スターウォーズ エピソードグランブルー (塩なめこ)
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プロローグ


(スターウォーズとグラブルの二次創作は)初投稿です。

どっちも世界観が深いので、筆者が把握しきれていない設定などで原作との乖離が生じるかもしれません。ご注意ください。


 

 

 ここら遥か彼方の銀河系。

 2つの物体が宇宙を駆ける。

 宇宙船だ。

 

 前方を飛ぶ宇宙船は様々な軌道で舞う。それを後方から付かず離れずの位置で追うもう一機。

 どうやら前を飛ぶ青い機体は後ろの機体に追われており、振り切りたいようだった。

 

 

 

 ピピピッ! ピピピッ! ピピピッ! 

 

 

 

 機体がターゲティングされ警報音が操縦席内に響く。

 それにも負けない音量で男は相棒に向かって叫んだ。

 

 

「クソッ! まだ振り切れないか! R6、ハイパードライブの準備はどうだ?」

 

『────!』

 

「準備完了だな、飛ぶぞ!!」

 

 

 倒されるレバー。

 ハイパースペースに侵入したその機体は直線方向に超光速に乗って動き出す。目指すのは誰も知らないような辺境惑星。

 

 そこで潜み生き延びるため、彼は碌な座標設定もせずに飛び立った。

 そこで新しい出会いが待っているとも知らずに。

 

 

 

 

 

 ◆◆◆

 

 

 

 

 

 モニカ・ヴァイスヴィントはその日もアマルティア島の秩序の騎空団、第四騎空艇団本部にて事務仕事に追われていた。

 リーシャが戻ってきて少しは仕事が減ったものの事件は絶えない。

 ファータ・グランデ全体の活動を統括する責任者の一人である彼女の元に各部署からの報告書が舞い込んでこない日はなく、ここ最近はずっと書類と格闘していた。

 

 

「よし、とりあえずこんなものだろうか。少し休憩を挟むとしよう」

 

 

 とはいえ彼女にとってこれは日常茶飯事。ひとつの遅滞もなくあらかた書類を片付けた彼女は、大好きなスイーツを取り出して一息つこうとしていた。

 

 

 ゴォォォン!! 

 

 

 その轟音が彼女の耳に届いたのは、ちょうど棚からケーキの入った箱を取り出そうとした時だった。

 

 

「な、なんだ!?」

 

 

 執務室の窓から外を見ると、島の森林地帯から煙が立ち上っているのが見えた。火事だろうか? 森に広がり街に到達すると危険だ。すぐに消火にあたらなくては───! 

 

 

「モニカさん、大変です!」

 

 

 そう思案している時に部下の一人が部屋に駆け込んできた。きっと今見えている煙について報告しにきたのだろう。

 

 

「あぁ、分かっている。火事だろう? すぐに人を───」

「違うんです!」

 

 しかし、返ってきたのは否定の言葉。モニカは続く言葉を聞いて驚愕する。

 

 

「空から何かが、降ってんきたんです!」

「なんだとっ!?」

 

 

 

 

 

 アマルティアの街のすぐ外で、その物体は動き出す。

 同時にカバーが外れ、中からローブを着た男が降り立った。

 

 

「ここは……どこだ?」

 

 

 R6というひとつのドロイドと、銀河を追われた元ジェダイの騎士はそうして空の世界へと足を踏み入れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 グランブルーファンタジー

 

 スターウォーズ エピソードグランブルー────。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ほら、見えてきましたよ! アマルティアです」

 

 

 ルリアはそう言って甲板から空に浮かぶ島を指さす。

 

 アマルティア島。

 

 秩序の騎空団の第四騎空艇団が本部を置くその島にあなたは依頼で荷物を運んでいた。

 内容は秩序の騎空団への補給物資。

 モニカやリーシャなどの第四騎空艇団の面々と面識が深いあなたは、度々彼らの頼み事を依頼として引き受けていた。今回の物資輸送もあなたの仲間であるリーシャから頼まれたものである。

 

 

「いつもいつもありがとうございます、団長さん」

「これくれぇどうってことねぇよな? 仲間の頼みなんだしよ!」

 

 

 そう言って胸を叩きながらあなたの傍らを飛ぶ赤い龍はビィ。あなたの大事な大事な相棒だ。

 

 

「もしよろしければ、到着した後になにかお礼でもさせてください。モニカさんも、皆さんと会いたがっていると思いますし」

「いいですね! 久しぶりにみんなでスイーツを───ってあれ? 見てください、街の向こう側から煙が……」

 

 

 そこでルリアは異変に気づいた。

 アマルティアの街は秩序の騎空団の建物が中心に建っており、そこからピラミッドのように四方に坂が広がるようになっている。

 

