Aria the Scarlet Ammo and IRONMAN(Girl?) (白銀の勇者)
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MarkⅠ

どうも、初めましての方は初めまして。またお前か。という方は、また私です。白銀の勇者(中2病)です

初めに、この作品は基本的にアイアンマンの設定は実写映画版アイアンマンの設定とストーリーを主にしてますが、アベンジャーズの他、スパイディやX-MEN等の違う世界線の話も混ざっているというカオスな世界です。なんでそんなカオスな世界にしたかと言われても……特に理由はありません

あと、自分は銃器等の知識は乏しい上にコミックス版のアイアンマンを見たことがないにわかなので、ここが違うぞこの馬鹿野郎!!と言うところがあったらなんなりと仰ってください

あと、アイアンマンスーツの出番はかなり少ないと思います


IRONMAN(アイアンマン)

 

彼の名を一度でも聞いたことのない人はまず居ないだろう

 

なんでかって?そりゃあ、彼はNY(ニューヨーク)をアベンジャーズというチームに所属し救ったヒーローだ

 

アメリカ市民に聞けばキャプテン・アメリカやマイティ・ソー。そしてスパイダーマンやハルク等のビックヒーロー達の名に混じってアイアンマンの名も出てくるだろう

 

ん?何でそんな話をしたか?

 

それは、この話の主要人物に居るからさ。僕……トニー・スタークとは別のアイアンマンがね

 

さぁ、ご覧頂こう。日本のアイアンマンにしてAランク武偵、香月(こうづき) 桃花(とうこ)……僕の昔の愛人の子供が日本で巻き込まれていった事件を……彼女の辿った軌跡を

 

 

 

 

午前10時、武偵島前行きのバス内にて

 

「オラァ!動くんじゃねぇぞ!動いたらコイツで撃ち抜いてやるからな!!」

 

響く悲鳴にそれを制するかのような大きな一発の銃声

 

その銃声で悲鳴はピタリと止む

 

バスの中、悲鳴、銃声。これだけでもうお分かりだろう。そう、バスジャックだ

 

「運転手!信号は全部無視して走り続けろ!後本部に通話を繋ぎな!」

 

バスジャック犯は計……三人

 

全員がアサルトライフル持ち。ちょっと刺激したらドンだろう

 

そんな中、一人の少女が最後部座席の左端でコソコソしていた

 

その少女は隣に座る男性に小さく話しかけていた

 

「すみません」

「な、なんだよ……」

「私は武偵です。制服……着てませんけど。あ、これ武偵徽章です」

 

スッ。と少女が見せたものは武偵徽章と呼ばれるもので、彼女が武偵である事を証明していた

 

男性がコクリと頷いた

 

「物分かりが良くて助かります。横の人に伝言をお願いします。私が合図したら椅子から転がり落ちて伏せてください。踏むかもしれませんがそこは……ご褒美って事で」

 

ヘラッと軽くジョークを混ぜながら耳打ちをする

 

男性が頷き、横の乗員に耳打ちをする

 

そして、最奥の人物に伝言が届いてから数秒が経ったのを確認する

 

ちょっと手鏡を無理して座席の間に突き出し、状況を確認

 

一人が無線で何かを叫び、もう二人は銃を構えて乗員を見ている

 

鏡に気付かれないようにちゃっと確認してちゃっと戻す

 

そして、彼女はスカートの内側の足に着けてある銃のホルスターから三つの愛銃の一つ、FN-57(Five-seveN)を取り出す

 

静かにコッキングし、安全装置を外して何時でも撃てるようにする

 

横の乗員に目を配り、もうやるぞ。と合図をする

 

「伏せて!!」

 

彼女の合図とともに横の乗員四人が椅子から前のめりに、もしくは横に向けて頭を押さえて伏せた

 

その瞬間、彼女は壁を蹴って丁度座席と座席の間の通路に面した椅子の前に着地するように飛び、犯人二人に向けて照準を構える

 

ガウンガウン!!と銃声と共に弾き出された二発の銃弾は犯人二人のアサルトライフルを持つ手に当たり、アサルトライフルを弾き飛ばした

 

それをロクに確認せず、椅子を蹴り、通路に着地すると同時に凄い速さで走り出す

 

アサルトライフルを拾わせる前に肉薄した彼女は拳銃の銃底で犯人の一人の即頭部を殴り、首に蹴りを入れて気絶させた

 

さらにもう一人の犯人にはそのままの勢いでローリングソパットを即頭部にぶち込んだ

 

その瞬間、チラリと彼女のスカートの中が見えたが……

 

「残念、スパッツよ」

 

決して白や黒の布地では無かった

 

「な、何だァ!?」

 

そこに無線をしていた犯人がアサルトライフルを構えながら出てきた

 

「3発で弾き飛ばす……可能よね?キャリー」

『はい、トウカ様』

「ナイスよ。後でコーヒー奢ってあげる」

『それは嬉しいですね』

 

ガウンガウンガウン!!と3回の銃声が響いた

 

そして、銃声と共に発射された弾丸はアサルトライフルに3回とも当たり、アサルトライフルは弾き飛ばされた

 

「おっと、動かないで。武偵よ。バスジャックの現行犯で逮捕するわ」

 

チャキッと突き付けられた銃口に犯人は両手を上げる他無かった

 

 

 

 

「武偵お手柄。バスジャック犯三人を即座に確保……犯行前に止められなかったのか……って無茶言わないでよ」

 

武偵校の予備校。その軽く改造された一室にバスジャックを止めた武偵、香月 桃花はいた

 

「それでも桃花はやっぱり凄いのだ!」

「お世辞ありがと、文。お礼にファイブセブンの整備ヨロシク」

「それはお礼じゃないのだ。それに、さっきのもお世辞じゃないのだ」

「冗談よ。ま、こんな記事はポイね」

 

桃花はその記事……3Dで空中に浮いていた電子の新聞を両手の手のひらを端と端に当て、クシャっと潰した

 

それに呼応してクシャクシャの紙屑のような形になったそれをあたかもそこにあるかのように掴んで背後にある3Dで出来たゴミ箱に投げつけた

 

「ま、あれとかを使うような事件じゃなくて良かったわ」

 

あれ。と言いながら視線を向けた先には多少趣味の悪い赤と金のトランクケースがあった。さらに違うところに視線を向けると、二メートルだいの黒いトランクケースがあった

 

「一度でいいから分解……じゃなくて改造させてほしいのだ」

「また新しいの作るときに手伝ってもらうわ?それでいいでしょ?」

「それでいいのだ!」

 

それで本当に良かったのか、軽くご機嫌な桃花の同居人の平賀文

 

身長143cmの彼女があの平賀源内の子孫だと言うから驚きだ

 

「それじゃあ、朝ご飯作ってくるわね?今日は休みじゃないわよ。出勤日よ」

「分かってるのだ!」

 

ジョークをスルーする文

 

そんな彼女を尻目にキッチンに歩いていく

 

「キャリー。今日の予定を」

『始業式です。時間割は……』

「大丈夫。思い出したわ」

 

パッと腕を振るう桃花

 

何か表示されかけてたのか、一瞬だけ小さく何かが写ったが、消えた

 

「帰国してすぐバスジャックって……お父さんの巻き込まれ体質でも受け継いじゃったかしら?いや、あの人巻き込まれ体質じゃないような……もうどうでもいいや」

 

バスの中に積んであった自身のかなり大きな……二メートルはありそうなどこで売ってたのか分からないトランクケースをチラリと見てすぐに視線を戻した

 

今日は何もなければな。と思いながら

 

 

 

 

その後、バスで登校。自身の教室、2-Aに入り、一人で本を読んでいた

 

友達はいるが、今日は友達と話す気にはならなかった

 

が、

 

「おっは~、ももちゃん!」

 

そんな彼女に友人の一人である金色の天然パーマのかかった髪をツーサイドアップにした少女が話しかけてきた

 

「理子……おはよ」

 

彼女は桃花の良い話相手である峰理子。身長は文程では無いが低く、フリル等がついた改造制服を身にまとっていた

 

「どう?アメリカ旅行楽しかった?」

「旅行って……お父さんに会って来ただけよ。あと、物作りしただけ」

「へ~……そういえば、ももちゃんのお父さんってどんな人なの?まだ聞いたことないんだけど……」

 

ももちゃんとは、彼女が桃花に名付けたあだ名だ

 

桃花の漢字をトウとは読まず、そのままモモと読んでるだけだ

 

「ま、まぁ……その筋では有名な人よ。うん」

 

言葉を濁してそんな事を言った

 

「え~、いい加減教えてよ~。名前くらいいいでしょ~?」

「ただのプレイボーイ。それだけで十分でしょ?」

「うぇ~、ももちゃんが冷たい~……」

「その内教えてあげるから駄々こねないで。ほら、飴あげるから」

 

と、懐から紙屑を理子に渡す

 

「これゴミ!!」

「あ、捨てといて」

「怒るよ!?」

「うひゃー、怖いわー」

「む~!!」

 

怒る理子。だが、二人ともふざけてるような感じの会話だった

 

「ほら、ホントの飴よ」

 

と、懐から本当に飴を取り出し、理子に渡した

 

「ありがと~」

「ほら、席に戻って。この話の続きが気になるの」

「へ~、なになに?……アベンジャーズ?意外だな~。ももちゃんがそれを読むなんて」

「まあね」

 

このアベンジャーズと言う小説は実際に起きたアベンジャーズが活躍した事件に少し脚色を加えながら書かれた小説だ

 

本来は色々と大人の事情が交差したりとかしてたのだが、そこら辺はなるべく綺麗になっている

 

「それの最後はね~」

「知ってる。アイアンマンことトニー・スタークが核爆弾を異世界にポイして終わりでしょ?」

「え?知ってるの?」

「……一応、ね」

 

ちょっと遠い目をしながら答える

 

「ってか何ネタバレしようとしてるのよ」

「テヘッ」

 

と、ちょっと舌を出す……所謂てへぺろをする理子

 

背の低さからなるロリっぽさと可愛らしい改造制服がその仕草とマッチしていた

 

男ならその仕草だけでも惚れるのが出てくるだろう。だが、桃花にその気はない

 

「それじゃあ、私はこれを読むから」

「結末知ってるならいいじゃん」

「いいでしょ?何度読んでも」

「む~……じゃあ、後でひっついてそのちっちゃい胸を……」

「……ア゛ァ?」

「怖っ!?ちょっ、本当に怖い怖い!!」

 

今頃だが、桃花のスタイルは……まぁ、スレンダーだ

 

159cmと女性の中では中間辺りの身長に殆ど無い(Aカップ)胸。だが、他は締まるところは締まって出るとこは出てる

 

「うっさいわねロリ巨乳。垂れろ」

「垂れろ!?」

 

予想外の言葉に若干驚く理子

 

「もういい。寝る。お休み」

「え!?ちょっ!?」

 

そのまま机に突っ伏して本当に寝てしまうのだった……




第一話、如何でしたでしょうか?

文についてはあんまり原作内でも触れられて無いので、主人公と相部屋にしました。それと、二人の部屋については、トニーの部屋のあれを思い浮かべてもらえればありがたいです

桃花のステータスは次回かその次の話で公開します

次回は結構早めに更新できると思います


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MarkⅡ

あんまり話は進みませんし短いですが、第二話です


『お父さん!私も手伝うわ!!』

『トウカ!?何で来た!!お前のアーマーじゃ耐えられないぞ!』

 

桃花は夢を見ていた。二年前、中学三年生の頃、自分が自ら首を突っ込んだ事件に

 

『耐えられる!私のMark-Ⅱ改なら!』

『巫山戯るな!俺のアーマーですら耐えられないんだぞ!くそっ、またいかれた……ジャーヴィス、そこのハートブレイカーを寄越せ!!』

 

様子はまさに混戦にして激戦

 

様々なアイアンマンが飛び交い、何人もの人と戦っている

 

普通ならアイアンマンが圧勝する。が、アイアンマンの中には腕をちぎられ、顔をもぎ取られ、装甲を剥がされ、石油の海に突っ込み……有り得ないパワーにより爆発していくアイアンマンもあった

 

そして、夢の中で桃花の話しかけている人物……アイアンマン、トニー・スタークのアイアンマンスーツも例外では無かった

 

何度もアーマーを壊され、その度にそこら辺を飛んでいるアーマーを空中かアクロバティックな方法で装着している

 

桃花の着ているアーマー……アイアンマンスーツの二番目、Mark-Ⅱを新たに自分で作り上げ、ある程度の改造を施したそれはハッキリ言って今トニーが壊されまくってるアーマーよりも性能は格段に低い。勿論、装甲も薄い

 

『武偵をナメないで!この程度……』

『武偵如きが調子に乗るな!良いから戻れ!!』

『嫌よ!目の前で事件が起こってるんだもの!見過ごせるわけが……』

『おい!後ろだ!!』

『え?』

 

リパルサーと呼ばれるエネルギー噴射口を調整し振り返ると、そこには赤く発光した手を振り上げながら飛びかかってくる人間

 

その場から離脱する事が出来ず、その人と激突する

 

『トウカ!!』

『くっ、熱っ!』

『トウカ様、このままではアーマーが持ちません』

『嘘でしょ!?装甲はチタンで……』

 

声を出しながらも片手のリパルサーで組み付いた人間の頭を撃ち抜く

 

が、車すら吹っ飛ぶそれを耐えきり、さらに絶命しなかったその人間は桃花のアーマーの背部装甲を手で無理矢理引きはがし、さらにヘルメットを片手で吹き飛ばした

 

『あぁっ!?』

『トウカァ!!』

 

振り返れば赤く発光したアーマーを片手で引きはがすその怪力の手が構えられ、もう振り抜かれる寸前だった

 

 

 

 

「いやぁぁぁぁぁ!!……あれ?」

 

目が覚めたら、教室だった

 

どうやら、突っ伏したら本当に寝てしまっていたらしい。ついでに起きた時に体は衝動的に起こしていた

 

まだHRは始まっていない

 

「はぁ……はぁ……夢、よね」

 

汗で額に張り付いた髪の毛を払う

 

もう、二年近く前の話だ。だが、あの時の恐怖は忘れていない

 

武偵どころか生まれて初めて味わった死の恐怖

 

あの時、無人のMark-ⅩⅩⅩⅨ、ジェミニが咄嗟に助けてくれてなかったら今頃どうなっていたか……多分土と墓の下で白骨化してるか燃え尽きて灰になって世界を旅してるかのどちらかだろう

 

「も、ももちゃん?大丈夫?うなされてたけど……」

「ご、ごめん、理子……ちょっと焼き殺される夢を見てただけ……」

「ちょっとじゃ済まないよねそれ!」

 

あながち間違ってはいない

 

「そうね……でも平気よ。ほら、皆も静まり返らないで……ね?」

 

パンパン。と手を鳴らしながら静まり返ったクラスの皆に言った

 

その言葉を機にクラスはまた駄べりと笑いに包まれた。が、理子だけは心配そうに桃花を見ている

 

「本当に平気?寝汗もすごいけど……」

「本当に平気だから」

「汗のにおいは?」

「そうね……消臭剤でも買ってこようかな?」

 

なんてジョーク混じりの会話を理子とする

 

ふふふ、と桃花の笑い声とくふっくふふ。と理子の笑い声がクラスの話し声に消える

 

そんなこんなで時間は過ぎ、始業式の時間となったため、全員で移動。そして何事も無く終わり、教室に戻ってきた

 

そして、最初のHRが始まる前に遠山キンジという生徒が教室に入ってきた。ちなみに、アミダくじの結果、隣の席だ

 

(遠山君……事件にでも巻き込まれたのかしら?)

 

所々制服が汚れている事から適当な推理をする

 

入学式当日にわざわざ汚れた制服で来る人間なんてまずいないだろう。汚れてたらクリーニングなりに出す筈だ

 

桃花は彼の体質を一応トニー・スタークから聞いている

 

ヒステリア・サヴァン・シンドローム。性的興奮がトリガーで発生する体質で彼はそれが発生すると身体能力等がかなり上がるのだ。だが、その反面女性を第一に考えるようになる

 

一度、入学した後になんやかんやでヒステリア・サヴァン・シンドロームの彼と戦い、色々と普段の彼とは違う事を疑問に思い、トニーに聞いたのだ

 

結果、彼は何処から拾ってきたのか、彼がヒステリア・サヴァン・シンドロームという体質(病気?)を持っていることが分かったのだ

 

まぁ、だからと言ってどうする事も無いが

 

(厄介よね。HSS(ヒステリア・サヴァン・シンドローム)って。女性に対してギザな態度取るらしいし……私なら死にたくなるわね)

 

本人もHSS後は死にたくなるのだが、そんなの彼女の知る由ではない

 

と、そこで先生が入り、色々と話をした。基本聞き流してたが、どうも去年の三学期からの編入生がいるらしい

 

何て事を軽く聞き流してたら丁度件の編入生が入ってきた

 

ピンクのツインテールとちっちゃい角のような髪飾り。そして、前髪を止めるヘアピン。さらに、文といい感じの身長

 

(……ギリギリ勝った。多分)

 

何が、とは言わない

 

「神崎・H・アリアよ。ヨロシク」

 

テンプレな挨拶をするアリアを傍目に机の中にしまってあった小説をバレないように読み始める

 

理由としては……何か厄介な事が起こりそうだからだ

 

「……アタシ、あいつの隣がいいわ」

 

と、キンジを指さして言う

 

(え、ここ結構いい席なのに……)

 

桃花が今座る席は普通に当たりだったため、なるべく離れたくない

 

「良かったな、キンジ。お前にも春が来たみたいだな。あ、先生、俺が替わります」

 

と、生贄となったのはキンジの右隣の大男、武藤剛気

 

「はい、キンジ。ベルト返すわ」

 

何故かアリアがキンジにキンジのベルトを投げ渡す

 

これから何が起こるか、察した彼女はスッ。と顔を伏せ、寝たふりをした。キンジに助け舟を求められても困るからだ

 

案の定、理子がフラグやら何やら意味のわからないことを言い、さらにそれにクラスの皆が乗った

 

結果、俯いたアリアが拳銃を抜こうとする

 

(ここで撃ったら誰が修理すると思ってるのよ……)

 

注※業者の人です

 

そう思いながら、隠し武装の一つを一瞬で展開する

 

手の内側に着けていた腕時計のあるロックを外す。すると、レンズが手のひらまで移動した

 

そして、垂れた紐をもう片方の手で掴み、体を上げながら照準を一瞬でアリアの二丁の拳銃、ガバメントに合わせ、2回紐を引く

 

バシュ、バシュッ!という音と共に発射された火花のように見えるビームはアリアのガバメントを吹っ飛ばした

 

「あぅっ!?な、何すんのよ!!」

「後から修復に来る業者の人の苦労を考えようか?神崎さんってあっつぁ!?」

 

年頃の女の子らしくない声を出しながら何故か凄く熱くなった腕時計を高速で外して投げ落とした

 

「……不良品ね。業者に出さないと」

 

ジョークを言いながら腕時計を熱っ熱っと言いながら回収するのだった




桃花の腕時計はリパルサー付きの腕時計です。ロックを解除すると、レンズの部分が手のひらに勝手に移動し、紐が垂れ、それを引っ張ることでリパルサーレイを撃つことが出来ます。が、二発撃つとレンズが焼け焦げ、修理が必要になります。そして、その構造上、時計の部分が手の内側に来るように腕時計を着ける必要があります

出力はアイアンマンのリパルサーレイ最大出力の30%程度です

特に他には何も書く事がありませんので、これにて

この続きが気になるという物好きな方がいましたら、生暖かい気持ちで続きを待っていてください


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桃花の設定

今回は桃花の設定についてです

それと、この話を投稿するまでに、お気に入り登録してくれた物好きな方が二人ほど。お気に入り登録、ありがとうございます

なるべく、暇潰しにはなる内容にしていくつもりです


香月 桃花

性……女

歳……16

使用拳銃……G18、FN-57、HK45

容姿……黒色の髪を肩甲骨辺りまで伸ばしている。目はちょっとつり目よりで、十人に聞いたら五人は可愛いという容姿。身長は159cmで、胸はAカップ。それだけがコンプレックス

 

トニー・スタークの元愛人(日本人)の子供

 

母親似で母親思い。とは言ってもトニーの事を恨んでたりとかはしてない。それどころか自分を産んでくれたことに感謝している。トニーは時間が空いたらよく会いに来てくれる。特にトニーに対して何か思っている等はなく、トニーとは普通に娘として接し、トニーも父親として接している

 

桃花の事は既にペッパーにバレている。ペッパーにバレた時、トニーはお説教を半日以上させられたそうな

 

そんなトニーが親だからか、軽く天才的な頭を持っている。その為、通常科目の授業は何時もトップだが、推理は苦手

 

中学生から武偵養成校に通い、武偵として戦っている

 

推理は得意とは言えず、分からない時は携帯端末にいる人工AI、キャリーと協力する時がある。悪く言えば脳筋

 

女とは思えない位の怪力の持ち主で、百キロ位の物は持ち上げる事が出来る。が、腕は細い。しかし、それだけの怪力を持っていても、腕の体力は平均位と、何処かズレてる感じ。全力を出せば百五十キロのベンチブレスを一回持ち上げられる

 

私服は可愛い系の物を好む。が、スカートの下には大抵スパッツか短パンを履く。履かない時もある。たまに寄せて上げるブラを着ける時も

 

恋愛沙汰は起きた事が無く、彼氏居ない歴=年齢。だが、人の恋愛沙汰に介入してニヤニヤするのは好き

 

拳銃はG18、Five-seveN、HK45のいずれかを使う。Five-seveN、HK45はトニーから武偵校への入学祝いに貰ったもの。G18は文に取り寄せてもらい、さらに文に作ってもらった特製ドラムマガジンがある

 

拳銃の腕はAランク下位程度。接近戦は苦手だったが、とある生ける伝説から直接指導して貰い、素手での格闘戦が平均以上になった。特に円形の盾を持ったままの格闘戦が得意。普段はサバイバルナイフを携帯してる。ガン=カタやアル=カタは苦手。一昔前は怪力でどうにかしてた

 

車とバイクの運転は人並みに出来る

 

 

 

 

C.A.R.E.Y(キャリー)

 

中学二年生の誕生日にトニーから贈られてきた人工知能。ケアリーとも読める

 

日常での話し相手や推理時の手伝い、電子機器に関する事など、様々な事が出来る人工AI。普段は桃花の携帯電話の中にいるが、家に帰るとパソコン等に自ら移る

 

トニーのジャーヴィスよりは性能は低いものの、桃花のアシスタントを立派にこなす




生ける伝説とは、皆さんご存知のあの人です。あと、桃花はアベンジャーズの面々とは一応知り合いです


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MarkⅢ

今回も話はあまり進みません

アイアンマン登場はまだ先です


昼頃。昼休みとなり、持ち込んだ弁当を食べる事にした

 

隠し武装について聞かれたが、自分と文で作ったの一点張りで何とか通した。まぁ、事実だが

 

アイアンマンのリパルサーを小型化させ、生身でも撃てるようにした物だが、少し耐久性が問題なようだ

 

「うわ~、今日も美味しそうだね、ももちゃん」

「昨日の残り詰めただけよ。はい、理子の分」

「あれ?理子のも?」

「余りすぎちゃったからね。要らなかった?」

「そんな事無いよ~。早速食べよ?」

 

くふふ。と笑いながら理子が弁当を包んだ可愛い柄の風呂敷をとっていく

 

その間に周りを見渡すと、ポツンと一人で弁当を食べてるアリアがいた

 

(まぁ、初日で銃ぶっぱしようとしたんだし……仕方ないのかな?)

「あれ?どうしたの?」

「……ごめん、あの子と食べてくる」

 

一言謝って鞄の中に入れておいたデザートも持ってアリアの元に行く

 

「Hello,M's神崎?」

「……あんた、確か香月桃花だったかしら?」

「Exactly。あの双剣双銃(カドラ)のアリアに覚えてもらっていて光栄だわ」

 

武偵の中で二つ名は相当腕の立つ者にしか与えられない

 

アリアはSランク武偵の一人。二丁のガバメントと二本の小太刀を扱うことから双剣双銃のアリアの二つ名が着いた

 

「そりゃあこのアタシに向かって変なブラスト撃ってきたんですもの」

「どうだったかしら?私の歓迎の挨拶」

「百点満点。嫌気が差すほど」

 

ジョークにジョークで返すアリア

 

そのアリアの横で弁当を食べる桃花

 

「……強襲科Aランク。使用する銃はグレッグ、ファイブセブン、HK45。近接にはスターク社製のサバイバルナイフを使用」

「あら、調べたの?」

「気になったから。それだけ」

 

あむっと弁当の中の食べ物を胃に詰めていくアリア

 

「一緒に食べる友達は?」

「居るとでも?」

「……ごめん」

 

そのまま黙々と食べ進め、弁当を食べ終えてしまった

 

桃花はそのまま持ってきたデザート……ももまんを取り出す

 

「デザートはやっぱこれよね~」

 

と、いいながらももまんに齧り付こう……と、したらアリアの視線が自分に……いや、自分の持ってるももまんに注がれてるのがすぐに分かった

 

ももまんを上へ下へ横へと動かすと、面白いようにアリアの視線がついてくる

 

それに苦笑いしながらアリアにももまんを差し出す

 

「食べる?」

「いいの!?」

「え、ええ……」

 

アリアがひったくるようにももまんを桃花の手から取ってもくもくと食べ始めた

 

一応、桃花の好物は甘い物と苦い物。ももまんを家で食べるならいつもブラックコーヒーがついてくる

 

(……淑女とは程遠いわね……)

「キャリー、録画」

『分かりました』

 

小動物的な可愛さがあったため、携帯端末で録画する事にした

 

理子の甘ロリとはまた違った感じの可愛さがあった

 

と、すぐにアリアはももまんを食べ終わった

 

「……もう無いの?」

 

と、寂しそうな目で見てくるアリア

 

あきらめたように溜め息を吐き、おやつ用のももまんを袋から取り出してアリアに渡す

 

「……キャリー」

『もうしてます』

 

可愛いものにはめっきり弱い桃花だった

 

 

 

 

「いや~、最初はいけ好かないと思ってたけどいい奴ね~」

「い、いけ好かない……」

 

どうやら、アリアはももまんで彼女に懐いたようだ

 

「そういえば、桃花。あんた、遠山キンジって知ってる?」

「そりゃクラスメイトだし」

 

ついでに、気になった人物だから。と心の中で付け加える

 

「あいつ、なんで強襲科止めたか知ってる?」

 

キンジが強襲科を止めた理由

 

それは、去年に起きたとある事故のせいだ

 

「一応は」

「……結構有名?」

「……さぁ。私は偶然知っただけよ」

 

それも嘘。本当は気になったからキャリーと一緒に調べあげただけだ

 

「そう」

「それだけ?」

「それだけ」

 

キンジの事が気になるのか。そう思いながらも紙袋に手を突っ込み、

 

「食べる?」

 

と、夕食後のデザート用のももまんで餌付けを開始するのだった

 

ちなみに、彼女は太りにくい体質だ。痩せにくいのもあるが

 

 

 

 

次の日

 

特に何事もなく、文に弁当と整備用のファイブセブンを渡し、代わりにホルスターにはHK45を突っ込んで登校した

 

そして、午前中の授業を消化して理子と弁当を食べ午後からは適当に射撃練習でもしようかと射撃場に向かおうとしたところで依頼を受けたらしいキンジを見つけた

 

「や、遠山君」

「……香月か。なんか用か?」

 

と、素っ気なく返してくるキンジ

 

女嫌いの彼……その理由も知っているが、そんな彼なら納得の返事だ

 

「何受けたの?」

「何でもいいだろ」

「気になるじゃない」

「……青海に迷子猫探し。報酬は一万。0.1単位の依頼だ」

「へぇ、テンプレな依頼ね」

「ほっとけ」

 

だが、よく迷子の猫探しは0.1単位分の依頼としてある

 

「手伝いましょうか?」

「いいよ。強襲科Aランク様の手を煩わせる依頼じゃないし」

「女の子の誘いには乗るものよ。キャリー」

『かしこまりました』

「おい」

「少し待ちなさい」

 

と、キンジの手を掴んで待つこと数秒

 

『恐らくテトラポットの上で座ってるかと』

「らしいわよ?」

「……何も出ねぇぞ」

「依頼達成料の一万で奢ってくれたらいいわよ」

「おい」

「冗談。ほら、鬼の角生やしたちっちゃい彼女がお待ちよ?」

 

鬼の角とはアリアの髪飾りの事だが、遠回しにアリアの事をいいながらキンジの背中を押す

 

そして、そそくさとその場を離れると、アリアがキンジの元までちょこちょこと寄ってきた

 

「……さ、射撃練習射撃練習」

 

結果、命中率は七割。桃花的にはイマイチな結果になってしまった

 

「もうちょっとバレルとか……ヘビーバレル?いや、それよりもマズルブレーキかサプレッサー……」

 

と、一人でHK45Cを片手に呟いている桃花が多々目撃された

 

 

 

 

「ただいま~」

 

と、桃花が寮の部屋に帰ってきた

 

靴を脱いでリビングまで行く。すると、

 

「あややっ!?」

「……文、正座」

 

文が赤と金のトランクケースを今にも手に取ろうとしていた

 

HK45の銃口を防弾制服に向け、ゆっくりとトランクケースから離して正座させる

 

「触るなって言ったわよね?」

「出来心だったのだ」

「じゃあ私の銃にマズルブレーキ着けてくれない?あと、ちょっと精度上げてくれないかしら?」

 

と、HK45を回転させて銃身を持ち、文に向ける

 

「お任せあれなのだ!」

 

HK45を受け取って自分の部屋に入っていく文

 

そんな文を見届け、部屋の片隅に放置してある二メートル大のキャリーバッグを見る

 

「……我ながらよく運んだわね……」

 

なお、空港では自身の怪力を遺憾無く発揮した彼女が多々目撃されている

 

そのキャリーバッグを少し倒してゴロゴロと自分の部屋に運ぶ

 

「……さて、キャリー、設置よ」

 

パン!と手を一回叩く

 

「3Dワイヤーで中身まで再現。中身を展開して」

 

その声と共にキャリーバッグが3Dのワイヤーで再現される

 

トニー・スタークのよく使う物を寮の部屋に手軽に持ち運べるように色々と工夫して出来た3D投射機を使ったからこそ出来ることだ

 

その3Dモデルに手をつけ、引っ張る

 

すると、中身がパァっと3Dで展開される

 

パーマをかけるような機械が二つついた土台のような物が展開された

 

「これが……」

 

こんな物だったのか。と驚きながらも作業は続ける

 

