征竜の決闘者、ヲ級を拾う (バージ)
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征竜VS月光艦隊

大海原の中にぽつんと存在する小さな島。

そのそばに集結していた深海棲艦の大艦隊は、今や壊滅の憂き目にあおうとしていた。

 

空を飛び回る黒い影。鋭角化したダンゴムシのような見た目をした深海棲艦の艦載機は、今やもう数十機しか残っていない。300機以上いた艦載機をたたき落としたのは、嵐そのもの。

当初太陽の見え隠れする明るい曇りだった空は今や暗雲に閉ざされ、時折稲光を発している。巨大な竜巻が空を移動し、巻き込まれた艦載機は例外なくバラバラのがらくたとなって海に落ちていく。そんな空模様の下、海上もまた炎と黒煙に包まれていた。

溶岩の様な見た目をした一体の竜が、光線の様な炎のブレスを放ち、艦種の区別なくその場にいる艦を葬っていく。低空を飛ぶドラゴンがなぎ払うようにしてブレスを放てば、全力での回避運動もむなしく、数隻の深海棲艦が撃沈されていく。頑強な装甲を持つ戦艦ですら、ブレスの直撃によって一撃で葬り去られていた。

 

 

 

 

~~~

 

 

 

 

今岩山のような見た目のドラゴン、巌征竜レドックス君の下で縮こまっている僕は、無人島で生活しているごく一般的な新米決闘者。強いて違うところをあげるとすれば、異世界転移したっぽいって所かなー。名前は竜然征谷(りゅうぜんせいや)。

 

等と頭の中で冗談を言っている俺が推定異世界転移したと思われるのは、もう三ヶ月も前の話だ。

この無人島で気づいた俺が持っていたのは、デッキとデュエルディスクだけだった。

断っておくが、俺はアニメの世界の住人じゃないし、特別な力を持った存在とかでもない。紛れもなく一般人だ。遊戯王だって正直そこまで詳しくない。そんな俺が気づいたら知らないところにいたのだら混乱するに決まってる。

しかし初めのうちは混乱していた俺を平静にさせたのは、何を隠そうデュエルディスクだった。普通に考えたら意味不明な状況でも、遊戯王だと考えれば何もおかしくはない。そう、世の中の多くの不可解な現象は、遊戯王だからの一言で解決可能なのだ。

世界は誰が作ったのか?とか、人間は死んだらどうなるのか?等と言った、人間が抱く知りようのない疑問に対し、答えられることが優秀な宗教には求められるという話をどこかで聞いたことがある。そう考えれば、遊戯王は優秀な宗教であると言えるだろう。

困ったことがあったら何でも光の創造神とかドン千とかのせいにしておけば、大体解決!そう言う心境に至った俺は、軽いノリで無人島生活をエンジョイしていた。

 

現在地不明、何故ここにいるのかも不明、帰る手段無し、一人きり。このモンスター実体化能力がなかったら絶対とっくに死んでる。何故一般人の俺が普通に無人島で生きていけるかと言われれば、モンスターを実体化させているからだ。

当時の俺、左手に装着したデュエルディスクから、カードをドロー。俺が引いたカードは、カンコーン!!デブリドラゴン!青っぽい白(銀?)色をしたスリムな体格の星4ドラゴンである彼に乗って、俺は空を飛んだ。

そうして自分がいる場所が無人島だと知ったわけだが。小さな島ではあるが、人間一人くらいいくらでも生きていけるだけの十分な広さがあり、木の実や獣、魚をとってすごした。そうやって生活しながらもデッキとカードの仕様を探った俺。一ヶ月の生活で分かったことは色々ある。

 

まず、俺が持っていたデッキは征竜をメインにしたごちゃ混ぜデッキだ。でもデッキとしては征竜が入っているだけの紙束だ。メテオドラゴンとか光の角とか時代が違いすぎるカードが入ってる。それどころか命の砂時計とかミリスレディエントとかどこから突っ込めば良いのか分からないカードまで入ってる。

何デッキだよこれ。カードは拾ったのかな?

 

次に、モンスターの召喚には俺自身の生命力を必要とする。強いモンスターほど、あるいは強い力を持って召喚するほどに、消費する生命力は多くなる。

初めて焔征竜ブラスターを生け贄無しでポンだしした時なんかは膝から崩れ落ちた。

後から分かったことだが、ちゃんとリリースしたり、子征竜の効果で召喚したときは消費が少なくてすむ。そして同時に出せるのは現状三体までだ。最初は一体が限界だったのだが、今は三体まで召喚できるようになった。デュエルリンクスかな?

あと生命力と言ってもフィーリングで言ってるだけなのでそれがなんなのかは分からない。疲れて力が抜けるからなんとなく生命力って言ってる。召喚に必要、魔法トラップ発動に必要、ドローするにも必要。アニメ以上に身体能力が求められている気がする。

 

だから俺は鍛えた。

水征竜ストリームを召喚して海に放てば、食べきれないほどの量の魚を簡単に取ってきてくれると気づいてからは、異能サバイバルものから熱血修行ものにジャンルが変わっていた。

ランニングに始まり、ドロー練習、デュエリスト能力の調査。正直楽しかったし、何も分からない内から海に繰り出すのは無謀すぎると考えた。

そうして修行していたら三ヶ月があっという間に過ぎていった。

 

で、深海棲艦の大艦隊がこんにちはした。

多分数日前に嵐征竜テンペストを召喚して、はしゃいだのが原因だろう。何せ空には暗雲が立ちこめ、強風が吹き、雷がゴロゴロ言い出した。調子が良かったからテンペストにリソース注ぎ込んでみたのだが、まさか天候から変わるとは。あんな異常気象があったら目立っても仕方ない。

いや、でもどうだろう。海だし案外大した異常気象でもない?

まあいいや、深海棲艦が大挙してやってきたことには違いない。

 

まーびっくりしたよね。だって遊戯王関係の世界だと信じて疑わなかったし。艦これなのか遊戯王なのかそれとも別の何かなのか分からなくなったよ。でも深海棲艦の艦載機が何機も飛んできたからそれどころじゃなくなってた。

最初は隠れてやり過ごそうとしたけど、結局見つかって戦闘が勃発。砲撃から身を守るために守備力3000のレドックスを召喚。航空機を蹴散らすためにテンペスト、船を追い払うためにブラスターを召喚。命の危機にさらされて、火事場の馬鹿力が出たんだと思う。上級モンスター三体召喚とかそれまでの俺には無理な芸当だった。というか、やっぱり結構無茶していた。敵を殲滅して安心したらそのまま気絶しちゃったし。

 

あの後どれくらい気絶してたのか全然分からないけど、起きてからも驚いた。レドックスだけが俺のことをずっと守ってくれていたからだ。ブラスターとテンペストは俺の負担を減らすために自主的に姿を消したらしい。彼らとは話すことはできないけど、意思疎通はできる。

この時はすごく感動したし、忘れられない思い出だ。

 

そんなこんなで、今俺は海岸を散策中。

船だか艦載機だかの残骸がそこら中に転がっているが、それ以外に変わったとことはない。あんな戦闘があったとは思えないくらい海は穏やかだ。そんな風に思いながらも海岸を歩いていると、うつぶせで打ち上げられている人を見つけた。いや、人というか、深海棲艦だ。

 

空母ヲ級。

人間ではないことを象徴するような白灰色の肌と髪。深海棲艦らしい白と黒で怪物染みた頭部の……帽子?は分離して横に転がっている。他に思い当たる節もないし、おそらくあの大艦隊の旗艦だったヲ級だ。

一人だけ攻撃されにくいように立ち回る、他とは違う形状をした杖を持った相手がいる。そうカードに宿って実体化はしていないブラスターから聞いているが、見るからにカッコイイ感じの杖が一緒にあるからおそらく合っているだろう。

 

全快したわけではないが、警戒してデブリドラゴンを召喚しておく。帽子の方からは離れた方向から近づき、人型の方を突っついてみるが反応無し。死亡、あるいは轟沈だろうか。それとも座礁?仰向けにしてみると、まず体の冷たさに驚く。そして顔を見て、今度はなんとも言えない気持ちになった。何せ目を閉じた彼女は、人間の女性にしか見えなかったからだ。

 

こちらは襲われた側で、相手は生き物かも怪しい相手。後悔するわけでもなければ悪いとも思わないが、それでもあまり良い気分にはなれないことは確かだった。

微妙に下向いた気持ちで彼女の隣に座り、なんと無しにデッキからカードを一枚ドローする。そこには、今まで持っていなかったはずのカードがあった。

清冽(せいれつ)の水霊使いエリア。

……え?

 

 

 

 

~~~

 

 

 

 

遊戯王・艦これ、そして俺達が住むスタンダード次元。

征竜は遊戯王、深海棲艦は艦これからそれぞれやってきた。

あの夜、語られた事は真実なのだろうか?

ただ俺の手には清冽の水霊使いエリアのカードが、握られていた。

 

次回!相手の墓地から自分フィールド上に特殊召喚!お楽しみは、これからだ!

 

 

 

 

 




そういう訳で以下の要素が含まれます。

・サクサク進行、軽いノリでいく予定
・主人公強キャラ
・ハーメルン、初 投 稿
・遊戯王オリカ
・デュエル自体は少なめにする予定

以上の注意点で嫌な予感がした人は、小説を読んでから言いましょう。

「注意点が変わっていないか確認しただけだ!」

と。


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相手の墓地から自分フィールド上に特殊召喚

改行についてはどうしようか悩んでいます。
文章毎に改行していましたが、これが良いことなのかどうか。今回ちょっと変えてみる。あるいはどうでもいいことなのかもですが。
というかメモ帳とハーメルンで感覚が違うな…。



実体化したエリアがバッとやってカッとなると、倒れていたヲ級は目を覚ました。

確かにヲ級は死んで(?)いたはずなのに、本当に復活した。

どうして…(現場猫並感)

エリアは腰に手を当てて見事なドヤ顔をしている。かわいいのは分かったから説明してくれ。

 

目覚めたヲ級は俺を見ると、赤ん坊のように両手を向けて近づいてきて、そのまま膝立ちの体勢で俺の腹のあたりに抱きついた。その行動にどうすれば良いか分からない俺、迫真の棒立ち。特殊召喚しないタイプのデッキを相手にしたときの二ビルみたいだぁ。エリアの方を見ると満足した様な笑顔でカードに戻っていった。

どうして…(現場猫並感)

というか人間並の感触と人外の冷たさが同時に感じられて変な感じだ。

 

そのまま状況変わらず数分経過。

寒いぞ!ヲ級の体温の冷たさでこのままだと凍えてしまう。

 

「ヲ級、ちょっと。ちょっと放して」

 

そう言って肩をタップすると、ヲ級は俺に抱きついたまま俺を見上げた。放してはくれなかった。

どうして…(現場猫並感)

 

その後なんとかしてヲ級を引きはがしたら、杖も頭のヤツも拾わずに俺の後を付いてくるようになった。良いのかなーと最初は思ったけど結局まあいいやってなった。その後はめぼしいものもなく、散策は終了。

自分の体を気遣って今日の所はおとなしくしておくことにする。代わりにヲ級を見てみるが、彼女は何をするでもなくずーっと俺のことを見つめている。

俺が視線を向けると目が合う。そのまま数秒見つめ合うが、表情一つ変わらない。近づいて目の前で手を振ってみるが、無反応。彼女を中心に回ってみると、彼女は俺に合わせて向きを変える。艦これアーケードみたいな感じで。……なるほど?

 

そんな感じでヲ級の扱いに困りつつその日が終わったが、夜寝るときは普通に困った。木と葉っぱで作った自作のシェルターで眠るわけだが、当然一人用である。

寝床で座ってどうしたものかと考えるもやはりどうすれば良いのか分からず、いつの間にか寝落ちしていた。

翌日起きたら狭い寝床でヲ級が俺に抱きついて寝ていた。

困ったように思いつつも、とりあえず夜の間放置するようなことにならなかったらしい、という事実に少し安心した。

 

つーか深海棲艦って寝るのか。いや、このヲ級は一回死んで蘇生したようなものだから他とは違うのかもしれないが。あと寒い、ヲ級が冷たい。俺は炎征竜バーナーを召喚して暖を取る。もしかして寒さで目覚めたんじゃないかと思うが、そこで気づく。ヲ級の体温、昨日はもっと冷たくなかったか?いや、生き返ったばかりだから冷たかっただけか?とりあえず保留で。バーナー君のおかげで暖かくなってきた。抱きつかれたままヲ級のほほをつついてみる。

 

「ン……」

 

そんな声と共に目を開けたヲ級がこちらを見る。そしてもぞもぞと体をこすりつけてくる。人とそう違わない、柔らかい肉体が体の半分ほどを襲う。しかし動じない。なぜなら決闘者だから。そしてひとしきり体をこすりつけて満足したのか、抱きついた状態のまま動きを止めた。

っておきないんかい。そう思っていたらヲ級がいるのとは反対側にバーナーが入り込んできた。狭い!力を絞って呼んだため、人より少し小さいくらいの大きさのバーナーだが、それでも一人用のシェルターに三人は多すぎる。それに密着してもやけどするほどではないとは言え、温度が高い。片方冷たくて片方熱いとかどういうことだ。何もバランス取れてないぞ。

バーナー君!バーナー君!?バーナバーナー!(フシギバナ)

いや待って、冷静に考えてみよう。フィールドには水属性と炎属性のモンスターが一体ずつ。そして俺は決闘者だ。何だ、何もおかしなことはないな!

 

そうして俺は二度寝した。決闘者としての生き方が、少しずつ彼を精神的にも肉体的にも決闘者にしていたのだった!!

 

 

 

~~~

 

 

 

空を飛ぶ艦載機から見渡しても島影一つ見えない大海原に、黒い洋上施設が存在していた。人類の誰にもその存在を知られていないその場所の周りには、無数の深海棲艦が停泊している。そんな場所の中の開けた場所で、とある深海棲艦が座っていた。

人の女性のような姿で、肌は白く、服も白い。白い髪は腰まで伸び、おでこからは大きな一本角が生えている。明らかに巨大な手と爪を持ち、極めて豊かで女性的な体型をしている。深海棲艦の中でも特異で強力な個体、"姫"と呼ばれる者の一種。

港湾棲姫だ。

 

「月光が消えた?」

「そうっす!集結していた百隻の艦隊ごと、月光様が消えちまいました!」

 

港湾棲姫は報告してきた深海棲艦(駆逐イ級)の方を見る。

普通の深海棲艦の中では珍しく数少ない、人間と遜色ないほどに流暢に会話できる個体だ。それ以外は全く他の深海棲艦と違いが無いのだが、その一点で何かと重宝がられていた。別に深海棲艦は思考の伝達手段として、口頭での会話を重視していない。しかし、少なくとも港湾棲姫は会話できる相手とは口頭での会話をしていた。

 

もたらされた報告は、港湾棲姫にとって不可解なものであった。それは、ある作戦のために集結させていた百隻以上の艦隊が、丸ごとどこかへ消えてしまったというものだ。もちろん消えたとなれば轟沈したと考えるのが普通だが、それにしたって奇妙だった。

まず集結地点は日本本土から南東に二千キロ以上は離れている地点だ。人類の制海権の全く及んでいない地点であり、戦闘が発生すること事態不可解だ。さらに艦隊旗艦をつとめる空母ヲ級"月光"は、一般的な深海棲艦とは違う特殊個体だ。

他の深海棲艦よりも明確に強力な個体であり、力と存在が人類側にも認知されているほどだ。その能力を考えれば、月光が一方的にやられるという事態は考えづらい。よしんば負けたとしても、百隻からなる艦隊が一隻たりとも逃げられないというのはおかしな話だ。

 

「しかも、人類が何かしら作戦を行った気配が全然なかったす!いつも通りっす!」

 

そんな報告に、港湾棲姫はわずかに顔をしかめる。そしてあまりに不可解な状況に、港湾棲姫は調査を命じるのだった。

 

 

 




・竜然征谷(りゅうぜんせいや)
青年。遊戯王はカジュアル。紛れもなく一般人だったが、決闘者になりつつあるので、「紛れもなく」の一言はもう適用されなくなってきている。


・港湾棲姫(こうわんせいき)
全体的に体が大きい。成人男性でもすっぽり抱きしめられるだろう。このお話の設定上体が冷たいことを除けば、抱きしめられればすごく気持ちが良いのではなかろうか。そして大きな体と比してなお巨大な爪。ふとパッションでリップな人を連想した。



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アレキサンドライドラゴン


×アレキサンドライトドラゴン
○アレキサンドライドラゴン

この小説書くまで気づいていませんでした。


 

ヲ級を見つけてから一週間が経過したころ、なんとヲ級が少しずつ人間らしい反応を見せるようになってきた。最初の内は俺を見て、俺の近くにいる以外何の反応もなかった。精々走り出すと同じ速さで付いてくるとか、寝るといつの間にか一緒に寝てるとかその程度だ。しかし今は幼児とする程度の意思疎通はできるようになった。

 

そんな日々の中、偵察のために召喚している風征竜ライトニングが、接近する深海棲艦を発見した。あの一戦の後は、常にライトニングを偵察のために上空に待機させている。知らぬ間に近づかれて空爆や艦砲射撃を受ける事態は心臓に悪すぎる。

 

できるだけ消費を押さえるようにしているが、一日中ライトニングを出しっ放しにするのは楽じゃない。しかしこの紙束征竜デッキにおいて、海の監視ができてかつ最も安いのがライトニングだったのだ。深海棲艦との戦闘はあれ以降これで三回目、一度も見逃したことはない。

 

今回の相手は重巡1、軽巡1、駆逐4という、どこにでもいる編成。それが2かける3、サイコロの六の目と同じ配置である複縦陣を組んでやってくる。

一方のこちらの前衛にアレキサンドライドラゴン(通常・ドラゴン・光・星4・2000/100)、後衛にメテオドラゴン(通常・ドラゴン・地・星6・1800/2000)の二体だ。青銀のウロコを持つ神秘的なドラゴンと、溶岩に似た見た目の甲羅を持つ亀のようなドラゴンのコンビ。

どうして親征竜を使わないのかって?あいつらコスト(生命力)が……。どうして子征竜を使わないのかって?あいつらって親征竜を呼ぶためにいるんじゃないの?というのは冗談だが、相手がたいしたことないから練習のためにこの二体を出したのもあるし、これでも割と過剰戦力だったりする。

 

しかし元から感じてはいたのだが、アレキを知って実感したことがある。それはカードにおける攻撃力と守備力が、そのまま実際の戦闘力を現している訳ではないという事実だ。アレキの守備力は100、遊戯王最弱クラス。ミリスレディエントやクリボー(どちらも攻撃力300)といった、海馬に雑魚モンスターと呼ばれたりするモンスターにすら殴り倒される貧弱さだ。これがそのまま実際の防御力だとしたら、アレキは対空砲で簡単にたたき落とされてしまうだろう。

しかし実際にやってみればどうだ。

彼ら(いや、彼女らか)が懸命に行う対空砲火は一発たりとも、アレキにかすりもしない。アレキの飛行速度が速いとかそういうことではなく、敵はアレキがどこにいるのか分かっていないのだ。今深海棲艦の周りを飛び回っているのは、幻。本体は対空砲の届かない上空に羽ばたくこともなく浮いている。

アレキサンドライドラゴンのカードテキストには、彼のウロコは古の王の名を冠し、神秘の象徴であると書かれている。要するに魔法みたいなことができる存在だったのだ、アレキは。アレキの光のブレスは重巡くらいならおそらくワンパン可能だが、それをする必要もない。後衛として配置したメテオドラゴンの遠距離攻撃で、すべて片付いてしまった。

 

上空に打ち上げた巨岩がメテオのごとく落ちてくるメテオドラゴンの攻撃は、投石と言うよりはもはやミサイルである。攪乱と遠距離火力の合わせ技で、想定とは異なる相性の良さだった。いやまあ、あの編成の敵6隻相手じゃそりゃ一方的な戦いにしかならないだろうけど。

 

しかし、こういう事態になるのだな。

100隻という大艦隊を一席残らず沈めたのは良いが、そんなことすれば当然目立つ。だから別の深海棲艦がやってくること自体は避けようがなかっただろう。だがそれにしたって散発的に、小戦力を突っ込ませるか?普通に考えればやらないだろう。

無秩序なように見えるというのが感想だ。

ここから分かるのは、深海棲艦は秩序だって統制されているわけではないという可能性。気ままに泳ぎ、気ままに行動し、気ままに人を襲うのがデフォルトなのかもしれない。……まあ、深海棲艦がただの理性なき怪物なのだとしたら、高度な秩序と統制を持たないことは当然ということになるが。隣に座るヲ級を見ていると、どうなんだろうなと思ってしまう。

他の人間と出会ったことすらない俺からすれば、この世界がどうなっているのかなど知りようがないわけだが。

 

ちなみに俺たちが座って飲んでいるのは空き缶を用いていれたお茶もどきだ。今時(?)浜辺に行けば漂着したゴミはいくらでも転がっている。この無人島も例に漏れず、漂流物の中からペットボトルや空き缶などをサバイバルに利用しているわけだ。

何かの果実がなっている木の葉を使ったお茶もどき。微妙に甘いにおいがして悪くないお茶だろう、火種はバーナー。

水霊使いエリアと人食い植物がどっちも大丈夫と言っていたから、多分食べても大丈夫だ。怖いからやりたくないが、最悪自分に魔法カード超再生能力を撃てばなんとかなるだろう、多分。ちなみに葉っぱを見たのが人食い植物、入れた後のお茶を見たのがエリアだ。なおエリアが無言で催促してきた、もとい飲みたそうにしていたので一緒に飲んでいる。

清冽の水霊使いエリアは結構コスト重いのだが、ただの水霊使いエリアならそこまで気にならないコストですんでいる。正直清冽の方は気楽に出せん…。

 

ヲ級は食べ物を渡せば食べてくれるようになった。彼女は感情というものが薄いように見えるが、微妙に喜んでいるっぽいことは分かる。お茶の時間中は特にそれが顕著で、今もヲ級の表情が微妙に緩んでいる。

湯気を立てている空き缶のお茶を、大事そうに両手で包み込み、目を細めている。そうして時折こちらを見つめるヲ級の姿に、なんとなくこちらの心も温まる。

彼女は動いていないときは必ずすぐ近くまで寄ってくるし、今も肩がぶつかるぐらい近くにいる。悪い気はしないが、この距離で見つめられるのは照れくさい。このお茶の時間は、正直かわいいを過剰摂取しているような気がしてならない。ヲ級とエリアの片方だけでも十分なくらいだ。

 

 

 

 





・アレキサンドライドラゴン
割とレギュラー枠というか、出番が多かったりする。遊戯王カードとしての性能とは全く異なる強さをしている。


・水霊使いエリア
出番はあってもセリフはない。今後もセリフはつけない予定。現状唯一の人型モンスター。戦っても強くはない。


アンケート設置しました。
現状見た目とかカード効果とかあまり説明していませんが、アンケートの結果如何によっては最低限の説明はした方がいいなと。
そんなわけでよろしくお願いします。



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召喚コスト


マスターデュエル良いよね。
なおフュージョンフェスの為のパックで爆死してまともなデッキが作れない模様。
まあ必要SRすら出なかったから逆にあきらめがついたけど。

征竜が使えればなー俺もなー。



 

 

変わらず無人島生活を送っているわけだが、カードが最初よりも大分増えている。

カードは拾った……訳ではなく、いつの間にか勝手に増えているのだ。不定期に増えるカードであるが、何かしら普段と違うことが起こったときにも増える。

あの大艦隊との戦いの後にも、結構カードが増えていた。清冽の水霊使いエリアもそうだし、それ以外にもあの時は割と有用なカードが手に入っている。

七星の宝刀(征竜だな!)、ティオの蠱惑魔(単体でどうしろと)、幽鬼うさぎ(!!?)。王立魔法図書館(シナジーないぞ)、閃光のバリア -シャイニング・フォース-(ミラフォ…)。

え?微妙?征竜と関係ない?謎チョイス?下位互換?うるせぇ!!!

 

それは置いておいて今日も深海棲艦はやってきた。

軽空母2、軽巡2、駆逐8の合計12隻。

偵察しているライトニングに変わって新入りのガスタ・ガルド、鷹ぐらいの大きさの緑の鳥だ。ライトニングと比べて非常にコストが低いので一日中出しておいても苦にならない有能。なおデュエルになったらガスタが他にないのでバニラチューナー状態の模様。

 

何にせよ敵は普通にアレキサンドライとメテオの二体で蹴散らした訳だけど。今回閃光のバリアを使ってみて、軽巡洋艦の主砲ぐらいなら軽く防げることが分かった。で、攻撃を受けて許容量を超えた場合は反射攻撃を行うわけだ。

これなら普通にバリアとして使える。ただ反射の方は案外使いこなすのが難しいかもだ。今回は一言で言ってタイミングを逃した。なぜなら反射攻撃する前に敵が全滅したから。

今回はさっさとアレキが全部片付けてしまってな。

 

 

 

~~~

 

 

 

決戦から一ヶ月後。

朝にやってきた18隻からなる艦隊をいつもの二体で撃滅。

しかしこの後、昼になってさらなる深海棲艦が現れる。

一日に二回の襲撃を受けるのは初めてだったが、デブリドラゴンとライトニングで撃滅した。

 

そうして夕方。三回目の襲撃、来る。

敵は重巡洋艦3、軽巡洋艦3、駆逐艦6。

これは良くない。何が悪いって、同じモンスターを短期間でもう一度召喚しようとするとコストが上がる。

今日まだ出していないのはリアクタンと親征竜しかいない。

ストリームは魚を捕るのに出したし、バーナーも火をおこすのに召喚している。

そして既に二回の戦闘があり、四回目がないとも限らない。できれば消費は抑えたいところ。

悩んだが、結局ブラスターを召喚して蹂躙して終わった。

完全にオーバーキルだし、一発の艦砲射撃も島に受けることなく終了した。

まあこの程度の敵ならアレキだって蹂躙なのだが。

戦い自体五分も経たずに終了したのだが、それでもデブリ・ライトニング二体で戦った時よりも消費が重い。

親征竜は大和型か何かか。

 

しかし相手が戦艦だろうが何だろうが、ドラゴン達にとって航空機がないのなら10や20の敵艦は敵にならない。

図体こそ大きいが、加速も最高速も敵を遙かに上回っているのだ。

主砲が当たらないのは当然として、高角砲も当たる気配がない。

航空機だってそれほど脅威にはならない。

たこ焼き(強航空機)とは戦ったことがないが、そこまで大きな差はあるまい。

 

やはり戦闘における唯一にして最大の弱点がダイレクトアタックだ。

だから今まで戦うときは念を入れて防御役を用意していた。

やっぱりヤリザ殿が最強でござるな!

