この厄祭戦の悪魔に祝福を! (青は澄んでいる)
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プロローグ

「頼むソラァァァァァッ!金貸してくれーーーーー!

具体的には20万エリス程」

 

「ダスト、うるさい」

 

「ごめんソラうちのバカが。こらダストよりによってソラに集らないでよ!」

 

始まりの街アクセル。

そこにある冒険者ギルドで無表情にも近い少年に金髪の男がタカリそれをポニーテールの少女が抑えていた。

 

「大体、この前もソラに金借りてたでしょ!アンタ恥ずかしくないわけ⁉︎」

 

「仕方ねえだろ借金取りに追われてもう後がねえんだ!」

 

「それに比例してソラからの借金が増えてんでしょうが!」

 

そう、目の前の金髪ダストは椅子に座ってその話を鬱陶しそうに聞きながら皿に装われた肉を食べている少年“ソラ“に金を借りようとしていた。

が、彼に何度も金を借りている所為でその金額は恐ろしい額になっていた。

ソラがまだ大人しい方でなければ恐らくダストは即座に叩き出されているだろう。

 

「貸すのは良いけど、良いの?多分今回ので100万はいくんじゃない?」

 

「おおマジかありがとうソラ様ぁ!その金はいつか返すからよぉ!」

 

「やめてよみっともない!というかソラもコイツに金貸さなくて良いから!」

 

「うるせぇリーン!惚れた男だからって俺の邪魔ばっかりしやがって!」

 

「なっ⁉︎だ、だだだだ誰が誰に惚れてるってのよ!訳わかんない!」

 

「その反応が答えだわボケェ!良いから邪魔すんじゃねえ!」

 

「2人ともうるさい。静かにして」

 

ダストとリーンの騒がしい声に不機嫌な表情をしながらも、ソラは肉を食べる手を止めず、フォークで刺した肉を口に運んだ。

 

そんな彼等の所に、1人のギルドの受付嬢の制服を着た金髪の女性が近づいてきた。

 

「あの、ソラさん」

 

「ん?あっ、ルナ。どうしたの?」

 

「はい。実は初心者殺しに襲われたパーティーがありまして、そのパーティーは無事だったんですけどソラさんにそれの討伐をお願いできないかと。

ちなみに出現した地点はこちらになっていて」

 

初心者殺しとは、ゴブリンなどの弱いモンスターの近くに身を潜めそのモンスター達を狩りにくる弱い冒険者を狩る駆け出し冒険者にとっては天敵と言ってもいいモンスターだ。

普通なら駆け出しの街の冒険者には手に負えない相手だが、ソラには何の問題もなかった。

 

「分かったよ。行ってくる」

 

ソラは肉を一気に口の中に頬張ると椅子から立ち上がりルナから地図を受け取りギルドを出ようとする。

 

「あっソラ、私たちも手伝おっか?初心者殺しでしょ?相手」

 

「おおいリーン!俺は行かねえぞ!初心者殺しなんて死にに行く様なもんじゃねえか」

 

「アンタの借金少しでも返済する為でしょうが!我儘言うな!」

 

「お前は合法的にソラと一緒に居られる口実が欲しいだけだろ!俺知ってんだかんな!」

 

「うっさい!この屑〈ダスト〉!」

 

「んだとこのチョロリーン!」

 

「何ですってぇーーーーー!」

 

「あ、あのー…」

 

「「あ“っ!?」」

 

ヒートアップする2人の喧嘩にルナが割り込んできて、喧嘩中だった為怒り気味に彼女に反応する2人。

 

「そ、ソラさんもう行きましたよ?」

 

「「・・・」」

 

ルナの言葉に2人はポカンとして数秒ほど固まった後リーンはバッとギルドの入り口の方に目を向けた。

そこにソラの姿はなかった。

どうやらもう討伐に向かったらしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハァー、でも面倒だなー」

 

アクセルの街から出て初心者殺しが現れたと言う森の中を歩いていた。

 

その森の中は静かな雰囲気で普通は落ち着く所なのだろうが、そこにある獣が引っ掻いた様な爪痕や剣による木の傷、そして刺さってる矢を見たらそれどころではない。

 

「ここか」

 

ソラはそれに慌てる事なくただ周りを見渡す。

 

すると周りの草木から生き物が通る音が聞こえその隙間から鋭い目が見え隠れし、殺気も伝わってきた。

それはソラにとって味わった事のある殺気だった。

初心者殺しだ。

 

「始めるぞ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

”バルバトス”」

 

 

ソラ。

フルネームは”ソラ・イブラヒム”

彼は、この世界ではない世界から転生した転生者である。

 

彼が自身の”力”の名を呼ぶと、彼の体は光に包まれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハァ…」

 

「おいリーンいい加減そのため息止めろ。俺まで幸せが逃げるぜ」

 

「煩いこの借金大魔王」

 

「誰が借金大魔王だよ!ってんな事よりソラなら大丈夫だって。俺たちと初めて会った時も初心者殺しなんて直ぐに倒したじゃねえか」

 

「そうですよリーンさん。元気出してください」

 

