ガンダムビルドブレイカーズ:オルタナティブ (Wandarel)
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プロローグ〜栄光の三人〜

皆さんお待ちかねぇ!作者のワンダレルです。
かつて栄光を意のままにしていた三人を皆さんはご存知でしょうか?
そう、あの三人です。
彼らはどのようにして出会い、そしてどのようにしてあのような別れとなったのかを知りたいですよね?
それを今ここに紐解いていきましょう。
それでは!ガンプラファイト!レディーゴー!


夜、イチカがアルマから新しいシステムを頼まれせっせと作ってる中、レイカは部屋にてとある写真を見ていた。

それはひとつの思い出。

かつて、湯ノ森最強の小中高チーム「湯ノ森シャイニングゼロ」。

その栄光が詰まっていた三人の写真。

そして零の戦女神(ヴァルキリーゼロ)の記録。

師匠との出会いもこの時だった。

「……思えば、私も不貞腐れてたんだろうなぁ。」

レイカはその写真とゴッドフレームアストレイを見ながら過去を思い出した。

「本当に楽しくって、別れが考えられなかったな。あの時は。」

これはかつての栄光の三人の物語。

当時のレイカはもちろんとても強かった。


「さぁイチカ。ガンプラファイトしに行きましょ!」

「うん!お姉ちゃん!」

私は、妹の手を引き、いつものガンプラバトルが出来る公園に向かっていた。

「イチカはどんなプラモを作ったの?」

「ザク!それでそれで、私の大好きなガンダムを組み合わせたの!」

「ふふ、絶対かっこいいわイチカお姉ちゃんが保証してあげる。」

「えへへぇ……。」

イチカも私と同じでガンプラファイトも得意で、一緒についてきてもらっていた。

そして公園に着いた時、私達はいつも通り賑やかな公園だった。

「あ、イチカ。お姉ちゃんちょっとおつかい思い出したから少しここで遊んでて!」

「はーい!」

私は母さんに頼まれていた買い物を済ませるために近くにあった惣菜店を回って行った。

「あらレイカちゃんおつかい?」

「うん!おじさんお野菜のかき揚げよっつ!」

「はいよ!お会計四百円ね!」

「えーと四百円だから……はいおじさん!」

「はいよ!イチカちゃんがよく食べるから1個おまけでい!」

「ありがとうございます!」

昔から私は礼儀正しい子だった。

だからイチカ同様にこの湯ノ森商店街の人には愛されてた。

そして、私が公園に帰ってきた時私はイチカを置いていったことを一生後悔することになる。

「イチカー?イチカー?どこにいるの?」

イチカが見当たらない。

キョロキョロと周りを見るとイチカが公園の端っこで泣いていた。

「イチカ?どうしたの?」

「あの子が……私のザクがダサイって……かっこ悪いって……それで、デバイスも……。」

見ると、イチカのデバイスは父に頼めばなんとかなるレベルとはいえ、機能不全を起こすレベルで壊れていた。

そして、レイカはイチカの指を指した人間を見た。

それはこの辺りでは有名な強さの小学生ビルダーの女子樹宮 奏(キミヤ・カナデ)だった。

レイカは頭に血が昇った。

「……イチカ、少し待ってなさい。」

「お姉ちゃんが敵を討つ。」

レイカはゆっくりと近づいていった。

そしてベースに着くと同時に決着が着いた。

「くっそぉまた負けた!」

「ふふん、出直してらっしゃい!」

偉そうな態度。

間違いない。

「ねぇ、イチカのガンプラをバカにしたの?」

「あら?あの子のガンプラは弱い上に形も成り立ってないそして塗装もされて無ければヤスリがけも行われてないビルダーとして恥を知るべきレベルの子に教えてあげただけよ?」

「……あの子がどんな思いであのザクを作ったと思ってるの?」

「第一にガンダムとザクを組み合わせること自体がありえないわ。センスがないのよセンスが。その点抜かりなく揃えてテクニックもある私が勝つのは必然でしょう?」

「……そう。ならいいわ。」

私はデバイスをセッティングした。

「妹の仇討ちさせてもらうわ。」

「あらあら、姉ですか。どれほど粗雑なものか見せてもらいましょう。」

そしてフィールドが展開される。

フィールドは電子空間のカジノ。

そして、同時に自分と相手のガンプラが降り立つ。

「あら、なかなかに綺麗な塗装を施してるわね。あの子とは大違い。」

「………。」

「貴方のガンプラの名前は?こだわりがあるのでしょう?」

「……ガンダムアストレイゴールドフレーム天光(アマツヒカリ)。」

「素晴らしいわ、貴方のそのガンプラは私のガンダムフレームで歌を奏でてあげましょう。」

「……能書きはいらない。早く始めましょう。」

「……ずいぶんと頭にキてるのね。」

私の最初のガンプラファイトの始まりは怒りから始まった。




「絶対にあなただけは捻り潰す!!」
「な、何よこの力!?こんなのシステムにないはずよ!」
「つーかまーえた……。」
次回
ガンダムビルドブレイカーズ:オルタナティブ
〜栄光の三人編〜
第一話
〜妹の仇討ち〜
ガンプラファイト!レディーゴー!


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第一話〜妹の敵討ち〜

皆さんお待ちかねぇ!
作者のワンダレルです。
さて、前回はイチカの大切なものを奪われ、激怒したレイカが天才モデラーと呼ばれるキミヤ・カナデに勝負を挑みます。
果たしてこの戦いの結末はいかに!
それでは!
ガンプラファイト!レディーゴー!


相手のガンプラはガンダムキマリスヴィダールをガンダムヴィダールのように青く染め上げ改造されていた。名前をガンダムヴィダールカナデというらしい。

「私は貴方のような人に会いたかった。」

レイカはその言葉に、は?と首を傾げた。

「何が言いたいのかしら?」

「どこの人間も、愛が足りないのよ。自分好みのカスタマイズというのは、真に愛があるなら細かく事細かく己の色に染めるべきよ。その点、貴方のその天光はとても素晴らしいわ。」

「………だから?」

「え?」

「そんなくだらない理由で私の妹を傷つけたの?」

「当然よ。出来るはずの努力を怠った人間に私は負けない。」

そして、バトルが始まると同時にカナデはデュアルハンドガンを引き抜き撃ち始めた。

無論、それは読めていたが多少の被弾はする。

「ちっ!」

天光には射撃武器がほとんどない。

「さぁ、奏でましょう。貴方の音を聞かせて!」

つまり近づくまでは

「これでやるしかない!」

腕にあるシャイニングショットが頼りだ。

だが、相手はそう簡単には当たってくれやしない。

「その程度?」

ヴィダールカナデは華麗に避けながらアストレイ天光に射撃を食らわせる。

そこからはなぶり殺しだった。

近づくことすら許されず、近づけても大型のランスに妨害され、離れればすかさずヴィダールハンドガンで撃ち抜かれる。

「圧倒的な力、そして実力は常に!プラモを愛した者に与えれる!私はそんな軟弱な人間を許さない!そしてそんな奴を叩き潰す!あなたもそうでしょう?」

すると、ガンダムヴィダールカナデは手を差し伸べた。

「私と共に来ない?貴方はきっともっと大きくなる。いえ、私が大きくしてみせる。一緒に愛なきモデラーを蹴散らしましょ?」

「…………いい信念ね。私も共感したし貴方について行こうと思う。」

「分かってくれたかしら!」

レイカは左手で握手に応じた。

「私は貴方を誤解してたわ。」

「ふふ、ありがとう。」

レイカの利き手は右手である。

「アンタが最低最悪のクズだってことが!!」

「!?」

瞬間、レイカはシャイニングフィンガーで掴んで投げ飛ばした。

「……?!?……どうしてわからないの!?」

「わかるわけが無いでしょ!大切な家族を傷つけられてそんな理屈を理解出来るはずがないわ!」

「貴方は何も分かってない!このままだとこのガンプラバトルも力のある大人によって支配される!そうならない為にも今ここで子供が大人より大きな実力を持つ必要がある!私や貴方のような人が率先してその力で全てをねじ伏せて黙らせれる!貴方もそうしてきたはずよ!」

「だったらこの力で今からアンタを黙らせる!」

レイカはスーパーモードを起動した。

「くっ、だが貴方もまたそれを利用されてるだけだって何故分からないの!!」

「利用されてても!妹を守れるならそれでもいい!」

だが、モードを起動しても実力が大きい。

所々、損傷がある。

(だけど、だけど!イチカの為にも!)

「死んでも負けるかァァァァァァァァァァァァ!!」

レイカは金色に染まりながらも赤く光った。

「満身創痍なその体で!」

ヴィダールカナデがハンドガンを連射するが、アストレイ天光は直撃しても進んでくる。

「な!?」

そしてそのまま掴まれ、殴られる。

二発、三発、四発。

何度でも殴る。

だが、ドリルランスでアストレイ天光の頭を抉る。

だがそれでも止まらない。

「何よ!?そんなシステムなかったはずよ!」

「捕まえた……ぶっ殺してやる……。」

蹴りでランスとハンドガン二丁を弾き飛ばし、馬乗りになった。

そして、一発。

「壊す……。」

二発目。

「こわす……!」

三発

「コワス………!!」

そこから連撃に入る。

「壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す!!」

何度も何度も何度も殴り続けた。

「クソっ!離脱できない!」

だが、ふと連撃が終わった。

そして、カナデはアストレイ天光の目を見て怯んだ。

その目は、獲物を狩る死神の目。

だが、救いを与えてくれる戦女神のようだった。

戦女神(ヴァルキリー)……。」

「終わりにしてやる……。」

レイカはシャイニングフィンガーの力を収縮し、シャイニングフィンガーソードを作り上げた。

だが、普通のシャイニングフィンガーソードよりも遥かに高出力だった。

「切り捨てごめぇぇぇぇぇぇぇぇん!!」

そのまま、カナデヴィダールをシャイニングフィンガーソードが呑み込んだ。

バトルエンドの音声が流れ、全てが終わった。

だが、レイカはカナデのデバイスを蹴り飛ばした。

「……強者の特権よ。出直してこい三下!!」

レイカはイチカの手を引き、その場を去った。

「……私が……負けた…………。」

イチカはいつの間にか泣き止んでいたが、私は家の前でイチカを抱きしめた。

「お姉ちゃん?」

「…大丈夫、イチカの邪魔をするやつはお姉ちゃんが倒すよ。」

そして、私はその誓い通りイチカの邪魔をするモデラーを全てねじふせ、無敗記録を伸ばし続けた。

そしていつしか私は、こう呼ばれるようになった。

零の戦女神(ヴァルキリーゼロ)と。

「私の妹の邪魔をするやつは皆等しく壊す………!」




「邪魔だ、どけぇぇぇ!」
「ふ、確かに恐ろしい力よ。数多の敵をねじ伏せてきただけはある。」
「ぶっ壊してやる!」
「ほれほれどうした?当てることすら出来んのか?」
「こいつ!」
「そのような力業がこの流派東方不敗に通じるかどうか、試してみるがいい!」
次回
ガンダムビルドブレイカーズオルタナティブ
栄光の三人編
第二話〜流派東方不敗〜
ガンプラファイト、レディーゴー!


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第二話〜流派東方不敗〜

皆さんお待ちかねぇ!
作者のワンダレルです。
前回、あの天才モデラーのキミヤ・カナデを討ち果たし、妹のイチカを守るために鬼に、そして修羅となり零の戦女神と呼ばれるようになったレイカ。
しかし、そんなレイカに挑む一人の男が現れます!
その男は一体何者なのか?
それはこのお話でわかります。
それでは!ガンプラファイト!レディーゴー!


一人、また一人とレイカは倒していく。

若き伝説、零の戦女神(ヴァルキリーゼロ)は止まらない。

全ては……そう、全ては……。

「イチカの為に……。」

もう何回と相手にしてきたのだろう。ヴァルキリーゼロの名を聞いて挑んでくる大人もいた。

だがそれすらもレイカにとってはイチカの邪魔をする存在としか思えてなかった。

故に、レイカは誰にも負けなかった。

だが……。

「レイカ、最近あの公園でよくガンプラバトルをしてるのか?」

「そうだよ、お父さん。」

「……レイカ、お前はガンプラバトルを楽しんでるか?」

「パパ……。」

「………うん、楽しんでるよ。」

嘘だ。

本当は楽しんでなんかない。

敵を潰す。

イチカの邪魔をする奴を潰す。

ただそれだけのマシーン。

(イチカを守る為に負けるわけにはいかない)

ただそれだけが、レイカを動かした。

そして、通算勝利数が千を超えたあたりだった。

「シャイニングフィンガーソォォォドッ!!」

また、1つのガンプラを粉砕した。

「さすがは零の戦女神!サインください!」

「お断りよ。時間が無いの。」

(イチカを守る為……イチカを守る為……。)

そんなことを考えていた時だった。

周りの野次馬がざわっとどよめいた。

「ねぇ、あれって……ガンプラファイト選手権の王者じゃない?」

「え!?あのメイジン達を一掃した!?」

「………?」

何を言ってるかは分からないが、デバイスをしまおうとした私の前に一人のおじいさん(?)がいた。

「ほう、恐ろしい眼をしておる。そこまでして世界が憎いか小娘。」

「……誰、アンタ?」

「ワシの名を知らぬか。ワシは黒須 洋介(クロス・ヨウスケ)、またの名を未だ負けを知らぬ東方不敗マスター・アジアよ。」

「どうでもいい。貴方も私と戦うんでしょうおじいさん?」

「ふっ……貴様の名前はなんという?」

「レイカ。デンノ・レイカ。」

「ならばレイカよ、構えるが良い。」

レイカはデバイスをセットしゴールドフレーム天光をセッティングした。

そして、相手のマスターアジアは、マスターガンダムを元にしたミキシングプラモを設置した。

そして、バトル開始の音が鳴る。

「ガンプラファイト!レディーゴー!」

「潰す……。」

レイカは一気に仕掛けた。

拳の連打、当時プラモトレースシステムが無い時でも目に見えない速度でのパンチを繰り出せた。

しかし、マスターアジアは涼しい顔でそれを避け続けてる。

ひとしきりパンチのラッシュを終えた時、マスターガンダムがかかってこいと言わんばかりに手を動かした。

「確かにその力、とても恐ろしいものよ。」

「邪魔をしないで……私はイチカを、妹を守るの。」

「貴様、守るという言葉を勘違いしておるのではないか?」

「なんですって?」

ぽっと出のおじいさんにそんなことを言われたレイカは青筋を立てた。

しかし、その言葉の後に拳を振るわれた。

レイカは不意打ちだったこともあり、ダウンした。

「そのような覚悟で討たれた者は、さぞや無念であろうな。」

「……。」

すると、レイカは目の前でマスターアジアは演武を始めた

「相手のことを省みず己が過剰に守ろうとするから敵に敬意が払えなくなり、己を見失うのだ。」

「敵……ですって?それに私が己を見失ってる……?」

「その力を背にした貴様の理屈がこのグランドマスターガンダムと流派東方不敗に通じるかどうか……試してみるがいい!」

「……上等よ。絶対に倒す!」

レイカはヨウスケに突撃した。

「邪魔だ……どけぇぇぇぇ!!」

レイカは一気に勝負を仕掛けるためにシャイニングフィンガーソードを構えた。

振り回し、絶対に当たる位置を狙った。

だが、その全てが空を切るだけだった。

「でぇりゃぁぁぁっ!!」

全てを返され、カウンターを打たれた。

大きく吹き飛ばされるアストレイ天光。

「どうしたどうしたぁ!その程度のものに過ぎんのか!」

「……なめるなぁぁぁっ!!」

レイカは最大出力でシャイニングフィンガーを構えた。

「シャァァァイニングッ!!フィンガァァァァァァッ!!」

だが、それを肘打ちで止められた。

そして、そこからは一方的だった。

「未熟!未熟!未熟千万!だからお前はアホなのだ!」

その言葉と共にレイカの何倍も早い連撃を加えられ、蹴り飛ばされた。

無論、アストレイ天光はスタンが入り行動不能になっている。

「ダァァクネスッ!フィンガァァァァァァッ!!」

レイカは一撃で全てのパーツをブレイク判定にされた。

そして、零の戦女神は地に引きずり落とされた。

バトルエンドの音声が流れ、フィールドは解除された。

「……私が負けた……。いや、負けちゃダメ。イチカを守れるのは私だけ………。」

レイカは目の前のクロス・ヨウスケを睨んだ。

「ふ、今ここで貴様がワシを殴るのは簡単だろう。しかし、お前が守ろうとしてる者が本当にそれを求めているのか?」

「うるさい!アンタに何が……!」

そういった時、いつの間にかイチカが走ってきてレイカを捕まえていた。

「お姉ちゃん、もういいよ!もういいんだよ!」

「イチカ……?離しなさい、コイツは私が……。」

「もうやめてお姉ちゃん……。いつもの優しいお姉ちゃんに戻ってよ……お姉ちゃん……。」

振り返ると、イチカが号泣しながらレイカを止めようとしていた。

「……イチカ。」

「それが真実よ小娘。貴様は守ろう守ろうと必死になりすぎて守られる者の事を何一つ考えていなかった。今貴様は自身の守るべき者に守られたのだ。」

「お願い、お姉ちゃん……。」

「………ごめんね、イチカ。お姉ちゃん失格ね……。ごめんね……。」

レイカは自然と涙が零れてきた。

「私はあの時からイチカさえ守れればいいと思ってた…でも、それは間違っていた。イチカの事を何も分かってないくせに守ろうだなんて……。」

「人の言葉を返すだけではまだまだ未熟よ。貴様の強さはまだまだ高みへと到れる。拳を鍛え精進せよ小娘。」

そういうとマスターアジアは踵を返し、立ち去って行った。

そして、周りの野次馬達もざわざわと帰って行った。

レイカは帰り道、イチカと手を繋いで帰っていた。

「イチカ、イチカのザクは……」

「大丈夫だよお姉ちゃん。私のザクをいいものだって言ってくれた人がいたんだ。だからお姉ちゃんも無理しないで、一緒に強くなろ!」

「………。」

レイカは常々このイチカの笑顔に元気をもらっていた。

「そうね、私少しやろうと決めたことがあるの。」

「うん、私応援するねお姉ちゃん!」

「………うん。」

二人はしっかりと足を踏み家へと帰った。

レイカは心に決めた覚悟と共に、帰路についた。

血まみれの戦女神はようやく、本当の姿を取り戻したのだ。

 




「恥は覚悟の上です!」
「ようし……その覚悟、しかと受けとったぞ。」
「行くぞレイカ!」
「はい!師匠!」
次回
ガンダムビルドブレイカーズ・オルタナティブ
第三話〜飛び立つ戦女神〜


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第三話~飛び立つ戦女神~

皆さんお待ちかねぇ!
作者のワンダレルです。
さて、前回レイカは血塗られた零の戦女神として数多のモデラーをなぎ倒してきましたが、そこにクロス・ヨウスケこと東方不敗マスターアジアが現れます。
そして、レイカは完膚なきまでに叩きのめされ敗北したが、その敗北とマスターアジアの教えでレイカは大切なものを無くす前に取り返すことが出来たのです。
そして今回はレイカに何か動きがあるようです。
それでは!
ガンプラファイト!レディーゴー!


私はあらゆる人から聞いて、とある人物の住処に尋ねてきた。

見た目は普通の道場のような場所しかし、すぐ近くに海と山がある。

チャイムを鳴らすと漢が出てきた。

「む?貴様はあの時の……。」

「お久しぶりです、クロス・ヨウスケさん。」

小学二年生の子供が来るとは思っていなかったのだろう。

「ここは遊び場では無いことは分かっている上でここに来たのか?」

ヨウスケさんからそう言われた私は頭を下げた。

「どうか、私に流派東方不敗を教えてください。」

「ほう?なぜワシがそれに応じると思った?貴様の願いなど跳ね返すものと分かっておったろう。」

「恥は覚悟の上です!私は、短期間であの子の為にもそして私自身も強くならないといけないんです!どうかお願いします………。」

「……だがしかし貴様はまだ子供。今の時代は武術より勉学よ。修行にかまけ勉学を怠れば貴様自身の首を絞めることになる。諦めるのだな。」

「……ならば、私はその両方をマスターします。」

「……口にするのは容易いことよ。しかし小娘。それは過酷な道ぞ。」

そう言ってヨウスケは振り返った時、レイカとは似ても似つかない誰かがいたような気がした。

「言ったはずです。過酷なのは重々承知。やり遂げてみせます。」

覚悟。そんな目を宿したレイカを見放すほどヨウスケもまた優しさがあった。

「……ようし、貴様のその覚悟しかと受けとったぞ。中に入るといい。」

「はい!師匠!」

気合いが違う。かつて数多のガンプラファイターと戦ってきたヨウスケにとってはこの出会いは奇跡であった。

「よいかレイカよ。貴様の行く道は修羅の道。最強を目指すのならば必要な期間は一年だ。

「一年……。」

「その一年の間で見事流派東方不敗が最終奥義石破天驚拳を見事習得して見せよ。そして学問に手を抜くことも許さん。少しでも学問に緩みが見えるようならばワシは即刻貴様を破門とする。よいな?」

「はい、師匠!見事成し遂げてみせましょう!」

そこからは私にとってまさに、地獄だった。

リアルでは勉強と護身術、そして流派東方不敗の武術のマスターを目指し、倒され続け、常に成績のトップを飾り、たまにイチカを連れてきて一緒に勉強や修行を務めた。

もちろん、ガンプラファイトにおいても地獄であった。

動き、目線、その全てが圧倒的。

どんな攻撃も全く当たらず、涼しい顔をしている。

そして、手厳しく指導される。

「その動きは見事。だがそれは全て手に取るようにわかるもの。相手の虚を打とうとするからこそ読まれるもの。基本的な戦い方を身につけ兵法を学べば貴様のその戦法も真に戦えるものになるだろう。」

当時、ミラージュコロイドを使って不意打ちを仕掛けようとした時、一瞬で見抜かれ、撃破された。

師匠いわく、見えるらしい。

これには師匠が本当に人間なのかを疑ったレベルで驚いた。

師匠は勉学にも精通しており、イチカや私にも様々な事を教えてくれた。

父さんや母さんにもあってもらったが……。

「ぬ、貴様らは確か……。」

「「く、クロス先輩!?」」

「ほう、あの時のデンノとヒジマ……いや、今は結ばれ二人ともデンノとなったか。」

「知り合いなの?」

「おう、パパとママの二つ年上の先輩だよ。」

「娘達がお世話になってます。」

「ふはははは、ならばこの小娘達の強さに納得もいくものよ。この二人は天賦の才を持ちながらあらゆる事への興味が絶えぬ。アルマやお前達同様とてつもない強さを得るだろう。それもお前達の教育が良いからこそだな。」

「とんでもないです先輩。私達もアルマも1on1ではあなたに勝てたためしがないんですから。」

「はっはっはっ、そう謙遜するな元日本チャンプよ!」

という、会話もあり、とても強いんだということはわかった。

私はその一ヶ月後に出たプラモトレースシステムを生かす戦い方を学び、そして師匠に両手を使わせる程になった時私に悲劇が起きる。

バキンッ……。

「嘘……。」

天光が修復不可能な破損をしたのだ。

「……どうやらプラモの限界が来たようだな。まぁあれほど無茶な動きをすればそれも当然よ。」

「天光………。」

「……そのデバイスに天光のデータはあるか?」

「……?ありますけど…。」

「ならば、貴様にはまだ戦う道は残されている。武闘家たるものあらゆる物事に真剣に取り組めい!長年戦いしかしておらなんだ貴様がどのようなガンプラを作るかワシに示してみよ!」

「……はい!師匠!」

私はそこから一ヶ月、パーツを探した。

あらゆるものに精通し、あらゆる状況に答えれるものを。

そして、私の動きを天光のように、いや、天光以上に行けるように!

