錬金術師様、骸骨騎士と共に異世界へお出掛け中 (ジェイ・デスサイズ)
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第1章 錬金術師、異世界へ
気になっていたこの作品がアニメ化という事で・・・はい、オーバーロードの時と同じで衝動に駆られました。異世界の方が合ってるのかな?
っと、話が逸れました。骸骨騎士様、只今異世界へお出掛け中、アニメ化おめでとうございます!
それでは本編をお楽しみ下さい。
「動くな!大人しく投降しろ!さもないとこいつがどうなっても知らねぇぞ!」
エルフ攫いの男が子供エルフの太ももに剣を突き刺す。
「いやぁ!痛い!痛い!」
「子供を盾にする気!?野蛮な上に卑怯者のようね!」
「うるせえんだよ!」
突き刺すだけではおこたらず、更に剣で太ももをぐりぐりと抉る。
「ああぁぁ!?」
「いいか、これ以上抵抗するんじゃあねーよ!こいつらを穴だらけにしてもいいんだぜ!あはははっ!」
「くっ・・・!」
「おい、誰かこのダークエルフの女を縛り上げろ!こんな希少種、滅多に味わえないからな!あははは」
剣を下ろしたダークエルフの女性に周りの男が近づこうとした時、この場の者ではない人物の声が地上ではなく・・・
「ったく、どの世界でもエルフはこういう扱いをされるのか・・・不愉快極まりないな」
「・・・ん?」
私が目を覚ましたのはいつもの自分の部屋ではなく、森。日差しが程よく温かく目を覚ましたばかりの私を再び眠りへ誘う・・・いやいや、そうではなく。え、森?
ふと両腕を上げると自分の手ではない【別の手】があった。
「は?・・・はぁ!?」
テンパる私は立ち上がり手足・服装を確認した。この格好には見覚えがあったそう、これは---
「私が遊んでた、サービス終了したゲームアバター【キャロル】じゃん!?」
そう、サービス終了したはずのゲームのアバターが今の自分の姿なのだ。えぇっと、確か最後の記憶は---
「やりこんでたゲームのサーバーが落ちるまでゲームの中に居ようとして、起きてたけど眠気に勝てなくて寝落ちしたのまでは覚えてるんだけど・・・え、此処ゲームの世界?」
私は原始的だとは思うが、自分の頬を抓ってみた・・・うん、痛い。
「痛い・・・って事は、現実?も、もしかして本やアニメで見た異世界転生ってやつかな?」
もしそうだとしたら、獲得した事のある魔法とか使えるのかな?
「物は試し、ね。えっと、確か・・・
木がある方へ手を向けて呪文を唱える。すると私の手がバチバチと電気を纏い、木へ向かって放たれた。直撃した木の真ん中は黒焦げになり、奥の木数本も貫通していた。
「ら、
このアバター【キャロル】が身に着けている装備は、防具兼武器の【殲琴ダウルダブラ】。今は洋風な服装であるが私の任意で装備姿に切り替える事ができる。このダウルダブラは装備者のレベル・職業数の数値に応じて攻撃力・防御力・魔法威力・魔法防御・その他多数の補助効果を得る事ができ、殲【琴】の為、琴の弦を操り攻撃や防御をする事が可能。扱うにはレベルを上げる事はもちろん様々な職業も得なければ性能をFULLに生かせない。
「えっと、メインが【錬金術師】でサブが【召喚士】、だったはず。【錬金術師】だから魔法士の
右手にダウルダブラの弦を伸ばし、軽く腕を振る。すると振った後一本の斬撃が飛び、木を両断した。
-つ、使えた。ということは他の職業のスキルも使えると思って良さそうね-
「それに弦を使えたって事は、ゲームのまま弦での攻防も可能・・・だとは思うけど、ゲームの時は
などと考えているとお腹から[ぐうぅ~]と可愛らしい音が鳴った。
「うっ・・・まずはご飯を食べてから、ね。取り敢えず近くの街を探すとしますか・・・
私は
―流石ダウルダブラ、消費MPを最小限に抑え、尚且つ即座にMPが回復する。気力があれば半永久的に飛ぶ事も出来るわね―
何て考えながら飛行を楽しみながら下の森を眺めていると大きめの鉄の柵の荷台を囲う複数の男と、それらに対峙する1人の女性が居た。その女性は周りの男達と違う部分が1つあった。それは―――
