強い方のオルガの逆行奮闘記 (トライデント)
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機体解説 アドバンテージ

アドバンテージの機体解説です。
武装など本編では出てきていない要素が載ってますが、ソイツを持たせるということです。


というか日間ランキング載ってたし、めちゃくちゃなスピードでお気に入りも増えたんですけど、夢ですかね。


GAT-00C ADVANTAGE

アドバンテージ(キャノンタイプ)

 

 ザフトのジンらMSに対抗すべく製造されたG兵器達だが、万が一半壊した時などのことを考慮すると、修理に時間がかかることは製造時に問題として上がっていた。

 それを想定し、その時の穴が一番大きくなると計算されたのは、唯一の支援機として製造されたバスターであった。

 ストライクがランチャーストライカーを装備すればいいのではないかとの声も挙がったが、アグニは支援よりも対艦攻撃の方を大きく想定していた為、バスターの穴を埋め切る事は難しかった。

 そこで挙がったのは、G兵器よりも低コストの支援機を製造する事だった。

 フェイズシストの使用は出来なかったが、主にバスターやストライクの余剰パーツを流用することにより、低コストながらも高性能な機体を実現することが出来た。

 装甲はジンのアサルトシュラウドから着想を得て、アーマーが各部に取り付けられ、フェイズシストを展開させたG兵器程ではなくとも、強固な装甲を実現させたが、アサルトシュラウドと違いパージは不可能な為、詰め寄られた時の自衛が問題視された。

 その穴埋めとして、本機にはビームサーベルが採用されている。

 これにより、支援機ながらも自衛も可能と、バスターとは違った強みを持つ機体となり、G兵器達の支援をこなして戦いを有利に進められるようにと、アドバンテージの名を付けられた。

 仮にバスターを使用せずとも、ストライクと2種類のタイプの異なる本機により、様々な作戦に対応できる事や、データが集まれば基地防衛部隊などに配備される事が期待されていている。

 

【追記】

 ヘリオポリスでタイプの異なる2機が製造されたが、1機はザフトの襲撃により破壊されてしまうも、残存した1機がオルガ・サブナックの手に渡った。

 

【さらに追記】

 オルガ・サブナックに渡ったアドバンテージはキャノンタイプで、破壊された方のアドバンテージはタンクタイプである。

 ザフトのザウートを参考に開発され、脚部がキャタピラ式であることと、肩に装備されたキャノンの砲身が長いこと以外はキャノンタイプと変わらなかった。

 地上はキャタピラによる機動性。宇宙空間でもキャタピラの底部に搭載された多数のバーニアにより、擬似的な移動砲台としての活躍を期待されたが、試験を行うこともなく破壊された、悲運の機体である。

 

 

【主兵装】

専用大型ビームマシンガン

 銃身が長めの専用大型マシンガンを主兵装としている。

 外付けのエネルギーパックを搭載している為、弾幕形成による支援や集中砲火が主な運用とされている。

 出力を変えることにより、高出力のビームライフルとしても使用可能。

 後述の精密射撃モードによる中距離〜遠距離の狙撃も可能だが、その分エネルギー消費も増えることになる。

 

 

【副兵装】

115mmレールガン

 肩部に搭載された二門のレールガン。

 連合軍の主力戦力であるメビウスに搭載されているリニアガンよりも弾体の加速を上回る、遠距離攻撃用の武装。

 二門から同時発射される高弾速の砲撃により、MSの撃墜はもちろん、戦艦への攻撃や、隊列を乱す為の牽制攻撃など、多彩な役回りを担う武装。

 何発も連射出来るような武装では無いことや、どのG兵器にも装備させてなかったことから、試験的な意味合いも兼ねている。

 開発が検討されているストライカーパックのIWSPの武装候補に採用されているものと同じものである。

 

75mm対空自動バルカン砲塔システム イーゲルシュテルン

 G兵器に搭載されているものと同型を採用。

 自動追尾の迎撃射撃での自衛や、専用大型ビームマシンガンとの同時発射による弾幕形成など、用途は豊富。

 

ビームサーベル

 エールストライカーやデュエルに搭載されてるものより、柄が短めの専用ビームサーベルとなっていて、左腕部装甲に装備されている。

 バスターはフェイズシスト装甲が採用されているが、本機には採用されていないため、それの穴埋めとして採用。

 これにより、状況によってはバスターを上回る自衛力を誇る。

 

専用シールド

 キャノンタイプは、専用のシールドも装備している。

 機能はストライクやデュエルのものと同様だが、外見は異なり、曲面型を採用されている。

 

 

【備考】

センサー

 G兵器のツインアイと異なり、本機はゴーグル型ツインアイ構造を採用している。

 当初はバスターと同型のセンサーの搭載を想定されていたが、コストの都合上見送られた。

 その代わり、外見はG兵器同様のツインアイの上に、ゴーグル型のセンサーアイを被せる形となった。

 これにより、通常射撃モードと精密射撃モードの使い分けを可能とした。

 ただし、精密射撃モードに移行すると、ゴーグル下のツインアイの光が増す為、敵機に警戒されやすいという欠点を抱えている。

 

ジェネレーター

 バスター程の数の搭載は出来なかったが、極力コストを抑えたものをいくつか搭載しているため、継戦能力は高め。

 しかし前述の通りバスター程の数と質ではない為、母艦や味方機との連携はバスター以上に重要である。

 

カラーリング

 頭部は白基調だが、メインカメラ上部の一部が赤くなっている。

 胴体はボディの上半分が赤ベースで、他がグレー基調である。




後書きなんでメタメタに言います。

ポジションがガンキャノン。性能がジムキャノンII。開発方法が陸戦型ガンダム。それがアドバンテージです。
見た目は頭がガンキャノンで、胴体は胸部分のカラーリング以外ジムキャノンIIです。陸戦型ガンダム要素はどっか行きました。その内生えるかも。
主兵装の専用大型ビームマシンガンもガンキャノンのビームライフルとジムキャノンIIのジム・ライフルを足して2で割ったような感じです。


これが生まれた経緯(第1話投稿前)
①順当に考えればバスターなんだけど、ディアッカ機とでバスターだけ都合良く2機作るか?作らねぇよ。
②じゃあ2機有ってもそんな違和感無いストライク用意してランチャーストライク?でもアグニとかバカMS以上にエネルギー切れるの早いわよ。
③じゃあアストレイ?別のフレームでも生やす?でもそうするとジャンク屋とも絡めなきゃいけないし、流石にそこまでは話を広げられないなぁ。
④じゃあオリジナル機体しか無いけど、オルガの立ち位置だと支援機だよなぁ…。そんな都合の良い位置のオリジナル機体なんて簡単に…。
⑤飾ってあったガンキャノンのガンプラ見つける。
⑥つい最近クロブで動かしたGP01を思い出す。
⑦脳裏に電流走る。
⑧ジムキャノンIIベースでガンキャノンポジションの機体だ。


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逆行のオルガ

コイツまた逆行もの書き始めたな。

サブナックの方のオルガが活躍する小説がないんで、書き始めました。


C.E.71

ヤキン・ドゥーエ宙域

 

 

「シャニ!?チィッ…!!」

 

 

目の前に広がる爆炎。

その正体は、お仲間であったシャニ・アンドラスの搭乗機であるフォビドゥンが撃墜されたものだった。

彼らの間に絆というものが存在したかと言われると、決してそんなことはなかったが、それでも目の前で命を散らすところを見るとなると、話は別なのだろう。

 

 

「ヤロウ…よくも……!」

 

 

シャニを堕とした、自身の搭乗するカラミティよりも旧式のはずのデュエルとバスター達に、仇打ちのために砲撃を行おうとするが…。

 

 

「何ッ!?クソッ…!よりによって、あのバカデカいので来やがった…!」

 

 

オーブ解放戦の時から、何度も戦い続けて来た相手。

その機体の名はフリーダム。しかも、母艦であるエターナルの主砲ユニットであるミーティアを接続し、向かってくる。

 

 

「だが、サーベルもそんなにバカデカけりゃ、避けるのも…!」

 

 

フリーダムがミーティアのビーム砲からサーベルを展開し、振り下ろしてくるのを、なんとか受け流して回避する。

 

 

「サーベルだけだったらこんな…何ッ!?」

 

 

突如鳴り響くアラート。センサーに目をやると、背後から高速で接近してくる熱源が。

その正体を確かめようとするも…。

 

 

「があああああああっ!!?」

 

 

自身の搭乗するカラミティの背部に、巨大なサーベルが叩き付けられる。

先程避けたはずのミーティアのサーベルが、自身を切り裂こうとしているのを感じる。

 

 

(クソッ…!あの赤いのもいたかよ……!)

 

 

胴体から腰部にかけて真っ二つにされ、あとは自分も、先程のシャニと同じような末路を辿るのみとなる。

 

 

「ヘッ……だが……これで、もう闘わないで…苦しまないで……」

 

 

済むと言い切る前に、オルガ・サブナックは爆炎に包まれ戦死した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぐっ…ううっ……ああ……?」

 

 

目を覚ますオルガ。

目を開けるとそこには、緑の地面が広がっていた。

 

 

「…………」

 

 

草原とは行かずとも、人工芝が広がっているエリアだということは分かった。

しかも、側には住宅地が広がっているようにも見える。

 

 

「……オレが天国になんて、いけるはずがねぇ。だったら地獄…にしては、普通すぎねぇか……?」

 

 

彼が普段読んでいたジュブナイル小説に、目が覚めると死後の世界にいたというような展開があったことを思い出す。

行ったことないということを抜きにしても、ここはあまりにも普通の場所…というより、ただの公園であると理解する。

 

 

「………っつーか、ここコロニーじゃねぇか」

 

 

頭上を見てみると、そこにも地面が広がっていて、人が生活しているような風景も見える。

その光景は、たしかに宇宙コロニーでしか見れないものであるが…。

 

 

「………プラントにしちゃあ、静かすぎる。それに、オレの格好も…」

 

 

ヤキン・ドゥーエ宙域でコロニーとなると、思い浮かべるのはプラントになる。

だが、プラントのすぐ近くで核なりあの大量破壊兵器を用いた戦闘が行われてるにしては、あまりにも長閑過ぎる。

"コーディネーターの感覚が自分達とはかけ離れてる"と無理矢理考えても、こんなどこも変わらない日常が送れるとは思えない。

さらに、自分の身体を見てみると、既に消えかかった記憶が浮かび上がってくる。

 

 

「………あんな目に遭う前、オレが気に入ってた格好じゃねぇか」

 

 

生体CPUとして軍のパーツにされる前、普通の生活を送っていた時、よく身につけていた服装だった。

 

 

「何が起こってんだ……?いや、待て…これって……」

 

 

ジュブナイル小説に、似たような現象があったことを思い出す。

現在の記憶を保持したまま、過去へと逆行すること。

仮にそうだとしたら、オルガにとってそれは、地獄以外の何物でもなかった。

 

 

「……………冗談じゃねぇ。ようやく解放されたと思ったのに、また苦しむ………ん?」

 

 

そこまで言って、ふと感じる。

生体CPUとなってからの自分って、こんなに独り言を言うようなやつだったか?

そして、生体CPUとなった自分の身体って、こんなにも軽かったか?

 

 

「………まさか、オレって、戻れたのか…?」

 

 

時間が、ではない。

あの戦うためだけに、苦しみしか待っていないような生体CPUとしての身体ではなく、元の身体に、戻った。

 

 

「………とりあえず、辺りを見てみねぇとな」

 

 

こうして、オルガ・サブナックは自分のいる宇宙コロニー…。

ヘリオポリスの探索を始めるのだった。




実際どうなのか知りませんけど、あんな薬漬けとかの身体から普通の身体に戻れたのなら、すぐに気付くと思うんですよね。


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ヘリオポリスのオルガ

今のところタイトルが◯◯のオルガで続いてますけど、別にそういう縛りとかは無いですね。


感想欄で言われてたオルガの服装のアイデア頂きました。
袖破れてるし下に長袖のシャツ着てます。
要するに軍服の部分が普通のお洒落なYシャツとズボンになっただけですね。


オルガがこのコロニー、ヘリオポリスにやってきてからしばらくが経った。

その間で何があったかというと…。

 

 

「オルガさん!今日もありがとうございます!」

 

「別に。わざわざオレが来なくても自動操縦のがあるんだし、礼を言われることはないだろ」

 

「ですけど、こういうのって口に出さないと伝わらないですから。当たり前にするのも、ちょっと」

 

「……あっそ。ていうか、その敬語もやめてくれねえ?慣れねえんだけど」

 

「えっ、でもオルガさん。19歳って言ってましたよね?」

 

「言ったろ。大体って」

 

「前も言いましたけど、大体ってなんですか…。それが通るにしても、私達16ですよ?前後したとしても、最低2つは差がありますし…」

 

「そうそう。サイは1つ上だからまだしも、オルガさんにタメ口は利けませんって」

 

「…………どういう経緯でそうなったかは、聞かないでおいてやるよ。トール」

 

 

オルガが運転する車に同乗してるのは、トール・ケーニヒ。ミリアリア・ハウ。そして、キラ・ヤマトの3人である。

ヘリオポリスを探索していたオルガは、周りを走っている自動操縦の車の順番を待っていた3人を目撃。

「このままだと遅刻しちゃう」だの「そもそもトールが寝坊しなきゃ」だのと聞こえて来たので、切羽詰まった状況だというのは、オルガも感じていた。

見なかったことにしてもよかったのだが、その内の1人の声が、どこかで聞いたことがあるような声だったことと、自分よりも年下の子供とはいえ、右も左も分からないオルガからすれば、誰かとコンタクトを取るのは必要なことだったので、首を突っ込んだ。

 

 

『………遅刻しそうなのか?』

 

『えっ?あっ、はい…そ、そうなんです……』

 

『じゃあ、オレが送ってやる。その代わり、ちょっと手伝って欲しいことがあってな』

 

『えっ』

 

「………なんて言うもんですから、オレはてっきり面倒ごととか、なんか悪役映画みたいなことを言われるもんだと思いましたからねー」

 

「だから、悪かったって言ってんだろ。混ぜっ返すな」

 

「たしかに第一印象は怖そうな人って思ってましたけど、オルガさんは良い人でしたからね。格好もオシャレだし。なんだか、橋の下の段ボールに入ってる猫に傘差してそうな」

 

「……ミリアリアも、聞かないでおいてやるよ」

 

「あ、あはは…」

 

 

隣で苦笑いするキラを横目に、これまでのことを思い出す。

この3人と関わったことで、この場所と時期など、色々なことを知ることが出来た。

だがそれでも、まだ不可解なことがあった。

 

 

(………なんでオレ、オーブの住民カードとか免許証なんて持ってんだろうな)

 

 

車を運転するのに必要な免許証や、ヘリオポリスの各所にあるゲートを開けるのに必要なIC付きの住民カード。

もちろん。これらは本来オルガは持ち得ないものであるはずなのだが、ズボンのポケットに入っていた財布の中に、何故か入っていたのだ。

しかもそれを見ると、自分はヘリオポリス在住のナチュラルということになっていた。

 

 

(まあ、死んだはずのオレが戻って来たことに比べたら些細なことか)

 

 

実際、オルガ自身はコーディネーターではなく、ナチュラルなため、全てが偽造というワケではない。

今も自分のICカードでゲートを解放できたため、ヘリオポリスにオルガがいることに、違和感を抱く人間は誰もいない。

 

 

「でも、大変ですね。頭を打って、自分の事のほとんどを忘れちゃってるなんて」

 

「……まぁ、オーブの住民ってことはこれで証明されてるんだから、ごくフツーの男だったんじゃねぇかな。生年月日のとこにキズがついてて、見えねえけどよ」

 

「にしては、うちのゼミの色んなこと手伝ってますよね。何か関係してたりするんですかね?」

 

「オレに聞かれてもな。身体が覚えてるってことはありそうだがな。ほら、なんだっけか。あんな理工学系なのに、何故か心理学の本があって、それに載ってた……。ああ、手続き記憶か。自分のことを忘れても、道具の使い方まで忘れてるってことは、まず無いって書いてあった気がするぜ」

 

「………オルガさん。見た目に反して、頭良いですよね」

 

「キラは聞かなかったことにしてやらねえ」

 

「ええ!?」

 

 

まさか自分が元地球連合軍の生体CPUだったとは言えるはずもなく、そうやって誤魔化す。

オルガ自身も操縦はともかく、工学系のことも出来ることに、驚いていた。

 

 

(まあ、そのおかげで屋根のあるとこで暮らせてるんだから、文句は言えねえが)

 

 

今のオルガは、キラ達の通うカトーゼミのある建物の一部屋で生活している。

キラ達の送り迎えや、ゼミの手伝い。そうでない時は、趣味の読書をしていたりと、普通の生活を送っている。

 

 

(…………これが続けばいいんだが)

 

 

そのオルガの気持ちとは裏腹に、時代は刻一刻と進んでいった。

ヘリオポリスの崩壊まで、ちょうど1週間を回ったところだった。




初めて来た時から3週間ぐらいが経過してますね。
つまりオルガはおよそ1ヶ月、ヘリオポリスにいることになります。

自分が死んだと思ったら、生きてて過去に戻ったことと、全く身に覚えのないものを持ってることに比べたら、前者のが100不可解ですよね。
なのでオルガは誰にも怪しまれることなく、ヘリオポリスに滞在できています。
まあそのせいで、これからのことに巻き込まれるんですが。


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オルガ、再び

再びのオルガです。
アムロ再びみたいになってますけど、ほんのちょっとだけ由来あります。


オルガは、妙な日だとは感じていた。

そこそこ気に入っていたコップは割ってしまうし、靴紐は切れるし、毎日オルガが迎えに行ってたカズイが自分でゼミに来るし、見覚えがあるようで無いような男…?が教授の客として来るなど、いつもとは違うことが連続で起こる日だった。

 

 

「……カズイと来客はともかくとして、コップと靴紐は不穏だな」

 

「えっ、どうしたんですか。何かありました?」

 

「やけに縁起が悪いことが続いたもんでな。あんま気にしねえタイプだったんだが、ここまで続くとな」

 

 

今日もいつものキラ達3人を迎えに行ったオルガは、話しかけて来たトールにそう答える。

ただ、不吉なことが起こる前から、オルガは嫌な予感を抱いていた。

 

 

(…………今更だけどヘリオポリスって、前回のどこかで聞いた覚えがあるんだよな。オーブの中立コロニーってのは知ってたが、何かのタイミングで名前自体を聞かなくなったというか、むしろそれ以来名前を聞かなくなったっつーか……)

 

 

逆行前、ヘリオポリスが崩壊した時のことを、オルガは知らない。

その当時、オルガは生体CPUとして調整をうけていた為、外部からの情報のほとんどをシャットアウトされていた。

研究員の誰かが報告としてヘリオポリスの名を出したが、それ以来オルガは、その名を耳にすることはなかったのだ。

 

 

(………この世界で嫌な予感となると、キナ臭いことしか浮かばねえんだがな)

 

 

この嫌な予感は、オルガはつい先程のある出来事により、大きくなっている。

オルガがキラ達を迎えに行くのは、自動操縦の自動車の乗り場の近くであるため、そこに並んでいる人たちの顔が、ある程度見える。

その中の1人に、見覚えがある顔があったのだ。

 

 

(……見間違えじゃなきゃ、やたらあの艦長に似てたんだが。なんで中立国に、連合の士官がいるんだ?)

 

 

 

 

 

 

 

 

同時刻。ヘリオポリス港内。

 

 

「これで護衛任務は終了だ。ご苦労だったな、フラガ大尉」

 

「周辺にザフト艦が2隻いたようですが、よろしいので?」

 

「ザフトも、港に入ってしまえば手出しは出来んよ」

 

「中立国…でありますか。聞いて呆れますな」

 

「オーブとて、地球の一国ということだよ」

 

 

地球連合軍輸送艦内に、男達の姿はあった。

1人はムウ・ラ・フラガ。この輸送艦の護衛の任務を与えられた地球軍のエースパイロットである。

 

 

(地球の一国…の割には、コーディネーターの受け入れを積極的にしてるようにも思えるんだがね。表向きは、かなり中立寄りなんだろうが……)

 

「では、艦長」

 

「うむ」

 

「………上陸は本当に、彼等だけでよろしいので?」

 

「ヒヨッコでも、Gたちのパイロットに選ばれたトップガンたちだ。問題無い」

 

 

ムウは、"7人"の一般兵を見送った後、艦長に心配の声を挙げた。

自分の顔はある程度割れている為、中立国とてなかなか歩き回れる立場でないと承知してはいるが、さっきから感じる不吉な気配に、警戒を止めることは出来なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

それからしばらくして、オルガ達はカトーゼミ内で轟音と揺れを感知。

その後警報が鳴り響き、揺れが続く中、避難シェルターへと向かう。

 

 

「きゃあっ!?」

 

「停電…!?何が起こってるんだ…」

 

「そこに非常階段があるはずだ。そこから行くぞ」

 

「はい!」

 

 

遂には停電まで起こり、パニックになりかけるゼミメンバーを落ち着かせ、サイに指示をするオルガ。

非常階段の扉を開けると、他の避難者がいた。

 

 

「おい!何が起こってんだ?」

 

「ザフトのMSが、ヘリオポリスに入って来たんだ!」

 

「はあ?ザフトが?」

 

「君たちも早く避難しろ!」

 

「チッ…早く行くぞお前ら!!」

 

 

ザフトのMSが攻め込んで来たと聞き、困惑するゼミメンバー。

とにかく、早くシェルターへ向かうため、オルガはサイ達を先に向かわせ…。

 

 

「キミ!」

 

「キラ!?」

 

「すぐに戻る!」

 

 

その声に振り返ると、1人で別方向へと向かった客人を、キラが追いかけていた。

 

 

「ったく…!トール達は先に行ってろ!遅くなっても、引き返したりするんじゃねえぞ!!」

 

「オルガさん!?」

 

 

キラの後を追い、オルガも走る。

また誰かが追ってこないように釘を刺すことも忘れない。

 

 

(ザフトが攻め込んで…ヘリオポリスの名前を聞かなくなった…となると…!)

 

 

オルガの中で、最悪の計算式が出来つつあったが、今はキラ達を追い掛けるのが先だった。

 

 

「何してるんだよ!そっち行ったって…」

 

「お前こそ何してる!早く逃げろ!」

 

「2人とも何してやがる!こんなとこで足止めるな!」

 

「オルガさん!?」

 

「お前も…!」

 

 

オルガがキラ達に追いついた直後、走って来た方から爆発音が聞こえる。

オルガは後ろを見るが、今の爆発で、来た道は埋もれてしまっただろう。

 

 

「クソっ…トール達と合流できるか…?」

 

「女…の子……?」

 

「なんだと思ってたんだ。今まで!」

 

「あっ、えっと…!」

 

 

それに振り返ると、今の爆風でさっきまで被っていた帽子が飛び、客人の顔がはっきりと見えるようになった。

キラが目の前の子の正体が女の子だったことに驚くが、今はそんな場合では無い。

 

 

「何してやがる!とっとと行くぞ!」

 

「は、はい!ほら早く!」

 

「離せこのバカ!」

 

「バ…!?」

 

 

オルガが先導し、キラが女の子の手を引っ張り、走り出す。

キラが自分をバカと言われたことに驚くが、泣き出しそうになってる顔を見て、鼓舞する。

 

 

(工場区に行けばシェルターはあるだろうが、3人入り切るか…?ともかく、行くしかねえけどよ……!)

 

 

しばらく走り続けると、目の前に光が見える。

その光に向かって走ると、そこは工場区に間違い無く、銃撃の音も聞こえる。

柵の方へと近付き、下を見ると…。

 

 

(何っ…!?コイツは……!)

 

 

オルガが驚くのも、無理は無い。

銃撃戦が繰り広げられている周りには、稼働前のMSが2機横たわっていた。

1つはイージス。

オルガは話でしか聞いたことが無いが、お仲間のクロトの搭乗機であるレイダーの前身機である。

そして、もう1つはストライク。

オーブ解放戦の頃から、フリーダムやジャスティスと続き、何度も闘いを繰り広げたMSだった。

その付近にも2つ、MSコンテナが見えるが、1つは炎に包まれ、壊されていることは目に見えている。

 

 

「やっぱり…地球軍の新型機動兵器……!お父様の裏切り者おお!!」

 

「お、おいバカ!こんなとこで大声上げるな!!」

 

 

今の叫びで、オルガは冷静さを取り戻す。

キラも今の状況を理解し、女の子の手を取り走り出す。オルガもそれに続く。

さっきまでいた場所に弾丸が飛んでくるが、追撃が飛んでくることはなかった。

 

 

「すぐそこで戦闘になってるとこで大声上げりゃこうなる!何考えてんだ!!」

 

「うっ…うううっ……!」

 

「………泣いてんのかよ」

 

「泣いてちゃダメだよ!ほら!そこにシェルターが!」

 

 

走り続けるオルガ達は、ようやくシェルターのある場所にたどり着く。

満員でないことを示す緑色のライトが見え、安堵するキラ。

 

 

「ほら、ここに避難してる人達がいる…!」

 

『まだ避難してない人がいるのか!?』

 

「ああ!連れの2人も一緒だ!開けてくれ!!」

 

『3人…!?』

 

「ああ!」

 

『……もう、ここはいっぱいなんだ!左ブロックに37シェルターがあるが、そこまでは行けるか!?』

 

「なっ……」

 

 

その声を聞き、左を見るオルガとキラ。

同じく、シェルターの扉が見えるが、距離が遠い。

オルガとキラは、互いに見合わせ、頷く。

 

 

「だったら、1人だけでも頼む!女の子なんだよ!!」

 

『分かった!スマン…!』

 

 

その声と同時に、エレベーターの扉が開く。

 

 

「おら!さっさと入れ!!」

 

「えっ…?な、何をする!私は…!」

 

「僕たちは大丈夫だから!早く入って!!」

 

「ま、待て!お前達は」

 

 

女の子が入ったことで、満員の赤色に変わるライトを見届ける2人。

 

 

「………行くぞ、キラ。諦めんなよ」

 

「はい…!」

 

 

今まで走って来た道を戻る2人。銃声が鳴り響く中、走り出す。

 

 

「ラミアス大尉…!」

 

「ハマナ!ブライアン!早く起動させるんだ!」

 

(………ラミアス大尉…?)

 

 

戦闘が行われてる中、聞こえて来た名前に違和感を覚え、足を止めるオルガ。

その名前は、前回に自分の母艦だったドミニオンの艦長が、口にした名前だったはずだと、薄らと思い浮かべる。

 

 

「はっ…!?危ない!後ろ!!」

 

 

一緒に足を止めていたキラが、ラミアスという名の女性…マリューの背後から銃を向けるザフト兵を見つけ、声をかける。

その声のおかげで、命を落とさずに済んだマリュー。

 

 

「来い!2人ともだ!」

 

「左ブロックのシェルターに行きます!お構いなく!」

 

「あそこはもうドアしかない!」

 

「えっ…!?」

 

 

その声と同時に、左ブロックから爆発が起こる。

もう、左ブロックには行けない。

顔を見合わせたオルガとキラは、走り出す。

 

 

「こっちへ!」

 

「……行けるか?キラ」

 

「は、はい…!」

 

 

今2人がいる場所からマリューのいる場所へ正規ルートを辿るとなると、かなりの時間を必要としてしまう。

オルガはキラに確認を取り、2人は覚悟を決めて、そこから飛び降りる。

 

 

「なっ…!?」

 

「チッ…!大丈夫か!キラ!」

 

「え、ええ…!なんとか…!!」

 

 

その間にも、残っていた作業員が赤いスーツを着たザフト兵を撃ち抜き、残るザフト兵は1人だけとなる。

 

 

「ラスティ!?くっ…!うおおおおおお!!!」

 

「ぐわあっ!?」

 

「ハマナ!?」

 

 

最後の作業員も撃ち抜かれ、それに気を取られたマリューも撃たれるが、致命傷は負っていない。

 

 

「ああ!?」

 

「お、おい!キラ!!」

 

 

それを見て、マリューに駆け寄るキラ。

そこに最後のザフト兵が接近。弾が無くなった銃からナイフに持ち替え、トドメを刺そうとする。

そして、その2人の顔を、互いに認識する。

 

 

「アス…ラン……?」

 

「なっ…キラ……!?」

 

 

互いに、それまでの動きを止める2人。

降りかかったナイフを下ろすザフト兵を見て、困惑するオルガ。

 

 

(アスランってのも、聞き覚えのある名前だが……今はそれどころじゃねえ!!)

