TS娘と可愛い女の子達 (レーズンモン)
しおりを挟む

転生した

処女作です。
ご指摘お願いします。


 

 

俺は転生した

 

 

俺の前世は大したものじゃなかった。小学生の頃はよく泣き、よく遊び、よく怒られた。中学生の頃はよく夜遊びをし、授業は寝て過ごし、休み時間には友達と遊びいつも通りに授業は寝て過ごし教師に怒られる。

そんな奴がまともに進学出来るはずもなく、夜間の普通科の高校に通い朝から昼までバイトをし、学校に登校する。そんな日々。

 

高校を卒業したら進学はせず、新卒で入社した。もう面接はしたくない。現場の仕事で朝から汗水たらし、上司の声にビクビクしながら仕事をこなす。日々バイトこなし体力には自信はあったが、そんな自信は入社一日目で折れた。

 

そんな汗くさい日々を過ごしていた時、出会った。その子は営業の子で俺と同じ新卒の子だった。いつもハキハキと元気で明るい子だった、俺とは大違い。

ある日その子の歓迎会が行わられるという一報が回ってきた。俺の時はそんなのなかったぞ、先輩が一回飲みに連れってくれたけどそれだけ。

俺はその歓迎会に行くことにした。まあほとんどの人が参加してたから参加しなきゃいけない感じだったけど。俺新人だし余計にね。

 

参加日当日、居酒屋のひっろい一室を貸し切って歓迎会が行われた。俺は先輩方に酒を注ぎに回っていた。しないと怒られそうだから。正直かなりめんどくかった、先輩方のうざ絡みが堪えた。俺は一人か仲のいい人と一対一で飲むのが好きだから。

そんなことしていたら当然飲めないわけでして、内心帰りてえなと思いながら絡まれながら注ぎに回っていたら、ふと視界の端に新人の女の子が入った。なんとなく女の子を見ると女の子の方も俺を見ていて視線が交じった。そしたら女の子が手招きしてきた。招かれたのでひょいひょいと女の子方に近寄る。隣に座っていた男の人が何かを察したかのように離れていく、すれ違いざまに肩を軽く叩かれた。よく分からない意図だったが追及はせず女の子隣に座る。座ると同時に女の子が

 

「初めまして、お話ししてみたかったのですけど中々タイミングがなくて」

と言った。

 

まさか女の子方から話してみたかったとは嬉しい。

 

「いや自分も同じです。同じ新人同士でしたし」

 

「そうだったんですね!両思いでしたね」

 

凄い勘違いしそうな言い方に俺は動揺した。かなり。そんな俺を可笑しそうに見る女子の笑顔に俺は不覚にもドキリとした。俺、、チョロすぎ?

彼女と出会ったのはそんな日常の中だった。

 

そっからは非日常になっていた。歓迎会がお開きになり、彼女から連絡先を交換しないかと言われ、俺は喜々として交換した。そっから頻繁に連絡を取り合った。仕事の愚痴から好きなものや嫌いなもの、時には二人で出かけた。楽しかった、物凄く。前までの日常はただ過ごしていたが、最近は楽しくて仕方ない。毎日仕事に張り切り、休憩の時は彼女と会社から用意された弁当を一緒に食べる。もちろんなるべく消臭する。汗臭いと彼女に迷惑をかけるしあまり消臭すると逆に匂いがきつくなる。別に彼女から臭いと言われてないからね。いやほんと。

 

そんな日々を自ずと分かる。俺は、彼女が好きだと。そうと決まれば俺は行動が早かった。なんせ彼女は可愛い、惚れた弱みかと思ったが客観的に見ても可愛かった。連絡を毎日欠かさず取り、休日になればデートに誘い、エスコートした。ちょっと、いやかなりうざいかもと思ったが彼女もまんざらではなさそうなのでこれは脈アリか?と思った。

中々告白まで踏ん切りがつかず、いじいじと毎日を過ごしていたら彼女の方から、大事な用がある、と休憩の時に告げられた。並々ならぬ様子だったので二つ返事で了承した。

休日になり、二人で出かけデートスポットを回った。彼女が計画したようだった。いつもより気合の入った服を着て(彼女も同じ)いつもよりドキドキしながら回った。初めて二人で出かけた時よりもドキドキしたかも。

すっかり辺りは暗くなり、人のいない夜景が見える穴場スポットに到着した。夜景をバックに彼女と向かいあう。彼女が何をしようか何を言おうか分かる。だがいいのか?女の子から言わせて?男が廃るのでは?これはいけない。彼女が意を決して口を動かすが俺は手の平を突き出す。彼女は俺の突拍子のない行動に困惑したが俺から言いたいというと彼女は笑顔で頷いた。

 

「好きです。あの日、歓迎会であなたと会った日から。俺と付き合ってください」

 

とあまり考えずに言ってしまった。俺から言ったのに何も考えてなかった。咄嗟に口から出た言葉を紡いだ。

 

「私はあなたを職場で初めて見てから好きです。私の方こそ付き合ってください」

 

とまさか一目惚れされていた。あの日から俺は狙われていたのかと内心納得していた。なんせ彼女の方からぐいぐい来ていたから。

その日から彼女と付き合うことになった。

 