―エルフだっ!うわぁ、綺麗な女性だなぁ・・・ってもしかしてあの荷台に居るのって、もしかして仲間のエルフなのかな。異世界に来ても、エルフは人間にとって商品同様って事か・・・悲しいな―
男共の行動に1人勝手に悲しくなっているとガキが荷台のエルフに剣を指していた。
―流石に、見逃せないわね。えっと、確かキャロルのロールプレイは・・・―
「ったく、どの世界でもエルフはこういう扱いをされるのか・・・不愉快極まりないな」
私、いや。オレは空からゆっくりと降り地面に足を付ける。エルフの女性や男共はポカンとしていたがそれらを無視して荷台へ近づいていく。するとガキが騒いできた。
「な、なんだガキ!止まれ!止まれって言ってんだよ!さもないと―」
「さもないと・・・何だ?」
ガキの後ろには既に荷台は無く、ダウルダブラの弦を数本地中に伸ばし荷台を地中から空へ持ち上げた。
「あ、あれ!?荷台は!?」
「動くなよ、エルフの子達よ。さて、では―――「我が出るまでもないかもしれないが」
オレが攻撃を仕掛けようとしたら、不意にこの場の者以外の声が聞こえた・・・と思ったらガキの後ろに白銀の鎧を身に纏った大男が現れた。頭に小動物を乗せながら。
「手を貸そう」
「え?」
「なっ!?今のって・・・」
「(何だろう、何となく小動物と鎧男がドヤ顔してる気がする)」
―鎧ラリアーット!!―――(グッ)
鎧の攻撃を合図と受け取ったかの様にエルフの女性は敵に攻撃を開始する。流れるような剣捌き、鎧は肉弾戦、小動物も嚙みつきをしていた。出番の無くなったオレは荷台を支える弦の維持に集中した。
敵を全滅(ガキはラリアットで飛んで行ったが)したのを確認し、オレは弦をゆっくり自分の元へ戻し荷台を下ろす。弦を戻し終えたオレは早速鉄格子を破壊しようとしたが―――
―まだ練習してないから正直怖い。斬れ味が凄いのは分かるが故に、エルフの子達も斬りかねない―
「・・・おい、鎧男。この格子どうにか出来るか?オレは筋力が無くてな」
「うむ!任せよ。ではエルフの子達よ、少し離れてくれ。今出してやr―――」
「動かないでください!」
エルフの女性はオレ達へ剣を向ける。
「我は怪しい者ではない。たまたま通りかかっただけだ」
「オレも似た様なものだ」
「助けてくれたことには感謝しますが、貴方はともかく顔も見せない様な相手を信用しろと?」
「我にも事情があるのでな、兜を脱ぐ事は出来ぬのだよ」
「そんな事言って―――」
―きゅいっ♡―
「ベントゥヴォルピーズ!?」
「おい、お前。そんな事今する事か?この子達は怪我をして苦しんでいるんだぞ、その処置を終えたらいくらでも気の済むまで答えてやる」
エルフの女性はバツの悪そうな表情を浮かべ、剣を収め荷台の元へ歩いてくる。
「感謝する、えっと・・・」
「話は後だ、まずはこっちだ」
オレの意見に同意するかの様に、鎧男は鉄格子を力任せにこじ開け捕らわれたエルフの子供達を荷台から降ろす。降ろした時にこの子達の首に黒い首輪の様な物が見えた。
「酷い・・・こんな物まで」
「降ろした時に気になったが、その黒い首輪の様な物はなんだ?」
「この子達の首に付けられてるのは【
「ほぉ、オレの知らない魔法か。興味深い・・・ならオレの糧にさせてもらおう」「どれどれ、では外してしまおうか」
「2人揃って何言ってるのよ、それが出来ないから困って―――」
「【
「っ!?・・・ッッ!?」
「凄いっ!綺麗に治った・・・♡」
「傷跡は・・・無いな。他に痛みがある所は無いか?」
「大丈夫です!」
「治癒魔法に解呪魔法を詠唱も無しに扱えるなんて、貴方達相当な腕をしているのね。鎧姿だし戦士かと思ったわ・・・貴方は、ごめんなさい。正直侮っていたわ」
―まぁ、見た目はこの子達と同じくらいか下だもんな。でも、この姿からダウルダブラ纏った時が楽しいんだよな―
「大層なものではない」
「そういう反応は慣れている、気にするな」
「ありがとう、おじさん達!」
「はは、気にせずとも良いぞ。また悪い奴が来ても、我がやっつけてやるからな。はははっ」
「・・・」
子供達と別れた後、エルフの女性が話しかけてきた。
「人族にも貴方達みたいに珍しいのがいるのね。人族は野蛮で危険な種族だと聞いていたから。鎧の貴方は精霊獣と心を通わせる事ができるなんて・・・」