 

 

唯一の襲撃者が動きを止め、キラに危害を加える心配もない。

となれば、今は自分の身を第一にする時間だ。

 

 

「キラ!!早くそれに入れ!!」

 

「えっ…?」

 

 

オルガはその場を離れながらも、キラに指示を飛ばす。

その声を聞いたマリューは、アスランに銃を向け、撤退させる。

それを見たマリューは、キラを空いているコクピットに突き飛ばし、自分もそれに続く。

 

 

「となると……オレはコイツしかねえ……!」

 

 

周囲に爆炎が起こりながらも、隣のMSに飛んでいったアスランを確認し、オルガは最後に残ったMSへと走る。

その一瞬だけ、肩にカラミティと同じぐらいの砲台が2つ載っているのが見えたが、これがカラミティではない事は、オルガにはすぐ分かった。

開いていたコクピットになんとか飛び込み、爆炎から身を守り切った。

 

 

「クソっ…!またここに入ることになるとはな……!」

 

 

また、コクピットに入る。MSに搭乗することになることに悪態を吐くも、現状一番安全な場所であるため、そうは言ってられない。

 

 

「………そこのイージスにザフト兵がいるとなると、とっとと離れねえとな…!」

 

 

稼働スイッチを押し、OSを起動させる。

何度も見てきたカラミティのG.U.N.D.A.MのOSとは違い、普通のナチュラル性のOSだということは、オルガは理解してしまった。

 

 

「これ、やたら動かしづらいんじゃなかったかよ…!まあ、文句言っても仕方ねぇけどよ…!」

 

 

OSを起動して少しすると、このMSの名前なんだろう。英文字が並んでいることが分かった。

 

 

「ADVANTAGE……アドバンテージ…?センス無え名前してやがるな…!!」

 

 

悪態を吐きながらも、なんとかMSを動かし、起き上がらせる。

こうして、オルガは再び、MSに載ることとなった。




カラミティのOSの描写ないんでG.U.N.D.A.MのOSかどうかは怪しいですけど、カラミティ達もG兵器なんで、多分使ってるとは思います。一応オリジナル設定とさせてもらいますがね。



詳しい設定は次話にして、先に名前の由来だけ置いときますね。

ストライク
→常勝
→常勝のためには有利な状況が必要
→有利
→アドバンテージ

あとこれも先駆けて。
OSの描写で分かると思いますけどコイツ、G兵器じゃないです。
アムロ再びみたいなタイトルにしたのもそのせいです。アムロ乗ったのディジェだし。一応改造元リック・ディアス(γガンダム)だけど。
そんで、もう1つあったけど破壊されてたMSも同じ名前ですけど、なんか足の形状が他のMSと違うとだけ。


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初戦

オルガ機のスペックをまとめたものを後書きと別話で投稿しときます。
タイトルがど真ん中ストレートですけど、気にしないでください。


アドバンテージを起動させたオルガは、そのままその場から飛び去る。

近くのイージスがこちらをロックオンすることもなく、爆発する工場区から離れることに成功する。

今乗ったばかりのMSの武装を確認して、燃え盛るこの場で攻撃するという選択を選ぶことは、互いに無かった。

 

 

「クソっ、分かっちゃいたが動きが鈍いな…!他の2機は…?」

 

 

センサーを見ると、ストライクとイージスはアドバンテージと同じ方向へと飛んでいることを確認できた。

この方向は、トール達を置いて行った方だと、オルガは思い出す。

 

 

「チッ…アイツら、せめて避難出来てりゃいいんだが…」

 

 

爆炎の中から飛び出し、着地するアドバンテージ。

イージスの方を見ると、ジンのそばへ着いていた。

その他に、もう1機ジンが確認できた。

 

 

「こんなとこに大所帯で来やがって…!いや、それよりキラのいるストライクは…お、おい!?」

 

 

あの状況から、ストライクを操縦してるのはマリューの方だというのは、オルガも想像できていた。

そうなると、パイロットでもないマリューが、満足に操縦出来るはずもなく、着地したものの、フラフラと足元が覚束ない。

イージスが普通に着地してたのに対し、今のストライクを見ると、ナチュラルとコーディネーター以前に、MSの操縦を知っているパイロットとそれ以外の差が明らかだが、オルガにとって今はそれどころじゃない。

 

 

「トール!?サイ!カズイ!ミリアリア!?避難出来てなかったのかよ……!!」

 

 

フラフラ動くストライクの足元から、誰かが出て来たのでモニターに表示させると、それは逃げ遅れたトール達だった。

 

 

「どうにかアイツらを…!なっ…!?」

 

 

トール達をどうにかその場から遠ざけられないかと考えるも束の間。コクピットにアラートが響き渡る。

前を見ると、ジンがこちらに向けて主兵装であるアサルトライフル"76mm重突撃機銃"を構え、今にも発砲しそうな光景があった。

 

 

「冗談じゃねえ…!近くに民間人がいるってのに、戦闘なんかしやがって…!!」

 

 

このMSの性能を把握し切れてない状況で、敵の攻撃を喰らい続ける選択を取れるはずもなく、その場から離れるオルガ操るアドバンテージ。

せめてトール達の走った方へと行かないよう、真逆の方へジンを誘い出すように動く。

 

 

「この内に、コイツの武装を…!クソっ!フェイズシストですらねえのかよ!コイツ!」

 

 

かつての乗機であったカラミティは、トランスフェイズ装甲を採用していた。

これにより、ジンの重突撃機銃ぐらいならダメージを負うことはなく、容易に耐えることが出来た。

しかしトランスフェイズ装甲は、ストライクらに採用されていたフェイズシスト装甲の改良型であるため、この時期ではまだ存在していない。

ならばフェイズシストの起動ボタンは無いかと探したがそれもない。

最悪、後に量産されるストライクダガー並みの装甲ではないかと、オルガの脳裏に浮かぶ。

試験を行える状況でもなければ、手元にカタログがあるワケでもないこの状況。

この機体の装甲がどれほどのものか把握する術は、オルガには無かった。

ならばせめて、どんな武装を積んでるかは把握しなくてはと、オルガはモニターに武装一覧を表示させた。

 

 

「イーゲルシュテルン…レールガン………?コイツ、そんなのも積んでるのかよ…エネルギー持つか…?」

 

 

武装欄の中に、1つ気になるものを見つけたオルガだが…。

 

 

「チッ…!追い付いて来やがったか…!」

 

 

それについて、深く考える時間は無かった。

再びアラートが鳴り、こちらに撃たれた弾を再び避ける。

 

 

「レールガン…なんて、狙ってるヒマあるかよ!!」

 

 

あちらから撃たれているだけじゃ埒があかないと、こちらも何かを撃とうとしたオルガだが、肩に搭載された2門のレールガンはイタズラに撃つ武装ではなかった。

 

 

「なら、これしかねえじゃねえかよ!!」

 

 

頭部に搭載されたバルカン砲"イーゲルシュテルン"。

これを牽制として撃つ以外、現状のアドバンテージで射撃戦は出来なかった。

 

 

「何がアドバンテージだ!有利なもんでも……って、そもそもここコロニーじゃねえか……!!これ以上こんなことしてたら、ヘリオポリスが…!!」

 

 

少しの間、アドバンテージのイーゲルシュテルンと、ジンの重突撃機銃で射撃戦が行われていたが、その間にもヘリオポリスに弾が飛び交っている。

ザフトに襲撃され、各地で炎があがるヘリオポリスだが、これ以上被害が広がるのは避けたかった。

 

 

「だったら……!これしかねえな…!!」

 

 

ある程度の被弾もやむなしと、オルガはスラスターを吹かせる。

その間にもジンの射撃がアドバンテージを襲うが、アドバンテージの装甲は大したダメージを負うことは無かった。

ジンの射撃を受けながらも急加速したアドバンテージは、目の前のジンに向けてタックルをしかけ、その手に持つ重突撃機銃を吹っ飛ばすことに成功する。

 

 

「ジン1機の射撃なら、大きなダメージは負わないみてえだな……って、マジかよ……!!」

 

 

アドバンテージの装甲の硬さを確認出来たオルガだが、目の前のモニターから警告が表示された。

今の無理なタックルで、推進剤の殆どを消費してしまったようだ。

 

 

「推進剤ぐらいちゃんと積んどけよ!バカ整備班……!!」

 

 

推進剤が足りなくなった現状に、ここにいない整備班に八つ当たりするオルガだが、元々これは製造されてすぐのモビルスーツであり、最終テストを控えた状態であった。

その為、主兵装も揃えてなければ、推進剤やエネルギーの補充も万全とはいかなかったのだ。

バーニアの不調を確認した目の前のジンは起き上がり、空いた利き腕に格闘武装である重斬刀を装備し、切り掛かってくる。

 

 

「…………なんだよ。使えるじゃねえか」

 

 

今の状況のアドバンテージは、ジンの重斬刀を避けることも出来ず、斬り裂かれるだけなはずだった。

だが現実はそうはならず、斬られたのはジンの腕の方だった。

アドバンテージの左手には、左腕部の装甲に格納されたビームサーベルが握られていた。

それはオルガがアドバンテージの武装欄で見つけた最後の武装だった。

どこから取り出されたか把握出来ないビームサーベルに武装ごと腕を斬られたジンは、撤退を選択し、その場から飛び去った。

 

 

「………コイツが無きゃ、死んでたかもな。……って、キラは!?」

 

 

本来なら追撃する状況なのだろうが、此方も余裕の無い状況なため、逃げ去るジンを見逃したオルガ。

安心したのも束の間、同じく当然モビルスーツに乗ることになってしまったキラを心配し、センサーとモニターを頼りにストライクの方へと向かうアドバンテージ。

 

 

「うおっ!?な、なにが…!?」

 

 

その方角から爆発が起こり、最悪の事態を想定するオルガだったが、それは杞憂に終わった。

目の前には健在のストライクを確認し、その近くに建物の影で爆風から身を守れたトール達も確認出来た。

ひとまずのザフトの襲撃を、やり過ごすことが出来た。

 

 

「………しかし、またこんなことになるとはな…」

 

 

ここ数週間の付き合いとは言え、知り合いの無事を確認し安心したオルガ。

その安心よりも、今の状況をどう彼らに説明したものかと悩むオルガだったが、それよりも大きな問題があった。

 

 

「……………結局、俺はモビルスーツに乗る運命なんだろうな」

 

 

これから起こることを考え、諦めに似た感情をオルガは抱いていた。




かるーくアドバンテージの説明載せときます。
武装など詳しくは後日専用ページを投稿しますので、その時に。



GAT-00C ADVANTAGE
アドバンテージ(キャノンタイプ)

ザフトのジンらMSに対抗すべく製造されたG兵器達だが、万が一半壊した時などのことを考慮すると、修理に時間がかかることは製造時に問題として上がっていた。
それを想定し、その時の穴が一番大きくなると計算されたのは、唯一の支援機として製造されたバスターであった。
ストライクがランチャーストライカーを装備すればいいのではないかとの声も挙がったが、アグニは支援よりも対艦攻撃の方を大きく想定していた為、バスターの穴を埋め切る事は難しかった。
そこで挙がったのは、G兵器よりも低コストの支援機を製造する事だった。
フェイズシストの使用は出来なかったが、主にバスターやストライクの余剰パーツを流用することにより、低コストながらも高性能な機体を実現することが出来た。
バスターを使用せずとも、ストライクと2種類のタイプの異なる本機により、様々な作戦に対応できる事や、データが集まれば基地防衛部隊などに配備される事が期待されていた。
ヘリオポリスでタイプの異なる2機が製造されたが、1機はザフトの襲撃により破壊されてしまうも、残存した1機がオルガの手に渡った。


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巻き込まれるオルガ

結局タイトルにオルガ入ってるじゃねえか。


ザフトの襲撃を退け、ひとまずの危機を乗り越えたヘリオポリス。

 

 

「………見慣れたモンが、周りボロッボロで、各地で火災発生…か。なんてこったよ」

 

 

数十分前の事を思い出すも、それとは比べ物にならない光景が広がっていた。

地球連合軍の新型MS奪取の為、襲撃して来たザフトにより、建物は崩壊、火災は治まったものの、被害は残ったまま。

 

 

「………中立コロニーでMS作ってるってことを抜きにしても、襲撃は流石にマズいんじゃねえかよ……いや、人のことは言えねえか…」

 

 

ザフトに悪態を吐くも、逆行前の自分も似たような事をしたのを思い出し、それ以上の言葉を抑えるオルガ。

 

 

「………まあ、いい。流石にそろそろ降りるか」

 

 

戦闘が終わったストライクからキラとマリューが降りてから少し経っている為、アドバンテージに乗っているのがオルガだというのは、マリューの治療をしているトール達にも伝わっている。

なので、トール達がチラチラとこちらの方を見ていることに、オルガは気付いている。

コクピットハッチを開き、上部からロープリフトを下ろし、それを使いオルガは地上へ降りる。

 

 

「っと…なんとか降りれたか」

 

「オルガさん!心配しましたよ!!」

 

「あの機体、オルガさんが乗ってたんですね!わざわざザフトのMSをこっちから離してくれて、ありがとうございます!」

 

「いや、一番ヤバかったの対処したキラに礼言えよ。言った?ならいい」

 

 

地上へ降りたオルガに駆け寄ってくるトール達。

オルガは奥の方へと目をやると、ベンチに横たわるマリューと、そのそばにキラとミリアリアもいるのを確認する。

ひとまずの安全を確認し、安堵するオルガ。

 

 

「………で、でもオルガさん…すごいですね。こんなの動かせるなんて……」

 

「あー…火事場の馬鹿力だか知らねえが、身体が覚えてるんだか知らねえが、動かせてな。自分でもビックリだ」

 

「ま、まあ…オルガさんならそんな驚きませんし……それに、キラも動かせても、そこまで……」

 

「…………そうかい」

 

 

カズイにそう言われ、誤魔化すオルガ。

カトウゼミ内でも、色々と出来るお兄さんとして通って来た為、MSを動かせたとしてもそこまで驚かなかったのは、カズイだけでなくトール達も同じ気持ちだった。

キラも教授からOS関係で色々と無理難題を押し付けられてるのを全員把握してた為、トール達はもちろん、オルガも驚くことはなかった。

カズイに誤魔化し、キラに目線をやるオルガ。MSを動かし、ジンを撃破したことを、上手く飲み込むことが出来ていないようだった。

 

 

「そっちも無事だったか、キラ」

 

「オ、オルガさん……。オルガさんも無事で、良かったです」

 

「OSが動かしづらいやつだったが、何とかな。サーベルが装備されてなきゃ、多分死んでたぜ」

 

「貴方も…よくMSを動かせたわね」

 

「アンタがどういう役職かは知らねえが、推進剤ぐらいしっかり積んどいてくれねえか?危うく死にかけたんだけど」

 

「まだ試験を控えてるところだったのよ…それに、全て終わってなかったわ…」

 

「………そうかい。だがまあ、アンタがこっちに来いって言ってくれなきゃ、オレ達は2人とも揃って爆炎に呑まれてたろうよ。そこは、感謝しとくぜ」

 

「そう…ですね…MSに乗れてなきゃ、あそこから脱出出来ませんでしたし…ありがとう…ございます」

 

「…………………お礼を言われることは、ないわね」

 

 

オルガとキラがこうして無事でいられるのは、マリューがMSの方へと誘導したおかげだと、その礼を言う2人。

ただマリューからしたら、民間人である2人をMSに乗せたことや、自分らがヘリオポリスでMSを開発したせいでザフトに襲撃されたこと等を含めて、自分がしたことに対して礼を言われても、素直に喜べなかった。

 

 

「しっかし、こんなデッカいのが動くなんてなー」

 

「あ、貴方達!そこから離れ…」

 

「あー、待ってくれや。オレが言う」

 

「えっ…?」

 

 

トールやカズイ達がストライクやアドバンテージに触ってるのをマリューが静止しようとしたところ、オルガが割って入る。

 

 

「………事情は分かるが、いきなり銃なんて突き付けようとするんじゃねえよ。これからの事、アンタの脅しで進めるのはよくねえだろ」

 

「…………」

 

 

マリューが懐に忍ばせた拳銃を取り出そうとしたのを、オルガは見ていた。

そばに居るキラにも聞こえないように小声で話し、オルガはトール達に近づく。

 

 

「MSってのは、軍の技術の塊ってやつだ。それにコイツらは地球軍の試作MSってやつだろ?」

 

「……ええ。そうね」

 

「だったら、本来民間人のオレ達が、見たり触ったりしていいようなもんじゃねえ。とくにロールアウト前はな」

 

「ろ、ろーるあうと…?」

 

「あー……まあ、機体の運用が始まる前ってこったよ」

 

「で、でも…キラやオルガさんが乗ってましたよね……?」

 

「オレ達は軍人じゃねえ。そもそも、民間人がMSに乗るのだって、本来は大分マズイことだぜ」

 

「と、言うと……?」

 

「場所によっちゃ、即刻銃殺とかもあり得るんじゃねえかな」

 

「え、えええ!?」

 

「と言うことは、私たちも……!?」

 

「ちょ、ちょっと貴方!いくらそこまでは…!」

 

 

今の自分達の現状について説明するオルガ。

そのことについて戸惑いを隠せないキラ達を見て、マリューが止めようとするが、すぐにオルガは話を続ける。

 

 

「だが、オレ達はそうはならなかった。そうなる場合は、オレとキラなんてこの場にはいねえからよ。そのつもりもないんだろ?」

 

「も、もちろんよ…。流石に、銃殺だなんてするつもりはありません」

 

「じゃ、じゃあ私たちはどうなるの…?」

 

「……どうなるんだ?緘口令でも敷かれるか?」

 

「……………そのつもりではあります。ですが、ここでは出来ませんので、場所を変えてになります」

 

「………だとよ。まあ、こんな状況じゃ家に帰れねえからな。せめて親御さんに連絡取るのは許してくれるかよ?もちろん、現状全ては説明しないようにさせてもらうが」

 

「ええ。それぐらいは。流石に、無事を伝えた方がいい状況でしょうし」

 

「……じゃあ、さっさとしてこいお前ら。オレはコイツの見張りしとくからよ」

 

 

アドバンテージを親指で指し、トール達を送るオルガ。

それを受けて、少し離れてから携帯電話を取り出すトール、カズイ、ミリアリア、サイの4人。

 

 

「……キミは、いいの?」

 

「え、えっと……」

 

「キラもしてこいよ。ここはオレ1人いりゃ充分だからよ」

 

「…………では。ありがとうございます」

 

 

少し遅れて、キラもトール達と同じく、携帯電話を取り出す。

あれだけ派手な事をしてきたが、どうやら携帯電話は無事だったようだ。

 

 

「………………」

 

「………キミは?」

 

「………オレに連絡を取るようなヤツは、いねえよ。宿主の連絡先も知らねえしな」

 

「……そう」

 

「………本当は緘口令どころじゃねえんだろ。最高軍事機密に触れた状況だ。なのに、オレの説明にほぼ口出ししなかったな」

 

「貴方がそこまで軍のことに詳しいのかは、今は聞かないでおくわ。ただ……そうね。私も軍人で、綺麗事を言っていられる立場でないとは分かっているけれど…貴方とあの子を巻き込んだのは私で、他の子もそれに巻き込まれる形になった。貴方が止めてくれなかったら、銃を突き付けながら、説明することになっていたでしょうから……」

 

「………オレのやったことも、そんな変わんねえよ。どうせ緘口令を敷かれるだけじゃ済まないだろうし。それを深く説明しなかった、オレも同罪みたいなもんだ」

 

「………なら、どうして?」

 

「……………………」

 

「………?」

 

 

さっきまでと違い、黙り込むオルガの顔を覗くマリュー。

 

 

「………身体を弄ったり、薬がなきゃ生きていけねえ、短命な身体になんかしねえだろ?」

 

「…ッ!?」

 

 

そう言いながら、マリューの方を向いたオルガの顔は、何とも言い表せない、諦めや安堵が混ざり合ったような顔をしていた。

 

 

「す、するわけないでしょう!?な、なんでそんなことを……!!」

 

「……なら、いい。これから、戦いに巻き込まれるって言うなら、オレは協力してやる。その代わり、なるべくキラ達を巻き込まないでやって欲しくてな。アイツがそうしたいって言うなら止めやしねえけど、そういうようなヤツじゃねえってのは、分かってるからな」

 

「…………貴方、いったい……?」

 

「……オルガ・サブナック。ただのナチュラルで、オーブ在住の一市民……らしいぜ?」

 

 

生年月日だけ確認出来ない住民カードを見せながら、オルガはそう言った。




自分をあんな目に遭わせた(暫定)ラボ関係の人間は許せなくても、普通の軍人には恨みは持ってないです。


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大天使の降臨

キラが銃を向けられる話です。
状況的に反射でああなるのは仕方ないんだろうなとは思うんすけど、かと言って民間人に銃向けんじゃねえよとは思いますわよ。


キラ達の連絡が終わり、マリューによりストライクやアドバンテージの武装運輸を任せられたオルガ達。

 

 

「民間人のオレ達がこんなことしてていいのかよ?」

 

「ロールアウト前のMSに搭乗、目撃した以上、大差はありません」

 

「へいへい。で、このアドバンテージと…アレと持ってかれたやつ以外に、もう1機MSあったよな?ぶっ壊されたヤツ」

 

「ああ…。アレもアドバンテージよ。貴方が乗ったのとは別タイプだけども」

 

「ほお……。なら、部品ぐらいは使えるんじゃねえのか?」

 

「…………そうね。ただ、ある程度は母艦に積んであります。パーツより武装の方が少ないはずなのよ」

 

「………そうかい。なら武装のが必要か」

 

 

アドバンテージの武装コンテナを運搬しながら、そう呟くオルガ。

ボタンを押し、車から降りると、コンテナが開かれていた。

 

 

「これがコイツの武器か。シールドと…なんだこれ。ビームライフル?」

 

「専用のビームマシンガンね。流石に詳しい説明は出来ないわよ」

 

「聞くつもりもねえよ。今んとこはな」

 

「……………」

 

 

そのコンテナには、赤と黒色の曲面型の専用シールドと、長い銃身が特徴の専用ビームマシンガンが収納されていた。

これにより、アドバンテージは武装を揃えることが出来た。

 

 

「キラの方も、終わったらしいな。そういや、アレには何が積まれてんだ?コイツみたいに、ライフルやシールドか?」

 

「………詳しい説明は出来ないと言ったでしょう。ですが、それではないとは言えますね」

 

「そうかよ。で、あっちも開いたが……あん?」

 

 

ストライクの方のコンテナも開き、その中身が顕となる。

ただ、それに対してオルガは既視感を覚えた。

 

 

(いや、戦ったことあるんだからある程度は見覚えあるんだが…。たしか、オーブの時に一回だけ見た覚えあるんだよな。どんなやつだったけか……)

 

 

そこにあったのは、ランチャーストライカーだった。

肩に装備するガンランチャー、超高威力を誇るビーム砲のアグニなのだが、オルガはオーブ解放戦でのパーフェクトストライクの装備としてしか確認しておらず、どんな武装だったかを完全には覚えていなかった。

 

 

(どんな感じだったかね……。見た目通りの射撃武装だろうし、エネルギーパックと直接繋がってるからな……)

 

 

そこまで考えてたところで、異変が起こった。

 

 

「うおっ!?」

 

「な、なに!?」

 

 

突如上空から爆発音がし、その場にいた全員が上を向く。

するとそこから、白いMSが飛び出す。それを追うように、オレンジ色のMAも飛び出していた。

 

 

「シグー!?それに、メビウス・ゼロ……フラガ大尉!?」

 

(シグーってことは…クソっ!隊長機かよ!)