「ここかしら……いや、ここでも……」

 

数分かかってようやく決まった

 

「そんじゃ、設置……っとぉ!」

 

軽く気合を入れてキャリーバッグをガラガラと動かす

 

所定の位置まで持って行って一息ついた

 

と、そこでガチャッと部屋のドアが開いた

 

「マズルブレーキ着け終わったついでに色々と改造しといたのだ……ってそれ何なのだ?」

「……あれのお兄さんよ」

 

と、言いながらトランクケースを指さす

 

「ほ、本当なのだ!?」

「装着は私しか出来ないけどね。あ、弄らないこと。弄るとレーザーが発射されるから」

 

ちなみに、嘘である

 

「わ、分かったのだ……」

 

マジだと文は視線で悟った。嘘だが

 

「それじゃあ、私は昼に全部無くなったももまん買いに行くけど……文も来る?」

「行くのだ!」

「じゃあ行きましょ?」

 

と、制服のまま財布だけを手に取ってポケットにねじ込み、文から受け取ったHK45を一度構えて感触を確かめながら、ホルスターに収める

 

「相変わらずいい仕事するわね」

「代金は桃花だからタダなのだ!」

「遠山君からは結構代金取ってるものね。じゃあ、行きましょうか」

 

キンジは文の常連だったりする

 

文には改造出来ない銃は無い。物作りの腕だけならあのトニー・スタークと並ぶんじゃないか?と思いながらも家を出て、近場のコンビニに行く

 

「そういえば、桃花はももまんが何で好きなのだ?」

「私、甘いものと苦いものが極端に好きだからね。ほら、ブラックコーヒーとももまんをよく一緒に飲んで食べてるでしょ?」

「それくらいは知ってるのだ。でも、なんでももまんなのだ?」

「ん~……たまたま買ったももまんがたまたま美味しかったってだけね。深い理由は無いわよ」

 

そんな訳でコンビニの中に入る。が、そこである人物を見つけた

 

「あら、遠山君じゃない。さっきぶりね」

「ん?香月か」

 

キンジは雑誌コーナーで雑誌を立ち読みしていた。成人指定ゾーンからかなり離れて

 

文に適当に欲しいものとってきなさいと言うと、適当な雑誌を手に取ってキンジの隣で読み始めた

 

「……おい」

「こんな時間に外に……差し詰め神崎さんが転がり込んできたから逃げてきた?」

 

沈黙

 

「……え?マジ?」

「……昨日からな。だが、もう一日二日経てばあいつは自分の部屋に……」

 

流石にジョークで言ったらしいが、流石に本当だとは思ってなかったようだ

 

「ベルトを外す行為に家に転がり込み……あっ」

「察したような顔するな。絶対に違うから」

 

まぁ、HSS持ちの上に女嫌いのキンジにそんな度胸はないとちゃんと理解はしている

 

が、面白そうだからそういう反応をする

 

「そう……彼女出来たのね。おめでとう。式には呼んでくれるわよね?」

「彼女じゃねぇし式も上げん。なんでアリアと恋人にならなくちゃいけねぇんだ」

 

ブツブツと文句を言いながらも立ち読みを続けるキンジ

 

「ジョークよ。また文の銃整備を値切ってもらうから許して?」

「なら許す。ってか、平賀さんは銃の整備で小遣い貯めてるのか?」

「……そんじょそこらの金持ちよりお金持ってるとだけ言っておくわ」

 

文は武器に関する事なら何でも出来る上に銃の整備の質等がかなりいい為、多少値を張ってもアッサリと交渉は成立するのだ

 

なお、桃花は同居人だし友達だからサービスしてるとのこと

 

「……結構高いもんな」

「でも、それに見合った働きをするからいいのよ」

「それは分かる」

 

違法改造だろうが銃検だろうが文にとってはちょちょいのちょいだ

 

勿論、弾薬の調達も

 

「……あんな子が凄腕の整備士って言われても最初は信じないよな……」

「私もこの目で見るまでは信じなかったわよ」

 

コンビニでお菓子の棚をジーッと見る文はヘタをしたら小学生にしか見えない

 

「まぁ、ドンパチはからっきしだけど」

「天は二物を与えないからな。あれでドンパチ出来たらただのチートだ」

 

それもそうね。と言いながら雑誌を読んでると、手にお菓子を持った文がトテトテと歩いてきた

 

「それじゃあ、また明日。遠山君」

 

雑誌を元に戻し、レジでの会計ついでにももまんを買おうと歩いた時

 

「……なぁ、香月。一つ頼んでもいいか?」

 

と、雑誌を戻したキンジが桃花を見ていた

 

「ん?何?」

「アリアについて調べて欲しい……まぁ、厳密に言えばお前に仕えてるのかなんなのか分からないキャリーって奴への頼みだ」

 

キンジの頼みはほんの数秒で一匹の猫を見つける事の出来るキャリーの腕を見込んでの事だった

 

が、キンジはキャリーが人工AIだとは知らない

 

「……分かったわ」

「すまん。助かる」

 

キンジは再び雑誌の立ち読みを始めた

 

だが、流石に報酬の一つもないのは軽くイラッときたので

 

「すみません、これとももまん5個ください。お代はあそこの男子生徒で」

「ファ!?」

 

キンジにお代を払わせる事にした

 

「それじゃ、明日までに情報は集めておくから~」

「ちょっ、香月テメェ!!」

 

買ったばかりのももまんをくわえながらコンビニから文と一緒に出る桃花であった

 

 

 

 

「香月のやつ……ちくしょうめ……」

 

キンジはちゃんと律儀に金を払って店から出てきた。雑誌も買って

 

ちょっと軽くなった財布をポケットに突っ込んで寮の自分の部屋へと歩く

 

「……そういえばアリアが居るんだっけ……俺の日常は何処に消えたんだよちくしょう……」

 

軽くヘコみながら帰るキンジであったとさ




桃花、キンジに(無理矢理)奢らせるの巻

次回もあまり話は進まないかと……でわでわ


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MarkⅣ

一度書き上げたものを消してしまうというミスをおかしましたが、なんとか更新です

今回はアイアンマンの出番はなし

あと、気が付いたらお気に入りが七人になってました。地雷だと分かってながらも閲覧してさらにはお気に入り登録してもらった事に心より感謝を

それでは、本編をどうぞ


キンジにももまん五つ分の金を出してもらった次の日の放課後。武偵校の温室にて

 

ここでキンジにアリアについての情報を渡すことになっているのだが、キンジは一向に現れない。が、代わりに

 

「あら、理子?」

「あれ、ももちゃん?どったの?」

 

理子が来た

 

「……まさか、遠山君に?」

「そだよ~?あ、ももちゃんも?」

「不本意ながら。これを渡すためにね」

 

と、言いながら桃花は手に持っている紙の束を取り出した

 

この紙の束にはアリアについての事が書かれている。が、キャリーがアリアのデータから適当に掻い摘んだ物らしい。キャリーは当時のデータは何故かバックアップを残さずに消去したらしい

 

「見ていい?」

「いいわよ?ほら」

 

と、言いながら紙の束を理子に渡す

 

理子は探偵科Aランクだ。もしかしたら、キャリーと同じ位の情報を収集しているかも知れない

 

「……これ、理子が調べたやつと殆ど同じだよ?」

「あら、そうなの?」

 

流石に殆ど同じとは予想外で、少し驚く

 

「それじゃあ、後は理子に任せようかな?私は帰って……」

「いや……キーくんそこにいるから……」

 

と、言いながら理子が指さした方には

 

「だ、ダンボール?」

 

ダンボールがあった

 

が、そのダンボールがモゾモゾと動き、バッ!!と持ち上げられ、

 

「待たせたな!」

 

袋を手に持ったキンジが出てきた

 

「キーくん……リアルでそれやるのはちょっと……」

「アリアを撒こうとして周りを見てたらこれを見つけてな。それで逃げたら逃げれた」

「神崎さん……Sランクの名が泣くわよ……」

 

ダンボールでコソコソしてるキンジを何処に行ったのあのバカ!と言いながらキョロキョロとしているアリアが何故か鮮明に頭の中に写った

 

軽く頭を抱える桃花

 

「じゃあ理子。これ、頼まれてたやつ」

「お~、流石キーくん!」

 

と、言いながらキンジから渡された袋を受け取る理子

 

中はR-15のギャルゲーだった

 

「お前ホントそういうの好きだな」

「一度ハマると抜け出せないんだよ?」

 

理子がキンジにR-15のギャルゲーを買わせたのは罰ゲームとかではなく、理子が身長故に15歳以上と見られず、ギャルゲーを買えなかったため、キンジに買ってきてもらったと言うわけだ

 

理子は袋の中を見て、一つのギャルゲーを手にすると顔をしかめた

 

「……これはいらない」

「え?何でだ?」

「あ~……理子はね、『2』とか『3』とかつくギャルゲーは嫌いなのよ。蔑称とか言ってね」

 

何故知ってるかと言われたら、桃花は過去、理子にキンジと同じ事を頼まれたからだ

 

その時についでに、と続編のやつも買っていったら、有り難く突き返された

 

「理子、遠山君は処理に困るだろうから私が貰っとくわ」

 

と、言ってギャルゲーを受け取った

 

「それじゃ、遠山君。これが神崎さんについての資料」

 

と、キンジにアリアの事について纏めた紙の束を渡し、鞄の中にギャルゲーを詰め込む

 

「中身は理子が調べたものと同じっぽいからそれを見ながら説明を聞いて?」

「分かった。助かった、香月」

「ももまん分の働きしただけよ」

 

そう言って、鞄を手に持って温室から去っていった

 

(確か文は今日は依頼があるから遅くなるって言ってたから……取り敢えず帰って着替えてゲーセンにでも行きましょ)

 

そんな訳でバスに乗ってちゃちゃっと帰ってちゃちゃっと着替えて財布だけポケットにねじ込んで部屋の外へ

 

「キャリー、何からやろうかしら?…………キャリー?」

 

キャリーに話しかけるが、応答しない

 

携帯電話を見ると、電源が切れている。電源をつけると、充電してください。とだけでてプツン。と切れた

 

「じ、充電切れ……最近充電してなかったし、幾らお父さん製の電池パックとは言ってもキツかったのね……」

 

充電するのも面倒になって財布の入ってるポケットとは逆方向のポケットに携帯を入れて歩く

 

目指すは寮から比較的に近い場所にある少し大きめのゲーセン

 

「……キャリーが居ないのも久しぶりね」

 

何時もはいい話相手になってくれるキャリーは今頃、家で何かしてるか、携帯の中に閉じ込められているか……おそらく後者だろう

 

家に移ってたら一言桃花に声をかける筈だ

 

その後は特に何もなくゲーセンに到着した

 

「さて……ガンシューティングでもやりましょうか」

 

ガヤガヤと様々なゲームの音が混ざってカオスなゲーセンの中に入ってすぐ、ガンシューティングの場所まで行く

 

そして、おもちゃのガンを持ち上げる

 

(うっわ、軽……)

 

おもちゃのガンを手に持ち、百円玉をゲーム機に入れる

 

一人でプレイの所に照準を合わせ、引く

 

そして、ムービーが始まるが、特に興味はないため、スキップすると、戦闘が始まった

 

武器はハンドガンのみ。だが、それだけでも桃花には余裕だった

 

片手をトリガー、もう片方の手で適当にガンを持ち、敵の眉間合わせて引き金を次々と引いていく

 

(反動が無いから楽勝ね。全段ヒットも夢じゃないわ)

 

弾が切れたら身を隠し、ガンを振る。が、その時につい癖でマガジンを仕舞ってるところに手をやってしまう

 

が、特に気にせずにバンバン撃って行く

 

数十分後、道中にあったマシンガンやショットガンなどを数回使ったが、難なくクリアした

 

「ふぅ……楽勝……」

 

そう言いながら、何時も足に着けていたが、今は外してるホルスターにガンを仕舞いそうになって顔を少しだけ赤くする

 

後ろに軽くギャラリーが居たが、それを無視して適当にぶらぶらとする

 

ぶらぶらしてると、UFOキャッチャーにアメリカで活躍しているヒーローのフィギュア等があったが、本人に会ったことがあるのでスルーした

 

そのままぶらぶらとしていると、某太鼓型のゲーム機を使って達人を目指すゲームがあったので、それを夜ご飯ギリギリまでやる事に

 

鬼の曲を何曲もやってる内に時間はみるみる削れていき、腕がパンパンになってもう無理になった頃には時間は結構削れていた

 

またギャラリーが出来ていたが、スルーして店の外へ

 

「ん~……久々のゲーセンもいいモンね」

 

軽く伸びをしながら財布と充電の切れた携帯をゲーセンに忘れてないか確認して帰路につく

 

が、流石に軽くだが体を動かしたため、喉が乾いていた。途中にあった自販機でジュースを買ってベンチに座って飲み始める

 

炭酸じゃないから腹は膨れないし。とか思いながらゴクゴクとジュースを腹の中に入れていく

 

が、その時、視界の隅に明らかに外見がチャラく、五人くらいで一人の女の子にかなりしつこく話しかけている男達が見えた

 

「うっわ~……ナンパ?それとも当たり屋?…………あの子、スタイル良いわね~……」

 

視線を自分の胸元に落とす

 

そこにはお世辞にも大きいとは言えない自分の胸

 

視線を絡まれてる女の子に移す。デカイ

 

「世の中不公平よね」

 

ジュースの入ったペットボトルを持ち前の怪力のあらん限りで握りつぶそうとしてしまったが、大惨事になるのでそっと堪えた

 

が、この気持ちを晴らさんべく、桃花はペットボトルをベンチに置いて動いた

 

「ちょっとあんた等。その子困ってるでしょ?開放してあげたら?」

 

拳銃やサバイバルナイフ等は持ってきてないが、素手のチャラ男相手に遅れを取るほど桃花は弱くない。が、問題は数だ。数の暴力で来られたら流石に少しばかりキツイ

 

「ん?……なんだぺちゃパイか」

「よし潰す」

 

コンプレックス(胸がない)のをサラッと言われた

 

その瞬間、ビキッと桃花の額に青筋が浮かび上がり、スタスタと一人に近づくと、地面にあったマンホールを片手でガコッと外して持ち上げ、胴体をそれで(後遺症が残らない程度の力で)薙ぎ払った

 

「ぐげっ」

 

すっ飛んでいくチャラ男A(名前も分からないためこう呼ぶことにした)

 

「な、なんだこの女!」

「使いづらいわね……円形の盾なら良かったんだけど」

 

マンホールを元に戻し、普通に構える

 

「まっ、盾なしだけど頑張ってみますか」

 

手をプラプラとしてから軽く構える

 

構えてからわずか数瞬でチャラ男Bの懐に潜り込む

 

「速っ……」

 

そのまま鳩尾に拳を叩き込み、くの字に体が曲がったところで膝を顎に入れる

 

悲鳴もなく倒れるチャラ男Bの手を掴んで

 

「どっせい!」

 

年頃の女の子としてそれはどうなのかと思える声を出しながらチャラ男Cに向けてチャラ男Bを持ち前の怪力でぶん投げた

 

「こ、こっち来ぐへぇぁっ!」

 

顔面と顔面がぶつかり、チャラ男B&C気絶

 

「……サンドバッグにもなりゃしないわね」

 

パンパン。と自分の手を払う

 

「お、おい!二人で取り押さえるぞ!」

 

チャラ男Dの言葉にチャラ男Eが頷き、桃花を取り押さえようとする

 

すぐに身構え、チャラ男Dの方に体を寄せ、手を掴んで首元を持って回転しながら地面へと叩きつけ、即頭部をサッカーボールのように蹴って気絶させる

 

今度はチャラ男Eの手を掴んで足を払い、背中に体を乗せてそのまま投げ飛ばした

 

「ぐはっ!」

「あなた、その股についてる汚いもの潰されたくなければとっとと去りなさい」

 

チャラ男Eは情けない悲鳴を上げながら仲間を置いて何処かに走り去ってしまった

 

「……あなた、大丈夫?」

「……あ、はい。ありがとうございます」

 

チャラ男に絡まれていた少女は桃花に礼を言った

 

「スタイル良いんだし日が暮れる前にはちゃんと帰らなきゃダメよ?」

「で、ですよね……」

「ほら、ちゃっちゃと家に帰りなさい?」

 

そう言うと、桃花はベンチに置いてあったペットボトルに入ったジュースを手にとって去っていった

 

 

 

 

「……家、か……」

 

少女は桃花が去ったあと、しばらくその場にいた

 

不意に空を見上げて、溜め息をつく

 

その時、背後から一人の女性が近寄ってきた

 

「自由時間は終わりよ」

「分かってます」

 

少女は、無表情で答える

 

「今日やる事は分かってるわね?」

「……はい」

「なら良いわ。いい、たかがあなたの為にあれだけ希少なものを使うのよ?失敗したらどうなるか、分かってるわね?」

「……ッ」

 

少女は頷く

 

「じゃあさっさと行くわよ。XX-1。あなたは『ウルヴァリン』と『X-23』……ウェポンXをも超える兵器になるのよ」

「……その為の、アダマンチウム……」

「えぇ。あなたの骨を全てアダマンチウムに変えさせてもらうわ。反抗しないようにナノマシンも埋め込んでね」

「分かりました……」

「『ウルヴァリン』と『スパイダーマン』の遺伝子を組み合わせてヒーリングファクターと怪力を発現させた個体はあなただけ。私達をがっかりさせないでね」

 

そう言うと、女性は踵を返して歩いていく

 

少女は俯く

 

「助けて…………嫌だよ……兵器にされるなんて……」

 

少女の声は誰にも届かず、少女は女性の後をついていくのだった

 

 

 

 

「……ん?何故かスパイダーセンスが反応してる?……まぁ、日本に居るヴィランなんてシルバーサムライ位しか知らないし、折角の日本の観光は楽しまなきゃね。メイ叔母さんへのお土産も帰るまでに考えておかなきゃ」

 

 

 

 

「ただいま~……」

「あ、おかえりなのだ!」

 

帰宅した桃花に待っていたのは、文の声と台所から漂ういい匂いだった

 

「ごめんね、ちょっと遅くなった」

「別にいいのだ。あ、お箸とか出しておいて欲しいのだ」

「うい~」

 

適当に返事しながら箸とコップ、それと紙パックに入っているお茶を取り出してテーブルに置く

 

その後は文の料理を食べながら適当に駄弁り、食器を二人で洗った

 

そして、文が寝た後

 

「……これ、インストールお願い」

『やるんですね』

「……仕方ないじゃない。前に押し付けられたのは面白かったんだし」

『分かりました。あと、携帯電話充電しておいてくださいよ?』

「わ、分かってるわよ……」

 

こんな会話があったそうな無かったそうな

 

ちなみに、桃花が寝付けたのは深夜も遅い頃だったという

 

 

 

 

「Uh~~……理子、今、私はすごく眠たい」

「うん」

「だから寝る。お休み」

「ちょぉっ!?」

 

武偵校についた桃花は理子に挨拶した後、自分の思ってる事を伝えると机に突っ伏して寝息を……

 

「駄目だよ~!」

 

立てようとしたら理子に机をバシバシ叩かれた後に頭をシェイクさせられる

 

「わ、分かったわよ!」

 

目を擦りながら顔を上げる

 

「机叩かないでもいいでしょ……響くじゃない」

「ももちゃんがそうやって寝る時って何時も昼休みまでぐっすりだから駄目だよ!」

「はいはい……」

 

寝不足で今にも降りそうな瞼を必死に持ち上げる

 

全くもう。と言った感じの表情をしている理子だが、何か考え込む様に顔を俯かせると、数秒後に真面目な表情に変えて桃花を見る

 

「理子?」

 

今までそんな理子の顔は見たことが無かった。必死な表情や真面目な表情は見たことがあるが、どれも可愛さが残っている様な感じだったが、今回は違った

 

何処か、凄みのような物があった

 

「明日、バスに乗らないで武偵校まで来て」

「……い、いやいや。自転車とか持ってないからね?」

「じゃあ歩いて!」

「む、無茶言わないでよ!」

「ももちゃん!」

 

理子が桃花をジーッと見てくる

 

「あたしは本気だ」

「ッ!?」

 

理子の何時もの軽い感じの声と口調ではなく、何処か重い雰囲気を醸し出させる声と口調

 

思わず息が詰まる

 

「……で、出来たらね…………」

 

絞り出せた言葉はそれだけだった

 

「……くふ。人の頼みは聞かないと駄目だよ?ももちゃん」

 

理子の声と口調は、何時もの感じだった

 

が、何処か、変な違和感が心の中に残った




途中で出てきたキャラは二人がオリキャラ、一人があの人です

……と、言うかスパイダーセンスって言ってる時点であの人だって丸分かりですよね

原作第一巻の最後に桃花は多分関与しません。その代わりにあの人と協力してのオリ展開を考えてます

次回こそアイアンマンの出撃です。多分本日中に


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MarkⅤ

特に書くことはありませんが更新です

今回はアイアンマンの登場です


「ふわぁぁぁ……よく寝た」

 

翌日のバス発車時間一時間前、桃花は目を覚ました

 

「キャリー、起きてる?」

『はい。つい先程スリープモードから回復しました』

 

目を擦りながら、ベッドから降りてパジャマを脱ごうとする

 

「……あれ?今日は起きるのが遅いわね……」

 

時計を見ると、何時もはバス発車時間一時間十分前には起きるようにしてるのだが、今日は十分遅かった

 

何故こうも中途半端かと言うと、文を起こしたり銃の最終チェックをしたり新聞をじっくり読んだりすると、丁度これくらいの時間が時間を無駄にせず、遅刻もしない丁度いい時間だったからだ

 

『いえ、何時もと同じです』

「え、でも、あの時計は……」

 

机の上に置いてあるトニーお手製デジタル目覚まし時計は何時もより十分遅い時間を表示していた

 

『ですが、私のシステムに組み込まれている時計機能では何時も通りの時間を指してます』

「おっかしいわね……お父さんお手製よ?……まぁ、時間は直しておきましょ。って、目覚まし機能まで停止してる?下手すりゃバスに乗り遅れてたわね……」

 

カチカチとデジタル時計を操作し、時間を元に戻す

 

そして、表示時間を戻し終わったところでパジャマの前ボタンを外していく

 

『……トウカ様。どうやら、この家全体の時計が十分ズレてるみたいです』

「……え、なにそのピンポイント時計テロ」

『直した方がアヤ様も慌てなくて済むかと』

「……それもそうね」

 

パジャマの前ボタンを外したまま部屋を出て家中の全ての時計を十分進める。勿論、文の部屋の時計も

 

全ての時計を操作し終わった所でパジャマの上の袖から手を抜き取りながら自分の部屋に戻り、パパッと防弾制服に着替える

 

そして、文の部屋にもう一度入り、文のベッドに登って文をベッドから転がり落とす

 

「あやっ!?」

「おはよう、文。いい朝ね」

 

べちゃっと地面に落下した文は目を覚ました

 

「いい加減この起こし方は止めて欲しいのだ」

「昔どれだけ起こそうとしても起きなかったのは誰だったかしら?」

 

ほらほら着替えて。と言って部屋を出ていく

 

そして、新聞をキャリーに展開してもらい、読んでいると防弾制服に身を包んだ文が部屋から出てきた

 

「はい、番組欄」

「ありがとなのだ」

 

目の前に表示されてる新聞のモニターの一部の端を掴むような動作をしてヒュッ。と文に投げつける動作を取る

 

モニターは文に向かって飛んでいき、文は両手でそれを挟んで止め、それを覗き込む

 

文が番組欄を見ながらリモコンを操作する

 

その横で新聞を広げて記事を読んでいく

 

その後は適当に会話をしながら文はテレビを。桃花は新聞を読んでいく

 

そして、三十分程経った頃

 

「それじゃあご飯作ってくるわね」

「あいあいさーなのだ」

 

桃花が新聞をピッ。と横に弾いて席を離れキッチンに行く

 

食パンにバターをつけてトースターに突っ込みつつ卵を二つ、ベーコンふた切れを手に取って、先に油をひいたフライパンを温める

 

その間にパパッとキャベツを切り、フライパンがあったまったのを確認してベーコンを突っ込み、その上に重ならないように卵を落とし、蓋をする

 

待つこと数分。チーン。と音を立ててパンが焼けた

 

パンを皿に移してフライパンの上で焼けたベーコンエッグを二つのパンの上に一つずつ乗せ、塩コショウを軽く振る

 

フライパンを流しで水につけておいて完成

 

「出来たわよ~。さ、食べちゃいましょ」

「今日も美味しそうなのだ!」

 

そのままパクパクと食べ進め、食べ終わり、皿をパパッと洗ったら丁度いい時間だ

 

最後に銃の最終チェックをパパッとし、ホルスターに差し込む

 

今日もHK45。ちなみに、桃花はバスジャック鎮圧時に使ったFive-seveNとG18(グロッグ)の三丁を所持している

 

G18は文が特別に取り寄せてくれた切り札。さらに文が作ってくれた特製ドラムマガジンは64発もの弾丸が入る優れもので、超偵ではない彼女の切り札とも言える。勿論、ドラムマガジンはそれなりにかさむし重く、大抵はマガジンを何個か持っていくか、ドラムマガジン一つを持っていくかのどちらかだ

 

もっとも、超能力(ステルス)にも対応出来る力を彼女は持っているのだが

 

「さ、行くわよ」

 

そして、バスに乗り込むために靴を履いて、赤と金のトランクケースを持って扉を開けた

 

「あれ?それも持っていくのだ?」

「ちょっと色々と整備したかったからね。何処かの誰かさんが工具全部持って行っちゃったし」

「あはは~」

 

結果、昨日理子の言った言葉には、従わなかった

 

 

 

 

「間に合った間に合った。ふぃ~」

「結構余裕だったのだ」

 

バスの席に腰を下ろして一息つく

 

どっこいしょ。と年不相応の声を出しながら赤と金のトランクケースを足元に置く

 

そして、バスは男子寮前へと行き、男子生徒が乗り込んでバスが発車しかけた時……

 

「うぉぉぉぉ!ちょっとタン……」

 

マ。だろう。次に出てくるであろう言葉は

 

その言葉が聞こえる前に、バタン。とバスの扉は閉じた

 

(……遠山君、遅刻確定ね)

 

一応敬礼をしたのだが、キンジには見えなかったであろう

 

バスはキンジを華麗にスルーし、武偵校へと向かっていく。が、その途中、ある女子生徒の携帯電話から着信音が鳴った

 

「あ、あれ?マナーモードにした筈なんだけど……」

 

と、女子生徒は携帯を取り出し、開く。が、その画面は待受なんかではなく、謎の画面だった

 

そして、

 

『この、バスには、爆弾が、仕掛けられてやがります』

 

バスジャックが起こった

 

 

 

 

「……不幸だ…………」

 

キンジは溜め息をつきながら一人で歩いていた。恐らく、遅刻は確定だろう

 

先日、ゲーセンでとったレオポン人形が鞄から見え隠れしている

 

すると、携帯が鳴った

 

着信主が誰かと見てみれば、アリアからだった

 

「……何の用だ?」

『事件よ事件!とっとと来なさい!』

「……は?」

『バスジャックよ!7時58分、男子寮前発、Gの3がバスジャックにあったのよ!』

「何だと!?」

 

キンジは携帯を仕舞って、全力で駆け出した

 

 

 

 

「やっと来たわね!さっさと行くわよ!」

「道中詳しい事話せよ!」

 

アリアと合流し、ガレージの中にあった黒ワゴンに二人で乗り込む

 

アリアが運転席に座った

 

そんなちっこいあんよで運転出来るのか……?なんて思ってたら急発進した

 

「ぐげっ」

 

シートベルトをしめきっておらず、運悪く首元に来てたシートベルトが首を直撃した

 

「バスジャックはさっき話した通りよ。目標は全員の救助よ」

「げほっげほ……ったく、この間もバスジャックあったんだろ?頻度高すぎだろ」

「それは言えるわね。そんでもって、犯人は恐らく武偵殺し」

「武偵殺し!?」

 

武偵殺し。それは、かつて武偵を狙い、次々と殺していった凶悪犯罪者だ

 

「……だが、武偵殺しは……」

「真犯人がいるのよ。この前捕まった人とは別に……」

 

アリアの言葉を半分疑いながら、キンジはベレッタにマガジンを差し込むのだった

 

 

 

 

「爆弾はあったか?」

「こっちは無い」

「こっちもだ」

「同じく」

 

バス内では強襲科の生徒を中心に、爆弾を探していた

 

『無駄な、抵抗は、しやがるな、です』

 

その声に耳を貸さずに強襲科の生徒は爆弾を探す。が、強襲科の生徒の一人、不知火 亮が窓の外で一台の車を発見した

 

そして、その車には軽機関銃が

 

「ッ!みんな伏せろ!!」

 

不知火の声に反応して全員がしゃがんで頭を抱える

 

その瞬間、何十発もの弾丸が頭上を通り抜けていく

 

「あややや!ドンパチは文の居ない所でやってほしいのだ!」

「大丈夫。あなたは傷付けさせないから」

 

桃花は文の上に覆い被さるようにして文を守っている

 

ガラスの破片が落ちてくるが、どれも刺さることは無かった

 

「やってくれたわね……撃ち落としてやるわ」

 

桃花が腕時計の隠し武装を展開し、紐を握る

 

そして、壁越しにブラストを発射した

 

バシュッ!!という音と共に発射されたブラストはバスの装甲を突き破り、車のタイヤを吹っ飛ばし、スリップさせた

 

「ふっふ~ん。どう?私の射撃力」

「……香月さん。もう一台来てる」

「Uh-oh……」

 

不知火の言葉に思わず声が漏れる

 

「……文、あれを使うわ。頂戴」

「つ、使うのだ?」

「えぇ。やってやるわ。だから取って」

「気をつけるのだ!」

「この程度で死なないわよ」

 

文からトランクケースを受け取って腰に仕込んであるワイヤーフックを身を乗り出してバスの屋上に引っ掛け、靴越しに足にガラスが刺さらないようにトランクケースでガラスを全て砕いてワイヤーを頼りにバスの屋上に立った

 

「さぁ……やるわよ」

 

銃弾ではタイヤやエンジン意外に当たれば何発も打ち込まなければ撤退させる事は出来ない。だが、ブラストなら出来た

 

「キャリー、アシストお願いね」

『かしこまりました』

 

桃花はトランクケースを屋上に落とし……踏んだ

 

その瞬間、ガシャン!と音を立ててトランクケースが奇妙な形に変形する

 

それに手を突っ込む

 

「……あ、あの黒ワゴン、遠山君と神崎さん乗ってる……」

 

