僕のヒーローアカデミア×Fate Grand Order (小野屋陽一)
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第1期
第1話


初投稿。因みにFateはFGOしか知らない。


side立希

自分―藤丸立希は今、高等学校の入試を受ける事にした。

「入試かー…緊張する…」

「まぁお互い頑張ればいいじゃん」

実の姉―藤丸立香がやれやれと言った感じでやって来た。

「実技は大丈夫なんだよ。タニキやエミヤ、レオニダスに扱かれて…」

「うん…今思うとよくついていけたよ私達…」

お互い遠い目をする。

「問題は筆記だよ…そりゃ有名人が沢山いてさ、頭のいい人もいる…けど主張が激しいんじゃん!?」

「そうだよねぇ…武勇伝とか語られて…おまけに参考書の内容が違うって否定してくるし…」

「…結果、自分は理系がよくて」

「私は文系…足して二で割ればいいんだけどねぇ…」

「「はぁ…」」

入試前、しかも校門の前で自分たちは項垂れる。

「ま、まぁ兎に角何とかなるさ。」

「そうだね…」

不安が漂う中、自分たちは前へ進む。

 

事の始まりは中国で『光る赤子』が生まれた。以降、各地で『超常』が発現し続け、『超常』が『日常』となる。『超常』に伴い爆発的に犯罪係数が増え、『敵(ヴィラン)』が現れる。それと同時に『ヒーロー』という『架空』が『現実』となった『職業』が生まれた。

 

そんな世界に生まれた自分と姉。物心がつく頃には親はいなかったが、寂しくはなかった。寧ろ毎日が楽しい。理由は『カルデア』があるから。双子で生まれたために、自分と姉の『超常』、言い換えると『個性』によって二人の家族を作り上げれた。そしてそんな家族の為に守りたい、力になりたい……そんなふわっとした理由で『ヒーロー』を目指す事にした。姉は……どういう理由でヒーローになりたいのかは分からない。多分同じだと思うけど…

 

「さて…頑張るか…」

自分と姉が入試を受ける高校は『雄英高校』。倍率が300という超エリート高校。その高校から数多くの有名なヒーローが卒業している養成校だからだ。今はプロヒーロー、『プレゼント・マイク』から実技の試験の説明を聞き終え、指定された会場のスタート地点にいる。服もジャージに着替え終えている。因みに姉とは別だ。

「(さぁ、ここからが本番だ…落ち着いてやれば、必ず合格できる!!)」

改めて頑張ろうと意気込んだ時だった。

『はい、スタート!』

「―はい?」

突然のスタート合図。これには思わず思考停止した。

『ほらほらどうしたぁ!?賽は既に投げられてんぞ!?』

『!!!』

そのアナウンスによって全員動く。当然自分もだ。

「っ…出遅れたっ!」

急いで仮想敵がいるエリアへと入る。そして自分の目の前に仮想敵が現れる!

『標的捕捉!ブッ殺ス!』

「やってみろ…っ!」

自分は右手の甲に描かれているシンボル―『令呪』を掲げ、『個性』を発動させる。姉や自分の個性の名は―

「出でよ―『ライダー』!」

「―召喚に応じます。我が主…」

―『英霊召喚』。

 

「あら」

『グギャ!?』

その女性は十字の杖を振り上げ仮想敵の頭部を破壊。

「ふふっ」

『ガガ!?』

次にそのまま十字の杖を振り下げ別の仮想敵の胸部を破壊。

「―光を!」

『グギュ!?』

十字杖を回転させ地面に突き刺すと同時に更に別の仮想敵の頭上から光が放たれ破壊。

『『『『標的捕捉!ブッ殺ス!!』』』』

「何、やる気なの?……んんっ。いいえ、嘆かわしいことです」

「(いつも思うけど…何でこの人本当に聖女なんだろうか…)」

現状。かなり楽。自分が召喚した人物はライダー、『マルタ』。悪竜タラスクを鎮めた一世紀の聖女。 妹弟と共に歓待した救世主の言葉に導かれ、信仰の人になったとされる。美しさを備え、魅力に溢れた、完璧な人…ってまぁ簡潔すれば『恐るべき怪獣をメロメロにした聖なる乙女』 だ。

「ああもう!数が多すぎない!?怒らせるなっての!いっけぇー!」

『■■■■■■■■■!!!!!』

「あ、タラスク出した」

巨大魔法陣の中から悪竜の顔が出て、咆哮。複数の仮想敵をなぎ倒していく。多くの仮想敵を倒す彼女にヘイトが集まり、仮想敵が更に襲い掛かって来る。

『ブッ殺ス!』

「おっと!」

当然、マルタさんの近くにいる自分も標的にされる。だけど英霊達の(地獄の) 訓練によって身体能力は高い自分は危なげなく、バク転して攻撃を回避する。

「マルタさん!」

「!分かってるつーの!!」

『グギャ!?』

自分の呼びかけにマルタさんは呼応し、自分に襲い掛かって来た仮想敵を十字杖で叩いて破壊する。

「はっ!マスターに歯向かうなんて10年早いよ!……んんっ……いえ。道は、いつも険しいものです」

「いや、今更素を隠しても意味ないです」

「……別にいいじゃない!私は聖女なのよ!?幻滅されるわけにはいかないのよ!!」

好戦的な顔をしたがすぐに慈愛染みた顔に直すマルタさん。でも自分がツッコミで指摘すると慈愛の顔が消え、普段の顔つきと口調に戻る。

「んー…自分としては素のマルタさんの方が好きですよ。姉御感あって」

「は、はぁ!?な、何馬鹿な事言ってんのよ!!」

顔真っ赤にして怒ってくるマルタさん。ちょっとにやけてしまう。っと、まだ試験は終わってなかった。

「ぐっ…い、いでぇ…」

「!大丈夫ですか?」

近くに怪我をした受験者がいた。頭や腕に血の跡がついており、受験者自身、止血しようと腕を抑えていた。

「マルタさん」

「分かってるわよ!…ううん!…分かってます。願い、想い、そして…」

スキル『奇蹟』を使用させて受験者の怪我を治癒させる。

「き、傷が…ありがてぇ…助かった!」

「どういたしまして」

「ちょっと!?助けたの私よ!?なんでマスターが礼を―」

『オオオオオオオオオ!!!!!』

「「!!」」

そんな時、近くのビルが破壊した。そして出てきたのは…超巨大な仮想敵だった。たしか、説明で言われた0Pの仮想敵だ。

「でけぇ!?」

「逃げるぞ!」

「どうせ0P何だ!倒しても意味ねぇ!!」

超巨大な仮想敵に、周りにいた受験生達は逃げる。

「マスター!逃げるわよ!」

「…………いや、ここで倒そう!」

けど自分は逃げない事を決める。これには逃げようと促したマルタさんも驚いた。

「はぁ!?倒しても意味ないんでしょ!?だったら―」

「倒す意味?違うよマルタさん!ヒーローってのは『敵を倒す』んじゃない…『人を助ける』事が重要なんだ!ここで食い止めなければ被害が広がる!!」

自分は逃げない。これが試験だとしても、ヒーローになるならこの程度で逃げてはダメなんだ!

「……はぁ……困ったマスターだわ……でもそこが私は好きなのよ!」

マルタさんは自分の隣に立つ。そして、杖を構える

『オオオオオオオオオ!!!』

超巨大仮想敵は自分たちを標的にしたようだ。真っ直ぐこちらにやって来る。

「おい!あんたらも逃げろ!」

「勝てるわけがねぇ!」

周囲にいた受験者達が逃げる様に自分とマルタさんに言ってくる。だけど自分はそれを無視し、巨大仮想敵と対峙する。

「それはどうかな…マルタさん。『宝具』を許可する!」

「下がってください、マスター…行くわよ!」

マルタさんは杖を掲げる。すると後ろから光が放たれた。そしてそこから現れるのは、悪龍の『タラスク』

「はぁ!?ど、ドラゴン!?」

「まじで!?」

「まさかアレと戦わせるつもりなの―」

ドラゴンという伝説上の生物を見て驚く皆。だけど…驚くのはまだ早い。戦わせる?違うんだなぁ…

「リヴァイアサンの子、今は人を守りし者―流星となれ!『愛知らぬ哀しき竜よ(タラスク)』!!

『■■■■■■■■■■■■■■■■!!!!!』

マルタさんは召喚したタラスクの後ろに跳んでタラスクを十字の杖でフルスイング。大回転しながらタラスクは巨大仮想敵に吹っ飛び着弾する。

『えええええええええええええ!?!?!?!?!?!?』

『オオオオオオオオオ!?!?!?!?!?』

やっぱり驚くよね。自分も始めはそうだった。なんか巨大仮想敵も驚いていた気がする…気のせいかな?

「よーし!」

巨大仮想敵は爆発四散。タラスクの威力がそれを物語る。

「これも、神の思し召しです」

『いや戦わせるんじゃないんかい!!?』

「さっすがマルタさん!」

皆がツッコむ中、自分だけマルタさんを讃える…

『終~~~~~~了~~~~~~~~!!!!』

そう言った所で試験が終わったのだった。

 

 

side立香

『はい、スタート!』

「―へ!?」

実技試験の説明を終え、私はジャージに着替え、スタート位置で試験開始を待っていると突然の開始合図をされ出遅れてしまった。

「ああもう!出遅れた!!」

急いで仮想敵がいるエリアへと入る。そして私の目の前に仮想敵が現れた!

『標的捕捉!ブッ殺ス!』

「うわっ!来たぁ!!」

私は急いで右手の甲に描かれているシンボル―『令呪』を掲げ、『個性』を発動させる。弟の立希や私の個性の名は―

「出で来て!―『アルターエゴ』!」

「―召喚に応じますわ。我が主…ふふ」

―『英霊召喚』。

 

『『『『標的捕捉!ブッ殺ス!』』』』

「またこれは、随分と荒々しい……私、昂ってしまいます」

その女性は頬を染め、舌なめずりをしていた。私は急いでそれを止めさせる。

「昂らないでお願いだから!」

現状。かなり楽になったけど、私が召喚した英霊に手を焼いてしまう。私が召喚した英霊はアルターエゴ、『殺生院キアラ』一言でいえばヤバイ。うん。性的な意味で。説明は長いから省く。今も頬染めながら仮想敵をなぎ倒してるんだから…

「ふふ…ああ…より強く、より弱く、はぁ…、美味しそう♡」

「だからそんな顔しないでくださいキアラさん!?というかその服装アウトだから!!何で最終再臨服装!?」

「(す、すげぇ…ふ、服が際どい…)」

「(控えめに…え、エロい…っ)」

「(ゴクリ…)」

そういった周囲の皆の目線でキアラさんは更に高揚していく。

「ああっ……何という事でしょう。この心と欲望のまま体を差し出した結果が、こんな姿になる事だなんて。今や私が宇宙の中心。何人もこの指からは逃れられない。でも、ふふっ、まだまだ、まだまだちっとも足りません。この宇宙に遍く愛を満たすまで、私の欲望は尽きないのですから。でも、ご安心ください、マスター。私はあなた様のサーヴァント。あなた様は私の大切な契約者。いつまでもどこまでも、その関係に変わりはありません。でも……うふふ……ふぅ……気を付けてくださいね。私、このように気紛れな女なので。あなたが私の掌から零れ落ちるようなことがあれば、どう扱ってしまうか分かりませんもの」

長々と何かを語りながら私とキアラさんの周囲にいる仮想敵を次々と地面から生えた白い手達が掴み拘束し、そのまま地面と抱き着かせながら破壊する。

「ほんと落ち着いて下さい。そして私を巻き込まないで…」

召喚失敗した…と思っていると付近ビルが破壊した。そしてそこから現れたのは…

『オオオオオオオオオ…』

実技試験の説明会で言われていた0Pの超巨大仮想だった。

「うわぁ!」

「に、逃げろぉおお!!」

「相手は0Pだ!無視だ無視!」

「でかっ!?ちょ、キアラさんどうしよう!」

当然私も焦る。どうしようかキアラさんを訪ねた。が、彼女は真剣な目で巨大仮想敵を見て―

「抱けますかね…でも入ります?…いや……マスター、少しお時間頂いても?」

そんな事を言う。いつものキアラさんだ…

「実家のような安心感~じゃなくて!?ああもう!キアラさん戻って!お疲れ様でした!」

「あら…もう……全く持って物足りません…」

不服そうなキアラさんを元の場所に返す。と、同時にどっと疲労感が来た。捕捉だが、この『英霊召喚』は私の体内に保持されてる『魔力』を消費して召喚してる。人一人分の魔力は尋常じゃない。いくら大量に保持してたとしても、一日の召喚は最大3体まで。立希も同様だ。

『オオオオオオオオオ…』

「はぁ…って完全に私狙い……えっとこういう時は…来て!『フォーリナー』!」

「はぁーい!マスターさん!」

私は新たに召喚する。フォーリナー、『アビゲイル・ウィリアムズ』。セイレム魔女裁判において最も有名な少女。笑顔で現れた。そんな彼女に私は更に命令する。

「アビーちゃん!『宝具』を許可します!」

「!……ああ……マスターは悪い人だわ……」

私は指示すると、アビーちゃんの姿が変わる。金髪が銀髪へ、肌も白くなり、額には鍵穴が現れ、そして彼女の周りには触手が現れる。

「イグ・ナ。イグ・ナ、トゥフルトゥクンガ。我が手に銀(しろがね)の鍵あり。虚無より顕(あらわ)れ、その指先で触れたもう。我が父なる神よ。我、その真髄を宿す写し身とならん。薔薇の眠りを超え、いざ窮極の門へと至らん!―」

『オオオオオオオオオ!?!?!?!?』

アビーちゃんから現れた巨大な触手は巨大仮想敵を襲う。そして…

「―『光殻湛えし虚樹(クリフォー・ライゾォム)』」

巨大仮想敵は消えた。文字通り、『消えた』

『―は?』

「(あー…これSANチェックはいるかなぁ…)」

周囲にいた受験者達は驚愕していた。よかったあの触手みて発狂している人はいなさそうだ。

「見てくださった?マスター!」

『宝具』が終わると、アビーちゃんは元に戻る。

「うん!ありがとうアビーちゃん」

「えへへ♪」

褒めてくれと言わんばかりのカワイイ笑みで近寄って来たアビーちゃんを私は頭を撫でる。うん愛い愛い。

『終~~~~~~了~~~~~~~~!!!!』

そう言った所で試験が終わったのだった。

 

side三人称

実技試験が終わり、そのまま筆記試験。

「おつかれ、試験どうだった?」

全ての試験が終わった立香と立希。校門前でお互い労う。

「疲れた…でも行けたと思う。そっちは?」

「こっちもいいかな?ま、あとは筆記を祈ろう」

「だね…」

そのままカルデアへと戻る二人。カルデアに戻ると、『試験お疲れ様』と英霊(家族) 全員が労い、いつもより豪華な料理を食べるのだった…




藤丸 立希(フジマル リツキ)
所属:雄英高等学校ヒーロー科1年A組
出身:カルデア
誕生日:9月16日
血液型:A型
出身地:南極
好きなもの:マンガ、アニメ
戦闘スタイル:オールラウンダー
パワー:C
スピード:B
テクニック:A
知力:C
協調性:A
隠れオタク:A
性格:天然オタク
個性:英霊召喚
カルデアにいる英霊達を召喚する事が出来る。正し召喚には魔力を大量に使う為、『一日3人まで』しか召喚出来ない。基本は1人だけ召喚する。
特徴:容姿はぐだ男。性格は温厚。カルデアにいる英霊達は家族のように接している。ボケもツッコミもする。アニメオタクでネタを多用。

藤丸 立香(フジマル リツカ)
所属:雄英高等学校ヒーロー科1年A組
出身:カルデア
誕生日9月16日
血液型:AB型
出身地:南極
好きなもの:マンガ、アニメ
戦闘スタイル:オールラウンダー
パワー:B
スピード:B
テクニック:C
知力:B
協調性:C
毒舌:A+
性格:サバサバ乙女
個性:英霊召喚
カルデアにいる英霊達を召喚する事が出来る。正し召喚には魔力を大量に使う為、『一日3人まで』しか召喚出来ない。基本は1人だけ召喚する。
特徴:容姿はぐだ娘。髪は後ろで束ねている。性格は普通。言いたい事はバッサリ言う。面倒臭い事からすぐ逃げる。実はコンタクト。オフの日はメガネ。


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第2話

投稿は不定期。話も短文or長文で不安定。


side三人称

雄英高校にて

「実技成績出ました。」

「あの二人…何者ですかねぇ…」

試験管である教師達の前に映し出されたのは実技試験結果。そこにはタイ2位の『藤丸 立香』と『藤丸 立希』の名前があった。

「『藤丸立香』敵ポイント66、救助ポイント10。彼女と共にいた謎の女性が次々と仮想敵を薙ぎ払い、そして最後の巨大仮想敵を新たな人物を呼び出し、文字通り消しましたね。」

「『藤丸立希』敵ポイント36、救助ポイント40。彼も彼女と同様に付き添っていた女性が仮想敵を次々に壊し、そして巨大仮想敵には巨大な怪物をぶつけ破壊…ほんと、何なのでしょうか?」

「二人の個性は…!これは驚きです!同じ個性ですよ!個性名は…『英霊召喚』?」

「英霊…というのはよくわからんが…映像を見る限り、従者を呼び、戦わせる…というわけか。」

教師達は二人に興味を示す。そして審査結果は…

「まぁ、結果はどうあれ二人は合格さ!」

 

 

side立希

『人理継続保障機関フィニス・カルデア』。通称カルデア。そこは南極にあり、標高6,000メートルの雪山に建てられている。そこが自分たちの実家だ。どうやって日本から南極に?簡単に言えば、魔術はスゴイ。つまりはそういう事だ。

「立希君!立香ちゃん!」

「んー?」

「何?ロマニ?」

今日も英霊達の厳しい訓練でヘトヘトの自分たちの前にロマニが息を切らしてやって来た。手には二通の手紙。

「結果!結果が届いたよ!ほら!入試の結果!」

「落ち着いてロマニ…その手紙が?」

「う、うん。ほら!開けて結果を教えて!」

「そんなせかさないでよ…」

「何で君達はそんな落ち着いてるんだい!?」

「「疲れてるから…」」

「あ、ああ…訓練終わった後だったのね…そりゃそうなるか…ハハハ」

苦笑してるロマニから手紙を受け取る。そして手紙の口を開けると、小さな機械が入っていた。すると―

『『私が投影された!!』』

「「うわっ!?」」

「!立体映像!?しかもオールマイトじゃないか!?」

映し出されたのは№1ヒーローであり、『平和の象徴』、『オールマイト』だった。

『『なぜ私がいるのかだって!?それは私が雄英に勤めることになったからなんだ。ん?もう待ちきれないって顔をしているな!?本題の合否結果だが……文句なしの合格だ!!!筆記は平均点を大幅に上回り、実技の方も良かったぞ!実は我々が見ていたのは敵Pだけではなく、ヒーローらしい行動をしたものに与えられる救助活動Pというのも見ていた!さあ、受験戦争は終わったが、君が行くところはもっと過酷だぞ!雄英が君のヒーローアカデミアだ!!』』

「「おおー…」」

「おめでとう。姉」

「ん。そっちこそ」

お互いハイタッチをしてお互いの合格を祝う…そしてロマニは泣いていた

「ちょ!?何で泣いてるの!?」

「そりゃ嬉しいからだよ!合格おめでとう二人とも!さぁ!皆に報告しないと!!」

「あはは、今夜は豪華になりそうだ…」

自分が言った通り、その夜はエミヤ、紅閻魔、タマモキャット、ブーティカの豪華な料理が振舞われ、英霊達とドンチャン騒ぎで祝杯をした…

 

 

side三人称

入学日。

「どう?」

「普通に似合ってると思う。」

「ん。そっちもかっこいいね」

立香と立希は雄英高校の指定の学生服を着て準備万端だ。

「立希君!立香ちゃん!ティッシュ持った!?」

「「うん」」

「ハンカチは!?」

「「うん!!」」

カルデアの出入り口にて、ロマニが一つ一つ確認してくる。

「先輩。」

「「何?マシュ?」」

と、そこに二人後輩、マシュがやって来た。少し不安そうな顔をしていたけが、笑顔で―

「…行ってらっしゃいです!」

そう二人に言う。二人はそんなマシュを見て微笑んで答える。

「「行ってきます!」」

 

 

side立希

「ドアでか…バリアフリー?」

「いやいや…あれじゃない?異形型個性持った生徒もいるし」

転移魔術でビルの建物の裏から雄英高校まで登校し、教室の前までたどり着く。そして姉が言った事に納得しつつ、教室に入る。何人か生徒が既にいた。自分達は席に荷物を置く。五十音ずつの席なので、お互いの席は近かった。席に座ると、赤髪の不良っぽい男子とピンク髪にピンクの肌をした女の子がやって来た

「はじめまして」

「おう!はじめましてだ!俺は切島鋭児郎。これからよろしくな!!」

「私は芦戸三奈だよ。よろしく!」

「うん、よろしく」

自分と姉は切島君と芦戸さんに握手をする。

「自分は藤丸立希です。」

「私は藤丸立香です。」

そう答えると、切島君と芦戸さんは反応する。

「え!同じ苗字って事は…」

「はい、姉弟です。自分が弟で、あっちが姉」

「まじか!じゃあ双子かよ!」

そう言うと切島君は珍しそうに見て来た。勿論芦戸さんも。

「二卵性で似てないけどね」

とまぁ軽く話をしているとメガネの男子がやって来た。

「やぁ、はじめまして。ボ……俺は聡明中学出身の飯田天哉だ。よろしく頼む」

「藤丸立希です。」

「藤丸立香です。」

さっきと同じ様に自己紹介すると、やっぱりさっきと同じ反応があった

「む、二人は…姉弟なのかい?」

「うん。さっきも言ったとおり、自分が弟で、あっちが姉だよ」

カクカクとした動きで話かけてくる飯田君を見て自分は苦笑しながら答える。

「(はぁ…初対面だから同じ事何回も言うの怠い…)」

「(まぁまぁ、自分が皆に言うから)」

小声で姉が言いこぼす。自分は気付かれないように答える。

「ねぇねぇ!二人とも同じ苗字だから下の名前で呼んでいい?」

そんな時、芦戸さんがそう言って来た。

「特に問題ないですよ。身内でも名前で呼ばれてるし」

「私もそれでいいですよ。」

自分と姉がそう答える。

「なら俺も鋭児郎でいいぜ!これでイーブンだ!」

「私も三奈でいいよ!後敬語もいらない!」

いい笑顔で切島君…基、鋭児郎君と芦戸さん…基、三奈さんが言って来た。

「…分かった。三奈…さん。鋭児郎君」

「あはは!立希は固いねぇ~」

三奈さんに笑われた…女性相手は苦手だ。こういうのは…その後、寝袋に入った小汚いおじさんがやって来た。まさかの教師だった。名前は相澤先生。自分たちの担任だと言う先生の指示に従って体操着に着替えてグラウンドに移動させられた

 

「個性把握テストぉ!?」

クラスの一人がそんな大声で言う。いきなりジャージに着替えてグラウンドに集合と言われたらと思ったら…

「入学式は!?ガイダンスは!?」

クラスメイトの女子が先生にそう聞くと、先生は坦々と答える。

「ヒーローになるならそんな悠長な行事出る時間ないよ。雄英は“自由”な校風が売り文句。そしてそれは“先生側”もまた然りだ。」

…いきなりの体力テスト。しかもただの体力テストではない。“個性”を解禁したものだった。まずはデモンストレーションで、爆豪と呼ばれたボサボサの金髪男子が個性を使ったボール投げをする。

「―死ねぇ!!」

「………死ね?」

何とも怖い掛け声。そして爆風。派手な個性だ。そして先生が持っていた機械に『705.2m』と記された。

「まず自分の最大限を知る。それがヒーローの素地を形成する合理的手段だ。」

「なんだこれ!『面白そう』!」

「700って…マジか!」

「個性を思いっきり使えるんだ!」

和気藹々となるが、そこで先生が言って来た。

「なら…この体力テストでトータル成績最下位の者は……見込み無しと判断し、『除籍処分』としよう」

「なっ…」

「えっ…」

『はぁあああああ!?!?』

これには自分も姉も含め、全員驚く。初日から難関がやって来た…

 

 

side立香

「(じょ、除籍処分って……ヤバイ…これは頑張らないとっ!)」

第一種目 50メートル走。五十音順で二人ずつ走る。今の所、一番速いタイムは、飯田君の『3秒04』。見て「はっや!」って思わず大声で言ってしまった。そして次は私の番だけど…

「…あ゛?」

「ひぇ…」

一緒に走る人がまさかのボール投げをした男子。見た通り感じ悪くて怖い。というかガン飛ばして来た。

「(ってビビるな!今は自分の事が最優先!)」

取り敢えず、“個性”を使った結果を出さなければならない。というわけで!

「来てください!『アサシン』!」

「―なんだ、立香。いきなり私を呼んで…」

私の前に現れたのはアサシン、『スカサハ(水着)』師匠。

『ええ!?誰ぇええ!?』

「うひょー!水着のねーちゃん!」

「マブいぜぇ!!」

「まさかの師匠呼ぶんかい…」

立希以外全員驚いてた。というかあのブドウ頭の男子と稲妻マークのメッシュが入った金髪の男子は師匠に失礼すぎる…

「あ゛!?なんだテメェ!?部外者はすっこんでろ!!」

ひぇ…さっきのボール投げした男子、師匠にメンチ切った!怖いもの無しなの?

「…は!小僧。そう吠えるな。弱く見える」

「んだとてめぇ!!」

師匠も師匠で余裕な笑みを浮かべて…

「師匠!煽るのはよしてください!今は助けて欲しいのですが!!」

ボサボサ金髪男子と離れ、スカサハ師匠に助けてもらうように懇願する。

「全く…命令なら、仕方がない」

「わーい(ふぅ…)」

安心して、ようやく始める。走るレールの前に師匠が立ち、その隣に私が立つ。

『位置についてヨーイ―』

スタート合図が来ると同時に

「―よっ」

師匠が私を担ぎ―

『…は?』

『スタート!』

「ふっ!」

「っ!?」

加速。さっすが師匠。早い。ボサボサ金髪の男子はなんか両手を爆破させて推進力で走っていたが、師匠のほうが速くたどり着く。

『3秒47』

『ええええ!?!?』

私のやり方を見た全員が驚く。立希は呆れたような顔をしてたけど…いいじゃん。文句ある?

「それアリかよ…」

「師匠ありがとうございます!」

「次は自分の力でやれ」

軽く師匠に怒られた…因みに立希は普通に走っていた。立希と一緒に走ったもじゃもじゃ緑髪の男子も普通に走っていた。彼は個性を使わないのかな?因みに立希の記録は『5秒34』と平均より速い。

「お疲れ」

「師匠に走らせるって…」

「そっちはしないの?」

「…野郎に担がれたくないし女性に担がれるのも嫌だ…」

もっともな意見に苦笑するしかなかった。

 

第二種目 握力。他の生徒では手を生やして纏めて握ってたり、万力を作り出していた。だがしかし、そんな生徒は少人数。後は皆普通に測定。立希のほうは平均より上回る。何故って?そりゃレオニダス先生の『レオニダスブートキャンプ』で得た筋肉の結果だからだよ!私?…うん、割愛で…。

 

第三種目 立ち幅跳び。レーザーをへそから出して飛距離を稼いだり、爆風で飛んだりとかなり応用していた。私?レオニダスブートキャンプはジャンプ力も上がる!

 

第四種目 反復横跳び。ブドウ頭の男子が個性で面白いくらい早く動いていた。私?レオニダスブートキャンプは敏捷性も上がる!

 

第五種目 長距離走。一周1000mの校庭を10周走る。持久力は苦手だ。

「…あ、良い事思い付いた」

不意に、立希がそう言う

「誰か呼ぶの?」

「うん。出でよ!『ライダー』!」

今度は立希が個性を使った。そして呼び出した英霊は…

「―僕に何か用かい?」

「おー、立希じゃないかーってなんだここは?何でクソガキ達が沢山いるんだ?」

『また誰か現れた!?』

ライダー、『坂本龍馬』そして『お竜さん』だった。

「おい女!てめオレの事クソガキつったなぁ!?あぁ!?」

お竜さんの言葉にまた反応するボサボサ金髪の男子…沸点低くない?

「うるさいぞクソ雑魚ナメクジ野郎」

「んだとぉ!てめぇ!!」

今にも一触即発状態…そんな時に龍馬さんが割って抑える

「こらこら、お竜さん。煽らないの…それで、僕達は何すればいいんだい?」

話しを変えようと立希に声をかける龍馬さん。立希もソレを理解し、直ぐに答える。

「えーと坂本さんというよりはお竜さんに用があって、お竜さん。蛇になって校庭を飛んでくれない?」

そう言うとお竜さんは嬉しそうにその提案にのった。

「ん。それならお竜さんに任せろーそれくらい朝飯前―蛙一匹前な事だ。」

「んーよく分からないね。」

立希と仲良さそうに話すお竜さん。というか…

「いいなぁ…私も乗せてよ」

「いや師匠いるんだしまた担がせてもらえばいいじゃん」

ズルイ。ダメ元で頼んだらやっぱり駄目だった。ちくせう。因みに立希は大蛇になったお竜さんの上に乗って校庭を飛んだ。

「あはははー!!やっぱお竜さんと一緒に飛ぶのは楽しー!!」

『そうかそうかー!それは私も同じだぞー!』

「何だアレ!?ドラゴン!?蛇!?」

「わっかんね…つかあの男性も誰だよ…」

「あはは、二人とも楽しそうだ。」

坂本さんは二人を見て笑っていた。私?まぁレオニダスブートキャンプのおかげで余りバてないで完走出来た…バイクで走るってありなの?お竜さんで走った(?) 立希がアリならアリか…

 

 

side立希

さて、坂本さんとお竜さんを返して、第六種目のボール投げが始まる。茶髪で丸顔の女子がボールを無重力にして記録『∞』をたたき出したのは驚いた。というかそんな結果あるんだ…

「次。」

「あ、はい」

さて、自分の番だ。ボールを投げる所に立つ。投げようとした時、ふと思いついた

「先生。この円の中だったら何してもいいですよね?」

「ああ。問題無い」

「それじゃあ……来い!『ルーラー』!」

もう一回『英霊召喚』をする。

「―今度はこっちの姿なの!?……こほん。私はどのような姿であろうと、私は私です」

『また水着の女性!?』

「ひょおお!」

「やっぱりマブいぜぇ!」

ルーラーの『マルタ(水着)』を呼ぶ。そしてそこの二人は後でタラスク(鉄拳聖裁)かな?そういう目で見ないでほしい

「それで?私は何をすれば?」

「うん。このボールを思いっきり投げてくれればいいよ。」

「…はぁ?そんな事で呼んだの?仕方ないわねぇ……」

やれやれと言った感じでマルタさんはボールを掴む。そして―

「ハレルヤ!!!」

『(………ハレルヤ)』

マルタさんの力のこもった渾身の投擲。ボールは弾丸のような速度で空高く舞う。そしてボールが点となり、見えなくなった。数秒後、先生が持っていた機械が鳴る。

「…『1274.0m』」

『はぁああ!?』

「どーよ!」

「さっすがマルタさん!」

さすがマルタの姐さん!そこに痺れる憧れるぅ!

「………次」

「あ、私か「どれ、私も少し本気を出すか」え?師匠?」

次は姉の番。だけどその前にスカサハ師匠が動き出した。

「おい、そこの黒服の男。この円の中なら何してもいいんだろう?」

「そうだ…」

「ふむ。立香。少し離れてろ」

「え?あ、はい」

そう言って姉を退かし、師匠はボールを軽く真上にあげ―

「…ふん!!」

―蹴った。投げるじゃなく、蹴った。

『え!?それってありなの!?』

思わず全員がそうツッコんだ。

「『円の中』なら問題ない…して、記録は?」

「…『1512.7m』」

「まずまずか…」

『えぇ…』

「「あはは…」」

師匠の態度を見て自分と姉は苦笑する。

「ちょ!?アンタ何私と対抗してんのよ!」

「何、少し暇だったからな。けしてお前のドヤ顔見てイラっとしたわけではない。」

「してるじゃない!!」

取り敢えず、ケンカしそうになった二人を自分と姉は返した。…ああ、後ここまで良いとこなしだったもじゃもじゃ緑頭の男子も指を犠牲にして、なかなかの記録を出していた。

 

そして結果は…

「んじゃ、パパッと結果発表。トータルは単純に各種目の評点を合計した数だ。口頭で説明すんのは時間の無駄なので一括表示する…ちなみに除籍はウソな。君らの最大限を引き出す、合理的虚偽」

『はーーーーー!!?』

相沢先生はハッと鼻で笑いながら結果を表示する。その言葉に多くの皆が叫ぶ。だが、一部の生徒はソレに気付いていたようだ。ちなみに自分は3位、姉は4位だった。

「あんなのウソに決まっているじゃない…ちょっと考えればわかりますわ……」

「そゆこと。これにて終わりだ。教室にカリキュラムなどの書類あるから目ぇ通しとけ」

そう言って相澤先生はもじゃもじゃ緑髪の男子に保健室利用届けを渡すとその場から去って行った。相澤先生が見えなくなった頃、自分は姉と小声で話す。

「(姉…)」

「(うん…あの先生、嘘って言ってたけど…)」

「「(見込み無かったら絶対除籍してた…)」」

少し冷や汗が出たのは内緒だ。

 

放課後、帰ろうとした時、三奈さんと鋭児郎君に呼び止めらた

「なあ!立希!お前の個性ってなんだ!?」

「水着のお姉さんとカッコイイ男性が急に現れて、そして消えたよね!?」

すると他の生徒も聞いてくる

「それ言ったらそっちの藤丸だって同じだよな!!」

仕方ないから個性を話す事にした。姉が初めに話す。

「えーと…私達は双子で生まれたからかな?個性が同じなの」

『ええ!!!』

「…それで、個性は…『英霊召喚』って言えばいいかな?有名な偉人を呼んで使役するって感じかな…?」

姉がそう説明すると三奈さんが目を輝かして自分に聞いてくる

「そ、それじゃあその召喚した人達って誰なの!?」

「自分が呼んだのは、『坂本龍馬』」

『坂本龍馬ぁ!?!?』

クラス全員が驚いていた。まぁ有名人だしね。

「マジかよ!あの土佐の人!!」

興奮するように鋭児郎君が鼻息を荒くしていた。で、姉の方は

「で、私が呼んだのは『スカサハ』」

「えっと……誰?」

流石にマイナー過ぎて知らないか…って思ったら

「ケルト・アルスター伝説の戦士ですわ。異境・魔境『影の国』の女王にして門番であり、槍術とルーン魔術の天才。数多の亡霊があふれる『影の国』の門を閉ざし、支配せしめるに足る実力を有すとか…」

まさかの知ってる人がいた!ポニーテールの女子が丁寧に説明してくれた。

「マジかよ!?そりゃあんなすげぇ結果だせるわな…」

頷く稲妻マークのメッシュが入った金髪の男子。そして丸顔の女子が興味津々に自分に聞いてくる。

「もう一人は!?」

「『マルタ』。まぁ簡単に言えば、タラスクっていう悪龍をメロメロにした聖女だよ。」

「聖…女…?」

「全然清らな服装じゃなかったよ!?」

とまぁさっきの二人の反応が面白かった。これからもっとすごい人達呼ぶ事になってまた皆が驚くのは容易に想像できた。




漫画読みながらニヨニヨ妄想してます。


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第3話

FGO。推しはマルタです。


side立希

登校二日目。いくら雄英と言えど国立高校だ。午前中の授業は至って普通の一般的な科目、英語や現代文なのである。教科書も特段変わった様子はない。

「―はい、次の問題わかるやつ、プチャヘンザアップ!!」

先生たちは皆ヒーロー。今日もプレゼント・マイク先生の声は実に賑やかだ。

 

午前の授業を終えてお昼。だいたいの生徒は学食を利用するだろう。なにせ『ランチラッシュ』という有名なヒーローの料理を安価で食べれるのだ。

「立希!一緒に食べようぜ!」

「ん。いいよ」

鋭児郎君に誘われ、弁当を持って移動する。姉もクラスの女子に誘われていたから大丈夫だろう。

「誘ったのは自分だけ?」

「ん?立希以外にも誘ったぜ!」

「お!藤丸弟も呼んだのか!こっちだこっちー!」

「既に飯と席は確保しておいたぜー!」

ひょろりとした体つきの男子と稲妻形の黒メッシュが入った金髪の男子がいた。たしか、瀬呂君と上鳴君だ。さっそく4人集まり、自分は弁当箱を取り出す

「お?立希は弁当持ってきたのか!」

「おいおい、弁当よりぜってーここの食堂の飯のほうが美味いぜ!」

瀬呂君と上鳴君は自分の弁当箱を見てそう言ってくる。

「そうかな?自分としては家の弁当は一番美味しいって思うよ。」

そう反論。だってこれはタマモキャットが作ってくれた弁当だ。絶対美味しい事に間違いないのだから。弁当の箱を開けると…

「「「うぉお!?」」」

「…力込めすぎ…」

弁当の具材が輝いていた。そして匂いも良く、胃に空腹感を訴えてくる。他の3人も自分と同じような感じだった。上鳴君と鋭児郎君は涎を垂らして見てくる。

「こ、こりゃ確かに…」

「う、美味そうだ…ゴクリ…」

「な、なぁ藤丸!よかった少し交換してくれねぇか!?」

そんな瀬呂君からの願い。

「どうしようかなーさっき自分の弁当を否定してたしなー…」

「うぐ…」

意地悪しすぎた。自分は弁当のおかずを少し弁当箱の蓋にのせ、3人の前に出す。

「…冗談だよ。はい交換。」

「おぉ!サンキュー!」

数秒後、3人から「美味ぇ!!」と言う褒め言葉が来た。ほら、やっぱり美味しい。自分もいただきます…うん。美味い。

 

 

side立香

午後。午前が一般的な科目ならば、午後はヒーロー基礎学。この授業はヒーローとしての素地を鍛えるための授業。先生はあの超有名なオールマイト。なんと豪勢な。さすが雄英だなぁ…

「わーたーしーがー!!普通にドアから来た!!」

「オールマイトだ!」

「すげぇ!本物だ!」

「銀時代(シルバーエイジ) のコスチュームだ!」

「(いつ見ても画風が違うなー…)」

そんな事思っていると、早速授業が始まる。テーマは…『戦闘訓練』だった。そしてそれに伴い、入学前に各々要望した『戦闘衣装(ヒーロースーツ)』に着替え、グラウンドβに集まる。

 

「あ!立香ちゃん!」

集合場所に向かう通路で麗日ちゃんと出会う。

「麗日ちゃん…うわ、すごいね。その戦闘衣装」

「要望ちゃんと書けばよかったよ…スーツパツパツで…」

宇宙服をイメージした衣装の麗日ちゃんを見て少し驚く。

「立香ちゃんの衣装…無駄が無くてかっこいい!」

キラキラと目を輝かして私の戦闘衣装姿の感想を言ってくる。私は頬をかきながら感謝する。

「そう?ありがとう。」

『魔術礼装・カルデア』を元にした戦闘衣装。元って言ったけどそのままだ。

「あ!デク君!」

「!う、麗日さ―うぉお!?」

「あ、姉」

麗日ちゃんと話していると、そこに立希と…声からして…緑谷君だろう。何かオールマイトをリスペクトした緑の戦闘衣装を着てやって来た。そして緑谷君は案の定、麗日ちゃんのコスチュームを見て顔を赤くしていた。そんな二人を他所に立希が私の所に来る。

「衣装、似合ってる」

「そっちこそ似合ってるじゃん」

立希の衣装は『魔術礼装・極地用カルデア制服』を元にした…というかあっちもそのままの戦闘衣装。まぁ変えなくてもカッコイイしね。

「二人の衣装って…もしかして同じコスチューム会社?」

私と立希の衣装を見た緑谷君はそう聞いて来た。

「そうだよ。名前は『CDF』」

「ええ!あの有名な!?」

立希がそう答えると緑谷君が突然大声で驚く。もしかして知ってるの?

「デク君知ってるの?」

麗日ちゃんがそう緑谷君に聞くと、緑谷君は鼻息を荒くしながら早口で答える。

「正式名称、『カルデア・ダヴィンチ・ファクトリー』!戦闘衣装は勿論!様々なサポートアイテムの製作にて、世界中の科学者の度肝を抜く技術力を持った大手企業だよ!」

普段見る緑谷君とは違く、勢いがあったのか、私と立希はたじろぐ。

「う、うん…知り合いがそこに務めてたからそれで注文した」

「お、同じく」

知り合いというかそこの社長とは家族並みの信頼関係。というかダ・ヴィンチちゃんから「どんな衣装がいいかな!?」って興奮気味に迫られた。因みにこの戦闘衣装、防御力が高い。確か…『防弾防刃防水耐電耐熱性』だったはず。ダ・ヴィンチちゃんェ…

「えっと…緑谷君。そろそろ集合場所に遅れるから早く行こう?」

麗日ちゃんが勢いのある緑谷君を制しながらそう言うと、緑谷君はハッとなり顔を赤くしがら謝ってくる。

「!ご、ごめんなさい!ぼ、僕こういうのにすごく興味があって…」

「(あー…いわゆるヒーローオタクかぁ…その気持ちすっごく分かる。気になるよねぇ…)」

そんな事がありつつ、私達はグラウンドβに向かう。

 

「始めようか有精卵共!!戦闘訓練のお時間だ!!!」

クラス全員が集まり終え、オールマイトの言葉に全員の顔が引き締まる。訓練内容は屋内での対人戦闘訓練。敵退治は主に屋外で見られるが、統計で言えば屋内の方が凶悪敵の出現率は高いらしい。そういうわけで『敵組』と『ヒーロー組』に分かれて、2対2の屋内戦を行うのだった。

「(うーん…それだと私や立希とペア組むと結構有利になるよね、そのチーム…)」

説明を聞き終え、ふとそんな考えが出てくる。私と立希は最大3人呼べる。2対5は鬼畜。そしてペアが立希となら2対8ってエグイ。

「…姉、どうする?」

立希も、私と同じ考えだった。

「…立希も同じ考え?」

「うん。姉と同じ…個性の関係上、仕方が無いけど…流石に相手が可哀そうだ。アンボニとかワルキューレ3人召喚したら尚人数差がつくよ…」

あー確かに…なら…

「…オールマイト先生」

私は手を上げ、発言する。

「何かね?藤丸少女」

「私と立希は個性の関係上、ペア組むと相手が不利になるので…私達は一人チームとしてくれませんか?」

「ええ!?」

「大丈夫なのかよ!?」

そんな提案に近くにいた切島君と三奈ちゃんが驚いた。オールマイトは少し考える素振りをする。

「成程…因みに藤丸少年の意見も同じかい?」

「あ、はい。問題ありません。」

オールマイトが立希にそう聞き、立希は肯定。それを見たオールマイトも頷く。

「…よし分かった!良いだろう!個性把握も大事だ!!」

「「ありがとうございます。」」

これで解決。そしてペア決め入る。ペア決めはくじ引きだった。結果は以下の通り。

A:[緑谷 出久&麗日 お茶子

B:[轟 焦凍&障子 目蔵]

C:[八百万 百&峰田 実]

D:[爆豪 勝己&飯田 天哉]

E:[芦戸 三奈&青山 優雅]

F:[砂藤 力道&口田 甲司]

G:[上鳴 電気&耳郎 響香]

H:[常闇 踏陰&蛙吹 梅雨]

I:[白尾 猿夫&葉隠 透]

J:[切島 鋭児郎&瀬呂 範太]

K:[藤丸 立香]

L:[藤丸 立希]

屋内戦闘訓練第一回戦目はヒーロー組が緑谷君と麗日ちゃん。敵組が爆豪君と飯田君だった。緑谷君と爆豪君は幼馴染であるが、どうやら確執があるらしく、執拗に緑谷君を狙っていた。その結果フリーになっていた麗日ちゃんと飯田君による一騎打ち。そして冷静さを失っていなかった緑谷君と麗日ちゃんの連携プレー?によってヒーロー組が勝利した。個性の反動で倒れた緑谷君は保健室、個性の副作用で吐いてる麗日ちゃん。どちらが勝ったかわからないような結果だったけど勝利は勝利である。その後、八百万さんからの講評。なんかオールマイト先生が「思ってたより言われた…っ」という小声が聞こえたのは気のせいとしておこう…うん。

 

続いて第二回戦目、ヒーロー組は轟君と障子君、敵組が尾白君と葉隠ちゃん。障子君による索敵、轟君の個性による凍結により、敵組がまとめて無力化。ヒーロー組の勝利。轟君の”個性”『半冷半熱』の凄まじさを私達A組全員目の当たりにした。さすがは推薦入試の一人だよ。

「強ぇえ!」

派手な個性。上鳴君がそう感嘆する

「仲間を巻き込まず、核兵器にもダメージを与えず、尚且つ敵を弱体化!!」

轟君の個性でモニター室が冷え、体を震わせながらも解説するオールマイト。

「最強じゃねぇか!!」

切島君含め、皆それぞれ口々に感想を言い合っていた。

「あの氷結…アナスタシアさん思い出すなぁ…」

立希は…何か外れた事言っていた…まぁ分かるけど…

 

そして第三戦目。オールマイトがクジの入った箱の中身を漁し、取り出す。

「ヒーロー組は……K!」

「あ、私だ」

私だった。呼ばれて少し緊張する。続けて…

「そして敵組は…J!」

「うっしゃあ!やってやらぁ!」

「うっし!頑張るとすっかぁ!」

敵組は切島君と瀬呂君…二人の個性は知らないから少し不利かな?

「(さてさて、誰を呼ぼうかな?)」

 

 

side立希

姉がヒーロー…言っちゃあ何だけど姉って性格的に敵っぽいんだよなぁ…

「なぁ藤丸!どっちが勝つんだろうな!」

上鳴がそう聞いてきた。自分は自信を持って答える。

「姉だよ。正確に言えば姉が召喚する人物によって勝利が決まる。」

「即答かよ!」

「今度は誰来るんだろ?」

「少し楽しみだよね!」

三奈さん。麗日さんなどのクラスメイト数人がワクワクしていた

「早く美女呼べよ!うへへ…」

ブドウ頭…峰田君。一回レオニダスブートキャンプに参加させようかな…割とマジで

「(どうせ姉の事だから…脳筋殺法だろうなぁ…)」

姉は最初は色々考えるけど、段々面倒くさくなって最終的に力ずく…ってなる事が多い。

『訓練スタート!』

試合が始まった。映像では音声は無い。映し出されたのは、敵組がいる建物の前で召喚している姉の姿。召喚された人物は中華風の衣装を着た派手な幼女。

「カワイイ!!」

三奈さんがそう言う

「あの子も偉人さんかしら?」

疑問に思うカエルっぽい女子、蛙吹さん。

「幼女には興味ねーよ」

本当に興味を無くしている峰田君。お前ぇ…

「立希!あの子は誰なんだ!?」

切島君が聞いて来た。自分は答える。

「『不夜城のアサシン』。真名は『武則天』だよ。」

そして、次に姉がした行動を見て、やっぱり脳筋殺法だったとわかり、溜息をついた。

 

 

side立香

『訓練スタート!』

「出てきて!『アサシン』!」

スタート合図と同時に『英霊召喚』。右手の甲に刻まれた令呪が光る。

「―全く。妾を使役しようとするなど……不遜過ぎて逆に興味が湧いてくるぞ?マスターよ」

「あはは、ごめんね、ふーやーちゃん」

アサシン、『武則天』。唐の二代皇帝太宗の後宮、妾の一人。出てくると不服そうな表情をしていた。

「後で飴あげるから協力してくれないかな?」

「…どれ、それなら仕方がないの。甘露は美味な物じゃ。」

ちょろ―こほん。やる気になってくれたふーやーちゃん。早速働いてもらう。

「それじゃあ…この建物に『宝具』をお願い。あ、中にいるクラスメイトは殺さないでね?毒もすっごく弱めで」

「なんじゃつまらん。折角新しい毒を使えるかと思うたのに…麻痺毒程度かの…」

やれやれといった顔でふーやーちゃんは動き始める

「あっぶな…因みにどんな毒で?」

「青酸カリと蠱毒をミックスし、そしt「あ、それ以上は聞きたくないです。」そかそか。」

会話を止めてもらって、早速『宝具』を発動させてもらった。

「憎むべきはそなたならず。そなたの中の罪。妾の法は、その罪の全てを痛苦の腕(かいな)で引きずり出す!とくと味わうが良いぞ。―」

瞬間。私の前に建てられていたビルの真下から巨大な毒壺が現れ、ビルはその毒壺に入る。そして容赦なくふーやーちゃんは蓋を閉め、その上に乗った。

「―『告密羅職経』にぱっ☆本日の拷問、これにて終了!」

可愛らしい笑顔での死刑宣告。(死んでない) さっすが容赦ない!

「さて、中に入りますか~ふーやーちゃん。」

「うむ。しかしまだ毒は張り付いておるから気を付け―お主には関係無いの。」

話しながら建物内に侵入。さて核がある部屋を見に行くとそこには…

「うぎぎ…う、動けねぇ…」

「か、体全体が…痺れて…」

死んだアルパカのような姿で倒れている切島君と瀬呂君がいた。

「うむ。解毒しない限りは今日ずっと動けんぞ。かかか♪」

「!だ、誰……だ…」

動こうにも動けない二人。実際、視線を少し移動するぐらいしか出来ないだろう…それぐらいふーやーちゃんの毒は効果覿面なのだ。私は微笑みながら二人の前を通る。

「どもども~びっくりした?ごめんね?まぁ麻痺毒だから死なないよ。それじゃあ。」

『ヒーローチーム!WI―――――N!!』

核に触れて、訓練終了だ。

 

さて、講習の時間。正直楽だった私は微笑みながら。負けてしまった瀬呂君と切島君は項垂れながら皆のいる場所に戻る。

「今戦のMVPは藤丸少女だ!何故だか分かる人!」

オールマイトがそう皆に聞くと、案の定、ポニーテールの女子、八百万さんが挙手する。

「はい。藤丸さんは建物事、毒で覆い敵のみを無力化。核に損害を与えず、誰も怪我せず終える事が出来ました。」

「妾の毒は千差万別。生から死を意のままに操れるものぞ。」

『うわぁ…』

胸張って話すふーやーちゃんの言葉に皆引いた。因みに切島君たちは解毒剤を飲ませ回復している。

「訓練始まったら紫色の液体が建物の流れて来た時はマジでビビった…折角のテープも流されちまったし…」

「くそ…悔しいぜ…」

二人は悔しそうにしていた。そんな二人にオールマイトは肩を叩いて励ます。

「今回はこういう結果になったが、まだまだ挽回は出来る!しっかり反省して次に生かそう!!」

そんな感じで私の戦闘訓練が終わった。

 

 

side立希

無事、第三試合が終わって…次は第四試合。

「ヒーロー組は……E!」

「僕の番だね☆」

「がんばるぞー!」

オールマイトが引いたクジの結果、ヒーロー側は三奈さんと、金髪の男子、青山君。

「そして敵組は……L!」

「あ、はい!」

そして敵側は自分だった。三奈さんと青山君。三奈さんの個性は確か『酸』って言ってた。で、青山君は『ネビルレーザー』。自慢するように説明してた。だから情報無しでの戦闘じゃない。勿論向こうも同じだ。

「頑張れ」

不意に姉から一言だけの応援。それだけで十分気合が入る。シスコン?知ってる。

「ん。姉が勝てたなら、自分も勝ちたいさ。」

さて、頑張ろう。

 

 

side立香

立希達を見送った後、後ろから八百万さんに声を掛けられた

「藤丸さん。先の試合、見事でしたわ」

「八百万さん。いやいや、勝てたのはふーやーちゃんのおかげですよ。」

「そうじゃよ!だからはよ甘露よこせ!マスター!」

癇癪上げるふーやーちゃんに私は飴玉を上げる。

「あ、そうだった。ありがとー」

「むふふ♪美味美味♪」

『(カワイイ…)』

嬉しそうに飴玉を食すふーやーちゃんに思わずほっこり。

「その…この方は何という名前で?」

「なんじゃ。興味あるのか?妾の名は武則天!唐の二代皇帝太宗の後宮、妾の一人じゃ!」

「え!?そうなのですか!?」

ふーやーちゃんの自己紹介に八百万さんは目を輝かす。

「八百万さん知ってるの?」

「確か…武氏はその子を殺した犯人として王皇后を追求し、寵姫・蕭氏とともに失脚させ、自らが高宗の皇后の座についたと言われて、その際、武氏は二人の手足を切り取った上で酒壺に投げ込み処刑したとか…この流れから、武氏が自ら子を殺して皇后に罪をなすりつけたのではないかと考える者も……真実は知りませんが…」

「ふむ…確かに、大方当たっておるが……真相は言わぬぞ…言わない方が、良い事もある…」

「そ、そうですか…」

ちょっと怖いふーやーちゃんが現れた。そういうのタブーだっけね。ちょっと空気が悪くなったからすぐに話題を切りかえる。

「それにしても八百万さんはスカサハ師匠の事と言い、博識だね。偉人に興味があるの?」

「はい!個性でありとあらゆる知識が必要でして、その一環で偉人にも詳しいのです。」

嬉しそうに話す八百万さん。私はそんな彼女に興味を持った。

「へぇ~私も結構詳しいから、聞きたい時は是非聞いて。」

「まぁ!でしたら後で紅茶とお菓子を用意しますわ!」

あ、この人ブルジョアだ。見た目や口調からそれっぽいなぁ…って思ってたけどさ…

「…そういえば、次の訓練。どちらが勝つと思いで?」

「んーまぁ、弟だと思うよ。」

不意の八百万さんから質問。私はあっさりと答える。余程のヘマをしなければ負けるはずがない。なんせこっちには英霊という強い味方がいるからだ。

『訓練スタート!』

「始まりましたわ!」

映像を見ると、早速立希は召喚していた。呼び出した英霊を見た私は…

「え、その子出すんだ…いや、まぁいいと思うけど…」

多分、敵っぽい英霊を出したかったんだろう。形から入るタイプだし。弟は

 

 

side立希

核の部屋にたどり着いた自分は誰を出すか考えた。敵っぽく、尚且つ対人戦となると……あの子か?

『訓練スタート!』

「出てきて『アサシン』!」

右手の甲の令呪が光り、『英霊召喚』。出てきたのは…

「―はい。マスター…すべて、すべて、貴方の御心のままに。私はすべてを捧げます。この体も。この心も、すべて……」

「うん………でも自分の体は大事にね?」

アサシン、『静謐のハサン』。暗殺教団の教主「山の翁」を務めた歴代のハサン・サッバーハの1人。先の姉の試合を見て、毒は有効だと思い、彼女を呼んだ。彼女はかなり忠誠心が高い。姉と自分は彼女の毒に触れても大丈夫で、結構気に入られてる…はずなんだけど何故か姉より自分の方が忠誠心高い……何でかなぁ?今も手を握って来て微笑んでるし…カワイイから許すけどさ!っと、切り替え切り替え。

「それじゃあせっちゃん。早速お願いしていいかな?」

「…はい。何なりと…」

せっちゃんは自分の手を放し一歩後退。そのまま頭を垂れ、膝を付く。

「この建物に、男女二人が侵入してるから、その二人を無力化にして欲しい。殺すのは駄目。毒も限りなく弱くしてくれないかな?で、無力化したらこの『捕縛テープ』で拘束して。」

「はい……参ります」

そう命令…お願いをすると、ハサンの仮面をかぶったせっちゃんは音も無く、自分の前から消えた。そして1分後…

「…終わりました」

さっきお願いを聞いていた状態で現れる。そのせっちゃんの隣には捕縛された三奈さんと青山君がいるのだった。

「「ムグー!!」」

ご丁寧に口まで封じている…容赦無い…

「早…さすがせっちゃん…ありがとう。」

お礼に頭を撫でたらせっちゃんは体を預けてくれる。うーんカワイイ。

『敵チーム!WI―――――N!!』

あっさり勝って試合終了。

 

さて、講習の為戻って来たのだが……

「うぎぎぎぎ……藤丸のヤロォ……羨ましいぜぇえええ……」

「くそぉ……所詮男は顔かよぉ……」

「………………」

「あはは…」

上鳴君と峰田君から嫉妬の目で睨まれる。何故か。せっちゃんが俺の手を握って背中にピッタリとくっついているからだ。この子、自分と姉、カルデアの皆以外だと人見知り(?) が発動するんだよね。

「いやぁ、まさか静謐ちゃん出すなんて、てっきり両儀式さん出すかと」

姉がそう言う。確かにそれもアリだった。だけど…

「んーでも敵っぽいってなるとハサンの方がいいかなって。」

「藤丸、今度のその人は何者?」

耳たぶがイヤホンジャックの女子、耳郎さんが聞いて来た。自分は答える。

「簡単に言えば、暗殺者メンバーの一人。けどまぁ見た通り、人見知りでね…」

「静謐ちゃんやっほ」

「マスターの姉様……お久しぶりです…」

姉がヒラヒラとせっちゃんに手を振ると、せっちゃんは自分にくっつきながらも挨拶する。

「そんな事はいいんだよぉ!!藤丸ぅう!手ぇ繋いでる理由を言えゴラァ!」

血の涙を流して訴えてくる峰田君を見て軽く引く。せっちゃんを見て理由を言うかどうか聞いて見ると、軽く頷き、説明しても良いと分かる

「彼女は…毒の娘…つまり彼女の体液は猛毒なんだ。触れたら……死から逃れられない。」

「ケロ…私は少し毒に対抗はあるわ」

蛙吹さんがそう言うが、自分は首を振って否定する。

「そこらへんにある毒と彼女の毒と比べても意味無いよ。そのくらいレベルが違うから。で、唯一自分と姉だけ大丈夫なんだよね。」

せっちゃんを見ながら言うと、せっちゃんは肯定してくる。

「はい…マスターのおかげで……私は今幸福を感じてます……だから……貴方にすべてを……捧げます…」

ちょっとその発言はアウト…ほら峰田君が発狂しだした…

「クソォオオ!!!」

「峰田うるせぇ…」

「女に飢えすぎだぞあいつ…」

瀬呂君と上鳴君が引いてた。勿論峰田君の周りにいたクラスメイトも…ちょっと表に出し過ぎだ。

「無駄話はそこまでだ!今は講評だぞ、諸君!とはいっても藤丸少年がMVPだがな!」

そうオールマイトが言って本題へと戻る。

「「気づいたら意識無かった……」」

どんよりと落ち込んでいる青山君と三奈さん。リプレイ映像を見ると、二人の前に突然現れたせっちゃん。直ぐに『ネビルレーザー』で攻撃する青山君だったがせっちゃんは簡単に避け、攻撃―捕縛する。驚く三奈さんだけど切り替えて『酸』をまき散らし、せっちゃんに攻撃と青山君に巻かれた『捕縛テープ』を溶かして解こうとしが、せっちゃんは苦無を投げ、飛び散った酸を相殺。そして青山君同様、あっという間に捕縛したのだった。うん。速過ぎてごめんね?

「そうですわ。立香さん同様に、ヒーロー組を瞬時に鎮圧したのは素晴らしいですわ」

八百万さんがそう褒め称えてくれる。

「だってさ。よかったねせっちゃん。褒められてるよ」

「……ありがとうございます。」

そう小声でせっちゃんはお礼を言った。

「かかか♪終わったのなら帰るとしようかの!」

「うん。ふーやーちゃんもお疲れ様」

「マスター…お呼びなら即参ります…」

「うん。お疲れ様」

自分と姉は武則天と静謐のハサンに礼を言って返す…と同時にどっと疲労が来た。やっぱり慣れないなぁ…姉も疲れる顔をするのだった…

 

その後の訓練も皆で観戦、講評しあって無事終了。放課後は皆で訓練の反省会をして学校が終わった。

「皆個性が面白いね」

「そうだね。私達ももっと頑張らないと」

「…これ以上きつくしないで欲しい…」

「それは…同感」

そうぼやきながら、自分と姉はカルデアに戻るのだった…




CDF (カルデア・ダヴィンチ・ファクトリー)
レオナルド・ダ・ヴィンチとロマニ・アーキマンを含め総勢100程度の会社。主に戦闘衣装やサポートアイテムの製作・発注が基本だが、世界中度肝を抜く技術力があってかなりの大企業。因みにセキュリティはBBが遊び半分で作り上げ、尋常ではない強固さをもっている。
※本部がカルデアにあり、世界各国に支部があるイメージ。


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第4話

それなりに書き溜め(大体アニメ5期ぐらいまで)してるので、修正しながら投稿します。


side立希

戦闘訓練が終わった次の日のHR。相沢先生が昨日の戦闘訓練の事を話す。爆豪君と緑谷君は先生に軽く注意されていた。

「さて本題だが、早急に君達にさせておきたい事がある。」

「(何だろ…テストとか…?)」

“自由”が校風だからなぁ…そう思いながら耳を澄ませ―

「学級委員長を決めてもらう」

『学校っぽいの来たーーー!!!』

普通だった…その後、クラスのほとんどが委員長をやりたいと手を上げる。けど収集が付かないため、飯田君の『投票』という案で決める事になった。結果、委員長が緑谷君。副委員長が八百万さんとなった。因みに副委員長だけど、八百万さんと鋭児郎君が同じ2票だったからジャンケンで決めた。自分?人を引っ張る仕事は無理だ。

「姉は誰入れた?」

姉にそう聞くと、姉はさらっと答えてくれる。

「飯田君。メガネだし、委員長っぽいキャラじゃん。そっちは?」

「鋭児郎君。ああいう人って支えになってくれるかなって」

ま、お互い駄目だったけどね。

 

 

side立香

午前の授業が終わって、昼休みになる。

「立香ちゃん!一緒に食べよ!」

麗日ちゃんからのお誘いが来る。

「いいよ。麗日ちゃん。」

「やった!あ、デク君と飯田君も一緒だけどいいかな?」

「大丈夫」

戦闘訓練以降、麗日ちゃんとは仲良くなったと感じる。私は弁当を持って麗日ちゃんと一緒に食堂へ行く。緑谷君と飯田君は後で来るらしい。席に着いて、弁当箱を開ける。

「わぁ…立香ちゃんの弁当は今日も美味しそうやー…」

「実際美味しいからね。食べる?」

「いいの!?じゃあ交換しよ♪」

涎を垂らす麗日ちゃんにそう聞くと、案の定嬉しそうに頷いて来た。因みに今日の弁当はエミヤが作った。いつも内心オカンと呼んでます。その後、飯田君と緑谷君が昼食を持って席に着く。

「はぁ…僕が委員長って務まるかなぁ…」

4人で昼食を食べている時、不安そうに緑谷君が言いこぼした。それに反応するのは飯田君。

「大丈夫さ。緑谷君のここぞという時の能力と判断力は評価に値する。だから君に投票した。」

「(あ、緑谷君に投票したんだ。)」

そう思う私。確か、緑谷君に3票入っていた。緑谷君が自分に入れて、飯田君が入れて…後1票は……麗日ちゃんかな?

「…あれ?それじゃあ飯田君にいれたのは誰なん?」

不意に麗日ちゃんが疑問に思った。飯田君は分からず、首を横に振るそんな時に、私は手を上げ答える。

「それ私。」

「何!?藤丸クンだったのかい!?すまない…折角入れてくれたのに当選出来なかった……」

驚いて、悔しそうに謝罪する飯田君。別に私は気にしていない。

「別に気にしないよ。まぁ、飯田君なら委員長似合いそうだなって思って入れただけだから。」

メガネだし。

「でもさ、飯田君も委員長やりたかったんでしょ?メガネだし!」

麗日ちゃんざっくり行くなぁ…そして同じ意見だし。

「“やりたい”と“相応しい”かは別の話だ。僕は僕の正しいと思う判断したまでだ。」

キリっとした顔で答える飯田君…とまぁ色々雑談していた時だった。突如としてサイレンが鳴り響く。

『!?』

食堂にいた全員が驚く。そして直ぐに校内放送が響きわたった。

【セキュリティ3が突破されました。生徒の皆さんはすみやかに屋外へ避難してください。】

「3!?」

「何々!?」

「兎に角逃げようぜ!?」

「セキュリティ3って何ですか!?」

「校舎内に誰かが侵入して来たんだよ!!こんなの初めてだ!!」

「ちょ―押さな―」

突然の避難勧告。食堂には大勢の生徒がいる。大勢が出入り口に我先にと行くため大混雑になる。

「いてぇ!いてぇ!」

「押すなって!!」

「いてぇ!!ちょ!倒れる!!」

「押すなってぇええ!!」

「流石最高峰!!危機への対応が迅速―「ただ単にパニックになってるだけでしょ!!」」

飯田君のセリフに思わず大声で突っ込んでしまう。でも今はそれどころじゃなった。

「っあ……っ!」

「立香ちゃん!?」

人混みに押され、誰かに足を踏まれ、麗日ちゃん達と離れてしまう。動こうにも動けない。何も抵抗できないまま人混みに流される。

「みん…っ……落ち………っつう!」

どうにかしようとしても、誰かに肘や腕が私の体にぶつかり、まともに動けず、話せない。なすすべが無かった。

「(誰…か………助けて……っ!!)」

更に圧迫され息がしにくくなる。もうダメだ……と思った時だった。

「―おい」

「っ!」

誰かに腕を引かれた。かなりの勢い。体のバランスが崩れ、転びそうになった。けど誰かに受け止められていた。

「……大丈夫か?」

「…………へ?」

誰か―と言ったけど、クラスメイトだった。白と赤の髪の男子。確か名前は…

「と、轟君……なんで?」

「なんでって、人混みで苦しそうにしていたから。お前の腕掴んで引っ張っただけだ。」

真剣そうな眼付でそう言ってくる。一先ずお礼を…

「あ、ありがとう……ございます……その………」

「…どうかしたか?」

今の状況。転びそうになった私を轟君に受け止めてもらってます。腕引っ張ってもらっただけでこうなる!?

「皆さん!!大!!じょーーーーぶ!!!!」

「!飯田君!?」

気付くと、遠くで飯田君が非常口のマークの恰好で壁に張り付いて皆を落ち着かせていた。話を聞くと、報道陣が学校に入って来ただけだった。轟君も分かったようだ。

「敵じゃねぇんだな……ならいい」

「よ、よかった……えと……もうダイジョウブデス。ハイ。」

「……立てるか?」

「は、ハイ」

轟君に立てさせてもらう。周りの皆は飯田君の話を聞いて落ち着いて避難をしていた。

「あ、ありがと…助かりました」

ようやく私は轟君にお礼の言葉を言う。

「気にするな。ヒーローを目指す奴なら、これくらい当たり前だ。」

「そ、そだね。アハハ」

そんな一言二言だけ会話し終えると、轟君はどこかに行った。

「姉!大丈夫!?」

「立希…」

そこに立希が来た。少し服装が乱れている。多分私と同じように、人混みにまみれてたのだろう。

「人混みきつかった…一瞬息できなかった。マジで………どしたの顔赤くして…」

「え?え~~~と~~~……イケメンって行動もイケメンだなって」

「はい?」

それしか言いようが無かった…翌日、緑谷君が委員長を飯田君に譲り、それを皆が賛成していたけど、イケメンの行動に余韻があって余り頭に会話が入ってこなかった。



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第5話

サクサク進みます。


side立希

今日のヒーロー基礎学は『人命救助訓練』。実際にレスキュー活動はヒーローの本文とも言える役割で数多のヒーローが活躍している分野だ。と言っても個性に依存する場面が多く、どこまで臨機応変に対応できるのかが重要だ。

「(…って言っても基本呼べば大体何とかなるし、大丈夫かな?)」

先生の話を聞いてそう思う自分。回復系だと……玉藻と天の衣さんかな……姉は…マーリン呼ぶだろうな。

 

という事で授業開始。訓練場は少し離れた場所にあるため、バス移動。どれだけ校内が広いかがよく分かる。飯田君の指示でバスに座る。そして移動中は皆と会話をしていた。

「―あなたの“個性”オールマイトに似てるわ」

「!?」

バスの中で梅雨さんが緑谷君に言った。そう言われると似ている部分がある。というか緑谷君は殴る時にオールマイトと同じ『スマッシュ!』って言ってたし、リスペクトかな?

「待てよ梅雨ちゃん。オールマイトは怪我しねぇし似て非なるアレだぜ。つっても、増強型のシンプルな個性はいいな!派手で出来る事が多い!」

鋭児郎君が梅雨さんの意見を否定し、増強型の個性を褒めた。

「俺の『硬化』は対人じゃ強ぇけどいかんせん地味なんだよなー」

「そうかな?自分は鋭児郎君の個性はすごくカッコイイと思うよ?」

不満顔になる鋭児郎君を自分はフォローする。鋭児郎君の“個性”は盾にも矛にもなれるし、いいと思う。

「そうか?ははっ!ありがとな立希!そう褒めてくれっと嬉しいぜ!」

少し元気になった鋭児郎君。そしてそこに青山君が割って入って来た。

「僕の『ネビルレーザー』は派手さも強さもプロ並み☆」

「でもお腹壊すのはヨクナイよね!」

そんな青山君が言った事をバッサリと三奈さんが言い切る。フォローは…無理かな。

「というか派手っていったら藤丸姉弟だってそうじゃん!右手の甲に書かれてるシンボルとか、召喚する時に光り輝いてカッコイイじゃん!」

「あはは、ありがと」

興奮気味の三奈さんに褒められ、自分は頬をかきながら感謝する。女子に褒められるのは嬉しいけど恥ずかしい。

「召喚はいいんだけど、一日3回しか今の所出せないんだよね。」

「え?そうなの?それ以上召喚したら?」

少し自分の個性について捕捉を咥える。

「姉も自分も、ぶっ倒れるだけだよ。」

「やっぱどの個性も長所と短所はあるかー」

そんな会話を三奈さんと鋭児郎君としつつ、目的地にたどり着いた。

 

 

side立香

たどり着いた場所は、ドーム状の建物。そこに私達が入る。建物の中は…

「すっげーUSJかよ!!」

力強い滝や渦潮が見える『水害ゾーン』や燃えている建物が見える『火災ゾーン』。それ以外にも様々な場面を想定したと思われるゾーンがいくつかあった。確かにこれなら人命救助訓練には最適の場所と言える。他に何があるか地図で確認していると、宇宙服のようなものに身を包んだヒーロー。本日の講師である『13号』先生が施設の紹介をしてくれた。

「水難事故、土砂災害、火事・・・etc.あらゆる事故や災害を想定し、僕が作った演習場です。その名も・・・U(ウソの)、S(災害や)、J(事故ルーム)!」

『(USJだった!!)』

私含め、全員心の中でツッコんだ。大丈夫?本家に怒られない?13号先生はそのまま話しを続ける。

「えー、訓練を始める前に、お小言を一つ二つ…三つ……四つ……」

「(増える増える…)」

13号先生の増えていく小言の数に困惑しつつも私達は彼の話に耳を傾ける。先生の個性は『ブラックホール』。なんでも吸い込みチリにしてしまう個性。でもその個性で災害から人を救い上げている。それと同時に簡単に人を殺せる力でもあると先生は言う。そして今の超人社会は一見成り立っているように見えるが、一歩間違えれば容易に人が殺せるような状況にある。そのような個性を個々が持っている事を忘れないように。と皆に訴え、この授業では心機一転して人命救助の為に個性の扱い方を学んでいこう。と、13号先生は朗らかに言うのだった。

「―君たちの力は人を傷つける為にあるのでは無い。助ける為にあるのだと思って下さい。以上、ご静聴ありがとうございました」

「ステキー!」

「ブラボー!!」

13号先生が自身の胸に右手を添えて恭しく、どこかコミカルに頭を下げると、麗日ちゃん、飯田君を始めとしたクラスメイトの多くが拍手で答えた。話を静聴していた相澤先生が授業の方に移ろうと語り出す。

「それじゃ、まず……」

そんな時だった…

 

―ゾワ―

 

「「っ!」」

嫌な予感が来た。人類救出中で何回も感じた、『憎悪』と『殺意』。それは立希も感じていた。同時に、相澤先生より後ろの噴水広場の中央。黒い何か、渦のようなものが見えた。ぐるぐると形を変え、ズズッと不気味な音を立てて拡大していく。

「先生!!」

私は相澤先生を呼ぶ。ここが『危険』になるという意味を込めて。

「!立香ちゃん?大声出してどうし―「ッ!!分かっている!!全員一かたまりになって動くな!13号!生徒を守れ!」え!?」

困惑した麗日ちゃんを他所に、相澤先生はゴーグルをかけ捕縛布を装備する。纏っている雰囲気が緊迫したものに変わっていくのに気がつかない皆が間抜けな声を上げる。

「何だアリャ?また入試ん時みたいなもう始まってんぞパターン?」

「違うよ、鋭児郎君…あれは―」

切島君の隣にいた立希が冷や汗をかきながら答える。

「―敵だ」

 

 

side立希

突然の事態。敵は次々と黒い渦のようなものから湧いてくる。脳を剥き出しにした大男、身体中に手を身につけた痩身の男など…敵数は多く、自分たちを含めたこちらの人数を上回る大所帯だ。

「敵!?バカだろ!?」

一番に慌てる峰田君

「ヒーローの学校に入り込んでくるなんてアホすぎるぞ!」

それにつられる瀬呂君

「先生、対侵入者用センサーは!」

何とか対応しようと案を出す飯田君。

「もちろん、ありますが……!」

13号先生が答えるが…反応から望みは薄そうだ。

「現れたのはここだけか学校全体か……何にせよセンサーが反応しないなら向こうにそういうことができる“個性”がいるってことだ」

冷静に分析をする轟君。それでようやく全員に緊張が伝わり、今度は恐怖が伝わる。

「13号、避難開始!センサーの対策も頭にある敵だ…上鳴、お前も"個性"で連絡試せ!」

しかしそんな中、相澤先生が活発に動き、指示を出す。上鳴君は反射的に頷いた。

「っス!」

「先生は!?1人で戦うんですか!?あの数じゃいくら"個性"を消すっていっても!!イレイザーヘッドの戦闘スタイルは敵の個性を消してからの捕縛だ。正面戦闘は……」

緑谷君が相澤先生を心配する。ヒーローオタクであり、色んなヒーローの情報を知っている彼だからこその意見。けどそんな緑谷君の意見を相澤先生は否定する。

「一芸だけじゃヒーローは務まらん」

緑谷君の真っ当な意見。そして不安を飛ばすように一言そういう相澤先生先生は13号先生に任せ、階段から飛び降り、戦闘へと臨んだ。相澤先生-『イレイザーヘッド』は“個性”『抹消』と装備した『捕縛布』用いて敵達の連携を断ちながら近接戦闘を続けていた。

「すごい…多対一こそ先生の得意分野だったんだ」

感嘆する緑谷君。自分も相澤先生の動きを見てそう思った。これがヒーロー…

「分析している場合じゃない!早く避難を!!藤丸君も速く!」

「う、うん!」

飯田君に声をかけられ全員で出口へと急ぐ。しかし…

「―させませんよ」

『!!』

黒い靄のような敵が行く手を阻むようにこちらに向かってくる。転移、ワープ系の“個性”だ。明らかに強個性。今回の騒動で中枢にいると思われる人物は語る。

「初めまして、我々は『敵(ヴィラン)連合』。僭越ながら……この度ヒーローの巣窟、雄英高校に入らせて頂いたのは―平和の象徴オールマイトに、息絶えて頂きたいと思っての事でして」

『!』

黒い靄の説明に自分達は驚く

「本来ならば、ここにオールマイトがいらっしゃるハズ……ですが、何か変更あったのでしょうか?まぁ……それとは関係なく……」

オールマイトの殺害。つまりは平和の象徴を殺害する宣言に生徒が息を呑む中、自己主張を続ける黒いモヤの敵。

「させない!」

13号が右人差し指の先の蓋を外し、攻撃態勢に入る……けどその前に爆豪君、鋭児郎君の二人が接近戦を試みたのだった

「その前に俺たちにやられることは、考えてなかったか!?」

『爆破』と『硬化』された腕が迫る。恐怖にも負けずに勇猛に動いた二人。しかし敵は無傷だった。

「危ない、危ない……。そう生徒といえど優秀な金の卵」

「ダメだ!どきなさい二人とも!!」

ゆらりと再度攻撃をすり抜けた黒い靄は揺らめく。警戒心を強めた13号先生は叫び、二人が振り返るがもう遅い。靄が広がり、避難のために一塊になっていた自分らを一瞬で囲い込んだ。

「散らして―」

「姉!」

「っ!」

先ほどとは数段速く靄が広がる。得体の知れないそれに嫌な予感がした自分はすぐに姉に手を伸ばす。

「嬲り―」

しかしその手が掴むよりも先に暗い靄が辺りを覆い、生徒たちを分断するように蠢く。障子君や飯田君など体格の良い生徒が周囲の生徒を靄からかばうように動く

「―殺す」

「皆!!!」

完全に闇に覆われる前、13号先生の声が聞こえるが…そこで途切れた。

 

 

side立香

「―っ!ここは……ってあっつ!!?」

敵の狙いがオールマイトと知り、そして黒い靄に覆われた……と思ったらさっきいた場所じゃない所に転移された。私の周りは火事だらけ、確かUSJ内マップで見た、『火災ゾーン』。正に、倒壊してる街が炎で覆われている場所だった。熱波がスゴイ。

「あっつ…「ひゃっはー!!いたぜぇ!!」っ!!」

「俺達の獲物だぁああ!!」

「わっ!!」

さっそく敵が襲い掛かって来た。バックステップで直ぐに回避する。

「逃げんなゴラァ!!」

「大人しく殺されろ!」

「女だぜ!ヒヒ!」

「悪趣味……っ」

気付けば私の周囲には異形型、発動型、変形型とありとあらゆる敵がいた。

「残念だけど…ここでやられるわけには行かない!!『アーチャー』!」

危機的状況。けど私は一呼吸し、冷静さを取り戻す。そして『英霊召喚』を発動させる。

「―はっ、この程度で俺を呼ぶなんてな…無能どもが雁首揃えて…」

「んだとぉ!?」

「ぶっ殺されてぇかテメェら!!」

私が呼んだのは、アーチャー、『エミヤ・オルタ』。開口で敵達を煽る煽る。

「それで?命令は何だ?マスター」

銃に弾丸を込めながら聞いてくるオルタ。私は命令を下す。

「殺さない程度にここにいる敵を倒して!」

「はぁ…面倒だがまぁ、いいだろう…」

面倒くさそうな態度をするが、それでも了承してくれる。オルタは私より一歩前に出る。

「何ごちゃごちゃ言ってんだ!!」

「この数相手に挑もうってのか!?バカめ!!」

「そいつは……どうかなっ!!」

瞬間、オルタは早抜きのように双剣銃を構え、敵の数体を射撃した。

「ガッ!?」

「うぎゃあ!!」

「なっ…「ふっ!」ぐぁ!!」

『!!』

早くも数名の敵が気絶。オルタの早業にこの場にいた敵達は驚愕した。

「どうした?こないのか?やれやれ…頭が悪いのか、それとも性根が悪いのか…」

ここでオルタは更に挑発。これには敵達も黙っていられず…

「っ!!!全員で掛かれぇ!!」

『ウオオオオオオオオオ!!!!!』

敵全員がオルタ目がけて襲い掛かる。

「マスター、頭を下げていろ」

「う、うん!」

オルタの言う通り、私は頭を守るように下げる。そこからはオルタの無双が始まった。

「ふっ!」

オルタは敵に向け、双銃乱射。放った一発一発の弾丸が敵の体の節々に着弾し、行動不能にする。弾丸が通らなかった敵には接近し、銃についている刃で応戦。完全に装甲を削り取り、敵をダウンさせる。

「な、なんだこいつは…ぐあぁ!!」

「は、はえぇってもんじゃね―ギャア!」

「つまらん!」

ようやく敵達が不利だという事を理解した時には既に遅く、ほぼ全滅していた。そして最後の一人。

「ひ、ひぃ!た、助け「人生終了、ご苦労様」うあぁ…」

銃声が鳴り響き、終わった。ドサリ。と襲って来た最後の敵が倒れた。私はゆっくり立ち上がり、オルタに話しかける。

「殺してないよね?」

「…命令通り、急所は外している。さっきの奴も『空砲』で撃った。騙されて無様だな………」

これで終わり…かと思ったらまだオルタは銃を収めなかった。

「どうしたの?」

「…まだいるな…」

「え?」

そう言って一発撃った。

「うわぁ!!あ、あっぶな…って藤丸!?」

オルタが撃った場所には、白く太い尾を持った男子がいた。確か…

「……あ!え、え~~と……尾白君、だった!うん!」

「え、えぇ…俺そんなに存在薄いかな……って藤丸の隣に立ってるのは敵か!?」

クラスメイトの尾白君と合流。ごめんね?ちょっと顔を覚えるの苦手だから…というかオルタが敵じゃない事を教えないと!

「ちがうちがう!!確かに悪っぽい顔だけど味方だから!!」

「お前も大概失礼だな。」

やれやれと言ったため息をつくオルタ。そして偶然にも私と同じ火災ゾーンに飛ばされた尾白君。彼はヒット&アウェイ戦法でここまで来れたらしい。

「…それで、これからどうすればいいかな?」

真剣な顔付きで尾白君が聞いてくる。オルタが一早く答える。

「ここから出ればいいだけのこった…」

確かにそうだ。だけど…

「ううん。ここを出てもどうせ敵だらけ…だったら、尾白君を追いかけていた敵達をここで倒せばいい。まだ先だけどプロヒーローが来るのを待とうよ」

と、提案する。こっちには英霊がいる。仮にオルタだけで対応しきれなくなっても。再び別の英霊を呼べば何とかなる…はずだ。

「だ、大丈夫なのその作戦…自信無いなぁ…」

「オルタがいるんだから大丈夫だよ!頼りにしてるよ」

「アンタは雇い主だ。報酬がある限り、オレはアンタを信用するよ…」

不安そうな尾白君を鼓舞しつつ、私達は動き出す。一先ず、何とかなりそうだ。



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第6話

私の妄想内のFGOでは、同一人物の水着鯖と通常鯖は一緒でオルタやリリィは別。サンタはキャラ次第で別だったり一緒にしてます。


side立希

黒い靄に包まれ、直ぐに晴れたかと思えば、さっきまでいた場所じゃなかった。多分倒壊ゾーンという場所だ。そんな場所で―

「おらぁ!くたばれぇ!」

「グベラ!?」

襲い掛かる敵に爆豪君は『爆破』で倒し、

「オラオラァ!」

「ぐぇ!!」

鋭児郎君も自身の『硬化』で鋭くした手刀で敵を倒す

「ちょこまか逃げんじゃねぇええ!!」

「あっぶな!?」

そして自分は持ち前の反射と身体能力で敵の攻撃を躱している。自分以外にも爆豪君と鋭児郎君がここに飛ばされた。二人は持ち前の個性で反撃してるけど、自分は避ける事しか出来なかった。

「何遊んでんだ!!さっさと誰か呼んで戦え!モブ顔!!」

「モブ!?え!?それ自分の事!?」

突然の爆豪君からの罵倒。結構心が抉られる。英霊を呼ぼうにもどんどん敵が来るから中々呼ぶに呼べない…

「フン!!立希!今だ!」

「ありがとう!!『アサシン』!」

そんな時、自分に襲い掛かって来た敵を鋭児郎君が倒してくれる。その隙に呼び出す事が出来た。二人のサポートが出来、尚且つ敵を迎撃できるといえば…

「―おぉっと、いきなり戦闘かいマスター?さて、侠客らしく殴り合いと行くか」

アサシン、『燕青』。中国四大奇書「水滸伝」に登場する天巧星を背負いし男。中国拳法の流派のひとつ「燕青拳」の使い手だ。

「誰だこいつ!?」

「いきなり出てきたぞ!?「千山万水語るに及ばず!せぇい!」ブベラッ!?」

敵が同様して隙が生まれた。そこを逃がさず燕青は蹴りで気絶させる。

「おお!立希が呼んだアイツの体術すげぇ!!」

「どーでもいいだろぉ!!」

燕青の動きを見て驚く鋭児郎君に吠える爆豪君…そこからはほぼリンチに近い。敵は爆破され、殴られ、そして体術で吹き飛ばされる。自分?燕青の攻撃が当たる様に誘導しつつ回避してサポートに徹した。そして最後の一人がやられる。

「…終わりかな?」

「我が忠義は既に無く、今は只一人の侠客として拳を振うのみ」

「これで全部か」

「弱ぇな」

ようやく一息。自分達は一息つく

「っし!早く皆を助けに行こうぜ!」

戦いが終わって鋭児郎君がそう提案するが、爆豪君は…

「行きてぇならお前らで行け。俺はあのワープゲートぶっ殺す!」

「はぁ!?」

「うわぁ…大きく出たね……」

そのまま一人で動こうとする。普段から単独行動を好む爆豪君ならそうするんじゃないかと思っていた。

「まぁ、いいんじゃないか?マスター……それによっ!!」

「グベラッ!!?」

「「「!」」」

突然、燕青が空中に蹴りを放つと、カメレオンっぽい敵が姿を現し、壁に叩きつけられ気絶する。

「んーおたく、殺気が隠せてないねぇ~そこの金髪君なら大丈夫でしょ。」

ニヤリと笑う燕青。

「す、すげぇ…全っ然気付かなかった…」

燕青が強いと分かる鋭児郎君

「余計な事すんじゃねぇ!俺がヤッてたわ!!」

そして何故か対向する爆豪君。コワい

「というか爆豪君と燕青声似てない?」

「似てねぇわ!!モブ顔!」

「そうかねぇ~?」

場を和ませようとしたけどあんまり効果が無いようだ…

「兎に角だ!!行きてぇなら勝手に行ってろ!」

「待て待て!ダチを信じる!男らしいぜ爆豪!ノッたよおめェに!」

漢気溢れる鋭児郎君は爆豪君に付いて行く。勿論自分もだ。ここで単独行動しても意味が無い。

「二人について行くよ。何かあれば燕青に任せるし」

「いやいや、無頼漢の俺に頼っても良くないよぉ」

「いや、十分頼れる存在っス!」

「お前らついてくるなら黙ってろ……っ!」

自分達の話声にイラつく爆豪君だけど…一先ず何とかなった…かな?

 

 

side三人称

広場では凄惨な光景が広がっていた。脳を剥き出しにした黒い大男―『脳無』が一瞬で相澤の背後に回り込み、すでに肘が崩れた右腕を掴むとそのまま勢いよく地面に叩き付けた。掴まれていた相澤の右腕はあらぬ方向にへし折れ、頭部からは血が流れ落ちる。

「―『個性を消せる』。素敵だけどなんてことはないね。圧倒的な力の前ではつまりただの無個性だもの」

手を身体中に身につけた痩身の男―『死柄木弔』はふらりと揺れながらどこか楽しさを滲ませた声で笑う。その声に呼応したように、脳無は相澤の左腕をもグシャリと握りつぶした。

「~~~~~~っ!!」

相澤の短い悲鳴に耳も貸さず、脳無は更に殴り痛めつける。

「死柄木弔」

すると、死柄木の横に黒い靄―『黒霧』が蠢きやがて人の輪郭を作り上げる。

「黒霧、13号はやったのか?」

「ええ…ですが、申し訳ありません―」

黒霧がワープし、広場に来て現状を報告する。13号は行動不能に出来たが、散らし損ねた生徒がいて一名逃げられた。その旨を伝えると、ガリガリと頭をかきむしり、ぶつぶつと喚き出す。

「黒霧、お前……お前がワープゲートじゃなかったら粉々にしたよ……」

逃げた生徒―飯田は学校に行き、プロヒーローに救援を求めるだろう。流石に何十人ものプロ相手では敵わない。故に死柄木は、今回はゲームオーバーだと呟き、そして一言

「―帰るか」

「(…え)」

「(おい…今、帰るって言ったか?言ったよな!)」

「(ケロ…ええ、確かにそう聞こえたわ)」

近くの水辺に隠れていた緑谷、蛙吹、峰田は死柄木の一言を聞いて安心する。しかし緑谷は思う。気味が悪いと…雄英高校への侵入、生徒への襲撃、プロヒーローとの交戦。これだけのことをしといて、あっさりと引き下がる。目的のオールマイトも殺せずに帰ってしまったら雄英の危機意識が上がるだけ…緑谷には敵が何を考えているのかわからなかった。

「けどなぁ……その前に平和の象徴としての矜持を少しでも―へし折って帰ろう!」

「―え…」

しかしそう簡単にこの場からいなくなるほど、敵は甘くなかった。死柄木は先ほどのまでの気怠げな動きが嘘のように、俊敏に蛙吹の前まで近づき掌が頭にかざされる。個性は不明だが、『触れるだけで相手を粉々にしてしまう』という個性。緑谷の頭に嫌なイメージが浮かぶ。蛙吹が塵となってしまうイメージが。

「(ヤバイヤバイヤバイヤバイ!!さっきの敵達とは明らかに違う!!助けないないと!!) 『スマッシュ』!!」

反射的に緑谷は死柄木に殴りかかる。

「脳―っ゛!?」

虚を突いたのか、個性を伴った緑谷の拳は死柄木クリーンヒットし、死柄木を鈍い音とともに遠くへ飛ばす。

「(やった!当たった!それに…反動が来てない!コントロールが出来た!?)」

緑谷は個性の反動が自身に返ってこないことに喜びつつも、すぐさま次を警戒する。

「(…?攻撃が来ない?あの脳無って呼ばれた敵ならすぐ来ると思ったのに……?) 「いい拳だったよぉ~緑髪君」…え!?」

「だ、誰だよお前!!」

「敵……では無いわね。あの脳無って敵から私達と緑谷ちゃんを守ってくれたもの」

その時3人の前に現れたのは…燕青だった。先ほど緑谷が死柄木を殴ろうとした時、死柄木は脳無に自身を守らせようと命令をした。だが脳無がその命令に従うよりも前に、燕青が脳無を掌底で吹き飛ばし、行動を封じていたのだった。現に、脳無は死柄木と同じように地面に倒れてる。

「いやぁ~マスターの『令呪』でここまで一気にたどり着けてよかったよぉ~取り敢えず、お前さんらの護衛をさせてもらおうか~」

「え、えと…ど、どちら様で?」

のらりくらりとした口調で緑谷達を水の中から上がらせる。緑谷達は戸惑いつつも燕青に話しかける。

「マスター…藤丸立希に呼ばれ、馳せ参じた燕青だ…ところで黙っていれば色男って、褒め言葉なのかね、アレ?」

「立希ちゃんが…」

「こ、こんな強ぇ奴も出せるのかよ!」

「藤丸君…ありがとうっ!」

3人はこの場にはいない立希に感謝する。その時、遠くの方から轟音が響いた。そして―

「もう大丈夫―」

それは敵も生徒も待ち望んだ人物の声。平和の象徴。

「―私が来た」

No1ヒーロー、オールマイトの到着である。オールマイトの表情は…怒りを表していた。

 

 

side立希

「あっぶなー…」

倒壊ゾーンから脱出した自分達。そしてそこから見えたのは、遠くで相澤先生が敵にやられていた所だった。そして近くには緑谷君たちもいて…自分は直ぐに燕青を向かわせる事にした。

「モブ顔、お前何した…」

「立希…その右手の甲…」

驚いた顔をする爆豪君と鋭児郎君。二人は自分の右手の甲に刻まれた淡く赤く光る令呪を見ていた。

「これ?『令呪』だよ。自分が呼んだ『英霊に対して絶対的な命令を行うことができる』んだよ。」

軽く説明。命令は3回まで。1画回復するには1日必要だ。さっき自分は燕青に

―「令呪を持って命ずる。緑谷君たちを守れ」―

と令呪を消費。すると燕青は一瞬にして緑谷君の所へ移動したのだった。令呪を消費したから右手の甲に描かれていたデザインの一つが消える。

「普段は使わないよ。そもそも命令するような立場、自分に似合ってないし、強制はさせたくない。でも今回は使う。『ヒーロー』として、人を守るために」

他にも使いようはあるけどね…そう思いながら手の甲をさすりつつ、自分達も緑谷達の所へ移動していると…今度は遠くから轟音。出入り口の方からだ。そして…

「―もう大丈夫…私が来た」

平和の象徴―オールマイトが現れた。

 

 

side三人称

到着したオールマイト。彼は一瞬にして脳無、死柄木、黒霧以外のヴィランを倒し、圧倒的な実力を発揮した。広場に駆けつけた轟、爆豪、切島、立希のサポートを得ながら、オールマイトは脳無と正面から戦闘。『ショック吸収』、『超再生』という個性を備えた脳無相手にオールマイトは…

「敵よ…こんな言葉を知ってるか…『更に(プルス)向こうへ(ウルトラ)』!!」

個性の許容量を上回る拳撃を連続で打ち込み、施設外へと吹き飛ばした。その光景は切島が思わず

「コミックかよ……」

と零すほどに…切島の他に、その場にいた全員がオールマイトに圧倒する

「やはり衰えた…全盛期なら5発も撃てば充分だろうに…」

「(これがトップ…)」

「(プロの世界か…!)」

生徒たちはトッププロの全力の戦闘に、雰囲気に飲まれ呆然と立ちすくしていた。

「流石だ…俺達の出る幕じゃねぇみたいだな…」

「そうだね…ここは退いた方が得策…却って人質にされる可能性がある…」

「……………ちっ」

「おい緑谷!突っ立ってねぇで行くぞ!」

轟、立希、爆豪、切島はそう言いこぼし、邪魔にならないよう動こうとする…が、緑谷は依然として緊張した面持ちのままだった。その原因はオールマイト。それは緑谷だけが知っている事情―今のオールマイトは力を出し切り、活動限界を迎えている事を。オールマイトは虚勢を張っていると直感的に緑谷は理解した。しかし、オールマイトは生徒を守るため、虚勢を貫く。

「さぁどうした!?」

「脳無さえいれば……!奴なら!!何も感じず立ち向かえるのに……!!」

「死柄木弔……落ち着いて下さい」

その圧力に呑まれて、死柄木が圧倒される。しかし、あくまで冷静に黒霧は様子を見る。対平和の象徴として作られた特製サンドバックである脳無との戦闘で、オールマイトの体は消耗していることは目に見えていた。

「…よく見れば脳無に受けたダメージは確実に表れている。どうやら子どもらは棒立ちの様子……。あと数分もしないうちに増援が来てしまうでしょうが、死柄木と私で連携すれば、まだ殺れるチャンスは充分にあるかと……」

「……うん……うんうん……そうだな……そうだよ……そうだ……やるっきゃないぜ……目の前にラスボスがいるんだもの」

ブツブツと呟く死柄木。立希達は主犯格の二人の動きは見られない間に退避をする。

「主犯格はオールマイトが何とかしてくれるだろうし……俺らは他の連中助けに行くぞ」

轟がそう言う

「……緑谷君?」

一人動きを見せない緑谷に立希は訝しむ。

「何より……脳無の仇だ」

そんな時、オールマイトのすぐ傍まで迫り、ワープゲートを大きく広げて襲い掛かる黒霧と、それ随従する死柄木。再び激闘が始まる…瞬間だった。

「なっ…」

『!』

そんな様子を見ても動く気配のないオールマイトを助けるべく、いつの間にか個性で跳んでオールマイトの前にワープして現れた黒モヤに肉薄する緑谷の姿があった。

「~~~っ!!」

「緑谷!!?」

緑谷の行動に皆は驚く。そして立希は気付く。

「(一蹴りであんなに速く……って折れてない!?)」

現に緑谷は折れた事で体に来る激痛を我慢していた。けれどそのまま拳を振るい構え、吠える

「オールマイトから、離れろ!!!!」

「二度目はありませんよ!!」

死柄木が黒霧のゲートに手を突っ込み、ワープ先にいる緑谷に手が迫る。

「!!!!」

だがしかし、触れる直前、死柄木の手に弾丸が突き刺さる。

「ごめんよ皆んな」

「っ!!来たか!!」

出入り口のある方向から声が響く。そこには多くの人影があった。そして―

「1-Aクラス委員長、飯田天哉!!ただいま戻りました!!」

飯田の声が響くのだった。

 

 

side立香

「遅れてすまんな!って…こりゃあ…」

「やっと来てくれたぁ……」

「ようやく救援か」

「た、助かったぁ…」

火災ゾーンにて、『パワーローダー』先生が助けに来てくれた。けど、先生は少し呆れ気味な表情だった。それは何故か…

「これ全部…君らが?」

パワーローダー先生が指を指して聞いてくる。それを尾白君は頬をかきながら答える。

「僕達…というよりは…この人が…」

「殺してはいない。」

さらっとオルタが言う。私は苦笑するしかない。

「あはは…」

なぜなら、私と尾白君の周囲には絶賛気絶して倒れている数々の敵の姿があったからだ。何とも言えないような顔をする先生。

「…ここまでかな?ありがとうエミヤ・オルタ。」

「ふん…次は別の奴を呼べ。」

そう言ってオルタは消える。ともあれ襲撃が終わった事に安堵した。気絶した敵を先生に任せて、私は『USJ』から出る。既にクラスメイトが集まり、警察でいっぱいだった。

「16…17…18……両足重症の彼を除いて全員無事か」

警察の一人が私達を保護し、点呼をする。緑谷君以外は皆軽症で無事だ。

「姉、無事でよかった」

「そっちも生きててよかったよ…」

立希も無事で少しほっとする。

「何処に飛ばされた?自分は爆豪君と鋭児郎君と一緒に倒壊ゾーン。」

「尾白君と一緒に火災ゾーン。エミヤ・オルタ呼んで火災ゾーンにいた敵を全員行動不能にさせたよ」

私の言葉に立希は苦笑していた。

「容赦ないなぁ…まぁ自分も燕青呼んで何とか凌いだよ…」

やれやれと言った仕草で話してくる。そして立希の令呪が一画消えている事に気付く。

「…あれ?令呪使ったの?そんな危なかった?」

「ん。結構危なかった。」

弟とお互いの安否を確認し合うと、周りのクラスメイトも確認し合っていた。青山君の「僕は何処にいたと思う!?」という質問が煩かった。結局「秘密さ☆」って答える始末に一瞬殺意が湧いたのは内緒。

「はぁー…疲れた…」

後日、この『敵連合USJ襲撃事件』はネット、ラジオ、テレビ等で報道された。当然高校は臨時休校。相澤先生は敵との戦闘で重症。13号先生もだ。そしてオールマイトや緑谷君はリカバリーガールの治癒で処置が出来、全員無事だった。よかった…けどカルデアに戻るとこの事を全員知っていたため、過保護の様に私と弟の安否を迫るように確かめて来た。何とか一日使って英霊達を宥める始末…休んだ気がしなかった




あんまり俺TUEEEEはしない。この姉弟の強さはオリジン組と戦って、ギリ負けるか、偶に勝てるか。ぐらいの強さです。今のところは


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第2期
第7話


気楽に感想どうぞ。(返答はするかどうか気分次第)


side立希

襲撃事件の後日…

「雄英体育祭が迫っている!」

『クソ学校っぽいの来たああああ!!!』

休日明けの登校。包帯グルグル巻きで現れた相澤先生のHRでの連絡に、皆大声で言った。まだ戦いは終わってないとか言ってたからまた敵が来たのかと思った。

「待って!待って!敵に侵入されたばっかりなのに大丈夫なの!?」

手を上げ、麗日さんが発現する。しかし相澤先生は落ち着いて話す。

「逆に開催し、こちらの危機管理体制は盤石だと示す。警備も通常の五倍だ。何より、体育祭は『最大のチャンス』だ。敵如きで中止していい催しじゃない。」

雄英体育祭は日本のビッグイベントの一つ。『かつてのオリンピック』に代わる行事。それをトップヒーローが『スカウト目的』で見るのはもはや当たり前。それをふまえ、相澤先生は話す。

「年に1回…計3回だけのチャンス。ヒーロー志すなら絶対外せないイベントだ。」

 

というわけHRが終わり、午前授業を行って昼休み。当然、クラスメイトでの話題は体育祭の事だ。

「あんな事あったけどよ…なんだかんだテンション上がるな!立希!!」

体育祭に燃え上がる鋭児郎君。自分は頷く。

「そうだね。体育祭で活躍すればプロヒーローにスカウトされるかも…だからね。」

周りの皆も盛り上がる。飯田君なんか独特な燃え方で気合入ってるようだ。そして…

「頑張ろうね。体育祭。」

すっごい形相の麗日さん。全然うららかじゃない麗日さん。どしたの一体…

「(体育祭か……)」

普通にテレビはカルデアにあるから当然、中継されるから応援される。というか…下手な事したら怒られて今までしてきた特訓メニューが増やされる可能性が…っ……否定できない…っ!

「…自分も頑張らないとっ!」

自分も麗日さんに似たうららかじゃない顔になる。

「立希もかよ!?」

「何か覚悟を持った表情してんな…」

鋭児郎君と上鳴君がビクってなっていた。

 

 

side立香

「(体育祭かー…)」

話題になっている雄英体育祭。サポート科・経営科・普通科・ヒーロー科がごった煮になって学年ごとに各種競技の予選を行って勝ち抜いた生徒が本選で競うという簡単に言えば『学年別総当たり』

「(テレビで見た事あったなぁ…大きく分けて3回ぐらい競技種目あったっけ…となると英霊呼ぶのも選択が大事だけど……) まぁいざとなればゴリ押しすれば何とかなるか…」

「…自分も頑張らないとっ!」

「立希もかよ!?」

「何か覚悟を持った表情してんな…」

立希も気合が入っている顔付きになっていた。その後、私は麗日ちゃんと体育祭について話す。それと

「へぇー、麗日ちゃんはお金が欲しいんだ」

「究極的に言えばね…」

うららかじゃない麗日ちゃんを見て何となくヒーローになりたい理由を聞いてると、恥ずかしそうに答えてくれた。

「ウチ貧乏で…少しでも父ちゃん母ちゃんに楽させたいんよ。だからこの体育祭は…絶対に活躍するよ!!」

「そっか。いい親孝行じゃん」

「えへへ…」

恥ずかしそうにブンブンと後頭部に添えた腕を上下に動かす麗日ちゃん。

「立香ちゃんはどう?両親とか何してるん?」

そんな質問が来た。私は少し苦笑しながらも答える。

「あー……親いないんだよね。物心ついた時には姿も見た事がない。写真も無いよ。」

「え…ご、ごめん…」

案の定、麗日ちゃんが悲しそうな顔をしてきた。私はすぐにフォローする。

「だ、大丈夫大丈夫!本当の親はいないけど、私達には沢山の家族がいるから!!」

親の事は知らない。そして親の事は誰にも聞かない。だって私にはカワイイ後輩やオカンみたいな医師、弟だっている。そして強くて、厳しいけど優しい英霊達もいるから。全く寂しくない。だから問題ない。まぁロマニが何か知ってるっぽいけど…言わないなら別にいいと思ってる。

「ほらほら、切り替え切り替え!体育祭、お互い頑張ろう!負けないよ?」

「!……うん!!」

少し悲しそうな顔付きになっていた麗日ちゃんだったけどすぐにいつもの状態に戻る…元気になってよかった。私にシリアスな展開なんて似合うわけない。

 

放課後、Aクラスの前に大量の生徒がやって来た。どうやら敵情視察と宣戦布告をしに来たようだった。紫髪で隈がついた生徒が堂々と宣戦布告。はぁーすごいなぁ…でも爆豪君は「上に上がれば関係ねぇ」って言って帰る始末。ヘイト集めたの君だよね!?まぁその言葉にまた周りに火が着くし………それから二週間は体育祭で上位に入れるように、立希と特訓し合う。当日は敵同士なんだけど…そして体育祭の前日。スカサハ師匠に呼ばれた。勿論立希も。

「当然。上位に入るよな?二人とも?」

圧倒的強者のオーラを放ちながら私達に訊いてくる。思わず正座して、片言になってしまった

「ア、ハイ」。

「い、イエス。マム」

そんな師匠からの激励(?) を私達は貰い…そして遂に雄英体育祭が始まる!!



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第8話

ピースサインは良い曲。


side立希

学校に行く前…自分は深呼吸

「ふぅ………はぁ………」

「緊張してる?」

そんな時、姉が話かけて来た。自分は頷く

「そりゃ勿論……これで下位だったら……自分達の明日は無い……」

昨夜の師匠からの激励(?) 勝ち負けの前に…まずは上位を取らなければ…っ!姉も冷や汗をかきつつも肯定してくれる。

「だよねー……でもやるからには全力。お互い頑張ろう」

「ん。」

いよいよ体育祭!

 

 

side三人称

『雄英体育祭!!ヒーローの卵たちが我こそはとシノギを削る年に1度の大バトル!!』

雄英体育祭会場のスタジアムにて。プレゼント・マイクの実況が響く。

『どうせてめーらアレだろ!?敵の襲撃を受けたにも拘わらず鋼の精神で乗り越えた奇跡の『新星』!!!!』

その言葉に会場はだんだんと盛り上がる。

『ヒーロー科!!一年!!A組だろぉおお!!!?』

―ワァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!―

満を持して、A組全員が会場へ姿を現す。会場のボルテージはMAX。

「わぁああ…人がすんごい…」

入場するA組メンバー。緑谷は緊張しつつも進む

「大人数に見られる中で最大のパフォーマンスを発揮できるか…これもまたヒーローの素養を身に着ける一環なんだな…」

飯田は意気込む。

「メッチャ持ち上げられてんな…なんか緊張すんな!」

「しねぇわ。ただただアガルわ…っ!」

興奮する切島。同意を求めようと爆豪に話しかける…そんなA組を筆頭に、B、C、D…H組がぞろぞろと入場する。

『選手宣誓!』

全員集合し終え、1年主審。18禁ヒーローの『ミッドナイト』が自前の鞭を叩き、指示をする。

『1-A爆豪勝己!!』

呼ばれた爆豪は檀上に上がる。そして―

「せんせー……俺が一位になる」

『絶対やると思った!!』

爆弾発言。A組クラスの心が一つになった瞬間だった。そしてA組以外の組の生徒からブーイングが来る。爆豪は無視し、檀上から降りたのだった。

『さーてそれじゃあ早速第一種目行きましょう!!いわゆる予選!毎年多くの者がリタイアするわ!さて運命の第一種目は……コレよ!!』

画面に映し出されたルーレットが止まる。競技内容は『障害物競走』となった。

『計11クラスでの総当たりレース!コースはスタジアムの外周約4km!我が校は自由が売り文句!ウフフ…』

ミッドナイトの説明中、スタジアムの外へと通じる門が開く。そこにクラス全員がスタート位置に着いた。

『コースさえ守れば『何をしたって』構わないわ!さぁさぁ!位置に着きなさい!!』

ミッドナイトの指示にて、全員構える。

「さて…行くとしますか…」

立希は緊張しつつも集中し

「絶対…上位には入る!」

立香もまた、軽くストレッチをして今かと待つ。一瞬、会場が静かになった時、スタート合図のランプが今……全て灯った!!

『スタートォ!!!!!!!』

第1種目。開始。

―ワァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!―

「いでぇいでぇ!!」

「スタートゲート狭すぎるだろぉ!!?」

合図と同時に歓声。そして参加者全員一斉に走りだす…がしかし、ゲートが狭く、大混雑になる。

「(いだだだ…って待てよ…もしかしてスタート地点がもう…)」

人混みに巻き込まれそうになった立希。そして気付く―

「―最初のふるい」

―既に駆け引きが始まっている事に

「うわぁ!!なんだぁ!?」

「こ、氷っ!?」

始めに一番前に出た轟は個性を使い、スタート地点の地面を『氷結』。そこで多くのクラスメイトの足が凍りつけとなり、動けなくなる。

『さぁさぁ!こっちも実況していくぜ!解説アーユーレディ!?ミイラマン!!』

『無理やり呼んだんだろが…』

実況はプレゼント・マイク、解説は相澤でお送りする。

『いきなりの轟の『氷結』での妨害!!一位コレで決まったんじゃね!?』

「甘いわ!轟さん!!」

「!」

「そう上手くいかせねぇよ!!半分野郎!!」

しかし、個性を使って轟の妨害を防ぐクラスがいた。それは当然、A組。爆豪は『爆破』で空を飛び、八百万は『鉄棒』を『創造』し高跳びをする。

「っぶなー!」

「二度目はないぞ!」

芦戸は靴裏から『酸』を出して氷を溶かし、尾白は『尾』で地面をたたいて跳躍する。

「あっぶなー…!」

「凍る前にジャンプしてよかった…」

立香と立希は地面が凍る瞬間、ジャンプして凍りつけを回避。二人以外にも同じ方法で避けるA組メンバーがいた。

「クラス連中は当然として…思ったより避けられたな…」

「轟の裏の裏かいてやったぜぇ!ざまぁねぇってんだ!」

個性『もぎもぎ』で凍った地面に自身の頭のボールを投げ、その上を撥ねる様に進む峰田。

「くらえオイラの必殺―『ターゲット発見!』グベラ!?」

「峰田君!?」

峰田と共に走っていた緑谷は驚く。そして直ぐに峰田を殴り飛ばした正体に気付く。

『いきなり障害物だ!!まずは手始め…』

『『『『『ターゲット…大量!!!』』』』』

「入試の仮想敵!?」

『第一関門!!ロボ・インフェルノ!!!』

プレゼント・マイクが言い終えると同時に入試に出てきた仮想敵がぞろぞろと現れる。勿論、あの0P仮想敵―巨大仮想敵もだ。

「入試の時の0P敵じゃねぇか!!」

「マジか!ヒーロー科あんなのと戦ったの!?」

「つか多すぎ!!?」

「一般入試用の仮想敵ってやつか…」

周りの生徒達は大量の巨大仮想敵に同様。

「どこからお金出てるのかしら…」

そんな中、八百万は疑問を持っていた。

「それ同感。」

立香もまた同じ

『オオオオオオオオオ!!!!!!』

「!…っ!!」

巨大仮想敵が一番前にいた轟を襲おうと動いた。しかしそれを轟は腕を下から上へと振りかざし、巨大仮想敵を凍りつけに。そのまま巨大仮想敵の股下を通る。

「あいつが止めたぞ!あの隙間から通れる!」

他の生徒達もそこを通ろうとした時だった。

「やめとけ、不安定な体勢ん時に凍らせたから……倒れるぞ」

轟の言ったとおり、轟音を立てて大勢いる生徒の前に巨大仮想敵は崩れ落ちた。

『1-A轟!攻略と妨害を一度に!!こいつはシヴィー!!すげぇな!!一抜けだ!アレだなもうなんか…ズリィな!』

『実況になってねぇぞ』

プレゼン・マイクの雑な解説に相澤はツッコム中、轟の妨害によって大勢の生徒が足を止めてしまう。

「誰か下敷きになったぞ!?」

「えぇ!?死んだ!?体育祭って死ぬのか!?」

「死ぬかぁー!!」

『1-A切島潰されてたー!!』

切島、仮想敵の下敷きになったが持ち前の『硬化』で防御。掘って出てきた。

「轟の野郎ワザと倒れるタイミングで!俺じゃなかったら死んでたぞ!!」

そう悪付く切島。そんな彼の隣から―

「―A組の野郎は本当嫌な奴ばかりだな…俺じゃなきゃ死んでたぞ!!」

「B組の奴!」

全身銀色の男子生徒が現れる。

『B組!鉄哲も潰されていたー!ウケる!』

鉄哲。“個性”『スティール』で全身を鉄化し、切島同様に掘って現れた。

「個性ダダ被りかよ!!ただでさえ地味なのに!!」

切島は涙をのみつつ前へ進む。他の生徒は協力しつつ道を開く者達が現れる。

「(先行かせてたまるかよ)」

一方、爆豪は『爆破』を連続で空中に放ち、巨大仮想敵の頭上を行く。

『1-A爆豪!下がダメなら頭上かよー!クレバー!』

「おめーこういうの正面突破しそうな性格してんのに避けんのね!」

「便乗させてもらうぞ」

「!」

爆豪に続くように、瀬呂は肘から個性の『テープ』を伸ばしターザンのように飛び、常闇は個性『黒影(ダークシャドウ)』を使い、巨大仮想敵を上って攻略する。そしてこの二人以外にも動いている人物がいた。

「出でよ!『ライダー』!」

「―またお呼び出しかい?マスター?」

「―またお竜さんの力を借りたいのかー?」

「勿論!お竜さんまた蛇になってここを突破してくれない?」

「まかせろー!龍馬も立希もしっかりつかまっておけよー』

立希はライダー、『坂本龍馬』と『お竜さん』を呼び、黒蛇となったお竜さんの上に坂本と共に乗り、ロボ・インフェルノ達の足元を地を這うように飛んで突破する。

『1-A藤丸!何だぁあの黒蛇はぁ!?あいつの個性かぁ!?』

『藤丸立希の個性『英霊召喚』だ。本人曰く、偉人を呼びだせるらしい。あいつの姉の藤丸立香も同じ個性だ。』

『解説センキュー!イレイザーヘッド!そして一足行く連中A組が多いなやっぱ!』

『他の科やB組も決して悪くないただ…立ち止まる時間が短い。』

相澤の言う通り、後続にいるA組は直ぐに対応する。飯田は『エンジン』で機動力を生かし突破、上鳴は『電気』で仮想敵をショートさせて突破。耳郎は『イヤホンジャック』で仮想敵の装甲に突き刺し、音を流して破壊する。

「おっと…あー…坂本龍馬さんとお竜さん取られた…マジでどうしよ」

立香も皆に続き突破しようとするが、仮想敵に遮られた。

「(他に機動力ある英霊いたっけ?ここで止まってるわけには…) ………あ」

悩んで上を向く立香。視界に入ったのは日の光。そこでピンと閃いたのだった。

「来て!『セイバー』!」

「―円卓の騎士、ガウェイン。召喚に命じ参りました。」

立香の前に現れたのはセイバー、『ガヴェイン』。彼は『太陽の騎士』や『忠義の騎士』と呼ばれることもある騎士。つまり―『太陽の出ている間は三倍に近い能力を発揮する』のだ。

「あれ障害物。排除、OK?」

話す時間が無いため短文で説明する立香。ガヴェインは直ぐに理解する。

「把握しました。マスター、私の後ろをついて来てください。」

「うん!」

「いざ、全てを白日の下に……ゼヤァ!!」

『グギィ!?』

『アガァ!?』

『グベラッ!?』

日の光によって強くなるガヴェイン。彼の薙ぎ払う剣で一気に仮想敵が破壊され、立香は突破出来た。その後も、八百万が『大砲』を『創造』し、巨大仮想敵を撃退。後続が次々と突破する。

「チョロいですわ!」

『オイオイ第一関門チョロいってよ!んじゃ第二はどうさ!?落ちればアウト!それが嫌なら這いずりな!!ザ・フォール!!』

「うわぁ…」

次の関門は、綱渡り。見上げる程に高い岩の柱の間をロープで繋いである。エリアだった。

「大げさな綱渡りね。」

個性『蛙』で蛙のような動きで渡り始める蛙吹。そこから次々と渡り始める生徒。中にはサポートアイテムを使って渡る生徒もいる。

『実に色々な方がチャンスを掴もうと励んでますねイレイザーヘッドさん』

『何足止めてんだバカ共…』

『さぁ先頭は難なく一抜けしてんぞ!』

プレゼント・マイクの言ったように、先に第一関門を突破していた轟は既に対岸にいた。そして自身が渡ったロープを凍らせ、妨害し、前へ進む。

「クソが!」

「!」

しかしそこに爆豪の姿。『爆破』で空を飛び第二関門を突破する

「(調子上げて来たな…スロースターターか…)」

そんな二人の背中を見て追う人物、飯田も急ぐ

「恐らく兄も見ているのだ…かっこ悪い様は見せられん!!」

バランスを取るように体をTの字にし、ロープの上をすべる。

『カッコ悪イイーー!!!』

思わずプレゼン・マイクは大声で言った。

「お竜さんここ通れる!?」

『んー大丈夫だ。まかせろー』

「しっかり掴まってたほうがいいね!」

「へ?…って!!うわぁああああああああ!!!?!?!?!?」

立希もお竜さんを使って第二関門を突破する……が、蛇のように動くお竜さんは一気に谷底まで行き、そして一気に岩柱へ上る。それを何回もするのでジェットコースター状態。立希は坂本龍馬の補助の元、お竜さんに掴まってなんとか落ちずにすんだ。だが突然の絶叫マシン化したためか、立希はバクバクと心臓が鳴らせ、顔が真っ青になるのだった

「死ぬかと思った死ぬかと思った死ぬかと思った死ぬかと思った死ぬかと思ったぁ!!?」

『なんだー?立希ー?情け無いぞぉー?』

「いやいやお竜さん。これは僕でも怖いよ」

「そ、それにしても坂本さん余裕の笑みっすね…」

ケロっとしてる坂本龍馬を見た立希は戦慄する

「ハハハ。慣れだよ、慣れ。」

立希達が先に行くのを見つけた立香は焦る。

「私達も速く行かないと……でも道が…」

「ふむ…」

ガヴェインは周囲を確認。そして『ソレ』を見つけて、動いた。剣を腰の鞘にしまい…

「マスター、行きますよ?失礼」

「…へ?」

ガヴェインは立香を横に抱いて走る。つまり、『お姫様抱っこ』だ。立香は一瞬フリーズしたが直ぐに我に返し、羞恥に悶える。

「ちょちょちょ!?ガヴェインさーん!?なんでお姫様抱っこなんですか!?」

「ハハハ!女性であるマスターに無礼な事は出来ませんよ。それよりしっかり私に掴まっていて下さい。『道』を渡りますので」

「み、道…?そんなのあるわけが……」

ガヴェインが進む先…それは……『轟が凍らせたロープ』だった

「そ…それは道と呼べなーい!!って渡れてるー!?」

思わず立香はツッコんだ。しかしガヴェインは笑みをもって答える

「太陽の下の私に、不可能な事は有りませんよ」

「アラやだイケメン!!でも待ってこれ中継されてるからぁあああ!!!」

―キャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!―

『おおーーっと!?何だ!?突然の女性達からの黄色い悲鳴が…って1-A藤丸姉ぇええ!!謎のイケメン騎士にプリンセス・ホールドされて第二関門を突破ぁああ!!つーかアイツ誰だぁああ!?』

『藤丸姉が呼んだ偉人だろ…どうせ…』

「立香ちゃん誰そのイケメン!!」

「騎士も呼べるの!?」

立香とほぼ同時に第二関門突破した麗日と芦戸は驚く。

「説明は後でするから!!!というかもう降ろして!!!!」

バタバタと暴れ、降りようとするが、ガヴェインは離さない。

「はっはっは。このままマスターを抱いて走れば先頭にたどり着けますよ?」

「先頭に着く前に私が恥ずか死ぬぅうう!!!」

立香の羞恥の叫びがこだまする…そんな騒ぎを起こしてる中、轟は着実にゴールへ近づく。そして最終関門へたどり着く

『先頭が一足抜けて下は団子状態!上位何名が通過するかは公表しねぇから安心せずに突き進め!そして早くも最終関門!!かくしてその実態は……一面の地雷原!!怒りのアフガンだ!!!』

最終関門は地雷エリア。先頭を行く奴ほど未発動の地雷とより多く向き合わねばならないという仕様だ。プレゼン・マイクの解説は続く。

『地雷の位置はよく見りゃ分かる仕様になっているぞ!目と足を酷使しろ!威力はないが派手な音と見た目だから、失禁必至だぜ!』

『人によるだろ』

「(成程なこりゃ先頭ほど不利な障害だ。) エンターテイメントしやがる…」

地雷を踏まないように少し慎重に進む轟。しかしそんな彼の背後から現れたのは…

「はっはぁ!俺は関係ねーーーー!!!」

「っ!」

『爆破』で空を飛ぶ爆豪。遂に轟を抜いた!