 

 

逆行前のオルガの時期ではゲイツに劣っていたものの、この時期のシグーとなると、少数配備の高性能エース専用機として、地球連合軍に恐れられていた。

それを追うメビウス・ゼロも、宇宙専用とは言え有線式ガンバレルを搭載したオールレンジ攻撃を可能とした高性能MAなのだが、その最大の特徴であるガンバレルは全て破壊されたらしく、メビウス・ゼロ本体だけが残存していた。

 

 

「あのオレンジのヤツ、白いヤツにボコボコにされてやがんな…。ぐっ…!」

 

 

上空へ目線を向けていると、再び爆炎が起こった。

 

 

「クソッ!今度は……なっ!?」

 

「アークエンジェル……!!」

 

 

その爆炎から出て来たのは、白を基調とした戦艦だった。

マリューがその名を口にするも、オルガはその名を既に知っていた。

かつての乗艦のドミニオン。その姉妹艦であるアークエンジェルが、ヘリオポリス内にその姿を現した。

 

 

『……ッ!?アラートが鳴りましたけど、どうすれば……!』

 

「ロックオンされてねぇかそれ……!とにかく装甲を展開させとけ!それぐらいいいよな!?」

 

「え、ええ!構いません!!」

 

 

ストライクに搭乗しているキラから、アラートが鳴ったとの報告が入り、急いで指示を出すオルガ。

ちょうどランチャーストライカーの装備が完了した後のようで、フェイズシフトを展開させたストライク。ランチャーストライクが立ち上がる。

そこへ向け、シグーがマシンガンを撃ち放つ。

 

 

「チッ…!お前ら伏せろ!!」

 

「うわあああああ!!?」

 

「きゃああああ!!」

 

 

オルガが近くにいたトールを、マリューがミリアリアと共に地面に伏せるが、フェイズシストを展開させたランチャーストライクが射線に立ち、オルガ達を庇った。

 

 

「ぐっ……!オレもアイツに乗っとくからな!トール達はMSに近づくんじゃねえぞ!」

 

「え、ええ!頼みます!!」

 

 

オルガがアドバンテージに飛び乗り、OSとモニターを起動させる。

上空を向くと、アークエンジェルがシグーに向かってミサイルを発射していた。

シグーが回避したミサイルは、ヘリオポリスを支える柱に当たり、ケーブルが何本も切れていた。

 

 

「コロニーの中でミサイルブッ放す馬鹿がいるかよ!?だからって、コイツを撃ったところで……!」

 

『アレを追い返すには……これか!!』

 

「ま、待てキラ!あんま迂闊に…!」

 

「待ちなさいキラくん!それは……!」

 

 

通信で聞こえて来たキラの声を、オルガとマリューが静止しようとしたが間に合わなかった。

アグニから撃たれたビームは、シグーの一部に当たるもそのまま突き進む。上空のヘリオポリスの地面に着弾したと同時に爆発が起こり、大きな穴を開けていた。

 

 

『なっ……あっ……』

 

(ありゃあ…バカMSの腹のビーム砲と同じぐらいだな……)

 

 

自分が撃ったビームの威力に戦慄するキラと、かつての乗機を思い返しながら、現状を分析するオルガ。

ヘリオポリスに大穴が空いたものの、そこからシグーが脱出し、再びのピンチを凌ぎ切った。

 

 

「………威力を知らなかったんだから、仕方ねえよ。キラ」

 

『……………すみ、ません……』

 

「オレに言ったって仕方ねえが、一応ソイツは受け取っとく。そら、オレはトール達を運ぶから、キラはサイ達を頼むぜ。落とすなよ」

 

『は、はい!』

 

 

腰のウェポンラックに専用マシンガンを、左腕で専用シールドを装備させ、空いた右手にトールとミリアリア、マリューを乗せ飛び立つアドバンテージ。

それに続き、左手でサイとカズイを乗せたランチャーストライクも飛び立つ。

2機はハッチを開けたアークエンジェルのカタパルトデッキに降り立ち、それぞれトール達とサイ達を無事に降ろす。

 

 

「ラミアス大尉…!」

 

「ナタル!無事だったのね…!」

 

「ラミアス大尉も、ご無事で何よりです」

 

(………やっぱり、あの艦長じゃねえか。気のせいじゃなかったんだな)

 

 

カタパルトデッキの奥から、地球連合軍の軍服や作業服を着た集団が駆け寄ってくる。

その中には、オルガが自動車乗り場で見かけた数人、ナタル・バジルールの姿もあった。

 

 

「………そして、その子達が…」

 

「……ええ。巻き込んでしまった子たちよ」

 

「………名乗った方がいいか?」

 

「そうね。頼めるかしら」

 

「……オルガ・サブナックだ」

 

「キラ・ヤマト、です…」

 

「トール・ケーニヒ…」

 

「ミリアリア・ハウ…」

 

「サイ・アーガイル…」

 

「カ、カズイ・バスカーク…」

 

「………私はナタル・バジルール。ラミアス大尉から話は聞いてると思うが、君たちの状況は…」

 

「あーあー、知ってる知ってる。すぐには帰れないってことだろ?故意じゃないとは言え、軍事機密ってモンに触れてるからな」

 

「……理解しているなら、助かる。ところでキミ…」

 

「ん?オレがどうしたよ」

 

 

それぞれの自己紹介が済み、ナタルが名乗ったところで、オルガに向けてナタルが話しかける。

その顔は、どうにも困ったかのようなものだった。

 

 

「…………失礼だが、どこかで会ったことがあるか?」

 

「…………いや、ねえはずだけど」

 

「……そうか。突然変なことを言ってしまい、申し訳ない」

 

「珍しいわね。ナタルがそんなこと言うなんて」

 

「い、いえ……。何故か、ふと口から出てしまって…」

 

 

ナタルからそんなことを聞かれ、誤魔化すオルガ。

本当にふと口から出たようで、ナタル自身も戸惑っている様子だった。

 

 

(………まあ、アンタについてオレがどうこうするつもりは、全くねえけどな。別に恨んでるワケでもねえし。アンタからしたら、突然割って入ってきたオッサンと一緒に付いてきた付属品みたいなもんだろ。アンタにどうこう出来ることじゃねえしな。これが、アンタの指示であんな目に遭ってから寄越されたってんなら話は別だが、そんなことねえし)

 

「……では、すまないがキミ達にはこれから…」

 

「あー、取り込み中のところすまないがね。ムウ・ラ・フラガ大尉だ。オレの乗艦許可も得ていいか?乗ってきた艦も堕とされちまってな」

 

 

ナタルが話しかけた途端、紫のパイロットスーツを着た男が話しかけてくる。

その言葉は、マリューに向けてのものだった。

 

 

「えっ…私に、ですか?」

 

「………実はなんですが、ラミアス大尉。艦長やその他士官は……。なので、ラミアス大尉にその任があると思われます」

 

「………そう、なの。貴女達が無事で良かったけど、辛いわね…。状況は分かりました。許可します」

 

「ありがとさん。しかし…キミ達がモビルスーツを動かしたのかい?」

 

「ええ。それぞれ、ジンを撃退しています」

 

「ジンを撃退……!?」

 

「なるほどな…。キラ・ヤマトと、オルガ・サブナック…だっけ?」

 

「ええ…。ザフトに襲撃を受けた際、何故か工場区にいたため、私がストライクに乗せました。彼の方は、アドバンテージへ」

 

「そうか。ところで…キミ達」

 

「え?」

 

「あん?」

 

「キミ達って、コーディネーターだろ?」

 

「は、はい…」

 

「いや。オレは違えけど」

 

 

その答えを発した途端、周りにいた兵士がキラに向けて銃を構える。

 

 

「……えっ?」

 

「ちょ、ちょっと貴方達!!」

 

「お、おい!何考えてんだよお前ら!」

 

「ト、トール……」

 

「コーディネーターでも、キラは敵じゃねーよ!!さっきジンを倒したって聞いただろ!?どういう頭してんだよお前らは!」

 

「……つーかよ。コーディネーター以前に、民間人に、しかも子供に銃向けてんじゃねえよ。軍人どころか、大人としてどうなんだよ」

 

「オルガさん……」

 

「………まあ、ザフトに襲撃された直後なんだから、ある程度は仕方ねえのかもしれねえけど、だからって銃向けるのはやり過ぎじゃねえのかよ。オッサン」

 

「……いや、それはその通りだ。悪かったな。オレはただ聞きたかっただけなんだが、状況が最悪過ぎた。そこまで考えが回らなかったのは、大人として酷かったな。お前ら!銃を下ろせ!」

 

「……………」

 

「……後からもっと最悪なタイミングでこうなるよりはマシ、と思っとくか」

 

「ラミアス大尉、これは一体…」

 

「別に驚くことはないでしょう。ヘリオポリスは中立コロニーだもの。戦禍に巻き込まれたくなくて、移住するコーディネーターも珍しくないわ。オーブ本国にだって、多くのコーディネーターがいるって話だし。違う?キラくん」

 

「は、はい……。僕は、1世代目のコーディネーターですから…」

 

「1世代目…となると、両親はナチュラルか。いや、本当に悪いことをしたな。Gの操縦練習をしている兵士を何度も見てきたが、動かすことすら出来ない奴らが多くてな。しかし、キミはナチュラルなんだな」

 

「……火事場の馬鹿力ってやつだと思うけどな」

 

「でも、カズイじゃないけど、オルガさんなら動かせても不思議じゃないなって思っちゃいますよ。ゼミでもホント、何でも出来てますから」

 

「………向き不向きで片付けられる話じゃないが、ある程度のセンスってのも、やっぱあるのかねえ…」

 

「……………」

 

「ん、どうした?ラミアス大尉」

 

「い、いえ……。たしかに、すぐに適応できるような人間がいるというのは、よくある話ですものね」

 

 

神妙な顔つきでオルガを見ていたマリューに、ムウが話しかけたところ、そう誤魔化すマリュー。

先程本人から聞いた言葉が引っ掛かってるものの、悪戯に拡げるべきではないと、そう考えてのものだった。

 

 

「しかし…ストライクとアドバンテージか。オレのゼロが健在ならある程度はマシだろうが、この分だと間に合いそうにねえ。急がないとマズいな」

 

「マズいって…何がですか?」

 

「何がって、どうせ奴さんたちまた来るぜ?なんたって、相手はクルーゼ隊だからな」

 

「ク、クルーゼ隊!?つ、つまり…あのシグーに乗っていたのは…」

 

「ああ。ラウ・ル・クルーゼだ。坊主が撃ってくれなきゃ、破害はさらに増してたろうが…。ただ、これで終わりなワケがねえからな。アイツらはしつこいぜ?」

 

 

ムウの言葉通り、クルーゼ隊は再度のヘリオポリスへの襲撃の準備を進めていた。

ヘリオポリス崩壊まで、残り1時間。




ムウさん好きなキャラではあるんすけど、手放しに子供達を任せて良いかと言われると間が現れます。戦場じゃなかったら手放しで良いんすけど。
まあガンダム世界の大人ってわりとそんなもんで、むしろムウさんはどっちかと言うと任せて良いグループですわね。


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出撃のオルガ

某日
作者「NZ国王の実況よかったなー。高トルクパンチはぁ!おっ、アプデ情報来た来た。わりと最近にジャスティス来てるからSEED枠無さそうだし、カラミティはまだまだ先かなぁ。ペース的にAGEやGガンとかじゃね?Gエグザスとかボルトにローズ辺り?大穴の大穴でブルーディスティニー2,3号機とか閃光の果てにのG04G05とか…」
PV「始めるわよ」
作者「おー、クロブからパイロット映す前に暗転して数カット挟んでからバーンッと出すのセンスいいよなあ。んで、今回はどんなのが…」

PV「まずパイロットの胸辺りね」
作者「両肩の出っ張りみたいなの連合の特殊パイロットスーツのここ(あそこ)じゃね?」

PV「機体の主兵装ね」
作者「明らかにバズーカだし傍からキャノン見えるしなんならそれトーデスブロックじゃね??」

PV「パイロットの顔部分ね」
作者「その髪型オルガじゃね???」

PV「そろそろ暗転開けるよ」
作者「どう見てもカラミティじゃね????」

PV「パイロットはオルガ・サブナックだよ」
作者「僕の好きなオルガだね?????」

PV「機体はカラミティガンダムだよ」
作者「僕の大好きなカラミティだね???????」

オルガ「ははっ!なに遊んでんだよ!お前らァ!!(新録)」
作者「オルガのカラミティ使えんの!!?!?!?!?!????!」




えー、前書きぶっ壊れました。ぶっ壊れましたし前話で今話にヘリオポリス崩壊とか書いちゃいましたが延命しました。次話で崩壊です。
ですが関係ありません。カラミティ参戦の前には全ての事象が些事です。どっかのガトーが私は3年待ったとか言ってたけどこちとら無印エクバどころか無印ガンガンから約14年待ってるんで僕の勝ちです。あと5倍は待ちやがれこの野郎。そんでやっと勝ちだぞこの野郎。人生の半分以上待ちやがれこの野郎。バカ野郎この野郎。


アークエンジェルに着艦してから少し経ち、オルガ達は一室にまとめられており、その内キラは疲れからか眠っていた。

 

 

「マリューさんも言ってたけど、キラOS書き換えながら戦ったんだって」

 

「たしかに教授に色々任されてたけど、戦いながら出来るのか…。オレには無理だなあ」

 

「い、言い方はアレだけど…こ、これもコーディネーターだから…なのかな……」

 

「えー、でもオルガさんも出来そうじゃない?」

 

「たしかにオルガさんも出来そうだなあ」

 

「………た、たしかにオルガさんなら……」

 

「オレを何だと思ってんだよ。書き換えならまだしも、1人で戦いながらは無理だぞ。あの軍人…マリューの姉ちゃん……?がいたから、少しは余裕があったんじゃねえのか」

 

「まあ、確かにあの人もいましたからね。敵が近付いて来ても声をかければ避けられますし」

 

「そうそう。サイの言う通りだ」

 

「ちなみにオレもオルガさんなら出来ると思ってます」

 

「なんでだよ」

 

 

眠っているキラを他所に、年下の面々に良いように言われるオルガ。

ちなみにもしこの状況でキラが眠ってなかった場合、彼も同じことを言っていただろう。

 

 

「失礼するわね」

 

「ん…マリュー……あー、なんて呼べばいい」

 

「軍人でもあるまいし、マリューで構いません。呼びづらければ、マリュー大尉なり、ラミアス大尉なり」

 

「じゃあ、ラミアス大尉。何の用だよ?」

 

「……………」

 

「…………あー、分かった。格納庫に行きゃ良いんだろ。だがこのままは流石にイヤだぜ」

 

「え、ええ……。パイロットスーツを用意しますので、案内するわ」

 

「そうかよ。じゃあ頼むわ」

 

「……………」

 

「……なんだよ」

 

「……本当に、いいの?」

 

「何言ってんだ。さっき手伝うって言ったのはオレだし、そもそもアンタはそう言いに来たんだろうが」

 

「……………そうね。頼むわ」

 

「えっ、オルガさん。格納庫とか、パイロットスーツとか、何の話ですか?」

 

 

あれよあれよと言う間に話が進み、状況を飲み込めてないトール。

トールだけじゃなく、ミリアリア達も同じようだ。

 

 

「さっき、あのオッサンが言ってただろ?またザフトが攻めてくるってよ。だから、それの迎撃をしなきゃいけねえって話だ」

 

「で、でも…!なんでオルガさんが!?さっき言ってましたよね!軍人じゃないって!」

 

「………あのオッサンの機体が使えないなら、MSを出すしかねえ。そんでそのMSに乗れるのが、オレとキラだ。だったらオレが出るしかねえだろ」

 

「…………でも……」

 

「キラが目を覚ましたら、伝えといてくれりゃいい。来る分には止めねえが、無理はするなってな」

 

「オルガさん!」

 

 

自分を呼び止める声が聞こえるも、その部屋から立ち去るオルガ。

視界の端で、目を覚ましかけているキラが映るも、それに気付いたのは部屋を完全に出てからだった。

 

 

「……………」

 

「………なんだよ。さっきから変に黙って。言っただろ、戦うことになるってんなら手伝うって」

 

「……………」

 

「呼びに来た手前言わなかったようにしてんだろうが、さっき言っちまったことに後悔でもしてんのか?別に、アンタを恨んじゃいねえよ。アンタからしたら強制したとでも思ってんだろうが、強制されただなんて思ってねえし」

 

「………それだけじゃ、ないのよ。さっき聞いた、身体を……」

 

「あー…………。あんなの、例えに決まってるだろ。本当にそんな目に遭ったりしてるなら、こんなところに五体満足でいられるはずがあるかよ。それに、その例えが本当だとして、アンタらはそんな目には遭わせるのかよ?身体をいじくり回して、薬漬けにでもするかよ?」

 

「だ、だから、するワケないでしょう!?」

 

「ならいいって話だ。何度も言わせんじゃねえよ」

 

 

オルガの考えは変わらず、格納庫への歩みを止める事はない。

実際、マリューはそれを望んでオルガを呼びに来たのだから、本人が不満を抱かない分、理想的な状況と言えるはずなのだ。

しかし、先程オルガから"例え話"とされた、薬漬けや、身体をいじくり回すという言葉が、ずっと心に残り続けていた。

 

 

(………本当に例え話だとしたら、さっきは実感が込もり過ぎていた顔をしていたのよ。そう考えると、彼にとって今の状況が強制されてるとは思ってないと言うのも、納得がいく)

 

 

本当に、目の前を歩く彼をMSに乗せ、戦場に出させていいのかと思うマリューだった。

ただ先程ナタルやムウと話した通り、現状このアークエンジェルでクルーゼ隊に対抗できるのはMSだけで、そのMSを動かせるのは目の前のオルガ・サブナックと、もう1人の少年キラ・ヤマトだけなのだ。

キラの出撃も必要になるだろうが、自ら名乗り出てくれたオルガがいる分、キラへの説得をする必要が半分以上無くなった。

 

 

(………酷い話だとは分かってはいるけれど、恐らくキラくんも出撃に名乗り出てくれることになる。アドバンテージ1機でジンの小隊を相手にすることは難しいというのは、彼らも理解していた。となると、トールくん達を守るため、そして…オルガくんを1人で戦わせないためにも、彼は名乗り出る。利用する…ことになるわね)

 

 

軍人としてと言うより、大人としてどうかと思う話の流れに、マリューは罪悪感を覚えるものの、自分たちが立たされた状況に、藁にも縋りたい想いでいっぱいだった。

 

 

(…………最低な人間よね)

 

 

自嘲するマリューだったが、既にオルガは更衣室にたどり着き、中で着替えている音が聞こえる。もう後戻りなど出来なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おう、来たか兄ちゃん。似合って……や、こんな事言うもんじゃねえな」

 

「気にしてねえよ。自分から言い出したんだからよ。で、それよりだ。あのアドバンテージってやつのマニュアル見せてくれよ。これから命預けるモンの能力知らなきゃ話にならねえ」

 

「もちろんだ。ラミアス大尉やバジルール少尉からも許可得てるしな」

 

 

MS格納庫に、薄緑色のパイロットスーツに身を包んだオルガが現れ、整備班のマードックと話し合う。

アドバンテージのスペックを纏めたマニュアルが渡され、オルガはそれを開く。

 

 

「話に聞いてた、ビームマシンガンね。まあジン相手ならそれなりに……。あん?コイツ、なんかギミックでも付いてんのか」

 

「あー…。まあ、付けちゃいるが、今は辞めといたほうがいい」

 

「なんでだよ。出し惜しみ出来る状況じゃねえだろ」

 

「いやな。コイツは出力を変える事でよ、マシンガンとライフルを切り替えられるんだよ。ただそのライフルがな、中々な威力かつ、エネルギー効率がな…」

 

「……チッ、ホントに何がアドバンテージだよ」

 

「自分がってより、味方を有利に進めるって感じだからな」

 

「…………まっ、そもそもこんなとこで戦うこと想定されてねえんだから、仕方ねえか」

 

 

これからのことに悪態を吐くも、自分から名乗り出たことや、時間の余裕もないことから、マードックにマニュアルを渡し、コクピットへと向かう。

 

 

「マシンガンじゃまずくなったら、ストライクのライフルを射出するからよ。あと、先に積んであったデュエルのライフルも腰のラックに装備させてある。ただ何発も撃てるもんじゃねえし、あのラックは急造品だ。マシンガンを装備させることは出来ねえから、なるべくマシンガンで立ち回ってくれ!」

 

「はいよ。コイツのマシンガンにはエネルギーパックを付けてあるなら、仕方ねえ」

 

 

走りながらアドバンテージの方を見ると、たしかに両手に装備された専用ビームマシンガンやシールド以外にも、デュエルのビームライフルがマウントされていた。

ただこれを使うには、機体そのものからエネルギーを供給しなければいけなくなるため、下手に連射すればエネルギー切れを起こし、使い所を誤ればピンチになりうる。

 

 

(まっ、バカMSとは武器も状況も違えんだ。ドカドカ撃つわけにはいかねえからな)

 

 

しばらく走り続けたオルガは、コクピットハッチの前へとたどり着いた。

あとはコクピットに入るだけなのだが……。

 

 

「オルガさん!!」

 

「なっ…キラ!?お前なんでここに……」

 

 

格納庫の入り口から、キラの声が響き渡った。

たしかに、口止めもしなかったし、ここへ来ることを拒みもしなかったが、実際に来るとは思わなかったのだろう。

 

 

「オルガさん、僕も行きます!いや、行かせてください!」

 

「……オレが出て行くからって言うなら、止めとけ。責任感とかを抱いてるつもりなら、返って迷惑だ」

 

「違うんです!僕には………」

 

 

そう言いかけたところで、周りの視線に気付き、目を逸らすキラ。

 

 

(………あの反応、周りが恥ずかしいってより、周りにはあまり言えない…って感じだな。となると……。ああ、そういうことか?)

 

 

そこまで考えたオルガに、1つ思い当たることがあった。

工場区でザフトから襲撃を受けた際、キラと赤服の兵士が互いを見合い、立ち尽くしていたこと。

そして、互いに名前を呼んでいたことを。

 

 

「………おいオッサン!ストライクの整備も済んでんだろ!?」

 

「あ、ああ!いつでも出せる!」

 

「ならキラ!そんな格好で出るんじゃねえ!さっさとスーツ着て来い!!」

 

「……っ!わ、分かりました!!」

 

(………本当にそうなんだとしたら、オレが読んでた本よりもひでえ話だな…。後で問いただすか)

 

 

キラがスーツを着るのを待ち、オルガはアドバンテージを見上げる。

コーディネーターとは言え、ただの民間人のキラにばかり前線を任せるつもりは無く、これから自分が命を預ける機体を再確認する。

G兵器に使用されているツインアイとは違い、ゴーグルのようなカメラをしている。

それを見て、オルガは後に量産されるストライクダガーもあんな感じだったと思うも、よく目を凝らすと、その奥にツインアイが隠されていることを見抜いた。

 

 

(まあ、アレは量産型だが、コイツは試作MSらしいしな。ジンのライフルなら防げることも確認済みだし、少なくともアレよりはマシだろうが……)

 

 

二度目の搭乗とは言え、カラミティの時と違いテストすらしていない状態での戦闘は、不安が残っていた。

そういう意味で言うと、キラも共に戦ってくれるというのは嬉しいことなのだが、操縦感覚や記憶が残っているオルガと違い、素人でしかないキラを戦場に出すことに、別の不安が出ていた。

 

 

「す、すみません!お待たせしました!」

 

「別にそんな待っちゃいねえよ。オッサン、あのビーム砲以外で、何が使えんだ」

 

「ソードストライカーになるなぁ…。ランチャーと違って、近接特化のストライカーだ」

 

「ならちょうどいい。オレがコイツで援護してやる。それにジンのライフル程度なら、ストライクの装甲で防げるんだろ?」

 

「おう。それに、ジンの刀とはリーチも段違いだし、アンカーとビームブーメランもある。まあ、すぐには使いこなせるとは思っちゃいねえけど、自衛もそこそこだ」

 

「ってワケだ、キラ。さっきのようなことには、そうそうならねえはずだ。コロニーの心配より、自分の身の心配をしろよ」

 

「は、はい!!」

 

 

キラがストライクに向けて走り出したのを確認し、オルガはアドバンテージのコクピットへと入り、ハッチを閉める。

 

 

「……バカMS程の火力はねえが、援護主体って言うなら、頼むぞ、アホMS」

 

『カタパルトに付けてくれ!アドバンテージから出すぞ!』

 

「あいよ!仕方ねえ、やらなきゃヘリオポリスどころか、アイツらまでやられちまうからな……」

 

 

コクピット内にマードックの声が響き、それに従うオルガ。

出撃させるためのカタパルトまで機体を動かし、出撃の準備を整え、後は射出されるのを待つだけになる。

 

 

『オルガくん!』

 

「ん、なんだよ。ラミアス大尉」

 

『…………頼むわね』

 

「またそれかよ。分かってるっての。やられたくはねえんだから、やらなきゃしょうがねえだろ。さっさと出してくれ」

 

『………アドバンテージ!発進よ!!』

 

『悪いな兄ちゃん!頼んだ!!』

 

「行くぜ!!」

 

 

声を挙げると同時にカタパルトが作動する。

射出時にかかるGを耐えながらも、アークエンジェルからアドバンテージが跳び出す。

二度目の搭乗かつ、初めての出撃となった。




本当はもっと早く投稿したかったんですけど、早くカラミティ動かしたい欲が勝って、めちゃくちゃに動かして来ました。
そんでまさかの全ボイス新録にガン泣きでございます。供給されました。
この作品のオルガは薬入ってないんで比較的静かなんすけど、やっぱこうなるよなって感じのボイスでめちゃくちゃ好き。みんなも百円握り締めて対策してゲーセンへGO。


次回、ヘリオポリス崩壊(真)


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崩壊、ヘリオポリス

あばよ、ヘリオポリス。

そう言えばSEED本編見直してて思うんすけど、MS間の通信、特に敵軍同士ってどうなってるんですかね。
Nジャマー云々とか、難しいことは馬鹿なんであんまよく分かんないんすけど、敵軍同士で通信繋がってることあるんすかね?傍受とかは聞きますけど、特に戦闘中。
イージス強奪後、明らかにミゲルとアスランが通信で会話してるんすけど、ミゲル機の通信をアスランが知ってると仮定すれば説明は付くんす。
最初のキラとアスランは、まあイージスは元々連合製だから繋がるのは分かるんす。
舞い降りる剣のフリーダムとデュエルも、同じザフトの機体なんで、分かるんす。
そんで砂漠のストライクとラゴゥ、最後の方のジャスティスとレイダー、これ明らかに会話してるんすけど馬鹿正直に捉えていいんすかねアレ。アニメだから〜とかじゃなくて。
それによってオーブ解放戦のアスラン介入時のアレが大分変わるんすよね。アレ僕はキラだけに向けられてると思ってるんですけど。
まあ、この作品では自軍(で製造された兵器)同士での通信はNジャマーが酷くない限り問題無く可能、敵軍同士は改造しない限り接触回線あるいは超至近距離(1機体分)でのみ可能とさせてもらいますけど。
じゃなきゃ後の話が面倒くさいことnスキュラ,シュラ-ク


アドバンテージの出撃後、それに続いてすぐにストライクも出撃する。

背後にはアークエンジェル、そしてヘリオポリスの支柱。

これらを護らなくてはならない戦いが始まる。

アドバンテージに追い付いたストライクから、通信回線を開いたキラの声が聞こえる。

 

 

『マリューさんによると、Nジャマー…というのが、散布されてるらしいです』

 

「あー…。よく分からねえが、なんかザフトが撒いた妨害か。ったく、コロニーを戦場にしやがって」

 

『……………ザフトのMS、ジンの数も分からないらしくて』

 

「けっこう来るだろうな。クルーゼ隊……?とか言ってたし、エース部隊ってやつか」

 

『………大丈夫、ですかね。自分から出撃しておいて、なんですけど』

 

「まあ、1対1ならこちらが上だろうよ。だが、ストライクはいま接近戦用装備だ。オレの援護に合わせろよ」

 

『………はい』

 

 

モニターに不安な表情をしているキラが映り、気遣うオルガ。

先の闘いで、ジンのマシンガンが効かなかったことを確認しているが、それは1対1の話で、今から来るのは複数のジンであろうことから、キラが不安に思うのもオルガは理解していた。

 

 

(………まあ、なら最初から出るなんて言うなとは思うが、半分はオレの所為でもあるんだろうな。仕方ねえ。クロトやシャニを援護するよりは楽だろ。パイロットとしての腕は劣るが、変な暴走の心配はねえしな)

 

『オルガさん!敵のMS反応です!』

 

「ん。悪い、助かった。こっちのモニターにも映って…。はあ!?」

 

 

思考を巡らせているオルガは、キラの声で目の前のことに切り替える。

レーダーで確認した後、モニターに映るジンの姿に、オルガは驚愕する。

先の闘いで装備していた重突撃機銃持ちもいるが、機体総数に比べるとごく僅かであった。

その他の機体のほとんどが大型ミサイル"M66キャニス 短距離誘導弾発射筒"を装備していたのだ。

 

 

『ど、どうしました!?』

 

「クソッ…!何考えてんだバカーゼ隊!!聞こえるかよアークエンジェル!!」

 

『こちらアークエンジェル、ナタルだ。ジンを捕捉したか?』

 

「ああ!だが奴ら、マシンガンなんてほとんど持っちゃいねえ!!バカでかいミサイル抱えてやがる!!」

 

『なに!?まさか、要塞攻略用のD装備……!?』

 

「ってヤツじゃねえのか!?そっちからは撃たれたミサイル迎撃するよう言っといてくれ!!こっちはMS自体を叩く!!」

 

『くっ…!イーゲルシュテルン!ヘルダート装填!ゴットフリートはまだ起動させるな!!』

 

『オルガさん!』

 

「キラ!なるべく固まって動くぞ!オレがあのミサイルを墜とす!」

 

『は、はい!!』

 

 

オルガ達が捕捉したとほぼ同時に、オルガ達のコクピット内でアラートが響く。

こちらも捕捉されたことを表すもので、2人は警戒を強める。

その間に、ジンは大型ミサイルと両脚部に装備したミサイルポッド"M68パルデュス 3連装短距離誘導弾発射筒"からミサイルをストライクとアドバンテージに向けて発射している。

 

 

「チッ!!本当に撃ってきやがった!!」

 

『オルガさん!僕の方では、バルカン砲でしか…!』

 

「ああ!ソイツも撃て!出し惜しみなんかしてられっか!!」

 

 

ストライクがイーゲルシュテルンの自動迎撃機能を駆使し、いくつかミサイルを撃ち落とすも、全てを撃ち落とすことはできない。

 

 

「撃ち落とす!!」

 

 

オルガが声を挙げると同時に、アドバンテージが主兵装であるビームマシンガンと副兵装のイーゲルシュテルンの一斉射を始める。

かなり密のある弾幕を形成する事が出来、ストライクが撃ち漏らしたミサイルを全て撃ち落とした。

 

 

「ミサイルを撃ち落とすのに、一々こんなことして…。グッ!?」

 

『オルガさん!?』

 

 

オルガが苦悶の声を挙げ、それを心配するキラ。

 

 

"オラアアアア!!!"

"オラオラオラァ!!!"

 

(コイツは…!クソッ!オレはもう、あんな薬漬けで戦ってんじゃ……!!)