召喚コストについては使いこんで行けば少しずつ楽になってくから、修行あるのみだ。

使い続けていくのが一番の解決法だろう。

 

この日は結局四回目の襲撃はなく、次の日になった。

戦うのはそれはそれで修行になるので、現状無人島修行生活を満喫中の俺。

 

しかし冷静に考えてみると島の上の人間一人殺すために艦砲射撃を浴びせるというのは、一言で言ってナンセンスだよな。

俺一人のために島を襲い続ける深海棲艦達の神経が理解できない。

まあ最近は近づいた端から撃滅しているので、実際に襲う気があるのか分かっていないが。

実はこの島の周辺が通り道になっているだけだったりして。

 

「そこら辺、どう思う?」

「ヲ?」

 

ヲ級に聞いてみるが、彼女は疑問の声と共に小さく首をかしげた。実にかわいらしい。

会話ができないのは相変わらずだが、それ以外はずいぶん人間らしくなった。

 

デュエリストとしての修行の一環で島の北部の岩山を跳び回るのだが、これをヲ級をおもり代わりに背負って行っている。

アクションデュエルがなかった頃から、パルクール染みた機動はデュエリストの技能の一つだ。

最初の内は怖がった様子でしがみついていたヲ級だが、最近は慣れたらしく平然としている。それどころか体重移動をこちらに合わせて行っているらしく、動きやすくなってしまった。

今も跳躍と共に縦360度、横180度の回転をしてから着地するが、何の障害も感じない。

次からはヲ級に頭部装着状態で背負われてもらうのでも良いかもしれない。

カード手刀でちょっとした木の枝くらいなら真っ二つにできるようになったし、そろそろ次の展望を考えるべきだろうか。

でも自分がいる島の場所が分からないことも、軽い気持ちでいける範囲に陸地がないことも変わりないんだよな。

 

俺はデブリドラゴンを召喚し、北西方向の探索に送り出す。

俺は星読みの技術があれば大まかな現在地が分かるだろうか、なんて考えていた。

 

 

 

 





・ガスタ・ガルド
タッグフォースで使いまくった。タイミングを逃すという概念を理解していなかったあの頃、どうしてシンクロ素材にして効果を発動できないのか理解不能だった。


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とある世界の掲示板その1


名前見ても書き込んでいる人が誰か分からない人、全然大丈夫なので安心してください。
掲示板なのに偽名が偽名になってないと思った人、それARC-Vでも同じこと言えんの?という冗談はさておき、髪型で区別が付かないのと同じように、偽名になっていない偽名でも彼らは誰のことか分かっていません。でも一部有名人は身バレしてます。




 

573:明けの明星

では、征竜に何か起こってはいるのか

 

574:海の馬

せやな

 

575:KID

まあ大丈夫でしょ。巨神竜が目を光らせてるんだからさ

 

576:ウィッター

オイラ心配だよ、また何か巻き込まれたらどうしよう

 

577:RAY

ウィッターさんの不幸っぷりは神がかってるからね…

 

578:レゴ竜

バスの間違いで冥界行った件はもはや伝説だぞ

 

579:春うらら

今度は気づいたら4征竜の衝突の中央に立ってたりして

 

580:ウィッター

ひえ~、勘弁してぇ!

 

581:KID

大丈夫大丈夫、そんなこと起こらないって!

 

582:海の馬

実際巻き込まれようがないしな!

 

583:極神聖帝

むしろ周りの危険物の方が問題じゃないかの?ほら、混沌とか

 

584:ウィッター

ウッ(心停止)

 

585:屋根裏の物の怪

いや、大丈夫でしょ。もう長らく問題起こしてないだろ

 

586:RAY

長らく何もしてないのは征竜も同じでは?

 

587:アルファ

バンッ!バンッ!

 

588:海の馬

ヒヒン!

 

589:数学者

一部の人の心をえぐるからこの話題はやめないかのう。

 

590:レゴ竜

ワイトもそう思います。

 

591:鬼畜司書

王立魔法図書館としては、マスマティの提案に賛成である。

 

592:明けの明星

征竜が動いたとしたら、やぱり彼らの役割が原因か。

 

593:極神聖帝

征竜は大いなる役割を果たしておるからな。

 

594:RAY

そう考えると、どこかで属性のバランスが大きく崩れるような事態が起こっているのかも。

 

595:数学者

ふむ、そういえばシラユキ姫がその件で飛び出していったとか。

 

596:極神聖帝

なんじゃと!?こうしてはおれん儂も行くぞおおおおおおおおおお!!

 

597:海の馬

おい、誰かこのケモナージジイを止めろ!

 

598:アルファ

バンッ!バンッ!

 

599:レゴ竜

サーチ!パキケファロ!!

 

600:KID

ジムルグさん、速く結界像おいて!!

 

601:明けの明星

私の墓地には天使族モンスターが4枚のみ。後は分かるな。

 

602:極神聖帝

はなせええええええええええええええええ!!

 

 

 

 

 

 

 

星々の瞬く夜の空に、いくつかの人影があった。

そのうちの一人は漆黒の翼を羽ばたかせることなく宙に浮かび、遠くからでも分かるほどに強大な力を持つ存在だった。

彼は明けの明星という名前でどこぞの掲示板に書き込んでいる。

 

「予感がする。今は動くべきだ。特等席を逃したくないのであれば」

 

白髪をたなびかせる絶世の美青年。カードとしての彼は、デッキから堕天使を大量に呼び出したり、相手ターンに融合してサンダーボルトをかましてきたりするど派手なモンスターだった。

とはいえ融合の方は最近烙印劇城デスピアから出てきてばかりなので、相手ターンサンダーボルトをくらった決闘者は少ないかもしれないが。

 

「シラユキ姫は足跡をたどれば何か分かるかもしれん。スペルビア、カグヤ姫にコンタクトを取れ」

 

明けの明星はそばにいた堕天使にそう命ずる。

彼はかつてアテナと組んでフィールドと墓地を反復横跳びし、バーンダメージを与えながら特殊召喚していた堕天使だ。

 

「巨神竜の元へ向かうぞ」

 

そう言って彼らは飛び去っていった。

明かりのない夜と星空だけを残して。

 

 





・ウィッター
彼がバスを間違えたのは単なる偶然だったかもしれないが、投獄されたこと自体は必然だろう。何なら「ウィッ」部分の相手とは同じ牢に入れられている。
何のことか分からないあなたは、クリッターのストーリーで調べてみよう。

・極神聖帝
ごめんなさい。ケモナー扱いされているのは独自設定であり、公式は一切関係ありません。

・春うらら
本編ストーリーでは出ないことが決まっているため、遠慮無くここで登場させられた。



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露天風呂、ドロー予想ゲーム、夜襲


デュエル回まで遠いっすね…。



 

俺がいる無人島は島の三割を岩山、残りを森と砂浜が占めている。

北部に岩山があり、こちらは海岸が崖になっているのでここからの上陸はできないだろう。そこそこの高さがあるので、最初の内はミリスレディエントをおいて見回りをさせたりもした。

森の方は虫はいるが大型の動物は住んでおらず、いても鳥とかネズミとかだ。それもあって俺の食料のほとんどは今や水征竜ストリームが取ってくる魚が占めている。

そして水もストリームが空気中から生成した水でまかなわれている。

もうあいつ一人だけで良いんじゃないかな(サバイバル)。

炎征竜バーナーが火を出せるので、マジでこの二体だけで生活が成り立つ。

巌征竜レドックスが地面から生やした頑丈な石のナイフもあるため、魚を捌くのにもそれほど苦労しない。レドックスは大ざっぱだが岩石を操ることができる。人が使う様なナイフは専門外だろうが、試行回数でなんとかすることができた。

嵐が来ても嵐征竜テンペストが晴らしてくれるので天気も敵にならない。

 

マジで征竜が無人島サバイバル無双している。

もしかして征竜はサバイバルのスペシャリストだったのでは?

無人島に持って行くものを聞かれたら征竜と答えれば良いのだろうか。

 

今は岩山の一角に焔征竜ブラスターが溶解させて作ったへこみに水を溜め、バーナーが暖めた風呂でくつろいでいる。この風呂は便利だ、バーナーと一緒にはいれば燃料いらずだから。バーナーは炎を出さなくても周囲の温度を上げられるらしい、器用というかなんというか。

だからこの風呂は三人混浴。俺とヲ級とバーナーで全員種族が違う。群雄割拠で弾かれそう。ヲ級は初回こそお風呂に驚いていたが今は普通にくつろいでいる。

多分ヲ級は暖かいものが好きなのだろう。だから何度もひっついてくるし、お茶も好き。

 

で、多分多くの人が気になったであろうこと。ヲ級のこれは服なのか肌なのか。

まず足の黒いのは服というか装備だ、座らせて脱がせたから分かる。

で、体の方はって?分からん。俺にはあえてこれ以上脱がせようとする勇気がなかった。非力な私を許してくれ…。

 

 

 

 

 

 

25枚のデッキを前に座り込む俺たち。

最初はカルタみたいに対面に座る予定だったが、ヲ級は真横に座っている。彼女は座るときいつも識する。やるのはドロー修行の一種。シャッフルしてから5枚引き、それを見て次に引くカードを予想する。

引いたのはレドックス、貪欲、牙竜転生、七星宝刀、メテオドラゴン。

 

「んー……テンペスト」

「バーナー」

「よし。ドロー!」

 

引いたのは、リアクタン。二人とも外れだが、ヲ級は同じ子征竜なのでかすってはいるか。この修行兼ゲームはたまにやるのだが、ヲ級がルールを理解して一緒にやるようになったのは最近だ。なかなか当たらないのだが、ヲ級には一つ特技がある。

シャッフルしてもう一度。

ライトニング、ミリスレディエント、ヤマタノ竜絵巻、光の角、ティオの蠱惑魔。

 

「人食い植物、かな」

「ミズ。タイダル。ドロー」

 

そう言ってヲ級が引いたのはタイダル。見事的中だ。

そう、ヲ級は水属性モンスターを感知している時がある。

それが何かまでは分かってないようだが、このデッキに水属性は三枚しかない。

すなわちタイダル、ストリーム、清冽のエリアの三枚だ。三択である。

 

「、アタッタ」

 

ヲ級がタイダルのカードを両手でつまむようにして持ち、こちらに見せてくる。

 

「ヲ、」

 

そう言って何もかぶっていない頭を差し出してくる。

そんなヲ級の頭をなでると、すごくうれしそうにする。

彼女は頭をなでられるのが、というか触れ合うのが好きだ。

いくらか表情が動くようになってからも、この時は本当にうれしそうな顔をする。

そして手を放すと座ったままだがさらに距離が縮まる。

……かわいいね!(皐月並感)

 

 

 

~~~

 

 

 

何度目か分からない深海棲艦の侵攻。

これを普通に撃退した日の夜。その日は月の無い曇り空で、真っ暗な夜だった。

夜の間も索敵は行っているが、こう暗い夜だと精度には限界がある。

この日俺は夜戦、というか夜襲を受けた。

何かを引きずった様な跡をつけながら、ずりずりとゆっくり陸地を進む軽巡ホ級が現れる。砲塔付きの縦に長い口から、人が這い出てくるような見た目をした深海棲艦だ。人工的な明かりのない闇の中、深海棲艦の姿は完全にホラーだった。

そして今まで見たこともないくらい機敏に、そして力強くヲ級が俺の前に出たことにもう一度驚いた。召喚したリアクタンが完璧に壁の役割を果たして問題なく倒したのだが、両手を開いて、完全に俺をかばう姿勢だった。

空母という後ろにいるべき艦種で前に出るとは。

…決闘者と空母ってどっちが前に出るべきなんだ…?

 

 

 

 

 





・夜襲
つまりダイレクトアタック。やはりヤリザ殿は最強でござるな。


・前衛と後衛
オレイカルコスの結界!




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とある日の提督専用掲示板


先週仕事が忙しすぎて投稿できず…。
許せサスケ、また今度だ。

なおこの掲示板は時系列的にはそこそこ前のもので、月光艦隊全滅からいくらかたった時点です。


 

105:名も無き提督

深海棲艦の大艦隊が消えたんだが。

 

 

106:名も無き提督

大艦隊の霊圧が…消えた…?

 

 

107:名も無き提督

冗談言ってる場合じゃないぞ。

 

 

108:名も無き提督

何、なんかあったの?

 

 

109:名も無き提督

>>108見てないなら速く報告書を読め、ヤバいぞ

 

110:名も無き提督

大艦隊なんていたか?

 

 

111:名も無き提督

>>108何で知らないんですかね…?

 

 

112:名も無き提督

別方向のウチにも大分前に連絡来てたよ?

 

 

113:名も無き提督

というか全体に通知されてるはずだが…。

 

 

114:名も無き提督

大丈夫だ、長門は知ってるから。

 

 

115:名も無き提督

(艦娘に任せてるなんて言えない…)

 

 

116:名も無き提督

冗談だよな?

 

 

117:名も無き提督

フッ、雷ママに任せておけば間違いなどあるはずがない

 

 

118:名も無き提督

(ファミチキください)

 

 

119:名も無き提督

こいつ直接脳内に!?

 

 

120:名も無き提督

そんなことよりおうどん食べたい

 

 

121:名も無き提督

脱線してるぞ、話を戻せ。

 

 

122:名も無き提督

極めて遺憾ながら、業務を自分で行わず艦娘に丸投げしている提督は一定数存在する。

 

 

123:名も無き提督

いや、そうだけど、そうじゃなくて月光艦隊の話。

 

 

124:名も無き提督

そうだった、確か100隻以上いることが確定って話だったよな。しかも旗艦が月光。

 

 

125:名も無き提督

その月光艦隊、消えたよ。

 

 

126:名も無き提督

ファ!?

 

 

127:名も無き提督

消えるってどういうことだよ

 

 

128:名も無き提督

文字通り消えた。前進するでも後退するでもなくいなくなった。

 

 

129:名も無き提督

100隻以上の艦隊がどっか消えるってどういうこと???

 

 

130:名も無き提督

これが白鯨ですか?

 

 

131:名も無き提督

正確にはこっちが月光艦隊の足取りをロストしたっていうのが事実。

 

 

132:名も無き提督

それ、単に見失っただけでは?

 

 

133:名も無き提督

深海棲艦領海の奥深くだろ?むしろどうやって補足してたんだ?

 

 

134:名も無き提督

大咬提督と法崎提督の合わせ技だZO!

 

 

135:名も無き提督

誰だそれ?

 

 

136:名も無き提督

ウッソだろおまえ!?

 

 

137:名も無き提督

軍内部であれだけ有名な二人を知らない!?

 

 

138:名も無き提督

どうせ釣りだろ。……釣りだよな?

 

 

139:名も無き提督

世界は不思議で溢れている…

 

 

140:名も無き提督

どれほどの知名度があろうが、決してその認知度が100%にはならないという例の一つだろうか

 

 

141:名も無き提督

誰か説明してくれよぉ!

 

 

142:名も無き提督

説明しよう!(デデン)

 

大咬提督は日本最高の偵察要員だ!

普段深海棲艦領海から艦隊が攻めてくるときはだいたいこの人が第一発見者だ。

彼の艦娘はその気配の無さと神出鬼没さから現代の忍者と言われている。

 

法崎提督は日本最高の頭脳だ。

天才軍師、神算鬼謀、その明晰さ右に出る者無し!

ビックデータを解析しての作戦立案なんかもやってるぞ。

 

今回の月光艦隊も法崎提督の予想を元に大咬提督が偵察していたはずだ。

 

 

143:名も無き提督

はえー、すっごい

 

 

144:名も無き提督

すごいのはそうだけど全然話進まないな

 

 

145:名も無き提督

結局月光艦隊はどこ行ったんだ?海の中潜って移動してるとか?

 

 

146:名も無き提督

一概に否定しづらいこと言うのやめーや、本当になったらどうする。

 

 

147:名も無き提督

深海棲艦は潜水艦だった…?

 

 

148:名も無き提督

こちらが把握していた情報から推理するに、極めて不可解と言わざるを得ない。

知られざる何かが起こったと仮定する方が妥当。

現時点で解答が得られない問題であっても忘却してはならない。

 

 





・大咬提督と法崎提督
イメージ元のキャラはいるが、スターシステムと言うほど本人ではない感じ。
……多分。予定では。


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榛名が帰還を祈る日


ここから数話ほど皐月メインのラブコ…シリア…話です。
新しくキャラを出すときは、背景をしっかりしろってばっちゃが言ってた。
でも大丈夫、サクッと軽いノリで安心安全。
ん?軽い…しっかり…んんん???



 

ボクは睦月型駆逐艦の5番艦、皐月。

哨戒任務というごく普通の任務に出ていたボクたちだけど、あの時はいつもと違っていた。きっかけは深海棲艦の大艦隊の消滅。あり得ない自体に海軍は完全に浮き足立ってしまった。

 

事態は領海のベールの向こう側であるが、海軍はその集結を事前に察知していた。

主力艦隊だけでも百隻以上という大艦隊。全国で散発するだろう陽動や、遊撃艦隊などを含めれば総動員数は数百隻というとんでもない数になる。

当然こちらとしても決戦に向けてできる限り準備していた。

軍全体の緊張が高まり、ぶつかる日が近いだろうと思われていたところに、突然の異常な艦隊の消滅が起こった。

 

振り上げた拳を向ける相手が消えて、海軍は完全に準備の使い先を失ってしまった。

単純に強敵がいなくなって良かったね、で終わる訳がない。

緊張と不安と恐怖に加え、どこか弱気な安堵や理解できないことに対する不快感。

決戦によって負うはずだった物理的な障害は心理的なものへと取って代わって、それはともすれば敵と正面からぶつかるよりも大きな問題だった。

 

軍内部の統制が緩みだし、それぞれがバラバラにに動きを始めた。

提督と艦娘もその例に漏れず、原因が分からない内は動かない方が良いという人もいれば、普段の倍以上の哨戒を行う人もいる。極端なところでは、作った準備で一気に大攻勢を仕掛けるべきだという人もいた。

まさに浮き足立った状態。

ボクたちもボクたちの提督も、そんな海軍全体の空気から多少の影響を受けていた。

 

ボク達の艦隊は、戦艦1、軽巡2、駆逐3の六隻からなる艦隊。ある程度の砲戦も行えるが、大戦力というわけではない。

何事もなく哨戒を進め、帰投する方向へと舵を切った直後。

致命的な奇襲を受けた。

 

最初の砲撃によって戦艦榛名が中破し、砲戦能力の大部分を喪失。

こういう事態を避けることも駆逐艦であるボクの役目の一つなのに、攻撃されるまで気づけなかった。

敵の艦隊は戦艦2、重巡洋艦6、軽巡・駆逐が多数とこちらの四倍は戦力がある。

懸命に戦いなんとか撤退することには成功したが、その時点でボクは中破していたし、仲間達ともはぐれてしまった。

 

そうして一人になったボクは、深海棲艦の領海ギリギリで浮かんでいた。

大破に近い損傷具合に加えて航行に必要な主機が損傷し、長距離の航行はすでに不可能。それどころか、異音と黒煙を吹き出し、走り出せばいつ爆発するか分からない。

深海棲艦に見つかって沈められるか、他の艦娘に助けられるか。あるいは海の上にあっても一部鼓動し続けている人間としての部分が、餓死するのが先か。

 

運命の岐路に立たされたボクを前にしても、見上げた空はどうしようもなくいつも通りで、澄み渡っていた。

 

 

 

~~~

 

 

 

とある鎮守府にて、戦艦榛名は湯に浸かっていた。

リラックスしている、というわけではない。体には若い女性が負うには痛々しい傷がいくつも付いており、その表情は暗い。

入渠。"艦娘"としての"損傷"は、放っておけば直るというものではない。一定の設備と、そして短縮することのできない時間が必要となる。既に中破した榛名が入渠してから二日が経っているが、まだ半分も終わっていないなかった。

 

皐月とはぐれてしまった彼女は仲間達と共に提督に報告すると共に、すぐに救援の要請を行った。しかし、返答は拒否(ネガティブ)。すぐに救援を送ることはできないというものだった。

折り悪くあるいはそのものと重なってしまったのか、彼女達の戦闘を皮切りにして、複数の深海棲艦の侵攻が確認されたからだ。

 

「邪魔するぞ」

 

そう言ってやってきたのは中破した駆逐艦菊月。

 

「二カ所それぞれで戦闘があった。直にここも一杯になるだろうな」

 

二日間入渠しっぱなしの榛名に、菊月が状況を説明する。

榛名達の哨戒艦隊が早々に敵を発見したおかげで、自分たちは準備する時間を得られたこと。

侵攻してきた深海棲艦を本土からは大分離れた位置で迎撃し、撃破したこと。

しかし状況は未だ予断を許さず、どこで戦闘が始まってもおかしくないこと。

既に付近の艦娘はフル稼働しており、手が足りないぐらいだと言うこと。

上層部は混乱から立ち直り切れておらず、いつも以上に動きが鈍く当てにならないこと。

 

「皐月ちゃんのことは」

「不明だ。見つかってもいないが、轟沈が確認されたわけでもない」

 

暗い様子の榛名に対し、菊月は多少表情が堅いものの、いつも通りの範囲に収まっている。

 

「榛名が、もっとしっかりしていれば…」

「よせ。自軍を上回る戦力から完全な奇襲を受けたんだ。撤退できただけでも大したものさ。それに、奇襲の警戒も私たち駆逐艦の仕事の内だ。あなたに責はない」

「そう…ですね、すみません」

 

菊月の言葉はそれだけなら厳しく聞こえるが、彼女の口調がそう言うものだと言うだけで、実際には少なからず気遣いが含まれている。

 

「これはつい先ほど聞いた話だが。上層部の動きが鈍いのはいつものことだ。しかし我らが提督達はそうじゃない。()()()()()()()()()()()()()援軍が動き始めたそうだ」

「それって」

 

上の許可が無くても、提督達には独自の裁量権が与えられている。

提督同士の連携によって、決して自由ではないそれを最大限駆使して彼らは戦っている。

提督の頭脳である法崎提督や、提督専用掲示板などと言うけったいな代物も、密かにその役に立っているのだ。

 

 





そろそろ自分、評価と感想乞食していいすか?
これが作者のモチベにガチで直結するので、お願いします!
手札が悪いとき、増G撃ったら展開してほしいと思うでしょう?そういうことです!


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皐月が海の冷たさを思い出した日


この世界のアレキサンドライドラゴンは相当強いです。



 

天気の変わりやすい海の上、時に雨に打たれ、時に日差しを浴びながら丸二日間。一人待ち続けた後に現れたのは、深海棲艦だった。重巡3、軽巡2、駆逐5の十隻からなる艦隊。中破してまともに動くこともできないボクの運命は、ここに決した。

少しだけ溢れそうになった悲しみを押し殺して、ボクの最後の戦いが始まる。

ただでは沈まないぞ、その前に、一隻でも多く道連れにしてやるんだ。

狙うのは重巡洋艦、可能な限り接近して魚雷で仕留める。離脱する必要が無いんだから、全速力で駆け抜けるだけでいい。主機の損傷なんて気にしない、かつてボクに乗艦した誰かが、足が折れても戦い続けたように。

 

いくつもの砲弾が飛んでくる。それらはボクの横をかすめ、あるいは近くに落ちて大きな水柱を立てる。深海棲艦の無表情、進行方向に速度、向けられる砲身、飛来する砲弾、それらすべてがよく見える。荒波をさらにひどくする砲撃の中でも、ボクの足は調子が良かった。艦娘に生まれ変わってから、一番かもしれないほどに速く進む。駆逐艦の横を抜け、軽巡洋艦に砲撃を浴びせ、重巡洋艦の前まで来て。

そして、ついに砲撃による直撃を受けた。広がっていた視界が急に狭くなる。

自分の死を実感する中で、装填していた魚雷のすべてを投射。多分、きっと当たっただろう。爆発の音がした。仰向けに倒れて、少しずつゆっくりと体が沈んでいく。

冷たい。できるだけのことはやったけど、どうしてこんなに冷たいのかな。

誰か一人くらい、ボクの最後を見届けてほしいなんて思うのは、贅沢かな?

