは見間違いではなかったようです!』

 

 

龍驤索敵隊 第二中隊 2番機 操縦手『それは分かったからすぐに陣容の確認だ!空母がいれば迎撃機が飛んでくるのも時間の問題だぞ!!』

 

 

 

やはり先程の航跡は見間違えではなかったようで雲の合間ではその正体である龍驤隊の天山艦攻が飛行していた。時折隙間から見える多数の艦影を見ながら興奮を隠せない偵察妖精であったが敵の迎撃機がくる前に陣容を確認せるように操縦妖精から急かされる。

 

 

 

龍驤索敵隊 第二中隊 2番機 偵察手『はっはい!とりあえずは艦隊中央に報告通りの輸送船団を確認!編成は補給艦及び輸送艦ワ級を確認!どちらもeliteです!数は恐らく30隻ほど!』

 

 

龍驤索敵隊 第二中隊 2番機 機銃手『こっちも見えた!ってクソなんてこったい!なんとなく予想はしてたがコイツら空母も有してんのか!?編成は空母ヲ級2隻及び軽空母ヌ級4隻!どっちも前の空母機動部隊で腐る程みた連中で輸送船団と同様にeliteだ!』

 

 

龍驤索敵隊 第二中隊 2番機 偵察手『あとはお馴染みの重巡リ級や駆逐艦イ級及びロ級、あっあと戦艦ル級も確認!数は……、って敵空母より敵機の離陸を確認…!どうやらこっちの存在はバレてるみたいです…!』

 

 

 

雲を利用して近づいていくが目の前には案の定海上を埋め尽くすのではないかというレベルの敵艦隊が第一警戒航行序列で陣形を組み航行していた。編成からしても味方潜水艦が捕捉していた輸送船団で間違いはないようで中央に位置する形で空母ヲ級やヌ級、更には補給艦(シマロン級)及び攻撃輸送艦ワ級(マッコーリー級)(が所狭しと並ぶように航行しており、それを護る形で戦艦ル級(ニューメキシコ級)や重巡リ級(ペンサコーラ級)・駆逐艦イ級及びロ級(フレッチャー級及びグリーブス級)の姿が…

 

ひとまず全容は確認出来たため追加の情報を得ようとした天山搭乗員達であったが流石にそこまで間抜けな敵ではなかったようで確認された空母から迎撃機らしき影が発艦していくのを偵察妖精がしっかりと捕捉する。

 

 

 

龍驤索敵隊 第二中隊 2番機 操縦手『ちっ!動きの早い奴らだぜ…!偵察妖精、すぐに母艦に打電しろ!機銃妖精戦闘用意!一応雲を使って振り切るが念の為頼むぞ!』

 

 

龍驤索敵隊 第二中隊 2番機 偵察手『はっ!直ちに龍驤さんに打電します!(慣れた手付きで素早く打電していく)』

 

 

龍驤索敵隊 第二中隊 2番機 機銃手『おうよ!こっちだって簡単に落とされてたまるかってんだ!』

 

 

 

一応隠れるように飛んではいたもののどうやら雲の隙間から本機の存在を見られたようで、あまりの動きの良さに思わず操縦妖精が舌打ちを溢しながら敵機に完全捕捉される前に振り切ろうと雲の中へと進路を変えながら後部銃座妖精と偵察妖精に指示を手早く出していく。

 

 

 

 

ー空母ヲ級及ビヌ級カラ迎撃機発艦ヲ確認 現在向ッテオリマスー

 

 

ーソウカ …トハ言エドコチラノ存在ハ完全ニバレタナ 大方母艦ニ打電シテイル頃合イダロウ 艦隊戦闘用意!対空、対水上及ビ対潜警戒ヲ最大限ニ引キ上ゲロ!ー

 

 

ー直援機隊発艦急ゲ!敵機ノ来襲ニ備エルンダ!ソレト警戒機及ビ攻撃隊発艦用意!輸送船団ニ指一本触レサセルナ!ー

 

 

ーフ〜ン 敵ノ偵察機ニミラレテカラノ動キガナカナカハヤイワネ〜。マアソコハ流石eliteクラス?ッテトコロカシラー

 

 

 

敵機視認の報告が入ってから間もなくしてすぐにル級が全艦に戦闘配置を命じていく。それを受けて偵察機を攻撃するための戦闘機隊が発艦していくのと同時に敵艦隊の襲来に備えるために攻撃隊の準備にも空母部隊は慌ただしく対応に追われている。

そんな中、先程重巡リ級から普級と呼ばれた潜水艦はなんだかんだ言われながらもしっかりと対応している艦隊を海中から潜望鏡で見ながら関心の表情を浮かべていた。

 

 

 

ーオシャベリハソコマデダ オマエモオレタチノタメニ闘ウコトヲ条件二ヒロッテヤッタンダゾ 弾薬ダッテナントカヨウイシテヤルンダカラシッカリ働ケー

 

 

ーハイハイ〜、人使イガ荒イ連中ネェ全ク…(渋々と) マアデモ…フフッ♪サテト、コッチデノ生活もワルクハナイシ 一体ドンナ敵ガ出テクルノカシラネ〜?セイゼイタノシマセテモラワナキャ♪ー

 

 

 

だが悠長に喋っていたせいでル級に少しキツめに注意されてしまったため渋々と返事を返しながら自身も戦闘配置の準備に取り掛かる。…だが会話から察すると彼女はこの世界の住人ではなさそうにも思える……、そして本来の深海棲艦ではあり得ないような現代艦を模様した見た目…果たしてこれは……

 

 

そして彼女は何者で朝日達とはなんの関係があるのだろうか……?

 

 

 

 

 






第十九話 警戒網の攻略

(ちなみにワ級について原作では補給艦という設定であはありますが深海棲艦の輸送艦の設定がなかったのでこの物語オリジナルで追加しました)


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第十九話 警戒網の攻略


(タイトルを変更しました)


一難去ってまた一難というのはまさに今の状況が当てはまるだろう。空母機動部隊を撃退したパラオ艦隊に飛び込んだ敵輸送船団の存在、規模からしてもちろん放っておくことは出来ないため秋山提督は直ちに稼働機をかき集めての広範囲索敵を行うように指示を出していく。

案の定、味方潜水艦の報告通り司令部のある沖ノ島に向けて航行していた敵艦隊を捕捉。直ちに偵察機妖精は艦隊に当てた打電を飛ばしていくのであった……。


…だがまだ一同は知る由もなかっただろう……
この輸送船団にはまさかの事実、そして衝撃的で実に恐ろしい隠し玉が隠されているということに…… 



(それと話は逸れませんが
皆さんのご存知の通り艦これで睦月型や軽巡パースなどの艦娘に携わり様々な魅力的な絵を描いて来られた草田草太さんに関しての衝撃的な訃報が飛び込んで来ました…
作者自身草田さんのことを知ったのは最近ですが、イラスト自体はかなり好きだったのでよく見ていたので非常に悲しい思いです。

改めて草田さんに感謝の言葉を伝えたいと思います
今まで素敵な絵を世に送り出してくれてありがとうございました。これからはゆっくりと疲れを癒やしてください
ご冥福をお祈りします)


 

 

偵察機が輸送船団を見つけてから同時刻

パラオ艦隊にて

0800

 

 

秋山「瑞鳳、現状分かっている情報を教えてくれ。手短に、尚且つ分かりやすくな?」

 

 

 

龍驤隊の偵察機が輸送船団を見つけたという情報はすぐさまパラオ泊地艦隊へと送られて、艦隊では先程までの緊迫した雰囲気が一変し慌ただしくその対応に追われていた。そんな中、秋山は落ち着いたような表情で瑞鳳に送られてきた艦隊についての情報を手短に分かりやすく説明するように頼む。少し難しいような依頼だがそこは流石秘書艦と言わんばかりに瑞鳳は頷きながら電信妖精から送られてきた電文を見ながら口を開く。

 

 

 

瑞鳳「オッケー、先程龍驤さんの偵察機が航行中の敵輸送船団を本艦隊の進路上で確認。かなりの大規模な艦隊らしく、輸送船や補給艦だけでもワ級クラス30隻いるとのこと。もちろんどれもeliteみたいです」

 

 

秋山「やはり本格的な上陸部隊を載せてると見ていいだろうな。連中の狙いはやはり司令部のある沖ノ島か?」

 

 

瑞鳳「現状ではなんとも言えませんが輸送船団の進路からして恐らくそうかと、尚偵察機からの追加情報ではその護衛艦隊に空母ヲ級を含む空母部隊も確認されたみたいです。隻数はそれぞれヲ級が2隻、ヌ級が4隻。どちらもワ級同様eliteクラスとの情報も…」

 

 

秋山「昨日相手をした空母機動部隊と同様のメンツか…、恐らく大鳳の偵察機を追い回したのもここから来た連中だな。数は少ないが輸送船団の連中を護衛するには過剰すぎる位だなこりゃ…、んで可能なら空母以外の全容も本来なら確認したいが…」   

 

 

瑞鳳「…流石に敵艦隊に見つかって迎撃機を上げられてるとなれば護衛艦の確認どころじゃなくなるよね…。とりあえずは輸送船団と空母の有無を見れただけでもいい方だとは思うけど…」

 

 

龍驤『とりあえず艦種ぐらいはザッと確認出来たけぇどぱっと見特に変わらないメンツやなこれ、戦艦ル級に重巡リ級、あと駆逐艦イ級やロ級ってところかいな』

 

 

 

自分の要望通りに瑞鳳が手短にしながら分かりやすく説明してくれた内容を聞きながら秋山はやはりかという表情を浮かべている。味方潜水艦からの報告通り敵艦隊の中心核は輸送船団でありそのほとんどが補給艦・攻撃輸送艦ワ級を占めているようで、進路からして狙いは予想通り司令部のある沖ノ島で間違いはないようだ。  

更に大鳳の偵察機を追いかけ回した戦闘機隊の母艦らしき空母部隊が護衛艦隊として組み込まれていることも確認されており深海棲艦の本気度がこれだけでも伺えてしまう。 

 

出来れば輸送船団の護衛に当たっている艦隊の全容を確認したかった秋山であったが、相手に空母がおり更に迎撃機が出ているとなれば偵察機もそれどころではないようで流石に厳しいかという口調で呟く。まあ、数までは捕捉出来なくても艦種識別はなんとか出来たのが幸いであり空母の有無が判明しただけでも上出来かもしれない。

 

 

 

阿武隈『とは言えど少し厄介なことになりました…。輸送船団に空母が含まれているもなると場合によっては近づきにくくなるかも…』   

 

 

大鳳『そうですね…、空母がいるってことは相手は警戒機を飛ばせること。つまり私達の接近にいち早く感づくことが出来て逃げることも出来ますし場合によっては攻撃隊で追い払うことも可能です』

 

 

出雲『生憎こっちは敵空母機動部隊を攻撃して間もない上に現状偵察に戦力を割いてる。となるとさっきみたいな強襲は厳しいし航空攻撃ではこちらが不利です…』

 

 

霧島『…まあ最悪それに関しては夜襲で仕掛ければ敵の空襲は回避出来ますが…、偵察機に見られたとなればこちらの存在はうっすらですがバレている可能性があります。となれば相手は最大限の警戒レベルになっていまゆからその状態でどうやって接近するかが1番の問題です』

 

 

 

空母組や阿武隈、さらに霧島の言う通り輸送船団の護衛に空母が含まれているとなれば簡単には近づけなくなる。というのも空母がいるということはつまり警戒機などを周辺に飛ばせることを意味しており、こちらが近づこうにもすぐに感づかれて逃げられてしまう。仮にも警戒機の問題をクリアしても位置がバレたとなれば逃げるための時間稼ぎとして敵攻撃隊からの激しい空襲を受けてしまい、輸送船団の攻撃どころの話ではなくなってしまう可能性が出てくる。

最悪、空襲に関しては日が落ちた夜間に接近して殴り込めば問題はないがそれでもこちらの存在がうっすらとだがバレていることを考慮すれば相手もそれなりに警戒していることも十分あり得る話だ。

 

 

 

鳥海『となればいかに敵の空襲を避けながら察知されずに接近するというかが大事になりますね。戦力では拮抗していますがこちらは輸送船団さえ潰せれば相手の上陸作戦を頓挫させられますし』

 

 

雪風『鳥海さんのおっしゃる通りです、あとは警戒体制を敷いているであろう敵艦隊にどうやって感づかれずに近づくか…ですね…』   

 

 

青葉『…そう考えると味方潜水艦はよく見つからなかったですよねぇ。相手に空母がいるとなれば対潜哨戒で見られてもおかしくはなかったと思いますが…』

 

 

秋山『タイミングが良かったんだろうな…、まあそのお陰で輸送船団の存在が露見したわけなんだけども…。だがそれよりも問題なのはどうやってこの艦隊に仕掛けるか…なんだよな』

 

 

 

しかし他に手がない以上どうにかしなければならないため、一同はどうしたものかと首を少し撚りながら何かいい案がないか考えていた。だがそれさえどうにかすればあとは鳥海の言う通り輸送船団を潰すだけであり、こちらが得意としている夜戦に持ち込めれば勝機は充分ある。……問題はそれに達するまでの壁をどう乗り越えるか…という話なのだが…

 

 

 

龍驤『…それならこうゆうのはどうや?初めから逃げられそうならあえてそうさせるとか』

 

 

曙『はい…!?龍驤アンタさっきの会話聴いてたの…!?輸送船団の撃破が目的なのに逆に逃げられたらそれこ…そ?ってもしかして…!(何か閃いた模様で)』

 

 

龍驤『ほっほっー♪流石は曙はんやなー、あれだけでピンと来たんかー(ニヤリ)』

 

 

朝日『…?えっと…それはどうゆう意味でしょうか…』

 

 

 

だがそんな半分手詰まり状態の仲間に助け舟と言わんばかりに何か閃いた龍驤がるとこんな提案を出すが、その意味が最初分からなかった曙から反射的に鋭いツッコミが炸裂しかけていく。…しかしその最中に彼女の言っている意味を理解したのか途中からあっという表情を浮かべて、龍驤はそんな曙に対して流石と言わんばかりの笑みを見せる。

 

…が朝日を含め何人かはなんのことか分からないようで頭の上に?を浮かべながら首を傾げていた。

 

 

 

龍驤『単純なことや。敵艦隊が高確率で逃げるなら敢えて逃げさせて誘導、そこをウチらが得意の夜戦で強襲すれば被害を抑えつつも打撃を与えられると思うんやけどな』

 

 

榛名『…つまり艦隊を二分して一方で追い立ててもう一方はその逃走経路に展開、待ち伏せして夜間に強襲するってことですかね?』

 

 

敷波『なるほどー、それなら逃げる前提でこっちも動けるし敵艦隊の動きが手に取るように解るってことかー。けどそうなると二分した艦隊の内訳とかどうするの?』

 

 

龍驤『ふっふっ…!それもきちんと考えとるで…!って言わんでも大方みんなわかってるとは思うけぇどな、水上部隊と空母部隊を二分。空母部隊で追い立てて水上部隊が待ち伏せして強襲って感じかいな』

 

 

阿賀野『えっでもうちの空母部隊は攻撃隊に出せるほどの艦載機の整備ってまだ終わってないよね?それだと敵艦隊を追い立てるほどの攻撃は無理だと思うけど…』

 

 

龍驤『確かに阿賀野の言う通り、うちらから攻撃隊に出せるほどのタマは揃ってないし無理に出しても単純な殴り合いじゃこっちが不利や』

 

 

大鳳『なっなら龍驤さんの提案自体が破綻してs…『何も攻撃隊で追い立てることはない、ようは敵艦隊の誘引さえ出来ればええはずやで?』…!?』

 

 

時津風『ちょっとどうゆうことさー龍驤さーん。早く教えてよー(ムスー)』

 

 

秋山『まあ待て、そんな不満そうな顔しなくていいんじゃないか時津風?龍驤、何か策があるんだろ?』

 

 

 

龍驤の提案から察するに今の艦隊を二分、誘導側と攻撃側に分けて一方を先回りさせて待ち伏せ、そしてもう一方でその待ち伏せエリアに敵艦隊を誘導させて叩くといった感じのようだ。…が誘導側である空母部隊は先の機動部隊強襲で多少なりとも損耗しており、機体の整備が完全ではない以上今の航空戦力で追い立てるほどの攻撃を出すのは無理ではなかったのかと阿賀野が疑問の声を投げかける。

確かに彼女の言う通りでありそれは1番龍驤が痛感するほど知っていることでもあるため否定もせずにあっさりと認める。

 

…だがそれなら彼女が立案した作戦が最初から破綻してしまうのではないかという不安が過ぎった大鳳がそう呟く。発言は真っ向から否定しつつなにも攻撃隊で殴り込むことではないという口調で龍驤が反論し、先程からなんのとこか分からなかった時津風が不満そうな表情を浮かべるがそれを秋山が宥めながら詳細の説明を促す。

 

 

 

龍驤『もちろんや、そもそも敵艦隊は確かに強力な艦艇を揃えてるけどソイツらの目的はあくまで上陸部隊を載せた輸送船団の護衛。つまり積極的にドンパチするのは嫌うはずやで』

 

 

睦月『言われて見ればそうかも、いくら強い護衛艦隊でも輸送船団を擁護しながらの戦闘なんてしないもんねー。だってそれで護衛対象の上陸部隊に被害出したら本末転倒だもん』

 

 

皐月『あー、睦月姉さんの言う通りかもね。敵艦隊としては避けれるなら可能な限り戦闘は避けたいだろうし、もしものためにお護りとして強力な護衛の艦艇組み込んでるのかも。状況が状況だし』

 

 

龍驤『そーゆこと、つまりその艦隊からすれば敵艦隊が居そうな海域には自分から近づかないはずやで?…それがいるとわかってるなら尚更な…!(ニヤリ)』

 

 

瑞鳳『…なるほど、そうゆうことですね…!つまり龍驤さんの作戦はこうゆうことです…!艦隊を二分したあと私達空母部隊が航空隊を発艦、もちろん出すのは攻撃隊ではなく制空隊。それで所定の海域で暴れて貰ってここの海域に私達はいるよって錯覚させて敢えて逃げてもらう』

 

 

曙『…最初から逃げられるのが分かっているなら敢えて逃げさたほうが潔いからね。んでその逃げる先を上手いこと誘導してその先に水上部隊が待ち伏せして敵攻撃隊の攻撃を避けられる夜間に奇襲する…って算段かしら?』

 

 

龍驤『おー、瑞鳳はんに曙はんもなかなか鋭い線いってくれるなー♪ほとんど正解なもんやで、文句なしの百点満点や…!』

 

 

秋山『なるほどな…確かにそれならこっちの攻撃隊を損耗せずに敵艦隊の動きを制約出来る…。輸送船団を擁護してるか積極的な戦闘は避けたいだろうしな』

 

 

 

言われてみれば確かにそうかもしれない、といのもいくら空母を有し強力な攻撃隊を保有している敵艦隊がいるとはいえど彼らの本来の目的は上陸部隊を乗せた輸送船団の護衛。そのため他の艦隊に比べれば積極的な戦闘は避けたがるはずで、仮に戦闘でもして船団に被害を出したら本末転倒になりかねない。

ということは敵艦隊がいると分かっている海域には例の深海棲艦側は絶対近づいて行くとはなく、仮に近づいてきても警戒機でこちらを見つけて攻撃隊などで露払いするか全速力で振り切ろうとするはず。

 

つまり龍驤が考えている作戦はこうだ。まず先程話した通り艦隊を二分して誘導側の空母部隊と待ち伏せ側の水上部隊に分けていく。そして空母部隊が戦闘機隊を発艦させて所定の海域で警戒機などを撃墜してもらい、輸送船団側に敵艦隊がここにいると錯覚させる。敵艦隊側からすれば可能な限り接触は避けたいため距離を取ろうとしながらも沖ノ島へ向かう進路を取るだろう。だがそれを逆手にとって水上部隊でその進路上に待ち伏せ、航空攻撃を受けにくい夜間を待って敵艦隊に殴り込むということだ。

 

 

 

霧島『それなら攻撃隊を出さなくても敵艦隊を誘導出来ます…!輸送船団を擁護してるなら積極的な接敵は避けたいからそこを上手く利用すれば…!』

 

 

鳥海『…なら早速作戦会議といきましょう提督…!あまり時間はありませんがこの気を逃すわけにも行きません…!』

 

 

秋山『もちろんだ…!瑞鳳、すぐに作戦会議を始めるぞ…!さっき説明してくれたあの情報をみんなにも共有してくれるか?それと龍驤の作戦立案も…!』

 

 

瑞鳳『もちろん任せて…!そうゆうのは得意だから…!』

 

 

青葉『ほほーっ、なんだか面白くなってきましたねー。青葉もお手伝いいたします♪』

 

 

 

こうして、彼女の提案した作戦に乗ることにした一同はそれに向けての作戦立案や艦隊の状況確認などの作業に慌ただしく追われることに。もちろんそれは瑞鳳や秋山も例外ではなく旗艦として準備に必要な敵艦隊の情報を分かりやすく纏めてた書類の整理や龍驤の考えた案の詳細確認の把握に早速取り掛かるのであった……。

 

 

 

 

 

 

8月24日 

0900

深海棲艦隊

輸送船団にて

 

 

 

 

 

ーソウイエバ ナンデ敵ノ潜水艦ヲ見逃シタノ? イクラ距離ガアッタトハイエド 旧式ノ潜水艦相手ナラ私ニ頼メバ一瞬ダッタノニ マサカノコノコト自分達ノ情報ヲ敵ニ上ゲテタトカジャ ナイワヨネ?ー

 

 

 

敵艦隊の来襲に備えて警戒態勢を敷いていた深海棲艦の輸送船団であったが、そんな中ふと気になったことがあったようで晋級が旗艦のル級になぜあの時敵潜水艦を攻撃しなかったのか尋ねる。彼女の性能は不明だが遠距離を航行していた敵潜を攻撃出来ると明言しているあたりかなり高い能力を有しているようだ。

 

 

 

ーソンナワケナイダロ コチラダッテソンナ呑気ニ敵艦隊へ情報ヲ上ゲルホド優シクハナイシ…ー

 

 

ーナラナンデ攻撃シナカッタノ?ー

 

 

ー…司令部カラノ指示ダヨ…戦闘ガ避ケラレナイ場合ヲ除イテ哨戒艦相手ニハ極力交戦ヲ行ウナッテ出港前ニ直接ナ…。…マア索敵機ハ流石ニ今後ノ影響ヲ受ケカネンカラ迎撃指示ハ出シタガ…ー

 

 

 

どうやら先程追尾されていた伊19を攻撃しなかったのは司令部直接からの指示が原因のようで、戦闘が避けられない場合や索敵機などの遭遇を除いて哨戒艦に遭遇した場合は極力交戦しないようにということらしい。…が本来であれば艦隊の情報などがバレるのを防ぐために発見したとなれば直ちに撃沈命令を出すはずであり現に先程の索敵機相手には迎撃命令が出されている…、なのに何故哨戒艦への攻撃に司令部は許可しないのか…?

 

 

 

ーデモソレナラ索敵機相手二攻撃指示ヲ出シタノニ矛盾ガ生ジルワヨ〜?司令部ノ理論デ行クトソッチモ無視シナイトイケナイハズ…ー

 

 

ーサアナ…、ソモソモ哨戒艦モ情報ガバレル前ニ撃沈マタハ撃破シナイトイケナイハズナノニ ナンデカ哨戒艦ニハ攻撃スルナ…トー

 

 

ーナンカオカシナ話ヨネェ〜 哨戒艦ニハ攻撃スルナナノニ索敵機ニハシテモ構ワナイッテ イクラ至近デ今後ノ戦闘ニ避ケラレナイトハ言エド〜ー

 

(ナニカ裏ガアリソウネェ、コノ艦隊ダッテ私ガ来テカラ急遽編成サレタラシイシ…。…フフッ、モシカシタラ…ネ…♪)

 

 

だがその理論で行くなら索敵機を攻撃したことに矛盾が生じてしまい、仮に艦隊の情報が明かされるという理由なら哨戒艦も撃破、または撃破する必要が出てしまう。司令部が何を思ってこんな指示を出したのか、ひとまずは指示に従ったル級ではあったが内心は何を考えているか全く掴めずにいるらしい。経緯を聞いた晋級は表上不思議そうな表情をしているが裏ではこっそり理由を探っているようで密かに笑みを浮かべていた。…そんな彼女の想像を遮るように空母ヲ級から緊急電で無線が飛び込んでくる。

 

 

 

ー東側ノ海域へ警戒任務ニ出タ警戒機ヨリ緊急電!我敵戦闘機ノ猛攻ヲ受ツツアリトノコト!ー

 

 

ーコッチモダ!東側ノ海域ニ偵察へ向カッタ連中ノ何機カガ複数ノ戦闘機カラ追撃ヲサレテイル!モウ既ニヤラレテル連中モイルゾ!ー

 

 

ーナニ!?(東海域ニ向カッタ連中ノホトンドガ敵戦闘機カラノ攻撃ヲ受ケテルダト…?モシヤ…)…他ノ海域ニ向カッタ奴ラハ攻撃ヲウケテイナイノカ…!ー

 

 

ーイエ!東側ノ海域以外ニ向カッタ警戒機カラハナニモ…!!東側ノ海域ニ敵機ハ集中シテルモノト思ワレマス!ー

 

 

 

どうやら敵艦隊通報を行うために各空母から発艦した警戒機から相次いで敵機の襲撃を受けたという緊急無線のようで報告では既に何機かやられているらしく各空母の深海棲艦は焦りの表情を顕にしていた。…が攻撃を受けているのは艦隊から見て東のエリアに向かった警戒機や索敵機のみでありそれ以外に向かった機からは特にこれといった報告を受けていないためル級はまさか、という顔をしながら確信する。

 

 

 

ークッソ…!早速仕掛ケテキタカ…!ー

 

 

 

 

 

 

 

輸送船団に緊急電が入って来た同じタイミング

艦隊東側海域にて

 

 

 

ークソ!コイツ等何処カラ現レタンダ…!!サッキマデイナカッタダロ…! オイオマエ!艦隊ニハチャント打電シタダロウナ!?ー

 

 

ー当リ前ダ!トックノ等二打電シテル!ソレヨリモドウスルンダコレ!?ココママジャジリ貧…(ダダダダダダ!!)ー

 

 

大鳳制空隊 第二中隊 中隊長機『ほれほれ!!そんなよそ見してたら隙だらけですぜ!!』

 

 

ーアァ…!二番機ガヤラレタゾ!コッチノ戦闘機隊ガイナイカラッテ好キ放題暴レヤガッテ…!ー

 

 

 

輸送船団に緊急電が入ったのとほぼ同じ時間、その東側海域の警戒に出ていた警戒機隊はかなりの規模による敵戦闘機隊の襲撃を受けて激しく混乱していた。というのも敵艦隊接近を通報するためならある程度の攻撃は覚悟していたがここまで警戒機相手に本気を出されるとは思っていなかったらしい。艦隊に打電しながらもなんとか逃げ回っていたドーントレス隊であったがその中の1機が僅かな隙を見せてしまう。

 

もちろんそれを見逃すような相手なんかではないため、あっさりと突かれてしまい大鳳隊の零戦からのシャワーのような機銃掃射を喰らいコントール不能で黒煙を吹き上げながら墜落していく。

 

 

 

大鳳制空隊 第二中隊 2番機『全く敵戦闘機が居ないっていうのは最高だねぇ…!こりゃ撃墜記録が捗るってもんだ!(逃げ回る警戒機隊を追い回しながら)』 

 

 

瑞鳳制空隊 第二中隊 3番機『ですがこんなんで本当に敵艦隊は釣られるのですかね?いくらここに限って私達が暴れているとはいえど…』

 

 

瑞鳳制空権 第二中隊 2番機『ここまで本気で迎撃戦を展開してんだ!それにこの海域の警戒機相手を徹底的にやるってことは本隊がここにいると思うはず…!つまり嫌でも反応せざる負えないってわけさ!』

 

 

龍驤制空隊 第二中隊 4番機『さっきの空戦での汚名返上だ…!やられたぶんは艦隊が違えどきっちりお返しさせて貰うらからな!喰らえ!(ダダダダダダ!)』

 

 

 

敵艦隊の航路制限及び敵攻撃隊の東側海域誘引のために展開している瑞鳳・大鳳・龍驤隊の第二中隊は数日前起こった艦隊防空戦での汚名返上を果たさまいと言う勢いで敵機に対して猛追を仕掛けていた。僅か2機小隊が3つの6機しかいない警戒機隊に比べ戦闘機隊は30機近くというもはやオーバーキルではないかというレベルで攻撃を行っており、敵機も後部銃座で必死の反撃を試みているがほぼ焼け石に水と言ってもいいだろう。

 

 

 

ー不味イ!コノママジャ全滅ダゾ!増援ハマダカ!?コンナニ敵戦闘機ガイルトナレバ敵艦隊モスグソコジャナイノカ…!ジャナケレリャ警戒機相手二ココマデ本気にナランゾ!ー

 

 

龍驤制空隊 第二中隊 中隊長機『さてとぉ…!わざわざ第二中隊の制空隊全機でここまで出張ってきたんや!引っかかってくれにゃつりに合わないってもんよ…!』

 

 

大鳳制空隊 第二中隊 8番機『おうよ!ついでに4番機妖精を落とした憂さ晴らしもさせてもらうぜ!うちのマドンナに手を出した罪は重いぞ…!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー第一次攻撃隊発艦急ゲ!敵艦隊ハ近イゾ!ソレト攻撃隊発艦完了次第全艦取舵イッパイ用意!敵艦隊ノ追跡ヲ逃レルタメニ進路ヲ変針スル…!ー

 

 

 

警戒機隊がパラオ艦隊の戦闘機隊による襲撃を受けていることを受けて旗艦のル級は東側海域に敵艦隊がいると断定。まだ正確には確認出来ていないがこの状況ではどう考えてもそこにいるとしか思えない(そもそも警戒機相手に戦闘機総出で襲いかかっていることを考えるとそれしかないだろう)。そのため、味方機の援護を兼ねて第一次攻撃隊の発艦命令を下して、ヲ級やヌ級の飛行甲板では攻撃隊の発艦準備が慌ただしく行われていた。

 

それと同時にいるであろう敵艦隊の追跡を振り切るために艦隊各艦に攻撃隊発艦後、取舵で追跡を振り切るために北に進路を変針するように指示を出す。

 

 

 

ーソレト他エリアニイル警戒機隊ヲ呼ビ戻セ…!第二次攻撃隊二組みミ込ンデ戦力ノ増強ヲ計ル!ー

 

 

ー第一次攻撃隊間モナク発艦可能ニナリマス!第二次攻撃隊二関シテモ現在格納庫作業準備完了、一次攻撃隊発艦後二作業開始シマス!ー

 

 

ー警戒機隊、アト十分デ全機帰投シマス…!ソノ後ハ各母艦ノ指示デ着艦…!ー

 

 

ーナルベク作業ヲ前倒シ二スルヨウ整備連中二伝エロ…!攻撃隊デ敵艦隊ヲ足止メマタハ混乱サセテソノ隙二追跡範囲外二離脱スル…!ー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

瑞鳳 電信妖精『瑞鳳戦闘機隊より入電!我敵機部隊と現在進行形で交戦中とのこと!相手はやはり例の輸送船団から飛び立った警戒機隊と思われます!戦況はこちら優勢…!』

 

 

 

深海棲艦の輸送船団に報告が行っているのと同時刻、連合艦隊から分離したパラオ艦隊の空母部隊にも同様に接敵した戦闘機隊からの報告が飛び込んでくるように次々と絶え間なく入ってきてるようだ。そんな混戦状態の無線なのにも関わらず瑞鳳の電信妖精は慣れた手付きで各機からの報告をあっという間に纏めて瑞鳳に伝えていく。

 

 

 

瑞鳳『やっぱり警戒機飛ばしてたね…!とりあえず戦闘機隊には無理しないことを改めて徹底させて…!恐らくすぐにでも敵攻撃隊がそっちに押し寄せて来ると思うから!』

 

 

瑞鳳 電信妖精『はっ!改めて全機に徹底させておきます…!』

 

 

龍驤『ほー、瑞鳳はん張り切ってますな〜。てっきり旗艦変更で提督が霧島はんに移乗したから離れ離れになって寂しがってると思ったんやけど〜(ニヤニヤ)』

 

 

瑞鳳『もー…!龍驤さん茶化してないで作戦に集中してくださいー…!/// (まあ…寂しいかって言われたら寂しいんだけど…/// )』

 

 

龍驤『ほいほい〜、相変わらず素直やないんやから。ホンマどっかの誰かさんとソックリやな〜。大鳳はんもそう思わんかー?』

 

 

大鳳『えっ!?…あっまあ確かにそうかもしれませんが…。あっでも提督さんが霧島さんに移動するとき少し寂し…『あー!?///それは言っちゃ駄目ー…!!/// 』』

 

 

朝日『あはは…、なんだかいろいろと大変そうです瑞鳳さん…。これが旗艦の役目なんですね…』←違うそうじゃない

 

 

出雲『朝日ちゃーん…、それはちょっと違うと思うわよ…(汗)(瑞鳳を見て何か察したような表情を浮かべながら密かにお幸せを願っている)』

 

 

 

…とそんな一面もありながらも誘導側である空母部隊所属の瑞鳳・龍驤・大鳳・出雲、そして護衛を任された朝日の5人は与えられた作戦を遂行し僚艦艦隊の突入援護を行うために敵機に対して猛攻撃を戦闘機隊に行わせていた。これ程全力で叩き潰せば敵艦隊は嫌でもその海域にこちらがいると錯覚し攻撃隊を送り込んで来るはずだが…

…どうやら案外早く乗ってくれたようだ。

 

 

 

出雲制空隊 第一中隊 2番機『こちら警戒線の2番機…!レーダーにかなりの数の反応を探知!やっこさん引っかかってくれました…!』

 

 

出雲『…っと噂をすれば…♪(カチ)こちら出雲…!警戒線を張っていた本機が侵攻する敵攻撃隊をレーダーにて捕捉…!やはりこちらの戦闘機隊がいるエリアに向かっています…!』

 

 

朝日『…こちらでも対空レーダーで捉えました…!機種は不明ですがおよそ40機近い反応が東側海域に接近中!恐らくは敵空母部隊の第一次攻撃隊かと…!』

 

 

瑞鳳『…よし!ここまでは作戦通り…!電信妖精、すぐに本隊に報告してください…!『作戦第一段階完了、直チニ第二段階ニ移行ス』と…!』

 

 

瑞鳳 電信妖精『はっ!直ちに別働隊に暗号文及び偽電で打電します!(素早く通信機器を操作する)』

 

 

瑞鳳『それと敵攻撃隊に関しては足止め程度で構わないのであまり無理をしないことも伝えて…!』

 

 

瑞鳳 電信妖精『そちらの件も了解しました!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

瑞鳳制空隊 第二中隊 中隊長機『…瑞鳳より打電!奴さんこちらの誘導に引っかかったな…!この海域に攻撃隊を送り込んだそうだとよ!』

 

 

 

瑞鳳からの打電はすぐさま警戒機隊と戦闘をしていた第二中隊各機にも共有される。やはり敵は予想通りこちらの誘導に引っかかったようで、それなりの規模の攻撃隊を送り込んで来たようだが生憎警戒機隊はすでに壊滅させているため戦闘機隊は周囲警戒を先程から行っているらしい。

 

 

 

大鳳制空隊 第二中隊 9番機『よぉし…!それじゃ第2ラウンド行きましょうか!敵さんにはこちらのお遊びに付き合って貰わないとですな…!』

 

 

龍驤制空隊 第二中隊 7番機『はっはー!そりゃもちろんそうやろて!このまま夜までダンスパーティーといきまへんと…!ウチらが満足しませんと…!』

 

 

大鳳制空隊 第二中隊 中隊長機『だが気は抜くんじゃないぞ…!敵さんはまだまだ元気一杯、しっかりと手厚く饗せ(物理)よ!』

 

 

全機『『了解(はい)(あいで)!!』』

 

 

 

先程の警戒機攻撃や周囲警戒などで疲れているはずなのだが士気については問題はないようでむしろ元気が逆に湧き出てくるように感じてくる。そのため各機気合い十分というオーラを漂わせながら押し寄せてくるであろう敵攻撃隊を待ち構えるために迎撃体制に入っていくのであった…。

 

   

 

 

 

 

???

 

 

 

ー…ナニ…、アル空母機動部隊ガ壊滅寸前マデ被害ノコオムッタ…?シカモ旗艦喪失デ戦闘不可ト…ー

 

 

 

ここは太平洋のどこかにある諸島、恐らく雰囲気からして深海棲艦の基地と見ても間違いはないだろう。あちこちに港の設備や軍港としての機能、大規模な飛行場が展開してあり時折陸上機や空母艦載機が降り立っていることが確認出来た。港にも多数の戦闘艦や輸送艦などの支援艦が停泊しており、造船ドッグでは建造途中だろうか…?深海棲艦の艦船らしき影も確認出来る。

 

あちこちに建物らしきものが建っている中、司令部らしき建物では親玉みたいな深海棲艦が先程報告書らしき書類をマジマジと見ていた。…どうやらここが沖ノ島侵攻作戦の司令部で彼女がその指揮を握る泊地棲鬼(flagship)という深海棲艦だが何やら気になる内容が飛び込んで来たため驚きの表情を見せていた。

 

 

 

ー…ソウイエバ数週間前二連中ノ本土近海デ活動シテイタ 通商破壊艦隊ノ艦載機30機ノウチ20機ガ一瞬デ消滅…、ソシテ精鋭ノ潜水艦部隊6隻ガ 輸送船団襲撃中二通信途絶。ノチニ撃沈ガ確認サレテタワヨネ…ー

 

 

ーイヤソレダケジャナク 今回ノ大規模侵攻作戦ニ備エテ奴ラノ南方方面ノ泊地ニ対シテ 空襲作戦ヲ実行シタトキモソウダッタワ…。パラオ泊地ダケ決定打ガ与エラレズニ 甚大ナ被害ヲ受ケタハズ…ー   

 

 

 

 

どうやらパラオ艦隊の総攻撃を受けて壊滅的な打撃を受けた空母機動部隊の残存艦艇からの報告らしく、あの精鋭揃いがここまで一方的な被害を被るとは思わなかったようだ。…がそんな中で過去に日本本土近海、そして各泊地空襲作戦でパラオ諸島で攻勢を強めた攻撃隊が逆に返り討ちにあったという話を思い出してまさか、という顔を見せる。

 

 

 

ー…確カ彼女(晋級)ガココニ来タノモ 同ジクライノタイミング…私達ヨリモ遥カニ高性能ナ武装ヲ備エテ 連中ニ対シテアウトレンジデ攻撃ガ可能…ー

 

ー……マテヨ、確カ壊滅的ナ打撃ヲ受ケタ艦隊モソレニ近イ状況ニ遭遇シテタワネ…。…マサカ…ー

 

 

 

だが報告書を見ていくうちに明らか晋級と酷似したような性能に近い攻撃をどの艦隊や航空隊も受けているという共通点、それに気づいたらしく泊地棲鬼は何かを察知したのか眉を思わず細めてしまう。だがいくらこちらの世界の住人でなく本来であればあり得ない性能を有していても彼女はこちらに味方するというのは確認済み……

 

それに人類側がそんな高性能な兵器を艦娘に装備したというというのは耳にしていない。……いろいろな線をなぞりながら考察をしていた泊地棲鬼はある答えにたどり着いた。

それはどう考えたって一つしか浮かばない…… 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー……マサカ連中ニモオ尋ネ者ガ…?ー       

 

 

 

 

 

 

 

 

 







第二十話 砲雷撃戦 用意!



それと実は護衛艦艦娘をもう一人追加しようかと現在進行形で考えていますがなかなか思い浮かばないんですよね…。もし何かこの子が適任だなっていうのがあれば感想欄で提案お願いします。

もちろん全員が採用される…というわけではないのでその辺はご了承ください…(汗))(深海棲艦側にももう一人追加したいので敵側(強敵)に似合ってそうな艦艇があれば知恵をお貸しして頂きたいです)



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第二十話 砲雷撃戦 用意!



敵輸送船団を見つけたはいいものの、同時に敵空母を確認したことでどうやって接近するかという新たな問題が発生。このまま呑気に近づいても逃げられてしまうか敵艦載機の空襲に晒されるのは目に見えていたためどうするか悩んでいた。…が龍驤がふと提案した方法のお陰でその突破口が見えたことから早速それに向けて行動を開始する…。




…それと同時刻、深海棲艦の本拠地と思われる太平洋某所の海軍基地ではここ最近起こっている謎の攻撃について、密かに朝日達の存在を察した深海棲艦が現れていたのであった。

  
 
(今回はかなり長いです)


 

 

 

8月24日

0900

 

パラオ艦隊

別働隊(水上打撃艦隊)

旗艦霧島

艦橋にて

 

 

 

霧島 電信妖精「霧島さん、誘導艦隊旗艦の瑞鳳より入電…!『敵攻撃隊誘引に成功ス。コレニヨリ作戦第一段階完了、直チニ第二段階ニ移行ス』です…!」

 

 

霧島「やはり引っかかってくれましたね、流石は龍驤さん、いい作戦を閃いてくれました!(視線を変えて)提督、敵輸送船団の空母艦載機がこちらの誘引に引っ掛かったそうです…!」

 

 

秋山「よしよし…、ひとまず攻撃隊を誘い込むことには成功したな…。後はその誘引がどれくらい上手く行くかだが…」

 

 

 

瑞鳳率いる空母部隊から敵攻撃隊の誘引に成功したと電信妖精からの報告を聞くや否や、引っかかってくれたという笑みを浮かべながらこの作戦を閃いた龍驤に対して感謝しつつ隣で指揮官席に座っていた秋山にすぐさま伝える。それを聞いた秋山もとりあえずは敵攻撃隊の誘引には成功したな…、という笑みを一瞬見せるがすぐに真剣な表情に戻りその誘引がどれくらい上手くいくかと考えていた。

その間にも霧島を旗艦とし臨時に編成された水上打撃艦隊は空母部隊から分離したあと、複縦陣で航行しつつ敵機や敵艦隊に発見されないように航路を調整しながら所定ポイントへ向かっていた。ちなみに分離した空母部隊を含めた陣形及び編成はこんな感じ

 

 

 

パラオ艦隊

空母艦隊(誘導艦隊)

 

旗艦瑞鳳

大鳳、龍驤、出雲、朝日

 

 

 

陣形

単縦陣

 

 

     朝日

 

     瑞鳳

    

     大鳳   

 

     出雲

 

     龍驤

 

 

 

水上打撃艦隊(本隊) 

 

第一艦隊

旗艦霧島(水上打撃艦隊旗艦も兼用)

榛名、鳥海、古鷹、青葉、吉野、巻雲、雪風

 

 

第二艦隊 

旗艦阿賀野

阿武隈、敷波、曙、時津風、涼風、睦月、皐月

 

 

陣形  

第四警戒航行序列

 

 

 

     (第一艦隊)

       吉野    

     

   青葉  鳥海  古鷹

       

     霧島  榛名

  

       雪風

 

       巻雲

      

      (第二艦隊)

    阿賀野  阿武隈

 

     敷波  曙

 

    時津風  涼風

 

     睦月  皐月

 

 

以外編成となっている。

 

 

 

 

鳥海『報告を聞く限りでは敵艦隊は誘導している海域にこちらがいると踏んでいると見ていいですから、かなりの数を送り込むのではないでしょうか?』

 

 

阿賀野『そりゃなんとしてでも輸送船団には接近させたくないでしょうしねぇ…、んでこっちには空母がいるということが分かれば是が非でも足止めしてくるでしょ』

 

 

阿武隈『でもこっちとしてはそうなってくれたほうがいいけどね、その方が敵艦隊に接近出来るしこのペースで来てくれれば確実に夜戦へ持ち込める』

 

 

古鷹『いくら深海棲艦とは言えど夜間で航空機を飛ばすなんて至難の技だからね…、そんな事すれば真っ先に標的に為りかねないし…』

 

 

 

とは言えど瑞鳳から送られてきた情報を見る限り、例の輸送船団はこちらが誘い込んでいる海域に敵艦隊がいると踏んでいるらしい。現にそれを示すように次々と各空母から攻撃隊を発艦させて味方戦闘機隊が展開している海域へ送り込んでいるのがその証拠だ。それだけ深海棲艦側からすれば輸送船団が重要ということを意味するが、むしろこっちからすればより多くの航空戦力を出してくれたほうが狙い通りに作戦を進められる。

より多くの艦載機を航空攻撃に割くということは他の面でどうしても疎かになってしまう。現に深海棲艦側は哨戒に出ている警戒機隊も呼び戻して最低限の哨戒機以外を攻撃隊に組み込もうとしているようで、先程まで濃密だった警戒線が嘘のように薄くなり始めていた。

 

こうなればこちらが隠密行動中に見つかるという可能性は格段に下がり敵輸送船団への接近が容易に。輸送船団護衛の空母部隊が有りもしない艦隊への攻撃に躍起になっているどさくさ紛れ、夜間まで待って突入すれば航空攻撃を受けることなく比較的奇襲に近い形で敵艦隊を攻撃することが出来るということだ。

 

 

 

秋山「とは言えどこの作戦は空母部隊と水上打撃部隊の両者が見つからないことが前提…、一度でもどちらかの存在が露見してしまえばその時点で破綻になる…。最大限の警戒で挑まんとな…(真剣な表情)」

 

 

榛名『もちろんそれは分かっています、流石に油断して逆にカウンター喰らったら元も子もないですからね…(汗)』

 

 

皐月『だねー。でも、提督がいつも通りで安心したよ♪』

 

 

秋山『いつも通りって…、どういう意味だそりゃ…(汗)』

 

 

 

とは言えど秋山の言う通り一番肝心なのはいかに敵艦隊に見つからず、比較的奇襲に近い形で接近出来るかということ。どんなに作戦通りに動けても空母部隊か水上打撃部隊のどちらかが一回でも見つかってしまえばその時点で作戦は破綻してしまう。いつも以上、真剣に取り組まないといけないなっとそんなことを口に零して、榛名もそれに同意しながら眉を密かに細めていく。

…とそんな秋山を見ていた皐月が何やら意味有りげな話し方をしつつ笑みを浮かべながらそんなことを口にする。一体何のことなのか…と今一理解していない秋山であったが…、その理由は一瞬で分かった。

 

 

 

皐月『どうゆう意味って、そりゃ瑞鳳さんと離れ離れになってるから落ち着かなくてソワソワしてるってことだよ♪』

 

 

秋山『何言ってるんだ…こんな時にソワソワなんてs…ってちょっと待て…!皐月今なんつった!?』 

  

 

 

皐月の口からとんでもないことがしれっと話されたため、うっかりそのまま流しかけたがすぐに我に戻った秋山が二度見しかけながらも慌てるように問い詰める。…がそんな暇など彼にはなく、追い打ちをかけるかのように次々と他の子が話に乗っかり始めていく。

 

 

 

巻雲『だって提督さん、瑞鳳さんが居ない時は落ち着かない雰囲気で隙あらばソワソワしてるじゃないですか。巻雲にはお見通しですよっ♪』

 

 

霧島『確かに…、私が代理で秘書艦してたときもどこか落ち着かなさそうな顔してましたね…。瑞鳳さんが居るときは特に変わらずいつも通りなのに…』

 

 

秋山『ちょちょい…!俺そんなにソワソワしてんのか…!?そんなことはないと思ってたが』

 

 

青葉『何をおっしゃいますか提督ー、瑞鳳さんがいなくて寂しかったんじゃないですかー?だって普段からお二人は仲良くて濃厚(意味深)☆なんですから♪』

 

 

秋山「青葉ちょっ誤解生むような発言はよせ…!?まだそこまでは行ってn…あ…」

 

 

 

普段は真面目な霧島も皐月の発言を聞いて確かに、っという表情を浮かべながらチラリと秋山へ視線を向けながら話に乗っかっていく。そんな彼女を見ながら慌てて否定する秋山であったが、追い打ちをかけるように青葉が爆弾発言を繰り出してしまう。もちろんそれは聞き逃すはずもなく慌てながらも訂正するようなことを口にするが…、どうやら逆に口が滑ってしまったようだ()。

 

 

 

鳥海『なるほど、まだそこまでは行ってないということはそこまでは行ってるんですね(納得の表情)』

 

 

秋山『鳥海までなに納得してんだ…!?というかそういう意味じゃねぇ…!』

 

 

榛名『そんな否定しなくても別に悪いことじゃないんですから気にしなくてもいいと思いますよっ♪榛名はお二人のこと応援してるので…!』

 

 

秋山『それは嬉しいけど榛名サン、今それを言うタイミングじゃありませんよ()』

 

 

曙『ふんっ!相変わらずイチャラブしてんのね…!というかさっさと認めなさいクソ提督…!』 

 

 

時津風『こらこら〜、そんなツンツンしないのボノちゃん〜。簡単に二人が認めたら面白くないし弄りがいがないし〜』

 

 

曙『誰がボノちゃんよ…!?曙って呼びなさい…!』

 

 

阿武隈『まあ提督と瑞鳳さんの距離が近いのって今に始まったことではないからねっ、この中の艦娘では一番付き合いが長いんだし。だからいい感じなのは変じゃないと思うよ?』

 

 

秋山『だー!阿武隈までそっち側いくな…!というか頭脳組がほとんど青葉側じゃないか!古鷹からもなんか言ってやれ…!』

 

 

古鷹『それを言うなら提督さんこそいい加減認めてくださいよー、だって人間で言ったらお二人ってほとんど付き合ってるっていうことなんですから』

 

 

秋山『いやまあそうかもしれんが…、…って古鷹どっからそんな知識持ってきたんだ…!?そんな本この泊地に置いてあったか…!?』

 

 

青葉『あー、それなら私が近代化改修のために本土言ったときに基地近くの本屋で買ってきた奴ですね♪ここの泊地には一番似合いそうな内容なんですし〜』

 

 

秋山『犯人お前か…!?やけに最近そういう知識を口にするなって思ってけど…!』

 

 

吉野『(なんだか色々と大変そう…ってそうじゃなくてっと…)お取り込み中すみませんが…一つお聞きしてもよろしいですか?』

 

 

 

どうやら彼女達がそういった知識を知った一番の原因は青葉(この世界でも変わんねぇな)のようで、青葉が本土で買ってきた本のせいで前に比べて最近の弄り度レベルが上がっていたらしい。秋山も薄々と感じてはいたようだが青葉からの追加で付け加えるように放った一言で改めて実感していた。

だが、それを知ったところで止めてくれる子がいるはずもなく鳥海や霧島、榛名もあっさり青葉側についてしまい、おまけと言わんばかりに阿武隈や古鷹さえもなんの疑いも持たず味方してしまう。

 

曙もそれに加わるように追撃(祝福)するが時津風にいいところで邪魔されてしまい二人によるじゃれ合いに突入してしまった。そんな戦闘中とは思えない終始カオスな状態を苦笑いしつつ聞いていた吉野であったが、ふと思い出したかのようにとある質問を投げかける。

 

 

 

霧島『おっとこれは失礼いたしました…(汗)ついつい提督の弄りに夢中になってしまって、それでどうされましたか?』

 

 

吉野『…どうして私をこの艦隊に組み込んだのか…っについて聞こうと思ってて、編成決めたときから気になってなので』

 

 

鳥海『言われてみれば確かにそうですね…、吉野さんは近距離で撃ち合えるような武装も装甲もありませんし…本来であれば朝日さんと一緒に空母部隊の護衛を任されるはずですが…』

 

 

秋山『そのことについては俺から説明しよう、彼女をこっちに組み込むんだのも俺なんだしな』

 

 

 

確かに吉野に言われてみれば敵艦隊とガチガチに撃ち合う水上打撃艦隊に彼女が組み込まれるのもおかしな話だったりする。それもそのはず、吉野に限らず現代の戦闘艦のほとんどほ近距離で砲撃戦を行うことを想定していない。どちらかというと互いが直視出来ない遠距離でのミサイル合戦を想定した武装や船体になっているため、本来であれば朝日と同じ空母部隊護衛に組み込まれるはずだが…

 

脱線しまくっていた一同であったが、彼女のその言葉を聞くなり先程のカオスな状況がまるで嘘かのように落ち着きを取り戻して戦闘中の雰囲気に戻っていた。なんで吉野をこちらに組み込んだのか、気になるように首を傾げていた鳥海であったが彼女を組み込んだ張本人である秋山が説明すると語りながら名乗り出ていく。

 

 

 

霧島『そういえば提督、艦隊編成のときやたら吉野さんを水上打撃艦隊に組み込むように後押ししてましたね…(思い出したかのように)』

 

 

雪風『え?しれぇがわざわざですか…?』 

 

 

涼風『でもよぉ、私達はガチガチにドンパチする用の艦隊だぜ?なのに砲雷撃戦に不向きな吉野さんなんで組み込むんだ?まさか提督が知らない訳ないし…』

 

 

秋山『もちろん、吉野が涼風みたいに砲雷撃戦に向いてる武装を積んでいないことは分かっている、それに何より彼女の武装は遠距離向きの性能。…けど彼女を引き込んだのはそれ以外に重要な仕事を君に頼みたいからっていうのが主な理由だ』

 

 

吉野『私に頼みたい重要な仕事……ですか?』

 

 

秋山『あぁ、そうだ。何も吉野が砲撃戦に参加する必要もないし、それよりももっと大事な役割が君にはあるしな』

 

 

青葉『なんか引っかかるような言い方ですね~、さっきから勿体ぶり過ぎですよ提督ー』

 

 

 

鳥海に言われてそういえば確かにそうだ、っという表情を霧島は浮かべ作戦会議の時に秋山が積極的に水上打撃艦隊に組み込むように働きかけてきたこともふと思い出した。だが、砲撃戦に不向きな彼女をなんで組み込むんだのか…、そんなことを涼風は呟く。だがそれは秋山も充分承知の上らしくそれでも彼女をこちらに組み込んだようだ。

吉野にしか頼めない、だが撃ち合い以外で戦局を左右しかねない大事な役目を…。とは言えど先程から引っかかるような言い方しかしないためか、青葉が少し不満そうな顔をしながら秋山に問い詰めるように質問を投げかける。

 

 

 

秋山『まあそう急かすな青葉、これから説明してやるからさ。いくら輸送船団が相手だといえどその護衛艦隊は強力だ、…となれば夜戦でいかに敵艦隊よりも先に見つけて先制攻撃で決定打を与える必要がある』

 

 

曙『確かにクソ提督の言う通りだけど…。それとこれになんの関係が…』

 

 

秋山『…これだけじゃちょっと分かりづらいか、まあ単刀直入に言えばだな―――』

 

 

 

 

 

 

 

  

 

 

 

 

 

 

ダダダダダダダ!!!!