その日からさらに仕事に身が入るようになった。先輩方からも前から明るくなってたけど最近はさらに明るくなったなと言われた。その返しとして彼女が出来ましたとニコニコで答えたら、ああやっとか。と言われた。どうやらバレバレだったようだ。いつ付き合うか賭けでもしていたみたいだ、いやなに人の恋を賭け事にしてるんですか!と怒ったらめちゃくちゃ笑われた。俺も釣られて笑ってしまった。

 

その日から本当に楽しかった、ああ、楽しかったな。。これからだったのにな。

 

ある日彼女が倒れた。救急車で病院に運ばれた。俺も一緒についていった職場の人も快諾してくれた、いや仕事はいいから一緒についてやれと背中を押された。俺の心は焦燥していたが少しだけ暖かくなった。

病院の診察の結果治療法が確立していない病だと、そう、言われた。

 

その日からまるで色が抜けたように俺の目には白黒の世界が広がっていた。どうやって日々を過ごしていたかあまり覚えていない。毎日病院のベットに横たわっている彼女を見る日々。毎日弱っていく彼女を見ていく日々。彼女が何をした?俺が悪かったのか?答えは出ない。

 

家に帰ったら部屋の電気もつけずに布団に籠る。時折胃液がのぼってきて吐く。そんな日を繰り返していたら病院から電話で彼女が死んだと連絡がきた。

 

俺は急いで病院へ行き、病室を開けると彼女の両親と看護師に医師がベットの周りにいた。両親は泣いてベットに縋り付き、医師は悔しそうに拳を握り、看護師は母親の背中を撫でていた。

俺はフラフラとベットに近づきそれに気づいた医師を看護師が下がる。俺は彼女の顔見る。やせ細り、頬がこけ、髪は真っ白になり肌は青白い。元気だった時の彼女の面影はない。彼女の髪を梳きながら頬を触る。冷たい。限界だった。

 

俺は病院を飛び出し走った。目的地などない。走って走って階段を上り足を滑らした。後ろへとゆっくりと落ちてゆく、その時彼女との思い出が蘇った。ああ、楽しかった本当に、これが走馬灯なのだろうと思った。まだまだこれからだったのに、まだまだやりたいことがあったのに、これからもっと楽しくなるはずだったのに。

そんな未練をたらたらとたらしながら頭に強い衝撃がきた。意識が遠のき、それから、、、

 

 

 

 

 

 

俺は転生した。

 

 

 

 

 

 

目が覚めた。長い夢を見ていた。もう取り戻せない日を。

俺は転生した。しかも女にだ!なんでだよ、、、女に生まれ変わってかなり大変な日々を過ごしてきた。両親にはかなり迷惑をかけた、何故かって?俺は小学生上がった時に前世の記憶が蘇ってきた。その時俺はかなり荒れた、先ず死のうとした。はい、ダメ。母親には泣かれ、俺は喚き、父親は暴れる俺を抱きしめ続けた。あの時はかなり迷惑をかけた、いやほんと。その後は散々暴れ疲れて爆睡をかまし起きてから一旦落ち着いて前世と今世を冷静に考えてみた。考えに考え、これは所謂転生では?と一応着地点に落ち着いた。そんな様子を両親はハラハラしてみていた。当たり前だ、ランドセル買ってもらってはしゃいでたらいきなり縄を引っ張り出して首吊り縄を作り始めのだから。そっから突然の奇行に両親が慌てて止め、ああなったわけだ。

とにかく今は転生し、小学生の女の子になったわけだ、いや元々俺だったわけだが前世の記憶を思い出た女の子になったわけだ。うん、だから俺はこの体の持ち主殺しているわけではない。そうだ、そうに違いない。

取り合えず今は自殺しない。今世の両親に悪い、俺はそんな身勝手に死に、悲しませたくない。前世のことはゆっくり時間を掛けて噛みしめていこう、こうでも決意しなければ死んでしまいそうだ。

 

取り合えず今は女の体に慣れなければ、、頑張るぞ、俺。死ぬな俺。生きるんだ、だって彼女に言われたじゃないか、、

 

「生きて」

 

っと。

 

 

 

 

女の体に振り回され、男との距離感や女友達の作り方を学びながら俺は日々を過ごしていった。

 

 

 

 

コンコン

 

 

玄関からノック音が聞こえた。はいはいっと

ギイギイとなきながらドアを開ける。

 

「やぁ、いらっしゃい」

 

「お、お邪魔します、雨野さん」

 

俺、雨野日比(あまのひび)、大学生のお姉さんになりました。

訪ねてきたのはこのアパートの隣に住む女の子。名前は結月ゆかり、薄い紫色の髪色にうさぎ耳のパーカーを着ているスレンダーな女の子。確か今は高三だっけ?俺と同じ大学を受けるらしい、それを恥ずかしそうに言ってきたとき結構可愛かった。たまにその時の様子を真似していじる、顔を真っ赤にして怒るからやめられない。

 

前世の記憶を蘇ってきたその後の俺は、小中高という黒歴史を過ごし、知り合いのいない遠い大学に進学した、大学通ったことなかったからね。実家から通うのは遠いということで俺は念願の一人暮らしをはじめた。前々から一人暮らししたがったが錯乱した前例があるせいで信用を取り戻すのに時間がかかってしまった。

やっと一人暮らしをはじめた数日後に隣に引っ越してきたのがゆかりちゃんというわけだ。

 

「どう?受験勉強は順調?」

 

「はい、雨野さんに付き合ってもらいましたし、友達にも」

 

