うちはの呪詛師 (万華鏡写輪眼かっこいい)
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うちは日記

 

 

 ―――うちは一族

 

 

 呪術界において長い歴史を持った由緒ある名家。

 代々、炎を顕現させ、操る相伝術式「炎融呪法」を扱い、室町時代から忍として裏の世界を支配していた忍者の家系である。そんなうちは一族を語る上で欠かせないのが、赤い瞳に勾玉が特徴の「写輪眼」と呼ばれる一族相伝の魔眼。その能力は、呪力の視認、動体視力の向上、強力な幻術と多岐にわたり、瞳術において「六眼」と並ぶほどの魔眼である。

 

 その多岐にわたる瞳力の中でも特筆すべきは、動体視力である。

 

 写輪眼は、ありとあらゆる瞳術の中でも動体視力に優れており「見切り」に関しては、群を抜いて秀でた性能を持っている。その優れた動体視力と呪力の視認の掛け合わせは、親和性の高さから「うちは一族は、生得術式以外の技術・体術に分類されるすべての術を視認するだけで見抜き跳ね返す」と評されるほどである。

 

 

 

 そんな由緒ある名家の人間も、今では一人しかいない。

 

 

 

 

 

 その生き残りの名を、うちはトビ。

 

 うちは一族最後の生き残りにして呪詛師。彼は、今日も大金を求めて夜の街を奔走する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ×月×日

 

 やっと配達業にも慣れてきた。 

 

 中学生として学校へ通いながらの仕事。

 最初は、無理があるかと思ってたけど、案外うまくいってる。これもすべて神威さんさまさまです。もう神威さんに足向けて寝れません。

 

 

 

 

 

 ×月×日

 

 完全オビトスタイル。

 

 それが配達業者としての俺の姿。家にあった渦巻仮面呪具と真っ黒コート呪具。この二つがあれば誰でも黒幕オビトへと大変身! そこに自前の写輪眼があれば完璧。尚且つ万華鏡写輪眼を持っているなら、先生が120点あげます。

 

 

 

 

 

 ×月×日

 

 今日も夜のビル街を走る。

 

 走ると言っても、ただ神威して神威するだけの簡単な作業。荷物を持って神威空間に神威して、配達地点近くに神威したあと、そこまで走って神威して帰宅する。それで一日に数十万稼げる。毎日毎日ウハウハです。

 配達業は、非常に儲かるお仕事です。

 

 

 

 ×月×日

 

 【配達業者オビトのルール】

 

 1:配達依頼をするときは、専用HPにメールで依頼して下さい。

 2:生物か無生物は、依頼メールを出す時点で記載してください。

 3:生きているモノを運ぶときは、予め目隠しや耳栓を着用させて下さい。

 4:料金は、現金でお支払い下さい。

 5:あとは、思いついたら増えます。

 

 

 

 

 

 ×月×日

 

 配達業は、順調。

 

 最初は、依頼なんて全く来なかったけど、それも依頼を2、3個こなせば解決した。多分、実力が認められたんだと思う。ただ、数をこなしていく中で失敗数ゼロ件の我が配達業者オビトは、荷物を狙うものに狙われやすくなった。

 

 狙われはじめの頃は、神威を絶対に見せないって言って、相手の意識を刈るまで神威はしなかったけど……そんな気持ちも数か月後には無くなり、躊躇いなく使うようになった。主に、逃げるために。

 

 

 

 

 

 ×月×日

 

 配達業務中に勧誘を受けることが多くなりますた。

 

 「一緒に政府をぶっ壊そう!」や「一緒に楽しく人殺ししませんか?」、「呪術界をちゃぶ台返ししませんか?」とか、色んな勧誘が来てる。イケメンから美女、ブス、デブと勧誘に来る人間も様々。ただ、全体的に共通しているのが、胡散臭さが異常なのとすぐに消滅しそうな計画性の無さがある。

 

 ……多分だけど、それが売りだね。

 

 

 

 

 

 ×月×日

 

 転生して14年。

 

 前世も合わせると30後半に突入した最近。転生して若返ったせいもあると思うけど、精神が歳を取っている感覚がない。考え方だったりモノの見方は変化してるけど、気持ち的にはまだまだ若い人としての感覚がある。

 

 あー、久しぶりに前世に戻りたくなった。

 

 

 

 

 

 

 

 ×月×日

 

 夏休み、さいこー。

 

 学校無いの最高すぎる。別に学校が嫌いなわけではないけど、それでも毎日朝の7時30分には家を出ないといけない生活は辛すぎる。もっと、時間に余裕のある生活がしたいです!!! ―――って、叫びたくなるくらいには学校生活は怠い。

 

 ま、楽しいけどね。

 

 

 

 ×月×日

 

 久しぶりに神威さんのオート機能を使った。

 

 はくはつ、こわい。ぷるぷる、ぼくは、わるい、はいたつぎょうしゃ、じゃないよ。

 

 

 

 ×月×日

 

 この前の怖い人は、本当に怖い人だったらしい。

 

 何でもこの前の白髪は、あの世界最強さんだったらしい。そのおかげというか、そのせいで無駄に評価が上がった。ひっそりとやってたのに……。とりあえず、当分は配達の仕事は止めておこうと思う。普通に怖いです。

 

 俺がしてることは犯罪行為だけど、人殺してるわけでもねーし……見逃してくんねーかな。

 

 

 

 ×月×日

 

 久しぶりのNARUTO探し。

 

 結論:この世界にはNARUTOは無い。うん、知ってた。

 実在というか写輪眼を持ったうちは一族が実際に現実に存在してるから、もしかしたら未来の世界っていう可能性もあるかと思ってたけど、それも無さそう。それよりも昔に写輪眼を持った転生者がいたって言われたほうが信用できる。

 

 てか、この世界がNARUTO世界の未来なら、どうやったら生得術式とかいう血継限界だらけの世界になるんだ……。属性変化もなさそうだし、唯一似てるもので存在してるのは、医療忍術くらいか。

 

 まぁ、医療忍術のレベルを超えた完全な再生だけど。

 

 

 

 ×月×日

 

 今日は、久しぶりに呪力操作の訓練をした。

 

 まいまみーが死んでからは、訓練とか全くしてなかったけど、西京さんに会った時が恐すぎて始めた。ただ、今のうちに訓練していたほうが良いと思って始めたけど、3時間たったところで止めた。理由としては、とある事実に気づいてしまったからだ。それは―――

 

 ―――俺が訓練した程度で覆る差なら世界最強って言われなくね?