「こちらの方は分からぬが、我は他の人族とは少々違うので参考になるとは思えんがな」
「オレも普通ではないからな、参考にしない方が賢明だ。それとこの狐?は人には懐かないのか、オレの帽子に乗っかっているが」
―そのせいで頭が重くてこの小さい身体ではフラ付くのだが―
「通称”綿毛狐”、エルフ族でも中々懐かないわ」
「おぉ、ポンタ。いつのまに」
「コホン。改めて感謝するわ。私はアリアン・グレニス・メープル。エルフ族の戦士よ」
「我はアーク、旅の傭兵だ。その方の帽子に乗っているのはポンタだ」
―きゅい♡―
「オレは、キャロル・マールス・ディーンハイム。錬金術師だ」
ツッコミあるとは思いますが、優しい目で見ていただければと思います。
感想等々お待ちしております。
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第2話 錬金術師、街へ
1話投稿から約2ヶ月、アニメは無事終了しましたね。個人的にオープニングは中毒性があり、エンディングはセリフの様な歌詞がありとても好きです。是非二期してほしいものです。
前置きはこのくらいで、本編をどうぞ。
「・・・ところで、賊の死体から物を取るの?」
「どうせこ奴らの荷物も正規に得た物ではないだろうしな、我が盗ってもバチは当たるまいて」
はは、と笑いながら賊の死体から金目な物を回収していくアーク。騎士がそういう行動をすると・・・何ともシュールだ。
「さて、回収も終えたし。後はこの死体をっと。【
と騎士が炎魔法で焼こうとした時、アリアンが腕を上げ行動をやめるように伝え、代わりに彼女が地面に手をつき詠唱を唱える。
『呑み込め 大地よ』
唱え終えると死体がみるみるうちに地面に呑まれていった。
「これが精霊魔法・・・と言うものか?」
「貴女の帽子の上に居る子も使う魔法は精霊魔法よ。少し違いはあるけれど」
きゅいっ
そう鳴くと私の頭の上で風魔法を使い宙にくるくると回る。すると上から鳥の羽が降って来た。何かと思い上を向くと黄色とオレンジの鮮やかな鳥がアリアンの元へ飛んで来ていた。アリアンの腕に止まると---
『アリアンよ』
「「し、しゃべった!?」」
鳥から男性の低音ボイスが放たれたのだ。
『ディエントの街にて、奴らの拠点を特定した。至急ディエントへ来てくれ。救出作戦を実行する』
「了解。こちらは4人の子供達の救出に成功、至急ディエントへ向かいます」
言い終えるとその鳥は再び空へ向かって羽ばたいて行った。
「アリアン、その鳥は会話が出来るのか?」
「ふふ、違うわ。この子は囁き鳥、言葉を覚えさせて相手に届けることが出来る精霊獣よ」
「伝書鳩とボイスレコーダーを合わせた様なものか」
アークは兜の顎付近に手を添え独り言のように呟いた・・・今何て言った?
「ぼ、ぼい・・・?何?」
「い、いや。こちらの話・・・で?」
「そう・・・?精霊獣を手懐けるのは人族には難しい・・・だから、囁き鳥は私達エルフ族だけの通信手段なの」
アリアンの説明が終わるとアークは身を震わせたり顎に手を添え呟いたりと忙しかった。
「そうか!実に興味深い、いや実にファンタジー・・・!」
・・・さっきのボイスレコーダーといい、ファンタジーといい。アークはもしかして私と同じ世界の人間?
「・・・伝説級の魔法と言われる転移まで使えるアーク。そして浮遊魔法に私の知らない武具を扱うキャロル、本当に貴方達何者なの・・・?」
「何者でもない。我が名アーク、流浪の傭兵だ」
「オレはオレだ。他の誰でもないし、それ以上でもそれ以下でもないさ」
「キャロルはともかく。アーク、貴方傭兵なのよね。なら・・・貴方を今此処で雇う事は可能かしら?」
-まぁ、私は傭兵ではないしね。適当なこと言ってバレたらその方が面倒だし-
「雇う、我をか・・・ふむ。だが、我を雇うことで仲間に何か言われたりせぬか?」
「確かに、良い顔をしない者も居ると思う。私も、ただの人族なら信用しない。でも貴方はエルフ族になんの偏見も持たず子供達を助けてくれた、精霊獣にも認められているわ。だから・・・私は貴方を信用する。同胞を救う為、貴方の力を私に貸してほしい」
アリアンはそっとアークへ手を差し伸べる。わぁ、中々良いシーン!