 

闇の中へと沈んでいく。

死の間際、ボクはそれを感じていた。人生でこれより上はないと思えるほどの恐怖。そして少しの寂しさと嫌悪感。そんな嫌な感覚を。

朦朧とした意識だけが、海上で連続する爆音と、そして海から引き揚げられる感覚を感じていた。

 

 

 

~~~

 

 

 

やっぱり、艦娘いるなー。

 

偵察に送っていたライトニングが、高高度から一方的に艦娘達を発見する。

彼女達の存在を知った俺は、そんなのんびりした感想を抱いていた。

深海棲艦がいるんだから艦娘もいるだろうと思っていたが、見つけるまでにずいぶん時間がかかった。

おそらく俺がいる島が日本本土からはかなり離れている為だろう。それに深海棲艦よりも艦娘は数が少ないと思われる。何せ偵察していると深海棲艦を一日に何度も見つけるのだ、この広い大海原の中なのに。

多分総数としてはものすごい数になるんだと思うが、果たして人類は大丈夫なのだろうか。そう言う意味でも艦娘を見つけられたのは僥倖だった。

艦娘がいるんだから人類も存続しているのだろう、多分。

 

そう思っていると、また別の日に一人の艦娘がピンチに陥っているのを発見した。

状況を確認しているアレキサンドライドラゴンの報告を聞くと、たった一隻の小型艦娘が複数の深海棲艦に特攻かましているという、驚きの状況。

どうしようかと悩む時間も無かったため、とっさに戦いに介入していた。

急降下しながら何十発という虹色の光球を一斉に撃ち込み、周囲の深海棲艦を瞬く間に殲滅。そのまま海鳥の狩りのごとく海中に突っ込み、まさに沈んでいく最中の艦娘を引き揚げる。

まるで強い力で海中へと引っ張られるかのように体が重かったため、やむなくアレキの魔法で艦娘の装備である艦装を引きはがした。

そうしたらめちゃくちゃ重かったのが人間並の重さに変わったので、重いのは全部艦装だった、と思ったのだが違うらしい。アレキが言うには艦装が今そこにある艦娘が人間かそれ以外かを決定づけているのだとか。艦娘って不思議だね。

で、助けてしまったものは仕方が無いので、島まで連れてきてもらって看病している。

 

実際にこの目で見るまで分からなかったが、小さい体に金髪と、ボロボロだが黒いセーラー服などを見て、彼女が皐月だと分かった。

艦娘の生態はよく分からないが、アレキ曰く人間状態らしいし、見たところ大分重篤な状態だ。

浅くない負傷をしているし、少なくともその状態で一度は海に突っ込んでいる。

決闘者ならともかく、普通の人間なら死んでるかもしれない状態だ。

さらにここは人もなければ物資もない無人島だ、看病だってできることは限られてくる。

総じてヤバい状況である。一瞬魔法カード「超再生能力」を使おうかと考えたが、ドラゴン族にしか適用できないようなカードを人に使うリスクが不透明なため考え直す。「治療の神 ディアン・ケト」でもあればそれを使うんだが、手元に単純にライフを回復するようなカードはない。

清冽の水霊使いエリアを召喚して治せるか聞いてみるが、ちょっとした手助け程度にしかならないらしい。ヲ級の時とは事情が異なるらしいのだが、何がどう違うのかはよく分からなかった。

 

とりあえず弱っていても食べられて、栄養価の高い料理でも調達しよう。

小さくなるまで魚を溶かし茹でたスープとかどうだろう。

そうして皐月の無事を祈りつつ、できることを考えるのだった。

 

 





この物語におけるシリアスの役割は、前座もしくはかませ犬です。

あと2~3話で初めてのデュエル回です。
なお、エクストラデッキはエリアのみの模様。

・追記
何故か二重投稿されてる?一応消したけど…よく分かりませんが変だったらすみません。


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ヤマタノ竜絵巻を服代わりにする日


昔の遊戯王のゲームで2種類のパーツを合わせてカードにするやつ好きでした。
攻撃力2000の星四が最強だった記憶。
デッキキャパシティは…ある意味召喚コストみたいなものですかね。



 

ボクは……ボクは、誰だろう。

思い出されるのは、暗い海と、痛み、憎しみ、絶望。

ああ、そうだ。ボクは艦娘…駆逐艦皐月。

 

 

艦娘とは、かつて戦った艦の記憶と、海の上で戦う力を持った少女。普通の生物とは異なり、海や工廠で発生…生まれる。

艦娘はいずれも"艦装"を付けている時と外しているときで、その力が大きく異なる。

艦装を外しているときの艦娘は、人間ともそう変わらない。人より多少力持ちで、人より大分頑丈ではあるが、基本的に人間と同じだ。人間と同じものを食べ、同じように寝て、同じように感情を持っている。

 

しかし"艦装"を付けている時の艦娘は、人間の体の部分ですら全く別の特性へと変わる。そのあり方は、まさに戦闘艦船。海の上を走り、砲を撃ち、そして沈めば死ぬ。その体は燃料によって駆動し、皮膚はライフルの弾すらはじき返す。

重量が大きく増すため、陸上での活動は不可能ではないが、極めて困難になる。土の上を歩こうものなら足から陥没してしまうだろう。それ故に艦装の装着は海の目の前で行われる。

人間なら死ぬような怪我をしても、沈没していないのであれば、入渠すれば治すことができる。ただし、沈むのだけは致命的だ。軽傷だろうが浅瀬だろうが、沈んでしまえばまず助からない。

 

だからこそ、皐月は不思議だった。

間違えようもない、自身の轟沈は明確で…言い訳のしようも無い、忘れることもできない感覚だったからだ。

 

 

頭が働かないままぼーっとしたまま目を開けると、横に座ってボクを見ている男の人がいた。

 

「大丈夫だ、ゆっくりお休み」

 

誰かも分からないその人の言葉に、少しの安心を得られたのか、ボクの意識は再び沈んでいった。

 

 

 

 

 

 

さて、困ったことになった。俺は草と苔の絨毯の上で眠る皐月を見ながら考える。

いや、無人島で大けが人を抱えている時点で困ったという次元じゃないのだが、艦娘は生命力も強いらしく傷は少しずつ癒やされている。

最初は焼け焦げて無くなった服の中が焼け焦げて黒ずんでおり、もう二度と元に戻らないんじゃないかと思わせられた。決闘者ならともかく、普通の人間だったらそのまま死んでただろう怪我をしていたんだから治る方向に進んでいるだけですごい。

しかも意識がほとんど戻らないので、この数日水しか飲ませられていない。一応木の実をすりつぶしてほんの少しだけ混ぜた水を飲ませているが、ほぼ何も食べていないのと変わらない状態だ。

いや、本当にすごいな!もちろん喜ばしいのだが。

 

俺とヲ級と二人で彼女に付いているが、もう七日になる。

最近はヲ級がいくらか意思を見せるようになり、多少のコミュニケーションが成立するようになっていて助かった。俺から片時も離れようとしないヲ級だが、皐月の看病だけは俺が離れているときでも頼むことができたからだ。何か変なことになるんじゃないかと少しだけ心配したが、結局それも杞憂ですんだし。

 

それで何が困っているかというと、服がないことだ。

スカートはまだ使えるのだが、皐月の上半身の服は半分しか残っておらず、使い物にならない。いや何もないよりはマシなのだろうが、大事なところが隠せていないので服としては落第だった。しかもいくら良くなっているといっても完全に治っているわけではなく、服がない、つまり焼け落ちた部分から覗くのは、主にグロ注意的な意味で目をそらしたくなるものだ。

だから何でも良いからとにかくまともな服を着せてやりたいのだが、当然無人島に服があるわけもなく。まだ俺が上半身裸になる方がマシなので俺の服を着せる手もあるが、普通に寒いんだよな。

仮にも決闘者なのだから数日くらいは問題ないのだが、恒常的に裸で無人島生活はヤバい。つーか俺は腹が弱いんだよ、服着てても腹が冷えて調子悪くなるのに、裸じゃ体調が持たない。ディスカバリーチャンネルでやってたって?うるせぇ!俺は元軍人でもサバイバリストでもないんだ!

ちなみに洗うときはエリアが水を渦のようにして、セルフ洗濯機をしてくれている。いつもありがとう。

こうなったらバーナーを出しっ放しにして腹巻き代わりに貼り付けておこうか。コスト的には無しというわけじゃない、問題なのはさすがにバーナー本人が納得してくれるか分からないところ。風呂のヒーターから夜の湯たんぽまで気にせずやってくれているので、多分やってくれるだろうけど。

 

改めて所有カードを確認する。カードは少しずつ増えているが、うまく使えるかというとそうでもないのよな。

人食い植物、スピック、サイガー、マンモスの墓場、ドラゴン・ゾンビ、ゴースト王-パンプキング-。ローの祈り、ゼラの儀式、闇の破神剣、天狗のうちわ、あまのじゃくの呪い、偽物のわな。

こんなんばっかである、というかそれこそ最初期の頃のカードばかりだ。

マンモスの墓場とか、パンプキングとかは陸上戦なら大量召喚して物量戦という選択肢もあるが、戦場が海と空だけなんだよな。

ティオの蠱惑魔は……一瞬可能性はあるかと感じたが、まあ服にはならないな。

あ!ヤマタノ竜絵巻じゃん、これだ!!

 

服を脱いで召喚したヤマタノ竜絵巻を体に巻き付ける。絵巻に書かれたドラゴンが出てくるというモンスターなのだが、ドラゴンにはそのまま絵の中にいてもらって、開いてみたら超長い絵巻を問題なく巻き付けることができた。

上半身と肘くらいまでとは言え、思ったよりも悪くない見た目と着心地だ。想定外なほどに普通に服として成立している。

なんとなく自分自身がモンスターになった気分も味わえるし、我ながら良いアイデアだ。名付けて竜絵巻の怪人、攻守は1100/400。ちなみにヤマタノ竜絵巻が攻守900/300なので、単純計算で俺個人の攻守は200/100である、黎明期の遊戯王でも見向きもされないな。

 

「セーヤ、ぐるぐる」

「あ、ヲ級。どうだ、まあ変だろうけど、悪くないんじゃないか?」

「ヲ。悪くない」

 

ヲ級もかなり話せるようになったが、抱きついてくるのは変わらない。この光景を皐月に見られて大丈夫なんだろうか?人間に味方する深海棲艦もいるのか、完全な不倶戴天の敵なのか、一度も人類と接触していない俺には分からない。

まあ、ふたを開けてみなければ分からないことか。

 

 





・足から陥没
エンヴィー人間体で起こってたやつ。アレって日常生活ヤバいのでは???

・竜絵巻の怪人
手榴弾を1つを持った新兵の価値を10とすると、手榴弾を2つ持った新兵の価値は18だ。


次回、自然な流れだから見とけよ見とけよ~。



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現れろ、航路の支配者!


デュエルの前に踏みしるしたロード!それが"自然な流れ"となるのだ!



 

最初に目覚めてから数日。重症だったボクもゆっくり動けるくらいまでは回復した。ボクが救助されてから動けるようになるまで十日以上かかっていたみたい。その間ボクを助けてくれた彼、征谷はつきっきりで看病してくれた。それだけでもすごいことなのに、なんと彼は無人島で生活しながらそれをしていたんだから大変だ。

征谷は特別な力を持っているけれど、そんなのとは全然関係なく大変な恩を受けてしまった。

 

色々聞いてみたけど、征谷は何ヶ月もこの島で住んでいる。一人で、という訳じゃない。征谷の持つ力、召喚された人たちと、そして一人の深海棲艦。夜天の支配者、空母ヲ級・月光。

あの大事件にして最大の謎、月光艦隊の消失は征谷がやったことだった。彼が呼び出したドラゴン、征竜によって百隻以上という大艦隊は文字通り全滅したのだ。 そりゃー誰も分かんないはずだよ。ドラゴンがやりましたってだけでも誰も信じられないだろうに、それを呼びだした人がいるなんて。

もしボクが大まじめに報告書を提出したとしても、もちろんまともに受け取れられない。

それどころかボクは損傷…というか正気を疑われて、前線に出られなくなるだろう。何せボクはほぼ大破状態から行方不明になり、何十日も経ってから帰ってきたら艦装を全損していたという状態。生きているだけでも奇跡的だし、人間なら正気を失っていても全くおかしくない。

正気を疑われるような兵士を、あるいは動作の怪しい兵器を戦場になんて出せない。

戦力や提督のことも考えれば、廃棄されるようなことはないだろうけどね。

 

征谷はできれば黙っていてほしいとしか言わなかったけど、ぶっちゃけボクは報告できない状況だ。いや、それがなかったらかなり葛藤した所だけどね。

軍属にして兵器である"艦娘"としての使命と、人としての恩義を秤にかけるようなことにならなくて、むしろ安心だったかも。

 

問題なのはむしろヲ級。月光の方だよ。

彼女はもうそれなりの時間征谷と一緒にいることになる。うらやまいやいやいや。

人と一緒にいる深海棲艦なんて見たことも聞いたこともない。でも彼女に征谷を傷つける気はまるでないみたいだし、ボクに対して敵意もない。感覚的にも確かに何かが違うことが分かる。それが何かが分からないけど。

まあ、征谷が大丈夫だって言ってるんだから大丈夫か。

 

体の方はおかげさまでなんとかなっている。見た目はひどいことになっているけど、征谷が貸してくれた上着のおかげで外からは見えない。こんな傷でもしっかり入渠すれば完全に元通りになるのだから艦娘というのは不思議な存在だなーと自分でも思う。まあ今は施設がないからどうにもならないけど。

艦娘としての装備も全損しているので、入渠と装備の更新、両方やらなきゃ艦娘として戦うことはできない。帰れなくなっちゃったけど、征谷を残していけないし、一緒だったかな。

 

リハビリを兼ねた散歩の途中、征谷がお茶に使っていた葉っぱを見つける。同じものか確信はないので、場所だけ覚えておこう。この島はそれほど大きくはないけど、数日で見て回れるほど小さくもないから、場所はしっかり覚えておかなきゃ。まだ走ったりはできないけど、寝たっきりだと体がなまっちゃう。

森を抜けて海岸に出ると、砂浜に深海棲艦の残骸が転々と転がっている。征谷がしょっちゅう深海棲艦を撃沈しているようなので、そのせいだろう。

 

「でもこの島、どこの島なんだろ」

 

この島のことはボクにも分からない。

星を見れば大ざっぱな位置は分かるんだけど、こんな所に島なんてあったかなぁ。

ボクが知らないだけかもしれないけど、ちょっと不思議だ。

 

「皐月、調子どう?」

「征谷!」

 

どこからかやってきた征谷の声を聞いて、少しだけドキッとする。それに顔を直視できない。

さっきは正気を疑われるなんて言ったけど、ホントにどこかおかしくなっちゃったのかもしれない。

ボクの微妙な表情をみて征谷がたずねる。

 

「何かあったか?」

 

というか、ボクのキャラじゃないんだけど!

まあ、確かに沈みかけたあの時は、人生もとい艦娘生で二度と無いような思いを味わった。

冬の水風呂に飛び込んで、その上で全身を虫が這いずり回っているような感覚だった。

生涯忘れることができないだろうし、口にすることもできないような経験。

そんな状態を短時間で引き揚げてくれたし。気持ちが弱ってわめいたり弱音を吐いたりしても聞いてくれたし。一人動けないボクの隣にいてくれたし。不定期に熱出した時とか、征谷の顔が妙にかっこよかった気がするけど。

……。

でもでも、征谷は結構変な人だ、明らかに普通じゃない。

でゅえりすとっていってたけど、それ何?って聞いたら「デュエリストはデュエリストだ」って言ってたし。いや、結局なんなの?

 

だから、ボクのキャラじゃないんだって!名前呼ばれただけなのに心臓うるさい!顔が熱い!

 

「ボク壊れちゃった」

「えぇ!?」

 

そんな風にしばらく征谷が慌てていると、唐突に後ろから元気な声をかけられた。

 

「うーん、これは提督!……あれ?提督?…かどうかは分からないけど、こんにちはー!」

 

 

 

その声の主は、小さな子供くらいの大きさをしていた。暗い色のセーラー服で、茶髪ボブの少女だった。伝説によればそれは航路を支配しており、「よーし、らしんばんまわすよー!」という聞いただけでSANチェックを誘発するような呪文を唱えるのだか。

そんな彼女はその左腕に、デュエルディスクを装着していた。

 

 

 

 





・この島について
水属性の通常モンスターだったりするかもしれない。

・皐月
五月病をマスクチェンジして皐月病にしそうな元気少女。

・伝説って???

・次回、VS妖精伝姫!



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素征竜VS純妖精伝姫その1


ぶっちゃけプレミ(プレイングミス、間違いのこと)しているんですが、征谷はデュエリストとしてはまだ馬の骨(ガチ)以下で征竜のことよく分かってないのでそう言うものだと思って許してください。

アンケートの結果、征竜知らない人も結構いるということだったので、主な分は解説を入れてあります。出てくるカードの説明全部入れるとすごい量になってしまうので、テンポのためにも説明は少なめにしています。
詳しいことが分からなくても雰囲気が分かればOKということでよろしく!



 

 

「「デュエル!!」」

 

場所は浜辺。提督達からはラスボスとか言われたりヘイトを集めたりしている、茶髪ボブの妖精と向き合う。片手のデュエルディスクを前に、お互いに初手に引いた五枚の手札を確認する。

 

「私の先行ー!来て、ふかふかのお姫様!"妖精伝姫(フェアリーテイル)-ラチカ"を召喚!効果発動!」

 

クリーム色の毛並みをした小柄なケモ姫が現れる。

"妖精伝姫"はシラユキを初めとしていろんなデッキに採用されるカード群。攻撃力1850、守備力1000、光属性、星4、魔法使い族で統一されているテーマだ。

ラチカの召喚時効果で俺のライフが500回復し、相手のデッキトップ三枚を表にして一枚を選ぶ。バウンドワンド、サモンリミッター、ワンダーワンド。

なにやら恐ろしいカードが見えているが、俺はワンダーワンドを選択し、相手の手札に加える。

 

「私は永続魔法"魔術師の右手"を発動!カードを一枚伏せて、ターンエンド!」

 

"魔術師の右手"は魔法使い族がいるときにターン1で魔法カードを無効にするカード。いきなり魔法に制限をかけられたが、"魔法族の里"よりかはマシか。

 

 

ボブちゃん

手札3 ライフ4000

フィールド:妖精伝姫-ラチカ

魔法罠:魔術師の右手、伏せ1

 

---

 

デュエルの観戦者が二人、空母ヲ級・月光と皐月が横で見ている。

二人ともデュエルを見るのは初めてで、テンションが高い。

 

「あ、なんだかかわいいモンスター?が出てきた!」

「ヲ。かわいい」

 

---

 

「俺のターン、ドロー!」

 

相手が初手でソリティアして制圧してきたらどうしようもなかったが、とりあえず戦いにはなりそうか。俺の手札は…うーん、いまいち。

この紙束征竜デッキには一つ巨大な問題がある、それはエクストラデッキに清冽のエリアしか入っていないことだ。

 

征竜は炎・水・風・地のそれぞれの属性を持ったドラゴン族モンスターであり、俗にレベル7の四体を親征竜、レベル3、4の四体を子征竜と呼ぶ。そして征竜はエクシーズ召喚を軸にしたデッキである。もちろん異論は認めるが。

子征竜の効果で親征竜を召喚すると、召喚した親征竜は攻撃できないデメリットがある。エクシーズ召喚の素材にすればこのデメリットは関係ないため、そうやって展開するのが征竜の動き方なのだ。にもかかわらずエクシーズカードが一枚もない。

これでどうやって戦えばいいんだ!

親征竜の効果で自身を特殊召喚した場合は攻撃できるのだが、親征竜は相手ターンの終わりに手札に戻ってしまうのだ。だからあまり出す気になれず、思い切った動きができない。ただ幸いなことにアレキがいる。

 

「俺はアレキサンドライドラゴンを召喚!バトル!アレキでラチカを攻撃!エンシェントイリュージョン!!」

 

アレキの攻撃が通り、ラチカを破壊して150ダメージを与える。伏せカードは無反応か。魔法使い族は使うんだろうが、相手のデッキはなんだろう?まあ、俺の動きも征竜要素皆無だからなんとも言いがたいが。

 

「カードを一枚セットして、ターンエンド」

 

竜然征谷

手札4 ライフ4500

フィールド:アレキサンドライドラゴン

魔法罠:伏せ1

 

 

---

 

 

「征谷がいつも出してるヤツだ!」

「ヲ。アレキサンドライ、ドラゴン」

「でも、いつもみたいに幻を出したりはしないんだね」

「ヲ。デュエル、だから」

 

 

---

 

 

「私のターン、ドローです!…よし、永続魔法"憑依覚醒"発動!」

 

憑依覚醒は攻撃力がモンスターの属性の種類×300アップする、憑依装着テーマのサポートカード。妖精伝姫はすべて光属性なので、それだけなら300アップのままだ。

 

「気まぐれにして神出鬼没。来て、"妖精伝姫-シラユキ"!憑依覚醒の効果、攻撃力1850の魔法使い族モンスター召喚に成功したとき、一枚ドローします。永続魔法"ウィッチクラフト・スクロール"を発動」

 

妖精伝姫モンスターは憑依装着モンスターと攻撃力も種族も同じ、だから憑依装着の効果を受けられる。そしてウィッチクラフト・スクロールはターン1で魔法使い族が戦闘破壊したときに1ドローできるカードだ。

そのまま憑依覚醒の効果で攻撃力が300上昇し2150になったシラユキがアレキに飛びかかる。

 

「この時、トラップカードオープン!"マジシャンズ・サークル"」

 

初手に伏せたのはアレか。昔からあるカードで知っている人も多いだろう。

両者とも攻撃力2000以下の魔法使い族モンスターをデッキから特殊召喚できるが、もちろん俺のデッキに魔法使い族は入っていない。

 

「あわてんぼうなお姫様!来て、"妖精伝姫-シンデレラ"!」

 

バトルが終わったときにはアレキがやられ、シンデレラの2150ダイレクトをもらって、俺の残りライフは2200となっていた。4000ライフだとラチカの500回復も馬鹿にならないな。しかし相手はスクロールの効果でさらに1ドロー。アド差がどんどん開いていく。

 

「シンデレラの効果発動!手札のワンダーワンドを捨てて、デッキから"ガーディアンの力"を装備。シラユキの効果で、エンドフェイズに装備した"ガーディアンの力"を手札に戻します。ターンエンド」

 

 

ボブちゃん

手札3 ライフ3850

フィールド:妖精伝姫-シラユキ、妖精伝姫-シンデレラ

魔法罠:魔術師の右手、憑依覚醒、ウィッチクラフト・スクロール

 

竜然征谷

手札4 ライフ2200

フィールド:なし

魔法罠:伏せ1

 

 

 

~~~

 

 

 

征谷がデュエルを行っているのとは別の場所。

 

「もう見つかったか。やはり、早いな」

 

そこはどこだろうか、一切の光の届かぬ闇の中、足場も定かならぬ場所に黒い翼の男が立っていた。目の前には黒い光を放っているかのように存在感のある球体がある。

白髪の美青年、堕天使ルシフェルは左手を差し出して球体に向け、凝縮された様な闇を作り出す。しかしルシフェルは何かに気づいたようにぴくりと眉を動かすと、その手の闇を消した。

 

「そういうこともある……か。興味深い」

 

そうルシフェルがつぶやくと、先ほど作り出していた闇の代わりに、今度は正反対のものを生み出した。

 

「光栄に思うがいい、私がこれを使うことは多くない。存分に浴びるが良い、"フォトン・リード"!」

 

確かな光が現れ、周囲の闇を照らしだしていく。それを一身に浴びた黒い球体は少しずつ形を変え、一人の人に変わった。

そこには赤と桃色の和服姿で艤装を装備した少女が、眠ったままたゆたっていた。

 

 





よし!自然な流れでデュエル始まったな!みんなそう思うだろう?(強弁)

デュエルがあまり進んでいないし征竜も出てきていませんが、パート分けます。次回は早めに出します。エクストラ実質無しで分かるとおり、低速環境です。

一応確認して投稿していますが、デュエルでおかしな部分があったら教えてくれるとうれしいです。治せるとは言い切れませんが…。


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素征竜VS純妖精伝姫その2


いやー、低速ですね。
ちなみにボブ妖精ちゃんはデュエル初心者どころかこれが初デュエルです。征竜の効果はシラユキから教わったという背景。デュエル描写難しかったです。

そして襲いかかるチェーン処理の妙。
デュエル分からない人は雰囲気だけでも味わってくれたらと思います。



 

ボブちゃん

手札3 ライフ3850

フィールド:妖精伝姫-シラユキ、妖精伝姫-シンデレラ

魔法罠:魔術師の右手、憑依覚醒、ウィッチクラフト・スクロール

 

竜然征谷

手札4 ライフ2200

フィールド:なし

魔法罠:伏せ1

 

---

 

 

「もしかして、ピンチ?!頑張れー!征谷ー!」

「ヲ。ガンバレー」

 

 

---

 

ここで何か引けなければ、何もできずに終わる!