 ルリアが指さしたのは、あなたたちが飛んでいるこちら側とは反対側に広がる大地の方の森である。

 

 その光景を見て何か起こっていると察したあなた達は急いで騎空艇を港に付けることにした。速度を出し、アマルティアへと向かう。

 

 

 

 

 

 

 

「あっ、リーシャ船団長! お疲れ様です!」

 

 

 港に着くと秩序の騎空団員があなたたちを迎える。手には荷物のリストが記載されているであろう書類の束があった。

 彼があなたたちの運び入れた荷物を受け取ってくれると言う。あなたは仲間に指示をして運び出すように言う。

 

 しかし急いできた割にはなんというか、通常運転だ。港は滞りなく運営ができているようで、緊急事態という雰囲気ではない。……それでも少しザワついているか? 

 

 

「お疲れ様です。ここに来る際に森の方から煙が見えたのですが何かあったのですか?」

「あぁ、あれのことですね。ご心配をおかけしました。今のところ、特に大事にはなっておりません。火元も鎮火しました。ただ……」

 

 

 リーシャの問いに対してその騎空団員はなんでもない事のように答えたが、最後の方になって言い淀んだ。

 

 

「ただ、どうしたのです?」

「いえ、本当に問題はないのですが、どうにも処理が面倒な事案になりそうでして。とはいえ帰ってきたばかりの船団長がわざわざ出向くようなことでもないかな……と思いまして」

「この後本部に寄る予定でしたので気を使う必要はありません。しかし、事件にもなっていないのに処理が面倒……とは?」

「いや、その……事件ではあるんですよ。空から謎の物体が降ってくるという」

「はい?」

 

 

 突拍子もない返答をされてついリーシャはそう聞き返してしまった。荷物係の彼は困惑した表情をしながら語り出す。今日の午前中、何があったのかを。

 

 

「いえ、ですから、空から何かが落ちてきたんです。あの煙はその飛翔体から出てるものでして。しかもそれには人が乗っていたとかで」

「???」

 

 

 ますます困惑していく一同。説明するよりも見せた方がはやいですね、と彼は一人仲間を呼びつけると、モニカの元まであなた達を案内するように行った。

 

 ルリア、ビィ、リーシャとあなたは促されるまま件の人物の元へと向かう。これが、彼らと新しい世界との邂逅を齎すのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「で? もう一度名前を伺ってもよろしいかな」

「えぇ、構いません。俺はフェトル・ナジュムと言います。そちらの方は貴方の友人ということでよろしいのかな?」

 

 

 案内された部屋であなたはモニカとフェトルと名乗る男と出会った。彼の問いにあなたは首肯しながら、その男のことを観察する。

 

 男の風体はこの辺りのものとは違った。肌色の道着のような服に茶色のローブを羽織る彼の姿は、どこか浮いている。

 

 

「うおっ!?」

 

 

 突然、傍らのビィが驚いて飛び退いた。何があったのか、あなたは彼の視線の先を見ると……円柱状の鉄の塊が動いていた。

 

 

「そしてこちらがR6。俺の大事な友人だ」

「わぁ!? ろ、ロボットですか?」

「あぁ、ドロイドだ。彼は賢いよ」

 

 

 同じく驚いたルリアを落ち着かせるような優しい声でフェトルは答えた。あなたはこの2人(?)の雰囲気がここにいる誰とも異なることに違和感と既視感を感じるだろう。

 あなたはモニカに問う。

 

 

 

この人は一体……? 

 

 

「いや、それが私にもよく分からないんだ。空から降ってきたというのだけが確かでな……」

「空から……ですか?」

「あぁ」

 

 

 モニカはこれまでに起こったことをあなたに話し始める。

 

 最初、轟音と共に森の方から煙が昇り始め、モニカを含む秩序の騎空団の面々は急いで調査に向かった。

 そこには地面を抉り、半分埋まってしまった大きな物体と、その物体が発する炎を必死に消そうと、身につけていたであろうローブを叩きつけている男がいた。

 

 

『あぁ、クソ! R6、起きろ! お前の力が必要だ! R6? おーい!』

『……っ、とりあえず私達も消化作業に入ろう。貴公、我々も手伝おう!』

『っと、ここの方々か! 助かる!』

 

 

 その風貌に困惑しながらも、火が森に燃え移って森林火災になることを危惧したモニカたちは、迅速に火元を消化した。元々火事だと想定して道具を持ってきていた判断は正しかったという訳だ。

 

 