「・・・分かった。傭兵として、アリアン殿に雇われよう」
そしてアークは返答と同時にその手を握る。
「ふっ・・・ありがとう、アーク」
「まぁオレは傭兵でもないし戦闘には参加していないからな、アリアンに声を掛けられなくても無理はない」
と、良いシーンだが何となく拗ねた私はそんなことを呟いてみる。
「キ、キャロルに何も思ってない訳じゃないのよ!?」
握手していた手を離し、あわあわと動揺するアリアン。うん、こういうクールキャラの慌てる姿は可愛い。
「ふふ、冗談だ。だが、傭兵じゃないのは事実だからな。オレに振られても受け入れられないからな」
「ディエントで傭兵登録をすれば良いではないか?」
「アーク・・・聞くぞ。お前が傭兵組合所の人間だったら、オレを見て受けさせるか?」
そう問いかけると2人はオレの全身を改めて見直す。
「私なら断るわね」
「・・・すまぬ」
「気にするな、馴れている。という訳だ、折角出会ったばかりだが、オレは此処でお別れだ」
私はくるっと背を向け歩く。するとアリアンに止められ、手に何か入った袋を渡された。
「これは?」
「貴女にも助けてもらったのは事実、これはそのお礼よ。ありがとう、キャロル。またどこかで逢いましょう」
「なら、遠慮なく頂こう・・・またな。アリアン、アーク」
「うむ、またどこかで」
私は
『良かったんですか、マスタ~。あの2人と一緒に行かなくて』
私が被っている帽子の4つのつばに付いている装飾品、アーティファクトの1つが声をかけてくる。
「それはそうだが、さっき話した通り。”今”のオレの姿では傭兵証を発行すらできん。だからと言って、わざわざあの姿になるのは逆に目立ち過ぎる・・・暫くはアリアンから貰った金で様子見だな」
すると、大きな街を見つけたので近くの森で降りてから街へ入る・・・え、マジ?
「此処・・・ディエントなのか」
『あんな別れ方したのに、1日経たずに再会しそうですね~』
「そんな気がしてならないな・・・取り合えず、今夜泊まる宿を探すか」
私は軽く食べ物を購入し、今夜泊まる宿を探しにぶらついていると兵士らしき2人が実に興味深い話をしていた。
「あぁ~あ、公爵様は今夜もエルフでお楽しみなのかねぇ」
「だろうよ。俺も楽しみて~」
「俺らみたいなただの兵士じゃエルフなんて買えるわけないだろ」
「それはそうなんだけどさ~」
休み中なのか、警戒心ゼロの会話に拍子抜けしながらも盗み聞ぎをした。
「・・・此処にも、囚われている奴がいるのか」
『どうしますか、マスター。私達はマスターに従いますよ?」
「・・・公爵、というのなら。デカい所に住んでいるだろうな、そしてそいつの部屋は高い所だ」
『マスターは何でこうしゃく?とか言う奴の部屋の場所が分かるんだゾ?』
先程話をしていた蒼のアーティファクトではなく、反対側の赤のアーティファクトが訊ねてきた。それに答えたのは私ではなく蒼のアーティファクトが答える。
『そりゃバカと煙は高い所へいくからよ。いわゆるお約束ってやつね』
『なるほどだゾ!』
「お前ら勝手に喋るな、喋るなら部屋や人気の無い所にしてくれ・・・だが、此処にもアイツらがいるならオレまでそっちに行かなくても良いな」
『では、マスターはどちらへ?』
3つ目の緑のアーティファクトが私に目的の場所について尋ねてくる。
「屋敷の裏から侵入し、地下を探す。そういう所に何かを隠し持っているのも、お約束ってやつだ」
『ではマスター、今夜に派手に行くのですか?』
残る1つの黄色のアーティファクトが私に尋ねてくる。
「あぁ。今夜あの屋敷に仕掛けるぞ」
私が指さしたのは、この街で1番大きな屋敷―――エルフ売りという下らない事をする奴の住処だ。
いかがでしょうか。
多少原作沿いにしながらオリジナルのキャラや話も可能なら組み込んでいこうと思います。
では、次のお話でお会いしましょう。
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第3話 錬金術師、夜襲