途中から見つけた黒ワゴンにはキンジとアリアが乗っていた

 

二人とも目を見開いている

 

「……あぁもう!見られたんなら仕方ない!しっかりと目に焼き付けなさいよ!!」

 

そして、桃花はそれを右手を右に、左手を左に思いっきり引っ張った

 

その瞬間、丸の形で青く光るライトがある場所が胸部に張り付き、左右に引っ張った手には鱗のように段々と赤と金の装甲が装着されていく

 

そして、それは背中、腰、太もも、足。段々と面積を増やしていった

 

最後に、顔を囲むように装甲が展開され、最後にフェイスガードらしきものが現れ、顔を外界と閉ざした

 

「ウィンドウ展開」

 

ポンポンポン。とフェイスガードと桃花の顔の前に様々なウィンドウが表示される

 

装甲の全体図やエネルギー量等など

 

そして、フェイスガードで閉ざされた視界に外の様子が投影された

 

「……さぁ、パーティーの時間よ!」

 

アイアンマン。ニューヨークを守った鋼鉄のヒーローが、そこにいた

 

 

 

 

「……なぁ、俺の目には香月のやつがアイアンマンに変身したのが見えたんだが?」

「奇遇ね。アタシもよ」

 

黒ワゴンの中で二人は目を見開いていた

 

当たり前だ。いきなり知り合いがあのヒーロー、アイアンマンになったのだから

 

「……と、取り敢えずあの車どうにかしてからバスの上に飛び移るわよ!」

「お、おい!」

「トウカ!!それ撃ち落として!!」

 

 

 

 

アリアから車を撃ち落とせと言われた

 

車は積んである軽機関銃の銃口を桃花に向けている

 

弾丸程度なら、装甲が薄いこの携帯型アイアンマンスーツ、MarkⅤ。その改修機であるMarkⅤverT(トウカ)なら弾く事が出来る

 

昔トニーが作ったMarkⅤよりも低性能で装甲は鉄しか使ってないMarkⅠでも防げるのだから当たり前と言っちゃ当たり前なのだが。だが、MarkⅠ程ガッチガチに装甲を固めてないので、何十秒もくらい続ければアーマーの機能が停止するか、装甲が貫かれてしまうかもしれない

 

「キャリー、リパルサーレイ出力45%に固定。二発ぶっぱなすわ。積んである改修型リアクターの状態は?」

『オールグリーンです』

「オーケー」

 

キュィィィィンと両腕のリパルサーにエネルギーが溜まっていく

 

そして、軽機関銃が火を吹く前にリパルサーレイと呼ばれるブラストを発射した

 

バシュッバシュッ!!と二発続けて発射されたそれは一発は軽機関銃を破壊し、もう一発はタイヤを吹っ飛ばした

 

キュルルルルルル!と音を立てて車がスリップし、やがて見えなくなった

 

「ひゅ~」

『目標沈黙しました』

 

さて、ここからどうしようかと考えていると、黒ワゴンが寄ってきた

 

そして、中からアリアとキンジが飛び出した

 

「おっと」

 

桃花が二人の手を掴んで片手ずつで引っ張りあげる

 

「お、重くないのか?」

「平気平気」

 

そのまま二人をバスの上へと乗せる

 

「さて、このバスの事はご存知?アナウンスしましょうか?」

「んな事してる場合か!」

 

ジョークをマジで返され、軽くへこむ桃花

 

「そうね。把握してるから大丈夫よ」

 

しっかり乗ってくれるアリア

 

「そ。バス内とバスの上は確認済み。バスの横や真ん前は一度見てる……だとすると……」

「バスの下ね。厄介な所に……」

 

アリアと桃花がギリギリの所に立ち、バスの壁を見る

 

「そんじゃ、見てくるわね」

 

と、言いながらアリアがワイヤーフックをかけてバスの下に向かって潜る

 

「遠山君は念の為に中を見てきて。もしかしたら見つけてないだけかも」

「……お前が行けばいいんじゃないか?」

「あれに一発も撃たせず無力化出来るかしら?」

 

桃花が指を指す方には、3台もの軽機関銃を積んだ車が

 

「まぁ、この姿を晒したくないってのが一番ね」

 

今の桃花はアイアンマンの姿だ。バスの上に行ったのは桃花一人。そして、途中参戦がアリアとキンジ

 

だとすると、もしかしたらアイアンマンは桃花……と、言うことがバレてしまうかもしれない。ついでに文が口を滑らすかもしれない

 

なお、文は桃花がアイアンマンスーツを持っている事は既に知っている

 

「……分かった。行ってくる」

「もし撃たれたらちゃんと隠れなさいよ?」

「分かってる。転校までは死にたくないからな」

 

キンジの手を掴んで、宙吊りにし、キンジの足がバスの中に入ったのを確認し、ゆっくりと手を離した

 

「……さて、キャリー。リパルサーは出力50%。ぶちかますわよ」

『了解しました』

 

キュィィィィンとリパルサーに再びエネルギーが溜まっていく

「トウカ!あったわ!大きなC4が張り付けてあったわ!」

「外せる?」

「大丈夫。それと、キンジは?」

「車内よ」

「車外に出ないように言っておいて。その間に解体するわ」

 

アリアがC4へと手を伸ばしたその瞬間、3台の車が軽機関銃をアリアへと向けた

 

「分かった……って神崎さん!ちゃんと捕まってて!」

桃花がバスから飛び降り、車体の後ろに腕を突き刺す

 

後部座席に座ってる生徒は居なかった

 

アリアの盾になるように位置を一瞬で調整する

 

その瞬間、軽機関銃が火を吹いた

 

「ぐぅっ……!」

カンカンカンカン!!と弾丸がアイアンマンのスーツに撃ち込まれ、弾かれていく。が、衝撃はそのまま桃花へと伝わっている

 

「トウカ!!」

「アイアンマンをナメないで……この程度の銃弾なら……神崎さんは早く爆弾を……」

『あと三十秒弾丸を貰い続けるとアーマーが危険です』

 

カカカカカカン!!と何十発もの弾丸がアーマーの装甲を削っていく

 

当然、中にいる桃花にその衝撃はダイレクトで届いている。が、アーマーの怪力と己の力を振り絞って手のひらを一台の車へと向け、リパルサーレイを放つ

 

バシュッ!!と発射されたリパルサーレイは車のタイヤを吹き飛ばし、スリップさせた

 

「射角よし……真正面……」

 

そして、手を下ろして正面に車がいることを確認する

 

キャリーが狙いを察し、アーマーのエネルギーをある一点へと回す

 

UNIBEAM(ユニビーム)!!」

 

桃花の叫びと共にアイアンマンの切り札の一つ。胸のリアクターにエネルギーを集め、発射するユニビームが放たれた

 

ユニビームは車の中心を射抜き、爆発させた

 

「ラスト一台!」

 

桃花はだいぶ薄くなった弾幕の中、手を動かして照準を定める

 

「くっ……キンジ!手が届かないから手伝っ……あの馬鹿!!」

「上に通信機みたいなやつがあった!こいつを外して……、」

 

アリアがキンジに手助けを頼もうとするが、キンジはバスの上に上がっていた

 

キンジはバスの上に着いている通信機(らしい)を剥がそうとしている

 

「この状況で上に登るなんて馬鹿じゃないの!?」

 

アリアはそう叫びながら、小柄な体から出るのであろう俊敏さを存分に使い、数秒もかからずバスの上によじ登った

 

が、その瞬間、軽機関銃の銃撃は止まった。が、代わりに銃口はアリアへと向いている

 

「リパルサー!早くっ!!」

 

キュィィィィィンとエネルギーが溜まっていくが、軽機関銃の銃口はアリアを捉え、二発の弾丸が放たれた

 

アリアは高速で足のホルスターからガバメントを抜き、車へと二発の弾丸を放った

 

弾丸は交差し、軽機関銃の弾丸はアリアの額を掠め、アリアの弾丸は軽機関銃の付け根に当たり、もう一発弾丸がエンジンを撃ち抜き、車を爆発させた

 

「……流石神崎さん。Sランクは伊達じゃないわね」

 

バスの上でアリアが額から血を流しながら気絶してるなんていざ知らず、一息つく桃花

 

「おい、アリア。しっかりしろ、アリア!」

 

バスの上からキンジの声が聞こえる

 

「ま、まさか……キャリー!アーマー解除して!」

 

桃花の声にキャリーが反応し、アーマーは逆再生されるように折りたたまれ、元のスーツケースへと戻った

 

突き刺してた手が、腕の太さが変わったことで抜け、地面に落下しそうになるが、何とか穴の端を掴み、片手でスーツケースを持ちながらよじ登る

 

「神崎さん!」

 

キンジの手の中で気絶しているアリアを見て、桃花がキンジの隣へと移動する

 

額からは血が流れている

 

その時、バスがトンネルから抜けた

 

「早く爆弾を解除して医者に……」

 

そう言いながら桃花がバスの下に潜ろうとするが、その時、バスが移動している橋の横にヘリが現れた

 

そのヘリの扉は開きっぱなしだが、その中に、伏せ撃ちの構えでスナイパーライフル……ドラグノフを構える青髪の少女が一人

 

「レキ……」

 

キンジが呟いた

 

レキ。桃花は実際に話したことは無いが、狙撃科のSランクで命中率は100%という驚異な数値を叩きだしたと聞いている

 

レキは何かを呟きながら、トントン。とトリガーを叩き、そして、引いた

 

ドラグノフから放たれたライフル弾は橋の鉄骨、ワイヤー、タイヤを全て通過し、走るバスの下にあるC4を止める金具に直撃。金具が外れ、C4が海へと投げ出され、落ち、大爆発を起こした

 

「……凄まじいわね」

 

桃花はレキのあまりの狙撃の腕に驚愕する他無かった

 

こうして、バスジャック事件は幕を下ろした

 

 

 

 

ピシュッ!ピシュッ!と糸をウェブシューターから発射する時の独特の音が響く

 

そして、その音を出している主は橋の一番高い場所に両足をつけ、さらに両手もつけてバランスを取る

 

視線の先には、一台のバス

 

「ありゃ、終わってる」

 

赤と青のタイツで全身を包んみ、覆面を着けるその人物が喋った

 

「折角海外出張でここまで来たのに。まぁ、大事にならなくて良かったケド」

 

赤と青のタイツの人物はうんうん。と頷く

 

そして、バスの上にいる一人の少女を見て覆面の下で目を細めた

 

「あの子は……それに、同じような制服の子がいるから……もしかして武偵の乗ったバスをジャックしたのか!?なんという根性の持ち主」

 

ひゅ~。と口笛を吹くその人物はその場で立ち上がった

 

「それじゃあ、僕はもう行こうかな。早くメイ叔母さんのお土産買いに行かなきゃ」

 

その人物は橋から飛び降り、水面に激突する寸前にピシュッ!とウェブシューターから糸を出し、橋の一部にくっつけ、振り子のように体をスイングさせる

 

それを繰り返してその人物は去っていった

 

タイツの背中には、蜘蛛のマークがあった




ちょっとアーマーについて解説

桃花の持ってるアイアンマンMarkⅤverTは根っからのヴィランとの戦闘を想定してないため、従来のアイアンマンより装甲はかなり薄いです。どちらかと言ったら災害時で壁を壊しながら進むようなアーマーです。なので、軽機関銃の弾丸でもかなり危ない状態でした。あと、ユニビームが武装に追加されてます

最後に出てきた人物は、もう皆さんお分かりですよね?それでは、また次回


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MarkⅥ

今回はバスジャック後の話とオリ展開の始まりです

流石にハイジャックの時に桃花を潜り込ませるのはちょっと無理があるので

あと、あのヒーローのゲスト参戦です


コンコン。と病室のドアをノックする音が響く

 

暫くして中にいる人物のどうぞ。と言う声が聞こえたのを確認して中に入る

 

「やっ、神崎さん」

「トウカ。わざわざ来てくれたの?」

 

見舞い人の桃花は怪我人のアリアが寝ているベッドの隣に置いてある椅子に座る

 

そして、手に持っている袋をもう一つの椅子に置く

 

「調子はどう?」

「この程度かすり傷よ」

 

と、言いながら桃花とあまり変わらない胸を張るアリア

 

だが、今まで留めていた前髪が降りているのが目に見える

 

既に聞いた話に、額の傷跡はもう治らないと聞いた

 

「……神崎さん、額の傷……」

「こ、この程度よく受けてるから慣れっこよ」

 

あんたは事件解決の度に生傷付けてるのかとツッコミを入れたくなるが、ぐっと抑える

 

「……多分、その傷跡を無くす事はきっと出来る。その方法を見つけるまでは我慢して?」

 

今までアイデンティティのように見せていた額だ。傷跡がついてしまってかなりショックを受けているであろうアリアに桃花はそう言った

 

「ッ……医者から聞いたでしょ?この傷跡、治らないって」

「私はアメリカのある筋に通じてる」

 

ある筋。それは、トニーの事だ

 

トニーは心臓一歩手前に破片が刺さっていたが、今はもう破片を抜き取っている

 

そんな技術があれば……と、思っていた

 

「ある筋って何よ」

「そ、そこは……秘密」

「教えなさい」

 

ニッコリとイイ笑顔で桃花の肩に手を置くアリア

 

ギリギリと万力のような力で肩を掴まれ、骨が悲鳴をあげ始める

 

「……皆そこまで言及はしなかったわよ?」

「じゃあアタシは言及する」

 

とうとう骨がHelp me!と声を上げ始めた

 

このまま黙って骨が面白い事になっても困るので、わかったわかった。と言って話す事にした

 

これを話したのは一部の教師と文だけだ

 

「絶対に他言無用よ?」

「そこら辺はちゃんと守るわよ」

 

と、アリアが言ったのを聞き、溜め息をついてから口を開いた

 

「トニー・スターク。私はトニー・スタークの昔の愛人の娘。知る人の中ではただの日本人の親戚になってる。ペッパーさんを除いてね。もし、引き取られていたら名前は桃花・K・スタークになってたでしょうね」

 

はい白状したわよ。と言ってアリアの手を肩から取る

 

そして、拳銃を抜いて後ろに向ける

 

「遠山君?大人しく出てこないとその顔面ぶち抜くわよ?」

「怖い事言うな!!」

 

ガラガラガッシャン!!と音を立ててドアが開き、キンジが姿を現した

 

「……トウカ?アタシは嘘が嫌いなんだけど?」

「私のアイアンマンはトニー……お父さんの設計図を元に作った物よ。あ、遠山君。これ誰かに言ったらSHILDに頼んで暗殺してもらうから」

「一々言うことが怖いし絶対に言わん!」

「後、病院ではお静かに」

「わーってるよ……」

 

SHILDがそんな殺し屋みたいな事をする訳が無いが、何となく脅し文句に使った事を心の中でニック・フューリーに謝罪する

 

キンジは適当に椅子を引っ張り出してそこに座った

 

「だから、私はアベンジャーズとも面識があるし、X-MENとも面識がある。ついでに、スパイダーマンやウォーマシン。他にも色んなヒーローとの面識があるわ」

 

いきなりの事にポカーンとしているアリア

 

キンジはマジか。と言った感じで驚いている

 

「遠山君は遠山の金さんの子孫だったわね?偉人の子孫が二人もこんな場所にいるなんて凄いと思わない?」

「一人は偉人って言うかヒーローだけどな」

 

キンジの冷静なツッコミ

 

ここはその通りだ。すごいと思わないか?アリア。とか言って欲しかったと思う桃花だった

 

「あと、アイアンマンの事も勿論他言無用ね。あれ、私の最大の秘密なんだから。喋ったらリパルサーでぶち抜く」

「だから一々怖いしマジでできるから余計に質が悪い!」

 

キンジってこんなキャラだっけ?と思いながらもアリアを見る

 

「……わ、分かってるわよ。誰にも言わない」

「なら良いのよ。で、今回、神崎さんは遠山君とチームアップしてた訳だけど、そこまでラブラブなの?」

 

話を変えるために違う話題を切り出す

 

ここで二人が大慌てしながらそんな訳ないと顔を真っ赤にしながら言うのが桃花の理想だったのだが、二人は押し黙った

 

(……Uh-oh.地雷だったとは)

 

予想斜め上の地雷に黙らざるを得ない。沈黙が病室を包む

 

「……アリア。これ、今回のバスジャックについての資料だ。強襲科と探偵科が調べたやつだ」

 

沈黙を破ったのは意外にもキンジだった

 

キンジはアリアに袋の中から取り出した紙の束を渡した

 

中をチラッと見てみたが、ももまんも入っていた。多分、サッと渡して帰るつもりだったのだろう

 

「そして、あの後犯人が使っていたホテルの部屋が見つかった」

「宿泊記録は?」

「改竄されてた。お陰で誰がやったのかわからん状況だ」

 

やれやれ。と言った感じで話すキンジ

 

「それには理子達が調べてくれた事が書いてある。俺のチャリジャックもな。だけど、手がかりは見つからなかった」

「でしょうね。武偵殺しは桁外れに狡猾。足跡なんて見つかるわけ無いわ」

「ち、ちょっと待って。武偵殺し?それはもう捕まって……」

「前のは誤認逮捕よ」

「ならなんで逮捕された人は釈放されないの?」

「……証拠が無いのよ。その人が武偵殺しじゃないっていう証拠が。そして、本物の武偵殺しの証拠が」

 

武偵殺しが逮捕された。それは、結構前に聞いた事だった。が、それが誤認逮捕だった

 

つまり、武偵殺しはまだお天道様の下を歩いていると言う事

 

「とりあえず、その資料には目通しとけ」

「こんなの読んでも時間の無駄よ」

「なら捨てろ」

「そうするわ」

 

売り言葉に買い言葉。険悪な雰囲気のアリアとキンジ

 

アリアが持っていた紙の束をゴミ箱へと投げ捨てる。それを見たキンジが拳を握る。内心では腹が立っているのだろう

 

桃花は紙の束をゴミ箱から回収し、自分の鞄の中に入れた

 

「……キンジ。もう出てって。済んだでしょ?」

「何がだ?」

「強襲科に戻ってから最初の事件。もう済んだから探偵科に戻っていいわよ。さよなら」

 

そんな事を話していたのか。と桃花は思ったが、とても口を開ける雰囲気では無かった

 

「何だよ……勝手なやつだな。あれだけ強引に引き込んでおいて用が終わったらそれかよ」

「なに?謝ってほしいの?それともお金が欲しいの?」

「ちょっ……二人とも……」

 

流石にこのままでは本気の殴り合いに発展しかねない雰囲気だったため、二人の間に割り込もうとする

 

「……俺を怒らせたいのか?」

「さっさと帰って欲しいのよ。一人にして」

「……あぁそうかよ。なら帰らせてもらう」

 

キンジが立ち上がって病室のドアへ歩いていく

 

「……アタシはあんたに期待してたのに……現場に連れていけばあの時みたいに実力を見せてくれると思ってたのに」

 

アリアが見たキンジの実力。桃花はすぐにキンジがHSSで何かをやったのだと把握した

 

「お前が勝手に期待しただけだろ!探偵科Eランク!それが俺の実力だ!それにもう俺は武偵を辞めるって決めてんだ!お前はなんでそんなに勝手なんだよ!」

 

キンジが声を荒らげる

 

「勝手にもなるわよ!アタシにはもう時間が無いの!」

「何だよそれ!意味わかんねぇよ!」

「うるさいわね!それにあんたが武偵を辞める理由なんて……アタシに比べれば大したこと無いに決まってる!」

「神崎さん!それに遠山君も!!」

 

これ以上は見てられない。と桃花が声を荒らげる

 

それを堺に二人が押し黙る

 

桃花はキンジが武偵を辞める理由については一つだけ心当たりがある

 

実の兄がとある事件で死んだ事だ

 

理由は分からない。が、実の兄が死んだ事を曲がりなりにも大したことでは無いと言ってはいけない

 

「神崎さん、遠山君。落ち着きなさい。興奮しすぎよ」

「ッ……」

「……」

「まず神崎さん。あなたに何があったのかは知らない。けど、ちゃんと人の気持ちも考えて。もし、あなたがそんなに焦る理由を大したことないって言われたら怒るでしょ?それに遠山君。イラつくのはよく分かったわ。けど、まずは神崎さんの話を聞いて。まだ武偵なら自分から物事は調べなさい」

 

桃花の言葉に二人が俯きながら黙る

 

暫くして、キンジが荒っぽくドアを開け、去っていった

 

「……神崎さん。あんな事言っちゃダメよ。それに、遠山君には事情があるの」

「あんな時に全力を出さない理由ってある訳無いじゃない」

「私から言える事じゃないけど、きっと遠山君はそれでずっと悩んでるの。ってか、あれは死にたくなるわね。うん」

(も、もしかして……後で死ぬほど激痛が走ったりとかするの……?)

 

アリアが真面目に考え込むが、検討違いである

 

「……もういいわよ。アイツはもう関係ない」

「……そう」

「……トウカ、悪いけど一人にして」

「……分かった。またね、神崎さん。あ、それの中身ももまんだからね」

 

そう言って、桃花は病室から去っていった

 

なにか、モヤモヤするものが胸でつっかえていた

 

 

 

 

日曜日。アリアが病院から退院するらしい

 

だが、桃花はアリアと会おうという気にはならなかった

 

キャリーに武偵殺しについて調べさせた結果、逮捕されていたのはアリアの母親だった

 

だが、まだ容疑者という立場であり、二審までには判決が下るのだという

 

アリアは恐らく、母親の為に頑張っている。多分、自分と肩を並べられるパートナーを探しながら

 

「……神崎さんはイギリスに帰っちゃうらしいし……本当にこれで良かったのかしら……」

 

桃花は気分転換に外出していた。が、気分が乗らない

 

なにか、後味が悪く、どうにかしてやりたいと思う。だが、自分にやれる事なんて無い

 

もし、推理力があったなら、武偵殺しの手がかりを片っ端から探して部屋の中で3Dワイヤーを使いながら一人で黙々と考えていただろう

 

「……はぁ」

 

溜め息を付きながら桃花は街を歩く

 

空はどんよりと曇っていた

 

 

 

 

一人の少女が、白色のワンピースを着てフラフラと街中を歩いていた

 

その少女は先日、桃花が助けた少女だった

 

フラフラと歩道を歩いていく。バッグも持っておらず、ポケットの中には何も入っていない。が、耳にイヤホンマイクのような物をつけていた

 

「おい、あいつ……」

「あぁ。この間の……」

 

自分の前方で五人の男が何かコソコソと話していた

 

少女はその五人の男が自分を無理矢理どこかに連れていこうとしていたチャラ男達だと頭の中で理解した

 

その五人が下衆な笑いを浮かべながら少女に近寄ってくる

 

「よぉ、久し振り?」

「……」

 

少女は黙っている

 

「今日はあの嬢ちゃんもいないしそこに路地裏もある……ちょっと来い」

 

一人が少女の手を握り、グイッと路地裏に向けて引っ張る

 

少女は無抵抗のまま路地裏に連れ去られていく

 

その時、イヤホンマイクから声が聞こえた

 

『力試しには丁度いい。殺せ』

 

イヤホンマイクから聞こえる声

 

その声を聞き、少女は

 

「分かりました」

 

それだけを呟いた

 

その瞬間、少女の両手の甲から三本ずつ……計六本の、銀色に光る鉤爪がシャキン!と音を立てて皮膚を突き抜いて生えた

 

 

 

 

「……今日は何しようかしら?」

 

桃花はまだそこら辺をブラブラとしていた

 

特にやることが無い。文も今日は依頼のため忙しい。理子には何故か連絡がつかない

 

「……漫喫にでも行きましょうかね」

 

じゃあ漫画喫茶にでも行こうと決まったらしく、財布の残金を確認してから歩を進める

 

その時、

 

「ギャァァァァァァァァ!!」

 

断末魔が聞こえた

 

「ッ!?」

 

その声を聞いた瞬間、頭を切り替え、声の聞こえた方に走る

 

数回道を曲がると、路地裏がある場所についた

 

その路地裏からは赤色の液体が少しだけ見えた

 

それを見た瞬間、足に着けたホルスターからHK45を抜き、路地裏へと突入する

 

「動くな……ッ!?」

 

路地裏の中は正しく地獄絵図だった

 

最初に見えたのは腕。だが、それだけ

 

路地裏を奥に奥にと目をやっていくと、足、胴体等が散乱していた

 

それを見た瞬間、胃の中のものが逆流しそうになるが、なんとか抑える

 

鉄臭いそこをHK45を構えながらゆっくりと歩いていく

 

その時、何かを蹴っ飛ばした

 

サッカーボールのように蹴っ飛ばせたそれは……

 

「な、生……」

 

生首。人の生首だった

 

武偵として色んな現場を見てきたが、こんなバラバラ殺人は今まで見たことがない

 

蹴っ飛ばしたのが生首だと認識した瞬間、胃の中のものが逆流。抑えようとしたがとても抑えられず、吐き出した

 

「けほっ……うぇっ……」

 

地面に四つん這いになり、胃の中のものを吐き出す

 

元人だったものを見てそれは失礼だとは思ったものの、年頃の女子に耐えれる風景ではとても無かった

 

「おえっ……はぁ……はぁ……」

 

胃の中のものを出し終わり、多少楽になった

 

壁に手をついて立ち上がる。その時、

 

「た、助け……ぐげっ」

 

ドスッ!という音と男の声が聞こえた

 

気力を振り絞り、HK45を構えて走り出す

 

そして、路地裏のかなり奥の方。音の発生源はあった

 

最初に見えたのは、鋼鉄の鉤爪で頭を貫かれ、壁に押し付けられている男

 

「ウルヴァ……リン?」

 

鋼鉄の鉤爪……三本の鉤爪を生やす人物(ミュータント)はウルヴァリンしか知らない

 

が、その鉤爪が生えてる腕は、華奢だった

 

そして、その鉤爪で頭を貫いているのは

 

「あなた……あの時の……」

「ッ!?」

 

先日助けたあの少女だった

 

白いワンピースは真っ赤に染まっている

 

とても信じられなかったが、目の前の光景は現実だ

 

「その鉤爪を仕舞って手を上げて!」

 

HK45の銃口を少女に向ける

 

少女は鉤爪を男だったものから抜いた

 

「そうよ。そのまま両手を上げて。じゃないと撃つわ」

 

少女が何か一言二言呟いた

 

その瞬間、少女が鉤爪を構えて桃花に向けて走り出した

 

「チッ!」

 

舌打ちをしながら拳銃のトリガーを引く

 

狙うは少女の両足

 

ガウンガウン!!と銃声が二回響き、少女の両足へ弾丸が吸い込まれていく

 

が、弾丸はガキンッ!!と音を立てて弾かれた

 

「なっ!?」

 

予想外の展開に驚くが、サバイバルナイフをホルスターを着けている足とは逆の足から抜き取り、構える

 

そして、接近して放たれる鉤爪をよく見て避け、サバイバルナイフで鉤爪の生えた手を打ち上げようとサバイバルナイフを鉤爪に向けて振るう

 

鉄の刃物同士ならキンッ!!と音を立て、鉤爪が真上へ弾かれるはずだった

 

しかし、予想は外れ、スッ。とナイフは鉤爪を通過した

 

振るったナイフが爪によって真っ二つに切られるという形で

 

「そんなっ!?」

 

予想外の展開に動きが止まる

 

『トウカ様。あれはアダマンチウムだと予測されます』

 

アダマンチウム。それはキャプテンアメリカの盾に用いられるヴィブラニウムと鉄を合わせて合金した金属を再現しようとして出来た金属である

 

鉄製のナイフや弾丸では傷一つ付けることなんて出来ない

 

(アダマンチウム!?そんなの勝てる訳が……)

 

驚愕で動きが止まっている桃花に向けて少女は腕を振るい、桃花の首を掴んで持ち上げ、壁に叩きつけた

 

「がっ……」

 

首を万力のような力で締め付けられ、息が出来ない

 

少女は無慈悲にアダマンチウムの鉤爪を桃花の心臓向けて突き出す

 

(や、殺られ……)

 

鉤爪は桃花の服を切り裂き……そこで止まった

 

(……え?)

 

殺そうと思えば殺せた筈

 

よく見ると、鉤爪を放とうとした腕には白色の糸のような物がくっついている

 

さらにピシュッ!と音が響き、もう片方の、桃花の首を掴んでいる手に糸がくっつく

 

少女が桃花から手を離してもがく。その隙に桃花は横に避難した

 

次の瞬間

 

Look out!Here comes to the SPIDER=MAN!!(見ろ!スパイダーマンが来たぞ!!)!!」

 

赤と青のタイツを着た人物が勢い良く路地裏を作ってるビルの上から降ってきて、少女を蹴り飛ばし、桃花の横に着地した

 

「よっ、大丈夫?トウカ」

「ス……スパイディ!?」

「あなたの親愛なる隣人、スパイダーマン。只今参上ってね」

 

ニューヨークを守るヒーローの一人、蜘蛛の力を手にした超人、スパイダーマンが、そこに居た




ゲストとして皆さんの親愛なる隣人、スパイダーマンが登場です

僕が好きなヒーローはアイアンマンとスパイディの二人なので、ちょっと無理をしてスパイディには来てもらいました。勿論ウルヴァリンも好きですし他のヒーローも好きですよ?

