俺たちと謎と青春と S2 (ちゃんま2)
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第1章 エピソード1 D4FES編
探偵、再び! その1


さあさあ、廻たちの新しい物語が始まります!
登場人物の設定などは、作者の前作「俺たちと青春と謎と」の設定集をお読みください!


それでは、本編どうぞ!


音楽スタジオ「TRY」

 

 ミーン ミーン

 

季節は夏真っ只中、とある音楽スタジオで会話をする二人がいた。

 

廻「あ〜、暑いな~」

 

俺の名は、「音咲廻(おとさき まわり)」。ちょっと「他人とは違うこと《探偵》」をやってるけど、それ以外は普通の大学生だ。

 

茜「ちょっと、扇風機の前を占領しないで。私の方にも風が来ないから。」

 

こいつは、「月本灯(つきもと あかり)」。俺と同じ佐々野木大学に通っている大学生だ。とある事がきっかけで知り合ってからずっと俺たちと行動を一緒にしている。 

 

廻「あ〜、悪い、今どく…しっかし、暑いな〜…」

 

灯「廻、だらしないよ…」

 

廻「そうは言っても、暑すぎてな…。だいたい、何で空調が壊れてるんだよ、マスター」

 

俺はマスターと読んだ人物に呼びかける。

 

裕次郎「いや、それは申し訳ない…。最近どうも機械の調子が悪くてな…」

 

この人は、「佐藤裕次郎(さとう ゆうじろう)」。ここ、音楽スタジオ「TRY」の店長だ。よく相談に乗ってもらったりしていて、頼れる兄貴分みたいな人だ。

 

廻「修理はいつ来るんだよ?」

 

裕次郎「それが、修理業者が繁忙期でしばらく忙しいらしくてな。修理に来れるのがもう少しかかるらしい…」

 

廻「マジかよ…。」

 

裕次郎「悪いな…だから、バイトには無理して来なくていいぞ。」

 

廻「悪いけど、お言葉に甘えて、そうさせてもらう…」

 

じゃないと、暑くてバイトなんてやってられねえよ

 

 ♪♪♪♪♪

 

廻「わりい、電話だ。」 

 

裕次郎さんに一言断ってから電話にでる。

 

廻「もしもし?」

 

泊『久しぶりだな、廻!』

 

廻「お、泊じゃねえか、どうかしたのか?」

 

電話の相手は「黒崎泊(くろさき とまり)」。俺の中学時代の友達だ。疎遠になっていてメールだけのやり取りしかしていなかったけど、とある事件をきっかけに再会し、また連絡を取るようになった。

 

泊『お前、今夏休みだよな?』

 

廻「そうだが?」

 

泊『夏休み中何か予定あったりするか?』

 

廻「いや、特にはないが、…それがどうかしたのか?」

 

あいにくと、俺の夏休みの予定なんてバイトで潰れてるよ…

 

ま、それはさておき。こんな時になんの電話だろうか?

 

泊『お前に手伝ってほしいことがあって。』

 

廻「手伝ってほしいこと?」

 

泊『そう。実は今度東京で、凄いDJの大会が開かれることになってな。』

 

あー、そっか。こいつはまだDJ活動を続けてたんだったな。

 

廻「それがどうかしたのか?」

 

泊『実は、うちの仕事関係の人が、その大会のオープニングの前座に選ばれてたんだけど、急に出れなくなったんだよ。』

 

廻「そうか。そりゃ災難だったな。」

 

泊『で、なんとな、聞いて驚くなよ?』

 

廻「何だよ、もったいぶらずに言えよ…」

 

泊『何と!その前座に『俺が出てみないか』って言われてたんだよ!』

 

廻「お、本当か。それは良かったな!」

 

泊は本当にDJを真剣にやってるからな。前座であるとはいえ、大きい大会に出れれば、有名になって名が売れるからな。

 

泊『ありがとな。で、本題はここからなんだが…』

 

あ、そうか。そう言えば、「手伝ってほしいことがある」って言ってたな。

 

泊『お前にもその前座に出てほしいんだよ。俺と一緒に』

 

……

 

廻「…はぁ!?」

 

いきなり、泊に突拍子もないことを言われて驚いてしまう。

おかげで、後ろにいる二人には不思議そうな目で見られる。

 

廻「お前、いきなり何いってんだよ。」

 

泊『いや、本当は俺も一人だけで出ようとしたんだけどな、少しでも、注目を集めたくてな、パーフォーマーをつけたいと思ってな。』

 

なるほどな…。それで、有名な会社からスカウトが来たりもするかもしれないからな。泊にとっては願ってもねえ千載一遇のチャンスってわけだ。

いや、それは分かるんだが……

 

廻「けど、それで何で俺なんだよ?他の奴に頼めないのか?」

 

泊『そりゃ、俺も最初はそう思ったんだけどな、どうもしっくりくる人が誰もいなくてな…』

 

廻「だからって何で俺なんだよ?俺も中学の頃から全くDJなんてやってないんだぞ?いくらなんでもブランクがありすぎるだろ?」

 

泊『だから、パフォーマーの方を頼んでるんじゃないか。お前、DJだけじゃなくて、ダンスの方もできただろ?』

 

というより、もともと俺はパフォーマとしてやってて、DJ関係はまたにしかやってなかったからな。

 

泊『それにほら、俺たち動画にも投稿してて、ちょっと有名になってたじゃないか?』

 

廻「けど、お前俺でいいのかよ?数年間全く手を付けてなかった素人と組んで、お前に迷惑かけるだろ…」

 

泊『そんなの気にしてないよ。それに俺の望む結果にならなくてもその責任は俺にあるんだから廻は気にしなくていいだよ。』

 

廻「けど…」

 

泊『それに、正直そのへんは大丈夫と思ってるけどな。』

 

廻「?」

 

泊『お前は、前から覚えるのが早かったからな。振り付けを覚えるのにも時間かからなかっただろ?それに、ぶっつけ本番で練習の時になかった振り付けもちゃっかりいれてたこともあったしな。』 

 

廻「それは、そうだけど…」

 

いつの時の話しをしてんだよ…

 

泊『なぁ、頼むよ、廻!こんなこと頼めるの、もう廻しかいないんだ!頼む!』

 

…はぁ。なんやかんや泊には前から助けられたし、『前の事件』のお礼もまだできてなかったからな…

 

廻「…そのイベント、本当に俺も参加できるのか?」

 

泊『あぁ。確認したらメインの出場じゃないなら、当日までに変更点を運営の人に伝えたらいいって言われたから大丈夫だぞ。それがどうした?』

 

廻「…やってやるよ。」

 

泊『…え?』

 

廻「俺もその大会に出てやるよ。」

 

泊『本当か!いやー、助かる!』

 

何で聞いてきたやつが一番驚いてるんだよ…。まあいいや。

ここからはいくつか確認しておきたいことを泊に聞く。

 

廻「で、セトリはどうするんだよ?」

 

泊『あー、それなら俺が選曲してるから大丈夫だ。あとは、合流して練習するだけだな。』

 

廻「そうか。で、俺たちが練習できる期間は?流石に1,2日で完璧にはできないぞ?」

 

泊『勿論ちゃんと、そこも余裕を持ってるよ。本番まで一ヶ月半。俺たちが合流して練習する期間含めても一ヶ月はある。』

 

一ヶ月か…。ブランクがあるから不安ではあるけど、それだけあったらギリギリ何とかなるか?

 

廻「…まあ、それだけあったらギリギリ何とかなるよ。」

 

泊『そうか。ま、俺もいきなりのお願いだから完璧にとは言わないよ。だからって、やる以上は中途半端なものはダメだけどな。』

 

廻「そんなの言われなくても分かってるよ。」

 

廻「…あ、そう言えば、泊がこっちに来るのか?」

 

泊『そのつもりだ。廻が住んでるところのほうが東京に近いだろ?何か問題でも?』  

 

確かにここは東京に近いけど、いろんな意味で大丈夫か?

 

廻「いや、別に泊がこっちに来るならそれでもいいんだけど、お前大丈夫か?主に金銭的な意味で…」

 

泊『あー、それも大丈夫だよ。宿泊費や、交通費は大会運営が出してくれるみたいだからな。俺はホテルを予約するだけでOKってことだ。』

 

ふーん。そりゃ、良心的な運営なことで……

 

廻「ま、お前がそれでいいなら俺も何も言わねえよ。」

 

まあ、何かあっても家に連絡すれば泊めてくれるだろうから、そこは心配ねえか。

 

泊『ま、詳しいことは合流してからまた改めて話すよ。…で、もう他に聞いておきたいことはないか?』

 

そう言われて少し考える…。

 

廻「(ま、今は特にこれと言った質問はないし、これだけでいいか。後は会ってから聞けばいいからな…)」

 

廻「いや、特にはない。」

 

泊『そうか。じゃ、また。』

 

…あ、ヤベ…。一番大事なことを聞き逃すところだった…

 

廻「あ、悪い。まだ一番聞きたいこと聞いてなかった。」

 

泊『何だ?』

 

廻「そのDJの大会の名前ってなんだよ?」

 

泊『あぁ、そう言えば言ってなかったな。そのイベントの名前は……』

 

直後、そのイベントの名前を聞いて俺は、驚く事になる。

 

 

 

  泊『 D()4()F()E()S() () だ!』

 

 

 

 

 

 




事件メモ
今回は特になし。

さて、心機一転ここからシーズン2が始まります!
いや、前作の最後で「またどこかで会いましょう」なんて言ったのにすぐに新作を投稿してしまいました!
シーズン2では、前作で出来なかったオリ主とのクロスオーバーに挑戦していこうと思います!
前作での経験を活かして、このシーズン2も頑張って投稿していくので、応援よろしくおねがいします!
最後に、クロスオーバーなのに、キャラを全く出してなくてすみません…
次回からはどんどん出てきますよ!


次回予告
久しぶりの泊からの電話はなんとあの『D4FES』の前座の話だった!そこで、あの人物たちと出会い?…

それでは、また次回お会いしましょう!



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探偵、再び! その2


前回のあらすじ
久しぶりに泊から電話がかかってきた廻。
その内容はなんと「D4FES」のオープニングに出場するので一緒に出てほしいといったことだった!

それと、この小説では、D4DJのオリジナル展開・設定を含みます。

それでは、本編どうぞ!


数日後 空港 

 

俺たちは、今空港に来ている。その目的は今日から泊がこっちにくるからその迎えってことだな。

 

灯「しかし、ビックリしたよね…まさか泊さんに頼まれて出場する大会がまさか『D4FES』なんてね。」

 

まだ時間があるから灯と話していたら話題は例の大会の話しに変わっていった。

 

廻「本当だよ、全く…」

 

まさか、俺もそんな大きすぎる大会とは思ってなかったからな。

 

灯「というより、流石に廻でも、『D4FES』のことは知ってたんだね…」

 

廻「そりゃ、一応DJやってたし、界隈では凄い盛り上がってたからな。それに、D4FESって言ったら、日本にDJ文化を開花させた凄い大会だからな。」

 

俺も噂では、8年ぶりに開催されるってことは聞いてたけど、まさかその大会に出ることになるとはな……

 

泊「よ!待たせたな!」

 

そんなことを灯と話していると後ろから声をかけられる。

…やっときたか。

 

廻「『よ!』じゃねえんだよ。いきなり連絡してきたと思ったらまさかD4FESにでることになるなんて…」

 

泊「それに関しては悪かったよ。」

 

廻「…まあ、やると決めた以上はできることは全てやるけどよ、いくら前座とはいえ、下手な真似はできないぞ?分かってるのか?」

 

確認も込めて俺は、泊に改めて聞く。

 

泊「それに関しては、廻を信じてるから大丈夫だ。」

 

廻「そうかよ。」

 

表情から見てどうやら泊は覚悟を決めているようだった。

こうなったら俺も覚悟を決めないとな…。俺だけいつまでもうじうじしている場合じゃないからな。

 

廻「で、どこで練習するんだ?」

 

泊「ん?」

 

廻「いや、『ん?』って…。練習する場所も当然確保してきてるんだろ?」

 

泊「いや、裕次郎さんのスタジオを使わせてもらおうと思ってたんだが…」

 

…なんともまあ、タイミングが悪いことで……

 

廻「泊…」

 

泊「な、なんだよ?」

 

廻「残念ながら、マスターの所の音楽スタジオは今休業中だ。」

 

泊「…ゑ」

 

数秒間沈黙が続く。

 

泊「…マジで?」

 

廻「マジだ。」

 

泊「……」

 

泊「終わったな…」

 

そう言うと、泊はどこぞのボクサーみたいに真っ白に燃え尽きてしまった。

 

灯「どうする?言ってくれれば裕次郎さん、スタジオ開けてくれそうだけど…」

 

廻「けど、あんなクソ暑いなかで練習したら熱中症になってぶっ倒れるぞ?」

 

一応扇風機もあるけど、それだけじゃ、暑さは紛れないだろうな…

 

灯「でも、どうにかなるかもしれないじゃん?取り敢えず連絡だけでもしてみる。」

 

そう言って灯は裕次郎さんに電話をかけに行った。

 

‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾

数分後 

 

灯「お待たせ。」

 

数分後に裕次郎さんとの連絡を終えた灯が戻ってきた。

 

廻「で、どうだった?」

 

灯「裕次郎さんに連絡してみたら、なんと!」

 

……お、これは、ひょっとすると…

 

灯「裕次郎さんの知り合いが使っていたスタジオを借りれることになったって!」

 

泊「灯さん、本当ですか!?」

 

復活した、泊が灯に話しかける。

 

灯「うん、本当だよ。なんでも今は使ってないから無料で貸してくれるらしいよ。」

 

おいおい、マジかよ。貸してもらえるどころか、まさか料金も無料なんて…

 

廻「本当に無料でいいのか?」

 

灯「まだ使えるけど、何年も使ってないから古くなって誰も使ってないらしいよ。だから、無料でいいんだって。」

 

これは、後で裕次郎さんにお礼を言っとかないとな。

 

灯「住所も聞いたから、早速行ってみよう!」

 

廻「そうだな。」

 

泊「本当にありがとう、灯さん!」

 

灯「お礼なら私じゃなくて、後で裕次郎さんに言ってね。」 

 

泊「そうします。」

 

一時はどうなるかと思ったけど、取り敢えず練習する場所は確保できたな。

 

廻「って、行くのはいいけど、灯もくるのか?」

 

灯「うん。どうせ、私もやることないから一緒に行こうかなって。ダメだった?」

 

廻「いや、ダメってことはないが…」

 

灯「じゃあ、いいじゃん!早く行こうよ!」スタスタ

 

廻「…はいはい。じゃ、行きますか。」

 

泊「あぁ。」

 

そうして俺たちは、裕次郎さんの知り合いのスタジオを目指して移動していった。

 

‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾

電車での移動中

 

俺たちは今スタジオに行くために電車に乗っていた。

因みに泊は朝が早かったのか爆睡している。

 

灯「…ねえ、廻…」

 

すると、いきなり不安そうな声で灯が俺に話しかけてきた。

 

廻「なんだ?」

 

灯「…さっき裕次郎さんに電話したときに気になることを言っててね…」

 

廻「気になること?」

 

灯「うん、実は…」

 

‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾

数時間前

 

灯『というわけで、裕次郎さん、どうにかできないですか?』

 

裕次郎『ん〜…、いきなりいわれてもなぁ…』

 

灯『無茶を言ってるのは分ってます。けど、このままだと、泊さんが……』

 

裕次郎『…』

 

灯『おねがいします、練習できればどこでもいいので…』

 

ただ、他の人に迷惑をかけない場所に限るけどね…

 

裕次郎『…一つ』

 

灯『え?』

 

裕次郎『一つ当がないわけでもないよ…』

 

灯『ほ、本当ですか!?もうその場所でおねがいします!』

 

裕次郎『そこまで言うなら、連絡してみる。ちょっと待ってて』

 

灯『分かりました。』

 

数分後

 

裕次郎『お待たせ。無事に使わせてもらえるようになったよ。』

 

灯『本当にありがとうございます!』

 

裕次郎『ただ、そのスタジオもう古いし、長く使ってないから今も使い物になるかは分からないって言われたけどね。』

 

灯『だとしても、練習する場所がないよりはいいですよ。助かりました。』

 

裕次郎『…けど、変だな……』

 

灯『何が変なんですか?』

 

裕次郎『あてがあったから電話したけど、そいつと仲良くないんだよな。』

 

灯『そうなんですか?』

 

裕次郎『学生の時のクラスメイトでね。そんなに話すこともなかったよ。お互いスタジオを開いたときには、それなりに話していたけど、それも一ヶ月も立たないうちに連絡しないようになったらね…』

 

灯『そうなんですね。…けど、それでよく貸してくれましたね…』

 

裕次郎『そうなんだよね…。しかも、最初は渋ってたのにD4FESの名前を出したら、すぐに了承してくれたんだよ。』

 

灯『え?…』

 

‾‾‾‾‾‾‾‾‾

廻「そりゃ、確かに変だな。けど、そんなに気にすることか?」

 

全く気にならない、といえば嘘になるけど、貸してもらえるだけ感謝しないとな。

 

泊「そうだよ。それに、練習する場所を貸してもらえたんだから、ついたらお礼を言わないとな。」

 

廻「そうだな。」

 

灯「…本当になにもないといいんだけど……」

 

 

数時間後 古いスタジオ

 

灯「やっと、着いたね…」

 

廻「…ほんとだな。」

 

たく、場所を提供してもらえたのはいいけど、こんなところにあるなんてな…

 

廻「ここ、立地悪すぎるだろ。オーナーのところより人が来てなかったんじゃないか?」

 

多分それで潰れたんだろうな。

 

?「待たせたね。君たちが、裕次郎が言っていた人たちだね?」

 

そんなことを考えてると、後ろから声をかけられる。

振り向くと、一人の男性が立っていた。

 

廻「そうです。」

 

「待たせて悪かったね。私の名前は、『逆田(さかた)です。』」

 

廻「音咲廻です。」泊「黒崎泊です。」灯「月本灯です。」

 

続けて俺たちも自己紹介する。

 

廻「今回は、僕たちのために練習の場所を提供してくれてありがとうございます。」

 

泊「ありがとうございます。おかけで助かりました。」

 

逆田「いえ。気にしないでください。それよりも聞きましたよ、あのD4FESに参加するんですよね?」

 

泊「はい。…と言っても、出るのは、オープニングだけの前座ですけどね」ハハ

 

逆田「それでも、凄いですよ!オープニングでも中々出れる人はいないんですから。」

 

廻「ありがとうございます。せっかく、練習場所を提供していただけたので、僕たちも最高のパフォーマンスをしたいと思います。」

 

オープニングだけとはいえ、あのD4DFESに出れるんだから、自分たちの実力を出しきらないとな。

 

逆田「えぇ、頑張ってください。…すみません、話しがそれましたね。これがスタジオの鍵です、どうぞ。」

 

廻「僕たちが持ってていいんですか?」

 

逆田「いいよ。私も、いちいち出てきて鍵を渡すのも大変だから。大会が終わったら返してもらえればいいですよ。それと、スタジオの中もしばらく使ってないから掃除が必要ですよ。」

 

泊「分かりました。掃除は僕たちの方でします。」

 

逆田「スタジオは、汚さなければ好きに使っていいですよ。…じゃ、もう帰るからあとはよろしく。」

 

そう言って逆田さんが、帰ろうとしたときだった。

 

灯「…あの!」

 

逆田「?」

 

灯が逆田さんを呼び止めた。

 

灯「裕次郎さんから聞いたんですけど、最初はスタジオ貸すの渋ってたんですよね?なんで急に貸すことにしたんですか?」

 

廻「おい、いきなり何聞いてんだよ!…すみませんね…」

 

逆田「ハハ、別にいいですよ。理由は、『D4FESに出るから』応援したくなったんですよ。立とうと思って立てる舞台じゃないですから。」

 

…何か、今の言い方気になるな……

 

灯「そうだったんですね。いきなり、変な質問してすみませんでした。」

 

逆田「いえ、いいですよ。じゃ、後はゆっくりどうぞ。」スタスタ

 

そう言うと、逆田さんは去っていった。

 

廻「…さて、それじゃ掃除するか。」 

 

泊「そうだな。早く練習したいから、早く終わらせよう。」

 

‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾

数時間後

 

廻「使ってなかっただけあって汚れが酷いな。」

 

泊「そうだな。ま、もうそろそろ俺の担当は終わるけどな。二人はどうだ?」

 

廻「俺ももう少しで終わるよ。」

 

灯「私はもう終わってるよ。」

 

廻「早いな。…あぁそっか、一人暮らしだから家事やってるからか。」

 

灯「それもだけど、元々掃除とか得意だったからね。って、喋ってないで手を動かす!」

 

廻「分かってるよ。」

 

 ♪♪♪♪♪

 

廻「悪い、電話だ。……あれ?マスターからだ。もしもし?」

 

裕次郎『お、出たな。今時間大丈夫か?』

 

廻「時間は大丈夫だけど、どうかしたのか?」

 

裕次郎『無事にスタジオにつけたか?』

 

廻「ああ、逆田さんに会って鍵ももらったよ。好きに使っていいんだとさ。わざわざそれを確認するために連絡したのか?」

 

裕次郎『いや、それもあるんだが……』

 

廻「…何かあったのか?」

 

裕次郎『…少し思い出したことがあってな。』

 

いつもの裕次郎さんのように、明るい声ではないな…

 

廻「思い出したって?何を?」

 

裕次郎『D4FESの単語が出た瞬間に話しに喰い付いてきてな。』

 

廻「それなら、灯から聞いたぞ?」

 

裕次郎『そうか。あと、そこから話している時の声が明らかに変だった。』

 

廻「変って、どんなふうに?」

 

裕次郎『その何て、言うか、…喜んでるのか怒ってるのか分からないような声だったんだよ…』

 

廻「それは確かに変だな…」

 

怒りと喜びって全く違う感情じゃねえか。それが一緒にくるってどういうことだよ…

 

裕次郎『ま、なにもないと思うけど、一応伝えておこうと思ってな。じゃ、大会頑張れよ!』ピッ

 

灯「何の話しだったの?」

 

廻「何でもねえよ。…よし、早く掃除終わらせるぞ。」

 

泊「そうだな。」 

 

‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾

数時間後

 

廻「よし、これで終わりっと。」

 

泊「あー、疲れた…」 

 

灯「お疲れ、飲みのも買ってきたよ。」

 

泊「お、ありがとう!」

 

廻「ありがとうな」

 

灯「どういたしまして」

 

俺たちは灯が買ってきてくれた飲み物を飲みながなら今後のことについて話していく。 

 

廻「取り敢えず、今日はもう遅いから練習は明日からだな。」

 

泊「そうだな。とうやら、電気も通してくれてるみたいだから電気関係も困らないな。これなら思いっきり練習できるぞ。」

 

廻「それは助かるな。灯はどうするんだ?」  

 

灯「ん~~、そうだね、私も用事がない日は見に来ようかな。」 

 

廻「分かった。…さて、あんまり遅くなるといけないからそろそろ帰るか。」

 

泊「そうだな。」

 

‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾

数分後 帰り道

 

廻「そう言えば、お前どこに泊まるんだ?」

 

泊「宿泊に関しては問題無しだ。しっかりと予約してるから。」

 

廻「そうか、ならいいけど…」

 

泊「…あ、じゃあ俺こっちだから。」

 

廻「じゃあ、また明日な。」

 

灯「……あ!私コンビニに用があるから寄っていい?」

 

廻「別にいいぞ。」  

 

そうして、コンビニに向けて歩き出した時だった。

 

?「ちょっと、どいてよ!」  

 

「ちょっとぐらいいいじゃん?君見たところ学生だよね、どこの学校?」

 

声をした方を見ると、小柄の小さい女性が男に絡まれていた。

 

ん?なんで、あの子うさみみなんてつけてるんだ?随分と目立つ姿をしてるな…

…って、それよりも……

 

廻「そこまでにしといたほうがいいよ。その子が困ってるだろ。」

 

「あー?誰だお前」  

 

廻「ただの通行人だよ。」

 

「ふざけやがって、馬鹿にしてるのか!」 

 

廻「別に馬鹿にはしてないよ。」

 

「だいたい、かんけーない奴は引っ込んでろ!…さ、どこか遊びに行こう!」

 

?「いた!」

 

 ガシ

 

廻「その手、離せよ。」

 

俺も男の腕を掴み、女性から手を離す。

 

「いててて、この野郎!」

 

殴ってきた拳を避ける。そして…

 

廻「よっと!」

 

そのまま背負投げを決める。

 

「っ!」

 

廻「どうする、まだやる?」

 

「くそ!覚えてろよ!」

 

灯「大丈夫?怪我はない?」

 

?「えぇ、ありがとう…」

 

廻「ま、怪我がないなら良かったよ。……やべ!」

 

灯「どうしたの?」

 

廻「今気づいたけど、綾が随分と怒ってるみたいだ…。悪い、これ以上怒らせると、まずいから俺はもう帰るぞ。じゃあな!」ダッ!

 

灯「ち、ちょっと!じゃ、気をつけてね!」

 

?「あ…。行っちゃった…」

 

 お〜い!

 

?「皆!どうしたのよ?」

 

?「どうしたもなにも、むにの帰りが遅かったから見に来たんだよ。何してたんだよ。」

 

むに「別に。ちょーっと、男の人に絡まれちゃったのよ。」

 

?「えー!?だ、大丈夫だったの、むにちゃん!」

 

むに「ちょっと!声が大きいわよ、りんく!他の人もいるんだから。それに大丈夫よ、助けてもらったの。」

 

りんく「助けてもらったって誰に?」

 

むに「さあ?」

 

?「『さあ?』って…名前聞いてないのかよ…」

 

むに「仕方ないじゃない!名前聞く前に帰っちゃたんだから」

 

りんく「でも、とにかくむにちゃんが無事で良かったよ〜!ね、まほちゃん!」

 

真秀「うん。さ、早く帰ろう、麗が待ってるから。」

 

むに「そうね。」

 

むに「(…あの男性、どこかで見たことあるような?…ん~~どこでだったかしら?)」

 

りんく「おーい、むにちゃん!置いていくよ!」 

 

むに「こらー!わたしを置いていくな〜!!」

 

 





事件メモ
・逆田 裕次郎の学生時代の同級生。交流はそんなになかったが、今回スタジオを借りることになった。
・逆田は当初はスタジオを貸すつもりはなかったが、「D4FES」の単語が出てきた途端に何故か貸すことにした。

以上です。

いやー、やっとD4DJのキャラを出せました!ただ、口調が合ってるか分からないので不安です…
なので、少しでも「なんか違う」と思ったら感想などで気軽に言ってください!

次回予告
取り敢えず連絡する場所を確保できた廻たち。これからD4FESにむけての練習が始まる!
そして、最後に出てきた女性たちは一体誰なのか?

それでは、また次回お会いしましょう!


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探偵、再び! その3


前回のあらすじ
何とかスタジオを借りることが出来た廻たち。
しかし、裕次郎や、逆田の話しから廻は不審に思うところがあるのだった…

それでは、本編どうぞ!



あれから数日後

 

泊「……。よし、結構形になってきたな。」

 

廻「そうだな。と、言ってもまだまだ練習は必要だけどな。」

 

なんせ、俺はブランクが長すぎるからな。

 

泊「あ、そうそう。明日からのことなんだけどな、場所を変えようと思う。」 

 

廻「せっかくここに慣れてきたのになんでだよ?」

 

泊「実は、明日からD4FESの会場で練習できるようになってな。実際のステージで練習できるだけでなく、近くにあるスタジオが大会期間中、無料で借りれるらしいからな。」

 

廻「なるほど。確かに、実際のスタジオで練習できるのは、本番をイメージしやすいし、交通の便から考えても楽だからな。いいんじゃないか?」

 

泊「決まりだな。じゃ、後で待ち合わせの場所をメールで送っておくから確認してくれ。」

 

廻「分かったよ。」

 

明日からいよいよ、ステージで練習出切るのか…。

一体どれだけ凄いんだろうな……。

 

泊「さて、時間もいいし、今日はこの辺にしとくか。あ、逆田さんに鍵を返しに行かないとな。」

 

廻「じゃ、俺が行ってくる。泊はスタジオの片付けよろしく。」

 

泊「了解。」

 

そうして俺は逆田さんに鍵を返しに行った。

 

‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾

数分後 逆田の家

 

 ピンポーン

 

逆田「はい、どなたですか?」

 

廻「廻です。借りてたスタジオの鍵を返しに来ました。」

 

逆田「あー、廻さんですね。今行きます。」

 

 

 ガチャ

 

逆田「わざわざ返しに来てくれてありがとうございます。」

 

廻「いえ、僕たちのためにスタジオを貸してくれてありがとうございました。」

 

逆田「練習はもういいの?」

 

廻「はい。明日からは別の場所で、練習するので。」

 

逆田「ま、ここらへんは交通の便が悪いからね。…因みにだけど、どこで練習するの?」

 

廻「あー、それはD4FESの会場の近くですね。」

 

逆田「へー、そうなんだ…」

 

廻「…あの、何か?」

 

逆田「…そう言えば、会場の近くって言ってたけど、もしかして実際のステージでも練習するのかな?」

 

…やっぱり、おかしいな。なんで、そんなに俺たちの練習する場所を気にしてるんだ?

 

廻「…まあ、そうですね。それがどうかしましたか?」

 

逆田「あぁ、ごめんね。いきなり変なこと聞いて。場所を聞いたのは、僕も応援したいと思ったし、差し入れを持っていきたいなと思ったから…」

 

廻「そうですか、ありがとうございます。それでは、失礼します。」

 

 

逆田「…」

 

‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾

数分後 帰り道

 

廻「…」

 

泊「…でさ、あそこの部分を変えて見ようと思うんだけど、どうだ?……おい、廻聞いてるのか?」

 

廻「悪い、考え事してた。」

 

泊「しっかりしてくれよ?大会も近くなってきたんだからな。」

 

廻「悪い。」 

 

泊に呼びかけられて、我に返る俺。

どうしてもさっきのことが気になって仕方ねえんだよな…

いや、D4FESに集中しないといけないのはわかってるんだけどな…

 

泊「じゃ、もう一回言うぞ?」

 

廻「頼む。」

 

そうして、ステージでのことを話しながら進んでいく。

 

泊「…お、コンビニがあるじゃねえか。ちょっと休憩していこうぜ!」

 

廻「そうだな。俺も疲れたし休みたいからいいぞ。」

 

?「あー!」

 

突然後ろから大声がしたので振り向くと昨日の女の子が立っていた。

 

廻「あれ、昨日の?」

 

泊「なんだ、知り合いか?」

 

廻「昨日ちょっとな。」

 

まさか再会するとはな。

 

?「ちょっと、むに!いきなり走らないでよ!」

 

後ろからまだ3人の女性が走ってむにと呼ばれた女性と合流する。

 

むに「だって、昨日助けてもらった人を見つけたから。」 

 

?「えー!?じゃあ、この人がむにちゃんを助けてくれた人なの!?」

 

黄色い髪のロングヘアの女性が話しかける。

凄い元気な人だな…

 

「まあ!それでは、お礼を言わないといけませんね、むにさん。」

 

むに「わ、分かってるわよ!その、昨日はた、助けてくれてありがと…」

 

照れながら俺にお礼を言うむにと呼ばれした少女。

 

廻「どういたしまして。怪我とかなかった?」

 

むに「大丈夫だったわよ!」

 

それなら良かった。

 

?「ねえねぇ、DJやってるの?」

 

?「ちょっと、りんく!初対面の人にいきなり…」

 

やけにフレンドリーに聞いてくるな。まあ、いいけど…

 

廻「してるけど、どうしてそんなことを?」

 

りんく「やっぱり!何となく感覚でやってないかなって思って!あのね!私達もDJやってるの、ここにいるみんなで!あ、私『愛本りんく(あいもと りんく)』って言うの!で、こっちが…」

 

なんか、自己紹介が始まったな…

 

むに「『大鳴門むに(おおなると むに)』よ。」

 

麗「私は、『渡月麗(とげつ れい)』です。昨日はむにさんを助けていただきありがとうございます。」

 

凄い礼儀正しい子だな。どこかのお嬢様か?

 

真秀「私は、『明石真秀(あかし まほ)』です!」

 

これは、俺たちも名乗った方がいいよな…。

仕方ないか…

 

廻「むにさんが、無事で良かったです。僕は音咲廻です。」

 

泊「俺は、黒崎泊です。俺も廻も大学生です。みんな見たところ学生みたいだけど、高校生?」

 

真秀「はい。私たち、陽葉学園っていう学校に在籍してます!」

 

泊「よ、陽葉学園!?それは凄いな…」

 

やけに泊が驚いてるな…。そんなに陽葉学園って凄いのか?

 

廻「なんでそんなに驚いてるんだ?」

 

泊「お前知らないのか?陽葉学園といったら中高一貫校で、音楽活動に力を入れてる学校だよ。特にDJ活動に力を入れてて、ライブスペースや練習室なんかの設備が凄いらしいぞ。」

 

廻「へー。そうなのか。」

 

学校が力を入れるなんて、凄いな…

 

麗「陽葉学園のこと、よくご存知なんですね。」

 

泊「まあ、DJやってるとどうしても耳にはいってくるからね。それに在籍中に成績を残すと、いろいろとスカウトが来るとか…」

 

りんく「えー!そうなの!?」

 

廻「……いや、知らなかったのかよ!」

 

思わず、素で突っ込んでしまった。

なんで陽葉学園にいるのに知らないんだよ、この子…

 

真秀「は、はは…まあ、りんくはまだ転校してきたばかりだから知らないのも無理はないよ。」

 

あー、そういうことね…

 

泊「…あ、転校と言えば、最近陽葉学園にユニットごと転校して来た人たちがいるとか…」

 

むに「それって、『Photon Maiden』のことじゃない?」

 

泊「そうそう、確か…」

 

廻「ちょっと待て。」

 

泊「何だよ、せっかく盛り上がってたのに…」

 

廻「ここで、立ち話するのもなんだから、どこか店に入らないか?」

 

それに俺も少し興味が出てきたから、話しを聞きたいのもあるからな。

 

泊「てことだけど、四人とも大丈夫?」

 

真秀「え?で、でも…」

 

廻「心配ないよ、俺たちの奢りだ。」

 

りんく「えー!いいの!?」

 

食いつきはや!

 

泊「ま、そういうことだから遠慮しないで。」

 

りんく「じゃ、お言葉に甘えて!」

 

そういうことで、俺たちは近くのファミレスに入ることにした。

 

‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾

 

真秀「あ、あの…本当に良かったんですか?」

 

泊「来ちゃったものは仕方ないよ。ま、遠慮しないで。」

 

麗「ありがとうございます!」

 

ま、ほどほどにしてほしいけどな。

そうして、四人が注文をする。

 

りんく「あ、すみません!このチョコレートパフェと、バニアアイスと…」

 

廻「…」

 

泊「…りんくちゃん、け、結構食べるんだね…」

 

廻「あ、あぁ…」

 

……俺たちの財布もつか?

 

泊「それで、さっきの続きなんだけどさ、Photon Maidenのことなんだけどさ。確か、Photon Maidenってあのネビュラプロダクションに所属してて、姫神紗乃がプロデュースを努めてるんだよね。何で、わざわざ陽葉学園に?」

 

真秀「それは、『サンセットステージ』に出場するためだと思います。」

 

廻「サンセットステージ?」

 

真秀「学園祭の最後に全校生から選び抜かれたアーティストがパフォーマンスを披露する場なんです。」

 

廻「なるほど、DJに力を入れている陽葉学園の大会で優勝できてれば、一気に知名度なんかあげれるならな…。」

 

むに「ま、結果はPhoton Maidenは出場できなかったけどね」

 

廻「ん?何で?」

 

そんなに実力があるなら、容易く突破できそうだけどな。

 

泊「確か、ある、ユニットに負けたんじゃなかっけ?名前は確か、…は、」

 

むに「『HappyAround!』私たちのユニットよ!」

 

泊「え、えーー!」

 

廻「うるせーよ。」

 

おかげで周囲の人の注目を集めてしまった。

「すみません…」と一言謝って席につく。

 

泊「ごめんね、いきなり。まさか君たちがあのHappyAround!だったなんて知らなくて…」

 

真秀「私達のこと知ってるんですか?」

 

泊「そりゃ勿論。最近注目を集めてる、DJユニットだよね?陽葉学園にスーパールーキーが現れたって噂になってるよ。何でも、あの『Peaky P-key』も注目してるとか。」

 

まーた知らないのユニットが出てきたよ…

 

りんく「聞いた?まほちゃん!私たち有名になってるんだって!」

 

むに「ま、この私の力を持ってすれば当然よね!」

 

…何かいろいろと騒がしいユニットだな。

ま、嫌いじゃないけどな……

 

廻「そんなに有名なら、D4FESには出るのか?」

 

真秀「あー…」

 

泊「どうしたの?」

 

麗「非常に言いづらいのですが、私達には招待が来てないんです…」

 

その瞬間場が気まずくなる。

 

廻「あー、なんかその、ごめん…」

 

真秀「気にしないでください。注目されているとは言えまだ結成してそんなに経ってないですから…」

 

りんく「けど、私たち、D4FESのルーキータイムに自己推薦で出場するの!」

 

なんだ、D4FESはそんなこともしてたのか。

 

廻「お前も推薦で出場すれば良かったじゃねえか。」

 

泊「いや、俺じゃまだ無理だな。ルーキータイムはマイナーなユニットだけとはいえ実力を備えたやつらばかりだからな。」

 

麗「ちょっと、待ってください。『も』ってことは、お二人もD4FESに出場されるんですか?」

 

二人で話していると麗に質問される。

 

泊「まあね。出場と言っても、オープニングの前座をやるだけだよ。」

 

りんく「えー!でも、メインステージに立つってことだよね!?すごい!」

 

泊「ありがとうね、りんくちゃん。ま、俺もあわよくばこの機会にスカウトとかの声がかけられるといいんだけどね…」

 

廻「ま、立場は違うけど、お互い頑張ろう。」

 

りんく「うん!」 

 

廻「じゃ、俺からも聞きたいことがあるんだけど、いいか?」

 

俺はむにの方を見て話しかける。

 

むに「な、何よ…」

 

廻「いや、『何は』俺のセリフだよ。さっきからチラチラ俺の方見て気が散るんだよ。」

 

むに「!あ、あんた気づいてたの?」

 

廻「まあな。それで、何か俺に言いたいことがあるのか?」

 

むに「別にないわよ。…けど、どこかで見たことあると思って。」

 

麗「まあ!むにさんのお知り合いですか?」

 

むに「いや、そんなんじゃないけど…」

 

廻「俺も会ったことないぞ。昨日が初対面だろ。」

 

むに「けど、どこかで…うーん、どこだったかしら?確か最近、ニュースかなんかで…」

 

泊「それってもしかしってた ング!」

 

俺は急いで泊の口を抑える。

 

麗「あ、あの大丈夫ですか?」

 

廻「気にしないで、大丈夫だから。」

 

泊「大丈夫な、わけないだろ!いきなりなにすんだよ!」

 

廻「お前が『探偵』のこと言いそうになったからだろうが。」コソコソ

 

四人には聞こえないように小さい声で泊に話しかける。

 

泊「別にそれぐらい言ってもいいだろ…」コソコソ

 

廻「余計にややこしいことに為るだろが!大人しく黙ってろ。」コソコソ

 

泊「分かったよ」コソコソ

 

麗「あ、あの…」

 

廻「悪いね、二人で話して。けど、もう終わったから大丈夫。」

 

麗「は、はぁ…」

 

さて、そろそろ良い時間になってきたな…

 

廻「そろそろお開きにしますか。」

 

真秀「そうですね。」

 

あー、伝票見るのこえーな……

 

廻「」

 

泊「廻、どうした?」

 

 スッ

 

俺は、静かに伝票を泊に渡す。

 

泊「わぉ…」

 

これはしばらく贅沢はできねえな…

 

‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾

店の外

 

ハピアラ「「ごちそうさまでした」」

 

泊「じゃ、気をつけて帰ってね。」

 

麗「では、今度はD4FESでお会いしましょう。」

 

廻「そうですね。じゃ、また。」

 

廻「俺たちもあの子達に負けないように頑張らないとな。」

 

泊「そうだな。」

 

 

 このとき俺たちは『夢の舞台』が、あんな惨劇の舞台になるなんて、このときは思いもしなかった…

 

 





事件メモ
・何故か逆田は、二人が練習する場所を気にしている。

以上です。

次回予告
D4FES会場でハピアラと再会した廻たち。着実に練習を済ませ、自信をつけた廻たちだったが、会場に異変が?

それでは、また次回お会いしましょう!





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探偵、再び! その4


お久しぶりです。最近、プライベートの時間があまり取れなくて、投稿が遅くなってしまいました。そのお詫びというわけでは、ないですが、今回の話しは長くなっています!じっくり読んでください!

前回のあらすじ
偶然にもハッピーアラウンドのメンバーと再会した廻たち。そこで、様々な話しを聞くことができたのだった。
そして、ついに事件が…?

それでは、本編どうぞ!

 


翌日 D4FES 会場

 

廻「…すげえ…」

 

朝早くから出発して会場についた俺はそのスケールのデカさに圧倒されていた。

 

泊「これは思った以上だな。」

 

廻「あぁ、想像以上だ。」

 

泊「けど、これだけでかいとやる気が出るな!」

 

廻「そうだな。…さて、準備するか。」

 

そうして、俺たちはD4FES大会本部に行くことにした。

まずは、そこで今の時間使えるか確認しないとな。

 

‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾

D4FES 大会本部

 

廻「すみません。」

 

スタッフ「はい、どうしました?」

 

泊「俺たち、オープニングに出演する『Driving』の二人ですけど、いいですか?」

 

『Driving 』っていうのは、俺たちのユニット名だ。

名前を決めたのは泊で、理由は、俺たちの名前から取ったのと「止まったり、回ったり、ドライブみたいに爽快なライブができるように」らしい。

因みに、このユニット名は俺が中学の時にやってたユニット名そのままだ。

 

廻「僕たち、ステージで練習したいんですけど…」

 

スタッフ「分かりました。今、使えるか確認してきますね。」

 

そうして、スタッフの人が確認しに行った。

 

 

数分後

 

スタッフ「お待たせしました。」

 

泊「それで、どうですか?使えます?」

 

スタッフ「それが、他のユニットがこれから使うことになっているので…」

 

廻「そうですか、分かりました。それじゃ、いつならステージが使えるかと、今空いている近くのスタジオを教えてもらってもいいですか?」

 

スタッフ「それなら、明日はすぐにスタジオが使えますよ。近くのスタジオは……が開いてますよ。」

 

廻「ありがとうございます。」

 

泊「取り敢えず、今日はスタジオで練習だな。」

 

廻「そうだな。」

 

ま、メインステージに出演する人たちも、優勝することに必死だから仕方ないよな。

 

スタッフ「あの、本当に困ります!」

 

ん?何か外が騒がしいな。…って

 

逆田「だから、ここに知り合いがいるんですよ!通してください!」

 

外に出ると、逆田さんとスタッフの人が揉めていた。

 

廻「逆田さん、どうしたんですか?」

 

逆田「あ!いました!私が探してたのは、この人たちです。」

 

スタッフ「そうでしたか。」

 

逆田「いやー、迷惑かけてごめんなさいね。」

 

スタッフ「今回は、多目に見ますけど、本来は事前にお配りしている、『証明写真付きの参加証明書』がないと、本部に入れないですからね。気をつけくださいよ…」スタスタ

 

そう言うと、スタッフの人は歩いて去っていった。

 

廻「で、どうしたんですか?」

 

逆田「いや、急に応援に来たいと思ってね。久しぶりに、D4FESも見たいと思ったから。」

 

廻「…そうしてくれるのは、嬉しいでるけど、別に今じゃなくて本場を見に来てくれたほうがいいと思うんですけど…」

 

逆田「まあまあ、そう言わずにさ。」

 

泊「そうだぞ。それに、練習から見に来てくるなんて何か、贔屓されているみたいでいいじゃないか。」

 

逆田「あ、ごめんなさい、ちょっとトイレにいってきますね。先に外に出て待っててください。」スタスタ

 

行ってしまった…。

 

 

数分後

 

廻「遅かったですね。」

 

あれから50分程度で、逆田さんが帰ってきた。トイレにしては長すぎるな…

 

逆田「すみませんね。多分、気の生のもの食べたから、あたったのかもしれないですね…」

 

廻「それ、病院に行ったほうがいいんじゃないですか?」

 

逆田「大丈夫ですよ。」 

 

それならいいんどけどな…

 

逆田「お二人はこれからどうするんですか?」

 

廻「今から近くのスタジオで練習しようと思ってます。」

 

逆田「それなら、二人の邪魔になったらいけないので、今日はもう帰ります。では、頑張ってください。」スタスタ

 

そう言うと、逆田さんは去っていった。

 

廻「じゃ、俺たちもスタジオに行くか。」

 

泊「そうだな。」

 

‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾

スタジオ

 

泊「…よし、こんなものだろう。」

 

廻「だな。あとは、実際のステージに立って練習するだけだな。」

 

泊「しかし、流石廻だな。もうブランクを感じさせない動きができるじゃねえか。」

 

廻「ま、俺も基礎から体力作りといろいろ頑張ったからな。」 

 

泊「そりゃ、頼もしいな。今から本番が楽しみだ。」

 

廻「取り敢えず、今日はここまでだな。」

 

泊「そうだな。しかし、ホテルが使えるのはありがたいな。」

 

廻「あぁ。まさか、オープニングにしかでない俺たちも出演者と同じホテルが使えるなんてな。」

 

そう、今日から運営が用意してくれたホテルに泊まるのだ。

灯は、本番当日に見に来てくれるらしい。勿論『あいつら』も連れてな。

 

泊「腹減ったなあ…。どんな、料理が出てくるか楽しみだな!」

 

廻「そうだな。じゃ、早く行こうぜ。」

 

俺も今日は朝早くて疲れたからな。後はゆっくりしたいな。

 

‾‾‾‾‾‾‾‾‾

数分後 ホテル

 

泊「夕飯まで、少し時間があるから少し探索しようぜ!」

 

廻「…お前、疲れてないのか?」

 

さっきまで俺と同じぐらいヘトヘトだったのに、ホテルについた途端、元気になりやがった。

 

泊「いや、疲れてるけど、何か初めてくるところってわくわくしないか?」

 

廻「お前は子どもかよ…」

 

泊「何だよ、ノリ悪いな…。それに、どこに何があるかだけでも知ってた方が良くないか?後でスムーズに移動できるし。」

 

廻「…たく、仕方ねえな。その代わり他の宿泊客に迷惑かけんなよ?」

 

泊「分かってるよ。」

 

数分後

 

泊「これで一通り見たな。」

 

廻「だな。…よし、もうご飯の時間だな。」

 

泊「やっとか。早く行こうぜ!」

 

廻「そうだな。」

 

お腹すいたし、どんな料理が出てくるか楽しみだな。

そうして、食堂に向けて進んでいるときだった。

 

 

 ドン!