『それで貴公、名前はなんというのだ? 何処から来た? 街の人間が言うには空から降ってきたとの事だが……』

『ははは、お騒がせして申し訳ない。俺はフェトル・ナジュム。しがない機械の修理屋なのだが……。ふむ、何処から来たのかを答える前にこちらからも質問していいかな?』

『なんだ?』

『銀河帝国……という言葉を聞いたことは?』

『帝国……? 少し前に無くなったエルステ帝国のことか?』

『なるほど……。これは少し話す必要がありそうだ』

 

 

 それがあなたたちがこの島に降り立つまでにあった出来事だ。

 それからモニカはあなたたちがここに来るまでフェトルに色々と聞いていたのだが……。

 

 

「なんというか出てくる単語が違う世界のものと思えるものばかりでな……。素性もよく分からないし、どう対処したらいいものかと困っていたんだ」

「違う世界のもの……ですか?」

「あぁ。彼が言うには……彼はこの空のずっとずっと上からやってきたらしいんだ」

「宇宙……と俺たちは呼んでいるが……。ふむ、やはり文明レベルが俺いた場所と違いすぎるな」

 

 

 あなたは彼らの話を聞いて先程の既視感の正体を看破した。これはこれまで度々体験してきた異世界の人々と交流した時の感覚に似ている。

 

 

 

もしかして異世界の人? 

 

 

「異世界か……ふむ。君たちからしたら似たようなものか。そうだな、俺は異世界人だ。俺の船に乗ってここにやってきたね。

 しかし、君はなかなか面白い体験をしてきているみたいだな。普通、初対面の人に異世界人かどうか尋ねる人はいないよ」

 

 

 そう指摘されてあなたは少し顔を赤く染めた。少し無礼だっただろうか? あなたはすぐに頭を下げる。

 

 

「別に怒ってないよ。いや、君がどういう人なのか興味が湧いただけなんだ」

 

 

 そう言うフェトルに、そう言えば自分たちは彼に名乗っていないなと思ったあなたは自らの名を教える。仲間であるルリアやビィ、今来たばかりのリーシャも同じように自己紹介をするだろう。

 自分たちはこの空の世界で騎空団を率いて旅しており、あなたは自分がその団長であることも付け加えた。モニカとはその旅の途中で知り合い、公私共に良くしてもらっている仲であると伝えた。

 

 

「騎空団?」

「そうだぜ! オイラたちは騎空艇に乗って色んなところで依頼をこなしながら星の島イスタルシアを目指してんだ」

「傭兵とは違うのか?」

「傭兵は多くの場合船を持たない個人を指すことが多いな。それに仕事の内容も異なる。人員の他に騎空艇を貸し出すこともできるから、荷物運びなんかも依頼されるんだ」

「ほぉ、なるほどな……」

 

 

 交通手段の提供から戦闘員の派遣、村の農作業の手伝いから戦術指南、果ては国同士の外交の場にて見届け人として招かれることもあり、適当な報酬を提示すればありとあらゆることを騎空団はやってくれる。

 フェトルは彼らの在り方について深く感心したようで、しばし考えてから口を開いた。

 

 

「団長たちは騎空団としてかなり腕は立つのか?」

「当たり前だぜ! コイツとオイラたちがこれまでどれだげ冒険をしてきたと思ってるんだ」

「あぁ、ビィの言う通りだ。彼らは相当の強者だよ。我々だけでなく各国とも繋がりの深い存在だ」

「では団長、折り入って頼みがあるんだがいいかな?」

 

 

まさか……

 

 

「察しがいいな。俺を団長たちの騎空団に一時的に加えて欲しい。ダメだろうか?」

 

 

 フェトルは言う。今の彼にはこの世界で生活していけるだけの基盤がない。彼が持っていた【クレジット】なる通過はここでは使えない。そうなると色々と困るので騎空団で働きたいということだった。

 

 

「一時的……というのはどういうことなんでしょう?」

「俺が元いた場所に帰れるようになるまでは……ということだ。諸事情があって本来ならひとつの場所に長居できない身分でな。とっとと船を修理してここから去りたいんだ。だが……」

「金も材料もないんじゃどうしようもないってわけか」

「あぁ。材料さえあれば修理は俺とR6でできる。だからできれば俺の故障した船も直るまで置かせてもらいたいんだが、どうだろうか? 迷惑なら断ってくれても構わないが……」

 

 

これからよろしく! 

 

 

 申し訳なさそうに言うフェトルに対してあなたはきっぱりと言い放った。あなたにとって仲間が増えていくことは喜ばしいことである。仲間になりたいという者を拒む道理があなたにはない。

 

 

「即答とは……。団長は器が大きいのか純粋なだけなのか……。ありがとう。これからよろしく頼む」

「はい! よろしくお願いしますフェトルさん!」

「道着の兄ちゃん、よろしくな!」

 

 

 そしてそれはあなたの相棒たちも同様だ。ここに新たな騎空団員が誕生した。

 

 

 

 

 

新キャラクター加入! 