「そっかそっか偉い偉い、頑張ってる子にはご褒美だ!よーしよし」

 

「ちょっと!子供じゃないんだから撫でないでください!」

 

ぐりぐりと頭をなでる。これをするとゆかりちゃんは怒るけどまんざらでもないので大人しく撫でられる。ゆかりちゃんはツンデレなのだ。

そんなやりとりをしながら部屋へと歩いてゆく。今日もこの子は私とゲームをしに来たのだ!いや~こんな可愛い子と一緒にゲームをできるとは役得だね!こんな時は女の体に生まれてよかったぜ。

そう、俺はまだ女として生きることを決断できていない。まだ男のときの方が長く生きてたし、まだ前世のことは割り切れてない。時々夢に見る、彼女と楽しかった日々を。そして時々死にたくなる、だがダメだ、彼女が夢にでてきて言うんだ。

 

生きてって。元気だった頃の姿で

 

だから死なない。死ねない。

 

っとだめだだめだ。今からゆかりちゃんと遊ぶんだからネガティブになってしまってた、時々こうなる。ほんとに俺はこんなところだけは女々しい。

 

「雨野さん?大丈夫ですか?」

 

「あ、あぁごめんね、考え事してた」

 

「そうですか?また遠くを見てた感じでしたよ」

 

「ごめん!っさ!ゲームしよっか」

 

「はい、あの何か辛いことがあったならいつでも相談に乗るので遠慮しないでくださいね?」

 

「うん、ありがとね。ほんと優しくて可愛い女の子だね」

 

「え、えぇ!?か、可愛いですか、わ、私」

 

顔を真っ赤にしながら手を顔の前に交差させながらせわしなく振っている。うん、可愛い。

 

「うん、可愛いよ、私にはもったいないな」

 

「あ、雨野さんもか、かっこいいです。」

 

と耳まで真っ赤なゆかりちゃんが細々と言ってくれた。確かに俺は可愛いよりか、かっこいいか。切れ目でショートカットで身長百八十センチだしな。うん、可愛くはないな。

 

「さて、さっそく遊ぶか。何持ってきたの?」

 

「はい、今日はこれです!」

 

持ってきたのはファミコンのゲームソフト。殴りあう大乱闘なあれだ。この世界もファミコンあるんだよねー。この前ゆかりちゃんがファミコン本体を持ってきておもわず声でちゃったよ、久々にみたし。

 

「じゃあゲームセットしてっと」

 

「じゃあいきますよ?ゲームスイッチ、オン!」

 

こんな前世男、未だに前世を引きずっている女々しい俺と、可愛い女の子と関わっていく日々を過ごす日常の始まりだった、、、なんつって

 

 

 

 

 




見切り発車です。この先どうしましょ


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

友達

お昼過ぎ、休日。

今日はバイトが入っていなのでぶらぶらと街を徘徊中...はい、趣味は散歩兼お店冷やかしです。適当に洋服店に入ったり、ゲームセンターで時間を潰す。大学の友達は皆用事があるらしく一人さみしく歩く。

ナンパをかわしながら歩いていると前から既視感のある金髪の女の子が歩いてきた。向こうも俺に気づいたらしく、ポニーテールと立派な胸部装甲を揺らしながら走ってきた。

 

「日比さ~ん!」

 

「マキちゃ~ん!」

 

「「ひしっ」」

 

公共場だが関係なく俺は女の子と抱き合う。では、紹介しよう。この金髪ロングの快活そうな顔立ちにお胸が豊かな子、弦巻マキちゃんだ!ゆかりちゃんと高校の友達で軽音部に入っているらしい今もギターケースを背負っている。

馴れ初めはゆかりちゃんに紹介してもらってそっから意気投合、時々二人で遊んだりゆかりちゃんを入れて三人で遊んだりしてる。

 

「日比さんはまた徘徊ですか?」

 

「間違ってないけどその言い方、老後のおじいさんみたいじゃん」

 

まぁ確かに老人みたいな事してるけどさー、そんなはっきり言われたらちょっと傷つく。せめて散歩って言ってよ...

 

「それで?マキちゃんはギター背負ってるって事は?」

 

「はいその通りです!スタジオ借りて朝からガンガン弾いてきましたよ!」

 

予想通りにギターを弾いていたみたいだ、朝から。マキちゃんはギターの一回聞かしてもらったけどすごかった、ライブとか行ったことないから詳しくはわかんないけどとにかくすごかった。語彙力がない。

 

「じゃあこれから暇?暇ならデートと洒落こまない?」

 

「いいですよ!あ、でも一回家に帰っていいですか?ギター置きに行きたいですしお風呂にも入りたいです」

 

「スンスン...確かにいい匂いがするね」

 

「へ、変態だ...」

 

マキちゃんが自分の体を抱きしめながら一歩一歩ゆっくりと下がってゆく。確かにさっきの俺キモかったな、俺が女じゃなければ通報案件だ、いや女でも仲がよくなければ通報案件かも。ば、挽回しなけば。

 

「ご、ごめん!冗談のつもりだったけど流石に気持ち悪かったね」

 

「あははは!全然気にしてませんよ、私も冗談でオーバーに反応しただけなんで」

 

「も~焦ったよ~嫌われたらどうしようかと」

 

「私たちは友達です!そんなやわな関係じゃないんで大丈夫ですよ!」

 