『ここで先頭が変わったーーー!!喜べマスメディア!!お前ら好みの展開だぁああ!!』

―ワアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!―

『後続もスパートかけてきた!だが引っ張り合いながらも先頭二人がリードかぁ!!!?』

一気に実況が盛り上がり、ライブ中継を見ていた観客もつられて盛り上がる。地雷が爆破するよりも早くかける生徒。地雷を爆破してから進む生徒。レースはもう終盤だ。

「お竜さん行ける!?」

『威力が無いなら大丈夫だー!それに龍馬もいる!』

「僕も少しは役に立たないとね!」

立希も先頭に続き、最終関門へと足を踏み入れる。坂本龍馬は持っていた拳銃で地雷があるところを射撃し、爆破。その跡をお竜さんがゆっくりと進む。

「よし!このままいけば一位じゃなくても上位に―」

その時だった。立希より後ろから大爆発が生じた。そしてその爆破の衝撃で何かが立希達の頭上を飛んで行く!その正体は…

『!?』

『A組緑谷!爆発で猛追ぃーーー!!つーか!!!抜いたぁあああ!!!』

「緑谷君!?」

「(やっぱ…勢いスゴイ…っ!)」

ここに来て緑谷。ロボ・インフェルノで仮想敵の残骸を持って最終関門に突入。そして最終関門の入り口付近には大量の地雷が埋まってあり、それを掘って集め、その上から仮想敵の残骸を『ボード』にして乗って前方に吹っ飛んだ!!

「デクぁ!!俺の前を行くんじゃねぇ!!」

「後ろ気にしてる場合じゃねぇ!!」

爆豪、轟。突然現れた緑谷にすぐに対応する様に前へと走る。

『元・先頭の二人足の引っ張り合いを止め緑谷を追う!!共通の敵が現れれば人は争いを止める!!争いは無くならないがな!!』

『何言ってんだお前』

プレゼン・マイク、相澤の実況が響く中、緑谷は思考を巡らす。

「っ!(くっそ!駄目だ!放すな!この二人の前に出れた一瞬のチャンス!掴んで放すな!!追い越し無理なら…抜かれちゃ―) 駄目だ!」

「「!!」」

失速し不時着しそうになった緑谷。しかしその前に『ボード』を振りかざし、地面に衝撃を起こす。その地面には地雷が…作動させ、轟と爆豪を妨害し、更に前へと進む!

『緑谷間髪入れず後続妨害!!なんと地雷原即クリア!!イレイザーヘッドお前のクラスどういう教育してんだ!!』

『俺は何もしてねえよ。奴らが勝手に火ィ付けて合ってんだろ―『さぁさぁ!序盤の展開から誰が予想出来た!?』―無視か』

『今一番スタジアムへ還って来たその男―』

スタジアムへ一番先にたどり着いたその人物―

『緑谷出久の存在を!!!!』

巨大画面に映し出される―緑谷出久の姿。障害物競走第1位。

「私達も行かないと!ガヴェイン!」

緑谷が一位という事に驚く立香だが。それと同時に自分も速くゴールへ。という気持ちが現れる。

「…分かりました。それではマスター『宝具』を許可してもらっても?」

「…え?あ、うん……え?」

そんな立香を見たガヴェイン。立香を降ろし、剣を構えた。そして剣の刀身に光が灯る。

「マジか!!お竜さん急いで!!アレ喰らったらマズイ!」

立香より前にいた立希。その光が見えた瞬間、立希は顔を真っ青になり、お竜さんを急がせる。

『まかせろーー!!』

お竜さんの動きが早くなると同時―ガヴェインが動く。

「この剣は太陽の現身。あらゆる不浄を清める焔の陽炎―『転輪する勝利の剣(エクスカリバー・ガラティーン)』!!!!!」

轟音。ガヴェインが解き放った炎の斬撃によって地雷が埋まってある地面を抉り、そしてその余波で最終関門に挑んでいた生徒のほぼ大半を吹き飛ばした。

『ギャアアアアアアアアアア!!!!』

『うわぁあああああああああ!!!!』

『なんだぁああああああああ!?!?』

吹き飛ばされた生徒は大声を上げて地面へと落ち…

「ああああああああっぶなぁーーーーーーい!!!!!」

『ギリギリセーーーーフ!!!!」

「やれやれ、マスターのお姉さんは豪快だねぇ!!」

立希と坂本龍馬、お竜さんはガヴェインの宝具に呑まれそうになるがギリギリ最終関門を突破。そして蛇になったお竜さんから飛び降り、無事ゴールする。

『藤丸姉!まさかの容赦のない一撃を撃ち放つぅううう!!!!おいおい!大丈夫か!?ほとんどの奴がぶっ倒れてんぞぉオイ!!』

「加減はしておりますので。では参りましょう」

宝具を放ち終え、ガヴェインは立香と共に走る。

「いやこれ私がやったわけじゃないよ!!そしてガヴェインはやり過ぎ!!」

立香はガヴェインに色々注意しつつも、最終関門突破。無事ゴールしたのだった。それからポツポツと生徒達がゴールする。

『さぁ続々とゴールインだ!順位等は後でまとめるから取り敢えず、お疲れ!』

ようやく第一種目は終えるのだった。

「デク君すごいね!一位!悔しいよちくしょー!」

ゴールした麗日は一位になった緑谷を褒め、悔しい気持ちを表す。

「この個性で遅れを取るとは…やはり俺はまだまだだ…」

飯田もまた、悔しそうに緑谷を見る。

「麗日さん…飯田君…い、いやぁ…」

緑谷はそんな二人を見てオロオロする。

「中々いい順位じゃないかな?」

「お竜さん頑張ったぞー!イエーイ。ピース。ピース。」

「うん…本当に有難う…姉やり過ぎ…」

立希は手伝ってくれた坂本龍馬、お竜さんを労い、立香をジト目で見る

「おお!確か坂本龍馬!!やっぱすげぇわ立希!!」

やや遅れてゴールした切島が立希を褒める。

「立香ちゃんこのイケメン騎士誰!?」

「お姫様抱っこしてもらってたよね!?」

ガヴェインの事が気になる芦戸と葉隠。立香に詰め寄る。

「言わないで…恥ずか死ぬ……」

立香は羞恥で顔を両手で覆い隠すのだった…

『ようやく終了ね。それじゃあ結果をご覧なさい』

ミッドナイトの号令にて、画面に順位と名前が映し出される。結果は以下の通り。

 

1位 緑谷出久   13位 尾白猿尾  25位 円場硬成  37位 鎌切尖

2位 轟焦凍    14位 泡瀬洋雪  26位 上鳴電気  38位 物間寧人

3位 爆豪勝己   15位 蛙吹梅雨  27位 凡戸固次郎 39位 角取ポニー

4位 塩崎茨    16位 障子目蔵  28位 柳レイ子  40位 葉隠透

5位 骨抜柔造   17位 砂糖力道  29位 心操人使  41位 取陰切奈

6位 藤丸立希   18位 麗日お茶子 30位 拳藤一佳  42位 吹出漫我

7位 藤丸立香   19位 八百万百  31位 宍田獣朗太 43位 発目明

8位 飯田天哉   20位 峰田実   32位 黒色支配  44位 青山優雅

9位 常闇踏陰   21位 芦戸三奈  33位 小大唯

10位 瀬呂範太  22位 口田申司  34位 鱗飛龍

11位 切島鋭児郎 23位 耳郎響香  35位 庄田二連

12位 鉄哲徹鐵  24位 回原旋   36位 小森希乃子

 

『予選通過は上位44名!!残念ながら落ちちゃった人も安心しなさい!まだ見せ場は用意されてるわ!』

ミッドナイトの宣言により第1種目が終了。会場から拍手が送られる。

『そして次からいよいよ本選よ!!ここからは取材陣も白熱してくるよ!キバリなさい!!』

そして再びミッドナイトの号令により画面のルーレットが回り始める。

『さーて第2種目よ!私はもう知ってるけど~~~~何かしら!?言ってるそばから……コレよ!』

体育祭はまだまだ続く…



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第9話

人数調整でちょこっと原作改変。


side三人称

第一種目が終わり、続けて第二種目。画面に映し出されたのは…『騎馬戦』

「騎馬戦…!」

「個人競技じゃない…」

立香と立希はそう言いこぼす。

『参加者は2~4人のチームを自由に組んで騎馬を作ってもらうわ!基本は普通の騎馬戦と同じルール!でも一つだけ違うのよ!先ほどの結果に従って各自Pが振り当てられること!』

ミッドナイトが騎馬戦のルールを説明。

「成程…入試見てぇなP稼ぎ方式か!」

「つまり組み合わせによって騎馬のPが違うって事か…」

説明を聞いた生徒達は色々と考察する。

『あんたら私が喋ってんのにすぐ言うね!!』

ミッドナイト、説明を取られ拗ねる。

『ええそうよ!!そして与えられるPは下から5ずつ!44位が5P、43位が10P…といった具合よ!そして……1位に与えられるPは……1000万P!!』

「…え」

『!!』

1位の緑谷。目を見開いて驚愕。そして緑谷の周囲にいる皆彼を見る。そんな皆の反応を見てミッドナイトはニヤリと笑い、言い放つ。

『上位の奴ほど狙われちゃう下克上サバイバルよ!!!』

 

 

side立希

さて、第二種目の騎馬戦。今はチーム決めの交渉時間だ。1位の緑谷君は皆から裂けられている。まぁ1000万Pだしね…でも

「人の事言えないんだよなぁ…」

現在、自分も一人だ。まず自分の個性を知ってる人はAクラスメンバーしかいない。けどクラスの皆は爆豪君や轟君といった攻撃が強いメンバーを誘っている。

「自分は英霊を呼ぶだけで、自身は強くなってないからなぁ…どうすれば…「あ、いたいた。立希ー!」ん。姉」

悩んでいると姉が寄って来た。

「騎馬戦、組もうよ」

「いいよ」

即決。身内がいるってマジいいよね!!

「でもどうする?肩車?姉重いからつらい…」

「おいコラ…違うよ、私らだけで騎馬作ればいいじゃん。」

「どゆこと?」

姉の指示に自分は従う。その作戦に自分は賛成した。

「さっすが姉。自分じゃ考えられない事を平然とやってのける!そこにしびれる!憧れるぅ!!」

「うっせ」

軽く若干ふざけたらどつかれた。ともあれ、早速自分と姉は騎馬を作りあげる。そして15分後。そろそろ試合開始だ。

『さぁ!上げていけ鬨の声!血で血を洗う雄英の合戦が今!!狼煙を上げる!!カウントダウンスタート!!』

ミッドナイトの号令でカウントダウンが始まる!

「それじゃあ―よろしく!!姉!」

「分かってる!」

『3!』

騎馬の左後ろに姉―

「ガヴェイン!」

「任せて下さい。」

『2!』

騎馬の右後ろにガヴェイン―

「坂本さん!お竜さん!」

「はいはい!分かってますよ!」

「もう一頑張りといくかー!」

『1!』

騎馬正面に坂本龍馬。そしてお竜さんが自分中心に宙を舞う。

「勝ちに行こう!」

姉、ガヴェイン、坂本さんで作られた騎馬の上に自分が乗り、そして姉と自分の合計Pが刺繍されたハチマキを取り付ける!

『スタートォ!!』

第二種目、騎馬戦が開始まった。現在自分のチーム、トータルP…『385』

 

 

side立香

「…さて、どうしようか。」

「緑谷君チームのPは欲しいけど…高望みはし過ぎないほうがいいよね」

スタート合図と共に緑谷君のチームが大半の騎馬に狙われ、逃げているところを離れた所で見ている。緑谷君は常闇君と麗日ちゃん…もう一人は知らないけどサポート装備を付けてるからサポート科の人だろう。

「うわ!あんな数相手に跳んで避けた。」

緑谷君の行動に立希は驚く。それは私もだ。緑谷君は迫って来た大勢の敵の頭上を跳び、回避する。

「常闇君の個性で死角をカバーして…あ、お竜さんもあんな感じで頼める?」

「任せろー!…よっ!」

「お竜さん?…!」

「っ……やはり穢らわしい取り方ではだめですか…」

立希がお竜さんに常闇君の『ダークシャドウ』の動きをまねる様に指示したその時、お竜さんが立希の頭部に伸びてきた蔓を掴んでいた。元をたどると髪が蔓の女子生徒が私達のPを取ろうとしていた。

「A組だなお前ら!!ハチマキ寄越せ!」

体が金属の生徒が騎馬を動かしてこちらに接近して来た

「お竜さん!」

「よーし、お竜さん少し本気出しちゃうか!!」

立希がお竜さんに攻撃指示。お竜さんは騎手の金属生徒に紫色の霧を吐き、目くらましをする。

「ぶわ!?な、なんだぁ!!?」

「騎馬前進!!」

「「「了解!!」」」

怯んだ隙に私達、騎馬を前進させる。

「鉄哲!前―「見えねぇ!!粘々して取れねぇ!!」なっ!?」

「お竜さんの唾も入ってるからな」

「いやいや、それ汚いから」

「それ!Pゲット!!」

「「「「あっ!!」」」」

お竜さんに注意する坂本さんを他所に、立希が敵のハチマキ―Pをゲットする。

『藤丸チーム!Pゲット!!ってなんだあの騎馬!?そんなのアリかぁ!?』

ここで私達の騎馬が注目された。

『ルールに乗っ取っての二人騎馬!採用!!』

ミッドナイト先生からの許可が出たから何も問題無い。そのまま逃げる様に動きまわる。

『アリだったぁ!!同じ個性の二人と騎馬作るってすげぇよ!!流石姉弟チーム!!』

『725』と書かれたハチマキを奪取。一気に私達のチームPが『1110』となる。

「今順位は!?」

画面が見えてる立希に聞く。

「今の所は……3位!このままキープする!?それとも上狙う!?「現状維持!」了解!」

上位に入れば次に進める。だから高望みはしないで現状維持。

『7分経過!現在のランクを見てみよう!』

画面に映し出された現在の順位は以下の通り。

 

1位 緑谷チーム  5位 轟チーム  9位 角取チーム   13位 鉄哲チーム

2位 物間チーム  6位 麟チーム  10位 峰田チーム

3位 藤丸チーム  7位 爆豪チーム 11位 心操チーム

4位 拳藤チーム  8位 小大チーム 12位 葉隠チーム

 

 

side立希

『A組緑谷以外パッとしてねぇ…ってか爆豪あれ…!?』

「爆豪チームが0P…」

「取られたのかな?」

プレゼン・マイク先生と同じ様に、自分と姉も少し動揺する。でも他のチームを心配より自分達のチームの事を考える。

「マスター!周囲に敵の騎馬が!」

ガヴェインが声を上げる。ガヴェインが見える方向を見ると、敵チームの数体の騎馬が突撃して来た

「鉄哲の仇…それにお前らのPも奪ってやるぜ!!」

「げ…B組どうし共闘してきたぁ…」

「どうするマスター?」

自分は考える。そして視界の隅に緑谷チームと轟チームが出くわしていたのを見えたから騎馬の3人に指示する

「逃げる!緑谷チームと轟チームの方に!」

「擦り付けね!把握!!」

それは言わないで欲しい姉よ。

「「「「「逃がすかぁ!!」」」」」

『さぁ残り時間半分を切ったぞ!!B組隆盛の中!果たして1000万Pは誰に頭を垂れるのか!!』

「(自分のチームは取らないんだけどね!!)」

自分のチームを含め、他のチームごと緑谷チームと轟チームへと向かう。だがその時だった!!

「-いくぜ!!『無差別放電130万V』!!」

轟チームにいた上鳴君からの放電が襲って来たのだった。

「「アババババババ!?!?!?!?」」

「「マスター!?」」

「お前ら大丈夫かー?」

「だ、大丈夫じゃ……ない…」

「し、痺れる…」

流石に電気は耐えられない。完全な不意打ちで体が麻痺する。坂本さん達は英霊。つまり『霊』だから大丈夫だった。お竜さんにとっては宙に浮いてるから通電していない

「―悪いが我慢しろ」

「うわ!!?」

「ぐっ…」

「また氷つけかよっ!!」

今度は轟君の放った氷が襲い掛かって来た!こっちは動けないのにっ!

「お任せを!」

ガヴェインが空いている腕で剣を抜き、地面に突き刺す。すると剣は光輝き、太陽の熱を放射。自分のチームの所だけ氷が解け、凍りつけを防ぐことが出来た。

「ナイス……ガヴェイン……っ」

『何だ何した!?群がる騎馬を轟一蹴!!』

『上鳴の放電で確実に動きを止めてから凍らせた…流石というか…障害物競走で結構な数に避けられたのを省みてるな』

『ナイス解説!』

相沢先生の解説で理解する。流石轟君…やっぱり強い…っ

「マスター二人が回復するまでは守備にまわりましょう」

まだ痺れて動きにくい。そんな自分と姉をフォローするようにガヴェインが動いてくれる

「そうだね……あ、そうだお竜さん」

「なんだー坂本……ああ、よし来た!」

そう言って坂本さんの指示の元、お竜さんが動き、遠くへ飛んだ…かと思ったら直ぐに戻って来た。その手には

「獲ったぞー」

「え?」

ハチマキがあった。まさかの漁夫の利。

「…ん!?おい!?ハチマキ無くなってるぞ!!?」

「え!?何処行った!?!?」

氷結で動けない騎馬が遠くで騒いていた。成程、騎馬が氷に注視してる隙に奪ったのか。

「ナイス……お竜さん……よし、大分動けるようになった…姉、無事?」

「こっちも…大丈夫!」

これで更にPが上がり、上位をキープできる。そしてようやく動けるようになった自分のチームはすぐに戦線離脱。緑谷チームと轟チームから離れる。

『残り約1分!!轟フィールドをサシ仕様にし…そしてあっちゅー間に1000万奪取…とか思ってたよ5分前までは!!緑谷狭い空間を5分間逃げ切っている!!』

「緑谷君すっげ…「感心してる場合じゃないよ!」そうだけど……」

麻痺が解け、ハチマキが取られないようにフィールド全部使って逃げる。

「藤丸!そのハチマキ頂くよ!」

「そんな事させるかー!」

「くっ…常闇みたいな守り方……」

耳郎さんからのイヤホンジャックをお竜さんが弾いて、

「立希ー!!ハチマキ寄越せぇー!!」

「お任せを!ハッ!!」

「眩しいぃー!つーかアジィ!!?」

峰田君と梅雨さんを背負った障子君の騎馬からの突撃をガヴェインの光る剣で目くらます。

「マスター!今度は正面から2!」

「左からは1!」

そして坂本さんと姉は敵の位置を知らせてもらう。というか…

「数多くない!?どれだけヘイト集まってるの!?」

「現状上位でそれなりにPあるからね!!時間ももう無いし!!」

そんな時、試合に動きがあった。

『なーーー!!!?何が起きた!?速っ速ーー!!!飯田そんな超加速が出来るんなら予選で見せろよー!!』

「飯田君!?」

「轟君の手にハチマキ…それじゃあ!」

轟チームを見ると、轟君の手にはハチマキがしっかり掴まれていた。

『ライン際の攻防!その果てを制したのは…逆転!!轟が1000万!!そして緑谷急転直下の0Pーー!!』

画面の順位が移動する。

 

1位 轟チーム  5位 麟チーム  9位 角取チーム  13位 小大チーム

2位 藤丸チーム 6位 緑谷チーム 10位 葉隠チーム

3位 物間チーム 7位 爆豪チーム 11位 心操チーム

4位 拳藤チーム 8位 鉄哲チーム 12位 峰田チーム

 

『残り1分を切って現在轟ハチマキ4本所持!!ガン逃げヤロー緑谷から1位の座をもぎ取ったあ!!上位5チームこのまま出揃っちまうか!?』

「もうひと踏ん張り!!皆頑張るぞ!」

「「「「了解!」」」」

自分は姉達を鼓舞する。

『P寄越せぇ!!』

そう言ってもやっぱり敵が多い……ここは上位キープギリギリを行くしかない!

「アーット!間違ッテハチマキ落トシチャッター!」

作戦を思い付いた自分は態とハチマキを落とす。

『!!』

すると敵チームの騎馬全員、その落ちたハチマキを見る。

「ちょ!?何して―「大事ナ大事ナ『395』Pナノニーデモ逃ゲヨー!」…え?何で片言?」

『よこせぇ!!』

訝しげる姉を横目に、敵チームの騎馬を見る。敵チームの騎馬達は撒き餌に群がる鯉のように、落としたハチマキの方へと行く。その隙に自分達は逃げる!

「いいのかー?折角のハチマキだぞー?」

お竜さんがそう聞いて来た。自分は少し笑いながら答える。

「大丈夫。だってあのハチマキ…」

「獲ったぜ!『395』P-「ちょっと待て!これ『80』Pって書いてるぞ!?」はぁ!?」

「ホラね?」

これには群がっていた敵チームの騎馬全員唖然し、止まっていた。

『藤丸弟!行動がゲスーーーイ!!そして爆豪チーム2本奪取で3位!この終盤で順位が変わりゆく!!若気の至りだぁ!!』

いよいよ終盤!どんどんチームのポイントが移動し始める!カウントダウン10秒前が始まる。

「P減って順位落ちたけど上位!だから逃げ切るよ!!」

「「「「了解!」」」」

自分のチームは兎に角逃げた。坂本さんと姉の索敵!お竜さんの防御!ガヴェインの目くらまし!そして遂に…

『TIME UP!!!』

騎馬戦が終わった。

「「お、終わった~」」

終了と同時、騎馬を止め、自分と姉はその場に座り込む。中々体力を使った。早速結果発表だ。

『早速上位5チーム見てみよか!!1位!轟チーム!!』

「………くそ…っ」

やっぱり1位は轟チーム。1千万P取ったから…けど轟君自身は悔しそうな顔付きだ。

『2位!爆豪チーム!!』

「だぁあああああ!!!!」

いつの間にか上位に戻った爆豪チーム。1位になりたかった爆豪君は悔しそうに吠えていた。コワい

『3位!藤丸チーム!』

「「イエーイ!」」

そして自分のチーム!最初から最後まで上位キープ出来てよかった…姉も満足してハイタッチする。

『4位!鉄て…アレェ!?オイ!?心操チーム!!?』

「ふっ……ご苦労様」

…これまたいつの間にか上位に入っていたチーム…あの紫髪の男子、体育祭前に宣戦布告してた人だ。

『いつの間に逆転してたんだよオイオイ!!そして最後!5位!緑谷チーム!!』

「うわぁあああああ!!!」

最後に緑谷君チーム…P取られたけど何やら最後、常闇君がファインプレーをしていたらしくギリギリ上位に入っていた。緑谷君は嬉し涙を噴水の様に大量に流していた。

『以上5組が最終種目へ進出だぁあああ!!!!!』

―ワァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!―

結果発表が終わり、盛大な拍手が大会を包み込む。最終順位は以下の通り。

 

1位 轟チーム  5位 緑谷チーム 9位 角取チーム  13位 小大チーム

2位 爆豪チーム 6位 拳道チーム 10位 葉隠チーム

3位 藤丸チーム 7位 鉄哲チーム 11位 物間チーム

4位 心操チーム 8位 麟チーム  12位 峰田チーム

 

こうして無事に最終種目へ行けた。



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第10話

ヒロアカで好きなキャラは緑谷君。カッコいいよね。流石主人公。


side三人称

『1時間程昼休憩挟んでから午後の部だぜ!じゃあな!!オイ、イレイザーヘッド飯行こうぜ!』

『寝る』

『ヒュー!』

プレゼン・マイクと相沢の実況・解説が一時休憩となる。

 

 

side立香

昼食。私はクラスメイトの女子全員集まって、おしゃべりしながらお昼ご飯を食べる。

「悔しいわ。三奈ちゃん、百ちゃん、お茶子ちゃん、立香ちゃん。おめでとう。次の種目、私の分まで頑張って頂戴。」

そう讃えてくれる梅雨ちゃん。

「ありがとー。けど次の種目でどうなるか分からないし、さっきも結構まぐれみたいな感じだし…うーんこれからどうなるか難しいなぁ…」

私はお礼を言って、次に意気込む。が、不安を言いこぼす。

「ですがここまでこれたのもチーム一丸となって動いた結果…きっと実力にお見いですわ」

そんな私に八百万さんは褒め称えてくれる。

「皆すごかったー!飯田君にあんな超必持ってたのズルイや!」

麗日ちゃんはさっきの飯田君の個性技の事を言う

「…まぁとっておきは隠すものだし…」

私はそんな麗日ちゃんと宥める。

「でもさ!一番印象に残ったのってさ!アレだよね!」

「うん」

「そうだね…―」

三奈ちゃんが言った事に耳郎ちゃん、葉隠ちゃんが頷く。そして―

「「「「「「お姫様抱っこ」」」」」」

麗日ちゃん、梅雨ちゃん、八百万さんも頷いて、全員が同じ事をいう。その矛先は私だ…

「言わないで…恥ずか死…」

「(そんな事ありませんよ)」

過去を掘り返され、恥ずかしくなって顔を隠す。因みにガヴェインは『霊体』になってもらっている。こうすれば邪魔にならないし、本人は透過して私と弟以外は見えない。というかお姫様抱っこした本人にフォローされても意味が無い。

「で、早速なんだけどあのイケメン騎士は誰!?」

目を輝かして聞いてくる三奈ちゃん。私はため息ついて答える。

「…セイバー……ガヴェイン…八百万さん説明よろしく……」

説明するのがメンd…じゃなく、騎馬戦で疲れてるから私は八百万さんに全部放り投げた。

「は、はぁ…コホン。ガヴェイン…ですと『太陽の騎士』や『忠義の騎士』と呼ばれることもある騎士ですわ。アーサー王の甥であり、アーサー王の影武者、そして王が倒れた場合の代理候補の一人。もっとも彼本人は周囲からの評価も意に介さず、あくまでアーサー王の右腕であり続けた、最も著名な円卓の騎士のひとりですわ」

八百万さんの博識がすごい…女子皆も感嘆する。

「「「「へー!」」」」

「(おぉ!私の事をこれほど知っているとは…是非ともこのレディとお茶を嗜みたい)」

ガヴェインも嬉しそう…というかナンパしようとしてるし…

「(でたよ…手癖の悪いすけこまし…) …ガヴェインが八百万さんといつか対面したいんだって」

「え!?話聞いてるの!?」

耳郎ちゃんが周りを見る。霊体だから見えないよ。そして八百万さんは嬉しそうに答える。

「まぁ…でしたら私はそのお方の騎士道を聞いてみたいですわ」

といった時だった。

「あ、いたいた!」

「おーい!そこの女子メンバー!」

「「「「「「「?」」」」」」」

峰田君と上鳴君が来た。そして相澤先生の言伝を聞かされる…え゛何それやりたくない…

 

 

side立希

さてお昼だ。鋭児郎君、瀬呂君、上鳴君と一緒に食べる。

「…デケェ」

「なぁ…立希…」

「これ……弁当…か?」

自分の目の前にあるのは弁当。しかしそれは…重箱だった。しかも5段。こんな大きく高い弁当に鋭児郎君、瀬呂君、上鳴君は唖然とする。

「…うん。そうだね」

『重箱!?』

まぁ驚くよね…3人とも大声でツッコんで来た。

「しかも3段とかじゃなくて5段もありやがる!!」

「え!?これ全部食うのか!?」

「気合入ってんなー…」

「さ、流石に無理かな…よかったら食べる?」

狼狽える3人。今日が体育祭だという事で調理班が全力で作ったからなぁ…姉の方も確か同じものだったかな。自分は皆で食べようと提案すると、3人は目を輝かす。

「いいのか!!」

「俺さ!初めて立希の弁当食った時から気に入ってるんだよなー!」

さっそくオープン。すると…視界に広がるのはとても美味しそうな数々のおかず。

「マジでうまそうだ!!」

目を輝かす上鳴くん。

「料理ってこんな輝くっけ!?」

感嘆する瀬呂君。

「しかもあったけぇ…」

涎が出始めてる切島君。自分含め、皆ゴクリと唾を飲み込む

「冷めない内に食べようか。頂きます」

「「「頂きます!!」」」

さっそく食べる。案の定「美味い!」と言ってくれると自分も嬉しくなる。当然、自分も美味しいと言ってしまう。そんな時…

「立希ー!お竜さんにも食わせろー!」

「んぐ!?」

「「「おわ!?」」」

「こらこらお竜さん。マスターの食べる量が無くなるよ」

自分の後ろから抱きつくようにお竜さんが現れる。坂本さんもやれやれといった感じで後ろから現れた。

「っとと…大丈夫だよ。お竜さんも坂本さんもありがとう。是非食べてって」

「そうだぞー!お竜さんは頑張ったからなー!それ相応のお礼が無いと駄目だ!」

「全く…でもまぁマスターが良いなら、遠慮なく…うん、美味しい」

そのままお竜さんは自分に抱き着いたまま、つまんで食べ始め、坂本さんは自分の隣に正座し、箸で食べ始める

「モグモグモグモグ…」

「あはは……どうしたの3人とも」

二人が食べ始めた時、3人の動きが止まっていた…というか同様している?

「え?いやぁ…なんつーか…」

「偉人と一緒に飯食ってるってすげーなって…」

「つか女性に抱き着かれてるお前が羨ましいわ」

鋭児郎君、瀬呂君、上鳴君の順に言ってくる。というか上鳴君はブレない。

「んー美味い。」

それでマイペースなお竜さんである。

「まぁ改めて…彼が坂本龍馬さんで、こっちがお竜さん」

「ライダー、坂本龍馬。マスターの召喚に応じ参上した。こっちは相棒のお竜さん。僕ともどもよろしく頼むよ」

「よろしくな、お前ら……ところでお前ら美味そうだな」

いきなりお竜さんが3人を見て涎を垂らす。完全に目が捕食者だ。

「「「…え」」」

「いやいや、ダメだからね……」

やれやれと坂本さんがやんわりお竜さんを制する。お竜さんはムッとした顔で坂本さんを睨んだ。

「な、なぁ立希、男性の方は坂本龍馬ってのは分かる。有名だから…でもそっちの女性は何者なんだ?」

瀬呂君が聞いて来た。

「お竜さんはお竜さんだぞー」

「んー彼女は天逆鉾に縫い付けられていた大蛇の物の怪だよ。で、坂本さんがそんなお竜さんを助けた…だっけ?」

「そうだね。」

「あー…そうだったなーモグモグ」

「へぇー……ってこの女性は妖!?」

お竜さんの正体を知って顔を青くする上鳴君さっきのお竜さんの発言もあって一層青くなっていた

「蛙与えれば大丈夫だから」

そんな上鳴君を自分は落ち着かせる。

「蛙!?え!?食うのか!?」

「蛙は私の大好物だ。」

「「「おぉう…」」」

何とも言えない3人の顔だった。その後、上鳴君は峰田君と女子メンバーの所によって何か話していた。その顔がなんかいやらしい顔をしていたのは気のせいだろうか…?

 

そして昼休憩が終わり、スタジアムに集まる。坂本さんとお竜さんは『霊体』になってもらう。

『最終種目発表の前に予選落ちの皆へ朗報だ!あくまで体育祭!ちゃんと全員参加のレクリエーション種目も用意してんのさ!』

「…………」

ぞろぞろと自分達はスタジアムに集まる…のだが、ある場所に目が集まる。

『本場アメリカからチアリーダーも呼んで一層盛り上げ……ん?アリャ?』

『なーにやってんだ……?』

プレゼン・マイク先生、相澤先生が呆れた声をこぼした。

「わお…」

自分は驚く。視界の先に写っていたのは…

『どーしたA組!!?』

A組の女子メンバー全員が何故かチアの衣装をまとって並んでいた。なんか『チアァ!』という擬音語が聞こえる。女子全員顔が暗い。というか何してんの姉…

「峰田さん!上鳴さん!騙しましたわね!?」

「「ひょー!!」」

八百万さんが怒鳴る。峰田君と上鳴君はサムズアップし合っていた。あぁ…あの二人に騙されたのか…

「…でも姉が騙されるなんて珍しい。あ、写真撮るね。」

「撮るな!!…あの二人が『相澤先生からの言伝だから』って言って来た……考えればあの二人に先生が頼むわけない…」

スマホを取り出してチア姿の姉を撮る。消す?そんな事するわけが無い。

「(お似合いですよ!マスター!あ、弟さん後で撮った写真を見せて下さい。我が円卓の宝にしますので)」

「するな!!」

霊体のガヴェインがすごくいい笑顔で言って来た。まぁ肝心の姉はすごく不機嫌だけど

「何故こうも峰田さんの策略にハマってしまうの私……衣装も『創造』で作り上げたのに…」

項垂れる八百万さんに

「アホだろあいつら…」

馬鹿馬鹿しいと思いチアの道具を投げ捨てる耳郎さん

「まぁ本選まで時間空くし張り詰めててもシンドイしさ…」

そしてチア姿になっても平気そうな葉隠さん。何か大丈夫そうだ。

「いいか!絶対撮るなよ!?絶対にだ!フリじゃないから!!」

「いや自分が撮らなくてもこれ中継されてるよ?ほらあの大画面に映ってるし…」

「(あ、オワタ)」

大声を上げる姉だが冷静に諭すと、項垂れた。ドンマイ。

「まぁまぁ立香ちゃん!いいんじゃない!?やったろ!!」

「透ちゃん好きね」

そして梅雨さん、三奈さんに手を引かれながら退場。そんなハプニング?があったけど無事全員集まった。

『さぁさぁ皆楽しく競えよ!レクリエーション!それが終われば最終種目!!』

プレゼント・マイクの実況と同時に大画面に映られたのは…『トーナメント表』

『進出5チーム!総勢18名からなるトーナメント形式!!1対1のガチバトルだぁ!!』

1対1のガチバトル。くじ引きで組み合わせを決め、レクリエーションを挟んで始まる。トーナメントは去年見た事があった。形式は違うけど、例年通りだった。レクリエーションに関してはトーナメントに参加する18人は参加するもしないも個人の判断らしい。で、早速組み合わせを使用とした時だった。

「あの…すみません……俺…辞退します…」

『!?』

まさかの尾白君が辞退を提案。なんでも騎馬戦の記憶が無いらしく、皆が力を出し合った中で、わけわかんないままトーナメントには入りたくないと言ったのだった。他にも尾白君と同じ理由でB組の一人が辞退を提案する。どうなるかは主審のミッドナイト先生の采配だが…

『そういう青臭い話はさぁ……好み!!棄権を認めます!!』

まさかの好みで決めた。結果、繰り上がりで6位の拳道チームが入る事になったが、二人の話を聞いた拳道チームのメンバーは違うチームの鉄哲チームの二人を指名し、その二人がトーナメントに入る事になった。

『それじゃあ二人を入れて組み合わせるわ!因みにシード権は2つ!運も実力のウチ!!』

組み合わせの結果…

 

 

【挿絵表示】

 

 

まさかの自分と姉がシード権。幸先が良い。召喚に限りがあるため、戦う数が減るのは嬉しい。

『よーしそれじゃあトーナメントは一先ず置いといてイッツ束の間!楽しく遊ぶぞレクリエーション!』

そんなわけで、レクリエーション後、トーナメント戦が始まるのだった…

 

 

side立香

「(レクリエーション……って言ってもなー…)」

トーナメントの組み合わせが終わり、私はスタジアムの外に出ている。すでにチア服は脱いでジャージ姿。レクリエーションには参加しないで観戦する。立希は借り物競争に参加していた。引いたカードは『カワイイ女性』だったらしい。だからお竜さんと一緒にゴールインしたんだなって納得した。まぁそれで緊張をほぐしていた。他の女子もチア姿で応援合戦して緊張ほぐしてたし、他は静かな所で神経を研ぎ澄まして…まぁ色々していた。

「(私も緊張ほぐさないとなー) ……あ」

「……………」

のんびり歩いていると、そこに轟君がいた。ばっちり目と目が合った。

「あー………」

「………なんだ」

警戒してるのか、鋭い眼差しで見てくる。何ていえばいい…?えーと…

「…お互い、頑張ろう……ね?」

「……ああ……」

「「……………」」

一応の励まし。でもそれから会話が続かない……何この空気!?

「(何か話題!!) えっと……轟君の親とか来てるの!?」

「あ゛?」

「っ!」

一瞬。殺気に近い何かが私を襲う。というか轟君のトーンが一段低い。やっべ、地雷だった!?

「え、あ、その…ごめん。不躾だったかな…?」

「……いや、いい。んでもねぇ………お前はどうなんだ?」

「へ?何が?」

「……両親……来てねぇのか?」

そう返された。私は素直に答える

「あー………いないんだよねぇ…死んだのか……生きてるのか……全然分かんないや」

「っ……悪い…」

そんな私に轟君は申し訳なさそうに謝罪して来た。私は慌てて訂正する。

「だ、大丈夫。全然気にして無いよ。それに…親がいなくても家族がいるし」

「家族…」

言葉に反応した轟君。

「そうそう。弟の立希は勿論、実家にはカワイイ後輩や、オカンみたいな医師もいる。それにさ…ヒーローみたいに強くて、カッコイイ英霊達だっている…皆…私にとって大事な家族なんだよ。」

皆の姿を思いながら話す。皆がいたから、今の私がいるんだから。

「………」

轟君はただ黙って聞いていた。そんな轟君に私は再度質問する

「轟君にはいないの?大切で大事で守りたい…そんな人達」

「…ああ……夏兄……冬姉………お母さん……」

「大事な皆を守る…そういう理由でヒーローなりたいって私は思ったのかなぁ…あはは」

「……………」

何かハッとする轟君。そしてさっきまでの鋭い視線が緩和したように思えた。

「まぁ、私が言いたいのは…そんな緊迫した感じ出さなくてもさ、自分がやりたいようにすればいいんじゃない?…それじゃあね!」

体の向きを変え、スタジアムに戻る。その時に轟君は何か言っていたけど全然耳に入らなかった。だって…

「(あんな空気で会話無理!)」

やっぱり私にはシリアスは似合わない。

 

 

side轟

「…ありがとな…少し、落ち着いた……藤丸立香……か……」




二次小説あるある。おもしれー女。的な感じ。


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第11話

他の対戦はカット。


side三人称

神経を研ぎ澄ます者、緊張を解きほぐそうとする者、それぞれの想いを胸にあっという間に時は来た。

「オッケーもうほぼ完成」

『サンキューセメントス!』

セメントスの“個性”によってスタジアム中央にリング場が出来上がる。

『ヘイガイズ!アーユーレディ!?色々やってきましたが!!結局これだぜガチンコ勝負!!頼れるのは己のみ!ヒーローでなくともそんな場面ばっかりだ!わかるよな!』

―ワァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!―

プレゼン・マイクの実況が始まり、歓声が沸く

『心・技・体に知恵知識!総動員して駆け上がれ!!』

今、最終種目が始まろうとしている…

『ルールは簡単!相手を場外に落とすか行動不能にする!後は『まいった』とか言わせても勝ち!ケンカ上等!こちとらリカバリーガールが待機してっから!道徳倫理は一旦捨ておけ!だがまぁ勿論命に関わるよーなのはクソだぜ!アウト!ヒーローは敵を『捕まえる為』に拳を振るうのだ!』

いよいよ開戦…

 

 

side立香

最終種目。第一回戦、第一試合。試合はまぁ…地味だった。宣戦布告して来た男子、心操君の”個性”は『洗脳』。初見殺しだが対人戦だとかなり有利。始めは緑谷君を挑発させ、『会話させる事』で洗脳する。そのまま場外に移動させようとしたが、緑谷君は個性を暴発させ、自身に衝撃を与えて洗脳を解いた。心操君は再度洗脳させようと挑発するが、緑谷君は会話せず、心操君を背負い投げで場外に出し、二回戦進出した…心操君の叫びは本心ぽかったなぁ

 

第二試合。瞬殺だった。瀬呂君は『テープ』で轟君を捕縛し、場外に出そうとした…が、轟君からの『大氷結』。スタジアムの天井を突き抜ける程の氷結により阻止され、且つ瀬呂君を、ミットナイト先生の体半分ごと拘束。行動不能にさせて、轟君が突破。瀬呂君に対して『どんまいコール』がスタジアムに響く…その轟君の姿は…どことなく悲しく見えた気がした…

 

第三試合。これまた瞬殺。蔓髪の女子-塩崎さんに上鳴君は『放電』で対抗したが塩崎さんは『ツル』で壁を作り放電を防御。そのまま拘束して塩崎さんが突破した。

 

第四試合……戦いじゃなかった。双方合意のサポート装備を付けて参戦した飯田君と、サポート科の発目さん。どうやら発目さん、飯田君の真面目さを利用して自身が作ったサポートアイテムの紹介をした。10分もののアイテム紹介。本人は満足して自分から場外に。飯田君は無事突破したが騙されて怒っていた。どんまい…そしてさっきのサポートアイテム紹介…ダ・ヴィンチちゃんがものすごく興味を持ったのかLINEがバンバン来てる…

 

第五試合。三奈ちゃんと青山君。『ネビルレーザー』を回避する三奈ちゃん。そして『酸』で青山君のベルトを破壊し、青山君が慌てた隙に接近しアッパーを放つ。人体急所の顎殴られたら……青山君は気絶。三奈ちゃんが勝利した。

 

第六試合。先手必勝だった常闇君。八百万さんが『創造』するよりも早く攻撃し、場外に出した。1対1だと彼最強じゃね?

 

第七試合。個性ダダ被り対決。漢気溢れたガチの殴り合いだった切島君とB組の鉄哲君。最後はクロスカウンターで両者ダウン。引き分け時は回復後簡単な勝負で決めるのだった。

 

そして一回戦最後の組合わせ。爆豪君と麗日ちゃん。爆豪君の『爆破』攻撃に何度も何度も耐え続け、頭上に会心の一撃の『瓦礫の流星群』を放つが、爆豪君はそれを正面突破。麗日ちゃんは再度攻撃を仕掛けようとしたが…個性の許容重要で行動不能。爆豪君が試合を突破したのだった。席に戻った時、彼女の目のあたりが腫れぼっていて何となく察した。まぁその後の彼女は元気になっていたから安心した。

 

引き分けの切島君と鉄哲君。腕相撲で二回戦突破したのは切島君だった。お互い力強い握手をしていた。

 

二回戦。第一試合。緑谷君対轟君。相変わらずの強烈な範囲攻撃の『氷結』。それを緑谷君は自損覚悟で打ち消す。個性を使う度、彼の指が赤黒くなり痛々しい…それでも、弱点を発見。轟君は体に霜が降りてから動きが鈍くなった。鈍くなった轟君に緑谷君が拳を振りかざす。轟君は距離を置いて氷結を放つが反応が鈍い。そして緑谷君は叫んだ。

「君の!力じゃないか!!」

すると轟君は…

「俺だって……ヒーローに……っ!!!」

初めて、轟君が左の『炎』を纏った。そしてお互い全身全霊の力を放つ。緑谷君の『右腕での殴り』、轟君の『左の炎』。衝突と同時に轟音と衝撃がスタジアム内に轟く。煙が舞い、二人の姿が見えなくなるが…数秒後に晴れると、場外に緑谷君の姿…轟君が勝利し、準決勝進出したのだった…この時の轟君の姿は…瀬呂君と戦った時より、何か違かった気がした。

「さて……いよいよ私か……」

 

『さぁ!ド派手な二回戦が始まって第二試合!!初戦!電気の攻撃をものともしなかった!塩崎!対(バーサス)!障害物競走ではプリンセス・ホールド!騎馬戦では弟との共闘!シード権獲得の藤丸姉―藤丸立香!』

変にプレゼン・マイク先生から紹介される。

「いや…もう忘れて…」

そして対戦相手は上鳴君を瞬殺した塩崎さん。彼女の蔓の髪が厄介だなぁ…

「ああ…与えられたチャンス…無駄にせずここまで来れました…全力で頑張りましょう」

「へぇ……全力…ね……いいよ(ガヴェイン、お疲れ。交代だよ)」

彼女の提案にのる

「(…分かりました。些か物足りませんが、マスターの命なら致し方ありません…)」

霊体状態のガヴェインを返す。ドッと魔力が消費されたが問題ない。

「そっちが全力を提案するなら…こっちも『全力』で相手するから。」

「ええ…」

お互い構え、スタート合図を待つ―

『START!!』

 

 

side三人称

「はっ!!」

「来て!―『セイバー』!」

試合開始と同時に、塩崎は“個性”『ツル』を使い、一気に立香を覆い尽くす。

『塩崎!藤丸姉を圧倒!こりゃ勝負あったかぁーー!?』

「―目障りだ」

「……っ!!」

刹那、塩崎の蔓に切れ目が現れバラバラと舞い落ちる。そこで立香の姿が現れ、彼女の前に立つ者がいた。黒ずくめの禍々しい甲冑が特徴。そしてバイザーで目を隠していた

「蹂躙してやろう…」

甲冑を纏った女性は剣を地面に突き刺し、立ち尽くす。

『藤丸姉!ここで新しい奴を『召喚』したぁああ!!今度は誰だ!?なんかメッチャコエェーー!!』

『なんつー迫力なんだアイツ…藤丸姉もとんでもない奴を呼んだな…』

「立希!あの人誰だ!?」

実況席が騒ぐ中、立香の事を知っている立希に、一緒に観戦していた切島は訊く

「……彼女は『アルトリア・ペンドラゴン』…聞いた事ない?かの有名な『アーサー王』だよ…オルタだけど」

『アーサー王ぉおお!!?』

知名度の高い偉人に切島以外にも、立希の近くにいたA組メンバーが驚く。

「え!?アーサー王って女性!?」

「つかオルタって何?」

しかし聞きなれない単語に疑問に思う芦戸。これも立希が答える。

「簡単に言えば…闇堕ちした姿。『非情さに徹しきった騎士王の側面』。あるいは、『アーサー王が求めた“理想の王”とはこういったものだったのかもしれない。』…っていう姿を象ったのがオルタだよ。」

立希が説明してる中、セイバー・オルタは動く。襲い掛かって来る蔓を全て切り落とす。頭上から来ようが床の下から来ようが…たった一本の黒い剣により全てを封じられる。

「くっ…!」

「鳴け。地に堕ちる時だ…マスター」

剣を構え、セイバー・オルタは立香に命令するように促す。

「これが…全力だよ!塩崎さん!セイバー・オルタ!『宝具』の許可を命じる!」

「させませ―「無駄だ。その蔓のような頭髪は既に切り落とした」な…」

セイバー・オルタの言った通り、塩崎の『ツル』は短髪まで切り落とされた。直ぐに伸ばしす事は不可能だった。そしてセイバー・オルタの持つ黒い剣―『エクスカリバー』が黒く輝き始める!

「卑王鉄槌。極光は反転する。光を呑め!『約束された勝利の剣 (エクスカリバー・モルガーン)』!」

「――――っ」

瞬間。スタジアムに黒い柱が聳え立つ―

『なんじゃこりゃあああああああ!!!!?』

プレゼン・マイクの大声が空へと響き渡る…

 

 

side立希

自分の控室にて。

「姉…やり過ぎ…」

「いやだって相手が全力でやろうって言ったから…」

「それでも限度ってあるでしょ!?」

結果は当然、姉が三回戦進出。相手の塩崎さんは場外……というかスタジアム外まで吹っ飛んでいた…落下地点が茂みでよかったよ……今はリカバリーガールの治療の元、医務室にいる。

「で……肝心のオルタは?」

「そこ」

姉が指さす方向を見ると…

「もっきゅもっきゅもっきゅもっきゅ……」

無心にハンバーガーを食べるセイバー・オルタ。何バーガー食べてんだ王様!!

「―はっ!い、いつからそこにいた貴様!「ありがとうオルタ!後でお礼にバーガー1ダース上げるね!エミヤが!」……んぅ、よい、無礼を許す。」

「ちゃっかりエミヤを生贄に……」

姉とセイバー・オルタの漫才を見てため息を付く…因みに、現在スタジアムは修理中。そりゃ対城宝具撃ったら壊れる……

「ほらほら、次なんでしょ。相手は三奈ちゃんだけど大丈夫?」

「まぁ……酸さえ避ければ何とでもなる…かな?…少なくとも脳筋殺法にならないようにしておくさ…」

「頑張れ~」

二回戦、第三試合が始まる…




対城宝具を対人にブッパとか酷いよねw


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第12話

評価に☆9に投票されてた事に今気付きました。とても嬉しいです。


side立希

『修理完了!もう二度と壊すんじゃねぇぞ!!フリじゃねぇぞ!!第三試合!!身軽な動きと『酸』によって翻弄!芦度!!対!姉弟そろって何シード権獲得してんだ!?姉みたいな戦法すんなよ!藤丸弟―藤丸立希!!』

「(その説は姉が迷惑かけました…)」

事実だから何も言えない。

「負けないよ!立希!!」

「うん。悔いの残らない試合をしよう…!」

拳を自分の方に突き出し、気合十分の三奈さんにやんわり受け答える。そして、その後直ぐに

『START!!』

スタート合図。試合が始まった。

「出てきて!坂本さん!お竜さん!」

「さて、それじゃあ行くよ、お竜さん」

「どーんと任しとけ」

自分は瞬時に霊体状態の二人を実体化して呼び出す。

「あ!確か…坂本龍馬と…蛇になる女性!!」

「(女性相手に忍びないけど…)勝負においてはそんな事は関係無い!」

お竜さんと坂本さんを引き連れ、自分は前に走る。

『藤丸弟!数で勝負して来た!あの二人は誰だ!?』

『A組連中が騒いでたが……男の方はかの有名な『坂本龍馬』らしいぞ』

―えええええええええええええええええええええええええ!!!!!―

『マジかよ!観客同様にオレっちも驚愕だぁ!』

そんな実況に坂本さんは苦笑する。

「龍馬は有名人なんだなー」

「はは、そんな大層な事してないんだけどねぇ…」

「いや明治維新に大きく貢献した志士の一人が何言ってんの…」

思わずツッコんでしまった。でもそんなくだらない話しをしながらも、自分達は動き回る。

「くっ!3人ともすばしっこい!!このぉ!」

お竜さんは空から。坂本さんと自分は地上から三奈さんを翻弄し、『酸』の攻撃を分散させる。酸が来るが、持ち前の身体能力で回避は余裕だ。

「へいへい、ビビってんのかよーい」

空中で挑発するお竜さん。

「いやいや、煽らないでね」

そう言いながらもしっかり回避する坂本さん

「そらそら!当たらないよ!」

自分も回避しつつ挑発っぽい言葉を言う

「ああー!もー!全然当たらなーい!」

案の定、三奈さんは攻め苦しい状況に陥った。

『藤丸弟!以外にも自由自在に動いて芦戸を翻弄!個性が無かったらこれ個性無しでの戦闘と同義語じゃね!?』

『だろうな。藤丸姉は少し召喚者に頼りがちだが、藤丸弟の場合、自身も参戦し、個性頼りじゃない戦法を取っている』

酸の攻撃は攻略し、三奈さんは息切れする。そして攻撃が止むと同時にこちらが攻める番となる!アイコンタクトで坂本さんとお竜さんに指示を送る

「さぁ!行くぞ!」

「はぁあああ!!どりゃあー!!」

「わぁ!?」

お竜さんが飛び、腕を振りかざす。三奈さんはそれを回避。ドゴンとお竜さんの拳が地面にひび割れを作る。

「今だぞ!」

「はいはい!分かってますよぉ!」

「あだだだ!!?」

不利な体勢で回避した三奈さんに、坂本さんの拳銃が放たれる。ゴム弾だから大丈夫。火薬で飛ばしてるから痛いけど。

「さぁ!とどめだ!」

「うぇ!?いつの間にっ!?」

そして自分は三奈さんを後ろから掴んで放り投げる。人を投げ飛ばせる力?坂本さんのスキル、『カリスマ』で一時的に攻撃力―身体能力を上げてもらった。

「うわぁあああ!!!」

『藤丸弟!二人の攻防に合わせ芦度を空へ放り投げたぁ!!』

天高く舞う三奈さん。バタバタと動いてるが何も出来ない。これで最後!

「坂本さん!お竜さん!『宝具』を許可する!!でも手加減してね!!」

「!お竜さん、出番だ!」

「…わかった、本気出す……」

坂本さんが刀を構え、その後ろでお竜さんが黒い大蛇へと変貌する。そして黒影になったお竜さんの上に坂本さんが飛び乗った。

『いえーい、ぴーすぴーす』

「いやいや、本気で頼むよ」

『任せろ。お竜さん大変化……『天駆ける竜が如く』!』

「食べちゃダメだからねーー!?」

「キャアアアアアアアアアア!!!!!!」

空高く舞う三奈さんに、慈悲も無く、黒蛇となったお竜さんが特攻。そして……パクリと食べた

「あ、食べた」

『芦戸食われたー!!!!』

『……マズイ…ぺッ!』

お竜さんは口をもごもごさせ、口に含んだ三奈さんを吐き出す。

『と思ったら吐き出されたー!!!場所は場外だ!!』

内心ほっとした。飲み込まれたらマジ焦るところだった…

「ベトベト……するぅ………がくり…」

お竜さんの涎まみれの三奈さんはバタリと気絶。やり過ぎた…まぁともあれ…

『芦戸さん…場外!!藤丸君!三回戦進出!!』

勝った。

 

「人の事言えないけどやり過ぎ」

「…そだね。」

「つかお前ら姉弟そろって容赦なさすぎ。」

「双子あるあるだな。」

試合後、観客席に戻ると姉やクラスのメンバーに注意された。正直すまんかった。やり過ぎた。いやホント反省します。反省してる合間に二回戦、第四試合が始まる。鋭児郎君と爆豪君。前半は鋭児郎君の『硬化』で爆豪君の『爆破』を耐えていたが…後半の爆豪君の連続爆破で衝撃に耐えきれなくなり戦闘不能。準決勝進出だ。

「次は…飯田と立香か!」

瀬呂君の言葉に自分は姉と飯田君を見る。

「む…そうだな…藤丸クン。俺は負けない!」

キリっとした顔で姉に告げる飯田。姉は頷く

「うん。こっちこそ。まぁさっきみたいな事はしないよ……多分」

『(メッチャ不安だ…)』

自分とクラスメイトは多分心が通った。同じ事思ったな多分。

「藤丸さん………考えて戦うのが苦手でしょうか?」

「八百万さん……それ正解……」

八百万さんの考え通り、姉は脳筋なのだ

 

 

side立香

『サクサク行こうぜ!第三回戦!第一試合!実はエリートヒーロー家出身!飯田!!対!姉弟そろって容赦なさすぎ!藤丸姉!!』

もう実況の言葉は無視する。戦いに集中!

「(いくよ、セイバー)」

「(分かっている。)」

セイバー・オルタも準備万端のようだ。そして飯田君も

「すぅ……よしっ!」

お互い準備万端だ。スタートと同時に『セイバー・オルタ』を出して攻める!それだけだ。

『START!!』

試合開始。直ぐに召喚!

「セイ―「『レシプロバースト』!!」!―バー!」

「ほう…少しは…やるなっ!」

「!!」

『飯田の蹴り!しかし藤丸姉が召喚した女性騎士は難なく防いだ!動体視力やべぇ!』

ギリギリだった。だけど一瞬だけ、飯田君の蹴りが私の召喚より遅かった。あとちょっと速かったら私は蹴飛ばされて場外だったかもしれない。

「騎馬戦で使っていた技だね…でもそれ…ものすごく速度上げる代わりに時間が立てばダメになるんでしょ?…つまり短期決戦と見た!」

私が言い与えると飯田君は動揺した顔になった。が、直ぐに切り替わる。

「っ……まだまだ行くぞ!!」

「甘いっ!」

飯田君は連続で蹴りを放つ。回し蹴り、踵落とし、踏み付け、蹴り上げ…etc.正直、速過ぎて目が追い切れてない。でもオルタは全て凌いでくれてた!

『飯田!!連撃の蹴りぃーーー!!しかしそれを余裕で防ぐ女騎士も凄すぎるぅーー!!』

「くっ……うおおおお!!!!」

おそらくだが、最速・最大の蹴りが来た。だがその瞬間、飯田君の“個性”『エンジン』から黒い煙が出た。つまり…エンストだ!ガクンと速度が落ちる。

「なっ―」

隙が出来た!

「セイバー!」

「ふん…功を焦ったな……蹂躙してやろう」

そう言ってオルタは三連撃。飯田君の体を斬り放った。

「ぐああああ!!!!」

飯田君は場外へ吹き飛ばされる。

『飯田君!場外!藤丸さん!準決勝進出!!』

―ワアアアアアアアアアア!!!―

「つまらん…」

セイバー・オルタは剣を収めながら言う。私は勝った事を喜ぶ

「やった!ベスト4だよ!」

 

 

side立希

『ドンドン行こうぜ!三回戦!第二試合!ここまで無敵に近い個性で勝ち上がり!常闇!!対!姉も行くなら弟もってかぁ!!?藤丸弟!』

「うん。頑張るか」

緊張しつつもリングに上がる。対戦相手の常闇君は目を閉じたまま立ち尽くしていた。

「…参る」

さて、作戦としては…常闇君の『黒影(ダークシャドウ)』を坂本さんとお竜さんに任せ、自分が本体を叩く。この勝負はどっちが先に相手の懐に入れるかの勝負だな…

「常闇君…負けないよっ!?」

「藤丸?……どうした?」

意気込もうとした時、突然疲労が来た。しかもこの感じは魔力消費!?

『おおっと!?藤丸弟!開始前に膝を突く!連戦の疲労かぁ!?』

少しざわつく観客の声。だけどそんな声より自分は突然の魔力消費に動揺する。

「(え!?何で魔力消費!?まだ坂本さんとお竜さん返らせてないないのに…)」

疑問に思う。が、それは直ぐに解決した。何故なら―

「-ぬあっはははは!!遂にわしのオンステージじゃあ!!」

―呼んでないのに自分の隣にもういたからだ。しかも

「…何で呼んでないのに来るんだよ……ノッブ!!」

自分の隣に現れたのはバーサーカー、『織田信長(水着)』…通称水着ノッブだった…

 

 

side立香

『藤丸弟!新しい奴を召喚ってまさかの水着女子ぃいいーーーー!!!!?』

「凹凸ねぇ「峰田ちゃん。サイテーよ」んブッ」

立希の試合観戦。隣で梅雨ちゃんがセクハラ発言した峰田君を舌で叩かれていた。

「ここで変える―いや、ノッブが勝手に出てきたのかなぁ…」

私は苦笑する。そしてまぁ当然、皆から誰だっていう質問は来るよね?

「立香ちゃん。あの水着の少女は誰なん?」

早速、麗日ちゃんが聞いて来た。私はさらっと答える

「かなり有名人だよ。ノッブ」

「ノッブ?」

ああ、ついいつもの呼称で言ってしまった。言い直す。

「織田信長」

数秒の静寂。そして―

『オダノブナガァアアアアアアアアアア!!!!!?!?!?!?!?』

今までよりも驚愕したクラスメイト大声に私は耳を塞いだ。

 

 

side立希

あ、A組の驚いた声が聞こえる。そして当の本人、ノッブはギターを鳴り響かせる。

「イエーイ!のってるかのう!わしこそが!渚の第六天魔王こと―そう、ノブナガ・THE・ロックンローラーじゃああ!」

「魔王…!!」

何か常闇君が戦慄してる?そのままノッブは自己紹介を続ける。

「遠からんものはよぉく聞け!近くば寄ってわしを見よ!これよりは第六天魔王、織田信長が覇道なる!」

ギャーン!とギターを鳴り響かせると同時にステージの四方にあった灯篭が火柱を立てる。え!?いつの間にそんな演出を!?

―ワアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!―

これには観客も大喜び。というか有名な偉人だから尚更だ。実況も興奮気味だ。

『マサカのジャパニーズ!戦国武将!!超超有名の織田信長ぁあああ!?!?!?でも何で水着ぃいい!!?』

「ふふん♪どうじゃこの水着、ええじゃろええじゃろ?うっはっはっはー!皆まで言うな、わかっておる。そなたはまっこと果報者よな、このこのー」

そう言って自分の腰部を肘でつついてくるノッブ。自分は唯々ため息しか出なかった。とりあえず聞きたい事がある。

「…ノッブ、坂本さんとお竜さんは…?」

ノッブはドヤ顔で答えてくれた

「はっ!あやつらなら『わしが出るから戻っていいぞー』っと、帰らせた。ま、是非もないよネ!」

うん。予想通りの答えに自分は項垂れる。

「うわぁ…もうグダグダだぁ……色々と作戦考えてたのにノッブが出てきたから全部台無しだぁ…」

やり直しを要求したい…けどそんな願いは叶わず。直ぐに試合が始まる

『ともあれ!試合……START!!』

「行け!『黒影(ダークシャドウ)』!」

『アイヨ!』

容赦なく常闇君からの攻撃が来る。クソ!切り替えろ!

「ああもう!ノッブ!今は戦いに集中して!」

「ぬ?ここはわしの野外オンステージじゃないのか?」

勘違いしているノッブに自分は指示を送る。

「ここ戦闘広場!!ほら来るよ!!」

『オラァアア!!!』

「むっ!ゲッチュー!」

『キャウン!』

殴りかかって来たダークシャドウ。それをノッブがギターに炎を纏わせ叩き防ぐ。というか…キャウン?

「うっはっはっはっはー!」

そのままノッブはギターから炎を噴出させダークシャドウに向けて振りかざす。

「ぐっ!魔王め……っ!!!」

『グ、グゥ……』

体育祭で見て来たダークシャドウから見て、それなりに接戦かと予想していたが…ダークシャドウが押し負けている?

『織田の攻撃炸裂ぅーー!武器がギターってやべぇ!!そんで常闇どうしたぁー!?防戦一方だぜぇ!!』

「何か…ダークシャドウの動きが鈍い……弱点は炎…?」

でも何か違うような……そう言えば…騎馬戦時、上鳴君の放電もダークシャドウは弱っていた気が……まさか…

「ノッブ!ここら一体を『火の海』にできる!?」

「何!?」

思い付いた事を早速ノッブにやらせる。

「わしを誰だとおもうておる!!」

ノッブは地面にギターを突き刺す。すると地面は放射状にひび割れ、そこから一気に炎が噴出した。

『なんて火力だぁ!!これが織田信長の力かよ!!?クレバー!!』

まぁこれがバーサーカー何ですよ。火力馬鹿なのだから。

「藤丸…っ……知っていたのか………っ!」

「そのセリフとその焦りの表情……疑惑が確信に変わったよ!」

常闇君の表情が険しくなった。ダークシャドウの正体…それは影!闇があるほど強くなるが……逆に光に非常に弱い!!つまり!今フィールドは『炎』によって明るいため、ダークシャドウのパワーは…急激に弱くなる!!

「火はいいのぉ…何もかも全てを燃やし、無くしてくれる…消してくれる…比叡山延暦寺……本能寺…ってそれわし諸共燃やされてるー!つらいわーわしどんだけ裏切られておるー?うわっはっはっは!!」

「いや全然笑いごとじゃな―ああもうグダる前にノッブ!『宝具』!!」

分け分からん事を言ってるノッブを直ぐに動かす。これが最後の攻撃だ!

「なんじゃ?わしのロックが聴きたいのか?そうじゃろそうじゃろ!」

ノッブは再度ギターを地面に叩きつけ、爆音と爆発を響かせる。するとそこから現るのは『ウィッシュをするがしゃどくろ』

「三界神仏灰燼と帰せ……我こそは、第六天魔王波旬、織田信長―」

「っ!!『黒影(ダークシャドウ)』!!」

『ヒカリ…苦手……』

「―うぉおおおおお!第六天魔王波旬~夏盛~『ノブナガ・THE・ロックンロール!』」

ノッブがギターを弾くと同時にがしゃどくろが常闇君に向けて拳をラッシュ!!そして最後にアッパーを繰り出した!!常闇君はダークシャドウで防御するが、炎の光で弱り果てていたため防げず、場外に吹っ飛んだ

「ガッ!!!…………無……念……」

「イエーイ!」

ノッブの演奏が終わると同時に常闇君は気絶した。

『常闇君!場外!藤丸君の勝利!!』

「天地に轟け、我が魂のロックンロール!……決まったぁ…」

天を仰ぐように、ノッブは空を見上げ、言い切った。

『えげつない怒涛の攻撃ィーーー!!藤丸弟も準決勝進出!!これでベスト4が出揃ったぁ!!!』

―ワアアアアアアアアアアアアアアアア!!―

何とか勝利した…さて、ノッブの事だが……

「ようし!立希よ!このままわしと同行しよう!こういう時の為に稽古した、New敦盛を披露しようでわ「はいお疲れ様!そして帰れ!!」のじゃじゃじゃじゃじゃじゃ!?」

当然、強制送還だ。今回はまぐれで相性がよかったけど…ああもう…おかげで後一回しか『召喚』出来ない!ノッブのまま?グダグダになるから嫌だ!

「っ…魔力消費がヤバイ……もう……グダグダだぁ……」

疲労が残る試合だった…次は準決勝…で、相手は爆豪君……どうしよう一筋縄ではいかない相手だ



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第13話

戦闘描写、難しいです。


side立香

「はぁー…いよいよ準決勝……かぁ…」

スタジアムの修理が終わり、私は待合室からスタジアムに向かう廊下を歩いている。相手は轟君。個性は『半冷半熱』。本人は氷しか使っていなかった…でもそれは緑谷君の戦いまでの話。もしこれから炎も使われるとなると…ヤバイかもしれない…

「(オルタ、相手は私と同い年だけど強いよ。大丈夫?)」

「(愚問だ。蹴散らす)」

心強い。オルタに習って気持ちを切り替える。よし…

「―君が藤丸立香だな」

「!」

後ろから声を掛けられた。振り向くと…そこには№2ヒーロー『エンデヴァー』―轟君のお父さんが立っていた

「な、何か用ですか…?」

巨体から放たれる圧に、私は言いよどみながら聞く。エンデヴァーは私を見下ろしながら言い放つ。

「担当直入に言う。先の試合。焦凍は『左』を使った。だがまだ操作はまるでなってない。そこで…この試合で焦凍に『左』を使わせて欲しい。」

…はい?

「えっと……何故ですか?」

一応聞いてみる。するとエンデヴァーは笑った。

「決まっている。あいつは完璧な『俺の上位互換』となる!そして覇道を歩ませる!オールマイトを超える『義務』がある!故に…君はテストベッドとして戦ってくれ。」

「……………そうですか」

理解する。あの時、轟君が親の話で不機嫌になった事が…意味がようやく分かった。なら私の答えは決まった。

「くれぐれも、みっともない試合はしな―「嫌です」―何?」

答えはNO。腹が立つ。覇道を歩ませる?覇道ね…いつも言ってるノッブのほうがまだ…かなりマシだ!エンデヴァーは…家族を…実の息子を…自分の道具のようにしか見てない!だから!

「轟君は…あなたの所有物じゃない」

「…どいつもこいつもっ…!」

そう言い切るとエンデヴァーは苦虫を潰したような顔付きになる…もしかして前の試合にも緑谷君に言っていた?

「(成程…緑谷君にも同じ事言って、私に同じ事言われたんだな…) 家庭事情にとやかくは言いません…が、一つだけ言います……子供は親の道具じゃない!!もっかい道徳学んできたらどうですか!?」

私は大声で言ってから、全力疾走でスタジアムに向かう。

「(言っちゃった!いいよね!?どうせ個人的に会うことないだろうし!?流石にあれは人間性疑うって!)」

「(よく言った。マスター)」

道徳的間違ってない…と言い聞かせて戦いに専念する

 

 

side三人称

「……………………ちぃ」

離れていく立香を見送るエンデヴァーは小さく舌打ちをする。

 

 

side立香

『さぁさぁ!準決勝の始まりだァ!決勝に行くのはどっちだ!!氷と炎の強個性!轟!!対!偉人召喚での代理戦!藤丸姉!!』

「………………」

「………………」

轟君と静かに対面する。彼の顔は…どことなく暗い。

「…さっき、轟君のお父さん…エンデヴァーに会ったよ」

そんな彼に、私はさっきの出来事を教える。轟君はピクリと反応した

「…何?」

「何でも、テストベッドで戦ってくれって頼まれた。『左』を使わせろって」

「っ…あいつ…「でも断った。嫌だって言った」…っ!」

静かな表情から怒りの表情。そして今は驚愕の表情。コロコロ表情が変わる轟君が少し可愛くて微笑んでしまう。

「そんな暗い顔してないでさ。今はこの体育祭を楽しめばいいじゃん。炎を使うかは轟君次第…トーナメントが始まる前に私が言った事、覚えてる?」

―自分がやりたいようにすればいいんじゃない?―

「………ああ、そうだな…」

あ、少し明るくなった……かな?

「ん。よかった(これで炎も使われたら嫌だなぁ…頼むから氷だけ使って!ホント!!)」

口では安心した事を言ってるけど、内心では冷や汗がダラダラと流れ出る。

『準備はいいか!!?START!!』

ここでスタート合図が来た。

 

 

side三人称

スタート合図と同時、二人も同時に動く。

「っ!!」

「セイバー!」

「―よかろう」

轟は『氷結』を立香に放つ。迫りくる氷結に対し、立香は自身の前に霊体状態の『セイバー・オルタ』を実体化し、オルタは剣で氷を粉砕し防ぐ。

「ちぃ…っ!!」

「「!」」

轟は氷結を死角とし上空から接近していた。右足でかかと落としを放った。

「甘い!」

オルタは剣で蹴りを防ぐ。だがそれと同時に剣が氷に包まれる。

『轟!武器を氷漬け!!戦力を削いだ!!』

『現状、藤丸姉よりはあの女騎士が厄介だからな。先に潰した方が楽だろ。』

実況・解説と共に多少、観客からどよめきの声が響く。立香は自信を落ち着かせながら冷静に判断する。

「(よしよし…そのままオルタの方を注目して!) オルタ!」

「問題無い!フン!」

「っ!(氷漬けにしても斬りに来るか!!)」

轟は直ぐに剣から離れる。が、オルタは一気に轟に接近し、凍らせた剣で斬りかかった

「ゼァ!」

「っ!」

オルタは真横に振りかぶる。轟は上半身を後ろに移動させ回避。そのままバク転をしながら『氷結』を放つ。

「ふん!」

オルタは迫って来た氷結を氷漬けにされた剣で強引に破壊。氷と氷をぶつけ、剣に張り付いた氷を引き剥がした。

「そこだっ!」

「うっ……ぐっ!」

その隙に、轟はオルタの後ろに先回りし、右手に纏わせた氷をオルタのバイザーに当たった!

『轟!あの女騎士を翻弄ーー!!』

「(すっご…あのオルタと渡り合ってる…)」

これにはオルタも驚愕。瞳を大きく見開く

「っ……目障りだっ…」

オルタはバイザーを投げ捨てる。金の瞳が現れ、轟を睨む。

「マスター…『宝具』の許―「させねぇ!」―ええい邪魔だ!!」

オルタは宝具を展開しようと立香に命令を促そうとしたが、その前に轟がそれを妨害する。

「さっきの大技は厄介だ…だがそれにはタメが必要だ……こんな接近戦で使えるはずがねぇ…っ!」

「貴様…っ!!」

剣を振るい、何とかオルタは距離を取ろうとするが、轟は攻めの『氷結』を展開。距離を遠ざけさせないように近接を挑む

「(左は……っ…) まだ考えが纏まらねぇ……」

「何をブツブツ言っている…私に挑んだ事を後悔するが―「オルタ!ごめん!交代!!」なっ…」

ここで、立香が動いた。まさかのセイバー・オルタを退出させる。

「!」

『おおっと藤丸姉!!ここで女騎士を呼び戻した!!』

「ごめん…後でバーガー2ダースね…」

「…ちっ―」

「(今が好機っ!)」

不服そうな顔でセイバー・オルタは消える。轟はこれが好機だと思い、再び立香に向けて『氷結』を放つ!

「(っ…これで後は無くなった…) 決勝とかもう考えない…今はこの試合に勝つことだけを考える!『バーサーカー』!」

今日最後の、3体目の英霊召喚。立香は右手を上へと掲げた。

「―私の出番か……砕けよ!!」

「!!」

と同時、氷結が立香を覆った…かに思われた。一瞬にして砕かれる。立香の前に新たな英霊が現れる。両手足に部分的甲冑が備わり、手には鎖のついたモーニングスター。他は大事な所以外は一切身に纏っていない服装。屈強な肉体を持った女性が現れる。

『ここでまた新たな人物ぅう!!ってまた服装うっすい奴だなぁ!?オイ!?』

プレゼン・マイクは英霊を見て大声でツッコミをするのだった。

「轟君…先に謝っておくね……ペンテシレイアさんも…本当にごめん!」

「何?」

唐突に轟に謝罪した立香。そのまま右手を前に突き出し―『令呪』を唱えた

「『令呪を持って命ずる!試合が終わるまで…目の前の敵を『アキレウス』と認識しろ!』」

そんな命令を聞いた英霊―ペンテシレイアは冷静な顔付きが見る見るうちに怒りの形相へと変わった。

「……!!!き、貴様っ!!…―レウス……アアアアアアァアアキレウスゥウウウウウウウウ!!!!!!!!」

「っ!!何つー声出しやがるっ!!」

『目の色が変わったぁああ!!?てか何だこの悍ましい気は!?』

『馬鹿野郎…悍ましいってもんじゃねぇぞ……』

咆哮。スタジアムが軽くゆれ、ぷれ、プレゼン・マイク、相澤は勿論の事、観客全員恐れおののいた。

 

 

side立希

「馬鹿姉!轟君殺す気か!!?」

「え!?あの人そんなにヤバいの!?」

観客席にて、自分は大声で言う。序盤はセイバー・オルタでいい戦いを繰り広げて安心して見ていられたのに、今は冷や汗がだらだら流れる。

「普通だったら…いや普通でも結構強いのに狂人化したらマジでヤバイっ!」

「立希!お前の姉が呼んだ女性は誰なんだ!?」

慌てる自分に、鋭児郎君が聞いて来た。自分は一息ついて答える。

「…『ペンテシレイア』。ギリシャ神話におけるアマゾネスの女王。ペンテシレイアはアマゾネスの軍勢を率いてトロイア側に加勢し、アカイア軍と戦った…そこで彼女にとって最悪の事件が起こった…」

「最悪?なんなん?」

近くにいた麗日さんが聞いてくる

「彼女を倒した人物…アキレウス。彼は彼女を倒し、死に際に言った…『美しい』って」

「へ?それのどこが最悪なの?」

三奈さんも聞いて来た。まぁ普通だったらそう思うだろう。

「彼女は『戦士』として戦った。『女』を見せていたわけじゃない。もし、真の戦士との死闘を終えたなら、勇者は敵を見て安堵するかもしれない…『倒せた』とか『自分は死ななくてよかった』とか…『もう起き上がってくるな』とか…でもアキレウスは違かった。『美しい』って言ったんだよ。彼女に。つまり…彼女は彼女自身の持つ『戦士』としての『誇り』をアキレウスによって『踏み弄られた』って事だよ…それ以降、彼女は『アキレウス』という言葉を聞くだけで…見ただけで…ああなる…」

「アアアアアアアキレウスゥウウウウウウウウウウウウウウウウ!!!!!!!!!!」

おっかしいなー…スタジアムゆれてない?咆哮って建物ゆらせる事できたっけ?

 

 

side三人称

「(オルタと充分戦えてるし!令呪もまだ2画ある!だから大丈夫なはず!……はず…) なんだけど…」

「貴様…貴様貴様貴様貴様貴様貴様キサマキサマキサマキサマキサマキサマだけアアアアアア!!!!!!!絶対絶対絶対絶対絶対ゼッタイゼッタイゼッッッッッッッッタイにユルサナイィイイイイ!!!!!」

令呪によって狂人化したペンテシレイアは血走った目で轟を睨み、吠える…これをみたし立香は

「(狂人化し過ぎじゃ…)」

やりすぎたと感じていたのだった。

「何だこいつ……俺はアキレウスじゃねぇ…」

「ウソヲ……ツクナァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!」

「っ!!」

獣のような咆哮と同時にペンテシレイアは轟に突撃する。轟は『氷結』を放つ

「邪魔ダァアア!!」

しかしペンテシレイア。その氷結を拳で粉砕する。

「何!?」

『拳で突破ァアア!!なんつー怪力なんだぁオイ!?』

実況ともに、轟は驚愕する。肉体のみで破られるとは思いもしなかった。

「砕ケロォ!!」

その勢いのままペンテシレイアは手にしていたモーニングスターを振り回し、轟に投げつける

「っ!「爆ゼロォ!!!」なっ―」

目の前に来たモーニングスターを凍らせ防ぐ轟。だが防いだと同時に上空からペンテシレイアが襲い掛かる。両手にはカギ爪が装備されて、振りかざされる。

「ちぃ…!!」

轟はすぐに後退。袖の一部がカギ爪に引っかかり、破れる。それでも何とか回避する事が出来た…が、これでペンテシレイアの攻撃が終わるわけではなかった。

「ガァァ!!」

「っ!?ぐっ!」

先ほど凍ったモーニングスター。ペンテシレイアは強引に鎖を引っ張り地面にくっついていた氷ごとぶん回したのだった。不利な体勢で避けていた轟に直撃し、吹っ飛ぶ。

『またまた怪力を発揮ぃーー!!人間かよ!?』

「っ!」

轟は吹っ飛ばされつつも、地面に触れる。すると『カーブした氷壁』を作り、リングアウトを防ぐ。

「アキレウス…アアアアアアキレウススゥウウウウウウウウ!!!」

「だからちげぇ…っつっても聞こえてねぇか…」

「(大丈夫だよね…轟君…死なないよね!?)」

遠目でハラハラしながら立香は二人の戦闘を見ていた。いつでも令呪を使えるように構えている。

「はぁー……仕方ねぇ……これで決めるっ!」

「貴様……貴様ァ……!」

「ちょ!?勝手に『宝具』許可されてる!?って轟君立ち向かう気満々!!」

轟の右半分に霜が出現。そしてじわじわと地面に氷が張られる。この行動で予想できるのは、一回戦目で見せたあの『大氷結』。

「アア……ウァァァ……―」

対してペンテシレイア。だらりと上半身の力を抜く…そして自身に眠るアキレウスへの復讐心と、強さを求める戦士としての精神、軍神アレスの血、それら全てを瞬間的に励起させ、体中から闘気を放出し始める。

「ふぅー…………ゼヤァッ!!」

「―『アウトレイジ・アマゾーン』!!」

圧倒的大質量の氷が展開。同時にペンテシレイア。その氷壁に特攻。『宝具』を放つ。ありとあらゆる武器と肉体で攻撃しまくり、氷壁の攻撃を相殺し合う!!

「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!」

ガリガリと氷を削る。そして光りが見えた頃、獣のように噛み付くように氷壁から姿を飛び出した!!

「―っ!?」

だがそこに、轟の姿は無かった。

 

 

side立香

「うっわ!さっぶ!!」

轟君がペンテシレイアさんに『大氷壁』を放った。けど『宝具』を使ったペンテシレイアさんならきっと凍りつけにはなっていないはず…

「うーん…氷壁で二人が見え―「見つけたぞ…」!?」

私は驚愕した。後ろを振り向くとそこには…体半分霜状態の轟君がいた。そして私の片足を薄い氷で拘束していた

「ま、まさか…」

「あの黒い女騎士といい…あのわけわかんねぇ女といい……わざと派手な奴ぶつけてお前に注視させねぇように動いてたな……この氷壁はあの女とお前を離れさせるため……そして俺がお前に近づくために出させてもらった!!」

「(バレた!!) 令じゅ―「させねぇ!!」っあ!」

令呪を使ってペンテシレイアさんを呼び戻そうとした。けどそれよりも早く右手を氷で拘束された

「そして…本体を叩けば……っ!」

「あー……ここまでかぁ……」

次の瞬間、途轍もない寒さが私を襲った―

 

『藤丸さん!行動不能!轟君の勝利!!』

―ワァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!―

一瞬だけ、意識が飛んだ。そして気が付けば、勝負が終わり、観客の声が響いていた。

『狂人化した女相手によく頑張ったぁ!!』

プレゼン・マイク先生の拍手の入った実況

『あの大氷壁を使い、死角からの本体に強襲…合理的でいい判断だった。』

坦々と話す相澤先生の解説。

「(ああ…私、負けたんだ)」

ようやく理解した。そして令呪の効果が無くなり、ペンテシレイアさんも元に戻る。

「―はっ!…私は……!マスター!!無事か!?」

「ごめんね……ペンテシレイアさん……うぅめっちゃ寒い…」

「悪ぃ…今溶かす」

瀬呂君…とまではいかないけど私は今凍りつけにされている。そして先ほどから轟がゆっくりと左の『炎』で溶かしてもらっていた。

「…本当にごめんなさい…轟君…ペンテシレイアさん……一応ね、言うけど…アレが私なりの全身全霊で…」

「そうか……」

「ああ……いや、いい。問題無い。貴様はこの女王のマスターなのだ。それなりの威厳と強さを見せて貰わねばこちらも困る」

深く反省し、二人に謝る。色々と言われるかと思ったけど、すんなりと許してくれてほっとする。

「そっか……」

ゆっくりと、轟君が氷を溶かしてくれる。何故か知らないけど自然に笑えてきた。

「どうした?」

「あはは…なんだろ?轟君の炎…すごく暖かい……別に無理して戦いに使わなくても、こうやった用途でもいいんじゃないかなって思って…」

「………そうか」

ちょっと目を見開いた轟君。ほんの僅かに口角をあげ微笑んでいた。

「そろそろ、私は戻るとしよう。少年。なかなか骨のある強者であった―」

そう言ってペンテシレイアさんはゆっくりと消えた……って事はその分の魔力消費が来る―

「…も、ダメ…」

「藤丸!?」

消費分の疲労が一気に押し寄せた。その後の記憶は無い…



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第14話

マルタ、イリヤ、セミラミス。この三人が家の女傑です。


side立希

試合後、姉は個性の使い過ぎで倒れた。まぁいつもの事だから心配ない。今は医務室で休んでいる。多分自分の試合中に戻ってくるだろう…それよりも…

「姉が負けたかー…しかも思いっきり弱点見つけられたー…」

頭を抱えながら自分はスタジアムに向かう。相手は爆豪君。“個性”は両手から放たれる『爆破』しかもそれだけじゃない。本人の戦闘センスがヤバすぎる。戦う度に強くなっている。上鳴君が言ってた才能マンというのも頷ける。

「自分も召喚は後一回…やるなら…全力で戦うか!」

 

『エブリイバディ!!準決勝!最後の試合だ!ここまで怒涛の攻撃でのし上がった!!爆豪!!対!色々とツッコミ満載な偉人を出しまくり!!藤丸弟!!』

またプレゼン・マイク先生に突っ込まれる。うーん何も言えない。

「モブ野郎…さっさと呼びたい奴だせ。強い奴だそうがテメェさえぶっ飛ばせばカンケーねぇ」

そして自分と対照的に立っている爆豪君はヤル気満々だ。

「(やっぱバレてた…弱点) …まぁ…そうだね。でもそれは爆豪君。君にも同じ事が言えるよ」

「あ…?」

「君の個性…強く広範囲な爆破をするとものすごく掌が痛いんでしょ?」

「っ……ちぃ!」

麗日さんとのあの大爆破した後、自分は爆豪君が『腕を抑えていた動き』を見落とさなかった。

「まぁ痛くしないように、小・中規模爆破を連続して使ってるようだけど…」

「うっせぇ!どう言おうが俺が勝つに決まってるからよぉ!!ねじ伏せてやらぁ!!」

痛い所を付かれたのか、大声を上げ挑発して来た。自分は深呼吸して一度緊張をほぐす。

「勝つ…かは分からない。けどそう簡単には勝たせないからね…っ!」

『お互いヒートアップ!!それじゃあ…―START!!』

スタート合図が来た。けど爆豪君は来なかった。

「さっさと呼べやぁ!!」

どうやら召喚してくれるようだ。これは嬉しい。

「それじゃあお言葉に甘えて…出てきて、『アルターエゴ』」

 

 

side立香

「た、ただいまー…」

大分回復した私はリカバリーガール先生に許可もらって観客席に戻る。

「あ!お帰りー!立香ちゃん!」

「戦い終わってぶっ倒れた時は驚いたぜー」

そんな私を麗日ちゃんや切島君らが向かえてくれる。

「あー…前に弟が言ったように、召喚は一日3人までだから……今は少し回復したし大丈夫かなぁー…今どんな感じ?」

席に座りながら状況を聞く。私の試合の次は立希と爆豪君だ。

「今試合始まったばっかりだよ。爆豪の奴、藤丸が召喚するの待ってる。その上で勝つ気らしい…」

耳郎ちゃんに教えてもらう。

「私だったら絶対攻撃してるよ……で…誰呼んだの?」

「あ!出てきたよ!」

三奈ちゃんの声で、私はスタジアムを見る。立希の召喚で現れたのは…それは凶悪な棘で出来た鋼鉄の具足。腕をすっぽりと隠している黒色の袖。そして、跳んでしまえばお尻が丸見えになってしまいそうなぐらいに防御力に難がありそうな装備……

「ひょおおお!!!」

「な、なんちゅー服だ!すっげー!!」

一言で言えば際どい服を纏った女性。これには峰田君と上鳴君がすごく反応していた。

『想定内というか斜め上を行ったぜ藤丸弟ぉーーー!!』

「うっそぉ…」

実況に続いて私も驚いた。

「うっひゃあ…衣装すごい……彼女は誰?」

麗日ちゃんが頬を染めながら聞いて来た。私は立希に対してのため息を吐いて答える。

「『アルターエゴ』。『メルトリリス』だよ」

 

 

side立希

「―以前。私が言ったわよね、マスター。貴方は燃えるような舞台がお好みなのね?」

自分が呼んだメルトは不敵に笑いながら聞いて来た。

「燃えるような…というか敵が燃えるね。『爆破』って意味で」

自分は笑いながら言い返す。

「んだその女ぁ……痴女じゃねぇか!!」

爆豪君がそうツッコんだ。いや、痴女じゃないよ。

「なぁ!?なんて失礼なガキなのかしら!?これにはちゃんとした理由があるのよ!?」

振る舞いは貞淑であってもその見た目は過激で嗜虐的。アルターエゴの『メルトリリス』。女神の英霊を複合したハイ・サーヴァント。組み込まれた女神はギリシャ神話のアルテミス、旧約聖書のレヴィアタン、インド神話のサラスヴァティー。因みに、下がアレな理由は上半身ほど感覚障害が発生していないため。布一枚隔てるともう感覚が解らなくなってしまうからだ。

「―ハン!そんな事すら知らないだなんて…ホントガキね!おこちゃま!」

メルトの言葉に爆豪君がイラついていた。

「んだとぉ…っ!」

そんな一触即発な二人の間に自分が割って入る。

「はいはい。ケンカの続きは拳と拳……じゃなくて拳と蹴りで付けようね。メルト」

自分はメルトの前に立ち―

「何かしらマスター?」

手を差し伸べ、言う。

「Shall we dance?」

「…フフ♪Yes. My master.」

メルトは妖艶な笑みを浮かべ、自分が差し出した手を取った

 

 

side三人称

立希とメルトリリスが何かしようと動き、構えた。それを見た爆豪は訝しむ。

「おいモブ顔…テメ何してんだ……」

「別に、メルトを呼んでも爆豪君は自分を攻撃してくるんでしょ?だったら簡単。自分も戦えばいい!」

「踊る気満々じゃねぇか!!」

「何よ。これが私達の戦い方なのよ?」

怒る爆豪に立希とメルトリリスは冷静に受け応え、爆豪は更にイラついた。

『なんだなんだ!?藤丸弟&プリティガール!これからダンスでもするってかぁ!?』

実況の声に立希とメルトリリスは不敵に笑う。そして―

「正に―」

「―その通りよ!!」

「!!」

ダボダボの萌え袖からメルトリリスの手を握る立希。そしてそのまま社交ダンスのような動きで一気に爆豪まで距離を詰めた。

「ワン!ツー!」

「ぐっ!!?」

予想外の息のあったステップ。立希が爆豪にメルトリリスの背を見せる様に回転。そしてメルトリリスから鋭い蹴りが爆豪を襲う。軽く爆豪は吹っ飛ぶがリングアウトにはならない。だが警戒するレベルだと気付く。その時立希がメルトと踊りながら言いこぼす

「いつだったか―マシュが全身全霊の『宝具』で姉や自分を守るために展開した時、彼女を支える為自分達は彼女の肩を掴んだ。するとマシュに魔力が注がれ、通常とは倍の威力が出され危機を乗り切った…そう…つまり自分が英霊と『触れながら』戦闘すれば魔力がよく循環し、より良い『ベストコンディション』が発揮される!!」

「見切れるかしら?」

立希が腕で視点が逆さまのメルトリリスの背をしっかり支えた決めポーズをさせる。

「ふざけてんじゃねぇぞ!!」

爆豪は『爆破』で空を飛び接近。二人を引き裂くように『爆破』を仕掛けた。

「スイッチ!」

「ええ!!」

「っ!?」

掛け声と共に二人は一度手を離す。爆破を回避しつつ、背中を軸に爆豪の左右を通りながらターンし、彼の背後でまた手を繋ぎ合流。

「うざってぇええ!!」

振り向き様に爆豪は大振りでの『爆破』。背後にいるメルトリリスと立希をぶっ飛ばすように力の限りを振るう。

「右の大振りぃ!!」

「!」

しかし、その攻撃は二人に掠ることなく通り過ぎた。しゃがみ込む立希、その上を跳んでいるメルトリリス。二人の間を通過するだけに終わってしまった爆豪の腕を見計らい、逆立ちの体勢で立希の背中に着地するメルトリリス。

「全く、ヒヤヒヤするわね…っ!」

「でも楽しいでしょ?」

『マジで踊りながら戦かってるぜ!息ピッタシだぁ!!』

『無駄の無い。息の合った動きだな』

これには実況・解説も感嘆した。

「trente(トラント)!」

「―ちぃ!!」

メルトリリスは立希の背中の上にて、腕を軸として体を回転。そして足に備わっている剣―『魔剣ジゼル』による斬撃を叩き込んだ。爆豪はそれに反応し後ろに下がる。ギリギリ、ジャージの上着が斬られる。

「まだまだ行くよ!」

「ああ、たまらないわ!」

「!」

立希、メルトリリスをフィギュアスケートでよくある投げ方でメルトリリスを爆豪の方へ高く投げる。メルトリリスはトリプルアクセルをするかのような回転で爆豪へ接近。膝に付いている棘で攻撃する。

「うぜぇ!!」

爆豪は回転してくるメルトリリスに向けて『爆破』をして防御。黒い煙が舞った。

「―自分で視野を狭めちゃだめでしょ?」

「っ!!」

爆豪は驚く。なぜなら煙の中から立希が現れたからだ

『ここで藤丸弟が前線!!マジかよ!!』

「バカが!!死ねぇ!」

しかし爆豪。思考を切り替えて『爆破』を立希に放つ。さっきより規模が大きい爆破だ。立希はそれを

「―~~~~っ!!!いっっっっだぃ゛!!」

モロに喰らう。実際は腕をクロスさせ防御はしたがジャージで防げるはずがなかった。裾は焼き焦げ、肌は大火傷で赤黒くなる。腕に襲う激痛。立希は少し涙を流し、唇をグッと噛んで我慢していた。

「(腕を捨てやがった!!何で―) 「ホント、馬鹿なマスター…私の為に攻撃の隙を作ってくれるなんて…」―そういう事かよ……っ!!」

何故無謀な事をしたのか疑問に思った爆豪だが直ぐに理解した。

「さっきのは……『大きめの爆破』……だったね………メルトリリス…『宝具』発動っ!」

両腕の激痛を食いしばって我慢しながら立希は後ろへ、メルトリリスはフィギュアスケートのように地面を蹴り前へ。お互いの位置を交換する。

「―そう、思う存分やっていいのね?」

メルトリリスが『宝具』を発動と同時、どこからともなく水が押し寄せ、スタジアムのフィールド全てを飲み込む。

『氷の次は水かよ!!爆豪大ピンチ!!!』

「っ!」

「(掌の汗腺から出る汗が『爆破』してるなら…メルトの水で流せば爆破は生じない!) それにさっきの『大規模爆破』で手を痛めてる……これが…自分の全力だ……っ!」

「―邪魔者には、そろそろご退場願おうかしら?ウッフフフ、アッハハハハ!之なるは五弦琵琶、全ての楽を飲み込む柱。消えなさい、『弁財天五弦琵琶 (サラスヴァティー・メルトアウト)』!」

爆豪を中心とし、メルトリリスは切り刻みながら大回転。そのまま上へ高く舞い踊り、渦型の水柱を形成した。

『黒い柱の次は水の柱ぁああ!!塩崎同様!!爆豪吹っ飛ばされたかぁーーー!?!?』

 

 

side立希

「はぁ…はぁ……加減は…してるよね?」

「当然。ホントはトドメの一撃で蹴り入れたかったけど……今回は渦だけにしといたわ」

「よかった…いだだ…」

我ながら無茶をした。両腕の火傷はリカバリーガールに治してもらおう…

「これで終わり?出直し―「まだ終わってねぇぞ!!痴女野郎!!」―なっ!!?」

試合終了…かと思った。

「マジか……っ!」

『爆豪生きてたぁああーー!!!』

「いつ俺が『攻撃出来ねぇ』つったんだぁ!!?」

上を見れば、空中にて、痛む体を叱咤して爆豪君は勢いと回転をつけ、大技に向けて準備していた。

「痴女野郎の回転……利用してやらぁああ!!!」

「っ!」

メルトは自分の盾になろうと前へ移動したが……それは自分が止めさせた

「―お疲れ、メルト」

「マスター!?アンタ何す―」

「『榴弾砲・着弾(ハウザーインパクト)』ォオオ!!!」

メルトに着弾するよりも早く、自分はメルトを返す。あの大技をくらったら彼女は大怪我を負う。いや、スキルを使えば回避は出来る。けど自分は出来ない。結局は詰みだ。まぁ色々と理由は考えるけど…一番の理由としては…

「…目の前で家族が大怪我する瞬間は見たくないんだよね―」

そんな独り言は、爆豪君の大技によって掻き消される。衝撃と轟音…そして魔力消費と疲労が襲い掛かった。

 

 

side立香

「あーあ…メルトリリス…絶対怒ってるなー…」

『藤丸君!行動不能!!爆豪君の勝ち!!』

―ワアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!―

試合終了。観客が大いに沸く。戦った二人に拍手喝采だ。

『逆転の勝利ぃいい!!!お前ら見たかよ!!爆豪の大技をよぉ!!!ビクトリーィイイ!!!』

「結果的に爆豪が勝ったけどよー立希もよく頑張ったよなー」

「うんうん!まさか踊って戦うなんて意外すぎるよ!」

切島君、三奈ちゃんはさっきの試合について興奮気味に話している。

「立香ちゃんも出来るん?」

「そもそもしないよ。あんな事」

麗日ちゃんと話しつつ、私は弟を見る。見事に場外に吹っ飛び、倒れていた。そして気絶してる弟の胸倉をつかんで叫ぶ爆豪君

「てんめっ!モブ野郎!!何痴女野郎消しやがった!!ナメてんのかぁ!?あ゛ぁ!?」

「ストップ!それ以上の追い打ちは禁止よ!!」

『おいおい爆豪まさかの不完全燃焼なのか!?藤丸弟に鞭を打つぅうう!!』

『何してんだアイツ』

結局、ミッドナイトとセメントスの二人に止められ、立希は医務室に搬送された。

「…ま、お疲れ。頑張ったんじゃない?」

 

 

side三人称

決勝戦。轟対爆豪。試合開幕と同時に轟は大氷結。しかし爆豪は氷壁に穴を掘って突破。その後爆豪は轟に近づいてぶん投げ、轟は場外に出るのを防ぐ。そして爆豪は轟に対して『左』を使わせようと行動にでるが、轟はまだ考えがまとまっておらず、『左』を使うのを拒んでしまう。そこで爆豪は奮い立たせる。

「てめぇ虚仮にすんのも大概にしろよ!俺が取んのは完膚なきまでの1位なんだよ!」

「―っ」

「何でここに立っとんだクソが!!!」

そう叫び、爆豪は跳ぶ。そして立香戦で見せた大技。『榴弾砲着弾 (ハウザーインパクト)』を撃ち放つ。轟は自分の今までの事を思い返す。

「負けるな頑張れ!!」

その時、緑谷の大声を聞くと同時に轟は一瞬炎を纏わせる……が、やはり、気持ちが不安定なため、炎を消し、爆豪の大技を喰らって場外に吹っ飛んだ。

「……は?―は!?ふっざけんなよ!!こんなの!こんっ…」

納得のいかない爆豪。轟の胸倉をつかんで不満をぶつけようとしたが、ミッドナイトの”個性”によって意識を無くした。

『轟君!場外!よって!以上で全ての競技が終了!!今年度雄英体育祭1年優勝は……A組!爆豪勝己!!!』

 

 

side立希

「いやはや…目が覚めたらもう決勝終わっててマジびっくりだ。はっはっは」

「そだね。そしてなんやかんやあったけど私らベスト4だよ。かなり良い線いったよね」

目が覚めたら知らない天井で、寝ている間に両腕の怪我が治っていた。リカバリーガールに感謝。今は姉と互いを称え合っていた。

『それではこれより!!表彰式に移ります!』

「何アレ…」

「起きてからずっと暴れてんだと、しっかしまー」

「ん゛んーーーー!!!!!」

「………………」

「「イエーイ」」

表彰台1位の座に拘束された爆豪君。2位の座には静かに立つ轟君。そして3位の座に自分と姉が立つのだった。というか爆豪君めっちゃこっわ。常闇君の「悪鬼羅刹…」という呟きが聞こえた。言い得て妙

「(よく相手出来たなぁ…)」

『メダル授与よ!!今年メダルを贈呈するのはもちろんこの人!!』

「私が!!メダルを持って『我らがヒーロー!オールマイトォ!!』来たぁ!!」

「被った…」

「うわぁ…」

悔しそうなオールマイトにミッドナイトは手を合わせて謝罪していた。そしていよいよメダル授与だ。

「おめでとう!藤丸少年!藤丸少女!姉弟そろってのベスト4だ!」

「「ありがとうございます。」」

№1ヒーローにメダルを授与されるのは感動ものだ。嬉しいと感じる。

「藤丸少女。君は個性に頼りきっている部分が見られたな。次はそれを補うよう頑張ってくれたまえ!」

「あ、アハハ…善処します」

「藤丸少年は、自分から率先して動いていたのはよかったが……共に戦ってくれた召喚者達の気持ちを考えてやって欲しい。彼ら彼女らの行動は、君を信頼しての行動だったからな!」

「ええ…そうですね…」

とまぁオールマイトからの講評。帰ったら謝ろう。轟君と爆豪君も自分と姉みたいに称賛されてメダルを授与され、軽く評価を言われ、授与式が終わった。

「しかし皆さん!!この場の誰にもここに立つ可能性はあった!!ご覧いただいた通りだ!競い!高め合い!さらに先へと登っていくその姿!!時代のヒーローは確実にその芽を伸ばしている!!てな感じで最後に一言!!」

オールマイトは高らかに腕を上げ、指を立てる。

「皆さんご唱和下さい!!せーの!」

『プルスウ「おつかれさまでした!!!」え!?』

「え?」

「そこはプルスウルトラでしょオールマイト!!」

「ああいや…疲れたろうなと思って……」

ブーイングが響く中、体育祭が終了した。

 

その夜。今日の体育祭のVTRを背景にし、盛大なパーティーをカルデアで行った。皆が自分と姉を祝福して、自分と姉は今日呼んだ英霊達に謝罪と感謝をしたのだった。



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第15話

バビロニア面白かった…あんなこと私らマスターはやってたのか…


side立希

「んー休みだぁ……何しよっかなー」

体育祭が終わって、振替休日によって今はカルデアにいる。体育祭で上位を取れて、色々と頑張ったから今日は訓練無しといわれ、本格的に暇になってしまったのだった。

「暇だなー姉はメディカルチェックでここにいないし…何しよっかなー」

「あ、先輩」

「お、やっほーマシュ」

のんびり廊下を歩いていると、カワイイ後輩と出会った。

「あれ?先輩、今日の訓練はお休みで?」

「うん。体育祭で上位取って頑張ったし、そのご褒美で今日は一日中暇だよ!やったね!」

「そうなのですか!私も体育祭をテレビで見て…その……先輩達、とてもかっこよかったです!」

「ありがとう。そう言われるなら、頑張った甲斐があったよ」

後輩からそんな嬉しい事を言われ、少し気恥ずかしくなり、頬をかきながら礼を言う

「そ、それで…今日は何かご予定が?」

「それが全くない!だから超暇!!姉は姉で用事があっていないし……いっそ出かけようかな…」

「あ、あの!でしたら……」

「んー?」

「わ、私も…いいですか?一緒に……」

今日の予定が決まった瞬間だった。

 

 

side立香

「―それでは、お大事に…」

「はい。ありがとうございました…(ロマニは過保護過ぎなんだよなぁ…)」

今日は完全なオフ。体育祭後、カルデアでメディカルチェックし終えた時、ロマニが言った

―一応、他人の個性影響で体に異常が無いか病院行ってね!これ絶対だから!!―

「(結果は異状なし。分かり切ってるのに…) さーて、今日何しようかな…」

体を伸ばしながら病院の出口まで歩いている時だった。

「…藤丸?」

「…轟君?」

クラスメイトに出会った。

 

 

side立希

「出てきて。『シールダー』!『アーチャー』!『キャスター』!」

「―お待たせしました。先輩!」

「―嬉しいわ!嬉しいわ!マスターさんとお出掛けだなんて!」

「―まぁ、今日ぐらいはゆっくりするといい。」

カルデアからいつもの路地裏に転移し、広いところで3人を召喚する。

「それじゃあ。出かけようか」

「はい!久しぶりですね…こうやってのんびりするのは…」

シールダーの『マシュ・キリエライト』。盾装備ではなく、メガネを掛け、白衣を羽織ったほうの姿で現れる。

「マスターさん!私ね!本屋に寄りたいわ!」

「いいね。近くに大型デパートあるし、そこに行こうか」

キャスター、『ナーサリーライム』。彼女は偶然マシュとお出掛けしようという話を聞いて、一緒に行きたいと言って来てもらった。

「ごめんね、エミヤ。何か保護者って感じでついて来てもらって…」

「構わない。それに丁度材料を調達しに外出しようと思っていたところだった。今夜は何食べたいかリクエストはあるかい?」

「(完全にお母さん…) んー今は何とも…考えてみる」

アーチャー、『エミヤ』。完全に保護者。

「それじゃあ行こうか。休日だから人が多いと思うし、離れないように」

「は、はい!」

「分かってるわ!」

「勿論だ。」

早速自分らは楽しむ

 

 

side立香

「どこか怪我でもしたのか?」

「ううん。まさか。過保護な親代わりが念の為病院行ってこいって煩く言ってきてね。まいったよ。あはは」

「そうか…」

偶然、轟君と出会った。そして病院の外にあったベンチにて、私と轟君は座って話す。

「轟君こそどうして病院に?治療?」

「違う……見舞いに行った……お母さんの」

「……何処か悪いの?」

「ああ……」

轟君から話された内容は。想像できないほど重い話だった。“個性婚”で生まれてきた自分。父親に虐待に近い特訓を施され唯一の支えの母親から煮え湯を掛けられる。轟君のお母さんは『ヒーローへの夢と父親への恐怖の間で苦しむ息子』、『愛情とNo.1ヒーローに固執する余り暴走する夫』との板挟みの中で、精神的に追い詰められ今は療養生活を送っていたのだった。

「…って待って待って、そんな大事なこと、私が聞いてよかったの?」

「問題無ぇ…むしろ藤丸は親父のせいで巻き込まれたんだ……試合前に言われた理由がわかっただろ?」

「ああ……まぁ、そうだねぇ……」

「俺は…今でもお母さんを苦しめておかしくした親父が許せない…体育祭はお母さんの力…『右』だけを使い親父を『完全否定』したかった……けど緑谷や…藤丸の言葉を聞いて…分からなくなっちまった…」

どことなく、生気が無い轟君。

「緑谷君……君の力じゃないかー……だっけ?」

「…自分がやりたいようにすればいい……お前の言葉だ」

「そんな事言ってたねぇ……」

「…………」

「…………」

静寂。私は自然に口が開いた

「親子喧嘩ねぇ…私、全然した事がないよ。だっていないし」

「………」

私の言葉に轟君は訝しんだ表情をする

「弟とだって喧嘩した事がない。不満言ってもあっちが謝って改善するし、私だって同じ事をする。親代わりがいるけど……過保護だし、まぁ怒る…というより注意ぐらいられるけど全く喧嘩した事が無い。でもいいんじゃない?喧嘩。もうこの際バンバンしちゃいなよ。」

「?」

「お互いの主張を認めない。反抗する……でもそういうので何かが結ばれてそうじゃん。」

「………」

そのまま私は話す。

「結果論だけど…今回の事で轟君は変わろうとしてるんでしょ?だから轟君は轟君のお母さんの所に来た。」

「……ああ……」

「いい事じゃん。」

自然だった。体が勝手に動いた。何故か知らないが……轟君の頭を撫でてしまった。

「……………………」

「―(何してんだ私!?)あ、ご、ごめんね!?嫌だったよね!?同年代の女子に頭撫でられて!!ホントすみません」

「…いや……いい……」

ああもう…やっぱりシリアスは駄目だ。シリアルにしよう

「轟君、これから用事ある?」

「?いや、無ぇ」

その言葉を聞いて私は立ち上がって轟君の前に移動し、提案する

「じゃあさ遊ぼうよ!折角の休日だしさ!ゲーセンでも行こう!」

「行ったことねえ」

「え、あ、そっかそうだよね…じゃあ今日ゲーセンデビューしよう?楽しいからおすすめ!」

「…じゃあ、よろしく頼む」

我ながら雑な話題切り替え………ってこれもしかしてデートって奴ですかい!?

 

 

side立希

「おお!!体育祭ベスト4がいるぞ!」

「え!?マジで!?」

「うっそ本物!?」

「坂本龍馬出してー!」

「織田信長ー!」

「カワイイ女の子!!」

「うん…完全に忘れてた……」

ショッピングモールにて、そこには大勢賑わっていた。が、自分がそこに現れると尚大騒ぎ。体育祭は『かつてのオリンピック』。それなりの功績だせばそりゃ有名になるわ。今はいろんな人にサインとか求められ、3人と遊べない!!

「マスターさん…狭苦しいわ…っ」

「せ、先輩…きゃ!」

「マシュ!ナーサリー!うぐぐ…エミヤ!何とか出来ないかな!?」

「そ、そうだな…一旦私達を霊体化して逃げればいいのでは?」

「その案採用!!」

エミヤの言う通りに3人を霊体化させ、脱兎のごとく逃げた。

「あ!待ってくださーい!」

「ていうか今人消えなかった!?」

「マジ!?じゃあそいつらも彼の個性!?」

「はいはいすみませんねー!今オフだからー!ゆっくり遊びたいからサインはしないよー!」

持ち前の身体能力で人混みの中をするすると抜けて逃げる。

「逃げるんだよぉ~~!!スモーキー!」

「(スモーキーって誰です!?)」

マシュからツッコミが来た。別にただのネタだよ。

 

 

side立香

「…すげぇな」

「結構種類多いよ。ここ」

近場にゲームセンターが無かったから思い切ってショッピングモールまで移動した。スマホで調べると、音楽ゲーム、カーレス、RPG、格闘ゲーム…色々豊富だった。

「何すればいい?」

「うーん…初心者が出来そうなゲームは……やっぱコレだね」

私が選んだのは『太鼓〇達人』。お互い100円ずつ入れ、二人プレイをする。

「やり方は画面に流れるマークをリズムに合わせて叩けばいいだけ。『赤』は太鼓の正面。『青』は太鼓のふちを叩くの」

「分かった」

チュートリアルをして準備万端。お互いが知っている曲を、そして難易度選を選ぶ。私は『ふつう』で轟君が『かんたん』だ。

『はじまるドン!』

「頑張ろう!」

「ああ」

 

 

side立希

「―いやぁ…参った参った…有名人の気持ちが分かった気がする。」

「お疲れ様です。先輩」

「何はともあれ、本屋に付いたな」

「嬉しいわ!」

人混みから脱出し、無事ナーサリーが行きたかった本屋にたどり着く。結構広い。

「あ、そういえば自分も漫画欲しかったな…新刊出てるかな?」

自分は漫画コーナーに行こうと考える。

「どれ、私も探すとしよう。最近料理を作るだけじゃなく、芸術性にも興味があってな」

エミヤは料理コーナーに行きそうだ。

「私は…どうしましょう…特にコレといったものが…」

「んー…じゃあナーサリーに頼んでみたら?彼女は見たとおり本好きだし。」

「私が貴女に本の魅力を教えてあげるわ!」

ナーサリーは色んなコーナーを見て回りそうだ。R18コーナーはダメだからね?

「それじゃあ…お言葉に甘えて…後で先輩もおすすめを教えてくれませんか?」

「良いけど…自分漫画だよ?」

「はい。構いません♪」

ともあれ、それぞれ行きたいコーナーへと行く。

 

 

side立香

『成績発表~ガンバれドン!』

「むずいな……」

「あはは…」

轟君。まさかの音楽ゲーム苦手。リズムで叩く…というよりは来たタイミングで叩いていたから早いのが来るといい点が出せず、総合得点が低くなってしまった。

「けど……楽しい……な」

けど本人が楽しいと感じたなら、ゲームの結果なんて関係無いか。少し笑みを浮かべた轟君を見て、私はほっとする。

「(よかった…) それじゃあ別のゲームしてみる?気になるのある?」

「そう…だな………アレは何だ?」

轟君が指さした所は……『大型のクレーンゲーム』だった。

「ああ、あれはレバーを操作して、中に入ってある商品をゲットするの。」

手本として、私が最初にプレイする。商品は『〇ンレス猫のぬいぐるみ』コインを入れて、レバーをぬいぐるみの上まで移動。そしてボタンを押す。クレーンはぬいぐるみを掴んだ……が、上に上がる頃には落ちてしまう

「あー…残念。まぁこういうゲームは確率ゲームで、何回もコインを入れてゲットする……って感じ」

「成程……」

そう言って…轟君はコインを入れた。そしてレバーでクレーンを操作し、ボタンを押す。

「…お」

「…え?」

クレーンは先ほどと違い、しっかりとぬいぐるみを掴んで移動。そして商品出口に落とし、ゲットできた。

「すごいね!初めてゲットした所見たよ!」

「ああ………やる」

「…へ?い、いいの?」

突然のプレゼントに私は戸惑った。

「教えてくれた礼だ」

「あ、ありがとう…(こういうの少女漫画で読んだ!まさか実際にこんなシチュエーションが来るとは…お、落ち着け私!)」

不覚にもドキっとした。

 

 

side立希

本屋から出る。エミヤ以外、皆それぞれ買った本を手にしている。

「ふふ♪マスターのおかげで新しい出会いが出来たわ♪」

嬉しそう本を抱えるナーサリー。分厚い本で、なんか難しそうな本だ。

「それはよかった。マシュも本買ったの?」

「あ、はい。こういうの何ですが…」

おずおずと見せてもらった。漫画だった。しかも

「(N〇RUTOって…マジか…) いいんじゃない?結構有名どころだしね。エミヤは?」

「買わなかったが、軽く速読で内容は把握した。早速戻ったら実戦しようと思う」

まさかの記憶。本ェ…

「(戦闘じゃない所で本領発揮してんな) そっすか……マシュ?」

「………………」

歩いていると、マシュがついて来てない事に気付いた。周りを探すと、マシュが足を止めて何か見ていた。

「何かあったの?」

「あ、す、すみません!その…このアクセサリーが綺麗でして…」

「ああ、確かに綺麗だな」

「そうかしら?私はそんなに…」

マシュが見ていたのは…銀色の十字架で、真ん中に青色に光るガラスが付けられたアクセサリーだった。

「これ、マシュの『大盾』に似てるね」

「言われてみれば……」

値段は…安い。買える

「店員さん。これください」

「え!?せ、先輩!?」

唐突の自分の行動に驚くマシュ。止めようとしてくるけど、自分は止めない。

「日頃世話になってるお礼とでも思えばいいよ。カワイイ後輩に送るのも先輩の務めって奴」

無事買って、そのアクセサリーをマシュに渡す。

「ありがとう…ございます……」

大事そうにマシュは受け止めてくれた。

「ははは、やるなマスター」

エミヤに小突かれ、自分が何をしたのかハッと気づく。これってデートみたいやん…

「いや別にそういう意味で渡したわけじゃ……ああもう…意識しだすとコッチが恥ずい!」

「マスター、顔真っ赤だわ!」

言わんといてナーサリー!

 

 

side立香

『K.O!!You Win!!』

「おおー!轟君スゴイ!」

「俺自身…驚いている。」

今度は格闘ゲーム。『〇トリートファイター』テーブルに描いてあるコマンドを轟君は巧み打ち込んで、コンボを連発。アーケードでラスボスまで倒した。

「コンボってあんなに長く繋がるんだねぇ…」

「偶然だろ…」

『対戦者が現れました。』

「「ん…?」」

ゲーム終了かと思いきや、画面にそんな文字が現れた。隣を見ると、いかにもゲーマーっぽい人がサムズアップしていた。

「さっきから見ていたけど中々の腕並だぜアンタ!一勝負してくれないか?ああ、別に何かを賭けてとかじゃあない。何となく気になっただけだ。」

「…だってさ。まぁこういうのもゲーセンあるあるだね…」

「分かった。初心者だがよろしく頼む」

轟君は了承すると、初心者だと知ったゲーマーの人は驚いていた

「こいつは驚いた…あのコンボで初心者なんてな……本気出すかもしれねぇな…」

「お、おい!あそこ!『キング』が対戦してるぜ!」

「マジかよ!あの連続100連勝したあの!」

「対戦者誰だよ!動画動画!」

なんか人が集まって来た!?え、この人そういうので有名なの!?

「ふっ…気にするな…若気の至りって奴さ…」

なんだろう…一周回ってこの人面白い…

「…ああ」

『Fight!!』

そんなこんなで対戦が始まった。轟君は初心者が扱えるキャラ。相手は玄人が使うキャラを使用する。

「COMとは違う動きで……難しいな……」

「むっ…このコンボを封じるとは……やはり侮れない……っ!」

中々の接戦だった。格闘ゲームはしない私でも、すごい戦いだと思う。周囲の人達もざわめいていた

「す、すげぇ!あの『キング』と互角だぜ!」

「うっわあの攻撃守れんのかよ!?」

両者一歩も引かず。体力ゲージもお互い少しずつしか減らない……が、ここは経験の差があったのだろう。

『K.O!!』

「ふっ…ギリギリだったが…私の勝ちだな…」

「ああ…悔しいな……けど楽しかった」

「俺もさ。勝負をしてくれてありがとう。俺はまた更なる高みへ行ける。」

―パチパチパチパチパチパチパチパチパチパチ!!!―

「(……ナニコレ)」

対戦相手と握手する轟君。すると歓声が沸いた。

「すっげぇ!これ神プレイだったんじゃね!?」

「……ちょっと待て、『キング』の対戦相手、体育祭2位の奴じゃね!?」

「え!ウソ!?」

「そういやそこの女子もベスト4の……」

「(あ…ちょっとマズイかも…) 轟君、一旦ここ出よう。人混みで溢れると思う」

「分かった」

「ふっ…ここは私に任せてくれ…またいつか会おう。」

周りに騒がれる前に、私達は退避する…追われなかったのはあの人のおかげかな…?ありがとう。名も知らないゲーマーさん!