ギルドの酒場では、ソラがクエストに行ったきり元気がないリーンをそれを見かねたダストと休憩時間だったルナが何とか慰めようとしているところだった。

 

「でも、あの後沢山血を出してた・・・」

 

「それも心配だけどよ、あれ以来俺たちも一応同行したけどずっと問題なかっただろ?考えすぎだって」

 

「でも・・・」

 

リーンの言う通りソラは自身の”力”を使って一度血を流して倒れている。

その時の光景があまりにもショッキングでリーンはそれ以来、ソラがその力を使うのに反対はしないものの彼が力を使うのに抵抗を感じている。

 

リーンはなにもソラに置いて行かれた事にへこんでいるのではない。ソラが力を使って無事であるかどうかが不安なのだ。

 

「それにソラもアレを最大出力で使わない限りは大丈夫だって言っただろ?」

 

「・・・」

 

「…ダァッ!もう!お前いい加減位雰囲気出すのやめんか!そうやって控えめなのはその胸だけにしろ!」

 

「んなっ!?アンタ、絶対に言っちゃいけない事を!」

 

「悪いかこの貧乳!」

 

「ッ!?もう我慢できない!本当ならソラが帰って来た時にぶつけようと思った怒りを今アンタに与えられた屈辱も含めて晴らしてやるわ!」

 

「おうやってやるよ!俺だっていい加減やるときはやるぞ!」

 

そういって、二人は取っ組み合いに入った。

そんな一見すると仲が悪くて喧嘩しているが、ルナは安心した様に見ていた。

 

「(良かった、リーンさんがいつも通りになって。まあダストさんの言葉は私もどうかと思いますけど・・・)」

 

ルナはリーンをいつも通りに戻したダストに感謝すべきかどうすべきか本気で悩んでいたという。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ、こんなもんでしょ」

 

ソラが戦闘を開始して数分後、戦闘は終了していた。

 

戦闘を終えたソラの前にはまるで”何かの鈍器に潰された”かのように撲殺された黒い獣、初心者殺しが倒れたいた。

 

「にしても、余計な奴まで来たからめんどくさかったな」

 

ソラは初心者殺しの周りを見た。

そこには初心者殺し同様に潰された弓や剣を握ったゴブリンがいた。

 

ソラと初心者殺しの戦闘を聞きつけ漁夫の利を狙おうとしたところを逆にソラに殲滅されたようだ。

だがそんな周りの惨状であるにも関わらずソラの体には返り血一滴浴びてなかった。

 

「まあ仕事はしたし、帰るか」

 

ソラは特別気にした様子もなくその場を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おうソラ、無事に帰って来たか」

 

「うん、ただいま」

 

「お帰り、どうだったよ今日は」

 

ソラはアクセルの街に帰ってくると街の城壁の門番に話しかけられた。

 

「別にいつも通りだよ。黒い虎プチプチ潰しただけだから」

 

「いやいや初心者殺し相手にそんな事言える強者なんてこの街にはそうそういねえって。

それよりよ、今回は一人で行ったのか?いつもならダストの坊主とリーンの嬢ちゃん達が一緒だろ?」

 

「仕事引き受けた時は居たんだけど別に大丈夫だと思って一人で行ったよ」

 

ソラのいつも通りの感情の起伏が少ない言葉で何とも思っていない風に言う。

そんな彼の言葉に門番の男は何とも言えない顔になっていた。

 

「おいおい、お前後でリーンの嬢ちゃん達にどやされるぞ」

 

「ん?何で?」

 

「いや何でってお前な…まあ良いや。俺から言うもんじゃねえしな。

兎に角、ギルドに戻ってあいつ等が居たら謝っとけよ?」

 

「?まあ分かったよ」

 

ソラは門番の男の言う言葉の意味が分からなかったが、一応了承し街に入ろうとした。

 

「あっ、ちょっと待てよソラ。ホレッ」

 

「ん?」

 

街に入ろうとすると止められ、門番から何か投げ渡された。

キャッチしそれを見ると、それは小さい手のひらに収まるくらいの袋だった。

 

「お前さん何時も街の清掃やら色々とやってるだろ?ウチのカミさんが頑張っている褒美の菓子だとよ。

リーンの嬢ちゃんと一緒に食べな」

 

「そうなんだ、ありがとう」

 

ソラはお礼を受け取るとそれをポケットに仕舞い、門番に礼を言うとギルドに向かって歩き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~冒険者ギルド~

 

「ソ~ラ~?今回は何で一人で行ったのかな~?」

 

「…えっと」

 

冒険者ギルドに戻ると、ソラはそこに居たリーンに捕まり現在正座させられている。

どうしてこうなったのか本気で分からないソラだったが、今のリーンには逆らってはいけないと本能的に察知し大人しく言われる通りにした。

(因みにダスト含めた冒険者やルナを含めた受付嬢はいつもの事なのただ見ているだけである)

 

「ソラの使う力が最大出力で無茶しない限り大丈夫なのは分かってるよ?でも約束したよね?なるべく私たちを同行させるって。

勿論一人で行くなって言わないよ?でも今回は初心者殺しの相手な上にゴブリンも出たんでしょ?そんなイレギュラーがあるかもしれないんだよ?」

 

「…でも、何とも無かったし。無事倒せたから」

 