いや~良かった、こんな可愛い子に嫌われたらどうしようかと。また女の子との距離感ミスったらどうしようかと思ったよ。

 

「じゃあマキちゃん家に行こうか」

 

「はい!」

 

マキちゃん家には何回かお邪魔したことがある。お父さんと二人暮らしらしい、らしいっていうのはお父さんを見たことがないから、忙しい方みたいだ。マキちゃんの部屋は防音室になっていて家で自主練ができる最高の環境だ。

二人で横並びで歩く、俺とマキちゃんの身長は二十センチ差があるから視界の端でチラチラと金髪の髪が見える。ぴょんぴょんとアホ毛が跳ねてるのが可愛い。ほんと周りの子たち可愛い子ばかりだ、てかこの世界顔面偏差値高くない?俺も含めて。

マキちゃんと雑談しながら家に向かう。平和だ、周りを見渡せば子連れにカップル老夫婦。ガヤガヤとうるさくない程度の話し声、上を見上げたら青い空に白い雲。平和だ、すごく心に染みわたる。

 

「日比さん?どうしました?」

 

急に俺が会話を中断したのが不思議に思ったのか俺の顔を覗き込んでくるマキちゃん。

 

「あぁ、ごめん感傷に浸ってたよ」

 

「...一人で抱え込まないでいつでも相談してくださいね?友達なんですから」

 

心配そうな顔でマキちゃんが言う。まったく俺は何しているんだ、年下の子に心配させて...精神年齢合わせると結構いくぞ?俺はだめだな、いつまで引っ張んてんだか。

 

「...ありがとうマキちゃん...てかそれゆかりちゃんにも言われたよ」

 

「ですよねー私がわかるんだからゆかりちゃんにわからないはずがないですよ」

 

「ん?それってどういう」

 

「はいはい鈍感さんには教えてあげませーん」

 

「???」

 

よくわからないがまぁゆかりちゃんとは家が隣同士だしよく一緒に遊ぶから俺の様子は分かりやすいのかも?

マキちゃんと雑談を再開し、家に到着。俺は家に上がらせてもらい居間で待ってマキちゃんはギターを部屋に置いて風呂に入っていった。女の子の風呂は長いので携帯をいじってのんびり待たせてもらおう。女の体になって実感したけど風呂に入ると必然的に長くなる。母親と後輩に徹底的に女のお風呂の入り方というものを叩きこまれた。あの時の恥辱は忘れもしないだろう...

と感傷に浸っていたら風呂のドアが開く音が聞こえてきた。早いな、汗を流しただけかもしれない。

 

「日比さーん髪乾かしてくださーい」

 

脱衣所のドア越しからくぐもったマキちゃんの声が聞こえてきた。

 

「はいはーい」

 

俺は返事をし、脱衣所に向かう。脱衣所のドアを開け、中に入るとドライヤーを持った下着姿のマキちゃんの姿が。紫色のレースのブラとブラウスを着た大人っぱい姿のマキちゃんが目に入る、だが俺は欲情しない。先に魅力的だと感想が出てくる、今世に転生してから性欲が薄いと感じている、何故かはわからない。だが目を惹かれるのは確か特に俺にはない豊かな体の一部が。だが女の子は視線に敏感だ彼女からにも言われたし身をもって体験している。だからあまり見ないようにしている。

 

「はい、ドライヤー貸して後ろ向いて」

 

「はーい」

 

可愛らしい返事とともにドライヤーを手渡し後ろを向くマキちゃん。前に泊まりにきた時にお節介で髪を乾かしてあげたら気持ちよかったらしくお風呂あがった時に俺がいたら頼んでくるようになった。俺も別に苦ではなくむしろサラサラの髪を合法的に触れるので役得である。

 

「では、お嬢様髪を梳かさせていただきます」

 

「うむ、苦しゅうない」

 

お許しをもらったので弱い風力でドライヤーを当てながらもう片方の手で髪を傷つけないようにゆっくりと梳かしてゆく。甘い匂いがし、バレないように髪を鼻に近づけて嗅ぐ。クンクン...なんていい匂いなんだ...っは!いかんいかん、また気持ち悪いことをしてしまっていた。あれもこれもマキちゃんが魅力的なのが悪い!

トリップから戻ってきて再度髪を乾かしてゆく。...マキちゃんにはバレていないようだ、鼻歌を歌いながら頭を小さく揺らしながら目を瞑っている。(鏡に反射してみえる)にしてもほんとサラサラだな~絹のようだ。マキちゃんは金髪だが地毛らしい、まぁゆかりちゃんも薄紫だし後輩も白よりの銀髪だしな、大学の人たちも茶髪多いしこの世界は黒が普通ではないらしい。この日本は統一化よりか自主性が重んじられてる節がある、前の世界よりかいい世界だな俺はそう感じた。

しばらくマキちゃんの髪を満喫しながら乾かし終え、マキちゃんが着替えに部屋に戻って俺は一足先に家を出て待つ。

ぼーっと空をみて待っているとドタドタとせわしない足音が聞こえてきた。そしたらバーン!とポニテのマキちゃんが勢いよく出てきた。

 

「お待たせしました!さぁ、行きましょう!」

 

「そんなに急がなくてよかったのに」

 

「時間がもったいないですから!さぁ!はやくはやく!」

 