今回の話はアーク達が城内で暴れている一方、キャロルは何をしていたのか。といったお話になります。皆様の暇つぶし程度になれば幸いです。
それでは本編をお楽しみ下さい。
市民が寝静まった深夜、私は公爵が住んでいる(あの後調べ確定させた)城へ行き裏門近くの路地で身を細めていた。
「・・・裏門の警備、たった数名なのか。余程自信があるのか、平和ボケしてるだけなのか」
『あの感じ、十中八九後者だと思いますけどね〜。どうするんですか、マスター?別にマスターなら余裕だと思いますよ?』
蒼のアーティファクト、『ガリィ』が私に尋ねてくる。だけど、変に騒ぎになっても困るし-
「騒ぎにするのは侵入してからだな。透明化を掛けて侵入するぞ」
私は自身に透明化の魔法をかけ、城内の庭へ侵入。罠も無くあっけなく中へ侵入でき地下への階段も容易に見つけることができ地下へ向かった。地下には牢屋がいくつかあり、既に連れて行かれた後なのかそもそも使われていないのか、判断はできなかった。見張りは来る途中気絶させたので、透明化を解除する。
「此処には誰も囚われていないようだな・・・という事は公爵とやらの近くか?」
私が自分で集めた情報を整理していると、蒼のアーティファクトが私の帽子から外れ、一瞬蒼い光を放ち、光が収まるとゴスロリ風の容姿をした、青を基調とした
「どうした、ガリィ」
「生命反応がありますよ、マスター。この牢屋の奥に」
ガリィが指した牢屋の奥には確かに小さな人影らしきものと、弱い呼吸する音が聞こえた。もしかしたらエルフ以外にも捕まっている子がいるのかも知れないと思い、確認することにした。
「ガリィ、鍵を壊せ。確認するぞ」
「了解ですよ、マスター」
ガリィは牢屋の鍵の所を水で覆い、それを凍らせ、手に作った氷剣で凍った鍵を破壊した。ガリィが先に入り、その後に私が中に入る。ガリィは囚われている子をしゃがんで抱え私に報告する。
「マスター、恐らくですが《魚人》じゃないですかね。側頭部にヒレみたいなのありますし、手のひらに水かきの様な大きな膜がありますよ」
そこにいたのはガリィの言う通り《魚人》だった、それも小さな女の子の。こんな小さな子供でさえも金にしようだなんて・・・
「ちっ、この世界の人間はクズしかいないのか・・・ガリィ、その子を保護する。応急手当を頼む」
「かしこまりました、マスタ~」
ガリィはその子供の首から下を回復魔法を付与した水で包み、傷を癒していく。すると弱い呼吸だったのが安定した呼吸に変わり始めた。
「よし、呼吸も安定し傷も癒えた。後は―」
次の作業の指示を出そうとした瞬間、《ヒュッ》と何かを投擲した音が聞こえた。
―それは私に向かって投擲されていた物の音だった―
《キィン》と、金属同士のぶつかる音がした。それは投擲されたと思われるクナイと、緑のアーティファクトから現れたオートスコアラー・・・ファラの剣がぶつかる音だった。
「マスター、御怪我はありませんか?」
「あぁ、問題無い。問題なのは―」
私はクナイが飛んできた方へ顔を向ける。そこには・・・忍者がいた。しかも、ケモミミの。私は「忍者!?」と声が出そうになるも、相手の問い掛けにより出なくなった。
「貴方達、その子をどうするつもりですか」
「どうする、だと?突然現れ攻撃をしてきた奴に素直に答えると思ってるのか?」
お互いに牽制しあっていると、ガリィが呆れた声で
「マスター、そんな事している場合ですか~?今はこの子の安全が優先じゃないんですか~」
若干煽る様に言ってくる。
「分かっている!・・・オレ達は此処に捕まっているエルフや他種族を解放しようと忍び込んだ、そして衰弱しているこの子を見つけ治癒し保護した・・・これで満足か」
私の説明を聞いたケモミミ忍者は目を見開き驚いた表情をしていた・・・え、何か変な事言った?
「解放・・・?人族の貴方達が何故その様な事を?」
武器を収め話にのってくれた・・・っていうか、この世界の人ってそんなに悪人多いの!?
