星降る里へ (もっち~!)
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ギルド職員って美味しいのだろうか?

ベータテストにおいて最強のキャラを作ったと思う。バグを見つけ、報告した上で、完全攻略してしまったのだから。まさか、始まりの街からダイレクトで最終ステージに飛べるとは。こんなのバグ以外の何者でも無いと思う。ラスボスはまだ製作途中らしく、防御力なしで、特殊攻撃も無い。避けタンクなら誰でも倒せたであろう。

 

ベータテスト中にラスボスを倒すなんて、運営は想定していなかったらしい。いや、俺もだよ。

 

一般人向けのベータテストが終わり、本格運用するまでの1ヶ月は、関係者による最終ベータテスト、通称ベータ2テストが始まる。テスターから上がったバグの修正が為されたか、テストしていくのだ。手の空いている運営、開発などのスタッフや俺の様な関係者が、納期有りきのテストをしていくのだ。

 

俺、一ノ瀬真二は、メインプログラマの一ノ瀬誠一の弟であり、運営会社の社長の息子である。その関係で、ゲーム漬けの毎日を送っている。幼少期から剣道、柔道、空手などの武道を学んでおり、ゲーム内でリアルスキルのテスト担当であった。このゲームはリアルスキルモードのオン、オフが出来る。オフの時はスキルアシストモードとなり、剣術や、徒手空拳などのスキルを得ることにより、それなりに戦えるようになるのだ。

 

そして、今…真っ新なキャラで冒険者ギルド内にいる。現在の初期装備は、解体用ナイフだけである。戦う装備ではない。解体係で、解体作業をしている。解体場で解体用ナイフでC判定の解体を100体熟せば、解体スキルが貰えるらしいのだが、それのテスト中である、ベータテストで、100体も解体した猛者はいなかったそうで、NPC冒険者の持ち込む死体をひたすら解体しまくっている最中である。

 

このゲームでは解体スキルが無くても、モンスターや動物を倒せば、自動解体モードにより、ドロップ品を得られる。ドロップ品は肉や皮などの他内臓などのレアドロップ品が確立で手に入るのだが、解体スキルがあれば、レアドロップ品を含む丸々1体分の素材が常時手にはいるのだ。お得感満載なスキルである。スキルを手に入れるのは解体業者や冒険者ギルドなどの解体場で解体する必要がある。自分で倒すと自動解体モードにより、ドロップ品になり、丸々の解体が出来ない仕組みのせいであるが…

 

漸く解体スキルを手に入れられた。魔物鑑定、動物鑑定も手に入った。そしてレベルが上がった。このベータ2のキャラは、ステイタスが無い。レベルが上がろうと、ステイタスアップは望めないのだ。なんで?ステイタスアップのテストは出来ているからである。あくまでテスト優先のキャラでありアバターなのだ。

 

「シン、次は鑑定場でテストしてくれ」

 

鑑定スキルも自動モードがある。レベルにより判別出来る範囲が変わるらしい。薬草の品質、宝石、魔石の品質のチェックがc判定100個でマスター出来るそうだ、鑑定場の席にある図鑑を手に判定していく。便利なスキルを手にいれるにはマニュアル操作が不可欠らしい。ベータテストではそんな面倒な行動を取る者がいなかったらしい。ゲーム内で図鑑を調べるなんて理不尽である。

 

紆余曲折を経て、鑑定EXというスキルを得て、図鑑無しで、色々な物を鑑定できるようになった。

 

「シン、食堂を頼む」

 

兄の誠一、キャラ名がイッセーから指示が飛んできた。

 

冒険者ギルド本部のグランドマスターをしているイッセー。そもそも冒険者ギルド本部って、運営部門が取り仕切っている組織である。運営サイドがゲーム内に常時おり、ゲーム内の不正などに目を光らしている。忙しい場合は、AI搭載のNPC職員だけで無く、運営サイドの人材がキャラを操り、ギルド職員をしているそうだ。そのうちの一人が俺であるが…

 

食堂に配置替えされると、容量不明のマジックバック、包丁などの料理用具一式を貰えた。マジックバックは食材仕入れの為らしい。このバックにいくら物を詰め込んでも、重さが一定になるそうで、市場で肉をブロック買いしても、野菜を箱買いしても、俺一人で持ち運べるそうだ。更に、無造作に詰め込んでも、分類、リストアップ機能付きで、入っている物がリストで見られるそうだ。

 