そうして、私はとあるものを見つけた。

「これなら!」

そして私は半月で仕上げた。

「ほう、このガンプラはなんという名前だ?」

「正式名称はガンダムアストレイゴッドフレーム。愛称はゴッドフレームアストレイです。」

「なるほどな……貴様らしい美しいガンプラよ。かつての天光の魂がそのゴッドフレームへと受け継がれているのはよく分かるぞ。」

「……師匠、お手合わせお願いします!」

「良かろう!」

再び修行が始まった。

そして修行を始めてから約一年。

私はわずか五ヶ月で流派東方不敗が最終奥義「石破天驚拳」を習得し、修行は終わりのはずだったが、私が無理を言って修行を続けてもらった。

その理由は、私なりの流派、「流派冥王不敗」を習得したからだ。

「ふむ、そろそろか。」

「……はい。」

「貴様は今までの修行によって大きな力を手に入れた。流派東方不敗が最終奥義石破天驚拳を貴様に伝授した。だが貴様はそれだけでは飽き足らず流派東方不敗のさらなる道を開いたそうだな。」

「はい。我が流派東方不敗を元に私が編み出した流派冥王不敗。是非ともその力を試したく思いました!」

「良かろう、貴様の流派冥王不敗がこの流派東方不敗に通じるかどうか試してみるがいい!よってここで、流派東方不敗の真の免許皆伝の戦いとする!」

「……望むところです、師匠!」

「見事ワシを打ち破りその修行の成果を証明してみせよ!行くぞぉぉぉっ!!」

「戦術レベル、ターゲット確認。目標……グランドマスターガンダム!」

バトル開始のカウントがなり始める。

「ガンプラファイト!」

「レディーッ!!」

「「ゴーッ!!」」

両者共に前へと一気に詰寄る。

そして、拳がぶつかり合う。

「ほう、ただかまけて拳を振るい続けただけでは無いようだ。」

「もちろんです、私は負けられませんから!」

衝撃で距離が離れた時に、お互いが同じことをする。

「「秘技!十二王方牌大車併!!」」

ちいさなグランドマスターガンダムとちいさなゴッドフレームアストレイがぶつかりあってる中、二人はさらに拳をぶつけ合う。

「そらそらそらそらそらっ!」

「うりゃりゃりゃりゃりゃっ!」

だが、なかなかに決着がつかない。

お互いが構えた。

「ダァァァクネスッ!!」

「アァァァセナルッ!!」

「「フィンガァァァッ!!」」

二人の拳がさらにぶつかる。

そしてさらに激闘となる。

「超級!」

「覇王!」

「「電影弾ッ!!」」

二つの超級覇王電影弾がぶつかり、大きな嵐になる。

「「うおおおおおおっ!!」」

そして、終わると同時にお互いが気を高め構える。

金色のハイパーモードのオーラを纏った。

「流派!東方不敗が最終奥義!」

「流派!冥王不敗が最終奥義!」

「石破ッ!天驚拳ッ!!」

天地(てんち)ッ!壊牢拳(かいろうけん)ッ!!」

二人の最終奥義がぶつかり、爆発した。

「甘いわレイカ!!」

そして、その爆風の中を師匠が石破天驚拳のオーラを右手に宿しながら突撃してくる!

「石破天驚ッ!!ダァァァクネスッ!!フィンガァァァッ!!」

だが、それは私の読み通りだった。

(見える……今の私には!)

この時からだ。わたしはアニメでよく見ていたゼロシステム、それを野生の勘で行っている。どこからどう来るのかどう動いてくるのか。

「はっきりと見える!」

私はそれを我流で描いた持ち前の合気道にて軽くあしらった。

「何っ!?」

「流派冥王不敗の真髄はカウンターにあり!師匠、覚悟ッ!」

「むぅ!いかん!」

絶対に避けられない距離だ。

私は天地壊牢拳のエネルギーを右手に込めた。

「天地壊牢ッ!!アァァァセナルッ!!フィンガァァァッ!!」

そして、グランドマスターガンダムを掴んだ。

TheEND(ジ・エンド)!!」

そして、私は見事師匠に勝利した。

初めて勝利したのだ。

「答えよレイカ!流派東方不敗はっ!!」

「王者の風よッ!!」

「全新っ!!」

「系裂ッ!!」

「「天破侠乱ッ!!」」

「「見よ東方は赤く燃えているッ!!」」

演舞、そして流派東方不敗流の挨拶を終え、師匠は私の手を掴んだ。

「見事だレイカ。貴様はわしの見込みより遥かに強かった。よくぞこの一年で流派東方不敗を我がものにし我流の己の道を手に入れワシに勝利した。だがよいか、武闘家たるもの一時たりとも拳から力を抜くものでは無い。目先のことにとらわれ心を乱していてはこの流派東方不敗に勝とうなど夢のまた夢。」

そして師匠は私に優しい笑顔を向けた。

「レイカよ。貴様の想い、そして魂はしかとこのワシに伝わったぞ。流派東方不敗の名はその流派冥王不敗と共に貴様にとって忘れられぬものになるはずよ。修行を積み、またワシの元へ戻ってくるが良い。でェあっはっはっはっはっ!」

「ふふ、そうですね。師匠!」

私も笑った。

「さぁ、行くが良い。己の道を切り開いた貴様に勝てぬものなどおらぬ。」

「……また、時々ここに来ますね?」

「ふ、その時は貴様を完膚なきまでに叩きのめし、一から修行をつけてやろう!」

私はこの一年で大きな力を手に入れた。

その原動力は私やイチカだ。でも本当に……

「本当は私、あなたの事が好きなんですよ、師匠。」

この恋はきっと叶わない。

だけど、前へと向かうには十分だった。

「ただいまぁー♪」

「おかえり、レイカ姉!今日のご飯はステーキだってさ!」

「あらステーキなんて久しぶり!」

「お?修行の方は?」

「じゃーん!免許皆伝と新しい流派!」

「……ん?まさかクロス先輩に勝ったのレイカ!?」

「えっへへ、私もやればできる子なんです!」

「ほへー!じゃあレイカ姉!私にも流派東方不敗教えてよ!」

「いいわよイチカ。その前にご飯にしましょ♪」


「……零の戦女神(ヴァルキリーゼロ)。その強さは確かに貴様の持ち味よ。常々鍛錬を怠らず、飛び立つがよい。今こそお前が本物のキング・オブ・ハートよ。」




「流派冥王不敗の名にかけて、あなたは私が倒す!」
「ほほう、嬢ちゃんもゼロの名前持ってんのか!」
「この人、強い!」
「やばいな、これ勝てるか?」
次回
ガンダムビルドブレイカーズ:オルタナティブ
第四話
「ゼロとZERO」
ガンプラファイト!レディーゴー!


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第四話~ゼロとZERO~

皆さんお待ちかねぇ!
作者のワンダレルです。
前回驚異的なセンスで流派東方不敗を習得し免許皆伝するだけでなく新たな流派、流派冥王不敗をレイカは作り上げてしまいました。
その驚異的な力はあの東方不敗マスターアジアが少々手を焼く程に強かったそうです。
これからも彼女はとてつもない強さを発揮していくことでしょう!
さてそんな彼女ですが、今回は小規模な大会に出る模様です。
一体どんなことが起こるのやら……。
それでは!ガンプラファイト!レディーゴー!


「アルマ市長主催の湯ノ森ゲリラバトル?」

「うん!ソウちゃんから聞いたんだ〜♪」

「へぇ、面白そうね……ん?ソウちゃん?」

「あら、レイカ知らないの?我らが湯ノ森の市長ソウゲツ・アルマはパパとママの同期にして元チャンプチームメンバーの一人よ?」

「え!?あの人が!!?」

度々私たちの家に来ていたあの人が市長だとは思いもしなかった。

「それに、イチカとも仲良くしてるみたいだしな。」

「な!?い、イチカ?大丈夫?なにか酷いことされてない?何か嫌なことされたらお姉ちゃんに言ってね?ソイツちょっと抹殺してくるから?ね?ね?」

心配で思わず早口になってしまう。

「大丈夫だよレイカ姉!」

「い、いくら将来有望な人で今のGBNにプラモトレースシステムを作り上げたすごい人でも裏ではとんでもない暗躍を………。」

「レイカ姉漫画の読みすぎだよ。」

「そうだぞレイカ!パパもアルマとイチカの関係は認めませんからね!」

「父さん!」

「レイカ!」

二人が握手しようとしたそのちょうど真ん中に

ドスッ

とガーベラストレート包丁が刺さった。

その刃先にはGが150ガーベラストレートにぶち抜かれたかのような構図になっていた。

「あら、ごめんなさい。つい現役の癖で包丁投げちゃって。」

((お、恐ろしい……))

レイカとヨシモリを震え上がらせるには十分だった。

「それじゃ、明日開催だし私もソウちゃんのプラモトレースシステムのアップデートのテストプレイヤーだから先に出るけど、レイカ姉も頑張ろ!」

「むぅ……そこまで言うなら仕方ない、お姉ちゃん頑張るわ。」

そして、翌日。

ゲリラバトルの会場は大きく賑わっていた。

さらに、アルマ市長の登場によりさらに歓声が上がる。

そして、アルマ市長はそれを静止し、話し始めた。

「諸君、この度はキミヤグループを筆頭とした開発陣営と共に今、GBNはAR化に成功した。今回のテストプレイもかつて僕がプラモトレースシステムのテストプレイをしてもらったデンノ・イチカ。彼女に務めてもらおう。」

そして、イチカが舞台裏からでてきた。

「よろしくお願いします!」

イチカが、礼儀作法を学び始めたのはそういうことなのね……。

テストプレイは順調だった。

イチカのZ-ark-IIの性能を遺憾なく発揮し、テストプレイAIのことごとくを、捩じ伏せた。

そして、テストプレイ終了後にアルマから声がかかった。

「ありがとう、イチカ。君のおかげでまた湯ノ森のガンプラバトルは進化を遂げるよ。」

そう言ってイチカの頭を撫でた。

(あー、羨ましい。あー、妬ましい……イチカのあんな嬉しそうな顔を独り占めして………、いざとなったら私が……。)

と邪念と呪詛が溢れそうになる。

「さぁ、諸君。ガンプラバトルは進化を続ける。湯ノ森をガンプラバトルの最先端へと導くことを僕は約束しよう。」

その宣言にわっと歓声が上がる。

(すごいわね、アルマさん。私よりも……いや、誰よりもガンプラバトルを愛してないとこんなことは出来ない。長年変わることのなかった様式が大きく変わり始めてる。)

認めたくはないが、アルマさんの力量には本当に尊敬している。

(だ・け・ど!イチカを独り占めするのは許せない……!)

「認めたくないものね。若さゆえの嫉妬というものを………。」

そうぼやきながらブラックサンダーを食べる。

そうして、湯ノ森ガンプラゲリラバトルが始まったのだが……

(どーしましょ。)

なんかこう、強くなりすぎたのかもしれない。

老若男女問わず失礼に当たるからと全力でやってるのだが……。

「おかしいわね。イチカなら一時間くらい普通にもつのに……。」

天地壊牢拳を使うまでもなく敵をなぎ倒し続けていた。

中には大人なのに三人チームになって一人を叩くという卑怯極まりないモデラーがいたからそれも一瞬でねじ伏せた。

そして、一人、零の戦女神と呼ばれた少女は少しだけ退屈してた。

(まぁいいわ!せっかくだし楽しみましょ♪)

そう思って椅子から立ち上がった時、

「ふごぉっ!?」

「あいたぁっ!?」

偶然私の頭が人に直撃した。

「いてて、ご、ごめんなさい大丈夫ですか?」

「おーいてて、あー俺は大丈夫。そういう君は?」

「え、ええ、私も。」

「………。」

「………。」

しばしの沈黙。

「あの、もしかしてゲリラバトル参加してる人ですか?」

「おう。………ということは君も?」

「はい……。」

「「…………。」」

さらにしばしの沈黙。

「やりましょうか。」

「そうしようか。」

お互いの意見が合致した。

さっそくARモードに入る。

「そう言えば優勝者は世界選手権のチームになれるんだってさ。」

「え?そうなんですか?」

「そう言えばあなたは……。」

「お?あ、悪い悪い、自己紹介忘れてたな。俺は有音零斗(アリネ レイト)!現役中学生だぁ!よろしくな!」

「デンノ・レイカです。現役小学生です、よろしくお願いしますねレイトさん。」

「おぉ、礼儀正しい子じゃねぇか……小学生!?」

「はい、小学五年生です。」

「ほぇー、俺の弟と同い年かぁ。」

「双子の妹が一人います。」

「双子……ん?デンノ……まさかあのデンノイチカの!?」

「姉ですぅ〜♪」

「ま、マジか!?妹さんのサインもらっていい?!」

「ダメです殴りますよ。」

「おおう、めちゃ怖い。」

そんな他愛もない(?)話をしているとARモードのセッティングが完了したようだ。

「年下だからって俺は手を抜かねぇぞ!」

「そう言って私に負けた人いっぱい見てきました!」

出撃カタパルトが開かれる。

「デンノ・レイカ。ガンダムアストレイゴッドフレーム!行くわっ!」

「アリネ・レイト、コアガンダムα!出るぜ!」

同時に出撃した。

フィールドが広がる。

今回のフィールドは、グランドキャニオン。

広大なフィールド故に、相手を見つけるのはかなり苦労する。

「「ガンプラファイト!レディーゴー!」」

バトルスタートと同時にレイカは一気に走り始めた。

レイカのゴッドアストレイは地面があるならブースターよりも走った方が早いことに最近気づいたからである。

「さーて、どこにいるかしら?」

すると、超遠距離から狙撃される気がしたので回避した。

案の定自分がいたところをビームが撃ち込まれていた。

(マジかよ…野郎この攻撃を回避できんのか。おもしれぇ!だが、今は体制を立て直させてもらうぜ。)

(あっぶなーい、あの威力のビームはヤタノカガミでは防げないわ。)

その後もレイトを探しに走りまくっていた。

「しかも走り回ってる!?ブースター使わずに!?」

「だって走った方が早いんだもん♪」

「えぇ……。」

こんなおちゃらけた態度で話したりしてるがレイトの腕前はすごい。

しばらく前に同じくグランドキャニオンで戦ったスナイパー相手には狙撃されたあとの移動で追いついて撃破してたのだが。

(全然追いつけない。一体どこにいるのかしら…。狙撃地点に向かってももういないし。)

ビームを回避しながら距離を詰めようとしているが、一向に分からない。

気がついたらかなり遠くまで行っている。

(待ち伏せしてもいいけど待ち伏せしたところで相手の思うつぼよね……あら?)

一方レイトも相当に驚いていた。

(いやいやいやいや、避けすぎじゃねぇかいくらなんでも!え?完全に不意打ちだったよな!?絶対避けれない位置取りだったよな!?)

完全にレイカの強さを見誤っていたのだ。

(ちっ、もっかい体制を立て直させてもらうか。コアチェンジ!サタニクスD!あばよ!)

そう思いながらサタニクスアーマーに切り替え掘り進み始めた。

「ったく冗談じゃねぇ。まぁ、楽しいからいいか!」

そう思っていた。

「みーつけた♪」

ちょうど自分が進もうとしていた進路の先に金色のアストレイの顔があった。

「え?」

一瞬思考停止した。そして、

「嘘だろォォォォォォッ!?なんでここに!?」

「アーセナルッ!!」

「うおっ?!やべっ!」

「フィンガァァァッ!!」

そしてそのままアーセナルフィンガーを打ち込まれ、一気に地上まで引きづり出された。

「あ、危ねぇ咄嗟に防御してなけりゃ死んでた……。」

「あら、今ので確実に倒せたと思ってたんだけど……。」

「やばいな、これ勝てるか?」

「まぁ、零の戦女神(ヴァルキリーゼロ)の名は伊達じゃないから〜♪」

「ん?お前もゼロの名前を持ってんのか?」

「え?あなたも持ってるんですかレイトさん?」

「おう!俺は無型(むけい)のZEROって言われてるな!」

確かにレイトさんは型にはまった戦い方をしてない。

かなり歪だけどとても強いやり方だ。

「いい戦法ですね。ならば、この私も………。」

雰囲気が変わる。

今までとは違い、ようやく本気を出せる相手だ。

「流派冥王不敗の名にかけて、私はあなたを倒す!」

ゴッドアストレイがさらに黄金に輝く。

「へへっ、そう来なくっちゃな……。この逆境、むしろ燃えるぜ!だからこそ俺もやれる限りの全力をぶつける!」

すると、レイトは大きく飛び上がった。

そして、後ろにあった大型の山のような地形に飛び移りながらこう言った。

「まだ一度も完成してねぇが、いけるか…?」

「へっ…そうかい。んじゃ、行こうぜ!」

「チェンジ!プラネッツナイト!!」

どことなく上から鎧のようなアーマーが降り、コアガンダムαと融合される。

「プラネッツナイトガンダム!!」

融合したそのガンプラはまさに完成度が高かった。

騎士のような見た目でありながらコアガンダム系列の良さを殺していない。

「すっご……。」

思わずレイカが呟くほどだ。

「行くぜぇぇっ!」

プラネッツナイトがランスを持って突っ込んでくる。

無論レイカはこれを掴んでへし折るつもりだったが。

「うっ!?」

衝撃が大きくとてもじゃないが掴めない。

「このっ!!」

すかさずレイカは戦法を変えトツカノツルギを構えた。

(多分、アーセナルフィンガーでも掴むのは困難。なら、隙を見て叩き込むしかない。)

「やァァァっ!!」

レイカは刀二本を振るい猛攻を仕掛ける。

が、その全てがランスと盾に全て防がれスキをぬってちまちまとダメージを与えられていた。

(このままじゃジリ貧……なにか手は!?)