「オレ達は正確には人ではないからな、そのせいだろうな。こいつらの関節とか良く見てみろ」
私は親指でくいっとし、視線を誘導する。ケモミミ忍者は私の言う通り目線をガリィ達へ向ける。
「関節を?・・・なっ、か、絡繰!?」
「その通り、私達はマスターによって創造された
ファラは優雅にお辞儀しながら簡潔に説明した。ポカンとするケモミミ忍者、まぁ珍しい・・・かな?とりあえず、これ以上は戦闘にならなさそうね。
そう考えていると上の方から何かが崩れた様な音と鐘の音が同時に聞こえた。
「マスター、最上階付近での音の様ですわ」
「あの時の2人が上から侵入して、速攻見つかってたりして」
くすくすと笑うガリィに、私の判断を待つファラ・・・そうね。
「あの2人が来たのなら、捕まっている奴等はあいつらに任せよう。オレ達はその子を連れて脱出だ」
そう言うと2人は頷き撤退の準備をする。するとケモミミ忍者は武器を仕舞い謝罪をしてきた。
「問答無用に攻撃を仕掛けてすみませんでした・・・。それと、失礼を承知の上でお伺いするのですが。この街を明日には出られますか?」
なんでそんな事聞くんだろう、と一瞬思ったが悪い子ではないから素直に教えてあげよう。
「あぁ、この街にもう用は無いからな」
「!・・・それでしたら、明日お話したい事がありますので朝方に門の前の木でお待ちしております。では!」
「は?ちょ、待っ―」
引き留めようとしたらケモミミ忍者はフッ、と消えてしまった。
「あらら、一瞬で消えちゃいましたね」
「・・・はぁ、まぁ急ぎの用もないし乗ってやるとするか。とにかく、まずは脱出して宿屋に戻るぞ」
「了解~」「畏まりましたわ」
こうして私達は魚人の小さな女の子を保護して宿屋へ戻った。その途中、城から爆破の音が聞こえたが・・・アイツら、派手にやりすぎでは無いか?
取り敢えず宿屋に戻った私はガリィとファラに魚人の子を世話を命じ、今は身体を洗ってあげている。
「やれやれ、のんびり異世界ライフは出来そうに無いな。これでは」
窓辺に肘を置き、夜空を眺めながら呟く。だけど、私は残念がってない。寧ろこれからが楽しみで仕方ない・・・どんな事が起きるのか、此処の世界の暮らしや歴史はどのようなものなのか。その他諸々。
「ふふ、面白くなりそうだ」
いかがでしょうか。
今後はこの魚人の子も交えたキャロル達を書こうと考えております。それと、オートスコアラーについて知っている人もいるかも知れませんが、知らない人もいらっしゃると思いますので出て来たら此処に書こうとおもいます。
それでは、次回縁があればお会いしましょう。
【ガリィ・トゥーマーン】:可憐な容姿とは裏腹に自動人形の中でもとりわけ悪辣であり、主人であるキャロルに対しても人を食ったような態度を取り、バレエやフィギュアスケートのような挙動が特徴。空気中の水を操作する能力を持ち、水や氷塊を意のままに生成・操作することが可能。これを用いて水柱や氷剣による直接攻撃、氷の足場を滑走することによる高速移動、水を鏡に見立てた現像投影による幻惑など、幅広い戦術を得意とする。
【ファラ・スユーフ】:風を発生・操作する能力で風をその身に纏い、戦場ではフラメンコを彷彿とさせる優雅な振る舞いに乗せて大剣を思わせる哲学兵装「
基本性能こそ四体のオートスコアラーの中で最底辺に位置するものの、戦闘能力は人間以上の為、化け物レベル。
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第4話 錬金術師、最初の依頼
季節外れの猛暑だったり、季節に合った気温だったり、体調を崩される方も少なくないと思われます。私も崩しましたし、2回目のコロナにかかりました…2回目だとしても、中々身体に来ますね…
さて、今回はキャロルがケモミミ忍者の話を聞いて今後の動きを決める回になります。皆様の暇つぶし程度になれば幸いです。
それでは本編どうぞ
「・・・本当に居るとはな」
翌日、早朝に宿を出た私はあのケモミミ忍者に言われた所へ行く事にした、すると居た。救出した女の子は疲労が激しかったのか、まだ眠っておりガリィが抱えている。
「・・・!お待ちしていました。ボクの名前はチヨメ、刃心一族【六忍】の1人です。この度は来て下さりありがとうございます」
元気に自己紹介、礼を言うとペコっと頭を下げるケモミミ忍者。素直と言うか、真面目と言うか。
「気にするな、こちらも予定がある訳ではないからな。オレはキャロル・マールス・ディーンハイム。錬金術師だ・・・というか、じんしん?」
「
―【刃心一族】・・・【刃+心=忍】よね!?凄い、初めて忍者見た!ー
でも、今の私は【キャロル】冷静に落ち着いた感じにしないと・・・!