「何か言った?」

 

「・・・何でもない」

 

ソラは何とか意見を言おうとするもリーンの威圧に負け、黙るしかなかった。

 

「お、おいリーン。流石にその辺にしとけって、いくら何でもソラが不憫で…」

 

「屑〈ダスト〉は黙って」

 

「はい、黙ってます」

 

流石に不憫に思い助け舟を流そうとしたソラのフォローに入ろうとしたダストの助けも虚しくあっさり瞬殺されてしまった。

 

「で?ソラ。何かいう事は?」

 

「・・・・ごめん」

 

「ご・め・ん?」

 

「ッ…ごめんなさい」

 

「はい。よく言えました」

 

「(俺、何でこうなってるんだろ・・・あっ)そうだ」

 

「ん?」

 

リーンの迫力に気圧されていたソラはそこでふと何か思い出した様にポケットに手を突っ込み先ほど門番から貰ったお菓子を取り出した。

 

「コレ、さっき門番の人から貰ってリーンと食べろって」

 

「・・・」

 

ソラから差し出されたお菓子が入った小袋をリーンは少しばかり考える素振りを見せながら見ていた。

 

「えっと、いらないなら別の奴に」

 

「食べる」

 

「?」

 

「食べるわよ、今回の事も許してあげる。でもその代わり今後は私たちが居たら一人ではクエストには行かない、良いわね?」

 

「…うん、分かったよ」

 

「よろしい。あっ、そうだソラ」

 

「ん?」

 

ソラはリーンからのお許しを得て正座の体制から立ち上がると彼女から呼ばれたので痺れる足を何とか保ちリーンの方に体を向けた。

 

すると彼女は懐から何か糸の様な物で縫われた物を取り出してきた。

 

「はいこれ」

 

「?なにこれ」

 

「”ミサンガ”っていうらしいよ。どういった効果かは分からないけど、一応お守りとしてつけておいて。言っておくけど拒否権は無いよ」

 

「・・・分かった、ありがとう」

 

ソラはリーンから渡された白、黄、緑の色をしたミサンガを受け取って、腕に起用に結び付けた。

 

ミサンガを結び終わりリーンに視線を戻すと、彼女の右腕に巻かれた自分とは違うピンク色のミサンガが巻かれているのをソラは発見した。

 

「リーンそれ」

 

「ああこれ?色が可愛かったから私も着けてみたんだ。変?」

 

「嫌、似合ってるけど」

 

「そ、そう?えへへ」

 

リーンはソラにミサンガが似合っているのを誉められどうやら機嫌は完全に治ったようだ。

 

「けっ、ソラに褒められてアタシ嬉しいってか?このリア充が!」

 

「なっ!?なななな何言ってんのよアンタは!」

 

「うるせえ!事あるごとにいちゃつきやがって!爆発しろや爆発」

 

「誰が爆発するか!アンタって奴は・・・もういいわ!アンタのその口に度と開けないようにしてやる!」

 

「やれるもんならやってみやがれ!」

 

丸く収まりそうな雰囲気にダストがちょっかいを入れた事によリーンがいつも通り起こり、先ほどの取っ組み合いの続きとでも言わんばかりに再開され、周りの冒険者も野次を飛ばしながら面白がっていた。

 

 

そんないつも通りの雰囲気に戻り、リーンの機嫌も戻ったことでソラは内心安堵しリーン達の喧嘩を他所にギルドの女給に話しかけた。

 

「ねえ、トード肉3人分お願い」

 

「は、はい。あの…大丈夫なんですか?アレ」

 

「大丈夫でしょ。いつもの事だし」

 

そんないつも通り騒がしい光景を見ながら、ソラは誰にも気づかれないように薄っすらと笑みを浮かべた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





全くダストの奴、言いたい放題言ってくれちゃって。

もう、ソラもソラでちょっとは反応してよ…ひょっとして私に興味無い?

って私は何を考えてんの!?

ああもう!これも全部ソラとダストの所為よ!


次回;この新たな転生者と女神と悪魔に遭遇を!



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この新たな転生者と駄女神と悪魔に遭遇を!

ソラは普段、以前とある事がきっかけでリーンに冒険者として一人でクエストに行くことを止められている。

全く行ってはダメとはいかないがそれでも一人でクエストに行かせてもらえる事は少ない。

 

そのためソラはクエストはクエストでも街の清掃やら土木工事の手伝いやらをやっていた。

 

「おやっさん、こっちの壁終わったよ」

 

「おうソラ、もう終わったのか。お前もうバイトじゃなくて正式に雇われるか?ウチの連中も大歓迎だと思うぜ?」

 

「それは嬉しいけど、俺はやっぱり戦う方が何か性に合ってるかな」

 

「そうか。まあ気が変わったらいつでも言えよ」

 

おやっさんと呼ばれた土木工事の親方はソラにバイト代の入った封筒を渡した。

 

「ホレよ、今日のバイト代だ。大事にしろよ?」

 

「ありがとうおやっさん。それじゃあ俺ギルドに行くから」

 

「おう、頑張れよ」

 

ソラは服を着替え、親方にお礼を言い今日の街の清掃クエストでも受けようとギルドに向かって歩き出した。

 

