吸血鬼対岡っ引き対オランダ商人対不死者 ~魔性の絶技×緊縛奥義×秋葵入り×太陽よ葬らん~ (フランシスコ・バルトロム・ピロ)
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吸血鬼対岡っ引き対オランダ商人対不死者 ~魔性の絶技×緊縛奥義×秋葵入り×太陽よ葬らん~
時は天下泰平、江戸時代。四人の男達が日の本最大の都市に集まっていた。
「一日で三度も辻斬りに……この国は地獄か!?」
一人は安住の地を探すイタリアン吸血鬼、ピッツァーノ。
蝙蝠翼に尖った耳を持ち、安住の地を探し故郷の迷宮都市ベネツィアより江戸に流れ着いた男。
「お江戸の平和は俺が守る……手段とかは選ばねぇ!!」
二人目は悪魔に魂を売った世紀末的岡っ引き、コロスケ。
故郷を守るため南蛮魔術に手を染め、額に獣を示す墨を入れ、恐るべき力を手に入れた男。
「チャンス! この機にジパングを植民地に!!」
三人目は二人の戦いを見守る智謀のオランダ商人、ホルスタイン。
岡っ引きと吸血鬼の両者の戦いに乗じ、黄金の国ジパングを我が物とせんと奸計を巡らせる男。
「跪け。──さもなくば
そして江戸に突如として現れ暴力を振るう太陽組組長、ヘリオス。
不死身の体を持ち、いつか天をも掴むと公言して憚らぬ不遜の男。
「下手人は何故か夜しか動かねぇ」
「不思議ですなあ」
岡っ引きの味方を装い安全な立ち位置から吸血鬼をけしかけるオランダ商人!
「ホレホレ十字架が怖いか、こんなところに隠れおって!」
「てめぇ、キリシタンだったか!」「しまったァ!」
「へえ、吸血鬼か。本物を見るのは初めてだぜ」
「辻斬り強盗め、まさか死なないのか!?」
吸血鬼と不死者、人外を歩む者同士に芽生える友情!?
「あぁ、ここはどこだ!? 阿蘇で地獄巡りのはずだったんじゃねえのか?」
「ここが阿蘇山に見えるか!? ここは富士山だこのヒャッハァめ!!」
急転直下!!
一週間後、ピッツァーノとヘリオスはベネツィアの人となっていた!!
迷宮都市ベネツィア……霊道の運河が幾重にも連なる結界構造は立ち入る者を出口なき冥府へと誘う。 その恐るべき死の匂いは『ベニスに死す』と恐れられるに至り、この魔都で斃れ果てる命は数知れない──
「まさか帰郷が叶うとは夢のようだ、それも友を連れて……行ってよかったジャパン!」
「それより明日からマフィア『不倶戴天』を立ち上げるんだからよ、早くらしい寝床を探そうぜ」
天狗・オメーン、般若・オメーン、お亀・オメーンを身に着け魔都に対する防護を固めたピッツァーノ。
彼は富士の名水により吸血鬼の力を失った。しかしそれは、同時に忌まわしき吸血体質から解き放たれた事を示していた。
「……人の世界で生きられるのだ。 私は普通がよかったんだ……」
「よかったじゃねえか。少なくとも俺は人並みなんてサラサラごめんだけどよ」
だが、そんな彼らの元に復讐に燃える一人の男が迫っていた。
「見つけたぞイタ公、不死者野郎!」
「「コロスケ!?」」
血涙を流し、海の底に沈んだ江戸を想い猛るコロスケ! しかし二人には一切心当たりがないどころか、突如放り込まれた設定に困惑する。
「不死者どもの陰謀でお江戸は今や海の底……どうしてくれよう!?」
「よせっその設定は無茶だ!」
「つーか俺らは無関係だろそれぇ!?」
そんなやり取りをしていた一行を急襲する一人の風。それはコロスケを強かに蹴り飛ばし、容易く無力化した。蝙蝠を思わせる翼に人間を凌駕するその身体能力、紛れもなく吸血鬼だ!
「すごいですぞ吸血鬼パワー! この勢いでベネツィアを植民地に!」
「こんなセリフ切り貼りの三文小説で更にセリフの使い回しだと!?」
「なんて野郎だ、恥を知れこの悪党!」
下手人はコロスケに倒された筈のホルスタイン。一命を取り留め吸血鬼となった彼は江戸を沈め、ピッツァーノ達を追ってきたのだ。
ヘリオスが血祭りに上げられているのを尻目に、ピッツァーノはコロスケに駆け寄る。こんな男でも、コロスケは彼にとって極東で得たかけがえの無いな友人であった。
「ゲホッ、すまねえ。どうやら奴が下手人だったようだな……」
「喋るな!今から病院に連れて行ってやる!!」
怪我は重く、もはや助からないと見えた。その傷を押し、コロスケは口を開いた。
「ピッツァーノ、これを……」
今際の際の言葉と共にコロスケの十手を受け取り、ピッツァーノは光に包まれた!
「…いやいや、ちょっと待て。返すから元に戻せ」
「そんなことより早く手助けしろや!」
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