この部署では料理スキルの他、生活スキルも手に入るそうだ。野営時に必要な水や種火を出せるようになり、清浄などの衛生レベルを上げる能力が身につ

くらしい。

 

「不衛生で食中毒はカンベンだぞ」

 

と、料理長のお言葉…

 



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いっぱしのギルド職員に

 

2日目…受付業務に駆り出された。色々な種族の方々への対応…各種言語をマスターしていく。言葉をヤリトリを繰り返していくだけでマスターするのか。NPCのギルド職員との会話でも覚えられるようだ。

 

午後からは製作工房に回された。冒険者ギルド内でも鍛冶、木工、金工などの武器防具の製造、修繕が行われるそうだ。最初に回されたのは、リアルで経験のある研磨作業である。主に刃物を研ぐ仕事である。リアルで料理をするので、包丁を研いだり、おろし器の目研ぎなどをよくしていた。なので、苦では無い。経験があったせいか、研磨スキルが手に入った。調子こいて現場の刃物類のほとんどを研いでいたら

 

「ほぉ~、お前、気に入ったぞ」

 

と、親方に気に入られ、褒美に錬成スキルをもらった。錬成スキルは同一素材を変形加工出来るスキルである。例えばインゴットから剣などを錬成したり出来る。刀は、複合材なので、鍛冶スキルがいるそうだ。そのせいか、鍛冶場へと拉致された。鍛冶場はサウナを化していた。汗臭のするスチームサウナであり、慣れるまで、ゲロゲロ状態であった。こんな臭いを再現するなと言いたい。リアルでこんな臭いしないぞ!悪臭に耐えて、鍛冶スキルを得るのに3日かかった。合金製造をしていたせいか、錬金スキルも覚えたのはラッキーだろうか。

 

6日働いて休暇を貰えた。休暇と言っても、ゲーム内でテストをしないとダメであるけど。現在の時間の流れはリアル1時間で1日の割合で、まだテストを開始してから、リアルでは1日経っていないのだった。通常ゲームでは、4時間で1日経過で、リアル1日でゲーム内は6日になる。メンテなどのゲーム停止時には、ゲーム内時間も止まるそうだ。

 

 

「シン、これで刀を作ってみな」

 

兄であるイッセーから木材を貰った。錬成で刀にしていく。強度を上げる為、木繊維を圧縮したり、しなりを盛らせる為、繊維方向に柔軟さを持たしたり。短刀と脇差しを作ってみた。

 

「その刀を手入れをしつつ1年つかってくれ」

 

何かのテストだろうか?木製品と長く付き合うって、付喪神が憑くかのテストか?手入れはワックス塗りで良いのかな?毎日、補修もしないとダメかな。

 

グランドマスター室から出ると、製造現場の親方からの指示で、薬草採取の為に森へと入っていく。木刀でゴブリン狩り…切れない。木刀で撲殺状態である、コレはダメだな。錬成で斬れるように刃の角度を調整していく。金属の様に薄くすると、欠けるし、どうするかな。

 

刃に鉄をコーティングしてみる。2体処理すると、コーティングが剥がれる。実用的では無い。チョークスリーパーの要領で頸動脈を遮断する感じで、首筋に狙いを変えて叩いていく。首回りの脂肪の多いオーク相手だと通用しない手である。そうだ!必殺仕事人の様に…鉄のインゴットからかんざし状の物を錬成してみた。鼻の穴から脳へのダメージ狙いである。これのせいか、暗殺術が芽吹いた。暗殺術持ちのギルドの職員って、良いのか?

 

斬れない木刀とかんざしタイプの武器でゴブリンと狼を退治しながら、薬草を採取していく。果物を見つけ、一休みの傍らステイタスをチェックすると、レベルの表記が消えていた。強くなったのか、どうかがわからない。通常、プレイヤーはHP,MPは勿論、STR,VITなどのステイタスが存在するが、俺のステイタスには表示されないのだった。運営サイドのプレイヤーは、一般のプレイヤーと別物なのだろうか?

 

オークの集落を何回か殲滅すると、冒険者ギルド内での指名依頼が増えていく。まだ公開オープンしていないので、一般プレイヤーの冒険者が居ないため、リポップしたモンスターの間引きや、ダンジョンから溢れたモンスターの殲滅など…いつの間にか冒険者ランクがAになっていた。

 

「一般プレイヤーでAランクはまだいない。誇ってもいいぞ」

 

と、グランドマスターの兄。

 

 



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VR世界の学校で出会いはあるのだろうか?