 

「俺のターン、ドロー!俺が引いたカードは…!」

 

七星の宝刀!(カンコーン!)これに賭けるしかない!

 

「俺は手札から焔征竜ブラスターの効果発動!2枚目のブラスターを捨て、"魔術師の右手"を破壊!」

 

まずはかぶっていたブラスターを使う。自身と炎属性モンスターを手札から捨ててフィールド上のカードを選択して破壊できる効果だ。これで魔法が使える。

 

「七星の宝刀を発動!手札から厳征竜レドックスを除外し、2枚ドロー!除外されたレドックスの効果で地征竜リアクタンをサーチ!」

 

よし、これなら!

 

「手札から水征竜ストリームの効果発動!リアクタンを捨てて、来い!瀑征竜タイダル!!」

 

瀑征竜-タイダル 攻撃表示 攻撃力2600 守備力2000

 

「さらに速攻魔法"超再生能力"を発動。子征竜の効果で特殊召喚された親征竜は攻撃できない。エンドフェイズ、超再生能力の効果で捨てたドラゴン族の枚数、4枚ドロー!ターンエンド」

 

 

ボブちゃん

手札3 ライフ3850

フィールド:妖精伝姫-シラユキ、妖精伝姫-シンデレラ

魔法罠:憑依覚醒、ウィッチクラフト・スクロール

 

竜然征谷

手札5 ライフ2200

フィールド:瀑征竜-タイダル

魔法罠:伏せ1

 

---

 

「おおおー、あれがおっきい方の征竜?ボク初めて見ちゃった!」

「ヲ。呼ぶのが、大変」

「普段は出せないんだもんね。でも、デュエルなら大丈夫なんだ」

「ヲ。チャンス」

 

---

 

 

「すごい動き…!でも、私の有利は変わらない。私のターン、ドロー」

 

(永続魔法"妖精の伝姫(フェアリーテイル)"が二枚目…手札には妖精伝姫-ラチカしかないし…)

 

「私は"妖精伝姫-ラチカ"を召喚!ラチカと憑依覚醒の効果発動!」

 

二枚目のラチカの効果が発動しデッキからめくった三枚は、"妖精伝姫-カグヤ"、"妖精伝姫-ターリヤ"、"シャインスパーク"。ターリヤとシャインスパークはまずい、カグヤを選ぶしかないか。

カグヤを手札に加えたボブちゃんはシンデレラの効果で手札から"妖精の伝姫"を捨て、二枚目の"ガーディアンの力"を装備。さらに手札の"ガーディアンの力"もシンデレラに装備した。

装備魔法"ガーディアンの力"は攻撃宣言時に自身に魔力カウンターを乗せ、カウンターの数×500の攻守アップを持つ。さらにカウンターを消費して破壊から守ることまでできる装備魔法だ。

 

(憑依覚醒で引いたのは、"魔法族の里"…は、後だよね。ガーディアンの力は攻撃時に攻撃力が500上がるから、二枚で1000。3150でタイダルを越えた。伏せカードがあるけど、さっきのターンで使わなかったんだから攻撃反応系じゃないはず)

 

そう考えたボブちゃんは残った"妖精の伝姫"を発動し、効果でカグヤを通常召喚。

"妖精の伝姫"は同名モンスターが自分フィールドに存在しない、手札の攻撃力1850の魔法使い族モンスター1体を相手に見せて発動し、そのモンスターを通常召喚する永続魔法だ。

召喚したカグヤの効果でターリヤをサーチし、バトルフェイズ。

 

「バトル!シラユキで瀑征竜-タイダルを攻撃!二枚のガーディアンの力が発動して…」

 

その瞬間、カッと見開く。

この瞬間を待っていたんだー!

 

「チェーンしてトラップカード、閃光のバリアシャイニングフォースを発動!!」

「えっ…!?なんで!!?」

 

シャイニングフォースは相手フィールドに攻撃表示モンスターが3体以上存在する場合のみ発動可能。相手フィールドの攻撃表示モンスターをすべて破壊する。

要するにミラフォの完全下位互換である。そりゃあ何でと言いたくもなる、こんなカードミラフォがあるなら入れる意味が無い。ミラフォがあるなら。

 

「ガーディアンの力が…」

「チェーン処理の関係上、魔力カウンターが乗る前にシャイニングフォースが発動する。ガーディアンの力は効果を使えない」

 

これで妖精のモンスターはすべて破壊され、フィールドががら空きになる。

 

「うう…でも、タイダルは自分の効果で手札に戻るはず」

「その通り。特殊召喚された征竜は相手エンドフェイズに手札に戻る」

 

 

ボブちゃん

手札3 ライフ3850

フィールド:なし

魔法罠:妖精の伝姫、憑依覚醒、ウィッチクラフト・スクロール

 

竜然征谷

手札6 ライフ2700

フィールド:なし

魔法罠:なし1

 

---

 

「あのバリア?、すごいね!征竜も戻っちゃたから、誰もいないけど」

「多分、最後のターン」

「そうなの!?」

 

---

 

 

(大丈夫……墓地に親征竜はブラスターだけ。征竜は1ターンに一度しか効果を使えないはず。墓地からシラユキが2回分特殊召喚できるんだし、このターンはなんとかなる!)

 

 

「さぁ……覚悟は良いか!ドロー!!」

 

ここから一気に征竜を召喚する。

手札からストリーム・ライトニングの効果でテンペスト・レドックスを捨ててタイダルとテンペストを特殊召喚。攻撃できない2体をリリースしてタイダルをアドバンス召喚。

アレキ、ブラスター、リアクタン、ストリーム*2、ライトニング、テンペスト、タイダル。

この8枚を次々と除外し、ブラスター、タイダル、テンペスト、レドックスを特殊召喚する。

これでタイダルだけ2枚で、5枚の征竜がフィールドを埋め尽くした。

 

「合計攻撃力は12000。バトルフェイズだが、どうする?」

「墓地から7枚のカードを除外して、シラユキを特殊召喚!シラユキの効果、ブラスターを裏守備表示にする!」

「ならば守備表示のシラユキをレドックスで撃破!」

「もう一度!!墓地、フィールド、手札から7枚のカードを除外して、特殊召喚!片方のタイダルを裏守備表示にする!これで残りはタイダルとテンペスト、シラユキでテンペストを防ぐから、これで…」

「普通はあまり入らないだろうが、持ちカードの関係で、これも三積みしてたんだ。手札から、"幽鬼うさぎ"の効果発動。シラユキを破壊する」

 

守備表示でテンペストの攻撃を凌ぐはずだったシラユキは、無慈悲にも幽鬼うさぎによって破壊される。

 

「そんな!?」

「行け!タイダルとテンペストでダイレクトアタック!」

 

氷の嵐がボブちゃんに襲いかかり、ライフをすべて削りきった。

そうして俺は勝利を収めたのであった。

 





・シラユキ
実はターン1制限がない。なんなら自分の除外効果に自分でチェーンできるという珍しい効果。

・フェアリーテイル
マスターデュエルで見たら全部SR以上でびっくり。お高いケモ姫である。

・実績解除
"EXなしで勝利"
エリアが入っているが、実質0枚だったので取得。

初デュエルということで、良ければ感想や評価等お願いします!!


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シラユキと妖精さん


マスターデュエルは悪名高い勇者が追加されましたね。でも今のところデスフェニほどのストレスは感じていません。まだデスフェニほど氾濫してないからかな?
征竜が使えるなら勇者征竜使うんだけどな~俺もな~。
仕方ないのでいつものデッキに混ぜてアンデライロ勇者タワー使います。絶望は…ナオキです…。ただでさえデッキパワーはひっくいので。



 

ボブ妖精ちゃんとのデュエルのあと、半透明の薄い幻の様な見た目をした妖精伝姫シラユキが現れた。人とリス、あるいはうさぎ?のあいのこのような姿で、赤白の服を着たかわいらしい少女だ。

カードとしてはカグヤとは全く別の運用方法でいろいろなデッキに採用可能。全く毛色の違うデッキからでも唐突に飛んでくるため神出鬼没だ。

彼女の目的はなんと俺であり、わざわざ会いに来たのだとか。

 

その目的は、征竜の相棒となる征竜決闘者、すなわち俺がどんな人間かを確認すること。観点としては善悪そのもので、強大な力をもつ征竜の相棒となる征竜決闘者が邪悪な存在ではないか。

大まじめな表情でそう話していたのだが、ボブ妖精ちゃんに

「でもホントは興味本位で飛び出して来たんだよねー」

と暴露され、ふくれっ面でペチペチ叩いていた。なんとも仲が良さそうである。

 

ちなみにシラユキと同じようにブラスターが横で半透明に(こちらは割とくっきりしていた)出てきていたのだが、邪悪な存在ではないかという話では、フンと鼻を鳴らしたような様子だった。推測だが、そんなわけないだろう、といった感じだった。

 

相手のことはデュエルをすればある程度分かるが、しかしシラユキ本人はこの世界で実体化している訳ではないので、この世界で物質的に存在している相棒、マスターが必要だった。なのでこちらの世界に来てからまずシラユキは相棒捜しから始めたらしい。妖精ちゃんが物質的な存在かどうかは疑問がわくが。

征竜もそうだが、自身を呼び出してくれる相棒無くしてできる干渉にはかなりの制限があるらしい。かといって自分と相性が良い相手でないと、姿も見えないし会話することすらままならない。この相性が良い相手を見つけるのがなかなか難しく、何年も会えないなんてこともざらなんだとか。シラユキは運良く早めにボブ妖精ちゃんと出会えたらしい。

 

さらには俺達が皐月を看病している様を後半見られていたらしく、その時点で当初の目的は半ば達成されていたとか。見てたなら手伝ってくれと思わなくもないが、シラユキは満足した様子なのでなんとも言いがたい。

 

ところでシラユキという精霊と出会って会話したことで、今まで全く知らなかった真実が明らかになった。

俺が今までカードから召喚していたのは、一部を除いてカードの精霊ではなかったという事実だ。

俺が召喚していた中で、別世界で生きてきた彼ら精霊は、8征竜と清冽のエリアのみ。それ以外は俺がなんやかんやしてカードから生み出した、力の塊、カードの魂、使い魔、カー。そういったものであったのだ。

これからは厳密なことはともかくとして、わかりやすさのためにも別世界からきた者達を精霊、カードから召喚した者達をモンスターと呼ぶこととする。とはいえモンスターに意思や心がないかというとそういう訳でもなく、召喚するたびに個性を確立していき、やがては一個の存在として確かな者となるのだという。

俺が今まで気づかなかったように、そこまで両者を別に考えることはないのかもしれない。

 

 

 

~~~

 

 

 

デュエルを行ったのはボブ妖精ちゃんとシラユキというコンビだったわけだが、用事があったのはシラユキだけでなく、ボブ妖精ちゃんもそうだった。

彼女はどこからともなく艦これ世界の妖精達を呼び寄せると、一斉に建物を建築し始めた。手のひらの上に乗るような大きさの彼女達であったが、すごい勢いで働き、わずか一週間で一軒家ができあがった。

一体どこから建材を調達したのか、赤煉瓦で作られたその家は無人島の森と岩場の中間という、人工物が一切見当たらないロケーションにおいて、完璧な雰囲気を放っていた。

 

少し離れたところには木の枝を立てて葉っぱで屋根を作った、超古代人かサバイバルの人が使っているようなシェルターがある。俺が丸二日かけて作った、何度も使ったことのあるサブの方の寝床だ……比べるのはよそう。実際の所これは召喚の力も借りず、自力で作って自分で使っているので、寂しさはあまりなく、妙な感慨があった。

で、中身は大体4LDKで風呂トイレあり。和室もあるがこの畳は一体どこから持ってきたんだ?ここ無人島だぞ?亜空間物質転送装置(通常罠)でも使ったのか?しかも風呂だかプールだかよく分からない施設が付いている。入居施設だそうだがまるで慮外の施設だ、艦娘は死んでさえいなければこれで治せるらしい、どういうこと???

無人島なので規模も小さいし性能的にも簡易拠点相当の代物らしいが、おかしいのはそこじゃないんだよなぁ。今は完成と同時に皐月が突っ込まれており、性能や怪我してから時間が経っていること等が理由で5日程度かかるらしい。

 

皐月から聞いてはいたが、艦娘ってすごい。皐月の体に刻まれていたやけど跡はそれこそ人間なら一生残り続けるような傷だろうに、綺麗さっぱりなくなってしまうと言う。一応実際に戦うとき以外は彼女達妖精さんがいてこそ可能なことらしいが、艦娘がすごいことには変わりが無い。

妖精さんの方は見た目からして不思議な存在だからむしろ受け入れやすいんだが、艦娘は見た目人間と変わらないんだよな。

 





本作にはガッツリ独自設定が含まれます、遊戯王も艦これもです。精霊の話とかアニメとも背景ストーリーとも別物になってますね。
次回はまだ未登場の征竜が二種類出てきます。ようやく素征竜から純征竜に…!



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とある日の掲示板その2


精霊の掲示板二回目。
という訳で、コテハン付きの彼らが一体誰なのか分かるかな?
征竜二種?すみません、それ次回でした!!!!!

あとよく分からないのですが、番号指定するやつがうまくいっていないかもしれません。読みにくかったらすみません。



310:星遺物が我が手にない

友達の聖女ちゃんが自慢してくる!!!

 

 

311:V・S・D

ミラーフォースほしい…ほしい…

 

 

312:名無しの精霊

なんか相剣の人たち困惑してたけどどうしたんだろう。

 

 

313:垂氷

>>311 うん?一枚は持っておったであろう?

 

 

314:V・S・D

>>313 その一枚を無くしたんだよ!!!

 

 

315:名無しの精霊

>>314 何で??

 

 

316:名無しの精霊

なんかガンドラ氏がキョロキョロしてたけどなんかあったんかな。

 

 

317:名無しの精霊

閃光のバリア使おう!

 

 

318:V・S・D

だからミラフォだって言ってんだろ!

 

 

319:名無しの精霊

底知れぬ絶望の淵へ沈め!!

 

 

320:KID

>>310どうしたの?

 

 

321:星遺物が我が手にない

>>320よく分からないけど、いっぱい冒険してきたって自慢してくる!!

 

 

322:KID

>>321 あはは、まあ彼女はそう言う星の下に生まれたところあるしね

 

 

323:星遺物が我が手にない

>>322 しかもカレーがおいしかったとかご飯がおいしかったとか!うらやましい!

 

 

324:名無しの精霊

カレーって精霊界だとなかなか食べられないよね。

 

 

325:名無しの精霊

確かにうまいカレー食べたら自慢できる

 

 

326:名無しの精霊

そして天は鳴き、大地は震えるだろうね

 

 

327:名無しの精霊

え、何それ、かっこいい

 

 

328:名無しの精霊

よく知らないけど世界を救うことしかできない男が言ってたらしい。

 

 

329:名無しの精霊

世界を、救う!!!

 

 

330:名無しの精霊

なお幼なじみは救えない模様

 

 

331:名無しの精霊

妹を救うこと以外なら何でもできる男がなんだって?

 

 

332:ウィッター

混ざってるというか微妙に人違いでは…?

 

 

333:星遺物が我が手にない

なにか間接的に貶められている気がする…

 

 

334:KID

あ、ウィッターさんちーっす!

 

 

335:名無しの精霊

速報!速報!堕天使のトップと巨神竜が会談!

 

 

336:ウィッター

ファ!?うーん

 

 

337:名無しの精霊

またウィッター殿が死んでおられるぞ!

 

 

338:名無しの精霊

マシンナーズ・フォートレスみたいな不死身っぷりですね

 

 

339:名無しの精霊

アンデットよりアンデッドしてるやつじゃん

 

 

340:屋根裏の物の怪

世間は大変だなー

 

 

341:名無しの精霊

あれ、そういえば巨神龍の街に行ってる人がいたような

 

 

342:名無しの精霊

あー、なるほどそう言う。

 

 

343:名無しの精霊

>>342 え、何がなるほどなの?

 

 

344:名無しの精霊

そういえばアンデットって言うほどアンデッドして無くない?

 

 

345:名無しの精霊

ウチの相棒がアンデッドで墓地から特殊召喚できるのあまり多くないって言ってたことあったわ

 

 

346:垂氷

そ、そんなことはない!アンデットはちゃんとアンデッドじゃ!

 

 

347:鬼畜司書

馬頭鬼殿の力がアンデット全体の蘇生の半数を担っているという記述をどこかで見たような。

 

 

348:星遺物が我が手にない

アンデットってそうだったの?全然知らなかった

 

 

349:垂氷

ほらどこぞの刀使いと宿命の対決をする、自己蘇生能力を持ったテーマがあるじゃろ?

 

 

350:名無しの精霊

でも、そのデッキにも馬頭鬼殿は入りますよね?

 

 

351:垂氷

(目そらし)

 

 

352:海の馬

今北産業

 

 

353:名無しの精霊

堕天使のトップと巨神竜が会談!

ウィッター殿がまた死んでおられるぞ!

馬頭鬼最強説

 

 

354:名無しの精霊

ちくわ大明神

 

 

355:KID

おお、綺麗に産業でまとまったね

 

 

356:名無しの精霊

誰だ今の

 

 

357:海の馬

へー、でもそんなことあってウィッターは無事なの?

 

 

358:ウィッター

大丈夫じゃないよ!

 

 

359:名無しの精霊

なるほど、無事志望(二重の意味で)

 

 

360:名無しの精霊

それでも巨神龍なら…巨神龍ならなんとかしてくれる…

 

 

361:星遺物が我が手にない

……あれ?何か忘れているような?

 

 

 

 

 

 

 

「なるほど。大体分かりましたわ」

 

とある海上で、栗色の髪をポニーテールにした茶色のブレザーを来た艦娘がいた。

その隣には、半透明になっている一人の精霊がいる。

それは金で装飾された荘厳な鎧を身につけた、筋骨隆々で狼頭の男だった。

 

「うむ。すまないな、熊野。付き合わせてしまって」

「謝らないでくださいませ。極めて特殊な形態ですけれど、目的を達するまではあなたがわたくしの司令官なのですから」

「痛み入る」

 

艦娘である熊野は艤装を身につけているものの、その左腕には艤装とは異なるものが装備されていた。そばにいる精霊の衣装とも類似した配色の、白と金のデュエルディスクだ。

 

「うーん、これ、もう少しかわいいデザインはありませんの?」

「ライトロードが使うのは、いや光属性のスタンダードなデュエルディスクだが。確かに少女に渡すには少々無骨かもしれん」

「レディと言ってほしいものですわ。それにわたくし、無骨なものも嫌いではなくってよ?これでも重巡洋艦ですから…っと、それよりこれ、無骨と言うよりは……厳格ですのね」

 

自らのデュエルディスクをじっくりと観察し、熊野はそう結論づけた。

知識の全く関わらない、単純に熊野本人の感性によって導き出された感想であるが、精霊は感心したうなり声をだす。

 

「なるほど。私は洒落は介さないが、さもありなんと言ったところか」

「?…どういうことですの?」

「我ら、厳格なる正義の集団故な」

 

 





・そして天は鳴き~
汚い音声の親戚。

・アンデット
トの方が種族名。

・マシンナーズ
こいつアンデッドじゃね?




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幻征竜と眼征竜


皆さんマスターデュエルでドラゴサックに演出あるの知ってました?



 

赤煉瓦の一軒家。

入居施設にて水に浸かっている皐月の横で、椅子に座る空母ヲ級・月光がいた。

 

「じゃあ、やっぱり艦載機は作れないんだ?」

「そう」

「艦娘用の入居施設で治せないのは仕方ないけど、艦載機の補充ができないのは変だよね。うーん、ボーキサイトがないからとか?」

「ううん。あっても、ダメだった」

 

征谷と共に割と普通の人間のように暮らしている月光であったが、同時に深海棲艦らしさ、というより空母らしさを喪失していた。航行自体は可能なものの、艦載機が一隻たりともないのである。空母らしさがないのも当然と言いたくなるところだが、問題は補充もできないところだ。

月光にとって征谷と出会う前の記憶は曖昧だった。ごく自然に航行し、戦闘し、補給をしていたような感覚はある。しかし霞がかかった記憶の中で、艦載機は時間経過で勝手に補充されていた様な気持ちがあり、しかし今は全くその気配がなかった。

かといって妖精さん達にもどうすることもできず、入居施設はあっても開発工廠があるわけではないこの場所では試すこともできない。

 

なお、空母の艦娘が扱う艦載機の主な材料となる"ボーキサイト"だが、これ自体はこの場所に存在していた。征谷が撃沈しまくった深海棲艦の残骸が島にはいくつも残っており、そこから妖精さん達が材料を回収していたからだ。

邪魔だし見た目が悪いという理由でたまに征谷が浜辺から陸地にまとめていたのだが、これが皐月の修理素材や装備に変わり、あまりがまだまだ残っているのである。

 

「月光も不思議だよねー。あ、そういえば深海棲艦の間でも月光って呼ばれてたんだって?」

「そう。月明かりの空を飛ぶ。月光」

 

発音もすでに自然になっているが、月光はゆっくりと言葉を句切って話す。まだ早く話すことは難しかった。

 

「何でボクたちと同じ呼び方なんだろうね。偶然?」

「分からない」

 

月光の呼び名は、人類と深海棲艦で共通していた。当然両者に交流などないし、何なら深海棲艦に一部意思と言葉も持つ者がいるということすら未だ知られていない。にもかかわらず月光という呼び名は一致する、奇妙な事態だった。

 

 

 

 

 

 

完全に艦娘としての体を修復し航行可能になった皐月は、色々と話し合った結果本土へと戻ることになった。それに当たってアレキサンドライドラゴンが途中まで、ガスタ・ガルドが直前まで同行する。アレキには護衛をしてもらい、ガスタ・ガルドには日本の様子を見てきてもらう予定だ。

というのも日本がどうなっているのか遠くからだけでも確認したかったからだ。

慣れていて戦闘力もあり高いステルス能力を持つアレキにやってもらおうかとも思ったが、使いやすすぎて逆に手元から放せなくなった。デブリドラゴンが似たような使用感なのだが、どちらかというと対空・対艦載機戦の方が得意なのだ。それでコストも低くてある程度高高度を飛べるガスタ・ガルドに白羽の矢が立った。

綺麗な緑色の鳥で、ステルス性と言われると多少不安だが、まあ地上からは見えてもノミみたいな小ささだろうし、今時飛行機なんてまともに飛んでいないらしいからそこも問題ない。

 

俺も皐月と一緒に日本に行くかどうかという話になったのだが、それを止めた者がいた。シラユキである。彼女が言うには、俺にはまだこの島でやるべきことが残っているのだとか。

デュエルモンスターズの精霊が言うことでもあるし、征竜達やエリアも良いんじゃないかという感じだったので、俺は無人島暮らしを続行することになった。

 

それからしばらくしてからのこと、なにやら深海棲艦が増え始めた。おそらく普段は平均すれば日に十隻弱程度の深海棲艦を撃沈しているのだが、これが二倍くらいに増えた。

それに確信はないのだが、どうもこの島、移動している気がする。全くこれっぽっちも確信が持てないのだが、星の位置と気候の変動が大きいような気がする。深海棲艦が増えたのも、別の場所に移った結果そこにいる深海棲艦とぶつかっているんじゃないだろうか。

精霊達に聞いても分からないし、証拠もないのだが、どうにも気になってしまう。

 

 

 

~~~

 

 

 

皐月、シラユキと分かれた後、この世界でのデュエルディスクを用いた初めてのデュエルを思い出しつつ、デッキを組み直している。ボブちゃん(シラユキ)から妖精伝姫一式を譲り受けたこともあるし、あのデュエルの後で征竜カードが二枚も増えていたのだ。

 

一枚目は「幻獣機ドラゴサック」。

ランク7/風属性/機械族/攻2600/守2200。

待望のランク7エクシーズモンスターで、トークン生成能力、カード破壊能力、破壊耐性を持つ使い勝手の良いカードだ。

征竜デッキであればまず投入されるカードで、2積み3積みされるぐらい使われる。とりあえずサック立てとけという雑な感じで展開されることもよくあり、これさえあれば先行で何もやることがないという事態は避けられる。

そもそもエクストラが実質0枚で、バニラでも良いからランク7エクシーズがほしかった現状、彼の存在で全く話が変わってくる。ありがとう幻征竜ドラゴサック!