 

 サレンダーするので、見逃してください。

 

 

 ×月×日

 

 今日は、最高の旅行日和。

 

 本日、向かったのは日本最北端に位置する県、北海道へと行ってまいりました。今回は、魚介類、海鮮を目当てに旅行サイトに書かれてた星4~5のうまそうなメシヤに行ってきた。カニ、イクラ、ウニ、カキ……全部うまかった。

 

 ほっかいどう、さいこー。

 

 

 

 ×月×日

 

 いやなことを全部忘れて楽しんだ翌日。

 

 お金を使いすぎていた事実に気づいて泣きそうになりました。配達業を休止している間は、お金の使い過ぎには気を付けようって考えてたのに、ついつい前の感覚でお金を使っちゃう。明日からは、出来るだけお金を使うような遊びはせずに、もっと家で遊ぶ系で攻めてくか。

 

 あと、今日から家計簿つけてくか……。

 

 

 

 ×月×日

 

 家で遊ぶといったな―――あれは嘘だ。

 

 今日は、友達と海に行きますた。とてもたのしかたです。何というか、頭を空っぽにして遊ぶっていう感覚が普通に楽しい。マジでストレス解消にもなるし純粋に面白いから、精神年齢に関係なく馬鹿出来て楽しめる。

 

 だんしちゅうがくせい、さいこー。

 

 

 

 ×月×日

 

 今日は、クラスのみんなで夏祭り。

 

 最近の子供はかなり進んでいます。例えば、クラスでの参加のはずが周りにカップルたくさんいるとか、気づけば途中で半数の人間が消滅してるとか、少し遠くで頭が重なっている姿が見えるとか……先生、ぼく彼女が欲しいです。

 

 まぁ、別にカップルへの呪いで楽しくなかったとかは無かった。普通にクラスの彼氏彼女いない組で楽しく遊べた。と言うよりも、我がクラスの美少女双子が夏祭り初めてってことで、みんな楽しませる雰囲気が出来てて上手くいった。

 

 

 

 ×月×日

 

 夏休み最終日。

 

 みんなで図書館に集まって宿題討伐。作文とかいう難易度SSSクラスのモンスターの討伐が一番難しかった。あれには、いつか世界を破滅させる力が宿っている。前世というアドバンテージがありながら言うのもあれだけど、作文はちょっときついッス。

 

 まじあいつはんぱねーわ。

 

 

 

 

 

 

 

 ×月×日

 

 修学旅行に向けての授業スタート。

 

 今日から修学旅行に向けての授業が本格的に始まった。初日の今日は、運命のグループ分け。本来であれば、仲の良い人同士でのグループ作成のはずだったが、今回はくじで決めることになった。何でも去年の先輩方がかなり好き勝手にやったらしく、くじへと変更になったらしい。

 

 運命のダイスロール! 俺のターン! ドロー!!! 俺は、3グループのくじを攻撃表示で召喚! メンバーは、夏祭りのメンバーだ! 

 

 やったあああああ、俺はあたりを引いたぞーー!!!! 

 

 

 

 ×月×日

 

 修学旅行は、沖縄観光。

 

 配達業で何度も言っているとはいえ、それでも非常に楽しみです。それに、メンバーも夏祭り組と最高の組み合わせ。これは、前世含めて最高の修学旅行になるかもなー。マジで楽しみ。今日も学校で大阪をどうやって回るのかの話し合いをグループでやった。

 

 夢が広がリングのイカリングだった。

 

 

 

 ×月×日

 

 ひっさびさの配達。

 

 何の危険もなく運ぶことができた。やっぱり2か月何もしなかったのは正解だったな。これからは、前回までの定期便じゃなくて不定期便として活動していこうかな。それのほうがコッチの行動も読みずらいだろうし……。

 

 一先ず、㊗仕事復帰!

 

 

 

 

 

 ×月×日

 

 修学旅行まで1か月!

 

 修学旅行まで残すところ1か月。もう行くところは大体決まったし、修学旅行の日程もすべて固まって後は当日が来るのを待つ時間。つまり、ただの焦らしプレイ。まぁ、その焦らしが我がグループいやほかのグループも合わせて仲間意識を高めてる感じがある。

 

 つまり、はよいきたいです。 

 

 

 

 

 ×月×日

 

 修学旅行当日!

 

 さいこうやー。友達と乗る飛行機さいこー。友達と回る観光地さいこー。友達とわいわい話しながら食べるめしさいこー。すべてがさいこーでした。また、明日も観光地が俺らを待っている! つまり、今日は友達とオールでトランプ、ゲームをするってことだ!!!

 

 おれは人間をやめるぞ! ジョジョーーッ!!!

 

 

 

 ×月×日

 

 人間をやめた翌日。無計画で告白をする馬鹿野郎が発生。

 

 何も考えずその場のノリで美少女双子の片割れである黒髪に告白した馬鹿がフラれるのを、遠くから双子のもう片方である金髪ギャルと見る気まずさは異常。金髪ギャルはおもしろそーに笑ってたけど、どっちも知っている人間且つ友達である俺にとっては気まずさが億千万でした。

 

 

 てか、なんで同じグループのメンバー告白してるんだ。絶対、次の日気まずくなるって!

 苦笑いの黒髪と死ぬほど暗い男の姿―――凄く苦しいです。

 

 

 

 ×月×日

 

 修学旅行最終日。案の定地獄。

 

 フラれたやまだくんは、想像以上に暗くて笑い飛ばせないし、昨日見たというか昨日の出来事を知っているメンバーが当事者と俺と金髪ギャルの四人という話したくても話せない状況。―――まさに、地獄。何も知らないほかのメンバーはすごく心配して、知っている俺は気まずいという不幸。ふざけんじゃねー。

 

 

 ただ、フラれる現場を一緒に覗き見した金髪ギャルの距離が少し縮まってて、ぼくはきんちょうしました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ×月×日

 

 修学旅行から1か月。

 

 やっぱり金髪ギャルの距離が近い。それに合わせて黒髪も少し近い。流石にここまで来ると「もしかして…俺のことがッ…!」みたいな思春期男子の思考に堕ちかけるけど、そこは安心してください。私は、前世からオタクのエリート陰キャオタク。そんな思春期特有の失敗はしません。

 

 でも、もしかしたら俺のこt―――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ×月×日

 

 卒業まで2か月。

 

 俺の進学先は、公立高校。なんとか前世のアドバンテージを活かせることができた。今回、高校進学ではそれなりに頑張ったというか、少し勉強を増やしたりと前世があっても心配な部分があった。多分だけど、この調子だと大学進学の時には、普通に受験勉強をしないといけないかも。

 

 まぁ、大学落ちても配達業として頑張ればいいか。

 

 

 

 

 

 ×月×日

 

 就職しました。

 

 とある宗教団体からのの勧誘が始まり。まぁ、宗教団体といっても表向きはということで、裏向きにはゴリゴリの呪術裏組織だった。目的は、「非呪術師を殲滅して、呪術師だけの世界をつくること」というなかなかにぶっとんだ思想の持主。だけど、勧誘に来た一番偉い人は、すごい優しかった。言ってることが残酷なのに、それを感じさせない凄味があった。

 

 最初は、断ろうと思ったけど、殺しとか汚い仕事はなしの高給料だったのでOKした。

 

 要は、お金を払うから専門の配達人になってよとのことだった。契約中は、他の配達はせずに頼まれた配達だけを行う。そして、高いお金を貰う。それでいいらしい。とりあえず、周りの奴らが俺を使えないようにすることが目的だから……極論:俺は何もしなくてもいい! つまり、最強の就職先!!!