その時、レイトはレイカのトツカノツルギを二本共一気に盾で弾いた。

「やば!?」

「これで!終わりだ!!」

強烈な突きがゴッドアストレイに一閃する。

大きな一撃。

砂埃が凄かったが、金色の装甲を貫いていた。

が、それは腰パーツの一部だった。

「……な!?」

レイトの背後でミラージュコロイドが解除される。

「流派!冥王不敗の名のもとに!」

その手には既に最大級のエネルギー波がこもっている。

「だが!甘ぇぇっ!」

レイトはすかさず重く早い一閃を放ち、直撃したはずだった。

貫いたはずのゴッドアストレイは残像だった。

「天地壊牢けぇぇぇぇぇんっ!!」

いつの間にか至近距離にいたレイカの天地壊牢拳が直撃した。

そして、煙が晴れる。

「…………!!」

レイカは驚愕した。

半壊しながらも、プラネッツナイトが立っていたのだ。

盾も壊れ、残っているのは右腕の拳のみ。

ランスは砕けて使い物にならない。

だがそれでも彼は。

「まだ、勝負は終わってねぇぞ……!」

と走ってきた。

今まで、この技を直撃して耐えられたのはZ-ark-IIとグランドマスターガンダムくらいだ。

「うおおおおおっ!!」

そしてレイカは、知っている。

半壊したプラネッツナイトの一発の拳を受けた。

軽い。ダメージとしては非常に軽いもの。

だが、師匠の教えで知ったこと。

「良いかレイカよ。拳とは人の全てを語る。そういうものだ。」

(重くて、でも、しっかりとして、純粋にガンプラバトルを最後まで楽しんでる。)

「その拳に答えなければ、私は流派冥王不敗を名乗れない!」

ゴッドアストレイが思いっきりぶん殴った。

拳法モジュールのおかげでかなりの大打撃だ。

「さすがに、ブレイク判定が出たか。」

レイトがそう言うと、プラネッツナイトが爆散し、バトルエンドの音声が流れた。

「いやー負けた負けた!」

「お疲れ様です。」

「へへ、めちゃくちゃ強いなレイカ!」

「えぇ、鍛えてますから。」

「くく……いつか弟と一緒にやるためにも俺ももっと強くならねぇとだしな!」

レイトは負けたにもかかわらず豪快に笑い飛ばした。

「レイトさん、私はあなたを尊敬します。強くなりすぎて忘れてた事を見つけられた気がするので……。」

そうだ。私は忘れていた。

敵への敬意を。

全力で答えるといいながら、あまりにも曖昧な応対をしていたのだ。心のどこかでセーブをかけてたような……。

「お?そいつァ良かった!ガンプラ好きに悪いやつはいないしな!そんじゃ、俺は次なる相手を探すついでにはぐれちまった弟を探してくるわ!」

「えぇ、お気を付けて。」

私は手を振りレイトさんを見送った。

「私もまだまだね。もっと精進しないと。」

レイカは改めて己の足りないものを自覚し、更なる高みへと至った。




「お?次の相手か?」
「全力で応対しましょう。」
「………思った以上にやばいな。」
「流派冥王不敗の名のもとに……私はあなたを倒す!」
「深く、深く、もっと深く……真に明鏡止水の境地へ……。」
『この感じ……来る!』
「やるしかねぇか……。」
次回
ガンダムビルドブレイカーズ:オルタナティブ
第五話〜絶対領域と進化する死神〜


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第五話〜絶対領域と進化する死神〜

皆さんお待ちかねぇ!
作者のワンダレルです。
さて前回、あのアリネレイトを倒したレイカですが、大切にしていたことをレイトとの戦いで思い出し、改めて己の未熟さを知りさらなる強さを求めるようになりました。
そんなレイカの前に立ちはだかる一人の少年。
果たしてその正体やいかに!
それでは!
ガンプラファイト!レディーゴー!


レイトさんと別れたあとはひとしきり色んな人を相手にしてきた。

その後もレイトさんくらいに強いひともいたけど、レイトさんほど苦戦をすることなく一蹴し続けた。

「なんて他愛のない。鎧袖一触とはこのことね♪」

夕方のゲリラ戦の準決勝の時、レイトさんと当たることになってたが、レイトさんは諸事情で不在により私が不戦勝で決勝に登ることになった。

決勝戦は湯ノ森が誇るGBNドームにて行われるようだ。

決勝の地へと歩みを進めてると、イチカに声をかけられた。

「レイカ姉、勝ってきてね!」

「……もちろん。流派冥王不敗に不可能はないわ。」

いざ、決勝の会場につくとわっと歓声が上がってるのが聞こえてくる。

「皆さんお待ちかねぇ!湯ノ森ガンプラゲリラバトルの決勝戦へようこそ!司会は私、亜細陽介(アサイ・ヨウスケ)ことMCストーカーがお送り致します!それでは!決勝へ進んだ猛者の入場です!」

入場の合図に合わせて、私は決勝の舞台へと進む。

湧き上がる歓声の中、ストーカーが解説してくれる。

「赤コーナーのデンノ・レイカ選手!年齢は十一歳とかなり若々しい未来ある小学生ガンプラファイター!またの名をヴァルキリーゼロと呼ばれており、その実力は決して侮れません!」

と解説を受けた。

(どこで知ったのかしら、ヴァルキリーゼロの称号のこと……。)

「続いて青コーナーの高宮 光(タカミヤ・ヒカル)選手!年齢は十六歳と湯ノ森の高校生のエースと呼ばれた男!今回も彼と相棒とのコンビネーションが炸裂するのか期待が膨らみます!」

目の前に見た目は爽やかな青年が立つ。

「お?次の相手は君か。よろしくな。」

手を差し伸べできた。

むろん、私も握手で答える。

「よろしくお願いしますね。」

見ただけで、気配だけでも分かる。

(この人、強い。)

レイトさんもそうだが、このゲリラバトルにおいて他のガンプラマイスター達はかなり強い。故に私も経験値を積み込んできたと思う。

「各選手、準備はよろしいですか?」

「OKだ。」

「行けますよ。」

「今回のフィールドは機動戦士ガンダムOOセカンドシーズンの最終話より月面!」

「フルアーマーガンダムAGE2Breaker。」

「ガンダムアストレイゴッドフレーム。」

「敵を討ち果たす!」

「勝利を掴む!」

お互いがカタパルトから射出される。

「それでは!!ガンプラファイト!レディー!ゴー!」

ストーカーの掛け声と同時にレイカとヒカルはバトルリングへと降り立った。

開幕、気配を感じたレイカは反射的に右方向へと飛ぶ。

そしてさっきまで立っていた位置にビームが降り注いだ。

「開幕から狙撃……すごいわね。」

「避けられたか。なら少しずつ距離を詰めながら近寄らせなけりゃいい。」

レイカは接近戦を仕掛けたが、

「……!」

ミサイルランチャーの弾幕とビームの弾幕がそれを許さない。

(近づかせない気かな……。)

「おっと!分厚い弾幕によりレイカ選手が近づけない!この状況をどう切り返すのでしょうか!」

(こうなれば……。)

レイカはゴッドアストレイの腰からトツカノツルギを片方だけ取り出した。

(何をする気だ?)

「おや?武装を取りだした? 」

そして、レイカは真っ直ぐに突っ込んできた。

「……なら。」

ヒカルは容赦なく弾幕を展開した。

だが、それはゴッドアストレイに当たらなかった。

正確にはビームは右手のヤタノカガミで弾き、物理は左手に持つトツカノツルギによって切り払った。

故に、大きく接近を許してしまった。

「マジか!」

「取った!」

レイカはすかさず二本目のトツカノツルギを取り出し十字に切る。

ガギャアァァン

鋭い金属音により、視界に見えたのはパーフェクトストライクガンダムの物であろう対艦刀シュベルトゲペールとダブルオーガンダムセブンソードGの二本で防がれていたトツカノツルギだった。

「見切りが甘いな、お嬢ちゃん。」

そのまま蹴りを入れられ、ゴッドアストレイが体勢を崩した。

「くっ……!」

そして高火力砲アグニとサンダーボルト版フルアーマーガンダムのビーム砲が同時発射され、レイカは避けざるを得なかった。

再び遠距離での一方的な攻撃になり始める。

(思った以上に厄介ね……それに私の動きを読まれてる?)

「助かった、マリオン。」

『軌道の先読みの範囲を上げる?』

「頼む。四秒圏内を二秒圏内に。」

『了解。』

レイカは月面という宇宙空間でありながらも、宇宙空間とは思えないスピードで疾走していた。

(ブースター無しであのスピードで走るのは本来のアストレイシリーズなら不可能だな。だとすれば、Gガンダムシリーズのパーツを使ってるのは明白だな。遠距離技のないGガンダムシリーズなら弾幕を張るだけでも打撃になるはずだが、こうも避けられるとさすがにキツイな。)

(なーんて思ってるんでしょうね。)

レイカはヒカルのその思考を先読みしていた。

最初に突っ込んだのもそれが理由だ。

「物事の本質を知るために物事へ近づけ……。」

だからこそ出来た奇襲をしかけた。

「やァっ!!」

レイカは地面に正拳突きを放ち、砂埃のようなものを上げた。

「…!マリオン。」

『距離を取りましょう。』

突然のその行動には必ず意味がある。そう踏んだマリオンとヒカルは後ろへと下がった。

確かに正解だった。

八基の小さなゴッドアストレイが突撃してきた。

「マリオン、火器管制システムの譲渡をする。」

『わかった。』

当然と言えば当然だが、ランダムな軌道で飛んでくるミニゴッドアストレイを人一人で捌き切るのは不可能。

だが。

マリオンとの連携が出来ているヒカルにとっては可能であった。

ミニゴッドアストレイを弾幕で四基落とし、二基を近接武器で落とした。

残りの二基はかなりしつこく、アーマーの一部、アグニパーツとシュベルトゲペールパーツを破壊されパージした。

が、GNバスターソードIIのパーツ二刀流による改造パーツ「ツインスラッシュ」により斬られ、残り一基もGNソードIIブラスターの二丁装備による「ツインブラスト」で落とされた。

「ヒヤッとしたな、マリオン。」

『えぇ。』

だが、肝心の本体がいない。

一瞬何か火花が散るような音がし、何かに挟まれた。

「マリオン!」

『エネルギー低下!攻撃パターン……マガイクノタチ。』

「こいついつの間に…!」

ゴッドアストレイがミラージュコロイドを解く。

あの土煙を出した時、瞬時に十二王方牌大車併を放ち、すぐさまブースターをかけながらミラージュコロイドを使った。

「こうでもしなきゃ、近寄らせてくれないもの……。」

そこからトツカノツルギでの連続突きをしかけた。

「でりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃっ!」

だが、なかなかいいダメージは入らなかった。

それどころかまだ、余裕そうにしていた。

「隠し玉を披露してやるか。」

そう言うと、AGE2Breakerはアーマーパージをした。

それもこのタイプはパージしたアーマーを敵に当てることで大ダメージを負わせるものだった。

「ぐっ!!?」

パージ攻撃により、ゴッドアストレイのマガイクノタチが完全に破壊された。

突然の攻撃にダメージを受け吹き飛ばされた時、ヒカルはドッズライフルを構えていた。

そして、容赦なくパージしたビーム兵器とミサイルに当て、爆発させた。

「……ふぃー。」

『間一髪って言うところかしら?』

だが、ゴッドアストレイは欠損こそ無いものの、パーツの所々が中破レベルの損傷を受けていた。

(読み切れなかった?!……まさか、ゼロシステム!?)

「さて、これで。」

ヒカルのデバイスウィンドウに0-TRANS-AM(ゼロ・トランザム)の文字が映る。

瞬間、AGE2Breakerが紅く染まった。

ツインスラッシュを構えて突撃してくる。

レイカもむろん、迎え撃つ。

だが、本来のトランザムよりもタチが悪い。

何せ、攻撃がまともに当たらない。

そのくせこちらは常に致命傷は辛うじて避けてるが、じわじわと追い詰められていく。

一度鍔迫り合いになったが……。

出力の違いでトツカノツルギは折れた。

「ッ!!」

だが、タダではすまさないレイカは折れたトツカノツルギでツインブラストを突き刺し、破壊した。

(一旦距離を!)

ゴッドアストレイが大きくバックステップをしたが、AGE2Breakerは追ってこなかった。

疑問に持ちながらも、離れリカバリーツールで少量のパーツ回復を行なう。

だが、それすらも

『目標、予定通りの位置についたわ。』

「了解した。」

ヒカルの策のひとつだった。

『システム最大効率。』

「ライザーツインスラッシュッ!!」

大型の二刀流によるライザーソード。

避けれるはずもない。既にリングギリギリだ。

「しまった!?」

「終わらせる!」

迫り来るビーム刃、レイカはそれを受け止めるしか無かった。

ゴッドアストレイが両手を構え、暗闇に光る。

「アァァァセナルッ!!フィンガァァァァッ!!」

受け止めた、だが出力が桁違いで押し込まれ始める。

『ゼロトランザム、残り三十秒。』

「十分だ。」

ヒカルのデバイスウィンドウに残り三十秒の警告が鳴る。

(このまま、負けてしまうの?……多分、勝てないかもしれない。)

ヤタノカガミのおかげで軽減してるが少しずつ、腕パーツにダメージが入っていく。

アレ、使うの?』

「……使うか。」

AGE2Breakerのパーツが少しだが輝き出す。

レイカはそれを見たことがある。

師匠も扱っていた明鏡止水の境地に近しいもの。

パーツの覚醒

簡単に言えばパーツの限界突破だ。

だが、これを扱えるのは極小数。世にいう選ばれた人にしか使えないものらしい。

出力が上がり、ダメージ量が増える。

(もっと、もっと深く。)

レイカはその状況でも諦めてなかった。

(明鏡止水の境地よりさらに深く……。)

レイカは今、この試合を見ているイチカの為にも、負けられなかった。

その時だった……。

よくは分からない。でも、ふわっと何かを感じた。

目の前には大きな扉。

レイカは明鏡止水の境地について師匠から教わっていたことがある。


「よいかレイカ。この明鏡止水の境地とは更なる力を発揮するもの。特にプラモトレースシステムへの順応があればなお大きな力となるであろう。」

「なるほど。」

「時にレイカよ。」

「なんですか師匠?」

「この明鏡止水の境地にはワシが到達出来ておらん領域がある。」

「師匠でもですか?」

「修行をさらに積めば突き詰めれるものよ。なに、イメージは簡単だ。」

師匠が言った事はその時はまだ掴めてなかった。

「心の奥深くまで澄み渡らせれば見える深く暗い深海よ。その深海において奥深く、己の身体が海底へと着いた時、目の前に扉が見える。それを開けていくのだ。」

「開けていく?」

「そうだ。そして、同じ大きさの扉がその開けた先に現れる。そして、それもまた開けていく。」

「なるほど。」

「だが三つ目、およそ最後の扉であろう。その扉は先程の二つの扉よりも遥かに大きく、そして重いものだ。」

「ていうことは……。」

「ワシはその最後の扉を開けれてないのだ。」

それであの強さならこの人は本当に人間なのだろうか……。

そんなことを思っていた。

「だが、レイカよ。貴様ならその扉を開けれるやもしれん。」

「何故です?」

「お前は、れっきとした武闘家だからだ。さぁ!修行を続けるぞ!」

「はい!師匠!」


今、私のイメージはその最後の扉の前に来ている。

最初に見た時は開かず、レイトさんとの戦いの時も開けれなかった。

だが!!

「この手で……勝利を掴む!!」

ゴッドアストレイが金色に光、さらに輝きが増す。

ゴッドアストレイがライザーツインスラッシュを力強く掴んだ。

「でえぇぇぇぇやぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」

そして、そのままAGE2Breakerごと投げた

「な!?」

勢いよく投げ飛ばされ、中破くらいだがそこそこのダメージを受けた。

「な、な、なんとぉ!!ライザーソードのような必殺技を掴んで投げたァァァ!?」

さすがに会場もどよめく。

『ヒカル!?』

「大丈夫だ!しっかし今のでよくわかった。あのお嬢ちゃんはカウンター使いだな。」

「………。」

レイカは今、何者にも負けない気持ちでいた。

(見える……全てが。)

「パージ覚悟だ。マリオン、パターンの掴みを頼む。」

『任せて。』

AGE2Breakerがドッズライフルを撃ちながら近づく。

だが、ゴッドアストレイの掌底で全てを弾かれる。

両腕のシールドについてるガトリングも撃つが、それすらも掌底の廻手で弾かれた。

そしてある程度近づいた瞬間、ヒカルはあえてシールドで殴りかかった。

だが、レイカは。

「見える!」

シールドを両方シールドを掴み、引き剥がし破壊し、蹴り飛ばした。

『解析完了。』

「よし。」

ヒカルはレイカの超反応の解析結果を一瞬で頭に入れ、対応した。

「カウンターをする時にじりっと動く……か。」

しかしかなりの距離、リアル目線で言えば四キロメートルは離れてある。

「落ち着いて対処するか。」

AGE2Breakerがツインスラッシュを構えようと振りあげようとした時だ。

ゴッドアストレイが少し動いた。

(……!コイツ!この距離でも!!)

気がついたら、ゴッドアストレイは既に目の前にいた。

その目は緑に光っていた。

だが、確かに違いがあるのはその目にまるで阿頼耶識システムのリミッター解除をしたバルバトスのように、緑の閃光が飛び散っていた。

この時、ヒカルは思い出した。

パーツの覚醒と似たようなもの、スポーツ界で極限の集中力を引き出すという意味合いの単語。

ゾーンを。

そこから一気に目に見えないくらいのスピードで殴られる感覚があった。

だが、違和感があるのはデバイスのダメージ認知が遅れて発生していることだ。

あまりにも早すぎて、ダメージ認知が追いついていない。

そして、両手のアーセナルフィンガーを構え、ツインスラッシュを掴まれ、砕かれた。

それを機にAGE2Breakerは最後のアーマーをパージしてゴッドアストレイの気を逸らして一気に離れた。

『ヒカル!損傷が!』

「分かってる…だが、ヤベェな。ゾーンに入ってるがあれはただのゾーンじゃない、言うなれば絶対領域(アブソリュートゾーン)。あれの気を許せる人間以外入れない危険地帯だな。」

『ヒカル、こちらも出し惜しみは出来ない。』

「まぁな、頼りにしてるぜマリオン。だから……」

「一緒に決めるか。」

AGE2Breakerの目が赤く染まり、音声が流れる。

『EXAM-System-Standby』

そして、パーツの覚醒による光がより一層濃くなり、何かのリミッターが外れるような音がする。

EXAM-System-Final-Phase-Express

機械的な音声に合わせ、AGE2Breakerがビームサーベルを二本、一本は右腕に前方へ。

もう一本は左腕から肩の部分へと構えた。

赤眼の閃光が走る死神と碧眼の閃光を宿す絶対領域の神が。

ぶつかった。

仕掛けたのはレイカから。

無数に出てくる拳を全て読み、回避。

ビームサーベルによる超高速の一振。

それを回避するゴッドアストレイ。攻防一体、そして一進一退。

どちらかがダメージを与えればどちらかがダメージを負う。

「『俺達は負けやしねぇ!!』」

覚醒とリミッター解除をしたことにより、マリオンとの連携はもはや一心同体の領域にあった。

そして、レイカもまた、真に明鏡止水の境地へとたどり着いていた。

「うおおおおおっ!」

双方が雄叫びを上げながらAGE2Breakerはビームサーベルを、ゴッドアストレイは拳を振るい続ける。

そして、レイカは足払いをしかけた。

しかし、それを読めているヒカルは素早く避けた。

だが、それが命取りだった。

「天地ッ!!壊牢けぇぇぇぇぇんっ!!」

直撃。誰もがそう思っていた。

しかし、その必殺技をヒカルは避けた。

「『甘いんだよオォッ!!』」

そう言って、ゴッドアストレイは左腕を縦に斬られ、腰を袈裟斬りにされ削られ、ギリギリまで追い込まれた。三撃目が振るうためにAGE2Breakerがビームサーベルを構えた!

「まだ………終わってない!」

レイカの強い叫びが響く。

その手には、天地壊牢拳によるエネルギーがこもったアーセナルフィンガーがあった。

「『なんだと!?』」

「天地壊ろォォォォォッ!!アァァァァァァセナルッ!!フィンガァァァァァァァァァァァァァッ!!」

レイカはAGE2Breakerの胴体を貫いた。

大きなエネルギー体となった右腕の掌にはAGE2Breakerのコアが掴まれていた。

「『………へっ。』」

TheEND(終幕)

貫いたその右手のコアを握りつぶした。

AGE2Breakerの爆散と共にバトルエンドの音声。

そして、大歓声があがった。

「勝者!デンノ・レイカ!今後見ることがないであろうレベルのとても素晴らしい戦いでした!皆さん!最高の試合を繰り広げた二人へ拍手を!」

ストーカーのその声に応じて大勢の人間が拍手をする。

「やったねぇ!レイカ姉!」

「……ふふ、イチカ。当然よ。流派冥王不敗に不可能は無いもの。」

そして、歓声の中、こちらにヒカルが歩いてきた。

「……ぶったまげたよ本当に。小学生とは思えないレベルだしな。」

「ふふ、ガンプラマイスターたるもの侮ってはいけませんよ♪」

「いや、すごかった。多分俺に足りないものがあったんだろうな。次は勝たせてもらうぜ……レイカ。」

「……頑張りますよ、ヒカルさん。」

二人は白熱する歓声の中、固く握手をした。

そして、表彰も終わり各々が帰宅している時、レイカは思った。

(……今日の戦いは多分忘れられないわね。きっと。レイトさんも、ヒカルさんも。)

レイカはゴッドアストレイを広がる夜空に向けた。

月光を浴びたゴッドアストレイが煌めいたのはきっと気のせいだろう。


「……市長、よろしいですか?」

「あぁ、構わないよ。」

「例のプラモトレースシステムのアップデート企画、お疲れ様でした。」

「ありがとう、***君。君のサポートもあっての結果さ。」

「ところで市長、湯ノ森からの代表は決まっているのでしょうか?」

「あぁ、既に決めさせてもらったよ。彼等は……ガンプラファイトをさらなる進化へと発展させれるからね。」




「ん?レイカ?どうして君がここに?」
「そういうヒカルさんこそ。」
「なんだ?どういう事だ?」
「単刀直入に言おう、君達にはチームになってもらう。」
次回
ガンダムビルドブレイカーズ:オルタナティブ
第六話
「栄光の始まり」
次回も!
ガンプラファイト!レディー!ゴー!


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第六話〜栄光の始まり〜

皆さんおまちかねぇ!
作者のワンダレルです。
さて前回、レイカとヒカルによる大激闘か繰り広げられ、圧倒的でもはや、神秘的な戦いを見ることが出来ました。
そんな彼らにも数奇な運命が待っているようです。
それでは!
ガンプラファイト!レディーゴー!


