トガヒミコの楽しい雄英生活 (ベルゼバビデブ)
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第一話

ヒロアカのトガちゃんってかぁいいよねえ…


 どうもみなさん、トガです。今日は雄英高校のヒーロー科の入試試験にやって来ました。筆記の模試ではいつもE判定で、先生やクラスメイト達からは絶対に無理だと言われてしまいました。でも、今日はなんと"秘策"があるのです!

 

 筆記試験で隣の席になったのは地味顔のモジャモジャくんでした。試験直前まで齧り付くように見ていた参考書は付箋まみれ、チラリと見たバックの中には使い込まれたノート。沢山勉強したのだろうと言うことが分かります。

 

 

--彼女…トガの"秘策"とは俗に言うカンニングであった。トガは隣の席の男子をカンニング対象に相応しいと見定め、視界の端に捉える腕、体、筆の動き、それらをよく観察し、分析してカンニングをやってのけている。そして、勿論カンニング、ダメ絶対!--

 

 

 続いて実技試験になりました。私に知恵を貸してくれた地味顔のモジャモジャくんは何やらメガネくんに怒られてました。楽しいねえ。実技試験の内容はロボットを沢山壊せば良いみたいです。アイテムの持ち込みはオッケーとのことで、私はカッターナイフを持ち込みます。早く壊したいねえ。

『はい、スタート』

 スタートの合図と同時に私は駆け出します。みんな遅いねえ。

 

--現在のトガの格好は中学の時の制服姿にカッターナイフ。周りと比べて明らかに異常だが、トガは"かぁいい服"が好きなのだ。そしてトガ…本名渡我被身子の個性は変身。取り入れた血の量に応じて取り入れた相手の姿に変身できる個性。但し、真似られるのは姿と声、匂いなどのみで口調や個性までは真似られない。故にロボット相手ではただの無個性であるし、仮に他人から血を貰っても個性は無いので結局無個性のままである。それでも彼女はロボットを恐れなかったし、試験を余裕で受かる気でいる。世の中には実質無個性で個性を持つヴィランと戦うヒーローは少なくない。個性を抹消し、抹消した後はお互い無個性の肉弾戦を行う抹消ヒーローが良い例である。--

 

「かっこいいロボットだねえ、でも動きが鈍間だねえ。」

 私はロボットに組み付き、すぐに背後に回り込みます。首にあたる箇所にはご丁寧なことにカバーがしてありますが、機械が動くと言う事は装甲と装甲の間には隙間があるってことだよねえ。私は隙間にカッターを突き立て、隙間沿いに斬り裂く。内部のケーブルがぷちぷちと心地良い音を立て切れていくのがわかります。楽しいねえ。

 

 

 試験時間が終わりに近づいてきた頃、巨大な0ポイント仮想ヴィランが現れました。あれはかっこよくないです…。それに邪魔されたく無いので逃げることにします。

 私がその場から立ち去ろうとした時、地味顔のモジャモジャくんが飛び出していきました。

「スマーッシュ!」

 轟音と共に崩れ去る巨大な仮想ヴィラン、彼は拳の一撃で0ポイント仮想ヴィランを倒してしまったのです。凄いねえ。カッコいいねえ。

 

 …それに落ちてきた彼、手足がボロボロで血だらけで…素敵だねえ…。

 

 

 試験から数日後、雄英から何かが送られてきました。謎の丸い機械で使い方はわかりません。困ったので取り敢えず机の上に置くと、何かが投影されました。

『わ た し が 〜 投影された!おめでとう、渡我少女!君は春から雄英生だ!君の個性、調べさせてもらったよ。変身…まさか個性を使わずに身体能力だけで合格してしまうとは私も驚きだ!』

「やった、合格!嬉しいです!」

 

 

--トガの武器はその身体遣いにある。相手の視線から隠れるように、死角を縫う様な身体捌き、背後を取り急所への一撃、勿論人を殺めた事など無いが、おおよそ殺人術に部類される身体の動きを彼女は独学で習得していた。そして筆記試験についてだが、無論雄英側もカンニング対策は万全にしていた。それでもなおトガのカンニング技術の方が優っていたのだ。何度も言う、カンニング、ダメ絶対。--

 

 

 今日は待ちに待った入学式です。私はA組になりました。どんな人達がクラスメイトなんだろうね、楽しみだねえ。そんな気持ちで教室に向かっていると、見覚えのあるモジャモジャ頭が目に入ります。思わず駆け寄り、声を掛けました。

「ねぇねぇ、君。実技試験の時ボロボロになってたよねえ?カッコよかったよ、手足がボロボロで…」

「えっ!?あの、ボロボロで、格好いい?え?」

 彼はあたふたしていておかしいねえ。

「あ、そうだ。僕、緑谷 出久。よろしくね」

「トガです。よろしくです。」

「お友達ごっこなら他所でやりな。」

 寝袋に入った芋虫のような姿勢の男の人がいつの間にか背後にいました。怖いねえ。

 

 消太せんせえが体操服に着替えてグラウンドに出ろと言いました。グラウンドに出ると個性把握テストなるものをやるみたいです。最下位は除籍だなんて厳しいねえ。

「ねえ、消太せんせえ」

「渡我、苗字の方で呼べ。」

「私も個性使っていいんですか?」

 私の個性は人の血を摂取しないと使えません。

「…自分でちゃんと条件を説明して、相手に了解を得られたら構わんぞ。」

 今まで中々使えなかった自分の個性、使っていいと言われて嬉しくなりました。




トガちゃんが普通の女の子だったらそれはもうトガちゃんじゃ無い説。

亀更新、エタ率高めですが、よろしくお願いします。


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第二話

前回までのあらすじ

「個性把握テストするよ」

※トガちゃんの個性変身に少し独自解釈を入れてます。


どうもみなさん、トガです。消太せんせえに言われて除籍を賭けた個性把握テストをやります。

 

第一種目 50m走

 

 私はメガネの男の子、天哉くんに声をかけました。彼は普段から走るのに相性のいい個性だからか、身体の作りが速く走るように出来てます。それに身長がある分脚も長くて最適です。

「ねぇねぇ天哉くん。」

「む、君は確か…渡我くん。なんだい?俺に何か用かい?」

 私は個性のために血が必要だと話しました。すると、彼は少し悩んだような顔をしてから

「俺の体が一番速く走れそうか…そう言ってもらえると嬉しいよ。対等に争わなければ意味がないからな、俺で良ければ協力しよう。」

 私はカッターの先端で天哉くんの指先をチクリと刺し、出てきた血を指で掬いそれを舐めた。

 

 

--因みに、飯田は渡我が徐にポケットからカッターナイフを取り出したのをみて何故そんなものを持ち歩いているのかと驚いた。口には出さなかったが。--

 

「ありがとねえ天哉くん」

 私は天哉くんの姿になり、お礼を言う。

「あ、あぁ…目の前に自分と同じ見た目の人間が立ってると凄く不思議な気分だな…あと、体操服大丈夫か?なんかこう、パツパツだが…」

 

 

第二種目 握力測定

 

 今度は体が一際大きい目蔵くんにお願いをすることにした。事情を説明すると、彼の個性の一つである複製腕が口の形となり

「良いだろう」

 と短く答えてくれました。…なんで顔の口の方で言わないんですかね?