 

 

 

あたり一面青空に包まれた空、その静寂を撃ち破るかのような機関銃音が響き渡ったと思ったら切り裂くように2機の航空機が勢い良く通過していく。片方は深海棲艦攻撃隊の直援戦闘機であるF6Fヘルキャット、それを機銃をブッパしながら追撃しているのはパラオ艦隊所属の零戦52型。どうやら先程から激しい格闘戦を繰り広げているようだが…、この状況下なのにこの2機だけで留まるはずもないわけで…

 

 

 

ーコノ…!最新鋭ノヘルキャットデゼロゴトキヲ振リ切レナイダト…!?フザケオッテ!ー

 

 

大鳳制空隊 第二中隊 2番機『おらどうしたぁ…!キビキビ動かんかい猫野郎!お前の性能はそんなもんか!?』

 

 

ークソ!(なんとか回避する)ー

 

 

ーコチラ雷撃隊2番機!敵戦闘機二背後ヲ突カレタ!助ケテk……(ダダダダダ!!)

 

 

瑞鳳制空隊 第二中隊 10番機『ほいいっちょ上がりぃ!やっぱベルト給弾式の九九式二号四型は最高だぜ!20ミリを撃ちたいときに撃てるってもんだ!』

 

 

 

警戒機隊を壊滅させた第二中隊の戦闘機隊30機はその後艦隊を攻撃するためにやってきた深海棲艦の第一次攻撃隊50機を奇襲する形で戦闘に突入。もはや敵味方が分からないレベルの乱戦状態になりながら戦闘機同士、いやそれだけでなく爆撃機、雷撃機でさえも巻き込まれるような空中戦にまで発展していた。

なんとか追跡を振り切ろうと右へ左へと蛇行するアヴェンジャー雷撃機であったが魚雷を抱いた状態で機動力のある戦闘機から逃げられるはずもないため、ぴったりと背後に付かれてしまう。

 

後部銃座で必死の反撃を試みようとするが、その前に射撃位置についた零戦の搭乗員妖精が照準器一杯に広がった敵機目掛けて20ミリによるシャワーのような機銃掃射を行っていく。いくら防弾を強くしても所詮は攻撃機、もちろん耐えきれるはずもなく黒煙を拭き上げながら制御を失って墜落していく。

 

 

 

龍驤制空隊 第二中隊 11番機『護衛機の腕はええけど、さっきのに比べたらコイツらはそこまで大したことあらへんな…!』

 

 

龍驤制空隊 第二中隊 8番機『だが油断はしなさんなよ…!さっきのに比べたらまだマシやけど、なかなかいい腕してやがる…!それにこの猫野郎、図体デカい割には動きは機敏だ…!』

 

 

瑞鳳制空隊 第二中隊 2番機『ちぃ…!羨ましい限りだ…!火力もあって防弾性能もいいのにそれを補える大馬力エンジンがあるっていうのは…!零戦じゃキツイもんがあるぜ…!』

 

 

瑞鳳制空隊 第二中隊 中隊長機『おしゃべりする暇があるなら戦闘に集中だ…!というかあまり深追いするんじゃないぞ…!俺らの仕事はあくまでコイツらを長時間引き止めておくことだ…!』

 

 

大鳳制空隊 第二中隊 中隊長機『もちろんそれは分かってますぞ…!そらもういっちょ!(ドーントレスに頭上からのダイブでの射撃を行う)』

 

 

ー敵機上ダ!来ルゾ!ー

 

 

ー右旋回デ回避……(ダダダダダ!!)ー

 

 

 

確かに先程の艦隊防空時の空中戦に比べたらある程度負担は減っているが、それでも最新鋭の戦闘機を乗り回せるほどの技量を深海棲艦の搭乗員が持っていることには変わりはなく警戒するに越したことはない。そのため、中隊長は各機に気を抜かないように指示を出しつつ自分たちの目的があくまで敵攻撃隊を長時間引き止めておくことだということだと言う事を改めて徹底させる。

その間にも敵攻撃隊と味方戦闘機隊による入り乱れ合う格闘戦は更に激しさを増していくのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1030

深海棲艦

輸送船団護衛艦隊にて

 

 

 

ー第一次攻撃隊ヨリ入電、我敵機ノ襲撃ヲ受ケリトノコトデス…!ー

 

 

ー恐ラク警戒機隊ヲ襲撃シタ戦闘機隊ダナ…、待チ伏セサレテイタカ…動キガヤケニイイナ…。ダガコレデコイツラノ先ニ敵艦隊ガイルノハ確定シタナ、第二次攻撃隊ノ発艦状況ハ?ー

 

 

 

その頃第一次攻撃隊を発艦させた母艦の主である輸送船団の護衛艦隊では敵機襲来の無線が飛び込むように入電シてきており、ヲ級から報告を受けたル級はやはりかという表情を浮かべる。警戒機隊を壊滅させてからどうやらこちらの動きを察知したらしく待ち伏せをされていたらしい。

 

動きがいい敵機だな…っと思いながらもこれで敵艦隊がその先いることは確定したため、さらなる追撃をかけるために第二次攻撃隊の発艦状況を空母群に尋ねていく。

 

 

 

ー第二次攻撃隊ニツイテハアト三十分デ全機発艦準備完了スル、一次攻撃隊ト比ベテ機数モ増エテルカラ敵艦隊ノ露払イニハモッテコイダー

 

 

ーソウカ、全機発艦シタラ所定通リ艦隊面舵デ進路変更。敵艦隊ノ追撃ヲ攻撃隊デ撹乱シテイル間ニ追跡範囲外ニ離脱スルー 

 

 

 

第二次攻撃隊も特にこれと言って問題なく、空母ヲ級や軽空母ヌ級の飛行甲板に所狭しと戦闘機や雷撃機、爆撃機などが並べられており爆弾や魚雷などを抱えた状態で今か今かと発艦指示を待っていた。その周囲では最終確認だろうか、深海棲艦の整備兵らしき人影が慌ただしく機体と機体の間を縫うように行き来しながら整備に追われている。

その近く、艦橋付近のボードではそれぞれの母艦搭乗員達が集結しており作戦に向けた最終ブリーフィングの話し合いが行われており皆真剣な表情で話を聞いていた(人間と違って顔だけでは感情が分かりづらいが…)。

 

 

 

ーワザワザコレダケ敵機ガ出向イテ来テルンダ、コノ先ニ敵艦隊ガイルノハドウ見テモ間違イハナイ。ジャナケレバ警戒機ヲ徹底的ニ潰サナイカラナー

 

 

 

ートハ言エド第一波攻撃隊ハ敵戦闘機隊ノ足止メヲ喰ラッテイマス。ソウカンタン二相手モ通シテクレルトハ思エマセンガ…ー

 

 

ーナニ、二次攻撃隊ハ直援戦闘機ノ数モ多イ。ソレニ腕利キモカナリ揃ッテイルカラ攻撃隊ノ攻撃を妨害出来レバ上出来ダ。ダガ油断ハシナイヨウニ徹底サセテオケヨー

 

 

ー……ウ~ン…、ナンカ引ッ掛カルワネ…ー 

 

 

 

ル級が空母ヲ級と敵艦隊攻撃についてや敵戦闘機の妨害についてどうするか話し込んでいる中、その会話を聞いていた晋級が何やらスッキリしないような表情で考え込んでいる。どうやら敵戦闘機の動向とはっきりとしない敵艦隊の行方が気になって仕方ないようだ。

 

 

 

ー…仮ニ敵艦隊ガ陣容ヲ掴マレナイタメニ戦闘機アゲテ偵察機ヤ攻撃機ヲ迎撃シテイルトシテモ…、動キガ良スギルノヨネ。マルデコチラノ存在ヲ敢エテアピールシテルカノヨウニ…ー

 

ー…トハイエド攻撃隊ヲ迎撃スルノモ別ニオカシクハナイシ…、偵察機ダッテ本当ニ居場所ガバレナイタメニ攻撃ヲシタダケカモシレナイ…。…デモコノ胸騒ギハナンナノ?マルデ私達ガ既ニ相手ノ罠ヘ誘イ込マレテルヨウナ感覚ハ…ー

 

 

 

だが普通に考えれば自分たちの所在や陣容がバレるのを嫌った敵艦隊が接近させる前に警戒機を落としただけということも充分あり得る。そして攻撃隊迎撃も同様に艦隊への被害を防ぐための行動と考えれば特におかしなことはない。…しかし彼女からすればその行動のすべてが仕組まれているような感じがして仕方ないようだ。

とは言えどそれを裏付ける確証がないため、本当に気の所為だったのかもしれない…そう思い胸騒ぎがする胸の内をなんとか抑えて任務に集中する晋級であったが…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1100

 

 

 

 

ーナニ!?敵艦隊ガドコニモイナイダト…!!ソレハドウイウ事ダ…!ー

 

 

 

あれから30分近くが経過し、第二次攻撃隊を特に問題なく送り出した輸送船団は予定通り進路を北に変針して敵艦隊の追跡範囲外に離脱しようと試みていた…。…しかし、直後に敵の迎撃機をなんとか突破した第一次攻撃隊の指揮官機から衝撃的な内容の報告が飛び込んで来たためル級が思わず無線越しに声を荒らげてしまう。

まあそれはそうだろう、いると思っていた敵艦隊がいないとなれば誰だって彼女と同じ反応をするに決まってる。混乱を隠せない状態で攻撃隊の指揮官にどうゆうことかと問い詰めるが…

 

 

 

『ソッソレガ我々ニモ理解ガ出来テイマセン…!アレダケ迎撃機ノ妨害ガ激シカッタノナラソノサキニ敵艦隊ガイルハズナノニ…!ドコヲ探シテトンデモソレラシキ影ガ見当タリマセン…!』

 

 

ーソンナコトガアルカ…!アレダケ警戒機ヤ攻撃隊ヲ徹底的ニ叩キ落トソウトシテタンダゾ…!トイウカ本当ニ探シタノダロウナ、単純ニ妨害サレテイル間ニ逃ゲラレタダケジャナイノカ…!?ー

 

 

 

だが問い詰めたところで指揮官機である搭乗員パイロットからは全く分からないとしか返答は帰ってこず、向こうも何が起こっているのか理解が追いついていないようだ。まさか攻撃隊からの空襲を避けるために迎撃機で時間稼ぎをしてその隙に離脱したのか、もしくは攻撃隊が見落としているのではないかという疑いを見せながらル級は再度尋ねていく。

 

 

 

『見落トシハ絶対ニアリ得ナイ…!ナンセ迎撃機トノ戦闘デ数ハ減ッテルトハ言エド全機デ周囲ヲ隈ナク探シタンダ!視力ナラ誰ニモ負ケン!』

 

『ソレニ迎撃機デ時間稼ギヲシテ離脱シタナラ警戒機隊トアレダケ派手ニ戦闘シタ辻褄ガ合ワナイゾ…!ヤルナラ隠密ニ済マセルハズダ…!』

 

 

ー…トナレバ迎撃機デ時間稼ギヲシテコチラノ追跡カラ逃レタトイウ線ハナイ。ダガソレナラナンデアノ海域ニ戦闘機ガ集中シテ…!…イヤ…、ソレヨリモ…!ー

 

 

 

だが第一次攻撃隊の指揮官を担当していた攻撃隊の隊長は元偵察隊からの成り上がりのため索敵にはかなりの自信があるらしくそれはあり得ないと疑いの質問をひとけりする。というか他の搭乗員達も目を凝らして隈なく海面上を探しつくしていたため見落とすということは本来でありえない。

それに攻撃隊の目を避けるために一旦引いたにしても、相手の目的はこの輸送船団なのは確実。本来であればこちらに悟られないように接近、警戒機を落とすにしても隠密に済ませるはずだが…

 

しかし相手はそれどころか警戒機隊と派手に空戦を繰り広げるという明らかに真逆のことをしでかす始末。わざわざ自分たちの存在をアピールしておいて攻撃隊を放ってきたら尻尾を巻いて逃げるとなれば矛盾が生じてしまう。考えれば考えるほど相手の動きが読めない、一体何を企んでいるのかと少し焦りを見せながら考えていたル級であったが、今はそんな悠長に考えている暇はないと決心した雰囲気を見せながら艦隊各艦に指示を飛ばしていく。

 

 

 

ー今スグ第二次攻撃隊ヲ呼ビ戻セ!ソレト第一次攻撃隊モダ!作戦ヲ練リ直ス!ー

 

 

ーヨッ呼ビ戻スッテドウイウコトデスカ…!アノ海域ニ敵艦隊ガイルッテ話ジャナインデスカ…!?ー

 

 

ー話ガ変ワッタンダヨ…!ココマデ探シテモイナイトナレバ  モウアノ海域ニハ敵艦隊ハイナイッテコトダ!ー

 

 

ーイッイナイッテ…!ナラナンデ警戒機隊ヤ攻撃隊ガ敵戦闘機ノ攻撃ヲ受ケテ…ー

 

 

ーソンナノワタシニ聞カレテモ知ルカ…!ダガ敵艦隊ガアソコニイナイトナレバコレ以上探シテモ時間ノ無駄!ナラトットト攻撃隊ヲ帰艦サセテ再度位置ヲ炙リ出ス…!ー

 

 

 

いきなり攻撃隊を呼び戻せと言われたためか空母群の深海棲艦達は驚きを隠せない様子。まあそれも無理はない、まるで自分たちの艦隊を護るように敵戦闘機が攻撃隊や警戒機隊を次々と襲いかかってくれば誰だってその先に獲物がいると思ってしまうし、特定のエリアに絞っての出現なら尚更だ。だがいざ蓋を開けて見ればそこには敵艦隊の姿はどこにもなく各攻撃隊からの報告だけでもただでさえ混乱しているのに、ル級から発せられた敵艦隊はあの海域に存在すらしてしていないという言葉で更に追い打ちをかけられたらしい。

 

とは言えど、これ以上攻撃隊を遊兵化させるわけにはいかないのは事実のため戸惑いはしつつもそれぞれの攻撃隊へ帰艦命令を出していくのであった。…一人を覗いて、

 

 

 

ー…案外ワタシノ予想ガ当タッテイルカモシレナイワネ……。トリアエズソナーヤ武装ノチェック今ノウチニシテオキマスカー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1130

東海域

第二次攻撃隊の帰路途中

 

 

 

ーシカシ先発シタ第一次攻撃隊ガ敵機ノ強襲ヲ受ケタノニ敵艦隊ノ姿ヲ発見出来ズ…カ。一体連中ハ何ガシタイノカ?ー

 

 

 

先発した第一次攻撃隊が敵艦隊を発見出来なかったという報告を受けて、帰投中の第二次攻撃隊指揮官はどうゆうことだと首を傾げながらも愛機であるアベンジャー雷撃機の操縦桿を握っていた。敵戦闘機の動きからして迎撃機が時間を稼いでその隙に離脱したという仮説はまずあり得ない。そもそもこちらに空母がいるのは既に相手には筒抜けであるため、敵艦隊はそれを充分承知している。

しかしこの輸送船団が司令部のある沖ノ島へ向かっていることが分かっているとなれば、呑気に欺瞞撤退をする余裕などないはず。…となれば空母部隊の支援を受けながらこちらの航空攻撃なんてお構いなしで接近し、空襲の少ない夜間に突入してくる、それを見越しての阻止攻撃だったのだが…

 

 

 

ー…イヤソモソモソノ海域ニ敵艦隊ガイタノカトイウ事実スラ怪シイナ……。敵戦闘機ヲ確認シテ偵察機モ捕捉シテイタト言エド…、肝心ノ本体ガ見ツケラレテナイ…ー

 

ーダガ第一次攻撃隊ノ報告ヲ聞ク限リ敵機ハマルデ自分達ノ後ロニ敵艦隊ガイルカノヨウニ動イテイル…。ソモソモ警戒機相手ニ派手ナ攻撃ヲシテルトキタ…、何ガ目的ナンダ…ー

 

 

 

しかし現実を見てみれば敵機の迎撃線と思われるラインを突破した先には敵艦隊どころか艦船が居たという形跡すら見つけられなかった。いくら敵艦載機である戦闘機や偵察機を捕捉したと言えどその肝心の母艦を含む艦隊を見つけられないとなればそこに敵艦隊が居たという事実も怪しい。そこから考えられるとすればいると思っていた艦隊はそこには始めから存在すらしておらず、自分達は有りもしない敵を今まで追い求めていたことになる。 

そしてこちらの警戒機隊や第一次攻撃隊を奇襲した敵戦闘機群は有りもしない架空の艦隊攻撃に向かっていた自分達を更に誘引するため動いていたとなれば、相手の不可解な攻撃に説明がつく。…とは言えどそれが判明したところでその肝心の敵本隊はどこへ行方を晦ましたのか、という話にになってしまう。

 

動きや相手の考えが全く読めずに少し考え込んでいた指揮官機の搭乗員であったが、今それを考えてもどうにか出来ると言うわけでもないためひとまず帰投命令に従って母艦へ戻ることにしたのだが…

 

 

 

?「おーおー、いたいた。結構な数いますねー」

 

 

 

しかし第二次攻撃隊の動きも既に読まれていたようで、雲の隙間や距離を開けて気づかれないようにその背後を追尾している出雲機のF35Bの姿があった。話し方を聞く限り、先程敵機を捕捉したようでレーダースクリーンに映し出されている敵機の集団を見ながら搭乗員妖精は興味深そうな表情を見せながら機体の位置を調整している。

 

 

 

出雲制空隊 第一中隊 4番機「やはり先行した攻撃隊からの報告は既にこの後発組にも伝わっている。となれば本隊にも情報は言ってるとみていいでしょうね、…まっだからといって無傷で帰す気はありませんけど」ピッ

 

 

 

どうやら空母部隊からは敵攻撃隊や艦隊を誘導させる戦闘機隊だけでなく索敵担当として出雲の航空隊も駆り出されているようで、高性能なレーダーやレーダーに映りにくいステルス性能を存分にいかして偵察機の役目を肩代わりしているようだ。特に敵艦隊に遭遇することがなかったためほとんど無傷の状態で追尾されていることにも気づかずに飛行している編隊を見ながら、もちろん貴方達もただでは返しませんよという雰囲気で無線機のインカムを入れていく。

 

 

 

出雲制空隊 第一中隊 4番機『こちら出雲機4番機、現在敵の後発組と思われる攻撃機編隊を追尾中。こちらに気づいた様子はなし、指示を請います』

 

 

出雲 空中管制妖精『了解、貴機に関してはそのまま監視を続行してください。味方戦闘機隊が会敵したことを確認次第所定の決まりに沿って現空域から離脱、可能な限り見つからないようにお願いしますね』

 

 

出雲制空隊 第一中隊 4番機『任せてください、ここで見つかるなんてことがあったらそれこそステルス機の恥ですから』

 

 

 

 

 

それから20分ほど経過して

1150

 

 

ーン?ー

 

 

 

まさか異質な存在に追尾されているとは知る由もない第二次攻撃隊の各機は、出戻りになってしまっている現状に不満を抱きながらも編隊を乱さずに飛行していた。…そんな中、外縁を飛行していたとあるドーントレスに乗っていた後部銃座担当の搭乗員が何かに気づいたのかマジマジと見つめていく。

 

 

 

ードウシタ、何カ見ツケタノカ?ー

 

 

ーイヤ…、アソコノ雲ノ間カラチラリトダガ黒イ影ガ見エタヨウナ気ガシテ……ー

 

 

ーナンダト…?ー

 

 

 

そんな相棒の異変に気づいた操縦員の深海棲艦はどうしたのかと問いながらチラリと視線を向ける。そんな彼の問いに気の所為かもしれないという雰囲気で答えながら黒い影らしきものが雲の間から見えたと後部銃座の搭乗員は答え、それを受けて表情が強張った操縦員は慌てて彼が見ている視線の先へ目線を移す。

……がこれといって何かが見えるわけでもなく、敵機らしい影すら確認出来ない。そもそも自分達は敵艦隊に存在すら悟られていないはずのため見つかるなんてこと自体があり得ないはずなのだが…、

 

 

 

ードコニモ敵機ナンデイナイゾ?トイウカソモソモソレラシイ影スラ見当タラナイシナ…。気ノ所為ジャナイノカ?ー

 

 

ーイヤソンナハズハ…確カニソレラシイ影ハ見エタンダガ……ー

 

 

ー……(先程と同じように観察するが)ダガイナイモノハイナイゾ?ソモソモコッチハマダ見ツカッテスライナイハズ、ソレニ敵艦隊ノ注意ハ完全ニ一次攻撃隊へ行ッテルn…「ダダダダダ!!!」ナニ…!?ー

 

 

 

指揮官に言われても尚、しかしという口調でなかなか食い下がらない後部銃座要員だったがいないものはどんなに探してもいないもので、そんな部下をなんとか宥めようとした攻撃隊隊長であったが……、それを遮るかのような機銃音が突如響き渡る。

 

 

 

ードウシタ…!?何ガ起コッテルンダ…!!後部銃座!報告シロ!!ー

 

 

ーソッソレガ俺ニモヨク…、ッテ3番機ト8番機ガ落チテイクゾ…!!ー

 

 

ーナンダト…!?ー

 

 

 

何が起こったのか状況把握が追いつかなかった攻撃隊指揮官であったが後部銃座要員からの報告を急いで仰ごうとする。…彼も何が起こったのかわかってはいなかったがそれでも目先で起こっている状況をそのまま伝えていき、彼の視線の先には何者かの攻撃を受けて黒煙を拭き上げながら墜落していく僚機の姿が…、

 

 

 

ークソッ何処カラダ…!!ドコカラ撃タレタ…!!ー

 

 

ー恐ラク頭上カラカ…(ダダダダダ!!)ッ!敵機直上!!ー

 

 

ー全機散開!!コレ以上好キ勝手サセテタマルカ…!!直援機隊ハ何ヲシテイル…!!サッサトアノゼロヲ落トセ…!!ー

 

 

 

あまりにも突然のためどこから撃たれたかと問おうとした矢先、またしても機銃掃射が編隊に襲いかかっていき何機が被弾して次々と落第していく。急いで敵機の所在をなんとか探ろうとした攻撃隊隊長、だがその前に後部銃座からの報告が飛び込んできたため慌てて頭上に視線を向けると、そこには頭上から勢いよく降下してくる機体の姿が…。

太陽を背に突入してくるためハッキリとした姿は見えないが、反射した影だけでも腐る程見てきた憎き零戦だと言うのは嫌でも分かってしまう。

 

それに敵機となれば好き勝手させるわけにも行かないため混乱している頭を無理やりフル回転させて戦闘機隊に戦闘命令を下令。その指示を受けた護衛機のF6Fヘルキャット隊は増槽を投棄しながら小隊ごとに散開して敵機迎撃の任務に向かう。

 

 

 

大鳳制空隊 第一中隊 10番機『奇襲は成功だ成功…!!連中め完全に油断してな…!戦闘機隊の動きが鈍いぞ!』

 

 

大鳳制空隊 第一中隊 6番機『まさか自分たちまで動きが筒抜けなんて思いもしなかったでしょうね…!!やはり彼らがいてくれてラッキーでしたよ!』

 

 

瑞鳳制空隊 第一中隊 中隊長機『お喋りはそこまでだ…!!ようやく護衛機がこちらに気づいたぞ!各機ケツを取られんなよ…!』

 

 

 

攻撃隊へ強襲した零戦隊は敵機の間を縫うように次々と降下していき、その後急上昇で再度攻撃体制を整えようとする。出雲機から送られてきた的確な情報のお蔭で完全なる奇襲に成功したことから、士気が一気に高揚した搭乗員妖精達であったが、そんな彼らに敵討ちと言わんばかりの勢いで敵機が機銃のシャワー攻撃を行いながら突っ込んで来た。…がそうなることぐらい分かっていた戦闘機隊各機は何事も無かったかのようにその攻撃をひらりと急旋回で躱すと、所定の決まり通りに動き出していく。

 

 

 

龍驤制空隊 第一中隊 中隊長機『ええかみんな!うちらの目的は敵攻撃隊をすぐに動かせないように損傷させることや!間違っても撃墜に固着するんやないで!』

 

 

瑞鳳制空隊 第一中隊 2番機『もちろんでっさ!撃墜しなくてもすぐに使えなくさせればそれだけ突入艦隊の負担が減るってもんよ!とりあえず片っ端から喧嘩吹っ掛けてやります!』 

 

 

 

とは言えど自分たちの目的はあくまで敵攻撃隊を可能な限り損傷させてしばらくの間使えなくさせるのが本来の狙い。そのため撃墜に固着しないよう肝に命じながらも零戦隊は片っ端から目についた敵機に攻撃を加えるという、普段ならあまりしないような戦闘スタイルで空戦を繰り広げていく。もちろん護衛機である深海棲艦の戦闘機隊もただでやられるわけにはいかないため、必死で僚機を護ろうと決死の戦闘を続けていくのであった……。

 

 

 

 

 

同時刻

パラオ艦隊

空母艦隊にて

 

 

瑞鳳 電信妖精『…!我が瑞鳳戦闘機隊から入電!我報告にあった攻撃隊を発見しこれに対し攻撃中とのこと!』

 

 

瑞鳳『とりあえずは敵機を無傷で返すことはこれで無くなったね。あとはどれくらいの敵機をすぐに動かせないように出来るか…(真剣な表情で)』

 

 

 

もちろん味方戦闘機隊による敵攻撃隊への強襲は瑞鳳達空母部隊にもしっかりと情報は伝わっており、電信妖精が搭乗員から入電した内容をすぐさま瑞鳳に方向していく。それを聞いた瑞鳳はひとまず敵艦隊の攻撃隊を無傷で返すことはが無くなったと安堵しかけるも、その表情は真剣な雰囲気を浮かべておりどれくらい時間稼ぎが出来るかと考え込んでいた。

 

 

 

大鳳『ですが、これで敵の攻撃隊をすぐに動かせなくさればそれだけ敵艦載機の稼働機数が減って味方艦隊が突入しやすくなります』

 

 

龍驤『まーそうなや、航空機っていうのはそんなポンポン直せるもんやないしここで多く損傷されればそれだけ空母艦載機の戦力を割けるで』

 

 

瑞鳳『それもそうだね、ひとまずは出来る限りのことはやっていこう。あとは提督や霧島さん達が上手く行ってくれればいいけど…』

 

 

朝日『ですね…』

 

 

出雲『えぇっ』

 

 

 

 

1800

沖ノ島南西海域

 

 

 

ー全ク…派手二ヤラレタモンダナ……ー

 

 

 

あれからかなりの時間が経ち、なんとか航空隊の被害を最小限に抑えることに成功した輸送船団ではその着艦作業を二時間前ほどまで行っていたらしく今はそれを終えて格納庫などで整備作業を行っていた。…だが損耗は抑えられても各機の損傷はかなり激しく、未だ整備要員がボロボロの機体の整備に追われている様子を見ながら空母ヲ級は密かに眉を細める。

 

 

 

ーナントカ被害ハ最小限二抑エラレタノハイイガ…ソノホトンドガ被弾損傷ト来タ…。コレデハシバラク大規模ナ攻撃隊ヲ出セナイ…。完全二出鼻ヲ挫カレタナ…(ため息)ー

 

 

 

敵艦隊を撃滅させるために輸送船団の護衛艦隊から有りったけの攻撃隊を発艦させたのはいいのだが、その肝心の敵艦隊を発見することができず、それどころかどこからともなく現れた敵戦闘機群に襲われて無駄な損傷を負わされてしまった。…幸い格納庫で直せない損傷ではないものの、これではすぐの出撃は不可能といっていいだろう。

 

 

 

ー…ダガソレヲ気ニシテテモ仕方ナイカ…ヒトマズハ整備ヲ急ガゼルトシテ…旗艦ニモ報告シテオカナイト……ー

 

 

 

…だが気にしててもどうにかなることではないため、ひとまずは機体の修理を更に急がせることにしたヲ級は整備兵たちに急ぎ整備を終わらせるように指示を出す。もちろんそれと平行して旗艦であるル級への報告を行うのであった。

 

   

 

 

 

 

ー…ソウカ、分カッタ。ヒトマズ機体ノ整備ハ早メニ行ウヨウニ改メテオケヨ、最低デモ明日ニハ索敵ニ出セル分ハ確保シテオク必要ガアルカラナ(ピッ)………オカシイ…、イクラナンデ相手ノ動キガ良過ギルゾ…ー

 

 

 

その後空母群を代表したヲ級からの報告を受けたル級は航空機の整備を急がせて明日までに索敵に出せる分は確保しておくように伝えるとそのまま無線を切る。…がその表情は明らかに敵戦闘機の動きに異変を感じているようで、あまりにも良過ぎる相手の動向に疑問を持っていた。…まあそうなるのも無理はない、基本的にこの時代でも航空機を捕捉するには電探などのレーダーが主軸となっておりそこから敵機の動向を割り出していくのだが…。

 

いくら性能がいい電探やレーダーを載せていても現代のように広範囲を正確に尚且つリアルタイムに把握出来るかと言われたらそうでもない。どうしても技術などの関係はあるしどんなものでも限界は出てきてしまう。…しかしこれはどうだろう?こちらは幾度と探しても敵艦隊すら発見出来ていない、それなのに相手は警戒機隊や攻撃隊を艦隊に接近される前にしっかりと動きを捉えている。

それどころか動きをリアルタイムに把握しているかのようにも感じ、こちらの予想進路をピンポイントで当てて待ち伏せしてると来た。

 

 

 

ー動キガ良過ギルナンテモンジャナイ…、マルデコッチノ動キガ筒抜ケテルミタイニ連中ハ正確ダゾ…。私達ハ敵戦闘機スラ警戒機隊ガ攻撃ヲ受ケルマデ見ツケラレナカッタノニ…ー

 

ーモシヤ艦娘側ニ高性能ナ電探ヲ搭載シテイル奴ガイルノカ……?ジャナキャ説明ガ付カナクナッテシマウ…ー

 

 

ー馬鹿イエ…、電探ノ技術デ行ケバコッチノ方ガ進ンデイルンダ。艦娘側デモコチラト同等レベルノ電探ヲ持ッテイルノ米国ト英国グライ、ダガソノ2ヶ国デモ我々ヲ超エル電探ヲ開発出来テイナインダゾ。ナノニアノ島国ガ作レルハズガナイー

 

 

 

他の深海棲艦も異変は感じ取っていたようで、まるでこちらの動きが見えてるかのような相手の攻撃に関していろいろと議論を交わしていた。…だが電探にしてはあまりにも正確過ぎる…、ましてやこちらが把握出来ていないことを相手が把握してるとなれば尚更。もしや艦娘側にこちらの電探を超える性能を有した艦が現れたのではないかという話がとあるリ級から浮上するが、あっさりと他の艦によって弾かれてしまう。

 

…確かに深海棲艦による侵攻作戦当初と比べると人類側の電探開発技術はこちらからしても目を見張るものがある。現にアメリカやイギリスなどの一部ではほぼ互角の電探を開発することに成功し、それ以外の国でも追い縋るかのような勢いを見せているのは確か。

だが全体的に見てみれば電探などの技術面なら自分たちが現状リードしており、一番互角に張り合えているイギリスやアメリカでさえもこちらを超えるようなレーダーは未だに開発出来てない。それなのに日本のような島国、尚且つまだまだ技術面で一歩劣っている連中が作れるはずがない…というのが彼らの考えのようだ。

 

 

 

ー……ジャアコレハドウ説明スルンダ?攻撃隊ノ動キガコッチハホトンド筒抜ケカノヨウニ連中二先手ヲウタレテルンダゾー

 

 

ーソレハ攻撃隊ヲ上手イコト誘導シタカラ出来タカラデアッテレーダートハ関係ナインジャナイカ?奇襲攻撃ダッテ敵機二偶然見ツカッテ付ケラレテタダケカモシレナイシナー

 

 

ーダガナァ……ー

 

 

ー話ハソコマデ、ドッチニシロ航空攻撃ガ不発二終ワッタ以上敵艦隊ト直接殺リ合ウ可能性ガ高クナッタワケダ。コウモシテイル間ニ近ヅイテキテルダロウー

 

 

 

最初こそ人類側に高性能の電探を装備した艦娘が現れたのではないかという話がチラホラ上がったが、普通に考えればそんなことがあり得る話ではないため最終的に攻撃隊を誘い出された際に偶発的に発生したということで纏まってしまう。それでも何隻かの深海棲艦は不服そうな表情をしていたが、ル級が本題に入ったことで一同はそちらに注目していく。

 

 

 

ーダガソノタメニココマデ強力ナ艦隊ヲ組ミ込ンダンダ、輸送船団ナゾニ手出シハサセン…!!攻撃隊ヲ防イデ油断漕イテイル連中ニ我々深海棲艦ノ強大サヲ見セt…「イイトコ悪イケド、敵艦隊ノオ出マシヨ」……!?ー

 

 

 

彼女の言う通りどっちにしろ航空攻撃が不発に終わった以上敵艦隊に接近のチャンスを与えてしまったことは間違いない。それにこれからは日が落ちて辺り一体が暗闇に包まれるため、相手が得意としている夜戦での攻撃を受けてしまうだろう。しかしそんなことは関係ないと言わんばかりの勢いで僚艦を励ますル級は、相手がなんだろうとこの圧倒的火力でねじ伏せるだけだと断言しようとしたが…。

…いつものおちゃらけた口調とは違った真剣そうな声が聞こえたと思った矢先、晋級から遮るタイミングでの敵襲が報告されたことで艦隊の雰囲気が一変する。

 

 

 

ーテッ敵艦隊ダト…!?ドウユウコトダ晋級!!報告シロ!!ー

 

 

ー報告モナニモソノマンマジャナイ、ソナー二多数ノ艦艇ト思ワレル反応ヲキャッチシタワ。ドウヤラ貴方達ノ狙イ通リ夜襲デ仕掛ケテ来ル気ミタイネー

 

 

ーナンダト…!?(コッチノレーダーニハマダ引ッ掛カッテナイノニ…イクラナンデモ早スギル…!!)ー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

晋級が敵艦隊と思われる反応をキャッチしたのと同時刻

パラオ艦隊

水上打撃部隊にて

 

 

 

吉野 AN/SPY-1D妖精「水上レーダー目標探知!!沖ノ島南西60マイル!!単横陣で突入してきます!!艦隊速力23ノット!!こっこれは…!」

 

吉野 AN/SPY-1D妖精『隻数60隻近くを確認!!味方偵察機及び潜水艦からの報告にあった例の輸送船団ですっ!!』

 

 

吉野『…ようやくお出ましね…(真剣な顔で)すぐに味方艦隊に報告…!急いで…!』

 

 

 

ル級率いる輸送船団が敵艦隊らしき反応をキャッチしたのと同時刻、吉野の水上レーダーにも反応が出たようでCICは慌ただしい雰囲気になっていた。AN/SPY-1D妖精が報告を続けている中、スクリーンには敵艦隊反応と思われる反応が何十隻も映し出される。CIC妖精からの報告を聞いた吉野はようやくお出ましかという表情をしながらすぐに味方艦艇と情報を共有するように指示を出していく。

 

 

 

霧島「提督!吉野さんより入電!『我輸送船団ト思シキ敵艦隊ヲレーダー二探知』したとのです!」

 

 

秋山「…よくやくお見合い出来たな…、もう逃さないぞ…。全艦に砲雷撃戦用意を下令!ここが正念場だ!」

 

 

霧島『了解ですっ!霧島より各艦艇!吉野が敵輸送船団らしき艦隊捕捉!本艦隊はこれの接触及び撃滅に当たります…!!スゥ~『全艦砲雷撃戦 用意っ!』』

 

 

阿賀野『二艦隊了解っ!いい?水雷戦隊の実力特と見せちゃいましょう…!!』

 

 

曙『当たり前よ!誰であろうと敵艦隊なら徹底的に酸素魚雷で潰してあげる…っ!』

 

 

鳥海『私達の実力を見せてご覧に入れましょう…!!』

 

 

 

もちろんその情報は霧島や秋山の元へとすぐに伝わり、それを受けた秋山かすぐに砲雷撃戦用意を下令。霧島も提督からの指示をすぐに味方艦隊に共有して砲戦用意を伝えていく。他の艦娘も気合い充分な雰囲気を見せながら敵艦隊との夜戦に向けて慌ただしい準備に追われていくのであった……。

 

 

 

 




 


第二十一話 現代戦の要




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第二十一話 現代戦の要

(予想以上に長くなったため再びタイトルを変えさせていただきました。申し訳ございません)





護衛艦隊に空母部隊を有する輸送船団に対してどう接近するか悩んでいたパラオ艦隊であったが龍驤の提案により敵艦載機を誘導、敵艦隊の警戒網に抜け穴を意図的に作り出すことで見事接近。そして予定通り夜間になってから強行突入を果たすことに成功

輸送船団一行もまさか誘い込まれたなんて夢にも思わなかったらしく、刺客ともいえる僚艦からの報告に驚きを露にしているのであった……。






 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

8月24日

沖ノ島南西海域

1800

 

 

吉野 AN/SPY-1D妖精「敵艦隊速力、進路ともに変わらず!こちらに突っ込んできます!接敵まであと60分!」

 

 

吉野 OPS-28D妖精「こちらでも同様にレーダーに艦あり!周辺に他の艦隊は見受けられません!尚、大型艦艇の反応が複数あり!恐らくはこれが戦艦か空母と思われます!」

 

 

吉野 OQS-102妖精「ソナーに現状反応はありません!ですが周辺海域のデータが不足しているため警戒は必要です!それにこの規模なら最低でも1、2隻いてもおかしくないかと…!」

 

 

 

吉野「すぐに共有出来る情報は他艦艇に共有してください!この輸送船団を仕留められるかは私達の初動対応に掛かっています!それと対水上戦闘用意!」

 

 

吉野 攻撃指揮官妖精「了解!総員対水上戦闘用意っ!(バン)周辺警戒を更に厳とせよ!新たな敵艦隊の出現に注意して!」

 

 

 

各対水上レーダーのスクリーンに表示されたおびただしい敵艦隊の反応が表示されるや否や吉野CICは慌ただしい状況に一変していた。次々とCIC妖精から挙げられる情報を聞きながら吉野は慣れた感じですぐさまその情報を共有するように改めて徹底させていく。

それと同時に艦内に対水上戦闘用意を下令していき、吉野からの指示を受けた攻撃指揮官妖精がすぐさま合戦用意の艦内アラームを鳴り響かせながら戦闘配置を命ずる。

 

 

 

吉野 砲術妖精「主砲、短SAM攻撃用意よし!」

 

 

吉野 SSM妖精「ハープーン対艦ミサイルも発射システム異常なしっ!全弾合図があればいつでも撃てますっ!」

 

 

吉野 攻撃指揮官妖精「了解っ!けど本来の目的は忘れないでね!私達はあくまで敵艦隊の情報を味方艦隊と共有すること!指示あるまで発砲は厳禁します!」 

 

 

 

 

 

 

(艦内アラーム音)

 

 

吉野 砲雷妖精「配置だ配置!急げ急げ!万が一のために弾は用意しておけよ!」

  

 

吉野 武器整備妖精「各自持ち場はなんとしてでも死守だ!ビビって放棄するんじゃねぇぞ!」

 

 

吉野 修理妖精「被弾してもいいように角材はいつでも使えるようにしておけ!それと隔壁閉鎖も急げ!敵は待ってくれやしないからな!」

 

 

 

CICが慌ただしくなっている中、艦内でも乗組員妖精達が狭い通路を忙しなく行ったり来たりしている。いくら吉野の任務が情報収集で戦闘の可能性はないとは言えど万が一のこともあり得るため、被弾に備えて再び隔壁こどで閉鎖するために重厚な扉をあちこちで閉めていき、その間にもそれぞれの持ち場で戦闘時の再確認が行われていた。

 

 

 

吉野 見張り妖精『こちら左舷見張り!現状敵艦隊らしき影は確認出来ません!尚接近中と思われる方位以外も同様です!』

 

 

吉野『了解っ!引き続き監視をお願いします!尚、敵輸送船団への夜間戦闘の規定に沿って本艦は面舵180度反転で陣形を離脱、後方に退避して味方艦隊を支援します!面舵一杯!』

 

 

吉野 航海長妖精『面舵一杯!左舷後進一杯急げ!ここでモタモタしてたら後方の陣形が乱れるぞ!それと機関室!ヘマして機関グズらせるなよ!』

 

 

吉野 機関妖精『お任せくださいっ!我らこんご…ゴホン!吉野に搭載されているガスタービンエンジンなら他の艦艇なぞ遅れをとりません!』

 

 

吉野 機関長妖精『よっしゃ機関全開だ!ここでモタモタするなんて現代艦の恥ってもんよ!オマエの瞬発力を見せてやれ!』

 

 

 

慌ただしく動き回っている艦橋妖精を横目にしながら、それと同時に180度面舵一杯の号令を下して陣形を離脱しつつ後方へ退避するように吉野は指示を出していく。彼女の兵装や装甲では第二次世界大戦時の艦船相手では明らかに部が悪い(そもそも現代艦は遠距離での撃ち合いを想定されているのがほとんど)。そのため敵艦隊を捕捉出来、味方艦隊と情報共有が終わればすぐさま面舵反転で後方に退避するように秋山から伝えられていたのだ。

 

その規定に乗っ取った形で彼女の指示を受けた機関室では機関要員の妖精達が気合充分と言わんばかりの雰囲気を見せなが機関が愚図らないように目を光らせていく。もちろん彼女に搭載されているガスタービンエンジンは妖精達の期待に答える形で絶好調とも見て取れる甲高い音を響かせた。

 

 

 

 

キィィィン!!

