我の進む道こそ王道なり (ごーたろんす)
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前日譚
我の進む道こそ王道なり


その瞬間、下界全ての子供、下界に降り立った神々は予感した。

 

下界の王が産まれたのだと。いや、降臨したのだと。

 

 

 

 

 

 

 

精霊と共に生活をしているエルフ族。

その王家、アールヴ家にまた一人子供が産まれた。

綺麗な金髪に深紅の瞳。

なによりも産まれたばかりの赤ん坊のはずなのに思わず平伏したくなるかのような王気(オーラ)が溢れ出ている。

 

「この子の名はギルガメッシュ。ギルガメッシュ・リヨス・アールヴだ。」

 

父の名付けによりギルガメッシュは下界にしかと降臨した。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ギル。何をしているのだ?」

 

リヴェリア・リヨス・アールヴ。ギルガメッシュの姉にして神々とも並びうると評される美貌の持ち主。

 

「姉上か。本を読んでいる。エルフ族には足りぬものが多すぎる。

いや、エルフ族だけではない。下界の子供全てだな。」

 

椅子に座り長い足を組んで本を読んでいるギルガメッシュ。

つい先日15歳になった可愛い弟だった。

 

パラパラと本のページを捲るギルの隣に座り話を続けろという目線を向ける。

ギルはふぅと一息ついて紅茶を入れて姉に渡す。

 

 

 

「姉上。今は神々がこの下界に降り立ち、新たな時代と移り変わっている。それは理解しているな?」

 

リヴェリアは紅茶のお礼を言いつつギルのその言葉に頷き続きを聞く。

 

 

「そもそもだ。古代から新時代へ移り変わっているが神々などきっかけの1つにすぎん。

時は刻一刻と流れていく。当たり前の話だ。

 

本を読み、他種族のことにも目を向けた。エルフ族の歴史にも目を通した。

神々は幾つもの次元、幾つもの時代を見てきた筈だ。そんな本より過去を知れる神々がこれほど近くに来ているのになぜ下界は進んでいない?」

 

 

「…だがギル。オラリオは進んでいるのだろう?

進んでいないなどということは無いのではないか?」

 

ギルは静かに首を横に振る。

 

自分で考えてみよと言わんばかりに口を閉ざす。

 

 

どういうことだ?私は何を見落としている?ギルがここまで言うのだ。確実に何かある。

 

姉としてギルが産まれて15年ずっと一緒にいた。ギルは無駄な事は絶対に言わず、王としての覇道を自ら突き進んでいる。

だからこそ王として考えて……

 

「そういうことか。…ギル。私にはエルフ族しか想像できんが、この閉鎖的な種族だからこその停滞か?」

 

「ふっ。さすが我が姉上よ。愚物の父とは違う。我はエルフ族の王、いや、下界の王としての自負がある。

だからこそ民草には示さなばならん。このままではエルフ族は他種族に置いていかれる。ある種もう置いていかれている。

 

エルフ族の長所は豊富な魔力と精霊との親和性、そして同胞に対しての絆が強い。

逆に短所は肉体労働に向いておらず他種族を見下し、そして何よりの問題は発展しようとする気概の無さだ。

 

ヒューマン、アマゾネス、獣人族、小人族、様々な種族が織りなってこの下界はある。

 

そこを忘れ我がエルフ族が至高など烏滸がましいにも程がある。

 

我が王でなければこんな種族はとうに見放しているぞ。」

 

ギルの言葉には重みがある。自分の可愛い弟の筈なのに王としてのギルガメッシュを見せつけられ同じ王族なのに頭を下げそうになる。

 

「なるほどな。ギルの言うことは正しいと私も思う。だが今更変えられるものなのか?」

 

「変えれるではなく変える。我は王。王たる務めを果たすだけよ。だが今のままでは何もできぬ。

 

何故なら書物でしか外の世界を知らぬからな。

 

……姉上もアイナと共にもう外に行くのだろう?」

 

 

「……ギルは気づいていたか。」

 

「当たり前だ。我が我でいられたのは姉上。貴女とアイナがいたおかげだ。これを。」

 

ゴソゴソと2つ荷物を渡され、ピアスを2つ手に置かれた。

 

「餞別だ。このピアスは我の王の財宝(ゲートオブバビロン)に入っていたものだ。この財宝を渡すのは姉上とアイナくらいよ。今後配下ができれば考えてやらんこともないがな。」

 

 

「…ギル。ありがとう。大切にする。」

 

可愛い弟の頭をグシグシと撫でると無言でそのまま撫でられるギル。

 

本当に可愛いやつだと思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

姉上が森から出て行ってしばらくはさまざまなエルフ族の集落を見て回り、現状のエルフ族の問題点をメモに書き記した。

エルフ族の中でも色々な性格の者がいる。王と祭り上げられたエルフもいればダークエルフもいた。

 

犯罪をするエルフ(殴って更生済み)や貧しくて食事もできないエルフ(王族なんて関係ないと家から大量の食材を配布)などヒューマンでなくともエルフ族も変わりないことがよくわかった。

 

 

ある程度梃入れはできたのでもうこの森には用はないと外の世界に行くことにする。

 

「幸いにも我はエルフ。時間はあるのだ。世界中を見てまわり、そして下界の民草を導ける王となろう。

 

まぁ王となる前に遊ぶのも一興。そこそこ回ったらオラリオに行って姉上に会いに行くか。あやつらも行くみたいだしな。

 

さて我の瞳に何を写してくれる?外の世界よ。」

 

ニヤリと笑い、フードを被って歩き出す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

刮目せよ。下界の王が今この時より飛躍を始める。

 

神々ですら見通せぬ王が何を成すのか。

 

新時代の先を行く王が歩み始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

世界中を見て回り、ギルがやったことは神々に恩恵をもらうのではなく民の暮らしを観察し、それがどうすればより良くなるのかを考えることだった。

 

種族が違えば何もかもとまではいかないが常識すら違う部分が多々ある。

 

それを踏まえた上で良くする為、ひいては子供達が健やかに大人になって次代に託せるような生活をできるようにするにはどうするか。

 

それを常に考え、まずはエルフ族に落とし込もうと画策していた。

 

ーーー問題はこの神時代。恩恵を授かりモンスターと戦う。それ自体は構わんが力、それも戦う力がある者が偉く力無いものが喰い物にされるなどあってはならん。

 

力とは1つではないのは雑種、民草もわかっておるだろうが三大クエストとやらのおかげでそのような現状になってしまった…か。

 

理想論だけで語るには今の時代は不可能に近いな。

 

 

 

 

ギルはこう考えつき、結果だけ先に言ってしまえば戦闘力を上げることにした。

 

極東にて技の極地とも言われる武神。タケミカヅチに出会い、貧窮を極める社に王の財宝から大量の食事と自ら稼いだ金を渡して教えを乞うた。

 

 

 

「ううむ。ギルガメッシュ。本当に出て行くのか?」

 

 

社の子供達にまとわりつかれながら優しい目で子供達の頭を撫で、抱っこしているギル。

 

タケミカヅチがこう言ったのは子供達が非常に懐いているのもそうだが、極東でも食事に困らない農業や仕事を教え、皆を笑顔にしたからだ。

 

そして権力のある者に対しては、王の財宝の波紋から剣や槍の先端を出して脅しに脅した。

 

ーーー雑種めが。我は王だ。そして子は宝よ。宝は全て我のもの。我のものに手を出そうなど死に値する。

雑種。貴様ができるのは頭を垂れて我の宝を必死で守ることだけだ。

ああ。安心しろ。雑種にも劣るゴミはこの王自ら間引いてやろう。

 

 

そう言って朝廷の中でも控えめに言ってもクズと思われる者は全て消した。女神アマテラスやツクヨミは困った顔をしていたが納得もしていた。

 

タケミカヅチは子は宝という言葉にまったくもってその通りだと頷く。

 

何よりハイエルフである筈のギルガメッシュが子供とはいえ、ヒューマンのおしめを替えたり肩車をしたりと触れ合えていたのだ。

 

技を教えるにしても喋り方が多少傲慢とはいえ、真摯に取り組んでタケミカヅチも舌を巻く程の成長を見せた。

 

「ああ。神タケミカヅチ。世話になった。我はエルフ故に力もある程度までしかつかんと思っていたが…。そんなこともなかったな。

 

これも我の見聞を広げることになった。この子らは次代の宝よ。神タケミカヅチが孤児を引き取り、父のように抱える。

 

それを見たからにはエルフ族、ひいては下界の王たる我が助力するのは当然。下界に住まう者の代表として礼を言う。」

 

「俺は神だが…。こう、なんだ。下界の王に礼を言われるとやはり嬉しいものだな。孤児を引き取るのは俺の自己満足かとも思っていたが、認められるとやはり嬉しい。

 

何よりハイエルフであるギルガメッシュがヒューマンの子と触れ合えたのが嬉しいことだ。」

 

 

ギルはふっと笑い膝の上に座って抱きついていた命を抱き上げて横に座らせる。

 

「ギルさま??命は抱っこしてほしいです!」

 

「ふふ。命は可愛いな。だがすまない。これからは父、タケミカヅチにしてもらうと良い。

我はもう出る。そうだな…。命。桜花。千草。お前たちはいずれここを出るだろう。他にも一緒に行くものはいるだろうがお前たち3人は決してここに留まるような器ではない。

 

オラリオにこい。我も旅の最後にはオラリオへ行く。そして下界の子供の悲願を達成し、この下界をより良くするぞ。

 

この王と約束だ。」

 

 

子供達は首を傾げながらも約束約束!!と大はしゃぎしている。

 

タケミカヅチはその光景を目に焼き付けた。これが下界の王かと。天界にも王と名乗る神々はいたがまさに王の中の王だと認める。

 

ギルは話そこそこに極東を出てまたオラリオまでの旅路を楽しむことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーなんだ?兎人??いや、ヒューマンの子か。我の瞳にそっくりだな。あれは神?しかも高位な神だな。

 

む?隠れて見ている女と男……

 

あれは強いな。冒険者とやらか。

 

子を狙っているのならば容赦はせん。威嚇程度に撃ち抜いてやろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーー王の財宝(ゲートオブバビロン)射出。

 




見てくれてありがとうございました。



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王とは?

ギル様カッコいいよね。

アルフィアとザルドってどういう風に扱うのが正解なんだろ


それは急に現れた。恐らくレベル4程の力で投げられた槍や剣が10本程私達のいた所に着弾する。

 

轟音を上げガラガラと甥を隠れて見ていた場所が抉り取られ崩壊する。

 

だがこちらは最強と評されていたヘラ、ゼウスファミリアのレベル7。この身が病に蝕まれていてもあれくらいの攻撃なら避けられる。

 

 

「……オラリオからの追手か。」

 

まさかレベル4以上の追手をあの数だけオラリオから出すとは思わなかった。ザルドも同じようで大剣を構えている。

 

しかしやってきたのは何か色々おかしいエルフだった。

 

極東の服……。甚平とやらだったか?待て。エルフはあの年増もそうだが肌を他者に見せるのは嫌なのでは無かったか??

 

何故半袖短パンなのだ。

 

恐らくこの人生で一番と言っていいほどのマヌケ顔をしているだろう。

 

ザルドも同じようでポカンとして固まっている。

 

スタスタと歩いてくるエルフを普段は閉じている目を開けて見る。エルフとは思えぬ程に鍛えられた身体。そして歩くだけでわかる技術の高さ。目には怒りの炎。

 

ザルドも気づいたのか構えつつ口を開く。

 

「……どこのファミリアの者だ。」

 

そうだ。オラリオでもこのレベルのエルフなど見たことがない。こいつは一体……

 

「黙れ雑種。誰が口を聞いて良いと言った。子は宝。すなわちあの子も我の宝よ。我の宝に手を出す雑種は殺す。

 

が、貴様らはただの雑種とは違うようだ。それは認めよう。よってこの王自ら貴様らを処罰してやる。」

 

……何を言ってるんだこいつは。あの子は私の甥だぞ?私の可愛い妹の子。ああメーテリア。

 

「……待て。王だと?まさかっ!!」

 

ザルドがそう言った瞬間に先程の比にはならん速度の剣や槍が飛んできた。

 

あれはこいつがやったのか!?くっ!あれは魔法か!!

 

黄金の波紋から次々と射出されてくる剣や槍、挙げ句の果てには鍋まで飛んでくる。

 

「おっと。命と買いに行った鍋まで出てしまった。」

 

鍋は着弾する前に粒子となって消えた。つまりこいつはこの速度で射出しているものを知覚、把握しているということ。

 

こいつは強い。

 

ザルドもわかったのか頷き本気になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーほう。この速度なら対応されるか。神々の恩恵とやらか。しかし瞳を見てわかる。雑種……いやこいつらはあの子に特別な思いがあるようだ。いきなり攻撃した非礼は詫びよう。

 

だが我もタケミカヅチのところで教わった技術を試したいと思っていた。近接においての実力差はある。が、格上相手にどこまでやれるか。

 

 

否!!

 

 

 

どこまでだと?我は唯一無二の王!王の中の王だ。我がやらねば民は着いてこん。近接で勝つ。必ずだ。

 

 

 

 

 

 

波紋からの射出が止み、砂埃が落ち着くとエルフはジッとこっちを見ている。先程までとはどこか違う。

 

私もザルドも多少の傷はあるものの大したものではない。

 

「王とやら。1つ良いだろうか。」

 

「……貴様らはどうやらそこいらの雑種とは違うようだ。我の勘違いだったのは認めよう。その詫びとして口を開くのを許す。」

 

 

「感謝する。貴殿はエルフ族の王家。下界の王と噂されているギルガメッシュ・リヨス・アールヴ様でよろしいか。」

 

何?あの年増の家系だと?それにギルガメッシュの名は私でも聞いたことがある。メーテリアが会ってみたいと言っていたやつだ。

 

「いかにも。我が王の中の王。ギルガメッシュ・リヨス・アールヴだ。名乗れ。貴様ら。」

 

「ゼウスファミリア、レベル7の暴喰のザルド。」

 

「……ヘラファミリア、レベル7。静寂。アルフィア」

 

ーーーレベル7か。ふっ。超え甲斐がある相手だ。だが此奴らに見えるモヤの様なものはなんだ。まぁそれは後だ。

 

チャキっと音を鳴らしてタケミカヅチと共に作った刀を出して構える。

 

「我は王。(おれ)は我が王としての責務がある。その為には貴様ら程度に負けてはおれん。エルフが苦手とされる近接にて必ず勝つ。」

 

ザルドは思わず笑ってしまっている。私も笑いはしないが魔法使い(マジックユーザー)が顕著なエルフ、それも莫大な魔力を持つと言われるハイエルフが近接だと?と思う。

 

あの年増も魔法はまあまあだが近接は犬の餌レベルだった。面白い。それにこいつの言葉には覚悟がある。雑音とは違う。

 

「……ザルド。」

 

「わかっている。王よ。俺は近接主体。アルフィアは魔法も使う。まぁ埒外の才能を持っているから近接も強いが……。

 

俺が相手をさせてもらおう。」

 

あのエルフはニヤリと笑いザルドに斬りかかる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

防がれた瞬間に大剣と刀がぶつかったところを中心に回転してザルドの裏を取る。

 

しかしザルドはすぐ対応して防ぎ大剣で薙ぎ払う。

 

それをギルガメッシュは刀を斜めにして衝撃ごと受け流しまたしても間合いの中に入る。

 

 

ーーーやはり強い。受け流すだけで腕が痺れた。だがこれこそ我の望んだ戦い。もっと速く、もっと鋭く、もっと脱力を。

 

 

急激に技術が伸び、今にもザルドの喉元を喰い千切ろうと襲い掛かる。

ザルドもレベル7にしてあのベヒーモスを倒した漢。幾ら技術が凄かろうと軽い攻撃では倒れない。

 

ザルドは膨大な戦闘で培った経験があり、逆にギルガメッシュはその経験がほぼない。稽古としてタケミカヅチと戦うことはあってもタケミカヅチは神威を封印しているほぼ一般人と同じ身体能力だ。

 

恩恵のあるそれも最高レベルとも言えるレベル7のザルドに対して時間の経過と共に劣勢になっていく。

 

弾き合い、一旦距離を取る。

 

 

ザルドはある違和感を覚えていた。技術は明らかにオラリオのガキ共の遥か上。なんなら自分以上。アルフィアでも真似は出来ても身体に落とし込めるかといえば否だ。

 

それほどにギルガメッシュの技術は才能がある上で長い時間を費やし、しかと自らのものにしていると断言できる。

 

だがおかしい。確かに外の世界だとレベルをあげるのは難しいがレベル2程度の身体能力しかないのだ。

 

あの魔法といいレベル4くらいはあって然るべきなのだが。

 

 

「王よ。この戦いの相手として1つだけ問わせてほしい。」

 

「良い。許す。」

 

 

「王のレベルを教えてほしい。」

 

 

「……??レベルだと?我は恩恵を貰っていない。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「……は?」」

 

 

 

 

 

 

 

 

その言葉にザルドとアルフィアは言葉を失った。あれ程の魔法に多少なりとも手加減をしているがレベル7のザルド相手に近接戦闘が成り立ってしまっているエルフがレベル以前に恩恵無し。

 

私以上の才能の権化ではないか。年増なんぞ相手にもならんぞ!?

 

アルフィアの背に冷たい汗が流れる。

 

 

「…くく!くははは!!さすがは王だ!!俺の目も曇ってやがる!これこそ下界の未知?いいや違う!

 

下界の王だからこそここまで出鱈目なんだ!」

 

「出鱈目とは酷い言い草だな。ザルド。貴様でなければ不敬罪で処刑しているぞ。しかし手抜きをされてこの様とは王として恥ずべきことだ。

 

 

ザルド。本気でやれ。我を殺してしまっても罪には問わん。」

 

「わかりました。王。このザルド、全力でやらせてもらおう。」

 

 

ザルドは本気で接近して本気の振り下ろしをする。

 

ーーーは、やい!!マズイ!

 

刀では対応しきれない!!

 

 

全てがスローになっていく。ここで諦める?下界の王が諦める?

 

 

 

 

 

 

 

ふざけるな!!

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーギルガメッシュ。お前の理想とする王はなんなんだ?俺達神にも王ってのはいるけどなどうも下界と天界じゃ違うらしくてなぁ。ギルガメッシュを見てると神である俺すらも着いて行きたくなる。

 

 

ーーー天界の王がどんなのかは知らんが王にも色々ある。賢王、愚王、独裁王、その時代においての王、その国に応じた王がいるだろうよ。

 

だがなタケミカヅチ。我は唯一無二の王の中の王を目指す。だからな我がなるべき王とは………

 

 

 

 

 

 

「う、おおおおおおおおおおおおお!!!」

 

 

刀を捨て、新しく波紋から出した剣を2本重ねて大剣にぶつける。火花が飛び散り両腕の骨にヒビが入るが痛みを無視して耐える。

 

地面が陥没するほどの圧が大剣からかかってくる。

 

 

まさかあのザルドの本気を恩恵無しが耐えるだと!?

 

 

アルフィアは目を閉じることもせずにその光景を凝視する。

 

 

「王よ。見事だ。」

 

 

ザルドは笑い大剣を横薙ぎする。それも2つの剣でガードするが身体は言うことを聞かず吹き飛ばされ山の斜面に突っ込んでいく。

 

 

 

「……おい。ザルド。やりすぎだ。」

 

 

「う……。え、エリクサーあるから……その、だな。」

 

 

「ふん。大方あの雑音共と違う本物を見つけてはしゃいだんだろう。ガキか貴様…!!!」

 

アルフィアは溢れんばかりに目を見開きザルドの後ろを見ていた。ザルドはまさかと思い、バッ!と後ろを見る。

 

綺麗な金髪は血塗れ、片目を閉じて血だらけになり、甚平はボロボロで上半身はほぼ裸。腕はあらぬ方向に曲がっている。

 

しかしおぼつかない足取りだが己の足でこちらに歩いてくる。

 

「……王とは、惑わず。曲げず。頼らず。常に民の先頭に立ち続け、導く者の事だ。貴様らとて我の民。迷子になっておるのならば我が導こう。

だからこそ只では負けん。次は勝つ。」

 

 

そう言ったギルは立ったまま気絶した。あくまでも倒れることを拒否するギルに感服するザルドとアルフィア。

 

 

こんなやつがいたのか。メーテリアが会いたいと言っていたのがよくわかる。ギルガメッシュはとても美しい音を奏でる。

口だけの雑音、上を見上げて立ち止まる雑音とも違う。私が求めていた英雄そのものだ。

 

だがギルガメッシュは英雄なり得ない。何故なら王だから。

 

 

 

「エリクサーを飲ませたから大丈夫だとは思うが。アルフィア。どう思う。」

 

「……ギルガメッシュは英雄の器だが私達の求める英雄にはならん。ギルガメッシュは王だからな。」

 

ザルドもそれはわかるのかゆっくりと頷く。

 

「ふん。英雄の中の王と言うのも悪くない。賢王だのなんだのと色々な王が多い中唯一無二の我は英雄王とでも名乗るのも一興よ。」

 

 

2人はいきなり話し始めたギルにビクッとしてしまう。

 

「もう目覚めたのか。」

 

 

「ああ。口の中に何か入ってきたら起きるのは当然だろう。しかし貴様らは英雄探しでもしているのか。

…まさかあの子ではあるまい?」

 

 

アルフィアはため息を吐いてザルドは笑いながら説明する。

 

そういえば勘違いされたままだった。

 

 

「ほう?アルフィアはヒューマンであろう?見た目通りの年齢だと思うのだが…。妹の子…。ああ。その見た目と若さで叔母さんと言われるのは嫌だろうな。

 

我でも10代で叔父さんと言われるのは嫌だ。」

 

 

「……わかってくれるか。」

 

アルフィアは本当に嫌そうにぽつりと呟いた。

 

ザルドは叔母さんと言って吹き飛ばされないギルガメッシュにこれが王の中の王!英雄王ギルガメッシュ!!と内心で仰いていた。

 

それから色々と話をして夜営をする事にしてテントや食材を出すとザルドは目をキラキラさせて料理させてくれと料理を始めた。

 

ーーー美味い。

 

この一言しか出ないくらいザルドの料理は美味しかった。それからいつもの鍛錬をしているとアルフィアだけが近づいてきた。

 

「……私はどうすれば良いのだろうか。あの子に会ってみたい。だが…。」

 

「何を悩むことがある。あの子はアルフィアの愛おしい妹の子。ならば会えば良い。お義母さんと言わせれば良いだけだろう。」

 

「お、義母さん……」

 

「どの道我はあの子に会いに行く。明日行くから貴様も着いてこい。」

 

それだけ言って鍛錬に戻るとアルフィアはその場に座ってブツブツと何かを呟きながら考えを巡らせていた。

 

ーーーどれだけめんどくさいのだこいつは。妹が大好きなのだからその子も好きになるに決まっているだろう。

 

それにあの子は妹にそっくりなのだろう。まぁこの歳で叔母さんはちと嫌かもしれんがな。

 

あとは知らんと無視し続けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………どれだけ往生際が悪いのだ貴様!!いい加減にしろっ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日の朝、いざいかんとなってから嫌だ嫌だ!とゴネ始めるアルフィアに呆れる。だけならよかったのだがギルガメッシュも止めろ!あの子はあの子は!とぐちぐちいい始めギルはキレた。

 

 

「ええい!!このたわけめ!!天の鎖!!!」

 

黄金の波紋から出た鎖にぐるぐる巻きにされるアルフィア。天の鎖は対神兵器。神からの恩恵を受けている冒険者にも効く。特にレベルが上がり器を昇華させ、神の器に近くなるやつほどよーーく効く。

 

「な!なんだ!これは!!」

 

「ザルド。この馬鹿を持て。あの子のとこに引きずり出してやる。あの子は生涯一人だと思っているんだぞ!!貴様は歴とした血の繋がりのある者だろう!

 

子は宝だ!!どんな黄金にも勝る!!それを理解してきっちり話し合え!」

 

 

ザルドはビクビクしながらアルフィアを担ぎ、ギルの怒りとその言葉を受けて目を見開きがっくりと項垂れたアルフィア。

 

不思議な3人が田舎にある1つの家に向かって歩き始めた。




読んで頂きありがとうございます。


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白兎本当にアルフィアの血族か?

ギールさまっ!ギールさまっ!

※この作品のギル様は神性がありません。

御了承ください。

質問で基本的なミスに気づかさせてもらえたので年齢について説明させていただきます。

原作ですとリヴェリアは71歳で森を出ます

そして原作時点で99歳です。

ギル様が15の時に森を出るので71

ベルが4歳の時の話なので原作10年前ですのでリヴェリアは89歳。

森から出て18年経つということでそれにリヴェリアが出て行った時の年齢の15歳をプラスして33歳に変更します。
27歳→33歳


その日、僕にとって決して忘れられない日になった。

 

僕にとって全てを決める日になったんだ。

 

 

 

 

僕はなりたい。英雄になりたい。誰よりも大切で大好きな貴方達の誇りに思える英雄に……

 

 

 

 

 

 

 

こんな片田舎に訪ねてくる人はいなかった。だけど今日は違う。ドアがノックされ出てみるととてもカッコ良くこの世の者とは思えないエルフがいた。

 

ポカンとして見惚れているとそのエルフは頭を撫でてくれた。お祖父ちゃんに聞いていた話と違う。

 

エルフは極端に他種族との接触を拒むって聞いてたのにこの人の手はとってもあったかい。

 

えへへと顔がにやけてしまい手にグイグイと頭を押しつける。

 

「可愛い子よ。良い良い。我はギルガメッシュ・リヨス・アールヴ。可愛い子よ。名前を教えてはくれぬか?」

 

あっと思いギルガメッシュさんの目を見てちゃんと自己紹介する。

 

「べ、ベル!ベル・クラネルです!4歳です!」

 

「そうかそうか。ちゃんと自己紹介できて偉いぞベル。我のことはギルと呼ぶが良い。おい。いつまでそうしている。貴様らは4歳のベルに出来ることも出来んのか。」

 

そう言うとギルお兄ちゃんの後ろからすごい鎧を着て顔に傷のあるおじさんとなんか鎖でぐるぐる巻きにされている綺麗なお姉さんがいた。

 

ーーーなんで鎖でぐるぐる巻き???

 

真っ赤な目をぐるぐるさせてアワアワとなるベルを見て忘れてたとギルは指パッチンをして鎖を消す。

 

誰が消したのか分かったのかキラキラした目でギルを見るベル。

 

 

それを見てムッとするアルフィア。ずいっとギルの前に立ってベルをジーッとみる。

メーテリアそっくりだ。この深紅の瞳は気に食わないがギルと同じ瞳だと思えば我慢できる。

 

こてん?と首を傾げて鎖でぐるぐる巻きにされていた綺麗なお姉さんを見上げる。

 

ぐっと心に気合いを入れてベルと目を合わせて頬を撫でる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私をお義母さんと呼べ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

スパンッとアルフィアの頭を引っ叩いてやる。このたわけめ。何を訳のわからんコミュニケーションをしている。

 

ザルドを見ろ。顔を手で覆って天を見上げてるではないか。

 

 

 

 

 

「ふぇ??お母さん??お母さんなの??」

 

 

ベルは涙目でアルフィアを見る。アルフィアはうぐっと唸る。

 

 

ーーーこれはダメだ。なんという純粋無垢。4歳といえどここまで純粋だとは。仕方あるまい。この王がフォローしてやるか。

全く世話のやける民よ。

 

 

「ベルよ。こやつはアルフィア。ベルの母の双子の姉だ。ベルが祖父と2人で暮らしていると聞いて義母としてベルを愛する為に来た。

 

ほら存分に甘えてやれ。」

 

ベルの背をポンっと叩いてやるとベルは涙を堪えて走ってアルフィアの胸に飛び込んだ。

 

 

 

「うわぁぁぁぁん!!おかあさぁん!!」

 

抱きつかれたアルフィアは固まり、しかしぎゅっとベルを抱きしめた。

アルフィアとベルの姿を見て我とザルドは共に外に出る。

 

ーーー子供の涙くらい我等に勝てるものは無いな。存分に義母との時間を楽しむが良い。

しかし本当にベルはアルフィアの血族か?こう言っては悪いがあの女王気質のアルフィアとは似ても似つかぬがな。

 

 

「王よ。礼を言わせてほしい。俺がいくら言ったとこであいつは、アルフィアはベルに会わなかっただろう。

アルフィアは十分にヘラファミリアの冒険者として、そしてメーテリアの姉として責任を果たしたと俺は思っている。

 

これからは片田舎のここでベルとゆっくり余生を過ごしていける。

あまり長い時間は共にいられないだろうが、ベルにとってもアルフィアにとってもかけがえの無い時間になるはずだ。」

 

 

ザルドはそう言って頭を下げてくる。しかし引っかかる文言があった。

 

 

「ザルド。長い時間共に居られないとはどういうことだ。」

 

 

そこから語られるアルフィアを蝕む病。ステイタスに出現する程にアルフィアに対しての呪いかの様な病の話。

 

ーーーそういうことか。モヤが見えていたのは病。ではザルドはどうなのだ?ザルドも病を患っている?

 

 

ザルドに聞くとベヒーモスの毒を食べて侵されているとのこと。

 

 

ーーーううむ。此奴はアホなのか?いや、戦場に居なかった我が言っても意味はない。しかし此奴らは2人とも我の民と認め、我に実力を持ってして認めさせた冒険者。

 

我がどうにかせねばなるまい。王として民を守るのも当然の責務。

 

 

 

「……ザルド。我は英雄王。王の中の王だ。ならばこそ貴様ら民を守り、導かねばならん。

 

それこそ我にとっての王としての責務だ。

 

猶予はどれ程ある。」

 

 

ザルドは大きく眼を開いてこちらを見て、そして泣きそうな顔をして頭を下げてくる。

 

もう永くはない。恩恵で抑えてはいるが持って後5年も無いと。正直にかの王様に伝えた。

 

 

「よかろう。神々の恩恵を授かるつもりは無かったが、我は言葉を違えん。適当な神に恩恵を授かり、我の魔法を最大限発揮出来る様にする。

 

ザルドは冒険者であったな。適当な神を紹介しろ。」

 

 

「い、いやしかし王!俺達の為に王の道が違えるなどあってはなら「馬鹿め。我は下界の王。下界の王たる我の進む道こそ覇道にして王道よ。

 

たかが1人や2人の民を背負うこともできずして何が王か。

 

それにこれによって我が民草を導ける範囲が今以上に広がると考えよ。

 

我の進む道に間違いなど無い。」」

 

 

ザルドは言葉が出なかった。ヒューマンである自分より歳下のハイエルフの王様が、下界の頂点に立つことが産まれながらにしてわかっている王様の覚悟と勇気、そして大きすぎる器に涙すら流れ、止められない。

 

 

 

落ち着いたザルドは再び頭を深く下げ、自らの主神のゼウスについて説明した。この片田舎に居る大神ゼウス。

追放された理由も過去にオラリオ、そして三大クエストで何があったかも。

 

「……なんだその下半神は。下劣極まりないが……選り好みはできぬ状況か。仕方あるまい。

 

ん?ちょっと待て。その下半神に育てられたベルが何故あれ程純粋無垢に育っている!?」

 

 

「……すまない王。俺にもまったくわからん。とにかくメーテリアの血がかなり濃いのだろうさ。

メーテリアは本当に、ほんっっっっとうにヘラファミリアの中でも唯一と言って良いほどの良心の塊だった。」

 

 

「……メーテリアとやらには我が宝物庫からとびっきりの宝をくれてやりたいぞ。

 

まぁわかった。とりあえずは恩恵を受けて1年間はコンバージョンとやらが出来ず、動きようが無いのだな。

 

とにかく1年かけて貴様らを治療する。我の魔法はもう3つ埋まっているからな。そこに治癒魔法もある。これを鍛え上げ、貴様を完治させた後に近接の鍛錬といこう。」

 

 

今後の予定を立てながら良い時間になったので家に戻るとベルがぎゅっとアルフィアの服を握って膝枕ですやすやと寝ていた。

 

アルフィアは微笑み、ベルの頭を撫でていた。

 

 

ベルを起こさないように今後の予定を伝えると閉じていた瞼を開いてザルドと同じように固まってしまった。

 

そして理解したのか頭を下げて薄っすらと涙を溜める。

 

まったく世話の焼ける民草よ。しかしベルの笑顔を曇らすわけにはいかん。王として言葉を違えるわけにもいかん。

 

これからは時間勝負となる。帰ってきたゼウスにザルドが全て説明をしてゼウスは下半神としてではなく大神の、父の、そしてベルの祖父としての一面を見せて頭を下げてきた。

 

 

恩恵を授かる為に上半身裸になり、ゼウスの前に座ると唖然とするザルド、ゼウス、それにアルフィア。

 

 

「なんだ。我が肉体に見惚れたか。」

 

 

冗談で言ったつもりがザルドはコクコクと頷き、アルフィアは頬を染める。ゼウスはワシの知っとるエルフと違うんじゃが…と呟く。

 

 

「今更だが言っておく。我は下界の王にして英雄王。そして王の中の王だ。ならば民を率い、守り、導かねばならん。

 

エルフ族だけではない。全ての種族を導ける王だ。ならばその全ての種族に認められなければならん。

 

つまりはそう言うことだ。」

 

ゼウスは大笑いしたのでぶん殴って黙らせる。ベルが起きるだろうが。

涙目になりながら恩恵を刻んでいくゼウスと笑いを必死で堪えているザルドとアルフィア。

 

 

「お、終わったぞい……。え?エルフってなんだっけ?ぎ、ギル。お主は本当に王の中の王じゃわい。」

 

震える手でステイタスを渡してくるのでそのまま見る。

 

 

 

 

 

 

ギルガメッシュ・リヨス・アールヴ

 

 

LV1

 

力: I 0

耐久: I 0

器用: I 0

敏捷: I 0

魔力: B 795

王気(カリスマオーラ) A

直感(センス) A

 

【スキル】

[黄金律]

どんなことをしても金銭に困る事はない。

金銭を稼ぐ際、どれが一番効率が良いかわかる。

 

全知なるや全能の星(シャ・ナクパ・イルム)

星の輝きの如く地上の隅々へと行き渡り、万象を見通す。

ギルガメッシュの精神性、知性が上昇する度に解析度も上昇する。

 

【魔法】

王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)

幾年の時、幾つもの次元を通して貯められた宝物庫。

全ての世界、次元を通しても持主は1人。

貯められた宝具の使用可能。

現在の所有者 ギルガメッシュ・リヨス・アールヴ

 

王の誇り(プライド・オブ・キング)

詠唱

我は王なり。エルフの王 下界の王 英雄王。全ての民を守り 全ての民を導く。我に敗北は無し 故に続け。 幾千の未来は我の手の中。我が名はギルガメッシュ。

 

固有結界。結界内の率い、守り、導く民は常に守られる。発動者はステイタス超補正。階位2段階上昇。

 

[プロミネンス・ウェスタ]

詠唱

我が民は病無し 怪我無し 呪い無し。全てを守ろう。全てを癒そう。我が名はギルガメッシュ

 

炎属性浄化治癒魔法。

全ての病、怪我、呪いを焼き尽くす聖火。

 

詠唱破棄時効果減少。死者には効果無し。

 

 

 

 

 

 

ザルドとアルフィアに紙を渡すと2人とも絶句。

何も言えずに紙を見て我を見ての繰り返しをしている。あまり動くとアルフィア。ベルが起きるぞ。

 

「なんにせよこれで貴様らの病と毒には目処がついた。固有結界を張った中で治癒魔法をすればどうにかなるだろう。

ならなければなるまでレベルを上げるまでだ。だが我の直感が言っている。問題ないとな。」

 

 

2人は呆然としていたが、ベルと共にあれることに気づいたのだろう。アルフィアは静かに泣きながらベルを起こさないように抱きしめた。

ザルドも嗚咽を漏らしながら泣いていた。

 

ゼウスは2人を優しく見て、頭を静かに下げてきた。

 

 

落ち着いてからはザルドに食事を作らせ、ゼウス自ら書いたらしい英雄譚を読ませてもらった。

我は英雄の中の王となると決めた。ならば過去の英雄にすら届かない位置に行かなければならん。

 

あの2人を治したら鍛錬をするとしよう。

 

 

 

そう決めてふと笑う。外の世界へ出て正解だった。これからの楽しみも増えるというものだ。民を守り、子の成長をゆるりと見守る為にもまだまだ努力は欠かせんな。

 

 

む?ベル。なんだ?一緒に読むか?うむうむ膝の上に座ると良い。

ふはは!我とベルは瞳の色が一緒だと?お揃いだな。

ん?我は父では無いぞ?耳を見てみよ。お父さんがほしいだと?ふむ。まだ我はエルフとはいえ若いのだ。

 

今年で33だぞ。アルフィアが21?だからなんだと言うのだ。お似合い?たわけ。我に似合う女などそうはおらん。

 

な、なんだアルフィア?何故怒っている。

 

やめ、ベルが居るんだぞ!!やめんか!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ギルお兄ちゃんはハイエルフだけどアルフィアお義母さんとお似合いだとおもいました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

福音(ゴスペル)しゅごい……。




ヒロインアルフィアになりそうなんだがどうしよう

怠惰のファルシオン様からのコメントで気づいたので追記として書いておきます。

本家ギル様の千里眼について

全知なるや全能の星にギルが強くなったり知識を加えると解析度が上がるという仕様にした上で直感スキルをつけたので千里眼つけませんでした。

この作品の都合で本家ギル様のスキルをちょいちょい変えてしまうと思いますがちゃんと説明できるよう努力します。

コメントで質問していただきありがとうございます。


圧倒的感謝!!!


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ふははは!!姉上。弟が出来たぞ。

え、赤バー??

怖い怖い。

コメントで色々質問してくれてありがとうございます

すごくありがたいです!


ーーーああ。暖かい。身体がとても軽い。私はこんなに幸せの中に居ても良いのだろうか。

メーテリアはあんなにも苦しんでいたのに……

 

それにギルは私のことをどう思っているんだろうか……

 

 

 

「ベル。起きよ。我に起こさせるとは良い度胸をしている。」

 

 

すやすや寝ているベルを起こす。むにゃむにゃ言いながらちゃんと挨拶をして意識が覚醒したのかにぱーっと笑って抱きついてくる。

 

 

「ふははは。ベルは甘えん坊よのぉ。良い良い。抱っこしたまま朝食に行こうではないか。」

 

うん!と返事をしてぎゅっと抱きついてくるベルを落とさないように抱き上げて朝食を食べる居間に歩いていく。

 

くふふくふふと可愛らしく笑うベル。余程家族が増えたのが嬉しいらしい。子供の笑顔は黄金にも勝るのは間違い無いな。

 

居間に行くと食事をザルドがパタパタと皿に乗せて机に運んでいた。ゼウスはドカリと座って笑い、アルフィアは閉じていた目を開いて我とベルを見てむっとしている。

 

ベルはニコニコして抱っこされたままみんなにおはようございますと可愛らしく挨拶をし、全員がおはようと返事をする。

 

「ギル。何故ベルを抱っこしている。ベル。何故ギルの膝の上に座っているのだ。」

 

アルフィアはむすっとしながら口を開く。

 

ベルはお兄ちゃんに起こしてもらって抱っこしてもらった!と嬉しそうに言い、こちらの顔を見上げてくふふと嬉しそうに笑う。

 

そんなベルの頭を撫でてやりアルフィアお義母さんに抱きついてこいと小さな声で言ってやるとうんっ!と頷き走ってアルフィアに抱きつきにいく。

 

アルフィアは聞こえていたのか待ち構えてベルを抱きしめていた。

 

下半神が便乗してアルフィアに抱きつこうとしたので波紋から剣先を突きつけてやる。

 

「な、なんじゃギル?い、いやギルガメッシュ様?」

 

「下半神。我は母と子の尊い時間を愛でている。王の時間の邪魔をするならば神でも殺す。それとアルフィアも他の下界の女も我が民よ。

 

我が民に手を出すのならば処刑するが?