 

 

side立希

次はお惣菜コーナー。エミヤが買い物したいって言ってたから皆で行く

「すまないな、マスター。私の買い物に付き合ってもらって」

「いやいや、問題無いよ」

買い物籠には大量の総菜が詰められる。カルデアは人が多いからそれなりに買いだめしないといけないからねぇ…お金?経費です。

「はい。エミヤさんには毎日美味しい料理を作ってもらってますから。これくらい大丈夫です」

「いつも美味しい料理をありがとうだわ!」

「ははは、このお礼はキッチリ料理として感謝を表そう。マスターの好きな品、作ってやるぞ?」

「(オカン…) それじゃあ…王道のハンバーグを」

「心得た。」

そして色々と大量に材料を買う。支払い?ブラックカードという物があってね……

「(CDFの総資産ていくらなんだろうか…)」

さて、十分楽しんだ。こんな休日もいいかもしれない。そう思っていると…

「あ」

「お」

「……え?」

姉と…轟君に出会った。

 

 

side立香

「あ…姉が轟君とデーt「違う!」理不尽!!?」

「大丈夫か藤丸」

ゲームセンターを出て休憩しようとフードコートに移動していたら、まさかの身内と出会う。そして立希が言おうとした事を殴って否定した。

「せ、先輩!?大丈夫ですか!?」

倒れた立希にマシュが支える。立希は殴られた部分をさすりながら私に文句を言って来た。

「イタタ…姉…いきなり殴る事ないだろ……」

私は強く否定する。多分顔が真っ赤だ。

「いや自業自得だから!?決してそういう事じゃないから!ね!轟く―」

「いやいや、まさかマスターに異性の友人がいるとは…私はエミヤ。いつか最高の料理で君を歓迎しよう」

「…どもっす」

いつの間にかエミヤが轟君と会話していた。

「エミヤぁあああ!!!違うからね!?そして轟君も嫌なら嫌って言っていいから!」

「はっはっは!大丈夫だマスター……『まだ』、友人なんだろう?」

「っ…………っ…………っ!!!」

ツッコミたい事が大量に溢れ、逆に何も言えなくなる。

「轟君…姉と何してたの?」

今度は立希が轟君に話かける。

「…病院で藤丸に会って…話して……予定ねえからここのゲームセンターに来て……音楽ゲームして、クレーンゲームで商品取って、格闘ゲームで対戦したな…」

「因みにクレーンゲームで取った商品は?」

「教えてくれた礼に藤丸にあげたが?」

素直すぎる轟君…今までの事をさらっと答えた。それを聞いて、立希が言おうとするのを…

「デートやん「だから違う!!」だから理不尽!!?」

「先輩!」

私は再び殴って止める。

 

 

side立希

「姉にぶたれた…二度もぶたれた…親父にもぶたれた事無いのに」

「ぶって何が悪い……じゃないよ。正直スマンかった。そして私達に親いないでしょ」

結局あの後、轟君とは別れて、今は姉とカルデアに帰った。そして今日の事を話す。

「でも公共のど真ん中でさ!デート!デート!って言う方も悪い!そして断じてデートじゃない!」

「でもさ…男一人、女一人、ショッピングモールでゲーセン行って遊んで、しかもクレーンゲームで取った景品を男からもらって、休憩する為にフードコートまで一緒に歩いていた……これをどう見ればデートじゃないんですか?姉さんよぉ…?」

ジト目の立希に私はたじろぐ

「うっ……私だって最初気付かなかったんですぅ……自分から誘っておいて『やっべ、これデートやん』って思ったんですぅ…意識して轟君と出かけて無かったからセーフ!ノーカウント!」

「はいはい…これ以上は何も言わないよ…」

く…何かため息はく仕草の弟がムカつく…

「そっちこそ何してたの…」

「んー?最初はマシュと一緒に出掛ける予定だったけど、ナーサリーが本屋行きたいって言ったから一緒につれて、エミヤは保護者っていう意味で付き添わせた。で、本屋よって、エミヤの買い物に付き合って、姉とばったり出会った。」

今度は私が立希に今日の出来事を聞いた。

「へー……因みに、マシュが大切そうに持っていたアクセサリーは?」

「アレ?ショッピングモールで売ってたアクセサリー。マシュが欲しそうだったし、マシュが持ってた『大盾』に似てたから、日ごろの感謝という意味合いで買っただけだよ」

その言葉に私は突っかかる。

「…はーっ!そっちだってデートっぽい事してんじゃん!」

「はぁ!?違うわ!大間違いだわ!つかデートって男女一人じゃん!こちとら母親、息子、娘二人ってはたから見れば『家族』だわ!だからデートじゃない!はい証明完りょー!」

今度は立希が大声を上げた

「いやいや!マシュの顔よく見てなかったの!?完全に乙女の顔してた!アクセサリーみて笑ってたよ!!」

「そんな事言ったら姉だって!轟君から貰ったぬいぐるみ見て笑ってたやん!そっちこそ乙女の顔じゃん!」

私も声を上げる。売り言葉に買い言葉。無駄な言い合いをしあう。

「…はぁー……もうこの件は忘れよう…疲れた…」

「そだね……はぁ……」

お互い、充実した休日が取れた……という事でいいだろう。うん。



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第16話

side立希

体育祭明けの学校。教室で皆ワイワイしながら会話する。

「超声かけられたよ!来る途中!!」

「私もジロジロ見られて何か恥ずかしかった!」

「俺も!」

「俺なんか小学生にいきなりドンマイコールされたぜ…」

「ドンマイ」

自分と姉も皆の輪に入る。

「自分も騒がれたよ…サイン求められたし…」

「私は騒がれる前に逃げた。」

「たった一日で一気に注目の的になったよな。」

「やっぱ雄英すげぇよ」

そんな時、チャイムが鳴り、相澤先生が入って来た。自分達は直ぐに静かになり、席に着く

「おはよう。」

『おはようございます!』

今日の相澤先生は包帯が解かれ、普通の黒服状態に戻っていた。

「相澤先生包帯取れたのね。良かったわ」

「婆さんの処置が大げさなんだよ…今日の“ヒーロー情報学”ちょっと特別だ」

そう相澤先生がいうと少し皆ざわつく。確かにヒーロー関連となると法律とか色々専門的な事が出てくる…まさか小テスト…

「『コードネーム』、ヒーロー名の考案だ」

『胸ふくらむ奴来たぁあああ!』

ワッと一瞬だけ騒ぎ、相澤先生が個性発動させようとした睨んだため一瞬で皆静かになる。というのも、前から話されていた『プロヒーローからの勧誘・指名』体育祭でアピールした分、集計された。その結果…

「例年はもっとバラけるんだが…4人に注目が偏った。」

轟君は3500件、爆豪君は3000件以上、そして…なんと自分と姉が1000件以上と結構びっくりした。あとは常闇君、飯田君、上鳴君、八百万さん、鋭児郎君、麗日さん、瀬呂君と、指名が入っていた。

「白黒つくなぁ…」

「見る目ないよねプロ」

集計結果を見て当然だと思う瀬呂君。納得のいかないと思う青山君。

「1位と2位逆転してんじゃん。」

「表彰台で拘束された奴とかビビるもんな…」

「ビビってんじゃねーよプロが!!」

上鳴君の言葉に爆豪君がイラつく。

「藤丸姉弟は同じ件数だな」

「同じ個性だし、どっちを取っても問題無いとか?」

「まぁ…」

「そうかもね」

鋭児郎君、三奈さんの言葉に納得する自分と姉。

「さすがですわ轟さん」

「ほとんど親の話題ありきだろ…」

反応が薄い轟君

「わあああ…!」

「うむ」

指名が入って嬉しい麗日さん。それに肯定している飯田君。

「無いな!怖かったんだやっぱ…」

「んん…」

とまぁ皆各々の反応。そして、これらを踏まえ、指名の有無関係無く『職場体験』を行う事になった。プロの活動を実際に体験してより実りある訓練をしよう。という事だった。その為のヒーロー名。

「適当に着けては駄目よ!この時の名が!世に認知されそのままプロ名になってる人多いからね!!」

そこに現れたのはミッドナイト先生。そういうセンスはミッドナイト先生が査定してくれるそうだ。

「『名は体を表す』…『オールマイト』とかな…」

最後に相澤先生がそう言って、各々名前を考える事になった。

「名前…かぁ…」

 

 

side立香

「うーん…全然思いつかない…」

15分経っても渡されたプレートに書けず、真っ白だ。しかも発表形式。初めは青山君。

「輝きヒーロー!『I cannot stop twinkling(キラキラが止められないよ☆)』」

『短文!!!』

まさかの文って…しかも英語とフランス語混じってるし…そしてミッドナイト先生は文を省略すればいいとだけ言って反対せず。次に三奈ちゃんは…

「『エイリアンクイーン』!!」

それ某映画の2……流石にミッドナイト先生も反対した。というか最初に変なの来たせいで大喜利状態になり、変な空気になった。次は梅雨ちゃん…

「小学生の時から決めてたの。『FROPPY(フロッピー)』」

可愛い。ありがとうフロッピー。空気が変わった…

「こういうのは早めに発表したほうが楽…」

「え、もう思いついたの…」

「まぁ…」

今度は立希。ヒーローネームは…

「『魔術ヒーロー Magi(マギ)』」

「カッコいいわね!確かに召喚する仕草はいかにも魔術師だわ!」

「よかった…」

高評価で採用された。何かあっさり決まって…

「…ずるい…」

「えぇ…」

それからどんどん皆発表する。皆よく思い付くなぁ…でも轟君、『ショート』って自分の名前…爆豪君、『爆殺王』はちょっと…麗日ちゃんの『ウラビティ』はシャレていていいね

「(あーもー…これかなぁ…) じゃあ私…」

前に立って、ヒーロー名を見せる。

「『魔導ヒーロー Mage(メイジ)』」

「…パク「パクリじゃない。オマージュ。」ういっす」

立希が何か言おうとしたけど睨んで止めさせる。

「あら素敵!召喚者を導かせるのかしら?良いわね!」

「アハハ…」

後は飯田君、緑谷君が順に発表して全員の名前決めが終わった。何とかなってよかったぁ…

 

 

side立希

職場体験。期間は一瞬間。指名があったメンバーはその中から。指名が無かったメンバーは用意された事務所から選んで体験する職場を選択。それぞれ活動地域や得意なジャンルが異なるからよく考えて選択しろと言われた。

「姉、どうだった?」

「…エンデヴァーから指名来た」

自分は姉に渡された名簿を見せてもらう。確かに、エンデヴァーの事務所名が載ってあった。

「№2じゃん。いいじゃん。そこにすれば?」

「いや…それは無理…絶対…というか何で指名して来た……」

なんかひと悶着あったらしい。ある意味目を付けられた?

「そっちはどうするの?」

「んーそりゃ勿論、『CDF』」

「やっぱり。私もそこにする予定」

どうやら姉も『CDF』から指名が来ていたようだ。ま、身近に知ってる場所があると何かと楽だよね。

「まぁ『本部』だから実家に戻るんだけどね」

「…え?『本部』?私、『日本支部』なんだけど」

「…へ?」

姉の指名先と自分の指名先の住所を見比べると…うん、違うね

「…ドユコト?」

「さぁ?…ま、いいんじゃない?お互い別々でも大丈夫でしょ。」

「うーん……そういえばその日本支部…『ヒーロー殺し』が出た付近だよね」

「…うん」

それは体育祭後、ニュースで聞いた事件。神出鬼没で現れた敵、『ステイン』。過去17名ものヒーローを殺害し、23名ものヒーローを再起不能に陥れた人物……そして飯田君のお兄さんも被害にあった一人だとか…

「…本当に気を付けてね?」

「ん。大丈夫。心配し過ぎ」

思うところがあるが、取り敢えず自分と姉は職場体験先を決めた

 

職場体験当日。相澤先生から駅構内で簡単な点呼と注意され、お互い職場体験先へ行く。

「…って自分はただ帰るだけなんだよなぁ…」

そう呟きながら駅内のトイレに移動。そして転移すれば…

「ようこそ~『カルデア・ダヴィンチ・ファクトリー』!通称『CDF』へ!歓迎するよ~」

「歓迎するよ~じゃないよ。ただ帰って来ただけだし…ただいま。ダ・ヴィンチちゃん…」

あっという間にCDF本部―基、実家。玄関から入ると…カルデア技術局特別名誉顧問並びにCDF総監督。人類史上の最大の天才と名高い、万能の才人。キャスター、『レオナルド・ダ・ヴィンチ』が、自分が来たことを祝してくれた。

「まぁまぁ。それで、職場体験だったね!実は…あれはウソなのだよ!」

「…は?」

突然の真実に思わず間抜けな声を出してしまう

「いや…いやいやいや!それはアカンでしょ!何平然と嘘書いてんのダ・ヴィンチちゃん!?アウト!犯罪だから!」

「ウソと言ったけど、職場体験はちゃんとさせるよ。まぁ、『サポートアイテム』の修理・開発・組み立てぐらいで、人命救助とか、そういうヒーローらしい仕事はしない…という意味でのウソなのさ!」

「えぇ…じゃあ何で自分は呼ばれたの?」

「そりゃ勿論…特訓に決まっている!」

ドヤ顔&指さしで宣言した。『特訓』。その言葉に自分は冷や汗をかいた。もう嫌な予感しかしない。

「うっそだろ…姉とは別なの!?」

「そうだね。カルデアの英霊メンバーと相談して…『職場体験期間は二人のどっちかを絞って特訓させ、どっちかを支部でヒーローの職場体験をさせよう』という案が採用されたのだよ!因みにどっちが先に特訓させるかはアミダくじで決めた」

「決め方雑!え!?それで自分が!?」

「オフコース♪次は君のお姉さんが本部。君が支部って事になるから問題は無い。まぁ…通常の特訓よりかはキツ目だから……頑張ってね♪」

「うぐぉおおお………っ」

自分は膝から崩れ落ちた。これから一週間。DIEジェストが始まった。

 

 

side立香

「―とまぁ、国から給金されてるから公務員…に類似するかもね。でも違うとすれば、副業が認められている。有名なヒーローになればCM出演やCDを出してる所もある。で、基本は犯罪の取り締まり。事件発生時には警察から応援要請が来る。地区ごとに一括で来る。」

「成程…勉強になります。」

『CDF日本支部』にて、私は戦闘衣装を着て、私の職場体験を担当するプロヒーローと歩きながら話を聞く。

「えっと…これから何処に行くんですか?」

「ああ、これから他のヒーロー事務所と合同パトロールをするんだ。ほらここの地域は『ヒーロー殺し』の被害が多くある場所の近く…一時的にパトロールを強化しようという要請があったんだ。無論、ヒーローとして、この街を守る者としては、参加しないとダメだ」

「成程…」

「それに、あの有名なヒーローも来てくれるからもしかしたら『ヒーロー殺し』の奴が捕まるのも時間の問題かもしれないしね!」

「有名なヒーロー……オールマイトですか?」

「ははは!確かに有名だけど違うよ……なんと!エンデヴァーさ!」

「………え゛」

 

「―えー…前例通りですと、ここ保須市に『ヒーロー殺し』が現れる確率は高いですね…」

「……………ならば、しばし保須市を活動拠点の中心にする。市に連絡しろ」

「分かりました」

「……………………」

保須市のヒーロー事務所にて、私の目の前にあのエンデヴァーがいる。正確に言えば、私を担当するプロヒーローを挟んで対面している…が、私はエンデヴァーのほうを見ないように体を横にしていた。

「(なんで!?なんでいるの!?もう会わないと思ってあの時あんなこと言ったんだよ!?それなのに!!大体おかしいよ!あんな失礼な事言ったのに言われた方は私を指名して来てさ!?もう…もう…っ)」

「藤丸…お前も来てたのか」

「え?轟君!?どうしてここに?」

「…職場体験先、親父の事務所だ」

「…え」

もやもやと考えていると、なんと轟君と出会えた。最近会うなぁ…でもなんでわざわざ嫌いなお父さんの事務所に…

「えっと…どうしてエンデヴァー事務所に?許した…わけじゃないよね?」

「ああ…許したわけじゃないし、許すわけもねぇ…ただ奴が№2と言われている事実をこの眼と身体で体験しに来た……受け入れる為に……」

「轟君…」

顔の左の痣に触れながら話してくれた。

「そっか…それでいい結果が見つかるといいね…「おい、ショート!何無駄話をして―貴様か」ひぇ…」

と、ここにダークホースのエンデヴァーが登場!そして予想通り、私を見て嫌悪感を出していた

「全く…折角貴様を指名したのに…よく別の事務所に行ったものだな…そしてここで再開するとは、私も思わなかったよ。藤丸立香」

「えぇっと…お、お久しぶりですー…」

「親父……藤丸は関係ねぇ……余計な事吹き込むな」

たじたじな対応をしてると、横から轟君が割り込んでエンデヴァーをにらむ

「ふん……まぁいい。話は別だ。あの時言われた事は後日、改めて言おう。」

あ、逃げられない。

「藤丸立香。単刀直入に聞く。貴様の“個性”についてだ」

「は、はい!何ですか!?」

突然、エンデヴァーは私に私の“個性”について聞いて来た。

「…貴様の“個性”『英霊召喚』とやらは…貴様の弟、藤丸立希と全く同じ“個性”…なんだな?」

「?…あ、はい。両親は…物心ついた時既にいないので両親の“個性”とか全く知りません。けど弟と“個性”は同じです…多分双子で生まれたからその影響で…という理由だと思いますけど…」

「成程……私は貴様の“個性”、一応『注目はしている』…とだけ言っておこう。話はそれだけだ」

「親父……」

「は、はぁ…」

その後、エンデヴァーさんが中心となって、会議が開かれる。性格がどうあれ、№2。実にスムーズで、有効的な会議で、警備強化の案が多く出されたのだった…

 

 

side立希

「『無限の剣製 (unlimited blade works.)』―この空間で戦うのも、久しぶりだな。マスター?」

そこは、別世界。無造作に、大量の剣が地面に突き刺さり、黄色い空には巨大な歯車が漂っていた。そんな世界に、自分とエミヤ。二人だけが存在していた。エミヤの両手には剣があり、エミヤの周囲に展開されている剣が自分に矛先を向け、漂っていた。対して自分は地面に四つん這いになっている

「自分の体は……無限の剣で出来ていた…っ……んなわけあるかぁああ!!!ちょおおおお!!エミヤ!!手加減!手加減プリーズ!!こんな錆びた剣二本で全方位から飛んで来る剣達を全部防ぐって無理がああああああああああ!?!?」

大声を上げながら、自分は全方位から飛んで来る剣を、地面に突き刺さっている剣で弾いて、いなして、躱して、防ぐ。本当ならエミヤに接近して攻撃したい…だけど無理だ。剣の雨が降り注がれ、動けない。そんな自分を、エミヤは見て笑う。

「はっはっは!何を言っているマスター!君ならすぐに成長できる!さぁ頑張れ!!終わったら特性サンドイッチを食べさせてやろう。」

「たべりゅうううううううう!!!!!!でもやっぱりキツイイイイイイイイイ!!!!」

こんなのが一週間とか…キツイ…



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第17話

side立香

職場体験、一日目は会議が中心で回り、私は支部でプロヒーローについての座学を勉強しただけで終わった。そして今日は二日目。支部のトレーニングルームにて模擬戦をする事になった。

「お互い"個性"は無し。けど何かしらサポートアイテムがあるなら使用してもいい。俺自身、基本はコレ使ってるしね。」

私の担当してくれるプロヒーロー…『ゴールド』さんは『スリングショット』と『黄金玉』を持つ。

「因みに、俺の個性は知ってるかい?」

「はい。“個性”『黄金ボール』。持った金の玉を変化させるという…」

「そうそう。こんな感じ―」

そう言って遠くに置いてあった廃材にゴールドさんはスリングショットで黄金玉を放つと、黄金玉は空中で鋭く変化し、廃材に深く突き刺さった。

「この通り、俺は触れた『黄金ボール』を自在に『変化』させる事が出来る。まぁ模擬戦は『ゴム弾』使うから安心して当たってくれ」

「あ、あはは…当たらないように頑張ります…」

お互い距離を取って構える。

「それじゃあ……始めっ!!」

「!!」

 

 

side立希

今日はクー・フーリンとの模擬戦…

「―その心臓貰い受ける!『刺し穿つ死棘の槍(ゲイ・ボルク)』!」

「奪うな―っぶねぇええええええ!!!!何で木製の槍で『宝具』発動させんの!?バカなの!?死ぬの!?つーか自分が死ぬぅううう!!!」

だけど模擬戦じゃない。ガチで命が獲られそうになる。さっきから支給された運動服が破れまくる。これで何枚目!?

「おうおうおう!本気じゃねぇが俺の槍を躱すなんて強くなったな坊主!……もう少し上げていくかぁ!?」

「それ以上は止めてくれ!マジで!!」

盛り上がるクー・フーリンを宥めようとするが、ほぼ意味が無い

「大丈夫ですよマスターさん。先ほど私の『宝具』―『白き聖杯よ、謳え(ソング・オブ・グレイル)』でマスターさんの肉体を回復と『ガッツ状態』を付与させましたので仮に重症を負っても死にません。」

「痛いのには変わり無いんですよぉおおお!!!」

天の衣さんが微笑んでそう言ってくるけど攻撃は受けたくない。だって痛いから!

「一回ぐらい慣れとけマスター!俺だって『ガッツ状態』で『流星一条(ステラ)』放って重症で生きれたからな!」

「アーラシュさん自虐止めてぇえええええええ!!!」

因みにクー・フーリンの次はアーラシュさんとの模擬戦。絶対矢で射抜かれて終わってしまぅ…

 

 

side立香

「アダダダ……ホーミングするゴム弾超痛い……」

「動きは良かったけど、ゴム弾から逃げる事は出来なかったね。」

ゴールドさんとの模擬戦。15分くらいで自分が白旗を上げる。始めはゴールドさんの『的』にならないように逃げまわった。けど流石プロヒーロー。普通のゴム弾を放って私の動きを一瞬止まらせた瞬間に連続でゴム弾が放たれた。しかも飛んで来るゴム弾を避けても、壁や床、天井に跳弾して死角から襲い掛かって来るし…個性無しでもめっちゃ強い……

「ゴールドさん…強い…」

「ははは!強くは無いよ。それに俺の“個性”には『黄金ボール』が必要だし、その黄金ボールの質量のみで形状変化させないとダメだしね。今の俺は今まで戦って来た経験があるから強いって感じただけさ。」

「……………それでも私より強いです」

ゴールドさんに手を差し伸べられ、その手を掴んで起き上がる。

「俺はプロヒーロー。“金の卵”だろうが、“体育祭ベスト4”だろうが、こっちにもプライドや意地がある。そう簡単にはやられないよ……さぁ、講評の時間だ。本部で鍛えているだけ、身体能力は高いね!体育祭ではそんな動いてる姿が見れなくて心配だったけど杞憂だった!ただまぁ…体育祭でもそうだったけど“個性”に頼り切っている部分があって動きにムラがある…それこそ俺が普通に放ったフェイクのゴム弾にビビったようにね。これからも模擬戦をしつつ、体感や筋トレ、柔軟をしつつ、動きながらでも思考できるぐらいには頑張ろう!」

「………はい…」

普通にしんどい…結局の所、模擬戦は連敗し続けた。午後はパトロールとして保須市周辺の市内をエンデヴァーのヒーロー事務所のメンバーたちと共に行動した。

 

 

side立希

午後はイリヤ、クロエ、美遊の魔法少女メンバーと模擬戦…というか弾幕避け。3人から放たれる魔法弾や矢を躱しまくる。ちょっとしたSTGだよ。今は休憩

「ちょっと疲れちゃった~。魔力供給、お願いね?マスター♪」

「いや全然疲れてないでしょクロエ!!そして魔力供給(キス) は止めてくれぇ!!こちとら健全な男子高校生なんですぅ!!」

ジリジリと近づいて自分の唇を奪おうとしてくるクロエ…確かに!確かにこれが初じゃないけど!完全に事案ですぅ!!普通に手を繋いで魔力流せばいいじゃないか!!

「クロがまたマスターさんにちょっかいかけてる……私が止めないとマスターさんがクロに…クロに奪われる!?色々と!!」

『おぉっと~?これは事案入りますかねぇ~?』

「クロ、また悪さしてるの?躾のために、一旦檻にでも入れておいた方が…『絵面的にアウトです、美遊さま』」

そこの魔法少女お二人さん!傍観してないで助けてくれぇ!

 

 

side立香

職場体験三日目。午前中はずっと座学と模擬戦。ゴールドさん曰く

「動きがよくなったね。ゴム弾にも被弾しにくくなった。」

とまぁ褒められたかな?でも連敗中。ちょっと悔しくなってきた。それでまぁ午後はパトロール。今日は保須市内をエンデヴァー事務所の人達と行動…で、エンデヴァー本人もいると聞かされ絶賛気分が下がった。現在保須市駅内。待ち合わせの時間まであと少し―

―キャアアアアアアアアア!!!!―

―うわあああああああああ!!!!―

「「!!」」

突如として外で轟音と揺れ。そして悲鳴が響き渡った。

「全く!こんなご時世に馬鹿な事をしてくれる…っ!藤丸ちゃん―『メイジ』!行くよ!ここからがプロの仕事さ!」

「!はいっ!!」

ヒーローネームで呼ばれ、私達は駅を出てすぐの中央広場出る。そこにいたのは…

『オオオオオオ!!!』

『アアアアアア!!!』

「っ!!」

USJ襲撃で見た、脳が露出した化物―脳無がいた。しかも二体。黒い肌で腕が長い脳無と白い肌で翼を生やした脳無だ。

「メイジは市民の避難誘導を頼む!!」

「!分かりました!!」

「行け―『黄金ボール』!!」

『オオオ!?』

ゴールドさんの指示で行動に移る。ゴールドさんはスリングショットで黄金玉を放った。黄金玉は鏃と変化し、黒い脳無の腕に着弾。奴が掴み上げていたプロヒーローを放した。

「『ゴールド』!助かった!!」

「『ザ・フライ』!無事か!!増援に来た!こいつらは何だ!?」

「いきなり上空から現れた!!それに暴れまわってこの現状だ!!」

『アアアアアア!!!』

『オオオオオオ!!!』

「っ!来るわよ!!」

「(他のプロヒーローがいるから…きっと大丈夫…今は指示された事だけをする!) サポート系なら…―『キャスター』!」

「―やれやれ、マスター。こんな僕に、何か用かい?」

「用があるから呼んだんだよ!!」

キャスター、『マーリン』。アーサー王の師であり臣下であり頭痛の種でもあった、伝説の魔術師。やれやれと言った感じで現れるから私も頭を抱えそうになる。

「いいから!敵が来たの!私達は市民の避難誘導!手伝って!」

「ふむ。君がそういうなら…苦手だけど全力でいこうか!」

マーリンと一緒に避難誘導をする。怪我をして動けなくなった人達の肩を担いだり、子供をおんぶして移動したりしていると、緑谷君から一斉送信メールが来たのだった…

 

 

side立希

今日もきっつい模擬戦…そんな時にメールが来た。

「―ん?何これ?『一斉送し―「おいマスター!何スマホで遊んでやがる!!父上に言いつけるぞ!」ちょっと待ってモーさん!?違うから!メール確認しようと起動させただけだから!!」

スマホを開いた時、モーさん、元い、モードレッドが指さして大声を上げた。当然、その声は…付き添いのアルトリア・ペンドラゴン・ランサー・オルタに聞こえる。彼女の顔がだんだんと険しくなる。

「マスター…私直々に付き合っているのにその体たらく…私の逆鱗に触れたな」

そして槍を構え、魔力を溜めた。自分は慌てて訂正する。

「オルタ違うから!!落ち着いて話しを―「『最果てにて輝ける槍 (ロンゴミニアド)』!!!」ああああああああっぶなあああああ!!!!!!ってスマホォオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!?」

問答無用に『宝具』撃って来た。自分マスターだよ!?回避出来たけどスマホが完全に木っ端みじんとなった。ゲームデータがぁあ!?

「ったくだらしねぇぞマスター!仕方ねぇ…このモードレッドが相手してやるぜ!」

しかもこれが開戦の合図となり、モーさんが特攻して来た。

「ノオオオオオオオオオ!!!」

それからはやけくそ気味で戦って…気付けば医務室のベッド…ああ、後スマホは後日新しいのを買った




これからもちょいちょい、ゴールドさんは出てきます。見た目は『ワンパンマン』のキャラ『黄金ボール』をちょいスリムにした感じ。ヒーロースーツは…ご想像で。


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第18話

side立香

今私は、突然現れた脳無達が暴れ、瓦礫だらけとなった保須市の町を駆け巡る。

「えーと…ここらへん?だったかな?」

「(何処に向かっているんだい?マスター?)」

「緑谷君から来たメールの場所。けどあんまり場所把握してないから軽く迷ってる」

避難誘導をし終えた私はマーリンを霊体化させ、移動する。走っていると、近くで轟音がなった。

「!アレは…」

「―虚仮脅しに低温とはいえ、意識を保ったままでいられるのは初めてだな。」

『ア゛……ア゛……』

そこにはエンデヴァー…と知らない黄色が目立つのマントとヒーロースーツを着たおじいさん。そして火傷を多々負った脳無のすがたがいた。

「あんた気を付けろ!こいつは…」

『アアア!!!』

おじいさんが大声を出すと同時に脳無が炎を放出。そして体を大きくし、口から木の根のように放出した舌をエンデヴァーに放つ。けどその攻撃は届かず、ジェットのような速さで動き、その脳無を踏み付けるおじさんの姿が見えた。

「はっや…」

「道路割っちまった…久々だと加減がなぁ…」

「ちっ…なんだやるじゃないかご老人…む」

「!」

ここでエンデヴァーが私の存在に気付いた…私情はこの際関係ない。今はヒーローとしてここにいるんだから。行く。

「藤丸立香…何故貴様がここにいる」

「今は『魔導ヒーロー メイジ』です…避難誘導し終え、友達から来た一斉送信先の住所に向かっていた所でした。あの…轟君は?」

周囲を見るが、彼の姿がいなかった。もしかして既にこのメールの場所に?

「…焦凍は今別の所にいる。貴様も…そこに行くところだろう。そこのご老人を連れて早く行け!」

「でもそこの脳無は」

「加勢はこのエンデヴァー一人で事足りる」

はっきりと言い切った。やっぱりこういうヒーローな部分は、№2ヒーローだ。

「お嬢ちゃん。そこに儂もつれてって―!」

その時だった。

『ア゛…ア゛アアア!!!!』

「!?」

「まだ生きていたか…っ!だが遅い!!」

埋もれた地面から這い上がって来た脳無。エンデヴァーがその脳無に向けて『炎』を放とうと腕を前に出した。

「マーリン!」

私はサポートしようとマーリンを実体化させ、スキルを使わせる。

「ん?ああいいとも。」

『夢幻のカリスマ』と『英雄作成』をエンデヴァーに向け唱える。そしてエンデヴァーから『大火力の炎の弾』が放たれた!

「―これは…」

『ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!?!?!?!?!?!?』

モロに炎を浴びた脳無。体は黒焦げとなり…倒れる間も無く、その場で完全に行動停止した。

「ご苦労様」

「ふぅ…」

上手く付与し、私は安心する。おじいさんはエンデヴァーの火力を見て感嘆していた。

「ひゃあ…なんつー火力じゃ…」

「……貴様、今私に何をした?」

ギロリと睨まれるようにエンデヴァーは私に聞いて来た。あまりの顔面の迫力にビビった。

「ひぇ!!え、えと簡単に言えばサポートです!エンデヴァーの身体能力と個性を底上げしました!暫くはさっきみたいな大火力が放てます!!」

「………成程。感謝する」

あの顔付きで迫られるとホントビビる…そしてエンデヴァーは本当に一人で加勢しに行き、私はおじいさん―『グラントリノ』さんと一緒にメールで知らされた場所に行く。

 

 

side立希

次はマルタさん!彼女なら分かってくれる。なんせ自分が初めて召喚した英霊かつ最も信頼を寄せている!だから手加減をしてもらって…

「ヤルってんならとことんヤルわよ。ナメんなっての!」

「ナメてませんよぉおお!!!うおらぁああああああ!!!!」

…無いんだよなぁ!!マルタさんとステゴロ。そして今は某奇妙な冒険よろしくとまでは言わないけどラッシュの速さ比べをしている。

「ノッてきたわよ!ハレルヤッ!」

「ちょっと待って!?手加減忘れて―ガハァ!!?」

さっきより速く、鋭い拳が水月―所謂人体急所に入って宙を舞う。あぁ…

「あ……あぁ~やっちゃった……わたしったらなんてことを……ま、マスター!起きて下さい!今治療を…」

当然自分はK.Oされ、意識が飛んだ…

 

 

side立香

「その住所じゃとすぐそこ―む!?んなっ…何でお前がここに!」

「グラントリノ!!と藤丸さ―「座ってろつったろ!!」ん!!?」

おじいさんの案内でようやく着いた。

「藤丸クン…」

「藤丸…来てくれたのか…」

「うん。緑谷君からの一斉送信でね。でも……終わっちゃった?」

「ああ。だがギリギリだった。」

「すまない…プロの俺が完全に足手まといだった。」

「おお!いたいた!メイジ!!」

「あ!ゴールドさん!」

「エンデヴァーさんから応援要請承ってね!彼の個性、いつもと違くて驚いたよ。火力がスゴイ…」

「あはは…」

そこには緑谷君、飯田君、轟君と、怪我を負ったプロヒーローがいた。しかも、轟君が引きづって運んでいたのは…あの『ヒーロー殺し』、『ステイン』だった。

「おい…こいつ『ヒーロー殺し』!?」

「もしかして君達が…」

「すごい…」

ゴールドさん含め、プロヒーローが『ヒーロー殺し』の身柄を保護する。その姿を私達が眺めていると、飯田君が緑谷君と轟君に謝罪していた。どうやら私怨でステインと戦闘し、危機に陥っていた所で二人に助けられ、自分の『ヒーロー』としての行動を省みて……という事だった。

「すまない…何も…見えなく…なってしまっていた…」

「……僕もごめんね君があそこまで思い詰めていたのに全然見えてなかった…友達だったのに…」

「――――っ!」

そういえば駅でクラス全員集まっていた時、緑谷君と麗日ちゃんが飯田君を心配していたのを見た気がする

「しっかりしてくれよ。委員長だろ」

「…ああ…」

そんな時だった。そこに大火傷を負った翼を生やした脳無が上空からやって来た。しかも緑谷君を攫ってだ。当然私たちは直ぐに後を追おうと動いた。その時、気絶していたはずのステインが個性を使って脳無の動きを止め、倒し、緑谷君を救ったのだった。

「粛清対象だ………ハァ……」

「そっちに一人逃げたハズだが!!?」

「エンデヴァーさん!!」

そこにエンデヴァーが再び現れた。先ほどの脳無を追いかけてきた。そしてステインを見ると攻撃しようと炎を放とうとしたが…

「贋物…」

―ゾワリ―

『―――――っ!!!!』

殺気。ステインから途轍もない憎悪が私達に襲い掛かる。個性を使われていないのに、この場、この一瞬。誰も動かなかった―動けなかった。

「―俺を殺していいのは本物の英雄(オールマイト)だけだ!!」

「っ!!!はっ…はっ……はぁ……っ」

殺気が消えた。ステインは立ったまま気を失っていた。

 

「こいつ…折れた肋骨が肺に突き刺さってるな…急いで病院に搬送を!」

プロヒーローがステインの状態を診てそう言った。その時私は閃く。

「…あ!ちょっと待って下さい!マーリン!」

「ようやく、僕の出番かい?」

「わ!…も、もしかして藤丸さんが呼んだ…」

「うん。マーリン。ここにいる人達に『宝具』を使って」

「―王の話をしよう」

マーリンを実体化させ、『宝具』を使わせる。すると地面には花が咲き乱れる。当の本人は『塔の牢獄』の中に移動していた。

「な、なんだこれは…」

「綺麗…」

「星の内海(うちうみ)、物見の台(うてな)。楽園の端から君に聞かせよう……君たちの物語は祝福に満ちていると。罪無き者のみ通るがいい―『永久に閉ざされた理想郷(ガーデン・オブ・アヴァロン)』!」

マーリンが唱え終えると、花弁が舞い上がり、楽園という幻想が消え、保須市の街へと戻る。

「藤丸クンさっきのは一体……こ、これは!!」

「すごい…傷がどんどん治ってく…っ!」

「回復か……」

「うん。自己回復能力を上げたの。でも重症物は流石に治らないかも…一先ず応急処置って感じかな?病院行った方がいいよ。」

「あたたた……久しぶりの『宝具』は応えるねえ」

「お疲れ、マーリン」

「すごい…すごいじゃないかメイジ!確かにこれは君が動かなくてもいいな!ははは!」

「これで元気になれたからまだ動ける!」

「まだ避難できてない人達がいるかもしれない!急がないと!」

ゴールドさん含め、他のプロヒーロー達も元気になり、各々行動しようとした時だ。一人だけ、私を見て笑っていた。そう…エンデヴァーだ。

「素晴らしい……素晴らしいぞ!藤丸立香!やはり私の見立て通りだった!!」

「…はい?」

「エンデヴァーさん!?」

「親父…っ!?」

私の近くにいたプロヒーロー達をかき分け、私の目の前にエンデヴァーが立った。そして、天啓を得たかのような顔で私に言った。

「藤丸立香……貴様は焦凍の許嫁となれっ!!」

静寂。からの―

『ええええええええええええええええええええ!!!?!?!?!?』

驚愕。

 

 

side立希

あの後気絶した自分は、マルタさんの看護の元、すっかり回復。膝枕最高でした…っ!午後も張り切って頑張るぞい!

「…おえっぷ……い、いくら毒耐性があっても毒状態で戦闘なんてしたら―オロロロロロ…」

「なんだマスター…この程度の毒で嘔吐するとは…酷いにも程があるぞ…?」

訂正。やっぱムリ。セミ様、元い、セミラミスに毒盛られ絶不調。吐しゃ物が床に飛び散る。

「毒盛った本人が何言ってるんですか…セミさ―オロロロロロ…」

「…絵面が酷いな。マスター」

鼻をつまみながらそう言ってくる両儀式さん。仕方ないじゃん…毒だから…これで一番弱めって…

「助けてくれぇ…」

切実な願いです…

 

 

side立香

フリーズした。私の脳が

「親父!てめ何言ってやがる!!」

「邪魔をするな焦凍!!これは貴様の将来重要になる案件だ!藤丸立香…貴様の“個性”は根絶やせるモノではないのだ!!」

「え、えぇ…と、轟君と…藤丸さんが…ええ…」

「…い、許嫁…?…は…?………えぇ…?」

「藤丸クン!しっかりしたまえ!放心してるではないか!?」

エンデヴァーから言われた事が、理解出来なかった。え?許嫁?『許嫁』って…アレ?……あの許嫁?

「てめぇは何で勝手に決めて!人に迷惑を掛けさせやがるっ!!そのせいでお母さんがどれほど―「と、轟君!!一旦落ち着こう!?ね!?」放せ緑谷!これ以上は許せねぇっ!」

「焦凍、何度も言うがこれからは俺について来い!俺が『覇道』へ導かせ―「え、エンデヴァーさん!今はその話は一旦置いておきましょう!?ほら!市民が危険な状態ですので!」…ちぃ…」

エンデヴァーに掴みかかる轟君…やめさせようと必死に止めにかかっている飯田君。顔を赤くする緑谷君…それを見てようやく意識が回復する。

「―はっ」

「気付いたかね!?藤丸クン!!」

「え…あ、あぁ…うん……何とか……落ち着いたよ…うん……」

「藤丸…すまねぇ…また親父が…」

「…だ、大丈夫だよ。今は……エンデヴァーさん」

「……なんだ」

フラフラと、おぼつきながらも、私はエンデヴァーの前に立つ。そして―

「許嫁の事は……諦めて下さい。そういうのは、轟君自身が決める事です……人を“道具”みたいに見る貴方に私は……賛同しません。絶対に」

「……ふん。今の内だ。そう言っておけるのはな…」

「藤丸…」

ハッキリと、私自身が思った事をいった。エンデヴァーは不服そうに鼻を鳴らし、プロヒーローを引き連れ仕事に戻った。

「ええと…取り敢えず救急車を呼ぼう!君達はそこで待っていてくれ!」

「あ、はい…」

ゴールドさんはそう言って走って行く。残ったのは私、緑谷君、飯田君、轟君、マーリンだけだ…

「え、えと……藤丸…さん?」

「~~~~~~~~~っ!!!」

一旦落ち着くと、さっきまでの出来事が鮮明にフラッシュバックされる。そしてどんどん足のつま先から頭のてっぺんまで真っ赤になり、熱くなる。

「………見ないで………」

恥ずかしくなって両手で顔を覆う。もう……もう!!

「どうしたのかね藤丸クン!?」

「どこか調子悪いのか?だったらそこのベンチに座って―」

「ふ、二人とも、藤丸さんはね?え、えと…」

「ははは、青春だねぇ。」

マーリンの言葉でプッツンする。

「あああああ!!!今は私を放っておいてぇええええ!!!!!!」

私の叫びが保須市の空にこだました。




初期エンデヴァーなら言いそうかなと。


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第19話

side立香

職場体験四日目。昨日の件についてゴールドさんから話される。『ヒーロー殺し』のステイン。彼はオールマイトに感銘を受けて私立のヒーロー科に進学するも、『教育体制から見えるヒーロー観の根本的腐敗』に失望して中退。そして敵となって今に至るという事だった。

「詳しい事は彼を事情聴取するとして……まぁ今回の事件、藤丸ちゃんの行動は立派だった!誇っていいぞ!」

笑いながらゴールドさんは私を褒めてくれる。

「は、はぁ。ありがとうございます…その、緑谷君達は…」

「ああ、3人に関しては―」

3人とも、命には別条なし。ただ飯田君は左手に後遺症が残るそうだ…マーリンの『宝具』はあくまでも一時的処置。そう理解してるけど…治せなかったことに悔しさを感じた。

「それでまぁ…3人は規則違反があってね…「え!?」まぁまぁ、話を聞いて欲しい」

資格未取得者が保護管理者の指示なく“個性”で危害を加えた事。それが例え『敵』でも立派な規則違反と3人は保須警察署長に言われたとの事。でもそれは『警察としての意見』でその人『本人の意見』では、立派に市民を守ってくれて感謝されたのだった。

「まぁ、どの道3人の保護管理者には監督不行き届で責任取られる…という結果だ。因みに俺は特に何もなし。藤丸ちゃんが立派に市民を避難誘導してくれてプロとして嬉しいよ。実際、その場にいた市民から藤丸ちゃんにお礼をしたいっていう報告も来ている。」

「そ、そうなんですか?それは…嬉しいですね…えへへ」

嬉し恥ずかしい気持ちで、体がこそばゆくなる…勝手な考えだけど…これで『ヒーロー』として、認められた気がする。

「で、だ…えーと…その……エンデヴァーさんが言った事なんだけど……あー…うん…」

「っ!!わ、忘れて下さい!!」

言いよどむゴールドさんに私は止める。あの事が鮮明によみがえって顔が赤くなる。

「ははは、ま、まぁ俺自身、関係はない。そこをとやかく言うつもりなんて無いさ……まぁ……頑張れ」

「…何をですか…」

私は項垂れる。

 

 

side立希

「はぁー…職場体験四日目…いや、地獄の特訓四日目と言ったほうがいいな。」

ご飯を食べながら自分は項垂れる。

「どうだい?首尾は?」

そこにダ・ヴィンチちゃんが笑顔でやって来た。

「ええ、ええ。どこぞの天災様のおかげで強くなった気がしますよ!ええそりゃもう!」

「ふふん♪それは嬉しい褒め言葉だ♪天才だなんて」

「天の災いと書いて天災ですよ!そして褒めてない!!」

皮肉を言ったのに華麗にスルーされた…ちくせう…

「まーまー美味しいエミヤの料理を食べて今日も頑張ろうじゃないか。まぁ今日の特訓は早めに切り上げて、こちらのCDFの仕事を手伝ってくれ。力仕事が多いよ」

「特訓と比べればそっちのほうがマシ。」

そのままダ・ヴィンチちゃんから今日の予定を教えてもらう。そしたらふと何か思い出したようなしぐさをする。

「あ、そうそう。昨日、日本支部付近で『ヒーロー殺し』が現れた事。知ってる?」

「ああ…テレビで速報してたね……(緑谷君のあの一斉送信メールはそれだって気付いた時にはもうスマホが死んでいた。物理的に) 姉は無事なの?職場体験でヒーロー仕事はしたんでしょ?」

「日本支部からの定期連絡だと、その事件に参加し、立香ちゃんは市民の避難誘導をして活躍したよ。後マーリンを呼び出してプロヒーロー達を回復させたとか。」

「あー…マーリンの『宝具』は便利だからねぇ…」

人理修復時も大いに活躍したし。あの回復力は半端ない。

「そ・れ・で・♪面白い事があったんだよ!」

「何かあったの?」

「フフフ…なんと、あの№2ヒーロー、エンデヴァーが君のお姉さんに、息子さん…確か君達と同じクラスの轟君だっけ?の許嫁宣告したんだよ♪彼すごいね、公衆の前で堂々と言って」

「…は?」

手に持っていた箸が落ちる。え、何を言ってるんだ?え?許嫁?姉と?轟君が?え?何でそんな話が突然?え?やっぱりあの『デート』で?もうそんな進んでるの?は?意味わからん。

「…?おーい、立希くーん?」

「(…えっと…つまり……轟君は自分にとっての……お義兄さん?) ………自分まだ『お義兄さん』って呼ぶ覚悟無いよ…」

「話が飛躍してないかい?」

自分は混乱した

 

 

side立香

今日は昨日の件の後処理。エンデヴァーさんを中心とし、補修工事に取り掛かる。

「―うん。いやぁびっくりしたよ。違反行為だって聞いた時は」

『ああ…俺もついカッとなって酷い事を言うところだった…』

今は昼休憩にて、轟君に電話していた。デー…お出掛けしたあの日に連絡先を交換していた

「怪我の方は大丈夫?飯田君、左手が…」

『後遺症が残るって本人が言っていた。だが飯田はその左手を『自身の戒め』として残すって言っていた』

「そっか…そういえば緑谷君も右手がボロボロだったね。なんか身近で怪我する人多いなぁ…」

『…なんか『俺が関わると手がダメになってるかもしれねぇ』って言ったらすげぇ笑われた。』

「…クスッ、フフ…それは確かに笑うよ!と、轟君も冗談言うんだね、っふふ」

『藤丸も笑うか…』

他愛ない談笑をする。っと、そろそろ活動再会だ。

「ごめんごめん…はー…お腹イタい…でも3人とも無事でよかったよ。安静にしてね?」

『ああ―』

そう言って電話を切ろうとした時、

『―名前』

「へ?」

『いや……『藤丸』って呼んだらお前の弟も『藤丸』だからややこしくなるな』

唐突にそう言われた。いきなりの事で少し困惑したけど、直ぐに私は受け答える。

「あー…確かに…まぁでも名字の後ろに『姉』とか『弟』とかつければいいんじゃない?」

『いや…それだとお前に…藤丸に失礼だ』

「そーかなぁ……………えっと…………じゃあー…………名前で?」

『そうなるな』

「……………」

おーけー。ちょっと落ち着こう。うん。これはどう呼ぶかを決める事だ。うん。そう…決してアレな事じゃない。決してだ。うん

「い、いいんじゃない?じゃあ…お、お互い名前呼び…とか?」

『藤丸が―『立香』がそれでいいなら。』

「っ!!え、えと………はい……『焦凍』……君」

『ああ……じゃあな、立香』

「ま、また後で…焦凍君…」

電話を切る。

「…………………」

スマホの画面を見る。画面には『轟 焦凍』という文字。

「だ、男子との通話って……すごい……」

心臓がバクバクした。

「藤丸ちゃん、パトロール行くよー…ってどうしたの?胸抑えて?」

 

そんなこんなで、その後何事もなく職場体験が終わった。『ヒーロー殺し』の事件以外は、特に事件もなく、パトロールだけで終わった。まぁ保須市でのパトロール中、避難誘導した人達に何度も感謝されて、握手など求められ、嬉しかった

「それじゃあ。職場体験終了だ。お疲れ様」

最後に、ゴールドさんと握手する

「はい!プロヒーローの仕事…すごく良い体験しました。それに模擬戦も…少し強くなれた気がします!」

「大事なのはこれからの藤丸ちゃん自身の行動さ!くれぐれも怠けないようにね!でも!時々は休むように」

「はい!」

こうして、私の職場体験は終わった…そして久々にカルデアに戻ったら…

「姉…詳しく聞かせてくれないかな?」

「マスター。許嫁とは本当で?」

「自分としては祝したいのですが……自分の気持ちがまだ整理できていないのですが…」

「ふ…やはり私は見間違いではなかった。という事だな」

「待って待って本当に待ってお願いだから話すからそんな皆で迫らないで…」

立希と英霊達に根掘り葉掘り聞かれ、話した。それからというもの、日本支部にエンデヴァーからの手紙が定期的に来るけど、私はそれをまだ知らない。



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第20話

side立香

職場体験が終わって次の日。学校にて

「アッハッハッハ!マジか!」

「マジか爆豪!!」

「……ブッフ…」

登校してきた爆豪君の髪型を見てついツボってしまう。なぜなら…

「笑うな…クセついちまって洗っても直んねぇんだ…おい笑うな…ブッ殺すぞ…」

「「やってみろよ『8:2』坊や!!アッハハハハハハハ!!!!」」

髪型が綺麗に『8:2』になっていたからだ。職場体験先で何があったのやら…他の皆の話を聞くと、私と同じ、トレーニングとパトロールばっかりだったらしい。それでも一部の人はすごい事をしていた。梅雨ちゃんは隣国の密航者を捕らえたとか…すごくない?後麗日ちゃんは……太極拳をしていた…何かに目覚めたの?

「はー…笑った笑った…なぁ立希はどうだ―って立希ぃ!?ど、どうしたぁ!?」

「……………」

「こ、こいつ…死んでいるっ!!」

「燃え尽きている…真っ白に…」

妙に立希が静かだなと思っていたら席に着いて某ボクサー選手みたいになっていた。ああ…次は私がこうなるのかぁ…嫌だ…

「死んで……ないよ…」

白かった立希に動き、色が付き始める…心なしかまだ薄いけど

「生きてた!!でも瀕死寸前!!」

「職場体験先で何があったんだ!?」

「地獄の……特訓……だったのさ……」

切島君、瀬呂君が問い詰めるが立希の反応は遅い。私はほっとくように促す。

「えーと、まぁ疲れてるから放っておいて。少しすれば元気になるから」

「お、おう…藤丸姉が言うなら、そうしておくか…」

「…おはよう」

「お、おはよう…」

「皆!おはよう!」

そこに焦凍君、緑谷君、飯田君が入って来た。

「お!例の3人がやっと来たぜ!」

「うんうん!『ヒーロー殺し』!」

「…心配しましたわ」

3人にワッと皆が詰め寄る。まぁ職場体験で一番の出来事で、その件の中心人物だから当然だ。

「あれ?そういえば立香ちゃんもそこにいなかった?」

麗日ちゃんがそう聞いて来た。私はさらっと答える。

「うん。でも私は市民を避難誘導してたから…3人の所に行ったらもう終わってた。」

「まぁ命あって何よりだぜ」

数人が3人に近寄って、色々と話す…が、一人だけ、私の所に来た。その人物は勿論―

「おはよう…立香」

轟―焦凍君である。

『……え?』

クラスがざわつく。

「お、おはよう……焦凍君…」

『!?』

更にざわついた。

「轟君…今姉の事」

「お、藤丸弟が復活した。」

いきなり動き出すな。そしてその眼力は何なの?

「ああ…藤丸っていうとどっち呼んだかわからねぇからな」

焦凍君はそんな立希の質問に答えた。

「そっかそっか…じゃあ次からは自分の事は『立希』でいいよ。自分もこれからは轟君の事は『焦凍く―「ふん!」ぐえ!?」

私は思いっきり立希の肘を入れる。

「(余計な事を言うな…っ!)」

「(はぁ?何言ってんだ…っ!)」

目でお互い訴える。

「立香…すまねぇ。また親父が…」

「!う、ううん!大丈夫!気にしてないから…」

焦凍君が謝罪してくる。当然『許嫁』についてだ。私はあの時言った通り、反対した。でもエンデヴァーは諦めていない。日本支部からエンデヴァーにそういう『手紙』が来ており、何とも手が付ける事が出来なかった。一先ずは何もしない。という事になった。手紙も受け取ったままで内容は読んでいない。

「何かあったら。すぐに言ってくれ」

「うん。わかった。」

一言二言話して、焦凍君は席に移動した……と同時に三奈ちゃんと葉隠ちゃんがやってくる

「ねぇねぇ!どういう事!?どういう事!?」

「前まではお互い『名字』呼びだったよね!もしかして―」

「はいはい!そろそろ始業だから席に着こうねー!」

何とか私はうやむやにするのだった。後ちゃっかり立希が焦凍君呼びになってた。なんかイラっとしたからデコピンした。

 

 

side立希

ようやく復活した自分。気付けばもう午後の授業。

「はい。私が来た。ってな感じでやっていくわけだけどもね。ハイ、ヒーロー基礎学ね!久しぶりだ少年少女!元気か!?」

「ヌルっと入ったな」

「パターン尽きたのかしら?」

午前はいつも通り普通授業。そして午後はヒーロー基礎学。今日はゴールデンエイジ姿のオールマイトが授業を行う。授業内容は職場体験直後という事で、遊び要素を含んだ『救助訓練レース』をする事になった。内容としては、今いる『運動場γ』―密集工場地帯で5~6人の4組に分かれ、1組ずつ訓練をする。オールマイトがどこかで救難信号を出したらエリア外から一斉にスタート。誰が一番オールマイトの所につくか競争するのだった。

「それじゃあ!初めの組は位置について!!」

 

皆工夫しながら我先にと動き始める。特に変わったなと思ったのは緑谷君。体全体にヒビのような模様が現れると工場の建物の壁やパイプを蹴って縦横無尽に動き回った。ただまぁレース事態は足を滑らせて最下位だったけど、その動きはアイエエ、ニンジャだった。

「さぁ!次の組だ!位置について!」

っと、自分の番が回って来た。相手は…八百万さん、峰田君、砂糖君、梅雨さん、そして姉だ。

 

 

side三人称

「今度の組は誰が一位だろうなー」

「八百万じゃね?何か空飛ぶもん『創造』するとか」

「梅雨ちゃんも意外にこういう所は得意そうだよな!」

「峰田ー!頑張れー!砂糖もファイトー!」

「藤丸姉弟は…まぁ速い奴ら召喚するんだろうな」

「何気に俺、二人がどんな奴を呼ぶのか楽しみなんだよなー」

『わっかる。』

一体誰が一位になるか、皆が画面を見てワクワクしていた。そして…救難信号が鳴り響く。つまり、スタートだ。

『『創造』!』

『ケロォ!』

『おりゃー!』

『うぉおおお!!』

『出てきて!『アベンジャー』!』

『来い!『フォーリナー』!』

スタートと同時に6人は動き出す。八百万は『鉄柱』を『創造』して高い建物まで伸ばし、そして更に『グライダー』を『創造』して空を滑空する。蛙吹は“個性”『蛙』で壁に張り付いて跳びまわり、舌を伸ばしてターザンのようにして移動。峰田は『もぎもぎ』を投げ、その上に乗って飛び跳ねて移動。砂糖は『シュガードープ』により砂糖を食べ、肉体強化しダッシュする。そして皆が楽しみにしていた藤丸姉弟の『英霊召喚』は―

『アゥオォーーーーーーーン!!!』

『狼ぃーーー!?』

『エネルギー、フルチャーッジ!』

『ロボットォオーーー!?』

当然の如く、皆は驚く。立香はアベンジャー、『ヘシアン・ロボ』を召喚。青い毛並みの巨大な狼が目立つが、狼―ロボの背には首の無い騎士―ヘシアンが乗っている。その後ろに立香が乗る。

『GO!!』

『アオオーーーーーーン!!!』

ロボは一蹴りで八百万より高く跳んだ。

「人じゃねぇのかよ!?」

「いや人いる!!けど首が無ぇ!!」

「つか狼ってあんな跳ぶのか!?」

「なんなのアリかよ!?」

「一位は立香ちゃんかな!?」

「いや…立希の方を見ろよ!!」

『!!』

一方、立希はフォーリナー、『謎のヒロインXX』を召喚。全身をSFチックな機械製の鎧で覆っている。そんな彼女は下半身に付いているロケットブースターで空を飛び、その背に立希はボードに乗る感じで立っていた

『行くぞ!アーヴァロン!』

『ひゃっほー!!』

「ロボじゃねぇ!人だよ!!」

「はっや…あれ命綱無しであの速度かよ…」

「人の背に立つって…えぇ…」

結果は…同着1位の藤丸姉弟だった。

 

 

side立希

同着。ま、それでも1位には変わり無いし、良い事だ。まぁオールマイトはめっちゃ驚いてたけど。狼に機械…そりゃビビるわ。今はもう授業が終わって、更衣室で着替えている。

「なぁ立希、さっき呼んだ奴は誰なんだ?」

「んー『謎のヒロインXX』だよ。で、見た目のアレは鎧。結構ハイテクで本人曰く、宇宙を飛べるとか…」

「な、謎?変わった名前してんなー…って女子かよ!?お前女子の背中に立ってたのかよ…やべぇよ…」

電気君(最近名前呼びしてもいいと言われた) に話すと色々とツッコミしてきた。まぁパージした姿だったら絵面危ないけど、フルスキンならいいかなって思って…それにえっちゃん気にしないし、本人だってそうやった使い方してたし…

「おい緑谷!ヤベェ事が発覚した!!こっちゃ来い!」

「ん?」

峰田君が何やら興奮している。彼の近くには……『壁の一部に空いた穴』があった。その穴の先は―『女子更衣室』だ。

「峰田君止めたまえ!ノゾキは立派な犯罪行為だ!」

「止めろ。姉の体を見たら…俺はお前の目を潰す」

飯田君と一緒に自分は峰田君の行為を説得。というか自分は二本指を構える。

「立希がガチで怒ってやがる!?」

「そりゃ怒るわ…一人称が“俺”になってるしな…峰田止めろ。お前の生命が危機だぞ」

「オイラのリトルネタはもう立派なバンザイ行為なんだよぉ!!八百万のヤオロッパイ!芦度の腰つき!!葉隠の浮かぶ下着!!!藤丸の隠れナイスボディ!!!麗日のうららかボディに蛙吹の意外おっぱァアアア!!!」

マジで覗く気だ。自分はツーフィンガーを峰田の目に刺そうと動いた時、その穴から『イヤホンジャック』が飛び出し、峰田の目に突き刺さった。そして爆音が響く。

「あああ!!!」

「耳郎さんの『イヤホンジャック』…正確さと不意打ちの凶悪コンボが強み!!」

「ありがとう耳郎さん…」

壁越しに自分は耳郎さんに対してお礼した。

 

 

side立香

「ありがと響香ちゃん。」

「何て卑劣…!!すぐにふさいでしまいましょう!」

「………………」

「峰田マジ最悪」

「女子の敵だね…」

女子更衣室にて、耳郎ちゃんのおかげで覗かれずにすんだ。けど耳郎ちゃんだけ言われてない事に本人はガッカリしていた。胸とか大きいだけ無駄だよ?肩とかこるし…何より重い

「今なんか、ウチ…藤丸にとてつもない怒りを感じるんだけど…」

「…何の事かな?」

す、鋭い…耳郎ちゃんの前で胸の話はしないようにしよう…

 

なんやかんやで数日後、HRにて

「えー…夏休みも近いがもちろん君らが30日間一ケ月休める道理はない。」

ズパっと相澤先生が告げる

「まさか…」

「夏休み林間合宿やるぞ」

『知ってたよーーーやったーーーー!!!!』

うん。知ってた。肝試し、花火、カレー…色々と皆が言う。峰田君。風呂とか湯あみとか大声で言わない。

「但し!その前に期末テストで合格点に満たさなかった奴は…『学校で補修地獄だ』」

「みんな頑張ろーぜ!!」

切島君が必至の形相で同意を求めた。

「(期末テストかー……)…はぁ…」

 

 

side立希

時は流れ六月最終週。つまり期末テストまで残す所一週間切っていた。

「全く勉強してねぇーーー!!」

電気君の嘆きが教室に響いた。三奈さんに至ってはオワタの顔をしている。

「体育祭やら職場体験やれで全く勉強してねー!」

「確かに」

珍しく冷や汗をかいている常闇君。

「中間はまー…入学したてで範囲狭いし特に苦労なかったんだけどなー…行事が重なったのもあるけどやっぱ期末は中間と違って…」

「演習試験もあるのが辛れとこだよな」

砂糖君の言葉に続いたのは…ふんぞり返る峰田君。何気に成績良いよね。

「あ、芦度さん、上鳴君!が、頑張ろうよ!やっぱ全員で林間合宿行きたいもん!ね!」

「うむ!」

「普通に授業うけてりゃ赤点は出ねぇだろ」

「言葉には気を付けろ!!」

「うっぐぅ…」

「うぐ…」

路地裏組の言葉が電気君以外に自分と姉にも被弾する。流石中間順位1ケタ台…

「そういや藤丸姉弟はどうなんだ?」

「二人の中間順位って確か―」

「姉と自分はタイ10位だよ」

「うん…私は文系が得意で理系が苦手」

「で、自分は理系が得意で文系が苦手」

「「お互い真逆の教科が得意で、どっちの教科も出る内容量が同じくらいだから同点。」」

「足して二で割ればいい具合だな…」

全く持って電気君の言う通りだ。まぁ期末に向けてお互い苦手科目を教え合えばいいし…最悪英霊達に聞けばいい。

 

その後、B組の拳道さんの情報で『仮想敵を倒す事』が演習試験という事が分かり、これで筆記試験に集中できる。とそこで、爆豪君が緑谷君に宣戦布告まがいな事を言っていた。

「体育祭みてぇなハンパな結果はいらねぇ…完膚なきまでに差ァ付けててめぇをぶち殺してやる!」

「かっちゃん…っ!」

「轟ィ…!藤丸ゥ…!てめぇらもなァ!」

「……」

何故か自分も目にを付けられた

「え、自分も?」

「ほら体育祭、焦凍君みたいに中途半端に負けを認めたじゃん…」

姉にそう言われた。でも自分、体育祭の決勝戦見てないからわからん…ともあれ、期末が始まる! 



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第21話

『ヒロアカの劇場版。読みたいですか?』のアンケートが約100人に答えてもらえたので投票終了しました。結果は
はい 53 / 50%
いいえ 5 / 5%
そんな事よりおうどん食べたい 49 / 46%
というわけで、書きます。





…うどん食べたい人多いな…丸亀にでも行きますか


side立香

期末試験、筆記試験!もう本当に難しいったらありゃしない!もう本当に…っ!…文系の国語とか社会…英語は大丈夫…なんだけどやっぱり物理と数学が…更にヒーロー基礎学も入ってもう大変だった…

「立希ー……どうだったー……?」

筆記の全科目が終わった私は机に付しながら立希に聞く。

「……やっぱり文系が……理系は余裕なんだけど……あ、でも姉に教えてもらった場所は大丈夫…」

私と同じように机に頭を乗せながら答えた。

「それ言ったら私も教えてもらった場所は余裕だよ…」

「「…また同じぐらいの点数かぁ…」」

まぁ平均より上だし、問題ないでしょう…さて、切りかえて次は演習試験!

 

「それじゃあ演習試験を始めていく。」

『はい!』

私達全員、戦闘衣装を着てバス発着場に集まる。そこには相澤先生含め、9人の先生がいた。

「この試験でも勿論赤点はある。林間合宿行きたけりゃみっともねぇヘマするなよ」

名簿を持った相澤先生がそう告げ、私含め全員身構える。

「先生多…」

「入試みてぇなロボ無双だろ!!」

「花火!カレー!肝試ーー!!」

拳道さんから実技試験の内容を聞いて余裕な態度を表す三奈ちゃんと上鳴君。

「残念!諸事情があって今回から内容を変更しちゃうのさ!」

しかし相澤先生の中から現れた校長先生からの変更内容。二人が固まった。というか校長先生はどうやって入ってたの?

「どうして変更を?」

「それはね―」

変更の理由。それは昨今敵の活性化が著しい為、対敵戦闘が激化すると、『ロボとの戦闘訓練は実戦的でない』という理由だった。それによりこれからは『対人戦闘・活動を見据えたより実践に近い教えを重視する』事になったのだった。

「―というわけで諸君らにはこれから…『二人一組(チームアップ)』でここにいる教師一人と戦闘を行ってもらう!」

「(うっそ…プロヒーロー相手に二人で!?)」

中々…いや、かなり難しい試験だよ!?いや、でも英霊呼べば楽勝かもしれな……

「尚、ペアの組と対戦する教師は既に決定済み。動きの傾向や成績、親密度…諸々踏まえて独断で組ませてもらったから発表してく……と、言いたい所だが、一つ報告がある。藤丸姉弟。」

「「?はい?」」

私達は相澤先生に呼ばれた。そして次の言葉に驚いた。

「お前らはこの試験…“個性”の使用は禁止だ。」

『え!?』

「「えぇ!?」」

まさかの逆ハンデ!え、個性無しでプロ倒せと!?無理無理無理無理カタツムリ!!じゃなくて絶対無理!!

「な、何でですか!?」

焦る立希。勿論私もだ。

「お前ら二人の“個性”はこの試験には向いてないんだ。教師陣が圧倒的に不利になる。1対多数…最高で8人、最低でも5人相手。しかも体育祭で出してくるような連中ばっかりだったらアッサリ合格してペアの採点が出来ん。」

坦々と相澤先生は理由を言って、成程と納得してしまった。若干不安になる。それは立希も同じ…そんな私達に校長先生が笑顔でフォローして来た。

「まぁ“個性”禁止の代わりに二人の採点は少し甘くするし、そして藤丸姉弟とペアになる所は『三人一組』。後私達教師側にも『ハンデ』があるからこれで大丈夫だろう!納得できたかい?」

「はぁ……まぁ、そういう事でしたら……」

「…分かりました…」

先行きが増々不安になった。そしてペアと対戦する先生が発表される。

 

緑谷&爆豪VSオールマイト

轟&八百万&藤丸姉VSイレイザーヘッド

芦戸&上鳴&藤丸弟VS校長

麗日&青山VS13号

耳郎&口田VSプレゼン・マイク

蛙吹&常闇VSエクトプラズム

峰田&瀬呂VSミッドナイト

葉隠&障子VSスナイプ

切島&砂藤VSセメントス

飯田&尾白VSパワーローダー

 

…ちょっと待って、私…推薦組二人と!?

「よろしく頼む」

「よろしく…お願い致しますわ」

「…足引っ張らないように頑張ります」

早速、私達は対戦する教師―相澤先生と共に試験会場へとバスで移動。因みに試験は各々違う場所にて同時スタートするらしい。

 

 

side立希

期末テスト、演習試験。場所は前に救助訓練レースをした場所に似た密集工場地帯。その出入口の前に、自分、三奈さん、電気君。そして対戦する校長先生が立つ。

「制限時間は30分!君達の目的はこの『ハンドカフスを私に掛ける』or『どちらか一人がこのステージから脱出』!」

校長先生から試験のルールを教えてもらう

「戦闘訓練と似てんな」

「逃げてもいーんですか!?」

疑問に思った事を三奈さんと電気君が挙手して果敢に質問する。自分はその答えを聞いて整理する。

「うん。なにしろ戦闘訓練とは訳が違うからね。敵は…超格上なのさ!」

『格上』。その言葉は発した校長先生が少し怖く感じた。

「つまり…戦って勝つか、逃げて勝つか…判断力が試されるというわけですね?」

「その通りさ!」

自分の言葉に校長先生はHAHAHAと笑いながら答えてくれる。

「でも…プロ相手だと全員逃げの一手だと思いますよ?」

「だよね!オールマイトとか…イレイザーヘッドと戦闘なんて適うわけがないよ…」

「そこも大丈夫!さっき相澤先生が言ったように、僕達には『ハンデ』があるのさ!」

三奈さんと電気君の不安に、校長先生はある物を取り出した。それは輪っか。体育祭で活躍?したサポート科の発目さんが発案した『超圧縮重り』というアイテムだった。体重の役の約半分の重量を教師全員が装着。これで『戦闘を視野に入れる』事が可能となった。

「それじゃあ早速!君達はエリア中央からスタート。ゴールはここ!頑張ってくれたまえ!」

校長先生は紅茶を注ぎ、飲み干してから自分達に喝を入れる。

 

さて、自分達3人は指定されたスタート地点に移動する。移動が終えると同時に試験開始。各々も同時に始まるらしい

「倒すぜええ~」

「うん!ここで赤点取りたくない!」

意気込む電気君と三奈さん。自分も緊張をほぐしながら二人に告げる。

「出来る限り、二人をサポートするよ。今回自分は二人の枷見たいなもんだから…」

「心配すんなって!」

「そうそう!私と上鳴でパパーっと片付けるから!」

何とも頼もしい…けど相手はプロ。そう簡単にはいかないだろうなぁ…気を引き締めよう。

『皆位置についたね。それじゃあ今から雄英高校1年。期末テストを始めるよ!』

スピーカーからリカバリーガールの声が聞こえる。成程、怪我の治療は万全というわけか…

『レディイイーーー……ゴォ!!!』

演習試験。開始。

 

 

side立香

密集市街地。そこが私、八百万さん、焦凍君の試験場所。スタートの合図と共に私達3人はゴールに向かって走る。けど真っ直ぐじゃない。相澤先生に見つからないよう、建物の陰に、そして迂回しつつだ。正直、相澤先生…イレイザーヘッド相手は不利。例え体重半分の重りのハンデがあっても、こっちが3人1組のペアで多人数でも、相手の個性は『個性を封じる』ましてや私自身『個性禁止』。逃げの一手しかない。

「八百万!何でもいい、常に何か小物を創り続けろ。創れなくなったら相澤先生が近くにいると考えろ。この試験どっちが先に相手を見つけるかだ。視認出来次第俺と八百万が引きつける。その間に立香。お前が脱出ゲートに走れ。それまで離れるなよ」

「う、うん……」

「………………」

移動しながら焦凍君は作戦内容を私と八百万さんに伝えてくる。その時私はチラリと八百万さんを見た。何か言いたげそうな顔をしていた。“何か考え”があるのだろうか…それともイレイザーヘッドを捕まえる“作戦”があるのだろうか…

「(うーん…私がとやかく言うのもなぁ…こちとら個性禁止だし…それとなく聞いてみ―) …八百万さんそれ何?」

「…何か出せつったが何だそれ」

「ロシア人形のマトリョーシカですわ」

ポコポコと『マトリョーシカ』を出して、数体を腰に入れる八百万さん。ちょっと面白い。

「そうか。取り敢えず“個性”に異変があったらすぐに言ってくれ」

「ええ…さすがですね轟さん」

「何が」

「相澤先生への対策をすぐ打ち出すのもそうですが、ベストを即決できる判断力です」

「…………普通だろ」

焦凍君のその言葉に八百万さんは暗い表情になった。

「“普通”…ですか…雄英の推薦入学者…スタートは同じハズでしたのに…ヒーローとしての実技に於いて私の方は特筆すべき結果を何も残せてません…」

「八百万さん…?」

暗い表情まま八百万さんは話す

「騎馬戦はあなたの指示下についただけ…本戦は常闇さんに成す術なく敗退でした……」

「…………」

俯く八百万さん………あれ?そういえば…

「八百万さん。マトリョーシカ…」

「「…!」」

話に聞き入って忘れていた。ミスだ。『マトリョーシカ』が『創造』出来ていない。つまりは―

「来るぞ!」

「すみませ―「と思ったらすぐに行動に移せ」!」

「(上!) 「ちっ!」焦凍君反撃はストップ!逃げるよ!!」

「そうだ。この場合は藤丸が言ったとおり回避優先だ。先手を取られたからな。」

電線に『捕縛武器』で逆さまにぶら下がていたイレイザーヘッド。焦凍君が腕で振り払おうとするが、イレイザーヘッドは落下して着地と回避をする。

「八百万!立香を連れて行け!」

「ハッ…「っ…八百万さん!逃げるよ!!」…あっ!」

八百万さんの腕を引っ張り、ゴールの方向へと向かう。

「はっ…はっ…はっ…」

「…………八百万さん。いつもの八百万さん。じゃないね」

ゴールへと走っている時、私は八百万さんの状態を告げる。すると八百万さんは動揺した

「っ……もう…もうどうしたらいいか分からないのです!脱出ゲートまであとどれくらいか…もっと最短ルートがあるのでは…轟さんが無事なのか…これでいいのか!!もう…思考が滅茶苦茶で…「落ち着いて!」!」

私は柄に無く、大声を出す。不安そうな顔の八百万さんに私は告げる。

「八百万さ―もう長いから『ヤオモモ』!!ヤオモモは私より頭が良いんだよ!もっと自分に自信持っていいんだよ!!」

ヤオモモは焦凍君と比べて自分が“格下”と格付けしている。そしてヤオモモの会話から体育祭から自信を無くしている。ここは…彼女の自信を取り戻す事が重要!

「ヤオモモは『何かやりたい事』があるんでしょ?『何か対策』があるんでしょ?人間口で言わないと分からないんだから!」

「でも…私の考えなんて轟さんに……そして藤丸さんにも―「通じる!!だってヤオモモは頭が良いんだから!誰よりも博識なんだから!!」藤丸さん…」

「そこか―」

「「!」」

『捕縛武器』が来た。狙いは…ヤオモモの腕!!ここでヤオモモまで捕まったらもう試験合格は無理だ!

「させない!」

「藤丸さん!?」

「ほぅ…」

ヤオモモの前に立ち、私の片腕に『捕縛武器』を絡ませる。引っ張られそうになるが、近くの電柱にしがみ付いて凌ぐ。

「ここは私が…時間を稼ぐ!ヤオモモ!もう一回聞くよ!『何かやりたい事』!あるんでしょ!?」

「っ~~~~はい!!」

さっきより顔付きが良くなったヤオモモ。いい返事だった。私は笑って見送る

「よし!じゃあ任せた!!」

「はい!」

そう言ってヤオモモは焦凍君のいる方へ行った。

「まさか…個性が使えない。お前が相手になるとはな…藤丸」

と、そこにイレイザーヘッドが現れる。捕縛武器は…どうやらナイフで斬ったらしい。私の腕に巻かれた状態で一部あるし。

「ええ…こうなるとは思いませんでした。けど…彼女を奮い立たせるために、私をこのペアに入れたんじゃないですか?イレイザーヘッド……相澤先生?」

「一体何の事だか…俺には性に合わん仕事だからな」

それほぼ答え言ってますやん…兎も角、宣言したからにはやるしかない。

「いつでもどうぞ…イレイザーヘッド!」

「ふっ…プロ相手に近接か……非合理的だな!」

構える私に相澤先生が迫ってくる



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第22話

side立希

「「うわぁあああ!!」」

「うおっとぉ…」

密集工場地帯にて…現在かなりピンチだ。次々と建物をドミノのように連鎖的に破壊され道が潰される。今も出口に届く道がまた一つ塞がれる。

「上鳴~~~『放電』で何とかなんないの~!?」

「それは駄目だよ三奈さん。敵の場所がわからない上にコントロールが出来ない放電。自滅の危険性がある!」

「立希の言う通りだぜ!無駄打ちは駄目だ!!」

そんな事を言っている間にもまた近くの建物が壊される

「っ!三奈さん!『酸』を!」

「!うん!!そりゃぁああ!!」

崩れ落ちてくる瓦礫を三奈さんの『酸』で溶かしてもらい、小さくなった落下物から身を回避させる。

「助かった…ありがと!」

「うん!…でも結構強めの『酸』は私の皮膚にもダメージがあるから…そう何度も出来ないよ!」

汗をかきながら三奈さんがそう告げてくる。

「(くっ…このままだとゲートから遠くに行って詰んでしまう…そしてこの思考も校長の“個性”『ハイスペック』で知られているはず…) 考えろ…天才に一泡吹かせるだけでいいんだ…何か打開策を…っ」

崩れる瓦礫から逃げながら自分は思考を巡らす。

 

 

side三人称

「―と、君は考えるだろうね、藤丸君。だけど無駄さ。既に盤石は出来つつあるのさ!」

紅茶を飲みながら、『鉄球クレーン』を操作する校長。彼の“個性”『ハイスペック』は人並み以上の思考能力。そう簡単にはいかない。

「よっ!」

再びクレーンで建物を破壊。そして連鎖反応でさらに破壊被害を増やす。

「ハハハ!脱出ゲートへの道は着々と封鎖されつつある!頭脳派敵は高みの見物さ!HAHAHAHA!!!」

 

 

side立希

「や、やべぇ…このままだと校長も捕まえられねぇで脱出も出来ねぇ…」

「うわーん!林間合宿行けなくなるよー!!」

崩れるのが止んだ。多分緩急を付けて自分達を動揺させるためなのか…現に二人はいつもの思考じゃない。

「(放電…酸…工場…鉄…強酸…時間…) そして自分は個性禁止…ここから逆転する方法は……」

どうにかして二人のサポートに徹する為、自分は思考をフル回転させる。小さな廃材で地面に図や文字を描き、『作戦』を立てる。

「……二人とも…作戦があるんだ」

「「!」」

考えた『作戦』を頭の中で整理してから二人に告げる

「勝負は一度きり…そして時間もギリギリ…それでもやる?」

「お…おお!何もしないよりははるかにマシだぜ!!」

「やるやる!林間合宿行けるなら何でもするから!!」

ん?今なんでもするって―ってそんなアホな事言ってる場合じゃない…時間が無いから簡潔に教えると…二人の目が輝いた

「「―…おお!」」

「さぁ…ネズミ相手に人が負けないところを見せてやろう…っ!」

 

 

side立香

「―まぁ、合理的且つ想定の範囲内な結果だな」

「うぐぐぐ…」

イレイザーヘッドとの近接。相手は捕縛武器と格闘術の二つ同時使っての戦闘。当然カフスすら付けられず、現在電柱に括りつけられ、拘束された。無理に解いてもいいけど、私の周囲にはマキビシが敷かれ、完全に身動きできない。先生忍者ですか!?

「だが俺が捨てた『捕縛武器』を使うのは、正直驚いた」

「…あらゆる状況下において、いろんな武器や格闘術を会得してるんですよ。」

即落ち二コマみたいに瞬殺されたけど…拘束される前、私の腕に巻き付いていた捕縛武器を使って一回だけイレイザーヘッドを転ばせた。けど捕縛武器を扱いなれているイレイザーヘッドに転ばし返しされ、今の状況になった。

「これでお前は何も出来ない。」

目薬を差して潤わせる相澤先生。私は不敵に笑いながら話す

「…そうでしょうか?少なくとも私達はイレイザーヘッドの『弱点』を知ってます。その目、USJ襲撃後、後遺症で『長時間の個性封じ』が出来ないですよね。」

「…………」

「それに『個性封じ』は必ず“瞬き”で隙が生じる。そこで焦凍君やヤオモモの『大技』で叩きつけられたら、厄介ですよね?」

「…………やけに喋るな。『時間稼ぎ』のつもりか?」

「っ…」

やっぱりバレた。私を置いて逃げて脱出して欲しい事、もしくは二人に助けて欲しい事、それか今の内に打開策でも出していて欲しいという願いだ。

「逃げの時間稼ぎは無駄だ。この道は視界が広く、そしてゴールに近い。あいつらがゴールに近づいたらすぐにでも行け―「藤丸さん!目を閉じて!」!んだこれ…っ!」

「!!」

私を呼んだ声。とっさに目を瞑る。何が起きたか分からない。けど瞼越しでも眩しい。もしかして閃光弾?

「立香!悪ぃ遅れた」

「その声…焦凍君?」

「お待たせしました!『相澤先生に勝利する』…とっておきのオペレーションがありますの!」

焦凍君が私の拘束を解除してくれる。目を開けると、そこにはさっきより自信に満ちた表情のヤオモモの姿。私は内心安堵する。

「…うん!二人とも頼むよ!!」

「ああ」

「はい!まず藤丸さん!コレを投げて下さい!先ほどの閃光弾ですわ!」

「OK!そりゃあ!!」

ヤオモモの指示の元、渡された『閃光弾』のピンを抜き、思いっきりイレイザーヘッドの方へ投げる。

「チィ…またか…っ!!」

再度眩しくなる。動こうとしたイレイザーヘッドは腕で光を防ぐ。

「轟さん!」

「分かった!……ぜぁっ!!」

「っ!」

「うわっ!!」

今度は焦凍君。体育祭で見せたあの『大氷壁』をイレイザーヘッドに放つ。これで凍りつけになってて欲しいけど、一瞬後ろに下がる仕草が見えたから無事なんだろうなぁ…

「そして…」

「ちょ!?」

ヤオモモの次の行動に私は焦った。

 

 

side三人称

相澤は大氷壁から避け、凍った捕縛布を切って屋根へと着地する

「(轟の最大出力…痛い所を突いて来たな…) そうだ、痛い所は突いていけ」

 

 

side立香

「…よしっ…八百万、今の内全容を…「焦凍君コッチ見ちゃダメ!!」っ!?」

無理やり焦凍君の顔を掴んで後ろを振り向かせる。何故って?そりゃ…ヤオモモが胸部分の服をオープンさせてドルドル音を鳴らしながら『創造』してるからだ。ヤオモモの発育の暴力をみせてはいけない!!

「…何を…してんだ」

見えない焦凍君に私はヤオモモが何をしてる教える。

「えーと。イレイザーヘッドの武器、『捕縛布』をヤオモモが『創造』してる!」

「正確には『ある素材』を織り込んだ私Ver.ですわ」

更に、『カタパルト』も『創造』して服を元に戻すヤオモモ。準備は出来たようだ。

「では説明いたしますわ―」

ヤオモモが考えた作戦。流石だ。私には考えられない。私と焦凍君はその作戦に賛同する。

「ああ…」

「成程…」

「よろしいですか?勝負は一瞬ですわ」

「文句なしだ」

「…ねぇ、ヤオモモ、『念の為』でさ―」

ヤオモモの完璧な作戦。それを成功させたい。だから私は念の為を作ってもらって…作戦開始だ。

 

 

side立希

自分、電気君、三奈さんは顔を見合わせ頷く。

「よし…行くよ!二人とも!」

「ああ!」

「うん!」

次の倒壊で、運命が決まる。そんな事思っていると揺れと轟音が来る

「来たよ!」

「作戦―開始!!」

 

 

side三人称

「さぁ…時間はまだまだあるけど、ゲームオーバーさ!」

校長は鉄球クレーンを作動させ建物を連鎖破壊。これで更に3人を脱出ゲートに遠ざけ、彼の脳内ビジョンには倒壊され、四方八方封鎖されて不合格を叩きつけられた3人の顔が浮かんでいた。

「…ん?」

が、ここで反応。鉄球クレーンで建物を破壊した音…ではない衝撃音が聞こえて来た。しかもクレーンの窓越しから白い煙も立っているのを確認する

「―ふむ、藤丸君かな?成程…『建物の倒壊を偽装』し、僕を混乱させようとしてるのかな?」

3人の持ち札は『酸』と『放電』と『知恵』。校長は考えを纏める。おそらく先ほどの倒壊と同時に付近の建物を『酸』で脆くし、倒壊。そして『酸』を『放電』させ『電気分解』し、その時発生する『煙』でよりリアリティを生み出す…という事だろう。

「無駄だよ。僕のこの『ハイスペック』で既に検討済み―」

―さ!と言いたかった。ドヤ顔をしたかった。でもそれは出来なかった。それは何故か…連続的に『轟音』と『煙』が発生していたのだった。そして煙が放つ先は―脱出ゲートに真っ直ぐ進んでいた!

「なっ―ま、まさか!!」

数秒かからず、校長の脳内ビジョンに3人が『何をしているか』が分かった。そして自分が『詰んでいた』事が分かったのだった。

 

 

side立希

今自分達は何をしてるか…それは…

「今度はここ!」

「うん!!」

まずは自分が指定した所に三奈さんが『酸』を放ち、デカい瓦礫の一部を溶かし、『傷』をつける

「電気君!」

「任せろぉ!」

そして次に『傷』がついた所の『酸』を『放電』で『電気分解』させる。煙が出るが関係ない!

「良いぜ!!!」

「ふぅー…マルタさん直伝―ハレルヤァ!!!」

そして…『魔力』で軽く『身体強化』した自分が思いっきり殴る!!『傷』が瓦礫の『ウィークポイント』となり、瓦礫は崩れ、道が出来る。殴る際、『酸』で拳を痛めないように『電気分解』で『酸を分解』!『最小限』のダメージで抑える!!

「走れ!走れ!!時間との勝負だ!!敵が新たな妨害をしてくる前に!!」

「おうよ!!」

「うん!!」

出来た道を3人で走る!!これが!自分が考えた作戦!!

「逆に考えるんだ…脱出する『道が無いなら』―『道を作ればいい』!!」

「すげぇよ!立希!!いつのまにそんな強くなったんだ!?」

走りながら電気君が聞いて来た。自分は走りながらぶっきらぼうに答える

「こちとら地獄の特訓で鍛えられたんだ!!今更『瓦礫』程度で痛める拳じゃない!オラァ!!」

走りながら周囲を見渡す三奈さんがある事に気付く

「そっか…もうこの辺りは『瓦礫』だからもう『倒壊される』ものが無い!」

「そう!そしてワザと破壊してもらえるように『自分達と脱出ゲートが真っ直ぐ離れた位置』まで誘導!!距離は遠いけどこれが『最短ルート』ダァアア!!!」

『酸』、『放電』、『拳』この順番で道を遮るデカい瓦礫を『破壊』し、脱出ゲートへ走る!!

「ラストぉ!」

「つぅ…これで…最後!」

「ウェ…ウオラァ!!」

もう脱出ゲート目の前。最後の瓦礫を破壊!!『脱出ゲート』が見えると、我先にという感じで電気君と三奈さんが走りだす…という所で問題が発生した

「「「!!」」」

最後の瓦礫を壊した時、その瓦礫で支えられていた巨大な鉄パイプが三奈さんの頭上に落下してきた。自分達の今の位置は、前に電気君。真ん中に三奈さん、後ろが自分…

「!三奈さん!!」

「っ!つぅ…!」

『酸』と出して防ごうとした三奈さん…だけど肝心の『酸』が出ず、掌を痛めたような仕草をした。

「!?(もう『酸』が出せないのか!?だったら…!!) フン!!」

「―え」

「うぉ!!立希!?」

鉄パイプが三奈さんに直撃する前に、パイプを殴ってパイプの落下速度を落とす!そのまま自分は三奈さんを抱き上げ―お姫様抱っこして全力で走る!!

「このまま行こう!」

「お、おう…!」

「え…え?」

遂に……自分達は脱出ゲートを通過したのだった。

 

 

side三人称

「(脱出ゲートは俺の背後。なら下手に追撃するより出方をじっくり伺おう)」

イレイザーヘッドは家の天井に中腰で座りながら『大氷壁』を見る。そして八百万が言っていた『オペレーション』が何なのか思考する…と、ここで向こうが動き出したのを確認した。

「―布かよ…」

イレイザーヘッドが見た物。それは『黒い布で覆われて脱出ゲートへ向かう3人の姿。』確かに見えないとイレイザーヘッドの“個性”は発動しない。だか…

「デメリットのがデカいだろソレ」

「「「!」」」

そう呟いて3人の後ろに飛び、『捕縛武器』で3人の頭部を拘束する。

「って」

「った!」

「…!」

轟と藤丸の痛みを訴える声が聞こえるが。八百万の声が聞こえなかった。その理由…『本人は屈み』、頭部の部分はマネキンで『創造』していたのだった。

「マネキンかい」

黒い布で覆われていた姿が現れる。そこには八百万と…

「(『カタパルト』…)」

「っ!!「何するつもりか分からんがさせん!」―あっ…」

八百万がカタパルトの射出レバーを作動させる寸前。イレイザーヘッドは捕縛武器でそれを阻止した。

「……!」

作戦失敗…そう思ったイレイザーヘッド。しかしそれは直ぐに否定する。それは何故か―

「―藤丸さん!」

「了解!」

―八百万の表情はまだ、『勝つ』と言っていたからだ。

「そぉい!!」

八百万の合図で藤丸が投げたのは、カタパルトにセットしていた同様の『偽物の捕縛武器の束』だった。

「―攪乱か?」

一旦距離を置こうと後ろに飛ぶイレイザーヘッド。彼の周囲にはばら撒かれた『偽物の捕縛武器』

「今です!轟さん!」

「ああ!」

「『地を這う炎熱』を!」

「!(当てに来ない…一体何を…)っ!」

轟から放たれた炎はイレイザーヘッドの下を舞う。すると同時に『偽物の捕縛武器』が変化し始める。ギシギシと軋む音が響く。八百万は不敵に笑う。

「先生相手に“個性”での攻撃を決めてにするのは極めて不安…ですから!『ニチノール合金』ご存知ですか?加熱によって瞬時に元の形状を復元する……『形状記憶合金』ですわ!!」

「っ!…………大したもんじゃないか…」

『偽物の捕縛武器』はイレイザーヘッドの体中にがんじがらめに巻き付き、拘束した。そこを轟が持っていた『カフス』で捕まえたのだった…

 

 

side立香

「はぁ……何とかなった…」

「こんなすんなりいくか…」

ヤオモモの作戦が上手くいき、無事イレイザーヘッドを拘束する事が出来た。緊張が解け、どっと疲れが来た。

「…ええ……本当は私がカタパルトを作動させた時点で私達の『勝利』でしたわ…藤丸さんの『念の為』があって正解でしたわ…」

「…最後の『偽物の捕縛武器』を投げる案は藤丸が提案したのか?」

拘束されたまま、イレイザーヘッド…相澤先生が訊いて来た。

「あ、はい。でもこの作戦は全部ヤオモモが提案しました。私はその作戦が失敗しないよう、『もしも』の事を言っただけです。『もし、カタパルトの射出を妨害されたら、もう一組作っていた偽物の捕縛武器を私が相澤先生に投げる』と。」

私はそう言う。まぁ金属だからそれなりに重かった…『魔力』で軽く『身体強化』しといてよかった…

「…藤丸さんのおかげで成功しましたわ…やっぱり私は…「いや何でそこで弱気になるのヤオモモ…これスゴイ事だよ!ね、焦凍君」…え」

「ああ。こんな『作戦』、俺は考えた事がねぇ…こんな事出来るのは八百万だけだ。だから自信持て」

「………っ……はい…っ!」

私と焦凍君がヤオモモを褒めると、ヤオモモはうれし涙…を我慢しつつ笑みを浮かべていた。

「どうした八百万…気持ち悪いのか?吐き気には足の甲にあるツボが…」

「な、何でもありませんわ!!」

「よかったね、ヤオモモ」

演習試験、これにて終了。

 

 

side三人称

「(3人での支え合い……二重の作戦……そして今回で八百万は自信回復………合格だ。)」

和気あいあいとした3人を見ながら、イレイザーヘッドはそう思うのだった。

 

 

side立希

無事脱出。久々に全力で動いた。荒くなった呼吸を整える。後ろでは電気君と三奈さんはその場でへたり込んでいた。そんな自分達を校長先生が出迎えてくれる。

「いやぁ…完全に失念していたよ…藤丸君。君は個性を頼らないで動く人だった…という事だったんだね」

「まぁ…姉みたいに『ゴリ押し戦法』はあんまりしませんし…でも校長に一泡吹かせたのは嬉しいですよ。」

自分の言葉に校長先生は大いに笑った。

「ハハハ!そうだね!悔しいけど一本取られた!ともあれおめでとう!君達は『クリア』だ!」

「うっしゃー!脱出出来たー!!立希あんがとな!!マジで!な!芦度!」

「…え…あー……う、うん!そうだね!」

「二人が喜んでくれると、自分も嬉しいよ。」

何はともあれ合格した。あ~疲れた…本当に疲れた…

「それじゃあ試験の結果は後日!今はゆっくり休みなさい。特に藤丸君はその拳はリカバリーガールに治してもらわないと」

「あー……そうですね」

校長先生に言われ今気付いた。自分の拳は、グローブは破け、皮膚も剥がれ、血だらけだった。瓦礫とパイプを殴ってる時はアドレナリンで痛みを感じていなかったけど、だんだんと痛みを感じて来た…

「グッロ!?え!?そんなんなるまでオモックソ殴ってたのかよ!?」

自分の拳を見た電気君が顔真っ青になった。それと同時、三奈さんが申し訳なさそうに謝って来た

「っ…ご、ごめん!私の『酸』でも傷ついたよね……それに……最後も私が足引っ張ったから…」

そんな二人に自分は気にしてないことを話す。

「んー…平気平気。いっつも特訓で怪我しては傷が無いくらい回復してもらってるから……もうこういうのは慣れちゃったんだよねぇ…」

「いやぁ…まさか最後!パイプが落ちてきた時はマジビビったぜ…」

「で、でもさ…どうして立希は私を助けたの?助けなくても先に走ってた上鳴が脱出ゲート行けばクリアしてたじゃん。」

三奈さんがそう言うが、自分は首を横に振って答える。

「ううん。違うよ。自分の目の前で助けられるのに助けないなんて…そんなの『ヒーロー』じゃないじゃん。それに…折角最後まで3人で行動したからさ!笑ってクリアしたいじゃん!」

サムズアップして二人に言う。エゴを押し付けてる感あるけどこの際別にいい。終わり良ければ総て良し!!

「……~~~~~~っ!そ、そうだね!!や、やったぁーーー!クリアだぁーー!!」

一瞬呆けた三奈さんだったが、次は顔を赤くしながら試験クリアを喜んだ。

「うお!いきなり芦戸元気になったな!?そうだよな!嬉しいよな!林間合宿だぁーー!!」

それにつられ電気君も喜ぶ。うんうん。頑張った甲斐があった…って、ちょっと待てよ?

「(確かに…『クリア』したけど『合格』って言われ―んー?……)」

考えすぎ…か?…まぁともあれ、演習試験が終わった。

 

 

side三人称

「(ふふ…さて、それはどうか…な?)」

3人の前で笑顔を浮かべる校長先生…だがしかし、内心では黒い笑みを浮かべてるのだった。

 

試験が終わり、芦戸は立希と上鳴と別れる。そして誰もいなくなった時…

「あー……もーー……ずるいじゃん…ずるいじゃん!私の事をフォローしてさ!カッコイイ事いってさーー!初めてお姫様抱っこされたー!あーもー!………はー……心臓バクバクしてる………顔暑い………うぅ……」

芦戸は先程の立希の行動と会話を思い出し、悶々とするのだった。



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第23話

劇場版書き始めました。そちらもよろしくお願いいたします。


side立希

「「………………」」

「oh……」

期末テストが終わって次の日。結局の所、演習試験に合格出来なかった砂糖君と鋭児郎君の二人ははっきり分かるぐらい落ち込み、絶望していた。これには何も言えなかった

「立希…土産話…楽しみにしてるぜ……」

悔し涙を我慢しながら言ってくる。

「まだわかんないよ…ちょっと演習試験に違和感持ってるから…」

そんな鋭児郎君に自分はほんの少し希望を持たせて、HRが始まった。

「おはよう。今回の期末テストだが…残念だが赤点が出た。したがって―」

相澤先生の冷酷は言葉に一瞬静寂になり―

「『林間合宿は全員行きます』!!」

「「どんでん返しだぁ!!」」

―相澤先生のカッと見開いた目にその言葉で一瞬にして歓喜が訪れた。

「筆記の方は赤点ゼロ。実技で切島・砂糖…そして芦戸、上鳴、瀬呂が赤点だ」

「「…え!?」」

そしてまさかの電気君と三奈さんも不合格。二人は呆然とする

「う…やっぱりかぁ…」

瀬呂君はどうやら心辺りがあったらしい。聞けば、試験中、ミッドナイトの“個性”で眠ってしまい、何も出来ずに峰田君一人での活躍で合格したとか…ああ、何もしてなかったという事か…そして

「やっぱり…『クリア』=『合格』じゃなかったんだ…」

姉の言葉に自分も納得する。『クリア=合格』じゃない事に…でもそれだと何で自分は合格なんだ?と思った時、相澤先生が配点内容を話す。

「今回の試験、我々敵側は生徒に勝ち筋を残しつつ、どう課題と向き合うかを見るよう動いた。でなければ課題云々の前に詰む奴ばかりだったろうからな。」

「え、えぇ!?じゃあ俺と芦戸が不合格って理由は…」

「お前ら二人、全部藤丸弟の采配に任せっきりだったじゃねぇか。もっと自分達で考えて行動しろ。逆に藤丸姉は作戦に『予備』を提案。そして『味方の士気回復』。それらが無かったらお前だけ不合格だった。」

『ガーン』という文字を背景に、ガックリと項垂れる電気君と三奈さん…ごめんね。二人の意見を聞けばよかった…

「ひぇ…あっぶなー…」

姉も姉で活躍してたんだ…流石姉!略して『さす姉』!

「えっと…本気で叩き潰すと仰っていたのは…」

瀬呂君がおそるおそる聞くと、相澤先生はハッキリ言う。

「追い込ませる為の『合理的虚偽』ってやつさ」

「「ゴウリテキキョギィイー!!」」

…まぁ結果はどうあれ、全員で林間合宿行く事になったからよかった。ただまぁ…赤点組は別途に補修時間が設けられ、そこはキッチリと宣告された。どんまい…

 

 

side立香

「―ってな感じでやってきました!『県内最多店舗数』を誇るナウでヤングな最先端!『木椰区ショッピングモール』!」

三奈ちゃんが大声で紹介してくる。

「へぇ…こんな場所あったんだ…」

「広…そして人多…」

テスト明けの休日。私達A組は林間合宿の準備で買い物にやって来た。A組全員…ではない。爆豪君はいつもの群れるの嫌いで拒否、焦凍君はお母さんのお見舞いでいない。

「で、どうするの?」

「ウチ大きめのキャリーバッグ買わなきゃ。」

「では一緒に回りましょうか」

「俺アウトドア系見に行くんだけど」

「あー!私も私も!」

早速買い物…と言いたいところだったが全員がバラバラと言い出し動こうとする。

「個性の差による多様な形態で数をカバーできる以外にもティーンからシニアまで幅広い世代にフィットするデザインが集まって―「緑谷、幼子が怖がるからよせ」」

「取り敢えず目的バラけてっし時間決めて自由行動すっか!」

最終的に、切島君の提案で集合場所と時間を決め、各々行動する事になった。

「姉、どこ行く?」

「ん。靴かな。昨日探したら色褪せてたから新品に替えるには丁度いいかなって、そっちは?」

「自分も靴。サイズが小さかった…はぁ、自分こういうファッション系は苦手だ……」

「あー、そうだったね。前に私がとっかえひっかえして私服選んだ事あったよね」

立希とそんな会話しながら、アウトドア系に行く。因みにメンバーは私達以外に上鳴君、飯田君、三奈ちゃん、葉隠ちゃんの計6人。店に入ると、色とりどりの靴…今の時期はサンダルも。大量にあった

「うっわ…どれ買えばいいかわからん…姉…「やだよ。自分で決めろ」ういっす…」

早速立希が私に頼ろうとしてきたから拒否する。それくらい自分で何とかしろ。

「何々?立希ファッションに自信無いの?」

そんな時、三奈ちゃんが割って入って来た。立希はため息つきながら話す。

「三奈さん…正直そうだね…全く自信がない…新しい靴買いたいけど本当にこれでいいのか…とか自分に似合っているか…分からなくてずっと同じもの履いてる自分が今ここにいる…」

「アハハ!ダメだよ!今の時代!男も女もファッションは大事だよ!……じゃ、じゃあさ!私が見てあげようか?」

と、三奈ちゃんは立希に提案してきた。立希は驚いていた

「…え?いいの?三奈さんは三奈さんで自分の事「いいの!いいの!それに、期末テストで助けてもらったお礼まだしてないし!これで貸し借りは無しって奴だよ!」…じゃあお願いします…」

「それじゃ、し立香ちゃん立希借りるよ~♪」

「あ、うん。どうぞ」

そう言って立希の腕を引っ張って男子の靴がある方へ行く二人。気のせいか、いつもより笑顔な感じの三奈ちゃんだった。

「(…お?これは…?) 「Loveの匂いがするね!立香ちゃん!」葉隠ちゃん…いやどうかな…弟そんなイケメンじゃないし、本当にその期末テストのお礼だけかもしれないよ?」

後ろからぬっと出てきた葉隠ちゃん。透明で分かんないけど絶対イイ笑顔してる…

「どうかな~…そして私はまだ聞いて無いよ~立香ちゃんと、轟君の関係♪「だから…違うよ…」 ふっふっふ~♪」

まだ諦めてなかったか葉隠ちゃん……言えるわけがない…保須市での出来事を……ふと靴が並んである棚が視界に入った。

「(…あ、コレ焦凍君に似合いそう………って何でいきなり彼の事考えた!?ああもう!葉隠ちゃんのせいで意識しないようにしてたのが意識しちゃったじゃん!はぁ…) もうヤダ…」

「藤丸クン、どうしたのかね!?どこか具合が悪いのかい?」

「ナンデモナイデス。ハイ…」

項垂れながらも私は靴を買う…

 

 

side立希

三奈さんの提案で色とりどりで何種類もある靴を見る。

「これなんてどう!?ピンク!」

「正直、派手系は自分に似合わないと自負してます。「そっかー…うーん…じゃあ……青!」あ…いいかも…もう少し暗い色で「ダメダメ!折角夏なんだよ!明るく行かないと!」う、うーん…じゃあ思い切って明るい青にしてみるよ…ありがとう、三奈さん」

「いいよいいよー!これくらい!それに私こういうファッション好きだし!」

三奈さんのおかげでスムーズに靴が買える。少し押し切られた感があったけど…でも無事に買えてとても気分が良い。これも彼女のおかげだ。感謝。

「……立希はさ…こう……人外系の女子って…どう…思っちゃう?」

三奈さんも自身の物を買い終え皆の所に戻る時、ふとそう聞かれた。

「うん?どういう事?」

「あー…ほら、私さ!こう、皆と違って肌とか髪ピンクだし、黒目で触覚生えてるじゃん?どうかなーって…」

いきなり言われ、少し困惑した。…もしかして皆と見た目が違ってコンプレックスがあるとか?それを元気と明るい性格で補って隠してるとか…?うーん…深刻な悩みだったら簡単な事は言えないぞ…

「うーん……自分の意見。としては、三奈さんっぽくていい…と思うよ。」

「…えっと?」

少し恥ずかしいけど…これで三奈さんの悩みが解決するならいいか…さっきの事も感謝して…よし

「んと…何て言えばいいのかな…そう思い詰めて考えなくてもいい。って事だよ。その…綺麗な桃色の髪と肌…えーと、宝石見たいな黒目。そしてそのー…小さくて可愛い触覚とか、そういうの含めて、芦戸三奈っていう“個性”で―「あああああ!ストップ!ストォップ!ありがとう!!」ア、ハイ」

褒めながら説明したら止められた。ま、まぁ感謝されたからいいのかな?それ以降の会話はあまりなく、皆と合流するのだった…

 

 

side三人称

芦戸は隣で一緒に歩いている立希を見ながらほんのりと頬を朱に染める

「(あー…もー……なんでそういう浮いた事ポンポン言えるの!?……でも…綺麗…か……) エヘヘ…「?どうかした?」~~っ!何でも無いよ!うん!早く行こ!」

「そうだね。ありがとう三奈さん」

「う、うん…(あー………何かこれからどう接すれがいいか分かんなくなる……)」

悶々とする芦戸…そんな彼女を後ろから葉隠は隠れながら眺めてるのだった。

「(ほほう…三奈ちゃん…まさか立希君の事……フッフッフ~♪)」

「(透明だけど浮いてる服装で隠れてるの見えてんだよねぇ葉隠さん。どうしたんだろ?)」

因みに葉隠の行動は立希にバレバレだった

 

 

side立香

その後、緑谷君が敵と遭遇したとの事、それを麗日さんが警察に通報したことにより、一時ショッピングモールを閉鎖。周囲を警察が捜索するも結局見つからなかった。

「―とまぁ、そんな事があって敵の動きを警戒し、例年使わせて頂いている合宿先を急遽キャンセル。行き先は当日まで明かさない運びとなった。」

次の日、HRにて相澤先生はそう告げる。

「…大丈夫…だよね?」

心配顔になる立希。私は深く考えない事にした

「まぁ、いいんじゃない?林間合宿事態無くならなくて。(それにいざとなれば英霊達が何とかするでしょ。)」

こうして、濃密だった前期が幕を閉じて、夏休み―林間合宿が始まった。

 

林間合宿当日。A組B組各々バスに乗って移動する。一体何処に行くのか全く分からない。ただ風景が山ばかりだから海では無いと分かる。そしてバス内では…

「音楽流そうぜ!夏っぽいの!」

「ポッキーちょうだい!」

「しりとりの~り!」

「席は立つべからず!」

まぁ騒がしい。これ相澤先生に怒られない?因みに隣の席は立希だが…

「スゥー…スゥー…」

寝てるし。車酔いしやすいからという理由もあるけど…よくこんな騒がしい中寝れると思うよ。

「藤丸さん…」

「ん?何ヤオモモ?」

「その…期末テスト時、私を励ましてくれて、ありがとうございますわ…藤丸さんがいなかったら私はずっと自分に自信がありませんでした…」

向かい座席に座っていたヤオモモに突然、感謝された。

「いやいや。期末はほとんどヤオモモのおかげで、私と焦凍君が合格出来たんだから。感謝するのはむしろ私だよ…ありがとう」

「…ふふ、ではお互い感謝という事で……ところでその『ヤオモモ』何ですが…」

「あー……ずっと言ってた…八百万さんに戻す?」

「いえいえ!むしろそれでいいですわ…その…初めて同級生に“アダナ”というものが付けられて…私、うれしくて…」

「(カワイイ…) そっか、じゃあそっちも名前で呼んでよ。『藤丸』だなんて堅苦しいでしょ?」

「え!いいんですの!?そ、それでは……コホン……り、立香……?」

「うん。これからもよろしく、ヤオモモ」

「はい…!」

改めて仲良くなった私とヤオモモ。お互い微笑んでると

「女子の友情……グッジョブ!」

ヤオモモの座席の後ろから出てくる葉隠ちゃん…最近、葉隠ちゃんが神出鬼没だ。

 

一時間後、休憩でバスが止まる。全員バスから外に出る。私も立希を起こしてから外に出る。

「あー……良く寝た……ん?ここどこ?」

「さぁ…というかパーキングすらないって…」

「お、おしっこ…」

さっきから峰田君がバタバタと忙しなく動いている…ああ、トイレ…か

「B組何処だ?」

周囲を見渡す。まぁ何もない。止まった場所から広い森を見下ろせる…

「…何の目的もなくでは意味が薄いからな…」

「目的…?」

相澤先生の言い方が引っかかる。その時、プロヒーローが決めセリフと決めポーズをして現れた。緑谷君の説明から、プロヒーロー『プッシーキャッツ』と分かる。山岳救助を得意とした12年のキャリアを持ったベテラン4人1チームらしい…なんか金髪の女性は「心は18!」って緑谷君に猫パンチしてたけど…あと…

「………………ふん」

その帽子の子は誰?機嫌悪そうだし…

「ここら一帯は私らの所有地なんだけどね。あんたらの宿泊施設はあの山の麓ね」

『遠っ!!』

山の方向に指さした赤茶髪の女性…んん?じゃあ何でこんな遠い所にバスを?

「(あ、嫌な予感して来た…)」

「………あー………」

なんか立希が察したような顔になった。あ、これはマズい。と私は感じた。

「いやいや…」

「バス…戻ろうか…な?早く…」

「今は『A.M.9:30』早ければ12時前後かしらん?」

皆も薄々気付き、バスへと戻ろうと動く人もいる。そんな中、プロヒーローは話しを続ける

「ダメだ…おい…」

「戻ろう!」

「バスに戻れ!早く!!」

これから何が起こるか。容易に想像できた。私も直ぐにバスへと向かい―時、立希に肩を掴まれた。

「…諦め」

「ちょ―」

「12時半までに辿り着けなかったキティはお昼抜きね」

「悪いね諸君―」

金髪の女性がしゃがみ、地面に手を着くと、地響きが始まる。そして―

「合宿はもう―」

『うわああああああああああああああああ!!!!!』

地面がめくりあがり、『土の津波』が私達を飲み込んで崖から突き落とした…

「―始まっている」




次から第三期で切りがいいので、劇場版の方を多めに投稿します。


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第3期
第24話


side立希

『うわああああああああああああああああ!!!!!』

「私有地につき“個性”の使用は自由だよ!今から3時間!自分の足で施設までおいでませ!」

「っと―!「きゃあ!!」あだぁ!?」

「あ、ゴメン!立希!!」

「イダイ……」

『土の津波』に飲み込まれ、崖から突き落とされる。何とか体制を整えて、柔らかい土の上へと着地。と思ったら背中から三奈さんに潰される。

「―大丈夫か、立香」

「…あ、ウン……その…降ロシテクダサイ…」

そして隣では焦凍君が姉を受け止めてた。イケメンかよ…

「では諸君!健闘を祈るわ!この…『魔獣の森』を抜けて!!」

「魔獣の…森!?「三奈さん…そろそろ退いてくれると…」あ、あー!ごめん!!」

若干土まみれになったけど軽く払い落として立ち上がる。

「アダダ…まぁ三奈さんに怪我無くて何より…というか何ドラクエ染みた名前の森…」

「雄英こういうの多すぎ…」

「文句言ってもしゃあねぇよ。行くっきゃねぇ」

「耐えた…オイラは耐えたぞ!」

峰田君が森の奥へ走って行く。トイレ我慢してたのね…

『グルルルル…』

だが峰田君の目の前に化物が現れた

『マジュウだぁーーーー!!!』

「―ぁ」

峰田君……ドンマイ……じゃない。あのままだと襲われる!!

「『静まりなさい獣よ!下がるのです!』」

「口田!」

『グルルルル…』

「!?」

口田君が“個性”『生物ボイス』を使って魔獣を操ろうとしたが、通じていなかった。

「っ!成程…土くれ!!」

「え!?じゃあアレって『土で出来た獣』なの!?」

「そういう事だね!」

魔獣の正体が分かった時、各々動く。

「―っ!」

「死ねぇ!」

「『レシプロバースト』!」

「『フルカウル』!!」

特に爆豪君、飯田君、緑谷君、焦凍君。4人が一早く。焦凍君が土くれの魔獣の足を『氷結』で止め、飯田君が『蹴り』で、爆豪君が『爆破』で片腕ずつ破壊。そして最後に緑谷君が『スマッシュ』を獣の胸部に放ち、獣事態を滅ぼした。

「すげぇ!あの魔獣を瞬殺かよ!」

「やったな!轟!」

「流石だな爆豪―「まだだ!」―え…」

『ガロロロロロロロロロ』

爆豪君が言ったように、まだ。終わっていない。遠くから地響きが聞こえ、振動も来る。そしてさっきの魔獣と同じ咆哮も聞こえる。

「何体いやがんだここ…っ」

わらわらと出てくる魔獣にビビる電気君

「どうする!?逃げる!?」

「冗談!時間までに行かねぇと昼飯抜きになっちまうぞ!!」

慌てながらもどうするべきか考える三奈さん、鋭児郎君。

「なら…ここを突破して最短ルートで施設を目指すしかありませんわ」

「ケロ…」

「……(コクコク)」

「オッケー…」

「よし来た…」

八百万さんの案に皆頷く。

「よし!行くぞ!A組!ここを突破するぞ!!」

『おう!』

飯田君の号令にてこの森の攻略を開始した。

 

 

side三人称

各々行動に移る。まずは情報。障子は『複製腕』で目と耳を増やし、耳郎は木に『イヤホンジャック』を刺し、魔獣の位置を調べる。

「前方から3匹!左右に二匹ずつ!」

「―!上空からも……来るよ!!」

『ガァアアア!!!!』

「よし来たぁあ!!」

上空から来た獣を瀬呂が『テープ』で翼を拘束。不時着させる。

「砂糖!切島ぁ!」

「「うっしゃあ!!」」

切島は『硬化』した腕で獣の胴体を連続で殴り続け、砂糖は『シュガードープ』で身体能力を上げ獣の顎をアッパーし、破壊する。

「『黒影(ダークシャドウ)』!」

『アイヨ!!』

「せいっ!!青山!今だ!」

別の所で、常闇が獣の注意を惹きつけ、尾白は隙が出来た胴体に『尾』で叩き、バランスを崩す。そして―

「トドメね☆!」

木の上にいた青山が『ネビルレーザー』で獣を撃ち、破壊する。

「チックショー!!お前らのせいで!!オイラのズボンがびっちょびちょじゃねぇかぁああ!!」

『ッ!』

峰田は泣き叫びながら『もぎもぎ』を獣に投げまくる。『もぎもぎ』がついた木、地面に触れた獣はくっつき動けなくなる。

「離れてろ峰田ぁ!!『130万ボルト』ォオオオオオオ!!!」

『!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?』

動けなくなった獣の上に飛び乗った上鳴は『放電』し、焼き焦がす

「『森の鳥たちよ!悪しき獣を!ここから排除するのですっ!!』」

『グルルルル…』

また違う場所にて、口田の『生物ボイス』で操られた大量の鳥が獣の周りを飛び回り、獣の注意を惹く。

「―ほいっと!!」

『!?』

そこに芦戸が近づき、『酸』で獣の片足を溶かす。土くれなため簡単に崩れ落ち、動きを止める。

『オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!』

「うわー!!たいへーん!やられちゃうーーー!!」

「葉隠れさん。ナイス囮ですわ。」

「ホラさ!」

『オオオオ!?』

『透明』で狙いが定まらずに葉隠を追って来た獣。そして芦戸がまた『酸』で片足を溶かして動きを止める。

「皆さん!伏せて下さい!!」

『ガァ!?』

『グゥ!?』

八百万の号令で伏せると、獣二体の顔面に『砲弾』が着弾して破壊する。

「やったね!ヤオモモ!」

「はい!」

芦戸は『大砲』を『創造』していた八百万にグッドサインを送る。

「―いいよ!梅雨ちゃん!!」

「任せて!ケロォオオ!!」

『オオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!?!?』

動きが鈍い獣に近づいた麗日は『無重力』で浮かし、その獣を蛙吹が『舌』で掴み上空へ高く飛ばす。そして―

「―『解除』!」

『ガッ…!!!』

個性を解除し、落下させ破壊した。

「更に多数出現!!」

『『『『『『ガロロロロロロロロロ……』』』』』』

「姉!ゴリ押しで行こう!来い―」

「オッケー!来て―」

「「『アルターエゴ』!!」」

「―悪い獣たち……なら、しょうがないですよね」

「―ご指名感謝いたします。全力で楽しませていただきますね」

藤丸姉弟。『英霊召喚』で英霊を呼ぶ。し立香は入試の時に出したアルターエゴ、『殺生院キアラ』そして立希は同じくアルターエゴ、『パッションリップ』を召喚した。

「「『宝具』発動!!」」

「―私の告白……聞いてくださいっ!」

「―衆生無辺誓願度」

パッションリップは巨大なカギ爪のロケットパンチで獣達に猛攻を加え、キアラは名もなき魔神柱と光弾の手を出現させ獣達の体を串刺しにする。

「この両手は冷たい鉄のままだけど、心までは怪物にならないように……!逝って!―」

パッションリップは締めに再合体したカギ爪で対象を握り潰す

「―『死が二人を別離つとも(ブリュンヒルデ・ロマンシア)』!」

「大悟も解脱も我が指ひとつで随喜自在。行き着く先は殺生院。顎(あぎと)の如き天上楽土。うっふふふ…天上解脱、なさいませ?―」

キアラは体内に獣達を入れる。彼女の体内は一つの宇宙であり、極楽浄土となっている。その中に取り込まれたものは現実を消失し、自我を説き解され、理性を蕩かされる。どれほど屈強な肉体、防御装甲があろうとキアラの体内では意味を成さず、生まれたばかりの生命のように無力化し、解脱する

「―『快楽天・胎蔵曼荼羅(アミダアミデュラ・ヘブンズホール)』。どこまで逃げても、掌の上」

瞬殺。二人の前に大量にいたはずの獣は跡形も無く消え去った。

「馬鹿な獣たち。キューブにして捨ててあげます」

「何もかもが塵芥。無残に散らすことに何の痛みがありましょうや」

「スッキリしたね」

「まだまだいる…油断せずに行こう!」

 

 

side立希

「―全然っ間に合わねぇ!!」

「だね…」

「ハラ減った……」

時計の針は12時をさす。自分達がいる所はだいたい森の中間。3時間経過したけど誰一人辿り着いていない。プロだったら辿り着くのかな…

「だ、大丈夫ですか!?マスターさん!」

「リップ…ん。大丈夫だよ。さっきはありがと」

「は、はい…えへへ…」

自分は岩の上に座って休んでる。隣にいるリップが心配そうな顔をして聞いてくるから安心させるように頭を撫で、さっきまでの戦いの強力に感謝する。少し離れた所に姉が折れた木の上に座ってキアラさんと一緒に休んでる

「ふふふふ……より強く、より弱く、はぁ…、美味しそう♪」

「キアラさん……ストップ…今……疲れてるから……やめて……」

「冗談ですよ……マスター……フフッ」

『またスゲェ奴呼んだな藤丸姉弟!!』

すんごい目で見られた。

「な、なんてデケェパイもってんだあいつ…」

「あの女性なんて服際どすぎんだろ…っ」

「藤丸姉が呼んだ女性…何か目がヤバくないか?」

「ああ…なんか完全に目が捕食者だぜ…」

「喰われるなら本望」

「お前もう色々とヤベェな」

「立希ちゃん。立香ちゃん。今度は誰を呼んだの?」

ヒソヒソを言われつつも梅雨さんに聞かれ、答える。

「自分が呼んだのはアルターエゴ、『パッションリップ』。ヒンドゥー教の女神ドゥルガーとパールヴァティー、北欧神話の戦乙女ブリュンヒルデを掛け合わせ生み出されたハイ・サーヴァント」

「は、ハイ!よ、よろしくお願いします!」

『うおぉぉ……っ!』

「………っ!!」

ああ…リップが丁寧にお辞儀するから彼女の豊満なメロンが暴れてほとんどの男子が股間を抑える…そして耳郎さんから殺気が来るのは気のせいとしておこう…

「姉は「同じくアルターエゴ、『殺生院キアラ』。真言立川詠天流の(ド変態の)尼僧」なんか変な間があったような…」

姉もキアラさんの事を軽く説明する。キアラさんは笑みを絶やさずに一礼した。

「ふふふ…お見知りおきを……」

というか峰田君がすっごい形相でリップのメロンを凝視している…というか息荒すぎ。

「……………「峰田君。リップの胸ばかり見ないでくれる?触れようとしたら圧殺するからね?」っ!?…それでも……オイラは……っ」

「む、胸ばっかり見ないでください!もう……あんまりひどいと、胸の中にしまっちゃうんだから……」

「アラアラ…あの少年……良いですわね…いい具合の『性』について興味関心が高い…フフフ「キアラさんマジでアウトだから。そして峰田君をこれ以上変態にしないで。ホント。マジで」」

『よくわかんないけどあのお姉さん…色々とアウトだ!!』

峰田君以外、身を屈ませて守る体制になった。うん。その自己防衛は正解です。

「しっかしハラ減った…」

「誰か菓子とかもってないのか!?」

「荷物全部バスだよ…」

ぐったりする皆。そして空腹音が聞こえてくる。

「…立希」

「はいはい…リップ」

「あ!はい!ん…しょ!」

『!?』

しょうがないから、姉に呼ばれた自分はリップに頼む。リップが巨大なカギ爪で自信の胸あたりを漁る。するとそこから風呂敷で包まれた『箱』が現れる。リップの胸は簡単に言えば異次元空間。某猫型ロボットのポケットみたいなもんだ。

「えへへ…皆さ~ん!私がお菓子沢山もってますので是非食べて下さ~い♪」

『!ありがとうございます!!』

これで皆多少元気になり、自分達は再び魔獣の森の中を斬り抜け始める…



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第25話

side立香

時刻はP.M.5:20。ようやく合宿場にたどり着いた。

「やーーっと来たにゃん。とりあえずお昼は抜くまでもなかったねぇ…」

「何が3時間ですか…」

「腹減った…死ぬ…」

「悪いね。『私達』ならって意味。アレ」

「はぁ…やっぱり…」

「実力差自慢の為かよ……」

「(い、いやらしい…)」

私含め、全員クタクタになる。

「ねこねこねこ…でも正直もっとかかると思ってた。私の『土魔獣』が思ったより簡単に攻略されちゃった。いいよ君ら…特に…そこの6人。躊躇の無さは『経験値』によるものかしらん?」

緑谷君、爆豪君、飯田君、焦凍君…そして私と立希が指さされた。まぁ…ああいう化物以上の化物と大量に闘ったからね…アレは地獄だった…うん

「3年後が楽しみ!ツバつけとこーー!!プップッ!!」

「うわ!」

「汚い!!」

「これは酷い…」

そして、山に入る前からいた帽子の子が紹介された。赤茶髪の女性の従甥―『洸太君』。緑谷君が近づいて握手しようとした時…洸太君。まさかの緑谷君の急所を殴った。

「い、いてぇ…あれは…」

「緑谷君!何故陰嚢を!!」

「ヒーローになりたいなんて連中とつるむ気ねぇよ!」

完全に私達を嫌っていた。まぁ小さい子あるあるの反抗期なんだろうね。どことなく爆豪君に似てる…

「マセガキ「お前ににてねぇか?」あ?似てねぇよ!つーかてめぇ喋ってんじゃねぇぞ舐めプ野郎!!」

「悪い」

あ、焦凍君と同じ事考えてた。それから、バスから荷物を降ろし、部屋に運ぶ。そして直ぐに夕食となった。夕食はすごく美味しかった。それはもう五臓六腑に染みわたるくらい。というかお昼(?) がお菓子だけだから皆お腹が減り過ぎて変なテンションになっていた。

「―おかわり」

「すごい食うね…」

「いやもう…お腹すき過ぎて…それにさっき『世話焼くのは今日だけ』なんだから食べるだけ食べたほうがいい……うん美味い…」

「そうだね……」

夕食の後は皆で入浴。案の定峰田君が覗きをしようとしてきたが、洸太君の防衛で覗かれずにすんだ…けど三奈ちゃんが男女風呂の壁の間にいた洸太君に思いっきり素肌みせて感謝の手を振ったから洸太君は男子風呂の方に落ちて行った…まぁ緑谷君辺り受け止めていたような声が聞こえたから大丈夫なはず。

「芦戸さん。はしたないですわ…」

「いーじゃんいーじゃん。まだ子供なんだし」

「図太いのね三奈ちゃん「なっ!?ふ、太ってないし!痩せてるし!」そういう意味で言ってないわよ」

「っ…藤丸も…ヤオモモも……なんで大きいの……っ」

また耳郎ちゃんに睨まれた。いやだから―

 

「お早う。諸君」

『おはよう…ございます…』

「(眠い…)」

合宿2日目。起床時間はA.M.5:30普段だったらまだ寝てる…A組全員ジャージに着替えて外に集まる。

「本日から本格的に強化合宿を始める。今合宿の目的は全員の強化及びそれによる“仮免”の取得。具体的になりつつある敵意に立ち向かう為の準備だ。心して臨むように」

『っ…はい!』

真剣な相澤先生の声を聞いたら、眠気が少し飛んだ。こっからが厳しくなるという事だ。気を引き締める

「というわけで爆豪。こいつを投げてみろ」

「これ…体力テストの…」

爆豪君に渡された物は、最初の『体力テスト』の『ボール投げ』で使われた球だった。どれだけ成長しているか。もう一度確認するのだった。

「この3ケ月濃かったから1kmとかいくんじゃね!?」

「いったれ爆豪ォー!」

「んじゃよっこら―『くたばれ』!!」

「(…くたばれ)」

爆豪君は全力でボールに『爆破』の威力を乗せて投げた。結果は―『709.6m』

『!!?』

「あ、あれ…?思ったより…」

「伸びてない…」

いい記録かと思ったら全然変わってなかった。これには投げた爆豪君含め、全員動揺する。

「約三か月間。様々な経験を経て確かに君らは成長している。だがそれはあくまでも『精神面』や『技術面』後は多少の体力的な成長がメイン。“個性”そのものは今見た通りそこまで成長していない。だから―」

相澤先生はワザとらしく、嫌らしい顔付きで言う。

「―今日から君らの『個性を伸ばす』!死ぬ程キツイがくれぐれも…死なないように―」

うーん…ぶっちゃけカルデアと変わらない気がする?