 

 

「しがない機械技師のフェトル・ナジュムだ。R6共々よろしく頼む」

『────!』

 

 

クエストをクリアしたためフェトル・ナジュムが仲間になりました

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◆◆◆

 

 

 

 

 

 

 

 ピピピッ! ピピピッ! ピピピッ! 

 

 

 ズドォーン!!!! 

 

 

 …………。

 

 

 

「ダメです。やはり一切の通信が不通です」

 

「そうか。トルーパー、ご苦労」

 

 

 

 ファータ・グランデとは違う空域にそれは落ちた。

 流星となってこの世界にやってきたのはフェトル・ナジュムだけではなかった。彼女たちもまた、彼を追ってここに辿り着いたのだ。

 

 

「座標も掴めません。アウターリムより更に外、帝国の支配圏外かと思われます」

「あぁ……それは見れば分かる。そこらに浮いている船を見てみろ。この惑星独自のものなのだろうが技術レベルが低すぎる」

 

 

 そこは空に島が浮き、そこに人が住まう世界。しかし彼女たちに驚きはない。たとえ大地がないガス惑星であっても、海ばかりの惑星であっても、生物が住める環境ならばそこには国があった。それは彼女たちの文明にとっては当たり前のことである。

 

 問題なのは未知の生物がいた事であろう。

 フェトルを追ってハイパースペースを抜けてやってきたこの星の宙域で、彼らは何者かに船を強襲された。

 正体不明の敵の攻撃に晒され、フェトルを追跡することも叶わずに彼女らはこの空の世界に落ちるしかなかった。

 

 一時は反乱軍の新たな拠点であるのかと考えを巡らせた彼女であったが、この世界を少し調べてそれはないと断じた。

 いくらなんでも技術が後退しすぎている。反乱軍も生物の集まりである以上、最低限の衣食住、インフラが確保されていなければ戦うこともできないだろう。

 

 この星ではその最低限すら整えるのが難しいだろう。ここは資源は豊富そうに見えるが、いくらなんでも銀河の中心たる帝国から離れすぎている。

 資源を活用させるための機材や人員の輸送は必須であるのに、ここではコストが嵩みすぎる。

 もし仮にそのような大規模輸送をやっていたとしても、今の今まで帝国になんの情報も入らなかったというのはさすがに有り得ない。

 

 故にここは、本当にただの、銀河社会から隔絶された地であるだけなのだ。

 

 さて、であるならばだ。

 

「奴もここに落ちている可能性が高い。ここが未開拓地域であるのならば、奴の協力者がこの星にいるとは思えない。先程襲ってきた生物も、本能のまま我々を攻撃してきただけなのだろう。

 そんなものが奴だけを見逃すとも考え辛い。ジェダイもこの星に墜落していると断定した上で調査にあたる」

「了解しました、尋問官」

 

 

 ナル・グランデのとある島にて彼女たちは動き出す。ジェダイを殺すためならばどんな手段も厭わない彼女たちは、この空の世界の住人に対してもそれを強いるだろう。

 

 しかしフェトルと彼女たちは未だ瘴流域を挟んだ別空域にいた。彼と同じく今はまだ宇宙に上がれない彼女たちが、彼を発見することは容易ではないだろう。

 

 

 何処かに瘴流域をものともしない騎空団がいなければ……。

 

 

 

 





他作品のこともあるのでゆっくり更新でちまちま書いていきます。


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最初のお仕事


17日にグランデフェスっぽいですが皆さん石の貯蓄は十分か?




 

 

「いい機会だ。団長、依頼をしたいのだが構わないだろうか?」

 

 

 あなたにフェトルという新しい仲間ができたところでモニカが言った。あなたは快く承諾する。しかし随分と唐突であるなとあなたは思うだろう。

 

 

「いやなに、フェトル殿に騎空団の仕事に慣れてほしいと思ってな。急ではあるが簡単な仕事を用意させてもらった」

「おっと。それは気を遣わせてしまって申し訳ない」

「いや構わない。聞けば貴公は異世界人。この世界の秩序も分からないだろう? であるならばそれを指導するのも我々の役目だ。それに団長だって貴公の能力を知りたいだろうしな」

「確かに。俺が何に役に立てるかはこちらの世界の住人でないと分からないか」

 

 