 

貴様は下半神。我の民ではない。わかったか?」

 

 

ゼウスは首が取れそうな程にコクコクと頷き、波紋が消えるとがっくりと項垂れた。

ベルの耳を塞いでいたアルフィアは薄っすらと微笑みギルを見る。

 

ザルドはザルドで大笑いしてゼウスを揶揄っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

全員で朝食を食べた後、庭に出る。

 

 

 

 

「今から我の魔法を使い、ザルドとアルフィアの身体を治す。一応何度か使っているから問題は無いであろう。

スキルの相乗効果も上げる為に2人の病状も昨日聞いて確認もした。

 

さて。やろうか。」

 

 

 

 

 

ーーー僕は絶対に今日あったことを忘れない。これが僕、ベル・クラネルを作った原点(オリジン)だから。

 

ギルお兄ちゃんが詠唱をして終わったら風景が片田舎から城の中に変わった。金ピカでとても豪華な城の中。

 

そこにギルお兄ちゃんは王様のように椅子に脚を組んで座っていた。

 

ザルド叔父ちゃんが呼ばれて真っ白な綺麗な炎に包まれた。熱いよ。危ないよ。なんて言葉は出なくてザルド叔父ちゃんの身体から紫色の何かが苦しそうに出てきて燃え尽きた。

 

ザルド叔父ちゃんは自分の身体を確認して涙を流しながら膝をついてギルお兄ちゃんにお礼を言ってた。

 

 

 

 

次はお義母さんだった。とっても緊張してるのが僕にもわかった。だから僕は走って手をぎゅっと握ったんだ。

 

お義母さんはびっくりしてたけどギルお兄ちゃんは良くやった。ベルは英雄だなって言ってくれた。

 

 

そのまま一緒に手を繋いでギルお兄ちゃんの前に行くと一緒で大丈夫だって言ってくれて僕もあのあったかくて綺麗な炎に包まれた。

 

お義母さんの方を見ると真っ黒で汚くて、とっても怖いものが出てた。でも僕はお義母さんが、ギルお兄ちゃんが、ザルド叔父ちゃんが、そしてお祖父ちゃんが大好きだ。

 

何よりも大切だ。だからかな。あんな行動をしちゃったのは。

 

 

 

 

 

アルフィアとベルを共にプロミネンス・ウェスタの炎に入れるとザルドの時とは比較にならないモヤがでた。

 

何故だ?このままでは燃やしきれんだと!?

 

 

そう思い、我の魔力を限界まで注ごうとした。

 

 

 

「お義母さんから出てけー!!僕の家族に手を出すなーっ!!!」

 

 

ベルがなんと黒いモヤに叫びながらパンチをしに行った。その瞬間にモヤがブレた。

我の直感がここしか無いと叫ぶ。

 

 

「天の鎖よ!!」

 

立ち上がり、アルフィアの胴体に天の鎖を巻き付ける。そして一気に魔力を注ぐ。

 

ゴウッと白炎が火力を上げ、モヤを焼き尽くして行く。モヤは叫ぶかの如くグネグネとして燃やし尽くされた。

 

 

「「「ベルッ!!!」」」

 

倒れているベルに2人と一柱が駆け寄る。しかしベルは満足そうにすやすや寝ていた。はぁと全員が息を吐く。

 

固有結界を解除して家に戻り、2人の体調を聞き問題がない事を確認してあの出来事を思い出して考察する。

 

 

「恐らく我のスキルと直感はベルがあの行動を取るのを加味した上で問題ないとしていたのだろう。」

 

「……治療しているはずなのに死ぬかと思ったぞ。」

 

「アルフィアの気持ちは良くわかる。だがあれはベルの行動が無ければ我の魔力を限界まで注ごうにも浄化出来なかっただろう。

 

あれは貴様が神々の恩恵を得た為にあそこまで強固になっていたのだろうよ。スキルに出現する程の病だ。

 

ベルが殴りかかってモヤがベルに意識を持っていかれた。だからこそ天の鎖でアルフィアの恩恵を無効化して燃やし尽くすことができたのだ。」

 

 

我の説明を聞いて全員がなるほどと頷き、ベルの行動には驚いたが感謝する。ベルも起きて同じ説明をしてやる。

 

しかしアルフィアは複雑そうな顔をしながらベルに説教をする。

 

「ベル。私はお前に救われた。だが私はお前にだけは、メーテリアの忘れ形見のお前だけには危ない事をしてほしくない。わかってくれるか?」

 

ベルは俯いていたが目に炎を灯してアルフィアを見る。

 

「…それでもっ!!僕が危ないことをしたのは分かってる!!ギルお兄ちゃんがどうにかしてくれるって思ってた!!

 

……それでも、僕はやっと会えた家族を守るんだって。

 

ひっく。ギルお兄ちゃんが、下界のみんなを守るって、言ってた。でも僕だって男だもん。だから、ひっく。僕はお義母さんを、家族を守るんだって思ったの。」

 

泣きながら、はっきりと勇気を示し、行動した。我はベルに本当の英雄を見た気がした。

ベルは我が弟として、そして1人の漢として今この下界に足をつけて1人で覚悟を決めて立ったのが良くわかった。

 

ザルドとアルフィアでさえ目を見開き、固まっている。

 

 

 

 

「ベル。ベル・クラネル。」

 

 

声をかけるとベルは涙を溜めながらこちらを見る。

 

 

「さすがはアルフィアの義息子にして我が弟だ。我はベルを誇りに思うと共に1人の漢として、我々の家族の英雄として認めよう。

 

ベル。我を、兄を、王を、そして義母を、我の家族を助けてくれて感謝する。」

 

目線をベルに合わせて肩に手を置いて思ったことを伝える。

 

グシグシと目を擦って涙を拭いて我と目を合わせ、口を開く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ベルがあそこまでの覚悟を決めているとはなぁ。義母冥利に尽きるだろアルフィア。」

 

 

「五月蝿いぞザルド。…だが、私達の探していた英雄がこんなところにいるとはな。間違いなくあの子はあの時私の、私達の英雄だったよ。」

 

 

健康になった身体と朝にあったベル・クラネルの英雄譚を肴にティータイムを楽しむ2人。外に目線を向けるとギルと共に楽しそうに鍛錬をするベルが見える。

 

「しかしあの王も桁違いの王だな。俺は何をしてもこの恩を返せそうにない。」

 

「私もだ。健康はもちろんのこと可愛い息子の成長する過程まで見せてもらえるんだ。それにギルもベルも1人では無い。

私達は英雄を見つける為に、1人の英雄を見つけようとしてしまった。

 

だがあの2人を見ていると全く違うことをしていたのがよくわかる。」

 

2人は微笑み、外を見る。ゼウスはそんな2人を見て原書となるであろう英雄譚をせっせと書いている。

 

 

 

 

 

これは近い将来英雄譚に追加されるであろう物語。さまざまなファミリアがある現在の下界。ファミリアもまた家族。

 

だがこの物語の家族はファミリアも違う、種族すら違う。血の繋がりも少ししかないがこんな家族に、ファミリアになりたいと思わせるような、誰もが羨むような絆がある。

 

 

どちらが素晴らしいなどと比べ用の無いことは誰も言わない。ただただ美しい。それを皆に伝えたいだけだ。

 

 

 

 

 

ーーー2人の英雄が産まれた。1人は産まれながらにしての王。英雄王。

 

英雄王は最初の冒険に挑む。化物を打ち倒す?ドラゴンを打ち倒す?囚われた姫を助ける為に1人で国へ挑む?

 

いいや違う。たった2人の、未来を守るために不治の病と誰もが諦める猛毒に挑んだ。

 

 

猛毒は英雄王が討伐した。しかし不治の病はその者に深く深く根付いていた。正に死闘と呼べる闘いだ。

 

英雄王ですらダメかと思ってしまう程に不治の病は強く、困難で、そして執念深いものだ。

 

だが英雄王は1人では無い。もう1人弟がいた。英雄王が英雄と認める純粋無垢で心が誰よりも強い弟が。

 

弟の強い意志が、英雄王の強く気高い誇りがついに不治の病を倒す。

 

 

英雄王は2人を助けられたことに、弟の強い意志に感謝する。

 

弟は兄、英雄王に対して口を開く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーギルお兄ちゃんは下界全部を守ってくれてる。でもお兄ちゃんだって1人の下界の子だもん。だから僕はお兄ちゃんを含めて家族や友人、目に映る人は全部助けるよ。それが僕にとっての英雄なんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

うむ。最後のは載せられんからワシだけのものにしよっと。

 

 

 




完!!!

じゃないよ。紛らわしい終わり方になった。

まだオラリオ行ってねーよ。ダンジョンに出会いをって物語なのにダンジョン行ってねーよ!!

とりあえずベル君まじベル君

ギル様どこ行ったよ


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我は言った筈だ。右頬を叩いたら左頬も叩けと。

あ、あの、評価バーが怖い怖い怖い。

感想くれた方本当にありがとうございます。すごく励みになります。

遅くても必ず返信するようにしますのでよろしくお願いします。


アルフィアとザルドの体調が順調に回復し、鍛錬にベルも参加して毎日を過ごすようになっていた。

 

ザルドは腕を鈍らさない為と我の強化の為に毎日模擬戦をしてくれ、アルフィアは魔法ありで固有結界の中で戦っていた。

 

ベルはずっと横に座って戦いを見ては目をキラキラさせてあれはどうやったの??見えなかったところゆっくりやって!と甘えつつも家族を守れるようになる為に努力を惜しまない。

 

我が言えることではないがザルドもアルフィアもベルに対して甘すぎないか?下半神も豪快に笑って甘やかすだけではないか。

 

そうこうして早くも2年が経とうとしていた。ベルは6歳になってもずっと家族を守れる英雄になると言い続けて毎日の鍛錬を欠かしたことはない。

 

風邪を引いたにも関わらず鍛錬をしようとした時は、アルフィアが鬼のようになっていて英雄王である我ですら正直怖かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「こんなとこにいたのか。ザルド。アルフィア。」

 

 

 

 

 

 

そう言って神が訪ねてきた。どうも下界の終末が近づいているのをどうにか伸ばす為に2人をオラリオの礎にしようとしているみたいだ。

 

だが2人はとても微妙な顔をしている。

 

 

「……エレボス。そのなんだ。正直それは無理だ。」

 

 

ザルドの言葉にエレボスは首を傾げる。

 

 

「俺はベヒーモスの毒が解毒されてレベル8になった。」

 

 

「私は不治の病が完治してレベル8のザルドを相性もあるが本を読む片手間で倒せる。私達が闇派閥に行けばオラリオの雑音共は確実に全滅するぞ。

 

ザルドも私も時間制限があったが今はもう無い。」

 

 

エレボスは口を開けて固まり、しばらくして頭を抱えてしまった。どうすんだよ。いやどうしようもないぞこれ。

そんな事をブツブツと呟きながら必死に考えを巡らせている。

 

 

アルフィアは言うべき事はもう言ったと紅茶を飲みつつ読書に戻り、ザルドはとても気まずそうにしている。

 

「つーかさ、どうやって完治したんだよ2人とも。俺の記憶が正しかったらディアンケヒトとミアハですらどうしようもないって匙を投げてなかったか?」

 

 

その言葉で2人は我を見る。我はどうでも良いと紅茶を飲みながら寝ているベルの顔を眺める。

 

ザルドはため息を吐いて我に許可をもらい、魔法のとこはぼかしながら何があったかを話す。別に魔法を教えても良いのだがな。

 

 

「マジかよ。いや俺も下界の王のことは風の噂で聞いてたぜ?でもよそんなバグキャラみたいなやつが都合良くお前ら2人に会ってると思う?

 

ゼウスも知ってたんなら教えてくれよ!つかどーすんだよ。俺は下界の子供達が大好きだ。だから色々策を練ってたのに……」

 

 

本気で頭を抱えているエレボス。ゼウスは笑いながらすまんすまんと謝り、ザルドは何かを考えていた。

 

 

ーーーふむ。下界の終末か。我の庭を害するものなど我が許さんがな。それに我には配下のザルド。それにアルフィア親子がいる。

 

そういえば姉上は結構前にオラリオに着いたと文が届いていたな。姉上の事だ。今やアルフィアくらいにはなっておろう。

 

む?我の直感がピクリともせん。まさかまだレベル6か?いや反応せん。

ま、まさかとは思うが、この我と血を分けている姉上がだぞ?

 

王族のハイエルフの姉上がレベル5だなんてこと?

 

………反応した、だと?

 

 

ガタッと立ち上がる。我が急に立ち上がったものだからエレボスもザルドもそしてアルフィアすらもが我の方を見る。

 

「……エレボス。嘘偽りなく答えよ。良いな?」

 

波紋から剣先を360度包囲し突きつけながら問う。エレボスは真っ青になってコクコクと頷く。

 

ーーーえ?目、目の前の剣、なんかすげーやな感じするんだけど!?

 

目の前の刃先はミストルティンとロンギヌスの神殺し筆頭の宝具だ。これだけ脅せば嘘は言うまい。

 

「まさか、まさかとは思うが、この我の姉上。リヴェリア・リヨス・アールヴがまだレベル5などという雑種でもなれて恩恵のない我に一方的に処刑されるような雑魚ではあるまいな?

 

いや、分かっている。分かっているとも。我の直感スキルが不具合を起こしているだけだとな。

 

だが聞かねばなるまい。エレボス。どうなんだ。」

 

 

ーーー俺神だからさ、空気読まないで好き放題言える自信あったけどこの子相手にはできないのわかるよ。

 

つーかこれ正直に言っても嘘言ってもアウトじゃね?

 

スキルの不具合なんかこの子レベルの自我があると起こるわけねーじゃん。

 

この間わずか0.2秒という長い神生で一番の頭の回転をみせたエレボスだが救いはない。ここにアルフィアがいなければ。

 

 

 

「はぁそこの雑音を殺しても意味はないぞ。ちなみにだが年m、九魔姫は、あぁギルの姉の二つ名だ。あいつはレベル5だ。恐らく変わりないだろうな。」

 

エレボスもコクコクと頷く。波紋を消して頭を抱える。

 

ーーー我が姉上が、あの気高く、だが我を1人の弟として、王の責務を忘れさせてくれた姉上が雑種共と同レベルだと??

 

 

気の毒そうにアルフィアが見てきてザルドはため息を吐き、エレボスはゴクリと唾を飲んで深呼吸する。

 

「なんじゃギル。お前さんシスコ「福音(ゴスペル)」ぎゃぁぁぁぉ!!」

 

ゼウスが吹き飛んでいったがどうでも良い。これはまずい。いや不味くはないが我が雑種共と姉上が一緒なのが嫌だ。

 

 

 

「あー。王様。俺が行って暴れてきてやろうか?討伐は無理だろうが格上相手に闘う気概をみせてベルのように立ち向かえば経験値は入る。

 

俺は王様に本当に感謝してるんだ。この俺を使ってくれ。」

 

 

「ザルド…。いや、だがこれは我のワガママだ。それで一生の十字架を背負わせたくはない。」

 

 

「王様はもっとわがままを言って良いと思うぜ。王様はいつだって俺ら民や配下の事を考えてる。

 

たまには自分のことを考えても良いんじゃねぇか?何よりこれは俺からオラリオにいるガキ共への試練だ。

 

成長も何もしない生ぬるいあいつらのおかげで王様が悩むなんてことはあっちゃいけない。

 

それが配下としての俺の覚悟と想いだ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーー配下にここまで言わせてしまうとは我も王としてまだまだか。だがこのまま行かすわけにはいかんな。

 

 

 

 

 

波紋から一つピアスを取り出す。黄金の中に深紅(ルベライト)の宝石が入っている。それを放り投げる。

 

 

「これは我の宝物庫の中に6つしかない。我の認めた者にしか渡さん。姉上と姉上の友の2人にしか渡していない。

 

我が家族となったザルド。そしてアルフィア。時が来たらベルに渡す。

 

ザルド……。王の勅命だ。オラリオの冒険者のケツに火をつけよ。」

 

 

ザルドはピアスを付けて膝をついて平伏する。

 

 

「王の勅命たしかに聞きました。必ず達成してみせます。……こんな感じでいいのか?俺王族とか無縁でわからん。」

 

 

 

ーーー格好のつかんやつだ。しかし我の信頼する配下だ。必ず達成するだろう。ザルドはピアスをつけてエレボスと旅立った。

 

 

とりあえず必ずしてほしい事は伝えた。右頬を殴って逆頬もぶん殴れと。

 

オラリオの雑種共め。我が配下に、先達に泥を塗りおってから。

 

 

 

 

ーーーなんだアルフィア。ずっと我を見て。なんだその手は。んん??

 

ああ。これか。良い良い。アルフィアも我の家族よ。つけておけ。何?姉上と同じやつ?先程も言ったであろう。同じだ。

 

何故また手を出している。何?アルフィアだけの物を寄越せ?貴様はそんな物つけているのを見たことが無いぞ。

 

良くわからんがまぁ、アルフィアならば我が宝物庫の宝をくれてやる価値はある。何よりベルを産んだメーテリアの褒美も貴様が受け取るべきだろうよ。

 

ちょっとまて。うーむ何をやるか。アルフィアは剣を使うのか?何?女心を理解しろ?我は男だ。女心なんぞわかるわけがないだろう。

 

毎日身につけるもの?お!ならこのネックレスをくれてやろう。

 

ふはははは!!喜べ!我が財をアルフィアだけにくれてやったのだからな!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ギルのバカめ。私をこんなに惑わすのはお前だけだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーふう。エレボス助かったぞ。アルフィアが王様のことを好きなのは一目瞭然なんだがな。王様はそういうことには超がつくほど鈍感だ。

 

それにアルフィアもアルフィアでこう、なんだ。遠回し遠回しに言うせいで全然進まん。

 

ベルが居るからまだマシだったが年がら年中謎のやり取りを見せつけられるのは独り身にはかなりきつかった。

 

ぶっちゃけあのガキ共をぶん殴るのは八つ当たりも含めてだ。

 

下界の終末??

 

王様と俺とアルフィア、そして確実に来る次代の英雄のベルの4人でどうにかなりそうな気がする。

 

黒竜に関しても王様のドラゴンスレイヤー系の宝具ぶっ放しまくれば多分勝てるぞ?

 

そうだな。王様に会った時、下界は救われると思ってた。王様こそ救済の要だとも。

 

だが違ったんだよエレボス。

 

 

俺もアルフィアも、そして王様でさえもベル・クラネルという英雄が出てきて下界は救われると確信してる。

 

はっはっは!!あの姿を見ていないエレボスからすれば当然そう思うだろうさ。でも俺達は見た。

 

真の英雄の姿をな。アルフィアあたりは危険なことをさせたくないから複雑だろうけどな。

 

 

さぁて。オラリオのガキ共をぶん殴りにいくか。王の勅命だってな。

 

 

 

 

 

 

 

「おいおい!ゼウスファミリアの暴喰じゃねぇか!レベル7がこっちにつくなら確実にあいつらをぶっ殺せるぜ。」

 

 

「……オラリオのガキ共をやるのは良い。だが一般人に手を出してみろ。貴様ら闇派閥を丸ごと喰い散らかしてやる。」

 

 

ビリビリと圧力がかかり、闇派閥のメンバーは唾を飲み込み震えている。

 

 

「そゆこと。俺らもオラリオの冒険者に思うところはあるよ。でも一般人は一般人だ。それに手を出すならザルドも俺も許しはしない。

 

絶対悪にも絶対悪なりのプライドがあるのさ。」

 

エレボスの言葉に全員がゆっくり頷く。ザルドはピアスを光らせてゆっくりと闇の中に消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーさて、踏ん張れよオラリオの冒険者。これから始まるのは君達に与える絶対悪からの史上最高の試練だ。

 

ここを乗り越えられないと次代の英雄が出て来た時に置いていかれ、恥ずかしい思いをしてしまうぜ?

 

老婆心になっちまったか俺からのプレゼントを受け取ってくれ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーー何が一般人に手を出すなだ。知ったことか。あたしゃ気に食わないやつは幸せそうなやつは全部ぶっ壊す為にここに居るんだ。

 

レベル7がなんだ。お前も所詮闇派閥に入った、黒竜に負けた負け犬だ。

 

くくく。楽しいことになりそうだぜ。クソ偽善者がよ。




とりあえずザルドだけオラリオ行かせてみた。

ギル様出れないし大抗争カットするかも。

結果だけ書くかザルド目線で書くか悩み中


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ふははは!流石我が配下よ!愉悦愉悦!

読んで下さる皆さん優しいんだが…

原作キャラをリスペクトしつつここ気をつけて!ってすごい教えてくれる。

圧倒的感謝しかない。


ーーーその程度か。クソガキ。未だに乳離れもできんようでは先が思いやられる。俺のレーア・アムブロシアすら使わす事もできんとは呆れ返ってものが言えん。

 

数で押す事すらままならないとは……

 

貴様らは我々ゼウスファミリア・ヘラファミリアを追放した。それは構わん。時代は移り変わる。

 

だが先達として言わせろ。

 

 

この愚か者共がっ!!!貴様らは我々がオラリオを出てから何をしていた!!レベルの1つも上げず、オラリオの頂点に立ててそれほど嬉しかったか!?

 

レベル5?6?そのレベルなぞ捨てて吐くほど居たぞ?それでも黒竜には勝てなかった。そうさ。俺達は負け犬だ。

 

だがその負け犬以外のガキ共は何をしていた!!人が居なくなってやっと漁夫の利を得て安心したか?

 

 

答えてみろ。ロキファミリアのチビガキ。

 

 

 

 

 

ーーーそう言われると何も言えないさ。でもザルド。君が闇派閥に入ってこのオラリオを暗黒期に落とし入れるならば前時代の英雄と言えど、討たなければならない。

 

 

 

 

 

 

ーーー馬鹿が。だから貴様らはそこまでなんだ。何が勇者(ブレイバー)だ。勇気があるなら言葉では無くさっさと行動しろ。

 

俺への王からの勅命だ。右頬を殴って!!左頬も殴る!!

 

フレイヤファミリアのガキ共は全員殴ってやったからな。勇者も殴って終わった。次は貴様らだ。ロキファミリア。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あーあー。完全に八つ当たりじゃん。ザルド楽しそうだな。闇派閥闇派閥って言ってるけどちびっ子を利用しようとした主なやつら全員ザルドにぶちのめされて虫の息なんだけどなぁ。

 

それすら気づかないとは……。マジで英雄王と噂のベル君が居ないと下界終わってたぞ。

 

ま、ベル君はまだまだ真っ白だ。今後どんな色に染まるかわからないしどうなるかは未定だな。

 

しっかしザルド……。九魔姫に完全にバレてんじゃねーか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

暴喰のザルドを見てやつの口から王と言う言葉が出てきた時点で色々察した。これ、ギルが噛んでいるな。

私と同じピアスをしてたらバレるだろうが!!ギルに迷惑になるのがわからんのかあの馬鹿者は!!

 

 

 

 

周りの冒険者は全員両頬をパンパンに腫らしながら気絶している。フレイヤファミリアのオッタルにおいては地面に埋められて額に(負け猪)と書かれ、何処から持ってきたのか板に「私は大好きな女神様だけを追いかけて冒険者なのに上を追い求めない負け猪です」と書かれて首から吊られていた。

 

 

 

「九魔姫。久しいな。」

 

 

「……ザルド。せめてそのピアスを外してからやれ。ギルが噛んでるのがバレるだろう。

 

それに貴様、闇派閥を間引いたか?」

 

 

 

ザルドは腕を組みながら片眉を上げる。そして頷きながら嬉しそうに破顔した。

 

 

「九魔姫がまだまともで良かった。王様にはしばいてくると言ったが流石に王様の姉をぶん殴るのは気が引けた。

 

闇派閥のアホ共には一般人には手を出すなと言ったんだがな。アホには言葉は通じんらしい。

 

ちびっ子や一般人に火炎石を巻きつけて自爆特攻させようとしたらしくてな。全員ぶちのめしてやった。

 

王様からすれば庇護すべき民だ。ならば配下の俺が守るのは当たり前だ。」

 

 

やはりギルが噛んでいたか。しかしザルドが配下だと?どうなっているのだあの弟は。

 

「ま、おしゃべりもそこそこに我が王からの伝言だ。【姉上。久しいな。雑種共のケツに火をつける為に我が配下をオラリオに送る。存分に闘うと良い。

 

それと聞いたが姉上はオラリオに行って何年になる?未だレベル5だとか?我はそこいらの雑種共と同レベルの姉を持った覚えは無い。

 

ある魔導士からすれば魔法はそこそこ近接は犬の餌だとか。我の買い被りだったか?王が違えたという汚点になるつもりか?

 

我がオラリオに行く時胸を張って会えるのを楽しみにしている。】だとさ。これが王様が書いたメモな。」

 

 

ザルドにギルの書いたメモを渡されて無言で受け取る。確かにギルの文字だ。あの可愛い弟の汚点だと?

 

この私がか……??

 

そうかそうか……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「終末の前触れよ、白き雪よ。黄昏を前に風を巻け。閉ざされる光、凍てつく大地。吹雪け三度の厳冬--我が名はアールヴ。

 

ウィン・フィンブルヴェトル!!!」

 

 

今までで一番速いと断言できる高速詠唱による吹雪がザルドを襲う。ザルドも速すぎる魔法に驚きつつも大剣を振り下ろして吹雪を跳ね除ける。

 

その間にリヴェリアは後ろに下がりつつ次の詠唱に入っていた。

 

「間もなく、焔は放たれる。忍び寄る戦火、免れえぬ破滅。開戦の角笛は高らかに鳴り響き、暴虐なる争乱が全てを包み込む。至れ、紅蓮の炎、無慈悲の猛火。汝は業火の化身なり。ことごとくを一掃し、大いなる戦乱に幕引きを。焼きつくせ、スルトの剣--我が名はアールヴ。

 

レア・ラーヴァテイン!!!」

 

 

 

ーーーこんな馬鹿げた威力の魔法をぽんぽん撃ち込んでくる時点でやっぱ王様の血筋なんだな。と思うよな。

 

王様よ。やっぱ王様の姉はすごいわ。怒っているとはいえ、この高速詠唱はウチのファミリアにも出来るやつ居なかったと思う。

 

まぁアルフィアの詠唱の方が速いんだけどな。あいつは頭おかしい。いや無詠唱であんな剣やら槍やらをレベル7の全力投擲と同じ速度でぶっ放してくる王様が一番頭おかしいけどな。

 

 

 

「あっっっっつぅ!!」

 

 

考え事をしていたせいで無駄なダメージを食らってしまった。

 

 

「九魔姫。俺は王の勅命を達成せねばならん。ということで一度引かせてもらう。ここのクソガキ共が気絶している間に残ってる闇派閥のアホ共にやられんようにしてくれ。

 

あと王の勅命は内緒にしてくれるとありがたい。」

 

 

ーーーこいつ私に後処理丸投げにする気だ。

 

 

リヴェリアは杖をザルドの顔目掛けてフルスイングした。ドゴンッ!!という周りの空気がビリビリと震える程の威力である。

 

ザルドはふらつきながら鼻血を流す。

 

 

 

あれは怒り狂ったアルフィアと同じ顔をしてる。……よし逃げよう。

 

 

戦略的撤退、後ろに向かって全力前進することにしてレベル8のポテンシャルを遺憾無く発揮してザルドは戦場から消えた。

 

 

 

 

 

 

ーーーアイツだけは許さん。

 

 

 

 

 

九魔姫、ハイエルフ、そして英雄王の姉、リヴェリア・リヨス・アールヴはザルドを確実に仕留める為に今以上に冒険することを心に決めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふはははははは!!!良くやった!ザルド!流石我の配下よ。姉上は完全にザルドを狙っておるだろうよ。

 

まぁ姉上は別に良い。あれで相当な負けず嫌いだ。それに我の血を分けた姉なのだ。勝手にこれから強くなる。

 

しかし他の冒険者は本当に嘆かわしい。」

 

 

 

 

ザルドは戦ったフレイヤファミリア、ロキファミリア、アストレアファミリアのメンバーを思い出してため息を吐きたくなる。

 

レベルが文字通り違うといえどやりようは幾らでもある。闇派閥に入ったことになってはいるものの所詮はソロで動いてるのだ。

それもご丁寧に気づくように闇派閥の主力は全員ぶちのめして気絶させていたので挟撃の可能性すらほぼ無い。

 

だがそれに気づかず、ロクな案もなく個人個人で挑み散っていく。両頬が被害に遭っただけで済んでいるのが幸いだと思ってほしい。

 

しまいの挙句にアストレアファミリアは残っていた闇派閥にダンジョンで嵌められて壊滅状態。

 

ザルドが地上でまたしても両頬をしばいている所に大量の人を配置してどうする?闇派閥のアホ共を駆逐するのを先にしろ。

 

命の危険性が非常に少ない戦場に大量の人員を割いて防げた筈の死者を出すな。

 

 

ザルド、ギル、アルフィアは深いため息を吐いていた。

 

「我はオラリオに行く必要があるのか?姉上とアイナには会いたいがザルドの話を聞くと愚物が偉そうにしているイメージしか沸かん。」

 

 

「王様。流石に今回のは酷すぎた。仮に俺とアルフィアが王様に合わず、必要悪となると決めていても被害が拡大しただけで俺達2人は時間で倒れるだけだと思うぞ。

 

オッタルのクソガキもフィンのチビガキも何も進歩してない。オラリオ最強のファミリアに立ったことで踏ん反り返ってるだけだ。」

 

 

「くだらん。雑音なんぞそんなものだ。ベルのあの姿を見れば勇者などと名乗るのが恥ずかしくなるだろうな。」

 

 

「ふはは。だが我が弟はオラリオで英雄になる事を夢見ている。今回の件でベルが行くまでに多少なりともマシにはなるだろうよ。

 

我が配下よ。良くやってくれた。褒美だ。王の酒でも呑むが良い。」

 

 

波紋から金のグラスを3つと酒を取り出す。ザルドもアルフィアも嬉しそうにグラスを手に取る。

 

ゆっくりと胃に流し込みながらオラリオについて話をしていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーアストレアファミリアのメンバーに関しては完全に僕のミスだ。ザルドに煽られて頭に血が昇り、最悪の可能性を考慮せずに行動してしまった。

 

せめて疾風の復讐の手助けだけでもしなければ申し訳が立たない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーなんたる生き恥を……。暴喰め。俺が何もできぬ弱者であった事は認めよう。だがこのままでは終わらせん。

 

次会う時は俺が貴様を喰らう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーー暴喰のザルド……。やつのピアスはリヴェリア様と同じだった?まさか………

 

やつは何と言っていた?気絶する前に王からの勅命と言っていなかったか??

 

………そういうことか。私達に焦れと、強くなれ、満足するなというメッセージだったのか。おいヘグニ。気づいたか?

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーうう。これ絶対にギル様からのメッセージだよぅ。ヘディンも気づいてるもん。このままだと見放されちゃうよぅ。

 

へ、ヘディン。その、模擬戦と鍛錬……やろ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーザルドは絶対に許さん。が、今回の件で良くわかった。我々の慢心と実力不足が。そしてザルドが認めているということはギルは少なくともザルドと同等かそれ以上。

 

確かに王の財宝は無詠唱の上恩恵の無い状態ですらレベル5すらも屠れる威力だ。

 

あれから何年経った?私は弟に見下されるのを良しとする姉だったか?

 

冒険をするしかあるまい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アルフィア……何をしている?」

 

 

 

 

 

 

 

「夜這いだ。考えるのは辞めた。私はギルが好きだ。だから夜這いをする。」

 

 

 

 

 

 

 

「このたわけめ。順序がおかしいだろう。……この王にふさわしい女と考えれば世界中のエルフから身を守れ、我の隣に立てる実力を持ち、やはり外見すらも美しくなくてはならん。」

 

 

 

 

 

 

「ギル以外の雑音が束になって来ようと撃退できる。ギル。私との対戦成績はほぼ五分の筈だぞ。外見は問題ない。」

 

 

 

 

 

「ふははは。確かに間違いではない。……まぁアルフィアぐらいしか我も考えれば思いつかんな。

 

よかろう。我のとびきりの宝となることを許可しよう。」

 

 

 

 

 

「…………!?!?ほ、本当か??」

 

 

 

「王は言葉を違えん。だがしばらくはここの家族だけの話にするぞ。下半神が隠居してベルもいるのにエルフがゾロゾロと来られてはたまらん。」

 

 

 

「あ、ああ。それで良い。私も雑音は好かん。じ、じゃあその、よろしくギル。」

 

 

 

「ふははは!!夜這いまでしておいて!愛やつよ。近くにこい。我が宝よ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夜遅くまでギルの部屋から光が消える事はなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーアイツら俺の五感の鋭敏さ忘れてるだろ。でも良かったなアルフィア。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

でも耳栓は作ろう………。




祝!!ヒロインアルフィアさん!!


ベル君オラリオ行く時が14歳だしよ〜く考えるとメーテリアが17歳で産んでるから17+14で原作突入時点で31歳になっちゃうと思ってせめて20代で付き合おうと考えた。

特に意味はない。


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ほう?超絶残虐破壊衝動女とな?(愉悦

うーん。原作入りたいんだけどなぁ。

ダンまちの世界にヴィマーナは世界観壊れるどこの騒ぎでは無いので無い設定で行かせていただきます。

御了承ください。


ーーーメーテリアの息子!?アルフィアの旦那!?認めるわけ無いでしょう!!その息子も私のものよ!!返せぇぇぇぇ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ギル。ヘラのところに行くぞ。」

 

 

 

「アルフィアの主神だったか?しかしいきなりだな。理由はあるんだろうな?」

 

 

 

 

ベルがいつかオラリオに行くことには反対はしない。しかしギルもオラリオに行くとなっては私もついて行く。だがこのままだとヘラファミリアだから追放されていてオラリオに入る事すら出来ない。

 

だから今のうちにヘラの所に行ってコンバージョン待機状態にしてもらい、元ヘラファミリアという大義名分を得たいとのことだ。

 

 

確かにそうした方がいい。それにお互いが倒れる寸前まで何度も模擬戦と言う名の殺し合い一歩手前をしている。

 

恐らくステイタスも上がっているだろうしあのスキルがどうなったかも気にはなる。

場所も分かるようなのでベルとザルドも連れて行くことにする。

 

 

「わ、わしはちょっと遠慮しておこうかの。行きたいのは行きたいんじゃよ?でもほら誰か留守番しないと。」

 

 

あーはいはいと慣れているザルドはゼウスの戯言を右から左に流して旅の荷物を用意してくれた。

 

ベルはまだ10歳だが日頃の鍛錬の成果かレベル1の冒険者と同等の基礎能力ができていた。やはり恩恵前に蓄えるトレーニングは大切だと再度認識する。

 

道中はザルドの料理が美味しいのとアルフィアが愛らしいことぐらいしかなかった。

山中にはゴブリンなどのモンスターもいるらしいがレベル8と7、そしてザルドとアルフィアの鍛錬だけでレベル3までランクアップしている我がいるので怖がって出てこなかった。

 

 

 

「この村にヘラはいるらしい。未だに壊滅したことで子供らが亡くなったことを憂いている……とのことだ。」

 

 

「超絶残虐破壊衝動女がいるのか。我相手にどこまで通用するのか楽しみではあるな。」

 

 

ーーー王様だけだ。あの女神に会うのを楽しみにできるのは。

 

 

ーーーお祖父ちゃんのお嫁さんってことはお祖母ちゃんだよね?くふふ。楽しみだなぁ。

 

 

 

ザルドよ。ベクトルは違うが楽しみにしておるのは我1人ではないぞ。

 

 

ヘラの居る住居に着くと門の前に2人立っていた。

 

 

 

「久しいな。ヘラはいるか。」

 

 

 

「「あ、アルフィア様!?おられます!!どうぞお入りください!!」」

 

 

 

五月蝿い(ゴスペル)

 

 

 

門番をしていた女2人は白目を剥いて気絶した。ふははは。これでこそ我のとびきりの宝よ。

 

 

「もう!!お義母さん!!なんでそういう事するの!!大丈夫ですか?うう。完全に気絶しちゃってるよ……」

 

 

ベルに怒られてシュンとなるアルフィアは見ていて可愛い。怒っているベルも可愛いがな。しかしベルは本当に優しい子よの。

 

 

門番を寝かして中に入ると唸り声なのか泣き声なのかわからん声が聞こえてきた。アルフィアはズカズカと入って扉を開く。

 

 

「おい。ヘラ。私をコンバージョン状態にしろ。」

 

 

ヘラの事を気にすることなく自分の用件を簡潔に告げる。ヘラはアルフィアの声を聞いて泣いていた顔を上げて見る。

するとまた涙を目に溜めてアルフィアに抱きついて泣き始める。

 

 

しばらくそっとしておこうと思ったのだがアルフィアはさっさと用件を済ましたいのかヘラを1ミリも気にしなかった。

 

 

「私の用件だけ済ませてあとは好きなだけ泣け。」

 

 

「お義母さん!!お祖母ちゃんですよね??その、僕はベル・クラネルです。えっと、アルフィアお義母さんとメーテリアお母さんの息子です。

 

お祖父ちゃんのお嫁さんがお祖母ちゃんと聞いてて…」

 

ベルの言葉を聞いて神だから嘘がない事が分かりバッと顔を上げる。

 

「め、メーテリアの息子??そんな!!そ、そっくりじゃない!!アルフィア!?」

 

 

「その言葉通りだ。ベルは私の息子でもある。それとそこに居るハイエルフは私の旦那だ。」

 

ヘラはキョトンとするが脳が理解をしたのか物凄い形相で我の胸ぐらを掴んできた。

 

 

「私の可愛い子供を貴様なんぞにやるかぁぁぁ!!この子だって私が育てるんだ!!返せ!!そして帰れぇぇぇぇ!!」

 

 

ほう。これが超絶残虐破壊衝動女というわけか。ふははは。中々に面白いではないか。さてどこまでできるのか楽しみだ。

 

 

「ふむ。育てる?ひたすら泣き喚いて嘆き、可愛い子供が子を産んでいる事すら気づかずにいた愚か者がか?

 

アルフィアの病は何故完治している?まさかヘラという女神が泣き喚いていたから治ったのか!?」

 

 

ザルドは顔を背けて震え、ベルはヘラの言い分に怒っているのかムスッとしており、アルフィアは隠す事なく笑っている。

 

 

「か、完治!?アルフィア!?貴女の病気はスキルにまで出てた筈よ!?どういうこと!?」

 

「私の旦那と息子が治癒魔法と勇気で治してくれた。」

 

 

アルフィアの言葉に嘘はない。

 

 

呆然とするがだからといって許したりはしない。

 

「そう。あなたの役目はもう終えたわ。お疲れ様。さっさと消えなさい。アルフィアは私の可愛い子なの。ぜぇっっったいにあげない。それにベルはメーテリアの子。

 

なら私の子よ!この部屋から出さないでずーっと私と暮らすの。」

 

 

 

うーむ。これが超絶残虐破壊衝動女か。中々に面白い。言葉は通じぬか。さてさて次はどうするかな。

 

我の宝に手を出そうとするのだ。相応の覚悟は見せてもらう。

 

 

ベルに触ろうとするヘラの手に天の鎖を巻きつけ身動きが取れないようにしてやる。

 

「な、何よこの鎖!!外せ!!神威で廃人にしてやる!!………え?な、なんで!?なんで神威が出ないの!?」

 

 

あたふたしているヘラの前にゴッドスレイヤー系の武器を波紋から先だけを出す。

 

 

 

「さて。我の宝に手を出そうとしたのだ。相応の覚悟は見せてくれるのであろう?

アルフィアのコンバージョンが認められないのなら送還するしかあるまい。

 

大神の嫁だ。神格もさぞ高いのであろう?ならば神威の無い状態でこれらの武器で殺されても復活できるだろうさ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーまずいまずいまずい!!あの武器はまずい!!この状態で受けたら送還どころか消滅する!!

 

どういう事よ!!なんで下界の子がこんな武器を!

 

 

 

 

 

 

結論から言えば大泣きしながらもアルフィアのコンバージョンは許可された。そしてベルの事も諦められないのだろうが手紙を書く事で納得した。

 

というかベルのお祖母ちゃん、あんまりわがままいうと僕だって怒るよ?の一言でしょんぼりして謝ってきた。ベルが強すぎる。

 

 

「女神ヘラよ。ベルも外に出ておるから言うが下半神の居場所を教えてやろう。あの下半神は何度言っても我のとびきりの宝のアルフィアにセクハラをしようとするのだ。

 

毎回福音で吹き飛んでいるがあれはヘラの旦那だろう。泣く気持ちも嘆く気持ちもわかる。それほどに貴様の愛が深く、本物だと言う事だ。

 

だがまだ生きて貴様を母と慕っている子の事を考えてやれ。子の人生は貴様の瞬きに等しい時間に始まり、終わる。

 

だからこそ貴様だけは忘れてやるな。忘れた時に本当にその子は死ぬと我は思う。だからさっさと立ち直ってあの下半神をどうにかしろ。」

 

 

それだけ伝え、帰路についた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーー何よ何よあの子!この女神である私に対して脅して、説教して!!

……忘れた時に本当に死ぬ、か。そんなこと考えたことも無かったわ。

 

私達神は天界で魂に会える。そして巡り巡ることも知っている。でも、それでも私と同じ時を過ごした事は事実だわ。

 

そうよね。もう十分泣いたわ。悲しんだわ。

 

良しっ!ベルも私にお手紙くれるって言ってたし!

 

……ん??ベルの手紙が来る所にゼウスがいる??アイツ私に黙ってあの子とアルフィアとギルガメッシュとザルドと住んでるわね?