スパイディはディスク・ウォーズ:アベンジャーズでも日本に来てたので、旅行という設定なら無理なく出せるんじゃないかと思ってゲストとして出しました

あと、お気に入りがジワジワ増えていって嬉しいです


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MarkⅦ

前回の続きからです

あと、ここのスパイディはアメコミの設定とか映画(アメイジング)の設定とかマヴカプとかなんか混ざってゴチャゴチャしてますが、基本は映画の方の設定でやらせてもらいます

ついでにウルヴァリンの方も色々とゴチャゴチャしてますが気にしないでください


「スパイディ……何でここに?」

「ん~……旅行かな?」

「ここは観光するような場所じゃないわよ?」

「それくらい分かってるさ」

 

軽口を叩く二人。だが、その前方でスパイダーマンが蹴っ飛ばした少女が起き上がった

 

「スパイディ、チームアップよ」

「了解!」

 

桃花が拳銃を抜き、スパイダーマンは両足を広げて体勢を低くし、片手を地面に付ける

 

そして、鉤爪を構えた少女が動いた

 

動いたのを確認し、桃花がHK45の引き金を三回引く

 

弾丸は少女の胸に二発、腹に一発向かっていく

 

少女は走りながら鉤爪を振るって弾丸を切り裂いた

 

「Webswing~!」

 

スパイダーマンは走り出しながら壁にウェブシューターから発した糸をくっつけ、ジャンプ

 

そのまま振り子のように動き、速度をつけて少女を蹴る

 

が、少女はスパイダーマンの蹴りを両手で防ぐ。ガキンッ!!と音がするが、スパイダーマンはお構いなしに少女の手を蹴って後ろに飛び、壁に引っ付く

 

そのまま両手を離して地面に着地し、両手のウェブシューターから糸を大量に発射し、少女を捕まえる

 

Gotcha(捕まえた)!」

 

そして、そのまま飛び上がり、少女の体を宙に浮かす

 

「Ultimate web throw!!」

 

そのまま空中で回転しながら、少女を振り回し、地面へと叩きつけた

 

「ッ……!」

Havin' fun ya(楽しんでくれたかい)?」

 

スパイダーマンはスタッと着地する

 

「いや~、彼女、すっごく重いね~。僕より年下にしか見えないし僕より背はちっちゃいけど」

 

スパイダーマンは軽口を叩くが、手を少しプラプラとさせている

 

手首かどこかに軽く負担がかかったのだろうか。それとも腕慣らしは出来たと言いたいのだろうか

 

「……」

 

が、少女はムクリと起き上がった。傷一つない体で

 

「……常人ならノックアウトするレベルで叩きつけたんだけどなぁ」

「援護射撃するわ!スパイディはそのまま!」

 

ガウンガウン!!とHK45が火を吹く

 

マガジンの弾を全て撃ち切り、スライドがホールドオープンする。すぐに懐からマガジンを取り出し、差し込んでホールドオープンを解除する

 

放たれた弾丸は何発かが少女の皮膚の下へと食い込んだが、謎の回復力で一瞬で傷が治り、弾丸が肉に押し出された

 

Get ready(覚悟しろよ)!」

 

スパイダーマンが壁に張り付く

 

「Maximum spider!!」

 

そして、壁から少女に向かって飛び、蹴り付ける

 

そのまま地面に着地し、さらに飛び上がりながら殴る

 

そして、壁に張り付き、また飛んで蹴り付ける。さらに着地し、飛び上がって殴りつけてを何度も何度も繰り返す

 

その度にウェブシューターから放たれる糸が少女を固定する

 

Oopsy(悪いね)!」

 

さらにスパイダーマンが渾身の力で少女を蹴り飛ばした

 

「痛ッ!!」

 

が、スパイダーマンが蹴り飛ばした足を抑える

 

「こりゃマジでアダマンチウムっぽいよ?」

「そのようね」

 

蹴り飛ばされた少女はまた何事もなかったかのように起き上がる

 

「ウルヴィーでもちょっとは痛がるよ?」

「弾丸だって効いたはずよ。あれ?効かなかったかしら?」

「うん。弾かれるか当たってもすぐに回復されるか。貴重な盾だよ」

「それ本人の前で言ったら三枚下ろしよ?」

「居ないからいいの」

 

軽口を叩き合うが、実質この状況はピンチ以外の何物でもない

 

相手はアダマンチウムの骨格とアダマンチウムの鉤爪。さらに弾丸を受けてもすぐに傷が再生した事から、ウルヴァリンのヒーリングファクターまで持っている。対してこっちは意味のない鉄製弾丸。真っ二つのサバイバルナイフ。そして蜘蛛超人が一人

 

しかも蜘蛛超人の力も大して効かない

 

「……さてさて、どうしよう?アダマンチウムの骨格なら彼女の体重は八十キロはあるんじゃない?」

「女の子に体重の話は厳禁」

「はいはい」

 

軽口を叩きながらも気は緩めない

 

どうやって無力化するか。それを考える

 

が、不意に少女が何かを呟いた

 

そして、一言二言呟き、二人に向かって突っ込んできた

 

『ッ!?』

 

二人が同時に身構える。が、少女は飛び上がり、二人を飛び越えて、路地裏の奥へと走り去る

 

「追うよ!」

「分かってる!」

 

二人が少女を追う

 

が、少女は右へ左へと走って行き、壁をも乗り越える

 

「僕が追うよ!」

「スパイディ!私は武偵校の女子寮にいるわ!」

 

ピシュッ!ピシュッ!っとスパイダーマンがウェブスイングで移動し、少女を追う

 

「All right!!」

 

スパイダーマンはその言葉を残して少女を追っていった

 

「……これはあれを……アイアンマンを使う事になるかも」

 

桃花は考えながらも路地裏を抜け出し、警察に通報。警察を待たずに桃花は武偵校の女子寮まで走った

 

 

 

 

次の日、桃花は学校を休んだ

 

スパイダーマンはその日の内には女子寮まで来なかった

 

そして、今日はアリアがイギリスに帰る日。なるべく少女の件は早くケリを付け、見送りに行きたかった

 

恐らく、彼女はX-23……ローラのようにウルヴァリンのクローン……もしくは生体実験により生み出されたウルヴァリンと全く同じ力を持つミュータントだと桃花は考えていた

 

ウルヴァリンのミュータント能力として上げられるのは主に二つ

 

一つは鉤爪。そして、もう一つがヒーリングファクター

 

この二つだけなら、アイアンマンでも十分なんとか無力化が出来るかもしれない。リパルサーやユニビームを直撃させ、脳震盪でも起こしてやればその時点で無力化できるかもしれない

 

スパイダーマンにも出来ない事は無いが、如何せん彼は拳と糸を主体に戦う、ミュータントでは無いヴィラン。超人的な力を持った人間等の相手が得意分野だ

 

グリーンゴブリンやエレクトロ。彼等を相手にスパイダーマンは戦ってきたが、どれもヒーリングファクターや硬すぎる皮膚や骨格は持っていない。リザードマンがヒーリングファクターに近い能力を持っていたが、それに対しては解毒剤というモノがあった

 

しかし、今回は弱点というものが相手にはない。頭を切り落とそうが、骨以外全て消しさろうが、きっと相手はすぐに復活する。まぁ、ウルヴァリンを倒しているヴィランは多々居るのだが

 

パンチやキックも、相手のタフさのせいで先にスパイダーマンの方が手や足を痛めてしまう

 

だが、アイアンマンは硬すぎる装甲を持つロボットや宇宙人を相手に……さらには手加減されてたとは言え、あのマイティ・ソーとも渡り合えるアーマーだ

 

今回の戦いにおいてはアイアンマン程無力化しやすいモノはない

 

「……準備完了」

 

桃花は何時ものようなちょっと可愛い系の服ではなく、インナースーツのような物を着込んでいた

 

「リアクターセットっと」

 

さらに胸元に丸い装置を着ける。その装置の真ん中には逆三角形の物が取り付けてある

 

これはMarkⅤverTに直接取り付けてあった(パクってきた)改良型リアクターだ。それをMarkⅤからぶっこ抜いて来たのだ

 

「これで本当に準備終わり」

 

後はスパイダーマンを待つだけだった。が、丁度その時、コンコン。と窓が叩かれた

 

そして、閉めていたカーテンを開ける

 

そこには、逆さ吊りになったスパイダーマンが

 

スパイダーマンが逆さのまま手を上げる

 

窓をガラッと開ける

 

「早く入って。見られたら大変よ?」

「そうだね。とっとと入るよ」

 

スパイダーマンが逆さのまま窓のサンに手を当て、中に入る

 

「お~、年頃の女の子の私室だ~」

「ぶっ叩き出すわよ?」

「ちょっ、それだけは勘弁」

 

軽口を叩き合う桃花とスパイダーマン

 

「それじゃあ、色々と教えてくれる?あ、ジョークは抜きで」

「はいはい。まず、あの子が行ったのは研究所だったよ。しかも、飛びっきりヤバそうな」

「……違法研究所ってトコかしら?」

「そんなところ。で、目的は最強の『兵器』を作り出すことらしいんだ」

「最強の……『兵器』ですって?」

 

桃花が聞き返す

 

「どうもそれが『生物兵器』……要するに彼女らしいんだよ」

「何ですって?」

 

桃花の顔が険しくなる。が、スパイダーマンは話をすすめる

 

「ウルヴィーは第二次世界大戦にも出てたからね。さらにウルヴィーの遺伝子と僕の遺伝子を組み合わせてヒーリングファクター持ちで怪力持ち……さらにアダマンチウムの骨格と鉤爪を持ち合わせた兵器を作る事を目的にしてたらしいんだ」

「……あなた、何安々と遺伝子渡してるよ」

「いや、いつ取られたんだろ?ほんとマジで」

 

ハハハと苦笑するスパイダーマン

 

桃花がジト目でスパイダーマンを見ると、スパイダーマンは苦笑しながらそっぽ向いた

 

「こっち向きなさいよ」

「嫌です」

 

それでもそっぽを向くスパイダーマン

 

「そ、そんな事より。トウカ、これからどうするの?僕は……あの子をどうにかしたい」

「そんなの私もよ。武偵だもの。見逃せないわ」

「なら行こう。チームアップだ」

「分かってるわ」

 

桃花はそう言い、指をパチンと鳴らした

 

その瞬間、部屋にあったキャリーバッグが一人でに動き、開いた

 

キャリーバッグの中はタイルのようなもので敷き詰められており、人が一人乗れる大きさになっている

 

そこに桃花が乗り、パチンともう一度指を鳴らした

 

その瞬間、開いたキャリーバッグから腕が一つ丸っと入るような機械が二つ飛び出した

 

「うぉっ!?」

 

そこに桃花が片手ずつ手を突っ込む

 

『承認。アーマーを装着します』

 

キャリーの声が聞こえると同時に赤と金の装甲が着いた機械が大量に飛び出した

 

それらが桃花の体に装甲をくっつけ、ボルトやネジで自動で固定していく

 

腕を突っ込んだ場所からは腕の装甲が腕にくっつき、段々と赤と金の装甲が桃花を包んでいく

 

最後に頭部装甲が展開され、フェイスガードが装着される

 

『MarkⅢ改、装着完了』

 

キャリーの声を聞いてから、桃花が手を握ったり開いたりして可動を確かめる

 

「問題無し。さぁ、スパイディ。行くわよ」

「……あぁ、行こう。アイアンマン」

 

スパイディが窓から飛び出し、アイアンマンとなった桃花もそこから飛び出す

 

そして、空中で両手両足についているリパルサーが火を吹き、桃花の体を宙に浮かす

 

さらにリパルサーの出力は上がり、桃花に推進力を与え、桃花を空へと飛ばした

 

「スパイディ、あなたの速度に合わせるわ」

「ありがたいね。僕は原始的な移動しか出来ないから」

「背中に乗ったら運んであげるわよ?」

「女の子に送ってもらうのはプライドに関わるからね。僕が運ぶのは別にいいんだけど」

「じゃあ今度タクシー替わりに使わせてもらうわ」

「それじゃあ僕はスパイダーマンタクシーとでも名乗った方がいい?」

「そうね。いいんじゃない?」

「じゃあニューヨークに帰ったら考えてみようかな」

 

ジョークを言いながら二人のヒーローは一点の目的地へと向かっていく

 

 

 

 

とある研究所

 

そこの扉が、勢い良く外れ、向かいの壁へと激突した

 

そして、そこから入ってくるのは二人のヒーロー

 

「Look out!Here comes to the SPIDER=MAN!!」

 

一人は、蜘蛛の力を手にした超人、スパイダーマン

 

「さぁ、パーティーの時間よ!!」

 

もう一人は、赤と金の装甲を身につけた鋼鉄のヒーロー。アイアンマン

 

「……って、何も無いじゃない」

「中は知らないよ?情報集めで精一杯だったから」

 

二人は中を見渡すが、中は広いホールが有るだけであった

 

一応、二人の真ん前に扉らしきものがある

 

が、その時スピーカーらしきものから声が響いた

 

『待っていたわ。スパイダーマン。そして、アイアンマン』

「……キャリー、変声期オン」

『かしこまりました』

 

桃花がボイスチェンジャーの機能をオンにする

 

「待っていた?僕達を?」

「オイオイ、待ち合わせ場所にしちゃあ質素過ぎないか?」

「ファ!?」

「ボイスチェンジャー」

 

コソっと驚いているスパイダーマンに耳打ちをする

 

このボイスチェンジャーで使っているボイスはトニーの物だ

 

桃花がアイアンマンである事は秘密であるため、こういう機能を予め取り付けておいたのだ

 

『じゃあここを貴方達の墓場にするっていうのは?そうしたら賑やかになるでしょう?』

「なりそうだな。主に幽霊のせいで」

「じゃあここは生粋の心霊スポットになっちゃうな」

『大丈夫よ。人を近寄らせないから』

 

顔も見えない相手との軽口が続いていく

 

『それじゃあ、私の研究の成果の一つを紹介するわ』

 

その声と共に壁の一部がスライドし、そこから巨大な生物が現れた

 

その生物の体はかなり奇怪て、頭はワシ。体はゾウらしきもの。尻尾が蛇。足はライオンだった

 

『合成獣キメラ。どう?素敵じゃない?』

「……そうだね。呆れちゃうほど」

 

失笑するスパイダーマン

 

対して、ヴィランや人外の相手をあまりした事が無い。そのため、かなり緊張している

 

そのため、スパイダーマンのような反応をする事が出来なかった

 

「アイアンマン!君は先に行け!」

「スパイダーマン!?」

「この程度でエネルギーを使っちゃダメだ!ここは僕が受けおう!」

 

二人でやった方が早く片付くのでは……と言いたかったが、その言葉は喉の奥に詰まった

 

「あの子は君の知り合いなのだろう?二人で話をつけてこい!」

 

そのスパイダーマンの言葉を聞き、桃花は頷いた

 

「分かった!死ぬなよ!!」

「この程度じゃあ死なないさ!」

 

桃花が真ん前にある扉を飛行する形でぶち破り、突き進んでいく

 

スパイダーマンは豪快だなぁ。と思いながらもキメラの方を見る

 

「僕はこう見えてもゲテモノ相手は初めてじゃないからね」

 

スパイダーマンは身構え、こう言った

 

「You've got a black belt in stupid if you think you can beat me!?」

 

僕を倒す事が出来るなんて、馬鹿何段?と

 

かつて、とある格闘家に言った言葉をそのままそっくり、目の前のキメラに言い放った

 

 

 

 

ドガン!!と桃花は真っ正面の扉を何個も何個も突き破った

 

そして、最後に行き着いたのは何も無い部屋

 

そこに、あの少女は居た

 

「……やっと見つけた」

「……アイアンマン。いや、香月桃花」

「……バレちゃってたか。変声期の電源切って」

 

桃花はボイスチェンジャーの機能をオフにし、フェイスガードを上に上げ、顔を晒す

 

「わたしの主の命令で……あなたを殺します」

 

シャキン!と少女の手から鉤爪が姿を現す

 

「そう殺られるとでも?」

「殺らなきゃ……わたしは……」

「……良いわ。止めてあげる。あなたを」

 

少女の悲しそうな顔を見て、ガシャン!と音を立ててフェイスガードが降りる

 

アイアンマンのフェイスガードの目が青く光り、胸のリアクターが一段と強く輝く

 

「ねぇ、あなたの名前は?」

 

桃花は手のリパルサーを少女に向けて聞いた

 

少女は体勢を低くし、口を開いた

 

「XX-1」

「可愛くない名前ね」

「分かってます」

 

XX-1はキンキンッ!とアダマンチウムの鉤爪同士を当てて音を鳴らし、桃花へ向けて走り出した




スパイディの台詞は殆どマヴカプ3からです

あとXX-1が皮膚で弾丸を弾いてますが、ウルヴァリンx-men:zeroでウルヴァリンがマシンガンの弾を弾いてた描写があったので、それを使いました。でもsamraiの方だとショットガンとか拳銃とか普通にくらってるんですよね。なんでだろう?

でわでわ、また次回


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MarkⅧ

今回でXX-1の話は終わりです


「鬼さんこちら~手の鳴るほうへ~ってね」

 

ピシュッ!ピシュッ!とウェブシューターから糸が出る音が何度も響く

 

スパイダーマンはキメラの周りをウェブスイングで飛び回っていた

 

(それしても困ったな……図体デカすぎ)

「ほらほら!ナマケモノでももっと速く動くよ!」

 

スパイダーマンがウェブスイングで移動しながら、さり気なく蹴りや拳を叩き込むが、キメラは多少もがくだけだ

 

「ねぇ君、目が疲れてない?ほら、ウェブアイマスクをプレゼント!」

 

キメラの真ん前に移動したスパイダーマンがウェブボールをウェブシューターから発射し、キメラの目を糸で塞ぐ

 

「それじゃあついでにマッサージもしてあげよう!」

 

さらにスパイダーマンはキメラの真っ正面の壁に張り付いた後、キメラの眉間に両手のウェブシューターから発射した糸をくっつけ、思いっきり引っ張ってパッと離す

 

「Webstrike!!」

 

弾丸のように飛んでいったスパイダーマンはキメラの眉間に思いっきり蹴りを放った

 

そのまま眉間を足場にして飛び、ウェブスイングで移動してから天井に張り付く

 

「どう?気持ちよかったでしょ?お代は要らないよ」

 

逆さになったままスパイダーマンがジョークを口にする

 

キメラは暫くもがいた後、前足の爪で糸を剥がしとった

 

「Uh-oh.結構本気だったんだけどなぁ」

 

スパイダーマンはそう言いながら、天井に糸を張り付け、ウェブスイングで移動を始めた

 

 

 

 

「リパルサー出力100%!最初から全力よ!」

『加減無しで良いのですか?』

「相手はアダマンチウムよ!油断したらこっちが殺られるわ!」

 

キュィィィィィンとリパルサーへとエネルギーが溜まっていく

 

改良型リアクターは人生五十回分の心臓を動かせるというパラジウムを動力源としたリアクターよりも遥かに出力は上がっている。ココナッツ味とメタル味のそれはMarkⅢに積むにはオーバースペック過ぎるのだが、このくらいのエネルギーと出力が無ければXX-1とはまともに殴り合えもしないだろう

 

桃花が両手のひらをXX-1に向け、リパルサーからリパルサーレイを放つ

 

が、XX-1はそれをひらりとかわしてアダマンチウムの鉤爪を構えながら突進してくる

 

「連射よ!」

 

桃花の声に反応してキャリーがリパルサーレイを連射モードへ変える

 

そして、両手のひらから威力は下がったものの、何発ものリパルサーレイが放たれる

 

か、XX-1は両手をクロスしてリパルサーレイを防御しながらも桃花へ突っ込んでくる

 

「これでも貰っときなさい!」

 

桃花のアーマーの右腕のギミックが作動し、そこから三発のミサイルが姿を現す。そして、それが火を吹き、XX-1に直撃……するかと思いきや、XX-1はその三発のミサイルがを鉤爪で切り裂いた。そして、爆煙がXX-1の視界を塞ぐ

 

「チャンス……転送!」

 

桃花が右手を伸ばし、その手を広げる

 

そこに青色の光が現れ、段々と形を成していく

 

その形は、超巨大な銃

 

PROTON CANNON(プロトンキャノン)!!」

 

超巨大な銃……プロトンキャノンからユニビームに似た……しかし、それよりも極太のビームが発射された

 

ズガガガガガ!!と真っ正面に居たXX-1ごと桃花の真っ正面の壁をプロトンキャノンが削る

 

そして数秒の照射が終わり、プロトンキャノンか何処かへ転送された

 

プロトンキャノンの射線には、両手をクロスしたXX-1が

 

その手は焼けただれ、それどころか全身が焼けただれてる

 

が、その体は段々と元通りに戻ってきている

 

「……ヒーリングファクター。本当に厄介ね」

 

プロトンキャノンでも気絶させられなかった事に舌打ちをする

 

「……ちょっと嫌な雰囲気になってきたわね」

 

フェイスガードの下の顔は、いつも以上に悔しそうで、悩んでいた

 

 

 

 

「いい加減お寝んねの時間だよ!?早く寝ないと大きくなれないよ!?」

 

スパイダーマンはジョークを口にしてるが、実は物凄く苦戦している

 

自分のウェブストライクは余りダメージにならず、かと言ってアルティメットウェブスローをしようにもスペースが足りない(持ち上げる事はギリギリできる)

 

マキシマムスパイダーは連続ウェブストライクだ。もう一つ、クローラーアサルトという連撃もあるが、そっちは対人戦闘用だ

 

「下に参りま~す」

 

スパイダーマンがキメラの後ろに回り込み、四本の足全てに糸をくっつける

 

「日本でいうナワヒキだ!そぉれ!!」

 

それをスパイダーマンが思いっきり引っ張る

 

車すら持ち上げられる腕力で足を引っ張られたキメラはバランスを崩され、顔面から地面に激突する

 

「いえ~い、僕の優しょあべし」

 

バンザーイ。とかふざけたことをしてたら尻尾の蛇に鞭打ちされて吹っ飛んだスパイダーマン

 

「Uh~……頭がクラクラするよ」

 

壁に叩きつけられたスパイダーマンであったが、頭を抑えながら立ち上がった

 

そして、ウェブスイングで再びキメラの周りを飛び回った

 

「おっと、ウェブカートリッジも変えておかなきゃ。そろそろウェブが切れるかもしれないし」

 

スパイダーマンは空中で器用にウェブシューターからカートリッジを外し、新たなカートリッジを付ける

 

「さて……どうしようかな」

 

スパイダーマンはキメラの攻撃を避け続けながら、考える

 

 

 

 

「くっ!相手が悪い!!」

 

XX-1に不覚ながらも接近された桃花は自分の反射神経を頼りにXX-1の手で振るわれるアダマンチウムの鉤爪を避ける

 

こっちの装甲はチタン合金。普通に考えたらかなり堅い装甲なのだが、相手はヴィブラニウム合金には劣るものの、それ以外の金属なら切れないものの方が少ないアダマンチウム製の鉤爪

 

もし装甲に鉤爪が当たったら。それは紙同然に装甲が切り裂かれることを意味する

 

「キャリー!あれは撃てる!?」

『はい。ですが、一発しかありませんよ?』

「構わないわ!」

 

桃花がXX-1にリパルサーレイを撃って吹っ飛ばす

 

リパルサーレイが当たった部位が火傷をおってるのが目に見えるが、すぐに再生する

 

その僅かな間にアイアンマンスーツの腕の一部が動き、赤色のレンズが現れる

 

「レーザーカッターよ!受けきれる物なら受けきってみなさい!」

 

その赤色のレンズから光の速さのレーザーが発射される

 

「くっ!」

 

XX-1は鉤爪でそのレーザーを防ぐ

 

反応が遅れ、胸元が焼けただれ、骨格まで焼かれたが、アダマンチウムはそれをいとも簡単にそれを防いでいた

 

「嘘でしょ……」

 

XX-1の鉤爪は殆どの金属を……下手をしたらこの部屋を切り裂ける程のレーザーカッターを防いでいた

 

桃花は知らない事だが、同じくアダマンチウムの鉤爪を持つウルヴァリンはその鉤爪でサイクロプスの建物を丸ごと切断する事だって可能なオプティック・ブラストを長時間防ぎきった事がある

 

それと全く同じものであるXX-1の鉤爪がオプティック・ブラストより出力の低いレーザーカッターを防いだとしても何ら不思議ではない

 

そして、レーザーカッターの照射が終わり、腕からカートリッジが排出される

 

XX-1の鉤爪は赤くなり、かなりの熱が溜まっているのが目に見えて分かったが、形状は全く変わっていない

 

その鉤爪をXX-1は構え、桃花へと突っ込む

 

「ユニビーム!」

 

アイアンマンの胸部からユニビームが放たれる

 

XX-1はユニビームを片手の鉤爪で受け止め、弾く

 

そのままXX-1はさらに桃花へと突っ込む

 

桃花はすぐにリパルサーレイで迎撃する

 

が、XX-1は片手の鉤爪を地面に刺し、もう片方の手でリパルサーレイを受け止めた

 

鉤爪を抜き、桃花へと肉薄した

 

「ッ!」

「終わりです」

 

アイアンマンの腹部にXX-1の拳が当てられる

 

カンッという音が響いたが、すぐにドスッ!という肉を刃物が貫く音が鈍く響いた

 

 

 

 

「……ごめんねキメラちゃん?あまり残酷な事はしたくなかったけど……トウカが心配だからね」

 

スパイダーマンはウェブスイングを止め、キメラの目の側に糸をくっつけた

 

「目は閉じておいてよ!Webstrike!!」

 

そのままウェブストライクでキメラの目に思いっきり飛び蹴りを放った

 

瞼は咄嗟に閉じられていたため、失明はギリギリ無いだろう

 

スパイダーマンは悶えるキメラの下に潜り込み、腹部に二本の糸をくっつける

 

「もう一発!」

 

さらにそこでウェブストライクを使い、キメラの腹部に全力全開の蹴りを撃ち込む

 

キメラの苦しそうな鳴き声と共にキメラの体が宙に浮く

 

「Chance!」

 

キメラの体に糸をくっつけ、傍の壁に離れる

 

「Maximum spider!!」

 

そのまま辺りを飛び回りながらキメラを蹴って、さらに殴る

 

その度にキメラに付けられ、絡まっていく糸は徐々にキメラを空中に固定していく

 

「蜘蛛の巣完成!」

 

そして、何十回もの壁と壁との往復の後、キメラを中心に蜘蛛の巣が完成した

 

さらにスパイダーマンはキメラの腹に糸をくっつけ、限界まで引っ張る

 

「これで倒れてくれよ!!」

 

限界まで引っ張った糸をパッと離した

 

限界まで引っ張られた糸がゴムのように一気に収縮し、スパイダーマンの体を弾丸の如く打ち出した

 

浪の人間では目で追うのがやっとな速さで打ち出されたスパイダーマンはキメラにその速さを全く衰えさせず、蹴りを放った

 

ドゴォッ!!というとても人がなにか生き物を蹴って放たれる音ではない音が響く

 

それと同時に糸がスパイダーマンの蹴りの威力に耐えきれず、キメラを手放した

 

体が自由になったキメラだったが、余りの威力の蹴りで意識を手放し、壁に激突した

 

ドンッ!という音と共にキメラが地面に落ちる

 

「お~い、起きてるか~い?」

 

トントン。と頭を叩くが、キメラはびくともしない

 

「……よし、トウカの邪魔しちゃ駄目だろうし僕は……」

 

スパイダーマンは自分が入れそうな空気口を見つけると、そこに入っていった

 

 

 

 

「ッ……げほっ!」

『トウカ様!』

 

フェイスガードの下で逆流してきた血を吐き出す

 

フェイスガードの下が真っ赤になるが、視界は変わらない

 

「……今から病院に行けば助かります。速く病院に行って下さい……」

 

ボソっとXX-1はアイアンマンのヘルメットに顔を近づけそう呟いた

 

「……あなた」

 

アイアンマンのフェイスガードの下に映るモニター越しに見たXX-1の顔は今にも泣きそうだった

 

そっと鉤爪を抜こうとするXX-1の手を上から押さえつける

 

「え?」

「悪いわね。あまり出血したくないから」

 

栓の代わりになっている鉤爪を押さえてなるべく出血を抑える

 

今にも悶えたい痛さが腹から襲ってくるが、声を出さずに我慢する

 

「あなたはこのままでいいの?」

「このままって……?」

「ここのマッドサイエンティスト共に兵器として扱われるままで。それでいいのかって聞いてるの」

 

喋る度に痛みが襲ってくるが、我慢する

 

「……でも、わたしは兵器にされるために生み出されて……」

「あなたは人間よ。あ、ミュータントか。どっちにしても……兵器にされるなんて間違ってる……げほっ」

 

再び胃から血が逆流し、口から吐き出される

 

その度にXX-1は泣きそうな顔をする

 

「で……あなたはこのままでいいの?あのマッド共の言いなりになって人を殺し続ける感情の無い兵器のままで……それでいいの?」

「……嫌ですよ。そんなの」

 

XX-1の口から溢れたその言葉を桃花は聞き逃さなかった

 

「でも、わたしの中にはナノマシンが……あの人達の気分一つでわたしは殺されるんです」

 

少女が言ったそれを、桃花は黙って聞き、口を開いた

 

「その件については大丈夫みたいよ?」

「え?」

『あっあ~……おっ、やっと声が出た。聞こえるかい?アイアンマン』

 

スピーカーからここに入ってきた時に聞こえた女性の声ではなく、スパイダーマンの声が聞こえた

 

桃花は頷いた

 

『かなり重症みたいだね?』

「とっとと要件話して。クラクラしてきた……」

『あ、ごめん。えっと、研究所の人達は全員糸で鎮圧しておいたよ。なんかナノマシンの機能をどうたらこうたらするスイッチとかあったけど』

「ぶっ壊しといて」

『オーケー』

 

直後、ガシャンッ!!と音がスピーカーから聞こえた

 

え、誤爆とかしたら……とXX-1は思ったが、体には何ら異常はなかった

 

『これで大丈夫』

「ありがと。じゃあ警察に通報して撤収よ」

『え?飛べるの?』

「キツいけど寮に止血薬と包帯があるわ。この後やりたい事とかあるから病院はその後」

 

桃花は押さえつけてたXX-1の手を離した

 

「爪を仕舞って。一気に抜いた方が楽だから」

「わ、分かりました……抜きます!」

 

XX-1の爪がシャンッと音を立ててXX-1の体の中に戻る

 

それと同時に桃花が苦痛に顔を歪め、腹から大量の血が流れ出す

 

「あ、あの……一応全部は出してなかったので……」

「大丈夫……大丈夫だから……」

 

段々と指先から冷たくなっていくのを感じる

 

貫通してなかった事から爪は全て出し切ってなかったのは分かっていたが、案外深くまで傷ついているようだ

 

と、そこにスパイダーマンが戻ってきた

 

「ちょっと手を退けて」

「ん……」

 

桃花が傷口を抑えてた手を退ける

 

そこにスパイダーマンが糸を出して傷口に無理矢理蓋をする

 

これである程度止血が出来た

 

「さぁ、早く戻ろう」

「そうね。ほら、あなたも来なさい」

「え……わたしも?」

「何の為に助けたと思ってるの……ほら」

 

桃花がXX-1の手を掴んで無理矢理背負う

 

「おいおい、大丈夫?」

「この程度へっちゃら。ほら、スパイディ。全力で帰るわよ」

「了解」

 

桃花の両手両足のリパルサーのを吹かせて浮遊し、一気に研究所の外へ

 

「って通報は!?」

「スパイディ、お願い」

「はいはい……あ、もしもし、警察ですか?」

 

スパイダーマンがウェブスイングしながら警察に通報している間にさらにスピードを出して女子寮まで急ぐ

 

背負っているXX-1が絶叫マシンよろしく悲鳴を上げていたが、振り落としてしまったところでかすり傷一つ付かないだろうと思って加速する

 

スパイダーマンは途中で置き去りになった

 