 

二枚目は「No.ナンバーズ11 ビッグ・アイ」。

ランク7/闇属性/魔法使い族/攻2600/守2000。

相手フィールドのモンスター1体を対象としてそのモンスターのコントロールを得るという、シンプルかつ強力な効果を持ったモンスター。

こいつもドラゴサックと同じぐらい征竜で使われたカードであり、征竜全盛期には征竜が蔓延っていたため、征竜ミラーでビッグアイがビッグアイを奪うという事態が多発したらしい。

これでどんなに打点が高かろうが、破壊耐性があろうがこれ一枚で処理できるようになったし、何ならコントロール奪取できる。ありがとう眼征竜ビッグ・アイ!

 

幻征竜ドラゴサックと眼征竜ビッグ・アイ、この二枚が加わったことで、ようやく征竜デッキになったと言っても良いだろう。エクストラが実質0枚だった今までは肉のないビーフシチューのような物。純粋な高打点モンスターへの解答が二種類も増えたのがうれしい。何せ今までは青眼の究極竜一体すらシャイニングフォースでしか倒せなかったのだ。

ちなみに幽鬼うさぎは効果を発動したカードを破壊するので、効果の無いアルティメットは破壊できないぞ。

 

妖精伝姫をどうするかは悩みどころだが、実に良いね!

エクストラデッキに使えるカードが二種類も入っていて、それが両方とも征竜だなんて、こんな幸せな気持ちでデッキを組むなんて初めて。もう何も怖くない!

ちなみにどちらも対象を取る効果なので、対象にならない高打点モンスターが出たら相変わらず閃光のバリアしか解答がない。さらに対象にならない破壊耐性を持つ高打点モンスターが出てきた場合、完全に詰む。悲しいかな、現代遊戯王では勝負にならないデッキである。

あと、エクストラということで何故か「シューティング・ライザー・ドラゴン」と、「森羅の鎮神 オレイア」が増えていた。オレイアは植物族モンスターが入っていない俺のデッキだと、ただのランク7で攻撃力2800のバニラである。ライザーに至ってはチューナーがデブリドラゴンと幽鬼うさぎしかないので、使う機会はそうない。

清冽のエリアと同じく単なる賑やかし要因である。砂の魔女(サンド・ウィッチ)かな?

が、それはデュエルするときの話であって、召喚したときは別だという事実にはまだ気がついていなかった。

 

 

 

 





ついに純征竜と言えるデッキになりました。
マスターデュエル的にもゴールド4から3くらいのデッキパワーがあります。誘発をガン積みすればもう少し上に行けるでしょうが。
とはいえデッキパワーの低さは右手とカードを光らせることでいくらでも解決可能なんですけどね!
ちなみにこのお話で必須級の誘発はこの先出ません。増Gとかうららとか泡影とかのどんなデッキにも入ってるやつですね。禁止カードです。代わりにうさぎのようなあまり見ないやつは禁止してません。


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アレキ・デブリVS南方棲鬼


仕事が辛くて筆が進まない…。楽になることを祈りつつ初投稿です。



 

×日目

今まで空母ヲ級"月光"のことはヲ級と呼んできたが、今日から月光と呼ぶことにした。

皐月がいた頃から知ってはいたのだが、本人の認識でも月光という名前に違和感ないようだ。

そこだけ気になっていたから、なんと呼んだら良いか迷っていたのだ。

 

 

×日目

月光がそわそわしている。どうしたんだろうかと聞いてみるがよく分からない。

何だろうなと思っていたその日の夜、空を見上げたら星の位置が変わっている。どういうことだ?

 

 

×日目

深海棲艦が増えてきた。相変わらず近づいてくる奴らを迎撃しているが、日に20隻以上撃沈しているぞ。ただ駆逐艦と軽巡洋艦の割合が多く、それ以外は重巡洋艦と軽空母がたまにいる程度で、大型艦はあまり見られない。

 

 

×日目

一日の最大戦闘数が記録更新して4回になった。数は増えているものの艦種に違いは無く、艦娘の姿も無し。

 

 

×日目

「シューティング・ライザー・ドラゴン」が、実は召喚できる中で最大の移動最高速度を持っていることが判明。

機動力はそこまででもなさそうだが、直線だと相当速い。速度を測る手段がないため分からないが、音速の数倍は優に出ているっぽい。

 

 

×日目

ライザーの例があるため調べてみたら「森羅の鎮神 オレイア」が森を生やせることが判明した。

島の岩山だった部分が森に覆われてしまい、困惑を隠せない。どうしよう。もっと詳しく調べたいが、コストも重いため一旦自重する。

 

 

×日目

森になってしまったものは仕方ないので気にしないことにした。それよりオレイアの召喚コストが想定外に高かったことの方が問題だろう。親征竜並の召喚コストである。

エリアやライザーのことを考えればエクストラだから高いという訳でもあるまい、やっぱりカードのレベルや効果だけ見ても実態は分からないと言うことか。

 

 

×日目

この日は「No.11 ビッグ・アイ」について調べた。

大型トラックよりもでかい体にまず驚いたが、視線の先の相手を操るという予想通り過ぎる能力を持っていた。でも単体にしか効果を発揮できないため、深海棲艦相手だとそんなに役に立たない。コストも親征竜やオレイアの次くらいに重く、現状だと使い道がなさそうである。

デュエルとそれ以外は別、はっきりわかんだね。

 

 

×日目

一日の撃沈数が40隻を越えた。

 

 

×日目

一日の最大戦闘数が記録更新して6回になった。

 

 

×日目

敵が多すぎる!アレキサンドライドラゴンを出しっ放しにすることを本気で検討しだす。

 

 

×日目

鬼だー!?

 

 

 

~~~

 

 

 

鬼との戦闘を振り返ってまとめておこう。

その日は早朝に20隻ほどの敵艦を撃沈し、その後昼までは敵襲がなかった

明るいものの曇に覆われて太陽の見えない天候の中、11隻の僚艦と共に彼女は現れた。

 

白いとは言っても病的な肌、やはり色素のない白い髪はツインテールにされ、長くそれなりのボリュームがある。面積の小さいビキニと革ジャン、腕にはかぎ爪のようになもの、そして艤装に至るまでまがまがしい黒と赤の配色。深海棲艦の中でも特別強力な艦種である"鬼"であるが、一体彼女が何棲鬼であるかまでは分からなかった。

正直深海棲艦についてはそれほどよく知らないのである。ただ、戦闘後に月光に確認したら"南方棲鬼"かもしれないとは言っていた。

 

 

艦隊の編成は戦艦2、空母3、重巡洋艦・軽巡洋艦・駆逐艦が二隻ずつ。

戦いはいつも通り主砲範囲外からの航空戦から始まった。200以上の艦載機が現れるが、すぐに分かるぐらいにはいつも相手をしている艦載機よりも練度が高い。こちらはデブリドラゴンをメインに、アレキサンドライドラゴンをサポートに出した。

俺本体と月光を守るためにメテオドラゴンも召喚している。

 

 

結論から言って、航空戦は何ら危なげなく勝つことができた。正直に正面からの戦いを挑んできてくれたことが大きいと言えるだろう。単純な戦闘力だけで言えば、デブリドラゴンだけでも敵艦載機200を上回る。

こちらが警戒していたのは、数に任せて部隊を複数に分け、俺を直接攻撃してくることである。デブリもアレキも戦闘力だけなら負けようがないが、一纏めに大量に倒すのは難しいし限度がある。それで俺の方を狙われると、俺を守りながら戦わなければいけないし、そうなると神経を使う。確かにメテオドラゴンの腹の下に隠れていればそれほど危険は無いのだが、島の植物や拠点を破壊されるのは困る。そう言う意味でもこちらを直接狙われたくはないのだ。だからこそデブリが敵を殲滅するまではアレキの幻影術によって攪乱し、島に対する攻撃を防ぐ予定だったのだが、良い意味で予想を裏切られた。

高い機動力と風の鎧、風ビームに乱気流に風圧拳だか螺旋丸だかみたいな攻撃で、デブリドラゴンが無双して終了だ。

 

しかし相手は艦載機を失った空母すら撤退することなく突撃し、戦闘開始。

こちらはデブリとアレキが役割交代してアレキがメイン。僚艦に関してはまあいつものよりは強いんだろうが敵にはならず、いつもより警戒して戦ったため多少時間がかかったが、問題なく撃沈していく。ボスである鬼については火力、砲撃精度、回避運動、対空砲火、装甲、いずれも比較的高い能力でまとまっている。というか今まで月光を覗けば似たような深海棲艦ばかり相手してきたので、普通に過去最高の能力だ。しかしそれはアレキサンドライドラゴンを上回るほどの戦闘力にはならない。

確かなパワーアップ、というか普段との明確な違いがあったものの、空を飛ぶアレキを捉えられる様な砲撃でもなければ、アレキの幻術を打ち破れるようなものではないのである。

 

アレキが普段使いする虹色の光球は、自身の周囲にそれを複数出現させてから撃ち出す。その様子はバーン様のイオラだとか仙水の裂蹴紫炎弾前段階みたいな感じか。王の財宝は大抵面状に出してるから少し違う。これを10発以上同時に出せるわけだが、一発一発の威力も低くはなく、うまく直撃すれば軽巡洋艦でも一撃で撃沈可能。多量に当たれば戦艦でも瞬殺できるこの光球の一斉射撃を、彼女は一身に受けて一度は耐えた。その耐久力には感心したが、さすがに第二射には耐えられなかった。

結果、第三者から見ているだけでも完全なワンサイドゲームで終わったのである。

 

つまり、普通に海戦する分には全く問題ない。

なのでやはり避けるべきは近距離戦だろう。おそらく近距離からの撃ち合いならメテオドラゴンの防御力を上回る。数発でやられるほどではないが、攻撃され続ければいずれは力尽きる。言うまでも無く俺が食らったら即死だしな。近距離で爆発したくらいならデュエリスト的に考えて多分死なないけど。

 

 





・南方棲鬼
明確な個性を持つ数少ない深海棲艦の一隻。彼女の撃沈によって、深海棲艦側にも謎の存在が認知される。深海棲艦におけるインド洋の最大戦力であり、意思を持つ深海棲艦の中でもかなりの古参。ただしそもそも深海棲艦の中で意思を持つ者自体、非常に少ない。

深海棲艦も色々いますけど、それぞれ似合うデッキテーマは何がありますかね?良ければ教えてくれるとうれしいです。

次回は深海棲艦の掲示板回となります。


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とある日の深海棲艦専用掲示板その1


この回は、何というか書いてて楽しかったです。



72:南方棲鬼

ヤバいくらいやられてるんだけど!?

 

 

73:港湾棲姫

どうした。

 

 

74:南方棲鬼

知らないうちに次々やられてる!

 

 

75:深海海月姫

変なことだ。おかしなことさ。

 

 

76:空母水鬼

その辺敵いなかったと思うけど

 

 

77:港湾棲姫

付近に、艦娘がいる、鎮守府は、なかったはずだ。

 

 

78:潜水新棲姫

被害状況はどの程度だ?

 

 

79:南方棲鬼

分かんないけど、この一週間で100隻はやられてるわ!

 

 

80:空母水鬼

それは大変。

 

 

81:潜水新棲姫

やられてるのは指揮下?それ以外?

 

 

82:南方棲鬼

両方!指揮範囲外のは把握してないけど減ってるのは確かね。

 

 

83:潜水新棲姫

位置関係は?

 

 

84:南方棲鬼

詳しくは分からないけど、東から西に何かが向かっているような感じね

 

 

85:空母水鬼

斥候は帰ってこないのね

 

 

86:港湾棲姫

全部、か?

 

 

87:潜水新棲姫

全滅でなければもう少し情報が出てるだろう。

 

 

88:南方棲鬼

もー、どうなってるのよ!?港湾、何か知らない!?

 

 

89:港湾棲姫

なくは、ない

 

 

90:南方棲鬼

えっ、あるの!?

 

 

91:潜水新棲姫

月光の件か?

 

 

92:港湾棲姫

月光艦隊、100隻が、一夜で、全滅した。と、思われる。真相、不明。

 

 

93:南方棲鬼

なにそれ!?月光ってあの月光!?鬼より強いっていう!?

 

 

94:潜水新棲姫

人類からは夜天の支配者と呼ばれていた。

 

 

95:深海海月姫

月明かり、夜の闇を切り裂いて、その双眸は彼方を収め、昼のごとく飛び回り、比肩しうるものはなく、五倍の敵を打ち落とす。祖は隠されぬ玉座、満天の月光なり。

 

 

96:潜水新棲姫

海月、その言葉は何だ。知らない言葉だ、情報求む。

 

 

97:深海海月姫

耳に残るだろう。人間が歌っていたらしい。

 

 

 

 

 

~~~

 

 

 

144:戦艦仏棲姫

それで、最近は音沙汰ないの?

 

 

145:潜水新棲姫

ない。情報のどこにも南方棲鬼は現れなくなった。撃沈された可能性が高い。

 

 

146:戦艦仏棲姫

そうよね。情緒が発達しているように見えるけど、私たちは敵を黙って通せはしないもの。

 

 

147:港湾棲姫

やられた、か。

 

 

148:戦艦仏棲姫

港湾ちゃんから見ても、敗北は確定?

 

 

149:港湾棲姫

月光艦隊を、全滅できるなら、造作も無い、だろう。

 

 

150:戦艦仏棲姫

なら、全滅したのね。

 

 

151:潜水新棲姫

優先度高と認定。情報収集を続ける。

 

 

152:戦艦仏棲姫

直接行ったらダメよ、危険すぎるわ。

 

 

153:潜水新棲姫

偵察は潜水艦の任務の内だ。

 

 

154:戦艦仏棲姫

ダメ。あなたは要なんだから。

 

 

155:潜水新棲姫

おとなしく遠くから噂だけ聞いていろと言うのか。

 

 

156:戦艦仏棲姫

好奇心を抑えなさい。あなたもまた、数少ない心の発達した個体なのだから。

 

 

 

 

 

ここで二時間ほどの間が開く。

 

 

 

157:潜水新棲姫

了解した。

 

 

158:深海海月姫

納得はしないさ、了解はするさ。

 

 

159:港湾棲姫

海月、来た。

 

 

160:深海海月姫

今北産業

 

 

161:潜水新棲姫

産業?今北?海月、どういう意味だ、なんと発音する?情報求む。

 

 

162:戦艦仏棲姫

人なら、ここからでも心を見いだせるのかしら。

 

 

 

 

 

 

~~~

 

 

 

・南方棲鬼

感情豊かだが非常に好戦的。比較的近接戦闘に優れる。

 

・潜水新棲姫

自分の好奇心とガチバトルしている系ロリ。

戦艦仏棲姫の言を受け入れるのに二時間葛藤した。

 

・港湾棲姫

いつもゆっくり話している。

 

・深海海月姫

海月はクラゲと読むこととする。人類の感性だと不思議ちゃん。変な知識を持っている。

 

・戦艦仏棲姫

意思を持つ深海棲艦のママ的な立ち位置。港湾に負けず劣らずの大きさ。

ふわふわした髪のボリュームもすごい。

 

・空母水鬼

まだ感情に乏しく口数も少ない。が、掲示板(?)上だと割と普通に話せる時もある。

 

 

 

 





わかりにくいですが途中で一週間以上日が開いています。

しかし作者の精神が保つのか……これもうわかんねぇな。


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神風と巨神龍の元に居合わせた者達


最後まで週一以上更新で駆け抜けたかったですがダメでした。残念。
そして最初から登場予定だった神風がようやくまともに出せました。



 

 

推定南方棲鬼と戦った次の日。

見張りのミリスレディエントがこちらに向かってくる一人の艦娘を見つけた。報告を受けた俺はタイミングを見て浜辺まで向かうと、ゆっくりと上陸している最中の艦娘がいた。浅瀬のギリギリまで来てから艦娘としての力を霧散させ、少女は軽い足取りで俺の前まで歩いてきた。

 

「司令官。神風型駆逐艦、一番艦、神風。推参です!」

 

きりっとした表情で、海軍式の敬礼と共に少女…神風はそう言った。赤い和服姿の彼女がどこから来たのかとか、なんでこの場所に来たのかとか謎だらけだが、しかし俺にはそれよりも気になっていることがあった。

 

「司令官?俺が?」

「はい!あ、提督とお呼びした方が良いですか?」

「いや、そもそもなんで俺が司令官?初対面だよな?」

「司令官は司令官ですよ?」

 

そう言ってコテンと首をかしげる神風からは、一切の疑問も違和感も感じない。それが最も自然な状態であるかのようだ。俺が言葉に詰まっていると、ヲ級がやってきて神風と向かい合った。

 

「ヲ?」

「むむ!」

 

神風はジッとヲ級を注視するが、そこに敵意のたぐいは感じられない。わずかに不思議そうな顔をした月光とのにらみ合いは、すぐに終わった。

 

「神風型駆逐艦、一番艦、神風です!よろしくね」

「ヲ。月光。よろしく」

 

そして敵意もなければ大して驚くこともなく、神風はヲ級と挨拶した。

 

 

 

 

 

 

和やかな出会いに安心しつつも神風を自分の家へと招待した俺は、リビングで向かい合って座っている。この赤煉瓦ハウスを見て神風はなんとなく言い笑みを浮かべていたので、なにやら好みには合っているらしい。ヲ級は隣に座っているが、倒木や地べたに座っていたときと同じく、ほぼ密着する距離まで椅子を近づけている。

 

「で、えーとまず、神風はどこから来たの?」

「海です!」

「いや、うん、そうじゃなくて…」

「あ、そうね。目覚めたのは最近…かな?司令官がいるのが分かったから、すぐに向かったの」

「これが海域ドロップか?」

 

聞いてもよく分からない事態に俺は小さくつぶやく。艦娘は元々謎な存在だが、どこから生まれてくるのかすら分かっていない。皐月に聞いた話だが、艦娘の建造は妖精さんが最初から最後まで専門でやっているので、何をやっているのか分からない。見てはいけないらしいが、鶴の恩返しかなにかか?

 

「つまり、目覚めてから誰にも会ってないわけだ、深海棲艦とも」

「ええ、司令官が初めてよ。残骸はたくさん浮いてたけど」

 

一瞬刷り込みでもあったのかと思ったが、そういえば元から俺がいると分かってきたという話だったか。

 

「ここ、無人島みたいだけど、設備はあるの?」

「ああ、よく知らないが、入渠だけはできるらしい。資材はあるけど工廠とかはないから、装備が破損したら治せないと思う」

「うーんそれなら、攻撃は船体で受けなきゃだめよね」

「つっても、神風が戦うことないと思うけど」

「え?どうして?」

「どうしてって、そりゃ…あ、敵来た」

 

島で一番高い岩山にオレイアが生やした、一際高い木のてっぺんから周囲全体を監視するミリスレディエントからの報告。いつものように6隻編成のどこにでもいそうな深海棲艦をアレキサンドライドラゴンを召喚して撃沈した直後。

 

「まあ、こうなるから。戦うことないだろ?」

 

口を開けて呆けていた神風が再起動するまでには、結構時間がかかった。

 

「ええ~~~~~~!!!!」

 

大海原にかわいい悲鳴が響いた。

 

 

 

~~~

 

 

 

とある巨大な建造物、その中の白い壁で覆われた一室に一体の竜と、三つの人型があった。

 

「此度の担い手は未だ目覚めに及ばず……これほど力なき者が選ばれるというのも珍しい」

 

厳かな声でそう言ったのは、金と銀の巨大な竜。彼は精霊界でも有数の力を持つ者であったが、世界に君臨していると言うこともできた。しかしその実態は権威的な存在であり、力によって他の存在を支配しているわけではない。だからこそ力によって世に震撼の走るとき、彼は武力に寄って立たない方法にて問題を収めている。大事件が起こった場合の駆け込み寺のような扱いもあり、言ってしまえば苦労人であった。

大いなる神威を携えたその竜、巨神龍は、どこか笑っているようにも見えた。

 

「珍しいと言うが巨神龍よ、そう悠長に構えていて良いのか。今でこそ問題になっていないが、一線を越えればどれほどの禍乱となるか」

 

綺麗な声でありながら硬い口調でそういうのは、薄い青緑色の透き通った水のような体をした若い女性。左足と頭部の左側が真っ黒い氷のようになっており、その姿は見る人によってはどこか深海棲艦を彷彿とさせた。

しかしここにいる四人の中で最も年少となる焼けた肌の少女には、彼女が意図的に感情を表に出さないようにして、無表情を作っているように見えた。

 

「儂も同感ですな。悲観的な様子こそ見受けられませんが、巨神龍様は先ほどから不安要素ばかりをお話になる」

 

そう言ったのは、青いローブを身に纏った、どこか神官の様な姿をした老人。好々爺然とした雰囲気をしているが、その実かなりの力を身に秘めていることが巨神龍にはよく分かっていた。

 

「確かに属性バランスの崩壊が起こっているのは、遠く離れた世界の話。直接的な影響はあるまいよ。問題は、それほど遠い異変すら感じ取ってしまうかもしれない存在と、荒れ狂う流れの行き先が定まっていないところにある。もしその力がこちらの近くを通り過ぎ、眠れる竜が目覚めるようなことがあれば、また世界が止まってしまう」

「話に聞く力の量を考えれば、儂らの結界を越えて竜達を目覚めさせる可能性は否定できませんな」

「世界が変わっても、トリシューラの力の大きさには変わりが無いのだろう?"メイド動乱"や"アーゼウスの一撃"の時を遙かに超える悲劇が……それとも、それ以前に世界が滅ぶか?」

 

氷のような彼女は自分の言葉に疑問を持ったのか、巨神龍へと聞く。

同族の中では大人と言える彼女であるが、世界を滅ぼしうる存在が本気で暴れるような事態には、未だ出会ったことがなかった。何かと問題は起こる世界だが、世界の危機が顕在化するような大きな事件が起こったのは、それなりには前の話なのである。

 

「クハハ、何、すぐには滅びんとも。もしトリシューラが一切のかせなく暴れれば、他の超越存在達とぶつかるだろうよ。最終的には世界が滅びるかもしれんが」

 

笑いながらそう言う巨神龍の言葉に、この場にいた最後の一人が顔を上げる。

 

「でも、巨神龍さまはなんだかうれしそうだね」

 

その場の雰囲気にそぐわない明るく無邪気な声の主は、長い黒髪と褐色の肌をした少女。少女はとある火の鳥の神に仕える巫女であり、そんな彼女の言葉を肯定するように、巨神龍は笑った。

 

「意図もなく、約定もなく、何の縁もなく、偶然彼らは居合わせた。この事実が既に運命がそこにあることを示している」

 

 

 





後半は巨神龍と水属性二人と炎属性一人でお送りしました。
ちなみに深海棲艦っぽさがあると気づいたのは登場させた後です。
さて、彼らは誰でしょう。


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我が家と訪れる正義の武人


遊戯王でも割と知名度のあるあのテーマのキャラが登場。
ちなみに今回ほぼ推敲していないので間違いがあるかもしれません。後々手を入れたりするかもです。



 

神風が来てから数日、彼女は割とすぐになじんだ。俺と一緒にいて当然という認識のようだが、理由は分からない。これがゲームで言うところの海域ドロップというやつなのかとか、あるいは相手が鬼だったから特別だったのかとか、理由はいくつか考えられるが実際の所は不明である。考えても答えの出ようがない問題のため、俺は気にしないことにした。相手が敵対的というならともかく、友好的だし彼女が俺に従うものという認識のようなので、悪く扱う理由がない。

 

神風と話し合ったのだが、ひとまず彼女は出撃しないことにした。本人的には出撃したい様子だったが、状況を考えればそれをする意味は考え物だった。彼女一人では多勢に無勢だし、俺が召喚するモンスターがいればそれだけで事足りるからだ。

その後は神風と一緒に妖精さん建築の我が家を探索した。艦娘としての施設は一人用の入居施設があるだけだが、実は倉庫に用途不明の装置がいくつも保管されているため、これの探索を一緒に行ったのだ。

 

「やった!司令官、これがあったわ!」

 

探索後少ししてうれしそうな笑みを浮かべてそういった神風がもってきた物は、深海棲艦の残骸を原料に艦娘用の資材を生成するための装置だった。俺が見てもどっかの工場に置いてありそうな謎の機械でしかないのだが、神風には分かるものであるらしい。花のような笑みを浮かべる神風はハッとなって咳払いすると、照れくさそうに言葉を続けた。

 

「全体の内の一つだけど、これがあるなら他の装置もあるはず。艦娘でも使える物だから、司令官の手を煩わせることもないわ!」

 

そう言って張り切って倉庫あさりをした神風は、最終的に家の裏手にいくつかの謎機械を並べた。見た目は黒を基調とした溶鉱炉の様な物で、大きさも大きい物で二メートル以上ある。