吉野『それと同時に面舵の際は艦の傾きに注意してください…!!かなり傾きますよ!』

 

 

 

ガスタービンエンジンの出力が上がっていくのとほぼ同じタイミングで弾かれたように艦が飛び出していき、他の追随を許さないとも言えるような瞬発的な加速を見せる。その後しばらく加速してある程度後方との距離が離れたことを確認するや否やほとんど速度を落とさずに急転舵で反転していく。

 

艦の高さ自体高雄型を連想させるような見た目のため重心もかなり高め、それ故急転舵なんてすれば平然と曲がれるはずもなく大きく艦を傾けながら(もちろん転覆しない範囲で)円を描くように旋回しつつ進路を変える。

 

 

 

鳥海 見張り妖精『先頭の吉野が転舵を開始!当初の取り決め通り後方に陣取る模様です!』

 

 

鳥海 羅針盤妖精『うひゃー!?なんだあの加速!下手すりゃ駆逐艦よりも早いんじゃないかあれ!うちらの機関じゃ真似なんて到底出来ないぜ…』

 

 

青葉 機銃妖精『にしてもかなり傾斜してますねぇ…(眺めながら)まああれだけ艦橋が高ければ無理もないですけど…』

 

 

古鷹 見張り妖精『それにしてもホント向こうレーダーどうなってんっすかね?下手すりゃ深海棲艦の連中よりも優れてる可能性ありますけど…』

 

 

 

その様子を後方で3隻で横陣を組むように航行していた青葉、鳥海、古鷹の乗組員妖精達は相変わらず現代艦の瞬発力に驚きを見せていた。やはりというか当たり前なのだが、二次大戦の艦艇でいくら速力があったとしてもここまで瞬発力は良くなく一度減速したり増速するとなればどうしてもタイムラグが生まれてしまう。

 

だから吉野のようにキビキビ動ける戦闘艦自体珍しく感じてしまうのは無理もないのかもしれない。ほとんどラグがないように見える増速、そして艦が傾きそうになりながらの転舵を見ながらそれぞれの感想を述べているようだ。

 

 

 

鳥海『…ですが我々古参が吉野さんに遅れを取るわけには行きませんっ!先輩としてのお手本を見せなければ』

 

 

青葉『ふっふっ〜、ここが青葉の見せ所ですねっ!ここからは私達の出番です!』

 

 

古鷹『うんっ!それにここで輸送船団を通すわけにはいかないもんね!』

 

 

曙『あったりまえよ!深海棲艦の連中なんてコテンパンのけちょんけちょんにしてやるんだからっ!特型駆逐艦の意地を見せてあげるっ!』

 

 

巻雲『わっ私だってやってやりますっ!この中の駆逐艦では新米ですが水雷戦なら負けません!』

 

 

皐月『ならボクは歴戦の駆逐艦としての威厳を見せないとねっ!旧式だってやれば出来るんだからっ!』

 

 

 

 

だがいくら性能がこちらよりも高い装備があったとしてもそれを扱えるだけの練度がなければ宝の持ち腐れというもの。前世でそれなりに経験を積んでいて歴戦のイージス艦である彼女でもこの世界では新入り同様。なら自分達が遅れを取るわけにはいくはずもなく、パラオ艦隊の艦娘達はそれぞれの意気込みを熱く語りながら気合い充分という雰囲気を見せている。

 

 

 

秋山『…そういうことだ…!霧島、旗艦としてしっかしと頼むぞ。パラオ艦隊の強さを見せつけてくれ』

 

 

霧島『もちろんです提督っ!旗艦霧島より第一及び第二艦隊宛!これよりパラオ艦隊は単縦陣に移行します!艦隊速力は現速力を維持!』

 

 

 

そんな部下である艦娘達の意気込みを耳にしながらこちらも同様の表情をしていた秋山は彼女達の気持ちに答える形で霧島に合図を下令。もちろん彼女は待ってましたと言わんばかりの雰囲気で笑みを浮かべるとすぐさま僚艦娘に対して砲雷撃戦に備えた陣形変更を指示していく。

総旗艦からの指示を受けると各艦娘達はそれぞれの配置に付くため一斉に動き出しまし、先程まで組んでいた陣形を解くように航路を変える。

 

 

 

青葉『待ってましたよ〜!本艦は鳥海さんと古鷹さんの間に入りますっ!減速、面舵〜!』

 

 

古鷹『私達は青葉さんの後方に入りますっ!後方に付く予定の霧島さんとの距離にも注意して…!取舵10で減速!』

 

 

鳥海『増速っ!舵はそのままで!いいですかっ!本艦が先頭です!キビキビ動いてください!』

 

 

霧島『ここが旗艦の見せ所です!高速戦艦の名に恥じない動きをしてください!面舵!』

 

 

榛名『本艦は霧島の後方に付きますっ!提督にいいところを見せましょう!』

 

 

雪風『本艦は現在位置を固守!前方の艦の動きには注意してください!伊達に艦隊運動は呉でもやってきましたから!』

 

 

巻雲『私だって遅れるわけにはいきませんよ!水雷魂をぶつけてやりましょう!』

 

 

阿賀野『第二艦隊も複縦陣から単縦陣に移行しますっ!増速!面舵で阿武隈さんの前に出ます!前衛艦隊の動きには注意して!』

 

 

阿武隈『こんな私でもパラオでは歴戦の軽巡洋艦!なら阿賀野さんに恥ずかしい姿なんて見せられません!減速取舵10度!』

 

 

敷波『さーてとっ、いっちょやりますかっ。面舵減速、曙と阿武隈さんの間に入るよっ。問題ないとは思うけど双方の動きには気を配ってね〜』

 

 

曙『取舵よ取舵っ!敵艦隊と撃ち合う前に衝突なんて真っ平ごめんなんだから!』

 

 

時津風『お〜、ぼのちゃん張り切ってるね〜。なら私も張り切っちゃおうかなっ?陽炎お姉さんの分まで頑張らないと〜。とりあえず面舵〜、涼風の前に入るよー』

 

 

涼風『うっしゃ気合い入れて行くでっ!こうゆうのは勢いが大事ってもんよ!取舵っ!睦月と時津風の間に入るぜ!』

 

 

睦月『面舵〜。私もみんなの足を引っ張らないように頑張らないと!』

 

 

皐月『もちろんっ!んじゃボクも配置につくよ!取舵減速!』

 

 

 

日が落ちていることに加え灯火管制によって僚艦の視認性は最悪と言っていいほど悪いはずだが、それを全く感じさせないような素晴らしい各艦の巧みな操艦によってパラオ艦隊は単縦陣へと移行していく。やはり最前線とも言える泊地を拠点にして活動していることもあり、本土に展開している艦娘に劣らない実力があるようだ。

 

 

 

ー流石は戦い慣れているだけありますね…、動きに迷いがない…。この時代なら私達よりも僚艦の確認方法は限られていますが…それが全く感じないというか…ー

 

 

 

もちろん反転して退避している吉野もすれ違いざまにパラオ艦隊の陣形変更を目撃しており、こんなに視界が悪い中でここまで動けることに驚きを隠せない様子。海上自衛隊初のイージス艦として長年国防に携わってきた彼女もその過程で様々な経験を積んでいる故か、分かるものがあるのかもしれない。

 

 

 

ー…いや、関心してる場合じゃないよね…っ!私も頑張らないと、腐っても歴戦のイージス艦なんだから…!ー

 

 

 

だがいつまでも関心している場合ではないと自分を言い聞かせながらも、すれ違う艦隊を横目に配置に付くために艦内に指示を飛ばしていくのであった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1810

深海棲艦側

輸送船団にて

 

 

 

 

ー総員戦闘配置!繰リ返ス!総員戦闘配置!敵艦隊接近中トノ一報アリ!!ソレニ伴イ陣形ヲ複縦陣二変更スルッ!!ー

 

 

 

パラオ艦隊側が敵輸送船団の存在を察知したのとほぼ同じタイミングで、晋級のソナーによって敵艦隊の存在を認知した深海棲艦側の艦隊では慌ただしく戦闘配置に追われている。夜間や距離からして連中が砲雷撃戦を仕掛けてくることはほぼ間違いないためそれに備える形で複縦陣に変更しているらしい。旗艦のル級が忙しそうに指示を出していた。

 

 

 

ーソレト戦闘二備エテ輸送船団及ビ空母部隊ハ艦隊カラ分離 離脱シロ!ココデコイツラヲ失ウ訳ニハイカン!!リ級!ソッチノ護衛艦隊旗艦ヲ任セタゾ!ー

 

 

ー了解シタ!必ズヤ輸送船団ハ我々ガオ護リイタシマス!輸送船団ニハ指一本モ触レサセマセン!!ー

 

 

 

かと言って輸送船団を護衛した状態での戦闘は足を引っ張りかねないのが現実、そのため砲雷撃戦には明らかに不向きである輸送船と空母群を退避させるように追加で護衛艦隊旗艦のリ級に対して伝える。これを受けてル級は配下の護衛艦10隻で輸送船団及び空母群の36隻の艦隊は戦闘陣形に移行している別働隊の合間を縫うように航路を変えていく。   

 

 

 

ーソレデ 私ハドウスレバイイノカシラ 指揮艦サン?ー

 

 

ーオ前ハ潜航シテ敵艦隊ノ動向ヲ探レ ソッチノ静寂性ナラ連中ノソナーニハ引ッ掛カラナイハズダ ソレニアイツラハアンタノ存在ニハ気ヅイテナイー

 

 

ーナルホド〜 ワカッタワ …モチロン偵察ダケジャナクテ攻撃モシテモ構ワナイワヨネ?ソノタメノ原子力潜水艦ヨ?ー

 

 

ー…ハァ… ソレハ構ワンガ攻撃スルナラ対艦用ノ誘導弾カ魚雷ニシテクレ オ前ガ言ッテイタ例ノミサイルハ決シテ撃ツナヨ?下手スリャ俺達モ吹キ飛ビカネンー

 

 

ーワカッテルワ ソモソモアレハ敵艦ヲ狙ウ物モノジャナイカラハナッカラ使ワナイワヨ 二次大戦ノ艦艇ナラ対艦ミサイルデモ充分ヤレルシ ンジャココカラハ別行動ネー

 

 

ーアァ ヘマシテ連中ニ殺ラレルンジャナイゾー

 

 

ーソレハコッチノセリフヨ アンタ達コソセイゼイ輸送船団ト仲良ク沈マナイヨウニシナサイヨー

 

 

 

そんな慌ただしい状況の最中、ル級に命令を仰ぐような雰囲気で会話をしていた晋級は旗艦から敵艦隊の状況把握に勤めろという指示を受けるとすぐさま潜航準備に取り掛かっていく。…がそれだけで終わるような彼女ではないため、いざとなれば誘導兵器による敵艦への攻撃も構わないかと悪笑みを浮かべながら訪ねて来る。

 

もちろんそのために彼女をわざわざ輸送船団の護衛として組み込んだため、こっちに来て間もないのに好戦的な新入りに対してため息を溢しながら条件付きでしても構わないとル級は答える。その後一言二言会話を挟み、互いの武運を祈り合うと晋級は現代潜水艦ならではの急速潜航であっという間に暗い海の中へと消えていき、その様子を見ながらもル級自身も砲雷撃戦に備えた準備に取り掛かっていくのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

吉野 AN/SPY-1D妖精『むっ…これは…』

 

 

吉野 攻撃指揮官妖精『ん?どうしたのAN/SPY-1D妖精、報告して』

 

 

 

レーダースクリーンに映し出されている両艦隊の動向を監視していたAN/SPY-1D妖精であったがふと何かに気づいたらしく眉を上げながらマジマジと見つめている。乗組員の異変に気づいた攻撃指揮官妖精がどうしたのかと後ろから声をかけると、それに答える形でAN/SPY-1D妖精が口を開く。

 

 

 

吉野 AN/SPY-1D妖精『SPYレーダー分離したと思われる艦隊を探知…!どうやらどさくさ紛れに離脱するものと思われます!』バッ!

 

 

吉野 攻撃指揮官妖精『砲雷撃戦の前に分離して離脱…、間違いないソイツらが護衛対象であろう船団ね。恐らく戦闘じゃ足手まといになるから被害受ける前に退避ってとこでしょうけど…』

 

 

吉野 砲術妖精『んでその艦隊どうすんだ?俺達の狙いはコイツらだから呑気に見逃す訳にはいかんが…』

 

 

吉野『…とりあえずこのことは味方艦隊に報告しましょう、電信妖精。この情報を暗号文で旗艦に打電して』

 

 

吉野 電信妖精『了解しましたっ!直ちに打電します!』

 

 

 

どうやらSPYレーダーが分離した敵輸送船団を捕捉したようでスクリーンにはパラオ艦隊に接近している艦隊とは別に、そそくさと逃げるように進路を変えている艦船の反応が表示されていた。レーダーでは艦種の識別は反射するレーダー波で大雑把にしか判断出来ないが、戦闘前に別れて避けるように進路を取るということはこれが輸送船団本隊で確定だろう。

 

戦闘前ではあるものの肝心の輸送船団を逃しては元も子もないため攻撃指揮官妖精やAN/SPY-1D妖精の報告を聞いた吉野は直ぐ様味方艦隊に伝えるよう、電信妖精に指示を出していくのであった。

 

 

 

 

 

 

 

霧島 電信妖精『霧島さん、提督!吉野さんから入電来ました!。レーダーにて艦隊と分離、離脱していると思われる輸送船団の反応を捕えたそうです…!』

 

 

秋山『流石吉野だな、敵艦隊の動きが丸裸だ…。恐らくは輸送船団に被害を出させないために戦闘前に分離させて退避ってところだろうが…』

 

 

 

もちろんその情報は旗艦である霧島に直ぐ様打電されて、通信を受けた彼女の通信妖精が顔を上げながら二人に視線を向けながら報告していく。敵艦隊としてはこちらに完全に捕捉される前に味方輸送船団や空母群を退避させて、被害を防ごうという狙いがあったらしい。

 

…しかしその動きは吉野の強力な対水上レーダーによってしっかりと捕らえられておりその情報がパラオ艦隊に共有された時点で完全に筒抜けという状態になっていた。そそくさと退散しようとする一部艦隊の話を聞きながらも司令官席に陣取っている。

 

 

 

霧島『提督、離脱している艦隊が輸送船団となればみすみす逃がす訳には行きません。ここは阿賀野以下第二艦隊で追撃を掛けるべきかと』

 

 

秋山『…だがそうなると数で不利になる…交戦予定の艦隊だけでも25隻近く。対するこっちは第二艦隊が抜ければ8隻…、吉野は後方支援だから実質7隻で相手だな。それに輸送船団は最低でも10隻近く護衛の艦艇がいる…分散するのは得策ではないが…』

 

 

霧島『確かにリスクはありますが…かと言って護衛艦隊を戦力集中で突破しようにもその間に逃げられてしまいます。輸送船団を潰すために待ち伏せをしてるのにそれでは本末転倒に……』

 

 

秋山『ふむ……』

 

 

 

霧島から発せられた進言を聞いてどうしたものかと顎に手を当てながら秋山は考え込む。確かにこのまま護衛艦隊と全戦力でぶつかりあってもその間に輸送船団が逃げてしまうのは明白、というかそれが敵艦隊の狙いでもあるのだ。…だがその追撃でこちらの艦隊も分離してしまえばただでさえ戦力で劣勢なのに更にその差が広がってしまう。

 

確実さで言えば分離しないほうが得策なのだが、それでは本来の目的である輸送船団を撃滅することが難しくなる。確かに分散にはリスクが生じてしまう、しかし輸送船団を逃してしまえば沖ノ島への更なる接近を許してしまい最悪の場合上陸されかねない。

 

 

 

秋山『確かに霧島の言う通りかもな、それにここで俺がとやかく言えることじゃない。分かった、直ぐ様阿賀野以下第二艦隊に敵輸送船団追撃を伝えろ』

 

 

霧島『了解っ!』

 

 

秋山『恐らく離脱中の輸送船団にも護衛の艦艇は何隻か含まれてる、数は多くないだろうがこちらよりも多いのは確かだ。決して気を抜かないようにとも伝えてくれ』

 

  

 

最初こそ戦力分散に乗り気ではなかった秋山であったが、他に手がないと分かると止む終えないかという表情を浮かべながら霧島に第二艦隊への追撃命令を下令するように伝える。それを聞くと透き通る声で返事をした霧島は第二艦隊旗艦である阿賀野に対して指示を出していく。

 

 

 

霧島『そちらも了解しましたっ!水上打撃艦隊旗艦霧島より阿賀野へ指示を下令、貴艦は水雷戦隊を率いて敵輸送船団を追撃、撃滅してください!』

 

 

阿賀野『了解!いよいよ水雷戦隊旗艦らしいことが出来そうねっ!ノコノコと逃げようとする輸送船団にデカいの打ち込んで上げるわ!』

 

 

霧島『気合い入ってますね…!流石は次世代型軽巡洋艦のネームシップ!ですが油断はしないでください阿賀野さん!輸送船団側にもかなりの護衛艦艇が随伴してるはずです!』

 

 

阿賀野『問題ないわっ!だったら粉砕して輸送船団を狩るまでよ!!阿賀野より各艦へ!これより本艦隊は第一艦隊と分離後、逃亡中と思しき敵輸送船団を追撃!撃破します!』

 

 

 

霧島から輸送船団攻撃が指示されると同時に、透き通る声で自信満々に阿賀野は答えながら配下の水雷戦隊に対して命令を下す。旗艦からの指示が飛び込んでくるや否や先程まで追随していた第一艦隊から二艦隊各艦は次々分離していく。

 

 

 

阿武隈 水雷妖精『魚雷発射管及び酸素魚雷のチェック急げ!!いつでも撃てるようにしておけよ!!』

 

 

曙 水雷妖精『おらお前ら魚雷の最終確認だ!大事な場面で不発や自爆なんて他の連中笑われるぞ!』

 

 

曙 水雷妖精『おまかせください!我ら水雷妖精の名にかけてしっかりとチェックしております!ほらそこ!シャッキと動かんか!』

 

 

 

輸送船団への攻撃を行うために航路を変更した各艦では戦闘に備えた武装や弾薬などの最終チェックなどに追われており、駆逐艦や軽巡洋艦の命ともいえる酸素魚雷に関しては人一倍妖精達の気合いが入っているらしい。そんなこんなしている最中、第二艦隊は特に問題なく離脱している敵艦隊に対して追撃をかけるのであった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

吉野 AN/SPY-1D妖精『主力艦隊から水雷戦隊が分離、敵輸送船団に対する追撃をかける模様です』

 

 

吉野 攻撃指揮官妖精『現状ただでさえ戦力が劣勢だからどうするか考えたけど、向こうの指揮官さんは輸送船団にも追撃をかけるみたいね』

 

 

 

先程まで一つに固まって動いていたと思われる反応が2つに別れていく。その後別れたと思われる水雷戦隊が現海域を離脱しようとしていた輸送船団に追撃をかける様子がきっちりと水上レーダーに捕られていた。その様子を確認しながら報告を続け、攻撃指揮官妖精はスクリーンに表示されている僚艦と思しき反応を見つめつつ推測を述べていく。

 

 

 

吉野 OPS-28D妖精『ですがこの状況でのさらなる戦力分散は大丈夫なのでしょうか…?ただでさえこちらは劣勢なのに……』

 

 

吉野 砲術妖精『まあそうだな、でもだからって戦力集中してすぐに突破出来るほどの余力はこっちにはないも現実。それじゃ目的の輸送船団に逃げられちまうし敵の思う壺だ』

 

 

吉野 水雷妖精『つまり初動がいかに大事かってことだよな?相手が万全の攻撃体制を取る前に一撃を喰わてて混乱させる、そのために俺達がここにいるんだ』

 

 

吉野 OPS-28D妖精『はっはぁ……』

 

 

吉野『吉野よりCIC!間もなく味方艦隊が敵艦隊と接触、同時にキルゾーン誘い込みのため敵艦隊の誘引へ入りますっ!それに備えて電子戦の用意を!』

 

 

 

そんな攻撃指揮官妖精の推測を聞きながらもCICに属している各持ち場の妖精達は何やらいろいろと話していた。もちろんその内容は分離した敵輸送船団に関してであり、ただでさえ戦力で劣っているのに艦隊を2分して大丈夫なのかというものらしい。

 

確かに一部妖精の言う通り敵艦隊は護衛部隊だけで20隻近く、輸送船団に関しては40隻以上の艦船を有しているのに対してパラオ艦隊は僅か16隻。そこから更に分離するとなれば互いに8隻ずつの艦隊になるため更に戦力差が開いてしまうのだ。

 

 

しかしだからと言って全戦力を護衛艦隊にぶつけたところで突破出来るかと言われればそうでもない。いくら自分達の得意な夜戦ステージとはいえ、敵艦隊の目的はこちらの足止め。仮に突破出来たとしてもその間に逃げられてしまえばそれこそ本末転倒、最悪の場合沖ノ島に接近される危険性が生じる。だからこそ水雷戦隊で殴り込みを実施することで輸送船団に自分達も狙われていると悟らせれば、それだけでも動きは大幅に制限されてしまう。

…いろいろと話していると攻撃指揮官妖精のインカムの無線スイッチが入るとともに艦橋上部にいる吉野から電子戦用意の指示が入って来た。

 

 

 

吉野 攻撃指揮官妖精『こちらCIC、了解いたしました!NOLQ-2に対して電子戦用意を下令します!』

 

 

吉野 NOLQ-2妖精『了解、電子戦に備えて即時体制を取ります。各種電波妨害システム準備よし…!』

 

 

 

これを受けてCICでは電子戦用意の下令がされて、彼女が装備している電波探知妨害装置『NOLQ-2』の担当妖精がそれに応じて目の前にある機器やスクリーンを操って作動確認を行っていた。だが何故砲雷撃戦が始まる前に電子戦の用意が必要なのかと思われるが、敵が夜間砲戦を行う際に必要としている装備が絡んでいるからである。

 

…そう水上レーダーなどの電探装備、これが彼女が電波妨害装置を使う一番の理由である。人類よりもより優れたレーダーを持ち合わせている深海棲艦は、こうした艦娘が得意としている夜戦などに遭遇した際は電探などを駆使して対処しようとする傾向があるらしい。

 

 

実際過去の大戦でも序盤こそは電探がまだまだ未熟だったことや夜戦で慢心していたり戦法が不慣れだった米艦隊は夜戦に熟練した乗組員や指揮官が乗艦する日本艦隊に戦術面で押されることがかなりあった。その中では駆逐艦隊だけで巡洋艦部隊を返り討ちにした事例もあったり…。

しかしずっとそんなことばかりではなく戦争が長引くに連れてアメリカ軍も電探装備をどんどんグレードアップさせていき、最終的には立場が完全に逆転し夜戦時の弱点を克服することに成功した。

 

もちろんその技術を引き継いでいる深海棲艦もそれは同様であり、新型の電探による正確な敵艦隊捕捉で先手を打って返り討ちしようとするのは間違いない。だがそれが秋山の狙いであり、水上打撃艦隊に彼女を組み込んだもう一つの理由。

 

 

電探による夜間砲戦に慣れた深海棲艦に対して電波妨害装置を用いることで彼らの目ともいえるレーダーを潰してしまえば、見慣れない上に目に見えない攻撃で連中は間違いなく混乱する。その隙に誘い込んだキルゾーンで一網打尽にしてしまおうというものだ。   

 

 

 

吉野『タイミングは両艦隊が同航戦に移行する直前!絶対にタイミングを間違えないで!少しでもズレたら味方の連携が乱れるか最悪砲火に晒されるわ!』

 

 

吉野 NOLQ-2妖精『お任せください!絶対にタイミングなぞ外しはしません!私の実力はそんなもんじゃないのでね!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

霧島『艦隊取舵!!敵艦隊の進路を塞ぐように展開します!!』

 

 

鳥海『了解しました霧島さん!取舵一杯!!回頭してすぐに砲雷撃戦が始まります!!妖精の皆さんはいつでも撃てるように準備を!』

 

 

 

吉野が電子戦の準備に取り掛かったのと同時刻、第一艦隊では敵艦隊を同航戦に誘引しキルゾーンに誘い込むために取舵一斉回頭を始める。霧島の合図を受けるや否や先人を切る鳥海が取舵を始め、それに続く形で後続艦も次々と転舵していく。もちろん艦内でも取舵後すぐに始まる砲雷撃戦に備えて各部署の妖精はかなりドタバタしながら射撃準備に追われているようだ。

 

 

 

鳥海『電探妖精!敵艦隊は!』

 

 

鳥海 電探妖精『バッチリです!しっかりと二号二型電探で捕らえています!!現状はまだこちらがT字有利ですが…』

 

 

鳥海『確実に敵艦隊はこっちの動きを掴んでいます…!なら不利なT字戦よりも有利に撃ち会える同航戦に移行して来る…!そこが狙い目です!』

 

 

鳥海 水雷妖精『こっちはいつでも行けますぜ鳥海さん!敵艦隊にぎゃふんと言わせてやりましょう!!』

 

 

鳥海『もちろん!それと見張り妖精!取舵が終了次第、吉野さんが電波妨害を開始します!そうなるとレーダー系列は使い物になりません…!敵艦隊の情報はそちらが頼りになります…!』

 

 

鳥海 見張り妖精『お任せを!この鍛え上げられた目で闇夜に紛れた敵艦隊をしっかりと捉えてご覧に入れましょう!』

 

 

鳥海『お願いします…!レーダーが使えないとなると発砲のタイミングは吉野さんからの電波妨害が合図になります!絶対に見落とさないように!』

 

 

鳥海 電探妖精『了解!』 

 

 

 

とは言えど吉野が搭載している電波妨害はあくまで現代戦の艦艇に特化したシステム。この時代の艦艇が搭載している装備に対する電波妨害は想定なぞしているはずもなく、出来ないこともないが敵艦隊に対してピンポイントに行えない。そのため、電波妨害装置を作動させるということは味方艦隊のレーダーも使えなくなることを意味していた。

 

だからこそ、その電波妨害によって電探が一時使用不能になったタイミングでの攻撃が必要不可欠となり敵艦隊が混乱から立ち直る前に一撃加える必要がある。つまり吉野がジャミングを開始するタイミングは絶対に失敗できないということであり、彼女にはかなりの重役が与えられることに…。

 

 

 

巻雲『いいですかっ!魚雷発射のタイミングは回頭が終わった直後!電探が使えないとなると見張り妖精の目が頼りです!敵艦隊の監視は任せましたよ!』 

 

 

巻雲 見張り妖精『了解でっせ!夜戦といえば駆逐艦の晴れ舞台!!久しぶりに暴れてやりますよ!!』

 

 

雪風『呉からパラオに転属となって初の砲雷撃戦です!ですがやることはあっちと変わりません!幸運の女神、その実力を見せてあげます!』

 

 

雪風 砲術妖精『おうよ!伊達に歴戦揃いの呉で扱かれてきたんだ!こんなところで足引っ張る訳にはいかんからな!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーッ!敵艦隊取舵ニ入リマシタ!本艦隊ノ進路ヲ塞グ模様デス!コノママデハT字不利ニ…!!ー

 

 

ーソンナコトハサセン!艦隊面舵!コノママ同航戦ニ移行スル!!ソレト砲雷撃戦用意ッ!ー

 

 

 

もちろんパラオ艦隊が取舵で進路を変えているのは向かい合う形でこちらにやっできていた深海棲艦側もしっかりとレーダーによって捕らえており、最新鋭とは言えど少々レトロなスクリーンに表示された敵艦らしき反応を見ながら乗組員らしき物体が報告していく。それを聞いたル級はこのままではT字戦不利になって集中砲火を浴びると悟り、数を活かし火力を最大限発揮出来る同航戦へ移行するために艦隊に面舵を下令する。

 

旗艦からの指示を受けて先頭を行く駆逐艦群などの先頭艦に続く形で次々と取舵で順次進路を変えていく。と同時に敵艦との撃ち合いに備えて各艦では砲雷撃戦用意のアラームが艦内隅々まで鳴り響き各科の戦闘員が狭い通路を行ったり来たりしながらもそれぞれ配置についていく。

 

 

 

ー電探及ビ射撃指揮装置ノ連動確認!!合図ガアレバイツデモ撃テマス!!ー

 

 

ー面舵終了後ニ統制射撃ヲ行ウ、イイカ!絶対輸送船団ニ近ヅケサセルナ!!数ト火力ニモノヲイワセテ徹底的ニ撃滅シロ!!ー

 

 

 

面舵終了後にレーダー射撃による一斉射撃で敵艦隊を葬る予定のため回頭中でも電探や主砲、副砲などが相次いで音を立てながらゆっくりと左に旋回。送られてくる情報を元に面舵が終わればすぐにでも撃てるように砲塔を横に向けていた。

 

 

 

ーモチロンダ!連中ニハ酸素魚雷トカトイウ強力ナ魚雷ガ装備サレテイルトキクガ…!撃タセル前ニ沈メテシマエバ関係ナイ!ソノタメノ火力重視デ編成シタ巡洋艦部隊ナンダカラナ!!ー

 

 

ー間モナク敵艦隊回頭終了!デスガコッチモ最後尾艦ガ最終進路ニ入リマシタ!!ー

 

 

ーフッフッ イツマデモ我々ガ夜戦デ通用スルナンテ思ウナヨ!電探ニヨル正確ナ射撃 更ニハ数ヲ活カシタ物量デ捻リ潰シテクレルワ!ー   

 

 

 

確かに初期の頃の夜戦では圧倒的練度を誇る敵艦隊に何度も辛酸を飲まされてきた深海棲艦。しかし高性能なレーダーを手に入れてからはそういったことはほとんどなくなり、更に砲戦に特化した巡洋艦を組み込んだことで海戦を有利に進めることが出来た。今回も同様にケリを付けられるとほとんどの深海棲艦が思っているようでむしろ数で圧倒的な差があれば負けるはず(本当は16隻いるパラオ艦隊だが、分離した水雷戦隊と吉野の存在には気づいていない模様)がないと踏んでいるらしい。

 

相手はどうせT字戦で戦力差を埋める手筈なのだろうがそれはこちらからすれば見え見えと言っても過言ではない。このまま同航戦に移行し圧倒的火力を正確に敵艦隊に叩き込むだけ、そう思っていたのだが……

 

 

彼女らは知る由もないだろう、自分達の有利点であるレーダー射撃を封じる手立てを敵艦隊が有していることを……。

 

 

 

ー艦隊一斉射撃…!!撃チ方y……ー

 

 

 

吉野 AN/SPY-1D妖精『敵艦隊同航戦に移行!!砲撃体制に入りましたっ!!』

 

 

吉野 攻撃指揮官妖精『NOLQ-2妖精!!電波妨害装置作動始め!!敵の目を眩ませてやりなさい!!』

 

 

吉野 NOLQ-2『了解っ!NOLQ-2装置作動させます!!撃たせはしませんよっ!!(カチッ!)』

 

 

 

レーダーに表示されている敵艦隊らしき反応が味方艦隊と完全に並走する直前にAN/SPY-1D妖精が声を上げながら視線をCIC全体へ向けた。報告を聞いた攻撃指揮官妖精が電子戦開始の号令を下し、それを受けたNOLQ-2妖精がここぞというタイミングで電波妨害装置を作動させていく。

 

 

 

ブゥン……

ーナッナンダコレハ…?ー

 

 

ー何!?ドウシタ!何故撃タナイ!!ー

 

 

ーソッソレガ…!突如トシテ電探ガダウンシテ…射撃指揮装置ニデータガ送ラレテキマセン!コレデハ…ー

 

 

 

相手の電子機器などの発する電波を妨害する電波妨害装置、現代艦にとって当たり前と言っていいこのシステムはこの時代でも猛威を振るうようだ。確かにそういったものを積んでいない艦などには効果は薄い、だがこの世界の深海棲艦が搭載しているレーダーなどは二次大戦中こ艦艇としてはかなり発達したもの。

 

となれば彼女の搭載する妨害装置は十二分に威力を発揮出来るし防ぐ手立てがない彼女達にとっては見えない攻撃を防ぐ手立てはほとんど存在しないと言っても過言ではない。案の定、電子戦攻撃を受けた深海棲艦側の各艦、そのすべてのレーダー関係の装置がまたたく間に次々とダウン。

 

 

もちろん艦娘から今までそんな攻撃を受けたことのない深海棲艦が平然とすることなんて出来るはずもなく、一体何が起こったのか全く理解が追いついていない模様。更にはレーダー射撃が不可能になったことで砲弾を敵艦隊に向けて解き放つはずだった各砲は攻撃を開始出来ずにいた。

しかしそれを既に把握していたパラオ艦隊は…

 

 

 

 

霧島 二号二型電探妖精『電探が使用不能になりました!これが恐らく吉野さんからの合図です!!』 

 

 

秋山『…(頷き)霧島っ!』

 

 

霧島『はいっ!(スゥ)右舷魚雷戦始めっ!!』

 

 

 

霧島に搭載されていた対水上電探である二号二型電探のスクリーンが全く使い物にならなくなったことを確認した妖精が、これを吉野からの合図と受け取って素早く報告していく。電探妖精からの報告を聞いた秋山は頷きながらも艦橋にいた彼女に合図をかけ、霧島もそれに答えつつ一息つくと彼女らしいよく透き通る声で右舷魚雷戦始めの号令を下す。 

 

 

 

鳥海『水雷妖精!右舷魚雷撃ち方始めっ!敵艦隊の航路にありったけの酸素魚雷を流しなさい!』

 

 

鳥海 水雷妖精『待ってました!魚雷発射だ発射!遠慮はいらん!撃てるだけ打ち込め!次弾装填組は即時待機!』

 

 

鳥海 水雷妖精『了解!!連中が混乱してる隙に撃ち込んでやります!次の魚雷込める連中も気合いれてけよ!俺達水雷妖精の一番の出どころはここだからな!』

 

 

鳥海 水雷妖精『俺達の乗ってる巡洋艦はなんで魚雷を積んでるかって?そりゃこうするためだろうよっ!1番、3番発射管てぇ!』

 

 

 

もちろん旗艦からの号令が下れば誰も引っ張るはずもないもので第一艦隊の先人を斬っていた鳥海はすぐさま待機してきた水雷妖精に魚雷発射を指示。今か今かと待ち望んでいた妖精達は待ってましたと言わんばかりに発射位置に向けていた八九式61cm4連装魚雷発射管を作動、それと同時に彼女に搭載されている片舷8門の発射管から次々と酸素魚雷が解き放たれていく。

 

(史実では八九式61cm連装魚雷発射管は左右含めて4基8門とされていますが、この世界の鳥海は高角砲換装の際に魚雷発射管を連装から4連装に載せ替えて雷撃能力を向上させている。なので合計4基16門)

 

 

 

青葉『私達も行きます!右舷魚雷発射管、攻撃始めっ!』

 

 

古鷹『青葉さんや鳥海さんに遅れないでください!右舷魚雷戦、始めっ!』

 

 

巻雲『本業である私達駆逐艦が遅れる訳には行きません!水雷妖精の皆さん!魚雷全門発射してください!』

 

 

雪風『幸運の女神は私達についています!何故かって!それは私がその本人だから!よぉく狙って!てぇ!』

 

 

 

鳥海が右舷魚雷戦を開始したのとほぼ同じタイミングで、他の巡洋艦や駆逐艦群も一斉に右舷、敵艦隊がいると思われる暗闇に包まれた海域に次々と魚雷を発射。発射管から放たれた魚雷は海中へと自ら飛び込むように音を立てていき、一瞬沈んだと思ったら酸素魚雷特有の見えにくい航跡を後ろから出しながらスクリューの推力によってすぐさま進みだしていく。

 

 

 

青葉 水雷妖精『全弾発射を確認!次弾も忘れずに発射管に装填しろよっ!見張り妖精!撃った酸素魚雷はどうだ!』

 

 

青葉 見張り妖精『問題ありません!特に迷走や自爆、魚雷同士の衝突もなく正常に進んでいます!』

 

 

青葉 水雷妖精『よぉし!このために入念にチェック入れておいて正解だったな!』

 

 

古鷹 砲術妖精『水雷妖精に遅れを取るんじゃないわよ…!巡洋艦なら砲撃戦をしてナンボです!主砲要員は主砲発射即時待機!合図があればいつでも撃てるようにして!』

 

 

 

発射管に装填していた酸素魚雷を全弾撃ちきったからと言ってそれで終わりというものではなく、次弾装填に備えて各艦の水雷妖精は新しい魚雷の準備に取り掛かる。もちろん放たれた魚雷は特に迷走や自爆などをすることもなく正常に動いているようで、そのまま敵艦隊がいると思われる暗闇に消えていっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーナニヲシトル!レーダーガダメナラ目視デ敵艦隊ヲ見ツケンカ!!ー

 

 

ーダメデス!レーダー射撃ヲガッツリスル予定ダッタタメニ射撃指揮装置ガソッチニ完全ニ対応シテイタセイデ 発砲出来ズニ…!ー

 

 

ークソッ!!一体何ガドウナッテルンダ!コンナハズジャ!ー

 

 

 

その頃、深海棲艦の護衛艦隊では本来レーダー射撃で敵艦隊を壊滅させる手筈、なのに突如として艦隊が襲われた謎の攻撃により混乱状態に陥っていた。しかもがっつり電探連動で撃つ予定だったため、正確な敵艦隊の位置が送られてこないせいで射撃指揮装置がすぐに動けずじまいに…。

 

 

 

ーモタモタシテイルウチニ連中ヘ先ヲ越サレル!砲射撃指揮装置カラ砲側ノ直接照準ニ切リ替エロ!見張リ 敵艦隊ヲ見ツケルンダ!コノ距離ナラ見エルハズ…!ー

 

 

 

一瞬何が起こったのか理解が追い付いていなかった旗艦ル級であったがすぐに我に返ったのか、妖精達にレーダー射撃から砲側直接照準に切り替えるように指示を出しながら見張り妖精に敵艦隊を見つけるように伝えていく。流石はeliteクラスの深海棲艦、見慣れない攻撃を受けても咄嗟に持ち直せるほどの練度はあるらしい。

 

ここまま彼女の指示で混乱していた艦隊が立ち直せる…そう思っていたのだが…

 

 

 

 

今回ばかりは相手にした艦隊が悪い…と言わざる負えなかった…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー敵艦隊発見ッ!先程ト変ワラズノ位t……(ドォォォォォン!!!)ー

 

 

 

見張り妖精が敵艦隊発見との一報を発していた最中、暗闇に紛れて近づいていたであろう海中を突き進んでいた魚雷が忍び込むように接近。直後とてつもない轟音とともに航行していたあちこちの艦を飲み込むような大きな水柱が高く聳え立っていくのであった…。

 

 

 

 

 







第二十二話 悪魔の飛翔体
(艦隊陣容については文量の都合で次回に載せようと思います。それとこれが年内最後の投稿になります、


来年も艦隊これくしょん 『最新鋭の護衛艦は何を見るのか?』を主とともによろしくお願いします!


それでは、よい年を!)


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第二十二話 悪魔の飛翔体



吉野のアシストを受けて敵艦隊へ対し強襲攻撃をかけようとするパラオ艦隊。だが深海棲艦はそんなことを知らずノコノコと近づいてきた敵艦隊を返り討ちにしてやると言わんばかりに戦闘体制を整えていた。

高性能な電探、そして圧倒的火力で打ちのめそうとする護衛艦隊。しかし突如として襲われた目に見えない攻撃を受けてしまいあっという間に混乱状態に陥ってしまう。


…なんとか体制を立て直そうとした深海棲艦隊であったが、そこに追い打ちをかけるように艦隊は次々と激しい水柱に包まれてしまうのであった…。


(かなり遅くなりましたがあけましておめでとうございます。
今年もどうぞよろしくお願いいたしm(ハープーン直撃))

 
吉野「…遅すぎです」


 

 

 

 

8月24日

沖ノ島近海

1840

 

 

 

 

ゴォォォォォン!!!

ドォォォォォン!!!

 

 

 

 

ーグォ…!?ードサッ!!

 

 

 

 

見張り妖精から敵艦隊捕捉の一報を受けた直後、何処からともなく轟音が響き渡るとともに自身の艦が大きく揺れ動く。一体何が起こったのか理解が追いついていないル級だが、そんな彼女に追い打ちを掛けるように衝撃でそのまま艦橋の壁に勢いよく叩きつけられる。

 

 

 

 

ーナッ…ナニガオコッテ……(チラリ)ナッ…ー

 

 

 

 

叩きつけられた衝撃でくらくらする頭をなんとか抑えているル級は一瞬ここが戦場だという事実を忘れるかのように呆然としているらしい。その後ふと艦橋の外に視線を移したことですぐに現実に引き戻されてしまう。…彼女の視線の先、先程まで航行していたはずの駆逐艦ロ級が瞬く間に業火に覆い尽くされていた。

 

 

 

 

ー…ドウナッテルンダ……、ソウダ!確カ敵艦隊ヲ見ツケタトイウ報告ガ上ガッタ直後ニ突然轟音ガ響キ渡ッテ……ッ!ー

 

 

 

 

確か敵艦隊に対するレーダー射撃を行おうとして、それが突然出来なくなったことから見張りによる直接視認からの砲側砲撃による反撃に切り替えようとした。…がその直前に轟音とともに自艦が水柱で包まれたことをようやく思い出したらしい、くらくらしかけている頭をムチで強制的に戻しながらル級は直ぐ様立ち上がる。

 

 

 

 

ースグニ被害ノ状況ヲ確認シロ!!ナニガオコッタノカモ含メデ!ソレト僚艦モダ!!ー

 

 

 

 

衝撃の影響で物があちこちに散乱しており窓ガラスも一部割れている様子。艦橋要員も何があったのか分からず終始混乱していたがル級のよく響く声ではっとしたのかふらふらする足を無理やり走らせながら慌ただしく動き始めていく。

 

最初こそもたもたしていたが、やはり戦闘中ということもあり動き出すと流石はelite級の乗組員、続々と報告が上がって来た。

 

 

 

 

 

ー左舷中央部ニ被雷!!一部区画デ浸水ガ発生シテイマス!!恐ラク敵ノ放ッタ魚雷デス!!ー

 

 

 

 

ー機関室ハ問題ナイトノコト…!!戦闘行動ニハ支障ハアリマセン!!デスガ艦隊全体デノ被害ハカナリ深刻!確認サレテイルダケデモロ級及びイ級4隻、軽巡ホ級ガ2隻、並ビ二重巡リ級1隻ガ轟沈!轟沈ヲ免レタ他ノ艦艇モ被害ガ発生シテイマス…!ー

 

 

 

 

ー…初動デカナリヤラレタナ… タガ何故我々ガ攻撃スルヨリモ先ニ敵艦隊ガ先手ヲ打テテイルンダ 電探ノ性能デ行ケバ我々ニ軍配ガ上ガルノハ間違イナイハズ 一体ナゼ…?ー

 

 

 

 

思っていたよりもかなり被害は深刻のようで、報告だけでも初動の攻撃によって合計七隻の艦艇が喰われたらしい。深海棲艦乗組員からいま分かるだけの状況説明を聞いたル級は敵の先制攻撃でかなりやられたなと思わず頭を抱えてしまう。…がそれよりもふと脳内に過ぎるように、何故敵艦隊が自分達よりも先に攻撃出来たのかという疑問が浮かび上がる。

 

先程も言った通り艦娘側の電探は自分達が搭載しているものと比べるとどうしても見劣りしてしまう。だからこそ、そのレーダー性能差を活かして今日まで夜戦で敵艦隊に対して有力に戦えた。…しかし今はどうだろう?こちらが攻撃する前に敵艦隊から突然の魚雷攻撃を喰い、手も足も出ない状態になっているではないか。

 

 

 

 

ーイヤソレダケジャナイ…!コッチノ電探ガダウンシタタイミングデ魚雷攻撃 マルデコチラノレーダーガ使エナクナルコトヲ知ッテi… 「敵艦隊再度視認!ッ!曳光弾!?クッソ眩シイ!」 何!?マサカ敵機カ!?イヤソレヨリモ…ー

 

 

 

 

しかもこちらが電探を封じられた瞬間の魚雷攻撃、いくらなんでもタイミングが良過ぎるものでなんならまるでそうなることを知っていたかのように思える。もしかして敵艦隊には本当に我々を超える性能を有した電探が開発されたのか…そんなことを思っていた矢先、見張りから悲鳴とも見て取れる声が飛び込んできた。

 

それを聞いて慌ててル級がそちらに視線を向けた直後、自分達を包み込んでいた暗闇が突如として明かりに包まれ深海棲艦の艦隊を照らすような閃光が上空から何個もゆっくりと降ってくる。…もちろん幾度なく人類と戦ってきたル級はこれがすぐに敵機から投下された曳光弾だと判断、これが降ってくるということは敵艦隊から砲撃に晒されることを意味しており…

 

 

 

 

ー全艦衝撃二備エロ!!来ルゾ!!ソレト砲側射撃デ蹴散ラセ…!!ー

 

 

 

 

その意味を理解したル級はすぐさま僚艦に対して敵艦隊からの攻撃に再度備えるようにと伝えつつ、ひるまずに反撃を開始せよと指示していく。いきなりの攻撃で混乱しているはずなのにそれを感じさせないところを見るに流石はeliteクラスの深海棲艦といったところ。

 

…しかし何度も言ったように今回ばかりは相手にした艦隊が悪かったとしか言えなかった……。

 

 

 

 

 

 

 

(曳光弾投下の少し前)

パラオ艦隊視点

 

 

 

青葉 見張り妖精『敵艦隊に魚雷命中を認む!命中弾は確認出来る限りで8発!火災も発生している模様!!』

 

 

青葉 水雷妖精『よぉし!逆奇襲は成功だな!というか見張り妖精俺たちの魚雷はどうなった!ちゃんと命中したんだろうな!!』

 

 

青葉 見張り妖精『問題ありません!本艦の魚雷もイ級と思しき駆逐艦に命中!火災及び速力が低下しているため大破は確実です!』

 

 

 

もちろんその様子を見ていたパラオ艦隊でも魚雷の状況は各艦で把握しており、青葉の見張り妖精も次々と敵艦隊から上がる水柱を目にしながら急いで報告していく。他の艦の魚雷が命中シてるとなれば自艦のものもやはり気になるもので、水雷妖精が見張り妖精に対して自分達の放った魚雷はどうなったのかと若干興奮気味で話しかける。

 

 

 

青葉『喜ぶのはまだ早いです!ここからが正念場ですよ!!砲術妖精!!主砲の用意はいいですか!』

 

 

青葉 砲術妖精『問題ありません!合図があればいつでもぶっ放せます!!敵艦隊に砲弾の雨を降らせてやりましょう!』

 

 

青葉『了解です!!水雷妖精も継続して魚雷攻撃を!!ですが先程とはタイミングが異なるのでそこは気をつけて!!』

 

 

青葉 水雷妖精『はっ!』

 

 

 

しかし喜んでいる妖精達を宥めるように青葉がまだ早いという口調で引き締めさせる。先程は半分奇襲で仕掛けて大打撃を与えられたがここからは敵艦隊はこちらの位置を完全に把握した状態での砲雷撃戦に突入するため、まさに本当の戦闘は今からと言っても過言ではない。

 

   

 

霧島『残魚雷が残っている艦艇は引き続き魚雷戦を継続!!それと同時に混乱している敵艦隊に砲撃戦で追い打ちをかけます!!合図は水偵から投下される曳光弾で!!』

 

 

榛名『砲術妖精!!徹甲弾の用意はいいですか!?曳光弾が投下され次第すぐに射撃します!!』

 

 

榛名 九一式徹甲弾妖精『こちらはいつでも準備オーケーです!!信管調整やチェックは既に終わらせてます!!いつでも敵艦のと出っ腹に徹甲弾打ち込めますよ!!』

 

 

榛名 副砲妖精『主砲連中が装填中の間は俺たちで補うぞ!!威力は低くても数で補え!!絶え間ない弾幕を撃ち続けるぞ!!』

 

  

 

魚雷戦と平行して砲撃による追撃を行うために、霧島は各艦に的確な指示を下しながら砲撃用意を下令。これを受けて各艦では主砲や副砲担当の砲術妖精などはいつでも撃てるように最終配置についており、いずれ来るであろう合図を今か今かと待ち望んでいた。

 

 

 

 

カッ!!

鳥海 見張り妖精『複数の曳光弾を確認!!偵察機からの合図が来ました!!』

 

 

鳥海『いきますっ!!目標!!複縦陣左側の重巡リ級!!全砲門砲撃始め!!』

 

 

鳥海 砲術妖精『待ってました!!主砲副砲!!遠慮はいらん!!全力砲撃だ!ぶちかませ!!』

 

 

鳥海 主砲妖精『言われなくても分かってますよ!!目標はホ級だ!!反撃される前に潰してやれ!!てぇ!!』ドォォォォン!!

 

 

 

もちろんそんな艦隊の期待に答える形で、敵艦隊と会敵する前に味方戦艦や巡洋艦から発進した偵察機から砲撃合図とも見て取れる曳光弾が相次いで上空から投下されていく。先程まで周囲は暗闇に包まれていたのにそれを感じさせない眩しさが敵艦隊を照らし上げる。

 

これを合図と捉えた鳥海は間髪を入れずに砲撃開始の号令を下していき、待ってましたと言わんばかりの勢いで主砲である三年式二号 20.3cm(50口径)連装砲が、少し遅れて副砲の八九式 12.7cm(40口径)連装高角砲(史実では45口径十年式12cm単装高角砲)も一斉に火を吹くように砲撃を開始。放たれた砲弾が半円を描くように上空を飛来し敵艦隊へと降り注いでいった。

 

 

 

古鷹『私達も行きます!!目標重巡リ級!!撃ち方始め!!』

 

 

青葉『こちらもいきますよー!古鷹さんや鳥海さんに遅れないで!!目標軽巡へ級!!砲撃始め!!』

 

 

ドドドドォォン!!!