そして、女子寮の窓からダイナミック帰宅。すぐにアーマーを装着した場所に立ってアーマーを取り外す

 

数秒後、アーマーを外し終わる

 

外し終わった所でスパイダーマンが外から見ないように窓とカーテンを閉め、リアクターを取り外し服の上を脱ぎ、机の上から武偵徽章を開き、そこから注射器に入った止血薬を取り出し、部屋の救急箱から包帯とガーゼと絆創膏のシールの部分だけの物を取り出す

 

スパイダーマンの糸をXX-1に切り落としてもらい、止血薬を注射。ガーゼを傷口の上に乗せて絆創膏で固定する

 

「ちょっと包帯巻くの手伝ってくれる?」

「う、うん……慣れてるね」

「武偵の強襲科にいたら嫌でも生傷増えるから……なんとか跡にはなってないけど」

 

グルグルとXX-1の手で巻かれる包帯

 

巻き終わったところで適当に着替える

 

丁度そこでコンコン。と窓が叩かれた

 

「さ、入って」

「ほいほ~い」

 

カーテンと窓を開けると、スパイダーマンが入ってくる

 

「警察はもうちょっとであの研究所に行くってさ」

「そう……よかった」

 

ホッとする桃花

 

そこにおずおずとXX-1が割って入って質問する

 

「あの……なんでわたしを助けてくれたんですか?」

「……何でと言われても」

「助けたかったから助けた。これだけ。ついでに私は武偵だから悪が見逃せなかった。そんな所よ」

「僕もそんな感じかな」

 

さも当然のようにしれっと二人は答えた

 

「……殺されちゃうかもしれないのに?」

「それでもよ。そもそも強襲科に居る時点で……いつ死ぬかなんてねぇ」

「僕はあれ以上の事に巻き込まれてるからね。今回は軽い方さ」

「は、はぁ……」

 

あのキメラと戦うより危険な事って……と呆れながらも絶句するXX-1

 

まぁ、スパイダーマンはキメラを軽く捻り潰せる電気人間やトカゲ怪人、宇宙から来た寄生生命体等と戦い、勝利を収めている。これでキメラに負けたらそのヴィラン達が納得いかないだろう

 

さらに別世界の話ではあるが、スパイダーマンは地球のヒーロー達と勇敢にも後にその世界の宇宙最強となってしまうヴィラン、サノスとも戦っている

 

そんな彼に何故助けたなんて聞くのはただの愚問だろう

 

「それより、君の名前。XX-1なんて可愛げ無さすぎるよ。新しく考えないと」

「え、え?」

「そうね。ローラさんみたいにいい名前考えてあげないと」

「ちょ、な、なんで……」

 

いきなりの事に動転するXX-1

 

「ん?ちゃんと名前はあるの?」

「な、無いですけど……」

「なら考えよう。そうだね……ペッパーとか」

「スパイディ?」

「ご、ごめん。悪ふざけが過ぎたよ」

 

桃花の何処か雰囲気が酷く怖い笑顔を見て流石のスパイダーマンも謝った

 

「そうね……メアリーなんてどうかしら?」

「綴りは?」

「Mary。マリーともメリーとも読めるけど」

「いいね、賛成。君は?」

「え、わたし……ですか?」

「他に誰がいるのよ」

「……わたしはそれがいいです」

 

と、XX-1改め、メアリーが笑顔でそう言った

 

桃花とスパイダーマンが(スパイダーマンは覆面の下で)微笑んだ

 

「よし、今日から君はメアリーだ。これからよろしく」

「は、はい!よろしくお願いします!」

 

笑顔で返事するメアリー

 

「……さて、次は住む場所だけど……」

「あ、なら武偵校に来ない?武偵校なら寮の部屋が使えるし、メアリーの力を使うには持って来いよ」

「わ、わたしの力……ですか?」

「そう。あなたのアダマンチウムの骨格とヒーリングファクターは大勢の人を救える。どう?武偵になってみない?」

 

と、さらっとメアリーを勧誘する

 

だが、住む場所が無く、金も無いメアリーにはそれが現状では一番だろうし、何よりその力を思う存分使うことが出来る

 

「……でも、そんな急に……」

「途中入学は前例が無かった訳じゃないからイケルわよ」

「まぁ、収入源の無いヒーローよりはいいと思うよ?うん……」

 

スパイダーマンは普段はただの学生であるとだけ言っておこう

 

「それに、こっちにはトニー・スタークがいるのよ?いざとなったらあのプレイボーイの浮気親父に頼むわ」

「お、お父さんにその言い草はダメなんじゃ……」

「残念だったわね。ここに元愛人の娘がいるのよ」

「えぇっ!?」

 

どうやらトニーの事は知らないようだが、桃花のサラッと口にした出生を聞いて驚きの声上げた

 

「そんな事は置いておいて。スパイディ、メアリーを一旦ニューヨークまで連れてってお父さんに見せてきて。お父さんならメアリーの体内のナノマシンを取り除けるかも」

「え、僕お金ないよ?」

「金ならある。チケットは何とかする……ってパスポートとか諸々無いじゃない!」

 

今になって気付き、うがー!!と叫びながら悶絶する

 

流石にパスポートが無ければ海外に行けない。さらにこの様子だと戸籍も無い

 

「……はっ!偽造パスポート!」

「おいこら武偵」

 

サラッと犯罪を口にしたところでスパイダーマンのツッコミが入る

 

「……ってか、警察に事情を話して保護してもらってからなんとか武偵にしてもらったら良いんじゃないかな?」

「……その手があったか」

 

ポン。と手を叩く桃花

 

「じゃあそう言う事で」

「は、はい」

 

怒涛の速さで決まったメアリーのこの後の予定

 

と、ふと桃花が時計を見ると、あっ……という感じの顔になる

 

「もう放課後……しかも神崎さんの飛行機が離陸しちゃう」

「神崎さん……トウカの友達?」

「えぇ……今から空港に行って間に合うかしら?」

「それなら僕が送っていこう」

「え?」

「ついでにメアリーも紹介しよう」

「へ?」




ハイジャック事件には関与しないと言ったな?すまん、ありゃ嘘だ

そんな訳で次回からハイジャック事件に首を突っ込みます

でわでわ


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MarkⅨ

今回グロ注意(ガチ)

何故自分でもこんなにグロくしたのかは不明


アリアは荷物をまとめたキャリーバッグを手に空港にいた

 

そろそろ自分の乗る飛行機が出る時間だ。それを確認して立ち上がろうとした時

 

「神崎さ~ん」

 

と、後ろから最近はよく聞いた声が聞こえた

 

「え……トウカ!?」

「いや~、間に合った」

 

後ろから来たのは一人の少女を引き連れた桃花だった

 

「……なんで来たの?」

「そりゃあお見送りに。ってか遠山君来てないのね……薄情な男だわ」

 

はぁ……と溜め息を吐く桃花

 

「……そっちの子は?」

「あ、この子はメアリー。ちょっと訳あり」

「ど、どうも……メアリーです」

「神崎・H・アリアよ。もう会えないかもしれないけど」

 

どもりながら自己紹介したメアリーにちょっと笑いながら自己紹介で返したアリア

 

「それじゃあ……もう乗らないといけない時間だから」

「もうなの……?」

「結構ギリギリなのよ?」

「そう……たまにそっちに遊びに行くわ」

「アイアンマンで?」

「それもいいわね。不法入国になるけど」

 

二人でジョークを言い合って笑い合った

 

「それじゃあ、バイバイ。トウカ、メアリー」

「またね。神崎さん。一度だけでもチームアップしたかったわ」

「ま、また会いましょう!」

 

アリアかキャリーバッグを引いて歩いていく

 

それを見送る桃花とメアリー

 

「それじゃあ、飛行機が飛ぶ所でも見る?」

「は、はい!」

「じゃあそれまで適当に買い物してましょうか」

 

 

 

 

二人は空港の適当な売店でまずメアリーの服を軽く買って、着替えさせてから適当に売店を見て回った

 

すると、アリアの飛行機が離陸する五分前になったので、飛行機が見える場所まで行こうとする

 

が、その時見知った人間が走っていった

 

「遠山君!?」

 

キンジの顔はいつも以上に必死そうだった

 

そのキンジをメアリーの手を引いて追う

 

「と、桃花!?」

「何か起きるかもしれない!」

 

遠目に見えるキンジを全速力で追う

 

途中からメアリーの手を離し、メアリーがついて来てるのを確認して全速力で走っていく

 

そして、その時何処かから何か紙のついた小さい箱が投げ付けられた

 

紙を見ると、それはスパイダーマンからのメッセージだった。一体何処に……と思ったが、足を止める暇は無かった

 

「なになに……ウェブカートリッジ……壊せば糸が出ると。あと、これはあなたによ」

「え?あ、はい……」

 

メアリーは桃花から紙を受け取った

 

メアリーへ。と英語で書かれている所の下にはこう書いてあった

 

With great power comes great responsibility(大いなる力には大いなる責任が伴う).』と

 

「しっかり心に留めておきなさい」

「……はい!!」

 

メアリーは紙を二つ折にしてポケットにしまった

 

色んな検査を武偵徽章で無理矢理スルーし、キンジの後を追う

 

キンジはアリアの乗る高級飛行機の中に入っていった

 

その瞬間、飛行機のドアが閉じた

 

「間に合わなかった!?」

「わたしが!!」

 

既に動き出した飛行機にアダマンチウムの爪を突き刺し、メアリーが張り付く

 

「メアリー!これを!!」

 

桃花がウェブカートリッジをメアリーへ投げ渡す

 

「うん!」

 

メアリーが受け取った所で飛行機は加速していった

 

「……スパイディ!」

「はいよ!」

 

桃花がスパイダーマンを呼ぶと、スパイダーマンはすぐにやって来た

 

「武偵校までお願い。何か分かるかも」

「オーケー、任せて!」

 

スパイダーマンの背中に体を預ける

 

スパイダーマンは糸を出して桃花を背負ったままウェブスイングをしていった

 

 

 

 

「ぐっ……ぅぅ……」

 

飛行機は離陸した。その際にGがダイレクトで体に負担をかける

 

内蔵がイカレそうになるが、ヒーリングファクターに任せてアダマンチウムの爪をゆっくりと動かしてドアへ近づいて行く

 

そして、ドアにたどり着いて開けようとするが、ドアは勿論開かない

 

「開かない……なら!」

 

アダマンチウムの爪をドアとドアの間に通してロックを無理矢理切断する

 

そして、内部に入る。が、ドアは開きっぱなしになり、ドアの外へ再び体が投げ出されそうになる

 

なんとか堪えてドアを閉める

 

「どうしたら……あ、これなら!」

 

メアリーはウェブカートリッジを取り出し、閉まってるドアの隙間を中心にしてウェブカートリッジを当てる

 

そして、ウェブカートリッジを鉤爪で引き裂いた

 

すると、ウェブカートリッジから中にあった大量の糸が排出され、ドアを固定した

 

「これでよし……」

 

直後、ゴロゴロゴロ……と雷の音が響いた

 

「あ、あのまま外にいたら雷に打たれてたかも……」

 

その時の自分を想像してゾッとするが、そのマイナスな想像をなんとか振り払う

 

「えっと比較的新しくて男の人の匂いは……」

 

くんくん。と鼻を動かす

 

ウルヴァリンは実は鼻もいい。ある程度の匂いは判別できる程に

 

ウルヴァリンの能力を殆ど受け継いでいるメアリーにもそれは出来る

 

匂いを頼りにふらふら~と歩き、飛行機内の一室にたどり着いた

 

「し、失礼しま~す」

 

と、言いながら中に入る

 

「だ、誰だ!」

 

既に中にいたキンジがベレッタを抜いて構えてくる

 

「ひゃっ!?う、撃たないで!!」

 

と、両手をあげるメアリー

 

「だ、誰が来たのよ……ってメアリー!?」

「あ、アリア!!」

「は?」

 

アリアがベッドの横からひょこっと顔を出し、メアリーを見て驚く

 

メアリーはホッとした顔でアリアに近付く

 

「どうしてここに?」

「桃花がそこの人の後ろを走って行ったから一緒について行って……その後ドアの外に張り……じゃなくて中に滑りのんだんです」

「……そ、そういえばキンジ。あんた何で」

 

何でこの飛行機に入って来たのか聞こうとしたら雷が鳴った

 

アリアがその音に反応してひぃっ!?と声を出しながら縮こまる

 

「……おいあんた。えっと……メアリーだったか?見たところ武偵じゃなさそうだしその服も防弾性があるとは思えない。ここで隠れてろ」

「何かあるんですか?」

「あぁ。恐らくこの飛行機は……」

 

キンジが何か言いかけた時、パァン!と発泡音が響いた

 

アリアとキンジがハッと顔を上げて部屋を出る

 

機内は混乱しきっていた

 

「な、なに!?」

 

遅れて出てきたメアリーがキョロキョロと周りを見る

 

その時、機長のいる部屋からズルズルと操縦士である機長達が這いずり出されてきた

 

出してきたのはキャビンアテンダントの女性

 

「気をつけやがれ、です」

 

ポイッとキャビンアテンダントはカンを投げてきた

 

「ッ!全員部屋の中に入れ!!」

 

キンジの叫びに客員が全員部屋に入る。が、メアリーはトコトコと出てきた

 

「あの~……」

「バカっ!早く部屋に……」

 

アリアが部屋に戻れと言おうとした瞬間、カンから煙が出てくる

 

アリアとキンジはすぐに袖で口と鼻を塞ぐ。が、メアリーはモロに吸い込む

 

「ッ!?けほっ!」

 

が、持ち前の嗅覚でほんの少し吸ったところで袖で口と鼻を塞ぐ

 

が、ガスは無害な物だったらしい

 

ガスが無くなった所でポーンポーンポポーンと客員にアナウンスする前に鳴る音が何度も響く

 

メアリーの無理矢理詰め込まれた知識の和文モールスがそれを解読する

 

オイデオイデイウーハテンゴクダヨオイデオイデワタシハイッカイノバーニイルヨ

 

元は兵器にされる予定だったメアリーにとっては和文モールスの解読は朝飯前

 

「イウー?」

「……あのふざけた言い方、やっぱり武偵殺しか」

「やっぱり……?キンジ、あんた」

「チャリジャック、バスジャック。そして過去一連の事件。これの示すメッセージは……お前を直接対決で倒すこと。シージャックの時、武偵殺しは電波を出さなかった。つまり直接対決でその武偵を殺した……つまり」

「誘ってるのね……上等よ。風穴開けてやるわ」

 

アリアが白銀と黒のガバメントを取り出す

 

「メアリー。あなたはもう部屋に戻って。こっからはアタシ達の出番よ」

「……わたしも行きます。待ってるだけなんて嫌ですから」

「武偵じゃないなら避難してろ」

「大丈夫……戦いには自信があります」

 

ウルヴァリンの殆どの力にスパイダーマンの怪力。これだけあればただの人間にやられるなんてことはまず無い。空飛ぶボードに爆弾などで完全武装したミュータントっぽい人間やシンビオート製のスーツ着た人間などは除くが

 

「……じゃあアタシ達の指示に従ってもらうわよ?逃げろと行ったら逃げなさい」

「おいアリア!」

「ダークホースかもしれないから。もしCQCの達人なら十分に活躍してくれるわ」

 

アリアのこれは殆ど嘘だ

 

本音はアイアンマンである桃花の知り合いなら、何か特別な力があるんじゃないかと思ったからだ

 

「……分かりました」

「……ったく、今回限りだ」

 

アリアが飛行機一階のバーに向けて走り出し、それを追うキンジとメアリー

 

バーにつくと、そこにはさっきのキャビンアテンダントがいた

 

「やっと来やがったでございますね」

 

そのキャビンアテンダントの服装は変わっていた

 

メアリーにはアリアの着る防弾制服と似た物だと思っていたが、アリアとキンジは違う

 

それは、学校で理子が着ていたあの改造制服

 

そして、キャビンアテンダントは顔を掴み、引っ張る

 

ベリベリべりという音と共に顔が剥がれ、中から違う顔が現れる

 

「理子!?」

Bon soir(こんばんは)

 

理子は手にしていた青いカクテルを飲み干した

 

「頭と体で戦う人間の才能って結構遺伝するんだよね……あなたなら分かるでしょ?オルメス」

「ッ!?」

 

アリアの表情が驚愕に変わる

 

(オルメス……ここから割り出すとしたら……まさか、Holmes?確かにオルメスとは読めるけど……)

 

身構えながらも構える

 

Holmes。その読みはホームズ

 

「あんた一体……何者?」

 

理子はそれを聞いてにやりと笑い、一丁の拳銃、ワルサーP99を取り出す

 

「理子・峰・リュパン4世。それが、理子の本当の名前」

 

ワルサーに口付けするようにしながら理子が答える

 

「でもねぇ……皆呼び方が可笑しいんだよ。あたしには可愛い名前があるのに皆4世、4世、4世、4世さまぁ~……どいつもこいつもさ。酷いよね~」

「……4世の何処が悪いのよ」

「悪いに決まってるでしょ!?どいつもこいつも4世4世!あたしは数字か!ただのDNAか!!?あたしは理子だ!数字じゃない!どいつもこいつもよォ!!」

「ッ……」

 

メアリーが表情を変える

 

自分にも分かる。ずっと、本当の名前すらつけてもらえず、XX-1と呼ばれ続け……

 

だが、きっと桃花達が助けてくれなければ自分はメアリーではなく、XX-1として、兵器として戦い続けてきただろう

 

「……そこのあんた。何悟ったような顔してるの?」

「……わたしも、同じでした。でも、あなたの方がよっぽど辛かった……」

 

確かに兵器として戦わされるのは嫌だった。けど、それしか自分の生きる道が無いと諦めていた

 

諦めていない、そして歯を食いしばって耐えた理子の苦しみと比べて受け入れてしまって諦めた自分との苦しみはかなりの差があるだろう

 

「同じ……?」

「……へぇ、あなたの名前は?」

「メアリー。そして、もう捨てた名は、XX-1。ウェポンXを超える『兵器』の名」

 

メアリーは喋った

 

理子は顔を少し歪めた。が、それはウェポンXという単語にだ

 

「ウェポン……X?」

「なんだよ……それは」

 

アリアとキンジがウェポンXという言葉を疑問に思う

 

ウェポンXは第二次世界大戦周辺に極秘裏で行われた物だ。知ってる人間は裏世界に通じる者しかいない

 

「……丁度いいや。オルメスにウェポンX。二つを仕留めれば、あたしは自由になれる」

 

理子の言葉。それにメアリーは構える

 

なるべく人の前で鉤爪は出したくない。鉤爪が無くてもアダマンチウムの骨格とヒーリングファクターだけでも十分『人』とは戦える

 

「あとキンジ?人に無用心に腕時計を預けちゃ駄目だぞ~?」

「腕時計……まさか!全てお前の計算通り……」

「そーでもないよ?予定外の事はあったけど、チャリジャックとバスジャックで組ませたのも、キンジのお兄さんを殺ったのも、全部あたし」

「兄さんを!?」

 

キンジが目に見えて動揺する

 

「後ひとつ。いい事教えてあげる。あなたのお兄さんね?今、理子の恋人なの?」

「理子!お前……」

 

キンジが歯を食いしばってベレッタを構える

 

「キンジ!相手は挑発してるだけよ!落ち着きなさい!」

「これが落ち着いてられるかよ!!」

 

その時、飛行機がグラっと揺れた

 

「お~らら♪」

 

その瞬間、キンジの手のベレッタがはじき飛ばされた

 

「ノンノンノン。キンジ、今のお前じゃそこの小娘より役に立たない。そもそも、オルメスの相棒は戦闘ではなくパンピーな視点からヒントを与えてオルメスの能力を導く事。そういう活躍をしなきゃ」

 

その瞬間、アリアが二丁の拳銃を構えて走り出した

 

メアリーの詰め込まれた知識の一つがアリアが何をしようとしてるか導いた

 

拳銃を使った近接格闘術、ガン=カタ

 

拳銃を一撃必殺の近距離武器として使う戦闘。それは、相手への一撃必殺になると同時にこちらへの一撃必殺にもなる

 

「二丁拳銃があなただけの物だと思わないこと」

 

そう言って、理子は二丁目のワルサーを取り出した

 

アリアが驚愕するも、今更止まれない

 

小柄な二人の体が高速で動き、引き金が引かれる度、弾丸が機内を飛び交う

 

蹴りも交えた格闘の末、先に弾切れを起こしたアリアが理子の両手を脇で挟む

 

抱き合うような形になった二人を見て、キンジがバタフライナイフを開いて動いた

 

「キンジ!」

「動くな!」

 

アリアが理子を抑え、キンジがナイフを突き出しながら慎重に移動する

 

が、理子は不意に笑った

 

「双剣双銃……奇遇だよね」

「何が……」

「あたしも持ってるんだよ……『双剣双銃の理子』って二つ名を」

 

その瞬間、理子のツーサイドアップの髪が動いた

 

(ミュータント能力!?)

 

それを見たメアリーが驚愕に目を開いた

 

「アリアの双剣双銃は完璧じゃない。お前は知らない、この力の事を」

 

メアリーが駆けた。体勢を低くし、神経を研ぎ澄まし

 

理子の髪が二つのナイフを取り出し、アリアを切り裂こうとした次の瞬間、

 

「ハァァ!!」

 

メアリーが飛び、アリアと理子の頭上を越えながら、理子のナイフを蹴り飛ばした

 

「ッ!?」

 

が、アリアの力が驚愕により緩まったところで理子が手を抜き、二発の弾丸をアリアの胸に撃ち込み、髪でアリアを突き飛ばした

 

よほどの力で突き飛ばされたアリアは吹き飛ばされ、キンジの足元に転がった

 

「あ、アリア!」

「早く逃げください!ここはわたしが!」

「何言ってんだ!」

「わたしも……同じだから!!」

 

メアリーの両手の甲からゆっくりと、銀色に煌めく鉤爪が姿を現す

 

皮膚を突き破り、姿を現す鉤爪

 

「ミュータントにはミュータント。あなたは早く逃げてください」

「ッ!」

 

キンジはアリアを抱き上げ、逃げて行った

 

「チッ、逃げられた……」

「あなたの相手はわたしです」

「まぁいい。先にぶっ殺してあげる」

 

理子が髪でナイフを拾い上げる

 

双剣双銃。手数が多いぶん、相手が有利だ

 

だが、関係無い

 

理子のワルサーから放たれる弾丸をその身で受ける

 

弾が皮膚を突き破り、体内で止まる。その衝撃がダイレクトで伝わる

 

「……なぁんだ。ウェポンXってこの程度だったんだ」

 

ダラリと力無く壁にもたれたメアリーを見てさもつまらなさそうに溜め息をつく

 

が、異変はそれから起きた

 

「この程度ですよ。弾丸で突き飛ばされる程度」

「ッ!?弾は確かに……」

 

服は突き破られ、血は流れている。が、異常なのだ。その下に見える皮膚が

 

完全に、治っているのだ

 

「……化け物」

「そうですよ。化け物の兵器化。それが、わたしの生み出された意図ですから」

 

両手の爪をキンキンッ!と鳴らして理子へ走る

 

ガウンッ!!と理子のワルサーから弾丸が放たれ、メアリーに当たるが、今度は弾かれた

 

「くそっ!」

 

理子は髪で握ったナイフを振るう

 

「ッ!」

 

それをメアリーは腕に刺して受け止める

 

「捕まえた……!」

「これでも!」

 

理子がメアリーの喉に拳銃を突き付け、二回引き金を引く

 

弾丸が喉を突き破る

 

さらに、もう片方のナイフがメアリーの喉の傷口をさらに深く削る

 

「喉をやったんだ。これなら」

「…………ぃ」

 

が、メアリーはそれでも何かを言いながら理子の髪の毛を掴む

 

ヒューヒューと喉から空気が漏れる。が、メアリーは死なない

 

激痛。そして酸素の補給ができない。さらに苦しみ

 

普通なら意識が飛び、すぐに死ぬはず。だが、メアリーは死なない

 

弾丸で撃っても、ナイフで刺しても、喉を抉っても、死なない

 

「ひっ……」

 

理子の顔が恐怖に染まる

 

血まみれの同い年くらいの少女が、即死しても可笑しくない傷を負って生きているのだ

 

顔からは血の気が失せている。が、目は生気を失っていない。冷たくならない

 

「……ぁ……ぅ」

 

ヒューヒューと空気を喉から漏らしながら、ゆっくりとメアリーは理子に手を伸ばしていく

 

「ひぃ……アァァァァァァァ!!」

 

理子はメアリーを押し倒す

 

押し倒して足で手を固定し、動けなくしてからナイフで首をメッタ刺しにして、額に弾丸をほぼ零距離で撃つ。さらに心臓に向かってナイフを刺し、抉る。手を突っ込んで直接拳銃を突っ込んで心臓を撃ち抜く

 

虐殺。まさにその言葉が正しかった

 

最後にナイフで喉と地面を貼り付けにする

 

「はぁ……はぁ……」

 

辺りは血の海。自分も、髪の毛も、メアリーも。紅に染まっている

 

血なまぐさい匂いと目の前の死体が吐き気を催す

 

「後は……キンジとオルメス」

 

理子は立ち上がってゆっくりと歩いていく

 

が、背後でズブッとナイフを首から抜く音がした

 

理子が恐る恐るメアリーの方を見る

 

メアリーは、立っていた

 

メッタ刺しにされ、頭に弾丸を撃ち込まれ、心臓に直接弾丸を撃たれ、殺した筈なのに

 

さらに、傷は再生している

 

肉が何処からか生まれ、形を成し、器官が再生し、心臓が動き出し、血が流れ、皮膚が再生し……

 

「痛いじゃないですか……」

 

ゆっくりと、鉤爪と顔を上げた。血だらけで真っ赤の顔と、瞳孔の開きかけた目を上げて

 

「う、うわぁぁぁぁぁぁ!!」

 

理子は逃げ出した

 

勝てる訳が無い。殺せる訳が無い。逆に何時か殺される。殺し続けても、何時か殺される

 

そして、何より怖い。恐ろしい

 

あれだけ血を流し、心臓を撃ち抜き、頭を撃ち抜き、喉を壊したのに、動き、喋るあの少女……化け物が

 

やった事のない位の虐殺。それを受けても立ち上がる少女の皮を被った化け物が

 

ペチャ、ペチャ、と足音が聞こえる

 

振り向きもせずに無我夢中に走った。だが、足音は途中で止まった。いや、聞こえなくなった。さっきまで聞こえてたのに

 

「は、はは……やっと死……」

 

振り返る

 

そこには、さっきまで血の海に居たはずの少女

 

鉤爪を振りかぶり、血まみれの顔に笑みを浮かべた悪魔のような表情で

 

そこからはもう覚えていない

 

何も考えず少女を振り切って、走り、走り、走った

 

少女は居なかった

 

「な、何なんだよ……あの化け物は……」

 

心にトラウマを埋め込んだ化け物を考えもせずに周りを見る

 

理子は、丁度アリアの部屋の前にいた

 

「……八つ当たりでいい。オルメスを倒す」

 

アリアの部屋を開ける

 

まず目に入ったのは端っこでガタガタと震えながら風呂場を指さして抱き合うアリアとキンジ

 

そして、その視線の先には

 

「ひぃあっ……」

 

あの、

 

「……酷いじゃないですかぁ。勝手に逃げるなんて」

 

化け物

 

「─────────ッ!!」

 

声にならない悲鳴を上げて情けなく背を向けながら走った

 

もう、形振りなんて構ってられなかった

 

 

 

 

メアリーがアリアの部屋に入った時に時を戻そう

 

理子が何処かへ走り去った後、メアリーは一人でアリアの部屋に戻ってきた

 

「ひどい目にあいました~……」

 

ガチャっと開けたらそこはキス現場

 

二人がキスをしている真っ最中。そこに乱入する血で真っ赤に染まった少女

 

二人がまず、メアリーを見て顔を真っ赤にする。メアリーも顔を真っ赤にする(血で分からないが)

 

そして、二人の顔色が真っ青に変わる

 

『ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!?』

 

キスから抱き合いに移行し、部屋の隅に移動する。この間、一秒

 

「ちょっ、二人とも?」

「りりりりりりり理子を虐殺でもしたの!?」

「さ、流石に無理!ヒスってもこれは無理!!」

 

何やら訳わからないこと叫ぶキンジとアリア

 

ヒステリアモードでもこのスプラッタ少女を手駒にするのは無理なようだ。なお、ヒステリアモードは途中で血の気が失せた事により半ヒスに留まった

 

「逆に虐殺されたんだけど……」

 

確かに、服には穴やら切り口やら沢山空いていた

 

「ととととと取り敢えず風呂入ってきなさい!話はそれから!」

 

アリアとキンジが風呂場を指さす。仕方ないなぁ。と思いながら移動しようとすると、ガチャっと扉が空いた

 

あっといった感じの顔になるメアリー

 

「酷いじゃないですかぁ。勝手に逃げるなんて」

 

と、笑顔で振り返ると、そこには誰も居なかった

 

「……理子を追ってくる」

「キンジィ!?」

 

アリアを置いてキンジが走った(逃げた)

 

「……アリア?」

「と、取り敢えず風呂入ってこ~い!!」

 

風呂場まで手を掴んで連行し、メアリーを風呂場に蹴り入れた

 

スカ~ン!と、丁度いいくらいの金属を蹴った時の音が響き、アリアが足を抑えて悶え苦しんでたのは内緒だ。アダマンチウムの塊を蹴って足が少し痛む程度で済んだのは流石だ




想像してみましょう。目の前で胸を抉られてそこに拳銃突っ込まれて心臓に直接弾丸を撃たれた上に喉にナイフを刺されて弾丸も受けて零距離で額に弾丸を貰った少女が血まみれで立ち上がって笑いながらこっちへ歩いてくる光景を

ホラーでしょ?今回のメアリーがそれです

なお、メアリーの額に当たった弾丸は頭蓋骨で防がれてるので記憶喪失とかにはなってません

あと、何でここまでされて生きてるの?流石にこれだけされたら再生間に合わないだろ。と思ってるあなた。ウルヴァリンは公式設定で骨からでも再生します

それに意識を失わなかったのは骨をアダマンチウムの骨格にする時の激痛と比べればまだマシだったのと、拷問等に対する訓練をしていたからです。それと、笑ってたのは無意識です。メアリーはMではありませんが、痛すぎると逆に笑っちゃう子です←ドウイウコトダッテバヨ

一巻分の話が終わったらメアリーの設定を後書きか丸々1話使って書きます

でわでわ、次回お会いしましょう

see you again!!