 

……ふふ。ふふふふふふ。私が泣いてるときに楽しんでアルフィアにセクハラしてた?うふふふふ。

 

お仕置きしなくっちゃね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーアルフィアの件もどうにかなったな。さて、我は先にオラリオに向かうとするか。アルフィアはどうする?一緒に行くか。

 

 

オラリオに行く話を家でするとベルはお義母さんとギルお兄ちゃんは結婚するのにずっと僕の面倒を見てくれてるからちょっと寂しいけど2人の時間もある方がいいと言ってくれた。

 

ザルドはオラリオでは未だに闇派閥の一員だと思われているからベルを鍛え、田舎でゆっくりする。だが俺の力が必要になったら呼んでくれれば王の為にすぐに飛んで行くという。

 

 

やはり我は人に恵まれている。そして伴侶にも恵まれた。では行くとしよう。迷宮都市オラリオへ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アルフィア。オラリオに着いたら貴様とメーテリアの思い出の場所を案内しろ。メーテリアのおかげでベルにも貴様にも出会えた。

 

ならば王としてメーテリアへの褒美を賜わねばなるまい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そういうとこが好きなんだよ。ギル。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何故こうなる。検問で槍やら剣やらを向けられる覚えはないのだが??

 

アルフィア。まぁ落ち着け。雑種共の顔色が悪くなるところを見たいだろう?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「一度目は許そう。雑種共も仕事をこなしているだけだ。そこを許せぬようでは王としての我の器が疑われるというものよ。」

 

 

 

「ふ、ふざけるな!!ゼウスファミリアの生き残りだと!?暴喰が何をしたか知らないのか!!オラリオをめちゃくちゃにしたファミリアが!!」

 

 

 

「ほう?何をしたかだと?オラリオの冒険者、トップを掠め取ったやつらを育てようとしただけだろう。それとも何か?暴喰が相手をした冒険者は皆殺しにでもなっていたのか?」

 

 

 

その一言にうっ。と言葉に詰まる憲兵。

 

「……武器を下ろせ馬鹿者共。暴喰が関わっている事で死人は1人も出ていない。すまないエルフと……せ、静寂?」

 

 

「……誰だ貴様は?生憎オラリオの雑音共の事はあの年増くらいしか覚えていない。」

 

 

「……ガネーシャファミリア団長の象神の杖。レベル5のシャクティ・ヴァルマだ。」

 

「そうか。雑種。早く我とアルフィアを案内せよ。」

 

門で揉めていると見覚えのある2人のエルフが来た。

 

「な、なんでフレイヤファミリアの黒妖の魔剣と白妖の魔杖がここに!?」

 

 

2人は我の前に跪き頭を下げる。

 

 

「お久しぶりでございます。こうして再びお会いできたことを光栄に思います。王の中の王。ギルガメッシュ・リヨス・アールヴ様。」

 

「お、おひ、お久しぶりでござます!!あう。」

 

 

「ふははは。久しいなヘディン。ヘグニ。なるほどな。貴様らはあのメッセージに気づいたか。しかしヘグニ。まだまだあがり症は治っておらぬか。良い良い。それもヘグニの愛らしい所よ。」

 

「はっ。我々の不徳の致すところでございました。王にあのような事を気にさせること自体が我々の汚点。それに気づく事なく過ごす有象無象など相手にしておれません。」

 

「ぎ、ギル様!!ありがとう、ございます!!」

 

オラリオでも屈指の実力者の2人が跪き、そしてヘディンから出た名前で武器を構えていた門番達は顔を真っ青にしている。

特に何もしていないシャクティまでもが真っ青になる。

 

2人が挨拶に来てくれたおかげでスムーズにオラリオに入ることができた。2人にはアルフィアを紹介しておく。

 

 

「「は、伴侶ですか!?」」

 

「ふははは。我の隣に並び立つのはアルフィアのみよ。それに世界中のエルフがアルフィアに突っ込んでいっても返り討ちに会うだけだろうよ。なんせアルフィアはレベル8だからな。」

 

これには2人も絶句してしまう。オラリオ最高レベルの冒険者ですら届いていないレベル8。

五月蝿いのが苦手なアルフィアだがギルの声と話は好きなので黙って聞いている。

 

そのまましばらく話をして別れ、アルフィアの案内でとある廃教会へと辿り着く。

 

 

 

ーーーここはメーテリアの好きだった場所なんだ。よくせがまれて連れて来ていた。

 

 

そう呟き、手をぎゅっと握られる。ギルは改めてベルを産んでくれたこととアルフィアに出逢わせてくれたことを天に感謝する。

それから2人で教会を綺麗に掃除していく。幾ら廃教会といえど思い出の場所が汚いのは嫌だろうから。

 

 

 

それから2人は宿を取り、今後の予定を話し合ってから就寝した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーだからリヴェリアを出せと言っている。言葉も理解できんのかオラリオの雑種共は。

 

 

 

ーーー面倒だ。福音。

 




いきなりギル様の好感度チェック

アルフィア、ベル、ザルド、リヴェリア、アイナ>>ヘディン、ヘグニ、極東の神と命を含む子供達>>民(子供を含む)>>下半神、ヘラ>>オラリオの冒険者>>神々

ギル様なんやかんやで好き嫌いはっきりしてます。神々はそもそもギルの民でも下界の存在でも無いので普通に優先順位が最下位。

オラリオの冒険者は一部を除いて雑種です。

民は庇護すべき対象です。その中でももちろん順位は子供が上で大人は下です。


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導くというのは難しいものだな

ギル様のオラリオでの立ち位置にめっちゃ悩む。

冒険者として最前線に立たせるか、ベル君を育てる為の師匠にするか。

感想にて質問してくださる方、アドバイスくださる方、何より感想を書いてくださる皆様、本当にありがとうございます。

作者の文が拙いせいで作者はこう書いたつもりなのに!と、伝わっていない事が多々あります。

わけのわからない批判はちょっと遠慮させて頂きますが、思ったこと、質問、こんな方向性も良くない?などはどんどん書いてください!

感想だけでなく読んでくださっている皆様にも感謝でいっぱいです!



教会近くの土地を買い、アルフィアと住む為の家をゴブニュファミリアに依頼して、フードを被ってオラリオを、オラリオに住む我が民を見ていく。

 

さまざまな種族がごった煮のように住んでいる世界の中心とも呼ばれているオラリオ。悲しいかな。どれほど眩い光を放つところでも光があれば闇もある。

 

 

ーーーダイダロス通りか。ここには孤児やならず者が多いようだ。親の愛を知り、自由に育ち、未来へ向けてその在り方を形作る幼き頃にこのような劣悪な環境に身を置かねばならん宝がこうも沢山いるのか。

 

 

ある教会を見た。辛いこともあろうが懸命に今を生きている宝達。笑顔を絶やさず友のため、一緒に暮らす家族の為に貧困すらも糧とするその気高い魂。

 

我が手を貸すのは簡単だ。黄金を渡して教会ごと建て直してしまえばよい。だがそれをすれば強く輝きを放っているあの子達の未来を潰しかねん。

 

 

 

 

ーーーここの母たる人物よ。この強く輝きを放つ宝達に我は何をすれば良い?

 

 

 

 

 

フードを深く被っているが耳が見えたエルフの方と横に佇む女性らしき二人組に声をかけられた。

 

私は孤児院を経営しているマリアという。その方々は子供達を憐れみ、決して同情せず、今を必死で生きていることを認めてくださっているのが最初の言葉だけで良く分かった。

 

 

「冒険者様でありますか?ここの私の自慢の子供達を認めてくださってありがとうございます。

 

でしたらこの子達は冒険者様に憧れております。どのような冒険をされたか話してくださればとても喜びます。」

 

 

「ふむ。確かに括りとしては我もアルフィアも冒険者にはなるのだろうが……。生憎我々は外から来たばかりでなダンジョンにも潜った事はない。

が、我は下界の王にして英雄王。世界中、旅をした。その時の話でも良いか?」

 

まぁ!あの子達の視野も広がるいい機会ですねと喜ばれたので波紋からヴァリスを出してせめて食だけでも良いものを。と食材を買わせに行かせる。

孤児院の母が大量には買えんだろうとアルフィアはマリアに着いていく。

 

 

我はフードを取って子供達の前に姿を現せる。みんなポカンとしていたが我の溢れ出てしまう王気にやられたのかキラキラした目でこちらを見てくる。

 

ふははは!愛いやつらよ!近くの犬人族の子を抱き上げてやると嬉しそうにしており僕も!私もー!と近くによってくる。

 

良い良い!我は下界の王!子は至高の宝よ!存分に甘えるが良いぞ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「冒険者様。申し訳ございません。本当に助かりました。」

 

 

 

「…いや。私にも愛する息子がいる。もう一人の、あいつは旦那なんだが子は宝だと常々言っている。

私もそう思っている。」

 

 

「……それはとても素敵ですね。本当は、最初は同情心で孤児院を手伝っていたんです。でもずっとあの子達を見ていて、孤児院から大きくなって出た子達も何人もいて。

 

みんなお金を稼いで孤児院に恩返しをするんだ!って言って学もあまり学べないので冒険者になる子が多いんです。

 

私としては恩返しなんていいからもっと安全な職業について欲しいんですけどね。」

 

 

ーーーすごく気持ちはわかる。ベルがあの時覚悟を私達に見せたときに、嗚呼、止められないと思った。

 

それから毎日毎日恩恵の無い子は決してしない鍛錬を欠かさずやった。

 

本音を言えば私達の英雄になろうとするのはとても嬉しい。しかしどうしてもベルの安全を確保したくなる。

 

ここまで私は弱かったかと思ってしまう。

 

 

 

私はマリアとたくさんの母としての話をする。このような友は初めてだ。

 

 

 

 

 

買い物を終えて孤児院に帰ると、恐らく王の財宝から出した黒板に何かを書いて子供達はうんうん考えながら手を上げて答える場面を目撃した。

 

 

 

「ふははは!正解だライ!貴様は計算が得意みたいだな!将来はさぞ高名な商人になるだろう!そこのリーナは手先が器用だ!服を作ったりご飯を作ったりすれば大成するであろうさ。そこの……」

 

 

ギルが一人一人の名前を呼んで得意なことを褒めて、こんな職業があると教え、頭を撫でている。

 

子供達はギル様ギル様と嬉しそうに抱きついて、あれを教えて!これは何!?と質問攻めをしていた。

 

その一つ一つを子供相手だからと手を抜く事なく小さな子にもわかるように噛み砕いて教えていた。

 

 

 

「ふはははは!む。帰ったか。マリアにアルフィアよ。よし全員座るが良い!良い良い。素晴らしいぞ。

お前たち宝には特別に紹介しよう。

 

我が生涯愛すると決めた唯一の伴侶だ。分かりやすく言えばお嫁さんのアルフィアだ。

 

お前たちも成長し、大きくなればいつか人を愛する。その愛は素晴らしいものだ。できれば大切にしてほしい。

 

 

良い時間になったな。また今度色々教えに来よう。さて、教えたことはできるか?」

 

 

子供達は全員立てってこっちを向いて声を合わせる。

 

 

 

「「「「ギル様、アルフィアさん、今日はありがとうございました!」」」」

 

 

「うむうむ。挨拶は大切だ。どういたしまして。また来よう。それまで病気や怪我をしないようにな。」

 

「…また来る。マリアもまたな。」

 

 

 

みんな手を振ってバイバーイと言い続けていた。本当にギルはすごいやつだ。マリアの言っていた話を伝える。

 

 

ーーーそうか。これは我の責務であろうよ。マリアにも苦労をかける。しかしギルドはオラリオを統治していると豪語しておるのだろう?

 

それに憲兵のガネーシャファミリアだったか?ふむ。オラリオのファミリアはどうにもダンジョンと同じ冒険者に対する比重が重すぎるように感じるな。

 

基盤となるのはこのオラリオという都市そのものだろう。ならばオラリオで働く一般人、それに次代を担うに足る子供達に目を向けるべきだと思うのだがな。

 

 

 

 

 

そのギルの言葉はギルにとって当たり前の考えだったのだろう。だがヘラファミリアに所属してダンジョンと妹、メーテリアに明け暮れていた私には全く考えつかなかった。

 

ベルという何にも変え難い宝を得た今だからこそよくわかる。私達冒険者がなんと傲慢で浅慮なのかを。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ギルは急に私の頭を撫でてきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーそう考え込むな。アルフィアは気づいてそのような考え方もあると理解した。そして前に進もうとしている。

 

 

さすがは我の伴侶だ。誇れ。貴様はもう我の唯一無二よ。

 

 

 

 

 

 

 

「……わかっている。私にとってギルは王ではなく自慢の伴侶だ。」

 

 

 

 

 

顔を真っ赤にして頭を撫でられながらそろーっと横に近づいて服をちょんっと摘むアルフィア。

可愛いやつよ。そう思って手を繋ぐとキュッと握り返してくる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2人で街を散策しながらフラフラしているとなんとも大きい館があった。

ほう?これがロキファミリア。姉上のいるファミリアか。行くぞアルフィア。

 

 

 

 

 

 

 

「おい雑種。リヴェリアを呼べ。」

 

 

 

 

急に来たフードを被ったやつにロキファミリアの副団長にしてハイエルフのリヴェリア様を呼び捨てにした挙句命令された門番は一気に血が頭に登るのを理解した。

 

 

 

「誰を呼び捨てにしてんだ。てめえみたいなどこの馬鹿か分からんやつにリヴェリア様に会わせられるわけねーだろ!!」

 

 

 

 

 

「ふむ。これでいいか?呼べ。」

 

 

 

フードを外し、素顔を見せてもう一度伝える。

 

 

 

「て、てめぇエルフのくせに誰を呼び捨てにしてんだ!!この田舎もんが!!リヴェリア様はハイエルフだぞ!?」

 

 

 

 

何を言っているのだこの雑種は。

 

 

「やれやれ。だからリヴェリアを出せと言っている。言葉も理解出来んのか。オラリオの雑種は。」

 

 

 

「ふざけた事ばっかり抜かしてんじゃ「面倒だ。福音。」」

 

 

 

門番ごと音の威力で門を破壊する。中から慌ててロキファミリアの冒険者が出てくる。

口々に言葉を発する雑種ども。

 

 

五月蝿い(ゴスペル)

 

 

またしてもゴスペられて大半のメンバーが吹き飛んで気絶していた。

 

 

 

「…五月蝿い雑音だ。こちらは礼儀として律儀にノックまでしてやったと言うのに……何度言えば雑音は理解できる?」

 

 

 

 

「これはどういうことかな?ヘラファミリア、レベル7の静寂のアルフィア。」

 

 

槍を持った小人族と共に大量に出てくる雑種共。

 

 

 

「……ああ。勇気を履き違え、勇者など大層な二つ名を持っている人工の英雄(ただの道化)か。貴様ら雑音に用などない。あの年増を呼べ。」

 

 

 

その一言にロキファミリアの戦意は最高潮になる。自分達の団長のフィンを貶され、エルフ達は崇拝するハイエルフを年増と呼ばれ臨戦体制をとる。

 

 

 

「……はぁ。面倒だ。ギル。あいつが出てくるまで全員叩き潰すか?ザルドに本気も出させられんやつらなんぞただの雑音共だ。」

 

 

 

エルフは門の外から入ってくる人物を見て固まり、即座に跪く。エルフ以外はエルフが震えながら跪いているのを見て唖然とし、フィンは即座に気づいた。

彼がリヴェリアが良く話題に出す下界の王であり王の中の王と言われるギルガメッシュ・リヨス・アールヴだと。

 

 

「良い。楽にせよ。我はリヴェリアを出せと言った筈だがそれすらも出来ぬ程に貴様ら雑種は無能であったか?」

 

 

その言葉にエルフは全員震えが止まらない。フィンは不味いと思いながら話しかける。

 

「すまない。リヴェリアの弟である「喚くな雑音。貴様如きがギルに話しかけるな。」っっ!!」

 

 

アルフィアの殺気を受け、フィンはもちろんのことエルフ以外のメンバーもとんでもない相手を敵にしたことに今更気づいた。

 

 

「良い良いアルフィア。しかしながら貴様らはいったいオラリオで何をしているのだ?ザルドには手も足も出ず、姉上を呼べという簡単なこともできぬ。

 

そこの同胞よ。何ができるか言ってみよ。」

 

 

 

波紋から椅子を出して脚を組んで座る。当てられたエルフ、アリシア・フォレストライトは震えながら口を動かす。

 

 

「お、畏れ多くも口を開かせていただけるのなら、今すぐにギルガメッシュ様を歓迎し、リヴェリア様を呼んで参ります。」

 

 

「ふむ。歓迎などいらん。貴様らと仲良くする気などない。姉上だけ呼んでこい。

無能に無能を重ねよって。同胞のヘディンとヘグニは我がオラリオに来た門のところで待機しておったぞ。

 

ほとほと愛想が尽きる。我が下界の王で無ければ貴様ら雑種なんぞ見捨てておったわ。

 

そこのアマゾネス。純粋そうな方だ。名乗れ。」

 

 

 

「え?私??え、っとティオナ・ヒリュテです?」

 

 

「ティオナか。良い名だ。さてティオナ。一つ問う。ここのエルフはエルフの誇りがあると思うか?無理な言葉は使わずいつもの自分の言葉で答えよ。」

 

 

うーんうーんと悩み、どういう事か理解してから口を開こうとするとリヴェリアがやってきた。

 

 

「ギル!?何をしているんだ!」

 

 

「久しいな姉上。だが少し待て。今我はティオナに問いを投げた。そしてティオナは己で考えて答えを出そうとしている。

ならば王として民の答えを聞かねばならん。」

 

 

リヴェリアは納得したのか静観する構えだ。

 

 

 

「えっと、ぎ、ギル様?エルフの誇りってのは良くわかんない!でも家族としてはあたしがわかんない事とか教えてくれるし、アリシア、さっきリヴェリアを呼びに行ったエルフもすごっく優しいよ!」

 

 

ギルは微笑んで立つ。

 

 

「そうか。己に理解出来ない事が起こっている中でその元凶とも呼べる我の問いに対し、純粋に、そして何の下心もなく真摯に応えたティオナ・ヒリュテに免じて此度の事は不問にしてやる。

 

せいぜいティオナに感謝しておけ。

 

待たせたな姉上。久しいな。」

 

 

 

「ああ。弟に会えて私も嬉しいよ。だがやり過ぎだろう。」

 

 

姉上に連れられて館の中に入り、王の財宝から出した紅茶を入れて3人でお茶をする。

 

中々来なかったのは今面倒を見ている子供を怒っていて手が離せなかったようだ。姉上はザルドの背後に我がいた事にも気づいているので全て話してやる。

 

姉上は懐かしい額に手を置いてため息を吐くポーズをしている。

 

「それで姉上。見ればわかるが強くなったみたいだな。」

 

「おかげさまでな。オラリオの最高位はレベル7だ。フレイヤファミリア、猛者オッタル。そしてギルの配下の白黒エルフ。あとは私だ。」

 

 

「ほう?我を差し置いて王と名乗るなど不快極まりないが我の見る目は違えていなかったことを証明した姉上、ヘディン、ヘグニに免じて見逃そう。」

 

 

「年増。レベル6になったのはザルドの件だろう。レベル7にはどうやってなった。」

 

「年増と呼ぶな静寂。新しいスキルが出てステイタスが上がりやすくなった。これは私とロキ、それにフィンとガレスしか知らんから他言無用で頼む。

それで魔力がSになったからウダイオスをソロで燃やし尽くした。

 

私はな、王として産まれてきたがたった1人の可愛い弟に呆れられるのは嫌なんだよ。」

 

 

姉上の成長、そして配下としてのヘディンとヘグニの成長が嬉しく、とても気分が良くなり良い気分のまま帰ることとする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…おい。年増。いや、ちゃんと言うか。これからよろしくな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

お義姉ちゃん

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「「「は?」」」」」




ちなみに凶狼ことベートきゅん。何で食ってかからなかったって?

ダンジョンに行ってたんだよーん。

ギル様子供に挨拶は大切と教えて雑種相手には王様ムーヴするのマジ好き


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アルフィア!たまには外食するぞ!

アルフィアのヒロイン力高くない?

ギル様の嫁になって嫁力も上がったらそれこそ

「嫁の作法を教えてやろう。」

が炸裂するよ?ベル結婚できる?


読んでくださって評価して下さる方々本当にありがとうございます。

やっぱり原作リスペクトしつつクロスオーバーって難しいなとは思います。

自己満小説で本当に申し訳ありません。最初にも書きましたが気に入らなければブラウザバックをお願いします。


ーーーオラリオにギルガメッシュ様も来られた話を知っているか?

 

 

ーーー当たり前だ。我々エルフ族にとっての王の中の王だぞ!

 

 

ーーーロキファミリアのホームをぼろぼろにして九魔姫以外のエルフに説教かまして勇者は一言喋って黙らされたってやつか??

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーー何よりギルガメッシュ様の伴侶はヒューマンらしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

オラリオ中のエルフに激震が走る。多種族が共に生活しているオラリオにおいてエルフ以外の種族ですらその噂を知って、あらゆる所で話されている。

 

エルフ族は王家を崇拝し、その中でも特に王の中の王と名高く、オラリオに来ているエルフ達も実家のある森からギルガメッシュが森中を歩き回り、交流をしたことでとにかく評価が高い。

 

ギルガメッシュ本人からすれば民無くして王ならずという信念の元、そして自分の見聞を広げる為にやったことなのだが、この王はやればやる程、動けば動くほどに上手く行ってしまう。

 

 

 

とにかく結論。エルフ族の頭はカッチカチ。

 

 

 

 

 

 

ーーー誰だ相手は!!ギルガメッシュ様の伴侶にヒューマンがなるなど許せるか!!!

 

 

 

 

 

1人のエルフが路上で叫んだせいで他のエルフもそうだそうだと騒ぎ始める。そしてファミリアの壁なんぞ粉々に砕かれ、オラリオ中のエルフがギルガメッシュを探し、その伴侶を見定めてやると意気込んでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「リヴェリア?これ、どうするんだい?」

 

 

ロキファミリアの黄昏の館では全エルフが大人しかった。なんせギルガメッシュ本人に会い、苛烈にして器の大きさを見せつけられ、己らの不誠実な対応を許されたのだ。

 

これ以上恥の上塗りをしたくはない。

 

 

何よりギルガメッシュに懐いてしまったアマゾネス。ティオナがギルガメッシュに迷惑をウチの団員がかけるなら容赦しないと門番(内側)をしていて外にすら出れない。

 

 

「どうもこうもないだろう。どうせギルには何もできん。アルフィアに文句なんぞ言ってみろ。福音で吹き飛ばされて終わりだ。」

 

 

その言葉に対して何かを返すことはフィンですら無理だった。この騒動は始まりの時点で結果が見えている。

始まりの終わりだ。

 

 

「それにこう言ってはなんだが同胞だけで下界の王、ああ、今は英雄王を名乗って居るんだったな。

 

あの王を納得させられるものを出せると思うか?ギルは民の声はきっちり聞いて取捨選択をするが、オラリオの冒険者となっている同胞のことは相手にもせんぞ。

 

私が言ってしまってはいけないんだろうが幻滅している。己の出来ることをしていない。限界を越えるなんてことはギルからすれば普通のことだ。」

 

 

リヴェリアは何かと弟のギルガメッシュを持ち上げると思っていたがこの前、かの王を目の前にした時に決して大袈裟に言っていたのではないということが分かった。

この騒動はどうなることやら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「呼び出してごめんなさいね?ヘディン、ヘグニ。貴方達の崇拝する王様が大変な事になってるみたいだけど、貴方達の魂にはちっとも揺らぎが無いわ。少し気になっちゃってね。」

 

 

ヘディン、ヘグニの主神であるフレイヤに呼ばれ、そんな言葉を投げかけられる。

 

「う、うう。その、ギル様は、問題ないから、です。」

 

 

「…ふぅ。言いたいことは分かるがもう少し頑張れヘグニ。フレイヤ様。私達の王はオラリオにいる有象無象如きにどうこうされるようなお方ではありません。

 

ここで私達が心配して行くことこそ王に対する不敬。」

 

 

2人がキッパリと言い切るのでフレイヤは目をぱちぱちさせてくすくすと笑い始める。

 

この2人に出会ったのは本当に偶然だった。エルフの部族同士が不毛な戦争をしていたのだ。だが目を引く2人は互いの部族の王として、とても楽しそうに戦っていた。

 

 

フレイヤが2人に声をかけても一切魅了されることもなく会話をしていく。そこにとても惹かれて自らのファミリアに誘った。

 

 

 

ーーーこの2人はその王様に魅了されてしまってるのよね。下界に降りて神威を封印している状態の私じゃ上書きできないくらいの魅了。

いえ、魅了ではないわね。カリスマによる魅せ方。ある種の魅了だろうけど私とは本質的に違うわ。

 

 

「ねぇ?本当に私のものにならないの?」

 

 

「私は王に全てを捧げてでもついて行くと誓っているので。」

 

「お、俺もギル様の為の剣となるって決めてるので。」

 

 

【白妖の誓い】 【黒妖の誓い】

 

 

2人ともスキルに出る程に王を崇拝している。決して過保護になることもなく、互いが互いを認め合って適度な距離感を保っている。

 

 

 

ーーー美の女神ですら叶わない、そしてこれ程美しい繋がりがあるなんて。嫉妬しちゃうわね。

 

 

フレイヤらしからぬ苦笑を浮かべる。ヘディンとヘグニはフレイヤファミリアに入団する際にこう告げていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーー私達が心から崇拝するのはギルガメッシュ・リヨス・アールヴ王のみ。女神フレイヤに崇拝を捧げることはできません。

 

女神フレイヤと王が同時に危険になった場合、かの王はなり得ぬとは思いますが。私達は王の元に向かいます。

 

それでもよろしいでしょうか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

もう姉上には会いに行ったしフードは良いか。

アルフィア!静かな所を好むのは分かるが我は王だ。よって民の生活を知らねばならん。

 

だから昼間に見つけた居酒屋というのか?あの店にいくぞ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーギルガメッシュ様!!!

 

 

 

 

なんだこの雑種は。いったいどんな人数だ。

 

 

口々にやれ伴侶がどうだ、ヒューマンはダメだなどと囀る。こいつらは何様のつもりだ。

 

 

 

ブワッと上空一帯に王の財宝の波紋を開く。全員が黙ったことで口を開く。

 

 

 

「偉くなったな雑種共。我に意見をするなど。勘違いも甚だしい。」

 

 

口を開こうとした雑種の足元に剣を射出する。土埃を舞い上げ、剣が突き刺さっている。

その雑種はガタガタ震えながら座る。

 

 

「頭が高い。我はエルフの王などの器ではない。下界の王。引いては英雄の中の王。英雄王だ。

その英雄王が自ら見つけ出した至高の宝に対して、雑種如きが批判するだと?不敬にも程がある。」

 

 

アルフィアは横で目を閉じたまま薄っすらと頬を染めながら微笑むのを我慢している。うむ。可愛らしい。ベルの可愛さは確実にアルフィア、メーテリアの血であろう。

 

「何が誇り高いエルフだ。閉鎖的で前に進もうともせずに停滞する種族。そこの雑種。貴様はレベル8に勝てるのか?

 

我の伴侶、アルフィアは元ヘラファミリアのレベル8だ。

 

それでも認められぬのなら認められぬで構わん。存分にアルフィアと戦うが良い。」

 

 

誰一人言葉を発することができない。それ程に実力がかけ離れていた。

 

 

「そういうところが停滞していると言うのだ。何故格上に挑戦しようとしない。自分達は安定安心な位置から動かない。

 

本当にくだらん。我は毎日アルフィアと殺し合い一歩手前の模擬戦をするぞ?下界の王といえど我はエルフ。

 

同じ種族の王は出来て雑種は出来ぬ。何とも呆れた話よ。貴様ら雑種を相手にする時間など無い。わかったら消え失せよ。

 

それと不満不平が根底なれど我の為にファミリアの垣根を超えて集まり動いたことだけは褒めてやる。

 

さて、飲食店は客を集める時間だ貴様らも道の真ん中で邪魔をしたのだ。店に貢献してから帰れ。

 

待たせたな。我の宝よ。行くとしよう。」

 

 

アルフィアの手を握り、昼間に見つけた豊穣の女主人に入る。

 

 

 

取り残されたエルフは王の命だからとファミリア関係なく近くの店に謝罪して飲食を楽しむ。そして楽しむついでにギルガメッシュに言われたことについて話し合い、いつも以上に気合いを入れて冒険をするようになる。

 

 

 

 

 

ーーーせ、静寂!!

 

 

 

 

ーーーん?フレイヤのとこの小娘か。

 

 

どうやら店主はアルフィアの知り合いだったようだ。

 

 

 

「ほう!これは美味いではないか。ザルドと良い勝負だろう。」

 

 

「…まぁ美味いな。あの小娘がここまで料理できるとは思わなかった。」

 

 

その声が聞こえたのか店主は嬉しそうに笑っていた。店主、ミア・グランドと喋りながら食事を楽しむ。

 

そこに金髪エルフがやってきた。

 

「お初にお目にかかります。ギルガメッシュ様。挨拶が遅れ、申し訳ありません。」

 

 

「良い。許す。貴様はこの店の従業員として己の仕事をしていただけだ。仕事を途中で投げ出して挨拶に来る方が、我の中では不敬で不快だ。

 

やるべきことをやる。それが下界で生きる子としての最低限だ。どうもこの街の雑種はそれすらもわからんらしい。」

 

 

酒が入って上機嫌なギルは楽しそうにグラスを回して口を開く。

 

 

「……私も噂は聞いていました。仕事が無ければ行っていたかもしれません。真に申し訳ありません。」

 

 

「ふははは!!来てもいないのに謝るとは面白いやつよ。我はなやるべきことをしている民の話は必ず聞く。

貴様もそうだ。ミアの素晴らしい食事をこぼすことなく丁寧にしかし素早く運んでいる。

 

恐らく元冒険者だろう。ウェイトレスに当たらぬように上手く身体を使っている。

 

ふふふふ。貴様はやるべきことをしかとやっている。よって話を聞いてやろう。おい!ミア!此奴を借りる。」

 

 

「はぁ。わかったよ王様。でも長時間はやめとくれ?」

 

 

リュー・リオンというエルフを座らせる。オラリオにはそこそこ前に来ていたようだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーー何?アストレアファミリア??あれか。オラリオ中の馬鹿な冒険者に見捨てられたファミリアの生き残りか。

 

 

 

 

 

 

通りで瞳が曇っていると思った。エレボスにも心を揺らされたか。復讐か。なるほどな。勇者と名ばかりの小人が手伝ったのか。

 

 

 

 

「貴様は雑種ではない。やると決めたことをやり抜いたのだからな。そもそも正義とは何かなんぞ我もわからん。」

 

 

驚き、こちらを見るリューに説明してやる。

 

 

「正義と王は密に繋がっておる。王がこうすると決まればその国にとってはそれが正義となる。

 

例えると、それが賢王ならば生産業の活性化。愚王ならば他国との交流を切る。征服王ならば他国を征服する。とな。

 

 

だが問題はここだ。それが正義と信じれるものなら良いが、少なからず被害を受けてしまう相手からすればそれは正義ではなく悪政だ。」

 

 

「な、なら!!私達の正義は無意味だったと!?」

 

 

「そんなことは知らん。そもそも正義とは己の本質だと我は思っている。

我は王として下界の民全てを守り、導くと決めている。しかし己の身一つでそんなことできるわけがないのも分かっている。

 

 

それでも心が叫ぶ。その信念を貫き通せと。」

 

 

ーーーそれだけだ。貴様の正義なんぞしらん。正義が何なのかも知らん。そんな形も色も見えんものを追いかけるくらいなら、自分がどうあるかを考えて行動するんだな。

 

そして貴様は1人か?ファミリアが壊滅してからずっと1人なのか?周りをもう少し見ろ。以上だ。

 

 

 

ミアに勘定を投げる。

 

 

「王様。なんだいこりゃ。」

 

 

「美味い飯の礼だ。我の伴侶がいつもより食べていた。」

 

 

「それでも貰いすぎだよ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーー迷子の我が民を守ってくれていた礼だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーあれがあの白黒エルフの言っていた王かい。くくっ。あたしでもついて行きたいと思わされたよ。ったく。

 

この金は礼じゃなくてあの馬鹿娘をよろしく頼むってことだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーアルフィア?ユニコーンいるか?いらない?あの愚王が婚姻すると言ったらユニコーンとか言い始めてだな。純潔とかもう貰ったのにどうしろと。

 

む。なんだ。

 

分かった分かった。確かに我もベルのような可愛い子が欲しいからな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーなんだこのなまくらは。

 

 

 

 

 

 

 

ーーーなんだと???




そろそろ神様決めるか。

次回予告!!

ダイダロスにいる貧困を司る女神!ペニア!

黄金律を持っているギルと貧乏神!どちらが勝つのか!!




ごめんなさい冗談です。ソードオラトリアぱらぱら読んでたら頭によぎった笑


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このたわけが。働け!!

えー色々質問や指摘をしてくださってありがとうございます!

作者はギル様と言えば王の財宝と乖離剣・エアによる天地乖離す開闢の星のブッパ。それと天の鎖が強く頭に残っていました。

王の財宝
今作においては過去、未来、別次元に置いて集められた宝具やその他諸々が入っており、使用可能なのは今作のギル様ただ1人という設定にさせていただきます。

乖離剣・エア
頭おかしいドリルですが、色んなfateシリーズに出てきて何で無銘だから真名も無いはずやのに天地乖離す開闢の星が真名解放なん?など作者が原作を理解できていません。

しかも創造神エアの権能、つまり神代の能力で神霊に近いサーヴァントが持ってるやつやんか!!と気づいて、神性をカットしている今作のギル様は逆立ちしても使えません泣

そもそも威力頭おかしいしあれ、神造兵器やん。

ということで原作と全然違いますが王気を持つ者の魔力を消費して使用可能になる的なヴェルフの魔剣の上位互換として使うことがあれば使わせてみようかなと思います。

天の鎖
ギル様大好きズッ友チェーン。
ダンまちにおいて恩恵は人の器を数値化し、レベルが上がるごとに神の器に近づくとのことなのでレベルが高ければ高いほどギル様との相性が悪くなります。



長々と言い訳みたいな設定を書いてしまい、申し訳ありません。

これでも良いという方は是非ご覧ください。


アルフィアが横ですやすやと気持ち良さそうに寝ている。頭を撫でてやり、ゆっくりと起こさないようにベッドから出る。

 

安心して寝ているアルフィアはベルに似ているな。ベルがアルフィアに似ているのか。

 

さて、アルフィアはあまり体力のある方ではない。今日は家から出んだろう。我はタケミカヅチと作った刀もぼろぼろになったことだし噂のヘファイストスファミリアに行ってみるか。

 

 

 

 

同胞の雑種共を黙らせたのを民に見られていたみたいで商店街を通る度に声をかけられ、子供たちは目をキラキラさせて飛びついてくるようになった。

 

「ギル様!あのねあのね!僕昨日お母さんのお料理のお手伝いしたの!」

 

「ギル様!私は今日ね!パパを起こしてあげた!」

 

 

 

「ふははは。そうかそうか。」

 

 

1人ずつ目を合わせ、頭を撫でて名前を言い、褒めてやる。もちもちのほっぺをうっすらと赤く染めて嬉しそうに笑う子供達。

 

やはり子は宝よ。これからこの子たちが何を成すのか。それを見守るのが我の王としての、人生の先達としての責務よのぉ。

 

 

明るい未来を想像して笑顔になるギルは色んな人に挨拶をされながらもバベルについた。

 

ヘファイストスファミリアのテナントについて飾られている剣や槍などの武具を見ていく。

 

 

ーーーなんだこのなまくらは。これに三千万ヴァリスだと?

 

 

そうポツリと呟いてしまった。

 

 

 

ガッと肩を掴まれた瞬間にその手を掴み返して地面に叩きつけた。

 

 

 

ぐぅっ!!と苦しそうな息を吐き、睨みつけてくる女がいた。

 

 

「エルフに何がわかる!!手前の剣がなまくらだと!?」

 

 

眼帯をして肌が黒い。アマゾネスか?いや違うな。ハーフドワーフか。

 

 

そうこうしていると主神が来たようで執務室に連れて行かれる。

 

 

「なるほどね。しかし椿。ムカつくのは分かるけれどエルフに触りに行くなんてそうされても仕方ないわよ?」

 

 

ムスっとしている椿とやらは放っておいて訂正すべきことを伝えておく。

 

「ヘファイストス。別に我は触られたからといって拒絶などせん。ただそこの雑種からは敵意を感じたので叩き伏せただけだ。

 

我は王。王とは煌びやかなものと思う民も多いが、死に誰よりも近い。だが我は英雄王。このオラリオにいる雑種共などどうとでもできる。」

 

 

 

その喋り方と内容を聞いてすぐに気づく。

 

 

 

ーーーこの子。いやこのハイエルフは最近噂になっていた下界の王。ギルガメッシュね。なるほど。なまくらと言ったのはそういうことか。

 

 

 

「……ねぇギルガメッシュよね?貴方にはとんでもない魔法があると聞いているのだけれど……。」

 

指をパチンと鳴らすと波紋から剣先、穂先が出てくる。その光景をみて固まる椿とヘファイストス。だがヘファイストスは目を細めて出てくる武器を見ていた。

 

 

「これが普段射出している我の宝よ。これと見比べればそこの雑種の剣などなまくらも良いところだ。」

 

ポイッと渡すと椿はワナワナと震えていた。ヘファイストスは椿の気持ちがわかるのか苦い顔をしている。

 

 

ばっと顔を上げた椿はギルの元へ一直線。

 

そして極東の奥義、土下座を敢行する。

 

「先程は本当に申し訳なかった!!確かにこの剣からすれば手前の剣などなまくらも同然!!だが手前は手前の鍛治に誇りを持っている!!

 

どうかこの剣を貸してほしい!!この剣を越える物を作りたい!」

 

 

また始まったと言わんばかりにヘファイストスは頭を振る。

 

 

「ほう。面白いことを言うな雑種。我が宝物庫の宝を貸せだと?王の持ち物を借りようなど不敬ではないか?」

 

 

脚を組んで気品全開で煽り散らかす。しかし椿は土下座をしたまま頭も上げず動かない。

 

「ふははは。良い良い。貴様はそこいらの雑種とは違うことを認めよう。だが足りんな。ふむ。ちょうど良い。

 

この刀は我と武神タケミカヅチが共に作ったものだ。素人同然の出来だが愛用している。これをより美しく、強く打ち直せ。

 

結果次第で1つ我が宝を貸してやろう。」

 

椿は真剣に刀を隅々までみて感嘆の息を吐く。

 

「これが鍛治のアビリティを持っていない、え、と、王様が作ったとは思えんぞ。……思えませんぞ?」

 

 

「普段通りの喋り方で良い。我のことは好きに呼べ。我には宝具が、見本とも呼べる武器が大量にあるからなぁ。」

 

ニヤニヤしながら煽る煽る。ヘファイストスは椿のあんまりな敬語にガックリと肩を落としていた。

 

それからすぐに椿は走って出て行く。ヘファイストス曰く刀の打ち直しと同等以上のものを作るために出て行って今日は帰ってこないとのことだ。

 

ヘファイストスも鍛治神。やはり宝物庫の武器は気になるようでソワソワしているので神殺しの槍。ロンギヌスの槍を出してやる。

 

 

「っっっ!!これ、ど、どこで!?私達すら消滅させる武器じゃない!」

 

 

「そこの商店街の果物屋のキヌタさんが代々受け継いでいたらしくてな。先程我にくれたのだ。」

 

「嘘でしょう!?なんでそんなところにあるのよ!!」

 

「嘘だ。落ち着け。神は嘘だと分かるはずだろう。我の宝物庫には過去、未来、そして全ての次元の宝が入っておる。我しか使えんがな。」

 

 

その言葉が嘘では無いと分かって頭を抱えてしまうヘファイストス。

 

 

 

ーーーふはは。この鍛治神は中々に面白い。椿とやらも雑種ではない。己の仕事に誇りを持ってやっていた。

 

ここは当たりだな。

 

 

そこに誰かが入ってくる。

 

 

「ヘファイストス〜。誰かお客さんかい?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………紐の神か?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「違うよっ!?!?しかも嘘じゃないっ!?ボクはヘスティア!炉の神さっ!聖火や孤児の保護者って面もあるけどねぇ。」

 

 

 

 

ーーーちょっと待て。それが本当なら、いや、本当なんだろう。我のプロミネンス・ウェスタは聖火に近い。そして孤児の保護者だと?