 

 

side三人称

「な、なんだこの地獄絵図…」

“個性”を伸ばす特訓。B組メンバーはA組メンバーが個性伸ばしをしている状況をみてそう言葉を落とす。B組担任、『ブラド・キング』は説明する。

「限界突破だ。許容上限のある発動型は上限の底上げ!」

―クソガァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!―

―ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!―

「異形型・その他複合型は“個性”に由来する器官・部位の更なる鍛錬!」

―ヘ……へ……へ……―

―ぎゃああああああああああああああああ!!!―

「通常であれば肉体の成長に合わせて行うが…」

「まぁ時間がないんでな。」

―いてぇええええええええ―

―うああああああああああ―

『……………』

B組全員絶句する。しかしA組でも22人。B組もはいれば42人。この数を6人で教育出来るかと不安になる生徒もいた。が、それは杞憂。プロヒーロー『ワイルド・ワイルド・プッシーキャッツ』の4人の個性。『ラグドール』の『サーチ』、『ピクシーボブ』の『土流』、『マンダレイ』の『テレパス』、そして『虎』の『軟体』が全員の個性伸ばしのサポートに徹しする事が可能だった。そんな時だった。今も皆が放つ轟音。衝撃音とは倍以上の轟音と衝撃、振動がB組に襲う

「な…なんだぁ!?」

「イレイザー…これは何だ!?」

「…あの姉弟が召喚した奴らだ…たく…」

「また『土のフィールド』壊したの!?もぅ!!どんだけ強いのよ彼女らは!!」

―ノブナガ波ァ!―

―グルルルル…アォオオオオオオン!!!!―

―殴ッ血KILL (ブッちぎる)!!―

―肉塊に、成り果てるがいい!―

―塵芥と化せ!―

―喰ろうてやる―

「…あ!体育祭で見た奴らだ!!」

「えっと…たしか織田信長…やっぱりなんで水着?」

「というか待って、鬼いねぇか!?」

「狼…え?狼ってあんなデカいの?」

「なんで狐の尻尾と耳生やしてエプロンつけてんの?」

「腕から黒い炎だすってなんか漫画で見た事あるし!!」

「はいはーい!また作るから壊さないでよねー!!」

6人を囲うように土の壁で覆い、『フィールド』を作り上げるピクシーボブ。

「これで5度目よ…手加減をしらないのかしら…」

「というかあんなの使役してる藤丸姉弟がすげぇよ…」

「その二人は何処に?」

「『我ーズブートキャンプ』にて鍛えている。奴ら。中々いい動きをしている。単純な増強型はこっちに来い!」

『(古…)』

兎に角B組も“個性伸ばし”に取り掛かる。

 

 

side立香

「結構……辛いもん…だ……英霊……3体……呼んで……の……この運動……っ!」

「そう……だねっ!……という……か……フルで……呼ぶの……久しぶり……かもっ!!」

「ひ~~~~!!」

私と立希、緑谷君で『我ーズブートキャンプ』をしている。ぶっちゃけ『レオニダスブートキャンプ』の方がつらい。だから会話しながら運動していた。

「ふむ…やはりお前たちは普段から肉体を鍛えてるな…ではもっと鍛えるとしよう!」

「藤丸姉弟。『重り』を付けろ」

「「…え」」

相澤先生が取り出した道具―見た事があった。そう、期末テストで先生達が取り付けていた『超圧縮重り』だった。

「おっも!?」

「た、確か…体重の約…半分……っ!」

問答無用にその重りを両手首足首に取り付けられ、さっきより動かしにくい状態で運動する。というか重すぎ!

「くくく…筋肉にいい負荷がかかってるな……そうだ!限界を超えろよぉ~さっさとプルスウルトラしろよ!さぁさぁ!!」

「この人……だけ……っ……性別も…―」

「―ジャンルも……違うっ……!!」

「うぉおおおおお!!!」

「よぉおおおし!伸ばせ千切れ!ヘボ“個性”を!!」

因みに私と立希の個性伸ばし。『魔力量が限界値でも体を自由に動かせるぐらいの体力と精神力の強化。』だ。この特訓は夕方まで続いた……やっぱりこっちも辛い……



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第26話

小説版の所を少々…


side立香

合宿2日目の夜。それは葉隠ちゃんが言いだした事で始まった。

「女子会しよー!女子会!折角だし!」

私達A組女子が使っている部屋にB組女子メンバーがやってきて『女子会』が始まった。部屋の真ん中にお菓子、ジュースを置き、布団をクッション代わりに車座になる。

「それでは!『第1回 A組B組合同女子会』を祝ってカンパーイ!」

『カンパーイ♪』

「二回目はあるのかしら?」

三奈ちゃんの号令で私達は乾杯する。すると、私の隣にいるヤオモモはわくわくしていた。

「私、女子会初めてなんですけど…どういう事をするのが女子会なんでしょうか?」

「えーと…女子が集まって飲み食いしながら話す…とか?」

私は曖昧に答えた。女子会はまぁ…カルデアの女子メンバーでした事はある。その時は…マリーちゃんとデオン君とアストルフォと玉藻…何か二人程女子じゃないな…

「ちっちっち…そうじゃないでしょ!立香ちゃん!」

見えないけど葉隠ちゃんは指を振った。そして―

「女子会と言えば……『恋バナ』でしょうがー!」

『!!』

その言葉に一部の女子がテンション上がる。

「そうだ!恋バナだ!女子会っぽい!」

「うわぁ~」

「恋ねぇ」

盛り上がる三奈ちゃんにほんのり顔を赤らめる麗日ちゃんに梅雨ちゃん。

「えー……」

「あー、そういうノリか」

「あはは…」

戸惑う耳郎ちゃんと苦笑する拳藤さん。そして苦笑するしかない私。

「こ、恋!?そんなっ結婚前ですのに……」

「その通りですわ。そもそも結婚というのは神の御前での約束で―」

戸惑いつつまんざらでもなさそうなヤオモモに慈愛満ちるシスターのような塩崎さん。

「鯉バナナ?」

「んーん?」

首をかしげて分かってなさそうな柳さんに小大さん。反応が色々だがとりあえずテーマは『恋バナ』に決まった。

「それじゃ、付き合ってる人がいる人ー!」

言い出しっぺの葉隠ちゃんがそう言う…が、私含め女子達は周囲に視線を送るだけで誰も手を上げなかった。

「……えっ誰もいないの!?」

「え!?恋バナこれで終わり!?」

驚愕した葉隠ちゃんと三奈ちゃん。

「中学の時は受験勉強でそれどころじゃなかったけど、雄英に入ったら入ったでそれどころじゃないもんなー」

拳道さんの言う通り。私達はうんうんと頷いた。私も人理修復で忙しかったし…

「ああー…でも恋バナしたい!キュンキュンしたいよー!ね、片思いでもいいから誰か好きな人いないのー?」

何度聞いてもだれも手を上げない。これで終わりかな…と思った時だった。

「まだだ!まだ終わらないよ!!ねぇ立香ちゃん!!」

「…え゛!?わ、私!?」

突然の葉隠ちゃんから使命された。この瞬間嫌な予感が来た。

「ふっふっふ…そろそろ聞きたかったんだよねぇ~…轟君との仲を!」

『え!?』

「っ!?」

その言葉に、全員が私を見て来た。

「あー…確かに、何か轟と仲よさげだよね、藤丸」

「職場体験後なんかお互い『名前呼び』してたし!」

『え!?そうなの!?』

「っ~~~ちゃ、ちゃうねん!」

柄に無く、私は動揺する。不意に焦凍君と電話した時の会話が蘇り、顔が赤くなる。それを見てか葉隠ちゃん達のテンションが上がった。

「え~!?じゃあ何でお互い『名前呼び』になってるの~?」

「そ、それはほらアレですよ。弟と被ってややこしくなるじゃないですか。」

「え?だったら立香ちゃんは別に『轟』でいいじゃん?」

「えーとそれは焦凍君が『それだと藤丸に失礼だ』と言われて『お互い名前呼びしよう』という結果になって―『『お互い名前呼びしよう』!?』―ち、ちゃうねん!!」

葉隠ちゃん、三奈ちゃんからのマシンガントークが来て、墓穴を掘ってしまった。もう勘弁してほしい…と思ったところで…

「…あ、そういえばウチ聞いたんだけど…立香ちゃん轟君の『許嫁』?になるん?」

静寂。からの―

『許嫁けぇ!?』

麗日ちゃんから爆弾が投下された。血の気が一気に冷えた。

「ど、どこからそれを…」

「へ?飯田君から……もしかしてこれいわへんかった事やった?」

飯田ぁ…お前ぇええ!!!そうだよ…焦凍君以外にも飯田君と緑谷君にも聞かれたぁ…

「え!?もはや『恋』吹っ飛ばして『許嫁』!?」

「A組のイケメントップをもう手駒に!?」

「待って下さい話を飛躍しないでください!」

「誰か電気スタンドとカツ丼持ってきて!事情聴取するから!」

マズイ…このままだと私が死ぬ!(精神的に!) ここは話題を切り替えるしか…っ!

「ふふふ…逃がさないよ~!「そ、そういう三奈ちゃんだってどうなの?」へ?私?」

「私の弟……立希の事気になってる仕草を私はちょいちょい見てたよ?」

「―へ!?」

私が指摘すると、三奈ちゃんは激しく動揺する。

「おやおやぁ~これまたLOVEの香りが~?」

「べ、べべべ別にそうじゃないよ!?ほらアレ!期末試験の時助けてくれたからそのお礼で…」

「でもでも~皆でショッピングした時、嬉しそうな顔してたの私は見たな~」

よし!うまい具合に変化球で話題を変えれた!!

「そう言えば…立希、言ってたっけ…『三奈さんのおかげで買い物楽しかったし感謝してる』…って」

「うぐぐぐ……」

追いうちすると、更に三奈ちゃんは顔を赤らめる。

「顔が赤いわね、三奈ちゃん。」

「藤丸かー、まぁいいんじゃない?」

『え?』

ここで拳道さんが入って来た。

「ん?ああ、そう意味じゃないよ。ほら、体育祭のトーナメントでさ、彼色々考えて戦ってたし。体育祭始まる前は何か覇気が無いなぁって感じてたけど戦闘姿見て結構やる時はやるんだなって話」

「私も同意見です。」

「ん。ガッツある」

「優しそうだよね」

以外に知らない所で弟の好感度が良かった事に驚いた。

「……「顔がむくれてますよ三奈ちゃん。あれれ?嫉妬?」っちがうよ!あ~も~!それを言うなら皆はどうなの!?好きな人―じゃなくて!『気になってる人』!」

「気になってる…… っ!」

「あら?どうしたのお茶子ちゃん」

「あー!もしかして好きな人いるの!?」

三奈ちゃんの質問に顔が赤くなった麗日ちゃんを注目する。

「お、おらんよ!?おるわけないしっ」

「その焦りはあやしいな~?」

「誰、誰っ?秘密にするから!」

「いやっ、これはその、そういうんと違くてっ!」

色々と混乱していく麗日ちゃん。遂には“個性”『無重力』で自身と周囲を浮かし始める

「ちょ!?麗日落ち着いて!!」

「ちゃうんよ!それはちゃうねん!」

「お茶子ちゃん落ち着いて!私が悪かったから!!」

麗日ちゃんを落ち着かせた後も、私達の女子会はまだまだ終わらない…

 

 

side立希

「なぁなぁ!A組の女子で一番カワイイ奴って誰だと思う?」

『は?』

林間合宿2日目の夜。唐突に電気君が自分達に聞いて来た。B組のメンバーが来る前の時間潰し…だろうけどそのテーマに皆戸惑った。

「いきなりだな上鳴…」

「まぁこういう合宿で話すってなるとそういうのが多いよな…」

苦笑する鋭児郎君と瀬呂君。

「はいはいはい!オイラは八百万!なんてったってヤオロッパイが―「いやそれカワイイじゃねぇだろ!!」」

相変わらずブレないなぁ峰田君は…

「はっくだらねぇ…「んな事いうなよ爆豪~お前は誰なんだ~?」うっせぇ!!いるわけねぇだろ!!」

「んだよ連れねぇ…藤丸はどうなんだ?」

「え、自分?」

まさか自分に話題が来た。A組の女子でカワイイ人……

「……姉?」

『えぇ…』

露骨に引かれた

「いやいやいや、違うよ。家族愛」

そう言うと電気君は頭を抱える仕草をした。

「それも違う!何でこうも解答が違うんだよ!!次!緑谷!」

「!?ぼ、僕は―「あーお前は…麗日か。いつも飯田と飯食ってるし」っ!?べ、べべべ別にそうじゃないよ!?いやでも麗日さんはカワイイというか入学試験の時も彼女に助けてもらってその時の会話でも笑顔で話題振ってくるしその…」

「落ち着くんだ緑谷君!」

顔真っ赤にしてブツブツを言い始める緑谷君を必死にとめる飯田君。

「カワイイ…かどうか知らんけど…八百万じゃね?」

「ああー頭いいし、運動神経も抜群だよな。あと金持ち」

「庶民感覚が無くてもこー天然ボケ?が入ってるのもいいよな。あと金持ち」

「お前ら…」

身も蓋も無い回答が続出する。

「そういう上鳴はどうなんだよ!」

だんだん盛り上がってきたような気がする

「俺?俺かー…うーん…蛙吹とか?」

「意外だな。てっきり耳郎だと思ってたぜ」

「いやまぁあいつとは確かに話し盛り上がって楽しいけどよー…」

「体が貧相だよな」

「峰田、お前は何も言うな」

本当にブレないね。

「轟、お前はどうだ?」

「…………」

クラストップのイケメン。果たして誰を選ぶのか…

「…全員カワイイと俺は思う」

「かーー!でたよ!その答え!」

「くそ…イケメンが言うと何も言えねぇ…っ」

「何かワリィ…」

「いや謝る事じゃないよ…」

イケメンは何を言って許される…それで終わるかと思ったら、少し考える仕草をする焦凍君。そして―

「……………フッ」

微笑んでいた。まるで何か思い出してるようで…

「お、轟!なんだその笑みは!!」

「誰だ!?誰思い浮かんだんだ!?」

「……何でもねぇ」

「(…姉かなぁ)」

何となくそう思った。当たってるか外れてるか…聞かないでおこう…

 

この後、B組のメンバーが来て、腕相撲して、枕投げ(個性あり) で大騒ぎを起して相澤先生とブラド先生に怒られた…




こんな本編と関係ない、ちょっとした話が好きです。わかる人いるかなぁ…


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第27話

劇場版、第1作を書き終えました。感想気楽にどうぞ。


side立香

P.M.4:00。ようやく特訓が終わる。その事にはA組もB組も全員疲労困憊していた。勿論それは私も。虎さんの『我ーズブートキャンプ(重り付き)』しながらの『英霊召喚3体』…3人返した時の魔力消費の疲労が一気に来て足に力が入らない。

「姉……立てる?」

「な、何とか……立希こそ大丈夫……なの?」

「地獄の特訓効果出て……疲労はしてるけどまぁ体育祭の時よりかは大丈夫……疲れてるけど」

「いざとなったらこのキャットがご主人の姉様を担げばいいんだワン♪」

「…あれ?キャットだけ返してないの?」

私の隣にタマモキャットがいた。良い笑顔だね…

「うん。キャット以外は返した」

「何で?何かあるの?」

「昨夜言われてたじゃん。『世話焼くのは今日だけ』って…」

 

「己で食う飯くらい己でつくれ!!カレー!!」

『イエッサー…』

「…でしょ?」

「納得…」

「フッ…料理ならこのキャットにお任せあれ♪」

立希の言ったとおり、食材はプッシシー・キャッツの人達が用意していた。だからタマモキャットを召喚したのだと理解出来た。その後は飯田君が皆を奮い立たせ、誰が何をするか決める。私は野菜を切る係になった。

 

 

side立希

「ほっ!てい!」

「流石キャット。常日頃料理してるから余裕だね」

「紅閻魔先生と創作料理地獄ツアーしに行ったからだワン!」

「うぉ…あのケモ耳女性…野菜を投げてまな板に落ちるころには皮剥かれて食べやすい大きさにカッティングしている!!」

「というかあの人?俺達が特訓してた時戦ってた人じゃね!?」

キャットの調理を見た皆がざわつく。自分は隣で普通に野菜をカットしている。

「その人?も藤丸が呼んだの?」

三奈さんが訊いて来た。火をつけるのはまだだから暇になってるらしい。

「我こそはタマモナインの一角、野生の狐タマモキャット!ご主人のご友人。よろしくだワン♪」

『犬なのか猫なのか狐なのかどれなんだ…』

「いつも姉や自分に昼食作ってるメンバーの一人。キャットに掛かればどんな料理だって美味しいよ」

「ご主人……そんな褒めても豪華な料理しか出せんぞ♪」

「出るんだ…」

頬染めモジモジしながらそう言うキャットに自分と三奈さんは苦笑する

「しかしご主人も中々の料理上手…増々キャットは精進しなくてはな…」

「立希って料理できるの?」

「人並みにね。一時期、姉と共に自炊できるくらい料理できるように扱かれたからね…おかげで助かってるよ」

エミヤのオカン魂すごかった。

「へぇ…「三奈さんは料理するの?」わ、私?う、うーん…あんまりしないかなぁ…やっぱりした方がいいのかな…ほら、女性って家事する仕事が多いイメージだし…」

そう悩む三奈さんに自分は答える。

「いやいや。『女性=料理できる』っていう考えはもう古いよ。今の時代、専業主夫だっているし、無理して作らなくてもいいんじゃない?……料理に興味あるの?」

「……うん。なんかしてみたくなってきた…かな?」

「そっか。頑張って。もし良かったら手伝う?」

「っ……うん!お願い♪」

ほんのりと、頬を染めつつグッドサインを出す三奈さん。ま、手伝うと言ってもそんな人に教える程、料理は上手くないと思うけど、一般常識程度ぐらいは大丈夫だろう…

「成程…成程…ご主人は罪なお人だワン♪」

「…はい?」

なぜかキャットから微笑ましそうな視線を送られた。

 

 

side立香

「(うーん……三奈ちゃん…弟に気があるのか?まだ分からないなぁ…) 仮にそうだったとしても、立希は気付いてない…間違いなく…」

「どうかしたか?」

少し離れた所で、野菜をの皮をむきつつ、立希と三奈ちゃんを眺めていた時、焦凍君が来た。

「ううん。何でも…って焦凍君!?あれ?『火をつける係』じゃなかったの?」

「まだ火の準備はいいって言われてな…その間暇だから手伝いに来た。」

「そ、そっか…じゃあ野菜の皮剥きをお願いしようかな?」

「分かった」

そう言って私の隣で野菜の皮を剥き始めた。いや近くない!?いや確かにそこ流し場だけどさ!?兎に角私は野菜を切る事に集中する。一言も話さず、ただ黙々と―

「…剥きにくいな…」

「…あー…そのジャガイモ歪だね…しかも芽があるし…これは私に任せて別なの剥いて」

「分かった。姉さん…」

「「…………………あれ?」」

んん?今さっきの会話何か変だった。姉?姉さん?

「……あー…フフ、何か間違えてた。前にこういう会話、立希としてた。」

「…俺も冬姉と同じ会話したな……こういうのはアレか?デジャブって奴か…」

「なんか、今焦凍君が弟だと思っちゃった。ごめんね?」

「…俺も立香の事冬姉だと思った…悪い」

「フフ…」

「フッ…」

何か…こういうのっていいよね…

 

 

side立希

「(いや自分!自分だからね!?姉の弟は!!)」

「(ご主人、ドンマイだワン…)」

遠くで、無言で姉に目で訴えたが…タマモキャットに肩をポンと叩かれ落ち着かせられた。その後、皆で上手にカレーを作る事が出来た。この状況も相まってか美味しかった。

 

 

side三人称

合宿場を見渡せるぐらいの高さの場所に、数人の人影があった…

「疼く…疼くぞ…早く行こうぜ…!」

ローブを深く被る巨体。

「早く始めたいねぇ…俺が作った『コレ』の実験がしたいからなぁ……くくく…」

ペストマスクを被った人物は高揚していた。

「まだ尚早。それに派手な事はいいって言ってなかったっけ?」

仮面、シルクハットを被った人物。

「ああ…急にボス面始めやがってな…今回は『あくまで狼煙』だ…―」

継ぎはぎだらけの肌の男性が言いこぼす。

「―虚の塗れた英雄たちが地に堕ちる。その輝かしい未来の為のな…」

―やるなら11人集まってから―

不穏な影が動き始める……

 

 

side立希

三日目。引き続き”個性伸ばし”今回の『召喚』は一人だけと言われた。流石に6人はやり過ぎだと注意されたから…まぁ今日も皆で夕飯作りだから自分は『タマモキャット』、姉は『ペンテシレイア』を召喚する。そして夕飯を作って食べ終え……あっという間に夜。そして今夜、『肝試し』というイベントがあるのだった。

「腹もふくれた。皿も洗った!お次は…」

「肝を試す時間だー!「その前に、大変心苦しいが……補習連中は…これから俺と補習授業だ。」ウソだろ!?」

「すまんな。日中の訓練が思ったより疎かになってたので『こっち』を削る。」

「うわあああ!!堪忍してくれぇ!試させてくれぇ!」

補習組全員、相澤先生に捕縛武器で連行された。三奈さん…ドンマイ…

 

という事で肝試しが始まった。脅かす側がB組。A組の自分たちが肝を試す側になった。ルールは二人一組で3分置きに出発してルート通り歩く。中間にお札があるからそれを持って、一周する事だ。

「創意工夫でより多くの人数を失禁させたクラスが勝者だ!」

「失禁て…」

「汚い…」

因みに、ペア決めはくじ。結果…姉とだった。順番は二番目。緑谷君が一人余っていた。まぁ…どんまい

「姉は焦凍君とペアになりたかったんじゃない?」

「うっさい……ならそっちは三奈ちゃんとペアになればよかったじゃん。」

「何でそこで三奈さん?…補習でいないよ?「ちっ、にぶちんめ」え、何で舌打ち!?」

姉に舌打ちされた事に疑問に思う中、肝を試しが始まった。

 

 

side立香

私達の番が来て、暫く歩いた。その間、色々と怖がらせる仕掛けが降り注いだ

「あー…びっくりしたぁ…霊感とかないけど、いきなり来るのは苦手だ…」

「私は立希が驚いた事に驚いた……ものスゴイ『ビクッ』てなってたね…」

B組の3人に驚かされた。まさか足元から生首がヌッと出てくるなんて…私はそんな驚かなかったけど隣に歩いていた立希が「うお!?」ってビクッとしたのに驚いた。そして更に中間にある札を取った時、近くの茂みからラグドールさんが出てきてまたビクッとなる。

「アンタってお化け屋敷とか無理だっけ?」

「いや大丈夫なはずなんだけど……アレかな?何もないと見せかけて不意の突かれたドッキリにビクッてなる」

「へー………うん?なんか焦げ臭くない?」

「え?」

不意に、私の鼻孔が嫌な臭いに反応した。

「スン……確かに……もしかして山火事ぃ!?」

その時だった。一気に森が青く光る。そして地震が起きた。これは私や立希は感じる。これは只事ではない事に!!

「姉…これってもしかして―【皆!】!!」

今度は頭に声が響いた。これは…

「マンダレイさんの『テレパス』!」

【敵二名襲来!他にも複数いる可能性アリ!動ける者は直ちに施設へ!会敵しても決して交戦せず撤退を!!】

敵が襲撃!?

「姉…どうする…?」

「さっきの指示通りだよ。直ぐに施設に戻―『オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛!!!』―なっ…」

「―は!?……何で『アレ』がここにっ!?」

右奥から見える。燃え広がる青い炎…より、左奥の森に現れた存在に、私達は驚愕する。それもそのはず…アレは私達が滅ぼした『存在』なのだから―

『オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛!!!!!』

それは…裂け目のようなものが幾多も走った不気味な肉塊の柱。無数の赤黒い目が点在するというなんともおぞましい外見…見間違えるはずが無かった。

「「…『七十二柱の魔神』―『魔神柱』!?」」

 

 

side立希

『魔神柱』。その正体は人理焼却の黒幕の使い魔であるソロモン72柱そのもの。伝承と異なる姿であるのはソロモンの計画のために受肉・新生した結果であり、人理焼却のため各特異点に投錨され、時空を超えて地球の自転を静止させている模様。

「―何でここにあるんだ…人理修復で完全に滅ぼしたはずなのに…っ!」

「もしかして…その生き残りが…?でも何でこのタイミング……もしかして敵が…」

何故?どうして?と思考が巡る…落ち着け、ここで悩んでも意味が無い。深呼吸…

「すぅー…ふぅー…………落ち着こう姉。今はどう動くかだよ……普通なら敵と会敵しても逃げて施設に戻る事が大事…だけど…」

自分は魔神柱を眺める。姉も同じ考えのようだ。

「魔神柱…アレがここで放置したらもっとヤバくなる…アレは…私達魔術師…そして『サーヴァント』が倒すべき『標的』…見逃すわけには行かない……っ」

逃げるか、退治するか…ここで足を止めていたら時間が無くなる…

「―そうだ!キアラさん!!キアラさんなら何か知ってるはず!『アルターエゴ』!」

「!成程…」

咄嗟の機転。姉が『殺生院キアラ』を呼ぶ。キアラさんは自信の体内に魔神柱使役してたっけ……よくそんなラスボス級の英霊を使役出来たよなぁ…姉よ…

「―お呼びでしょうか?あら?随分と懐かしいものがあそこに…」

『オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛』

「キアラさん!あれって魔神柱かな!?」

「……………アレは……」

ジッとキアラさんが魔神柱を見る。そして口にする

「魔神柱―ではありませんね。似て非なる者…いうなれば『魔神柱擬き』…と言えばいいでしょうか?私が使役してある魔神柱とは格が違いますね…明らかに彼方が劣等種…」

魔神柱ではなく、『擬き』。そうキアラさんが決定済つけた。生き残りじゃないならよかった…

「けど…危険な事には変わり無い…姉、『逃げる』か『倒す』…どっちにする?」

「……一先ず、様子見で近づく。もしかしたら『魔神柱擬き』を使役してる本体がいるかもしれないし…仮に見つかったとしても、逃げればいいしね!」

姉の指示に自分は頷く。

「同行いたします…あのような不可解なモノ…見ていて憎たらしい…」

そして何やら苛立ちを浮かべているキアラさん。ちょっと怖い…

「了解…じゃあ自分も呼びますか…『シールダー』!」

「―武装完了。いつでも行けます!先輩!!」

シールダー、『マシュ・キリエライト』。自分と姉の自慢で頼れるカワイイ後輩。今回は武装してあり、大盾も装備している。

「マシュ!」

「マシュ。仕事だよ。よろしく頼む!」

「はい!先輩達を守るのが私の使命ですから!」

 

この後、まさか自分達に『危機』が迫る事になるとは…まだ知るよしもなかった…

 




ちょこっとオリジナル話を…まぁ駄作気味ですけどね


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第28話

色々指摘されて申し訳ないです…こっから自分ですらなんか駄作感じるちょこっとオリジナル話なので、読み飛ばしてもいいかな…


side三人称

『敵連合開闢行動隊』その真の『目的』は今の所解明していない。だがその一人、他のメンバーとは違う『目的』で動いている奴がいた。その人物は黒いコートを着ており、顔にはペストマスクを取り付けていた。

「(ふむ…実験体―『魔神柱』。中々の出来だ…我ながら素晴らしいモノが出来たぞ…くくく…『ドクター』に感謝しねぇとな…くくく…)」

その人物は己が作り上げたモノ―『魔神柱』を遠くから見て自画自賛をしていた。

「(さてさて…あんなにもデカいんだ…しかも荼毘の『炎』で明るくなっているからよく見えるはずだ…精々アレ見てビビりやが―「魔神柱……ではありませんね。似て非なる者…いうなれば『魔神柱擬き』…と言えばいいでしょうか?私が使役してある魔神柱とは格が違いますね…明らかに彼方が劣等種…」―なんだと…)」

満足な笑みが崩れた。彼の脳に『擬き』『格が違う』『劣等種』という言葉が記憶される。

「(俺の…俺のアレが擬きだと!?劣等種だと!?ふざけんな!!どこのどいつだ…俺の『魔神柱』にケチつける奴は……!!)」

怒りの形相で睨んだ先―そこには藤丸姉弟とキアラの姿。彼は気配を殺し、聞き耳を立てた

「―『逃げる』か『倒す』…どっちにする?」

「……一先ず、様子見で近づく。もしかしたら『魔神柱擬き』を使役してる本体がいるかもしれないし―」

「(なんだ…何であいつらは『魔神柱』を見てビビらねぇ!?まるで『今まで見て来た』ような雰囲気をだしていやがる…っ!……待てよ……あの角が生えた女…さっき何て言った…?『私が使役している…』……だと!?)」

先ほどの怒りが消えた。その代わりに歓喜が湧き上がる。そして改めて藤丸姉弟を視認。

「(おいおいおい……よくみたらあいつら…あの姉弟!!『藤丸姉弟』じゃねぇか!!体育祭みたぜぇ~偉人を…『英霊』を召喚して戦っていた所をよぉ~~!!成程……『記憶』通りなら、そりゃ見慣れてるわけだ!!決まりだ!!あいつらどっちかを……)…攫ってやる」

聞こえない。極小の声量で呟き、森の中へ消えた…

 

 

side立希

【A組B組総員!戦闘を許可する!】

警戒しつつ、魔神柱の根本まで近づいていると、マンダレイから再度の『テレパス』が来た。しかも『戦闘許可』これで不安無く戦闘が出来るが…それと同時に危険が増した。という事が分かる。

「戦闘許可……まぁこれから魔神柱倒す自分達にとっては関係無いか…」

「でもこれで心置きなく叩けるよ…それに……そろそろ見えて来たよ……」

『オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛』

「―久しぶりに見たよ…『魔神柱』…いや『擬き』…」

ようやく根本まで来た。見上げれが、首が痛くなるほどデカい…が、確かに『擬き』だと肌で感じる。これがもし本物だったらもっと途轍もない『恐怖』が自分と姉に襲いかかり、まともに動けないはずだ。キアラさんの言ってた事は正しいと分かる。

『…………!!オ゛!オ゛!オ゛!オ゛!オ゛!オ゛!オ゛!オ゛!!!』

「どうやら…彼方も私達の事に気が付きましたね…」

「先輩方!下がって下さい!私が守ります…っ!」

ギョロリと、柱についてある紅い眼が自分、姉、マシュ、キアラさんを見て来た。次にいかにも眼球の前に『力』を溜めていた

「姉!自分とマシュで『防御』をする!!マシュ!スキル発動!そして『宝具』を許可!!」

「了解です!ステータスアップ。頑張ります…シールドエフェクト、発揮します!…真名、開帳―私は災厄の席に立つ…」

『誉れ堅き雪花の壁』、『奮い断つ決意の盾』により強化。更に『宝具』を発動させる!

「それは全ての疵、全ての怨恨を癒す我らが故郷―顕現せよ、『いまは遙か理想の城 (ロード・キャメロット)』!」

『!!オ゛!オ゛!オ゛!オ゛!オ゛!オ゛!オ゛!オ゛!!!』

マシュが魔神柱の正面に向けて大盾を振りかざす。すると自分達を守るように城塞が出現。それと同時に魔神柱から光弾が放たれた!!

「マシュ!!」

「平気です!!この程度で……倒れる私ではありません!!!」

やはり『擬き』。完全に防御出来た!!

「姉!」

この隙に、姉に合図を送る。

「うん!キアラさん!!」

「この程度に『宝具』は入りません―参ります……応供、四顛倒!」

『オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛!?!?!?!?!?』

魔神柱の攻撃が終わると同時にキアラさんが特攻。素早い動きで魔神柱の目玉全てに『掌底』。最後の目玉には紫色の光弾を零距離で打ちこんだのだった。

「キアラさん…えげつない……でもこれで…」

「消滅。確認しました。戦闘…終了です。」

「不快…気に入りませんわ…」

『魔神柱擬き』が消滅する。呆気ない。というかなんかキアラさんが不機嫌だ。そんなに偽物嫌いなの?まぁ本人は本物持ってるし…

「お疲れ~呆気ないね。『魔神柱擬き』」

「そうだね…それじゃ、マシュお疲れ様」

「はい!また何かあったら呼んでください!」

戦闘が終わり、自分はマシュを返す。

「それじゃあ、一旦施設に戻―っ!?」

一息付いた時だった…

「っ」

「―え」

「…あら?」

数回の銃声。と同時に腹部に激痛が走った。あれ―なんで自分は『倒れてる』?

「っ!?………ぐっ………「人質捕獲」…!誰……だっ…!!」

「立「全員動くな!!藤丸姉……弟が死んでもいいのかなぁ?」っ……あなたは誰!?」

何が起きたのか、分からなかった。そして今度は頭部に硬い何かが押し付けられる。

「(っ…イテェ……温かい……血………腹部……撃たれ……) 油断……した……っ」

ジワリジワリと、シャツが血で染まる感覚が分かる。止血するべく、撃たれただろう場所を腕で抑える。

「あ…ね……逃……げろっ……っ!」

やっと理解出来た。今、自分と姉は危機に陥ってるという事に…っ

 

 

side立香

「あ…ね……逃……げろっ……っ!」

「逃げるな。じゃねぇと弟を撃ち殺す!」

地に伏して、血を流す弟に、私は平常心が乱される。敵が現れた。敵は黒いコートを着て、ペストマスクを付けて素顔が見えない。そして手には拳銃を持ち、それを立希の頭を狙っていた。

「っ………(はやく!早く助けないと!!立希が…っ!) 貴方は誰なの!?」

「ああ?…敵だよ。『束』。それが俺の名前だ。よぉーし動くなよ~藤丸姉。ちょっとでも抵抗する素振り見してみろ。お前の弟を殺す。」

「っ………「てめぇもだ藤丸弟。一人でも召喚してみろ。今度は姉を撃つぞ。」っ~~…!」

「よぉーし。いい子だ。いい弟をもったなっ!!ハハハ!」

「っ…グゥ……」

「立希!!」

アイツ……撃った場所をワザと蹴って……落ち着いて…怒りは…心を乱す……でも……許せない…っ!!

「くくく……おい藤丸姉。そこの女を消せ。分かってるだろうがおかしなことをしたら弟を撃ち殺す。」

「…マスター。」

「キアラさん………お願い」

「………分かりました―」

私はキアラさんを見て頷くとキアラさんはゆっくりと消える。

「っ……姉…………」

「よしよし……それじゃあ。人質交換だ。藤丸姉。俺と共に来い。そうすれば、弟を解放する。」

「………分かった。」

「っ!」

私は敵に近づく。近づくとよりペストマスクが気味悪く見えた。

「それじゃあ……寝てろっ!!」

瞬間、頭部に激痛。そこから記憶が無い。

 

 

side立香

「!!っ……く……そ……」

「藤丸姉確保♪くくく!!くははは!!実験台ゲットだぜ!!それじゃああばよ!!藤丸弟!!」

「ガッー」

束。そう名乗った敵は姉の頭を拳銃のグリップで殴り気絶させ、自分を蹴り飛ばす。そのまま姉担いで森の奥へと逃げた…

「く……そがぁ!!っ………ぐっ……!!」

自分はこれ以上無い程怒りを覚えた。直ぐにでも立ち上がり、追いかけたい。が一瞬で力が抜け、木を背にして座り込んでしまう。今だに腹部に激痛が襲いかかる。完全に銃弾は貫通している。体に穴が開くって始めてだ。血が全く止まらない。

「クソ……っ…来い……『キャスター』……!!」

「―ご用とあらば即参上!貴方の頼れる巫女狐、キャスター降臨っ!です!ってままま、マスター!?」

キャスター、『玉藻の前』…日本三大妖怪と名高い九尾の狐。自分が怪我を負っているのを見た途端、慌てふためいた

「玉藻…スキルで……治療して……ほしい…っ!」

「了解いたしました!!」

玉藻スキル、『狐の嫁入り』で回復……痛みが引いた。が…意識が朦朧する

「(血ぃ……出し過ぎた……) 玉藻……お願い……あるんだけど……」

今すぐにでも姉を助けたい。けど体が全く動けない。今日2回の召喚で魔力消費も重なって…もう自分は疲労困憊だ……だから……っ!

「なんでしょうかマスター!?この玉藻の前!マスターの願いであれば全て!聞き入れますわ!」

「それ……じゃあ……――」

自分は玉藻に『お願い』し、意識が落ちる―…

 

 

side三人称

『敵連合開闢行動隊』。緑谷の行動により、彼らの目的は『爆豪勝己を攫う事』を知り、筋肉質の巨体な男性の敵―マスキュラーとの戦闘で重傷を負いながらも勝利。そして皆を守ため、幼馴染を守るため、障子、常闇、轟と共に爆豪を護衛していた。そしてサイドを団子のようにして、その団子の付け根から髪がハネたのが特徴の敵―トガヒミコに襲われ、逃げられた麗日、蛙吹と合流した時、事が起きた。

「その爆豪ちゃんは『何処に』いるの?」

「―え?」

全員動揺。特に緑谷。障子に背負われながらも爆豪が自身の後ろにいたはずなのにそこには『いなかった』。しかも、爆豪だけでなく、常闇の姿もなかった。

「―彼なら、僕が『貰っちゃったよ』。こいつはヒーロー側にいるべき人材じゃあねぇ。」

「―!?返せ!!」

緑谷達の近くにあった木の上に、丈の長いトレンチコートと飾り羽のついたシルクハットが特徴の敵―Mr.コンプレスがいた。彼の手には『二つのガラス玉』があった。そのガラス玉に爆豪と常闇が入ってあると分かると直ぐに取り返そうと轟が『大氷結』を放つ…が、Mr.コンプレスはいとも簡単に、鮮やかな動きで躱し、逃げるのだった。

「させねぇ!!絶対逃がすな!!」

「諦めちゃ…だめだ…っ…!追いついて…取り返さなきゃ!」

「デク君!その怪我じゃ無理だよ!?」

「しかしこのままでは離される一方―「いました!いましたわ!」―っ!誰だ!!」

「っ…新手か…「ちょちょちょちょ!?ストップ!ストッププリーズ!」」

そこに新たに現れた人物。青い和服の狐娘―玉藻の前が、気絶した立希を尻尾で器用に使用して背負い、緑谷達の所に現れる。

「轟ちゃん待って!彼女の背に…立希ちゃんが…っ!」

「藤丸の召喚者か……!血だらけじゃないか!?」

立希の容態をみた麗日と蛙拭は顔を青くした。

「ご安心くださいませ。先ほど私が治し、今は気を失ってるだけですわ…そしてマスターからの『伝言』です。」

「伝言…?」

真剣な目つきで玉藻は告げた。

「一言一句。伝えます。『姉が敵に攫われた。焦凍君達と合流し、協力して欲しい。彼らならきっと何か行動しているはず。自分は戦えない。』…以上です」

「「「「「!?」」」」」

立希からの伝言に皆は驚愕。爆豪だけでなく、立香まで攫われた。

「そんな…立香ちゃんまで…」

「爆豪だけじゃないのか!?」

「立香が……ちぃ!」

「藤丸さんが……クソっ!麗日さん!!僕等を浮かして!そして浮いた僕等を蛙吹さんの舌で思いっきり投げて!!障子君は腕で軌道修正しつつ僕等をけん引!!」

「成程…『人間弾』か!」

「でもデク君!その腕で動くの!?」

麗日の言う通り、このメンバーの中で一番重症なのは緑谷だった。と、そこで玉藻の前が動いた。

「そこはご安心を…すでにマスターから『宝具』の許可は頂いてますので―ちょっと神様っぽい所、見せちゃおっかな―」

「「「「「!!」」」」」

玉藻の前を中心として、彼女の近くを漂っていた鏡―『玉藻鎮石』が動き、回転しだす。更に何枚もの札が現れ緑谷達を囲い、『結界』を発動させる。

「出雲に神在り、是自在にして禊の証、神宝宇迦之鏡也―『水天日光天照八野鎮石(すいてんにっこうあまてらすやのしずいし)』!みこーん♪」

結界を発動させると同時に鏡を上空へ上げ、魔力を注ぎ、それを地面に叩きつける。するとそこから魔力が溢れ漏れ、結界内を全て包み込んだ。

「さてさて―これでいくらかよくなりましたでしょうか?分かりやすく言えば『回復』といった所です」

「(傷が癒えてく…!!) ありがとう…藤丸君…っ!」

完全…とは言えないが、先ほどまで血だらけで赤黒くなっていた緑谷の両腕は動かせる程、大分よくなっていた。緑谷以外のメンバーも、擦り傷、打撲、切り傷、注射痕…全て消え、癒えた。

「立希……絶対…立香を助けるっ!!」

「これなら…僕はまだ動ける!早く行こう!!」

「っ……わかった!いいよ!梅雨ちゃん!」

麗日は緑谷の言われた通りに行動する。轟、障子、緑谷に触れ、『無重力』にして浮かす。そして3人を蛙吹が舌を伸ばし、纏め―

「必ず3人を救ってね!!」

「「「ああ!」」」

「ケロォ!!!」

―空高く、3人を敵が逃げた方へ投げ飛ばしたのだった。その場に残ったのは蛙吹、麗日。轟が背負っていたB組の一人。(今は麗日が担いでいる。) そして気絶した立希を背負っている玉藻の前だ。

「…貴女は行かないのですか?」

麗日は玉藻の前にそう訊く。

「私の役目はここまで。私とて、マスターが心配なのです。家族になると己の事なんか気にせず、何が何でも動こうとしますので……マスターはこの決断。きっと悔しがるでしょう…」

「ケロ…」

「デク君…」

彼女達は願った。きっと彼らなら3人を助ける事が出来ると…しかし現実は悲しい。回復し、多少傷が癒えた3人が行っても、救出出来たのは『常闇』のみ。『爆豪』と『立香』は敵の手に取り込まれた。敵が集合場所にて、黒霧の『ワープゲート』で逃げるとき、変色肌をつなぎ合わせた敵―荼毘が確認のためMr.コンプレスに個性の解除を促す。

「問題―なし」

「かっちゃん!!」

「―来んな…デク」

「立香!!」

轟は声を上げる。気付いた束はマスク越しだが高らかに笑う。

「ははは!ざ~んねん!彼女は俺が頂いた。くくく…これで『真の魔神柱』が作れる…っ!」

「……焦………凍………く―」

一瞬、立香の声が聞こえた。がワープゲートが閉じ、消える。

「―っぁああああああああああ!!!ちっくしょぉおおおおーー!!!」

「っ……………………」

緑谷は地に伏し咆哮し、轟は膝から崩れ落ちた。頼まれたのに何も出来なかった彼らは悔いた。ただただ自分たちの無力さを見せつけられた瞬間だった―



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第29話

side立希

「―っ!!」

「ようやくお目覚めですね、マスター」

「玉藻………」

目が覚める。森の中じゃない。そこは病室。自分の片腕には点滴が打たれ、自分が寝ているベッドの隣に、玉藻が座っていた。一瞬呆けた。が、直ぐに何があったのか思い出す。

「―そうだ!皆林間合宿は!?皆は!!?姉は!?!?「落ち着いてくださいっ!」ヘブッ!?」

取り乱してしまい、玉藻に札で叩かれた。

「しっかり全部お話いたします。相澤という人物からマスターが寝ている二日間。何があったかを―」

「っ―」

完全敗北。玉藻の話を聞いて感じた。林間合宿場で起きた事件。生徒42名の内、敵の攻撃によって意識不明の重体16名。重・軽症者11名。無傷で住んだのは13名無傷ですんだのは13名。そして―

「―行方不明2名……マスターのクラスメイトの一人、爆豪勝己…そしてマスターのお姉さん。藤丸立香 」

「―っ!」

プロヒーローからも6名のうち1名が重体。もう1名が行方不明となっていた。敵側は3名の現行犯逮捕。他は跡形もなく姿を消した。そして、今自分達がいる病院は合宿所近くの病院に運ばれた…との事。

「―以上です。」

「……くそっ……くそっ!くそっ!くそぉお!!」

玉藻の報告を聞いた自分。悔しい。自分がこんなにも弱くて悲しくなる。何がヒーローだ。何がマスターだ。家族を守れなくて何が…っ何がっ……

「…はっ………はっ…………はぁー…………「落ち着きましたか?」…まさか……全然落ち着いてない…でもこの悔しさは取っておくよ…姉を…大事な家族に手ぇ出したあの野郎に…っ」

最後に見た…姉を連れ去ったペストマスクを付けた黒コート。名前は…束…

「一発…いや泣くまで殴る…っ!……色々ありがとう玉藻…そっちは大丈夫だった?」

「ハイ♪この玉藻、マスターの頼みとあらば即ミコッと参上♪ですが…そろそろお暇しても?流石に二日もマスターの看病はそろそろ魔力が尽きてきている私にとってはキツいですぅ…」

そう言って尻尾と耳をしょぼんとさせた。

「あー…それは本当にごめんなさい。後でお礼にお稲荷作ってあげるから」

「なんと!!それはまことに…まことに楽しみですわ!!あ、そうそう。あのドクターが一度来てました。そこの机にお見舞い品置いて行ったので『美味しく食べてげんきになって』との事です」

「ロマニが?そっか…うん。元気になって姉を助けるよ!…カルデアはどうなってる?」

「ドクターが言うには…マスターのお姉さんと契約している者達が荒れに荒れてるとの事です…はい。」

「(あぁー……やっぱそうなるかぁー…早いとこ何とかしないと…!)ん。何とかするよ」

「では―」

玉藻を返し、病室が静かになる…一先ず、英気を養おう。お見舞い品の果物食べようかな?

「そういや…自分の腹どうなったんだ?」

銃弾で撃ち抜かれた。しかも2発。よく生きてたな…自分…やっぱり鍛えた効果?気になって病院服を剥いで見ると…

「うわー…跡残ってる…痛々しい…」

腹部に綺麗に銃弾の跡が二つ。玉藻のスキルで回復したけどやっぱ応急処置だったから少し残ってる…まぁ生きてるならいいや。

「立希いるー?って寝てるから挨拶がかえってくるわけ―」

「―へ?」

「―え?」

ドアがいきなり開いた。そこには芦戸さん。で、お互い固まったそれもそうだ。だって今自分は…

「き、きゃあああああ!!?」

「うわぁあああああ!!?」

病院服剥いでほぼ半裸だったから。

 

「えっと…汚いものを見せて申し訳ありません…」

「い、いやいや!?だ、大丈夫!というか私が勝手に入っちゃったから!!え、えと…い、いい体だったよ!?」

お互い顔を赤くして変に意識してしまう。こちとら異性に裸見られたの姉ぐらいだぞ!?ってああもう思考が…

「え、えと……今何が、どうなっているかは玉藻から聞いたよ……」

「えっと…あの狐の女性だよね?ずっと立希が目を覚ますまでその場から一歩も動かなかったよ。」

「(ホント…感謝と謝罪だなぁ…) うん。家族に迷惑かけた………皆はどう?」

「響香と葉隠はまだ意識戻ってない…緑谷とヤオモモは重症でここに入院してる…残りのメンバーは大丈夫……爆豪と…立香ちゃん以外は…」

二人の名前を出すと、芦戸さんは段々と顔を俯く…

「…そっか……うん…それでも皆無事でよかった…「よくないよ!」み、三奈さん?」

いきなり大声を出す三奈さん。彼女の眼からポロポロと雫が落ちていた

「ヤオモモ…緑谷…響香…葉隠……それに立希……ずっと目が覚めないで…死んだんじゃないかって思ったんだよ!?さっき緑谷が意識もどって、立希も戻って少しは安心出来たよ!!でも……爆豪や立香ちゃんが…行方不明って……こんなの……全然よくないよ……っ!」

「…ごめん…「…部屋、入っていいか?」!焦凍君…」

三奈さんの言う通りに、何も言えなくなっていた時、焦凍君が来た

「芦戸の声が廊下まで聞こえたから、お前が目ェ覚めたってわかったから来た。」

「轟ぃ……」

焦凍君はゆっくり自分のベッドの隣に来た。そして…

「すまねぇ…お前の姉を……立香を救えなかった……託されたのに……本当にすまねぇ…」

「っ!」

深く、頭をさげ、自分に謝罪してきた。

「……うん。許せない。」

「…」

焦凍君は俯いたままだった。確かに自分は信じて、託した。でもダメだった。けどこればかりは仕方が無い。彼を責めても姉が戻ってくるわけじゃない。だから…

「ちょ…立希それは言い過ぎ―「だから。もう一回言う」―え?」

「立希…?」

「自分の大事な家族を…姉を―『助けよう』」

自分はもう一度、託す。何となくだけど、姉を助けるには焦凍君の力が必要だと感じた。

「…ああ。絶対に、立香を助ける。」

覚悟の決まった顔をする焦凍君。自分はその顔をみて納得した。それから自分は三奈さんを見て、深く頭を下げる。

「三奈さん。心配をかけてごめん。そしてありがとう。こんな自分を心配してくれて」

「っ…うん!どーいたしまして!!今度こんな無理したら酸で纏った拳でぶん殴るからね!!」

「そ、それは勘弁してほしいかなぁ…あはは」

少し雰囲気が軽くなった時

「おー!立希!!目が覚めたんだな!!よかったぜぇ!!」

「あ、鋭児郎君。心配かけてごめんね」

今度は鋭児郎君が来た。元気そうで何より。

「気にすんな!緑谷も目ェ覚めたし!このまま皆元気になってくれればいいもんだぜ!!……で、話変わるんだけどよぉ…立希…お前の姉の事なんだけど」

「…うん」

「…まさか切島…」

「…………」

二人の反応。何かあるのだろうか?

「爆豪とおんなじなだけどよぉ…お前の姉を…立香を助ける方法があるんだ」

自分は鋭児郎君の話を聞く…

 

「―全く…鋭児郎君らしいなぁ…」

夜。既に入館時刻は過ぎている。自分はお見舞いに来た鋭児郎君の話を思い出していた。鋭児郎君が自分に言って来た提案―『爆豪・藤丸救出作戦』。林間合宿時、八百万さんが敵の脳無に『発信機』を取り付け、その発信元をヒーローと警察に届けていたところを偶然鋭児郎君は見たと言った。そこで、八百万さんに『発信機』にもう一台『創造』してもらい、自分達が救出しに行く。という事だった。

―俺は行く。今度こそ、お前との約束守る―

―まだ手は届くんだよ!―

焦凍君と鋭児郎君は行くと決めていた。この事は緑谷君たちにも話し、飯田君や他の皆は反対し、すこしもめたらしい。

「(多分緑谷君も行くんだろうなぁ…そして自分はどうするか…) 今晩、病院の前…」

行くのなら今晩。病院前で集まる。行かないならここに残る。

「姉を救出できる可能性があるなら、行くべき…だけど…それは―」

合理的じゃない。相澤先生ならそう言うはずだ。戦闘許可はとっくに解除されている。それに、『ルールを破る』これは敵と同じなんだ。

「………」

三奈さんの泣いた顔が鮮明に浮かび上がる。心配してくれる人もいる。そう簡単に動けるわけが………

「……………」

…こういう時、姉がいれば簡単なんだ。姉はすごい。自分はすぐ色々と考えて纏まらない。でも姉はスパッと決めて、後は真っ直ぐ……まぁ途中で止めたりするけど。でもその決断力はスゴイ。うん……

「……………馬鹿か自分は…何ウダウダ考えてるんだよ……!」

自分は勢いよくベッドから起き上がる。

 

 

side三人称

「―んん…「目が覚めたか。藤丸姉」…っ!!ここ…は…」

「よおこそ俺の『実験場』へ!歓迎…しなくてもいいな!ハハハ!」

「…っ」

何処にあるのか分からない地下の研究所。そこにはペストマスクを付けた黒いコートを来た男性―束。そして…手錠で拘束され、吊るされている女性―立香がいた

 

side立香

「『バーサーカー』!!」

目が覚めると私は直ぐに“個性”を使う。拘束して動きを封じられていようが『英霊召喚』すれば関係ない。ペンテシレイアさんを出してここを切り抜け―

「無駄だよ、藤丸姉。それは既に『対処済み』だぜ」

「!?な、何で!?『バーサーカー』!『ライダー』!『フォーリナー』!!」

何度も呼んだ。私が呼びだしたい英霊を思い浮かべて何度も何度も……けど誰も来なかった。空しく、私の声がこだまする。

「嘘……“個性”が…『使えない』!?」

「最近、裏で出回り始めた『薬』があってなぁ~面白い効力だぜ?なんせ今の藤丸姉の状態―『個性を使えなく』するんだぜぇ~?これは金になる」

「!?」

白い粉が入った小瓶を私に見せつけてくる。

「つっても出回ってるのは『しばらく”個性”が使えなくなる』方で、お前に投与したのは俺が個性で改良…改悪した独自の『薬』だけどな。ま、ここに『血清』はあるし、二度と使えなくなるわけじゃない。けど今はどうでもいいよな。なんせ、お前はこれから俺の『実験体』となるからなぁ!!ハハハハハ!!!」

「っ」

不安。焦り。恐怖。鼓動が速くなって、呼吸も荒くなる。こんなにも怖いと感じたのはいつぶりなんだろうか…

「(落ち着いて…まだ…まだ策はあるんだから……っ) 何で…私を攫ったの?理由ぐらい話してよ」

「んーーーーー…まぁ、いいか。どうせこれからお前は『魔神柱』になるからな!個性が使えない奴なんてただの『雑魚』でそこらにいる奴らとなんら変わんねぇ―『統制のとれないクズ。吐き気がとまらない』ぜ」

―どいつもこいつも統制のとれないクズばかりで吐き気がとまらないな―

「―!?」

既視感。彼の言った言葉。以前聞いたセリフと似ていた。そう、あの男と…あの悪魔にっ!

「その言葉…」

「ん?……ああ、やっぱり、お前…いや、『お前ら』にとっては『懐かしい』んじゃねぇか?くくく…」

そう言って彼はペストマスクを外した。彼の顔を見て、私は絶句した。

「なんで…嘘……」

「んーこういう時、何ていうんだ?久しぶり?って奴か?まぁ、俺自身は初対面なんだが…なぁ、藤丸立香」

にこやかに、そして物腰柔らかな顔で言って来た。その顔に私は見覚えがあった。覚えてないはずがない。忘れたくても忘れられないんだから。私は震える口を何とか抑えながら、言う。その人物の名を―

「『レフ・ライノール』…っ!」



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第30話

side立香

「『レフ・ライノール』…それが、そいつの名前か…へぇ…」

『レフ・ライノール』、真名『レフ・ライノール・フラウロス』。カルデア爆破事件の犯人であり、20XX年以降の人類史を焼却した張本人。そして―『ソロモン72柱の魔神』『序列64番の魔界の大侯爵』。つまり本物の『悪魔』という凶悪な人物!!

「何で…貴方はとっくに死んで…使役していたサーヴァントに殺されて…そして貴方は最後の特異点で……っ!」

「おっと、俺は別に『レフ・ライノール』じゃあない。俺は俺、『束』という存在だ。」

「じゃあどういう事なの!?」

「落ち着けって、まー俺の独断と偏見の結果でよ?その『レフ・ライノール』の『残留思念』つーの?それか『記憶』?が俺がこの世に生まれた時からあったんだよ。偶然の産物っつーわけだ。で、それが俺の”個性”と反応し俺の顔がその『レフ・ライノール』って奴の顔とくりそつ…何だろうな。」

「っ…でたらめ過ぎる…っありえない…」

馬鹿げた事を言ってる。

「ところがどっこい。ありえるんだよ。今!お前の前にいる俺の存在によって証明完了だ!!……っと、話が大分それた…か?いや、そうでもないな。その―名前なげぇからレフでいいか。レフのおかげで俺は『魔神柱』を作る『きっかけ』になったしよぉ!!」

「きっかけ…」

「ああ…俺はなぁ―」

彼―束は次の瞬間、呼吸を荒くし、涎をたらし、目と見開き、狂気的な笑みで言った。

「『憧れた』んだよぉ~~その『悪魔の力』を見てよぉ~記憶を探ってなぁ~~!!!ぐひゃひゃひゃひゃひゃ!!」

「っ…」

「お前らガキが『ヒーロー』を憧れたようによぉ…俺は『悪魔』に憧れたんだよ!!何だよあの力!おぞましすぎんだろ!!凶悪すぎんだろ!!本当に…本っっっ当にっ!!最高だぜぇえええ!!!!」

大声で。言い切った。荒い息を整え、涎を拭いて、さっきのような笑みになった。

「ふぅ…ま、そういうわけで、俺はそのレフの『悪魔の力』が欲しくて、敵連合と協力してんだよ。『オール・フォー・ワン』と『ドクター』の『助手』っていうくだらねぇ立場なんだが、『魔神柱』作るにはやっぱ金と時間と資源が必要だからなぁ…あの二人が興味もって助かったぜ。マジ。」

ニタニタと笑うレフ―束を睨みながら私は聞く

「その『魔神柱擬き』を作ってどうするの…」

「『擬き』…ちっ!あの時もあの角オンナに言われてマジイラついた…が、今から作る『魔神柱』は『擬き』じゃない。『真の魔神柱』なんだからなぁ!!藤丸姉!お前を『母体』としてな!そして!!その『魔神柱』に俺が入り!俺が『魔神』となって『悪魔の力』を手に入れる!!」

「!?そんな事できるわけがない!!」

「いいや!できるな!なんせ、俺の“個性”『配合(ミックス)』で『魔神柱』を作ってるからなぁ!!作り方教えてやろうかぁ!?何十体の『脳無』を俺が一か所に『配合』させて!遺伝子レベルで組み替えて!完成だ!」

「っ…それって…人を……」

脳無。USJ襲撃後、相澤先生が言っていた。その正体は他者に『いくつも個性を与えた結果』、ああなった存在だと

「文字通り、『人的資源』だ。意味違ぇか?どーでもいいか。なぁに、失敗しても成功の糧にするさ。実験には『当たり前』の肯定さ」

「い、イかれてる…」

話を聞いた私は心の底からゾッとする。

「何とでも言え!どうせお前も『実験材料』だ!そして…今から始める…」

そう言って…束は腕を私の方に伸ばし、ゆっくりと私に接近してくる。

「来ないで!!」

「嫌だね。俺の個性は人、物、個性―ありとあらゆるものを集束させる。が、その為には集める場所に『触れない』と発動しねんだよ。悪いな♪」

「嫌っ!『セイバー』!『アーチャー』!『ランサー』!」

体を動かす。手錠にも力を入れる。けど全く壊れない。『英霊召喚』したいけど個性が発動しない。何も出来ない……っ

「いいねぇ…その悲鳴…そそる―」

笑みを浮かべたまま束の指が私の体に触れる寸前―

「―ってね!!」

私は不敵に笑う

「―ぜ?」

「―嬰童無畏心、抱かれませ」

「なっ!?がぁぁああああ!?!?」

危機一髪。束の立ってた地面から『巨大な白い手』が現れる。そしてその手は束を掴み、拘束した。

「はぁ…はぁ…あっっっっっぶなぁ!!遅いです…遅すぎです!『キアラさん』!!」

「申し訳ありません。マスター。ですが、二日も放置される私の身にもなってください。」

「え、そんな時間経ってるの!?」

そんなやり取りを、私の隣に現れた女性―『殺生院キアラ』と会話する。キアラさんは細い白い手を出し、私の拘束を解除してくれる。

「キアラさん気を付けて、あいつに触れさせたら危ないから」

「先ほどの会話を聞いて承知してます。」

「うぐぁ!?」

一瞬、拘束を解除し、今度は『何本も細い手』で束を宙に十字架のように拘束。その隙に私は机に置いてあった、彼が見せびらかしていた『血清』を手に入れた。

「後でロマニに注射してもらお…「何故だ!?何で『召喚』できるんだよ!?まだ使えねぇだろ!!」うん?絶賛使えてないよ。簡単な事だよ…『林間合宿の時』からずっと『出しっぱ』なんだから」

「はぁ!?」

「貴方は私達の“個性”を理解してなかった。ただそれだけだよ。」

個性『英霊召喚』は文字通り『召喚』。つまり…『出して終わり』。後は何もしない。私や立希はまず召喚したい人物に『呼びかけ』をする。そして呼びかけられた相手が『許可』したら無事『召喚完了』だ。

「…っ!て、てめぇ!嘘つきやがったな!!」

「嘘?何の事?貴方は私に『消せ』って言って、私は『消した』よ。ま、『霊体』にさせただけだけど」

舌を出して、彼を苛立たせる。というか私は『了承』していない。『キアラさん、お願い。』と言っただけだ。

「長時間『霊体』にさせると『実体』には時間かかるって事が分かったよ…でもキアラさんありがとう。何も言ってないのに察してくれて」

「ふふふ♪マスターと私の仲じゃないですか♪」

笑みを浮かべるキアラさんに私は苦笑で答える。

「うーんなんだかその縁、切りたくなってきた…」

「クソ!クソ!あと一歩で俺は悪魔になれたのによぉ!!放しやがれぇ!!」

「無駄です。その程度の力で振りほどくほど、軟じゃありませんわ…それと、マスターに手を出そうとした時点で、逃しはしませんわ。」

束は拘束を解こうと暴れるが、キアラさんが出した大量の白い手が束を押さえつけ、それを阻止する。束はただ大声を出すだけだった。

「貴方みたいな存在…本当はキアラさんの『宝具』で存在事無くしたい…けどそれは『ヒーロー』じゃない。だから…刑務所で罪を償え。懺悔して、後悔しろ」

「っっっっ!!っざけんな!罪?後悔?はっ!そんな文字、俺の辞書に載ってるわけぇねぇだろぉおおおおお!!!―お゛ぉ゛!?」

「「!!」」

その時、異変が起きた。いきなり束の口から黒い水が噴き出された。その勢いは止まらない。むしろ溢れ出てき、彼を覆うように波打っていた。

「逃げる―ぎぃ!?」

「マスターっ゛!?」

そしてそれは束だけじゃない。私とキアラさんにも同様な現象が起こった。気持ち悪い。

「(体…がっ……飲ま…れっ―)」

口からあふれ出る黒い液体。その液体は私を飲み込むのだった…

「―ゲホッ!ぎ、ぎぼちわるい…「―ゲッホ!!くっせぇ…」―ってここどこ!?そして何で爆豪君もいるの!?」

「あ゛…!何でお前がここにいんだ!?モブ女!!」

「モブて…え、爆豪君も誘拐されたの?」

「てめなんもしらねーのかよ…クソがっ…」

黒い液体が消えると、景色が変わっていた。そこは外。夜空が見える。けど周りは瓦礫だらけ。キアラさんと束は何処に―

「―悪いね。二人とも」

「あ!!!?」

「っ!!!」

私と爆豪君の前に人がいた。その人物は…黒いスーツ姿で、パイプのついた黒い仮面をかぶった男性だった。

 

 

side三人称

「「「「「……………………っ」」」」」

緑谷、轟、切島、飯田、八百万。このメンバーで爆豪・立香を救出しに、発信の元へとたどり、廃倉庫にたどり着く。そこは『脳無精製所』として扱われていた。二人の手がかりがここにある…そう思い行動に移ろうとした時、プロヒーロー『Mt.レディ』の“個性”『巨大化』により破壊される。他にも『ギャングオルカ』、『ベストジーニスト』。警察も突入して来た。5人よりも早く行動していた。もうするべきが無いと飯田、八百万が皆にそう言った時だった。

「―折角弔が自身で考え、自身で導き始めたんだ。出来れば邪魔はよして欲しかったな」

圧倒。一瞬にしてプロヒーロー全員が突如現れた黒スーツの敵一人に倒される。5人はバレないよう必死に息を潜めた。

「(振り向くことすら出来なかった!!何が起きたのか全く分からなかった!!それでも…あの男性の気迫はっ!!)」

緑谷はその敵が何者なのか、直感で分かった。以前オールマイトが話していた。『巨悪の存在。』

「(なんだよ…ウソだろオールマイト…あれが…まさかあれが!!)」

「―さて、やるか」

敵名、『オール・フォー・ワン』。オールマイトと最も敵対する人物。緑谷以外の4人は名前や何者かは分かっていない。だが彼の存在から放たれる圧倒的恐怖に体が動かせなかった。そんな時だった

「―ゲホッ!ぎ、ぎぼちわるい…「―ゲッホ!!くっせぇ…」―ってここどこ!?そして何で爆豪君もいるの!?」

「あ゛…!何でお前がここにいんだ!?モブ女!!」

「モブて…え、爆豪君も誘拐されたの?」

「てめなんもしらねーのかよ…クソがっ…」

立香と爆豪だった。

「(爆豪!?)」

「(かっちゃん!)」

「「(立香!?)」」

「(まずいぞ!何故いきなり二人がここに…!!)」

これには緑谷達は驚愕した。

「―悪いね。二人とも」

「あ!!!?」

「っ!!!」

更にそこに二人だけでなく、死柄木を含めた敵連合のメンバーが何も無かったところから黒い水を吹き出しながら現れる。このままではマズイ。そう思った緑谷は恐怖で動けなくなった体を無理に動かそうと行動に移ろうとする。緑谷だけじゃない。轟と切島もだ。だが…

「(だめだ…だめだ二人とも!)」

「「っ!」」

飯田がそれを阻止する。八百万も切島を抑え阻止。危険だという事を知らせる。

「―やはり来ているな…」

「「「「「!!」」」」」

バレた。5人はそう思った。しかし、彼―オール・フォー・ワンは5人がいる壁ではなく…上空を見上げた。そこに現れたのは―

「―全て返してもらうぞ!オール・フォー・ワン!!」

「また僕を殺すか。オールマイト」

拳をオール・フォー・ワンに振りかざす、オールマイトだった。




レフでは無いです。レフの力に魅入られた狂信者…的な人物です。
個性は…『アレら』と『コレら』をレッツ・ラ・まぜまぜ!的な能力です。


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第31話

side立香

「―悪いね。二人とも」

「あ!!!?」

「っ!!!」

いきなり外に飛ばされたと思ったら、隣には爆豪君。目の前には黒いスーツ姿で、パイプのついた黒い仮面をかぶった男性がいて困惑する。

「―げえぇ…」

「「!?」」

更に人が増えた。しかも死柄木もいる。全員敵連合だと私は理解する。そしてこの黒いスーツの人物がボス核だと察する。それくらい怖く、ヤバいと感じるからだ。横にいる爆豪君も冷や汗かいてるし。黒いスーツは死柄木と会話…いや、何か言い聞かすように、赤子をあやすように言った。

「―全ては君の為にある」

「先生…」

「(―ってキアラさんと束は何処に―)「ひゃははは!助かったぜぇ!AFO!!」!!」

「ああ…そういえば君も一緒にここに飛ばしたんだったね。束」

「マスター。申し訳ありません先の状況で逃がしてしまいました…」

「ううん。大丈夫…気にしないで…」

兎に角だ。ここから逃げた方がいい。私は今“個性”が使えない。キアラさんに守ってもらいながら逃げた方がいい!!

「―やはり来ているな…」

「「?」」

黒いスーツがそう呟くと、上空を見上げた。それと同時に黒いスーツに何かが降って来た!

「―全て返してもらうぞ!オール・フォー・ワン!!」

「また僕を殺すか。オールマイト」

拳を黒いスーツに振りかざす、オールマイトだった

「随分と遅いじゃないか」

「うおお!!?」

「きゃ―」

「マスター!」

二人がぶつかった衝撃によりその場にいた全員が軽く吹っ飛ばされた。私はキアラさんに受け止めてもらう。

「いたた…黒いスーツ…オール・フォー・ワン…だからAFO…」

「―ここまで来るのに30秒…大分衰えたんじゃないか?オールマイト」

「貴様こそ!何だそのマスクは!!無理してるんじゃないか!?」

というかオールマイトの拳を素手で防ぐってどれだけ強いの!?

「む!!藤丸少女!そこにいたのかね!!いや…爆豪少年と同じくここに飛ばされたか……5年前と同じ過ちは犯さん!オール・フォー・ワン!」

そう言ってオールマイトは再度AFOに殴りかかった。けどその拳は届かなかった。AFOの片腕が一瞬に丸太のように太くなると、その腕でオールマイトに『触れずに』吹き飛ばした。

「『空気を押し出す』+『筋骨発条化』『瞬発力』×4『膂力増強』×3…この組み合わせは楽しいな…増強系をもう少し足すか…」

「オールマイトォ!!」

「やばい…本当に逃げ―「逃がすかぁあああ!!」!!ああもう!シツコイ!!」

「させません」

「クソ!またその手かよ!!あと一歩なんだよぉおおお!!!」

ここで束が私に触れようと近づいて来た。けどまたキアラさんのおかげで拘束する。

「―ここは逃げろ弔。その子を連れて」

「!」

束を拘束した時、AFOが遠くで倒れている黒霧に指から黒い枝を伸ばして突き刺した。すると勢いよく黒い霧の『ゲート』が現れる

「『個性強制発動』さぁ行け―ああ…あともう一人“個性”を発動させないとな―」

「―え」

そう言うと私のほうに指をさして来た。そしてまたあの黒い枝が伸びる。けどそれは私とキアラさんを突き刺さなかった。突き刺したのは―

「―ガッ!?」

拘束していた束だった。

「て、てめぇ…何の真似っ「僕やドクターが、君の考えに気付いていなかったとでも思ってなかったのかい?束。」っ!!」

その言葉にビクリと束が反応する。

「『魔神柱』―まぁ『おもちゃ』にしてはいいなとは思ったさ。けどまさか僕等を利用していただなんて心外だよ。でも僕は寛大だ…『その場で魔神柱を作ってみなよ』。君が追い求めていた『力』を見せてくれたら許してあげよう。ああ…材料は僕が持ってるから安心してなってくれ」

「―逃がさん!!」

「常に考えろ弔。君はまだまだ成長出来るんだ」

再びオールマイトとAFOがぶつかり合う。だけど今はそれどころじゃない。

「キアラさん逃げ―「ガァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!」っ!!」

逃げるよりも、束の“個性”が発動した。すると彼に周囲の瓦礫が集まり始める。更に何もない空中からさっきの黒い水が噴き出され、何体も『脳無』が大量に出され、集まる。そして最悪な事に―

「マスター―」

一番彼の距離が近いキアラさんと―

「っ!―」

私が―

「ガァアアアアアアアアアアッ!!!?!!?―」

吸い込まれてしまった―

 

 

side三人称

ぐちゅぐちゅと。肉が混ざり合う音が鳴り響く。そして天高く聳え立つ。

『―不要!不要!不要!!我が力を知れ!何故持て余すっ!!身も心も絶望し!虚無となれっ!!』

「!藤丸少女!?」

「モブ女…っ!?」

「ほぉ、これが束の言っていた『真の魔神柱』。これは何とも悍ましいな…束が憧れたのもよくわかる…ふふ」

そこに現れたのは林間合宿の『魔神柱』ではない。濁った金色の触手のような体に規則正しい配置に裂け目のようなものが幾多も走った不気味な肉塊の柱。そこから無数の赤黒い目が点在するというなんともおぞましい外見の束の言う、『真の魔神柱』となっていた。

「藤丸少女…っAFO!貴様何をした!!」

オールマイトは怒りの形相でAFOに吠える。AFOは仮面越しに笑みを浮かばせる。

「僕じゃない。元・助手がしたのさ。彼は『魔神柱』というおもちゃ…いや、兵器を作り上げ、『悪魔の力』とやらを得ようとした。結果は成功かな?…ふふ、素晴らしいじゃないか!」

『フハハハハハ!!!!我が力を思い知れ!ひれ伏せ!頭を垂れろぉおおお!!!』

「!!クソが!!モブ女!!」

「爆豪少年!!?くっ!今助け―「させないさ。その為の僕がいる」ぐっ!!Shit!!」

動き出した魔神柱。その力を存分に発揮する。巨大な目玉から光弾が放たれ、元々破壊されていた場所を更に崩壊に導かせる。敵味方関係無く。大いに暴走する。

「こいつぁ…や、やべぇ!!死柄木行くぞ!ここはマジでやべぇ!!はやく爆豪つれて逃げるぞ!!」

「めんっドクセーっ!」

敵連合も魔神柱からの攻撃を回避しながらも、爆豪を連れ去ろうと動く。対して爆豪は応戦しつつ、どうにか退避しようと思考を巡らすのだった。

「爆豪少ね―「余所見してていいのかね?オールマイト!!」ぐっ!」

オールマイトは直ぐに爆豪の元へ動こうとするが、AFOによって遮られるのだった…

 

「オールマイト…」

今の今までずっと壁に隠れていた緑谷達。AFOが邪魔をしてオールマイトは爆豪を救出できない。何とかこの窮地を脱出しようと思考をめぐらせる。

「(一瞬…どこでもいいんだ!かっちゃんを助ける道は……)」

本当なら立香も助けたい。だが彼女は今どうなっているのかが『分からない』。謎の男性の“個性”によって吸い込まれ、悍ましい『化物』が生まれた。ここにいても巻き込まれる…

「―飯田君。皆!」

「だめだぞ!緑谷君!」

「違うよ!あるんだ!決して戦闘行為にはならない!僕等もこの場から去れる!それでかっちゃんを助け出せる方法が!」

 

緑谷の作戦。結果的に成功した。緑谷の『フルカウル』と飯田の『レシプロバースト』の推進力。そして切島の『硬化』で壁をぶち抜く。そして直ぐに轟の『氷結』で高く跳べるような道を形成し、戦場を横断。そして最後に切島の―

「『来い』!!」

「!!―…馬鹿かよ」

『呼びかけ』。入学してから今まで爆豪と『対等』な関係を築いてきた切島。爆豪は『爆破』で上空に飛び、その呼びかけに応じてがっちりと握ったのだった。

 

 

side轟

「―緑谷さんの言った通りですわ!向こうがクギ付けになってる隙に私達も!」

「ああ…」

緑谷の作戦が成功した。爆豪を連れて3人は上空へ逃げる。そして俺と八百万もその場から逃げる―

『素晴らしい!生まれ変わった我の力がこれほどとはっ!!!』

―が視界の隅に奴が写る。立香を取り込んだ『化物』が…

―自分の大事な家族を…姉を―『助けよう』―

立香希の言葉を思い出し、俺は踏みとどまる。

「っ」

「轟さん!?「先に行ってくれ!俺はまだやる事がある!」そんな!待ってくだ―」

八百万の静止の言葉は俺の耳に入らなかった。すると俺と八百万を離すかのように、間に瓦礫が落ちてきた。

「っ………約束は破らねぇ…っ!」

『…なんだ?我に歯向かうのか?』

気付けば、周囲には敵連合、オールマイト、あの黒スーツの姿が見えなかった。この場にいるのは今―俺と化物だけだ

「当然だ…立香を…返しやがれっ!」

俺は『氷』と『炎』を体に纏わす…




戦闘許可は解除されてるんですけどね…許してつかぁさい…
『戦闘』ではなく、『救助』行為なんや…という言い訳。


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第32話

side立希

「ただいま!ロマニ!!」

「え!?立希君!?何でここに!?病院で休んで「今の状況で寝てられる程図太くない!!」で、でも…君はまだ病み上がり…!」

病室から転移し、カルデアに戻った自分。ロマニの静止を受けずに自分は管制室に入る。そこには多くの職員と、中央の座席にはダ・ヴィンチちゃんが座っていた。

「おや?随分早い帰り……わぉ、凄い形相だね。立希君」

「分かってるでしょ?ダ・ヴィンチちゃん…今、自分は物凄く…ムカついている…!」

自分はそうダ・ヴィンチちゃんに告げる。そんな自分に彼女は言う

「ムカつく…そうだね。分からなくもない。なんせ、君の…いや、私達の家族が危機に陥っている。よかったよ。ただ病室で寝ていたわけじゃないんだね。」

「うん…で、いいかな?いいよね?」

「勿論さ!既に我々カルデア従業員は動いている。勿論、サーヴァント達もいつでも準備万端さ!」

そう言われると、確かに、職員たちが慌てる様に動きまわっていた。自分は一旦深呼吸し、何とか冷静になるよう努める。

「立希君…!」

「自分は戻ったんだよ…ロマニ、自分は行くよ。世界とか人類とか助ける前に―家族を…姉を助ける!」

 

 

side轟

「―凍れっ!!」

俺は最初から全力を放つ!奴を『大氷壁』で拘束する!!

『他愛なし―ラァア!!』

「っ!?」

光弾で粉砕…っ!一瞬で―

『―死ね』

「っ!ガッ!!」

俺の所に光弾が放たれる。直ぐにその場から後ろに跳び回避する…が、光弾の威力で吹っ飛ばされた

「―くそっ!」

直ぐに左の『炎』を噴出させ空中で体のバランスを取る。そしてそのまま―

「うぉおお!!!」

『火炎』を放つ!!狙いは目玉だ!!

『っぐおぉ……貴様…貴様ァアアアアア!!!!!』

「弱点むき出しだ。狙えと言ってるようなもんだ―」

行ける。そう思った…が、奴はまだ本気じゃなかった。

『死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ねぇえええええ!!!!!!』

「―ッッッ!!!!」

再度『光弾』が放たれた―が、それは一発ではなく…散弾銃のように、まき散らされた。直ぐに氷を俺の周囲に展開し、防御―

 

『フハハハハハハハハハハ!!!!我に逆らおうとした罰だ!』

「はぁ……はぁ……く…そっ…っ!」

一発の威力がデケェ光弾の嵐…俺は何とか防いだが…体力が大分持っていかれた…っ

『軟弱め。その程度の力で倒せると思っていたか?』

「何…!」

見れば『炎』を喰らわせた目玉がもう癒え始めていた。

『あの世で後悔しろ』

「っ」

光弾が来る…そう肌で感じ、上を見た時だ―

「un(アン)、deux(ドゥ)!」

『ッガァ!?』

「!お前は…」

―上空から十字の斬撃が奴に直撃し、光弾が放たれずにすんだ。そして更に

「やぁっ!」

『ヅゥ!!?』

「!」

今度は巨大なカギ爪のついた手が奴の体に直撃。奴の装甲を抉った。

「全く、アンタ一人で倒せるわけないでしょ。何なの?バカなの?」

「え、えと…だ、大丈夫…ですか?」

「お前ら…体育祭の時の……魔獣の森の時の…」

俺の前に現れたのは二人の女性。しかも見た事がある人物。体育祭と林間合宿の時いた…そしてこの二人がいるという事は…

「自分が来た!何てね…」

「立希…っ!」

白と黒のラッシュガードの様な服装の立希がいた。

 

 

side立希

管制室にアラーム音が響く

「どうした!?」

「強力な魔力反応!映像出します!!」

メインモニターに映るもの。それは『魔神柱』だった。

「!合宿で見たのと……!そこに姉がいる!!ロマニ!!ダ・ヴィンチちゃん!!」

「OK!!行きなさい!!ヒーローではなく、マスターではなく、一人の藤丸立希として!!彼女を救うんだ!!」

「直ぐに転移の準備!体内魔力量は大丈夫かい!?」

「十分!!」

自分は直ぐに管制室から飛び、戦闘服に着替え、魔神柱の所に転移する。転移場所は魔神柱がいる所から少し離れた場所。直ぐに魔神柱の所に走ると、視界の先で『炎』と『氷』が見えた。

「焦凍君…!?まさか戦って…!」

急いで駆け付ける。案の定、そこで焦凍君が魔神柱と戦っていた。しかもトドメ刺される寸前!!やっばい!

「『アルターエゴ』!そして令呪を持って命ずる!『焦凍君を守れ』!!」

「―今度は返さないわよね!!」

「―い、行きます!!」

『メルトリリス』『パッションリップ』を呼び出しそのまま令呪の力で二人を焦凍君の元まで飛ばす。何とか魔神柱からの攻撃を防ぎ、自分は焦凍君の前に現れる。

「自分が来た!何てね…」

「立希…っ!」

驚いてる焦凍君。

「何だその恰好…」

「これ?…まぁ戦闘衣装とでも言えばいいかな?」

魔術礼装・カルデア戦闘服。白と黒の二色で作られたボディスーツ。

「それより…アレ相手に一人は無茶過ぎるよ…」

「…あのデカいのに立香が取り込まれた……」

「何だって!?」

簡潔に教えてもらう。この魔神柱は合宿で自分を撃った敵、束が敵の一人に強制的に個性を発動させられ、『真の魔神柱』となったと…

「そっか…なら……姉を助けるために…焦凍君、手伝って。あの魔神柱から姉を取り出す!!」

「!ああ。足りめぇだ…」

自分と焦凍君は目の前にいる魔神柱を見据える。

『コロスコロスコロスゥ!!!全てだ!我に歯向かうものは全て潰してくれるわぁあああ!!』

「まとめてゼリーにしてあげる」

「飛んで火に入る……いえ、なんでも!」

戦闘―いや、救助開始だ。

 

 

side三人称

『ウォオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!!!!』

「―ってヤバイなぁ!!」

「立希!俺の後ろにいろっ!防御は俺がやる!」

「分かった!なら攻撃は―メルト!リップ!」

「やればいいんでしょ?」

「はいっ!」

光弾の嵐が降り注がれる。轟は『氷壁』で自身と立希の身を守る。光弾を防ぐと氷壁が粉砕される―と、同時にメルトリリスとパッションリップが前へ出る。

「やぁっ!」

「trente(トラント)!」

「はっ!」

「un(アン)、deux(ドゥ)!」

「潰れて!」

「お生憎様!」

「もう逃がしません!」

「un(アン)、deux(ドゥ)、trois(トロワ)!ワルツ・エトワール!」

『オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛!?!?』

剣と巨大なカギ爪。二人の猛攻に魔神柱の装甲を斬り、削り、目玉を抉る。流石に魔神柱もかなり応えたようだ。だが、それはまだトドメとなる攻撃ではなかった。否、トドメを刺せなかった

『―クク…クハハハハハ!!!我をここまで押すとはな!!しかしまだだ!まだ我はやられん!!』

「立希…このまま奴を倒しても立香は…」

「分かってるよ…クソ…」

魔神柱の中には立香がいる。仮に魔神柱をこのまま倒したら立香も消えてしまう可能性があると考え、うかつに手は出せなかった。

「ちょっとマスター!このままやってもじり貧よ!」

「ま、マスターさん!」

「分かってる…分かってるよ二人ともっ!(どうやって姉を魔神柱から取り除く…でも何処に魔神柱の体内の何処に姉がいるんだ…っ)」

会話をしながらもメルトリリスとパッションリップは光弾を避けつつも攻撃を止めない。しかし降り注がれる光弾を全て躱す事は出来ず、少しずつ削られる…

「くそ…」

轟も『氷壁』を展開し光弾を防ぐが、体に霜が出来、維持が難しくなりつつあった。

『慈悲も無く。潰れて死ね―』

 

 

side立香

「―スター、マスター。ご無事で?」

「―ぷはぁ!ゲホッ!ゴホッ!…な、何とか…今度は何処―「『魔神柱擬き』の腹の中です」うっそでしょ!?」

レフ―じゃない。束が“個性”を発動させて私とキアラさんを取り込んだ。そしたらこんな黒い液体だらけで、何か―魔神柱の体内にいる状態だ。

「…って、私を取り込んだのに『擬き』?」

「ええ、私とマスターを取り込んだとしても『魔神柱』にはなりません…が、あの夜の『擬き』よりかは厄介なモノにはなりましたね…」

「そっか…っ!!」

突如、轟音。そして衝撃が来る。

『オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛!?!?!?!?!?』

「っ…これって…誰かが魔神柱と戦ってるの?…もしかして立希が―うぐっ…」

今度は私自身に異常が来た。この感覚は…魔力消費!?

「マスター!…これは……っ!」

「き、キアラさん…腕が…」

キアラさんにも異常が起きた。彼女の腕が薄くなり、透過していた。よくみたら腕以外にも、彼女全体が若干透明になっている。

「成程…この魔神柱は…マスターの『魔力』を『動力源』として動いているようですね…そしてその魔力は私を『召喚』した分の魔力も使って…このままだと本当に私たちはこの魔神柱に取り込まれてしまいますわ…」

「何とか……はぁ……しないと…っ…はぁ……はぁ………っ!」

どんどん魔力が消費されている。立ち上がろうにも足が動けない。

「キ…アラ……さん……っ!」

「あらあら…マスターを運ぼうにも透過していく私は担ぐことすらできません…ここは『賭け』にでましょう」

「………?」

「胎蔵界、理拳印」

印を踏み、キアラさんは細く白い手が何本も周囲の壁に触れた。するとそこからひび割れ始める。

「何……を…?」

「外にいる者に私達がここにいる事を知らせ、救出させてもらいましょう…かなり厚い装甲ですので人が出入りできるぐらいの穴は作れませんが…この手の大きさ程度なら貫通は出来ます。」

「…っ……(お願い……気付いて…っ!!)」

視界が霞んで来た。

 

 

side三人称

『―ぐぁああ!!!?』

「「!」」

「今度は何!?」

「マスターさん!アレ!!」

「…んん!?」

光弾の嵐が突如として止み、魔神柱が苦しみだした。何事かと同様した4人。そしてパッションリップが指さす所に―細く白い手が何本か生えていた。

「アレ…って!あいつの白い手じゃない!!」

メルトが叫ぶ。確かにあの白い手はキアラさんの能力で現れる手だ!

「あそこに立香がいるのかっ!」

「だろうね…でも…場所高い!」

高層ビルぐらいの高さの所から白い手が生えているのを立希は確認した。

「どうするの!?マスター!!」

「決まってる!あそこに行くよ!」

「けどどうするんだ?あそこまで俺の『氷柱』で伸ばしてもあの光弾で壊されちまう」

「大丈夫!!あそこに行く算段は既に思いついてる!メルト!リップ!『全体強化』!」

「「!」」

立希は『魔術礼装・カルデア戦闘服』に魔力を注ぎ、礼装に備えられた『魔術』を発動。一時的にメルトリリスとパッションリップの身体を強化する。

「メルト!白い手のところまで跳べる!?」

「愚問ね、マスター!やればいいんでしょ?」

『ちょこまかと……鬱陶しいハエめぇぇええええ!!!!!!!』

「あら、怖い怖い」

スキル、『クライム・バレエ』によりメルトリリスは降り注がれる光弾を全て回避。そして壁蹴りの要領で魔神柱を蹴り一気に白い手が生えている場所までたどり着く。

「ブチぬいてあげる!」

『グゥウウウウウ!!!』

そしてメルトリリスはそのまま脚の剣で一点を貫いた。

「よし!リップ!焦凍君をしっかりつかんで!焦凍君もしっかりリップにつかまって!」

「は、はい!」

「わかった!」

パッションリップの掌に轟は乗り、爪に掴まる。

『己己己オノレオノレオノレエ゛エ゛エ゛エ゛エ゛エ゛エ゛!!!!!!』

立希達が行動をしている間に魔神柱はメルトリリスに向けて光弾を放とうとした。だけどそれはさせない!!

「リップ!!」

「はぁっ!」

『ヌ゛!!』

パッションリップのスキル『被虐体質』により魔神柱の注視をメルトリリスからパッションリップに変え、メルトに放った光弾の軌道を反らした。

「そして…『オーダーチェンジ』!」

「「!」」

「っ―成程ね!」

一瞬にしてメルトリリスがいた場所に轟とパッションリップが転移し、逆にメルトリリスはパッションリップと轟がいた場所に転移した。

「いけ!リップ!焦凍君!!」

「はい!!」

『全体強化』に『被虐体質』のスキルで身体強化されたリップは巨大なカギ爪をメルトが貫いた所に突き刺し、カギ爪を引っかけ、強引に引き裂いた。

「更に!『ガンド』!!」

『ぬぅっ!?』

立希は魔神柱を『スタン』させ、動きを封じた。

「さぁ行け!焦凍君!長くは維持できない!だから君の手で姉を救って!!」

「!ああ!!わかった!!!」

「行ってください!」

「ああっ!」

パッションリップが引き裂いた場所から轟が入る。

「マスター…彼、大丈夫なのかしら?」

「大丈夫さ。焦凍君なら…!」

 

 

side轟

「立香!そこにいるのか!!」

俺は『氷結』で動く壁を固定しながら、伸びている白い手を頼りに奥へ進む。そして目の前に現れたのは―

「ぅ…………ぅ…………」

「ようやく………ですね……」

「!立香!!」

黒い液体に少し浸かってその場に倒れている立香の姿があった。

「あぁ…私ともあろうものが、なんて……あとは任せました…マスターのご友人―」

魔獣の森で見た女はそう言って消えた。さっきの白い手も消えた。成程…あの女のおかげでここまでこれたのか…

「立香!しっかりしろ!」

立香の上半身を起こし、意識があるか揺すって確認する。息は…してある…が、体力の消耗が激しい…っ

「ぅ………だ………れ………?」

「!立香!俺だ!」

「しょ……ぅ……と………君?」

「ああ!ここから脱出するぞ!」

俺は立香を横抱きで担ぎ、入った穴から出る。

「マスターのお友達さん!早く!!そろそろマスターの魔術の効果が消えます!!」

「っ!」

俺は自分の後ろに『氷結』を放ち、俺自身を押す。そして―

『オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛!!!?!?』

「立希!約束を…守ったぞっ!」

勢いよく体内から飛び出る。遂に、立香の救出に成功出来た。

 

 

side立希

「よっしゃあ!!っと、リップ!」

「は、はい!」

「!」

宙に飛び出た姉を担いだ焦凍君をリップがキャッチし、無事自分の所まで運んだ。

「姉は!?」

「ぅ……………」

「気絶してるだけだ…けどこのままにしておくのはマズイ…」

焦凍君の言った通り、姉は気を失っていた。けど生きている。少し緊張が解けた。

「(魔力がほぼ無くなっている……本当にギリギリだった……)…ありがとう焦凍君…!」

「ああ…だが、まだアイツが…「いや、もう心配は無いと思うよ」何…?」

自分は魔神柱を見る。

『ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!!!力…力ガァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!?!!?!!?』

魔神柱の全身にヒビが入る。そして水分が無くなるようにどんどん干からび始めた。

「焦凍君は姉を連れて下がって、後は自分が倒す。」

「出来るのか…?」

「勿論。まぁ自分の力じゃないけどね。」

自分の言葉に焦凍君は姉を背負って後ろに移動。それと同時、メルトとリップが自分も前に移動する。自分は干からびている魔神柱を見る。

「成程…姉の魔力を動力源として動いてたのか…で、魔力が無くなったから魔神柱の姿を維持できなくなっている…って事か…でもその前にお前を倒す。メルト、リップ。『合体宝具』!!」

「―行くわよ!」

「―う、うん!」

自分は二人に魔力を流し込む。リップの巨大なカギ爪―『トラッシュ&クラッシュ』の上に乗るメルト。そして空間圧縮を射出装置とし、流体変化により全身を宝具と成したメルトを撃ち出す。超遠距離狙撃宝具!

「合わせなさい!リップ!」

「うん!」

「「せーのっ!!―」」

パッションリップという『弓』で、メルトリリスという『矢』を撃ち放つ!!

「「『その愛楽は流星のように(ヴァージンレイザー・パラディオン)』!!」」

『――――――――――』

光速でメルトリリスは魔神柱の装甲を貫き、大口径の風穴を作り上げた。魔神柱は声すら上げず、崩壊する。

「これで終わり、ですか……?」

「これで終わり?出直して」

「これで…ようやく終わりだ……」

魔神柱がいた場所に、白目で泡を吹いて無様に倒れている敵…束を見つける。自分は近づく。

「で、こいつ。どうすんの?」

「そりゃ勿論…回収して…ねぇ?」

「はわわ…マスターさんの顔が怖いです…」

自分はそいつをカルデアに転送させ、ダ・ヴィンチちゃん達に任せる。今は姉の方が最優先だ。自分らは焦凍君と姉の所に戻ると、焦凍君は驚いていた。

「…スゲェな…一撃で倒すなんてな…」

「まぁね。自分の家族はすっごく強いんだから!」

「…ふん」

「えへへ…」

自分らの戦闘が終わった時、遠くから途轍もない衝撃と轟音。そして竜巻のようなものが現れる。その数秒後、大歓声が聞こえた。

「…どうやら、オールマイトの方も終わったみてぇだな。」

「(…そういや、ここに来るまで周囲で何が起きてたのか知らんかった…)そ、そっか…それじゃあ、自分らもそっちに行こうか。確か、緑谷君達がいるんでしょ?」

「ああ…立香がいるし、プロヒーロー達に会うしかねぇ…」

「あー…そう…だよねー……」

今更ながら、自分らがした事がかなりヤバい事に気付いた



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第33話

side立希

その後、自分と焦凍君はプロヒーロー達がいる所に向かう。案の定、何故ここにいるやら何をしていたやらと根掘り葉掘りと警察と共に怒られながら事情聴取された。いやもう怖かった。内心泣きながら少しだけ魔神柱の事を濁しながら説明し、姉を助けた事を話す。姉はそのまま病院に搬送される…救急車に乗っていた人員がカルデアで見た事ある人達だったからロマニ達が色々手回したんだなと自分は理解する…そして今、やっと事情聴取が終わった自分と焦凍君は自宅に帰る事にした。

「それじゃあ…自分は帰るよ。焦凍君は?」

「緑谷達と合流して、多分俺達も家に戻る。」

「そっか。姉を助けてくれてありがとう。」

「…ああ」

それと、自分が魔神柱と戦っている間にも、色々と事が進んでいた。一夜明けると報道で『オールマイトのヒーロー活動引退』を表明していた。しかも、彼の姿は今までの『筋骨隆々のマッチョボディ』ではなく、『痩せ細った骸骨』の姿だった。それがオールマイトの本当の姿であり、体力の限界という事だった。神野区での戦い。敵連合のボス、確か、オール・フォー・ワンだっけ?その敵との激戦で最後の力を振り絞ったというわけだ。そして、魔神柱の事だが…なんと奇跡的に何も言われなかった。皆オールマイトの戦闘に釘付けだった…?一応、ダ・ヴィンチちゃんに聞いてみると…

「魔神柱の事かい?安心したまえ。アレはタブーみたいなものだからね。映像関連はBBに昨夜の内に全て抹消してもらったのさ。一応記憶云々もキャスタークラスの英霊達の魔術で抹消済みさ」

「何それ怖い」

流石です。取り敢えずは一安心。自分は姉のお見舞いに行く…因みに、姉を取り込み、魔神柱となった敵―束は自分がカルデアに転送した後、監獄へと搬送される事になった…搬送前になんかサーヴァント達が色々したらしいけど…怖いから聞かない事にした。うん。知らない方がいい事もあるよね。

 

 

side三人称

それは、とある一室で起こった出来事…

「~~~~~!!~~~~~~!!」

その人物は猿轡され、椅子に拘束されていた。顔からは涙、鼻水、汗を大量に流し、拘束されてるが恐怖によって全身を震わせていた。猿轡されているが全力で叫びを上げている。目の前にいる存在を、心底拒絶していた。

「あらあらあら…どうして泣くのですか?貴方が欲していた本物の『魔神柱』ですよ?」

「うふふふふふ…この境界の眺めを楽しんで?あなたならきっと……耐えられるわ♪」

「ふんぐるいふんぐるい……ふふ、こいつがますたぁ殿にひでぇことしやがったんだなぁ?全く、反吐がでるってありゃしねぇ」

「こーんな可愛い邪神系後輩と会えるなんて人生に一度あるかないかですよ~全身全霊を持って、感謝してくださいねぇ~?ンフ、ンフフッ。ンフフフフッ」

「うふふ、僥倖に存じます。あまりに深々と覗き込むと。その瞳を焼いてしまいますよ?うふふ……」

「ウッヘヘヘ!エッへヘへ!タノシイ!」

「今宵はサバト。まぁ死にはしないから…けど死ぬ程恐ろしい事はするだろうけど…ねぇ…?」

人なのに、人では無いナニか。名状しがたい存在を視認した人物は絶望する…そして己が何に手を出したかを、今更ながら後悔した…

 

 

side立香

「やっほ。姉。元気になった?」

「ん。まぁね。」

次に目が覚めたら、病室だった。そこは日本支部のCDFが請け負っている病院。寝ているベッドの隣に立希がいて、私が目覚めた事に歓喜して抱き着いてこようとしたから殴ったのは謝る。で、体は何処も怪我とか、後遺症は何もないという医師の診断。魔力も無事回復して、今は安静している。個性も無事に血清にて回復。後は警察と事情聴取された…個性について話したらなんか空気が変わったけど…何かあるのだろうか……

「立香ちゃんも立希君も無事でよかったよ…」

「ロマニも来てたんだ!」

「うん。立希君とお見舞いの食べ物なんだけど…」

苦笑するロマニの後ろから、紙袋を持っている立希が出してきたものは…

「マック買って来た。チーズバーガーでいいよね?」

「分かってるじゃん」

弟にしては気がきく。病院食って量少ないからお腹が空いて…

「う、うーん…医師の経験がある僕としては…いやでもそれで立香ちゃんが元気になるなら…」

ブツブツいうロマニを無視して私は立希から渡されたチーズバーガーを食べようとした時…

「病人が何マック食ってんだ…」

「ハハハ、元気そうだね。」

「「「!」」」

相澤先生と、オールマイトが入って来た。

 

「(へぇーテレビで見たけどホントにガイコツみたいで細い体してる…)」

「えー…病室なのでそう長い話は出来ませんので」

「はい。すみません。本当なら支部でゆっくり話せばいいんですが…」

「藤丸少女と藤丸少年同伴での説明ですので、そう長く時間はとりません」

病室でまさかの家庭訪問。私が寝ているベッドの隣で立希とロマニ。相澤先生とオールマイトが対面して座っていた。内容は、『全寮制導入』についてだった。一応、ロマニが私達の親代わり。どう決断するのか―

「あ、はい。よろしくお願いします」

「「そんなあっさり!?」」

つい私達はツッコミをしてしまった。

「本当によろしいので?」

少し目を見開いて、またいつもの顔に戻る相澤先生が聞いて来た。ロマニはいつもの笑みを浮かべながら答える。

「ええ。というか僕は二人の親代わり。というわけですが、二人を縛ることなんてしません。寧ろ二人は自由に今後の人生を謳歌して欲しいです。」

「「…………」」

「僕らは二人のおかげで救われた事があります。かなり危機的だった状況から…二人は僕ら助けてくれた。率先してして動いてくれた。だから…今度は僕らが二人にそのお礼をしたいのです。」

「「ロマニ…」」

私と立希はロマニを見る。ロマニは少し照れ臭そうに頬をかく。そして、教師二人に深くお辞儀した。私と立希も遅れてお辞儀をする。

「よろしくお願いいたします。」

「「お願いします」」

 

「寮生活かー…皆と私生活…色々とありそうだ」

「そうだね。というか荷物纏めないと。というかカルデアの皆、この事知ってるの?」

「…多分知らない…うーんきよひーあたりが色々言ってきそうで怖い…」

「ガンバ」

「人の事いえないでしょ姉…円卓メンツとか…とうか一旦戻ってサーヴァント達宥めてよ。皆もの凄い殺気放ってて気が気じゃないんだし。五体満足な所みせて安心させて。」

「…そだね。」

家庭訪問が終わり、ロマニも先に帰った後、私は立希とおしゃべりしていると、また誰か入って来た。

「…入るぞ」

「え」

「お」

「見舞いに来た。」

「しょ、焦凍君!?」

まさかの焦凍君だった。片手には数本の黄色い花を持っていた。

「ふーん…それじゃあ、自分は帰るとしようかな」

「ちょ―「(ガンバ!)」」

「いいのか?」

「大丈夫だ。問題無い(キリッ」

キリッじゃない!!私が大丈夫じゃない!!!というか絶対勘違いされてる!!阻止しようと立希に手を伸ばすがさっさと退室してしまった。

「………………」

「えーと……こ、この通り元気になりました。アハハ」

「ああ…花。ここに飾る」

「あ、うん。ありがとう。」

この病室には私と焦凍君だけ。なんか変に意識してしまう。

「えっと、その花どうしたの?」

「手ぶらで来るのも失礼だろ…近くの花屋で適当に見繕った…」

「へー、そうなんだ。」

一言二言の会話。ベッドの隣にある机の上に飾り、そのまま椅子に座る焦凍君。何か会話…そういえばまだお礼言って無かった…!

「ありがとう。助けてくれて。」

「ああ…覚えてるのか?」

「うーん…全然。意識朦朧で全く覚えて無い。けどなんか誰かに呼びかけられてさ、担がれて運ばれてるなーって感じかな?」

事の詳細は立希から聞いた。まさか焦凍君が助けに来てくれるだなんて王子か!?王子様なのか!?

「立希との約束で…立香を助けるって守ったから」

「そ、そっか。何度も言うけどありがとう。」

「ああ」

ど、どうしよう…会話が続かない…

「…本当は」

「?」

「本当は合宿ん時、助けるハズだった…なのに出来なかった。すげぇ悔しかった…」

「焦凍君…」

本当に悔しそうに拳を強く握って言って来た。そんな焦凍君に、私は―

「えい」

「!」

軽く叩いたこう、頭をポンって感じで

「もう過ぎた事だから気にしないでよ。こうして私が無事なんだし。感謝だって何度もした。」

「だが「うじうじ男らしくない!私がいいって言ったならそれで終わり。以上!」あ、ああ」

ぎこちない焦凍君。少しおかしくて私は微笑む。

「…フフ、本当にありがとう。焦凍君」

「……………ぁぁ」

「?」

何か顔伏せたけどどうしたの?

「そういえば、全寮制になるけど、焦凍君は?」

「ああ。許可取った。だから俺も寮暮らしになる。立香達もか?」

「うん。退院したらすぐ戻って荷作りしないとね」

「ああ。そうだな」

「これからもよろしくね?焦凍君」

「…わかった」

 

「はぁー…あードキドキしたぁ…」

面会時間が過ぎ、既に焦凍君は退出した。今は少量の夕飯を食べている。

「うーん…少ないなぁ…」

ふと、私は机にある花を見る。焦凍君から送られた花。なんていう花なんだろ?

「…調べてみよ…」

スマホで適当に特徴を打ち込んで調べ、検索で出た画像から似た花を探す。

「あ、あった…―っ」

顔が赤くなる。ホント、イケメンはズルイ。偶然だけどこれはズルイ…

「ああもう…落ち着け私の心臓…っ」

花言葉は『大切なあなた』だった。




SAN値がもうヤバいっすね。1D100で済まないかも…


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第34話

side立希

「荷物はもう送っておいたからね」

「うん」

「ありがとう。ロマニ」

「先輩方、どうかお気を付けて…」

「大丈夫だよ」

「分かってる」

8月中旬。姉が無事退院。そして短い休みを過ごした自分と姉はロマニとマシュに見送られ、カルデアを出る。

 

「でけー!」

「恵まれし子らのーー!!」

「おおー」

「綺麗な所だね」

雄英敷地内。校舎から徒歩5分の築3日。巨大な5階建て。“ハイツアライアンス”そこが新しい自分達の家だ。A組全員と相澤先生が家の前に集まる。

「取り敢えず1年A組、無事に集まれて何よりだ。」

「皆許可降りたんだな」

「私は苦戦したよ」

「普通そうだよね…」

そして相澤先生の説明が話される…が、その前に警告が発せられた。

「轟、切島、緑谷、八百万、飯田…そして藤丸弟」

「「「「「「!」」」」」」

「この6人は『あの晩あの場所へ爆豪・藤丸姉救出に赴いた』」

『!』

「その様子だと行く素振りは皆も把握していたワケか…オールマイトの引退がなけりゃ俺は―『爆豪、耳郎、葉隠、藤丸姉以外全員除籍処分』にしてる」

相澤先生は言う。ヒーローの“信頼を裏切った”と。今はオールマイトの引退で混乱が続き、敵連合の出方が分からないから除籍をしないと。

「―正規の手続きを踏み、正規の活躍をして信頼を取り戻して欲しい…以上。さ、中に入るぞ。元気に行こう」

『(いや待っていけないです…)』

相澤先生の警告で皆の気分が一気に落ちた。そんな時、爆豪君が動いた。電気君を茂みまで引き連れ―

「うぇ~~い」

「バッフォ!」

「何?爆豪何を…」

「電気君…」

電気切れでアホの子になった電気君を見てウケる耳郎さん。今度は鋭児郎にお金をえ?カツアゲ?いやそれは逆か。

「いつまでもシミッたれっとこっちも気分悪ぃんだ」

「あ…え!?おめーどこで聞い…」

爆豪君の手には5万円。それを見た鋭児郎君は何処か思い当たりがあったようだ

「いつもみてーに馬鹿晒せや」

「…爆豪君らしーフォローだなー…」

さっきより雰囲気は良くなった。一安心だ。

「ねぇ立希…あの晩行ったって本当なの?」

「!あー…三奈さん」

何か冷汗出てきた。後ろを振り向くと自分を睨んでいる三奈さんがいた。そういえば彼女に無茶な事するなって言われてた…。

「私言ったよね?『今度こんな無理したら酸で纏った拳でぶん殴る』って」

「無理はして無いよ!大丈夫だった!うん!ほら!怪我なんて全くしてな―「そういう問題じゃないでしょ!」ア、ハイ。」

弁明出来なかったよ…

「ごめんね。やっぱり家族の危機は放っておけなかったから…」

「…私の心配は放っていいの?」

「そうは言って無いよ…」

うーん…こういう時、自分って何言えばいいか全然分かんないなぁ…ごめん…って謝っても納得する…わけないよねぇ…

「……今度は、約束守ってよね!」

「うん。絶対。」

「でも約束破ったのは変わり無いから……これから『さん付け呼び』禁止!」

「え゛」

「じー…」

「分かったよ…三奈さん―じゃなくて…三奈」

「うん!許す!」

いい笑顔です事。そのまま三奈は皆の所に行った。

「ふーん…」

「…何その笑み…」

「べっつにー。」

さっきから姉の笑みが地味にイラっと来る。いや、別にそういう事じゃない。うん。絶対にだ。

 

 

side立香

「1棟1クラス。右が女子棟、左が男子棟と分かれてる。ただし1階は共同スペースだ。食堂や風呂・洗濯などはここで」

「広キレー!!そふぁあああ!!」

「おおおおお!」

「中庭もあんじゃん!」

「豪邸やないかい」

「麗日クン!?」

「おおー」

カルデア並みに綺麗な室内。ここで皆と共同生活はいいね。私やクラスの皆は賑わう。

「聞き間違いかな…?風呂・洗濯が共同スペース?夢か?「男女別だ。お前いい加減にしとけよ」はい」

ブレないなぁ峰田君…

「部屋は2階から1フロアに男女各4部屋の5階建て。一人一部屋。エアコン、トイレ、冷蔵庫、クローゼット付きの贅沢空間だ。」

しかもベランダ付き。

「我が家のクローゼットと同じくらいの広さですわね…」

「実家の自室よりか狭いかな…」

「豪邸やないかい」

ヤオモモと私の発言に麗日ちゃんが驚いて倒れた。狭いか?いや、十分でしょ…

「部屋割りはこちらで決めた。各自事前に送ってもらった荷物が部屋に入ってる。取り敢えず今日は部屋作ってろ。明日また今後の動きを説明する。以上解散」

『ハイ!先生!』

因みに部屋割りは以下の通り。

 

 

【挿絵表示】

 

 

「それじゃ…始めますかぁー」

部屋に置いてある段ボールを開封する。

 

 

side立希

「―ふぅ…完了っと。あー疲れたぁー」

iPodに入れてある曲を聞きながら、ようやく部屋作りが終わった。お昼頃からずっと続けたから気付けばもう夜だ。お腹空いた…

「そういや、エミヤ達から弁当作ってもらってたな…」

部屋作りで段ボールを開けた時、一つだけ弁当が入っていたのはびっくりした。保冷パックがぎっしり入った保冷バッグがあったから冷蔵庫に入れて保存してある。直ぐにレンジで解凍し、夕飯にする。

「いただきます!あー…美味しい…暫く食べれなくなるのは嫌だなぁー」

しみじみとゆっくりと咀嚼しなかが食べ終える。さて、これからどうしようかな…ってどうせ夜だし、後は寝るだけ。明日からまた忙しくなるし、寝るまで漫画でも読んでるか…

「久しぶりに『ト〇コ』もいいなーでも『暗〇教室』も…いっそPCの『東〇project』で遊んでもいいな…」

弁当を片付けて、自分は趣味に没頭する―

 

「立希ー!いるー?もう寝てるー?」

「―ん?姉?はーい。今出るよー」

マンガを読みふけってると、ドアを叩かれ、姉の声が聞こえた。急いでドアを開けると…

「ん?皆どうしたの?」

姉以外に…クラスメイトが自分の部屋の目の前にいた。え?なんで?

「えーと、簡単に言えば、皆の部屋のお披露目会。」

苦笑しながら話す姉。

「それで!誰が一番いい部屋なのか―つまり部屋王を決めるの!」

夜でも元気がいい三奈が宣言した。

「は、はぁ…まぁ取り敢えず見せればいいんだね?」

「おう!さてさて!藤丸の部屋はどんなだー?」

わらわらと入ってくる皆。何か緊張して来た。ヤバいのは無いはず…さて、反応は…

「おー!」

「漫画だらけ!!」

「ゲーム機!!」

「アニメポスターでけぇ!」

「フィギュアもある!」

「アニメキャラのグッズもすげー…」

『オタク部屋!』

「まぁ…そうだよね」

マイルーム。棚の9割が漫画、小説、フィギュア、グッズ。壁には自分が好きなアニメポスターを張りつけ。机の上にはPC。そしてミニテレビにゲーム機と円盤だ。

「立希って隠れオタクだったのか」

「隠していたわけじゃないんだけどね」

「お!この漫画、俺読んでみてぇなって思ってたやつだ。」

「うわこのゲーム懐かしー前やってたわー」

「男子には中々好評だね!」

「へー、これが立希の部屋なんだー」

各々自分のマイルームを見渡す。

「そうだよ。まぁ読みたい漫画とか小説あったら貸すよ。」

「ゲーム機持ってきて大丈夫だったの?」

「何も言われてないし大丈夫でしょ。暇なとき遊ぼうよ。『〇球防衛軍』とか『戦〇BASARA』で」

「あーうん。」

「私も遊ぶー!」

どうやら4階での部屋見せは自分で最後だったらしい。なんか面白そうだから自分も見て回ることにした。

 

 

side立香

立希の部屋を見に行く前。私達女子の提案で部屋の披露大会が始まった。緑谷君は『オールマイトのオタク部屋』、常闇君は『黒だらけの部屋』、青山君は『眩しい部屋』と個性溢れる部屋だらけだった。峰田君の部屋は…何か危ないから見ない事にした。他にも尾白君は『普通の部屋』、飯田君は『メガネ大量の部屋』、上鳴君は『チャラい部屋』、口田君は『ペット(兎)がいる部屋』と面白かった。が、ここで峰田君含め釈然としない男子が現れた。そこで急遽、『誰がクラス1のインテリアセンス』かを全員で決める事になった。つまり…私達女子部屋も見せないといけないこととになったのだった…

「(…多分大丈夫なはず…うん…)」

続けて4階。切島君の『漢気溢れる部屋』、障子君の『ミニマリスト部屋』、爆豪君はくだらないと言って寝た。で、立希の『オタク部屋』を見終わったのだった。

「へー自分も皆の部屋見たかったなー…」

「後で見せてもらったら?」

立希も途中参加で入って来た。一応ざっと見て来た部屋の印象を教えておいた。そのまま今度は5階。瀬呂君は『エイジアン部屋』そして焦凍君の部屋は…まさかの『和室』造りが違う!!?

「当日即リフォーム!?どうやったんだ!?」

「……頑張った」

「大物になりそ」

「でも落ち着く…うん」

「…ならいい」

「イケメンがやることはちげぇな…」

最後は砂糖君の部屋。焦凍君の部屋を見た後はなんか印象が薄いかも…って思ってたけどそうでもなかった。

「何か甘い匂いする…」

「いけね!シフォンケーキ焼いてたんだった!……食うか?」

『食う!』

すごく美味しかったです…うまっ!

 

 

side立希

いやぁ…皆良い部屋だね。焦凍君和室って…イケメンはやることが違うなぁ…そのまま女子メンバーの部屋見せが始まった。2階に行って耳郎さんの『バンド部屋』ピアノもあった。姉とセッション出来そう。次は葉隠さんの『女子部屋』普通に女子っぽい部屋。そして正面突破の峰田君…発案者が峰田君って聞いた時狙いはコレかって思った…次は三奈の『カワイイ部屋』すごい…ピンクピンクしてすごかった。今度は麗日さんの『節約部屋』。〇金伝説でああいう節約生活で部屋無かった?梅雨さんは…気分が優れないようでダメらしい。で、八百万さんは『お嬢様部屋』ベッドがでかい…部屋の全体がベッドで埋まってた。そして最後は…姉の部屋だ。

「あー…私最後ってなんや嫌だ…」

「うだうだ言ってないでさっさと見せた方がいいよ。」

「弟の方はオタク部屋だったけど、姉の方はどんな部屋なんだろーな」

「別に面白いのなんて無いよ…」

そういいながら姉は部屋を見せた。

「おー星座表!」

「このアンティークいいね!」

「簪キレー!」

「…うん。姉っぽい部屋」

「うっさい」

ベッド付きの長机。壁に飾ってあるコルクボードには正座表やアクセサリーを飾り、棚の上にフラスコやガリレオ温度計などのアンティークを飾ってある。そして皆が注目したのは…

『ピアノ!』

「あ、電子ピアノ持ってきたんだ」

「暇な時弾けたらなって」

「藤丸姉ってピアノ弾けるの?」

「うん。まぁ趣味程度だけどね」

「でも女子部屋の中では藤丸姉の部屋は割とスッキリしていいな」

「…落ち着くな」

男子も女子も好評だった。そして談話スペースにて、爆豪君と梅雨さん除いた部屋王が投票で決まった。

「得票数6!圧倒的独走単独首位を叩き出したその部屋は……砂糖力道!!」

「はぁ!?」

まさかの砂糖君だった。

「因みに全て女子票。理由は―」

「「「「「「ケーキ美味しかった」」」」」」

『部屋は!?』

確かに美味しかったけど…部屋の審査じゃなかったのか…?そんなこんなで今日が終わった…



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第35話

side立希

昨夜はちょっとした休日だった。でもこれから自分達はいつもの日常―ヒーローを目指し、切磋琢磨する日常へと戻る。

「では、まず“仮免”取得が当面の目標だ。」

『はい!』

ヒーロー免許。これが無ければヒーロー活動が出来ない。これは人命に直接係わる責任重大な資格。当然試験は難しく、仮免でも合格率は例年5割を切るという。

「頑張らないと…」

「そうだね。」

皆も気合十分。

「そこで、今日から君らには―」

ここで相澤先生が指で合図を送った。すると教室にミッドナイト先生、エクトプラズム先生、セメントス先生が入って来た。

「―『必殺技』を作ってもらう!!」

『学校っぽくてヒーローっぽいのキタァア!!』

 

 

side立香

必殺技。これに皆大盛り上がり。私も心を震わせる。

「必殺!コレスナワチ必勝ノ型・技ノコトナリ!」

「その身に染みつかせた技。型は他の追随を許さない。戦闘とはいかに自分の得意を押し付けるか!」

「技は己を象徴する!今日日必殺技を持たないプロヒーローなど絶滅危惧種よ!」

「詳しい話は後だ。全員、戦闘衣装に着替えと体育館γに集合しろ。」

言われた通り、私達は戦闘衣装に着替え、体育館γに集まる。そこは巨大な体育館。

「通称―(T)トレーニングの(D)台所(L)ランド。略して『TDL』」

『(TDLはまずそうだ…)』

むしろアウト。考案者はセメントス先生らしく、生徒一人一人に合わせた地形や物を用意できるとの事。確かに体育館の地面はコンクリートだから先生の“個性”が大いに発揮する。

「質問お許しください!何故仮免取得に必殺技が必要なんですか!」

挙手しながら飯田君が聞く。すると先生らが答える。

「ヒーローとは事件・事故・天災・人災…あらゆるトラブルから人々を救い出すのが仕事だ。取得試験では当然その適性を見られる事になる。」

「その適性の中で、戦闘力は極めて重視される項目となります。技の有無は合否に大きく影響する!」

「状況に左右されることなく安定行動を取れればそれは高い戦闘力を有している事になるんだよ。」

成程…『これさえやれば有利で勝てる』っていう型があればいいんだ…

「つまりこれから後期始業まで…“個性”を伸ばしつつ必殺技を編み出す…圧縮訓練となる!」

セメントス先生が“個性”で体育館内に『コンクリート状の山』を作り、エクトプラズム先生が“個性”で『分身』を配置する。

「プルスウルトラの精神で乗り越えろ。準備はいいか?」

『!!』

「ワクワクしてきたぁ!」

皆やる気満々。けど私は…

「(やっべ…全然思いつかない…)」

技が思いつかず、焦っていた

 

 

side立希

「「うーん……「「何ヲ悩ンデイル。体ヲ動カセ」」アダァ!」」

現状、自分は姉と悩んでいた。皆必殺技作りで個性を連発しているのを見ているとエクトプラズム先生に蹴られ膝カックンされる。

「そう言いましても…先生。自分と姉の個性…正直『必殺技』が無いんですよ…」

「フム…確カ、君ラ姉弟ノ“個性”ハ『召喚者を使役する』ダッタナ」

「はい。私と弟は『召喚』する『だけ』なんです。」

姉の言う通りだ。自分達がカルデアの英霊達を召喚すれば後、自分達は何も出来ないんだ。まぁ強いてサポート?