 

 

 

 

 

「しかし、今日も見たな。変な夢」

 

ソラは冒険者ギルドに向かいながらそんな事を呟いた。

彼はとある理由で今の世界に転生してきた。

 

それが影響しているのか、彼は眠る際に稀にとある夢を見るのだがそれがどういう内容だったのかはあんまり思い出せないでいた。

 

「まあ良いや。別に大して困らないし」

 

だがソラはそんな夢の事も何も気にしていなかった。

 

「ん?」

 

そんな彼の視線の先にこの街では見かけない恰好の2人がおりソラの目に止まった。

 

その2人は一人は全体的に緑の色の見慣れない服を着ている男性で、もう一人は青い髪に青い服など全体的に青い恰好の女性だった。

 

その2人は何やら男性の方が何か言うと女性の方が男性に叫び声を上げながら襟を掴み揺さぶった。

その様子はソラ以外の街の住民も見ていて彼らを遠目に見る者や子供の目を塞ぎ立ち去る者など殆どだ。

 

本来なら無視してギルドに行きたいところだが、流石にあのままだと街の清掃の時に鉢合わせするかもしれないと思い、面倒ごとは早めに片付けておこうと思い仕方なくその2人に近づいた。

 

「ねえ、何やってんの?」

 

「「えッ?」」

 

ソラが話しかけて我に返ったらしい2人組はそらの方に視線を向けた。

 

「えっとぉ…」

 

「そのぉ…」

 

「どうかしたわけ?」

 

「え、えっとですね「おいちょっと待て、あっちょっと待ってくださいね」え!?ちょちょっと!」

 

男性は女性を引き寄せなにやらヒソヒソと話し始めた。

 

「なあ、俺たちは兎に角この街のギルド的な場所に行かないといけない。向こうから話しかけて来たなら好都合だ、あの人に話を聞いてあわよくば案内してもらおう」ヒソヒソ

 

「え?う、うん!分かったわ」ヒソヒソ

 

何を言っているのかは聞こえなかったがどうやら話は終わったようで彼らはソラに向き直った。

 

「えーっとですね。俺たち実はこの街にさっき着いたばかいでして、この街に冒険者になる為に来たんです。

でもその登録をするための場所が分からなくて、よければ教えてくれませんか?」

 

「冒険者になるって、もしかしてギルドに行きたいの?だったら俺も行くところだから、良かったら一緒に行く?」

 

「良いんですか!?」

 

「どうせ目的地一緒だからさ」

 

「「ありがとうございます!」」

 

2人組ソラに感謝すると彼の後を付いていく事にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ソラ達はギルドに辿り着くと扉を開けて酒場へと足を踏み入れる。

 

「いらっしゃいませ、お食事は好きなお席へどうぞ。お仕事は奥のカウンターへってソラさん!いらっしゃいませ!後ろのお二人は新しいご友人ですか?」

 

「ううん、ギルドに来て冒険者になりたいって言ったから連れて来た」

 

「そうですか。ではソラさん、私は他の人の対応があるので案内は頼んでも?」

 

「うん、分かった」

 

ギルドに入るなり女給に男性達の案内を頼まれた。

 

「それじゃあカウンターまで案内するよ。そこで手続きについても説明されるから」

 

「はい、ありがとうございます」

 

「ありがとう親切な人!」

 

「別に敬語は使わなくていいよ、見た感じ年も近いし」

 

「「そうか(そうなの)?じゃあ遠慮なく」」

 

ソラの申し出に2人は迷うことなくソラへの敬語を止め砕けた感じの口調に変わった。

恐らくこれが彼らの素なのだろう。

 

「おおソラじゃねえか」

 

ソラ達が話していると突然声をかけられそちらを見る。

そこにはジョッキに入ったシュワシュワを飲んでいるモヒカン頭で如何にも世紀末といった感じの服装の男が居た。

女性の方はその男の雰囲気が怖かったのか「ヒィッ」と小さな悲鳴を上げる。

 

「ああモヒカンの人」

 

「相変わらずその覚え方なのな・・・まあ良い、それよりそこの妙な恰好の二人組は何だ?見ねえ顔だが」

 

モヒカンの男はソラと一緒にいる男性達が気になったようだ。

ソラが説明しようとしたが男性の方から男のほうに近づいた。

 

「実は遠くからこの街に来て、ついさっき着いたばかりなんだ・・・・俺も、魔王軍と戦う冒険者になりに来たんだ」

 

男性はなにやら決め顔でそういった。

モヒカンの男は男性を暫く観察する。

 

「・・・はっ、そういうことかよ命知らずめ。ようこそ地獄の入り口へ!!!ギルドの受付ならあそこだ」

 

モヒカンの男は何が気に入ったのか気前よく、受付の場所を教えてくれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、3人はギルドの受付に並び彼らの番がやってきた。

 

「あ、ソラさん。今日も清掃の依頼を受けに来たんですか?」

 

「ああうん。そうなんだけど、途中でこの人達に会って。聞いたら冒険者登録に来たんだって」

 

カウンターでは受付嬢のルナが対応しており、ソラの指さした後ろの二人を見て状況を理解したらしい。

 