元気いっぱいのマキちゃんに手を引かれながら小走りで行く俺。わんぱくな楽しそうなマキちゃんの笑顔に俺も釣られて薄く笑い隣に並んで歩いていく。

 

「ところで、どこに向かってるの?」

 

「あ...なんも考えませんでした...てへへ」

 

頭を掻きながら舌をだしておどけるマキちゃん。美人は何しても可愛い。

 

「まったく...だけど可愛いから許す!」

 

「やったーー!!」

 

軽く飛んで両手をあげるオーバーリアクションなマキちゃんをみて俺もニコニコだ。彼女はムードメーカーの一面もある、これは学校ではモテモテだろうな。

 

「じゃあ、ご飯でも食べに行く?奢るよ」

 

「やったー!奢りだー!ごちになります」

 

「御馳走します、じゃあ行こうか何食べたい?」

 

「えーとですね...マ〇ク行きましょう!テイクアウトしてゆかりちゃんも誘って家で遊びましょう!」

 

「...いいね、デートじゃなくなったけど三人で遊ぶか」

 

「そうですね、ゆかりちゃんも嫉妬しそうなんで」

 

「そう?そんな嫉妬深かったっけ?

 

「そうですよ...日比さん限定で」

 

「ん??」

 

最後声が小さくてよく聞こえなかったがゆかりちゃんって嫉妬深いのか...そんな感じしなかったけど今度から気を付けよう。

 

「じゃあ、マ〇ク行きますか」

 

「レッツゴー!」

 

元気よく出発の掛け声をかけ、二人並んで目的地へ歩いていく。マキちゃんと雑談しながら目的地に着き、無事テイクアウトを完了し、俺たちのアパートへと向かう。事前にゆかりちゃんに連絡してるから俺の部屋にいるだろう。

 

「ただいまー、お母さんいる~?」

 

「お邪魔しまーす、あっどうも日比さんのお母さんこんにちは」

 

「誰がお母さんですかーー!!」

 

激おこぷんぷん丸なゆかりちゃんが走って出迎えに来てくれた。あ、結構怖い顔してる。

 

「ごめんごめん、冗談。はいこれ、マ〇ク一緒に食べよ」

 

「もうっ、冗談はほどほどにしてください!マキさん、雨野さん」

 

「だってーいい反応するからついつい...ね?」

 

「ね?じゃないです。ほら、さっさと入る!」

 

呆れたように溜息を吐いて部屋に入ることを促すゆかりちゃん。確かにいい反応するからついついいじってしまう、マキちゃんがノってくるからさらに助長してしまう。

三人で入るには若干狭い部屋に入り、小っちゃいテーブルを囲んでマ〇クを食べる俺たち。マキちゃんは食べながら喋り、ゆかりちゃんは黙々と食べながら相槌をうち、俺はさっさと食べて話し相手になる。皆違うタイプだ。

一番食べるのが遅いゆかりちゃんが食べ終え、ゆかりちゃんを交えて雑談を再開。今日はなにがあったーとかなにやったーとかこのゲームやりたーいとか平凡で平和な会話。俺はこの時間が好きだ、何気ない日常が一番というのは社会人になったらよくわかるからね。俺もあまり時間が残されてないなー、働きたくなくねえなーと片隅で考えてこの日常を嚙みしめていく。

 

「ゲームしよ!ゲーム」

 

「また急ですね...まぁ賛成ですけど」

 

「おっじゃあやろっか何する?」

 

「そうですねー...」

 

今日もまた平和の日常を紡いでいく、俺と可愛い子たちに囲まれ今日も夜まで遊び尽くしていくのでした。

 

 




毎日投稿してる人すごい


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

気になる隣人

ゆかりさんのお話

ちょっと長い


私は何不自由なく生まれ育てられてきた。母親は専業主婦兼パートの掛け持ち、父親はごく普通の営業サラリーマンだ。物心ついた時から母親に抱きつかれ、父親には頭を撫でられる、少々スキンシップが激しいが私の自慢の親。

親に愛され、親を愛しているごくごく普通の家庭、そしてごく普通に生きて愛する人が出来て、結婚して子供が出来てそして寿命を全うして死ぬ...そんなごく普通の人生を送って生きるのだと漠然と思っていた、まだその時は中学生だったかな?...今考えたら中二病ですねこれ。

 

そんな色のない生活を続けていた時、携帯で何気なくでてきたゲームをプレイしながら実況をするという動画を見掛けた。あまり視聴回数が少ない動画だったけど何気なく見てみた。

私は趣味と呼べるものがなかった、強いて言うなら読書くらいなものだった。そして何気なくみた動画で私は趣味というものが出来た。

 

ゲーム実況。私はゲームをほとんどしたことがなく最初はよくわからなかったが、実況者がわかりやすく説明してくれたお陰で大体のゲームジャンルを把握できた。

色んな動画みていたらそれぞれの実況動画の良さがわかってきた。あの実況者はリアクションが面白い、あの実況者の動画の編集は丁寧だ。

など、実況力や、編集技術、動画時間の長さなど千差万別だった。

 

私はもうハマるにハマった。学校から直帰して家に帰った部屋に籠って携帯で動画を視聴。夕飯の呼び出しが母親からかかりご飯を食べながら動画を見る。両親に怒られたけど私は決してやめなかった。

そんな日々を続けていた時、動画を見ながら私はふと思った。

 

(私ならこんなリアクションをするなー、あっ私ならここに効果音入れたりするなー...)とか考えてしまっていた。

 