「ナラ…ソノ『召喚』スル行為ヲ『技』トスルカ?」

「それはそれで…何か空しい…」

「…別ニ今日決メロトハ言ワナイ。一先ズ今日ハ個性伸バシニ専念ダ。」

「「…はい」」

 

そんなこんなで…時間はあっという間に過ぎていく。何と3日。その間…全く技が思いつかなかった。/(^o^)\ナンテコッタイ

「マズい…非常にやばいっ!」

「どうしよう…何か皆技っぽいの出来上がってるし…」

姉と冷や汗をかく。流石に姉も焦っていた。お互い何とか案を出そうと個性を見直すが…何の成果も無かった。

「…一応『個性伸ばし』でお互いの『魔力量』は底上げされたよね…まぁ召喚数は3体で変わらないんだけど…」

「そうなんだよねぇ…魔力使用は『召喚』以外何あるっけ?」

「……『令呪』を使う」

「でも令呪は3回しか使えないし、一画回復するのに1日かかるし…効率が悪い」

「…あ!だったらさ!戦闘衣装を魔術礼装にしない?」

「あーそれいいかも。ダ・ヴィンチちゃんに頼めばあっという間に出来上がるね。」

姉の戦闘衣装には『応急手当』『瞬間強化』『緊急回避』。自分の戦闘衣装には『浄化回復』『幻想強化』『予測回避』の各々スキルを使用できるのは戦闘とかで大いに活用できる。

「コスチューム改良も良いって言われてるし、許可取ればいいね…必殺技には関連ないけど」

「…うん」

「「はぁ………」」

 

4日目。着々とクラスの皆、必殺技が出来上がっていた。後、電気君や鋭児郎君等、戦闘衣装が変わっているのに気付く。

「二人ともかっこよくなったね」

「はは!まぁな!」

「立希は…全然変わってねぇな。ま、十分それでもカッコイイけど」

「見た目は変わってないけど、中身は変わってるよ。召喚した人達を強化・回復させる効果付けたよ。あと、この戦闘衣装に『GPS機能』が内蔵されてて直ぐに位置が分かるよ。」

後、ダ・ヴィンチちゃんのお遊び心で『電脳システム』を入れた。これがスゴイ。指で輪っかを作ってそこから覗けば『双眼鏡』。倍率調節可。指二本を真っ直ぐにして耳元に添えれば『通信』。口元に手を添えれば『拡声器』等…CDFの技術力は世界一ィイイ!!姉の戦闘衣装も同様だ。まぁ通信とGPSに関しては姉と自分のみだけど

「へー…技の方はどーよ?」

「う゛実は全然…個性伸ばし止まりで何も浮かばない…」

そう言うと2人は苦笑する。

「おいおい…大丈夫かよ!?」

「何とかするよ…絶対に…うん…」

この日も全然思いつかなかった……

「はぁ………」

「どうした。藤丸弟」

「常闇君……実は必殺技が全然できなくて焦ってるんだ…どーしよ……」

寮のリビングにて、深い溜息をついていると風呂上りの常闇君に出会う。

「どう?常闇君は必殺技出来た?」

「ああ。技名は―『深淵闇躯(しんえんあんく)』。『黒影(ダークシャドウ)』を纏い、弱点のフィジカル。近接をカバー出来る。技名は言いやすくするように改良する。」

「おー…名前カッコイイ…いいなー…自分もそんな技が出来ればなー…」

「ふっ…なら纏って見たらどうだ?」

「あはは。英霊と合体何て無理―」

その時、自分の脳に閃きが走った。

「そうか…そうだよ!!その案頂くよ!!」

「ふ、藤丸弟?」

いきなり元気になった自分に驚く常闇君をしり目に自分は立ち上がって行動に移す。

「ありがとう!常闇君!!常闇君の言った通り、自分も纏ってみるよ!!」

「あ、ああ…」

自分の考えを早速明日の訓練で実行してみる。勿論、姉にもだ。

 

早速特訓開始。エクトプラズム先生には席を外してもらい、姉と二人で特訓する事にする

「それで?どんな技思い付いたの?」

「えっと、説明…するよりは見てもらったほうがいいかな?来て―『ライダー』」

「―ひっさしぶりね!マス―コホン。お久しぶりです。マスター」

いつも通りのマルタさんが出てくれる。

「うん。久しぶりマルタさん。早速だけど手を貸して頂戴。」

「?分かりました」

「一体何を…」

自分はマルタさんと手を握る。そして、

「マルタさん…難しいけど、自分と『魔力』を馴染ませてみて。」

「…魔力を馴染ませる……こうでしょうか?」

「?」

目を閉じ、集中する。そして手をつないだ所から魔術回路経由でゆっくり、徐々に霊体化マルタさんの魔力を受け入れ、自分の魔力をマルタさんに馴染ませる。すると―

「これは―!」

「うっそ…」

「いけ…る…っ!」

徐々に霊体化し始めるマルタさん。そのまま自分に纏わりつき始める。そしてわずかに、自分の頭にマルタさんの衣装が実体化し始め、手には十字架の杖が現れ始める。

『成程…わかって来たわ!!』

「い…っ……けぇええ!!」

 

結果…自分の案は成功した。姉も早速ソレを試し、お互い『必殺技』が出来た。しっかり名前も決めて、何とかなった。後は仮免で使える様に、残りは調整に費やす!!



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第36話

side三人称

「―それじゃ、技名で、自分は『投影(トレース)』。姉は『降霊(ユニゾン)』で決まり。」

「うん。やっと形に出来た。ホントありがと」

立希と立香は技名を決め合う。

「先に完成したのは姉で、コツとか教えてもらったし、お互い様だよ……仮免合格できるよう頑張ろう」

訓練の日々はあっという間に終わり、遂にこの日が来る。ヒーロー仮免許取得試験当日

 

side立香

バスで会場まで移動し終え、私達A組は全員降りる。試験会場は国立多古場競技場。

「緊張してきたぁ…」

「仮免取れっかなぁ…」

皆、緊張した感じを出している。私も少し不安がある。

「この試験に合格し、仮免許を取得できればお前ら志望者(タマゴ) は晴れてヒヨッ子…頑張って来い」

『―はい!』

相澤先生からの激励(?) で気合が入る。

「うっし!それじゃあいつもの一発決めて行こーぜ!」

「おお!いいなぁ!」

気合が入ったのか、クラス盛り上げ組がアレを提案して来た。

「せーの!“Plus―「―Ultraァ!!」」

『!?』

その時、切島君の後ろから学帽を被った大柄でガタイが良い男子学生が大声で叫んだ。

「勝手に他所様の円陣へ加わるのは良く無いよ。イナサ」

「ああ!しまった!!どうも大変!!失礼!!!致しましたぁ!!!!」

「…おぉう」

典型的な体育会系といった感じの男子。思いっ切り地面に頭ぶつけて謝罪して来た…え、血出てない?大丈夫なの?何か同じ学校の生徒は彼を見てやれやれといった感じなんだけど…

「なんだこのテンションだけで乗り切る感じの人は!?」

「飯田と切島を足して二乗したような…」

「待って…あの制服…もしかして…」

少し周りがざわついた。そう言えば彼らの制服、見た事がある…

「東の雄英。西の士傑」

爆豪君がそう呟いた。

「何それ?」

「知らない?『士傑高校』だよ。まぁ私もさっき思い出したけど…」

知らなかった立希に教える。数あるヒーロー科の中でも雄英に匹敵する程の難関校だ。

「一度言ってみたかったっス!!プルスウルトラ!!自分雄英高校大好きっス!!!雄英の皆さんと競えるなんて光栄の極みっス!よろしくお願いします!!」

何ともTHE・男子高校生。というかやっぱり血が流れてる…

「…ああいうタイプ苦手だ…」

立希が顔を青くしている。ああいうのは苦手だって前言ってたね。

「夜嵐イナサ…お前らの年の推薦入試。トップの成績で合格したにも拘わらず…『何故か入学を辞退した男』だ。」

相澤先生が静かにそう言った。その事に私は驚く。

「え…」

「じゃあ1年…というか推薦トップの成績って…」

「…………………」

緑谷君と同じ気持ちだ。あの夜嵐という男性はつまり…実力は焦凍君以上ってこと!?

「雄英好きって言って推薦蹴るってイミフ。」

「……そうだね。」

その後、特に何事もなかったかのように士傑高校生たちは去っていった。と、同時にまた新しい人がやって来た。プロヒーローの『Ms.ジョーク』だった。どうやら相澤先生の知り合いらしい。というか出会って即告白って…そして相澤先生もしないと即答…嫌な顔してるし。

「何だお前の高校もか」

「そうそう!おいで皆!雄英だよ!」

「おお!本物じゃないか!」

Ms.ジョークの号令に私達と同じ学生達がやって来る。

「すごいよすごいよ!TVで見た人ばっかり!」

「1年で仮免?へぇーずいぶんハイペースなんだね。」

「私の受け持ちの『傑物学園高校』2年!よろしくな」

傑物学園の生徒の一人、真堂という男子が一人ずつ握手しながら自己紹介して来た。ドストレートに爽やかイケメン。けど…

「(ああいう人程、何か裏あるんだよなぁ…)「よろしくね!」 えっと…はい。」

「ねぇねぇ!轟君!藤丸君!サイン頂戴!体育祭かっこよかったんだぁ!」

「はぁ…」

「かっこよかったかなぁ…」

「ミーハーやめなよ」

「オイラのサインもあげますよ」

こうして他の高校の人達と接する機会なかったけど…やっぱり雄英生は有名なんだなぁ…ともあれ、説明会が初めにあるため、急いで戦闘衣装に着替え、私達は移動する。

 

説明会場には既に大勢の受験者がいた。というか多すぎ

『えー…ではアレ、仮免を……やります…あー…』

眠そうで疲れを一切隠してない人が説明を始める。大丈夫なのあの人…

『えー…ずばりこの場にいる受験者1540人一斉に勝ち抜けの演習を行ってもらいます。』

まずは第一試験。試されるのは『スピード』。条件達成者は『先着100名』という5割以上脱落するという…うっそでしょ!?

『まぁ社会で色々あったんで…運がアレだったと思ってアレして下さい』

「マジかよ…」

『ではー…ルールを説明します…』

そう言って私達に見せてきたのはボールと小型機械。

『受験者はこの『ターゲット』3つを体の好きな場所に着けてください。ただし常に晒されている部分にです。そしてこのボールを6つ携帯します。ターゲットはこのボールに当たると発光する仕組みです。3つ発光した時点で脱落といたします。3つ目のターゲットにボールを当てた人が“倒した”事とします。そして“二人”以上倒した者から勝ち抜きです。』

入学試験と似ているけど…相手はロボではなく、人。動きが違う。それにボールの数が合格ライン同じ。持っているボールが無くなったら相手からボールを取らなければならない…

「姉…これ結構きついルールじゃない?」

「うん…」

立希も私と同じ考えっぽいようだ。

『えー…では展開後、ターゲットとボール配るんで…全員行き渡って1分後にスタートとします』

「うん?展開後?」

次の瞬間。説明会場が言われた通り『展開』した。そして私達の周りには様々なフィールドが現れた。工場地帯、山、高層ビル街、住宅街、湖…

『(無駄に大掛かり!!)』

そんな事を心の中でツッコミしつつ、ボールとターゲットが配布され。ターゲット3つを体に取り付ける。私は左胸、右腰、左腕にターゲットを取り付ける。

「先着で合格なら…同校で潰し合いは無い。寧ろ手の内を知った中でチームアップが勝ち筋…皆!あまり離れず一塊で動こう!」

「あ、ああ!」

「緑谷の言う通りだぜ!」

「そうだね。」

緑谷君の意見に賛成だ。一先ず団体行動を―

「フザけろ遠足じゃねえんだよ。」

「待てよ爆豪!」

「バッカ待て待て!」

「3人ともどこ行くの?」

「え」

爆豪君が私達から抜けた。まぁ性格上知ってた。で、切島君と上鳴君。そして意外にも立希が爆豪君に付いて行った。

「俺も大所帯じゃかえって力が発揮出来ねぇ」

「轟君!?」

焦凍君も抜けた。広範囲の個性だとね…

「時間が無い!行こうぜ!」

私含め、残りのメンバーで行動することになった。

「単独で動くの良くないんだけど……」

兎も角、仮免取得試験第一次選考が始まった。



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第37話

オリキャラ二人出します。


side立希

「―あだだ…いきなり地震って…あー…爆豪君達とはぐれた…」

爆豪君、鋭児郎君、電気君の3人の所へ近づくため急ごうとした時、突如として地震発生。波のように地面がうねり瓦礫で完全に孤立した。

「誰かさんの“個性”かな…全くはた迷惑…っ!!」

「―くぅ☆惜しい!!☆」

服についた土を払い落としていた時、いきなり誰かが後ろからボールで攻撃してきた。自分はその相手と距離を離して構える。

「不意打ちしてくるなんて…ま、失敗のようだね。」

「アハ☆初めましてー☆雄英の…藤丸君☆」

その人物はレモン色の髪を歯車の髪留めで束ね、緑の作業服に類似した戦闘衣装を身に纏っていた。

「君は…」

見た事があった。その女性は確か士傑高校のメンバーにいた一人。

「どーもー☆士傑高校一年の加ノ工創(かのこはじめ)でっす☆」

…一つだけ突っ込ませて。語尾に『☆』ついてない?

 

 

side立香

試験開始早々、雄英以外の生徒組が結託し、私達を襲って来た。

「―むちゃくちゃするなぁもぅ…っ」

まぁそれでも皆個性伸ばしと必殺技の成果で対応し、防ぐ事はできたけど、真堂君の“個性”で『地震』を発生され、おかげで緑谷君達とはぐれて現在一人。瓦礫だらけだ。

「かなり地形変わったなぁ…あれだけの大技なら暫く動けてないかも…」

取り敢えず移動しなきゃ―

「―見つけた。」

「っ!?」

真横から人影。そしてそこからブレた棒状が私に襲い掛かる。反射的に後ろに跳び、バク転し回避する。

「誰!?って…侍?」

「………」

私を攻撃して来た人物は藍色の長い髪を後ろの低い位置でまとめ、侍のような戦闘衣装を身に纏い、手には逆刃刀を構えていた。

「貴方は…あ、士傑高校のメンバーにいた…」

「士傑高校一年。佐村伊蔵(さむらいぞう)…参る」

「っ!」

問答無用。一気に距離を詰められる。彼―佐村君が『逆刃刀』で攻撃して来た。速い!!

「くっ!」

横に一閃。髪が掠るが屈んで躱す。同時に地面にある石を拾い、礫として投げる。

「ふっ!」

当然、礫は刀で防がれる。それでも次の動作に隙は出来た。彼の胸囲についているターゲット目がけてボールで殴―

「『喝っ』!!」

「!?」

―ろうとした時、一瞬、体が動かなくなった。まるで金縛りにあった様な―

「1つ!」

「しまっ!」

逆に隙を作ってしまい、右腰のターゲットにボールを当てられてしまう。私は再度距離を置く。

「今のは…(体が一瞬動かなくなった…でもさっきの感覚は…初めてじゃない…カルデアの訓練で同じような事を体験した!!) もしかして…『覇気』?」

「!……正解。はぁ…初見でバレるってそれは無いよ…」

そう言って佐村君は納刀し、構える。

「個性は…召喚だっけ?悪いけど呼ばせる暇なんて与えない。さっきの攻撃で俺の速さに若干追いつけていない。距離を置こうとしても縮地で接近する」

「(研究されている…まぁ体育祭で目立ったし…)…でもそれは…どうかな…」

今こそ、『必殺技』を使う時だ。

「これで…終わりだ」

再度接近される。確かに今の私では彼の速さに追いついていない。でも―

「―『降霊(ユニゾン)』」

刀が私の体に当たるよりも早く、私は唱えた。

 

 

side立希

「いい加減☆ボールに当たれ☆」

「だが断る!!」

現在、自分は彼女―加ノ工さんと戦闘中。彼女が瓦礫に触れると瓦礫が『武器』へと変わり、それを持って攻撃してくる。

「そぉい☆」

「っ!ふん!!」

こん棒を振りかざしてくる。それをいなし、掌底で二つに折る!

「むっ☆『即席加工物(クリエイト)』」

「はぁ!?」

が、折れたこん棒が『手錠』に変わった。掌底した方の手首に手錠が掛かる。もう片方は彼女の手首に。

「せいやっ☆」

「っ!」

刹那。お互い同時にボールを持って殴る。殴った衝撃で手錠は壊れ、距離が離れる。

「あちゃぁ…☆」

「相打ちか…」

彼女の右肩のターゲット。そして自分の腹のターゲットが光る。因みに自分は腹、左胸、右肩だ。

「さぁ☆ドンドン攻めるよ☆『召喚』はさせないぞ☆」

「…!」

気付けば自分と加ノ工さんの周りはいつの間にか『壁』があり、囲まれていた。

「『加工装備(クラフト)』☆ただ闇雲に攻撃してたわけじゃないよ☆こうやって近接戦の『フィールド』を作っておいたのさ☆」

見た目で判断出来ないなと思った。彼女はかなり抜け目の無い行動をしているっ!

「(…けど) フッ…何勘違いしてんだ」

「ひょ?☆」

「誰が『召喚』するって言ったんだ?」

掌を前に突き出す。

「!させない―」

加ノ工さんが攻撃してくる。その攻撃が当たるよりも早く、唱えた。

「『投影(トレース)』―」

 

 

side三人称

「っ!」

佐村は刀を防がれた。そして目の前にいる敵。立香を見て驚愕する。

「『降霊(ユニゾン):セイバー・オルタ』!」

―何を手こずっている。蹴散らしに行くぞ―

立香は黒のバイザーで目を覆い。黒の部分手甲を装備し、黒の剣―エクスカリバーを手にする。

「これが―私の『必殺技』!」

降霊(ユニゾン)。自身に英霊を憑依させ、今まで出来なかった近接をカバーしたのだった。そして降霊したサーヴァントと自身の肉体をリンクさせ、身の丈に合った身体強化されるのだった

「今度はこっちの番!!」

―蹴散らす―

「!」

一閃、二閃、三閃と剣を振わせ、佐村を翻弄する。その動きはまるで騎士。

「(っ!さっきの彼女の動きとまるで違う!?)」

予想外の出来事に佐村は焦る。その焦りが原因なのだろうか―

「遅い!」

「っ!?」

立香の攻撃により刀が弾かれ、完全に隙が出来た。

「もらった!」

「ぐっ…」

今度は立香が佐村の腹部のターゲットにボールを当てる。佐村は距離を置いた。

「っ…」

「フフ…さっきの勢いはどうしたのかな?」

立香は不敵に笑う。

 

「ウッソォ…☆」

別の場所。加ノ工の攻撃を立希は防いだ。突如現れた大盾によって。

「『投影(トレース):マシュ・キリエライト』!」

―武装完了……。行きましょう!先輩!―

立希は下半身に部分甲冑を装備し、両手で大盾を持つ。

「これが…自分の『必殺技』だ!」

投影(トレース)。立香同様に自信に英霊を憑依させ、今まで出来なかった近接をカバーしたのだった。そして降霊したサーヴァントと自身の肉体をリンクさせ、身の丈に合った身体強化される。

「オラッ!」

「っ!!」

立希は大盾を振るい、加ノ工を払いのける。

「行くぞ!」

「ちょ!?☆」

そのまま立希は大盾を正面に構え、タックルをする。加ノ工は不利な体勢になりつつも躱す。

「ってしまった!」

「脱出!!」

立希は加ノ工を攻撃したのではなく、壁に攻撃したのだった。壁は崩れ、フィールドの意味が無くなる。

「このまま追加攻撃!!」

「っ!?」

立希は大盾を縦、横と振るう。大盾はその動きに合うように回転。加ノ工が手にしていた武器を粉砕する。

「盾ってそんな攻撃の仕方をするの!?☆」

「盾舐めんなぁ!!」

いつの間にか状況が逆転していた。今度は加ノ工が攻めあぐねる。

「な、何で『加工』出来ないの!?」

回避しつつも、加ノ工は立希の持つ大盾に触れ、破壊しようと“個性”を発動させていたが、まるで効果が無く、動揺する。

「さて何でだろうね!!」

―これは『英雄たちが集う場所』…そんな力は通用しません!!―

「二つめぇ!!」

「あぐっ!」

立希は隙をついて加ノ工の左肩のターゲットにボールを当てる。

「くっ…」

「体育祭の自分はもういないぞ!!」

立希は不敵に笑った。

 

「―うん…」

「?」

逆刃刀を構えていた佐村。だったが不意に刀を収めた。その行動に疑問をもった立香が、次に佐村が口にする。

「パス。ここで戦って失格になるのは嫌だし」

「…え?」

そう言い残し、立香からものすごい速さで離れたのだった。

「え…えー…」

―はっ…軟弱な奴め―

「いやいやいや…ちょっと待って!!ここで逃がすわけ無いでしょ!?」

立香は佐村を追いかける。なんせ一人も捕まえていないからだ。ここで逃がすとチャンスが無いのだった…

 

「逃げるんだよ~~~☆」

「逃がすかぁあああ!!!」

そして加ノ工もまた、立希から逃げていた。ターゲット二つも取られた加ノ工は絶賛ピンチ。ここで失格になるわけにもいかない為、戦闘放棄したのだが、逆に立希はあと一つで合格に近づくチャンス。逃がすわけにも行かず、加ノ工を追いかける。その時、

「あ☆佐村君発見☆」

「ん…加ノ工さん」

「あ!姉!」

「立希!」

ここで各々合流するのだった。そして更に―

「あ☆ケミィ先輩☆!!」

「何で裸…」

「藤丸君!藤丸さん!」

「立希じゃねぇか!!」

「立香ちゃん!」

「緑谷君!瀬呂君!」

「麗日ちゃん!」

ここで更に合流。藤丸達の前に、裸で瓦礫の上に座っている女性―現見ケミィと。その付近に固まって行動していた緑谷、瀬呂、麗日の姿があった。

「…………」

「ちょ!?☆先輩!?」

「…行くよ。加ノ工さん」

「あ!待て痴女!」

「いや!追わなくていい!!」

「いいタイミングで合流した事…」

「だね…」

5人は集まる。士傑高校3人は見逃した。追いかけてもいいが、5人もいれば別のターゲットを多くとり、合格に早く繋がると判断した。

「姉…どうだった?」

「ん?刀で攻撃されたよ…めっちゃ速い…でも一泡吹かせたよ。」

「こっちも。手数多くて焦ったけど後一歩のところまで追い込ませたよ…結局ダメだったけど…」

「藤丸君…藤丸さん…でもこれで5人集まった。これなら簡単に相手のターゲットをゲットできるっ!」

「何か作戦あるのか緑谷?」

「デク君…」

「勿論―行こう!」

 

この後すぐ、緑谷、立希、立香が囮で大勢の相手を分散しないように走り、そして瀬呂の『テープ』がついた岩々を麗日の『無重力(ゼロ・グラビティ)』で浮かして飛ばし、大勢を拘束。こうして5人は相手のターゲットにボールを当て、合格するのだった。




必殺技:投影(トレース)。降霊(ユニゾン)
自信に英霊を憑依させる。『英霊召喚』より力は劣ってしまうが、今まで出来なかった近接をカバーできる。(憑依すると、憑依した英霊の共通の武器、服、瞳、髪等、変わる。)

オリキャラ
・佐村伊蔵(さむらいぞう)
個性:剣豪
棒状の物に触れると好きな『刀』に変貌出来る。また肉体が剣術特化となり、『剣気』や『縮地』が可能。己を鍛える事で強くなる。

・加ノ工創(かのこはじめ)
個性:加工
触れた物を自分のイメージ通りに『加工』出来る。しかし0から1に増えない。あくまで加工。


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第38話

side立希

「おおお!!!っっしゃあああああ!!」

「雄英全員!」

「一次突破ぁあああ!!!」

「俺達すげええ!!」

「うん!スゴイよコレ!」

自分と姉が緑谷君達と共に合格し、控室に向かうとすでにA組の11人が合格していた。その後も怒涛のA組メンバーが合格し、無事一次選考が終了した。合格人数は規定の100人。

『えー100人の皆さん。これをご覧ください。』

『?』

突然控室の大型テレビに映像が映る。そこには先ほどのフィールド。

「何だろ?」

「さぁ…」

「…ん!?おいみろ!」

「…え…」

映像にて、フィールド内にある建物が突如として爆破され、倒壊。轟音を立て崩れ落ちた

『(――――何故!?)』

『次のテストが最後です。皆さんにはこれから……この被災現場でバイスタンダーとして『救助演習』を行ってもらいます!』

 

 

side立香

「バイ……何だっけ?」

「バイスタンダー。現場に居合わせた人の事だよ。授業でやったよ」

「え゛そうだっけ…」

そんな立希にため息を吐きつつ、軽く教える。

「一般市民を指す意味もあるよ。」

『ここでは一般市民としてではなく、仮免許を取得した者として―どれだけ適切な救助を行えるか試させていただきます。』

映像を見ていると、いつの間にか人がいた。しかも老人に子供。大勢瓦礫の中に入って行く。説明によると、彼らは要救助者のプロ―『HELP・US・COMPANY(通称HUC)』。傷病者に扮した彼らがフィールド全域にスタンバイし、私達が彼らを救出する。というのが試験内容だった。

「…………」

「…?姉、どうしたの?」

「ん…ちょっと…ね…似てるなって」

私はこの試験内容を見て訊いて、保須市の事を思い出す。あの時も私は避難活動をした。血を流し、泣いていた老若男女…プロヒーローがいたから上手く避難活動出来た…けど今は…私達だけしかいない!

「―気を引き締めないと…っ」

「そうだね。」

 

 

side立希

「「「「あ(☆)」」」」

10分後に試験は始まる。その間は休憩時間としてのんびりしていると、さっきの試験で戦闘した加ノ工さんとバッタリ出会った。もう一人の侍っぽい方は姉の方を見て自分と同じ反応をしていた。

「やほー藤丸君☆さっきぶり☆」

「どうも…」

「知り合い?」

「戦って逃げられた。姉こそ知り合い?」

「そっちと同じ。戦って逃げられたよ…」

各々戦闘経緯を話すと、加ノ工さんは指さして笑う。

「ぷぷー☆女の子相手に逃げるって佐村君それ無いよー☆」

「…うっさい。というか加ノ工さんだって人の事言えないじゃないか」

佐村君はイラついた顔をして、加ノ工さんを指摘する。

「…私は戦術的撤退を選んだだけだからノーカン☆」

「アウトだよ」

そんな2人を見て何か士傑って感じとは思えなかった。

「まぁ改めて自己紹介☆加ノ工創です☆よろしくね☆」

「あーうん。藤丸立希です。よろしく」

「佐村伊蔵…よろしく」

「藤丸立香です。」

お互い握手をする。別の所でも士傑高校のメンバーがA組メンバーと会合し、会話していた…けど夜嵐君と焦凍君は何か雰囲気が悪かった。特に夜嵐君は焦凍君に敵意を送っていた。何かあったのだろうか…

「それじゃあまた☆試験で☆」

「………それでは」

「あ、うん。」

加ノ工さんと佐村君と別れる…なんかあの2人、既視感を覚える…っと、そんな事考えてる場合じゃない。そろそろ試験の時間だ…切り替え無いと…

「むぅ……立希…さっきの子、だれ?」

「三奈さ―じゃなかった。三奈…?」

振り返るとそこには何か不機嫌な三奈がいた。

「試験だよ!ナンパ場所じゃないんだぞー!」

といかにも怒ってる仕草で自分に吠えて来た。とんでもない誤解だ。

「えぇ!?違うよ!?さっきのテストで戦闘しただけでって痛い!?熱い!?ちょ!酸纏って殴るのは本当にアブナイ!?」

何とか宥めようとした時―

―ジリリリリリリリリリリリリリリ!!!!!―

『!?』

警報のベルが鳴った

 

 

side立香

「焦凍君。」

「…立香」

「どうしたの?夜嵐君と会話して…なんか睨まれていた感じだったけど…」

先の夜嵐君と焦凍君の雰囲気が悪かった。少し気になって私は話しかけた。

「…いや、何でもねぇ。」

「…もしかして…エンデヴァーさん絡み?」

「…あいつは俺じゃねぇ。今は試験に集中だ。」

「………うん。そうだね」

またですか。またそういうのですかエンデヴァーさん。

「(でもまぁ今は関係無い。焦凍君の言う通り、試験に集中―)」

しようと深呼吸をした時だ。

―ジリリリリリリリリリリリリリリ!!!!!―

『!?』

警報のベルが鳴った

 

 

side三人称

『敵による大規模破壊が発生!規模は○○市全域建物倒壊により傷病者多数!』

突然の放送。これには受験者全員が驚き、慌てる。

「な、何だァ!?」

「演習のシナリオね」

「え!?じゃあ…」

「始まりね」

スタート合図なんて無く、いきなり試験開始。そしてまた控室が展開する。

『道路の損害が激しく救急先着隊の到着に著しい遅れ!到着するまでの救助活動はその場にいるヒーロー達が指揮をとり行う。』

控室が展開しきると同時に全員がフィールドに散らばる。

『一人でも多くの命を救い出す事!!』

二次選考の始まり。



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第39話

side立希

「行こう!三奈!」

「っ!うん!!」

向かう先は一番近くの都市部ゾーン。三奈と一緒に行動する。都市部ゾーンに行きながら姉に連絡。

「姉!救護に回って!治癒系の英霊で応急処置!控室場所が救護場所になるから!」

『了解!というかそうする予定!』

そんな通信を終え、周りを見渡す。各々自分達が出来る事をさっそく始めていた。

「チームで動くぞ!」

「情報はいち早くだ!」

「うっし!私も動くぞ!酸で瓦礫溶かして救助しやすいよう道を作る!」

「自分も動くとしよう!来てください!『キャスター』!」

「―召喚に応じよう。マスター」

自分も早速行動に移す。まず自分が呼んだのはキャスター、『アヴィケブロン』。青いマントとボディスーツ、無貌の仮面で身を隠した男。十一世紀、中世ヨーロッパのルネッサンスの起点となった哲学者の一人であるユダヤ系スペイン人だ。

「そして―『投影:ニトクリス』!」

―お望みとあらば―

次に自分はニトクリスと憑依。頭上の左右で耳のように髪がはね、手には細長い杖を装備する。

「姿変わった!?それが立希の技なの?」

「まぁね!先生!ゴーレム召喚してください!」

「了解した『動け、ゴーレム』」

アヴィケブロンが魔術本を取り出すと同時に魔術発動。瓦礫、土を材料とし、数十体の『ゴーレム』が誕生する。

「うぉ!?な、なんだぁ!?」

「ご、ゴーレムって奴か!?」

「先生はゴーレムを使って皆の救助と救助支援を!」

「了解した。だが肝心の救助する者たちが何処にいる?」

「それは自分が―『出ませい!』」

杖で地面を数回つつく。今度は地面に黒い渦巻く穴が現れ―そこから使い魔の『黄金スカラベ』、『メジェド様』がぞろぞろと出てくる。

「皆さん!黄金スカラベが上空で偵察し、怪我人がいるとその場で光ります!メジェド様は体が小さく、狭いところも索敵可能!目もライトのように光るので一緒に行動してください!」

大声でそう説明し終え、黄金スカラベとメジェド様は一気に拡散する。

「お、おう分かった!」

「面白い姿してる割には役に立つな!」

「うぉ!?ほんとに狭いところ入りやがる!?」

「虫が光ったぞ!あそこに行くぞ!!」

早速有効活用してくれている。

「―成程。では、私も動く。というより、ゴーレムを動かすとしよう。『操縦開始』」

そしてアヴィケブロン先生の指示でゴーレムも動く。そこから問題無く救助出来る。スカラベ、メジェドで情報共有。ヒーロー達で救助し、怪我人はゴーレムが一度に大量に運ぶ。瓦礫もゴーレムの怪力で撤去。ヒーロー達の行動もあって順調。勿論、自分も救助活動をする。

「う…た、助けてくれ…」

「大丈夫ですか!?ご安心を!自分らヒーローが来ました!絶対貴方を助けます!!」

怪我を負った大人を励ましながら体に負担を抱えないよう担いで運ぶ。このままいけば無事に―

―BOOOOOOOON!!!―

「!?」

フィールドの壁が一部崩壊。そこから現れたのは―

「対敵。全て平行処理できるかな」

プロヒーロー、否、敵役が現れた。

 

 

side立香

二次選考が始まると同時に皆一斉に散らばる。が、私含め一部のヒーロー達は展開した控室に留まる。

「全員行っても救護する役がいないなら意味ねぇ!」

「ここは俺達が指揮するぞ!」

「ここを救護地とする!」

『姉!救護に回って!治癒系のサーヴァントで応急処置!控室場所が救護場所になるから!』

「了解!というかそうする予定!」

立希との通信をし、私は救護活動に専念する事にした。まずは英霊を呼ぶ!

「来て『アサシン』、『キャスター』!」

「―聖神皇帝、ばーんと登場である!」

「―診察を始めよう」

対人戦闘以来のふーやーちゃん基アサシン、『武則天』。そしてキャスター、『アスクレピオス』。目深に被ったフードと嘴状のマスクで顔を隠す若干禍々しい姿。ギリシャ神話に登場する人物で、アルゴノーツの一人。 ケイローンの門下生でもあり、医術に関する知識は師をも凌駕していたという。つまり医者。

「ふーやーちゃん。アスクレピオス。訓練で本当の怪我じゃないけど、これから来る怪我人をドンドン治療してくれない?」

「なに?どこも悪くない?だったら早く本物の患者をつれてこい。患者の前にいない医者ほど無意味なものはないぞ」

「童は特に治癒系のスキルは無い…が、知識はある故に出来ない事もない。」

拷問技術を持つ彼女にとっては人間の体を診るのは簡単だろう。私も持ち前の知識と技術で応急処置ぐらいは出来る。そうこうしているうちに怪我人が運ばれてきた。

「なんじゃコイツら!?」

「ご、ゴーレム!?」

「(アヴィケブロン先生のゴーレムだ。) 大丈夫です!個性の一環ですので!」

「さて、どこが悪いんだ?…ん?ただの血糊ではないか!!ええい!本当の怪我人はどこだ!!「訓練ですので!我慢してください!」…ふん」

「ふむ、こういう怪我・出血の仕方だとちと救助された場所とあまり合わないの。まぁいい。軽症・重症を分けておくべきか…使い魔『酷吏』達よ。運んで行って参れ。」

嫌々ながらも診察するアスクレピオス。使い魔を使って症状を見分けるふーやーちゃん。そして私も診察をする

「いてぇ…いてぇよ…」

「大丈夫ですか?私の声がきこえますか?見えますか?……はい。大丈夫です。命にかかわる怪我ではありません!ゆっくりとここに体を横に…次は―「藤丸さん!」緑谷君!その子診せて!」

そこに子供を抱きかかえて緑谷君が来た。

「もうこんなに…「この子は大丈夫なの?」 あ、うん!頭怪我して出血が多いけどそんなに深くないよ!受け答えもハッキリしてる!」

「ひっく…ぐす…」

「泣かないで…私達ヒーローがついてるから…うん…」

診察をしている時だ。

―BOOOOOOOON!!!―

「!?」

フィールドの壁が一部崩壊。そこから現れたのは―

「対敵。全て平行処理できるかな」

…多分敵役のプロヒーローが現れた。この試験、厳し過ぎない!?



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第40話

side立希

『敵が姿を現し追撃を開始!現場のヒーロー候補生は敵を制圧しつつ救助を続行してください』

「難易度高すぎぃ!!」

「今更言っても仕方が無い!」

「どう動く!?ヒーロー!」

敵、元いプロヒーローの姿は白いスーツを着た人型のシャチのような容姿。確か『ギャングオルカ』!彼以外にも武装したサイドキックが大勢もいる。

「ギャ、ギャングオルカ!?マジかよ!!」

「(…ん?アレって真堂君?)」

双眼鏡で確認。殿をしようと動いた…が、直ぐにギャングオルカに沈められた…

「強っ…」

『立希!今から救助者を奥に避難させるから手伝って!』

「!了解!任せて!姉はどうするの?」

『私は…応戦する!』

「!へぇ…珍しい」

姉が率先して動くなんて…それくらい本気なんだろう。姉がそうなら弟の自分だって!

「アヴィケブロン先生!」

「了解した。」

急いで救助地に行く。そして着くと同時に先生が更に『ゴーレム』を召喚。そしてゴーレムは救助地の周囲に並び、肩を組み合う。つまり『壁』だ。これで仮に敵が来ても時間は稼げる。

「さぁ!今の内に!「流石藤丸君☆」!加ノ工さん!?」

「私もこんな事しちゃうのさ☆」

いつの間にか近くに加ノ工さんがいた。彼女は屈んで展開した控室に触れる。すると削れる音が発せられ、形が変わっていく。

「これって―」

「いやぁ良い材質の建物だった☆『巨大台車』の出来上がりぃ☆」

彼女の“個性”によって怪我人が大量にいた床の一部に大量のタイヤが現れ、文字通り『巨大台車』に変化した

「ふぅ…結構体力持ってかれたぁ…☆」

「すげぇ!」

「これなら一度に運べるぞ!」

「皆で押せぇ!」

「パワー系の個性持ってる奴らの出番だ!!」

「うん…これなら…立希!私達は敵を!」

三奈の言葉に自分は頷く。

「うん!行こう!先生はゴーレムで彼らを守りながら移動してください!」

「了解した」

「芦戸!藤丸!」

「俺達も行くぞ!」

「尾白君!」

「常闇!」

「僕もいるよ!」

「緑谷君!」

途中で尾白君と常闇君と緑谷君と合流。そのまま自分達は大量にいる敵を倒しに行く

「姉!間に合った!」

更に姉とも合流。目の前では敵役のプロヒーロー達との乱戦が勃発していた。

「ここからはヒーロー達の時間だよ!」

「皆で制圧するぞ!」

「行くぞ…」

 

 

side立香

『敵が姿を現し追撃を開始!現場のヒーロー候補生は敵を制圧しつつ救助を続行してください』

「っ…ハード過ぎるでしょっ」

思わず毒を吐く。前には敵。後ろには大勢の怪我人。しかも敵の場所が救助地のすぐ近くって理不尽すぎる!

「皆を避難させろ!奥へ!敵から出来るだけ距離をおけ!」

「真堂…さん!?」

「っ!一人で殿は無―」

「温い」

「グァアア!?」

敵―プロヒーロー『ギャングオルカ』は一瞬にして真堂君の意識を刈り取った。多分『超音波』。遠くにいた私でも耳が少し痛い…

「この実力差で殿一人?なめられたものだ!」

「っ…」

私は直ぐに立希に連絡する。

「立希!今から救助者を奥に避難させるから手伝って!」

『!了解!任せて!姉はどうするの?』

「私は…応戦するよ!」

連絡を切って私は戦闘準備をする。

「アスクレピオスは退却。ふーやーちゃんはそのまま怪我人を運んで。」

「了解したのじゃ!」

「ふん…次は本物の怪我人を診せろ」

アスクレピオスは不満そうに消える。

「ふぅ…よし!『降霊:ペンテシレイア』!」

―我が部族の力、その身で味わってみよ!!―

敵の方に向かいながら私はペンテシレイアと憑依。両手に手甲、そして鎖のついたモーニングスターを装備する。

「いっけぇえええ!!!」

モーニングスターをぶん回し、敵集団に着弾させる!

「なんだぁああ!?」

「モーニングスター!?あの子が投げたのか!?」

サイドキック達の動きが怯む。その隙にもう一度私はモーニングスターをブン投げる!

「砕…っけろっ!!」

「……っ!」

「ふっきィイイイイ飛べぇえええええええ!!!」

私以外にも参戦して来た。氷と風が敵に襲い掛かる。少し離れた所にいたのは、氷結を放ち終えた焦凍君だった。

「焦凍君!」

「…風」

「敵乱入とか!!なかなか熱い展開にしてくれるじゃないっすか!」

焦凍君がいる場所の上空から夜嵐君。彼ら二人の個性は制圧能力が高い。ならこういう場面は相性がいい!

「「!」」

「…うん?」

気のせいか…二人がお互い見た途端空気が悪くなったような…

「…お前は救助の手伝いをしたらどうだ?“個性”的にも適任だろ。こっちは俺がやる」

「ムムム…」

「(何か嫌な予感が…)「余所見とは油断大敵なんじゃねぇか!?」うわ!!」

「セメントガンだぜ!すぐ固まって動きづらくなるぜ!」

「別動隊…っ」

武装したサイドキック集団の一部が私に攻撃して来た。飛んで来る攻撃をかわし、モーニングスターを振り回して防御!

「今度はこっちの番!!」

ハンマー投げの様に回転し、暴れまわる!!

「ちょ!?その質量で向かってくるとか―ぐわぁあああ!!!」

「カワイイ顔してやる事えぐい―ぎゃぁあああ!!!」

「セメントガン効かないって嘘だろぉお!?ぐぉおおおお!?」

「っとと…目が回る……」

あっという間に鎮圧。プロヒーロー達を吹き飛ばす。やっぱり劣化してるとはいえ、英霊の身体能力・攻撃力は流石だ。

「焦凍君達は―」

加勢しようと焦凍君がいるだろう場所見て…呆気にとられた

「何で炎なんだ!!?熱で風が浮くだろ!?手柄を渡さないつもりなのか!?」

「誰がそんなことをするかよ」

「いいやするね!だってアンタはあの…エンデヴァーの息子だ!!エンデヴァーと同じ目をしている!!」

「同じだと…ふざけんなよ…俺はあいつじゃねぇ…」

「(何でこんな時に喧嘩してるの!?)」

夜嵐君の『強風』と焦凍君の『炎』。二人の攻撃が噛み合わなく敵に攻撃が届かない。そして二人は何かいがみ合ってるし…

「敵を前に何をしているのやら…」

再度、『強風』と『炎』が放たれる…だがまた噛み合わなく分散…

「また!やっぱりアンタは…っ!」

「!!風で…」

「!危ない!!」

強風で煽られた炎が動けなくなっている真堂君に向かう。距離的には私が近い!!

「行っ……けぇ!!」

「うわ!?」

炎が真堂君に届くよりも早く、私はモーニングスターの鎖を真堂君の方へ投擲。そのまま彼の体に巻き付け引き寄せる!!

「ギリギリ回避成功…大丈夫?」

「あ、ああ…すまない…感謝する…」

真堂君に感謝されつつ、私は焦凍君と夜嵐君に向かって―

「うん……あーもー…何してんの!!」

「っ…立香…」

「…っぅ…」

―怒鳴ってしまった。試験中に喧嘩…私怨で動いている二人にイラついた。丁度その時

「姉!間に合った!」

「ここからはヒーロー達の時間だよ!」

「皆で制圧するぞ!」

「行くぞ…」

「!立希…皆…」

立希含めた増援がやって来た。

 

side立希

姉と合流出来た。敵は…焦凍君と夜嵐君を撃退していた。マズイ!

「(少し…いや結構恥ずかしいけどやるしかない!)『投影:イリヤスフィール・フォン・アインツベルン』!!」

―必要な戦い……なんだよね。うん、行くよ、ルビー!―

『どどんとやっちゃいましょう〜!』

今度はイリヤと憑依。胸にひらひらと綺麗で可愛い星のボタンでとめたリボンを取りつけ、手には『ルビー』を装備する。

「ステッキが喋った!?」

「つか立希、何でリボン付けてんだよ!?」

「あ~…やっぱ恥ずかしい…でもこういう時ホントいいんだよ!」

若干白い目で視られた感じだけど無視して『ルビー』を構える。

『さぁさぁマスター!このルビーがしっかりとマスターの活躍をサポートいたしますよー!』

「喋ってる暇あるならさっさと自分の魔力を使ってくれ!!」

「ぞろぞろとヒーロー達が来やがったぞ!!」

「敵ナメンナ!!迎え撃てぇ!!」

大量の弾が飛んで来る。でも自分はそれらを気にしないでルビーを正面に構え―

「いけぇ!!シュート!」

桃色の大口径のレーザーを放つ。大量に向かって来た弾を飲み込み、大量の敵に着弾する。

「なんだぁぁあああ!!?」

「うわあああああ!!!?」

「まだまだァ!!シュナイデン!」

今度は魔力で模った斬撃を放ち、敵の武器を破壊する。

「こ、今度は武器を壊しやがった!?」

「これじゃあ撃てねぇ!?」

「すごい…」

「俺達も加勢するぞ!!」

『おう!』

そこから乱戦に入る。着々とヒーロー達が集まり、敵の達を翻弄する。自分も更に攻撃を加速させる。

「行くぞルビー!」

『アレをやっちゃいますかー!』

魔力を練り上げ、ルビーに注ぐ。するとルビーはステッキから大剣に変化する

「限定インクルード・バーサーカー!うりゃああああ!!!!!」

体全身使っての叩き込み。元々瓦礫だった場所が更に悪化。

『やり過ぎだろぉおおおおおおお!!!!!?!?!?!?』

そんな声と共に敵役のプロヒーロー達が吹き飛ぶ…丁度人がいない所に放ったから大丈夫だ!

―ビーーーーーーーーーーーーーーー!!!!―

『えー只今をもちまして。配置された全ての『HUC』が危険区域より救助されました。まことに勝手ではございますがこれにて仮免試験全工程…終了となります!!』

「お…終わった…?」

ここで、試験が終わった。

 

 

side立香

「―取り敢えず邪魔だ」

「ガァ!!」

「っ………」

「!」

立希達と合流出来た。けど夜嵐君と焦凍君がギャングオルカの『超音波』で行動不能になった。このままだと二人がマズイ!

「『解除』!そしてもう一回『降霊:アビゲイル・ウィリアムズ』!」

―いあ、いあ!…ふふふふ……―

今度はアビゲイル―アビィちゃんと憑依。額に鍵穴が浮かび上がり、巨大な銀の鍵を装備する。

「はっ!」

「―ぬっ!?」

「なんじゃこりゃ!?」

「タコの触手かよ!?」

地面に錠を突き刺し、カチリとひねる。するとギャングオルカとサイドキック達の周囲に巨大な触手を召喚し、妨害する。

「焦凍君!無事!?」

その間に私は倒れている焦凍君の所に向かう。

「立香か……悪ぃ…」

「今の状況の事?それともさっきの事?…まぁどっちでもいいけど「ふむ―中々の攻撃だ」っ!せぇい!」

更に触手を召喚して妨害。というかギャングオルカ触手食べてなかった!?いやシャチって獰猛なんだけど神話生物の触手食べて大丈夫!?けど今は…二人に言いたい事がある。

「今は試験に集中!夜嵐君も!!」

「っ!」

「ここで過去の事で引きずってても意味が無い事ぐらい分かるでしょ!?」

「………」

「「っ………!!!!」」

「うわっ!?」

刹那。『強風』と『炎』がギャングオルカを襲う。炎を風で覆い、ギャングオルカの動きを封じた。

「おいおい後ろ後ろ後ろ!」

「シャチョーが炎の渦で閉じ込められた!」

「マズくないか!?」

「シャチっぽいシャチョーは乾燥に滅法弱い!」

敵役のプロヒーロー達が騒いでいた。けど私はそんな事より、焦凍君の方を見ていた。

「焦凍君…」

「立香…お前の言う通りだ…無駄に張り合ってこんなんでトップヒーローに適うわけがねぇ…今出来る事を…俺とあいつでやるっ!」

「…うん!」

雨降って地固まる。多分夜嵐君も同じだ

「風はいい!炎を止めろぉ!!」

「させない!!」

「動けねぇなら…関係ねぇ!!」

攻撃してくる敵達に私は『触手』、焦凍君は『氷結』と防御し、反撃する。

「しまった!!」

「ヘルプに戻るか―「させない」グァ!?」

「っ!誰「はっ!」ぐおぉ!?」

バタバタと敵が倒れていく。そこに現れたのは―

「加勢しに来たよ。」

「佐村君!」

佐村君だった。逆刃刀で気絶させたようだ。というか早業すぎる…見えなかった。

「ここで動かないなんて…士傑の名折れ…参るっ!」

気付けば周りは乱戦状態。少しずつヒーローの方が優位になって来た…立希の方も『ルビー』を持って敵役のプロヒーロー達を凪飛ばしている。

「(もう一踏ん張りっ)『解除』!『降霊:殺生院キアラ』!」

―ふふふ……ソワカソワカ―

今度はキアラさんと憑依。髪が伸び、頭に巨大な二本の角が生え、白い布を被る。

「姿が変わっただと!?」

「構うもんか!撃って撃って撃ちまくれぇええ!!」

セメントガンの弾が来た!私は指で印を結ぶ

「大頭七野干法」

頭上に魔力玉を展開させ、光弾の雨を降り注ぎ、相殺し、反撃。

「嬰童無畏心」

『なんじゃそりゃぁあああ!?!?!?』

『魔神柱』の群れを敵役のプロヒーロー達に襲わせ、行動不能とさせる。その時、ギャングオルカに動きがあった!

「―で?次は?」

「「「!」」」

超音波で風と炎を打ち消したギャングオルカ。私は構えた時、ギャングオルカの真横から緑谷君が蹴りの攻撃を浴びせた。

「3人から離れて下さい!!」

「緑谷君!?」

「っ!」

「緑谷…お前は…」

―ビーーーーーーーーーーーーーーー!!!!―

『えー只今をもちまして。配置された全ての『HUC』が危険区域より救助されました。まことに勝手ではございますがこれにて仮免試験全工程…終了となります!!』

「…え」

と、ここで試験が終わった…



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第41話

こんな小説を読んでいただきありがとうございます。感想もちょこちょこもらって嬉しいです。


side立希

仮免試験の全過程が終わった。今はもう戦闘衣装から制服に着替え、会場の中央に全員集まっている。

「あー終わった…疲れた…」

「どうなったかなぁ…」

「やれる事はやったけど…どう見てたのかわかんないし…」

「こういう時間いちばんヤダ…」

「わかる」

「人事を尽くしたならきっと大丈夫ですわ」

自分はクラスメイトにお互い頑張った事を褒めたたえ、合格か不合格か不安になりつつも待った。自分も不安でいっぱいだ。

「姉はどう?受かる自信ある?」

「さぁ…でもやる事はやったから…」

数分後、遂に結果が出た。

『―我々ヒーロー考案委員会とHUCの皆さんによる二重の減点方式で見させてもらいました。とりあえず合格点の方は五十音順で名前が載っています。ご確認下さい。』

画面に合格者が写りだした。自分は直ぐに『ふ』を探す。

「ふ…ふ…ふ…」

結果は―『合格』だった!そして自分の名前の上には姉の名前もあった!

「やった!姉!合格したよ!姉も合格したね!!」

「…うん。」

ヒーローになるまずは第一歩を踏めた。

 

 

side立香

私も立希も『合格』出来た…でも…

「焦凍君…」

焦凍君の名前が無かった。つまり『不合格』…やっぱり夜嵐君といがみ合いで…

「…………」

焦凍君はただ黙っていた。そこに…

「轟!!ごめん!!」

夜嵐君が焦凍君の正面まで来て地面に頭をぶつけて謝罪して来た。

「あんたが合格逃したのは俺にせいだ!!俺の心の狭さの!!ごめん!!」

「…元々俺がまいた種だし…よせよ。お前が直球でぶつけてきて気付けた事もあるから」

どうやら夜嵐君も『不合格』だった。過去二人が何あったのか私にはわからない。でもここが二人の一旦の区切り何だろうね…

 

『えー全員ご確認いただけたでしょうか?続きましてプリントをお配りします。採点内容が詳しく記載されてますのでしっかり目を通しておいてください。』

配られた紙には私の試験結果が記されていた。ボーダーラインは50点。私は―80点。結構高得点で驚いた。

「姉どうだった?」

「80点。結構高得点で驚いてる。そっちは?」

「自分も80点。いやぁ…行動は良かったんだけど『やりすぎ』って書かれた…」

「私も…でも救護が適切な処置と診断が良かったって書かれてた。」

いくら劣化した英霊の力でも加減は難しい。でもこうして至らなかった所を捕捉してくれるのはありがたい…その後、不合格になった受験者は『3ケ月の特別講習を受講した後、個別テスト』をすれば仮免許を発行すると発表されたのだった。

「よかったね。焦凍君。」

「立香…ああ。すぐ…追いつく」

拳を握り締め、強く焦凍君は言った。

 

「「おお…」」

結果発表後、私や立希含め、合格した受験者の手元に『ヒーロー活動許可仮免許証』が来た。車の免許証に似てる。

「やったね姉。カルデアの皆に報告するよ。」

「うん。皆喜んでくれるよ。」

スマホで連絡しようとした時、

「おーい!」

「あら、士傑」

夜嵐君が走って来た。

「轟!!また講習で会うな!!けどな!正直まだ好かん!!先に謝っとく!!ごめん!」

そう言って走り去って行った…それどんな気遣い…

「…こっちも善処する。」

律儀に答える焦凍君。さて私達も帰る時間だ。立希に続いてバスに乗ろうとした時…

「すまん!言い忘れてたー!」

再び夜嵐君がやって来た。

「藤丸さん!!」

「「え?どっち?」」

「女性の方っす!!」

「え?わ、私?」

夜嵐君に呼ばれた。彼とそんなに接点なかったはず…と思いながら彼の前まで行くと…手を握られたぁ!?

「二次試験の時!!迷惑かけてすみませんでしたぁ!!でも貴方のおかげで過ちに気付けたのでここに!!感謝します!!」

勢いよく腕を振られどう答えて良いか分からなくなる。勢いがスゴイ!?

「え、えと…あ、あの時は私も必死だったから別に感謝される事は「あります!!」ひぇ…は、はい…」

「これで以上です!!ではまたどこかで!!」

今度こそ走り去って行く夜嵐君。彼は…真っ直ぐすぎる……立希が苦手だって言った事が何となく分かった気がするよ…

「……………」

「焦凍君?どうかしたの?」

「………んでもねぇ」

「?」

焦凍君の顔がムッとしていたような……気のせいかな?ともあれ、一生忘れない夏休みが終わった。明日から新学期だ…

 

 

side立希

「喧嘩して謹慎~~~~~!?」

今日から新学期。けど朝起きたら、治療跡が大きい緑谷君と爆豪君が掃除している姿があった。何でも昨夜、皆が寝静まった後外で喧嘩したとか…

「馬鹿じゃん!」

「ナンセンス!」

「馬鹿かよ!」

「骨頂!」

「新学期早々何してんだか…」

「「ぐぬぬ…」」

緑谷君が謹慎3日、爆豪君が謹慎4日という話だ。自分含め、二人に色々言う。でも仲直り?はしたとか…A組の新学期は二人欠けてのスタートになってしまった…

 

新学期のため今朝は校庭にて全校集会があった。校長先生の話はものすごくどうでもよくてありえないほど長かった…でも最後に校長先生が言った“校外活動(ヒーローインターン)”は少し気になった…後、生活指導から緑谷君と爆豪君の事が話され、問題児扱いされてた。

 

HRにて、梅雨さんが相澤先生に『ヒーローインターン』について質問した。これは皆疑問に思っていた事だった。

「…そうだな…先に言っておく方が合理的か……平たく言うと“校外でのヒーロー活動”以前行ったプロヒーローの下での職場体験…その本格版だ。」

「へー………体育祭の頑張りは何だったんですか!!?」

麗日さんの意見は最もだ。というかまた麗らかじゃない…

「体育祭で得た指名を『コネクション』として使うんだ。これは授業の一環じゃない。生徒の任意で行う活動だ。むしろ指名を頂けれなかった者は活動自体難しいんだよ。」

前は各事務所が募集していたけど雄英生の引き入れでイザコザが多発して今の形になったとか…麗日さんも納得した。

「ただ1年間生での仮免取得はあまり例がない。敵の活性化も相まってお前らの参加は慎重に考えてるのが現状だ……まぁ後日ちゃんとした説明と今後の方針を話す。こっちも都合があるんでな」

これでHRが終わり、通常授業に入った。1限目は英語だ。

 

「はー……やばい。きつい…」

「同感」

新学期が始まって3日。疲労がたまる…段々と授業が難しくなってきている。自分は国語、社会が…そして姉は数学、物理が……といった感じだ。それにヒーローインターンの事もある。

「姉はどうする?インターンの話」

「私…?うーん…まだいいかな。あんまり急ぎ過ぎてもね…というか今この状況がいっぱいいっぱいで大変で…」

「まぁ…そうだよね」

久しぶり項垂れている姉を見た気がする…そういえば今日は緑谷君の謹慎解除日。さっき皆の前で謝罪して遅れた分を取り返そうと息まいていた。ガンバレ!

 

「じゃ緑谷も復活したところで本格的にインターンの話をしていこう。」

HRにて、早速ヒーローインターンについて話される…と思ったらAクラスに誰かが入って来た。男性二人に女性一人。

「現雄英生の中でもトップに君臨する3年生3名―通称『ビッグ3』の皆だ」




今週の金、土は用事で投稿が出来ないです…多分、日の夜に投稿できる…かな?


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第4期
第42話


ヤクザ編。普通に重くて暗い話でしたね…


side立希

教室に入ってきたのは3人の生徒。青みがかった黒髪と尖った耳、三白眼が特徴的な男性。ねじれた水色のロングヘアを持つ女性。そしてデフォルメの効いた童顔に、大柄で鍛え抜かれた肉体というインパクトのある出で立ちの男性。この3人が…雄英生のトップ…『ビッグ3』の人物…

「あの人たちが…的な人がいるとは聞いたけど…!」

「びっぐすりー!」

「めっちゃキレーな人いるしそんな感じには見えねー…な?」

相澤先生が3人に自己紹介を促した。始めはみがかった黒髪と尖った耳、三白眼が特徴的な男性…『天喰』と呼ばれた先輩。

「……っ!」

『!!』

いきなりのガンとばし!?いきなりの迫力で一瞬ビビった。一体何が始まるのか…内心ドキドキしていると…

「……駄目だミリオ……波動さん……ジャガイモだと思って臨んでも… 頭部以外が人間のままで依然人間にしか見えない」

「……んん?」

「頭が真っ白だ…辛いっ…!帰りたい………!」」

『(ええ…!?)』

…どうやら天喰先輩は人間不信?

「あ。聞いて天喰君!そういうの『ノミの心臓』って言うんだって!ね!」

項垂れた天喰先輩に、ねじれた水色のロングヘアを持つ女性がフォロー?した。

「彼は『天喰環』!それで私は『波動ねじれ』!今日はインターンについて皆にお話してほしいと頼まれて来ました。」

今度は大丈夫そう…かな?波動先輩が話始める。

「けどしかしねぇねぇところで君は何でマスクを?風邪?オシャレ?」

「!…これは昔に―「あらあとあなた轟君だよね!?ね!?何でそんなところを火傷したの!?」」

「………!?それは―「芦戸さんはその角折れちゃったら生えてくる?動くの?ね?」」

「(何だろうあの先輩…)」

障子君に話かけたと思ったら今度は焦凍君に…と思った今度は三奈に…

「峰田君のボールみたいなのは髪の毛?散髪はどうやるの!?蛙吹さんはアマガエル?ヒキガエルじゃないよね?どの子も皆気になるところばかり!不思議!」

「天然っぽーいかわいー」

「幼稚園児みたいだ」

「ケロ…」

そんな波動先輩の行動に自分達は何とも言えない反応をする。

「オイラの玉が気になるってちょっとちょっとー!!?「違えよ」」

「ねぇねぇ尾白君は尻尾で体支えられる?」

「え、えと―「藤丸さんはその手に描かれてる印は何!?消えるの!?」」

「え?…あ、はい?」

「…………合理性に欠くね?」

あ、相澤先生がイラついて来た。全く話が進まない…最後にデフォルメの効いた童顔の先輩だ。

「大トリは俺なんだよね!前途ーーーーー!!」

『!?………(ゼント…?)』

「(え…多難?)」

「多難ーーー!!っつってね!よぉしツカミは大失敗だ!はっはっはっ!」

なんとも癖の強い人物ばかりだ…

「…3人とも変だよな…ビッグ3という前にな…なんかさ…」

「風格が感じられん…」

「いきなり質問されてびっくりしたー……」

3人の行動に皆不信に思う。そんな自分達に先輩は笑って話してくる。

「まぁ何が何やらって顔してるよね。必修でわけでもないインターンの説明に突如現れた3年生だ。そりゃわけもないよね……よし!色々スベリ倒してしまったようだし……君たちまとめて『俺と戦ってみようよ』!!」

『え…ええ~~~!!?』

もう訳が分からない…自分はそう思った…

 

 

side三人称

体育館γにて、ビッグ3の一人、『通形ミリオ』対『A組全員』との戦闘。ミリオは自身が体験した事を皆に体験させるためにこの案を出したのだった。全員ジャージに着替え終え、体育館に集まった。

「いつどっから来てもいいよね。一番手は誰だ!?」

「僕……行きます!」

ここで緑谷が前に出る。そして緑谷を筆頭として各々戦闘準備にはいった。

「よっしゃ先輩そいじゃあご指導ぉー…」

『よろしくお願いします!!』

戦闘が始まる。と同時に通形の服が『透過』した。慌てて服を着替え直す通形に緑谷が蹴りを放つが『すり抜ける。』そこに瀬呂の『テープ』、芦戸の『酸』、青山の『ネビルレーザー』、立香の『モーニングスター』と遠距離の攻撃が来る…するとそこに通形の姿がいなかった。

「いないぞ!?」

「まずは遠距離持ちだよね!!」

「ワープした!!」

いつの間にか遠距離主体のメンバーがいる背後に裸になった通形が現れる。

「すり抜けるだけじゃねぇのか!?」

ここで相澤先生が皆に伝える。

「お前らいい機会だ。しっかりもんでもらえ。その人…通形ミリオは俺の知る限り、『最も№1に近い男』だぞ。プロも含めてな」

『!!?』

「POWERRRRRRR!!!」

戦闘開始から約5秒。半数以上が鳩尾を殴られ戦闘不能になる…

 

 

side立希

クラスの半分がやられた。見た目と違って先輩はかなり強かった。これがビッグ3の本気なのかと思う程…

「後は近接主体ばかりだよね」

「何したのかさっぱりわかんねぇ!!」

「『すり抜ける』だけでも強ぇのに…『ワープ』とか…それってもう無敵じゃないすか!」

「よせやい!」

まさかここまで強いなんて思わなかった。このままだと全滅なのだろうか…

「姉、大丈夫?」

「ゴホッ……いきなり腹パンされて意味わかんない…イダイ…」

姉は『ペンテシレイア』さんと『降霊』し身体強化されていた為何とか耐えたみたいだ。

「(というか今は自分の事を考えた方がいいかも!) 『投影:マルタ』」

―さあ、行きましょう―

頭にベールを纏い、十字架の杖を構える。

「―何してるかわかんないならわかっている範囲で仮設立てて兎に角勝ち筋を探っていこう!」

「おお!サンキュー!謹慎明けの緑谷スゲー良い」

「成程ね…」

「探ってみなよ!」

通形先輩はそう言うと自分達に向かって走りながら沈んでいった。そして緑谷君の後ろにワープしてくる。緑谷君はそれに反応してカウンターをするが『すり抜け』られ、鳩尾を殴られダウンした。

「ほとんどがそうやってカウンターを画策するよね!ならば当然そいつを狩る訓練!するさ!!」

「(対応が早―)っ゛!!」

考える暇すらない。自分の目の前に通形先輩が現れ、反射的に杖を横に振るうが『透過』され鳩尾を殴られる。尋常じゃない力だ!!?

「POWERRRRRR!!!!」

「ゲボッ…『信仰の加護』……っ…」

直ぐにスキル『信頼の加護』で自分を少し回復する。

「かなりの強敵だよ…」

「お!これで終わるかと思ったら『二人』残ってたな!」

「立希…」

「姉…どう?遠くから見て先輩の行動は…」

「『すり抜ける個性』…やっかい…でも対策は出来る。『攻撃出来る』ようにすればいい」

姉の言ったことに自分は直ぐにピンと来る。

「成程…賛成だよ」

「まだやるかい?」

「「勿論です!」」

自分と姉は再度構える。

 

 

side立香

「『解除』、『降霊:浅上藤乃』!」

「『解除』、『投影:織田信長』!」

―私、お役に立てるかしら…―

―渚の第六天魔王、オンステージじゃ!―

私の瞳が紅くなり、赤いショールを羽織る。立希は赤と黒の巨大ギターを担ぎ、ノッブの帽子を被る。

「おお!体育祭とは全く違う!!」

「『千里眼』」

「『渚の第六天魔王』」

そのまま私と立希はスキルを発動させる。

「行け!立希!!」

「それなんて〇ケモン!!行くけどさぁあ!!ゲッチュー!」

私の指示で立希は通形先輩に向かって突撃。ギターに炎を纏わせ叩きつける。

「!っと!!」

「「!」」

通形先輩は通り抜けなく、回避した。とういか勘が良くない!?

「今の攻撃……成程『すり抜け出来なく』させたようだね…でもそれだけじゃ俺は倒せない!」

そう言って通形先輩は地面に沈む。

「それはどうですかね…っ!」

「よっと!」

立希が跳躍。と同時に私は両手を前に突き出し、地面を見る。そして―

「『凶れ』……!」

立希がいた地面を『抉った』。物を捻じ曲げる『歪曲』の力だ。

「わぉ…!」

抉った地面から通形先輩の姿を見つけた。

「見つけた!ノブナガ波ァ!!」

「もう一度…『凶れ』っ」

『歪曲』と『手を象った火の気弾』を通形先輩に放つ!

「甘い!」

「「!?」」

攻撃が当たる…と思いきや今度は通形先輩が上空へ逃げた。まるで地面と反発するかのように!!

「っ!うおぉぉ!!」

「立希!」

立希が再度炎を纏わせたギターを振るう…が、それは『すり抜けた』のだった。

「やべ…っ「どうやら制限時間があったようだね!!」っづ!!」

再度鳩尾を殴られ、立希は行動不能になった。それを見た私は……

「…降参します。」

両手を上げて降伏した。

 

 

side立希

「ぎりぎりちんちん見えないよう努めたけど!!すみませんね女性陣!」

自分達がようやく回復し終え、講評の時間になった。

「とまぁこんな感じなんだよね!」

そう笑顔で通形先輩は言うけど…

『わけもわからず全員腹パンされただけなんですが…』

全員項垂れる。そう言ったところで、通形先輩の“個性”が説明される。個性は『透過』。全身“個性”を発動するとあらゆるものをすり抜けるのだった。だから服も地面もすり抜けた。そしてあの『ワープ』は応用らしく、地中に落下してる時に個性を解除すると瞬時に地上に弾かれる…それがワープの原理であり、最後自分と姉の攻撃を躱してみせた跳躍の仕組みだった。

「…ん?でも藤丸姉弟の攻撃を避けてましたよね?」

瀬呂君が手を挙げて言うと、皆自分らを見てくる。

「あれは姉と自分、憑依した英霊の『スキル』で『一時的に当たる様に』しただけ。だから通形先輩は避けた…まぁ時間切れで二回も腹パンされたけど…」

『成程…』

そう説明すると皆納得した。

「ハハハ!二人はよく粘った方だよ!…まぁ長くなったけどコレが手合わせの“理由”!言葉よりも“経験”で伝えたかった!インターンにおいて我々は『お客』ではなく一人のサイドキック!同列(プロ)として扱われるんだよね!それはとても恐ろしい。時には人の死にも立ち向かう……!けれど恐い思いも辛い思いも全てが学校じゃ手に入らない一線級の“経験”!!俺はインターンで得た経験を力に変えてトップを掴んだ!ので!恐くてもやるべきだと思うよ1年生!!」

と、通形先輩は言い切った。自分達は拍手する。

「話し方がプロっぽい…」

「『お客』か…確かに職場体験はそんな感じだった」

「危ないことはさせないようにしてたよね。」

ヒーローインターン……恐くてもやるべき…か……人理修復の時を思い出す……

「姉、自分…ヒーローインターン。やるよ」

「…ま、いいんじゃない。何事も経験だし」

このヒーローインターンで更に成長するんだ!自分も更に向こうへ(プルス ウルトラ)って事だ。



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第43話

side立希

ビッグ3との会合の次の日。『1年生のヒーローインターン』は多くの先生が反対という意見だった。それでも強いヒーローに育てる為に、『インターン受け入れの実績が多い事務所に限り1年生の実施を許可する』という方針に決まった。とHRで知らされた。勿論、CDF日本支部は実地している。早速自分はダ・ヴィンチちゃんにインターンの事を話し、日本支部からも許可がもらえた。

「それじゃあ姉、行ってくる」

「うん行ってらっしゃい。ゴールドさんによろしくね」

 

「初めまして!君が藤丸ちゃんの弟君だね!職場体験で藤丸ちゃんを担当したゴールドだ!よろしく!」

「藤丸立希です。ヒーローインターンよろしくお願いします!」

CDF日本支部にて、姉がお世話になったゴールドさんに会った。姉がとても良い人だって言ってたけどその通りだ。話かけやすいし、フレンドリーな人物だ。

「藤丸君は職場体験どうだったかい?本部だったよね?」

「あー…まぁ一言で言えばきつかったですね…アハハ…」

職場体験(特訓) を思い出すと乾いた笑みしかでない……今思えばよく自分生きてたな…

「そうだったのか…でもその程度で根を上げちゃヒーローとしてやってけないぞ!まだ君は成長過程なんだ!頑張っていこう!」

「は、はい!」

背中をバシバシ叩かれながらも、早速インターンに取り掛かる。

 

「―最近、妙に不良の集団が多い。万引き、強盗…etc.…敵グループの抗争もこの前あって大変だよ…」

「自分もテレビでニュース見ますが日本各地で多いですよね…中には『薬』を使って自身の“個性”の威力を底上げするとか…」

戦闘衣装に着替え終え、夜の保須市をゴールドさんと共にパトロールする。

「だからここ最近各ヒーロー事務所で武闘派を欲しがっているんだよ。藤丸君と藤丸ちゃんは結構適材かもしれないね」

「確かに。自分と姉の“個性”はオールラウンダーですね。」

会話しながらも、周囲をしっかり見張る。時折ゴールドさんのファンなのか、市民の人達が手を振ったり声をかけたりしてくる。時たま自分にも来るからちょっと驚いた。そんな時―

「雄英高校では今どんな事をして―「ひったくりだぁ!誰かぁ!」!噂をすればだ!!藤丸君―マギ!行くぞ!」

「!はいっ!!」

ヒーローの仕事が来た。直ぐに声が聞こえた方に走る

「―!見つけた!」

「あいつらのようだ!」

急いで現場に行くと、自分達に背を向けて無我夢中に走ってる数人の集団がいた。集団の持つバッグには大量の財布が入っており、地面に落としながら逃走していた。

「既に射程圏内に入っている!行け!『黄金ボール・網』!!」

ゴールドさんが『金玉』をスリリングショットで放つと、放たれた金玉は空中で変化し、『金色の網』が犯罪集団の数人に絡みつく

「何だこりゃ!?」

「お、重ぇ…」

「さぁーて、悪いする奴らはお前らかぁ?」

「くそっ!」

網でとらえた犯人をゴールドさんが捕縛しようと動くと、犯罪集団の一人が腕を『蝙蝠の翼』に変え、飛んで逃げようとしていた。

「させない!『投影:アーラシュ』!」

―行くぜぇ!―

自分は瞬時に憑依し、茶色の弓を構え、矢をつがえ放つ。目標は飛び立とうとする犯罪者。矢は真っ直ぐ犯罪者背中に直撃する。

「いでぇ!?」

「流星をみせてやる!」

「がっ!ぐっ!うげっ!」

高精度での連射が売りのアーラシュの弓術。連続射撃で犯罪者を地に落とす。

「仲間を見捨てる…ひどい人だ……」

「おお!そんな事が出来る様になってるのか!すごいなマギ!」

―ワアアアアアアアア!!―

「さすがゴールド!手際良いな!」

「もう一人誰だ!?サイドキックか!?」

「あの子知ってる!体育祭でベスト4の一人!」

歓声が沸く。自分の行いがヒーローとして認められているようで嬉しくなる。でもまだ仕事は終わってない。ゴールドさんと共にさっきの犯罪集団を縛り上げる。

「これで全員ですか?」

「……いや!まだ後一人足り―「死ねクソがぁ!!」!!」

「ゴールドさん!!」

人混みの中から突如として現れた男性。片手が『黒曜石』のように黒く巨大な拳で殴りかかって来た!

「『解除』!『投影:マルタ』!」

―ヤルってんならとことんヤルわよ!―

「マギ!?」

「何ぃ!?」

「ギリギリ…セーフ…っ!」

アーラシュからマルタさん(ルーラー) に切り替える。両手に手甲を装備し、巨大な拳を防ぐ!

「お、俺の拳を…」

「その程度の拳…マルタさんの拳と比べれば軽い!!悔い、改めろ!」

マルタさんとのステゴロを思い出しながら犯罪者の胴体に数発拳を放ち、最後に顎に向けてアッパーカットする。

「クソが……はぁ……っ」

犯罪者は軽く宙に浮き、そのまま地面に倒れて気絶した。数秒だけ周りが静かになる。自分は一息ついて残心―

―ウオオオオオオオ!!!!!―

―と同時に突然の歓声。びくっとなった。

「すごいなマギ。華々しいデビュー戦だな。助けてくれてありがとう!」

バシバシとゴールドさんに背中を叩かれながら、自分は笑う。

「えっと……市民の皆さんを守れて嬉しいです。」

その後は犯罪集団を警察に届け、ひったくられた所持品は全部返す事が出来た。その後は何事も無く、パトロールが終わった。

 

 

side立香

ヒーローインターンは弟含め、緑谷君、切島君、麗日ちゃん、梅雨ちゃんの5人。そして早速活躍したようだ。スマホでネットニュースを見ると、『新米サイドキック!烈怒頼雄斗爆誕!』これは切島君。『リューキュウ事務所に新たな相棒』麗日ちゃんと梅雨ちゃん。そして…『新米ヒーロー爆誕!?マギ!』の弟だ。

「切島!お前名前!ネットニュースに載ってるぞ!スゲェ!!」

「梅雨ちゃん麗日すごいよー!名前出てる!」

「藤丸やるなぁ!動画もあって見たぜ!カッケェじゃん!」

クラスの話題になっている。当事者は少し照れ臭そうな反応を見せていた。

「やるじゃん」

「英霊達との特訓の成果があってこそだよ。」

私も立希に軽く称賛する。立希は軽く答えてるけど皆に褒められている時より嬉しそうだった…シスコンめ

「しかし学業は学生の本分!居眠りはダメだよ!」

ここで飯田君からそんな注意が来る。確かにその通りだ。勉学と両立しないと…それを聞いた切島君らは頷く。

「おうよ飯田!覚悟の上さ!なぁ!」

「うん!」

「勉強は大丈夫なの?」

一応、立希に訊いてみる

「ん。先生が補習時間設けてくれてるからそれで補ってる。姉もどう?インターン」

「両立出来ないからパス。」

各々ペースがある。私は私なりにヒーローを学べばいい。そう考えながら普段通りに授業に取り組む。そんな時

「藤丸姉。少し話がある」

「はい?」

私は相澤先生に呼ばれた

 

 

side立希

ヒーローインターン開始から数日後、久しぶり事務所から連絡が来た。けど今日、戦闘衣装は要らないと言われ、場所も事務所じゃなかった。指定された時間と場所を教えられ、準備をする。

「…ん?姉?」

「やっほ」

寮の玄関に姉がいた。しかも自分と同じように学生服を着ている。今日は休日のはず…

「どこか行くの?」

「相澤先生に呼ばれたの。そっちはインターン?」

「うん。でも事務所じゃないし、戦闘衣装もいらないって言われて…会議でもするのかな?」

そう話していると

「あれー!?立香ちゃんに藤丸君!おはよー!」

「立希ちゃんはインターンね…でも立香ちゃんは…?」

「お早う二人とも。私は相澤先生に呼ばれたの。」

麗日さんと梅雨さんに出会う。そして外に出ると、更に緑谷君と鋭児郎君にも出くわす。取り敢えず自分達は途中まで一緒なんだろう…と思っていた。

「…あれ?皆こっち?」

「ああ。集合場所がいつもと違くてさ!」

「ウチらも」

「同じく」

緑谷君の言う通り、皆同じ道、同じ駅、同じ方向…ここまで来ると皆集まる場所が同じだとわかる。

「お!」

「わ」

「……」

更にビッグ3もお揃い。そして集合場所には…相澤先生含め、多くのプロヒーローがいた。勿論、その中にはゴールドさんの姿も…

「ゴールドさん。この集まりは一体…」

「やぁ藤丸姉弟…まぁ直ぐに分かるよ。」

その時、細身の長身にメガネの男性が自分達の前にやって来た。

「あなた方から提供してもらった情報のおかげで調査が大幅に進みました。そして…『死穢八斎會』という小さな組織が何を企んでいるのか、知り得た情報の共有と共に協議を行わせて頂きます」

何か、途轍もない事が起き始めていた…



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第44話

side立希

自分達が集まった場所は、細身の長身にメガネの男性―プロヒーローの『サー・ナイトアイ』の事務所だった。

「先生!」

「先生が何故ここに?」

「急に声かけられてな…藤丸姉も来たか」

「はい。」

姉は相澤先生の元に、緑谷君はミリオ先輩の元に、切島君は環先輩の元に、麗日さんと梅雨さんは波動先輩の元へ行く。自分はゴールドさんの元に行き、鋭児郎君の隣に座る。

「鋭児郎君、これどういう状況?」

「いや俺もわかんねー。ハッサイ?」

「くわしい事はこれから話すから大丈夫や。それに、十分関係してくるで。」

鋭児郎君のインターンを担当してる縦にも横にも大きい巨漢、プロヒーローの『ファットガム』がそう教えてくれた。取り敢えず話を聞く事にしよう。それで姉や自分らが呼ばれた理由も分かるはず。

「えーそれでは始めてまいります。」

会議室に移動した自分達は、緑谷君のインターン担当している事務所のサイドキックさんが今回の件を話してくる。内容は『死穢八斎會』というヤクザが敵連合と会合していた事から始まり、そしてそのヤクザがここ一年で裏稼業団体と接触が多く、組織の拡大・金集の動きが大きい事が話された。

「えーこのような過程があり!『HN』で皆さんに協力を求めたわけで―」

「…?ゴールドさん。HNってなんです?」

「『ヒーローネットニュース』の略称だよ。プロ免許持った人だけが使えるネットサービス。全国のヒーローの活動報告が見れたり便利な“個性”のヒーローに協力を申請したりできるのさ。これで今回の件に呼ばれたのさ」

捕捉されながら説明を聞く。

「…で、さっさと本題の“企み”について語ろうぜ」

「ぬかせこの二人はスーパー重要参考人やぞ!」

「「!」」

いきなりファットガムが立ち上がって鋭児郎君と環先輩を示す。

「それだったら藤丸姉弟も参考人だよ」

「「え?」」

ゴールドさんも自分と姉を示して来た。話は続く。八斎會は認可されてない『薬物』の捌きをしている疑いがあった。その薬は…『個性を壊す』効果があった。

「個性を壊す……って姉!」

「っ…うん…あいつに私が摂取された薬と同じ…」

『神野区の悪夢』。爆豪君と姉が誘拐されて、オールマイトと敵連合が激戦を起こした事件。それで姉が呼ばれたのか。どうやら先日環先輩もその薬を打ちこまれたらしく…でも今は個性が扱えていると環先輩は言った。

「俺の『抹消』とはちょっと違うみたいですね。俺は“個性”を攻撃しているわけじゃないので」

『抹消』の個性を持つ相澤先生の話によると、『個性因子』という人体に含まれている因子を一時停止させていると語った。

「環が撃たれた直後、病院で診てもらったら個性因子が『傷ついとったんや』。今は自然治癒で元通りやけど」

そして、鋭児郎君のデビュー戦でその薬が手に入ったという事だった。

「因みに、藤丸君のデビュー戦でもその薬が手に入ったんだ。最後殴りかかって来たあの敵が所持してたよ。」

「そうだったんですか!?」

衝撃の事実に大声を上げてしまった…

「切島君と藤丸君のお手柄や」

「カッコイイわ」

ファッガムがその薬について話し、その薬の中身は…『人の血、細胞が入ってあった』と言う

「っ…!?」

その違法薬物の流通経路の中間売買組織の一つに『八斎會』と交流があり、そして麗日さん、梅雨さんのデビュー戦で退治した敵グループの片方がその中間売買組織の元締めだったとの事。

「成程…最近多発している組織的犯行の多くが八斎會につながると…しかしこじつけにも考えられる。決定的な『証拠』はあるので?」

ゴールドさんが質問した。するとサー・ナイトアイが答えた。若頭の個性は『オーバーホール』。対象の分解・修復が出来る事。そして…その若頭に『娘』がいる事

「「っ!?」」

自分、そして姉も気付き、顔を青くする。悍ましい事に…

「立希?顔を青くしてどうしたんだよ?」

「立香ちゃん。顔色が悪いわ」

プロヒーロー、『ロックロック』がため息を吐きながら言う。

「…その姉弟は分かったようだな…つまり『娘の身体を媒体として捌いている』って事だ」

『!?』

全員が驚愕。その娘はミリオ先輩と緑谷君と接触していたらしい。二人を見ると悔しそうに顔を伏せていた。

「―今回の事件の解決は…その娘の居場所を特定・保護!可能な限り確度を高め早期解決を目指します!ご協力よろしくお願いします。」

 

 

side立香

「―通夜でもしてんのか」

「先生」

会議が終わった私達は、緑谷君とミリオ先輩に若頭の娘―『エリ』について教えてもらう。もしその時点で娘を保護していたら……すごく悔しい気持ちが私にもわかった。そんな暗い雰囲気の中、先生が来た

「あ、学外ではイレイザーヘッドで通せ。いやぁしかし…今日は君達のインターン中止を提言する予定だったんだがなぁ…」

『!!』

相澤先生はそのまま話を続ける。

「連合が関わってくる可能性があると聞かされたろ。話は変わってくる。そして藤丸姉は参加無理だ。元々インターンしてないしな」

「あ、そうですね…それじゃあ私、話聞かない方がよかったのでは?」

「…一応、重要参考人だったからな。『どうして個性が使えなくなったか』…その原因は分かっただろ?」

「…そうですね。」

「藤丸姉の証言でその薬のルートが絞れ、やっとここまで事が動いた…」

そして相澤先生は緑谷君に娘さんと共に救おうと励ます。

「…とは言ってもプロ同等かそれ以上の実力を持つビッグ3はともかく、蛙吹、麗日、切島、藤丸弟。お前たちは自分の意志でここにいるわけでもない。どうしたい?お前たちの役割は薄いと思う」

「…私は!あんな話聞かされてもうやめときましょうとはいきません!」

「先生がダメと言わないなら…お力添えさせてほしいわ」

「俺らの力が少しでもその子の為になるんなら!!」

麗日ちゃん、梅雨ちゃん、切島君は参加する意思を示す。そして立希は…

「自分は……参加します。役割が少なくても…それで人々が救われるなら…っ!」

「…意思確認をしたかった。分かってるならいい。」

参加する意思を示した。私は残念だけど参加は出来ない…なら、私が出来る事をする。取り敢えずは…立希をサポートする事にしよう。

 

 

side立希

若頭の娘さん…エリちゃんの居場所が特定できるまでの間、自分達は待機となった。そしてインターンに関しては一切の口外を禁止された。緑谷君、鋭児郎君、麗日さん、梅雨さん。そして自分が作戦メンバーに入る。

「インターン組動きがきれてる」

「外で何か掴みやがったんだ…コラオイ何を掴んだ言え!!」

「わりー言えねー!」

待機している間、自分達は特訓し、鍛える。そして自分は今―

「ぐっ……はぁ…はぁ…」

「…………ふぅ」

当然、姉と特訓中だ。姉は今ペンテシレイアさんと憑依し、自分はマシュと憑依している。バーサーカーの強力な打撃に撃ち負け膝をついてしまう…

「ほらほら、どうしたの?そんなんじゃ助けられないよ」

「分かってるよ……『投影-」

それからずっと姉と模擬戦をした…が、どうにも戦績が悪い。色々と攻撃パターンを変え、手数で姉を攻撃するが、姉はあっさり返してくる。

「―『降霊:殺生院キアラ』」

「うわっ!?」

この勝負も姉の勝ちだ。白い手に足を掴まれ宙ぶらりん状態になる。

「うーん…はっきり言って攻撃が軽い。そっちは私より英霊と憑依できて攻撃手段は手広いけど…広すぎてここって時の攻撃が少ないね」

「…なら憑依する英霊を絞ったほうがいいの?」

「そういう問題じゃないよ。寧ろ攻撃手段は多いほうがいい。」

逆さまに吊るされた状態で姉から助言を貰う。頭に血が上ってそろそろ痛いんだけど……

「じゃあ…どうすれば……」

「…『投影』も『降霊』も憑依する条件は『英霊達との絆が高い』と憑依できる…シンクロすれば英霊の身体能力が少し付与される…これが強みだよ。」

「う、うーん…わからん…」

姉が自分に何を伝えたいのかいまいちピンと来なく、訓練が終わった。

 

「(今回の姉との勝率は3割…色々考えて戦ったけど全然効果なかった…このままインターンに参加してもいいのか…)」

「―い!おい!立希!箸止まってんぞ!」

「うぇ!?あ、鋭児郎君。」

昼食を食べてたけど、考えすぎて食べるのを忘れていた。少し心配そうな顔付きで鋭児郎君がやって来た。

「…インターンの事か?」

「…まぁね…今の自分は力になれるかなぁって。さっきの体育授業で姉と模擬戦して全然勝てなかったし…まずいかなぁ…って」

「おいおい…男らしくねぇぞ立希!何始まる前から弱気になってるんだよ!」

そう言いて喝を入れてもらう。自分は苦笑しながら答える

「まぁーこういう性格だしねぇ…ホラ、『石橋を叩いて渡る』…っていうけど自分は叩き過ぎて結局渡らないんだよ。」

「慎重になり過ぎだぜ!?男なら石橋なんて叩かないでそのまま渡っちまえ!」

「橋が折れて落ちたら?「それでも進め!」石橋関係無くなった…」

少し暗い空気が変わった。そのまま談笑してると

「何々ー?何の話をしてるのー?」

「石橋がどうしたのー?」

三奈と葉隠さんが昼食を持ってやって来た。

「あー、諺でな『石橋を叩いて渡る』ってあるじゃねぇか。立希はそれを『石橋を叩いて渡らない』って言うんだよ。」

「慎重過ぎない!?」

「そして結局渡らないんだね…」

ジト目で視られた。もう苦笑するしかない…

「アハハ…二人だったらどうする?」

「んー…『石橋を溶かして新しい橋を作る』!」

と、三奈

「『石橋を叩いて渡って皆に教える』!」

と、葉隠さん…何か意味がめちゃくちゃになって来た…皆の性格がよく分かる…

「切島は?」

「『石橋を渡る』!折れても渡り切るぜ!」

「切島君らしいね!『叩かない』って所が!」

そこから色々と諺を自分の好きなように言い換えて盛り上がった。気付けば昼休みが終わった。

「立希、色々と考えるのはいいけどよ、考えすぎて動けなかったら、結局は何も出来ないんだぜ?」

「鋭児郎君…」

「俺はこのインターンでする事は1つだけだ。『守る』事だ!ヒーローや先輩達の力になって!そんでエリちゃんを保護する!そんだけだ!」

拳と拳をぶつけ、そう宣言する。少し、スッキリする自分がいた。

「…うん。そうだね。皆を守る…それがヒーローだね」

「おうよ!」

 

それから2日後の深夜…スマホに連絡が入る。

「遂に…来た―」

―決行日



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第45話

暫くは弟ターン。


side立希

「それじゃ、姉、行ってくる」

「ん…気を付けてね。」

「…分かってる」

連絡が来た次の日。朝早くからナイトアイ事務所に今回参加するプロヒーロー達と自分含めインターン組とビック3が集う。プロヒーローの調査結果から、エリちゃんは本拠地にいる事が分かった。そして既に八斎會が家にいる時間帯は張り込みによって調査が終わり、警察からの令状も出ている状態だった。

「さぁ、仕事の時間だよ。マギ」

「はい。ゴールドさん。」

 

A.M.8:00。警察署前。そこにはライオットシールドを持って武装した警察が大勢。そして自分達ヒーローがいる。当然、戦闘衣装に着替えている。

「―隠ぺいの時間を与えぬ為にも、全構成員の確認。捕捉等、可能な限り迅速に行いたい。」

サー・ナイトアイの調査結果から、八斎會邸宅には入り組んだ地下施設があり、その一室にエリちゃんが匿われている事。そして警察からの情報からは八斎會の個性登録をリストアップが言い渡される。

「決まったら早いっすね!」

「君、朝から元気だな…」

鋭児郎君は張り切り、環先輩はどんよりして…

「緊張して来た」

「探偵業のような事から警察との協力…知らない事だらけ」

「ね!不思議だね」

麗日さんは緊張していて、梅雨さんはいつも通りで、波動先輩ははしゃいでる。

「こういうのは学校で教えてくれなかったからなぁ…新人の時は苦労したよ…ハハ」

「成程…プロは落ち着いて慣れてますね…」

自分は深呼吸しながら落ち着くように努力する…それから、相澤先生―イレイザーヘッドは緑谷君のインターン場所のナイトアイ事務所と動く事に。最後に、警察の人からの連絡が来た。

「ヒーロー。多少手荒になっても仕方ない。少しでも怪しい素振りや反抗の意志が見えたらすぐに対応頼むよ!」

そしてゴールドさんからも自分に助言が送られた。

「マギ、これからする事は職場体験の比じゃない。くれぐれも気を緩めないで動いてね」

「っ…はい。」

「―それでは、出動!」

 

A.M.8:30。決行。八斎會の邸宅前。

「令状読み上げたらダーッ!!と行くんで!速やかによろしくお願いします。」

そう言って警察の一人がインターホンを押す―

「何なんですかぁ」

『!!』

―刹那、八斎會邸宅の玄関が内側から破壊される。そこから現れたのは顔を覆うカフスを被った巨大な敵。巨大な拳で玄関を破壊してそのまま特攻して来た!

「朝から大人数でぇ…」

「助けます」

「大丈夫ですか!?」

先の破壊によって数人の警察が上空へ吹き飛んだがイレイザーヘッドの『捕縛布』とデクの『身体強化』で受け止められ無事保護される。

「オイオイオイ待て待て!勘付かれたのかよ!!」

「いいから皆で取り抑えろ!!」

突然の攻撃。警察達の動きが出遅れる。

「少し元気が入ったぞ……もぉ~………何の用ですかぁ!!」

「離れて!!」

再度殴りかかって来る敵。しかしそれはリューキュウによって止められる。“個性”で巨大な『翼竜』に変わり、拘束された。

「―はい!今の内に!」

「サポート!」

「「はい!」」

その間に各々動く。リューキュウに続いてネジレチャン、ウラビティ、フロッピーがサポートに徹し、

「ようわからん!もう入って行け行け!」

「梅雨ちゃん麗日!頑張ろうな!」

「また後で!」

自分達も屋敷内へと突入する。

「行くよ!」

「はい!(でもその前に!) 来てください!『ルーラー』」

「―行きます!どうか、主の御加護を」

突入と同時に自分はルーラー、『ジャンヌ・ダルク』を召喚する。十字架を記したマントを羽織り、巨大な旗を持った金髪の女性。十七歳で故郷を発ち、奇跡とも呼べる快進撃を成し遂げたフランスを救った聖女だ。

「ジャンヌ!ここで皆の指揮系統維持!『宝具』も使っていいから!」

「はい。お任せを」

大勢の警察とヒーローが邸宅に突入する。だから混戦状態になる。ジャンヌの指揮能力を使えばきっと容易に解決できるはず…そうこうしている内にあっという間に邸内に入った!

「怪しい素振りどころやなかったな!」

「俺ァだいぶ不安になってきたぜオイ!」

ファットガム、ロックロックがぼやく。

「ここだ。」

ナイトアイが生け花を置いた場所に止まる。そこに地下へ続く通路があり、“個性”で見た通りの方法をすると扉が開く。

「「「「なァアんじゃてめエエエらアアア!!」」」」

その隠し扉から敵―ヤクザ達が襲い掛かって来た!

「一人たのむ!」

「ハイごめんね!」

「よっと!」

しかしプロヒーロー達は対処する。ムカデヒーロー『センチピーター』が“個性”『ムカデ』で特攻して来た敵の内二人を拘束。次に『バブルガール』が敵一人を“個性”『バブル』で目に当てて視野を潰して拘束。最後の一人をゴールドが『黄金ボール・網』を放って拘束。数秒で鎮圧した

「(速い…!)」

「先行ってください!すぐに合流します!」

バブルガールがそういい、自分達はすぐに地下に続く階段を下りる。そこには通路が…

「!」

「行き止まりじゃねぇか!道合ってるのか!?」

ロックロックの言った通り、直ぐ目の前に壁があって行き止まりだった。

「俺、見てきます!!」

ルミリオンが『透過』で壁をすり抜ける。裸にならないか不安になったけど、ルミリオンの戦闘衣装は個性発動に呼応するものらしく大丈夫のようだ。

「―壁で塞いでるだけです!ただかなり分厚い壁です!」

「治崎の『分解』して『治す』ならこういう事も可能か」

「来られたら困るって言ってるようなもんだ」

「そだな!妨害できてるつもりならめでてーな!」

壁にデクが『身体強化』で蹴り、烈怒頼雄斗の『硬化』した拳で殴り、破壊して道を開ける。

「―『シュートスタイル』っ」

「―『烈怒頑斗裂屠(レッドガントレット)』!!」

「出遅れたぁ…」

自分も動きたかったけど2人より後ろにいたから出遅れた。

「進みましょう…!」

ナイトアイの指示で奥に進んだ時だった。今度はぐにゃりと道、壁、天井が粘土のように歪む。

「!!道が…」

「マギ!」

「!」

地下に続く入り口が突如として塞がれ、ゴールドさん含めたプロヒーロー達と分断された。

「待て、これは!」

前を向くと、地下通路全体がうねって変わっていた。



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第46話

side立希

地下に突入。そこで待っていたのは情報にあった敵の“個性”『擬態』によって地下通路がうねり、道が変わっていくのだった。ルミリオンは『透過』で先に目的の場所へ進むが、自分達はそうはいかなかった。約一階層分落下し、そこに3人の敵と会合。それを天喰先輩-『サンイーター』が一人で足止めし、自分達は先に進む。

「―背中預けたら信じて任せるのが男の筋やで!!!」

「先輩なら大丈夫だぜ!!」

サンイーターを残した事を心配する烈怒頼雄斗だけど、ファットガムに喝を入れられた。

「そんなんでいいの!?」

「逆に流されやすい人っぽい」

それを見た自分とデクで苦笑しつつも前に進む…暫くは敵の“個性”の範囲外なのか、普通の地下通路を走っていたが…再び道がうねりだす。

「っ…」

「イレイザー!」

イレイザーヘッドが狙われ、一部の壁がうねり、近くの穴へと押す。そんな時―

「うぉおお!!」

「烈怒―「フン!」―ファットガム!?」

「すまない!!」

ファットガムがイレイザーヘッドを押し、身代わりになった。けどファットガムだけじゃなく、烈怒頼雄斗も庇おうと動いていたのを自分は見えた。つまり…ファットガムと烈怒頼雄斗が穴へと入り、分断された。当然、その穴は塞がれる。

「烈怒―鋭児郎君…「マギ!心配事は後だ!行くぞ!」っ…はい!!」

一瞬不安になった自分。だけどそれは直ぐにイレイザーヘッドとデクにフォローされ、自分は気合を入れ直す。

「大丈夫。きっと切島君達は無事だよ。ファットもいる」

「…分かったよ。緑谷君―デク。」

自分達は地下通路を走る。が、しかし

「また来てるぞ!」

「いい加減にしてくれ!」

天井、壁、地面。全てがうねるように動き、迫ってくる。敵が再び行く手を阻んできた!

「ロックロック!」

「リーダーぶるな!この窮地!もとはと言えばあんたの失態だ!!『本締(デットボルト)』!!」

ナイトアイの指示で、ロックロックが“個性”『施錠』を使い、自分達の周りの天井、壁、地面が固定され圧死が免れる。

「こっちへ!この辺はもう動かねぇ!!狭さは言うなよ…強度MAXの『本締』だとそう何か所も締めれねぇ。これが俺の限界範囲……っ!締めてところからホラ!また!来るぞ!!」

正面から壁の一部が迫って来た!今度こそ出遅れない!

「『投影:マルタ』!ハレルヤ!!」

「『SMASH』!!」

迫って来た壁を自分は殴り壊し、続いてデクも蹴り壊す。

「ハッ…ハッ…」

「ふぅ…まるでモグラみたいだ……ッ!!」

「クソ…イレイザー!」

「分かっている!」

イレイザーヘッドは本体を探す。けど本体は地下通路と同化し、見つからない。このままだとジリ貧…

「(いや、違う。確か敵は薬で『ブースト』して“個性”を強化してる…このまま進んでも敵の体力が落ちるのが先…)っ!」

『!?』

その時、迫って来た天井、壁、地面の動きが止まり、逆に離れ道が開く―

「開いた!?」

「今度はどういうつもりだ!?」

―と思ったらすぐに迫って来た。

「うわ!?」

「デク!」

「下がれ!」

「っ!?」

轟音と衝撃。しかし数秒で静寂になる。

「分断…どうして…?」

「おい皆!!無事か!?」

壁の奥からロックロックの声が響く。声を聞くに、ロックロック一人分断、デクとイレイザーヘッド二人分断。そして、自分とナイトアイ、警察達と3つに分断されたようだ。

「圧殺できねぇとなってやり方を変えたのか…」

「却ってこっちは動きやすくなっちまってるが…」

「…それを補って余りあるということだろう…」

壁越しから声が伝わる。

「壁は厚くない…なら自分が殴って壊し―「来るぞ!“次の一手”が!」!!」

ナイトアイが言った時、後ろの壁がいきなり壊れた。そして現れたのは―玄関にいた類似したカフスを被った敵と…

「哀しいぜ、死柄木…ワクワクしちまうよ!」

敵連合の一人が現れた。黒と灰色を基調としたラバースーツ…確か名前はトゥワイス!

「どんな輩が来てんのかと思ったらコノヤロー!只のリーマンとガキじゃねぇか!!ヤクザなめんな!コノヤロー!!」

トゥワイスが大声で叫ぶ間、もう一人のカフスを被った敵が乱打して来た!

「デカいのやります!」

「待て!」

ナイトアイが動く前に、自分が前に出る。落ち着け…この程度の危機はもう何度も経験しているんだから…っ!

「やっちゃって下さいよ!乱波の兄貴!!」

「『解除』。『投影:燕青』」

―よーし 始めるとするか―

敵の乱打が来る。と同時に自分は青の手甲を纏う。

「柔は硬を制す―秘宗拳!」

複雑な歩法を用い、乱打で迫りくる拳をいなし、攻撃を反らす!

「何ぃ!?スゲェ!!」

そのまま敵の懐に入り―

「千山万水語るに及ばず!ハッ!!」

体術にて、敵の関節全てを叩き、トドメに腹部に両手の掌底を放つ!敵は真後ろに吹き飛び行動不能…というか泥の様に溶けて消えた。

「(溶けたって事は偽物?でも鎮圧は出来た!) ふぅ…」

「ヤクザ使えねぇな!!っ!!」

「ナイトアイ!」

「―天下の敵連合が一介のヤクザに与するとはな…」

トゥワイスに向けてナイトアイが『押印』を投げる。追撃しようと動くが、トゥワイスが逃げると同時に壁が動き逃げられた。

「…中々いい動きじゃないか。」

「ありがとうございます…っ」

「ナイトアイ!マギ!」

ナイトアイに称賛された時、別の壁からデクとイレイザーヘッド。そして怪我を負ったロックロックが現れた。どうやらデク達の所にも敵連合の一人、トガヒミコが現れ、ロックロックに攻撃したのだった。全員一か所に集まった時―

「キェエエエエ!!」

『!!』

突如として今まで以上に天井、壁、地面がうねり、暴れ始めた。

「全・員・圧・殺!!」

怒気の含んだ声が響く。

「声だ!聞こえたな!?」

「(奇声と同時に大きく動いた!何処だ!?反響して場所が分からないっ!)」

「キェエエエエ!!」

「やばいやばい!潰されるぞ!」

「うわぁあああ!!」

「(マズイ!) 『解除』!『投影:パッションリップ』!!」

―は、はいっ!―

圧殺されそうになった警察達と怪我を負って動けなくなったロックロックがいる場所に向かい、自分は両手を巨大なカギ爪に変え、迫りくる壁を止める!!

「っ!…マギ…っ」

「ギリギリィッ!!」

ガリガリと迫りくる壁が削られる…その間に自分は本体を探す

「ッ――――――――――――――――――!!!!!!!!!」

「(いた!!)」

言葉にならない奇声が響く。その声が頭上から聞こえ、上を見ると天井の一部に穴が1つあった。

「『SMASH』!!」

それはデクも見つけたようで、その穴に向けて蹴りを放った。その衝撃で遂に本体の姿が現れる。瞬時にイレイザーヘッドの“個性”で『抹消』。ナイトアイが『押印』を放ち気絶させる。すると天井、壁、地面の動きが停止した。

「はぁー……危なかった……大丈夫…ですか?」

自分はロックロックに声を掛ける。ロックロックは不敵に笑った。

「…ハッ!この俺がこんな子供に助けられるなんてな……あんがとよ。マギ!」

「どう…いたしまして…『解除』」

「―これで迷宮は終わった。」

一先ず危機は去った…後は先に行ったルミリオンと合流し、エリちゃんを保護するだけ!     



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第47話

side立希

迷宮が終わった。グチャグチャになった地下通路だけど、ナイトアイがエリちゃんの部屋までの方向を把握してるため大丈夫だった。敵連合とヤクザが同盟を組んでいた事に多少驚いたが、先ほど拘束した敵の話を聞くと裏切ったようだった

「―けど裏切ったからといって味方になったとも考えにくい…」

「全国指名手配の敵連合…我々警察としては無視できん…!」

と、警察の人達が騒めきながら話してると…

「何立ち話してんだ……!」

「ロックロック…」

ロックロックが吠えた。

「無視して進め!連合の方は警察に任せりゃいい!!俺達の最優先事項は何だよ!?」

怪我と負って行動不能になったロックロックは言い放つ。皆、一人一人の行動で時間を稼いでる事。、敵を鎮圧している事を…

「―ここまで来たらあと一息だろう!皆が稼いだ時間を無駄にするな!!」

『!!』

その言葉にイレイザーヘッド、ナイトアイ、自分。そしてデクが前へと走る!

「必ず救け出します!」

「だから後は…自分達に任せて下さい!」

「……ハッ!言ったな…!?必ずだぞ!デク!マギ!」

ロックロックに喝を入れられ、自分たちは前へと走る。長い廊下を…体感で1分ぐらいだ。走りながらイレイザーヘッドが指示を出して来た。

「治崎に追いつくことが出来たら兎に角俺が“個性”を消す。状況を見て動いてくれ。ただし無茶はしないように。」

「「はい!」」

「緑谷そして藤丸。何があるかわからん。どんなことがあっても動けなくなるような事はするなよ」

「っ…分かってます!」

「了解です!」

そして…遂に目的地に着いた!

「アレは…」

「!」

エリちゃんの部屋―の前に倒れている敵が一人。その奥は『構築』されただろう壁があった。

「デク!」

「うん!」

デクは飛び、壁を蹴り壊す―

 

 

side三人称

「「!!」」

デクが蹴り壊し、中へ入ると―そこには治崎とルミリオンの姿があった。部屋の奥にはルミリオンのマントに覆われた壊理の姿もある

「っ『SMASH』!!」

「グッ!!?」

デクは治崎を殴り飛ばす。その瞬間イレイザーヘッドが治崎の個性を『抹消』する。

「ナイトアイ!確保を!」

「―――――!」

イレイザーヘッドの声が響く。ナイトアイは…動く事が出来なかった。彼の視界の先には、倒れている治崎の側近二人。ボロボロの治崎。歪な壁の覆われた空間…そして―

「後ろに……います…」

血を吐いて、傷だらけのルミリオンと涙を流している壊理の姿があった。

「(一人で…ここまで……) 凄いぞ…ミリオ…!」

ナイトアイは二人に近づき保護した。

「…っ!(個性が消された!!)」

遠くで治崎が地面を叩き個性を発動させるが、イレイザーヘッドの個性によって発動出来なかった。

「いい加減に……!!」

「ルミリオンがここまで追い詰めた!!このまま畳みかけろ!!」

「「了解!!」」

イレイザーヘッドの指示に従い、デクとマギが動く。

「(『フルカウル』!)」

「『投影:メルトリリス』!」

―覚悟はいいかしら?―

デクは『身体強化』し、マギはメルトリリスと憑依し、金属質かつ鋭角的なフォルムの脚部を装備。治崎へ特攻する―

「起きろクロノォ!!」

「っ!」

「デク!」

「!!」

―その時、治崎が叫ぶ。デク達の近くで倒れていた治崎の側近の一人―『クロノ』が奇襲する。頭部から『矢印』が伸びた。一早く反応したマギは身を翻し回避。デクはイレイザーヘッドに押され回避。『矢印』はイレイザーヘッドの腕を掠った…同時にイレイザーヘッドの動きが遅くなる。

「!?」

「『長針が刺したモノは動きが遅くなる』…3人まとめて串刺しにしたつもりでしたが…さすがヒーローだ」

デク達が来る前、ルミリオンとの戦いで吹き飛ばされた時、治崎の手によって傷を『修復』され、今まで気絶したフリをし、チャンスを伺っていたのだった。

「(瞬きが…止められない!!)」

「ヤバ―」

「治崎!!」

「全て無駄だ!!」

ここでイレイザーヘッドの個性が解除され、治崎の個性『分解』が発動。そして地面を『棘の山』へと『再構築』し、デク達を襲った。

「っ―」

「フッ!」

デクやナイトアイ達は何とか棘の間に避難し、マギは脚部の刃で棘の山を切って防御する。

「こんな奴らに俺の計画を台無しにされてたまるか!―」

治崎は動いた。先の攻撃で自身の元に転がって来た仲間に触れ『分解』…

『!?』

「―ルミリオン。お前は確かに俺より強かった…だがやはり…全て無に帰した」

その場にいた皆は戦慄する。『再構築』された治崎の姿を見て―

「さァ、壊理を返してもらおうか」

その姿は正に…敵だった。

 

 

side立希

「“自分”と“仲間”を…『分解』して…」

「『融合』した…っ」

異形。今の治崎にはそんな言葉がぴったりだった。黒く鋭利な爪を持った腕を4本生やし、歪な音を発し続ける。

「最低の気分だが……さっきよりはいくらかマシだな…」

「(状況把握!エリちゃんとルミリオンはナイトアイが守っている!イレイザーヘッドはもう一人の敵と共に姿無し!デクは遠くの位置にいる!そして治崎は…仲間と融合し、怪我も治っている!) 状況…最悪っ」

冷や汗が頬を伝う…

「潔癖の気があってなァ…触られると…つい頭に血が上ってしまう…ここまでされたのは初めてだ…」

動きがない治崎…そこが不気味だ…

「悲しい人生だったな。ルミリオン…壊理に…俺に関わらなければ“個性”を『失う』こともなかった。病(ゆめ)に罹ったままでいられた…」

『!?』

永遠に…失う…つまり…ルミリオン…ミリオ先輩は―

「失って尚粘って…そしてこの結果が増援を巻き込み全員死ぬだけなんてな!!」

「っ!デク!」

「!うん!!」

ここで治崎が動いた。個性を発動させながらルミリオン達がいる場所へ特攻してくる。阻止すべく自分は周囲にある『棘』を斬ってデクに渡す。デクはそれを受け取り治崎に投げ放つ!

「ちぃ…」

しかし治崎が反応。デクが投げた棘を防ぎ、『分解』する。

「まだ!」

「こっちもだ!」

デクが『棘』を折って再度投げ、自分も『棘』を斬って蹴り放つ!

「無意味だ!」

自分とデクの放った棘は『分解』される。そして別の2本腕が『棘』を『再構築』させ攻撃してきた!

「っ~~~~~~!!」

「くっ…trente!」

何とか襲って来た棘を斬って防ぐ。デクも靴裏で防御していた。

「(個性の発動が速い!怪我じゃなく疲労も治ったのか!)」

「力と速さ…それだけだ「こいつの相手は私がする!」―っ」

その時、治崎の片腕に『押印』が直撃する。ナイトアイが動いた!

「貴様らはルミリオンとエリちゃんを!!」

「「了解です!」」

「させるか」

ナイトアイに治崎を任せ、ルミリオンとエリちゃんがいる場所へ移動する。デクもそこにいた

「エリちゃん!先輩!動けますか!?」

「…ああ…余裕…だよね…!!」

「……そんなわけないじゃないですか……移動しますよ!」

デクが壁を蹴り壊し、自分達が先ほど通った道へ移動させる。デクがルミリオンを担ぎ、自分はエリちゃんを抱く。

「もう…いいです…」

「………」

「ごめんなさい…」

エリちゃんがか細い声で謝罪してくる。

「…謝る事なんて全く無いよ……」

通路へ二人を避難させた時―ナイトアイと治崎がいる場所から鈍い音が聞こえた。

「―サー!」

ルミリオンが叫んだ。自分とデクは振り向く―

「―――――」

視界に―腹部を貫かれ、右腕を無くしたナイトアイの姿が―

「―っ~~~~~~!!!」

「―『解除』!『投影:アナスタシア』!!」

―静かに…―

デクと同時に動いた。自分達はエリちゃんをルミリオンに託す。まず襲って来た『棘』をデクが地面を踏み抜いて抉り、狙いを反らした。そして自分は重症を負ったナイトアイに接近し、彼の身体に触れ―

「凍てつけ!」

―手に持った人形、使い魔『ヴィイ』を使ってナイトアイの身体に絶対零度の冷気を放ち、瞬間凍結させる。

「――――…」

「コールドスリープ……この瞬間ナイトアイは仮死状態になった…最悪な応急処置だ…」

凍りつけになったナイトアイを地面に寝かせ…そして自分は治崎を睨む

「お前らが来て事態が悪化していること…気付いてるだろう…諦めろ。俺の言った通りになるだけだ。“全員死ぬ”」

「そんな事にはさせない…!」

自分とデクは構える。

「仮にそう決まったとしても…自分は抗う!」

「その未来を捻じ曲げる!!」

戦いはまだ終わらない…



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第48話

side三人称

「(『ワン・フォー・オール』『フルカウル』!『20%』!)」

「(さっきの地面の踏み抜きといい…デクの身体強化が上がってる…火事場の馬鹿力って事か…?) デク!自分が援護する!だから攻め続けて!!」

「分かった!!」

「小賢しい!!」

治崎が地面を『分解』し、槍へと『再構築』され襲い掛かる。

「動くな!」

マギは『ヴィイ』を使って冷気を槍へ放つ。槍は凍り、動きが止まる。その隙にデクが治崎の元へ行き、踵落としを放った

「っ!!」

しかし躱され、治崎がデクに触れようと手を伸ばす、デクは反応し上に飛ぶ。掠ったのか片腕のサポーターが『分解』された。

「(ここだ!)」

「(一撃で!)」

デクとマギの攻撃が重なる。マギは息を吹いて『氷結』を放ち、デクは天井を蹴って踵落としを放つ!

「『マンチェスタースマッシュ』!!」

蹴りと氷結が治崎を襲う―

「無駄だ」

―が、治崎は瞬時にマギの氷結を『分解』し、デクの蹴りを躱した。

「いくら速かろうが…先の二人に比べれば動きの“線”が素直で見えやすい。」

「避け―」

「デク!」

マギは二人に向けて氷結を放つ。

 

 

side立希

「―ったく“修復”と言っても“分解”の瞬間はしっかり痛いんだ―もう止めだ。」

「う゛う゛う゛!!」

「デク!…(腕と足に)…っ」

治崎の攻撃がデクに当たった。自分は瞬時にデクと治崎の間に氷壁を作って攻撃をずらしたが……それでもデクの足と腕に『棘』が突き刺さっていた……

「まだ…!!」

「…………」

デクは刺さった棘を抜き、立ち上がる。自分も同様に、構える。

「ああ…そうやってルミリオンにも粘られた。諦めない人間の底力は侮れない―」

すると、治崎の掌から口が出来た。

「お前のせいでまた死ぬぞ!これが望みなのか!?壊理!!!」

「「!?」」

いきなり大声で言い放った。ここにはエリちゃんはいない。既に避難させて―

「―望んでない…!」

「!?何で…」

「駄目だ!先輩と一緒にいるんだ!エリちゃん!!」

デクが穴開けた所からエリちゃんが戻って来た…彼女の顔は…恐怖と不安でいっぱいだ…

「壊理…こいつらでこの状況…なんとかなると思うか?」

「………思わない…」

「っ……………」

「ならお前はどうすべきだ?」

「戻る………」

「(っ…エリちゃん……)」

洗脳のように…暗示のように…治崎の声がエリちゃんを動かしている。マズイ…

「そのかわり…皆を…元通りにして……!」

「そうだよな…自分のせいで他人が傷つくより…自分が傷つく方が楽だもんな…まだルミリオン一人の方が、望みがあった。奴で芽生えかけた淡い期待が砕かれた。気付いてるか?壊理にとって最も残酷な仕打ちをしてる事に―」

治崎は静かに、エリちゃんに言った。

「―お前は。求められていない。」

その言葉に、自分は怒りを持った。

「…ふざけるな…求められてないわけ……ない!」

「余計なお世話だとしても…君は泣いてるじゃないか!!」

自分は治崎を睨んで言いった。そして…デクも体に刺さっていた棘を抜き、砕いて言う。

「誰も死なせない!!君を救ける!!」

デクの言う通りだ!…だから…『反撃の合図』だ!!

「『令呪を持って命ずる―」

『投影』を『解除』し、右手を掲げ、宣言する。

「―戻って来い!ジャンヌ・ダルク!!』」

令呪の一画が輝くと同時に、天井から地響きが来る。そして―

『!!』

「ドンピシャ!」

「ケロ…」

「デク君!」

「マスター!!」

巨大な敵と共に、リューキュー、ウラビティ、フロッピー、ネジレチャン。そしてジャンヌが天井を破壊しながらやって来た。

 

 

side三人称

時は遡り、地上にて―

「よしっ!ちょっと出遅れたけど私達も行くよ!」

邸宅の前で暴れた敵―活瓶力也はリューキュー達と迅速な警察達の対処により拘束される。

「インパクトのわりにあっけなかったわ」

「むしろインパクト強いのは…彼女なんだけどね…」

「ふぅ。どうにか務めを果たせました」

リューキュー達の隣にジャンヌがいた。彼女の士気により、始めこそ警察とヤクザの混戦状態だったのがジャンヌの持つカリスマによって警察、ヒーローの士気が高まり、最小限の被害に抑え、最大限のパフォーマンスを出せたのだった。

「まさか、かの有名な聖女と共闘したなんてね…そしてその力は正に英雄よ…」

「マギ君スゴイ人呼んだやん…」

リューキュウとウラビティが感嘆する。

「速く中行こうよ!急いだ方がいいよ!」

「そうですね。私もすぐにマスターの元へ…」

ネジレチャンの言う通りに皆は中へ行こうと動いた時だった。

「あらら…?」

「ケロ…?」

「皆さん!?」

ウラビティ、フロッピーともに、ヒーロー達と警察達が脱力する。その原因は―活瓶力也だった。

『!?』

「気絶させたハズ!」

「やっと薬が効いてきた……呼吸するだけで…“吸ってる”ぞ!!」

人に触れ、吸息する事で活力を得て『巨大化』する個性を持つ活瓶力也。しかしそれは薬によって強化され、呼吸するだけでどんどん巨大化し、拘束を破壊して動き始めたのだった。

「すごく元気が湧いてきたぁ!!」

「くっ―」

そこから20分経過―再びジャンヌの士気の元、ヒーローと警察は動くが…活瓶力也の個性により大半が活力を吸われ、行動不能へと陥ってしまう。ジャンヌも行動不能まで行かないが、疲労が出始める。

「ネジレチャン!!」

「ムゥー!嫌っ!」

「はっはっは!薬が切れた!!」

「くうっ…マスターに任されたのに…不甲斐ないです……っこうなれば―主の御業をここに!」

ここで遂にジャンヌが『宝具』を発動する。

「我が旗よ、我が同胞を守りたまえ!『我が神はここにありて(リュミノジテ・エテルネッル)』!」

「これは…」

「力が…戻ってくる!」

「いや、力が湧いてくる!!」

ジャンヌは瓦礫の山の上に立ち、旗を空へ掲げた。すると光が発せられ、その場にいた敵以外全員、日の光が覆われる。そして活力が奪われ行動不能になっていた全員が回復し、動けるようになった!!