 

 

 

もちろんこちらも遅れる訳にはいかないと言わんばかりに鳥海や青葉も続く形で主砲副砲問わずに全力射撃を実施。次々と放たれた砲弾はまるで吸い込まれるように敵艦隊へと襲いかかる。

 

 

 

ーいよいよ始まったか…、頼むぞみんな…ー

 

 

霧島『パラオ艦隊伝統の夜戦…!!しっかりと焼き付けてあげます!!右砲戦用意!!目標は旗艦と思しき敵戦艦ル級!!』

 

 

榛名『榛名も行きます!!目標は霧島と同じ敵戦艦ル級!!主砲交互撃ち方!!』

 

 

 

いよいよ始まったか…、そんな表情を密かに浮かべている秋山。それに対し霧島は、砲撃を始めた鳥海達に遅れを取るわけにいかないと言わんばかりに妖精達へ砲撃準備を下令。同じように指示が下った榛名と同様に敵艦隊に向けていた主砲群が目標である敵艦に狙いを付けていく。

 

それと同時に射撃指揮装置からの指示に従う形で交互撃ち方を行うため、各砲の右側砲身がゆっくりと音を立てながら射撃体制に入る。もちろん副砲や高角砲群も続く形で主砲と同じ敵艦へ狙いを定めて合図を待つ。

 

 

 

霧島 砲術妖精『各砲射撃用意完了!!いつでもいけます!!』

 

 

榛名 砲術妖精『こちらも大丈夫です!始めちゃいましょう!!』

 

 

霧島『…主砲!!よく狙って!!てぇ!!』

ドドドドドォォンン!!

 

 

榛名『勝手は…!!榛名が!!許しません!!』

ドドドドドォォンン!!!

 

 

 

射撃準備完了との返答が来るや否や当たりの砲撃音に負けないほどのよく透き通る声で霧島や榛名が撃ち方始めの合図を下す。直後待ってましたと言わんばかりに狙いを付けていた主砲が発砲ブザーに負けないほどの轟音を響かせながら一斉に火を吹くように発砲、放たれた徹甲弾が綺麗な弾道を描きながら暗闇へと飛んでいく。

 

 

 

ゴクン…!!

霧島 砲術妖精『続いて左側砲身だ!感覚を開けずに連続して撃て!!敵に反撃の隙を与えるな!!』

 

 

霧島 砲術妖精『副砲も遅れるな!!撃ち方始めぇ!!主砲の装填時間をこっちで補うぞ!!』

 

 

 

もちろんこれだけで終わるはずもなく右側砲の射撃が終わるや否や右側の砲身が下がっていくとともにすぐさま各砲の左側砲身が同じようにゆっくりと空へと向けるように上がる。その間にも主砲の射撃スピードの遅さを補うために霧島や榛名の右舷側に搭載されている15.2cm50口径単装砲や12.7cm連装高角砲が次々と射撃を開始、発射レートの高さを活かして砲弾を絶え間なく送り出す。

 

 

 

榛名 主砲妖精『発射準備よし!!』

 

 

榛名 砲術妖精『射撃だ射撃!!せっかく精度上げるために交互撃ち方にしたんだ!!ここで外すんじゃないぞ!!てぇ!!』ドドドドドォォンン

 

 

 

副砲群が絶え間ない射撃を続けている中、発射準備が完了した各主砲の左側砲身も先程の轟音に負けないような発射音を響かせながら徹甲弾を空へと一瞬打ち上げた。先程撃った砲弾に続く形でそのまま空高くへと飛びそうになるが、すぐさま軌道を変えて重力に沿いながら落下していく。…もちろんその先には狙いを定めていた戦艦ル級の姿が…

 

 

ちなみに交互撃ち方とは

指揮系統二属スル連装砲ヲ二連装砲ニ在リテハ左右交互ニ三連装砲ニ在リテハ右中左交互ニ又ハ左右砲中砲ヲ交互ニ発射セシムルヲ言フ

 

つまり左右の砲を同時発射させずに別個に発砲することで弾着観測が容易になり(=誤観測が少なくなる) かつ斉射間隔が短く出来る。そのため目標の変針・変速や、測的誤差などの累積に対する対応が早くできるというメリットが生まれるというもの。

 

 

今回のパラオ艦隊による夜間砲撃も、敵艦隊の位置が大雑把にしか掴めていないがその中でもより正確な砲撃を素早く叩き込む必要がある。だから霧島や榛名は一斉射ではなく交互撃ち方による射撃を用いているようだ。

 

 

 

 

※ちなちにこの海戦に投入された両艦隊戦力と陣容を説明してなかったためここに載せておきます

(敵輸送船団とパラオ艦隊所属の水雷戦隊についての編成は次回説明するため、ここでは両軍主力艦隊のみ解説します)

 

 

日本海軍

パラオ泊地艦隊(水上打撃艦隊)

総数8隻

 

 

戦艦 

霧島(旗艦) 榛名

 

重巡洋艦

鳥海 古鷹 青葉

 

軽巡洋艦

吉野(後方支援)

 

駆逐艦

雪風 巻雲

 

 

深海棲艦

侵攻艦隊(輸送船団護衛部隊)

総数27隻(残存20隻)

 

 

戦艦

ル級(ニューメキシコ級)×3隻(うち1隻が旗艦)

 

重巡洋艦

リ級×4隻(ペンサコーラ級及びノーザンプトン級)

内訳としてはそれぞれ2隻ずつ

 

軽巡洋艦

ホ級×3隻(アトランタ級)

へ級×7隻(クリーブランド級)

 

駆逐艦

イ級×4隻(フレッチャー級)

ロ級×5隻(グリーブス級)

 

 

                   ロ級(撃)

陣形         

             ロ級(撃)

      

                   イ級(撃)

   鳥海

             イ級(撃)

                    

                   へ級

   青葉

             リ級

 

                   リ級

   古鷹

             ル級(旗艦)(中)

             

                   ル級

   霧島

             ル級(中)

 

                   リ級  

   榛名

             リ級(撃)

             

                   ホ級(撃) 

   雪風

             ホ級(撃)

           

                   ホ級(中)

   巻雲

             へ級

    

                   へ級     

 

             へ級

 

                   へ級

 

             へ級

  

                   へ級

 

             イ級

 

                   イ級

 

             ロ級

 

                  ロ級

 

             ロ級 

 

                   

 

             

 

                    

 

 

 

 

 

 

ちなみに(撃)と書いているのは初動のパラオ艦隊による奇襲雷撃を受けて撃沈した艦。そして(中)とあるのは撃沈はしていないものの雷撃により中破の被害を受けた艦。

 

先陣を切っていた駆逐艦群はこれにより壊滅することに、これに大し後方を航行していた深海棲艦群は比較的被害は少ない。しかしそれでも艦隊のほとんどが被雷している状況。

 

 

 

(そして時は戻り)

 

 

 

ー敵艦隊発砲!!撃ッテ来タゾ!!ー

 

 

ー全艦発砲!!順番ハ問ワン!!撃テル砲カラ射撃シロ!!敵二主導権ヲ握ラスナ!!ードドドドドォォンン!!

 

 

 

暗闇の中の敵艦隊から次々と光る発砲炎を確認した見張り員が砲撃音に負けないほど声を上げる。それを受けたル級はこのまま敵に主導権を握らせないために即座に反撃を指示。奇襲雷撃によって陣形や味方同士のが乱れてはいるものの、指示に従う形で体制を立て直した艦が次々と発砲していく。

 

5インチ砲(127 mm)や6インチ砲(152mm)、はたまた14インチ砲(356mm)などが入り乱れるように立て続けに射撃を行い、放たれた砲弾がパラオ艦隊へと襲いかかる。…が体制を立て直したといえどそれは辛うじてであり未だに混乱から脱した訳では無い。

 

 

現に発砲していると言えどそのタイミングは明らかにバラバラであり統制が取れてないし、おまけに狙いを澄ます時間もない状態での発砲であるため自分が放った砲弾がどこに行ってるかも分からない始末。

 

 

 

霧島 見張り妖精『敵艦隊発砲!!案外立ち直りが早かったな!!』

 

 

霧島『ですが発砲タイミングはこちらが先!それに相手は統制が取れていないところを見るにまだ立ち直り切れていないはず…!見張り妖精!弾着観測は任せましたよ!』

 

 

霧島 見張り妖精『お任せください!!正確な弾着観測をお見せいたしましょう!!』

 

 

 

もちろん深海棲艦が発砲したのはパラオ艦隊側でも気付いており、見張り妖精から砲撃音に負けないほどの声で報告が飛び込んで来た。だが自分達の方が先に先手を打って発砲しているため弾着のタイミングは明らかにこちらが早い。

 

更に敵艦隊は未だに混乱から立ち直り切れておらず砲撃も目に見えるほど乱れており、これではマトモな射撃は出来ていないと霧島は確信する。…と同時に見張り妖精へ敵艦隊への弾着状況を見るように指示を下し、その間にも砲弾群は敵艦隊へと向けて飛来していき…

 

 

 

霧島 見張り妖精『こちらの砲弾!!弾着まであと!!6・5・4・3・2・1……!!』

 

 

ーッ!!敵戦艦発砲!!狙イハ本艦デス!!ー

 

 

ークソッ!!早速カ!!衝撃二各自備エロ!!ー

ドドドドドォォンン!!

 

 

 

ル級も見張りからの報告で霧島が放った砲撃がこちらに向かっているのは分かっており各自へ衝撃に備えるように指示を出す。その直後、轟音や衝撃とともに自艦周辺に第一射が着弾してかなり高めの水柱が次々と上がる。

 

 

 

霧島見張り妖精『初弾全弾近!!続いて次弾着弾します!!』

 

 

ー初弾夾叉!!クソ初ッ端カラコレカヨ!!連中メカナリ練度ガイイト来タ!!ー

 

 

ーソンナ関心シテル場合カ!!第二射来ルゾ!!恐ラク敵戦艦ハ射撃精度ヲ上ゲルタメニ交互撃チ方ヲシテル!!ー

 

 

ー再ビ衝撃二備エロ!!大丈夫ダ!!初弾カラマズ当テテ来ルコトハn……(ドドドドドォォンン!!)ー

 

 

 

いくら照明弾である程度明るくなっているとは言えどまさかこの暗闇で初弾から近で来るとは思っていなかった見張り員は思わず眉を潜めながら関心の表情を浮かべていた。…しかしそんな見張り員に対しもう一人の見張りが関心してる場合ではないと言いながら次弾が来ると素早く報告していく。

 

もちろんル級もその報告はしっかりと耳にしており再び各乗組へ衝撃に備えるように伝えようとする。いくら精度を上げるための交互撃ち方だとしてもいきなり当ててくることはない、そう思っていた彼女であったが…

 

 

 

ガギィィィィン!!!

ーグゥゥ…!?ー

 

 

 

その予想を打ち破るように霧島が放った徹甲弾の一発がまるでそこに吸い込まれるように艦橋へと突き刺さる。一瞬何が起こったのか理解が追いついていない艦橋要員やル級本人は着弾の衝撃で壁へと突き飛ばされた。…いやそれだけならまだマシのようなもので…

 

 

 

ーグッ…ナッナンダイキナリ…コノ衝撃ハ一体…ー

 

 

ーッ!マズイ砲弾ガ艦橋二!!退避!退避シロ!!コノママジャ巻キ添エヲ喰ラウゾ!!ー

 

 

 

着弾の衝撃で意識が飛びかけていた艦橋要員だったが目の前には突き刺さったと思われる砲弾が視界に入った。そうなればもちろんいつまでも倒れている訳にも行かず、乗組員は信管が作動する前に慌てて仲間とともに退避を試みようとする。

 

 

 

ゴォォォォン!!!

ーガッ!!グッ…ーザスザス!!

 

 

ーグァァァ!!?イダイ…!!誰ガ助ケ……(バタリ)ー

 

 

ー………(ドォォン)ー

 

 

 

…が当然間に合う訳もなく着弾から少し遅れる形で信管が作動、激しい爆風に包まれるとともに炸裂によって艦橋内部のあちこちへ破片が飛び散っていく。爆風とともに破片を喰らった艦橋要員のほとんどはそのまま倒れ込みながら息を引き取ったり激しい痛みに苦しみながら絶命したりとなかなか地獄のような有様であった。   

 

 

 

ー…何故ダ…何故我々ガ地獄ヲ見テルンダ…ー

 

 

 

衝撃で壁に叩きつけられくらくらする頭を抑えていたル級は目の前の光景に思わず言葉を失ってしまう。もちろん彼女も破片を喰らってはいるものの、艦自体の損傷としては軽微のため軽いかすり傷で済んでいるらしい。…が先程まで一緒にいた艦橋の乗組員は壊滅、艦の戦闘力としてはほぼ失ったと言ってもいい状況に陥っている。

 

 

 

ー…イヤ…ソンカコトヲ投ゲテイル暇ハナイカ…、ヒトマズコノママデハイイ的…。ドウニカシナケレバ…ー

ドォォン!!

 

 

 

しかしいつまでもそんなことで嘆いている場合ではないため、クラクラする頭を震え立たせながら立ち上がったル級は辺りで響き渡る砲撃音を背に使い物にならなくなった艦橋を後にしていくのであった…。

 

 

 

 

 

 

榛名 見張り妖精『着弾!!全弾近!!だがけっこういい線行ってる!!射撃諸元そのままで行け!!』

 

 

榛名 砲術妖精『副砲はバイタルパート以外を狙え!!数の暴力に物を言わせて撃ちまくれ!!』

 

 

 

霧島が射撃を開始したのとほぼ同じタイミングで砲撃を開始した榛名、こちらでも激しい射撃を行っており主砲や副砲群が次々と敵艦へ向けて砲撃を叩き込んでいる。もちろん敵艦隊からの反撃も受け、周囲には絶え間なく砲撃による水柱が上がり艦が大きく揺れていた。

 

 

 

榛名 見張り妖精『…!!霧島が敵艦隊旗艦と思しき戦艦ル級艦橋に命中弾!!流石だ…!!初弾でやってくれるとは…!!』

 

 

榛名 見張り妖精『榛名さん!!霧島さんが初弾で敵旗艦ル級の艦橋へ命中弾を与えました!!これで恐らく敵艦隊の指揮系統は更に乱れるかと…!』

 

 

 

自艦や他艦艇の弾着や状況確認を行っていた見張り妖精が霧島が放った砲弾の一発が旗艦である戦艦ル級へ着弾したことに気付いてすぐさま榛名に報告していく。その間にも内部に飛び込んだ砲弾が炸裂したのか一瞬閃光が光るとともに爆炎が窓を突き破って外へと溢れ出るように広がっていた。

 

艦橋に命中したと言えど撃沈に至るような致命傷ではないため、艦橋に被弾したル級からは相変わらず激しい砲撃が続けられていく。…が指揮系統で重要な区画が被弾となれば旗艦としての機能は壊滅と言ってもいいため、艦隊全体としてはかなり致命的な被弾になり得る。

 

 

 

榛名『流石霧島です…!!交互撃ち方とは言えど初弾からいきなり旗艦の艦橋に命中させるなんて…!!私も負けてられませんね…!!』

 

 

榛名 砲術妖精『当たり前ですよ!同じ高速戦艦として遅れるわけにはいきません!!修正射急いで!敵艦隊の連携が取れてないうちに決定打を与えるわよ!』ドォォン!!

 

 

榛名 副砲妖精『撃てるだけ撃ちまくれ!!遠慮はいらん!!俺たち戦艦乗りは撃ち合ってなんぼなんだからな!!』

 

 

榛名 高角砲妖精『数が少なくても連射力で補え!!高角砲だからって撃つのは航空機だけじゃないぞ!!』ドォン!!ドォン!!

 

 

榛名 見張り妖精『後方雪風及び巻雲も射撃を開始しました!!どうやら射程に入った模様!!』

 

 

 

巡洋艦や戦艦が砲撃を開始してから少し遅れる形ではあるものの後方を航行していた駆逐艦である雪風や巻雲も射程に入ったのか主砲による砲撃を開始しているのが確認出来た。とは言えど二人の装備している50口径三年式12.7cm連装砲(C型及びD型)の火力では戦艦や重巡洋艦と撃ち合うのは厳しいため比較的装甲の薄い軽巡洋艦や駆逐艦を狙っている。

 

 

 

巻雲『駆逐艦は水雷戦だけが取り柄ではありません!!艦隊型駆逐艦新鋭の実力!見せて上げます!』

 

 

巻雲 砲術妖精『水雷屋ばかりにいいとこは見せられない!駆逐艦だって狙う敵艦によっては砲撃戦はできるんだ!先輩方に遅れなんて取らないぜ!』

 

 

雪風『妖精の皆さんいいですか!雪風の実力をしっかりと見せましょう!呉の雪風の名は伊達じゃありません!』

 

 

雪風 砲術妖精『その通り!呉からパラオに転属になってもその実力は変わらんよ!新入りに負けるわけにはいかん!てぇ!』ドォォン

 

 

 

吉野の電波妨害によって乱れた敵艦隊に強襲する形で始まった両艦隊による砲雷撃戦、最初こそ雷撃による攻撃でアドバンテージを取れたパラオ第一艦隊であったがやはりそれだけでは数の差を埋めるのは厳しいか…。徐々に若干押され気味になっていた。

 

確かに巡洋艦や駆逐艦による一斉雷撃で敵艦隊の7隻を撃沈出来たのは大きい、だがその多くは先頭を航行していた駆逐艦がほとんど。レーダー使えなくても未だに艦隊としての戦闘能力は健在、数の差もまだまだといったところ。そのため統制が取れていなくても圧倒的火力による砲撃はパラオ艦隊にとって悩みの種になりつつあった。

 

 

 

ゴォォォォン!!

 

 

霧島 見張り妖精『敵軽巡洋艦からの砲撃、艦中央部に被弾!!』

 

 

霧島 修理妖精『おっしゃ!早速出番来た!おら角材もってさっさと仕事に取り掛かるぞ!今日は徹夜は覚悟しとけ!』

 

 

秋山『吉野の力を借りて強襲雷撃が成功したとしてもそれだけじゃ数の差は埋めれんか…、艦隊としての戦闘能力は維持してる訳だし…。…どうする霧島?』

 

 

 

敵艦隊が放った砲弾のうち一発が霧島の艦中央部に着弾、衝撃で少し艦が揺れる。見張り妖精からの報告が上がると同時に即応待機していた修理妖精達が待ってましたという表情を浮かべながら修理道具や角材を持ちながら被弾箇所へと砲撃の嵐の中向かっていく。

 

いくら電波妨害による攻撃と強襲の形で行った雷撃により敵艦隊の戦力を減らせたとしてもそれだけで優勢を取れるほど戦争は甘くない。まだまだ威勢のある砲撃を見つつどうしたものかという表情を浮かべていた秋山は隣にいた霧島にどうするか尋ねる。

 

 

 

霧島『…その点については霧島に任せてください…♪既に策は考えてます、(ピッ)霧島より鳥海へ。次弾による雷撃は出来るだけ後方よりに放てますか?』

 

 

鳥海『後方寄りですね、了解です。…ですが駆逐艦の子達は次の雷撃で予備魚雷を使い切りますが…』

 

 

霧島『大丈夫、次の雷撃で後方の巡洋艦群を一掃出来ればあとは砲撃で一気にケリをつけます。このまま伸ばせばこちらがジリ貧に成りかねませんし』

 

 

 

たがその点については既に策があるようで任せてくださいと笑みを浮かべると無線で鳥海へ繋ぐと何やら話していく。どうやら次弾による雷撃は先程の敵艦隊進路上にばら撒くのとは違い比較的後方へ流すようにという指示らしい。

 

…が重巡洋艦群はまだまだ予備魚雷はあるものの、駆逐艦の魚雷は次で全弾を撃ち切ってしまうためそれについて大丈夫なのかという質問が彼女から上がっていく。もちろんそれは霧島も解っているが、このまま戦闘が長引いて押されてしまうその前で一気に決着を付けたいという考えがあるようだ。確かに次の雷撃で敵艦隊の巡洋艦群を大方一掃出来れば火力の集中がしやすくなり各個撃破がしやすくなる。

 

 

 

鳥海『…なるほど確かに、分かりました古鷹や青葉、あと雪風や巻雲には私から伝えておきます』

 

 

霧島『ええっ、お願いします。発射のタイミングは貴女に委ねるわ』

 

 

鳥海『了解です、任せてください…!』

 

 

 

 

 

 

 

ークソッタレ…!!何故数デ劣ル敵艦隊ゴトキ二ヤラレナケレバ行ケナインダ!!旗艦ハ何ヲシテル!?ー

 

 

 

陣形後方を航行していて、比較的被害の少なかった巡洋艦隊では数の劣る敵艦隊相手になぜここまでやられなければならないのかと1隻のリ級は悪態を付きながら不満を露にしていた。それと同時に一体旗艦のル級は何をしているのかという愚痴を溢しながら通信妖精に問いただす。

 

 

 

ーソッソレガ!先程僚艦カラノ報告デ 敵戦艦ノ放ッタ砲弾ガドウモ艦橋二命中シタラシク ル級ノ無事ハ確認出来マシタガ艦橋二イタ乗組員ガ壊滅!!ソレト同時二旗艦トシテノ能力モホボ喪失シタ…ト!!現在ハ臨時デ別ノル級ガ指揮ヲー

 

 

ーコンナ時二何デ敵艦隊ノ射撃ガ正確ナンダ…!!レーダー射撃サエ出来レバアンナ奴ラ!!ソレデ ル級ハナンテ言ッテル!?ー

 

 

ー比較的被害ノ少ナイ巡洋艦部隊ヲ中心トシテ 敵艦隊へ反撃ヲ実施セヨトノコトデス!!ソノ間ニ艦隊ヲ立テ直ストノコト!!ー

 

 

ー了解シタ!!リ級ヨリ各巡洋艦宛!コレヨリ敵艦隊へ対シ砲撃火力ヲ持ッテ反撃ヲ実施スル 駆逐艦群ハ照明弾用意!!敵艦隊ヲ炙リ出セ!!ー

 

 

 

問いただすのとほぼ同じタイミングで僚艦のル級から旗艦が砲撃を艦橋に受けたことで指揮が困難との返答が来たのか通信員がすぐさま報告していく。それを聞いてどうしてこんな大事な時に敵艦隊の射撃が正確なのかと愚痴を溢したへ級であったが、追加の指示を聞くなりすぐさま各艦へ情報を共有。

 

指示を受けて、残存していた巡洋艦隊は僚艦の立て直しを支援するための砲撃戦へと移行。駆逐艦隊も味方艦隊の砲撃支援を行うために照明弾の用意に入りつつ、平行して魚雷の発射用意にも入る。

 

 

 

ーコノママワンサイドデ終ワルト思ウナヨ!!キッチリオ返シハシテヤル!!ー

 

 

ー各艦射撃用意ヨシ!!駆逐艦隊!!照明弾ヲ打チ上ゲロ!!敵艦隊ヲ炙リ出シテ徹底的火力デ叩キノメセ!!ー

 

 

ー了解!!照明弾発射ァ!!次ハオマエ達ガ丸裸二ナル番ダ!!ーゴォォォォン!!

 

 

 

そうこうしているうちに射撃用意が完了、それと同時に照明弾発射指示を受けたイ級やロ級などの駆逐艦が次々と照明弾を主砲から発射。敵艦隊がいると思われる海域の上空に向けて次々と射撃、それと同時に打ち上げ式の照明弾も放っていく。

 

 

 

カッ!!

ー照明弾発射確認!!敵ガ丸裸デス!!中央二戦艦2隻ヲ視認!!巡洋艦クラスモ3隻ホド!!駆逐艦モイマス!!ー

 

 

ー恐ラクソイツラガコチラニ魚雷攻撃ヲシテキタ正体!ダガ2度モ撃タセルカ!!次コソハ海ノ藻屑二シロ!!ー

 

 

ー当タリ前ダ!!全砲門撃チ方始メェ!!ードドドドドォォンン

 

 

 

打ち上げられた照明弾が次々と閃光とともに眩しく光ると先程まで暗闇に潜んでいたパラオ艦隊が露になった。見張りからの報告を受け、こいつらが魚雷攻撃をしてきた主だと確信しつつ今度こそは撃たせるなと砲撃指示を下す。

 

それを受けて射撃待機をしていた巡洋艦へ級やホ級、一部のリ級や駆逐艦群が相次いで一斉射撃を開始。6インチや5インチ、さらには8インチ砲弾が入り乱れるように次々と襲いかかっていく。

 

 

 

古鷹 見張り妖精『くっそ!敵艦隊照明弾撃ちやがった!これじゃこっちは丸裸だぞ!』

 

 

古鷹『それは想定内だから大丈夫!!それより敵艦発砲!!来るよ!!』

 

 

 

まさかこれほど早く照明弾を打ってくるとは思っていなかった見張り妖精は上空で当たりを照らしなが落ちてくる閃光の球を見ながら思わず悪態をついてしまう。というのもこれによりこちらは完全に丸裸となり戦力が露見、位置も掴まれるとなれば砲撃の雨に晒されるのも時間の問題となる。

 

だがこうなることは分かっていたのか悪態をつく妖精を古鷹が宥めつつ、それよりも敵艦が発砲したことを伝えて衝撃に備えるように指示を出す。

 

 

 

ドドドドドォォンン!!!

ガギィィィィン!!

 

 

古鷹 見張り妖精『うおっ!?(思わずコケそうになり)』

 

 

古鷹 砲術妖精『さっ3番砲塔被弾!!大破により使用不能!!現在弾薬庫誘爆に備えて注水中!!』

 

 

青葉 水雷妖精『左舷側魚雷発射管被弾により大破!!尚魚雷については右舷側に回していたため投棄などはなし!!』

 

 

巻雲 砲術妖精『2番砲塔大破!!負傷者多数です!!至急衛生兵を!!』

 

 

青葉『流石にこれは効きましたねぇ……』

 

 

古鷹『うん…、ある程度備えていてもけっこう響いたよ…』

 

 

巻雲『いたた……』

 

 

霧島『霧島より各艦!!先程の砲撃による損害報告を!!』

 

 

 

直後、艦隊周辺に次々と砲弾が相次いで着水し、それによりあちこちで水柱が上がっていく。もちろんそれだけで終わるはずもなく何発かの砲弾はパラオ艦隊を捉えており次々と命中、被弾により艦が大きく揺れてしまう。

 

いくら被弾することが解っていたとしても流石にこれは答えたようで、少し手痛い損傷を受けた古鷹・青葉・巻雲は思わず顔を顰めながらも妖精からの損害報告に耳を傾けていく。それと同時刻、霧島からも先程の砲撃で受けた損害報告をするようにという指示も飛んでくる。

 

 

 

鳥海『本艦は艦首に被弾しました…!ですが損害は軽微!戦闘についても問題はありません!現在損傷箇所の修理を試みています!』

 

 

古鷹『こっちは3番砲塔がやられただけ…!!幸い誘爆もしでないし機関も問題なしだから航行に支障なしです!!』

 

 

青葉『青葉は左舷側魚雷発射管が大破しました!!ですが左舷側の酸素魚雷を右舷側に回していたため投棄などはありません!』

 

 

巻雲『私は2番砲塔をやられました…!航行や戦闘に支障はありませんが負傷者多数…!現在衛生兵や修理妖精が対応中です…!』

 

 

榛名『本艦も被弾しましたが損害は軽微!!高速戦艦でも装甲は伊達じゃありません!!』

 

 

雪風『雪風は被弾なしです!至近弾のみ!全力砲撃可能です!!』

 

 

霧島『流石雪風ちゃん…!伊達に幸運の女神と呼ばれているだけありますね…!鳥海さん!魚雷については…!!』

 

 

鳥海『既に全艦魚雷発射済み!!砲撃による支障、及び自爆や迷走は確認されていないとのこと!順調に敵艦隊に向けて流れています!』

 

 

 

各艦から相次いで損害報告が上がっていくが、それと同時に鳥海から魚雷については問題なく発射したとの報告が上がってくる。閃光弾で海面一体が照らされているとはいえど、航跡の見えにくい酸素魚雷にとってはそんなの関係ないもので海中に潜むように敵艦隊へ流れていく。

 

 

 

ー全弾着弾確認!!命中弾数発ヲ認!!敵艦隊ノ攻撃ガ一瞬衰エマシタ!!ー

 

 

ーヨシ!コノママ押シ込厶ゾ!!後ハコッチガ主導権ヲ握レバ!!全艦続ケテ砲撃ダ!!連中二今マデノ倍返シヲシテヤレ!!ー

 

 

 

もちろん魚雷が流されていることを知らない護衛艦隊では、砲撃が何発か命中したという見張りからの報告を受けたリ級が思わず笑みを浮かべていた。…がすぐさま真剣な表情に戻り僚艦に絶え間なく砲撃を叩き込むように指示を飛ばす。

 

ここで主導権を奪い取れば後は立て直した戦艦部隊とともに数の優勢を活かして押し込んでいくだけ。先程撃沈させられた仲間の仇と言わんばかりにリ級は意気込んでいた、…のだが…

 

 

 

ー砲撃始m…『サッ左舷側二魚雷ヲ確認!!シカモ複数デス!!』ナッ…!?ー

 

 

 

再び砲撃始めの指示を出そうとしたまさにその直後、見張り妖精から悲鳴のような声と見て取れる魚雷接近の一報が飛び込んで来た。先程まで反撃開始だと言わんばかりの表情をしていたリ級であったが、一瞬で焦りの雰囲気に変わってしまう。

 

 

もちろん回避の指示は出そうとしたが、なにせ相手が航跡が見えづらい酸素魚雷。しかも発見が直前となってしまえば避けることなど到底不可能と言ってもいい。

 

 

 

ドォォォンン!!!

 

 

 

回避指示を出す時間もほとんどなく、あっという間に後方に展開していた巡洋艦や駆逐艦のほとんどが轟音や閃光とともに相次いで水柱に飲み込まれてしまうのであった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

同時刻

晋級艦内

 

 

 

『被雷二ヨリ機関停止!!浸水モ止マラナイ!!』

 

 

『駄目ダ!!艦ノ傾斜ガ止マラン!!総員退艦!!総員退艦ダ急ゲ!!』

 

 

『コチラリ級!!2番砲塔デ火災発生!!コノママジャ弾薬庫ニ誘爆……(ドォォォンン!!ドォォォンン!!)ザーーー』

 

 

ー…思ッタヨリ状況ハ良クナサソウ…マサカコノ短時間デ数ノ優位ヲ失イカケルトハ 想定外ダワー

 

 

 

まさに護衛艦隊が劣勢に立たせられていた中、攻撃位置につくために暗闇の中を航行していた晋級は無線越しに聞こえてくる僚艦の悲鳴のような会話に思わず眉を潜めている。いくら数が多くてもこっちが配置につくまでは持つと踏んでいた彼女であったが、予想以上に動きのいい敵艦隊の攻撃に驚きや関心の表情を浮かべていた。

 

 

 

ー本来ナラモウ少シ確実ナ配置ニ付キタカッタケド コレジャ間ニ合ワナイ…(ピッ)攻撃指揮官 前部発射管ノ状況ハ?ー

 

 

ー(ピッ)前部発射管ニツイテハ先程ノ指示通リ対艦巡航ミサイル『YJ-18B』ヲ装填済ミ 合図ガアレバイツデモ撃テマスー

 

 

ー航海長 進路180度反転 敵艦隊ニ対シミサイル攻撃ヲ行ウタメニ発射体制へ入リマスー

 

 

ー了解 進路180度反転 攻撃ニ備エタ発射準備ニ入ルー

 

 

 

本来であればもう少しいい位置に陣取りたかったが、流石に黙って味方がやられているのをただ見る趣味はないため攻撃指揮官に対し現状について確認することに。晋級の問いに対し、すでに発射管へ対艦巡航ミサイルの装填が完了しいつでも撃てることを答えていく。

 

それを聞くと同時に航海長に対し艦を180度反転して攻撃準備へ入るように指示を出し、それを受けて指示通り艦を反転させて敵艦隊へ艦首を向けるように進路を変針する。

 

 

 

ーソレト潜望鏡深度マデ浮上 YJ-18B班 対艦巡航ミサイルデ狙ウナラドウスレバイイカシラ?ー

 

 

ー本来デアレバ衛星ヲ中継シタ誘導ガ必要デスガ…ー

 

 

ーコノ世界ジャ私達オ得意ノ衛星ハ使エナイ…カ…、ナラ直接トソナーノ反応ヲ元二座標攻撃ヲ行ウワー

 

 

ー了解 デスガソレダト精度ハ落チマスガヨロシイデスガ?ー

 

 

ー大丈夫 今ハソンナ贅沢ナコトヲ考エテル余裕ハナイシ 精度ハ大型艦ヲ狙エバ問題ナイワー

 

 

 

いろいろと話しているうちに母艦は発射体制が整い、533mm魚雷発射管に装填された対艦巡航ミサイルもほとんど整備が終わり発射合図を今かいまかと待っていた。本来このミサイルは中国が独自に開発した北斗衛星導航系統か艦載レーダーシーカーによって目標まで誘導するのだが、生憎この世界では衛星が使えず艦載レーダシーカーは水上艦用のためこれも例外。

 

…となれば母艦からの直接照準かソナーなどで捉えた敵艦隊の反応を元に座標などで誘導していくしかない。もちろんそれでは精度が落ちるのは確かだが、今はそんなことを言ってられる余裕はないため最悪大型艦を狙えばどうにかなる。

 

 

 

ー今ハ味方ガ放ッタ閃光弾ノ恩恵ガアル 効力ガナクナル前二一撃加エルワヨ ソウイエバル級カラハ何カ指示ハ?ー

 

 

ーイエ…今ノトコロハ特二 艦自体ハ健在デスガアノ状況ダト恐ラク艦橋二被弾シテイル可能性ガー

 

 

ー艦橋…ナラサッキカラ無線ガナイノモ頷ケルワネ トナレバ艦隊ノ状況ハ思ッタ以上二深刻… ナラサッサト一撃加エナイトヤバイワ 対艦ミサイル攻撃用意ー

 

 

 

それ同時に旗艦であるル級と連絡は取れないのかと尋ねるが、どうやら先程応答がないようで乗組員からの報告によれば敵艦の放った砲弾が艦橋に直撃した様子。幸い戦闘能力は健在で沈没の危険はないものの、旗艦としてはかなり致命的なダメージのため思った以上に深刻のようだ。

 

かなり不味いことになったな…と思いながらも攻撃指揮官に巡航ミサイルの発射目標を潜望鏡で見ながら指示していく。そんな彼女の視線の先には、艦隊の中央で轟音を響かせながら砲撃を行っている2つの大型艦である霧島と榛名の姿が…

 

 

 

ー…ニシテモナゼココマデ劣勢ニナッテルノ…?レーダージャコッチガ優レテルッテ言ッテタノニ ソレニ数モ優勢 更ニコイツラハeliteクラスの実力ノハズー

 

ー…マサカハッタリダッタノ? …マサカ 私ガ直接確認シテルシナニヨリ輸送船団ノ護衛ノタメニ選バレタ精鋭… ナラナゼ…? イヤソレヨリモ…ー

 

 

 

攻撃に入ろうとした彼女であったがふと気になったことがあるようでそのことを考えかける。…というのもこの輸送船団の護衛を担当している深海棲艦達は選ばれた精鋭中の精鋭、更に数の優位や優れた電探などの装備を考えればこんなあっさりと決着が付くはずがない。

 

ならなんだ、まさか彼女達がハッタリだとでも言うのか…。そんなことを思いかけたがそんなことないという表情を浮かべながら晋級は軽く首を振る。彼女達は直接この侵攻作戦の指揮官直々に選ばれたメンツ、それなのに練度がハッタリということは有り得ないだろう。じゃあなんなのかと考えかけた晋級、しかし今はそれどころではないと言うことで攻撃に集中することに

 

 

 

ー対艦巡航ミサイル 発射弾数六発 目標敵艦隊ノ大型艦二隻 ソレゾレ三発ズツ発射 コレデ撃沈ハ出来ナクテモ戦闘能力ヲ削ゲレバイイワ 撃チ方用意…!!ー

 

 

 

 

 

 

 

吉野

CIC

 

 

吉野 OQS-102妖精『…(ゴォォンドォォォンンーキュイイーゴォォン)ん?何だ今の音…』カチャカチャ

 

 

 

その頃、砲撃の着弾音が響く海中に耳を傾けながら警戒を行っていたOQS-102妖精であったが一瞬何かの反応らしき音をキャッチしたようで思わず顔を上げながら機器を操作していく。だがそれ以外にこれと言って異変は確認出来ず、あの微かに聞こえたソナー音も確認出来ない。 

 

 

 

吉野 OQS-102妖精『…気の所為か?いやとりあえず報告しないと、こうゆうのを見逃していちゃ戦場では命取り……(アラーム音)っ!?』

  

 

 

一瞬気の所為かと思いかけた妖精であったが、流石に戦場でこんなことをしてたら命取りになりかねないと思い念のために報告しようとインカムに手をかざそうとする。…しかしその前にCICの雰囲気をあっという間に一変させてしまうほどのアラーム音がけたたましく鳴り響く。

 

 

 

吉野 AN/SPY-1D妖精『れっレーダーに感あり!!本艦6時の方向!!距離距離2万!!とっとんでもない速度で接近中!!推定速度マッハ2.5!!』

 

 

吉野 攻撃指揮官妖精『はぁ!?マッハ2.5ってどうゆうことよ!!深海棲艦って二次大戦の船が中心だからそんな速度は有り得ないはずよ!!』

 

 

吉野 AN/SPY-1D妖精『わっ私にもそれは…(ピピッ!!)種別判明しました!!恐らくこれは対艦巡航ミサイルです!!数六!!』

 

 

吉野 攻撃指揮官妖精『たっ対艦巡航ミサイル!?私達現代艦が装備してるやつじゃない…!!なんで深海棲艦が…『吉野よりCIC!!何があったの!!報告して!!』っ!』

 

 

 

どうやら艦載レーダーが深海棲艦側から高速で接近してくる飛翔体を探知した際の警報音のようで、スクリーンに捉えた反応を元にAN/SPY-1D妖精が素早く報告する。…が本来であれば有り得ないような速度で接近していることに彼女も驚いているらしく、報告を聞いた攻撃指揮官妖精も思わず声が裏返ってしまう。

 

更に付け加えるようにその接近中の飛翔体が対艦巡航ミサイルだということを聞くと更に驚きを露にして一瞬吾を忘れそうになりかけたが、催促するように飛び込んできた吉野からの無線でハッとなる。

 

 

 

吉野 攻撃指揮官妖精『ほっ本艦6時の方向、距離距離2万から高速で接近中の飛翔体を探知!!推定速度マッハ2.5!!数六!!反応からして恐らく敵の対艦巡航ミサイルです!!』

 

 

吉野『対艦巡航ミサイル!?なんで深海棲艦がそんな物を…いやそれよりも!!艦対空ミサイル発射用意!!それと味方にも打電急いで!!敵ミサイルの目標は!?』

 

 

 

なんとか我に返った攻撃指揮官妖精はそのままAN/SPY-1D妖精から報告されたことを吉野に伝えていく。まさか深海棲艦がそんな攻撃をするとは思っていなかった彼女も一瞬動揺を見せるがすぐさま迎撃用意と味方への報告、ミサイルの目標の算出を急ぐように指示する。

 

 

 

吉野 AN/SPY-1D妖精『この進路だと…(カチャ)まだ暫定ですが恐らく味方戦艦が目標です!!このまま行くと!!』

 

 

吉野『艦対空ミサイル発射用意!!Mk.99妖精!!迎撃位置の算出は!?』

 

 

吉野 Mk.99妖精『駄目です!!発射は可能ですがこのタイミングでの迎撃ではミサイルが間に合うかどうか!!それに発射となれば我々の位置が…』

 

 

吉野『構いません!!ぎりぎり間に合うならバレようが発射してください!!ミサイルに対しての防御がない僚艦がアレをモロに受けたら…』

 

 

吉野 Mk.99妖精『…分かりました!!やってみます!(カチャ)対空戦妖精!!艦対空ミサイル発射だ!!残弾は気にするな!!撃てるだけ撃ってバラ撒け!!』

 

 

吉野 対空戦妖精『了解!!対空戦闘!!CICの目標 味方戦艦へ接近中の対艦巡航ミサイル!!最終安全装置解除!!SM-2、発射始めっ!!』

 

 

 

次々と送られてくる情報に接近中の対艦巡航ミサイルの目標が榛名、霧島だという報告が上がってくるとともにすぐさま艦対空ミサイルの発射指示を下し迎撃位置の算出は可能か問う。

 

だが返ってきた返答は芳しくなく撃てないことはないが今撃っても間に合うかどうかの保証が出来ないし、もし艦対空ミサイルを発射すれば自艦の位置が敵艦隊にバレる可能性が出てくる。その危険性があるためあまりいい表情をしなかったMk.99 妖精(ミサイル射撃指揮装置)であったが、それでも構わないという吉野からの返事を受け覚悟が決まったようだ。

 

 

すぐさま対空戦妖精に対して撃てるだけの艦対空ミサイルを発射するように指示を下し、それを受けて味方艦隊に接近中の対艦巡航ミサイルに狙いを定めながら安全装置を解除しつつ発射ボタンを勢いよく押す。

 

 

 

ゴォォォォ!!!

 

 

 

彼女の前部と後部に搭載されているVLSが立て続けに開くと、轟音を響かせながらロケットブースターに点火されたSM-2が当たりを閃光と煙で包み込みながら何発も上空へ一瞬打ち上げられていく。がすぐに進路を変えて目標海域に向けて高速で飛翔していった。

 

 

   

 

 

 

 

 

霧島 電信妖精『よっ吉野より緊急電!!貴艦及び榛名に超高速で接近中の飛翔体を探知!!数六!!推定速度…さっ3087 キロ!?』

 

 

秋山『何!?それだとマッハということになるぞ!!なんで深海棲艦がそんなもの…『提督!!伏せててください(霧島)!!』ムグ!』

 

 

霧島『狙いは私達で間違いないんですね!それと見張り妖精!!確認は出来ますか!?』

 

 

 

同時刻、晋級が放った対艦巡航ミサイルの目標である霧島や榛名では吉野からの通信を受けて大騒ぎになっていた。それはそうだろう、今までに聞いたことのないような速度で突っ込んでくる飛翔体なぞ経験したことがないからだ。秋山もなぜ深海棲艦がそんなものをと言いかけたが、霧島だけは冷静のようで提督を伏せさせながら状況確認を素早く行う。

 

 

 

霧島 電信妖精『はっ…!間違いはないかと…!現在吉野が迎撃を試みていますが間に合うかどうか……』

 

 

霧島 見張り妖精『接近中の方角には特にこれと言って……あっ見えました!!微かにですが低空を高速で接近!!本艦に向かってきます!!』

 

 

霧島『くっ…!!全艦近接対空戦闘用意!!接近中の飛翔体をなんてしてでも叩き…『吉野から放たれた対空誘導弾を複数視認!!真っ直ぐ例の飛翔体に向かってます!!命中までおよそ10秒!!』』 

 

 

榛名『各自衝撃に備えてください!!それと修理妖精は即時待機!!いつでも動けるようにしてください!!』

 

 

 

状況確認をしながら思わず歯ぎしりをしかけた霧島てあったが、すぐに近接対空戦を全艦に下令しようとする。…がそれよりも先に吉野が放った艦対空ミサイルが命中しそうだということが分かると、迎撃よりも衝撃に備えるほうが先決と判断しようでそうした指示をしていく。

 

そう言い放った直後、ロケットブースター全開で接近してきていた艦対空ミサイルが霧島や榛名の右舷側近くで相次ぎ信管が作動。激しい閃光とともに次々と爆発して榛名や霧島目掛けて飛んできた対艦巡航ミサイルを巻き込もうとした。

 

 

 

ドォォォンンドォォォンン!!

 

 

霧島『くっ…!!』(ギギギギ!!) 

 

 

榛名『っ…!!』(ギギギギ!!)

 

 

秋山『どっ…どうなった…?『にっ2発は迎撃成功確認……あとは……駄目です!!残り4発がそれぞれに突っ込んできます!!』』

 

 

霧島『各自衝撃に備えて!!提督!!けっこう揺れますから注意してください!!』

 

 

 

艦の近くで相次いで爆発したため、その際に発生した衝撃が二艦にもしっかりと伝わって来たのか霧島や榛名は思わず顔を顰めてしまう。秋山も一瞬そうなりかけながらも見張り妖精にどうなったのかと尋ねようとする。

 

どうなら2発迎撃は確実のようで見張り妖精がなんとか目を凝らしながら報告しつつ残りはどつなったのかと確認しようとする。…が爆炎の中から飛び出してくるように残りの巡航ミサイルが姿を表したことで一変して悲鳴のような声が響き渡った。

 

 

最悪のシチュエーションになった、そんなことを霧島は微かに思いながら秋山や乗組員妖精に対して衝撃に注意するように伝えながら自分も備えようとしたが…   

 

 

 

 

ドォォォンンドォォォンン!!!

ガギィィィィン!!