 

 お世話になりまーす! これからよろしくお願いしまーす!!!

 

 

 

 

 

 ×月×日

 

 卒業式。

 

 思い出深い中学校卒業。いろんな人と写真を撮った。前世だったら恥ずかしくてあまり自分から言えなかったけど、今世ではいろんなメンバーに声をかけれた。夏休みに海に行ったメンバー、修学旅行メンバー、やまだくん、美少女双子とたくさん撮れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ×月×日

 

 入社初日。

 

 なんで、美少女双子がここにいるんだ?

 

 

 

 

 



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うちは日記 弐頁

 

 

 

 ×月×日

 

 入社1週間。

 

 まだ、双子に正体はバレていない。と言うよりも、誰にも俺の正体はバレていない。それも全ては、我が完全オビトスタイルがなせる業。配達業者として働いている時に必ず付けている渦巻仮面と真っ黒コートは、隠遁に特化した呪具である。

 

 仮面呪具「渦巻」

 2級呪具。オレンジ色が特徴の渦巻状の仮面。被った者を正しく認識することができなくなる術式が付与されている。被っている者が男なのか、それとも女なのか、年齢はどれくらいなのか等を正確に認識することができなくなる。また、被っている間は声が変化するため、声帯による判断も不可能。だが、一度仮面を取る姿を見られるとその相手には効果がなくなる。

 

 真っ黒コート呪具

 4級呪具。黒い外套。着けている者の気配を認識しづらくなる術式が付与されている。

 

 この二つがあるお陰で、入社1週間の今も正体はバレていない。多分、今後も目の前で仮面を取るようなポカをしなければ正体は隠し通せると思う。

 

 

 

 

 ×月×日

 

 入社して多忙の2週間。

 

 やっと仕事が落ち着いた。マジで3日経ったくらいで普通にやめてやろうかと思うくらいには、きつかった。それくらいの仕事量を任されてた。

 

 その最大の原因は、神威。

 

 神威による移動は、短縮移動であって瞬間移動ではない。そのため、移動するときには一度神威空間に移動した後、現実に移動するという2工程を挟まないといけない。また、移動する場所には予めマーキングをしていないと移動できないという2つの特徴がある。

 

 そんな使い勝手が良さそうで若干使いにくい神威さんを十全に発揮できるよう、ここ2週間うちの会社が良く利用する場所や移動出来たらプラスになる場所へマーキングしに行くという作業に加えて配達も並行して行う二重苦を味わっていた。

 

 もし、この生活が続いてたら半年くらいで失明してたと思う。マジで神威の燃費の良さと反転術式による再生があって良かった。

 

 

 

 

 

 

 ×月×日

 

 高校入学式。

 

 人生の絶頂期である青春爆走高校生として、これからは仕事のことはあまり考えず頑張っていこうと思います!!! ―――っと、思っていたら同じクラスに見覚えのある金髪ギャルが一人。目を擦って確認してもその姿は変わらず、何なら瞬きすればするほどその存在は大きく映る怪奇現象。

 

 はい、そうなんです。あの双子も同じ高校に進学してました。

 

 もう片方の黒髪は、違うクラスに配属されていたらしく、周りに友達のいないアイツは真っ先にこちらへとやってきた。向こうは、久しぶりにあったと思ってんだろうけど、会社で何度かあっている俺にとっては、気分が重かった。せっかく仕事気分忘れようと思ってたのに……。

 

 とりあえず、連絡先を交換することになった。

 

 

 

 ×月×日

 

 今日は、なぜか昼食を双子と食べた。

 

 まず、ギャルが一緒に昼食食おうと誘ってくる → 友達いるから無理と答える → 入学したてでいないっしょと冷静に返される → なら、友達出来るまで一緒に食べよと畳みかけられる → 普通にかわいくて了承 → 黒髪合流。

 

 はい、私が敗北者です。……オタクに優しいギャルっているんすね。

 

 

 

 ×月×日

 

 今日も双子と昼食。

 

 今日は、昼食を食べているときに驚愕の事実が発覚した。黒髪は、実はオタクだった。まぁ、生粋のオタクではないけど、アニメとかマンガとか普通に見るとのこと。最近だと、深夜に放送開始したアニメがおすすめらしい。因みに、ギャルは偶に一緒にアニメを見る程度。

 

 なんか、妙だな。そんなオタクに都合が良い美少女がいるはずない。

 

 

 

 ×月×日

 

 身体測定だあああああ。

 

 身長167㎝、体重56㎏、視力2.0、聴力は何も言われてない……とりあえず全部大丈夫そう。この前、神威しまくったから視力が若干心配だったけど、大丈夫だった。反転術式は、神ってことや。

 

 

 

 ×月×日

 

 昼食で身体測定の結果を聞かれた。

 

 なんか、俺の結果を聞いて驚いていたけど……俺ってそこまで太って見えるのか? 因みに、俺が逆に結果を聞いたらギャルに「女子に体重きくな!」と言ってぶん殴られた。普通に理不尽なんだが? 別に体重だけ言わなきゃ良いだけじゃん……。

 

 ぎゃる、こわい。

 

 

 

 ×月×日

 

 男友達ができた。

 

 うちのクラスには、同じ中学校から来た奴がいなくて友達ができるか不安だったけど、今日オタク友達が出来ました。後ろの席に座っているすずきくん。休み時間にラノベを読んでたので、仲間になりたそうにすずきくんのことを見てたら、話しかけてくれた。優しい。

 

 とりあえず、昼食を一緒に食べた。

 

 

 

 

 ×月×日

 

 1週間ぶりの仕事。

 

 ゲトーさんが入社2週間の地獄について謝罪に来てくれた。何でも、会社説明会の時には最初の2週間が忙しくなることを想定していなかったとのこと。まぁ、それに関しては俺の能力に関する話を全く話していなかったから仕方ないですよと言っておいた。

 

 あと、神威のことを術式だと認識していることを確認できた。これを早めに引き出せたのは、デカい。もし、術式ではなく瞳術だと認識していたら俺の存在まで芋づる方式でバレるからな……。没落してすでに呪術界との関りを断っているとは言え、元は呪術界の名家。探せばいくらでも情報は出てくる。

 