 

 

オルガの頭の中で響くのは、自分と同じ声をした、荒々しい声。

それを振り払おうと、首を振る。

 

 

「……ッ!悪い、大丈夫だ」

 

『オルガさん……』

 

『ストライクとアドバンテージ!ライン後退だ!あれを一つ一つ撃ち落としてたんじゃ、弾倉がいくつあっても足りやしない!!アークエンジェルが撃ち落とし、その間にMSを叩け!!』

 

『は、はい!オルガさん!』

 

「たしかに、それのが良さそうか…!」

 

 

アドバンテージとストライクが機体の向きを反転させ、アークエンジェルの方へと戻る。

それを確認し、ジンも追いかけて来る。

 

 

『誘き寄せる……ってことですか?』

 

「まあ、そうなるな。アークエンジェルは守らなきゃいけねえが、こっちが堕とされたんじゃ意味がねえ。ミサイルは艦に任せて、オレ達はMSだ。ぶった斬ってくれりゃいい」

 

『………分かりました』

 

『イーゲルシュテルン起動!バリアント!撃てえ!!』

 

 

ジンが撃ってきたミサイルを、アークエンジェルが撃ち落とすが、全てを撃ち落とす事が出来ず、コロニーの支柱へとぶつかってしまう。

 

 

『くっ…!!』

 

「マズイな…!キラ!間合いを詰めろ!オレが援護する!」

 

『は、はい!!』

 

 

大型ミサイルを撃ち尽くし、残るは脚部のミサイルポッドだけとなったジンに狙いを定め、オルガのアドバンテージが後方からビームマシンガンを撃ち放つ。

それを受け、キラのストライクがジンに向けて距離を詰める。

 

 

『このおおおお!!』

 

 

距離を詰めたストライクを対応としたジンだったが、重斬刀を装備していないD装備では、ソードストライカーを装備したストライクを対処出来るはずもなく、対艦刀"シュベルトゲベール"で真っ二つにされてしまった。

 

 

(ほー…。バカMSのシールドはビームコーティングされてたから防げただけで、それがなきゃ御陀仏ってことか。ビームの刃なくても、あんなもん振り回すだけで機体の色んなとこがイカレそうだな)

 

『あっ…あっ……』

 

「………悪いな、キラ。帰ったらなんか奢ってやるから、とにかく生きて帰るぞ」

 

『はっ、はい………』

 

(………まあ、パイロットがキラじゃな。これからも出撃して、慣れてくんだろうが……。オレはまだしも、アイツにこんな事に慣れて欲しくはねぇんだがな……)

 

『アドバンテージ、これより本艦のミサイルで退路を塞ぐ。そこを叩けるか?』

 

「ああ、やってやるよ。蜂の巣だ」

 

『よし。ヘルダート!撃てぇ!!』

 

 

アークエンジェルからミサイルが発射され、ジン達の動きを封じる。

そこにオルガのアドバンテージがビームマシンガンとイーゲルシュテルンの一斉射を叩き込み、ミサイルとビームマシンガン、バルカン砲の集中砲火を与え、ジンの数を減らして行く。

 

 

(母艦との連携なんて初めて…。いや、初めてじゃねえのか?バカMSで一緒に撃ちまくった覚えはあるが。まあ、やりようによっては楽に持っていけるな)

 

『オルガさん!大型ミサイル持ちのジンは全員倒しましたけど、残りが…!!』

 

「って、いつの間に?たしかにコイツとアークエンジェルで大分倒したが…」

 

『と、言っても…僕が倒した1機で最後だったみたいです。とにかく、来ます!』

 

「そんなにやってたのか……。今の動き、いいかもしれねぇな。んで、残りが……!マジかよ…!!」

 

 

キャニス装備のジンの第一陣を全滅させ、残るは後方の数機のジンだけなのだが、その内の1機が大型ビームランチャー"M69バルルス改 特火重粒子砲"を装備している。

随伴機は重突撃機銃装備なのだが、どれも二丁装備で、脚部には先程と同じくパルデュスも装備されていた。

しかも、そのジン部隊の後方には……。

 

 

「赤いMS……!!」

 

『あの機体は……!?』

 

『MS接近!ジンが4機!そしてこの反応は…!?イージスです!イージス接近!!』

 

『なんだと!?』

 

 

コクピット内に、アークエンジェル艦橋内の通信が響く。

奪われたG兵器の内の1機である、イージスがこちらに向かっていた。

 

 

『アスラン!着いてきたからには、足を引っ張るなよ!!』

 

『………ああ』

 

 

イージスのコクピット内で、バルルス装備のジンからパイロットであるミゲル・アイマンの声が響き、アスランと呼ばれた少年が応える。

彼の意識は、コクピット内のモニターに映されているストライクに向けられていた。

 

 

「クソッ…!数は減っても、アイツらのが厄介だな…!!」

 

『オルガさん!僕が前に…!この装甲なら、あれだって……!!』

 

「バカ野郎!そのフェイズシストってやつだって、無限じゃねぇ!!蜂の巣にされて、装甲が切れたらあのビームでおしまいだ!!」

 

『な、ならどうするんですか!?』

 

「そんなの……!ぐっ!!」

 

 

通信越しに2人が話してるうちに、こちらに向けてバルルスのビームが放たれる。

なんとかアドバンテージのシールドで防ぐ事は出来たが、あと何発防げるかは、把握する術はない。

 

 

『オルガさん!!』

 

「すぐには落ちねえよ!!こっちの心配より、二丁持ちのヤツと赤いのも警戒しろ!!」

 

『ですけど……!!』

 

(どうする…!オレが援護してキラが突っ込んでも、あのランチャー装備が邪魔すぎる!かと言って、今のストライクに満足な射撃なんか……。あん?)

 

 

思考を巡らせる中、オルガはある事を思い出す。

現在装備しているビームマシンガンの特徴。

そして、現在のアドバンテージに装備されている、もう1つの主兵装。

 

 

「………そうか!キラ!一旦そのバカでかい剣、元に戻せ!」

 

『えっ…?で、でも…、それだと無防備に……』

 

「コイツを使え!!」

 

『ええっ!?』

 

 

オルガのアドバンテージから、キラのストライクに向けて、ビームマシンガンが投げ渡される。

突然のことに驚くキラだが、なんとか対応し、右手に収める。

 

 

「ソイツはエネルギーパック形式だから、ソイツを使ったところで、ストライクには何の影響もねえ!!」

 

『わ、分かりました!でも、オルガさんは!?』

 

「コイツがある!気にすんな!!」

 

 

空いた右手に、腰にマウントされていたデュエル用のビームライフルが装備させる。

専用ビームマシンガンと違い、機体からエネルギーを供給して使用される武装だが、出し惜しみをしてはいられなかった。

 

 

「先にマシンガン持ち片付けるぞ!!」

 

『は、はい!!』

 

『こちらもジンに照準を合わせろ!撃てえ!!』

 

 

そこからは、先程と同じく、アークエンジェルから撃たれるミサイルと、ストライクのビームマシンガンとイーゲルシュテルン、アドバンテージのビームライフルとイーゲルシュテルンの一斉射が、ジン小隊に叩き込まれる。

圧倒的な弾幕により、回避し切る事が出来ず、3機のジンは堕とされる。

 

 

『チィ……!だが、これで……!!』

 

『ミゲル!あまり突出を!!』

 

 

アスランの静止を振り切り、残ったミゲルのジンがアドバンテージに狙いを定める。

今の一斉攻撃により、一番エネルギーを使っていた機体を狙ったのだ。

 

 

「クソッ!もう使えねえか!!」

 

 

現に、ビームを撃てるだけのエネルギーは残っておらず、残っていたグレネードを発射させるも、それも避けられる。

 

 

『オルガさん!!』

 

 

そこにキラのストライクが割り込み、空いている左腕でソードストライカーの装備であるビームブーメラン"マイダスメッサー"を投げる。

 

 

『はっ!そんなもの!!』

 

 

容易く避け、再びアドバンテージを狙うジン。

だがマイダスメッサーは、ジンの後方で弧を描き、ストライクの方へと戻る。

その軌道上には、ミゲルのジンが。

 

 

『ミゲル!避けろ!!』

 

『なっ、何ぃ!?』

 

 

マイダスメッサーは、ジンの両脚部を切り裂き、大きな隙を晒す。

 

 

『今なら……!!』

 

「下がれキラ!オレがやる!!」

 

 

隙だらけのジンに狙いを定め、アドバンテージの副兵装であるレールガンを準備する。

この状況下であれば、狙いを外すことなく、仕留める事が出来ると考えてのことだった。

 

 

「これで…!!」

 

"隙だらけだな!!アホ丸出しだぜ!!"

 

「………ぐっ!!」

 

『オルガさん!?』

 

 

オルガの頭の中で、再び声が響く。

それを振り払おうと、オルガは操縦桿を動かす。

アドバンテージはビームライフルを腰のマウントに戻し、ビームサーベルを左碗部から射出、右手に装備し、ジンへと突っ込む。

突然のことに驚くキラだが、オルガは気にしてはいられなかった。

 

 

「うおおおおおお!!」

 

『ミゲル!!!』

 

 

ジンのコクピットに向けて一閃。

コクピットを切り裂くも、エネルギーが枯渇寸前のアドバンテージでは、満足な長さを形成出来ず、両断するには足りなかった。

 

 

『ぐっ、おおおおおおお!!?』

 

 

そのおかげで、ミゲルは即死には至らなかった物の、飛び散った破片により、重傷を負い、意識を失う。

 

 

「………チッ!!」

 

 

仕留め切ることは出来なかったジンを、イージスへと向けて蹴り飛ばすアドバンテージ。

 

 

「ソイツを持って、さっさと帰りやがれ!!聞こえてはいねえだろうがな!!」

 

 

イージスが半壊したジンを支えたことを確認したオルガは、そう言い放つ。

先の一斉攻撃で、イーゲルシュテルンも撃ち尽くし、ビームサーベルも形成できないほどエネルギーが枯渇したアドバンテージに、半壊のジンを撃破させることは出来なかったのだ。

 

 

『オルガさん!なんて無茶を…!!』

 

『………そこの白いMS!!聞こえるか!?』

 

『なっ……!?アスラン!?』

 

『キラ……!キラ・ヤマト!!キラなのか…!?』

 

(………イージスと話してるんだろうが、向こうのは聞こえねえな。まあ、聞こうと思えば出来るとは思うがよ。同じ連合のなんだから)

 

 

キラのストライクの通信越しに、一方的な会話が聞こえるが、会話先のイージスの通信は聞こえなかった。

だが、事態はそれで終わりではなかった。

 

 

『MS!再び接近!!ジン数機!!』

 

『くっ…!またD装備なら、もう持たないぞ!!』

 

「クソッ…!!今から戻れば、どうにかなるかよ!?」

 

『アドバンテージ用のマシンガンのエネルギーパックの準備がまだ出来てないのよ!!ともかく、オルガくんはもう戻って!!アドバンテージはもう限界よ!!』

 

「クソッ……!このアホMS、パワーがヤバいってか…!!」

 

 

アドバンテージが戻ろうとしたが、既に遅かった。

ミゲルのジンからバルルスを受け継いだジンが、ビームを連射させる。

狙いが甘く、アドバンテージやアークエンジェルには当たらなかったものの、その先はヘリオポリスの支柱だった。

 

 

「なっ………!?」

 

 

連続で被弾し、先のミサイルが何発か当たっていたことから、既に限界だった支柱は、遂に崩壊した。

そこから連鎖は始まり、亀裂はヘリオポリスの大地まで広がり、ヘリオポリスは崩壊していく。

 

 

『キラ!!』

 

『アスラン……!!』

 

『ストライク!!アドバンテージ!!』

 

「くっそ……!キラ!巻き込まれないよう気をつけろ…!!」

 

 

崩壊に巻き込まれないよう、ジンとイージス達が撤退して行くのが見えた。

それに対し、ストライクとアドバンテージは、崩壊していくコロニーを目にしながらも、破片にぶつからないよう、制御していくしか出来なかった。

 

 

(…………あの時、オレ達がやってたのも、こんな感じだったのか……?)

 

 

それを見て、オルガが思い出すのは、オーブ解放戦の時のこと。

MSやイージス艦相手に好き放題やっていたが、中立国の大地であることには変わりは無い。

しかも、目の前で崩壊していくヘリオポリスも、オーブのコロニーである。

数週間を過ごした場所が失われて行くところを目にしたオルガは、喪失感と共に、罪悪感とも言える感情が湧き上がっていた。

 

 

(………前のオレとは違うって言いてぇが……。クソッ、戻ってから色々と考えちまうな…!)

 

 

思考を巡らせながらも、機体を制御し、崩壊に巻き込まれないようにすることで精一杯だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ストライク!アドバンテージ!!聞こえるか!!』

 

「……キラ。無事か?」

 

『は、はい……。なん、とか……』

 

「………じゃあ、帰るぞ」

 

『………はい』

 

 

さっきまでコロニー内にいたのが、目の前に広がるのは宇宙空間という現状。

なんとかヘリオポリスの崩壊に巻き込まれることはなかったオルガとキラは、アークエンジェルへと戻って行った。

 

 

『………?すみません、オルガさん。前に……』

 

「ん……。ありゃあ、救命ポッドか……?」

 

『僕が拾います。オルガさんは、先に戻ってください』

 

「………まあ、このまま放流されるよりはマシか。じゃあ、先に行ってるぞ。オレもやっとくが、念には念だ。周りの警戒もしとけよ」

 

『はい。分かってます』

 

 

ストライクが救命ポッドへと向かったのを確認し、オルガは機体をアークエンジェルへと動かす。

既にハッチを解放させていて、滞りなく着艦することが出来た。

 

 

「ふー……。送り出したのはオレ達とは言え、なんとか無事だったな」

 

「でも、アドバンテージのあの動きはダメじゃないですか!?エネルギー切れ寸前ってのは分かってたでしょ!?」

 

「とは思うがなぁ……。まあ、コロニー内だったし、レールガン撃ちたくなかったんだろうよ」

 

「だからって、あんな無茶されたら堪ったもんじゃないですよ!僕ちょっと文句言いに行って来ます!!」

 

「お、おい!!」

 

 

一方、アークエンジェルMSデッキ内で、整備士の声が響き渡っていた。

一方は、マードックのもの。

そしてもう一方は、キラ達とそう変わらなそうな、赤毛の少年のもの。

 

 

「………ふぅ。帰ってこれたが、ヘリオポリス、やっちまったか……」

 

「ねえアンタ!出てってくれて、護ってくれてた人に言うのもアレってのは分かってるけどさ!最後の方、あんな無茶されたら堪ったもんじゃないよ!機体もマズくなるし、アンタの身も危険だってこと、分かるだろ!?」

 

「あー、そりゃ整備の身からしたらそうなるよな。しかも気ぃ遣ってくれてるし、わる…い…………」

 

 

コクピットからエレベーターを垂らして、アドバンテージから降り、ヘルメットを外したオルガに、整備士の少年が詰め寄る。

機体だけじゃなく、自分の身を気遣ってくれたことから、嫌悪感を示さずに、謝罪しようとしたオルガが言葉を途切らせる。

 

 

(………おい。なんで、コイツがここにいるんだ………?)

 

 

本来なら、声を聞いた段階で気付くべきだったのだが、先程まで戦闘をしていたことから、意識を落ち着かせるのに時間がかかり、気付くのが遅れてしまった。

それのせいで、言葉どころか、オルガの表情は驚きで固まってしまった。

 

 

「………なに?僕の顔、なんか付いてる?」

 

「あー、悪かったな兄ちゃん。まあ、分かってるだろうが、コイツに悪気は無くてな」

 

「………あ、ああ……。そりゃあ、分かってるけどよ………。まあ、わる…かったな」

 

「………いや。ストライクに乗ってる子を護ろうとしてるってのも分かってるし、アンタも悪気は無いってのも分かってるから、謝って欲しいワケじゃないんだけどさ。次……って言っていいのか知らないけど、気を付けてくれってことだけ分かってくれれば、それでいいっての。アンタ、名前は?」

 

「………オルガ・サブナック」

 

「僕はクロト・ブエル。ここの整備班だよ。まあ、どうなるかは分かんないけど、よろしく」

 

 

オルガの記憶とは違い、普通の少年の言動をしているクロト・ブエルが、連合の整備士の格好をし、握手を求めて来た。

それに応え、オルガは手を差し出した。

表面上は普通の表情だが、心の中は、困惑でいっぱいのオルガだった。




先に言っておきますけど、べつに逆行はしてないです。


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崩壊のあと

一応ポッドの搬入はナタルから許可もらってます。


「僕?僕は普通に志願兵っていうか、職業軍人だけど。なんでそんな事聞くのさ」

 

「……いや。オレが言うのもなんだけど、ずいぶん若いなと思ってよ」

 

「そりゃあ、おやっさんとかに比べたらって言うか、普通に最年少だけどさ」

 

 

他のクルーが救命ポッドに釘付けになってる間、オルガとクロトの2人は食堂にいた。

「こんだけいりゃお前ら2人いても変わらねえけど、別にいなくても変わらねえから自由にしていいぞ」というマードックの言葉を受け、後者を取った2人であった。

食堂のテーブルを挟み、互いに向き合う2人。

 

 

「でも、よくMS動かせるよね。僕なんかからっきしだってのに」

 

「オレからしたら、よく整備なんか出来るよなって話だぜ。色んな意味で」

 

「色んな意味って何さ。まあ、確かにそうなるか。人間なんだし得意不得意あって当然って」

 

「………………」

 

「…………なに?さっき会った時から、僕の顔じっと見てさ。知り合いにでも似てる?」

 

「………いや、なんでもねぇよ」

 

 

「知り合いに似てるどころか、むしろ知り合いそのものだ」と言い掛けたオルガだったが、なんとか抑え返事をする。

正面に座るクロトは、自販機で飲み物を購入しに行くため、席を立つ。

購入と言っても代金はかからないが、1回の利用につき1人1本というルールが定められているのを、近くの張り紙を見てオルガも気付く。

 

 

(………マジでクロトだな。薬入ってない普通のクロトだ。百歩譲って整備士やってるのはいいんだが、なんでアークエンジェルにいんだ?たしかアイツ、ロドニア出身だったろ)

 

 

そう思考を巡らせるものの、自身で答えに辿り着くことは不可能だというのは、オルガ自身も理解していた。

 

 

(…………オレが知らなかっただけかもしれねぇが、アドバンテージなんて機体も聞いたことねぇし、丸っ切り同じってことは無いってことか?オレがオーブの住民カード持ってたり、ヘリオポリスにいたことも疑問だしな)

 

「ほら、水でいいでしょ?」

 

「あ、ああ。悪いな」

 

 

ペットボトルの水に口を付け、改めてクロトを見るオルガ。

自身の記憶とは異なるものの、お仲間の1人と会うことになった衝撃は和らいでいった。

 

 

(………まあ、普通に過ごしてんならそれに越したことはねえからな。この分だと、シャニもどっかで過ごしてるのかもしれねえ)

 

「あっ、オルガさん!ここにいたんですね!」

 

「……おっ?ああ、トール達か。救命ポッドの確認は終わったのかよ?」

 

 

そう考えてるうちに、食堂の入り口からトールの声が響き、オルガ達に近付く。

トールの他にもミリアリアとカズイもそこにいた。

 

 

「オレ達は直接見てないんですけど、そうらしいですよ。なんか、女の子が乗ってたようで」

 

「だったら、キラが拾って良かったな。あんな壊れかけのポッドになんざ、長い間いたくねえだろうし」

 

「その子、フレイ・アルスターって言って、同じ女子の私から見ても、すごく綺麗な子なんですよ」

 

「ふーん。フレイ…………?」

 

「ど、どうしました?オルガさん」

 

「………いや。もしかしてあの、赤ってか、ピンクみたいな髪した女か?たまに車の乗り場で見かけた」

 

「ああ、そうですそうです。よく女子グループで過ごしてた」

 

「キラが気になってる子でもありますよ。高嶺の花だろうに」

 

「……そ、それ…トールが言って……」

 

「ん?なぁにカズイ」

 

「い、いや!なんでもないなんでもない!!」

 

 

ミリアリアがカズイに向けて睨みを利かす光景を眺めながら、オルガは思考を巡らせる。

フレイという名前に、聞き覚えがあるどころか、前回会った人物と照合していた。

 

 

(たしかアイツだよな。なんか、オレが拾ったポッドに乗ってた捕虜。あの女、やたらポッドに縁があるな)

 

「あっ、噂をすれば」

 

「なんだ、ここにいたのか」

 

「………あっ。オルガさん、さっきは…」

 

「礼は言わなくていい。むしろオレも無茶したしな」

 

 

そうしている間にサイとキラ、そしてフレイの3人もその場に集まった。

キラはオルガの隣に座るものの、サイとフレイは入り口に立ったままでいる。

 

 

「オレ達は先に部屋に戻ってます。今のところ一室にまとめられてますけど、すぐに他の部屋を手配してくれるらしくて」

 

「そうかよ。じゃあ、あとでな」

 

 

そうして立ち去ったサイとフレイを見送るオルガ達。

一言も言葉を発しなかったフレイだったが、あまり現状を呑み込めてない様子なのは全員察しており、とくに何も言わなかった。

 

 

「……今更だが、オレ達ってこんな自由にしてていいのか?」

 

「ああ。それは艦長達に言われてるから大丈夫。食堂ぐらいならいいってさ」

 

「ならまあ、いいんだがよ」

 

「ところで、その格好してるってことはここの整備班?だと思うんだけど、オレ達とあまり歳変わらなくない?オレ、トール・ケーニヒ」

 

「トールね。僕はクロト・ブエル。さっきオルガにも言われたけど、僕みたいな歳の子が軍人してても、そんなおかしな話しじゃないよ。無理矢理やらされてるワケでもないしさ」

 

「なら、なんでクロトはそうしてるんだ?」

 

「…………まあ、なんでって言われると。僕って父さんがいなくて、母さんを支えるには働くしかなくてさ。それで一番金になるのが軍人ってだけで」

 

「………そうなんだ」

 

「ホントは、パイロットやらされるはずだったみたいでさ。でも僕って、全く適正無かったらしくて。そこをマードックのおやっさんに見つけてもらって、扱かれてるよ」

 

「んじゃあ、なんか武器の整備とかしてんのか」

 

「まあね。さっき金になるって言っといてあれだけど、こんな仕事無い方がいいんだよ。でも、そうも言ってられないし。………ていうか、さっき名前聞いたけどさ。あのフレイって子」

 

「フレイがどうしたの?」

 

「アルスターって言ってたよね?」

 

「ああ、そうね。フレイ・アルスター」

 

「アルスターって、たしか大西洋連邦のお偉いさんの名前だけど、その娘で合ってる?」

 

「あ、合ってるよ…。フレイ自身も言ってたし……」

 

「………ブルーコスモスのシンパとも聞いたけど」

 

「………あー」

 

 

会話を続けていたトール達だが、その名を聞き言葉を濁す。

反コーディネーター団体、ブルーコスモス。

その中でも比較的穏健派なのがフレイの父親、ジョージ・アルスターなのだが、それでもブルーコスモスに所属していることには変わりない。

 

 

「この戦争の引き金って、血のバレンタインじゃん。ブルーコスモスに影響受けた将校が暴走してさ。流石にドン引きだよ、あれ」

 

「…………」

 

「……まあ、その報復でエイプリル・フール・クライシス引き起こしたのも、ドン引きだけど」

 

「…………アレのせいで地球がめちゃくちゃになってるからな。しかも奴さん、地球にもコーディネーターいるって知ってる上でやってるし」

 

「………戦争が続いてるのも、そういうことなんですかね。やられたらやり返して、その繰り返し……」

 

「……とは言え。民間人の住処に核撃つのも、地球をめちゃくちゃにするのも、どっちもやり過ぎでしか無いけどね。って、こんな話よくないか。じゃあ、僕MSデッキに戻るから。何かあったら来てよ」

 

「……おう。その時は頼むぜ」

 

 

そう言って一気に水を呷り、食堂から立ち去るクロト。

それに続き、オルガも水を呷る。

 

 

「じゃあ、オレも行かねえとな。そこの自販機、1本なら好きにしてもいいみたいだぜ」

 

「……えっ?オルガさん、どこに行くんですか?」

 

「艦長のところ」

 

「な、何でですか……?」

 

「なんでって、MSデッキに行く許可貰いに。どうせ、また来るだろうしな」

 

「またって……まさか…!?」

 

「ああ。あのクルーゼ隊、ヘリオポリスぶっ壊しといて、追撃して来ないとは思えないしな。お前達も、早いとこ部屋に戻れよ」

 

「ま、待ってください!オルガさん!!」

 

 

食堂から立ち去ろうとしたオルガだったが、腕をキラに掴まれ、足を止める。

 

 

「………キラ?」

 

「あっ、あの……。ザフトが、また来るってことは……」

 

「………分かった。キラも行くか」

 

「…………………はい」

 

「お、おい!キラまで何言ってるんだよ!?オルガさんも!」

 

「………やらなきゃやられる。それだけってことはねえが、命あっての物種だ」

 

「………っ!」

 

 

勝手に話を進めるオルガとキラを止めようとするトールだったが、オルガの言葉を聞いて、勢いを弱める。

一瞬、ミリアリアとカズイにも目をやり、立ち去るオルガ達。

食堂に残されたのは、悲痛な顔持ちをした3人だけだった。

 

 

「………なあ、キラ」

 

「……どうしました?オルガさん」

 

「あの赤いMSのパイロットのことだがよ」

 

「…………あとで、マリューさん達にも説明します。その時に」

 

「………分かった」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「邪魔するぜ」

 

「ん。2人か」

 

「オルガくん!?どうしてここに…」

 

「MSデッキの立ち入り許可、一応得た方がいいと思ってよ。自分の機体の確認ぐらい、しとくべきだろ」

 

「…………キミの意志は伝わったが。キラ・ヤマト、キミもいいのか?ここに来たってことは、そっちの坊主と同じってことと認識するが」

 

「……………はい。オルガさんだけに、無茶はさせられません」

 

「………悪いな、キラ」

 

「……ならば、そのようにする。整備班にも伝えておこう。軍服を支給しなくてはならないな。フラガ大尉、サイズ計測を頼みます」

 

「はいよ、バジルール少尉。じゃあ、こっち来い…と言いたいとこだが、他にも言いたいこと、あるんだろ?」

 

「………はい。あの、赤いMSのパイロットについてです」

 

「イージスの……?工場区まで攻め込んできた、赤服の兵士のことかしら?」

 

「…………そのパイロット、僕の……月にいた頃の、友人なんです」

 

「…………そう、か。ならなんで、キミはここに?たしかに、戦えるための力があるならそうするべきだと、俺も思う。だがキミはまだ子供だ。友人同士で戦うことなんて、我慢できるか?」

 

「……………」

 

「そこは、オレもカバーする。別に徹底的に殺さなくても戦闘は出来るし、立ち回りによってはそもそも戦わなくても済むだろ。オッサンも、なるべくそうしてくれ」

 

「オッサンじゃない。だが、分かった。ここまで巻き込んどいて、無理するなって言える立場じゃないからな。俺たちは」

 

「………………」

 

「…………では、フラガ大尉。頼みます」

 

「おう。じゃあこっちだ、坊主達。着いてこいよ」

 

「………はい」

 

「おう」

 

 

ムウが先導し、立ち去るオルガとキラ。

ブリッジに残されたのは、マリューとナタルの2人。

 

 

「………………酷い大人ね。私たち」

 

「…………………」




オルガが察してたため、キラ1人が抱えることは回避出来ました。
その分マリュー達に飛び火してますけど。


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思惑

クルーゼ隊の語呂の良さ、好き。

とりあえず短めではありますが、こちらも投稿をば。
次話から多めに、ね。


ナスカ級"ヴェサリウス"艦内。

 

 

「奪った機体を全て投入するのか」

 