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MarkⅩ

今回で第一巻分の話は終わりです

あと、最近お気に入りが20人突破しました。本当にありがたいです

では、本編をどうぞ


理子をキンジが追う。そして、とある所で理子は止まった

 

「理子、逮捕させてもらう」

「そう簡単には捕まらないよ~?」

 

と、ヘラヘラとしながら答える理子

 

「……あれは来てないよね?」

「メアリーの事か……あれは俺も引いた。あとあれとか言うな。ちゃんとした人だよ」

 

いや、分かるよ?多分超能力(ステルス)だって。でもあれはトラウマ……。と答える理子

 

流石に理子はトラウマになっているらしい。そりゃあ、目の前で虐殺したのにあそこまで追ってこられて、さらには目の前で再生されて……そんじょそこらのグロ映画よりも何倍もグロかっただろう

 

それをその目で間近で見たならそれはトラウマになるだろう

 

暫くは彼女を見るだけで寒気がするかもしれない

 

「……それじゃ、理子はおさらばしようかな……お風呂入りたい」

「刑務所の風呂にぶち込んでやるよ」

「そんな事させないから。じゃ、ばいばいきーん」

 

ドドドドドドドン!!と理子の背後の壁に仕掛けられた爆薬が炸裂。飛行機の壁を切り抜く様に爆薬は炸裂し、壁が外れ、理子が外へ飛び出した。服を脱いで

 

「なぁっ!?」

 

いきなりの事に半ヒスからヒステリアモードへ完全に移行してしまった。やっちまったと思いながらそこら辺の突起物に掴まり、理子へ目をやると、理子は何か撃ち出していた

 

それは、

 

「ミサイルッ!?」

 

キンジが突起物から手を離し、壁にしがみつく

 

その瞬間、ミサイルが飛行機のエンジンに激突、爆発、炎上

 

エンジンが焼け落ちた

 

何故かその時外からあ痛~!?と言う声とカンッ!という音が聞こえた

 

「くそっ!もしかして全部髪の中にでもぶち込んでたのか!?」

 

キンジは壁伝いに移動する

 

その時、ズドッ!と目の前を銀色の三本の爪が横切った

 

「手に掴まって!」

「……全く、女性の手を借りるなんて」

 

キンジが手を差し伸べたメアリーの手を掴む

 

メアリーはその場で回転して爪を刺しなおす

 

「え~い!!」

「ッ!」

 

物凄い怪力で投げ飛ばされたキンジはヒステリアモードで強化された力を使って安全地帯まで退避する

 

一方メアリーはザクザク爪を刺しながら移動する

 

「アリアは運転席だよ」

「分かってるよ。それくらいならね」

 

キンジは走る。その後ろをメアリーが走る

 

そして、機長室の扉を荒っぽく開いた

 

「遅いわよ!」

「子猫ちゃんの相手をしてたんだ。ごめんね、アリア」

「……もしかして、なってるの?」

「ご想像に」

 

キンジが副長の座る席に座る

 

そしてメアリーがメーターやら何やらを色々とチェックする。戦闘機の操作法は頭に詰め込まれているが、旅客機の操作法は知らない。が、旅客機をハイジャック等をした時等の為に旅客機の機長室についても頭に詰め込まれている

 

「……燃料が……何この減り……ま、まさか漏れてる!?」

「燃料漏れ!?こんな時に!?」

「……理子の時か。してやられたな」

 

舌打ちをするキンジ

 

「うぅ……どうしましょう」

 

横目でアリアとキンジを見るが、どちらも何か考え込んでいる

 

決断の時は近い

 

 

 

 

「ハイ到着!」

「スパイディはここで隠れて待ってて!」

「はいよ~」

 

スパイダーマンがピシュッ!と糸を出して隠れる

 

鈍痛を引き起こす腹を抑えながら武偵校に入る

 

教室には、クラスメイトが揃っていた

 

「はぁ……はぁ……」

「香月!やっと来たか!」

「何があったの……?」

 

桃花の姿を見てクラスメイトが声を上げるが、腹を抑えながらその内の一人に聞く

 

曰く、アリアの乗った飛行機がハイジャックに会ったらしい

 

「何でそれで遠山君が……まぁいいわ。ありがと!」

 

桃花が腹を抑えながら教室から出ていく

 

「おい香月!」

 

クラスメイトが呼び止めるが、気にせず走る

 

「キャリー、アリアの飛行機……ANA600便の現在の航空路をリアルタイムでチェックしておいて」

『分かりました。それで、如何なるおつもりで?』

「……アイアンマンで行くわ」

 

武偵校を出てスパイダーマンを呼ぶ

 

スパイダーマンはすぐに来た

 

「隣人タクシー一丁。お嬢さん、どちらまで?」

「私の部屋まで」

「かしこまりました~」

 

ピシュッ!とスパイダーマンが糸を出し、桃花を背負ったままウェブスイングをする

 

「くっ……はぁ……はぁ……」

 

痛みが増して段々と苦しくなってくる

 

「……だいじょぶ?」

「平気よ……死にはしないわ」

 

スパイダーマンはなるべく桃花に負担をかけないようにウェブスイングで移動する

 

そして、桃花の家に窓から入る

 

「スパイディ……そっち行ってて。着替えるから」

「そ、そう?」

 

スパイダーマンが出たのを確認して少し前まで着ていたインナースーツを着る。そしてリアクターを胸に着けてアイアンマンスーツを着装する

 

「トウカ!?」

 

スパイダーマンが部屋の中に入ってくるが、気にしない

 

「……行ってくる」

「何をする気……って聞くほどでもないか。行ってらっしゃい」

「止めないのね」

「本人の意思を尊重するタイプなんで」

「そ。ならお構いなし」

 

トウカは窓から飛び出し、リパルサーから火を吐き出させ、飛び立った

 

「……さて、僕も行こうかな。スパイダーセンスの鳴る方へ~ってね」

 

スパイダーマンも窓から出てウェブスイングで移動を開始した

 

 

 

 

空へと飛び立った桃花はANA600便を追う。アイアンマンから伝わる振動がズキズキと傷口を刺激するが、気に止めずに飛ぶ

 

「……見えた」

 

フラフラと飛行するANA600便を肉眼で補足できた

 

が、その時飛行機の一部が吹き飛び、誰かが飛び出した。そして、飛行機から飛び出した人が何かを発射すると、エンジンが爆発。焼け落ちた

 

「あれが犯人!?」

 

バサッ!とパラシュートのような物で滑空し始めるその人物を追い、リパルサーを更かす。が、勢いが良すぎて

 

「あ痛~!!」

「おうっ!?」

 

カンッ!という音が響いたが、両腕のリパルサーを吹かすのを止め、その人を確保する

 

「確保したわよ……って理子ぉ!?」

「も、ももちゃ……はっ!?」

「……なんでアイアンマンの中が私だと分かったのかは聞かないでおく。けど、その飛行機に乗ってたのはアリアだけ。遠山君とメアリーが途中乗車したけど……」

 

もしかして、理子が……

 

そう思った矢先

 

「……そうだよ。あたしがハイジャック犯だよ」

「……そう。あっさり言うのね」

「後で調べれば分かるし。だったらここで……」

 

理子が少し暗い顔で言う

 

「……理子、離すわよ」

「え?」

「司法取引でもして戻ってきて。その時はまたお話しましょう?」

 

フェイスガードを上げて笑顔でいう桃花

 

「……犯罪者だよ?」

「いいの。それでも理子は友達だから」

 

理子から手を離す

 

理子はパラシュートを開いたまま落ちていく

 

「……ちゃんと戻ってきてね、理子」

 

フェイスガードを下ろし、改めてANA600便を追う

 

その時、キャリーがANA600便と防衛省の戦闘機の会話を傍受した

 

『防衛省よりANA600便への通信です』

「防衛省……?傍受して……ってあれは!?」

 

桃花が横目で確認したのはF-15イーグル。戦闘機だ

 

『こちら防衛省。ANA600便、応答せよ』

 

キンジ達は通信に出ない。いや、出る前に防衛省が通信をする

 

『羽田空港への着陸は許可出来ない。現在、滑走路は自衛隊により封鎖されている』

『馬鹿言ってんじゃねぇ!!』

 

キーン。と耳鳴りするくらい大きな声。クラスメイトの武藤剛気が声を荒らげた

 

ANA600便と通信してたのか通信に割り込んだのかは分からない

 

『誰だ』

『俺ぁ武藤剛気、武偵だ!ANA600便は燃料漏れ起こして残り十分しか飛べねぇんだ!代替着陸(ダイバード)なんて出来やしねぇ!羽田しかねぇんだよこのうすらトンカチ!』

 

燃料漏れと聞いて、エンジンが爆破された事を思い出す

 

代替着陸に出来そな地形はここら辺には無い。このままだとANA600便は……

 

最後の手段は、アイアンマンが全員を一気に持ち上げて海か陸へ着陸する寸前で脱出。減速させて無事に下ろす作戦。かつて、トニーがMark42を遠隔操作で行った事だ

 

『これは防衛大臣直々の命令だ。怒鳴ろうが罵倒しようが無駄だ』

「何が命令よ……」

 

呟き、舌打ちする

 

『……なぁ防衛省さん。お隣にそちらの物騒なお友達が見えるんだけどそっちのお家に無線で案内させてやってくれないか?』

 

物騒なお友達とは、F-15の事だろう。キンジがそういった

 

『……それは誘導機だ。誘導機に従って千葉方面へ行け』

「キャリー!割り込むわよ!!」

『完了してます』

「ボイスチェンジャー機動!」

 

ボイスチェンジャーが起動し、声が変わる

 

「パイロット!海へ行くな!撃墜されるぞ!!」

 

口調をトニーの物にし、声を荒らげる

 

『なっ!?その声は……』

「トニー・スタークだ!馬鹿な事言ってないでとっとと羽田を使わせろ!」

『自衛隊が封鎖している。無理だ』

「チッ……ならその戦闘機をどうにかしろ!」

 

桃花が叫ぶが、戦闘機は横についたままだ

 

「……防衛省との通信を切れ!強制的にだ!」

『分かりました』

 

防衛省との通信を切る

 

そして、操縦席を覗くと、そこにはアリア、キンジ、メアリーがいた

 

一瞬、フェイスガードを上げて自分が桃花だと知らせる

 

「どうするんだ?少年少女よ」

『……そこら辺は話し終わった。空き地島だ。そこに着陸させる』

「なっ!?」

 

予想外のキンジの言葉に思わず声が漏れる

 

空き地島は二キロ程ある。もしかしたら飛行機は止まるかもしれないが、失敗したら……

 

が、そのビジョンは頭の中のプロトンキャノンで消し炭にする

 

「……空き地島だな!?」

『そうだ』

「……進行方向とは逆向きに俺が飛んでお前らにぶつかってブレーキになる!お前らは安心して降りてこい!」

『何を言ってるんだ!飛行機を真ん前から激突して押すって事か!?』

『そんなの無茶苦茶よ!』

「無茶苦茶で構わない!俺は……アイアンマンだからな!!」

 

桃花がリパルサーを吹かせて空き地島へと先回りする

 

その様子をキンジ達は操縦席で見ていた

 

「……滅茶苦茶ね」

「けど、これしかない。そうだろ?アリア」

「その通り」

 

そして、ANA600便が雲の下へ……

 

だが、予想通り空き地島は見えない。一点だけ米粒以下に光る青い光があるが、それだけでは目印にならない

 

その時、空き地島に光が点った

 

ライトが点々と並び、滑走路のようになっている

 

『おいキンジ!装備科とかに頭下げて持ってきたんだ!ついでにこの人にも手伝ってもらった!』

『やぁやぁ。親愛なる隣人、スパイダーマンさ』

「スパイダーマン!!?なんでぇ!?」

「……あぁもう滅茶苦茶だよ」

 

スパイダーマンが頭にライトつけて手を振っている

 

『君達の着陸を僕の糸でなんとか援助するよ。アイアンマンとスパイダーマン。この二人が居るんだから心配はしなくていいよ』

「……心強いわね。いや、ホント」

「ここまで凄い助っ人はいないな。アリア、着陸させるぞ!」

「燃料はもうありません。それに落ちたら終わり……一発勝負です!!」

「美少女の応援にはしっかり答えないとな!!」

 

キンジが叫びながら操縦桿を慎重に操作する

 

そして、車輪を出し……

 

「ここだ!」

 

車輪を地面につけ、ブレーキをかける

 

そして、その瞬間、外では

 

「Maximum Spider!!」

 

スパイダーマンがANA600便に大量の糸をくっつけ、

 

「止まれェェェェェ!!」

 

全力で地面に足をつけ、糸を引っ張る

 

そして、桃花は

 

「REACTOR full power!!」

 

リアクターのパワーを最大に。そして、

 

「|Unlock power inhibitor!IRON AVENGER!!《リミッター解除!行くわよ、アイアンアベンジャー!!》」

 

さらにアーマー自体のリミッターを全て解除。飛び上がり、ANA600便へと向かって全速力で飛び、真正面からぶつかり合う

 

「うわっ!」

「きゃぁっ!!」

「うっ!」

 

中のアリアとキンジがアイアンマンが真正面からぶつかった衝撃で中を転げ回る

 

それを見たメアリーが操縦席に代わりに座ってブレーキをかける

 

「ぐぅぁぁぁ!!」

『トウカ様!これ以上はあなたもアーマーも危険です!!』

「知ったこっちゃない!!止めるのよ!!何としてでも!!」

 

バチバチバチ!!とアイアンマンの関節がスパークする。関節部は中のウインドウでは既に真っ赤。そして、桃花の腹部の傷も再び血が出てきた

 

スパイダーマンも段々と糸が手からすっぽ抜けそうになるが、必死に握る

 

そして……

 

 

 

 

「う~……腕痛い~……お腹痛い~……」

「桃花、無茶するからだよ?はい、リンゴ」

「ありがと~……」

 

ANA600便は結果的には止まった。一キロ以上滑走路を残して

 

アイアンマンが半マッハのスピードでぶつかったのと、スパイダーマンの力により、有り得ないほど早く止まったのだ

 

が、その結果転げ回りながらもアリアを庇ったキンジは系15箇所の打撲やら何やらで入院。桃花も血を流しすぎたのと手に負担がかかりすぎたことで内出血。さらに肉離れ等々。超重症だったため入院

 

対して、メアリーは服が血で濡れたのみ。新しく買ったからプラマイゼロになった

 

さらに、メアリーは警察に保護された。スパイダーマンが同伴し、事情を話した所、特別に戸籍を作り、今回の事件に貢献した事で武偵校への途中編入も許してもらえるかもしれないらしい

 

そのメアリーは空いた時間があったため、桃花の見舞いに来ている

 

「あ、そろそろ時間だ。またね、桃花」

「ちゃんとこっちに来なさいよ~?」

 

手を振ってメアリーを見送る桃花。そして、プルプルと震える手で水の入ったペットボトルを取って口に含む

 

そこでドアが開いた。そこから入ってきたのは

 

「よぉトウカ!元気そうだな!」

「ブッ!!?」

 

思わず口に含んでいた水を吹き出す

 

入ってきたのは

 

「お、お父さん!!?」

 

そう。桃花の父こと、トニー・スタークその人だ

 

ラフな格好でフルーツバスケットを手にしてズカズカと中に入ってくる

 

「なんだ?なんで驚いてんだ?」

「驚くに決まってんでしょ!?なんでここに来てるのよ!」

 

口からダバーッと垂れた水をゴシゴシと袖で拭く

 

「そりゃあ娘が入院したって聞いたからな。プライベートジェットで飛んできた。おっ、美味そうなリンゴだな」

「プライベートジェットって……ってかそれメアリーが剥いてくれた私のリンゴ!」

 

勝手にパクパクとリンゴを食べすすめるトニーとそれを止めようとするが動けない桃花

 

「リンゴ程度ケチケチするなっての。ってかメアリーって誰だ?」

「……ほら、この間の」

「あーはいはい。ローガンとスパイダーマンの遺伝子組み合わせてできたミュータントね。スパイダーマンの方から聞いたよ」

 

ドカッと椅子に座って適当な台の上にフルーツバスケットを置くトニー

 

「彼女はこっちの警察に任せておいていい」

「そりゃ分かってるわよ」

 

プルプルと震える手でリンゴを一つ取って口に運ぶ

 

「あとトウカ……お前よくも俺の名前使ってくれたな?」

「あ、いや……それはその……」

「お仕置きだ!」

「ちょっ、動けないんだから止め……いだだだだだだだ!!ホント痛いマジで痛い!!」

 

トニーが桃花のこめかみを中指の関節でグリグリグリとやる

 

「ごめんなさいごめんなさい!流石に悪かったわよ!」

「うん、分かればよろしい」

 

そんなやり取りをする二人は本当に親子に見えた

 

「で、お前のMarkⅤとⅢはおしゃか。使い方荒いんだよお前は」

「分かってるわよそれくらい……」

 

そう。桃花のアイアンマンMarkⅤとMarkⅢは先の二つの事件で大破

 

MarkⅤは装甲が殆んど削れ、MarkⅢは上半身の装甲や回路等が滅茶苦茶になっている

 

「だから言っただろう。MarkⅢとMarkⅤはカイリョウ型リアクターの出力には耐えられないと」

「……」

「だから、特別だ。MarkⅦを作らせてやる」

「え?」

「いいか、もうお前は裏に足を踏み込んだ。俺達の領域にだ。お前が首突っ込んだのはイ・ウー。武偵殺し、魔剣、無限罪……そんな奴等がいる組織なんだ」

 

桃花は黙り込む

 

「これからはミュータント……お前らの言う超能力者が出てくるかもしれない。お前はもう狙われないかもしれないが、お前の事だ。首を突っ込むだろう」

「分かってるじゃない」

「お前の親だしな。俺達アベンジャーズもなるべくお前を支援する。だが、俺達の支援は宛にするな。だから、MarkⅦを作れ。そして、守れ。装着しろ、お前の力を」

「……分かった。やってやるわ」

「パーツは送ってある。お前のルームメイトの子と一緒に作れ」

「文の事ね。勿論よ」

「……んじゃ、これで真面目な話は終わり。あ、そのアヤって子。ペッパーが欲しがってたぞ?優秀な人材だからってな」

「つまり推薦って事?」

「そうなるな。その気があるならスターク・インダストリーは歓迎すると言っておいてくれ」

「オーケー」

「んじゃ、俺はまだ寄るトコがあるんでな。達者でな」

 

と、言ってトニーは帰っていった

 

トニーが帰ったのを見てやれやれ。と言った感じでリンゴを食べようとする……が、

 

「あっ!?」

 

リンゴが全部無い

 

「あの親父ィ……全部食っていったわね!!」

 

今すぐ追って首根っこ掴んでお仕置きしたいが、絶対安静と言われてる上に動きたくても動けない桃花にトニーを追う術は無かった

 

「ぐぬぬぬ……」

 

その後しばらく、フルーツバスケットの中のリンゴを震える手で悪戦苦闘しながら皮を剥く桃花が文が見舞いに来るまで目撃される事となった




次回から二巻の話か幕間に進みます

そしてMarkⅦ登場のフラグも建てておくのを忘れない

でわでわ、また次回お会いしましょう



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MarkⅪ

今回は幕間と言う事で適当に模擬戦回です


ハイジャック事件から数日が経った

 

桃花は超人的な回復力を発揮し、一週間後に無事に退院。腹の傷も殆ど塞がった

 

そして、メアリーは桃花が入院している間に無事に武偵校に編入。編入してからすぐにアメリカのトニーの元へ行き、ナノマシンを全て体内から除去した

 

スパイダーマンは今、何処で何をやっているかは定かではない。元々、日本に居る事が可笑しかったため、今頃ニューヨークでヒーローをやっている事だろう

 

「へぇ、強襲科に入ったのね……何でまた」

「桃花と一緒だからですよ。あ、なんか射撃が出来ればSランクとか言われました?」

「そりゃそうでしょ……ってか、SSRには入らなかったの?」

「SSR?」

「超能力捜査研究科。超能力(ステルス)……私達の言うミュータント能力を研究したり事件解決に使う科目よ」

 

桃花は超能力捜査研究科に所属してる生徒の中の星伽白雪の名を上げた

 

彼女はG(グレード)17とかなりハイレベルな力を使うことができる。最も、これは勝手にキャリーに武偵校をハッキングさせて得た情報だ

 

なお、余談だが桃花達の言うミュータントは二種類ほどある。一つがウルヴァリンやメアリーのように生まれた時からミュータントとしての力を持った『ミュータント』。そして、スパイダーマンのように後天的にミュータントになった、もしくは力を手に入れた者を『ミューテート』と呼ぶ。だが、この違いは差して問題はない

 

「G17かぁ……わたしは何なんでしょう?」

「間違いなくカンストよ。ヒーリングファクターにアダマンチウムの骨格とその鉤爪。さらにはスパイディの怪力よ?」

 

呆れながら言う桃花

 

ちなみに、今の時間は昼休み。メアリーは桃花と同じクラスに編入させられた

 

「そうだ。一度模擬戦してみない?」

「模擬戦?」

「そう。前みたいにアイアンマンとXX-1としてじゃなくて武偵としての私達で」

「……いいですね。けど、お腹は……」

「またザックリやられない限り平気よ。五時間目に適当な場所でやりましょ?」

 

そう言うと、桃花は立ち上がった

 

「桃花?」

「装備科で武器借りてくるのよ。メアリーの銃も借りてきましょうか?」

「あ、銃ならありますよ?ほら」

 

と、言って足のホルスターから取り出したのはリボルバーと黒色の拳銃

 

どちらも桃花には見覚えがあった

 

「で、デザートイーグルにコンバットマグナム……」

 

どちらも44マグナム弾を使う超強力な拳銃だった

 

普通なら下手すると肩を壊す銃を使う武偵は中々居ないのだが、メアリーに拳銃の反動くらいへでもないだろう。メアリーが肩を壊す事があるとしたらロケットランチャーを十丁纏めて撃った時くらいだろう。それでも壊すかは分からないが

 

「……私のFive-seveN貸すからそれにあったゴム弾借りておいて」

 

流石にデザートイーグルとマグナムのゴム弾を受けて無事でいられる気がしないため、Five-seveNを渡す桃花であった

 

 

 

 

「文~、いる~?」

「あ、桃花!」

 

装備科に行き、文を見つけた

 

文は以前トニーから送られてきたあれを作っていた

 

「それは二人で作る約束でしょ?」

「待てなかったのだ!」

「はいはい……文、ここに盾ってある?」

「盾?いっぱいあるのだ」

「じゃあ円形の盾ってある?こんな感じの……」

 

と、桃花が両手で丸を作って文に伝える

 

文はちょっと待つのだと言ってトテトテと歩いていき、暫くして戻った来た

 

「使われてないやつがあったのだ」

「ん……いいわね。これ貸してくれる?」

 

盾を左手に装着してから文に聞く

 

「多分取り寄せて使われてないやつだから思う存分使ってもいいと思うのだ」

「そう。じゃあ、これ借りるわね?」

「は~いなのだ!」

 

盾を背負って装備科から出ていく

 

多分盾がカチ割られるんだろうなぁと思いながら

 

 

 

 

「……ん。ここら辺でいいわね」

 

桃花がメアリーを引き連れてきたのはちょっとした人気のない場所

 

メアリーはFive-seveNを構えたりして感触を確かめている

 

「どっちがが一撃いれたら勝ち。それでいい?」

「それでいいですよ~」

 

Five-seveNをコッキングさせて準備を済ませるメアリー。桃花も盾を左手に装着した

 

「盾ですか?」

「ちょっと心得があるのよ」

 

かつて散々本人にシゴかれながらも身に付けたキャプテン・アメリカの戦闘術。その戦闘術の訓練には殆ど円形の盾を使用していた

 

キャプテン・アメリカのようなヴィブラニウム合金製というトチ狂った性能の盾ではないが、元よりそんな盾を使う事を想定した訓練はしていない

 

桃花がメアリーから距離を離す

 

「それじゃあ……このコインが地面に落ちたらスタートね」

「うん」

 

桃花が十円硬貨を取り出し、コイントスをする

 

十円硬貨はクルクルと回転しながら落ち……地面に当たった

 

『ッ!』

 

二人が同時に動く

 

メアリーがFive-seveNを構えて照準を合わせる

 

距離的にはメアリーの方が圧倒的有利。だが、

 

(盾を右手で持った!?)

 

桃花は右手で盾を持ち、左手から外し、振りかぶる

 

「ハァッ!!」

 

そのまま盾をメアリーへ向けてぶん投げた

 

(ここは弾く!)

 

慎重に照準を合わせ、引き金を引く

 

Five-seveNから放たれたゴム弾が盾を真上へ弾く

 

(やった!後は桃花に……)

 

だが、桃花は目の前にいない

 

右にも、左にも。残っているのは

 

「上!?」

 

メアリーが弾いた盾を見る

 

既に、桃花は盾を手に持ち、振りかぶっていた

 

「もう一丁!!」

 

さらに空中で盾を投げる桃花

 

また弾いて取られたら厄介だと考え、メアリーは盾を横にローリングして避けてFive-seveNを構えた。が、不意に横を何かが通った。が、それを確認する前に引き金を引く

 

空中で身動きの取れない桃花にゴム弾が迫るが、何故か戻ってきた盾が全てのゴム弾を防いだ

 

「そんな!?」

 

思いにもよらぬ盾の使い方。それに度肝を抜かれるがメアリーはFive-seveNをすぐに桃花へと向ける

桃花は上半身を盾に隠し、体勢を低くしていた。それを見たメアリーが嫌な予感と共に拳銃を下げて横に転がる

 

そして、桃花はそのまま突っ込むかと思いきや、素早いモーションで盾を投げた

 

(あ、あぶなっ!?)

(避けられた!?まぁ、それも計算に入ってるけど)

 

桃花の投げた盾がブーメランのように桃花の手に戻る。その僅かな時間の間に桃花はメアリーに肉薄した

 

「ッ!!」

「くっ!」

 

桃花が盾を使った格闘術でメアリーに怒涛の連撃を放つ

 

「桃花……わたしは兵器にされる筈だったんですよ?CQCくらいは……」

「ッ!?」

 

メアリーが桃花の右手でのパンチを腕を絡ませて拘束。そのまま後ろへ向かって力を誘導し、桃花がよろけた所で後ろから拘束する

 

「こんな感じで出来るんですよ」

「ぐっ……は、外れない……」

「伊達に十トンの物持ち上げられませんよ」

 

桃花がメアリーの手を外そうとするが、メアリーの手はびくともしない

 

桃花は右手で外そとしながら、盾をぶん投げた

 

(降参……?)