 

 個性では無く元々生えているからなのか、腕は左右で6本になりました。でも6本ある腕の使い方なんてよくわかりません。結局測定は1本の腕でやりました。記録は…まぁまぁでした。

 

 

第三種目 立ち幅跳び

 

 50m走を跳ねるように走り切った女の子、立ち幅跳びでも良い記録を出していた梅雨ちゃん声を掛ける。

「ねえねえ、梅雨ちゃん」

「ケロ?被身子ちゃん、なにか用ようかしら?」

「私の個性でね…」

 本日3回目の個性の説明をします。面倒臭いです。

「分かったわ。でも、私の跳躍力は個性がカエルだからよ?だからあまり期待しないでほしいのだけれど…」

「大丈夫、個性抜きでも梅雨ちゃんは高く跳べる体をしてるよ」

 身体を見れば分かります。

「そう?ならよかったわ。」

 

 それにしても梅雨ちゃん…かぁいいねえ…

 

 

第四種目 ボール投げ

 

 私はボール投げの時はまた障子くんにお願いしました。腕のリーチが長く、筋力量もあるのでそれが最善だと思ったからです。そして地味顔モジャモジャの出久くんがボール投げの番になった時のこと

「まだ…動けます…!」

 一投目はパッとしない記録だったのが、二投目は凄い記録を叩き出しました。でも、そんなことより出久くんの指は腫れて痛そうな見た目になっています。私はいてもたっても居られず、思わず出久くんへと駆け寄ったのです。

「あぁ…出久くん、指痛そうだねえ、ボロボロだねえ、格好いいねえ…でも、入試の時みたいにもっとボロボロになった方が素敵だよお…」

「ちちち近い!それに何を言ってるの渡我さん!?」

 

 

第五種目 反復横跳び

 

 個性が無い素の身体能力なら私自身が一番反復横跳びはできそうだなと思ったので、この種目は自分の身体でやりました。私の動きを見て近寄ってきたのは三奈ちゃんです。

「ねーねー!今のステップってもしかしてダンスとかやってた!?」

「?いえ、ダンスはやった事ないです。でも踊るのって楽しそうだねえ」

「そうなんだ!被身子ちゃんって動きのキレ良いしきっと上手く踊れるよ!良かったら今度一緒に踊らない?」

 お友達とお話しするのは楽しいねえ。

 

 

第六種目 持久走

 

 スタミナがありそうなのは勝己くんでしたが、バッサリと断られてしまいました。

「お前の個性なんて知るかカス。死ね。」

 らしいです、酷いです。結局、持久走は自負の体で走ることにしました。それにしても出久くん、指の痛みのせいかうまく走れないみたいだねえ、かぁいそうだねえ…。

 

 

第七種目 上体起こし

 

 状態起こしで良い記録を出していたのは猿夫くん。彼をコピーする事にしました。

「ねえねえお猿さん」

「お猿さん!?」

「間違えました、猿夫くん。私の個性使う為に血がちょっとだけ欲しいです。」

「絶対ワザとだよね…?まぁ、話は飯田から聞いてるよ。」

 みなさん協力的で嬉しいです。

 

 

--因みに、尾白の格好をしたトガがやるまで1位は尾白だった。だった、と言うのは尾白の格好をしたトガが尾白よりも1回多く上体を起こせたからだ。尾白は…泣いた。--

 

 

第八種目 長座体前屈

 

 柔軟性には自信があったのでこの種目も自分の身体でやりました。でも、その後に透ちゃんがもっと良い記録を出したので悔しかったです。…透ちゃんに変身したら透ちゃんの素顔が見れるのかな?

 

 

 全ての種目が終わり、順位が発表されました。私は真ん中の方だったので除籍は免れましたが、それよりも残念なのが最下位の出久くん…もうボロボロのデクくんが見れないねえ、残念だねえ…

 

「ちなみに除籍は嘘な」

 消太せんせえの発言にみんなが驚く。私としては嬉しい限りだった。

「良かったねえ出久くん!」

 私は嬉しくなり、出久くんに笑いかけました。

「ありがとう渡我さん、入学して初日で除籍なんて洒落にならないもんね、焦ったよ。」

「これでまたボロボロな出久くんが見れるから私も嬉しいよお!」

「だからなんで!?」




●独自解釈
変身した相手の素の身体能力もコピー。また、複製腕(コピー素の腕)や尻尾等は個性だがトガちゃんも使える。但し、トガちゃんの脳味噌がその部位を動かすように出来てないので尻尾を操れない。オールマイトも言っていた「急に尻尾の生えた人間に芸を見せてと言っても…」の件。


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第三話

前回までのあらすじ

「ボロボロな出久くんが見れるから嬉しいです。」


 どうもみなさん、トガです。今日はオールマイトのヒーロー基礎学です。

 

 クラスのみんながそれぞれヒーロースーツを着ています。少しパツパツなスーツっぽい格好のお茶子ちゃん、かぁいいねえ。

 授業の内容は屋内での対人戦闘訓練、同じチームは三奈ちゃん。そして相手チームは力道くんと甲司くんです。

「渡我さんのコスチューム…なんていうか変わってるね?」

 話しかけてくれたのは出久くんです。出久くんの服装は…手作りって感じです。

「かぁいいのが好きなのです!」

 私のコスチュームは雄英の制服と同じデザインの服(サポート会社の説明では防刃、耐火素材なもの)をベースに、ナイフと血を採る為の特製注射器のホルスター、あとはいくつかの小物が入ったウェストポーチと普段とあまり変わらない格好をしています。かぁいいのが好きなのです!

 

 今日は出久くんがボロボロになるところが見たいねえ…。

 

 組み分けで出久くんの対戦相手に勝己くんがいたのを思い出します。

「ねえねえ勝己くん!」

「気安く話しかけんなクソ八重歯」

「勝己くん、その呼び方可愛くないです…」

 勝己くんは私の方は見ずに、出久くんを睨みつけています…アツアツです!勝己くんの個性は爆破、人をボロボロにするのに最適なのです。

「勝己くん、出久くんのことボロボロにして下さい。私、ボロボロで血が出てる出久くんが見たいです。」

 勝己くんはこちらをチラリと見てから悪そうに笑って

「テメェなんぞに言われなくとも完膚なきまでな叩きのめしてボロボロにしてやるよ…!」

 と言ってくれました。楽しみだねえ…

 

 勝己くんが出久くんと戦闘を開始し、暫くが経つ。モニター越しに何を言っているのかはわかりませんが、順調に出久くんがボロボロになっていきます。格好いいねえ出久くん!

 

 訓練は私たちの番になっていました。三奈ちゃんと作戦を考えます。

「私の個性は酸!手とか足から酸を出すの!」

 そう言ってジョバジョバと酸を出してくれます。

「(人間相手に使ったら相手の体がボロボロになるから)とっても素敵な個性だねえ。私の個性は変身!血を飲むとその人に変身できちゃうのです。」

「何それかっこいいー!」

 

 

--一方その頃、生き物ボイスの個性をもつ口田は近くを飛んでいた鳥達にトガ達の監視を命じていた。

「お前の個性便利だなー!俺索敵とか出来ねえからよ、助かるぜ!」

砂藤の言葉に照れたように頭を掻く口田。しかし、監視に行った鳥達が帰ってくることはない。--

 

 

 建物の中なのに鳥さんが居ました。パタパタと飛んでこちらを伺うように見ています。…おかしいねえ?