 

 

 

霧島『ぐっ!?』

 

 

榛名『きゃぁぁ!!?』

 

 

 

超高速で接近してくる飛翔体に対してその動きでは当然間に合うはずもなく、4発のうち艦の中央を捉えた2発がそれぞれ速度を落とさず勢いよく突き刺さったもとも思ったら轟音を響かせながら爆発。

 

その衝撃波のせいで指示を出していて動くのが遅れてしまった霧島や榛名は思わず悲鳴のような声を出しながら勢いよく弾き飛ばされてしまう。…だがそんな悲鳴も虚しく激しい閃光とともに二隻は激しい爆風に包まれてしまうのであった…。

 

 

 

 

損害状況

重巡洋艦三隻撃沈

軽巡洋艦七隻撃沈(内訳 へ級が二隻、ホ級が五隻)

駆逐艦六隻撃沈(内訳 イ級が二隻隻、ロ級が四隻)

(砲撃による戦果はリ級及びホ級、ロ級がそれぞれ一隻ずつ、あとは雷撃による戦果)

合計十六隻

 

 

パラオ艦隊

撃沈なし

古鷹・青葉・巻雲・鳥海が小破

榛名・霧島損害不明

雪風・吉野は損害なし

 

 

 

 

 




 


第二十三話 水雷戦隊の激闘



晋級の武装についてですが、弾道ミサイルや魚雷以外の武装が確認出来なかったため中国潜水艦の標準装備である対艦巡航ミサイルを使わせて頂きました。


それの攻撃方法もこれだ…!というのが探しても見つからなかったため史実とは違うかもしれませんがご了承ください…(もしあればコメント欄で教えてもらえると嬉しいデス



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第二十三話 水雷戦隊の激闘



いよいよ始まったお互いの主力艦隊による激しい砲雷撃戦
だが純粋な戦力では深海棲艦側に対して劣勢になりかねないと踏んだ秋山や霧島は吉野の電波妨害で敵艦隊を混乱させたのちに暗闇から雷撃による強襲を行うことを決断。

結果としては大成功で、突如として魚雷攻撃を受けた護衛艦隊主力はレーダー射撃を封じられた余波から立ち直ることが出来ず更に混乱を広げてしまった。その後は旗艦が被弾するなどしたが一瞬押し戻せそうになるものの、残弾を押し生ない鳥海達から第二波の魚雷攻撃を受けてしまい、多数の艦艇が一瞬にして海の藻屑にされてしまう。


このまま行けば勝てる、誰もがそう思ったが吉野のレーダーに突如として側面から亜音速で接近してくる飛翔物体を検知。一体何なのかというのも分かるはずもなく、吉野が咄嗟で迎撃を行うも失敗。高速の物体に狙われた榛名と霧島は抵抗する暇もなく一瞬にして激しい爆炎に包まれてしまうのであった…。





 

 

 

深海棲艦護衛艦隊と

パラオ主力艦隊による砲雷撃戦が始まったのとほぼ同時刻

 

 

 

阿賀野 見張り妖精『…むっあれは…!!』

 

 

 

激しい砲撃戦が始まった主力艦隊同士とは対照的に辺り一帯静寂な暗闇に包まれた海域を突っ切るように航行していたパラオ第二艦隊(水雷戦隊)。その先頭を航行していた阿賀野見張り台では、周囲を双眼鏡望遠鏡で隈なく見ていた妖精が何かを見つけたようで顔を上げながら艦橋内へと視線を向けていく。

 

 

 

阿賀野 見張り妖精『左舷側に艦影複数確認!!恐らく敵輸送船団と思われます!!』

 

 

阿賀野『ようやく見つけたわ…!もう逃しはしないんだから!旗艦阿賀野より二艦隊各艦へ!左舷に敵艦隊らしき影を確認!恐らくは例の輸送船団の可能性大!』

 

 

 

どうやらこの暗闇で敵艦隊らしき影を発見したようで、双眼鏡望遠鏡から目を離しながら艦橋内にいた阿賀野へ速やかに伝える。最新鋭ながら経験が浅くパラオ艦隊では新米に位置する彼女、だが設計コンセプトが夜戦で駆逐艦などを率い敵艦隊に突入するというもの。

 

そのため配属されている妖精達は精鋭中の精鋭であり、特に見張り妖精は夜間での視認性を高める特別な訓練をこれでもかと経験している猛者。だからこそこうした暗闇でも敵艦隊を発見出来るのかもしれない。

 

 

自分達が追いかけていた輸送船団を一度見つけたとなればもちろん見逃すはずもない。満面の笑みを浮かべながらも阿賀野はすぐさま配下の僚艦へ見張り妖精からの報告を伝えていく。

 

 

 

曙『ようやくね…!私達からこっそり逃げようだなんてそんな甘ったるいことはさせない!さっさと海の藻屑にしてやるわ!』

 

 

阿武隈『各員砲雷撃戦用意!!ここからが正念場だよ!精鋭の水雷戦隊の実力!特と見せつけてあげる!』

 

 

阿武隈 砲術妖精『当たり前でっせ!数が少ないからって油断してたら痛い目見ますよ!どっちがこの海戦の勝者に相応しいか連中に叩き込んでやりましょう!』

 

 

 

敵艦隊発見の報告を阿賀野から受けると配下の各艦娘は待ってましたという雰囲気を見せながらすぐさま即時攻撃体制を下令。特に曙は艦橋上部に仁王立ちしながら拳を手のひらについて気合十分という笑みを見せており、阿武隈や彼女の妖精達もやってやるという表情を見せていた。

 

 

 

阿武隈 見張り妖精『こちらも敵艦隊を視認しました!!大型艦及び小型艦を複数確認!!恐らく今見えてるのが護衛艦隊と思われます!』

 

 

曙 見張り妖精『こっちも見えた!!その奥にも何隻か見えるがあれがたぶん輸送船団だろうな…!ったくきっちりと護ってやがる!』

 

 

曙『けど見える距離まで接近して反撃されてないってことは私達にな気づいていないはず!やっぱ吉野って子の電波妨害が効いてるのかも!』

 

 

涼風『とはいえいつまでも呑気にはしてられないぜ!気づいていない今なら仕掛けるには絶好のチャンス!さっさとあの集団に酸素魚雷ぶち当てるぞ!』

 

 

敷波『けど流石に早とちりは禁物、焦って返り討ちはこの戦力差じゃ不味いからねー。阿賀野さん阿武隈さん、突入のタイミングはどうします?』

 

 

 

阿賀野の見張り妖精が見つけたのを皮切りに続々と僚艦の見張り妖精からも敵艦隊発見の一報が飛び込んでくる。薄っすらとではあるものの、暗闇の中に大小の艦影が見えており微かに輸送船団の姿も奥の方に確認出来た。本来ここまで近づいてるとなれば敵に気づかれていてもおかしくはないのだが、そのような動きが見られないことからどうやらこちらには気づいていないらしい。やはり吉野の電波妨害が聞いていているようで、そのことを曙は改めて身をもって体感している様子。

 

…がいつまでも悠長に話している余裕はないもので涼風が少し急かし気味で仕掛けようと提案していく。流石に早とちりして返り討ちは不味いと敷波がそう呟きながら突入のタイミングはどうするのかと阿賀野と阿武隈の二人に尋ねる。

 

 

 

阿賀野『突入の合図は偵察機から照明弾が投下されたタイミング!こちらの位置が露見する前に全艦同時雷撃を刊行、その後輸送船団に対し砲撃を行い強襲します…!それでいいですよね阿武隈さん?』

 

 

阿武隈『それで問題ないですよ…!どっちにしろこっちは軽…数で劣ってるから無闇に攻撃出来ない!ならギリギリまで引き付けてからの方が確実にダメージを与えられるから!』

 

 

皐月『みんな!聞いてたね!攻撃のタイミングは偵察機からの照明弾投下が合図!それまでにすぐさま撃てるようにね!』

 

 

皐月 水雷妖精『了解です!水雷班各員は即時戦闘体制!!合図が来たらすぐにでも酸素魚雷を発射出来るように!』

 

 

皐月 水雷妖精『もちろんです!既に酸素魚雷の最終チェックは済ませてます!合図があればどのタイミングでも撃てますよ!』

 

 

睦月『いよいよってことですな…!睦月気合十分です!主砲も魚雷もいつでもいけますよ!』

 

 

睦月 砲術妖精『12cm単装砲は旧式でも優れた主砲ですぞ!空母だろうが輸送船だろうが軽く捻り潰してやります!』

 

 

 

突入のタイミングとしては阿賀野と阿武隈から発進した水上偵察機からの照明弾投下が合図のようで、比較的奇襲に近い形で強襲するようだ。まあそれも無理はない、相手は輸送船団が多数占めているとはいえ30隻以上の大船団。重巡洋艦や軽巡洋艦などの護衛がいるのに対しこちらは軽巡洋艦と駆逐艦主体の少数水雷戦隊。

 

いくら精鋭とはいえど真っ向から勝負を仕掛けるとなると戦力差は歴然であり、輸送船や空母にも自衛火器があることを含めると下手をすれば返り討ちに合うのは目に見える。ならばギリギリまで引き付けてから仕掛けた方が有効な一撃を加えられるというもの。

 

 

即時砲撃戦用意の指示を受け各艦では妖精達が慌ただしく狭い通路や甲板を行ったり来たりしており、弾薬の各砲塔分の配分や射撃体制を取ってた。その間にも各砲塔や魚雷発射管などは続々と旋回して敵艦隊がいると思われる暗闇に向けながら狙いをつけていく。

 

 

 

阿賀野『ここで逃したら水雷戦隊としての名が廃し沖ノ島が危ない…!!絶対に逃してたまるものですかっ!!』

 

 

 

 

 

 

 

ドォォォン

ーイヨイヨ始マッタカ…。電信員、味方艦隊ノ状況ハ解ルカ?ー

 

 

 

まさか自分達の存在を察知して追撃してきている水雷戦隊がいるとは思っていない輸送船団一行は暗闇の海域を警戒しながら航行していた。そんな船団の旗艦を任された重巡リ級は、艦橋に寄りかかっていたがふと彼女の耳に微かにだが砲撃音が飛び込む。

 

それに気づきそちらの水平線へと視線を向けながらいよいよ始まったか…という表情を浮かべつつも電信妖精に対して護衛艦隊の状況はどうなっているかと確認を取ろうとする。

 

 

 

ー無線ハ繋ガッテイマスガ…カナリ混戦シテイルヨウデ正確ニハ…ー

 

 

ーフム…流石ニ現状報告出来ルホド余裕ハナイカ…。トリアエズ引キ続キ味方艦隊ノ動向ヲ探ッテクレー

 

 

ー了解シマシター

 

 

ーシッカシ一体何ガ起コッテルンダ…、先程カラ電探ヤレーダーガ使イ物ニナラナイ…。恐ラク向コウノ無線ガ混戦シテイルノモ突然電探ガ使エナクナッタ影響モアルダロウガ…ー

 

 

 

だが電信員から帰ってきた返答は、無線は繋がりするものの聞き取れないほど混戦しており正確には現状確認が出来ないとのこと。先程から突如として電探やレーダーがダウンした影響を考えるとその混乱の影響があるのだろう。そう思ったリ級は引き続き現状把握を務めるように引き続き指示を出しながら一体何が起こっているんだと自問自答していく。

 

それもそうだろう、先程から動きの良すぎる敵艦隊といい電探などが使い物にならなくなったりと今までにない異変が彼女を襲っているのだ。いくら経験豊富なリ級でも予想外の事態であり、こうなってしまうのも無理はない。

 

 

 

ー…ナニカ嫌ナ予感ガスル…、コンナ経験今マデニナイゾ…。モシヤスルト私達ハ…イヤ、今ハ任務ニ集中シナケレバ…ー

 

 

 

もしかすると自分の知らないうちに強大な敵と戦っているのではないか…、そう思っていたリ級は直感的に嫌な予感を感じていたが今はそんなことを考えている場合ではないと軽く首を振っていく。

 

なにせ現在30隻以上の輸送船団や空母群などの護衛を任されており、いつ敵艦隊と遭遇するかも分からないのに呑気に考察してやられてしまっては元も子もない。考えるのは生きて帰ってこれたらいくらでも出来ること、なので今は任務に集中することに。

 

 

 

ちなみに現在の戦力や編成、そして陣形は以下の通り 

 

 

深海棲艦側

輸送船団+空母群

 

 

補給艦ワ級×10隻(シマロン級)

攻撃輸送艦ワ級×20隻(マッコーリー級)

 

正規空母ヲ級×2隻(ヨークタウン級)

軽空母ヌ級×4隻(インディペンデンス級)

 

 

 

深海棲艦側

護衛艦隊群

 

 

重巡洋艦リ級×2隻(ノーザンプトン級)

軽巡洋艦ホ級×4隻(アトランタ級)

駆逐艦イ級×6隻(フレッチャー級)

 

 

      

陣形

輪陣形

 

          イ級

 

          リ級

   

        ヲ級  ヲ級

   

       補 補  補 補 

 

    イ級 補 補  補 補 イ級

 

         補  補

 

       輸 輸  輸 輸

 

    ホ級 輸 輸  輸 輸 ホ級

 

       輸 輸  輸 輸 

 

       輸 輸  輸 輸

 

    ホ級 輸 輸  輸 輸 ホ級

 

       輸 輸  輸 輸

 

       輸 輸  輸 輸

 

    イ級   輸  輸   イ級

    

        ヌ級  ヌ級

 

        ヌ級  ヌ級

 

          リ級

 

          イ級

パラオ第二艦隊

水雷戦隊

 

 

軽巡洋艦

阿賀野、阿武隈

 

駆逐艦

涼風、曙、敷波、皐月、睦月、時津風

 

 

 

陣形

単縦陣(輸送船団からみて右舷側)

 

          阿賀野

 

          阿武隈

 

          時津風

 

          涼風        

   

          曙 

 

          敷波

 

          皐月

 

          睦月

 

 

 

 

ー旗艦リ級ヨリ各艦へ!!対水上・対空・対潜警戒ヲ改メテ厳トナセ!!ココカラガ山場ダ!決シテ輸送船団ニ指一本触レサセルn…(カッ!)!?ー

 

 

 

だが正直言って敵艦隊がいつ襲ってくるか分からないのも事実、そのため各艦へ無線を繋ぎながら周辺警戒を改めて厳とするように伝えていく。彼女の背後にはたくさんの上陸部隊や物資を載せた輸送船団が控えており、気を抜いてやられるなど任された身として言語道断と言ってもいい。

 

なので何がなんでも輸送船団には手を出させる訳には行かない、そう言いかけたリ級であったが彼女の言葉を遮るように突如として辺り一帯が夜とは思えない閃光に包まれた。

 

 

 

ーナッナンダコレハ!?マサカ照明弾カ!?ダガドコカラー

 

 

ーコチラ艦隊前方イ級!上空ニ敵機ラシキ影ヲ確認!!恐ラクソイツラダ!!ー

 

 

ーチッ!言ッタソバカラカ!各艦周辺警戒ヲ徹底シロ!敵艦隊ハ近イゾ!サッサト見ツケダセ!!ー

 

 

 

最初こそ何が起こったのか理解が追いつかなかったが、これが照明弾ということだけはすぐに把握出来た。それに追加されるように僚艦から敵機らしき影を見つけたという報告を聞くなり、敵艦隊がすぐ近くにいると判断しつつすぐさま見つけ出すように指示を出そうとする。

 

 

 

阿賀野 見張り妖精『照明弾投下を確認!!偵察機からの合図来ました!!』

 

 

阿賀野 見張り妖精『これで敵艦隊は丸裸と言ってもいいな…!にしても相変わらずの物量だ…!あれほとんど輸送船とかマジかよ!?』

 

 

阿賀野『ですが今が絶好の攻撃チャンスです!ここでモタモタしていたら敵艦隊から反撃が来ます!全艦左砲雷撃戦用意!!』  

 

 

阿賀野 水雷妖精『もちろんです!ほら魚雷発射管旋回急いで!!敵艦隊にありったけの酸素魚雷をぶち込みなさい!自爆なんてしたら許さないわよ!』

 

 

 

 

だが照明弾によって丸裸にされた輸送船団を第二艦隊各艦はしっかりと捉えており、偵察機からの合図を確認すると同時に阿賀野が合戦用意を指示。これを受けて全艦の主砲や副砲、はたまた魚雷発射管などの全火器が旋回しつつ敵艦隊へと一斉に指向していく。 

 

 

 

阿武隈『全艦射撃用意完了!いつでもいけます!!』

 

 

阿賀野『了解っ…!(スゥ~)左舷砲雷撃戦始めっ!てぇぇ!』ドォォォン!!!

 

 

阿賀野 砲術妖精『撃ち方始めだ!!最新鋭軽巡洋艦の実力をたっぷり見せつけてやれ!』

 

 

 

全艦射撃用意完了という報告を阿武隈から受けると、頷きながら阿賀野は一息深呼吸をしてからよく透き通る声で砲雷撃戦開始の号令を下す。それを受けて待ってましたと言わんばかりの勢いで全艦が暗闇の中一斉に攻撃を開始、次々と砲弾や魚雷が敵艦隊へ向けて放たれる。

 

 

 

涼風『気合入れていくでぃ!遠慮はいらねぇからありったけぶち込め!』

 

 

涼風 水雷妖精『当たり前や!ここで遠慮したらいつ撃つってんだ!!1・2魚雷発射管!ありったけの酸素魚雷を流せ!』

 

 

睦月 水雷妖精『いくら旧式といえど積んでる魚雷は61cmの酸素魚雷!まだまだ現役で戦えますぞ!』

 

 

睦月『もちろんにゃしぃ!睦月型だってまだまだ砲雷撃戦は出来るね!』

 

 

皐月『砲雷撃戦開始っ!ボクの実力を特と見せてあげる!』

 

 

皐月 砲術妖精『12cm砲だってやれば出来るんだっ!貧弱砲だなんて言わせないぞ!てぇ!』ドォォォン

 

 

敷波『んじゃまー、ちゃっちゃとやっちゃいますかー。撃ち合いは得意って訳じゃないけど、特型駆逐艦としてしっかり働かないとねー』

 

 

敷波 砲術妖精『何をおっしゃいますか!護衛任務じゃ敵艦隊に撃つことなんて出来ない!久しぶりの砲撃戦だ気合い入れていくぞ!』

 

 

曙『ほら攻撃よ!攻撃!私達から逃げようだなんて間宮さんのスイーツより甘すぎるわ!』

 

 

曙 砲術妖精『そりゃそうでっせ!のこのこと沖ノ島にやってきたことを後悔させてやる!そしてパラオに曙アリと知らしめてやります!』

 

 

時津風『よーし!みんな気合い入れていくよー!』

 

 

 

照明弾によって照らされる敵艦隊へ差し向けるように第二艦隊全艦は予備の魚雷を含めた全弾を次々と海中へ向けて発射、放たれた酸素魚雷は我先へと獲物である輸送船団を追い求めて突き進んでいた。

 

魚雷発射に遅れるように主砲や副砲も轟音を響かせながら次々と射撃、15.2cm連装砲や14cm単装砲、12.7cm連装砲(B型やC型砲)や12cm単装砲から放たれる砲弾が入り乱れながら宙に半円を描きながら襲いかかっていく。

 

 

 

ー敵艦隊視認!ッ発砲炎確認!敵弾来マス!ー

 

 

ークソ!マサカココマデ忍ビコンデイタトハ…!直チニ反撃シロ!!輸送船団ニ手出シヲサセルナ!ー

 

 

ー射撃開始ッ!!護衛艦隊ノ意地ヲ見セツケロ!絶対ニ連中ヲ通スナ!!ー

ドォォォン!!

 

 

 

だが射撃を開始したということは敵艦隊に自分の位置が露見したということ、リ級の見張り員が敵艦隊を視認するのとほぼ同時に発砲炎を確認。それを受けてリ級も護衛艦隊全艦に反撃を指示、阿賀野達に対抗するように6インチや5インチ・8インチ砲などを用いて射撃を開始。主力艦隊同士の砲雷撃戦とは別に、こちらでもまた激しい海戦の火蓋が切られようとしていた。

 

 

 

ーコチラモ射撃ダ!タダ見テルダケッテノモ性ニ合ワン!ドウセコノ距離ナラ潔ク射撃支援ヲシタ方ガイイ!ー

 

 

ー当タリ前ダ!数デハコチラガ優位ナンダ!ソレニコノタメノ高角砲ヤ副砲ダ!今使ワナイデイツ使ウ!ー

ドォォンドォォン

 

 

 

護衛艦隊ばかりに任せる訳には行かないと、遅れる形で空母群や輸送艦も射撃を開始。どっちにしろこの距離では自分達も見つかってるし、だったらこの際開き直って火力支援をしたほうがいいという判断になったのだろう。装備している高角砲や単装砲などで次々と発砲していき、敵艦隊を撃退しようと試みる。

 

 

 

阿武隈 見張り妖精『敵艦隊発砲!あっ!空母群や輸送船団も発砲確認!』

 

 

阿武隈『流石eliteクラスの深海棲艦…っ!吉野さんの電波妨害を受けてるのにこの反応速度とはね…!けど発砲はこっいの方が早い!』

 

 

阿武隈 見張り妖精『はい!間もなくこちらの第一射が弾着します!』

 

 

 

もちろん敵艦隊からの砲撃はこちら側も把握しており、阿武隈の見張り妖精が双眼鏡片手に撃って来たことを素早く報告していく。流石はeliteクラスだと関心の表情を浮かべた彼女であったが、発砲のタイミングは圧倒的にこちらの方が早い。そのため相手からの反撃が来る前にパラオ艦隊の水雷戦隊が放った砲弾が雨のように船団へと襲いかかった。

 

 

 

ドドドォォォ!!

ドォォォン!!

阿武隈 見張り妖精『弾着!全弾近…いや船団右側のホ級に1発命中弾確認!船体中央です!』

 

 

阿武隈 射撃指揮妖精『よし!射撃諸元はそのまま!数にモノを言わせて撃ちまくれ!』

 

 

阿武隈 砲術妖精『狙いはこのままホ級だ!次弾てぇ!』ドォォォン!!

 

 

涼風『遠慮はいらねぇぜ!砲術妖精!ありったけ撃ちまくれ!相手に立て直せる時間を与えるな!』

 

 

涼風 砲術妖精『もちろんでぃ!こんなチャンス逃がすってんだ!敵の砲撃なんか怯まずに射撃だ射撃!』

 

 

涼風 見張り妖精『こちらの第一射は2発がイ級に命中!艦中央部で火災発生を確認!…ですが敵弾来ます!』

 

 

涼風『やっぱ来るか!けどそんな咄嗟撃ちに当たるかってんだ!』

 

 

 

彼女達が放った砲弾は主に右舷側に展開していた駆逐艦や軽巡洋艦などに中心として何発命中したようで、一部火災などの被害が発生している様子。しかしこちらの着弾に遅れる形で深海棲艦側が放った砲弾の雨が第二艦隊の周囲に降り注いでいく。

 

 

 

ドォォォン!!

ザァァァンン!!

曙 見張り妖精『うおっと…!戦艦砲じゃなくても流石にこれたけ撃たれれば衝撃が凄いな…っ!』

 

 

曙 見張り妖精『だが当たらなければどうもいうことはない!本艦含め全艦被弾なし!至近弾のみです!』

 

 

曙『恐らく私達が同航戦仕掛けてると思ってたんでしょうけど…!そんな単純な撃ち合いをすると思ったら大間違いよ!』

 

 

 

流石何十隻からも撃たれれば大口径砲じゃなくても着弾の衝撃はとてつもないもので艦隊全体が何個もの水柱に包まれてしまう。しかしこれだけ撃たれれば1、2発は被弾しそうだがぱっと見る限り至近弾のみで全艦被弾した様子は確認出来ない。

 

…というのもこちらが主砲を発砲すれば間違いないなく敵艦隊から反撃が来るのはどう見てもの明らか。だが相手はレーダー射撃が使えず砲側による砲撃を行うため咄嗟撃ちの状況を踏まえれば精度はそこまで高くない。そのため僅かに進路をずらして航行することで同航戦のように見せかけ、被弾率を格段に下げる戦法を取ったようだ。

 

 

 

睦月 修理妖精『よぉし!お前達チェックに行くぞ!駆逐艦は至近弾でも蓄積すれば大きなダメージになる!その前に直すのが俺たちの仕事だ!』

 

 

睦月 機関妖精『こちら機関室!先程の至近弾による損傷はなし!!全力航行可能です!』

 

 

睦月『まだまだこれからにゃしぃ!今日は長い夜になりそうだから覚悟するね!』

 

 

睦月 砲術妖精『ほらもっと撃て撃て!ここで遠慮なんかしていらんぞ!ありったけの徹甲弾をお届けしてやれ!』

ドォォォン!!

  

 

睦月 機銃妖精『砲術や水雷の連中ばかりに任せるな!射程に入った銃座から射撃開始!狙いは上部構造物でいけ!』

ダダダダダ!!

 

 

 

だが至近弾でも蓄積すれば軽巡洋艦や駆逐艦などの軽装甲艦は重大な損傷になりかねない、そのためかなり近い至近弾を受けた艦では修理妖精達が工具や角材を担ぎながら船体のチェックに奔走。もちろんこの間にも主砲群は砲撃を続けており、射程に入った機銃座も片っ端から射撃を開始し上部構造物などを集中して攻撃していく。

 

 

 

ガガガガン!!!

ーコノッ!連中メ機銃マデ撃ッテ来タ!(ドォォォン!)グッ!艦中央部ニ被弾!火災モ発生シタゾ、サッサト消化シロ!ー

 

 

ーコッチノ砲撃ハ…チッ外レタカ!向コウモ流石ニ反撃ガ来ルコトハ分カッテイタカ…、スグサマ修正射撃ダ!モタモタスルナヨ!ー

 

 

ーコチラモ射程ニ入ッタ銃座カラ射程開始!キッチリ相手ニオ返シシテヤレ!ーダダダダダ!!

 

 

ー見張リ員!敵艦隊ノ編成ハ分カルカ!?ドッチニシロ軽イ発砲音バカリダカラ戦艦ガ居ナイノハ確実ダガ…!ー

 

 

 

だが先手を取られた輸送船団側はそうも行かず、何発かの砲弾に被弾し一部の艦では火災が発生する始末。流石に相手も撃たれることは想定していたかと思ったリ級であったが、それよりも相手の艦種を確認することが先決と考え見張り員に特定を急がせる。その間にも撃たれたお返しと言わんばかりに射程に入った銃座が次々と射撃、敵艦隊に向けて無数の弾丸を放つ。 

 

 

 

敷波 見張り妖精『敵艦隊も機銃で撃って来たぞ!ここから先は大口径機銃弾も飛んでくる!気を引き締めていけ!』

 

 

敷波 水雷妖精『それもそうだが俺たちの魚雷はどうなった!?そろそろ到達する頃だろ!』

 

 

敷波『見張り妖精、そのへんはどうー?暗闇だから見づらいとは思うけど…』

 

 

 

相手から砲撃だけでなく対空機銃による射撃が開始されたことを確認した敷波の見張り妖精は被弾しないようにするため頭を少し下げつつ、被っていた九○式鉄帽(帝国海軍仕様)を深く被りながら近場の妖精達に気をつけるように声を張り上げながら伝えた。

 

もちろん言われなくても砲弾の破片や銃弾に気をつけていた水雷妖精であったが、それよりも放った酸素魚雷の行方が気になったようでどうなのかと尋ねていく。敷波も気になるのか見張り妖精にそのへんはのどうなのかと確認を取ろうとする…。

 

 

 

敷波 見張り妖精『どうかと言われましても…、酸素魚雷は航跡が見えにくいですからこの暗闇では…。いくら照明弾で照らされているとは言えど…時間的にはそろそろだとは…』

 

 

敷波『やっぱりかー…、まあそりゃ当たり前だから仕方ないといえばないけどー。とりあえず引き続き状況確認宜しくね、もし何かあればすぐに報告でー』

 

 

敷波 見張り妖精『はっ!お任せください!』

 

 

 

だがやはり航跡の見づらい酸素魚雷をいくら照明弾で照らされているとは言えこの暗闇の海から見つけ出すのは至難のようで、見張り妖精からは時間的にはそろそろだろうが視認するのは難しいという返答が返って来た。まあ当然といえばそうのため、そりゃそうだよねという表情を浮かべた敷波は引き続き状況確認を続けるように伝えた。

 

その間、輸送船団側では敵艦隊の艦種特定に激しい砲撃戦の中試みようとしていたがようやく特定出来たらしく見張り員からリ級へ素早く報告が入っていく。

 

 

 

ー特定出来マシタ!発砲音ガ軽イコトカラ重巡洋艦及ビ戦艦ハ有リ得ナイ!恐ラクハ軽巡洋艦又ハ駆逐艦ガ中心トナッタ敵ノ水雷戦隊デス!ー

 

 

ー水雷戦隊ダト!?トナレバ既ニ魚雷ヲ…。旗艦ヨリ各艦!敵艦隊ハ魚雷ヲ放ッテイル可能性ガアル!衝突ニ留意シツツ回避運動ヲ実施セヨ!ー

 

 

ー了解!本艦ハ僚艦トノ位置関係ヲ留意シツツジグザグ運動ヲ行ウ!見張リ員!海面ヲシッカリト見テオケヨ!ー

 

 

 

現在撃ち合っている敵艦隊が水雷戦隊と判明するや否や輸送船団旗艦を任されているリ級は既に相手が魚雷を放っている可能性があると長年の経験で直感的に判断、陣形を組んで航行してはいるが来てるであろう魚雷を警戒するために各艦に回避運動を指示。

 

それを受けて輸送船含めた深海棲艦各艦は僚艦との衝突に留意しつつ魚雷の接近に備えるために各々の回避運動に入ろうとする。流石はeliteクラス、判断はなかなか鋭かったみたいだが…

 

 

  

 

 

 

…どうやらその判断は既に遅かったようだ

 

 

 

ー…ッ!本艦右舷側ニ魚雷ラシキ影…(ドォォォン!!)グァァァ!!?ー

 

 

 

突如として見張り員が海中を進む魚雷らしき影を発見したのとほぼ同じタイミング、轟音とともに輸送船団の右舷側を中心として包み込むような水柱が相次いで上がっていく。その衝撃はかなりのもので被雷したイ級の右舷側にいた航海管制員は弾き飛ばされた影響で壁に思いっきり叩きつけられてしまう。

 

 

 

ークソ!遅カッタカ…!スグサマ被害状況を確認シロ!戦闘可能ナ艦ハ引キ続キ戦闘続行!ー

 

 

ー被雷シタイ級ヨリ報告!本艦ハ右舷側船体中央ニ被雷、機関モヤラレ浸水及ビ火災ガ止マラナイトノコト!尚一部輸送船含メ右舷側艦ヲ中心ニ被害ガ…ー

 

 

ー右舷側ヲ中心トイウコトハ右ヲ護ッテイタ護衛艦群ガヤラレテル可能性ガアルゾ…、トナルト状況ハカナリ不味イコトニ…!ー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

阿賀野 見張り妖精『敵輸送船団に複数の水柱及びを確認!こちらが放った魚雷が命中した模様!一部艦では火災が発生しています!』

 

 

阿賀野『回避運動っぽい動きしてたときは一時どうなるかと思ってたけど…!やっぱこっちの狙い通り敵さんギリギリまで気づいてなかったぽいね…!』

 

 

阿賀野 砲術妖精『ここが押し時です!水雷の連中が開いた突破口を更に広げるぞ!主砲、副砲引き続き撃ちまくれ!』

 

 

阿賀野 高角砲妖精『お任せを!片舷2門しかなくても発射レートは充分!ほらさっさと砲弾持ってきなさい!連中の攻撃でビビってる余裕はないわよ!』

 

 

阿賀野 高角砲妖精『当たり前ですぞ!ほらほらどいたどいた!砲弾のお通りだ!』

 

 

阿賀野 水雷妖精『まだまだ!私達の仕事は終わってません!魚雷発射管に予備弾装填急げ!深海棲艦に追加でおかわりさせてやりましょう!』

 

 

 

魚雷が命中したというのはもちろんパラオ第二艦隊も把握しており、見張り妖精が反射的に声を上げつつすぐ様報告。彼の視線の先ではその通り敵艦隊から相次いでかなり高めの水柱が上がっており一部艦では被雷の影響か火災が発生しているのが確認出来た。

 

一時敵艦隊が回避運動に入った際はどうなるかとちょっと冷や冷やしていた阿賀野だったが、狙い通り敵艦隊は砲撃戦に夢中になっていた影響で気づくのが遅れたなと確信する。雷撃によって突破口が開いたとなれば、このチャンスに乗らない訳にはいかない。押し時だと判断した砲術妖精は主砲・副砲の妖精達にこの突破口を更に広げるように伝えていく。

 

 

もちろん妖精達もそれは解っているため、砲塔内では主砲妖精達が慌ただしく動いており砲弾を弾薬庫から運搬して人力で装填していた。高角砲も同様のようで、機銃弾や砲撃の至近弾が来る中、高角砲妖精は弾薬庫から引っ張り出した八糎(八センチ)高角砲砲弾をバケツリレーで次々と運ぶ。

 

 

 

阿武隈 見張り妖精『状況からして半数近くの魚雷は右舷側に展開していた護衛艦群に命中した模様!その流れ弾が輸送船団に当たった可能性が…!現状確認出来る限り四隻撃沈は確実です!』

 

 

阿武隈『現状では撃沈確実は四隻…、けど輸送船に魚雷が当たったとなると積んでいる弾薬があわよくば誘爆するかも…!』

 

 

阿武隈 砲術妖精『どっちにしろ輸送船団右舷側に展開してた護衛艦隊が一掃出来たなら好都合!このまま砲火を集中してやる!』

 

 

時津風 砲術妖精『ありったけの弾を叩き込め!輸送船団の連中にはここに来たことを後悔させてやれ!』ゴォォン!!

 

 

敷波 水雷妖精『予備魚雷装填急げ!モタモタしてると流れ弾に魚雷が当たって投棄か最悪誘爆しかねん!アイツらみたいになりたくなかったらさっさと動きな!』

 

 

敷波 水雷妖精『もちろんでっせ!今度は輸送船の土手っ腹にぶっとい魚雷打ち込んでやります!』

 

 

 

他の艦でもそれは同様で、戦果確認をしつつも攻撃の手を一切緩めることなく次々と砲弾や機銃の雨を敵艦隊に叩き込んむ。この攻撃で船団の右舷側に展開していた駆逐艦イ級や軽巡洋艦ホ級を一掃出来たことで輸送船が丸裸となり、先程よりも攻撃が通りやすくなっている。

 

更に一部の流れ魚雷が陣形内部の輸送艦にも命中しており、ろくな装甲を持たない船が高威力の酸素魚雷を喰らってただで済むはずもなく、傾斜したり艦内に積載していた弾薬や燃料に引火して次々と爆発炎上を起こしていた。

 

 

 

ーァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛!??ア゛ツ゛ィィ!!ー

 

 

ークソッタレガ!!誘爆ガ止マラン!!消化ハモウ無理ダ!総員退艦!!総員退艦急ゲ!何デモイイカラ海ニ飛ビ込マンカ!ジャナキャ丸焦ニナルゾ!ー

 

 

ー機関浸水!完全ニ海水へ浸カッチマッタ!コレジャ復旧ハ出来ナイ!?ー

 

 

ー助ケテクレ!機関室カラ出レナイ!嫌ダ…!ココデ溺レ死ヌナンテ!誰デモイイカラ助ケ…(ドゴォォォォ)ー

 

 

ー…サッキ戦闘ガ発生シタバカリッテイウノニ…、ココマデ好キ放題ニヤラレルトハ…『右舷側ニ展開シテイタ護衛艦群トノ通信途絶!輸送船団ニモ被害ガ出テルゾ!』チッ!ー

 

 

 

被雷や被弾した艦から地獄のような乗組員の苦痛の声や悲鳴を無線機越しで聞きていたリ級は、先程戦闘が始まってから僅かな時間で一方的にやられていることに思わず歯ぎしりを見せてしまう。それと同時に通信妖精から右舷側に展開していた護衛艦群との連絡が途絶したという報告が飛び込み、輸送船団にまで被害が出ているという見張りからの追加での報告が入る。

 

それを聞くや否やリ級は思わず舌打ちをしながら、これ以上やらせるわけにはいかないという表情を浮かべつつ無線機で残存する僚艦に繋いでいく。

 

 

 

ー輸送船団旗艦リ級ヨリ残存スル護衛艦群へ!本艦隊ハコレヨリ船団ト分離後面舵!敵艦隊へ対シ突撃ヲ刊行スル!ー

 

 

ートッ突撃デスカ!?イクラナンデモ無理ガアリマス!仮ニソンナコトヲスレバ余計ニ船団ガ丸裸ニ…!ー

 

 

ーソウデス!確カニ先ノ雷撃デ陣形ニ穴ガ開シマシタガ再配置スレバ埋メラレマス…!ソレニ主力艦隊ガ戻ッテ来ルマデ時間ヲ稼ゲバ…!ー

 

 

ー主力艦隊ノ到着ヲ待ッテイタラソレコソ手遅レニナル!シカモ再配置サセル時間ガアルワケガナイ!コノママ守勢ヲ維持シテテモ勝機ハナイゾ!ー

 

 

 

恐らくここまでは更に船団へ被害が出る、そう踏んだようで残存する護衛艦群に対し敵艦隊へ突撃せよというかなり思い切った指示を下した。だがいきなりそんなことを言われてハイそうですかと答えるわけもないもので、流石にそれは無理があると僚艦からの反論が飛んでくる。

 

確かに彼女らの言い分も理解は出来る、突撃して万が一護衛艦群が壊滅した際には輸送船団が丸裸になってしまう。それなら多少被害が出ても陣形変更で穴埋めをしつつ主力艦隊が合流するまで耐えた方がいい。

 

 

だがいつ合流出来るかも分からない主力艦隊を守勢のまま待っていたらそれこそ船団の被害が拡大しかねない、ならそれよりも敵艦隊に対し肉薄して砲撃を叩き込んだ方が幾分かマシだ。それに重巡洋艦2隻が健在の今、火力面ではこちらが有利。となれば守勢から攻勢に転じれば相手は輸送船団に手を出すどころでは無くなってしまう。

 

 

 

ーソレニ火力面デハコチラガ有利!ナラ火力ヲ活カシテ肉薄シツツ砲撃ヲ叩キ込メバ敵艦隊ハ輸送船団ヲ狙ウドコロデハ無クナル!ー

 

 

ーデッデスガソウナルト沖ノ島ニ対スル上陸作戦ハ…ー

 

 

ー現状沖ノ島ニ上陸ナンテ出来ル状況カ!敵艦隊ヲドウニカシナケレバ上陸作戦ナンテ夢ノマタ夢ダ!船団ノ連中ハコチラガ敵艦隊ヲ抑エテイルウチニ現海域カラ離脱!ソノ際ニ船団ノ護衛ハ任セタゾ空母群!ー

 

 

ーコチラ空母ヲ級一番艦了解シタ!船団ヲ護衛シツツ離脱スル!敵艦隊ハ任セタガナントシテデモ無事ニ戻ッテコイヨ!ー

 

 

ー当タリ前ダ!コンナトコロデヤラレタラ護衛艦隊トシテノ名ガ廃ル!ソレニコノママヤラレッ放シッテ訳ニイクカ!ヤラレタ分タップリ仕返シシテヤル!ー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

睦月 見張り妖精『本艦の魚雷も複数命中を確認!駆逐艦イ級1隻及び輸送艦ワ級2隻撃沈確実!僚艦もかなりいい戦果上げてます!』

 

 

睦月『ふっふーん♪やっぱり提督に頼んで酸素魚雷搭載出来るように改装して貰ったのが良かったのね♪これぞ先手必勝!』

 

 

睦月 水雷妖精『やはり酸素魚雷は正義!圧倒的火力の一撃で葬れるのは堪りませんな!』

 

 

 

そんなことが深海棲艦側で起こっているとは知らないパラオ艦隊水雷戦隊では、酸素魚雷によって次々と飛び込んでくる撃沈戦果で士気高揚といった雰囲気を見せていた。もちろん睦月も例外ではなく、妖精とともに改めて酸素魚雷の凄さを思い知らされ満面の笑みを浮かべていく。

 

他の艦娘も続々と奇襲雷撃で戦果を上げているようで視線の先では、停止した艦船から暗闇に負けないほどの業火が甲高く次々と上げていた。まだまだ数では数的不利だがこのまま行けば確実に輸送船団を撃破出来る…、そう誰もがそう思っていたのだが…

 

 

 

涼風 見張り妖精『む?なんやあれは?』

 

 

涼風『ん?見張り妖精どないしたん、なんか見つけたか?』 

 

 

 

敵輸送船団の監視を続けていた涼風の見張りが何か異変に気づいたのか少し眉を上げながら何度も双眼鏡でマジマジと見ていた。そんな妖精の様子に気づいたのか涼風がどうしたのかという表情を浮かべながら駆け寄りながら声をかけていく。

 

 

 

涼風 見張り妖精『どないしたんと言われましても、どうも敵艦隊の動きが乱れすぎてるというか…ですが魚雷回避にしては統率が取れてるというか…』

 

 

涼風『大方陣形に開いた穴埋めのためじゃないか?輸送船団右舷側に展開していた護衛艦群を撃沈出来たとしてもまだまだ向こうの主力は健在だしな』

 

 

涼風 見張り妖精『…確かにそれもそうですね、まあでも一応は敵艦隊の動向はしっかりと見t……

 

 

 

どうやら敵輸送船団の陣形が乱れているようで最初こそ魚雷の回避をしようとした影響と思われたが、その割に対して統率が取れていることに異変を感じていたようだ。だが涼風には特にこれと言っておかしくは見えないようで、先程の雷撃で開いた陣形の穴埋めをしてるのではないかと推察する。

 

確かに彼女の言う通り、輸送船団を守るように右舷側へ展開していた護衛艦群は壊滅したと言えど護衛艦隊の主力は健在であり数も向こうがまだまだ上。となれば陣形の穴埋めをすれば充分対抗することは出来るため、そういうことなら敵艦隊の動きは有り得ない話ではない。涼風にそう言われ、確かにそうかもと思った見張り妖精はひとまず相手の動向を引き続き探ろうとしたが…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…左前方!敵艦隊接近!!』

 

 

 

どうやらその仮説は一瞬にして崩れ去ったようだ。見張り妖精からは砲撃音に負けないような悲鳴とも見て取れるような報告が艦橋全体に響き渡っていく。

 

 

 

涼風 見張り妖精『恐らく…いや間違いなく輸送船団から分離した護衛艦隊です!巡洋艦を先頭に単縦陣で突っ込んで来ます!!』

 

 

涼風 砲術妖精『ウッソだろ!?連中めついに破れかぶれになったか…!?』

 

 

涼風『んなわけあるかい!それよりも阿賀野さんに報告を!!考えるのは後や!!』

 

 

 

声を張り上げつつ報告を行う見張り妖精の視線の先、そこには輸送船団と分離したと思われる護衛艦隊が重巡洋艦リ級を戦闘として単縦陣で突っ込んで来ていた。まさかの事態に深海棲艦側がついに破れかぶれになって突っ込んできたのかと驚きを露にする砲術妖精であったが、そんなわけあるかと涼風が宥めつつそれよりも旗艦へ報告を急ぐように最速していく。

 

 

 

阿賀野 電信妖精『駆逐艦涼風より入電です!敵輸送船団から護衛艦隊と思しき集団が分離!こちらに突っ込んで来ているようです!』 

 

 

阿賀野 見張り妖精『こちら右舷側見張りも確認しました!重巡洋艦リ級を先頭に突っ込んで来ています!尚輸送船団は南に進路を変えて離脱を試みている模様!!』

 

 

阿賀野『このままじゃ埒が開かないって判断したわね…!数を減らされたとはいえ向こうの主力は健在っ!なら直接ぶつけてその隙に輸送船団を逃がすのかも…!』

 

 

 

涼風からの報告を受けたのとほぼ同時刻、阿賀野でもその様子は確認しており見張り妖精からの報告が飛び込んできていた。やはりこのままでは埒が開かないと判断したようで、数は減らされたといえど向こうの主力は健在。ならそれらの戦力で反転攻勢へ転じその隙に輸送船団を逃がす気なのだろう…と呟きながら阿賀野は突っ込んでくる敵艦隊を見つつ推察を立てていた。

 

 

 

阿武隈『こちらでも確認しました…!やはりそこまでしてでも輸送船団を護るということは、意地でも上陸部隊を護る気なのかもね!』

 

 

曙『んな呑気に関心してる場合じゃないわよ!数は減らせたとはいえど向こうは巡洋艦群が未だに健在!このまま直接殺り合ったらこっちがジリ貧になる!』

 

 

敷波『やれやれー…、ちょっと面倒くさいことになったなー…。まさか向こうが反転攻勢を仕掛けてくるなんて…、まあでもこっちが水雷戦隊って分かればそりゃそう来るかー…。でも直接相手なんかしたら輸送船団に逃げられちゃうし…』

 

 

皐月『阿賀野さんどうする?どっちにしろあの突っ込んでくる敵艦隊を黙らせないといけないと思うけど…』

 

 

時津風『まあ重巡相手は無視出来ないよねぇ…』

 

 

 

もちろん涼風の情報は各艦へしっかりと伝わっており、意地でも上陸部隊を載せた輸送船団を護る気なんだと阿武隈は納得したような表情を浮かべる。だが曙がツッコミを入れた通りいつまでもそんな悠長なことをしていられるはずもなくこのままではこっちがジリ貧になると指摘した。

 

確かに相手には重巡洋艦2隻、そして軽巡洋艦も同様に2隻が健在であるため純粋にお互いの位置が露見した状態で殴り合えば確実に劣勢。しかも仮に太刀打ち出来たとしてもその間に輸送船団を逃してしまえば本来の目的である船団の撃滅が不可能ということになってしまう。

 

 

しかしここであーだこーだ言っても状況を打破出来るはずもなく、輸送船団をどうにかする前にまずは接近してきている護衛艦隊を黙らせないと話にならない。それを口にしながら旗艦である阿賀野へ皐月がどうするのか聞く。

 

 

 

阿賀野『確かに皐月ちゃんの言う通りね…、どっちにしろあの敵艦隊をどうにかしないと…。とはいえどどうするか…』

 

 

阿武隈『阿賀野さん、不利とは言えど現状こちらはT字有利、ならその間に戦力を削るのが妥当だと思います…!先頭さえ潰せれば…!』

 

 

睦月『おー!確かにそれなら行けそうにゃしぃ!相手が単縦陣で突っ込んで来るなら転舵されるまでに砲撃を先頭に叩き込めばいいよね…!』

 

 

時津風『おー、それなら比較的戦闘を優位に進めそうだねー』

 

 

 

だがぱっと見れば八方塞がりのようにも見えなくないため、尋ねられた阿賀野もそれはそうだがどうしたものかと少し悩んでしまう。とは言えどそこは流石サポート役の阿武隈、経験豊富な知識を活かしてこうすればいいと咄嗟で答える。

 

というのもいくら戦力で不利だとは言え現状はT字有利、そうなれば相手と同航戦になるまでに火力を集中して先頭艦を叩き敵艦隊の陣形を乱せればまだ勝機はある。そう言われて睦月も確かにそれならという納得した表情をしながらうんうんと頷く。

 

 

 

曙『なら決まりね!突っ込んでくる連中にいつまでも構ってられないしさっさと蹴り付けて逃げていく輸送船団を追撃しましょう!』

 

 

阿武隈『確かにそうですね…!旗艦阿賀野より各艦へ!本艦隊はこれより敵護衛艦隊群と交戦します!陣形有利を活かせるうちに敵戦力を削ってください!』

 

 

阿武隈『みんな聞いた!?輸送船団から狙いを敵護衛艦隊群に変更して!陣形有利が失われるまでに火力を集中して各個撃破するよ!』

 

 

阿武隈 砲術妖精『お任せを!射撃指揮装置から各砲へ!次弾から狙いを突っ込んでくる敵艦隊に変更!狙いは先頭艦のリ級だ!』

 

 

 

と決まればいつまでもモタモタしている訳にも行かず、そう聞いた阿賀野はすぐ様僚艦へ狙いを輸送船団から護衛艦隊へと変えるように指示。阿武隈も妖精達に狙いを変えるように伝えていき、砲術妖精がそれに答える形で狙いを接近してくる敵艦隊の先頭艦であるリ級へと変更していく。他の艦も同様に主砲の狙いを変えていき、確実に当たるように照準する。

 

 

 

涼風『こっちは主砲も魚雷もいつでも行けるぜ!さっさとコイツら蹴散らして輸送船団を追撃するぞ!』

 

 

敷波『もちろんだよー、アイツらを逃がせばそれこそ司令部のある沖ノ島にとっては脅威になりかねないからねー。まずはアイツらをちゃちゃっと仕留めますかー』

 

 

阿賀野『目標接近中の護衛艦隊!その先頭艦リ級!同航戦になる前に仕留めるわよ!撃ち方h…『第一艦隊鳥海より阿賀野さん!聞こえますか!?』っ!?』

 

 

 

いつでも攻撃可能という報告を全艦から受けると、頷きながら阿賀野は射撃開始の合図を下そうとするが…。その直前遮るように彼女の耳へ鳥海からの無線が飛び込んで来たことで思わず目を見開き、撃ち方始めの号令を反射的に中断してしまい砲撃のタイミングを完全に逃してしまう。

 

 

 

曙『ちょっと鳥海!あなたなんでこのタイミングで無線入れてきたの!せっかくのチャンス逃しちゃったじゃない!』

 

 

阿賀野『曙ちゃんそれは今いいから…!それよりいきなりどうされましたか鳥海さん…!かなり急でしたけど…!』

 

 

鳥海『すみません…!でもそちらよりも状況が深刻なのでどうしてもお伝えしたいことが…!』

 

 

阿武隈『伝えたいこと…?それは一体…(声的にかなり焦ってる…?いつもはどんなときも鳥海さん落ち着いてるのに…)というか霧島さんはどうしたんですか…!』

 

 

 

まあせっかくのチャンスをいきなりの無線で逃してしまえば怒らない訳もないもので、曙が少しキレ気味でその張本人である鳥海に対して問い詰めようとする。…が阿賀野がそれを宥めつつ一体どうしたのかと応答していく。どうやらこちらよりも状況が深刻らしい、すみませんと答えながら話していく鳥海の口調がかなり焦っているようだ。

 

それを耳を澄ましつつ聞いていた阿武隈がいつもと違うことに気付く。本来であればこういった非常時には旗艦が繋げてくるはずなのだがそうじゃないことに対し、鳥海へ霧島はどうしたのかと確認を取ろうとする。

 

 

 

鳥海『その伝えたいことが霧島さんも含まれます!とりあえずそちらの現状はどんな感じですか!?』

 

 

阿賀野『えっと第二艦隊は指示通り輸送船団を攻撃中、その過程で護衛艦隊と交戦していますが…!』

 

 

鳥海『でしたら護衛艦隊との交戦を中止してすぐ様こっちに戻ってきてください!』

 

 

曙『はぁ!?いきなり繋いできたと思ったら何よそれ!!というか交戦を止めるってことは輸送船団を逃がせって言ってるようなもんよ!!』

 

 

 

どうやら伝えたいことと言うのが霧島も含まれているようで、それを説明しつつ阿賀野へそちらの状況はどうなっているかと尋ねていく。一瞬戸惑いながらも彼女は現在敵輸送船団、その護衛艦隊と交戦中だと伝えるとそれを聞いた鳥海からその戦闘を中止してこっちに戻ってきてくれという衝撃の一言が飛び出してきた。

 

もちろんそんなことをすれば輸送船団を逃がすことになり本来の目標が達成出来なくなってしまうことからハイそうですかと納得するはずもなく、曙が更に喰ってかかろうとする。

 

 

 

鳥海『…それよりもこっちはかなり状況が深刻なんです!!下手をすれば霧島さん…いえ!榛名さんや提督の身に関わり兼ねないんですから!!』

 

 

曙『…っ!?(思わず食下がってしまう)』

 

 

阿武隈『霧島さんや榛名さん…、いや提督の身に関わり兼ねないって…一体何が…』

 

 

 

だが彼女の発言に答える余裕すらないらしく喰ってかかるような反論を反射的に少しキツめの声で鳥海は弾き返してしまい曙も思わず口を閉じつつ後退りしてしまう。これはただごとじゃない、そう踏んだ阿武隈は一体何があっちでは起こっているのかと唖然とした表情を浮かべているのであった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 








第二十四話 ギリギリの攻防戦


あ号艦隊決戦編
OP Starlog(ChouCho)
プリズマイリヤ OPより

ED 未来(BobbyRookman)
艦隊これくしょんー艦これー
いつかあの海で EDより




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第二十四話 ギリギリの攻防戦


それぞれ主力艦隊同士が激しい砲雷撃戦を繰り広げている中、阿賀野率いる第二艦隊は戦域離脱を試みようとする輸送船団へ対して奇襲攻撃を敢行。もちろん深海棲艦側もただではやられまいと迎撃を試みる。  

だがしかし砲撃戦のどさくさ紛れに放たれた魚雷攻撃を受けたことで陣形に穴が空いてしまい、更に輸送船団の一部に被害が出たことで劣勢になりかけてしまう。だが主力の艦艇群は未だ健在のため輸送船団の護衛を指揮するリ級は残存艦艇で反転攻勢を開始。味方の船団を逃がす戦法に切り替えた。
 

まさかこのタイミングで反撃に出るとは思わなかった阿賀野達であったが、このまま輸送船団を逃すわけにもいかずどうにかして突破を試みようとする。

…が突如として舞い込んだ鳥海からの無線のせいでチャンスを逃しただけでなく、彼女から発せられた衝撃の一言を耳にした第二艦隊のメンツは驚きや混乱に包まれるのであった…。



 

 

 

 

ジリリリリ!!!