滑車に乗せて移動したのだが、そのときてこの原理という名の力業によって滑車に乗せたので、神風の腕力にはなかなか驚いた。皐月から聞いてはいたが、陸上においても明らかに人間以上の腕力を発揮している。最初は誰かドラゴンを呼んで手伝ってもらうつもりだったので、人力二人で成功したことには驚かざるをえない。

 

これで効率とか諸々の事情は置いておくとしても、自力での資材の生産が可能となった。資材の生産ができると言うことは、艦娘の運用が可能となったということだ。今すぐにどうこうという話ではないが、将来を見越せば大事な一歩目であった。

 

 

 

~~~

 

 

 

あるとき、神風の時と同じようにミリスレディエントから報告が来た。艦娘が一人こちらに向かってくると言うので、全員で浜辺へと向かう。今度は何だろうなと思いつつも待ったのは少しの時間で、見えてきたのは知識としては知っている容姿。栗色の髪をポニーテールにして、なんとなく気品のあるたたずまいの少女。重巡洋艦、熊野だ。

皐月や神風の時と同じく、初めて見る見知った姿。そんな姿を前にしながら、俺の視線は彼女の左腕に注がれていた。

 

「ごきげんよう。重巡、熊野ですわ」

「こんにちは、俺は竜然征谷。よろしくな」

 

浅瀬まで来て挨拶した彼女は、若干ぎこちない様子でゆっくりと地面に足を付けた。皐月や神風がそうするのを見てきたが、やはり航行状態から上陸状態に移行するのは気を遣うようだ。詳しくはないが、艦船としての状態である艦娘の重量が非常に重いことは聞いている。比較するならゾウどころかクジラである以上、慎重になるのは当然と言えるだろう。何せその重量が人間の小さな二本足にかかるので、地面が文字通り陥没するだろうことは想像に難くない。とはいえ、それなりに艦娘歴の長い皐月が流れるように変更していたことを考えれば、熊野もまた神風と同じく生まれてから長くはないのだろう。

…改めて考えてみると艦娘とは不思議存在である。

 

「ふう。なにぶん初めてのことですので、少々緊張しましたわ」

「初めて?上陸が?」

「もしかして、私と同時期に艦娘になったのかしら?」

 

俺が思ったのと同じことを神風が聞くが、帰ってきたのは別の答えだった。

 

「成り立てという訳ではないのですが……少々訳がありまして。あなたを探しておりましたわ」

 

そう言って熊野は左手を前に出す。そこには普通に考えてあり得ない物、気になって仕方がなかった物。そう、そこにはデュエルディスクが装着されていたのだ。

そしてわずかに感じていた気配が強くなり一つの輪郭を作り出す。スーッと透明な物が見えるようになったかのように現れたのは、筋骨隆々の狼男の様な存在。征谷にも使ったことがあるモンスター、"ライトロード・ビースト ウォルフ"だった。

 

「初めましてだな、征竜の決闘者よ。私はライトロードのウォルフ!突然だが、征竜のマスターたる実力が貴殿にあるのか、試させてもらおう!」

 

ウォルフがそう宣言すると、熊野が白と金のデュエルディスクを構える。デュエルが始まる気配を感じていた俺もまた、すぐにデュエルディスクを構えた。デュエリストが二人顔を合わせた以上、デュエルすることは自然なことであり、理由など必要ないのだ。

 

「「デュエル!!」」

 

 

 

~~~

 

 

 

ターン2(後攻1ターン目)

メインフェイズ1

 

竜然征谷

フィールド:

妖精伝姫-カグヤ   攻撃表示 攻守1850/0

幻獣機ドラゴサック  攻撃表示 攻守2600/2000

幻獣機トークン*2   守備表示 攻守0/0

 

ウォルフ

フィールド:

混沌魔龍 カオス・ルーラー    攻撃表示 攻守3000/2500

ライトロード・セイント ミネルバ 攻撃表示 攻守2400/800

ライトロード・アーク ミカエル  攻撃表示 攻守3000/2000

 

征谷の先行で始まったデュエル。

熊野(ウォルフ)のフィールドには二体の光の力を持つ存在と、一体のドラゴンが堂々と立つ。対する征谷のフィールドには可愛らしい獣人と、幻影を映し出す戦闘機。まだデュエルについてほとんど理解していない神風には、どちらが有利なのか分からなかった。

 

「私には戦況は分からないけど……月光は分かる?」

「ヲ。なんとなく」

 

月光は征谷と共に過ごして長いこともあり、おおよそのルールは理解している。実際のデュエルを一度見ていること、そして何より戦場に対するカンのようなものが働き、月光には二人の精神的な状態を正しく把握できていた。

 

「少し、不利」

 

空母ヲ級月光が端的に告げたその言葉は、征谷の心の内を言い当てていた。

 

 





最後の攻撃力を見ておかしいと思った方がいるかもしれませんが、あくまで簡易的なアレで魔法とかも書いていないのでそういう物だと思ってください。

次回、妖精伝姫征竜VSライトロード!デュエルスタンバイ!


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妖精伝姫征竜VSライトロード


お待ちしてくれていた方いましたら時間がかかってしまってすみません!
デュエル内容はともかく文章の方に時間かかってしまいました。正直一つ一つの効果を全部説明していくと文章量が爆増してしまうので、今回も主要カード以外は詳しく説明しないで進行します。よく分からない方はフィーリングでお願いします。



 

暫定征竜の決闘者である征谷と、艦娘・熊野の体を操る"ライトロード・ビースト ウォルフ"のデュエルは、スピーディーな立ち上がりを見せる。征谷の先行、初手は子征竜1、親征竜2種、カグヤに超再生能力。

征谷は初手にあった手札をすべて使い、ほとんど思考時間を使わずノンストップでカードを使用し盤面を構築した。

 

 

竜然征谷

手札4 ライフ4000

フィールド:

妖精伝姫-カグヤ   攻撃表示 攻守1850/0

幻獣機ドラゴサック  攻撃表示 攻守2600/2000 ORY1

幻獣機トークン*2   守備表示 攻守0/0

魔法罠:なし

 

 

ターン2、後攻のウォルフは征谷とそのフィールドをジッと見つめる。

 

(なるほど…素質自体はあるか)

 

ウォルフは小さく頷くと、フィールド魔法"ジャスティス・ワールド"を発動。このカードはデッキからカードが墓地に送られるたびにシャインカウンターを置き、その数×100ライトロードの攻撃力を上げる効果を持つ。

 

それから始まるのは怒濤の勢いでデッキからカードを墓地に落とすライトロードの展開だ。通常召喚されるのはライデン、効果でウォルフが落ち特殊召喚、2体で"混沌魔龍 カオス・ルーラー"をシンクロ召喚。

 

混沌魔龍 カオス・ルーラー 攻撃表示 攻守3000/2500

 

ライトロードはデッキからカードを墓地に送るテーマであるが、ウォルフとフェリスはデッキから墓地に送られた時に特殊召喚する効果がある(フェリスはモンスター効果のみ)。しかし求めるカードが落ちてくれるかは運次第であり、実際に使うと通常召喚以外何もできないなんてこともままあるのがこのデッキだ。つまり安定感に欠けるテーマなのだが、今これを使っているのは何を隠そう精霊である"ライトロード・ビースト ウォルフ"本人である。彼の力を持ってすれば、自分自身はおろか、それ以外の良いカードを墓地に送ることも当然可能であった。

この事実に、征谷は苦笑いを浮かべる。カオス・ルーラーはデッキから5枚ものカードを墓地に送るため、使い手を考えれば脅威でしかなかった。征谷のその予想は正しく的中し、カオス・ルーラーの効果でウォルフとフェリスがそれぞれ特殊召喚され、"ライトロード・サモナー ルミナス"が手札に加えられる。

さらにエクシーズ召喚されたのは"ライトロード・セイント ミネルバ"で、効果で3枚落として今度は"トワイライト・イレイザー"が発動する。効果で先ほど手札に加わったルミナスが特殊召喚され、ルミナスの効果でフェリスが特殊召喚。

2体で"ライトロード・アーク ミカエル"がシンクロ召喚され、効果で1000ライフコストを払い征谷のドラゴサックが除外される。

 

 

---

 

 

「ドラゴサックって、確か破壊されないのよね?」

「ヲ。破壊されないけど、除外はされる」

「なるほど」

 

 

---

 

 

「バトル!一斉攻撃だ!」

 

カオス・ルーラー、ミカエル、ミネルバが攻撃し、トークン二体とカグヤが破壊され、征谷のフィールドはがら空きになった。

 

「くっ…!」

 

征谷が若干気圧されるが、ウォルフの動きはまだ終わっていない。

カードを一枚伏せてからのエンドフェイズ、最後にアークミカエルの効果でさらにトリッククラウン、ウォルフが落ち、特殊召喚される。これで5体のモンスターがフィールドに並び、盤面をひっくり返したウォルフ。しかし一つだけ、アークミカエルとトリッククラウンの効果でライフは2000まで減ってしまっている。

 

 

竜然征谷

手札4 ライフ2850

フィールド:

魔法罠:なし

 

ウォルフ

手札3 ライフ2000

フィールド:

混沌魔龍 カオス・ルーラー    攻撃表示 攻守3000/2500

ライトロード・セイント ミネルバ 攻撃表示 攻守2400/800 ORY1

ライトロード・アーク ミカエル  攻撃表示 攻守3000/2000

Emトリック・クラウン      守備表示 攻守0/0

ライトロード・ビースト ウォルフ 攻撃表示 攻守2500/300

魔法罠:ジャスティス・ワールド(カウンター4)、伏せ1

 

 

ターン3・先行2ターン目、征谷は冷や汗をかいていた。

 

(相当な"落ち"。長期戦なら有利だろうが、そんな悠長なこと言える状況じゃないな)

 

 

デッキから落ちるカードの運次第で話が180度変わるライトロードというテーマにおいて、精霊の力を実感した征竜は気合いを入れ直す。

 

 

---

 

 

「デッキが切れたら敗北。あんなにカードを墓地に落としていたら、すぐにデッキが尽きてしまう」

「つまり、待っていればいずれは司令官が勝つってことね」

「ヲ。でも、多分そんな余裕はない」

「そうね。熊野、じゃなくてウォルフさん?の威圧感……半端じゃないわ」

 

 

---

 

 

すべてのモンスターを除去されフィールドががら空きになった征谷だが、状況そのものは決して不利ではなく、ここで征竜の強みを見せつける。手札と墓地から次々と征竜を特殊召喚し、合計4体4種類の親征竜をすべてフィールドに特殊召喚する。そこからエクシーズ召喚されるのは2体目のドラゴサックと"No.11 ビッグ・アイ"であり、ドラゴサックでカオスルーラーを破壊し、ビッグアイでミカエルを奪う。そのまま奪ったミカエルの効果で1000ライフをコストにミネルバを除外。

1ターン目に手札に加えていたカグヤを召喚し、"妖精伝姫-ラチカ"を手札に加えてバトルフェイズ、効果で攻撃できなくなったドラゴサックとビッグアイはそのままに、カグヤとミカエルで攻撃を仕掛ける。

ウォルフはカグヤで破壊されたトリッククラウンを蘇生せず、ミカエルで攻撃されたウォルフを伏せていた永続魔法"ライトロード・バリア"で守る。これでカードが墓地に送られ、ジャスティス・ワールドのカウンターが5になった。

 

征谷は破壊耐性のあるジャスティス・ワールドを厄介に思いつつも、カードを一枚伏せてターンエンドした。

 

 

竜然征谷

手札2 ライフ1850

フィールド:

妖精伝姫-カグヤ        攻撃表示 攻守1850/0

No.11 ビッグ・アイ     攻撃表示 攻守2600/2000

ライトロード・アーク ミカエル  攻撃表示 攻守2600/2000

幻獣機ドラゴサック       攻撃表示 攻守2600/2000

幻獣機トークン         守備表示 攻守0/0

魔法罠:伏せ1

 

ウォルフ

手札4 ライフ2000

フィールド:

ライトロード・ビースト ウォルフ 攻撃表示 攻守2500/300

魔法罠:ジャスティス・ワールド(カウンター5)、ライトロード・バリア

 

 

 

ターン4・後攻2ターン目、フィールド上の有利不利が行ったり来たりするこのデュエル。しかしウォルフの墓地には8種類ものライトロードモンスターが存在し、手札には既にライトロードの切り札が握られていた。

 

「大いなる光の裁定、ここに執行する!!"裁きの龍"を特殊召喚!効果を発動!!ライトロードジャッジメント!!」

 

現れたのは、荘厳たる白きドラゴン。墓地に4種類以上のライトロードモンスターが存在するときに特殊召喚できる"裁きの龍"。その恐るべき効果は、1000ライフをコストに、フィールドの自身以外のすべてのカードを破壊するというもの。

舞い上がる裁きの龍の頭上より光が降り注ぎ、フィールドのすべてのカードを消し去ってしまう。

 

「くっ!トラップカード発動!"幻蝶の護り"!選択したモンスター"裁きの龍"を守備表示に変更し、このターン俺が受けるすべてのダメージは半分になる!」

 

色とりどりのおぼろげな蝶々が征谷を囲むと、フィールドが光に包まれた。裁きの龍の全体除去効果により、トークンがいる限り破壊されないドラゴサックと、カウンターを2つ取り除いて破壊を免れるジャスティス・ワールド、そして守備表示となった"裁きの龍"本体のみが残る。

 

「残ったのはドラゴサックだけか…!だが、そのライフではもう裁きの龍の効果は使えない!」

「だがまだ私のターンは終わっていない!手札から、"ソーラー・エクスチェンジ"を発動!」

 

ソーラー・エクスチェンジによってハンターライコウが捨てられ、手札交換・墓地落としが行われる。そして今引いたらしいライデンが召喚され、効果でデッキから落ちたフェリスが特殊召喚される。

 

「闇を裂き、ここにもう一つの裁きを示さん!!シンクロ召喚!現れよ、"熾天龍 ジャッジメント"!!」

 

裁きの龍とよく似た、二対四枚の翼を保つ白きドラゴンが現れる。

 

「バトル、熾天龍ジャッジメントで、幻獣機ドラゴサックを攻撃!」

 

2体の裁きの龍の内の一体が、まぶしいほどに輝く光のブレスを放ち、ドラゴサックが飲み込まれる。2ターン連続で征谷のフィールドを全滅させたウォルフはターンエンドし、そして勝敗が決まった。

 

 

 

竜然征谷

手札4 ライフ1650

フィールド:なし

魔法罠:なし

 

ウォルフ

手札3 ライフ1000

フィールド:

裁きの龍        守備表示 攻守3000/2600

熾天龍 ジャッジメント  攻撃表示 攻守3000/2600

魔法罠:ジャスティス・ワールド(カウンター6)

 

 

 





・アーチャーフェリス
フェリスの蘇生がモンスター効果限定だって知っている人は果たしてどれくらいいるんですかね。芝刈りとかで落としても効果発動できないんですよ…。

・Emトリック・クラウン
まごう事なきデチューン要因。4000ライフで1000コストはキツすぎる。

・ジャスティス・ワールド
ウォルフがガチで本気出すとテキストが書き換わって裁きの龍や熾天龍にも効果が乗るようになる

・妖精伝姫要素
やってることが完全にガジェットのそれ。雑な使い方をしてすまない…。

・征谷
実は妖精伝姫出して、征竜出して、サックアイを出すという三点において3ターン同じことをしている。リソース管理と残す征竜の吟味こそが征竜プレイングの醍醐味と言えるが、そんなの解説しても征竜使いにしか分からねぇ……。


そういえば誤字報告してくれた方々、ありがとうございます!初めて使いましたが、ハーメルンの誤字報告って直すの楽で良いですねぇ。



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光道征竜と氷水炎鳳


MDで魔導書の審判の緩和からのストラク三パック買いでデッキを作り、前期はエンディミオン型でダイヤ4まで行きました。審判は現代でもヤバいカードですが周りが弱すぎて厳しいですね。セフェルとかクレッセンのデメリットの重さに時代を感じます。
ちなみに純魔導書デッキだとプラチナでもキツかったです…。

あ、前回のデュエルの最後の部分については次回で触れます。


 

デュエルを終えた後、いきなり挑んだウォルフも挑まれた俺も、晴れやかな表情で顔を合わせた。

シラユキの時にも思ったことだが、デュエルを通してなんとなく相手のことが分かったように思う。俺たちは敵意も隠し事もなく楽しくデュエルしたのだ。最中はプレッシャーを感じることもあったが、終わってみれば胸を張って良いデュエルだったと言い切れる。

 

「良いデュエルだった。よく戦った、征竜の決闘者よ」

「こちらこそ。久しぶりだが、文句なしのデュエルだった」

 

ウォルフ(熊野だが)と握手を交わす。肉体的には熊野のもののはずだが、完全にウォルフが表に出ているからか、見た目まで熊野ではなくウォルフそのものになっている。手を放すと蜃気楼のようにウォルフの輪郭がブレ、中から熊野が出てきた。ウォルフはそのとなりだ。観戦していた神風と月光も走り寄ってくる。

 

「司令官お疲れ様!」

「セーヤ、良かった」

「ああ、ありがとな」

 

勢いよく神風とハイタッチを交わし、それを見た月光が伸ばした手とも気持ち優しく手を合わせる。すると月光も勢いを付けていなかったせいでパチンと言う感じにはならず、手と手を合わせたまま止まってしまい苦笑する。

 

「どうやら満足したようですわね」

「うむ。彼は悪人ではない。征竜の決闘者に選ばれた以上、愚物ではあるまいが。善悪までは保証されんからな」

 

後ろでウォルフが微妙に気になることを言っている。征竜の決闘者って善悪は基準にならないのか…。

そのまま家に向かうでもなくその辺の倒れた木に腰を下ろして会話を続行する。神風などは家行かないのと思ったものの、誰もそのことに触れないので言うタイミングを逸していた。そしてウォルフの話により、この世界に来て俺は初めて事態の説明を受けることになる。

 

「さて。我々ライトロードが把握している限り、始まりは征竜が消えたところからだ。強大な力を持ち存在を感じられる征竜が消えたことはすぐに知られるようになり、その原因を探った。そも征竜は四属性を司り、そのバランスを維持する存在。これが消えた以上、どこかで四属性のバランスが崩れているはずだ。これを探った結果判明したのがこの世界であり、既に向かっていた征竜を追って来たのが私であり、シラユキ姫でもある」

 

全員が真面目に聞いていることを確認し、ウォルフは続ける。

 

「本来この世界は精霊界とはつながりがない、極めて遠い世界だ。今回この世界にこれるようになっているのも、本来あり得ない異常事態だ。故に今まで行き来した者はおそらくおらず、情報も無い。とはいえ細かい部分は不明だが、この世界の属性バランスの崩壊が征竜降臨の最大の理由であることは確かだ。征竜の決闘者である以上、貴殿は世界中を回り、いくつかのポイントで力の調整を行っているはず。おそらくは、瀑征竜を主として」

 

ウォルフの言うとおりだ。この島は今まさに世界の横断を行っている真っ最中であり、時々のタイダルの求め応じて召喚している。何をやっているのかよく分かってなかったが、水属性の力の調整を行っていたのかと納得した。

 

「やはり、水か。海を覆う深海棲艦という存在は、水属性のバランスの崩壊と何かしらの関係があるのだろう」

 

今までタイダルを召喚して水属性の調整を行った場所は、大抵の場合深海棲艦の部隊がいた。とはいえいない場合もあったし、いてもそこまで大艦隊という訳でもない場合が多いため、あくまで比較的そう言う場所に深海棲艦がいる場合が多いというだけだが。

 

「属性バランスの崩壊は一つの理由で起こるようなものではなく、様々な原因があるはずだ。そしてそれは水属性一つだけをどうにかすれば解決するようなものではおそらくない。四征竜がすべてこの世界にいることがその証。今、盟主フェルグラントを中心に問題の調査、場合によっては征竜達を援護する為の行動を計画している。先遣隊という訳ではないが、既に水と炎から一人ずつこの世界に足を踏み入れたそうだ」

 

ウォルフの話を聞きつつ、なんとなく隣に座っている月光の横顔を見る。一瞬月光は何か知っているだろうかと思ったが、どこかぼーっとしているようにも見える彼女の顔を見ると、そんなことないかと思えてくる。

 

「この世界の属性バランスは、いつ爆発してもおかしくない状態まで来ていた。今は貴殿らのおかげで表面的には多少の落ち着きを見せているが、危険な状態であることには変わらない。私も貴殿らとは別に調査を続ける予定だ」

 

頷いて今度は神風の方を見てみると、彼女はなにやら納得したような様子で頷いていた…はて?

 

 

 

 

~~~

 

 

 

 

三方を山に囲まれ、残りが海に面した港町。高くても二階建て程度の、一戸建て建築物の多い町並みを睥睨できる山の中腹。荒れたガードレールとコンクリートの道路を歩く二つの人影は、街を見下ろしながら楽しげに話していた。

 

「みてみてアーちゃん!あそこにも自動販売機!ホントにたくさんあるんだねー!」

「ああ、確かにどこにでもあるのだな。あと何度も言うが、プレア。アーちゃんはよせ。せめてアクティと…」

「あれ、たいまつだ、こっち来てから初めて見た。えーと何だろう、焼き肉?」

「たきぎで焼くのかもしれんな。……はぁ……何でこんなことに」

 

元気に話し続けているのが、幼さの残る褐色の肌の少女。プレアと呼ばれた少女は目に映るものすべてが新鮮で楽しいものだと言うかのようにはしゃいでいる。そんな少女を見る神秘的な透き通った水のような体を持つ女性……"氷水のアクティ"はため息をついた。望んでこうしているわけではありませんという意思を全身から発しているアクティは、しかし矢継ぎ早に繰り出されるプレアの言葉に、律儀にも一つ一つ答えている。

アクティが二人でここにいるのは偶然に偶然が重なった結果だった。偶然巨神龍のいる街に用があり、偶然そのとき巨神龍と氷結界のお偉いさんの会談に相席し、偶然この少女と出会った。

そうしてこの元気な少女、"ネフティスの繋ぎ手"プレアに目を付けられ、あれよあれよという間にこの世界へ降り立っていた。アクティはそこまで行動的な性質ではなく、普段なら別の世界まで足を運ぶことはなかっただろう。そんな彼女を連れ出したのがプレアな訳だが、それはそれとして自分が押しに弱いという事実を認めたくないアクティだった。

 

「うーん、繋ぎ手的にはあの建物が気になります。たきぎ、炎、お肉……じゅるり」

「肉が食いたいだけだろ、絶対炎がどうとかじゃないだろ。それでいいのかネフティス一の巫女」

「えへへ、それほどでもー」

「褒めてないぞ」

 

テレテレしている少女をジト目で見ながらアクティはため息をつく。そんなことを言いつつプレアから離れようとはしないアクティ。彼女は故郷でも一見冷たいように見えて実は優しいと思われていることに気づいていない。

 

「目的を忘れていないだろうな」

「もちろん!でも、炎と水の属性バランス調査もそうだけど、この世界の情勢も調べるの難しいよね」

「そうだな。窮地に立たされていると言うが、それでも人界は低いところで安定している。これなら影響が現れないのも頷ける」

 

望んだわけでもない仕事でも真面目に行うアクティだが、プレアとて不真面目な手合いではない。もし相方が頼りない相手であれば、プレアの方がむしろ真面目な進行役をこなすだろう。しかし共にいるのは氷水のアクティ。氷のごとく不機嫌にも見える表情をした彼女が、実は陽気な手合いが別に嫌いではなく、なんだかんだで楽しんでいることを感覚的に分かっているプレア。だから自分から積極的に踏み込んでいるのだ。

ガンガン距離を詰めてくるくせに相手を不快にさせないとか陽キャの鏡かよ。

 

「前は小さな基地だったが、次の基地ならもっと期待できるだろう」

 

彼女達精霊は普通の人の目には見えない。だから人間の軍事基地にも侵入し放題だった。艦娘と由縁があり、人間にとって未だよく分からない存在である"妖精さん"には見えているのだが、妖精さんは二人を見ても適当に手を振って終わりにするし、そもそも妖精さん自体人間と言葉が通じていないので、バレようがなかった。既に一度小さな基地に侵入した彼女達は、今向かっている規模の大きな基地……鎮守府の場所と、そして気になる情報を手に入れいていた。

 

「南太平洋に集結している深海棲艦の大艦隊。なんだかそれっぽいよね」

 

 





・ネフティスの繋ぎ手
MDのストーリー見た感じやっぱり祈り手が成長した姿みたいですね。名前がないのが不便だったので、祈り手からとってプレアという名前にしました。言うまでも無いことですが全部オリジナル設定です。


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使命の顔向き

 

「あの時、月光の見立てだと結構苦戦してたみたいだけど。司令官が逆転したのね」

 

神風と共に、日課である果樹園の見回り(オレイアが生成したもの)をしていると、そんな感想が出てくる。

ウォルフとのデュエルでは"裁きの龍"と"熾天龍 ジャッジメント"が現れた次のターン、結局征谷は勝利を収めることとなった。手札と墓地に十分なリソースを残していた征谷は征竜の強みを生かして再展開を行い、問題なく二体のドラゴンを除去。そのままダイレクトアタックで決着したのである。

 

「ああ、確かに心境的には若干押されてたかな。あの月光がそんなことまで理解してたってのは、逆にさすがというべきなのか」

 

神風の言葉を聞き、征谷は若干感心する。実際、心情的には押されっぱなしだったと言うのが征谷の感想だ。

迷いの一片もなくデュエルに臨み、戦い慣れているだろうウォルフの気迫は、経験の少ない征谷を気圧させるに十分な強さだった。ことデュエルに置いてはその精神力や気の持ちようは極めて重要であり、勝敗を大きく左右する。

精神的に圧されていたにもかかわらず勝利したことについては、征谷としてもは思うところがあった。

 

「多分あれは俺の実力っていうよりも……征竜の力で勝った、っていうのが大きいと思う」

 

デッキパワーに差があったから勝った、というのは身も蓋もない話だが、間違いでもなかった。征竜というデッキをまともに回せるのだから、征谷の腕が悪いわけではないのだ。ただ単純に、征谷とウォルフとの間にあったデュエリストとしての力の差を、征竜が埋めていたというだけで。

漠然とあるいは無意識のうちに征谷も理解していることであるが、カードに対する愛や信頼、執着がデュエルには少なからず影響を及ぼす。真に愛する、信頼し使い続けたカードであれば、それは必ず答えてくれるものなのだ。逆説的に考えると、そうでないカードをデッキに増やしていくほどに大事なところでデッキの動きが悪くなる。ただ単純に強いカードを入れれば良い、グッドスタッフが強いという考え方は、デュエリストとして高い次元に行くほど通用しなくなるのである。たとえば勇者デスフェニハリラドンだとか地獄みたいなデッキを使っても、純ライトロードとか純妖精伝姫とか、その人にとっての最高のデッキを使うプロには勝てないというのが心理なのだ。……そもそもそんなデッキを組めるのどうかは置いておいて。

征谷は知るよしもない……といっても微妙に感づいているが、ウォルフはデュエルそのものには手を抜いていなかったものの、その前段階つまりデッキ構築の段階では加減をしていた。実際に出てきた"Emトリック・クラウン"以外にも"魔神童"や"ゴブリンドバーグ"等といった強さはともかくウォルフ的には全く思い入れのないカードががデッキには入っており、これがここ一番の展開力を阻害していたのだ。そう、ウォルフやらフェリスやら平然と落としたいカードを落としていたが、あれでも加減されていたのである。

 

「でも、それも司令官の強さの内でしょ?艦隊だって、本人の練度がすべてじゃない。装備や設備、補給体制と全体としての人員体制、酒保の充実さまで。全体と比べたら練度が占める割合はそう多くはないわ。おろそかにして良いわけじゃないけどね!」

「はは、そうだな。ま、次はもっと気合い入れてくさ」

「ええ!そのときは、司令官の強いところを私にも見せてね」

「ああ、任せとけ!」

 

神風の励ましと言うよりは応援といった方が良い言葉は、その笑顔と共に征谷に勇気を与えた。期待されている以上、そう無様な姿は見せられない。征谷は意気込みを新たにした。

 

本心から征谷を応援する神風であるが、同時に彼女も問題を抱えていた。

お互いに木々や草花、たまに見かける虫なんかを見ながら歩いていると、海が見えるところまでたどり着く。穏やかな海の様子を目にして、神風は月光のことを思い浮かべた。

 

 

 