「ねぇ!アレ見てヒミちゃん!屋内なのに鳥がいるよ!」

「個性を使っての偵察でしょうか?捕まえてきます。」

 私は助走をつけてから右の壁を蹴り、そのまま左の壁を蹴り鳥さんへと手を伸ばします。

「おー!ヒミちゃんすごーい!」

 バタバタと暴れる鳥さんかあいいねえ…

「砂藤は増強系の個性っぽいし、口田の個性かな?その鳥どうするの?」

「三奈ちゃん、私のポーチからピアノ線を取り出して下さい。この鳥を使って逆に核兵器の位置を調べます。」

「そっか!鳥が口田の元に帰るならそれを追いかければいいんだ!ヒミちゃん頭良い〜!」

 ピアノ線を鳥さんの脚にくくりつけ、逃がします。しばらくするとある部屋に入っていくのが見えました。

 私はコスチュームを脱ぎ、三奈ちゃんからもらった血を摂取して三奈ちゃんに変身します。

「それじゃあ私が先に行ってきますね」

「よろしくー!」

 

「お、鳥が戻ってきたな。なに!?すぐそこに二人が来てる!?すぐ迎撃の準備だ!」

 力道くんの声が聞こえてきます。力道くんは増強系、口田くんは動物を操る個性のようなので遠距離攻撃は無さそうです。それに拘束も得意では無いと見ました。

「来たぞ!俺がいく!」

 力道くんが何かを口にしてからこちらに突っ込んできました。

「芦戸か変身した渡我か分からんが、悪いが遠慮なくいくぜ!」

 力道くんの右フックを躱し、左のパンチも躱します。

「やるな…これならどうだ!-シュガー・ラッシュ-!」

 流石は増強系、先程のコンビネーションパンチとは比にならない連続攻撃です。流石に躱し切れないです。…普通なら

「いってぇ!?コレ、酸か!?手が焼けみてぇにいてぇ…!」

 コスチュームと皮膚の表面を傷つける程度の酸ですが、効果は抜群です。

 それと同時に三奈ちゃんが部屋に入ってきます。

「口田!こっちが本物でそっちが変身した渡我だ!」

 甲司くんの接近を酸による滑るような歩行で躱し、三奈ちゃんが核兵器を確保してくれました。

「なっ!?あっちが本物!?どうなってんだ!?」

「三奈ちゃんの酸を予め小さな瓶に入れてたのです。」

「マジかよ…わかんなかったぜ」

 勝てて嬉しいです。オールマイトせんせえにも見事な作戦だと誉められました。

 

 でも、ボロボロの出久くんはすぐに保健室に連れて行かれて間近で見れなかったのが残念です。次はもっと近くで見てみたいです!




当初はトガちゃん爆轟チームで緑谷達に勝つ展開にしようかと思いましたが、それやると爆轟がスタートラインに立たないので没にしました。


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第没話

今回は前回の後書きで書いた没話です。


「おいクソ八重歯、テメェはディフェンスやってろ!俺一人で十分だ!」

「だからその呼び方可愛くないです…」

 勝己くんは行ってしまいました。暫くすると爆発音が聞こえてきます。今頃出久くんはボロボロになってるのでしょうか?

 

 勝己くんにはディフェンスをやれと言われましたが、やっぱりボロボロになったデクくんを見たくなったので部屋を出ちゃいます。すると、廊下でバッタリとお茶子ちゃんと出会いました。

「渡我さん!?」

「お茶子ちゃん!お茶子ちゃんはかぁいいねえ」

「えっ…?あ、ありがと…?」

 お茶子ちゃんの個性は無重力、お茶子ちゃんのぷにぷにとしたかぁいらしい五指で触れられると無重力状態になってしまいます。逆に言えばそれだけです。

 廊下には浮かして武器になりそうなものは有りません。ならば私が負けるはずはないのです。

「私もお茶子ちゃんみたいにかぁいくなりたいねえ…」

 お茶子ちゃんがピクリと反応したと同時に駆け出し、左手に逆手て持ったナイフをチラつかせると、お茶子ちゃんの足が半歩下がるのが見えます。それと同時に利き手である右手で注射器を投げ付けちゃうのです。

「なっー?」

「特製の注射器です!チウチウさせててね、お茶子ちゃん!」

 不意打ちの注射器を避けたお茶子ちゃんでしたが、私はお茶子ちゃんの目線から外れるように、懐へと潜り込みます。苦し紛れのお茶子ちゃんの手のスイングを回避して背後を取り、片手を背後で固め、首元にナイフを当てるのです。

「動いちゃダメだからねえ…」

「くっ…!」

 動いちゃダメだと言ったのにお茶子ちゃんは私の身体に触れてきました。身体が浮くのを感じます。ふわふわで楽しいねえ。でも、この状況を覆すには至りません。そんなことを思っていると、凄まじい爆発音が聞こえました。

 

「そんなの…ありかよ…!」

「どうだぁデク…!俺の方がすげぇだろォ!?まだまだ汗を溜めれば溜まるほど威力は上がっていくんだぜ!?」

 

 

--これまで、授かった個性を使わずに爆轟と渡り合っていた緑谷だったが、爆轟の籠手から放たれる遠距離攻撃は破壊力が桁外れであった。「当たらなきゃ死なねえ」その言葉通り、当たれば死ぬ、そんな威力は破壊された壁が物語っている。この状況に緑谷はどうやって爆轟を退け勝利するか考えていた。すると耳に付けている通信機に通信が入る。--

 

 

『デクくん、渡我さん確保したよ!』

「…!本当!?核兵器は…?」

『ごめん、まだ見つけられへん。もしかしたら上のフロアには無いのかも』

「オイデク、また無視か…あぁ!?なんだよオールマイト!」

 

 

--緑谷は爆轟が無線の相手(オールマイトから今の爆撃について注意を受けている)と話しているのを好機と捉え、作戦を考えた。爆轟の視線を自分に向けさせ、背後から麗日に確保テープで確保させようというもの。今更核兵器を見つけられるとは限らない。それなら今確実に居場所のわかる爆轟を奇襲で捕らえることの方が可能性が高いと緑谷は考えたのだ。作戦を伝え終えると、直様爆轟の背後から足音でバレないようにと無重力で浮いた状態の麗日が現れる。…緑谷は目の前の爆轟に意識が向くあまり、普段の彼なら気付くであろうある一つの違和感に気づくことはなかった。--

 

 

「派手な個性じゃねぇか!なぁおい!使って来いや!デク!!」

「君がすごい奴だから、越えたいんじゃないか!馬鹿野郎!!」

 二人は駆け出し、拳を振るわんと振り被っています。無重力で浮いた私は…

「確保!」

 そんな二人を邪魔するかのように一気に距離を詰め、確保テープを巻きつけるのです。

 

『ヴィランチーム、ウィーン!!!』

 

「ゴメンねぇ出久くん」

「麗日…さん?いや、まさか…」

 入学試験の時ほどではないですが、ボロボロになって素敵な感じに仕上がっているデクくんは私を見て驚いています。

 

 ドロリ…とお茶子ちゃんの体が崩れていく。

 

 

--麗日を確保したトガはある作戦を講じていた。ワザと個性の無重力を受け、無重力状態で麗日を確保、拘束時に両手が合わせられないように腕を固め、通信機も奪い取った。その後は麗日から採った血を摂取して麗日に変身。緑谷へと偽の通信を入れ、その後爆轟に一方的な通信を入れて緑谷の前に現れた。緑谷のミスはただ一つ。麗日は自分を短時間しか浮かせない。走り幅跳びの時に見せた極端に低いキャパ容量。トガは無重力の個性を使っているかのように見せ、本物の麗日を演じたのだ。--

 

 

「勝己くん、思ったよりデクくんがボロボロじゃないです。期待外れです。」

「あぁ!?うるせえぞこのクソ八重歯!テメェの作戦なんざ無くても俺はデクに勝ってたんだよ!!」

 

 

--因みに、変身が完全に解けたトガだが、コスチュームの下に見られても平気な薄めのレオタード的な物を着ているので変身するためにコスチュームを脱いでも完全に裸になったりはしない。とはいえ峰田はトガがコスチュームを脱ぎ出した瞬間興奮し出し、女性陣にボコされた。--