「隊長の命令ならば、従うさ。ナチュラルが作ったにしては、試作MSなだけあって、ジンとは性能が段違いだからな」

 

「しかし…。ミゲル、大丈夫なんでしょうか…?」

 

「本国に搬送されたんだ。意識は失ってたが、呼吸はあったし、応急処置も済ませていた。命に別状は無いだろうさ」

 

「話しか聞いてないけどよ、あのラスティが奪うはずだった機体…。ストライクだっけか?ソイツがデッカいソードを持ってたのに、急に割り込んだ敵のMSのサーベルが足りないせいで、あれぐらいで済んだみたいだぜ。どういう意図があったのか知らないけど、運が良かったよな」

 

「………たしかに。生きてるだけ、マシ……ですよね」

 

 

ヴェサリウス格納庫内で、そんな会話が行われていた。

ヘリオポリスから奪取されたG兵器のパイロットとなった赤いパイロットスーツを着込んだ少年たち。

デュエルのパイロット、イザーク・ジュール。

バスターのパイロット、ディアッカ・エルスマン。

ブリッツのパイロット、ニコル・アマルフィ。

そして、もう1つのG兵器のパイロットは…。

 

 

「……そうか。キミが月に居た頃の友人が、ヘリオポリスにいたのか」

 

「……はい。アイツがあの機体に乗っているのは、偶然なんです。地球軍にいるのも…!」

 

 

ヴェサリウス内、隊長室。

イージスのパイロットである、アスラン・ザラ。

そして、このヴェサリウスを母艦とするクルーゼ隊の隊長、ラウ・ル・クルーゼが、そこにはいた。

 

 

「だが、その機体を動かせて、なおかつコーディネーターならば、再び戦場に出てくるはずだ。私も、キミに友と争わせるようなことはしたくない。アスラン。先は許可したが、キミにイージスは…」

 

「いいえ。自分が、アイツを連れ戻します。同じコーディネーターなんです!話せばアイツも分かってくれるはずで…!」

 

「……ならば、ストライクの相手はキミの仕事だ。アスラン。ちょうど、あの船には他にも障害がある。イザーク達には、そちらの相手をしてもらう」

 

「……クルーゼ隊長のお話で、エンデュミオンの鷹がいるというのは、お聞きしました。しかし、あのモビルスーツは……?」

 

「どうやら、地球軍の試作モビルスーツはG兵器だけでは無かったようだな。アドバンテージと言ったそうだが」

 

「はい。イージスでロックオンした時、そのように」

 

「ふむ。ビームマシンガン、シールド、そしてビームサーベルに、両肩に付けた砲門……。中距離支援用の試作モビルスーツ、というところか……」

 

「……………」

 

「……不穏分子は、先に潰すに限る。分かるな?」

 

「………はい」

 

 

 

 

 

一方その頃、アークエンジェル艦内。

 

 

「おい、クロト」

 

「なにオルガ。いま僕、見ての通りめちゃくちゃ忙しいんだけど」

 

「整備班が整備してるのは当然だろ?それに、なんかあったら来いって言ったのお前だろ」

 

「いや、たしかに言ったけど。アレって方便とかって分からない?来るなとまでは言わないけど、タイミング考えてくれない?」

 

「今じゃなきゃいつ来るんだよ。武器に関することだってのに」

 

「おお、兄ちゃん…。いや、サブナック二等。何の用だ?」

 

「別に、そんな風に呼ぶなよ。艦長もいないんだからよ。戦うことを選びはしたが、なるべく階級で呼ばれたくはねぇし」

 

「そうか。じゃあ兄ちゃん。何の用だ?」

 

 

アークエンジェルの格納庫内に、オルガは現れた。

今なお整備中のクロトに声をかけているところにマードックもやって来て、オルガは本題に入る。

 

 

「あのグレネード撃ったビームライフルあるだろ?」

 

「ああ、デュエル用のライフルか。あれがどうした?」

 

「いやよ。あのビームライフルはまだ使い道あるからいいんだが、グレネード撃ったんだから、別のにしてくれねえか?」

 

「……ああ。グレネード装填させるのを辞めて、別の付けろってことか?」

 

「そういうこと」

 

「えっ。なんでだよ。グレネード付けれるなら、付けたほうがいいだろ?」

 

「別に武装付けるのに文句言ってんじゃねぇんだよ。あのグレネード、ライフルの下に付いてるから相手にモロバレだし、仮にライフルが壊されたら、誘爆が凄いことになるだろ。それに、まだ使っちゃいねえが、あれ使う時なんてレールガン使う時とそこまで変わんねえだろうし、だったら他にも取り回しのいいやつ付けて欲しいんだよ」

 

「あー………。なんかオレ、いま凄い正論を目の前のオルガからぶつけられてる気がする」

 

「あれに付けれて、取り回しのいい武装となると……」

 

「マシンガンがいいな。あのジンと似たようなやつ」

 

「ああ。それならいけるな。よしクロト、あそこにガッチリハマれるマシンガン部分作るから、死ぬ気で行くぞ」

 

「えっ、あの、おやっさん?僕もう2徹目なんですけど。そろそろ3徹目行きそ」

 

「…………………よし。行くか」

 

 

何やら悲劇的なことを言いながらマードックに引き摺られるクロトを見届け、オルガは格納庫から立ち去る。

後で水でも持って来てやろう。そう思いながら。

 

 

「あっ……オルガさん」

 

「ん…。トールか」

 

 

格納庫を抜け、自室へと向かう廊下で、トールと出会ったオルガ。

 

 

「部屋にいなくていいのかよ?それに、カズイたちは?」

 

「カズイたちは、部屋の中です。ただ、オレたちも、艦長に言いたいことが……」

 

「……………お前ら、まさか」

 

「………この艦にいるなら、自室に引き篭もろうと、何処にいても、そんなに変わらないでしょう」

 

「……ブリッジにいる方が、一番危ねぇぞ。敵のモビルスーツが狙うなら、大体そこだ」

 

「それでも、2人にだけ……。いや、違います。2人が戦うから、じゃなくて…。オレにも、オレたちにも出来ることがあるなら……!」

 

「……なら、オレに止める権利はねぇがよ。だったら、オレたちが帰れるよう、頼んだぞ」

 

「………はい!」

 

『サブナック二等、ヤマト二等、至急ブリッジへ!2人は、至急ブリッジへ!!』

 

「えっ……!?」

 

「………チッ。思ったより早ぇな」

 

 

艦内に、緊急アナウンスが流れる。

アラートまでは鳴っていないが、危機が迫っているというのを感じるのには、充分だった。

 

 

「そうするつもりなら、早く来い!アイツらも呼んどけ!!」

 

「は、はい!!」

 

 

オルガはブリッジへと走り、トールは引き返し、仲間のいる部屋へと戻る。

オルガがブリッジへ着くと、既にキラもそこへいた。

 

 

「早かったな、キラ」

 

「偶然、近くにいたので……」

 

「キミたちを呼んだのは、これだ。この熱源はザフトのナスカ級と、ローラシア級と認識された」

 

 

ブリッジ内のスクリーンに移されたのは、この宙域の地図だった。

その地図には赤い丸と、それを刺す矢印が記されている。

そこにはたしかに、ナスカ級、ローラシア級のアイコンが映されている。

 

 

「………十中八九、クルーゼ隊だ」

 

「……………」

 

「……赤いヤツ、イージスは落とさないようにする。撃って来たからには、撃ち返しはするが、なるべくトドメは刺さない。でいいよな?」

 

「……流石に、それ以上のことは言えないわ。それに、送り出す私たちが言えたことでは無いですが、自分の身を最優先にしてちょうだい。いいわね?」

 

「んなこと、分かってる。だろ?キラ」

 

「…………はい」

 

 

戦いは、近い。




要するに105ダガーのビームライフルみたいなものと思ってください。


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奪われたG兵器

色々注ぎ込んで作った試作兵器が襲って来るって、普通に考えたらめちゃくちゃ恐怖。


「兄ちゃん!悪いが注文された武器はまだ出来ちゃいねえ!予備のカートリッジは装備させとくから、専用ライフルでやってくれ!!」

 

「あいよ!そのカートリッジ、どんぐらい積んであんだ!」

 

「2つ積んである!マシンガン運用ならかなり戦えるし、精密射撃も行けるようにはなる!ただこの前も言ったが、精密射撃だとエネルギーの減りがマシンガンの時とは段違いだからな!その辺り考えてくれよ!」

 

 

マードックの声を聞きながら、コクピットハッチまで走るオルガ。

腰の方に目をやると、たしかにそこには、専用ライフルのエネルギーパックが入ったカートリッジが装備されていた。

 

 

「ドカドカ撃ちまくらなきゃいいんだろ!分かってるっての!」

 

「頼んだぜ!兄ちゃん!」

 

 

コクピットに滑り込み、ヘルメットを装着するオルガ。

すぐにアドバンテージを起動させ、カタパルトまで動かす。

 

 

『オルガさん。準備出来ました?』

 

「おう、ミリアリア。出来て……ミリアリア?」

 

 

そのまま流しそうになったオルガだったが、サブモニターに表示された顔に、思わず二度見してしまう。

マリューか、ナタル辺りの声がするだろうと思っていたところ、まさかミリアリアの声が聞こえるとは思ってなかったからだ。

 

 

『アークエンジェルのCICを務める事になりました、ミリアリア・ハウです。よろしくお願いします!』

 

「……トールが言ってたこと、マジだったか…」

 

『反対のハッチから、キラのストライク。後からフラガ大尉のメビウス・ゼロも発進します。カタパルト、接続確認。システム、オールグリーン』

 

「…よし。いつでもいいぞ、ミリアリア」

 

『………お願いします。アドバンテージ!発進!どうぞ!!』

 

「アドバンテージ。行くぞ!」

 

 

カタパルトが作動し、アドバンテージが発進する。

ミリアリアの言葉通り、反対のハッチからストライクが。

そしてその後少し経ち、メビウス・ゼロが発進した。

 

 

「キラ。今回は……。ああ、エールってやつか?」

 

『は、はい……。高機動戦闘用のストライカーパックだそうで、ストライクが装備してない、ビームサーベルも付いてます』

 

「んで、シールドとライフル持ちね。結局、そういうのが1番やり易いんだよな」

 

『坊主共!話してないでモニター確認しな!ザフトが来るぞ!』

 

「へいへい…。どうせジンが大量に……!?おい!オッサン!!」

 

『なっ…!?冗談だろ…!キラ!アークエンジェル!聞こえるか!敵陣、ジン数機!その他……!』

 

 

敵影を捕捉したオルガとムウは、自分の目を疑った。

ザフトのモビルスーツであるジンが複数いるのは、当然予想していたことだった。

 

 

『イージスの他に、ブリッツ、デュエル、バスター!!ジンと共にこちらへ来るぞ!!』

 

『なんだと!?』

 

『機影識別!シグナル確認!間違いありません!イージス、ブリッツ、デュエル、バスター!!ジンとの兵隊、確認!!』

 

『奪ったGを、全て投入してきたと言うの……!?』

 

(バスター、デュエルとは戦ったことあるが、残りの2機は初見だし、しかもバカMSじゃねえから、性能差もあるってか……!!)

 

「クソっ…!キラ!バスターには気を付けろ!見かけ通り、長距離射撃が得意そうだからな!」

 

『は、はい…!!』

 

 

そうオルガが言った直後、アラートが鳴り響く。

前方のバスターがこちらに狙いを定めた合図だった。

バスターが左腰に装備されているライフル"94mm高エネルギー収束火線ライフル"から、ビームが発射される。

 

 

「チッ…!射撃機ってのはこれだからタチ悪ぃな…!!おっさん!まずはまわりのジンを減らすぞ!」

 

『分かってる!ジン相手は油断しろとは言わんが、G相手に1対1になるなよ!!キラもだ!ストライクに乗ってても、Gの複数相手は避けろよ!ジン相手なら、フェイズシストがある内は何とかなるだろうが、油断するな!!』

 

『は、はい…!フラガ大尉は!?』

 

『開戦の時からジンなんざ何度も相手してる!G相手はしたことないが、こっちのことは気にするな!自分の心配をしろ!!』

 

 

バスターの射撃を避け、作戦行動を決めるオルガたち。

そうしている間にも、ムウが駆るメビウス・ゼロが、先端に装備されたリニアガンでジン1機を撃ち抜いた。

 

 

『くっ…!メビウス・ゼロということは、エンデュミオンの鷹か。クルーゼ隊長の言う通りだな』

 

『オレたちにはフェイズシストがあるけど、ジンはキツいだろうしな…。イザーク、オレが援護するから、オレたちでアレ止めるぞ』

 

『いい案じゃないか、ディアッカ。ニコル、アスラン。残りは頼んだぞ』

 

『は、はい!ジン部隊は、あのキャノン付きへ。僕とアスランが、ストライクを……』

 

『………いや。ニコルは、ジン数機と、あの船へ攻撃を仕掛けてくれ。ストライクは、こちらが見る』

 

『構いませんが……。1人で、大丈夫なんですか?』

 

『……ああ。やられはしないさ』

 

『………分かりました。何かあったら、すぐに呼んでください!』

 

 

一方、クルーゼ隊の方も、方針を決めていた。

それぞれ散開し、接敵する。

 

 

(クソっ…!バカMSなら、この数でもジン程度ならやれたってのに……!!)

 

『ジン数機、そちらに向かってるぞ!大丈夫か!?』

 

「オッサンもこっちの心配はしなくていいっての!デュエルとバスターが向かってんだろ!?どう考えてもそっちのがヤバいだろ!!」

 

『くっ…!アークエンジェル!援護を頼む!ジンの数を減らせば、あちらは撤退するはずだ!!』

 

『バリアント、スレッジハマー装填!ヘルダート、目標照準!!』

 

『目標照準、出来ました!!』

 

『よし!撃てえ!!』

 

 

オルガたちが立てた作戦は、クルーゼ隊の動きにより封殺されていた。

そこへ、アークエンジェルから援護射撃が放たれる。

これにより、ジンの隊列を乱すことに成功する。

 

 

『オルガさん!ジン1機が孤立しています!』

 

「分かってる!蜂の巣だ!!」

 

 

そこへ、オルガ駆るアドバンテージが接近。

専用ライフルから放たれるビームマシンガンで、ジンを撃墜。

 

 

「サンキュー、ミリアリア。だがオレより、キラの方にやってくれ」

 

『あっ、その心配はいらないですよ。ずっと着いてるワケじゃないですけど、キラはトールが。フラガ大尉にはサイが着いてますから』

 

「そうかよ。んじゃあ、あとは……!!」

 

『オルガさん!モビルスーツ接近!ジン数機が、向かっています!!』

 

「クソっ…!マシンガンじゃ、この数は……って、そういや…」

 

 

そう言いながら、オルガはアドバンテージのマニュアルに記されていたことを思い出す。

出力を変えれば、ビームマシンガンから高出力のビームへの切り替えが可能になるということを。

 

 

「………やってみるか。カートリッジの予備もあるんだから、丁度いいし……なぁ!!」

 

 

操縦桿のボタンを操作し、専用ライフルの出力を変更させる。

その後、ビームマシンガンを撃っていた時のように、ボタンを押す。

すると、さっきまで撃っていたビームマシンガンとは全く違う、太いビームが発射され、そこから更に連射する。

まさか同じ銃口からビームが発射されると思っていなかったジンは、突然のことに対応できず撃ち抜かれ、爆発と共に宇宙へ消えた。

 

 

「完全に初見殺しもいいとこだな……。まあ、おかげで助かったがよ。って…!もうエネルギー切れかよ!エネルギーの減りが尋常じゃねえな……!!」

 

『すぐにカートリッジの切り替えを!ジンは減ったけど、そっちにデュエルが……!!』

 

「チッ…!オッサン諦めて、こっち来たってか……!!」

 

 

モニターにエネルギー切れの警告が入り、すぐさまカートリッジの切り替えを行う。

別の警報が鳴り、敵影をロックオンさせると、そこには盗まれた青いG兵器、デュエルが映っていた。

 

 

『キャノン付き!いや、アドバンテージか!支援機を自由にさせるワケにはいかん!!』

 

「チッ…!ビームじゃエネルギーが切れやすいし、マシンガンじゃ決め手に欠けるし、どうする……!!」

 

 

デュエルが撃つビームを、専用シールドで防ぎながら、なんとか距離を保つアドバンテージ。

白兵戦を得意とするデュエルに、接近を許しては危険という判断は正しかったが、その状態をいつまでも保ってはいられない。

 

 

『坊主!今から無理してでも、そっちに向かう!悪いがその代わり、バスターにちょっかいかけてくれ!!』

 

「お、おお?まあ、バスターのがマシ……。いや、デュエルよりは絶対マシか!!分かった!!」

 

『モビルアーマーごと、撃ち抜いてやるよ!コイツを喰らいな!!』

 

 

そこへムウから通信が入り、メビウス・ゼロと、それを追うバスターが接近する。

ディアッカが操るバスターは、左腰に装備された"94mm高エネルギー収束火線ライフル"と、右腰に装備された"350mmガンランチャー"を連結。

左腰のライフルを先頭にすることで、"超高インパルス長射程狙撃ライフル"を形成。

アドバンテージたちの方へと、極太のビームが発射される。

 

 

「オッサン!あんなの当たったら、タダじゃすまねえぞ!!」

 

『元から、バスターの砲撃で当たっていいものなんざ無い!!あのライフルモードは、連射が効かないことが弱点だったはずだ!マシンガンで嫌がらせしといてくれ!!』

 

「それが一番良さそうだな…!お前に好き勝手させるかよ!!」

 

『キャノン付き…!アドバンテージってか!そのマシンガンがビームになってたのは、オレも見えてたぜ!!』

 

 

極太のビームを避け、アドバンテージとメビウス・ゼロがすれ違う。

ビームマシンガンとイーゲルシュテルンを連射させながら、バスターへと接近するアドバンテージ。

一方、連結を解除させ、肩のミサイルポッドからミサイルと、ライフルからビームを発射するバスター。

熾烈な射撃戦が続いた。

 

 

『あのマシンガン、なかなか厄介だな…!!』

 

『ディアッカ!イザーク!撤退信号です!!』

 

『はあ!?』

 

『なんだと!?出撃したばかりなはずだ!!』

 

『さっきのアドバンテージと、敵艦の攻撃で、ジンが多数やられました…!それに、あのアドバンテージの性能、まだ未知ということも…!』

 

『くっ…!たしかに、こっちもこの機体に慣れてはいないが…!』

 

『このまま続けても、仲間を失うだけってか…。体勢立て直すのはいいが、オレたちから吹っ掛けて、このザマとはな……!!』

 

『アスラン!!聞こえてますか!アスラン!!」

 

『あ、ああ…!ストライク……!!』

 

 

ヴェサリウスからの信号を受け、撤退していくモビルスーツたち。

イージスらG兵器の他に、ジンも撤退していった。

 

 

『………?アイツら、妙に素直に引いてったな。と言うより、やけに早過ぎる。艦もまだ叩かれてないのに、なんだ?』

 

「………まあ、アークエンジェルもそこそこ叩かれてたし、助かるっちゃ助かるが……。オッサン、クルーゼってやつ、こんなに引き際良かったのか?」

 

『引き際を誤るような奴ではない。ただ、それを抜きにしても、今回の撤退は早過ぎるようにしか思えないな。盗んだG兵器に、まだパイロットが慣れ切ってないことを考えた、ということを仮定してもな』

 

「……考えても仕方ない、か。キラ!そっちも大丈夫か?」

 

『は、はい……。すみません、大したことも出来ずに……』

 

「こっちこそ、イージスを押し付けちまったからな。イージス……。大丈夫だったかよ?」

 

『………………』

 

「…………互いに無事だったのは確認した。帰るぞ、キラ」

 

『…………はい』

 

 

3機は、アークエンジェルへと引き返す。

同時にハッチは開かれ、帰還に成功した。

やがてアークエンジェルは、航行を始めた。

行先は、軍事要塞アルテミスだった。




今更っすけど、トールたちが入隊するのがめちゃくちゃ早くなってます。
そんでついでに早期に撤退をさせることは出来ましたけど、ヴェサリウスの被弾は大したことなくなってます。なんならほぼ0。

超高インパルス長射程狙撃ライフル。スムーズに言えた時の気持ち良さは異常。


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軍事要塞アルテミス

アルテミスの傘、技術やあの鉄壁さは褒めれると思います。
ブリッツ盗まれたのが絶望的に運が最悪過ぎただけで。


前回アンケート始めたのが投稿してから少し経ってからだったので、現状トップの夜投稿にさせてますが、本決定は次話からにしますね。


アークエンジェルは航行を続け、アルテミスへと到着した。

アルテミスからの通信を受け、マリューたちが素性を明かし、なんとか要塞内部へと入ることができた。

 

 

「やけに入るのに時間かかったな」

 

「そりゃあ、アルテミスはユーラシアんとこだからな」

 

「ユーラシア………。あー、てことはアンタら。大西洋連邦なのか」

 

「言ってなかったけか?まあ、それ抜きにしても、アークエンジェルは新造艦だ。データも登録されてなかったんだろうよ」

 

「…………ふーん?」

 

 

先のクルーゼ隊との戦いから、そこまでの時間が経っていない状況だったため、オルガはまだ格納庫へいた。

近くにいたマードックとそんな会話をし、ストライク、アドバンテージを見上げる。

 

 

(………となると、コイツは……)

 

「おっと、オルガ。お前はまだここにいたか」

 

「フラガのおっさん?なんだよ。そんな野生のキラ捕まえて」

 

「や、野生って……」

 

「まあ、2人にしか出来ない……。いや。アドバンテージはマードック軍曹たちにも出来るか。ともかく、お前らの機体のOS、ロック掛けといた方がいいぜ」

 

「まっ、だろうな。キラ、ストライクのOS、しっかりやっとけよ」

 

「わ、分かりました……」

 

 

降りてからそこまで立ってない、各自の機体のコクピットに2人は戻り、作業を始める。

それから少し経ち、2人はコクピットから降りてくる。

 

 

「おっさん、マニュアルありがとよ」

 

「おう。ただ、よくマニュアル見ながらでもこんなすぐに対応出来たな」

 

「そうか?マニュアルありゃ、出来るだろ」

 

「いや、オルガ。マニュアルあったところで、OSのことに関してそんなすぐに対応出来るって、なかなか出来ないと思うけど」

 

「………まあ、ヘリオポリスで部屋を借りてたのが、その方面のゼミだったからな。キラもそんな感じだろ」

 

「いや、オルガさんの対応速度は僕も凄いと思います」

 

「なんでこの流れで裏切んだよ」

 

 

同意を求めたキラに裏切られたオルガは、そのままキラの肩、どころか首に腕を回し、捕まえる。

ギブの声を上げるキラと、その光景を見つめるクロトとマードックたち。

キラの犠牲のもと、ほんの少しだけ、和やかな光景が広がっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「足付き、アルテミスへと逃げたって?」

 

「みたいだな。偵察のジンが確認したそうだ」

 

 

一方その頃、ヴェサリウス艦内。

アークエンジェルのアルテミス入港を確認したクルーゼ隊は、これからの方針について話し合う。

 

 

「アルテミスとなると、あの傘が厄介だな。出てくるのがメビウスぐらいだとしても、あそこに引き込まれては何もできん」

 

「たしか、要塞全体をビームバリアが囲むんだっけ?そんなことされたら、こちらの攻撃なんて届かなくね?無駄にエネルギーや弾を減らすだけだよなあ」

 

「………それ、仕組みは分かってます?」

 

「仕組み?そんなの、敵見つけたら展開するだけだろ」

 

「………でしたら。僕のブリッツが、急所を付けると思います」

 

「ブリッツが、か。フェイズシストは知ってるが、他にも何かあるのか?」

 

「はい。1つ、面白い機能がありまして。それでしたら、あの傘が首を絞めることになると思います」

 

「ふむ。ではニコル、切り込みを頼めるか?」

 

「ええ。任せてください、アスラン」

 

「んじゃあ、あとはストライクやアドバンテージの対策考えるかね。ストライクの装備の切り替えも厄介だけど、普通にアドバンテージ自体が邪魔なんだよな」

 

「今まで使ってはいないが、あのキャノンも気になるところだ。何が発射されるかは分からないだけ、余計にな」

 

「ストライク………」

 

 

再びの襲撃は、近かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「各位!手を上げろ!その場から動いてはならん!!」

 

「な、なんだよ急に!?」

 

「チッ…。トール、一応言うこと聞いとけ。武装した奴らばっかだからよ」

 

 

アークエンジェルがアルテミスへ入港して少し経ち、アルテミス側からの反応を待っていたアークエンジェルクルーたちだったが。

オルガたちがいた食堂、そしてブリッジなど。艦内にアルテミス側の武装した軍人が乗り込んで来た。

 

 

「これより、他のクルーをここに集める。おかしなマネはしないでもらいたい」

 

「ずいぶんな歓迎じゃねえか。同じ連合なはずだろうによ」

 

「識別コードの無い軍艦を、そのまま友軍艦と認められるか!」

 

「ならなんで入れたんだよ……。へいへい、大人しくしてりゃいいんだろ」

 

 

悪態をついてはいるが、言われた通り両手を上げ、その場から動かないオルガ。

隣にいたトールやカズイもそれに倣い、抵抗はしない。

 

 

「し、識別コードが無いってのは、たしかに怪しまれるとこってのは分かりますけど……。お、同じ連合の服着てますよね?こんなにされることあります?」

 

「…………まっ、奴らにとって識別コードが無いってのは、よっぽど重要だったんだろうよ」

 

「おう、坊主共もここにいたか。となると、連れてかれたのはフラガ大尉や艦長たちだけか」

 

「マジでここに集められてんのかよ。整備班の連中までここに来られると、キツキツどころじゃないんだけど」

 

「悪いな。おかわりだ」

 

「…………マジかよ」

 

 

ブリッジにいたアーノルドたちもやって来て、いよいよぎゅうぎゅう詰めとなったアークエンジェルの食堂。

早く終わってくれと願うオルガだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「マリュー・ラミアス大尉。ナタル・バジルール少尉。ムウ・ラ・フラガ大尉……。たしかに、IDの照合は出来た」

 

 

アルテミス内の、司令室にて。

アークエンジェルより移動させられたマリュー、ナタル、ムウの3人と、アルテミスの司令官、ガルシアがそこにいた。

 

 

「ご足労をおかけして、申し訳ありませんね」

 

「いやいや。しかし、エンデュミオンの鷹とこうして会えるとは、光栄だ。まさか、あんな艦でやって来るとは思わなかったがね」

 

「特務ですので。細かいことは言えません。すみませんが、補給をお願いできませんかね?我々も、すぐに出て行きますので」

 

「ふむ……。何か急を要することがあるのかね?」

 

「一刻も早く、月の本部に向かわなくてはならないのですよ」

 

「それに、ザフトに追われている状況です。迷惑をかけるワケには…」

 

「ザフト…?ふむ。それは、あれのことかな」

 

 

ガルシアがモニターを表示させる。

そこに写っていたのは、一隻のローラシア級だった。

 

 

「なっ……!把握してるなら、何故何もせずに!?」

 

「別に、いつものことだからさ。辺りをうろちょろして、すぐに帰る。燃料を無駄にしているだけだよ。こんな状況で、補給を得て出たところで、どうにもならないのではないかな」

 

「奴らの目的は、我々です。このままここに留まっていては、アルテミスにも被害が……」

 

「被害?このアルテミスにか?ハハハハハ。エンデュミオンの鷹は、ジョークのセンスもお有りのようだ。このアルテミスに、傷一つ付けることは叶わんよ」

 

「しかし司令、やつらは……」

 

「ともかく、君たちは少し休みたまえ。連戦を潜り抜けてきたのだろう?だいぶお疲れのようだ」

 

「ですが、司令!」

 

「補給も何も、ザフトが去ってからで良かろう?月とも通信が出来ようさ」

 

「………アルテミスは、そんなに安全ですか?」

 

「ああ。まるで母の腕の中のようにね」

 

 

自らの要塞の堅牢さに慢心するガルシア。

それを見抜いたムウたちは、一刻も早く脱出したい気持ちでいっぱいだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「いつまでこんな状況なんですかね?」

 

「さあなぁ。艦長たちも戻って来ないしよ」

 

「友軍相手に、暴れるワケにはいかないからな…」

 

「にしても、この扱いは不当じゃありません?不明艦ってのを加味したとしても、艦長たちの素性は割れたころのはずでしょ」

 

「たしかに。フラガ大尉までいるんだから、その辺りはスムーズに進みそうな気するよな」

 

 

食堂にまとめられたクルーたちのぼやきが響く。

クロトが言った通り、この扱いが不当だというのは、この場の全員が思っていたことだった。

 

 

「………と、なると。今頃アイツら、これが大西洋連邦の艦だって分かってるはずだよな」

 

「まあ、普通に考えればそうだよね。と言うか、最初に艦長が言ってたはずだし」

 

「んじゃあ、アイツらの目的は……」

 

 

オルガがその先を言おうとしたところに、食堂へ何人かが入って来た。

アルテミスの司令であるガルシアと、その副官、士官だった。

 

 

「この艦に積んであるMSのパイロットと技術者は誰かな?」

 

「……………」

 

「パイロットと技術者だ。答えろ!」

 

 

手を挙げようとしたキラを、マードックが抑える。

オルガの方は、見向きもしなかった。

 

 

「何故、我々に聞くのです?」

 

「なんだと?」

 

「艦長たちが言わなかったからですか?それとも、聞けなかったからですか?」

 

「………なるほど。そうか、君たちは大西洋連邦でも極秘任務を任された優秀な兵士だったな」

 

「ストライクとアドバンテージをどうするつもりで?」

 

「別にどうもしないさ。公式発表の前に、是非ともお目にかかりたいと思っただけさ。して、パイロットは?」

 

「フラガ大尉ですよ。アドバンテージの方は、今のところ倉庫番でさぁ」

 

「おっと、それはウソだな。こちらのモニターでも、先の戦闘でメビウス・ゼロは確認出来た。ガンバレルを扱えるのは、フラガ大尉だけというのは私も知っているよ。もちろん、あのキャノン付きの機体が出撃していたのもね」

 

「くっ……」

 

「艦長が女性なのでね。違うだろうが、念のため……」

 

「きゃあ!」

 

「ミ、ミリアリア!!」

 

「やめてください!卑怯な!!」

 

「お、おい!坊主!!」

 

「僕が…!僕がストライクのパイロットです!!」

 

「………あー。んで、オレがそのキャノン付きのパイロットだよ。文句あっか?オッサン」

 

 

キラが名乗り上げたことに続いて、オルガも諦めたかのように名乗り上げる。

 

 

「お、オッサン……?い、いやいや…。何を言うかね、キミたちは。キミたちみたいな子供に、あれを動かせるはずがないだろう。ふざけたことを言うな!」

 

「……うるせぇな」

 

「なっ……!?」

 

 

キラよりも前にいたオルガに殴りかかったガルシア。

だがオルガはそれを回避し、腕を引っ張り背負い投げをお見舞いしていた。

 

 

「殴って来たの、そっちだからな」

 

「止めろオルガ!抵抗するな!」

 

「立場ってのがあるってのは分かるけど、何もしてねえのに殴られろってのはゴメンだぜ」

 

「貴様!!」

 

「オルガさん!」

 

「チッ…」

 

「やめてください!」

 

 

自らの上司を投げ飛ばした者に掴み掛かろうとした副官と、その標的だったオルガの間に割って入ったサイだったが…。

 

 

「ぐっ……!」

 

「サイ!ちょっと、やめてよ!キラたちが言ってること、嘘じゃないわ!2人がパイロットよ!」

 

「フレイ!」

 

「またそんなことを……!」

 

「だってキラは、コーディネーターだもの!!」

 

「なっ……」

 

 

吹っ飛ばされたサイを見て、この争いを終わらせたかったフレイ。

だが、その終わらせ方は、良くない方向へと話が転がっていった。




キラはコーディネーターだもの。
して、じゃあオルガは……?