「そうでしたか。それでは、登録するにあたって登録手数料がかかります。」

 

「え?お金かかるの?」

 

「はい。2人で2000エリスになります」

 

ルナの説明に男性の方は早速顔色を暗くしたが、直ぐにふと思い出した様に女性の方に向き直る。

 

「なあこの世界のお金って持ってないのか?」

 

「はあ?いきなりこの世界に連れてこられたんだからあるわけ無いじゃない」

 

「・・・(コイツ使えねえ)」

 

男性は内心女性に対して悪態をつきがっかりした。

 

「ねえ、ひょっとしてお金無いの?」

 

「えっ、あ、ああそうらしい…」

 

「…良かったらお金貸そうか?」

 

「えっ!?良いのか?」

 

「うん。俺も冒険者になるときに今の仲間からお金貸してもらったからさ」

 

ソラは冒険者になった時の事を思い出しながら、ポケットに手を入れてそこから折りたたまれ少しクシャッとなっているが2000エリスを取り出した。

 

「ルナ、これで足りる?」

 

「はい、丁度2000エリスですね。それでは、冒険者カードを作成しますからこちらの推奨に手をかざしてください」

 

「ははい。ありがとな、えっと」

 

「ソラ、ソラ・イブラヒム」

 

「そっか、ありがとうなソラ。俺は佐藤和真〈さとう かずま〉」

 

「私はアクアよ、ありがとねソラって貴方何書いてるの?」

 

”サトウ カズマ”と”アクア”がソラに対してお礼を言っているとソラが何やらメモを取っていた。

 

「ん?今カズマとアクアに貸した金額のメモ」

 

「・・・あのソラさん。因みにそれは何の目的で書いていらっしゃるのですか?」

 

「俺の仲間の思い付きでお金を貸したらその人の名前と金額をメモしておけって。

もし全然帰ってこなかったら取り立てろって」

 

「借金!?」

 

「プークスクス、異世界に転生して早々借金ですか?ざまあ見なさい!女神を無理矢理連れて来るとか罰当たりな事するからよ」

 

「おい、この借金はお前にも適応されるんだからな?」

 

「別にたったの1000エリスだから、そんなに急がなくても良いよ。俺の知ってる奴なんてこの前で合計100万だから」

 

「どんだけ借金してんだよ!」

 

「あ、あのぉそろそろ手続きを・・・」

 

カズマとアクアが互いに罵ったりソラのコメントにツッコんだりしている内に、ルナが少し困った顔で手続きを促した。

 

「ああすみません。水晶に手を翳すんでしたね」

 

カズマは慌てて受付に置かれた水晶に手を翳した。

 

すると、用意されたカードに水晶を通して得た情報がカードに刻まれていった。

 

「サトウカズマさんですね。ステータスは知力が高いだけで、後はほとんど平均値……、あれ? 今まで見たことがないくらい幸運値が人並外れて高いですね。ただ、冒険者に幸運ってあんまり影響を与えないステータスなんですが……。あの、本当に冒険者になられますか? これだと選択できる職業は基本職の方の冒険者しかないですよ? これだけの幸運があるなら、商売人だとかギャンブラーだとかになったほうが……」

 

「えっ?」

 

カズマは期待していたステータスとは違ったのか少し間の抜けた声を上げてしまう。

そんな彼の様子をまるで滑稽な物を見ているかのようにアクアは口元に手を当てて微笑していた。

 

「おい、いきなり冒険者人生否定されたぞ・・・」

 

「えっとカズマ、大丈夫?」

 

「あっ、うん。大丈夫だ。えーっとお姉さん、職業は基本の職冒険者でお願いします」

 

「そうですか・・・あのレベルを上げれば他の職業に転職できますからそう気を落とさないでくださいね?」

 

「…はい(なんか…思ってたのと違う)」

 

カズマは少ししょんぼりした様子でルナから冒険者カードを受け取った。

 

そんなカズマを他所に今度はアクアが水晶に触れてステータスを調べてもらっているようだ。

 

そしてカードへの記載が完了すると、ルナはその冒険者カードを確認した。

 

「えっと、アクアさんは・・・えっ!? 何ですか、この数値は!? 知力が平均より低いのと、幸運値が最低レベルな事以外は、全ステータスが異常なほどに高いですよ!? 特に魔力が類を見ないほどに高値なんですが、アクアさん、貴方いったい何者なんですか!?」

 

ルナが言ったアクアの驚きのステータスの高さが他の冒険者たちにも聞こえたのか周りも驚きに包まれている。

 

「え?何々?私が凄いって事?」

 

「凄いなんてものじゃないですよ!これなら、知力を必要とする魔法使い職は無理ですがそれ以外であればなんにでも、クルセイダー、ソードマスター、アークプリースト。最初から殆どの上級職に!」」

 

『おおおおおおおおっ!』

 

周りの冒険者はアクアのステータスの高さに驚きの声を上げ者が続出しアクアはそれを背に気分を良くして職業を選択した。

 

「そうね、女神って職業が無いのは残念だけど。それじゃあ私はアークプリーストにするわ」

 

「アークプリーストですね!あらゆる回復魔法を使いこなし前衛もこなせる万能職ですよ!」

 