 それにしても、ゲトーさんはガトーと名前が似てるのに優しい。

 

 

 

 

 ×月×日

 

 部活説明集会と見学会。

 

 野球部、サッカー部、バスケットボール部、バレーボール部、バドミントン部、卓球部、テニス部、囲碁将棋部、科学研究部、放送部……とたくさんの部活紹介を見た。その中でも最も魅力的に感じたのは、帰宅部。学校が終わったらすぐに帰宅する部活動。

 

 秘密主義なのか集会では紹介されず、見学会でも一切姿を現さない。なのに、放課後になるとかなりの人数が帰宅部のメンバーとして姿を現す。

 

 多くを語らず去るその姿―――まさに、忍者。

 

 今日、俺は本物の忍者になった。

 

 

 

 

 ×月×日

 

 ギャルうぜぇー。

 

 図書館で来月のテスト勉強をしてたら、双子がやって来た。二人ともと言うよりも、黒髪がテスト勉強するのにギャルが付いてきたという感じ。そして、気が付けば黙々と勉強する黒髪と俺の勉強を邪魔してくるギャルの構図に。黒髪に助けを求めても冷静に流され、ギャルに黒髪の邪魔スンナと言われ殴られる理不尽が広がっていた。

 

 そんな暴力ヒロイン道を走っているギャルは、黒髪の勉強を邪魔しないようにしつつ、俺に持ち前のマシンガントークを披露してくる。そのせいで、俺の集中力に限界が現れ、勉強が頭に入らずストレスが溜まるという地獄。

 

 もしかして、アイツは俺を潰そうとしてんのか……。

 

 

 

 

 ×月×日

 

 【悲報】社内いじめ判明。

 

 最近、会社に出勤したときに俺のことをフレンチクルーラーと裏で呼んでいることが判明した。その場面を目撃した時にその場にいたメンバーは、双子と上裸変態、ボビーの4人。ギャルと上裸がフレンチクルーラーがどういうモノなのかをボビーに説明していた。そして、それを聞いて笑っている黒髪。

 

 これは、立派ないじめです。社内の相談窓口ってありますか?

 

 

 

 ×月×日

 

 今日は、久しぶりに双子と昼食。

 

 なんだかんだ言いつつギャルとは毎日話をしているが、黒髪としっかり話すのは割と久しぶりだった。最近は、ワンピースを読み直しているらしい。普通にウォーターセブン編について語り合った。因みに、黒髪のワンピースでの推しは、ギルド・テゾーロでウォーターセブン編だけだとロブ・ルッチとのこと。

 

 俺の推しは、白ひげです。

 

 

 

 ×月×日

 

 魔のゴールデンウィーク突入。

 

 今回のゴールデンウィークは、学校が月曜日と火曜日を休みにしてくれたおかげで驚異の9連休が実現! だが、今回の休みは楽しむことが出来ない。なぜなら、この休暇を使ってボビーの故郷へとマーキングをしに行く予定が入っているからだ。

 

 本来であれば、ゴールデンウィーク外で行きたかったが、同じ学校に双子がいるため仕方なくゴールデンウィークを使うことにした。もし、ゴールデンウィーク外で行っていれば、万が一ギャルに疑われたときにヒントを与える結果になる。

 

 だから今回は、ゴールデンウィークを使うことで疑いの分散を図ることにした。

 

 それに、もし俺の正体をゲトーさんが暴こうとしていれば、今回のゴールデンウィークがブラフになる。ゴールデンウィークにしか予定を作ることが出来ない身分。つまり、ゴールデンウィークに9連休が出来る会社を探してくれるだろう。どこを間違えても学生の中を探すようなことにはならないはずだ。

 

 ―――フッ、完璧な計画だな。

 

 

 

 

 ×月×日

 

 ボビー旅行2日目。

 

 今回の旅行は、俺の素性を隠すために裏ルートからケニアに入ることになっている。つまり、違法入国です。普通は、一瞬で警察のお世話になりますが、そんな公共機関は呪術の前には無力。簡単に入国することが可能です。

 

 まず、専門の方(違法)を探します。そして次に、お金を渡します。そしたら、後は指示に従うだけです。何時何分にどこどこのなんとかって言う場所に来い。そして、そこにいる全身真っ黒の男に話しかけろみたいなね。そんな指示が来るので、それに全部従えば目的の場所に行けます。

 

 因みに、お金を払うときは、現金且つ一括で払えるようにしましょう。お金を出し渋る又は値下げ交渉なんてモンは、絶対にダメです。特に、脅しは止めましょう。たとえ、交渉の相手が自分よりも格下で脅せばやってくれそうでもしてはいけません。

 

 裏社会では、そういった交渉外による交渉を行った場合、すぐに裏データバンクに無料で晒され裏組合から永久追放されます。組合から追放されると、裏データバンクの使用禁止や仕事の斡旋が来ないなど、致命的な機能が使えなくなるのと同時に一流の呪術師殺しが送られてくるらしいです。

 

 なので、裏社会ではクリーンに生きましょう。

 

 

 

 

 ×月×日

 

 ボビーのおすすめする料理は絶対あたり。

 

 ボビーの味覚は、完成してる。日本人にあった料理をピックアップして持ってきてくれる大天才。今回の旅行は、仕事だから絶対楽しめないと思ってたけど、思った以上に楽しめてる。特に、食に関しては大満足。ボビーは、悪い奴ではないのが今回の旅行で分かった。

 

 ボビーがあの組織に入ったのは、ゲトーさんのカリスマ性に惹かれてとのことらしく。目標は、あの呪術大国である日本の王として君臨してもらうこと。その過程で非術師が死ぬのは、勿体ないが受け入れてるとのことだった。

 

 俺も理由を聞かれたけど、あの空気の中で「金払いが良かったのと最悪働かなくても良いと言われてことに惹かれた」とは言えず、「……深い理由がある」と言って濁すことしかできなかった。……ちょっと心が痛い。

 

 

 

 

 ×月×日

 

 ゴールデンウィーク最終日。

 

 一昨日、ケニアから日本に帰ってきてからは、すぐに寝て起きて飯食って寝ての生活を繰り返し、昨日一日が潰れた。そして、最終日の今日。せっかくの自由な時間の三分の二が寝て食って眠るの生活で消えたことが、衝撃的過ぎて朝は放心状態だった。また明日から学校が始まるって考えるとマジ憂鬱だった。

 

 そんな状態から抜け出すために、久しぶりに散歩していると野生のギャルに遭遇した。

 

 仕事や学校外で合うのは、去年の夏祭り以来だけど、二人っきりは初めて。まさかの事態過ぎて驚いていたが、相手は流石のギャル。そんな俺の驚きには一切触れず、必殺技のマシンガントークを披露。そして、気が付けば、一日ギャルと遊んで過ごしていた。帰り際の「じゃーねー」の一言で正気に戻ったが……あの生物は、本当に同じ人間なのか?