~~~

 

 

 

とある日、ダイニングルームで椅子に腰掛けながら、神風は月光について分かったことを整理していた。

 

「深海棲艦の艦載機は作れない、だから扱えるかも分からない。航行は普通に可能」

 

ちらっと横に目を向ければ、部屋の一角には本来空母ヲ級が頭部に付けている部分が、まるで何かの置物のごとく無造作に置かれている。目に光はなく、何本かある触手がだらんと垂れ下がっている様からは、普通の深海棲艦が持つ禍々しさも感じられない。月光はアレを装備(?)しようともしないし、しばらくこの場所に放置されていた。

 

「砲塔は使用不能、当然艦載機離発着も不能…もう軍艦としての要件を満たしていない、ただの船」

 

そこまで言って神風はキッチンに立つ月光を見つめる。何度も使っているだろうに、月光は未だにおっかなびっくりといった様子でお湯を沸かしていた。

 

「月光はさ、もう戦わないの?」

「ヲ?………うん。セーヤが、望んでいないから」

「そっか……あなたはもう、戦士じゃないんだ。もちろん、兵器でもない」

 

神風の質問に、月光はいつもよりもゆっくりと考えてからそう言った。月光としても考えたことのなかった質問であり、自分が戦わないことに疑問を感じたことはなかったからだ。しかし神風の問いをきっかけに深海棲艦だった頃と今のあり方を鑑みて生まれた疑問は、すぐに氷解した。怒り、憎しみ、悲しみ、絶望、負の感情で満たした体を動かす深海棲艦は、それらを失ったとしたら何になるのか。

月光本人はあまり気にしていないことでもあるし、そしてそれが分からなかったとしても、神風は納得を得ていた。

 

「よしっ!そういうことなら、それが一番です!司令官、えらい!!」

「ヲ。えらい」

 

納得した様子の神風を見て、月光はよく分からないながらも分かる部分にだけ同意した。

 

 

 

~~~

 

 

 

とある日の月光のことを思い出していた神風が、海に目を向けたまま口を開く。

 

「月光は最初は話せなかったのよね。私もハッキリしたことは分からないけど、多分彼女がああやって司令官と話して、暮らしていることはきっとすごいことだと思うの。それも、司令官にしかできないような」

「ああ、それは確かに。ただあれ以来何度か試してみたけど、エリアが復活?させられたのは月光のときだけなんだよな。となるとやっぱり、月光自身何か特別なのかも」

「ええ。ふふっ、それはその通りかも」

 

そんなことを言いつつも、神風は少し違う悩みを抱えていた。

 

(本当は、深海棲艦との戦いには司令官は参加しなくて良い。それが正しいことだと思うけど……司令官が大海を渡る以上、いつもたくさんの深海棲艦と戦うことになる。それを解決するためには艦娘も施設も装備も大変な規模が必要になる。それが司令官の負担になるようじゃ本末転倒だし)

 

確かに征谷がいれば、たくさんの深海棲艦を撃沈することができる。しかし征竜が真にするべきことはそういうことではないのではないかと神風は思っている。世界を救ってほしいなんて考えてはいないが、征谷には成さねばならないことがある。ウォルフが言った、征竜が今ここにいるのは使命があるからだと。征谷もまた、その言葉に同意している。であれば、その道を行く征谷を手助けすることこそが、おそらく自分がここにいる意味なのだと、神風は感じていた。

だからこそ神風は考える。征谷が戦わないですむためには、少数精鋭で対深海棲艦戦のすべてを片づけられることが理想だ。しかしそのための障害はあまりに多い。まず発生したばかりの神風の練度は当然低いし、一人しかいないため戦力も低い。そのくせ遠洋を進むため敵は強くて多く、到底経験を積むためにどうこうなどと言ってはいられない。征谷なら敵を一隻だけ残すなんてことも可能だが、手間に見合わないし本末転倒な側面もある。そもそも資材が少ないため継戦能力にも難があり、訓練するのも簡単じゃない。

神風は思ってしまう。一人とは言わないまでも少数精鋭で、対深海棲艦戦のすべてを片づけられるような、そんな力がほしいと。そしてそんな神風がとある剣を手にするのは、そう日の経たない内だった。

 

 





マスターデュエルで氷水を使いたいなと思いつつアイデアがないためちまちまパックを
買っていたわけですが、ロイヤル加工のエジルが出てしまいました。これは使わざるを得ない。そう思ってランクマ行ってますが、例によって難しいですね。コスモクロアもせっかく演出あってうれしいのに、なかなかうまく使えない。結局純審判魔導と似たような強さになってる気がします(笑)
氷水……水属性……瀑征竜…?


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とある日の提督専用掲示板その2

1:名無しの提督

速報:南方棲鬼の撃沈、ほぼ確定。

 

 

2:名無しの提督

マジかよ

 

 

3:名無しの提督

信じられねぇ……

 

 

4:名無しの提督

どういう…ことだ…

 

 

5:名無しの提督

南方棲鬼ってだーれ?

 

 

6:名無しの提督

ウッソだろおまえ!?

 

 

7:名無しの提督

あの最初の特異艦を知らない!?

 

 

8:名無しの提督

逆に何なら知ってるんだ

 

 

9:名無しの提督

誰か説明してくれよぉ!

 

 

10:名無しの提督

説明しよう!

南方棲鬼とは、インド洋を支配する深海棲艦の特殊個体だ。

深海棲艦の出現以降、現段階では史上初の特殊個体・特異艦であるとみられており、その戦力は通常の深海棲艦である戦艦ル級を遙かに上回っている!南方棲鬼率いる艦隊によってインドからサウジアラビアにかけてのあらゆる海軍が撃滅されている。

 

 

11:名無しの提督

はえー、すっごい

 

 

12:名無しの提督

何なら南方棲鬼によってあの一帯の海賊が九割減少したという逸話もある。

 

 

13:名無しの提督

草。

 

 

14:名無しの提督

有能

 

 

15:名無しの提督

そりゃそうだ

 

 

16:名無しの提督

草ー草草の草

 

 

17:名無しの提督

むしろ残り一割はどうしてるんだよ

 

 

18:名無しの提督

山賊でもやってるんじゃない?

 

 

19:名無しの提督

海賊じゃないじゃん!

 

 

20:名無しの提督

海だからなんとかなってるだけで陸じゃ捕まるしな

 

 

21:名無しの提督

あの辺は治安が悪すぎたり政府が機能していなかったりでもう何が信頼できるのか分からん。

 

 

22:名無しの提督

無から有が生まれないのは自明の理。海賊が海に行けない以上、陸の上で略奪行為を行うしかない。

 

 

23:名無しの提督

この海は深海棲艦に制圧されているため、海に出ると撃沈されてしまいます。

 

 

24:名無しの提督

だから、山賊になる必要があったんですね。

 

 

25:名無しの提督

じゅうべえは海賊だった…?

 

 

26:名無しの提督

現実としてはごくごく一部の船と港町が襲われていると思われる。

現状行われている船舶輸送は慎重に近海を行くものでリスクやコストの面からその規模は細々としたものとなっている。しかし重要度自体は高いので本来すぐに駆逐されるはずなのだが、深海棲艦出現による諸々の影響で政府がガタガタの国も多く、そう言った国では海賊の殲滅に回せる戦力がない。そして国境の問題があるので他国に逃げられると軍隊は攻撃するのが難しくなる。

 

 

27:名無しの提督

つまり奇跡と言うにはあまりに低俗過ぎる理由によって残っているわけだ。

 

 

28:名無しの提督

うーん、クソ。

 

 

29:名無しの提督

いつもの解説ニキありがとナス!

 

 

30:名無しの提督

漁業が壊滅的な打撃を受けた結果国自体が傾いている国もあるし。

 

 

31:名無しの提督

相変わらずこのどんな疑問にも回答できる知恵袋はどこからわいてくるのか

 

 

32:名無しの提督

まあ海賊が減ったって言うのは別に撃沈されて消えたわけじゃなくて、危なくて船を出せなくなっただけだしな。いや、撃沈されてもいるんだろうけど。

 

 

33:名無しの提督

あいつら多分多くは職業海賊じゃなくて漁師とかの兼業でやってるしな。

 

 

34:名無しの提督

見逃されているだけの事実上の犯罪者が陸に溢れるわけだ。

 

 

35:名無しの提督

それが治安の悪化に繋がっているのでは?

 

 

36:名無しの提督

うーん、クソ。

 

 

37:名無しの提督

こういうの聞いてると日本ってすごかったんだなって思ってしまう。

 

 

38:名無しの提督

政府機能が一時的に麻痺しても略奪が起こらない国だからな。

 

 

39:名無しの提督

南方棲鬼はやっぱ例のドラゴンがやったんかね?

 

 

40:名無しの提督

空飛ぶドラゴンが口から光を吐いて深海棲艦を撃沈したって言うあれか。

 

 

41:名無しの提督

神々しい銀色の輝きを放つ美しいドラゴンとかいう話。

 

 

42:名無しの提督

二十隻以上の深海棲艦を一体で掃討したとか

 

 

43:名無しの提督

あれ。俺が聞いたのは緑色だったぞ?

 

 

44:名無しの提督

ドラゴンとかただのデマだろ

 

 

45:名無しの提督

その割には目撃情報がたくさんあるんだよな、それも多数の箇所で。

 

 

46:名無しの提督

深海棲艦の残骸がそこかしこで漂着しているらしいしな

 

 

47:名無しの提督

あいつらの体って撃沈した後大体沈むからそんなに流れ着くはずもないのにどうなってんだか

 

 

48:名無しの提督

その話確定情報だっけ?

 

 

49:名無しの提督

そこら中ガタガタで情報の確度も下がってるだろ、信頼できるのか?

 

 

50:名無しの提督

終末系の宗教とか流行ってるらしいし

 

 

51:名無しの提督

残骸については実物があるから確実。これも相当な広範囲で見つかってる

 

 

52:名無しの提督

大いなる魔王ルシフェルによって罪深い人類はすべて駆逐されるだろう!

 

 

53:名無しの提督

お、おう

 

 

54:名無しの提督

自分、草いいすか?

 

 

55:名無しの提督

深海棲艦という前例がある以上ドラゴンの存在は一概に否定できるのもではないが、あまりに荒唐無稽な情報のため情報部でも扱いに苦慮している。確定しているのはインド洋を横断するようにして深海棲艦を大量に撃沈されているという事実のみ。しかし目撃情報を総合すればドラゴンのように見える何かが深海棲艦を撃沈しながら、インド洋を通過した横断したと言うことになる。

 

 

56:名無しの提督

いつから地球はファンタジーになった?

 

 

57:名無しの提督

深海棲艦が出てからでしょ。

 

 

58:名無しの提督

何も否定できねぇ

 

 

59:名無しの提督

でも東から西に横切ったってことはマジで月光艦隊壊滅させたのはこのドラゴンなんじゃ?

 

 

60:名無しの提督

え、なんでそうなるん?

 

 

61:名無しの提督

まあ元々どこにいたんだって話だよな。

 

 

62:名無しの提督

太平洋とか、あるいは南極とかにいて、そこから移動開始したんじゃないかって予想あるよな。

 

 

63:名無しの提督

え、南極に氷付けになった恐竜が!?

 

 

64:名無しの提督

あかん、ファンタジーが押し寄せてくる!

 

 

65:名無しの提督

お手玉仕込まなくちゃ

 

 

66:名無しの提督

真面目な話すると月光艦隊壊滅の理由で一番あり得るのがこの推定ドラゴンに壊滅させられたってパターンなんだよな

 

 

67:名無しの提督

確かに

 

 

68:名無しの提督

だってそれ以外現実的な予想がないぞなもうし

 

 

69:名無しの提督

しかしもし太平洋からアフリカ大陸まで海を横切ったら一体何隻の深海棲艦を撃沈すれば良いんだろうな?

 

 

70:名無しの提督

それは……たくさんでしょ

 

 

71:名無しの提督

千隻とか?

 

 

72:名無しの提督

千じゃきかない気がするなぁ

 

 

73:名無しの提督

あれ、トイレ行っている間に誰か俺の端末で書き込みした…?

 

 





提督専用掲示板。
それは文字通り提督と呼ばれる者のみがアクセスできる掲示板。
提督の賢者によって運用されており、そのセキュリティは極めて頑丈で、基本的に軍のネットワーク内からでしか参照できない。
アクセス中のパソコン自体に触れたりでもしない限りは、無関係の第三者がアクセスすることはできない。


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神風と闇の破神剣


めっちゃ間が開いてしまいました…。
少しずつ書き溜めしていましたが、ある程度先が見えるまで投稿は控えていました。後は最終話まで週一更新、をできたらいいなという願望。



 

人間である俺はもちろん、月光と神風も生きていくために食事を必要とする。艦娘は海上においてはカロリーメイトを彷彿とさせるような小さなブロック状の携帯食料を食べているらしいのだが、陸上では人と同じように飲み食いしている。一方普通の深海棲艦は何も食べていないらしく、その点は生物の範疇を逸脱しているように感じる。しかし今の空母ヲ級月光は普通に食事を取っているし、深海棲艦としての能力をほとんど失っている今となっては、月光は深海棲艦よりも人間に近いのかもしれない。

とにもかくにも食事は三人分必要であるわけだが、料理当番と言うべき役割は現状存在しない。割とそのときの気分で決まるというか、そのとき手が空いていた人がやっている。元々俺と月光の二人しかおらず、見方によっては赤子のようであった月光は当然料理もできなかったため、常に俺が作っていた。しかし何かと俺のまねをする月光は言葉を覚えると共に料理もできるようになり、そのうち二人で一緒に料理をするようになったのだ。といってもこの頃は割れた空き缶や何かのペットボトルなど、道具もまともになかった関係上、焼くか茹でるかの二択な上に眼球やら内臓まで食べるストロングスタイルだった。妖精さんによってコンロと鍋、包丁といった基本的な道具がもたらされ、神風が来ても料理当番という概念は持ち込まれることがなく、常に2~3人で料理を行っている。

 

赤レンガの我が家、もう慣れ切ったキッチンでエプロン姿の月光(妖精さんがもたらした基本道具の一つで、月光用のオーダーメイド。それ基本か?)と二人料理を開始する。神風は今電力装置を動かしているため今日の昼食は二人で作ろう。メインとなる食材は当然魚で、この魚は地征竜リアクタンが作ったくぼみのある岩に水征竜ストリームが取ってきた魚を入れて鮮度を保っている。この水槽はいくつか用意していて、魚以外にも貝やカニ、ウニなんかが泳いでいたりする。魚介類はそれはもう豊富な種類が得られるため、神風などは料理をするときに毎回真剣な様子で考え込んでいたりする。俺や月光はよく考えずに適当に選んでしまうのでえらい違いだ。

かつてはこれ以外にはちょっとした野草や木の実、適当な虫くらいしか食材がなかったのだが、今は「森羅の鎮神 オレイア」が生成した森からいくつもの植物を食材として使えている。森羅ってそういうのだっけ?と疑問に思ったこともあるが、実際にある以上はそう言うものだと考えるしかない。

今回作るのは野菜と魚を一緒に蒸し焼きにしたものだ。オリーブオイルや醤油、ワインなどがあれば上等な料理もできるのだろうが、その手の消耗する調味料のたぐいはさすがに妖精さんも用意してくれなかった。手分けして料理するなか、改めてみると月光も慣れたものだなと思う。初めの頃の月光がナイフ(この頃は石製)を使ったときなんか、ハラハラして目が離せなかった。しかし今や魚の三枚おろしだって慣れた手つきでこなしてしまう。まあ、毎日が魚料理ならそうなるのも当然かもしれないが。ただ、コンロの使い方だけはまだ月光も慣れていなかったりする。

余談だが、神風もまた完全に現代バージョンのキッチンには慣れていないのか、おっかなびっくり使っていたりして、何というか古…おば…もとい謎のかわいさがあった。

 

頭の装備もマントも外し、エプロンをした月光はもはやごく普通の人間の美少女にしか見えない。彼女が料理中でも構わず寄ってくるのは前からだが、ナイフを扱っているときだけは俺の言うことを聞いて距離を離してくれる。しかし火を使っているときは気にせず密着してくるのだ。これは二人で焚き火を囲んでいたの頃、刃物は注意しても炎についてはあまり注意しなかったことが原因なのかと考えている。大して広くもないキッチンで背中から密着している月光の、今や完全に人間と変わらなくなった体温を感じながらもそんな風に思う。

 

「セーヤ、ぐつぐつ」

「あ、そうだった」

 

やべ、火を使ってるのに意識が虚空に行ってた。後ろ…というか横にいたのが神風だったら普通に注意されていたことだろう。

 

 

 

 

~~~

 

 

 

 

海岸線。肩幅に両足を開いて正面の海を見据える神風と、それを横から見ている征谷と月光。

神風の手にあるのは一振りの剣。赤い刀身のそれを両手で持った神風が、大上段に振り上げる。

 

「せぇえいっ!!」

 

気合いの声と共に剣を振り下ろすと、大きな青白い光の刃が刀身より放たれ、海面を裂きながら遠くまで走って行った。もう一度神風が似たような体制から今度は地面にたたきつけるような形で振り抜くと、今度は振り抜かれた地面付近の刀身から何メートルも青白い光の奔流が立ち上り、砲撃よりはましな程度の爆音を響かせながら砂と海水を吹き飛ばした。さながらロックマンゼロのチャージセイバーの様な見た目だ。少なくとも威力だけを見れば、艦娘としての12.7cm砲の威力を軽く優越している。

純粋に驚いているというか感心している月光と比べ、征谷はなんとも言えない表情だ。突っ込みどころが多すぎて何から突っ込めば良いか分からないからだ。

神風が持っている剣は極めて古い時代の装備魔法"闇の破神剣"。闇属性モンスター1体の攻撃力を400ポイントアップし、守備力を200ポイントダウンするというそれだけの装備魔法だ。きっかけはウォルフとのデュエルの後増えたカードの確認をしているときに、前から持っていたこのカードから召喚された剣を神風が手に取ったこと。

何故か使えてしまっているのことに疑問を持ったのは征谷だけで、カードのことをよく知らない神風は本当に初めて剣を持ったのかと疑いたくなるぐらい堂に入った剣さばきを見せた。

何故剣が使えるのか?闇属性専用装備魔法じゃないのか?攻撃力400の威力がそれか?なんだその剣からビーム。等など疑問が多すぎて逆に何も聞けない征谷を尻目に、神風は喜んだ。何せ征谷はダイレクトアタックという名の本体狙いが一番の弱点であり、この剣があればそのカバーができるからだ。

艦娘は軍艦状態にならなければ砲が撃てず、その状態だと陸上を移動できないため肉盾と固定砲台にしかならない。このことを気にしていた神風が、まともな近接戦闘能力を手に入れた。闇の破神剣は非常にコストが低く出しっ放しにしてもまるで負担にならない。そういうことで常備することになった神風は毎日剣の、というより闇の破神剣の練習をしている。

 

「まあ……いいか」

 

どれだけ疑問を呈したところで、その解答が分かるわけではないことに気づいた征谷は、疑問を棚上げすることにした。

神風が剣や艦娘としての練習をするように、征谷は召喚・ドロー・デッキ調整などの修行を毎日行っており、月光はエリアと一緒に瞑想のようなことを始めている。家事、資材錬成、艦娘としての訓練に加えて剣の訓練まで加わり、やることがたくさんある神風だが、本人的にはむしろどんとこいだった。

 

 

 

 

 

 





・神風
神風型駆逐艦一番艦。元は1922年竣工の非常に古い駆逐艦。ただし艦娘としての性能が特別低いと言うことはない。

・闇の破神剣
闇属性専用の装備魔法。征谷も月光も持って振ること自体はできるが、その力を引き出すことはできない(青白いオーラが出ない)。





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器を満たす

 

 

夜、雲一つ無い空に浮かぶ満月の光に照らされた島、その中央付近にある赤煉瓦の家の中。畳の上に敷かれた布団の上で横になった月光は考えていた。隣で眠る征谷の顔を眺めながら、後ろで眠る神風の小さな寝息を聞きながら、窓から差し込む月の光を浴びながら。

 

(私を、満たす、もの)

 

空母ヲ級"月光"は、自分から物事を深く考えるということをしない。

 

月光の生活は初めからずっと征谷と共にあり、そしてそれは比喩表現ではない。何せ月光は一日の内のほとんどの時間を征谷と共に過ごしているのだ。朝も昼も夜も、食べるときも戦うときも、月光は征谷のそばを離れようとはしない。夜寝るときも一緒になって寝ているし、最初の内等は征谷がトイレのために離れようとするときすらついて行こうとしていた。初めのうちは暖かさを求めて、今はそれと同じくらい征谷の近くにいたいという思いから。

家ができて、神風が来てからも夜寝るときは一緒だ。畳の上に布団を二つ敷いて、三人川の字になって寝ている。征谷と密着して寝るヲ級を見て、神風は最初当たり前に苦言を呈したのだが、月光は頑として譲らなかった。普段自分の意見を表に出すどころか、そもそも自分の意見といえるものがあまりなく、言われれば素直に従う月光であるが、征谷から離れることだけはよほどのことが無い限り認めない。

 

月光が持つ最初の記憶は、征谷とエリアに蘇生されたあの日のこと、ただ冷たさと寂しさを感じて、暖かさを求めていた。ぼんやりとした認識の中にあって、自意識と言えるものが生まれた日が正確にいつだったのかは分からない。しかし月光はそれがどこから、あるいは何故生まれたのかはハッキリと分かっている。

 

(闇でも、水でもない)

 

月光は、自分から物事を深く考えるということをしない。かつて己を構成していたものを、失ったからだ。

 

そもそも深海棲艦とは、水と闇の属性を持っており、闇という巨大な概念の中の一つ、「負の感情」を原動力としている。深海の内より水属性の力によって形作られた器を、負の心の力で満たし、その闇属性の力によって行動を起こす。人より生まれた負の心によって動いている以上、彼女達が人間を襲うことは至極自然なことであった。