その時からなんの動画を見ても自分ならどうするか?自分ならこう言おう、自分ならこういう編集をする.....と完全に実況者になりきって見ていた。

 

だんだんと悶々とした感情が蓄積していき思い切って両親に頼んでみた。

 

「お父さん、お母さん、私ゲーム実況やってみたい...だから...その...パソコンとマイクが欲しい...です...」

 

そう言って懇願してみた。クリスマスでも誕生日でもなにも特別ではない日。段々と声が小さくなり、俯いてしまった私。勇気を出して言ってはいいものの初めてこんな風に物を強請ったのは初めてだったこともあり、声が出なくなってしまった。

不安で仕方なくなってしまった私に両親は笑い飛ばしながら了承してくれた。元々、誕生日にパソコンは買ってあげようと両親同士で決まっていたよだった。マイクは予想外だったみたいだが、ゲーム実況というものがやりたいならそれもついでに買ってやる、そう言われた。

私はもう喜んだ、思い出したら恥ずかしくなるぐらいに。次の休みに一緒に買いに行こうと約束し、私は部屋に戻って布団に包まった。

私の頭の中はどうやって実況とろう?てかそもそも編集ってどうやるんだ?そんなことを考え携帯で動画編集やり方で調べて、外が明るくなるまで没頭していた。

 

休日、約束どおり両親と私は電気店にパソコンとマイクを買いに出かけた。私はパソコンのスペックなどは全く調べていなかったことを今更思い出したが父親が詳しかったので助かった。あまり高すぎないパソコンを父親と相談しながら購入、当日に渡せないみたいなので後日また来訪しなければいけなかったが楽しみが後日に伸びただけなので特に不満もなかった。

マイクはちゃんと調べていたので目当ての物はすぐ見つかった。お手頃の価格で動画レビューとかをしっかりみて決めたものだった。

 

後日、電気店に再度訪れた私たちはパソコンを受け取り即帰宅(私が急かした)。部屋にそそくさと父親と一緒に運び開封。勉強机に置き、初期設定やらなんやらを設定を済まし動画編集ソフトをダウンロードした。マイクをセットし予め買っておいたゲームを起動し、動画撮影を開始した。

 

私は動画撮影をし終え、動画編集に取り掛かったが今日中に終えることが出来ないと悟った。椅子に全体重を掛けもたれかかる、実況者たちが編集は時間がかかると言っていたが今身をもって思い知った。これはつらい...

今日はこれぐらいにし私は重くなった体を動かし布団にダイブしてそのまま寝てしまった。

翌日の朝から動画編集を再開し夜までぶっ通しでやり続けた。

 

やっとこさ出来た動画を見返しながら思った。これ面白いか?実況はたどたどしい、シンプルに面白くないボケ、拙い編集。もう一度見返そうかと思ったが、やめた。これをインターネットの海に放り投げるのか?きつくないか?何より私が。黒歴史確定演出入ってるよこれ。とか散々悩みながら取り合えず疲れたし風呂入って寝て明日考えよう、そうしようと思いぐっすりと眠った。

 

結局それは没にした。それで改めて新しいゲームを買い、再度挑戦してみた。前回の反省を生かしズバズバとゲームに対してツッコミを入れながら実況を撮り終えた。前回はキャラを決めていなかったせいだ思い至り毒舌キャラな実況者でやってみることにした。編集技術はまぁ...回数こなしていけば何とかなるでしょ精神で。

数日かけ前回より時間をかけた動画を見返す。うん、前回よりか遥かにいいこれなら大丈夫、きっと、メイビー...

そして私は震える指でエンターキーを押した。ここから私のゲーム実況者の始まりだった。

 

私の初動画はあまり伸びなかったが想定よりか全然伸びた。初のコメントに初の高評価初の...低評価...何もかもが初体験のゲーム実況、動画編集で何が正解か手探り状態だったけど私の動画を再生してくれてあまつさえチャンネル登録を登録してくれた視聴者までいてくれる...私は初めて感情に戸惑った確かにゲーム実況をやってみたいと思ったが、まぁちょっとみてくれるだけで満足かな?とか思っていたが...

今はもっとゲーム実況をやりたい!もっと上手く編集できるようになりたい!もっと有名になりたい!と心からそう思った。自分でもこんなに感情が高ぶったのはびっくりした、コメントを読みながらニヤニヤしている私...気持ち悪いなーと自分で思いながら思っていたがやめられない。ふむふむ...声が綺麗、可愛い...なるほどなるほど...両親や友達から褒められるとはまた違った良さがあった、顔を知らない不特性多数に褒められる...中々に快感だぁ...おっといけないトリップしていた。

 

そっからの私の快進撃は始まった。私は動画を撮り続け、編集技術を向上させながらキャラに磨きをかけ続けた。日々増える高評価コメント登録者...低評価...まぁ毒舌キャラなんで合わない人は合わないだろう、うん...悲しくないよ。

だが私の快進撃は意外なところでストップした。

 

「ゆかり、一人暮らし...してみないか?」

 

父親からそう言われた。えらく急な話で私の頭は完全ストップ、緊急停止だ。かろうじて動いた口で理由を聞いてみると

 