スタートラインに立たない爆轟。


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第四話

前回までのあらすじ
「パツパツスーツのお茶子ちゃんかぁいいねえ…」


 どうもみなさん、トガです。消太せんせえにクラスの委員長決めをしろと言われました。みんなやりたいようですが、正直面倒臭いです。委員長は大変な役割だと思うので出久くんにやってもらいます。その方がボロボロになる機会が多そうだからです。

「なんで俺よりデクの方が票少ないんだァ!?」

 勝己くんが怒ってます。怖いねえ。

 

 今日は三奈ちゃんや梅雨ちゃん、クラスの女の子(一部不在)と一緒にランチです。

「ケロッ、被身子ちゃんってレバニラ好きなのね?」

「私はレバーってちょっと苦手〜血っぽいところとか!」

「あたしも〜!」

「私もレバーはフォアグラしか…」

「出た、セレブ発言…」

「私は血っぽいところが好きなのです。」

 透ちゃんの食べているものが途中でパッと消える様は見ていて面白いです。ちょっとした雑談をしつつ大体を食べ終え、デザートのアイス(ザクロ味)を食べていると、途端に警報が鳴ります。

「ケロ、何かしら」

「すみませ〜ん!この警報ってなんなんですか?」

 三奈ちゃんが聞いてくれた話によると、雄英史上初の出来事みたいです。驚きです。でもアイスが溶けちゃうので私は椅子に座り直します。

「ケロケロ、被身子ちゃんも避難しましょう」

 梅雨ちゃんに半ば無理矢理連れて行かれてしまいました。アイス…

 

 その後、いろいろあって天哉くんが非常口になって、委員長になりました。

 

 そして今回の授業は人命救助訓練です。

「さぁみんな!スムーズにバスに乗れるように番号順で並びたまえ!」

 天哉くんは張り切ってます。でもバスは向かい合わせに乗る場所もあるタイプだったのであんまり意味なかったですね。

 13号せんせえの話、消太せんせえの怒った声、そして黒いモヤモヤが現れて言ったのです。

「子供達は散らして…殺す!」

 イヤです!殺されたくないです!そんな風に思っていると、風景がどこかに変わります。ここは土砂…?

 空気がひんやりしたなと思うと、焦凍くんが沢山のヴィランを氷漬けにしてます。凄いです!でも…

「焦凍くん、脚が凍って動かないです。助けてください。」

「…悪ィ、居たのか。」

 そのあと現れたヴィランもあっという間に凍らせてしまいました。

「このままだとアンタらはゆっくりと体が壊死して行くわけなんだが…」

「ヒィィ…」

 凍って動けないヴィランの顔に掌を当てて冷気を当てているようです。頼んだらザクロ味のシャーベット作ってくれるのでしょうか?今度頼んでみることにします。そんなことより…

「壊死は良くないです!」

「そ、そうだ!嬢ちゃん言ってやってくれ!」

 ヴィランは涙声でこちらに助けを求めてきますが、勘違いしないで欲しいです。

 

「刺しましょう」

 

 その後、広場の消太せんせえを手伝いに行くと言った焦凍くんを引き止めます。

「…なんだ?怖いなら別についてこなくて良いぞ」

「私の個性であの人たちの誰かに変身して近づいた方が怪しまれないと思います」

「…お前授業の感じ見てると馬鹿だけど、アホじゃねぇのな」

 

 適当なヴィランから血を拝借して変身しました。焦凍くんの指示に従って首を掴み、消太せんせえのいる方へと向かっていきます。でも、消太せんせえは居ませんし、代わりにオールマイトがブリッジをしてます。

「あん?おいお前、なんだそのガキは。ちゃんと殺せって言っただろ」

 顔に手のある人…ヴィランが言うには死柄木っていうそうです。焦凍くんが事前に教えてくれた通りのセリフを読み上げます。

「人質ですよ人質、ヒーローの目の前でこいつをぶっ殺してやれば楽しいことになりやすぜ!」

「と、轟少年…!?まさか君がやられてしまったのか!?な、なんと言うことだ…!」

 オールマイトは必死に拘束を解除しようとしながらそう叫んでいます。…こちらの演技に気付いてないんでしょうか?

「今だ!!」

 焦凍くんが氷結を繰り出し、オールマイトのお腹を掴んでいるヴィランの手と脚を凍らせ、死柄木って人の脚を氷漬けにします。

「は?おい!お前何やってる!そのガキ起きてるぞ!」

 ドロリ…と私の皮膚の上を何かが落ちていきます。

「今度はなんだ!?」

「殺されたくないので殺しますね」

 私は走りつつナイフを取り出します。脚が氷漬けにされているなら簡単です。

「なんと…!渡我少女か!?でも殺すのはダメだぞ!?」

「ちっ、ヒーローが人騙して良いのかよ」

 死柄木という人が手で氷に触れると何故か氷は塵になって消えてしまいました。

「死ね。ガキ」

「嫌です。死にたくないです。」

 わざわざ手で氷を破壊したところを見ると、お茶子ちゃんのように手で触らないとダメな個性のようなので、手に触れれないように回避して腕にナイフを突き立てます。

「このガキ…避けやがった!しかもナイフを…いってぇな…!ヒーロー志望が悪戯に人間傷付けて良いのかよ…イラつくな!おい黒霧!

 突如聞こえる爆発音。チラリと音の方を見れば勝己くんが黒いもやもやの人を抑えて何やら叫んでます。いつのまにか出久くんも居ますが…あんまりボロボロじゃないですね、残念です。

「攻略された上にほぼ無傷、オマケにガキにナイフでブッ刺される…すごいなぁ最近のクソガキどもは…恥ずかしくなってくるぜ…おい脳無。」

 脳丸出しヴィランは氷漬けにされてるのをお構いなしに動き、腕も脚も砕けました。そのあと再生しました…うげえ、気持ち悪いです…。

 

 それからはオールマイトの独壇場でした。とてつもない連打でした。そしてヴィランを遥か彼方に吹き飛ばします。そのあと駆け付けてくれたせんせえ達のおかげで撃退に成功しました。」

 

 でも今日の出久くんはあんまりボロボロじゃなかったので残念です。




死柄木とトガちゃん闘わせるのって凄く違和感あるよね


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第五話

前回までのあらすじ
「お前馬鹿だけどアホじゃねぇのな」


 どうもみなさん、トガです。今日は雄英体育祭です。

「雄英体育祭やるよ」

 と、数日前に言った消太せんせえは包帯ぐるぐるの腕ギプスで格好良いです。ずっとそのままでいて欲しいです。

 

第一種目 障害物競走

 スタートと同時に焦凍くんが氷結を繰り出してきました。USJの時と違って溶かしてくれるとは思えないのでジャンプと壁蹴りで回避します。走っていると、前方に出久くんが見えたので、こっそり近づきます。出久くんはロボの残骸を拾ってます。何に使うのでしょうか?でも良いアイデアだと思ったので、小さめのカケラを拾いました。次に襲ってきたロボは装甲の欠片をナイフのように装甲の隙間に突き立て、内部のコードを切り裂きます。

 少し出久くんから離れてしまいましたが、出久くんの真似をしてロープを伝い大穴を回避します。

 

 現在のトップは焦凍くんと勝己くんが争っているようです。でも、地雷原の初めの方で出久くんがなぜか地面を掘っていました。

「出久くん」

「うわっ!?渡我さん!?びっくりした…!」

「何をしてるんですか?」

「ちょっと考えがあって…あ、先行ってて良いよ?危ないから」

 見ると地雷を集めているようです。もしかして私のためにボロボロになろうとしてくれてるんでしょうか?だとしたら嬉しいねえ。

「地雷を集めれば良いんだね?」

「えっ?」

 私は持ってきた装甲の欠片をシャベル(スコップ)のように使って地雷を掘り出し、出久くんのところは持っていきます。

 