 

 ぎゃるってすげーわ。

 

 

 

 ×月×日

 

 久々の学校。

 

 みんな良い休暇だったのか、凄い表情が良い。あの、いつもラノベを読んでいるすずきくんでさえ、昼食の時にゴールデンウィークをどう過ごしたのか語っていた。これが、ゴールデンウィークの魔力なのか……? 先生! アレには、人を変える力が宿っていますよ!

 

 まぁ! 俺はほぼ仕事だったけどね!!!

 

 

 

 ×月×日

 

 遂に、オタク友達が増えた!

 

 いつも話しているすずきくんとは別にオタク友達が出来た。名前は、さいとうくん。毎日、昼食でオタトーーク!を繰り広げている俺とすずきくんに話しかけようと思っていたらしく、遂に今日話しかけられたと笑っていた。

 

 ―――分かる。分かるよ、さいとうくん! 俺にはその気持ちが痛いほど分かるッ!!!

 

 

 

 ×月×日

 

 今日は、さいとうくんのゲームプレゼンを聞いた。

 

 今日の昼食では、さいとうくんがおすすめのゲームをプレゼンしてくれた。何でもストーリー、世界観、ビジュアル、アクションなどすべてにおいて高水準のパフォーマンスを披露している「THE LAST OF US」と呼ばれるゲームが一押しらしい。もし、手元にPS4があるなら絶対やったほうが良いと念押しされた。

 

 最近、ゲームしてなかったけどやってみるか……。

 

 

 

 ×月×日

 

 今日は、すずきくんとさいとうくんと俺の3人で帰った。

 

 すずきくんは、俺があの双子と仲が良いのが気になっているらしく、なんで仲が良いのか聞いてきた。俺もなんでこんな状況になっているのか不思議だけど、やっぱりデカいのは去年の修学旅行だろうなとか言いながら、他にも最近のおすすめマンガ、あの先生がウザいとかいろいろ話をしながら帰った。

 

 なんか、凄い久しぶりに前世の友達に会いたくなった……。

 

 

 

 ×月×日

 

 そういえば最近、仕事の連絡がない。

 

 やっぱりゴールデンウィークの長期労働がデカかったのか。あれ以降の連絡はない。心配になってゲトーさんに連絡を取ったが3週間くらいは休みで良いよとのお言葉を頂いた。つまり、3週間仕事がないってことは、3週間仕事がないということなんです。

 

 つまり、最高です。ということは、最高だということなんです。

 

 

 

 ×月×日

 

 もう少しで中間テスト。

 

 前回のようなミスはせず、学校で勉強はしないで黙って自宅で自主学習をした。自主学習と言っても、前世というアドバンテージがあるから忘れていた記憶を思い出す作業でもある。記憶的には十数年前の内容だからほぼほぼ覚えてないけど……。

 

 まぁ、普通に前世の記憶あっても数学だけはマジでむずい。

 

 

 

 ×月×日

 

 体力テスト。

 

 前世なら学校に行きたくないと思わせるほど、大っ嫌いだった体力テスト。それが今では、得意かつ大好きなテストになっている不思議。呪術というダークファンタジーに浸かっている人間にとっては、子どものお遊びな体力テストだが、今年はあまり高い結果は出さないようにしたい。

 

 去年までならそこそこ高い数値を出していたけど、今年はギャルが裏の人間だってことが判明したからな。あまり、怪しい結果を出さないようにしないといけない。それが、少し面白くないけど……。

 

 まぁ、結果は出せなくても雰囲気が楽しいからいいや。

 

 

 

 ×月×日

 

 中間テスト当日。

 

 ギャルに勉強したか聞かれたから、あの伝説の「俺、全然勉強してなかったわー」を披露した。ギャルが「あー、まじー! ウチもしてなかったんだよねー」と笑ってたが―――フッ、馬鹿がッ! 俺はこの日のために準備してきたのだよお!!! と、心の中で小心根暗キャラになりきっていた。

 

 テストの手応えは、良かったです。

 

 

 

 ×月×日

 

 中間テストの返却。

 

 続々とテスト結果が返却される中、俺はギャルに恨み言を言われていた。「嘘つき」「勉強してないって言ったじゃん!」「騙したなー!」と騒いでいるが、俺は余裕の表情で受け流す。これが、前世に社会の荒波に揉まれ今世では反省した男の人生2週目の余裕。

 

 まぁ、人生1週目の君には僕に勝つなんて無理だよ。

 

 

 

 

 

 黒髪には、負けていました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ×月×日

 

 大規模呪術テロについて。

 

 今日、会社で幹部が集まり大規模呪術テロの計画を始動するとの発表があった。俺は、幹部ではないが人的・物的資源の移動の大部分を任されるため、幹部と一緒に情報共有の場にいた。

 

 大規模呪術テロ―――その名も「新宿・京都百鬼夜行」。

 決行日は、人が寄り集まる12月24日。ゲトーさんの使役している2000体の呪霊を新宿と京都にそれぞれ1000体ずつ放つことで日本を大混乱に陥れる計画。放たれる呪霊には、1級や特級がかなりの数含まれており、この計画への本気度が窺える。ただ、かなりの力を入れているこの作戦でも、勝率見積は3割程度とかなり低く、日本を堕とすにはまだ足りないらしい。なら、なぜ準備の整っていない勝率の低い作戦を決行することになっているのか。その原因は、今年の呪術高専入学者にあった。

 

 乙骨憂太、東京都立呪術高等専門学校1年生。

 

 彼を呪っている特級過呪怨霊・折本里香が、今回の真の目的。彼を呪う折本里香は、呪いとしての力が特級の中でも別格、もし手に入れることが出来れば呪術界と戦うことが可能になる。それほどの力がその呪いにはあるらしい。

 

 そのため、今回の大規模呪術テロは彼の所属しているというか現在住んでいる呪術高専の警備を手薄にさせることが真の目的となっている。

 

 

 

 

 

 

 

 思ってた以上にマズいことになっている。

 

 俺は金を稼ぐために、この組織に入った。確かに、配達業者として今まで死体だったり違法な呪具や薬物を運んだりした犯罪者だけど、それでもまだ本格的な捜査の入らないギリギリ見逃される側の犯罪者として上手く事を運んでいたのに、いつの間にか、見逃されないレベルの取り返しのつかない犯罪者になる可能性が出てる。

 

 正直言って、それだけは回避したい。今すぐにでもこの組織からとんずらしたい……けど。

 

 双子がこの作戦に関わってる。今もこの話を聞きながら、やっと伝説が始まるみたいなバカな顔をして、やる気を出してる。俺は、それが恐い。もしかしたら、この作戦の途中で死ぬかもしれない。それこそ、あの西京さんに会う可能性だってある。それなのに、アイツ等には恐怖は浮かんでいない。