 

ヘスティアが我の唯一認める女神だったか。

 

 

 

 

「我は下界の王。英雄の中の王でもあり、英雄王のギルガメッシュ・リヨス・アールヴだ。ちょうど良かった。主神を探してはいないがいたら良いなくらいには思っていたのだ。

 

ヘスティア。我らの主神になれ。」

 

 

 

 

ヘスティアは固まっていた。天界ではグータラして下界にみんな降りたから僕も降りてみよっとと降りて神友のヘファイストスのところに厄介になってグータラしていたら、王がボクの眷族に!?

 

 

「……え?いいの?ギルガメッシュ?この子、本当にグータラ神よ?そりゃこのオラリオでの神格は誰よりも高いし、天界だとあのヘラすらいい子って言うくらいだったんだけど……。

 

でも、グータラよ?」

 

 

「ちょっ!!待って待ってヘファイストス!!せっかく探さなくてもボクの眷族になってくれそうな子が「ちなみにだが我らの家には住まわせん。我と我の至高の宝である伴侶の2人で住むからな。

 

それと我らの稼ぎは税金に回して必要最低限の金額しか渡さん。嗜好品が欲しいのならば働け。」……う、うう!!わかったよ!!」

 

 

泣きそうになっているヘスティアを肩に担いでヘファイストスに挨拶して帰っていった。

 

 

ーーーあの子大丈夫かしら。噂が正しいとギルガメッシュの伴侶ってあのアルフィアよね??

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーこんなの聞いてないよ。なんで最初の眷族がレベル4になれる下界の王で元ゼウスファミリア。ボクでも知ってるけどオラリオで1番レベル高いのはロキのとこのハイエルフ君とフレイヤのとこの3人だったかな?

その4人のレベル7だよね!?

 

なんで元ヘラファミリアでレベル8がボクの眷族なんだい!?

 

 

それにギル君のステイタス……。これってボクが恩恵を与えたから変化したのかな??

 

【プロミネンス・ウェスタ】

 

詠唱

我が民は病無し 怪我無し 呪い無し。全てを守ろう。全てを癒そう。我の原初なる炉の神に誓いし聖火。我が名はギルガメッシュ

 

炎属性浄化治癒魔法。

全ての病、怪我、呪いを焼き尽くす聖火。

女神ヘスティアの祝福により任意的に範囲指定可能。

 

詠唱破棄時効果減少。死者には効果無し。

 

 

ふむ。やはり女神ヘスティアとの相性は抜群だったな。ほらアルフィア。膨れるな。可愛いだけだぞ。

 

 

こちらもか。

スキルが消えている。まるで燃え尽きたように。そして新しいスキルか。

 

【家族一途】

家族に対する愛情の深さにより効果の増減。

愛情がある限り限界がなくなる。

 

 

 

ーーーふははは。可愛い奴よな。あの時ベルに会わせて本当に良かったぞ。

 

 

ヘスティアを追い出し、買い取った教会の地下部屋に案内する。新しい眷族を増やしても良いが我らのことは言うなと伝える。

 

恐らく新人くらいしか入らないだろう。新人と我らでは文字通りレベルが違いすぎるので意味がない。

 

ヘスティアもそれは分かっていたのか頷き、明日ギルドに登録をしに行く約束をして別れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーなんだこの醜い豚は。

 

 

 

 

 

 

ーーーギ、ギルガメッシュさまっ………




ストック切れちゃった。

金土日くらいしか書けないから更新遅くなります。

とりあえず一日一話は続けていきます!


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どういうことだ。我聞いてない!!

皆様読むだけでなく、評価、感想まで書いてくださってありがとうございます。

評価コメントでも面白かったと書いてくださる方がいて作者の励みになっております。

評価コメントの方もちゃんと目を通すようにしますので今後ともよろしくお願いします。

……評価コメント見れるの知らんかった(小声


ーーーギルドも女神ヘスティアもしらん。私はギルと、その、もう少し一緒にいたいだけだ。

 

 

アルフィアが朝から可愛くてベッドから出れん。最近気づいたがアルフィアは外ではあまり喋らんが家では甘えてくることが多い。

 

頭を撫でると未だにそっと抱きついてくるのが我のお気に入りである。

 

 

 

ヘスティアが家に怒りながら突撃してくるまでベッドから出なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まったく!!天界の三大処女神と呼ばれたボクの眷族なのに朝からあ、あんなことしてるなんて!!」

 

 

「何をわけのわからんことを。夫婦なのだから当たり前であろう。ヘスティアの眷族になってから恋愛禁止!と言われたのならまだしも、なる前から夫婦なのだ。

 

それで眷族にしたのは貴様であろう?それは黙認したと言うのだ。ならばいくら主神でもそこに口を出すのは王たる我が許容せん。」

 

 

ぐぬぬぬぬ〜!!とツインテールをうにょんうにょんさせながら唸るヘスティア。それを無視して手を繋いでいるアルフィアがいた。

 

3人で歩いているとやはり民から声をかけられる。子には我の主神様よ。とヘスティアを紹介してやると嬉しそうにヘスティアに抱きつきに行った。

 

さすが孤児を守護する女神。子供たちに囲まれても優しく親のように接している。

 

 

「……ヘスティアは尊敬すべき女神だと思う。あのヘラのこともいい子と言うくらいだからな。

 

あいつには絶対言わんが、新しい主神がヘスティアで良かった。」

 

 

アルフィアがボソリと呟き、閉じていた目を開いて子供たちとヘスティアを見ていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

子らが満足したのを見てギルドに向かい、受付嬢に声をかける。エルフ?いや、ハーフエルフか。何処かで見た顔だが誰だ?

 

 

「雑種。冒険者登録とファミリア登録だ。訳あって公にしたくないこともあるから個室を用意しろ。」

 

 

「はい??……!!!!ぎ、ギルガメッシュ様……!わかりました。すぐに用意させて頂きます。」

 

 

 

ほう。我と分かりながらもすぐに自らの職務に忠実に動いたか。オラリオの雑種にもマシなやつがいるでは無いか。

 

 

 

個室に通されて飲み物を出される。ソワソワしている受付嬢に名を聞く。

エイナ・チュールか。良き名ではないか。

 

 

「あ、あの、ギルガメッシュ様。母がとても世話になったとお聞きしておりまして。私が産まれたのもギルガメッシュ様のおかげだと。

 

母に代わってお礼を述べさせてくださいっ!」

 

 

 

ギルガメッシュは普通に生活をしてるつもりだが、見聞を広げる為に民との交流を優先させたり、エルフの住むさまざまな森を歩き、導いているので向こうが勝手に恩を感じていることが多い。

 

その為、ふとした時に感謝されることがとても多い。

 

 

「私の母はアイナ・チュールと申します。」

 

「何?アイナ?あの姉上の従者だったアイナか!?」

 

 

ガタッと椅子から立ち上がるギルにビクッとする他の3人。

 

 

「アイナは結婚して子まで授かっていたのか!?ええい!我になんの連絡もせぬとは!いい歳して未だに我を揶揄って遊んでおるのかアイツは!!」

 

 

 

昔からそうだ。アイナは我が物心ついた時からそこにいた。姉上と同じく王として産まれた我を敬うように扱わず、弟のように扱ってくれていた。

 

それはそれで不敬だがなっ!!あのアイナが子を授かっていたとは…。

 

 

 

「そうか。エイナ。アイナは今何をしている?」

 

 

そっと目を伏せて病気になって家で寝ていることを聞く。

 

 

「何だと?ちっ。世話のやけるやつよ。エイナ。仕事終わりに案内せよ。我がアイナの病を燃やし尽くしてくれる。

 

我の民には病無しだ。アルフィアの不治の病すら燃やし尽くしたのだから問題あるまい。」

 

「ほ、本当ですか!?ありがとうございます!ありがとうこざ「バタンっ!!」……います。ぎ、ギルド長?」

 

 

何やら豚みたいなのが入って来た。

 

「チュール!!何故受付におらん!どこの冒険者かしらんが………え?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「こっちを見るな。雑音が。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「せ、せ、静寂ぅぅぅぅ!!へへへヘラファミリアがなんでオラリオに!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この豚、まさか、まさかとは思うが同胞か!?この恥晒しめが……

しかしやかましいなこいつ。

 

 

 

 

「おい。豚。口を開くな。これが同胞とはな。エイナ。この豚に何かされたりわけのわからんことを囀られたら我に言え。

 

王としてこの恥晒しを処刑してやる。まぁ手を下すのはオラリオ中の同胞だがな。豚如きに王自ら手を下すことはない。」

 

 

 

ギルの言葉に真っ赤になって睨もうとしたが、誰が言葉を発したのか気づいたらしく赤から青に顔色を変える。

 

 

「ぎ、ギルガメッシュ様……」

 

 

 

 

「頭が高い。」

 

 

 

 

その一言ですぐに平伏するロイマン・マルディール。

 

 

 

 

ちょうど良い。アイナに会って恨み言の一つや二つ言いたいからな。エイナはこの豚をギルド長と言っておったな。

 

 

 

 

「豚。我とアルフィアを冒険者登録せよ。それとファミリアは新興ファミリアのヘスティアファミリアだ。

 

主神はヘスティア。我のレベルは4。アルフィアのレベルは8だ。

 

 

団長のところは空けておけ。何かあればエイナを通して我に伝えよ。

 

 

そして我とアルフィアが所属していることは伏せておけ。」

 

 

 

「は、はいっ!」

 

 

 

「ほう?ただの無能な豚かと思ったが即答するとは仕事はできるようだな。良い良い。先程までの不敬はこの仕事で不問にしてやろう。

 

それとエイナに用がある。連れて行くから穴埋めを貴様がしろ。」

 

 

 

呆然とするロイマン。パクパクと口を開閉している。

発言の許可をしてやる。

 

「不敬ながらご質問があります…。な、何故不問に……。わ、私が、その、豪遊し、好きに生きてこのような体型になり、醜いのはわかります。

 

ですが、不問にすると言うのは……」

 

 

 

「戯けめ。豪遊し、好きに生きていけるのは貴様が今までギルドに対して人生を差し出した正当な対価であろう。

 

我は王。外見が醜かろうと、なんであろうと貴様も我が民であることは違いない。行き過ぎは許さぬが己の責務を全うする民を負の側面だけで処罰はせん。

 

貴様は今の地位に登るまでに相応の仕事をした筈だ。責務を全うしている限り我が許す。

 

豪遊?結構。放蕩生活?結構。好きにせよ。」

 

 

 

 

ヘスティアは初めてできた眷族がとても誇らしかった。最初は自分もうわぁと思った。でもギル君は違った。

 

そこだけで終わらせないで良い部分を見つけ、肯定した。

 

普通の下界の子は負の側面を見て拒否する。しかし王は違う。民を見捨てないで導いた。

 

 

 

 

「貴様への道は示した。それからどうするかは貴様次第だ。失敗しても良い。間違いを犯してもよい。だが自分の責務だけは果たせ。」

 

 

 

 

ロイマン・マルディールは一世紀以上ギルドに尽くしてきた。冒険者という人種は傲慢でギルドの職員を見下す。

 

初めは死なせない為に必死だった。

 

ダンジョンの情報も冒険者の情報も何もかも精査して1人でも多くの冒険者が生きて帰ってこれるようにした。

 

しかしその思いが通じることはなく、変わることもなく、ただ時間だけが過ぎて割り切ることにした。

 

性格も曲がり、傲岸不遜になった自覚もあった。

 

 

 

その半生とも呼べる時間を王が認めてくれた。こんなに嬉しいことはない。

 

静かに立ち上がって頭を丁寧に下げてエイナを見る。

 

 

 

「私はギルガメッシュ様のおっしゃられた仕事を、私の責務を果たす。チュール。貴様も今すべき責務を果たせ。

 

ギルガメッシュ様。数々の不敬、申し訳ありませんでした。今から仕事をしますのですみませんが失礼します。」

 

 

 

 

手を振ってやると頭をもう一度だけ下げて出ていった。扉の外からは、ロイマンの指示が良く聞こえてくる。

 

 

 

「あの豚まで民か。ギルのおかげであの豚が出て行く時、こいつは誰だと思ったぞ。」

 

 

アルフィアの一言で全員が笑ってしまう。エイナに帰宅準備をさせて一緒にアイナの元に向かう。

 

 

 

 

 

 

 

「ただいま!お母さん!体調はどう??」

 

 

 

 

「あらエイナ?ギルドの仕事は?ん?お客様かし、ら……。え?ギル様!?ギル様よね?大きくなっちゃってー!!元気にしてた??」

 

 

 

 

寝ていたアイナがとても嬉しそうに抱きついてきて頬をつんつんしてくる。ヘスティアは嘘だろ!?となり、エイナは固まった後に震え始め、アルフィアはアイナを引き剥がして我の前に立つ。

 

 

 

「あら?」

 

 

 

「私の旦那に触るな雑音。病気の前に天界に送るぞ。」

 

 

 

 

アルフィアが殺気だつがアイナは目を今まで以上にキラキラさせる。

 

 

 

「あらあらあら!!ギル様のお嫁さん!?良かったわ!ギル様は昔っから大人びてて相手なんか居ないんじゃないかって心配してたんだから!

 

アルフィアちゃんね!ほらほら!お話しましょ!」

 

 

自由奔放。天真爛漫。これがリヴェリアの親友になれ、ギルが唯一強く出られない相手である。

 

 

 

ギル様の淹れた紅茶が飲みたいわ!と言われてもう何を言っても無駄だと気づいた面々は黙って紅茶を淹れるギルを同情の目で見てしまう。

 

 

アルフィアはアイナに捕まってたじたじである。普段なら即福音だが真っ直ぐに純粋に思ったことを言われる。それは溺愛しているベルと同じ為何もできない。

 

ヘスティアは母がとんでもないことをしているともう泣きそうになっているエイナを慰めていた。

 

 

 

 

「積もる話はあるが…。アイナ。病気とはなんだ。」

 

 

 

「……知っちゃってたかぁ。単純に森の外の空気が合わないみたいでね、体調崩し易くなってるみたいなの。」

 

 

 

とりあえずものは試しだと魔法を撃つとアイナの顔色は血色が良くなった。だが、直感がこのままだと再発すると言っている。

 

 

「うーん。あの炎、完全にボクのウェスタだよね。あ、そうだ。アイナ君は多分だけど身体の中が弱いんじゃないかい?

 

ボクの恩恵とギル君のウェスタは相性がいいから恩恵あげようか??」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「それだ!!」」」

 

 

 

 

 

 

 

ヘスティアが恩恵を刻み、直感もアイナは大丈夫だと告げている。

 

これで私も冒険者ね!と言うアイナに拳骨を食らわせてから今まであったことを互いにゆっくりと話していく。

 

アイナは元気になったしリヴェリアと遊びに行くわ!と大はしゃぎしていたがそこはもう姉上に任せよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーダンジョンに潜るのは久しぶりだ。行くぞギル。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーふははは!!何も気にせずに王の財宝を射出できるのは気持ちいいな!!

 

 

 




ロイマンって一世紀以上もギルドいるんだって。

そりゃ冒険者と色々あっただろうしあんな性格にもなるよね。

知らんけど笑


日曜日。天気が良い中で部屋でエアコンかけてグータラしながら小説書いてストックします。

明日から仕事行きたくねぇ


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ふははは!土産話ができたぞ!

やっとダンジョンに入れた


でもアルフィアとザルドとタイマンはれるのに最初の方いる?


ーーーふははは!今日も元気であるな!

 

 

 

 

毎朝商店街の子供達は自分達の大好きな王様が来るのを待ってそわそわしている。

 

 

ギル様の声だ!!

 

 

 

ギル様のお声が響き渡ると子供達は一斉に駆け出す。そして飛びついていく。最初はハイエルフ様で本当の王様だということを知って、子供達の行動を不快に思わないかとビクビクしていた。

 

 

しかしギルガメッシュ様は子は宝だと。子を大切にし、その子が成長してまた子を成す。下界の子ども全て、始まりあれば終わりがある。だからこそ願いを繋ぐのだ。我が子がより良くなる為に導き、託すのだ。

 

 

そう説いてくれた。本当にその通りだと思うし、そうありたいとも思う。しかしギルガメッシュ様はこうするのだと王様自ら、私たちのような年寄りまで導いてくれる。

 

 

不敬かと思ったが、一度言ってみたことがある。私達のような老い先短いヒューマンではなく、まだまだ若い子の相手をしてあげてほしいと。

 

 

 

 

 

ーーー戯けめ。貴様ら先達がこの下界を作ったのだ。我は王よ。ならば我がこの下界に生を受けるまでよく発展させたと褒美を取らせなければならん。

 

ふははは!老い先短い?ならば天界への餞別よ。我と話し、我が認めたことを心に秘めて逝くが良い。

 

 

 

 

 

その時集まってた商店街のみんなは泣いていたねぇ。私も泣いちゃったけどね。あ、こらぁ!!ギルガメッシュ様を叩くなんてどういう事だい!!

 

あんたら悪ガキは私らが厳しく教えなきゃならないようだね!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーふははは!見たかアルフィア!ルーダとウールの顔を!!ふははは!!なんという顔をしておるのだ!

あやつらはこの王の頬を引っ張ったりペシペシと叩いておったぞ。大物になるだろうな。

 

 

 

 

 

アルフィアはちびっ子女の子達に大人気だ。おねぇちゃんみたいな美人さんになるのっ!!そう言われてよく抱きつかれている。

 

 

 

 

ーーーああ。そうだな。サリアにお揃いの花をもらった。私の髪に良く似合うとな。ギル。子供が欲しい。ベル不足だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アルフィア。ベルにそんな成分はない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

子供達と別れ、商店街の民が色々食材をくれるので教会の場所を教え、別々に住んでいる事を伝えてヘスティアに渡すようにした。

 

ここの住民も子供もヘスティアのことが大好きなので喜んで持って行くと言い、子供達と共に向かって行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アルフィア。ダンジョンで気をつけることは?」

 

 

 

「物量と魔石の回収だ。物量は私とギルは全く問題ない。が、魔石の回収はめんどくさい。あれをギルドに持っていけば金になる。ドロップアイテムも同じだ。

 

小さいのは壊しても良い。モンスターには魔石を食べ、強化された強化種がたまにいる。まぁ雑音だ。」

 

 

 

 

ーーーなるほどな。さて行くか。

 

 

 

 

 

大きな階段を下へ降りていく。するとほんのりとした明るさの通路に出た。ここがダンジョン内部か。

 

 

 

 

椿が持って来た刀は想像以上の出来だった。なので一番ランクの低い剣を貸してやった。大喜びで帰る椿をみてアルフィアは孤児院のライと同レベルだと呟き、ため息を吐いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

刀を持って、出てきたゴブリンを、コボルトを斬り倒していく。身体は消え、コロンと魔石だけ残る。

 

 

 

「どういう原理なのだ。まぁ良い。アルフィア。どこまで行く?我はダンジョンの素人だ。今回はアルフィアの指示に従おう。」

 

 

 

「…上層での経験値などカケラにもならん。しかしギルの言うように初日で何か急いでいるわけでもない。まずは18階層にするか。」

 

 

10階層辺りからめんどくさくなって互いに魔法を使って殲滅しながら歩いていく。音がモンスターを吹き飛ばし、さまざまな武器がダンジョンを抉りながらモンスターを爆散させる。

 

 

 

「久しぶりに何も考えずに王の財宝を一斉射出したな。固有結界も使わんからマインドが楽だな。」

 

 

「私も病が治癒して初めてのダンジョンだがサタナス・ヴェーリオンの効果範囲と威力が昔とは桁違いに上がっている。

 

雑音が良く消える。」

 

 

 

各自、必要な事を確認しながら歩いていく。アルフィアは少し躊躇いつつも手を握ってくる。

 

 

「王としたことがこんな風情のカケラも無い所でデートをしてしまうとはな。許せアルフィア。次はお洒落なカフェとやらに誘おう。」

 

 

「ふふ。ギルが横に居ればそれで良い。この私がここまで幸せになれるとは思っていなかった。

 

……メーテリアも、ヘラ、ゼウスファミリアのあいつらも天界で驚いているだろうな。」

 

 

「ふん。我が認め、伴侶に選んだのだ。幸せになるのは当たり前だ。」

 

 

 

そんな話をしていちゃついているが周りは轟音が鳴ってモンスターは消し炭になっている。なんとも恐ろしい夫婦である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーゴァァァァァァ!!!

 

 

 

 

ほう。これが階層主とやらか?……よし。アルフィア。手を抜いて闘い、最後に我の天の鎖で身動きが取れないようにしてアルフィアが決めよ。

 

 

なんでそんな面倒なことを?決まっているだろう。子ども達の土産話だ。何故アルフィアが最後に決めるか?

 

サリアから貰った花を傷つけず、大切にする為に強い魔法を撃つ為に魔力を溜めていた。そして英雄王が姫を守り抜き共に巨大なモンスターを倒す。

 

 

子供達が好きそうであろう?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーやるぞギル。姫は私だ。ふふ。ベルに書く手紙は追加だな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーちょい待て。あれへへヘヘラファミリアの静寂じゃねぇか!!逃げろお前らぁ!!巻き込まれ「祝福の禍根、生誕の呪い、半身喰らいし我が身の原罪

禊はなく。浄化はなく。救いはなく。鳴り響く天の音色こそ私の罪

神々の喇叭、精霊の竪琴、光の旋律、すなわち罪禍の烙印

箱庭に愛されし我が運命よ砕け散れ。私は貴様を憎んでいる!

代償はここに。罪の証をもって万物を滅す

哭け、聖鐘楼。

 

 

 

ジェノス・アンジェラス。」

 

 

 

 

 

 

 

「ゴァァァァァァ!?ぁぁぁぁ(んぎゃぁぁぁぁぁぁ!!!)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

綺麗な鐘の音だ。しかし下品な悲鳴が聞こえたな。18階層の入口付近か?

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふふ。姫は英雄王に守られてモンスター消し飛ばしたぞ。ベル。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーざっけんな!!んな理由であんな馬鹿げた魔法使ってんじゃ…………いえ、なんでもありません。はい。え?ハイエルフ??じ、じゃあ九魔姫の?あ、弟様で王様でしたか。

 

 

すみませんすみません。このリヴィラの街はならず者ばかりでして。はい。え?構わない?へ、へい。案内しやす。

 

 

 

 

 

 

「ほう。なるほどな。上手くダンジョンを使っているな。金額などここに店を構えておる者が決めるのだ。我が口を挟む道理がない。」

 

 

 

リヴィラの冒険者。頭取とも言えるボールスは寛容すぎるギルにたじたじである。他の住民も唖然としている。

 

 

「ここは貴様らが作り、発展させた街だろう。ならば貴様らが法よ。だが無法は許さん。貴様らとて我の民。地上の腑抜けた冒険者共よりいくらもマシだ。

 

よって高い金額設定で良い。だが自分達で決めた金額の範囲内でやれ。ボールス。貴様がこの街の頭ならもっと上手く冒険者を使え。」

 

 

 

「へ、へい!!でもギル様。俺ァ自慢じゃねえですが馬鹿ですよ。」

 

 

 

「ふん。貴様らは阿呆だ。貴様らが冒険者で必死でこの街に来た、あるいはここを拠点に下に潜るとき何が一番欲しいか考えよ。」

 

 

 

リヴィラの住民は全員集まってあーでもないこーでもないと話し合う。アルフィアと紅茶を飲んでいると全員がやってきた。

 

 

「ギル様!出やした!まずは回復薬系ですね。あとはゆっくり寝れる宿。それにやっぱり食事です。」

 

 

「ならばこうしろ。まずは回復薬。回復薬と高等回復薬を医療系ファミリアに大量に注文しろ。

 

金が無ければ我が貸してやる。それをボールスの店に置いてしまえ。おい、ボールス。上で買うと一本幾らだ?」

 

 

 

 

それから金額を魔石の金額と平均させて約2倍で売らせることにした。そして簡易治療院のようなものを作らせてそこに酷いやつは寝かせる。

 

その時使ったベッド代も請求。

 

証文を書かせるようにして、必ず取り立てれるようにする。

 

 

 

「まぁ色々あるがこんなものだな。何故冒険者を助ける?理由は簡単だ。貴様ら。今までの貴様らのやっていたことでまた来ようとなるか?

 

少し貴様らの設定していた金額より下げたのは、ギル様に言われて俺は上に行くのを諦めてたことに気づいた。

 

だから頑張ってるお前らには負けて欲しくないとかなんとか言って表に貼ってある看板より価格を下げて先程の価格を言えばいい。」

 

 

 

 

ーーーうおおおぉぉぉぉぉぉぉ!!!やべぇ!正直ギル様怖えしえげつねぇけどすげぇぇぇぇ!!!

 

 

 

 

「ついでだ。我がここに来た時は鍛錬してやる。」

 

 

 

「……え?いいんですかい?いや、ギル様が強いのはゴライアス戦で分かっているんですが俺ら他派閥ですぜ?」

 

 

 

「はぁ。この戯け共め。派閥なんぞ知らん。下界の子は全て我の民。我は民を守り、導かねばならん。その為に貴様らも引き上げてやる。

 

その代わりだ。本当に死にそうなやつ、冒険者としてやばいと思った時は助けてやれ。それさえ出来ていれば貴様らもまた、我の民よ」

 

 

 

全員が良い返事をして武器を取りに行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーあのいけすかねぇロキファミリアのようなやつ。そう思っていたことを心から謝りてぇ。

 

俺らは冒険者として上を向くのをやめた、目を逸らした、安定した生活をしたいなんて色んな思いがあって停滞してた。

 

だけどギル様にやってることを認めてもらえた。あのお方と話をしていると何故か安心してやる気が出てきやがる。

 

おう!てめぇら!商売は信用が命だ!信用勝ち取れ!やべぇやつはこっちに連れてこい!

 

 

 

ったくよ。命あっての冒険だろうが。粗末に扱うんじゃねぇよ。テメェ等みてーなガキでも死んじまうと悲しむ人がいる。

 

俺らの王様は悲しむぜ?お前いくつだ?14?金はいらねぇ。だからもう一回助かった命をどう使うのか考えろ。

 

 

……途中まで送りをつけてやる。じゃあな。

 

 

 

 

あっっっっぶねぇ!!15以下はガキもガキだ。王様は子供大好きだからな。本当に感謝してもしたりねぇお人だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

でも二度と最低最悪の最恐かつ最凶夫婦と模擬戦したくねぇ。レベル上がったよ?でもその前に天界に逝っちまうとこだったんだよ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

地上に戻り、ギルドで魔石を交換する。アルフィアはソワソワしながら子供達のとこにいく。

 

「……サリア。ギルの話を聞け。すごい冒険をしたぞ。」

 

 

子供らは全員聞きたいと家から出てきた。そして少し誇張しながら面白おかしく話を聞かせる。

 

 

目をキラキラして刀を使う真似をしたりお姫様!お姫様だ!とくふふくふふと嬉しそうに笑うサリア。

 

微笑むアルフィアは口を開く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーー私はな。この身が救われた瞬間気づいたよ。ギルに会う為に産まれてきて色々な冒険を超えてきたんだとな。

 

 

 

 

 




リヴィラの街ゲットォォォォ!!


ゲットした理由はベルの冒険を少しでも安全にする為です。


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こ、これは!!

すみません昨日予約投稿したと思っていましたができてませんでした。


皆様本当に感想・評価ありがとうございます。


ダンジョンに潜り始め、18階層のボールス達の鍛錬(アルフィア無双)を繰り返して、商売をする為に地上での仕入れについてや、やるべき事を明確にさせる。

 

そうすることでボールス達にも変化ができたのか、リヴィラの街の人に助けてもらった。ボールスさんは救助の達人だ!など地上でも噂を耳にすることが増えた。

 

 

ちなみにギル様、姐さん!と呼ばれるようになり、アルフィアはとんでも無く嫌がっていた。

甥っ子に叔母さんと呼ばれるのが嫌で会うことを躊躇うやつだ。

 

自分より歳上でむさくるしいオッさんに姐さんと言われるのも嫌なのだろう。だが何度ゴスペってもある種の馬鹿ばかりのリヴィラの冒険者は、次会うと姐さんに呼び方が戻る。

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーアルフィア。我は商店街に行くが貴様はどうする?

 

 

 

 

 

ーーーすまないギル。私は今日マリアにお茶をしようと誘われている。それにマリアには聞きたい事もある。

 

 

 

 

 

珍しく予定のあるアルフィアと別れ、商店街で子供達と遊び、肩車をして色々な話をしながら歩いていると頭からすっぽりとフードを被った人物が歩いてきて我を見て止まる。

 

 

 

 

 

 

「……ギル?」

 

 

 

 

「ああ。姉上か。久しいな。ロキファミリア以来か。」

 

 

 

フードを取り、翡翠色の髪があらわになる。うむ。姉上と我はなんというか全然似てないな!!

 

 

子供達が誰ー?とぺちぺち頭を叩いてくる。

 

 

「ふははは!ルーダよ。この前もそれをして怒られたであろう?我は構わんが、怒られるということはいけない事をしているのだ。

 

それを忘れてはならんぞ?さてそこのハイエルフは我の姉よ。

 

リヴェリア・リヨス・アールヴだ。二つ名は確か、九魔姫だったか?」

 

 

 

ーーーおおー!!おねぇちゃん!!すっごく綺麗だね!ギル様!

 

 

ーーーえー綺麗だけどアルフィアお姉ちゃんの方が綺麗だよー!

 

 

きゃっきゃとはしゃぐ子供達を宥め、あいさつをさせる。

 

 

 

 

「あ、ああ。こんにちは。ギルの姉のリヴェリアだ。みんなはギルと仲が良いのだな。」

 

 

 

子供達は満面の笑みと共にギル様大好き!アルフィアお姉ちゃんも大好きなんだよ!と必死に言う。

姉上もそれを聞いて微笑む。

 

 

 

子供達を家に送って、ずっといる姉上に顔を向ける。

 

 

「さて。我に何か用か?」

 

 

姉上は難しい顔をしながら頷き、喫茶店に入ろうと提案してくる。

エルフが経営しているらしい喫茶店に入ると畏まられるので気にするなと伝えて紅茶を頼む。

 

 

 

「……ギル。色々言いたい事、聞きたいことがあるんだが時間は大丈夫か?」

 

 

「構わん。アルフィアも今日は予定があるからな。」

 

 

 

姉上はアルフィアの名前を出すと少し苦い顔をする。

ゆっくりと紅茶を飲んで口を開く。

 

 

 

 

「……本当にアルフィアを伴侶とするのか?

市井での同胞達の暴走とそれに対するギルの対応は耳に入ってきた。故にギル本人から聞いておきたい。」

 

 

 

「うむ。我にとってアルフィアは伴侶たる人物であり、至高の宝よ。義理の息子、アルフィアの甥もいる。」

 

 

 

ーーーアルフィアの甥?まさかメーテリアの子か?まぁそれは良い。そうか…。私の義妹にアルフィアか…。

仲良くしている想像がまったくできんな。

 

 

 

「ギルは知らないと思うがアルフィアとはヘラファミリアの時から何度か争ったことがある。

確かにやつの実力は桁違いだ。ああ、勘違いしないでくれ。私個人、厳密に言えば姉としては歓迎するし祝福もしよう。

 

 

だがアルフィアと仲良くできる気はせん!」

 

 

 

 

「???別に姉上がアルフィアと仲良くする必要はなかろう?

アルフィアも姉上とは何度もやり合った仲だ。家族になるなら当然挨拶(手刀)も深くせねばなるまい。と言っていたぞ。」

 

 

 

 

ーーー何故そんなにアルフィアもギルも戦闘寄りの考えなのだ。だが奴と久しぶりにやり合うのも楽しみだな。

 

 

 

 

「それと別の話だがアイナの件だ。ありがとう。私の親友を助けてくれて。」

 

 

 

「馬鹿を言うな。アイナは我の民。ならば守護するのは我の責務。我は責務をこなしたにすぎん。

 

……今から王としてあるまじき事を言う。姉上だからこそ言える。」

 

 

 

 

 

そう言って紅茶を一口飲んでゆっくりと口を開く。

 

 

 

 

「元気すぎるアイナを導くのは無理だ。」

 

 

 

 

その言葉に思わずリヴェリアは笑いを堪えれず口から音を立てて笑ってしまう。

 

 

 

 

 

ーーーあのギルが!王の中の王と言い続け、その通りだと私も認めたギルが。アイナには勝てなかったか。

 

そういえばアイナもギルを弟のように扱っていたな。というかギルが泣かされたのアイナだけではないか?

 

 

「っっふふ。ギルは相変わらずアイナには弱いか。」

 

 

 

 

「笑い事ではないぞ。元気になったアイナが家族とゆっくり過ごしたあとどうすると思っている。

 

 

ロキファミリアに突撃して姉上を振り回すのは想像に難くないであろう。これで私も冒険者と言っておったぞ。」

 

 

 

 

「…………え?」

 

 

 

リヴェリアは己の背中に冷たい汗が流れるのを自覚する。あの親友はとても良い友人だが、行動力という一点だけは尋常ではない。

 

ハイエルフの己を森から出すために逃げ出す算段をつけ、当時すでにエルフの頂点に立っていたと言っても過言ではないギルを脅すという暴挙に出た。

 

 

 

 

 

 

ーーーギ〜ルさまぁ?お姉ちゃんのこと大切ですよね?それに私もいるんですよ?

追手が来ないようにしてほしいなー。

 

 

 

ーーー何故我が手伝わねばならん。別に我は反対はせん。だが事を成すならば己の手ですべきであろう。

 

 

 

 

ーーーそれはそうなんですけどねー。おっと泣いてるギル様の写真が落ちちゃいました。

 

 

 

ーーーなぜそんなものを持っておる!!!!寄越せ!!!

 

 

 

 

ーーーあ〜あ。追手が来たらこれいっぱいあるからこれで気を逸らさないとダメだなぁー。

 

 

 

 

 

あの時のギルの顔は極東における鬼のようだったな。そしてアイナは英雄譚に出てくる魔女のようだった。

 

 

 

 

ギルにここまでしたアイナが恩恵を得てロキファミリアに来る?

 

 

 

リヴェリアは遠くを見ているような目になり、何かを悟っていた。ギルも同じような目になり、ハイエルフ姉弟は完全に黄昏ていた。

 

 

それから少し近況を話して解散した。解散した後にギルはぶらぶらとオラリオを散策していると声をかけられた。

 

 

「あら。貴方は王様ね?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーこいつは……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふははは!!なんという素晴らしい野菜達だ!!さすがはデメテルファミリアよ。これが我が民の血となり肉となる。

 

良い仕事をしている。褒美だ!受け取れ!」

 

 

 

ドカッと大量のヴァリスの入った袋を王の財宝から出して机に放り投げる。

 

 

 

声をかけてきたのはデメテルファミリアの主神である女神デメテル。ヘスティアから聞いていた善神中の善神。

怒らせるととんでもないことになるらしいが普段はおっとりとしていて、とても良い神とのこと。

 

 

話をかけた理由は民(下界の子供達)の為に王自ら動き、そして守護をしているという噂を聞いたこと。

孤児院に多額の寄付をし、綺麗に改装された孤児院を狙った権力者をねじ伏せてオラリオから追い出した事を聞きたかった。

 

ホームへ招待し、話を聞きつつデメテル印の紅茶を淹れるとそれに興味を持って畑の見学もしたいと言われて許可を出した。

 

 

 

ハイエルフなのに半袖になって眷族と共に野菜の収穫を始めてしまった。眷族達はハイエルフという事でかなりビクビクしていたが、ギルガメッシュの人となりを知って今ではこれもどうぞ!と果実を薦めている。

 

 

 

「ほう!これはまた美味だな。良い良い。ペルセフォネ。これとこれとこれを使い、パフェを作ろうではないか。

 

デメテルファミリアの栄養満点パフェだ。それに野菜ジュースを作れ。子供達の中には野菜嫌いもいる。

 

だが甘みのあるジュースならば飲めるやもしれん。」

 

 

「はい!ギル様!前に考案したパフェも作りますので食べ比べしましょう。

 

野菜ジュースですか…。果実をジュースにしたことはあっても野菜をジュースにしたことは無かったですね。

 

あ、そうか!果実の甘味に野菜も混ぜちゃえば良いですね!」

 

 

「ふははは!それは良いな!よし。女神デメテル!厨房に行くぞ。貴様の野菜と果実だ。

 

ならば貴様も食さねばなるまい!」

 

 

 

大笑いしながら歩いて行くギルをみてデメテルはおっとりと微笑む。恩恵がありながら、非戦闘員の多いデメテルファミリア。

その眷族を見下す愚かな冒険者もそこそこ多い中、ギルガメッシュは自分の目で確認して、それを認める。

 

 

 

 

 

 

ーーー本当に王様ね。天界にいた時のあのすけべジジイにも見習ってほしいわね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーー見下す?馬鹿を言うな。民として、そしてデメテルファミリアとしての責務をしっかりと果たしている此奴らを見下す理由がどこにある。

 

今の我にはここまでの農業は決してできん。

 

ペルセフォネ。他のデメテルファミリアの眷族達に伝えよ。

 

 

 

誇れ。貴様らはダンジョンに潜って強くなる。ただそれだけを考え、漫然と過ごしている雑種。停滞してその場から動かぬ雑種共より遥かに優れている。

 

己の責務が何かを理解して、行動している。ひいてはこのオラリオ中の民の生活を支えているのだ。

 

 

農業しかしていない?裏方の仕事?ダンジョンに潜っていない?この英雄王が認めてやる。このファミリアの眷族はオラリオ、我が民にとって欠かせぬ程貴重な者達だ。

 

 

励め。これからも我は期待している。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーー私達は王様に認められたんだ!!他の冒険者なんか知らない!!さぁみんな!今日も頑張ってオラリオを、ギル様の大切なみんなを支えて行くよー!!

 

 

 

 

 

 

 

ーーーおうっ(はいっ)!!!!




日常回なんだよなぁ。

次何にしよかな。


今日の20時にもう一話出します!


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ベル・クラネル

本日二話目ですのでまだ読んでいない方は是非一話前もお読みください。


最近暑かったり雨が降ったりと寒暖差がそこそこございますので体調にだけはお気をつけください。

作者は完全にノドやられました。


ーーーお義母さん、お義父さんへ。

 

お義母さんとお義父さんがオラリオに行ってもう3年以上経ちましたね。

 

僕とザルド叔父さん、お祖父ちゃん、お祖母ちゃんはとっても元気です。でもお祖父ちゃんが時々、ゲッソリしてるのはなんでだろう?

 

ちょっと心配ですが、お祖母ちゃんが大丈夫って言ってるし大丈夫だと思います!

 

僕は毎日お兄ちゃんお義父さんとやっていた鍛錬をしています。

 

その後ザルド叔父さんと一緒に狩りに出かけたり、模擬戦をやってもらっています!

 

色々な武器を試したけど、僕はナイフや短剣の二刀流!二刀流が良いと思ってます!だって二刀流だよ!

 

 

 

 

 

 

ザルド叔父さんには一回も攻撃が当たりません。でもいつも強くなってるって言ってくれます!

 

 

 

お義母さんのお手紙は全部宝物だから箱に入れてとっています。いつもお手紙ありがとう!

 

お義父さんもいっぱいオラリオのものを送ってくれてありがとう!でも金ピカの鎧はいりません。ちょっと恥ずかしい!

 

 

僕ももうすぐオラリオに行くからね!叔父さんはお祖父ちゃんとお祖母ちゃんの為に残るんだって!

 

 

また会える日をとっても楽しみにしてます!

 

 

大好きだよ!2人共!またね!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーよし!今日も鍛錬だ!

 

 

 

 

 

朝の5時に起きて近くの山の山頂まで走って降りる。それを2往復して家の庭でナイフと短剣の二刀流でザルド叔父さんと昨日戦った時のことを思い出しながら武器を振るう。

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーほう?昨日の俺との模擬戦をなぞってるのか。この子は才能こそ無い。ぶっちゃけあの馬鹿サポーターの血だろう。

もしかしたらメーテリアかもしれんが、あの子は立つ事すらままならんかったからな。

 

しかし愚直に反芻して何度も繰り返し、地道な努力をひたすらできる素直な子だ。

 

ステイタスの無い状態で基礎をしっかりと固める。これは神時代となった今、やっているものはほとんどいないだろう。

 

何をするにしても恩恵ありきだ。だがベルはその基礎に莫大な時間をかけた。恩恵を貰った時に飛躍するかもしれんな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何よりこの子の覚悟は生半可なものではない。ゼウスファミリア全盛期だった頃にもここまでの覚悟を持っているやつはいなかったんじゃ無いだろうか?

 

 

 

 

 

しかし本当に倒れるまでやるのはやめて欲しい。ヘラに睨まれるしアルフィアは怖いし。

 

 

 

「ベル!朝ご飯だぞ!汗流してこい!」

 

 

「あ、叔父さん!おはよ!わかった!ありがとー!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ご飯を食べて次は柔軟体操をしっかりとやる。お兄ちゃんがこれをすると怪我をしにくくなるって教えてくれた。

 

 

あっまたお兄ちゃんって言っちゃった。お義母さんと結婚したからお義父さんなんだよね?