 

「あの~、リアルで休みが欲しいんですが…」

 

「彼女いないのに、休んでどうするの?」

 

痛い箇所をつつく兄。年がら年中、ゲーム三昧では彼女は出来ないと思う。出会いが無いんだから…

 

「そうそう、高校の入学式には行けよ」

 

高校?入学試験を受けていない気がする。

 

「我が社のゲームはe-スポーツに認定されたんだよ。で、一芸入学で押し込んだ。精々、高校で彼女でも見つけろよ」

 

VR-MMOって、e-スポーツに入るのか?

 

「VR-MMOなのに?」

 

「お前、オートモード切っているだろ?ゲーム内での体捌きや身体能力を学校側が認めたんだ。お前が入学する星降学園では、ゲーム内で剣道や柔道などの組手をNPC相手に行っていて、VRでの鍛錬を実践しているんだ」

 

うん?学園からの依頼でフルダイブVRトレーニングシステムでも納品したのか?

 

「普通科ですか?」

 

進学コースは無理っぽ。

 

「フルダイバー科だ。学校はゲーム内の星降る里にあるから、通えよ。加速速度は4倍速だ。1日3時間が授業で、8時間はギルドで勤務だからな」

 

午前中、リアル3時間授業を受けると、実質12時間授業になるのか。それはハードだな。その上、ギルドでのバイトが確定なのか…ハード過ぎる。出会いの時間はあるのか?某ラノベの様にダンジョンで出会いを見つけるしか無いのか?

 

 

そして無事に入学式を経て、ホームルーム中である。VR世界内にある学校である。種族が様々である。eスポーツ科は別にあるらしい。体育会系のクラスもあるらしい。フルダイバー科は廃人向けで、現状、俺と1つ上の姉しかいないし…

 

「リアス姉さんと二人だけ?」

 

「あぁ、フルダイバー科はなぁ」

 

姉さんの種族はどう見ても悪魔に見えるのだが…まさか、サッキュバスか?肌を覆う布面積が少ない気がするのだが…

 

「どう?運営サイド特典でサキュバスにしたのよ~」

 

姉のエロそうな姿を見ても、なんとも思わない。俺、異常なのか?って、運営サイド特権って何?あっ!俺の種族が天使になっているし。

 

「で、授業って、何をするんだ?」

 

「他のクラスに潜り込んで、監察業務だな。チーターを見つけたら、手口を解明して、レベルをドレインしてくれって。ルール違反者も摘発してくれよ」

 

姉がそんなことを口にすると、俺のスキルにレベルドレイン、スキルドレインが芽生えた。これ、ダメなスキルじゃないのか?そもそも監察って、嫌われ職一番ではないのか?

 

「イッセーから聞いていないの?フルダイバー科は、基本、一ノ瀬家の者しか入学出来ないんだよ。将来、運営サイドに行くのは決定だし」

 

聞いていない。俺は学校も職業も選択出来ないのか。出会いは、どこにあるんだ?

 

授業は一般クラスのようだ。VR空間であることを除けば、普通の学校との違いは少ない?授業中に強制ログアウトするヤツが多いようだ。安全の為、尿意、便意、空腹などが一定レベルを越えると強制ログアウトが発動する。発動するてことは、健康管理が出来ていないと判断され、成績にマイナスポイントが負荷するようだ。

 

授業が終わると、俺は一旦ログアウトされ、休憩1時間が課せられる。この時間内でトイレ休憩や食事にストレッチを熟さないといけない。1時間後にはバイトの時間であるからだ。

 

「入学して1週間経てば、校則違反が出そうだな」

 

姉さんが悪い顔をしいている。学校のある星降る里には総合ギルド本部がある。総合ギルドは冒険者ギルド、商業ギルドなどが統合されているギルドである。主に、登録業務が為される。ここから、ゲームのスタート地点である『始まりの街』へ転移が出来る。尚、生徒特典により、『始まりの街』間の転移料金は無料である。

 

俺は職員特典により全区域無料で転移出来る。仕事場である『始まりの街』の冒険者ギルド本部へ向かった。まず在庫管理をチェックし、足り無い素材を採取したり加工したりする。ゲームの運用開始前であるが、NPCを鍛える為、通常と同じ手順で流通をさせていくのだ。

 

「今週末には正式オープン予定だ。チーターにはそれ相応な罰を与えろよ」

 

運営責任者で冒険者ギルド本部グランドマスターの兄が指示を出している。この冒険者ギルド本部が運営サイドの最前線になる。

 

 



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