 言われてみればそうだなとあなたは思う。

 フェトル自身は機械技師と名乗ったが、彼の言いようではこちらで言う機械とは全く異なるものを触ってきているように聞こえた。その技術がこちらで使い物にならないのであれば、それ以外で活躍してもらはねばならない。

 

 

「だから今回団長には2つのことを依頼したい。まず、フェトル殿が乗ってきたという船の回収を頼む」

「む。それならわざわざ依頼という形にしなくても……」

「まぁ最後まで話を聞け。もう1つはあの周辺の魔物退治だ。……あのような大きな船の回収には台車か荷車が必要だろう? だが運び入れるには危険が多くてな。さける人員も今はいない。早急に解決できるならこちらとしても助かるんだ」

 

 

 あなたは改めてモニカから依頼を受ける。

 早速準備をしに行こうかとフェトルの手を引っ張っていくだろう。フェトルはその勢いの良さに驚きつつも、申し訳なさそうに言った。

 

 

「俺の尻拭いのようなことをやらせてしまってすまない。団長の手間をかけさせないように全力であたるよ。……あーそれで頼みがひとつあるんだが、何か剣のようなものはないか? 生憎と武器は持ってなくてな」

 

 

 

 

 

 

 ◆◆◆

 

 

 

 

『────』

「わかってるよR6。でもアレをこの星で使うのは危険だ。過ぎた技術は争いを呼ぶ」

 

 クローン戦争時代から、共に修羅場をくぐってきた緑色の頭の相棒が心配そうに言う。だが俺はそう言って彼が見せる”それ”をまだ閉まっていくように伝えた。

 

 辛くも尋問官たちの追撃から逃れジャンプしてきた先で、俺たちは謎の宇宙生命体の攻撃をくらってしまった。

 その影響で惑星の大気圏への突入に踏み切らざるを得なくなったわけだが、このアマルティア島に不時着できたのは幸運だったろう。

 秩序の騎空団や団長と言った面々に出会えたのは奇跡に近い。おかげさまで大事になる前にスターファイターを回収できそうだ。

 

「しかし異世界か……。そんな遠くを設定した覚えはないんだけどな」

 

 ここには銀河を覆っていた暗黒面の暗いフォースの影さえも存在しなかった。クローン戦争が終わり銀河帝国が成立してからの5年間、ずっと俺の周りを付きまとっていたというのに、だ。

 こんな所にこれるような座標設定はしていない。もしかしたらスターファイターに後付けした、おんぼろのハイパースペース用の装置を使ったせいで、本当に異世界に来てしまったのではないだろうか。

 

「異世界転生……いやこの場合は異世界転移か? 我が人生で2回も体験することになるとは思わなかったぜ」

『───?』

「なんでもないよR6。とりあえず準備を急ごう。団長が待ってる」

 

 スターウォーズの世界に転生した。そういう経験が無ければ今頃パニックに陥っていたかもしれない。一度あったことなのだ。二度あってもおかしくはないかと考えれたおかげで、すんなりとこの状況を受け入れられていた。

 

「しかし異世界人が多くやってくるって、どういう世界なんだここは。ファンタジーっぽいのは分かるんだけどな」

 

 団長の発言を思い出す。あの言葉がなければここに留まるという判断はできなかっただろう。

 俺は今()()()()()()()()()()()()という確信にも似た仮定を行った上で動いている。これが異世界転移であるのならば、俺を追っていた彼らが、俺と同じ様にこの星に辿り着けるとは思えなかった。

 

 だからこうして騎空団に所属する事も出来た。通貨もルールも違う場所で行動の制限がないのはやりやすくていい。おかげで生活には困らなさそうである。

 

 とはいえ長居もしていられない。スターウォーズ世界の技術は絶対にこの世界にとって良いものでは無い。スターファイターかライトセーバー、R6が何者かに盗まれて解析されたりでもしたら大変なことになるだろう。

 

 加えて、尋問官たちが絶対にここに来ないとは言えない。団長の言葉を聞く感じでは異世界人は結構頻繁に来ているようだった。一度つながってしまった世界の住人が、もう現れないなんて言う保証が誰にできるだろうか。そんなことが出来るのは神だけである。

 

 その確率がたとえどんなに低くてもある以上、俺はとっととスターファイターを治してどこか遠くに移動しなければならない。

 

 だからこの騎空団でお世話になるのはスターファイターの修理が完了する間だけだ。技術レベルがよく分からないし、代わりになるようなパーツがあるかも分からないのでどの程度になるか推定することは出来ないが。

 

「なぁR6、似合ってるか?」

『───!』

「ありがとう。まぁ似合うよな、道着に竹刀だもん」

 