 

地面に当たった盾は跳ねて飛んでいき、木に当たり、地面に当たりを繰り返し

 

「うそっ!?」

 

メアリーへと背後から迫ってきていた

 

メアリーは拘束を解いて桃花から離れる

 

桃花は拘束が解けた瞬間振り返り、飛んできた盾を左手に装着し、離れきれてないメアリーへ盾で裏拳を放った

 

避けきれずメアリーは盾の攻撃を顔面でそれを受けてしまった

 

「あぅっ!」

 

カンッ!と音を立ててメアリーがドシャッと倒れた

 

「私の勝ちね」

「……その盾、ラジコンか何かですか?」

「残念。ただの盾よ。頭の中で全部計算して投げてるの」

 

桃花が適当に見える形で盾を投げる。その盾は地面や木に当たって跳ね返って、桃花があらかじめ伸ばしておいた左手にスッポリとハマった

 

「ね?」

「……桃花もそんな事出来るんなら人間やめてますね」

「失礼ね。これはキャップ直伝の技よ?習得までミッチリシゴかれて滅茶苦茶疲れたけど」

 

桃花がメアリーに手を差し出し、それをメアリーがとる

 

メアリーが立ち上がってスカートについた土をパンパン。と払う

 

「と、言うかメアリーってCQC出来たのね」

「もしも爪が使用不可能になった時のためにですよ。とは言っても、付け焼刃的な感じです」

 

あはは、と笑いながらちょこっとだけ爪を出す

 

ちなみにこの爪、毎回皮膚を突き破って体内から出てきているのだが、仕舞った瞬間ヒーリングファクターで元通りになるため出血は無い

 

「さて、じゃあ後は射撃訓練でもしましょうか」

 

と、メアリーのホルスターから自分のFive-seveNを抜き取り、自分のホルスターへ仕舞う

 

「え、苦手なんですけど……」

「武偵が近接戦しか出来ないでどうするの?ほら、とっとと行くわよ」

 

メアリーの手を取って射撃訓練場へズルズルとメアリーを引っ張っていく

 

「ちょっ、単位が無いので依頼を引き受けたいんですけど~!!」

「んなもん数日で規定数まで貯まるわよ!」

 

メアリーの声は桃花には届かなかった




桃花達の戦闘は大体二、三分で終わっています。しかも文字数もかなり少ない……

まぁ、そんなこんなでメアリーは武偵校二年生、強襲科となりました。使用拳銃はデザートイーグルとコンバットマグナムの二丁。弾丸はどちらも44マグナム弾を使用しています。近接戦はCQCとアダマンチウムの鉤爪を使います

次回にメアリーの設定を投稿します

あと、サブタイトルを第○話からMark○へ変えました


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メアリーの設定

今回はメアリーの設定です

本編では触れられてない部分が数カ所だけあります


メアリー

性……女

歳……16(薬剤での成長促進があったため、実年齢は3)

使用拳銃……デザートイーグル、コンバットマグナム

容姿……黒色の髪を腰辺りまで伸ばしている。黒目のたれ目気味で、背は小さめの152cm。胸はDカップ。私服はワンピース系を主に着る。体重は85キロ(内アダマンチウムが40キロ)。体重を減らしたいけど減らせないため結構な頻度で拗ねる

 

 

 

ウェポンXを超える兵器として作られた人工ミュータントの少女。知識はコンピュータの電極を脳に直接刺されて無理矢理記憶させられた。記憶させられたのは簡単な数学、理科と殆どの国の言語、そして兵器や乗り物に関するありとあらゆる知識と体術の知識

 

生まれてからすぐ薬品で14歳前後まで成長させられ、脳に電極を刺されたり、後述の骨格をアダマンチウムへと変えたり、拷問への訓練等、様々な苦痛を味わったため、痛みへの恐怖は無い。そのため、心臓まで胸を抉られても痛みで狂ったり等はしなかった

 

ミュータント能力は鉤爪、ヒーリングファクター等のウルヴァリンの殆どの能力にスパイダーマンの怪力。このヒーリングファクターがあった事で非人道的な事をされても死ぬことがなかった

 

骨格は全てアダマンチウムになっており、例え飛行機からパラシュート無しでスカイダイビングしようと骨は折れることは無い。実質、破壊は不可能

 

ヒーリングファクターのせいで半不老不死となっている。そのため、脳みそをグチャグチャに掻き回されようが数秒で再生する。が、その際の痛みはダイレクトでメアリーへと伝わる

 

戸籍では架空の両親の唯一の子供となっている。名字は無し

 

武偵としてのランクはAランク。ガン=カタ、CQC等は朝飯前だが、拳銃の腕が低く、Sランクにはなれなかった。強襲科に所属しており、基本的には事情通の桃花とチームを組んでいる

 

ミュータントだと言う事は隠しているため、SSRに入ったり超偵となる事は無かった

 

 

 

 

ミュータント能力について解説

 

 

 

鉤爪

メアリーの主武器となる自身の骨。元々はケラニンで構成された特殊な骨で出来た爪であったが、アダマンチウムがそれを覆ったため、今はキャプテン・アメリカのヴィブラニウム合金製の盾のような例外や同じアダマンチウム以外は切り裂ける爪となっている

 

ヒーリングファクター

超人的な回復力をもたらす能力。骨だけになったとしても肉が再生して数分後には動けるようになるほど強力である。そのため、彼女を殺す方法は殆ど無い。この能力のせいで彼女の老化はかなり遅い筈だったが、投与された成長促進の薬のせいで老化は人並みになっている

 

嗅覚、視覚、聴覚、犬歯、スタミナ、俊敏性、反射神経、感覚能力

メアリーの嗅覚、視覚、聴覚はかなり強化されており、真っ暗闇の中でも遠距離の敵を発見でき、見失ったとしても嗅覚で後を追うことが出来る。さらに聴覚も常人には聞こえない音も聞き取ることができる。犬歯もかなり発達しており、八重歯とかそんな可愛いものではなく、軽く人体に食い込む

一応銃弾をぶった切れる程の反射神経と俊敏性は持っているが、何時もは避ける必要が無いためくらってる。ヤバイ弾は切る

 

アダマンチウム

メアリーの骨格は全てがアダマンチウムで覆われており、このアダマンチウムを取り除かない限りメアリーの骨を傷付ける事が出来ない。これによりパンチとキックの重みが上がっている。彼女を本気で蹴ったり殴ったりしたら逆に殴った方の骨が砕けるので注意

 

怪力

スパイダーマンの怪力そのもの。10tの物を持ち上げる事が出来る超人的な力を持っている。この力にアダマンチウムの骨格が組み合わさり、鉄板を拳一つでぶち抜ける。拳銃も手刀で形を変えれる




一応メアリーのミュータント能力は上記の物が全部です。あれ、これブラドより強(ry

あれ、なんでだろう。ウルヴァリンにスパイダーマンの怪力足したら強くね?とか思って作ったキャラなのに明らかにチートキャラに……ってか、ウルヴァリン自体チートキャラだしスパイダーマンも大概チートだし、チートにチート足したらチートが出来るに決まってるし……

まぁ、次回よりジャンヌちゃんが黒幕の回です(サラッとネタバレ)

あかん、ジャンヌちゃんがメアリーにフルボッコにされる光景しか思い浮(殴


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MarkⅫ

とうとう原作2巻の内容に突入です

ちょっとキンジにハプニング到来?それではどうぞ


「と、桃花~……単位がぁ~……」

「……ごめん、今回はホントごめん」

 

武偵校にて。メアリーが桃花に泣きつき、桃花が謝るという奇怪な光景が目に見えた

 

理由はメアリーの単位が危ういからである。裏でコツコツと単位は取っていたらしいが、このペースでいくと、下手すれば留年確定か補修である

 

桃花はもうその件に関しては暫く考えなくても良くなってるため、考えた事が無かったが、今回ばかりは頭をひねる

 

メアリーがこうなったのは自分がメアリーを連れ回したからであり、ここで一人で頑張れとか言うのはあまりにも冷たすぎるし無責任だしヒーローとは思えないからだ。中にはDVした巨大化するヒーローがいたが

 

「……そ、そうだ!先生に聞いていい感じの依頼を探しましょう!」

「ぇぅ~……」

 

垂れメアリーと化したメアリーを担いで歩き出す

 

目指すは教務科の先生達がいる職員室

 

90キロ近いメアリーを細腕で軽々と持ち上げてえっさほいさと歩く桃花。彼女も常人から見たら人間辞めてるようにしか見えない

 

半金属の塊を担いだまま職員室に行くと、アリアとキンジが通気口に潜り込んでいた

 

「……なぁんか面白そうね」

 

ニヤッと笑うとメアリーの頭をFive-seveNの銃底でガツンと一発。正気に戻ったところで二人で通気口に入る

 

すぐにコソコソしているアリアとキンジを発見

 

「お二人さん?そういう行為は夜に自室のベッドでヤるものよ?」

「うぉぉっ!?」

「ば、バカキンジ!何してんのよ!!」

 

驚いたキンジが通気口の出口から滑り落ちた。そしてそれを追って飛び出すアリア。さらにニヤニヤしながらそれを追う桃花と桃花の言ってることが良く分からないため小首を傾げながら追うメアリー

 

まずアリアがキンジの上に着地しぐえっ。次に桃花が着地しぐはっ。最後にメアリーが思いっきり尻餅つきながらキンジの上に落下しゴシャッという音と共におぶぇっ!?

 

そしてキンジの死体が出来上がり

 

「し、死んでねぇよ……」

 

訂正。死んでなかった様子

 

「……ほぉ、なんか賑やかだなぁ」

 

と、言ったのは教務科の一人、綴先生だ

 

そして、その真正面にはSSRに所属している星伽白雪がいた

 

「そのボディーガード、アタシ達がやるわ!」

「アリアてめぇ……」

「キンちゃん!」

 

地面に這いつくばるキンジ。そのキンジに心配そうにかけよる白雪

 

「んー?誰かと思えばハイジャックの時のカップルに……訳あり二人か」

「か、カップル!?」

『バレてらっしゃる』

 

訳あり。とは桃花とメアリーの事だ

 

桃花はトニーの愛人の子。そして、メアリーは急に湧いた謎の人間

 

これを訳ありと言わずに何と言おうか

 

「……これは神崎・H・アリア。ガバ二丁に二刀流。『双剣双銃』の二つ名を持ち、Sランク。でも、アンタの手柄、全部ロンドン武偵局が自分の手柄にしてるぞ?このマヌケぇ」

 

と、アリアのツインテの片方を掴んで引っ張ったりしながら言う

 

「い、痛いわよ」

「ついでにキャリーに調べさせたら泳げないとかなんと……」

「トウカ?ハイクを読みなさい。カイシャクしてあげるわ」

「忍殺語はどうでもいいからその小太刀下ろせよください」

「と、桃花?日本語可笑しいよ?」

 

某ニンジャの世界で聞き取れてしまうちょっと変な日本語で話すアリアと桃花

 

その間にキンジへのダメ出し(?)は終わったようだ

 

「で、これが香月桃花。強襲科Aランク。銃は銃検とってあるG18、Five-seveN、HK45と」

「そうですけど」

「なお、トニー・スタークの愛人の娘でスリーサイズは……」

「コンプレックス刺激しまくるの止めてくれませんか!!?心折れそうです!!」

 

叫んだ後、壁の四隅で体育座りして壁にのの字を書き出す桃花

 

「これがメアリー。名字不明出身地不明のミュータン」

「先生!ちょっと散歩しませんか!!?」

 

何で知ってるの!!?と聞きたくなったが、代わりの言い訳とは程遠いものを交換で口から出す

 

「まぁいい。Sランク武偵とおまけのEランクがタダで受けるって言ってるんだ。これ程優良物件はないだろ?」

「うぅ……ですけどアリアが……」

 

桃花は拗ねながらも白雪はキンジに惚れてるのだと悟った

 

「せんせ~……私とメアリーのペアでその依頼受けさせてくださ~い……」

「ん?タダでか?」

「メアリーが暫く単位で困らないくらいの単位を……大事な生徒……もとい超偵でしょう?」

「ん~……まぁ、無事に護衛できたら考えたる」

「なら受けます。受けさせてください」

「え、なら俺にも単位を……」

「うるさいわよキンジ!黙ってなさい!」

「だとよ、星伽」

「その人達なら……」

「あ、私達だけだと心配なので神崎さんも」

「それは元からだ」

「……じゃあ私がキンちゃんの家にいきます!その方が色々といいですから!」

「……ハハワロス」

 

不憫な扱いをされキャラ崩壊したキンジであったとさ

 

 

 

 

「マジで俺の部屋なのか……まずアリア、トラップ仕掛けるな。俺が引っかかって死ぬ。そして香月。ベッドの下には何も如何わしい物は無い!メアリー、匂い嗅ぐな。特に何も匂う物は無い。白雪はお辞儀とか色々と止めろ!」

 

アリアと桃花は嫌そうな顔をするが、素直で純粋なメアリーはすぐにやめた。白雪はガッチガチに緊張している

 

「……チッ何も無いわね……本当に男なの?」

「悪いが男だ」

 

HSSの事は知っているが、年頃の青年の部屋に来たのならベッドの下を漁るのは最早お約束だろう。と思い行動に至った

 

「んで、今回星伽さんをボディーガードするのは何で?話聞いてなかったから分からないのよ」

 

桃花の問いにこくこく。とメアリーが頷く

 

「まぁ、身の安全を守るだけよ」

 

と、言うアリアだったが、何度も瞬きを繰り返していた

 

マバタキ信号(ウインキング)。モールス信号のようなもので武偵同士が使う信号だ

 

それを解読すると、

 

『テキハ デュランダル シラユキ ネラワレテイル キケン』

 

凄い片言だったが、大方理解できた

 

デュランダルと聞き、桃花は内心驚いていた

 

先日トニーが言った事にあった名前だ

 

魔剣。詳細のわからない敵

 

ただ、敵は武偵殺し……理子と同じイ・ウーに所属しているのは分かる

 

何故そんなにイ・ウーと関わりがある敵がこんなにも出てくるのかと疑問に思ったが、アリアにマバタキ信号で質問をする

 

『テキハ イウーカ?』

 

イ・ウー。それを聞いたアリアが顔色を驚愕に染めたが、すぐに顔色を戻す

 

『ソウ』

 

そうだ。とマバタキ信号で返したアリア

 

「……神崎さん。ちょっと質問していい?」

「何?」

「あなた、ももまん好き?」

「は?……ッ」

 

いきなり変な質問をした桃花だが、マバタキ信号を声を出すと同時にしていた

 

『イウートノ カカワリヲ オシエロ』

「好きに決まってるじゃない」

『ママ ツミ ナスリツケラレタ』

「奇遇ね、私もよ」

『ソレハ デュランダル二?』

「あら、話が合いそうね」

『ブテイゴロシ デュランダル ノホカニモ タクサン』

「なら今度一緒に買いに行きましょう?」

『ナラ ゼンリョクデ キョウリョクスル』

「えぇ、そうね」

『アリガトウ』

 

アリアと桃花のマバタキ信号での会話はここで終わった

 

「……そういえば神崎さん。あなたのミドルネームのHってホームズなのよね?もしかして、シャーロック・ホームズの子孫だったり?」

「そうよ?」

「マジ?」

「マジよ」

 

サラッとアリアがシャーロック・ホームズの子孫だと判明

 

「さ、そんな事より……危険物チェックよ!部屋の中に危険物が無いかチェックしなさい!」

「ある訳無いだろ」

「うっさいとっとと調べなさい!!」

 

アリアがキンジに指示をし、キンジが渋々動く

 

メアリーは適当に漁ってる

 

「神崎さん、ちょっと文に連絡したいから外に出るわね」

「えぇ、でも、気をつけなさい」

「これでもAランクよ。そうやられはしないわ」

 

桃花はキンジの部屋を出て男子寮から出て、人気のないところで携帯電話から文に電話をかける

 

「……もしもし、文?」

『桃花?今日からボディーガードなんじゃ?』

「えぇ、そうよ……でも、事情が変わったわ。MarkⅦを……明後日までに完成させて」

『実はもう出来てるのだ!』

「え、ちょっ」

『うずうずして……気が付いたら完成してたのだ』

「……あなたが違法改造とかしてなければSランクだってのすっかり忘れてたわ」

 

ほんの数日前に送られてまだ殆んど作ってなかったMarkⅦだったが、もう出来てしまったらしい

 

「何時でも射出出来るようにしておいて」

『分かったのだ!』

「じゃあね。多分数日で戻れるから」

 

ピッ。と通話を切る

 

「……魔剣……どんな奴か分からないけど……この私が、アイアンマンが相手になってやるわ」

 

そう言って、桃花は腕時計の上に機械を貼り付け、逆の手には機械のついたブレスレットを装着した

 

「キャリー……何時でも呼べるようにしておいてね」

『かしこまりました』

 

桃花はキンジの部屋へと戻っていった

 

 

 

 

「……ねぇメアリー、頭痛くなってきた」

「あ、あは……あはは……」

 

今現在、アリアと白雪が口喧嘩している。もうボディーガードとか打ち切られるだろうと思えるくらいに

 

理由は沢山あるが、一つは白雪がアリアの分の夕食をご飯一杯……しかもそれに割ってない割り箸ぶっ刺して出した事。さらに占いでだったりetc……

 

今は切り札が何枚あるとか幼稚な事で言い合っている

 

「だぁ五月蝿い!!私はアベンジャーズっていう切り札があるのよ!分かったら底辺の争いやめなさい!」

 

桃花の声でアリアと白雪が黙り込む

 

アベンジャーズは異星人や神と戦って勝利を収めたヒーローのチーム。その内の一人が身内なのだから、いざとなったらアベンジャーズに救援を頼む事が出来る。特に、イ・ウー関係なら

 

イ・ウーはトニーが危険と言うほどの組織だ。それの標的になったのなら、トニーはきっと駆け付けるだろう

 

「今日は寝なさいおこちゃま二人!遠山君もこの二人をとっとと寝室にぶち込んで!!」

「あいあいさー」

 

アリアを小脇に抱えて白雪の手を引いてキンジはアリアをベッドの上に放り投げて白雪におやすみと言って寝室のドアを閉めた

 

「……やっと静かになったな」

「……そうね」

「あははは……」

 

キンジと桃花が溜め息を吐く

 

「……白雪はおこちゃまじゃないと思うぞ」

「喧嘩は同レベルの人間同士でしか起きない。あとは分かるわね?」

「あぁ、もう分かった」

 

そんな事を話しながら、桃花は考えていた

 

桃花は先程キンジとアリアの占いに便乗して占いをしてもらったのだが、白雪は占いの結果を話さず、今日はもう調子が悪いみたい。と言って占いを止めたのだ

 

(……今回が年貢の納時……かもね)

 

軽く諦めたような笑いをする。キンジとメアリーはそれに気付かない

 

「……私は今日はずっと起きてるから遠山君とメアリーは寝ておきなさい。私は明日学校休むから」

「……アリアの話を信じてるのか?魔剣なんていう居るかどうかも分からない……」

「存在するわ……だって、あのお父さんが……トニー・スタークが気を付けろって言ったのよ?魔剣を」

 

トニー・スタークの名を聞いて驚くキンジ

 

アリアの話は信じられない節があった。が、トニーの言葉なら?

 

今までニューヨークの危機を自分の発明と武偵顔負けの推理力で救い、裏社会にも通じていそうなあのトニーが魔剣を……

 

「……信じられん。俺は寝る」

 

キンジは思考をぶった切ってその場で横になった

 

「……メアリー、あなたも寝なさい。あなたは切り札なのよ」

「え、わたしが?」

「あなたは私達の中ではぶっちぎりで強い。そんな切り札が戦いの時に寝不足で戦闘不能とか笑えないでしょ?」

「それを言ったら桃花も……」

「この中だと私が一番弱いから……遠山君はある条件下なら神崎さんを超えるくらい強いし神崎さんと星伽さんは言わずがな。ね?」

 

強襲科Aランク。超能力もこれと言った能力も無いただの武偵

 

キンジは強襲科に居た頃はSランクだったし、アリアは言わずがな。白雪は高度な超能力の使い手。メアリーはほぼ不死でありながら様々な能力を持っているミュータント

 

桃花にはアイアンマンがある。が、そのアイアンマンはその場ですぐ装着できるような物ではない。MarkⅦはMarkⅤの延長線上にあるスーツだが、装着までに多少の時間がある上、背負って持っていくわけには行かない

 

「分かったら寝なさい。こういうのは慣れてるから」

「……無理しないでくださいね?」

「体ぶっ壊れる程無茶はしないわよ」

 

元から眠かったのか、メアリーはソファーで横になるとすぐに寝息をたてはじめた

 

「……ほんと、子供っぽいわね」

 

桃花は適当なところから毛布を持ってきてメアリーに被せた

 

桃花は知らないが、メアリーはまだ作られてから三年。精神年齢こそ桃花と同じくらいだが、根本的な所はまだ子供だ

 

「……ってか遠山君、床で寝て大丈夫なのかしら?」

「大丈夫だ」

「……起きてたの?」

「寝付けなかっただけだ。あと、俺を買い被り過ぎだ」

 

桃花が呟くと、キンジはむくっと起き上がった

 

「ってか男の居る部屋で寝かせるか?普通」

「あなたにそんな度胸はないでしょ?」

「……事情があるだけだ」

「分かってるわよ。ほら、明日も学校でしょ?」

「お前もだろ」

「休むわ。アドシアードの方も大丈夫だし」

 

と、言うとキンジは呆れたように溜息を吐いた

 

桃花とメアリーはアドシアードの競技には出ず、アル=カタを使ったチアのBGMを担当する事になっている

 

桃花はベース、メアリーはキーボードだ

 

「枕取ってくる」

「布団は?」

「何とかすりゃ寝れるさ」

 

と、言ってキンジは適当なところから枕を持ってきて床に置いた

 

「寝付けないなら一杯やった方がいいわよ?」

 

桃花はコップを持って口に付ける動作をする

 

「……俺等は未成年だ」

「私は昔、お父さんに無理矢理飲まされちゃってね。でも何故かその日から二度と酒は飲むなって言われたのよねぇ」

「……俺のトニー・スタークのイメージから段々と離れていく……」

「お父さんなんて昔も今もプレイボーイだし一度アル中になりかけるしPTSD発症するし……完璧超人って訳じゃないのよ。頭はいいけど」

 

くすくす。と笑いながらキンジの部屋の冷蔵庫を漁る。何か飲めるものを拝借したかったが、無かった

 

「……なんか買ってくるか?コンビニなら開いてるだろ」

「じゃあ一緒に来てくれる?か弱い女子を一人で行かせるつもり?」

「はいはい行けばいいんだろ、お嬢様」

「すぐに支度しなさい。王子様」

 

最近は少しあったかくなってきたが、夜はまだ冷える

 

適当に風邪を引かないように防弾制服の上に適当な上着を羽織る

 

キンジも用意できたところで二人で外に出る

 

「で、何買うんだ?」

「コーヒーと、何かおつまみ。それとジュース」

 

二人で隣り合いながらコンビニへと歩いていく

 

寮は真っ暗だったため、携帯のライトで照らして出てきた

 

「女子寮とは違うのね」

「そうなのか?」

「こっちは色々と華やかなのよ。今度来てみる?」

「俺にとっての危険物一杯だから止めておく」

「ふふ、はいはい」

 

HSSに過剰なまでに警戒しているキンジを見るとちょっと笑えてきた

 

HSSは目に見えて身体能力が上がる。が、代わりに女に対してギザな態度になる

 

これはキンジだけなのか、それとも家系によるものなのか……はたまた家族は別のHSSを持っているのか

 

それはわからないが、女性のHSSも男に対してギザになるのか……なんて考えるが、答えは出ない

 

が、調べた限り、HSSは本能の延長線上みたいな物らしい。キンジ……男の場合、子孫を残したいという本能がギザな態度を取らせ、女を守りたいと思うから身体能力が上がる

 

では、女は?

 

考えると、もしかしたら女のHSSは真逆なのかもしれない

 

男のその本能をそそる様な態度を取るようになり、守ってもらえるような態度を取る形になるのではないか

 

「おい香月。どこまで行く気だ?」

「あっ……」

 

なんてことを考えていたらコンビニを通り過ぎていた

 

いっそキンジに聞いてみるのもいいかもしれないと思いながらコンビニの籠に欲しいものを突っ込んでいく。ついでにあれも突っ込んでおく

 

そしてキンジの欲しいものも買おうとしたが、流石に女に奢ってもらうのは気が引けるらしく、自分でパッパと買っていた

 

「さ、帰りましょ」

「そうだな」

 

店員からの生暖かいような嫉妬深いような視線を振り切るようにコンビニから出る二人であった

 

 

 

 

「遠山君はこのまま寝るの?」

「そうだな」

「そ。おやすみ」

「あぁ」

 

キンジが枕に頭を乗せて寝転がると、カチャッと何かを開ける音がした

 

ジュースでも飲んでるのかと思って放っておく

 

が、数秒後、ひっく。と桃花のしゃっくりが聞こえた

 

炭酸でも飲んでるのか?と思ってるとさっきの音がもう一回聞こえた

 

そしてさらに数秒後

 

「どーん!」

「うぼぁっ!!?」

 

桃花がフライングボディプレスしてきた

 

「な、何すんだよ香月!」

「あによ~……なんかもんくでもあるわけ~?……ひっく」

 

桃花の様子が明らかに可笑しかった

 

目はとろんとしていて頬はほんのり赤くなっていて滑舌が悪くなっている。そして漂うアルコールの香り

 

そして手にあるワンカップ(中身なし)。そして机の上にもワンカップ(中身なし)

 

「って酒じゃねぇか!!」

「そうよ~それいがいになににみえるのよ~」

 

完全に酔っている。しかも酔って性格変わってる

 

たかがワンカップ二つでだ

 

酒に弱いとかそんな次元じゃない

 

「おとこならさ~、こういうてんかいってどきどきするんじゃな~い?」

 

今の体勢はキンジが桃花に押し倒されている形だ

 

「知るか。とっとと水飲んで寝ろ」

「せっかくこうやっておとこがどきどきするしちゅえーしょんつくってるのにこうふんしないわけ~?」

 

もう酔う前の桃花の面影は殆ど無い

 

「いいから寝ろ。そんでもって他の男の前で二度と飲むな」

 

二度と酒を飲むな。と言ったトニーの気持ちが分かった気がしたキンジだった。が、

 

「なんかつまらな~い……なに?わたしじゃこうふんしないっての?」

「あぁそうだ。分かったら寝ろ」

 

酔っ払いの相手がこんなに面倒な物とは思ってなかったキンジはもう投げやりに答える

 

時と場合とシチュエーションによってはヒステリアモードになってしまうかもしれないが、生憎酔っ払いに押し倒されてヒステリアモードになるキンジではない。が、もしもう少し服がはだけてたりしたら今頃円周率を延々と数えてたかもしれない

 

「……じゃあきんじはりこみたいなこがこのみなの?」

「は?」

 

いきなり名前で呼ばれたのと見当違いな事を言われて二重の意味では?と思わず聞き返してしまった

 

対して桃花は何故かニヤニヤしている

 

「じゃあくらすのみんなにそうやって……」

「おいバカやめろ」

 

いい加減無理矢理寝かせようと思い体を上げようとしたが、桃花に手を掴まれて無理矢理地面に固定させられた

 

(な、なんつー馬鹿力!)

 

桃花が200kgの物を持てるとはしらないキンジはなんとか手を振り解こうとするが少し動くだけだ

 

「ん~……なんかおもしろくないわね~」

 

と、言うとパッと手を離して押し倒す形からキンジの腹の上に乗っかる

 

「お、おい、いい加減……」

「ここでそろぷれいやったらどうする?」

「ソロプレイ……?」

 

キンジが桃花が何をするのか考えようとすると、桃花が手を自分のスカートの中に伸ばす

 

「んっ……あ……」

(なんで酔っ払って発情してるんだよ!!)

 

いきなり喘ぎ始める桃花

 

「当て身ィ!」

「ひゃぅっ」

 

そこにキンジが全力で上半身を無理矢理起こしてヒステリアモード真っ青の速さで首に手刀を叩き込んだ

 

「あ、危ないところだった……」

 

主にヒステリアモード的な意味でだが

 

(こんな場面でヒスったら絶対に何か間違いが起きる……!)

 

取り敢えずコテン。と気を失って規則よく寝息を立ててる桃花の頭を枕の上に乗せる

 

「……明日朝起きたら言っておくか……もう酒は二度と飲むなと」

 

キンジは桃花の買ってきたおつまみを適当に齧る

 

「……まさか酒に媚薬入ってたとかじゃないよな?」

 

ガサガサと周りを漁るが、それらしきものは無し

 

「……今度平賀さんにも言っておくか。何かの間違いで香月に酒を飲ませる事が無いようにと」

 

結局、キンジは硬い床の上で寝ることになった……硬い床とは脱衣所の床のことである




ちょっと本文の中のネタについて解説

DVした巨大化するヒーロー……ハンク・ピム博士ことアントマンの事。現在アニメ放送中のディスク・ウォーズ:アベンジャーズのメインヒーローの一人、ワスプの夫。ピム粒子により巨大化したりお手製ヘルメットで蟻と意思疎通する。なお、DVが原因でアルティメッツではアベンジャーズを脱退させられた。ちなみに、映画アントマンが公開予定となっている上に映画、アベンジャーズ2でのメインヴィランとなる可能性のあるウルトロンを作った張本人でもある。詳しい事は原作か公開される映画を待とう

アル中トニー……アルティメッツにてトニーは正史より飲酒量が多い。ちなみに、アルティメッツではソーのムジョルニアが巨大な戦斧のような形だったりハルクの生まれた経緯が違ったりしてる

そんな訳でキンジ君危機一髪でした

桃花は酒癖悪いとかそんな次元じゃありません。飲めば発情します。最早酒=媚薬

あと、最近PS3版The amazing Spider-Man2を買おうとしてるんですけど……あれ、英語出来なくても進めれますかね←オイ

では、また次回お会いしましょう

でわでわ








壁|ω・`)カンソウホシイナー


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MarkⅩⅢ

とうとうタイトルの数字が一発変換出来ないようになってしまいました

そんな訳で一ヶ月くらい間が空いてしまいましたが更新です

ちょっと急展開入ります


「ねぇ遠山君?頭がガンガンするんだけど……」

「自業自得だ」

「えぇ、そうよね。思い出したわ……そうよ、お父さんの前でもあんな感じになってペッパーさんにチョークスリーパーされて意識狩り落とされて……」

 

翌日の朝。桃花は部屋の隅で体育座りしている

 

理由は昨日の真夜中の事だ

 

「遠山君じゃなかったら初めて奪われてたわね……」

「それは信用されてるのか男としてナメられてるのかよく分からんな」

 

一方キンジは朝食を作りながら、桃花に水を差し出した

 

キンジは起きてきたアリアか白雪に桃花とメアリーと一緒の部屋で寝てるのを見られて何か問題が起きないために脱衣所の水分全部タオルで吸い取って枕と毛布を引いて寝たのだが、寝心地は最悪だった

 

ワンカップは見られないように処分しておいた

 

「ねぇ遠山君……私の事変態だと思った?痴女だと思った?」

 

桃花の纏う雰囲気が完全に自虐してる人間のそれなのだが、キンジは極力桃花を見ないようにしている

 

「酒のせいだろ?気にするな。俺は忘れるから」

 

思い出してヒスりでもしたら大変だからな。と頭の中で付け加えておく

 

「……優しいのね」

「人の弱み握って何になる。野郎の弱みならガッチリ握って何か奢らせるが」

 

もし武藤辺りの弱みを握ったら全力で何か奢らせるだろう。と想像しながら、桃花の水を飲み干したコップを回収する

 

「頭痛薬は生憎置いてないからな。後でスポーツドリンク買ってくるからそれ飲んで昼まで寝ておけ」

「何から何までありがと……」

「乗り掛かった船だ。あ、アリアや白雪には何も言うなよ?撃たれそうだから」

「恩返しって事で黙っておくわ……」

 

体育座りから姿勢を変えてゴロン。と横になる桃花

 

実は頭痛がする他、体がダルイ。とてもじゃないがそれ以上は体育座りをしていられなかった

 

「ワンカップ二つで二日酔いってある意味凄いな」

「私もびっくり」

 

これだと将来飲み会とかに行ったら確実に大変な事になる。なんて思いながら頭を押さえてゴロゴロと転がる

 

「って、白雪さん起きないのね。あの子、普通に五時くらいに起きてご飯作ってそうだけど」

「そうだな……見に行ってみるか?ほら、手出せ」

 

桃花の手を引っ張って肩に担ぐ。肩を貸す形で歩いてぶち込んだ寝室のドアを開ける

 

「むにゃ……ももま~ん……」

「き、キンちゃんのベッド……はぁはぁ……」

 

そっと閉じた

 

「俺達は何も見なかった。いいね?」

「オーケー、ズドン」

 

決して、枕に齧り付いてるアリアとキンジのベッドに潜り込んで布団と枕を一緒に抱きしめている白雪なんて見なかった

 

「……メアリー、起こしましょうか」

「そうだな。あの白雪を見たあとだと一番まともに見える」

「私が何げにまともと思われて無い件について」

「ワンカップ二つで発情するやつをまともとは言わん」

 

ちなみに、メアリーはどれだけ飲んでもヒーリングファクターがアルコールを分解するので酔いません

 

「ほら、メアリー。起きて、朝よ」

 

ソファーの上で丸まって指をくわえて寝てるところは犬っぽい感じもするし子供っぽい感じもする。そのメアリーを揺らす

 

ぅん……と声を出してメアリーが目を覚ました

 

「……おはようございます…………?」

「おはよ。さ、朝よ、起きなさい」

 

目をこすってメアリーが上半身を上げる

 

桃花は既にキンジから離れて自分の足で立っている。が、結構厳しそうだ

 

「なんでフラフラなんですか?」

「ね、寝不足よ……寝てないから」

 

とてもじゃないけど二日酔いとは言えない

 

「……あれ?お酒のにおいが……?」

「へ?……あっ」

 

ここで桃花はウルヴァリンが超人的な嗅覚を持っているのを思い出した

 

それなら人には嗅ぎ取れないわずかな酒のにおいも嗅ぎとる事が出来る

 

「き、気のせいよ。ほら、神崎さんと星伽さん起こしてきて」

「は~い」

 

結構キツイ訳目をメアリーに押し付けた桃花だが、シラっとしてソファーに座った

 

『アリア~、星伽さ~ん、朝ですよ……あれ、何してるんですか?星伽さん』

『ひゃいっ!?え、えっとこれは……』

 