 

?「いた!」

 

前から歩いてくる一人の女性にぶつかってしまった。

 

廻「すみません、怪我はないですか?」

 

泊「なにやってんだよ、廻。ちゃんと前見て歩けよな…立てますか?」

 

?「痛いなー、ちゃんと前見て歩けっての。」

 

…は?

 

廻「すみませんね、『小さくて』見えなくて」

 

?「はー!?そっちがぶつかってきたんでしょ!なにその言い方!」

 

泊「おい、廻!」

 

?「しのぶ、ここにいたんだ。って、どうしたの?」

 

目の前の女性と険悪な雰囲気になっていると、後ろから声がかけられた。

 

しのぶ「…何でもない。行くよ、響子。」スタスタ

 

響子「ちょっと!」スタスタ

 

そう言うと、二人は歩いて去って行った。

 

 

泊「たく、お前どうしてあんな態度取るんだよ…」

 

廻「確かにぶつかったことは悪かったけど、あの態度はないだろ。」

 

ちゃんと謝ったからな。それで、あんな態度取られたらムカつくっての…

 

廻「…ま、過ぎたことは仕方ないだろう。早く行こうぜ。今日は顔合わせもあるんだろ?遅れたら大変だ。」

 

そう、今日はD4FESに出場する人たちが交流を目的として一堂に会する。だから、遅れたら運営の人に怒られてしまう。

 

泊「…はぁ。今度からは気をつけろよ。」

 

そうして、食堂に移動した。

 

‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾

ホテル 食堂

 

スタッフ「皆様、今日は交流会に参加いただきありがとうございます!」

 

スタッフ「今日は、この『D4FES』に参加している方が一堂に会しています。いろんな方と交流して、皆様の今後の成長に役立ててもらえれば幸いです。それでは、今日はお楽しみください。」

 

スタッフの方の挨拶が終わると、皆バラバラに動いて食事を取り始めた。

 

泊「じゃ、俺はいろんな人と話してくるけど、廻はどうする?」

 

廻「俺はあんまりそういうの得意じゃないから、一人で適当に食べてるよ。」

 

泊「そうかよ。ま、問題は起こすなよ?」

 

廻「おまえもな。」

 

そうして俺と泊は別れてそれぞれの行動を取った。

 

 

廻「さて、そろそろ部屋に戻るか。」

 

食事を済ませて、部屋に戻ろうとした時だった。

 

?「ちょっと、離して!」

 

大声がして、皆がそちらに注目する。

 

廻「(あいつ、確かさっきの…)」

 

見ると、さっきぶつかった女性が男たち数人に絡まれていた。

 

男1「嬢ちゃん、あの『Peaky P-key』の犬寄しのぶだろ?」

 

男2「俺たちちょっと、話しを聞きたいだけなんだよー。ちょっとベットの上でね」ゲラゲラ

 

そういうと、男たちは下品に笑う。

周りの人たちにも蔑んだ目で見られてるのに分からないのか…

 

それに、あいつ泊が言ってた『Peaky P-key』のメンバーだったのか。

 

スタッフ「会場で、問題行動を起こすのは辞めてください。」

 

スタッフの人が慌てて止めに入る。けど…

 

男3「あ〜?カンケーねえだろう、引っ込んでろ!」グッ

 

スタッフ「ッガ!」

 

スタッフの人を殴って倒してしまった。

 

男1「さ、行こうか。」

 

しのぶ「嫌だ、離して!」

 

しのぶは必死に抵抗するが、体格の差が激しく抵抗虚しく連れて行かれる。

 

…はぁ、仕方ねえな。

 

廻「…そこまでにしておいたら?」

 

男2「かんけーない奴は引っ込んでろよ。じゃないと、さっきの奴みたいになるぞ?」

 

廻「やれるもんならやってみな。」

 

男2「んだと、こらー!!」グッ

 

男が俺に殴りかかってくる。

 

廻「(よし、これを避けて……?)」

 

気づくと俺の前に一人の女性が出てきていた。そして、驚くことに、大の男の腕を掴んで受け流していた。

 

廻「(…この人、確か『響子』って言ってたか?)」

 

響子「大丈夫?」

 

廻「大丈夫ですよ。」

 

響子「しのぶを助けようとしてくれてありがとうね。けど、ここは私に任せて。」

 

男1「逆らわなければ、痛い目にあわずに済んだのに、仕方ないな、お前ら、やれ!」

 

リーダー的な男の合図で男たちが俺にと響子に殴りかかってくる。

 

今度はそれをちゃんと避けて、相手のみぞおちに一発殴る。

 

男2「がっ!」

 

そして、パタンと倒れる。

 

響子「へえー、やるじゃん!」

 

廻「そっちこそ。」

 

男3「よそ見してんじゃねえー!」グッ

 

 スッ

 

男を避けてそのまま響子が男に回し蹴りをする。

 

響子「よっと!」

 

男3「…」パタン

 

それを見た男たちは俺たちの様子を見て怖気づいたのか、数人は逃げてしまった。

 

たく、雑魚がイキってんじゃないよ。

そうして、俺と響子で残った男の相手をする。

 

そして、……

 

男1「何してる!?相手は男と女二人だけだぞ!?」

 

廻「、後はお前だけだな。」

 

男1「クソ!」スタスタ

 

走って逃げようとする男を走って追いかける。

 

男1「ッチ!どきやがれ!」

 

男のパンチを避けて、後ろに回り込む。そして、羽交い締めにする。

 

男1「離せ!」

 

廻「暴れんなっての」

 

そうこうしているうちに警備の人が来てくれたから、こいつを警備の人に渡す。

 

 

廻「…たく、やっと落ち着いたな。」

 

しのぶ「…ふ、二人ともありがとう…」

 

廻「どういたしまして。…さっきは、大人気なかったな、すまない。で、怪我はないか?」

 

しのぶ「怪我はない。…私もさっきはごめん…」

 

響子「とにかく、しのぶが無事で良かった。」

 

 おーい!

 

声がした方を見ると、泊とハピアラのメンバー、そして、二人の女性が近づいてきた。

 

泊「廻、一体何があったんだ!?」

 

麗「響子さん、廻さん大丈夫ですか?」

 

廻「なんともないよ。」

 

そうして、落ち着いたところで、皆に今あったことを話す。

 

 

泊「そんなことが…とにかく3人とも無事で良かった。」

 

廻「ところで、そこの二人は?」

 

由香「笹子・ジェニファー・由香です!」

 

?名前からしてハーフなのか?…

 

絵空「清水絵空でーす!二人を助けてくれてありがとうございまぁす!」

 

泊「二人は、響子さんたちと同じ『Peaky P-key』のメンバーなんだ。」

 

なるほど、だから心配してきたってわけか。

 

スタッフ「お二人とも大丈夫ですか?」

 

廻「はい。」

 

スタッフ「それは良かったです。二人のご協力ありがとうございます。それで、廻さんにお話があるんですがよろしいですか?」

 

廻「?別にいいですけど…」

 

一体何の話だ?

 

ここでは話せないとのことだったので、場所を移動して話を聞くことにした。

 

‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾

ホテル 応接室 

 

で、スタッフの人に言われた通りに応接室に来たわけだが……

 

廻「…何かついてきたな。」

 

何故かハピアラと、ピキピキの人たちもついてきていた。何があったのか気になるらしい。

スタッフの人にも許可を取ったから別にいいんだけどな…

 

廻「で、話しってなんですか?」

 

スタッフ「実は話しがあるのは、私からではないんです。」

 

廻「はい?」

 

一体どういうことだ?

 

 コンコン

 

俺たちが、困惑していると、誰かが部屋に入ってきた。

 

?「失礼します。」

 

スタッフ「ちょうど、良かった。空さん、この人が廻さんです。」

 

空と呼ばれた人が俺たちに挨拶する。

 

空「こんばんは、D4FES運営委員長の『三橋空(みつはし くう)』です。」

 

運営委員長が直にお出ましって…

他の皆も驚いている…

 

廻「どうも、音咲廻です。」

 

空「すまないね、急に呼び出してしまって。」

 

廻「それは別にいいんですけど、話しってなんですか?」

 

空「…実は君の力を借りたくて、呼んだんだよ。」

 

廻「?」 

 

どういうことだ?話しがみえねえな…

 

空「実は、このD4FESの開催が決定した次の日から大会運営に謎の電話が掛かってきてね。」

 

廻「謎の電話、ですか?」

 

空「最初は、無言電話が掛かってきてたんだ。けど、別に被害はなかったから、少し気味が悪かったけど無視をしてたんだ。」

 

空「それがだんだんエスカレートして、最近脅迫めいた電話を受けてね…」  

 

真秀「え!そ、それって大丈夫なんですか!?」

 

廻「真秀さん、落ち着いて。で、どんな電話だったんですか?」

 

空「それは録音しているものがあるからそれを聞いてほしい。」

 

そうして、空さんは録音したものを再生した。

 

‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾

『D4FESを今すぐに中止しろ。その気がないなら、こちらからD4FESを壊しに行く。どんなことをしても無駄だ。絶対に壊す。』

 

‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾

録音を聞き終えた後、空さんがまた話し出す。

 

空「一応警察に連絡しておいたけど、イタズラだろうと思って相手にしてなかったんだ。けど…」

 

廻「さっきの騒動があった。」

 

空「そうです。」

 

泊「けど、さっきの騒動は偶然だったんじゃないんですか?」

 

空「それが、そうでもないんだよ。実は、報告を受けてさっき連れて行かれた人たちのことを調べたんだけど、D4FESにそんな名前の人なんて参加してなかったんだ。」

 

響子「どういうことですか?」

 

空「そのままの意味だよ。あの中の誰一人として参加者の名前と一致しなかった。それに、昨日からこのホテルはD4FESの参加者が貸し切りになってるから、部外者は入れないんだよ。」

 

廻「誰かがあいつらを中に入れたってことですね?」

 

空さんが静かに首を振る。

 

なるほど、話しが見えきたぞ。

 

廻「つまり、こういうことですね?最初は誰かの悪ふざけだと思っていた脅迫電話だったけど、今日の騒動で現実味を帯びてきた。それをどうにかしてほしい、と。」

 

空「そうです。」

 

麗「けど、何で廻さんにお願いを?」

 

しのぶ「確かに。それに、頼むにしても警察とかじゃない?」

 

空「…あれ?皆さん、知らないんですか?この廻さんは…」

 

むに「あー!」

 

空さんが喋っているのに、むにが大声でそれを遮る。

 

ビックリした、いきなりどうしたんだよ…

 

真秀「どうしたんだよ、むに?」

 

むに「どっかで見たことあると思ったら、あんた最近話題の『音咲廻』じゃない!?」

 

りんく「えー!廻さん、そんなに有名人なの!?」

 

絵空「聞いたことあるわ。最近話題の様々な難事件を解決しているっていうあの探偵さんでしょ〜?」

 

むに「そうよ!まさか、D4FESに参加してたなんて…」

 

空「…話を戻していいですか?」 

 

真秀「あ、ごめんなさい…」

 

空「…それで、この依頼を受けてもらえますか?」

 

……結局こうなるのかよ…。

 

泊「おい、廻。協力してくれよ。じゃないと、このD4FESが…」

 

廻「分かってるよ。俺も、してきて練習を無駄にしたくはないからな。」

 

空「それじゃあ…」

 

廻「その依頼、引き受けます。」

 

空「ありがとうございます!」

 

 

りんく「ねえ、聞いた!?探偵さんだって!」

 

真秀「りんく、分かったから、落ち着いて!」

 

りんく「でもでも、探偵の活躍を間近で見られるんだよ!楽しみ〜。くぅ~、ハッピーアラウンド!」

 

そういうと、りんくは謎のポーズを取った。

ていうか…

 

廻「一応、言っとくけど、遊びじゃねえからな…」

 

りんく「分かってるよ!」

 

ほんとうかよ…

 

廻「取り敢えず、『あいつら』に電話するか。」

 

むに「『あいつら』って?誰よ?」

 

廻「ま、頼れる仲間だな。」

 

むに「?」

 

さて、今回の事件どうなるのか…

 

 





事件メモ
・ホテルで暴れた男たちは、D4FESの参加者や関係者でもない。
・D4FESが決まってから、無言の宇宙や、脅迫電話がかかってくるようになった。

以上です。

次回予告
ついに事件が起こってしまった。早速廻たちは情報収集のために動き出すが?…

では、また次回お会いしましょう!



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探偵、再び! その5

前回のあらすじ
D4FES運営委員長の三橋空から直接依頼を受けた廻。
早速情報収集に動き出す廻たち。そこでまた新たな出会いがあって…?

それでは、本編どうぞ!


翌日 ホテル

 

さて、今日から早速動かないとな。

 

泊「で、灯さんたちはいつこっちに着きそうだって?」 

 

廻「遅くても、今日の夜にはこっちにつくそうだ。」

 

泊「で、どうするんだ?」

 

廻「『どうする?』ってお前もついてくるのかよ?」

 

泊「なんだよ、いけないのか?」

 

廻「いや、別についてくるのはいいんだけど、練習しなくていいのか?無理して俺についてこなくてもいいんだぞ?」

 

実際、俺一人でも動けるからな。

 

泊「ま、元はと言えば誘ったのは俺だからな。俺も付き合うよ。それに、練習なら二人でしないと意味ないだろ?」

 

廻「…そうか。じゃ、これからホテルの人に話しを聞きに行くぞ。」

 

泊「分かった。」

 

そうして、俺たちは話しを聞きに行くことにした。

 

‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾

数分後 ホテル 応接室

 

西田「お待たせしました。私が、昨日の受け付けをしていた『西田(にしだ)』です。」

 

応接室で待っていると一人の男性が入ってきた。

 

廻「すみません、仕事中に。」

 

西田「いえいえ、あんなことがあったら仕方ないですよ。それで、私に聞きたいことというのは?」

 

廻「その昨日のことについてです。確か、招待されてもいない人が会場にいたってことですけど、何か心当たりはないですか?もしくは、不審な動きをしていた他の職員とか…」

 

俺は、西田さんに早速質問をしていく。

 

西田「残念ながら、何も…。他の職員の動きもここ最近は忙しくてあんまり見れてなかったので…」

 

そりゃそうか…D4FES関連の動きで忙しいだろうからな…

 

泊「あの、受け付けで名前を言ったと思うんですけど、その時点で分からなかったんですか?」

 

そう言えば、受け付けで名前を言って会場に入ったな。それに、招待状も見せたはず…

 

西田「確認はしたんですけど、どうやら参加者の名前を騙っていたみたいです。」

 

廻「つまり、本来参加するはずだった人と入れ替わったってことですか?」

 

西田「そうです。せめて、身元が確認できるものを提示してもらうようにしてたらこんなこと起こらなかったのに…」

 

廻「悔やんでも仕方ないですよ。それに、西田のせいでもないです。」

 

西田「そう言ってもらえると助かります…」

 

たく、犯人はホテルにまで迷惑をかけて何がしたいんだ?…

 

廻「最後に防犯カメラを見せてもらえませんか?」

 

西田「本来は警察の人にしか見せてはいけないけど、協力するように言われてるので、いいですよ。特別ですからね、他言はしないようにおねがいします。」

 

廻「ありがとうございます。」

 

多分、運営の人がホテルの人に話してくれたんだろうな。スムーズにカメラを見ることができた。

 

西田「では、ついてきてください。」

 

 

 

モニタールーム

 

西田「ここで、防犯カメラの映像を見ることができます。で、どの映像を見ますか?」

 

廻「取り敢えず、昨日の映像を最初からおねがいします。」

 

西田「分かりました。」

 

そうして、防犯カメラの映像を見ていく。何か手がかりが映っているといいんだけどな…

 

 

数時間後…

 

廻「……? すみません、そこの映像戻してもらえますか?」

 

西田「分かりました。」

 

俺は一つの映像に注目した。ホテルの入口付近の映像だ。

 

泊「何か見つけたのか?」

 

廻「これ見てみろ。」

 

泊「…あ、こいつら!」

 

そこには、昨日ホテルで暴れた奴らが映っていた。

 

泊「けど、なんでこいつらスーツなんか着てるんだ?会場にいたときと服装違うし…」

 

廻「取り敢えず、見てみよう。…動いたぞ。」

 

そうして、俺たちは、その映像を見ていった。

 

‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾

昨日 ホテル入り口付近

 

男1「ようそこ、〇〇ホテルへ!」

 

どうやら、参加者を待っていたみたいだ。

 

男1「お客様、申し訳ないないですが、今ホテル混んでるんですよ?」

 

参加者A「だって、どうする?」

 

参加者B「どこかで、時間潰すか。」

 

男1「大丈夫ですよ、裏口から入ることができます。」

 

参加者A「そうなんですか?」

 

男2「えぇ。では、こちらへどうぞ。」

 

そうして、参加者たちは男たちについていってしまった。

 

 

数分後…

 

男たちが戻ってきた。

…ん?手に何か持ってるな…。

 

廻「すみません、ここアップしてもらえますか?」

 

男の手をアップしてもらう。

 

これって…招待状か!

 

そうして、男たちはどこかへ去っていった。

 

‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾

泊「これって…」

 

廻「あぁ。さっきの参加者から招待状を奪ったんだろうな。」

 

これで、何で会場に入れたかは分かったな。

 

泊「けど、この人たちの安否は?」

 

廻「警察に連絡だな。けど泊、お前は空さんに電話してさっきの参加者と名前が一致するか確認してくれ。」

 

泊「分かった。」

 

また『あの人』の世話にならなきゃな…

 

廻「ありがとうございました。助かりました。」

 

俺たちは西田さんにお礼を言ってモニタールームを去った。

 

‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾

数分後 ホテルの外

 

廻「……もしもし、信条さんか?」

 

信条『何だ、何か用か?』

 

今電話しているこの人は、『信条誠(しんじょう まこと)』。警察官をやってる。そして、俺たちの捜査に協力してくれる人の一人だ。

 

廻「用がないと電話しないっての。」

 

信条『相変わらず生意気だな…まあいいや。それで、今度は何を頼みたいんだ?』

 

廻「話しが早くて助かる。頼みってのは…」

 

そこで、今まであったことを信条さんに話した。

 

 

信条『…なるほど、分かった。俺の方から所轄の方に連絡する。』

 

廻「助かる。」

 

信条『ま、何か進展があったら連絡する。じゃあな。』ピッ

 

これで、見つかるといいんだが…

 

泊「終わったか?」 

 

廻「あぁ。そっちは?」

 

泊「バッチリだった。あの映像の参加者と招待者の名前が一致したよ。」

 

廻「そうか…。」

 

泊「何か、浮かない顔だな?何か気になることがあるのか?」

 

廻「まあな…。ま、それはあいつらがついてから話すよ。…って、もうこんな時間か。そろそろ昼ご飯にするか。」

 

泊「そうだな。丁度お腹も空いてきたし。」

 

‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾

ホテル 食堂

 

 キャー! サインおねがいします!

 

 ガヤガヤ

 

廻「なんだあれ?」

 

俺たちが、食事を摂るために食堂に行くと、人だかりができていた。それも、女性ばっかり…

 

廻「…てか、邪魔だな。あれじゃ食堂に入れないぞ…」

 

泊「だな……。って、あれは!?」

 

廻「何だよ?」

 

泊「よく見たら、あの人『燐舞曲』の『三宅葵依(みやけ あおい)さんじゃないか!』なるほど、そりゃこの人だかりも納得だな。」

 

廻「納得してる場合か。…仕方ない、こうなったら強行突破だ。」

 

そうでもしないと俺たちが、昼ご飯食べれないからな。

 

廻「ちょっーと失礼!」

 

そうして人混みの中を進んでいく。

そして……

 

葵依「…あぁ、すまない。邪魔になってたね。」

 

そこにはとんでもないイケメンがいた。

 

俺たちに気づいた葵依さんが道を開けてくれた。

そうして、葵依さんもファンの人に挨拶をすると食堂に入っていった。

 

葵依「君たちが来てくれて助かったよ。」

 

廻「いや、別に俺たちは何もしてないですよ。」

 

葵依「いや、あの人だかりから離れる隙が中々なくてね。それで、君たちの流れに乗って私も離れるようにしたんだ。」

 

なるほどね、つまり俺たちを利用したってわけか…

 

泊「ま、取り敢えず行こうぜ。もうお腹すいたぞ…」

 

廻「そうだな。」

 

葵依「よかったら、君たちも一緒にどうかな?」

 

泊「いいんですか!?なあ、いいか、廻?」

 

廻「別にいいけど…」

 

泊「やったぜ!いやー、燐舞曲の人たちとも一回話してみたかったんだよなー!」

 

あんまり、騒がしいのは苦手なんだけどな…。ま、仕方ないか。

 

葵依「じゃ、行こうか。」

 

そうして、俺たちは燐舞曲の人たちと一緒に食事をすることになった。

 

 

?「やっと来た。遅いぞ、葵依!」

 

?「あら、葵依くん。後ろの二人は?」

 

?「…」

 

席に近づくと、3人の女性がいた。

金髪の元気なのと、大人っぽい雰囲気を持つ艶やかな人と、何故か俺たちを見つめてる(ような気がする)黒髪のロングヘアの3人がいた。

 

葵依「紹介するよ、さっき助けてもらった、えーと…」

 

そう言えば名前をまだ言ってなかったな…

 

廻「音咲廻です。」泊「黒崎泊です!」

 

二人で自己紹介をする。

 

緋彩「そうだったのね。私は『矢野緋彩(やの ひいろ)』よ。葵依くんを助けてもらってありがとうね。」

 

渚「アタシは、『月見山渚(きみやま なぎさ)』よろしくな! 」

 

?「…」

 

葵依「…椿、どうかしたのかい?」

 

椿「…いや、なんでもないわ。『青柳椿(あおやなぎ つばき)』です。」

 

…人見知りなのか?

 

緋彩「けど、『助けてもらった』なんて何があったの?」

 

葵依「あぁ、実はね…」

 

そこで葵依さんが、さっきあったことを話した。

 

 

渚「なるほどな〜。なーんか、葵依らしい理由だな(笑)」

 

話しを聞いて渚さんは笑っていた。

 

いや、本人にとって笑い事じゃないんだけどな…

 

「…笑い事じゃないんだけどな…」

 

ほらやっぱりな…。

 

廻「渚さん、もうそこらへんにしておいたほうが…」

 

渚「わーかってるって!笑ってごめんな、葵依」

 

緋彩「君って、昨日のあの騒動を止めた人よね?」

 

廻「えぇ、そうですけど…」

 

渚「あー、どっかで見たことあると思ったら、兄さんたち昨日の…」

 

まあ、あんだけ騒いでたらやっぱり見られるよな…

 

緋彩「あんなことがあってD4FES大丈夫かしら?…」

 

泊「それは大丈夫ですよ!なんたってここにいる廻が解決してくれますから!」

 

廻「お、おい…!」

 

あんまり言いふらすなよ。

 

椿「どうして、廻さんが?」

 

泊「実はこいつ探偵やってるんですよ。」 

 

すると、四人は興味を持ったようで俺の方を見てきた。

 

…こういうのあんまり好きじゃないんだけどな…

 

廻「実は…」

 

そこで、俺が空さんに頼まれて事件の解決をしようとしていることを話した。あんまり詳しいことは話せないけどな…

 

葵依「…そんなことが…」

 

緋彩「それは大役を任されて大変ね…」

 

廻「ええ。まあ、任されたからには絶対に解決しますけどね。」

 

緋彩「じゃ、ちゃんと解決できるか私が運勢を占ってあげましょうか?」

 

泊「いいんですか?じゃあおねがいします!」

 

緋彩「じゃあ早速。…あら、『思わぬところから新たな発見があるかも』だって。ラッキーアイテムは、『ヘッドフォン』よ。」

 

廻「ふーん…」

 

緋彩「あら、納得してないの?」

 

廻「いや、納得してないとかじゃなくて、俺そういうの信じてないんですよ。」

 

あまり非科学的なのは信じられないからな。

 

泊「お、おい!廻! すみません、いきなり…」

 

緋彩「別にいいわよ。そんな人もいるからね。」

 

廻「ま、お前も占いを信じるなとは言わないけど信じるのもほどほどにしとけよ。」

 

泊「なんでだよ、占いだって当たることだってあるじゃないか?」

 

…ここはひとつこいつに教えといてやるか。

 

廻「お前、よく詐欺するやつらが使う手口って知ってるか?」

 

泊「よく知らないけど、何か言葉で言いくるめたりするんじゃないのか?」

 

緋彩「…」

 

廻「そうだ。じゃあ何で騙されるんだろうな?」

 

泊「何だよ、もったいぶらずに教えろよ!」

 

廻「はいはい、分かったよ。答えは、『パーナム効果』っていう心理が働くからだ。」

 

泊「パーナム効果?」

 

緋彩「簡単に言うと、『誰にでも当てはまるような曖昧な内容を、自分だけに当てはまっていると思い込むこと』よ。

 

俺たちが話していると、緋彩さんが補足をしてくれる。

 

廻「そういうこと。例えば、『今、なにかに悩んでますね』とかそういうことを言われて、『どうして分かったんだ?』って思ったらそれはパーナム効果が働いてるってことだな。」

 

緋彩「廻くんは、よく知ってるのね。」

 

廻「えぇ、まあ。…あの、もしかしってですけど、緋彩さんって  心理学学んでたりします?」

 

渚「すげー!よく分かるな!」

 

葵依「緋彩は大学で心理学を専攻しているよ。」

 

廻「やっぱり。パーナム効果なんてそんなの知ってるのは、専門学を学んでないとわからないですからね。」

 

泊「なるほど、それで分かったのか。」

 

廻「そういうこと。…あ、ちょうどご飯が来ましたよ。」

 

そう言えば、話しに夢中で食事を頼んでたことをすっかり忘れてたぜ…

 

泊・渚「「やっとか!」」

 

廻「取り敢えず、ご飯食べましょうか。」

 

‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾

数時間後 

 

泊「いやー、美味しかったな!」

 

廻「そうだな。しかし、お前はよく食べるな…」

 

おかわりを3回もしてたからな。本当によく食べるよ…

 

葵依「じゃあ私たちはこれで。」

 

廻「はい。じゃあまた。」

 

そうして俺たちは燐舞曲の四人と分かれた。

 

泊「いやー、ためになる話しが聞けたな。な、廻」

 

廻「そうだな。」

 

本当に緋彩さんの心理学の話しはためになったな。

それに、泊も燐舞曲の皆からDJのことを聞けて嬉しそうだったからな。ま、結果的には一緒にいてよかったな。

 

泊「で、これからはどうする?」

 

廻「取り敢えず、他のホテルの人にも話しを聞いていこうと思う。」

 

泊「よし、それじゃ行くか!」 

 

‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾

緋彩「…フフッ」

 

渚「…なーんか、さっきから緋彩笑ってるけど、どうかしたのか?」

 

緋彩「そうね。」

 

葵依「もしかしって、『廻くん』のことかな?」

 

緋彩「そうかもね…」フフッ

 

椿「あんな緋彩、初めて見るわ…」

 

葵依「私もだよ。長く一緒にいるけど、初めてだよ。よっぽど、廻くんが気に入ったのかな?」

 

緋彩「さあ?どうかしらね?」

 

‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾

夜 とある場所

 

?「やーと、着いたよ。長い旅だった…」

 

?「…何一人で黄昏れてるんだ? それに長い旅って数時間しか経ってないだろ。」

 

?「分かってるっての。ノリが悪いな…」

 

灯「ほら、もう遅いんだから二人とも急ぐよ!」

 

?「はいはい。…たく、廻の野郎、こんなところまで呼びやがって…」

 

?「…あいつがこれたちを巻き込むのなんてもう慣れっこだろ? 

 

?「ま、それもそうだな。じゃ、行きますか!」

 

 

 




事件メモ
・暴れた男たちが会場に入れたのは、本来のD4FESの参加者から招待状を奪い取った。
・その証拠として、奪いとるところが映像に残っている。

以上です。

次回予告
燐舞曲の四人と束の間の休息を取れた廻たち。次は、運営本部に聞き込みをしにいくようだが?
そして、ついに『あいつら』が廻たちと合流する!

それでは、また次回お会いしましょう!


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探偵、再び! その6


前回のあらすじ
新しく燐舞曲のメンバーと交流した廻たち。そして、会場で暴れた男たちは本来の参加者から招待状を奪っていることも判明した。
そしてついに『あいつら』が廻たちと合流する!

それでは、本編どうぞ!


翌日 ホテル

 

廻「さて、今日は運営本部の人たちに話しを聞きに行こう。」

 

泊「てことは、メインステージに行くのか。」

 

廻「そうだな。…っと、その前に…」

 

泊「?」

 

廻「昨日無事に灯と『あいつら』が着いたみたいだ。だからまずは、あいつらと合流しようと思う。」

 

泊「そうか!それは、頼もしいな!」

 

あぁ、これで少しはスムーズに調査を進めることができる。

 

廻「それじゃ、合流地点に行くか。」

 

‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾

数時間後 

 

さて、合流する場所はここみたいだか…あいつらは……

お、いたな!

 

廻「おう、無事に着いたみたいだな。『弘人、玲央』」

 

弘人「なーにが『無事に着いたみたいだな』だよ!いきなり東京に呼び出しやがって!」

 

こいつは、『海瀬弘人(うみせひろと)』。

短髪で髪を金髪にしている。見た目がチャラチャラしているので周囲からよく勘違いされるが本人は女遊びをしているわけではなく、寧ろ女性は苦手である。(ホモではない)←ここ重要

 

玲央「…で、今度はどんな用で俺たちは呼ばれたんだ?」

 

で、こっちは『広田玲央(ひろたれお)』

短髪で髪色は薄い青色。全くというわけではないが口数が少なくあまり喋らない。

童顔でよくそのことをいじられる。いじられると怒る。

 

二人とも俺の頼りになる友達だ。

 

廻「ま、そのことは朝ごはんでも食べらながら話すよ。お前らもまだ食べてないんだろ?」

 

弘人「そうだな。じゃ、なんか近くの店に入るか。」

 

そうして、俺たちは近くの店で食事と今回の事件のことを話すことにした。

 

‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾

数分後

 

弘人「で、改めて聞くけど、今回はどんな事件なんだ?」

 

そこで今まであったことを話した。

 

弘人「ふ~ん。それはまた大変な事件に巻き込まれたな。」

 

廻「ほんとだよ。ただD4FESのオープニングに参加するだけだったのにな…。なんでこんなことになったんだか…」

 

泊「俺もまさかこんなことになるなんて思わなかったよ…」

 

灯「ほら、二人とも落ち込まないの!二人のせいじゃないんだから!」

 

弘人「灯ちゃんの言うとおりだぞ。お前が気にしても仕方ないだろう。俺たちができることは早くこの事件を解決することだけだろ?」

 

廻「…そうだな。」

 

弘人「で、これからはどう動くんだ?」

 

廻「取り敢えずご飯食べたら、運営本部に行って話しを聞いてみようと思う。」

 

弘人「分かった。」

 

店員「お待たせしました!こちら、日替わり定食です。」

 

俺たちが話しているとご飯が運ばれてきた。

 

泊「ま、取り敢えず腹ごしらえが先だな。」

 

廻「あぁ。じゃ、いただきます。」 

 

…うん、美味しいな。適当に選んだ店だけど、あたりだったみたいだ。

 

‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾

数十分後 

 

店員「ありがとうございました。またお越しくださいませ!」

 

弘人「さーて、じゃ、情報収集に行きますか!」

 

廻「そうだな。」

 

 

更に数分後 運営本部

 

廻「すみません、音咲廻です。例の事件について聞きたいんですけど…」

 

スタッフ「話しは空さんから話しは聞いてます。…後ろの三人は?」

 

廻「僕の友達です。僕の調査を一緒に調べてくれる仲間です。」

 

スタッフ「分かりました。それでは、中へどうぞ。」

 

そうして、俺たちは中へ入っていった。

何とか3人も中へ入ることができることができて一安心だ。

 

 

スタッフ「それで、何が聞きたいんですか?」

 

廻「ここ最近や、事件当日に何か他のスタッフに変わった動きとかなかったですか?」

 

スタッフ「いやー、僕は何も知らないですね…」

 

廻「どんな些細なことでもいいんです、何かないですか?」

 

スタッフ「そんなこと言われても…あ、そう言えば…」

 

廻「何か思い出したんですか?」

 

スタッフ「んー、事件と関係してるかはわからないですけど…」

 

そう前置きして、俺たちに話してくれた。

 

‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾

2日前 夕方

 

スタッフリーダー『よし、お前ら今日はここまでだ。お疲れさま!』

 

スタッフ達『お疲れさまでーす!』

 

スタッフリーダー『よーし、今日はどっか食べに行くか!?』

 

スタッフ『おー、いいっすね!リーダーのおごりっすか?』

 

スタッフリーダー『馬鹿野郎、割り勘だっての。』

 

スタッフ『冗談っすよ!』

 

 ワッハハ!

 

東野『あ、じゃあ俺奢りますよ!』

 

スタッフリーダー『いいのか?お前金欠だって言ってたろ?』

 

東野『いやー、実は臨時収入が入りまして…』

 

スタッフリーダー「ふ~ん、じゃ、今日は東野の奢りな!」

 

東野『少しは手加減してくださいよ!(笑)』

 

‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾

スタッフ「ってことがあったんですよ。」

 

廻「そうだったんですか…」

 

弘人「けど、残念ながら事件とは関係がないな…」

 

廻「そうだな。確かにその臨時収入ってのが気になるけどとても事件と関わってるとは……ん?」

 

2日前?2日前と言えば、確か…

 

弘人「廻、どうかしたのか?」

 

廻「少し気になることがな。すみません、ここって防犯カメラって設置してますか?」

 

スタッフ「はい。置いてますけど…」

 

廻「見せてもらうことってできますか?」

 

スタッフ「別にいいですけど。」

 

廻「ありがとうございます。」

 

そうして、俺たちは防犯カメラの映像を見せてもらうために移動した。

 

‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾

数分後 モニタールーム

 

スタッフ「で、どこの映像を見たいんですか?」

 

廻「昼過ぎの入り口の映像を見たいんですけど。」

 

スタッフ「分かりました。」

 

そうして、入り口の映像を出してもらう。そして…

 

廻「…止めてください。」

 

スタッフ「はい。」

 

廻「で、ここから早送りでこの人を追ってください。」

 

泊「お、おい、廻!この人って…」

 

弘人「何だ、知り合いか?」

 

廻「まあ、黙ってみてろ。」

 

俺の予想が正しければ、多分…

 

廻「…止めてください。」

 

スタッフ「あれ、こいつ…」

 

廻「もしかして、この人が『東野(とうの)』さんじゃないですか?」

 

スタッフ「そうですけど…。」

 

やっぱりか…。ん?何か受け渡ししてるな。

 

廻「この手元アップにできますか?」

 

スタッフ「やってみます。……これでどうですか?」

 

廻「ありがとうございます。」

 

廻「(封筒を渡してるのか。よく見たら封筒が膨らんでるな…。多分中身は…)」

 

廻「ありがとうございました。」

 

スタッフ「お役に立てて何よりです。」 

 

廻「あ、最後にもう一つ聞いていいですか?」

 

スタッフ「なんですか?」

 

廻「その東野さんは今日はどこにいますか?」

 

できれば今日中に話を聞きたいからな。

 

スタッフ「今日は、メインステージの照明器具の調整をやってると思いますけど…」

 

廻「ありがとうございます。」

 

最後に映像をスマホに送ってもらうようにしてスタッフさんと分かれた。

 

弘人「次は、その東野って人に話しを聞きに行くんだろ?」

 

廻「そのとおりだ。」

 

多分何かしらの繋がりはあるだろうからな。

 

そうして、俺たちで移動しているときだった。

 

りんく「あー!廻くんだ!」

 

廻「ん?りんくさんか、何か用?」

 

りんく「りんくでいいよ!」

 

廻「じゃ、りんく。何か用?」

 

りんく「別に用はないけど、見つけたから呼んでみただけだよ!」

 

なんだそれ…。それにしても、相変わらず元気な娘だな…

 

弘人「なんだお前、こんな可愛い子と知り合いになったのか?」

 

それを見て、弘人がニヤニヤと嫌な笑みを浮かべて俺を見てくる。

 

灯「ふーん、そんなんだ…」ツーン

 

そして、灯は何か急に冷たくなるし…何なんだよ…

 

廻「…そんなんじゃねえよ。」

 

灯「本当に?」

 

むに「やーと、見つけたわよ。りんく!…ってあれ?」

 

俺が話していると、後ろからハピアラの三人が現れた。

 

灯「あ!この前の!」

 

丁度いい。このまま誤解を解こう。

 

廻「名前をむにって言ってな。りんくと同じグループでDJユニットを結成してるんだ。で、そこから知り合ったってわけ。」

 

灯「なんだ、そうだったんだ…」

 

取り敢えず誤解がとけそうで良かったよ。

 

むに「で、後ろの二人は?」

 

廻「あぁ、こいつらは…まあ、助手みたいなもんだよ。」

 

弘人「誰が助手だ、この野郎。」

 

廻「冗談だよ。二人とも俺の仲間だ。こっちのチャラそうなのが」

 

弘人「『チャラそう』は余計だっての。海瀬弘人です。」

 

廻「で、こっちの静かなのが」

 

玲央「…広田玲央」

 

りんく「じゃ、この人たちが前に言ってた、人たちなんだ!」

 

廻「そういうこと。」

 

そして、そこからお互いの自己紹介が始まった。

 

廻「で、りんくたちはここで何をしてるんだ?」

 

麗「今日は練習を休んで、メインステージに出場する人たちの練習を見学しようということになったんです。」

 

廻「なるほどね。」

 

確かに、他のユニットの演技で自分たちにないものがわかったりしていい刺激になるからな。

 

りんく「ねえ、どうせならみんなで見に行こうよ!」

 

泊「いいんじゃねえか?どうせ俺たちの行く場所もメインステージの近くだし。」

 

廻「ま、そうだな。じゃ、行くか。」

 

そうして、俺たちはメインステージ方面に行くことにした。

 

‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾

数分後 メインステージ

 

で、先にメインステージについたわけだが…

 

廻「あれ?誰か練習してるのか?」

 

泊「あれは……『Photon Maiden』じゃねえか!?」

 

灯「え!嘘どこ!?」

 

弘人「おい、本当かよ!?」

 

泊がそう言うと、灯と弘人も身を乗り出してPhoton Maidenのパフォーマンスを見ていた。

 

弘人「マジじゃねえか…おい、後でサインもらってもいいか?」

 

廻「さあ?けど、時間があればいいんじゃねえか?…てか、お前らそこまで熱狂的なファンだったのかよ…」

 

灯「そりゃねぇ…Photon Maidenの音楽は好きでね!新曲発表されるたびに聞いてるから!」

 

弘人「そうなんだよ、特にDJが好きでな…」

 

お、おう…まさかそこまでだったとは…

ていうか…

 

廻「お前ら、本来の目的忘れんなよ…」

 

弘人「分かってるっての。けど、もうちょっとだけ見ててもいいだろ!?」

 

廻「少しだけだぞ。」

 

たく、時間がないってのに…

ということで少しの間舞台袖から、Photon Maidenの練習を見ることにした。

そうして……

 

数分後

 

弘人「お、終わったみたいだな。」

 

結局練習が終わるまで見てしまった…

 

灯「やっぱりすごかったね!」

 

廻「(…はぁ、こいつらは…)」

 

本当に今の事態を分かってるのか?…

そう思いながら、メインステージを見たときだった。

 

廻「…ん?……!」

 

 ダッ!

 

気づいたら俺は走っていた。

 

灯「ま、廻!?」

 

廻「危ない!」

 

?「え?」

 

目の前の娘を抱えて、離れる。

そして次の瞬間

 

  

 

   ガシャーーーン!!!

 

 

ふぅー、本当に危機一髪だったな。

 

廻「大丈夫ですか?」

 

?「う、うん…」

 

?「大丈夫!?乙和!」

 

乙和「私は大丈夫だよ。」

 

後ろからほかのフォトンメイデンのメンバーや弘人たちが駆け寄ってくる。

 

弘人「一体何があったんだ?」

 

廻「どうやら、誰かが照明器具に細工をしたみたいだ。」

 

泊「それで、照明器具が落ちてきたってわけか…。よく気づけたな。」

 

廻「ま、照明の動きがおかしいと思ってな。多分、ちゃんと固定されてなかったんだろうな、ぶらぶら動いてたからな。」

 

弘人「それで、変化に気づいたってわけか。」

 

廻「そういうこと。」

 

俺たちが話していると、助けた娘から声をかけられる。

 

乙和「あ、あの助けてくれてありがとう…」

 

廻「どういたしまして。」

 

乙和「…///」

 

廻「何か?」

 

乙和「あ、あのそろそろ離してほしいかなーって…」

 

よく見ると助けたときのままだから、抱えたままになっていた。

だから、急いで手を離す。

 

廻「あ、すみません…」

 

空「みなさ〜ん!大丈夫ですか!?」

 

後ろから空さんが走ってきた。多分この騒ぎを聞いて駆けつけたんだろう。

 

廻「見ての通り、皆無事ですよ。」

 

空「良かった…。取り敢えず詳しい話しを聞きたいのでついてきて来てもらっていいですか?」

 

廻「分かりました。」

 

乙和「あ、あの!私もついていっていいですか?」

 

廻「俺は別にいいですけど、空さんいいですか?」

 

空「いいよ。それにフォトンメイデンの皆さんも当事者だからね。」

 

乙和「ありがとう!」

 

そうして、フォトンメイデンのメンバーもついてくることになった。

 

‾‾‾‾‾‾‾‾‾

空「で、早速だけど、何があったか話してもらえるかな?」

 

廻「分かりました。」

 

そうして、空さんにメインステージでのことを話す。

 

空「そんなことが…」

 

廻「はい。そして、多分関係者の中に照明器具をいじった人がいると思います。」

 

真秀「そ、そんな…」

 

空「確かに、関係者じゃないと、そんなことできないだろうね。」

 

廻「けど、問題は誰が何のためにやったのがわからないことですね。」

 

そこが明らかになれば、一気に真相に近づけるんだけどな…

 

泊「いろいろわからねえな…今回のことといい、逆田さんのことといい…」

 

空「!今なんて!?」

 

なんだ、いきなり空さんが話しに食いついてきた…

 

空「今、『逆田』って…」

 

泊「言いましたけど、それが何か?」

 

空「…そうか、あの人が……」ブツブツ

 

廻「何か知ってるんですね?」

 

空「…」

 

廻「話してください。もしかしたらそれで事件が解決できるかもしれないんです。」

 

空「…分かりました。話しましょう。もう10年も前の『D4FESの闇』と言われた事件のことを。」

 

 

皆「!!」

 

『D4FESの闇』だと?一体なんなんだ?…

 

 





事件メモ
・スタッフの東野は何故か『臨時収入』で最近お金が手に入ったらしい。
・誰かがメインステージの照明器具をいじって落下するようにした。

以上です。

次回予告
起こってしまった第二の事件。幸い誰にも怪我はなかった。
そして、空から語られる『D4FESの闇』と呼ばれたんだ事件とは?廻たちは遂に事件の核心に迫っていく!

それではまた次回お会いしましょう!


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探偵、再び! その7


前回のあらすじ
ついに、弘人たちと合流した廻。そうして、調べていくうちに『D4FESの闇』と言われている事件にたどり着いた廻たち。一体、『D4FESの闇』とはなんなのか?

それでは、本編どうぞ!


 

廻「『D4FESの闇』?」

 

俺たちは引き続き空さんから話しを聞いていた。

 

真秀「D4FESにそんな事件があったなんて聞いたことないですけど…」

 

空「そうだろうね。何せそのことは公にならずに秘密裏に処理した事件だからね。」

 

廻「そんなことが…。それでその『D4FESの闇』ってのは、どんな事件なんですか?」

 

弘人「それに、その事件にその『逆田』って人がどう関わってくるんだ?」

 

空「そのことも話していくよ。」

 

空「…あれは、10年前のD4FESでのことだった…」

 

そうして、空さんは10年前のことを話してくれた。

 

空「今のD4FESの審査方法は知ってるかな?」

 

響子「確か、来場したお客の投票数で決まるんですよね?」

 

空「うん、そのとおり。けど、10年前は違ったんだ。」

 

廻「どんな方法だったんですか?」

 

空「審査員が投票していたんだよ。」

 

真秀「あ、思い出しました!確か、D4FES運営が選んだ5人が投票して決めてたんですよね?」

 

空「その通りだよ。けど、今思うとそれが問題だったんだ。」

 

どうやら、ここからが本題みたいだな。

 

空「実は10年前のD4FESで、審査員の買収が発覚したんだ。」

 

「!!」

 

これには驚いた。まさか、このD4FESで買収が行われていたなんて…

しかも、こんなに大きな大会だと買収も難しいと思うんだけどな…

 

空「一生の恥だよ。まさか、D4FESという夢の舞台で買収なんてことが起きてたんだからね…」

 

弘人「それで、10年前のD4FESはどうなったんですか?」

 

空「大会の途中で急遽審査員を変えて対応したよ。まあ、表向きはそれで、成功したようには見えたんだけど、一つ事件が起きたんだ…」

 

廻「もしかして、それが?」

 

空さんが静かに頷く。

 

空「ある参加者がその買収の被害にあったんだ。その参加者の名前が…」

 

廻「…逆田さん、ですね?」

 

空「そういうことです。」 

 

空「買収が発覚してすぐに運営も動いたけど、その後の対応が悪かったんだ…」

 

廻「対応?」

 

空「運営は審査員を変えてD4FESをやり直そうとしたけど、当時のスポンサー達が表沙汰になるのを恐れていたんだ。だから…」

 

廻「そのまま大会を続けるしかなかったんですね?」

 

空「はい。」

 

そりゃ、買収してた大会に出資してたなんて話しがでるのは避けたいからな…

 

空「当時の僕たちができたことと言えば、大会終了後にその買収していた人と、頼んだ人を出禁にするのが精一杯だったよ。」

 

空「けど、それでも逆田さんの怒りが収まることはなかったよ…」

 

空「で、それから二度と同じ不正が行われないように、来場者による投票に審査方法を変えたよ。」

 

そんなことがあったのか…。

 

空「っと、これが10年前にあった関係者の間で言われている『D4FESの闇』と呼ばれている事件だよ。これがなにかの役に立てればいいんだけどね…」

 

‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾

数分後 

 

弘人「凄い話しが聞けたな…。」

 

廻「あぁ。まさか、D4FESで買収が行われていたなんてな。」

 

けど、俺たち以上に驚いていたのは、当の参加者であるハピアラとフォトンメイデンのメンバーたちだった。

やっぱり、自分たちが立とうとしていた夢の舞台で買収が行われていたなんて信じたくないよな…

 

廻「…皆、大丈夫か?」

 

麗「はい…。驚いたけど何とか…」

 

廻「ま、昔はともかく審査方法も変わったし、運営の人もよく動いてくれてるから気にしすぎるなよ?」

 

真秀「ありがとうございます。」

 

?「あ、あの…」

 

そこでフォトンメイデンの一人から声をかけられる。

確か、乙和って言ってたか?