 

お祖父ちゃんに連れて行ってもらった村で僕くらいの子がお母さんと手を繋いでいるのを見て羨ましかった。

 

なんで僕には両親がいないんだろうって思って、泣いた日もあったけどあの日から全然違う世界になった。

 

 

本当のお母さんのお姉ちゃん。それに瞳がそっくりなお兄ちゃん。お父さんと同じファミリアだった叔父さん。それにヘラお祖母ちゃんもできた。

 

 

家族がこんなにもあったかいんだって、教えてくれた。

 

 

 

 

 

 

僕は絶対にこの幸せを失いたくない。家族みんなを助けられる、守れる英雄になりたい。

お義父さんは英雄王。下界みんなを護るんだって言ってた。

 

 

でも1人じゃダメな時だってある。なら息子の僕がお手伝いする為に、護る為に強くならないと。

 

 

 

 

毎日毎日苦しいし辛い。でもその為なら幾らでも頑張れるんだ。だから僕は、僕である為の原点を心に思い描く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うむうむ。やはりベルはベルよのぉ?アルフィア。泣くなら泣いて良いが手紙を置け。シワシワになるだろう。」

 

 

 

 

「う、うるさい。私のベルはなんて可愛いんだ。……今からベルを迎えに行ってくる。」

 

 

 

「あの子が自分で来る時を決めているんだ。それは無粋と言うものだぞ。それにあの子の道はあの子が決める。

 

ファミリアも自分で選ぶだろう。ベルは英雄になる。我達にとっての英雄にな。ならばその過程を特等席で見せてもらおうではないか。」

 

 

 

 

「……わかった。だが別のファミリアになれば気軽に会えないかも知れんぞ。」

 

 

 

「ははは!!我が会うと言えば会う。以上だ。」

 

 

 

2人はくすくす笑いながらまた手紙を読んでいく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーえ?ファミリア??お義母さんとお義父さんのとこじゃだめなの??

 

 

 

 

 

 

ーーーベル。この手紙には一回もファミリアがどこか書いていなかった。それは恐らく自分で決めろということだ。

 

英雄となるならばその道は自分で決めて歩かないとな?

 

 

 

 

 

そっか!そうだよね。英雄の道は簡単なんかじゃない。頑張らないと!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーヘラのやつがおるせいで若い女子と遊べんではないか!くそう、死んだフリして逃げるしかないかのぉ?

 

いや、それをするとヘラが怒り狂って追いかけてくる……

 

それよりベルを悲しませたとギルとアルフィアが本気で殺しにくる可能性もあるのぉ……

 

 

わしゼウスぞ?オリュンポスのトップぞ???

 

 

 

なんじゃザルド!!!そのまだ懲りて無いのかクソジジイみたいな目は!!!

 

 

何?その通りじゃと!?ぐぬぬぬぬ!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーこのアホ主神とヘラの護衛かぁ。俺もベルについて行こうかな。しょーもない夫婦喧嘩を毎日見るのは苦痛だ。

 

だがあっちはあっちでアルフィアと王様の夫婦かぁ。

 

 

 

………俺も嫁さん探した方がいいか?

 

 

ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーギル。本気か?本気で言っているのか?

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーアルフィア。我は嘘は言わん。遺憾ながら父と言わざるを得ん愚王と増長した馬鹿なエルフである母に会わせよう。

 

未だに王と王妃という立場にしがみつく道化よ。民には見抜かれておる。それでも奴らの持つ王家の証が無ければアルフィアを伴侶として公式には迎えれん。

 

 

最悪粉々にしてやっても良いが道化達にも我をこの世に産んだという最初で最後の全うした責務がある。

よってその褒美として最初は会話をしてやる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日、エルフの森は2度の大歓声が巻き起こる。

 

一つ目はエルフの民全員が求め、待ち望んでいたギルガメッシュ・リヨス・アールヴが王に即位した。

 

 

二つ目はその王が自らの手で選んだ伴侶を連れてきた。

 

 

 

 

 

「我こそが王の中の王。ギルガメッシュ・リヨス・アールヴ。我が民よ。待たせてしまいすまなかったな。

 

今はまだエルフの王。これは下界の王たる我の一歩目よ。王とは孤高。それは確かな事だ。王の事は王しかわからぬ。

 

だが民無くして王は成り立たん。だからこそ我は貴様ら民の前を常に先頭で歩き、導き、そして護ろう。」

 

 

 

 

 

「「「ギルガメッシュ王!ギルガメッシュ王!」」」

 

 

 

 

 

「それともう一つ。我が伴侶を見つけた。我はこやつ以外と契りを結ぶことはない。オラリオの冒険者。ヒューマンのアルフィアだ。

 

今日からアルフィア・リヨス・アールヴになるがな。」

 

 

 

アルフィアが堂々とドレスを着てギルの横に立つ。その瞬間歓声が湧き上がる。

 

 

 

「「「アルフィア王妃!アルフィア王妃!」」」

 

 

 

 

アルフィアは一歩前に出て口を開く。

 

 

 

「私はヒューマンだ。だがギルガメッシュ王を愛しているし、これからもそれだけは変わる事は無い。

 

それと気に食わないやつは直接言いに来い。不敬にもしない。ギルガメッシュ王を慕い、敬っているのはよくわかった。

 

ならば私がすることは気に食わないやつを力でねじ伏せ、何故ギルガメッシュ王が私を選んだかその身に刻んでやることだ。」

 

 

 

 

 

 

 

ーーー間違ってますよアルフィア王妃!!

 

 

 

ーーーそうだそうだ!ギル様、あ、ギルガメッシュ王が選んだなら間違いなんて無いんだ!

 

 

ーーーそうよそうよ!この森に、エルフの森の住民にギル様、あ、ギルガメッシュ王の事を疑うエルフなんていないわ!

 

 

ーーーでもアルフィア王妃の覚悟は私達もきちんと見ましたよ!

 

 

 

 

 

「ふははは!!これは一本取られたなアルフィアよ。それでこそ我が民よ。それと今まで通りギルで良い。」

 

 

 

そこからはお祭り騒ぎだった。といってもエルフなのでオラリオの祭りのような盛り上がりではなく、各々が祝うという大人しいお祭りだが。

 

 

 

「我はまたオラリオに戻る。何かあればすぐに文を飛ばせ。頼むぞ宰相。」

 

 

「はっ!この命に変えましても!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

オラリオでは号外が飛び交っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【エルフ族!ギルガメッシュ王が即位!

 

伴侶にはアルフィア・リヨス・アールヴ!!】




ちと短いけど許して!

次はちょっとした報告(リヴェリア煽り)してからキングクリムゾンの覚悟ガンギマリのベル君オラリオ到着って流れでーす。

毎日19時か20時に投稿します!

土日祝日はストックがあれば複数話投稿するかもです!


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お義母さんっ!お義父さんっ!結婚おめでとう!

いつも読んで頂き、ありがとうございます。

今日は余裕あったので2話あげます

2話目は予定通り20時です。

ベル君ってなんやかんやヘスティア様との相性抜群ですよね。


号外が流れてからしばらく経ち、ギルとアルフィアはオラリオへと帰還した。エルフの森では未だに賑わっており、それを面白がったギルがアルフィアを連れて参加する。

 

王家、ハイエルフと飲食をするなど永い年月を生きてきた大人エルフは考えられず困惑していたが、子供達はギルがエルフの森にいた時に既に経験済みなのか嬉しそうに酒を注いでいく。

 

 

ーーーふははは!今日は無礼講よ!エルフ族が気品を持ち王家を崇拝してくれているのは良くわかっておる。

 

だがな、王は民の目線から物事を見ねば、意見を聞かねば生活をよくするためにどうしていいのかわからんのも事実よ。

 

文面だけで民のことをわかった気になるなど愚かの極み。それに我が伴侶、アルフィアも元々は民だ。

 

子供達のように気軽に接せよとは言わん。貴様らにも貴様らの考えと誇りがあるだろうからな。

 

だが祝いの席での遠慮は無用!そこの貴様!我が酒を注いでやる。来い。

 

 

 

 

 

 

 

この言葉により大人エルフも楽しそうに会話をしていく。子供達は王様とアルフィアに抱きついたり膝の上に座ったりしている。

 

アルフィアは子供が大好きである。前までは騒がしい子供が苦手だったが、ギルに会い、ベルと暮らし、オラリオでマリアと親友とも呼べる仲になり孤児院の子供達と過ごすうちにギルと同じく宝だと思うようになった。

 

 

 

そしてギルとマリア以外知らないがかなりの可愛い物好きだ。花も好きだし、兎のぬいぐるみが特にお気に入りで家では抱きしめて座っているところが高確率で見ることができる。

 

 

 

ちなみに民は、自分達の子供がオラリオでギルとアルフィアにした事を知り、全員が全員手紙を送った。

 

 

 

 

 

 

 

【お前(愚息・愚娘)帰って来い。ギル様とアルフィア様になんて事をしている。再教育だ】

 

 

 

 

おおむねこの様な手紙の内容のためにしばらく傷心して俯きながら歩くエルフ達がオラリオで散見された。

 

 

 

 

 

ギルとアルフィアはオラリオに到着してからそのまま、ロキファミリアに足を伸ばす。

門番の1人は即座にリヴェリアを呼びに行き、もう一人は申し訳無さそうに少々お待ちくださいと伝える。

 

 

過去に大暴れしたアルフィアとハイエルフどころか王になったギルガメッシュに恐縮しまくっていた。

 

 

 

 

「そうビクビクするな。貴様は門番という責務を全うしているだけだ。我は責務を全うしている民をいたずらに辱める愚王ではない。」

 

 

その言葉を聞いて少し肩の力を抜く門番。自分達の副団長の言う通りできたお方だとも思う。

 

 

「だがアルフィアは分からんがな。アルフィアは知っての通り元ヘラファミリア。貴様らロキファミリアとフレイヤファミリアが下界の悲願である三大クエストに挑み、壊滅したのをいい事におらぬ間に追放したのだからな。

 

 

本当に恥知らずよのぉ?そうは思わんか?門番よ。

 

 

貴様ら程度では挑む事すら烏滸がましい下界の最難関の、救済をしてくれていたファミリアを自分達の自尊心を満たすためだけにその様な不様なことをしていたのだぞ?

 

 

挙げ句の果てに7年前にザルド一人にやられてランクアップを果たす始末。そこからランクアップをもう一度したのは姉上、ヘディン、ヘグニだけときた。

 

 

ああ、愚かしい。」

 

 

 

 

大仰な仕草で嘆かわしい嘆かわしいと笑いを堪えながら門番を揶揄う。その門番は不幸中の幸いと言おうか。

新人とまではいかないが二年程前に入団した人物であった。

 

だからこそ、え?え?そんなことあったの??とオロオロするだけですんだ。

 

 

「つまらん。この雑音は知らんみたいだな。ギルの言ってることは事実だ。だが別に貴様ら雑音を恨む、憎むなどの気持ちは全く無い。

 

 

むしろ追放してくれてありがたい。だがその後の怠慢は許しがたいものがある。最強の座に座るならそれに相応しい存在になるべきだ。」

 

 

その言葉が終わると共にリヴェリアとフィン、そして主神のロキが門から出てきた。リヴェリアは苦笑いし、フィンはいつもの凛々しい顔が崩れ、険しい顔をしていた。ロキは苦い顔をして頭をかいている。

 

 

「久しいな。ギルにアルフィア。まったくもって耳の痛い話だ。だが余りウチの若いのを虐めてくれるな。

 

その話は事実だ。アルフィアの視点からすればその通りだと言わざるを得ん。だがこちらからの視点では、また話が変わる。」

 

 

 

「姉上。確かにそちらの視点を我は考えてはいなかったな。では述べてみよ。そこの小人族が指示をしたのだろう?」

 

 

目線をフィンに送ると険しい顔のままフィンは口を開く。

 

 

 

ーーーふぅ。とりあえず挨拶だけ先にさせてもらうよ。エルフ族の王。ギルガメッシュ・リヨス・アールヴ殿。僕はロキファミリア団長のフィン・ディムナだ。

 

君の姉には世話になってるよ。さて、先程の話だが間違いは無いよ。それは勇者の二つ名をもつ冒険者としてでは無い。

 

フィン・ディムナ個人として嘘偽りないと誓う。

 

 

 

 

 

ーーーほう?冒険者として追放した事を冒険者だからと言わずに己の真名に誓うとは。面白い。

 

 

 

 

 

フィンの覚悟を決めた瞳を見て一つ評価を上げる。目線で続けろと言い、この小人族がどの様な説明をするか楽しそうに見る。

 

 

 

 

ーーーアリス。そこの門番の子なんだけど君も聞いたからこちらの目線も聞いておいてほしい。それから君自身でこのファミリアについてくるのか、移籍するのかは決めてほしい。

 

 

まず僕らは当時の二大派閥が敗走、壊滅したと聞いて正直なところ時代が変わる、いや、変わったと確信した。

 

その次代を担うのはロキファミリアとフレイヤファミリアだと。フレイヤファミリアはヘラファミリアに何度もやられ、僕らはゼウスファミリアに煮湯を飲まされた。

 

アルフィアじゃないけど憎む気持ちや恨む気持ちは全くなかった。理由は僕らにとって高い壁として聳え立ち、強くなる理由をくれたからだ。

 

 

だからこそ追放しなくてはならなかった。あの時代はヘラファミリア、ゼウスファミリアがいて一時的とはいえ、平和が成り立っていた。

 

壊滅、敗走した二大派閥をそのままオラリオ最強に据えて置くと異分子、闇派閥が大きく動く事になってしまう。

 

奴らを押さえつけていた二大派閥が弱体化したとなると奴らは狡猾に主力のいなくなったとこを狙う。

 

だからすぐに動いた。これが僕達の視点だよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

小人族の話を聞いてなるほどなるほどと頷く。だがまだ足りん。何故ならばその後の怠慢を聞いていないからだ。

 

 

 

 

 

 

 

ーーーそこに関しては事実レベルの上がっていない僕はなんの反論もできない。実際ウチはリヴェリア以外が停滞していると言わざるを得ない。

 

確かに次代を担う子達が今、メキメキと実力を伸ばしているがそれに焦るでもなく育てなければと思ってしまっているよ。

 

 

 

 

「ギルは王として民を導くだろう?街でのお前の行動も見た私は子供達の事を本当に大切にしているのがわかる。

 

だが我々もロキファミリアという大手のファミリアの幹部なのでな。次代を育てるのもギルの言う責務というやつなのだよ。」

 

 

 

「それはわからんでも無いが、姉上。姉上は別だが貴様らは冒険をするために冒険者となったのだろう?

 

次代を育てる、ファミリアの運営をする、その上で自らの冒険者としての格を上げるなど我からすれば全て当然の責務よ。

 

その器があるか無いかだろう。事実我はファミリアに入っているが鍛錬を欠かさず、稼ぎ、民や子供達の交流もしているしできておる。

 

アルフィアもそうだ。ヘディンもファミリアの書類や運営方法を全てこなし、ヘグニも戦うだけじゃダメだと手伝っておる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何より姉上。姉上が出来ている以上その言い訳は見苦しいぞ。」

 

 

 

 

ロキは、あちゃーと顔を手で覆い天を仰ぎ、小人族はその通りだよと呟いて肩を落とす。姉上に至ってはニヤッと笑って我、アルフィアを見て横目で小人族を見た。

 

 

 

ーーなるほどな。我を使って現実を見せるつもりだったのか。姉上も強かになったものよ。

 

 

 

 

「別に我は貴様ら雑種が何をしていようと、どうなろうとどうでも良いがな。さて姉上。報告と、アルフィアが個人的に話をしたいそうだ。

 

どうせオラリオ中に知れ渡っているのだ。ロキも小人族も来たければ着いてこい。」

 

 

 

そこから4人と1柱で話をするべく、応接室に向かう事になった。

名実共にエルフの王となり、アルフィアを伴侶に迎えた事。同胞達がオラリオにいる息子、娘にブチ切れていることなどを話す。

 

 

「あははははは!!!それでちょい前からあんなにエルフが落ち込んで歩いとんか!!めっちゃおもろいやん!」

 

 

 

「そうか。それは仕方ないな。私も姉として思うところはあったからな。しかしウチのファミリアの同胞は誰一人参加していなくて良かったぞ。

 

ティオナに感謝せねばならんな。ああ、ティオナがギルに迷惑をこれ以上かけるなら許さんと内門番をしていてな。

 

ふふ。弟が色々な人に好かれていて私は嬉しいよ。」

 

 

 

アルフィアもそれは予想外だったのか片目を開き、意外そうに姉上を見ていた。

 

 

 

「…年m、リヴェリア。私も名実共にギルの嫁となりエルフ族の王妃になった。敬語使え。」

 

 

 

姉上の額に青筋が入る。そして部屋の空気が凍る。小人族とロキはギギギという音が聞こえるのではないかと思うくらいゆっくり姉上を覗き見る。

 

 

「…アルフィア。貴様が王妃以前に私はギルの姉だ。義姉に対して敬う態度を見せろ。」

 

 

「私の旦那と旦那の配下にケツを叩かれなければ冒険できない雑音に対してどう敬えと?」

 

 

「冒険者として敬えとは言っていない。静寂という二つ名の通り、静かなとこに居すぎて人の言葉も聞こえなくなったみたいだな。

 

目上に対して敬意を払えと言っているんだ小娘。」

 

 

「ああ…。なるほどな。それはすまなかったな。私達ヒューマンからすれば100歳など死にかけのババアなものでな。

 

おや?行き遅れで口うるさいババアのどこを敬えば良いのだろうか?

先達として若輩者の私に教えてくれないか?」

 

 

 

フィンは後にこう語る。

 

 

 

ーーーもう二度とあの二人が揃う場には同席したくない。

 

 

 

 

 

 

 

 

ロキファミリアの応接室は粉々に吹き飛び、館の一部分が燃え、凍り、衝撃波か何かに晒されて文字通り吹き飛んでいた。

 

 

止めようとした団員は巻き込まれてボロボロにされ、やめやがれクソババア共!と言った口の悪い狼人族はハイエルフから杖でボコボコにされた挙句、別のファミリアの女に手刀で己の相棒ともいえる専用武装のフロスヴィルトを粉々にされた。

 

 

その上身体の内側から音が衝撃として蹂躙してきて血を吐いて白眼を向いて倒れた。戦闘が終わって片付けをしていた団員により、館の塔に引っかかったまま気絶しているところを見つけられ救助された。

 

 

 

 

 

 

ーーーははは!!姉上と伴侶が本気でやり合うとは!何という素晴らしい余興よ!

 

ロキ。貴様は姉上の主神よ。我の後ろに座っていろ。守ってやろう。

 

酒はいける口か?ならばこの様な余興をぼーっと見るなど王の名折れ。共に酒の肴として愛でようではないか。

 

 

 

 

ロキを連れ、2人で酒を呑みながら戦いを見る。

 

 

「しっかし静寂は当たり前のように強いけどリヴェリアもめちゃくちゃ強いな。最近ってかギルが来たくらいからフレイヤんとこの白黒エルフとなんや鍛錬しとる言うとったけど。

 

あ、ベートや。うわ、あの子もレベル5やで?あの専用武装、ファイたんとこの椿に作ってもらった一級武器やのに。手刀で粉々ってどないなってんねん。」

 

 

 

「ほう?椿か。あやつも我が民よ。己の責務を全うすることのできる女よ。そういえばロキ。姉上が面倒を見ているアイズという女子は巻き込まれておらぬか?

 

 

む。ティオナ!貴様とアイズとやらはこちらに来い!我が守ってやる!」

 

 

 

目についたティオナを呼びつけ、金髪の女を連れてきた。子供に酒はいかんな、王自ら紅茶を淹れてやろう。

 

 

「ギル様ー!こんにちは!リヴェリアとアルフィアさん凄いねー!」

 

 

「え…?こ、こんにちは?アイズ・ヴァレンシュタインです…。」

 

 

 

ティオナが説明している間に紅茶を淹れて渡してやると嬉しそうにティオナは飲んでアイズはオロオロしている。

 

 

「アイズ。ティオナが言った通り、我は王で姉上の弟だ。貴様は姉上の寵愛を受けている。ならば我が守るのも当然よ。」

 

 

こくりと頷くアイズを見ると何かを感じる。これは精霊か?加護?いやこの娘……。

まぁ良い。我には関係ない。これは姉上の管轄だ。

 

 

 

その後も続く戦闘を笑いながら見ているとようやく終わりそうになるが、あの2人は阿呆か。ここを更地にするつもりか。

 

互いに魔力を練り上げ始めた。

 

 

 

 

 

 

 

ズドッっと剣を2人の間に射出して止める。

 

 

 

 

「それ以上はやり過ぎだ。多少の怪我は多めにみるが大怪我は許さん。それに姉上。もう限界だろう。

 

アルフィアは……問題無さそうだな。」

 

 

姉上は苦い顔をしてジトっとアルフィアを見る。アルフィアは涼しい顔をしてこちらに歩いてくる。

 

 

「中々楽しめた。ギルの姉だけはある。」

 

 

それだけ言って横に座り紅茶を飲み始めた。姉上は恐らく内臓は傷ついていないが肋骨が折れ、腕にもヒビが入っている。

 

プロミネンス・ウェスタで完全回復してやり、姉上にも紅茶を淹れてやる。

 

 

「ありがとうギル。……次は勝つぞ。アルフィア。」

 

 

 

 

「いやいやいや。次とかやめてや。マジで。やるんやったらダンジョンでやってや?これ修繕費なんぼかかるねん。」

 

 

 

「我の個人資産から出す。」

 

 

「ギル…。」

 

 

 

波紋からデカい袋を出してロキに渡す。おっっも!!と持ち上げられず地面に落としたのを見てティオナが手伝っていた。

 

 

中には大量のヴァリスと余興の礼として財宝から金塊を出して入れてやった。

 

 

「それで直せ。我の伴侶と姉上のした事だ。それに良い余興であった。ではな。アルフィア。帰るぞ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーここがオラリオかぁ。よーし!えとギルドってとこに行って探索系のファミリア?を探して面接だっけ?

 

ファミリアに入ったらお義母さんとお義父さんに会いに行こっと!

 




原作に辿り着いたけどほんとに辿り着いただけだった

そしてベートきゅん。止める時にクソババア共!とか言っちゃダメだよ。


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原作突入
なんだ。相談とは?


そろそろギル様のランクアップ考えないと。

これ本日2話目ですのでお間違えなく。

皆様評価・感想ありがとうございます。

日間ランキングの11位に入ってました。皆様のおかげです。
本当にありがとうございます。

軒並み赤バーのなかにオレンジバーがいて居た堪れない笑


ーーーあ?てめぇみたいなガキはウチにはいらねぇよ。

 

 

 

ーーー兎みたいで可愛いな。愛玩動物としてなら飼ってやるぞ?

 

 

 

ーーー我等の女神の寵愛を受けれるとは思えん。帰れ。

 

 

 

ーーーオラリオトップのロキファミリアに入りたいだと?ふざけるな田舎者め。幹部は全員ダンジョンに遠征に行っている。

貴様など試験に受かるはずもない。帰れ!!

 

 

 

ーーーわざわざ来てくれて嬉しい。俺がタケミカヅチだ。本当に申し訳ないんだがちょっと貧困を極めていてだな……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぜ、全滅……!?」

 

 

 

 

ギルドに行って受付嬢のエイナ・チュールさんに貰った探索系ファミリアの一覧に全てバツマークが付いていた。

 

そりゃそうさ。僕が自分で行ってダメだったとこにバツを付けたんだもん。お義母しゃん。お義父しゃん。ザルド叔父しゃん。お祖父ちゃんにお祖母ちゃん……。

 

英雄になる前に冒険者になれません……!!

 

 

 

「うぅぅ。お義母しゃんとお義父しゃんに逢いたいよぅ。」

 

 

 

 

半泣きで噴水前に座って俯いている。

 

 

 

 

 

 

いや、僕は馬鹿か!家族の英雄になるんだろ!冒険者?ファミリア?知らないもん!!古代の英雄は恩恵無かったって言ってたし問題無い!!

 

 

よーし!ダンジョン行こっと!

 

 

 

 

 

「……君大丈夫かい?落ち込んだり元気になったりしてるけど。」

 

 

心配しておばs、ひっ!!背中がぞくっとした。お姉さんが声をかけてくれた。

 

 

「あ、だ、大丈夫です!!ちょっとファミリアを探して面接行った35件全部ダメだっただけなので!古代の英雄は恩恵無かったですし僕も英雄になるために来たので問題ないです!!

 

ダンジョン行ってきます!!」

 

 

 

「待ちなさい。問題しかないわよ???……それにしてもなんでそんなに面接に落ちるんだい?

そりゃ大手は難しいかもしれないけれど、中堅くらいなら恩恵くらいくれるだろうに。」

 

 

「弱そうなのと田舎者だからダメって言われました!」

 

 

お姉さんはうーんと考えてこっちを見てくる。

 

 

「えっと兎ちゃん?私そこの商店街の果実屋をしてるんだけど、この商店街の守護をしてくれてるというか、みんなが大好きな女神様がいるんだよね。

 

兎ちゃんはいい子そうだし紹介してあげようか?」

 

 

 

それにギル様とアルフィアさんだけしかいないし、ヘスティア様は1人教会で過ごしているからねぇ。寂しいとも言っていたし大丈夫でしょ。

……しかしこの兎ちゃん、髪の毛灰色にして伸ばしたらアルフィアさんに後ろ姿そっくりになりそうだね。

 

 

そんな内心を一切出さずにベルをジャガ丸くんの屋台に連れていく。

 

 

「ヘスティア様ー?この子オラリオに来たばかりで面接も全部ダメだったみたいで落ち込んでたんだよ。ヘスティア様眷族探してたでしょう?

 

だからどうかなって。」

 

 

ジャガ丸くんという美味しそうな物を作っている女神様がいた。……ジャガ丸くんの神様なんだ!!

 

 

 

「え!?スージー君本当かい!?これあげるからちょっと食べながら待ってておくれ!」

 

 

揚げたてのジャガ丸君をもらってスージーお姉さんと座って待っているとエプロンを外したヘスティア様がこっちに走ってきた。

 

 

「……あれ?ジャガ丸君の神様じゃなくて、紐の神様??」

 

 

 

「違わいっ!!前にも紐の神様って言われたけど違うからね!!炉の女神だよ。ボクはヘスティア。兎みたいな君の名前は?」

 

 

 

あっ!!スージーお姉さんにも自己紹介してない!

 

 

「ごめんなさいスージーお姉さん。自己紹介まだしてませんでした。僕はベル。ベル・クラネルです。

 

オラリオに英雄になるためにやってきました。それとお義母さんとお義父さんに会いに。」

 

 

「そうか!ベル君だね!英雄はとってもいい夢だね!ボクは応援するよ。ご両親はオラリオにいるのかい??」

 

 

 

「はいっ!と言っても義理なんですけど。それでも僕にとって大切で、唯一の家族なんです!色々あって渋るお義母さんをお義父さんと一緒に行くように説得したので先にオラリオにいるんです!」

 

 

にぱっと満面の笑みで両親の話をするベル君をみるとこちらも不思議なことに笑顔になる。

 

今の話にも一つも嘘偽りはない。純粋でいい子だ。これならあの問題児2人も納得してくれるだろう。

 

それに眷族できたのに1人で教会に住むのさみしい。いつも晩御飯呼んでくれるけどそのあと1人で帰るの寂しい。

 

 

 

 

 

ベルと2人で教会で暮らすのは楽しいだろうなー!!と嬉しくなってきた。

 

早速恩恵をあげないと!!と張り切って恩恵を与える。

 

 

 

 

 

 

ベル・クラネル

 

 

LV1

 

力: I 0

耐久: I 0

器用: I 0

敏捷: I 0

魔力: I 0

 

 

[スキル]

 

【英雄願望】

能動的行動に対するチャージ実行権

チャージ時間により、精神力、体力を消費する。

 

 

【家族一途】

家族に対する愛情の深さにより効果の増減。

愛情がある限り限界がなくなる。

 

 

【聖火の灯火】

憧憬を持ち続ける限り早熟する。

女神ヘスティアの祝福がある限り呪い、魅了を含む異常を無効。

 

 

[魔法]

 

【マキシマ・ウェスタ】

詠唱

燃え上がれ 燃え上がれ 汝を救おう 厄災は燃やし尽くそう 私は既に救われた ならばこの身は父の為 母の為 家族の為に。

この白炎の輝きに勝るものはありはしない。

全てを救ってみせよう。私はアルゴノゥト。さぁ前に進もう。

 

超広範囲浄化回復魔法

 

任意で浄化、回復、精神力譲渡を選択可能。

範囲を絞れば絞るほど効果増大。

 

詠唱破棄可能。詠唱破棄時、効果減少。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーー本当に待って。え?アルフィア君と同じスキル?あと聖火の灯火って何!?ボク別に祝福してないよ!?

 

あ、ギル君にも出てたや。もしかしてボクの恩恵のこと?でもアルフィア君には出てないし……

 

とりあえず聖火の灯火は消そう。早熟とか良くわかんないし。

 

しかもこれからあの問題児2人を紹介しないといけない……。どうかベル君は毒されませんように!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「え!?お義母さん!!お義父さん!?」

 

 

 

 

「「ベル??どうしてヘスティアと一緒に??」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ヘスティア様に恩恵を刻んでもらって、ギルドにも一部を除いて内緒にしてる人を紹介するって言われて一緒に晩御飯を食べに行くことにした。

 

 

 

 

 

「ベル君。ボクの眷族は君が4人目なんだ。それを知ってるのは眷属以外だと、ギルドの受付嬢のエイナ君とギルド長のロイマン君だけだ。それと今言った受付嬢のエイナ君の母親でアイナ君って言うんだけど、そのアイナ君が3人目の眷属なんだ。

 

冒険者登録しに明日ギルドに行くと思うけど今から会う2人のことはその3人以外には言っちゃダメだよ。」

 

 

「え??は、はい!!わかりました!!」

 

 

「誓って悪い子じゃないよ。ただ立場上、公にしなかっただけだから。ちなみに夫婦だしその子の家だからホームと勘違いしちゃダメだぜ?

 

ヘスティアファミリアのホームはさっきの教会さ!」

 

 

ふんふんと頷き、2人で楽しく話をしながら歩く。どこに何があるのかを教えてもらいながら到着する。

 

 

 

 

「おーい!新入団員が来たよー!とってもいい子だよ!」

 

 

 

ヘスティア様が中の人を呼ぶと2人分の足音が聞こえた。

 

 

「大声を出すなヘスティア。私が騒音と雑音が嫌いなのを知っているだろう。」

 

 

「ついに新しい眷族を作ったのかヘスティア。してソイツはどこに……」

 

 

 

そりゃぁもう驚いた。会いたくて会いたくて仕方ない2人がそこには居たのだから。思わず走って2人に抱きついてしまった僕は悪くない。

 

 

 

夕食が用意されて、今まで実家でしていたこと。ヘラお祖母ちゃんが来てくれて実家からちょっと離れた街にお出かけしたりしたことを話す。

 

 

 

 

「……なんだいなんだい。ベル君が君達のいつも言ってる息子だったのかい。やっと帰っても1人じゃなくなると思ったのに…。

 

でも良かったねベル君!これは君が諦めないで主神を探したご褒美さ!やっぱり家族が一緒にいるのはボクとしてもとっても嬉しいよ!」

 

 

 

「え?神様?僕ここには住みませんよ??あの教会に住みます!」

 

 

 

「「「え?」」」

 

 

一緒に住む気満々すぎてうずうずしていたアルフィアは絶望感溢れる顔で反抗期だ……マリア。反抗期キタ。と呟き、ヘスティアはなんで??と本気で首を傾げ、我もどういう事だ?と疑問に思う。

 

 

「だってあの教会はメーテリアお母さんの大切な思い出の場所なんでしょ?なら僕がお母さんの思い出を守るよ。それも僕の決めた家族の英雄になる為に必要なことだから。

 

 

あとさお義母さん。お義父さん。ヘスティア様だって家族でしょ。僕は1人の辛さを知ってる。それにその辛さを消してくれる家族が増える嬉しさも知ってるよ。

 

ヘスティア様が1人で寂しい思いをしてるなら僕は家族として寄り添うよ。それが英雄。でしょ??」

 

 

 

にっこりと笑うベルに我はついつい微笑んで頭を撫で、アルフィアはさすが私達の英雄だ。と笑う。

 

ヘスティアは涙を目尻に溜めてベルに抱きついていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーそれはそれとして諦めないでファミリアを探したとはどういう事だ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あ、やば。ベルくぅぅぅぅぅぅんんんん!!2人を止めるの手伝ってくれぇぇぇぇぇぇぇ!!!

 

オラリオが!オラリオが更地になるぅぅぅぅぅ!!!

 

 

 

 

 

必死で止めて、止めるなら相応の実力が必要だとお義母さんに言われ、庭で戦う事になってダンジョンに潜ってないのにアビリティの耐久の数値が120も上がりました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

お義母さんのばかぁ!!




もう覚悟ガンギマリしてるベル君に豊穣の女主人でのベートイベント必要ねーんだよな。

あと原作より強いとはいえど逃げ出したトマトジュースミノには勝てまてん。

名前をお出しして良いのかわかりませんので出しませんが、毎回誤字脱字報告をしてくださる方がいます。

作者のミスを読者様に指摘させるなどあってはいけないと思います。ですが見捨てずに毎回報告してくださり、本当にありがとうございます。

作者も今まで以上に気をつけるようにしますので今後ともよろしくお願いします。


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お義父しゃんはしゅごい!!!

16話でベルが3人目の眷属と記述していましたが、いつも通り誤字脱字報告をしていただき、アイナ忘れてた!!!

ほんっっっとうに申し訳ございません!!!

こう考えるとヘスティアファミリア、住んでるとこバラッバラだな笑


ベルがオラリオに来て、奇しくも同じ主神ヘスティアに拾われた。それからというものベッドに入ってくるアルフィアが白兎のぬいぐるみを我との間に入れてぬいぐるみごと抱きついてくる。

 

 

 

 

 

ーーー嗚呼。ベル。わかるんだぞ?ベルが私達の英雄となるべく歩み出したのは。だがベル……。ベル!べるぅぅ!!

 

 

 

 

 

うむ。鬱陶しいな。最初に出会った時のように鬱陶しい。もうこれは依存性では無いだろうか?ベルには中毒性のある何かが分泌されておるのか?

 

家から一歩出ればいつものアルフィアだが家の中だとまるで思春期の小娘のようになってしまう。

 

姉上と気晴らしに喧嘩でもさせようかと思ったがロキファミリアは深層に遠征に行っているとか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーただいまぁ!!お義母さん!!お義父さん!!

 

 

 

 

 

 

 

 

パッと離れ、いつも通り微笑んでベルにおかえりと言う。呆れて物が言えん。ベルはベルでアルフィアに抱きついているし。こいつも神々の言葉のマザコンとやらだな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーほう?ミノタウロスと戦った?助けられて血まみれにされたが、お礼も言えなかったと。ほほう?ベルよ。

 

アイズに惚れたのか??

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーあの小娘め。私より強くなければやらん。というかあの雑音共は何をしている。何故あんな小物に五階層まで逃げられるんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

お義母さんとお義父さんに再会してから朝はお義母さんが鍛錬の相手をしてくれるようになった。

ザルド叔父さんがどれだけ手を抜いてくれていたのかがわかる。

 

 

お義母さんは僕に隙があるとすぐに木の棒で叩いてくる。でも見えてるから避けられない筈はないのに、身体の重心が避けられない体勢になっているのも見切ってやっているらしい。

 

 

 

 

お義母さんしゅごい……。

 

 

 

 

それが終わると朝ごはんを神様も一緒に食べてダンジョンに行く。ご飯はお義母さんとお義父さんが交互に作ってくれる!

 

ザルド叔父さんの方が美味いのが腹立つとお義母さんは言うけど僕は全部美味しいよ??

 

 

 

それから神様はバイトに行って僕はダンジョンに行く。エイナさんがアドバイザーに付いてくれたから、お義父さんもお義母さんも安心してた!

 

 

エイナさんにはお義父さんとお義母さんのこと言ったらびっくりしてた。絶対に死なせないっ!って厳しく勉強させられたけど。

 

お義母さんに五階層までは許可してもらったから隅から隅までダンジョンの階層を探検してギルドで貰える地図と別に書いて行って、帰ったら答え合わせをしている。

 

 

その日も普段通りにダンジョンの5階層に潜っていた。

 

 

 

 

 

「ブモォォォォォォォォ!!!」

 

 

 

 

 

「なんで!なんでミノタウロスが!?」

 

 

 

 

まずいまずいまずい!!この道を通したら4階層に行っちゃう!降りる前に何人もの冒険者がいた!

 

 

僕が逃げたらその人達は…!!!

 

 

 

 

 

覚悟を決めろベル・クラネル!!ここでこのミノタウロスは縫い止める!!

まずはここから引きつけて4階層に行けなくする!!

 

 

 

石を拾ってミノタウロスに投げる。こっちを見て鼻息を荒くしているので挑発する。

 

 

「こっちにこい!!ザルド叔父さんのご飯にしてやる!!」

 

 

「ブモォォォォォォォォ!!ブルル!」

 

 

走って追いかけてくるので僕も全力で逃げる。正直お祖父ちゃんの書いたアルゴノゥトを読んでるからめちゃくちゃ怖いぃぃぃぃぃぃ!!!

 

 

 

 

行き止まりのそこそこの広さのあるルームに入って後ろを向くと若干遠くにミノタウロスがいた。あれ??もしかして追い切れてなかった??

 

ミノタウロスは行き止まりを見てすごく鼻息が荒いが確かに笑った。もう逃さないと言わんばかりに。

 

その顔を見てムッとしてしまう。

 

 

 

ーーーミノタウロス?手刀で一撃の雑音だ。

 

 

 

 

 

ーーーミノタウロス?雑種だったな。なぁに。ベルもすぐに倒せるようになる。

 

 

 

 

 

ーーーミノタウロス?焼くと美味いぞ。

 

 

 

 

 

お義母さんとお義父さんとザルド叔父さんより遙かに弱いくせに。いや僕も遙かに弱いけど食べられないもんね。

 

 

それに……追い詰めたのは僕だ!!ここに縫い付けてやる!!下から来たってことは迷子か、何かから逃げたから。

 

エイナさんが言ってた。迷子にはならないって。たまに階層を渡って出現するモンスターがいるらしいけど上層はないって。

 

なら何かから逃げた筈。その何かは十中八九強い冒険者。

 

ヒドイ冒険者じゃない限り追いかけてる筈だ。ここにこいつを縫い付けていれば僕がダメでも他に被害は出ない!!

 

 

 

「いくぞミノタウロス!!」

 

 

一気に懐に踏み込む。ミノタウロスは反応しているがこの体勢なら僕の方が有利!

 

ナイフで肉体に斬りつける。

 

 

 

ーーーパキン。

 

 

 

 

「え?」

 

 

 

ナイフがポッキリと折れていた。ギルドの支給品じゃダメだった。ぼさっとしていたらやられると思いすぐに間合いを取る。

 

 

 

ーーーお義父さん。上層では使うなって言われてたけど使うね。

 

 

鞘にしまっていた大好きな父から貰ったナイフを出して構える。

 

 

 

「深紅のアゾット。御守り代わりって言ってたけど、ミノタウロス。君は僕より強い。だからこそ負けられない!!僕は家族を守り抜く英雄になるんだ!!!」

 

 

 

ミノタウロスの振り回す両手を冷静に見て躱すが、風圧だけで頬が切れた。余裕は全くない。手加減してくれるお義母さんやザルド叔父さんとは違う殺意。

 

 

不幸というしか無い。不運と言ってもいい。たまたまベルの踏み込んだ場所が、地面が脆くなっていた。

 

結果、ベルがこの戦いでついにミノタウロスの腕が当たる位置から逃れられない体勢になってしまった。

 

 

 

「っっっっっ!!がっっっっ!!!」

 

 

 

そのまま壁に叩きつけられた。咄嗟にできることは避けるではなく自ら腕がくる方向に全力で飛んで衝撃、威力を受け流すこと。

 

しかしレベル1がレベル2でも単独で挑むと食われかねない膂力を持つミノタウロスの攻撃を全て受け流すのは不可能だった。

 

 

ーーーい、息ができない!!動かないと!!ダメだ!!諦めない!!帰るって約束したんだ。

 

神様にも、エイナさんにも、それにお義母さんとお義父さんにも。

 

 

 

ミノタウロスはゆっくりと歩いてくる。目の前に足がある。ただでやられてやるか!機動力を削いでやる!!