「なるほどな・・・それはそうと、わざわざオレを此処に呼んだ理由は?」
「門の前ではあれですので、話は歩きながらさせて下さい」
街道を歩く彼女の後を追う私達。先頭に私とチヨメ、後ろにガリィだ。それはそうと・・・
―この子は昨日、危険と分かってて単独で何かを探していた。それがエルフ族じゃないとしたら・・・―
「獣人族の・・・仲間の救出を手伝って欲しいのです!」
―やっぱり、正解か。エルフ族と人族の関係から、人族と他種族の関係なんて容易に想像出来るものね―
「救出、か・・・『お前達はどう思う』」
私は考える様な動きをし、念話でガリィ達と会話をする。
『私は別に構いませんよ~マスターが言った通り、特に予定もありませんしね~』
『私も問題ありません。強いて言うなら、その子の安全を第1にしなければいけないと言った所でしょう』
『私も派手に賛成。地味な旅は似合わない』
『アタシも大丈夫だゾ!戦えるかもしれないシナ!』
反対無し・・・決まったわね。
「・・・幾つか質問させてもらう。1つ目、何故オレに?」
「貴女は昨夜、その子を救いました。損得や己の危険を省みず・・・それにその時、ボクは気配を完全に消して奇襲しました。それを防ぐのは常人では出来ません。従者がそれ程の実力者なら、主であるキャロル殿はそれ以上と考えています。この2つが、キャロル殿にお願いした理由です」
「なるほど・・・2つ目、お前は幼い時から修行しているのか?」
「はい、修行を重ねて参りました。強くなる為、1人でも多くの仲間を助ける為に」
実力があるとはいえ、まだ年端もいかない少女がこんな危険な事を・・・全員では無いと思いたいけど、この世界の人間ってヤバい奴ばっかりなのね
「そうか・・・。良し、協力してやろう」
「ほ、本当ですか!」
「あぁ。元々、オレは世界を知りたくて旅をしている様なものだからな。目的地等は無い・・・強いて言うなら、この子を故郷へ連れて行く事。それが今の目的だな」
私はガリィが抱いている眠っている女の子の頭を撫でる。気持ち良かったのか笑顔を見せてくれた。
「ありがとうございます、キャロル殿!」
「つまり、私達を雇うって事なのだから。報酬は期待して良いのよね?」
良い感じに纏まった所を悪い顔をしたガリィが壊す。まぁ、気にはなってたけど。
「もちろんです、キチンとお支払い致しますので御安心を」
「了解~。確認はしておかないといけませんからねぇ」
「まぁ、それもそうだな。ではチヨメ、改めて宜しく頼む」
「こちらこそ、宜しくお願いします。キャロル殿」
私はチヨメちゃんと握手をする。ふふ、物語が動き出したって感じ!