「本当にいいの?」

「勿論です。出久くんとくっつけて嬉しいです。」

 今私は出久くんに後ろから抱き付いています。

「じゃあ、しっかり捕まっててね!」

 出久くんは地雷の山に装甲を盾にのしかかり、地雷を爆破させました。

「凄いねえ!凄いね出久くん!空飛んでます!」

「やっば…!着地考えてなかった!」

「え?」

 その後、出久くんは焦凍くんと勝己くんを踏み台にしながら装甲で地雷を爆破し再度吹き飛びました。

 流石にいつまでも抱き付いては居られず離れると、出久くんはゴールに向かって走り出します。

「おい待てやクソデクにクソ八重歯!!」

 背後から勝己くんの怒声とひんやりとした空気を感じました。そのあとあっという間に勝己くんと焦凍くんに抜かされ、私は4位でゴールしました。

 

 

第二種目 騎馬戦

 騎馬戦という事で出久くんに声をかけようとしたところ、肩をトントンと叩かれたので振り返ると見知らぬ男の子が立っていました。

「なぁ君一緒に組んでくれない?」

「嫌です。私は出…」

 私の意識はそこで途切れてしまいました。

「痛っ…」

 私が痛みを感じた足下に目をやると、障害物競走で使った小さな装甲の欠片を足の指に落としたようでした。

「うう、痛いです。」

「は?お前なんで…」

 私の肩を叩いた男の子が驚いていますが、何故でしょうか。彼と同じチームなのは猿尾くんと…誰でしょう?多分B組の人です。

「…あなた、誰ですか?私は出久くんと組みたかったんですが…」

 ちらりと出久くんの方を見ると、既に4人集まっているようでした。残念です。

「…俺は普通科の心操 人使。」

「そう、人使くん。私が騎手をやりますのでみなさんは騎馬をやって下さい。」

 こうして人使くんが戦闘で何故かぼーっとしてる猿尾くんとB組くんが後ろの騎馬に乗り、私が騎手をします。

「ねえねえ人使くん!作戦とかはあるの?」

「作戦…まずはポイントのハチマキを取らせて身軽になる。それで最後の1分で一気にハチマキを取る」

「…そんなことできるんですか?」

「俺の指示に従ってくれれば出来る」

 私は出久くんをボロボロにするのは勝己くんと焦凍君に任せ、人使くんの指示に従いました。早々にポイントを取らせ…その後はフィールド端で傍観。ラスト一分はB組の騎馬に人使くんが声を掛けた途端相手が固まり、簡単にポイントを取ることが出来ました。

「人使くん凄いねえ!」

「あ、あぁ…まぁな…」

 

 本戦の組み合わせ発表前に猿尾くんとB組の二連撃くんが何故か棄権してしまいました。おかしいねえ。

「猿尾くん猿尾くん私は棄権しませんよ?」

「渡我さん、渡我さんは騎手として騎馬戦参加してたんだよね?俺の事は気にせず本戦頑張ってくれ…」

 

本戦参加者

・轟、八百万、上鳴、飯田

・爆豪、芦戸、瀬呂、切島

・心操、渡我 ※尾白、庄田は棄権

・緑谷、麗日、常闇、発目

・鉄哲、塩崎 ※繰り上がり出場

 

 

本戦前のレクリエーション

 百ちゃんからチアガールの衣装を貰いました。チアガール、かぁいいねえ。

「騙しましたわね!?」

 百ちゃんは何やら怒ってますが、私は達ちゃんと一緒にたくさん体を動かして応援するのです。

 

 

本戦 ガチバトルトーナメント

1試合目 緑谷VS心操 緑谷の勝ち 原作通りなのでカット

2試合目 轟VS飯田  轟の勝ち  原作通りなのでカット

3試合目 渡我VS発目

 

 私は明ちゃんのベイビー達を装着し、ステージに上がります。

「渡我さん?サポートアイテムの着用は事前の申請が必要よ?」

「ここまで勝ち上がったなら立場は対等、お互い対等に闘いたいからといって明ちゃんがアイテムを渡してきたのです。睡せんせえ、ごめんなさい」

「…ちょっと棒読みなのが気になるけど、互いに同意の上なら問題無いわ!」

 因みに、今のセリフは明ちゃんが考えてくれました。そこからは明ちゃんとの打ち合わせ通り、明ちゃんのアイテムの紹介です。

「明ちゃん明ちゃん!これ凄いねえ!」

『そうでしょうとも!何故なら…』

『明ちゃん!これかぁいいねえ、どんなサポートアイテムなんですか?」

『流石に渡我さん、お目が高い!こちらのアイテムは…』

 

『…以上です!どうですか皆さん!この私、発目 明、発目 明、発目 明を!どうかよろしくお願いします!!』

 明ちゃんは満足したようで自らステージを降りて場外になりました。サポートアイテムの紹介楽しかったねえ。




砂藤、口田、尾白、青山辺りの不在キャラの代わりってなると大抵心操騎馬に参加になる気がしますけど、みなさんどうしてるんですかね?

因みにトガちゃんはたまたま持ってた装甲の欠片の鋭利な部分がつま先に当たり(若干刺さって)痛みで我を取り戻しましたが、心操ぐは理由がわからなかったのでこれ以上の洗脳は危険と判断して二度目洗脳は仕掛けてません。ご都合主義ですね。


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第六話

前回までのあらすじ
「雄英体育祭やるよ」


本戦 ガチバトルトーナメント

第四試合 瀬路Vs麗日

 

 お茶子ちゃんの試合は一瞬で終わりました。開始と同時に範太くんのテープがお茶子ちゃんを縛り上げてしまいます。お茶子ちゃんは直ぐに自分を縛るテープを無重力にし、範太くんをも無重力としますが、範太くんは自分の足を床にテープで貼り付けて固定してそのままお茶子ちゃんを場外へと投げ飛ばしました。お茶子ちゃん悔しいねえ…。

 

第五試合 常闇VS八百万 常闇の勝ち 原作通りなのでカット

第六試合 芦戸VS鉄哲

 

 徹鐵くんは鋭児郎くんと似た個性みたいです。体が鉄のように硬くなり、ガードは硬く、攻撃は痛くなります。個性を発動していると身体がピカピカになるのでわかりやすいですね。

「おうおうおう!女子を殴るのは気が進まねぇがよう!真剣勝負で手を抜くのも失礼だよなァ!!」

 徹鐵くんは大きく拳を振りかぶり、三奈ちゃんを殴ろうとします。

「へへーん!あたらないよーっだ!」

 三奈ちゃんは足裏から酸を出して滑るように回避し、手に貯めた酸を徹鐵くんに投げつけます。ジュウジュウと嫌な匂いがします。

「ぬおおおおおお!?い、痛え!!俺の体が!!」

 私の隣で腕組みをして試合を見ていた鋭児郎くんが口を開きました。

「芦戸の個性って俺らみたいな硬化個性持ちの天敵みたいなとこあるからなー」

「天敵ですか?」

 鋭児郎くんはなおも試合を見ながら頷き、腕を硬化させてガチンと叩きながら解説してくれます。

「一旦硬化すれば殴っても叩いても切っても撃っても固めても平気だ。でも酸はその守りを溶かしちまう。俺も体鍛えるためにたまに芦戸に酸を掛けてもらうんだけどよ、全く耐えられねえ。」

「なるほどです。」

「それだけじゃねぇ、俺達みたいなタイプは総じて俊敏さに欠ける。それに対して芦戸はフットワークが軽いし酸を投げての遠距離攻撃ができる。正直辛いぜ」

 そんな話を聞いていると、徹鐵くんが痛みに耐えきれず立ったまま気絶し三奈ちゃんの勝ちとなりました。

「気絶する時まで立ったままなんて…天敵相手になんて漢らしい奴なんだ!」

 鋭児郎くんは徹鐵くんに賞賛を送ってました。暑苦しいです。

 