「さぁ!我が同士達よ!戦わなくては!前に進めぬならば!敵を蹴散らせ!」

『オオオオオオオオオオ!!!!!!』

全員動けるようになり、ジャンヌが鼓舞し、奮い立たせると、皆がそれに呼応する。その時―

「麗日さん!」

「デク君!?」

遠くにデクの姿があった。

「応援呼びに来た!あっちの十字路の真下に目的がいる!プロが戦って足止め中だ!加勢を!!」

そして同時にジャンヌが『令呪』に反応する。

「その少年の指示に従って下さい!!」

「皆!指示通りに!!」

『翼竜』の姿となったリューキューが巨大化した活瓶力也にタックルする。そしてウラビティが活瓶力也の身体に触れて『浮かし』、フロッピーが舌で掴み、リューキューと共にデクに言われた十字路まで運び―

「ネジレ!ありったけ私ごと!」

「オッケー!!」

「なんで動けるんだ!この女共!!」

「ジャンヌさんのおかげでもあるけど―」

「「「―毎日言われるから!『更に向こうへ(プルスウルトラ)』って!!」」」

―ネジレチャンの“個性”『波動』の最大エネルギーの衝撃波によって十字路へ叩きつけらる。その衝撃は地面を抉り―

『!!』

「ドンピシャ!」

「ケロ…」

「デク君!」

「マスター!!」

―デク、マギ、壊理、治崎がいる場所へと辿り着くのだった。



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第49話

side立希

「リューキュウ!?二人共!!」

自分が『令呪』を唱えると、天井を壊してリューキュウ達が落ちてやってきた。

「っ…………」

リューキュウに押さえつけられていた敵は気絶したようだ。

「デク君!?あれ!?」

「じゃあさっきのデクちゃんは……」

ウラビティとフロッピーの言葉に自分は疑問を思った。

「ジャンヌ!どういう事?」

「はい。そこにいる少年の指示の元、この真上にあった十字路に敵を叩きつけると此処へたどり着きました。」

ジャンヌから状況を聞いて整理する。

「(今までデクは自分と一緒にいた…つまり偽物?…けど何で……敵連合?) 何が何だか分からないけど今はそれどころじゃない!ジャンヌ!凍結したナイトアイの保護頼んだ!」

「分かりました」

「ウラビティとフロッピーも!」

「「了解!」」

自分の指示でジャンヌ達はナイトアイの元へ行く。

「エリちゃん!!」

デクはエリちゃんの元へ走るが…

『!』

突然エリちゃんの足元の瓦礫が盛り上がり、彼女を宙へと飛ばした。

「治崎!!」

「メチャクチャだ…ゴミ共が!」

治崎の仕業だった。宙に飛んだエリちゃんを掴み、盛り上がった柱の上に上る治崎。割れた地面の更に下から地面を『再構築』したのか!

「(穴から上に出る気だ!!) 『投影:パッションリップ』!!デク!乗って!!」

「っ!うん!!」

再びパッションリップと憑依し、そして巨大なカギ爪を上へと向ける。その手の上にデクを乗せ―

「発射ァ!!」

「行かせるかァ!!」

カタパルトの様に、デクを治崎とエリちゃんがいる所へ飛ばす!!

「しつこい―」

刹那、視界に入った光景がスローモーションのように見えた。瓦礫の中、ナイトアイを保護するウラビティ、フロッピー、ジャンヌ。気絶している巨大な敵を抑えているリューキュウ。飛び立ち手を伸ばすデク。エリちゃんを抱え、飛んで来るデクを睨む治崎。そして―巻き上げられたルミリオンのマント…

「―え?」

一瞬、何が起こったのか分からなかった。ルミリオンのマントをエリちゃんが掴んだ時、エリちゃんの額に生えていた角が光った。するとどうだ、異形の姿だった治崎が部下と融合する前の姿に『戻った』のだった。そして―

「死んでほしくないのに…」

「もう…離さないよ」

「(よく分からないけど…エリちゃんを取り返せた!!)」

デクがエリちゃんを救けた!

 

 

side三人称

融合が解け、4本腕が消えたため宙へ落ちる破理。それをデクがしっかりと受け止めた。だが

「返せ!!」

「!!」

治崎がデクと壊理に手を伸ばす。そして盛り上げていた柱の一部を『分解』し、槍へ『再構築』して襲わせた。デクは空中で身動きが取れない状況だった。

「―もう一発っ!!」

「マギ!!」

「小賢しい!!」

マギが巨大なカギ爪を治崎へ放った。数本の槍が破壊されるが……全部とはいかなかった。残りの槍がデクへ向かう。

「(離さない!もう絶対に離さない!!) ああああ!」

デクは空中で蹴り上げた。瞬間―

『―っ!?』

とてつもない衝撃が治崎ふくめ、その場にいた全員に来た―

 

 

side立希

「―じゃあ頼むよ…!…よっ…と!『解除』!デク!無事!?」

「マギ…う、うん…大丈夫…でも…これは……」

瓦礫を上り、地上へ行くと、そこにデクとエリちゃんがいた。先の衝撃は体育祭で体験したことがあった。そう、デクが『身体強化』のし過ぎで放った衝撃と同じだった。そうするとデクの足は重症を負っている…と思ったけど……

「怪我も…治ってる…」

「え…さっきの蹴りの威力は重症モノ……エリちゃん?」

「…君の力なの…?」

「………っ」

エリちゃんを見れば、苦しそうな顔をしながらも、頷いた。さっきの治崎の融合が解けるといい、デクの重症を治すといい…まさか『巻き戻してる』?それがエリちゃんの”個性”…っ!

「ぐっ…」

「デク!?」

いきなりデクが体をうずめた。

「今度は…体が…内側から引っ張られてるみたいな…『力を制御出来ていないんだ。』!」

『拍子で発動出来たものの…』

「―来た!!」

『止め方がわからないんだろう壊理!』

地面から『棘』が襲ってくる。自分がデクとエリちゃんを担ぎギリギリ躱す。

「っづう!?」

「マギ…!!」

躱し終えた時、自分はさっきのデクみたいに体をうずめる。そして気付く。先の戦いでついた傷が消えていた。さっきエリちゃんを担いだからだと気付く。

「(少し触れただけで…この尋常じゃない激痛…!)」

『無様だな…』

十字路に空いた穴から現れたのは―再び『融合』して異形化―巨大化した治崎が出てくる

「化物…っ」

『人間を“巻き戻す”それが壊理だ。使いようによっては人を猿にまで戻すことすら可能だろう。そのまま抱えていては消滅するぞ!触れる者全てが『無』へと巻き戻される。呪われてるんだよそいつの“個性”は!!俺に渡せ!分解するしか止める術はない!!』

「断る!」

「絶対、やだ!」

長々と話した治崎に対し、自分とデクは短い言葉で拒否する。当たり前だ。

「『巻き戻す』個性…いい個性じゃん。デクの足を瞬時に治した。こんなやさしい個性を悪用するな!!」

「…体感して分かった…!身体が『戻り』続けるスピード…!!じゃあ…『それ以上のスピードで常に大怪我し続けていたら』!」

デクの『身体強化』が今まで以上に上がった気がした。おそらく普段なら重症モノになる威力!デクの覚悟が分かった。なら…自分もそれに答える事をする!!

「エリちゃん…力を貸してくれるかい?」

「デク…作戦がある…」



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第50話

取り敢えず、今回はここまで。


side立香

雄英高校、1-A寮。ロビー。

「………………「立香?」!焦凍君…」

「…起きるの早ぇな……」

「うん…今日はちょっとね……」

まだ日の光が出てきたばかりの時間帯。ロビーのソファに私は座っていた。丁度その時、焦凍君と会う。…服装から早朝ランニングする為に早く起きたのだと分かる。

「……立希の事か?」

「うん。今日が決行日。さっき見送ったんだ。」

「…心配なのか?」

「違う…と言ったら嘘かな…家族だし、弟だし、心配はするよ…前日まで何か悩んでたし。こういう時っていつも変に悩んで、変な行動して、変に自己犠牲出すんだよ…はぁ…不甲斐ない弟……」

「………「けど…」…?」

私は焦凍君を見て言う

「やる時はやるよ。私みたいにね」

 

 

side三人称

「―で、行く。トドメは任せたよ!」

「っ……うん…分かった!」

短い言葉でマギはデクに『作戦』を伝え、デクは了承し、ルミリオンのマントを使って壊理を自身の身体に固定する。そして異形化した治崎が攻撃する前にマギが動く。

「『投影:ジャンヌ・ダルク・オルタ』…」

―より強く!…よ…―

ジャンヌ・ダルク・オルタ(水着)と憑依する。二本の刀を装備し、黒手袋をはめる…がしかし、マギは更に動く。

「邪ンヌ。もっと憑依(シンクロ)率上げるよ!!」

―はっ!私に合わせる事が出来るのかしら?でも…いいわ。面白そうね!!―

マギの姿が変わる。黒髪が白髪となり、瞳が金色へ変わる。そして首には黒のチョーカー、服装も戦闘衣装の上からジャケットに類似した服を羽織り、左胸、左腕の部分に赤い炎の模様が浮かび上がる。

「(考えすぎた…もっとシンプルに、もっと単純に…今の自分は……皆を…) 守りたい…っ『令呪よ。我が肉体に応えよ』!!」

マギ全身に大量の魔力が覆われる。

『―“個性”が成り立つこの世界を!理を壊す程の力が…それが壊理だ!!価値もわからんガキに……利用できる代物じゃない!!』

「マギ!」

「…価値?利用?代物?……さっきから人を物みたいに言って……人間は…エリちゃんは…物じゃない!」

『再構築』された巨大な『棘』がマギとデクに降り注がれる―が、その間、マギが動く。

「『失墜の魔女』―『ムール・ウ・テュ・ドワ』―」

マギとジャンヌ・ダルク・オルタの重なった声が響く。

「―『三つ首の黒竜よ、世界を喰らい尽くせ!―」

刹那、マギの左手に黒炎―煉獄の焔を収束させ、黒く揺らめく紫炎の火球を生成。その火球から三尾の黒竜を象った火焔を発射する!!

『!?』

黒竜を象った火焔は降り注がれる『棘』全てを破壊尽くし、そしてマギは異形化した治崎へ特攻。

―デク、自分は今から大技を放つ。あいつを空中に飛ばすから…―

「―焼却天理・鏖殺竜(フェルカーモルト・フォイアドラッヘ)』!!吹き飛べぇえええええ!!!!」

三尾の黒竜を象った火焔と共に、マギも治崎の懐に入り、一閃。憑依率を上げ、スキルの効果、火事場の馬鹿力が合わさり、憑依した英霊とほぼ同等の威力の『宝具』が放たれる!そして…マギがデクに伝えた通り、治崎は空へ吹き飛んだ!!

「っ~~~~~~行け!デク!!」

 

 

side立希

「カッ……ハァ………!」

『―どいつもこいつも大局を見ようとしない!!』

何とか『宝具』を放つことが出来た。けどその反動で身体に激痛が走る。特に左腕。『投影』は『解除』され、『宝具』放つ時に大量の魔力を消費した。多分召喚していたジャンヌは消えてる……体力尽きて、受け身が碌に取れず不時着する。

『俺が崩すのはこの“世界”!!その構造そのもだ!!目の前の小さな正義だけの…感情論だけのヒーロー気取りが…俺の邪魔をするな!!』

ぼやけた視界。全部聞き取れなかったけど叫んで言い放つ治崎。多分自分が放った『宝具』で壊された身体を『再構築』してデクに反撃してる…けどそれが攻撃のチャンス…

「(治崎…必ずダメージを負ったら『分解』して『回復』する…そこが『隙』だ…そして身体強化最高値のデクなら…その『隙』を突く事が出来る!!) 回復は…出来ない…「マギ君!!」」

「っ…大怪我…大丈夫!?…」

ウラビティの声が響いた。既に自分は視界が見えてない。

「ウラビティ…デク…は?」

「デク君は…!!治崎を殴り飛ばしたよ!!」

その答えを聞くと同時、地面に衝撃が走る…デクが勝ったと分かった…

「(自分が『宝具』放って敵を上空へ飛ばして『隙』を作って、デクが叩く…) こんなの…作戦じゃないなー…―」

「!?マギ―」

自分は意識を手放した…




憑依率
0% 普通
20% 英霊の武装
50% 英霊の部分衣装や姿
100% ほぼ英霊姿。宝具可
100%オーバー 英霊クラス
普段は20%~50%使用。あくまでイメージ


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第51話

多くのお気に入り登録ありがとうございます。
それと、3期で出たオリキャラヒーロー、友達に描いてもらいました。ありがとう。
加ノ工創

【挿絵表示】

佐村伊蔵

【挿絵表示】



side三人称

病院内にて…

「―ナイトアイ…!!」

「オール…マイ…ト……死で…ようやく合う気に……?」

「返す言葉が見つからないよ…私は君に…ひどい事を…」

重症状態のナイトアイにオールマイトが来る

「ナイトアイ…!ダメだ生きて…!頑張って!」

「サー!ナイトアイ!」

更に、緑谷、ミリオも急いで駆け付ける。

「……ミリオ」

「ダメだ生きて下さい!死ぬなんてダメだ!!」

「…手の施しようがなく…正直…生きているのが不思議な程…」

「「「っ…」」」

医者の言葉に全員が言葉を失う…

「こうもなってしまっては治癒では何ともならない―「まだ生きてるなら。大丈夫です。」」

『!?』

絶望に満ちていた時、更にもう一人入って来た。

「君は…どうしてここに…」

「―出来の悪い弟に呼ばれたんですよ。『キャスター』」

「―オペの時間だ。成程。治療し甲斐がある」

 

 

side立希

「アホ」

「サーセン」

『宝具』を放ち、意識を手放した。そして次に目が覚めると病院の一室で寝ていた。窓から景色を見ると既に夜。そして自分が寝ている部屋に姉が入って来て。開口一番に罵倒された。

「何やってんの?「イタッ!?」人命救助に自分が怪我負ったら意味ないじゃん。「ちょ!?怪我した腕つつかな―イダイ!!」アレなの?自己犠牲?ふざけてるの?「至って真面目で―イダッイダイ!!」真面目だと尚の事馬鹿なの?「や、止め―」ああ、バカね。「ヤメロォオオ!!!」」

いつになく姉からの毒舌が来る。しかも『宝具』を放って大火傷した左腕を突つかれながら言われるから肉体的に、精神的にダメージが来る。何とか突かれるのを止めてもらう

「こ、これでも自分なりに頑張ったんですぜ?姉様」

「…へぇ…」

「そ、それに、『投影』も今まで以上にシンクロ率上げれる事が出来たのですよ?」

「…それがこの結果なの?」

「…い、exactly!その通りでござ―「フンッ!」イイッ↑タイ↓ウデガァァァ↑!?!?!?」

よ、容赦無く怪我した腕を叩かれた!?めっちゃ激痛走るぅ!?!?!?

「はぁ…ふざけるくらい回復してよかったよ……ホントに……良かったよ…」

「……ごめんなさい。」

「はぁ……別にいいよ……お疲れ」

「ん」

結果として、事件は終結した。自分が気絶した後、エリちゃんの“個性”が暴走したけど、相澤先生がエリちゃんの個性を『抹消』し、今は安静にしてる。他の皆も、戦いで怪我した人達は大学病院へ搬送されたのだった。鋭児郎君、天喰先輩、ファットガムが包帯だらけだったけど無事でよかった…

「…ナイトアイは?」

「…大丈夫、生きてる。アスクレピオス呼んで治したから。」

実は気絶する前に、姉に連絡して要請してたりする。箝口令?姉も関係者だからセーフ。

「いきなり連絡来て驚いたよ。学校休むの地味に大変だったし…」

苦笑いするしかない。でもそれで人一人分の命が守れたならいいでしょ…でもナイトアイのヒーロー活動は無理らしい。右腕損失と腹部損傷により体力低下…五体満足じゃないのが悔しい所…

「…それでも、死者数0何だから。立希、お疲れ」

「姉こそ。迷惑かけたね…」

「何を今さら」

「ウン。ソダネ…」

 

一夜明けて退院日。左腕の大火傷は後遺症無く完治。リカバリーガールの『治癒』はスゴイ。

『―犯人護送中の襲撃事件という前代未聞の失態。重要証拠品の紛失も確認されており、警察への批判が高まっています』

「嘘……もしかして敵連合が?治崎を…?」

「朝のニュースからずっとこの話…」

ニュースを見つつ、退院準備を終え、姉と一緒に部屋を出ると…

「やぁ、藤丸姉弟」

「おはよう!二人共!」

「ミリオ先輩。それと―」

「ナイトアイ…」

車イスに乗ったナイトアイに、その車イスを押しているミリオ先輩に出会う。

「君達には感謝している。実際、私は死ぬ一歩手前だった…」

「僕からも感謝するよ!!サーを救けてくれて……ありがとう!!」

そう二人からものすごく感謝された。自分と姉は慌てる。

「い、いえいえ!別に私が治したわけじゃないですし!お礼ならアスクレピオスに伝えますよ!」

「そうです!それに…窮地だったとはいえ、無理やり凍結状態にして…すみません…」

「フッ…姉弟共に素直に受け取らないな…」

「サー、少し笑いましたね」

そんな会話をする。

「…ヒーロー活動は?」

姉がそう聞くと、サーは少し顔を暗くしつつも答える。

「…引退だな…この姿だ。活動は絶望的に困難…が、ヒーロー事務所は止めない。サイドキックが多くいる。センチピーダーに引き継がせ、私は裏方でサポートに徹する。それに…まだミリオには強くなって欲しいからな…」

「ああ。僕ももっとサーに教えてもらいたい。あなたが教えてくれたから強くなれたんだから!」

「…その…『個性が消えて』も…ですか?」

今度が自分が訊くとミリオ先輩は元気よく答える。あの戦いで、先輩は薬を撃たれた。

「勿論さ!それに…今後もしエリちゃんが“個性”をしっかり扱える様になったら『“個性”を持ってる状態』まで『戻して』もらえないか頼んでみる!それがかなわないなら色々試してみるよ!」

「…大丈夫だミリオ。お前は誰よりも立派なヒーローになる。」

そんな2人を見た自分は心底ほっとする…本当によかった…

「だからさ!二人も笑って行こうぜ!」

「「―はい!」」

 

学校に戻ってから、色々と調査や手続きが立て続けに来て、結局寮に帰ってこれたのは夜だった。緑谷君達も同じ理由で道中バッタリ出会う。因みに姉はさっさと帰って既に寮にいる。自分含め、5人同時に寮に入ると―

「帰えってきたァァァァ!!!奴らが帰ってきたァ!!」

「大丈夫だったかよォ!!?」

「ニュース見たぞ!おい!!」

「皆心配してましたのよ」

「大変だったな!」

「お騒がせさんたち☆」

「まぁ兎に角ガトーショコラ食えよ!」

峰田君筆頭にクラスメイトが迎えてきた。

「お前ら毎度スゲェことになって帰ってくる!怖いよいいかげん!!」

「あ、あはは…」

「ワリィな…」

「無事で何より。」

「無事かなぁ…無事…うん…」

「お茶ちゃん!梅雨ちゃん~~!!」

「わっ!透ちゃん!」

「ケロ、心配かけたわ…」

玄関前で賑わう。途中飯田君が静止したけど緑谷君が大丈夫と言うと再度賑わう。

「立希」

「三奈。ただいま。」

三奈にそう言うと…若干怒ってるような仕草をしていた。

「立香から聞いたよ。また無茶したって」

「うぐ…痛いところを…」

「切島もそうだけど、無茶しすぎ!心配する方の身も考えてよね!」

「ぜ、善処します…」

わいわい騒ぐ中、爆豪君と焦凍君が途中退出した。どうやら明日、仮免試験の講習があるとの事。頑張って合格して欲しい…

「二人程抜けたけどインターン組の帰還を祝うぞー!」

『おー!』

こうして、内容が濃いインターンが終わった…




ナイトアイさん生存。でもリタイア。


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第52話

side立希

インターンが終わっていつの間にか10月を迎える。爆豪君と轟君は仮免の補講に行って、ナイトアイ事務所はセンチピーダーが引き継ぎ、エリちゃんは意識回復したと相澤先生に聞いた。そして今はいつもの学校生活へと戻る。今は数学の授業だ。

「アマリ美シイ問イデハナイガ…コノ定積分ヲ計算セヨ」

「(うっわ出たエクトプラズム先生からの難問。いくら得意な数学でも難しいな…)」

「…………………」

前に座ってる姉は…あ、止まってる。何か頭から湯気でてる幻覚が見えた…

 

 

side立香

立希達が戻って来ていつもの学校生活へと戻る。一応、立希からはの必殺技の憑依率の上げ方を教えてもらい、私も向上に成功した……で、今は―

「文化祭があります」

『ガッポオオォイ!!』

ガッポイ―つまり学校っぽいの略。学校行事が始まるのだった。

「文化祭!」

「何するか決めよー!」

「いや良いんですか!?この時世にお気軽じゃ!?」

「もっともな意見だ。しかし雄英もヒーロー科だけで回ってるワケじゃない。」

相澤先生が言うには、体育祭がヒーロー科の晴れ舞台だとしたら文化祭は他科が主役。注目度は比にならないけど彼らにとって楽しみな催しと教えてくれる。

「―そして現状、寮制をはじめとしたヒーロー科主体の動きにストレスを感じてる者も少なからずいる。だからそう簡単に自粛するワケにはいかないんだ。」

という事で、1クラス1つ出し物をする事になった。飯田君進行役、ヤオモモが書記をする。

「―ではまず候補を挙げていこう!希望ある者は挙手を―『ハイハイハイハイハイハイ!!!』ぐっ…なんという変わり身の早さだ…ええい必ずまとめてやる!!」

そこから怒涛の意見が挙げられる。全ての意見を飯田君は捌く。

「メイド喫茶!」

「メイド…奉仕か悪くない!」

「温いわ!オッパ―」

しばらくお待ちください。

「おもち屋さん」

「寒い時期にはピッタリだ!」

「腕相撲大会!」

「熱いな!」

「ビックリハウス!」

「わからんがきっと面白いんだろうな!」

「クレープ屋」

「食べ歩きには持ってこいだ!」

飯田君が全て捌いた結果、黒板に全員分の意見が映される。

・メイド喫茶・コント・お勉強会・オッパブ

・腕ずもう大会・郷土史研究発表

・ヒーロークイズ・演舞発表会

・ビックリハウス・殺し合い(デスマッチ)

・手打ちそば屋・占い屋・おもちやさん

・ふれ合い動物園・僕のキラメキショー

・アニメ・漫画鑑賞・暗黒学徒の宴

・タコ焼き屋・かえるのうた合唱・ダンス

・アジアンカフェ・クレープ屋

「不適切・実現不可・よくわからないものは消去させていただきますわ」

「あっ」

「無慈悲っ」

「は?」

「ハナから聞くんじゃねーや」

青山君、常闇君、峰田君、爆豪君が反応する…まぁ4人の意見は大なり小なり問題ある…特に峰田君はアウト。

「郷土史研究発表もなー地味だよねぇ」

「くっ…総意には逆らうまい!」

飯田君の意見も反対される。

「勉強会はいつもやってるし」

「お役にたてればと…つい」

ヤオモモはどんまい…結局、この時間で決まらなかった。寝ていた相澤先生が起き上がる

「実に非合理的な会だったな。明日朝までに決めておけ…決まらなかった場合…『公開座学』にする」

『こ、公開座学!!』

それは最悪な文化祭だ……

 

寮に戻り、皆で再検討する。けど全員じゃない。インターン組は補習で爆豪君は寝た。飯田君とヤオモモを中心に何をするか話すが…中々決まらない。

「落ち着いて考え直してみたが…他科のストレスを発散の一助となる企画を出すべきだ。」

「そうですわね…ヒーローを志す者がご迷惑おかけしたままではいけませんもの…」

そうなると私達だけが楽しいだけじゃダメ…体験系となる…

「―ダンスで良いんじゃねぇか?」

ここで意外にも焦凍君が発案した。

「超意外な援軍が!!」

「なんかあっただろ…バカ騒ぎするやつ……ああ、こういうやつだ。」

パソコンを操作し、焦凍君が見せて来た動画はステージにてバンドを組み、歌、ダンスをしている動画だった。

「轟から出る発想じゃねーーーー!!!」

「……仮免補講からの連想なんだが」

「どんな補講だったの…?」

爆豪君と焦凍君が…ダンス……なんかちょっと見てみたいかも…

「なるほど……」

「いけんじゃね!?」

「私ダンス教えられるよ!」

「ツーステップ☆」

「ダンスとはリズム!“極上の音”にノるんだ!!」

焦凍君の意見は中々理にかなっている。ダンスは青山君や三奈ちゃんが得意。演奏は…ヤオモモや耳郎ちゃんが得意。

「音楽と言えば―」

「っ!ウチ!?」

案の定、皆が耳郎ちゃんを注目する。

「耳郎ちゃん演奏上手いし何より音楽してる時とっても楽しそうだよ!」

「……でもウチのは本当に只の趣味だし…表立って自慢できるもんじゃないっつーか…」

耳のイヤホンジャックを弄る耳郎ちゃんだけど上鳴君、甲田君らが耳郎ちゃんを励まし…

「あんなに楽器できるとかめっちゃカッケーじゃん!!」

「人を笑顔にできるかもしれない技だよ!十分ヒーロー活動根ざしてると思うよ!」

「………ここまで言われてやらないのも…ロックじゃないよね…」

『おおーーー!!』

決まりのようだ。A組の出し物は―

「生演奏とダンスでパリピ空間の提供だ!!」

 

「―ん?」

ふと、パソコンを見る。次の動画が再生された……何か聞き覚えのある音楽と見た事がある紫髪の女性―

『BB~♪チャンネ―(ブッ』

「…………………」

見なかった事にしよ……



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第53話

side立希

自分達が補習をしてる間に出し物が決まった。バンド演奏とダンスホールを融合した出し物だった。

「やっと今日で補習終わったー」

「これで私達も本格参加できるねー♪」

 

寮に戻るとさっそく役割分担を始めていた。役割は三つ。『バンド隊』、『演出隊』、『ダンス隊』だ。自分はダンスかなぁ…

「お、補習組が帰って来たぞ!」

「今どんな感じかしら?」

「バンド決め!今の所、爆豪君がドラムで耳郎ちゃんがベース、百ちゃんがシンセサイザー?だよ!」

「…アレ?姉演奏しないの?」

「っ…余計な事を……」

自分が呟くと姉がじと目で睨んできた。いやだってピアノ弾けるじゃん。

「確かに!立香ちゃんもピアノ弾けるやん!!」

「そういや部屋にあったな」

「いやでも…人に聞かせる程上手いわけじゃ…」

「大丈夫ですわ。立香。二人で弾きましょう!私も頑張りますわ!」

「藤丸…お願い」

「………うん。分かった…やります…久しぶりに練習しないと……」

姉は八百万さんと同じシンセサイザー?になった。

「藤丸弟は弾けねぇのか?」

「全然。楽譜読めるだけ」

「後は…ギターとベースだね」

「へ?歌は耳郎ちゃんじゃないの?」

「ボーカルならオイラが!」

「この僕☆」

「歌なら自信あるぜ!」

というわけで、皆で査定。鋭児郎君は漢気溢れた歌。ジャンルが違う…峰田君は…何言ってるか分からない。がなってるだけ?青山君の綺麗な声…というか裏声。辛口な結果だ。

「おい立希!こういう時こそ何か誰か歌系の奴召喚出来ねぇのか!?」

電気君に言われ、自分は誰がいたか考える…候補がいた。

「えーと…あ、うん。いるよ。」

「おお!マジか!」

「え?いたっけ…」

姉が首を傾げる中、自分は呼ぶ体制に移る。

「えっと…じゃあ試しに呼んで欲しいんだけど…」

「了解。来て『ランサー』」

耳郎さんに頼まれ、早速呼び出す。

「―さあ、ライトを当てなさい!」

現れたのは、ランサー、『エリザベート・バートリー』。悪魔のような角や尻尾を生やした濃い桃色の長髪の少女。血の伯爵夫人とも言われた吸血鬼だ。

「おまっ!?立希!!「まぁまぁ、きっと大丈夫だから。うん。きっと」」

エリちゃんを見た姉が物凄く動揺した。

「おおー!可愛い娘キター!」

「10年後が楽しみだぜ」

「カワイイ!」

皆がエリちゃんを見て騒ぐ。エリちゃんが自分を見て来た

「それで?子イヌ。私をここに呼んで何をする気なの?」

「うん。エリちゃん…今こそ君の歌唱力をみせるんだよ!」

「!……ふふふ…ええ…いいわ!聞かせてあげる!!」

自分が歌って欲しいと願うと、エリちゃんは嬉しそうに皆の前に立つ。

「おお…何か期待できそうだぜ!」

「見た目もなんかアイドル衣装だし…めっちゃ歌が上手いかも!?」

「取り敢えず聞いてみようぜ!!」

「さぁ!エリちゃん!GO!!」

皆がエリちゃんの歌声がどんなものなのか楽しみにワクワクする。

「聞きなさい!!豚ども!サーヴァント界最大のヒットナンバーを聞かせてあげる!スゥー…―」

エリちゃんが声を発する瞬間、自分と姉は耳を塞ぐ―

「―ボエエエエエエ~~~~!!!!」

―吹っ飛んだ

 

 

side立香

「―いけると思ったんだけどなぁ…」

『逝けるわ!!』

バカ弟のせいで全員気絶した。既にエリザベートの姿は無く、皆意識が回復し、バカ弟に文句を言う。

「見た目で判断しちゃだめだって今知った…」

「リアル〇ャイアンマジでいたのかよ…っ」

「『ボエー』って本当にあったんだ…」

もれなく全員項垂れる。

「ダメだったか…でも良い時はすごく歌が上手いんだよ?だた上手くなる確率が低いだけで…「もういい。喋るなバカ。」ういっす」

バカ弟は殴って粛清。正座させて黙らせる。

「振り出しにもどったな…耳がイテェ……」

「やべ…思い出してきたら吐き気が…うっぷ…」

「もう一人候補いるんだけどなー…ネロ陛下「立希、シャラップ」ア、ハイ」

それからなんやかんやで耳郎ちゃんが歌う事になった。彼女の歌唱力は…耳が幸せになるくらい良かった。エリザベートの歌声を聞いた後だから尚更……それからギターも上鳴君と常闇君に決まる。途中、峰田君が、ギターが体格的に弾けなく捻くれたけど…三奈ちゃんの『ハーレムパート』作ると言ったら元気になった…そして演出隊も決め―深夜1時にて……

「全役割!決定だ!」

 

・バンド隊:耳郎、常闇、上鳴、爆轟、八百万、藤丸姉

・演出隊:轟、瀬呂、青山、切島、口田

・ダンス隊:緑色、飯田、麗日、芦戸、蛙吹、葉隠、佐藤、峰田、尾白、障子、藤丸弟、(青山)

 

「明日から忙しくなるぜ!!」

「皆ガンバロー!」

『オオオオオ!!』

 

因みにバンド名は―

「バンド名は『スパークエレキッズ』なんてどうだ!!」

「『夜間葬団』」

「『俺』」

「A組全員で臨むという意味を込めて―『Aバンド』というのは…」

「「それだ!」」

「「「………」」」

男子3人を黙らせて決まった。



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第54話

side立希

休日。つまりは文化祭に向けて練習だ。自分はダンス隊に所属。三奈がリーダーとなり、ダンス隊の技術を向上させる…が…

「ん~~~~上手くいかな~~~~い!!」

「まぁ…素人集団だしなぁ…」

自分含め、本格的な踊りを皆した事が無く、バラバラだ。

「まず基礎を固めないと!でも私一人じゃ…」

三奈はうんうん唸って考えている……よし

「来て。『アサシン』、『ランサー』」

「―あら?踊り?ふふ、楽しみましょ♪」

「―あなたが私に頼る以上、最高のパフォーマンスを見せてあげる」

アサシン、『マタ・ハリ』とランサー、『ラムダリリス』を呼び出す。ヒラヒラの多いオレンジ衣装を着た女性にペンギンのパーカーを来た女性が現れるからダンス隊の皆驚く。

「ぺ、ペンギン!?」

「アレ?体育祭で見た女子じゃね?」

「すっごい美人…」

「うひょー!来たぁああ!!」

「え、立希?」

自分が突然、英霊を呼び出したから困惑する三奈。自分は説明する。

「一応、踊りに長けた人を呼んだ。マタ・ハリ姉さん、ラムダリリス、自分達にダンスの基礎教えてくれない?」

「ええ♪皆に魅せる踊りを教えてあ・げ・る♪」

「とびきりエッジを利かせてあげるわ!マジ光栄に思いなさい。マジすごいから」

そう頼むと、二人は早速行動してくれる。

「これで、自分と皆の踊り方が向上するでしょ?」

「ありがと立希!よっしゃー!絶対成功させるぞー!!」

 

 

side立香

私達、バンド隊は―

「うんうん!そこは強く!そこは弱く!いい曲には、女神の加護が宿るものさ!」

曲が決まったから直ぐに演奏し、合わせる。だから私はキャスター、『ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト』を呼び、指揮をしてもらい、向上させる。黒い衣装を身に纏い、指揮棒を優雅に振るう。

「まさか世界有数の天才作曲家にして演奏家のモーツァルトに私達の演奏を見てもらうなんて…感動ですわ!」

「つーかやべぇ…現代楽器にもう慣れてやがる…」

モーツァルトの音楽の才能に皆は驚愕し、歓喜する。

「アマデウス、さっきの演奏はどうだった?」

「ふむ…やはり個人の力量の差がありすぎてまだ調律が合っていない…しかし僕はオルフェウスの導きし音楽魔術、その極みをお見せしよう!」

「協力感謝」

「ケッ…おいモブ女、そいつはいつまでいんだ?」

「…あはは……それでいつまでいるの?」

爆豪君の言葉に、私は部屋の隅に視線を送る。実はもう一人呼んでいた。一応、歌詞作りの助力になってくれるかと思ったけど…相変わらず捻くれ者で厭世家…結果的に駄目だった

「…何だマスターその目は。俺のことなぞ無視してろ。それよりネタをくれネタを。」

キャスター、『ハンス・クリスチャン・アンデルセン』…詩人で童話作家だからいいと思ったけど…性格の事を忘れていた…帰ってもいいのにさっきからずっと隅で本書いてるだけだ…

「んだこのガキ…」

「過度の期待はよしてもらおう。能書きはいい、さっさと働け。その分俺が楽をできるからな」

「んだとぉ…」

「アンデルセン煽らないで!はぁ…失敗した…」

アンデルセンの言葉に爆豪君キレそうになる…さっきからこの2人のおかげで内心ハラハラしている。

「アンデルセン…『人魚姫』や『マッチ売りの少女』など世界三大童話作家のひとりですわ!」

ヤオモモはすごく興奮している。有名だからね…兎も角…

「ひたすら殺る気で練習ぅう!!」

 

 

side立希

午後もダンス練習をしていると…

「―どうれ…登場一発ギャグで一笑いかっさらって…」

「通形先輩?」

寮の茂みから通形先輩が出てきた。そして―

「……って!え!」

「「「「エリちゃん!!」」」」

「デクさん……えと…マギさん…?」

インターン以来のエリちゃんが来た。見たとおり元気になっている。角も短い。

「あれ、自分の事覚えてるの?」

補習があった時、相澤先生伝いからエリちゃんは緑谷君と通形先輩を気にしていたと聞いてたけど…

「えっと…腕…怪我……大丈夫……ですか?」

「ああ…うん。大丈夫だよ。心配してくれてありがとう。改めて、マギこと立希。よろしくねエリちゃん」

「…ん…」

何この子ええ子や…挨拶して握手する

「でもどうして学校に…?」

「え!?何なに先輩の子ども…!?」

「素敵なおべべね」

「かっかっ可愛~」

エリちゃんが来た事でワイワイはしゃぐ。そこに相澤先生もやって来た。

「校長から許可が下りた。びっくりしてパニック起こさないよう、一度来て慣れておこうって事だ。」

前に緑谷君がエリちゃんを文化祭に招待するって言ってたっけ…彼女の“個性”が暴走しないために事前に来させたって事か…

「エリちゃん…インターンの子か!俺は飯田!よろしく!」

「オイラ峰田。10年後が楽しみだ」

「……………(ペコ」

エリちゃんは通形先輩の後ろに隠れてから一礼する。

「照れ屋さんなんだよね!」

「照れ屋さんか」

「というわけでこれから俺、エリちゃんと雄英内を回ろうと思うってんだけど、緑谷君もどうだい!?」

「おーいダンス隊!ちょっと話が…ってエリちゃん!!?」

「え、あの子来たの?」

演出隊とバンド隊が出てきた。

「オッスオッス!って俺のことは知らねーか!切島だ!よろしくなエリちゃん!」

「じゃーちょっと休憩挟もうか!ティータイム!」

「藤丸君もどうだい?」

「いえいえ、緑谷君と先輩、二人で十分ですよ…エリちゃんもそれでいいよね?」

「…大丈夫…です…」

こうして通形先輩と緑谷君はエリちゃんを連れて校内を回りに行き、自分達は休憩するのだった。休憩時に、自分は姉と話をする。

「姉どう?演奏の方は」

「…まぁボチボチ…アマデウス呼んで指揮してもらってる。そっちは?」

「マタ・ハリ姉さんとラムダリリス呼んで踊りの基礎学んでる…後で焦凍君に地面凍らせてラムダリリスのスケート見せて踊りの参考にしてもらおうかな…?」

「どうだろ…ダンスとスケートって違うんじゃない?」

「…いっその事演出隊として自分達の英霊達を召喚―「魔力消費で私達が倒れるからダメ」ですよねぇ…」

それから一週間…必死に自分達は文化祭に向けて頑張る…

 

 

side三人称

ある場所のビル屋上に3人の影―

「―再生数が伸び悩んでるわジェントル!」

背の低い女性が癇癪をあげ―

「やっぱりもっと大きな事したほうがもっと人の目を集められるわ」

その女性より少し身長の高い女性が静かに提案し―

「―偉業とは行動の意味…時代への問いかけさ。ラブラバ、アラネア…探してるのさ。私をもっと偉大にしてくれる案件を」

二人より高身長の男性がティーカップに紅茶を注ぎながら言うのだった…因みに、注いでいた紅茶は強風でずれ、全てティーカップから零れる

「―アッツ!?何するのジェントル!あーもうお気に入りの衣装がベトベトに…」

「ジェントルはティーブレイク中なの!でもそんな姿がカッコイイわ!」

「仕事終わりの紅茶もアッツ…」




ヤクザ編で弟が活躍(?)したなら、姉も活躍しないとね。


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第55話

side敵

私―『女郎ヤマメ』は虐めの対象だった。“個性”が発動し、姿が変わる。皆と違う―異形だから気味がられた…

―こいつ腕細長いぜ!気持ち悪い!―

―肌も紫…毒でもありそうでこわ…―

―だれか殺虫剤もってこいよ!―

辛かった。嫌だった…だから家に引きこもるなるなんて簡単だった…両親に相談しても知らん顔…

―それくらいで頼るな!―

―そうね。別に問題無いわ―

うんざりした。だから家出した。辿り着いた所は親友―相場愛美の家…彼女だけが私と会っても普通に接してくれた。そしてその彼女もまた、引きこもり。勇気出して書いた恋文を好きだった人に嘲笑されたらしい…私も親友も…何もかも信じられなくなった…そんな時、出会った、一つの動画―

「ヤマメ、見て」

「何、愛美…?」

『―初めまして諸君―』

「「…………」」

『―そう!私はジェントル!!『ジェントル・クリミナル』!!今を嘆く者達よ私を信じてついて来い!!私が!!世界を変えてやる!!』

「「っ!」」

―貴方という…光に…

 

「―きゃーーーー!!!」

「ラブラバ、アップデートは済んだかい?そしてアラネアは起きたかい?」

「ええ…ラブラバの悲鳴というアラームでさっき…ね」

懐かしい夢を見たきがする…ソファで寝ていた私はぼやけた視界で確認する。椅子に座ったまま倒れているラブラバ…そしてティーポットを高く上げ盛大にこぼしながらティーカップに紅茶をそそぐジェントル…いつも通りね…

「さぁ、行こう二人共。今日の撮影に行こうじゃないか!この一杯を優雅に済ませてね」

「ほぼ入ってないじゃない…」

今日も私達な紳士で淑女に、この世に制裁を与える…

 

 

side立香

文化祭間近。中々演奏が良くなってきた。今は休憩中。

「てめぇ走ってんだよ!俺に続けや!」

「いやお前が勝手にアレンジすっから混乱すんだよ!」

うん…何とかなる……よね?

「アマデウスさんのご指導は流石ですわ。勿論、耳郎さんのご指導も本職さながらです。素人の上鳴さんが一週間でコード進行まで辿り着くだなんて」

「私も素人同然なのにここまで弾けるようになったのも、耳郎ちゃんのおかげ」

「別にそんな……ってか今日のお茶いい香り…」

「確かに…もしかして結構高級?」

ふと紅茶の事が気になると、ヤオモモは目を輝かせる。

「分かりますの!?お母様から仕送りで戴いた幻の紅茶!『ゴールドティップスインペリアル』ですの!皆さん召し上がって下さいまし!」

嬉しそうに話すヤオモモ。うん、高級紅茶。マリーちゃんも飲んでた。

「よく分かんないけどいつもありがとー!!」

「よく分かんないけどブルジョワー!」

ヤオモモカワイイ空気が広がる中、立希がスマホを眺めていた。

「何見てるの?」

「んーBBチャンネル。結構面白いよ。姉も見る?」

「…いや、いい……というかいいの?」

「いいんじゃない?おっきーだって偶にゲーム実況してるし。あ、ヤベ。変な所押しちゃった…」

立希が間違えてタップした動画が再生される。それは零しまくった紅茶を優雅に飲む男性の姿。

『―次に出す動画。諸君だけでなく、社会全体に警鐘を鳴らす事になる。心して待っていただきたい!』

『きゃーーーー!!』

『…カメラ止めるわ(プッ』

動画に映らなかったけど女性の声が2つ程聞こえて動画終了。

「短い動画…なにこれ?悪戯?」

「さぁ?評価は…最悪だ……コメント見ると、どうやら迷惑行為で一部じゃ有名な敵らしい」

「敵…なのに動画出してるの?発生元とかバレない?」

「バレてないから動画出してるんでしょ…パソコンに強いのか、仲間がいるのか…もしかしたら電子系の“個性”?けど…次は何する気なんだか…」

少し空気が変わる…けど今は私達にとって、文化祭の方が大事だ。

「…まぁ聞いた限りヤバイ事をするって言ってたけど…それはプロヒーローに任せて私達な文化祭に集中。紅茶飲むでしょ。」

「砂糖は?「入れてる」パーフェクトだ、姉」

「はいはい、感謝の極みー」

「受け答え雑ぅ…今回はなんて紅茶?」

「『ゴールドティップスインペリアル』っていう高級紅茶。美味しいよ」

「へぇー……あ、そういやそのゴールドなんちゃらで思いだしたけど、学校から少し離れた所にそのゴールドなんちゃらを出してる喫茶店があるって知ってた?」

「へー…何で知ってるの?」

「知らない先輩達の話を耳にした。そもそも喫茶店って言ったけど見た目が店じゃないから隠れた名店らしい……えーとはい。画像」

スマホの検索画像を見ると…確かにこれは喫茶店に見えない。草木まみれの二階建ての家だ。

「文化祭終わったら振替休日あるし、行って見たら?」

「んー…ま、いつかね…」

 

 

side敵

動画を投稿してから私達は作戦会議を開く。

「―開店は午前7時から90分のティータイムだ。その後森に囲まれた山を越えると雄英だ。」

「…多分索敵に長けた『ハウンドドッグ』を警備にあてるわね……私が足止めするわ。森の中なら私の“個性”は充分に発揮するし」

「うむ任せたアラネア。だが次は肝心の校内。広大な敷地全てに張り巡らされたセキュリティは厄介…」

「そこで私の出番ね!ジェントル!雄英の内部ネットワークに侵入してこっそりセンサーを無効化する!私はハッキングのプロなのだから!」

親友のハッキングはスゴイ。そのおかげでジェントルの住所を割って今ここにいるのだから…

―気持ちが抑えられなくて…住所割っちゃいました―

―私達…貴方のファンです!だから…お手伝いします―

―歴史に名を刻む為の…お仕事を!―

「―世の為人の為私の夢の為、そして…君達の想いに応える為に!」

「ジェントル!」

「ラブラバ!」

…気付けば二人は抱き合って床に倒れている。親友のその行動力が羨ましいわ……

「好きよ…!ジェントル・クリミナル!!」

「私もさ…ほらアラネア!君も!」

「え、遠慮するわ…でも…私も好きよ…ジェントル……」

作戦実行まであと数日……




書いてて思った事。ジェントルハーレムやん


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第56話

side立希

いよいよ明日文化祭本番。自分達A組は体育館で最終確認をする。

「ツートントン!ツートントン!パッ!で、青山中央!緑谷ハケる!」

「ウィ☆」

「ラジャ!」

「緑谷!動きまだヌルいからグッ!グッ!意識!」

始まる前は本当に出来るか不安だったけど…

「何とかなりそうだ」

バンド隊もダンス隊も素人以上の技術になった。三奈のおかけだ。好きだからこそ、本気でやれるんだ…

「―そんで緑谷はソデからすぐ天井行ってそんで青山セットして…ロープで吊り上げる!」

というところで、ハウンドドッグ先生が来て終了時刻を言って来たからここで練習が終わってしまった…

 

P.M.11:35。中々寝付けない。明日が本番だからか、少し気分が高揚している。ロビーには自分含めまだ寝てない人が多くいる。

「立希」

「三奈、明日は本番だね。どう?」

三奈にそう聞くと、笑顔で答えてくる

「うん。キンチョーするけど…でもサイッコーに盛り上げて皆を元気にしたい!」

「自分もだよ。自分も含めて素人同然のダンス隊がここまで上手くなれたのも三奈のおかげだよ。これなら本番も成功するよ。きっと。」

そう言うと、三奈は嬉しそうに笑みをこぼす。

「そ、そうかな?でも立希も手伝ってくれたじゃん。私一人だと教えるの大変だった…立希が呼んだ二人にお礼言いたいよ!」

「じゃあ後で伝えておくよ。」

「うん!」

そろそろ寝ないと明日に響く…皆にお休みを言って自室に行く。

 

 

side立香

「ああもぅ……ダ・ヴィンチちゃん…朝から呼んで……まだ眠い…」

A.M.7:50。普段の私ならまだ寝ている時間帯。じゃあなぜ起きてるか。朝一にダ・ヴィンチちゃんから電話が来たからだ。内容がカルデアに来て欲しいと…外出許可証を提出しカルデアに戻る。で、内容が―

―「文化祭でバンドをすると聞いたよ!だからハイこれ!!私特性!ダ・ヴィンチ楽器!!ソース元はアマデウスとサリエリ!!さぁこの楽器を使って観客を盛大に盛り上げちゃって!!」―

…名状しがたい楽器?いや、アレを楽器と呼べない。私の身長の倍デカし、何か機械的スイッチとかレバーとかあったし…そもそも何で楽器を持った千手観音?というか本番直前に渡されても意味がない…正直にいらないと言って、帰還する……きっとロマニが何とかしてくれてる…はず…

「はぁ…コンビニでカフェオレ買って目を覚まそう…」

 

「ん?…あ、緑谷君。」

「!ふ、藤丸さん!?どうしてここに…」

コンビニで買い物終えた時、緑谷君に出会った。

「ちょっと実家に朝一に呼ばれてね…もう用事は済んだ所。緑谷君は?」

「昨夜、点検してたら青山君を吊るすのに使ってたロープがボロボロだったから朝一でホールセンター行って買いに…」

そう言ってビニール袋の中身を見せてくる。

「ヤオモモに『創造』してもらえばよかったのに…なんでわざわざ…」

「きょ、今日本番だし!八百万さんには万全な状態で演奏してもらいたいから…あと…これをエリちゃんに贈りたくて…」

「リンゴ飴…へぇ、エリちゃんリンゴ好きなんだ…」

「うん…って急がないと!藤丸さん行こう!」

「朝から走るの嫌なんだけど……はぁ…」

さっきコンビニで時間確認して、A.M.8:30。まだ間に合う…

「―わっ!」

「気を付けたまえよ」

「?」

「すみません!」

前を見ると、緑谷君が誰かとぶつかりそうになっていた……男性1人と女性2人……帽子、サングラス、マスク、コート…何か怪しい姿…まぁ季節的に花粉も多くなるし…花粉症対策?そんな事を考えながら私は緑谷君の元に辿り着く。

「ほら緑谷君何してんの…」

「ちょっとぶつかりそうになっただけ…「ゴールドティップスインペリアルの余韻が損なわれるところだったじゃなあないか」す、すみません!」

「さぁ行こう…ハニー達」

「ハニー!!?ええ!私はハニー!」

「ちょっと、私もよ」

…変な人達……けどどうしてだろうか…どこかで聞いた事がある声……

「…………何だろ…」

「…ん?あの家…」

緑谷君が見ていた方向に建物があった。それは前に立希に見せてもらった『ゴールドティップスインペリアルを扱っている喫茶店』だった。

「藤丸さん知ってるの?」

「前にヤオモモが私達に振舞ってた紅茶をあの店が扱ってるってさ。」

「…喫茶店に見えないなぁ…」

「―ゴールドディップスインペリアルを知ってるのかね!君達はわかる人間かね!?幼いの素晴らしい!!」

「「!」」

さっきの男性が急に興奮しながら近づいて来た。

「えっと…私の友達が淹れてくれたのです。そして私も紅茶を少し嗜んでますので…」

「ほほう…そんな高貴な友が―」

…ちょっと待って。

「(この声……紅茶……嘘でしょ…) はい…人に…恵まれて…」

「いい…友人を持っているね」

―諸君だけでなく、社会全体に警鐘を鳴らす事になる―

立希と見た動画を思い出した。あの人物―敵と同じ声だった。チラリと緑谷君を見る…どうやら緑谷君もあの動画の人物だと勘づいている…

「「…………………」」

「それじゃあ…私達はこれにて―「待って下さい。」………」

「っ!緑谷君…っ」

「ルーティーンってやつですか…?」

「「っ!」」

「…何の事かな?」

空気が変わった。それと同時に男性がマスクとサングラスを外し、緑谷君も買った物が入ってる袋を地面に置く。私は買ったカフェオレを飲み切る―

「…私達は動画を見ました…そう、貴方の投稿した動画を…っ!」

「雄英に手ぇ出すな!」

「ラブラバ、カメラを回せ。アラネア、準備をしろ」

A.M.8:32。私達の出し物開始まで…あと1時間28分!



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第57話

side立香

敵との遭遇。私と緑谷君は構える。

「察しの良い少年少女だ。」

土曜の朝、人通りは無い。近辺にはヒーロー事務所もない。

「(…藤丸さん、通報できる?)」

「(ごめん…スマホ持ってきてない。うかった)」

小声で緑谷君と相談。朝だから油断してた…今度から持つようにしておこう…そう考えている間に緑谷君は『身体強化』をする。

「ラブラバ!アラネア!予定変更だ!これより、何があろうともカメラを止めるな!」

「もちろんよジェントル!」

「分かったわ!でも…ここで戦うのは得策かしら?」

男性はコートを脱ぎ、それに合わせ女性二人もコートを脱ぐ。そのうち一人はカメラで撮影して来た。

「諸君!これより始まる怪傑浪漫!!目眩からず見届けよ!私は救世たる義賊の紳士…『ジェントル・クリミナル』!!」

ジェントル・クリミナル。襟が高い紳士服を着た、白髪でヒゲの生やした男性。

「同じく、義賊の淑女、『アラネア』…」

カメラを持ってないほうの女性。アラネア。肌は紫、黒のゴスロリ装束。それと服を着ても彼女の腕は私達より細く、長い。漆黒の髪に血走った紅い瞳…異形型だ。

「『ラブラバ』よ!」

カメラを持った女性。ラブラバ。ジェントル・クリミナルと同じ服装で赤のツインテールの女性。

「予定がズレた!只今いつもの窮地にて手短に行こう!今回は!『雄英行ってみた』!」

「キャー!」

「ジェントル…それは俗っぽいわ…」

アラネアと同じ事を思った…ってツッコんでる時じゃない!

「そんな事させない!」

「緑谷君!?突撃はダメ!!」

『身体強化』した緑谷君が特攻する。

「なっ!?」

「!」

けど止めらえた。緑谷君は見えない壁に遮られていた。

「ふっ…外套脱衣のついでに“張らせて”もらった。リスナーならば承知のハズだが?私の“個性”は『弾性(エラスティシティ)』触れたものに弾性を付与する。たとえそれが空気だろうと!」

「っ―」

「緑谷君!!」

ジェントルが説明終えると同時に緑谷君は勢いよく私の後ろに吹っ飛んだ。これがジェントルの個性…

「『ジェントリーリバウンド』…暴力的解決は好みじゃない」

「十分に暴力的っ!?」

私も行動に移そうとした…けど足が動かなった。足を見ると…蜘蛛の糸が絡みついていた。

「これは…「ジェントルに注目しすぎよ。」っ!」

アラネアを見ると、彼女の振袖から白い糸が垂れていた…

「いつもなら私はジェントルの裏方―サポートに徹する…紳士(ジェントル)が答えるなら淑女(私)も答えるのよ。“個性”は『蜘蛛』。粘着性の糸を絡ませたわ。」

「(抜けないっ)…っ」

力いっぱい足を動かそうとするけど全くビクともしない。地面と足が接合されたみたいに…

「それよりジェントル。エグイぐらい暴力的よ。」

「私も驚きと混乱の最中さ…すなわちそれほどのスピードとパワー!見かけによらず恐ろしい!私達は征く!」

そう言って3人は逃げた。

「待て!あーもう足がベトベトする!!」

「―謝るぐらいなら学校に手を出さないでよ!!」

やっと糸が千切れて歩けるようになる。そしてタイミングよく、緑谷君が戻って来た。私達はジェントルを追いかける

「そいつは出来ぬ相談!!『ジェントリー―」

その時、ジェントルが急に私達の方を向く。そして地面に触れた。

「―トランポリン』!!」

「「!?」」

瞬間、私達が立っていた地面が跳ね、私達を空中へ飛ばす。

「高いわね…あそこから落ちたら死ぬわよ…」

「問題無いさ…学生の頃は…私も行事に勤しんだよ…君達も懸ける想いがあるのだろうが私のこのヒゲと魂を及びはしまい。」

「そうね。貴方達の想いなんてジェントルに及ばないわ!これは伝説への大いなる一歩なのよ…邪魔はしないで!」

「アラネア…そうだな。…さらば!!青春の煌きよ!!」

そう言って空中を飛んで行く3人…

「邪魔しないで?伝説への一歩…?…ふざけないで!『降霊:ワルキューレ・オルトリンデ』!」

―全力を、尽くします―

ワルキューレ・オルトリンデと憑依。腰あたりから白くカーブかかった翼が生え、右手に白い槍、左手に盾が装備される。

「っ―「緑谷君!」わっ!?ふ、藤丸さん!?その姿…」

空を飛べるようになった私は空中で身動きできなくなっていた緑谷君の腕を掴む。

「このまま追うよ!緑谷君!!」

「待って藤丸さん!!追わなくても…止めて見せる!!」

そう言って緑谷君は3人に向けてデコピンをしようとしていた。

「ジェントル・クリミナル!!『デラウェアスマッシュ・エアフォース』!!」

緑谷君がデコピンをしたと同時に彼が付けていた手袋―サポートアイテムが変化し、空気弾が放たれる。空気弾はジェントルの背中をとらえた!

「ガッ!?」

「「ジェントル!?」」

「っしゃあ!!」

「すご…」

「空気砲…しかし止めるに如かず!!私は!めげっ!!ない!!」

それでも空中で受け身をとり、ジェントル達は前に進む。

「(動きが一瞬止まっただけ) 「藤丸さん!!僕を投げて!!おもいっきり!!」どうなっても知らないよっ!!」

言われるがまま、私は緑谷君をジェントルに向けて投げる。回転し、勢いを付けて緑谷君を投げ飛ばす。私もその後に続く

「懸ける想いは!皆同じだ!!」

「そいつは!失敬!!」

ジェントルの体を掴み、建設途中の建物に不時着する緑谷君。

「私の相手は…貴女!」

「望む…ところよ!!」

アラネアと共にジェントルと緑谷君に続く



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第58話

side三人称

緑谷達が建設途中の建物に入るところを、朝散歩していた一人の爺さんが見ていた

「…事件のかほりがするぜぇ…「気にしないでオジちゃん!」ん?」

「何故ならこれは撮影だから!ご近所にお伝え願えるかしら!?」

ラブラバがその爺さんに適当な事を言って時間稼ぎをする…が、本人は時間稼ぎにもならないと思考を巡らす。

「(ジェントル…辛いけれど企画はもうズタボロ…アラネアも分かってるはずよ!…ここはもう退くしか…)」

一方、緑谷達

「緑谷君!ジェントルとアラネアは!?」

「藤丸さん…土煙で見失ってる…何処だ…」

鉄骨だらけの場所に二人は背中を合わせて周囲を確認する。煙が晴れると…

「―まさしくこれは不測の事態」

「「!!」」

「しかし私は動じない!」

「そうね。私もよ」

ジェントルは服が鉄骨に引っかかり宙ぶらりん。その隣でアラネアは糸を垂らし、逆さまの状態で宙にいた。

「何でその感じでいられるんだ!!」

「安心して、逆さまになってもこのスカートは捲れないわ」

「別に心配してないし…」

「必ず企画を成功させる!!その覚悟がある!!紳士は「淑女は」動じたりしないのさ!!そう!私はジェントル・クリミナ「アラネアよ」ル!少し重ねるのが早いぞ。アラネア」

「淑女?何処が?」

「紳士なもんか!!雄英にちょっかいかける気なんだろ!!何するつもりだ!」

藤丸は槍を構え、緑谷はエアフォースを撃てるように構える。

「フッ何をするつもり…か…いや本当敵連合のような輩と一緒くたに考えないでいただきたい。」

「そうね、攫ったり刺したりしようなんて考えてないわ。愚の骨頂よ。」

「私達は君達の文化祭に侵入するという企画をやりたいだけ…見逃したまえ少年少女よ」

ここでジェントル、命乞い。タイミングよくカメラを向けたラブラバは驚いていた。

「警戒態勢で臨んでるだ!わかるだろ!?侵入する前にあなた達見たいな人が見つかった時点で…」

「警報は鳴って文化祭は中止。逃げ場は無くなる。だから諦めてよ」

緑谷と藤丸は説得を試みる。

「ホホウ、それならば心配ない。我が相棒の一人が警報センサーを無効化する算段だ。中止にもならない。私達の企画成功…ウィンウィンの関係じゃぁないか!」

「「そんなのもっと大問題じゃないか!(になるじゃん!)」」

「確かに!」

「…ジェントル…」

「(論破されてるぅーー!!)」

アラネアは呆れ、ラブラバは更に驚く。

「―平行線だ。」

「「!」」

ここでジェントルが動く。足で空気に『弾性』を持たせ、跳ぶ。アラネアも同時に糸を手繰りよせ、上へと動く

「紅茶の余韻が残る間に眠ってもらおう雄英生よ!アラネア!」

「人使いの荒いわよ…ふっ!」

「緑谷君避けて!」

「っ!」

アラネアは緑谷達に向けて『糸』を飛ばす。ジェントルは周囲の鉄骨に『弾性』を持たせ、その反動で加速。緑谷達を翻弄する。緑谷達は動こうにも絶妙なタイミングでアラネアの『糸』が襲ってくるため動きが制限される。勿論アラネアが飛ばした『糸』もジェントルは『弾性』を持たせ、ジェントルの動く範囲を増やす。

「動きが…」

「予測出来ないっ!」

「―ふっ!」

「うっわ!!」

藤丸は反射的に盾を構えた。と同時に衝撃が走る。ジェントルが藤丸に見えない速度で攻撃したのだった。

「藤丸さ―ぐっ!?」

緑谷に攻撃当たった。しかし彼が視認したのは遠くにいるジェントル。

「空気の『弾』なら、空気の『膜』でお返ししよう。」

「さっきの威勢はどうしたのかしら!?」

「っ…せいっ!はっ!」

アラネアは藤丸を拘束しようと蜘蛛の巣を広げ放つ。藤丸はそれを槍で斬り捌く。

「あら、やるわね…」

「ジェントル!アラネア!悲しいけれどもうここは退いた方が……」

「いいやラブラバ、まだだ。「「捕まえ―」」おっと、君達は私の話を聞かねばならないよ。」

ジェントルは動こうとした緑谷と藤丸を制した。その時、丁度鉄骨の上に立ち、『弾性』を与えながら鉄骨を繋げていたボルトを外す。

「私の“個性”は私の意志では解除できない。徐々に元の質へと戻っていくんだ。尋常でない弾みを残しながら『硬さを取り戻して』いく鉄骨…そして今私が立っているココの『ボルト』は全て外した。」

「!」

「まさか―」

緑谷と藤丸は下を見る。そこには―先ほどの爺さんが見物していた。

「どこの局じゃ!?」

「君達は雄英生。崩れる鉄骨を…無視出来ない」

ボルトが外れ、弾性の消えた鉄骨が落ちる―

「させない!」

「っ!下の人に落とそうと…っ!」

緑谷は落下する鉄骨の下に入り、受け止め、藤丸は爺さんのいる所まで飛び、抱きかかえる。

「な、なんじゃー!?山場なのか!?」

「お爺さん少し離れた場所に移動しますよ!!」

藤丸は爺さんを抱え、離れた場所へと向かった。

「―いやはや、下に向かうかと思ったが、改めて恐ろしいスピードとパワーだ。」

「彼女もやるわね…」

「大変心苦しいことだが…そこで耐え忍んでくれたまえ。さっきの少女も戻ってくる。すぐに退散しないとな。掴まれ、ラブラバ、アラクネ」

ジェントルは近くにあったクレーンに『弾性』を与え、曲げる。

「エグイわジェントル!!」

「でもそこもカッコイイわ」

「っ(駄目だ!行かせるな!!)」

緑谷を他所に、3人はクレーンの『弾性』をばねに、雄英がある方向へ飛ぶ



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第59話

side三人称

「そろそろだなー!ソワソワしてきた!」

A.M.8:45。A組の寮にて、全員準備万端だった。

「明鏡止水。落ち着きましょう、上鳴さん。」

「明鏡止水」

「つか爆豪Tシャツ着なよ。つくったんだから」

「るっせぇ!俺が何着ようがカンケーねーだろ!」

バンド隊。爆豪以外はソワソワしだしてる。

「ダンスの衣装バッチシー!」

「既製品に手加えただけだけど」

「エロけりゃいい!!」

「というか藤丸弟が裁縫得意だったのが意外なんだけど…」

「ミシンぐらい、余裕で使える。」

ダンス隊。衣装チェック。男子は長袖、長ズボン、ネクタイといったスーツ。女子は中に青服を着た長袖とゆるふわスカート。

「…緑谷いねぇな。」

「ロープを買いに行ったさ☆」

「こんな時間まで何してんだあいつ…」

「姉がいない…え、どこ行ったの?スマホ…出ないし…えぇ…」

文化祭スタートまであと15分

 

 

side立香

「―お爺さんそれじゃあ!体に気を付けて!」

「おお。ありがとなー!」

お爺さんを避難させ、私は直ぐに飛び緑谷君がいる所に戻る。

「緑谷君は……いた!!」

工事現場の少し離れた場所…というか山の中にいた。この山を越えたら雄英……

「―女の子も抵抗しないで!もう諦めてくれ!!」

緑谷君の所に着地すると、既に緑谷君はジェントルとラブラバの上に乗り、拘束していた…けど一人足りない。アラネアの姿が見えない。

「緑谷君、アラネアは?」

「…分からない。この森に入った時には彼女の姿は…取り敢えずこの二人を警察に引き渡す。これからすぐに―」

「『愛してるわ』」

「ありがとう…ラブラバ」

ジェントルとラブラバが何か囁いていた瞬間、私は―吹き飛ばされた。

「っ!?」

直ぐに受け身を取って着地する。一体何が……

「―ラブラバがジェントルに“個性”使ったわ。ジェントルの本気の本気よ」

「アラネア…!!」

上からアラネアの声が聞こえた。上を見ればさっきいなかったアラネアの姿…そして―

「森の中は…私のフィールドよ。」

―木々に大量の蜘蛛の巣がはられていた。

「貴方の相手は私。蝶のように飛びなさい。そして私の蜘蛛の巣に引っかかりなさい。私の麻痺毒で動けなくしてあげるわ」

蜘蛛の巣を張り巡らせたフィールド。ワルキューレの飛行能力を奪われた…

「(なら…)『解除』!『降霊:エミヤ・オルタ』」

―せいぜいうまく使え―

「姿が…変わった…?」

今度はエミヤ・オルタに憑依する。双剣を魔改造した白と黒のガンブレード。肌がオルタみたいに少し黒くなり、髪も白くなる。

「なら…飛ばなければいい。」

「っ…食らいなさい!!『繭玉』!!」

アラネアがバレーボールぐらいの大きさの繭の玉を放ってきた。直ぐに避ける。繭玉は地面に着弾するとそこに生えていた草が少し溶けていた。

「安心しなさい!肌が少しかぶれる程度よ!!」

「そもそも当たりたくもない!ふっ!!」

私は双銃を使って降り注がれる繭玉を撃ち飛ばして防ぐ。それと同時に早撃ちでアラネアにも弾丸を放つ。

「っ!フッ!」

口から毒を飛ばし、弾丸を溶かし防いでくる。そして蜘蛛の巣を使い縦横無尽に木々へ移動する。

「ホント…っ…蜘蛛みたいに動く…!」

「ええそうよ!私は蜘蛛!忌み嫌われた存在!それが私!アラネアなのよ!!『糸牢獄』!」

私の周囲に蜘蛛の巣状糸が包囲してくる。

「!シッ!!」

双銃の塚部分を連結させ双頭剣に変化させ、回転し、切り刻む。

「フフ…『糸籠目』…!」

「これは―」

今度はドーム状に取り囲んできた。しかも…徐々に狭まって来る。

「ふふ…今までの糸は粘着性だったけど…この糸は粘着性より鋭利性を与えたわ…触れたら…斬れるわよ?」

「っ……………」

一発撃つ。アラネアの言う通り、弾丸は真っ二つに斬れた。糸はどんどん増え、私を包み込んでくる―

「『解除』―」

 

 

side三人称

「(勝った!)」

藤丸を繭のように包めることが出来たアラネアは内心喜ぶ。後は麻痺毒を注ぐだけ…そう思い藤丸に近づく―

「!?」

突如、繭が解かれる。アラネアの『糸籠目』が斬られたのだった。

「―『降霊:両儀式』」

―いいぜ、やればいいんだろ?―

再び藤丸の姿が変わる。赤のパーカーを羽織り、手にはナイフを持っている。漆黒な髪に……光る水色の瞳がアラネアを写す。

「嘘…『糸籠目』の糸が切断できるわけが…」

「…『死』を見ただけ。『糸の死』を見て、それに沿って私は斬っただけ…」

今、藤丸の瞳は『直死の魔眼』となっている。その瞳はありとあらゆる事象の視覚化に特化し、『死』を見る事が可能。藤丸は『糸籠目』の『死』を見て、切断し、脱出したのだった。

「っ……ふざけるな…どうして…何で私達の邪魔をするのよ!!」

アラネアは癇癪を起こし、『繭玉』を放ちまくる。藤丸は落ち着いて対処。ナイフで繭玉を潰さないように切り落とし、防ぎながら一歩ずつアラネアに近づく。

「…大人しく投降して」

「っ…嫌よ!まだ!私は…私達は負けてない!『螺旋糸』!!」

最大硬度で練り上げた糸を編み上げ、回転させながらアラネアは放つ―

「そう…でもここで終わり。アラネア」

藤丸は『直死の魔眼』によって『死』を見て再度糸を斬り落とし―

「因果応報。貴女達がこれを正義だと言っても、世間から見ればこれは悪…法の下でしっかり裁かれて…」

「―っぁ」

―アラネアの鳩尾をナイフの塚で殴り、気絶させる。

 

 

side立香

「…ふぅ…何とか勝てた…『解除』」

森の張り巡らされた蜘蛛の糸を切り落とし、気絶させたアラネアを担いで緑谷君がいるだろう場所に向かう。

「はぁ…汗だらけに、泥だらけ……本番前にシャワー浴びたい……」

 

「―これまで戦ってきた誰より、戦い辛かったよ。ジェントル」

緑谷君の所に辿り着くと、戦いが終わっていた。地面に倒れたジェントルに緑谷君が乗って拘束する。

「緑谷君」

「藤丸さん…アラネア…よかった。勝ったんだね」

「ん。強かった。雄英に入ろうとしただけはある。」

「―ジェントル…アラネア…嫌…やめてよ…放して…!!」

「「!」」

近くの茂みからラブラバが現れた。彼女が持っていたパソコンを落とし、泣きながら近づいて来た。

「ジェントルとアラネアを放して!放して!嫌よ!ジェントルが心に決めた企画なの!大好きなティーブレイクも忘れて準備してきたの!アラネアも私もジェントルの為に頑張って来たの!放せ!何が明るい未来よ!!」

気絶したアラネアをその場に寝かせる。ラブラバは緑谷君を叩き、泣きじゃくりながら訴えてくる。

「私の!私達の光はジェントルだけよ!!ジェントルが!私達の全てよ!ジェントルを奪わないでよ!!」

 

 

side三人称

「―――――」

体力限界のジェントルは考える。そして思い出す。

―お手伝いはダメだ!犯罪に加担させる事になる―

―罪ならすでにハッキング犯してるわ!―

―私なんて家出する為に両親を糸で束縛したわよ―

―いいのジェントル。貴方といれるなら―

―…何処でも私達は幸せよ―

「ジェントルと…アラネアと…二人と離れるぐらいなら死ぬ!!」

「(ラブラバ…アラネア……私も…幸せだったよ!!)」

ジェントルは遠くから何かが近づいてくるのに気付く。それがプロヒーローだと分かる。

「(彼女達に罪はない!このままヒーローに捕まればラブラバも、アラネアも戦いに加担したとすぐバレる!ならばせめて……) っ!!」

「!?」

「この戦いは無かった事に…」

ジェントルは拘束されていた手で緑谷を『弾性』で飛ばす。

「緑谷く―「君もだ」っ!?」

更に、不意をついて藤丸も『弾性』で緑谷を飛ばした方向に飛ばす。

「そのまま失せたまえ…(少しでも、罪を軽く…) 彼女達の為に、彼女達の明るい未来の為に…」

「ジェントル…」

ジェントルはラブラバと気絶したアラネアを抱きしめる。その時―プロヒーロー達が現れる。

「路傍の礫に躓いてしまってね……雄英、『自首』がしたい。」



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第60話

最近のガチャがドブ


side立香

「わわ…っと」

「藤丸さん大丈夫!?」

「何とか…それよりもジェントルは…」

「…ジェントル・クリミナルは……多分…」

「…戻ろう、緑谷君」

ジェントルの“個性”で飛ばされた私達。直ぐにジェントル達がいる所に戻る。何となくだけど、彼がしようとしている事が分かった。ジェントルは仲間…ラブラバとアラネアを……

「―世間知らずの女性二人を匂引かし、洗脳していた事。だからどうか、相場愛美と女郎ヤマメに…恩赦を…!」

「「…………」」

戻ると、そこにはジェントルの胸元を掴み上げているハウンドドッグ先生と。周囲を包囲しているエクトプラズム先生がいた。そしてジェントルは自首をしていた。アラネアはまだ気絶し、ラブラバは涙を流している。

「ソノ怪我ハ!………」

エクトプラズム先生が私達に気付く。そしてハウンドドッグ先生が私達を見てくる。

「…戦ったのか」

ハウンドドッグ先生がそう問いて来た。私は緑谷君を見る―

「雄英にイタズラしようとしてるのがわかって、少し揉めました…けれど、もう…大丈夫です。」

「…そうなのか?」

「はい。私と緑谷君で説得しました。」

結果。既に始まっていた文化祭。けど中止にはならなかった。ジェントル達を『端迷惑な動画投稿者の出頭希望』とし、『緊急性は無し』と判断され、そのまま警察署に出頭させた。

「……全て終わったら、紅茶とお菓子持っておしゃべりでもしようよ。アラネア…」

私は気絶しているアラネアに言い残した。

 

―「オールマイトガ心配シテイタゾ。藤丸弟モダ。A組10時カラダロウ?」―

エクトプラズム先生にそう言われ、直ぐに雄英に戻る。途中緑谷君が買い出しの品を置いて来た事を思い出していたけど…

「緑谷君。ハイこれ」

「あ!これ僕が買った…いつ…」

「お爺さん避難させて戻る時に回収して、近くの茂みに隠しておいたの。中身は大丈夫だから」

「ありがとう!」

私がしっかり回収しておいたから無事雄英に戻れた。校門前には…

「緑谷君☆遅いよー!」

「青山君!!ごめんなさい!」

「姉!カルデアに戻って何しに…何でそんな泥だらけ?」

「話は後!もうすぐ始まるんでしょ!?」

青山君と立希が待っていた。

「ホラ着替えて☆」

「そんな汗と泥だらけじゃダメでしょ…先生、個性使っても?」

「イイダロウ。」

「『投影:天の衣』」

―ええ、行きましょう―

「『魔術医療』!ハイこれで回復したでしょ?」

王冠の様な帽子をかぶり、白の髪と赤の瞳となる立希が私達にスキルを使って傷が癒やし、泥と汗が消える。

「ありがとう藤丸君!」

「ナイス!」

「後30分で始まるから!!」

 

立希が、私が着る服を持って来たから近くのトイレで早着替え。そして会場の体育館に入る。

「ヤオモモ!皆!おまたせ!」

「心配しましたよハル!」

「おっせーぞモブ女!!」

「大丈夫?弾ける?」

「ん……大丈夫!」

バンド組に色々と言われつつも、私はヤオモモの隣にある電子ピアノの前に立つ。そして―A.M.10:00。A組の出し物が始まる―

 

 

side三人称

「いくぞコラァアア!!!」

―雄英全員音で殺るぞ!!―

BOOOOM!!

爆豪の爆破のドラムから、バンド隊の前奏が始まる。大音量、大迫力に観客は湧く。それと同時にダンス隊全員きれのある動きのダンスが始まる。

「開幕爆発!!」

「ツカミはド派手に!!」

『よろしくお願いしまぁああす!!』

耳郎の歌が始まると同時に盛り上がる。

「(ここで―)」

「(粒立たせる!!)」

ギターの常闇と上鳴がギターを鳴り響かせ、

「(立香!行きますわよ!)」

「(オッケー!)」

立香と八百万もそれぞれの音を絡ませ鍵盤楽器の綺麗で楽し気なハーモニーを奏でる。

「おお!?」

「いいじゃん!!」

いきなりの盛り上がりに観客達は心を躍らせる。

「(―青山ちゃんと緑谷ちゃんのパート!)」

緑谷と青山が前に立ち、同じ動きをする。

「息ピッタリ!」

「緑谷とレーザーだ!!」

「行くよ!」

「ウィ☆」

そのまま緑谷は青山を投げ、青山は空中で『レーザー』を乱射する。これには観客も笑った

「あっはっは!人間花火かよ!!」

その後直ぐに青山は尾白に受け止められ、緑谷は裏方へ移動。そして曲もだんだんと盛り上がっていく

「(そろそろだ!)」

峰田、障子が『もぎもぎ』を宙へと投げ、

「よっしゃ今だ“せろろき”!!」

「セイ!」

「おお」

舞台上にいる切島が『硬化』し、瀬呂は『テープ』を宙へ飛ばし、轟は『氷結』の準備をする。

「『羽ばたく者よ!光源を上下左右に動かすのです!』」

口田も『生物ボイス』で鳥たちにライトを操作させる。そして―

「サビだ!ここで全員―ブッ殺せ!!」

『!!!!!』

曲がサビに突入と同時に会場内に『氷の道』が何本も現れる。瀬呂の『テープ』、峰田の『もぎもぎ』、八百万が『創造』して放った『砲弾』を支柱にして轟が『氷結』を放って固定する。そしてその氷の道を使ってダンス隊が走りだす。

『おおおおおお!?!?!?』

「楽しみたい方ァア!!ハイタッチ!!」

麗日が観客とハイタッチし、『無重力』で浮かす。

「行って来いダンス隊!!」

障子がダンス隊数人を投げ飛ばす。

「ダイヤモンドダストじゃあ!!」

「青山君行こう!」

「ウィ☆」

天井で緑谷はロープで吊るし、『レーザー』を乱射する青山を持って運ぶ、人間ミラーボール。切島は轟が作った『氷』を『硬化』した腕で削りダイヤモンドダストを降り注ぐ。

「上鳴行って来い!」

「おうよ!」

「空中ギター!」

砂糖が上鳴を投げ、それを麗日が『無重力』で浮かし、観客の上で上鳴のギターが鳴り響く。

「浮いたお客はテープで安全確保!」

踊りながら芦戸は観客を保護し、

「うおおおお!!」

「あいつずっとロボットダンスしてるぜ!」

飯田はずっとロボットダンスし、場を笑わせ、

「(『投影:ラムダリリス』!) ラムダリリス直伝!トリプルアクセル!からのイナバウアー!」

―飛び切りのエッジをきかせてあげるわ!―

「ぺ、ペンギン!?」

「フィギアスケートしてるペンギンがいるぞー!!」

ラムダリリスと憑依した立希はペンギンパーカーを着て氷の道を滑りを魅せ、

「オイラの時代ー!!」

『ブー!ブー!』

峰田がダンス隊の女子を使って『ハーレムパート』を見せ、観客からブーイングが響く。

『なんだこいつらぁああああ!!!』

これ以上ない程盛り上がる。曲もいよいよ終盤。耳郎の弾くギターが響き、それにバンド隊が合わせ―

『――――――――――♪!!!!!』

耳郎の歌声が会場全てを覆いつくいた!!

ワアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!

 

A組の出し物は無事、成功する。そして―

「わああああ!!!」

見に来た壊理も、このライブを見て、今まで不安そうな顔が笑顔へと変わる―




『Hero too』は良曲


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第61話

オリ回


side三人称

警察所、取調室にてアラネアとラブラバは―

「…これ独学?」

「そうよ」

「この情報は?」

「私達で集めたわ。」

「…世の中の為に使わないか?」

「「嫌よ。私達はジェントルの為に使いたいわ」」

―全て終わったら、紅茶とお菓子持っておしゃべりでもしようよ。―

「…ええ、そうね…」

「アラネア?」

「何でも無いわ。(いつかまた貴女と会いたいわ。そして…いっぱい惚気話してやるんだから…)」

 

 

side立香

「めっちゃ心配したよ?」

「…うん」

「何でスマホ持ってないの…」

「朝だし…」

「汗だらけと泥だらけだったのは?」

「敵と会合…」

バンドが無事に終わり、片付けの中、私は立希にしつこく質問責めされてた…向こうでは緑色君がオールマイト先生に怒られていた。

「…いやまぁ結果的に文化祭は中止にならなかったけどさ…こういう時こそプロヒーローの先生達頼ればよかったじゃん…いくら仮免持ってたとしてもさ」

「ぐっ……弟に正論言われる日が来るなんて…」

「おいコラ」

その後、ハウンドドッグ先生にも同じ事を言われ、注意された…

 

バンドの片付けを終わらせた私達は文化祭を楽しむ事にした。さっきまでミスコンを皆で見て楽しんだ。拳道さんの華麗なドレスを裂いての演舞に、3年サポート科、絢爛崎先輩の高い技術での圧巻のパフォーマンス。そしてねじれ先輩の純真無垢な妖精のような幻想的宙の舞い…思わず見惚れてしまった。そして今はアピールタイムが終わり、審査の時間に入る。結果発表はタイムスケジュールの最後に行うらしい。ひと段落着いたところで、各々行きたいところに行く流れに―

「A組メンバー集まってー!」

「集合だよー!」

「なんだなんだぁ?」

「さっきおもしれーモン見つけちまったんだよ!」

そんな時芦戸ちゃん、葉隠ちゃん、上鳴君が妙にはしゃいでいた。私達は指示に従って集まる。そして上鳴君の手には一枚のチラシ。それには―

【雄英カップルコンテスト(笑)】

 

 

side立希

『雄英カップルコンテスト(笑)』。それは当日飛び込み参加も可能。男女よし、男女逆転よし、女同士よし、男同士よし、コスプレしてよし、なんでもありのコンテスト―つまり、雄英カップルコンテスト。毎年恒例のステージイベントで、性別問わずのカップルイベント。片方を男役、片方を女役とし各ペア制服なり衣装なりを着てステージに立つ。ちょっとしたアピールをし、どのカップルが一番良いか決める催し…という事だった。

「へえ!おっもしろそう!」

「でしょ!だからウチのクラスからも誰か出そうよ!」

この企画に三奈、葉隠さんが喰いつく。電気君も同じように反応する。

「俺出てみたい!」

「えー上鳴はなー?」

「おいおい女子出せよ?」

「でしたら私が衣装を『創造』しますわ!」

八百万さんも興味を持ち、協力しだす。

「でも誰出るんだ?さすがに全員は無理だろ」

瀬呂君の意見み皆は悩む。

「別に問題ねぇ」

「俺はちょっと…」

「くだらねぇ…」

賛成反対意見が半々。でも面白そう…

「公平にくじ引きで決めよう!参加人数は4人の2ペアずつ!!」

「(こういうのって言い出しっぺがよく当たるパターンだよなぁ…ま、自分は当たるわけ無いか。)」

―そう思っていた自分がいました。

「クジの結果発表!!『轟焦凍&藤丸立香』ペアと『芦戸三奈&藤丸立希』ペア!」

「ウソダドンドコドーン!!」

フラグ回収しちまった。

 

 

side三人称

参加ペアが決まったA組一行。直ぐに準備に取り掛かる。女子メンバーが衣装、化粧を用意。その行動力に男子メンバーは驚愕する。

『女子スゲー……』

「それじゃあ参加者はコッチに来てねー♪」

「おう」

「りょうかーい♪」

轟、芦戸は素直に従う

「ああ…うん……はぁ……」

「ヤメロー!シニタクナーイ!シニタクナーイ!「うるさい」タコスっ!!」

一人だけ騒がしかった立希だがすぐに立香からの腹パンによって大人しくなる。そして数十分後…姿を現す。

「―これでいいのか?」

『おおー!』

始めに出てきたのは轟。その姿はまるでどこかの童話から出てきた王子のいで立ち。上は白いチュニックで金の刺繍と金の肩章、赤と黒のサッシュベルトが付いている。下は深い紅のスラックスに黒い革靴。普段の装いとは全く違い新鮮である。それに様になっているというのもあるのだろう、男子たちから見ても格好いいという感想が出る。

「かっこいいよ!轟くん!」

「お、似合ってるな~流石イケメン!」

「青山もイメージ的には近いけど、轟も負けねぇな!」

「僕じゃないのとても残念☆」

「眉目秀麗ってやつか」

「そうでもねぇ、それに首元が少しきつい」

各々そんな反応、会話をしていると…

「ほら!ここまで来たんだから!」

「いやいやいや、無理。嫌だって。」

「大丈夫よ。立香ちゃん。可愛いわ」

「嘘だよ。それにさっき焦凍君みたけど私なんかが隣に立てるような雰囲気じゃ…」

「お、今度は藤丸姉か?」

「…立香か?」

奥の方で立香がごねていた。が、女子メンバーがそれを阻止する。

「藤丸、大丈夫だって!そら!」

「っ!」

強引に引っ張られ、押され、姿を現す。

『おおおおおお!!!!!』

「……ミナイデ…ゴショウデス…」

水色を基調とした肩周りにリボンを模したプリンセスラインのドレス。いつも一括りにされている髪はハーフアップで毛先を緩く巻かれ、パールの髪飾りが付けられている。顔も薄く化粧が施されている。アイシャドウのほかに頬と唇もほんのり色づく程度のピンクで彩られ、華やかだ。

「………………シニタイ」

立香は赤くなった顔を隠す

「マジか」

「美姫…」

「めっちゃ美人やん!!」

「轟と藤丸姉のコンセプトは『王子様とお姫様』だよー!」

普段とは違く、美しさを持った立香は皆を軽く魅了した。

「折角ですからディティールに拘りましたの!可愛さと美しさのバランスを考え、立香に似合う色味にいたしましたわ!勿論轟さんの衣装にも力を入れお二人が並んだ時にお互いが映えるデザインを考えましたの!」

「髪もほどよく巻けたわ。自信作よ。ケロ」

準備を手伝った女子たちも満足げだ。座り込んでいる立香に轟が声を掛ける。

「似合ってるぞ」

「っ~~~~~~~~~!!!!!」

これには顔だけでなく、体全体赤くなる。言葉も出なく、その場で固まった。

「じゃじゃーん!どう~私のこの姿!」

「お、今度は芦戸か!って…」

丁度その時、芦戸が現れた。その姿を見て皆少し驚いた。

「執事服!?」

「一回やって見たかったんだ!『男装』!!」

黒を基調とした王道の燕尾服。中に白シャツを着てネクタイを結び、黒の革靴を履いて白手袋を装備。腰にはチェーンのついた銀時計が付いている。

「やっぱ男装って言ったら執事だよね!!」

「中々様になってんなー…」

「以外に似合ってるな。」

「三奈ちゃん胸きつくない?」

「コルセットで何とか抑えてるから大丈夫!!」

「……ちょっと待て、とするとだ…まさか藤丸弟は……」

瀬呂がそう呟いた時、奥から最後のメンバー、立希が現れる。

「………………」

『……おおぅ…』

「……ナズェミテルンディス!!」

「立希の『女装』も似合ってるよ!」

黒のウィッグを被り、ロングヘアとなる立希。そして軽く化粧を施し、これまた白と黒を基調とした王道のメイド服。メイドのカチューシャを取りつけ、腿までのヒラヒラのついたスカート。黒のスパッツに茶のロングブーツ。手には丸い銀色の盆を持つ。

「あっはっは!姉弟そろって化けやがった!!」

「恥ずかしがってる割にはむしろ堂々としてるな!」

「…もう開き直ってる…(そもそもこれが女装初めてじゃないし…ああもう…新宿を思い出す…っ)」

「コンセプトは見ての通り『執事とメイド』だよ!!」

「っ…ブフッ…似合ってる…ナイス…」

「…ウレシクナイデス。」

「よーしここまで来たら何かしら賞取るぞー!」

「「「「おー!」」」」

波乱の文化祭はまだまだ続く。



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第62話

side立希

コンテスト開始10分前…ステージ裏に自分含め、姉、焦凍君、三奈と待機する。

「はぁ~~~~~~~~…………(人生で二回も女装するなんて…)」

「立希、似合ってるぞ」

こんな事で褒められても嬉しくない…自分は焦凍君を見る

「嬉しくないです。というかこれはステージイベントだよ?大衆の目にさらされるんだよ?焦凍君はいいの?」

「ああ、特に問題ない。それにこういうのは楽しんだほうがいいんじゃねぇか?」

最初の頃とは雰囲気が大分違う焦凍君に自分は内心驚いた。

「丸くなりましたねぇ…”初期ろき”君は何処へ…」

「?」

「ププ…大丈夫だから立希…クスッ…似合ってるから…」

「さっきから笑いを我慢してるようで漏らしてる姉に言われても説得なんて無い……」

「ほらほら!しゃきっとしてよ立希!」

「三奈…」

「あ、ステージで何か話す時は地声じゃなくて女子っぽい声で話して♪あと王様か姫様っぽい人召喚してよ!」

「…ア、ハイ」

味方は誰一人いなかった…

 

 

side立香

「あれあれー?もしかしてA組もコンテストに出るの?意外だなぁー!」

B組の物間君が来た。彼もこのコンテストに出場するのか着流しを着ていた。

「君たちが出るなんて話聞いたことなかったけど、グランプリを取るのは勿論僕たちB組さ!なにせウチには拳藤がいるからね!ミスコンでは“動”の美しさを、そしてこちらでは“静”の美しさを見せつけるのさ!僕のエスコートもあるから完璧だよ!」

「負けないぞー!」

私と焦凍君と少し離れた所で物間君は芦戸ちゃんと立希に話かけていた…というか立希の姿を見て嘲笑してるし…

「おやぁ?もしかして君、藤丸弟君かい?ははは意外だなぁ!君がまさかそんな姿を大衆に晒す日が来るなんて!」

「…………」

立希は…さっきから真顔で物間君を眺めて……

「―あ、これヤバイ」

「どうした立香?」

「ウチの弟…キレそう…」

「…そうなのか?そうに見えないが……」

「普段怒らない人って…いざ怒ると結構怖いよ…うん」

普段の弟は怒らない。何があっても『自分が悪い』と決めて直ぐに謝罪して、怒りなんて知らないような奴…けど…本当に怒らせると何するか分からない……

「ひょっとして女装が趣味とかだったりする?藤丸弟君が可愛らしいメイド姿なんて滑稽「当て身」ガハッ」

「「!!」」

と、物間の首筋に綺麗に手刀を決める人物、拳藤さんがやって来た。物間君が着流しなこともあり、こちらも華やかな着物姿だった。

「ごめんな、こいつ心がアレで。藤丸弟も気にしないでくれ。」

「……うん。分かりました。」

立希は笑顔で対応した。

「じゃあ、そろそろ開始時間だから私らもそろそろスタンバイするわ。お互い頑張ろうな」

「ええ、お互い頑張りましょう。」

そうして拳道さんは物間君を担いで去って行くのだった…

「立希どうしたの?急に丁寧口調になって…」

「…何でもないですよ。三奈、ちょっとした練習です。ステージでアピールしないといけないので…」

「おお~~何か瀟洒なメイドさんみたい!じゃあ私も…コホン、皆さん、どうぞよろしくお願いいたします…うーん何かもどかしいかも…」

拳藤さんが来てくれたおかげで事が起こらずにすんだ…立希は怒ると丁寧口調になるから…一歩手前だった。

「…物間君に何しようとしたの?」

「…別に何もしませんよ。ただまぁ……いつか仕返しはしたいかなぁと思いましてねぇ…」

「(あ、コイツ根に持つタイプだ…)」

「それよりも、姉も何をするのか焦凍君と相談したほうがいいんじゃないので?お互い頑張りましょう」

「…そうだね。」

「ああ」

 

 

side三人称

『それでは皆様、お待ちかね!「雄英カップルコンテスト(笑)」開始いたします!!それでは早速いっちゃいましょう、一組目―…!』

観客席には多くの生徒たちが見に来ている。歓声を上げる者、スマホで撮影する者、声援を掛ける者、皆大いに楽しんでいる様子だ。勿論A組の面々も自分たちのクラスメイトの出番をまだかまだかと待ち構えていた。ステージはミスコンの時と一緒の物で、ランウェイを歩き一番前の広いスペースでちょっとしたアピールをするというものだ。B組の物間、拳藤ペアは着物に合わせてゆったりとした動作で観客を魅了する。他にもチャイナペアや、男女で制服を入れ替えたペア、アラビアン衣装のペア、ウィッグを被る者など様々だ。

『―さぁー!次のペアは男女!しかし服装は逆!!1年A組!藤丸立希&芦戸三奈ペア!!』

「藤丸弟ー!」

「芦戸ー!」

A組の仲間からも声援が飛ぶ。と、同時に立希と芦戸が現れる―が、二人の前にもう一人、現れる

「―散歩の途中なのですが……」

その女性―ルーラー、『アルトリア・ペンドラゴン(水着)』。バニー姿をベースにスカートやグリーブ。背中には後光のようにビットが飛び回る。アルトリアは日傘を差し、ゆったりと皆に魅せながらランウェイを歩く。アルトリアの後ろに続く様に立希と三奈が現れる。

「おおお…こ、神々しい…」

「執事も様になってんなー…」

「…え、アレ男子!?完全に見た目女子だろ……」

観客全員がざわついた。司会はハッと我に返り、解説をする

『え、えーと!?あ、あの神々しい女性は藤丸立希さんの“個性”で召喚された人物!司会の私含め、多くの観客を魅せてきます!これは…言葉が見つかりません…っ』

ランウェイを渡りきると、3人は優雅にお辞儀をする。その姿に皆感嘆した。

「アフタヌーンティーの時間です」

「かしこまりました」

「こちら、ゴールドゴールドティップスインペリアルでございます。」

アピールタイム。アルトリアが立希と芦戸に言うと、二人は了承し、立希は観客に魅せるように紅茶をポットからカップに注ぎ、それを芦戸がアルトリアに渡し、それをアルトリアは飲む。

「ええ…これは中々美味しいですね…腕を上げましたね。」

「「ありがとうございます。」」

「フフ…では、散歩に戻るとしましょうか」

そう言ってステージ裏へと戻る3人。全員静かにそれを見送った。また呆けてしまった司会がまた我に返る。

『―は!な、なんという従者二人と主の一部始終!!本物の貴族を見た気分でしたー!!』

 

 

side立香

「(成程…アルトリアに注目させて少しでも自身の女装を見せないようにした…) でも様になってるなぁ…」

「そろそろ、出番だぞ」

「あ、うん。でもパフォーマンスどうすればいいかな?私も誰か呼ぶ?」

「…いや、呼ばなくていい……ここは俺に任せてくれ」

「(何か考えがあるのかな…?) …うん。分かった。」

そろそろ時間だ。

「それじゃあ、エスコートお願いします」

「ああ」

 

 

side三人称

『―お次も1年A組!男女カップル!轟焦凍&藤丸立香ペア!』

二人がステージに躍り出る。轟と立香は手を繋ぎランウェイを歩く。さながらお姫様をエスコートする王子様という様子だ。

「轟だ!」

「きゃー!」

「おー…あの女子綺麗だな!」

「いいなぁ~」

様々な声が飛び交う。二人はランウェイを歩きながら観客達に手を振る。

「(なんとかなるとは言ったけど、どうすんだろ?とりあえずお姫様っぽくはしてるけど……)」

笑みを浮かべながらも内心不安になる立香。そしてあっという間にランウェイを歩き切り、一番前へ来る二人。その時、轟が立香のほうに体の向きを変え、跪き、そして繋いでいた立香の手にそっと唇を落とす。

「……………ぇ?」

『きゃーーーーーーーーーー!?!?!?』

女子の黄色い声援が響く。実を言うと轟は王子様というものをあまり知らない。小さい頃読んだ童話やちょっとだけ見たアニメのものは知っているがそもそも男子なので興味がなかった。故に自身が持ちうる限りの知識やイメージを総動員した結果がこれだったのだ。

「………立香。少し、我慢してくれ」

「……………へ?」

すべて良かれと思ってやっている。まさに天然王子。そんなことは知らない立香。何が起こったのかいまだに脳が処理出来てない時、更に轟は行動を移す。

『きゃーーーーーーーーーー!!!!!』

『おおおおお!!!!』

なんとそのまま立香を抱き上げたのだ。そう、お姫様抱っこで。

「―(くぁwせdrftgyふじこlp)!?!?!?」

もはや会場は阿鼻叫喚だった。驚きの声、黄色い声、冷やかしの声……そして立香もようやく何が起きたのか理解すると同時に内心叫び散らかす。

『なんとここでキス&プリンセス・ホールド!会場も温まって参りました!』

「掴まってろ」

「…はぃ……」

バランスを取るために立香も轟の肩に手を回す。そのままランウェイを戻り、ステージ裏にはける二人であった……

 

コンテストの結果は―優勝せずとも、藤丸立希&芦戸三奈ペアは『ユニーク賞』。そして轟焦凍&藤丸立香ペアは『審査員特別賞』を獲得したのだった…

 

 

side立希

『おめでとーー!!!』

コンテストが無事に終わり、皆に賛美される。まさか賞獲れるなんて思わなかった。嬉しいようで、嬉しくないようで…不思議な気持ちだ…

「執事芦戸かっこよかったぜ!」

「えへへ!ありがとー!」

「メイド藤丸弟よかったよー!あの紅茶の注ぎ方すごかった!」

「ドウモ、アリガトウ」

「ナイス轟!お似合いだぜお二人さん!」

「ああ…」

「立香!すごく綺麗でしたわ!」

「ウン。アリガトウ」

自分と姉は片言で話す。お互い羞恥心いっぱいいっぱいで…あ、もう着替えは終えてる。もう…もう二度と女装したくない!!

 

 

side立香

「…………………」

焦凍君に手の甲にキスされて……焦凍君にお姫様抱っこされて……

「立香?どうかしたか?」

「っ~~~~~~」

不意に焦凍君に呼ばれるが、私はそっぽを向いてしまう。

「…立香?」

今、焦凍君の顔が見れない!さっきの出来事が鮮明に浮かび上がって…っ

「焦凍…君!」

「?おう」

「っ……えと…お、お疲れ様でしたぁ……」

「…ああ……悪ぃ、無理させ過ぎたな…」

「そ、そんな事ない…です!その…えと…私にとってはいい経験だったというか…むしろ嬉しいというか…ああもう…何言ってんの私……兎に角!」

「おう」

「……き、嫌いじゃなかったです…ハイ…楽しかった…よ……うん」

「…そうか。俺も、楽しかった」

その時の焦凍君の顔は…

「――――」

優しい笑みで私を見ていて―

「おい轟!ちょっと来てくれ!」

「おう。じゃあまたな立香」

「…ぁ…………はぃ……」

―分からなくなった。この“気持ち”に…

 

こうして、文化祭が終わった…



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第63話

無駄話


side立希

文化祭が終わり、振替休日が来た。今自分は……

「はい、自分達の勝ち」

「やったー!!!」

「だぁーーー!負けたぁーーー!!!」

「勝てねぇーーー!!」

瀬呂君、電気君、三奈とロビーのテレビを拝借してちょっとしたゲーム大会を開いていた。タッグ戦にて“自分&三奈”対“瀬呂君&電気君”だ。3人とも初心者だから基本操作を十分に教えて対戦してるが……始めて連勝している。

「立希の使うキャラの動きがわけわからん…何でそんな動きするんだ…」

「つか使い分けが難しい……よく芦戸はついていけるよな……」

「私も初めてだけど…結構楽しいじゃん!ゲーム事態全然知らないけど!」

「三奈がもう慣れてるのに驚いた…自分も慣れるのにかなり時間かかったのに…何か悔しいな……」

「今度はお前ら二人が対戦してみろよ!俺ら観戦って事で」

「いいね!負けないぞー!」

「自分も負けたくはないかな…」

更に白熱。疲れたから休憩する。

「やっぱ負けちゃったかー」

「つーか立希、最後ほぼネタに走ってたな」

「勝つとか負けるの前に、やっぱり楽しまないと」

ソファに座って談笑する。のんびりとした時間は本当に久しぶりだ…こうして英霊達とわちゃわちゃしたのんびりとした生活が……

「カルデア思い出すなぁ……」

「何か言ったか?」

「ん、実家思い出すなぁって、こう、のんびりとした感じなんだよ。実家にいる英霊達と遊んだり談笑したり」

「へぇー…あ!私、立希が召喚する人達知りたーい!」

唐突に三奈が手を上げて言って来た

「お、それいいな!俺も気になるぜ!またマブい姉ちゃん呼んでくれよ!」

「上鳴…直球すぎんぞ……まぁ俺も気にならないって言うと嘘なんだが……」

電気君、瀬呂君も賛同して来た。自分は悩む。

「えぇ…いきなりそう言われても…これでも数えきれないぐらい英霊と過ごしてるけど……うーん……」

誰を紹介するか……

「どんな人物を知りたいの?」

「うーん…じゃあ立希が一番苦労した人物!!」

取り敢えず絞ってもらう。

「苦労?…苦労かぁ…大体の英霊は苦労したなぁ……あーその中で一番苦労した英霊がいたなぁ…」

「お、誰だ?」

「『清姫』」

自分は3人に思い出話を語る―

 

清姫。クラスはバーサーカー。『安珍清姫伝説』に登場する童女。熊野詣途中に一夜の宿を求めた美形の僧、安珍に一目惚れ。けど、夜更けに安珍の下を訪れた清姫は拒絶される。それでも安珍は、熊野詣の帰りにまた会おうという約束を交わす。でも清姫を恐れた安珍は約束を破って清姫に会うことなく逃げる。そのことに気付いた清姫は裏切られたことに絶望、悲嘆、憤怒して…そして竜にその身を変えて、彼を追いかけ、追いついた先の寺で鐘に隠れていた安珍を焼き殺した。安珍を焼き殺した清姫は彼の後を追い入水。自ら命を絶った…と云う伝承を持ったお姫様。

「生前がすごい身分だったから、基本的には物腰柔らかで気品のある女性。だけどその本性は激情家で、好きになった相手が関わると非常に嫉妬深いんだ」

安珍に裏切られた経験から『嘘』を蛇蝎の如く嫌って、嘘をつくことを絶対に許さない。 例えそれが自分を気遣う嘘や、優しさからの方便でも許さないという筋金入り。

「まだ彼女と会って間もない頃―」

 

―「…えーと、だから、自分は安珍じゃないよ?」―

シミュレーションルームにて、自分の横について来る清姫にそう言う。

―「ふふ、旦那様はおかしな事をおっしゃるのですね?あなた様は間違いなく安珍様の生まれ変わりですわ」―

しかし、清姫は自分の言葉を聞き流し、微笑みと共に答える。その答えに自分は苦笑すらできなかった。

―「うーん……前世は安珍じゃないと思うけど…自分を通して別の人を見ている清姫には悪いけど……応えれることは出来ないです。」―

あの頃の清姫は…生前の過去に囚われまくって、自分を安珍だと勘違いしていた。どんなに否定しても、それを彼女が否定する。

―「………どうして、どうしてそんな事を言うのです?また……私から逃げるつもりなのですかっ…………」―

―「…逃げてないよ。清姫は『嘘』が嫌いだよね?だから正直に自分は言う。『自分は、清姫が求める、安珍じゃない。』」―

ハッキリと、彼女に分かるようにそう言った。

―「嘘、嘘、嘘、うそうそうそうそうそうそうそうそ……嘘ッ!!あなたは安珍様です!!私の旦那安珍様ですっ!!」―

―「やべっ―」―

刹那、彼女の周囲が燃え上がった

 

「いやぁ…あの時は本当に死ぬんじゃないかって思った。まだ使役してる英霊が少ない時だったからもう姉と英霊達と清姫を宥めるのが……蛇化して実家が火の海になったし……」

「「こっわ!?」」

「ひぇ…『恋は盲目』って言うけど…」

3人とも顔を青くする。

「そ、それからどうなったの!?」

「いやまぁ無事に何とか鎮静させたよ。英霊でも、一人に対して数人で対応すればいいだけだったし…まぁこっちからは手を出さないで気の済むまで暴れさせた。それはもう……家の一画が半壊するぐらいまで…まぁ当然こっぴどく怒られたけど。」

「「「うわぁ…」」」

 

―「―……ハァ……ハァ、ハァ、ハァ…………」―

―「ふぅ……やっと落ち着いた……」―

結局、体力の限界がきた清姫が姿を戻しその場でへたり込んだことで戦いは終わった。

―「姉ありがと…助かった」―

―「何やってんの…ほら、行け」―

―「はぁーい……大丈夫?清姫、立てる?」―

―「っ………」―

自分は怖がらせないように、笑顔で彼女を迎える。すると清姫は涙を流し、訴えて来た

―「どうして……どうして……そんな顔ができるんですかっ、私は…あなたを…殺そうとしたのにっ…!」―

―「…確かに怖かったよ?…けどまぁ…それでも放って置く事なんて無理だし…自分、姉と違って上手く話せないし、だから不器用なりに頑張って接している…のかな?」―

自分は清姫の頬に流れている涙を拭きとる。

―「安珍にはなれない。けどさ、過去を引きずるより、今を楽しもうよ。勿論、清姫が良ければ、自分と仲良くしてくから。」―

そう言うと、清姫は目を見開き…そして笑みを浮かべた。

―「……あぁ…………あぁっ……私がどんなに攻撃しても決して逃げずに全てを受け止めてくれる器の大きさ、それでもなおこちらを気遣ってくれる優しさ。……だんな……さまっ……!」―

なにか流れが変わった。

―「……うん?」―

―「あぁ、この方は私が安珍様を……昔の男の人を引きずってるのを嫉妬してくださってるのですね。自分だけを見て欲しいと他の男の事など考えないで欲しいと……なんて独占欲に満ちてっ、なんて愛おしい方なのかしらっ!この人なら私から逃げずにいないでくれるっ……私の愛に応えてくれるっ!」―

―「えーと…?」―

―「不満など、あるわけがありませんわ……!どうか、どうか……この私にあなた様に……初めからきちんと恋をさせてください……」―

―「え…あ、その………友達からで?」―

なんか曲解過ぎない?

 

「(自分の都合の良いように考えてしまうのはバーサーカーたる所以…でもまぁ彼女自身もちゃんと自分を…マスターの事を見ようと決心するきっかけにもなったので結果オーライなのかもしれない。その結果がなぁ……)…とまぁ、そんな感じで、無事?仲良くなれたかな?」

ヤンデレよりの思考になっちゃってるけど…

「「なんじゃそりゃ……」」

「むー………」

清姫の事を粗方話終えると、瀬呂君と上鳴君は苦笑して、三奈は不満そうな顔をする。え、反応悪……

「え、それ大丈夫…なのか?」

「完全にヤンデレじゃねぇか……よく今まで生きてこれたなお前…」

「いや、いい子だよ?英霊達(玉藻とか静謐) とメル友になって、情緒不安定な事は無くなって…まぁたまに自分のベッドの下にいたりするけど…」

後バレンタインかな…『プレゼントは私です♡』は心臓に悪い……

「こっわ!?ストーカーじゃねぇか!?」

「―ストーカーではありません。『隠密的にすら見える献身的な後方警備』です。」

「「「「うわぁあ!!?」」」」

いつの間に、自分の隣に良い笑顔と共に座っていた。角を生やし、青緑の着物を着た女性―清姫がいた。全く気付かなかった。思わず飛びのいた。

「うふ、うふふふ…何とも懐かしい出来事……愛しくて、恋しくて、愛しくて、恋しくて、裏切られて、悲しくて、悲しくて、悲しくて悲しくて悲しくて、憎くて憎くて憎くて憎くて憎憎憎憎憎憎憎憎憎憎憎憎憎憎憎憎憎憎憎憎憎憎憎憎憎憎憎憎憎憎憎憎憎憎憎―だから焼き殺しました。」

「「「………………………」」」

顔を真っ青に、3人は自分を見てくる。見るな…そんな目で自分を見るな!!

「えっと…きよひー?自分は呼んでないんだけど…」

「はい♡旦那様(ますたぁ) が私の事を話してると感じ取り、ここへ馳せ参じました♡ふふ…うふふ…お願いですから、今も、これからも、私に嘘はつかないでくださいね。食べちゃいたくなりますから……ふふふふっ」

「逆にきよひーに嘘吐く相手見てみたいわ。」

そんな会話をすると

「…あら?貴女…」

「!ひゃ、ひゃい!!」

ギラン!といった擬音が出るほどの鋭い睨みで三奈を見る清姫。完全に蛇に睨まれた蛙だ。

「うふ…うふふふ…貴女…成程…成程……うふふ、見て分かりますわ。話さなくても分かりますわ…気になっているという事を……」

「え!?その!?わ、私はべ、別に―「三奈!」!」

自分は慌てて首を横に振る。清姫に嘘を付いてはダメだ。内容は分からないけど誤魔化すと後がマズイ。

「あら?何かしら?別に……の後は?」

「え、えと…その…「こらきよひー、自分のクラスメイトを虐めないで」り、立希…!」

「あら旦那様?私は別にいじめてませんよ♪」

頭を撫で、自分の方に注意を向けさせ、危機を回避させる。これが今のところの有効打だ。

「どうだか……正月には戻るからそれまではカルデアは頼むよ?」

「はい、私、旦那様に忠実に仕えますわ。嘘をつかなければ、ですけれど…ふふ…うふふ…―」

そう言って消えた。

「「「「はぁ~~~~~……」」」」

どっと疲れる…思わず自分達4人はソファに埋もれる。

「めっちゃ美人だけど…俺には無理だぜ……」

「同感…」

「ねぇ…他にもあんな子いるの?」

「いないけど……類は友を呼ぶんだよねぇ……聞く?毒っ娘なんだけど」

「「「嫌だ!!」」」

この後めちゃくちゃゲームで遊び倒した。さっきの出来事を忘れる為に…



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第64話

無駄話その2


side立香

体育祭が終わり、今は振替休日……そして私が今いる場所は……

「わぁ……」

目の前にある建物―和風の豪邸。表札には『轟』と在る……遠い目で私は眺め、呆けた声が出る

「?どうかしたのか?」

隣にいた焦凍君が首を傾げた。

「……ううん。何でも無いよ(えっと…どうしてこうなったんだっけ?)」

和風の豪邸…そう、焦凍君の家に招待された。その経緯を私は振り返る―

 

時は戻って…そう、私はヤオモモとお出掛けを満喫してた。外出許可証をだして、近くのショッピングを楽しんだ。一緒にコーディネートして、カフェでお茶して、優雅な一時を楽しんだ。

「ヤオモモ、そろそろ時間じゃない?」

「そうですわ…立香とこうしてお出掛けするのは楽しいですわ。楽しい時間はあっという間になくなって少し残念です…」

この後ヤオモモは両親に呼ばれ、実家に戻る。近況報告をするとか…別れて私は寮に戻ろうとした時―

「「あ」」

その帰路にバッタリ焦凍君と出会った。

「っ…」

「立香?」

文化祭で“少しだけ自覚”した私は一瞬目を反らしてしまった。一旦落ち着いて、改めて焦凍君を見て言葉を交わす。

「ぐ、偶然だね?焦凍君もお出掛け?」

「いや、これから実家に戻るつもりで、何か土産を買った方がいいなと思ってな……立香こそ、どうしてここにいるんだ?」

「さっきまでヤオモモと遊んでたの。折角の休日だからのんびりしたくてね…で、ヤオモモが実家に戻ってるから私は帰ろうかと…」

「そうか…………なぁ立香」

「何?焦凍君?」

「もしよかったら…遊びに来ねぇか?」

「……………はい?」

 

で、今に至る。

「―只今」

「あ、焦凍おかえ…り…」

「お、お邪魔します……」

焦凍君の家族が出迎えて来た。赤が入り混じった白髪と、眼鏡をかけた女性…見た感じお姉さん?

「立香、俺の姉さん。」

「ふ、藤丸立香です。えっと今日は焦凍君に遊びに誘われて来ました。」

一礼して経緯を話す。

「…え、あ、そ、そうなの!ふふ、いらっしゃい。焦凍の姉の冬美です。今日帰ってくるって知ってたけど…まさか友達呼んでくるなんて姉さんビックリしたわ」

「ごめん」

「ううん。気にしないで。さ、上がって上がって」

「は、はい」

居間に案内され、焦凍君と対面に座る

「はい二人とも、温かいお茶よ。外は寒かったでしょ?」

「ありがと」

「い、いただきます。」

さっきから緊張しっぱなしだ。お茶を飲んで落ち着こう…落ち着け…

「(えっと…藤丸ちゃんでいいかな?)」

「あ、はい何でしょうか?」

お盆を壁として冬美さんが小声で話しかけて来た。

「(ここに来た理由って…もしかしてお父さんが言ってた『許嫁』の事―)「ゲホッ!コフッ!」藤丸ちゃん!?」

「大丈夫か?」

爆弾発言して来た冬美さん。思わず咽た。

「だ、大丈夫……(冬美さん!?な、何でそんな事知ってるんですか!?)」

「(…お父さんが最近、焦凍にそう言ってたの聞いちゃって…驚いたわよ…)」

何言ってんのエンデヴァー!?や、やめて!外堀から攻めてこないで!?

「焦凍君!ちょっとお姉さん借ります!」

「?ああ」

強引だけど冬美さんを連れて、居間を出る。

 

「えっとですね。そ、その件は…私は拒否したというか無かった事にして欲しいというか…その…い、許嫁の件で来たわけじゃないです!焦凍君に純粋に誘われて来ました……」

「そうだったのね…そっかぁ…焦凍に友達…フフ、姉さん嬉しいな。こうしてお友達を家に連れてくるなんて…」

廊下で経緯を話す。冬美さんは微笑みながらも納得してくれて、ホッと一息付く。

「…学校にいる焦凍君はクラスと上手く関わってますよ。表情は…そんな変わってないですけど楽しそうですよ」

「フフ…焦凍の事、よく見てるのね?」

「っ!?えと、そ、そういうわけじゃ…うぅ…」

さっきから顔が熱い。それを見て冬美さんは笑っている。は、恥ずかしい…

「…焦凍の事は知ってるのかしら?」

「えと…本人から聞かされました……過去の事も…」

「そっかぁ…世間から見て、私達の家族はややこしくて、お父さんとの関係は正直言って悪い…でもね、最近変わってきている気がするの。」

「………」

「私は、お父さんの手で焦凍と距離を置かされて…何もしてあげられなかった…でも…今、焦凍は変わり始めている。多分、藤丸ちゃんのおかげじゃないかなって思うんだけど?」

「わ、私!?身に覚えが…」

「そうかしら?寮生活になる前、焦凍と学校の事を聞くと藤丸ちゃんの名前を聞くけど?」

「!?」

え!?何話してるの焦凍君!?

「だから…ありがとう。ウチの弟と仲良くなってくれて…」

そう言って深くお辞儀して来た。これには驚いた

「あ、頭上げて下さい!そ、それに私以外にも力になってくれた人がいますので私だけのおかげじゃないです!」

「それでも…こうして感謝の気持ちを形にするのは大事な事なの。受け取ってくれないかしら?」

「…はい。受け取ります…」

「これからも弟と仲良くして欲しいわ。もっと仲良くなってもいいのよ?」

「え、ええ!?」

 

「姉さんと何話してたんだ?」

「えっと…世間話を…少々…」

冬美さんの最後の言葉が耳に残る……思い出す度に体が熱くなる。今だって気を利かせてくれたのか別室にいるし…

「えと…これから何する!?」

「そうだな……こうして呼んだがいいが何をすればいいんだ?」

「え、えぇ…焦凍君はこうして人を誘った事は?」

「無い…な…俺は…」

「あ、ご、ゴメン…」

スンとした顔で訴えて来た。うんそうだよね…過去が過去だったし…

「えと…立希だったらよくゲームしたりするけど…」

「…夏兄と冬姉が昔遊んでたゲームがあった気がするな…」

「じゃあそれで遊ぶ?」

「…やり方が分からねぇ」

「説明書あればそれ見ながら遊べばいいよ。それにお互い初心者だし…」

それから、焦凍君は冬美さん呼んで一昔前のテレビゲームを接続してもらう。まさかの〇リオパーティー…

「本当に遊ぶのねぇ…」

「姉さん?」

「アハハ……」

焦凍君を見てため息を吐く冬美さん。私は苦笑いするしかない。そのまま冬美さんを入れて遊ぶ事にした。始めて遊ぶけどこういうパーティーゲームは多分得意な方…

「久しぶりに遊ぶけど…焦凍って結構強いのね…」

「そうなのか?」

「(そういえばゲーセンで格闘ゲーム強かったなぁ…)」

一通り遊び終えた時…

「たっだいま~!焦凍帰って来た……か……」

白髪で、どことなく焦凍君に似た顔付きの男性が元気よく居間に入って来た…もしかしてお兄さん?

「夏兄。立香、俺の兄さん」

「お邪魔してます…藤丸立香です」

「……………」

「夏?どうしたの?固まって…」

「…はっ!……なっ…」

私と焦凍君を交互に見て―

「しょ、焦凍が女の子連れて来ただと!?俺がまだしてない事を!?」

「へ!?」

姉兄共にとんでもない事いいますね!?

「弟に先越された……「ち、違います!!」え、そうなのか!?いやでも…藤丸って……あいつが言ってた許―「違います!!」」

轟家全員に伝わってるの!?

「ほら、夏、自己紹介。」

「あ、ああそうだな姉ちゃん…焦凍の兄の夏雄だ。よろしくな!」

「は、はい」

冬美さんに促され、夏雄さんと握手する。夏雄さんは嬉しそうに笑う。

「いやぁ…こうして弟が友達を家に連れて来るなんて感激だよ…是非これからも弟と仲良くして欲しい…」

「えっと。勿論です。私も焦凍君と一緒の学校生活はとっても楽しいので、本人が望むなら仲良くしていきたいです。」

「…俺は嫌わねぇぞ?」

ハッキリと言われ、自然と顔が、体が熱く、赤くなる。そんな私の反応を見た夏雄さんからジト目で見られる…

「…………ホントに付き合ってないの?」

「してません!!」

何で疑うの?

 

この後、夕食を振舞われそうになったが、私の外出許可の時間が終わりそうだったから早めに寮に戻る事に。焦凍君はもう少し後で寮に戻るらしい…というかもう身が持たない…

「はぁ~~~……緊張したぁ……」

 

まさか再び轟家に行くことになるが…私はまだ知る由もなかった…

 

side三人称

轟家にて

「姉ちゃん。焦凍と藤丸ちゃん、本当に付き合ってないの?」

「本人が否定してるけど…気があるのは見ていて分かるわね」

「だよなぁ…何か愛い愛いしくてもどかしい……アレで付き合ってないとか俺彼女と付き合ってないって言われてるような気分だ…」

「冬姉?夏兄?…俺を見てどうしたんだ?」

「何でもないぞ」

「ふふ、焦凍にも春が来たんだねって話」

「春…?今の季節は冬に入るが…」

「「焦凍……」」




次から5期。


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第5期
第65話


B組戦ですね。まぁ姉弟がいないチームはダイジェストですけどね


side立希

文化祭が終わって、月日が流れ11月下旬。いつも通りの学校生活を送っている。変わった事と言えば……エリちゃんを雄英で預かる事になった。“個性”の様子見として教師寮で住むことに。休学中のミリオ先輩が面倒見ている。自分含め、インターン組はたまに会いに行く程度…後はオールマイトがいない『ヒーロービルボードチャート JP』にて、万年トップ2だったエンデヴァーが遂にナンバー1になった。そして早々、脳無とは異なった異形の敵が襲撃してきたが、大勝負にて勝利。無事始まりを告げた…

「んー…あー…眠い「何言ってんの。まだ午後の授業があるのに」あ、姉」

「HRで相澤先生言ってたでしょ。今日は忙しくなるって」

「そうだけど…まぁ何とかなるさ。」

午後の授業は戦闘訓練。だけど今日はいつもと違う。

 

 

side立香

「ワクワクするねー!」

「葉隠寒くないの?」

「めっちゃ寒ーい」

「根性だね…」

「私、冬仕様~カッコイイでしょーが!」

11月下旬で、そろそろ冬が来る。だから皆の戦闘衣装も冬仕様になるメンバーがいる。

「ヤオモモ、マント姿いいね」

「そう言われると嬉しいですわ。立香の衣装は…とても魔術師っぽいですわ」

「まぁね。」

私も戦闘衣装を変えてみた。『魔術礼装・魔術協会制服』を元にした戦闘衣装。違うと言うなら中の制服は橙色じゃなく、白。因みに立希も変わっている。『魔術礼装・真説要素環境用カルデア制服』を元にした戦闘衣装だ。

「立希その姿寒くね?」

「全然。それにこれCDFが最近開発した衣装で、試験的に着てるから…まぁ今回だけだよ。動きやすくていいね。」

「でも入学時に比べると皆コスチュームが様代わりしてるよね」

「そうですわね」

そんな話をしていると…

「おいおい、まーずいぶんと弛んだ空気じゃないか、僕等をなめているのかい?」

馬鹿にするような声が聞こえて来た。振り向くと…執事服のような戦闘衣装を着た物間君の姿…そして彼以外にも後から複数の人影が現れる。

「お!来たなぁ!」

「舐めてねーよ!ワクワクしてんだ」

「フフ…そうかい。でも残念。波は今確実に僕等に来ているんだよ…」

対戦相手がやって来た。今回の戦闘訓練は―

「さぁA組!今日こそ!シロクロつけようか!?」

―B組!