あのゲリラバトルから二週間が経った。

私こと戦女神のゼロは凄まじい勢いで有名になった。

聞いたところ、決勝で倒したタカミヤヒカルさんはテレビや動画配信などでも取り上げられるほどに有名で、それをきっかけに……。

何故か小学校で表彰されることになった。

「おめでとう、レイカさん。」

「ありがとうございます!」

賞状を受け取って、私は自分の席へと戻った。

そして、長い話を聞き終わり、隣のイチカが寝ていた。

「起きて、イチカ。」

「んにゅ……。」

「あ、アルマさん来てるわよ。」

「え!?どこどこ!?」

「嘘よ〜♪」

「なーんだ嘘かぁ……。えへへ。」

「ふふふ。」

そう談笑していた。

「それでは、本日来賓としてお越しくださったソウゲツ・アルマ市長からの祝辞です。」

イチカとレイカが固まり同時に言った。

「「え?いたの?」」

壇上に登った市長は真剣な眼差しで私たち全員を見ていた。

「今回、デンノレイカというたった一人の生徒がこうして大きな大会に出て栄光を与えられた。しかし、君たちにもチャンスはある。今回の件で一層君たちはガンプラバトルへの思いが熱くなったはずです。この八木野小学校の皆さんにもこぞってガンプラバトルに励んでもらいたいものです。何はともあれ、レイカ君、優勝おめでとう。以上です。」

盛大な拍手が送られる。

隣のイチカに至ってはもう泣いている。

そして、その表彰は下校前の事だったので、いつも通りイチカと二人で校門を出た時、いかにも怪しい車があった。

「………イチカ。」

「分かってるよレイカ姉。」

イチカはモデルガンを取り出し、私は身構えた。

そして、車の扉が開いた瞬間

パァン!

イチカがBB弾を男に直撃させ怯んでいるところを私が近づき、

「せいやっ!!」

みぞおちに肘打ちを決めた。

グエッと言って男が悶絶しうずくまったのを見て

「走るよイチカ!」

「ラジャ!」

二人は走って家まで帰った。

家に着いて、店番をしていた母さんに言うと。

「…………あ。言うの忘れてた。」

と小声で言った気がした。

ふと商店の入口を見るとさっきの男がいた。

レイカは構え、いつでも倒せるようにしていた。

「あぁぁ!!レイカ!ストップストーップ!」

「母さん!?」

急に母さんに抱きしめられビックリしていた。

「……やれやれ、君たち姉妹の連携は流石だね。」

見るとさっきの男は市長さんだった。

ん?ということは私たち……。

「市長さん殴ってたの?」

「ソウちゃんだって気づかなかった……。」

母さんによって頭に手刀を叩き込まれたんこぶが出来た二人が改めて状況を確認する。

「今日、イチカにも用があったのと私にも用があったんですねアルマかん。」

「そうとも。」

「ごめんねアルマ。ウチの娘達が…。」

「構わないさ、あの時も君とヨシモリはきっての武闘派にして脳筋だったからね。」

「え?何?今私バカにされた?撃っていい?ねぇ撃っていい娘達よ?」

「お母さんステイクール。」

「というわけさ、ご同行願えるかな?」

「分かりました。そういうことでしたら。」

促されるまま二人で車に乗った。

「戦女神のゼロ。君の戦闘力は素晴らしいものだったよ。」

「あら、ありがとうございます。」

「イチカと共に作り上げたプラモトレースシステムを完璧使いこなしてる辺りは流石は双子姉妹、そして、マスターアジアの一番弟子なだけはあるね。」

「レイカ姉は強いからねぇソウちゃん。」

「まぁ、それもあって折り入っての頼みがあるわけさ。」

市役所に着き、イチカにもついてきてもらう形で待合室へと連れていってもらった。

「既に役者は揃ってるよ。さぁ、入りたまえ。」

私は先陣をきって扉を開けた。

そして、その光景に思わず絶句した。

「ん?レイカ?どうして君がここに?」

「あん時のガキンチョ共!?」

「あ!ヒビキ君!」

「!イチカちゃん!」

まず目に入ったのが準決勝などの前に戦ったプラネッツナイトの人、アリネ・レイトだった。

「あら、プラネッツナイトの怖い人のレイトさん。」

「おい待てクソガキ、名前の前のやつなんだ。」

そして、同じクラスでイチカが仲良くしてると言っていたヒビキ君だった。

「あー、待て。となるとこのクソガキ二人はヒビキと同い年だったってのは知ってるが同じクラスだったのか?」

「そうなりますねぇ……。」

ヒビキとイチカは部屋の奥でガンプラを持って遊びだしていた。

そして、私はもう一人目に入っていた。

「……あ、やべ気づかれた。」

そう、決勝戦で戦ったタカミヤ・ヒカル。彼もまたここにいたのだ。

「お久しぶりですヒカルさん。」

「久しぶり。」

この状況を作ったアルマ市長が少し咳払いをした。

「さて、ここに君たち三人を集めた理由だが、突然だが君たちにはチームになってもらう。」

「「「………は?」」」

無論三人の答えはそうなった。そして真っ先に反論したのはレイトさんだった。

「おい待てよ、日本代表戦に出れるのは優勝者のレイカってやつだけじゃねぇのか?」

「ふ、何も1on1での出場とは言ってないだろう?僕は優勝者の基準でチームを作ると決めていたのさ。レイカ君、あのバトルの後の簡単なアンケートがあっただろう?それに答えてくれたからこそこのチームさ。印象に残ったバトルもしくはガンプラを二つ選出してもらった時、バトルはヒカル君、ガンプラはレイト君の二人を選んでいた。ということさ。そして、これは君たち三人に答えてもらってはいるよ。」

ヒカルさんが口を開く。

「なるほど、あのアンケートそんな感じだったのか……。確かに俺もゴッドアストレイとコアガンダムαとの戦闘が印象的だと書いていた。」

「……そういうことなら一応納得は行くが、正直上手くやって行けるか分からねぇな。」

「確かにそうですね。」

「んで、市長さんよ、アンタに言われてヒビキを連れてきたが、ヒビキはともかくあのちんちくりんはどういう理由でここに……。」

私はレイトさんがそれ以上言う前にレイトさんの机を割っていた。

「………誰の妹がちんちくりんですって?」

「…マジか。」

「妹のイチカはその小ささがいいんです!何故それがあなたにはわからないんですか!!」

「いやそこかよ!!」

「落ち着きたまえレイカ君。まぁ君たちがヒビキ君、そしてイチカがいることには疑問を持つだろう。理由は明白だ。イチカとヒビキには僕がまだ見つけれてないというのもあるが、僕が見るに二人には君たち同様の天賦の才があると思ったのさ。そして、プラモトレースシステムのテストプレイヤーとしてイチカを採用してる。そしてヒビキ君はレイト君、君の戦う勇姿を間近で見たいということで、イチカとヒビキ君をチームのサポーターに採用しようと思ってるんだ。」

「僕、兄さんやみんなのために頑張るからお願い兄さん!」

「………ったくしょうがねぇなホント。わかった。だが無理だけはすんなよ?約束破ったら怒るからな。」

「うん!」

ヒビキ君は目を輝かせて頷いていた。

「そこで、チーム名を考えてもらおうと思ってたんだが……。」

「「だが……?」」

三人が首を傾げる。

「手違いというかなんというか、イチカとヒビキが考えた名前を二人が書いて既に選手権の本部に出してしまったらしくてね。」

「ま、マジかよ……」

「あらあらイチカ、あわてんぼさんね。」

「チーム名は湯ノ森シャイニングゼロ……となってるのだが、こちらの手違いだ。訂正も兼ねて君達に……。」

「いや、それでいいんじゃねぇか?」

ヒカルさんがそう切り出す。

「二人のゼロと俺の名前がヒカルだからシャイニングゼロっていうチームにしたんだろ。なら甘んじてその名前を受け持とうじゃねえか。」

「ヒービーキー?」

「だって兄さん忙しそうだったから……。」

「よくやった!!」

「………えへへ。」

「まぁ、君たちがそれでいいならチーム湯ノ森シャイニングゼロで登録しておこう。無論、君たちの戦いのサポートは湯ノ森市長たる僕が全面支援することを約束しよう。」

アルマのその言葉に三人は一応納得はいった。

「リーダーはどうする?さすがにチームならリーダーいるだろ?」

ヒカルがそう提案した。

すると、ヒカル以外の全員がヒカルを指さした。

「……………え?俺?」

「年長ですもの。」

「年長だしな。」

「年長だからねぇー。ね、ヒビキ?」

「うん。」

「僕もそれで賛成だ。」

「えーえーそうですか俺に拒否権はない感じでですか。やってやろうじゃねぇかぁぁぁっ!!」

ヒカルが半ギレで叫んだ。

そうして、その日から部活動と同じような感覚で戦闘訓練やチューニングを行った。

チームワークの連携も兼ねてお互いを知るために何度も模擬戦をし続けた。

そうして半年の年月が経ち、全国日本選手権の会場へとたどり着いた。

「思えば長かったですね、ヒカル、レイト。」

「まぁ、ここまで来れりゃあとはのし上がるだけだろ!」

「レイカ姉達なら勝てるよ!」

「僕も応援するから頑張って!」

「そんじゃ行くか、湯ノ森シャイニングゼロ!」

「「いや、そういうのは恥ずかしいから無理。」」

「……俺よくコイツらと一緒にいて心無事だったな……。」

こうして、栄光は始まった。

この後の絶望を知ることも無く。




「第一回戦!湯ノ森シャイニングゼロVSチームクロノクル!」
「やるしかねぇな!」
「貫きます!」
「よし、約束だみんな!」
次回
ガンダムビルドブレイカーズ:オルタナティブ
第七話「光り輝くゼロ」
ガンプラファイト!レディーゴー!


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第七話〜光り輝くゼロ〜

皆さんお待ちかねぇ!
作者のワンダレルです。
さて前回、湯ノ森シャイニングゼロとして日本へそして世界を制する為に始動した小中高最強のチーム!
初戦へと向かい、栄光を掴め!
それでは!ガンプラファイト!レディーゴー!



予選を難なく突破した湯ノ森シャイニングゼロ。

はっきり言えば秒殺だった。

年齢層の違い故にぶつかることは多いものの、基本的な強さでカバーしきっていた。

そして、本選の第一戦の前日。

「はーい!休憩ー!」

レイカは輝いていた。

レイトとヒカルは死にかけていた。

当然である、本選向けに五十本組手の半分をほぼ休憩無しで行っていたのだから。

「あの、レイカさん?いやレイカ様?」

「レイカでいいですよ〜。」

「指が死にそうなんですが……。」

思わずヒカルがそんなことを言う。

「あらあら、気合いで何とかしましょ♪」

「なんとかならねぇから言っt………。」

レイトが少し口応えしたその瞬間。

ベコォッ!!

「大丈夫ですよ!だって私もこうして元気ですから!ね?」

アルマの敷地とはいえ、レイカはレイトとヒカルの背後の壁の一部を粉砕した。

「「あ、すみませんなんでもないです。」」

ある意味地獄だったと思う。


日本代表戦本選の会場は湯ノ森から大手の電車の八つ隣駅にあるダイバーシティTokyo。

「広いわ〜……。」

「まぁ、大都会ってやつだしな。」

「さすがは本選って所だな。」

なお、主催者の話はそこまで深くもないのでこの三人は全く聞いていなかった。

「それでは、選手の皆様の健闘を祈ります。」

湧き上がる拍手。

「美味しい物食べたいですねぇー。」

「アルマのおっちゃんが奢ってくれるだろ。」

「さすがは大人だ。」

その拍手の中我が道を行く湯ノ森シャイニングゼロ。

その夜、アルマに呼び出された。

「さてと諸君、既存のチーム戦なら対策のひとつでも立てるところだが………。」

レイカ、レイト、ヒカルの三人は既に眠っていた。

「……ふふ、彼らにはその必要はなさそうだね。」

アルマはホテルの部屋から出ていった。

……その数秒後に全員が起きて、枕投げを始めたのは言うまでもない。


本選第一戦ブロック

「みなさんお待ちかねぇ!実況、司会進行を務めるMCストーカーでございます。さて皆さん、待ちに待っていた日本代表戦!これにより世界選手権へのチームが決定する戦いの第一打!予選でのシード権を含めた計八チームによる本選出場をかけた熾烈な戦いの幕開けです!では!入場していただきましょう!チームクロノクルとチーム湯ノ森シャイニングゼロの入場です!」

会場がざわめき始めた。

「そういや、湯ノ森がこの大会出るの久しぶりなんだってな。」

「なるほどぉ〜なら、皆さんが知らないからでしょうか。」

「だったら俺たちで湯ノ森を示してやろうじゃねぇか、な?」

「「あ、そういうのいいです。」」

「こいつら……。」

チームクロノクルの人達は男性が一人、女性が二人のチームだった。

「よろしくお願いしますね、湯ノ森シャイニングゼロ。」

「こちらこそよろしくな、チームクロノクル。」

お互いのチームリーダーが握手をした。

そして、お互いがデバイスにセットしていく。

耳の良いレイカが、相手側の思惑を把握した。

「クロノクルの皆様、どうやらレイトとヒカルを先に潰しに行くそうですよぉー。」

「……ほほう、小学生のガキだからってレイカも舐められたもんだな。」

レイトが笑いながらそんなことを言う。

「なら好都合だ、あまり手の内を晒さずに済みそうだな。」

「えぇ、作戦はそれでいいんですね?」

「おう、やってやろうか。」

会場の歓声が響く。

そして、それと同時にカウントが始まる。

「それでは!ガンプラファイト!レディーゴー!」

MCストーカーのその掛け声と共に出撃する。

「タカミヤ・ヒカル、ガンダムAGE2BreakerFA!出るぞ!」

「プラネッツナイトガンダム、アリネ・レイト!行くぜ!」

「ガンダムアストレイ・ゴッドフレーム、デンノ・レイカ、行きまーす!」

ステージは宇宙空間。

リングは視認可能な距離である。

相手のリーダーのガンプラはブルデュエルにストライクノワールを組み合わせた機体、ブルノワール。

ガンダムエピオンを元にガンダムエクシアと融合したガンダムEE。

ガンダムフラウロスとデュナメスを組み合わせたフラウロスD。

戦術は完璧だった。

「各員!予定通りに動きなさい!」

「「ラジャー!」」

そして、ブルノワール、EEが近づきフラウロスDが狙撃に入り、レイトを執拗に狙いながら、AGE2Breakerを牽制する。

「ちっ!!」

プラネッツナイトがフラウロスDの攻撃に被弾しないように回避しながら、シールドで残り二機の攻撃を捌く。

「やべーな、やっぱ近づけねぇ……。まぁ、全部俺の想定内だがな。

ヒカルは不敵に笑った。

「各員押し込め!フラウロスD!ダインスレイヴを打ち込め!」

「はーい♪」

「よし、やれ!」

次の瞬間、撃ち抜かれたのはガンダムEEだった。当然、格闘特化の回避型故に一撃でブレイク判定になった。

「!!何してるのD!」

プレイヤーの方では揉めていたが、Dが言い放ったのは衝撃の一言だった。

「いや、俺は打ってない!俺はしばらく前にブレイクされてた!

「………は?」


遡ること一分前。

「当たらないな……。さすがは予選を突破しただけはあ……」

このセリフを言うと同時に一気にブレイク判定が入っていた。

その背後には残忍な戦女神がいた。

「ふふ、借りるわね〜♪」

そう言ってゴッドアストレイはブレイクされる前にフラウロスのダインスレイヴの弾頭を持って右手のみを一瞬だけハイパーモードにし。

「えい♪」

素手で投げた。


「………!」

気がつくと目の前にゴッドアストレイがいた。

至近距離、刹那、ゴッドアストレイはトツカノツルギを引き抜き、四肢を裂き、ハイヒール状の脚部によるかかと落としでブルノワールを破壊した。

「し、試合終了ー!!わずか二分!たった二分で決着を着けたァァァ!!」

ストーカーがそういった後に静まり返っていた会場が大騒ぎが始まった。

「今何したんだ!?」

「あの金色のアストレイ何時からいなくなってた!!カメラ回せ!」

さぞ衝撃だったろう、マスコミが騒ぐ騒ぐ。

「あー、うるせぇ。」

レイトがぼそっと愚痴をこぼす。

「私何か悪いことしたんでしょうか、ヒカル?」

「まぁ……だいぶ悪い事したな!」

ヒカルがニヤッと笑う。

「やだー、レイカ怖ーい!」

「「お前が一番怖いんだよ!!」」

ヒカルが相手のリーダー、ヤシマ・アイに握手した。

「お見事、シャイニングゼロ。圧倒的な力を感じたわ。」

「そりゃどうも。なにせうちのチームは暴れん坊将軍とじゃじゃ馬のハッピーセット(皮肉)だからな。」

「あら〜誰がじゃじゃ馬なのかしら〜?」

「お前だよガキンチョ。……あだだだ!ギブギブ!!」

このことは歴代史上初の事だ。

わずか二分での決着、ましてや日本代表戦という大きな舞台でこれを出来たのは後にも先にも彼らだけである。


宿泊施設にて。

「お疲れ様、わずか二分で終わらせるなんて本当に伝説になりそうだね、君達なら。」

「まぁ、ある意味ズルしたからなぁ。レイカが相手の戦術聞こえてなかったら集中砲火受けてたレイトが少し危なかったくらいだし。」

「あんくらいなら避けれはするが、作戦の為とはいえヘイトを稼ぐのはもうコリゴリだぞ俺は。」

「でもレイトさん優しいですよね?自分から殿(しんがり)やるって言ってましたし。」

「う、うっせ……あーもう、トイレ行ってくる!」

そう言ってレイトは出ていった。

イチカとヒビキはもう寝ている。

「……イチカやヒビキ君も私たちの姿を見てガンプラバトルをするんでしょうね〜♪」

「そうなったらビシビシと鍛えてやるかレイカ。」

「イチカに手を出したら殺しますよ?」

「あーやっぱ今のナシで。」

そんなやり取りがいとしくて楽しかった。この時は。


宿泊施設のトイレにて

「がハッ…ゲホッゲホッ………、クッソ……まだ………。」

(余命は長くて半年、下手をすれば一ヶ月でしょう。)

「……死んでたまるかよ……なぁ、コアα………。」

便器の中に広がる血反吐、レイトはコアαと共に皆に心配をかけないように生死をさまよっていた。

「……終わりにゃ出来ねぇ………ここまで来たんだ……日本は取る………、絶対に………。」

彼らは栄光の終わりへと走っていく。

脇目も振らず、上を目指して……。

 




「強い……この人達!」
「まだ、終わってねぇぞオラァ!!」
「そっちとは射程がダンチなのよね!」
「もらったぁ!!」
「流派!冥王不敗の名のもとに!」
次回
ガンダムビルドブレイカーズ:オルタナティブ
栄光の三人編第八話
「準決勝湯ノ森シャイニングゼロVSチームアリメノール」
それでは次回も!
ガンプラファイト!レディーゴー!


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第八話~準決勝湯の森シャイニングゼロVSチームアリメノール~

皆さんお待ちかねぇ!
作者のワンダレルです。
さて前回、圧倒的な戦力差を日本中に轟かせ、ある意味世界にもその凄まじい強さを見せつけた湯の森シャイニングゼロ。
勝機ムードがただよっているなか、ただ一人雲行きの怪しい男がいました。
それでは!
ガンプラファイト!
レディーゴー!


湯の森シャイニングゼロのメンバーは次の準決勝に向けて、ウォーミングアップを兼ねて組手をしていた。

そして、累計1999回目の組手で、レイカが勝利した。

「これで……それぞれが999勝999敗1引き分けね……。」

さすがのレイカも疲れていた。

そこで、ヒカルがある提案をする。

「ならよ、最後の一回は決勝終わった後にやって1000勝した方が湯の森最強ってことにしないか?」

「ほう、湯の森最強か。」

「いいですね〜♪私、俄然燃えてきました。」

「そんじゃ、お前ら約束な。決勝終わったら1000勝と湯の森最強を賭けた最後の戦いをしようぜ。」

「おー!」

「おう………。」


その夜、レイトは思い悩んだ。

(……クソっ、中途半端で終わらせたくねぇ。せめて、アイツらに花を持たせるまでは……。)

そう思いながらコアガンダムαを見た。

コアガンダムαはレイトの意志に答えるかのように頷いた。

「頼むぜ、コアα……もしもの時ヒビキを守れんのはお前だ。」


準決勝当日。

昨日のレイカの活躍のせいか、やけに人が多い気がする。

「なんか、人多くないかヒカル?」

「まぁ、あれだけのことしたらそりゃこうなるだろ。」

「えー!レイカ怖ーい……誰のせいなのかしら〜……」

「「だからお前だよ!!」」

そんなことを言ってる間にチームアリメノールの面々が現れる。

華奢な男とヘッドホンを首にかけてる女性。そしてもう一人は細め女性が居た。

「あら、いい男じゃない〜♪」

ヒカルに向けて細めの女性がそう言った。

「アタシがアリメノールリーダーカマイ・リョウタよ。体は男でも心は女の子だからよろしくね☆」

「よ、よろしく……。」

さすがのヒカルもびっくりした。

レイカも驚きレイトもビックリした。

いわゆるオカマという類のイメージが大きく崩れるほど、綺麗な女性だとしか思えなかったからだ。

「そして、アタシの可愛い妹弟たちよ。」

「ども、湯の森シャイニングゼロの噂はかねがね聞いてます。カマイ・リョウタの弟、カマイ・アキラです。よろしくお願いしますね、アリネ・レイト。」

「おう、よろしくな。」

「やっほー、カマイ・リョウタとカマイ・アキラの妹にして釜井家の紅一点、カマイ・ハヤナでーす!よろしくね、レイカちゃん!」

「よろしくねぇーハヤナちゃん〜♪」

「ちょーっと待ちなさいよ!紅一点じゃないでしょハヤナ!」

「だってリョウタ兄男じゃん!」

「なぁんですってぇ!!」

「まぁまぁ、落ち着きましょうよ。ともかく、よろしく頼みますね?」

チーム全員と握手した。

そして、ガンプラが並べられていく。

「それでは!準決勝、チームアリメノールVS湯の森シャイニングゼロの試合を開始します!ガンプラファイト!レディーゴー!」

「カマイ・リョウタ、ガンダムAGE-2ヤークトアルケー、行っくわよぉ〜♪」

「カマイ・アキラ、Sin・スサノオ、推して参る!」

「カマイ・ハヤナ、ハイパーガンキャノン、いっきまーす!」

「フルアーマーAGE-2Breaker、タカミヤ・ヒカル、目標を破壊する!」

「コアガンダムα、アリネ・レイト!敵を殲滅する!」

「ガンダムアストレイ・ゴッドフレーム、デンノ・レイカ、敵を粉砕しまーす♪」

全員が並んだ。

ステージはソロモン宙域。

そして開始と同時にゴッドアストレイのトツカノツルギとSin・スサノオの強化サーベルのシラヌイとウンリュウがぶつかった。

それを皮切りに、ハイパーガンキャノンとフルアーマーAGE2-Breakerによる砲撃合戦も始まった。

そして、レイトは

「チェンジ!プラネッツマーズ!!」

マーズアーマーを装着して必然的にAGE-2ヤークトアルケーとぶつかった。

「あらあら、威勢のいい子♪」

「るせぇ!俺はオカマに構う趣味はねぇよ!」

「あら残念、なら力ずくでわからせるわァ!!」

隠し腕のビームサーベルとGNバスターソードの三連撃を見事、ヒートレヴソード二刀流で防ぎきった。

「あらら、あのお嬢ちゃんだけが強いも思ってたけど、どうやらそれと同等に厄介ね!」

「へっ!初戦でレイカしか見てねぇなら足元すくわれるぞオラァ!!」

そう言って、ヒートレヴソードの峰打ちでAGE2ヤークトアルケーを怯ませた。

「悪いが、伊達にレイカ達と模擬戦してねぇんだ、なめてかかったら痛い思いするぜオカマ野郎。」

「ほほう、痺れるわね〜……俄然やる気出ちゃうわ!」

一方、フルアーマーAGE2Breakerとハイパーガンキャノンは弾幕を貼り続けていた。

「アッハハハッ!楽しいねぇヒカルお兄ちゃん!」

「おいおい、人の事をお兄ちゃん呼ばわりしてんのかこの嬢ちゃん!」

『ヒカル、ミサイルポッドの弾薬が尽きそうよ。』

「OK、パージ頼むマリオン!」

(しかし、あのガンキャノンめちゃくちゃ弾幕張ってやがるな……こいつら思ってた以上に強いが、他のみんなは大丈夫か?)