 

乙和「さっきは助けてくれてありがとうございます。」

 

廻「どういたしまして。怪我はないか?」

 

乙和「はい、大丈夫です。」

 

衣舞紀「どうしたの、乙和いつもの元気は? あ、私は『新島衣舞紀(にいじま いぶき)』です!乙和のことを助けてくれてありがとうございます。」

 

乙和「う―、だって…怖かったし…」

 

ノア「そりゃ、あんなことがあったらね…、あ、私は『福島ノア(ふくしま のあ)』です。…って咲姫ちゃん、どうしたの?」

 

咲姫「…」ジッー

 

廻「なんですか?」

 

咲姫と呼ばれた人が俺をじっと見つめていた。

な、なんかそんなに見つめられると恥ずかしいな…

 

弘人「なんだ廻、照れてるのか?そりゃ、こんな可愛い子に見つめられたらそうなるよな」ハハ

 

廻「いや、そんなんじゃ…」 

 

灯「ふーん、そっか…廻は、若い子が好きなんだね…」

 

廻「灯まで何いってんだよ…。それに、お前も若いし、…」

 

灯「?」

 

廻「その、か、可愛いだろ…」

 

灯「!///」

 

泊「はいはい、二人とも惚気けるのはそこまでね。で、本当に咲姫さんは廻を見つめてどうしたんですか?」

 

ふぅーなんとか泊のおかげで話しを反らせたな。

 

咲姫「あなたが色が透明で珍しかったから…」

 

ノア「へぇー、透明なんて珍しいね。」

 

咲姫「因みに、乙和さんとあの人からは、濃い蜂蜜色が見える。」

 

弘人「蜂蜜色?一体何のことですか?」

 

廻「色、……もしかして咲姫さんは、『共感覚』じゃないですか?」

 

衣舞紀「よくわかりましたね!」

 

廻「ま、俺もジーッと見られて最初はびっくりしましたけどね。まぁ、人を見て色なんていうのは、共感覚しかないからすぐに分かりましたよ。…ん、けど、蜂蜜色ってどういうことだ?」

 

咲姫「それは、二人が甘いK…」

 

灯・乙和「ストープ!」

 

いきなり二人が咲姫さんの口を封じに来た。

 

?どうしたんだ?

 

ノア「…あー、だからいつもと態度が違ったのね…」

 

何か分かったのかニヤニヤして二人の方を見る。

 

廻「何か分かったんですか?」

 

ノア「…」

 

俺がそういうと「こいつ、マジか…」みたいな驚いた顔で俺を見てきた。

 

ノア「なるほど、これは苦労するわね…。頑張りなさいよ、乙和。ところで…」チラッ

 

玲央「…」カタカタ

 

ノアさんが、玲央のほうに近づく。ん?いきなりどうしたんだ?

 

ノア「あなた、本当に男?近くで見るとそうは思えないくらい『かわいい』…!」

 

…あ……

 

ノア「…ん?」

 

俺たちが顔面蒼白になったのと、当の玲央の様子がおかしいのに気づいたのか、ノアさんがおろおろしだす…

 

おいおい、やばいぞ…

 

玲央「おい!」

 

ノア「え?」

 

玲央「今何って言った?ゴラァー!」バタバタ

 

慌てて3人で抑え込む。

 

ノア「え!ちょっ!」

 

廻「離れて!」

 

真秀「わ、私も手伝います!」

 

そうして、真秀さんが弘人の近くに来た。

 

……あ、…おいおいマジか…

 

真秀「…あ、あれ?ひ、弘人さん!」

 

お、驚くのは分かるけど、取り敢えず今は…

 

廻「真秀さん、手伝って!」

 

真秀「あ、はい!」

 

 

一時間後…

 

廻「や、やっと落ち着いた…」ハアハア

 

灯「そ、そうだね…」ハアハア

 

やっと、玲央が落ち着いたみたいだ…

 

弘人「」

 

廻「おい、いつまで寝てるんだ、起きろ!」バン!

 

弘人に近づき、軽く顔を叩く。

 

弘人「…はっ!お、俺はまたやったのか…」

 

廻「そうだよ。しかもタイミング悪く気絶するし…」

 

麗「それでこ、これは一体…」

 

気がつくと周りにはドン引きしてる人たちばっかりだった。

さて、そろそろ説明しないとな。あ、そう言えば泊にもか。

 

廻「実は…」

 

そこで弘人と玲央のことについて説明しだした。

 

実は、弘人と玲央にはそれぞれ秘密がある。まあ、秘密っていうことでもないけどな…

まず、弘人は女性が苦手なんだ。俺も良くは知らないけど、昔女性に酷い目にあったんだとか。

それ以来女性に触れられると、固まって動けなくなる。

……まるで某ヒーローのウィークポイントだな。

因みに、小さい女性だったら固まらないみたいだ。…決してロリ艮ではないぞ?

 

で、玲央の方はというと、顔が童顔だからそのことを言われたりいじられたりすると怒る。それも一度怒り出すと、手がつけられなくなるときもある。まあ、今日は早くに落ち着いたほうだな。

 

 

廻「てことがあるんです。」

 

ノア「じゃ、じゃあ私は…」

 

廻「知らなかったとはいえ言われたくないことを言われたんだから謝ったほうがいいと思いますよ。」

 

そういうと、ノアさんは気まずそうに玲央に謝りにいった。

 

ノア「ご、ごめんなさい…」

 

玲央「…ふん。」

 

真秀「あ、あれは許してくれてるんですか?」

 

廻「どうだろ?」

 

真秀「どうだろうって…」

 

廻「けど、一度謝ってまたしつこく言わなければ、大丈夫だよ。あいつは、根に持つタイプじゃないから。」

 

廻「ま、後は弘人に近づきすぎないようにすれば大丈夫だよ。」

 

衣舞紀「そ、そうなのね。」

 

泊「ま、言われたことに気をつけてたら大丈夫ってことだろ。じゃあ問題ないな!」

 

廻「まあな。」

 

弘人「すまない、迷惑をおかけします。…って、一段落ついたらお腹すいたな、お昼ごはん食べに行こうぜ!皆も一緒にどう?」

 

りんく「いいの!?」

 

真秀「ちょっと、りんく!」

 

弘人「いいよ、俺らの奢りだから!」

 

…あれ?何かデジャブだな。この展開前にも見たことあるぞ? 

 

りんく「やったー!楽しみ!」

 

乙和「うんうん、何食べようかな!?」

 

あっ(察し

 

…まあ、せっかくだからいいか。

 

廻「そうだな。ちょうどいい時間だし食べに行くか。」

 

玲央「…その前に、分かったことがあるんだがいいか?」

 

廻「分かった。じゃあ弘人たちは先に行っててくれ。」

 

弘人「そうするよ。じゃ、なるべく早く来いよ!」

 

廻「はいよ。」 

 

そうして弘人たちは、先に昼ごはんを食べに行った。

……あいつ、りんくの食事みて絶望しないといいけどな…

 

‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾

廻「で、何が分かったんだ?」

 

玲央「さっき言ってた逆田ってやつのSNSのアカウントを調べてみた。」

 

玲央は機械類や、スマホやパソコンを使っての情報収集収集に長けている。その能力で今まで多くの事件で助けられた。

 

廻「相変わらず仕事が早いな。それで何が分かったんだ?」

 

玲央「どうやら、数日前から誰かと連絡を取っているみたいだ。」

 

そう言って俺にはノートパソコンの画面を見せてくる。

 

廻「何々、『10万でその仕事を引き受ける』?なんのことだ?」

 

見た感じ何か依頼をしてたみたいだな。

 

玲央「で、もっと詳しく調べていくと、連絡を取っている相手が、どうやらこの大会の関係者であることが分かった。どうやら相手は金に困ってたみたいだ。」

 

廻「なるほどな……ん?」

 

ちょっと待ってよ?……もしかして…

 

廻「…なぁ、玲央。もしかして、逆田さん、他の人ともやり取りしてないか?」

 

玲央「…調べてみる。」

 

 

数分後

 

玲央「…終わった。」

 

廻「で、どうだった?」

 

俺の考えが正しければ、多分…

 

玲央「結果から言うと廻の言うとおりだった。数日前からこっちも10万で何か依頼してたみたいだ。」

 

やっぱりな…

 

廻「そいつらの身元が分かる投稿って何かあるか?」

 

玲央「それなら、写真を投稿してるな。」

 

顔も隠さないで投稿するなんてバカな奴らだな。けど、これで…

 

廻「…やっぱりな。」

 

 ♪♪♪♪♪

 

玲央「…弘人からだ。」

 

廻「出ていいぞ。俺は少し考える。」

 

そう言って俺はヘッドフォンを耳に当てた。

その後ろで玲央は弘人からの電話に出た。

 

玲央「…どうした?しかもビデオ通話で。」

 

弘人『ま、廻は!?』

 

玲央「いつもの考える癖が出てる。」

 

弘人『!それじゃ!?』

 

玲央「事件の真相が分かったんだろうな。」

 

りんく『えー!本当なの?』

 

弘人『多分ね。玲央、見せてやれよ。』

 

玲央「…見せるものでもないと思うが…」

 

弘人『いいじゃねえか。りんくちゃんたちは初めて見るんだし』

 

玲央「…はぁ、分かった。」

 

りんく『ん?あれ、何してるの?』

 

玲央『あれは、廻が考え事するときの癖みたいなものだよ。』

 

りんく『そうなんだー!』

 

 

 

『そんなに俺たちの練習する場所を気にしてるんだ?』

 

 

『D4FESの闇』 『何か依頼してたみたいだ』

 

 

廻「…」

 

考えがまとまったのでヘッドフォンを外す。

 

むに『あ、ヘッドフォンを外したわよ。』

 

麗『一体どうしたんでしょうか?』

 

玲央「…どうやら答えが出たみたいだな。」

 

廻「あぁ、『真実が繋がった』!」

 

後は、念の為に信条さんに電話をしておくか。

 

廻「で、弘人はどうしたんだ?」

 

弘人『あー、そうだった!早く来てくれよ!』

 

廻「? どうしたんだよ?そんなに急かして…」

 

弘人『あー、そのちょっとな…』

 

廻「…あっ。」

 

そう言えば、りんくたちが一緒に食べに行ってたんだった。

 

じゃあ早くいかないと弘人が可愛そうだな。多分、りんくのあの食事風景を見て色々と察したんだろうな。

 

廻「わりい、今から向かう。」

 

弘人『そうしてくれ…』

 

 

因みにこのあと支払い金額を見て絶望したのは言うまでもない…

 

 

 

 





事件メモ
・『D4FESの闇』とは、10年前のD4FESで発覚した審査員の買収のことである。そして、そのせいで一人の人生を狂わせていくことになる。そのことがきっかけで現在のD4FESの審査方法は「観客の投票」に変わった。
・逆田は数日前からSNSで複数人とやり取りをしていた。その時に10万で依頼をしている。

次回予告
明かされた『D4FESの闇』。それは、決して許すことができない審査員の買収であった。
そして、そのことを元に遂に真実にたどり着いた廻!
次回遂に犯人と対峙!果たして無事に解決することができるのか!?

それではまた次回お会いしましょう!




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探偵、再び! その8


前回のあらすじ
空から『D4FESの闇』と呼ばれている事件のことを聞いた廻たち。そのまま、玲央の調べからついに事件の真相に辿り着いて?

それでは、本編どうぞ!


 

翌日

 

いよいよ明日がD4FES開幕となる前日に俺たちはホテルのメインホールに来ていた。

勿論、事件の真相が分かったからだ。

信条さんにも事前に連絡して、確認したいこともしているから大丈夫だ。

…大丈夫なんだが……

 

廻「何で関係ない奴らまでいるんだよ…」

 

そう何故かメインホールにハピアラ、ピキピキ、フォトンメイデン、燐舞曲のメンバーまで集まっていた。

 

真秀「すみません。りんくが『どうしても探偵の活躍するところを見てみたい!』って言って聞かなくて…」

 

何か真秀さんにはすっごく同感できるな。なんでだろ…

 

弘人「まぁ、いいじゃないか。いざとなれば俺たちで守ればいいし!」

 

あ、弘人がいるからか。俺もいつも弘人に振り回されてばっかりだからな。

そうやって勝手に同感していると、今度は乙和から話しかけられる。

 

乙和「ちょっと!私は無関係じゃないよ!」

 

廻「…あ、悪い。」

 

そういえば、乙和も今回の事件の被害者だったな。

 

乙和「!私の扱い酷くない!」

 

衣舞紀「まぁまぁ、落ち着いて乙和。」

 

荒ぶる乙和を衣舞紀さんがなだめてくれる。

ふぅー、助かった…

 

廻「…で、ピキピキと燐舞曲のメンバーは何で来たんですか?」

 

響子「私たちはこのD4FESで何があったか知りたいだけだよ。」

 

緋彩「私達も同じ理由ね。何があったか知る権利は私達にもあると思うけど?」

 

正直そう言われたら何も言えねえな…

 

廻「…はぁ、分かりましたよ。その代わり静かにしててくださいよ?」

 

俺がそういうと口々に返事をする。

 

逆田「で、この集まりは何なんですか?」

 

東野「そうですよ!何も聞かされてないんですけど…」

 

ちょうどいいみたいだし、始めるか…

 

廻「皆さん、お待たせしました。今日集まってもらったのはこのD4FESで行われている一連の事件について真相が分かったからです。」

 

空「ほ、本当ですか!?」

 

廻「はい。」

 

逆田「なんですか、その『D4FESでの事件』って…。私達も関係あるんですか?」

 

廻「えぇ。ここにいるのは関係者ばっかりですよ。」

 

東野「ほんとうかよ…。」

 

廻「ま、時間も持ったないから今から話していきますね。まず、始まりはこのD4FES運営に脅迫電話やメールが届いたことから始まります。」

 

乙和「えー!そうなの!?」

 

ってさっそく俺との約束忘れてるし…。ま、これで止まってたら進まないから気にせずにいくか。

 

廻「そうなんだよ。送られてきた時期は、今回のD4FESが決まってからですよね?」

 

空「はい。」

 

廻「それからこのD4FESで2つの事件が起きました。」

 

弘人「それが、ホテルでの騒動とメインステージでの照明器具の落下だな。」

 

廻「そうだ。まずは、ホテルでの事件について話しますね。あの日暴れていた人たちは皆、D4FESには招待されていなかった人です。」

 

葵依「そうなのかい?」

 

そう言えば燐舞曲とフォトンの皆は知らないのか…

 

廻「はい。映像でも他の参加者から招待状を奪っている姿が確認できました。」

 

廻「そして、それが『何者か』によって指示されていたことも。」

 

逆田「…」

 

…反応なしか……

 

廻「で、次のメインステージでの事件は整備されているはずの照明器具が『何故か』落ちてきた事件でしたね。」

 

乙和「うん。いきなりだからビックリしたよ…」

 

廻「ただ落ちてきた偶然な事件に見えるけど、実はこれは仕組まれていたものなんですよ。」

 

衣舞紀「もしかして、それって!」

 

どうやら気づいたみたいだな。

 

廻「あれは偶然なんかじゃない。故意的に起こされた事件なんです。」

 

東野「!」

 

空「けど、一体誰が…」

 

廻「それは、東野さん、貴方じゃないですか?」 

 

俺がそういうと皆が一斉に東野さんの方を向く。

 

東野「な、何だと!?ふざけたこといってんじゃねえぞ!?」

 

廻「ふざけてませんよ。僕は至って本気です。」

 

東野「しょ、証拠はあるのかよ!」

 

廻「貴方が映像で誰かからお金を受け取っているのを確認しています。それに、貴方、最近金欠だったみたいですね?」

 

東野「…」

 

廻「他のスタッフの人から話しを聞きました。それなのに、貴方は奢ると言ったそうですね。」

 

東野「…ッチ」

 

廻「それは、貴方がお金を受け取ったから。そして、その見返りとして、貴方はメインステージの照明器具をいじって落とすように依頼された。違いますか?」

 

スタッフ「た、確かに、東野さんなら照明器具の担当だったから自然にいじれるはずだ…」

 

廻「そういうことです。…もう諦めた方がいいですよ、SNSで誰かから依頼を受けていたことは分かってるんだから。それに照明器具から指紋を採取できればすぐに分かることですよ。」

 

あのとき落ちてきた照明器具は念の為に今も保存してもらっている。だから、指紋も拭き取れてないはずだ。

 

東野「クソ!」ダッ!

 

もう言い訳ができないと思った東野が逃げていく。しかし…

 

弘人「よっと!」

 

東野「うわ!」

 

近くにいた弘人が足払いをして、東野がこける。そして、すぐに弘人に捕まえられた。そしてそのまま警察の人に身柄を渡された。

 

廻「…よし、じゃ話しを続けていきますね。」

 

空「けど、一体誰がこんなことを…」

 

廻「それはもう分かってるんじゃないですか?」 

 

空「え?」

 

廻「全ては10年前のD4FESから始まったんですよ…」

 

空「!そ、それって…」

 

廻「そうです。この依頼をした人は、…逆田さん、あなたですね?」

 

逆田「…ハハ、何を根拠にそんなことを」

 

廻「根拠ならありますよ。貴方は10年前のD4FESで、審査員の買収と言う被害にあっているじゃないですか。」

 

逆田「つまり、その復讐を行いにわざわざこんなところまで来て犯行を行わせたと?バカバカしい、10年も前のことを今更復讐しようだなんて…」

 

廻「…本当にそうですか?」

 

廻「オーナー、裕次郎さんが行ってましたよ。最初は俺たちにスタジオを貸す気はなかったって。だけど、『D4FES』という言葉が出てきてから、貸す気になったと…」

 

逆田「それは…せっかくD4FESに参加できるのに、良いパフォーマンスができなかったらかわいそうだと思って…」

 

廻「けど、こうも言ってましたよ?『喜んでるのか怒ってるのか分からないような声だったんだよ…』って。察するに、復讐できる機会ができて嬉しいのと、10年前のことを思い出していて怒りがこみ上げていたんじゃないですか?」

 

逆田「…」

 

そこまで言うと逆田さんは黙ってしまった。

 

廻「そして、貴方は僕たちに執拗に練習場所などを聞いていた。それは、部外者の貴方が東野さんと接触する機会を伺っていたから。」

 

泊「あっ、そうか!確かに関係者でもない逆田さんが来ても運営内部には入れない。だから、俺たちがD4FESの会場に行くのをいつ行くのか知りたがっていたのか!」

 

廻「あぁ。俺たちの知り合いという名目で中に入って、東野さんと接触して、照明器具を落とすように依頼をした。機材をいじるなんて内部の人しかできないから、東野さんに頼んだってわけだ。」

 

廻「まだ、反論しますか?言っておくけど、証拠もあるからな。」

 

逆田「証拠だと?…」

 

廻「『自分は証拠を一つも残してない』、そう思ってたんですか?」

 

逆田「…っ!」

 

残念ながら証拠はある。それもバッチリな。

 

廻「まず、防犯カメラの映像に貴方が東野さんのお金を渡している姿が映っています。さらに、SNSでのやり取り、これもアカウントを特定して貴方のものだと分かるでしょう。そして、ホテルで暴れた男たちと、東野さんから証言が取れればもう言い逃れはできないですよ。」

 

さて、どうでる?大人しく諦めるか?

 

逆田「……だよ…」

 

ん?

 

逆田「何なんだよ!!!」

 

廻「!」

 

開き直ったのか、逆田さんが大声を上げる。そして念の為に男性陣が、前に出て何かあったらすぐに飛び出れるように準備をする。

 

逆田「…あぁ、そうだよ。今回のことを仕組んだのは全部俺だ!」

 

響子「何でそんなことを!皆が目指してたどり着いた夢の舞台なのに…」

 

逆田「だからだよ。その舞台をぶち壊してやれば、10年前俺をこんな目に合わせたことを隠したスポンサーへの復讐になるからな!」

 

目的は、D4FESそのものでなくて、D4FESについていたスポンサーたちへの復讐だったのか!くそ、そこまでは読めなかった…

 

逆田「10年前と同じくついているスポンサーもいるんだろ?だから、今回の事件を起こして、D4FESが台無しになればまたスポンサーの奴らは逃げるだろう…。けど、その後に社会に暴露すれば10年前のことが明るみになる。そうすればもう隠れられない、そう思ってなのに!」キッ!

 

そこまで言うと今度は俺を睨みつけてきた。

 

逆田「全部お前のせいで台無しだよ!!」

 

廻「…あんた、何か勘違いしてないか?」

 

逆田「なに?」

 

廻「10年前、あんたは確かに審査員の買収の被害にあって成績を残せなかった…それは同情するよ。しっかり、確認しなかった運営の落ち度もあるからな…」

 

真秀「ちょ、ちょっと!」

 

灯「廻!」

 

空「…いいんです。そのとおりだから。」

 

すまない、空さん。けど、どうしても言わなければいけないことだから。

 

逆田「だったら、何で俺の邪魔をした!」

 

廻「…あんた、またやり直そうとしたのか?」

 

逆田「は!?」

 

廻「まだ年齢も若いほうだ、これからいくらでもやり直せたはずだ。けど、あんたは、そうはしなかった。むしろ、D4FESに出場している人に嫉妬している。実際、照明器具を落とすのは誰でも良かったんだからな。」

 

逆田「…だっ黙れー!」

 

逆田が刃物を持って俺に走ってくる。

 

りんく「あ、危ない!」

 

俺はそれを避けて、腹にパンチを入れる。

 

逆田「ガッ…」

 

廻「あんたがするべきは、逆恨みなんかじゃなかった。恨むぐらいなら、もう一回やり直してD4FESの舞台に立つべきだったんだよ…」

 

俺は静かにそう言うが、もう逆田には届いていなかった。

 

そうしてそのまま警察の人に逆田さんを引き渡す。

 

‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾

灯「何とか今回も解決したね!」

 

廻「そうだな。」

 

真秀「廻さん、大丈夫ですか?」

 

廻「大丈夫。こういうのは慣れっこだから。」

 

響子「確かに、ホテルのときも凄かったよね。」

 

俺たちが話していると、空さんから話しかけられる。

 

空「廻さん、今回は本当にありがとうございます!」

 

廻「どういたしまして。」

 

空「本当に助かりました。おかげで何とかこのまま開催できそうです。」

 

廻「それは良かったです。」

 

俺たちもこのまま練習が無駄になるのは嫌だったからな。

それに、このD4FESに出場する人たちの今までの努力も無駄にならなさそうで良かった。

 

 

廻「おっと、もうこんな時間か…」

 

弘人「ほんとだな。」

 

結構遅い時間に集めたからな、そろそろ休まないと。

 

廻「じゃ、今日は明日に向けて休むか。」

 

泊「そうだな。本当に明日が楽しみだ!」

 

灯「じゃ、また明日ね!」

 

弘人「明日は頑張れよ!」

 

廻「あぁ、分かってるよ。」

 

響子「私たちも、廻さんたちのステージ楽しみにしてます。」

 

真秀「頑張ってください!」

 

廻「ありがとう!頑張るよ。」

 

…これは、下手なパフォーマンスはできないな…。

ま、俺たちは自分たちのできる最大限のステージを魅せるだけだ。

 

さて、そろそろ部屋に戻るか…

 

 





次回予告
無事に事件を解決し、D4FESを開催することができた。そして、いつも通り、裕次郎のスタジオで今回の振り返りをしていると…?

それでは、また次回お会いしましょう!


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探偵、再び! エピローグ


前回のあらすじ
D4FESでの事件を解決した廻。
そしていつも通り音楽スタジオで話していると意外な人物が訪問してきて?

先に行っておきます。作者の技術ではライブシーンを描写することができませんでした。なのでライブシーンはなしです。期待していた方ほすみません…

それでは、本編どうぞ!


 

数日後 音楽スタジオ「TRY」

 

あれから数日が経った。

 

事件のことを少し話すと、ホテルで、暴れた男たちと東野が「逆田に頼まれてやった」と自白したことで証拠が固まって、逮捕されたみたいだ。

 

…本当に復讐なんかに囚われずに、またやり直せてたらな…。

 

ま、今更遅いけどな。それに人には絶対に許せないことの一つや2つあるだろうから、綺麗事を言うつもりもない。

 

弘人「けど、あれからもう数日も経つのか…」

 

灯「そうだね。廻たちのステージ、最高だったよ!」

 

廻「そりゃどうも。」

 

そう言われると、俺たちも頑張ったかいがあるな。

 

灯「それに、他のD4FESの出場者のステージも凄かったよね、特にフォトンメイデン!」

 

弘人「だよね!まさか、あそこでなんか表現をしてくるなんて」

 

…こいつらも楽しめたようで何よりだ。

 

灯「…けど、本当にD4FESが開催できて良かったね。廻が真相を突き止めれなかったらと思うとゾッとするよ…」

 

弘人「そうだね、廻たちだけじゃなく、他の皆もD4FESに向けて頑張ってたわけだからね。その大会を一人の都合で壊されなくて本当に良かったよ。」

 

裕次郎「ま、終わりよければすべてよし、だな。後で俺にもD4FESの映像見せてくれよ?」

 

灯「任せてください!廻のステージも他の人の映像と撮ってますから!」

 

…はぁ!?

 

廻「お前、映像撮ってたのかよ!?」

 

灯「え?そうだけど?いけなかった?」

 

廻「いや、いけないってことはないけど…恥ずかしいからな…見たら消せよ?」

 

灯「えー?なんで!?いいじゃん…」

 

 リーンチリーン

 

そんなことを話していると誰かが店に入ってきた。

 

廻「いらっしゃいま…って!?」

 

灯「ん?…って、えーー!?」

 

そこには、フォトンの乙和と燐舞曲の緋彩さんがいた。

 

弘人「おい、マジかよ!…あ、あのずっとファンです!頑張ってください!」

 

乙和「えー!?本当に嬉しいな!これからも応援よろしくね!」

 

って、お前は何普通に話してるんだよ…

 

廻「何でここまで?ていうかどうしてここが…」

 

緋彩「あらー、用がないと来たらいけないのかしら?」

 

廻「いや、そういうことじゃないですけど…」

 

緋彩「…ふふっ、冗談よ。ここが分かったのは、灯ちゃんから聞いたからよ。」

 

いつの間に仲良くなってたんだよ…相変わらず、コミュ力おばけだな…

 

乙和「そういうこと!」

 

緋彩「今日は用事があって近くに来たから寄っただけだから、早く帰るわよ。」

 

廻「そうですか、気をつけて帰ってくださいね、緋彩さん。」

 

緋彩「あら、私のことは『緋彩』でいいわよ。」

 

廻「え、でも…」

 

緋彩「年齢変わらないでしょ?それに、敬語じゃなくていいわよ。」

 

廻「…はぁ。じゃあ遠慮なく、そうする。」

 

廻「そう言えば、他のメンバーは?」

 

乙和「来てないよ!私たちだけで来たから」

 

廻「ふーん…それでわざわざここまで、ごくろうなこった…」

 

緋彩「あら?『わざわざ』ってことでもないわよ?」

 

ん?

 

緋彩「だって、あなたに興味があったから来たのよ?」

 

廻「……は?」

 

思いがけない言葉を言われてビックリする。

……正直「ドキ」っとした…

 

緋彩「…なーんて、冗談よ。」

 

廻「…ビックリしたじゃねえーか!」

 

緋彩「ビックリしたってことは、『ドキドキした』ってことかしら?」

 

廻「…」

 

玲央「…廻?」

 

廻「…ノーコメントで…」

 

緋彩「答えてくれないの?残念」

 

そんなの答えれるわけ無いだろう。答えたらどうなるか…

と、そこまで考えたところで後ろから異様な雰囲気を察してゆっくりと後ろを振り返る…

 

灯「…廻、二人だけの世界は終わった?」

 

何か凄く怒ってる。もしかして、これ結構やばい?…

 

廻「…え、いや…」

 

乙和「…二人で随分と楽しそうだね」ツーン

 

廻「ちょ、乙和まで!」

 

どうしたんだよ…俺何かしたか?

 

灯「廻は緋彩さんみたいな人が好きなんだ…」ジトー

 

廻「俺をそんな目で見るんじゃない。」

 

緋彩「あら、廻くんは、私のことは嫌いなの?」

 

廻「いや、そんなんじゃないけど…」

 

灯・乙和「フン!」

 

廻「痛ってーな!なにすんだよ!」

 

 

弘人「…あーあ、また大変なことになったな、廻。」

 

裕次郎「そう思うなら助けてやれよ…」

 

弘人「いや、面白そうだから、もう少し放っておこう(笑)」

 

裕次郎「…お前も性格悪いな…後でどうなっても知らねえぞ…」

 

おい、聞こえてるぞ、弘人。後で覚えとけよ…

……こうなったら、逃げるが勝ちだ…

 

廻「さらば!」ダッ!

 

灯「あ、逃げた!」

 

乙和「待てー!」

 

緋彩「あらあら…」

 

…この出会い。それは、これからの物語の始まりでしかなかった…

 

さて次はどんなことが待ってるのやら…

 

            

              to be continued…

 

 





さて、ここまで「俺たちと謎と青春と S2」を読んでいただきありがとうございます。
初めて挑んだクロスオーバーエピソードだったので、キャラがちゃんと原作通りになってるかとか不安だったけど、取り敢えず第一話を書ききれて良かったです。作者もほっとしています。

そして、少しお知らせですが、今回話しに絡んで来なかった、Merm4idとLyrical Lilyですが、この2グループも後の話しで出していこうとは考えています。

そして、これからの話しの構成ですが、D4DJのキャラとのクロスオーバーと廻たちだけの話しを交互に書いていこうと思います。
(廻たちの話しにも少しはD4DJのキャラも出していこうと考えてはいます。) 
ということで、作者からのお知らせは以上です。

次話予告
ある女性から、行方のわからない息子を探してほしいと依頼を受けた廻。
しかし、それはただの行方不明事件ではなかった…

では、また次話でお会いしましょう!



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エピソード2
愛の行方は… その1



さて、おまたせしました!第二話です。
最初に言っておきます。この第二話凄く生々しい描写などがあります。苦手な方はご注意ください。

それでは、本編どうぞ!


 

とある日 音楽スタジオ「TRY」

 

季節は9月夏が終わったとはいえ、まだまだ残暑が厳しい季節である。今日もいつも通り音楽スタジオでバイト中だ。

因みに、空調設備は俺たちがD4FESに出ていた間に直ったみたいだ。

 

廻「…」

 

灯「…」

 

弘人「…だぁー、暇だー!」

 

仕事をしていると、弘人がいきなり大声を出した。

客がいないとはいえ、いきなり大声を出すのはやめてほしいんだけどな…

 

廻「いきなりなんだよ…」

 

弘人「だってよー、ここ最近全く依頼がないじゃないか…だから、体がなまってよ…」

 

廻「依頼がないのはいいことじゃないか。誰も困っている人がいないってことだから。それに、そんなに体を動かしたいなら、外で運動でもしてこい。」

 

弘人「それはやだ。まだ外暑いし…」

 

じゃあ、大人しくしてろっての…

 

 チリーンチリーン

 

そんな話しをしていると、誰かが店に入ってきた。無駄話はこれまでだな。

 

廻「いらっしゃいませ!」

 

?「…あのー、ここに『音咲廻』さんっていう探偵がいるって聞いたんですけど…」

 

…どうやら、店の利用じゃなくて、依頼みたいだな…

そう思って話しを聞こうとすると、先に弘人が話しかけた。

 

弘人「はい!音咲廻はこいつです!」

 

…何でお前が得意げに話すんだよ……

まあ、依頼が来ないで退屈してたから仕方ないか…

 

廻「えぇ、音咲廻は僕ですけど…」 

 

?「あ、あの!た、助けてけださい!息子が!」

 

廻「分かりました。話しを聞きますから、取り敢えず落ち着いてください。」

 

どうやら、その人相当焦ってるみたいだ…

息子さんに何があったんだ?取り敢えず落ち着いてから話しを聞いて見るか。

 

‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾

数分後

 

廻「…落ち着きました?」

 

?「はい。すみません、取り乱して、お恥ずかしいところをお見せしてしまって…」

 

廻「何があったか話してくれますか?」

 

そうして、目の前の女性が話し始めた。

 

智子「はい。私は『藤井智子(ふじい さとこ)』って言います。。それで、廻さんに頼みたいことがあって…」

 

廻「そう言えば、さっき、『息子が…』って言ってましたね。」

 

智子「そうなんです!実は、一週間前から息子が行方不明なんです。」

 

弘人「警察にはもう連絡してるんですか?」

 

智子「いいえ、まだです。あんまり、大事にはしたくなくって…」

 

それでも、先に警察に連絡するべきだと思うけどな…

まあ、本人がそうしたくないって言っている以上どうにもできないけどな…

 

廻「それで、僕たちにその息子さんを探してほしいんですね?」

 

智子「はい…。」

 

廻「…分かりました。できることはしましょう。」

 

智子「ほんとうですか!ありがとうございます!」

 

廻「けど、条件があります。」

 

智子「なんですか?」

 

受ける以上これだけは言っておかないとな。

 

廻「僕たちでその息子さんを見つけれなかったら、警察に行って行方不明届を出してください。」

 

智子「…分かりました。最終手段として考えます。」

 

最終手段って…そんなに警察沙汰にしたくないのか…。

また厄介な事情抱えてるんじゃないだろうな…

 

弘人「…それにしても、若いのに子育て大変ですね。」

 

そうして、場を少しでも和ませようと弘人が話しを変える。

 

智子「ハハ、よく若いって言われるけど、実はもう30代なんですよ?」  

 

……え?ま、マジかよ…どう見てもまだ20代前半に見えるぞ…

他の皆も同様に驚いていた。

 

廻「そう言えば、ご家族の方には今回のことは知ってるんですか?」

 

智子「夫はいません。一年前に事故で亡くなりました。それに、私の両親は、遠方に住んでるからあんまり迷惑をかけたくないんです…」

 

廻「それは、無配慮に質問してすみません…」 

 

智子「いいですよ。気にしないでください…」 

 

…やばいな、また空気が悪くなってきた。

 

灯「と、とにかく、私たちもできることを精一杯やりますので、任せてください!」

 

智子「お願いします。」

 

弘人「じゃあ、その息子さんの名前と写真を見せてもらってもいいですか?」

 

智子「はい。名前は、『真人(まさと)』です。学校は、『峰坂高校』です。写真は……これです。」

 

そうして、俺のスマホに写真が送られてくる。

智子さんを真ん中にして、左右に男の子が二人いる。

 

廻「ありがとうございます。…あれ、二人兄弟だったんですね?」

 

智子「え…あ、はいそうです。」

 

ん?気のせいか?今、何か智子さんが変だったような?

 

智子「その写真の、左に写っている子が真人です。」

 

弘人「けど、兄弟が行方不明だと、兄弟も不安ですよね…」

 

智子「…」

 

廻「…智子さん?」

 

智子「…え、えぇそうね…」

 

やっぱりなんか変だな……

 

廻「本当に大丈夫ですか?」 

 

智子「はい。お気遣いありがとうございます。」

 

廻「因みにどっちがお兄さんなんですか?」

 

智子「真人が兄ですね。」

 

廻「そうですか。あの弟さんのほうは…」

 

智子「もうこれぐらいでいいですよね?必要なことは話しましたから!それじゃ、これで…」

 

そう言うと、智子さんは自分の電話番号を書いた紙を置いていって出ていった。

お兄さんのことを聞こうと思ったら帰ってしまった…

 

廻「何か悪いことを言ってしまったらしいな…」

 

弘人「やってしまったことは仕方ないだろう。取り敢えず、明日から早速探してみるか?」

 

廻「…そうだな。」

 

…何かこの事件一筋縄ではいかないような気がするな…

 

 

 

そして、その予感は調べていくうちに、現実のものとなるのだった…

 

‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾

翌日 峰坂高校 職員室

 

そして、俺たちは次の日から早速真人くんのことを調べるために

峰坂高校に来ていた。

 

智子さんが話しをつけてくれていたみたいで、受付の人に話しを通りしたらすんなり案内された。

そして、男性の教師が俺たちの前に現れた。

 

担任「あなた方が探偵の人ですね?話しは聞いてます。」

 

どうやら、この人が真人くんの担任なのか。

 

廻「はい。真人くんのことについて調べにきました。」

 

担任「分かりました。」

 

そこで話しを聞くことにした。

 

廻「では、早速。真人くんの行きそうな場所は分かりますか?」

 

担任「残念ながら分かりません。」

 

廻「そうですか…」

 

担任「あの、よかったらこのあとのHRで時間をとるので、そこでクラスの子に聞いてみますか?」

 

おっと、これは願ってもない提案だな。

 

弘人「ありがとうございます。けど、いきなり俺たちが教室に行っても生徒たちが混乱しないですか?」

 

担任「いいですよ。真人くんが学校に来てないことは生徒の間でも知れ渡っていて、大変なんですよ…。それに、生徒なら何か知ってるかもしれないですし。」

 

廻「それなら、この後教室に行ってみます。」

 

弘人「けど、こう言っちゃなんですけど、何でそんなに一生徒の失踪がそんなに知れ渡っているんですか?」

 

担任「あー、実は真人くん、学校でちょっとした有名人なんです。」

 

灯「有名人、ですか?」 

 

担任「そうなんですよ。ま、正確には真人くんとその家族なんですけどね。」

 

廻「家族が?」

 

担任「皆さんも、智子さんに会ったなら分かると思うんですけど、智子さんって凄い美人じゃないですか。で、智子さんが用事があって学校に来た時に、『保護者に凄い美人がいる!』って生徒や教師、他の保護者の間で話題になったんですよ。」

 

なるほど、それで有名人になってるのか。

 

灯「確かに、智子さん最初会った時は芸能人かと思うくらいキレイな人ですもんね。」

 

担任「それに、性格もいい人で人気も凄いんですよ。学校行事でも頼りにしていますよ。…っと、そろそろHRの時間ですね、行きましょうか。」

 

話しの途中だったが、HRが始まるとのことだったので、教室に移動した。  

 

‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾

坂峰高校 教室

 

担任「じゃ、私が呼んだら入ってきてください。」

 

廻「分かりました。」

 

俺たちが返事をすると、担任は教室に入っていった。

 

担任「はーい、皆席に付け。」

  

担任の先生がそういうと生徒たちが次々と席に着く音が聞こえてきた。

 

灯「…何か、懐かしいね。」

 

廻「懐かしいって、まだ高校卒業して一年くらいだろ…」

 

弘人「お前、分かってないな…。ま、廻らしいけどな。」

 

廻「分かってなくて悪かったな。」

 

弘人「そんなんじゃ、お前『青春』とはほど遠い学校生活だったんだろうな…」

 

廻「ま、否定はしない。」

 

その時はいろいろとあったからな。

 

※詳しくは、S1の最終話をご覧ください

 

弘人「何だ、あっさり認めるんだな。」

 

廻「まあな。…本音を言うと俺も青春したかったんだぞ?」

 

玲央「…廻がそんなこと言うなんて意外だな。」

 

廻「そりゃ、俺も彼女とか高校でも友達作って楽しみたかったっての…」

 

弘人「なんだ、お前彼女作りたいって願望あったのかよ(笑)」

 

廻「失礼な。俺だってそういうのは考えるぞ?」

 

こいつらは、俺を何だと思ってるんだ?

 

弘人「じゃ、好みの女性とかいるのか?」

 

廻「…まあ、あるけど…」

 

灯「!」

 

廻「…どうした、灯?」

 

灯「な、なんでもないよ?そ、それよりさ…担任「それで、おねがいします。」灯「…」 

 

灯が何か言おうとしたけど、担任から呼ばれたので教室に行く。

 

廻「話しはここまでだ。行くぞ。」  

 

弘人「そうだな。……灯ちゃん、好み聞けなくて残念だったね…」ボソ

 

灯「!べ、別に!廻の好みなんて、どうでも…」ボソ

 

弘人「…素直じゃないね…」

 

廻「? おい、早くしろよ。」

 

俺がそう言うと、二人は教室に入ってきた。

 

担任「と、言うことで探偵の音咲廻さんたちです。皆、もう知っていると思うが、真人くんが行方不明です。何か知っていることがあったら話してほしいと思って呼びました。皆、何か知っていることはないか?」 

 

担任がそういうが、生徒は誰一人として話そうとはしなかった。

ま、人前じゃ話しづらいよな…

 

廻「今、担任の先生から言われたら通り、僕たちは今真人くんを探しています。何か知ってることがあれば、話してほしいです。けど、人前では話せないこともあると思います。なので、今日は一日ここにいるので話せることがあれば、そこに来てください。…先生、いいですか?」

 

担任「分かりました。では、廻さんたちは、職員室にいます。なので、話せることがあれば、職員室に話しに来てください。では、以上。」

 

そうして、HRは終了した。

 

‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾

数時間後 職員室

 

あれから俺たちは、職員室の一角で誰か生徒が話しに来てくれるのを待った。

けど、全然来なくて、時間だけが過ぎていった。

 

弘人「誰も来ねえな…。もしかして、生徒も誰も真人くんのこと知らないのか?」

 

廻「そうかもしれないな…。けど、他のクラスの人にも伝えてもらっているから、まだ待ってよう。」  

 

この待つだけしかできないのは辛いな…

手がかりが何かあればすぐに話せるんだが…

 

弘人「玲央は何か見つかったか?」

 

朝から必死にノートPCなどで情報を集めている玲央に弘人が話しかける。

 

玲央「必死に探してはいるが、まだ有力な情報はない。」

 

弘人「そうか…。目撃情報とかもないのか?」

 

玲央「それも最初に調べたが、なにもないんだ。」

 

廻「何もない?」

 

玲央「そうだ。行方が分からなくなった一週間誰からも、どこでも目撃情報がない。」

 

灯「…ねぇ、考えたくないけど、もう真人くんは…」

 

最悪の事態を想像して灯が震える。

 

廻「落ち着け。まだそうだと決まったわけじゃないだろ?」

 

震える灯に近づいて支える。

根拠もないもないが、それでもまだ生きてると信じたい。

 

玲央「けど、一つだけ気になることはあった。」

 

弘人「なんだよ、あるんならそれを話せよ。で、何が気になるんだ?」

 

玲央「SNSで藤井のアカウントにたどり着いた。で、そこから2兄弟のアカウントも見つけたんだが、これを見てくれ。」

 

灯「…あれ?真人くんの名字が『武井(たけい)』になってる!」

 

弘人「偽名ってことか?」

 

玲央「いや、それはない。このSNSは自分の名前じゃないと登録できないからな。」

 

てことは……

 

廻「…真人くんは、藤井さんの実子じゃないってことか?」

 

玲央「おそらくな」

 

一体どうなってるんだ?

 

弘人「ま、あんまり家庭のことに首を突っ込むのはよくないな。そういうなら、廻も春田さんと一緒に暮らしてるわけだからな…」

 

廻「そうだな…。」

 

春田、というのは俺が一緒に住んで生活している、俺の『第二の家族』だ。

とある事情があって、中学の頃からお世話になっている。

 

※詳しくはS1をご覧下さい。

 

玲央「因みに、弟の方はちゃんと実名で登録してる。これだな

 

廻「へー、弟の名前は、『藤井輝樹(ふじい てるき)』って言うのか。」

 

確かに弟の方は実名で登録してるみたいだな…

 

…あれ?

 

廻「なあ、この投稿って何だ?」

 

俺は一つの投稿に目が行く。

 

弘人「ん?なんだこれ、どっかの物置小屋か?」

 

廻「そうみたいだな。」

 

その投稿には、どこかの物置小屋の写真が投稿されていた。

 

弘人「で、メッセージには、『裁きのとき』?なんだこれ…」 

 

『裁きのとき』?

 

……ダメだ、何もわからないな…

 

廻「ま、気になるから後で俺のスマホにこの画像送っておいてくれ。」

 

玲央「分かった。」

 

裁きのとき、一体誰を裁こうってんだ?…

 

そんなことを考えていると、担任の先生が近づいてきた。

 

弘人「あれ、担任さん、その子は?」

 

担任「どうやら、生徒が廻さんたちに話しがあるそうです。」

 

灯「もしかして、それって?」

 

担任「はい。真人くんのことです。」

 

お、どうやらやっと生徒が話しに来てくれたみたいだ。

これで、何か分かるといいんだけどな…

 

 





事件メモ
今回の依頼
『武井真人』の捜索。
・藤井智子 今回の依頼主。行方不明になった真人を探してほしいと依頼をしてくる。何故か家族のことを話したがらないようで?…
・武井真人 一週間前から行方不明になっている。目撃情報もないみたいだ。どうやら、弟の輝樹とは血が繋がっていないようだ。
・藤井輝樹 智子の実子。今のところ何も分かってない。
・輝樹は、SNSにどこかの物置小屋の写真と『裁きのとき』というメッセージが投稿されていた。

以上です。

次回のあらすじ
行方不明の真人を探してほしいという依頼を受けた廻たち。
話しをしながら、生徒が話しに来てくれることを待っているとようやく生徒が話しに来てくれた。生徒は廻たちに何を話すのか?