 

 

 たとえ、どんなに危険でもアイツらは参加する。なぜなら、アイツ等には覚悟があるから。

 

 俺が今すぐ仮面を取って、この作戦に参加するのは止めようって言ってもアイツらは止まらない。なぜなら、ゲトーさんに心酔してるから。

 

 

 

 

 

 

 それなら、俺はアイツ等が生き残れるように全力を出す。なぜなら、それしか方法がないから。

 

 

 とりあえず、うちはの屋敷に戻って目ん玉でも探すか……。

 

 

 

 

 



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うちは日記 参頁


4話の途中が繋がっていたので、削除してます。


 

 ×月×日

 

 決行日まで、7か月。

 

 これからは毎日、百鬼夜行に向けて準備を進めないといけない。その為にも計画について詳しく知る必要があるが、残念ながら現時点で百鬼夜行について決まっている事項はかなり少ない。まず、ゲトーさんが呪霊を1000体ずつ京都と新宿に放つこと。そして、俺達は京都・新宿に来ている呪術師の足止めと目的を悟らせないように派手に動くこと。最後に、ゲトーさんが一人で東京の呪術高専に行って呪いを奪いに行くの3つが今のところ確定している。

 

 この計画は一見すると、足止め組が頑張れば案外計画が上手く行くように感じるが、それは絶対に在り得ない。なぜなら、相手に世界最強がいるから。アレは、同じ呪術師としてカウントしてはいけない。

 

 ―――特級呪術師・五条悟

 

 日本三大怨霊の一人・菅原道真の子孫にして現代における最強の呪術師。彼の才能は生まれつきのモノで、数百年ぶりに生まれた「六眼」と「無下限術式」の両方の才を持つ時代の寵児である。彼の扱う術式は、敵の攻撃を完全に防ぐことができ今まで傷をつけた者は存在しない。そこに時間の制限はなく、たとえ寝ている間や意識外であっても彼に攻撃が届くことはない。

 

 曰く、一人で日本を壊滅できる

 

 曰く、存在するだけで勢力図が変わる

 

 曰く、彼のせいで世界の均衡が崩れた

 

 等々、話が上がる自他共に認める世界最強。ソレが五条悟だ。

 

 たとえ足止めに命を懸けても五条悟ひとり居れば、すべては水の泡。アレが少しでも本気になれば足止め組は一瞬で花散ることになる。だから、今回の俺の勝利条件は計画が曖昧な現在でもある程度ハッキリしている。

 

 『 五条悟と接敵しない。』

 

 それが今回の唯一の勝利条件。たとえ出くわしても敵意を見せない、すぐに逃げるの二つを徹底する。それしか道はない。

 

 

 

 ×月×日

 

 百鬼夜行までに準備しないといけないことは沢山ある。

 

 第一に万華鏡写輪眼の移植。

 これは出来るだけ早めに準備する必要がある。少し前であれば万華鏡写輪眼を移植することは、両目が神威の俺にとってはあまり意味のないというか、反転術式があるせいでその必要性が失われていたが、百鬼夜行に向けて力を付けておかないといけない今となっては必須アイテムになっている。

 

 その理由は、須佐能乎の存在にある。

 

 須佐能乎とは、両目が万華鏡写輪眼に開眼した者が有することの出来る呪力の化身。開眼者を包み込むように巨人の像が展開され、ありとあらゆる物理攻撃からその身を守る最強の盾となる。また、須佐能乎には4つの形態があり、完全に展開することが出来れば腕一振りで山を消し飛ばすことの出来る破壊力を持った最強の矛にもなれる。

 

 そんな一度展開すれば術者の身を守る絶対の盾となり、完全体を展開できれば最強の矛にもなれる須佐能乎には、使った者の肉体に凄まじい負荷を掛けるという劇毒としての側面も持っている。使えば使うほどに、須佐能乎の状態を深めようとすればするほどに全身への負荷、特に眼に掛かる負荷は尋常ではなく、もし須佐能乎を数十回使用すれば失明するほど掛かる負荷は大きい。

 

 ただ、この劇毒としての効果を打ち消すことの出来る方法が一つだけある。

 

 万華鏡写輪眼開眼者が他の万華鏡写輪眼を移植することにより生まれる、光を失うことのない万華鏡写輪眼。

 

 ―――その名も「永遠の万華鏡写輪眼」。

 

 永遠の光を手に入れることが出来れば瞳力が以前よりも格段に跳ね上がり、その身は須佐能乎による負荷や瞳術の使用によるダメージが無くなり、万華鏡写輪眼としての力を十全に扱うことが出来る。

 

 永遠の万華鏡写輪眼を手に入れることが出来れば、百鬼夜行での生存率は格段に跳ね上がる。単純に物理攻撃に対しての盾と反転術式を使う呪力を節約できるからだ。その為にも、時間を調節して万華鏡写輪眼を移植する準備とうちはの屋敷にしっかり保管されているかの確認を行わないといけない。

 

 

 

 ×月×日

 

 あの計画を聞いてから学校に行くのが楽しくなくなった。

 

 本当は学校生活も楽しくて、夜もちょっとした仕事が楽しくて、その上お金も同時に稼げて毎日が楽しいことだらけ――みたいな生活を考えてたんだけど……。気が付けば、そのちょっとした仕事が日常生活に悪影響を及ぼしてる。裏で配達業をするのは、お金を稼ぐことと気軽に非日常を味わうことが出来る楽しさから続けてた。ただ、それも最悪な方向へと道が繋がってた。

 

 本来であれば、「非術師を全員殺すー」とか言ってる頭のおかしい奴らに適当に話を合わせて適当に配達も仕事をこなせば、大金が手に入る予定だったのになー。普通に「非術師を全員殺す」が現実的になるとはなぁ。おかしい世の中だ。

 

 世界はバランス調整もっと仕事しろ。ワンチャンありそうな雰囲気出すなって。

 

 

 

 ×月×日

 

 今日は雨。

 

 放課後、俺の暗い顔を見たギャルが「もしかして、アンタ雨嫌いなの?」と見当違いなことを聞いてきて思わず笑った。一緒にいた黒髪も普通に「いや、奈々子違うよ。トビはいつもこんな顔だよ」とか何でナチュラルにディスってんの? なんで、アイツらはあの話を聞いた後にも日常生活に支障が出ないんだ? メンタルが鋼なのか、ゲトーさんに心酔しすぎてメンタルが常に状態異常なのか? それとも、単純にバカなのか?