その奥で、ゴッドアストレイとSin・スサノオが凄まじい連撃を繰り広げていた。

目に負えないスピード、通常なら見えそうにない。

だが、二人だけにはわかる世界である。

そして再び剣と剣が交わる。

「なかなかいい筋をしている、剣術士か?」

「いいえ、武闘家です〜♪」

そして再び金属音が鳴り響き続ける連撃が始まった。

(初戦の時に目をつけていたが、思っていた以上に危険だな。)

(なんだろう……妙に手加減されてるような気がするなぁ。)

レイカのこの違和感はすぐに分かった。

「リョウタ兄さん!兄さんの言う通りプランBの方がベストだ!」

「あらヤダ、やっぱり〜?ハヤナ!フォーメーション変えるわよ!」

「えー!……じゃ、本気だすからねヒカルお兄ちゃん♪」

そう言って、三機は一気に距離を取った。そして、ハヤナがとんでもないことをし始めた。

ハヤナがバトルエリアギリギリのラインまで向かい、何かを構えた。

「……くそ!レイト、レイカ!回避だ!」

「了解!!」

ハヤナのハイパーガンキャノンがツインサテライトキャノンをぶっ放してきたのだ!

「そっちとは射程が……ダンチなのよね!」

さらに、レイカに向かって凄まじい量の弾幕を張り始める。

「やーん!レイカ近づけなーい!」

さすがのレイカもこれは本音だ。

ミサイル、ビームスナイパーライフル、そして狙撃銃の的確な乱射がレイカの動きを大きく制限した。

「ちっ!」

レイトが援護に回ろうとしたが、背後の殺気に気が付き、すんでのところでヒートレヴソードで受け止めれた。

「あ、あっぶねぇ!!」

「妹の元にはいかせん!」

(クッソ!このままだとレイカもあぶねぇ!!)

一方で

「あら、君もAGE2をベースにしてるのね〜。お姉さんが相手をしてあげるわ〜☆」

「……アンタ、只者じゃないな。初戦ではあまり俺らの手の内は見せてなかったはずなんだが……。」

「オホホ、なぁに簡単よ〜、相手がこうされたら嫌だなと思うことが実現出来ればいいのよ〜。普段のお付き合いならそんな事しないけど、勝負の世界においては話は別。アタシ達かなり負けず嫌いだからね☆」

「なるほどな!」

ヒカルはすかさず、マリオンとの連携で弾幕を張り始めるが

「お行きなさい、ファングちゃん!!」

リョウタがファングを使いこなし、見事な迎撃を始める。

「くそっ!!」

「筋はいいのだけれど、まだまだね!」

『ヒカル、後ろ。』

「ぐっ!!」

思わぬところから攻撃をくらい、ダメージが入る。

「アタシ達三人にとって、アンタ達を含めて全員を倒すためのノウハウを鍛えてきたのだから残念で残酷なことを言うとすれば……。アンタ達の敗北は確定してるのよ。」

「な!?」

それは薄々と分かってはいた。

「コアチェンジ!チェンジ!プラネッツヴィト………」

「させん!!」

Sinスサノオのトライパニッシャーでアーマーの輸送をしていた機体を一部破壊され、レイトはマーズアーマーで戦うことを余儀なくされた。

「ちっ!!」

「湯の森シャイニングゼロの暴れ将軍……その異名に恥じない戦いを所望する!」

「ったく、テメェらの都合で俺の予定狂わされてたまるか!」

レイトもスサノオに挑む。

さらに、レイカの方も

「あっは!逃げろ逃げろぉ!!じゃないと死んじゃうよー!」

「このぉー!」

(分厚い弾幕と高火力で避けるので精一杯、ツインサテライトキャノンを掴んでいたらその間にほかの攻撃でやられちゃう!)

「アンタ達はいい強さを持ってるけど……世界に行くにはまだはやいわね。」

「………それはどうかな?」

ヒカルは不敵に笑った。

「行くぞ、マリオン!」

『えぇ、ヒカル。』

『EXAM-System-Standby』

「奥の手は、最後まで隠しておくもんだぜ……そうだろみんな!」

「あぁ!!コード承認完了……頼むぜ、コアα!!」

「コアチェンジは出来ないが、わざわざ隙を見せるか!ならばその首を貰い受ける!」

レイトが悪い笑みを浮かべた。

「エマージェンシーチェンジ!プラネッツナイト!!」

その瞬間、騎士の様なアーマーがすぐさま飛来し一気にドッキングした。

「ほう、騎士道か?」

「おうよ、武士道VS騎士道で勝負しようぜ……!」

「もっちろん、ヒカル!」

レイカは気合いを入れ、一気にハイパーモードへとなった。

「ゴッドアストレイハイパーモード……向かうところ敵なしね。」

「えぇー!金色になった!狙いやすくしてくれてありがとうー!」

ハイパーガンキャノンが撃つが、全て避けられる。

「あらあら、ここからはそうそうには当たらないわ〜♪」

全員がそれ相応の本気を出す。

「ふっ………それがアンタ達の答えね……きっと井の中の蛙だったのでしょう。みんな、遊びは終わりよ。本気で潰しにかかりなさい。」

「了解した。」

「了解〜♪」

そして、カマイ家三人が口を揃えて言った。

「「「TRANS-AM!!」」」

瞬間、カマイ家の全機体が紅く染まる。

「では、まずそれを貰いましょうか☆」

「!?」

気がつけば、肩備え付けていたライフルがファングと砲撃で持ってかれた。

「遅いわよォ!!」

「がっ!!」

そしてGNバスターソードでもう片方のキャノンも持っていかれた。

(この三人、まだ余力を!?)

Sin・スサノオの二刀流の猛攻が入る。

プラネッツナイトの盾でなんとかギリギリ防いではいるが、レイトの攻撃が当たらない。

「こんにゃろ!!」

「当たらんな、軸がぶれている。」

ランスでの対抗をシラヌイ、ウンリュウを使うまでもないと言わんばかりだった。

(ランスじゃどうにもならねぇ、なら!)

ブレイバーズブレイドの変形をし、基本形態であるロングブレードモードで攻めるが、それはシラヌイに弾かれ続ける。

「その程度で私の首は取れんよ。」

(くそっ!くそっ!!もう時間が無ぇんだ!!俺はもう、いつ死ぬか分からねぇ!!)

「乱れたな。」

その刹那、プラネッツナイトの左腕を斬られ、持っていかれた。

「何を思っているかは知らないが、武士の前での油断は死を意味するぞ。」

「ぐっ………!」

(このままおわるわけにゃ!!)

「さらにさらにフルバースト!」

ハイパーガンキャノンの攻撃頻度が大きく上がった。

レイカはプラモトレースシステムの為に専用の周りの人間も見れるような透明なガラス状のフィールドがあるが、その動きを見ている限り、相当に苦戦している。

「くっ………。」

(弾幕を捌ききれない……!!)

「いっただきぃ!」

瞬間、装填が完了したツインサテライトキャノンが放たれる。

「!避けれない!アーセナル!フィンガー!!」

辛うじて大きな致命傷は避けれた。

が、瞬間、ゴッドアストレイも左腕を抉られた。

「ビームが効かなくても、物理なら問題ないよねぇ〜♪ご愁傷さまぁー!!」

徐々に湯の森シャイニングゼロのメンバーが追い込まれ始める。

快進撃もここまでか……。

もはや彼らに勝ち目は一切な……

『否ッ!!!』

「兄さん!!みんな!!がんばれー!!」

「負けるなレイカ姉ー!!!」

三人にだけ、ヒカル、レイト、レイカの三人には確かにヒビキとイチカの声が聞こえた。

「………そう……だな、例えここで終わるとしても……ヒビキの為にも、ちったぁ悔いのないようにしてぇしなぁ!!」

「………師匠、イチカ、みんな……この一瞬でもいい。私に力を……!!」

「…………やる気満々だな……、マリオン、一気にパージしてあれをやるぞ!!」

『……待ってたわ、その言葉を。』

戦況が大きく、そして、流れが変わった。


「ズッタズタに!してあげる!!」

レイカは、動かない。

弾幕が降り注ぎ、直撃する寸前、ゴッドアストレイを避けるかのような動きで弾幕が逸れた。

「……ハァ!?どうなってんのよ!!」

絶対領域(アブソリュートゾーン)………

レイカは、絶対領域へと入った。

ゴッドアストレイがハイパーモード以上に金色に輝く。

ここからは、一方的になる。

歓声が湧き上がる。

再び、湯の森シャイニングゼロというダークホースがようやく力を取り戻したのだ。

「一歩、二歩、三歩。」

「クソ!!さっきまで当たってなのになんで当たらないのよォ!!」

ハイパーガンキャノンがジャイアントガトリングを二丁で掃射する。

だが、当たるどころか逸れるばかりで近づいてくる。

そして、レイカは加速した。

「な、なんですって!!?」

瞬間、ハヤナは理解した!

弾が逸れていたのではなく、レイカが的確にピンポイントに弾幕を弾いていたのだ!!

そして、レイカは一瞬で背後に回り込むと、マガイクノタチでツインサテライトキャノンを無理やり引きちぎって投げ捨てた。

「こいつ!!」

ハヤナも反撃し、マガイクノタチが破壊されたが、その代わりにかなり距離を取られた。

「バカね!言ったでしょ!射程がダンチだってね!!」

ピンポイント射撃を行うが、当たらない。

「遅い、遅すぎるわ。止まって見える。」

コントローラールームのレイカを見てもわかるが、必要最低限の回避しかしてない。

そして、勝利の詠唱を始める。

「流派、冥王不敗の名の元に!私のこの手が深淵に染まる!!全てを呑めと揺らめき吠える!!」

一気に加速した。

ゴッドアストレイのリミッターを超えるスピードだった。

「天地壊牢ォォォッ!!アァァセナル!フィンガァァァァァ!!」

天地壊牢拳のパワーを掌に込め、アーセナルフィンガーでハイパーガンキャノンの胴を掴んだ!!

「が!!このぉっ!!」

すかさずマシンガンやバズーカを打ち付けるが、レイカは止まらない。

「あなた達なんかに……この湯の森シャイニングゼロが負けるわけがありません!!」

そして、レイカはそのままハイパーガンキャノンを粉砕した。

「助けて、お兄ちゃん!!」

その断末魔を最期にハイパーガンキャノンはブレイク判定になると同時に、過負荷に耐えきれなくなったゴッドアストレイが接続不能となり、再起不能となった。


同刻

「………ハヤナが敗れたか。」

「おいおい、安心しろよ。お前もすぐにぶっ潰してやるからな……!」

「ほざけ!!」

スサノオの連撃がどんどんとヒットしていく。

だが、簡単には終わらせない。

「行け!ビット!!」

ブレイバーズブレイドをビットモードに切り替え、攻撃し、ボウモードでの遠隔攻撃に変えたが、戦況は余り変わらない。

だが、レイトの目はまだ諦めていない。

しまいには、右足も持っていかれた。

「プラネッツナイト………ここでキメるぞ………。」

『あぁ、行こうレイト……君達の未来の為に!』

「切り捨て……ごめぇぇぇぇぇぇん!!」

Sin・スサノオが凄まじい勢いで迫り来る。

そして、剣を振り上げ、縦に切り裂いた……。

が。

プラネッツナイトは破格のスピードでSin・スサノオの背後に回りこんだ。

「何!?」

「………これで、決着(ケリ)つけるぜ!!」

プラネッツナイトがステージの太陽の後光を浴び、光り輝いた。

「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラァ!」

プラネッツナイトのブレイバーズブレイドが、コンマ二秒で変形し、本来なら片手では持てないものもあったはずだが、レイトの意地で振るい、ビットモードも食らわせ、宙に浮いていたシールドを利用しシールドブレードで貫き、片手でショートブレイドモードとロングブレードモードを持って切り裂き、クロスワインダーモードでスサノオの半身を砕き、そして、グラディウスモードでトドメを刺した。

「見事……武士道とは、死ぬことと見たりぃぃぃぃ!!」

Sinスサノオを撃破したプラネッツナイトは機能を停止した。

「………これが、チーム湯の森シャイニングゼロだ………へへ……。」

レイトはコントローラー席でへたりこんだ。

「アキラ!ハヤナ!」

「おいおい、よそ見してていいのか!!」

フルアーマーAGE2BreakerがAGE2ヤークトアルケーと鍔迫り合いになる。

「……アンタ達を甘く見ていたみたいね。文字通り、アタシとヒカル君で1VS1のガチンコよ!」

「いや、俺にはまだ人がいる!専属AIのマリオンと、湯の森シャイニングゼロのメンバー達だ!!」

AGE2ヤークトアルケーとフルアーマーAGE2Breakerがヘッドパーツをぶつけあった。

「マリオン、行くぜ!」

『アーマーパージ!』

「ぎえっ!!?」

フルアーマーAGE2Breakerがパージし、そのパーツが直撃した事でそこそこのダメージをAGE2ヤークトアルケーに与えれた。

AGE2Breakerが覚醒した。

「マリオン、皆、行くぞ!」

『えぇ!!』

TRANS-AM!」

EXAM-System-Final-Phase-Express

「『(わたし)達で決める!!』」

「やってみせなさい!!湯の森シャイニングゼロ!!」

GNバスターソードとセブンソードGがぶつかり合い火花が出る。

「ファングちゃん!!」

すかさず、リョウタはファングを仕掛けるが

「『見える!』」

ファングを全て破壊した。

近接攻撃のみの応酬でお互いがそこそこの損傷へ入る。

お互いレッドゾーンだ、次で決まる!

「小賢しいわね!なら!コレで決めるわ!!」

AGE2ヤークトアルケーがGNバスターソードを上に構えると、ライザーソードとなった。

「『なら、こっちも!!』」

AGE2BreakerもBreakerバスターソードを上に構え、ライザーソードにした。

「アタシ達が上へと行く!!」

「『(わたし)が破壊する……(わたし)達の意志で!!』」

「トランザムッ!!ライザァァァァァッ!!」

ライザーソード同士がぶつかり合う。

「『うぉぉぉぉおおおおおおぉぉぉっ!!!』」

「らァァァァァァァァァァっ!!」

三人の声が響き渡る。

ヒカルに響いてくる。

「ヒカルさん!がんばれー!」

「負けないで!ヒカルさん!!」

「頑張って、兄さん!!」

ヒビキの声が、イチカの声が、ツルギの声が………。

『私達で示しましょう、私達の道を!』

「行け!ヒカル!!」

「ファイトです!ヒカル!」

「マリオン、レイト、レイカ………。」

ヒカルは笑った。

瞬間、AGE2Breakerのライザーソードの出力が大きく上がった。

そして、AGE2ヤークトアルケーを呑み込んだ。

「俺が……俺達が!!湯の森シャイニングゼロだっ!!!」

一気にステージごと破壊して、バトルエンドの音声が流れた。

その瞬間、わっと歓声が上がった。

「決着ー!!!準決勝を制したのは湯の森シャイニングゼロ!!圧倒的、そして圧巻の戦いでした!!皆さん!彼らの戦闘に!彼らの勇姿に拍手を!!」

拍手と歓声が会場に響き渡った。

「負けたよォ……。」

「ハヤナ、また次がある。その時に勝とう。」

「……うん。」

「……アンタ達。」

相手チームアリメノールのリーダー、リョウタが声をかけてきた。

「お見事ね☆是非、決勝でも勝って欲しいわ!アンタ達の勇姿は私が、私達アリメノールが見届けたわよ!しゃきっとなさい!!」

「えぇ、ありがとう。アンタもまた立派なガンプラマイスターだ。」

「ありがとう〜☆そんじゃ、またいつか会いましょ!」

「あぁ!」

「次は武士道の勝利を貰う!あえて言おう!覚えておくがいい!必ず、リベンジを果たす!」

「おうおうかかってきやがれ!次も騎士道の圧勝で終わらせてやらァ!」

「次は負けないもんね、べーだ。」

「あらあら、可愛いわね〜♪次も私は負けないわ〜♪」

それぞれが握手し、リーダー同士でハグを交わして、準決勝はおわった。


そして、決勝が準決勝から二日開けてからの開催となっているため、各自がダイバーシティ東京でうろついていた。

かたやお土産に、かたやガンプラバトルにと勤しんでいた。

レイトもまたその一人だった。

夕方でもうすぐ日が落ちる時間帯だ。

「母さんや父さんにはお土産買ったし、そろそろ帰るか。」

(………アイツもきっとあっちで。いや、気にしてる間はないな。うわ、咳でそう。)

ゲホッ…ベショ……

「んあ?」

ふと足元を見ると、血が出ていた。

「うヴっ!!」

そこからは噴水のごとく吐血し、レイトは倒れた。

「がはっ……かひゅ……ひゅ……。」

(息が……出来ねぇ……!!あぁ、くそ……もう少しだけ……持って欲しかった……。)

「人が倒れてるぞ!」

「救急車!救急車呼べよ誰か!」

(……あぁ、コアα、みんな。お前ら……こんな結果で満足か……?俺は……嫌だね………。あぁ……ヒビキ……。)

レイトの意識は……そこで途絶え、夕日が完全に落ちた。

そして、湯の森シャイニングゼロは……。

栄光の光を失った………




「………レイトが………?」
「嘘だ……嘘だって言ってよ兄さん!」
「………そんな……どうして……どうして……!」

次回、ガンダムビルドブレイカーズ:オルタナティブ
第九話~栄光の終末~
次回も!
ガンプラファイト!レディーゴー!