それではまた次回お会いしましょう!





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愛の行方は… その2


前回のあらすじ
真人を探すために、学校に来た廻たち。廻たちが待っているとようやく一人の生徒が話しに来た。

それでは、本編どうぞ!


 

坂峰高校 職員室

 

弘人「それで、早速だけど、君は何を知っているのかな?」

 

そう言って弘人が、話しに来てくれた生徒に話しかける。

 

担任「あ、私は席を外しますね。その方が生徒も話しやすいでしょうし。」

 

そうして、担任の先生はどこかへ行ってしまった。

さて、これで話しやすくなったと思うがどうだ?

 

生徒「…」

 

弘人「落ち着いて、ゆっくりでいいから君が知っていることを話して。」

 

それでもまだ話すことを躊躇っている生徒に、優しく弘人が話しかける。

 

生徒「…皆さんは、」

 

そう言って安心したのか、生徒が話し始めた。

 

生徒「真人くんが、血の繋がっていない子ってのは分かりますか?」

 

廻「はい。それはついさっき分かりました。」  

 

生徒「そうですか。で、真人くんと輝樹くんが兄弟なんですけど、実はあの二人仲が悪いんです。」

 

廻「仲が悪い?それは確かですか?」

 

生徒「はい。僕が直接見ました。偶然放課後に誰もいない教室を通ったときに、言い争いをしてました。」

 

弘人「何で言い争いを?」

 

生徒「さあ?良くは聞こえませんでした…あ、けど誰か『人の名前』を言って言い争ってました。」

 

言い争いなんて穏やかじゃないな…。それに『人の名前』か、気になるな…

 

生徒「二人が仲が悪いのはすぐに広まりました。真人くんが有名人だから噂が広まるのは早かったです。」

 

廻「そうなんですね。ん?お母さんだけじゃなくて、真人くんも有名人なんですか?」

 

生徒「そりゃ、お母さんもあんなに美人だし、真人くん自身も文武両道のイケメンで、凄いモテてますよ。あとは、やっぱり、輝樹くんと血が繫がってないのが、皆の興味を引いてる対象になってるんです。」

 

なるほどな。そう言えば、担任も『正確には真人くんとその家族なんですけどね。』って言ってたな。家族揃って有名人か…

 

灯「確かに、あんな美人のお母さんとイケメンなら有名にもなるよね。」

 

生徒「そうなんですよ。…あ、ここだけの話しですけど、真人くんのお母さん、独身だから同じ独身の先生や、保護者、さらには、何と生徒からもアプローチを受けてるみたいですよ。」

 

弘人「そ、それは凄いな…」

 

灯「想像以上にモテてるんだね…」

 

生徒「はい。それに、性格も非の打ち所がないですからね。あんな人に告白されたら断る人はいないですよ。」

 

だろうな。断る要素が今のところないからな…

 

生徒「けど、残念ながらアタックしていった人たち、みんな断られてるみたいですよ。因みにさっきの担任も振られたみたいですよ?」

 

そ、それは気の毒に…

 

生徒「僕が話せるのはこれだけです。じゃあ失礼します。」

 

灯「あ、ちょっと待って」

 

教室に戻ろうとする生徒を灯が呼び止める。

 

灯「一つ質問があるんだけど、いい?」

 

生徒「何でしょうか?」

 

灯「真人くんは、彼女とか好きな人はいないの?」

 

生徒「さあ?それは聞いたことないですね…。どうしてそんなことを?」

 

へぇ、灯も鋭い質問ができるようになったな。これも一応俺たちと探偵をやってきたからか?

取り敢えず、真人くんの人間関係が分かるのはいいことだ。

 

灯「いや、親子揃って美男美女だから真人くんにもそういう人がいるのかなって思って。」

 

生徒「そうでしたか…。すみません、そこは本当にわからないんです。けど、真人くんのことを知っている人は不思議がってはいますね。」

 

廻「それは何でですか?」

 

生徒「それが、真人くんはあんなイケメンなのに、彼女ができた噂とか、誰か女性と一緒にいるところを誰も見たことないんです。それどころか、告白を断っていたみたいです。」

 

確かにそれは変だな。けど、本人にしか分からないからな…

何か彼女を作りたくない理由とかあるのかもしれないな…

 

生徒「唯一、女性と一緒にいたのと言えば、真人くんのお母さんですね。美男美女だから絵になるんですよね。」

 

灯「そっか。引き止めてごめんね。聞きたいことは以上だよ。ありがとうね。」

 

生徒「では、失礼します。」

 

そうして、生徒は今度こそ教室に戻っていった。

 

弘人「いろいろと、聞けたな。今のところ怪しいのは言い争いをしていた、輝樹くんか…。…おい、廻、聞いてるのか?」

 

廻「あ、悪い。」

 

弘人「何か考え事か?」

 

廻「あぁ。さっきから全然輝樹くんのことが話題に上がってこないのが不思議でな…」

 

灯「言われてみれば確かに!ずっと真人くんのことだけだね。」

 

廻「なんで誰も輝樹くんのことは言わないんだろな?」

 

弘人「そこも調べて見る必要があるな。」

 

廻「あぁ。」

 

生徒の話しを聞き終えた俺たちは、担任の先生に話しが終わったことを伝えるために、話しに行った。

 

‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾

担任「あ、廻さん。話しは終わりましたか?」

 

廻「はい。……そう言えば…」

 

担任「?何か?」

 

廻「いや、そう言えば智子さんに告白して振られた人がたくさんいると聞いたんですけど…」

 

担任「あぁ、そのことですか……。」

 

いやなことを思い出させるようで悪いけど、どうしても質問したいことがあったので遠回しに質問する。

 

担任「実はあれ、振られたんじゃないんですよ…」

 

弘人「え?どういうことですか?」

 

担任「正確には、身を引かなければなかったんです。」

 

廻「というと?」

 

担任「実は、智子さんに告白した男性は次の日に『藤井智子に近づくな』っていうのが書かれた紙と、プライベートを写した写真がポストに届けられて…」

 

廻「それは、つまり智子さんにストーカーがいると?」  

 

担任「恐らくそうでしょうね。だから、怖くなったり面倒事に巻き込まれたくないからみんな、智子さんを諦めるんです。」

 

そういうことがあったのか…

 

担任「けど、それにしては変なんですよね…」

 

弘人「変って何がですか?」

 

担任「いや、智子さんの学校行事とかでの様子を見てたら、元気に笑顔なんですよ。強がっているようにも見えなくて…それ見たら本当にストーカー被害にあってるのかなって…」

 

確かにストーカー被害にあってたら、少しは表情や態度に現れそうだよな…。

 

廻「そうでしたか。いろいろと話してくれてありがとうございました。では、また。」

 

担任「はい。」  

 

いい時間になったので、今日のところは引き上げることにした。

 

‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾

翌日 佐々野木大学 食堂

 

弘人「で、今日はどう動くんだ?」

 

廻「家族のことについて知りたいから、智子さんに話しを聞きにと思う。」

 

灯「けど、すんなり話してくれるかな?依頼に来たときも、話したくないって感じだったよね…」

 

廻「それでもまずは行動してみないとな。それに、信条さんにも依頼するからどうにかなるだろ。」

 

そう、昨日のうちに信条さんに今回のことを話して協力してもらっている。

勿論、智子さんの家族についてだ。

 

廻「ま、取り敢えず行ってみるか。」

 

弘人「じゃ行くか。」

 

俺たちは、智子さんに住所を聞いて藤井家を訪れることにした。

 

‾‾‾‾‾‾‾‾‾

数分後 藤井家  

 

廻「すみません、急に押しかけて。」

 

智子「いえ、今回のことだったら仕方ないですよ。それで、何を聞きたいんですか?」

 

廻「輝樹くんはどういう子なんですか?」

 

俺がそう聞くと、やっぱり智子さんは俺たちを睨みつけてきた。

 

智子「何故、そんなことを?」

 

廻「勿論、事件と関係があるからです。」

 

智子「私が頼んだのは、真人を見つけてほしいってことだけですよ?輝樹がなんの関係が…」

 

?「母さん、誰と話してるの?」

 

俺たちが話していると、2階から誰かが降りてきて智子さんに話しかけた。

 

?「あれ?その人は?」

 

智子「あなたには関係ないわ。部屋に戻ってなさい。輝樹」

 

って、この子が輝樹くんか…。

てか、実子なのに冷たいな…

 

灯「私たちは、探偵です。」

 

輝樹「探偵…。へぇ…」

 

弘人「智子さんから、行方不明になった真人くんを見つけてほしいって依頼を受けて動いてるんだ。何か知っていることはないかな?」

 

輝樹「…さあ、何も知らないです。」

 

何か答えが淡々としてるな…。血が繫がってないとはいえ兄弟が行方不明なんだぞ?気にならないのか?

 

廻「真人くんのこと気にならないんですか?」

 

輝樹「さあ?喧嘩もよくしてたし、仲が良くなかったですから。」

 

仲が悪いとはいえ、心配はすると思ったんだけどな…

想像以上に仲が悪いらしい…

 

智子「私も答えることはないです。お帰りください。」

 

輝樹「母さん…」

 

心配した輝樹くんが、智子さんに近づいたときだった。

 

智子「近づかないで!!」バチン!

 

触れようとした輝樹くんの手を払い除けたのだった。

 

智子「…すみません、本当に今日は帰ってもらえますか?」

 

廻「分かりました。」

 

これ以上は何も話せないだろうし、無理に聞くこともできないから今日のところは帰ることにした。

 

‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾

藤井家の外

 

弘人「何かあの家庭変だな。なんで輝樹くんにあんな態度をとるんだ?」

 

廻「そうだな。何か拒んでいるようにも見えたな…」

 

「あんたら、ここらへんのもんじゃないね?」

 

俺たちが話していると近所のおばさんに声をかけられた。

 

廻「はい。ちょっと藤井さんの家に用があって来たんです。」

 

「そうかい。けど、大変だったろう?外まで声が聞こえてたよ。」

 

廻「それはすみません。」

 

ちょうどいい。ここで情報収集しておくか。

 

廻「あの、藤井家について何か知りませんか?どんな些細なことでもいいんです。」

 

「藤井さんのことねぇ……あ、そういえば、藤井さんの子ども、弟の…あ、輝樹くん。最近よく夜にどこかへでかけてるのを見るなぁ…」

 

廻「夜に?」

 

「あぁ。『こんな時間にどこに行くんだい?』って声かけても無視して行っちまうんだよ…感じが悪いね。」

 

夜に外出ね…

 

「昔はあんな子じゃなかったのにねぇ…」

 

廻「そうなんですか?」

 

「あの家族は昔からあの家に住んでいてね、私にもよく笑顔で挨拶をしてくれたもんだよ。お母さんによく懐いていてね、とてもかわいい子だったよ。けど、この数年でガラッと変わっちまったよ…。あぁ、そう言えば、丁度あの子が来たぐらいからだったような?」

 

あの子?もしかして…

 

廻「もしかして、真人くんですか?」

 

「そうそう。真人くんが引き取られて、藤井家に来てからだねぇ…」  

 

やっぱりか…

 

「けど、不思議だねぇ…」

 

廻「何がですか?」

 

「いや、智子さん、あんなべっぴんさんなのに全く浮ついた話しがないんだねぇ…。まだまだ再婚もありえると思うんだけどねぇ…」

 

真人くんと一緒で智子さんも付き合ってるとかそんな話しはないのか…

 

廻「いろいろと聞けてありがとうございました。」

 

お礼を言って俺たちは帰路についた。

 

‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾

弘人「しかし、ますます気になるな、あの家族…」

 

灯「そうだよね…それに、あのおばあさんは『お母さんによく懐いていて』って言ってたけど、今じゃとても仲は良く見えないよね…」

 

廻「まだまだ調べる余地がありそうだな。」

 

 ♪♪♪♪♪

 

廻「わりい、電話だ。」

 

どうやら、信条さんからみたいだった。

 

廻「もしもし」

 

信条『俺だ。言われてたもの調べたぞ。』

 

廻「助かる。で、どうだった?」

 

信条『前科はないみたいだな。そして、一年前に夫とは死別してるな。と、ここまでは変わったことはないんだが、問題はこれからだ。』

 

廻「何が分かったんだ?」

 

信条『実は、親同士の関係は良好だったみたいだが、子ども同士がよく喧嘩してたみたいで仲が悪いみたいだ。』

 

あの二人、前から仲が悪かったのか…

 

廻「それって、輝樹くんと真人くんのことだよな?」

 

信条『何だ、知ってたのか。』

 

廻「まあな。けど、何で二人は一緒に暮らすことになったんだ?」

 

信条『それは夫が引き取ったみたいだ。』

 

廻「何で夫が?」

 

信条『何でもボランティア活動を熱心にしてたみたいでな。それで児童養護施設とかにもよく行ってたらしい。で、その縁で引き取ったのが『真人』みたいだ。』

 

そうだったのか…。

 

廻「なるほど。」

 

信条『俺が調べれたのはこれまでだ。』

 

廻「ありがとう。あ、その真人くんを引き取った施設のことを教えてほしいんだが…」

 

信条『分かった。住所は……だ。電話番号は…の…だ。』

 

廻「ありがとう。じゃ、また。」ピッ

 

弘人「…何か分かったか?」

 

廻「あぁ、いろいろとな。」

 

取り敢えず明日は真人くんがいた施設に行ってみるか…

 

 

 





事件メモ
・真人と輝樹は昔から仲が悪い。
・真人は智子の夫が引き取った。
・輝樹は昔は、愛想が良かった。

以上です。

次回予告
信条から兄弟のことが聞けた廻。今度は真人がいた施設に行って見るようだ。

それでは、また次回お会いしましょう!




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愛の行方は… その3


前回のあらすじ
学校で、真人や智子について聞けた廻たち。
そして、真人たちの家にも行くが、そこで智子と実子である輝樹の関係の異常に気づく。
そして今度は、真人が幼少期にいた施設を訪れるみたいだ。

それでは、本編どうぞ!


 

翌日 施設前

 

今日は真人くんがいた施設に来ていた。さて、何か分かるといいんだが…

ま、取り敢えず行ってみるか。

 

そうして施設の中に入っていく。

 

廻「すみません、昨日電話した音咲廻ですけど。」

 

受付「はい、廻様ですね。」

 

廻「『武井真人』くんのことについて聞きたいんですけど、担当だった人っていますか?」

 

受付「しばらくお待ち下さい。」

 

数分後…

 

受付「おまたせしました。こちらへどうぞ。」

 

そうして、受付の人に案内されて、応接室に向かった。

 

‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾

応接室

 

廻「失礼します。」

 

応接室に入ると、一人の女性がいた。

 

?「どうぞ、おかけください。」

 

席につくとすぐに本題に入った。

 

赤坂「私が真人くんの担当だった、『赤坂(あかさか)』です。それで、今日は何を聞きたいんですか?」

 

廻「実は、小さい頃の真人くんのことを知りたいんです。」

 

赤坂「小さい頃の真人くんですか…」

 

廻「何でもいいんです、どんな子だったかとか。」

 

赤坂「そうですね、大人しい子でしたよ。」

 

今とは正反対だな…

 

赤坂「けど、個人的な感想ですけど、『愛に飢えていた』感じはしましたね…」

 

廻「『愛に飢えていた』?それはどんな風にですか?」

 

赤坂「実は真人くんの実父は浮気して離婚したんです。で、真人くんがここに来た理由は実母からの虐待なんです。」

 

赤坂「で、他の子の母親が会いに来ているときに、真人くんがよく甘えに行く姿が見られたんです。」

 

廻「親からの愛が分からないからそれを他の親に求めてるんですね。」

 

赤坂「はい。そうだと思います。」

 

特に小さい頃に虐待なんて受けてたらそうなる可能性は高いだろうな…

 

赤坂「あー、それと引き取りに来た藤井さんのお母さんにもよく懐いてましたね…」

 

廻「そうですか…。」

 

赤坂「その姿を見て、藤井さんの夫がひきることを決めたみたいですよ。実子の輝樹くんともとても仲良くしてましたよ。今も仲良くしてますか?」

 

!? それは今とは全然違うな…

 

廻「実はその二人のことなんですが…」

 

そこで、今の二人の関係を話した。

 

赤坂「!そ、そんなことが…。それは本当なんですか?」

 

廻「僕たちは実際に見たわけではないですが、学校でも二人が喧嘩してるのを聞いた人がいるみたいで…」

 

赤坂「そんな…あのときは仲良くしてたのに…一体何が…」

 

廻「それは、まだわからないです。」

 

それに、智子さんも輝樹くんに冷たいからな…

本当にあの家族の間に何があったんだ?

 

廻「今日は話しを聞かせていただいてありがとうございました。失礼します。」

 

赤坂「はい。また何か聞きたいことがあったらいつでも来てください。」

 

取り敢えず、今日のところは施設を後にした。

 

‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾

数分後

 

弘人「まだ時間があるな。どうする?」

 

廻「そうだな…。坂峰高校に行ってまた聞き込みしてみるか。」

 

弘人「分かった。じゃ、早速行くか。」

 

 

 

坂峰高校

 

廻「じゃ、手分けしてやるぞ。何かあったら連絡しろよ。」

 

弘人「了解。」

 

そうして灯と俺、弘人と玲央に別れて情報収集に向かった。

 

 

灯「で、どこから調べるの?」

 

廻「そうだな。まずは、教室に残っている生徒から話しを聞いてみるか。」

 

この時間ならまだ生徒が教室に残ってそうだからな。

 

そうして、教室の生徒に話しを聞きに行った。

だが……

 

灯「何も聞けないね…」

 

廻「そうだな…」

 

思ったよりも、真人くんたちのことを知っている人がいなかった。放課後だから帰宅した生徒や部活に行った生徒もいるから知っている生徒がもう学校にいないのかもな…

こんなことならもうちょっと早くに来れば良かった…

 

そんなことを考えていたときだった。

 

生徒A「てかさ、今思い出しても怖いよな…」

 

生徒B「お前そればっかだな。」

 

生徒A「けど、本当に怖かったんだって…輝樹と真人のやつ。」

 

灯「君たち、ちょっと待って!」

 

生徒B「はい、なんですか?」

 

灯「ねえ、君たちちょっと聞きたいことがあるんだけどいいかな?真人くんのことなんだけど…」

 

灯がそういうと、嫌そうな顔をした。

 

廻「さっき『輝樹と真人』って聞こえたんだけど、知ってること教えてくれないか?」

 

灯「おねがい!真人くんのことが知りたいの。なんでもいいから教えてくれない?」

 

そういうと渋々といった感じだったが、話してくれることになった。

 

‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾

灯「それで、改めて聞くけど、君たちは何を知ってるの?」

 

生徒A「俺たち、この前あいつらのお母さんと話してたんです。」

 

灯が聞くと生徒が話し始めた。

 

生徒A「何か学校に用事があったときに、偶然会ったから話してたんです。」

 

流石は美人ママだ。生徒にも積極的に声をかけられてるみたいだな。

 

生徒B「そのときに後ろから二人に呼び止められたんです。」

 

そうして、その時のことを詳しく話してくれた。

 

‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾

数日前 坂峰高校

 

生徒A『あれ、真人のお母さんですね!?』

 

智子『そうだけど、あなたは真人のお友達かな?』

 

生徒B『はい!』

 

智子『そうなのね、これかも仲良くしてね。』

 

生徒A『どっか行くんですか?案内しますよ?』

 

智子『ありがとう。でも、大丈夫よ。学校にはよく来てるから迷ったりしないから』フフッ

 

生徒B『そうですか。けど、何かあったら声かけてくださいね。何でも手伝いますから。』

 

智子『頼りになるわね。』

 

そうやって話しているときでした。

 

真人『母さん、何やってるんだい?』

 

智子『あら、真人。それに、輝樹も。いたなら話しかけてくればいいのに…』

 

輝樹『あんまりにも、仲良く話してたから話しかけづらくて。用事があるなら早く行かないと。』

 

智子『そうね。じゃ、君たちまあね。』

 

生徒A『あ、はい。…行っちゃったよ。もう少し話したかったのにな…』

 

そうして、僕たちも帰ろうとしたときでした。

 

真人・輝樹『『…おい』』

 

二人に急に掴まれてそのまま壁に押し倒されたんです。

 

生徒B『な、なんだよ!』

 

真人『てめー、気持ち悪いんだよ。人の母さんに色目使ってんじゃねえよ…』

 

生徒A『ま、待てよ!俺たちそんなつもりは…』

 

輝樹『なかったっていいたいのか?嘘つくなよ、いつもとちがう態度と声で接しやがってよ。』

 

真人『もう、母さんに近づくな。今回は見逃してやる。けど、コンドあったら分かるな?』ギロッ

 

生徒A・B『『は、はい!すみませんでしたー!!』』

 

そのときの睨みつける視線が怖くて二人で走って帰りました。

 

‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾

廻「そんなことが…」

 

生徒B「あれから怖くて二人にも話しかけてないです…」

 

まあ、そんなことがあれば話しかけれないよな…

 

生徒A「けど、俺たち以外にも同じ目に合っててやばいよな…」

 

廻「ん?君たち以外にも同じような目にあった人がいるのかな?」

 

生徒B「はい。僕たち以外にも真人たちのお母さんと関わりを持とうとしたり、楽しげに話していると、あとからあの二人がきて脅してくるんです。女性だとなんともないんですけど、男性だと、絶対に脅して来ますね…」

 

廻「えっと、ごめん。言い方が悪いけど、二人はいわゆる『マザコン』ってやつですか?」

 

生徒A「あー、一時期そんな噂も流れたな…。ま、今は噂はほとんど消えてますけど…」

 

灯「消えたって何で?」

 

生徒B「女子生徒とは仲がいいから、それで消えたんだと思います。まあ、それでも男性の間ではマザコンってのは消えてないですけどね。」

 

男性と女性の間では噂が半々って感じか?

 

生徒B「けど、生徒は脅されるだけで済んでいいほうですよ。真人のお母さんを口説こうとした男性教師なんて事故にあったり、急に別の学校に移動になったりして不幸になってるから。」

 

灯「え?それも、もしかしてあの二人が?」

 

生徒B「まあ、証拠とかはないですけど、『二人がどうにかしてやったんじゃないか』って噂ですよ。」

 

まあ、智子さんを口説こうとした人が次々に不幸になってたら、二人を疑いはするよな…

 

生徒A「あの、もういいっすか?俺ら帰りたいんですけど…」

 

灯「うん、ありがとうね。」

 

廻「…さて、いろいろと新しい情報が手に入ったな。」

 

灯「そうだね…。あ、もういい時間だから二人と合流しない?」

 

廻「そうだな。」

 

そうして、二人と連絡を取り合流した。

 

‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾

数分後 弘人の車の中

 

廻「で、お前のほうの情報は集まったか?」

 

俺たちは弘人の車の運転で帰っていた。で、今はお互いの情報を交換しているところだ。

因みにだいたい、車を出してくれるのは弘人だ。いつも助かっている。

 

弘人「バッチリだ。そっちは?」

 

廻「あぁ、俺たちもいい情報が聞けたよ。じゃ、まずは俺たちの話しからするか。」

 

弘人「頼む。」

 

そうして、俺たちが生徒から聞いたことを話した。

 

弘人「ふーん…要するに二人とも『お母さん大好きっ子』ってわけだ。」

 

廻「そうみたいだな。けど、気になるのは男性教師が次々と不幸になってることだな…」

 

灯「そうだよね…。とても高校生ができる範囲を超えてるよね…」

 

誰かが裏にいる?そして、そいつが真人くんを誘拐したってことか?

…何にしても証拠がなさすぎる……

 

廻「で、そっちはどうだったんだ?」

 

弘人「俺たちもだいたいお前らが聞いた話しと同じだな。真人くんも、輝樹くんも、少しでもお母さんと仲良くする人を見つけては脅してたらしい。」

 

玲央「…けど、一つだけ違うのは、暴行事件を起こしていたみたいだ。」

 

廻「そうなのか?」

 

弘人「あぁ、一回だけな。前に智子さんが、不良生徒に絡まれたことがあったみたいだ。勿論、智子さんも抵抗して逃げようとしたけど、数人いたから押し倒されたみたいだ。」

 

弘人「で、そのときも真人くんたちがきて、不良生徒と乱闘騒ぎを起こしたみたいだ。」

 

灯「で、どうなったの?」

 

弘人「けど、それがただの喧嘩で済まなくなってな、輝樹くんが刃物を持って、不良生徒にまあ、相当な怪我をさせてたみたいだ。」

 

刃物って…。いつも、身につけてたってことか?だとしたら、やばいやつだな…

 

廻「けど、よくそんな事件が大事にならなかったな?」

 

弘人「そこは、示談で済ませたらしい。学校側も大事にしたくないから、示談で済ませようとしてたみたいだ。」

 

灯「けど、その怪我されられた生徒の親は怒ったんじゃないの?」

 

弘人「それがまあ、運が味方したというかなんと言うか…。その不良生徒の親も不良生徒の問題行動を日頃から良く思ってなかったのと、未遂とはいえ智子さんを襲おうとしたことが恥ずかしてく表に出したくないから、大人しく示談に応じたみたいだよ。まあ、言い方が悪いけど親に見放されてたみたいだな。」

 

それは、運がよかったって言っていいのか?

まあ、物は言いようだけど…

 

弘人「けど、まあこうして話しを聞いて見ると、お母さんが大好きなのもあるけど、何か『守ろうとしてる』ようにも見えるな…」

 

廻「まあ、見方によってはそう見えるな…」

 

灯「けど、だからってあそこまでお母さんに男性を近づけたくないものかな?」 

 

弘人「まあ、中高生なんて難しい年頃だから、親の再婚なんて反対したいんじゃない?それが知ってる人から尚更でしょ。俺は親の再婚相手が同級生や同じ学校の先生なんて嫌だけどな。」

 

灯「確かにそうだけどさ…」

 

廻「まあ、取り敢えず明日また智子さんに家に行ってみよう。また何か分かるかもしれないから。」

 

弘人「そうだな。」

 

 

 





事件メモ
・真人の担当だった、赤坂によると、小さいときは真人と輝樹は仲が良かった。そして、真人は『愛に飢えていた』らしい。
・坂峰高校の生徒によると、少しでも智子と仲良くしようとしている男子生徒や男性教師は、脅されたり、次々と不幸な目にあっている。

以上です。

次回予告
真人がいた施設と高校の生徒の証言から、少しずつ二人のことが分かってきた廻たち。
そして、再び智子がいる家を訪れるようだが?

それではまた次回お会いしましょう!


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愛の行方は… その4


前回のあらすじ
施設で引き取られる前の真人の様子や生徒から新たな情報を得れた廻たち。この事件の真相に徐々に近づいてきたようだ。

それでは本編どうぞ!


 

翌日 藤井家

 

灯「着いたね…」

 

廻「あぁ…」 

 

今度は何か手がかりを見つけれるといいんだけどな…

 

 ピンポーン

 

智子「…はい。」

 

インターフォンを押すと、智子さんがすぐに出てきた。

けど、真人くんのことがあってか、前あったときよりも元気がなかった。

 

廻「何回もすみません。また真人くんのことについて知りたいと思って来ました。」

 

智子「私は何も知りませんよ。」

 

廻「では、真人くんの部屋を見せてもらうことってできますか?何か手がかりがあるかもしれないので…」

 

智子「…どうぞ。」

 

何とか部屋に入れてもらうことは成功したな…

後は何か手掛かりがあるといいんだが…

 

 

智子「…真人の部屋はここです。帰るときにまた声をかけてください。」

 

そういうと智子さんは一階に降りていった。

 

廻「さて、やりますか。」

 

そして、真人くんの部屋を探し始めた。

 

数分後…

 

弘人「…あれ、これ変じゃねえか?」

 

弘人の声に、俺たちが一斉に振り向く。

 

廻「何がだよ。」

 

弘人「ほら、これ。」

 

そうして、弘人が指差す先をみる。

 

廻「確かにこりゃ変だな…」

 

その先には、コンセントが明らかに外されている跡があった。

 

玲央「…ちょっと見せてみろ。」

 

そう言って玲央がコンセントをいじり始める。

 

廻「…あれ?玲央って機械系も専門なのか?」

 

玲央「少しだけな。」

 

弘人「で、どうだ。何かあったか?」

 

玲央「これ見ろ。」

 

そう言って、玲央が一つの機械を見せてくる。

 

灯「もしかして、これって!」

 

玲央「盗聴器だな。」

 

マジか…。

 

玲央「…だとすると…」

 

玲央がそう言って動き出す。…まだ何かあるのかよ…

 

玲央「…やっぱり。」

 

そうして、玲央が指差す。その先には…

 

弘人「…今度はカメラかよ。」

 

そう、盗撮カメラが仕込まれていた。見つからないように工夫されている。

 

弘人「考えたくないけど、これって他の場所にもつけられてるんじゃないか?」

 

玲央「…多分な。」

 

廻「多分、仕掛けたのは犯人だろうな。弘人と灯は智子さんに説明してくれ。俺と玲央で他の場所も見て見る。」

 

灯「分かった。」

 

そうして、二人は智子さんに説明しに行った。

 

そして俺たちは隣の輝樹くんの部屋に入った。

盗聴器とカメラの件は玲央に任せて、俺は輝樹くんの部屋を探索することにした。

 

そして…

 

廻「ん、なんだこれ?」

 

そこには、SDカードがあった。それも凄い巧妙に隠されていた。まず普通には気づかないな。

 

まあ、持っていくか。

 

玲央「…どうやら、この部屋にはないみたいだ。」

 

廻「じゃ、次だな。」

 

そうして、次々と部屋を調べていた。

 

 

数分後…

 

廻「これで、後はリビングだけだな。」

 

そうして、リビングに入ったときだった。

 

灯「さ、智子さん!」

 

部屋に入ると、智子さんが倒れていた。

 

廻「おい、どうしたんだよ!?」

 

灯「そ、それが、盗聴器のことを話してたら急に倒れちゃって…」

 

廻「とにかく救急車を!」 

 

そんなことをはなしていたときだった。

 

輝樹「母さん!!」

 

丁度、輝樹くんが帰ってきた。

 

輝樹「一体何があったんですか?」

 

弘人「それが、この家に盗聴器が仕掛けられてたんです。」

 

輝樹「…盗聴器?」

 

灯「はい。そして、そのことを智子さんに話したら倒れたんです。これから救急車を呼ぼうとしてたところです。」

 

輝樹「いいかげんにしろよ!」

 

廻「!」

 

俺たちは輝樹くんのいきなりの豹変ぶりに驚いた。

 

輝樹「勝手に部屋を漁って盗聴器だあ?ふざけんじゃねえ!」

 

智子「輝樹!私はだ、大丈夫よ…」

 

輝樹「けど…」

 

智子「いいからほっといて!」

 

その気迫に押されて俺たちはもう何も言えなくなった。

そして、気まずくなりそのまま帰ることになった。

 

 

‾‾‾‾‾‾‾‾‾

数分後

 

弘人「いきなりビックリしたな…」

 

廻「あれは完全に俺たちが仕方ねえだろ。それに、盗聴器を発見して智子さんを不安にさせたのは事実だからな。」

 

誰だっていきなり自分の家に「盗聴器が仕掛けられてます」なんて言われたら、不安だしな。

 

廻「…あ、結局リビングだけ確認できなかったな…」

 

弘人「そんなの後でもできるだろ。」

 

灯「けど、いつでも盗聴されてるんだよ?危なくない?」

 

玲央「…それに、見たところリビングにも盗聴器もカメラもある。」

 

そうか…リビングにもか…本当に一体誰が?…

ん?…

 

灯「廻?」

 

廻「あー、悪い。考え事してた。」

 

弘人「じゃ、今からでも行ってみるか。」

 

そうだな。気まずいけど仕方ないな…

 

灯「けど、輝樹くん帰ってくるタイミング良かったよね。学校じゃなかったのかな?」

 

弘人「忘れ物でもして帰ってきたんじゃないの?」

 

そう言えば今日は平日か……

…あれ?

 

灯「何か気になってるの?」

 

廻「まあな。」

 

ま、ここで考えても仕方ねえか。

 

「あら、あんたらまた来たのかい?」

 

気がつくと、目の前にあのおばあさんがいた。

 

「また、藤井さんとこのこと調べにきたのかい?」

 

廻「えぇ、まあ…」

 

「何をしてるかは知らないけど、あんたらも大変だねぇ。」 

 

廻「まあ、そこは俺たちが好きでやってるので…」

 

「そうかい。まぁ、頑張りな。…あぁ、そうそう、藤井さんとこのと言えば…」

 

これはどうやらまた何か情報を知ってそうだな。

 

灯「何か思い出したんですか?」

 

「ここ最近夜に出かけてるのは話したよね?」

 

廻「はい。」

 

「実は、その時に何でか『コンビニで買った物』を忘れているようなの…」

 

『コンビニで買った物』?なんだそれは?

 

廻「それって中身まで見れましたか?」

 

「んー、暗いからね…よくは見えなかったけど、『食べ物や飲み物』をいくつか持ってるのは見えたけどねぇ…」

 

『食べ物や飲み物』?一体何でそんなものを?

 

「あー、それと何日か前に『ガラの悪い連中と数人でどっかに行くところ』を見たねぇ…。見たのはその一回きりだけどねぇ…」

 

廻「『ガラの悪い連中』ですか?」

 

「あぁ。車に何か荷物を積んでどっかに行ってたよ。」

 

廻「そうですか。」

 

「これがなにかの役に立つかはわからないけど、頑張りな。」

 

廻「はい。いろいろ聞かせてくれてありがとうございました。」

 

そうして、おばあさんは歩いて行った。

 

弘人「で、リビングにある盗聴器を取りに行くんだろ?早く行こうぜ。」

 

廻「…いや、やっぱり辞めよう。」

 

灯「え!ど、どうして!?」

 

廻「…まだ確かな理由や証拠がないから何も言えないけど、一つだけ言うなら、犯人は意外な人物かもしれないってことだ。」

 

灯「?どういうこと?」

 

廻「ま、そのうち分かるよ。あ、そうだ。玲央、一つ頼みたいことがあるんだがいいか?」

 

玲央「…内容を聞かないとなんにも言えない…」

 

廻「実は…」

 

そうして、玲央だけに聞こえるように頼み事を伝える。

 

玲央「…なるほど。それぐらいなら明日までには調べれる。」

 

廻「そうか、助かる。」 

 

結果は明日だな。

 

廻「取り敢えず今日は遅いから帰るか。」

 

弘人「そうだな。」

 

‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾

同日夕方 春田家

 

廻「ただいま。」

 

綾「あ、おにい!お帰り!」

 

こいつは、「春田綾(はるだ あや)」。俺がお世話になってる春田家の長女だ。小学3年生で、俺のことを「おにい」と言って慕ってくれている。

…まあ、本人的には慕っているというよりは別の感情もあるみたいだけどな。

 

実「あら〜、廻くん。お帰りなさい。今日は遅かったわね。」

 

この人は、「春田実(はるだ みのり)」。この春田家の夫婦のお母さんだ。俺のことも実の子供のことのように育ててきてもらった。

 

廻「すみません。最近またやっかいなことに巻き込まれていて…」

 

実「あら~、そうなの。大変ねぇ…。無茶だけはしないようにね。」

 

廻「はい、分かってます。」

 

大輝「何だ、お前また面倒事に巻き込まれたのか?(笑)」

 

廻「…笑い事じゃないですよ……」

 

この人は「春田大輝(はるだ だいき)」。春田家を支えている大黒柱だ。実さんと一緒に俺をここまで育ててくれた恩人だ。

 

大輝「ま、そのことは食事を食べながらでも聞こうじゃないか!」

 

…話すことでもないんだけどな……

 

 

数分後

 

大輝「そうか。今度は人を探してるのか。警察に連絡は?」 

 

廻「それが、依頼してきた人から『警察に言わないように』って言われてるんです。まぁ、一応犯人が見つからなかったら警察に言うようには言ってるんですけどね。」

 

まあ、何かしら理由があるんだろうけどな…。

 

大輝「ふーん。まあ、本人が「警察に言いたくない」ってなら守らないと行けないけど、気になるな…」

 

大輝さんは元警察官だったからこういうことも気になるのかもな。理由があって今は別の仕事をしているらしい。

 

廻「やっぱりそこ気になりますよね…」

 

大輝「まあな。何にせよ、「理由を言いたくない」ってのは後ろめたい理由がありそうだな。」

 

廻「そうですね。」

 

実「二人ともそういうの話すのはいいけど、ほどほどにねえ〜。特に大輝さんはもう警察じゃないんですから。」

 

大輝「そうだな。」

 

実さんにそう言われて俺たちは食べることに集中しだした。

 

綾「ところでおにい。」

 

廻「何だ?」

 

綾「……最近灯ねぇとはどうなの?」

 

廻「どうってなにがだよ?」

 

いきなり何を聞いてんだよ綾は…

 

綾「何もないならいいの。」

 

廻「?…なんなんだよ…」

 

大輝「そう言えば廻、この前もいろいろあったみたいだな。」

 

この前って言ったらD4FESの事件か。

 

廻「D4FESでのことだろ。まあ、確かにいろいろありましたよ。それがなにか?」

 

無事に解決したけどな。

 

大輝「いや、結構いいホテルに泊まったんだろ?」

 

廻「そりゃ、まあそれなりには。」

 

大輝「いいよな、俺も泊まりたかったよ。」

 

廻「そんなこと言うなら夏休みの間に家族旅行でもしてたらいいじゃないですか。」

 

大輝「そうしたかったけどな…誰かさんが東京に行ったせいでな…」

 

完全に拗ねてるな…

 

実「あなた、大人げないわよ〜。それに、あなたが『廻も家族だから行くなら一緒に行く』って言って行かなかったんでしょ?」

 

大輝「まあ、大人げなかったな。すまなかった。」

 

一旦解決したところでお茶を飲んでいたときだった。

 

綾「ホテル……あー!おにい!もしかして、灯ねぇと一緒の部屋に泊まったんじゃないでしょうね!」

 

廻「!!」ブハ!!

 

大輝「おい、廻!」

 

廻「ゴホゴホ ご、ごめんなさい。…綾、お前いきなり何言うんだよ!」

 

いきなり変なこと言いやがって。

 

綾「なにその反応!ま、まさか本当に灯ねぇと…」

 

廻「んなわけあるか。」

 

そう綾は、俺が言うのも何だが、俺ことが好きすぎるのだ。多分今だけの一時的なもので将来的にいい人と出会ったら俺のこと何て忘れると思うんだけどな……多分。

 

廻「ごちそうさまでした。お風呂に入ってきます。」

 

大輝「その前にこれを片付けろ。」

 

廻「…そうでした。」

 

そうしてぶちまけたものを片付けることにした。

 

‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾

同日夜 春田家 廻の部屋

 

そうして、あれから風呂に入ってから今は自分の部屋でゆっくりしている

 

廻「さてと、輝樹くんの部屋にあったこの『SDカード』の中を見てみるか…」

 

数分後…

 

廻「…」

 

結果から言うとSDカードにはある映像が入っていた。しかし、それは俺の想像の斜め上をいくものだった。

 

廻「(何でこれを輝樹くんがこれを持ってるんだ?)」

 

仕掛けたのは輝樹くんなのか?一体何の目的で?

 

廻「…まあ、何にせよ信条さんに盗聴器と盗撮カメラを渡してるからそれから何か分かるといいんだがな。」

 

実「廻くん、まだ起きてるの?早く寝ないと明日起きれないわよ〜?」

 

廻「もう寝ますよ。」

 

そうだな、明日も早いし今日はもう寝るか…

 

‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾

翌日 音楽スタジオ「TRY」

 

廻「で、玲央どうだった?」

 

玲央「…廻の考え通りだった。」

 

廻「やっぱりか。」

 

灯「一体何を頼んだの?」

 

廻「後で話してやるよ。」

 

灯「もー!またそうやってごまかす…」

 

廻「別にごまかしてるわけじゃねえよ。その時が来たら教えるよ。」

 

今は話すべきときではないな…

 

弘人「で、今日はどうするんだ?」

 

廻「そうだな…。そろそろ、真人くんの居場所の手掛かりが見つかるといいんだが…」

 

灯「じゃあ、また学校に行くの?」

 

廻「そうするつもりだ。…あれ?電話だ。信条さんからか。」

 

何か分かったのか?

 

廻「もしもし?」

 

信条『廻か。藤井さんのことなんだけどな。』

 

廻「何か分かったのか?」

 

信条『兄の真人のことだけどな。あの子、養子縁組の手続きをやってないことがわかった。』

 

廻「てことは、戸籍上は親子じゃないってことか。」

 

信条『そうみたいだな。』

 

あれだけ小さい頃から一緒に暮らしてるのに、養子縁組はしてないのか…一体なんでだ?

 

廻「それって何か理由があるのか?」

 

信条『そのことなんだけどな、何故か真人くん本人が養子縁組になることを拒否してるみたいだ。』

 

何だそれ?親子にはなりたくないってことか?

けど、今まで聞いてきた話しだと智子さんを嫌ってるようには思えないけどな…

 

信条『あと、もう一つの盗聴器と盗撮カメラの鑑定終わったぞ。』

 

廻「そっちはどうだった?」

 

信条『指紋が発見されたよ。全部同じ指紋だ。誰が仕掛けたかが分かればすぐに犯人が特定できるだろうな。俺が話せることは以上だ。』

 

廻「そうか。」

 

そうして電話を切ろうとしたときだった。

 

信条『…あ、すまん。まだあった。』

 

廻「まだ何かあるのか?」

 

信条『関係あるか分からねえけど、智子って人妊娠してるぞ。誰の子かはわからないけどな。』

 

廻「そうなのか?」

 

それは初耳だな…。

 

信条『あぁ。俺も近くで聞き込みをしたところいろいろ聞けてな。そこで病院で見たっていう目撃情報があったから調べたら産婦人科を受診しててな。話しを聞いたら妊娠してたんだと。今は4ヶ月目だそうだ。』

 

4ヶ月目か…結構経ってるな…

……ん?何か引っかかるな…

 

信条『それとな、二人は最近は智子さんのことで近所に聞こえるぐらいの大声で喧嘩してたみたいだ。』

 

二人で?一体なんで?

 

信条『で、これが本当に最後なんだが、最近あのへんで変な騒動があってるみたいだ。』

 

廻「『変な騒動』?なんだそれ…」

 

まだ何か事件があったのか?トラブル続きだなあのへん…

 

信条『なんでも最近物置小屋で物音がするんだとさ。』

 

廻「何だそんなことか…」

 

対して重要な情報とは思えないな…

 

信条『まあ、俺も重要とは思ってはないけどな。古いし誰も近づかない所で音がするからあの近隣の人は怖がってるみたいだな。幽霊がいるとでも思ってるのかね…』

 

物置小屋…古い…

 

廻「…信条さん、その物音っていつから聞こえてくるようになったか分かるか?」

 

信条『ん?あー、確か一週間前からって言ってたぞ。それがどうした?…お前まさか、幽霊がいるとでも思ってるんじゃないだろうな?』

 

廻「まさか。俺も信じてないよ。それにいるのは『幽霊』ではないよ。」

 

俺の考えが正しければな…

 

信条『何か知らないが俺からはもう言うことはないぞ。廻からは何かあるか?』

 

廻「明日には解決するからいつもどおり来てもらっていいか?」

 

信条『分かった。じゃあな。』ピッ

 

さて、いつもどおりにやりますか。

 

俺は耳にヘッドフォンを当てる。

 

弘人「お、きたな。」

 

『一週間前から…』『物音が…』『SDカード、盗聴器、盗撮カメラ…』

 

『美男美女…』『二人で喧嘩』

 

なるほどな…

 

考えがまとまったのでヘッドフォンを外す。

 

廻「真実が繋がった!」

 

後は、明日を迎えるだけだな。

 

 

 





事件メモ
・藤井家に盗聴器と盗撮カメラが仕掛けられていた。
・映像が入ったSDカードが輝樹の部屋にあった。
・最近輝樹は夜に外出している。
・真人は養子縁組の手続きをしていない。
・最近物置小屋で音がするらしい。

以上です。

次回予告
事件の真相が分かった廻!一体真人はどこにいるのか?そして無事なのか!?
それではまた次回お会いしましょう!


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愛の行方は… その5


前回のあらすじ
藤井家で盗撮カメラと盗聴器、そして輝樹の部屋から謎のSDカードを手に入れた廻。そこには衝撃の映像が映っていて?
さらに信条の協力でついに事件の真相にたどり着いた!

それでは本編どうぞ!



 

翌日 音楽スタジオ「TRY」

 

灯「で、真人くんがいる場所が分かったんだよね?早く助けにいかないと!」

 

廻「早く真人くんの安否を確認したいのは分かるけど落ち着け。」

 

そう言って灯を落ち着かせる。

 

廻「それに正確には『俺は』分からないからな?」

 

灯「?…え?どういうこと?」

 

廻「まあ、簡単に言うとわかっている人に案内してもらうんだよ。」

 

弘人「何言ってるかは分かんねえけど、犯人は分かってるんだよな?」

 

廻「そうだ。ま、今から行くか。」

 

そうして信条さんに連絡してから俺たちは移動した。

 

‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾

数分後 藤井家

 

智子「…それで今日はなんのようですか?」

 

今日も不機嫌そうな表情で対応される。

ていうか、元はと言えばこの人が俺たちに依頼してきたんだけどな…

 

廻「今日はご報告に来ました。」

 

智子「報告?なんのですか?」

 

廻「無事に真人くんを見つけることができました。」

 

智子「ほ、本当なの!?」

 

廻「えぇ。」

 

智子「どこにいるの?迎えにいかなきゃ!」

 

廻「落ち着いてください。必ず真人くんをここに連れてきますから。それに今はあなたは無茶はできないはずですよ?」

 

智子「それってどういう?…」

 

廻「新しい命、と言えば分かりますか?」

 

智子「!? いつそのことを!?」

 

廻「ちょっと知り合いに調べてもらいました。そして、これから説明することはあなたにはかなりの負担をかけます。聞かないほうがいいですよ。」

 

智子「…分かりました。」

 

よし、智子は納得してくれたな。

……さて、そろそろ動き出した頃かな?