ビーッビーッビーッ!

 

 

「いてて…」

 

 

霧島 艦橋妖精「くそったれが!なんだ今の衝撃は…!!砲弾が当たったのと比べ物にならんかったぞ!」

 

 

霧島 見張り妖精「おっ恐らくは艦中央部に当たった可能性が…って被弾箇所と思しき場所で火災が発生してます!現在も炎上中!!」

 

 

 

あれからどれくらいの時間が経ったのか…、衝撃でくらつく頭を抑えながら先程まで伏せていた秋山はゆっくりと起き上がっていく。艦橋内では被弾時の非常アラー厶がけたたましく鳴り響いており、周りでは妖精達が慌ただしく行ったり来たりしていた。

 

 

 

秋山「くそっ…派手にやられたなこりゃ…っ!?そういえば霧島はっ!」

 

 

霧島「私は大丈夫です提督…っ、少々被弾時の衝撃で飛ばされてしまいましたが…」

 

 

 

現時点では被害状況は把握出来てないが妖精達の動きや被弾時の衝撃だけでかなり深刻なのは充分伝わってくる。かなり派手にやられたなと呟きながら立ち上がった秋山だったが、すぐに霧島のことを思い出したようで少し焦りの表情を見せながら当たりを見渡そうと視線を動かしていく。

 

…がどうやらその心配はないようで、声が聞こえてくるとともに被弾時の衝撃で壁に叩きつけられていた霧島がクラクラする頭を抑えながら立ち上がる。見た感じメガネが外れていること以外怪我をしているようには見えないため秋山は一瞬安堵の表情を見せるが…

 

 

 

鳥海『霧島さん榛名さん!!大丈夫ですか!?無事なら応答してください!!』

 

 

古鷹『提督も無事なら返事して!!』

 

 

 

しかしそんな最中、安堵しかけていた提督を現実へ引き戻すように鳥海や古鷹から無事なら返事をしてくれという通信が飛び込んでくる。そりゃ見慣れない兵器の攻撃を直で喰らっているため平然としていられるはずもなく、通信の先からでも分かるくらい二人の声はかなり焦っていた。

 

 

 

霧島「霧島より鳥海へ…、私はなんとか大丈夫…提督も同様で怪我はありません…」

 

 

榛名『榛名も大丈夫…ですっ…!現在被害状況の集計をしている最中で…』

 

 

雪風『そうですか…!それは良かったです…、けっこうな爆炎が上がってますから一時どうなるかと…』ホッ

 

 

青葉『もしお二人や提督に何かあったら瑞鳳さんに顔合わせなんて出来ませんから…』

 

 

巻雲『ちょっちょっと青葉さん…、こんな状況で縁起のないこと言わないでくださいよ…』

 

 

霧島「幸い被弾したのが一発で済んだのか幸いね…、吉野さんの咄嗟での迎撃が効をそうしたわ…」

 

 

 

だが霧島や榛名は辛うじて冷静さを保っているようで、焦りを見せているメンバーに提督とともに大丈夫だと伝えて安心させていく。やはり被弾したのが一発だけで艦中央部の重要防御区画(バイタルパート)に直撃ということもあるのだろうが、吉野がギリギリで艦対空ミサイルの迎撃をしてくれたのも損害を抑えられた要因だろう。

 

 

 

吉野『すみません…、最新鋭の防空システムを備えたイージス艦であろう私が打ち漏らしちゃうなんて…』

 

 

榛名『いえ、吉野さんはよくやってくれたと思いますよ…!あれがなければもっと損害は酷くなっていたでしょうし…』

 

 

吉野『でっですが…』

 

 

霧島「気にしちゃうのは分からなくもないですが、それを考えるのは後です…!今はこの状況を切り抜けないと…」ドォォォン

 

 

 

しかしいくらある程度迎撃出来たとしても数発打ち漏らしてしまったのは流石に響いたようで、最新鋭の防空システムを備えたイージス艦でありながら情けないという口調で吉野は落ち込んでしまう。けど霧島や榛名はそこまで気にしていないようで、むしろ感謝をするように優しく語りかける。

 

それでも吉野は少し申し訳なさそうな雰囲気を浮かべていたが、今はそれを考える余裕などないと言わんばかりに艦隊の周囲へ敵艦隊からの砲撃が降り注いで来た。霧島もそれは分かっているようでそれを考えるのは後としつつ、今はこの状況を切り抜けることに注力することに。

 

 

 

霧島『ひとまずまずは損害報告を急いでください…!先程の攻撃でどれくらいの被害が出たか…っ!』

 

 

霧島 修理妖精『おっしゃ!聞いたなお前ら!損害状況の確認とその修理をすぐに取り掛かるぞ!火災の消火もだ!!』

 

 

霧島 電信妖精『こちら電信室!先程の攻撃で通信アンテナが損傷!!送受信不能です!!』

 

 

霧島 機関妖精『こちら機関室!被弾による機関損傷はなし!全力航行は可能!!』 

 

 

霧島 砲術妖精『主砲及び全力射撃可能!ですが右舷側の高角砲群が攻撃により全滅!副砲群もそれなりに被害が出ており負傷者も多数出ています!現在衛生妖精や修理妖精が対応に…!』

 

 

霧島「思った以上にやられてるわね…けどそれよりも旗艦なのに送受信不能はかなり不味い…(ギリリッ)!榛名姉さんの方はどうですか…!?」

 

 

 

とりあえずは損害の把握を務めることにした霧島は艦内へ被害報告を急ぐように伝達、それから少ししてすぐに各所の妖精達から次々と被害の状態が上がってきた。主砲群や機関に関しては特に被害が出ていないようだが、艦中央に直撃したせいで右舷側の高角砲群や一部副砲に被害が出ているようで爆発の影響で無線機の通信アンテナも損傷が出てしまっているらしい。

 

もちろん通信アンテナが壊れたということは送受信が不能になっていることを意味しており、旗艦でこうなることは指揮系統に乱れが出てしまう。そう思った霧島は少々ばかり歯ぎしりをしてしまうが、無理やりでも気持ちを切り替えて今度は榛名の被害状況を確かめるために尋ねていく。

 

 

 

榛名『こちらは無線アンテナが損傷し送受信不能、そして右舷側副砲や高角砲群に被害が出ています…!幸い戦闘能力や航行能力に影響はありませんが…!』

 

 

霧島『となると戦艦群の通信機器は全く使い物になりそうにありませんね……、霧島より鳥海へ!旗艦能力をそちらに委譲します!いけますか!?』

 

 

鳥海『問題ありません!鳥海より第一艦隊へ!旗艦霧島が被弾による送受信不能により、現時刻を持って本艦が臨時で指揮を取ります!』

 

 

秋山「やはり艦中央部に直撃したのがかなり響いているか…幸い貫徹力はなかったのか重要防御区画が貫かれてないのが不幸中だな…」

 

 

霧島『はい…、ですが正直言ってこちらは満身創痍と言っても過言ではないです…。先程の攻撃でこちらの連携が完全に乱れてしまいましたし…』

 

 

 

やはり榛名も同様だったようで重要防御区画を貫かれなかったため致命傷は免れたものの、着弾した影響でかなり被害が出ているようだ。だが最悪無線機が機能していれば榛名に旗艦を委譲しようかと思っていたが、どうやら話を聞く限りそれは難しいとのこと。

 

その報告を受けた霧島は止む終えないという表情を浮かべながら、戦艦組以外で旗艦としての能力が長けている鳥海へ指揮権を譲渡することに。…というのもいくら被害が少ないと言えど霧島や榛名は無線の送受信が不能、そして満身創痍に近い形のためこの状態で戦闘を指揮すれば間違いなく艦隊は混乱してしまう。

 

 

ただでさえ不明物体の攻撃を受けて混乱しているのにそこへ追い打ちをかけるのは得策ではないと判断したのかもしれない、霧島からの指示を受け鳥海は了解という返事を返しながら取って代わって臨時の指揮を取る。

 

 

 

秋山「っと…、ほい霧島。メガネ落ちてたぞ(手渡す)」

 

 

霧島「…提督ありがとうございます…♪(受け取り)」

 

 

秋山「構わんさ、俺に今出きることは限られるしな…、しかし状況は芳しくしどうしたものか…」

 

 

 

そんな中床にふと視線を向けた秋山が被弾時に霧島が落としたと思われるメガネを見つけ、拾うとその流れで彼女へと手渡す。霧島もそれに気づき少し笑みを浮かべながら感謝の言葉を口にしながら受け取って掛けていくがそんな時間も長く続くはずもなく、あまり宜しくない状況にどうしたものかと秋山は眉を細めていた。

 

 

 

霧島「しかしそれは向こうも同じことかと…第一波と第二波雷撃で敵艦隊は半数の16隻を喪失、対してこちらは無傷とまでは行きませんが戦闘能力は維持しています…!」

 

 

榛名『どっちにしろ今引くことは出来ません…!幸い敵艦隊も旗艦が致命的な損傷を受けています!となれば効果的な反撃は難しいかと…!』

 

 

 

しかしそれは敵艦隊も同じような状況なのは変わらない、二度の雷撃を受けた深海棲艦の護衛艦隊は半数以上の艦艇を既に喪失。戦艦群は健在ではあるものの、そのうちの一隻である戦艦ル級は機能をそう失しており相手も効果的な反撃が出来ずにいる。

 

どっちにしろこの状況で引くことは難しいし、何よりこちらは脱落艦は一隻も出ていない。となれば例の不明攻撃も気になるが榛名の言う通りこのまま戦闘を継続するしかなさそうだ。

 

 

 

霧島「確かに例の不明攻撃も気になりますが…、離脱しようにも向こうだって今更簡単に逃してくれない可能性があります…!なら決定打を与えてから離d…『敵艦隊発砲!!なんだありゃ!さっきとは比べ物にならんくらい統率が取れてるぞ!!』っ!?」

 

 

秋山「なんだと!?さっきまで連中は連携が乱れていたはずだぞ!!」

 

 

 

仮に離脱するにしても敵艦隊へ決定打や止めを刺さなければ逃してはくれないのは確か、再度あの攻撃を受けるかもしれないという不安はあるがこのまま撃ち合うしかない。そう言いかけた霧島であったが、それを遮るように見張り妖精から砲撃音に負けないような報告が艦橋へ響き渡っていく。

 

先程の乱れ具合がまるで嘘かのように統率のとれた敵艦隊からの砲撃に見張り妖精も驚愕しているようで、それを聞いた秋山も嘘だろという表情を浮かべていた。

 

 

 

霧島「狙いは!当然統率が取れているということは何か優先的な目標がa…まさか!?」

 

 

秋山「どうした霧島!?何かわかったのか!」

 

 

霧島 見張り妖精「敵弾…!?我が霧島と榛名に集中しています!!弾着まであと5秒!!」

 

 

榛名『そっそんな!?どうして急に統率が…!』

 

 

霧島「…火災が発生したのが仇になったか…!回避急いで!!『駄目です!!間に合いません!!』ちっ…!敵弾が来ます提督!衝撃に備えてください!」

 

 

秋山「えっあっどうゆうこt…(ドゴォォォン)ぐぉ!?」ガギィィィンン!!

 

 

 

だが霧島は直感的にその理由が分かったようでまさかという顔をした直後、妖精から追加の情報で敵弾のほぼすべてが自分と榛名に集中して飛んで来ているという報告が飛び込む。慌てて回避の指示を出したがそこそこ近い距離で撃ち合っていたため当然避けることなど不可能。

 

どうやら火災が発生した影響でだだでさえ暗闇に包まれているのに目立つぐらいに2隻の姿が露見。それにより敵艦隊の狙いが絞られてしまったことで集中砲火を受ける形になったらしい。秋山に衝撃に備えるように指示した直後、2隻は先程とは比べ物にならないくらい大きな水柱に飲み込まれていくのであった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー…一体何ガ…ー

 

 

 

普級から放たれた対艦巡航ミサイルが霧島と榛名に命中したのとほぼ同時刻、その光景を目撃していた旗艦ル級は一体何が起こったのかという表情を浮かべていた。それもそのはず、自分の艦隊は既に半数以上が撃沈され、自身を含め残存している艦艇もほとんどが損傷しているというほぼ満身創痍とも見て取れる状態。

 

今後を考えることで精一杯なのに突如としてどこからか飛んできた飛翔物体の攻撃を受けた敵戦艦のことを気にする余裕などなかった。そんなル級を知ってか知らずかどこからか無線が入っていく。

 

 

 

ー全ク…何言ッタソバカラ死ニカケテルノヨ、シカモ数デ劣ル相手ニ(ため息)ー

 

 

ーソノ声ハ…オ前カ…、トイウコトハアノ敵戦艦ガ被弾炎上シテルノモ…ー

 

 

ーソウヨ、セッカク攻撃位置ニツコウトシテタノニワザワザソレヲ中断シテマデ援護シテ上ゲタンダカラ感謝シナサイヨネー

 

 

ー…スマン…、恩ニキル…ー

 

 

 

その主は敵戦艦二隻に対して対艦巡航ミサイルによる強襲を刊行した普級からであり無線機越しに少し不満げなため息を零しながら話していた。どうやら攻撃ポジションに付くために移動していたようだが、味方艦隊の劣勢一報を受けてワザワザ移動を中断してまで援護射撃をしてくれたらしい。

 

まさかに九死に一生を得るとはこのこと、ギリギリで助けてくれた彼女に対して当然頭が上がるはずもなく軽いお説教を受けながらル級は申し訳なさそうに感謝の言葉を口にしていた。

 

 

 

ー感謝スルノハ後、今ハ敵艦隊ヘ反撃スルコトニ集中シテ。サッキ誘導弾ニヨル攻撃デ戦艦二隻を被弾サセタワ、火災モ発生シテルシ連携モ乱レテルカラヤルナラ今ウチヨー

 

 

ー…言ワレナクテモ分カッテイルサ、コレナラ目標ヲ集中シテ攻撃シヤスイ。巡洋艦ヤ駆逐艦隊ハ甚大ナ被害出テイルトハイエド戦艦組ハ健在ダカラナー   

 

 

ーソレナラ今度コソ問題ナイワネ(念押し)?セッカク援護シテアゲタンダカラマタシクジルンジャナイワヨー

 

 

ー…モウアレハ懲リ懲リサ…、ソレニEliteガコンナコトヲ何度モシテルンジャ名ガ廃ルシナ…。…ソレヨリオ前ハコレカラドウスルンダ?ー

 

 

ー私ハモウ少シ敵艦隊ノ様子ヲ探ルワ、…チョット気ニナルコトガアルカラー

 

 

 

だが呑気に感謝している場合ではないと普級は更にツッコみを入れつつ対艦巡航ミサイルによって敵艦隊が混乱しているうちに体制を立て直して反撃するようにと念押しさせる。もちろん言われてもル級も分かってはいるため、当然という表情を浮かべながら流石に同じ過ちをEliteクラスの深海棲艦がしているようじゃ名が廃ると付け加えていく。

 

…と同時に今後の行動について尋ねてきたル級に対して彼女は先程の雰囲気が嘘のように少し引っ掛かるような口調になる。どうやら彼女なりに気になることがあるようで、それを確かめるために更に敵艦隊の動向を探るらしい。

 

 

 

ー気ニナルコト…?ソリャ一体何ダッテンダ…、マサカ敵艦隊ニ新手ガ出テキタトカ…ー

 

 

ーソンナ単純ナコトジャナイワ、…マアデモアンタノ言ッテルコトガ完全ニ違ウ訳ジャナイケドー

    

 

ー……?ー

 

 

ー…トリアエズ、アンタ達ハコッチヲ気ニスル余裕ハナイデショ?コッチハコッチデドウニカスルカラ今ハ敵艦隊ヲ叩クコトニ集中シテー

 

 

ー…アッアァ、分カッタ。ダガ無理ハスルンジャナイゾ?ジャナケレバ私達ノ二ノ舞イダカラナ…。…マアオ前ナラ心配ナイトハ思ウガ…ー

 

 

ーソンナノ当タリ前ヨ、ソレヨリモ今度ハ頭使ッテチャント戦イナサイネ?先ニ言ッテオクケド次ハ流石ニ援護出来ナイト思ウカラー

 

 

ー…何度モ言ワナクテモ分カッテルサ、ソレジャ切ルゾー

 

 

ーエエッ、武運長久ヲーピッ

 

 

 

ル級もその引っかかるような口調が気になったようでそれは一体何なのか、もしや新手が出てきたのかと心配そうな口調で尋ねていく。しかし彼女からは半分合ってるがそんな単純なことではないと言われ、こっちを気にするよりも目先のことを優先しろと言われてしまう。

 

確かに普級の言う通り、先程の対艦巡航ミサイルによる攻撃で敵戦艦2隻は被弾炎上し夜間ということもあってか非常に狙いやすいぐらい目立っていた。しかも先程の勢いは完全に衰えていることから敵艦隊を叩くなら今しかない。

 

 

とりあえずそう言われたためひとまず自分たちがぶち当たっている目先の対処をすることにしたル級は、彼女といろいろと話した後に無線を切った。その後少しの間砲撃音が響き渡る中無言で考えていたがすぐに顔を上げて、艦内に指示を出していく。

 

 

 

ー本艦隊ハコレヨリ敵艦隊へ対シ反攻作戦ヲ実施スル!盟友ガ開イテクレタ突破口ヲ無駄ニスルナ!各自状況ヲ報告シロ!ー

 

 

ーコチラ機関室!先程ト変ワラズ戦闘航行ニ支障ハナシ!!全力航行可能デス!ー

 

 

ー各砲塔モ同ジグ!射撃指揮装置ガ先程ノ砲撃デ損傷シマシタガ敵戦艦ヲ狙ウ分ニハ支障ハアリマセン!!ー

 

 

ー了解シタ!ソレト臨時指揮ヲ取ッテイルル級ニモソノコトヲ伝エロ!!数ハ減ッタガ集中砲火デ叩ケレバ…!!ー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー全艦一斉射撃用意!!目標ハ被弾炎上中ノ戦艦群!ココデ奴ラヲ沈メレバ主導権ハコチラニ傾クゾ!ー

 

 

ー主砲射撃用意!イイカ!ヨク狙ッテイケ!射撃指揮装置ハ役二立タン!ダガEliteクラスノ我々ノ底力ヲ見セツケテヤレ!!ー

 

 

 

旗艦ル級から指示を臨時指揮艦経由で受けた護衛の主力艦隊ではに向けて慌ただしく準備に追われていた。二度の雷撃や砲撃によって今や半数近くを失い、残った十一隻もそのほとんどが損傷している。しかし数や戦力面で見ればまだまだこちらが僅かに有利、更に言えば敵艦隊は普級の誘導弾攻撃で混乱しているため立て直す絶好のチャンスとも見て取れるだろう。

 

もちろんそんなチャンスを逃すはずもなく、先程の劣勢はどこに行ったのかという雰囲気に包まれている。相変わらず電波妨害によってレーダー射撃は出来ないが、それでも狙う目標がハッキリと分かる状態ならEliteクラスの彼女達となれば容易いことだ。

  

 

 

ー砲雷撃戦準備完了!!合図ガアレバイツデモ行ケマス!指示ヲ!!ー

 

 

ー奴ラヲギャフント言ワセテヤリマショウ!!ソシテヤラレタ仲間ノ仇モキッチリと取ラセテヤル!!ー

 

 

ーモチロンダ!全艦撃チ方……始メェ!!テェェェ!!ードォォォン!!

 

 

 

 

その後各艦から準備完了との報告が次々と入ってきて、それぞれ仲間の敵討ちややれたぶんしっかりとやり返してやるという意気込みを見せていた。もちろん彼女らの期待に答えない訳もなく旗艦のル級は直ちに攻撃命令を下令。

 

直後轟音とともに全艦の主砲や副砲が轟音とともに一斉に火を吹き、次々と放たれた砲弾は半円を描きつつ入り乱れ我先へと敵戦艦へと襲いかかるように降り注ぐのであった…。

 

 

 

 

 

   

 

 

 

ー味方艦隊ノ砲撃ガ再開シマシタ、ヤハリ対艦巡航ミサイルニヨル援護ガカナリ効イテイルミタイデスナ。敵艦隊ノ攻撃ガカナリ弱イデスー

 

 

ーヤハリ見慣レナイ誘導弾ニヨル攻撃ヲ受ケタトナレバ混乱スルノモ無理ハナイデショウ…。実際ソレヲ狙ッテイタ訳ダシ…、ケドソレヨリモ気ニナルコトガ…ー

 

 

ー突如敵戦艦ヲ護ルヨウニ周辺デ爆発シタ物体ノ正体…デスネ…?ー

 

 

ーエェ…(眉を潜め)ー

 

 

 

味方艦隊による猛烈な砲撃が始まったことを潜望鏡で監視していた副長が目を離しながら隣りにいた普級へと報告していく。やはり自分の放った対艦巡航ミサイルの効果は絶大のようで敵艦隊は思うような攻撃が出来ておらず、先程の勢いはどこへやらという感じで終始押されっぱなしのようだ。

 

だが今の彼女にはそれ以上に突如として敵戦艦を護るように相次いで飛翔、直後巡航ミサイルの進路上で相次いで爆発した物体が気がかりで仕方なかった。副長の言葉に頷きながらも普級はかなり興味深そうな表情でかなり考え込んでいる様子。

 

 

 

ー明ラカニコチラノミサイルの進路上二ピンポイントデ爆発…、シカモカナリギリギリダッタノニソレヲ感ジサセナイ正確サ…ー

 

 

ーソモソモ艦娘トイウモノハ第二次世界大戦デ活躍シタ艦船ガ中心デス。仮に迎撃シタトシテモ亜音速デ飛翔シテクルミサイルヲソノヨウナ旧式装備デ叩キ落トセルトハ…ー

 

 

ーソレ以前ニ艦隊トハ関係ナイ方角カラ飛ンデキテル、トナレバアレトハ別ニ敵艦ガイルト考エタ方ガ良イワー

 

 

ー亜音速ノ対艦巡航ミサイルヲ二発撃墜…ソシテモウ二発ノ進路ヲ狂ワセラレルホドノ性能ヲ持ッタモノ…。……マサカー

 

 

 

どう見ても確かにこちらのミサイルの進路上に展開されている上にかなりギリギリだったのにも関わらずそれを感じさせないような正確さ。明らかに第二次世界大戦などで使われた装備では出来ない離れ業に、艦隊とは真反対から飛んできた飛翔体。

 

新手がいるのは確実だが、亜音速の対艦巡航ミサイルをあのギリギリで迎撃出来るということは発射した母艦もかなりのレーダーシステムを持ち合わせているということ。それを踏まえて考えていた副長であったがまさか…、という表情とともに隣に立っていた普級へ再度視線を向けていく。どうやらそれを感じたのは乗組員だけではなかったようで…

 

 

 

ー…ドウヤラ貴方モ同ジコトヲ思ッタヨウネー

 

 

ー貴方モトイウコトハ…普級サンモデスカ…?ー

 

 

ーエエッ、ドウ考テタッテアレホドノ迎撃性能ヲ出セルナラ発射シタ母艦ノ能力ガ高クナイト高性能ナ兵器ヲ持ッテイテモ意味ハナイ。ソレヲ踏マエルト…ー

 

 

ー…我々ト同ジ現代兵器ヲ兼ネ備エタ艦艇ノ可能性ガ高イ…トー

 

 

ーマダ確実ナ証拠ハ得ラレテナイケドネ、ケド状況カラシテホボ間違イナイデショウ。謎ノ電波妨害、ソレニ迎撃システムヲ持ツトナレバ私ミタイナ潜水艦デハナク水上艦艇タイプトイウコトニナルワー

 

 

ー…ツマリー

 

 

 

普級も同じことを思っていたのか、明らかにこれは自分たちと同じ現代艦艇よる攻撃だと断定。まだ確実な証拠は得られていないが、突如として見舞われた電波妨害や亜音速の巡航ミサイルを迎撃した対空ミサイルのことを考えれば嫌でもあり得てしまう。そしてあのタイミングで高精度の誘導が出来るということは潜水艦である自分たちとは違い水上艦艇ということになる。

 

しかし艦娘や深海棲艦というのは知っての通り第二次世界大戦などを中心とした艦艇であり現代艦の艦娘というのはまずあり得ないこと。仮にあったとしても人類の現代兵器では攻撃が全く通じないし、そもそも今の海軍に現代艦艇はほとんど存在しない。それらを踏まえた上で考えると彼女が考えられるものは一つしかなく…、

 

 

 

ー私達ト似タ…イヤ同ジヨウナ状況ニ陥ッテイル子ガ敵側ニモ居ルトイウコニナルワネ。…果シテ私ノ邪魔ヲシタノハドコノドイツカシラ…ネ♪ー

 

 

 

自分達と同じような状況になっているお尋ね者が敵艦隊側にいると直感的に判断した普級は、これからが面白いことになりそうだと思いながら不気味な笑みを密かに浮かべていくのであった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

霧島『――気にしちゃうのは分からなくもないですが、それを考えるのは後です…!今はこの状況を切り抜けないと…!』ドォォォン

 

 

吉野「…っ…!分かりました!(確かにいまは気にしている余裕はないですね…、とりあえず切り替えないと…!)。…にしても…」

 

 

 

最新鋭の迎撃システムを備えたイージス艦で有りながらあのような醜態を晒してしまったことに思わず引きずりかけてしまう吉野(まあ彼女の性格を考えればそうなるのも無理はないだろう)。しかし霧島に今はそれを気にしている余裕はないと言われ、確かにそうかもしれないと思いながらも彼女は顔を横に振って無理やりリセットする。

 

だがその後ふと引っかかることがあったことを思い出したのか、少し神妙な表情を浮かべながら少し考え込んだあと耳につけているインカムに手を伸ばしてどこかと無線を繋げていく。

 

 

 

吉野『(ピッ)吉野よりCICへ、今いいかしら?少し聞きたいことがあるんだけど…』

 

 

吉野 攻撃指揮官妖精『こちらCIC、大丈夫ですよ。というか聞きたいことというのはアレ…のことですかね?』

 

 

吉野『えぇ、あの突如として現れた対艦巡航ミサイルのことについて今ある情報を教えて欲しいの』

 

 

 

吉野 CIC

(戦闘指揮所)

 

 

 

吉野 攻撃指揮官妖精『今ある情報ですか…、もちろんあるにはありますが…。突然だったので多くはありませんよ?』

 

 

吉野『別に構いません、今ある情報を言ってくれれば大丈夫です。確実なものや不確実な情報でも、出来る限り言ってくれれば…』

 

 

吉野 攻撃指揮官妖精『…分かりました、CIC各班へ例の対艦巡航ミサイルについての情報、そしてその前後で起こった異変を洗い出して報告して。僅かなことでいいわ』

 

 

 

その無線の相手である攻撃指揮官妖精は、吉野から例のミサイルについて今ある情報を出来る限り教えてほしいと頼まれ思わず眉を潜めてしまう。というのもミサイルが発射されたこと自体が想定外だった上に迎撃出来るギリギリのタイミングでの探知のせいで、それに関するデータがあまり多く集められてなかったのだ。

 

しかし吉野からの返答はそれでも構わない、むしろ今ある情報を不確実か確実でもいいから出来る限り教えてくれとのこと。そう言われてしばしば考え込んだが、すぐに顔を上げて戦闘指揮所内全体を見渡しながらミサイルについての情報やその前後で起こった僅かな異変などをすべて報告するように伝達する。それを受けて少しした当たりで各所から次々と放たれ

たミサイルに関しての情報が真偽問わずに上がっていく。

 

 

 

吉野 AN/SPY-1D妖精『ミサイルの発射弾数は合計で6発、うち3発ずつがそれぞれ味方戦艦に向かったものと思われます。推定速度がマッハ2.5、発射方向は推定ですが六時の方向かと』

 

吉野 AN/SPY-1D妖精『尚その方向に水上艦思しき反応はありません、それを踏まえて考えると…』

 

 

吉野『水上艦じゃなくて海中から…つまり潜水艦から発射されたということか…』

 

 

吉野 AN/SPY-1D妖精『恐らくは…』

 

 

吉野 攻撃指揮官妖精『AN/SPY-1D妖精、その発射されたミサイルの正確な種類は判別できそうかしら?』

 

 

吉野 AN/SPY-1D妖精『正直これだけだと判別は流石に…、とはいえど速度的に対艦巡航ミサイルなのはすでに解っています。そこから各国の潜水艦で使われている奴を割り出せれば…』

 

 

 

現在あるミサイルについての情報だが発射された弾数は合計六発、うち三発ずつが霧島と榛名に向けて放たれたこと。そして発射された方角に敵艦らしき反応は確認されていないとなれば、ミサイルの母艦は水上艦ではなく潜水艦ということで必然的に絞られる。更にミサイルの種類も亜音速で飛行していたことから対艦巡航クラス、その潜水艦発射型だろう。

 

だがそのミサイルの種類ざなんなのかと言われると、流石にすぐに割り出すことは難しい様子。また限られた情報だけでピンポイントに特定するのはかなり骨が折れる作業なのかもしれない。

 

 

 

吉野 OQS-102妖精『…そういえば、すみませんちょっといいですか?』

 

 

吉野 攻撃指揮官妖精『ん?どうしたのOQS-102妖精、別に構わないけど…』

 

 

吉野 OQS-102妖精『実はミサイルが発射される直前、ソナーに一瞬ですが何らかのスクリュー音を探知しまして…』

 

 

吉野 砲術妖精『何、機関音だって?そりゃ本当か?』

 

 

吉野 OQS-102妖精『ええっ…、それで気になったので再確認しようと思った矢先にミサイルが撃たれたもんですから…』

 

 

 

そんな会話の中、ふと話を黙って聞いていたOQS-102妖精が先程気になったことがあったと付け加えるように報告していく。どうやらミサイルが発射される直前、ソナーに何らかのスクリュー音を探知したらしい。もちろん調べようとしたらしいがその直後にその主が攻撃を始めたためそれどころではなかったようだが…

 

 

 

吉野『…ミサイルが発射される前にソナーで海中からスクリュー音探知…、ますます潜水艦という可能性が高くなりますね…。ソナー、現在は何か表示されてない?』

 

 

吉野 OQS-102妖精『いえ現在は砲撃音のみでこれと言って…、なんせ反応したのも一瞬でしたから…。とりあえずキャッチした座標を共有しておきます』カタカタ

 

 

吉野 攻撃指揮官妖精『…敵艦隊から少し離れた位置、でも真反対で味方艦隊の背後を突く感じね…。レーダー員、これにミサイルのルートを表示出来る?』

 

 

吉野 AN/SPY-1D妖精『少々お待ちを(カタカタ)出ました、スクリーンに表示します』ブゥン

 

 

 

そのスクリュー音探知の直後にミサイルの反応、明らかにとう考えても潜水艦が撃ってきたことは間違いない。送られてきた情報を一通りみながら呟いていた吉野の独り言を聞きながらも、OQS-102妖精が探知した簡単な位置をスクリーンに表示する。位置から見て敵艦隊とは真反対のものの、明らかに背後を突くような配置にも見えるなと冷静に把握していた攻撃指揮官妖精。

 

それからすぐに今度はAN/SPY-1D妖精にミサイルの表示から命中するまでの飛翔ルートを表示するように伝え、指示を受けたAN/SPY-1D妖精が目の前のモニターを操作し今のスクリーンに追加するように表示していく。

 

 

 

吉野『多少ズレてるけど位置的には近いですね…、ってことはあのミサイルは間違いなくこのスクリューの主である潜水艦…』

 

 

吉野 攻撃指揮官妖精『あとはその正体ですね…。どこの国の潜水艦なのか、もしくはそれが原潜か通常型のどっちか…。ですが仮に解ったとしてもそれはそれで面倒なことになりますね…』

 

 

吉野『えぇ、私はともかく彼女達に関しては現代兵器からの攻撃を防ぐ手立てがありませんし…。こちらも気を抜けばやられる可能性が充分あります…』

 

 

吉野 砲術妖精『それにその深海棲艦と思しき潜水艦が新兵器なのかそうじゃないのかによっても意味は変わってくると思いますよ…。もし新兵器じゃないとしたら…』

 

 

吉野『…信じられないかも知れませんが充分それもあり得るかもしれませんね…、私達がそうであったように…』

 

 

吉野 攻撃指揮官妖精『…どっちにしろとりあえず今は情報を集めるのを最優先とするしかないでしょう。もしそうなら相手からのアクションがあるでしょうから』

 

 

吉野『まあそうするしかないでしょうね…、いると解っても行方が分からない以上下手に動くことは出来ないd…『右舷見張りよりCIC!味方艦隊が敵の猛反撃を受けています!』っ!?』

 

 

 

多少のズレはあるものの位置的にはかなり近く、どうやらこのスクリュー音の主が対艦巡航ミサイルによる攻撃を行ったことはほぼ間違いない。だがそれよりも問題なのが現代型の潜水艦となれば原潜か通常型だろうがかなりややこしいことになる。

 

というのも吉野達はまだ良いが、この世界の艦娘達の装備は第二次世界大戦など過去の大戦で使われた兵器が中心となっているため亜音速で飛行するミサイルの迎撃などほぼ不可能と言ってもいい。それにその潜水艦がどこからやってきたかによっても意味は大きく変わってしまう、仮に深海棲艦の新兵器ではないとしたのなら…

 

 

考えたくはないが自分だけでなく朝日や出雲もそうであったようにそうなることは充分に有り得る話、それが現実味を帯びてきたことに彼女は真剣な表情を浮かべていく。しかし今あるのだけではなんとも言えないのが現状、ひとまずは出来る限り情報を集めるしかないだろう。もしそうなら再び何らかのアクションがあるはず、そう踏んでいた吉野やCIC乗組員一行であったが見張り妖精からの飛び入るような報告で一変してしまった…。

 

 

 

吉野『見張り妖精!詳細の報告を!何があったの!』

 

 

吉野 見張り妖精『はっ!ミサイル攻撃を受けてから間もなくして敵艦隊が一度砲撃を中止、その直後に一斉射撃による猛攻撃を開始しました!』

 

 

吉野『上手いことやられたか…、こっちがやってきたことを逆にやられてるような感じです…!味方艦隊の状況はっ!』

 

 

吉野 見張り妖精『現在敵艦隊の射撃はミサイルに被弾し炎上中の味方戦艦2隻に集中しています!くそっあれじゃただのいい的だぞ!』

 

 

吉野『…っ、ますますあそこで防げなかったのがここに来て響いて…(歯ぎしり)。いや今はそんなことを気にしてる余裕は…!とりあえず味方艦隊の状況把握を急いで!』

 

 

 

 

 

 

 

巻雲『あわわっ!?敵艦隊の勢いが嘘みたいに戻ってます!というか霧島さんと榛名さんが集中的に狙わてますよ!?』

 

 

古鷹『霧島さん!榛名さん!そっちの状況はっ!(ザーザー)あぁもうこんな時になんで繋がらないのよっ…!』

 

 

鳥海『古鷹さん落ち着いて!それよりも今は各艦の状況確認が先です!可能なら私達で押し返すしか…!』

 

 

 

もちろん霧島や榛名が集中的に攻撃を受けているのは第一艦隊の各メンツも把握しており、巻雲は水柱に包まれる2隻を眺めながらかなり焦っている表情を見せていた。なんとか連絡を取ろうと試みていた古鷹であったが、雑音しか耳に聞こえてこない状況に思わず苛立ちを見せてしまう。

 

だが流石に臨時指揮を任されただけはある鳥海は、焦りを押し殺しながら落ち着くように指示を出して艦隊全体の状況把握を急がせる。どっちにしろ多少でも余力があるなら自分達で押し返すしかないのが現状ではあるが…

 

 

 

雪風『こちら雪風!魚雷の残弾はゼロです!主砲と機銃弾はまだまだ余力はありますが…!』

 

 

巻雲『私も雪風さんと同様に魚雷の残弾はゼロ!予備魚雷もカラッカラの空っぽです!主砲も残りの2基でなんとか応戦を…!』

 

 

古鷹『さっきも言ったけど3番砲塔は大破して使い物にならない!幸い主砲弾の残弾はあるけどこのペースならあとどれくらい持つか…!魚雷はもうないようなもんだよ…!』

 

 

青葉『私も魚雷の残弾はありません…!それに霧島さんや榛名さんを援護しようにも敵艦隊の妨害のせいで思うように…!』

 

 

青葉 砲術妖精『だーっ!くそったれ!当たっても手応えが全然ねぇ!ってかさっきからちびちびしか命中してない!こんなんじゃ日が明けちまう!』

 

 

青葉 射撃指揮妖精『その前に味方戦艦が沈められてしまうのが先ですよ!ひとまずは巡洋艦や駆逐艦は無視!敵戦艦を中心に攻撃してください!』

 

 

 

ぶっちゃけ今の彼女らに押し返す余力はないと言ってもいいだろう。既に魚雷の残弾は全艦ゼロ、主砲や副砲は残弾はまだまだあるもののこのペースで撃ち続ければ弾切れになるのは時間の問題。おまけに味方戦艦群が反撃どころではない状況では艦隊の火力はガタ落ちも同然であり、未だ戦艦が全隻健在の敵艦隊を押し返すなど不可能に近いようなもの。

 

艦娘もそうだが、妖精達もこの状況にかなり焦りを感じているようで完全に押されている中どうにか突破口を開こうと敵戦艦に対して反撃を試みようとしている。…しかしそれも敵艦隊の激しい妨害のせいで思うようにいかない。 

 

 

 

ーどうする…私も正直押し返すだけの火力はないようなもの…主砲だってこのペースならいつまで持つか……。でもこのままじゃ提督やお二人が…(焦り)…こうなったら止む終えません…!ーピッ

 

 

鳥海「電信妖精!今からすぐに第二艦隊旗艦の阿賀野さんに繋げることは出来ますか!?」

 

 

鳥海 電信妖精『もちろん!今からでもすぐに繋げることは出来ます!』

 

 

鳥海「ならすぐに繋いでください!大至急に…!」

 

 

古鷹『いっいきなりどうしたんですか鳥海さん!?というか第二艦隊は確か現在輸送船団本隊と交戦中のはずでは…!!』

 

 

鳥海「構いません!今はそんなことを気にしてる余裕はないんです…!!少しでも戦力を確保しないとお二人どころか私達も壊滅しますよ…!!」

 

 

 

あまり使いたくなかった手段だが、この現状を考えると止む終えないという形になったようで鳥海がすぐさま電信妖精に第二艦隊へ連絡を取るように指示。相手はもちろん旗艦である阿賀野であり呼び戻して応急的な戦力増強を行うつもりだろう。だがそれに驚いた古鷹が言うように第二艦隊は現在輸送船団の追撃をしている最中、どう考えてもこちらの援護を出来る余裕もなくそうなったら本隊を逃してしまうことを意味する。

 

どう考えたって無理な話ではあるものの、そんな彼女の疑問にいつもよりキツめの口調で彼女が反論してきた。それだけ悠長に考えている余裕が自分達にはないということであり、悠長に考えていたら自分達までも壊滅的な打撃を受け最悪壊滅してしまうかもしれない。驚く僚艦をちょっと無理やりに宥めながらも鳥海はすぐさま第二艦隊旗艦である阿賀野へ緊急の連絡を取っていくのであった…。

 

 

 

鳥海『第一艦隊鳥海より阿賀野さん!聞こえますか!?』

 

 

 

 

 

 

 

 

そして時は戻り…

 

 

 

阿賀野『…そんなことが…ひとまず現状ではお二人は健在なんですね…!?』

 

 

鳥海『はい…!集中砲火を浴びてはいますが致命的なダメージは受けてないみたいで…!現在各砲による応戦をしているのは確認出来ます…!ですがやはり勢いは…』

 

 

曙『(チッ)あぁもうなんでこんな時に新手の深海棲艦から茶々が入るのよ!こっちはそれどころじゃないのに!戦場でいっつもそう…!』

 

 

涼風『んな呑気に言ってる暇はないぜ!こうなった以上ウチらが輸送船団を相手する場合じゃなくなった…!すぐにでも反転して戻った方がいいんじゃないか…!?』

 

 

曙『そんなこと分かってるわよ!!けどその前に寄ってたかってくるアイツらをどうにかしないと離脱出来ないわよ!!』

 

 

 

鳥海から現在の状況を聞いた阿賀野は、まさかそんなことが起こっていたのかという表情を見せながらそれと同時にかなり焦っているようにも見えた。連絡は取れなくても辛うじて砲撃は出来ているらしいが、やはり集中砲火を受けているようで思うような反撃が出来ていないとのこと。

 

そんな二人の会話を聞いていた曙はどうして戦場じゃタイミングの悪いときに限って新手が、しかも面倒な奴が現れるのかと思わず悪態をついてしまう。だが涼風の言う通り愚癡を言っている余裕はなく、こうなった以上輸送船団に固執する状況じゃなくなったためすぐにでも反転して主力の援護に回るべきなのは間違いない。

 

 

 

皐月『けど向こうもハイそうですかって逃してくれそうにないよ…!!むしろこっちが引き気味になったから余計に押してくる…!』

 

 

睦月『コイツらをどうにゃかしないと不味いにしゃしい…!このまま引き連れたらそれこそ霧島さんたちが…!』

 

 

敷波『…と言ってもどうやって追撃しようとしてくる敵艦隊を追い払うのさ、魚雷だってバカスカ撃てないしそれこそ霧島さんたちように取っておく必要がある。けど火力面じゃどうあがいても不利だよ?』

 

 

ー確かに敷波ちゃんの言う通りコイツらを魚雷で追い払おうにも撃ててせいぜいあと一斉射分…、ここで使ったら霧島さん達の支援に使えなくなる…。だからといって砲撃で追い返せる火力が…!ー

 

 

 

しかしそう決まったところでこの突っ込んでくる敵艦隊をどうするのかという問題が新たに浮上してくる。主力艦隊の援護に向かおうにもこのまま引き連れて行くわけにも行かず、かと言って追い払おうにも簡単にはいかないのが現実。これだけの規模を追い払おうにも強烈な一撃を加える必要が出てきてしまう。

 

最悪魚雷を使えばどうにか出来そうではあるものの、水雷戦隊の酸素魚雷残弾はあと一斉射分しか残っていない。これをここで使えば間違いなく主力艦隊の援護で使うことが出来ず、焼け石に水状態になってしまうのは確実。だが仮に魚雷を温存出来たとしても追撃してくる敵艦隊を水雷戦隊の砲撃だけで追い返せるかと言われれば、タイミングを完全に逃してしまった今ではそれも難しい。

 

 

敷波の言う通りここで魚雷を使うのは得策ではないのは分かってはいるものの、だったらどうやって短時間で敵艦隊へ決定的な一撃を加えればいいのか…。一同の会話を耳にしながらも阿武隈は脳内をフル回転させて何かいい案がないか必死で探りを入れていくのであった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

吉野 電信妖精『味方艦隊の状況が分かってきました、味方戦艦群は2隻とも無線アンテナ損傷で送受信不可。辛うじて艦娘同士の交信は出来てるみたいですが戦況は劣勢、そのため臨時旗艦が輸送船団を追撃している水雷戦隊へ後退命令を下令しているとのこと』

 

 

吉野『…なんとなくは想像してたけど…やっぱり戦況は芳しくない…か…、それでその水雷戦隊は下がって来れそうなの?』

 

 

吉野 電信妖精『味方艦隊の無線傍受を聞く限りかなり厳しそうですね…、なんせ輸送船団の護衛艦隊群が反転攻勢に転じているらしくその対応で精一杯とのことで…』

 

 

吉野『…つまり現状じゃ両艦隊ともに動くに動けないって訳ね…、でも私が動いても焼け石に水だし…だからといってどうにか水雷戦隊を合流させないと霧島さん達が…』

 

 

 

同時刻、吉野でも味方艦隊の状況が少しずつ分かってきたようで電信妖精が傍受した内容を事細かに説明していく。それを聞いていた吉野はなんとなくはこうなることを予想していたが切迫する状況に焦りを見せていた。今のままでは艦隊の合流など到底不可能。現状動けるのは自分しかいないが仮に動いたとしても焼け石に水のようなもの、しかしどうにかして水雷戦隊を合流させないとそれこそ想定し得る最悪の事態になってしまう。

 

 

 

ー…いや待って、何も敵艦を撃沈する必要はないじゃない…!相手は体制を立て直せてるとはいえ見慣れない攻撃を受ければ流石に混乱する…それを踏まえるとなればやることは一つしかない…!ー

 

 

 

吉野『吉野よりCIC!!対水上戦闘用意を艦内に下令!!火器管制員は即応戦闘体制!』

 

 

吉野 攻撃指揮官妖精『了解!艦内各員は対水上戦闘に備えよ!!火器管制員は即応体制!急いで!』

 

 

吉野『本艦はこれより味方艦隊の支援に移ります!砲術班はSSM(90式艦対艦誘導弾)発射準備に取り掛かってください!』

 

 

吉野 SSM妖精『了解!砲術員はハープーン発射準備に備え最終確認を行え!久しぶりに動かすから動作不良がないようにしろよ!』

 

 

吉野 砲術員妖精『当たり前です!貴重な対艦ミサイルをお釈迦にするわけにはいきませんからね!これより作業に入ります!』ピッ

 

 

 

だがよくよく考えてみれば何も敵艦隊を撃沈させる必要はなく、要は味方艦隊の合流を援護すればいいだけの話。それにいくら体制を立て直した敵艦隊とは言えど見慣れない兵器による攻撃を受ければ流石に応えてしまうことを考えれば、やることと言えば一つしかない。

 

そう思った吉野はすぐさまCICへ水上戦闘に備えた戦闘配置を命令、それと同時に日本の護衛艦が保有・切り札とも言えるSSM(90式艦対艦誘導弾)へ備えた発射準備を下していく。指示を受けた艦内では休む暇もなく今度は敵艦隊攻撃に備えた準備へ妖精達は慌ただしく追われていくのであった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…だが彼女は知る由もなかっただろう

このミサイルでまさかこの世界でも現代戦を経験しまさに一進一退の激戦を繰り広げるとは…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 







第二十四話 私に出来ること

(もしこうしたらいいよーとか
こんな設定とかどうかなっていうのがあればぜひ感想で寄せてくださいー。前にも言いましたが兵器とかについては自分はにわかなので…(汗))




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第二十五話 私に出来ること



主力艦隊同士で激しい砲雷撃戦を行っていた最中、突如として飛来した高速の飛翔体による攻撃を受けたパラオ主力艦隊。その主は吉野達とほぼ同時期にやってきた中国の潜水艦094型原子力潜水艦(晋型原子力潜水艦)から放たれた対艦巡航ミサイルであったが、そんなことを知る由もない彼女達はこの攻撃を受け霧島と榛名が被弾。

更にその被弾で発生した火災によって敵艦隊から格好に狙われる的になってしまい集中砲火を受けてしまう。このままでは危ない、そう判断した鳥海はすぐに第二艦隊旗艦へある阿賀野へ救援要請を依頼。


しかし離脱しようにも開き直った敵輸送船団護衛の艦隊よって阿賀野達もそれどころではなく、ほぼ四方八方塞がりの状態になっていた。 

…そんな一部始終を聞いていた吉野は味方艦隊の支援を行うために対艦ミサイルによる攻撃を決意するのであった…。





 

 

 

8月24日

沖ノ島近海

1900

 

ビー!!ビー!!