しかしそれは奇跡であったのか、あるいは何者かの意図したことであったのか。焔征竜ブラスターによって自らの器を満たす闇の力のすべてを焼き尽くされてしまった月光は、水属性の力を持つ器のみが残された。本来であれば海に溶けていたであろうその器は、水属性の力によって構成されていたが故に、清冽の水霊使いエリアによってよみがえったのである。月光が戦う力を喪失しているのも当然だ。何せ空母として艦載機を飛ばし、戦場を支配する力の根源には闇の力があり、それを月光は失っているのだから。

 

(月光。月の、光)

 

月光は、自分から物事を深く考えるということをしない。物事を感じるままに生きているからだ。

 

それでも今は考えている。神風からされた戦わないのかという質問が、月光に疑問を自覚させた。戦わないこと自体には思うところはない。それは征谷が月光に戦力を求めていないからであり、征谷が望むのであれば、月光は逡巡無く戦場へと足を踏み出すだろう。月光が不思議に思っているのは、自分を自分たらしめていたものを失ったにもかかわらず、今ここにいる自分は何なのかと言うこと。もっと正確に言えば、かつて自分(やみ)で満たされていた自分(水の器)は今、自分(なに)で満たされているのかと言うこと。

 

(セーヤが、いるから)

 

月光はごそごそと己の服をまさぐり、一枚のカードを取り出す。征谷も知らない、気づいたときには月光が持っていたもの。そこには日本海軍の戦闘機……と、似たような形をした絵柄をしたモンスターカード、"幻獣機ライテン"があった。

 

 

 

 

~~~

 

 

 

 

真っ暗な闇の中、人が見てもどこなのか全くわからない場所。明けの明星と呼ばれる堕天使が、自身の指折りの部下の一人と話していた。

 

「確かに深海棲艦は水属性の器と闇属性である負の心を持つ。だがそれは、深海棲艦が怒りや憎しみに支配される理由にはならない。奴らは進んで人間を襲うが、しかし負の感情など何ら抱いていない機械的な存在。負の心を燃料にして動く心ない機械……それが深海棲艦だ。だからこそ、月光は面白い。やつはもはや一個の精霊…いや生物として確立している。その身に何を満たしたところで、己の存在が変わりはしないというのに」

 

そう言ってルシフェルは楽しげに笑う。そんな彼の横に控える暗い赤の翼を持った堕天使が、ルシフェルよりもわかりやすく興奮した様子で口を開いた。

 

「しかして興味深い構造ですな。水属性の器が航行能力をもたらし、闇属性の力が軍艦としての戦闘力をもたらす。水と闇二つの属性間にあるある種の親和性によって、極めて自然な形で深海棲艦という形態を鋳造している…実に面白い。このような現象、本当にルシフェル様が手を出しておられないので?」

 

堕天使ユコバック。その堕天使は大きな黒い鎖によって体を×印に縛られていた。否、その筋肉質な体に巻き付いた鎖は何らその堕天使を阻害していないため、縛られているという表現は正しくないかもしれない。

 

「無論だ、何もしてはいないさ。私のやり方とは違う。それに、逆にした方が堕天使らしいだろう」

「逆ですかな?」

「心ない機械を動力にして負の心を動かせばいい。憎しみそのものの怪物がそれ故に残虐に人を襲う。打ちのめされた人間はより強い憎しみを生み出し、新たな戦いののろしとなる。憎しみ同士がぶつかり合い高め合うことで現出する、現世という名の地獄がな」

「なるほど、確かに堕天使らしい退廃的な堕落した世界ですな!我が輩、震えて参りましたぞ」

 

そう言って身を震わせるユコバックだが、その口元はわずかにつり上がっている。そんなユコバックを何の感慨もなく一瞥したルシフェルは、また周囲を満たしている闇の外側へと意識を向ける。

 

「深海棲艦の上位個体は闇を燃料にしているとは思えないほどに凪いでいたがな。純粋という表現がふさわしい水属性の具現、あれは氷水のそれに酷似している。………世界が変われど、運命というものはあるものだな。送り込まれた最初の精霊が、氷水とネフティスとは」

 

ルシフェルが数奇な巡り合わせに、感慨深い様子で思いをはせる。ことが起こったタイミングで氷水のアクティが巨神龍の元を訪れていたのは全くの偶然だし、ネフティスの巫女プレアもまたそうだ。そして彼女達二人がその場に居合わせなければ、プレアがアクティの手を引いてこの世界にやってくることもなかっただろう。

深海棲艦と多くの類似点を持つ氷水という精霊の中の一人が、偶然に偶然を重ねてこの世界を訪れた。それに気づいたルシフェルは、図らずも「ワクワクを思い出し」ていた。

 

「ところでよろしいのですかな。月光殿には感づかれているのでは?」

 

ユコバックがふと思い出したように、唐突にそう言った。

 

「良い、確かに月光には感づかれていよう。清冽のエリアもあるいは。が、それでも奴らにできることなどない。始まりの部隊はもう目前まで迫っている。港湾棲姫と言ったか、この戦いが、征竜の決闘者にとっての初めての戦いとなるだろう」

「いささか難しい様に思えますが。このままでは、征竜の決闘者は敗北する可能性が高いのでは」

「状況は港湾棲姫が有利と言ったところか……構わない。もしここで命を落とすようであれば、所詮それまで。竜然征谷は征竜の決闘者たり得なかったと言うことだ」

 

明けの明星は水面の如き揺れる波紋の上に浮かびながら、楽しげに笑みを浮かべた

 

 





・幻獣機ライテン
モチーフが日本海軍が太平洋戦争で運用した戦闘機とかいうドンピシャ過ぎて笑った。月光の艦載機が一瞬で決まった瞬間であった。

・ルシフェル
めちゃくちゃ物騒な話をしているが、ここのルシフェルにそう言う趣味はないので、堕天使的な話をしているだけ。最初に姫・鬼を見たときは、こいつら本当に闇属性か?と思った。

・姫と鬼
人を襲う以外の闇要素isどこ?



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ライトロード征竜と潜水艦


・光導征竜
墓地送りという点では相性がいいがそれ以外は微妙。というかライトロードのデッキパワー自体が。トワイライトロードは大して強くない上に初期ライトロードの補強にもならないというひどく残念な性能してますよね。強化パーツにはなってくれよと思わずにはいられない。
そんなんだから絶望タワーでも事故るんだ!(個人の感想です)



 

「光の援軍ルミナスサーチ、ウォルフ特殊召喚。ソーラーエクスチェンジフェリス捨て、ルミナス召喚効果でレドックス捨ててライデン、ライデン効果発動、ミネルバエクシーズ召喚効果発動、ストリーム効果でタイダル特殊召喚、墓地からタイダル効果でレドリアクタン除外、リアクタンサーチ。ライトニング効果でテンペスト特殊召喚。墓地からテンペスト効果で特殊召喚ブラストリーム除外、バーナーサーチ。ドラゴサックとオレイア特殊召喚してサック効果でトークン生成。ターンエンド」

 

フィールド:

幻獣機ドラゴサック       攻撃表示 攻守2600/2000 ORY1

幻獣機トークン*2        守備表示 攻守0/0

ライトロード・セイント ミネルバ 攻撃表示 攻守2000/800 ORY1

森羅の鎮神 オレイア       攻撃表示 攻守2800/2500

ライトロード・サモナー ルミナス 攻撃表示 攻守1000/1000

 

 

精霊ウォルフからもらったライトロードのカードを入れてデッキを作り、色々と回してみたが、今のはほぼ最大まで展開できた場合の先行展開例となる。ライトロード周りには難しいことも無く、うまくいけば次々と特殊召喚することが可能だ。

破壊耐性のあるドラゴサック、被破壊時効果のあるミネルバ、次のターンまで残れば効果を使えるルミナスがいて、手札にはバーナー一枚。そして大量の墓地リソースがある。瞬間的に考えれば先行でこれ以上の展開はできないだろう。

ただ、しかし問題となるのはリソースの枯渇だ。まずデッキに親征竜が三種三枚しか残っていないため、次の自分ターンには最大展開が可能だが、その次のターンにはほとんど動けないということになるだろう。まあ合計3ターンでほぼ決着してしまえば関係ないといえばその通りだが、果たしてそんなにうまくいくだろうか。

とはいえ総合的に考えれば、デッキの力を出し尽くした展開であるため、非常に強力な動きであることは間違いない。

 

結論を言おう、この「ライトロード混在型純征竜デッキ」は、俺には使いこなせない。理由は簡単で、すごく事故るからだ。

ライトロードにおいて特殊召喚の肝となるモンスターがウォルフとフェリスな訳だが、いずれも通常召喚できないために手札にくると腐ってしまう。手札交換魔法のソーラーエクスチェンジもあるが、これ自体ライトロードが手札になければやっぱり腐ることになる。これならばない方が良いくらいだ。ではこれらの二枚を使わない場合を考えてみよう。

光の援軍という非常に強力なカードがあり、これは出て半年で制限カードになったという過去が強さを証明している。三枚の墓地肥やしは征竜としてもありがたいし、ライデンをサーチすれば余った通常召喚権を消費しつつ、追加で二枚の墓地肥やしが可能だ。この二種類であれば十分考慮に値する出張パーツであると言えるだろう。俺も最初はいけると思った。ただ一点だけ、この出張パーツでデッキを組むと、光の援軍が引けなくなるという致命的な欠点が無ければ。

精霊であるウォルフ、及びその相棒である熊野はよく使いこなせていたと感心したくなるが、これはやはりカードとの親和性、絆、そしてデュエリストとしての力の差なのだろう。それがあればほしいカードを引けるし、ランダムな墓地肥やしで必要なカードを落とせる。それがないから必要なカードを引けないし、相対的に手札に来てほしくないカードを引いてしまう。もちろんこれば常にそうであるわけではなく、何回もやっていれば先ほどの例のようにうまくいくこともある。しかし全体的に見れば動きは悪くなっているし、そのような状態ではここぞという勝負の時に強い引きを成すこともできない。

色々試してみたのだが、今の俺では「ライトロード混在型純征竜デッキ」を使うよりも「純征竜デッキ」を使った方が強いということが分かった。結果的にデッキの強化は成されなかったのだが、このような試行錯誤もまた決闘者としての修行の内なのだ。実際大きな差ではないが、試行錯誤の前の俺よりも、今の俺の方がデュエリストとしての力が増していることを実感できる。

しかし改めて考えてみると、俺と妖精伝姫とはずいぶん相性が良いらしい。今の俺のデッキは「妖精伝姫混在型純征竜デッキ」な訳だが、妖精伝姫要素のせいで事故ったという事態はほとんど無い。デッキに入っている三種の妖精伝姫、カグヤ・ラチカ・シラユキはそもそもどれを引いても困らないという事実は確かにあるのだが、それをさっ引いても脇を固める要因として機能している。征竜とほとんどシナジーが無いにも関わらずである。まあなんだかんだ妖精伝姫をデッキに入れてからもうそれなりの時間が経っているし、当然何度も触っているカードだから絆が深まっているのかもしれない。

 

等と考えているとなにやら意思を感じたので、ポケットから一枚のカードを取り出して召喚する。青い縦ロールの髪、水色の肌(というか体毛?)、肩の露出した若緑色のドレスを着た獣少女。妖精伝姫全員に言えることだが、その身長は小学生ほどに小さい。"妖精伝姫(フェアリーテイル)-シンデレラ"がちょこんと立っていて、そして何かを訴える様な視線で征谷を見上げていた。

言いたいことは分かる。実際今デッキにシンデレラは入っていないのだから。しかし。

 

「装備魔法が無いからさ…」

 

そう、装備魔法が入っていないのである。シンデレラは装備魔法に関する能力を持っているが、それがないなら効果に意味が無いのだ。

全く持っていないというわけではないのだが、持っている装備魔法が光の角とか闇の破神剣とか、リアル召喚ならともかくデュエルでは弱すぎて使えないカードばかりである。一応最近手に入ったカードの中に"守護神の矛"という、装備モンスターの攻撃力がお互いの墓地に存在する装備モンスターと同名のカードの数×900ポイントアップする装備魔法がある。二枚あれば1800アップするため確かに使い道はあるのだが、征竜は墓地から除外してしまうため、そうそうそろうことがない。何なら一枚もないことの方が多いだろう、その場合は何の役にも立たない。結局しゅんとしたシンデレラがカードに戻って終わった。

このように、もらったカードにもモンスターが宿っていて召喚ができる。妖精伝姫の面々はコストも高くないから普通に召喚可能だ。面白いことに精霊としてこの世界に来ていて、シラユキ本人からもらった"妖精伝姫-シラユキ"からもモンスターであるシラユキを召喚できるのだ。この辺を考えるとやっぱり精霊とモンスターは別の存在なのだろう。

なお、ドラゴンを初めとした強力なモンスターは他より桁違いに召喚コストがかかるため、相対的に他のモンスターは召喚コストが低い。なので妖精伝姫の五人を同時に出しっぱにしたところで大した負荷にもならないのだが、彼ら的にはカードの中にいて不満はないらしく、用があるときしか出してほしいと言ってこない。……さっきみたいに重要じゃない用でも出てくるが。

そんなわけで普段は召喚していないモンスター達だが、一方でミリスレディエントなどは見張りの仕事があるので出ずっぱりだ。シルバーフォング、サイガー、それに日本本土観光を終えたガスタガルドなんかで見張りのローテーションを組んでいる。おそらく総召喚時間で考えれば、最初期から見張りを任せているミリスレディエントがぶっちぎりで一番だろうな。

噂をすれば影、ではないが。見張りのミリスレディエントから、急ぎの連絡が入った。

 

 

 

 

~~~

 

 

 

 

潜水艦、という艦種がある。他の軍艦とは見た目も用途も違い、海中を静かに移動するそれは、当然外からは目視することができない。深海棲艦である所の潜水艦は他の船とは少し違った見た目をしており、ワニのように大口を開けた中から長髪の女が這い出しているような、どこかで聞いたことのある怪談話の怪異の様な外見となっている。彼女達もまた海の中を航行・潜行できるため、ミリスレディエントが発見したと言うことは当然潜水艦が浮上していることを意味する。

急ぎの思念を受け取ってすぐに、注意喚起の遠吠えが響き渡る。モンスターからの報告を受け取れるのは俺だけのため、月光と神風に連絡するための手段は別に必要だからだ。

潜水艦を相手にするのはまだ数回しか経験していないが、いずれの場合も敵が島の上陸を許してしまっている。上陸するために浮上するまで見つけることができないため当然の結果である。感知する手段がないわけではなく、アレキサンドライドラゴン等は海中に集中していいのであれば潜水艦の早期発見は可能だ。しかし数の少ない潜水艦のためにそれなりの生命力を消費するアレキサンドライドラゴンを出しっ放しにするのはあまりにもコスパが悪かった。

魚雷の使用に制限がかかる以上、陸上の潜水艦に使える武装は精々機銃くらいなもので、移動力も装甲も水上艦以下の潜水艦は、ハッキリ言ってあまり脅威にならない。それに陸上戦ならドラゴン達よりコスパのいいモンスターが使えるので、そちらを使っている。今回も"マンモスの墓場"と"ドラゴン・ゾンビ"を召喚しようとしたところで、神風と月光が走ってきた。

 

「司令官、状況は?」

「今のところ潜水艦三隻」

「そっか…司令官、今回は私に任せてもらえないかしら」

 

そう言って神風は背負っていた闇の破神剣をつかむ。確かに陸上の潜水艦数隻程度が相手なら試してみるのにちょうどいいかもしれない。

 

「分かった、"マンモスの墓場"と"サイガー"を後衛に着ける。何かあったら突撃させるから」

「了解しました!」

 

"マンモスの墓場"はマンモスの骸骨で、肉がなく弾丸が骨を滑るので機銃で撃たれてもほとんどダメージを受けない。"サイガー"はその角から電撃攻撃が可能で、このサイガーサンダーは何かあったときに素早く放てるため便利だ。

ビシッと敬礼してから走り去っていく神風とその後に続く召喚したモンスター達を見送った俺は、ふと一枚のカードを手に取った。"瀑征竜-タイダル"、それは海に囲まれたこの場所に置いては紛れもなく最強のカード。本来タイダルは海と言うよりは陸上にある川と滝の方を住処としているが、海というフィールドでも強いことには変わりが無い。しかし現状タイダルは戦闘に使うことができないのだ。理由はこの世界において、海の水属性が強すぎるかつ非常に不安定だからだ。何度か属性バランスの安定化のためにタイダルを召喚しているが、毎回戦闘していないにもかかわらずかなり苦労している。使えるなら海上において無双の力を発揮するのだろうが、今の俺には到底制御できるものではなく、まともに使えなかった。

 

その後しばらくして神風が危なげなく敵を撃破したことを、サイガーからの連絡で聞くのだった。

 

 





・サイガー
カプセルモンスターGBでの相棒。サイガーサンダーギガでバリバリしてた。リメイクしてまたやりたい。

・マンモスの墓場
掃討知名度があるはず、あの頃の遊戯王のゲームならどこでも出てたと思う。某苦行(複数あるって?ははは)だと永続デバフを内蔵してるやつ。

・海というフィールド
リバイアサンが最強なのでは?


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旅人は太平洋帰還を歓迎する


太平洋決戦はすでに始まっているのだ。



 

征谷と征竜がこの世界に現れてから一年ほどが経過する頃。

彼らがいた島は北太平洋の中心をスタート地点として、インド洋を渡り、南大西洋を抜け、南太平洋まで泳いできた。擬似的な世界一周を経て、北太平洋にて出会うことのなかったその姫と、南太平洋の北部、赤道近くにて邂逅した。

深海棲艦の中でも最も大きな勢力を持つのは北大西洋に戦艦仏棲姫であり、2番目と大きな差を付けて3番目にインド洋に南方棲鬼が位置する。空母水鬼や深海海月姫等は南方棲鬼とそう規模が変わらず、潜水新棲姫は勢力を持たず少数で行動している。そんな深海棲艦達の中で2番目に大きな勢力を持ち、太平洋を勢力圏としているのが港湾棲姫であった。

港湾棲姫は潜水新棲姫ともまた違った特殊な深海棲艦であり、洋上にいくつも拠点を持ちそれらを管理している。そんな彼女は決戦の地として、南太平洋にある洋上要塞を選んだ。

 

港湾棲姫は主に戦艦仏棲姫の協力により、移動する島とそこに住むドラゴンの存在を確認していた。もとより深海棲艦の中で最大級に強力な空母ヲ級月光と、その艦隊の壊滅。そして第三位に位置する勢力を持つ南方棲鬼の撃沈。これらを成したと思われる者についてはまさに注目の的であり、明確な思考を持つものであれば、人も深海棲艦も例外なく多大な興味を持たずにはいられない。港湾棲姫もそのうちの一人であり、南大西洋にて行われた偵察により三体のドラゴンの存在が明らかになっている。

一体目は、大型乗用車程度の大きさをした小柄な青白いドラゴン。デブリドラゴンのことだ。風を操り近くの航空機を容易く撃墜する他、飛行速度が速く暴風を纏っているため、複数による対空砲でもまともに命中しない。火力は低いものの風による衝撃波や鎌風、ブレスによって駆逐艦程度なら簡単に撃沈してしまう。航空機にとって最大の敵となるだろう。

二体目は、二十メートル以上あると思われる巨体と、宝石のような美しいウロコを持ったドラゴン。アレキサンドライドラゴンのことだ。重巡洋艦の主砲並の威力を持つ光球をいくつも同時にはなったり、戦艦でも一撃で撃沈しかねない威力のブレスビームを放つ。あまり動き回ることはないものの高高度を飛行可能で、一度も被弾を確認できていない。直接的に最も多くの深海棲艦を撃沈しているのがこのドラゴンだ。

三体目は、美しいウロコのドラゴンよりも少し小さいと思われる、溶岩の様な甲羅を持った亀のようなドラゴン。メテオドラゴンのことだ。地上から動くことはなく、詳細は不明だが頑健な装甲を保有していると思われる。また射出する巨大な岩塊は命中率こそ低いものの、その質量が着水することによって起こる大波は百メートルを超える船体を持っていたときならいざ知らず、体の小さな深海棲艦にとっては致命的となる。

 

強大な三体のドラゴンであるが、無敵の存在というわけではない。港湾棲姫には、これら三体の内二体の撃破方法について目処が立っており、また残りの一体については撃破するする必要が無いと考えていた。なぜならそもそも深海棲艦は、あれらのドラゴンを積極的に撃破するべき対象だと認識していないからだ。深海棲艦にとっての第一目標はあくまで人間であり、ドラゴンはその障害となる存在に過ぎない。つまり第一目標である人間の殺害さえ果たせるのであれば、極論ドラゴンはどうでも良いのだ。

 

要塞の周囲には、港湾棲姫が太平洋中から集めた優に千隻を超える深海棲艦が浮かんでいた。準備は万全で、移動する島もまた、コースを変更することもなくまっすぐ進み続けている。要塞の中心部分に座す港湾棲姫は、ふと疑問に思った。自身が集めた深海棲艦の中に何隻か紛れていた、黒い闇のようなものを纏った個体は何なのだろうかと。しかしそんな疑問は、泡沫のごとく雑多な思考の中に消えていく。後に残ったのは、港湾棲姫が普段からよくする、その大きくて強い体とは違ってどこか悲観的で不安げな表情だった。

 

 

 

 

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ファンタジーにおける冒険者を思わせるような装備をした、精悍な男がいた。彼は"彼岸の旅人 ダンテ"。薄暗い平原の中ちょうど良い大きさの岩に腰掛けた彼は、大きく分厚い本を読みながら、周囲にいる者が思わず聞き入ってしまうような魅力的な声で歌うように読み上げた。

 

カグヤは言った。"常に余裕を持ち万象に雅を見いだす"と。

プレアは言った。"心の感じるままに進む"と。

アクティは言った。"平和を守る力を"と。

ウォルフは言った。"大義のためにひた走り、成し遂げる力"だと。

ルシフェルは言った。"運命を打ち破る者"だと。

 

「デュエリストとして相棒に求めるもの、あるいは相棒たる条件」

 

ダンテが持つ本の中には、今読み上げた者達以外にも様々な精霊の言葉が書かれている。それは彼が長い旅の中で出会い、そしてその者達に聞くことによって作られた本だ。新たに現れた世界と問題を耳ざとく聞きつけた彼は、早速新天地へと旅立つ準備を進めていた。

 

「うまくいけばまだ見ぬリバイアサンや征竜の言葉をえられるかもしれないな」

 

機嫌よさげなダンテはふと近くにいた緑髪の少女に声をかける。向かう先にはエリアもいることが分かっているからだ。

 

「そういえば、ウィンの友人もいるんだったか。彼女もまた、未だ出会う運命になかったな」

 

声をかけられたのはどこかダンテと雰囲気のあった装いをした(つまり、その格好で荒野の旅にも繰り出せそうな)少女。"風霊使いウィン"は、声をかけられる前から思い描いていたことを答えた。

 

「それなら多分。"非日常によって損なわれることのない、日常の中の優しさ"じゃないかな」

 

 

 

 

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とある鎮守府の人気の無い廊下で、皐月は数秒間フリーズしていた。

生死の境界線を彷徨い、征谷と出会い、そして帰ってきた皐月は、それまでとあまり変わらない日常を過ごしていた。日常とは言っても深海棲艦との戦いが続いているため平和とは言い難いのだが、練度の高い駆逐艦である彼女が領海内において窮地に立たされるような事態はそうそう起こらない。また最近は深海棲艦の数が減っているため接敵する回数自体が減少していた。

具体的なことまでは分からないまでも、皐月は征谷の影響が出ていることを確信していた。皐月もまた征谷の動向を追い続けているが、他の誰にも実態の知られていない事実を皐月だけは知っていたため、征谷の軌跡をある程度はつかむことができていた。

今日もまた艦娘全員に使用許可されている共用パソコンを用いて情報収集を行ったばかりである。そんな彼女が廊下に立ち尽くしているのは、見たこともないような物を見てしまったからだ。それは二つの人影であり、片や民族衣装のような者を来た褐色の少女、片や深海棲艦を彷彿とさせるものの別物であろう少女。

鎮守府という軍事施設には全くもって似つかわしくない二人が供も連れずに歩いているのを見て、皐月は思った。

 

「もしかして、精霊?」

 

 

 





・大きさについて
デブリはアニメのソリットビジョンのそれよりも大きい。初代ガンダム(18m)の半分より小さいくらい。一方アレキはガンダムより大きい。実はメタルギアRAYとも比べるつもりだったのだが、調べても大きさが出てこなかった。誰か真相を教えてほしい。10~12mだと思っていた作者の認識は一体どこから来たのか…。

・彼岸
ドラゴサックからケルビー二を出せばそのまま彼岸につなげられますね。ラスティバルディッシュまで行くとさすがにシナジー外だと思いますが。

・霊使い
属性一致ですが、果たして混ざるのか…?


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