ものともしなかったメアリーを尊敬しながら、頭を押さえて横になる

 

今にも寝てしまいたい気分をなんとかおさえる

 

「遠山く~ん……寝ちゃっていいかしら?」

「朝飯食ってからにしろ。もう出来るから」

 

コトン、コトン。と皿が机の上に置かれていく音がする

 

皿の中身を確認すると、白米と味噌汁。それと焼き魚であった。が、それと二つほどトーストと目玉焼きがある

 

この二つはおそらく外国人であるアリアと……名前的に外国人のメアリーの物だろう

 

「わざわざ和食と洋食を作ったの?」

「まぁな。食費は差っ引かせてもらうぞ」 「はいはい」

 

ガンガンうるさい頭をおさえながら適当な場所に座る

 

「起こしてきましたよ~」

「キンちゃん!おはようございます!」

「ふわ~ぁ……なぁんでこんな時間まで寝てたのかしら……」

 

寝室からメアリーと着替えた白雪とアリアが出てきた

 

「遅いぞ。ほら、飯出来てるから食え。アリアとメアリーはトーストのほうでいいか?」

「はい、いいですよ」

「腹に入れば何でもいいわ。ももまん以外は」

 

メアリーとまだ寝ぼけ目のアリア、白雪が座って、最後にキンジが席についた

 

その後は適当に朝食を食べ、桃花はダウン

 

「ちょっくら自販機まで行ってくる」

 

キンジが自販機までスポーツドリンクを買いに行った

 

後で金渡しておこう。と思いながらも目を閉じる

 

「私学校行かないから……もう寝不足で……」

 

と、言うのは嘘でただの二日酔いだ

 

なんでたったワンカップ二つでベロンベロンに酔った挙句二日酔いに……と頭を抱えながら目を閉じる

 

すぐに眠気が襲ってきて意識はそのままぷつん。と途切れた

 

 

 

 

「買ってきたぞ……ってなんだ、寝てるのか」

 

一人でソファーの上で寝てる桃花を見て溜め息をはくキンジ

 

既にアリア達は寮の前に待機している

 

「ったく、あんまり手間かけさせるな」

 

キンジはそう言うと、スポーツドリンクをテーブルの上に置き、すぐに玄関に戻って靴を履いて外に出ていった

 

そしてそれから一時間後、桃花が目を覚ました

 

「あ~……体ダルっ」

 

頭痛はかなり収まったが、体のダルさが抜けない

 

動きたくないと抗議する体を起こして周りを見渡す

 

そこで、テーブルの上に置かれたスポーツドリンクを見つけた

 

「ありがたく貰って今日は寝てましょ」

 

桃花はスポーツドリンクを四分の一程飲んでから、再びソファーに横になった

 

あ、キンジに金を渡すの忘れてた。と気付くのは意識が飛ぶ瞬間であった

 

 

 

 

そしてその日の放課後。メアリーの買ってもらった携帯に一通のメールが届いた

 

そこには、とある路地裏で待つ。と書かれていた。送り主の欄には何も書いてなかった

 

「キンジくん。ちょっと寄るところあるから先に帰っててください」

「ん?あ、あぁ。アリア、白雪。帰るぞ」

 

取り敢えず、誰がメールを送ってきたのか分からないが行ってみることにした

 

何かイタズラだったりしても、滅多な事がない限り問題はない

 

そんなこんなで件の路地裏についた。が、そこには誰もいなかった

 

「……?」

 

携帯を見てみたが、場所は確かにこの路地裏で時間帯は指定されてなかったので迷ったが、放課後に来たのだが、どうもイタズラだったようだ

 

小首を傾げながら来た道を帰ろうとする。が、背後……いや、背後の少し上辺りからシャキンッ!と音がした

 

スカートの中に着けているホルスターからデザートイーグルを抜きながら後ろに向けて構えた

 

「誰ですか!?」

「おいおい、ちょっぴり脅しただけじゃねぇか」

 

後ろにいた男は奇怪だった

 

黄色と青を貴重にした衣装に身を包みんでいる。身長は男性の中では小さいほうだろう。そして、メアリーと全く同じ場所から生えている銀色の爪

 

それだけで判別は十分だった

 

「ウルヴァ……リン?」

「そうだ。よく知っているな」

 

その男はX-MENのウルヴァリンだった

 

「スパイダーマンから俺のクローンがまた生まれたって聞いたからな。日本観光ついでに見に来ただけだ」

 

爪を仕舞いながらメアリーを見るウルヴァリン

 

だが、メアリーはいきなり歯を食いしばり、デザートイーグルの引き金を引いた

 

ドンッ!!ドンッ!!と44口径の銃口から弾丸が発射され、ウルヴァリンを吹っ飛ばす

 

「あなたのせいで……わたしはあんな辛い目に!!」

 

何をしている。ウルヴァリンに怒るのは完全にお門違いだろう。自分に向かって呼びかけるが、体は言う事を聞かない

 

だが、メアリーは生まれてからまだ三歳しか経ってない上に今までの畜生な扱いへの恨み辛みを誰かにぶつけたことなんて無い。ぶつける前にスパイダーマンがしょっぴいた

 

だから、自分の大元となったウルヴァリンを見た瞬間、その恨み辛みが爆発してしまった

 

桃花とスパイダーマンに救われて、あっさり今までのことは切り捨てる事ができるほど、メアリーの精神は育ってなかった

 

「確かにわたしが桃花と会えたのはあなたのおかげ!でも今までの生活はあなたのせい!だから……だから!!」

 

ドンッ!!とさらに一発。さらにまた一発、44マグナム弾がウルヴァリンに当たる

 

そして、弾切れ。カチっカチっとトリガーを引く音だけが響く

 

「あなたの……せいで……」

 

俯きながら、トリガーを引く

 

視界が滲む。もう、何を言ったらいいか分からない

 

「いっつ……まさか会ってから数秒で弾丸ぶち込まれるとはな……」

 

対して、ウルヴァリンは慣れているのかすぐに起き上がった。傷も既に塞がっている

 

「俺はこういう時なんて言えばいいが分からんが……」

 

ウルヴァリンはそのままメアリーに近付き、メアリーを抱きしめた

 

「……え?」

「よく頑張ったな。辛かっただろう。特に骨格をアダマンチウムに変えられた時は」

 

ポンポン。とメアリーの背中を子供をあやすように叩く

 

「だが、もう忘れろ。乗り越えろ。それまでは俺が的なりサンドバッグになってやる」

 

メアリーの目から涙が流れる

 

「それに今まで耐えれたからいい友達が出来たんだ。それは右ではないか」

「はい…………あと、That's rightの訳し方違います……」

「…………」

 

ちょっと恥かいた上に締まらないウルヴァリンだった。ちなみに、今回ウルヴァリンがいいたかったのは「そうだろう?」である事をお忘れなく

 

 

 

 

「えっと……その……ごめんなさい!急に撃っちゃって!」

「気にすんな。サイクのオプティックブラストに比べりゃ屁みたいなもんだ」

 

色々と決壊したメアリーだったが、数分間ウルヴァリンに泣き付いたら収まった

 

「今回は顔合わせに来ただけだ。邪魔してすまなかったな」

「あ、いえ……」

「それと、俺からも言っておく。魔剣は実在する」

「!?」

 

急に魔剣の事を言われ、驚く

 

「俺も何度か対峙したことはある。ミュータントが何人もイ・ウーとやらに勧誘……いや、拉致されかけてな。その度に俺を含めたX-MENはあいつと戦った」

「……」

「だが、あいつは面を見せなかった。誰に聞いても顔は見ていない。が、声からして相手は女だ。そして、あいつは氷を操るミュータントかミューテートだ」

「氷を……」

「油断はするなよ。相手は俺達X-MENからも逃げ切るヴィランだ。少なくともスパイダーマン並にしつこいと思え」

「はい!…………ん?しつこい?」

「あぁ。しつこいだけだ。実戦はあまりした事が無いだろう。頭がキレるやつだし、氷を操ってくるからしつこいとしか言い様がない。まぁ、普通に戦えばスパイダーマンの圧倒だろうさ」

 

なら襲われても勝てるかな?と思ったが、ウルヴァリンやスパイダーマンはかなり長い間ヒーローをやってる上に様々なヴィランと戦う腕利きのヒーローだ。そんなヒーローとまともに戦うとなれば超能力者一人くらい楽々と倒して見せるだろう

 

ウルヴァリンの意見は当てにならないが、頭はキレ、超能力も持ち、引き際も鮮やかな強敵だというのはハッキリと分かった

 

「じゃあな。俺は日本を観光しておく」

「あ、はい!迷惑かけてすみませんでした!」

「気にすんな。あと、目、腫れてるからな」

 

そう言うと、ウルヴァリンはヒョイヒョイとビルの上に登って何処かへと行ってしまった

 

それを見送り、取り敢えずキンジの部屋に戻る事にしたメアリーだった

 

 

 

 

「お邪魔しま~す」

 

特に何事もなく帰ってきたメアリーは靴を脱いで丁寧に揃えて上がる

 

桃花は大丈夫かな?と思いながら歩いたその時、首に違和感がした。何か、異物が入り込んだかのような

 

ゆっくりと下がると、そこには自分の首の太さと同じ位の横幅に広がった赤色の線。ポタ、ポタ、と赤が垂れている

 

次に、自分の首に手をやる。何か生暖かいものがついた。手を見る。真っ赤

 

「…………?」

 

声が出ない。いや、出るが、それは喉から、ヒューヒューと空気が漏れるような音

 

そして、目の前の赤色の線を良く見る。それは、細いピアノ線だった

 

それを見て自分の参上を理解した瞬間、メアリーは倒れた

 

「な、なんだ!?……ってメアリー!?」

 

飛び出してきたキンジが喉を抑えながら倒れているメアリーを見付ける

 

「ピアノ線……それに血……ま、まさか!」

「うるさいわよキンジ!……メ、メアリー!?」

「どうかしたの?キンちゃん……ひっ!?」

「ちょっと何事……メアリー!!」

 

アリアが小太刀でピアノ線をいち早く切り、キンジと桃花がメアリーに近付く

 

「の、喉の中程まで切れてやがる……即死か……」

「死んでないわ。メアリー、大丈夫?」

 

桃花がメアリーの体を少し揺らして聞く。メアリーはちょっと手を動かした

 

「ま、マジかよ……」

「後数秒ね。待ちましょう」

 

そして数秒後、メアリーの傷はふさがった

 

「……息できないってホント辛いんですよ?暫く気絶させて欲しかったです」

「ホントに死んでたら嫌じゃない。あ~あ、制服が血だらけじゃない。最早ホラーよ?」

『あの時に比べれば……』

「あの時?」

 

最早グロ&ホラー担当と化したメアリーであった

 

キンジとアリアはもっと酷い惨状を見た事があるので大部グロ耐性がついたが、白雪はいきなりのスプラッタに気絶してしまった

 

「今度はメアリーの首の位置か……前は」

「アタシの首の位置だったわ……間違いない、魔剣の仕業ね」

「だから居るかもわからねぇやつのせいにしても……」

「いえ、その通りです。多分、今回は見せしめかなにかだったんだと思います」

 

メアリーがピアノ線の握り、 廊下の壁から無理矢理引っペがす

 

「メアリーまでもか?だから魔剣は……」

「存在します。今日、ウルヴァリンに会ってきましたが、ウルヴァリン含めたX-MENの全員が魔剣と一度接触しています」

「なっ!?」

「ほら言ったじゃない!!」

「あんた帰り道に何してんのよ……」

 

アリアはスルーしたが、キンジと桃花はメアリーが帰り道にウルヴァリンと会ってたことに驚いた。それに、キンジは魔剣が実在すると言う事に驚いた

 

「アタシの勘は当たるのよ」

「でも、近くに来てるとかは何も情報が無いじゃねぇか」

「あ、なら聞いてみましょうか?今日受信したこのメルアド、多分ウルヴァリンのですし」

 

メアリーが血の乾いた手でスマホを操作し、ウルヴァリン……と、言うかウルヴァリンからの呼び出しメールに返信を送る

 

そしてメアリーがシャワーを浴びて桃花がキンジにジュース代渡して桃花、キンジ、アリアで掃除をしながら待つこと数分

 

メアリーが風呂から出てきたあたりで着信が来た

 

「……あ、これ本当にウルヴァリンのメルアドみたいです」

「で、なんて帰ってきたのよ」

 

何故か嬉しそうなアリアがメアリーに後ろから抱き着いて肩から画面を覗き見る

 

「えっと…………こ、この近辺にいるみたい……です」

「ほらキンジ!!アタシに謝りなさい!そしてももまん買ってきなさい!!」

「何故そうなる」

 

自分の言ったことが正しかったからか、アリアは大はしゃぎ

 

「取り敢えず、魔剣と対峙したことがある人が言ってるんだから確実ね。これからは気を引き締めるわよ」

「ぜぇ~ったいにとっ捕まえてママの刑期減らしてやるわ!!」

(ただのボディーガードのハズが……はぁ)

 

その中で、白雪はまだ気絶していた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ウルヴァリンが何故魔剣の居場所をメアリーに教えれたか

 

『……ミュータント発見機はヴィラン探しに使うものではないぞ』

「……ホントすまねぇ」

 

実はプロフェッサーXにウルヴァリンが頼み込んでました




ちょっとネタについて解説

それは右ではないか……これはMARVELが原書の方でやらかしたエキサイトな翻訳です。That's rightのrightをそのまま右と訳してしまったからではないか……と思います。日本通のウルヴァリンらしからぬ発言ですね

そんな訳でウルヴァリン登場。ディスク・ウォーズ:アベンジャーズの方でもやっと出てきたので調子に乗って出してしまいました。一応原作版の方ですが、スパイディとは違い何故かキャラが掴めない……

今回は鬱憤が爆発したメアリー氏の的になってしまいましたが、大丈夫です。出番はあります

そして恐らくどの二次創作でも魔剣の存在がこの時点で確立する事は無いでしょう。いや~、MARVELキャラって便(ry

まぁ、魔剣の存在確立と同時にメアリーのグロキャラ確立という珍事件もありましたが……

そんな訳で一話挟んでから(挟まないかも)ジャンヌちゃんをフルボげふんげふん。失礼、ジャンヌちゃんとの全面対決です

では、次回また会いましょう

P.S
ディスク・ウォーズ:アベンジャーズのサージが思い出せなかった自分はにわかMARVELファン


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MarkⅩⅣ

なんか深夜のノリで書いてしまったキンジの更生(?)話

多分今回でお気に入り人数が下がる(確信)

あと、パスドラでバットマンとのコラボがきましたね。自分の前のデータはその為だけに始めました。今のデータは友達にリセマラしてから新しく始めてくれと頼まれたから渋々やり始めたデータですが
ゴッドフェスのすぐ後にバットマンとのコラボって財布をプロトンキャノンで中身だけ焼き払う気ですかあの運営は

まぁ、取り敢えず本編どうぞ


「……で、神崎さんは遠山くんの強化に協力しろと?」

「えぇ、そうよ。何時でもあの凄さを出せるようになったらまさに敵なしよ!」

「……神崎さんがちょっと興奮させればすぐなのに」

「え、何か言った?」

「いいえ、なにも?」

 

メアリー半デュラハン化事件から数時間後。つまりは翌日の昼休み

 

桃花はチア服のアリアと屋上で話していた

 

二日酔いも回復した桃花はもっさもっさと適当に買って来たパンを食いながらアリアの話に内心呆れていた

 

まぁ、それはキンジの事情を知ってるからなのだが

 

「それに、桃花の訓練にもなるかもしれないじゃない。肉弾戦の」

「私は基本銃撃だし肉弾戦なんてアイアンマンスーツ装着時しかしないわよ」

 

もっさもっさとパンを食べ終わり、パックジュースを飲み干す

 

聞けば、取り敢えずキンジの脳天めがけて踵落としなり銃床落としなりやれと言う

 

確かに素のキンジの打たれ強さを上げる訓練にはなるかもしれないが、所詮それだけだ

 

腐ってもAランク武偵の踵落としをヒステリアモードでもないキンジが受け止めれるとはとてもじゃないが考えられなかった

 

「そういうわけで私は下りるわ。あ、メアリーを誘わないで。あの子、骨まで金属だから遠山くんの頭をカチ割るわよ?」

「骨が金属?」

「今度あの子の骨を叩いて見なさい。金属叩いた時と同じ感触と音がするから」

 

アダマンチウムと人間の骨がぶつかり合ったら結果なんて見えている。ゴミをビニール袋の中に突っ込んで屋上から出ていく

 

と、丁度その時キンジとすれ違った

 

「……頑張んなさい」

「……はいよ」

 

数分後、屋上で何十発もの発砲音が響いた

 

 

 

 

「何よあいつ!信じられない!!」

(……遠山くんの言い分はごもっともだけどね)

 

放課後、アリアは桃花を連れてプンスカと擬音が出そうな程怒りながら歩いていた

 

ちなみに、桃花は口にパックジュースを咥えている

 

「まぁ喧嘩別れ?しちゃった訳だけどどうするの」

「……魔剣が出てくるまで待つわ。その時に……ってバカキンジの部屋に荷物置きっぱなしだわ……取り敢えず取ってこないと……」

 

コンビニとか色んなところを二人で回ってたため、空は結構暗い

 

何も起こってなきゃいいけど。ともう一つのパックジュースにストローを通して飲みながら桃花は考える

 

「ってさっきからどんだけパックジュース飲んでるのよ」

「昨日スポーツドリンク程度しか飲んでないしね。ちょっとパックジュースが恋しくなったのよ」

 

ちなみに、アリアは袋に入ったももまんを抱えている

 

そんな事を話してるとキンジの部屋についた

 

取り敢えずアリアは荷物だけとってさっさと自分の部屋に帰ろうと思いながらドアを開けた

 

そこには

 

「なっ……なっ……」

「…………」

 

上半身裸のキンジと服を脱ごうとしている白雪。二人が固まった

 

桃花の口と手からパックジュースが離れてポトッと地面に落ちた

 

「桃花~?帰ってきたの…………へぅっ!?」

 

さらに居間から顔を出したメアリーが顔を赤くする

 

カオス。実にカオス

 

桃花は無言のまま部屋に入り、メアリーの手を掴んでそのまま玄関まで戻る

 

「……ちょっとメアリーは私の部屋で預かるわ」

 

至極無表情で桃花は顔を真っ赤にしてフリーズしてるメアリーを引きずってキンジの部屋から出ていった

 

「……は?ちょっ、香月!せめて弁解の余地を!!」

「こ、こ、この……バカキンジィィィィ!!」

 

数秒後、銃声が響き、ドボン!と何かが川に落ちる音が聞こえた

 

 

 

 

「……って、遠山くんって星伽さんを止めようと動いたんじゃ?私が上に乗ってアレをし始めても止めた位なんだし……」

「ふ、二人で裸になって……あ、あんな事やこんな事……」

「どうしたのだ?二人とも何かボーっとして」

 

その日、桃花とメアリーは全く使い物になりませんでしたとさ

 

 

 

 

「ふぅん。で、川にドボン!と」

「誤解が解けてなによりだ……げほっ」

 

翌日、桃花は学校を休んでドラムマガジンを取り付けたグレッグ片手に昼頃、キンジの部屋に押し入り、風邪で寝込んでいると聞いたキンジに昨日の事を問い詰めた。結果、いきなり脱ぎ始めた白雪を全力で止めようとしたところにタイミング悪く桃花達が来たことが分かった

 

枕元には特濃葛根湯という風邪薬があった

 

(特濃って……何が特濃なのよ……成分か?成分なの?それとも味なの?)

「それは俺のだ……やらんぞ……」

「要らないわよ……私はバフ○リン派よ」

 

手に取っていた特濃葛根湯をキンジの枕元に戻す

 

「白雪が買ってきてくれたんだよ……マジで助かった……」

「ふぅん……星伽さんが?……あ、ちょっと電話したい人がいるから出るわね」

 

なんか面白くなかった桃花はキンジの寝室を出てアリアに電話した。今頃は昼休みだ

 

「もしもし?」

『桃花?何学校休んでるのよ』

「まぁ気にしないで。で、一つ質問だけど……特濃葛根湯って知ってる?」

『ちょっ、にゃ、にゃによいきな……きゃうっ!?』

 

どんがらがっしゃーんとアリアが椅子と机ごとひっくり返った音が聞こえた

 

あ、ビンゴだこれ。とアリアの惨状を音だけで聞きながらニヤける

 

『あ、アタシはそ、そんな風邪薬の事……』

「あ、もういいわ。からかえたから」

『桃花ァァァァァ!!?』

 

ピッ。と通話終了ボタンを押す

 

そしてキンジの部屋に再入場

 

「ど、どうしたんだ?めちゃくちゃニヤけてるが……」

 

キンジは上半身だけ起き上がらせて桃花に聞いた

 

「何でもないのよ。なんでも」

「いや、そうもニヤけられると正直言って気味悪……」

 

パシュッという小さな音と共にキンジの頬を何かが掠った

 

「気味がなんだって?」

「な、なんでもございません」

 

桃花の手には煙を上げるグレッグ。キンジはゆっくり両手を上げた

 

「まぁ、今の私は機嫌がいいわ。寝汗、かいてるだろうし体拭いたげる」

「え?」

「もちろん背中だけ。前と下半身は自分でやりなさい。あなたの汚れたバベルの搭なんて見たくないわ」

 

現役女子高生がそんなこと言っていいのかよ……と内心引く。が、このまま嫌だと言ったら最近アリアが来た事で自分の命のために購入した防弾寝間着に弾丸が吸い込まれそうなので大人しく上だけ脱ぐ事にした

 

「ぬるま湯だけどいいわよね?答えは聞かないけど」

 

と、丁度そこで洗面器を持った桃花が入ってきた

 

酷くならないんなら構わん。とだけキンジは言っておく

 

「んじゃ、背中見せて」

「はいはい」

 

ベットの上でちょっとだけ向きを変えて桃花に背中を向ける

 

そしてタオルを絞った事で絞られたお湯が洗面器に落ちる

 

暫くしてからちょっと冷たい気もする軽く濡れたタオルが背中についた

 

「……背中、大きいわね」

 

キンジの身長は丁度170cm。大体平均的な身長だ

 

「そうか?」

「私から見たら。って事」

 

対して桃花は159cm。頭一個位身長は違う

 

「今まで文の背中しか拭いてなかったから。あの子はちっちゃいから」

 

確かにアリアよりも少し小さい平賀さんと比べればな……と内心思う

 

そして背中を拭かれるがままで数十秒後

 

「……遠山くん。悪い事は言わない。今回のボディーガードの件、下りて」

「な、なんだよいきなり」

「相手はあのX-MENからも逃げ切る魔剣。もし、戦闘になったとしたら私は確実にアイアンマンスーツを装着せざるを得ないわ。さらにメアリーがいても、相手はミュータントのヴィラン。神崎さんとあなたを守りながら戦うのは余りにも危険すぎる……」

 

そう言いながら背中を拭く桃花の手は少しだけ震えていた

 

「アイスマン……彼には及ばなくても、それとほぼ同じ力を持ってるのなら……私とメアリーが協力しても相性は最悪よ……アイアンマンスーツには氷化させられたら抜け出せるための力はない。メアリーは最悪……死ぬわ。勿論私も」

 

死ぬ。その言葉を聞いて、キンジの体が少しだけ強ばる

 

「……なら逃げればいいじゃないか」

「逃げたら星伽さんはどうなるの?私達は敵ではないと判断してまた狙ってくるわよ」

 

その言葉にキンジは次の言葉を紡げない

 

「……だから、下りて」

 

ピチャ……とタオルが湯につく音が虚しく部屋に響いた

 

「……なら、お前らも下りればいいじゃないか。白雪とはあったばかりなんだろ?」

「馬鹿言いなさい。例え死んだとしても助けるわ。だって、私は……」

 

再び、背中に濡れたタオルの感触が伝わった

 

「トニー・スタークの娘であり、キャプテンアメリカの弟子の鋼鉄のヒーロー、アイアンマンよ?たった一人でも、助けが必要な人が居たなら……私はその人を死ぬ気で助ける。それが、ヒーローだもの」

 

その言葉に、キンジは言葉を失った

 

同い年の、自分よりも小さな少女が、人を死ぬ気で助けると言ったのだ。対して自分はどうだ。兄が死に、武偵を止めたいと言って強襲科を止め、今は転校を待つだけだ

 

「……なぁ、もし、トニー・スタークがアイアンマンとして……ヒーローとして死んだら、お前はヒーローを止めるか?」

「愚問ね。止めないに決まってるでしょ」

「なら、トニー・スタークがとある事件に介入して、人を救った後に死んだ。そしたら、世間は事故を防がなかった責任はトニー・スタークのせいだ、トニー・スタークは無能だと叩き始めたとする。それでもヒーローを止めないのか?」

「当たり前。そんなマスゴミ放っておくわ。そして、新しく私がヒーローとしての名声を重ね、トニー・スタークは無能ではない。立派に人を救い、笑顔を守ったヒーローだと世間に思い知らせるのよ。トニー・スタークの娘である私が、ね」

 

マスゴミという言葉においとツッコミを入れそうになったが、キンジは桃花の言葉に何も言えなかった

 

自分は兄がそうやって世間から叩かれたから武偵という存在に失望して武偵を止めようと思った

 

「……けど、それは起こってみなきゃ分かんないんじゃないのか?」

「そうね。けど、確実に言えるのはそこで折れたらお父さんの評価は落ちに落ちる。人間ってのは流されやすい生き物なのよ。だから、私は折れずに……流されずに反抗する。自分の肉親が好き勝手言われるなんて……たまったものじゃないからね」

 

自分はどうだ?兄の事をあんな風に言われてどうした?

 

逃げ出した。反抗もせずに。マスコミに迫られた時に威嚇射撃なりなんなりしてからカメラやボイスレコーダーに向かって兄は立派な武偵だった。それを無能呼ばわりするなと言えば良かったのではないか。その後に兄の分まで自分が頑張れば……武偵として活躍していけば、兄の評価はガラリと変わったかもしれないんじゃないのか

 

遠山金一の弟はあれだけ優秀なんだ。だから、本当は遠山金一も優秀な武偵で、あの事故は本当は遠山金一のせいでは無かったのではないかと思い知らせる事だって出来たかもしれないのだ

 

自分はただ、桃花の言ったように周りに流されてしまったのではないか。と折れてしまったのではないか。と

 

「そうか……そうだよな」

「……例え、その時折れてしまったとしてもその後でも遅くはないわ」

「……そうなのか?」

「名声を上げれば世間は食いつく。自分という餌に。その餌にかかった人達に大々的に叫ぶのよ。自分はトニー・スタークの娘だ。第二のアイアンマンだ。トニー・スタークは立派なヒーローだった。自分はそれを見習っている。と。まぁ、それが無理でも私はヒーローを続けるけど」

 

今までの自分には全く無かった発想。世間に見返すという行為

 

だが、もう今更では遅いかもしれない。もう、世間ではあの事件は遠山金一のせいと決めつけられてしまったのだから。

 

でも、

 

「……まだ、間に合うと思うか?」

「何が?」

「武偵として……昔憧れた正義の味方として、武偵を続ける事……兄さんを超える事……」

「……それは自分で決めることよ。遠山くん」

「俺は……」

 

正義の味方、兄を超える。この二つを成し遂げるにはもう遅いのか?

 

「ヒーローはなりたくてなるんじゃない。なっているものなのよ。人を助け、笑顔を守る。それだけで、人はヒーローになれる。武偵はそれに打って付けだと私は思うわよ。善人を悪人からその銃で守る。それだけでいいのよ。それだけで、人は守った人のヒーローになれるの。世間でヒーローと呼ばれる人達はそれを積み重ねてきた人よ」

 

桃花はタオルを洗面器の中に置く

 

「スパイダーマン。彼はね、最初は警察に追われる身だったのよ?でも、それでもスパイダーマンは偶然居合わせたヴィランの巻き起こした惨状の中、沢山の人をその手で救った。そして、そのヴィランはニューヨークの全ての人を怪物へと変えようとした。スパイダーマンはそれを防ぐために急いでヴィランの元に行く中、警察に足を撃たれた。警察とは和解したけど、もうヴィランの元にたどり着けないそう思った時に、偶然救った人の親の中に工事用のクレーンの責任者が居たの。その人は、クレーンを独断で、部下に手伝ってもらって動かしてスパイダーマンの足場にした。その結果、スパイダーマンはそこに飛び込んできた警察の一人と一緒にヴィランを倒し、その野望を粉砕し、ヒーローになった」

 

せいぜい、テレビの中で活躍を少し聞いた程度の知識しかなかったが、今やヒーローヒーローと言われているスパイダーマンにそんな過去があるとは思いもしなかった

 

「長々と話しちゃったけど、私の言いたいことは、正義の味方っていうのは、例え一人の人を助けたとしてもなれるものなのよ。感謝され、慢心せず、どんな状況でも困ってる人を助ける。それが、正義の味方なのよ。遠山くん、あなたにその覚悟はあるの?正義の味方となる覚悟は」

「……あぁ、やってやる。兄さんはあんな危機的な状況でも見知らぬ人を助けて死んだんだ。兄さんを超えて、正義の味方になるのにその程度の覚悟が出来てないわけない」

 

キンジは振り返って真っ直ぐ桃花の目を見て言った

 

「……なら、魔剣捕縛から下りろ。なんて言えないわね。遠山くん、今回はチームアップよ。誰かがやられそうなら死ぬ気で助ける。私達全員を助ける気で、全力で戦いなさい。代わりに、私達全員があなたを死ぬ気で助ける」

「あぁ。やってやるさ!」

「いい意気込みよ。さ、正義の味方……いえ、武偵を続けると決めたのでしょ?なら、早く寝ちゃいなさい。魔剣戦で風邪で動けないとかなったら一発ぶち込むわよ?」

「分かってるさ」

 

キンジは上を着てから布団に潜り込み、数分後に寝息を立て始めた

 

「……頑張りなさい、ヒーローさん」

 

桃花はキンジの頭を一撫でして、後片付けをしてからキンジの部屋を出ていった

 

 

 

 

翌日

 

「やっとやる気になったのね!ほら、行くわよ!!」

「俺は誰かを守れるくらいに強くな……あだぁっ!?」

「遅い!もう一回!!」

「わかってる!さぁ来い!!」

(……説得方法思いっきり間違ったわね。これは)

 

一人頭を抱えていた桃花であったとさ

 

翌日、頭をぶっ叩かれすぎたキンジは一人での特訓に切り替えましたとさ




よし、これでキンジを思う存分魔改造出来る←オイ

取り敢えず……キンジには別れた妻でも(殴



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