 

 まぁ、何でも良いや。明日からがんばろ。

 

 

 ×月×日

 

 分かる人には分かるらしい。

 

 今日の昼食ですずきくんとさいとうくんが俺のことを心配してジュースと弁当を奢ってくれた。普通に優しすぎて嬉しかった。今日は、久しぶりに友達と楽しく会話できたと思う。気分転換にさいとうくんが薦めてくれたゲーム始めてみようかな……。

 

 

 

 ×月×日

 

 今日は、文理の希望調査があった。

 

 すずきくんもさいとうくんも文系に行くとのことだったので、同じ文系を選んでおいた。正直言って、今はそんなことを考えられないというか、考えられるんだけど凄いどうでもよく感じて身が入らない。まぁ、前世も文系だったしこのままで良いか。

 

 

 

 ×月×日

 

 期末テストに向けた授業多すぎ。

 

 なんでこんな大変な時期に期末テストの勉強しなくちゃいけねぇんだー。と、言いたくなるけど学校だから仕方ない。それに、学校側もあと数か月後には死ぬ可能性あるなんて欠片も想像できないもんな。因みに俺も考えられない。やっぱり、あの人はこの世界の中でも別格に頭がぶっ飛んでると思う。

 

 【募集】世界平和。

 

 

 

 ×月×日

 

 今日も組織は絶好調。

 

 ゲトーさんが本格的に作戦を進めている。今日は、京都と新宿に配置する呪霊の情報共有がされた。呪霊の中には、見ただけで簡易領域を展開させるモノや領域展開が可能な1級から特級の呪霊など1級以上の術師じゃないと対応の難しい呪霊がかなりの数いた。百鬼夜行では、予め呪霊達に仲間への攻撃を禁ずる命令は出すが、範囲攻撃を行う呪霊などは範囲内に呪術師が居れば、例え仲間が居ても攻撃を放つようにするらしい。

 

 それもあって、今日はそういった攻撃を行う呪霊の確認をした。

 

 

 

 ×月×日

 

 不測の事態に向けて万華鏡写輪眼の調整。

 

 万華鏡写輪眼には、固有瞳術や基本的瞳力の向上以外にも特別な瞳力がある。それは、万華鏡写輪眼にあらかじめ設定した瞳術を時間差や特定条件下で自動発動させることが出来るというモノだ。NARUTOにおいては、サスケがイタチを殺した後にオビトの写輪眼を見て発動した天照やナルトに仕込んだカラスがイタチの万華鏡写輪眼を見たことで発動した別天神、マダラの死後に発動したイザナギなどかなりの活躍を見せている。

 

 その時間差万華鏡写輪眼の瞳力を俺も使うことにした。

 

 とりあえず、一つは決まっている。それは、死後のイザナギ発動。これは、必須だ。今回の最悪は、双子が死ぬことだが、その次点に五条悟と出会うことがある。五条悟と敵対したら確定で死ぬ。そして、百鬼夜行に参加するということは五条悟と敵対するということ。つまり、出会ったら確実に死ぬ。

 

 そうならない為に今から入念に準備はするが、絶対はない。もし死ぬことがあった際に、もう一度やり直す為にもイザナギの使用は死後でないといけない。ただ、そこで重要になってくるのが発動させるタイミング。もし使うことになるなら確実に死んだと思わせたい。だから、復活するタイミングを絶妙な時間に設定しないといけない。

 

 死んだ直後はすぐにバレるし、30分も後にすると激戦区だから眼が潰れず残ってるのか心配になる。だから……5分か10分がベストかな。

 

 

 

 ×月×日

 

 期末テスト当日。

 

 かなりズタボロだったと思う。ギャルが「今回は、ウチちょー頑張ったからトビに絶対勝てると思うわー」とか言ってたけど、今回マジで何も勉強してなかったし負ける気しかしない。それを聞いたギャルが「ウソ止めろし」とか言ってたけど、実はマジなんだよね。

 

 誰か事前に百鬼夜行止めてくんねーかな……。

 

 

 

 ×月×日

 

 全国模試とか普通に無理。

 

 先生が全国模試の申し込みの声掛けしてたけど、普通に今回は無理です。そんなことで時間は無駄にできません。全国模試受けるくらいなら、反転術式の効率を上げる修行をします。今のところ反転術式は眼以外の再生がかなり時間が掛かる。時間的には、再生させる大きさによるけど大体5分か10分くらい掛かる。眼なら10秒も掛からないけど。正直なところ、これ以上効率を上げるのは難しい……けど、それなら他の修業がしたい。

 

 まぁ、そう言うことなんで先生すいません。今回は、やめときます。

 

 

 ×月×日

 

 期末テストの返却。

 

 想像通りズタボロ。かなりの数で赤点を取った。でも、別に問題はない。百鬼夜行さえ如何にか出来れば、来年はしっかり勉強して高い点数取ればいいだけだし。だから、焦る必要はない。例えギャルが俺のことを全力で煽ってきたとしても問題はない。だって、勉強すれば勝てる。今回は、勉強しなかっただけだし期末テストについて考えられる時間もなかったし仕方ない。

 

 まぁ、でも負けたのは事実だから認めるよ。ギャル、今回はお前の勝ちだよ。本当に惨敗でした。

 

 だから、煽るの止めてくんね?

 

 

 

 

 

 

 ×月×日

 

 やっと明日から夏休み。

 

 遂に夏休みが始まる。今までは、全部夏休みに向けた準備とか修行しかしてこなかった。それも一旦は今日で終わる。明日からは本格的に永遠の万華鏡写輪眼を手に入れる計画が始まる。手に入れると言っても移植するだけだけど。移植に適合するかはほぼ運というか、かなり賭けの部分が大きい。

 

 本来であれば万華鏡写輪眼の移植は、血縁関係の中でも近親者に当たる人物の眼じゃないと適合しないと言われている。ただ、これに関しては不確定な要素を多分に秘めている。

 

 まず、NARUTOにおいては万華鏡写輪眼の移植失敗談が明確には出ていない。

 

 それに対して、成功談は明確。成功したマダラの名前やどうやったら永遠の万華鏡写輪眼を手に入れることが出来たのか詳しく語られている。このことから推測されるのは、誰もが最初の成功者のやり方を真似したのではないかということ。

 

 失敗談は、すべて語り継がれた話の中での小話。実際に移植で失敗した人物は全く語られていない。まぁ、敗北者について詳しく語る必要がないからこそ出てきていないだけでもあるが、全ては伝聞でしかない。言い伝えとは、言い伝えられていく中で変化していくものである。

 

 だからこそ、そこに希望がある。ただ、成功者には近親者しかいないのも事実。

 

 つまり、後は神頼み。

 

 

 

 ×月×日

 

 決行日まで、5か月。

 