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第九話~栄光の結末~

皆さん、お待ちかね。
作者のワンダレルです。
さて前回、世界への道をかけた日本選手権の準決勝を湯の森シャイニングゼロが制しました。
しかし、その日の夕方、アリネレイトが病に倒れました。
栄光の終わりは、もうすぐそこです。


レイトが倒れた翌日……。

「………レイトが……?」

ヒカルが、その事を聞き、絶句した。

「あぁ、どうやら昨日彼は倒れたそうだ。……そして、既に手遅れだったらしい。」

「……嘘ですよね?アルマさん……?レイトと約束してたんです……そんなわけないですよね………?」

レイカは混乱していた。

「……今から近くの病院へ向かう。改めて事実はそこで伝えよう。」

そして、ヒカル、レイカ、ヒビキ、イチカはアルマについて行った。

そして、有音零斗の病室へとついた。

そこで見たものは、顔に布をかけられてる誰かがいた。

「……………!」

ヒカルは、布を取った時全てを悟った。

「……ちくしょう……なんで気づいてやれなかったんだ…………。」

その言葉を聞いた、ヒビキが動揺する。

「何でだよ……兄さん、嘘だよね?起きて嘘だって言ってよ……兄さん………兄さん!!」

イチカは涙をこらえていた。

「レイト……こんなお別れあんまりだよ……。」

その頃、アルマは同じ部屋で医師の言葉を聞いていた。

「……どうにもならなかったんですね。」

「えぇ、現代医学ではもう手の施しようがない状態でした……。長くてもあと二日が限界だったと思います。」

「……そうですか、尽力を尽くしていただき感謝します。」

「医者失格です、生かせるかもしれない命を生かせれなかったんですから……。」

医師はあるものを持ってヒビキの元に向かった。

「……有音 響くんかな?」

「……はい……。」

「君のお兄さんがもしもの時は渡してくれと言われてたんだ。」

医師が持っていたのはコアガンダムα。

それを受け取ったヒビキは泣きながらもこう言った。

「………大切にするよ、兄さんの形見を………。」

ヒカルは気がつけば病室からいなくなっていた。

相当にこたえたのだろう。

それは、レイカも同じことだった。

前には進めそうになかった。


翌日、アルマが悲しげな顔をして言った。

「申し訳ない……僕の管理責任が甘かったがゆえだ。」

「……謝らないでください、俺も……リーダー失格だ。」

「すまないが、決勝大会については棄権にさせてもらった……。ここまで来てもらったのにすまない。」

アルマが、深々と頭を下げた。

「……レイカ姉……。」

「大丈夫よ、イチカ。」

嘘だ。大丈夫なんかじゃない。本当は辛い。今すぐ居なくなりたい。代わりに私が死ねばよかったんだ。レイトが死ぬことはなかったはずだ。全部。全部。私の………

「私が……悪い…………。」

レイカは部屋に篭って泣いていた。

後々、父さんと母さんにも顔を見に行ってもらった。

でも私は覚えている。

あの顔は、死んでも死にきれない顔だった。

きっと無念だったはずだ。

きっともう自分が限界だと分かってた。

日本を獲ってから逝きたいと心から願っていたんだと思う。

でも、それは……幻想に過ぎない。

ヒカルもこの湯の森からいなくなった……。

レイカは気づけば、イチカとよく一緒にガンプラバトルをしていた公園にいた。

あの時、イチカを虐めていたあの子が、私を変えた。

ここで師匠に負けたことが私を変えた。

そして、ゲリラバトルに参加してレイトに会ってまた変わって。

その決勝でヒカルと出会ってさらに強く変わった。

「……皮肉ね、変わってるふりをして変わってると妄想してて、変われてないのは私だけ……か。」

座ってうなだれていると、ふと影が覆った。

「………あ。」

そこには師匠が立っていた。

「……レイカよ、貴様はそこで何をしている。」

「………師匠、私を破門に……してください。」

「ほう?それなりに理由はあるようだな。」

「……私、この拳で世界に届かせれると思ってました……鍛えれば私が変わればいつか、大切な人を守れると……でも、現実は違う……私は結局、何も変われずに大切な人すら守れなかった………!それが……悔しくて悔しくてたまらない………!」

レイカは涙ながらに師匠にそう言った。

「……ならばガンプラを持って戦いの場に立てレイカ。」

「………何故…?」

「貴様のその甘さ、傲慢さがこの結果を生み出したというのならこのワシを超えれるはず。どうした?さぁ、構えんか!」

「………。」

レイカは無言ながら構えた。

人が誰一人としていない、たった二人のこの空間にて。

「「ガンプラファイト!レディーゴー!」」

ステージはランタオ島だった。

「ゆくぞ!」

「………。」

レイカは失意の中、戦いに挑んだ。

ゴッドアストレイとグランドマスターガンダムの拳がぶつかり合う。

だが……レイカの動きはとことん遅かった。

すぐに弾かれ、そのまま二撃目を入れられ、ゴッドアストレイはうつ伏せに倒れた。

「どうしたレイカ!何故立たん!」

「………もう、どうでもよくなったんです。なんの為にこんなことをしていたのか、何故こんなことをしていたのかもう分からないんです。」

すると、グランドマスターガンダムがゴッドアストレイを持ち上げ、平手打ちをした。

プラモトレースシステム越しだからこそ、衝撃はもちろん来る。

だが、グランドマスターガンダムは続けざまに平手打ちをし続けた。

「この馬鹿者!馬鹿者!馬鹿者!!馬鹿者ぉぉぉっ!!」

「え?」

レイカが師匠を見ると、その目に涙を浮かべていた。

「貴様がそのような弱腰になって何になる!貴様の思いはその程度か!貴様が今までに得たものはその程度の事で挫けるものなのかァ!!」

「師匠……。」

「立ていレイカ!貴様の性根をもう一度叩き直してくれる!!」

レイカは、その言葉に感銘を受けた。

レイカは涙を拭い、師匠と対峙する。

「望むところです、師匠!!」

気がつけば、人が多く集まっていた。

「ゆくぞぉぉぉっ!!」

「うおおぉっ!!」

拳が、蹴りが、全てがぶつかり合う。

師匠が言っていた言葉、拳が全てを物語り拳で伝わるものだと。

(師匠は怒っている。その真意は今は亡きレイトとの約束を果たせと言わんばかりに……!!)

「どうした!全力で来んかぁ!」

「ならば、流派冥王不敗が秘技!牙王烈衝脚(がおうれっしょうきゃく)!!」

単なるかかと落としではない。

拳法モジュールの全てを生かした相手の守りを粉砕する一撃。

「ぬぅ!!」

師匠の守りは崩しきれないが、体勢を崩すことは出来た。

「「秘技!十二王方牌大車併!!」」

ミニマムゴッドアストレイとミニマムマスターガンダムがぶつかりあった。

その間にも蹴り殴りの応酬をする。

「でぇやぁ!!」

師匠のマスタークロスを

「はぁ!!」

トツカノツルギで切り裂いて

「捉えた!!」

マガイクノタチを展開し、捕らえようとしたが

「甘いわァ!!」

掌で抑えられ引き離された。

「見せてみよレイカ!明鏡止水の境地を超えたその力を!」

「……無論です、今日こそ私は真に、貴方を越してみせる!!

「はぁぁぁぁぁぁ、タァッ!!」

グランドマスターガンダムとリアルの師匠が気を高め、明鏡止水の境地へと至り、金色の光を引き出した。

「…………。」

(父さん、母さん、イチカ、ヒビキくん、ヒカル、レイト……。私は……私を超えて……この拳を……。)

「この拳を世界へと轟かせる!!」

瞬間、ゴッドアストレイが金色に輝き、目に閃光が走る。

だが、それはリアルのレイカも同じだった。

ゴッドアストレイとレイカの青き眼に閃光が輝く。

絶対領域を超えたさらに先の力、真・絶対領域(シン・アブソリュートゾーン)へとレイカはたどり着いた。

「流派、東方不敗が最終奥義ィィ!!」

「流派、冥王不敗が最終奥義ィィ!!」

「石破天驚ォォォッ!ダァァァクネスッ!!」

「天地壊牢ォォォッ!アァァァセナルッ!!」

「「フィンガァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!」」

公園に大きな衝撃波が出る。

周りのギャラリーの何人かが吹き飛んだ。

届け……。

「届けぇぇぇぇぇぇぇ!!」

レイカは、グランドマスターガンダムとの一騎打ちに打ち勝った。

「ぬおぉっ!?」

ゴッドアストレイはグランドマスターガンダムの胴体を捉え、掴んだ!

「師匠、これが、私の答えだ!!」

「……よろしい。今こそお前が本物のキングオブハートよ……。」

「師匠のその言葉と最強の称号、しかと受け取りました……。ヒィィィィトォォォッ!!エンドッ!!!

ゴッドアストレイがグランドマスターガンダムを握り潰して爆散させ、バトルエンドの音声が流れた。


「ふ、レイカよ。ワシから教わることはもう無さそうだな。ワシもまだ未熟というものよ。貴様はワシの全力を超えたのだからな。

「いいえ、師匠。まだまだ私は未熟です。ですから……私、まだ師匠の弟子でいたいです♪」

レイカは師匠に抱きついた。

「ふん、ならば覚悟するがいい。今まで以上に厳しい稽古をするぞ。よいな!」

「はい!師匠!!」

私は、両親とイチカに説得し、月に一週間は実家に帰ってくることを条件に師匠の道場にて住み込みで修行をした。

時折、イチカとタッグでヴァルキリーゼロワンなるチームを組んでたりもしたし、シグレちゃんのあの事件の事も忘れてない。

それでも、その悲しみを背負ってでも今は亡き大切な人達の思いを胸に戦い続けた。

そして、四年後。

「いってらっしゃいレイカ。入学の手続きの方は任せておいて!」

「うん、母さん♪」

「パパ応援してるからな!!」

「うん、父さん!」

「……イチカ、お姉ちゃん頑張ってくるね〜♪」

「レイカ姉、頑張ってね!」

私は、1VS1の日本選手権の舞台へと降り立った。

決勝までは私は全力を出し切り、倒して上へと上がって行った。

「決勝の相手は、ナギツジ・タクマさん……。三年くらい前にお鍋一緒につつきあったあの人ね……。」

レイカは覚悟を決めていた。

「私が、私の拳で湯の森シャイニングゼロの力を……轟かせる!」

手に持つゴッドアストレイの青い眼が光った。




「………約束を守るよ、レイト、ヒカル。」
「よろしく頼む。」
「負けて……たまるかァァァァァっ!!」
「………これで、チェックメイトだ。」
次回
ガンダムビルドブレイカーズ:オルタナティブ栄光の三人編
最終話「ヴァルキリーゼロ」
ガンプラファイト!レディーゴー!


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最終話~ヴァルキリーゼロ~

皆さんお待ちかねぇ!!
作者のワンダレルです!
さて、前回。
湯の森シャイニングゼロはレイトを失い、決勝の棄権を余儀なくされ約束は果たされませんでした。
失意のレイカにあの東方不敗マスターアジア、クロス・ヨウスケが拳を持ってレイカにすべき事を教えました。
立ち上がった戦女神には本当に様々なことがありました。
レイカはその苦難を乗り越え、今に至ったのです。
戦女神は再び飛び立ちます!
それでは!!
ガンプラファイト!
レディーゴー!



会場に入れば、わっと歓声が上がる。

やはり、日本選手権。どうあがいてもこの騒ぎになるとは思っていた。

しかも、相手は全米選手権を制した人だ。

だからこそ……。

「この感じ、この肌触りこそガンプラファイトね。……行くわよ、ゴッドアストレイ。約束は守るわ、レイト、ヒカル。」

一歩ずつ踏み歩いていく。

そして、反対側からコートを着たタクマさんが向かってくる。

お互いが、目を合わせる。

「お久しぶりです………よろしくお願いしますね、タクマさん。」

「よろしく頼む、レイカさん。」

お互いが握手をした。

そして、タクマはコントロールパネルをとりだし、デバイスをセットした。

そして、レイカはプラモトレースシステムを起動しデバイスのシステム接続範囲に入った。

「さぁ、一世一代の舞台!勝利を手にするのはナギツジタクマか?それともかつての栄光を取り戻した戦女神のゼロか!」

「ダブルオーコマンドクアンタ、ナギツジ・タクマ。目標に飛翔する!」

「デンノ・レイカ、ガンダムアストレイ:ゴッドフレーム。約束を果たす!!」

フィールドはなんと湯の森の町をモチーフにしたステージ。

かつて、ゲリラバトルをした時と同じように見えた。

ダイバーシティ東京において、これほどレイカにとって嬉しいステージはなかった。

「……これは……なるほど、俺達にふさわしい舞台を用意してくれたんだな、おっちゃん。」

タクマさんがそう言った気がした。

「さぁ、始めましょう。全てはこの拳で語ります!」

「あぁ……。」

「ガンプラファイト!レディーゴー!」

レイカのゴッドアストレイが素早く飛びかかる。

が、タクマもそれを見越し肩部ミサイルランチャーで迎撃。

無論、レイカにはそんな攻撃は通用しない。

だが。

「くっ!!」

即座にダブルオーコマンドクアンタのアームシールドのビーム砲がレイカを襲う。

通常の弾幕と違い物量はそう多くはないが

(さすがはタクマさん、的確な狙撃による牽制が上手い……!)

まるでこちらの手の内を知ってるかのようにレイカの弱点だった部分を突いてくる。しかし

「私もただそれだけじゃない!!」

レイカはミサイルをわざと受けた。

そして、煙が晴れるとゴッドアストレイの姿はなかった。

「……そこか!」

コマンドクアンタはコマンドソードで真後ろに薙ぎ払った。

しかし、それは空を切る。

そして、ゴッドアストレイはコマンドソードの先端に立っていた。

「!」

「もらった!!」

レイカは素早く蹴りを繰り出すが、すんでのところで回避され、振り払われた。

そのまま距離を取られ、コマンドクアンタはマシンガンによる攻撃を仕掛けてきたが、ゴッドアストレイは廻手で全て弾き、コマンドクアンタかもう一度ミサイルランチャーを放てば、ゴッドアストレイはそれを踏み台にして距離を詰めていく。

コマンドクアンタが距離を離し、ゴッドアストレイがその距離を埋める。

レイカはそれが楽しくて仕方なかった。

「ふふ、そうよ。戦いは……終わってない!」

「自信家だな……だが勝ち誇るのは勝ってからにしなよ?」

タクマがふとそう言ったが、その後に言った言葉はある意味衝撃を与えた。

「目の前の相手を見ている君なら……俺に勝てるかもしれないな。」

「ふふ、なら流派冥王不敗の真髄を見せてあげる。」

レイカはトツカノツルギを取り出し、十字に構えた。

瞬間、コマンドソードとトツカノツルギがぶつかり、火花が散る。

だが、やはり距離を取られミサイルやマシンガンによる遠距離攻撃をされる。

しかし、レイカはそれを叩き斬るが、とうとうトツカノツルギがブレイクされた。

だが、コマンドクアンタも武装をパージした。

(……見ていたとおりね、弾切れの武装をパージして機動力を上げてくる。ここからが本番!!)

レイカは素早く構えた。

「………やっぱり、戦女神相手には奥の手を使わざるを得ないか。」

コマンドクアンタが覚醒を使い、赤く染まった。

そしてあえてほぼ全ての武装をパージし、コンバットナイフを二本手にした。

レイカは笑った。

かつて、この湯の森の町でのゲリラバトルで戦いを制した時のこの感覚を……レイトとヒカルの思い出が蘇った。

「はァァァァァァっ!!たァァァっ!!」

ゴッドアストレイが絶対領域(アブソリュートゾーン)に入り金色に染る。

だが、それだけでは終わらない。

レイカの身体が徐々に光を帯び、レイカの髪色が金色となり、髪がどことなくなびき始め、真・絶対領域(シン・アブソリュートゾーン)へと入った。

その姿は、まさに戦女神だった。

「決着をつけるぞ、戦女神のゼロ。」

「えぇ、そうしましょ全米の王様?」

次の瞬間、コマンドクアンタは覚醒の赤色と共に緑色に発光しながら量子ワープを始め、あらゆる角度からあらゆる攻撃を仕掛け始めた。

しかし、レイカはそれを全て見切り、弾く。

少しづつ、相手もパージしスピードが上がっていく。

コマンドクアンタが最後にはコンバットナイフのみになったが、そのスピードはもはや人の目には追えそうになかった。

だがそれでもレイカはカウンターを続けた。

何回も何回も。もうそれが何分続いたかすら分からない。

拳が、ナイフが交差し続ける。

しかし、レイカが少しづつダメージを受けているのも事実。

ゴッドアストレイがレッドゾーンに入った。

ここで、ある転機が訪れた。

「……これで、チェックメイトだ!」

コマンドクアンタが大きく振り上げた。

ゴッドアストレイの耐久値はもうドット単位でギリギリだった。

圧倒的だった。

だが、タクマは忘れていたことがあった

「………やっと……油断してくれた!」

ゴッドアストレイがコンバットナイフを両方掴み砕いた。

流派冥王不敗の根本はカウンターにあり

「しまっ……!!?」

「流派!冥王不敗が最終奥義!天地壊牢けぇぇぇぇぇん!!」

エネルギー波がコマンドクアンタを包む。

大きく継続ダメージが入った。

この距離での直撃は量子ワープをさせる暇も与えない。

「覚悟!!天地壊牢!アァァァァセナルッ!!フィンガァァァァァァァァァッ!!」

その上で、大きな掌のエネルギーでコマンドクアンタを掴んだ。

「ヒィィィト!エェェェン……」

だが、トドメを刺す寸前で、ブザーが鳴った。

タイムアップだ。

「損傷率によって判定を行います!」

との事だった。

ゴッドアストレイもコマンドクアンタも満身創痍で耐久値はギリギリだ。

「判定結果を発表します!日本選手権優勝者は……ナギツジ・タクマ選手です!

耐久値がほんの数ミリの差だったらしい。

お互い、全力を出し尽くした。

その上で負けた。

両者が握手をした後に、レイカは言った。

「今度は負けませんからね!」

「あぁ、期待してる。」

そして、二人は踵を返し会場を離れていった。




レイカは控え室で泣いた。
敗北が悔しかったからじゃない。
「約束……果たせなかったよ………。ごめんね……レイト、ヒカル……。」
その後悔の念は長く続いた。
湯の森高校に入学してからも、ヒカルの妹のツルギちゃんに会った時も、ヒビキ君が強くなってた時も、でもイチカが言った。
「みんなで世界取ろうよ!湯の森ガンプラ部でさ!!」
その言葉に本当に救われた。
あぁ、この子はなんて健気で真っ直ぐなんだろうと。
いつも、私はこの子の笑顔に救われた。
そして、今回も。
だからこそ……。
「レイト、ヒカル。私、前に進むわ」
そう言っていると、イチカがまた遅刻だと騒いでいた。
「ふふ、あわてんぼうさんね。」
レイカは部屋から出た。
無論いつものようにツッコミとボケの応酬をしながら自転車て学校まで一気に飛ばす。
そして、校門を飛び越える。
かつての因縁を越えるように。
そしてレイカは笑って言った。
「アイ!キャン!フラァァァァァァァイッ!!」

《栄光の三人編・終了》


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罪深きスサノオ
短編集 執念の果て


これは、とある男の執念の物語。
彼は、全てをかけひたすらにとある男との再戦を望んだ。
その一端がここに記されている。


兄を含め、チームアリメノールは湯の森シャイニングゼロに敗北した。

ハヤナ「次は……絶対勝ってやるもん。勝ち逃げなんてさせるもんですか……!!」

リョウタ「あらあら、それだけ気迫があるならきっとすぐに戦えるわよ。アタシとしてもヒカル君とは朝まで語り合いたいわぁ〜☆」

アキラ「兄さん、欲望が漏れてるよ。」

そうだ、いずれまた戦える。


アキラ「次は武士道の勝利を貰う!あえて言おう!覚えておくがいい!必ずリベンジを果たす!」

レイト「おうおう、かかって来やがれ!次も騎士道の圧勝で終わらせてやらァ!」


聞けばアリネレイトは私と同級生だったらしい。

故に、私はその戦いを経て私自身が勝手に彼を戦友(とも)と思っていた。

必ず、勝てると。

お互いが切磋琢磨し、何度もぶつかると。

そう思っていた。


その翌朝、ホテルで宿泊していたチームアリメノールは兄の大声で起きることになる。

リョウタ「なんですって!?

ハヤナ「んー……リョウタ兄うるさい……。」

アキラ「何かあったのか、兄さん?」

リョウタ「……アリネレイト君が……亡くなったそうよ。」

私は悪い冗談だと思った。

だが、アリネレイトのご両親の許可を得てひと目顔を拝んだ。

リョウタ「……酷い顔……大きな未練を残して逝ったのでしょうね。」

ハヤナ「……レイトさんはいい人だったはずよ。どうしてこんな………。」

アキラ「………。」

私は黙っていた。

黙って、心の中で問うた。

アキラ(アリネレイト……君はそれでいいのか。弟を残し、そして大切な仲間を残して逝ったのが……。私の唯一無二の親友が……勝ち逃げをして。それでいいのか君は……。)

その問いに対する答えはなかった。

その日から私は……


リョウタ「ん?アキラ、どこ行くのよ?」

アキラ「……修行をしてくる。」

リョウタ「修行って……アンタ学校は?」

アキラ「平気だ、兄さん。問題ないよ。」

私は天ノ玉原市へ一人で向かった。

平日は夜更け、寝不足にならない程度に修行をし、土日の週末は天ノ玉原市にいるガンプラマイスター達をなぎ払っていった。

その過程で、Sin・スサノオは壊れ、修復をした。

そして、ある時修行で山篭りしていた時に熊に襲われ、顔に傷を負い瀕死の重体になった。

アキラ(……遠い……アリネレイトにはもう届かないのか……。)

その時は近くの神社の少女が神社に運んで治療をしてくれていた。私は目を覚まし、その少女に事情を聞き礼を言った。

アキラ「恩に着る。」

???「ううん、気にしないで!困った時は助け合いでしょ?」

もちろん、兄さんは天ノ玉原へと飛んできた。

そして、

バシンッ!!