 

 

side立希

A組対B組の対抗戦。舞台は運動場γ。工場地帯を模した訓練場。お互い4、5人の1チームと作り、計5戦するという内容だ。そしてこの対抗戦に特別参加者が来た。

「特別参加者?」

「誰?」

「倒す!」

「女子!?」

「一緒に頑張ろうぜ!」

その人物は…普通科のC組、心操君だった。彼は相澤先生の捕縛布と機械的なマスクを装備したジャージ姿で現れる。彼の“個性”は『洗脳』。問いかけに返答すると操られるという初見殺しで強い。

「ヒーロー科編入を希望してる。」

それから心操君から簡単な挨拶が来る

「―立派なヒーローになって、俺の“個性”を人の為に使いたい。この場の皆が、超えるべき壁です。」

そんな心操君に、A組、B組のメンバーは各々思う。

「ギラついてる」

「引き締まる」

「“初期ろき”君を見ているようだぜ」

「確かに」

「そうか?」

「いいね、彼」

そして早速チーム分けのくじ引きだ。因みに心操君はA組チームB組チームそれぞれ一回ずつの2戦参加。5対4の試合が1試合ある事になる。

「そんなん4人が不利じゃん!!」

葉隠さんが不満を訴えるが、相澤先生、ブラド先生が説明する。

「確かに5人チームは数的有利を得られるが、経験と連携のない心操を組み込む方が不利。そしてハンデもある。」

「今回の状況設定は『“敵グループ”を包囲し確保に動くヒーロー』!お互いがお互いを“敵”と認識しろ!どちらかが先に4人捕まえた方が勝利となる!」

「敵も組織化してるって言うもんね。シンプルでいいぜ!」

両方の陣営には相手を投獄する『激カワ据置プリズン』が設置され、それに相手を入れて捕獲判定をする…見た目のせいで緊張感が無い…ともあれルールは理解出来た。

「じゃ」

「クジな」

クジの結果、チーム構成と対戦表が決まった

       A組     B組

第1セット・蛙吹梅雨  ・円場硬成    

     ・口田甲司  ・鱗飛竜

     ・上鳴電気  ・宍田獣郎太

     ・切島鋭次郎 ・塩崎茨

     ・心操人使

 

第2セット・青山優雅  ・吹出漫我

     ・八百万百  ・黒色支配

     ・葉隠透   ・拳藤一佳

     ・常闇踏影  ・小森希乃子

     ・藤丸立香

 

第3セット・飯田天哉  ・鉄哲徹鐵

     ・障子目蔵  ・回原旋

     ・轟焦凍   ・骨抜柔造

     ・尾白猿夫  ・角取ポニー

 

第4セット・爆豪勝己  ・凡戸固次郎

     ・耳郎響香  ・泡瀬洋雪

     ・瀬呂範太  ・取蔭切奈

     ・砂糖力道  ・鎌切尖

 

第5セット・緑谷出久  ・柳レイ子

     ・麗日お茶子 ・庄田二連撃

     ・芦戸三奈  ・小大唯

     ・峰田実   ・物間寧人

     ・藤丸立希  ・心操人使

 

 

「スタートは自陣から。制限時間は20分。時間内に決着のつかない場合は残り人数の多い方が勝ち。」

 

「丁度、5対5だぜ。」

「デク君は再戦やね」

「うん。力をつけた心操君がどう来るか楽しみだ。」

「ガンバロー!」

「そうだね」

 

第1試合が早速始まった。そして開始早々、口田君が“個性”で偵察してる時に一塊で動いていた鋭児郎君達に宍田君と円場君が特攻。B組の攻撃が来る時、心操君が動いた。

『『ペルソナコード』…』

『俺の“声”で喋りやがった…!?』

心操君が装備していたマスク…どうやら変声機のようだ。どっかの名探偵のように自身の声を円場君の声に変えて宍田君を『洗脳』した。そのおかげで梅雨さんが円場君を舌で捕獲して監獄に連行するが、洗脳が解けた宍田君が再び暴れ口田君を力ずくで連行し、鋭児郎君を上空に投げそれを塩崎さんが受け止めて捕縛という連携した動きでA組チームが不利になった

「早くも削り合い!宍田・円場の荒らしが覿面!これは残人数同じでも精神的余裕はB組にありか!?我が教え子の猛撃が遂に!A組を打ち砕くのか!?」

「偏向実況やめろー!」

若干こっちもブラド先生の実況で荒れつつも、戦闘は終わらない。ここで梅雨さんが電気君、心操君に自身の『粘液』を塗布し、宍田君の嗅覚を混乱させる。それでも塩崎さんが落ち着いて対処。『ツル』を全範囲に伸ばし、電気君を確保。『放電』しようとする電気君を蔓状の監獄で拘束。鱗君の動きもあって電気君のピンポイント放電も防がれる…が、ここでも心操君の『ペルソナコード』で鱗君の声で塩崎さんを『洗脳』して行動停止させる。

『おい!今のは俺の声じゃねぇよ!!』

「(便利なサポート機械…そして強い…)」

心操君の動きによりB組のコミュニケーションが乱れる。鱗君が宍田君に指示をするが『洗脳』の警戒によって指示が通らず、塩崎さんは景色と『擬態』していた梅雨さんに確保され、更に鱗君にドロップキックを喰らわす。一方パイプの陰に隠れていた心操君を宍田君が見つけ、攻撃しようとするが、心操君の捕縛布で宍田君の頭上のパイプが落下させ直撃。そして―

『避けろォオ黙示録ゥ!!』

『!?』

梅雨さんに投げ飛ばされた鱗君が宍田君に直撃。本来なら回避出来たはずだったが、心操君の『声帯』に警戒しすぎた宍田君は回避出来なかった。二人はそのまま気絶する。

『ごめんなさいね』

「オイ心操やべーだろ。ハンデになってねぇ」

「いや…蛙吹さんと上鳴君の機転で心操君が活きた…スゴイ…」

「(偽の声と本物の声との切り分けかぁ…)」

こうして第1試合の結果は…B組チーム4人を監獄に入れる事が出来たA組+心操チームの勝利となった。

『全然まだまだだ…俺自身の実力でプロにならなきゃ』




B組戦が終わる頃に、劇場版を書きます。


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第66話

side立希

第1試合終了後、直ぐに反省会。それぞれ良い点・悪い点を言って課題を見つける。

「まったく、良いもの見せてもらったよ。共闘が楽しみだ。ヘイ心操君!A組に吠え面かかせる計画練ろうよ!」

「こっちも対策練らなきゃ。今出来る事・アイデア挙げて行こう」

「よっしゃ!」

「コンボつくろー!」

「俺達も煮詰めよう!」

「轟を軸に動こうか」

「俺か」

「ばくごー!ウチらも」

「てめーら足引っ張んなよ!」

「うっさ…」

初戦から盛り上がり、各々作戦会議を始める。自分も緑谷君達と作戦を練る。

「…次の試合は……あ、もうなんだ」

「どうかしたの?」

「第2試合が始まるよ。是非見たくて」

隣に三奈が来て、自分はそのまま大画面を見る。

「…ああ、なるほど!応援しないとね!」

「うん」

「では第2セット!準備を!!」

頑張れ、姉。

 

 

side立香

「では第2セット!準備を!!」

「立香ちゃん行こ!」

「うん」

第1試合から白熱し、皆気合十分だ。勿論私もだ。私達の対戦相手は…数はこっちが有利だけど、前の試合を見れば数の有利不利は考えなくてもいい。各々の実力が相手に通じるかどうか…

「―個人的に、ちゃんと戦ってみたかったんだよね!」

「誠心誠意、お受けいたしましょう。」

拳藤さんとヤオモモがなにやら話込んでる。

「―俺とお前は…宿命の存在…ヒヒ常しえの黒に住む」

「ほほう…貴様も深淵の理解者」

常闇君と黒色君も何か話込んでる…というか見ていて痛々しい会話…いやまぁカッコイイと思うけど…

「わぁー!なんかワクワクするね!立香ちゃん!」

「わくわくはしないかぁ…多分葉隠ちゃんだけだよ。そう思ってるのは…」

 

 

side立希

「それではガンバレ拳藤!第2チーム!START!!」

「偏見実況やめろー!」

ブラキ先生のスタート合図にA組のメンバーがブーイング。自分は苦笑するしかない。

「なぁ、拳藤ってB組でどういう立ち位置なん?」

「おう!!」

瀬呂君の質問に鉄哲君が大声で答えた。

「ありゃあやる奴だぜ!なんてったって委員長だからな!」

「声デケェ」

頭の回転が速く、とっさの判断も冷静。それでクラスをまとめる明朗な性格。それが『B組の姉貴分』の彼女らしい。

「とっさの判断か…八百万のオペレーションがうまく刺さるかどうか…」

焦凍君が呟いた事に自分は共感する。この試合はどちらのチームにも指揮する存在がいる。

「(八百万さんと拳藤さん。どちらかの指揮で勝敗が決まる…) 姉もどう動くか…」

 

 

side立香

スタート合図と同時に私達は動く。まずは偵察だ。

「常闇さん『ダークシャドウ』で偵察を!立香も出来ますか?」

「心得た」

「オッケー『降霊:エミヤ・アサシン』」

―手早く片付けよう―

エミヤ・アサシンと憑依。髪が灰色になり肌が褐色になって首にボロボロの赤マフラー。手にはサブマシンガンに腰に複数のナイフを装備する。

「立香ちゃんの姿が変わった!?」

「英霊と憑依したからね。偵察に持ってこいなの」

初めて私の『降霊』を見た葉隠ちゃんは興奮する。

「立香これを。『通信機』です。」

「ありがと!じゃあ行ってくる!」

『オレラニマカセナ!』

ヤオモモからもらった通信機を耳に付け、ダークシャドウと私はパイプだらけの狭い通路を進む。そして―

「見つけた!」

『オッシャア!』

「―様子見って感じかね!」

B組メンバーを発見。4人全員で行動していたようだ。

「任せるよ。黒色」

『様子見ジャネーヨ今ココデヤレル奴ァヤッチマウゼ!!?』

「ダークシャドウ待って!勝手に動いたら―「行ってきます」!」

『ウオ!?』

黒色君が動いた。驚く事に、ダークシャドウの体内に潜り込んだ。そのままヤオモモたちがいる方へと戻っていく。

「(ダークシャドウが乗っ取られた!?マズイ!先手取られた!連絡―)「させないぞー!」うわっ!!?」

耳に取り付けた通信機でヤオモモに連絡しようとした途端、目の前に『ドゴドゴドゴドゴ』という巨大文字が襲い掛かって来た。直ぐに跳んで回避―

「ドンピシャ!」

「っ!」

回避した着地地点に、今度は目の前に拳藤さんがいた。彼女の『大拳』の叩き落としが来る―

「させないっ!」

「うわっと!」

身体を捻りつつ、サブマシンガンを狙いつけず乱射。近距離だった拳藤さんはその場から離れる。乱射した銃弾は周囲のパイプに穴を開けるが…『巨大文字』には傷一つ付かなかった。吹出君の“個性”だ。かなり硬い…受け身を取って着地し、B組の3人と対面する。

「うーん…やっぱり貴女の行動は読めなかった。藤丸さんは手数が多いからね。でも…作戦に支障はないね。」

「(一体どんな作戦…)!」

ヤオモモ達がいる方向が光輝いた。アレは確か青山君の『ネビルレーザー』。あっちも対応はしている…

「やっぱ、光ったら黒色失敗♪うふふ♪うふふ♪」

「え…っ!?」

キノコ。私の鼻先から『キノコ』が生えた。そしてそれは鼻先だけじゃなく、次々にこのエリア一体にキノコが生え始めた。

「プランB」

「おっしゃー!」

「キノコまみれにしちゃいノコ!」

小森さんがニヤリと笑った。そこから一気にキノコだらけの世界へと変貌したのだった。既にB組のメンバーの姿が見えなくなる。そして私の体から次々に生え始める。

「やばっ…」

小森さんの“個性”『キノコ』!直ぐにナイフで斬り落としてまだキノコが生えてない場所へ避難!

『立香!一度退避し、皆と合流してください!』

『了解!』

ヤオモモの指示で直ぐにヤオモモ達がいる所へ戻るため上空を舞う。その時だ。下から轟音が響き渡る

「今度は何!?」

『ゴンズドドガガンゴーン』という『巨大文字』がエリアの一部を崩壊させた。さっきの『巨大文字』と同じだ。

「(吹出君の“個性”『コミック』!) っそういう事か…!」

上空から見えたからB組の作戦が分かった。さっきの『巨大文字』で…ヤオモモと私達が分断された!つまり…「私達のブレーンを切り離した…これが拳藤さんの作戦!」

やられたと感じた

 

 

side立希

「うわぁ…マズイなぁ…」

大画面で今の戦闘を視聴。今は八百万さんが姉達と分断され、拳藤さんが八百万さんと近接戦闘で対峙している。拳藤さんの方が近接戦闘は分がある。現に八百万さんは『盾』ばかりを『創造』し、防御しかしてない。

「あっという間に有利な状況をつくり出しやがった!!」

「これがうちの拳藤さんよ!」

鉄哲君が大声で喜んでいる。でも…

「最善手かは分かんねぇな」

「え!!?」

「どうせなら八百万さんだけじゃなくて、姉も分断すればよかったかも」

「え!?」

「…そうだな。八百万だけじゃねぇ。立香も警戒すべきだった。」

焦凍君の言う通りだ。八百万さんはどうかわかないけど…姉は窮地に迫る程、やっかいになる。

 

 

side立香

「常闇君!」

「メイジ!無事だったか!」

キノコだらけの場所にて、常闇君を発見。

「状況は?」

「キャンストップトゥウィンキングが黒色に捕獲されてしまった…奴の個性は俺と似ている。『影』となる場所を自由に行き来できる。他の個性は見た通りだ。」

「もへ~~」

キノコだらけの葉隠ちゃんが現れる。

「インビジブルガールもキノコまみれだ…クリエティとも分断され…奴らは強い」

「そうだね。現に彼らの姿が見えない。けど…まだ勝算はあるよ。」

「何…?」

「ドユコト?」

私の発言に常闇君と葉隠ちゃんが疑問に思う。私は上を見て、話す。

「ヤオモモが私達の事考えてないわけがないよ」

上空から何か落ちてきた―

 

ヤオモモからの贈り物。『YAOYOROZU’S LUCKY BAG』と書かれた袋が上空から落ちてきた。それを常闇君が受け取り、中から『暗視ゴーグル』と『殺菌スプレー』を取り出す。ゴーグルのデザイン的に常闇君にだ。全員スプレーでキノコが生えないように殺菌。そして今度は私達が攻めの番だ。暗視ゴーグルをつけた常闇君は飛び敵影を見つける。

「疾さは力に勝る―『深淵暗躯(ブラックアンク)“夜宴(サバト)”』!」

「ガ…ッ」

「あう…っ」

常闇君が二人を捕縛しているのを確認。そして私と葉隠ちゃんで…

「アサシンなら、おおざっぱだけど気配で場所分かるんだよね…よっ!」

「うっしゃー!」

「アダダダダダ!?!?」

サブマシンガンでゴム弾を連射。葉隠ちゃんの拳のラッシュで吹出君を撃退する。

「(やっと一人…早く常闇君の所に―)「ギャ!」!葉隠ちゃ…っ!」

「やっと着いた…遅れてごめん」

「拳藤さん…っ!」

ここでまさかの拳藤さんが現れた。巨大な手で掴まれそうになったから後退する。常闇君を見ると咳込んで倒れていた。

「まさか…体内に『キノコ』をっ!?」

「可愛くないから封してたけど―肺攻めスエヒロダケちゃん♪」

「ゴボッ…メイジ……ガハッ……」

「くっ…」

マズイ。戦況がひっくり返された。ヤオモモも拳藤さんによって気絶されて葉隠ちゃんも拘束されて…私しかいない!

「遅れてごめん」

「イギギギ…」

「拳藤助かった!何だいそれ…」

「いやぁ気絶させたんだけどね…やられちゃった。」

「ヤオモモ…」

拳藤の姿を見る。気絶したヤオモモは『ワイヤー』で自身と『大砲』を括りつけ拳藤さんの動きを鈍らせていた。

「動きにくくてしょうがない」

「でも…これで終わりさ…ケケ」

「っ…(このままだと4人投獄されて勝負が負ける!)」

「どうせなら、貴女も拘束しちゃえ!」

小森さんがそう言ってキノコを生やし始めた。負ける?いや、まだ、まだ私は動ける!ここまで来て負けたくない!

「来い『バーサーカー』!」

 

 

side立希

『!!』

画面にて、窮地だった姉が『英霊召喚』した。同時に画面いっぱいに火の海が映し出される。

「な、なんだ!?」

「藤丸姉は何呼んだんだ!?」

炎系の英霊…姉が使役してる英霊と言えば…!!

『血が滾る!文字通りなぁ!!』

「…やっぱり、イバラギンか…」

「お、鬼だ!!」

全身から火を噴き出し、黄の着物を乱雑に見に纏い、二本の角を生やした少女、バーサーカー『茨木童子』が現れた。

「藤丸!あの鬼は何だ!?」

「大江山の鬼、『茨木童子』だよ。日本の古代・平安時代に酒呑童子と共に鬼を従え、天下に横行した鬼の頭目の一人。」

『お、鬼!?』

『ケケ…こんな少女を呼ぼうが俺達に敵うまい…』

『おい。今、吾を小柄と嗤ったな?気に食わぬ…気に食わぬ…!』

画面に写っている茨木童子は黒色君の言葉に反応し、さっきまで高笑いしていた顔が険しい顔付きへと変わる。

「なんか…やばくね?」

『行くよ!』

 

 

side立香

「行くよ!」

「きゃっははははは!」

「「「「っ!!」」」」

私の開戦の言葉でイバラギンが動く。笑いと共に周囲に炎をまき散らす。すると周囲のキノコは燃え、灰と化すて散った。

「私のキノコが!!」

「っ…こんだけ明るいと…影が……」

「やばっ」

「あぶない!」

吹出君は『巨大文字』で動けない拳藤さんを守った。でも動きは封じた!

「『宝具』発動!」

「真なる鬼の姿、見せてやろう!ぎゃっはははははは!喰ろうてやる!走れ、叢原火!『羅生門大怨起』!」

イバラギンの切り離された腕は真っ赤に燃える怨念の鬼火を纏って巨大化し、猛烈な速度で相手に向かう!対象は…

「黒色!」

「っ!!」

黒色君!小森さんが動いてもキノコは鬼火によって無効化!そのまま黒子君を捕縛し握り潰す。

「ガッ…バカ…ナッ……」

黒色君はそのまま気絶する。全身黒いから焦げてるのかどうか分かりにくい…

「やはり凌辱は心地よい…!クハハ…」

「ありがと!後でお菓子あげるから!」

「うむ!鐚一文負けてやらんからな!!―」

これ以上暴れられると被害甚大になるから退却してもらう。

「(そして…)『解除』!『降霊(ユニゾン):ヘシアン・ロボ』!!」

―アウォオオオン!!!―

私は狼王ロボと憑依する。青い髪に黄の瞳。そして…頭に獣耳、尻尾が生える。両手両足に鎖が付いている。

「セヤァ!!」

『キャアア!!』

そのまま私は四足走行で小森さんに特攻。素早い動きと爪で攻撃し、空中に飛ばした小森さんを受け止める。このまま逆転も行けるか…!?

「―すごいね、藤丸さん」

「!」

気絶した黒色君と小森さんを連れて投獄させようとしたけど…目の前に拳藤さんが現れた。しかも体に括りつけられていたヤオモモの姿がない。

「どうやって…!吹出君の“個性”!」

「うん。『ユルユル』っていう言葉で圧倒間に解けたよ。そして葉隠さんと八百万さんは既に投獄済み。」

彼の出す擬音は実現する。厄介な個性…でも彼の姿は…―

「まさか…!」

周囲を見れば常闇君がいない!!

「気付いたようだね。吹出は『スケスケ』の言葉で透明になって彼を連行したわ」

ロボの嗅覚で確認!二人の匂いがB組チームの監獄がある位置に移動してる!!

「っ!なら投獄される前に叩けば―「それをさせると思う!?」っ邪魔!!」

『大拳』で道を塞いでくる拳藤さん。身を翻して躱す!

「(拳藤さんを倒して行くか!躱して行くか!…) 倒すのが先!」

「ここから先は行かせない!!」

体術はあっちが有利だった。素早さで翻弄しようが的確に防御して、そして攻撃してくる。攻めあぐねそうこうしているうちに―

『終~~~~了~~~~~!!!第2セット!4-0でB組勝利!!』

「私達の勝ちだよ」

「!…はぁ…負けた……」

完全に負けた。悔しい気持ちでいっぱいになった…



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第67話

side立香

「メンゴね常闇。浅田飴いる?」

「ゴホ…情けは無用…!ゲホゴホ「リカバリーガールにお薬もらおうね」」

試合終了後、小森さん復活。でも黒色君は全身火傷にて、気絶しているヤオモモと共に救護ロボに搬送される。

「被害がえげつないですね」

「ヒーロー科の訓練とはこういうものだ…しかしちょっと壊しすぎたな」

「吹出!拳藤!そして藤丸姉!分かってると思うが被害は最小限に!」

「「「はい…」」」

先生からの講評…というか注意をされた。確かに戦闘した場所は崩れ落ち、焼け残った跡が痛々しく刻まれている。うん、やりすぎた。まぁバーサーカー召喚した時点で被害甚大になるのは確定なんだよなぁ…

「姉お疲れ。惜しかったね」

「ん。はぁ…疲れた」

試合が終わったから皆の元へ戻る。立希が私に話かけて来た。

「でも姉にしてはよく考えて戦ったんじゃない?いつもだったらゴリ押しだったでしょ」

「まぁ…ぶっちゃけ負けたくないっていう気持ちでいっぱいいっぱいだったよ…やっぱり仲間がやられると精神的に来る。立希も覚悟しておいた方がいいよ」

「了解」

それからステージ移動も兼ねて、少し休憩を挟む事になった。私はヤオモモの付き添いとして医務室へ向かう。

 

 

side立希

休憩時間も作戦を練る事に。緑谷君中心に考える。

「当たり前だけど、皆“個性”だけじゃなくて、精神面での成長が“個性”を更に強くしてるんだね」

「書くなぁ~」

「ま、オイラには及ばんけどな!」

緑谷君はノート色々メモしながらそう呟く。

「でもウチらの相手、結構強いよ…心操の『洗脳』があってあの物間!たしか相手の“個性”を『コピー』するんでしょ!?」

「ウチらの“個性”を『コピー』されると手強いなぁ…」

少し不安げの麗日さんと三奈。そこに自分が入る。

「あ、それなんだけど…自分の“個性”はコピーされても使えないよ。断言できる。」

「「「「え!?」」」」

「藤丸君詳しく!」

緑谷君がものすごく喰いついた。そういや個性の考察とか対策を考えるのが好きだったね…

「了解。それじゃあ自分と姉の“個性”『英霊召喚』を詳しく教えてあげるよ。まぁ今まで見てきた通り、自分と姉は『英霊を呼ぶ』。だけど、実際は『許可』を取ってるだけなんだよ。」

「許可?」

「交信してるともいう。簡単に言えば、自分が呼びたい人物に『召喚したいから来てくれない?』って送る。で、受信した人物―つまり英霊が『いいよ』と許可を取ったら『召喚可能』になるんだよ。」

「成程…藤丸君や藤丸さんはその英霊達と電話してるイメージで…」

「Exactly。しかもお互いに『絆』が無いと『召喚不可』。だから物間君が『コピー』して『召喚』しても物間君と英霊との『絆』は無いから英霊達は誰も受け付けないって事」

「初めて知った!」

「初めて教えたからね…(ま、まだ教えてない事あるけど)」

その後、緑谷君がオールマイトに呼ばれ、遠くで内緒話していた。

 

 

side立香

「おしかったね。ヤオモモ」

「そうですね…でも立香も最後奮戦したと聞きましたわ。」

「うん…諦めたらそこで終わりだしね。やるだけやったよ」

復帰したヤオモモと一緒に戻る。丁度いいタイミングで第3試合が始まる。

「第3セット!準備を!」

「飯田さん達を応援しましょう!」

「うん。」

頑張れ、焦凍君…

 

『―なら当然!更地にするよなァ!!?』

『馬鹿の考え!!』

第3試合、開始早々、鉄哲君がパイプだらけの道を壊しながら正面突破。さっきの反省聞いて無い…で、A組も動く。一気に焦凍君の『氷結』が襲う。しかも視界を遮らないように氷塊じゃない。改良されていた。氷結で動きが鈍くなったB組メンバーを一網打尽するのが作戦らしい…飯田君が動こうとした時、画面に映ってる場所がいきなりドロドロと柔らかくなっていく。

『氷結ブッパは安い手じゃん』

『サンキュー!柔造!反撃が柔軟だぜ!』

骨抜君の“個性”『柔化』でB組の拘束が解ける。しかも彼の周囲が柔らかくなって隠れていた尾白君も見つかる。

「即興だよな…読みがいいのか骨抜の奴…」

そのまま動けるようになった回原君が尾白君と会合。飯田君が助けに動こうとしたけど骨抜君が足場を『柔化』して阻止する。

『俺達の連携を断つ気か…!!おのれ敵狡猾なり!!』

「設定に入り込むね」

更にB組の追撃。角取さんの“個性”『角砲(ホーンホウ)』が障子君を襲い、焦凍君には鉄哲君が迫る。このままB組の有利になるか…と思ったらそうでもなかった。

『―10分!誰も俺を止められない!!』

『柔化』で埋められた飯田君が新技で復活した。よく見れば彼の足のマフラーが普段より大きく、かっこよくなっていた。個性伸ばしで『レシプロ』の馬力を底上げしたらしい。

「はっや…」

『ただし!制御しきれない!!』

別の場所にて、尾白君と回原君が近接戦闘をしている。

「普通に戦っている!」

「普通に押され気味だが尾白だって今までの尾白じゃねぇ!頑張れ!」

『ぐっ!』

そこに飯田君が突入。骨抜君を見失った代わりに援護としてきた。ものすごい速さで回原君を捕まえて牢獄へと向かった。

『んの野郎…!』

『“俺拳”!!』

「(焦凍君!)」

また別の場所にて、焦凍君と鉄哲君が戦闘。『氷結』を物ともせず壊しまくる鉄哲君。今度は『炎』で攻める焦凍君だけど鉄哲君はものともせず……

『鉄哲!轟を捕えて逃がさない!!圧倒的な近接に範囲攻撃も出す暇なし!』

それでも…焦凍君は諦めてない。『炎』の火力を更に上げた。熱でカメラが溶けるぐらいに…

「おいおい…藤丸姉が呼んだあの鬼が出していた火力以上だぜ…」

それは言わないで…付近に障子君、尾白君が集い、角取さんを何とか確保…と同時に地面から骨抜君も参戦。周囲を『柔化』させ焦凍君達にパイプを落下させ直撃させる。

『今度は!!外させないぞ!!』

更に飯田君も参戦。あの速さで蹴りをくらった骨抜君。気絶する―

『鉄哲!これを押せ!!』

「これは……!!」

最後の力。『柔化』した建物を鉄哲君が殴り倒し、動いていた飯田君に直撃した

「全員ダウン!?」

 

その後、角取さんが尾白君を無理矢理投獄して1-1。そして『角砲』を使って気絶した仲間と、そして自身を空中に飛ばす―

『Sorry』

そのまま時間が経過し、引き分けになった…



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第68話

side三人称

第3セット終了。気絶者多数で第2セット同様、反省会は後に回った。そのまま第4セットが始まる。

「さて第4セット!現在両者互角のように思えるがぁ!?A組の1勝はほぼ心操のおかげ!!はたして互角と呼べるのか!?」

「酷い言い方だぜ!ブラド先生!!」

偏向実況される中、第4試合開始。

『遅ェーンだよのろまが!』

『ウチ“音”聞きながらなんだけど!』

爆豪が先行し、瀬呂、砂糖、耳郎が追いかける。その時、早速B組の攻撃がくる。

『ハイ、しゅーりょー』

取蔭の“個性”『トカゲのしっぽ切り』により、全身をバラバラの状態で爆豪を攻撃。直ぐに瀬呂が『テープ』でバリケードを貼って佐藤と耳郎を守る。が、それを予期して、凡戸が“個性”『セメダイン』を撒き散らし、更に鎌切が、A組がいる頭上のパイプを切り落とす。

「A組の動きが全部逆手に…!」

セメダインと共に落ちてくるパイプを爆豪が『爆破』で吹き飛ばす。だが遮蔽物が消えた頭上から鎌切が耳郎を襲う…

『―ハッ!!』

『まぁじ!?』

それを爆豪が耳郎を足蹴で庇い、『爆破』を鎌切に放つ。防いだ鎌切は距離を置く。これにはB組メンバーは驚く。

『決めてんだと俺ァ!勝負は完全勝利!4-0無傷!これが本当に強ぇ奴の“勝利”だろ!!』

爆豪の言葉に頷く3人。動きが変わる。爆豪は凡戸を追う。泡瀬が途中で阻止してくるがそれを砂糖が対応。再び爆豪を妨害しようと泡瀬が動くが、耳郎、瀬呂が現れ、泡瀬を撃退。遂に爆豪は凡戸に追いつく。取蔭が阻止しようと動いたが、爆豪の連続『爆破』に『トカゲのしっぽ切り』は効果無く、凡戸を攻撃。砂糖が確保する。

「なんという迅速な連携!!一瞬で俺の可愛い二人を確保!!」

「協調性皆無の暴君だったろ!?丸くなったどころじゃないぞ…」

『『爆破式(エクス) カタパルト』!!』

爆豪の新技で鎌切も行動不能。そして―事前に爆豪が3人に渡していた『手榴弾』を使って取蔭の場所を特定。そのまま取蔭も気絶させ、B組メンバー全員を投獄し、試合終了

「わずか5分足らず…!!思わぬチームワークでA組!4-0の勝利だ!!」

 

 

side立香

「はぁー…やっぱスゴイな爆豪君…」

始めは大丈夫かな?って思ってたけど…彼なりに皆を信頼しての動きだった…反省会もこれといった課題点も無い。

「立香」

「!焦凍君。怪我大丈夫?」

ちょうどその時、治療を終えた焦凍君が来る。

「ああ、リカバリーガールのおかげでな……爆豪スゲェな」

「うん。凄かった。でも焦凍君だってすごかったよ」

「…そうか…でも負けた」

「それ言ったら私もだよ……次で最後の試合だね」

「だな…緑谷達、勝てるといいな」

「そうだね。」

私と焦凍君は画面を見る。頑張れ、バカ弟

 

 

side立希

自分達は自陣の牢獄場所に移動する。

「取り敢えず心操いんだよな。不安になってきた。洗脳されたくねーよ」

「あんまそこだけに捉われんよーにね。向こうは姿見せなくてもどっから来るか分かんない攻撃が揃っとるもん」

峰田君と三奈が敵側に行った心操君を警戒する。

「で、こっちの手段としては―」

「浮かす!」

「溶かす!」

「くっつける!」

「「「不利なんだよなぁー」」」

麗日さん、三奈、峰田君が項垂れる。それでもこっちには爆豪君と同等の機動力・戦闘力を持った緑谷君がいる。

「兎に角、先に見つけて対応するしかない。さっき皆で考えた作戦通り、囮役の「僕が!」おっと」

「前にでて、先行。皆はサポートに回ってほしい。」

“個性”に違和感が無いか確認していた緑谷君が帰って来た。どうやら大丈夫のようだ。

「大丈夫かよー…個性の強さならお前と藤丸弟頼りだぜ?」

「まぁ、頑張るよ。」

「大丈夫!絶対勝てる!」

以前と大分心強くなった緑谷君に自分達は嬉しく思う。

「「ぴゅー!」」

「前はもっとキョドってたのになぁ…」

『第5セット目!本日最後だ!準備はいいか!?最後まで気を抜かずに頑張れよー!』

「作戦は僕が囮。で、物間君の対応が藤丸君。心操君は僕が対応!」

「了解。3人は他のB組メンバーを対応。自分がしっかりサポートするから安心して動いて」

「「「うん!」」」

『START!』

 

 

side立香

「START!」

「お!始まった!」

『行こう!』

さっそく立希達は動き出す。『身体強化』した緑谷君を追うように立希達は走っていく。

「フォーメーションとしては…爆豪君達と似ているな」

「バランスも似てるからなー」

A組、B組の皆は各々考察し始める。

「姉として、弟はどう動くと思うんだ?」

瀬呂君が私にそう聞いてきた。

「いつも通りの立希なら…自分から動かない。私と行動する時はいつも私をサポートしてる。よく他人の動きを見て対応してるって本人が言ってた。」

「成程…“個性”も手数が多いから味方として頼りになるな!」

「となると、緑谷が爆豪以上の働きをしなきゃね」

 

 

side三人称

『フルカウル』で工場地帯を跳び回り、上空から索敵する緑谷。

「!」

ここで緑谷が飛んで来るドラム缶を発見。と同時に

「『キャア!』」

「(麗日さん!?)っ」

声に反応する緑谷だが直ぐに『偽物の声』だと判断する。試合が始まる前―

 

―「心操君が『変声機』使うのが多分分かる」―

―「嘘!?」―

―「昔から耳が良くて…『ペルソナコード』で心操君が話すとモスキート音並みの『ノイズ音』が聞こえた。咄嗟じゃない限り、判断できるよ。」―

 

立希が言った事を頼りに、緑谷は対応。言われてみれば確かに僅かなノイズが聞こえた…気がした。

「(多分偽物…って分かる藤丸君すごい…)!」

「あれ?見つかっちゃったか」

パイプの影に隠れていた物間の姿を捕える。見つかった物間だが冷静に行動する。

「爆豪君の活躍を見た後で緑谷君を、そして次に君を警戒しない分けがない。君達みたいな…動けて強い人間を警戒する。クレバーな人間はそう考える。」

「(心操君は…見えない…なら!)」

「仲間の方を見向きもしないなんて!薄情だな!」

「(煽り…洗脳を警戒!)」

「“恵まれた人間が世の中をブチ壊す”心操君とそんな話をしたよ!!」

 

二人と別行動になる麗日達。近くに心操がいるだろうと警戒しながら移動。峰田が『もぎもぎ』をくっつけたロープを引いてると…

「!何かくっついた!!」

「「!」」

その言葉と同時に大量の瓦礫が3人を襲う

「『アシッドベール』!!」

芦戸が『酸』で襲い掛かる瓦礫を溶かして防ぐが、続けて瓦礫が襲い掛かって来た。

「柳さんの『ポルターガイスト』!」

「あてずっぽーだ!」

更に、その瓦礫たちが突然『巨大化』し、芦戸は溶かしきれなくなる。

「(小大さんの『サイズ』!!) させん!」

麗日が巨大化した瓦礫を触れて『無重力』にする…が、今度は突如として『無重力』にした瓦礫が強い『衝撃』が受け、吹き飛ぶ。

「どわぁ!?」

巨大化した瓦礫が3人を襲う…寸前、3人の前に矢が降り注がれ、瓦礫の威力が殺され地面に落ちた。

 

「―およそどの方向にいるかはわかった。」

「姿を見られないように展開して…」

「危ない!!」

パイプの陰に隠れていたB組メンバーの柳、小大、庄田だったが、突如頭上から矢の雨が降り注がれる。直ぐに柳が『ポルターガイスト』で瓦礫を操作し、小大が『サイズ』で巨大化させ防ぐ。

「今のは…矢…?」

「A組にそんな“個性”を持った人なんていない……つまり…」

「藤丸だ…でもどうやってここを……」

 

side立香

『―狙わずとも』

「やっぱこういう時、アーチャーって便利だなぁ…」

3人を瓦礫から守った人物が映し出される。勿論、立希だ。けど『投影』で姿が変わっている。工場地帯全体を見渡せる高台にて、褐色の肌になり、白弓と矢をつがえていた。

「藤丸スゲェな!」

「どんな人と融合?してんだろ?」

皆私を見てくる。まぁ説明できるのは私だけか。

「アーチャー『アルジュナ』。インドの叙事詩『マハーバーラタ』の大英雄にしてその中心人物。“授かりの英雄”の二つ名を持った人だよ。さっきは千里眼でA組チームを守って、B組チームを狙撃したってところかな?」

『任務遂行…引き続き援護。』

立希は引き続き射る。別の画面にて、A組メンバーに襲い掛かる瓦礫を次々と落としていく。これには試合を見てる全員が驚いている。

「つっよ!?」

「あんな遠距離で当てれるのかよ!?」

『!?』

「お?何かあった感じだな」

「んん?」

いきなり立希はその場から離れ、皆のいる方へと向かう。何か問題が?…その時遠くで黒い鞭見たいな物が現れた。

 

 

side立希

「え」

思わず声を出してしまった。高台から皆を援護しつつ、遠方から物間君を無力化しようとした時、緑谷君に異変が起こった。攻撃をしようとした緑谷君の腕に突如として黒い鞭状が現れた。

「う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛!!!」

「(…嫌、なんか違う!) やばっ!!」

直ぐに自分は緑谷君の所に向かう。千里眼で見ると、物間君に黒い鞭何本も飛ばされる。何とか回避出来てるけど…周囲が滅茶苦茶に破壊される。

「心操君!」

どうやら物間君が叫んだ方向に心操君が隠れているようだけど……今はそれどころじゃない!!

「緑谷君!?」

勢いよく緑谷君が飛ぶ。黒い鞭が周囲に飛び散り…まるで暴走するかの様に周囲を破壊し尽くす。

「「「うわぁ!?」」」

「「「なんだ!?」」」

「緑谷君の作戦…いや違う―ぐっ!!」

黒い鞭の一本が自分に来た。ものスゴイ力で腹部を殴られ、吹き飛ばされる。

「ガッ―…―ハッ!!「藤丸君!?」麗日さん…緑谷君が…」

「デク君」

尋常じゃない痛み。一瞬気絶しかけた…吹っ飛んだ場所に麗日さんがいた。

「緑谷君の……所に……行って!!」

「っ…うん!」

尋常じゃない強大な力。緑谷君の新技かと思ったけど違う。明らかに暴走状態で“個性”に振り回されている。

「立希大丈夫!?」

「ゲッホ…鳩尾食らった…結構痛い…でもまだ戦える…っ!」

「一体何がなんだか分かんねぇけど…まだ試合は終わってねぇよな!!」

「ふぅ…うん。そうだね!行こう!」

三奈と峰田君と一緒に緑谷君のところへ向かう!

 

「イタァ!オラァ!!」

「『投影:―」

「緑谷!麗日!無事!?」

急いで向かえば既に敵味方共に全員集まっていた。緑谷君は…どうやら黒い鞭は消えて無事のようだ。

「皆集まった!」

『乱戦だぁ!!』



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第69話

次から劇場版書きます。


side立希

乱戦状態に入った!こうなると作戦とか関係無くなってしまう。

「―マルタ』!」

マルタ(水着)と憑依。藍色の髪に変わって、手甲を装備。降り注いでくる瓦礫を殴り飛ばして防ぐ。

「ナメんなっての!ハレルヤ!」

「『アシッドショット』!ピリピリ痛むよー!」

背後から三奈がサポートで『酸』を放ってくる。

「『大』」

「この乱戦で持続ダメージはいただけない。『ツインインパクト』『解放(ファイヤ)』!!」

小大さんが瓦礫を『巨大化』して『酸』を防いで、その隙に庄田君が三奈に向けて瓦礫を投げて“個性”『ツインインパクト』で放った。直ぐに自分は空中で身動きできない三奈に向かう。

「『グレープバックラー』!!危ねぇ!」

「峰田ァ!」

「速い…!」

その時峰田君が三奈の前に現れ、『もぎもぎ』を持って瓦礫を防ぐ。『もぎもぎ』は相手にとっては罠だけど本人にとっては跳ねるから移動手段になる!

「けど…」

「全て計算通りよ!そうさ!庄田二連撃!計算通り!オイラが『ツインインパクト』の威力に耐えられず―「その計算は自分がいなかったらミスしなかったかもね」なっ!?藤丸テメェエエ!!」

「余裕か!もぉー!!!」

どうやら威力に耐えられないまま三奈の胸に飛び込む算段だったらしい…予想通りだったから当たる前に自分が受け止め阻止する。そして三奈は峰田が企んでいた事を理解する。

「立希貸して!!こうだ!!『アシッドレイバック』!!」

怒った三奈は峰田君を掴んで回転して投げる!そのまま峰田君は周囲の『もぎもぎ』に当たり物凄い速さで跳び跳ねる。

「『グレープピンキーコンボ!―」

「―跳峰田』!!避けるなよぉーー!!」

「最悪!」

移動しながら『もぎもぎ』を投げまくる峰田君。移動範囲が増えB組メンバーを翻弄する。

「―君の“力”もらったよ!!」

「(物間君!!) させない!『アサシン』!!」

「―そうね、遊んでみるくらいなら」

遠くで物間君が緑谷君と麗日さんに何かしようと動いたのが見えた!直ぐに自分はアサシン、『ステンノ』を呼ぶ。ギリシャ神話におけるゴルゴン三姉妹の長女。純白の衣装を身に着け、後光のような飾りを付けた少女が現れる。

「スキル発動!」

「うふふ。楽しいわ、とってもね」

「ハァン!!」

「「!?」」

「物間!?」

ステンノの『魅惑の美声』によって物間君を魅了。彼の動きを止める。

「緑谷君!麗日さん!今の内に心操君を!!」

「ありがと!」

「わかった!」

自分がした事だと理解した緑谷君と麗日さんは心操君の方に向かう。魅了された物間君は…

「ああ…おお女神よ!なんと美しい!こんな近く!こんな愛らしく!愛おしい女性がいたとは!今の今まで気付かなかった己の両眼を…アア……えぐり取ってしまいたい…っ」

「うふふ…駄目よ。貴方は私の愛を見なきゃダメよ…ずっと…ね?」

完全に行動不能だ。というか魅了されてもよく喋るなー……

「物間どうしたの!?」

「(文化祭の仕返しだコノヤロー…) ステンノ、そのまま牢獄がある方に物間君を連れて行って!」

「ええ、さぁ来て」

「おお女神よ!僕を置いて行かないでくれ!」

「物間!?」

「完全に操られてる!あの子も心操と同じ洗脳を!?」

B組メンバーの言葉を無視して物間君はステンノの後を追う。

「物間!」

心操君が捕縛布で助けようと動くが

「!」

「『解除』!」

その捕縛布を緑谷君は掴んで防ぎ、麗日さんの『無重力』を使って接近する!!

「(よし、暫くは洗脳に注意しなくていい!) 「おぇ!!」峰田君!!」

「峰田ァ!!」

「慣れてしまえば捕え易い!!人は動ける恵体と僕を呼ぶ!」

いつの間にか庄田君が峰田君を捕まえた!まずい!コンボが切れた!

「よっしゃ!一人捕まえればあとは楽だ!」

柳さんが『ポルターガイスト』で瓦礫を動かし三奈に降り注がせる。

「やば―「三奈屈んで!」立希!!」

「『解除』!『投影:謎のヒロインX・オルタ』!」

―五秒で終わらせましょう―

謎のヒロインX・オルタと憑依。白髪に黄の瞳になって、ダブル・カリバーを装備。振り注がれる瓦礫たちを斬り落とす!!

「嘘…」

これには柳さんは驚愕していた。

「今!」

「っ!うん!!」

「麗日さん!!」

「せぃ!!」

「う!?」

「レイ子!?「ほっ!」しまっ!」

柳さんが自分に注視してた時、背後から迫った麗日さんが当て身をして柳さんを気絶させ、そのまま素早く小大さんを周囲にあった『もぎもぎ』にくっつけて捕獲。上手く目立つ事が出来た…

「小大さん!柳さ―「おりゃああ!!!」ガッ!?」

そして仲間が行動不能になった事で動揺した庄田君にも下から来る三奈に気付かず、アッパーカットを食らって気絶する。

「後は心操君…「大丈夫だよ。」麗日さん…」

「デク君言ってた。絶対勝つって!」

その言葉通り、緑谷君は掴んでいた捕縛布を絡め寄せて接近。そのまま心操君の体に乗って捕縛し……試合終了。

『第5セット!なんだか危険な場面もあったけど!4-0でA組の勝利よ!!』

いつの間にか実況者がブラド先生からミッドナイトに変わっていた。そして…

『これにて5セット全て終了です。全セット皆敵を知り、己を知り、よく健闘しました!第1セット A、第2セット B、第3セット ドロー、第4セット A、第5セット A!!よって今回の対抗戦!A組の勝利です!!』

『YEAAHH!!!!』

何とか勝利する事が出来た…

 

試合終了後、反省会。というか緑谷君が使ったあの黒い鞭についてだ。新技にしては緑谷君のもつ“個性”から大分逸脱している。けど緑谷君からは“分からない”という回答が来た。

「―でも麗日さんと心操君が止めてくれたおかげで、溢れた力を抑えることが出来て、あの時は本当に訳がわかんない状態だったんだ。だから二人共ありがとう!」

「ほんとビックリしたよ…自分なんてあの黒い鞭に叩かれて一瞬気絶したんだから…」

「ほ、本当にごめんね!藤丸君…」

戦闘衣装が無かったら絶対鳩尾に跡残ってた…それぐらい痛かった…そしてこの訓練にて、心操君の編入試験も兼ねていたらしい。心操君はまだまだ自分には足りないと言っていたけど、相澤先生からは及第点だと告げられる。

「―これから改めて審査にはいるが…恐らく、いや十中八九!心操は2年からヒーロー科に入ってくる!」

ブラド先生がそう言うと皆驚く。AかBかは、おいおい決めていくらしい。

「まだまだ講評していくぞ」

「せんせー!峰田最低だったんで断罪してくださーい!」

「はぁ!?オイラは庄田達を体張って翻弄したんだが!?」

「そんな事言ったら立希だって奮闘したじゃん!アンタからセクハラ守ってくれたし物間を行動不能してくれたし襲ってくる瓦礫を切り落としたし!!」

不満を言う峰田君を三奈が正論で黙らせる。そしてフラフラと羞恥の籠った顔付きで物間君が自分に来る。

「ふふ…藤丸君…よくも僕をあんな目にしたね…記憶に残ってるんだが!?」

「いやぁ…女神に魅了された物間君……正直サイコーでした。内心クッソ笑った」

「君そんなキャラだったかい!?」

「(文化祭の時まだ根に持ってたんだ……)」

「ええい!今回は確かに僕等B組に黒星がついた!しかし!内容に於いては決して負けてはいなかった!つまり!!今からもう一回やれば次は分からない!!」

「やんねぇよ。もう今日の授業終わりだ」

物間君…タフだなぁ……

 

 

side立香

その日の夜。A組の寮にB組のメンバーが集う。今回の訓練の反省と交流を兼ねて何人か来たようだ。

「バカヤロー!てめー!!弱音吐いてんじゃねー!」

「しかし…今日俺は完全にお前に上を行かれた…」

「俺とおめーは違う強さがあんじゃねぇのか!?」

「てつてつー!!!うおおおお!!」

「熱いなぁ…」

「まぁ漢の友情ってやつだねぇ」

「感動ですわ!」

切島君と鉄哲君の熱い友情を見つつ、私はヤオモモと拳藤さんと紅茶を運ぶ。私も今回戦闘したB組メンバーと交流をしている。

「ね、ホークスの写真ないの?プライベート!」

「む…今丁度…」

「ごめんね黒色君。訓練で全身火傷負わせて…」

「い、いや…大丈夫……俺も……あの小さい子に油断してた………」

試合の事で私は黒色君に謝罪する。

「しっかし、八百万といい藤丸といい、手強かったよ。」

「何気、拳藤さんが一番動いたよね?ヤオモモに大砲とワイヤー括りつけられて、私と近接戦闘して」

「悔しいですが、参りましたわ…」

ヤオモモは悔しそうに言うが、拳道さんは褒めちぎる

「いやいや、私も結構ピンチだったよ。まさか藤丸が一人で黒色と小森を圧倒するなんて思ってなかったし」

「そうだよー!あの鬼っ子本当に怖かったし!そして藤丸ちゃんもいきなり動きが早くなってびっくりだよ!」

「…油断した」

「ふっふっふ!これが立香ちゃんの実力なのさ!」

「…何で葉隠ちゃんが自慢げに話すの…」

『アハハハハハ!』

有意義な時間だった。

 

 

side立希

「ア……アア…」

「えーと…三奈、そろそろ峰田君限界じゃ?」

「まだまだ。これくらいプルスウルトラしないとダメ!」

今回の戦闘にて、峰田が三奈にしようとしたセクハラを三奈は許しておらず、峰田君を拘束して強制的に更生動画をかれこれ1時間見させている…

「一応未遂だし…許しても…」

「ダメだよ!こういう時ガツンとさせないと!立希は優しすぎだよ!」

「まぁ、こういう性分だしね…アハハ…」

苦笑しながら三奈を見る。三奈は少し不満顔をしていたけど、今度は少し頬染め、感謝して来た。

「もう…でも今日はありがと。緑谷の動きもあったけど、立希のサポートがあってこその勝利だと私は思うよ!」

「そうかなぁ…まぁそうなら…自分も嬉しいかな。役に立てたって思うし」

「そうだよ!素直に受け取らないねぇ…そういう性分なの?」

「その通りです…」

「「アハハ」」

この後、物間君が介入してきて今回の戦闘に付いて不満をまき散らして来た。自分はただ聞き流した



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第70話

劇場版の『HEROES RISING』書き始めました。


side三人称

12月中旬。雪は降り積るなか、A組は久しぶりの休日にて寮内でゆっくりと過す。

「立希~借りてた漫画返しに来たぜ~」

「いらっしゃい。電気君」

立希の部屋に上鳴が入る。彼は借りてた漫画を返しに来た。

「っておいおい、休日なのに“個性伸ばし”してんのかよ…」

「持って来た漫画大方読みつくしたし、ゲームもやり尽くしちゃったから…暇潰しに『投影』で憑依率を底上げしてた」

上鳴は呆れ仲が立希を見る。今の立希は『マシュ・キリエライト』と憑依していた。その時、上鳴はふと思いつく

「…なぁ、その技ってたしか呼んだ人物と憑依?するんだよな?」

「うんそうだよ。」

「…てことは、いろんな姿になれるってわけだよな!」

「うんまぁ…それが?「よっし!今から皆をロビーに集めるぞ!あと藤丸姉も呼べ!」え!?何するの!?」

「決まってんだろ!暇潰しだ!!」

 

「―てなわけで!『第1回 藤丸姉弟、英霊憑依パーティー』を始めまーす!」

『おー!!!』

ロビーにて、爆豪以外のA組が集い、簡易的に作られたステージに立つ藤丸姉弟に拍手を送る。本人たちは突然の事で困惑しいてる。

「司会は私!芦戸!そして解説はヤオモモ!スポンサーは上鳴でお送りしまーす!」

「え、何?どういう事?いきなりすぎてわけわかんない。」

「奇遇だね、姉。自分もだよ。電気君どういう事?」

「さっき言ったろ!暇潰しだって!まぁ藤丸姉弟の憑依姿も気になるってのが本音だけどな!皆もそうだろ!」

「まぁ、そうだな」

「初めて見た時はビックリしたけど、すごいよね!」

「毎回違うの見れて結構新鮮」

「単純に気になる!」

「というわけだ!観念して俺達に見せろ!」

「は、はぁ…まぁ自分は別にいいけど…姉は?」

「……はぁ…ここまで来ると逃げれないし……さっさと終わらせる。」

「合意とみなして開催!ルールは簡単!お互いクジを引いて、お互い引かれたお題の人物に憑依するだけです!!」

「いつの間にこんなの用意したんだ…」

「因みに全部ヤオモモが『創造』してくれました。」

「頑張りましたわ!」

プリプリしながら八百万は言う。己の知識を皆に振舞える事が出来嬉しく、本人もこの企画が楽しみのようだ。

「では!最初の一人目!どうぞ!!」

パーティーの始まり。

 

 

side立希

突如として始まった『憑依パーティー』さっそくクジを引く。

「最悪なのは引かないでよね…」

「その言葉、そのままそっくり返すよ。」

姉に睨まれながら言われるが運は姉の方が自分より悪い。自分が引いたのは…

「えーと……『殺生院キアラ』」

「お前ぇ!!」

「おっとぉ!立香選手!フラグだったようです!さぁ次は立香選手の番です!」

「く…恥ずかしいの引いてやる!」

「オイヤメロ」

姉が引いたのは…

「…『マルタ』 (ちっ)」

「ふぅ、セーフ。(この姉、皆に聞こえないように舌打ちしたな…)」

「立希選手の反応を見る限りセーフのようです!ではお披露目ターイム!順番は立希選手から!」

「それじゃあ早速。『投影:マルタ』!!」

―祈りましょう、せめて、あなたのために―

『おお!』

始めの時とは憑依率が上がってるから、大分変わる。髪が藍色に変わり、頭にベールを、下半身に十字架を刺繍された赤ローブを纏い、金の十字架の杖を持つ。

「では解説のヤオモモから!」

「はい!『マルタ』という人物は悪竜タラスクを鎮めた、一世紀の聖女ですわ。妹弟と共に歓待した救世主の言葉に導かれ、信仰の人になったと…美しさを備え、魅力に溢れた、完璧な人。恐るべき怪獣を虜にした聖なる乙女ですわ!」

「悪竜を虜にしたって…結構スゲェな」

「というかそれ聖女?」

「立希選手!感想を一言!」

「え?えーと…一応、マルタさんとは始めて召喚して、初めて絆を深めた仲なので、ここまで憑依できたのは嬉しいです。」

「へぇ~そんなんだ~ありがとーございました!お次は立香選手です!」

 

 

side立香

私の番が来た…

「…本当にやらないとダメ?「この際諦めちゃいなYO☆YOU☆」くっ…」

せめて第一再臨姿!!

「『降霊:殺生院キアラ』!」

―ご指名感謝いたします。―

『おー…』

姿が変わる。尼僧服を着こなした姿へと…セーフ!

「(何だ…つまんない)」

「オイコラどういう意味だ、バカ弟」

小声で言っても聞こえてんぞ…

「ではヤオモモ解説を!」

「はい。『殺生院キアラ』…彼女は江戸時代に途絶えたとされる真言宗系の異端宗派『立川流』最後の導師。その傍流である真言立川詠天流というカルト組織で幹部をしており、彼女の欲求が原因で西欧財閥から国際手配されていましたわ…最もこの国際手配は東洋人であるにかかわらず聖人と評価されることを憎んだ聖堂教会の枢機卿の妬みもあったようで……あと……その……」

『?』

ヤオモモが少し恥ずかしそうに言う。え、まさか…

「儀式には性交を行うらしいですわ…」

「マジで!?」

「何ィ!?」

「(本当にヤオモモは博識過ぎぃ!!)」

峰田君と電気君が敏感に反応した。

「あ、あの人か!林間合宿で獣達を圧倒した女性!!」

「あんな際どい服装にそんな理由があったのかよ…」

男性陣地が反応する。その反応に女子陣営がしらける。

「では立香選手感想を」

「…彼女は強いですがあまり人前で憑依したくないです。」

「本当だったら、際どいスリットの入った体のラインが判るピチピチの尼僧服を着こなして―「応供、四顛倒!!」あっぶなぁ!ちょ!?クラス相性的に自分不利だから!!」

馬鹿(弟) が余計な事を言いそうになったから力尽くで止める。

 

 

side三人称

「ちょっとハプニングがありましたが…では2人目いってみよー!次は立香選手からクジを!」

「あ、危なかった…」

「今に見てろ……」

勢いよく立香が引いたのは…

「『イリヤスフィール・フォン・アインツベルン』」

「\(^o^)/オワタ」

「立希選手の顔がオワタ顔にぃー!これは一体どういう事だぁ!?」

「因果応報。」

「っ…自分のクジは……『アルトリア・ペンドラゴン・オルタ』…くっ」

「よし」

「さっきと逆な反応!では立香選手から行ってみよー!!」

 

 

side立香

さっきより落ち着いて憑依する。

「『降霊:アルトリア・ペンドラゴン・オルタ』!」

―よかろう―

『かっけぇー!』

髪が金色に変わり、黒のバイザー。黒の手甲をはめ、黒のエクスカリバーを装備する。

「『アルトリア・ペンドラゴン』。通称『アーサー・ペンドラゴン』!中世の騎士道物語で有名な『アーサー王物語』で登場する伝説上の人物!聖剣エクスカリバーを岩から抜いてブリテンを統一しましたわ!」

「まぁ今回は『オルタ』っていう聖杯の呪いに侵され、非情さに徹しきった騎士王の側面。あるいは、アーサー王が求めた“理想の王”とはこういったものだったのかもしれない姿なんだけどね」

「捕捉ありがとうございます!」

「体育祭で塩崎と飯田を吹っ飛ばした女性か」

「あの女性はとても強かった…俺のレシプロが通用しなかったのはとても悔しい……」

「黒い柱が出たのはマジビビった。」

「では感想を!!」

「普通に強くて何よりカッコイイから使い勝手が良いです。」

「成程!では立希選手の番です!」

 

 

side立希

「くっそう…強いけど恥ずかしいんだよ…「さっさとなれ」うぐぅ…」

うじうじしているとよけい恥ずかしくなるからさっさとなる事にする。

「…『投影:イリヤスフィール・フォン・アインツベルン』!」

―行くよ、ルビー!―

『どどんとやっちゃいましょう〜!』

『ぶほぉ!!』

「やっぱこうなったかぁ!!」

「ざまぁ」

仮免試験より憑依が上がったから……栗色の髪と赤い瞳になり、簡易的な桃色のヒラヒラ衣装になって、手にはルビーステッキを握る…なんちゃって魔法少女になった…

「これじゃ、〇法少女俺じゃないか…」

「に、似合ってるぜ…ブフゥ…」

「藤丸…おま……ダメ…アハハ!!」

「か、解説を…クスクス…」

「えと…申し訳ありませんがご存じありませんわ…『フォン』が名前に付いてるという事は貴族…といった所でしょうか?」

「えっと…まぁそんな所…アインツベルン家は魔術に長けた貴族で、歴史上には載ってないんだよ…秘密主義かなぁ…」

「そうなんですの…クス…」

「魔術に長けた結果が魔法少女かよ!あっはっは!」

「感想どうぞ!」

「クッソ恥ずかしいです。」

 

 

side三人称

「ではでは3人目ー!!」

「これ何人までするの?」

「二人の限界まで!」

「はぁ…」

項垂れながらも藤丸姉弟はクジを引く。立希は『ペンテシレイア』、立香は『ジャンヌ・ダルク』を引いた。

「セーフ」

「ん。大丈夫」

「両者共に大丈夫だと分かる反応。ちょっと面白くないです!」

「三奈?」

「ンン!何でもなりません!では立希選手どうぞ!」

「…『投影:ジャンヌ・ダルク』」

―主の御加護を―

立希は芦戸をジト目で見つつ、憑依する。金髪になり、頭部にマテリアルを装備。十字架が刺繍されたマントを羽織り、巨大な旗を持つ。

『おおー!綺麗!』

「世界でも最も有名な聖女。百年戦争で有名なフランスの英雄…オルレアンの聖処女ですわ。フランスを救った聖女であり、十七歳で故郷を発ち、奇跡とも呼べる快進撃を成し遂げましたわ。ですが…貶められて十九歳で火刑に処されるという…悲劇的な結末を迎えましたがそのわずか二年間で歴史に名を刻んだ聖女ですわ」

「俺らぐらいの年でそんな功績あげてたのかよ…」

「インターンの時はすごく助かったよね!」

「ケロ、そうね。」

「聖女にもいろんなタイプがあるんだなー」

「では感想どうぞ!」

「ジャンヌと憑依したせいか…すごく心が安らぐ…さっきまでの事がどうでもよくなった…」

「聖女パワーすげー…」

「ではでは、お次は立香選手!」

「ん。『降霊:ペンテシレイア』」

―いいだろう―

今度は立香が憑依する。白髪と黄の瞳に変わり、カギ爪のついた手甲、鎖のついたモーニングスターを装備する。

『こっわ!?』

「バーサーカーだからね…仕方が無い…」

「ギリシャ神話におけるアマゾネス、アマゾーンの女王ですわ。 アレスの娘であり、ヘラクレスに帯を奪われたヒッポリュテを始め、他にも姉妹がいると聞きますわ。 ヘクトールの死後、ペンテシレイアが率いるアマゾネスの軍勢はトロイア側に加勢し、アカイア軍と戦闘し敗北したと…」

「あ、ヤオモモ、それ以降は『彼』の名前が出るから言わないで」

『彼?』

「…その名前に反応すると危ないから…」

「…ああ、俺が体育祭で戦った女性か…立香が―「それ以上いけない!!」」

「…では『A氏』と言いますわ。その戦闘時、A氏が彼女に止めを刺した際、A氏はペンテシレイアの顔を見て「美しい」と言いましたわ 「女」としてではなく「戦士」として戦い抜いてきたペンテシレイアにとっては、もはや最大級の侮辱の言葉であり、彼女は激怒。 死に際に「お前の槍はお前の愛する者を貫く」と呪詛を吐き、戦死したと…」

「あ~…だから立香ちゃん彼女に―「ダメ!」」

「…アk「おい弟!」口が滑っちゃうぅ!!モーニングスターは止めて!!」

「おい何か立香の瞳が血走ってないか!?」

「あ、待ってペンテシレイアさん!?私の体つかって暴れないで!?」

「なんでバーサーカー系は好き勝手に動こうと…バーサーカーだからか……」

立香と憑依していたペンテシレイアが暴走しそうになったが、何とか止める。

「では感想を!」

「はぁ、はぁ……強いけど扱いには注意が必要……」

まだまだ続く



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第71話

side立希

「面白くなって来た4人目ー!立香選手どうぞ!」

「はい…『セミラミス』。つまんない」

「お次は立希選手!」

「さっきから露出がねぇ!藤丸ゥ!水着のねーちゃんひけぇ!!」

「そーだぜ!まぶいねーちゃん来い!」

「オイ」

峰田君と電気君の欲に満ちた願望が来る。姉が冷めた目で二人を見る。

「あっはっは、流石に自分の運でも引けるわけがないよ…『スカサハ(水着)』(勝った)」

「立希!?」

「(計画通り)」

某ノート主人公並の笑みで姉を見る。フラグ回収完了!

「えー…後で峰田と上鳴は粛清するとして、立香選手どうぞ!」

「後でお前も粛清する……『降霊:スカサハ』!」

「粉☆バナナ!?」

―折角だ。ハメを外すか。―

『おおお!!!』

「「キタァ!「フン!!」グボォ!?」」

紫髪、紫の瞳となり、紫色のパレオ姿になった姉。そして刹那、三節棍で峰田君と上鳴君を地に伏せる。

「立香ちゃんきれー!でも冬の時期にその姿は寒そうです!!」

「実際寒い…」

「えっと…スカサハと言いますと、ケルト・アルスター伝説の戦士ですわ。異境・魔境『影の国』の女王にして門番であり、槍術とルーン魔術の天才ですわ。数多の亡霊があふれる『影の国』の門を閉ざし、支配せしめるに足る実力を有すとか…後にアルスターの英雄となる若きクー・フーリンの師となって彼を導き、技を授け、愛用の魔槍さえ与えましたわ。」

「うぅ…羞恥プレイすぎる……」

「感想は「寒くて恥ずかしい!」分かりました!」

そう言って直ぐに元に戻った。

 

 

side立香

「よし、『投影:セミラミス』」

―面倒にも程がある―

今度は立希が憑依。エルフ耳になり、襟に黒ボアを身に着け、黒ベルトを持つ。

『黒…』

「アサシンだから。毒使うから。」

「アッシリア帝国に君臨したとされる伝説の女帝ですわ。人類最古の毒殺事件の犯人。幼少の頃より化粧、結髪、装身から舞踏、音楽、天文まで幅広く教養を修め、男を惑わす美貌を持っていましたわ。一方で贅沢と退廃を好む情熱的な女性…女神デルケトととある人間の間に産み落とされたと聞きますわ」

「毒殺って…こわぁ…」

「こうやって聞くと色んな奴がいるんだなぁ…」

「そんで色んな人を使役してんのな…」

「女帝として君臨していただけに気位が高いけど、話せば結構面白くていい人だよ。チョコ作るし」

「それは何か違うでしょ…」

何か他人と感覚が違う弟にツッコミをする。毒盛られたのに笑ってたんだよ?この弟は…

「では感想は?」

「憑依しやすいから、これから頼っていきたいです。」

…セミラミスも弟の事気に入ってるのかな?

 

 

side三人称

「はぁ…体力精神的に疲れた…次で最後にして…」

「同感…」

「わっかりました!さぁこの企画もいよいよ最後!では最後5人目をどうぞー!」

「「はぁー…」」

やっと終わる…という心境と共に藤丸姉弟はクジを引く。

「えーと…『ヘシアン・ロボ』獣耳っ子再び。」

「ん…『オジマンディアス』王様じゃん」

「決まったようです!!では立希選手どうぞ!」

「了解。すぅー…『投影:オジマンディアス』」

―神たるファラオの武勇を見せるとしよう―

心を落ち着かせ、立希は憑依。髪が軽く逆立ち、青い宝石が施された白マントを纏い、青と黄の縞模様のフック型錫杖を持つ…

『上半身裸ぁ!!』

「はっくしょん!さっみ。」

が、全員の第一印象が褐色の肌になった立希の上半身だった。

「前よりちょっと引き締まった?」

「『お〇いマッスル』 聞きながら筋トレしてた。」

「ヤオモモ解説どうぞ!」

「『オジマンディアス』、またの名は建設王ラムセス2世。エジプト最高のファラオと名高い、紀元前十四~十三世紀頃の人物ですわ。広大な帝国を統治した古代エジプトのファラオのひとり。民を愛し、そして大いに民から愛された。『メリアメン(アメン神に愛される者)』とも呼ばれました。やがて和平を結ぶことで古代エジプトに交流による繁栄をもたらした名君ですわ!」

「王様すっげ!」

「エジプト人だからその姿なのか…」

「それでも…うん」

『すごく寒そう』

「はっくしょん!通気性すごいこの服…」

「このままだと風邪ひくので感想どうぞー!」

「オチが上半身裸でした……さっみ」

終わると立希は直ぐに元に戻った。

 

「では最後!立香選手お願いします!!」

「うん。『降霊:ヘシアン・ロボ』」

―アウォオオオン!!!―

立香も最後の憑依をする。青い髪に黄の瞳。そして獣耳、尻尾が生え両手両足に鎖が付く

『再びー!』

「カワイイ!」

「獣耳っ子来たぁ!!」

「(まじまじ見られるのもなぁ…)」

立香の感情に反応してか、耳が垂れるそれを見てA組大半が胸に手をそえ、悶える。

「姉、写真撮っていい?」

「するな」

「カワイイですわ…んん!『ヘシアン』とは、アメリカ開拓史伝承の一つ『スリーピーホロウ』の正体ですわ。ドイツ人傭兵団“ヘシアン”の騎士。彼はアメリカ独立戦争でイギリスの同盟国として派兵され、戦争によって砲弾を受けて首を失くし、それ以来死を自覚することなくニューヨーク近郊の森を彷徨い、緑に目が光る亡霊馬を駆って襲ってくるとされると言われてます。そしてロボとは、『シートン動物記』で有名となった『狼王ロボ』ですわね。シートンはカランボーに居る知人の牧場主からオオカミに家畜が襲われて困っているという依頼を受けオオカミ退治に向かい、そこで群れを率いて猛威を振るっていたのがロボ。シートンは罠を用いてロボの仲間を捕らえ投げ縄で絞殺。意気消沈したロボは自暴自棄からかシートンの罠に嵌り捕獲されてしまう。プライドを傷つけられたロボは餌も水も拒否し餓死する。シートンはロボのその誇り高い王者の貫禄に敬意を表し、彼らの生涯を著書として発表されましたわ…」

「そんな過去が…でもカワイイ…」

「ちょっと耳触らせて!」

「尻尾モフモフ!」

「わわ…ちょ…」

皆の勢いに負け、立香は耳と尻尾を撫でられ、触られる。皆アニマルセラピー(?) で癒される。

「毛並みがいいんだな」

「っ!?しょ、焦凍君!?」

『おー……』

焦凍が立香の頭を撫でる。立香は嬉しさ半分、羞恥半分の感情が出てくるのを必死に堪える…が、感情に反応したのか、尻尾が勢いよく振り動く。本人は気付いていない。

「何か…微笑ましい」

「あれで付き合ってねぇんだよな…」

「なんなん…」

「むふふー!ゴチになりまーす!立香選手、感想どうぞ!」

「……ノーコメントで「やったね姉!オチが付いたよ!」うっさい!」

これにて企画は終了。皆楽しんで満足したようだった。

「以上!第1回『憑依パーティー』でしたー!次回もお楽しみに!!」

「「え、2回目もやるの?」」

続く…?




ちょっとしたお遊び話でした。憑依したメンツ選びはスマホ開いてサイコロ振って決めました。


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第72話

敵アカデミアは全カット。原作読んでるなら知ってるよね!


side立香

B組との戦闘訓練から時は進み、気付けば12月下旬。終業まであと数日…

「「あひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!!」」

「一時間インタビュー受けて!!」

「爆豪丸々カットォー!!」

「ある意味守ってくれたんやね」

「使えやぁああ……」

「まぁ…しょうがないよねぇ…」

12月初旬。仮免取得をして30分後にプロ顔負けの活躍をした焦凍君と爆豪に先日、インタビューが来た。けど質疑応答する度に爆豪君は焦凍君につっかかって、カメラマンや記者たちを困らせる…結果的に放映されたのは焦凍君が返答してる部分のみ写されて、爆豪君の部分は全部カットされていた。

「インタビューのところ見たけど…仕方が無い。アレは。うん」

「そうだね…」

スマホで見ていた瀬呂君、上鳴君は大爆笑している。

「オールマイトから遠ざかってない?」

「イカれてんだ」

「世間に爆豪君を見せるのは早すぎたんだよ」

「聞こえてんぞ!クソデクと玉とモブゥ!!」

緑谷君、峰田君、立希は爆豪君を見ながら呟く。まぁ本人にガッツリ聞こえてるけど…

「もう3本目の取材でしたのに…」

「“仮免事件”の好評価が台無し」

私もヤオモモと一緒にため息を吐く…それから次のニュースが流される。最近話題の事件。“泥花市による暴動”内容は『たった20人の暴動により50分程で街が壊滅に追い込まれた』というものだった。被害規模は、“神野”以上…死傷数は抑えられたのが幸い。

「(エンデヴァーに襲撃した新種の脳無といい、今回の暴動といい…私達が目指すヒーローへの非難が増してる…オールマイトという『平和の象徴』が消えたのはやっぱり世間に響いてる…でも)」

《―しかしヒーローへの非難一色だったわけですが、今は時代の節目と言いましょうか、『非難』が『叱咤激励』へと変化してゆくのです。》

「“見ろや君”からなんか違うよね」

「エンデヴァーが頑張ったからかな!」

「……………」

少しずつ、流れが変わりつつある…そう思いたい。

「姉、どしたの?何か考え中?」

「別に、何でも無いよ」

そんな時、勢いよく教室の扉が開く。そして誰かが入って来た。

「楽観しないで!良い風向きに思えるけれど!裏を返せばそこにあるのは“危機”に対する切迫感!勝利を約束された者への声援は!果たして勝利を願う祈りだったのでしょうか!?」

その人物は、ミッドナイト先生と一緒にセクシポーズをする…プロヒーロー、Mt.レディだった。

「ショービズ色濃くなって来たヒーローに今!真の意味が求められている!」

「わぁあああ!!」

「峰田君どしたの!?」

「特別講師として招いたんだ。お前ら露出増えてきたしな。ミッドナイトは付き添いだ。」

芋虫状態の相澤先生が説明してきた。今回の授業もいつもと違うのだろうか…

「今日行うのは『メディア演習』!現役美麗注目株の私がヒーローの立ち振る舞いを教授します!!」

「何するかわかんねぇが…皆ぁ!プルスウルトラで乗り越えるぜ!」

『おー!』

私達は切島君に鼓舞され戦闘衣装に着替えて集合場所の校庭へと向かう。校庭にあったのは…インタビューステージ……

「“ヒーローインタビュー”の練習よ!!」

結構緩かった。

 

 

side立希

Mt.レディという特別講師が来て、始まったのはインタビューの練習だった。しっかりとステージが設置されて、カメラもマイクも用意されて、結構リアリティがあった。

『凄いご活躍でしたね!ショートさん!』

「何の話ですか?」

『何か一仕事終えた体で!はい!!』

「はい」

さっそく焦凍君がインタビューされる。

『ショートさんはどのようなヒーローを目指しているのでしょう!?』

「俺が来て…皆が安心できるような…」

『素晴らしい!!あなたみたいなイケメンが助けに来てくれたら私逆に心臓バクバクよ!』

「心臓……悪いんですか…」

『やだなにこの子!?』

「ブフッ…」

ツボった……天然だな、焦凍君

『どのような必殺技をお持ちで?』

それから焦凍君は校庭に大氷壁―『穿天氷壁』を放ち、技の説明をする。B組戦で使っていた技は…どうやらエンデヴァーの技らしい。

「―俺はまだあいつに及ばない」

『パーソナルなとこまで否定しないけど…安心させたいなら笑顔を作れると良いかもね。あなたの微笑みなんて見たら女性はイチコロよ♡』

あー確かに…姉がそれ見たら死ぬんじゃね?

「俺が笑うと死ぬ…!?」

『もういいわ!』

「ブッフ…」

やっぱり天然すぎる…笑いでお腹痛い……

 

 

side三人称

それからA組のメンバーはMt.レディからインタビューを受ける。誠実さ、自信、癒し、堅実、漢気、etc.…それぞれの個性を表す。

『なにもう皆!心配して損しちゃった!意外にちゃんと出来るじゃない!それじゃあ次は―』

次のインタビューは…立希と立香の番だった。

「お、藤丸姉弟は一緒か」

「やっぱ“個性”が同じだし、一括りにされるのは当たり前か。」

「覚えやすいってのもあるしな」

『えー、マギさん!メイジさん!ご活躍すごかったですよ!』

「はい!応援ありがとうございま「ブッフ…ごめん…ちょ…タンマ……」…ちょっとスイマセン。」

立香がインタビューの受け答えをしようとした時、普段の声より明るい声で話す姉を見た立希は吹き出し笑い堪える。立香は笑みを浮かべたまま…

「フン!」

「アダダダ!?ごめんごめん!ごめんなさいぃいい!?!?」

思いっきり立希の腕をつねる。激痛に立希は悶え苦しむ。

「今インタビュー中。普段と違うのは当たり前。おk?返事はハイor Yes」

「や、Ja…「誰がドイツ語で話せっつった?」Yesゥウウ!!」

『この姉弟漫才しだしたわね。面白いわ』

「んん…はい。続き大丈夫です。」

「イタタ…ど、どうぞー…」

ジト目で藤丸姉弟を見るMt.レディ。気を取り直して再会する。

『コホン…では、お二人は姉弟でしかも“個性”が同じとお聞きしますが?』

「はい。私達の“個性”は召喚者を使役する。それは共通です」

「えっと、でも自分達は『召喚』以外に、『憑依』して、『召喚』より力は衰えますが、オールマイティに活動できます。自分はそれを『投影』、姉は『降霊)』と命名してます。まぁ違うのは技名だけで内容は同じですけどね」

『成程。もしよければその技を皆に見せてくれませんか?』

「いいですよ。『降霊:アルトリア・ペンドラゴン・オルタ』」

「んーとじゃあ『投影:ジャンヌ・ダルク』」

2人は憑依した姿を見せる。

『カッコイイですね!じゃあ最後!それで何か一言お願いします!』

「…敵は倒す。ただそれだけだ。」

立香は剣を正面で刺し立て宣告。

「…いついかなる時も!我らと共に!苦難も、悲嘆も、貴方達と一緒なら乗り越えられます!さあ、頑張りましょう!」

立希は旗を掲げ鼓舞。2人共憑依した英霊を元にしたセリフだ。

『うーん。2人共しびれる良い回答ね。安心と信頼がグッと来るわ』

「「ありがとうございます」」

こうして藤丸姉弟のインタビュー練習が終わる。

 

 

side立香

「ふぅ…何とかなった…」

あんまりこういうのは慣れてないから苦手かも…立希は大丈夫そうだけど。

「お疲れ。立香」

「あ、焦凍君。うん結構緊張したよ。焦凍君はよく緊張しないで話せたね。」

「そうか?ただ来た質問に答えるだけだろ?」

「それが出来ないんだよねぇ…苦手だから」

気恥ずかしく後頭部をかきつつ答える。

「そうか?結構良いと俺は思った。最後も…カッコよかった」

「そ、そう?それだったら嬉しいかな?焦凍君にそう言われると心臓バクバクするよ…」

「俺が言うと……心臓が!?」

「え!?いやそういう事じゃないよ!?」

インタビューの時といい…焦凍君の天然が連発してる……

「フフ…いつか本当のインタビューが来たら、しっかり答える様にしておかないとね」

「ああ…そうだな」



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第73話

side立希

12月25日。今日は―

『Merry Christmas!!』

クリスマス。寮のロビーにて、盛大に祝う。全員サンタ服を身に纏う。帽子の先っぽがそれぞれ皆の特徴に合うデザインが施される。勿論、自分と姉もサンタ服を着ている。因みに帽子の先っぽのデザインはカルデアマーク。

「聖夜だー!」

『カンパーイ!』

ジュースを飲み

「祝えー!」

『イェーイ!』

大声で祝いの言葉を発し

「飯だー!」

『美味しー!』

料理を食べる。

「サンタ呼べー!「りょうかーい」え゛マジ!?」

『おお!?』

「祝え!『アーチャー』!」

自分は令呪を掲げ召喚する。

「―ふぉっふぉっふぉっ、サンタじゃぞ。マスター、メリークリスマス」

『おおおお!?』

アーチャー、『アルテラ・ザ・サン〔タ〕』。サンタ仕様のアルテラが羊に乗って現れる。

「ほんとにサンタ!?」

「いやぶっちゃけ、サンタコスしただけ。」

「む、失礼な奴だなマスター……空を見よ。聖夜に祈りを抱く者であれば見えるはずだ。夜空を駆ける一条の虹を。メーメー鳴く羊たちの群を。そして大胆な衣装に身を包んだ、ちょっと風邪気味の、麗しいサンタの姿を……その名はアルテラ・ザ・サン〔タ〕。西方大王、星の紋章を持つ剣姫が数奇な運命からサンタクロースとしての使命に目覚め、はじめての体調不良(微熱)にも負けず立ち上がった、頼もしきクリスマスの英霊である。」

「トナカイ…じゃなくて羊…」

「もう衣装が薄いのには触れねぇぞ…」

「ふぉっふぉっふぉっ、しかし丁度いいタイミングで呼んでくれたなマスター。サンタからのクリスマスプレゼントを贈呈しよう」

「え、ホント」

そう言ってアルテラは羊―チェルコのモコモコに手を入れ取り出す。

「エミヤ、ブーティカ、タマモキャットが作ったクリスマスケーキだ。皆で食べるとよい。」

「おお!ありがとう!」

『やったー!ありがとうございまーす!』

「子供に夢を与えるのがサンタの使命。今更感謝なんて……はくちゅ!」

「(あ、やっぱり我慢してた)」

ちゃんと礼してから返した。

 

 

side立香

カルデアからのクリスマスケーキが来て尚盛り上がる。私は麗日ちゃん達と話しながら食べて飲む。

「―インターン行けって…雄英史上最も忙しない1年生だよ…」

「麗日と梅雨ちゃんの二人はまたリューキュウだよね」

「そやねぇ、耳郎ちゃんは?」

「まだ考え中。」

「立香ちゃんは?」

「私?CDFの日本支部。立希と一緒。」

「そっか。いいなぁ~身内に社長さんがいて」

クリスマス前に、先生からインターン再会の連絡が来た。私含め、皆それぞれどこに行くか模索中だ。

「(そういえば、ゴールドさんと会うの久しぶりかも。職場体験以来だし)」

「―おおい!清しこの夜だぞ!!いつまでも学業に現抜かしてんじゃねーー!!」

「斬新な視点だなオイ。」

峰田君が机をたたいて言い放った。

「まぁまぁ、峰田の言い分も一理あるぜ。ご馳走楽しもうや!」

そう言って出来立ての丸焼きの七面鳥を運んでくる砂糖君。

『料理も出来るシュガーマン!!』

「(…ま、今は峰田君の言う通り、楽しむか…)」

 

 

side三人称

その後、相澤先生と壊理が寮にやって来た。

「とりっくぉあとりとー…?」

「違う、混ざった」

『サンタのエリちゃん!』

皆同様、エリちゃんもサンタ服を着ていた。

「かっ可愛~!」

「似合ってるねぇ!」

それからクリスマスパーティーは大いに盛り上がる。

『~♪』

皆で歌い、皆で食事をする。そして最大のイベントは全員でのクリスマスプレゼント交換。プレゼントボックスにロープを括りつけ、それを一人一本ずつ取る。

『せーの!!』

そして一斉に引っ張り手繰りよせる。

「んだ…?メガネ……」

「バスケットボール!」

「おお…金塊……」

「ダンベル~~!」

「この服のデザインいいね!」

「蛙の鏡!サンキュー!」

「『水戸納豆カレー』!?箱だけで情報量が多すぎる!?」

「クロッキーノートと水彩色鉛筆!大事に使いますわ!」

「わっ!わ!お、お餅!」

「あ…あ!オールマイト…」

皆様々なプレゼントを見て色んな反応し、思う存分、クリスマスを楽しんだ…

 

 

side立香

「―ふわぁ…んー…疲れたぁ」

無事クリスマスパーティーが終わって、皆で片付け。それも今終わってもうやることはない。

「(はー…渡しそびれちゃったなー)」

実はもう一つクリスマスプレゼントを持っている。皆で交換するプレゼント用じゃない。私個人であげたいプレゼント。

「(いやまぁ、理由とすれば色々と、色々と!迷惑というかお世話?になったし?そのお詫び?お礼?感謝?ま、まぁそいういう感じであげたいなーって思っての事だったんだけど結局渡せる時間なかったし…) しょうがないか…」

綺麗にラッピングしたプレゼントボックス。これは部屋のオブジェクトにするとし―

「立香」

「っ!しょ、焦凍君!ど、どうかしたの!?」

いきなり後ろから呼ばれてびっくりした。反射的にプレゼントを後ろに隠してしまう。

「いや、廊下で何ブツブツ言ってるんだって思ってな…」

「ちょっと考え事してて…えーとそう!インターンの事!焦凍君は何処に…ってまぁエンデヴァーの事務所だよね?」

「…ああ。けど今回は俺一人じゃない。爆豪と緑谷も誘った。そっちはどうなんだ?」

「私?立希と一緒にCDFの日本支部だよ。ほら、職場体験で私の担当してたヒーロー」

「ああ…」

他愛無い会話…けど、これはチャンスだ。

「えっと…焦凍君はプレゼント交換。何だった?」

「砂糖が作ったキャンディーだった…かなり甘いやつだった…立香は?」

「私は口田君が厳選した動物動画のDVD。後で視てみる………焦凍君」

「何だ?」

廊下には誰もいない。一呼吸して…

「メリークリスマス。私から、焦凍君からのプレゼント…です」

背中に隠してたプレゼントを焦凍君に渡す。

「…………俺に」

目を見開いて驚いてる。普段見ない焦凍君の顔だ。

「…開けていいか?」

「いいよ。別に豪華な物じゃないし。」

綺麗にラッピングを剥がし、箱のフタを開ける。中から、スノードームが出てきた。

「それね、態々振らなくても底についてる機械が自動で振動起こしていつでも雪を降らせられるんだよ。」

「…………」

「えっと、これはその、焦凍だけのプレゼントというか…特別って言えばいい…かな?と、兎に角!普段お世話になってる焦凍君の為の!贈り物です!」

ちょっと自分でも何言ってるのかわけわかんなくなった。多分私の顔が赤い。

「(気に入ってくれるといいんだけど…) 「―とう」 うん?」

「ありがとう。すげぇ、嬉しい」

少し顔を俯かせた焦凍君。そして絞り出すかのような声で言ってくる。そしてその表情は…嬉しそうな顔だった。

「っ……どう、いたしまして!それじゃあお休み!」

「ああ…」

私はもどかしくなって直ぐに部屋に戻る。直ぐにドアを閉めてカギをかける。

「っ~~~はぁ~~~~~~……」

一気に緊張が解け、その場にへたりこむ。心臓がバクバクする。

「きんっっっっちょ~~~したぁ~~~~………でも、渡せてよかったぁ~~~~……ふふ」

ちゃんとプレゼントを渡せる事が出来た。安心したのか、この日の夜は直ぐに寝つけた…

 

 

side轟

「……立香」

立香から貰ったスノードームを見る。

―焦凍君だけの―

―特別って言えば―

「…………?」

この日だけ、少し寝つけなかった。



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第74話

自分の中の二次小説あるあるを書きたかった。


side三人称

冬休みまで残り数日。その前に立希と立香はサポート科に向かっていた。理由は戦闘衣装のメンテナンス。布とはいえ、細かな機械が埋め込まれ、それらに異常が無いかチェックする事にしたのだった。

「ダ・ヴィンチちゃんから説明書預かってたし、サポート科には機械弄りの得意な人達が豊富にいるから上手くメンテできるはずだよ」

「面倒だけど…自分の戦闘衣装だから…やるしかないか…」

多少機械いじりが出来る立希だが、立香は苦手な為、やる気が出て無かった。ぶつくさ言いながらも二人はサポート科のラボ室に入る。

「「失礼しま―「爆発するぞー!逃げろぉーー!!!」―へ?」」

カッ!

二人が入室すると同時、白衣や作業着を来たサポート科のメンバーが脱兎の如く出て行く。二人は逃げている面々に気を取られてしまい―

ボフン!!

背後―ラボからくる煙に襲われてしまう―

 

暫くして、そのラボ室の周囲に人だかりが出来上がる。なんだなんだ?という野次馬で来る人もいれば、何だ、またいつものか…と呆れながらも見に来た人もいた。

「また発目の失敗か?」

「いや、今回は違うっぽいぞ。」

「どっかのバカが個性実験を失敗したらしい」

「大丈夫なのかよ!?怪我人とか出てねぇのか!?」

「今それを調査中…あ、おい!人影が見えるぞ!」

『!』

今だラボから湧いてる煙の中から二つの人影が見えた。そして声も聞こえる。

「―げほっ!げほ!何?ここ何処?何でこんなに煙たいの?」

「―けほっ…今この体には悪影響すぎる…ここから出ないと…っ」

男性と女性の声。そして数秒後、煙たいラボから人が現れた。二つの人影の正体は―

「…ん?あれ?ここってもしかして…雄英高校!?うわーなつかしー」

それなりに高身長で黒髪。やや疲労感が見え隠れした、それなりにオシャレした男性と

「…てことは…あー、この日だったんだ…把握」

橙色の髪を降ろし、ゆったり目の普段着を着こなし、状況を把握した女性が現れる。

「…あれ?姉じゃん。久しぶり」

「そっちこそ。まぁゆうて数日ぶりだけど」

雰囲気からして大人。そして会話から姉弟と分かる。だがしかしその場にいた全員は二人の事を知らない為…

『どちら様ぁあああ!?!?!?』

全員の心が1つとなり、ツッコミした。

 

『10年後の藤丸姉弟ぃいい!?!?!?』

「うわー皆の10年前の姿なつかしー」

「そうだね…皆ちっさい」

突如として現れた二人の男女。駆け付けた先生達と話をすれば、男性は『藤丸立希』、女性は『藤丸立香』と答え驚愕。取り敢えずの処置として、1-Aの寮のリビングのソファに座ってもらい、A組全員と会合する。藤丸姉弟の近くに座っていた相澤先生がなぜこうなったか説明する。

「あー…数十分前、サポート科のとあるグループが『時間』に関する個性実験をしていた。が、実験は数日かけての徹夜で行われており、メンバーの一人が疲労によっての実験操作ミス。つまり実験失敗した。その時に偶然、藤丸姉弟が出くわしたといったところだ」

「一体何でそんな開発してたんだサポート科…」

「…開発発端者が『1日24時間なんて足りなすぎる。24時間以上に出来ないか。』という非合理的な思想をした結果がコレだ…本来なら『1日48時間』だったらしいがミスによって『10年』に変化。そして時間を保持できる機械を作ってなかったため暴発。その結果が…」

「これだと…うん…」

『(アホすぎるだろ…サポート科…)』

「くだらねぇ」

A組全員そう思った。爆豪に至っては吐き捨てる。

「何で二人はサポート科に…?」

「えーと…確か戦闘衣装のメンテナンスをするって立香ちゃん言ってた!」

「あ、それ俺も聞いたぜ。立希が分厚い資料持って出掛けてたな」

緑谷の疑問に麗日と切島が答える。

「二人の証言通り、ラボには藤丸姉弟の戦闘衣装とその衣装の説明書が落ちていた。」

「ふ、二人は元に戻れないんですか!?」

上鳴がそう聞くと、相澤は頭を掻きながら微妙な表情をする。

「どうだろうな…前例が全くないからどうにも言えない…」

「あ、ちゃんと戻りますよ。相澤先生」

ここで、10年後の立希が挙手して答える。全員が立希を見る

「今は大体お昼過ぎなので…夜の7時ぐらいには10年前の自分と姉に戻れますよ。ね、姉」

「まぁ…そうですね。私らの記憶だと…うん」

『記憶?』

今度は皆立香の方を見る

「私と立希にとって、この体験は『10年前に経験済み』って事。大人の私達…というよりは10年前の私達が今まさに経験してる…って言えばいいかな?」

「…!そうか!この時代の藤丸姉弟は今『10年後の世界』に入るって事か!」

「正解。相変わらず頭の回転早いねー」

緑谷の答えに立香は頷く。

「えっと…じゃあつまり、入れ替わってるって事なのか?俺達の知ってる藤丸姉弟は10年後の世界にいるって事なのか!?」

『ええええ!?!?』

瀬呂の言った事に皆驚愕する。

「あー…うん。だろ……実は『10年後の自分と入れ替わった』って事は覚えてるけど…『10年後の世界に行った』中身は全然覚えてないんだよね。」

『え!?』

「未来の私と入れ替わってたって皆から聞いたし…まぁ過去で大丈夫だったなら問題ないでしょ」

「楽観視してないか!?」

「大人の余裕と言って。」

「…ま、まぁそういうわけで。相澤先生、10年前の自分達は問題無く戻ってくるので何も心配ありません。」

「…わかった。大人になったお前らがいうんだ。信用しておこう…さて、俺はまだ仕事がある。後はお前ら好きに話でもしてろ」

「お疲れさまでーす」

「…10年経っても変わらんな。お前ら姉弟…」

そう言って、寮から出て行く相澤…その姿が見えなくなった瞬間

「おおー…10年後の立希か!」

「何かかっこよくなってねー!?」

「そうかな?ありがとね」

「10年後の立香ちゃんきれー!」

「何かこう…如何にも大人の女性って感じ!」

「んー?それは褒めてるの?」

一気にA組全員が二人を囲むように集う。

「はいはーい!10年後って事は、俺達の10年後も知ってるって事だよな!」

『おお!!』

上鳴の発言に皆は沸く。が、藤丸姉弟は少し困った表情をする。

「あー…うん。知ってるよ。知ってるけどー…詳しくは教えられないかな?」

『え!?』

立希の言葉に全員ショックを受けた。折角己の未来がどうなってるか知れるのに…と考えていた人達がいた

「『パラレルワールド』。未来は不確定要素のが多いからね。私達が言った事がこれからさき本当に起こるか分からない。仮にここで未来の技術を教えて、本当にこの時代で出来ちゃったら私達の未来で何らかの影響が及ぼされる…だから言えない。」

「成程…もしかしたら藤丸姉弟の生死に関わる事になる…という事ですわね」

「そゆこと。相変わらず博識だね。ヤオモモ」

「り、立香…?」

立香は八百万の頬なでる。

「詳しくは言えないけど…その頭のよさでヤオモモは多くの人を救ってたよ。勿論、私もその一人。そのままいっぱい知識を蓄えて。けっして無駄じゃないから」

「…ひゃ、ひゃい……」

立香の褒め言葉に八百万は頬そめ、その場に膝を付いた

「モモちゃんが堕ちた!?」

「大丈夫!?ヤオモモ!?」

葉隠と耳郎が八百万を支える。当の本人は顔が真っ赤になっていた。

「な、何ですのこの胸の高鳴り…お母様に褒めらた時と全く違うのですわ…」

「おい何か危ない世界に入る寸前じゃね!?」

「これが大人の女性の魅力なのか!?」

ざわっとなるA組。一先ず八百万は別のソファに寝かせる。

「アハハ…でも詳しくは言えないけど、ざっくりとなら言えるよ。例えば…ミリオ先輩。無事復帰して、立派なヒーローになってるよ。」

「え!そうなの!?藤丸君!」

立希が言った事に緑谷は強く反応する。

「うん。ナイトアイさんの『予言』通りだったよ。それに…デクもいっぱい人を助けてるよ」

「ぼ、ぼぼ、僕も!?」

「すごいじゃんデク君!」

顔真っ赤になる緑谷。麗日がそう褒めると…

「ああ…!?デクが人をいっぱい助けてるだぁ!?クソありえねぇだろ!」

爆豪が否定して来た。

「おいバクゴー、否定は良くねぇぜ」

「そうだよー!というか10年経ってるんだし、皆ヒーローになってるなら人助けは当たり前でしょ?」

「うるせー!だったら俺の未来教えろやぁ…オールマイトを超えた№1ヒーローになってんだろぉ?ああ!?」

爆豪がそう言い吠えると…藤丸姉弟は顔をそらす

「あー…うん…爆豪君…ねー…」

「まー…うん…確かにスゴイヒーローにはなってたよ…うん。なってた」

「何だそのビミョーな反応!!」

曖昧な答えに爆豪はブチ切れる

「や、だってまさか…あーなるとは思わなかったし…」

「だよね…ああなって…まさかそーなるなんて本人も思ってなかったでしょ…アレ…」

『(未来の爆豪どうなってんの!?)』

全員がそう思った。

「い・い・か・ら教えろこのモブ姉弟!!!」

結局のらりくらりと躱され、分からずじまい。爆豪は不貞腐れ部屋へと戻って行った

「未来かー…そういや藤丸姉弟は10年後何してんだ?」

切島の質問に全員興味深々

「無事に自分らはヒーローになって、活動してるよ。10年も経ってるから、個性もかなり上達したし」

「まぁ、このくらいは大丈夫か…そうだね。召喚も『3人が限度』だったのも、今じゃ『6人』で増えたし」

「すごい強くなってる…」

「あ、けど姉は今、活動休止してるんだよね。」

「まぁねー…流石にこの状態でヒーロー活動なんて無理だし…」

「え?何かあったの?」

「ケロ、何処か怪我でも?」

芦戸と蛙吹が立香を心配するが、立香は首を横に振って否定する。

「怪我とかしてないよ。産休。」

『…………え?』

「…何?」

一瞬、静かになる。よくよく見れば、立香の腹部には…少しだけ膨らんでいた。立香はそのお腹を愛おしそうに撫でる。そんな立香に立希は訊く。

「判明してどのくらい経ったっけ?」

「5ヵ月。やーっと安定期に入って少しは楽になったー…」

『授かってらっしゃるぅううううう!?!?!?!?』

衝撃の新事実に全員大声を上げる。

「え、嘘、ちょ、まって…えーと…つまり…10年後の立香って…」

「この通り」

立香は今まで付けてた薄い生地の手袋を外し、皆に見せる。薬指には光輝く指輪が嵌っていた

『ええええええええ!?!?!?!?』

『きゃああああああ!!!!!!』

クラスメイトが結婚していた事にA組の男子達は驚き、女子達は歓声を上げる

「誰!?相手は誰なの!?」

「イケメン!?イケメンの旦那さん!?」

「さてどんな人でしょーねー?」

過剰反応する芦戸と葉隠に立香はやんわり受け流す。

「さ、触っていいですか!?」

「いいよ。まぁまだ動きはしないけど」

「わぁー…生命の神秘やー…」

「ケロ。めでたい事だわ♪」

立香のお腹を恐る恐る触れながら感嘆する麗日と蛙吹。

「一体誰と契りを交わしたのだろうか…藤丸姉…」

「………さぁな」

常闇の疑問に轟は反応する…が、どこか顔が険しかった。

「む、どうかしたのかい轟君。顔が怖いぞ?」

「……………さぁな…」

飯田にそう指摘され、轟は顔を伏せる。轟自身、何故か胸あたりがモヤモヤし、自然と拳を握っていた。

「………………」

そんな轟の姿を、立香は皆に気付かれないように見た。

「いやぁーホント、まさか姉が結婚するなんて思わなかったよ。人生何が起こるか分かんないねぇ…」

しみじみ立希がそういうと立香は呆れた顔で言う

「んな事いって、そっちだって交際して何年経ってるの?」

『え!?』

全員、今度は立希を見る。

「あ、あはは…2年…かな?」

「彼女さん待ってるんでしょ?そろそろ覚悟決めたら?」

「や、覚悟は決めて、今日答えようとしたら…こうなったんだよ…こうして指輪も用意したし…あ、やべ」

立希は懐から指輪の入った箱を取り出し、立香に見せたが、周囲にA組メンバーがいた事に気付き直ぐに隠したが時すでに遅し

『おおおおおおおお!?!?!?!?』

『きゃああああああ!!!!!!』

また男子達は驚き、女子達は歓声を上げる

「何だこのクソリア充姉弟ぃいいいい!!!!」

峰田が怒り散らす。

「あー…未来の峰田君にも言われたよそのセリフ」

「お前10年経っても変わんねぇのな」

「因みに私の知ってる限り、交際情報無し」

『oh…』

「何してんだよ未来のオレェええええええええ!!!!!」

慈悲の無い情報に峰田は嘆く。

「それより、相手は誰!?☆」

「流石に教えられないよ。恥ずかしいし。」

青山の問いに立希は苦笑しながら答える

「けど告白すんだろ!?頑張れよ立希!!彼女さんに漢気見せてやれ!」

「うん。未来の鋭児郎君にもそう応援されたよ…うん……戻ったら言う。」

『おおー!!!!』

立希の言葉に大いに盛り上がる。

「………………むぅ」

ただ一人、芦戸だけが不満顔になっていた。恋愛話に興味があるはずなのに、今だけは賛同できない自分がいた。

「………………」

そんな芦戸を立希は皆に気付かれないように見たのだった…

 

それからずっと10年後の藤丸姉弟と会話をする。何か記念に残そうと写真を撮るが二人の存在だけが映らない。食べる事ならよかったが、アクセサリー類は全て二人から透過し持ち運べなかった。よって二人が戻る時間までずっと談笑する…そして…

「19時まで…後2分…そろそろ戻る時間だ。」

「あー、楽しかったー。10年前の皆と会話出来たって10年後の皆に伝えておくね」

「立香!今日の事は絶対に忘れませんわ!」

「うん!お腹の子は大事にね!」

「ありがとー」

「ガンバレよ!立希!」

「フラれても、未来の俺達が励ますからよ!」

「うん。いい返事が来るように頑張ってみる。」

最後は皆に別れの言葉を言われる。残り1分。

「それじゃあ…最後に自分らも何か言っておく?」

「そだね…」

『おお!!』

「コホン…えーここにいるA組は、将来、立派なヒーローになってます。多くの人を助け、多くの笑顔を作ってます。」

「けど、その未来に辿り着くには…これから先、数多くの困難が待っている。もしかしたらその困難に絶望するかもしれない…けど」

「その困難を突破すれば、未来は皆が想像してる以上に明るく、光輝いてる!その証拠が自分と姉。」

二人の言葉を皆は聞き逃すまいと静聴する。

「…私は最愛の人と結ばれ、そして…新しい生命を身に宿せた…」

「…?」

立香は一人の男子に一瞬だけ笑みを送り、

「自分は愛する人…守るべき人を見つける事が出来た。」

「…ぇ?」

立希もまた、一人の女子に視線を一瞬だけ送る。のこり十秒。

「「だから。皆にはこの言葉を送る……希望ある未来に、更に、向こうへ!」」

『Plus ultra!!!』

全員、拳を天高く上げる。と、同時に19時ジャスト。藤丸姉弟から煙が放たれ、包まれる。

『!!』

「「……………」」

煙が晴れた頃には、そこには10年前の姿、つまり今の時代の藤丸姉弟が立っていたのだった。

「おー戻って来た!」

「良かった~じゃあ向こうも無事戻ったんだね!」

「お前ら姉弟凄かったぜー!」

ワラワラと姉弟に集まって各々言う。が、何故か姉弟の反応は無かった。

「立希?どうしたの?」

「…立香?何かあったのか?」

芦戸と轟がそう声をかけたとき、ようやくフリーズしてた姉弟が動きだす…

「「っ~~~~~~~!!!!!」」

というより、一瞬にして顔を真っ赤にし、顔を覆ってその場に蹲る。突然の行動に皆は困惑する。

「どうした藤丸姉弟!?」

「え、何!?未来で何があったの!?」

「…ナンデモアリマセン」

「…ナニモイイタクアリマセン」

『ええ!?』

その後、どんなに皆が質問攻めをしても…姉弟は頑なに未来の事は言わず、終始顔が真っ赤だった。

「(な、なんかわかんないけど…今は焦凍君を見るともの凄く恥ずかしい…!何で!?)」

「(言えるわけないじゃん!!三奈見たら鼓動が早くなって…何この気分!?感情!?)」

立希と立香はずっと悶えて続けるのだった…未来で何が起きたのか…




ifなので、確証はないです。


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第75話

毎回名前間違えてすみません。


side立希

時は経ち、新年。え?冬休み何をしたか?カルデアに戻ってのんびりしてただけ。ん?10年後の世界はどうしたか?さて何の事だか…というかあの入れ替わり事件(?)。次の日には未来の出来事の記憶が全く無いんだよね…姉の方も覚えてないとの事。まぁ脳や体に異常が無いし何も問題無い。後は…大晦日は全サーヴァントでのどんちゃん騒ぎだった…そんな大晦日を過ごした新年初日の朝。

「ふわぁ…ねむい…」

「同感…けどそんな事言ってる場合じゃないからね…ふぁ…」

新年初日からインターンが始まるため、いつもの時間に起床し、準備。既に学生服に着替え終え、荷物を持ち、外にでる準備をする。

「先輩!インターン頑張って下さい!」

「「行ってきます!」」

マシュに見送ってもらいつつ、日本支部のCDFまで転移する。

 

 

side立香

立希と共に、私達はインターン先である日本支部のCDFに着く。

「ようこそ!そして久しぶりだね!」

そこで案の定、ゴールドさんが出迎えてくれた。

「まずは明けましておめでとう。新年初日の大事な挨拶さ」

「明けましておめでとうございます。そしてお久しぶりですゴールドさん!八斎會に突入ぶりですね…」

「明けましておめでとうございます。私にとっては職場体験以来ですよね?」

「そうだね。けどこうして再会してよく分かる…君達二人が以前より成長している」

「「ありがとうございます」」

プロヒーローにそう認めてもらうとちょっと嬉しい自分がいる…立希も同じ心境っぽい。

「その調子でどんどん成長して立派なヒーローになろう!今日からまたビシバシ行くよ!」

「「よろしくお願いいたします!」」

さっそく私と立希は戦闘衣装に着替え、集合場所の会議室に入る。既にゴールドさんがいた。数冊の本を持って

「さて、インターンの内容は君達姉弟を今まで以上に成長させる事。その内容はズバリ―」

ゴールドさんは私達に指さし言う

「『コンビネーション』が良いと思うね」

「コンビネーション…ですか?」

立希がそう言うとゴールドさんは頷く。

「同じ“個性”を持っている。これほど良好な状態で連携を取れるなら負けなしだと思うね。ましてや姉弟。一緒にいる時間が多いんだ。究極的にはサインや言葉なしで互いの行動を把握し、隙が無い連携を取れるといいよね。それにお互いの欠点を補える。プロヒーローは一人じゃなく集団行動がほとんど。だから連携を取る事を学ぶに損はない。」

「成程…」

私は頷く。今までは英霊に戦いを委ねた戦法をして、最近やっと自身も戦えるようになった。ならもっと戦法を増やし、柔軟に動けるようにする。その為に、まずは連携―立希とのコンビネーションを覚える…

「連携を取るとして…その方法は?トレーニングルームでゴールドさんや他のプロヒーロー達と模擬戦で?」

「模擬戦はしない。実戦で覚えてもらうよ。」

「そんなに敵いますか…?」

立希がそう聞くと、ゴールドさんは頷く。

「…近頃敵が多くてね…猫の手も借りたい状態に陥っている…この『本』の影響で犯罪者が増えつつある。」

そう言ってさっきからさっきから持っていた本を渡してくる。タイトルは…

「『異能解放戦線』…?」

「あ、これ学校近く本屋の隅に山積みされてた本だ。」

「…最近この本を買う人が増えていてね…泥花市の市民抗戦で更に注目されて…俺が捕まえた敵の大半がこの本を所持して『解放せよ!』と吐き捨てる始末…」

「確実に裏で何者かが動いてますね…」

「うん。まぁそういう詳しい部分はプロヒーローの上層部が色々してるから…君達二人は連携を生かし、この本に感化してしまった敵や、犯罪者を捕まえる事!新年から忙しくなるけど期待してるよ!ルーキー姉弟!」

「「はい!」」

こうして、私達のインターンが始まる

 

 

side立希

インターン始まって1週間。兎に角自分と姉はヒーローとして何が大切で何が重要なのかを考えながら、ヒーロー活動に勤しむ。勿論、課題と出された『コンビネーション』。つまり連携をしながらだ。改めて言われ、意識すると難しい。いつもなら何となく『姉がこう動くなら、自分はこう動く』という思考の元で自分は動く。簡単に言えば、『姉が主体的』だけど今回は『自分も主体的』になる。そうなると分からなくなる。

「ちょ、姉、先行し過ぎ!?」

「え、ま?けど早いに越した事ないでしょ」

「そうだけどぉーー!!!」

こんな事があって自分と姉の歯車がかみ合わなくなって…結果的には大丈夫なんだけど…連携が取れていたかどうかと言われると…厳しい結果だ。

「―『救助』、『避難』、『撃退』この3つがヒーローに求められる基本三項。普通は“救助”か“撃退”のどちらかに基本方針を定め事務所を構える。」

パトロールしながらゴールドさんから教授される

「それじゃあ日本支部のCDFも?」

「詳しくは知らないが…まぁ“撃退”が基本方針かな?これでも自分は敵迎撃を中心とした立ち回りだしね。けど“救助”と“避難”をしないなんて事はしない。ヒーローは平和の象徴。誰よりも早く動いて、被害を最小にするよう立ち回り、解決する…とまぁ言うのは簡単だけどいざ実行となると難しい。けどやるしかない。やるんだ。」

「はい!」

…早く連携出来るようにしないとな…何か焦ってる自分がいる。姉もそうなのかな?

 

 

side立香

『異能解放戦線』…読んでみたけど共感しなかった…出来なかった。どの章もまるで偉大な功績のように書き記しているがどれもテロ。民衆、他者を巻き込んで、犠牲を出している。そのクセ、この本はカッコつけたがる。何度も出てくる『解放せよ』という文体が嫌になる。感想を言うなら『犯罪者が何を言ってるんだ』だ。

「(…けどこんな本を読んで動く存在…敵が現れる。)」

インターン始まって一週間。正直、立希と連携は取れてない。あの本を読んでからどうも心がざわつく。余裕がない気分だ。

「姉!」

「分かってる!」

今日も敵、犯罪者が現れる。連携の前に自身が強くならないと意味が無い。まずは…

「(『降霊』の憑依率を上げる。そのためには無意識下で、英霊達と交わるしかない。)『降霊:エミヤ』!」

―懲りない連中だ―

「同感!」

『エミヤ』と憑依。褐色肌、白髪に変り、両手に『干渉・莫邪』を装備。戦闘衣装にピッタリな赤いロングコートに類似した服をはためかせながら、逃走してる敵を追う。

「はぁっ!」

『干渉・莫邪』の柄を繋ぎ弓に変化。ドリル状の矢をつがい、放ち、犯罪者の動きを止める。

「―行くぞ!」

と、同時に私を横切るように立希が動く。私と同じような衣装を纏いながらだ。私は『干渉・莫邪』を、弧を描くように回転を加えて投げる。

「なんちゃって鶴翼三連!!」

前方にいた立希が両手に持っていたナイフと、先程私が投げた『干渉・莫邪』を使い犯罪者を斬り伏せる。

「ナイス。さっきの連携はいいんじゃない?」

「うん…まぁいいんだけど…何で姉が『エミヤ』となの!?同性なら『クロエ』でしょ!?」

改めて、立希を見る。褐色肌、桃色の髪、私とほぼ同じ衣装…『クロエ・フォン・アインツベルン』と『投影』してた。

「いや別にクロエと憑依するのは別に気にしてないよ!?けど何か違うでしょ!?」

「絆的にこれが最適解でしょ。連携取るなら常に最善の手が必須。無意識下で憑依をして、憑依率を上げた方が得策。」

「それはそうだけど…じゃあ何?『宝具』も発動できるぐらいの憑依(シンクロ)率上げる気なの?」

「将来的にはそうなるでしょ。今は出来なくても…それじゃ、戻るよ。」

「え、あ、ちょっと待って!!」

…少し焦ってる私がいる…落ち着こう……出来る事が出来なくなるから…

 

 

side三人称

今回は少し遠出。ゴールド、藤丸姉弟は保須市よりも都会な場所でヒーロー活動だ。

「それじゃあ、今日も一日頑張って行こう!」

「はい!」

「支部から大分離れましたけどいいです?」

「問題無いよ。自分以外にもプロヒーローはいるから―「ひったくりよー!」っと!早速―」

ゴールドが藤丸姉弟に指示しようと振り向いた時既に動いていた。既に声が聞こえた方へと動いていた。これにはゴールドは目を見開いて驚き、直ぐにゴールドも動く

「全く…将来が楽しみだ…っ」

対して藤丸姉弟。『ひ』という言葉から直ぐに動いた。

「(『投影:アタランテ』!!)」

―獲物は逃さん―

立希―マギは『アタランテ』と憑依。金と緑の髪、緑の瞳と変化し、『天穹の弓』を装備する。憑依し終えたマギは地に足をつくと同時に一気に加速する。

「(『降霊:ロムルス=クィリヌス』!!)」

―降臨である―

立香―メイジは『ロムルス=クィリヌス』と憑依。褐色肌。青い髪、赤い瞳となり、そして黄金の籠手を装備し駆ける。

「(まだ…私は…)行けるっ!」

―ローマ!!―

憑依したメイジだがマギより多少遅い。そのためメイジはロムルスと憑依率を底上げ。背中から黄金の翼を生やし、足から赤色のエネルギー波を噴出。マギに追いつき、追い抜く。

「(はっや!?だったら自分だって!!)」

―いいだろう!―

マギもまた、憑依率を底上げ。アタランテの獣耳と獣尾を生やし、今まで以上の加速をする。そしてマギとメイジの視界にバイクに乗って大量のハンドバッグを所持したひったくり犯と思われる人物を視認。マギは矢をつがい、メイジは片手に赤いエネルギーで象った槍を放とうとした時―

「―ム!?」

「ぅえ?」

「え゛」

横からエンデヴァーが登場。そのまま『炎』を使った推進力でひったくり犯にラリアットし鎮圧する。

「エンデヴァー…って事は…―」

マギがそう言いこぼすと同時、遅れてヒーローが3人やって来る。

「あ゛?んでここにテメーらがいんだぁ!?」

爆豪

「藤丸君と藤丸さん!?」

緑谷、そして

「立香、立希…そっちも一足遅かった感じか…」

轟。

「焦凍君…あー…そう言えば3人のインターンって確かエンデヴァーの下で…」

偶然にも、5人はインターンで鉢会うのだった…



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第76話

side立希

「ふぅー…今日も疲れたぁ…姉、お疲れさん」

「そっちもお疲れ」

インターン最終日。何事も無く無事に全過程が終わる。今日は活動中に緑谷君、爆豪君、焦凍君の3人に出会った。休憩時に少し話したけど…エンデヴァーから『1回でも早くエンデヴァーより敵を退治する』という課題が出されて躍起になってるとの事。3人も立派なヒーローになる為頑張っている。戦闘衣装がボロボロになるぐらいそれぐらい一生懸命に…そんな3人を見て、自分と姉も今まで以上に張り切ってしまった。ちょっと疲労がいつもより多い…

「お疲れさん。藤丸君、藤丸ちゃん。後は自分らが対応するからゆっくり休みなさい。」

「はい…」

自分と姉は支部に帰ろうと立ち上がった時、姉のスマホから着信が来た。

「…?焦凍君からだ…はい、もしもし………え、あー…いやいや、大丈夫。特に問題無いけど…うん…うん…じゃあ…立希も誘うから…うん。それじゃあ…」

焦凍君からの電話だったらしいが…どうにも浮かない顔をする姉。というか誘うって?

「何かあったの?」

「んー…焦凍君が…詳しく言えば焦凍君のお姉さんから夕飯を食べに来ないかって招待された。」

 

 

side立香

焦凍君から…冬美さんから招待された。折角招待されたし、立希と一緒に行く事にした。ゴールドさんに許可貰って、早速向かう。

「…あれ、そう言えば何で姉は焦凍君の家の場所知ってるの?」

「…さっき住所教えてもらったから。」

一回来た事あるなんて言えるか…今の場所からそれほど遠くないから直ぐに制服に着替えて歩いて向かい焦凍君の家に辿り着く

「でっかぁ…和風の豪邸だ…」

焦凍の家の大きさに驚いてる立希を他所に、着いた事を連絡しようとした時、黒い車が目の前で止まる。

「む。貴様らは…」

そして助手席からエンデヴァーが出てくる。

「…こんばんは…お誘い…ありがとうございます…」

「…ああ。ゆっくりしていくと…いい…」

…我ながら、ギクシャクとした挨拶…まぁ今までの事振り返ると当然の結果だよね…

「(やっぱり…苦手だなぁ…この人は…)「立香」あ、焦凍君。今夜は誘ってくれてありがと」

「ああ…冬姉も喜ぶ。」

「そ、そうかなぁ…?」

「でかー…」

「だよね。デカいよね…」

後ろの座席から焦凍君達が出てくる。緑谷君は家の広さに驚いてて立希がそれに共感してて…

「何でだ!?」

爆豪君は何か怒ってる…?この事言われなかったのかな?

「友達を紹介してほしいって」

「今からでも行って来いやっぱ友達じゃなかったってよ!!」

「かっちゃん…」

「まーまー落ち着こうよ。というか人の家の前で騒ぐのはマナー違反だよ?」

「っ………っ………」

立希からのごもっともな意見に歯ぎしりしながら黙りこくる爆豪君。偶に正論言うんだよね。この弟は…

「……………」

エンデヴァーは…只何も言わずに前に進む。なんか……

「どうかしたか?」

「ううん。何でも無いよ。」

気にしないように、私達は焦凍君の家にあがる。玄関には冬美さんが出迎えてくれた。

「ただいま。姉さん」

「お帰り!そして忙しい中お越しくださってありがとうございます。初めまして。焦凍がお世話になってます。姉の冬美です!」

「「お邪魔します!」」

「…お邪魔する」

「お邪魔します。」

「!藤丸ちゃんお久しぶり!元気にしてた?」

「あ、はい。あはは…」

私と目が合うと、冬美さんが笑顔で向かい入れてくれた。

「突然ごめんねぇ、今日は私のわがまま聞いてもらっちゃって…ふふ、(焦凍と仲良くしてくれてありがとね)」

「っ…」

「「「「?」」」」

冬美さんから小声でそう言われ、私は動揺する。落ち着け。落ち着け私…

「(あの子、あまり顔に出ないけど、藤丸ちゃんと会話すると少しだけ嬉しい顔してるんだよ?後クリスマスプレゼントもすごく嬉しかったって。家に来る手紙で書かれたよ。)」

「っ!?」

ちょ!?まっ!?焦凍君事細かに教えないでくれませんか!?恥ずか死ぬから!!