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ナチュラルとして

「キミは裏切り者のコーディネーターだ」や「もう僕たちを放っておいてくれ!!」など、印象深いセリフが出て来たこの話。


フレイの言葉により、騒動が収まったあと、アークエンジェルの格納庫には、沢山の人間がいた。

そのほとんどは、アークエンジェル所属の者ではなく、アルテミス所属の者たちである。

そしてそのまた半分近くが、ストライクとアドバンテージに、それぞれ群がっていた。

 

 

「こんなの見たところで、お前らにどうにか出来んのかよ?」

 

「黙れ。貴様に選択肢などないのだ。さっさと従え」

 

「へいへい…」

 

 

先ほどオルガを捕えようとしたガルシアの部下が、そう言った。

アドバンテージのコクピットで、OS情報のコピー作業をしているオルガだったが、始まる前からずっと苦虫を噛み潰したような顔をしている。

 

 

(ったく……。あの女、止めたかったってことは分かるが、止め方が最悪過ぎるだろ。ここがどこだか分かってんのかよ……)

 

 

その原因は、先ほどのフレイの行動だった。

動機は理解できても、その行動、というより言葉は、容認出来るものでは無かった。

 

 

(……分かってねえんだろうな。つい最近まで、中立国のコロニーで学生してたんだから、そこまで考えが付かなくても、あまり責められたもんじゃねえか……。いや、んなこと言っても問題は問題だ。せめてこの時だけは言わせろ、あの女)

 

 

あれからすぐ、キラとオルガと整備班の面々は連れられたが、他のクルーが残された食堂からは、トールの怒り声が響いていた。

それからすぐに自分も言うことは無いだろうと、オルガはほんの少しだけ配慮していた。

 

 

(………キラが言うならまだしも、オレが言ったところでな)

 

「……貴様はコーディネーターではないのか」

 

「ちげぇよ。オレはナチュラルだ。ただの一般人」

 

「そんなはずがあるか。もう1人がモビルスーツを動かせるのは理解できる。コーディネーターならば、それぐらいは出来るだろう。貴様はナチュラルだと言うのならば、モビルスーツを動かせると言われて、納得出来るか」

 

「知るかよ、そんなこと。出来ないことをとやかく言われるならまだしも、出来ることに対して言われても、どう答えりゃいいんだ。出来るから、としか言えねえだろうが」

 

「…………何者なのだ。貴様は」

 

「だから、ただのナチュラルだよ。ぶっ壊されたヘリオポリスにいた、オーブの一市民だっての。ったく、なんでアンタなんかにここまで言わねえといけねえんだよ」

 

 

自分を睨みつけてくる士官に、オルガはそう答えるしかなかった。

オルガからしたら、モビルスーツを動かせることよりも、オーブの住民カードを持ちながらヘリオポリスにいたことの方が問題だったため、士官の言葉には別の意味で響いていた。

 

 

(………オレが何者かなんて、オレが一番聞きてえってのによ)

 

「………ふん。だが、貴様もナチュラルなら、これからも……」

 

 

士官の言葉は、それ以上続かなかった。

 

 

「な、なんだ!?」

 

「今の振動は、いったい……!?」

 

 

突然の振動に驚く面々だが、一番驚いていたのは、ガルシアとその部下だった。

 

 

「管制!今の振動はなんだ!?」

 

『わ、分かりません!周辺に敵影も…!』

 

「だが、これは爆発だぞ!?」

 

「うわっ…!」

 

「超長距離からの攻撃かもしれん。傘を開け!索敵も急げ!ぐずぐずするな!!」

 

 

再び、振動が響く。

2度の予期せぬ揺れにより、これは敵からの襲撃だというのは、この場にいた全員が理解した。

 

 

 

「おい!この警報はなんだ!?」

 

「え、えっと、これは……」

 

「分かんないのかよ!?」

 

「だったら今すぐに聞いてこい!この複数の揺れは、明らかに攻撃だろ!!」

 

 

一方その頃、他のクルーたちが集められた食堂。

こちらでも揺れを感知したノイマンたちが、アルテミスの兵士に問い詰めていた。

自分たちも、この原因を確かめたいと思った兵士たちは、部屋を出ようとしたところ……。

 

 

「やるよ…!」

 

「ああ…!」

 

『ぐわぁ!?』

 

 

その隙を突き、クロトにトール、サイ。そしてノイマンたちが兵士を押さえつける。

脱出の隙を窺っていたアークエンジェルのクルーにとって、この揺れは絶好の好機だった。

 

 

「ま、待て!!」

 

「そんなことしてられる場合じゃないだろ!」

 

「僕たちは格納庫に行くから、トールたちはブリッジに行きな!」

 

「あ、ああ…!けど、オレたちだけで行っても……」

 

「艦長たちもいい具合に脱出するはずだから、心配いらないって!ぐずぐずしてると、アルテミスと心中することになっちまうよ!」

 

「……分かった!」

 

 

クロトとマードックら、整備班とは別れ、ブリッジへと走るトールたち。

その間にも、振動は続いていた。

 

 

「な、なんだと…!?傘が壊された!?」

 

「チッ……!!」

 

「ぐわっ…!?き、貴様!何を……!」

 

「明らかに襲われてんだろ!だったら、こんなことしてる場合かよ!オレたちが出なきゃ、どうにもできねえだろうが!!キラ!!」

 

「はい……!!」

 

 

そしてその頃、格納庫にいたガルシアに、アルテミスの傘が破壊された報告が入った。

それを聞いたオルガは、近くにいた士官を蹴り飛ばし、アドバンテージのコクピットを閉めた。

それに続き、ガルシアを蹴り飛ばしたキラも、ストライクのコクピットを閉める。

 

 

「出るぞ、キラ!すぐそこに、襲撃犯がいるはずだ」

 

『……………』

 

「……?おい、キラ!聞こえてるか!?」

 

『あっ……。は、はい…!分かりました……!!』

 

 

反応が遅れたキラに引っかかるも、今はそれどころじゃないと、アドバンテージを発進させるオルガ。

その後ろから、ソードストライカーを装備させたストライクも続く。

 

 

『いた!あいつら、今日こそ…!』

 

『くそっ…!こんな所で…!!』

 

「ブリッツ……。コイツが悪さしてやがったのか!」

 

 

出たところには、黒いG兵器。ブリッツがそこにいた。

 

 

(ブリッツって言うと、シャニのフォビドゥンのヤツだったな……。全く関連性が分かんねえが、たしか姿が消えるシステム積んでたんだよな。そりゃ、あの傘におんぶに抱っこなアルテミスなんざボロボロだろうよ)

 

『くそっ……!もう僕たちを、放っておいてくれ!!』

 

「……キラ」

 

 

ブリッツと交戦を続けるストライクに乗るキラから、悲痛な叫びが聞こえて来る。

ガルシアに何かを言われたんだろうということは、オルガにも分かった。

 

 

「とにかく、ここから上手いこと脱出しねえと……」

 

『オルガくん!キラくん!聞こえて!?』

 

「艦長…!いくらこっちが2機とは言え、こんな狭いとこでブリッツの相手はキツいぞ!」

 

『分かってます!2人とも、アークエンジェルまで戻って!反対側の港から脱出するわ!!』

 

「ああ…!分かった!聞こえたかキラ!援護するから、さっさと戻るぞ!」

 

『……っ!』

 

『くっ…!逃げるのか!?』

 

 

迫ろうとするブリッツを振り切り、アークエンジェルへと戻ろうとするストライク。

それを追おうとするブリッツだったが、アドバンテージから放たれる弾幕と、アルテミスに起きた大きな爆発により、追撃は叶わなかった。

 

 

「ストライク、アドバンテージ、着艦!!」

 

「アルテミスから脱出する!最大船速!アークエンジェル、発進!!」

 

 

着艦を確認したミリアリアの声を聞いたマリューにより、アークエンジェルは超高速で発進する。

後ろでは、大きな爆発が起き、アルテミスは半壊した。

 

 

「キラ、オルガ!大丈夫だったか!」

 

「ああ。オッサンたちも、無事だったな」

 

「……………………」

 

「………キラ?」

 

 

帰艦した2機のいる格納庫に、オルガたちは降りる。

そこへムウが声を掛けてきたが、キラは返事もせずに、格納庫から出て行った。

 

 

「キラはどうしたんだ?」

 

「………あのアホ司令に、なんか言われたんだろうな。ちょっと様子見てくる」

 

「あ、ああ…。悪い、頼んだ」

 

 

それに続き、オルガも格納庫から出る。

行き先は、キラの部屋だった。

 

 

「キラ。大丈夫か?」

 

「………………」

 

「………入るぞ」

 

 

部屋の扉をノックするが、返事は無い。

先に一言を告げてから、オルガはキラの部屋へと入った。

 

 

「………あのアホに、なに言われたんだ」

 

「…………………」

 

「……コーディネーターがどうこうとか、言われたか?」

 

「………裏切り者のコーディネーター。地球軍につくコーディネーターは貴重……」

 

「………ったく、好き勝手言いやがって」

 

 

ガルシアに言われた言葉は、キラに大きな穴を開けていた。

それを知ったオルガは、キラが寝ているベッドに座り込む。

 

 

「裏切り者も何もねぇだろ。元々ザフトにいたってんならそうだろうが、お前はただの民間人だったんだ。何を裏切るってんだ」

 

「………………」

 

「………いや、そうだったな。友達がいたんだよな、あっちには」

 

「………自分の意思でストライクに乗ったのに、いざああ言われると、ショックを受けている僕自身にも、嫌気が差して来てしまって……」

 

「なら、どうすんだ。オレ1人でも……」

 

「………いえ。戦います。僕が選んだんですから」

 

「………そうかよ」

 

「……でも、ありがとうございます。オルガさん」

 

「あん?」

 

「わざわざ、部屋にまで来て、心配してくださって」

 

「………礼言われるこたぁねぇよ。フラガのオッサンたちも心配してからよ、後で一言言えよ」

 

「……はい」

 

 

それからしばらく、オルガはキラの部屋にいた。

その後2人は、言葉を交わすことは無かった。




精神的にはかなりマシですね、ここのキラ。


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ユニウスセブン

作品中でも重要な出会いのうちの1つですね。


アルテミスを脱出したアークエンジェルは、航行を続けていた。

しかし、その間にも、アークエンジェルの中で、1つの大きな問題が発生していた。

 

 

「……水が足りない、か」

 

「ヘリオポリスでもうちょっと物資とかを積んでから、出航のつもりだったらしいからね。アルテミスでも貰えなかったしさ。ここまで持っただけ、まだマシだと思うけど」

 

「あんなことがあったなら、仕方ねえんじゃねえの。んじゃ、話した通りこれも武装プランな。紙にまとめといたから置いとくぞ」

 

「クッソぉ!誤魔化せなかった!!」

 

 

後ろで吠えるクロトの声を聞き流し、格納庫をあとにするオルガ。

話を逸らそうとしてたのが丸見えだったため、あまりクロトの話を広げようとはしていなかったが、問題自体は受け止めていた。

 

 

(どっかで貰うなり拾うなりしなきゃいけねえ、か。しかし、どうすりゃいいかね)

 

 

そう考えていたオルガが向かっているのは、アークエンジェルのブリッジ。

クロトが知っているなら、今ごろマリューたちが何か手を打とうとしているだろうと考えてのことだった。

 

 

「邪魔するぜ、艦長」

 

「オルガくん?どうかしたかしら」

 

「水不足、どうすんのかなと思ってよ」

 

「………………そう、ね」

 

 

マリューのその顔は、覚悟を決めたような顔だというのは、オルガにも分かった。

 

 

「……なんか、決まったのか?」

 

「……ここから近い宙域へ向かいます。目的は、移動中で」

 

「目的ぐらい、流れで分かる。手が必要になるんだったら、手伝いはするぞ」

 

「…………………」

 

「…………人死にが関わることじゃねえんだろ。だったら、そんな気にしないでいいだろうが」

 

「……ならば、キラくんやトールくんたちも頼めるかしら」

 

「へいへい」

 

 

その声を聞いたオルガは、ブリッジから退出する。

キラやトールたちに話を通しに行くため、それぞれの部屋へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

「トール、サイ。大丈夫か?」

 

『はい。こちらは大丈夫です』

 

『こっちもです、オルガさん』

 

「周りに敵はいないんだ。落ち着いて動かせよ」

 

 

アークエンジェルから、4機の宇宙用モビルアーマー"ミストラル"が出撃する。

その随伴機として、ストライクとアドバンテージの姿もあった。

 

 

『……………』

 

「キラ。周りの警戒はオレもやってる。そこまで気負わないでいいぞ」

 

『……あっ。は、はい……』

 

(…………やれやれ。さっき、あの女が謝ってたのはオレも見たが、本当にカタチだけだったな。キラ自身は気にして無いようだし、あの女も、状況や諸々考えたら一定仕方ないとこはあるんだろうが……)

 

 

キラの曇った顔を見て、オルガは思考を進める。

先のフレイのこと、そして、それ以外にも心当たりはあった。

 

 

「………ユニウスセブン、か」

 

『あれって、プラントの……』

 

「……周りに浮かんでる戦艦からの採掘は、オレとトール、サイでやる。ミリアリアとカズイ、キラはユニウスセブンから頼むぜ」

 

『えっ?オレは構いませんけど…』

 

『……わ、分かりました……』

 

「キラ、頼んだぜ」

 

『はい。そちらも、気を付けて』

 

 

2組に分かれて、作業を始める。

多数が浮かんでいる戦艦の瓦礫からは、使用可能な弾薬など。

ユニウスセブンからは、飲用水を求めての作業だった。

 

 

(……フラガのおっさんの言う通り、水が見つかって喜ぶほど、オレは堕ちちゃいねえが……。あのすげえ爆発、核のせいだったよな、コレ)

 

 

オルガ自身が、こうしてキラたちと出会う前、逆行する前のこと。

ボアズに向けての核攻撃、そしてプラントへの核攻撃未遂。

それを護衛していたのは、他でも無いオルガだった。

 

 

(……悪いが、そこまでは責任感じねえぞ。オレは関わってねえんだからな。思うことが1つも無いってことはねえが……。せめて、また核が使われなきゃいいと思うことだけだ)

 

 

そう思う反面、どうせまた使われることになるんだろうというのは、オルガ自身も、諦めに似た感情を抱いていた。

逆行前、自分の形式上の上司であるムルタ・アズラエルが、どこかからか手にしたものが関係していることぐらいしか、オルガは知らなかった。

彼自身が現状で出来ることは、何もない。

 

 

「………あっ、戦室とかは見ない方がいいぞ。見なくても、作業はできるだろ?」

 

『えっ?は、はい…。現状、出来てますけど……』

 

『なんでです?中まできっちり探した方がいいんじゃ……』

 

「………こうなる前は、普通に動いて、中にも船員はいた。だが今じゃこの有り様。あとは、分かるだろ」

 

『………………あ、あー…』

 

『…………………』

 

「……そういうこった。カズイは取り乱しそうだし、万が一ミリアリアに見せたとなると、後味悪い。消去法だったが、2人に頼んだんだよ。悪かったな、トール、サイ」

 

『い、いえ…。そういうことなら、気にしてませんよ』

 

『……たしかに、ミリィが見ることになるかもしれないぐらいだったら、オレが代わりにでも……』

 

「だから、あんま周りとか見ないようにしてくれ。オレも目星は付けとくからよ」

 

 

オルガの声により、慎重に作業を進めるトールたち。

キラたちの方も、アークエンジェルの方へと進んでいるのが見える。

これを何往復か繰り返すのは、ここにいる皆も察しがついていた。

 

 

「……しばらくやったし、ミリアリアは戻っていいぜ。お前さんに、やってもらいたいことがあるみたいだ」

 

『私に…ですか?』

 

「お前さんもオーブの生まれなら、知ってるよな。折り紙のアレ。えーっと、なんだっけ。あの鳥……」

 

『………ああ。折り鶴ですか?』

 

「ああ、そうそう。それだそれ。あっちでもやってるみたいなんだが、人が足りないみたいでよ」

 

『でしたら、私もやりますよ。小さい頃にお母さんに教わったから、覚えてますし』

 

「おう。カズイ、あともうちょっと頼んだぜ」

 

『は、はい……』

 

 

そうして、ミリアリアがアークエンジェルに戻り、交代でアーノルドたちが来てから、しばらく経つ。

作業の終わりが見え始めた頃に、ミリアリアの乗ったミストラルがアークエンジェルから発進する。

 

 

『…………じゃあ、お願い』

 

「…………はい」

 

 

マリューの声を聞いたミリアリアは、その腕に抱えた折り鶴をユニウスセブンに放つ。

それは、ミリアリアたちが折った、弔いのためのもの。

アークエンジェルの艦内でも、乗員たちが敬礼をしていた。

 

 

(……………………死んじまったら、その想いが届くかなんて、分かりゃしねえ。オレに、そんな人なんていなかったし。そもそも、死んですぐにここに来たんだから、分かるはずもねえんだがな)

 

 

そう思っているオルガも、警戒の目を一時的に止め、ユニウスセブンに散らばる折り鶴たちを見届けていた。

 

 

(……祈りなんかじゃなかったが、あの時もシャニに届いてたかなんて、オレには分からねえからな。だが、そういう行動や気持ちってのは、今を生きてる人間にしか出来ねえものってのは、今のオレなら分かる。こんなクソったれな世界だったんだ。向こうってのがあるんなら、せめてそっちでぐらい、静かにいれたらいい)

 

 

それはいつの間にか、目を閉じ、少しの祈りに繋がっていた。

 

 

「………なんて、ガラでもねえ。そろそろ作業の終わりも見えたし、周りの警戒を………ん?」

 

『オルガさん…!むこうに、偵察型のジンが……!!』

 

 

オルガがそれを確認したと同時に、キラの声が聞こえる。

モニターに映ったのは、紫色をしたジン。長距離強行偵察複座型ジンのものだった。

外見からも分かる通り、両肩に配置されたレドームにより、長距離の偵察を可能にする機体だった。

 

 

「みんな、聞こえるか!アドバンテージから正面、4時の方向に偵察型のジンが見える!作業止めて、引き下がるの待つぞ!!」

 

『えっ、えええ!?』

 

『カ、カズイ!落ち着けって!!』

 

『くっ……!なぜこんなところに……!』

 

 

アーノルドの言う通り、こんなところに偵察型ジンが来ることなど、全く予想していなかったオルガたち。

とにかく、向こうが撤退していくのを待つしか無かった。

 

 

(ロックオンなんかしたら、さすがに気付かれる。だが、あれを使えるようには……)

 

『行ってくれ…!そのまま……!!』

 

 

キラの願い通り、偵察型ジンは撤退を始める。

 

 

『よし…!』

 

「まだだ。もう少し待て。油断は……」

 

 

油断はするなと言う前に、通信越しに警告が鳴ったのが聞こえた。

それは、アーノルドたちが乗るミストラルが、偵察型ジンに捕捉されたものだった。

 

 

『ぐっ………!!』

 

『くそっ…!撃ってきた……!!』

 

『アーノルドさん!?チャンドラさん!?』

 

「チッ……!撃ってきたのは、そっちだからな……!!」

 

 

攻撃を始めた偵察型ジンを、野放しには出来なかった。

すぐさま偵察型ジンをロックオンしたアドバンテージは、両肩からレールガンを発射する。

アドバンテージまで捕捉していなかった偵察型ジンは、レールガンに撃ち抜かれ、撃破された。

 

 

「……初めて使うのが、こんな時ってか………」

 

『すまない…。助かった』

 

『ありがとな、オルガ……』

 

「そっちが当たらなかっただけ、よかったぜ……。トールたちも大丈夫か?」

 

『は、はい…。こちらは全員無事です』

 

「……艦長!こっちの様子伝わってんだろ?そろそろ戻っていいか!他の奴らが来たら、ミストラルじゃ持たねえぞ!」

 

『もちろんです。作業途中でも、そのまま戻ってきてください』

 

「……よし。お前ら、戻るぞ」

 

『………すみません、オルガさん』

 

「なるべく一撃で仕留める必要があったんだ。だったらこっちがやった方がいい。気にすんな」

 

 

そう言って、キラからの通信を切ったオルガ。

アドバンテージとミストラルたちは、アークエンジェルへと戻るが……。

 

 

 

 

 

 

 

「………お前、また救命ポッド拾ったのかよ」

 

「見つけて、しまったもので……」

 

「別に責めてるワケじゃねえけど…。とことん縁があるな、キラ」

 

「準備できました。開けますぜ」

 

 

それから少し遅れて、キラの乗るストライクが帰艦した。

ストライクの腕には、救命ポッドが抱えられていた。

マードックの開放準備が整い、周りの兵が銃を用意し、万が一に備える。

 

 

『ハロ、ハロ』

 

「……………?」

 

 

呆気に取られたオルガだったが、それはこの場にいる全員も同じだった。

救命ポッドを開けると同時に出てきたのは、ピンク色をした小さな球体状のロボット。

そして、そのすぐ後から……。

 

 

「ありがとう。ご苦労様です」

 

『ハロ、ラクス、ハロ』

 

 

同じく、ピンク色の髪をした女の子がそこから現れた。

そのロボットの言った通り、彼女の名前はラクス…。ラクス・クライン。

キラと同じく、コーディネーターだった。




ミストラルに夢中で隠れてたアドバンテージに気付かず、的確にレールガンで撃ち抜かれた長距離強行偵察複座型ジンのパイロットにも黙祷。


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平和の歌姫

劇場版の映像が出ました。
正直今更アークエンジェルが沈むとこ見たく無いんですけど、めちゃくちゃ不穏な映像でしたね。
あと令和の世でリ・ガズィ思い浮かべる変形見れるとは思いませんでした。個人的にはあの変形好きなんすよね。


えー、分かると思いますけども。二段落目までとそれ以降までにかなりの期間があり、ここ書いてるまでとも期間空いております。そりゃ何度か映像公開のタイミングありましたからね。なんなら主題歌も発表されました。西川アニキありがとうございます。
ここまで時間かかった原因に関しては、後書きの方で言い訳しますぬ。
解決としましては、想定してた出番を8割ぐらいカットしました。先送りってヤツです。


「ラクス・クライン…かぁ」

 

「プラントの歌姫だよな。なんでこんなとこにいたんだ…?」

 

「さっきの特殊なジンと、関係してたりするのかな…?」

 

「さぁな。オレが堕としたから、知りたきゃラクス・クライン本人に聞くしかねえが…」

 

「本人のあの反応的に、ザフトが探してたってのは当たってそうじゃない?降りるまでこの船、ザフトのだと思ってたみたいだし」

 

 

ラクスが救助されてから、少しが経った。

オルガたちは食堂へ集まり、現状把握と指示を待っている。

一方で、その渦中の人物であるラクスは、この船の責任者とでも言うべきマリューやナタル、ムウが話を聞いてる最中。

 

 

『クロト。もうちょっとそっち寄ってくれよ。聞こえないだろ』

 

『おい、トール!あんま押すなっての!艦長にバレるだろ…』

 

『クロトも声がデカいぞ。そんな声出しちゃ…あっ』

 

『なぁにしてんだオマエら。あとで聞けゃあいいだろうが。とっとと搬入作業に戻るぞ』

 

『オルガさん!首根っこ引っ張らないでくださいよ!』

 

『ボクに至っては右耳なんだけど!?い、痛いってオルガ!』

 

『………トールとクロトがいて助かったな。キラ、カズイ』

 

『う、うん……』

 

『そうだね…』

 

 

そんな一幕もあったが、搬入作業も終わり、現在に至る。

 

 

「………あのジンに僕たちが見つからなければ、あの子は…」

 

「だから、撃ったのはオレだって言ったろ。お前が気にすることはねえぞ、キラ」

 

「クライン…。クラインってのも、聞き覚えあるんだよな…」

 