アクアが選択した職業によりまたもや周りから歓声が上がる。

 

 

 

「・・・」

 

「カズマ、ドンマイ」

 

周りから賞賛や期待の声を掛けられるアクアを見てカズマは軽くフリーズし、それをソラは何時と変わらない表情でとりあえず励ました。

 

そんな彼らに気分を良くしたアクアが近づいてくる。

 

「ふっふーん、どうよ」

 

「・・・」

 

アクアはどや顔で親指を立ててきた。

そんな彼女の様子にカズマは

 

「(殴りたい!この笑顔!)」

 

と、まさしく嫉妬まっしぐらな事を思っていた。

 

「まあとりあえず2人とも、冒険者登録おめでとう」

 

「うん・・・ありがとう」

 

「まあ私にかかればこんなもんよね。そういえば、ソラって何の職業なの?私気になるわ!」

 

「あっ、それは俺も興味ある」

 

カズマとアクアは登録し終わると自分たちを案内してくれたソラのステータスと職業が気になり聞いてみた。

別段隠していたりしているものでもないのでソラとしては見せても良いのだがそれには問題があった。

 

「別に良いけど、俺にもよく分からない職業なんだよね」

 

「ん?よく分からないってどういうことだ?」

 

「まあ見せた方が早いかな・・・はい」

 

ソラは自分の冒険者カードを懐から取り出しそれをカズマに手渡しカズマとアクアはソラのステータスを確認した。

 

「えーっと、知力と幸運は少しだけ低くて魔力は平均。おっすげえ筋力や体力に生命力などの身体能力はぶっちぎりで高い!」

 

「凄いわ!…ん?でもこの職業って」

 

「ん?何々・・・がん、だむ・・・ってガンダム!?」

 

「知ってるの?」

 

「知ってるもなにも(ガンダムっていえば、俺の元居た世界で誰もが知っているロボットアニメだぞ!

って待てよ?するとソラってもしかして)なあソラ、ちょっとこっちに来てくれ。アクアも」

 

「ん?」

 

カズマは何かに気付いたのかソラとアクアをとりあえずギルドの酒場にある隅っこの席に着いた。

 

「なあ、ソラ。お前ってひょっとして、転生者か?」

 

「!ひょっとしてカズマも?」

 

「その反応はやっぱり!」

 

「うん。俺もそうなんだ」

 

ソラは自らが転生者であることを明かした。

カズマはそれに合点が行ったのと早速同じ転生者と出会えたことに喜びを感じずにはいられなかった。

 

「良かったーいきなり同じ転生者に会えて。それにしてもガンダムか、めっちゃいいじゃん!」

 

「そうなの?」

 

「?そのガンダムって多分だけどソラの特典だろ?転生する時に女神に選ばせてもらったんじゃないのか?」

 

「・・・女神?」

 

「え?」

 

カズマはソラの反応になにやら違和感を感じる。

なんだか会話がかみ合ってないようなそんな感じが。

 

「えっと、ソラも元の世界で死んでこの世界に転生させてもらったんじゃないのか?」

 

「ああカズマ、お話中に悪いんだけど多分ソラは何も覚えていないわ」

 

「え?」

 

「そうでしょ?ソラ」

 

アクアは何か知ってるんかソラの反応をみてなにやら察したらしい。

 

「アクアの言葉はあってるよ」

 

「…それってまさか」

 

「うん

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺、自分の名前と転生したこと以外の記憶が無いんだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




あ、そういえば今日の街の掃除が残ってたんだった。

今日は街の溝掃除だったっけ。

そういえばダストにもそろそろお金返してもらわないと、リーンにも返さなかったらしばいてでも返させろって言われたし。

それにしてもリーンから貰ったこの”みさんが”っていうやつ、結構いい匂いだなぁ。

次回:この初クエストにカエルを!






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この初クエストにカエルを!

カズマとアクアが冒険者となり早数日。

 

彼らは冒険者として早速モンスターを狩りに

 

 

 

 

 

 

行けなかった。

 

 

「ふんっ!ふんっ!ふぅんっ!」

 

「おらカズマァ!何だそのへっぴり腰は!もっと腰に力入れろや!」

 

「へい!親方!」

 

「こらそこ!そんな振り方じゃ怪我しちまうだろうが!安全第一だ馬鹿野郎!」

 

「へイッ!親方ッ!」

 

現在彼らは自分たちの装備を揃える為に汗水流してつるはしを振るって時折そこの親方に活を入れられながら働いていた。

 

カズマとアクアは最初は装備を揃える金もソラから借りようかと考えていたらしいがソラの書いていた借金者名簿(カズマ命名)を危惧してソラから教えてもらった土木工事のバイトに励んでいた。

 

「おおアクアちゃん。今日も良い筋じゃねえか」

 

「ふふん、私にかかればこんなもんよ」

 

アクアは工事の壁に見事な手際でセメントを塗りその腕前を親方を含めた土木工事の男達に褒め与えられるというカズマとは真逆な対応をされていた。

 

 

「ふぅ~、今日も疲れる…」

 

「どうカズマ、バイトには慣れた?」

 