 

 

 

「ーーーーーああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

 

全力で吠えた。のに、ミノタウロスは細切れになって僕は血まみれになった。どゆこと??

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、あの…。だ、大丈夫…ですか?」

 

 

 

 

 

 

 

………ふぇ?金髪の妖精さん???

 

 

 

 

「ご、めんなさい。その、あのミノタウロス…。私達が逃しちゃって…。怪我してる?」

 

 

 

 

 

……!!!!

 

 

 

 

「っっっだぁぁぁぉぁぁぁぁぁ!!!!」

 

 

 

全力で何故か逃げていた。ギルドでエイナさんと何故かギルド長のロイマンさんにも怒られて、心配された。

 

でもみんなを守ろうとしたことは褒められた。それに約束を守ったことも。えへへ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なるほどなるほど。我の息子は英雄となるべく自らを鼓舞して敵わない強敵にも立ち向かったのだな。

 

ふふ。ベルよ。さすが我が子だと言っておこう。説教は無しだ。アルフィアが十分すぎるほどしたようだしな。」

 

 

 

帰ってお義母さんに褒められたけどそれはそれ。これはこれと正座をしてコンコンと説教された。

 

 

「あい。ごめんなさいお義父さん。」

 

 

 

「良い良い。だがベル。ベルが我等を守りたいと思う事と我等がベルの未来を守ろうとすることは同義よ。

 

だからこそ強くなくてはならん。そして相討ち、もしくは相手の戦闘力を削ぐなどという考えは既に負けている。

 

そんな考えは捨てよ。王と英雄に敗北の2文字はない。逃走は戦略的撤退よ。敗北では無い。その判断を間違えぬようにな。

 

 

さて!ベルも無事で英雄としての道を進んでいることだ。今日は久しぶりにあの女将の店に行こうではないか。」

 

 

 

「ええー!?ギ、ギル君。みんな、ごめんよ。今日はベル君を紹介してくれたお礼にスージー君とこの家族にご馳走するって言っちゃってるんだ!」

 

 

 

「なるほどな。それで晩御飯はいらんと言ってきたのか。ならばヘスティアはまた今度だな。」

 

 

 

「うん。ごめんよ!今日は家族水入らずで楽しく過ごすといいよ!ベル君!今日はそのままそっちに泊まっちゃっていいからね!」

 

 

ヘスティアは慌てて出て行ったので3人で豊穣の女主人に向かった。

 

 

「あれ??何か忘れてるような……。あ。お、お義父しゃん……!」

 

 

「ん?どうした。」

 

 

ーーー朝、ご飯をくれたシルさんに夜食べに行くって言ってたのに忘れてた!!

 

シルさんのお店にしてください!とお願いすると良いぞと言われたのでホッとする。

 

2人の手を引いて声をかけられた店の方に行くと見つけた!!

 

 

 

 

「………ベル。ここが豊穣の女主人だ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

僕は今、間抜けな顔をしてる自信がある!!!

 

 

お義母しゃん笑わないでよぅ。

 

 

 

 

 

 

 

3人でカウンターにベルを真ん中に座らせ、料理を注文していく。

 

 

「ほー。シルの客が王様と静寂の息子かい。可愛い子だねぇ。というかシルあんた良くこんな子を騙したね。」

 

 

お義母さんのデコピンをくらって吹き飛び、額が真っ赤のシルさんは涙目で料理を運んできた。

 

 

「だってミア母さん。ベルさんが今オラリオで噂のパンドラの箱(アンタッチャブル)の息子なんて知らなかったんですもん。

 

(これは手を出せないわね。ヘディンとヘグニが敵対する事になる上にあの2人が崇拝して勝てないと言わしめる下界の王様にレベル7の時点で病気さえなければヘラファミリア最強に勝てると言われてたアルフィア。

 

そこに恐らくゼウスファミリアのザルドまでいる。どうすることもできないわ……!)」

 

 

 

 

ーーーーー……??何故女神が人のふりをして働いているのだ?まぁこちらに害が無ければどうでも良い。

それにミアも許可しているようだしな。

 

 

 

 

全知なるや全能の星がとても仕事をしてしっかりと気づいているギルガメッシュだった。

 

 

 

「どうでも良いけど王様。今日、ロキファミリアの宴会の予約が入ってるよ。面倒ごとだけ起こさないでおくれよ。

 

するなら外でやっとくれ。」

 

 

 

「ふむ。店の迷惑になりかねんな。アルフィアも王妃となったから挨拶に来るだろうしフード被っておくか。」

 

 

 

フードを被り、ベルの終わる事のない話を聞いて楽しく過ごしているとロキファミリアがやってきた。

 

どう謝罪をしてくるか楽しみだと思い、今は宴の場なので放置する事にした。

 

 

しばらくしていると姉上とアルフィアにボロボロにされていた狼人が何やら面白そうなことを始めた。

 

 

「よっしゃぁ!!アイズ!!あの話してやろうぜ!!」

 

 

 

「……??」

 

 

「あれだよあれ!あの兎野郎のことだ!」

 

 

 

その瞬間アルフィアが行動に移そうとしたのでベルの目の前で唇を塞いで黙らせる。アルフィアは頬を、いや首から上を真っ赤にしている。

 

 

「な、な、な、何を!」

 

 

「面白くなりそうだ。あの狼人が何を言うのかな。だから福音は待て。」

 

 

ベルは目をキラキラさせてこちらを見てくる。

 

 

 

お義父しゃんしゅごい……!お義母しゃんの福音止めた!!

 

 

 

 

 

「五階層までミノが逃げたやつ??あれ怪我人いなくて良かったねー!」

 

 

 

「そうそう!それだよ。五階層でな、明らかにルーキーの兎みてーなガキがミノにやられそうになっててよぉ!

 

間一髪ってとこでアイズが助けたんだけどよ、その兎野郎、ミノの血まみれになって白兎が赤兎になってやがった!!

 

 

ギャハハハハハハ!!なぁアイズ!あれ狙ったんだろ?」

 

 

 

「……そんなこと、ないです。」

 

 

 

「しまいの挙句にウチのお姫様、テンパってしどろもどろになってるしよぉ!!

 

それから兎野郎は本当にルーキーかよってくらいの速度で走って逃げてやんの!!お姫様逃げられた感想は?」

 

 

 

「!!!ベートさん…嫌いです。」

 

 

ロキファミリアの席は大爆笑だ。ベルは顔を真っ赤にしてアルフィアにそっくりなまるでトマト野郎になっている。

 

 

 

「ベート。その子も笑い者になる。いや、アイズが良いと言うわけではないが他派閥の子を巻き込むな。

 

それにその件は我々の落ち度だ。あまり公の場で口にするな。まだ謝罪もできていないというのに。」

 

 

 

狼人は酒を飲み、空のジョッキをドンッと机に置く。そして姉上を見てニヤッと笑う。

 

 

「うっせーんだよババア!笑ってねーとやってられっか!」

 

 

「……そうかそうか。貴様にはまた折檻が必要みたいだな。よかろう。ちょうどアルフィアにも再挑戦しようと思っていた。

 

貴様も連れて行ってやろう。三つ巴でな。」

 

 

「……それ、ベートが一人になるだけだよねリヴェリア。僕でもそこには行きたくないよ。」

 

 

ロキファミリアの全員が頷いていた。

 

 

「はっ!上等じゃねーか!ババアもあの音ババアもぶちのめしてやらぁ。いつからそんなに日和るようになりやがったフィンよぉ!?」

 

 

「おいこらクソ狼。誰に絡んでんだ。ぶら下がってるもん引きちぎるぞテメェェェェェ!!」

 

 

団長ラヴのバーサーカーが狂化しました。そんな音声が流れたガレスだったがふと気づいたことがあった。

 

 

「のう?ベートよ。その子はルーキーじゃったよな?」

 

 

「ああ。兎野郎な。確実にルーキーだと思うぜ。なんせ転がってたナイフはギルドの支給品だったしな。」

 

 

「ならなぜいつもお前のいう雑魚という言葉が出てこん?」

 

 

 

確かにとロキファミリア全員が、ベートをみる。ベートは顔をこれでもかと顰めるがまた酒を煽ってから口を開く。

 

 

 

 

 

「あいつはルーキーのくせに俺等が行く5分程度だが耐えていた。」

 

 

 

 

その言葉にざわつく。あのミノタウロス相手にルーキーが5分も耐えていた?

 

 

「それだけちゃうやろ?主神命令や。ベート。言い?」

 

 

 

 

「……ババア以外全員そうだ。いつからロキファミリアは日和るようになった?勝てねぇ相手。格上相手に勝つ気で挑まない。くだらねぇ!くだらねぇ!くだらねぇ!!!

 

ババアと音ババアの時もそうだ!!逃げるやつ!声をかけるやつ!それだけじゃねぇか!

 

喧嘩してよーが、冒険者なんだから参加してぶん殴りゃ良かったんだよ!!」

 

 

 

 

「いやだってあれは無理じゃない?あんたもボロ雑巾になってたじゃない。それに日和るって言ってたけど団長はロキファミリアのみんなの命を預かってるんだから安全策を立てるのも当然でしょ?」

 

 

冷静になったティオネがベートに説明していく。しかし次の言葉で何も言えなくなる。

 

 

「……あのガキは吠えたぞ。やられそうになっても意地と根性でミノの脚をナイフで突き刺してやがった。

 

レベル1。それもルーキーができるのにレベル5の俺、テメェ等ができねぇなんてのは通用しねぇ。

 

立場?んなもん関係ねぇだろ。ババアは最初俺になんつったよ。

 

 

音ババアにまた挑むっつってんだぞ。ババアはレベル7だがあの音ババアはそれより上だ。レベル1のルーキー。レベル7でロキファミリアの副団長が格上に挑むっつってんのに何を理由つけて逃げてやがる。

 

 

はっきり言ってやるよ。ババア以外の全員あの兎野郎以下だ。冒険者って名乗るのやめちまえ!!」

 

 

 

ーーーふはははは!!!聞いたかアルフィア?

 

 

 

ーーーああ。あの生意気な小僧が。だが見込みがあるな。おや?ベル。何を恥ずかしがっている。ふふ。お義母さんに抱きついて、まったく。

 

 

 

 

ミアから一番高い酒をもらいそれを持ってフードを被ったままロキファミリアの席に歩いていく。

 

 

「ああ?なんだテメェ。」

 

 

 

「くくく。ふはははは!!貴様の名を名乗れ。貴様は間違いなく冒険者だ。そこいらの雑種とは一線を画している。」

 

 

 

酒を渡してやるとロキはギル!?それ神酒やんか!?と大慌て。エルフは全員平伏し、姉上は驚き、目を見開いていた。

 

 

「ああ?あーババアの弟か。王なんだっけか?ベート。ベート・ローガだ。」

 

 

「まぁ飲め。そういえば息子が世話になったようだ。礼を言っておこう。」

 

 

「「「「御子息がもう産まれていた!?え?でも?え?」」」」

 

ベートもへ?という顔をして赤ん坊の世話なんかしたか?と必死で考え、姉上はどういうことだ!!いつできた!と近寄ってくる。

 

他のエルフは混乱の極致である。店員のリューにはロキファミリアが来る前に教えていたのだが、わかるわかると頷いていた。

 

 

「やかましいぞ。アルフィアが産んだ子ではない。義理の息子よ。アイズが助けたあの兎野郎こそ我が自慢の息子よ。」

 

 

 

ベートは神酒を吹き出し、姉上は唖然として、同胞達はそりゃベートも認めるわと思った。

 

 

「…マジかよ。んで?息子を危険な目に遭わせた俺等に報復ってか?」

 

 

「否。あれはベルにとって英雄となるために必要な一歩。それをベル本人の口から聞いた我等が出たら器の大きさが知れるというものよ。

 

そしてベート。貴様は目を曇らすこともなく、現状を理解して格下も格下のルーキーであるベルを認めた。それは本当の強者のみができることよ。

 

よってこの酒を褒美として持ってきただけだ。

 

しかし祝いの席だからな。違うファミリアで王たる我がここにいては肩の力も抜けまい。

 

ミア!我はもう帰る。」

 

 

それだけ言って外に出る。ベルもご馳走様でした!とミアに言い、ベートのところにいく。

 

 

「ベートさん。……負けません。」

 

 

キョトンとするベートだが言いたい事がわかったのか獰猛な笑みを浮かべる。

 

「吠えんな兎野郎。テメェを待つ気はねぇぞ。」

 

 

にっこり笑ってベルも出口に来た。最後にアルフィアがゆっくりと女王の様に歩く。

 

 

「行き遅れ。いつでも相手をしてやる。ついでに1つ教えておいてやる。スキルに不老長寿というものが出た。病気があったとこにな。

 

ハイエルフとほぼ同じ寿命になるというのが主神の判断だ。早く相手を見つけないと死ぬまで行き遅れと呼ばれるぞ。

 

 

あと狼。貴様は見込みがある。行き遅れとこい。英雄の作法を教えてやろう。

 

 

 

 

……それと別で私の事をババアと言った回数半殺しにするからな。逃げるなよ。安心しろ。聖女より良い回復があるからその日の内に終わらせてやる。」

 

 

 

「お前だけは許さんぞアルフィア。」

 

 

 

 

「お、おおおおう。じょ、上等じゃねぇか…!?」

 

 

「くっそビビっとるやんベート。それでも戦おうとするんは神やけど尊敬するわ。」

 

 

 

ブチ切れリヴェリアに酒をびちゃびちゃと溢すベートを見てロキは笑いを堪えることが出来なかった。

 

 

そしてベルという、あの王とアルフィアの義理とはいえ認められている息子。そしてロキファミリアにおいて苛烈過ぎるほどの実力主義のベートをルーキーの状態で認めさせ、負けない。

 

追いつき追い越すという宣言を正面からする胆力。何一つ嘘の無い台詞に鳥肌が立ってしまった。

 

 

間違いない。あの子、いや、あの家族は下界の救済の要にして本物や。それをこの目で見れるなんて。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

嗚呼。本当に下界に降りてきて良かった!!!

 




ベルのヒロイン→ベートきゅんが立候補しました。

原作ヒロインの口下手のせいで全然登場しねー!!!

やっぱ掘って厚くすると文字数増える。話数分けて書いていいかなぁ?

ちなみにベートきゅんは4回半殺し(ヘラファミリア基準)にされます。


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冒険者は冒険をしてはいけない?あれ?

怪物祭どーしよ。フレイヤ様が手出せないって前話言ってるんだよなぁ。

なんとかなるべ!


皆様、読んでいただき本当にありがとうございます。

ベートきゅんの人気にびっくりだよ笑

ギル様主人公なのにあまり出てきません。

さーせんっした!!


ーーーほう。ベルのスキルか。

 

 

 

 

 

ーーーああ。ヘスティアが相談に来た。アビリティの伸びが桁違いだよ。私達の元ファミリアでさえここまでのやつは見た事がない。

 

さすが私達の英雄で、メーテリアの子だよ。

 

 

 

……何より私達の愛し子だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ベルのステイタスをヘスティアが持ってきて、相談しに来た。アビリティの上昇速度が成長のそれではない。もはや飛躍だ。

 

 

酒場での一件以来、ベートを追い越すのを目標に日々アルフィアとの特訓を今まで以上に張り切ってやっている。

 

 

 

「うぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

 

 

 

 

「五月蝿い。声を出す暇があるなら攻めろ。」

 

 

 

「ぎゃぁぁぁぁ!!うう。頭痛いよぅ。お義母さん嫌い。」

 

 

 

 

 

………!?!?

 

 

 

 

 

 

アルフィア。ちょっと嫌いと言われただけでオロオロするな。頭でも撫でてやればベルは機嫌が良くなる。

そしてベルめ。やり返すのに一番良い方法に気づきおったな。だが嫌いと言ってチラチラとアルフィアを見て心配になるくらいなら何故やった。

 

 

 

 

刀を持ってアルフィアとベルのところに歩いていくと、二人も気づいたようでこちらを見てくる。

 

 

 

 

「ベル。可愛い息子の仇打ちと行こう。アルフィア。やるぞ。」

 

 

 

「お義父さん!!うん!僕ちゃんと見てるね!」

 

 

 

 

「……私だけ、悪者か。」

 

 

しょんぼりしているアルフィアをどうにかやる気にさせて近接戦闘を挑みに行く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーシィッ!!居合の太刀!五光一閃!!

 

 

 

ーーー甘い。どれだけ速かろうと一撃など対応できて当然だ。

 

 

 

 

 

初めはアルフィアにも高い勝率をキープできていたが、アルフィアがレベル8になって、病に蝕まれることもなくなり健康な状態に慣れ始めたアルフィアはより強くなった。

 

 

一度見た技は全てこなせ、オリジナル以上の技へと昇華させていく。だが我は英雄王。無様な姿を民にも子にも、何よりアルフィア。至高の宝である貴様だけには見せん。

 

 

 

「シィッ!!」

 

 

 

刀の速度をバラバラにして緩急をつけるがひらりと躱され、我の腹に手刀を刺しにくる。

 

 

多少のダメージはくれてやるがこのままでは逃さん!!

 

 

 

脇腹を抉られるがそれを無視してアルフィアの右肩に刀を投げ捨て全力の殴打をくらわせる。

 

 

アルフィアがその場から浮いて離れ、少し距離ができる。その距離をタケミカヅチに教わった縮地で詰める。

 

 

 

 

ーーーやっと顔色を変えたな。

 

 

 

急に目の前に我が来たように見えたのか目を見開き、口を開く。

 

 

 

 

ーーー「福音っ!!!」

 

 

 

魔法は無しと言っておったのに福音だとっ!?

 

 

 

「ぐぅぅぅぅぅぅぅ!!!」

 

 

 

その場で福音の衝撃波に耐える。そっちが先に使ったからな!プロミネンス・ウェスタを体内に使い、内臓のダメージをくらいながらも治していく。

 

 

アルフィアは吹き飛ばない我に焦って距離を取りにいくがまたしても縮地で詰めて殴打する。しかし捌く。殴る。捌く。蹴る。防ぐ。

 

 

超高速戦闘に移行したところでベルが止めてきた。

 

 

「お義父さん!お義母さん!おしまい!リヴェリア伯母さんとベートさん来たよ!」

 

 

苦虫を噛み潰したような顔の姉上と笑いを堪えてベルの肩を叩き、親指を天高く上げているベートがいた。

 

 

 

 

 

「……ベル君。その、伯母さんはやめてほしい。その通りなのだが、リヴェリアで良い。」

 

 

 

 

「ギャハハハハハハ!!もう無理だ!!伯母さん!!クラネルお前さいっこうだな!!」

 

 

 

杖で殴られて、吹き飛んでいくベートがいた。アルフィアも姉上の気持ちがわかるのか頷いていた。

 

 

アルフィアと我の怪我を治したあと、ベルはダンジョンに行く時間になったので用意をしに家に入っていく。

 

 

 

 

「さて。行き遅れと狼小僧。相手をしてやる。が、待て。」

 

 

 

2人は首を傾げる。

 

 

 

「ベルが行かねば遠慮なくできんからな。あの子は優しいから半殺し程度で止めにくる可能性がある。」

 

 

 

ーーーおいババア。半殺し程度ってなんだ?

 

 

 

ーーー……ヘラファミリアは主神もそうだが、頭と実力がおかしかった。今の私でもあの時の女帝にはなすすべなくやられる。

 

アルフィアは病が無ければレベル7でもそのレベル9の女帝に勝てるらしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おーーーい!クラネル!お前も一緒にどうだー??見てるだけでも勉強になんだろ!?なっ!?」

 

 

 

 

目を開いてベートを見て殺気を飛ばすアルフィアとよくやったベートと思うリヴェリアがいた。

 

ベルは天使のような笑顔でこういった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「見ててもベートさん超えられないので今はまだ基礎を固めて、冒険者としてダンジョンに挑みます。

 

レベルが上がったら是非一緒にお義母さんと鍛錬しましょう!

 

 

それじゃいってきまーす!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…。やはり私の息子は天使だ。その天使を利用しようとした雑音には私の魔法をくれてやる。」

 

 

 

 

ベートは頭をガリガリとかいて、獰猛に笑う。

 

 

「ちっ。ダッセェ事しちまった。音ババア!!ぶっ殺してやらぁ!!」

 

 

 

「ふっ。まったくだ。どうせ貴様を超えなければ私も納得できん。それに先程のギルとの戦い。ギルの実力にも驚いたが…。

 

アルフィア。同胞達は何も言わなかったが貴様、レベル8だな?」

 

 

 

 

「…。まぁ貴様等なら良いか。私はレベル8だ。それと狼小僧。やはり貴様は見込みがある。約束通り英雄の作法を教えてやる。

 

 

終わったらさっきのも含めて5回半殺しだ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

鍛錬でボロボロにされ、その後回復→福音の5ループを経験し、戦闘スタイル的に上がりにくい上、レベル5になってアビリティの打ち止めかと思っていたのに耐久が170も上がった狼がいたそうな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ベル君!!なーんで階層が増えてるのかな!?」

 

 

 

ギルドにてハーフエルフにマッピングした地図を渡して、大声で怒られる白兎がいた。というか僕だった。

 

お義母さんに怒られる恐怖を身体が覚えているのか反射的にビクッとしてぎゅっと目を閉じてしまう。

 

 

 

 

ーーーそんな小動物みたいに震えられると私がいじめてるみたいじゃない!!!もうっ!

 

 

 

職員はもちろん、ギルドに居た冒険者も同情の目線をベル君に送っている。受付でやるべきでは無かったと今更後悔して、面談ボックスに連れていく。

 

 

 

「ごめんねベル君。あそこでやるべきでは無かったね。

でもベル君、冒険者になってまだ二週間くらいでしょう。なのに七階層に行くのは冒険どころか蛮行だよ?」

 

 

「うう。ごめんなさい…。」

 

 

「ベル君に何かあったら私もそうだけどヘスティア様やギルガメッシュ様、アルフィア様だって悲しむよ?」

 

 

親を出すのはちょっと卑怯かなと思ったけど私が悪者になってベル君が死なないならそれでいい。

 

 

「で、でもでも!お義母さんに十階層までは行って良いって!それ以上行くとお説教って言われましたけど…。」

 

 

 

え?アルフィア様が??嘘をついている様には見えない。というかベル君は絶対に家族関係で嘘はつかない。どういうこと?

 

 

「……ベル君?アルフィア様がそうおっしゃったのね?」

 

 

コクコク頷くベル君を見て考える。アルフィア様は元ヘラファミリアで今やオラリオ最高のレベル8。ダンジョンの事を分かっていないなんて事はあり得ない。

 

なら、ベル君はアルフィア様が許可するアビリティがあるということだ。確認する?いや、それはベル君だけじゃなく、アルフィア様やギルガメッシュ様への不敬にもなりかねない。

 

母を救っていただいてそのような事はできない。

 

 

 

考えているとドアがノックされた。

 

 

 

 

「チュール。入るぞ。貴様また受付で大声を……。ベル・クラネルだったか。次は何をした。」

 

 

 

ベル君はぺこぺこ挨拶をして、全て説明した。

 

 

「……チュールの気持ちは良くわかる。しかし静寂が許可したか。だがヘラファミリアは頭がおかしかったからな。

 

うーむ。ベル。ギルガメッシュ様はなんとおっしゃっていた?」

 

 

 

「お義父さんですか??お義父さんはレベル1でミノタウロスを倒すならば今は基礎を固める時。だからお義母さんの言う事を聞いてしっかりとダンジョンに潜りなさいって言ってました!」

 

 

 

ーーーレベル1でミノタウロスを倒そうとするなと声を大にして言いたい。

 

 

エイナとロイマンが同時に思った。

 

 

「はぁ。チュール。儂は何も言わん。静寂の判断だ。間違う筈も無いだろう。だが、ギルド職員として他のレベル1に真似されると死人が量産されかねん。

 

儂に報告する必要は無い。だから貴様がベルを連れて一度話をしてこい。それで納得し、秘匿する必要があると思えば秘匿しろ。

 

 

これはギルド職員としての責務だ。もちろん女神ヘスティアにお伺いを立てろよ?ベルのステイタスについては我々は関与しないが他の冒険者を守る責務がある事を忘れるな。」

 

 

ギルド長からの指令という大義名分を得たので、ベル君と共に女神ヘスティアの働く屋台に行く。

おそらくギルド長は私の気持ちに気づいて大義名分をくれたのだろう。

 

 

 

 

 

 

 

「あー。ごめんねエイナ君。なんか面倒かけちゃってるみたいで。それに関してはベル君とアルフィア君、ギル君に任せるよ。それにボク今からじゃが丸くん揚げないといけないし」

 

 

「神様!お土産に買って帰るのでプレーン二個と餡子一個と、エイナさん何にします??」

 

 

じゃが丸くんを買ってエイナさんと2人で歩いて帰る。ただいまー!と家に着いてお義母さんにじゃが丸くんを渡す。

 

 

ーーーん?アイナの娘か。どうした。ベル。これは…。ちなみにだがベル。お前はこしあんとつぶあんどちらが好きだ?

 

 

 

 

私はつぶあんかなぁ。

 

 

どっちも好き!商店街ではこしあんだけど神様のじゃが丸くんはつぶあん!両方とも作ってくれる人と神様が好きだから好き!

 

 

でも甘いのそんなに好きじゃないからプレーンが一番!!

 

 

 

 

 

ーーーああメーテリア。私達の息子は天使だぞ。しかしつぶあんしか認めん。

 

 

 

 

 

その後ギルガメッシュ様も来てくださり、ギルド職員として対応をさせていただく。ギルド長の言葉と共に説明していく。

 

 

 

 

「……ああ。なるほどな。あの豚、本当に変わったな。」

 

 

失礼だが本当にそう思う。ギルド長があれ程真摯に仕事に向き合っているのは私達職員からすれば驚き以外なんでもない。

 

 

ベル君が最初に来た時、私が担当になると怒って言ったことがあった。ギルド職員ともあろうものが早死にする、冒険者の器じゃない。と言い、いつまで続くかと賭け事をし始めた。

 

 

それをたまたま見ていたギルド長。その時に言われたことで誰もが言葉を失ってしまった。

 

 

ーーーふん。そういう冒険者を守るのがギルドではなかったのか?チュール以外の受付嬢は仕事が一切できんらしいな。

 

ならば結構。守るべき対象で賭け事をする愚物などギルドに必要ない。辞めてしまえ。

 

 

ローズ先輩や、ミィシャは沈痛な顔をして俯いてしまった。

 

 

 

ーーー今までの私が横暴であったことは認めるが仕事を舐めたことなど一度も無い。オラリオの為、身を粉にして働いてきた。

私以外の先達も同じくだ。その信頼を貴様等が崩すのであれば私にも考えがある。

 

くだらんことをする余裕があるのならば仕事をしろ。愚か者めが。

 

 

 

 

 

結果としてギルガメッシュ様とアルフィア様の義理とはいえ息子とわかり、私はギルド長本当にありがとうと思ってしまった。

 

他の受付嬢は知らないが、賭け事の対象にしたせいでギルド長がベル君を気にしていると勘違いして露骨に避けるようになった。

 

ミィシャだけはちゃんと謝って仲良くしているが。ベル君も気にしていないみたいで良かった。でもなんか仲良く喋ってて、ベル君が頭を撫でられてるのを見るとモヤモヤするんだよね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「エイナとロイマンならば良いのではないか?ベル。ベルのアビリティの伸びは正直我でも驚くほどだ。幾多の冒険者を見てきたアルフィアやロイマンからすれば未知と言っても良いだろうよ。

 

だから本来ならばステイタスの秘匿はしなければならんが、担当のエイナとロイマンにはこのぐらい伸びましたと教えてやれ。」

 

 

それから見せてもらったベル君のステイタス用紙を見て絶句した。二週間で敏捷、器用、耐久がC。力、魔力がD。

 

そして前回からトータルで250ほど伸びている。前回の更新が4日前?

 

 

お礼を言ってから夜になっていたがギルドに走って戻り、ギルド長に面会を求めた。

 

 

 

 

「……なんだこれは。チュール。ベル・クラネルから目を離すなよ!?これでは他の神々にちょっかいをかけられて、かけたところがあの2人に消されてしまうぞ!!

 

それと嫌な予感がしたから報告せんで良いと言ったのに何故報告してきた!!」

 

 

 

 

 

 

「冒険者は冒険をしてはいけない。そう言い続けましたが、私じゃベル君に言っても冒険じゃなくって普通の事でしたよ?とか言われかねませんよギルド長!!

 

私はギルド職員としての仕事をしただけです!というかギルガメッシュ様がギルド長に伝えろって言ってたんですよ!!」

 

 

 

 

げっそりする私とギルド長は今までではあり得なかったが、その日一緒に食事に行って、愚痴を言い続けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何?神々の宴?」

 

 

 

 

ヘスティアが相談があると我のとこに来たので話を聞く。どうも神々の宴とやらに行くらしい。

 

 

 

「うん!それにボクの神友のヘファイストスが来ると思うんだ。そ、それでね?ベル君に、武器を贈りたいなって。あの子が英雄になるための手助けをできる武器を。

 

ボクにとって君達も、アイナ君も大切な子供だよ。でもベル君は絶対に無理をする。無理をできてしまう。それくらい君達を大切に思って英雄になろうと覚悟をしている。

 

ボクはへっぽこだから出来る事は少ないけど、あの子の手助けはできる。だから武器を贈らせてほしい。」

 

 

 

ふむ。やはりヘスティアは我の主神たる神格を持っているな。ならば我とアルフィアの出来ることは……。

 

 

「ヘスティア。貴様は我々の主神であり、母よ。その申し出ありがたく頂戴しよう。だが我々の母をその見窄らしい恰好で行かせては王としての器が知れるものよ。

 

アルフィア!行くぞ。」

 

 

 

ヘスティアを掴み、そのままドレスを買いに行く。髪を結ってやり、ほんのりと化粧をして王の財宝から出した香水をかける。

 

 

 

「ふははは!これでこそ我の主神よ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーここがガネーシャのとこかぁ。なんてとこ通らすんだい!!んー??なんか心無しめっちゃ見られてる?あ、これおいしい!

 

 

 

 

 

 

ーーーおい、あれ誰だ?

 

 

 

ーーー声かけるか?

 

 

 

 

ーーータケミカヅチさんチィーーーッス!タッパに料理詰めるとかwww

 

 

 

 

 

ざわつく神々。しかし悲しいかな。自己評価がベルと同じく低すぎるヘスティアは気づかない。

 

 

パクパクご飯を食べているとチラチラ見てくるヘファイストスがいた。目をキラキラさせ、満面の笑みでトテトテ走っていく。

 

 

 

「ヘファイストスー!!会いたかったよ!!」

 

 

 

「……え??へ、へ、ヘスティア!?!?」

 

 

 

「「「「はぁぁぁぁ!?!?ロリ巨乳だと!?!?」」」」

 

 

 

 

「む!なんだいなんだい!この神友を忘れるなんて酷いじゃないかい!!そ、そりゃ迷惑いっぱいかけちゃったけどさ!!」

 

 

 

頬を膨らませ怒るヘスティアを見てオロオロしてしまうヘファイストス。

 

 

 

「い、いや違うのよ!その、ドレスとか化粧してて、えと、綺麗で分からなかったのよ!」

 

 

その言葉にニヘラっと笑って嬉しそうに子供達がプレゼントしてくれたんだと伝える。それは本当に嬉しそうに。

 

天界でも引きこもり、下界に来ても引きこもっていた神友がこんなにも変わったのがヘファイストスは嬉しかった。

 

 

 

「……え?ヘスティア?」

 

 

「げぇ!?フレイヤ!?」

 

 

銀髪の女神がやってきた。が、何かおかしい。美の女神は美の権化ともいえるのだがフレイヤに目線がいかず、やはりまだヘスティアを男神は見ていた。

 

「げぇ!?ってひどく無いかしら。それに……。とっても綺麗よヘスティア。食べちゃいたいくらい。」

 

 

ひぇっ!とヘファイストスの後ろに隠れてチラッと顔を出す。

 

 

「それはごめんよ。でも、ボク、君のこと苦手なんだ。アルテミスやアテナ程じゃないけどボクも処女神だからさぁ。」

 

「フレイヤ。あんまりヘスティアを虐めないでちょうだい。ほらヘスティアも。」

 

 

ーーーどう見たってお母さんです。ありがとうございますヘファイストス様ぁぁぁぁ!!!

 

男神の心は1つになった。

 

 

「そういえばヘスティア。あんたのとこってあの2人以外に増えたんですってね。商店街でヘスティア様のとこに兎ちゃんが入団したぞー!ってどの店の看板にも白兎の絵が描かれてるじゃない。」

 

 

「あー。ベル君か。えっと、ヘファイストス。フレイヤもちょっといいかい?」

 

 

ちょいちょいと呼んで少し背伸びをして2人の耳元でコソコソと小声で話す。

 

 

「フレイヤにも説明しとくけどボクのとこにギル君とアルフィア君も所属してるんだ。あとはギルドの受付嬢のエイナ君の母親もなんだけどね。

フレイヤのとこにいるえっと、ヘディン君とヘグニ君には説明してあるから知ってるとは思うんだけど一応ね。

 

それで、あの夫婦の息子がベル君。義理だけど小さい時から育ててたみたいでさぁ。探索系のファミリア全部断られて商店街のスージー君が連れてきてくれてボクの眷属になったんだ。

 

そもそもボクの眷属にギル君とアルフィア君がいるのを知ってるのはギルドのロイマン君とエイナ君。あとファミリアだと2人とロキとデメテル、ゴブニュくらいかな。

 

だからあんまり言いふらしてほしくないなーって。」

 

 

 

フレイヤは思った。探索系全部断られたってウチも???

 

 

 

「そうだね。一覧表を貰って全部回ったみたいだしロキもフレイヤもあったよ。」

 

 

「……そう。これはちょっとその時の門番は説教ね。」

 

 

あの子私のファミリア来てるじゃないっ!!内心荒ぶっているフレイヤだった。

 

 

そのまま3人で食事をしながら話しをしているとうるせーまな板が来た。

 

 

「ファイたん!!フレイヤー!!そんで……誰や?こんな神おったか?」

 

 

 

「ロキ。君は胸と一緒で脳も無くなったのかい?」

 

 

 

「ど、ど、どチビやとぅ!?!?な、なんやねん!!なんであんたがそないなドレス着てんねん!!あ、あれか!!ギ!!ふが!ふが!!」

 

 

飛びかかって、すぐ様口を塞いで耳元で言う。

 

「ばかばかばか!ギル君はウチに所属してるのを内緒にしてるんだ!エルフがこぞって移籍してこないように!!」

 

 

落ち着いたロキは頷いた。手を離してやるとふぅーっと息を吐く。

 

 

「そうなんやな。まぁええわ。んで?珍しい3人やけど何の話してたん?」

 

 

「さっき言った子の話だよ。フレイヤのとこもヘディン君とヘグニ君がちょいちょい来て一緒に鍛錬してるからね。

 

一応違うファミリアだしフレイヤには言っておかないといけないと思ってさ。ヘファイストスはボクが連れて行かれて恩恵刻んだの知ってるし。」

 

 

 

「あれ面白かったわよねー。ギルが来てあんた気に入って恩恵を授けろって拉致していったもの。肩にこう担いでね。」

 

 

ヘファイストスの言葉とジェスチャーにロキは大爆笑してフレイヤもクスクス笑っている。

 

 

「ああ、そうや。あんたのとこのベルたんに謝っといてほしいねん。ウチも後日直接謝りに行かせてもらうけどな、ヘスティア。あんたんとこの子を危険な目に合わせてしもてほんまにすまん。」

 

 

「聞いてるよ。何も無かったしそれで良いとはならないよ。もちろん当事者のベル君が気にして無いし、両親も気にして無い。

 

でもボクにしたら可愛い眷属なんだ。だから思うところがあるのはわかるだろう?」

 

 

ヘスティアの怒り。それは子を大切にする母として当然のことだった。だからこそヘファイストスもフレイヤも、そしてロキも頷き、沙汰を待つ。

 

 

「……ダンジョン内はイレギュラーはあるだろうけど、絶対に子供達に油断、慢心しない様に伝えろ。それのせいで君のとこの子供達が怪我をしたり天界に還ったりしたらボクは悲しい。

 

他の子供達に被害が行くのも同じことだよ。それだけ。」

 

 

ヘファイストスはこの神友を誇りに思う。

 

 

フレイヤは私の子達にも同じように伝えようと、同じ女神として尊敬を。

 

 

そしてロキは………。

 

 

「必ず。必ず伝える。でもな、それだけじゃうちの気がすまん!!」

 

 

本気でこの善神に対して報いたいと思っていた。

 

 

「んー。じゃあベート君がボロボロになってたの許して。」

 

 

 

 

 

 

「あれはベートが悪い。」

 

 

一瞬で切り捨てられるベート。なんのこと?とフレイヤが聞いて、あった事を話して笑ってしまうフレイヤとヘファイストス。

 

 

 

 

 

 

ーーーさーて!ご飯食べようぜ!珍しいメンバーだけどこんなのも良いだろ!折角下界に来たんだ!楽しまないと!

 

 

 

満面の笑みで誘うヘスティアに三神は各々呆れたり、笑ったり、仕切んなや!と言ったりするがヘスティアの後に続く。

 

 

宴の後もロキが奢るわい!と誘って4神で呑みに行くことになる。

 

 

 

 

「聞いてるのー?ヘスティア!私も兎さんと仲良くなりたいのに!アルフィアにデコピンされて真っ赤に腫れたのよ!

 

ヘイズには治すなってミアが言ってるし!!

ヘディンとヘグニなんて無視して部屋出て行くし!!」

 

 

ぐでんぐでんに酔っ払ったフレイヤがいた。知らない名前が出てくるので困ってしまう。

ロキもロキで館は半壊されるしうちのエルフはみーんなあんたんとこに恐縮しまくっとるし!とぐちぐち言う。

 

 

「ヘスティア。あんた一気にトップファミリアね。」

 

 

「勘弁してくれよヘファイストス。ギル君とアルフィア君がボクの言う事聞くわけないだろう!?ベル君が自分から教会に住むって言ってくれなかったらまだひとりぼっちだったんだぞぅ!?

 

あ、でも孤児院の子とか商店街の子がヘスティアファミリアに入りたいって言ってくれてて嬉しいんだぁ。」

 

 

女神達も下界の子と変わらずストレスは溜まるようだ。フレイヤが寝てしまったので眷属の猪人に渡す。

 

 

「……。女神ヘスティア。感謝する。フレイヤ様のあのような姿を見ることができたのは初めてだ。」

 

 

「あはは。良いよー!君も良い子だね!フレイヤのことよろしく頼むよ。ヘディン君とヘグニ君にもよろしく伝えておいて?」

 

 

ペコリと頭を下げて帰るのを見送る。それを呆れた目で見てくるヘファイストスとロキ。

 

 

「あんたあの子誰か知ってるの?」

 

「うん。エルフ以外での唯一のレベル7の猛者君だろう?えっとボクは会ったこと無いけど、ギル君の配下のザルド君って子にボコボコにされたって聞いたよ?」

 

 

「「ちょっとまて!!ザルド!?ザルドって言った(つったか)!?」」

 

 

それからヘスティアを締め上げると聞きたくなかった事実が出てくる出てくる。誰が言ったのかパンドラの箱(アンタッチャブル)の名に偽り無し。

 

 

ロキは疲れて一応フィンには伝えるけどどうしようもないわ。うちなーんも知らないっと。と帰って行った。

 

 

「そ、そんなに凄い子なんだザルド君って。そうだ。ヘファイストス。相談があるんだけど。」

 

 

頭を抱えていたヘファイストスは首を傾げながら話を聞く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーベル君に、英雄へと至るであろうあの子に武器を作ってほしい。

 




なんとか書けた。

やっぱ掘り下げると長くなるけど許して?


あとヘスティア様の優しさ出そうとしすぎてフレイヤと仲良くなっちまった!!!


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それぞれの女神達

ギル様どうやってランクアップさせるか未だに悩んでる笑


感想と誤字脱字報告本当にありがとうございます。

分かりづらい表現をしているのをどうにかしたい今日この頃。


ーーーベル君は無理をする。無理ができてしまうんだ。鍛錬ですらアルフィア君に気絶させられるまで自分から続けていく。

 

ボクはギル君、アルフィア君、アイナ君、そしてベル君に救われた。救われたんだよヘファイストス。

 

特にベル君には一人で寂しい想いを楽しく、嬉しい想いに変えてもらった。あの子がなんで英雄を目指して、あんなに覚悟をしてるかわかるかい?

 

 

 

 

ーーー……わからないわよ。私の眷属ってわけじゃないし。でも下界の子だから憧れて、とか?