 

廻「じゃ、俺たちはもう行きますね。」

 

智子「はい…」

 

廻「…あ、最後にもう一つだけいいですか?」

 

智子「なんですか?」

 

廻「輝樹くんのことなんですが…」

 

智子「何で輝樹が?」

 

廻「まあ、それは置いといて。輝樹くん、最近何か『探しもの』してなかったですか?」

 

智子「…そういえば、『SDカード』がなんとかって言って家中探し回ってましたね。それがなにか?」

 

廻「そうですか。ありがとうございます。では失礼します。」

 

智子「…」

 

‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾

同日 某所

 

?「ッチ。まさか気づかれるなんてな。」

 

ある場所で刃物を持った人物がいた。

 

?「ンー!、ンー!!」

 

そしてもう一人。口にテープを巻かれた男がいた。

 

?「けど、これで最後だ。…なあ、真人兄さん…」

 

刃物を持った人物が真人に近づきテープを外していく。

 

真人「バカなまねはやめろ、輝樹!」

 

輝樹「…」

 

真人「こんなことしたって何も変わらないぞ!」

 

輝樹「『何も変わらない』?そうだろうなぁ、お前が俺から全部奪ったんだからな!」

 

真人「わ、分かった!今までのことは謝る。だから!」

 

輝樹「フッ。もう遅いんだよ!」

 

そこで輝樹が刃物を真人に刺そうとして手を振りかざす。

 

真人「ッ!……?」

 

しかし、その刃物が真人を貫くことはなかった。

 

廻「ギリギリ間に合ったな…」

 

廻がギリギリのところで輝樹の腕を掴んでいた。

 

輝樹「てめぇ…!」

 

弘人「大丈夫か!?」

 

あとから入ってきた弘人たちが真人を輝樹から引き離す。

 

廻「っと、これは没収だ。」

 

そして、廻が輝樹から刃物を奪う。

 

輝樹「…なんでここがわかった?」

 

廻「最近のこのあたりでこの物置小屋から『物音がする』って話しがあったのと、君のこの投稿からだね。」

 

そうして、例の『裁きのとき』と書かれて物置小屋の写真と一緒に投稿されたものを見せた。

 

廻「そして、一週間前以上にもう一つ投稿をしていた。それは、お金で釣って複数人を呼び集めていた。これも俺の仲間に調べてもらったよ。」

 

灯「あ、そのことを玲央に調べてもらってたんだ!」

 

そういうことだ。

 

廻「で、物音がするようになったのは一週間前、そしてそこの真人くんが行方不明になったのも一週間前…。輝樹くん、真人くんを誘拐したのは君だね。」

 

輝樹「…ふん、そうだよ。よくわかったな。」

 

もう逃げられないと悟ったのか輝樹くんはすんなりと認めた。

 

智子「輝樹、どうして!?」

 

廻「智子さん、どうしてここに?」

 

智子「やっぱり私も何があったか知りたいからです。」

 

廻「…想像以上にあなたの体に負担をかけるかもしれませんよ?」

 

智子「はい。覚悟はできてます。」

 

廻「分かりました。」

 

智子「それであなたはなんでこんなことをしたの!」

 

廻「…それは智子さん、あなたが関係してるんですよ。」

 

智子「私が?」

 

智子さんが覚悟を決めたんだ。俺も全てを話すか。

 

廻「事は数年前に遡ります。まだ真人くんが施設にいたころです。お父様が慈善事業をしていて真人くんを引き取ることになったんですよね?」

 

智子「はい、そうですけど…」

 

廻「そうして、真人くんを引き取ることになったんですけど、一つ真人くんが抱える問題があったんですよ。」

 

灯「問題って?」

 

真人「…」

 

廻「『愛に飢えていた』。施設にいた頃の真人くんの担当の人から聞きました。他の保護者や智子さんによく甘えに行ってたとか。親からの愛情を全く受けてこなかったから、その反動でしょうね。」

 

灯「それが今回のことと、どう繋がってくるの?」

 

廻「それは二人の、真人くんと輝樹くん、そして智子さんの3人の関係だよ。」

 

そもそも今回の事件はこの関係が変わったことから始まる。

 

廻「小さい頃は二人は仲が良かったみたいですね?これも施設の人から聞きました。」

 

智子「はい、喧嘩もあんまりなくて本当の兄弟のようでした。」

 

そうここまで良かったんだ。ここまではな…

 

廻「けど、高校に入学した頃から関係は変わってきます。ここから二人が喧嘩をするようになったんですよ。」

 

これは近所の人や生徒からも聞いたことだ。

 

廻「そして、智子さんに近寄ってくる異性を二人で徹底的に排除してきた。そうですよね?」

 

俺は二人の方を向いて質問する。

 

真人「…そうです。」輝樹「そうだよ!」

 

やっぱりか…

 

廻「智子さんによってくる異性の生徒、教師、独身の保護者が近づいてくるたびにそうしてたんでしょう。智子さんは美人だからほいほいと男がよってきますからね。」

 

おそらく、告白した先生たちを脅してたのもこの二人だろうな…

 

灯「けど、どうしてそこまでするの?」

 

そうだな、ここらへんで核心を突くか。

 

廻「それは、二人が智子さんを好きだからじゃないですか?勿論、母親としてじゃなくて、一人の女性としてですよ。」

 

「「!!!」」

 

俺がそういうと周りの人たちがざわつき始めた。

まあそうだろうな。けど、これが真実なんだよ。

 

廻「つまり、今回のことは二人のその愛で起きた事件なんですよ。」

 

弘人「けど、そうだとして何で真人くんを誘拐することに繋がるんだよ?」

 

廻「おそらく二人は互いにこの愛が許されないことを知っていながらも、智子さんのことを諦めることができなかった。」

 

それは同級生の告白を断っていることで信憑性が増すな。

見たところ二人ともイケメンの部類に入るからな。俺からの目線だが。

 

廻「二人の間には暗黙のルームがあったんじゃないですか?『好意は伝えない』とかですかね。で表向きは頼れる母親として接していた。けど、ある日それが破られたんですよ。」

 

弘人「つまりその暗黙のルールを破ったから真人くんが輝樹くんに誘拐されたんだな?けど、誘拐するって一体何をしたんだよ?」

 

真人「…」

 

そうして弘人が真人くんの方を見るが、何も答えようとはしない。

…まあそうだろうな。

 

廻「…ここでは言いたくないけど、智子さん聞きますか?」

 

一応智子さんに確認する。

 

智子「はい。」

 

廻「分かりました。では、続きを話します。」

 

廻「実は、藤井家に盗聴器と盗撮カメラが仕掛けられたんですよ。何故か輝樹くんの部屋からはどちらも見つかりませんでした。」

 

灯「てことは?」

 

廻「そう、仕掛けたのは輝樹くんだろうな。で、それとは別に輝樹くんの部屋でSDカードを見つけたんですよ。」

 

そうしてSDカードをポケットから取り出す。

 

輝樹「!てめえが持ってたのか!」

 

廻「まあ、部屋を探したときにちょっとね。で、実はこの中身なんですが……」 

 

灯「?廻どうしたの?そんなにやばいものだったの?」

 

廻「まあな。」

 

ここまで来たら言うしかないか……

 

廻「この中にある映像は、智子さんあなたの情事の動画が映してありましたよ。それも真人くんとのね。」

 

弘人「はぁ!お前それ見間違いじゃないのか!?」

 

廻「間違いないよ。はっきりこの目で見た。」

 

灯「け、けどなんで!?血が繫がってないとはいえ親子でしょ!?」

 

廻「理由までは分からねえよ。けど、これが二人の暗黙のルールを破ったってことですよ。」

 

弘人「って、ま、まさか!?」

 

やっと気づいたか。

 

廻「そう。二人はこうして恋仲になったわけだ。当然それには輝樹くんが黙っているわけはない。問い詰めたはず。けどそれで納得できない輝樹くんは真人くんを誘拐することを計画して今回の事件を起こしたわけだ。」

 

廻「これが事件の真相ですよ。」

 

要するに輝樹くんの嫉妬で起きた誘拐ってことだな。

 

灯「けど、今日までなんで生かしておいたの?」

 

まあ、普通じゃまなら始末するよな…

 

廻「そこは、最後の理性で抑えていたんじゃないのか?」

 

輝樹「そうだよ。それに、一応兄弟だったからな。」

 

弘人「『だった』?」

 

輝樹「真人、お前俺が気づいてないとでも思ったか!てめえ養子縁組の手続きしてねぇんだろうが!だから親子でもねぇ!だからそれを逆手にとって母さんに近づいてやったんだろ!」

 

真人「ッ!!」

 

輝樹「は!図星か!」

 

なるほど、だから真人くんは養子縁組の手続きを拒否してたのか。

 

智子「やめて!」

 

輝樹「何だよ!やっぱり母さんは輝樹をかばうのかよ!母さんは俺だけの母さんだろ!何でだよ!」

 

智子「ごめんなさい。本当は知ってたの」

 

輝樹「え?」

 

智子「二人が私を女として見てたことに。そりゃ長く一緒に生活してたら嫌でも分かるわよ…」

 

真人「!」

 

この反応、真人くんもそれは知らなかったのか…

そう言えばさっき智子さんだけ驚いてなかったな。知ってたのか…

 

灯「じゃあなんで?」

 

智子「言えばよかったの?二人に『私を女として見てるの気づいてるよ』って」

 

灯「そ、それは…」

 

普通言えないよな…

 

智子「だから黙ってたの。けど、いつの日か私よりもいい人と出会って忘れてもらえる、一時の気の迷いだと思っていたのよ。けど、全然そうはならなかった。むしろ私への気持ちが行動に現れてきて露骨になってた。そしていつからかそれがエスカレートしてきて怖くなってきたのよ…」

 

灯「怖くなってきた?」

 

智子「盗聴器つけてたの輝樹だけじゃないのよ。真人もつけてたのよ。」

 

輝樹「は、はぁ!?」

 

智子「真人、気づいてるのよ。バックに入れてたでしょ?それにあなたは盗聴器だけじゃなくてGPSもいれてて私の行動まで把握してきていた。だから怖くなったのよ。あなたたちをもう以前のかわいい子我が子として見れなくなっていたの…」

 

おいおい、流石にそれはやりすぎだろ。

けど、今ならなんで輝樹くんを避けていたのか分かるな。確かにこんな事情があれば自分から引き離したくなるよな。

 

灯「じゃあ、真人くんとのじ、情事は?」

 

灯が恐る恐る智子さんに聞く。

 

智子「輝樹の言うとおりにね、養子縁組をしてないことを理由に迫ってきたの。『一回やれば諦めがつくから』って。で、私も一度の過ちですむならと思って誘いにのってしまったの。けど、それを見られて誘拐にまで発展するなんて…」

 

それで今回の事件につながったのか。

 

灯「けど、誘拐までするなんて…喧嘩してでも話し合えなかったの?」

 

真人「無理だな。だって、こいつはもう俺には持ってないものを持ってるからな。母さんがもう俺のもとに戻ってこない、手に入らない決定的なものをな!」

 

弘人「『決定的なもの』?なんだ?そんなものあったか?」

 

廻「簡単だよ。智子さん、あなた妊娠してますね?」

 

智子「…はい。」

 

灯「ま、まさか…」

 

弘人「智子さんと真人くんの?」

 

そういうことだな。

 

真人「は、ハハ!そ、そうだよ!もう智子さんはお前のものにはならないんだよ!ざまーねぇな!」

 

今まで黙っていた真人がここにきて喋り始める。

助かった安心感と欲しい物を手に入れれた達成感と優越感からだろうな。

 

けど…真人くんにとっても残酷な現実があるんだよな…

 

廻「優越感に浸ってるとこ悪いけど、真人くんにも話さないといけないことがあるんじゃないですか?」

 

真人「話すって何を?」

 

智子「…そう、やっぱりそこまで見抜いていたのね…」

 

廻「まあ、そうですね。…俺から話しましょうか?」

 

智子「いえ、私からちゃんと話します。元はと言えば私が招いたことなので。」

 

真人「な、なんだよ!」

 

ただならぬ雰囲気を感じ取ったのか、さっきの余裕が嘘のように話しかけてくる。

 

智子「真人、このお腹の中にいる子はあなたの子じゃないの。」

 

真人「…は?」輝樹「はぁ?」

 

真人「な、何言ってるんだよ?確かに俺たちでやっただろ?」

 

すかさず俺も補助に入る。

 

廻「真人くん、智子さんは今妊娠4ヶ月目だよ。君たちがやったのは、2ヶ月前だろ?普通に考えて子供ができるわけないんだよ。」

 

そう、盗撮カメラの撮影日をみたら2ヶ月前になっていた。だから4ヶ月目だと計算が合わないんだよな。

 

真人「そ、そんな、じゃ、じゃあそれ誰の子だよ!?」

 

智子「私もね、いい人と会ってたの。その人との子ね。」

 

真人「だ、だってGPSを仕掛けてたのに…」

 

廻「そんなの気づいてたら、家においていくなり別の場所においておいたら簡単に誤魔化せるよ。」

 

真人「…の」

 

智子「?」

 

真人「こんの、クソアマー!」

 

真人くんが智子さんに殴りかかる。しかし…

 

弘人「はい、ストップ。どこにいくのかな?」

 

弘人が真人くんを抑える。

 

真人「離せ!俺を馬鹿にしやがって!俺の気持ちを弄んでたんだろ!」

 

はぁ…いい加減終わらせるか。

 

廻「いい加減にしたらどうだ。」

 

真人「はぁ!?」

 

廻「『俺の気持ちを』って言うならお前、輝樹くんや智子さんの気持ちを考えたのか?」

 

智子・輝樹「「!!」」

 

廻「確かに輝樹くんもお前とやってることは同じだよ。けど、少なくともそれより先の行動は起こそうとはしなかった。一歩手前で踏みとどまってたんでしょう。そんな輝樹くんが『行為をした』なんて分かればどうなるかなんてわかったはずだ。」

 

真人「ッ!」

 

廻「智子さんに対してもそうだ。気持ちも考えずに強引に迫って。正直親子じゃなかったら強○と変わらねえよ。」

 

真人「クソっ」

 

そこまで言うと、真人くんはうなだれてそこから何も言わなくなった。

 

廻「…信条さん、後はお願いします。」

 

信条「…分かった。二人とも行こうか……」

 

智子「真人、輝樹……」

 

そうして二人は詳しい話しを聞くために信条さんに連れて行かれた。

 

 





事件の真相
輝樹が真人と智子の情事を知って嫉妬から誘拐した。というのがこの事件の真相だった。

次回予告
いつも通り事件について語り合う廻たち。今回の件はやるせない気持ちのようで?

それではまた次回お会いしましょう!


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愛の行方は… エピローグ


前回のあらすじ
と、思ったけどエピローグで前回のあらすじはいらないですよね?エピローグのときはなくそうかな?

それでは本編どうぞ!


 

数週間後 音楽スタジオ「TRY」

 

あれから二人の処遇などが決まった。

まず兄の真人くんの情事のことは一押し「同意があった」と判断されて強○にはならなかった。

次に弟の輝樹くんは暴行や誘拐などの行動が問題視されて少年院に送られた。

そして二人とも智子さんがどうしても手に入らないのを悟って完全に諦めがついたみたいだ。

 

あと、信条さんが聴取したところ智子さんに告白した男性教師や保護者を脅していたのはやっぱり二人が脅していたみたいだ。高校生なりに動いて弱みを握ったりして智子さんに近づけないようにしていたみたいだ。

 

因みにその智子さんだが、あの日に言っていた男性とうまくやれているみたいだ。

幸いなことにお腹の中の子供も順調に育っているそうだ。

 

灯「けど今回は本当にビックリしたよね…。実の子供だけじゃなくて、まさか高校生の年齢の子も智子さんを女性として好きになってたんだからね…」

 

廻「そうだな。」

 

弘人「ほんと世の中どんなことがあるか分かんねぇな…。色んな人がいて。」

 

灯「けど今回の事件どうにかならなかったのかな?」

 

バイトしながら話していると、急に灯がそんなことを言い始めた。

 

廻「どうにかって?」

 

灯「確かに二人はやりすぎて智子さんを怖がらせたけど、好きで愛してたのは事実でしょ?だから何か別のやり方がなかったのかなって…」

 

弘人「そうは言ってもねぇ…」

 

廻「智子さん本人に二人の感情がバレてるんだから隠しようがなかっただろ。」

 

灯「そうだけどさ…」

 

廻「まあ、やりきれない気持ちになるのは分かるな。」

 

俺も「真人くんが情事に及ばなければ」とか「二人が気持ちを切り替えて新しい出会いがあれば」とかどうしてもぐるぐると頭の中で考えてしまっている。

あのとき「こうしていれば…」って考えるのは考えてもどうしようもないけど考えてしまうもんだな…それでも…

 

廻「二人の愛の行方さえ間違えなければな…」

 

裕次郎「けど、好きになったもんは仕方ないだろ?」

 

廻「そんなもんか?」

 

裕次郎「そんなもんだよ。ま、お前もいずれ分かるさ。」

 

俺にはまだ良く分かんねえな…。ま、裕次郎さんの言うとおりにそのうち分かるかもしれねぇな。

 

弘人「あ、そうだ。好きと言えば、結局廻の好み聞けなかったな?(笑)」

 

…こいつ覚えてやがったのか。

 

廻「お前はそんなことだけはよく覚えてるよな…」

 

もっと他のことでも記憶がよければいいんだけどな…

 

弘人「で、結局どんな人が好みなんだよ?」

 

廻「…お前、そんなに俺の好みが気になるのか?」

 

弘人「いや、ないな。」

 

廻「…」

 

こ、こいつ!聞いてきてその態度かよ…

 

弘人「けど、約1名気になっている人がいるみたいだぞ?」

 

そうして弘人が指差す方を見ると、何故かジーッと俺の方を灯が見ていた。

 

廻「灯…お前なぁ…」

 

灯「ま、まぁお互いまだ知らないことがあるだろうし!知っておいたほうがいいかなーって思って!」

 

聞いてもないのによく喋るな…

 

裕次郎「俺も興味があるな。廻と玲央からはそんな話しは聞かないからな。」

 

裕次郎さんもかよ…。物好きな人たちだな…

 

……仕方ねえな…

 

廻「そんなに聞きたいなら聞かせてやるよ。」

 

玲央「…意外だな。廻はその手の話しはしないと思ってたが。」

 

廻「ま、聞かないとしつこいだろうからな。それに別に聞かれて困るものでもないからな。」

 

弘人「で、どんな人なんだよ?」

 

廻「それはな、」

 

俺が言おうとすると3人の視線が集まる。

 

廻「…」

 

灯「廻?」

 

廻「…強いて言うなら黒髪ロングの似合う人だな。」

 

それだけ言って他の業務をするために奥の部屋に行く。

 

弘人「お、良かったね!灯ちゃんも『黒髪ロング』じゃん!」

 

灯「」ポカーン

 

弘人「あ、灯ちゃん?…」

 

灯「」ポカーン

 

裕次郎「は、ハハ…あまりの嬉しさに放心してるのかな?」

 

弘人「おっさん、今そんなこと言ってる場合じゃねえよ!戻すの手伝って!灯ちゃん!おーい!」

 

裕次郎「嬉しいのは分かるけど、戻ってこーい!」

 

 

…たく、騒がしいな。ここまで声が聞こえてきやがる。

 

ちょっと意地悪しすぎたかもな。

……ま、嘘ではないけどな。

 

さーて、俺もそろそろ弘人たちを手伝いに行ってやるか。

 

 

                 to be continued…

 

 




 
ネクスト エピソード
次の依頼は何とあのお嬢様たちから!
とある「悪戯」がきっかけで大事件に!?


さて、予告を見て気づいた人もいると思いますが、今度はあのグループとの絡みを書いていこうと思います。
楽しみに待っててください!


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エピソード3 Lyrical Lily編
悪魔のイタズラ その1



心機一転!第三話始まります!
この話しではあのDJグループが出てきます!

それでは本編どうぞ!


 

とある日 音楽スタジオ「TRY」

 

季節は9月も中旬になってだんだんと涼しくなってきた。もう少ししたら今よりは生活しやすくなるだろうな。

そんなことを考えてながらバイトをしていたときだった。

 

その日は珍しく灯とシフトも被ってなかったし、弘人と玲央も用事があるとかで「TRY」に来てなかった。

 

 チリーンチリーン

 

廻「いらっしゃ、……あれ?」

 

ずいぶんと珍しい客が来たな。

 

ノア「久しぶりね、音咲廻。」

 

そこにはDJユニットの「Photon Maiden」の一人、福島ノアがいた。会うのはあのD4FES以来だな。

 

廻「本当に久しぶりだな。今日はフォトンの皆は一緒じゃないのか?」

 

ノア「今日は私だけよ。」

 

廻「ふーん…」

 

ノア「…今時間あるかしら?」

 

廻「見ての通り暇だけど?」

 

いつも通り客足が少なく丁度暇していたところだ。

てか、よくここ潰れないよな…。ま、潰れないってことはそれだけ裕次郎さんのやり繰りがうまいんだろうけどな…

 

裕次郎「どうやらお前に話しがあるみたいだから聞いてやったらどうだ?」

 

廻「いいのか?今は一応『仕事中』だぞ?」

 

裕次郎「別に少しくらいいいだろ。ここがこんな状態なのは今に始まったことじゃないし。」

 

廻「そうか。じゃ、こっちだ。」

 

俺はノアを奥の部屋に通して話しを聞くことにした。

 

‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾

廻「で、今日は何で来たんだ?」

 

ノア「実は、「ある子たち」を助けてほしいの!」

 

廻「ある子たち?誰だよ?」

 

ノア「音咲廻、あなたは『Lyrical Lily』っていうユニットを知ってる?」

 

Lyrical Lily?確かどこかで聞いたような?………あっ

 

廻「思い出した。確かD4FESに出場してたユニットだな。あのお嬢様学校の有栖川学院で結成されたDJユニットで話題になってたな。そのLyrical Lilyがどうかしたのか?」

 

ノア「それがね、そのLyrical Lilyが今大変なことになってるの!」

 

廻「大変なこと?」

 

ノア「まあ、詳しいことは本人たちから聞いて。」

 

廻「あぁ。…って俺はまだ受けるって言ってないぞ!」

 

なに話しを進めてるんだよ。

 

ノア「あら、そんなこと言っていいの?」

 

廻「…どういうことだよ?」

 

何か俺の弱みでも握ってるのか?けど、俺はノアに弱みを握られるようなことは…

 

ノア「乙和に言おうかな?それとも緋彩さんの方が良かった?」

 

廻「それは別に困らないが…」

 

ノア「二人が知ったらいろいろと騒がしくなるんじゃない?」

 

ノア「それに、灯さんだっけ?あの人とあったらこの前みたいに面倒なことになるんじゃない?」

 

…こ、こいつ!この前のこと知ってて!しかも乙和話したのかよ…

 

廻「…」

 

ノア「で、どうする?」 

 

廻「…はぁ、分かったよ。で、話しはLyrical Lilyの人たちから聞けばいいんだな?」

 

ノア「そうよ。何だ思ったより話しが分かるじゃない!」

 

だって、受けないと更に面倒なことになるだろ。

 

ノア「じゃ、Lyrical Lilyのメンバーには話しを伝えておくから。」

 

廻「それは助かる。」

 

俺たちとLyrical Lilyは接点がないから助かるな。

 

廻「あ、じゃあ俺からも一つ聞いていいか?」

 

ノア「何?」

 

廻「何でLyrical Lilyの人たちじゃなくてノアが依頼してくるんだよ?」

 

まあ、別に本人が依頼してこなくてもいいだけどな…

けど、気になるから聞いておくか。

 

ノア「…さっきも言ったけど今は動きづらいのよ…」

 

なるほど、物理的にか。

 

ノア「だから、私が来たのよ!」

 

廻「ふーん…」

 

ノア「後はみいこちゃんに頼まれたからここに来たのよ。しかし、あの天使な美夢ちゃんたちを陥れるなんて許せん!」

 

ん?

 

ノア「あの四人はね、言葉では言い現れせないくらいの天使なのよ!心配するなってのが無理なのよ!」

 

これは…

 

ノア「あの四人を怖がらせるような輩は許せん!」

 

うん、間違いない。地雷踏んだな…

 

そこから数時間後に渡ってノアの謎演説を聞かされることになった。

そう言えばD4FESであったときにフォトンのメンバーから可愛いものや人に目がないって言ってたな。

そういや、玲央にも「可愛い」って言って大変な目にあったな…

すっかり忘れてたぜ…

 

そうして結局俺が開放されたのは夜遅くだった……

 

 

 

ノア「…ってことで頼んだわよ!」

 

廻「おう。」

 

やっと開放された…。性格変わりすぎだろ。…って玲央も性格変わるからノアだけじゃないか。

 

裕次郎「結局また厄介ごとに巻き込まれたな。」

 

廻「あぁ、いつも通りだよ…」

 

自分で言ってて悲しくなるぜ…こんないつも通りはいやだな…

ま、受けたものは仕方ねえか。いつもみたいにやれることをしないとな。

 

裕次郎「ま、今日はお前も帰りな。どうせ明日から動くんだろ?なら少しでも休まないとな。」

 

廻「じゃ、お言葉に甘えて。お疲れさまでした。」

 

裕次郎「おう、気をつけてな。」

 

‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾

翌日 

 

弘人「てか、お前フォトンのメンバーと会えたなら連絡しろよ!」

 

灯「そうだよ!」

 

廻「できるかよ、バイト中なのに。そんなに話したいならお前から連絡しろよ。」

 

弘人「え?」

 

廻「昨日ノアの連絡先交換してきたからな。教えてほしいなら教えてやるよ。」

 

一応何かあったときのために連絡先を交換していたのだ。

 

弘人「け、いいねー。有名な探偵さんは…」

 

廻「だから知りたいなら連絡先を教えるって言ってるだろ…」

 

灯「そこまでしなくていいよ。そんなことしてたら他のファンの人に怒られそうだから。」

 

玲央「…三人とも話している中悪いがそろそろ目的地付近だぞ?」

 

玲央の言葉で俺たちは本来の目的を思い出す。

 

廻「そうだな。あー、あそこが入口か。」

 

そうして入口まで来たわけだが……

 

弘人「……いや、でかすぎるだろ!」

 

俺たちはその家の大きさに驚いて何も言えなくなっていた…

ていうかもう家じゃなくて屋敷だろ、ここ…

お嬢様学校に通ってるくらいだからお金持ちなのは予想してたけど想像以上だな、これは…

 

灯「…私中に入るのが怖くなってきたよ……」

 

廻「けど、ここまで来て引き返せないだろう。」

 

ここは覚悟を決めて行くしかないな。

そうしてインターフォンを押す。

 

 ピンポーン

 

『はい、どなたでしょうか?』

 

廻「あの、ノアさんからここに来るように言われてきた音咲廻です。」

 

『確認しますね。しばらくお待ち下さい。』

 

 

数分後…

 

『おまたせしました。今門を開けますね。』

 

廻「ありがとうございます。」

 

…しかし本当に規模が違うな。どんなお嬢様が住んでるのやら。

 

‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾

『こちらです。』

 

執事の人に案内されて俺たちは一つの部屋に入った。

 

廻「失礼します。」

 

そうして部屋に入ると一人の男性と四人の女の子がいた。

 

美夢パパ「桜田家にようこそいらっしゃいました。あなたが探偵の廻さんとそのお友達ですね?」

 

廻「はい、そうです。」

 

美夢パパ「噂は聞いてますよ。いくつもの依頼を解決して評判も良いと。」

 

廻「ありがとうございます。それで今回は何があったんですか?」

 

早速話しを聞き始める。

 

美夢パパ「そうですね、早速本題に入りましょうか。今回起こったのは娘たちが通っている学校で起こったんです。」

 

そこで娘さんたちが俺たちに挨拶をした。

 

美夢「はじめまして。桜田美夢『(さくらだ みゆ)』です。有栖川学院高等部1年です。そして、ここにいるのが私のお友達です。」

 

美夢に続いて三人も挨拶をする。

 

春奈「同じく有栖川学院高等部1年の『春日春奈(かすが はるな)』です。」

 

みいこ「『竹下みいこ(たけした みいこ)』です。私も有栖川学院の一年生なの。」

 

「なの」?随分と変わった語尾だな。まあこれがみいこの口調なんだろう。

 

で、残りはあと一人なんだが……

 

?「…」

 

灯「え、えっと、君は?」

 

?「…」

 

灯が声をかけるが反応しない。何かあったのか?

 

春奈「胡桃さん!…すみません……」

 

すかさず美夢がフォローに入る。

 

美夢「彼女は、『白鳥胡桃(しらとり くるみ)』ちゃんです。いつもは元気があってこんな子じゃないんですけど…」

 

美夢パパ「実を言うとこの胡桃さんが今回の依頼に関わってくるんです。」 

 

つまり、胡桃がこんなことになってるのも関係してるのか…

 

廻「詳しい話しを聞きましょうか。」

 

美夢「きっかけは一つのイタズラなんです。」

 

弘人「イタズラ、ですか?」

 

春奈「正確には少し違うのですが…」

 

どういうことだ?

 

美夢「胡桃ちゃんとみいこちゃんはイタズラがするのが好きでよく私や春奈ちゃんも驚かされることがあるんです。」

 

春奈「特に胡桃さんがイタズラ好きです。そして、そのイタズラが原因で倉庫の整理などを頼まれて、私や美夢さんも手伝うことができませんあるのです。」

 

胡桃とみいこはイタズラ好きか…

 

春奈「それであの日も胡桃さんがイタズラをして罰として教室のワックスがけを任されていたのです。」

 

そうしてその時のことを詳しく話してくれた。

 

‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾

2週間前 有栖川学院 放課後

 

胡桃『あー、また雑務押し付けられたよー…』

 

みいこ『仕方ないの。それよりも早く終わらせて帰るの!』

 

胡桃『そーだね。』

 

みいこ『けど、運が悪かったの…今日は美夢ちゃんも春奈ちゃんも用事があって帰っちゃったの…』

 

胡桃『そうだよね…二人が手伝えないときに限ってバレるなんてね。』

 

二人が手を動かしてワックスがけをしていたときだった…

 

『みいこさん、少しいいかしら?』

 

みいこ『はい、どうしました?』

 

一人の生徒がみいこに用があって呼びに来たらしい。

その生徒に連れて行かれてそこからは胡桃が一人でワックスがけをやることになったみたいだ。。

そして作業をすること数分…

 

胡桃『……あっ!』

 

そこで忘れ物したのに気づいて胡桃も自分の教室に戻ったらしい。

 

そして胡桃がワックスがけに戻ると…

 

胡桃『あれ?何この人だかり?』

 

胡桃が教室に戻ると人だかりができていたみたいだ。そしてそこには…

 

『…』

 

血だらけで倒れてた……

 

‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾

灯「それってワックスで滑って倒れてたってことですよね?でもそれがどうつながってくるんですか?」

 

春奈「実は、それが『胡桃さんのイタズラじゃないか?』って言われてるのです。」

 

廻「なるほど、日頃からのイタズラをしていからすぐにそういう噂が流れたってことですか。」

 

てことはつまり今回の依頼は…

 

みいこ「お願いなの!胡桃ちゃんの無実を証明してほしいの!」

 

やっぱりか…

 

春奈「私からもお願いします。確かに胡桃さんはイタズラをして困らせることはあります。けど、人を不幸にしたり怪我をするイタズラをする人ではないのです。」

 

美夢パパ「お願いします。娘の友達を助けてください。」

 

廻「…」

 

灯「廻?」

 

廻「胡桃さん、一つだけいいかな?」

 

胡桃「…なに?」

 

廻「君は今回のイタズラをしたのかな?」

 

弘人「おい、廻!いきなりそんなこと聞くなよ!」

 

廻「お前じゃない。俺は胡桃さんに聞いてるんだ。で、どうだ?」

 

じっと胡桃を見る。

 

胡桃「…ない」

 

ん?

 

胡桃「私はやってない!」

 

廻「…そうか。じゃ、俺は君とその友達を信じるよ。」

 

胡桃「え!?」

 

美夢パパ「で、では!?」

 

廻「はい、胡桃さんのためにできることをします。」

 

美夢パパ「ありがとうございます!お礼は必ず支払いますので…」

 

廻「あー、そういうのはいいですよ。」

 

美夢パパ「し、しかし…」

 

弘人「気にしなくていいですよ。僕たちはボランティアでやってるようなもんですから。」

 

廻「そういうことです。」

 

美夢パパ「そうですか…」

 

廻「あ、けど、一つだけ頼み事をしてもいいですか?」

 

美夢パパ「何でしょうか?」

 

廻「それは……」

 

 





事件メモ
今回の依頼『白鳥胡桃の無実を証明する』
・胡桃とみいこがイタズラの罰で教室のワックスがけを任された。
・二人は途中で教室を離れている。
・二人が離れている間にワックスで滑って怪我をした生徒がいる。

以上です。

次回予告
美夢パパとリリリリのメンバーから依頼を受けた廻たち。
早速有栖川学院に調査に向かう。そこで様座な証言を聞いて…?

ではまた次回お会いしましょう!


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悪魔のイタズラ その2


前回までのあらすじ
Photon Maidenの福島ノアから「Lyrical Lilyを救ってほしい」と言われて話しを聞きに行った廻たち。
そこでLyrical Lilyのメンバーである白鳥胡桃のイタズラが原因で怪我をした生徒が出たことを知った。そうして依頼を引き受け動き出すのであった。

それでは本編どうぞ!



 

翌日 有栖川学院

 

今は有栖川学院の高等部の校舎にいる。そこで校長先生を待っているところだ。

 

弘人「さて今日から調査開始か。けど、まさか潜入することになるなんてな。」

 

廻「仕方ねえだろ。それしか方法がなかったんだから…」

 

時間は昨日に遡る…

 

‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾

昨日

 

廻『あ、けど、一つだけ頼み事をしてもいいですか?』

 

美夢パパ『何でしょうか?』

 

廻『それは有栖川学院での調査に協力してほしいんですが。』

 

美夢パパ『それは可能ですが…ただ…』

 

廻『ただ、なんです?』

 

美夢パパ『有栖川学院はいわゆるお嬢様学校なので一般人を上げるのは難しいし、他の生徒が不安になるので普通には入れないと思います…』

 

なるほどな……なら…

 

廻『では、潜入させることはできますか?』

 

美夢パパ『それならば可能です。すぐにでも手配します。』

 

廻『ありがとうございます。助かります。』

 

‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾

そうして俺と灯は教育実習生として、弘人は有栖川学院に出入りしている業者の新人として潜入することになった。玲央はいつも通り情報収集をやってもらう。

 

廻「さて、お前らへますんじゃねえぞ?」

 

弘人「分かってるよ。お前こそ下手して潜入してること喋るんじゃねえぞ?」

 

そうやって軽口を叩いていると部屋に校長先生が入ってきた。

 

校長「お待たせしました。私が有栖川学院の校長です。」

 

廻「今回は潜入捜査への協力ありがとうございます。」

 

校長「いえいえ、こちらこそわが校の生徒のために動いてくださってありがとうございます。」

 

何とか美夢のお父さんの力を借りて学園に潜入することに成功した。美夢のお父さんと有栖川学院の校長は個人的に仲が良く今回の事情を知って協力してもらったわけだ。

 

校長「さて、お二人にはそれぞれ別のクラスに入ってもらいます。」

 

それは助かる。別のクラスの方が色んな情報が集まりやすいからな。

 

校長「では、そろそろ行きましょうか。朝の集いが始まりますので。その後は早速クラスに入ってもらいます。」

 

廻「分かりました。」

 

そうして俺たちは早速教室に移動した。

 

‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾

有栖川学院高等部1年 教室

 

俺は胡桃たちのいるクラスに配属されることになった。灯は隣のクラスだ。

因みにその問題になっている胡桃だが、今は自宅待機になってるみたいだ。

そしてHRが始まる。

 

担任「…さて、皆さんにお伝えしなければならないことがあります。」

 

生徒たち「?」

 

担任「実は今日から教育実習生としてこのクラスに来ている人がいます。どうぞ、お入りください。」

 

そう言われて教室に入っていく。

 

廻「どうも、音咲廻です。これからしばらくの間よろしくお願いします。」

 

 パチパチ

 

こうして無難に挨拶を終えた。そして早速一限目から授業に入るみたいだ。

 

 

数時間後 昼休み

 

ひとまず灯と職員室で落ち合うことになった。昼食も兼ねて話し合いをするつもりだ。

 

灯「…あ、いた!」

 

廻「来たか。それで、早速だけどそっちはどうだった?」

 

昼食の準備をしながら灯に話しかける。

 

灯「今のところは何も異常はないよ。廻は?」

 

廻「俺もだな。それに生徒からまだ話しも聞けてないからな…」

 

まあ初日なんてそんなもんだろう。大事なのはこれからだな。

 

廻「ま、最初はこの学園に慣れるので精一杯だからそこまで手が回らなねえよ。」

 

ここはお嬢様学校だからな。正直その雰囲気に圧倒されてるのが現状だ。それに一応教育実習生として潜入しているわけだから生徒のこととか覚えることがたくさんあるんだよな…

 

廻「取り敢えず話しを聞けたらそれでいいけど、まだ無理に聞きに行く必要はないだろう。」

 

灯「そうだね。」

 

廻「てか早く食べようぜ。昼休み終わるぞ?」

 

灯「あ!そうだった!」

 

‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾

放課後

 

俺たちは実習の初日を終えて今はある場所に向かっていた。

 

灯「で、今どこに向かってるの?」  

 

廻「胡桃の家だよ。」

 

灯「胡桃ちゃんの?何で?」

 

廻「当時の状況を本人から改めて聞いておこうと思ってな。」

 

灯「あ、そうか!胡桃ちゃんにも話し聞かないといけないよね。」

 

そういうことだ。

 

灯「けど、実習終わったあとに向かうのは正直キツイよね…」

 

廻「仕方ないだろう。弘人はまだ終わりそうになかったんだから。」

 

いつもなら弘人に車を出してもらうところだがあいつはまだ業者の話しが終わりそうにないみたいだからな。

 

灯「分かってるよ!別に弘人を責めてるわけじゃないからね!…けど、弘人大丈夫かな?」  

 

廻「大丈夫だろ。あいつなら上手くやってるよ。」

 

灯「そうだよね!周りに溶け込むのうまいし」

 

そうだ。だから正体や目的がバレるなんてことがない限りは大丈夫だ。

 

そして話しているうちに胡桃の家が見えてきた。

 

灯「うわぁ…美夢ちゃんの家も大きかったけど、胡桃ちゃんの家も大きいね…」

 

廻「そうだな…」

 

胡桃も有栖川学院に通っているから凄い家に住んでるとは思ってたけど、これはまた想像以上だな…

 

…って驚いてる場合じゃねえや…

 

インターフォンを押すと使用人の人が対応してくれてた。

そして美夢のお父さんが話しをしてくれていたらしく、すぐに胡桃の部屋に案内された。

 

使用人「胡桃お嬢様、お客様です。」

 

胡桃『…誰?』

 

使用人「有栖川学院から来た教育実習生の廻様と灯様です。」

 

胡桃『いいよ。入ってきて』

 

使用人「では、お帰りの際は私にお声掛けください。」

 

廻「分かりました。」

 

そうして胡桃の部屋に入っていく。

 

廻「…あんまり元気そうじゃないな…」

 

胡桃「…見てわからない?」

 

そうだったな…今の状況で元気出せって方が無理があるよな…

 

廻「悪かったな。あんまり気が効くほうじゃなくてな。」

 

胡桃「別に気にしてないよ。それより私に何か用?」

 

灯「そうなの!ちょっと胡桃ちゃんに聞きたいことがあって来たの。」

 

廻「改めて事件当時のことを聞いておこうと思ってな。」

 

胡桃「でも前に話したときと変わらないよ…」

 

廻「それでも本人から聞くのとではまた違ったりするからな。どんな些細なことでもいいから教えてくれ。」

 

胡桃「分かったよ。」

 

そうして事件のことについて聞き始めた。

 

‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾

廻「じゃ、早速だけど何か気づいたこととか気になったことはないか?」

 

胡桃「そう言われても……あっ!」

 

どうやらなにか心当たりがあるようだ。

 

胡桃「最初にみいこちゃんを呼びに来た生徒がいたよね?」

 

灯「そうだね。それでみいこちゃんが一旦ワックスがけから離れたんだよね。」

 

廻「それがどうしたんだ?」

 

胡桃「実はね、その生徒どこかで『見たことあるな』って思ってたの。」

 

灯「思い出せたの?」

 

胡桃「うん。お父様の会社で何回か見たことがあったよ。」

 

会社で見たのか…だとすると胡桃のお父さんの部下の子供ってとこか。

 

廻「なるほどな。」

 

胡桃「あとね、それだけじゃないの。」

 

廻「?『それだけじゃない』ってのは?」

 

胡桃「その子の名前は『黒木友里愛(くろき ゆりあ)』って名前何だけど、実は一ヶ月前に退学してるはずなの。有栖川学院の制服も着てたし…」

 

廻「そうすると、何でその場に居たのかが謎だな…」

 

しかもわざわざ有栖川学院の制服まで着てくるなんてな…

まあ、ただの退学の手続きで来てただけかもしれないが。

 

廻「それ以外に気づいたことはないか?」

 

胡桃「後は何もなかったよ。」

 

灯「廻、今日はこれぐらいでいいんじゃない?」  

 

廻「そうだな。じゃ、帰るか…」

 

そうして俺たちが帰ろうとしたときだった。

 

胡桃「待って!」

 

廻「なんだよ?…」

 

いきなりでかい声出すなよ…ビックリするだろ…

 

胡桃「…何で私を助けようと思ったの?」

 

廻「…『何で』って…それは前に会った時に言っただろ?胡桃の友達を信じたからだよ。」

 

胡桃「…まさか本当にそれだけなの?」

 

廻「そうだ。」

 

灯「フフッ。ビックリするでしょ?」

 

胡桃「う、うん…」

 

灯「けど、世の中にはいるんだよ?たった『それだけの理由』で他の人のために動いてくれる人が。…ね?」

 

そういって灯と胡桃は俺の方を見てくる。

 

廻「…なんだよ…」

 

灯「別に〜?」

 

なんなんだよ、本当に…こういうのに慣れてないせいか少しむず痒いな…

 

廻「…後はまあ、俺も『人から信用されない』ってことの辛さは知ってるつもりだからな。手遅れになる前にどうにかしたいってのもあるけどな。」

 

俺も今でこそ仲直りできたけど過去にいろいろあったからな。

 

※S1最終章をご覧ください。

 

胡桃「え?」

 

おっと喋りすぎたな。

 

廻「ま、後は任せな。どうにかして解決してやるよ。」

 

胡桃「うん!あ、ありがとう…」 

 

廻「やっと元気が出てきたな。」

 

胡桃「うん、少しはね。」  

 

廻「やっと笑ってくれたな。やっぱり人は笑ってる方がいいぞ?」

 

胡桃「そうかな?〜」

 

廻「特に胡桃みたいな子供はな。」

 

胡桃「こ、子供じゃないもん!」

 

廻「そりゃ失礼。じゃ、今度こそ帰るぞ。」

 

灯「またね、胡桃ちゃん!」

 

胡桃「ばいばい!」

 

胡桃「…『音咲廻』か…変わった人だなぁ…けど、不思議と頼頼りになる人だなぁ。」

 

少しはもとの胡桃に戻ってきてるようで何よりだ。

早く元通りになるように頑張らないとな…

 

 

‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾

胡桃の家を出て俺はすぐに信条さんに電話をしていた。

 

廻「こんな時間にすまないな。」

 

信条『別に構わねぇよ。どうせ今日は夜勤だったし。で、今回はどんな頼みごとだ?』

 

廻「『黒木』って人知ってるか?白鳥ってのと関係があるんだが。」

 

信条『黒木?白鳥?…あ、もしかして最近捕まった「黒木達郎(くろき たつろう)」のことか?』  

 

父親の名前は黒木達郎か。

 

廻「多分その人だと思う。で、何して捕まったんだ?」

 

信条『横領だよ。白鳥家の会社の一つの副社長を任されてたんだけど横領がバレて捕まったみたいだな。』

 

廻「なるほど。あー、あと黒木には子供がいると思うんだがその子はどうしてるんだ?」

 

信条『あー、子供たちな。って何でそこまで知ってるんだよ!』

 

ん?

 

廻「ちょっと待て。今子供『たち』って言ったか?」

 

信条『…ったく、俺の言葉は無視かよ。そうだよ、黒木には3人の子供がいる。』

 

黒木の子供は友里愛さんだけじゃないのか。

 

廻「名前は分かってるのか?」

 

信条『長女が友里愛で、次女が「真理(まり)」三女が「美緒(みお)」だ。』

 

廻「そうか。ついでにもう一つ質問いいか?」

 

信条『何だよ?』

 

廻「友里愛さんたちは達郎が捕まってどうなったんだ?学校の転校とか。」 

 

信条『それがあの有栖川学院に通ってたのに3人とも退学をせざるを得なくなったみたいだ。転校したかどうかは分からないな。全く親のせいで子供にも迷惑がかかって同情するよな…』

 

廻「そうか。」

 

信条『もういいか?そろそろ仕事に戻らないと流石に怒られるからな。』

 

廻「あぁ、大丈夫だ。ありがとう。」ピッ

 

そうして電話を切る。

 

廻「聞こえてたか?」

 

灯「大体はね。けど、友里愛ちゃんだけじゃなくて他に二人も姉妹が居たなんてびっくりだよ…」

 

廻「そうだな。まさか三人姉妹だったなんてな…」

 

灯「それに親のせいで退学しなきゃいけないなんて…」

 

全くそのとおりだ。子が親に迷惑をかけるならまだしも親が子に迷惑かけてんじゃねえよ。

 

廻「けど、またひとつ疑問が出たな。」

 

灯「うん…何で友里愛ちゃんは有栖川学院の制服を着て有栖川学院に居たのかだよね?…」

 

廻「あぁ。その謎が解けたとき事件解決に近づくような気がする。」 

 

灯「そうだね。じゃ、早速明日、弘人たちに伝えないとね。」

 

廻「そうだな。」

 

 

 








事件メモ
・何故か一ヶ月前に退学したはずの「黒木友里愛」が有栖川学院の制服を着て学院内に居た。
・黒木家は三姉妹がいて友里愛、真理、美緒がいる。
・白鳥家の関連会社で横領事件があった。
・横領事件で逮捕されたのは「黒木達郎」。副社長をしていた。

次回予告
有栖川学院内に潜入することに成功した廻たち。周りの人たちの協力を得て少しずつ事件を追っていく中で周りたちはある事実を確認する。

それではまた次回お会いしましょう!