第七試合 上鳴VS塩崎 塩崎の勝ち(原作通りなのでカット)

第八試合 切島VS爆豪 爆轟の勝ち(原作通りなのでカット)

 

第九試合 緑谷VS轟

 

「まだ僕は!君に傷ひとつ付けられちゃいないぞ!」

 焦凍くんに向かって叫ぶ出久くんはボロボロで格好良いです。尚も体を壊しながら焦凍くんと戦っている姿に興奮します。

「君の!個性(ちから)じゃないか!!!」

 出久くんがそう叫び、凄まじい爆破が起こり出久くんは場外に飛ばされ、ステージは大破壊されてしまいました。

 この後ボロボロの出久くんを見に行ったら手術の邪魔だと叩き出されてしまいました。残念です。

 

 

第十試合 渡我VS瀬路

 

 正直、範太くんのテープをくぐり抜けて範太くんに勝というのは難しいです。

「悪く思うなよな!渡我!」

 こちらに向けて真っ直ぐ飛ばしてくるテープを躱すのは簡単です。体の向き、視線、肘の位置それらから左右に体をずらせば回避ができます。

「これならどうだ!」

 次の攻撃は薙ぎ払いです。しかし左右から高さをずらしての攻撃は跳んでもしゃがんでも回避が出来ません。なんとか地を這う右側のテープを跳んで回避したものの、すぐさまやって来た左側の高めのテープは今まさに私の腕を巻き取らんとしています。

 …私の負けです。

 

 思えば、私はこの体育祭で個性を見せていませんでした。不思議です。みんな、みんな個性で工夫して戦ってるのに。

『君の!個性(ちから)じゃないか!!』

 ふと、出久くんの叫びを思い出します。でも私は個性を使うのに血を必要とします。この場には私と範太くんしかいません。範太くんとの、距離は遠く、とても血を取れそうにありません。

 私に個性を使って良いと言ってくれた消太せんせえ、快く血をくれて変身させてくれたクラスメートのみんな。

『お前って馬鹿だけどアホじゃないのな』

 焦凍くんは私にそう言ってくれました。

『天敵相手になんて漢らしい奴なんだ!』

 そう言っていた鋭児郎くんも勝己くんに最後まで食らいつき、眼前での大爆発を立ったまま堪えて気絶していました。

 

 私だけ、個性も使えずに負けちゃうの?

 

「悔しい…!」

 

 思わず下唇を噛み締めてしまいます。

『クソ八重歯』

 勝己くん、その呼び方は可愛くありません。ですがそんな八重歯がプチりと何かを切り裂く音が聞こえます。口に広がるあの大好きな味。

 

 血の味。

 

 範太くんに負けてしまったかぁいいお茶子ちゃん。お茶子ちゃんは触れた相手も自身も無重力に出来ます。

 今口に広がる血は誰の?…答えはわかってます。

「よっしゃ!捕まえたぜ渡我!」

 範太くんのテープが私の腕を巻き取り、縛り上げます。

「このまま場が………!?」

 どろり、と何かが私の腕を滑り、テープごとすっぽ抜けました。

 私の個性は『変身』血を摂取した人物に変身し、変身を解除すると泥っぽい何かが身体を落ちていく。そういう個性。

 

 誰も私が私に変身出来ないなんて、言ってない!

 

 私は私に変身し、変身した私の腕を巻き取ったテープは泥っぽい何かによって私の体を滑り離れていったのです。

「どうなってんだ!?」

 私は範太くんの左側に回り込むように距離を詰めます。範太くんは一度テープを切り離さないと次のテープが打てません。切り離しの判断が遅れた範太くんの懐に入り込み、薙ぎ払いのために体の前でクロスしている両腕を掴み、そのまま強く引きながら血を強く蹴った膝蹴りを顎に叩き込みます。

「ちょっ!?嘘だろ渡我ッ!」

 

 ゴスッと鈍い音がして、範太くんは気絶しました。

 




というわけで、トガちゃんが自分に変身するという展開がやりたかったので書いた回。
異論は認めます。


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第七話

 トガsポーチ 色んなものが入ってるぞ!

入ってるもの抜粋
・クラスメイトから提供してもらった血液が入った特製の瓶
・各種ナイフ
・採血用特製注射器 ※1
・応急処置道具


 どうもみなさん、トガです。範太くんとの試合では、範太くんの顎に膝蹴りを叩き込み勝ち上がることができました。

「範太くんごめんね」

「良いよ良いよ、真剣勝負だしさ。イテテ…」

 

 

第十一試合 芦戸vs常闇 常闇の勝ち(原作通りなのでカット)

第十二試合 爆豪vs塩崎

 

「おい蔦髪。ぶっ殺されたくなきゃ棄権しろ」

 バチバチと手を小さく爆破させる勝己くんは茨ちゃんを睨み付けてます。怖いねえ。

「おぉ、なんと穢らわしい言葉。私が救済せねば…」

 茨ちゃんは目を閉じて祈る様なポーズを取っています。

 

 そして試合開始と同時にツタ状の髪が地面に突き刺さり、勝己くんを拘束しようとします。

「雑魚が!そんな見え見えの作戦に誰が引っかかるかよ!」

 勝己くんは爆破で一気に中に浮き、ツタを回避します。それからも地面を貫いて襲い掛かる大量のツタを避け、爆破で捌いていきます。

「ようやく体があったまってきたぜ!俺に持久戦を挑んだ時点で負け確なんだよ!それじゃあ…死ねェ!!」

 空中で地面に両手を向けた勝己くんは轟音と大量の煙と共に、下方向への大爆破を仕掛けました。

 

 煙が晴れる前にもう一度だけ爆破と茨ちゃんのものであろう悲鳴が聞こえ、煙が晴れるとそこにはところどころで炎上するツタとそれに囲まれ佇む勝己くん、場外に吹き飛ばされ気絶している茨ちゃんが見てました。

「どひゃー…爆豪の奴容赦ねぇな…」

「勝己くんらしいのです。」

 

第十三試合 轟vs渡我

 

 試合開始と同時に顔以外を全部凍らされてしまいました。

「…さっきの瀬路みてぇに中途半端に拘束して抜けられると面倒だからな。悪いが全身凍らさせて貰った。この氷の量ならちょこまかと避けられねぇだろうしな。」

 そう言いながら焦凍くんが近づいて来ます。

「うぅ、焦凍くん酷いです…」

 右手をかざし、ひんやりとした空気が顔に当たります。寒いです…

「…降参です」

「悪いな」

 

(後の展開は原作通りなのでカット)

 

 表彰式になり、3位のところに踏陰くんと並びます。二人なのでちょっと狭いです。

「踏陰くん狭いです…」

「我慢しろ、俺とて狭い。」

 

「渡我少女!正直ステゴロタイマン戦闘が得意な個性じゃないだろうに3位とは素晴らしい!今後は個性でどんな闘い方をすれば相手と有利に戦えるか考えていこうな!」

「ありがとうございます。嬉しいです。」

 

 

 雄英体育祭が終わって次の登校日、職業体験について消太せんせえに説明を受けました。正直ヒーロー事務所についてはよくわかりません。こう言うことは詳しい人に訊くのが良いのです。

「ねえねえ出久くん!一緒の事務所に行こうよ!」

「えっ?トガさんそれはちょっと…」

 一緒の事務所に行けばボロボロになった出久くんが見れると思いましたが、出久くんは指名なし、対して私は数件ほど指名があったので一緒には行けないとのことでした。残念です。でも、出久くんは事務所を見てアドバイスをくれました。