「ゆかりももうすぐで高校二年生だ、つまりもうすぐで大人の仲間入りなわけだ。でだ大人になにが求められると思う?そう、自立力だ!自立力を鍛えるには一人暮らしが効果的なわけだ、だから一人暮らししよう、うん、そうしよう」

 

早口でまくし立てた父親の発言になにか違和感を私は感じた。無理やり納得させようとしてるような、なにか隠してるような感じがした。つついてみよう。

 

「急な話だし、なんで今なの?中途半端な時期だよね?」

 

「そ、それは...そう!ゆかりがやっているゲーム実況にしゅ「見てないよね?」...み、見ていません...こ、コホン、趣味に集中できるんじゃないか?」

 

これは何か隠している。父親は隠し事が苦手だ、視線は泳ぐし汗はだらだら流している。

 

「まぁ確かに一人の方が集中できるけどいきなり一人暮らししろって言われて納得できるわけないよ。してほしいならちゃんと訳を言って」

 

「...そうだなお父さんが間違っていた、ちゃんとゆかりに相談せずに勝手にしてしまった」

 

「ん?どういう意味?」

 

「お父さんこの間友達と飲みに行ってな、その友達はな不動産業をしていてな持ち掛けられたんだ。その友達の娘さんがアパートに一人暮らしをはじめたらしくてな、その隣の部屋が空いてるらしくてな友達も心配らしくてな色々あったらしいから...知人の子が隣に住めば少しは安心できるって言われてな」

 

「それで?会ったこともない人の世話をしなくちゃならないの?」

 

「いや、今は大学生らしいし落ち着いたらしいから大丈夫だ、だが親からしてみれば一人娘を遠くに置いておくのは心配だったらしくてな、私も娘がいるから同情してな...酒の席でもあったからなんだ...その...勢いでな?」

 

「ぐぢぐぢ言ってないでハッキリ言って」

 

いくらか声のトーンを落として言った。

 

「私の娘を隣に住ませよう。いずれゆかりも独り立ちしなければならないから私も知人の子がいれば安心だ!って言ってしまってな...そっからはもうトントン拍子、入居することに決まってしまった。っはっはっは!酒は怖い!」

 

「怖いじゃないよ!なに酒の席で決めてんの!信じられない」

 

怒る私と宥める父、それをニコニコと笑顔の母。カオスな状況だった。

しばらくたって怒りの収まった私、ふと冷静になってみたら意外といいかもしれない。ゲーム実況には没頭できるし、一人暮らしはやってみたいとは思っていた。高校から少し遠くなるし、ゲーム実況は引っ越しが落ち着くまでできないけど好奇心の方が勝った。

父親には仕送りは多めにしてもらい、一人暮らしを了承した。

 

引っ越しの準備がはじまり段ボールに家具や服、電気機器を両親と詰めていった。そこまで量は多くないので家の車で引っ越し先のアパートに向かった。未だに実感が湧かなかった。

 

引っ越し先のアパートに着き、私の家の中に一足先に入る。前の私の部屋よりか少し広い、畳の部屋が二部屋寝室と居間、台所にトイレとお風呂。実家に比べたらどれもこれも狭いけど私の部屋、私だけの家。これで好きなだけ趣味に没頭できる...むふふ

 

そんなこと部屋の真ん中で考えていたらドアの方から話し声が聞こえる。両親の声と女の人の声...女の人にしては声は低かった、もしかしたら父親が言っていた隣の人かも。今日から暮らしていくのだから挨拶しとかないと思いドアを開けた。

 

ドアを開けたらその人はいた。女の人にしては身長が高く、ショートカットで切れ目でかっこいいよりの女の人だった。その人は両親と話していたけど私に気づいてこっちを見た。

 

「雨野ちゃんこの子が私たちの一人娘のゆかりって言うのよかったら仲良くしてくない?」

 

「は、初めまして、結月ゆかりっていいます。高校二年生です、よろしくお願いします」

 

「うん、よろしく。私は雨野日比、大学生だよよろしくね?」

 

長身で声が低く、年上なこともありキョドってしまったが笑顔で対応してくれた雨野さん。その不意な笑顔にドキリとした...この人きっとモテモテなんじゃないかな?女の人に。

 

その後は軽い会話を終え挨拶を済まし、荷物を運びこんだ。家具や服、電気機器を大まかに設置し終え両親が引っ越し祝いに外食に連れて行ってくれた。新しい家に送ってもらい両親は車で去っていった。それを不思議な気持ちで見送って新しい家に帰った。部屋に入り、辺りを見回す...っよし!頑張ろう!そう思い気合をいれ頬を叩く...痛い...

 

激動の一日から既に数日が経った...私の胸に秘めている感情...それは...寂しい、そう寂しいのである。帰ってきたら母親がお帰りと言っていれてご飯を用意してくれる。父親が帰ってきて学校の様子を聞いてくる...そんな当たり前の生活が当たり前じゃなくなり私は絶賛ホームシック中であった。だからあの時油断していた。

 

学校が終わりトボトボと歩いて帰っていた。その日は先生に頼まれ事をされたため少し遅くなった。辺りは暗くなってきていて電柱の明かりがつきはじめた。いつもは通らないがアパートまでの近道を通ろうと思った。その道は狭く、日が上にあっても暗いそんな道だった。さっさと通って帰ろう、そう思い早足で歩いていたら前から人が歩いてきただけど様子がおかしい。ふらふら千鳥足で歩いていて不気味だった、その時なぜ引き返さなかったかわからないが私はさっさと横を通り過ぎようとした。だが、