最後にこの投稿を待っててくださった読者の方々投稿が遅れてすみませんでした!
いいわけですがリアルがいろいろと忙しくて落ち着いてきたのでようやく最新話を投稿できました!
なるべく早くに投稿したい気持ちはありますが作者の生活もあるのでそこはご了承ください。


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悪魔のイタズラ その3


前回のあらすじ
有栖川学院高等部で潜入調査を開始した廻たち。調べていくうちに白鳥家の関連会社で横領事件があったことを知った廻たち。さらに事件にその娘たちが関係してきて?

それでは本編どうぞ!




 

翌日 有栖川学院高等部

 

俺たちは昼食も兼ねてお互いが知り得た情報を交換するために職員室に集まっていた。

 

弘人「それでお前らはどんなことがわかったんだ?」

 

灯「それはね…」

 

そうして弘人に昨日の出来事を話していく。

 

弘人「そうか…退学したはずの子がわざわざこの学校の中にねぇ…そりゃ確かに変だな。」

 

廻「あぁ。だから放課後にでも先生たちに協力して詳しく聞いて見るつもりだ。」

 

他の先生たちも校長先生から伝達はあってるから俺たちの目的は知ってるから話しはきけるだろう。

 

廻「で、弘人は何か分かったのか?」

 

弘人「おう、こっちもバッチリだ。」

 

そうして弘人が話し始める。

 

廻「で、何が分かったんだ?」

 

弘人「ちょくちょく生徒が廊下で噂話してるのが聞こえ来てな。その中でいろいろと聞けてな。例えば、『あれは自作自演じゃないか?』なんて言われてる。」

 

廻「『自作自演?』なんでそんな話が出てくるんだ?」

 

弘人「なんでも近くにいた生徒によると『血の匂いがしなかった』そうだ。それに見た目も『まるで血糊を塗りたくったようだった』なんて言われてる。」

 

灯「けど、そこまであからさまだったら自作自演ですぐに胡桃ちゃんの誤解も解けそうだけど…」

 

弘人「それが問題なんだよ。」

 

廻「どういうことだ?」

 

弘人「実はこの話し半信半疑でな。自作自演を信じてる生徒もいれば、胡桃ちゃんのイタズラで怪我をしたって信じてる人で分かれてるんだよ。」

 

灯「なんで半信半疑なの?」

 

弘人「これも近くで見ていたらしい別の生徒の話しなんだが、『本当に怪我をしているようにも見えた』らしい。」

 

灯「??ど、どういうこと?…」

 

弘人「実は、傷口が実際にあったのを見ている生徒もいるみたいなんだ。」

 

廻「だから半信半疑ってわけか…」

 

弘人「そういうことだ。」

 

廻「そういえば、救急車は呼ばなかったのか?半信半疑とはいえ酷い怪我だったら呼ぶと思うが…」

 

弘人「どうやら呼ばなかったみたいだな。呼ぼうとしたところを一人の生徒が止めて連れて帰ったみたいだ。」

 

灯「『止めた』?なんで?」

 

弘人「何でも凄い形相で止めてくるもんだからその気迫に圧されて誰も連絡しなかったんだと。怪我した生徒を抱えてそのまま去っていったみたいだ。」

 

なるほどね…

 

弘人「あ、そうそう。その怪我をした生徒と抱えていった生徒二人とも中等部の制服だったみたいだぞ。」

 

灯「ここって高等部の校舎だよね?なんで中等部の子が?」

 

弘人「別におかしなことではないよ。他校の生徒ならともかく中等部の子なら高等部の校舎に入ってきてもおかしくはないよ。」

 

廻「そうだな。ま、それも防犯カメラ見れば少しは分かるだろうな。」

 

灯「じゃあ私が友里愛ちゃんたちのことを聞くから廻が防犯カメラを見てくれば?」

 

廻「そうするか。」

 

そうして昼ご飯を食べて午後の授業に向かった。

 

‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾

有栖川学院高等部 廊下

 

みいこ「あ、探偵さん。こんにちはなの!」

 

次の授業に向かうために廊下を歩いていたところ前からLyrical Lilyのメンバーがやってきた。

 

春奈「もう、みいこさん。廊下で大声を出さないでください!誰かに聞かれたらどうするんですか!?…廻すみません…」

 

どうやら、春奈もみいこたちには苦労してるみたいだな。

 

廻「別に俺は気にしてないよ。後みいこ、だっけ?『探偵さん』って呼ぶのはやめてくれ。俺のことは廻でいいよ。」

 

みいこ「じゃあ廻さんって呼ぶの。」

 

春奈「もう、みいこさんは…。ところで廻さん、胡桃さんの件ですが…」

 

廻「心配ないよ。ちゃんと進んでるよ。」

 

春奈「本当ですか!?」 

 

廻「あぁ。少しずつだけど確実に真相には近づいてるよ。」

 

みいこ「ありがとうなの!流石たん…廻さん!」

 

春奈「みいこさん、気をつけてください!周りの人に聞こえたらどうするんですか!?」

 

みいこ「ご、ごめんなさい…」

 

春奈「もう、本当に…」

 

廻「…なんていうか、春奈も苦労してるんだな…」

 

春奈「…そうですね。」

 

廻「そう言えば昨日胡桃に会ってきましたよ。」

 

春奈「!…そう、ですか…。」

 

廻「…」

 

春奈「く、胡桃さんの様子はどうでしたか?」   

 

廻「前に会った時とあんまり変わらなかったです。少しは落ち着きを取り戻してはいたけど。」

 

みいこ「それは嫌なの…早く元の胡桃ちゃんの戻ってきてほしいの…」

 

春奈「みいこさん…。そうですね、過去がどうであれ今は私達四人でLyrical Lilyなのですから。」

 

こういうのがチームワークっていうのか?なんかいいな。

 

廻「ま、元気もそのうち取り戻すでしょう。」

 

みいこ「本当に?」

 

廻「あぁ。この件が解決するころには四人とも笑顔になるように俺たちも頑張るよ。」

 

みいこ「分かったの!」

 

廻「…おっと、そろそろ行かないと授業に間に合わないな。それじゃまた。」

 

春奈「はい。」

 

…こりゃ責任重大だな……

 

‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾

放課後 

 

俺は灯と離れて防犯カメラの映像を見に来ていた。

何か手掛かりがあるといいんだけどな。

 

廻「すみません、早速ですけど映像見せてもらっていいですか?」

 

警備員「廻さんですね?話しは聞いてますよ。どうぞこちらへ。」

 

そうして奥のモニターがある部屋に入っていった。

 

廻「じゃ、2週間前の映像を見せてもらっていいですか?」

 

警備員「分かりました。…出ましたよ。」

 

廻「ありがとうございます。」

 

さて何が映っているか…

 

‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾

2週間前

 

友里愛『…』

 

お、さっそく事故現場の前に誰かいるな。この子が友里愛か? 

まだ後から誰か来るな。残りの真理と美緒か?何か話しているけど小声だから何を話しているかまでは分からねえな…

 

……ん?

 

気になる部分があったので警備員の人に映像をアップで見せてもらう。そして…

 

廻「(やっぱり俺の見間違いじゃないな。けど何で友里愛は…)」

 

そう言えば、昼休みの時に弘人が言ってたな…そういうことなのか?…

…いや、ここで考えても仕方ないか。取り敢えず事件?(事故?)が起きるまで全て見るか。

 

そうして、遂にその時の時間帯になった。

 

廻「(…お、教室に胡桃たちが入ってきたな。ってことはそろそろか。)」

 

そうして映像を全て見終えた。

 

‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾

廻「(なるほどな…。これで事件か事故かはハッキリした。けど、まだ疑問は残るな…)」

 

警備員「映像はこれで全てです。他に見る映像はありますか?」

 

廻「いえ、今日はこれで失礼します。」

 

警備員「では、また何かあったら来てください。」

 

廻「ありがとうございます。……あっ、そうだ。少し聞きたいことがあるんですが…」

 

警備員「はい、なんでしょうか?」

 

廻「この有栖川学院の入り口の警備は日頃どうしてるんですか?」  

 

警備員「日頃、ですか?そうですね、生徒だと有栖川学院の制服を着ていることと、生徒手帳を入り口で提示してもらえれば通してますよ。」

 

廻「それは中等部の生徒もですか?」 

 

警備員「そうです。」

 

廻「関係者だとどうですか?例えば、…『生徒の保護者』とか。」

 

警備員「その場合だと校門で一旦待ってもらって職員室に連絡します。そこで許可が出れば中に入れるようになってますね。あ、ついでに出入りする業者さんは止めませんよ。」

 

廻「そうなんですか?」

 

生徒やその関係者と業者なんかの部外者だと随分と対応が違うな…

 

警備員「いやね、ここだけの話しですけど、なんせ出入りする業者も多いんですよ。だから業者さんだといつもの制服なんかを着てたら通してます。」 

 

おいおい、それでいいのかよ…適当すぎねぇか?

 

廻「…そうですか。ありがとうございました。では。」

 

そうして今日は家に帰ることにした。

 

‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾

その日の夜 春田家 廻の部屋

 

 ♪♪♪♪♪

 

丁度ゆっくりしようとしていたところに電話がかかってきた。

 

廻「誰からだ?…おっ、玲央か。」

 

玲央からってことは何か分かったみたいだな。

 

廻「もしもし?どうした?」 

 

玲央『…いつも通りわかったことがあったから連絡した。』

 

やっぱり。流石頼りになるな。

 

廻「そりゃ助かる。で、何が分かったんだ?」

 

玲央『副社長やってた黒木達郎って奴なんだが…こいつ想像以上にやばい奴だった。』

 

廻「と言うと?」

 

玲央『まず、達郎が副社長やってた会社、業績は良いがSNSや口コミ、ネットでの評判が非常に悪い。』

 

廻「業績がいいのに何でだ?」

 

玲央『まず社内の雰囲気が悪いみたいだ。パワハラやセクハラは当たり前、本当かはわからないが、暴力沙汰もあったみたいだ。』 

 

…マジかよ……

 

玲央『で、なんでそんなことになっているかというとその原因が…』

 

廻「『達郎』ってことか?」

 

玲央『そうだ。』

 

確かにヤバいやつだな。

 

廻「けど、なんでそんなやつが今まで野放しにされてたんだ?」

 

玲央『社長は事なかれ主義で居ても居なくても変わらず実質的に達郎が会社の実権を握ってたのが理由だ。』

 

なるほどな…

 

玲央『でも白鳥の父がいる親会社からは目をつけられてたみたいだ。』

 

廻「そうだったのか…」

 

玲央『外面だけはいいから今まで何とかやり過ごせてたみたいだ。けど、今回横領を内部告発されて金も名誉もなくなったってわけだ。』

 

廻「そうか。いろいろと助かる。」

 

玲央『それともう一つ。』

 

どうやら、まだ何か情報があるみたいだ。

 

廻「何だ?」

 

玲央『達郎は妻と離婚してるみたいなんだが、その理由が少し気になってる。』

 

廻「ん?なんだよ、気になる理由って…」

 

玲央『どうも子育てで対立したからみたいだ。』

 

廻「対立か…確かにそれは気になるな。」

 

玲央『少し詳しく話すと、その対立した内容は「甘やかし」だな。』

 

甘やかし?

 

玲央『母親の方は裕福な家庭で育っていることに甘えずに基本的なマナーなどを教えて金持ちだからと言って人を見下すなって言って育ててたみたいだ。そんな性格もあって母親の方は近所の人からも何かと頼られたり評判が良かったみたいだ。』

 

しっかりしている母親だな。金持ちってだけで舞い上がってる人もいるのにな。

 

玲央『だが、反対に達郎はとにかく娘たちを甘やかしてきたらしい。その結果子供たちは「面倒くさいことを言う母親よりも父親」の方に愛情が向いたらしく高校に入るのをきっかけに母親の言うことを全く聞かなくなったみたいだ。』

 

廻「それでそのまま愛想を尽かして離婚ってことか?」

 

玲央『そうだ。親権は達郎の方でな。離婚するころには娘たちは横柄で人を見下していて、残念ながら母親が育てたかった方とは反対の方に育ってしまったみたいだ。』

 

廻「そんな家庭の事情があったのか…」

 

玲央『俺が分かったのはこれぐらいだ。』

 

廻「ありがとうな。しかし、達郎ってのロクでもないやつだな。」  

 

玲央『そうだな。』

 

廻「ま、また何かあったらまた教えてくれ。じゃあな。」ピッ

 

……甘やかし、ねぇ…

 

確かに気になるな…弘人に調べてもらうか。

 

‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾

翌日 有栖川学院高等部 校門前

 

さて、今日もやりますか……ん?何か騒がしいな…

 

 ザワザワ!!

 

生徒1「早く退学でもなんでもしてくれないかしら。」

 

生徒2「ホントですね。」

 

どうやら有栖川学院の生徒が誰かに対して文句を言ってるみたいだ。

 

灯「や、やめて!どうしてこんなことするの!?」

 

灯が必死に止めてるみたいだ。急いで俺も仲裁に入る。

そして灯の後ろに隠れる形で今にも泣きそうな表情の胡桃がいた。

 

廻「落ち着いて。灯、一体何があったんだよ?」

 

灯「そ、それが、胡桃ちゃんと偶然通学路で出会ったから一緒に登校してたら、校門であの子たちが話しかけてきて…」

 

そういうことか…

 

生徒1「『落ち着いて』も何も、胡桃さんがあんなイタズラをしなければこんな大事にはならなかったんですよ?落ち着いていられないですよ。」  

 

灯「まだ『イタズラ』と決まったわけじゃないよ!」

 

生徒2「いや、どうせ胡桃さんの仕掛けたイタズラに決まってますわ。早く皆さんに謝ったらどうです?『イタズラしてごめんなさいって』」

 

灯「ちょっと!」

 

灯が生徒に向って何か言おうとしたときだった。

 

胡桃「いいよ、灯さん…」

 

灯「く、胡桃ちゃん!?」

 

胡桃「私の日頃の行いが悪かったんだよ…だから…」

 

生徒1「やっとその気になったみたいね。」

 

胡桃が皆の前に出る。

 

胡桃「この度は私のしたイタズラで皆様にめ『胡桃が謝る必要はない。』…え…」

 

生徒2「はい?先生、今なんと?」

 

廻「『謝る必要はない』と言ったんです。」

 

生徒1「…先生今の状況をわかってるんですか?」

 

胡桃「そ、そうだよ…私が謝れば全部解決するんだよ!」

 

…はぁ……

 

廻「本当にそう思ってるのか?」

 

胡桃「え?」

 

廻「大体出回ってる噂も半信半疑なんだろ?それに本当に胡桃が今回のことをやったとは思ってない。」

 

事実そのとおりだからな。

 

胡桃「でも…」

 

廻「じゃあ、胡桃はやってもないことをやったと認めて、それでいいのか?」    

 

胡桃「そ、それは…」

 

廻「やってないんだから胸を張って堂々としてろ。」

 

生徒2「…何を言い出すかと思えば、先生が一人の生徒の肩を持つんですか?」

 

生徒1「そうです。先生としてどうなんですか!」

 

廻「知るかよ。」  

 

生徒1・2「!!」

 

廻「そう思うなら君たちが勝手にそう思っていたらいい。…さ、もうすぐ朝の集いが始まるぞ。急げ。」

 

俺がそう言ったところで気まずそうな顔をしながらも生徒たちが去っていった。

 

廻「…取り敢えず、何とかなったか?」

 

廻「…大丈夫か?」

 

胡桃「…」

 

そう聞くが胡桃からは何の反応もない。本当に大丈夫か?

 

廻「取り敢えず、今日は帰ったほうがいいだろ。送っていくから一緒に行くぞ。灯、このことを伝えておいてくれ。」

 

灯「う、うん…」

 

胡桃「…どうして…」

 

廻「?」

 

胡桃「どうしてそこまで私のためにしてくれるの!?」

 

はぁ、やっと口を開いたと思ったから…

 

廻「前にも言っただろ?信じてるからだよ。」

 

胡桃「で、でも、私が本当にやってるかもしれないのに」

 

廻「その時はその時だな。」

 

胡桃「っ!なんで…」

 

廻「…はぁ、あのな、俺だって先生や探偵やってる以前に一人の人間だぞ?誰を信じるかは俺が決めるっての。それに…」

 

廻「別に信じてるのは胡桃だけじゃねえよ。」

 

胡桃「え?」

 

廻「…胡桃には心配してくれる友達がいるじゃねぇか。胡桃が本当にイタズラしてて人の不幸笑うようなやつなら誰からも心配されねぇよ。」

 

胡桃「ぅ、うわ〜ん!!」

 

廻「っは!お、おい泣くなよ!」 

 

灯「もう、慌てないの、廻。落ち着いて。」

 

廻「落ち着いてるっての。けど、いきなり泣き始めるから…」

 

灯「…はぁ、廻って女の子のことなーんにも分かってないんだね…」

 

……悪かったな。

 

灯「こういうときは優しく抱いてあげればいいの。」

 

…ほんとかよ。少女漫画の見すぎじゃねえのか。

けど、灯の圧が凄かったので実行することにした。

 

…優しくだよな……

 

 ギュッ

 

廻「…大丈夫か?」

 

胡桃「!…う、うん。」

 

 

それから数分すると胡桃も落ち着いたみたいだ。

 

廻「落ち着いたか?」 

 

胡桃「うん!もう大丈夫だよ。」

 

そりゃ良かった。

 

胡桃「私、一人じゃないんだね。」

 

廻「あぁ、胡桃を心配してくれる人はいるよ。…だからあんな真似もうするなよ?」 

 

胡桃「分かった。廻さん、信じてくれてありがとうね。」

 

廻「…そういうのは解決した後に言ってくれ。」

 

胡桃「あ、もしかして照れてる?」

 

灯「あれはそうだよ!慣れないことしてるから照れてるんだ!」

 

……っ!こ、こいつらは!!

 

廻「行くぞ。」

 

灯「もう!隠さなくてもいいのに!」

 

胡桃「もしかしてツンデレってやつ?」

 

廻「…置いてくぞ?」

 

胡桃「ごめんなさい!」スタスタ

 

 

胡桃を信じている友達のためにも早く解決しないとな。

 

 





事件メモ
・滑って転んだ子の怪我は自作自演の可能性がある。
・映像で廻は『何か』に気付いた。
・達郎がいた会社は達郎が原因で社内の雰囲気が悪い。
以上です。

次回予告
胡桃やLyrical Lilyのメンバーのためにも絶対に解決することを改めて決意した廻。
しかし、廻が有栖川学院から離れることになり?…一体どうなる!?

それではまた次回お会いしましょう!


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悪魔のイタズラ その4


前回のあらすじ
今回の騒動が自作自演じゃないかと疑われていることを知った廻たち。
そして防犯カメラを確認すると事故か事件かは分かったようで?

それでは本編どうぞ!


 

あれから胡桃を家に送ってから有栖川学院に戻ってきたわけだが、ある問題に直面していた。

それは……

 

校長「これ以上廻さんを潜入させておくのは無理があります…」

 

そう、朝の件で悪い意味で目立ちすぎてコソコソとできなくなった。

 

灯「どうするの、廻!」

 

廻「どうするも何も俺がここにいたってもう意味がないだろ…」 

 

灯「じゃあ、私だけで調べるってこと!?」

 

廻「そうなるな。」

 

灯「『そうなるな』じゃないよ!私一人でなんて無理だよ…」

 

廻「別にお前一人じゃないだろ。弘人だっているし。」

 

灯「そうだけど…」

 

廻「灯なら大丈夫だ。」

 

灯「そんな無責任に言わないでよ…」

 

廻「別に無責任に言ってるわけじゃねえよ。」

 

灯「え?」

 

驚いた様子で俺を見てくる灯。そんなに驚くことじゃねえだろ。

 

廻「お前、いつも俺たちを見てきただろ?そのとおりにすれば大丈夫だよ。」

 

灯「…」

 

廻「俺は灯を信じてる。大丈夫だ、何かあったらすぐに駆けつける。」

 

灯「…分かった。」

 

灯「廻が私を信じてくれるんだから、私も廻を信じないとね。」

 

廻「決まりだな。じゃ、後は任せたぞ。」

 

灯「うん、任せて!」 

 

頼もしいな。

 

校長「…話しはまとまりましたか?」

 

廻「はい。僕はここで抜けさせてもらいます。」

 

校長「分かりました。後の処理は私がしておきます。」

 

灯「でも、廻はこれからどうするの?」 

 

廻「ちょうど調べたいことがあったからそれを調べることにする

。」

 

正直それさえ分かれば一気に事件解決に繋がるからな。

 

灯「分かった。廻、気をつけてね。」

 

廻「灯も無茶するなよ?あと防犯カメラの確認を忘れるなよ。」

 

灯「うん!」

 

そうして俺は有栖川学院を離れた。

 

‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾

数分後…

 

廻「さて、教えてもらった住所だとここらへんのはずだが……」

 

俺は今、有栖川学院の先生たちに聞いたある住所を訪れていた。

…っと、どうやらここみたいだな。

 

そうして一つの古い木造住宅に着いた。

 

廻「(…なるほど、離婚してからはここに住んでるのか…)」

 

そんなことを考えながらも進んで目的の部屋の番号のインターフォンを押す。

 

 ピンポーン

 

?「はい?」ガチャ

 

すぐに中から一人の女性が出てきた。

 

廻「…あなたが黒木、いや、『白城玲子(しろぎ れいこ)』さん、ですね?」

 

そう、俺が会いに来た人は、黒木達郎の元妻の玲子さんだ。

 

玲子「…そうですけど、あなたは?」

 

廻「音咲廻って言います。実はあなたの子どもたちについてお話しを聞きに来たんですけど…」

 

玲子「…取り敢えず中へどうぞ。」

 

そうして部屋の中に入った。

 

玲子「それであの子たちの何を聞きたいんですか?」

 

廻「実は…」

 

そこで今回の事件のことを話した。

 

玲子「!! あ、あの子、そんなことを!」

 

廻「落ち着いてください。まだ娘さんたちがやったという証拠はありません。」

 

玲子「けど、あの子たちならやりかねないわ。」

 

廻「何故そう思うんですか?」

 

玲子「分かるわよ。数年とはいえ一緒に過ごしたんだから…」

 

そういう玲子さんはどこか寂しげな表情をしていた。

まあ、中が悪かったとはいえ玲子さんにとっては娘の事実は変わらないから思うところはあるんだろうな…

 

玲子「話しが逸れたわね。で、その事件と関係して娘たちのことを聞きたい、ということでいいのかしら?」

 

廻「そうです。できればどんな子たちだったのかを聞きたいです。」

 

玲子「…そうね、小さい頃は何も問題はなかったのよ。自分で言うのもなんですけど、第三者から見れば仲の良い家族に見えていたでしょうね。」

 

そうして玲子さんが話し始めた。

 

玲子「けど、それはあくまで第三者から見ればの話しです。現実はそうではありませんでした。」

 

廻「というと?」

 

玲子「もともと、元夫とは望まない結婚だったんです。元夫がお金をチラつかせて、それで両親を味方につけて結婚したんです。」

 

廻「…愛の無い結婚だった、ということですか。」

 

静かに玲子さんが頷く。

 

玲子「今だから言いますけど、例えお金持ちでもあんな人と結婚はしませんよ。パワハラやセクハラを当たり前にやってる人だから。けど、私は運悪く新卒で入社したときに目をつけられてさっき言ったようにお金で無理やり結婚させられたんです。」

 

なんで達郎みたいなやつと結婚したのか不思議だったが、そういう事情があったのか……

 

玲子「それに子どもだって元夫との間に作る気はなかったんです。けど、これも無理やり迫られて三人も子どもたちを生みました。」

 

これは既に玲央から聞いたことだな。

 

玲子「けど、無理やりとはいえできた子どもたちを見捨てるような真似はできずにしっかりとした人に育てるように育児も頑張ってきました。幸いにも元夫も子どもたちには虐待はせずにむしろ子どもたちの前では気持ち悪いくらいの笑顔で接していました。」

 

玲子「けど、私が見ていないところでは娘たちに私の悪口などを吹き込んで印象操作をしてました。その結果、少しずつ元夫の言うことだけを聞くようになって私の言うことは全然聞いてくれないようになったんです…」

 

玲子「そうして、とうとう私が離婚を決意する出来事が起こったんです。」

 

廻「離婚を決意する出来事ですか?」

 

玲子「はい。あれは中学校に入学したばかりのときでした。」

 

‾‾‾‾‾‾‾‾‾

玲子『ただいま。…あら、まだ誰も帰ってないのかしら?』

 

近所への用事で数分間離れて家に戻ってきたときでした。

その時はちょうど友里愛の友達が遊びに来ているときでした。

そうして部屋に入っていくととんでもない光景を目にしたんです。

 

玲子『あら、友里愛帰ってた…、あ、貴方何してるの!』

 

友里愛『!!』

 

そこには友達の財布からお金を抜き取っている友里愛の姿があったんです。

 

友里愛の友達『友里愛ー、遅いよ…な、何してるの?』

 

友里愛『ご、ごめんなさい…〇〇。お母さんからお金を取れって言われて…』

 

友里愛の友達『!』

 

‾‾‾‾‾‾‾‾‾

廻「…それでどうなったんですか?」

 

玲子「結局私がやったことにされたんです。それで、私からもうやっていけないと判断して離婚してもらいました。」

 

なるほどな…

 

廻「子どもたちは過去にもそんな経験はあるんですか?」

 

玲子「はい。私の財布からもお金を取ろうとしてたときもありました。幼稚園の頃から他の子の物でも自分が気に入れば力づくで奪い取っていました。そのたびに注意してたんですけど、元夫は『そんなことでいちいち怒鳴るな』って。本当にいい加減でしたよ…。」

 

玲子「それに、結局は全部元夫がお金で解決してきたので、そういうのが嫌で私にママ友ができなかったです。それに娘たちも友達はいたけど、一緒になって他人を馬鹿にしたり、娘たちにはかわいそうですけど、純粋に仲良くなりたいってわけじゃなくて『大企業の副社長の娘』っていう肩書きだけで見られていたような気がします…」

 

達郎もだが、娘たちもなかなかやばいな……

多分、父親である達郎の影響が大きいんだろうな…

 

廻「…」

 

玲子「もう、このくらいでいいですか?当時のことを思い出すと今でも辛くて…」

 

廻「はい。ここまで聞けたら大丈夫です。辛いことを思い出させてすみません。それじゃ失礼します。」

 

玲子「待ってください!」

 

廻「?」

 

玲子「…娘たちに伝言をいいですか?」

 

‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾

その日の夜 廻の部屋

 

 ピコン♪

 

おっ、来たな。

 

『灯さんからのメッセージがあります。』

 

そうしてスマホの画面を開くと、そこには防犯カメラの映像が送られてきていた。

 

数分後…

 

なるほど。これで今回の件がハッキリしたな。

 

 ピコン♪

 

ん?また灯からのメッセージか。

 

灯『映像送ったよ。見れるか確認してね。あ、それと映像に映っている生徒は友里愛ちゃん、真理ちゃん、美緒ちゃんで間違いないって確認できたよ!』

 

三人はやっぱり達郎の娘たちか…ってことは…

 

俺はヘッドフォンを耳に当てていつものように考え始めた。

 

………なるほど。そういうことか。これで全てが繋がったな。

 

廻『そうか。確認ありがとう。』

 

そのメッセージを送ると俺は信条さんに電話をかけた。

確か今日は夜勤って言ってたから忙しくなければ出るはずだ。

 

信条『なんだよ、こんな夜遅くに…』

 

廻「悪い。ちょっと調べてほしいことがあってな。」

 

信条『何だ?』

 

そうして信条さんに事情を説明する。

 

廻「…ってことだ。」

 

信条『なるほどな。俺はそれを確認すればいいんだな?』

 

廻『そうだ。』

 

信条『ったく、しょうがねえな。明日すぐにでも行ってやるよ。』

 

廻「助かる。」

 

信条『じゃ、俺はこれから仮眠を取るから切るぞ。証拠は明日にでも送っておく。じゃあな。』ピッ

 

さて後は信条さんが証拠を手に入れればバッチリだな。

 

 





事件メモ
・娘たちは子供ころから性格が悪かった
・達郎の元妻である白城玲子はお金と権力で無理やり結婚されられた。

遂に今回の騒動が分かった廻!後は信条からの証拠を待つだけだ!
果たして胡桃を助けることができるのか!

ではまた次回お会いしましょう!


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悪魔のイタズラ その5


前回のあらすじ

達郎の元妻である玲子に話しを聞きに行った廻。そこで過去の娘たちの話しを聞くことができた。そして事件の真相にたどり着き、後は信条の証拠を持ってくるのを待つだけだ。

それでは本編どうぞ!


 

3日後 有栖川学院高等部 応接室

 

あれから3日が経った。全ての証拠を揃えられた俺たちは応接室に関係者を集めていた。勿論あの三姉妹もいる。そして友里愛は包帯を巻いている。

 

胡桃「急に呼び出してどうしたの?」

 

廻「実は今回の件について真相が分かったからそれを伝えようと思ってな。」

 

春奈「ほ、本当ですか!?」

 

廻「本当だよ。ちゃんと犯人まで分かったよ。」

 

友里愛「あの、その『今回の件』とはどのようなことでしょうか?」

 

…知ってるのにとぼけるのか。まあいいや。

 

廻「では早速話していきましょう。」

 

そうして話し始める。

 

廻「まず、数日前にワックスがけの途中に生徒が滑って大怪我をするということがありました。」

 

友里愛「…なるほど、そのことでしたか。」

 

廻「知ってるんですね?」

 

真理「えぇ。私と美緒は中等部ですけど、そのことは話題になってたので。」

 

廻「それだけじゃないですよね?」

 

美緒「…どういうことです?」

 

廻「だって、今回の件で怪我したのは『友里愛さん』あなた自身なんですから。噂を聞いた、なんてもんじゃないでしょ?」

 

友里愛「何故私が今回の件で怪我をしたと言えるんですか?」

 

廻「防犯カメラにバッチリ写ってましたよ。例のワックスがけをしている教室に入っていく姿が。そう『怪我をした友里愛さん』が入っていく様子がね」

 

友里愛「…」

 

弘人「どういうことだ?その言い方だと最初から怪我をしていたみたいになるじゃねえか?」

 

廻「弘人、お前自身が言ってたじゃねえか。『この件は半信半疑だ』って。」

 

弘人「!そういうことか。」

 

気づいたみたいだな。

 

廻「そう。今回のこの事件、貴方たち3人の自作自演ですね?」

 

三人「!!」

 

本当にバカなことをしたもんだ……

 

美緒「なんで『自作自演』なんて言い切れるのよ!?」

 

真理「そうです!それにそんなことをして私達に何のメリットがあるんですか!?」

 

廻「メリットなんてありませんよ。」 

 

真理「じ、じゃあ!」

 

廻「でもそれは、『貴方たち3人には』です。」

 

灯「どういうこと?」

 

廻「落ち着け、順を追って説明してやるよ。先に今回の事件のからくりを説明するぞ。」

 

まあ、からくりってものでもないけどな。

 

廻「時系列で話していきます。まず、校門を潜って隠れてわざと友里愛さんに怪我を作る。」

 

校門はここの制服を着てたから通れたんだろうな。警備員の人にもいちいち生徒の誰が辞めたかなんて教えないだろうからな。

 

玲央「なんで本当に怪我を作るんだ?後で血糊で怪我に見せるならそんなことしなくてもよさそうだけどな…」

 

廻「多分、『念には念を入れて』のことだろうな。完璧に怪我に見せれたとしても、近くで見られたり、血の匂いがしなければバレそうだからな。」

 

灯「あれ?でも弘人の話しだと『血の匂いはしなかった』って言ってなかった?」

 

廻「だから、ところどころに小さく怪我を作ったんだろうな。逆に大きくしてもわざとらしくて疑われそうだからな。」

 

玲央「なるほどなぁ…で、あとは友里愛ちゃんが教室に入っていって『事故』に見せかけるってことか。」

 

そういうことだ。で、その血糊と実際の怪我作りをするところが全部カメラに写ってたわけだ。これは灯から送られてきた防犯カメラの映像から確認できた。

 

友里愛「確かに怪我をした私の姿がカメラにも写っていたから言い逃れはできないですね。」

 

お、意外とあっさり罪を認めるのか?

 

友里愛「しかし、何か大切なことを忘れてはいませんか?」

 

ん?

 

廻「『大切なこと』ですか?」

 

一体なんだ?

 

友里愛「なんでワックスがけをしていた二人はその持ち場を離れたんですか?二人が離れなければ私が教室に入って怪我をしたように見せかけることもできないのでは?」

 

確かにそうだな。

 

友里愛「それに胡桃さんは忘れ物に気付いて教室を出たのでしょう?…まさか偶然とはいいませんよね?」

 

廻「あー、そのことですか。それは友里愛さんの言うとおり偶然ですよ。」

 

友里愛「!!」

 

廻「ただし、胡桃に関しては。だけどな。」

 

胡桃「どういうこと?」

 

廻「友里愛さんが怪我をする役割りなら、真理さんと美緒さん二の役割りは、胡桃とみいこを教室から引き離すことだったんじゃないですか?」

 

美緒・真理「!!」

 

どうやら二人も動揺してきたみたいだな。

 

廻「これも生徒たちから聞きましたよ。そしたらいましたよ。美緒さん、あなたがみいこを呼んでほしいって言われたから呼びに行ったって人がね。」

 

廻「で、みいこは教室から出ていった。で後は胡桃を教室から引き離すだけ。だったけど、胡桃は忘れ物に気づいて出ていったから真理さんは動く必要がなかったってことですよ。」

 

みいこ「そう言えばあのとき結局呼んでた人がいなかったから少し探したの。それでもいかなったから戻ったけど…」

 

これで教室には誰も居なくなったってわけだ。

 

廻「あとはスマホで友里愛さんに連絡して友里愛さんを教室に入れればいい。そしたらあとはまた二人のうちのどっちかが発見する役をやればいい。」

 

廻「で、怪我のことがバレないように教室から出て、後は胡桃のイタズラで怪我をしたように噂を広めた。それが今回の『事件』ってわけです。」

 

だから今回の件は事ではなく『事件』ってわけだ。

 

廻「まあ、どんなに言い訳しようとも貴方たちが血糊を買った場所の防犯カメラの映像があるから、後はレシートなんかを調べれば貴方たち3人がやったってすぐに分かりますよ。」

 

そう、これが信条さんに頼んでいた証拠だ。

 

灯「じゃあ最初に言ってたメリットの話は?確か、『三人にはメリットはない』って言ってたけど…」

 

そうだな、そろそろそっちを話すか。

 

廻「あぁ、それは簡単に言うとメリットがあるのが友里愛さんたちの父親である『黒木達郎』にしかないからだよ。」

 

弘人「じゃあ達郎にはどんなメリットがあるんだよ?」

 

廻「それはだな…」

 

 ガチャ

 

俺が話そうとしたその時、ちょうどドアが開いて信条さんが入ってきた。

 

信条「おう、遅れてすまんな。」

 

廻「やっと来た。」

 

信条「『やっと』ってお前なぁ…夜勤明けですぐに駆けつけたんだぞ?少しは感謝とか気遣いとかないのかよ…」

 

廻「悪かったな。」

 

信条「…まあいいよ。で、どこまで話が進んでるんだ?」

 

不貞腐れたように信条さんがそういう。

 

廻「ちょうど信条さんからの証拠と証言がほしかったとこだ。」

 

実は後数個、今回の件に必要な証拠を持ってきてもらっていた。

 

信条「ならグッドタイミングだな。ちゃんとあったし聞いてきたぞ。」

 

廻「…あぁ、話しがそれたな。話しを戻すと、達郎のメリットってのは『白鳥家の評判を落とすことともう1つは強請ること』だな。」

 

弘人「『強請る』ってそれ脅すってことだろ!?どういうことだよ!」

 

友里愛「そ、それは、どういう…」

 

……やっぱり娘たちはそこまでは知らなかったか。

 

廻「まず事の発端は、達郎の逆恨みから始まるんだよ。」

 

春奈「『逆恨み』ですか?」

 

廻「そう。最初話しを聞いたときに一つわからないことがあったんだよ。そもそも何で達郎は横領をしなければ行けなかったのか。」

 

灯「それは何かお金が必要だったんじゃないの?」

 

廻「でも達郎は副社長だぞ?そんな立場のやつが金に困るか?」

 

灯「でもだったらなんで横領なんか…」

 

廻「そう、だから俺も横領したことが疑問だったんだ。」

 

弘人「で、なんで達郎は横領したんだよ?」

 

廻「それは家族には内緒で金を動かさなければならなかったからだ。」

 

胡桃「? え、どういうこと…ますますわからないよ…」

 

廻「結論から言うと、黒木達郎は『不倫してた』んだよ。」

 

友里愛「!!」

 

真理「ま、まさか…お父様に限ってそんなことするわけが!」

 

三人は『父親』としての黒木達郎しか知らないからそうなるのも無理はないな。

 

信条「残念ながら事実だよ。調べていくうちに黒木達郎は一人の女性と関係を持っていることが分かった。それも結婚している間にね。で、通帳とかを調べたり本人に横領で捕まってから事情を聞いていると、『家族にバレずに金を渡すために横領に手を染めた』って言ってたよ。家計の管理は元の奥さんがやってたみたいだから下手に金を動かすとバレると判断したみたいだ。」

 

まあ、その結果横領がバレて取り返しのつかないことになったんだけどな。

 

弘人「ん?でもなんで今更そんなことを隠すんだよ?もう離婚してるんなら金のやり取りくらいどうってことないように思えるんだが…」

 

廻「離婚してからはお金の件に関しては堂々としてただろうよ。けど、多分達郎自身もその女性に脅されてたんじゃないのか?だからお金を渡し続けていた。」

 

信条「そうだな。確かに取り調べで脅されたとも言ってたな。ただの金づるにしかされてなかったみたいだ。で女性から『金を渡すのを断れば関係を元奥さんにバラす』ってな。」

 

弘人「それでも今更元奥さんにバレるのが嫌な理由がなくないか?」

 

廻「…まだわからないのか?」

 

弘人「?」

 

玲央「…『不倫に対する慰謝料は3年の間は請求できる』そういうことだな?」

 

廻「そういうことだ。」

 

娘たちが高校生になってから離婚してるからまだ離婚して数ヶ月しか経ってないからな。友里愛さんは高校一年で二人は中3だから計算は合うな。

 

灯「そっか!だからバレるのを恐れてたんだ!」

 

やっと理解してくれたか。話しを戻すか。

 

廻「けど、それも長くは続かないで胡桃のお父さんに横領がバレて退職した。」

 

胡桃「逆恨みってまさか!?」

 

廻「そう。横領がバレたことを逆恨みして胡桃のお父さんを恨んだんだよ。で、今回のことを計画したってわけだ。」

 

廻「達郎の計画はおそらくこんな感じだろう。まず、会社で聞いた胡桃の性格を利用して、胡桃のイタズラで怪我をしたように見せかける。そのために娘たちには学校にいたクラスメイトと連絡を取らせて達郎に逐一報告する。そしてワックスがけを胡桃たちがやることを知り、今回の事件を起こした。」

 

廻「で、噂を流して胡桃を陥れるってわけだ。そしてその後だ。」

 

むしろこっちの方が本命だろうな。 

 

廻「胡桃を陥れた後は、そのことをネタに胡桃のお父さんを脅迫するつもりだったんだろうな。」

 

信条「その可能性は高いな。計画書が達郎の部屋の引き出しに保管されてたよ。で、その中身は胡桃さんを陥れた後に、娘たちに写真を撮るか録音して証拠を残して、胡桃さんのお父さんを脅迫する計画が書かれていたよ。」

 

全く胸糞悪いな…自分が悪くて捕まってんのに逆恨みして関係ない人たちを巻き込みやがって。

まあその計画もこうやってバレたから意味ないけどな。

 

廻「まあ、その計画ももうこうやってバレてるから意味ないけどな。大方慰謝料とか言って金を騙し取る計画だったんだろうな。」

 

友里愛「…つまり、私達は最初からお父様にいいように利用されていたってことですか。」

 

廻「そうなりますね。」

 

俺がそう言うと友里愛が胡桃の方を見る。

 

友里愛「胡桃さん…」

 

胡桃「…」

 

友里愛「許してもらえるとは思ってない。けど、お父様のせいで迷惑をかけたわね。」

 

胡桃「…え?」

 

友里愛「ごめんなさい…」

 

胡桃「!」

 

予想以上に素直に謝る友里愛に驚きを隠せない。

てか、わがままに育ったって言ってたからどんな子たちかと思ったら意外に素直じゃねえか。

そう思っていると…

 

真理「私は認めないわ!」

 

美緒「そうよ!」

 

友里愛「真理、美緒…」

 

どうやらこの二人は認めないようだ。というより父親に利用されていたなんて信じたくないんだろうな。

 

真理「だって、お父様が言ってたじゃない、『悪いのは胡桃さんのお父さん』だって!」

 

美緒「えぇ、お父様が大変だから、横領なんて黙ってれば良かったのよ!お父様も『後でお金を返すから大事にしなくても良かった』って…」

 

廻「…バカだな。」

 

真理「…はい?」

 

廻「『バカ』だと言ったんですよ。勿論あなたたち二人に。」

 

美緒「わ、私達がバカですって!ふん、何と言われようが結構。あなた方のような庶民には一生わからないことですよ。」

 

廻「そういうことを言ってるんじゃないんですよ。」

 

真理「?」

 

廻「不倫なんかして、しかも今回みたいに関係のない人を傷つけるような計画を立てる人が横領した金を『後で返す』なんて本気で信じてるんですか?悪いけど、俺は信用できないね。」

 

美緒「っ…」

 

俺がそう言うと思うところがあるのか、美緒さんは黙ってしまった。

 

真理「け、けど、この計画がうまく行けば、私達も転校してお父様はまた3人で暮らせるって!」

 

廻「…本当にそうですか?」

 

真理「え?」

 

廻「…信条さん、計画には娘さんたちのことはなんて書いてあった?」

 

信条「…おいおい、そこまで言う必要あるのか?」

 

廻「素直に謝ってたら俺もそこまで言わなかったよ。けど、そうじゃないから少し現実を見てもらおうと思ってな。」

 

信条「…仕方ねえな。」

 

真理「げ、現実?」

 

信条「…計画では奪い取ったお金は一切娘にやらないと書いてあったよ。理由をつけて働かせるか、比較的お金のかからない公立高校に転校させるつもりだったらしい。」

 

真理「!!」

 

廻「そういうことです。それにもし失敗してもあなたたちが『勝手にやったこと』にして自分は責任を取るつもりはなかったみたいです。」

 

成功したら金は全部自分のもので、失敗したら娘たちのせい…

父親失格だな。

 

真理「そ、そんな…じゃあ私達は今まで何のために!人まで傷つけたのよ!それを…それを…」

 

追い打ちをかけるようで悪いが俺は、話しを続ける。

 

廻「それにそもそもあんたら本当に関係のない胡桃たちを傷つけたまま何事もなかったかのように暮せるのか?」

 

真理「!」

 

廻「…実は3人に聞いてもらいたいものがあります。」

 

3人「?」

 

そう、実は玲子さんの伝言を録音していた。

そうして俺は録音を再生した。

 

‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾

玲子『友里愛、真理、美緒、久しぶりね。』

 

友里愛「お、お母さん…」

 

美緒「今更何を…」

 

友里愛「黙って聞きましょう。」

 

そうして三人は玲子さんの伝言を聞くことにしたようだ。

 

玲子『今回のことは廻さんから聞きました。…バカなことをして。』

 

玲子『…まずあなた達はこれからあの人と離れて暮らしなさい。私も離れることができるように動くわ。』

 

美緒「は!?」

 

いきなりのことで驚いている。そりゃそうだろうな。いきなり『親と離れろ』なんて言われたら誰でもビックリするよな。

 

玲子『もしも廻さんから真相を聞いてるなら分かってると思うけど、あの人と一緒に居てもあなた達にいい影響はないわ。むしろ悪影響でしかないわ。』

 

玲子『そうして、あなた達はやってしまったことを後悔して、許されなくてもずっと謝り続けるのよ。』

 

そこで録音が終わった。

 

‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾

美緒「な、何よこれ!いきなりお父様と離れろとか!意味わからない!」

 

真理「そうよ!別れて結構経つのに、今更母親面して!それに、お父様と離れたら私達はどうやって暮らすのよ!」

 

ここまで玲子さんが言ってるのにわからないのか…

俺が口を開こうとしたときだった。

 

友里愛「いい加減にしなさい!」

 

真理「お姉様…」

 

友里愛「もう、もういいでしょう…」

 

美緒「でも!」

 

友里愛「あなた達ももう気づいてるんじゃないの?」

 

真理「な、何を…」

 

友里愛「横領事件があった後にお父様に会いに行ったときにお父様が何て言ったか覚えてる?」

 

友里愛「お父様、あの人、最初の第一声が私達への謝罪や心配じゃなくてお金のことだけしか話してなかったでしょ?」

 

真理「で、でも…」

 

友里愛「あの人は私達のことなんて何も考えてないのよ。」

 

なるほどな…人は窮地に立たされると本性が出るって言うけど、捕まった達郎もそうだったんだろうな。

で、その達郎を見て友里愛さんも思うところがあったんだろうな。だからさっきも一人、素直に謝ったんだろうな。

 

廻「もう、大人になったらどうだ?」

 

美緒「え?」

 

廻「お父様がとか、誰かが言ったからじゃなくて『自分がどうしするのが良いのか』考えろって言ってんるんだよ。」

 

『誰かが言ってるから』なんて考えで行動してる内はまだまだ子どもだな。

 

信条「…そろそろいいかな?」

 

友里愛「…はい。刑事さん、お願いします。」

 

そうして三人は信条さんと他の警察の人に連れて行かれた。

 

その時に一瞬友里愛さんが「本当は私もお母さんと暮らしたかったな…」と言ったのを聞き逃さなかった…

 

本当は玲子さんの愛情も三人は分かってたのかもな…

 

まあ、何はともあれ

 

廻「事件解決だな。」

 

春奈「終わったんですね。廻さん、本当にありがとうございました!」

 

春奈さんに続いて2人も廻にお礼を言う。そして…

 

胡桃「あ、ありがとう…」

 

廻「…何だ、照れてるのか?」

 

胡桃「ち、違うよ!」

 

前の仕返しだ。…意外と俺は根に持つタイプだぞ。

 

廻「そうか?顔が赤いぞ?」

 

胡桃「!〜!?」

 

そういうと胡桃はそっぽ向いてしまった。

 

廻「…やっば」

 

灯「あ〜あ、廻、やっちゃったね。」

 

廻「おい、弘人、こういうときどうすればいいんだよ?」

 

灯「私、しーらない!」

 

…おいおい、勘弁してくれよ……

 

 

こうして有栖川学院での事件は幕を閉じた。

 





事件の真相
事故ではなく事件。そして、達郎の娘たちの自作自演だった。
そして達郎は娘たちを利用して、胡桃の父親を強請って金を奪いとる計画を立てていた。

以上です。


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悪魔のイタズラ エピローグ


第三話エピローグです。遂に第三話完結です。どうぞ!