 

 

 

先程まで微かに周辺の砲撃音や艦内放送などが響いていた意外は静けさを見せていた艦内、しかしそれが嘘のように今は慌ただしい雰囲気に包まれていた。けたたましいぐらいに戦闘配置に備えたアラームが鳴り響いており、艦内放送を掛けている妖精の声もどこか強張っているようにも聞こえる。

 

 

 

吉野 砲術員妖精「急げ急げ!もたもたするんじゃない!もっとキビキビ動け!事態は一刻を争うぞ!」

 

 

吉野 砲術員妖精「そんなことは言われなくても分かってますよ!ですがあんまりドタバタしてると流石に不味いのでは…!噂じゃ潜水艦がいるかもって…」

 

 

吉野 砲術員妖精「そんなことよりも今は目先のことだ!潜水艦がいるっても今の現状どこに居るかなんて分かんねぇ以上、味方艦隊の支援に集中しろ!」

 

 

吉野 砲術班妖精「潜水艦はソナーの連中がしっかり見てくれてるから気にするな!俺たちの仕事は対艦ミサイルがしっかり飛ぶようにチェックをしておくことだ!」

 

 

吉野 全砲術員妖精「「はっ!!」」

 

 

 

アラームがけたたましく鳴り響く中、指示を受けた砲術員妖精達が艦中央部に搭載されている対艦ミサイルの発射機へ向かうためにかなり急ぎ足で艦内廊下を進んでいた。状況が状況なのでそうなるのも無理はないが、一部妖精達からは潜水艦がいるかもしれないのにこんなに慌てて大丈夫なのかという声が上がっている様子。

 

確かに彼の言う通り、現状どこに潜水艦がいるか分からない状態で居場所がバレるような足音を立てていいのかという不安があるのかもしれない。だが今それを気にしたところでどうにかなるはずもなく、そういうのは専門の連中に任せて自分達は与えられた役目を果たすことに集中することに(もちろん音を立てないような配慮はしっかりしてる)。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

吉野CICにて

 

 

吉野 攻撃指揮官妖精『各班状況を伝えて!』

 

 

吉野 SSM妖精『艦対艦ミサイルの発射準備に向けて現在発射機の最終確認に入っています!あと5分すれば完了出来きますがもう少し詰めれば早く終われます…!!』

 

 

吉野 攻撃指揮官妖精『…作業に当たっている乗組員に出来るだけ早く終わらせるように改めて伝えて!ソナー!敵潜水艦はどう!?』

 

 

吉野 OQS-102妖精『駄目です!現在投入出来る対潜レーダーで索敵中ですが変化なし!恐らく向こうにはこちらの存在はバレていることを踏まえると…!』

 

 

吉野 攻撃指揮官妖精『こっちの所在が分かるまで身を潜めてるつもりね…(ギリッ)。あわよくばアクティブソナーを打ってそれを当てに居場所を洗い出すつもりだったけど…!』

 

 

 

同時刻、CICでもかなり慌ただしい状況になっており書類やデータ片手に乗員があまり広くない室内通路を行ったり来たりしたりして情報共有などに追われていた。既にハープーン発射筒は最終チェック段階に入っており、現状のペースで行くとあと5分もすれば発射は可能とのことらしい。

 

出来る限り急ぐように攻撃指揮官妖精は伝えながらソナーに敵潜水艦に何か動きはないのかと確認を取るが、流石に相手もこちらの存在は認知しているようだ。ありとあらゆる対潜レーダーを投入して捜索はしているものの海中データが不足しているのもあってか発見には至っていない様子。

 

 

 

吉野 OQS-102妖精『向こうも馬鹿ではないってことですね、こちらが必然的動かざる負えない状況になるまで待っているつもりでしょう。実際そうですし…』

 

 

吉野 攻撃指揮官妖精『…ひとまずは敵艦隊の対処が先決だけど…、吉野さん!念のため水上戦闘配置と並行して対潜戦闘用意を下令しましょう!こちらがミサイルを撃った瞬間に向こうも動く可能性が…!』

 

 

吉野『…それもそうね…!居ると分かっているのに警戒を疎かにしてやられるなんて恥中の恥!艦内に水上戦闘用意と並行して対潜戦闘用意を!』

 

 

吉野 攻撃指揮官妖精『了解です!CICより艦内へ!現在発令中の水上戦闘用意と並行して対潜戦闘用意を下令します!相手がどう仕掛けてくるか分からない以上、最大限の警戒レベルで任務に当たりなさい!』バァン!

 

 

 

恐らくこちらがアクションを起こすまで待っているつもりなのだろう、実際戦況としては深海棲艦側が優先のことを考えると自分から動く必要が向こうにはない。あわよくばアクティブソナーなどを使ってくれて、そこから居場所を割り出したかったが流石に希望的観測だろう。

 

潜水艦の居場所が掴めない以上ひとまずは味方艦隊の支援に備えた攻撃に備えるのが先だが、ミサイルによる攻撃を行えば間違いなく居場所を掴ままれカウンターを喰らうのはほぼ確実。…となれば現在出している対水上戦闘用意に加えて対潜戦闘用意も必然的に出さざる負えないため、攻撃指揮官妖精はすぐさま吉野に通信を繋いで手早く進言していく。

 

 

吉野もそれは充分承知しているしどっちにしろ敵潜水艦とやり合うことを踏まえれば先手は打っておく必要があると判断、すぐに対潜戦闘用意を下令するように指示。それを受けて攻撃指揮官妖精は艦内放送で敵潜に備えた対潜水艦戦闘用意を下令、相手がどう仕掛けてきてもいいように万全の体制を取るように改めて徹底させる。

 

 

 

吉野『とりあえず敵潜水艦についての対応は現状を維持するとして…、AN/SPY-1D妖精!輸送船団と交戦中の味方艦隊と敵護衛艦隊はレーダーで捉えてる!?』

 

 

吉野 AN/SPY-1D妖精『もちろん!しっかりレーダーで捉えています!現在敵輸送船団の護衛艦隊と思しき反応と味方艦隊が引き続き交戦中!』

 

 

吉野 電信妖精『尚戦況は先程話した通り若干劣勢の模様!無線傍受ではやはり敵艦隊がかなり渋といようで味方艦隊がかなり苦戦している模様で…!』

 

 

吉野『こっちも必死だけど…!それは向こうもおんなじってことか…(ギリッ)敵艦隊の陣容はどう!?』

 

 

吉野 AN/SPY-1D妖精『味方水雷戦隊の情報では敵は単縦陣で尚も接近中!重巡クラス二隻を主軸とした編成のようです!』

 

 

吉野『恐らく火力で物を言わせて味方艦隊をねじ伏せつつ輸送船団へ手出しが出来ないようにするつもりね…、まあ実際その目論見は大成功なんだけど…!』

 

 

 

敵潜水艦への警戒も怠らないようにしつつも、同時に敵艦隊の対処も行うことにした吉野は電探妖精に両艦隊はしっかり捉えているのかと尋ねる。問われた担当の妖精はしっかりレーダーで捕らえていると答えながら、スクリーンに表示された情報を彼女へ速やかに共有。それと同時に無線の傍受をしていた電信妖精が現状の戦況を説明し、かなり渋とい敵艦隊に味方艦隊が苦戦していることを伝えていく。

 

やはり重巡を主軸とした護衛艦隊相手ではいくら精鋭である水雷戦隊では荷が重いようで、水雷屋の命ともいえる魚雷の使用が制限されていることもあってレーダーでも解るほど味方艦隊は押されていた。恐らく相手は火力面での優位を活かしてねじ伏せるつもりなのだろう。…まあそれを防ぐために自分たちが動いている訳だが、

 

 

 

吉野 攻撃指揮官妖精『どっちにしろSSMでは駆逐艦クラス以外は一撃では沈められません!数も限られてるとなると敵旗艦へ集中的に叩き込んだ方が…!』

 

 

吉野『いえ!旗艦だけに攻撃して仮に撃沈したとしても相手の勢いを止めないと意味がない…!砲術妖精!SSMの目標を単縦陣先頭の重巡洋艦二隻へ照準してください!発射弾数は二発!』

 

 

吉野 砲術妖精(主砲担当)『二発だけということは…、一隻に対して一発ずつですか!?流石に重巡洋艦相手にSSM一発では明らかに火力不足ですよ…!』

 

 

吉野『それはもちろん解っています!ですが本艦の目的はあくまで敵艦の撃沈ではなく味方艦隊の撤退支援!なら無理に撃沈する必要はありません…!』

 

 

吉野 砲術妖精(主砲担当)『たっ確かにその通りですが…!ですがSSM一発では致命傷を与えられるか怪しいラインですよ…!それではいくらなんでも無理があるのでは…』

 

 

 

だが援護射撃をするにしてもその主軸を担うハープーンは現代の戦闘艦を念頭にして作られた艦対艦ミサイルであり、重装甲化された巡洋艦相手には確実に火力不足。そのため攻撃するとなれば旗艦へ集中的にミサイル攻撃をして叩くのが現実的だろう。しかし吉野から返ってきた返答はそうではないようで、1隻へ集中して叩くのではなく先陣を斬っている敵の重巡洋艦2隻に対して2発のハープーンによる攻撃を実施するというもの。

 

確かに自分たちの目的は敵艦の撃沈ではなく味方の撤退支援なので彼女の言い分も間違ってはない、…がその攻撃方法では敵艦はほぼ確実に沈められないか決定的な致命傷を与えることはほぼ出来ないことを意味する。当然他のCIC妖精からそれでは敵の勢いを止められないのではないかという不安が相次いて上がってきた。

 

 

 

吉野『確かにSSM一発では敵の巡洋艦に致命傷を与えることや撃沈させることは厳しい、ならいっそのこと一隻に対して集中的に叩いたほうが現実的です…!』

 

 

吉野 攻撃指揮官妖精『ならそうしたほうがいいのでは…!SSM一発では誰がどうみても…』

 

 

吉野『…けど集中的に叩き込んで敵艦を沈められるかは分かりません!それで撃沈させられなかったら本末転倒です!』

 

 

吉野 砲術妖精(主砲担当)『でっでも撃沈出来る可能性があるなら旗艦を沈めて指揮系統を混乱させれれば…!』

 

 

吉野『…いえ、そうじゃなくても相手の指揮系統は充分に混乱させられます…(ニヤリ)!要は私達がやられたことと同じようにすれば良いんだから!』

 

 

吉野 電信妖精『私達がやられたことをそっくりそのまますればいい…ってまさか!』

 

 

 

だがそれはもちろん吉野も充分に解っており、確かに重巡洋艦相手にハープーン一発では致命傷を与えることすら難しいだろう。それなら一隻に対して集中的に攻撃を仕掛けたほうが確実にダメージを与えられる。だが集中的に攻撃してもこの時代の重巡洋艦相手ではよほど当たりどころがよくない限りどのくらい叩き込めばいいかも分からない。

 

まあそりゃ出来ることなら旗艦を撃沈して指揮系統を混乱させたいのが本音だが、仮に撃沈出来なくても充分に敵艦隊を混乱させられる見込みが吉野にはあるようだ。最初こそ彼女が何を言ってるのか分かっていなかった妖精であったが、とある言葉を聞いてハッとした表情を浮かべる。

 

 

 

吉野『…そうゆうこと(悪笑み)!攻撃指揮官妖精!!ハープーン発射用意!目標は先程言った通り敵護衛艦隊先方の重巡洋艦二隻!発射弾数は二発、それぞれ一発ずつによる攻撃を行います!』

 

 

吉野 攻撃指揮官妖精『わっ分かりました…!SSM妖精!ハープーン発射用意!目標は水雷戦隊と交戦中の敵護衛艦隊先方の重巡洋艦二隻!発射弾数は二発!それぞれ一隻に対して一発の攻撃を行います!』

 

 

吉野 SSM妖精『了解しました!ハープーン発射用意!発射弾数二発!敵重巡洋艦二隻に対して照準します!』

 

 

吉野 Mk.99妖精『目標の敵艦二隻はレーダーでバッチリ捕らえてます!それを踏まえて誘導方式はアクティブ・レーダー誘導(終末)に設定します!』カチッ

 

 

 

ようやく意味を理解した妖精を見ながら彼女らしくない悪笑み(まあ戦場に立ったことがあまりないからだろう)を浮かべながらすぐに攻撃指揮官妖精へハープーンによる攻撃命令を発令。そこから経由してそれぞれの火器管制担当の妖精にも指示は伝わり、艦対艦ミサイルの最終発射準備が着々と進められる。

 

目標となっている敵艦隊はバッチリとレーダーで捕えられており、攻撃対象の重巡洋艦2隻へ対し自艦からのアクティブ・レーダー誘導(終末)へ設定しつつしっかりとロックしていく。

 

 

 

吉野『それと電信妖精!現在護衛艦隊と交戦中の味方水雷戦隊へ連絡を取って!撤退支援と言ってもタイミングが合わなきゃ意味がない!』

 

 

吉野 電信妖精『分かりました…!現在交戦中の味方水雷戦隊旗艦へ通信を繋ぎます!』

 

 

吉野 攻撃指揮官妖精『吉野さん!主力艦隊同士の方はいかがいたしますか!?』

 

 

吉野『あっちは流石にハープーン撃ち込んでも効果が望めないし攻撃分散出来るほどの弾薬はない…!主力艦隊の支援には撤退支援をした味方水雷戦隊に任せましょう!』

 

 

吉野 攻撃指揮官妖精『了解です!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

曙『あーもうしつこい!!こいつらいつまで引っ付いて来んのよ!!(ドォォン!!)こっちはそれどころじゃないってのに!』

 

 

曙 砲術妖精『ほら撃って撃って撃ちまくりなさい!!こんな勢いじゃすぐに相手に飲み込まれるわよ!!』

 

 

曙 砲塔妖精『無茶言わんでください!!対空戦闘や輸送船団で撃ちまくったせいで残弾もけっこうカツカツなんですよ!これ以上ペース上げたら緊急時の砲弾が無くなります!』

 

 

曙 砲術妖精『そんなこと言われなくてもわかってる!!けどそれで勢いを抑えてたら一生コイツらに束縛されちゃうわよ!』

 

 

 

その頃阿賀野達水雷戦隊は相変わらず先程と状況が変わらずかなり劣勢に立たされているようで、どうにかこうにかして敵護衛艦隊を振り払おうとしていた。…が砲戦火力では圧倒的に重巡洋艦や軽巡洋艦を主軸としている相手ではいくらなんでも部が悪すぎる。

 

しかしなんとかして振り払って霧島たちの援護に行きたいと思っているせいで彼女達は内心かなり焦り始めていた。それは艦娘だけでなく妖精も同様のようで、曙の乗組員たちもしつこいレベルでついてくる敵艦隊をなんとか追い払うと試みるが…。やはり残弾の問題もあるためこれ以上圧力を掛けるのは難しい様子…。

 

 

 

阿武隈『阿賀野さん!これ以上時間を掛けると残弾も含め霧島さんたちの援護が間に合わなくなる可能性が…!!』

 

 

阿賀野『ええっ…!それは分かってる、けどこの護衛艦隊をどうにかしなきゃ落ち着いて離脱なんか出来やしないわ…!』

 

 

涼風『けどどうするってんだ!?魚雷の使用が制限されているせいでこっちは瞬間火力さえ出せずにいるんだぞ!』

 

 

皐月『阿賀野さん!やっぱ魚雷を使いましょうよ!流石にこっちはいつまでも相手が出来る訳じゃないし…!最悪一部艦艇だけで牽制用の雷撃をすれば…』

 

 

 

だがいつまでもこの護衛艦隊に構っていたらそれこそ霧島たちの主力艦隊への救援が手遅れになってしまう可能性もあるため、阿武隈がかなり焦り気味の声で阿賀野へ指示を仰いでいく。もちろん彼女もそれは解ってはいるものの、しつこいレベルで張り付いてくる敵艦隊をどうにかしなければ安全に離脱することすら出来ない状況。

 

更に涼風の言う通り水雷戦隊最大の火力である魚雷の使用が制限されているため、敵艦隊へ決定打を与える手段がない。いくら主力艦隊支援のためにとは言えど、魚雷をここで出し渋って戦闘が長期化したらそれこそ本末転倒だろう。このままでは埒があかないため最悪一部の艦による雷撃を行い、それを利用して離脱するべきではないかと皐月が意見具申を申し出ていく。

 

 

 

睦月『そうにゃしぃ!それなら魚雷を主力艦隊用にも取っておけるし護衛艦隊を追い払える手段にも使えます!』

 

 

敷波『まあ実際それしかないよねー、敵主力艦隊への攻撃時に火力は減っちゃうけどそれでうだうだしてたら味方が危ない訳だしー』

 

 

ー確かに睦月ちゃんや皐月ちゃんの言う通り…、魚雷の温存に拘ってたらそれこそ味方が危ない…。敵主力艦隊の攻撃時に火力は下がっちゃうけど…、やむを得e…ー

 

 

吉野『吉野より阿賀野さんへ!聴こえますか!』

 

 

阿賀野『…!?その声は吉野さんですか!』

 

 

 

確かに他のメンバーの言う通りそれなら敵護衛艦隊群を早急に振り切ることも可能で、主力艦隊攻撃時に火力は減ってしまうものの魚雷の温存も出来る。無理に出し渋って味方艦隊の被害が拡大してしまうぐらいなら…、そう思った阿賀野はすぐさま間髪入れず味方へ指示を出そうとするが…。

 

直後その指示を遮るように吉野からの無線が飛び込んできたため思わず阿賀野は目を見開いてしまう。

 

 

 

吉野『はい…!…ってその声からしてやはり状況は芳しくなさそうですね…』

 

 

阿武隈『まあそうね…!状況なんて最悪中の最悪ってもんかしら…!!』

 

 

曙『というかアンタは大丈夫なんでしょうね!?まあ無線してるからやられてるってことはないでしょうけど…!』

 

 

吉野『皆さんに比べたら全然ですよ…!むしろあまり動けてないくらいです…!!』

 

 

曙『アンタはそれでいいのよ!アタシたちに比べたら殴り合いが得意って訳じゃないんだし!なにより装備の換えが効くかも分からないんだから!』

 

 

 

先程まで味方艦隊の通信傍受をしていたため、彼女から状況説明を受けなくとも状況はすぐに理解出来た。そんな吉野の言葉に同意するように阿武隈も最悪中の最悪と言って良い戦況に思わず愚痴を溢している中、曙はそっちは大丈夫なのかと少し声を荒げて確認していく。

 

他の艦と比べて直接戦闘に加入はしていない上に、未だに位置を捕捉されていないとなれば攻撃を受けることはないとは言えどやはり心配なのだろう。それに、装備などが自分たちに比べ換えが効くかも分からないせいで余計に気になるのかもしれない。

 

 

 

吉野『…それは分かってます!それよりも先程まで無線を聞いていましたが…、今相手してる艦隊にかなり苦戦していると聴きます…!おまけに霧島さん達もかなり危ないと…』

 

 

曙『そうよっ!霧島達がけっこう劣勢になってるから今すぐにでも援護に行こうとしてるんだけど…!コイツらのせいでなかなか行けず仕舞いなのよ!』

 

 

涼風『別に手段がねぇ…って訳じゃないんだけどな…!けど霧島さん達の援護に魚雷を温存してる兼ねないで現在進行系で火力不足で押され気味なのが現状だ!』

 

 

吉野『…ある程度は覚悟してましたが、思ってた以上に厳しそうですね…(ギリッ)!』

 

 

 

もちろん心配されなくてもそれは自分自身がよく解ってはいるものの、芳しくない戦況を黙って見ているほど余裕は彼女にはないようだ。その後無線傍受で聞いてないような情報を一通り聞くなり思っていた以上に状況はよくなさそうだなっと思わず厳し目の表情を浮かべてしまう。

 

 

 

阿賀野『それで、急に無線なんていれてどうしたんですか…!?今けっこう取り込み中で話を聞く余裕が…』

 

 

吉野『その件に関してですが…、阿賀野さん達は武器の使用が制限されているせいで離脱出来ないんでしたよね!』

 

 

曙『そりゃそうよっ!ってかそんなことアンタが聞いてどうすんの!アンタが積んでる武装じゃどう見たって焼け石に水…』

 

 

吉野『…でしたら本艦が皆さんの撤退支援をします!主力を担ってる旗艦を含む重巡に攻撃を叩き込めば相手は追撃どころでは無くなるはず…!!』

 

 

睦月『えっあっ…よっ吉野さんがですか!?』

 

 

曙『はぁ!?アンタさっき私が言ったこと聞いてなかったの!?どう考えたってその武装じゃ殺る前に一方的に殺られるわよ!』

 

 

 

だが彼女が気にしたところでどうにかなる問題かと言われればそうでもなく、阿賀野からすれば絶賛取り込み中なので緊急の用事でなければ出来る限り無線を入れてほしくない。しかし吉野もそれは解っていることであり、それどころか武器が制限されているせいで離脱出来ない現状を打開するために撤退支援を行うと切り出す始末。

 

まさか無線を入れてきた内容がそう来るとは思っていなかったようで、嘘でしょと言わんばかりにそれぞれが驚きの表情を見せる。それもそうだろう、いくら圧倒的な防空能力を持ってるとは言えど阿賀野たちからすればその見た目でゴリゴリの武装や装甲を持っている敵艦隊と殺り合うなど明らかに無理な話。

 

 

曙の言う通りまともな装甲もない上に僅か主砲一門で砲撃戦をしようものなら撃ち合うまでもなく、一方的に殺られるのが目に見える。しかも換えが効くかも分からない装備となれば下手に被弾するような戦闘は進められたものではない。

 

 

 

吉野『それはもちろん解っています!ですがどう見たってこの状況で動けるのは私しかいません!なら今動かないでどうするんですか!』

 

 

阿武隈『そっそれはそうだけど…、でも無理してまで戦闘に入らなくてもいいんですよ…!どうやったって吉野さんの武装じゃ近距離戦は無茶どころじゃありませんし…!』

 

 

吉野『…ご心配ありがとうございます!ですが近距離で殺り合うとは言っていませんのでご安心を!手段がないわけじゃないですし…!』

  

 

涼風『でもどうやって撃沈するってんだ!?…まさか朝日の時見たいな隠し玉をアンタも持ってるとか…!』

 

 

吉野『…そのまさか…ですよ(ニヤリ)腐っても私は最新鋭の艦娘!予想外の攻撃なら得意中の得意です!』

 

 

 

だが他に動けるものがいるかと言われれば当然おらず、どうやったって彼女しかいないのも事実。もちろん近距離戦が出来ないのは吉野自身がよく解っているため、静止しようとした阿武隈に問題ないと答えながらそれ以外の手段はあると答えていく。

 

とは言えどその武装でどうやって撃沈するのか、まさか朝日みたいな隠し玉でも持っているのかと尋ねた涼風に対しそのまさかと笑みを浮かべながら答える。朝日や出雲がそうであったように、最新鋭の艦娘(護衛艦)でありて、敵味方が予想出来ない攻撃なら得意中の得意だ。

 

 

 

吉野『というかこれしか手段がないならやるべき…いえやらしてください!私だって黙って見てる訳には行かないんです!撤退支援ぐらいなら…!』

 

 

阿賀野『…吉野さん、それで本当にこの護衛艦隊を振り切ることが出来るんですね…!?』

 

 

吉野『…はい!…とは言えど流石に百発百中とまで行くかは分かりませんが!それでもこの攻撃で多少なりとも敵艦隊に影響は与えられるはずです!』

 

 

阿賀野『…(ドォォォォンン)分かりました、それでいきましょう!吉野さん攻撃の際は合図をしてください!そのタイミングでこちらは全速力で戦域を離脱します!』

 

 

皐月『えっあっ…あっ阿賀野さん!?』

 

 

 

更に言えば吉野自身も黙ってこの状況を見ている訳にも行かないもので、今自分に出来ることをさせてくれと必死の説得を試みていた。そんな彼女の様子を少しの間静かに聞いてきた阿賀野であったが、少しして本当にそれでこの戦域を離脱することが出来るのかと念押しするように確かめる。

 

もちろん吉野だって確証があっての発言のため、百発百中とまで上手くいくかは分からないがそれでもやってみる価値はあると返答していく。それを聞いた阿賀野は少しの間砲撃音を背景にいろいろと考えていたが、すぐに顔を上げて彼女の提案を引き受けることに…。

 

 

 

睦月『そっそれって大丈夫にゃしぃ…!?いくらなんでもそれしかないからって確証はないんでしょ!?』

 

 

阿武隈『そっそうですよ!しかも相手は重巡洋艦を含んだ護衛艦隊…!吉野さん一隻で追い返すなんてどう考えても不可能…』

 

 

阿賀野『…確かに実際そうかもしれません!誰がどう考えても一隻だけの攻撃で追い返すのはかなり難しい…。…ですがここは吉野さんを信用して見ましょう!』

 

 

涼風『…まじかよ…(ニヤリ)阿賀野さん案外そういう賭けに乗ることあるんですね…!』ドォォォォンン

 

 

阿賀野『…私だって本来ならリスクありありの賭けになんか乗りたくはないわ!…けど今はこれしか切り抜ける術がない以上…!』

 

 

曙『……ならここで議論してても仕方ないわよ!!考えてる暇があるならさっさとやりましょう!こっちは猶予がないんだから!!』

 

 

敷波『…まっそうなるよねー、提督とか霧島さんたちが危ないのにモタモタする余裕はないしー。ちゃちゃっとやっちゃいますか』

 

 

 

だが他のメンバーからすればほぼ賭けと言っていいもので、確証がない上にリスクも生じるような作戦で本当に上手くいくのかという不安があるらしい。阿賀野だってもちろんそんなリスクのある作戦をしたくはないがそれに頼るしかないのならやるしかないという覚悟を決めた様子。

 

敵艦隊の砲撃が飛来する中、普段の彼女を知っていた涼風はまさかそんな作戦に乗るとは思っていなかったらしく、思わず笑みを浮かべてしまう。しかし他に手がないのはみんな分かりきっていることで、敷波や曙はやるならさっさとやってしまおうという雰囲気を見せていた。

 

 

 

阿武隈『んじゃそうと決まればどう動くか取り決めとかないと…!吉野さん!離脱のタイミングはどうしますか!?』

 

 

吉野『離脱については誘導弾による攻撃が直撃したタイミング!!恐らくはそれで混乱状況になるかと…!』

 

 

曙『ならさっさとやりましょう!こっちだって時間ないんだしあそこまで言うならあんたにだってキッチリ仕事して貰うんだからね!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー速力緩メルナ!!ココデ勢イヲ落トセバ敵二チャンスヲ与エルゾ!!最大全速デ突ッ込メ!!ードォォォォンン!

 

 

ー使エル武装ハナンデモ構ワンカラ片ッ端カラ射撃シロ!!給弾ヤ冷却モ忘レルンジャナイゾ!!砲ハ一門デモ多ク確保シテオケ!ーダンダンダン!!

 

 

ーダメコン員ハ被弾時ハスグニ損傷箇所ノ応急修理ニ取リ掛カレ!!コノ程度ノ砲撃デ怯ムンジャナイゾ!巡洋艦隊ノ圧倒的火力ヲ連中ニ見セツケロ!!ー

 

 

 

一方阿賀野達が何やら企んでいることを知らない深海棲艦側の護衛艦隊は相変わらず勢いを落とさずに猛烈な砲撃を浴びせていた。最初こそ主砲や副砲を中心とした射撃であったが対空砲の射程に入るや、40mm(60口径)や20mm(70口径)、12.7mmなどの機銃や機関砲の曳光弾を光らせていく。

 

最初の奇襲雷撃で自分たち護衛艦にも少なくない被害は出たものの、最大の砲戦火力を有している重巡洋艦などが無傷であったためこのまま返り討ちにしようと試みているらしい。そのため使える武装は種類問わず借り出しているようで、最大全速で突っ込みながらも片っ端から射撃している。

 

 

 

ー敵ノ水雷戦隊ハ完全ニ勢イヲ失ッタゾ!明ラナカニ守勢へ変ワッテイル!コノママ押シ切ルゾ!ー

 

 

ーハッ!輸送船団ニ手ヲ出シタコトヲ今頃敵ハ後悔シテルカモナ!!最初ノ奇襲デ決定打ヲ与エラレナカッタノガオマエ達ノ敗因ダ!ードォォォォンン!!

 

 

ーダガ気ハ抜クンジャナイゾ!相手ハ腐ッテモ水雷戦隊、シカモアノ数デ殴リ込ミヲカケテ来タトイウコトハ練度モカナリアルハズ…!ナニヲ仕掛ケテクルカ分カラン!ー

 

 

ーモチロンデス!ココデ油断シテ返リ討チシタラソレコソ輸送船団ノ連中ニ顔向ケガ出来マセン!我々ノ役目ハ護衛任務!ソレガ無事終ワルマデヤラレマセンヨ!ードォォォォンン!!

 

 

 

最初の攻撃で決定打を与えられなかったことを良いことに、先程とは比べ物にならないくらいに勢いが乗っているようだ。一部の深海棲艦に関しては鼻で笑いながら敵は今頃輸送船団に仕掛けたことを後悔してるかもなと豪語する始末。しかしそんな中でも旗艦のリ級は冷静のようで、仲間に気を抜かないように指示を出していく。

 

いくら戦力が劣るとは言えど相手は腐っても精鋭の水雷戦隊、あの数で輸送船団相手とは言えど殴り込みを仕掛けてということは練度もかなりあるはず。それに自分たちの任務はこの敵艦隊の撃退もそうだが、あくまで輸送船団の護衛のため無事に合流するまでが本当の目的だ。他の深海棲艦もそれは分かっているようでもちろんと答えながらも砲撃を叩き込む。

 

 

 

ー無理ニ敵艦隊ヲ撃滅シヨウトハシナクテイイ!ダガ我々ノ追撃ヤ砲雷撃戦ヘ参加出来ナイヨウニ徹底シテ破壊シロ!情ナドハイラン!ー

 

 

ーヘヘッ了解シヤシタ…!!苦シンデ沈ンダ盟友ト同ジ世界ヲ味アワセテヤル!!艦娘ノ悲鳴ハ私達ニトッテ最高ノゴ馳走ダワ!ー

 

 

ー全クダ!ココデ忌々シキ艦娘ノ悲鳴ヲシッカリト耳ニ焼キ付ケテ置カナイトナ!ー

 

 

 

 

 

 

吉野『対水上戦闘…!!目標はCIC指示の敵重巡二隻!!味方艦隊撤退支援を行うためにハープーンによる攻撃を行います!発射弾数二発!!』

 

 

吉野 攻撃指揮官妖精『水上戦闘!!ハープーン攻撃用意!目標はCIC指示目標の敵重巡二隻!!発射弾数は二発!それぞれ一発ずつでいきます!』

 

 

吉野 砲術妖精『座標指定用意よし!!火器管制レーダーとの共有も問題ありません!1番、続いて2番発射管の順による攻撃で行います!』

 

 

吉野『了解!!』

 

 

 

一応身構えてるとは言えど少しいい気になりつつある深海棲艦護衛艦隊、それとは別にそんな彼女達へ対し狙いを定めていた吉野では艦対艦ミサイルによる攻撃に備えた発射準備に追われている。CICでは吉野の指示の元最終確認に入っているらしく、目標である敵艦隊先方の重巡リ級二隻へと照準する形でしっかりと捕捉しているようだ。

 

本来であれば対艦ミサイルなどでの攻撃時には、他艦や早期警戒機などの情報を元にアウトレンジからのミサイル攻撃を行うもの。だが現状では情報をリンク出来る僚艦がいないことや、衛星などが使えないため自艦のレーダーでの反応を元に攻撃を行う必要がある。とは言えどイージス艦が搭載している艦載レーダーは最大200kmから500kmほどの探知距離を誇るためしようと思えば出来ないことはない。

 

 

そうこうしているうちにハープーンの攻撃準備が完了したため、SSM妖精がいつでも行けるという合図を伝えていく。もちろん吉野もそれは耳にしているため聞きながら頷くと、静かに深呼吸をしながらもよく透き通る声を響かせて…

 

 

 

吉野『……(スゥ)ハープーン攻撃始め!!』

 

 

吉野 砲術妖精『1番発射用意ぃ……てぇ!』

 

 

吉野 SSM妖精『ハープーン攻撃開始!』(カチッ!)

シュゴッ!!

ドゴォォォォ!!

 

 

 

彼女の合図を受けて砲術妖精が艦対艦ミサイルによる攻撃開始を命令、それを皮切りにSSM担当の妖精がハープーンの発射ボタンを作動。すると艦中央部の第1と第2煙突間に設けられた3連装発射筒(本来は4連装)の1つが轟音とともに一体が閃光や白煙に包まれていく。

 

その後発射筒の膜を破りながら閃光や白煙の中から1発の艦対艦ミサイル(ハープーン)が勢いよく飛び出てくる。ある程度出てくると中央部後寄りや胴体末尾に設けられた4枚の小型誘導翼が展開され、固体燃料ロケットエンジンのブースターで推力を得ながら斜めに暗闇の上空へと打ち出された。

 

 

 

ガギィィン!!

ゴッ!!

ゴォォォォォ!!

 

 

 

一瞬空高くへと撃ち出されるのかと思うレベルで最初は勢いよく上空へと飛行していたハープーンであったが、打ち上げに使っていたブースターが切り離されると初期速度を得ながら一瞬落下。海面手前で主エンジンであるターボジェット・サステナーが作動し、先程と違い青白いアフターバーナーが点火されながら暗闇の海面スレスレを猛スピードで突っ切っていく。

 

 

 

吉野 見張り妖精『ハープーン発射確認!正常に目標へ向けて飛行しています!!』

 

 

吉野 砲術妖精『続けてニ番発射…てぇ!!』

カチッ!!

シュゴッ!!

 

 

 

見張り妖精から発射されたハープーンが問題なく目標へ向けて飛行しているとの報告が飛び込んでくるとそれを確認した。砲術妖精は引き続き第2射攻撃を指示。それを受けたSSM妖精が再び発射ボタンを押していくと、発射して空になった発射筒の隣に隣接していた別の発射筒から轟音や閃光とともに先程と同じ感じで中から第2射のハープーンが勢いよく飛び出してきた。

 

 

 

吉野 AN/SPY-1D妖精『ハープーン発射をレーダーでも確認しました!!二発とも飛行に異常は見受けられません!誘導も問題なく行われています!』

 

 

吉野『後は敵がこっちの目論見通りに混乱してくれればいいけど…!はっきり言ってこればっかりは掛けるしかないか…』

 

 

 

 

 

 

 

 

睦月『このー!こっちに来んな!』(ドォォォォンン!!)

 

 

睦月 砲術妖精『だー!!軽巡に弾かれた!!クソッタレやっぱり旧式の砲だとどうしても辛いもんがあるぜ!』

 

 

睦月 主砲妖精『何を!十二糎(センチ)単装砲は我が駆逐艦では優れてんだ!一発弾かれたからってなんだ!!』

 

 

睦月 機銃妖精『撃て撃て!!大きな損傷を与えられなくても小さな損傷を蓄積していけ…(ドォォォォンン!!)ガハァ…!』

 

 

睦月 機銃妖精『あぁ!班長がやられた!!衛生兵!!衛生兵ィィ!』

 

 

睦月 給弾妖精『しっかりせんか!!班長がこんなとこでくたばってどーすんだってんだ!!』

 

 

ーイケイケ!!連中ハ総崩レニナリツツアルゾ!コノママ火力ノ優位ヲ活カシテ闘エ!ー 

 

 

ー間モナク敵艦隊ガ魚雷射程へ入リマス!サッキヤラレタ分ヲキッチリオ返シシテヤリマショウ!!ー

 

 

 

吉野から艦対艦ミサイル(ハープーン)攻撃が開始された頃、阿賀野達水雷戦隊は劣勢へ傾きつつある戦況をなんとか抑えている始末だ。だがやはり火力不足は否めずじわじわと押されており、小さいものの各艦それぞれにダメージが少しずつ蓄積し始めているのが現状。

 

しかしそれとは対照的に形勢逆転で優勢を取り戻した深海棲艦隊は、更に圧力をかけながら相変わらず敵艦隊へと接近していた。どうやら自艦隊の一部艦艇に装備する魚雷の射程に入ったようで、先程の敵討ちと言わんばかりに魚雷発射の準備に取り掛かり始めていた。

 

 

 

ーウム…!駆逐艦隊ハ魚雷射程ニ入リ次第私ノ合図デ一斉ニ雷撃ヲ開始シロ!他ハ引キ続キ主砲撃ヲ続ケテ魚雷発射ノ支援ダ!ー

 

 

ー分カリマシタ!水雷員!右舷雷撃戦用意!旗艦ノ合図ガ有リ次第スグニ発射スルンダ!信管ノチェックモシッカリトナ…!ー

 

 

ーオ任セクダサイ!我々水雷員ハ魚雷ノプロフェッショナル…!完璧ニ整備シテ全弾命中ヲご覧ニ入レマショウ!ー

 

 

皐月 『っ…!(これ以上はそろそろ…っ)見張り妖精!吉野さんの支援攻撃は確認出来た!?』

 

 

皐月 見張り妖精『いえ!自分が見る限りでは確認は出来ていません…!!ですが時間を考えるともう攻撃を開始しててもおかしくは…!』

 

 

皐月『なるほど…!見張り妖精!引き続き監視をお願い!何か発見があればすぐに報告して!』

 

 

皐月 見張り妖精『お任せください!この鍛えられた目で隅から隅済みまで見てやりますよ…!』

 

 

 

間もなく敵艦の魚雷射程へ入る頃、じわじわと押されていく戦況を見てこれ以上は抑えられない。そう心のなかで思った皐月は見張り妖精へ対し、吉野からの支援攻撃は始まったのかと尋ねていく。だが返答は確認出来ないとのことだったが時間を考えると攻撃を開始していてもおかしくはないとのこと。

 

それを聞いた皐月は引き続き敵艦隊の動きと並行して動向を探るように指示を出しながらも、自分は指揮に集中するために真っ直ぐ敵艦隊へと視線を向ける。だがそんなことを知らな護衛艦隊は完全に敵艦隊の息の根を止めるために魚雷発射管を旋回させてていく。

 

 

 

ー右舷雷撃戦用意ヨシ!魚雷発射準備出来マシタ!!リ級サン!ヤッチャイマショウ!!ー

 

 

ーモチロンダ!準備出来次第魚雷攻撃ヲ開始セヨ!!沈メラレタ戦友ノタメニモココデ一矢報イルゾ!ー

 

 

ー魚雷発射用意ィ!敵艦隊ヘ引導ヲ渡シテヤレ!ー

 

 

 

魚雷発射準備が完了したことを確認するや否や、旗艦のリ級は間髪入れずに駆逐艦隊へ魚雷攻撃開始を下令。どうやらここで敵艦隊へ完全に引導を渡すつもりのようで、イ級や巡洋艦で魚雷発射管を装備しているホ級が狙いを定めようとする。

 

 

 

 

 

…がそんな彼女らの狙いは一瞬にして崩れ去った。

 

 

 

ガギィィン!!

ドゴォォォォ!!!

ーウグォ!?(弾かれる)ー

 

 

ーガッ!?ー

 

 

ーナッナンダ!?何ガ起コッタ!!ー

 

 

ー何ガッテ…ミッミロ!旗艦と後続のリ級が炎上シテル!恐ラク被弾シタンダ…!ー

 

 

ーバッ馬鹿ナ!?砲撃ノ前兆ハ全ク感ジラレナカッタゾ!!マサカマタ敵艦隊カラノ雷撃ヲ許シタノカ…!?ー

 

 

ーイエ!魚雷攻撃ナラ大キナ水柱ガ上ガルハズデスシ、何ヨリ他ノ艦モ被雷シテルハズデスヨ!アノ状況デ敵艦隊ガココマデピンポイントニ撃テルトハ思イマセン!!ー

 

 

ージャア何ダッテ言ウンダ!!我々ニ気付カレズニ一瞬デ攻撃出来ル兵器ナド聞イタコトガナイゾ!?ー

 

 

阿武隈 見張り妖精『さっ左舷見張りより艦橋へ!敵重巡リ級が二隻とも被弾炎上中!なっなんだあの攻撃見たことがねぇ!』

 

 

阿武隈 見張り妖精『アレが阿武隈さんが言ってた例の艦娘による攻撃なのか…!?あっという間過ぎて何がなんだか…!!』

 

 

阿武隈『…阿賀野さん!』

 

 

阿賀野『ええっ!まさにベストタイミングってやつね!!』

 

 

 

魚雷攻撃をまさに開始しようとした矢先、先陣を斬るように航行していた重巡リ級二隻が突然立て続けに被弾・炎上。轟沈するのどの被害ではないものの被弾したときの衝撃は凄まじく指揮を取っていたそれぞれのリ級は弾かれるように吹き飛ばされていく。

 

あまりにも急すぎる展開のためか後続を航行していた護衛艦隊各艦は何が起こったのか全く把握が出来ておらず、その影響で魚雷発射のタイミングを逃してしまう。最初こそ敵艦隊からの雷撃による被弾かと思われたが、僚艦の被弾時や相手の状況を考えるとそんなピンポイントな攻撃が出来るはずがないと言い切られてしまった。

 

 

だがその攻撃が吉野からだということを予め解っていた阿武隈、こんな攻撃方法もあるのかと驚愕していた妖精達を横目に阿賀野へ促すように声をかける。もちろん彼女もそれは解っているためため…

 

 

 

阿賀野『全艦面舵一杯からの煙幕展開!!敵艦隊が混乱している今がチャンス!全速力で現海域を離脱します!』

 

 

涼風『よっしゃ!待ってましたぜ!発煙妖精!艦載の発煙装置を始動させろ!!ありったけの煙幕ばら撒け!』

 

 

涼風 発煙妖精『待ってました!野郎ども煙幕展開だ!遠慮なんかいらんからどんどん焚いていけ!』

 

 

曙『機関妖精!今燃やしてる燃料の一部を不完全燃焼させて!そうすれば馬鹿みたいに黒煙を発生出来る!発煙装置と並行すれば目眩ましにはなるはずよ!』

 

 

敷波『発煙装置と煙突の黒煙っていうダブル煙幕だからかなり視界が悪くなるよー。僚艦との衝突、あっあと敵艦隊の攻撃に注意してねー』

 

 

睦月『このチャンスを逃さない手はないね!早く離脱して霧島さんたちの援護に行きましょう!』

 

 

 

旗艦の号令が響くや否や各艦は発煙装置やボイラーの不完全燃焼で発生する黒煙を使った煙幕を展開しつつ、全速力で面舵一杯からの離脱を開始。吉野の攻撃で敵艦隊が混乱している状況を利用して、予定通り現海域を離脱しながら味方艦隊の支援に向かうつもりのようだ。

 

だがこれでもかというほど煙幕を炊いたため周囲の視認性は最悪と言ってもいいほど悪い。そのため、各艦所定の決まりどおりの航路をなぞりながら衝突に留意しながら進路を変更していく。だがその分自分達の正確な位置の欺瞞にはまさしく持って来いとも言える。

 

 

 

ーナッ!?敵艦隊煙幕展開!クソコッチガゴチャゴチャシテルノヲ利用シテ逃ゲルツモリカ!ー

 

 

ーサセルカ!各艦各自デ魚雷攻撃開始ィ!旗艦ノ指示ヲ待ッテイテハ逃ゲラレテシマウ!マダ見エテイルウチニ叩キ込メ!ー

 

 

ー了解!全魚雷発射管攻撃始メ!各自判断デ攻撃シロ!ー

 

 

ーマッ待テ!コノ状況デ各自バラバラデ魚雷ヲ撃ッタラソレコソ…!!ー

 

 

 

彼女らの狙いは見事的中、深海棲艦側からすれば敵艦隊が次々と煙幕に隠れるように姿を消していきどうなっているか全く分からない状態になっていた。ただでさえ正体不明の攻撃を旗艦が受けたせいで混乱しているのに、それに便乗する形で動かれてしまったら尚更だろう。

 

だがみすみす見逃す訳にも行かないもので、魚雷の発射準備を整えていた各艦は各自判断での雷撃を刊行。まだ煙幕に隠れきっていないタイミングで決定打を与えようと試みている。しかし突然正体不明の攻撃を旗艦が受けた際の混乱から立ち直れていないのにも関わらず、そんな無理やりな雷撃を行ったとしても有効打を与えられるとは到底思えない。

 

 

そのためそれを知っていたホ級はなんとか止めようとするがすでに雷撃を開始した彼女達の耳に届くはずもなく、その声は虚しく砲撃音にかき消されてしまうのであった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー…!!先程輸送船団直衛ノ護衛艦隊カラ無線ヲ傍受シマシタ!ソレニヨルト艦隊旗艦ト僚艦ガ正体不明ノ攻撃ヲ受ケタトノコト!ー

 

 

ー尚交戦中デアッタ敵水雷戦隊ハ味方艦隊ガ攻撃ヲ受ケルヤ否ヤ全速力デ現海域ヲ離脱シテイル模様デス!…晋級サン!コレハマルデ…!!ー 

 

 

 

 

その頃、相変わらず海中で潜むように動向を伺っていた晋級艦内では無線傍受をしていた乗組員の元に輸送船団の護衛艦隊から飛び込んでくる。それを聞くや否やハッとした表情で顔を勢いよく上げると、すぐに視線を動かしてCIC中央部で陣取っていた普級へ状況を事細かに説明していく。

 

だがこの展開はなんとなくではあるものの晋級からすれば分かりきっていることのため、普段の様子から察するに落ち着いた指示を出すと思われたが…

 

 

 

ー…(少し笑いを堪え)フフッ…ー

 

 

ー…?晋級…サン…?ー  

 

 

ーアハハッ!!ー

 

 

ー…!?ー

 

 

ーヤッパリコウデナキャ!戦場ッテイウノハコノ楽シサガアルカラ辞メラレナイノヨ!!ー

 

 

 

しかしそこに居たのは笑いを堪えるように肩を震わせている彼女の姿であり、らしくない様子に思わず乗組員は一体どうしたのかと首を傾げながら声をかけようとした。…がその直後に抑えられなくなったのか今までにないような高笑いが戦闘室内全体へ響き渡る。

 

それはその場にいた乗組員全員が驚いて思わず凝視してしまうほどのレベルであり、しばらくの間あ然とした表情で眺めていた。だが普級はそんなことお構いなしと言わんばかりに高笑いしたした後にゆっくりと目を見開く。

 

 

…その表情というものは普段のクールな彼女とは対照的であり、それはまるで獲物を直感的に感じ取った猛獣のような好戦的な雰囲気を全開というもの。少しして笑いが落ち着いたと思った矢先、雰囲気を一切変えずにインカムに手を伸ばし… 

 

 

 

ーソナー員!アクティブソナーデ忌々シクドサクサ紛レニ隠テル敵ヲ炙リ出シナサイ!マズハ丸裸ニシテアゲナキャ!ー

 

 

ーエッアッヨッヨロシイノデスカ…!?アクティブソナーヲ使エバ自艦ノ位置ガ露見シテシマイマス!ココハパッシブソナーデ探シ出シタ方ガ…!ー

 

 

ーソンナコトシナクテモ向コウハコッチノ存在ニモウ気ヅイテル!ナラコソコソ隠レル必要ハナイシソレコソ後手ニ回ルワヨ!!ー

 

 

ーハッハァ…ー

 

 

ーソレニモウコチラノ存在ハバレテルヨウナモノ!隠レ通スツモリモナイッテコト!ソナー員!先程ノ指示通リニアクティブソナーヲ作動サセナサイ!マズハ見ツケ出サナイト…!