 団長はどうやら武器を集める趣味があるようで、剣や槍、斧といった様々な物を余るくらい収集していた。その中から、できるだけライトセーバーと同じ長さを持った剣を選んで貸して貰った。

 

 それで渡されたのがこの『袋竹刀』だ。多少乱雑に扱っても問題はないらしく、強度があるので防御にも十分使用出来る代物なんだとか。

 その分『斬る』というよりかは『叩く』という感じの剣だそうだが、ライトセーバーばかりを使ってきた俺にはそっちの方がいいかもしれない。

 

 あれの斬れ味は良すぎた。あれは刃物と違ってどんな方向から斬っても切断できる武器であったので、刃の向きとか考えずに攻撃と防御を両立できていた。

 それに慣れてしまった俺には刃に沿ったキレのいい剣筋とか無理そうである。それなら寸止めに近い感覚で扱える、『叩く』竹刀の方が合っている。それにちゃんと力を込めれば魔物を屠れるくらいには攻撃力はあるらしいし。

 

「よし。それじゃ行くぞ。車を押すの、頼んだぞ相棒」

『───!』

 

 

 

 

 

「おぉ! 随分様になってるじゃねぇか!」

 

 騎空艇の甲板に出ると、ビィという小さな赤い竜がこちらを見てそう言った。それに反応してルリアと団長もこちらを向き、近づいてくる。

 

「似合っているようで何よりだ。荷車の用意はできてるのか?」

「はい。外で他の団員の皆さんが見てくれてます」

「他の団員?」

「あぁ! でかい機械を運ぶんだろ? だったら人がいるって思ってな」

 

 話しながら甲板をおりると、そこには木製の荷車と、その横で談笑している3人の団員が見えた。

 

「あ、みんな来たみたい」

「おぉ、貴殿がフェトル殿か某はジンと申す」

「ボレミアだ。こっちが……」

「サラです! よろしくお願いします!」

「フェトル・ナジュムだ。よろしく」

 

 その3人はなんとも多種多様な装いをしていた。ボレミアと名乗った彼女はファンタジーらしい騎士や傭兵然とした格好であるのに対して、ジンは腰に刀をぶら下げた和風……? の服装をしている。

 サラはヒラヒラの、どこかの巫女や姫を連想されるような装いだ。ていうかこの子いくつだよ。団長でも若いと思ったけど、彼女に関しては幼さすら感じられるぞ。

 

「団長から聞いた話だと荷運びを手伝ってくれるという話だったが……ジンやボレミアはともかく、サラも同行するのか?」

「実はなフェトル殿、我々はサラ殿の付き添いなのだ」

「え、本当に?」

「はい! サラちゃんには心強い味方がいるんです」

「ちゃんと紹介しなくちゃですよね。来て───グラフォス!」

 

 そうサラが叫んだ瞬間、強いフォースが彼女の周りを漂い始めた。

 暗い気は感じられないが凄まじい力の奔流に思わず目を細めてしまう。サラの方を伺うと彼女の周りに黄金にも似た砂が浮かび始め、集まってひとつの物体を形作った。いや、生物だろうか? 

 

「砂神グラフォス。サラは砂神に仕える巫女だったんだ」

「いやはやこれは……凄いな」

「グラフォスはとっても強くて力持ちなんです。今回のことでお役に立てるかなと思って」

 

 確かにこの力があればスターファイターを持ち上げて運ぶのは簡単に出来るだろう。だがしかし、困ったな。意気込んでいるサラには悪いけど、既にそういう重量問題の解決策はあるのである。

 

「ありがとう、サラ。もしも俺の試す方法がダメだった時は頼むよ」

「……もしかして迷惑でしたか?」

「───」

 

 ヒェッ。

 声には出さないが身震いがした。サラが悲しそうな顔をした途端にボレミアから良くないフォースが感じられたからである。もしかして彼女、かなり過保護なタイプの人なのか……? 

 

「い、いやいや違うんだ。その気持ちはありがたいし、実際に頼るかもしれないから来てくれるとこちらとしても助かる。ただ……」

「ただ?」

「今回の仕事は俺の不始末が原因なんだ。だから、できるだけ皆の手を煩わせたくなくてな」

 

 一応、魔物退治という名目もあるので人手は必要なのだろうが、メインは俺の船の回収である。既に団長や秩序の騎空団に迷惑をかけてしまっているのに、更に団員の手も煩わせたらジェダイの名折れである。

 

「それにこれは俺たちの最初の仕事だ。団長へのアピールの場も兼ねてると俺は思ってる。だから、みんなと一緒に俺の活躍を見ててくれないか?」

「分かりました。でも……」

「あぁ、本当に困った時は遠慮なく頼らせてもらうよ」

「はい!」

 