 今日は、夏休み初日。朝でうちはの屋敷に帰ってきた。目的はただ一つ。うちはの所有する蔵の中から万華鏡写輪眼を取り出すためだ。流石に、夏休みの間で眼の調整をしないと12月にいきなり本番みたいな状況になりかねない。そうならない為にも形振り構っていられない。あの計画は、目暗ましの作戦ではあるけど、実際に日本呪術界にケンカを売る全面戦争だ。そんな中で俺と双子が生き残る確率なんてものは雀の涙ほどに小さい。

 

 多分、ソレをゲトーさんは解っている。その上で俺たちのことを駒として扱ってる。

 

 だから、それまでに使えるようにしないと……。

 

 

 

 

 ×月×日 

 

 この世界におけるうちは一族は、呪術師寄り。

 

 この世界でのうちは一族は、忍者というよりも呪術師としての側面が非常に強い。そのため、多少倫理観から外れた行動を実行することが出来てていた。

 

 ―――万華鏡写輪眼の保存

 

 次代の万華鏡写輪眼開眼者が光を失うことが無いように、万華鏡写輪眼の開眼者の死後、遺体から万華鏡写輪眼を取り出し何重にも封印術を施すことで保存し管理する仕来り。万華鏡写輪眼を開眼した者が出た際は、封印を解き万華鏡写輪眼の交換の儀を行う。これは、この世界の初代万華鏡写輪眼開眼者である「うちはマダラ」が取り決めた仕来り。それをうちは一族は、万華鏡写輪眼を開眼した者が出た際に代々執り行ってきた。

 

 ただ、ここ300年近くは万華鏡写輪眼を開眼した者はおらず、ほぼ形骸化した仕来りだったが……万華鏡写輪眼はしっかりと封印された状態で蔵の中に残っていた。数は、6組。それが、ほぼ完璧な状態で残っていた。

 

 つまり、まず俺は賭けに勝った。

 

 以前にも遠い血縁関係で永遠の万華鏡写輪眼を手に入れることが出来た奴がいる。今は、それだけ分かれば良い。早速、明日から移植手術を進める。

 

 

 

 ×月×日

 

 万華鏡写輪眼移植テスト1回目、失敗。

 

 前にも書いたが血縁とはいえ、遠ければ遠いほどその適合率は低い。本来であれば、近親者の万華鏡写輪眼があればベストだが……残念ながら万華鏡写輪眼に開眼した親戚はいない。俺が生まれる頃には、うちは一族は没落しており、俺を一人で育ててくれた母は写輪眼すら開眼していなかった。まぁ、それは別に良い。

 

 今回使用した万華鏡写輪眼は、かなりの年代物。ざっと900年近く昔の眼球。順番的には、2代目の万華鏡写輪眼。今回の移植手術は、失敗必須の実験。あまりにも時代が離れすぎて適合率がかなり低い。だから今回は、適合よりも自分の目ん玉を正常に取り出す作業の確認と移植する手順の確認が主だった。

 

 だから、失敗して当然なんだけど、出来れば適合してほしかった。チャンスは、あと5回。

 

 

 

 ×月×日

 

 万華鏡写輪眼移植テスト2回目、失敗。

 

 今回も適合しなかった。使用した万華鏡写輪眼は3代目開眼者の物。基本巴が特徴の万華鏡写輪眼だった。正直言って早く適合してほしい。2回しかまだ移植してないが、それでも減っていく万華鏡写輪眼を見ていくと心が折れそうになる。

 

 チャンスは、あと4回。

 

 

 ×月×日

 

 万華鏡写輪眼移植テスト3回目、失敗。

 

 4代目の万華鏡写輪眼も失敗。チャンスは、あと3回。

 

 

 

 ×月×日

 

 万華鏡写輪眼移植テスト4回目、失敗。

 

 移植の仕方が悪いのか、封印されていた5代目万華鏡写輪眼の状態が良くなかったのかわからない。それとも、ただ単に適合率が低かっただけなのかなぁ……。うーん、考えても仕方がないけど、たぶん世代が離れすぎて極端に適合率が下がってるんだと思う。それにしても明日が恐い。

 

 チャンスは、あと2回。

 

 

 

 ×月×日

 

 万華鏡写輪眼移植テスト5回目、失敗。

 

 6代目もやっぱり失敗。適合率問題がかなり高い壁になってる。甘く見てたのかもしれない。心のどこかで上手く行くって考えてた。何とかなるってそう感じてたけど、今はそんな希望的観測が出来ない。また、明日になるのが恐い。

 

 正直、明日も失敗する気がする。チャンスは、あと1回。

 

 

 

 ×月×日

 

 万華鏡写輪眼移植テスト6回目、失敗。

 

 7代目失敗。―――もうストックはない。全部試した。少し休もうと思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ×月×日

 

 やっとメンタルが戻った。

 

 今日は、久しぶりの仕事。今の今まで会社からの連絡を無視してたから当たり前だけど。上裸が俺のことをフレンチクルーラーと呼んだからぶん殴っておいた。いつもだったら平気だけど、流石に今日は無理だった。能天気な変態を見て普通に腹が立ってた。

 

 今日の会議は、百鬼夜行における陣形を決めた。

 双子、ボビー、美人さんが新宿、上裸とハチマキが京都、俺は状況を見てサポートに入れとのことだった。少し運が廻ってきたのかもしれない。凄い良い立ち位置を手に入れられたと思う。

 

 

 

 ×月×日

 

 今日は、うちはの蔵の中に百鬼夜行で使える物がないか漁ってみたところ、最高に使える物が出てきた。

 

 団扇呪具「うちは」

 特級呪具。うちは一族の家紋が入った大型の団扇。呪力を吸収し跳ね返す術式が付与されている。NARUTOにおいては、あのマダラが愛用していた武器で九尾の尾獣玉やナルトの螺旋丸を吸収し跳ね返していた。

 

 そんな宝具が蔵の中から出てくるなんて……流石うちは一族。

 

 

 ×月×日

 

 こんなことがあるのか……。

 

 蔵の中から初代であるうちはマダラの万華鏡写輪眼が出てきた。明日。入念に準備して最後の最後、ファイナルラストのラストチャンスに挑もうと思う。湧いて出てきた最後の挑戦。今回は、失敗しても仕方ない。

 

 でも、最後まで諦めはしない。

 

 

 ×月×日

 

 ―――適合した。

 

 

 

 

 

 

 ×月×日

 

 すべてが変わったように感じる。

 

 視界は良好。オールグリーン。問題はないどころか、いつも以上に調子が良い。呪力の流れが以前よりも見えやすいし動体視力も上がってる感じがある。須佐能乎も久しぶりに出したが、身体に激痛が走るようなこともなければ眼にも異常はない。完全に適合してる。神威も何度か使ったが、眼の消耗は感じない。

 

 今なら何でも出来そうな気分だ。

 

 

 今日、遂に万華鏡写輪眼が完成した。

 

 

 

 

 

 



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