『各員に告ぐ。これより、この宙域を移動する。繰り返す。これより本艦は、ユニウスセブンを離れ、移動を開始する。各員は、各々の準備を整えよ』

 

 

そこへ、ナタルの艦内放送が響く。

諸々の準備が終わり、アークエンジェルは航行を再開したようだった。

 

 

「各々の準備って、食事とか?」

 

「まあ、トールたちの場合はそうなるかね。ボクは格納庫に戻るけど」

 

「へぇ。まだ仕事あんのか。忙しいこって」

 

「オルガが頼んだ武器の製造だよ!!どの口が言ってるんだよ!?」

 

「えーっと。じゃあ、人数分のご飯の準備は出来たから。あともう1つ…」

 

「ミリィ?いつの間に準備してたんだ」

 

「あなたたちが喋ってる間、ずーっと1人でやってたんだけど?」

 

「………ご、ごめん…」

 

「そらよ、クロト。これでも入れとけ」

 

「おっと。またゼリーかよ。貰っとくけど…」

 

「これぐらいしか食えねえだろ。ご苦労なこって」

 

「誰のせいだと思ってんの?ん?」

 

 

静かに怒りを溜めるクロトと、どこ吹く風な態度のオルガ。

それを半笑いな表情で見るキラたちという、微妙な空間が広がっていた。

 

 

「じゃあ、ボクは格納庫に…おっと」

 

「みんな、食堂にいたのね」

 

「フレイ」

 

 

そこへ、フレイが入って来る。

ヘリオポリス組の最後の1人が集まり、歳の近い子供たちが集まった形となった。

 

 

「ちょうどよかった、フレイ。これ、持って行ってくれる?」

 

「持って行くって、誰によ?」

 

「あの女の子に。一応こうなる前に、マリューさんに許可を取ったから大丈夫だと…」

 

「あの子に!?イヤよ!そんなの!!」

 

「うるっさ。どうしたんだよ急に」

 

「あの子ってコーディネーターよね!?しかもザフトのなんでしょう!?そんな子のところに行けって言うの!?」

 

「お、おい…!そんなこと言うもんじゃ…」

 

 

近くにいたクロトが、動揺しているフレイを止めようとするが、そう簡単に止まりはしなかった。

 

 

「キラは違うっていうのは、流石に分かってるけど…。コーディネーターって、頭の良さも、運動神経も全然違うのよ。何かあったらどうするのよ!」

 

「何かあったらって…」

 

「飛びついたりってこと…?あの子はそんなことしないと思うけどなぁ…」

 

「そんなの分からないじゃない。コーディネーターの能力なんて、見かけじゃ分からないのよ!」

 

「見かけじゃ分からないってのは、ナチュラルも同じだろ」

 

「で、でも!コーディネーター程じゃないでしょ!」

 

「ナチュラルだって、薬漬けにでもされりゃ、コーディネーターと同じぐらいの能力を持つことだって出来るだろ」

 

「そりゃ外的な要因で力を付けりゃ…って、薬漬け!?」

 

「あ、あなた急に何を…!?」

 

「………たとえ話だぞ?」

 

「えっ…あっ、そ、それは分かってる…けど……」

 

 

オルガがたとえ話と評した今の言葉で、一瞬だけフレイの勢いは止まった。

それは、クロトやトール、キラたちも同じだった。

たとえ話にしては、あまりにも自然な流れで出された為、一瞬でも流しそうになり、それを認識するのに少しの時間がかかってしまったからだった。

 

 

「…とにかく、武器も持ってない一般市民が、敵軍の新造艦で暴れるようなことはしないだろ。仮にお前が逆の立場だとして、そんなことするか?」

 

「それは……」

 

「あら、何の騒ぎですの?」

 

 

そこへ、あまり耳覚えのない声が響いた。

フレイやクロトの後ろから、その声の主は現れた。

 

 

「ラクス・クライン…!?」

 

「な、なんであなたがここにいるのよ!?」

 

「まあ。驚かせてしまったのなら、すみません。わたくし、喉が渇いてしまって…」

 

「答えになってないわよ!なんでザフトの子が、勝手に歩き回ってるのよ!?」

 

「あら。勝手にではこざいませんわ。わたくし、何度も許可を求めましたのよ?それに、わたくしはザフトではありません。コーディネーターですが、軍に所属してはおりませんもの。貴女も、地球軍では無いのでしょう?」

 

「まあ…。これに関しては、ラクス・クラインの言う通りだと思うけど…」

 

「ちょっと!なんでこの子の肩を持つのよ!」

 

「肩を持つって言うか、アンタは拒絶し過ぎと言うか…」

 

 

フレイがその場から離れ、フレイとラクスの間にいるクロトがそう言うが、フレイの姿勢は変わらない。

だが、クロトの意見は、フレイ以外にこの場にいるキラたちと同じものだった。

 

 

「ご挨拶が遅れましたわね。ご存知の様ですが、わたくしは…」

 

「ちょっと。やだ!やめてよ!」

 

「あら…?」

 

「冗談じゃないわ!なんで私があんたなんかと握手しなければいけないのよ!」

 

「……?」

 

「コーディネーターのくせに、馴れ馴れしくしないで!!」

 

 

それを聞いたラクスは、先ほどとそこまで変わらない様子だった。

だが、それ以外。この言葉を聞いて、衝撃を隠せない者がいた。

 

 

「………………」

 

 

ラクス以外は、今の言葉に少なからず、表情を歪ませていたが、一番ショックを受けていたのは、もちろんと言うべきか。

この場にいる、ラクス以外のコーディネーターである、キラだった。

 

 

「………もういい。分かった分かった。悪いがサイ、コイツと一緒に、部屋で飯食っててくれねえか?」

 

「………はい。行こう、フレイ」

 

「ちょっとサイ?急になによ」

 

「いいから。いくよ」

 

「なによ、もう……」

 

 

オルガの言葉により、サイとフレイが食堂から去った。

 

 

「………あの子、ブルーコスモスじゃないんだよね?」

 

「お父さんはそうらしいけど、本人は違うって…」

 

「ただ、あの感じだと、そんな変わんないようにも見えるけどね…」

 

「キラ。悪いがその…ラクスの飯を運んでやってくれ。そうしたら、お前も飯だ」

 

「………………」

 

「おい、キラ。食えるうちに食っとけ。それがお前の仕事だ。出来るだろ」

 

「………あっ。は、はい…」

 

「また部屋に戻るようで悪いけど、我慢してくれや」

 

「あら。また1人であの部屋にいないといけませんのね…」

 

「つまんねえだろうが、仕方ねえだろ。ここが地球軍の船ってことは、アンタも分かってるはずだろ?」

 

「皆様とお話しをしたかったのですが…。仕方のないこと、なのですよね。分かりましたわ。すみませんが、お願いできますかしら?」

 

「う、うん…。じゃあ、行こうか」

 

「………今度こそ、ボクは格納庫に行くから」

 

「ああ。頼んだぜ」

 

 

そうして、キラとラクス、そしてクロトも去って行った。

残ったのは、オルガとトール、カズイ、ミリアリアの4人だった。

 

 

「………いや。オレもちょっと用事あったな。悪いが3人は、先に飯済ませててくれ。キラが戻ったら、頼むぜ」

 

「あっ、はい…。えっと、オルガさん…」

 

「ん?」

 

「………いや、何でもないです」

 

「そうか?じゃあ、行ってくるぜ」

 

「………オルガさん、さっきの…」

 

 

その最後のトールの言葉は、オルガに聞こえることは無く、食堂の扉は閉まった。

 

 

(クロトのヤツにもう一個言うの忘れてたな。今度はシールドなんだが…)

 

 

オルガの目的は、武器の他に、シールドのバリエーションを増やしたいことを伝えることだった。

それを忘れていたオルガは、格納庫へと向かうが……。

 

 

「ん……?これって、歌声か…?」

 

 

曲がり角の奥から、聞き覚えのない歌声が響く。

女の声ということは、オルガにも分かった。

 

 

「ああ。歌姫だもんな。そういうことか」

 

 

そこから、これはラクスの歌声だというのも、すぐに理解した。

 

 

「………いい歌声だな」

 

 

それに誘き寄せられるように、曲がり角へと近付くオルガ。

角の向こうには、キラとサイがいた。

 

 

「ん。サイまでいたのか?アイツとの飯、もう済ませたのかよ」

 

「あっ、オルガさん。フレイなんですけど、あまり食欲湧かなくて、あとで食べるって言われて。オレも食堂に戻る途中だったんですよ」

 

「そうかよ。んじゃあ、先に飯にしとけ。オレはちょっと用事あるからよ」

 

「分かりました。キラ、先行ってるよ」

 

「………う、うん…」

 

「………?」

 

 

サイと対照的に、キラの顔色が優れないことに、オルガは気付いた。

その間にも、ラクスの歌声は響く。

 

 

「………………」

 

「………おい、キラ。さっきのことは、気にすることねえぞ。あの女がああいう性格だってのは、アルテミスでもそうだっただろ」

 

「………あの、オルガさん」

 

「ん?どうした」

 

「この子の歌声、どう思いますか…?」

 

「どうって、綺麗だなって。お前はそう思わないのか?」

 

「いや、その……」

 

「まあ、強いてあげりゃあ…」

 

「……!」

 

「知り合いがうるせえのしか聞かなくて、音漏れが酷くてな。それに比べるのもラクスに悪い気はするが、それとは大違いってぐらいか。さすがは歌姫ってところじゃねえのか?」

 

「えっ……」

 

「………本当にどうした、キラ。ポカーンとしやがって」

 

「えっと。オルガさんの記憶って、自分の過去のことを、ほとんど忘れちゃったんですよね?その知り合いって、どこまで覚えてるんですか?」

 

「あー………。そう言えばそうだな。名前や顔までは行かねえが…それだけは浮かんだってとこか?」

 

「ってことは、ほんの少しでも記憶が戻ったってことですか!?よかったじゃないですか!オルガさん!」

 

「………………」

 

 

ふと頭に浮かんだシャニのことを、そうやって誤魔化したオルガだったが、それを記憶が戻ったと思ったキラは、喜びの笑みを浮かべた。

それを見たオルガは、罪悪感を感じると共に、安心もしていた。

 

 

「………お前はいいヤツだな、キラ」

 

「えっ…?」

 

「そら、早く食堂に戻れ。オレもすぐに行くからよ」

 

「あっ…、はい。オルガさん」

 

 

そう言われたキラは、食堂の方へと戻って行った。

 

 

(オレのやること、決まったな)

 

 

キラに見えないところで、オルガは1人、覚悟を決めた。

やること自体は変わらないが、心持ちがたしかなことになったのは、オルガ自身にとって、大事なことだった。

 

 

(しかし、オレってこんなに、コーディネーターとちゃんと接することが出来たんだな。周りにトールたちがいたキラはともかく、ラクスとも普通に出来た)

 

 

そこで思い返すのは、今までのコーディネーターとの交友関係のことだった。

逆行する前は、生体CPUとされたこともあり、オルガが覚えてる範囲ではコーディネーターと接したことがなかった。

それもあり、ナチュラルに囲まれていたキラ以外のコーディネーターと接することに、わずかな不安を抱いていたオルガだったが、その心配は無用だったようだ。

 

 

(もしかしたら、オーブの市民ってことになってたことと、何か関係あるのかもな?あそこは中立国だ。ナチュラル以外に、コーディネーターも…)

 

 

そこまで考えていたオルガだったが…。

 

 

『オルガ!』

 

「………?」

 

 

オルガに覚えの無い声が、脳内に聞こえた。

それは、逆行前も、逆行してからも聞き覚えの無い、男の子の声。

 

 

 

「………気のせい、か」

 

 

周りには、そんな男の子などいない。

今も聞こえるのは、ラクスの歌声だけだ。

気のせいと断じたオルガは、すぐに行くというキラとの約束を守るため、格納庫へと急いだ。




なんか初期ラクスのキャラを掴むの、ザクIIで大気圏突入するよりめちゃくちゃ難しかったです。どういうことなんですかね?
自分今まで色んな作品のキャラのセリフを書いたり、即行で演じたりしてたんですけど、ここまでキャラを掴むのに時間掛かったの初めてなんですよね。
ラクス・クラインというキャラと相性が致命的に悪いのかと思ったんですけど、試しに書いてみたエターナル搭乗時辺りのラクスはそうでもなかったので、初期のラクスとめちゃくちゃに相性が悪かっただけみたいです。他のSEED小説書いてる人凄い。
「自分の敵を全て倒せば平和になりますわ」とかいうエアプ以下のラクスが生まれるところでした。今年一のホラーです。



キラくん良い子ですね(作者感


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フレイの叫び

正直ムーブは擁護できないところが多いてか殆どだけど、目の前で父親殺されたと考えると、一概に全部悪いとは言えないんだなぁ。

ところでPVなんすけど。あの神妙な表情してるアスランなにしてるんだ?


「シグナル受信。友軍艦のものです」

「ネルソン級1。ドレイク級2ね…。回線を開いてちょうだい」

「はい。えっと…これですか?」

「そうだ。そのボタンを押すんだ。それから…」

「先遣隊のものだと思われます。となると、あれは…」

「識別確認!第8艦隊所属のものです!」

 

 

 航行を続けていたアークエンジェルは、友軍艦のシグナルを受信していた。それよりも前のやり取りのことから、ナタルは第8艦隊のものだと当たりを付けていたが、的中したようだ。

 

 

『こちら、第8艦隊所属艦モントゴメリ。アークエンジェル、聞こえるか?』

「こちら、アークエンジェル。マリュー・ラミアス大尉です。コープマン艦長、お久しぶりです」

『ああ。ハルバートン提督も気にしていたが、致命的なことにはなっていないようだな。バーナードとローと共に、補給と迎えに来た。もう少しの辛抱…』

『フレイ!フレイは無事なのか!?』

『ア、アルスター外務次官…!』

「フレイ…?それに、アルスターと…」

「ジョージさん!?その艦に乗っているんですか!?」

『おお!サイくんか!ブリッジにいるということは、志願したのかね?』

「え、ええ…。ですけど、何故その艦に乗って…?」

『フレイがその艦に乗っていると聞いて、居ても立っても居られなくてな』

 

 

 そんな話が続き、第8艦隊先遣隊との合流を目指すことになったアークエンジェル。

 そのことは艦内でも共有され、オルガたちはもちろん、艦で保護されている民間人にも知らされることになった。

 

 

「第8艦隊というのに合流出来れば、我々は地球へ帰れるのか…?」

「確証は出来ねえけど、少なくともアンタたちのことも報告されてはいるはずだからな…。地球帰還用のシャトルとかは用意されててもおかしくはねぇ」

「ほ、本当ですか!?」

「だから、確証は出来ないって言っただろ。仮にそうだったら、なんとか守ってはやるとしかオレには言えねえよ」

 

 

 その頃、オルガはフレイと一緒にヘリオポリス周囲の宙域で拾ったポッドに入っていた民間人たちの質問攻めに遭っていた。

 今までも、他のアークエンジェルの軍人に説明はされていたが、今の第8艦隊と合流するという明らかな変化に、敏感になっていたのだろう。

 

 

(変に応えない方がいいんだろうが…)

「おかあさん…」

「大丈夫よ。この艦のお兄さんたちが、守ってくれてるから」

「うん……」

(………あの声を聞いてから、妙に子供を見掛けると安心させようとさせちまうな。オレって、そんなことするヤツだったか…?)

 

 

 小さな娘を心配させまいとする母親を、複雑な心情で見るオルガ。

 少なくとも、生体CPUとされていた頃にはしていなかった言動のため、自分でも驚いているところだった。

 あの時、男の子の声を聞いてからそういう気持ちが芽生えたのではないか?という心当たり自体はある。

 だが、だからと言って何故それに繋がるのか?という疑問の答えにはなっていない。

 

 

(考えても仕方のないことだろうが…。その内分かるって保証もねぇしな…)

「あっ…。すみません。時間を取らせちゃって」

「緊急時でもないから、問題はねぇよ。じゃあ、オレは戻るぜ」

 

 

 そう言って、オルガはその場を去る。向かうのは、格納庫だ。

 

 

「よう、クロト。さっき言ったシールドのことなんだけどよ」

「聞いたよ。地上戦用のでしょ?」

「おう。だから急ぐ必要はねぇぞ」

「分かってるよ。だから今は先に頼まれてたデュエルのライフルの改造を進めてるのさ」

「悪いな。仕事増やしてよ」

「別に。さっきはああ言ったけど、オルガたちに命預けてる状況なワケだし」

「そうかよ。じゃあ、その調子でストライクやメビウス・ゼロの整備も頼むぜ」

「それは俺たちがやってるぜ。オルガの兄ちゃん」

「おやっさんたちがやってるから、大丈夫」

「ん…?じゃあアレか?お前アドバンテージ専属なのか」

「どんどん投げてくれば自然とそうなるよ!」

 

 

 若干青筋を立てながら、オルガへと詰め寄るクロトだったが、そうする前に手を動かせとマードックに耳を引っ張られ、格納庫の奥へと連れられた。

 周りの整備班もいつものことだと、全く気にする様子は無い。

 

 

「……そういや、艦隊と合流するって言ってたから、どんなのか聞いとかないとだな。たしか、第8艦隊って…」

『緊急態勢!緊急態勢!パイロットたちは、出撃準備を!』

「あ…?なにがあって…。チッ」

 

 

 そこへ、警報が鳴り響く。出撃準備のため、オルガは更衣室へと走る。

 そこには既にムウがいて、パイロットスーツへの着替えを終えようとしているところだった。

 

 

「なにがあったんだ?」

「どうやら、合流しようとしている先遣隊がザフトに襲われてるらしくてな。ジンの小隊が確認されてるようだ」

「あー…。あっちが捕捉されちまったのか」

「すみません!遅れました…!」

「遅れてねぇよ。気にするな」

「俺は先に行ってる。先に出撃しとくから、後から来いよ」

「分かってる。キラ、今回はエールにしとけ。オレたちが後ろからバカスカ撃って数減らしに行くからよ」

「オレたち…?」

「アークエンジェルだよ」

「ああ…」

「…よし。オレも先に行ってる。早く来いよ」

「はい。分かってます」

 

 

 キラを残し、ムウの後を追って更衣室を出るオルガ。急いで格納庫へと向かうオルガだったが…。

 

 

(ん…?あの女…?)

 

 

 そこで、フレイとすれ違うが、気にすることは無く格納庫へと走る。

 格納庫へとたどり着くと、先ほどと同じくクロトがいた。

 

 

「オルガ。整備は大丈夫だけど、さっきのライフルはまだ出来てないよ」

「さっきやってたばっかだからな。気にしてねぇよ」

「そういえばだけど、アドバンテージの機能が安定することが出来たから、アレ使えるよ」

「アレってなんだよ」

「精密射撃モード」

「精密射撃モード?」

 

 

 そう言ったクロトは、アドバンテージのマニュアルをオルガへと投げ渡す。

 開かれたページには、たしかに"精密射撃モード"と書かれていた。

 

 

「ビームマシンガンの出力を切り替えた時に、その機能使えば狙撃出来るんだよ」

「へえ?だけど出力切り替えるとよ、消耗激しかったぞ」

「改良できれば、エネルギーの効率とかも上手く行けるんだけどさ。あとは、最初からマシンガン用とビーム用でカートリッジ決めとくとか?オルガに言わなくても分かってるだろうけど」

「まあ、狙撃出来るってンなら使ってみるが、やったことねぇんだよな…」

「あっ、でもこれ欠点あるんだよね」

「なんだよ?」

「コイツのセンサーって、見ての通りゴーグル型のセンサーアイじゃん?」

「…ああ。でも、下にもカメラアイ見えたぜ?」

「気付いてたのか。そうそう、ストライクとかと同じツインアイに被せてるんだよ。ただモードを切り替えると、ツインアイの光が増して、敵にバレバレなんだよ」

「まあ、狙撃なら敵と距離離してるだろ。そんな気にすることは…」

「あと普通にビーム撃つよりもエネルギー消費多いよ」

「そっちのが問題じゃねえか」

 

 

 コクピットへと向かいながら話していたため、そんな話をしているうちにたどり着く。

 無重力の床を蹴り上げ、コクピットへと入ったオルガは、すぐさま出撃準備を整える。

 

 

「OS起動。装備、良し。カートリッジは…3か。どんだけ狙撃でエネルギー持ってかれるかだな…」

『オルガくん。既にフラガ大尉のゼロが出撃してるわ。アドバンテージも続けてちょうだい』

「分かってる。オレはなるべく、先遣隊とアークエンジェルの中間に位置を取る。援護頼んだぜ」

『オルガさん!』

「トール…?」

 

 

 カタパルトへ機体を動かしているところへ、マリューからの通信を受けているところを、トールが割って入った。

 

 

『ノイマンさ…ノイマン曹長と一緒に、オレが操舵を担当しますから、ザフトの攻撃は頑張って避けます!ですから、先遣隊の救援を少しでも優先してください!』

「そりゃ、目的は知ってるが…」

『あそこに、フレイの父さんがいるってのはオレも知ってます!いいですよね!?艦長!』

『そうね…。先遣隊の救援が目的ですから。ですが、あまりアークエンジェルから離れすぎないように。アドバンテージの性能上、母艦から離れすぎるのは危険です』

「……なら、そうしとくぜ。ミリアリア、やってくれ!」

『はい!カタパルトスタンバイ。システムオールグリーン。アドバンテージ、発進!どうぞ!』

『オルガ・サブナック。アドバンテージ、行くぜ!』

 

 

 アークエンジェルから、アドバンテージが発進する。

 カタパルトから得た勢いを利用し、先に発進したメビウス・ゼロに続き宇宙を駆ける。

 

 

「とりあえず、この辺りまでか…」

『オルガ!そのままジンの小隊に向けて撃ち続けててくれ!こちらも視線を向けに行く!』

「おう!うろちょろ動き回ってりゃ、そっちに視線向けれるってか!」

 

 

 作戦エリアに到達したオルガは、ムウからの通信を受け、ジンの小隊へ向けてビームマシンガンとイーゲルシュテルンを斉射させる。

 編隊を崩したのを見たムウは、有線式ガンバレルを展開。孤立した一機のジンを囲む。ジンを撃破したメビウス・ゼロは、高速機動で残りのジン小隊の視線を逸らしに掛かる。

 

 

「コイツの使い方も慣らさねぇとな!そらくらえぇ!」

 

 

 さらに、メビウス・ゼロに意識を奪われているジンに向けて、両肩からレールガンを発射。

 撃たれていることにすら気付かないジンは、そのまま撃ち抜かれ、宇宙へと消えた。

 

 

『オルガくん!ストライクも出撃させたわ!だけど、向こうもジンの小隊を多数出撃させたみたい!』

「本当にジンだけか!?仮にコイツらにクルーゼ隊が混ざってるなら、奪われたヤツらも来るだろ!」

『今はそれも確認してるわ!けど、反応が…』

『艦長!高速で移動する機影を確認!これは…!』

 

 

 サイが周辺宙域に向かう機影を確認した途端、先遣隊のうちの一艦である、ローがビームで撃ち抜かれ、撃沈する。

 ローを撃ち抜いたビームは、ジンのバルルス改とは色も違ければ、威力も桁違いだというのは、オルガは理解してしまった。

 

 

『そのシグナルは…!イージス!?』

「クソッ…!やっぱいやがったか!」

 

 

 イージスには"580mm複列位相エネルギー砲 スキュラ"が搭載されていた。

 それはオルガが逆行する前の搭乗機であったカラミティにも搭載されていて、オルガ自身も何度も使った武装であったため、その威力はオルガ自身もよく知っていた。

 

 

『僕がイージスを抑えます!』

「頼む!どうする、オッサン!」

『ジンの数が多いな…!後方にナスカ級やローラシア級いることも考えねばならんし…どうしたもんか…!』

「なら今度はオレが敵の視線を集中させる!新しい機能試すぞ!」

『アドバンテージの新機能だと!?』

「どれぐらい出来るか分かんねぇとは、先に言っとくからな!」

 

 

 エールストライクがイージスを抑え、ジン数機をメビウス・ゼロが相手取り、後方からジンの小隊が増援として現れている状況。

 そこで、比較的フリーで、ジンから本格的に狙われる前に動ける最後のチャンスであるアドバンテージが、動き出す。

 

 

「出力切り替えて、メインセンサー周りの機能も…これか!」

 

 

 専用ビームマシンガンの出力を切り替えた後、メインセンサーに関するボタンを探り、切り替えボタンを押す。

 すると、OSの画面にPrecision Shooting Modeと表示され、アドバンテージの頭部のゴーグル型のセンサーアイの下にあるツインアイが光を増し、何かをしてくるだろうことが外見からも丸分かりだが、それに気づくものはいなかった。

 

 

「後ろのジンの小隊でいい、ターゲットロックオン…。そこだぁ!!」

 

 

 シールドを腰のウェポンラックにマウントし、銃身を左腕部で固定し、狙撃体勢を整えたアドバンテージは、高出力のビームを発射させる。

 ロックオンされたことには気付いたジンだったが、その長距離射撃に初見で対応することなど出来ることもなく、撃ち抜かれる。

 

 

「これが精密…長ぇな。狙撃モードでいい。しかし、今のでエネルギー切れかよ!マシンガン撃ったとはいえ、2発が限界ってか…!」

『オルガ!そっち行ったぞ!』

「分かってる!」

 

 

 すぐさまカートリッジの交換、センサーの切り替え、シールドの再装備などを済ませるが、その間にジンが詰めてきている。

 その後方からメビウス・ゼロも追いかけているが、数の差は圧倒的だった。

 

 

『ジンの小隊!新たに確認!』

『くっ…!合流したばかりだったのか…?』

「なんてタイミングで見つかってんだよ…!クソぉ!」

『オルガ!とにかく先に、コイツらを片付けるぞ!』

「蜂の巣にしてやる…!」

『こちらも照準を合わせろ!撃てぇ!!』

 

 

 メビウス・ゼロの有線式ガンバレル、リニアガン。アドバンテージの専用ビームマシンガンとイーゲルシュテルン、レールガン。そしてアークエンジェルからの砲撃。

 これらの一斉射撃がジンの小隊に叩き込まれ、多数の撃破に成功したが、まだジンは残っており、後方からも増援がやって来る。

 

 

『バーナード!撃沈!!』

『イージスが、ストライクの相手をしながら…!』

『ストライクの方へ、ジン小隊接近!』

「クソッ…!オッサン!キラの方に行くぞ!」

『それしか無さそうだな…!』

 

 

 その間に、最後の随伴艦であったバーナードも撃沈される。

 広がる爆炎の方を確認すると、鍔迫り合いをしているストライクとイージスの周りに、ジンたちが近付く。

 数の差にやられようとしてるストライクを援護しようとしているところだったが…。

 

 

『ぐっ…!』

「オッサン!?大丈夫か!」

『すまんが、離脱する…!立つ瀬がないな…!!』

「てめぇ…!やりやがったな!!」

 

 

 その途端、近くにいたジンからの攻撃で、メビウス・ゼロは被弾。致命傷は負っていないが、戦闘の継続は困難な為、離脱することとなってしまう。

 専用ビームマシンガンの出力を切り替え、メビウス・ゼロを撃ったジンに向けてビームを発射。撃破には成功したが…。

 

 

(コイツ1機で、どこまで…。クソッ!バカMSだったら、こんなヤツら沈めてやれるってのによ…!)