開幕話すことも無くビンタされた。

リョウタ「馬鹿なことしてんじゃねぇぞクソガキ!!」

アキラ「兄さん、そんなに怒らなくても……ヨツユさんのおかげで生きてるんだし……。」

その言葉を言った瞬間、更にもう一発くらった。

リョウタ「んなもん結果論に過ぎねぇんだよバカタレ!修行するなとは言いたくねぇし仏になったあの子に対してもこんな事言いたくもねぇが……」

そこまで言って、リョウタ兄さんは泣きながら俺を抱きしめて言った。

リョウタ「死人を追いかけてまで決着をつけようとしてお前が死のうとするな……。お前は……お前ら兄妹はな、親父もお袋も死んじまって不憫だったかもしれねぇが、俺にとって大切で仕方ねぇ家族なんだよ。だから頼む……無茶だけはしないでくれ……。お前やハヤナまで死んだら、俺は……もう耐えられねぇよ………。」

アキラ「兄さん……。」

その時からだ。修行をし始めた時、私は亡霊が見えるようになった。

そして、私はそれを見切り、悪霊を斬り捨て成仏させるレベルまでになった。

ヨツユ「……すご。」

聞いたところ、ヨツユさんも同年代らしい。

アキラ「……まだだ、まだ頂きを目指さなくては……。」

そうだ。私は決着をつけねばならない……。


アキラ「久しいな、アリネレイト!」

レイト「はっ、相変わらずだなアンタは。」

その掛け声から、バトルが始まる。

アキラはSin・スサノオ改をもってプラネッツナイトと対峙した。

アキラ「ちぇぁぁぁっ!!」

レイト「うらあっ!!」

重い金属音が鳴る。そして、打ち合いが始まり、その連撃を制したのはアキラだった。

アキラ「………。」

だが、アキラは斬る寸前で刃を止めた。

レイト「……どうした、やらねぇのか?」

アキラ「……このような虚像が相手では務まらん……完璧な貴様自身と戦わねば意味をなさん!」

レイト「………。」

アキラ「切り捨て!ごめぇぇぇぇん!!」

プラネッツナイトを両断し、その姿はポリゴンとなって砕け散った。

戦っていたのは、あくまで生前のアリネレイトのデータだ。

アキラ「………。」

アキラは納得がいかなかった。だからこそ、追い求め続けた。

そして、アキラは習得した奥義も生まれ、四年にわたる修行を得て、再び湯の森へと帰ってきた。

そして、アキラは霊の声を聞いていた。

修行には悪霊を斬り祓うこともまた鍛錬でもあった。

そして、聞いて、見てしまった。

???「レイトさん、今日は特別にゴルドラン一緒に見ませんか?」

???「お?お前にしちゃ珍しく優しいな。明日槍でも降りそうだな。」

???「前言撤回します。」

???「冗談だっての……あのー、冗談ですよー?聞いてますー?」

アキラ「!!」

アリネレイト。恐らく魂だけの存在だろう。そして隣の少女は私と同じくその手のものが見えている人間だろう。

アキラ「……これは憎しみでも私怨でもない。私の我儘なのは分かっている。だが、この機を逃す訳にはいかん!」

アキラは即座にSin・スサノオを取り出した。




長年待っていた。
私はかの騎士の気配を感じ取った。
死してなお、何かを守るためにその場にいるのだろう。
譲れないものがあるのかもしれん。
だが、私とて決着をつけねばなるまい。
我が最高傑作のこの『Sin・スサノオ改ニ』をもって、真に騎士道と武士道の真髄を、その頂きへと登らん!
ここで雌雄を決しようじゃないか……。

アキラ「会いたかったぞ、アリネ・レイト!」


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蒼月の全面戦争
短編集 蒼月の光と影


アルマ「……随分と懐かしい写真だ。」
ノリス「これは……市長とトモコ様と………このお方は?」
アルマ「あぁ、この子かい?この子は……僕の妹にあたる子だよ。」
ノリス「ん?そのようなお方は見ておりませんが……。」
アルマ「ノリスはよく僕の妹に会ってるよ。何せ今日も会う予定さ。」
アルマ(……トモコを、母を追い詰めるための一手として意識外からの攻撃は必須。それに答えてくれたのが彼女だ。)


幼少期、僕はとても惨めだった。

満たされることは多かった。

そして僕は生まれた時からある意味優れていた。

だが、それでも僕は傀儡として育てられた。

記憶力が高く、読み書き出来ないなりに勤勉に過ごした。

その二年後、蒼月 悠宇(ソウゲツ・ユウ)という妹が生まれた。

二歳児ながらも当時の僕はこの子が僕同様の才能を持ち、人の上に立つ人間になると思われていた。

だが、その希望は僕が五歳の時に砕かれた。

アルマ「……母様、ユウは?」

トモコ「いい、アルマ。このソウゲツの人間は私とあなたしかいないのよ?大丈夫、お前は立派にこの湯の森を導く人間になるのだから。」

この時、僕は悟った。

父は既に殺されている。妹もきっと………。

僕はこの時に決意した。

アルマ(この女はいずれ僕を傀儡にし、全てを手に入れようとするだろう。そんな事を……父や妹の為にもさせる訳にはいかない。)

その為にあらゆるものを利用するしか無かった。

そして、僕は母は、隣町である「天ノ玉原市」を湯の森と合併し奪う算段を立てていた。

中学生になった時、僕はガンプラというものに夢中になっていた。思えばこの時が僕がガンプラファイトを発展させるきっかけとなったのだと思う。

高校になって、アマリとヨシモリに出会い……。

トモコ「みすぼらしい……子供のような趣味をしてる暇はない!お前はいずれ湯の森を統べる子。ガンプラなど捨ててしまえ!」

アマリとヨシモリから貰って作り上げたガンプラを捨てられ、僕は生まれて初めて、親に対する憎悪が湧き上がった。

殺してやる。

その場の怒りに溺れ、実行に移そうと思った時だった。

ヨシモリが直接僕の家に来て、母を殴った。

ヨシモリ「馬鹿野郎!!親の都合だけで子供の夢を邪魔してんじゃねぇよ!!夢ってのは誰しもが持てる権利だ!アンタがアルマの邪魔をすんじゃねぇ!!」

そして、アマリが僕のデュアルOガンダムを見つけてくれた。

アマリ「はい、これ。」

アルマ「……どうしてこれを。既に廃棄されたはずじゃ……。」

アマリ「たとえどれくらい下らないものだとしても、アルマ君が頑張って作ったこのガンプラを誰かが無下に扱われるのは私が許せない!」

二人の活躍で僕は母から趣味を取り上げられることはなくなった。

僕はこの時、この二人はなんて健気で儚くも美しいのだろうかと思った。

それと同時に僕はこの二人のような子供がガンプラを楽しめる町を作りたいと思った。

その為ならば何でもすると誓いながら。

そして僕は、母に連れられ天ノ玉原市へと来た。そこでは何とも奇妙な出会いをし、今も……いや、片方は亡くなってるが交流をした男女がいた。

アルマ「……僕の母はこの美しい天ノ玉原市を吸収合併し奪おうとしている。そして僕はいずれなるべくして君たちの隣町の湯ノ森の市長となる。そこで、僕としては君たちと手を組みたいんだ。」

???「……脅しのつもり?」

アルマ「そうとも脅しさ。拒否すれば君たちの事を報告させてもらおうと思ってるからね。だが安心したまえ。僕と手を組めば最大級の安全を確保しながら君たちを救うことをここに約束するよ。それを踏まえて、僕と共に来るかい?」

あの時は脅しだと言ったが相手にとっては状況が悪く、脅しのようになってしまった。おそらくその事で彼女は僕の事を嫌っているだろう。


アルマ「まぁ、彼女のがこちらに来ることは流石に想定外だったな。」

ノリス「市長、天ノ玉原役所に着きましたぞ。」

アルマ「ありがとう、では先に僕は上がらせてもらうよ。」

ノリス「直ぐに向かいます。」

ノリスが車を駐車場へと走らせた。

そして、僕は最速で市長室へと入る。

??「久しぶりだねアルマさん。」

アルマ「こちらこそ数ヶ月ぶりだよカナタ君。」

カナタ「ところで今回は何用で?」

アルマ「あぁ、昨日本人からの連絡と要望があって君の所のじゃじゃ馬お嬢様の娘をこちらで預かることになってね。」

カナタ「あっ………(察し)」

アルマ「そのついでもある。」

ノリス「失礼します、お久しぶりですなカナタ殿。」

カナタ「まぁまぁ、そう固くならなくてもいいですよ。」

アルマ「カナタ君、彼女は今日来てるかな?」

カナタ「あぁ、なるほど。」

カナタは役所内電話を取ると話し始めた。




カナタ「久居さん、アルマ市長がお見えだよ。」
??「あら、直ぐに向かいますね。」
受話器を戻して改めて向かい合い、アルマとカナタが握手をする。
アルマ「本当に君が僕の同盟に答えてくれて助かったよ。」
カナタ「いえいえ、こちらとて同じようなものです。」
そうしてる間に、市長室をノックする音が聞こえた。
??「市長、久居です。」
カナタ「入ってくれ〜。」
??「失礼します。」
入ってきた女性は緑髪にメガネを掛けた美女。
名前は久居悠宇(ヒサイ・ユウ)。
ユウ「この様子だと、とうとう動くのね、兄さん。」
アルマ「そうとも、僕とあの女との全面戦争さ。」
ユウは、かつての生き分かれた妹、蒼月 悠宇なのだ。
ノリス「……なるほど、天ノ玉原市長の秘書が……。」
アルマ「あぁ、これでキーは揃いつつある。あとは彼女達の成長を待つのみさ。」
多方向からの同時攻撃。
それによる蒼月 智子とそれを従える養王田組の殲滅、排除。
おおよそ、トモコは影武者を使うため暗殺は無意味に近い。
アルマ「さぁ、トモコ。僕と親子喧嘩でもしよう。全てをかけたチェスゲームのようにね?」
アルマの盤面が一手先に進んだ。


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仁義の華編
プロローグ「華となれ」


皆さんお待ちかねぇ!
作者のワンダレルです。
さて、今回はある人間の過去とそして明日へと繋がる外伝を描いていこうかと思います。
その漢の成長を我々がしかと見届けましょう!
それでは!ガンプラファイト!レディーゴー!


幼少期、俺は親がどんな職をしてるのかは悟っていた。

釜井 亮太(カマイリョウタ)

極道

ある意味道を間違えればすぐに地獄に落ちるようなものだ。

だが…。多分期待を背負わされてたんだと思う。

だけど、俺は若干6歳にして自分の事を悟っていた………。

リョウタ「………心が女だなんて……言えないよな……。」

幼いながら、心苦しかった。

だが、そんな俺を……アタシを両親は認めてくれた。

女らしさを認められ、女性として振る舞えることが本当に嬉しかった。

弟と妹もそれを認めてくれた。

だから、普通である妹と弟に文句を言うやつはぶちのめした。

そして俺は無事に高校を卒業した。歳が十も離れている妹のハヤナも小学二年生。アキラは小学三年生だった。

釜井組の構成員の人からも慕われていたからこそアタシは選んだ。

リョウタ「親父……俺に釜井組を継がせてください。」

アタシは頭を下げて頼み込んだ。

親がくれた身体を親が許し女に変えてくれた。

だからこそその恩を返す必要がある。

リョウタ「俺に、親父とお袋への仁義を通させてくれ。」

ショウゾウ「リョウタ、別にそれは構いやしねぇ。だが、この渡世をヤクザが生きるにはかなり苦しいぞ?そしてどこで命を狙われるか分からねぇ。だがお前の覚悟を俺は認めよう。しっかり俺の後を付いてこいよ?」

リョウタ「……ありがとう、親父!」

アタシは嬉しかった。

そして、組員の人から色んなことを教わりながらアタシは渡世の生き方を学んだ。

トシミツ「坊ちゃん、戦いの基本はあらゆることにひたむきに努力することですぜ!」

リョウタ「なるほど……あと坊ちゃんじゃなくてお嬢と呼んで欲しいなぁ?」

トシミツ「そいつァできません。俺ァ嘘がつけんので…。ヘヘッ。」

リョウタ「仕方ないなぁ……。」


ショウゾウ「リョウタぁ!まだまだ半人前だなぁ。」

リョウタ「ぐぬぬ、今日こそオヤジを超えてみせる!」

ハヤナ「にいにがんばれぇ〜!」

アキラ「兄さん、頑張って!」

アヤハ「こらアンタたち、飯の時間だよ。」

リョウタ「手伝うよお袋。」

アヤハ「ふむふむ、その様子だと飯の作り方をかなり勉強してきたんだね?」

リョウタ「ふっふーん、びっくりさせてやるんだから☆」

父のショウゾウから生き様を。

母のアヤハからは組のみんなの面倒と家庭的な事を。

特に若頭だったトシミツからは沢山学んだ。そしてアタシはものの数ヶ月で色んな事に精通しとても強くなった。だがもちろん、努力することはやめなかった。

そんな矢先だった。


父のショウゾウと母のアヤハが襲われた。

組長の次に偉い若頭のトシミツは何とか一命を取り留めたらしい。

そしてアタシは偶然その場に居合わせた。

今でも覚えている。

アヤハ「……リョウタ……ハヤナとアキラと……釜井のみんなを守るんだよ……。」

ショウゾウ「……舞え。華のように……美しく……そして……仁義を忘れるな……。」

リョウタ「親父ぃ!!お袋ぉっ!!死ぬな……死ぬなぁ!!」

その願いは虚しく、病院で二人は亡くなった。


トシミツ「すまねぇ……すまねぇ……坊ちゃん。俺が……俺がきづけなかったばっかりに………。」

両親はあっさりと死んでしまった。

確かに、極道やヤクザというのは、その素性の都合福祉などのサポートは受けられない。だが……

リョウタ「こんなのあんまりじゃない………。」

アキラはなんとなく悟ったようだが、ハヤナはまだその事を知っていない……なんて無慈悲で残酷なのだろうか。

だが、時間が無い。

アタシはすぐさま釜井組の頭になる事を決めた。

誰かに反対されると思っていたが、特に揉める事無く満場一致で収まった。

でも、アタシは………とてつもない虚無感に襲われた




リョウタ「………俺はどうすればいいんだよ。」
トシミツ「坊ちゃん、俺達にゃやらなきゃならないこともありますぜ。」
リョウタ「仁義を忘れるな……か。」
次回
ガンダムビルドブレイカーズオルタナティブ:仁義の華編
第一輪「外道狩り」


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第一輪「外道狩り」

皆さんお待ちかねぇ!
作者のワンダレルです。
さて前回、カマイ・リョウタの両親である二人は何者かにより暗殺され、偶然居合わせた釜井組若頭のトシミツも重傷を負い、リョウタはトシミツの推薦の元、釜井組の組長となりました。
果たして、彼に待っているのは地獄か、それとも変革か……。
答えはいずれ明かされるでしょう。
それでは!ガンプラファイト、レディーゴー!


リョウタは苦悩していた。

いざ組の頭になったものの、これからどうすればいいのかわからなかった。

リョウタ「……こんな時、アタシがしっかりしないといけないのに……。」

トシミツ「坊ちゃん……。」

リョウタ「トシミツ……。」

トシミツ「坊ちゃん、すまねぇ。でぇぇぇやぁっ!!」

リョウタは突然、トシミツに殴られた。

リョウタ「ごふっ……何を……。」

トシミツ「俺ァバカだから言葉で説明はできやしません。だけど、今アンタが止まれば俺達やアキラ坊ちゃん、ハヤナ嬢ちゃんに顔向けできねぇだろう!!アンタの仁義や任侠はそんなもんじゃあなかったはずだ!立ってこいカマイリョウタ!!」

トシミツはリョウタに発破をかけた。

リョウタ「……そうね……アタシ、ちょっと迷ってたかも……。ありがとう、トシミツ。アンタにはよく救われるわね。」

トシミツ「へへっ、それしか取り柄がないんでねぇ。」

リョウタはトシミツに思いっきり往復ビンタをした。

トシミツ「がふぅ………。」

リョウタ「でもアンタがレディに手を上げたことはこの往復ビンタでチャラにしてあげるわ☆」

リョウタはまずやるべきことを考えた。

リョウタ「トシミツ、近隣の半グレ達は?」

トシミツ「もう調子こきまくってますな。」

利権の事、そしてその先の事はトシミツや父親から学んでいる。

トシミツ「今を機に責め立てるのも無理はないでしょう。」

リョウタ「……一応睨みきかせとくか。守代のほうは?」

トシミツ「いちばん大きいのはやはり朝露旅館ですな。相変わらず電之商店はこちらの要望に応じませんが……。」

リョウタ「電之商店?なんだそれ。」

トシミツ「この湯の森における最強のガンプラショップ兼商店ですな。」

リョウタ「ん?てことはアタシのこのガンダムスローネAGEツヴァイの素体も……?」

トシミツ「親父が買ってきたものですわ。」

リョウタ「……電之商店には手を出すな……って親父に言われたことあるわね。」

トシミツ「えぇ、一度痛い目にあってますからね。」

リョウタ「なんですって?」

流石にこれは驚いた。

何せ、釜井組は湯の森においてはほぼ王者と言っても過言ではないほど戦力は強い。

そんな釜井組の構成員達がカタギ相手に痛い目にあったというのは不思議だ。

リョウタ「用心棒かしら?」

トシミツ「いえ、相手はただのカタギです。」

リョウタ「………謎ね。でも下手に手を出さない方が懸命ね。」

トシミツ「それと朝露旅館の方も、特にアサヅユ・シラナに下手を打つのは危険ですな。」

リョウタ「え、なに。この湯の森化け物のオンパレード?」

トシミツ「あながち間違いでは無いですね。あれはヤクザっぽいカタギです。」

リョウタ「極道がヤクザとか言うな。ていうかそれだけやばいのね……気をつけておくわ。」

トシミツ「それと、分かっていますよな?」

リョウタ「えぇ、ヤクはご法度……暴力沙汰も過激なシマ荒らしや確証のない時は絶対にこちらから手を出さない…よね?」

トシミツ「そうです、後は……。」

リョウタ「半グレ共に舐められるな……よね。」

極道はメンツが生命だ。舐められたらそこで終わる。

リョウタ「えぇ、皆にも教えないとだから集会することを伝えておいて。」

トシミツ「了解しやした、坊ちゃん。」

すぐさま集会を始め、おおよそ必要なことは伝えた。

リョウタ「いい、アンタ達。今言ったことはとても大切なことよ!そして、親の仇は意地でも取る。アタシについてきて!」

「「はいっ!!」」

威勢のいい声が響き渡った。

無論、釜井組は警察とは腐れ縁のような付き合いがある。

リョウタが一人バーに座っていると、横に美女が座る。

???「久しぶりだな釜井の息子。」

リョウタ「息子じゃなくて娘よ、カヤさん。」

彼女の名は吉住 華夜(ヨシズミ・カヤ)。先代釜井組長の父とはちょっとしたライバルでもあり友人だったらしい。

なお、若く見えるがこれでももう五十代だ。

カヤ「ショウゾウとアヤハの事については残念だったな。この件は警察も動いてる。……釘を刺しておくが、あまり報復は考えるなよ。」

リョウタ「………大義があるかないかによりますね、それは。」

カヤ「……死に急ぐなよ、釜井の息子。」

リョウタ「貴方もですよ。あなたには子供がいるんですから。」

カヤ「……まぁ、アンタさえ良ければ許嫁にしても良かったんだけどなぁ。」

リョウタ「ご冗談を、アタシは……体は男でも心が女なんですし、子供の時の約束ですよ。」

カヤ「うちの娘、結構アンタの事気に入ってんのよね。」

彼女の娘、吉住 雨奈(ヨシズミ・アマナ)はリョウタと昔からの付き合いだった。

なんなら、小さい頃の約束で結婚するとまで言われてる。

当時から、心の性別が違うことを悟っており、優しさから安易に振ることも出来なかった。

まぁ、今も彼女は大学で頑張っている。

リョウタ「それに、アタシはアンタら警察やカタギとは違う。アマナちゃんがこの世界に踏み込む必要はないはずよ。」

カヤ「まぁね、最初アマナがアンタと結婚するなんて言った時はアンタを張り倒そうと思ってたよ。」

リョウタ「張り倒されてるんだよなぁ。」

思いっきりシバかれたと思う。

そこからカヤさんとは別れた。

リョウタ「……ま、アタシも腹を括らなきゃいけない時かもね。」

トシミツ「坊ちゃん、組の頭になるということは生命を狙われるということです。お気をつけて。」

リョウタ「うん。わかってるわ。」

リョウタは釜井組の組長として、狙われる立場であるのは明らかだ。

だけど、きっとこの行いは間違っていないはずだ。

だが、この三日後アタシはさらなる後悔が待っていた。

いつも通り、トシミツと一緒に挨拶回りをしていた時だった。

トシミツは元々鼻がよく、こちら側では「狂犬のトシミツ」と呼ばれている。

トシミツ「……坊ちゃん、血の匂いだ。」

リョウタ「なんですって……。」

トシミツに連れられ、一緒に路地裏に入ると……。

リョウタ「!?」

ボロボロになったカヤがいた。

リョウタ「おい!カヤさん、しっかりしろ!おい!」

揺さぶって声をかけた。

だが、反応は無い。

トシミツが匂いを嗅ぎ、首を横に振った。

トシミツ「死臭が既にしている……もう、この女は死んでますぜ……。」

リョウタ「………カヤさん……。トシミツ、カヤさんの家に行くぞ!」

トシミツ「了解しやした!」

リョウタは嫌な予感がしていた。

そして、リョウタとトシミツは半ば強引に中に押し入った。

???「おとなしくしやがれ!!」

???「がふっ!!」

???「往生際が悪いんだよクソガキ……。さっさと口を割れや。母親や父親みたいに殺されたいか?」

???「割るもんですか……アンタ達みたいな半グレなんかに!!」

髪の毛を捕まれ、複数の男に殴られていたアマナがいた。

リョウタ「アマナちゃん!!」

リョウタが救援に入った。

トシミツ「大丈夫かクソガキ!」

アマナ「リョウタ!トシミツ!」

リョウタ「テメェら……。」

???「なんだこいつら!」

トシミツ「釜井組じゃボケェッ!!」

トシミツが容赦なく殴った。

リョウタ「テメェら……リヴェルか!」

半グレ組織リヴェル。

ヤグシ・リョウゾウをリーダーに湯の森を土台にしていたが、先代にコテンパンにやられて大人しくしていた。

ヤグシ「釜井組かぁ、弱小のボンボン如きにやられるほど俺らは甘くねぇぜ?やっちまえ!女はその後に好きにしていいぞてめぇら!」

リヴェルの下っ端共が現れる。どうやら組織全体でヨシズミの家に攻め立てて来ていたらしい。

リョウタ「仁義はずれの外道共が……ここで狩ってやらぁっ!!」

トシミツ「死んどけ腐れ外道がぁっ!!」

トシミツが容赦なく下っ端相手の頭に銃弾を撃ち込む。

リョウタ「死んで地獄で後悔しとけ!」

リョウタもドスで次々と外道を葬っていく。

ヤグシ「く、くそ!!どうなってやがる!!女、テメェは人質だ!」

そう言ってヤグシはアマナを掴んだ。

アマナ「触んないでよこのクズっ!!」

アマナは親の影響か柔道の達人だ。すぐに投げ飛ばされた。

リョウタ「うらぁッ!!」

リョウタは殴りかかった。五六発殴ったあと、質問をした。

リョウタ「誰の差し金だ?」

ヤグシ「ひっ……。」

リョウタはその答えに三発殴った。

リョウタ「誰の差し金だ?」

ヤグシ「み、三日月組です……!お前らの親を殺すように指定したのもだ!」

リョウタ「………そうか。ならもうお前に用はない。」

ヤグシ「え?」

リョウタ「外道はこのアタシが裁く!!」

リョウタはドスを突き立て、一撃で始末した。

トシミツ「……三日月組が親父達を……。」

リョウタ「…この喧嘩、少数精鋭でやる。アタシが単身三日月組の親玉を取ってくるわ。」

トシミツ「援軍は?!」

リョウタ「大丈夫……アタシ、これでも自信あるのよ?」

アマナ「リョウタ……。」

リョウタ「大丈夫だ、アマナ。辛かったな……。」

リョウタがアマナの頭を撫でると突然わんわんとアマナが泣き始めた。

それから、アマナは釜井組で引き取る事にした。

そして、アタシは単身、三日月組のある天ノ玉原のとある神社に向かった。

道中にいた熊をなぎ払い、女中と思われる護衛は眠らせた。

釜井組は無益な殺生はしない。

狙うはただ一つ。

三日月組もっとも力の強い人間、月夜見(ツクヨミ) シズクただ一人だ。




リョウタ「仁義はずれの外道を狩りに来たぞ……。」
シズク「……冗談も休み休みにして欲しいものね、青臭いガキの分際で……殺すぞ?」
次回
ガンダムビルドブレイカーズ仁義の華編
第二輪「釜月頂上戦争」
仁義を持って前へとゆけ!