「?」

焦凍君をほんの少しだけ睨んだ。けど全然意味が無く、首を傾げるだけ…

「姉どしたの?顔真っ赤だけど…」

「な、何でも…無い…うん…」

「夏兄も来てるんだ。靴あった」

「うん。家族で焦凍たちの話を聞きたくて…」

冬美さんの案内で私達は居間に入り、そして夕飯をご馳走になる。どれも美味しそうだなも思った。隣に座っている立希にいたっては目を輝かしてる…風に見えた。家主のエンデヴァー―炎司さんが奥に座り、右回りで冬美さん、夏雄さん、立希、私、焦凍君、緑谷君、爆豪君の順に座る。

『いただきます!』

「食べられないものあったら無理しないでね」

「どれもめちゃくちゃ美味しいです!この竜田揚げ、味がしっかり染み込んでるのに衣はサクサクで仕込みの丁寧さに舌が―」

「飯まで分析すんな!!てめーの喋りで麻婆の味が落ちる!!」

緑谷君の分析じみた食レポに爆豪君が怒りつつ止めさせ

「うまい!うまい!うまい!とても美味しいです!ご飯が進みます!実家の厨房班といい勝負しますよ!」

「他所ん家の食事にそんな勢いよくがっつくな。」

私も私で立希の早食いを止めさせる。美味しいのは十分わかってるからそんな勢いよく食うな。こっちが恥ずかしい。

「ふふ、喜んでもらえて良かった」

そんな皆の様子を見て冬美さんは嬉しそうに微笑む。

「そらそうだよ。お手伝いさんが腰やっちゃって引退してからずっと姉ちゃんがつくってたんだから」

夏雄さんが食べながらそう言う。

「「成程」」

緑谷君と立希が満足そうに頷く

「料理かー…自分と姉も作れるけど最近全然作れてない…3人は料理する?つくれる?」

「つくれるわ!林間の時野菜刻んでたただろ!!」

「僕もそれなりに…一応入学前の体力作りの一環で一時期作った事があるけど…こうした料理はないかな?」

キレ気味に爆豪君が、爆豪君を宥めながら緑谷君が答える

「焦凍君は?」

「…そばなら」

「「「作れるの!?」」」

私、立希、緑谷君がハもった

「…がんばった」

やる事が違うなぁ…

「藤丸君と藤丸さんは?」

「自分の得意料理はオムライス!フワトロに作れるよ。三日月型にした卵をナイフで裂いてトロってかけるアレ」

「え、すごい!」

「私は…あんまりしないというか…強いて炒飯?」

「姉の炒飯はご飯がすっごいパラパラで味が染みてて美味しい。」

「へー!」

冬美さんに聞かれ立希と私は答える。すると、焦凍君が

「いつか食ってみたい。立香の炒飯」

そう言いこぼす。さっきの言葉何度も頭に再生され顔が赤くなる。

「い、いい、いつかね!うん!」

「おう」

「(ニコニコ」

すっごい満面の笑みだ…冬美さんが…

「料理は夏もつくってたじゃん。かわりばんこで」

「あー…どうだろ。俺のは味濃かったから…エンデヴァーが止めてたかもな…」

「………」

夏雄さんの発言に空気が変わった。さっきまで明るく、和気あいあいとした空気が一気に冷めた。

「…し、焦凍は学校でどんなの食べてるの?」

「学食で―「気付きもしなかった今度…」―「ムッ…」」

炎司さんと焦凍君の言葉が被る。

「……ごめん姉ちゃん。やっぱり無理だ」

「夏…」

雰囲気が悪くなった。夏雄さんはそう言って居間から出て行く。私達はただそれを見る事しか出来なかった。

 

 

side立希

居たたまれない雰囲気のまま、夕食が終わった。取り敢えずご馳走になったから食器洗い等の片付けをする。さっきまで笑顔だった焦凍君のお姉さんは浮かない顔になって、居間を出て行った焦凍君のお兄さんは何とも言えない表情をしていた。

「(色々過去が重いなぁ…)」

一応、焦凍君の過去については姉経由でざっくりと知ってる。こういうのってあんまり触れない方がいい…よね?

「(緑谷君達も知ってたんだ)」

「(え、うん。体育祭の時に教えてもらって…ていうかかっちゃんも知ってたんだ)」

「(は?俺のいるところでてめーらが話してたんだよ。)」

「(聞いてたの!?)」

「(それ盗み聞きじゃない?)」

「(るっせぇ!つーかよ~~~~~……)」

居間にまだある食器を取りに、入ろうとした時、冬美さんと焦凍君の話声が聞こえた。

「手伝わせちゃってわるいなぁ…」

「手伝わせない方が緑谷君達に悪い。」

「私だって夏みたいな気持ちが無いわけじゃないんだ…でも…チャンスが訪れてるんだよ…」

さっきの事についてだ。

「…焦凍はお父さんの事、どう思ってるの?」

「……………この火傷は父親から受けたものだと思ってる……お母さんは堪えて堪えて…あふれてしまったんだ。お母さんを蝕んだあいつをそう簡単に許せない……」

「(焦凍君…)」

「でもさ、お母さん自身が今乗り越えようとしてるんだ。正直…自分でもわからない。親父をどう思えばいいのかまだ…何も見えちゃいない」

色々、焦凍君も悩んで―

「客招くならセンシティブなとこ見せんなや!!」

「爆豪君!?」

ここで爆豪君乱入。空気を読まないで…いや読まない方がいいのか?ここは…

「まだ洗いもんあんだろが!」

「ああ!いけない!ごめんなさいつい…」

「あ、あの!僕達轟君から事情は伺ってます…!」

慌てる冬美さんを緑谷君が宥める。爆豪君はイラつきながら食器を片付けに動く

「晩飯とか言われたら感じ良いかと思うわフツー!四川麻婆が台無しだっつの!」

「えーと…ごめんなさい。聞こえてしまいました…」

自分らはいそいそと食器を片付けに動く。

「姉?どしたの?」

「…………焦凍君はさ」

「?」

「多分、許せるように準備をしてるんじゃないかな…?」

「え」

食器を片付けながら姉がそう言う。思わぬ答えに焦凍君は目を見開く

「本当にお父さんの事が嫌いなら、今みたいに悩まないと思うよ。『許せない』なら許さなくてもいいと、私は思う。でも、今、『許したい』って考えてる…うーん、待ってるって感じかな?」

「…何でそう、立香は思ったんだ?」

その問い、姉は微笑んで答える

「だって焦凍君、優しいから。ちゃんと許せるように待ってる。今はそういう…時間じゃないかな?」

「(待ってる…か…)」

少しだけ、ぎすぎすした空気が緩和した気がする…

 

 

side立香

食器を片付けた後、夏雄さんは早々に実家から出て行く。私達は居間で冬美さんと焦凍君から話を聞く。焦凍君達のもう一人のお兄さん―『轟燈矢』について。既に亡き存在だった。

「お兄さんが…」

「それは話してないんだ」

「率先して話すもんじゃねぇだろ」

緑谷君が言いこぼし、冬美さん、焦凍君が答える

「夏は…燈矢兄ととても仲良しでね…よく一緒に遊んでいた。お母さんが入院してまもなく頃だった…お母さんが更に具合悪くなっちゃって焦凍にも会わせられなくて…でも乗り越えたの。焦凍も面会に来てくれて…家が前向きになってきて…でも…」

「…夏雄さんだけがそうじゃない?」

「…お父さんが殺したって思ってる」

立希の問いに冬美さんが静かに肯定する。

「だからあんな面してたんか」

「……」

爆豪君の言った通り、食器を片付けてる時、夏雄さんとすれ違った。その時の顔は…何かを許せないといった表情だった。そんな暗い過去を聞いた私は…

「(………重い…重いよこの家族…どんだけ闇抱えてるの轟家…)」

一人で静かに沈んでいた。何も言えない状態になった時、炎司さんから学校に送る時間だと告げられた。

 

「ごちそうさまでした!」

「美味しかったです」

「四川麻婆のレシピ教えろや」

「竜田揚げの作り方知りたいです!美味しかったからエミヤ達に作らせる!」

「俺のラインで送ってもらうよ」

「学校のお話きくつもりだったのにごめんなさいね」

各々、私達は冬美さんにご馳走になったお礼を言う。既に家の前に車が止まって待機していた。それに私達は乗ろうとした時

「藤丸立香。」

「ぇ?あ、はい!?」

いきなり目の前に炎司さんが現れる。静かな視線で見てくる。

「……すまなかった。あの時、貴様の言葉を聞かずに勝手な行動をした。」

そう言って頭を下げて来た。

「えっと…あの時ってもしかして……」

「…焦凍と婚約しろ言った事だ」

「あ゛?」

「あ…」

「あ」

「あー」

「あー…あー…」

爆豪君、緑谷君、焦凍君、立希、冬美さんの順の反応。対して私は何も言えなく、顔が、体全身が熱くなる錯覚をする。

「…………あの…その…件は…忘れて…欲しい……です……ので……もう掘り返さないでくださいお願いします…」

何とか早くなる鼓動を落ち着かせながら話す。最後の方は小声で早口になったけど…というかこんな皆がいる所で話さないでほしいんですけど!?

「…俺を許してくれるのか?」

「許る、許さない問題じゃないです…もう過ぎた話です。というか私自身、本気でその話を受け取ってないので…ぶっちゃけ過ぎた話です。」

「……そうか。わかった……これからも焦凍と仲良くしてくれ」

「それもうとっくに言われてます。」

「…そうか」

そう言って車の助手席に座る炎司さん。さて……

「「「「……………」」」」

私を見ないでくれませんか?男子4人…というか焦凍君のその表情は何?悲しいのか怒ってるのかよく分からない顔なんだけど…緑谷君は顔を赤くしないで。爆豪君は興味無いねありがとう。立希はニヤつくな。後で殴る」

「自分だけ理不尽!?」

「あれ?声に出てた?まぁいいや。後で覚悟してて」

「理不尽な姉には逃れられなかった…」

「ふふ…♪(本当にこれからも焦凍の事よろしくね?)」

冬美さんは私に何させたいのですかねぇ!?ちょっと!?

「ケェーーーー!!!青春してねぇで早く乗れ!高校生共!」

「してません!!」

独特な雄叫びを上げるハイヤーさんに注意され、私達は車に乗って学校へと戻る…

 

 

side三人称

「フー…フー……い、いい、行く…かぁああ…」

皆を乗せた車が轟家から立ち去る所を見た何者。その人物の片手には注射器があった…



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第77話

姉弟を活躍させたい為に雑な敵を入れました。


side三人称

「フー…フー…」

轟家の近くの電柱に黒い影。その人物は荒い呼吸をしながら轟家を見ていた。

 

 

side立希

「―貴様らには早く力をつけてもらう。今後は週末に加え…コマをずらせるなら平日最低2日は働いてもらう。」

「前回、立希達もそんな感じだったな」

「うん。まぁその分予習と復習が大変だよ。」

「期末の予習やらなきゃ…轟君英語今度教えて」

「自分は…姉、国語よろしく」

「えー…じゃあ数学よろ」

「勉強しとけやモブ共!!」

車内にて。自分達の今後の予定を話す。

「って爆豪君窓から顔出し過ぎ!危ないよ!?」

何故か爆豪君が車の窓全開にして顔を外に出していた。

「っせぇ!つかNo.1ならもっとデケェ車用意してくれよ!!」

「だからってその対処?は何…」

確かに運転手合わせて7人。だから車内は少し狭く感じるけど…緑谷君の隣そんなに嫌なの?

「ハイヤーに文句言う高校生かー!!!エンデヴァー!あんたいつからこんなジャリンコ乗せるようになったんだい!!」

運転手がそう大声で文句を言う。アグレッシブな運転手だ…

「頂点に立たされてからだ」

運転手にエンデヴァーさんが静かに答える

「ケェーーーーーー!!立場が人を変えるってェ奴かい!」

「ケェーって何?」

「…ん?前に誰かいない?」

その時、姉が前の方に指をさす。自分らは前を見ると―

『!』

2人の人影。そして舗装された道路の白線が剥がされ、浮き上がって―

「良い家に!!」

「住んでるな!!ええ!?」

「「エンデヴァー!!!!!」」

「「「敵!!」」」

自分、緑谷君、爆豪君は同時に言う。敵は二人。一人は顔が横断歩道の様なメイクになっているスキンヘッドの男。もう一人は体全身にバリケードテープの様なメイクになっているスキンヘッドの男そして人影は二人だけじゃなかった。白線に2人が巻かれていた。

「「夏兄!(夏雄さん!)冬姉!!(冬美さん!!)」」

「「―っ」」

焦凍君のお兄さんとお姉さんが人質として捕縛されていた…

 

 

side三人称

「頭ァ!引っ込めろジャリンコ!」

運転手は声を上げ、敵二人から回避するようにドリフト。と同時にエンデヴァーは炎と戦闘衣装を纏い、車から飛び出す

『!?』

緑谷達も出ようとしたが、それよりも早く、『白線』が車の周囲に纏わりつき、出られなくなる。

「彼らを放せ!!」

「「俺らを覚えてるかエンデヴァー!!」」

エンデヴァーが拳を構えるが、二人の敵は捕縛してる夏雄と冬美を盾にしたため動きを止める。

「…………7年前!暴行犯で取り押さえた…!敵名を自称していた。名は…」

「そう!そうだ!」

「すごい!俺達を覚えてた!」

「嬉しい!そうだよ!俺達だよ!」

「『エンディング』」

「『オープニング』」

敵二人―エンディングとオープニングは嬉し涙を流しながら名を名乗し、そして夏雄と冬美を盾にしながら後ろに後退。その際、オープニングは近くの標識―『速度制限標識60』を視認と同時にエンディングを掴んで車並の速さで逃げる

「っ!」

直ぐにエンデヴァーは『炎』で追走する

「すまないエンデヴァー。でも分かってくれ」

「俺達がひっくり返っても手に入れられないものを」

「アンタは沢山持っていた!」

「憧れだったんだ!」

エンディングとオープニングは逃げながら大声で吠える。

「「俺達は何も守るものなんて無い!!」」

「この男を―」

そう言ってエンディングは『白線』の先端を夏雄に向け

「この女を―」

オープニングは手に持っていた標識を冬美の首元に添え

「「殺すからな!!」」

「―」

エンデヴァーは目を見開く

「頼むよエンデヴァー!」

「今度は間違えないでくれ!」

「俺を―」

「俺達を―」

「「殺してくれ」」

敵二人はケタケタを笑い、涎をまき散らしながら吠える

「ヒーローは余程の事でも殺しは選択しねぇ!」

「でもよぉ!あんた脳無殺したろ!?」

「俺達もあの人形と同じさ!生きてんのか死んでんのか曖昧な人生!」

「だから安心して!その眩い炎で俺達を―」

敵の会話が中断される。爆豪の『爆破』で車内から脱出したからだ。

「マテやクソ敵共!!」

そのまま爆豪は『爆破』で空を飛び、

「逃がさねぇ…っ!」

轟は『氷結』で道路の一部を凍らせ滑るように移動する。

「(『投影―』)」

「(『降霊―』)」

立希と立香も動く。立希は『アタランテ』、立香は『ロムルス=クィリヌス』と憑依し爆豪、焦凍と共に接近する。

「忘れ物だぞ!」

運転手がレバーを引いて後部座席から5人の戦闘衣装が入ったアタッシュケースを射出。

「かっちゃん!ショート君!マギ!メイジ!」

最後に車から出た緑谷が『フルカウル』で身体強化し、4人にアタッシュケースを投げ渡し、4人は受け止め、5人は取り付けれる戦闘衣装を装備する。

「夏雄兄さん!冬美姉さん!!」

「インターン生……」

「俺達の邪魔をしやがって…」

「俺達の死を仕切り直すぞ!」

「エンデヴァー(マイホープ)!!」

再びエンディングとオープニングは逃走を始める。そこをエンデヴァーは反応する

「(体勢を崩した!チャンスだ!今なら奴より速く―)」

動こうとしたエンデヴァー。その時、夏雄と冬美と目が合う。冬美は涙を流し、助けてくれと願う視線と表情。しかし夏雄は…恐れているような表情

「―」

エンデヴァーは動きを止めてしまう。

『!!』

そんなエンデヴァーの背後から5人が現れ、敵二人を追いかける。

「俺達の希望の炎よ!!」

「息子娘の命じゃあまだヒーローやれちゃうみたいだなぁ!!」

涙をまき散らしながら、エンディングは『白線』、オープニングは背中にあった『落石注意』の標識を構える。エンディングは道路にある『白線』を、オープニングは空中から現れた『岩石』を、大量に放つ。

「夏兄…冬姉を…―」

大量の『白線』に対し、轟は『炎』を足と腕に溜め、一気に放出。『白線』のほとんどを焼き払う。

「―返せ!!」

「仕留める!!」

同時に、降ってくる『岩石』は立希が『天穹の弓』で素早く矢を数本同時につがえて射出。空中で岩石を連続で貫き破壊する。

「まだぁ!!」

更に立希は矢をつがえ、今度は敵二人に向けて放つ。

「「!」」

エンディングとオープニングは避けるが、左右に別れ分断される。エンディングは一瞬歯痒い表情をしては、『白線』を動かす

「早く俺達を…殺さねぇから!!」

『っ!』

周囲に止まっていた車数台を『白線』で掴み、5人の方に放り投げる。更に、エンディングは夏雄と冬美を対向車側に移動させる。

「死人が増えるんだ」

オープニングはそう言うと同時、対向車側から車が来る。夏雄と冬美に車がぶつかる―

「させない!!」

「増えねンだよ!!」

―寸前。爆豪は凝縮した『爆破』、そして立香は地面に触れると同時に赤いエネルギーで象った槍を伸ばし放ち、一気に加速。夏雄と冬美が車にぶつかる前に移動。そのまま瞬時に爆豪は夏雄、立香は冬美を敵から奪い去るように、抱きかかえ救出する。

「『エア・フォース』!」

放り投げられた車。緑谷は空気の弾を地面に放ち、上空へ飛翔。そして

「―増えない、増やさないっ!お前らの望みは何1つ叶わない!!」

腕から最近発生した新たな個性、『黒鞭』を伸ばし、車に括りつけ空中キャッチ。壊すことなく地上に着地させる。

「ふざけ―「終わりだ!!」―違うぅぅぅ!!お前じゃあぁぁ…」

エンディングは動こうとしたが先に動いた轟の『氷結』によって拘束される。

「っ―」

それをみたオープニングは逃走。

「立希!」

「逃がすか!!」

「お前らじゃねぇええええ!!!!」

一早く反応した立香と立希。立希は矢を撃ち放つ。オープニングは近くにあった『方向指定標識』を視認し、自身に来る矢の方向を上に変えて直撃を回避する。

「なら…『解除』!『降霊:清姫』!」

―焦がします―

「!」

先程と同様に一気に加速して接近した立香は瞬時に切り替えて『清姫』と憑依。緑髪、黄の瞳となり竜の角が生え、白拍子を羽織る。

「シャアア!!」

そして手に持った鉄扇を大きく振るうと同時、扇型の炎がオープニングを襲う。

「アチィイイイ!?!?!?」

矢と違い、炎には形が無いためオープニングは方向を変える事は出来ずに食らってしまう

「くんなぁああああ!!!!」

「っ!?」

オープニングは『一時停止』標識を立香に翳す。すると立香の動きが急に止まり、これ以上攻撃が出来なくなる。がしかし、立香は慌てる事なく、むしろ笑みを浮かべていた。

「ナイス姉!『解除』『投影:子ギル』!」

―頑張ります!―

「なぁ!?」

立香の背後から立希が飛び出し、切り替えるように『子ギル』と憑依。金髪、赤い瞳となり、腰に金の部分甲冑、赤い腰マントを纏う。そして手をオープニングがいる方に翳し、握り潰すように動かす。

「『天の鎖(エルキドゥ)』!!」

「お前じゃなぁあああああい―ッッッ!!!!」

オープニングがいる空間から鎖―『天の鎖』が展開。そのままオープニングを拘束するように雁字搦めに纏わりつく。オープニングは解こうと動くが全くビクともせず、諦めたのか項垂れるのだった。

「敵捕縛!…戦闘終了……ふぅー…」

「夏雄さんと冬美さん…無事でよかったぁ…」

 

 

side立香

「冬美さん!大丈夫ですか!?怪我は…」

「…大丈夫…だよ。助けてくれてありがと。立香ちゃん」

敵一人の拘束を立希に任せ、私は冬美さんの元に行く。冬美さんを敵から助けたあと直ぐに別の敵を追うため歩道に置いてしまったけど…

「すみません…敵を追いかけるためとはいえ…地面に寝かせてしまい…」

「ううん!全然!大丈夫だよ!…敵はどうなったの…?」

「今は弟が拘束しています。」

私は立希がいるほうを見る

「ちがぁぁぁう!おまえじゃなぁあああい…ダメだぁああああ…」

「暴れても神性の鎖を断ち切ることは出来ませんよ…」

敵は拘束されても泣きわめいて暴れようとしていた。

「もう一人の敵は…?」

「もう一人は…焦凍君が捕まえていますよ」

別のところで、焦凍君は『氷結』でもう一人の敵は拘束していた。もう一人の敵は泣きわめいていた。

「夏雄さんも爆豪君が助けましたよ」

「夏雄…」

道路の真ん中にて、エンデヴァーは夏雄さんと話をしていた。私は冬美さんを引き連れ、彼らの元に近づく。

「-俺を許さなくてもいい。」

静かに、エンデヴァーは夏雄さんに言った。これを聞いた冬美さんは目を大きく開いていた。

「許してほしいんじゃない。償いたいんだ。」

「…体の良いこと言うなよ…!」

それを聞いた夏雄さんは涙を流しながら言う

「姉ちゃんすごく嬉しそうでさぁ…!でもっ……!あんたの顔を見ると思い出しちまう…」

「夏雄…」

冬美さんは今にも泣きそうになっていた。

「何でこっちが能動的に変わらなきゃいけねんだよ!償うってあんたに何ができるんだよ!」

「考えてる事がある―「「ああああああああやめろォオオオオ!!エンデヴァアアア」」」

「!おい」

「うるさっ!」

いきなり敵二人が吠える。

「何だその姿はぁああああやめてくれぇ!」

「猛々しく傲慢な火!!眩い光!」

「俺たちの希望がぁあやめろぉ」

「「消えちまうぅ違うやめろぉおお!!」」

そんな泣き叫びが町中に響いたとき、遠くからパトカーのサイレンが聞こえてきた。やっと警察が来る…

「希望…ね…そんなの希望なんてじゃない…」

私は泣き叫んでいる敵二人を見ながら、小声で言う

「ただ縋ってるだけだよ。」

 

 

side立希

「はぁー…まさか今日が終わる頃に敵が来るなんて…緑谷君お疲れ。爆豪君も」

泣き喚く敵二人を何とか警察に身柄を渡し、後処理を任せる

「うん。藤丸君もお疲れ。すごかったよ!藤丸さんとの連携!」

「まぁね。連携をとることがインターンの課題だったし…緑谷君だってすごかったよ。あの黒い鞭。B組戦と違ってコントロールできてたじゃん。」

「うん…まだ改善の余地あるけど…使えるようになったかも!」

そう言って緑谷君は手をぐっぱっぐぱ動かし、嬉しそうに笑みをこぼす。

「爆豪君も、さっきの爆破移動、すっごく速かったよ。」

「ったりめぇだろ!」

「かっちゃんインターンの課題クリアしたんだ!やっぱり要領は『徹甲弾-「るっせぇぞ!何で要領知ってんだよクソデク!」ご、ごめん…」

少し騒いでると、姉と焦凍君、そして夏雄さんと冬美さんが来る。

「姉、お疲れ。連携上手く行ったよね?」

「ん。まぁね。まぁこの連携具合をゴールドさんが見てないから本当に上手くいったかは分かってないけど…」

「またやればいいだけだよ。焦凍君お疲れ。敵の拘束大丈夫だった?」

「おう。立希もお疲れ…爆豪、立香。夏兄と冬姉を助けてくれてありがとな…」

「けっ」

「ううん。ヒーローとして当たり前のことしただけだよ。」

そして、冬美さんと夏雄さんが自分たちに深くお辞儀する。

「皆ありがと!」

「…ありがとう。」

 

その後、自分らは学校へと戻る。後日、姉経由で聞いたことだけど、轟家は別の場所に家を新しく建て、引っ越すことになったそうだ…けど、エンデヴァーは今まで住んでいた家に残るのだった…

 

 

side三人称

学校に戻る前…

「えっと…立香…ちゃんでいいかな?」

「え、あはい。何ですか?」

立香は夏雄に呼び止められる。何かあったのか立香は近づくと、夏雄は立香にしか聞こえないように小声で話す

「(焦凍の事、よろしく頼むよ。あいつ、結構君の事気に入ってるから…アイツの言ってた婚約抜きで仲良くなってほしい)」

「…っ!?え、ちょ、」

突然の事に立香は一瞬呆けたが、理解すると顔が真っ赤になる。それを見た夏雄は少し微笑む

「よろしくな」

「友達としてですよね!?はいわかりました!」

しばらく学校に戻る間、焦凍の顔が見れない立香であった…




敵の個性は『標識』。視認、触れた標識を扱う事が出来る。


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第78話

side立希

冬休みはあっという間に過ぎた。インターンの課題は無事に合格をもらい、姉と自分はヒーローとして強く成長したと感じる中、始業のベルが鳴る。怒涛の一年次も気付けばもう…

「(残り3カ月かぁ…長かったようで、短く感じる…)」

「明けましておめでとう諸君!」

HR。委員長の飯田君から朝の連絡がみんなに伝えられる

「今日の授業は実践報告会だ。冬休みに得た成果・課題等を共有する。さぁ皆スーツを纏いグラウンドαへ!」

自分たちは各々戦闘装束が入ったカバンを持ち、移動を始める。

「飯田君、空回りしてないね」

「だな。なんかインターンでつかんだんじゃね?」

「かもな」

自分は電気君と瀬呂君と一緒に飯田君を見ながら移動始める。肝心の飯田君は…

「-一週間ではあるが学んだのさ…物腰の柔らかさをね!」

そういってクネクネと自身の腰を動かしてた…

「あー…」

「空回り…」

「すぐチェーン外れる自転車みてぇ」

いつもの飯田君だった。この後更衣室で黒い鞭をコントロール出来、強いと言った緑谷君を不快と感じた爆豪君が血みどろにして大変になった…

 

 

side立香

更衣室で麗日ちゃんのホアアアな事があったけどグラウンドαに向かう。男子の方でもなんかあったっぽい…緑谷君の頭に爆豪君の衣装パーツ突き刺さってるし…

「わ~た~が~し~機だ!!」

グラウンドαに全員集うと、そこには綿菓子機を持ってわたがしを作っているオールマイトがいた。

『オールマイト!!』

「あれ?相澤先生は?」

「ヘイガイズ。私の渾身のギャグを受け流すこと水の如し…」

まだ冬か、それともオールマイトのギャグののせいか、寒い風が吹いた気がする。

「相澤くんは本当今さっき急用ができてしまってね。まぁ私一人でも大丈夫さ!HAHAHA!」

そういって作ったわたがしを皆に渡す。

「では予定通り!実践報告会だ!インターンのメンバー組で順番に成果を見せてもらおう!待ってる間はわたがしを食べながら見よう!」

 

実践報告会。単純に大量の仮想敵と対戦し、各々インターンの成果を見せることだ。やっぱり皆も成長している。コンボ、新技。手数と先読み。索敵強化。最短効率チームプレイ。物腰。円滑なコミュニケーション。総合力。決定力。予測と効率。底上げ、スピード、経験値…

「皆すご…各段に動きが違う…」

隣で立希が言いこぼす。私も同様に感じていた。

「素晴らしい!では最後に…藤丸少年・藤丸少女ペア!期待してるぞ!」

「「はい!」」

いよいよ私たちの出番だ。すでに視界の先に大量の仮想敵が待ち構えている。

「立香!ファイトです!」

「立香ちゃんガンバー!」

「立希負けんなよー!」

「一発でけぇの出せ!」

そんな声援を受け、私と立希はグラウンドαの中央に立つ。

「それじゃ、姉。」

「ん。」

そんなアイコンタクトで何をするか決め、構える。

「それでは……開始!!」

 

 

side三人称

『消えロ人類!』

『俺ガ!』

『俺達ガ!!』

『スカイネットだ!!!』

20もの大きさの異なる仮想敵が藤丸姉弟に襲い掛かる。まず5体が先方隊として突撃してくる。

「(『投影:トリスタン』)」

「(『降霊:ガヴェイン』)」

―踊りましょう―

―いざ、全てを白日の下に―

迫りくる敵に、姉弟は焦らず素早く英霊と憑依。

「炎よ!」

『ギャアアア!』

『溶ケルゥ!!』

『ガアアアア!』

立香は『ガヴェイン』と憑依。金髪、青い瞳と変化。そして白銀の鎧を身に纏い、装備した剣-ガラティンで仮想敵の数体を炎と共に切り上げて吹き飛ばす。

「ふっ」

『何…ダッ!?』

『見え…無イ…』

残りの特攻してきた敵は『トリスタン』と憑依した立希が対応。赤髪、金の瞳と変化。黒と銀の鎧を身に纏い、琴のような弓-フェイルノートで青閃の矢で射って破壊する。

『中々ヤルな人間!』

『散開!!』

残りの仮想敵は二人を取り囲むように立ち回る。完全に取り囲むと同時に再度襲い掛かる。

『カカレェ!!』

「『解除』!『投影:沖田総司』!」

「『解除』!『降霊:土方歳三』!」

―速攻でカタを付けます!―

―ここは新選組が引き受けた―

二人は瞬時に切り替える。立希は『沖田総司』と憑依し、白髪、ピンクがかったブロンドの瞳と化し、浅葱の羽織を身に纏う。立香は『土方歳三』と憑依。黒髪、黒い瞳と化し、洋装を纏う。

『姿ガ変ワッタ!』

『構ウもんカ!!』

『俺達ハ強イ』

『ヒャッハー!』

「邪魔っ!」

立希は刀-加州清光で素早く動き刺突と斬撃で仮想敵数体を切り伏せ

「うるさいっ!」

立香は刀-和泉守兼定で強引に切り伏せ、ロングライフルで仮想敵数体を撃ち飛ばす。二人の猛攻に取り囲まれた状況から突破。

『逃がスな!!』

突破され、仮想敵達は二人を追う。と同時に藤丸姉弟は仮想敵達がいる方に向きを変える。

「来て!『フォーリナー』!!」

「-いあ、いあ!ふふふふ……」

立香は令呪を掲げ、『アビゲイル・ウィリアムズ』を召喚。

「スキル発動!」

「お祈りしましょう」

『正気喪失』にて残りの仮想敵に恐怖状態を付与。すると仮想敵全員が動きが悪くなる。

『ナ…ナンだ…』

『こ、怖ェ…』

『アノ幼女は一体……』

「うふふふ…いけなぃ子たち…」

この隙に立希が令呪を高く掲げ、振り下ろす

「とどめ!!落ちろ!『ムーンキャンサー』!!」

「『パオーン』!!」

『ヘ』

立希は仮想敵の直上に召喚-『大いなる石像神』をそのまま落とし、残り仮想敵達を潰す。

『ニ…ンゲ…ン…』

『コ…ワァ…』

押しつぶされた仮想敵達はそう言いこぼし、壊れるのだった…

「「戦闘終了…ふぅ…」」

 

 

side立香

戦闘が終わると、皆から拍手される。

「素晴らしい!皆拍手!藤丸姉弟は合金ヒーロー ゴールドの下でインターンだった!」

「私達は『コンビネーション』を磨き上げ、それなりにものにし、英霊との憑依率も底上げして強化もしました。」

オールマイトが紹介してくる。私は破壊した仮想敵を見ながら、立希と何をしたか言う。

「すごいわマスター!後で私のパンケーキあげちゃうわ!」

「いやいや、こっちこそ。いつもありがとねアビちゃん」

さっき最後に召喚したアビちゃんに褒めされ、少し嬉しくなる。彼女の目線に会うように屈むと頭を撫でられ、ちょっと恥ずかしいけど、嬉しい。

「立香、その可愛い子は誰ですの?」

ヤオモモ…と、皆がやってくる。皆わくわくした感じだ。

「あー…アビちゃんだよ。『アビゲイル・ウィリアムズ』。」

「!確か…17世紀末、清教徒の開拓村セイレムで起きた『魔女裁判事件』。最初に悪魔憑きの兆候を示した一人!」

相変わらずのヤオモモの博識っぷりだ。

「おー久しぶりの八百万の解説だ。」

「でもよく分からん。というかさっきの連携すごかったな!」

「剣から炎だしたり!見えない攻撃を放ったり!」

「なんか新選組みたいな姿で敵をばっさばっさ斬ったり!」

皆ワイワイ盛り上がる。

「憑依したのは、姉が『ガヴェイン』、『土方歳三』、自分が『トリスタン』、『沖田総司』だよー」

『やっぱり新選組だった!』

立希が言うと、更に盛り上がった。と、そんな時だった。

「ちょ、マスター!スルーすか!?私の事、誰も気づいてないんですかぁーー!?!?」

『!?』

遠くで仮想敵を潰していた象の像から叫び声が飛んできた。

「なんだなんだ!?」

「なんか梅雨ちゃんに似た声だ…」

「ああ、ごめんごめん。忘れてたわけじゃないから。うん」

立希が象の像に近づいて像を叩くと、パカリと別れ、出てくる。

「全く…いきなり呼んだと思ったら…ボク、何かの格ゲーコマンドじゃないんすよ!」

…いつもの腹がでっぷりした姿のガネーシャが現れる。

「いいじゃん。『ガネーシャ』。この前言ってたじゃん。いつか召喚してくれーって」

「もうちょっと活躍が欲しかったっすよ!もぉー!!」

「が、ガネーシャ!?シヴァとパールヴァティーの間に生まれた象の頭を持つ…『障害を排する神』…っ!」

『神様ぁ!?』

ヤオモモが解説するとさっきより大声を上げて驚く皆。流石に神クラスとなると…うーん、神クラスの英霊と普通に過ごしてるから感覚麻痺してるなぁ…

「でっぷりな神じゃねぇか!!」

峰田君がつっ込む。それを聞いたガネーシャは胸を張って答える。

「ジナ……ガネーシャさんは孤高の神霊サーヴァントなので、主従関係とか嫌いッス。ボクは自由に、食べたい時にたべ、遊びたい時に遊ぶのです!故に!この姿をどう見られようが気にしないっス!マスターとも主従じゃなく友達みたいな感覚っス」

「だね。友情!」

「友情!」

立希とガネーシャはお互いグーサインを出す。そんな感じで私達は召喚した二人を返し、皆のインターン発表会が終わる。

「皆しっかり揉まれたようだね。録画しといたたから相澤君に渡しておくよ。引き続きインターン頑張ってくれ!更なる…向上を―」

そう、オールマイトが締めくくる。




第6期はまだ執筆が完了してません。漫画だけじゃ皆どんな動きをするか分からないので、多分アニメ見た後でがっつり書きます。故に…

次の話を書いたらしばらく書きません。


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第79話

劇場版は今執筆中。


side立希

その日の夜。寮の大広間で自分達は鍋の準備をする。

「どんどん切るよー!野菜足りるー!?」

自分は調理係。さくさくと野菜を斬る。隣では三奈が肉を切っていた

「うへぇ…ぬるぬるして切りにくい~」

「そうだねぇ…そのまま上からというより、斜めに切り下ろす感じのほうが切りやすいよ。こんな感じ」

自分は三奈の後ろに回って、腕を掴んで動作を教える…と、何故か三奈は固まっていた

「ぇ、ぁ…」

「?どうしたの?」

「…立希ってたまーに轟みたいな天然かましてくるよね…」

「???」

三奈の言ってる事が分からない。自分がエミヤに教えてもらったようにしただけなのに…

「何でも入れてよろしいなんて、素敵なお料理ですわね!」

「お茶っぱはよろしくないですわよ!?」

「それは闇鍋ですわよ」

少し離れたところで何か勘違いした八百万さんが麗日さんと姉に止められていた。

 

 

side三人称

「『インターン意見交換会』兼『始業一発気合入魂鍋パだぜ!!!会』を始めよう!!」

『Fooooooo!!!!!』

飯田の開口により、鍋パが始まる。各々いい具合に煮えた具材を取り、ジュースで喉を潤す。

「腹へったな」

「轟、ゴマの肉とって」

「カンパーイ」

「良い香りですね」

「いい肉使ってるからね」

「ウィ☆」

「ウェーイ」

「ッパァァアア!!」

「鋭児郎君なんて?」

「フゥ~~」

「キャー!」

「三奈ちゃん。危ないわよ」

「食べる~~~!」

「ホコリ立つから跳ねないの」

鍋パは大いに盛り上がる。

「それねぇ、まだ火通ってないよ!」

「態とやってるでしょ…」

葉隠が個性の『透化』で鍋を見えなくして、尾白が苦笑。

「くー!寒い日は鍋に限るよなぁ~~~!!」

「けど…あっつ!美味しいけど…あつつ!」

切島と立希は鍋のおいしさを堪能。

「暖かくなったらもうウチら2年生だね。」

「あっという間ね。」

「怒涛だった。」

耳郎、蛙吹、麗日が今までの事を振り返る

「君達!まだ約三カ月残ってるぞ!!期末が控えてる事も忘れずに!」

「止めろ飯田!鍋が不味くなる!」

飯田が喝っすると峰田が吠える。

「味は変わんねぇぞ」

「おっ…お前それもう天然じゃなくね…!?「皮肉でしょ。『期末 慌ててんの?』って」高度!」

轟の言葉に峰田はつっ込み、それを耳郎が付けたす。

「ポン酢入れると変わるよ。」

「そうか。」

「それでいいのかよ!?」

『ハハハハハハ!!!!』

立香が轟に薦め、峰田は更に突っ込む。それを皆で笑い合う。

「(ああ…いいなぁ…この感じ…)」

立希は鍋の具材をつつきながらそう思う。偶然にも、立香も同じことを思っていた。

「(カルデア…とは違う、また別の暖かい気分…数年前では考えられない出来事だ…今、こうして私や、立希がここにいる事…学校に通えるなんて思ってなかったし…立希も、私も…)」

立香はぼうっと皆を見ながら、つぶやく。

「恵まれたなぁ…「立香。どうかしたか?」ううん。何でもないよ。色々あったなぁ…って」

「…そうだな。」

轟に声を掛けられ、再び鍋パに戻る立香。そのまま1年A組のメンバーは鍋パを楽しむ。

 

 

side立香

「立香」

「?何、焦凍君」

鍋パが終わり、各々部屋に戻る時、焦凍君に声を掛けられた。

「さっきのパーティーの時、声かけても反応が遅かったから、何かあったんじゃないかって思ってな…」

「あー…さっきは何でもないって言ったけど、アレは嘘なんだ。」

「嘘…」

私は焦凍君に言う

「本当は…感謝してたんだ。この1年A組に。皆に出会えた事を。前の私ではありえない事だったんだー数年前までは…英霊の皆と、家族ぐらいだったし。」

「?…どういう事だ?」

「んー…これはばかり言えないかな?もちろん、立希に聞いても向こうも言わないと思うし。うん。(けど…いつか、教えるかもしれない。それを知って、焦凍君はどう思うのだろうか…)」

「そうか…俺も…立香に会えて…嬉しい。」

「…へ?」

唐突にそう言われ、私は目が点になった。

「…緑谷もそうだが…立香に、色んな事を言われて、色んな事に気付けた…だから…ありがとな…そして、これからも…頼む。」

「ぇ、ぁ、う、うん!こ、こちらこそ!」

バクバクと鼓動が速くなる。何とか返事して素早く部屋に戻る。

「天然って…コワぁ…」

勢いよく私はベッドに潜る。

 

 

side三人称

数日後。インターン再始動日。

「そろそろ春休みが終わっちまうな」

「今度のインターン遠征だって」

「あら本当ね」

「梅雨ちゃん達も?マジで?俺らも俺らも!」

「僕たちもその日遠征だよ!?」

「え~~~何だろうね!?」

「待ってウチも」

「俺もだ」

「同じく~」

「偶然…?じゃなさそうだけど…」

3月下旬。

 

この日-

 

―街からヒーローが消えた




それでは、アニメ第6期が放送終わるまで、お待ちくださいませ。もしかしたら、別の作品を書くかは…気分次第。


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第6期
第80話


お久しぶりです。もうアニメと漫画読みながら書いてます。
久しぶり過ぎて書き方忘れとるぅ…不定期投稿確定です。


side三人称

とある市街。いつもの日常。いつもの街の風景。しかし一つだけ『違う』ことがあった。

「……なんか今日…ヒーローいなくね?」

一人がそう呟く。普段は多くのヒーローが街の中を移動しているが、今日はそれが無かった。

「あ!いるじゃん!」

ようやく、ヒーローの姿があった。プロヒーロー、スライディン・ゴー。個性で滑りながら移動している…しかし、その彼の顔はどこか不安感があった。

「(どういう事だ…?)」

表向きは市街地を中心に活動するプロヒーローだが、裏では『異能解放軍』に協力者として所属している解放軍潜伏解放戦士。自分以外のプロヒーローが街にいない事に動揺していた。そんな彼の背後から―

「知らねェのは『お前ら』だけだ。」

「!?」

別のプロヒーローがスライディン・ゴーをがっしりと掴み言う。

「裏切り者の解放信者!!」

 

side立希

インターンが再始動。けど今日は普段のヒーロー活動とは少し…いや、かなり違かった。

「こんな所に…敵の本拠地があるなんて…」

群訝山荘。そこに一つの館が見える。情報によると、そこには敵軍隊長達が集い、定例会議を開いているらしく、それが今日、その館で行なわれているらしい。故に、この山荘にいるのは自分だけじゃなく、大人数のプロヒーローやクラスメイトがこの作戦に参加していた。今回のヒーロー活動は…『超常解放戦線の一斉掃討』だ。

「ふぅー…「緊張してんの?」まぁ、ちょっとだけ。けど普段通り動けるから問題無し。」

そろそろ作戦開始だ。一呼吸すると、隣にいた姉が話かけて来た。

「そっちこそ大丈夫?」

「別に。というかこういう空気はもう慣れっこだし…」

「…確かに」

誰にも聞こえないよう、小声で言う姉に、自分達は苦笑する。今までの事を思い出せばこの程度の空気感にはもう慣れっこだった。

「それに、私達はプロヒーローをサポートするだけだし、ミッドナイト先生が言うには直ぐに後方に回されるらしいから、やる事やって後はプロに任せれば何も問題無いよ」

「そだね。」

それでも少しは気を引き締めようと深く息を吸う―

「―何で俺が最前線なんスか!!?わぁーんみんなが恋しい!!A組が恋しいよぉおおおおおお!!!!!」

その近くで電気君が吠えていた。

 

side三人称

「―動いてる。」

群訝山荘。前衛側が動き始めた事を、後衛側にいた耳郎は『イヤホンジャック』で地面に刺し、音で確認する。近くにいたプロヒーローのインカムにも反応があった。

「今回…かつてない規模でヒーローが集まった。だからと言って決して気を抜くな。裏を返せば、これだけ集めなければならないほど敵は強大ということだ。」

後衛側にいる遊泳高校のA組、B組のメンバーは気を引き締める。

「常闇と藤丸姉弟はともかく…大丈夫かなー…」

「きっと大丈夫ですわ…!」

耳郎、そして八百はクラスメイトの調子を願う中、前衛側は別行動しているプロヒーロー達が蛇腔病院へ強行突破と同時に動いていた。

「みっ…皆といたいよー!!」

そんな中、上鳴は作戦が始まる前から不安がっていた。今も走りながら情けない声で叫ぶ。

「事前に了承してくれたじゃない。あなたの“個性”が必要なの。不甲斐ない大人を助けると思って」

「いや大人不甲斐ないとか思ってないっスもん!」

上鳴の不安をぬぐわせようとミッドナイトが話かけるが逆効果。

「まぁまぁ、電気君…じゃなくてチャージズマ。そう気負う事ないよ。普段通り、今まで特訓してきた事をすればいいんだから。」

「立希ぃ…けどよぉ…」

「ほらほら頑張れチャージズマ。いつものウェイウェイはどこに行ったの?元気が取り柄なんだからしっかりしてよ。」

「立香までっ…何でお前ら姉弟そんなケロっとしてんだよ!?」

立希と立香が笑みを浮かべながら上鳴を励ます。

「上鳴。お前とギターを爪弾く中で分かった事があるんだ。お前はすごい奴だ「今ギター褒められても!」違…」

常闇が励ましていると、遂に動きだす。

「開けます!!」

先頭を走っていたセメントスが館へ到着と同時に個性の『セメント』を発動。館の壁がうねり始め、一気に館を半壊させる。そして始まった。

 

ヒーローVS超常解放戦線!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

全面戦争!!

 

 

 

 

 

 

 

「―だから戦闘志向の敵を厳選してきた…!候補を用意するだけでどれ程の労力を費やしてきたか!」

蛇腔病院の地下。『殻木球大』は突如として来たプロヒーロー達から逃げ、機械を作動させる。

「(『ワープ(ジョンちゃん)』も『二倍(モカちゃん)』も失った今…ワシと死柄木はここから逃げる術を失った!!)…いや、『アレ』を使えば…?かつての助手が完成したと言ってペラペラ話していたアレを…」

その部屋の隅に置かれた『物』を見る殻木。しかし頭を振るう

「…いや、どうせ使えん!そもそも科学者であるワシがあんな偶像物に縋るなんて……!今はハイエンドが頑張ってくれている間に―」

殻木は画面の方を見る。そこには《定着率70%》という数字。そしてその近くには

『―――――――』

液体で満たされた巨大カプセルの中に死柄木が入っていた。




1~2週間に1話ずつ投稿したい…失踪だけはしたくない…


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第81話

ストック分をどうぞ


side立香

「―ハイ!幹部一名無力化成功!後衛に心配かけねー為にも皆さんパパっとやっちゃって!」

遂に始まった私達ヒーローと敵―異能解放軍との全面戦争。セメントスの先手が決まると同時、館から大勢の敵が襲い掛かる。

「最高だよチャージ!」

「さっすがチャージズマ!」

「かっこいいよー!」

「あざぁぁす!!」

さっきまで不安そうだった上鳴君―チャージズマが早速活躍した。敵が放ってきた大量の『電撃』を私達に当たらないように『帯電』で吸い、防いだ。

「『忍法・千枚通し』!!」

「フッ!!」

「『ウルシ鎖牢』!!」

次に敵が動く前に、エッジショットの『紙肢』。ミッドナイトの『眠り香』。シンリンカムイの『樹木』が襲いかかり、次々と敵を戦闘不能にしていく。

「地面が―」

「いいぞマッドマン!!」

「マジすか」

「ゲホッ!ガハッ!キノコなっ…!?」

「広域制圧はお任せノコ!」

そしてプロヒーローだけじゃない。骨抜君―マッドマンの『柔化』で大勢の敵を柔らかくした地面で沈ませ拘束し、小森さん―シーメイジの『キノコ』でキノコまみれにして戦闘不能にしていく。

「(キノコはやばい。喰らった事あるからよく分かる…)」

「凄いぞシーメイジ!後は任せろ!我々が総力で中枢を叩く!」

ギャングオルカを筆頭に次々と敵を無力化し、半壊した館へと入る。

「マギ!メイジ!こっちだ!」

「「了解!」」

当然、私と立希も前に進み、ゴールドさんに呼ばれ直ぐに合流。そして移動しながら指示を聞く

「情報によれば地下の巨大神殿に敵が大勢集まっている!地上に上がる道は外にいくつかあるがそれは事前に潰した。残ったのは屋敷内の5か所!その内の一つを封鎖する!!」

「セメントスの個性射程外の通路ですね!」

「それじゃあ…久しぶりに呼びますか…!」

立希は英霊と憑依し始め、私は英霊を呼び出す―

 

side三人称

館内にいる敵達は強襲してきたヒーローに翻弄されるが、タダでは負けない。直ぐに応戦し、構える

「通路を護れ!」

「死守しろ!」

敵達の後ろには地下へと続く通路があった。ヒーロー達に壊されないように各々“個性”を発動させる。

「そうはさせるか!『必殺・ゴールドスプラッシュ』!!」

「あ、網!?」

「お、重ぇ…っ!!」

“個性”の攻撃が来る前にゴールドは『黄金ボール』を大量にスリリングショットで放つ。黄金ボールは網状へと変化し、敵達に覆いかぶさり、網の絡まりと黄金の重さで行動不能にさせていく。

「『投影:鬼一法眼』!!」

―かんら、からから!―

マギは『英霊憑依』で応戦。白髪へと変わり、片手には巨大扇―『てんぐの扇』を持つ。そのまま跳躍し、一回転した勢いで扇を地面に叩きつける。

「どりゃあ!」

『どわぁあああああ!?!?!?』

扇で巻き上がった風は一瞬竜巻を発生させ、ヒーロー達の前にいた敵達を吹き飛ばす。

「メイジ!任せた!」

「やっちゃえ!『バーサーカー』ァ!!」

「―■■■■■ーーー!!」

通路の守備が手薄になった瞬間、メイジは『バーサーカー』、『ヘラクレス』を召喚。ギリシャ神話二大英雄のひとり。巨体と岩のように黒い肌が目を引く偉丈夫の姿が現れる。

「Go!!」

「■■!」

メイジはヘラクレスに指示を出すとヘラクレスは正面突破する。片手に持つ大剣を振るい、一撃で大量の敵を薙ぎ払う。

「なんだアイツはぁああ!?」

「止めろぉ!!」

「■■■■■!!!!!」

敵は完全にヘラクレスを狙う。電撃、炎、氷、斬撃、岩、音波…ありとあらゆる攻撃をヘラクレスに浴びせる。

「■■!■■■!!」

『はぁ!?』

しかし、ヘラクレスはそれらを浴びても一歩も止まらなかった。狂化故の肉体強化。そして―

「スキル発動!行きます!!」

「全員離れてくださーい!!!」

メイジがヘラクレスにスキルを発動させると同時、マギが他のヒーロー達に巻き添えにないよう避難指示を飛ばす。

「■■■■■!!!!」

『勇猛』にて自身を強化したヘラクレスは敵もろとも、通路を大剣で一撃、二撃、そして両手で持った三撃で破壊する。その破壊力は館の周囲全体を震わせる威力だった。地震が来たかと錯覚するぐらいだ。

「す、すげぇ…」

「プロヒーローの立つ瀬が無いな!!?」

これには周囲のヒーロー達は驚く。同時刻、地下神殿講堂内では…

「ぐっ…」

「リ・デストロ様!!」

別の地下通路を常闇の『黒影』の『終焉(ラグナロク)』に破壊され、その攻撃で吹き飛ばされたリ・デストロ。

「なっ…!?隠し通路が…!!」

その数秒後、メイジ―ヘラクレスが破壊した衝撃が地下にいた敵達に襲いかかる

『!?』

ヘラクレスの破壊力は通路だけでなく、地下全体の床、壁、天井にヒビを走らせ、瓦礫の雨を地下内に振らせる。これには敵達は戸惑い、騒然とする。

「っ~~~~~~~!!!!」

リ・デストロはこの事に更にストレスを感じ、全身を黒く染める。

「ふぅ…通路封鎖完了!」

「■■!」

「いや破壊じゃね?破壊だよね?」

地上。良い笑顔のメイジとグッドサインを送るヘラクレスにマギは真顔でツッコんだ。  




なんやかんや80話も書いてたのかぁ……
お気に入り登録やら読んでくれて感謝です。


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第82話

ストックが無くなるぅ…


side三人称

館の一室。ホークスはトゥワイスに『剛翼』の風切羽の先を向け、動きを止める。今まで解放軍のフリをし、スパイ活動をしていたホークス。そんな彼を味方だと信頼していたトゥワイスは裏切られ、怒り、悲しむ。

「―ただ皆の幸せを守るだけだ!!」

「連中に伝えとくよ」

叫ぶトゥワイスに無慈悲の一撃を食らわせようとするホークス…その時、『蒼炎』がホークスに向けて放たれた。

「…!!」

「伝えなくていいぜ!聞こえてる。俺に気付いてなかったろ!?」

突然の事にホークスは地面に転がるように緊張回避。しかし炎によって翼は燃える。そんなホークスの顔を脚で踏み止める存在が現れる。

「絆されてんじゃんかヒーロー!」

その人物―茶毘は妖しい顔を浮かべながら『蒼炎』を放つ。

 

side立香

「どけどけファッタクのお通や~!!」

通路を封鎖(破壊)した後、ファットガムの指示に従い、私、立希、上鳴君、常闇君、骨抜君、小森さんは後衛へと下がる。今はファットガムが私と立希以外を『脂肪吸着』の脂肪に入れ、運んでいる。私達は…

「■■■!」

「意外とバランス取れていいなコレ…」

「これからこの移動方法もいいかも…」

ヘラクレスの肩に乗り、押さえてもらいながらファットガムと同じ歩調で移動してもらっている。

「藤丸ちゃんその人?誰!?」

「またすんげぇの呼んだな!?」

小森さんと上鳴君がヘラクレスを見て驚いていた。

「ヘラクレスだよ。聞いたこと無い?」

「確か、ギリシャ神話の大英雄だよね。アルゴノーツとしての航海、巨人族とオリンポスの神々との戦いなど数多の冒険を繰り広げ、その全てを乗り越えたとか…言っててスゴイな…」

ヤオモモがいない代わりに骨抜君が博識を見せてくれる。流石推薦入学者…

「またメッチャスゴイ人呼んだな!姉弟揃って活躍して羨ましいわ!!」

「凄いのはヘラクレスですよ。やったね褒められたよ」

「■■■!!!」

ファットガムの賛美にヘラクレスは吠える。どこか嬉しそうな感じ…

「それにしても、もう後ろに下がるのか…」

「本当にもう後衛回っていいんスか?」

「同意」

「俺らまだやれますぜ!!」

立希がそう呟くと、上鳴君達はまだ戦えるという意気込みを訴える。しかし、ファットガムは首を振る。

「君らを始めとした広域制圧“個性”で相手の初動を挫く!したら包囲網を狭めてく!そうやってじわじわ潰すんや。」

「…そうなると広範囲攻撃はかえって狭めた所だと足手まといになるから…」

ファットガムが説明に姉が理解する。

「せや!君らの力借りんのはここまでや!それに君らはヒーローとて生徒!いつまでも危ない所にいさせるわけにはいかへん!」

そう説明されながらもどんどん館から離れていく…そんな時、館の壊れた窓から一瞬、青い炎が見えた―

 

side三人称

「あかんツクヨミ!出たらあかーーーーん!!」

群訝山荘前線より30m後方にて、藤丸達を後方に運んでいたファットガム。その時常ツクヨミ―常闇が突如ファットガムの脂肪から抜け出し、空へ飛翔する。

「常闇君!?」

「何してんだバカ!!」

突然の行動に立希と上鳴は声を上げる。常闇は危機感じている表情をしていた。

「最上階!ホークス!恐らくピンチだ!」

「ホークスが―!?」

ファットガムが、皆が止める前に、常闇は館の方へと飛び去って行く。ファットガムは放置する事は出来ず、脂肪に入れて運んでいた上鳴、骨抜、小森を出し、常闇の方へと向かう。

「君らこっから走り!乗り逃げは許さへんでぇーー!!!」

ファットガムの姿が見えなくなり、残された5人と英霊1人。

「イタタ…いきなり何考えてんだ常闇…!」

「ど、どうするノコ!?私達も行くべきノコ!?」

「落ち着きなよ。僕たちが行ってもどーすることも出来ない。返って足手まといだ。」

焦る上鳴と小森に冷静な判断をする骨抜。ヘラクレスに乗っていた立香と立希は一旦降りる。

「骨抜君の言う通り、足手まといになるのはダメだし、ここは素直に戻るべきかな?」

「姉に賛成。大丈夫だよ。常闇の個性は強いし、敵はいるけどプロヒーローもいっぱいいる。無事戻ってくるさ。」

「…そ、そうだよな!よ、よし。後衛に戻って指示を待つか…!」

少し落ち着き始めた上鳴。急ぎ後衛へと行こうとした時、5人の頭上がふと暗くなる―

「!!回避!」

「ヘラクレス!!」

「■!!!」

「「「!!?」」」

―刹那、何かが皆の頭上に振って来た。先に反応したのは立希。その言葉にし立香は動き、二人は魔術で肉体強化で回避。反応に遅れた上鳴三人は立香の指示でヘラクレスが3人を勢いよく掴み回避する。

「な、何!?」

先ほどまで5人がいた場所には、クレーターが出来上がり、煙が舞い上がっていた。そして、その煙の中から人が現れる。

「―おいおい、今の躱せんのかよ~ヒーローいなくなったから今のうちに気絶させて人質にして、ヒーロー達をフルボッコにするって考えていたのによ~」

『!』

そこにはタンクトップを着た敵がいた。直ぐに5人は戦闘態勢に入る。

「動きを止める!」

「キノコまみれになっちゃえノコ!!」

「お?」

敵が動く前に、骨抜は『柔化』で敵二人が立っている地面を泥のように柔らかくして沈ませ、小森は『キノコ』の胞子をばら撒く。

「無駄だっての―』

「「!!」」

しかし、敵二人は戦闘不能にはならなかった。突如、敵は体を変化させる。徐々に肉体を巨大化させ、肌は肌色から黒い鱗へ、背中から大きな翼、尻尾が生え、手足は鋭い爪が生え始め、顔はどこか恐竜染みた形へとなり、口から炎を吐いた。

『俺、強個性の『竜(ドラゴン)』にそんな弱個性効くわけねぇだろ~』

「「竜…!」」

先の攻撃の正体が分かる立香と立希。炎によって胞子は燃やされ、飛翔により泥を脱した敵。

「だったらこれならどうよッ……!!」

『ん~?うぉっ!?』

敵の体の一部に上鳴はサポートアイテムの『ポインター』を貼り付け、『帯電』した電撃を放つ

「130万ボルトをくらいやがれ!!『だから効くわけねぇだろォ~~!!!』なっ!?」

しかし、雷撃を受けても敵はひるまず、生えた尾で上鳴に向けて攻撃を仕掛けて来た。

「危ない!!」

「ヘラクレス!!」

「■■!!!」

「立香!わりぃ…助かった!!」

その攻撃を、上鳴に当たる前に、ヘラクレスが上鳴の前に移動し、大剣で受け流す。

「■■■!!!」

『おっと!危な~い!』

ヘラクレスは跳躍し、大剣を振るうが敵は難なく回避し、空中にいるヘラクレスに尾で叩き落とす。

「ヘラクレス!!無事!?」

「■■…■■■!!!」

地面に不時着するヘラクレス。立香の声に吠え、無事を伝える。立香は直ぐに指示を飛ばす。

「ヘラクレス!3人を後衛に運んで!!後は私達がやるから!」

「■………■■!!!」

「きゃ!」

「うぉ!?」

「ちょ…立希…立香っ!!?」

ヘラクレスは即座に行動。上鳴、骨抜、小森を抱え、後衛へと走る。

「お前らもバカかぁーーーー!!!」

上鳴が大声を上げるなか、ヘラクレスの抱えられた3人はどんどん遠くへと行く。残された立香と立希は竜へと姿を変えた敵を見据える。

『へぇ~たった二人で、俺を倒すってのか~?大勢の方がいいんじゃないの~?』

ケタケタと笑う敵に二人は睨む。

「冗談。むしろ多くいたら人質が多く取られて逆に不利になる。」

「ヘラクレスで倒すのもいいけど…それだと森の被害が尋常じゃなくなるし…それに、竜程度なら問題無い。」

『………は?』

問題無し。と立香の言葉に敵は少し苛立ちを覚えた。今までこの個性で人々を怖がらせ、あまたのヒーロー達を倒して来た彼にとって、その言葉は侮辱に匹敵した。

『舐めてんじゃねぇぞヒヨッコ共が…お前ら人質の前にズタボロに引き裂いてやるよ…!』

口に炎を纏わせる敵。しかしそんな敵を見ても立香と立希は焦らず、むしろ余裕だった。

「姉、アレだね『投影―」

「ん。竜にはアレだね『降霊―」

『燃えろッ!!』

竜からの吐く炎は森を炎の海へと化す―

―行くか―

―アハハ!―

『!!』

しかし、その炎は二つの剣劇で掻き消された。そして同時に、敵は自身の体に突如として違和感を覚える。

「―:ジークフリート』!」

「―:クリームヒルト』!」

二人の姿を視認したと同時、敵は恐怖する…

 

side立希

突如としてやってきた敵。だけど相手が『竜』になるなら、こっちは『竜殺し』になるまでだ。

「行くぞ!!」

『ジークフリート』に憑依した自分は栗色の髪と少し黒い肌へと変わり、手には聖剣にも魔剣にもなりうる黄昏の大剣―バルムンクを両手で持つ。そして敵目掛けて跳躍し、突き刺すように攻撃を放つ。

『っ…な、何だその武器…何でこんなにも震えるんだ……!?』

「(“個性”が本能的に危険だと察知してる…のかな…なら好都合だ!)どうした!さっきの威勢は!!」

まずは翼を奪い、動きを削ぐ!あえて単調な攻撃をして躱せた。竜が躱した方向には…

「ふふ…無様…ねっ!!」

『クリームヒルト』に憑依して白い髪と肌になった姉が、身の丈以上の大剣―バルムンクを両手で地面を抉りながら敵めがけて上へと赤黒い斬撃を飛ばす。

『ギャアア!?!?イテェ!!?何だこの痛さはぁあああああ!?!?!?!?』

姉の攻撃は敵の生えた翼を抉り、不時着させる。そして激痛に襲われ、のたうち回る。

「ナイス姉。と、クリームヒルトさん」

―流石だな―

―…何でしょう、ジークフリート様。愛してもいなかった妻にそのようなお褒めの言葉で私が喜ぶとでもお思いですかぁあああ!!!―

「クリームヒルトさん。言葉と行動が会ってないよ…勝手に憑依率上げないで…」

あ、なんか姉の頭に黒いリボンのような衣装と黒の手袋が追加された。

『ふざけるな…俺がこんな所で負けるはずがあぁぁ……!!!!』

息絶え絶えの敵がその巨体で自分と姉を見下ろしてくる。そしてまた口に炎を溜め始めた

『死ねぇえええええ!!!!!』

今まで以上の火力だが、もう無意味だ。自分と姉はバルムンクに力を込め、薙ぎ払う。

「―覚悟!」

「―さよなら」

青と赤の交差する斬撃は迫りくる炎を掻き消し、そのまま敵の腹に深く刻み込んだ。

『カッ―」

流石に、敵は痛みとショックで気絶し、竜から人の姿へと戻った。

―これもまた宿命か……―

―馬鹿馬鹿しいわね。ま、悪くはないけど―

「「ふぅ…」」

無事倒す事が出来、憑依を解除する。と、同時に姉が持っていた通信機が鳴る。

「はいこちらメイジ。どうぞー」

『立―メイジ!大丈夫ですか!?上鳴さん達から敵と鉢合わせお二人で足止めしてると聞いたのですが!?』

どうやら八百万さん―クリエティからの通信だった。

「今終わった所。敵が弱くて良かったよ。勝手な行動したのは悪いって思うけど、非常事態だったから…今からそっちに戻る。一応、プロヒーロー達にも言っといて」

『…分かりました。また敵が来るかもしれません。その時は応援を呼んでください。』

「了解」

と、通信を終えると、姉は一息つく。

「ふぅ…急に憑依率上がったから無駄に魔力消費した…ヘラクレスも3人を無事後衛に届けてから退却したし、私も後衛に戻って休みたい…」

「そうだね。早く戻って電気君達を安心させ―」

言葉が止まる。突如として館がある方から轟音と衝撃音が聞こえ、地面…いや、山一帯が揺れたからだ。

「「!?」」

自分達は直ぐに館の方を見る。そこには…

「オオオオオオ!!!!!」

巨大な敵が吠え、暴れていた。




時間軸調整が難しい…


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第83話

私「無いんですゥ~…もうストックはすっからかんなんですゥ」
友「書け」
私「か…書けといわれてもこれでは話が進めません…」
友「三人称で状況を把握すればよいないか…書け」
私「じょ、状況~?内容が多すぎて私の頭がオーバーヒートしちゃいいますよォォォ!」
友「関係ない、書け」

とまぁこんな感じで書きました(笑)


side三人称

蛇腔病院。その地下。事態は進んでいた。先行していたミルコは死柄木を入れたカプセルを一部破壊し、プレゼンマイクが完全に破壊し、殻木を拘束する。死柄木は息が無く、心臓が止まっていた…はずだった

 

―転弧の事応援してるから

 

―ヒーロー…まだなりたい?

 

―書斎に入ったな!?

 

―忘れないでね

 

 

 

 

―弔、おいで

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―寒い」

 

 

 

 

 

 

 

蛇腔病院周辺の街。その街一帯は対敵戦闘区域になる恐れがある為、緑谷達はプロヒーロー達と共に住民を避難させていた。各々個性や呼びかけをし、順調に避難させていた。そんな時、緑谷は足を止める。

―来るよ―

―止めるんだ―

「(この声…ワン・フォー・オール……初代の……)」

緑谷の体内に響く声。『黒鞭』以来、干渉が無かったのが、突如として反応し始める。

―人の枷から解き放たれし力の膨張―

―超越者が―

―来る―

緑谷は何かを畏怖する。そして、蛇腔病院の方を見た。そして目を見開く

「病院が―」

 

 

蛇腔病院の地下が―

 

 

蛇腔病院が―

 

 

山が―

 

 

森が―

 

 

道路が―

 

 

ビルが―

 

 

家が―

 

 

ヒーローが―

 

 

人々が―

 

 

ありとあらゆるものが『崩壊』していく。止まらない衝撃ではない。全てが塵となっていく。状況は一変する。ヒーロー達は住民を連れ『崩壊』から逃げる。

 

 

 

 

 

 

蛇腔病院…だった場所。

「いいね。『崩壊』が自由に操れるなんて…さて…状況は良くなさそうだが…俺が起きたら始めるんだったな」

蘇った死柄木は通信機器を拾う。

「おいでマキア。皆と一緒に今ここから全てを壊す。」

厄災が動きだす。

 

 

 

蛇腔病院より約80km群訝山荘。

「―おおおおおケツー!!」

ヒーロー対超常解放戦線の戦闘は過激。解放軍の一人、外典が”異能”『氷操』にて『巨大化』したMt.レディを吹き飛ばす。落下地点に偶然いたファットガムはギリギリ回避する。

「これ以上リ・デストロの邪魔をするな。楽に死ねると思うなよ国の犬ども!!」

外典を中心に解放軍たちが動きだす。そんな中、ホークスを救けに動いていた常闇はホークスを担ぎ館から脱し、

「あ!!ちょ待っ!「ファットガム!」―後衛に救護班が待機しとる!行き!」

それをファットガムが視認し、すぐに指示を飛ばす。

「あんたかぁ~!!超痛かったんだけど!氷嚢にしてやるわ!」

「レディに続け!!」

依然変わらず戦い続けるヒーロー、解放軍。そんな戦況を荼毘とMr.は半壊した館の上の階から見下ろす

「Mr.他の連中は?」

「荼毘!!どこ行ってた隊長だろが!」

「軍隊ごっこなんざ奇襲で機能してねえよ。逃げねぇのか?」

「トゥワイスが殺られた…多分な…そんで…止めたんだが行っちまった。あんなの自殺行為だぜ…トガちゃんがああも冷静さ欠くなんて…」

仲間―トゥワイスが殺された事により、トガヒミコも動きだす。ヒーローの一人に『変身』し奇襲。数人のヒーロー達をナイフで斬り倒す。

「生きにくい、生きやすい世界に、好きなものだけの世界に、邪魔ですヒーロー」

地響きと同時、トガヒミコの背後から巨大な片腕が地下から現れる。

「―主よ!!」

その片腕の正体―地下神殿講堂に眠り続けていたギガントマキアだった。主が目覚め、主の命を実行する為に起動する。

「何だコイツは!?」

「情報に乗っていた敵だ!!だが放置してもいい存在だったはず…ッ」

「コイツが動きだしたって事は…まさか病院側で―」

マキアが動きだした事に多くのヒーロー達は動揺する。直ぐに対応すべきだが、マキアの巨体と、周囲にいる多くの解放軍により、対応が遅れてしまう。その間にマキアは主の仲間である者達に手を伸ばす。

「わああ待って何やめて何する気ぃぃ!!?」

「落ち着けMr.」

マキアに掴まれたMr.はそのままマキアの背に乗せられる。そこにはトガヒミコもいた。

「死柄木が起きたな!鼻が効くんだっけか。それで俺らを!っと、待ってくれマキア!一人使いてぇ奴がいる!!」

マキアに掴まれる前に、荼毘は一人―スケプティックを捕まえる。

「ひゃ!?「一目見た時から良いなと思ってました」なんの話だ!?」

そのまま荼毘と共にマキアの背に乗せられる。

「待ったぞ主よ!!!今会いに行きます」

荼毘たちを乗せたマキアはそのまま館から飛び出し、死柄木のいる蛇腔病院方向へと移動を始める。

「―させるかぁああ!!」

それを止める為にヒーロー達が動く。Mt.レディがマキアを正面から受け止め、阻むがマキアは停止せず突き進む。

「レディを援護しろ!」

援護しようとするヒーロー達に氷柱が降り注がれる。

「うわぁ!氷の奴まだ―」

「何が起きてる!?もうメチャクチャだ!」

「何が起きようと!己の仕事に命賭すべし!」

外典の『氷操』を阻止すべくセメントスが『セメント』で攻防

「実に不愉快!!」

「そのまま返そう!」

マキアが掘った穴から地下にいた解放軍が出現。『ストレス』で筋骨隆々の黒い巨人に変貌したリ・デストロがエッジショット含め多くのヒーロー達が応戦する。

「ギガントマキアに続け!解放戦士達よ!ここより革命を始めよう!」

マキアが動きだした事によりヒーロー側の優勢が逆転する。解放軍たちがマキアの通った道に続く。

「もっと寄って!!」

「わかってます!!」

マキアを止めるべく、ミッドナイトを背負ったシンリンカムイがマキアの元へと急ぐ。

「んんばってますってぶぁ!!「主への”最短距離”」い゛―」

マキアを正面から止めていたMt.レディ。しかしマキアに片足を掴まれ、いとも簡単に投げられてしまう

「岳山ぁ!!!「よそ見しないで!!恐らく蛇腔側が失敗した!奴が街へ下りたら未曾有の大災害になる。力じゃ止まらない!」」

ミッドナイトは自身の戦闘装束の一部を破り、いつでも“個性”を出せるようにする。

「私を奴の顔まで連れてって!!」

「っ!」

そしてマキアの直ぐ傍まで接近で来た時、突如マキアの背中から『蒼炎』がシンリンカムイとミッドナイトを襲う。

「―な?」

荼毘である。ヒーロー達がマキアの背にいることを隠し、虚を突いた攻撃だった。しかし、荼毘たちの存在に一瞬早く気付いたシンリンカムイ。身を挺しミッドナイトを守り、マキアの直ぐ横まで移動させ回避させる。

「(連合が背中に…!!けど…)っ!!」

“個性”を使おうとしたミッドナイト。だが届かない。突如目の前に現れた『瓦礫』に阻まれる。それをしたのは

Mr.だった。

「くそ―」

「ヒーローをナメるなよ!!?」

瓦礫で地面に落下。不時着したミッドナイトだが、思考は止めない。

「(アレを止めれる個性…マジェスティック…いやダメだ大きすぎる…!!)ホント…不甲斐ない…」

ミッドナイトは通信機器を作動。繋げた相手は…

「―聞こえるかしらクリエティ!!」

『―ミッドナイト先生!?』

八百万だ。ミッドナイトはマキアを止める為に、麻酔で眠らせるよう、八百万に全てを託す事にした。八百万は困惑する。聞こえてくるミッドナイトの荒い息にボロボロの声に危機を感じた。

「貴女の判断に…委ねます…っ」

『先せ―』

八百万の返答を訊く前に、ミッドナイトは通信を切る。そして目の前には解放軍たちがミッドナイトに殺意という矛を向けて―

「ふんっ!!」

「ぇ」

『っ!?!?』

突如、巨大な足が解放軍たちの真横から現れ、そのまま解放軍たちを蹴り飛ばす。完全な不意打ちに解放軍たちはそのまま真横へと吹っ飛び…遠くで気絶してるのだった。

「ミッドナイト先生!大丈夫ですか!?」

「あ、なたは……!」

巨大な足の正体は…髪の色、多少衣装が違えど、巨体な姿となっていたメイジ―立香だった。




私「ワハハハハハハハハハハハハハハハーッ!こ…ここまで書いたんです!次の投稿はッ!次の投稿だけは延ばしてくれますよねェェェェ~~ッ!」
友「だめだ」
私「わはははははははははははーッ!!」


頑張ります…(泣)


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第84話

side立香

巨大な敵が見えた時、私と立希は直ぐに後衛にいる皆の所へ…行かなかった。前衛の方へと…”考えるよりも先に体が動いていた”あの巨大な敵で何かが起きる…そう直感した。

「姉!後で落ち合おう!『投影―!」

立希は『投影』で英霊と憑依してあの巨大な敵の方へまっすぐ向かう。私は巨大な敵の後ろから回りこむように動く。上手く行けば挟み撃ちの形になり、止める事が出来るかもしれない……!

「『降霊:バニヤン』!」

―がおー……。えへへへ―

深緑のベレー帽をかぶり、金髪金眼となり、そしてMt.レディのように私自身の体格が大きくなる。大体20m前後ぐらいだろうか。巨人になった私は急ぎ追いかける。その道中、巨大な敵の背中から『蒼炎』が見えた。どうやら敵連合もいるらしい…っ!

「(ミッドナイト先生…!!)」

巨体となった私の視界で見えたのもは、急に現れた瓦礫で不時着するミッドナイト先生の姿。私は直ぐにミッドナイト先生が落ちた所に向かう。そして解放軍たちがミッドナイト先生に襲いかかろうとした所を―

「(ウチの教師になにするきじゃ!!)ふんっ!!」

「ぇ」

『っ!?!?』

思いっきり解放軍をまとめて蹴り飛ばし、ミッドナイト先生を守る。

「ミッドナイト先生!大丈夫ですか!?」

「あ、なたは……!」

ミッドナイト先生が何か言う前に、私は先生の前に手を翳し、スキル『豆スープの湖』にてミッドナイト先生の

傷を多少癒す。完治とまではいかないが不時着した際の骨折ぐらいは治せる。

「メイジ…?…どうしてここに…後衛に戻ったはず…」

「説明は後で…!今はあの巨大な敵が優先ですよね?」

「……ええ、そうね…今さっきクリエティに判断を…委ねたわ…あの巨体を…眠らせて欲しいと…不甲斐ないわ…本当なら…私達…大人のヒーローが…やるべきなのに…っ」

そう言いながら木を支えにして立ち上がり、ふらつきながらも巨大な敵の方へと向かい始めるミッドナイト先生…倒れそうになり、すぐに私は巨体となった手で支える。

「治癒はしましたけど直ぐに動いてはダメです…!私も行きます…既に弟もアレを阻止に行ってますので…!」

「マギも…なのね…頼むわ…」

「はい!」

ミッドナイト先生を優しく持ち、すぐに巨大な敵の方へと向かう。

「メイジ…クリエティと通信したいんだけど…さきので壊れて出来なくなったの…」

「…スイマセン。巨体になった時、渡された通信機落としちゃいまして…直ぐに追いかけます…っ!『解除』!『降霊(ユニゾン)―」

…とにかく直ぐに巨大な敵の方へと向かう。

 

side三人称

「―イヤホンジャック!テンタクル!!音の位置から距離とここへの到達時間を!巨人の大きさを目算でいいのでお伝えください!」

ミッドナイトから判断を委ねられた八百万―クリエティは頭をフル回転させ接近してくる巨大な敵―ギガントマキアに対しての対応策を思考し、指示を飛ばす。

「―速いよ10秒もかかんない…!!!!」

クリエティの指示で到達時間を推定した耳郎―イヤホンジャック。しかし直ぐに変化を聴き取る。マキアの足にMt.レディがしがみつき、シンリンカムイが離さないように巻き付き少し減速する。

「減速した!!でも少し…」

「約25mだ!Mt.レディより大きい!…待ってくれ…新たに巨大な足音を捕らえた!!」

マキアの体長を推測した障子―テンタクル。その時もう一つ別の方向から音を捕らえる。

「なっ!?」

『複製腕』の目を生やし、聞こえた方向を見たテンタクルは驚愕する。

「―ぉぉぉぉおおおおおお!!!!」

『!?!?』

遅れて後衛にいるA組とB組のメンバー全員が驚愕。マキアの横から巨大な人影が現れた。山荘全体に響く咆哮と共に、拳を大きく振り上げていた。その勢いのまま―

「プロテアーパーンチ!!!」

マキアの横顔を殴り飛ばした。

「っ!!!」

流石のマキアも動きを止める。マキアは殴った存在と目を合わす。

「『投影:キングプロテア』!出撃!!」

―潰しますか?―

「はぁぁ!?!?立希…マギか!?!?」

「何でアイツあんなにデカくなってんだよ!?」

その正体は…薄紫色の髪と瞳。両手に包帯を巻き、体の所々には茂った緑や土色のひびがあり姿が多少違えど、マギがMt.レディとほぼ同じぐらい巨大化していた。

「約21…いや、22…24!?どんどん巨大化している!!」

「なんかデッカイ奴と融合してんのか!?」

「最短距離!!」

「フンッ!!!!」

直ぐに移動を再始動するマキアに対し、マギは正面から受け止め少しでも動きを阻止する。さきのMt.レディの様に踏ん張り続ける。キングプロテアと憑依したマギはスキル『ヒュージスケール』によりここに来るまで徐々に巨大化。そしてほぼギガントマキアと同じ身体へと成長する。

―マスター!これ以上は無理です!!―

「(つぅ!!!常時全身成長痛みたいで身体がイッダイ!!!)」

憑依だが、無理やりキングプロテアとの融合により身体に悲鳴が走る。慣れない巨大化を堪えながらもマギはマキアと対峙する。

「凄い…マギのおかげで大分到達時間が伸びた!」

「ここで迎えうちます!!」

今が好機と感じたクリエティは更に指示を飛ばす。

 

side立希

「HAHAHAHAHAHAHA!!!!!」

「(なんつー怪力!!全然止まらない!!)」

プロテアと憑依して巨大化したのに押し負けられる…!減速してるはずなのに!!

「とま―「おっと、それは頂けないな!!」づぅ゛!?!?」

巨大な敵の顔をまた殴ろうとした時、『蒼炎』が降り注がれる。巨大な敵の頭部に敵―荼毘がいた。容赦なく自分に浴びせてくる。背中に隠れていた!?

「何時まで持つかな!!!」

「っづ~~~~!!!いつまでもっ!!!」

―マスターさん!!―

『蒼炎』の高火力がじわじわと自分の肌を焼き始めてくる。英霊との憑依で軽減しているけど…このまま浴び続けたらまずいっ!!

「全っ然っと止まんない゛っ!先輩っ起きっ…て!ほどいて…体勢をっ!!ヒヨッ子が頑張ってんだからっ!」

巨大な敵の足に縋りついているMt.レディが叫ぶ。そんな時だ。

「―ギ!マギ!!」

「!」

耳元で誰かが自分を呼んでいた。横を見るとそこには上半身のみ浮かしている取蔭さん―リザーディがいた。

「今から合図すると同時に横に跳んで!!通信しても返事なかったからここまで来たんだから!!」

「(何か作戦があるのか!?)了…っ解!!」

作戦前に渡された通信機は巨大化して使えないからポケットに入れたままだった…一瞬後ろを確認。そこにはこの巨大な敵を止めるべく、覚悟を決めた同級生―ヒーロー達が構えていた!

「今!」

「っ!!」

「!」

リザーディの合図で真横に飛ぶ。せき止めていた水を一気に解放するように、巨大な敵が動きだす…瞬間、地面が沈み、巨大な敵の動きを止めた。

「落とし穴!?」

「位置ドンピシャあ!!」

「ゴーゴーゴーゴー!!」

巨大な敵が落とし穴に落ちると、隠れていた皆が動きだす。

「多勢に無勢をお許し下さい」

塩崎さん―ヴァインが『ツル』で巨大な敵の首を絞める。が、一人の力で拘束出来ず、首を振って千切る。顎に数本千切れず張り付いているワイヤーがあった、見れば峰田君―グレープジュースの『もぎもぎ』で接続されていた。

「立ち上がられたら望み薄ですぞ!!」

「寝ぇぇてぇぇろぉぉ!!」

「ふんっ!!」

宍田君―ジェボーダン、砂糖君―シュガーマン、拳道さん―バトルフィストが怪力で頭部を上げさせないようにワイヤーを掴み引いていた。

「何とかして口を開けさせて!!」

「!!分かった!」

リザーディの指示で自分は体勢を整え、巨大な敵の前まで移動。巨大な敵の背中にいる敵達はクラスのヒーロー達が動き、邪魔していた。

「ぬ゛ぁ゛!!?」

「チャージズマ!!」

『放電』しようとしたチャージズマの前に瓦礫が突如出現し、そのまま激突して落下する。

「構…うな…っい゛げ!!」

「っ!おおお!!」

その声に自分は突撃しながら思考を巡らす。

「(口を開けさせる…という事は何かを飲み込ませるって事だ!薬か?この巨大な敵を鎮静させる薬…睡眠薬!!眠らせる個性…が無いから作った!という事は八百万さんが『創造』で!!)」

「―」

少しだけ、巨大な敵の顎が動いた時、危機を感じた。

「!やば―」

「マギィ!?!?!?」

不意に、自分は突撃を止め、巨大な敵の顔付近にいた皆の前に強引に割り込み防御体勢。と同時、途轍もない衝撃音、暴風が襲い掛かる。巨大な敵が『圧縮した空気』を吐き出した。

『うわぁああああ!!!』

「皆ァ!!」

「息臭ェ!!」

「マギのおかげで助か「まだ来るっ!!!」たぁ!?!?」

今度は『蒼炎』が襲い掛かる。皆が焼かれないように覆いかぶさるように壁になる。

「っ~~~~背中が大火傷だ……っ」

「藤丸…お前…っ」

ためだ。巨大な敵が立ち上がってしまう…!!炎で近づけない…っ

「まだ!!」

「!」

クリエティが吠えると同時、再び巨大な敵が地面に沈む。落とし穴の底に更に穴を!!流石八百万さん!!

『敵連合ォおおお!!!』

ここで前衛にいたプロヒーロー達が辿り着いた。体勢を整えたMt.レディが巨大な敵の背中を取り、顔を掴んだ。

「アーンしなさい!ホラあーん!!」

チャンス到来だ!どうやら向こうもこっちの作戦に感づいたようだ。

「マギ!皆をお願い!」

「ピンキー!!?」

その時、燃え上がる炎の中を、三奈―ピンキーが前に進んだのを見た。




サクラファイブ全員揃えたい。実装しないかな…


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第85話

side三人称

森が燃える。荼毘の放った『蒼炎』が燃え広がり、ヒーロー達は集う事が出来ず、ちりじりとなる。

「皆無事か!!?」

「火の回りが速過ぎだ!なんつー火力ぶっぱしやがる!」

そんな中、炎の中をかき分け、マキアの顔付近まで走っているヒーロー―ピンキーがいた。

「(『アシッドマン』!!粘性アーマーで火には捕らわれない!)」

粘度をMAXの状態にして全身に酸を纏ったピンキー。その手には八百万が『創造』した『睡眠薬』があった。

「(行ける!!行ける人がやらなきゃ!!)」

Mt.レディがマキアの口を強引に開ける。マキアの背中にいる敵連合はプロヒーローが足止め。これが最大の好機の瞬間であった。

「眠れぇえ!!!」

腕を大きく振りかぶり、睡眠薬を投げる―

 

―主への最短距離。

―蠅に時間を割くなど寄道甚だしい。

―判断を誤った

「―二度と集らぬよう払うが最短。」

マキアは遂に、己の“敵”を見る。そして

「全ては主の為に―」

マキアの声を聴いたピンキー―芦戸は思い出す。思い出してしまう。

「(この声……)ぁ」

―うえええ~怖かったァア―

中学時代に出会った存在。道を聞かれた同級生の代わりに自身が応え、何とか危機から脱した存在。あの時の恐怖が、中学生の頃の自分に戻してしまう。

「―」

芦戸は『睡眠薬』を持っていた手を滑らせてしまう。宙に舞う薬。動きだすマキア。いとも簡単に片手で背中に乗っていたMt.レディを掴み放り投げ、もう片方の手で前にいた芦戸を掴み飛ばす―

「三奈ぁああああ!!!!」

よりも前に、炎の中から手を伸ばしたマギが芦戸を掴み直撃を回避する。

 

side立希

ギリギリ間に合った…っ!あのままだと三奈が無事じゃすまなかった…っ!!

「三奈!無事!?」

「っ…ごめん…薬…入れられなかった……うっ…う…」

掌を開くと、三奈は泣いていた。作戦失敗で…というより、何か別の意味での涙のようだった…彼女と一緒に掴んでいた薬が入っているであろう瓶があった。ヒビが入っているけど、液体は漏れていない…

「ううん。大丈夫…まだいける…「おうそうだ!まだ終わってねぇ!!」!鋭児郎君!?いつのまに…」

自分の肩を掴んでいたであろう鋭児郎君が現れる。鋭児郎君は三奈が持っていた薬を掴み、自分を見てくる。

「立希…頼む!俺をあいつの所まで運んでくれ!!芦戸。おめーの行動は無駄にしねぇ!!」

「鋭児郎君…うん。分かった。まだやれる!」

「切島…立希…」

自分は三奈を炎が来てない所に置き、切島君を掌に乗せて巨大な敵を見据える。

「ふぅ…烈怒、行くよ。あの巨大な敵の顔付近まで!!」

「おう!頼む!」

「しっかり掴まってて!」

自分は烈怒を肩に乗せ、行動を開始する。

 

side三人称

落とし穴から脱したマキアは立ち上がる。マキアは背中に手を回し、乗せていた敵連合を掴む。プロヒーロー達を払い落とし、再度背に乗せ、己の主がいるであろう方向を見据える。

「蠅は、払った。同志よ捕まってろ」

再び死柄木の元へ移動しようとした時、突如、巨大な岩石がマキアに直撃する。

「っっっ!」

岩石を投げたのは巨大化したマギ。

「おらぁ!!」

マギは足元の地面に指を突き刺し、大量の土砂をマキアに向けてまき散らす。

「小賢しい!!」

その土砂をマキアは片手で振り払い掻き消す。が、前にいたマギの姿がなかった。

「―上!」

「ふん!!」

太陽を背に、マギはマキアに向かって跳んでいた。勢い良くマキアに掴みかかる。

「大蠅が!!」

マキアは吠える。両手でマギを掴み、引きはがす。逆にマギを両手で拘束し、更に締め上げる。

「っ~~~~!!!!」

マギは顔を歪める。が、体を動かし、最大限顔をマキアの顔に近づかせる

「今!」

「―俺の後ろに!!血はァ流れねぇ!!!」

巨大化していたマギの肩から、切島―烈怒頼雄斗が飛び出す。飛び出た烈怒を見たマギは次の行動に移す。

「(『大河の巨獣』!!)捕まえ…たぁ!!」

身体強化し、拘束を解き、マキアの両腕を掴み拘束する。

「小蠅―」

「!」

烈怒はポケットから『睡眠薬』を取り出しマキアの口に向けて投げる。が、それは空中で破壊された。

「(敵連合…!)」

マキアの背に乗っていた敵―トガヒミコがナイフを投擲し壊したのだった。その時、烈怒は空中で身をひねる。

「(今のは、俺の分!!)」

別ポケットからもう一つのヒビ割れの『睡眠薬』を取り出す。

「(芦戸!!!おめーの漢気は俺が受け取った!!)」

先ほど芦戸が持っていた『睡眠薬』。勢いよく、今度こそマキアの口の中に……入った。

「ヨシ!『解除』!!」

薬が入ったと同時、マギは憑依を解いて縮小。元の大きさになりつつ、烈怒と共に落下する。そんな二人を捕まえようとマキアが手を伸ばした時、マキアの体に『砲弾』が放たれ着弾する。

「男二人は重いってー!!」

その隙にリザーディが『とかでのしっぽ切り』にて上半身を空中まで飛ばし、二人をキャッチ。地上ではクリエティが『創造』した『大砲』でマキアに向けて撃ち放つ。

「烈怒頼雄斗とマギが飲ませたぞ!!切島と藤丸がやったぞ!!!」

燃える森の中、次にクリエティはプロヒーロー達に通信する。

「暴れる程回りが早まるはずです!!マジェスティック!!」

「委細承知した!さすが百ちゃん。俺の見込んだ女だよ!さぁ皆さん!インターン生に頼りっぱなしはここまでにしよう!」

個性『マホウ』にてプロヒーロー達を運びマキアと敵連合の元へと来るマジェスティック。形勢逆転…かに思えた。

「―小蠅はキリがない」

マキアの姿が変わり始める―




ストック…無くなった。はい頑張ります。


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第86話

小説書く時間が無い…


side三人称

「一体…なに…が…」

誰かがそう呟く。A組、B組の皆は只々傍観するしかなかった。目の前に映るは、木々が倒れ、地面が抉れた跡のみ。さきまで、そこでマキアがいたが、その巨体の姿は今は無い。

「障子…ヒーロー達は…」

「遠過ぎる…確認できない…」

瀬呂の問に、障子は冷静に応える。マキアが暴れた付近には、救護班が待機していたテントがあった。マキアが暴れ飛んできた岩や土砂が降り注ぎ、半壊していた。

「……なんて事……」

八百万は俯く。何が起きたのか、記憶を蘇らせる。自分達が何故無事だったのかを―

―「■■■■■■■■■!!!!!!」―

薬を何とかマキアの口内に入れた後、すぐに駆け付けたヒーロー達。それと同時、マキアは姿を変える。顎の部分が自身の目の位置まで移動。そして巨体が更に大きくなり、両手が巨大な爪を生やした。そのまま皆に振るいあげた。巻き上げられた土砂。それが降り注がれるよりも前に、皆の体が浮いた。

―「君達の決断と行動は間違いなく正しかった。これから何が起きようともそれだけは確かさ―」―

マジェスティックが『マホウ』でA組、B組、ヒーロー達全員を土砂が来ない所へと運んだのだった。マキアはそのまま主―死柄木がいる所へと進行を開始する。

「(私達が無事だったのは…ただ…敵とすら認識されてなかっただけ…ただ…それだけ…)っ」

八百万は拳を握る。これ以上、もう自分達があの巨大な敵に対し、出来る事が無い…そう理解してしまった。

「なぁ…さっきの土砂で…他のヒーロー達…どうなったんだ…?」

「分からない…最後…マジェスティックが…私達をここまで個性で飛ばしたのは見えたけど…本人は…」

「まさか…いや…嘘だろ…っ!」

不安、恐怖、絶望…不穏な空気が出始める。

「ねぇ、麻酔効くお時間、もう過ぎてるノコ。」

「…オイラ達の決断と行動は…本当に正しかったのかな…ヒーロー達の決断と行動は……」

小森と峰田同様、皆は不安になる…そんな時だった。

『―れか、聞こえるか、応答……してくれ…!!』

「!常闇さん……っ!」

常闇から通信が来た。直ぐに八百万は連絡を取る。

「無事でしたのね!」

『何とか…な…あの巨大な敵が暴れ、救護場所が半壊した。直ぐに来て欲しい。瓦礫の撤去と怪我を負ったヒーロー達の救助を…!』

「!分かりました!直ぐに皆を連れて行きます!」

『頼む…クリエティ、お前の師も重症だ。』

「…ぇ?」

常闇が言った事に、八百万は疑問を持った。師とは?と。

「と、常闇さん。私の師とは……」

『?…マジェスティックだが?』

『!!』

常闇の答えに、八百万含め、通信を聞いていた皆は驚く。

『…百ちゃん…聞こえる…かい?』

「!マジェスティック!!ご無事でしたのね!!」

そしてタイミング良く、マジェスティックから通信が繋がる。

『ああ…さっきの土砂で…骨折しちまったが…何とかな…他の…ヒーロー達も…無事だ…ミッドナイトも…いる…』

「ミッドナイト先生無事だったんだ!!」

「よかったぁ…!」

「流石プロヒーロー達!」

全員安堵する。八百万もまた安堵する。

「本当にご無事で…私達を運び終えた後、すぐに自身も個性で回避したのですね…」

『…いや、それは…違う…不甲斐ないが、君達のクラスメイトに助けられた。』

「え?」

『藤丸ちゃんだよ…メイジが…』

「立香が…!?」

「藤丸姉も来てたのか!!」

「藤丸弟といい、すげえなあいつら!」

「つか藤丸弟何処だ?」

皆が賑わう。しかし、通信はまだ終わらない。

『彼女はそこにいるかい?通信してもつながらなくてね…俺達を救助場所に運び終えたらすぐにどっか行ってしまってね…』

「そうなのですか?ですが…私達の所に立香…メイジの姿はありませんが…」

『…何だって…?』

「ねぇヤオモモ!立希は何処!?」

芦戸がそう大声で聞いた。皆は周囲を探すが、立希が何処も居なかった。今まで静かだったのは、本当にいなかったのだった。

「マジでいねぇじゃねえか!?」

「最後に一緒にいたの切島と取蔭だよね!?」

峰田が吠え、芦戸は二人に問う。

「いや……見てねぇ…」

「…さっきの敵が暴れた時、はぐれちゃって…皆みたいにマジェスティックが運んでくれたと思ったんだけど…」

切島と取蔭は答えるが、姿を見失ったと言う。消えた藤丸姉弟。

「…まさか……お二人は…!!」

八百万は、二人が何処に行ったのか気付いた時だった。遠くの方から衝撃音が響いた。

「何だ!?」

「方角から…あの巨大な敵が行った所からだ!!」

「アイツ…まだこの山にいたのか?」

「皆さん!ここからは分断して行動します!!B組の皆さんは救助場所へ!我々A組はあの巨大な敵がいる所へ!」

『!』

突然の八百万の指示に皆は戸惑う。八百万は指示を言い終えると同時、マキアがいるであろう方向へ走る。

「ヤオモモ!一体どうしてそんな指示を!?」

遅れてついてきた耳郎が走りながら訊く。

「立香が…藤丸さんが…戦ってるかもしれないのです…!」

「…え?まさか…さっきの音って…!!」

再び、衝撃音が響いた。

 

side立香

―さぁ!行こうぜ!マスター!!―

「うん!!」

ミッドナイト先生を助けた私は、『アキレウス』と憑依。部分的に銀の鎧を纏い、アキレウスが戦場で駆けたと言われる『三頭立ての戦車』を呼び出す。ミッドナイト先生を乗せ、手綱を引く。

「Go!!」

『!!』

海神ポセイドンから賜った不死の二頭の神馬―『クサントス』と『バリオス』に指示を飛ばし、駆け始める。本当なら本人呼んで操作したいが…ヘラクレス呼んで消費したから魔力をストックしておきたい。

「(憑依率上げて何とか加速してるけど…)「■■■■■■■■!!!」何あれ…!!」

巨大な敵に近づいた時、その敵は姿を変え、暴れ始めた。大量の土砂が迫ってくる。

「もっと憑依率あげて加速するよ!!」

―おう!!―

『!!』

それに応えるように、戦車は地面ではなく、空を駆ける。何とか土砂を回避している時、その土砂に襲われそうになっているプロヒーロー達が見えた。

「ッ!!」

速度の向上に比例して戦車の攻撃力が増す。降り注ぐ瓦礫の雨を破壊しながら突破。まずは一人!!

「危機一髪!!」

「うぉ!?何だ!?ってミッドナイト!?気絶してるのか!?」

「助けに来ました!!どんどん運ぶので掴まっててください!!」

光速…とまではいかないけど、トップスピードで、土砂の中を潜り、戦車に乗れるぐらい、ヒーロー達を救助し続ける。土に埋もれそうになっているヒーロー達だが、戦車の勢いで掘り起こし、そのまま救護場所へと到着する。

「到着…ってここも半壊して…『姉!』立希?そっちは無事?」

戦闘衣装に備わっている通信機能で立希と連絡を取る

『何とか…あの敵を止める為に、八百万特性の睡眠薬を投与した…けど…』

「止まる気配無いね…どうすんの?」

『…時間を稼ぐ。多分、体がデカすぎて、薬の効き目がまだ効いてない。少しでもいいから、気を引き付けて、あの敵を眠らせたい!』

「…了解。まぁ時間稼げば、避難する人も多く救えるしね…ピックアップするから場所教えて」

『うん!』

「ふぅ…じゃあ行きますかっ!」

「ちょっと待っ―」

私は救助したヒーローを降ろし終えると同時に移動開始。誰か私を呼び止めようとしていたが今は時間が無い。直ぐに戦車を飛ばし、立希がいる所へと向かう。場所?戦闘衣装に内蔵しているGPSで把握済みだ。

「勝手な行動してばっかだ…」

『確かに…でも今動かないと、街にいる人々…そして今戦っているヒーロー達が危ない。だから…動ける自分と姉で何とかしよう…!』

「そうだね…(焦凍君…)」

今、何がどうなってるかは分からない。けど、今は、私が今出来る事に専念する!!

「姉!」

「お待たせ。行くよ。目標は…巨大な敵へ!!」

立希と合流し、そのまま巨大な敵がいる方向へ戦車を走らせる。




とりま生存。


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第87話

ティアマトかぁ…来ちゃったし、いつか出したい。


side三人称

「主のもとへえええ!!!」

「やれやれ…ようやくヒーローどもを撒いたな…」

「マキアに何かしたようだが、大丈夫そうだ。」

ヒーロー達との攻防が終わり、マキアは再び行動を開始。マキアの背に乗る敵連合達は一息入れた。

「(もうすぐ…もうすぐだ……待っててね……)」

荼毘は何かを企む。今か今かと笑みを浮かべ始めた時、

「!!」

マキアが急に方向を変えた。

「うぉ!?何だ!いきなり曲がるのは止めろ!!作業が出来なくなる!!」

遠心力で倒れそうになったスケプティックは文句を言う。それでもパソコンで何かをしている作業を止めない。

「ぬぅううううう………!!!」

「?……どうしたマキア!その方向に死柄木がいるのか!?」

マキアは唸る。何か異変を感じたスピナーはマキアに問うが、反応せず、ただただマキアは移動を止めない。

「…ん?おい誰かいるぞ!ヒーローか?」

Mr.コンプレスが周囲を見渡すと、指をさし見つける。マキアの前を爆速で走るもの―

「街には行かせないから…っ!」

銀の鎧を纏い、戦車を操縦する、メイジ。そして…

「モーラン・ラベェ!!」

戦車の上にて、金の丸盾を構え、金の槍を振るい鼓舞する、マギの姿だった。

 

 

side立香

「モーラン・ラベ!!姉!こっちに敵連合が気付いたよ!!」

「分かってる!」

アキレウスのスキル、『宙駆ける星の穂先』と、今『レオニダス一世』と『投影』している立希はスキル『殿の矜持』にてあの巨大な敵を私達自身に引き寄せ街に行かせないようにしている。

「姉は操縦に集中!!そら!攻撃が来たぁ!!」

一瞬後ろを確認。見えたのは『蒼炎』。荼毘が放ってきた。それを盾で防いでくれる。

「っとぉ!ナイフも来た…!!けどこの程度で突破は出来ない!!」

―スパルタの心意気、ご覧にいれましょう!―

「ほうるぁ!!」

「っとぉ…!」

防戦一方かと思ったが、蒼炎とナイフを盾で振り払うと、立希はその勢いのまま持っていた槍を敵に向けて投げ放った。踏ん張った勢いで戦車のバランスが崩れそうになる

「!…ぉおおおおおおおお!!!!!!」

槍は巨大な敵の顔に突き刺さり、一瞬のけぞった。が、逆にそれが仇になった。再び暴れ始まり、巨大な爪を生やした手で地面を抉り、岩石の雨を降らせてくる

「あ、やば…姉、ごめん」

「馬鹿!!迂闊に挑発すんな!!」

岩石雨の中、縫うように戦車を操る。正面に来た岩は槍を呼び出し、切り防ぐ!!

「ギリギリ…ィ!!「姉…いやメイジ!」何…?」

何とか岩石から脱した時、声をかけられる。その顔は、いつもの笑顔じゃなく、覚悟を決めた、真剣な表情だった。

「いつもの様に、世界を…皆を助けるよ!!」

「……今更何言ってんの…いつだってそうしてんじゃん…分かってる!!」

私は戦車を加速させ、上昇。空を飛ぶ。そろそろスキルの効果が切れる。

「行こう!来い『ランサー』!そんで『投影―!!」

戦車から飛び出す弟―マギを見送り、そして私も覚悟を決める。

「巨人には…来て!『バーサーカー』!そして『降霊―!」

 

 

side三人称

空中を舞うマギ。そのまま『英霊召喚』と『投影』をする。

「―牛若丸』!!」

―牛若丸、まかりこしました。武士として誠心誠意、尽くさせていただきます!!―

平安・鎌倉時代に活躍した日本の武将―源義経。その若き頃の存在と憑依。烏帽子に類似する物をかぶり、腰に備わった刀を抜刀。片腕に纏う袖をはばたかせる。そしてマギの隣には―

「―我が名は武蔵坊弁慶、参る!」

源義経と共に活躍した、日本史上最も有名な僧兵、『ランサー』、『武蔵坊弁慶』が召喚に応じる。

「マスター!牛若様!我は逃げませずぞ!!この命尽きるまで戦い抜いて見せましょうぞ!!」

―よく言ったぞ弁慶!主殿!この我ら、微力ながら主殿の力となりましょう!!―

「心強いね!!行こう!!」

「参る!!」

そしてメイジもまた行動に移る。『アキレウス』との憑依を解除し、新たに憑依と『英霊召喚』をする。

「―ダビデ』!!」

―どうしても、と言うのなら仕方ない―

旧約聖書に登場する古代イスラエルの王と憑依。緑の瞳と髪色となり、首には黒く長いマフラーをたなびかせ、

手には『羊飼いの杖』を装備する。そしてメイジの隣には―

「―来たか。ならいいさ。殴って蹴ってさっぱりしてやる!」

英文学最古の叙事詩と言われる主人公、『バーサーカー』、『ベオウルフ』が召喚に応じる。

「ほぅ…なかなか殴り合いしがいのある野郎じゃねぇか。」

―戦うのかー。面倒だけど、頑張ってもらおう―

「アンタも頑張るんだから!ほら!来るよ!!」

4人はマキアに向かって落下する。

「馬鹿が。空中で何が出来る!荼毘!!」

「分かってるよ。」

スピナーの声に、荼毘は応える。マギと弁慶に向けて『蒼炎』を放つ。

「弁慶!」

「委細承知!」

蒼炎が来ると同時、マギと弁慶は体勢を変え、互いの足裏を合わせ蹴り、空中で回避する。

「ベオウルフ!!」

「ぶっ飛べっ!!」

蒼炎はそのままメイジとベオウルフの所まで来る。が、ベオウルフの持つ二振りの魔剣をその剛腕で振り払い、掻き消し防ぐ。

「ちっ…マキア。」

「鬱陶しいぞ…小蠅どもが…っ!!」

マキアは長い爪を更に伸ばし、巨腕を振り回す。

「遅い!!」

「ぬん!!」

着地と同時に二人は回避。爪が当たる瞬間、マギは刀でいなし最小限の動きで避け、弁慶は薙刀で受け身を取る。

「ベオウルフ!援護!二人をあの攻撃から反らして!!」

「ったく、しょうがねぇ」

遅れて着地したメイジとベオウルフ。メイジが指示するとベオウルフは魔剣を振るい、スキル『ベルセルク』、『堅忍の老境』を発動し自身を強化し、マキアに特攻。そのままマキアの爪を次々と切り落として行く

「オラオラオラ!どしたどした!」

「ッ!!アアアアアア!!!!!」

マキアは切られた爪を瞬時に生やし両腕で地面を抉り、土砂をまき散らす。それでも、マギとメイジは動きを止めない。

―その巨体が仇となったな!!―

「こんなものでは!」

マギと弁慶は駆ける。マギは巻き上げられた岩石を足場にし、弁慶は地面に突き刺さっていたマキアの爪から駆け上り、二人は同時に腕を斬りつける。

「オラ!行くぞぉ!!」

「そぉれ!とう!」

メイジはベオウルフに担がれ、土砂を回避。そして『カリスマ』にて自身とベオウルフを強化し、メイジは杖を連続で振るい、ベオウルフは更に強化された肉体と魔剣にて脚を攻撃する。

「(硬ったいなぁっ!!)」

「(でも…攻撃は効いている!!)」

「っ~~~~~~!!!!!」

マキアはぐらりと、その巨体が傾いた。腕と脚。特に脚に、違和感を覚えた。なぜならベオウルフの攻撃ははマキアの様な『巨人特攻』が付与され、僅かにダメージが蓄積されるのであった。

「おいおい!?マキアが圧倒されてんのか!?」

これにはマキアの背に乗っている連合軍も動揺する。

「ちっ…加勢するか…!!」

荼毘は身を乗り出し、マキアの頭上から『蒼炎』を振り放つ。広範囲の炎に、マギ、メイジ、弁慶、ベオウルフは一旦退避する。

「あっつ!けど…姉!弁慶!サポートよろしく!」

「分かってる!『治癒の竪琴』!ベオウルフ!」

―一曲どう?―

「おう」

メイジは3人にスキルを発動。蒼炎の壁を3人は難なく回避し、再びマキアの前に現れる。

「その程度じゃ俺は止められねぇ!!」

ベオウルフは再びマキアの爪を切り飛ばす。そして隙が出来た所を弁慶とマギが特攻。

「あまり攻撃は通じぬようですな…っ!ならば!!」

弁慶はマキアの正面で構える。

「どっせいっ!」

腕を突き出し、スキル。『怨霊調伏』を発動。対象は荼毘。

「ぁ?個性が…消された…?」

腕に『蒼炎』を纏っていた荼毘だったが突如として掻き消され、使えなくなった。

「厄介故に、封じさせてもらおうぞ!マスター!」

弁慶は鎖鎌を投擲。マキアの装甲に引っ掛ける。そして鎖を張ったと同時、鎖の上をマギが駆け上がる。

「抜きつけ、構え!」

マギは牛若丸のスキル『六韜秘術・迅雷風烈』にて強化。刀―薄緑の刀身に魔力を込め俊足の抜刀を放つ。

―天狗に速さで勝てると思うな!?―

「―!?」

マキアは一瞬、マギの姿を見失う。と同時、頭部に何閃と斬撃が繰り出された。

「ちっ…やっぱり硬い…」

しかしそれでも、マキアにはダメージがほぼ無い。顔についている装甲によって防がれている。

「………蠅…」

マキアは思った。今まで自身に纏わりついて来たヒーロー達。それらは自分にとってはうっとおしい蠅だと思っていた。それは今もそう感じている。が、この今戦っている蠅―マギ、弁慶、ベオウルフ、メイジの存在に、マキアは…はっきりとした敵意を向けた。

「…敵!」

「マスター!」

「っ!」

マキアは4人に向けて爪を振るう。ただ振るったわけじゃない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その狂爪は、森一帯を掻き消した。




GW遊びたいなぁ~でも小説も書きたいなぁ~


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第88話

side立希

「―、―ター!マスター!ご無事で!!」

「かっっっ……はぁぁぁ……なん…とか…」

何度も旅で体感した。『死』。敵のあの巨腕がブレたと同時、『燕の早業』で回避。直撃は避けれたけど…その後の余波で地面に叩きつけられた。凄く…痛い…。一瞬意識が吹っ飛んだ…英霊と憑依してなかったら今頃全身複雑骨折だ…

「姉は…」

「大丈夫…ケホッ…スキルと防御したのと…ベオウルフ…ありがとう…」

「……中々やるな、てめぇ……ま、楽しめたぜ……―」

姉がいる所を見たと同時、ベオウルフが退却した。憑依したダビデのスキル、『神の加護』で身を護り、更にベオウルフが姉を守ってくれた。バーサーカー故のあの攻撃の直撃はきつい…こっちの火力が減ってしまった…

「(けど…まだ終われないっ!)」

弁慶に肩を貸してもらって立ち上がる。

「『浄化回復』っ…ふぅ。少しは回復したけど…このままじゃジリ貧か…」

戦闘衣装に備わっている効果を自分に唱え回復。直ぐ近くに刺さっていた刀を取り、構える。

「さぁて…ここからが正念場だ…向こうも本気出してきたし…こっちも本気だ…っ!!」

「…やるしかない…か」

姉と自分は頷き、何をするかを決める。そして再び巨体な敵が暴れ始める。

「■■■■■■■■!!!!!!」

敵が間髪入れずに狂爪を振り下ろしてくる。自分と弁慶は二手に分かれ、姉は後ろに避ける。

「弁慶!タイミングはいつでも!!『幻想強化』!『予測回避』!」

「はっ!!では…こうだっ!」

「ふっ!」

「■!」

弁慶がスキル『仁王立ち』にて敵の注意を引き、姉もまた、降り注がれる爪を持っている杖で捌く。その隙に自分は更に肉体強化。そして―令呪を掲げる。

「『令呪よ。我が肉体に応えよ』!!」

令呪の力により、憑依率が上昇。戦闘衣装の上から牛若丸の片側鎧を身に着け、白、紫の装束が纏われる。

―我らは英霊。人類史に刻まれた。嘗てありしの人の影。我らの存在は、人類史の存続によって報われる…その事実だけで私は戦える!仮初の命を!賭ける価値があるっ!!!―

握る刀に魔力注ぎ、振り払う。瓦礫が宙を舞う。

「―鬼一が兵法、受けてみるか!―」

魔力充填。解き放つ。牛若丸を宿わせた自分は『宝具』を発動。背後から7人の自分が現れる!!

「―遮那王流離譚──『八艘飛び』!―」

牛若丸と自分は重なった声で発動させる。

 

side三人称

マギが宝具発動。8人のマギはマキアへ向かう。

「■■■■■!!!!」

マキアはマギに襲い掛かる。長く生えた爪を変化。確実に捕らえるように。爪を『鞭』のように長く、しならせ始める。そして8人のマギに向けて打ち放つ。爪は地面を抉り、次々と突き刺さる。

「―ふっ!」

土煙が舞う中、マギは爪の上を駆け巡る。襲い掛かる爪を、マギは斬り防ぎながら駆け巡る。

「っおおおおお!!!!」

爪を縦に切り裂く。加速して細切れにする。体を捻り、回転斬りにて防ぐ。複数くる爪には数人で斬り伏せる。思う存分、刀を振るい、少しづつ、マキアに接近する。

「ゴホッ…ッ!!」

吐血するが、マギは走るのを止めない。斬るのを止めない。自身の身体に無理矢理同調させ、英霊の宝具を体現させていれば当然反動が現在進行形で体を蝕んでいく。それでも、マギは止まらない。力を振り絞り、踏み込む。

「■■■■■!!」

マキアの正面に突貫するマギ。既に他7人のマギはマキアの爪に討ち取られていた。全ての爪が宙に舞うマギを襲う。

「―極楽か地獄か、それとも永遠の彷徨か」

「『令呪よ。我が肉体に応えよ』!!」

―いいとも!いいとも!じゃ投げようか!―

弁慶とメイジが動いた。弁慶は手から武器を話し、手を合わせ、『宝具』が発動する。そしてメイジもまた、令呪の力により、憑依率が上昇。戦闘衣装の上からダビデの衣を纏い、持っていた杖を投石器に持ち変える。

「『降伏した方が経済的だよ?それが嫌なら、仕方ないね!』―」

巨人ゴリアテを打ち倒した投石器。メイジはダビデと重なった声で言いながら投石器を回転させ加速。石は緑色に強く大きく輝き始める。

「(集中…!集中……!!魔力を…一点に!!この石にっ!!ありったけ溜める!!)っ!!!」

「海を行き、果てよ!『五百羅漢補陀落渡海』!!」

弁慶の背後から金色の無数の曼陀羅が立ち並び、後光がマキアを照らす。そして更に、自身の身体に無理矢理同調させ、英霊の宝具を体現したメイジ渾身の投石器から放たれた5つの光が弧を描きながらマキアへと向かう。

「■■!?」

5つの光のうち、4つがマキアの周囲の地面へと着弾し、土煙が舞う。そして弁慶の宝具によって、マキアに異変が起きる。全身が硬直し、激痛が襲い、動けなくなる。当然、マギに襲い掛かろうとしていた爪も全て停止。その隙にマギは爪を掻い潜り、遂に射程に捕らえた。

「ではマスター…ご武運を…っ!―」

『宝具』を使った事により、弁慶は退却。マギは弁慶に感謝しつつ…目の前の敵を、マキアに刀を振り下ろす。そしてマギの背後から、最後の5つ目の光―必中の投石が真っすぐマキアを捕らえた。

「『五つの石(ハメシュ・アヴァニム)』!!!!!いっけぇええええええ!!!!」

「(残った、ありったけの魔力を!この一撃に!)オオオオオオオオオオオオ!!!!!!」

「―」

「っ―」

マキアの体に、刀が、投石が、当たる。

 

 

―刹那

 

轟音と衝撃が周囲一帯を包み込む。




GWで書き溜めしないと…


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第89話

不定期だけど、最後まで書きたいこの気持ち。


side三人称

作戦地帯の近くの事務所。

「未野市、香薫市、根羽呂市、播土市、藻周市、堀巣市、蔵人市、仮妥市、唐鞠市、維奈良市、波羽市、砂色市、侍土市、阿野戸市、手野市、大他市、朝瑠多市、那鳩市、加和市、古平良市―」

その人物は坦々と地名を言い続ける。その地名を忘れまいと書き溜める者、録音する者、多くの人が記録し続ける。

「―以上、私が『視た』被災確定地です。時間がありません。直ぐに避難を始めてください。本人を視たわけではないので更に避難範囲を広げて行動をしてください。」

言い終えると同時に動きだす。その人物は車椅子を動かし、隣に立っているヒーローに声をかける。

「頼むぞ。お前を『視た』結果だ。」

ヒーローは頷き、動きだす。

 

死柄木が蘇り、ギガントマキアを呼んだ。そして上空からエンデヴァーが降り立つ。

「死柄木!!!」

「寝起きに早々№1かよ」

エンデヴァーは直ぐに戦闘開始。一刻も早く死柄木を戦闘不能にするため灼熱の拳を振るい続ける…が、死柄木の体は焼け続ける中回復する。全ては殻木が死柄木の体を調整した結果である。

「先生が溜め込んでいた”個性”…この万能感…なのになんだ満ち足りない。」

―オール・フォー・ワンが欲した全ての内で唯一思い通りにならなかった力だ―

死柄木の体内で何かが囁く。そしてその力を手に入れなければならないと直感する。

「―ワン・フォー・オールを」

「!!」

エンデヴァーとの対峙を止め、死柄木は避難先へと飛ぶ。目的はワン・フォー・オール。その個性を所持している、緑谷の元へ

 

「―死柄木は僕を狙ってる可能性があります!人のいない方へ誘導できるかも!!」

「俺がツブしたらァ!!!!」

ワン・フォー・オールの名を通信越しから聞いた緑谷ヒーローとして行動する。そして事情を知り、死柄木に完全勝利をするべく爆豪も共に動く。

「頭ん中響くんだ―」

 

「手に入れろって―」

 

「ワン・フォー・オールをよこせ緑谷出久」

戦闘は更に激化する

 

 

side立希

「はっ……はっ……はぁぁぁぁ………」

抉れた地面。隕石が落ちたかのような跡。そんな場所で自分は大の字で倒れていた。既に憑依は解け、一歩も動けない状態だった。やっぱり、『宝具』は体の負荷がえげつない。

「魔力…使いすぎた…っ…ゴホッ…グぇぇ…」

口の中で鉄の味がする。魔術回路に傷がつき、体内がもうボロボロ…そりゃ吐血するよ…

「はぁぁぁ…ふぅぅぅぅ………」

近くの木を背に、姉も疲労困憊となっていた。自分と同じ、『宝具』を放ったから。投石器を持っていた腕が赤黒くなっていた。魔術回路が顔や腕にはっきり見えている。枯渇していると分かる。

「(敵…どう…なった…?一撃…入った…?記憶が…曖昧…っ…)」

何とか頭だけを動かして、巨大な敵がいた場所を見る。今だに土煙が舞っていた。弁慶の宝具で、動きを封じさせ、装甲を解除し、隙だらけになった肉体での、自分と姉が放った一撃…

「やっ…た……か……?」

ぽつりと呟いた時、地響きが鳴る。そして、土煙が晴れる―

 

そこには…

 

「―ふぅぅぅぅぅ……………」

巨大な敵が、佇んでいた。顔に付いている装甲には斬撃跡が深く刻まれていた。胸部に蜘蛛の巣のように広がる衝撃跡が残っていた。鞭のようにしなり、伸びていた爪は全て折れていた。ただ、それだけだった。

「オオオ……オオオ……」

自分は静かに、ただ見る事しか出来なかった…奴が、ゆっくり立ち上がり、完全に自分と姉を標的として捕らえている瞳を…ただ見る事しか出来なかった。

「ああ…くそっ……ゴホッ」

「■■■■■■■■!!!!!」

しくじった。

 

 

side三人称

「■■■■■■■■!!!!!」

マキアは再始動する。確かに、マギとメイジの放った一撃は、当たれば倒れはしないものの、数分は動けなくなるぐらい、死柄木の元へ行きたいマキアにとってはマズイ致命的な一撃だった。だがそれは当たればの話だ。マキアは弁慶の宝具により、体を動かせなくなった。纏っていた装甲も剝がされた。しかし、”個性”は使えたのだった。マキアの”個性”は『耐久』。この個性の効果で並外れた体力を持ち、更にはAFOから複数の”個性”を与えられていた。故に、マギとメイジの一撃が当たる瞬間、マキアは本能で自己防衛。複数の”個性”にて再度『肉体強化』、『装甲生成』し、完璧とまでは言わないが、致命傷を避けたのだった。

「■■■■………敵……」

肉を切らせて骨を断つ…マキアはマギとメイジを視界に捕らえる。そして折れた爪を生やし、腕を振り上げる。

「っ…」

「まだ…」

マギ―立希は何とかその場から離れようと体を動かすが、『宝具』を使った反動で一歩も動けなかった。メイジ―立香は何とか立ち上がるが、普段通りに体を動かす事は出来ない。絶対絶命。待ってくれない。マキアはそのまま腕を振り下ろ―

「光MAX!!『集光屈折ハイチーズ』!!!!」

「『心音壁(ハートビートウォール)』」

「!」

―そうとした時、マキアの横から突然の光と爆音が放たれ、振り上げた腕を止める。そして今度は『砲弾』が襲いかかる。

「二人を保護!!注意をこちらに!!」

「ウィ☆!!」

A組のクラスメンバーがギガントマキアの元に辿り着く。立希と立香が戦闘不能になっている姿を確認と同時に行動開始。砂糖が『シュガードープ』で身体強化した体で耳郎と葉隠をマキアの付近まで投擲し、葉隠は光を、耳郎は音を放つ。更に支援にて八百万は再度『創造』し『大砲』を、隣で青山が『ネビルレーザー』を撃ち放つ。

「小蠅が…!」

ギガントマキアが立希と立香を視界から外した時、茂みから芦戸、尾白が出てすぐに二人の元へ辿り着く

「藤丸!お前ら無茶し過ぎだろ!!」

「しっかりして!今度は私が助けるから…!」

二人は藤丸姉弟のを担ぎ運ぶ。

「総員撤退を!!」

救助出来た事を確認した八百万は指示を飛ばず。それと同時に合図を送る。

「撤退の合図だ!」

「OK!!」

「こっちくんなこんやろー!!!」

ギガントマキアの足元。『複製腕』で伸ばした『目』で合図を視認。瀬呂は『セロテープ』、峰田は『もぎもぎ』を周囲一帯に貼り付け、少しでもその場に足止めする。

「立香…貴女はどうしてそんな無茶を…!」

既に意識を無くしている立希と立香を運び撤退するA組メンバー。マキアは…

「おい、マキア。今はそんな事してる場合じゃないだろ?さっさと死柄木の所に行け」

「………主の元へ!!」

荼毘が言うと、マキアはA組を追う事を止め、再び死柄木の元へ移動を開始する。

 




また遅くなります。


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