『この子を殺すわ!パパの船を撃ったら、この子を殺すって!アイツらに言って!』

「なっ…!あの女、なんでブリッジに!?」

 

 

 CICのどちらかが付けているインカムが、フレイの声を拾ってしまったのだろう。フレイの必死の声がアドバンテージ内にも響く。

 

 

『フレイ…!』

『そう言って!!』

 

 

 そして、その直後。

 

 

「なっ…」

『えっ…』

 

 

 ヴェサリウスの主砲から撃たれたビームが、モントゴメリを貫く。

 先遣隊のうち、最後まで残っていたその艦には、フレイの父親が乗っていた。

 

 

『えっ…あっ…う、うそ…パ…パ……?』

「くっそ……!」

『いや…いやあああああああああああ!!!!』

 

 

 フレイの叫びが、アークエンジェルのブリッジと、アドバンテージのコクピットに響く。

 フレイのことを好ましい人とは言えなかったオルガだったが、守れなかったことの対価はこれだと言わんばかりに、オルガの心に傷が付く。

 

 

『ザフト軍に告ぐ。こちらは地球連合軍所属、アークエンジェル』

 

 

 それから、ナタルが発したラクスを巡る発言により、ザフトは引いて行った。

 

 

「…助けに行ったのはこっちだが、こうしないとこっちの民間人も危ない。そもそも助けに行かないってことは、まぁ無理だったけどよ…」

「バジルール少尉の判断は間違っちゃいないのは、俺も分かってはいる。俺が撃たれてなきゃ、こうはなってなかったかもしれないしな」

「………おい、キラ。そろそろ降りて来い。そんなとこで閉じこもるな」

「……………」

 

 

 格納庫には、帰還した3機のパイロットがいた。

 だがそのうちのストライクのパイロットであるキラは、コクピットから出てこなかった。

 

 

「お前だけの責任じゃねえんだよ。あの中で一番ヤバいイージス抑えてたんだ。何もしてないならまだしも、大役こなしてただろ」

「……………」

 

 

 その言葉を聞いたキラは、コクピットハッチを開き、ゆらりとした動きで出て来る。お世辞にも、顔色は良いとは言えなかった。

 

 

「フレイに、大丈夫って…言ったのに……」

「…あのとき、オレも引き返せばよかったな」

「それに、なんでナタルさんは…あんな……」

「卑怯かそうじゃないかで言ったら、卑怯なんだろうな。自分から助けに行ってからなんだから」

「………」

「ただ、ああしなかったら今度はアークエンジェルが狙われていた。その事は、キラも分かってるんだろ?」

「……分かっては、います。けど…」

「……分かってて、尚且つ引きずってんなら、お前はそれでいいだろ。とにかく、今は部屋に帰って休め。送るぞ」

「オルガさん……」

 

 

 それからも、キラが深い傷が負うことになるのは、オルガも察してはいたが、今は休ませることしか出来なかった。

 

 

(あの女…前回もこうだったのか…?流石に、これはキツすぎるだろ…)

 

 

 いけ好かない女という印象から、フレイに対する印象が変わりつつあるオルガだったが、今だけは顔を合わせたくはないという思いで、キラの部屋へと向かった。




いけ好かない女→さすがに同情する女→???


前書きと後書きの間に映画見てきました。もにょる人いるだろなってのも分かる。減点方式だと半ばちょい上の点になるのも分かる。
でも僕は加点方式で6億点になりました。すげぇもん観たわ。
前書きで触れたアスランについて、そんなネタバレではないはずですけど一応数行空けときます。
色々語りたいことはありますけど、それはもう少し期間あけてからで。












作者の中で2人のシンが同居してる。
「アスラン…やっぱアンタすげぇや…」
「アンタはいったい、なんなんだぁぁああ!!」


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歌姫の帰還

映画効果でSEED小説が豊作でニッコニコですわ〜。

原作だと低軌道会戦までにクルーゼ隊2回襲って来るんですよね。ところでここに作者権限のハサミがあるじゃろ?


 先遣隊が全滅してから、少しが経った。

 アークエンジェル艦内を歩くオルガは、先ほどのことを思い出す。

 

 

『返して!パパを返してよぉ!!』

「………チッ」

 

 

 目の前で父親を失い、絶望に囚われたフレイの叫びが、今でも耳に残っている。

 帰還したオルガたちは、目に涙を浮かべ、怒りや憎しみといった複雑な表情が混ざった顔をしたフレイに詰められ、何も言えずにいた。

 

 

(幸いと言えば幸いだったのは、キラだけが言われることは無かったことだが…)

 

 

 その場にいたのはキラだけじゃなく、オルガもいたため、キラだけがフレイから言葉の刃を向けられることはなかった。

 だが、どうにかすると言ったのに何も出来なかったことに対する負い目から、キラの精神的にそこまで差はない。

 少なからず想っていた人を、あんな目に合わせてしまったという事実だけで、キラには十分堪えていた。

 

 

「…地球に降りるだろうから、何か奢ってやるか」

「…サブナック二等兵?」

「ん…?やべっ。声出てたか…」

 

 

 そこにいたのは、帽子を外したナタル。

 方向的に、ブリッジへと戻る途中だったのだろう。

 

 

「………」

「………?」

 

 

 オルガを見て、神妙な表情をするナタル。

 何事かと思うオルガだったが、そんな表情をされる心当たりなど、1つしかなかった。

 

 

「…まだオレとどっかで会ったかと思ってるのか?バジルール少尉」

「………そう、だな」

「あの時も言ったけど、そんなことは無いはずだぜ。オーブの一市民が、連合の士官と会うことなんて、そうそうないだろ」

「それは、そうだが……」

「………」

 

 

 お互い、何故そんな感覚を持っているのかなど分かるはずもない為、どこへ着地したものかと悩んでいる。

 

 

「バジルール少尉、これからのことだが…。ん?オルガもいたか」

「オッサン」

「オッサンじゃない」

「さっき言った時は、否定しなかっただろ」

「そんな余裕無かったからな。今は余裕あるから否定するさ」

「ほーん」

「上官に向かって、ずいぶんな態度だな…」

「頼りにはしてるし、これでも一定の敬意は持ってんだよ」

「なら後はオッサン呼びを止めればいいだけだな」

「いや、オッサンだろ」

「サブナック二等兵」

 

 

 そんなやり取りをキッとした表情で見るナタル。

 一方、そのことを流すオルガは、別のことを考えていた。

 

 

(オッサンもオーブの時に出撃してるんだろうけど、何に乗ってたんだ?ストライクはキラだから、バスター辺りかね。あの量産機ってことはねぇだろ。何がどうなってバスターがアークエンジェル側にいたかまでは知らねえけど、射撃はメビウス・ゼロでもやってるからな)

「……なにをそんなに真面目な顔して考えている?」

「ん…?あー…未来のこと」

「未来…。まあ、先のことは色々考えちまうよな。こんな状況だと」

 

 

 別のことを考えていたオルガは、そう誤魔化す。

 

 

「それは分かりますが、やはりフラガ大尉への態度は改めるべきだと…」

「俺は気にしないけどな。オッサン呼びは辞めてほしいが、そこぐらいだ。志願してくれたとは言え、そうした経緯はバジルール少尉も知ってるだろ」

「はい。ですが、ラミアス艦長や私のことはちゃんと呼ぶのに、フラガ大尉だけふざけた呼称をするのは、流石に…」

「あー……。よし、オルガ。今からバジルール少尉のことをナタルって呼べ」

「フラガ大尉?」

「あん?急に何言ってんだオッサン。ふざけてんのか?」

「バジルール少尉。どう思うこれ」

「今のはフラガ大尉が悪いと思います」

 

 

 先ほどキッとした表情でオルガを見ていたナタルだが、今度はムウのことを冷めた目で見ることになった。

 

 

「いや。俺だけそうなってるなら、2人を崩した方が早くないか?」

「サブナック二等兵。気が向いたらでいいから、しっかり呼ぶように。しっかりと気を向かせるようにすることだ。いいな?」

「へいへい。とりあえず今回は呼んどくぜ、フラガ大尉」

「よし。これからはなるべくそう呼ぶように」

「おー…これは手厳しいねぇ」

「……それより、これからのことを話し合うんじゃなかったのかよ?」

 

 

 これ以上この話を続けるのはよくないと、自分が原因と分かっていながらも軌道修正を図るオルガ。

 それにより、2人の表情も変わる。

 

 

「おっと、そうだったな。と言っても、ほぼ終わってるんだがな」

「そうなのか?」

「ラクス・クライン嬢だけどな。どうにかしてザフト側へと返還させることにした。もちろん、元からそのつもりだったんだがね」

「……私のあの判断は、全てが間違っていたとは思ってはいない。だが、そういったつもりで保護したのではないというのは、分かってはいる。故にこそ、早期の返還をするべきだと、私が進言した」

「ほーん…。まあ、そうした方がいいのはオレも分かるけどよ。誰が返しに行くんだ?あのナスカ級に渡しに行くんだろ?」

「キラが適任だろうな。話を聞いただけだが、この艦であの歌姫と一番話をしたのは、キラなんだろ?」

「その認識でいいと思うぜ。ただ、相手はクルーゼ隊だろ?」

「おっ。オルガも同じ考えか?」

「………」

 

 

 何かに勘付いた顔をしたオルガを見て、さらに真面目な顔をするムウとナタル。

 オルガの懸念は、2人も抱いてるのと同じだという証明だった。

 

 

「ちなみに、この事についてラミアス艦長も同じ考えだぜ。返還に関してはすぐに許したんだがな」

「……とにかく、キラや本人に伝えるのが先じゃねぇか?そこからだろ」

「ああ、そこはノイマン曹長に伝えに行ってもらってる」

「そうなのか?」

「決まってたことだからな。その辺りは進んでるぞ」

「じゃあ、こっちはこっちで考えるか。一先ず、オレがするべきと思うのは…」

 

 

 ここからの話は、マリューも交えてブリッジで行う事になった。

 各自の役割を果たすべく、準備を進めて行った。

 

 

 

 

「よし。ライフルは外しときましたぜ」

「では、クライン嬢はヤマト二等兵と共にコクピットへと進んでもらいたい」

「分かりましたわ。お見送り、感謝致します」

「……礼を言われることは、ありません」

 

 

 アークエンジェルの格納庫。ストライクの周りに、アークエンジェルのクルーは集まっている。

 その先にいるのは、パイロットスーツを着たキラと、宇宙用スーツを着たラクスだった。

 

 

「気を付けろよ、キラ。イージスが出て来たら…」

「……ええ。警戒は続けるつもりです」

 

 

 ラクス返還に伴い、キラへはイージスのパイロットに迎えに来させるように言ったが、返還の話を聞いた段階で、キラは元からそうするつもりだった。

 キラ以外にイージスのパイロットのことを知ってるのは、マリューとナタル、ムウとオルガだけなため、濁したようにしか言えなかったが、先の先遣隊全滅の大半がイージスによるものだったため、周りもとくに勘付くことはなかった。

 

 

「キラ!」

「サイ…?」

「……いや、なんでもない。気を付けろよ!」

「……うん」

(……この前のアレといい、キラとサイ、なんかあったのか…?)

「そこの緑髪の方…。オルガ様でしたかしら?」

「ん…?オレはオルガだが、どうしたよ。ラクス嬢」

「……いいえ。なんでもありませんわ。では皆様方、ご機嫌よう。キラ様、お願いしてもよろしくて?」

「えっ?い、いいですけど…」

「……クロト。今のなんだったか、分かるか?」

「僕に聞かないでくれる?」

 

 

 一連のやり取りの後、2人はコクピットへと入って行った。

 各員が離れたのを確認し、カタパルトへ到着したストライクが発進する。

 

 

『……よし。じゃあ手筈通りだ。オルガ、後から頼んだぜ』

「任せろ。本当は何もない方がいいんだけどよ」

『違い無い。ムウ・ラ・フラガ。メビウス・ゼロ、行くぜ!』

 

 

 その後、少し経ってからメビウス・ゼロが発進する。

 オルガは、アドバンテージのコクピットで待機している。

 

 

「……あの、オルガさん。本当に、後からでいいんですか?」

「考えてみろ。オレの機体に狙撃機能付いてるのは、アイツら知ってるんだぜ」

「えっ…?そ、それがなんで、後から出撃することに繋がるんですか…?」

「……こちらは素直に返還するつもりだったと、あちらに示すため?」

「それだ、トール。オッサンのメビウスに搭載されてるのは、有線式のガンバレル。それで不意打ちってのは無理だってのは、アイツらもよく知ってるはずだからよ」

 

 

 その間、この行動の意味をトールたちに説明する。

 仮に何事もなく返還が行われた後、近くにアドバンテージの姿が確認されてしまっては、その隙に狙い撃つつもりだったのだろうと、いらぬ難癖を付けられるのを防ぐためだった。

 そして、それはしばらくして起こった。

 

 

『敵機捕捉!デュエル、バスター、そして…シグー!』

『マリューさん!あの白い機体、ヘリオポリスで見た時とは違います!姿も、機体の速さも!』

「シグーのハイマニューバ型…!パイロットは、おそらく…」

『ラウ・ル・クルーゼだ、間違いない!オルガも来てくれ!』

「分かってる!カートリッジは2か…!さっさと出してくれ!」

「オルガ!まだライフルの改造終わってないから!その代わり、ストライクのライフルも一緒に、バズーカも射出出来るようにしとくよ!」

「バズーカ?そんなのもあんのか。分かった!とにかく出してくれ!」

『アドバンテージ。発進、どうぞ!』

「アドバンテージはオルガ・サブナックだ。出るぜ!」

 

 

 アドバンテージ、発進。

 向かう戦場は、激戦が予想された。




先に言いますと、第8艦隊合流までに襲ってくるクルーゼ隊カウントを1減らしました。なので次話でイザークくんには痛いいいいい!してもらいます。まあ痛いのは一瞬ですよ。男の子でコーディネーターで赤服でおかっぱでしょ。耐えてよ。
本当はRe版のドラグーン装備したシグー出したかったんですけど、流石にアレにデュエルとバスターは無理ゲーだなと。


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SEED発現

種割れのSEを文字起こしするとキラキラバシューン!!が大体だと思うんですよ。当社比だけども。
言うほどキラキラバシューン!!って感じしないのに、キラキラバシューン!!以外だとあんま思い付かないし、キラキラバシューン!!でも違和感は無いんすよね。
キラキラバシューン!!の話ばっかしてますけど、今話はキラキラバシューン!!とイタイ!!イタイ!!イタイイイイイ!!回です。


 戦場に到達したオルガが真っ先に確認したのは、敵の数。

 出撃した時に聞いたデュエル、バスター。そしてシグー(ハイマニューバ)を確認。

 既にデュエルは(エール)ストライクと、シグーHはメビウス・ゼロと交戦を開始している。

 後方にいるであろうヴェサリウスからのジン小隊、そして残りのG兵器であるブリッツの増援も警戒しながら、牽制射撃の準備をする。

 

 

「アークエンジェル!ストライクのライフルの射出準備は!?バルカンとサーベルでデュエルの相手は厳しいだろ!」

『格納庫から、既に準備は出来ているそうだ!ヤマト二等兵、一度後方に下がれるか?』

『は、はい…!』

『逃がすか!今日こそ仕留めてやるぞ、ストライク!!』

「一度こっちが見る!さっさと下がれ!キラ!!」

 

 

 ビームマシンガンを発射しながら、Aストライクとすれ違うアドバンテージ。

 Aストライクを追っていたデュエルは、シールドでアドバンテージの射撃を防ぎながら、距離を詰めるタイミングを伺っている。

 

 

『アドバンテージが…!そろそろ貴様も鬱陶しい!!』

『イザーク!援護するぜ!』

「いい加減しつこいんだよ…!テメェら!!」

 

 

 バスターが発射するミサイルを、ビームマシンガンとイーゲルシュテルンの斉射で撃ち落としながら、接近してくるデュエルから距離を保ち続けるアドバンテージ。

 

 

(性能はあっちのが上だ!それに、予備カートリッジは2つしかねぇ…!ビームなんざ使えねぇぞ…!)

『オルガさん!デュエルの相手に戻ります…!』

「すまねぇ、頼む!」

『へぇ?じゃあ、オレたちはこのまま射撃戦続けようぜ!オレは大歓迎だからな!!』

「そっちのが性能上だからって、調子乗りやがって…!」

 

 

 ビームライフルの装備を完了したAストライクが復帰し、デュエルとの交戦を再開する。

 その一方で、アドバンテージとバスターの熾烈な射撃戦は続く。

 ジェネレーターの数と質の差、そして装備している兵装の火力から、アドバンテージよりもバスターの方が性能は数段上なのは、この戦場にいる全員が最初から分かり切っていた。

 オルガもこのまま射撃戦を続けていては、先にダウンするのはこちらだと理解しているが、かと言ってバスターを野放しには出来ないと、二重苦に直面している。

 

 

『オルガ!そっちは大丈夫か!』

「バスター抑えるなら、コイツが一番向いてるだろ!オッサンこそ、その白いの相手に大丈夫かよ!」

『はっきり言って、キツいな…!』

『ハイマニューバ型は、ジンで経験済みなのでね。さて、どうする?ムウ・ラ・フラガ!』

『ちぃ…!ラウ・ル・クルーゼ!』

 

 

 それは、オルガだけが直面している問題ではなかった。

 有線式ガンバレルを搭載しているとは言え、メビウス・ゼロ1機で、グリマルディ戦線から因縁のあるラウの駆るシグー。ましてや高機動型であるハイマニューバを相手するには、いくらムウでもキツいものがあった。

 

 

「イーゲルシュテルン、ヘルダート装填!バリアントの起動はまだか!」

「これだったら、まだジンの小隊が出て来てくれた方がよかったかもしれないわね…!」

「な、なんでですか!?あの3機だけでもこんなピンチなのに、そこにジンもいたら全滅しますよ!」

「それでも、ジンの数を減らせば、撤退の可能性があったってことだろ…!」

 

 

 一方、アークエンジェルのブリッジ内。

 このピンチの状況を見て、そんなことを言うマリューに驚くトールだったが、隣にいるアーノルドが補足に入る。

 

 

「ええ…。この前、最初にGが襲って来た時がそうだったことから、その可能性はあった。だけど、このままでは…」

 

 

 マリューが答えようとした、その時。

 

 

「ぐっ…!?」

「うわぁっ!?」

「きゃあああっ!!」

 

 

 アークエンジェルが、爆音と共に揺れた。

 すぐさま索敵に移ったクルーたちは、襲撃犯の特定へ移る。

 

 

「11時の方向に、熱源確認!」

「敵影捕捉!GAT-X207!ブリッツです!」

「ミラージュコロイドを使った襲撃…!」

 

 

 既に攻撃を終えたことで、展開していたミラージュコロイドは解除され、その姿を確認することになった。

 ラクスを迎えて撤退したイージスを除いた、この戦場で未確認だったG兵器、ブリッツ。

 幸い被弾した箇所は重要部では無かったものの、敵1機がフリーな状態が発生してしまった為、事態は深刻を極めてしまっている。

 

 

「チッ…!やっぱ黒いのもいやがったか!」

『アークエンジェル!?』

「キラはデュエル抑えてろ!オレが何とか援護に…!」

『行かせると思うかよ!』

「だよな…!クソォ!!」

 

 

 なんとかアークエンジェルの救援へと向かいたいオルガだったが、バスターがそうはさせなかった。

 収束火線ライフルからビームを発射し、じわじわとこちらを追い詰めにかかってくる。

 

 

「いい加減にしろってんだ…!大人しくしてやがれ!」

『ぐっ…!?』

 

 

 痺れを切らしたオルガは、装填されているカートリッジに残っているエネルギーを使い切るまでマシンガンを斉射させ、バスターを怯ませる。

 

 

「オラァァァ!!」

『があっ!?や、やりやがったな…!

 

 

 その隙を突き、左腕部からビームサーベルを射出しながら突撃を敢行させる。

 そのまま左手に装備させたサーベルで、バスターの左腕を切り裂く。

 これによって収束火線ライフルと共に、連結使用を封じることに成功し、バスターの戦力を大幅に削ることとなった。

 

 

「バスターの左手を叩っ斬ってやった!アイツもうミサイルや右の銃から撃つことしか出来ねえぞ!」

『了解した!すまないが、こっちは抑えることで手一杯でな…!』

「気にすんな!そのまま抑えてくれ、オッサン!アークエンジェル、いま向かうぞ!!」

『すまないわね…!』

 

 

 バスターを削ったオルガは、専用ライフルのカートリッジを交換させ、アークエンジェルの元へと向かう。

 アークエンジェルの迎撃を回避しているブリッツへとビームマシンガンを発射させ、アークエンジェルから距離を取らせる。

 

 

『オルガ二等兵。バズーカの射出準備が整った。いけるか?』

「バズーカ?構わねぇけど、なんか策でもあんのか?」

『私に考えがある。バズーカに込めたのはアンチビーム爆雷と、散弾だ』

「アンチビーム爆雷に、散弾…?切り替えて使えって……。ああ、そういうことか?」

『察しが良いな。バズーカ射出!受け取り損ねるな!』

「あいよ!」

 

 

 ブリッツが距離を取り、アドバンテージが専用ライフルをウェポンラックに装備させたことを確認したナタルは、ストライクのバズーカを射出させる。

 

 

『装備を変えて、なにをするつもりだ…?ですが、余計なことをされる前に…!』

『アンチビーム爆雷を撃て!その後は、分かるな?』

「分かってらぁ!アンタの策、乗らせてもらうぜ!」

 

 

 ビームを撃とうとするブリッツへ向けて、バズーカからアンチビーム爆雷を発射させるアドバンテージ。

 その直後にビームを発射させるブリッツだったが、ばら撒かれたアンチビーム爆雷により、ビームは相殺される。

 

 

『なるほど…!ですが、姿を消して、接近してしまえば!』

『今だ!サブナック二等兵!』

「姿なんざ消してんじゃねぇ!さっさと出て来やがれ!」

 

 

 ブリッツがミラージュコロイドを展開したことを確認したオルガは、バズーカ内の弾を切り替え、ブリッツがいた方向へとバズーカを向け、散弾を連射させる。

 

 

『なっ…!?』

「かくれんぼは終わりだぜ!」

 

 

 大量にばら撒かれた散弾により、ミラージュコロイドを展開してようが関係無く、ブリッツの姿が炙り出される。

 

 

『元々はそちらのものでしたね…。弱点もよくご存知だ…!』

『ニコル!足付きよりモビルアーマーとストライクを狙うぞ!』

『分かりました…!』

「切り替え早ぇなコイツら…!キラ!オッサン!そっちにバスターとブリッツ行ったぞ!オレもすぐに…!」

『オルガさん!ジンの小隊も確認しました!数は3機!』

「絶妙なタイミングで出して来やがったな…!」

 

 

 ミリアリアの通信とほぼ同時に、オルガもジンの小隊を捕捉してしまった。

 G兵器の動きを封じたとは言え、撤退まではいっていなく、こちらが疲弊した状況での増援は、苦しいものがあった。

 

 

『ジン1機はこちらへ。残りはストライクだ。イザーク、ジンを向かわせるぞ』

『了解!さぁ、どうする?ストライク!!』

『くっ…!このままじゃ…』

「キラ!このバズーカ使え!」

『は、はい…!』

 

 

 アドバンテージが投げ渡したバズーカを左手で受け取り、込められていた散弾を発射するAストライク。

 2機いたジンをそれぞれ分散させ、片方をアドバンテージがレールガンで撃ち抜く。

 

 

『怯むな!こちらの有利は変わらない!』

「数ばっかいやがって…!」

『こっちは撃てるんだよ!AP弾くらいな!』

「ぐっ…!?」

『オルガさん!?』

『オルガ!?』

 

 

 Aストライクの方へと合流したアドバンテージを、残された右手でガンランチャーを使ったバスターが放った徹甲弾が貫く。

 致命傷は負わなかったものの、左腕を吹き飛ばされてしまい、カートリッジの交換を封じられたことと、シールドも同じく吹き飛ばされてしまったことから、窮地に立たされてしまった。

 

 

『サブナック二等兵!大丈夫なの!?』

「オレは大丈夫だがよ…!」

『隙が出来たな。ムウ・ラ・フラガ!』

『なっ…!?くそっ…!!』

『フラガ大尉!?』

 

 

 長い攻防と、アドバンテージの被弾を見たことで生じたメビウス・ゼロの一瞬の隙を付き、高速で接近したシグーHが重斬刀でガンバレル部分を切り裂く。

 すぐにパージしたことで誘爆することは無かったものの、半数のガンバレルを失ってしまった。

 

 

「オッサンは下がれ!オレはまだ…!」

『そこだな!アドバンテージ!』

「チッ…!デュエル…!!」

『オルガさん!!』

 

 

 五体満足のAストライクよりも、被弾したアドバンテージを先に仕留めようとデュエルが襲い掛かる。

 ビームマシンガンとイーゲルシュテルンの一斉射を行うも、装備しているアンチビームシールドと、デュエルらG兵器が持つフェイズシスト装甲で防ぎながら、サーベルを構え接近してくるデュエル。

 

 

『先に貴様を始末してやる!受け取れえええ!』

「ちくしょう…!!」

 

 

 ビームサーベルも一緒に吹き飛ばされてしまい、迫り来るデュエルを対処する手段が無いアドバンテージ。

 黙ってやられるつもりのないオルガだったが、どうにも出来ない状況なのは変わりなかったが…。

 

 

『オルガさん!!』

「キラ!?」

『はっ!ならば一緒に切り裂いてやる!ストライク!アドバンテージ!!』

 

 

 そこへAストライクが割って入るが、それに構わず2機に斬りかかるデュエル。

 

 

 

『やらせるかあああああ!!』

 

 

 突然、ストライクの動きが先程までとは大きく変わった。

 

 

『なにっ!?』

 

 

 接近するデュエルを右足で振り上げ、蹴り飛ばす。

 

 

『やああああああああ!!』

『うわ、うわああああああ!?』

 

 

 その隙を突き、コクピット付近をビームサーベルで切り裂く。

 蹴り飛ばし、デュエルとの距離を取ってすぐにビームサーベルを振り下ろしたため、撃破には至らなかった。

 

 

『痛い…!痛い…!痛いいいいいいいい…!!!』

『イザーク!?』

『なにっ…?』

『隊長!撤退しましょう!敵艦隊が来ました…!』

『ふむ……。ニコル、イザークを頼んだ。全機撤退だ!』

 

 

 いまの一連の出来事、そして艦隊の接近を感知したクルーゼ隊は撤退を選択。

 デュエルの肩を抱えたブリッツと、バスター、シグーH、そして残ったジン小隊がヴェサリウスへと戻って行く。

 

 

『はあ…!はあ…!!』

「キラ、悪い…。助かった」

『はあ…!あっ…?オ、オルガさん……?』

「………ん?」

 

 

 コクピットのサブモニターにキラが映っていた為、そこへ目を向けたオルガ。

 そこに映っていたキラの目は、ハイライトが消えていたような目をしていたと、オルガは認識したが…。

 

 

『オルガさん、大丈夫ですか……?』

「あ、ああ…。大丈夫だ。助かったぜ、キラ」

 

 

 その次に見た時は、いつものキラの目に戻っていたため、いまは気に留めないことにしたオルガ。

 それよりも、顔色と息の切らし具合から心配が勝ち、帰還を急ぐことにしたのも大きかったが、それをキラに伝えることはない。

 

 

『すまなかったな、オルガ。本当に大丈夫か?』

「マジで大丈夫だからそんな気にすんな、フラガ大尉」

『おっ、今度はしっかりと呼んだな。なら本当に大丈夫そうだな』

『第8艦隊との合流も果たせました。全機、帰投してください』

「第8艦隊…か」

 

 

 

 アークエンジェルの前方から、地球連合軍の艦隊が向かってくる。ドレイク級、ネルソン級の他に、アガメムノン級の姿もあった。

 それは、ハルバートン提督が率いる第8艦隊のものだった。




1機増えても戦力差的には厳しいことにはそんな変わんないですわね。マシにはなってますけど。
でもザウートでデストロイを相手するよりは格段にマシです。あのパイロット何したのレベルですけども。運命時にジン乗るよりも酷いでしょ。

※自首しときますけど、投稿してしばらくしてから、バスターの右腕叩っ斬ったのに、右腕生やしてガンランチャー使ってることに気付きました。ガンランチャー使うのは正しいので、左腕に修正しましたわ。自首する作者です。


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