 良かった。サラは納得してくれたみたいだ。ボレミアも殺気が収まっているみたいだし、上手くやれたと見て構わないだろう。多分。

 

「よし、それじゃあ荷車はR6に任せて行くとしようか」

「えぇ!? これとっても大きいですよ!?」

「ルリア、R6を舐めちゃいけないぞ。こいつはこれくらいの物なら難なく運べるさ」

『───』

「おぉ。ワイヤーが引っかかって……」

「凄いねボレミア! 1人でどんどん引っ張ってちゃうよ」

「あぁ、見た目からは連想できないパワーがあるな」

 

 

 

 

 

 ◆◆◆

 

 

 

 

「……」

「───ッ!」

 

 

 ジンはただ彼の流れるような動きを目に焼き付けていた。

 フェトルはその手に持った竹刀で襲い来る魔物たちを次々と斬り伏せていく。先程彼が言ったように他の誰の手も煩わせることなく。

 

「……すごい」

「道着の兄ちゃん、もの凄く強ぇじゃねぇか」

 

 団長たちは彼の活躍を見て各々唸る。機械技師とは何だったのか。明らかに体系化されたその剣技に、彼らは魅了されていた。

 彼が魔物相手に用いていたのは”フォームI”、【シャイ・チョー】である。

 ジェダイの誰もがこの剣技を学ぶ。最も古典的でセイバーテクニックの基礎を形作ったフォームであるが、それ故に荒削りで、時代と共に対セイバーやブラスターを主眼に置くようになった銀河では、あまり実戦的とは言えないものであった。

 

 そのため、このフォームを学んだほとんどのジェダイが、自身のフォースや性格に似合ったフォームへと転向、修行してジェダイ・ナイトとなっていく。それはフェトルも例外ではなく、彼が用いる本来の型もこのフォームではない。

 

 だが、袋竹刀を持った状態で対魔物相手に戦うなら、遥かにこのフォームの方が勝っていた。

 ライトセーバー黎明期に発展したこの剣技は、原生生物を相手取る際や、相手を殺傷せず無力化するという点において非常に特化していた。

 

『斬る』よりは『叩く』。

 

 フェトルはクローン大戦以前の、まだ平和の調停者であった頃のジェダイの在り方に立ち返りながら、その剣さばきをさらに鋭いものにしていく。

 

 その舞にも似た戦いが終わった頃には魔物たちは地に倒れ付していた。しかし、彼らの体からは血の一滴も流れ出ることはなく、彼らの命はひとつとして散ることもなかった。

 

 

 

どうして魔物たちを守ったの? 

 

 

 あなたはそれが気になってしまい、フェトルに問う。

 15歳の若者であるあなただが、魔物たちの驚異はしっかりと認識している。

 ディアドラが住むアイルストという例外こそ存在すれど、基本的に彼らは縄張り争いをする敵同士であり、故に躊躇えばこちらの命も危うくなる。

 

 彼らが営みの驚異となるからこそ、騎空団に討伐を依頼されるわけである。

 騎空団の団長たるあなたは、依頼された以上一切の容赦なくその命を絶たなくてはならないという認識を持っていた。

 生き残らせればまた襲わせる機会を与えることとなり、魔物による被害を抑えるという観点から見れば、依頼を達成したとはいえなくなるからだ。

 

「その理由は主に3つ。ひとつは、今回の仕事の場合は魔物を完全に殺す必要は無いと判断したからだな」

 

 今回のメインはあくまでもフェトルの船の回収である。

 その驚異となりえるのが、彼の墜落現場付近に生息する魔物たちだった。だからモニカはその討伐を依頼した訳だが、それは回収作業の邪魔になるからであり、アマルティアの街に被害が出たからというわけではない。

 だからこそ回収作業が終わるその時まで眠っていてくれれば十分なのである。

 

「2つ目はこの辺の生態系を乱しすぎないようにするためだ。下手に介入しすぎて逆に魔物たちが活発になったら怖いからな」

 

 生態系とは絶えず変化するものだ。

 野生においては弱肉強食が絶対のルールである。そこには狩るものと狩られるものが存在し、それは魔物同士の関係にも当てはまる。

 もし今殺したのが狩られる側の弱者なら、強者は餌を求めて街の方まで行動範囲を広げるかもしれない。

 逆にこの辺りを仕切る強者が死ねば、ここは縄張り争いなどで荒れてしまい、その影響は生活に及ぶかもしれない。

 だからこそ現状維持に努める。旅に出る前は狩りをして生活をしていたあなたはこの考えにすぐに納得することが出来るだろう。

 