「さてと、では出発か?」
「はい、目的地は【王都オーラヴ】。仲間の情報では、1番大きな奴隷商”エツアト商会”に捕らわれていることが判明しました。他の仲間と合流次第襲撃を仕掛ける予定です」
「了解した。その王都にはどれくらいで着くんだ?」
チヨメは地図を広げ問いに答える。
「そうですね・・・このまま街道を南下していけば4日程で着くはずです」
―4日・・・元の世界だったら1日もかからないのになぁ。なんて思っても、無い物強請りは悲しくなるだけね―
「そこそこかかるな・・・流石にそれまでにはこの子も目が覚める筈だ。もしかするともっとかかるかもな」
「この子も混乱しますものね~」
そう。今の私の最優先事項はこの子の安全・・・まぁ、守りをガリィ達に任せれば問題ないとは思うけど、念には念をだ。
「確かに、その子を危険に巻き込む訳にはいきませんね・・・」
「まぁ、その時はガリィ達に守らせれば大丈夫だ。オレは作戦に参加しよう」
「ありがとうございます、キャロル殿」
私達は街道・・・と言っても人目に付かないように森の中を歩く。地図を見ると隣には【カルカト山群】と言う山群があり、その奥に隠れ里があるとの事。行く機会があったら行ってみたいものだ。
休憩をはさみながら南下する事1日、夕日が私達を照らしもうすぐ今日の終わりなのだと告げる。野営の為にチヨメが色々探しに行こうとしたのを止め、私は魔法を唱える。
「
すると地面から鉱物で出来た家が現れた。人数も少なく長居もしない為小屋寄りの家にした。
「こんなものか。今日は此処で泊ま・・・どうした、チヨメ」
「え、詠唱も無しに、しかも一瞬で・・・」
あぁ~無詠唱と速度が速かったからそんなありえないみたいな顔してたのね。
「この程度、オレにとっては造作もない・・・ほら、入るぞ」
私達は家の中に入った。中も石造りではあるが、ベッド等もちゃんと完備してある。そこは私のこだわりで
『外だとしても家のようにリラックスして寝たい』
からである。
私は街で買っておいた食材で料理を、ガリィは女の子をベッドに寝かせる為に寝室へ、チヨメはテーブルに食器等を並べてくれている。するとガリィから念話が飛んできた。
『マスター、あの子が目を覚ましました。飲み水や軽食等お願いします』
私はチヨメにこの事を伝え、水と食べ物を持ち寝室へと向かった。ノックし、ガリィから返事を受け取り部屋に入る。そこにはベッド上で身体を起こしていた・・・が、流石に目が覚めたら別の場所にいたせいで身体を小さくしており、眼は明らかに怯えていた。
私はこの子が怖がらないように目線を合わせ話しかける・・・まぁ元々目線は近いかもだが。
「大丈夫だ、オレ達は敵じゃない。地下の牢屋で弱っていたお前を保護した者だ。オレはキャロル、キャロル・マールス・ディーンハイム、錬金術師だ。青いのがガリィ「どうもっ♪」黒いのがチヨメ「もう大丈夫ですからね」。お前の名前を聞いても良いか?」
「・・・シルヴィ」
「シルヴィ、だな。身体で痛い所は無いか?違和感は無いか?」
私の質問に対して、シルヴィは自分の身体をペタペタと触り始める。すると元々身体に何かあったのか、無くなっている事に驚いていた。
「傷があったのに・・・無くなってる、よ」
「オレの魔法で身体の傷等は全部治したぞ・・・大丈夫そうで何よりだ」
私は安心し、シルヴィの頭を優しく撫でる。シルヴィは拒否せず、素直に受け入れてくれた・・・可愛い。すると彼女の思い出に触れたのか、声が出ていた。
「・・・ママ」
「は?」「え?」「へ?」
「ママもこうして撫でてくれた、の・・・今は天国に居る、の」
「・・・」
シルヴィは母親を思い出し、眼が潤んできていた。そして涙となり、流れ・・・私はそれを拭う。
「んっ・・・。ねぇ、お願い。シルヴィのママになってほしい、の」
と、私の眼を真っすぐ見て言ってきた。最初に声を出したのは私ではなく・・・。
「ねぇ、シルヴィ。ちょっと良いかしら?」
後ろに控えていたガリィが目線を合わせるように屈みながら訊ねる。
「何でマスターにお願いしたのかしら?ママと言うより、良くて姉妹だと思うのだけど」
それは私も思っていた疑問だ、ナイスガリィ。
「魔力が2人より凄い、の。だからお姉ちゃんより、ママなの」
「・・・オレの魔力が見えるのか?」
「うん。見える、よ?」
「凄いです・・・魔力が直接見える方は極稀と聞いています。もしかすると彼女の種族特有のものかもしれませんが」
チヨメが説明をしてくれた・・・え、凄っ。この子。
「それと・・・少しだけど、ママに似ている、の」
そう言いながら私を見るシルヴィ・・・あぁ、もうっ。
「分かった・・・なってやるよ。生憎子供なんて育てた事無いから、母親らしい事が出来るか分からんぞ」
そう言うと、シルヴィは満開の花の様な笑みを浮かべ私に抱き着いてきた・・・いやはや、独身恋人無しだった私が、いきなり子持ちになるとは・・・人生分かりませんねぇ。
女の子、シルヴィがキャロルの保護下に入りました〜。この後の展開でシルヴィをどうにか活躍させたいと思っている作者でございます。
皆さんの想像、意見、感想などお待ちしております
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