「トガさんの個性でヒーロー活動をやっていくとなると、やっぱり一通りのことがやれるのがいいと思うんだ。ここなんてどうかな?」

「マニュアル…?」

 出久くんの説明では都会の方が経験は積めるだろうという事、マニュアルというヒーロー満遍なく一通りの活動ができるヒーローだと言うこと、私に来た指名だと一番条件に合うのはそこと言うことでした。

「ありがとう!出久くん!」

「う、うん!お役に立てて良かったよ」

 

 意外だったのは天哉くんと同じ職場体験先だったことです。行きの新幹線の中、退屈だったので話しかけます。

「ねえねえ天哉くん。」

「…なんだね渡我くん。」

「暇です。退屈です。」

「そう思うなら課題に目を落とし手を動かしたまえ」

 退屈だった理由は課題です。勉強は苦手なのです…

「…はぁ、仕方ない、良いかい?ここの計算は…」

 しばらく課題を進めた後、今度は天哉くんから話しかけて来ました。

「…渡我くんは何故マニュアルのところに?」

「出久くんにオススメされたのです」

「緑谷くんが…?………そうか。何か…頼まれていることでもあるのかい?」

「?何も頼まれてないのです。」

 天哉くんは目を閉じて少し考えた様な表情をしたのち、そうかと言ってまた課題に目を落としました。

「…天哉くん、この問題も分かりません」

「…きみ、授業を真面目に受けてるのか…?」

 私は視線を逸らします。授業は退屈で真面目に受けてないのです。

「…はぁ、俺はもう課題を終わらせたから協力はしよう。………答えは写させないからな」

 私の手からサッと課題を取り上げカバンの中に仕舞われてしまいました。盗み見ようと思ってたのに…

 

 そして事件が起きたのは職業体験の最中、天哉くんの姿は気が付いたら無く、マニュアルさんは消火活動をしながら天哉くんがいないか周りを見渡しています。

「渡我さんは危ないから下がって!くそ、天哉くんはどこ行っちゃったんだ!」

「私、天哉くんを探してきます」

「ちょっと!?渡我さん!?ダメだよ危ない!」

 

 私は事前に天哉くんから貰っていた血を摂取し、天哉くんの姿になりました。この方が足が速いのです。

「天哉くーん!どこですかー!」

 すると背後から声が掛けられます。

「うわぁ!?飯田くんがスカー…違う、もしかして渡我さん!?」

「出久くん!」

 何故かこんなところに出久くんがいます。天哉間のことはしばらく忘れて駆け寄ってしまうのです。

「出久くん!こんなところで出会えるなんて偶然だね!運命感じちゃうね!」

「うわあぁぁあ!飯くんの姿で近いと圧が!!」

「そうでした。天哉くんの姿のままなのでした」

 変身を解き、出久くんと話します。

 

「飯田くんがいない!?不味い…!」

 出久くんの話ではヒーロー殺しステインがこの街に居て、飯田くんはお兄さんの復讐のためにステインを探していると言う予想を話てくれます。それは大変なのです。

 出久くんの予想で路地を回っていると、倒れている天哉くんとボロボロの人が見えました。出久くんは狭い路地をピョンピョンと壁を蹴る様に素早く接近すると顔を殴った様です。

「ハァ…!またスーツを着た子供か!」

「飯田くん!助けに来たよ!」

 やっと天哉くん達のところにたどり着き、状況を把握します。天哉くんの他にも誰かいる様です。

「出久くん!そっちはお任せするのです!」

 私は事前に貰っていた目蔵くんの血液を摂取し、目蔵くんの姿になります。

 目蔵くんの体格と個性は血液提供に相性が良かった様で良く変身を練習させてくれました。そのおかげで六本腕の動かし方は分かっています。もちろん複製はできませんが、力は強いのです。私は天哉くんに近づきます。

「俺は良い!先に彼を…!」

 彼と言うのは天哉くんでは無い誰かのことの様です。出血が酷く意識が無いようでした。一先ず出久くんとステインから距離をとり、簡単な止血をします。そして…惜しいのですがクラスのみんなから貰った血液のうち、O型の血液をありったけ輸血します。この人の血液型はわから無いですがこれならなんとかなるでしょう。大通りまで出て近くの人に声を掛けて救急車を呼んでもらいます。次は天哉くんを助ける番です。

 

 再び駆け付けると出久くんがボロボロになっていました。格好いい!…ですが、張り上げられている刀を見れば殺そうとしているのが分かります。それはダメです。ポーチからナイフを抜き、六本の腕で同時にステイン目指して投げつけます。

 ガキン!と金属同士の音がしました。全部弾くか躱すかされた様です。

「珍妙な出立ち…セーラー服を着た六本腕の巨漢とは…」

 次の瞬間目の前に刀を構えたステインが迫っていました。

「渡我さん!血だ!そいつに血を見せちゃダメだ!!体が動かなくなる!僕もそれでやられた!」

「血!血は私も好きなのです!」

 私は目蔵くんの変身を解き、刀を躱します。次に別のクラスメイトの血液を摂取します。

「珍妙な出立ち、珍妙な個性だ!」

 刀の横振りを実くんに変身して躱し、再度目蔵くんに変身。六本腕による連続パンチをお見舞いするのです。

「オクトブロー!なのです!」

「上手い!体の小さい峰田くんの身体で被弾面積を減らして攻撃は体格と手数に恵まれた障子くんに変身!凄いよ渡我さん!」




※1…色々上手く使うと輸血にも使える。トガは他に興味があるので採血輸血の知識がある…という設定。

クラスメイトの血液は同意の元提供してもらっている。よって爆豪のものはない。

トガちゃんの個性についての解釈
→元の体格より小さい峰田にも変身可能なのか?可能!その際基の体がドロドロになって崩れ、小さくなり、別の姿に変身する様にドロドロが集まって基の体・別の姿に変身する。
…こう書くと気持ち悪いな。トガちゃんの体どうなってんだ…


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第八話

トガちゃんの変身の当創作物における設定です。
・外見及び筋肉などをコピー
・よって障子の六本腕(部位の複製は不可)や尾白の尻尾はアリの状態になるし、訓練すれば動かすことも可能(なので実質尾白の個性「尻尾」に関してはトガも個性を使えることになる※練度は当然異なる)解釈的にはギャングオルカやセルキーに変身すれば水中活動も可、魚になる個性の人に変身すれば鰓呼吸も理論上可能。そしてホークスになれば練習次第で空は飛べる(羽根を一本一本動かすのは個性の範囲なので不可。)塩崎になってもツタの髪は操れないし、峰田の場合髪の毛はもげない。ウワバミの場合髪の毛は蛇っぽい見た目だが生きていない。上鳴に変身すると多少の電気なら酷くても"アホになる程度"で済む。轟の場合左半身は耐火性を持つ。
・瀬路の特徴的な肘や麗日の肉球(?)もコピー出来るが膝からテープは出ないし肉球で触れても無重力には出来ない。相澤先生に変身するともれなくドライアイが付いてくる。爆豪に変身すると手汗が凄いだけの人になる。口田や心操になって声帯をコピーしても個性は使えない。

長々と書いたけど、原作のイレイザーが個性説明のイメージ図で尻尾が動かない様になってたんだよね。でも矛盾はしてないよ。してないったらしてない。


「オクトブロー!なのです!」

「刃物相手に素手とは…」

 ガキンガキンと金属同士のぶつかる音がします。

「素手かと思えばまたナイフか、チッ…一撃貰ったか」

 如何に相手が戦闘の達人であろうと、6本も腕があれば1本くらいは体を掠めさせるくらいのことは出来るものです。しかしながらなんだか力が入らなくなってきました。恐らく時間切れです。