 

数日後 音楽スタジオ「TRY」

 

あれから達郎の娘3人は施設に引き取られることになった。

当然その前に玲子さんにも引き取るように話しがいったけど、玲子さんは断ったらしい。

まあ、玲子さんも娘たちも今更どう接していけばいいかわからないだろうからな…

 

けど、これから少しずつでもお互い歩み寄っていってほしいな。

実際玲子さんも伝言では言ったなかったけど、「自分も娘たちを見捨ててこうなった責任があるから、時間が経って娘たちがやり直せていたら少しずつ会いに行きたい。」って言ってたからな。

 

せめて娘たちと玲子さんと仲がうまくいくように願うしかないな。

 

ちなみにあれから達郎がどうなったのかと言うと……

これが一言で言うとまあ胸糞悪いんだよな…

結果的に今回の有栖川学院での件は何も罪に問われなかった。

達郎が娘たちを唆していた時の録音や映像もないし、計画書だけでは事件性を立証できない、って判断かららしい。

 

まあ、横領の件は勿論、娘たちも施設に入って達郎からいなくなるし、会社も当然クビだから達郎に残ってるものは何もないからそれが達郎への罰じゃないかってのが俺たちの結論だ。

 

灯「あの3人、大丈夫かな?…」

 

廻「大丈夫だろ。」

 

俺たちからはうまくいくように願うしかできないけど、友里愛さんがしっかりしてるし、大丈夫だろ。それに…

 

廻「人はやり直せるだろ?だから大丈夫だろ。」

 

灯「廻…うん!そうだね!」

 

 チリーン チリーン

 

おっと、誰か来たようだ。

 

廻「いらっしゃ…ってまた来たよ…」

 

乙和「ちょっと!出会ってすぐに『また』って失礼じゃない!」

 

灯「あ!乙和ちゃん、こんにちは!」

 

乙和「灯、久しぶり!」

 

…こっちもいつの間にか仲良くなってるよ。

 

廻「…で、なんのようだよ?」

 

乙和「用がなきゃ来ちゃいけないの?」

 

廻「別にそうはいってないだろ…」

 

乙和「まあ、練習もなくて暇だから遊びに来ただけだよ。…あ、そう言えば!」

 

廻「?」

 

乙和「ノアから依頼を受けてたんでしょ!?何で私にも言ってくれなかったの!?」

 

いや、なんでわざわざ言わなきゃいけないんだよ…

てか、あいつ、結局言ったのかよ…

 

廻「それぐらい言わなくてもいいだろ…」

 

乙和「ぶー!廻のケチ!」

 

 チリーン チリーン

 

また誰か来たな。今日はよく来るな。

 

廻「いらっしゃ…もう驚かねぇぞ…」

 

胡桃「?何に驚くの?」

 

乙和「胡桃ちゃん!春奈ちゃん!」

 

灯「あー、胡桃ちゃん!あれから大丈夫だった?」

 

胡桃「うん!なんとかね。春奈ちゃん達の助けもあって何とか事件の真相も広まってるからね。」

 

春奈「まだまだ完全に収まったとは言えませんが、少しずつ事態は落ち着いてきてます。」

 

そりゃ良かった。

 

廻「順調そうで何よりだな。」

 

胡桃「うん。本当にありがとう!」

 

元気になってなによりだ。みいこたちに聞いてた通りに元は元気な子だな。

 

胡桃「あ、そうだ。忘れないうちに…」

 

そういうと胡桃がポケットに手を入れて何かを取り出していた。

 

胡桃「手を出して。」

 

廻「ほらよ。…因みにそれはカエルのおもちゃとかじゃないよな?」

 

胡桃「…」

 

……おい

 

胡桃「…ち、違うよ?」

 

…わっかりやす……

 

廻「じゃあ、手に持ってるもの見せてみな。」

 

そうして胡桃が手を開くと、やっぱり手のひらにはカエルのおもちゃがあった。しかも結構リアルなやつが。

 

胡桃「何で分かったの?」

 

廻「ん?あぁ、事前にみいこたちから胡桃がやったイタズラのことは聞いてたからな。大体想像できた。それと、ポケットが妙に膨らんでいたぞ。だから何か入ってるって分かったから何かイタズラするって予想したんだ。」

 

胡桃「ぶー、つまんない…何でイタズラのこと言っちゃうかな…」

 

俺が説明すると胡桃は不貞腐れてしまった。

 

春奈「もう、胡桃さん!不貞腐れないでください!今日来たのは改めてお礼を言うのと、御礼の品を渡すためでしょ?」

 

そういうと春奈さんが灯に御礼の品を渡した。

 

春奈「改めて先日は胡桃さんを助けていただきありがとうございました!良かったらこれを皆さんで食べてください。」

 

そうしてケーキが入った箱を灯に渡す。

 

灯「え?こ、これって行列ができることで有名なところのケーキだ!本当にいいの!?」

 

春奈「ええ。皆さんにはお世話になりましたから。」

 

弘人「これって予約も一ヶ月待ちが当たり前の店のだろ!金持ちって凄えな…」

 

まあそういう繋がりもあるってことだろうな。

 

春奈「もう、胡桃さんはいつまで不貞腐れてるんですか…」

 

胡桃「だって……!」

 

不貞腐れていた胡桃だったが、急に笑顔になった。

…なんか嫌な予感がするな……

 

胡桃「廻さん、ちょっとしゃがんでよ。」

 

廻「いいけど…なんでだよ?」

 

胡桃「いいから!」

 

…まあ、しゃがむくらいならいいか…

 

廻「ほら、これでいいか?」

 

胡桃「うん、ありがとう!」チュ

 

………

………………え?

 

春奈「く、く、く、胡桃さん、あなたい、今!き、きす」

 

それを見た全員が混乱する。

 

胡桃「ハハ、慌ててるいいんちょ面白い!」

 

いや、笑い事じゃねえから!なにわろてんねん!

 

胡桃「私、廻さんのこと、気に入っちゃった。これからもよろしくね!」

 

え、えー……

 

 ポンポン

 

廻「ん?」

 

灯・乙和「さ、説明してもらおうかな?」

 

廻「ハ、ハハ…」

 

廻「…」

 

廻「サラバ!」ダッ

 

よし、逃げ…

 

 グッ

 

乙和「二度も逃げれると思った?」ニコッ

 

…はぁ、めんどくせ……

 

弘人「ハハ、またライバルが増えて残念だったね、灯ちゃん?」

 

廻「?ライバル?一体何のだよ?」

 

灯「廻は知らなくていいの!弘人も余計なこと言わないでよ!」

 

乙和「そうだよ!まさか胡桃ちゃんまで…」

 

胡桃、ってかそうだ!

 

廻「おい、胡桃!さっきのは一体…って」

 

胡桃「じゃ、私はこれでまたね!」

 

廻「いや、『またね』じゃなくて…」

 

乙和「コラー!話しを逸らすな!」

 

…仕方ねえな……まあ、なるようになるか。

今はこの小悪魔のイタズラをどうにかしないとな。

 

                   To Be Continued…

 





次話予告
ある日いつも通り大学に向かおうとしていると、スマホを家に忘れて?
そこからとある事件に巻き込まれていく廻!そして出会うパリピなDJグループの一員と出会うことで廻の長い一日が始まる。

それではまた次回お会いしましょう!


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エピソード4 Merm4id編
廻と茉莉花の長い一日 その1



皆さん、大変お待たせしました!第4話投稿です!
そしてサブタイトルから分かる通りMerm4idのメンバーが絡んで来ます!

それでは本編どうぞ!


 

AM 6:30 春田家

 

その日、俺は用事が合ったからいつもより少し早くに起きた。

 

廻「行ってきます。」

 

実「あら、廻くん。今日はいつもより早いのね。」

 

廻「あぁ、今日はちょっと用事があるから早く出ます。」

 

実「そうなの。気をつけてね。」

 

廻「はい。」

 

そうして、家を出た。

 

 

数分後…

 

 

廻「あ、やべ。スマホ忘れたか…」

 

まあ、まだ間に合うしスマホ取りに戻るか。

 

そしてスマホを取りに戻ったわけだがまさかこれがながーい一日の始まりになるとはこのときは思いもしなかった…

 

‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾

よし、もうすぐで家に到着だな。

 

あと数メートルで春田家に着くというタイミングでそれは起こった。

 

 …〜〜!

 

ん?

何か聞こえるな…気のせ……

 

 〜〜〜!!

 

…どうやら気のせいじゃないみたいだな。

 

廻「(はぁ…朝から面倒事は嫌だぞ…)」

 

そう思いながらも声のするほうを見る。

 

廻「…何か追いかけられてるな……」

 

よく見ると一人の女性が数人の男に追われているようだ。

しかも、何か俺の方に来てねぇか?

 

男「待ちやがれー!!」

 

?「誰かー!助けてー!  !」

 

どうやら女性の方が俺に気づいたようだ。

 

?「すみません!追われてるんです!助けてください!」

 

廻「見れば分かるよ。取り敢えず後ろに隠れてな。」

 

?「! ありがとう〜!」

 

なんか、ふんわりしてるな…追われてるって自覚あるのか?

 

男「ん?なんだ兄ちゃん」

 

男「すまねえが、そこをどいてくれないか?」  

 

廻「まあ、あんたらがこの人の知り合いとかならそうしてもいいんだけどな。どう見てもそうじゃないだろ?」

 

男「チッ。こっちも時間がないんだ。お前らやれ!」

 

ったく、朝から体使わせるんじゃないよ。

 

男「フン!」

 

まずは男のパンチを避ける。

そして、そのまま殴りかかってきた男のお腹に一発殴りをいれる。

 

廻「ほらよ。」

 

そうして気絶した男を男たちの群れに投げる。

 

男「うわーー!!」

 

男「おま、避けろや!」ドン

 

投げた男を避けれなくて男たちの集団が一斉にコケる。

フー、スッキリしたな。……ん?

 

廻「…おいおい、マジかよ…」

 

遠くを見るとこの男たちの仲間と思われるグループがこっちのメンバーと合流しようといていた。

 

流石にこれはまずいな…

 

?「どうしよ!」

 

廻「話しは後で。取り敢えず逃げるぞ!」

 

そうして女性の手をつかんで走り出す。

 

‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾

AM 7:30

 

あれからどれくらい逃げて来たかわからないが、大分遠くまで逃げれたから取り敢えず大丈夫だろう。

 

?「た、助けてくれてありがとう!」ハアハア

 

息が上がりながらもお礼を言う女性。

 

廻「どういたしまして。意外と息が上がってないんだな。」

 

?「まあね〜!DJやってるからそれで体力があるのかも。」

  

ふーん、なるほどねぇ。しかし、またDJか。最近はよくDJやってる人との関わりが多いな。

 

?「けど、あなたこそ、全く息が上がってないように見えるけど、何か運動してるの?」

 

廻「まあ、俺も鍛えてるからこれぐらいなら平気だ。」

 

?「…というよりもあなたどこかで見たことあるような?」

 

廻「別に俺のことなんてどうでもいいだろ…」

 

?「いや、でも……あっ!あなた最近噂の探偵さんでしょ!?」

 

廻「…まあ、そうだけど……」

 

少しは、人の話し聞けよ。

 

?「それに最近、『胡桃ちゃんが助けてもらった』って言って写真も見せてもらったの〜!」

 

廻「なんだ、胡桃たちと知り合いなのか。」

 

?「そうなの!D4FESで知り合ってね。」

 

なるほど、D4FESでねぇ……ってことはD4FESの出場者ってことか。

 

茉莉花「あっ!そう言えば、自己紹介がまだだったね。私は『水島茉莉花(みずしま まりか)』だよ〜!Merm4id(マーメイド)っていうDJグループで活動してて、大学2年生だよ!」

 

廻「…音咲廻。同じく大学2年。」

 

茉莉花「同じ2年生なんだ〜!じゃあ、これからもタメ口でいいね!」

 

また、灯みたいに距離感が近い人が出てきたな…

 

廻「まあ、それは別にいいんだけど。そろそろ何があったか教えてくれないか?」

 

ここでようやく本題に入る。

 

茉莉花「実は…」

 

廻「…」

 

茉莉花「私にもよくわからないの。」

 

廻「…ん?わからないって?」

 

茉莉花「言葉通りの意味よ〜。何で追われてるのか私にもわからないの。」

 

廻「…じゃあ取り敢えず警察に相談するしかないな。」

 

茉莉花「だよね〜!」

 

廻「『だよね〜!』って、あのな、事態の深刻さ分かってるのか?」

 

茉莉花「わかってるよ〜」

 

ほんとうかよ…

 

廻「じゃあ、気をつけていけよ…」

 

そうして大学に向かおうとしたときだった。

 

廻「…っ!隠れろ!」

 

茉莉花「え!?」

 

廻「いいから、早く屈め!」

 

距離は離れているが声を出せばバレる位置に男たちがいた。

 

くそ、もう追いついて来たのか…

 

 いたか? いや、こっちにはいねぇ。

 

 『あの人』からの命令は?

 

 ついさっきあった。『あの女も庇った男も連れてこい』だそうだ。達成できれば報酬が上がるとも。

 

よっしゃ!それじゃ早く終わらせて金もらって帰るぞ! ダッダ

 

廻「…よし、行ったか……」

 

それにしても、『報酬』か…あいつらはただ雇われただけなのか?しかも『連れてこい』か…行って無事で済むとも思えねえな

 

…はぁ、仕方ねえなぁ……

 

廻「今だ、行くぞ。」

 

茉莉花「え?」

 

廻「俺も帰ろうとしたけど、女性一人で心配だし、俺も無関係じゃなくなったみたいだから警察署までついて行ってやるよ。」

 

茉莉花「本当に〜!!ありがとう!」

 

…また面倒事に巻き込まれたな……

 

そうと決まれば連絡をしないとな。朝早いけどあいつら起きてるか?

 

廻「…あっ…」

 

そうだったー!そう言えば、家にスマホ忘れてきたんだった…

先に取りに行くか?いや、距離があるからな……そうだ!

 

廻「水島」

 

茉莉花「ん、何?あと『茉莉花』でいいよ。」

 

廻「…茉莉花、スマホを貸してくれないか?」 

 

茉莉花「…流石に初対面の人にスマホを見せるのはちょっと…自分のスマホはどうしたの?」

 

そういうのはきっちりしてるのな。ちょっと感心。ってそんな場合じゃなくて…

 

廻「家に忘れた。」

 

茉莉花「え!廻ってスマホなくても大丈夫な人なの!?」

 

廻「そんなわけねぇだろ。今だって連絡できなくて不便なんだから…」

 

今の時代スマホが無いと不便だっての。だからって依存症ってわけでもないけどな。

 

茉莉花「仕方ないな…。連絡だけにしてよ?」

 

そう言って茉莉花が俺にスマホを渡す。

 

廻「ありがとう。じゃ、早く連………」

 

茉莉花「あれ〜、どうしたの?」

 

廻「…スマホの充電切れてるぞ。」

 

茉莉花「……あっ!」

 

茉莉花「…そう言えば、昨日寝落ちしてそのままだった……」

 

廻「おいおい、マジかよ…」

 

茉莉花「なんか、ごめんね…」

 

廻「別に茉莉花が謝る必要はないよ。取り敢えずここにいても仕方ないから公衆電話に向かうぞ。」

 

茉莉花「えー!令和のこの時代に公衆電話なんてあるの!?」

 

廻「別に全部が撤去されたわけじゃないからあるよ。幸い、近くの公園にあるから行くぞ。」

 

茉莉花「そうだね〜。」

 

そうして取り敢えず公園に行くことにした。

 

‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾

AM 8:30

 

廻「そう言えば」

 

茉莉花「ん〜?」

 

廻「茉莉花はこんな朝早くから何しようとしてたんだ?それにやけにスマホを見せたがらなかったし。」

 

茉莉花「あ〜、それはねぇ、モデルの撮影が合ったからだよ〜。」

 

廻「モデル?へぇ~、モデルやってるのか。」

 

茉莉花「あれ?驚かないの?」

 

廻「そりゃまあ、知り合いに事務所に所属してDJやってるやつらを知ってるからな。」

 

今更モデルぐらいで驚かねぇぞ。

 

廻「つまり、モデルをやってるから情報が漏れないようにスマホを見せたくなかったのか。」

 

茉莉花「そうだよ、流石、探偵さん!」

 

そりゃどうも。

 

廻「てか、モデルってこんな朝早くから撮影してるのか?」

 

茉莉花「いや、いつもはこんな朝早くからはないんだけどね。昨日スタジオの人からいきなり連絡が来てね。それでスタジオに向かってたの。」

 

廻「…」

 

茉莉花「けど、スタジオに着いたと思ったらいきなりあの男の人たちに襲われそうになって…」

 

廻「それで逃げてきたってことか。…てか、それスタジオのやつ怪しくないか?」

 

茉莉花「う〜ん…どうだろ?あんまりスタジオの人と話さないからわからないや…」

 

廻「そうか…」

 

取り敢えず、今はあいつらと連絡取らないとな…

 

 

 





事件メモ
・男たちは誰かから雇われているかも?
・茉莉花はスタジオに着いていきなり男たちに襲われそうになった。

Merm4idの水島茉莉花の護衛を受けた廻。二人のスマホが使えずに連絡が取れない中、廻は無事に茉莉花を守ることができるのか?

それではまた次回お会いしましょう!


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廻と茉莉花の長い一日 その2


前回までのあらすじ
用事がある廻が家を出たとこで男性に追われている女性と出会う。それはDJユニット「Merm4id」の水島茉莉花だった。
成り行きで茉莉花を助けることになった廻も男たちから追われることに。果たして男たちの目的とは?
それでは本編どうぞ!



 

AM 9:00 公園

 

廻「よし、公園に着いたぞ。」

 

あれから男たちに見つからずに公園まで来れた。

 

茉莉花「早く公衆電話を探そう!」

 

廻「そんなに急がなくても目の前にあるだろ?」

 

茉莉花「あっ!ほんとだ〜!」

 

俺たちの目の前にはすぐに公衆電話がある電話ボックスがあった。

 

廻「取り敢えず、俺が電話を掛ける。茉莉花は念の為外を見ててくれ。それと男たちが来たらすぐに逃げれるようにな。」

 

茉莉花「は〜い」

 

相変わらず気が抜ける返事だな…まあ、今はどうでもいいか。

取り敢えず信条さんの番号にかけるか。

 

 チャリン

 

お金を入れて番号を押していく。

 

信条「…もしもし?」

 

お、出てくれたか。

 

廻「信条さん、廻だ。」

 

信条『何だ、廻か。こんな朝早くからどうしたんだ?それに公衆電話からだからビックリしたじゃねえか。』

 

そりゃ今どき公衆電話から掛けるやつなんていないから驚くだろうな。

 

廻「取り敢えず手短に話すぞ。俺たち誰かに追われてるみたいだ。」

 

信条『はぁ!?追われてる?誰に?』

 

廻「それはわからない。けど、追われてるのは確かだ。追ってきてるのは男が数人だ。」

 

信条『そうか。取り敢えず場所はどこだ?迎えに行ってやるよ。』

 

廻「場所は…」

 

茉莉花「ちょっと、廻!来たよ〜!」

 

廻「ッチ、もう来たか。悪いどうやらゆっくり話してる暇はないみたいだ。また後でかけ直す。」ガチャ

 

信条さんが何か言ってたみたいだが、男たちが近づいてきたためすぐに電話ボックスから離れることにした。

 

 

数分後…

 

何とか男たちに気づかれる前に逃げ切ることができた。けど…

 

茉莉花「結局、私たちの場所伝えれなかったね…」

 

廻「悪かった…」

 

茉莉花「別に謝ることはないよ。けど、どうして私たちの場所が分かるんだろ?」

 

廻「(確かにさっきから俺たちの場所がピンポイントで当ててやがる…相手はどうやって俺たちがいる場所を知ってるんだ?)」

 

なにかの手段を使ってるとは思うけど、一体どうやって?

まあ、今は逃げることだけで精一杯だから、そこまで考えられねぇな…

 

廻「取り敢えず、歩いて警察まで行くしかないな。」

 

茉莉花「そうだね。」

 

せめてお金があればタクシーでも使えるんだけどな。俺も茉莉花も今は手持ちのお金がないから歩くしかないみたいだ。

 

そうして俺たちは警察に向かって歩き出した。

 

‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾

AM 9:30

 

結構歩いたと思ったが、警察まではまだまだだな…

そんなことを考えながら歩いていると……

 

廻「っ!まただ。茉莉花、こっちだ!」

 

目の前にまた男たちがいた。

 

警察からは離れるが、見つかるわけにもいかず進路を変える。

さっきからもうずっとそうだ。目の前に男が現れては進路を変更している。

 

廻「(まるで誘導されてるみたいだな…気のせいか?)」

 

流石に考えすぎか……

 

そんなことを考えていると一つの店が目に入った。

 

廻「携帯ショップか……いや、待てよ、もしかしたら…。茉莉花、入るぞ。」

 

茉莉花「えっ、携帯ショップ?」

 

廻「事情を話して茉莉花のスマホを充電させてもらおう。」

 

茉莉花「携帯ショップで充電できるの?」

 

廻「そこは話して見ないとわからないな。」

 

茉莉花「そうだね〜。取り敢えず話すだけ話してみようか。」

 

そうして店の中に入る。そして……

 

廻「何とか、充電させてもらえるみたいだ。」

 

茉莉花「やったー!」

 

最初に話した店員には怪しまれたが、最終的に店長が出てきて事態を把握してくれて、充電を許可してくれた。

 

廻「取り敢えず、長居するわけにはいかないから、30分充電したら店を出るぞ。」

 

茉莉花「そうだね~。お店にも迷惑をかけれないからね。」

 

それにいつ男たちがまた近づいてくるかわからないからな。

 

そして、30分間充電させてもらった。

 

‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾

30分後… AM 10:00

 

廻「さて、充電ができたことだし、店を出るか。急なお願いを聞いてくださってありがとうございました!」

 

茉莉花「ありがとうございました!」

 

店員「お役に立てて何よりです、またのお越しをお待ちしております。」

 

店員にお礼を言って店を出る。

 

廻「何%まで充電できたんだ?」

 

茉莉花「45%みたい。」

 

廻「そうか。連絡を取るためなら十分だから、無駄遣いしないようにしないとな。」

 

茉莉花「は〜い。…ってなにこれ!?」

 

廻「どうした?」

 

茉莉花が驚きながらも、スマホの画面を見せてくる。

 

 水島茉莉花 見かけた

 

何だ?SNSでエゴサでもしてたのか?

……ん?

 

廻「何だよ、これ…今日の日付で茉莉花の目撃情報がたくさんあるじゃねぇか…ってことは、待てよ?」

 

もしかして今まで俺たちの位置がバレれたのって…

 

廻「茉莉花の目撃情報で俺たちの位置がバレてたのか…」

 

全く上手くSNSを使ったもんだ……

 

茉莉花「あっそうか、私モデルだから……」

 

廻「しかも、変装してないからな。でも、これで『何で俺たちの位置が分かるか』は分かったんだ。だったら、対策が取れるだろ?」

 

茉莉花「?」

 

廻「変装しに行くぞ。」

 

そうして、俺たちは一旦目的地を警察署からショッピングモールにして中にある服屋を目指すことにした。

 

金は、まあ途中のATMで降ろすしかないか。仕方ない、これも必要経費ってやつだ。

 

‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾

同時刻 音楽スタジオ「TRY」

 

そして、俺たちがショッピングモールを目指していたとき、灯たちにも動きがあった。

 

灯「…ねぇ、廻遅くない?」

 

今日は皆で集合して遊びに行こうって話てたのに……

 

弘人「そうだなぁ…いくらなんでも遅すぎる。もうとっくに集合時間過ぎてるぞ…」

 

そうなんだよね…今まで廻が約束の時間に遅れたことないのに…それに遅れるなら連絡してくれるから…

 

 ♪♪♪

 

弘人「あれ、信条のおっさんからか。俺にかけてくるなんて珍しいな…」

 

確かにいつもなら廻に電話かけてくるよね。

 

弘人「もしもし?」

 

信条『…お、良かった。弘人は出たな。』

 

弘人「何だよ、『弘人は』って。それより俺にかけてくるなんて珍しいな。」

 

信条『あぁ、実はさっき廻のやつから電話がかかってきてな。』

 

弘人「廻から?なんで?」

 

信条『いや、俺も詳しくは聞けなかったけど、「追われてる」って言ってたぞ。』

 

弘人「はぁ!?追われてる!?」

 

……え?

 

弘人のその言葉に驚き耳を傾ける。

 

信条『あぁ。追われてるのは本当みたいだ。俺と話している時も切羽詰まる様子だったしな。それに追手が来たみたいで途中で電話が切れたからな…』

 

弘人「そっちで廻たちの場所は分からねぇのか?発信元辿っていけないか?」

 

信条『いや、発信元が公衆電話だから追うのは難しいな…』

 

弘人「そうか…」

 

信条『あぁ、それと廻の近くに女性が居たな。』

 

弘人「女性?」 

 

信条『あぁ、誰かは分からないけどな。電話から聞こえてきた。』

 

弘人「分かった。また何かあったら連絡してくれ。」

 

信条『あぁ。』

 

そうして弘人が信条さんとの連絡を終える。

 

玲央「…どうやら遊んでる場合じゃないみたいだな。」

 

弘人「そうみたいだな。さて、どうにかして廻と連絡を取らないとな…」

 

灯「私が廻のスマホに電話をかけてみるね。」

 

そうして今度は私が廻に電話をかける。

 

♪♪♪♪♪

 

 

♪♪♪

 

中々でないな……

 

綾「もしもし?」

 

灯「…あれ、綾ちゃん?」

 

ようやく出たと思ったら綾ちゃんが電話に出てきた。

 

灯「何で綾ちゃんが?」

 

綾「その声、灯お姉ちゃん?」

 

灯「そうだよ。それよりどうして綾ちゃんが?」

 

綾「何でって、おにぃの部屋に電話があったから…」

 

もしかして……

 

灯「ねぇ、綾ちゃん?廻は家にいる?」

 

綾「ん?おにぃなら朝早くに出ていったけど?」

 

灯「分かった。ありがとうね。」ピッ

 

電話を切って弘人たちに言う。

 

灯「…廻、電話を家に忘れてるみたい……」

 

弘人「マジかよ…こんな時に限ってスマホを持ってないのかよ」

 

灯「けど、取り敢えず廻の場所を調べないと……」

 

 チリーン チリーン

 

そんなことを話していると、「TRY」に誰か入ってきた。

 

‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾

AM 11:00

 

あれから歩いて何とかショッピングモールに着いた。

そうして今はショッピングモール内の某服屋に来ていた。

 

廻「さて、服ぐらいさっさと選んで出るぞ。」

 

いつまたあの男たちが襲ってくるか分からないからな。

のんびりしているわけにはいかない。

 

茉莉花「そうだね。」

 

廻「じゃ、俺はメンズの方を見てくるか…」

 

茉莉花「ちょ、ちょっと!」

 

廻「ん?」

 

茉莉花「『ん?』じゃなくて〜!私たち襲われてるんだよ!」

 

……あっ

 

廻「悪い。一人になるべきじゃなかったよな。」

 

茉莉花「う、うん…」

 

たく、もうちょっと危機管理をしっかりとしないとな。

 

廻「じゃあ茉莉花の方から選ぶか。早く行こうぜ。」

 

そうして女性物の方に進んで行こうとするが……

 

廻「?どうしたんだ?」

 

急に茉莉花が足を止める。

 

茉莉花「ごめんね、廻を巻き込んじゃって…」

 

…はぁ、たく何を言うかと思えば……

 

廻「別に今更だろ。それに巻き込まれるのは慣れてるから気にするな。」

 

茉莉花「ふふっ。」

 

廻「…なんだよ?」

 

茉莉花「いや、廻って優しいんだね。」

 

廻「…それは過大評価し過ぎだ。…ってか早く行くぞ。」

 

茉莉花「うん!」

 

‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾

一時間後 AM12:00

 

一時間経ってようやく買い物が終わった。

………女性の買い物長過ぎだろ…まあ、いいけど…

 

廻「っと、これで変装完了だな。」

 

茉莉花「そうだね〜」

 

服装は変わったからこれで少しは奴らを巻けるだろう。

 

廻「さて、行くか…っと…」

 

茉莉花「…やっぱり、ショッピングモールにも入ってきてたんだね…」(小声)

 

廻「みたいだな。よし、今のうちに行くぞ。」

 

そうして男たちにバレないように歩いてショッピングモールを出た。

 

廻「よし、これからまた警察署に向かうぞ。」

 

大分寄り道したけど、これで警察署に行けるな。

 

茉莉花「…ねぇ、廻?……」

 

廻「ん?なんだ?」

 

茉莉花「お腹空いちゃった。」

 

 コテッ

 

おいおい…

 

廻「緊張感ねぇな…」

 

茉莉花「だって、朝から何も食べてないから…」

 

はぁ…仕方ないか…

それに俺も腹減ったからちょうどいいか。

 

廻「…じゃあ、あそこのファ○マでいいか?」

 

たまたま目の前にあった某コンビニを指差す。

 

茉莉花「いいよ!早く行こう〜」

 

…こんなにのんびりしてていいのか?

 

‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾

PM 12:15 コンビニ イートインスペース

 

廻「そう言えば、朝からずっと気になってたんだが…」

 

昼食も兼ねて食べながら俺は気になっていたことを茉莉花に聞く。

 

茉莉花「ん〜?何?」

 

廻「モデル業界では前日に急に撮影の予定が変わるってことはよくあるのか?」

 

茉莉花「いや、そんなにないよ。モデル本人だけじゃなくて、カメラマンさんとか撮影には多くの人の協力が必要だからね…それがどうかしたの?」  

 

廻「…おかしいと思わないか?」

 

茉莉花「え?何が?」

 

茉莉花は何も違和感を感じてないようだ。俺はいま時点での自分の考えを茉莉花に話す。

 

廻「茉莉花は撮影場所に着いた途端に襲われそうになったんだよな?」

 

茉莉花「うん、そうだよ。着いたら男の人が数人いて…」

 

廻「それだよ。撮影の日時の変更、スタジオについたら男たちが襲ってくる…随分と都合が良くないか?」

 

まあ仕組まれたっていう証拠は何もないけどな。

 

茉莉花「た、確かに……あっ!」

 

廻「どうした?」

 

茉莉花「今思い出したけど、昨日の連絡はマネージャーからじゃなかった!」

 

廻「誰からだったんだ?」

 

茉莉花「確か、……そうそう、撮影スタジオの人からだったよ。いつもはマネージャーから連絡が来るから変だと思ったんだよね〜…」

 

なるほど。確かに普通、撮影日時の変更なんて重要なことは事務所のマネージャーが連絡するよな。

 

いろいろと情報を得ることはできた。けど、まだ分からないのは…

 

廻「(なんで、茉莉花は追われてるんだ?)」

 

廻「なぁ、茉莉花は追われる理由はないのか?」

 

茉莉花「いや、ないよ…。あ、でも変な会話と写真なら拾ったけど…」

 

廻「『変な会話と写真』?」

 

茉莉花「うん。一週間前のことなんだけどね。」

 

‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾

一週間前

 

例のスタジオでのことだよ。

その日の撮影が分かって帰ろうとしたときに通路で通話してる人がいてね。男性だったんだけど…

邪魔するのも悪いから話しが終わるまで近くにいたの…

 

男『……はぁ!来週?そりゃ、いきなりすぎねぇか?』

 

男『…おいおい、マジかよ。あの〇〇ちゃんか!?』

 

茉莉花『(〇〇ちゃん?確か、同じモデルの子だよね?)』

 

男『仕方ねえな…。まあ、〇〇ちゃんが来るならいいか。……あぁ、またな。』

 

そこで通話を終えて去ったから私も通路に出たの。

で、そこに一枚の写真が落ちてたの。

 

‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾

廻「その写真は何だったんだ?」

 

茉莉花「…それがね、盗撮された写真だったの…」

 

廻「!!おいおい、マジかよ……」

 

茉莉花「どうやらスタジオに盗撮用のカメラが置かれていたみたい…」

 

廻「その写真はどうしたんだ?」

 

茉莉花「取り敢えずマネージャーに渡したよ。私一人で判断できないから…」

 

そりゃ、確かに茉莉花一人で判断できねえな。

 

茉莉花「そう言えば、その写真を見たマネージャーの様子が変だったな…」

 

廻「変って?どんな風に?」

 

茉莉花「何かいつものマネージャーと違って怖かったな…」

 

廻「怖かった、か……」  

 

茉莉花「いつもは優しい人なんだけどね。その日のマネージャーは眉間にしわを寄せてて…あんなマネージャー初めて見たから怖かったな…」

 

どうやら、そのスタジオを調べてみる必要がありそうだな。

 

廻「茉莉花、スマホを貸してもらっていいか?」

 

茉莉花「いいけど、電話するの?」

 

廻「あぁ。俺の仲間にな。」

 

そうして弘人たちに連絡をすることにした。

 

 





事件メモ
・撮影スタジオでのことと、撮影日時の変更は仕組まれているかもしれない。
・茉莉花は盗撮された写真を拾った。
・そして、男が通話しているのを聞いている。
以上です。

次回予告
遂に弘人たちと連絡を取る廻。時を同じくして弘人たちにはある人たちが来ていて?
それではまた次回お会いしましょう!


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廻と茉莉花の長い一日 その3


お待たせしました。お久しぶりです、今年初投稿です!
今年もよろしくお願いします!

前回のあらすじ
警察署を目指して動き始めた廻と茉莉花。
しかし、すぐにいる位置がバレて男たちに追われる廻たち。
一旦は服装を変えてやり過ごしたかに思えたが?

それでは本編どうぞ!



 

PM 12:20 コンビニ イートインスペース

 

3回コールが鳴ったあとで弘人が出た。

 

弘人『…もしもし、どちらさまでしょうか?』

 

弘人が丁寧に応対する。あぁ、そうか。これは茉莉花のスマホだから知らない番号からかかってきてることになってるのか。

 

廻「俺だ、廻だ。」

 

弘人『廻!? お前ほんとに廻か!?』

 

廻「そうだよ。」

 

弘人『連絡が取れなくて心配したんだぞ!それに信条のおっさんから『追われてる』何て聞いたから…』

 

廻「それは悪かった。」

 

弘人「俺だけじゃなくて、灯ちゃんも、玲央も心配したんだからな…特に灯ちゃんなんて…」

 

灯『ちょっと!余計な事は言わないでよ!』

 

電話の近くで灯が弘人に何か言っている。まあ、結構心配かけたみたいだな。

 

廻「…それは後で謝る。ところで近くに玲央はいるか?」

 

弘人『あぁ、いるけど…』

 

廻「変わってくれ。」

 

そうして玲央に変わってもらう。

 

玲央『…変わったぞ。』

 

廻「いきなりで悪いけど、調べてほしいことがある。」

 

玲央『…いきなり、なんだよ。』

 

廻「急で悪いな。今から言うスタジオを調べてほしい。」

 

玲央『スタジオ?』

 

廻「あぁ。……っていうところなんだが…」

 

玲央『…分かった。調べてみる。』

 

廻「頼んだ。なにか分かったらまた連絡してくれ。」

 

そして、玲央は弘人にスマホを返した。

 

弘人『とにかく無事で良かった。何処かで合流するか?』

 

そうだな…警察署を目指してたけど、一旦弘人たちと合流したほうがいいかもな。俺一人で茉莉花を守るのも無理があるからな。人手があるに越したことはないからな。

 

廻「そうだな。…今連れに聞いてみる。」

 

弘人『あぁ、そういやお前今女の人といるんだったな、誰といるんだ?』

 

…これは言ってもいいのか?

 

そう思って茉莉花に目配せする。

 

茉莉花「!」グッ!

 

…どうやらいいみたいだな。

 

廻「水島茉莉花って知ってるか?」

 

弘人『知ってるも何も、有名なモデルじゃねえか。……おい、まさか!…』

 

廻「そのまさか、だ。今、茉莉花と一緒にいる。」

 

弘人『…おいおい、なんの縁があって水島茉莉花と一緒にいるんだよ…』

 

そりゃ俺が聞きたいよ……

と、次の瞬間

 

?『茉莉花!?そこにいるの?…って、うわ!お兄さん大丈夫?』

 

廻「うるさ!」

 

弘人の声が聞こえなくなったと思ったら、いきなり女性の声が聞こえてきた。

 

そう言えば電話かけたときなんか後ろがうるさかったな…誰か来てたのか…

 

茉莉花「あ〜!その声はリカ!」

 

?『茉莉花!大丈夫なの!?』

 

茉莉花「さおりも心配させてごめんね。なんとか今は大丈夫。」

 

?『とにかく無事で良かった。何があったの?』

 

……さっきから置いてけぼりなんだが……っ!おいおい…

 

廻「悪いけど、これ以上悠長に話している暇はない。」 

 

茉莉花「え?」

 

廻「あれを見ろ。」

 

茉莉花「……あっ!」

 

どうやら、男たちがここまで追ってきたみたいだ。

 

茉莉花「皆、ごめん!詳しいことは後で話すから!」

 

廻「そういうことだ。じゃあな。」

 

灯「あっ、ちょっと、廻!」プッープッー

 

‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾

PM 1:00

 

廻「ふぅ、なんとか巻いたな。」

 

茉莉花「そうだね…それよりこれからどうする?」

 

廻「そうだな…できれば合流地点を決めたかったんだが…」

 

できれば弘人たちと合流したかったが…途中で通話を切ってしまったからな…

くそっ!早く弘人と話して合流場所を決めれば良かった…

……悔やんでも仕方ねえか…

 

茉莉花「ごめんね…」

 

廻「ん?」

 

茉莉花「私がリカたちと話してたから…」

 

廻「気にすんな。友達が茉莉花のことを気にするのは当然のことだろ。」

 

茉莉花「でも…」

 

廻「それに元々スマホは茉莉花のだろ。借りてるのは俺だしな。」

 

茉莉花「そうだけど…」

 

廻「何だ、最初に会ったときの元気はどこにいったんだ?」

 

茉莉花「だって、友達や廻に迷惑かけて…」

 

廻「…そんなの気にしてないと思うけどな。俺もその友達も。」

 

茉莉花「え?」

 

廻「友達が危険な目にあってたら心配するのが普通だろ。お前だってそうだろ?」

 

茉莉花「それはそうだけど…」

 

廻「それに俺のことは気にするな。首を突っ込んだのは俺だからな。」

 

茉莉花「ふ〜ん。」

 

廻「…なんだよ……」

 

茉莉花「やっぱり廻って優しいね。」ニコッ

 

廻「別に…普通だろ。」

 

茉莉花「普通でここまで他人を守れる人なんてそんなにいないよ。」

 

廻「…そうかもな。」

 

たく、ようやく元気が戻ってきたか。

 

茉莉花「じゃ、改めてこれからどうするか考えないとね。」

 

廻「だな。」

 

 ♪♪♪♪♪

 

ん?電話か?誰からだ?

この番号は……あいつか。

 

廻「大丈夫だ、これは俺の仲間の番号だ。」

 

茉莉花「じゃあ、廻が出てよ。」

 

廻「分かった。」

 

そうして茉莉花からスマホを受け取って電話に出る。

 

廻「もしもし?」

 

玲央「…言われたスタジオのこと調べたぞ。」

 

廻「お、速かったな。」

 

玲央『軽くしか調べてないから詳しくは調べれなかったけどな。』

 

廻「それでもいいよ。で、どうだった?」

 

玲央『仕事で使ってるアイドルやモデル、その他関係者からの評判は悪いな。』

 

廻「理由は?」

 

玲央『あるカメラマンが理由だ。名前は黒田(くろだ)って奴だ。』

 

黒田か……

 

廻「茉莉花、黒田ってカメラマン知ってるか?」

 

茉莉花「黒田?…あ、あぁ黒田さんね……」

 

黒田のことを聞くと茉莉花の表情が曇った。

 

廻「どうかしたのか?」

 

茉莉花「あんまり関わりがないからね。良くは知らない。」

 

廻「けど、写真撮影で世話になってるんだろ?」

 

茉莉花「そう、なんだけどね…」

 

廻「何か歯切れが悪いな。そんなにヤバい奴なのか?」

 

茉莉花「…ここだけの話し、女性関係が、ねぇ…」

 

廻「…そういうことか。」

 

茉莉花「私も何回か誘われたことあるけど正直しつこくて理るのが大変だったよ…」

 

廻「そうだったのか…で、結局誘いに乗ったことはないのか?」

 

茉莉花「うん。だって、あの人絶対にホテル行き狙ってたし。」

 

廻「ホテル行きって、マジかよ…」

 

茉莉花「まあ、私にはそう見えただけだよ。けど、噂では何人も誘われては連れて行かれてるみたい…」

 

酒に酔わせてってことか…本当だと酷い話だ。

 

茉莉花「あ、そうそう。朝スタジオでの話しをしたでしょ?」

 

廻「そういえば言ってたな。」

 

茉莉花「その時の男の人も黒田さんだよ。」

 

廻「そうか…。いろいろありがとうな。」

 

玲央『…もういいか?』

 

廻「あ、悪い。」

 

すっかり茉莉花との話しに気を取られすぎた。

 

玲央『そうそう、連れの人に話したい人がいる。』

 

誰だ?さっきの女性たちか?

 

廻「そうか、じゃあこっちも変わる。茉莉花」

 

茉莉花「ん?」

 

廻「茉莉花と話したい人がいるんだとよ。」

 

茉莉花「誰だろ? もしもし?」

 

マネージャー(以下マネ)『茉莉花ちゃん、無事!?』

 

茉莉花「マネージャーさん!どうしてそこに?」

 

茉莉花のマネージャーだったのか。

 

マネ『そこにいる廻さんに相談しようと思ってね。』

 

茉莉花「廻に?」

 

廻「?」

 

マネ『えぇ。あなたが前に拾った写真についてね。そうしたらあなたが追われてるってことが分かって私もう…!』

 

茉莉花「私なら大丈夫ですよ〜。何せ頼もしいボディーガードがいるから。ね?」

 

いつから俺はお前のボディーガードになったんだよ…まあ、いいけど。

 

茉莉花「取り敢えずマネージャーは廻に用事があるんですよね?じゃあ、変わりますね〜。」

 

そうして再び茉莉花からスマホを受けて話す。

 

廻「電話変わりました。廻です。」

 

マネ『あなたが廻さんですか。お噂は聞いてます。』

 

廻「それはどうも。それで俺にどんな用ですか?」

 

マネ『実は前に茉莉花が拾った写真のことなんですが…』

 

廻「あぁ、茉莉花から聞きました。盗撮された写真だったんですよね?」

 

マネ『はい、その通りです。それの件で依頼をさせてもらいたくて来たんですけど…』

 

廻「どんな依頼ですか?」

 

マネ『実はとあるスタジオで盗撮が行われていまして…』

 

廻「黒田って人の仕業みたいですね。」

 

マネ『そうなんです。で、どうにか証拠を掴んで犯行を暴こうと思ったんです。』

 

なるほどねぇ…

 

マネ『今まではただの噂だと思ってたんですけど、あんな写真を見つけたらもう黒い噂も信憑性が増してきたし…』

 

廻「黒い噂、ですか?」

 

マネ『えぇ。女性をしつこく強引に口説くのは当たり前、同意もなしにホテルに連れて行く、挙げ句男性数人で女性とやってるなんて噂もあるぐらいです…』

 

そりゃ酷いな。事実なら女の敵だな。

 

廻「ありがとうございます。残念ながら茉莉花さんを守るのに精一杯で依頼を受けることはできません。」

 

マネ『そう、ですか…』

 

廻「ですが、茉莉花さんを無事に送り届けれたならその時に依頼を受けます。」

 

マネ『! あ、ありがとうございます!』

 

たく、結局こうなるのかよ……

 

と、ここでスマホの充電が気になり始めたので通話を終えることにした。

 

廻「では、すみませんがまたここで。…あぁ最後にこのスマホの持ち主に変わってもらっていいですか?」

 

マネ『分かりました。』

 

玲央『…変わった。』

 

廻「あぁ、弘人たちに伝え忘れたんだが……おいおい、またかよ!悪い、また後で。行くぞ、茉莉花!」

 

茉莉花「う、うん!」

 

‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾

PM 2:00

 

廻「たく、さっきからしつこいな…」

 

茉莉花「本当だよ。いい加減目的が分かればいいんだけど…」

 

廻「そうだな…」

 

朝から考えてるんだけど、目的も理由も全く分からねえんだよな…

しかもさっきからどうやって俺たちの場所を知ってるんだか…

明らかに俺たちの居場所をどうやってか知ってるみたいだしな…

 

男「いたぞ!」

 

って言ってるそばから!