「そして3つ目。多分、この辺で魔物が暴れてる原因が俺の墜落だからだな。勝手に踏み入って勝手に荒らして勝手に殺す。酷いとは思わないか?」

「それは確かにそうかもしれないが……。フェトル殿はどうしてそのように思ったのだ?」

「彼らからは混乱や恐怖と言った感情が感じられたんだ。モニカからはここ最近この辺りは荒れていなかったと聞いている。なのにそんなものが感じられたってことは、原因は最近この辺りで起こった何かだ」

「それが船の墜落、か。しかしフェトル、お前はどうして魔物の感情が分かったんだ?」

 

 ボレミアの疑問にあなたは首肯するだろう。彼の物言いでは戦いの中それを感じて非殺傷に切り替えたように聞こえる。

 

 あなた自身も多くの経験を積んだことで、戦いの中で殺気や敵意に敏感になったり、人との会話の中から感情を読み取る術を身につけたりしたものだが、流石に先程のような一瞬の攻防の中で、種族の違う生物の感情まで図る術は知らない。

 

「フォースのおかげさ」

 

 彼はあっけらかんと言った。しかしあなたたちは首を傾げるばかりである。

 

「フォース、ですか?」

「あぁ。俺は彼らから発せられるフォースを読み取っただけなんだ」

 

 さも当然のことようにフェトルは言うが、あなたたちの疑問は膨らむばかりである。

 

「えぇと、よく分からないです……」

「そもそもフォースとはなんだ。変なことを言ってサラを困らせるな!」

「わ、悪かったよ。ちゃんと教えるからそう怒らないでくれないか」

 

 とは言っても見せた方がはやいかなーとフェトルは呟きながら歩き、そして足を止めた。

 件の船がある目的地に着いたのだ。

 

「よし。R6、準備してくれ」

「待ってくれよ。まださっきの”ふぉーす”? の話が終わってないぜ」

「それを今から見せるのさ、ビィ。まずはこいつを地中から引っ張り出さないとな」

 

 あなたは彼の視線の先にある船を見る。

 真ん中に大きなガラスのドームがあり、その中にはシートが見える。

 後ろにある突起はエンジンだろうか。横に広がる羽のような部分は片方が焼け焦げている上に、引きちぎられたような跡がある。

 そしてその先端は三角形のように尖っているのだろうか。土が盛り上がって埋まってしまっている。

 モニカから聞いた通りの光景に、やはりサラを連れてきて正解だったとあなたは思うだろう。グラフォスがいれば台車に乗せることは容易いはずだ。

 

「ほんとうにグラフォスの力が無くても大丈夫なんですか?」

「あぁ、大丈夫だ。まぁ見ててくれ」

 

 だがフェトルにその気は無いようで、優しい声でサラに語りかけた後、一歩前に出て両手を船の方に突き出した。その姿に一同は不思議そうにフェトルを見ることしかできなかった。ボレミアからは若干怒気が感じられたがこの際は触れないでおこう。

 

 1、2、3───。

 

 彼が手のひらを広げ、腕を突き出してから、静寂がこの場を支配し、ただ時間だけが過ぎる。

 

「オイオイ、そんなところで突っ立って一体何をしようって───えええええええええ!!?? 

 

 堪らず呆れてしまったビィがフェトルに語りかけようとしたところで、それが起こった。

 

「はわわっ!? 船が宙に浮いてますぅ!」

「これは……っ!? なんと摩訶不思議な」

「フェトルさん、触れてないよね?」

「あぁ、私たちにもそう見える。一体何が……」

 

 その光景を見てあなたの仲間たちは次々と声をあげるだろう。あなた自身も驚き、息を飲んでじっと見つめている。

 彼の乗ってきたという船の全貌が明らかになった。思っていたよりも分厚いそれは明らかに人の何倍もの質量を有しているというのに、宙に浮いていた。

 しかもそれをしたであろうフェトルはただ目を瞑って手を伸ばしているだけである。彼自身は触れていない。

 

「────」

 

 

 深く息を吸い込みながら、彼はゆっくりと腕を横に動かした。R6が引っ張ってきた台車の方へ向けると、それに追従するように彼の船も動く。

 まるで見えない大きな手があるようだ。慎重に、丁寧に、ゆっくりと浮いていた船はどんどん沈み、台車の上に置かれた。

 

「これがフォースさ」

 

 一仕事終えたフェトルは、瞑っていた目を開いてあなたたちにそう言った。






初めての書き方でしたけどどうでしたかね……?

それはそうと土古戦場まであと一週間ですね。
リアル事情と準備のために色々頑張るので、次の更新は未定です。
とりあえずロベリアは取んなきゃね……。


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