 ベチャベチャと目蔵くんを模っていた部位が無くなり私自身の姿になります。先程輸血に血を使ったのでストックできている血の種類はあまりありません。体格の優れた目蔵くんと天哉くんにはもう変身できません。…ステインから投げられた三本のナイフ、内一本をキャッチしつつ残り2つを躱します。

「渡我さん!上だ!」

 チラリと上を見ると刀が落ちてきている様です。とは言え彼方に意識を取られるとステイン自体への注意が…………居ません。咄嗟に振り向きながらナイフを振るとガシリと掴まれてしまいます。

「子供にしてはなかなかの身のこなしと勘のの良さ…ハァ、悪くない」

「女の子の腕を乱暴に掴むなんて変態さんなのです。」

 ズルリ、と私の腕が崩れ拘束を抜け出します。私は私に変身したのです。

「コイツ…!」

 スパイクの付いたブーツでの蹴りをギリギリ躱し、先程キャッチしたナイフを投げつけつつ距離を取ります。

 

「渡我さん!血が…!」

 ステインはニヤリと笑い、ブーツのスパイクに付いた血を手で拭い取りました。

「俺の個性は凝血、舐めた血の持ち主の動きを止める。お前達はそこでメガネの小僧の粛清される様を見て真の英雄になる為の糧にするがいい」

 ステインは勝ち誇った様に血を舐めとりました。そして動きが止まったのです。

 

「が…!?こ、これは…!?」

 

 動きがだったのは私ではなく、ステインでした。

「そのブーツに付いた血は貴方の血なのです。」

「そうか!障子くんに変身して六本のナイフでステインを攻撃した時に手に入れた血をスパイクに塗り付けてあたかも渡我さんの血のようかに偽装したんだ!」

「そんなことが!?し、しかし渡我くんの顔には確かに傷が…まさか!」

「そのまさかだよ飯田くん!渡我さんは"顔に傷の付いた自分自身"に変身したんだよ!」

「そんな個性の使い方が!?」

 出久くんが興奮しています。

「…?あれ?出久くん、もう動けるんですか?」

「あれ?本当だ。動ける…なんで?」

 そのあと、自分の個性で動けないステインを拘束したのです。

「緑谷!」

「轟くん!?」

「無事だったか、それにそいつはステインか?お前達で捕まえたのか」

 出久くんの連絡を受けた焦凍くんが合流し、念のために頭以外を凍結して拘束してくれました。

 

 その後、ヒーローの人達と合流しました。中には私が輸血した人もいる様です。

「君が輸血してくれた子だね?君の処置のおかげで助かったよ」

「もう動いて平気なんですか?」

 ヒーローである彼は傷口を押さえ、少し痛みに顔を引き攣らせながらも笑って頷きました。

「街がこんな風なのにヒーローが寝てる訳には行かないさ」

 すると、ステインは彼を睨みつけ、怒りの形相を見せました。

「黙れ、ヒーローを騙る紛い物が!」

「うるさいのです」

 猿轡代わりに目当て(?)を噛ませ黙らせます。

「もがもが…」

 

 その時でした、空からヴィランがやってきて出久くんを攫ったのです。

「出久くん!」

 しかし出久くんは自ら掴まれている脚を逆に掴み、そのままヴィランを殴りつけます。そして空飛ぶヴィランの前に氷の壁が現れゆく手を阻みました。

「行かせねえ!」

 そして放たれる炎の槍にヴィランは貫かれたのです。落ちてくる出久くんを壁を登って空中で受け止め、炎の噴出で勢いを殺してから着地したのはナンバー2ヒーローのエンデヴァーさん。

「焦凍、良い判断だったぞ。ヴィランに逃走させない…見事な氷壁だった。更にステインまで拘束したとは流石は俺の息子だ。」

「倒したのは俺じゃねえ、渡我だ。」

「何?」

 エンデヴァーさんがこちらを見下ろします。威圧感が凄いです。

「………。あー、確か身体からドロドロの何かを分泌する個性だったか?」

「あれは個性の副産物というかなんと言いますか…」

 思えば範太くんとの勝負でしか個性を見せてない…しかも自分に変身しただけなので人からはそんな風に認識されているのだと知りました…

「副産物?」

「私の個性は変身です。見た目をその人に変身できます。」

「個性も使えるのか?」

「いえ、見た目だけです」

 エンデヴァーさんが眉間に皺を…正しくは更に皺を寄せました。

「そんな個性でどうやってヒーロー殺しを?」

「…そういやどうやったんだ?渡我。」

「それはですね…」

 私の拙い説明の途中で警察がやってきたので一度説明は中止になり、事情聴取が行われました。

「なので、ナイフで血を採って私の血だと思わせてステインに舐めさせたのです」

「なるほど。」

 

 数日後、私は目蔵くんとインタビューを受けていました。

「ヒーロー殺し確保に貢献されたんですよね!ご感想は?」

「怖かったのです」

「い、未だに実感が湧きません…」

 私はともかく、なぜ目蔵くんもインタビューを受けているかというと…

 

 この個性社会では「ヒーロー資格を持たない人間が監督者のいないところで個性を用いて人を傷つけることはヴィランと同じこと」なのです。…が、私の個性は変身であり、直接的な攻撃力は持ちません。そしてステインの怪我はナイフの様な刃物による浅い切り傷。そして私の証言から

・"プロヒーローネイティブ事務所に職業体験していた"渡我 被身子と障子 目蔵はネイティブの指示の下ステインと交戦。負傷したネイティブは障子 目蔵が連れて逃げ、その間に渡我 被身子の正当防衛によりナイフを奪い取られ負傷、その後誤って口にした自身の血液で身動きが取れなくなった。

・その後"エンデヴァーと共に現れた"職業体験生の轟 焦凍により氷結で更に拘束、お縄になった。

 ということになってしまいました。被害者はそう、目蔵くんです。そして他にも被害者は居ました。それはヒーロー殺しステインによって倒れた数々のヒーロー。ヒーロー見習いの女子高生に返り討ちにされたヴィラン、ではそんなヴィランに負けた今までのヒーロー達は?

 

「そんな弱いヴィランにヒーロー達は負けたのか」という空気が世間に漂ったのです。天哉くんは悔しそうでした。

 

「それにしてもお手柄でしたね!」

「自分は怪我をしたネイ…ネイティブさんを運んだくらいで大したことは…」

 目蔵くんは必死に嘘を吐いています…

「雄英高校での授業の成果が出たのです。普段の訓練のお陰なのです。」

「なるほどね!努力は裏切らないってことですね!」

 この後、消太せんせえに呼び出された私はゲンコツを貰いました。痛いです…。

 

 

 

--一方その頃。ヒーロー殺しステインの逮捕をテレビで見ている男がいた。そう、死柄木 弔だ。

「女子高生に返り討ちにされたヒーロー殺し、報道はヒーロー殺しを『大したことないヴィラン』にしたいみたいだな。ざまぁないぜ大先輩。」

死柄木は心底愉快そうにふんぞり返って椅子に座りテレビを見ていた。

「しかしメディアも馬鹿だよな。大したことないヴィランにヒーローが殺せるかよ。その女子高生が強過ぎるだけだろ。何もわかっちゃいねえな。まぁ、俺たちにとっては好都合…。ヒーローが頼り無いって思われる方がな。」

 死柄木はグラスを4本の指で持ち上げ、カラカラと中の氷を鳴らし、その直後5指で触れグラスを崩壊させた。氷を踏み潰した死柄木はドアを開け部屋を去って行く。--




轟くんがハンドクラッシャーにならずに済んだ世界線。そしてステインは女子高生に正当防衛される情けないヴィランになってしまいました。


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