 

今度は一人か……ん?一人か、これはチャンスかもしれないな。

 

廻「茉莉花、少し待っててくれ。」

 

茉莉花「え?」

 

廻「そこを動くなよ。」スタスタ

 

茉莉花「ちょっと!」

 

男「よし!こいつを連れていけば俺が!」

 

廻「よそ見してんなよ、っと!」

 

相手の腹に腹パンをかまして気絶させる。

 

よし、後は他の奴らが追って来る前に連れて行くか

 

そうして男を引きずって茉莉花の所に連れていく。

 

茉莉花「ちょっと!連れてきて大丈夫なの?」

 

廻「まあ一人ぐらい大丈夫だろ。俺がどうにかする。」

 

 

‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾

30分後 PM2:30

 

廻「…よし、ここまで来ればいいだろ。」

 

男を人通りの少ない路地裏に連れてきた。ここなら人目を気にせず話しを聞けそうだな。

 

廻「茉莉花は周りを見ててくれ。話しは俺が聞く。」

 

茉莉花「分かった。」

 

よし、起こすか……

 

廻「おい。」

 

男「……ん…」

 

廻「おい!」

 

男「ん?…」

 

廻「起きろ!」

 

男「! ここは…っ!そうだ!」

 

廻「気がついたみたいだな。」

 

男「お、お前!」

 

やっと起きやがった。

 

廻「今からいくつか質問に答えてもらうぞ。」

 

男「はっ!お前に話すことなんかねえよ!」

 

廻「そうか。じゃあ、警察に行くのと素直に話すのどっちがいい?」

 

男「…っち!」

 

どうやら話す気になったか。

 

廻「じゃあ、まず最初の質問だ。何故俺たちを狙う?」

 

男「お前はかんけーねえよ。」

 

廻「関係ない?」

 

男「用があるのはそこの女の方だ。」

 

廻「なんのために?」

 

男「そこまで知るかよ。俺たちはただ『女を連れてきたら金をやる』って言われたからそれに乗っただけだ。」

 

なるほどねぇ…

 

廻「次の質問だ。お前らを雇ってるのは誰だ?」

 

男「…」

 

廻「だんまりか…。警察に行くか?」

 

男「…黒田って奴だよ。〇〇スタジオの。」

 

茉莉花「!!」

 

廻「(怪しいとは思ってたけど本当に黒田の仕業とは…)」

 

廻「次の質問だ。…お前らどうやって俺たちを追跡してる?」

 

正直これも知りたかった。いくらなんでも見つけるのが早すぎる。

 

男「それは本当に知らない。」

 

廻「本当か?」

 

男「ほ、本当だ!どうやってるのか知らねえーけどおめーらがいる位置を把握してスマホにメッセージを送ってくるんだよ!」

 

ふーん、なるほど……

 

廻「スマホは……ここか。」

 

男のポケットからスマホを取り出す。

 

廻「で、暗証番号は?」

 

男「だ、誰がそこまで……あ、痛いいい!」

 

男の右腕を後ろに曲げて背中に押し付ける。

すると男の体勢がこの逆くの字になり痛みが押し寄せてくる。

個人的に強引なやり方は好きじゃないが緊急事態につき仕方ないということで。

 

男「わ、分かった!言うからや、やめてくれー!」

 

廻「で、番号は?」

 

男「さ、3659……」

 

廻「はい、ありがとさん。」

 

そうして、男のスマホにパスワードを入力しスマホを開く

 

廻「……なるほど、そういうことか。」

 

一応、写真に撮っておくか。

 

 いたぞー! あそこだー!

 

廻「来たか。よし!行くぞ。」

 

茉莉花「うん!」

 

男「待ちやがれ!」

 

待たねえよ。

 

 プシュー

 

男「グァ!」

 

さっき催涙スプレー買ってて良かったぜ。

 

 

…さて、やっと情報が集まってきたな。

 

 





事件メモ
・〇〇スタジオの評判は悪い。それはカメラマンの黒田という人物のせい。
・黒田は女性関係が悪い。
・黒田が茉莉花を男たちに追わせていた。
・どうやってか黒田は茉莉花のいる位置情報を男たちのスマホに送っていた。

ちなみに話の中で出てきた催涙スプレーですが、気軽に買えるんですかね?そこらへんのことは分からずに書いてしまいました。
まあ違ってたらお話の中だけのことにしてください。(笑)

次回予告
男たちを追わせていたのは黒田というカメラマンだった。
そのことを知った廻たちは今度こそ弘人たちと合流しようとするが、そこに魔の手が迫る!

それではまた次回お会いしましょう!



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廻と茉莉花の長い一日 その4


前回までのあらすじ
茉莉花が呼ばれていたスタジオのことを調べてみると一人の男が浮かんできた。それはカメラマンの黒田という男だった。
果たしてこれから廻はどう動くのか?
それでは本編どうぞ!


 

PM4:00

 

廻「よし、巻いたな。」

 

茉莉花「そう言えば、さっき『なるほど』って言ってたけど何かわかったの?」

 

廻「ん?あぁ、どうやって俺たちの居場所を探してるのかは分かったよ。」

 

茉莉花「ほんと〜!?廻、すごーい!」

 

廻「そりゃどうも。」

 

まあそれがわかったところで、問題の解決になってないけどな。

黒田って奴をどうにかしないとな。

ここらでもう一回あいつらと連絡しとくか。

 

 ♪♪♪♪♪

 

玲央『もしもし?』

 

廻「俺だ。」

 

玲央『廻か。』

 

廻「あぁ。あれからスタジオのこと何か分かったか?」

 

玲央『スタジオのことに関しては何もない。』

 

廻「そうか…」

 

何かわかってると良かったんだが……

 

玲央『ただ、スタジオ付近でいろいろあるみたいだ。』

 

廻「いろいろ?」

 

信条『それについては俺から話そう。』

 

廻「なんだ近くにいたのか。」

 

信条『まあな。で、その近所であったことなんだがな…』

 

そうして信条さんが話し始めた。

 

信条『ここ最近何回か通報があってな。』

 

廻「通報…」

 

信条『そうだ。夜遅くまで電気がついてたり、話し声がうるさいとかな。』

 

廻「それで実際に現場には行ったのか?」

 

信条『俺は直接見てないけど、実際に現場に行った奴らの話しによると特に不審な点はなかったそうだとさ。だからその場では厳重注意程度で済ましたみたいだ。』

 

廻「そうか。」

 

信条『けど、一つだけ気になること言ってたな。』

 

廻「『気になること』?なんだよ?」

 

信条『関係者がそのスタジオのカメラマンしかいなかったんだよ』

 

廻「それって『黒田』ってやつか?」

 

信条『そうだけど、お前ら知ってたのかよ?』

 

廻「まあな。で、他は誰がいたんだよ?」

 

信条さんの話しだと黒田以外にもいるってことだよな。

 

信条『他は関係ない男しかいなかったな。確か…3.4人はいたらしいぞ。』

 

廻「そうか、分かった。じゃあ、玲央に変わって……ッチ、またか…行くぞ、茉莉花!……茉莉花?」

 

信条『おい、廻!』  

 

また男たちがやってきやがった!通話を終えて茉莉花の方を見ようとした時だった。

 

茉莉花「ん〜〜ググ!」

 

背後に忍び込んでいた男に茉莉花が連れて行かれるところだった。くそ、集中し過ぎで気づかなかった!待ってろ!今…

 

 ゴン!

 

瞬間、後ろから衝撃が走り意識を失ってしまった…

 

‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾

PM5:00

 

廻「…ん?」 

 

廻「っ!てぇ!」

 

あぁ、そうか…確か後ろから殴られて…

 

廻「(くそ、随分と長い間気を失ってたみたいだな…どうやら縛られてるし体も動かないみたいだ。)」

 

茉莉花「…」

 

廻「おい!茉莉花!」

 

茉莉花「ん?ん〜…あ、あれ?ここどこ?」

 

廻「気がついたか。どうやら捕まったみたいだ。みたところどっかの倉庫みたいだな…」

 

それも使われてないみたいだな…

 

茉莉花「そ、それって…」

 

廻「あぁ、大分ヤバい状況だ…」

 

それにここがどこかも分からないからな。

 

?「気がついたか。」

 

廻・茉莉花「「!!」」

 

声のしたほうを振り返るといかにもチャラそうな一人の男が立っていた。

 

?「たく、手こずらせやがって。」

 

茉莉花「あ、あなた!黒田さん!」

 

黒田「よう、茉莉花ちゃん。」

 

どうやらこいつが黒田か。

 

廻「あんたが黒田か。」

 

黒田「あぁ。女一人連れてくるのぐらい楽勝だと思ったのに、てめーが邪魔するから、よ!」ガン!

 

廻「っ!ぐっ……」

 

茉莉花「ま、廻!」

 

黒田「優しいね、茉莉花ちゃん。けど他の人を心配してる場合じゃないと思うよ?」

 

茉莉花「え?」

 

黒田「覚えてないかな?数日前、見ちゃったでしょ?」

 

茉莉花「数日前……あっ!」

 

黒田「思い出したみたいだね。そう、あの時だよ」

 

‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾

数日前 〇〇スタジオ

 

茉莉花「あ〜!やっと仕事終わったー!早く帰ろ。」

 

茉莉花「随分遅くなったな、まだ裏口開いてるかな?……あれ?」

 

そこでいつもは消えてる電気がその日に限って着いたままになってることに気づいた。

 

茉莉花「(あれ?何か声が聞こえるような?)」

 

黒田「おい、来週の件どうなってる?」

 

茉莉花「(なんだ、黒田さんか。また誘われたら断るの面倒だからバレないように出よう。)」

 

黒田「来れないだぁー!?お前らふざけてんのか!」

 

茉莉花「!」ビクッ!

 

黒田「女を連れてこないと始まらないだろうがよ!」

 

茉莉花「(女を連れて来る?)」

 

黒田「それに紹介もできねぇからな。……ッチ、3日だけ待ってやる、それまでにどうにしろ。」

 

黒田「あぁ、知るかよ、そんなの。ノルマ達成してないてめーらが悪いだろ。その点俺はもう達成してるからな。」

 

ノルマ?紹介?一体黒田さんは何を言ってるの?

 

黒田「そうだよ、スタジオで撮影したモデルや話しに乗って着いてきたバカな女を紹介してやった。満足してたぜ。」

 

茉莉花「(!!)」 

 

黒田「特にかくお前も早く連れてこい。場所はいつもの場所で…」

 

ここにいたらあたしも危ない。早く帰ろう。

そうして、そのまま帰ろうとしたときだった。

 

 ガタン!

 

茉莉花「(しまった!)」

 

黒田「誰かいるのか!?」

 

茉莉花「(急いで逃げなきゃ)」ダッ!

 

‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾

黒田「色々確認したらあの日あの場所にあの時間までいたのは茉莉花ちゃんだけってのが分かったから急いで男たちに連絡して回ったてわけ。」

 

廻「なるほどな…」

 

茉莉花「ま、廻!」

 

廻「どうやらあのスタジオではいろいろと犯罪が行われていたらしいな。」

 

廻「盗撮された写真があったのもその写真を売りさばき、ついには女性を別の男に紹介、そして金でももらってたのか?」

 

黒田「…ほう、どうやら頭がよく回るみたいだな。付け足すとついでに自分の欲も満たしてたけどな。」

 

……このゲス野郎が…

 

廻「そんなこと簡単に言っていいのか?」

 

黒田「そりゃ今から消される奴に何を話しても意味がないからな。」

 

茉莉花「!」ブルブル

 

黒田「ん?あぁ、茉莉花ちゃんは安心して。俺らが楽しんだ後は売られるだけだから(笑)」

 

クソ野郎が!

 

黒田「まあ、その前に…」

 

黒田が俺の方を向く。

 

黒田「お前はただ殺すだけじゃつまらねーな。散々俺たちの邪魔をしてくれたからな!」

 

ガン!

 

廻「がっ!」

 

茉莉花「廻!」

 

廻「お、俺なら大丈夫だ…お前は自分の心配をしてろ…」

 

黒田「ほう、随分と余裕だな。おい、お前ら!」

 

黒田が呼ぶと男たちがぞろぞろと入ってくる。

 

黒田「おい、お前ら。こいつをかわいがってやれ。ただしまだ殺すなよ?」

 

そこからは壮絶な俺へのリンチが始まった…

 

‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾

数分後 PM5:45

 

黒田「おーい、生きてるか?」

 

廻「…」キッ

 

黒田「まだ大丈夫そうだな。」グッ!

 

廻「がっ!」ピチャ

 

やばいな、口から血が出始めた…

 

茉莉花「もうやめて!最初から私が狙いなんでしょ!」

 

黒田「そうはいかないねえ…。ほら、待ってるお姫様の為に頑張れよ、っと!」

 

廻「…っ」

 

黒田「おいおい、大丈夫かよ?(笑)」

 

黒田「まあ、十分楽しめたよ。そろそろ終わりにするか。」

 

茉莉花「やめて!」

 

黒田「じゃあな!……ん?なんの音だ?」

 

男「た、大変だ!」

 

血相を変えて男が近づいてくる。

 

黒田「なんだ、なんの騒ぎだ!」

 

廻「…フッ」

 

黒田「何だ、なにがおかしい!?」

 

廻「お前、詰めが甘かったな。」

 

黒田「何?…」

 

廻「襲うならよく調べてからやったほうがいいぜ?」

 

黒田「だからなにを…」

 

廻「俺には警察の知り合いがいる。」

 

黒田「!」

 

廻「それに奪ったスマホもすぐに壊さなかったのが間違いだ。」

 

黒田「は?……まさか!?」

 

廻「やっと気づいたか。」

 

今どき位置情報なんかすぐに調べれるだろ。ましてや、信条さんっていう警察の協力者がいるんだからな。

 

弘人「いた、やっと見つけたぞ!」

 

廻「よう、遅かったな。」

 

弘人「それだけ喋れるなら大丈夫だな。」

 

廻「バカ言え、もう現界だっての…」

 

信条「廻、無事か!?」

 

ここでようやく信条さんと大勢の警官が倉庫に入ってくる。

 

黒田「来るな、近づいたら…」

 

廻「近づいたら、なんだ?」

 

黒田「お前、いつの間、に…がっ!」

 

それをきっかけに警官たちも男たちの制圧に入る。

 

‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾

一時間後… PM6:45

 

信条「一段落ついたな。」

 

廻「助かった。」

 

今回一番危なかったからな。

 

茉莉花「廻!」

 

廻「ん?茉莉花か。」

 

茉莉花「ごめんね、私のせいで…」

 

廻「気にするな。それに謝るのは俺の方だ。」

 

茉莉花「え?」

 

廻「結局俺の油断で茉莉花を危ない目に合わせてしまったからな。すまなかった…」

 

茉莉花「私は気にしてないよ!だって廻は必死に私を守ってくれたから!」

 

廻「そうか…」

 

灯「廻〜〜!」

 

……うるせーな…

 

廻「周りのやつが見てるだろ。少しは静かにしろ…」

 

灯「だ、だって、廻が追われてるって聞いて!わ、私!」

 

廻「落ち着け。俺は大丈夫だから。……その」

 

灯「?」

 

廻「心配かけて悪かったな…」

 

灯「…本当だよ、今度買い物に付き合ってもらうからね!」

 

廻「はぁ!?なんでそうなるんだよ!」

 

灯「当たり前でしょ?今日の予定の分もあるんだから!」

 

…こうなったら聞かないよな……

 

廻「はぁ、仕方ねえな…」

 

灯「約束だからね!」

 

廻「分かったよ。」

 

茉莉花「え、え〜と、あなたは?」

 

灯「ん…あっ!あなたモ、モデルの『水島茉莉花』さん!?うそ、本物!」

 

廻「あ〜、そういや説明してなかったな。俺の友達の月本灯だ。」

 

茉莉花「そうなんだ〜!よろしくね!」

 

灯「は、はい!」

 

?「お〜い、茉莉花ー!」

 

と、そこに3人の女性がやってきた。

この声…あぁ、朝の茉莉花の友達か。

 

?「茉莉花、大丈夫!?」

 

茉莉花「うん、廻が守ってくれたからね!」

 

?「廻?…あっ!朝の!」

 

?「茉莉花を助けてくれてありがとう!」

 

廻「別に大したことはしてないよ。」

 

茉莉花「あっそうだ!廻に改めて紹介するね!私が活動しているMerm4idのメンバーだよ!」

 

リカ「瀬戸リカだよ!よろしくね!」

 

さおり「え、えっと、日高さおり、です。」

 

ダリア「松山ダリアだよ。改めて茉莉花を助けてくれてありがとうね。」

 

廻「どうも。」

 

こりゃまた個性的なメンバーが揃ったな…

 

灯「すご~い!Merm4idの皆さんが揃ってるなんて!」

 

こっちはこっちで感動しすぎだろ…

 

廻「ん?そういや、茉莉花のマネージャーは?一緒にいたんじゃなかったのか?」

 

弘人「あぁ、マネージャーさんなら警察にいるよ。今頃待ってるんじゃないか?」

 

廻「そうか。」

 

茉莉花「後でマネージャーにも謝らないと…迷惑をかけたからね…」

 

廻「そうだな。」

 

信条「おーい!」

 

俺たちが話していると信条さんが近寄ってきた。

 

廻「なんだよ?」

 

信条「これから警察の方で詳しい話しが聞きたいから一緒に行ってくれ。」

 

廻「分かった。」

 

信条「あぁ、それと」

 

廻「?」

 

信条「お前に電話だ。」

 

電話?誰だ?

 

廻「もしもし?」

 

大輝『おい、廻、大丈夫か!?』

 

廻「なんだ、大輝さんか。俺なら無事だけど?」

 

大輝『そうか。信条の奴に聞いたがまた巻き込まれたらしいな。』

 

廻「まあね。けど、もう解決したし大丈夫です。」

 

大輝『そうか。けど、病院には行けよ?』

 

廻「嫌だよ。面倒くさい…」

 

大輝『お前のことだからそういうと思ったよ。いつもなら何も言わないけど、今回は怪我したんだろ?だったらちゃんと行け。』

 

廻「…はぁ、分かったよ。」

 

信条「終わったか。…あぁ、俺だ。分かった、責任持って連れて行くよ。」ピッ

 

通話を終えた信条さんが俺たちの方を向く。

 

信条「それじゃ、行くか。そこのお嬢さんもいいかな?」

 

茉莉花「あ、はい。大丈夫です!」

 

廻「じゃ、また後でな。」

 

弘人「あぁ。けど、この件の埋め合わせは絶対にしろよ?」

 

廻「はいはい、分かってるよ。」

 

特にそうしないと約一名怒る奴がいるからな。

 

そうして俺たちは信条さんと共に警察と病院に向かった。

 

 

 

こうして俺たちの長い一日が終わった。

 

 

………本当に長ったな…

 

 

 




事件の真相
黒田がスタジオでの盗撮や防音設備が整っているのをいいことに行為場にしていたことを茉莉花にバレそうになったので消そうとしたのが真相。



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廻と茉莉花の長い一日 エピローグ

前回までのあらすじ 
黒田のことについてわかってくるも後ろからの追手に気づかずついに捕まってしまった廻たち。しかし、GPSでの追跡で何とか助かり解決するのだった。

それでは本編どうぞ!


 

数日後 音楽スタジオ「TRY」

 

裕次郎「それはまた災難だったな。」

 

廻「ホントだよ。お陰でとんだ一日だったよ。」

 

いつものように喋りながら業務をしている俺たち。

 

灯「けど、〇〇スタジオって有名なスタジオだったのに裏であんなことやってたなんてね…」

 

裕次郎「『あんなこと』って?」

 

廻「盗撮や盗聴は当たり前。更には弱みを握って脅した女性との行為をスタジオでやってたみたいだ。」

 

弘人「聞けば聞くほど胸糞悪い話だよな…」

 

玲央「…それに人身売買もやってたらしいな。」

 

裕次郎「マジかよ!!」

 

うるっさ!

 

廻「マスター、声がでけえよ!他の人に聞かれたらどうするんだよ…」

 

裕次郎「わ、悪い…けど、人身売買なんて…」

 

灯「裏社会の人間と繋がってたんだよね…」

 

そう。実は黒田は裏社会のやのつく人や暴〇団なんかと繋がりがあったらしい。

 

まずは女性の弱みを握って脅し体の関係を持たせる。

その後その筋の人間に売って風〇なんかで強制的に働かせていたみたいだ。

 

自分が楽しんだらその後は売って捨てる。完璧なクソ人間だな。

 

弘人「まあけど、黒田って野郎は捕まったみたいだし一件落着だな。」

 

廻「まあ、一応はな。」

 

灯「『一応』?」

 

廻「まだ黒田に指示されて動いてたやつとか、関係のあった奴らは捕まってないからな。そういう意味では完全な解決とは言えないからな。」

 

ま、それも黒田が捕まってない芋づる式に捕まると思うから時間の問題だけどな。

 

弘人「でもこれからスタジオの運営者からも訴えられるみたいだから人生終わりだな。」

 

 チリーン チリーン

 

廻「いらっしゃ……なんだお前らか。」

 

乙和「なんだって、お客様に対して酷くない!?」

 

廻「スタジオを利用しないやつはお客様じゃねえんだよ。それにどうせ遊びに来ただけだろが…」

 

乙和「あったりー!」

 

『あったりー!』じゃねえんだよ…こっちは一応仕事中だぞ……

 

灯「あ、乙和ちゃん!今日は一人?」

 

乙和「ううん。もう一人いるよ?」

 

茉莉花「はーい!ここに行ったら廻が居るって聞いて来ちゃった。」

 

廻「いや『来ちゃった』じゃねえよ。何しきたんだよ?」

 

茉莉花「聞きたいことと渡したい物があったからね。」

 

廻「聞きたいこと?なんだよ?」

 

茉莉花「いや、どうして私達の居場所がバレてたのかなって。それだけは警察も廻も教えてくれなかったから。」

 

廻「…お前、そんなこと聞くためにわざわざ来たのか?」

 

暇人かよ…

 

茉莉花「だって〜気になるじゃん!」

 

廻「あのな、俺は暇じゃないんだ」

 

茉莉花「いいじゃん。教えてよ〜!!」

 

廻「だーっ!もう、分かったから離れろ。動きづらいだろ。」 

 

茉莉花「やった!それで理由は?」

 

どうやら理由を聞くまで離れそうもなかったので理由を話すことにした。

 

廻「結論から言うと茉莉花のスマホが乗っ取られてたんだよ。」

 

茉莉花「え?」

 

廻「だから、カメラやGPSなんかを遠隔操作で起動させて位置情報を把握してたってわけ。」

 

これは男のメールのやり取りを見て分かったことだ。

 

茉莉花「けど、そんなのいつの間に…」

 

廻「ある程度の知識と技術を学べば誰だってできるもんだぞ。」

 

廻「ま、後はロッカー何かにスマホを置く時間があったならその間にウイルスを仕込まれた可能性もあるな。」

 

実際関係者なら怪しまれずに忍び込めそうだしな。まあ場所にもよるが。

 

茉莉花「だから廻、警察についたときにスマホを見てもらえって言ってたんだ…」

 

廻「そういうことだ。」

 

茉莉花「今は私のスマホ大丈夫かな?」

 

廻「まあ、警察で見てもらってウイルスなんかは取り除いてもらってるとは思うけど、不安なら新しいスマホ買うなり、セキュリティを強化するなりしたほうがいいかもな。」

 

茉莉花「そうだね…」

 

弘人「ま、次からは気をつけようってことで。そう言えば渡したいものって?」

 

ちょっとくらい雰囲気になったところで弘人が話しを変える。本当にこういうときに弘人がいると助かる。

 

茉莉花「あぁ、そうだった。これ、これを廻たちに渡したかったの!」

 

廻「チケット?」

 

茉莉花「そう私達Merm4idの次のライブのチケット。今回のお礼ってことで!よかったらみんなで見に来て!」

 

灯「ありがとう!絶対に行く!ね、廻?」

 

廻「そうだな、せっかくもらったんだし行くか。」

 

ライブか…しばらく行ってないから楽しみだ。

 

乙和「ぶー!なんかつまんない!」

 

廻「何だよ、いきなり…」

 

乙和「だって、私達Photon Maidenのライブには来てくれないのにMerm4idのライブには行くんだ…」ジッー

 

廻「なんだよ、ただライブに行くだけじゃねぇか。」

 

そんな目で俺を見るな。

 

乙和「ねぇ、廻。次はPhoton Maidenのライブにも来てよ。」

 

廻「何でだよ?」

 

乙和「Merm4idのライブに行くなら来てくれてもいいじゃん!」

 

廻「いや、Merm4idのライブはお礼も兼ねて行くのであって…」

 

乙和「違う!そういうことじゃなくて!」

 

弘人「あー、話しの途中で悪いけど乙和ちゃん、こいつには直接言わないと分かんないよ。そういうの鈍いから」

 

乙和「///」

 

ん、なんか顔が真っ赤に…一体どうしたんだ?

 

乙和「うー//と、とにかく来てよ!」

 

廻「はぁ…分かったよ。」

 

乙和「やった!」

 

とりあえず落ち着いたみたいだ。

 

灯・茉莉花「「ジッー」」

 

……今度はなんだよ…

 

廻「…何だよ」

 

灯「べーつに〜?何でもないけど?」

 

茉莉花「でも廻って誘われたら誰でもついて行っちゃうんだね…」

 

廻「いや、そんなことは…」

 

茉莉花「私ともデートしてほしいな…」

 

廻「……は?」乙和・灯「「!!」」

 

茉莉花「だって灯ちゃんとはデートするんでしょ?」

 

いやまあ、出かけるけどデートなのか?

 

茉莉花「出かけるぐらいいいじゃない?」

 

廻「い、いやそうだけど…」

 

乙和「茉莉花ちゃ〜ん!モデルが気軽にそんなことしていいの?」

 

灯「そうですよ〜、スキャンダルにでもなったりしたら大変ですから〜」

 

茉莉花「別に変装すれば大丈夫だから〜前みたいに二人で、ね?」

 

 ピキッ!

 

乙和「ま、前みたいに〜?」

 

灯「ふ、二人で〜?」

 

 

廻「おい、弘人どうにかしろ!」コソコソ

 

弘人「いや〜、あれはもうどうにもできねえぞ。」コソコソ

 

廻「はぁ!?」

 

弘人「てか、お前も男なら覚悟を決めろ。」

 

廻「できるか!」

 

俺は逃げるぞ!!

 

二人「どういうことかな〜?廻!!」

 

さらば!

 

俺たちの騒がしい日常はこれからもまだまだ続きそうだ。

 

 

           第一部「DJ少女たちとの出会い編」完

 

 

 





次回予告!
新章突入!とある高校を舞台に起きる様々な事件に廻が挑む!
果たして廻は謎を解くことができるのか!?
新章「毒花学校編」開幕!

頑張って執筆しますのでこれからも応援よろしくお願いします!


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第2章 毒花学校編 
新章開幕!出会いのプロローグ



さて心機一転、ここから新章開幕です!
引き続きD4DJのキャラクターも出てきますよ!
そして、この章ではあのドラマの刑事ともコラボします!
そして最初に言っておきます。この章では今までの話と違い、一つの事件を全話を通して追っていきます!
それでは本編どうぞ!


 

突然だがこんな言葉を聞いたことはあるだろうか?

 

「美しいものには毒がある。」

 

海や陸に生えている植物や生き物にはきれいなものがある。

そして、そういうものほど毒を持っていて危ないものだ。

 

しかしそれは動植物だけだろうか?もしかして人も?

 

特にきれいな……おっとこれ以上はこれから先のお話で確かめてください。では……

 

 

???年前

 

某日どこかの屋上

 

一人の人物がいた。夜遅くにも関わらず学校の屋上にいる。

 

『もしもし?』

 

「…俺だ。」

 

『〇〇か。こんな時間にどうしたの?』

 

「…お前には最後を見届けてもらおうと思ってな。」

 

『…え?』

 

「もう俺には無理だ、耐えられない。」

 

『ち、ちょっと!?今どこにいるの!?』

 

「じゃあ、先にあっちで待ってるよ。」

 

数秒後鈍い音が響き渡る。

 

『〇〇?…〇〇!?返事して!〇〇!』

 

…大丈夫俺は死なない、むしろこれから始まるのさ。

 

_______________

 

現在 弘人の家

 

弘人「…!…ハァ、ハァ…久しぶりに『あの夢』をみたな…」

 

朝、ベッドで目が覚めた弘人。どうやら悪い夢を見てうなされていたようだ。

 

弘人「たく、いい加減忘れたと思ってたんだけどな…」

 

もうあれから6年か…

 

感慨深い顔をしながらスマホを見る。そこには一枚の男の写真が写っていた。

 

弘人「(そう簡単には忘れられないってことか…)」

 

弘人「…って!ヤバ!今日はあいつらと約束してたんだった!」

 

急げー!間に合わねえぞ!どうしてこんな時に限って寝坊してんだよ!

 

‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾

数分後 音楽スタジオ「TRY」

 

弘人「っ!わ、悪い!寝坊した…」

 

廻「やっと来やがった。遅かったな。」

 

弘人「ほんとに悪い、今度何か奢るから許してくれ。」

 

廻「おっ!言ったな!その言葉忘れんなよ?」

 

こうなったら学食で一番高いのを頼んでやるか。日頃のことを考えるとこれぐらいしてもいいだろ。

 

灯「まあまあ、ちゃんと来てくれたんだしいいじゃん。でも、弘人が寝坊って珍しいね?」

 

確かにいつもの弘人なら時間には集合してるからな。っていうか遅刻したのこれが初めてじゃねえか?

 

弘人「…まあ、ちょっと、な?」

 

なんかいつもより歯切れも悪いな…一体どうしたんだ?

 

玲央「…それより、今回はどんな依頼なんだ?」

 

と、そこで玲央が本題に入る。

 

廻「いや、弘人が…」

 

弘人「別にいいだろ、俺のことは。本題に入るぞ、時間ももったいないからな。」

 

…まあ、本人がそう言ってるし良いのか?

少し気になるが弘人が話し始めたので話しを聞くことにする。

 

弘人「今回の依頼者は、『花舞凛(はなまいりん)』って言う人だ。」

 

裕次郎「花舞?どっかで聞いたような?」

 

玲央「もしかして最近話題になってる政治家の花舞凛か?」

 

灯「『花舞』…あっ、そうか。どこかで聞いたことあると思ったら。」

 

廻「そりゃ、また大物から依頼を受けたな…」

 

一体どこでそんな依頼を受けてくるんだよ。

とそんなことを考えていたら弘人が話し始めた。

 

弘人「それがよ、この前急に本人から電話がかかってきてよ。で、とりあえず話しを聞くことなったんだ。」

 

廻「ってことはまだ正確には依頼は受けてないんだな。」

 

弘人「まあな。何か俺たちを特別に指名しててな。それと『依頼内容は直接じゃないと話せない』って言われてな。」

 

なんだそりゃ…まーたなんかありそうだな。

 

弘人「ってことで今から行くぞ?」

 

灯「え?今から?」

 

弘人「そう。ちょうどこのあと15時からアポを取ってるから。」

 

廻「また勝手な…」

 

まあ、いつものことだからもう気にしてねえけどな…

 

灯「まあ話を聞くだけでもいいじゃん。行ってみようよ。」

 

廻「はいはい、分かったよ…」

 

もうこうなったら行くしかないな。

 

灯「(あれ?弘人、スマホ忘れてる…)」

 

ん?誰だろう、この人?

 

‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾

同時刻 警視庁特命係

 

ここは警視庁。東京都内の警察署を束ねる「東京警察本部」であり日本全国の警察を管理・運営している機関である。

 

その警視庁のとある一室に「特命係」と呼ばれる部署がある。「警視庁の陸の孤島」などと呼ばれているいわゆる窓際部署である。

そんな特命係に所属している刑事が二人いる。

 

?「おはようごさいます!右京さん。」

 

右京と呼ばれたオールバックで紳士風の格好をした男が挨拶を返す。

 

右京「おはようございます、亀山くん。」

 

今度は亀山と呼ばれたフライトジャケットを着た男が右京に話しかける。

 

亀山「で、朝から何を見てるんですか?」

 

右京「これです。」

 

亀山「何々…花崎高校付近で原因不明の事故が連続で発生?」

 

右京「えぇ。まず昨年の10月、花崎高校の教師が学校の近くの坂を自転車で通っていた所、ブレーキが効かずガードレールに激突。一命をとりとめたものの重症。」

 

右京「次に今年の1月、学校の屋上からまた教師が誤って滑り落ち重症。」

 

亀山「…なんて言ったらいいのか分からないけど、不幸な事故ですね…。で、右京さんは何が気になってるんですか?」  

 

右京「学校側の対応です。」

 

亀山「学校の?」

 

右京「この後花崎高校は対応に追われますが、警察を介入させてないみたいですよ?」

 

亀山「え?でも事故の原因の追求しなきゃダメですよね?」  

 

右京「えぇ。事故にあった親族の方も納得しないでしょうから。」

 

右京「そして最終的には全て『不幸な事故』として片付けられたみたいです。」

 

亀山「けど、通報とかあったら少しぐらい介入しそうですけどね。」

 

右京「できなかったのではないでしょうか?」

 

亀山「え?」

 

右京「この花崎高校の理事長は『花舞凛』さんという方です。」

 

亀山「あっ!それって最近噂の!」

 

右京「えぇ。政治家も兼任してる方ですね。確か、『真の男女平等を目指して』を公約にして活躍されている方ですね。」

 

亀山「つまり、圧力かけて捜査させなかったってことですか?」

 

右京「推測の域を出ませんがおそらくそうでしょう。」

 

さらに右京は気になることがあるようだ。それは…

 

右京「ですが、最近動きがあったようです。」

 

亀山「何かあったんですか?」

 

右京「事件の究明に探偵を雇ったようです。」

 

亀山「探偵?!」

 

探偵と聞いて驚く亀山。無理もないだろ。警察を介入させないと思ったら探偵を雇ってきたのだ。

 

亀山「…まさかまたあいつらじゃ!」

 

亀山の言う『あいつら』とは塾年探偵団のことだ。昨年の袴田議員の事件で出会い、成り行きで協力することになった探偵団だ。

 

右京「いえ、どうやら違うみたいですよ?それどころかプロでもないみたいです。」

 

亀山「う〜ん、確かに気になりますね。」

 

右京「えぇ。何故事故が起こったのか、警察を介入させたくない理由、そして探偵を雇う理由…気になりますね…」

 

‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾

数時間後… 弘人の運転で移動中

 

灯「あっ!そう言えば弘人スマホ置いていくところだったよ?」

 

弘人「おっ、ありがとう。後で降りたときにもらうよ。」

 

灯「…そう言えば、弘人のスマホに写ってた男の人って誰なの?」

 

弘人「…」

 

廻「…どうかしたのか?」

 

弘人「…なんでもないよ。その人は俺の友達だよ。」

 

廻「ってことは高校や中学の時の友達か。」

 

弘人「あぁ。」

 

灯「今は会ってないの?」

 

弘人「ん?…あ、あぁまあね…」

 

灯「そうなんだ…会えるといいね!」

 

弘人「…そうだね。」

 

…やっぱり何かおかしいな。けど、今一番気になるのは……

 

乙和「ほんとに今から事件現場に行くんだー!」ワクワク

 

廻「…なんでお前がいるんだよ…」

 

いきなり弘人が「もう一人連れていく」っていうから誰かと思ったら…

 

弘人「いやー、悪いな。どうしても『行きたい!』って言われてな。連れてきてしまった(笑)」

 

乙和「いいじゃん!私だって気になるし…」

 

廻「一応言っとくけど遊びでやってるんじゃないからな…」

 

乙和「分かってるよ!邪魔はしないから!」

 

はぁ…ここまで来たら仕方ないか…

 

乙和「そう言えば前から聞きたかったんだけど…」

 

廻「ん?」

 

乙和「弘人さんは何で女性恐怖症なの?」

 

灯「確かに。」

 

乙和「え?灯ちゃんたちも聞いたことないの?」

 

廻「まあな。」

 

…そういえば弘人のことよく知らねえな、俺たち。

 

玲央「で、どうなんだ?」

 

弘人「…おうおう、玲央までどうしたんだよ?そういうの興味なさそうなのに。」

 

廻「いや、単純にお前のことを知らねえからな。」

 

弘人「…そうか……おっと、悪いな。どうやら着いたみたいだ。話しはまた後でな。」

 

どうやら目的地に着いたようだ。

聞きたかったが仕方ない、また後でだな。

 

車を降りて校門に歩いていく。

 

‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾

花崎高校 校門付近

 

ん?校門のところに誰かいるな。

校門を見ると二人の男が立っていた。

 

?「…おや、亀山くん。どうやら来たようですよ?」

 

亀山「みたいですね。あの…君たちだよね?今日ここに呼ばれている探偵っていうのは。」

 

亀山と呼ばれたフライトジャケットを着た男が話しかけてくる。

 

灯「そうですけど…」

 

?「そうでしたか!君たちが!」

 

男のうちオールバックの髪型の紳士風の男が話しかけてくる。

 

廻「あの…」

 

?「いや〜、実は仕事でここに来ていたのですがね?偶然君たちが来ると聞いてぜひお会いしたいと思いましてね。」

 

なんだこの人?

 

廻「いや、それは別にいいんですけど俺たちこれから約束が…」

 

?「おー、それはますます運がいい!亀山くん、せっかくです。これから仕事現場を見せてもらいましょう!」

 

亀山「そうすっね。じゃあ行こうか。」

 

灯「ち、ちょっと!!廻、どうしよう?」

 

廻「…まあなるようになるだろ。」

 

怒られるかもしれないけど、仕方ないな……

 

‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾

花崎高校 職員室

 

廻「すいません、呼ばれてきた音咲廻ですけど…」

 

俺が職員室に入り、声をかけると一人の女性が歩いてくる。

 

?「貴方が音咲廻さんですね?お待ちしておりました。」

 

廻「どうも。」

 

凛「私がこの花崎高校の理事長をしている花舞凛です。」

 

廻「それで話しというのは…」

 

凛「ここではちょっと…移動しましょう。着いてきてください。」

 

そうしてついていくことにした。

 

‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾

移動中…

 

廻「…」キョロキョロ

 

?「」キョロキョロ 

 

廻・?「(…なるほど……)」

 

灯「廻、どうしたの?」亀山「どうしたんです、右京さん?」

 

廻・右京「「なんでもない(です)」」

 

灯「ならいいけど…」

 

凛「着きました。中へどうぞ。」

 

そして部屋の中へ入っていく。

 

凛「それでお話を、の前に。」

 

 

凛「確か廻さんたちは四人で動いていると聞いたのですが、後ろの三人は?」

 

あ〜、まあやっぱり言われるよな…

 

廻「まあ見学みたいなもんです。」

 

右京「えぇ、我々にはお構いなく。」

 

凛「ですが、外部の情報が外に漏れることは防ぎたいのでできれば退室していただきたいのですが。」

 

右京「ご心配なく。ここで聞いたことは忘れますので。」

 

凛「そういうことではなくてですね…」

 

廻「まあ出ていく気もないみたいですし時間がもったいないので進めましょう。」

 

凛「……絶対に漏らさないようにお願いしますね。」

 

渋々といった様子だが話し始めた。

 

‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾

凛「〜〜っということです。ここまでで質問はありますか?」

 

廻「いや、特にないです。」

 

依頼の内容は案の定最近ここで起こっている事故に関することだった。それの原因と犯人を突き止めてほしいとのことだ。

 

凛「で、依頼を引き受けてくれるでしょうか?」

 

廻「その前に何点か僕からも質問いいですか?」

 

凛「なんでしょうか。」

 

廻「まず警察に頼らずに僕たちに依頼をする理由はなんでしょうか?」

 

犯人を突き止めるだけなら警察の方が早く見つけれるだろう。

 

凛「大事にしたくないだけです。」

 

亀山「『大事にしたくない』ねぇ?」

 

凛「なんですか?」

 

右京「つまり警察に犯人を見つけられると困る何かがある。そうともとれますねぇ。」

 

灯「ちょっと!」

 

廻「いや、いい。」

 

灯「え?」

 

…この人やっぱり……

 

凛「困るなんてそんな。生徒を不安にさせないためでもあります。外部の人間が口を挟まないでください。」

 

右京「これは失礼しました。」

 

廻「理由は分かりました。では、次は監視カメラについてですが…」

 

右京「…」チラッ

 

凛「あぁ。物騒なことが続いたから最近つけたんですよ。」

 

廻「そうですか。じゃあ所々ついてないのは何でですか?」

 

凛「…」

 

廻「つけるなら全部つけたほうが防犯的にもいいと思うんですが。この部屋の前もつけられてないようだったので。」

 

凛「…特に重要だと思った場所につけているだけです。全部つけても費用の無駄なので。」

 

廻「…分かりました。」

 

そうきたか。  

 

廻「質問は以上です。」

 

凛「では受けてもらえますか?」

 

廻「…まあ、そうですね。やれるとこまでやってみます。」

 

さてどうなるかな。

 

凛「ありがとうございます。」

 

 コンコン

 

凛「どうぞ。」

 

ドアが開くと二人の男女が入ってきた。

 

?「ここに居ましたか。」

 

凛「えぇ、例の件でちょっとね。それで何の用?」

 

?「会合の時間です。時間が迫ってきても中々戻ってこられないので我々で迎えにきました。」

 

凛「あら、もうそんな時間だったのね。」

 

右京「こちらの方々は?」

 

凛「こちらは私の秘書をしている『朝川翔一(あさかわしょういち)』です。」

 

翔一「よろしくお願いします。」

 

凛「そしてこちらがここ花崎高校で教師をしている『前川アザミ(まえかわあざみ)』です。」

 

アザミ「どうも。」

 

弘人「…っ!」

 

廻「…?」

 

気のせいか?今弘人が反応したような?

 

凛「では私はこれで失礼します。何か質問があったり進展したらお伝えください。」

 

廻「はい、分かりました。」

 

凛「そう言えば自由に出入りするための許可証を取りに行ってもらえますか?本来は私が持ってきたいのですが時間なので…」

 

凛さんがそう言った時だった。

 

女「なぁ、あんたバカにしてんの?」

 

?「そ、そんなつもりは…」

 

女「いやいや、今月分の金額が足りないっての、どうすんのよ?」

 

うわ〜マジか。今どきあんなことしてる奴いるのか…

 

?「けど、もうお金が…」

 

女「ハァ〜前にも言ったけどそれなら親の金持ってくるとかあんだろうがよ!」バン!

 

瞬間、女が弱気な男の顔を平手打ちした。これは見過ごすわけにはいかねえな。

っとその時だった。

 

亀山「はーい。君たちそれまで。」

 

女「あ〜、誰だあんた。」

 

女が亀山さんがにらみつけると周りの取り巻きの女子も亀山さんを睨み囲む。

 

あ〜あ、何やってんだよ、あの人!!

 

亀山「いやいや、今この子からお金を巻き上げようとしてたよね?」

 

右京「そうですね。見てしまった以上見過ごすわけにはいきません。」

 

女「ッチ。おい、部外者があんま調子のんなよ!」

 

すると亀山さんはそれを避け女生徒を拘束する。

この動き…まさか…って俺も見てるわけにはいかねーな

 

女2「ふん!」

 

廻「はい、何するのかな?」

 

女「痛てて!」

 

さらに玲央と弘人のおかげもあって事態を取敢えず沈静化することに成功した。

 

女「お、お前ら何なんだよ!?」

 

廻「俺は探偵だよ。」

 

右京「…仕方ありませんねえ。我々はこういうものです。」

 

そういうと右京さんと亀山さんがポケットからあるものを取り出す。

 

女「け、警察!?」 

 

右京「申し遅れました。警視庁特命係の杉下右京です。」

 

亀山「同じく亀山薫だ。」

 

ガヤガヤ 嘘でしょ… なんでサツが…

 

乙和「嘘、警察!?」

 

凛「あ、貴方たち!?」

 

右京「すみません、騙すつもりはなかったのですが。」

 

嘘つけ、バレるまで身分を隠し通すつもりだっただろうに……

 

亀山「取敢えず後は警察署の方で話しを聞こうか。」

 

そう言うとさっきまでの勢いはどこへやら、すっかり意気消沈しうなだれているようだった。

 

その後俺たちは許可証をもらって帰り、右京さんたちは女子生徒たちを連れて警察に行ってしまった。

 

なんっていうか、怒涛の一日だったな。

 

‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾

その日の夜

 

凛「…」

 

アザミ「…やっぱり昼間のこと?」

 

凛「えぇ。」

 

何故警察が…上の連中には圧をかけているのに。

 

アザミ「まあ、来た言っても二人でしょ。どうにでもなるでしょ。…あなたの力ならね。」

 

凛「けど、ただでさえ例の件で忙しいのに、警察まで…」

 

 プルプル

 

凛「誰よこんな時に。はい、もしもし?」

 

?『片山です。』

 

凛「あぁ、片山さん。お久しぶりです。」

 

片山『風のうわさで聞いたのだけど、学校大変なことになってるそうね。』

 

凛「…相変わらずどこで聞いたのかお早い情報収集ですね。」

 

片山『それで、今回も警察には言ってないの?』

 

凛「…そのつもりだったんですけどね。警視庁の杉下と亀山とかいう二人が来て結果介入させることになりました。」

 

片山『…へぇ、あの二人が……』

 

凛「ご存知なんですか?」

 

片山『まあ、そうね…。気をつけなさいよ?』

 

凛「え?」

 

片山『あの二人、特に杉下右京にはね。』

 

凛「お言葉ですが、たった二人ですよ?それに片山さんがそこまで評価している理由が分かりません。」

 

そうたかが警察官二人、恐れる必要はないわ……

 

片山『すぐに分かるわよ。それじゃ、夜遅くに悪かったわね。』

 

杉下右京…音咲廻…フン、私の相手ではないわ。上手く利用してあげる。

 

 

 




こうして見ると乙和の影が薄かったな…もっと活躍させれるように頑張ろう。
事件メモ
・花崎高校で原因不明の事故が発生している。
・被害者は全員教師。
それではまた次回お会いしましょう!
次回予告はなしにします!(またつけるかも)


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