 

 

ーワッ分カリマシタ…!アクティブソナー用意!準備出来次第作動サセテ敵艦ヲ炙リダシマス!!ーカチッカチ

 

 

 

高笑いを抑えるとすぐさまソナー員に対してアクティブソナーを使った敵艦捜索を指示。だがアクティブソナーというのはパルス状の音波を発し、船舶・魚群・海底地形などに反射して戻ってくるまでの時間や強度から、対象物までの距離などを測定するソナー。だがソナー員の言う通り自艦から音波を発するため位置が露見しやすく対潜索敵が向上した今では非常に潜水艦にとってリスクが大きい。

 

その影響もあってか現代潜水艦には基本的に自艦の位置が露見しやすいアクティブソナーではなく隠密行動に比較的向いているパッシブソナーが装備される。しかしまだ完全に見つかっていないならいざ知らず、既に敵から存在を察知されているこの状況では晋級の言う通りハッキリいって意味がないようなもの。

 

 

そんな指示を受けたソナー員は分かりましたと答えながらすぐさまアクティブソナーの準備に取り掛かり、それを横目に見ながらも晋級は立て続けに指令を出す。

 

 

 

ーソレト先程ト同様ニ魚雷発射管へ対艦巡航ミサイルノ装填急ゲ!!アクティブソナーデ対象ヲ発見次第スグニ撃チコメルヨウニネ!!次弾ハYU-4長魚雷(魚4型)デ行クワ!ー

 

 

ー了解デス!戦闘指揮室カラ魚雷発射管室ヘ!全発射管ニ対艦巡航ミサイルノ装填ヲ急ゲ!次弾ハアクティブ誘導ノYU-4長魚雷(魚4型)ノ準備ヲシテオケ!ー

 

 

ーハッ!指示通リ対艦巡航ミサイル及ビ次弾ノ魚雷準備ニ取リ掛カリマス!!アト五分オ待チ頂ケレバ完了スルカト!ー

 

 

ーフフッ♪出来ルダケ急ギナサイヨ…!戦場ッテイウノハイツ何ガ起コルガ分カラナイ。ソレニモタモタシテタラセッカクノ獲物ニ逃ゲラレチャウ♪ー

 

 

ー言ワレナクテモウチノ装填員と整備員ハ優秀デスカラ…!!敵ニソンナ猶予ハ与エマセン!ー

 

 

ーソノ意気!アクティブソナー作動ノタイミングハ対艦巡航ミサイルノ装填ガ完了、及ビ次弾ノ用意ガ終ワリ次第スグ!恐ラク奇襲攻撃ニナルデショウケドセイゼイシクジラナイヨウニネ!ー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

吉野 攻撃指揮官妖精『発射したハープーンは二発とも目標へ命中。損害は不明ですが見張り妖精からの報告で火災の発生は確認しています…!』

 

 

吉野 電信妖精『尚味方艦隊はこの攻撃を皮切りに現海域からの離脱を開始した模様…!無線を傍受した限り敵艦隊はかなり連携が乱れています!苦し紛れに魚雷を発射したようですが…』

 

 

吉野『そんな混乱状態じゃどのみち魚雷発射をしても有効打は与えられないでしょうね…。でも阿賀野さん達もそれは解ってるでしょうから何らかの対策は打ってるはず…、でもそれよりも…』

  

 

 

ハープーンミサイルが二発とも敵艦へ命中したのは吉野もしっかりと把握しており、レーダースクリーンに表示されたデータや味方からの報告を元に攻撃指揮官妖精からの報告を受けていた。自分の狙い通り、対艦ミサイルによる攻撃を受けた敵艦隊はかなり混乱しているようで、苦し紛れの雷撃を行っている始末。

 

もちろんそのお陰もあってか、味方水雷戦隊は煙幕を展開しつつ全速力で現海域を離脱。本来であれば敵艦隊も追撃をかけるはずだが旗艦が攻撃を受けたせいでそれどころでは無さそうだ。だがそれよりも気になることがあるようで、彼女達は問題ないと口にしつつ目元を細めていく。

 

 

 

ー問題はこの攻撃で例の潜水艦がどう動いてくるか…恐らくハープーンの攻撃で確信はしてるはず…。そうなれb…(ビー!!ビー!!)

 

 

 

吉野 OQS-102妖精『吉野さん!ピンガー音を探知!恐らく敵潜水艦アクティブソナーです!』

 

 

吉野『もう来たか…っ!OQS-102妖精!敵潜水艦の位置は!!』

 

 

吉野 OQS-102妖精『ピンガー音が放たれた方角から察するに恐らく本艦左前方の海中からかと思われますが…』ビーッ!!ビーッ!!

 

 

吉野 AN/SPY-1D妖精『レーダーに高速で近づく複数の飛翔体を検知!!数六!推定速度マッハ2.5!!タイミングから察するに敵潜水艦から放たれた対艦巡航ミサイルです!本艦到達まであと90秒!!』

 

 

吉野 『っ!?(いくらなんでも手際が良過ぎる…っ。バレることは承知だったとしても…)対空戦闘用意!絶対にミサイルを撃ち落としなさい!!』

 

 

 

…だがそんな悠長に考えられるほど戦場というものは決して暇ではなく先程の対艦ミサイル発射に反応してか、突如としてソナーにピンガー音が検知。敵潜水艦からのアクティブソナーだと判明してからすぐに、休む間もなくレーダーに接近する高速の飛翔体を捕えた。

 

先程霧島達と攻撃した際の情報とほぼ一緒のことや発射タイミングからみて、敵潜水艦から発射されたものもすぐに解ったが流石にいくらなんでも手際が良過ぎる。そう思った吉野ではあったが、すぐに対空戦闘用意を命令してひとまずその場を乗り切ることに注力するのであった…。

 

 

 

 

 

 








第二十六話 本当の戦い


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第二十六話 本当の戦い


阿賀野達水雷戦隊の撤退支援のために、貴重かもしれない艦対艦ミサイル『ハープーン』による攻撃を決断した吉野。

当然ハープーンによる奇襲攻撃には成功し、撃沈とまではいかなかったものの敵護衛艦隊の指揮系統を混乱させることに成功。それを利用して阿賀野達は予定通り敵艦隊を振り切って現海域を離脱することに成功した。


…がそれも束の間、待ってましたと言わんばかりの勢いで突如として彼女を複数のミサイルが襲うのであった…。




 

 

 

 

 

 

ー…!!アクティブソナーニ反応アリ!ソレト同時ニ本艦左前方ノ海上ニテ推進音探知!今マデトハ非常ニ異ナル反応デス!恐ラクコレガ…!ー

 

 

ーミーツケタ♪イツマデモ安息地ニイレルナンテ思ワナイコトネ♪戦場ニ安全ナ場所ナンテ…イエソンナトコワタシガ壊シテアゲル!ー

 

 

 

吉野達ががアクティブソナーの反応と潜水艦の存在を確信したのとほぼ同時刻、晋級側でも今までとは全く異なる敵艦の反応をキャッチ。ようやく自分たちが探していた狩るべき獲物を見つけたとなればもう容赦する必要はなく、徹底的に追い詰めて上げると言わんばかりの笑みを零していた。

 

 

 

ー対艦巡航ミサイル全弾発射準備完了シマシタ!!次弾ノ魚雷モ含メテイツデモイケマス!!ー

 

 

ーナラ対艦巡航ミサイル全弾発射始メ!!アクティブソナーニ反応ガアッタ座標へ照準シテ攻撃シナサイ!!迎撃ノ隙ヲ与エナイデ!!ー

 

 

ー了解シマシタ!!砲術長!対艦巡航ミサイル全弾発射始メ!!アクティブソナーニ反応ノアッタ座標へ攻撃シロ!!迎撃ノ隙ヲ与エルナ!ー 

 

 

ーモチロン言ワレナクテモ分カッテオリマス!!全魚雷発射管開ケ!!『YJ-18B』対艦巡航ミサイル攻撃開始シマス!ーカチッ

 

ガギン!

シュゴォォォォォ!!

 

 

 

その後間髪入れずに砲術長に対して装填完了した対艦巡航ミサイル『YJ-18B』による攻撃を指示。彼女の命令を受け砲術長はミサイル発射管制員に対して攻撃合図を下し、発射命令を確認した管制員は彼女が装備している全六門の発射管を相次いで開く。

 

全発射管が開いたと思った矢先、海中独特に響く音とともに相次いでブースター全開で対艦巡航ミサイルが順々に射出。発射時に出る泡を蒔き散らしながらも全弾問題なく発射されて、海中で抵抗が多いのにも関わらず勢いを極力落とさずに羽を展開しつつ海上へと進路を変更する。

 

 

 

バシュ!!

ゴォォォォ!!

 

 

 

発射してから少し経つと、海中から何本か水柱が立ったと思ったら、対艦巡航ミサイルの頭が次々と姿を現す。海上へと出てくると水中用から水上用ロケットブースターに切り替わり一気に上空へと飛来、すぐに進路を指定した座標へと変更すると目標目掛けて一気に飛んでいった。

 

 

 

ーYJ-18B全弾発射確認!!問題ナク飛翔シテイマス!!誘導モ問題アリマセン!ー

 

 

ー流石ウチノ整備班ネ♪次弾魚雷装填急イデ!!万ガ一防ガレタ場合ニ再度攻撃出来ルヨウニシナサイヨ!!ー

 

 

ーオ任セクダサイ!我ラ潜水艦ノ本業ハ魚雷攻撃!!ソンナモノデシクジッタラ情ケナイ限りリスゾ!!ー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

吉野 AN/SPY-1D妖精『レーダーに高速で近づく複数の飛翔体を検知!!数六!推定速度マッハ2.5!!タイミングから察するに敵潜水艦から放たれた対艦巡航ミサイルです!本艦到達まであと90秒!!』

 

 

吉野 『っ!?(いくらなんでも手際が良過ぎる…っ。バレることは承知だったとしても…)対空戦闘始め!絶対にミサイルを撃ち落としなさい!!』

 

 

吉野 砲術妖精(対空ミサイル担当)『CIC指示の目標!!接近中の対艦巡航ミサイル!!SM-2攻撃始め!!』カチカチッ

 

 

ガギィ

シュゴォォォォォ!!

ゴォォォォ!!

 

 

 

もちろん晋級から放たれた六発の対艦巡航ミサイルは吉野の対水上レーダーにしっかりと移されており、本艦到達までの時間や経路も事細かにスクリーンへ表示されていた。だが発射されたと思しき地点がかなり近かったことや到達までの猶予がないためか、吉野は迷わずに艦対空ミサイルによる迎撃を下していく。

 

それを受けて艦対空ミサイル発射管制担当の妖精がレーダーやCICから送られてきた情報を元に、素早く画面を操作していき発射ボタンを勢いよく押す。直後前後甲板に装備されていたVLSが相次いで開くとともに、閃光や白煙を蒔き散らしながら次々と艦対空ミサイル『SM-2』が暗闇の夜空へ相次いで打ち上げられる。

 

 

 

吉野 左舷見張り妖精『左舷見張りよりCIC!!艦対空ミサイルは正常に発射しています!対艦巡航ミサイルについては未だに確認出来ず!』

 

 

吉野 攻撃指揮官妖精『CIC了解!発見でき次第すぐに報告して!!』

 

 

吉野 左舷見張り妖精『了解……敵対艦巡航ミサイル複数確認!!まっすぐ本艦へ向かってきます!!』

 

 

吉野 砲術妖精(対空ミサイル担当)『インターセプトまであと5秒!!スタンバイ…マークインターセプト!!』

 

 

 

艦橋左舷見張りを担当している見張り妖精から発射された艦対空ミサイルは全弾問題なく次々と打ち上げられながら目標へと向かっていると報告が飛び込む。だが敵潜水艦から発射された対艦巡航ミサイルは未だ発見出来ていないようで、その追加報告を聞いた攻撃指揮官妖精は発見出来次第一報を入れるように指示。

 

見張り妖精から了解という返事が帰ってきた直後、接近してきた対艦巡航ミサイルを目視で発見したようで声上げながらCICへ報告を行う。だがそれと同時に発射された艦対空ミサイルも敵の巡航ミサイルを捕らえており、到達予定地点で目標目掛けて次々と突っ込んでいく。

 

 

ヒュン!!

ザブゥゥン!!

ドゴォォォォ!!

 

 

カウントを行っていた砲術妖精(対空ミサイル担当)が命中の合図を出していくのと同時、艦側面の上空で巡航ミサイルに命中した艦対空ミサイルが次々と爆発。咄嗟撃ちだったため一部のミサイルは空振りして海中へ突っ込んでいったものの、それでもほとんどは迎撃することに成功したらしい。

 

 

 

吉野 砲術妖精(対空ミサイル担当)『迎撃成k…いや違う!二発突入してきます!!本艦到達まで30秒!』

 

 

吉野『っ!近接対空戦闘始め!!主砲でもCIWSでも何でもいい!!絶対に撃ち落として!!』

 

 

吉野 砲術妖精(主砲妖精)『主砲、対空射撃開始します!!撃ち方始め!!』

 

 

吉野 攻撃指揮官妖精『CIWSもAAW(対空戦)オート!!絶対にミサイルをはたき落としなさい!!』

 

 

ブァァァァァァ!!!

ボフッ!!カラァン!!ボフッ!!カラァン!!ボフッ!!

 

 

 

だがやはり先程と同様で亜音速で突っ込んでくる対艦巡航ミサイルを全弾はたき落とすのは無理があったようで、対空ミサイルの弾幕を回避した2発が吉野目掛けて突っ込んできた。流石に超音速で飛んでくるミサイルを全弾迎撃するのは厳しいか…、そういう表情を見せた彼女であったがすぐに切り替えて近接対空戦闘始めの号令を下していく。

 

その指示を受けると、予め防げなかった場合に備えて準備していた近接火器がミサイルの飛来方向に一斉に指向しながら射撃を開始。127mm単装速射砲や前部20ミリCIWSなどは持てる限りの最大火力を叩き込んでいき、絶対に被弾させないと言わんばかりにの弾幕を展開していた。

 

 

 

ドォォォォン!!

 

 

吉野 左舷見張り妖精『左舷見張りよりCIC!爆発閃光視認!!ですが一発しか落とせてません!!』

 

 

吉野 AN/SPY-1D妖精『こっちでも確認した!くそっ1発抜かれてる!!敵対艦巡航ミサイル突入してきます!!』

 

 

吉野『迎撃は!?』

 

 

吉野 砲術妖精『この距離じゃ間に合いません!!迎撃不能です!!』

 

 

吉野 『総員対ショック防御!!衝撃に備えて!!』

 

 

 

だがいくら現代兵器でも超音速で飛んでくるミサイルを近接火器ですべてはたき落とせるわけではないもので、主砲とCIWSの弾幕をくぐり抜けた一発が吉野目掛けて突っ込んでくる。既に迎撃可能な最終ラインは突破されており、吉野の問いに砲術妖精はもう無理だと即答。

 

となればやることは一つしかなく、咄嗟の判断で彼女は被弾に備えて全乗組員妖精に対ショック姿勢を取るように指示。それを受けて各妖精達はデスクやら手すりなど被弾の衝撃で弾き飛ばされないようなところに飛びつくようにしがみつく。

 

 

 

吉野 左舷見張り妖精(新兵)『てっ敵対艦ミサイル突っ込んできます!!もう目と鼻の先だ!!』

 

 

吉野 左舷見張り妖精『何呑気に報告してんだ!!いいから物に捕まってろ!!死ぬぞおまぇ!!』

 

 

吉野 左舷見張り妖精(新兵)『ぶべら!?(壁に叩きつけられる)』

 

 

吉野 航海士妖精『うぉぉぉ!?これ艦橋に突っ込んでくるぞ!!捕まって意味あんのかよ!!』

 

 

吉野 艦橋妖精『そんなん気にしてる場合か!!来るぞっ!!』

 

 

吉野『……っ…!!』

 

 

 

どのくらいヤバいのかと言うとそれはもう突っ込んでくる対艦ミサイルがスローモーションで目に見えてしまうレベルであり、新入りの見張り妖精は艦橋内から思わず凝縮してしまう。だがそんなことをすれば間違いなく自殺行為になりかねない、そのため隣りにいた熟練の妖精が床に無理やり壁に押し付ける。

 

…だがこれはどう見ても艦橋に突っ込んでくるのは誰がどう見ても確実、本当に伏せて意味があるのかという疑問がこんな状況でも生まれしまう。がそんなことを話したところでどうにかなると言われればそんなことはないもの。

 

 

艦橋上部にいた吉野もこればっかりはやれると直感的に思ったようで、反射的に身構えてしまう。そんな彼女とは裏腹に突っ込んでくる対艦ミサイルはそんなのお構いなしのようにぐんぐん距離を詰めていき、このまま艦橋に突っ込むように命中してしまうと誰もが覚悟を決めざる負えなかった。

 

 

 

ガギィィン!!

ガリリリリッ!!

ゴォォォォン゙!!

 

 

吉野 右舷見張り妖精『うぉぉぉ!!ギリギリすんげーや!?ミサイルが!!ミサイルがホンマ目の前通過していくぞ!』

 

 

吉野 左舷見張り妖精『じゃかしいわ!お前らはよしゃがんで物に捕まらんか!!死ぬぞ!!』

 

 

吉野 右舷見張り妖精『いや大丈夫だ!艦橋よりCIC!!敵対艦ミサイル本艦斜め右を掠めるように飛んでいきます!被弾の恐れはありません!』 

 

 

吉野 航海士『いやいや!?何いってんだ!さっき思いっきり金属同士が当たるようなo…(ドォォォォン)うおっ…!?』

 

 

吉野『きゃっ…!?』ドスッ!

 

 

 

…が転生の運か悪運か、突っ込んできたミサイルは艦橋直下とレーダー上面間の壁へ羽を擦らせながら通り過ぎた。しかし羽が壁に擦る際にとてつもない音が響いてきたため、誰もが被弾したと錯覚したが、右舷見張り妖精だけはしっかりと凝縮していたようで冷静にCICへ見たままのことを速やかに報告していく。

 

とは言えどほとんどの艦橋乗組員妖精達は被弾に備えていたため何が起こったのか理解が追いついて居らず、そんな訳あるかと問い詰めかける始末。だが外れたミサイルがすぐ近くの海水に着弾したのか、艦全体に先程とは比べ物にならないくらいの衝撃に見舞われてしまいそれどころではなくなってしまう。それは吉野も同じであり着水の衝撃で悲鳴を上げながら尻もちをついてしまった。

 

 

 

 

 

 

ゴォォォォンンッ!!

 

吉野 OQS-102妖精『うおっ!?大丈夫かよこの揺れ!!ってかどうなってんのかここじゃ全く分かんねぇ…!!』

 

 

吉野 攻撃指揮官妖精『CICより各部へ!損害状況の報告を!万が一の事態に備えないと…っ!』

 

 

 

もちろんその衝撃は艦内のCIC戦闘指揮所にまで伝わっており、直で感じながらまさかヤバいところに被弾したんじゃないかと妖精の一人がそう呟く。とは言えど確認してみなければなんとも言えないため、攻撃指揮官の妖精は速やかに損害状況の把握を務めるために各部へ状況報告を指示、それを受けてあちこちから次々と報告が入ってくる。

 

 

 

吉野 AN/SPY-1D妖精『対水上レーダー異常ありません!火器管制システムも正常に作動していることからレーダー類にダメージは無さそうです!』

 

 

吉野 攻撃指揮官妖精『ってことはレーダー類のかる箇所には被弾してないってことか…、機関室!!そっちはどう!?』

 

 

吉野 機関長妖精『こっちは問題ありません!けっこう衝撃は来ましたが破断や浸水はなし!全部のガスタービンエンジンは頗る良好だ!』

 

 

吉野 修理妖精『現在損傷箇所を総出で確認中だが今のところは確認出来ない!火災や浸水箇所も同様だ!』

 

 

吉野 攻撃指揮官妖精『…被弾もなしな上に火災や浸水もないとなると、間一髪で当たってないってこと…?でも衝撃は来てたし…』

 

 

 

だが入ってくる報告を聞く限りではどこも異常は見られていないようで、被弾時の炎上や浸水、またレーダー及び火器管制類や船体の損傷も確認されていない。まさかあれだけの衝撃を受けてどこも異常がないのかと思った攻撃指揮官妖精は、思わず首を傾げながら考え込んでしまう。

 

…がここは腐っても戦場、こちらがどうなっていようが相手からすれば関係ないもので……

 

 

 

ビー!!ビー!!

吉野 OQS-102妖精『…!!ソナーに前方の水中から接近する物体を検知!!これは……魚雷!!敵の魚雷です!!』

 

 

吉野 攻撃指揮官妖精『はぁ!?さっきミサイルが来たばっかよ!!もう敵が魚雷撃ってきたっていうの…!?数は!!』

 

 

吉野 OQS-102妖精『現在確認されているのは2本のみ!!ですが完全に捕捉されているのかまっすぐこちらに向かってきます!!』

 

 

吉野 攻撃指揮官妖精『あぁもう!とりあえず戦闘行動に異常ないならこのまま戦闘続行!!各自持ち場に付き直しなさい!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ビーッ!!ビーッ!!

ークソ…派手ニヤラレタ…ナ…損害状況ノ確認ヲシナケレバ…ー

 

 

 

ハープーンミサイルによる攻撃を受けた2隻のリ級、その1隻の旗艦では衝撃で弾き飛ばされた彼女が頭を抑えながらゆっくりと立ち上がる。周りでは被弾した影響か、乗組員が慌ただしく行ったり来たりしており、艦橋内には少し焦げ臭い匂いがしていることからかなり緊迫した雰囲気の様子。

 

とりあえず被害状況の確認をしなければ話にもならないため視線を動かしながらも、リ級は各部へ被害状況の報告をするように促すことに。

 

 

 

ー現在艦中央ニテ火災発生!!重要区画ヘノ貫通ハ確認出来テイマセンガ被弾箇所ノ上部構造物ガ破壊サレテイマス!!現在消化活動中!!ー

 

 

ーマタ被弾ノ影響デ負傷者ガ多数出テイマス!!衛生兵ヤ手空キノ乗組員総出デ対応ニ当タッテイマスガ…ー

 

 

ー通信システムニ関シテハ問題アリマセンガ、レーダーアンテナガ損傷シテイルタメ一部索敵ニ支障ガ出テイマス!!ー

 

 

ー火災発生以外ハ各部異常アリマセン!!船体ノ浸水や損傷ハミラレマセンノデ戦闘行動ニ支障ハナシ!ドウヤラ艦上物ノダメージガ大キイヨウデ…ー

 

 

ーヤハリカ…、内部ニダメージハナイガ思ッタ以上ニ上部構造物ヘノ被害ガ大キイ…(ため息)ー

 

 

 

報告を聞く限り重要区画(バイタルパート)に直撃はしたものの、幸い破られていないとのこと。しかしその分の威力が上部構造物に集中してしまったらしく、負傷者が一部武装などが多く発生しまったらしい。一通り話を聞いたリ級は派手にやられたな…と思いながら頭を少し抱えていた。

 

 

 

ー軽巡ホ級ヨリ旗艦及ビリ級へ!状況ハドウナッテイル!報告シロ!!ー

 

 

ーコチラ旗艦リ級…、状況トシテハ被弾箇所デ火災発生…。上部構造物ガヤラレテ負傷者多数ダ…。一部レーダーナドニ被害ハ出テルガ重要区画ヘノ貫通ハナシ…、戦闘ヤ航行ニ支障ハナイー

 

 

ーコッチモ同ジダ…、派手ニヤラレタガ戦闘行動ニ問題ハナイ…。突ッ込ンデキタ奴重要区画ニ当タッタガ幸イダナ…ー

 

 

ーソウカ…、一体ドウナルカト思ッタガヒトマズ無事ナラ良カッタ…。イキナリ派手ニ被弾シタモンダカラドウナルカト…ー

 

 

ーソレヨリ貴方達ニ被害トカハナイノ?ー

 

 

 

そんな最中、遮るように通信音が響き渡るともに臨時で指揮を取っていたと思われる軽巡ホ級一隻が飛び込むように安否確認をしてきた。やはり見慣れない攻撃手段で派手に被弾した上に通信が一時途切れれば不安になってしまうのかもしれない。

 

もちろんそんなホ級を安心させるように無線を繋ぎながら戦闘行動に支障がないことと、今把握出来ている被害状況を速やかに伝えていく。同じく被弾したもう一隻のリ級も同様のことを伝えると、ひとまず安心したのか思わずホ級は安心しかける。…がそれよりも確かめたいことがあるのか、他の味方艦隊の被害はどうなったのかとリ級はすぐさま報告を促す。

 

 

 

ー我々ヤ他ノ艦ヘノ被害ハ幸イニモアリマセン、ドウヤラ指揮能力ノアル艦艇ヘノ攻撃ガ中心ダッタヨウデスー

 

 

ーナルホド、ダカラ私達重巡ニ対シテ攻撃ガ集中シタ訳ネ…。ソノ際ノ敵艦隊ノ動向ハ?ー

 

 

ーハッ…!敵水雷戦隊ハ本艦隊ノ旗艦ガ被弾シタ直後ニ一斉回頭ノノチ全速力デ現海域ヲ離脱。コチラモ雷撃デ追撃ヲ掛ケマシタガ…ー

 

 

ーソノ際ニ敵艦隊ハ煙幕ヲ展開、レーダーモ使エナカッタタメ完全ニ振リ切ラレマシタ…ー

 

 

ー…マルデ私達ガコウナルコトヲ解ッテイタカノヨウナ動キ…、…マンマトハキルゾーンニ誘イ込マレタッテコトカ…ー

 

 

ー恐ラクハ…ー

 

 

 

どうやら話を聞く限りでは攻撃は指揮系統能力が高い自分達重巡リ級に対して集中したらしく、他の艦艇への攻撃はなかったため被害はないようだ。しかしその後の反動がかなり響いたようで、旗艦が被弾した影響で混乱した自艦隊を見計らい、敵水雷戦隊は一斉に回頭しながら戦闘海域を全速力で離脱。

 

もちろん逃がすまいと戦闘可能な各艦は雷撃による追撃を試みたが、煙幕による目眩ましのせいで思うような戦果を上げることが出来ず、レーダーが謎の妨害によって使えなかったこともあり完全に振り切られてしまったらしい。

 

 

 

ーソレデ…今後ハドウイタシマスカ旗艦リ級サン、幸イ暫定的ニ逃走方向ハ確認シマシタノデ追撃ノ指示ガアレバ…ー

 

 

ーイエ…ソノ必要ハナイワ、ドッチニシロレーダーガ使エナインジャ敵艦隊ヲ追ウコトスラ出来ナイ。ソレニ無闇ニ追ッテモイラヌ損害ヲ貰ウダケヨー

 

 

ーデッデスガ…コノママ負ケッ放シデハ他ノ連中ニ合ワセル顔ガ…ー

 

 

ー…ソノ気持チハ解ラナクモナイ、ケド私達ハアクマデ輸送船団ノ護衛艦隊。本来船団ヲ護ルノデアッテ敵艦隊ヲ壊滅サセルノガ目的ジャナイワー

 

 

 

もちろんこのままやられっ放しで納得いく彼らではなく、当然追撃をかけるべきではないのかという案が軽巡ホ級から上がって来た。幸い暫定的にではあるものの逃走方向は割り出せているため後を追うことは可能ではある、しかし旗艦である重巡リ級はその必要はないと否定しながら答えていく。

 

そもそも自分達はあくまで輸送船団の護衛という任務が託されており、この戦闘も輸送船団から視線をこちらに逸し逃がすというもの。敵艦隊には逃げられたものの輸送船団を逃すという役目は充分に果たしているし、なにより無理な追撃は返って自艦隊の被害を無闇に増やしてしまい兼ねない。

 

 

 

ー全艦ニ通達、集合ノノチ陣形ヲ組ミ直シテ現海域ヲ離脱シマス。ソノ後ハ輸送船団ト合流シテ主力艦隊ガ戻ッテクルマデシッカリ護ワヨー

 

 

ー…ハッ!護衛艦隊各艦ヘ!直チニ集合ノノチニ単縦陣現海域ヲ離脱!ソノ後ハ輸送船団ト合流ダ!損傷箇所ノ修理ト残弾ノ確認ヲ怠ルンジャナイゾ!ー

 

 

ー…シカシコレデ本当ニ良カッタノデショウカ…?確カニ輸送船団ヲコレ以上丸裸ニスル訳ニハ行キマセンガ…敵艦隊ヲミスミス逃シテ逃ゲ帰ルナンテ…ー

 

 

 

こうしてリ級は全艦へ集合ののちに現海域を離脱した後、輸送船団と合流して主力艦隊が戻ってくるまで与えられた役目を全うするようにと伝える。それを受けて各艦は指示通り戦闘で乱れた陣形を整えながら、現海域離脱に向けて損傷箇所の修理や残弾の確認などに乗員達は休む暇もなく追われていく。

 

だが結果的には沈められた同胞の仇を取れていないため多少なりとも不満はあるようで、ホ級は本当にこれでいいのかと呟きながらそう投げかける。もちろん旗艦の言ってることが解っていない訳ではなく、確かに輸送船団を野放しにして別の艦隊に襲われたら元も子もないのは理解していた。むしろ、それを踏まえてこそこのまま逃げ帰るように離脱するのは抵抗があるのかもしれない。

 

 

 

ーソレハソウダケドコッチモ万全ナ状態ジャナイシ、ソンナ状態デ追撃ハカケラレナイワ。マダ作戦ハ終ッテナインダシ、敵艦隊ダッテ他ニモ健在ノハズヨー

 

 

ー…ソレモソウカモ知レマスナ…、無事ニ帰レレバマダ連中ニ仕返シスルチャンスハイズレ出来ルデショウシ…。ー

 

 

ーエエッ、ダカラ私達ハ今与エラレタ任務ヲ全ウシマショウ。コノ近辺ダッテ制海権ハ取リ切レテナインダカラー

 

 

ーデスナ…、先程ノヨウニ何処カデ待チ伏セサレテイルカモ知レマセンシ…。…ソレヨリ主力ノ方は大丈夫ナンデショウカネ…?ー

 

 

ー……ー 

 

 

 

とはいえどだからといって無闇に追撃をかけるほど彼女達も馬鹿ではないため、ひとまずは輸送船団の護衛に注力することに。しかしそれよりも気になっていることがあるようで、敵の主力艦隊と交戦している本隊は大丈夫なのかと心配そうな口調で旗艦へホ級は尋ねていく。

 

それも無理はない、分離して敵艦隊と交戦を開始したであろうタイミングから突如無線機がレーダーと同様に使えなくなってしまい、現在主力艦隊との通信が出来ない状況になっている。恐らくは何かの妨害電波によって通信や電探が阻害されているのだろうが、これでは本隊が今どうなっているのか確認が取れずにいたのだ。

 

 

 

ー確カニ向コウノコトモ気ニナル、…ソモソモ突然無線機ヤレーダーガ使エナクナッタッテイウノモオカシナ話…。ソレニアノ攻撃……マルデ私達ガ見エテイルヨウナ正確サ…ー

 

 

 

もちろんリ級もその気持ちは同じであり、全くと言っていいほど連絡が取れない主力艦隊の状況をかなり気にしている。そもそも、それ以前に戦闘が始まるや否や突然にして無線機やレーダーが使えなくなるという謎の状態の上、まるで自分達の位置が見えている正確な攻撃という連続に彼女でさえ思わず不気味がっていた。

 

そうなるのも無理はない、というのも彼女が考えられる限りや経験でこのような攻撃を受けたことほとんどない。仮にこの侵攻作戦で人類側が決戦兵器として複数投入したのなら、他の戦域の深海棲艦から確実に情報が上がってくるはず…、だが現時点ではそんな話は一つも上がってきていない。

 

 

 

ー…ヒトマズコノ事ハコノ戦闘ガ一段落シタラ侵攻部隊の中核艦隊総旗艦へ報告スルコトニシマショウ。ソレニ彼女達ナラ問題ナイハズヨ、戦力デハコチララノ主力ガ有利ダシ腕利キバカリダカラー

 

 

ー…確カニソウデスガ…ー

 

 

ー…心配ナノハ解ルケド私達ハ私達デ集中、ナンセ輸送船団ヲ現状護レルノハ私達ダケナンダカラ…ー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ヒュン!! 

ガギィィン!!

霧島「うぐっ…!?」

 

 

そんな護衛艦隊の考え通り、最初こそ奇襲攻撃で劣勢に立たされていた深海棲艦の輸送船団護衛の主力艦隊であったが、晋級によるミサイル攻撃によって形勢を逆転させていた。やはりかなりの腕利き揃いのようで、こちらも精鋭揃いであるはずのパラオ艦隊を徹底的に押し始めていた。

 

ミサイル攻撃によって指揮系統が混乱した隙を付かれて激しい砲撃の雨を受けているパラオ艦隊、その攻撃は霧島や榛名に集中しており周囲に次々と飛んできた砲弾が着弾して次々と水柱が立ち昇っていく。時折、砲弾が船体に直撃した際に金属が擦れる音が響き渡り、同時に激しい衝撃が襲ってきたことで思わず霧島は顔を顰めてしまう。

 

 

 

霧島 副砲妖精『右舷副砲群中央に被弾!!損害状況は不明だ!すぐに応急工作班と衛生兵を向かわせろ!!』

 

 

霧島 修理妖精『急げ急げ!!休む暇は…(ドゴォォォンン!!)がはっ…』バタン

 

 

霧島 修理妖精『あぁくそ!アイツが砲弾の破片でやられた!!衛生兵!!衛生兵ィィィ!!』

 

 

霧島 修理妖精班長『馬鹿野郎!そんなとこで治療出来るか!とりあえずコイツをしっかりした遮蔽物の影に運んでいけ!残りで作業を急ぐ!!』

 

 

霧島 機銃妖精『こちら右舷機銃班!こっちに人を回してくれ!!それと衛生兵もだ!もうけっこうな人員がやられちまった!』

 

 

霧島 機銃妖精『しに…た…く…ね…ぇ…』ゲホっ

 

 

霧島 機銃妖精『無理に喋るな!傷が広がるぞ!!あとちょっと待ちゃ艦内でしっかり治療してくれるからな!!』

 

 

 

だが苦しいのは彼女だけでなく、妖精達も砲弾や機関銃の雨の中必死の戦闘や修理などを行っていた。だがこんな中で全員が無事で済むはずがないもので、被弾した際の砲弾の破片や機銃弾を喰らった妖精は次々と負傷しながら倒れ込んでいき、衛生兵が激しい攻撃の中担架などで必死に艦内の野戦病院に運び込んでいく。

 

もはや地獄としか言えない状況、しかしそれを嘆いた所でどうにかなるかと言われればここは戦場であるためどうにもならない。そのため恐怖で気が狂いそうになるのを無理やり堪えながら各自それぞれの持ち場を死守していた。

 

 

 

霧島『うぐ…!このままじゃこっちがやられるのも時間の問題…見張り妖精!!阿賀野さん達はまだ見えませんか…!』

 

 

霧島 見張り妖精『駄目です!砲撃の雨で周囲確認がやっとで全く見えません!ですが時間的にはもうそろそろかと…!!』

 

 

秋山『ほっ…本当に大丈夫なのか…!?あっちだってこっちと同じ位激戦なんだろ…!それで敵艦隊の追撃を振り切って戻って来れるのか…!?』

 

 

霧島『…確かにそうですが!…どっちしろ阿賀野さん達を信じる他ありません!鳥海さん経由で話を聞く限り何か策があるみたいですが…(ヒュン!)っ…!?』

ドゴォォォンン!!

 

 

霧島 砲術妖精『くそ!砲弾の一発が第三砲塔に命中!!すぐに砲塔内を注水しろ!!火災も発生してる!』

 

 

霧島 砲術妖精『第三砲塔!状況はどうなってる!報告しろ!!(ザー!!)くそっ!雑音ばっかでなんも聞こえやしねぇ!!』

 

 

霧島 修理妖精『んなことより火災の鎮火が優先だ!このまま放っておいたら弾薬庫誘爆で吹っ飛ぶぞ!!』

 

 

霧島『…どっちにしろ賭けるしかありませんね…!こちらではどうすることも出来ませんし…、提督!万が一の時は他の艦に移譲してくださいよ!貴方まで巻き込む訳にはいかないんですから!』

 

 

秋山『…あぁ!(少し歯がゆい表情をしながら)』

 

 

 

しかし完全にジリ貧になりつつあるのも事実であり、このままではこちらがやられるのも時間の問題。それを直で霧島は感じながらも見張り妖精に救援に急行してきているであろう阿賀野達水雷戦隊は見えないかと問いただす。だがこれ程までに激しい砲撃の雨では到底味方艦隊を視認できるはずもなく、見張り妖精からは全く見えないと答えた。

 

とはいえど離脱してるなら時間的に戻ってきてもおかしくはないもので、引き続き見張りをするように霧島は伝える。…が無線を聞く限り本当に戻ってくれるのかという不安があるのか、もっとも艦橋で装甲が厚い部屋にいる秋山が大丈夫なのかという疑問を投げかけていく。確かにこちらと比べるとまだいい方だが、阿賀野達の方もかなり激しい砲雷撃戦に発展しているため、そんな状況で本当に敵艦隊を振り切って戻って来れるのかという不安があるのだろう。

 

 

…が霧島もそれは解ってはいるものの、ジワジワと追い詰められていく自艦隊の状況を考えれば他に手があるはずもないもので、阿賀野達に賭けるしかないと口にしていく。だがいつまでも待てるほどこちらの状況はよろしくないため、提督には万が一の場合は他の艦に移譲するようにと無理やりでも念押しする。

 

 

 

ドォォォォン!!

青葉 砲術妖精『撃て撃て!!水雷戦隊が万が一援護来たときのためにタゲをこっちに集中させろ!!そうすりゃ攻撃が通りやすくなる!!』

 

 

青葉 砲術妖精『お任せを!こちらの主砲は全期健在!!まだまだ火力は維持出来ますよ!!てぇ!!』

ドォォォォン!!

 

 

青葉 九一式徹甲弾妖精『残弾は非常用だけ残してすべて弾薬庫から引っ張り出して!!生き残るのに弾ケチってたら後がないわよ!!』

 

 

青葉『ここが正念場です!!何としてでも阿賀野さん達が合流するまで持ちこたえますよ!!』

 

 

 

それは他の艦娘も同様で、救援に駆けつけた際に味方水雷戦隊の攻撃が通りやすくするためにできる限り自艦隊にヘイトを向けようと攻撃の手をなんとか強めようとする。青葉もその一隻であり、妖精達にここが正念場だと伝えながら敵艦隊へ視線をまっすぐ向けていく。

 

残弾の猶予があまりないパラオ艦隊各艦だが、ここで弾をケチってやられるくらいならという勢いで弾薬庫から非常用だけを残して次々と青葉の徹甲弾妖精が運び出していた。その間にも全基健在の主砲は次々と轟音を響かせながら発砲していき、敵艦隊へ砲弾の雨を降らせる。

 

 

 

古鷹 砲術妖精『3番砲塔がやられたからってなんだ!!まだ主砲は健在だ!!てぇ!』

ドォォォォン!!

 

 

古鷹『ここが耐え時だよ!なんとか阿賀野さん達が来てくれるまで耐えれれば…!!』 

 

 

巻雲『ほっ本当に来るんですか…!?あっいや別に阿賀野さんを信頼してない訳じゃないんですけど…』

 

 

雪風『信じましょう巻雲さん!阿賀野さんならきっと来てくれます!!必ず!』

 

 

ー雪風ちゃんの言う通り…、他に手がない以上…阿賀野さんの言葉を信じるしかない…!!…けどそこまで耐えられるか…もし耐えられなかったら…ー

 

 

 

3番砲塔を戦闘序盤で破壊されて火力が減少しているはずの古鷹も、ここが堪え時ということで精一杯の最大限火力を叩き込んでいた。しかし本当にこんな状況で来れるのかという確信はないもので、巻雲は不安そうな表情(もちろん信頼していない訳では無い)を浮かべるが、問題ないと言わんばかりに雪風が激戦を感じさせない明るさで励ましていく。

 

そんな雪風の言葉を横目に通信機能が喪失した霧島に変わり臨時で旗艦を任された鳥海は、まさにその通りだという顔で指揮を取り続けていた。…しかし今でもかなりギリギリという戦況を目の前に本当に耐えきれるのかという不安は拭えず心の中で少し弱気になりかけるが…

 

 

 

ーいえ…!ここで弱気になってどうするの私…!全員で帰ってこなきゃみんなに合わせる顔がない…!…何としてでも耐えてやるわ!ー

 

 

 

 

 

 

 

 

ー…連中メ、必死デ抵抗シテイルヨウダガ完全ニ後ノ祭リダナ。戦艦サエ沈メテシマエバ勝ッタモ同然ダ…ーニヤリ

 

 

ー気ヲ緩メルナリ級、私達ハコイツラニサッキマデコテンパンニヤラレテタンダ。ソレニコウシテ優勢ニナッタノモ彼女ノオ陰ナンダカラナ?ー

 

 

ー…グッ…ー

 

 

ー…戦場デノ油断ハ命取リ…私達ハソレヲサッキ身ヲ持ッテ経験シタノ。ソレニ敵艦隊ハ徹底抗戦スル気ミタイダシ、呑気ソンナコト言ウ隙アルナラサッサト沈メサナイー

 

 

 

自分達の放っている砲撃が次々と敵艦隊へと襲い掛かっていく光景に、それを艦橋でみていたリ級は思わず笑みを浮かべながら勝ったなという口調で話していく。相手の必死な反撃も彼女からすれば可愛いもので、このまま戦艦さえ沈めてしまえば後は火力で物を言わせて簡単に蹂躙出来るだろうと踏んでいるらしい。

 

しかし臨時で指揮を取っているル級からすればリ級の言葉は油断そのものであり、完全に優先になっても最後まで気を緩めるなと厳しい口調で注意していく。というか最初奇襲を受けた際もいくらレーダーが使えなかったからと言えど、若干の油断があったせいもありこれでもかと言うレベルで返り討ちに合ったのだ。いくら優勢になったからと言って、相手が徹底抗戦する気ならば最後まで本気でいく必要がある。

 

 

 

ーソレヨリ旗艦ル級、今後ハ如何致シマス?ヤハリコノママ敵艦隊ヲ殲滅シテ輸送船団ト合流…デショウカ?ー

 

 

ーエエッソレデイイワ、ドッチニシロレーダート広域無線機ガ完全ニヤラレテイルセイデ輸送船団ノ状況確認モ出来ヤシナイ。サッサトコイツラヲ片付ケテ向カワナイト…ー

 

 

ーデスナ…、コノ電波妨害モ気ニナリマスガ…我々ニ呑気ニ探セルホド暇デハアリマセンシネ…ソレヲスルナラサッサト忌々シキコイツラヲ沈メテ合流シタ方ガイイデショウー

 

 

ーソウネ…(ニシテモ何ナノカシラ…コノ胸騒ギノヨウナ違和感ハ…イヤソレナラサッキカラ腐ル程感ジタノダケド…、ソレトハ違ウヨツナ…)ー

ドォォォォン

 

 

 

まあどっちにしろ徹底抗戦する気満々の敵艦隊を片付けないと他の行動に移せないため、旗艦ル級の言う通り当面は敵艦隊の掃討に集中することに。それにレーダーや無線機が謎の電波妨害で使えないため輸送船団の状況もハッキリ言ってほぼ不明、早く敵艦隊を掃討して安否を確認したいという気持ちもあるようだ。

 

だがそんな状況かでふと気になったことがあるようで、さっきから胸騒ぎのような感覚襲われていることにル級は少し眉を細めていた。この状況を考えれば誰がどう見たってよほどのことがなければ負けることはほぼない。…なのに先程とは違った感じにただ事ではないと感じたようで臨時指揮を持っているル級へ話しかける。

 

 

 

ール級チョットイイカシラ?少シ確カメタイコトガアルノダケド…ー

 

 

ー…?ハイ、ナンデショウカ…?ー

 

 

ー最初敵艦隊ヲレーダーデ捕捉シタ際、相手ハ何隻ダッタカ覚エテルカシラ?ー

 

 

ー確カ…直後ニ電波妨害ヲ受ケタノデハッキリトハ言エマセンガ…全部デ七隻ノハズデス。他ニ敵艦隊ノ反応ハ確認出来マセンデシタシー

 

 

ーソウ…(ヤッパリ…戦闘序盤デハ気ニシテナカッタケド…改メテ見ルトコレハオカシイ…)ー

 

 

 

敵艦隊発見時に相手が何隻だったのかというのが気になったようで、問われたル級は確実なことは言えないが恐らくは全部で七隻だと答えていく。それを聞いた旗艦ル級は戦闘序盤でこそあまり触れてなかったが、改めて聞いた敵艦隊の数に直感だが嫌な予感を感じたようで、それを踏まえた話を切り出す。

 

 

 

ー…ネェ、今更ノ話ナンダケド…モシソレガ全部ダトシタラ幾ラナンデモ少ナ過ギナイカシラ?コッチノ規模ヲ考エレバモウ少シ敵艦ガ居テモ可笑シクナイト思ウケド…ー

 

 

ー…ソウデスカネ?…単純ニ空母群ガ抜ケテイルカラ少ナク感ジルノデハ?我々ミタイニ戦闘ニ巻キ込マナイヨウニ護衛ヲ当テテ離脱シテルデショウシー

 

 

ー…ソンナ単純ナ話ジャナイワヨ、ドウ考エタッテ私達ノ侵攻部隊ト比較シテモコノ敵艦隊ハ戦力ガ少ナ過ギル。他ノ戦線ジャ最低デモ十隻以上ハ確認サレテイルノヨ、空母護衛デ抜ケテルト踏マエテモコノ数ハオカシイー

 

 

ー…ト言ワレマシテモ…レーダーノ最後情報カラ察スルニ他ニ敵艦隊ハ確認出来テ居マセンガ…ア…ー

 

 

ー…ソウイウコト、私達ハ謎ノ電波妨害デレーダーモ無線モ封ジラレテイル。ダカラ今コノ海域以外ノ情報ハ全クッテ言ッテモイイホド入ッテコナイ、…モチロン離脱シタデアロウ輸送船団ノ情報モネ…?ー

 

 

 

最初こそ臨時で指揮を執っていたル級はあまり気にしていなかったようだが、よくよく考えるとまさかという表情になった。…そうどう考えたって自艦隊の規模に対して敵艦隊の数が少なすぎる、幾ら空母護衛のために何隻か抜けているとしても今までの海戦から察するに七隻は異常な数。今回の侵攻作戦に限っても、ここと同様に砲雷撃戦が勃発した海域では最低でも敵艦隊は10隻以上は確認されている。

 

それに自分達が敵艦隊をレーダーで捕捉したと言っても発見から戦闘開始直前までという短い期間、もちろんそんな短時間で海域全体の把握なんて出来るはずもないのだ。…つまりこれ以外に敵艦隊が潜んでいても可笑しくはなく、完全に居ないとは言い切れない。しかも輸送船団との通信も阻害され全くといっても連絡を取ることが出来ない状況、もし仮に輸送船団がこれとは別の艦隊に襲われいるとしたら…

 

 

 

ーモシ仮ニ敵艦隊ガコイツラ以外居タトシテ、ソノ変ニイルカ輸送船団ノ連中ヲ襲ッテイルトシタラ…。コノ状況ヲ知レバスグニ戻ッテクフカ駆ケ付ケテクルハズ…ー

 

 

ー…アリ得ナイ話デハナイデスナ、我々ハレーダート通信トイウ手段ヲ失ッテイルヨウナモノ…モシ他ニ敵艦隊ガ居タトシタラー

 

 

ー…ソウイウコト、ダカラ何時マデモ死ニカケノヨウナコイツラバッカニ構ッテラレナイワ。早イウチニ戦艦ダケデモ片付ケテ……ー

 

 

 

もちろんこの状況は伝わっているだろうし、救援のために駆け付けて来ていても可笑しくはない。そもそも自分達はレーダーや通信装置が全くと言ってもいいほど使えない状況なのだ、こんな状況で逆襲でも受けたらそれこそ敵の主力艦隊撃滅どころの話しではなくなる。

 

だからこそいつまでもほぼ死にかけのような敵主力艦隊に何時迄も構っている場合ではないため、早いこと戦艦だけでも片付けて新たな敵艦隊を警戒しようとしたル級であったが……

 

 

 

『…右舷側ニ魚雷ラシキ陰を確認!!至近デス!?』

 

 

ーナッ……シマッ……ー

ドォォォォンドォォォォン!!

 

 

 

どうやら相手の方が一歩早かったようだ、突如として右舷側見張り員が砲撃音に負けないほどの声を上げながら魚雷らしき陰が見えたという報告が飛び込んでくる。それを聞いたル級はヤバいという表情を浮かべながら慌てて回避の指示を出そうとした。

 

…しかし魚雷が見える直接見えるということはかなり接近しているということ、当然そうなれば回避どころか回避行動さえ取る暇もあるはずがないもので、敵の主力艦隊を追い詰めていたはずの深海棲艦隊は次々と大きな水柱に轟音とともに包まれていくのであった……。

 

 

 

 

 






第二十七話 決着


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