 

 

 

 

ーーーそうだよね。確かに憧れてるのは間違いないよ。でもボクは聞いたんだ。アルフィア君との鍛錬で気絶するまでしないで良いんじゃないか?って。

 

 

 

 

 

 

 

「神様。僕は強くなりたいです。あのトップファミリアのベートさんにだって認めてもらった。それはあの時、僕の英雄への憧れを、道を定めてくれた人がいたから。

 

王の中の王で、英雄の中の王。お義父さんがお義母さんと叔父さんを助ける為に挑んだ冒険。

 

それは4歳だった僕にすごく眩しくてそこに行きたいと思わせてくれた光景だったんです。

 

……僕の英雄像はあの強くてカッコいい家族を守りきる、幸せな光景を誰にも奪わせない英雄なんです。

 

だから強くないといけない。」

 

 

 

クリッとした深紅の瞳に炎を灯して真っ直ぐに自分を見てくる。あまりにも高い目標。

 

ボクの目から見てもギル君とアルフィア君は別格だ。その2人をまもりたい。それだけじゃなく、王であるギル君の物理的に守れない、手の届かないところすらも守る。

 

だからこそ必死で手を伸ばし続ける。

 

 

 

 

 

ーーーだからあの子には相応しい武器が、あの子を支える武器が必要なんだ。ヘファイストス。ボクに出来ることはなんでもする。

 

ボクの全てを賭けても良い眷属(ベル君)が現れたんだから。だから、だから頼むよ。もう指を咥えて見るだけは嫌なんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ヘスティアの母としての愛情、そしてベル・クラネルの優しく、純粋な覚悟を聞いてヘファイストスは己の中の炎が燃え上がるのを自覚した。

 

 

ここまで自らが打ちたいと思う担い手がいただろうか?ヘスティアは下界に降りてきてほぼ力を封印されている自分に打たせてくれるだろうか?

 

 

 

 

 

 

ーーー……ヘスティア。私が打ちたいって言ったらどうする?もちろんあんたの小さな英雄の武器。うちの一番できる椿に任せても良い。

 

 

 

 

ーーーそんなの椿君には悪いかもしれないけど一番信用してて一番好きなヘファイストスの方が良いに決まってるじゃないか!!

 

 

 

満面の笑みと共に抱きつかれる。ああ。こういうところが天界の時からこの大切な神友にはあった。

 

 

 

ーーーわかった。わかったから離れてちょうだい?私の武器が小さな英雄の相方になるなら、そんな嬉しいことはないわ。

 

要望は何?ヘスティア。

 

 

 

ーーーナイフか短刀ってギル君は言ってたよ。それと鍛治をする炎は僕の炎でやってほしい。あの子には聖火(ウェスタ)が宿ってるんだ。

 

 

 

 

ーーー聖火(ウェスタ)ですって!?どんだけ規格外なのよ…。わかったわ。やってやろうじゃない。

 

 

気炎を上げ、本気で鍛治をする鍛治神と優しい炎を灯す炉の女神が共にいずれ英雄になる子供の為に武器を作成し始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「集まってもらってすまない。」

 

 

 

 

「てめぇの為に集まったんじゃねぇ。クソ猪。要件だけさっさと伝えて解散しろ。」

 

 

「「「「そうだそうだ。ささっと終わらせろ。」」」」

 

 

「口だけは達者な愚物め。黙って聞いていろ。」

 

 

 

「うるせぇよ陰険エルフ。」

 

 

「誰の真似だそれ。」

 

 

「口下手。」

 

 

「メンタルクソ雑魚は黙ってろ。」

 

 

 

「羽虫は喋んな。そもそもそれ誰の真似だ。元がクソダセェからやめやがれ。」

 

 

 

また始まったとオッタルはため息を吐きそうになるがとんでもない殺気が会議室に襲い掛かる。

ガリバー兄弟は固まってしまい、アレンは毛を逆立たせている。

 

殺気の出所を見ると瞳孔が開いているヘグニとメガネを握りつぶしているヘディンがいた。

 

 

 

 

「……俺がダサいのは、別にいい。でも元がクソダサい?ギル様を侮辱したんだよね?殺してやるよ。」

 

 

「愚猫が。誰に対して物を言ってやがる。有象無象の雑魚の分際で調子に乗るなよ?」

 

 

 

オッタルは気がついた。この2人はフレイヤ様に忠誠を誓っておらず、フレイヤファミリアの中でも異端である。

 

その中で忠誠を誓っている王。フレイヤ様から聞いたことがあるが、エルフの王であり、かの静寂を伴侶として迎えている下界の王。

 

その王を間接的にとはいえ馬鹿にされたのだ。だがこれからフレイヤ様が来られるのに血まみれはまずい。

 

 

 

「ヘグニ、ヘディン。すまないがフレイヤ様がもう来られる。それが終わってからにしてほしい。それとアレン。今のはお前が悪い。間接的とはいえフレイヤ様を馬鹿にされればお前も同じことをするだろう。」

 

 

「ちっ。私はメガネを取りに一度部屋に戻る。ヘグニ。抜け駆けするなよ。」

 

 

「うん。フレイヤ様のお話が終わったら殺す。」

 

 

アレンは舌打ちをするがどう見ても痩せ我慢だ。ガリバー兄弟ですら冷や汗を流している。

 

「アレン。死ぬなよ。」

 

 

「……うるせぇ。」

 

 

 

ヘディンも戻り、シーンとした部屋の中でフレイヤ様が来られるのを待ち続ける。あまりにも空気が重い。

 

 

「……そういえば。昨日フレイヤ様が神々の宴に行かれたんだが少し珍しいことがあった。」

 

 

正直これは自分の宝物として黙っておこうと思ったが、少しでも空気を良くしようと勝手に口が動いた。

 

 

「宴を最後まで楽しんでおられたのも珍しいのだが、その後に女神だけで酒を飲みに行かれたのだ。どうも女神ヘスティアがフレイヤ様の愚痴を聞いて慰めてくれていたようだ。」

 

 

「???女神ヘスティア??」

 

 

「誰だ??」

 

 

「ヘスティアファミリアなんてあったか?」

 

 

「知らない!」

 

口々にガリバー兄弟が言うが、ヘディンとヘグニはピクリと反応していた。

 

「フレイヤ様は羽目を外されたのか眠ってしまってな。女神ヘスティアが女神ロキと女神ヘファイストスを放って俺に伝えに来てくれたのだ。その時の言葉に感動してしまった。」

 

 

 

ーーーあ、君がオッタル君だろ?フレイヤ寝ちゃったから連れて帰ってあげてくれないかな?美の女神に手を出す馬鹿はいないと思うんだけどね。

 

でも君達はフレイヤが好きなんだろー?なら他人に寝顔なんて見せたくないだろ?ボクもフレイヤのとこの子が嫌な思いするのは嫌だしね!

 

 

 

おお!とガリバー兄弟、そしてアレンですら耳と尻尾をピクピクさせる。ヘディンとヘグニの雰囲気も柔らかくなってきた。

 

 

「かの女神は善神中の善神だと思った。そもそも女神ロキや女神ヘファイストスとフレイヤ様を同席させられるのは女神ヘスティアくらいのものだろう。

 

それとヘグニ、ヘディン。女神ヘスティアからよろしく伝えてほしいと伝言を預かった。確かに伝えたぞ。」

 

 

ガリバー兄弟とアレンはバッと2人を見る。

 

 

「……ギ、ギル様の主神だから当然。ヘスティア様は俺も大好き。」

 

 

「ふっ。かの女神らしい。他派閥の我らが訪問しても笑顔で迎えてくださる。とても暖かいお方だ。」

 

 

とても誇らしそうに女神ヘスティアのことを語る2人に固まるガリバー兄弟とアレン。あれ?こいつらフレイヤファミリアだよな?とか言うな。

せっかく空気が柔らかくなってきたのに。

 

 

フレイヤ様がちょうど来られたので全員椅子に座ってフレイヤ様を見る。

 

 

 

「ごめんなさいね。忙しいのに。昨日の宴で私も思うことがあったからちょっとファミリアとして徹底して欲しいことがあるの。」

 

 

珍しい。フレイヤ様がファミリアの事で口を出してくるのは滅多にない。

 

 

 

「まず一つ目ね。イレギュラーとかあるだろうけどダンジョン内では油断も慢心もしないこと。

 

ロキファミリアがミノタウロスを逃した話聞いたでしょ?あれルーキーの子が襲われちゃったらしいのよ。

 

何よりあなた達がそれで悪く言われるのは嫌だし、怪我をしたり天界に還ったりするのはもっと嫌だから。」

 

 

ここまで我らの身を案じてくれるとは…!!フレイヤ様に今一度忠誠を誓おう。

 

 

「二つ目なんだけど。こっちの方が問題よ。兎さん、ウチに面談きてたのに門番してた子が勝手に追い返してるの!!

 

私知らなかったし、それでシルとしてちょっかいかけてアルフィアにデコピンされたのよ!!」

 

 

兎さん???となるガリバー兄弟とアレン。

 

 

「……フレイヤ様。もしや御子息を勝手に追い返した有象無象の愚か者がいたということですか?」

 

 

「べ、ベル君俺と同じファミリアになってたかもしれないの?」

 

 

「そうなのよ!!それでね兎さん全部の探索系のファミリアに断られたんですって!タケミカヅチのとこだけタケミカヅチがちゃんと対応してたみたいなのよ。

 

ヘスティアがそれについて本気で怒ってて。」

 

 

 

「「殺す。」」

 

 

またか!!何度か見せられたあの少年についても白黒エルフの地雷なのか!!

 

 

「まて羽虫。誰だその兎ってやつは。」

 

 

「ヘスティアファミリア。2週間程前に冒険者登録したレベル1のベル・クラネル。ギルガメッシュ王とアルフィア王妃の義理の息子で暴喰のザルドの弟子だ。

 

そして我らの英雄たるに相応しい子だ。」

 

 

「べ、ベル君は、毎日アルフィア様に止められても気絶するまで挑む。それに、俺らが挨拶に行った時に言ってくれた。」

 

 

 

 

ーーーお義父さんの配下??じゃあザルド叔父さんと一緒ですね!僕は家族を守る為に。お義父さんの手が届かないとこを全部守る為に英雄になります。

 

だからヘディンさんもヘグニさんも守れるくらい強くなります!!

 

 

 

 

アレンはアホくせぇと呟く。ガリバー兄弟ですらレベル1が何言ってんの?と言う。

 

 

「だが御子息は至るだろう。見ていない貴様等に分かれと言う方が無理な話。」

 

 

「ふふっ。お、お前らじゃ相手にならない。ベル君は絶対に強くなる。」

 

 

ヘディンは目を瞑り思い出しているのか口角を少し上げ、ヘグニは宝物を自慢するように笑う。フレイヤ様はそれを見てくすくす笑っている。

 

 

 

「まぁ兎さんの話は時が来ればわかるわ。それとヘディン。門番の件お願いしても良いかしら?」

 

 

「かしこまりました。今日中に締め上げておきましょう。」

 

 

「あ、それとザルドの話が出てたけれど、さっきロキから聞いた話もしておくわね?貴方達にとって厳しい話になるけれど認めなさい?」

 

 

あまりにも弱すぎるオラリオの次代を思ってやったこと。ギルガメッシュ王の勅命だったこと。アストレアファミリアが壊滅したのは我々の怠慢と弱さのせい。

 

 

項垂れるしかない幹部。いや白黒エルフはそうでもないが。というかコイツら知っていたな?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーロキに呼ばれて幹部全員とレフィーヤが集められた。

 

 

 

「すまんな。というかベート大丈夫なんか?顔色悪いで?」

 

 

 

「……今朝もあの音ババアに喧嘩売りに行ってボコられた。一発も当てられねぇ!!!クソがっ!!!」

 

 

激おこやん。この子もえらい負けず嫌いやしなぁ。しっかし楽しそうで何よりや。でも音ババアはやめとき。

 

 

「はは。ベートがそこまで悔しがるなんてね。僕も何も考えずに戦いたくなってきたよ。それでロキ。どうかしたのかい?」

 

 

 

「あー。すまんすまん。ミノタウロスの件についてどチビ、ヘスティアからの伝言や。イレギュラーはあるやろうけどダンジョン内で油断や慢心はすんなやと。

 

 

……。理由は他派閥でもあんたらが怪我したり、天界に還ったらヘスティアは悲しいからや。あのどチビはほんっっっまに善神や。」

 

 

 

「ふむ。やはりかの女神は素晴らしいな。ロキ。少しは見習え。」

 

 

「まーヘスティアなら言いそうだよな。音ババアですらヘスティアのこと尊敬してるっつってたしよ。ギルもヘスティアで良かったっつってるくらいだからな。」

 

 

 

「女神ヘスティアに最大の感謝を。今回は助かったが次もうまくいくなんてことはない。僕らの慢心が招いたことだ。絶対に忘れないように。」

 

 

全員が返事をする。そんな中ロキが苦い表情で口を開く。

 

 

「もう二個話あるんやけどな一個は7年前のザルドの件や。あれ、ギルも噛んどるらしい。オラリオの次代の冒険者が弱すぎて、黒竜とかなんとかいうレベルやなかったからザルドを派遣したんやと。

 

それに気づいとったんはウチやったらリヴェリア。あとはフレイヤんとこの白黒エルフだけや。

 

やからこの3人はレベル7なんやろな。」

 

 

僕は人生で一番と言って良いくらい苦い顔をしてる自信がある。ガレスも同じ顔をしていた。

 

 

「あれは本当に恥ずべきことだよ。」

 

 

「え?じゃあギル様が闇派閥の黒幕ってこと?あたしそれは無いと思うだけどなー。この前一緒にじゃが丸君食べたし!」

 

 

奢ってくれた!!アルフィアさんと食べさせ合いした!と元気よく言うティオナ。いやほんとに懐いてるな。あの2人も可愛がっているし。

 

 

「……私も、ギルに買ってもらったもん。アルフィアさんはベルはやらんって怒る。」

 

アイズもか!!うちの幹部なのに餌付けされてる??女神ヘスティアはじゃが丸君の屋台で働いていると聞いてるが、まさかじゃが丸君の神なのか?

 

 

「あ、あの、私もティオナさんといた時にリヴェリア様の弟子ということでご馳走していただきました。それにアルフィア様に特訓もしていただいて。

 

ベルとは姉弟と思えって言われましたけれど。

 

 

えへへ。全力の魔法って一言で消えちゃうんですよ?エルフって魔法が取り柄なのにどうすれば良いんでしょ??」

 

 

涙目になっているレフィーヤ。リヴェリア。わかるぞ。そこを越えてこそ私の弟子だ。じゃないよ。

 

ロキも予想以上に幹部が交流していることに驚く。

 

 

 

「がはははは!!リヴェリアになんと言われるか分からんかったから言っておらんかったが儂もギルとは酒を飲みに行ったりするのぉ!

 

それよりギルは本当にエルフか?儂とスモウをしたり子供らを肩車したりしとったぞ?」

 

 

 

ガレスもだった!!というかハイエルフとスモウって何をしているんだ一体!!!

 

 

「よーガレス。ギルはどうだったよ?」

 

 

「がはははは!!あれでレベル4はおかしいわい!華奢なエルフとは思えん程筋肉もついておるし儂とちょっとの間じゃが力が拮抗しておった。

 

そうじゃそうじゃ。ロキよ。デメテルファミリアから野菜と果実が届くぞ。ギルと一緒に畑を耕す勝負をしてのう!

 

汗をかいて飲む酒は最高じゃったわい。」

 

 

 

「何してんねんあんたもギルも。ダンジョン行きーや。畑とじゃが丸君だけやんか。」

 

 

ロキのツッコミにこれほど助けられたことは無いんじゃないだろうか?本当に何をしているんだ!!

 

 

「「「「ロキ。分かってないな。」」」」

 

 

リヴェリア、ベート、ガレス、ティオナが口を揃えた。リヴェリアが説明するみたいだ。

 

 

「そもそもギルは王だ。王としての責務は下界の繁栄と子供達の平和。だからこそこの多種多様の種族がいるオラリオで会話をして、民の暮らしが良くなるように模索している。

 

ダンジョンに潜るのは王として強さも必要だからだ。」

 

 

「大体前提が間違ってんだよ。冒険者はアホみてーにダンジョン行って強くなりゃ良いけどな。ギルはちげー。アイツは本当に下界の全ての住民を背負うつもりだ。

 

俺ですらあいつの作る国は楽しそうでついて行きたくなるぜ?」

 

 

「そうじゃなぁ。儂は正直エルフは好かんかったがギルが王として君臨して統治してくれるなら住みたいのぉ。」

 

 

「あー!私も!ギル様の国に住みたい!」

 

 

 

これがカリスマってやつなんだろうね。エルフにとって相容れないとまでは言わないが仲が良くないドワーフのガレス。

 

相性が良くないアマゾネスのティオナ。

 

単純にクセの凄い狼人のベート。

 

ここだけでも凄いのにアイズもソワソワしてリヴェリアの服を摘んでぐいぐい引っ張っている。

 

 

 

 

「はー。ギルは凄いなぁ。あ、そうやもう一つだけ。これが一番うちの中で問題や思っとる。」

 

 

ロキは少し怒気を放ちながら細い目を開いて口にする。

 

 

「ベルたんがオラリオにきてファミリア探しとる時に探索系ファミリア全部に門前払いされとる。タケミカヅチんとこはタケミカヅチがちゃんと対応したらしいから全部とはちゃうか。

 

 

そこにはもちろんウチのファミリアも入っとる。」

 

 

 

 

 

「「「「「は?あ?ほう?はぁ?え?」」」」」

 

 

 

 

「……なんだって?どういうことだい?いや、分かってる。分かってるんだけどね。どうも感情のコントロールができないみたいだ。」

 

 

 

 

幹部全員が顔を顰めるか、額に青筋を作っている。

 

 

 

「どの雑魚だそいつは。強者が見下すのは別にいい。それで立ち上がれなけりゃそれまでだ。だがよ。オラリオに来てファミリアを探してたっつーことは一般人だったクラネルを追い返してんだよなぁ?

 

その雑魚はよぉ!?

 

まだスタートラインにも立ててねーやつを見下す気はねーぞ俺はよぉ!!」

 

 

「ああ。ベート。お前の苛烈なまでの実力主義は知っている。そしてその矜持もな。必ず通せと通達している筈なんだがな!!どこの馬鹿者だ!!ティオナ!!ティオネ!!アイズ!!レフィーヤ!!

 

 

探し出してここに連れて来い!!」

 

 

 

4人は全員思うところがあったのかすぐに走って出て行った。

 

 

 

 

 

5分程でボロボロの男が引きづられて来た。ティオナが足を持って放り投げてくる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーその後、彼の姿を見たものはいなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーなんつって!リヴェリアやフィン。そしてベートにガレスまでブチ切れていて真っ青になった門番はウチとフィンに連れられ、ヘスティアファミリアに詫びを入れにいった。

 

 

 

 

 

ーーーいやいやいやロキ!?何してるのさ!!別に怒ってないよ!

 

 

 

ーーーそうですよ!!というか、断ってくれたおかげで神様と、ヘスティア様と会えたしお義父さんやお義母さんと一緒のファミリアに慣れたので感謝してます!!

 

 

 

 

あっかん。この2人とおったら浄化される。フィンですら目を閉じて天を見上げとるし。

 

 

ギルとアルフィアは不在かいな。え?ダンジョンで暴れてる?こっわ。

 

 

 

フィンはすぐにその話を聞いて門番を連れて帰り、槍を持ってベートと18階層に行った。参加するらしい。昔みたいな顔になっとったなー。

 

 

うち暇やしどチビ茶出してや。

 

 

ーーーいいけどあの門番君にもうちょっと優しくしてあげなよ。

 

 

ーーー人数多いとな、あんなアホも出てくるんや。締めるとこ締めとかんとな。ここはギルとアルフィアおるしアンタら2人で浄化できるから大丈夫や。

 

 

ーーーなんでロキ様僕の浄化回復魔法知ってるんですか??

 

 

 

なんて??聞いてなかったことにしよ。あーこの紅茶美味いわぁ。

 




次はギル様主体でかきまーす!


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庭の植物の処理は庭師の仕事よ

遅くなり申し訳ございません。

私事ですが、いつも笑顔の父が他界しました。

長男ですので色々と引継ぎや母、妹の精神ケアなどをしていてとても更新する事ができませんでした。

まだまだ親孝行がしたかった。後悔も出てきますが、これからのことを考えて進み、天国でも笑って過ごすであろう父に良い報告ができるよう精進していこうと思います。


暗い話はここまでで、これからもこの作品をよろしくお願いします!


神の宴に向かったヘスティアはヘファイストスと合作でベルのナイフを作り、それをこっそりと見せてきた。

 

 

 

ーーーほう。見事なナイフだ。ベルの物で無ければ我の宝物庫に保管したいレベルの出来ではないか。

 

 

 

ーーーふむ。これはヘスティアの聖火か?私達も恩恵を貰っているから多少なりとも感じられるな。

 

ヘスティアの加護、いや祝福だったか?このナイフにも組み込まれているようだ。

 

 

 

 

ヘスティアはとても嬉しそうにナイフを見ていた。ベル君は喜んでくれるかなとソワソワしている。

 

ヘスティアがくれたナイフの時点でベルは喜ぶだろう。ベルもヘスティアのことを本当に信頼している。

 

我が息子の為にここまでの物を作ってきたのだ。多少のお膳立てがあっても構わまい。

 

 

 

 

「ヘスティア。明日は怪物祭だ。ベルには休めと伝えておいてやるから2人で出かけてくると良い。

 

我とアルフィアも誘われるだろうが、何か理由をつけて断ってやる。というかアルフィアが騒がしいのが苦手だからな。

 

少し離れたところで夫婦水入らずで過ごすとしよう。良いなアルフィア。」

 

 

「…あの子の誘いを断るのは辛いが、ギルと2人で居られるならば良い。ヘスティア。あの子を頼むぞ。」

 

 

 

「ぎ、ギル君!アルフィア君!!任せておくれ!ベル君は絶対にボクが守るよ。だってあの子も君達もボクの大切な子なんだから!」

 

 

ヘスティアの言葉に2人して微笑んでしまう。最初は打算で拉致したが今では本当にヘスティアが我らの主神で良かったと心から思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ヘスティアの服を2人で選んでやり、ベルと約束させて送り出す。手を繋いで歩く2人は兄と妹のようだ。

 

 

 

 

 

 

「さて、アルフィア。我等もデートと洒落込むか。」

 

 

いつまでもウブなアルフィアは頬をほんのりと染めて、そろ〜っと手を繋ぐ。愛らしいやつだ。

 

 

闘技場の方はあまりにも人が多く騒がしいので、2人でダイダロス通りにある孤児院に屋台の食べ物をたくさん買って行く。

 

我等に気づいた子供達が走ってこっちにきて抱きついてくる。頭を撫でてやり、全員に荷物を持たせて孤児院の中に入る。

 

 

「…マリア。差し入れだ。」

 

 

「アルフィア?ギルガメッシュ様まで。すみませんお出迎えできずに。」

 

 

「構わん。この宝達が出迎えてくれた。今街は祭りで騒がしい。宝達にも多少なりとも祭りの空気を味合わせたくてな。

 

色々買ってきたから食べさせてやれ。マリアも遠慮などするな。アルフィアの友に何かあっては我も心苦しいのでな。」

 

 

子供達は全員でお皿に買ってきた物を乗せていき、小さい子達は我等で抱っこしたり面倒をみる。

 

用意ができたところでパーティーを始めよう。

 

 

 

 

わー!きゃー!と大喜びの子供達を見ながらマリアと座り、3人でティータイムをとる。アルフィアはベルのことを。マリアは子供達のことを楽しそうに話していく。

 

我は万が一にも宝達が怪我をしないように見ながらその会話を耳に入れ、幸せを享受する。

 

 

 

「ギル様!私達ね、アルフィアお姉ちゃんもギル様もベルお兄ちゃんも大好き!ね!みんな!」

 

 

その子の言葉に全員が頷き、口々に大好きと言って飛びついてくる。可愛い宝よ。アルフィアも微笑んで抱っこしている。

 

 

 

 

「む?地震か?子供達よ。慌てずにアルフィアの近くにいろ。アルフィア、マリア。我は少し外を見てくる。」

 

 

揺れが強いところ、そして悲鳴が聞こえる方向に向かい走る。屋根を渡り走って行くと闘技場の近くに蛇、いや植物がうねうねとしており、そこにはロキファミリアのメンバーとベルとヘスティアがいた。

 

 

「ベル。これはなんだ。」

 

 

「あ、お義父さん!えと、モンスターが地面から出てきたらしくって、この子が取り残されてたから助けた!

 

お義父さんの手の届かないとこで守るのも僕の役目だから!」

 

 

「ごめんよギル君。ボクはこの子を助ける為にベル君にお願いしたんだ。ボクは子供達を守護する女神だ。だからこそ見過ごせなかった。」

 

 

「構わん。ベルは英雄として着実に進んでいる。そして子供は我が民にして宝。ヘスティアが同じ様に思ってくれていることを嬉しく思うぞ。」

 

 

ロキファミリアが戦っているのを見ながら話していると子供がキュッと我の服を掴む。

 

 

「ギル様。ベルお兄ちゃん。ヘスティア様、助けてくれてありがとぉ!あのね!お母さんとはぐれちゃったの!

 

あのお姉ちゃん達は大丈夫??」

 

 

「うむうむ。では我とお母さんを探すとするか。ヘスティアもついてこい。ベル。お前は我とアルフィアの息子で英雄となる男よ。

 

したいようにやれ。我が許可してやる。」

 

 

「……はぁ。そうだね。ベル君。今更だけどこのナイフはプレゼントだよ。君が英雄になる手助けをしてくれる【ウェスタ・ナイフ】だ。」

 

ベルは覚悟を決め、走って行く。その後ろ姿を見ながら子を肩車してやりヘスティアと共に歩く。

 

ヘスティアは自分の眷属が、やっとできた子が危険なところに行くのは嫌だったのだろう。それでも応援するというのは中々できるものではない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「レフィーヤ!逃げて!!」

 

 

「避けなさいっ!!」

 

 

 

モンスターのツタがこっちに迫ってくる。まるでゆっくり時が動いているみたいだ。魔力を練り上げて、魔法を撃とうしたらこっちにきた。回避出来ない。

 

後衛職の自分では耐える事も、ここからどうすることもできない。

 

 

 

 

 

 

 

「うぉぉぉぉぉぉ!!!レフィ姉に手を出すな!!!」

 

 

 

 

 

白兎が飛び込んできた。白炎を纏ったナイフを持って。

 

 

 

 

 

「「「ベルっ!?!?」」」

 

 

 

ツタを切り裂いていくが、アビリティ、何よりもレベル差がありすぎる。どんどん押し込まれているがベルは見ているこっちが分かるくらい歯を食いしばって耐える。

 

 

「っっっは!!ベル!!もう少し耐えて!!【誇り高き戦士よ、森の射手隊よ。押し寄せる略奪者を前に弓を取れ。同胞の声に応え、矢を番えよ。帯びよ炎、森の灯火。撃ち放て、妖精の火矢。 雨の如く降りそそぎ、蛮族どもを焼き払え】

 

『ヒュゼレイド・ファラーリカ』!!!!」

 

 

 

ツタを2本必死で抑え込むベルと他の動きを止めてくれるティオナさん、ティオネさん。そしてアイズさんがいたおかげで魔法が発動できた。

 

 

炎の矢が大量にモンスターへ殺到する。燃え尽きたモンスターの後には何も残っていなかった。

 

 

 

 

 

 

 

ーーーベル!ベル!大丈夫ですか!?

 

 

 

ーーーえへへ。腕の骨にひびが入ったくらいです。レフィ姉が怪我無くて本当に良かった。アイズさんやティオナさん、ティオネさんは大丈夫ですか??

 

 

なら手伝ってください。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ベルに言われて周りの怪我をしている住民達を集めた。

 

 

 

「ありがとうございます!皆さーん!今から怪我治しますから動かないでくださーい!

 

【燃え上がれ 燃え上がれ 汝を救おう 厄災は燃やし尽くそう 私は既に救われた ならばこの身は父の為 母の為 家族の為に。

この白炎の輝きに勝るものはありはしない。

全てを救ってみせよう。私はアルゴノゥト。さぁ前に進もう。】

 

『マキシマ・ウェスタ』」

 

 

 

住民が白炎に包まれる。白炎に包まれている住民はみんな安心しきった顔をして、己の怪我が無くなっているのに驚いている。

 

ベルはニコニコしながら子供達からベルお兄ちゃんベルお兄ちゃんと抱きつかれているのを享受していた。

 

 

 

 

「…え?あの子レベル1よね?あのクソモンスターと少しでも近接で戦えてアミッドみたいな魔法も使えるわけ?」

 

 

「ベルはレベル1だよ!やっぱギル様とアルフィアさんの息子だしすごいんだって!」

 

 

「…うん。ベル、すごい。」

 

 

「うー!!お、弟に守られるなんて!!アルフィア様にバレたら…!!」

 

 

 

4人はベルの魔法を知らなかったので驚きに満ち溢れていた。

 

 

 

「……これは?ティオナさん。怪我人がいるとお聞きして来たのですが?」

 

 

「あ!アミッド!!えとね、ベルがみんな魔法でぶわーって治してたよ!」

 

 

 

ベル??

 

 

首を傾げると四人は指差す。白兎のような少年が子供達に抱きつかれ、大人達にお礼を言われながら頭を撫でられていた。

 

 

「彼は治癒士なのですか?レベルは?」

 

 

「違うよー?冒険者でレベル1!近接もすっごく強いよ!それとレフィーヤの弟!私の弟みたいなもの!」

 

 

アミッドは自分の頭に疑問符が大量に出ているのがよくわかった。ティオネが妹のあんまりな説明にため息を吐いて説明する。

 

 

ーーーごめんなさいねアミッド。この馬鹿の説明じゃわからないでしょ?あの子はベル・クラネル。最近オラリオに来た正真正銘のレベル1よ。

 

私も信じたくはないけどね。治癒魔法も使えるみたい。さっきはじめて見たから詳しい事は何も知らないわ。

 

あとあの子の両親がオラリオにいてレフィーヤとあの馬鹿とアイズもかしら?は、可愛がられてるのよ。

 

レフィーヤは母親に姉弟と思えって言われたみたいでベルもレフィ姉って慕ってるわね。あの馬鹿は知らないわ。

 

 

 

 

レベル1でこの人数を治癒できる回復魔法の持ち主。すっごく欲しい。ちょっと話かけてみよう。

 

 

 

「もし。ベル・クラネル様でよろしいですか?私はディアンケヒト・ファミリアのアミッド・テアサナーレと申します。少々お話できませんか?」

 

 

くりくりした赤い瞳と幼いながら可愛い顔立ちをしている少年はこくこく頷いてくれる。

 

その仕草に思わず笑みを浮かべてしまう。

 

 

「僕はヘスティア・ファミリア団長のベル・クラネルです!よろしくお願いします!」

 

 

可愛い。とても可愛い。この子が一緒のファミリアで居てくれれば精神的に今の3倍は働ける。

 

 

「私のことはアミッドで構いません。ティオナさん達にお聞きしましたがベルさんは治癒魔法が使えると。」

 

 

「えへへ!正しくは超広範囲浄化回復魔法ですっ!僕のお義父さんの方がすごいんです!だから早く追いつきたくて!!」

 

 

超広範囲浄化回復魔法……???私と同じような魔法ですか??それでいてティオナさん達第一級冒険者が認める程の近接戦闘もできる??

 

お父上はそれよりもすごい??なぜ私達のファミリアに……!!

 

 

「そうですか。私達のファミリアはポーションなどの精製の他に、怪我をした冒険者、住民の方々の治療をしております。

 

是非時間がある時で結構ですのでバイトという形でお父上とご一緒に手伝ってはもらえないでしょうか?」

 

 

「はい!もちろんです!僕もお義父さんも下界の民は全て救うって決めてますから!今までも、今からも助けてくれてありがとうございます!」

 

 

ベルのこの言葉に聞いていた住民達もありがとう!とお礼を言ってくれる。私のして来たことはこれほど感謝される事ですか。

 

救える命を救うのが私達の役目。それを全うしただけなんですが…

 

 

 

 

 

「ベル。終わったのか?」

 

 

「あ!お義父さんっ!!」

 

 

 

 

 

 

 

ーーーギル様!!こんにちは!!ベル君には本当に助けていただき、感謝しかありません!!

 

 

ーーーギル様!!ベルお兄ちゃんが怪我治してくれたー!ありがとう!

 

 

 

ーーーぎ、ギルガメッシュ様。すみません。私、姉なのにベルに守ってもらっちゃって…。

 

次は絶対にベルを姉の私が守ります!!

 

 

 

ーーーギル様〜!!ベルほんとすごいねー!

 

 

 

ーーーギル…。じゃが丸くん。

 

 

 

 

 

 

「ふははは!!そう一気に言ってくれるな。ベルは我とアルフィアの自慢よ。そう言ってくれると我も嬉しいものだ。

 

レフィーヤ。貴様のその覚悟は見上げたものよ。ならば己自身を裏切らぬよう励め。姉上やアルフィアと訓練するがよい。

 

ティオナ。アイズ。それとティオネもついて来い。我がじゃが丸君を馳走してやろう。」

 

 

 

 

???え???ベルさんのお父上は今話題のギルガメッシュ王??ちょっと待ってください。混乱しています。ベルさん手を引かないで。ギルガメッシュ王に説明するの待ってください。

 

 

 

「ほう?聖女と呼ばれている子か。よい。手に負えん民が出たら我かアルフィア、ベルに声をかけることを許す。

 

貴様等が今まで我が民を救ってきたのは一目瞭然。ならば王として褒美を取らさねばなるまい。アミッドといったな。貴様もついて来い。」

 

 

あれよこれよと連れられてじゃが丸君をご馳走してくれた。そしてギルガメッシュ王の住んでおられる家を教えてもらい、いつでも来いとおっしゃってくれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーう、嘘だろうアミッド。あの静寂とハイエルフの王とその息子に応援を頼んだじゃと?

 

……金にならん。じゃがどうしようもない。特に静寂の機嫌を損ねたら神でもあやつは容赦せん。

 

 

 

どうやらディアンケヒト様に対しての最高の手札を手に入れたみたいだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーベート。ついて来い。あの花のようなモンスターがどこから来たのか探しに行く。ロキも来るのか?

 

 

 

 

 

 

 

ーーーいいけどよ、ギルが直接動くのか?

 

 

 

 

ーーーモンスター自体は我が庭に生えた植物と同等。ならば王たる我が剪定をせず、庭師がすべきこと。

 

だが庭を荒そうとする痴れ者には王自ら罰を与えねばなるまい。

 

特に民を傷つけたことの落とし前はつけてもらわねばな。

 

 

 

ーーーギルがおるんやったら安心や。せやけどうちも気になるわ。闇派閥の生き残りか、他の何かがやらかしとるか。

 

うちはトップファミリアや言われとる。ほんならトップに相応しい行動はせなあかん。

 

 

 

 

 

 

ーーーふっ。貴様もらしくなって来たな。行くぞ。

 




少し短いですがどうかご勘弁を。


少し更新速度が落ちるかもしれませんが続けていく所存ですのでこれからもよろしくお願いします。


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…これだから神は。

感想を書いてくださった方々。

本当にありがとうございます。とても励みになりました。

とはいえやる事もまだ増えたので不定期更新となりますがこれからもよろしくお願いします!


ーーー時が巡れば良くも悪くも変化が訪れる。その変化にいち早く気づいて対応できねば置いていかれる。あるいは手遅れになる。

 

それは冒険者だけでなく生きとし生けるもの全てに当てはまるであろうよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ギル。ここだ。あの花のモンスターの臭いがしやがる。」

 

 

 

ベートに匂いによる追跡をさせ、ロキを守りながら歩くと地下水道に行き当たった。

 

 

「嘘やん!うち濡れるん嫌や!ベートおんぶ!」

 

 

「っざけんな!くそ!おい!降りやがれ!!」

 

 

 

「仲が良くて何より。神々なんぞ我が民ではないから消え去ろうがどうなろうが知ったことではないが、ロキは別だ。姉上やティオナ達の主神であるからな。

 

我の民が大切に想っているならば別よ。ベート。我が会敵したら駆除してやるからロキを守れ。」

 

 

「ちっ。ギルが言うなら仕方ねぇ。ロキ。そのまま大人しくしてろ。」

 

 

ーーーいやベートめっちゃギルの言うこと聞くやん。ウチのファミリアでここまでベートの手綱取れるやつおらんくない?

 

 

改めてギルのカリスマを見せつけられてロキは唖然としてしまう。

 

 

ベートが案内し、ロキと喋りながら歩くと空洞になっている場所にモンスターが2体程いた。

 

 

 

「ロキ。降りて下がってろ。背負ってると守りにくい。」

 

 

頷き、降りようとするとそのままで構わんとギルが口にした。

 

 

「ベート。貴様には見せていなかったな。我の基本的戦術を。圧倒的物量で粉々にする。だ。

 

王の道に雑種はいらん。我の進む道は常に真っ直ぐ。それが王道にして覇道よ。」

 

 

 

パラララッと黄金の波紋があらゆる空間に浮かび上がり、そこからレベル5のベートですら目で追うのがやっとの速度で武器が射出される。

 

轟音を鳴り響かせ、食人花は消滅していた。

 

 

 

「……。ギルよぉ、詠唱したか?」

 

 

「これは無詠唱だ。我にとってこの王の財宝は生まれた時からそこにあったものだからな。言ってしまえば幾らでも詰めれるカバンから物を出してぶん投げているだけの魔法だ。」

 

 

「ギル。近接戦闘いるか?」

 

 

「戯け。我は下界の王。ベート。貴様やガレスはステゴロのできぬ王について行こうと思えるか?」

 

 

「……そういうことかよ。確かにテメェは王様だ。ロキのこと任せていいか?俺は下の方を見てくる。

 

……王様だけに働かせたなんて言われたくもねぇしババアと音ババアにバレたら殺されちまう。」

 

 

ベートが下に降りて行ったのをみてロキは口を開く。

 

 

「なぁギル。あんたホンマに王様やな。うちから見てもめっちゃカッコええわ。」

 

 

「当然であろう。民無くして王にならず。民の信を得られぬ王などおらぬ方がマシだ。我は民が笑って過ごせる世を作りたい。

 

子らにはベルの様に健やかに成長してほしい。もちろん光あれば闇もある。だがなロキ。我は光に手を伸ばせる子らの手を掴み、引き上げてやりたいのだ。

 

そしてその子らが成長した時同じようにしてやってほしい。我が生きている間にならなくとも、未来ではそれが普通なのだと言える世になって欲しいのだ。」

 

 

 

ギルは未来を見据えて行動している。悠久の時を生きるウチらにとってそれはとても眩しく、下界の未知とも言える。

 

ベル・クラネルやアルフィアを見ていても思う。ヘスティアファミリアは本当にすごいファミリアだと。

 

ウチらも負けてられへんなぁ。

 

 

 

 

 

 

 

ベートが戻り、特に何も無かったのを受けて一度黄昏の館に戻ることにした。今後の動きについても話し合うのでロキの部屋で紅茶を飲んで幹部共が来るのを待つことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーそうか。闇派閥が関係しているかはわからないが、ダンジョンからモンスターを地上に運んでいる何者かはいるということだね?

 

 

 

ーーーそやな。フィンの考えの通りや。後は……

 

 

 

 

ーーーダンジョンの入口が一つでは無い。我はオラリオに来て浅いがあの雑種を運ぶには入口からでは目立ち過ぎる。

 

ならば別の入口があると考え、備えるべきであろう。策を練るならば常に最悪の状況を予測し、それすら対応できる策を練るべきだ。

 

今考えられる最悪はザルドやアルフィアのような知られていない最高レベルの冒険者が敵の場合。

 

闇派閥の生き残りとやらがレベル8クラス、それ以上のモンスター、モンスターに準ずる何かを保持している場合。

 

情報戦において地上で味方、あるいは味方になりそうな神が諜報員としてこちらに紛れ込んでいる場合だな。

 

 

 

ギルの言葉にウチも、幹部連中も口を閉ざす。あり得ないなんてことは下界においてあり得ない。それは女神であるウチが一番良くわかっとる。

 

 

 

ーーーギル。戦闘において我々ができることは地上の人々を守り、敵を討ち果たす。その為の策はフィンが考える。

 

その上で姉としてできる弟に質問したい。ギルの目で見て確実に味方だと言える神々は誰だ?

 

 

リヴェリアの言葉に全員顔を上げ、ギルを見る。

 

 

ーーーふむ。王として信用足る神々と言えば、我の主神であるヘスティアは間違いない。

 

それにデメテル。ヘファイストス、ミアハ、ゴブニュ、フレイヤに、タケ。ああ、タケミカヅチのことだ。

 

それとそこのまな板だな。都市外であれば下半神とヘラ、それにアルテミスは間違いなく白。善神かどうかはおいておけ。

 

ロキを見ればわかるだろう?