 

「お嬢ちゃ~ん...ヒック、どこ行くの~?」

 

横を通ろうとしたら手を広げられ防がれた。その人はスーツを着崩した酔っぱらいのおじさんだった。その人が口を開くたびにアルコールの匂いがした、思わず後ずさり鼻を抑える。

 

「お嬢ちゃん一人?おじさんの家に来ない?一人で寂しくて~」

 

そんなことを宣う酔っぱらい。私は初めて男の人に絡まれて恐怖心で体が硬直して動けなくなってしまった、その様子を見た酔っぱらいは同意とみたのかノロノロと近づいてくる。近づくたびにアルコールの匂いと加齢臭が襲ってきた。私は酔っぱらいから目が離せず寄ってくる酔っぱらいを見ていることしか出来なかった。心臓が高鳴り冷や汗が流れ呼吸が浅くなる、どうする?どうしよう、助けを呼ばないと...こ、声を出さないと....

 

「た、たす...けて....」

 

かすれたような声しか出せない。自分でもギリギリ聞こえたような声、そんな声に反応して助けに来てくれる人がいるはずもなくいつの間にか目の前におじさんが来ていた。

 

ゆっくりと伸ばされる手...やけにスローモーションにみえた。ゆっくりとおじさんの手が伸びてきて私の腕を捕まえる...その瞬間

 

「俺の連れに何の用だ?」

 

私の腕に伸ばされていたおじさんの腕が私に触れる直前に私の後ろから伸びてきた腕によって止められた。その腕を辿って目線をあげれば私よりか二十センチは高い身長でその人はおじさんの腕を掴んで睨んでいた。

 

「もう一度言うぞおっさん、俺の連れに何の用だ?」

 

声が低く威圧的に言い放ちおじさんを睨んでいた、その人は帽子をかぶっていて髪の隙間から見えた目を私は見た。その目と横顔を私は今の状況を忘れて見入っていた、整った顔立ちに鋭い目つき...そしていつの間にか腰に回されていた手。まるでヒロインが主人公に助けられるような状況...私の心臓はさっきとは違う鼓動...張り裂けそうだ。思わず胸に手で抑えようとするが全く意味がない、顔が熱い...すごく...あつい....

 

いつの間にかおじさんはいなくなっていた。私はいまだ心臓の鼓動と戦っていた、中々収まらない...そりゃそうだ、まだあの人が目の前にいる。俯いている私を屈んで顔を覗き込まれているのだから。

 

「大丈夫?え~っと確か...そう!結月さんだ。変なことされてない?」

 

「はっはい、だ、大丈夫です!なにもされていません...」

 

「よかった。私もこの道よく通ってるからさ、そしたらびっくり、見覚えのある子が絡まれてるからさ」

 

「ありがとうございます。雨野さん、助かりました」

 

「......」

 

やっと心臓が落ち着き顔を上げると真剣な顔をした雨野さんにドキリとし、また心臓がうるさくなってきた時に雨野さんが柔らかい口調で言った。

 

「大丈夫、大丈夫だよ....」

 

雨野さんは私の手を取って両手で包み込んできた。私は今はじめて自分の手が震えていることに気づいた、雨野さんの体温が伝わってきて段々と手の震えが落ち着いてきた。が、恐怖心が徐々に蘇ってきて呼吸が浅くなってきたときに雨野さんが優しく私を抱きしめてくれた。母親とは違う...安心するような全てこの人に預けなくなるような包容力と力強さを感じた。私はゆっくりと雨野さんの背中に手を伸ばして抱きしめた...

 

しばらく抱きしめあった後今更ながら恥ずかしくなって腕をほどいた、雨野さんも気づいたのかゆっくりと腕をほどいた。

 

「もう大丈夫そう?」

 

「はっはい、ありがとうございます。さっきまで怖かったですけど今はもう大丈夫です」

 

「よしよし!それなら一緒に帰ろっか」

 

「そういえば隣同士でしたね、すいません引っ越しの挨拶だけで」

 

「何言ってるの、私も挨拶しかしてなかったしね。でもこれで縁ができたね」

 

そういって笑顔を向けてくる雨野さん、助けてくれた時のあの怖かった表情とギャップがあってまたもドキリとした...ふぅ、深呼吸深呼吸...

 

「では一緒に帰りましょう、雨野さん」

 

私たちは横に並んでアパートへと歩いてゆく、雨野さんの隣を歩いていると安心感があった。もう大丈夫、そんな確信めいた感じがあった。それはそうと帰ってから布団で悶えたのは言うまでもない...

 

その日から私はお隣さんの雨野さんと交流をするようになった。朝の挨拶からちょっとした会話、作ったご飯の余りをおすそ分けしたり、されたり....そんな些細な交流からいつの間にかお互いの家に入り浸りするような親密な関係になっていた。....雨野さんのお風呂上りにすごいドキドキしたりするけどいつの間にかホームシックを感じなくなっていた。これが自立かぁ...とか思ったけど一人じゃなかった、今は雨野さんがいる。

そして今、雨野さんに幾度といってきたセリフをいう。

 

「雨野さん!今日はこのゲームしましょう!」

 

 

 

 

 

 




ゆかりさんらしさ出てるかな


目次 感想へのリンク しおりを挟む




評価する
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10についてはそれぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に
評価する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。