カズマがつるはしを杖代わりに一息ついているとセメントの入った袋を担いだソラが話しかけてきた。

 

「ああソラ、今日も親方に怒られるわアクアは褒め称えられるわで大変だよ」

 

「おやっさんが怒りながら教えるのは早く仕事覚えさせる為だからさ」

 

「はいはい、分かってるよ・・・そういえばさ、記憶の方は今日も思い出せないのか?」

 

「うん。でも別に不便な思いはしていないから問題ないよ」

 

「お前なあ…」

 

カズマはソラが自身の事に無頓着すぎる事に呆れるしかなかった。

 

「(それにしても、あの時はいきなりの事過ぎて驚いたっけな)」

 

カズマは今から約数日前の、ソラとの出来事を思い返していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~数日前~

 

 

「記憶が無いって…どういう事だよ!」

 

カズマはソラがまるで日常会話でもするかのように何とも無さそうに明かした記憶喪失の事実に絶句していた。

 

「あー、俺にもよく分からないんだけど。この世界に気付いたら居て、何でか知らないけど自分の名前と力の使い方くらいしか覚えてなかったから」

 

ソラの説明にカズマはイマイチついていけていないようだ。

無理も無い、その日会ったばっかりの同じ転生者がいきなり記憶喪失だと言われたのだから。

 

「おいアクア、お前なんな知ってる風だったけど何か知ってるのか?」

 

「ええ。多分ソラは”漂流転生者”だと思うわ」

 

「「漂流転生者?」」

 

アクアの言った聞きなれない単語にソラとカズマは首をかしげる。

 

「そっ。分かりやすく言うとね、カズマが私のような女神に転生させられるのを”女神転生”でおそらくソラが体験したのが気が付いたら異世界に転生していましたっていう”漂流転生”なの」

 

「ああ、二次創作とかそういうのにある死んだ記憶があったり無かったりで気が付いたらチート能力を持って転生してたっていうアレか」

 

「まあざっくりいえばそういう感じね。続けるわよ?

漂流転生者は本来であれば私たち女神が転生させる過程をすっ飛ばして異世界に転生するの。

しかもソラがなったのは結構稀なものでね、転生特典を選んでいないのに何故かその力を持っていたり、自分に関する記憶を忘れていたり」

 

「ん?ちょっと待ってくれ。そんなに可笑しいのか?気が付いたら転生してチート持ちになってる事って」

 

カズマはアクアの説明に納得できていないらしい。

そんなカズマをアクアは呆れた風な顔で見ていた。

 

「あのねカズマ、そもそも漂流転生って本来なら魂だけか体ごと転生するんであって普通チートは持っていないのが殆どなのよ」

 

「へっ?そうなの?」

 

「そう。カズマが言う二次創作の例って極稀にたまたま力を持ったり、それこそ元々のその力の持ち主が生まれ変わったっていう感じなの。

まあその他にも相性だったり適合率だったりとか色々とあるんだけどね」

 

アクアの分かりやすいのだか分かりにくいのだか迷う説明にカズマは何となくだが一応理解の顔色は示していた。

 

「しかもソラの場合はかなりのレアケースね。自分の名前と力以外の記憶が無いなんて」

 

「そうなの?」

 

「ハァ…カズマよく考えてみて?そんな中途半端な記憶喪失なんて普通あると思う?

これだから前世は引きこもりのゲームオタクなヒキニートは」

 

「ヒキニート言うなよ。

まあ確かに、考えてみれば確かに中途半端だよな。その記憶喪失って治るのか?」

 

「うーんそれは分からないわ。だってこんな前例今までにないから」

 

「お前使えないな」

 

「アンタ天罰喰らわせるわよ!」

 

まあそんなコントも交えながらソラがどういった状態かを知った2人はとりあえずこの世界でのバイトなどを紹介してもらったりなどこの世界になじみながらソラの記憶を取り戻す手立てを考える事にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~現在~

 

したのだが・・・

 

「(今は自分たちの生活費や冒険に必要な装備の金を揃えるバイトを熟す毎日とか、俺の望んだ異世界生活はどこ行った?

本当ならこの世界で俺TUEEEEEE!するはずだったのに、何でこうなったんだろう)」

 

「カズマ、手止まってる。またおやっさんにどやされるよ」

 

「へいへい」

 

カズマは異世界に来て立派なバイト戦士になっている様に残念がるべきか、前世の自分から大きく変わった事に喜ぶべきかとかなり複雑な心境になった。

 

それからもカズマとアクアのバイト生活は続いた。

しかし2人はその生活には不満を抱いてなどいなかった。

 

昼間の土木工事にはだいぶ慣れてきて親方にも褒められるようになってきた。

 

バイトが終われば風呂で汗を流し風呂上がりの牛乳を飲み干す。

 

そしてギルドでシュワシュワを飲む。

 

昼間はバイト

 

終われば風呂と牛乳

 

ギルドでシュワシュワ

 

そしてある日にはバイトの親方たちも参加。

 

バイト

 

風呂と牛乳

 

シュワシュワ

 

ソラは筋トレ

 

バイト

 

風呂と牛乳

 

シュワシュワ

 

ソラは街の掃除

 

etc・・・

 

そんな繰り返しながらも楽しい生活をカズマとアクアは満喫し、今日も馬小屋で就寝し一日を終えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

お 終 い

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ってちがーーーーうッ!!!