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第二輪「釜月頂上戦争」

トシミツ「どうも皆様、私はトシミツ。現釜井組の若頭です。今ここに書かれているのは私のちょっとした日記のようなもんですわ。昔から自分の見てきたものとかはついついこういう風に記憶しておきたくなるんです。坊ちゃんには申し訳ねぇがここからもっと頑張って欲しいもんです。例え私が居なくなっても戦えるように、華やかに仁義を通してくれることを切に願ってますとも。」


リョウタ「………。」

リョウタは潜入に成功していた。だが、この時知らなかった。

小さな子供が自身の背後にいたことに

思わず瞬く間に振り向いてサプレッサー付きの(チャカ)を抜いて引き金を引く寸前だった。

リョウタ(…子供?)

それは、妹のハヤナと同い年くらいに見える少女だった。

名前は覚えてないがターゲットの姪っ子に当たる子だったはずだ。名前は……月夜見 渚(ツクヨミ・ナギサ)

リョウタ(……。)

ナギサ「おにいさんだぁれ?」

一瞬、女装がバレたのに動揺したがリョウタはその子に目線を合わせて言った。

リョウタ「……あなたのお父さんのお友達。シズクさんどこにいるか分かる?」

ナギサ「あっち。」

そう言って指さした方向の部屋からは禍々しく、空間が歪んでるようにも見える威圧感が出ていた。

リョウタ「そう……ありがと。」

リョウタは少しづつ歩みを進め、部屋に入った。

リョウタ「……随分と余裕そうだな。」

シズク「………護衛達は?あの子達は強かったと思うんだけど。」

リョウタ「寝てもらった。安心しろ殺しはしてねぇ。」

シズク「………小さな子供は?」

リョウタ「俺は……釜井の人間はターゲット以外の殺しはご法度だっていうことだ。」

シズク「……そうお前が釜井の……。」

今回の殺しのターゲットである月夜見 雫(ツクヨミ・シズク)が立ち上がる。

シズク「死ぬ覚悟は出来てる?もっとも出来てなくても殺すけど。」

リョウタ「余計な問答は無用だ。親の仇は取らせてもらうぞ、仁義はずれ!!」

リョウタがドスを持って己の間合いに飛び込む。

が、シズクはそれに反応しすぐに距離を取った。

シズク「遅いわね……釜井もこの程度?」

リョウタ「ドスだけじゃねぇぞ。」

既にリョウタは銃を抜いていた。

シズクもそれに気づいたが、五発ほど撃ち込まれた。

だが、シズクは咄嗟の判断で畳を押出し、畳で弾丸を防いでいた。

リョウタ「ちっ!」

リョウタは後ろに下がった。

ここで下手に追撃すれば確実に殺られるからだ。

それと同時に畳が倒れたが、既に姿はなかった。

一瞬の静寂。

シズク「もらった。」

気がつけば足元にシズクがおり、その掌はリョウタの胸に当てられていた。

シズク「破ッ!!」

練り上げられた呼吸、それが奔流となり一気に体内に直接流れ込む。

刹那、全身の軋む音がした。

リョウタ「ごぶぁっ!!」

勢いも強く、後ろに大きく吹き飛んだ。

リョウタ(なんだ……今の攻撃は………!!)

シズク「……つまらない。義だとか任侠だとか言って結局は何も無い。ただ無力なだけ。その敗北(こと)に対する恥の上塗りでしかないわ。」

リョウタ「ごふっ……やべ……ぇ……。」

意識が持っていかれそうになる。

シズク「諦めなさい。お前では私に触れることすら許されない。」

リョウタ「へっ……知らねぇのか。釜井組は……瀕死にはなっても簡単には……死なねぇんだよ……。」

頭からも血が出ている。もはや満身創痍だ。

シズク「知ったことではないわ、そんな事。」

リョウタ「負けるわけにゃいかねぇんだよォォッ!!」

リョウタが咆哮する。

父が、母が、恩人がこの女の指示で殺された。

目の前にいる仇をみすみす見逃せない。

リョウタは咄嗟に突進した。

シズク「芸のない……。」

シズクはもう一度リョウタに謎の武術を打ち込んだ。

骨が数本折れた音がした。

だが、リョウタの目は死んでいなかった。

むしろシズクの手を掴み動けなくしていた。

シズク(掴まれた!?)

リョウタ「くたばれ、仁義はずれの外道がァァァっ!!」

リョウタはその至近距離からドスを突き立てようとした瞬間だった。

首筋に衝撃。

リョウタ(な………。)

リョウタはそれを機に意識が途絶えた。

その刹那に見えたのは、緑髪にメガネを掛けている女性だった。


シズク「……ユウ、どういうつもり?」

ユウ「とりあえず落ち着いてこれを見て。」

シズク「………これって……ていうことは……。」

ユウ「そう、お互いに報復への大義はあっても私たちが疲弊するだけの無意味な戦争よ。」


気がつくと布団に寝かされていた。

隣には先程の緑髪の女性とツクヨミシズクがいた。

リョウタ「………なんで殺さなかった。」

ユウ「殺す理由がないから。」

シズク「………。」

リョウタ「………。」

それでもリョウタは立ち上がろうとした。

ユウ「動かないで。正直あれだけの攻撃受けてて動ける方がおかしいからそのまま聞いて。」

リョウタ「………。」

ユウ「自己紹介として……。私は久居 悠宇(ヒサイ・ユウ)。まず第一として私達はあなたのご両親と恩人さんを殺してはいない。」

リョウタ「……なに?」

ユウ「そして私達は貴方達にシズクの旦那を殺されたということになるわ。」

リョウタ「……釜井組がそんな仁義に背くようなことしねぇよ……。」

ユウ「えぇ、だから私はあらゆる手段を使って調べたのよ。」

その結果は凄惨たるものだった。

リョウタ「……アタシ達は、月夜見組との同士討ちで弱らせて一気に飲み込むつもりだったってわけね……。」

シズク「……正直ユウからこの話聞くまではアンタを殺すつもりだったけど、私は一般人でアンタは極道。そうなればアンタ達に大義はないわね。」

リョウタ「…………仁義はずれはアタシたちだったって訳か。」

ユウがこほんと咳払いをして話し始めた。

ユウ「そこで、月夜見組と釜井組で同盟を組もうと思うの。」

リョウタ「………だがアタシ達には……。」

シズク「大義とか私にとってはどうだっていいのよ。殺しかけておいてなんだけど、双方の誤解でこうなったのならけしかけたアホをカタにはめるのが先じゃないかしら?」

リョウタ「……。」

言い分は分かる。だが、信じていいのだろうか……。

その思考がリョウタの脳裏によぎる。

だが、この人達が違うというのは納得がいった。

あまりにもタイミングが良すぎたのだ。

リョウタ「それで……アタシはどうすればいいの?」

ユウ「ちょうど来てくれた人とここで話してもらうわ。」

そして、襖が開かれる。

そこに居たのは誰しもが知ってる英雄だった。

リョウタ「蒼月有真(ソウゲツ・アルマ)!?」

アルマ「君が新しく釜井組の頭になった人か……。良好な関係を築きたいものだね。」

リョウタにとっては予想外だった人物が現れた。




アルマ「やることは簡単だ。」
リョウタ「あまりにも出来すぎね。」
ユウ「のるかそるかは任せますよ。」
ガンダムビルドブレイカーズ:オルタナティブ[仁義の花]
第三輪「提案」
仁義を貫き、咲き誇れ!


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第三輪「提案」

トシミツ「どうも皆さん、トシミツでございます。此度の戦いは本当に互いに意味の無いものでした。和解しそこに現れたのはなんと、ソウゲツ・アルマ。先代と盃を交わしていた程の人間の登場に我々は焦りましたよ。」


シズク「ユウ越しに私に連絡を貰ったのよ。今回の件を調べさせて欲しいってね。」

リョウタには信じられなかった。

父と母が会合をしていたのは知っていたが……。

アルマ「カマイ・リョウタ君だね。今回の事件、湯の森の市長である僕のミスにおけるご両親の件は本当に申し訳ない。」

リョウタ「い、いえ、こちらこそ。……もしや、親父が言っていた釜井組への援助というのは……?」

アルマ「あぁ、僕の独断で支援をさせてもらっているよ。」

ユウ「久しぶり、兄さん。」

アルマ「あぁ、久しぶりだねユウ。」

状況がいまいち掴めない所から話が始まった。

アルマ「単刀直入に言おう。ここは僕の顔を立てるつもりで三日月組と釜井組で手を組んで欲しいんだ。」

リョウタ「え……。」

話がいきなりすぎてポカンとしていたが状況をある程度飲み込めてきた。

リョウタ「アタシは構いません。でも、三日月組の方々に納得していただけるかどうか……。」

シズク「大丈夫、それは私がなんとかする。」

ユウ「正確には優秀なユウに丸投げするが正解なのにね〜。」

ユウがやれやれと言わんばかりに手を挙げる。

シズク「丸投げした記憶ないんだけど。」

ユウ「今まで経理とか掃除関連をやってきた人は誰かな〜?」

アルマ「……ということさ。」

リョウタ「……アンタ、他にも提案あるんでしょ?」

アルマ「……先代同様に察しがいい、助かるよ。」

アルマはそう言うと一つの紙を取りだした。

アルマ「今回の事件、裏で手を引いているのは僕とユウの母であるソウゲツ・トモコが原因だ。大方、釜井組と三日月組の対立による湯の森の治安の悪化、そして上層部、組長。今回で言えばシズク君、君のような能力者を狙い養王田組を使って始末しに来たということ。ならば僕達もそれに対抗しなければならない。君の親御さんの敵を討つチャンスでもある。実の母を潰す僕のこの計画に参加してくれるかな?」

リョウタ「……拒否権はないんでしょ。親父もよく言ってたわ。アルマ市長には歯向かわない方がいいって。アンタが仁義を通すなら手伝うわよ。ただ……」

リョウタはアルマに圧をかける。

リョウタ「アンタが仁義外れのような事をした時は釜井組が潰れてでもアンタを殺すわ。」

だが、アルマを含めこの場にいる三人は至って冷静だった。

シズク「へぇ、伊達に鉄火場を生き抜いてきたわけじゃないんだ。」

ユウ「あらあら、凄い覇気ね。」

アルマ「……フッ、先代同様に君もまた上に立つ者の強さを持っている。余計気に入ったよ。」

リョウタ「そりゃどーも。」


その頃。

トシミツ「……坊ちゃん遅いな。」

トシミツはなかなか帰ってこないリョウタを心配しながらシマの見回りをしていた。

その時、トシミツの鼻がふと動く。

自分と同じ鉄火場の匂いだった。

トシミツ「……そこにいるんだろ。出てきたらどうだい?」

トシミツは同じ路地裏にいる人間に視線を向けた。

???「ウチの親父が世話になったな、釜井の狂犬よ。」

トシミツ「こいつぁ……そうかい、アンタが相手になるのか。三日月の化け猫……。」

三日月の化け猫。それは後に知る事だが三日月組の組長の兄、ミカヅキ・オウガの用心棒を勤めていた久居 康弘(ヒサイ・ヤスヒロ)の事である。

トシミツもヤスヒロもお互い裏の方ではかなり名を馳せている。

ヤスヒロ「狂犬よ、仇を取らせてもらうぞ。」

トシミツ「生憎だが俺もちょーどよく仇を討ちたかったんだわ。」

お互いが身構える。

今ここに、狂犬と化け猫の激闘が始まる。




トシミツ「くたばれ、仁義外れがぁ!!」
ヤスヒロ「甘い!その程度で終わるほど俺は鉄火場を生きてはいないぞ!」
次回、ガンダムビルドブレイカーズ:オルタナティブ
鉄火場の華編第四話
「狂犬と化け猫のワルツ」


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第四輪「狂犬と化け猫のワルツ」

トシミツ「こんにちは、トシミツでございます。さて前回、アルマ市長とシズク、ユウの元で坊ちゃんは同盟を組み、元凶たるソウゲツトモコの打倒を目標に掲げていた所、私は偶然ながらとある猫に出会います。多分、今まで裏社会で生きてきた私にとってもっとも命の危機を感じた戦いでしょう。」


ヤスヒロ「こちらからやらせてもらおう!」

ヤスヒロは躊躇することなく、銃を弾く。

トシミツ「見える!」

トシミツはその視線や殺気に合わせて紙一重の回避を見せた。

そして、カウンターのように

トシミツ「次は俺からだ!」

トシミツも弾くが……。

ヤスヒロ「ぬぅ!!」

ヤスヒロも同じく紙一重で躱す。

お互いに距離を開ける。

ヤスヒロ「少しはできるみたいだな、狂犬。」

トシミツ「お前もなかなかだぞ、化け猫。」

二人が持ち前の武器を構える。

トシミツは犬の牙のごとき鋭さのドスを、ヨウスケは鉤爪のような暗器を……。

その刹那、二人は同時に飛び込んだ。

トシミツ「チェァァァァっ!!!」

ヤスヒロ「ぬおおおォォッ!!!」

鉤爪とドスがぶつかり火花が散る。

ヤスヒロ(なるほど、これほどの手練とは……。)

ヤスヒロはトシミツが一本のドスで二つの鉤爪と同等の連撃を見せていることに舌を巻いた。

そして、トシミツのドスとヤスヒロの鉤爪がぶつかり鍔迫り合いとなる。

トシミツ(なんだと!?)

トシミツは常々、戦いに備えて鍛錬をし大抵の人間には負けないほどになっていたが、ヤスヒロの腕力も凄まじかった。

ヤスヒロ「狂犬、私が何故化け猫と呼ばれているか教えてやろう。」

ヤスヒロはそう言うと後ろに飛び退き、どこからともなくクナイを投擲した。

トシミツ「甘い!」

トシミツは当然それを弾く。

しかし、既にヤスヒロは視界に居なかった。

ヤスヒロは壁を走り、トシミツの頭上を取っていた。

ヤスヒロ「忠義を果たせぬまま死んでゆけいっ!!」

トシミツ「フンッ!!」

直後に降りかかる鉤爪をトシミツは回避したが……

トシミツ(ちいっ、かすったか……。)

その一撃は深手ではないものの、そこそこに重かった。

ヤスヒロ「今のを避けるか……この上ない強敵だな。」

トシミツ「そいつはどうも……だが、負ける訳にはいかんのだ!」

その言葉の直後、次にトシミツが仕掛ける。

閃光のような踏み込み、それは普通なら見えない程に。

それはまさに噛み砕くが如き力強さだった。

トシミツ「くらえっ!!」

ヤスヒロ「ぬぅっ!!」

ヤスヒロもすんでのところで致命傷は回避出来たが、腹にそこそこの傷を負った。

ヤスヒロ「ふむ……これでは先程食べた牛丼が出てくるな。」

トシミツ「なら、牛丼と一緒に内蔵も全部出してくれようか?」

二人は最速で駆け込み、一気にぶつかる。

大きな金属音を響かせながら、生命の取り合いをしはじめた。

トシミツもヤスヒロにも、狂気的な笑みを浮かべていた。

本気の殺し合い。それは鉄火場ではよくある事だが、それ以上の熱気がそこにあった。

トシミツ「ぬおおおおぉっ!!!そのまま噛み砕いてやるぞ!!」

ヤスヒロ「ちぇぁぁぁっ!!その命を狩り尽くさせてもらおう!!」

そして、ヤスヒロがトシミツのドスをかち上げ、大きく隙ができる。

ヤスヒロ「もらったぞ!!」

ヤスヒロは鉤爪をトシミツに突き立てた。

トシミツ「ぐうおっ………!!!」

その位置は致命傷である。

ヤスヒロ「勝負あったな。」

ヤスヒロが引き抜こうとした…が、鉤爪は抜けない。

トシミツ「甘いぜ……ただで済ませるわけねぇだろうが!!」

トシミツが繰り出したのは脅威的な頭突きだった。

ゴリっという普通なら出ない音がした。

その結果、互いの頭は割れた。

が、トシミツは身構えていたからこそ踏ん張れた。

トシミツ「………だが、もうお互い獲物も持てねぇレベルか。」

ヤスヒロも手持ちの暗器がボロボロと手から落ちる。

そして、ヤスヒロは自ら暗器を捨てた。

トシミツ「……バカだな、暗器使えば俺に勝てたろうに。」

ヤスヒロ「私にもそれなりの意地もあるが、この手の傷では暗器を上手く扱えまい……そしてもうひとつは貴様に対する敬意を込めてだ。」

そこからは壮絶な殴り合いとなった。

トシミツ「拳に魂がこもってないぞ!その程度か!!」

ヤスヒロ「ふっ、貴様こそ手加減してるつもりか!!」

ただただ、拳の音が響く。

トシミツ「負けらんねぇんだ……坊ちゃん達の為にもなぁっ!!」

ヤスヒロ「ぬうぅ!ユウとお嬢の為にも負けられん!!」

お互いの顔を捉え、何度も何度も音が響き、血しぶきが舞う。

そして、二人は

ヤスヒロ・トシミツ「うおおおおぉっ!!!」

お互いに雄叫びをあげて顔面を捉えたクロスカウンターとなった。

それと同時に二人は仰向けに倒れた。

トシミツ「……初めてだぜ、ここまで白熱した喧嘩は。」

ヤスヒロ「……それはこちらもだ。」

トシミツ「……戦争がなけりゃアンタとなかよくしたかったがな。」

ヤスヒロ「……私とてそうだとも。貴様ほどの強さを持つ人間となら対等に話が通じるやもしれないからな。」

そういった時だった。

???「トシミツ!生きてる!!?」

???「おーい、生きてるかー、ヤスヒロー。」

二人の耳に馴染みのある声がする。

ヤスヒロ「お嬢……と釜井の!!」

トシミツ「坊ちゃん……と月夜見の?!」

お互いに驚愕するが、リョウタとシズクが事の説明をしてくれた。

ヤスヒロ「なんと……つまり我々はその黒幕に踊らされていたと……。」

トシミツ「なんだよぉ、ただの骨折り損のくたびれもうけじゃねぇか坊ちゃん。」

リョウタ「誰もそこまでやれとは言ってないでしょトシミツ。無茶しないで、アンタはアタシの恩人でもあるんだから。それに、これ以上誰かが戦争で死ぬのは見たくないの。」

リョウタが応急手当をしながらトシミツにそんなことを言う。

トシミツ「坊ちゃん……。」

ヤスヒロ「羨ましいな。こっちでは労いの言葉など夢のまた夢というものだ。」

シズク「何?私が鬼畜外道だとでも?」

ヤスヒロ「ふっ、間違いではないだろう?」

シズク「ま、労いの言葉なんて要らないでしょ。アンタは生きる、生きてユウと過ごす。それでいいじゃない。アンタが死んだりしようものならユウはすぐにでも後を追うわよ?」

ヤスヒロ「……ふっ、娘の名を出されたのなら生命の扱いには気をつけなければな。」

トシミツ「しかし、決着つかずか……どうするよ?」

ヤスヒロ「確かにそれは私も納得がいかんな。」

リョウタ「あら、二人共ここがどこか知らないの?」

シズク「認めたくは無いけど、あの秀才が考えてる事だからやれることはあるんじゃないの?この街なら。」

そう、ここはガンプラバトルの聖地の一つ

「湯の森」である。




トシミツ「さてと、見せてやるぜ俺のとっておきをな!」
ヤスヒロ「いいだろう、私もまた再び阿修羅となろう!」
次回
ガンダムビルドブレイカーズ
鉄火場の華編第五輪「死闘再び」
仁義を貫く華であれ。


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