 

おっとどうやらカズマは気付いたようだ。

 

「んんっ、煩いわね。どうしたの?トイレ行き忘れたんなら着いて行ってあげようか?」

 

「ちっがうわ!お前俺たちがこの世界に来た目的を忘れたかっ!?」

 

「!そうだったわそうじゃない!カズマが魔王を倒さないと私帰れないじゃない」

 

言い忘れていたがアクアは元々はこの世界に魔王を倒す為の勇者となる転生者を送る役目をになっていたのだがアクアがカズマの死因を馬鹿にしたりなど色々やってそれに腹を立てたカズマによってこの世界に持ち込める”者”として連れてこられたのだった。

 

「忘れてたのかよ!それより金も溜まったし明日は装備を整えてクエスト行くぞ!」

 

こうしてカズマ達はクエストに行くことを決意したようだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして次の日。

 

カズマは武器屋で一本の片手剣を買い”ジャイアントトードを討伐”というクエストを受けることになった。

 

ジャイアントトードとは読んで字のごとくデカいカエルである。

そのモンスターはアクセルの街近くに多く生息しており、殆どの駆け出し冒険者が一番多く戦う相手といっても過言ではない。

 

しかしいくら駆け出し冒険者が相手にするようなモンスターとはいえどジャイアントトードには打撃が効かない。

だが、カズマはそれでも「女神であるアクアが居るので楽勝だろう」と高を括っていた。

 

 

 

 

だったのだが・・・

 

 

 

「いぃぃぃぃやぁぁぁぁぁっ!」

 

カズマは現在そのジャイアントトードに追いかけ回されていた。

 

カズマは最初はたかがカエルと侮っていたのだが、その巨体に追いかけ回される恐怖により、現在逃げ回るしかなくなっているのである。

 

「あ、アクアーーーー!助けてくれーーーーーっ!」

 

「プークスクスwww超ウケルんですけどwwwカズマったら涙目で逃げ回って超ウケルんですけどwww」

 

カズマはアクアに助けを求めるもののアクアはそんなカズマの姿を見て助けるどころかもう滑稽とでも言わんばかりに腹を抱えて目尻に涙まで浮かべて大爆笑していた。

 

「(アイツ後で埋めて帰ろう!)」

 

カズマは後で報復をしようと考えるのだが今は自分を追ってきているカエルが優先だ。

 

「いやぁぁぁぁぁ止めてぇぇぇぇッ!俺可食部少ないから美味しくねえって!」

 

「カズマー、助けてほしかったらまず私を”様”付けすることから始めましょうかー」

 

「アクア様ぁーーーーーーーーっ!」

 

「ふんっ宜しい。助けてあげるわよヒキニート」

 

アクアは何やら勝ち誇ったかのような顔をして胸を張る。

 

「(あの野郎ホントに後で覚えてろ…って)あれ?」

 

カズマがアクアの物言いにイラついているとジャイアントトードは何故か目の前のカズマから狙いを外し、その代わり何やら思いついたのかその光景を目をつむって想像しているのであろうアクアに向かって進行した。

 

「そうねまずはアクシズ教に入信すること。一日3回はアクシズ教の教会で祈りを捧げること。晩御飯のおかずを一品私に献上するこくきゅっ…」

 

「あっ」

 

そんな無防備もいいとこなアクアの頭からジャイアントトードは躊躇なくパクりと口に納めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、アクアは何とか救出されたのだがその後も懲りずに打撃が効かないカエルに”ゴッドブロー”(本人曰く相手は死ぬらしい)という拳による打撃技を繰り出すもあっさり捕食。

 

その度にカズマは救出したのだが、結局クエストはそこで断念することとなりアクアはカエルの粘液によってヌメヌメになって帰ってくる羽目になった。

 

 

「ぐすっ…エグッ…」

 

「・・・えっと、大丈夫?」

 

「これが大丈夫に見えるか?」

 

「私…怪我された…女神なのに…怪我されちゃった…」

 

クエストから帰りギルドに来て、そこに居た(今日はギルドでのバイトが入っていた)ソラに心配される羽目になったカズマはぐったりしており、アクアに至っては風呂でヌメヌメこそ落ちているが余程トラウマにでもなりかけたのか未だに涙を流していた。

 

「取り合えず注文でもしたら?今日は俺が奢るから」

 

「・・・ありがとう。ソラ」

 

こうして、カズマの異世界転生最初のクエストはクリアするのに困難を極めようとしていた。

 

 

「(ホント…俺の求めた異世界転生ライフは何処に行ったんだろう・・・)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ぷはー。やっぱ飲まなきゃやってられねえっすわ!

何だよあのデカいカエル!打撃が効かないって本格的にウチの女神が役経たずじゃん!

これじゃあ駄女神だよDA・ME・GA・MI!

ん?アクア、どうしたって何だよいきなり掴みかかんじゃねえ!

はな、離せえぇぇぇぇぇぇっ!



次回:この中二病魔女との遭遇を!


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