 

 

 

ーーーちょい待てや!!誰がまな板や!!

 

 

 

ウチがギルに飛びかかるとギルはうるさそうに顔を顰めている。痛っ!リヴェリア待って!頭割れるから離してくれぇぇぇぇ!!

 

 

「よいよい姉上。そう言えば姉上には王族の技を教えていなかったな。ちょうど良い。今教えよう。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーー王族拳骨(アールヴパーンチ)

 

 

 

 

 

 

 

 

ニヤニヤしながら殴ると姉上を含む全員が吹き出して何人かはお腹を押さえて床に突っ伏した。

 

アイズは目をキラキラさせて姉上の服をぐいぐい引っ張ってロキを指差す。

 

 

「…リヴェリアも!やって!」

 

 

固まる姉上と必死で笑いを堪えているほかのメンバー。しかし姉上はアイズにとても弱い。

 

頬を染めてロキをみる。

 

 

「あ、アールヴパーンチ…。」

 

 

ゴスッと音が鳴ってロキは倒れ、アイズとティオナ以外も床に倒れた。我が煽ったがこれはヒドイ。

 

 

「姉上。アルフィアの福音拳骨(ゴスペルパンチ)はすごいぞ。ボールス達リヴィラの街の連中は全員食らって半分が耐久100オーバーで上がったようだ。

 

殴り方もアルフィアに教えてもらえ。ベートを殴る時便利になるぞ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーむ。ギルが私の話をしている気がする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そのまま少し話をして、何か分かればまた連絡すると伝えてホームに戻ることにした。アルフィアにロキファミリアと話し合ったことを伝え、今後どう動くかも考える。

 

 

 

 

「はぁ。これだから神々は。五月蝿い上に面倒だ。」

 

 

「その通りだが、奴等は我の民では無い。手を出してくるなら滅ぼすまでよ。ベルはまだ帰ってないのか?」

 

「いや、ヘスティアが一緒に出かけたのにモンスターのせいで遊べなかったのがショックだったみたいだ。

 

今は2人で食事に行っている。そのまま今日は教会に戻るそうだ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ベルが何やら小人族のサポーターを仲間にして共にダンジョンに潜っているようだ。アルフィアはその小人族が女だと聞いて不貞腐れていたがな。

 

二人で散歩をしながらロキファミリアに向かう。理由はティオナとアイズが武器の為に多額の借金をしているらしく、ダンジョンに少し籠るとのことなのでアルフィアはついでに鍛えてくると。

 

我はロキとお茶をするつもりだ。いくら姉上やティオナ達とはいえ、王たる我がわざわざ強くする必要はない。我自身レベルに執着しているわけではないが未だにレベル4。

 

確かにアビリティは伸びているがランクアップする為の経験値はまだ足りていない。よって己よりレベルが低い相手に成長させてもらったなど、ロキファミリアの連中も言いたくはあるまい。

 

 

 

 

 

 

ゆっくりしていると夜に慌てて帰ってくる姉上達がいた。

 

 

 

「何?リヴィラにモンスター?我が民が殺されただと。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーー五月蝿い。ボールス。何があった。

 

 

ーーー姐さん!?ロキファミリアの連中も!?いえ、殺しです。何も動かさず、死体に開錠薬(ステイタス・シーフ)かけて見えるようにしたんですが読めやせん!!

 

 

ーーー…ガネーシャファミリア。ハシャーナ・ドルリア。レベルは4だな。私は雑音のことはしらん。

 

 

ーーーガネーシャんとこのハシャーナっつったら剛拳闘士っすよ!?姐さんからすりゃそりゃ雑音ですけど。

 

恐らく女がやりました。一緒に宿に入ってたんでさぁ。ハシャーナは何かミッションの帰りって言ってやしたぜ!一応ギル様にもご報告した方が良いと思って遣いをやろうとしてたんすけど…。

 

 

ーーー……。おいエセ勇者と行き遅れ。貴様等はオラリオの為と言って何も出来てない。行き遅れと狼小僧はまだマシだが他はザルドの件から何も進めていない。

 

貴様等で解決しろ。手間取るなら私が魔法を貴様等にくれてやる。

 

金髪小娘。ティオナの姉。貴様らは行き遅れの指示を見て自分に何ができるか考えて動け。

 

ティオナ。お前は怪我をしない立ち回りを覚えろ。技術が圧倒的に足らん。

 

レフィーヤ。お前の覚悟は聞いている。ならば姉としての矜持を見せろ。

 

 

 

 

私から見て出来ていなかったらお仕置きだ。

 

 

 

ボールスやリヴィラの街の冒険者を含めた全員が顔を真っ青にして頷き、フィンと私を見てくる。

 

 

 

「…それって僕もだよね?」

 

 

「当たり前だ。貴様が無様を晒したら狼小僧の様に耐久をひたすら上げてやる。」

 

 

口元をひくつかせてフィンは死体と部屋を見ていく。

 

 

 

ーーーこれは…。首を折られてそれから頭を殴るか蹴るで破壊しているのか?ポーチの中身が出ていると言うことは恐らく目当てのものが無く、八つ当たりしたのか?

 

 

ーーーつーことはハシャーナの持ち物目当てで誘い出して首折って殺害。そのあとイラついてってことかぁ?

 

しっかしそこまでやるか?普通。

 

 

ーーー普通じゃないんだろうさ。ボールス。女と言ったね?広場に全員集められるかい?

 

 

ーーー待て。フィン。この死体おかしい。首の部分に皮が剥がされている跡がある。そう見せる為のカモフラージュの可能性がある。

 

 

 

フィンは口を閉ざして眉を歪め、何かを考えている。アルフィアは目を閉じて壁にもたれて腕を組み、アイズ達はフィンの指示を待つ。

 

 

 

ーーーおい勇者。とりあえず18階層は閉じたから広場で調べねぇか?姐さんとギル様に鍛えられた俺らはそもそも殺しなんかしねぇ。

 

ギル様の民に手ぇ出すなんてアホか何も知らねぇやつのすることだ。紛れ込んでるやつがいるんだろうよ。

 

俺様達が調べてやっからその間に考えをまとめとけ。

 

 

 

そこからのボールスの手腕は私の目からしても見事だった。

 

 

 

 

「てめぇら!!!ギル様が大切にしている民が亡くなった。殺しだ。なら俺らがやることはわかってんだろうな!!」

 

 

「「「当たり前だ!!!見つけ出してやらぁ!!」」」

 

 

「おう。それでこそここの住民だ。ロキファミリアがちょうど良くいやがるからな。レベル4が殺されてる。無理はすんな。

そういうのはロキファミリアにぶん投げるぞ。

 

俺等のやることは犯人を見つけて逃さねぇように抑えてロキファミリアにぶん投げることだ。

 

モルド!!治癒院のポーション全部出せ。マジックポーションは九魔姫に渡して配分してもらえ。おい勇者。ここにあるエリクサーは4本だ。仕入前でちょっとしかねぇが死ぬよりマシだ。

 

使っていいから必ず犯人を捕まえろ。」

 

 

リヴィラがここまで完備されているとは思わなかった。そしてあの金の亡者とも言える男がギルの為に全てを投げ出してでも仇を討とうとする。

 

姉としてここまで誇らしい弟はいないだろうな。

 

 

 

 

そこから怪人とも言える女のテイマーが現れ、アイズを狙い、その上に食人花が大量に出てきた。

 

フィンの指揮とリヴィラの街の冒険者の援護により、なんとか押し返すことができ、アイズはアイズで怪人を技術にて圧倒。

 

アルフィアの指導がかなり身についていた。

 

 

 

ーーーだって、ベルが、どんどん強くなるから…。私も負けたくないなって…。

 

 

アルフィアは目を閉じて、少しだけ微笑んでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なるほどな。アルフィアも知らんと。時は巡る。ならば変化が訪れるのも摂理であろうよ。

 

我の民に手を出したのは許さん。それにアルフィア。そのハシャーナとはベルがオラリオに来た時に英雄になると言って応援してくれて食事に誘ってくれたと言っておったやつであろう。」

 

 

「……あいつか。ちっ。あの雑音を金髪小娘に任さずズタズタにしてやれば良かった。」

 

 

怒気を露わにするアルフィアを見てロキファミリアは身を固くしてしまう。

 

何かわかれば情報交換すると伝えてアルフィアと共にホームへ帰る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーなんだこの同胞は。おかしい気配をしている。そしてこの男神。気配が反転している?いや、酔っているのか??

 

確かヘスティアもオリュンポスだったな。天界の時のことを聞いておくか。




ベル君の冒険も、アルフィア視点も、ギル様の冒険も書きたいことが多過ぎるぅぅぅ!!

ゆっくり書いていこうと思います。


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なるほどな。つまり貴様は迷い子か

更新が遅くなって申し訳ありません。

皆様の暖かい感想やコメント、本当にありがとうございます。
後押しをしていただきました。

転職して田舎に帰って、家族を支えようと決心できました。

ゆっくりにはなるかもしれませんが、更新は続けていくつもりです。

今後ともよろしくお願いします。


ーーーリリは助けを求める目をしてたんだ。お義父さんやお義母さんからすれば許せないって思っちゃうかも知らないけど、それでもリリだって民だと思う。だから僕は助けるよ。

 

 

 

 

 

 

ベルとヘスティアが我が家に訪れ、どうしても話したいことがあると言うのでギルドからエイナも来て5人で話し合う。

 

 

そこでベルのサポーターをしている小人族の話について、ベルの考えとこれからどうするかについて聞いた。

 

 

 

「…。ベル。お前は被害を受けた。それでもそのサポーターを助けるのか?私はそのサポーターが別のとこでも同じことをしていると思うぞ?」

 

 

 

 

 

アルフィアは良い顔はしない。あれほど溺愛しているベルが被害を受けたのだから当然と言えば当然か。

 

 

 

「アルフィア君。君の気持ちはよくわかるよ。ボクだって最初は同じ気持ちになったさ。でもね、ベル君は君達の英雄になると覚悟して進んでるんだ。

 

ならボクはベル君の考えを支持してあげたい。それにサポーター君は本当に孤独なんだと思う。親から貰えるはずの愛情を受け取れず、神酒のせいで狂わされてる。」

 

 

エイナがソーマファミリアについての書類を見せてくれる。パラパラと見ていくと己の眉根がよるのがわかる。

 

 

 

「神酒か。それは構わん。このソーマとやらも恐らく褒美として作り、与えたのが始まりだろう。

 

それにハマり、抜け出せなくなったのがファミリアの崩壊に繋がり、この愚物の団長が利用しているといったとこか。」

 

 

「はい。その通りかと思います。ギルド長が独自のルートで調べたみたいなので間違いないかと。」

 

 

「…あの豚。私が言うのもおかしいがベルに対して過保護すぎないか?」

 

エイナもこれには苦笑いしてしまう。ベルは頭の上に疑問符を飛ばしているが。

 

 

「あのねお義母さん。リリはさ、少し違えば僕がそうなってたかもしれない未来のような気がするんだ。

 

僕もずっと一人でお義母さんやお義父さん、ヘスティア様に出逢えなくてオラリオで産まれてたらそうなってたかもしれない。

 

時々リリって何もかも諦めたような目をする時があるんだ。僕はそんな目をお義父さんの民がしてるのが本当に嫌だ。

 

そんな目をさせているこの世界が嫌だ。なら偽善者って呼ばれようと傲慢って呼ばれようと僕がお義父さんの代わりに引き上げたい。

 

 

華々しく怪物と戦ったり、お姫様の為に戦う英雄になりたいんじゃない。もっと近くの、商店街のおばちゃんやおじちゃん、子供達が笑顔で過ごせるように理不尽と戦って勝つ英雄になる。」

 

 

 

ベルの顔は、瞳はアルフィアを救ってみせた時のように覚悟を決めた一人の漢の顔をしていた。

 

 

ヘスティアとエイナは見惚れ、我とアルフィアは懐かしいと微笑む。ザルドと下半神、ヘラは羨ましいだろうな。

 

 

「…そうか。なら私は何も言わん。お前なら必ずできる。そのサポーターを救ってやれ。」

 

 

ありがとうお義母さん!!と抱きつかれ、ニマニマするのを我慢しながら頭を撫でるアルフィア。二人共本当に可愛いものだ。

 

 

「ならそのサポーターを救うのは我らの英雄様に任せよう。エイナ。ロイマンに今後の動きは報告する。貴様等ギルドが不利益にならぬようどう立ち回ってほしいのか策を立てろと伝えよ。

 

今回に限りロイマンとエイナの働きに免じて我とアルフィア、ヘスティアは貴様等の駒として動いてやろう。」

 

 

「ぎ、ギルガメッシュ様…。ギルド長倒れてしまいますよ…。」

 

 

「ふははは!!何、ロイマンならできるだろう。」

 

 

 

 

エイナにそれを聞かされたロイマンは真っ青になりお腹に手を当てて必死で書類と睨み合い、ソーマファミリアについて全てを洗い出していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーということがあってな。ロキよ、我が配下の優秀さは素晴らしいであろう??

 

 

 

ーーーいやいきなり来て自慢されても。つーかロイマンあいつホンマ誰なん?って感じやねんけど。そーいやアルフィアは?

 

 

ーーーベルが心配らしく、影から見守ると言ってベルを追いかけて行ったぞ。

 

 

ーーー…。ヘラファミリアの静寂のキャラ崩壊すごいやん。完全におかんやん。まぁメーテリアの実の息子やししゃーないか。

 

アルフィアがメーテリアをほんまに大切にしとったんはあの時代を生きとるオラリオにおった冒険者からしたら誰でも知っとるくらい有名やったしな。

 

 

 

 

ロキと2人で話をしていると何やらロキに客が来たらしく、部屋から出て行った。ふむ。暇だ。ロキの部屋を我好みに変えるか。

 

 

 

王の財宝から黄金を取り出して部屋中を金ピカにしたり、気に入って購入した椅子や机を置いて遊んでいるとロキが呼んでいると団員が呼びに来た。

 

 

 

「ぎ、ギルガメッシュ様!?」

 

黒髪の同胞がバッと膝をついた。その横には男神がいる。

 

 

「良い。楽にせよ。ロキ。何があった?」

 

 

極彩色の魔石や怪人、モンスターについてその男神、ディオニュソスから聞いた話をこちらに伝えてくる。

 

 

「ロキ。彼が下界の王と呼ばれているギルガメッシュかい?」

 

 

「我の名を気軽に呼ぶな雑種。」

 

 

「ちょい待ちギル!こんなやつでも神やねんて!」

 

 

「そんなことはわかっている。我が信を置く神に対しては構わんが民でも無い雑種に真名を呼ばれる程不愉快なものはない。

 

それに…。いやこれは良い。それで?」

 

 

ロキはヒラヒラと紙を見せてくるので読む。

 

 

 

 

 

「あの阿呆は…。姉上が怒り狂うぞ。」

 

 

「やんなぁ。悪いけどベートとレフィーヤくらいしか幹部おらへんからギルも行ってくれん?ちゃうファミリアの子に頼むんはお門違いやと思うんやけどなぁ。」

 

「構わん。アイズは姉上の寵愛を受けている。ならば我が面倒を見るのも当然とも言える。」

 

 

「ならフィルヴィスも連れて行ってくれ。ウチの団長でレベル4だ。役に立つ。」

 

 

ディオニュソスの話は無視してベートとレフィーヤを待つ。フィルヴィスとやらは所在なさげにしている。

 

 

 

ーーー同胞。貴様の出来ることは?

 

 

 

この問いに膝をついて魔法も全て答えていく。しかしこいつらの気配は何かおかしい。雑種は気配が反転している。穏やかそうに見えるが反転しているということはそういうことだろう。

 

 

そしてこの同胞。モンスターに近しい気配がある。我が民に何かをしたやつがいる。それが許せんが今は事を起こすには早い。ロキにだけ伝えるようにするか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーえ、えっと、ギル様??これって・・・

 

 

 

 

 

リヴィラの街についてからボールズ達に情報を聞くと下に行ったと教えられ、ベート、レフィーヤ、フィルヴィスはポーションやエリクサーなどを渡されていた。

 

そのまま下の階層に行進し続けると24階層にて肉壁のようなところがある。

 

 

 

「ふむ。ボールズ達の話によればヘルメスファミリアとやらの雑種共とアイズと共にいるらしい。

 

先頭は我が行こう。前方に見える敵は殲滅する。次にレフィーヤ。貴様が我の左右を見ろ。信頼しているから期待に応えよ。

 

その後ろに同胞だ。貴様の防御魔法でレフィーヤを守れ。

 

最後尾にベート。本来であればベートを最前線に置きたいとこだが縦隊で進むに当たって挟撃は面倒だ。

ベートの鼻と耳なら対応できるだろう。前方は我なら面でも線でも対応できるからな。

 

質問は?」

 

 

「やることを絞ってくれてんだ。問題ねぇ。ノロマとクソ雑魚エルフ。テメェらは互いに守り合ってろ。

ノロマはクラネルに負けてられねーんだろ。ババアと音ババアにあんだけやられても立ったんだ。意地見せろ。」

 

 

レフィーヤはベートの言葉でハッとして目に炎を焚べらせて頷く。リヴィラの街にいる時にベートにだけ伝えておいたのでこの編隊の意味に気づいたのだろう。

 

 

 

 

ーーーベート。我のスキルを教えたな?この同胞とあの神は警戒しておけ。ロキにも帰ってから伝えるが気配が反転している。

 

出身が同じヘスティアに天界でのことを聞いてみるが警戒しておくべきだと我の直感が告げている。

 

今回の件もタイミングが良すぎる。幸いにも同胞ということで我の言うことを聞いているから指示をするから合わせよ。

 

 

ーーー……。わかった。ギルは好きに動け。俺がノロマはフォローする。

 

 

 

 

 

王の財宝から武器をブッ放して目の前の見える範囲を更地にしながら進んでいく。レフィーヤと同胞は目が点になりながら後ろをついて行く。

 

 

 

 

「ギル!!前の道から大人数の匂いがしやがる!!」

 

 

 

ベートの声を聞いて全員走ってルームに行くと女冒険者が首を掴まれ、今にも殺されそうになっていた。

 

すぐさま武器を射出し、腕を切り落とす。そのまま女冒険者を掴んで後ろに投げる。

 

 

「う、腕がぁぁぁぁぁぁぁ!!なんだ貴様ぁぁぁぁぁあ!!!」

 

 

無視して大量の武器を射出し続ける。轟音が鳴り響き、全員が動きを止めて固まっている。

 

 

「おい。テメェらヘルメスファミリアだろ。アイズはどこに行きやがった。」

 

 

「ヴァ、凶狼……。剣姫は分断されました。別の通路の方で赤髪の女と戦っています。」

 

 

「ああん?この前リヴィラで戦ったってやつか。問題ねぇな。おい!ギル!!どうする!?」

 

 

射出を止めるとズタボロになりながら煙を上げて修復しようとしている男がいた。

目を離して女冒険者にコイツは誰だと質問する。

 

 

「ゲホッ。すみません。助かりました。その男はかつて27階層の悪夢で死んだとされていた闇派閥のオリヴァス・アクトです。

 

どうやら怪人となって生きていたようです。」

 

 

「ふむ。知らんな。闇派閥とは我の庭で民や子らに悪影響を及ぼす塵屑のことであろう。女冒険者。殺してしまっても構わんのだろう?」

 

 

「…ヘルメスファミリア団長のアスフィ・アル・アンドロメダです。できれば生かして情報を得たいとこですが…。」

 

話をしていると立ち上がろうとしていたので近くに行き、四肢に剣を刺して地面に縫い付ける。

これからどうするかと考えていると壁を壊してボロボロになっている赤髪の女と擦り傷のアイズが出てきた。

 

 

「……ギル??」

 

 

きょとんとしているアイズがテクテク歩いてこちらに近づいてきた。ベートは呆れ、レフィーヤはアイズさん……。とジト目で見ていた。

 

 

「れ、レヴィス!!助けろ!このエルフは桁違いだ!!」

 

 

「ぐっ。アリアがここまで力をつけているとは。」

 

レヴィスと呼ばれた女がオリヴァス・アクトとやらに近づいて胸の魔石をとり、食べ始めた。

 

「ちっ。回復しきれんか。ここは引いてやる。この支柱を壊すとアリアは無事でも他のメンバーはどうなるかな?」

 

 

その瞬間に武器を大量に射出するとギョッとして避けるが避けきれない数本が腕などを斬り飛ばす。

 

「ぐぅぅぅぅ!!な、なんだ貴様は!!」

 

 

「下界の王だが??とりあえず死ね。」

 

 

「おぃぃぃぃぃ!!ギル!!支柱壊れてんじゃねぇかぁぁぁぁ!!テメェら逃げろ!!!動けるやつは怪我人抱えて走れぇぇぇ!!」

 

 

ベートの大声で全員慌てて外に走って行く。我はレヴィスとやらを見て波紋を大量に出す。そこにフードを被った同胞と気配がそっくりなやつが現れ、レヴィスを逃す。

 

 

「逃げられるとでも?我は貴様等を天井ごと粉々にできる。」

 

 

「……王ノ民ハ羨マシイナ。モットハヤクニ会イタカッタ。ワタシハモウ戻レナイ。」

 

 

「……貴様もまた迷子か。どうして我が民はこうも迷子になるのか。どうせまた会うだろう。貴様にはまた会うだろう。このまま戻ってすぐにでもな。

どうするか考えよ。貴様の人生は貴様のものだ。そして下界の者ならば我が民草だ。

 

あんな愚神に己の人生を操らせるな。」

 

 

フードを被った同胞はビクッとしてこちらを見て少しだけ頭を下げる。意味は理解したのだろう。

 

ため息を吐き出して落ちてくる天井を粉々にしながら歩いて外に出るとレフィーヤが泣きながら走ってきて座ってアルフィアさんとベルになんて言えば良かったんですかぁー!!と大声で喚く。

 

 

どうも中に取り残されて潰されたのでは!?と想像して大泣きしていたようだ。頭をよしよしと撫でてやる。うむ。レフィーヤもベルと同じく可愛いやつよの。

 

それからヘルメスファミリアを連れて地上に戻る。

 

 

「馬鹿娘。姉上に全て伝えるからきっちり怒られよ。今回の件に関しては我は助けん。」

 

がーーーん!!とアイズはしょんぼりするがベートはもちろんレフィーヤですらアイズさん。流石にこれは無いです。と言う始末。

 

ベートとレフィーヤに逃げられないように掴まれてロキファミリアに連行されていった。

 

「ギルガメッシュ王。今回は本当に助かりました。ヘルメスファミリアを代表してお礼申し上げます。」

 

「よい。貴様等はアイズのついでだ。とりあえず情報の整理と精査をしたいから落ち着いたら貴様等の主神を連れてロキファミリアに行け。」

 

 

返事をもらってヘスティアの屋台に行く。

 

「いらっしゃいませぇぇぇぇぇ!!いらっしゃいませぇぇぇぇ!!」

 

 

「…なんという声を出しているのだ。」

 

 

「ギルくぅぅぅぅぅん!!!あと3つ買ってくれたら今日のノルマが終わるんだぁぁぁぁ!!お願いだよ!!買っておくれ!!!」

 

 

「う、うむ。ならば買おう。10個もらおう。そのままバイトが終わるなら家で家族で食べようではないか。」

 

 

パァっと華やくヘスティアを横目にお金を払って待っていると嬉しそうに笑ってやってくる。

 

今日どんなお客さんが来た、商店街の子らとこんな話をしたなど会話をして家に向かう。

 

 

 

ーーー???ディオニュソスかい??あーあの子は何だろ、病気みたいだったなぁ。

僕らって同郷でさ、えーと、12神って称号みたいなのが与えられるって時にディオニュソスは選ばれなくってさー。

 

それですっごい荒れてたんだよね。ボクは別にそんなのいらないしめんどくさそうだったからディオニュソスに譲ったんだよね。

 

だからなんだろ??ギル君の話を聞いてるとボクはなんだか怖いなぁ。だって天界の時とは真逆だよ?

 

気配が反転してるっていうのはよくわかんないんだけど天界の時とは真逆だしそれが反転してるってことなのかなぁ??

 

 

 

ーーーやつは酒が好きなのか?

 

 

 

ーーーんーワインを作るのが得意だったと思うよ?下界でも呑んでるのかは知らないけど、葡萄から拘ってたのは覚えてるなぁ。

 

え?葡萄?たぶんで良ければだけどデメテルじゃないかな?デメテルとも同郷だし顔見知りだからねぇ。

 

ううん!こんなのでよければいつでも聞いておくれ!

 

 

 

 

やはりヘスティアの顔の広さは情報として武器になるな。というかそんな称号を貰うくらい神格が高いのか。

 

なのに本人、いや本神はグータラ。ヘスティアらしいというかなんというか。

 

しかし誰かに操られている可能性も否定できんな。神も酔うような酒で酔わせ、操る。これも可能か…。

 

同胞の件もある。とりあえず監視対象ではあるな。それにデメテルとも関係があるか。

 

ペルセフォネ達は戦闘力が皆無だ。闇派閥に襲われたらどうしようもなくなるな。ちょくちょく様子を見に行くしかあるまい。

 

とりあえずロキ達と相談すべきだな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ちょっとまてアルフィア。そこの小人族の目が死んでおるぞ。」

 

 

「リリルカも私の娘にする。この子はまだ15歳だ。あんなクソファミリアに任せておけん。」

 

 

椅子に座っているアルフィアの膝の上に座らされて頭を撫でられ続けるリリルカとやらとそれを微笑ましそうに見ているベルがいた。




フィルヴィスってどうすれば良いんだろう

好きだから助けたい。でも助けるのムズカシイ


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可愛いは正義だぞ。ギル。

見てくださってありがとうございます!

久しぶりに実家に戻り、自分の部屋の掃除をしていると幼馴染が窓から入ってきました。

相変わらず元気で嬉しい反面もう三十路なんだから落ち着けよと思いました笑

母と妹が落ち込んでるのを気にしてくれていたみたいで感謝しかありません。みんな友達は大切にしようね!


ーーーリリはなぜこんなことになっているのでしょうか??

 

 

 

 

 

ベルの後ろを隠れて歩いていると小人族が私のベルのナイフを盗んで苦しそうな顔をしながら走っていく。

 

これがあの子が言っていた悲しそうな顔か。私は他人の感情の機微に疎い。正直、メーテリア以外の雑音がどうなろうとどう思おうと知ったことでは無かったからだ。

 

しかしギルに出会ってマリアやアイナ、年増と話し、子供の大切さを学んだ。何より最愛の息子に出会えたのだ。

 

そして今走っている小人族。リリルカ・アーデの情報を豚から聞いて把握している。

 

 

目の前で雑音共に囲まれ、殴られ、搾取される。挙げ句のはてにモンスター共の囮にされる。

 

 

 

「これだから冒険者は。でも、そうですよね。これは、あのお人好しのベル様を騙した報い。だとしたら、諦めも……

 

悔しいな! 神様。どうして、どうしてリリをこんなリリにしたんですか? 弱くて、ちっぽけで自分が大っ嫌いで。でも何も変われない、リリに」

 

リリルカの言葉は病に蝕まれていた時の私自身に近いものがあり、よく突き刺さる。

レベルが高いおかげなのか、私自身の言葉だからなのか、良く聞こえてしまう。

 

 

 

「寂しかった。誰かといたかった。必要とされたかった。でも、もう終わる。やっと死ねる。やっと終われる。

 

何も出来ない自分を、弱い自分を、ちっぽけな自分を、価値のない自分を、寂しい自分を。あ~、リリはやっと、死んでしまうんですか!!」

 

 

涙を流しながら小さい身体で、勇気と誇りが、芯がある少女の慟哭がダンジョンの通路に響く。

 

動こうと思うがどうしても動けない。私みたいなやつが、一度ベルを捨てようとしてしまったこんな女があの生きようとして必死になっていたあの誇り高い少女を救ってしまって良いのか?

 

私にはこのオラリオで生き抜ける力と才能があった。最愛の妹がすぐそばにいた。かつてのトップファミリアに在籍していた。

 

たがあの少女は何もなかった。それでも諦めないで生き抜いていた。あの子は15歳。まだ子供だ。

 

なんなら闇派閥の雑音共がいた7年前もオラリオにいて今尚生きている。それはもう強さだろう?

 

だが私のような女が肯定してどうなる。

 

 

 

……私ではあの少女の英雄になり得ない。

 

 

 

「リリィィィィィィィ!!!!!」

 

 

ベルがいつもの鍛錬の時以上の速度でキラーアントを薙ぎ倒してリリルカを抱き抱える。

 

 

「べ?ベル様??な、なんで。」

 

 

「女の子が泣いてるんだ。それに僕の大切なサポーターが泣いてるんだから助けるのは当然だよ。

 

ちょっと待ってね?このモンスターを全部倒して絶対に助けるから!」

 

 

ニコッと笑って言うベルにリリルカはポカンとしていた。ふふふ。やはりベルは英雄だ。ギルもこのベルを見たかっただろうな。

 

 

足が軽く動く。コツコツと靴を鳴らして歩いて行く。

 

 

「お義母さん??」

 

 

 

「ベル。そのままリリルカの怪我を治してやれ。福音。」

 

 

福音でキラーアントどころかダンジョンの壁まで粉々にしてやる。ベルは安心したのかリリルカを魔法で癒す。

 

 

「…リリ。僕達仲間でしょ。僕は何度だってリリを助けるよ。僕は英雄になる。その為にもリリが必要なんだ。

 

ほら僕ってモンスターと戦えても戦術とか戦略って苦手だから。

 

 

だからリリ…。そっちは任せるからね?」

 

 

 

リリルカは大声を上げて泣き、ベルにしがみついていた。

 

 

「リリルカ。お前は私の娘にする。異論反論は認めん。」

 

「へっ???」

 

「え???」

 

 

私はリリルカを抱き上げてそのまま地上に戻っていく。

 

 

「お、お義母さん?リリを娘にするって??どういうこと?」

 

 

「そのままの意味だが?あんなクソファミリアに可愛いリリルカを任せることはできん。家に住まわせて愛でる。」

 

「へ?お、お義母様??ですがリリは別ファミリアで…。」

 

 

「お義母さんと呼べ。ギルドの豚とエイナがソーマファミリアを調べている。約束で更地にはできんが、どうとでもなる。」

 

 

「し、しかし、リリがいたら狙われてしまい、迷惑がかかってしまいます!!」

 

 

「あんな有象無象に何ができる。」

 

 

「あー、リリ?お義母さんレベル8だよ??お義父さんはレベル4だけどお義母さんと同じくらい強いし。」

 

 

リリルカはポカンとしてプルプル震え始めた。

 

 

ーーーレベル8って今都市内で噂になっている元ヘラファミリアの静寂!?ということは下界の王のギルガメッシュ様もおられる!?

 

というかベル様はその義息子!?何それ怖い……

 

 

 

大人しくなったリリルカをそのまま家に連れて行くとギルとヘスティアも帰っていたのか台所からいい匂いが漂ってくる。

 

ベルとリリルカと一緒に手を洗い、椅子に座ってリリルカを膝の上に乗せる。ふむ。小さい頃のベルと同じで可愛い。素晴らしい。

 

 

 

 

「ってことがあってお義母さんがリリのこと娘にするって。」

 

 

 

ベルの話を聞いて納得する。リリルカはちゃんと反省もして、その上で前を向き、光に手を伸ばし続けていた。

 

ならば我も王として手を握ってやらねばなるまい。

 

 

「アルフィアよ。娘というのは一旦置いとくが我が家に住まわすのはもちろん良い。リリルカも我が家と思って生活するが良い。

 

教会も補強したとはいえ、ヘスティアとベルでギリギリの小さなホームだからな。」

 

「……ギル。リリルカは娘にするぞ。」

 

 

「ワガママを言うな。リリルカだって急に言われても困るであろう。それに本当の息子、娘ができたらリリルカは一歩引いてしまうタイプだ。」

 

 

「は、はい。その、アルフィア様がそう言ってくださるのはとても嬉しいです。リリはそんなこと言ってくれる人はいませんでしたから。

 

でも、その、ベル様に甘えるだけは嫌です。リリもベル様を支えれるようになりたいです。

 

それにギルガメッシュ様とアルフィア様の新婚生活の間に入るのはちょっと……!」

 

 

「わかるぜ!分かるよサポーター君!!ボクも同じ気持ちさ!でもサポーター君は住むところが無いんだろ?

 

それに狙われてるならこの家程安全なとこも無いし、ソーマのとこはエイナ君達次第だけどどうにかなるだろうからその後移籍すればいいさ。

 

それとアルフィア君。娘と言うけどボクのファミリアにサポーター君が入れば家族だから娘みたいなものだろう?それで満足しなよ。」

 

 

 

「……そうか。ならソーマファミリアを潰してしまおう。いや、だがエイナがまた怒ると嫌だからな。仕方ない。一緒に住むだけで我慢しよう。」

 

 

はぁ。アルフィアは可愛いもの好きだからな。それにベルの話を聞いた限りリリルカに対して何か近しいもの、もしくは共感できる部分があったのだろうな。

 

しかしリリルカのベルに対する発言。ふふ。我が息子はやはり英雄の器。異性からの好感度も高いようだな。

 

 

 

 

 

 

リリルカの荷物が異常に少ないのでアルフィアはリリルカを連れて服とか色々買ってくると言って出て行った。

 

あれは完全に娘とのお出かけがしたいだけの母親だな。

 

 

 

 

 

 

アルフィアがベルとリリルカの鍛錬の相手を毎朝するようになった。リリルカのサポート能力と咄嗟の判断能力、そして戦術は目を見張るものがあるな。

 

横で見ているとヘディンとヘグニがやってきた。

 

 

「よく来たな。む?姉上も来たな。」

 

 

何故か朝からレベル7のエルフが勢揃いした。

 

 

「王。これをフレイヤ様が御子息にと。」

 

「ほう。魔導書か。確かにベルは我等と違い、攻撃魔法が無かったからな。ありがたく頂こう。」

 

「う、む。あの女神フレイヤがベル君に?大丈夫なのか?」

 

姉上の言葉に首を傾げてしまう。

 

 

「高貴なるお方。確かに今までのフレイヤ様の行動からすればそう思われるのは無理のない事。」

 

「で、でも、フレイヤ様、ベル君大好きで、その、えと、そう!ファン?ってやつです。」

 

 

「ヘグニ……。高貴なるお方。つまりフレイヤ様は英雄足る御子息に強くなってほしいのと共に、何か協力したいということです。」

 

「ああ。なるほどな。お前たち2人とギル、それにアルフィアもいてザルドまでベル君には着いているから今まで通りに自分の物にできない。だから別方向で関わりが欲しいといったところか。」

 

白黒コンビは苦笑いを浮かべる。

 

「それもありますが女神ヘスティアが一番の理由でしょう。」

 

 

「うん。えと、ヘスティア様のこと尊敬してる、です!」

 

 

「そういえばヘスティアの聖火は不浄を滅する炎だからな。フレイヤの魅了の天敵とも言えるのか。」

 

 

「ええ。フレイヤ様も唯一畏れるのはヘスティア様だとおっしゃっていました。」

 

 

そんな話をして模擬戦が終わるのを待ち、ベルに魔導書を読ませる。ヘスティアはフレイヤにお礼言わなきゃ!と大慌て。

 

「ならフレイヤをこの家に呼んでやれば良い。ヘディンから聞いたが魅了のせいで外に気軽に出れんらしいからな。

 

我もヘスティアもアルフィアもベルも効かんから問題あるまい。」

 

 

ヘディンとヘグニは頭を下げ、感謝を伝えてからすぐに帰って行った。その日の夜、ニコニコしたフレイヤが白黒コンビと共に家に来た。

 

 

「それでぇ!!兎さん可愛くて!!朝の鍛錬ではかっこいい!!」

 

 

「毎回ベロベロになるのやめなよフレイヤ。それになんで神の鏡使ってるのさ。」

 

「だってぇ!!私抑えても魅了しちゃうから外出れないもん!」

 

「うんうんそうだね。夜ならボクもこの家でご飯食べるしいるから来ればいいよ。あ、そうだ。ギル君。デメテルも呼んでいい?フレイヤと仲良いんだ!」

 

「構わん。向こうの部屋を使え。ベッドも置いているが使っていないからな。毎回フレイヤはこうなるなら寝かしておけ。」

 

頭を抱えている白黒コンビにも伝え、もの凄い勢いで頭をさげられた。こいつ等も苦労しているんだな。

 

今後女神が飲み会をする時にウチの一室が良く使われるようになる。

 

 

 

子供達と話をしてから歩いていると懐かしい神を見つけた。

 

 

「いらっしゃい!美味しいじゃが丸くんはどうだ?」

 

 

「タケか?いつオラリオに来たんだ。」

 

 

「むお!ギルか!!久しぶりだな!ギルもオラリオに居たのか!!」

 

 

バイトが忙しそうだったのでホームの場所を聞いて後日伺うことにした。命や桜花も来ているらしいのでまた食材でも持って行ってやろう。

 

そんなことを考えながらロキファミリアに向かう。ヘルメスファミリアとヘルメス、そしてロキと幹部で情報の擦り合わせを行う為だ。

 

 

「だーかーらー!!リヴェリア様を呼んでって言ってるでしょー!?もう!」

 

「い、いや、リヴェリア様は幹部ですので…。そのお名前を聞いてからお伝えしますのでお名前を教えてください。」

 

「それじゃ驚かそうとして来た意味無くなるじゃないっ!!もー!!」

 

 

それを見た瞬間に回れ右をした。何をしているのだあの戯けは。我は用事があったような気がする。よし帰ろう。

 

 

 

 

 

「あー!!!ギル様!!!ギル様ってば!!」

 

 

 

 

 

 

 

何故ここにいるのだ。アイナ……




書きたいこと多くて纏まってない文章になってしまった。

申し訳ない。もうちょい掘り下げてゆっくり進めるかもです。


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閑話 ヘスティア様の1日

遅くなりました。

皆様体調にはお気をつけくださいね?


太陽が昇ると共に自分の可愛い眷族のベル君は両親と鍛錬する為にホームを元気に出て行く。

 

まだもう少し寝れるや……おやしゅみぃ……

 

 

 

 

「うわぁぁぁぁぁ!!!ち、遅刻だぁぁぁぁぁ!!!」

 

 

急いで準備して走っていつもの屋台に向かう。おばちゃんに怒られてしょんぼりしながらじゃが丸君を揚げていく。

 

 

ちらほらと冒険者達が屋台の前を通り過ぎてバベルの方に向かっていく。今日もベル君はダンジョンに潜ってるのかなぁと考えながら仕事をこなす。

 

 

「ヘスティア様!!おはようございます!今日はねー、えっとプレーンと抹茶クリーム味2つ!」

 

 

「おや!サリアくんじゃないかい!おはよう。今日の髪型可愛いね。ちょっと待ってねー」

 

 

「えへへ!あのね!お母さんにヘスティア様と同じ髪型にしてってお願いしたの!アルフィアお姉ちゃんの髪型はできないって言われちゃった!

 

アルフィアお姉ちゃんに抱っこしてもらったんだよっ!」

 

 

相変わらずアルフィア君とギル君は商店街で子供達と交流しているみたいだ。ボクも子供達が大好きだから嬉しいな。

 

サリア君の頭を撫でてお揃いだねと伝えて商品を渡すと嬉しそうに笑って帰っていく。

 

昼時には商店街のみんなや、ダイダロスにあるマリア君が運営している孤児院の子達も遊びに来てくれる。

 

みんな話す内容はウチのギル君とアルフィア君、それにベル君のことばかりでとても誇らしい。

 

 

 

「…ヘスティア様。こんにちは。小豆クリーム味3つください。」

 

 

「アイズ君じゃないか。毎回ここに来てくれるけどロキのホームからなら別の屋台の方が近くないかい?ちょっと待ってておくれよー?」

 

 

「ヘスティア様の、じゃが丸君が一番……です。ギルもアルフィアさんもベルも言ってました。」

 

 

どこも同じじゃないのかいっ!?と思いつつも自分の眷族らがそう言ってくれてるのを教えてもらいご機嫌になる。

 

 

「ヘスティア様は、じゃが丸君を司る女神だって。ヘスティア様の屋台で買うといつもの2倍美味しいって。」

 

 

「アイズ君…。きみ、騙されてるよ。ボクは炉の女神だよ…。あの子等は本当に!!ボクのこと紐の女神とかじゃが丸君の女神とか!!」

 

 

がびーん!!となるアイズ君には申し訳ないが嘘は良くない。

 

 

「で、でもヘスティア様のじゃが丸君が一番美味しいのは、なんで?」

 

 

えー?他の屋台のじゃが丸君なんて食べたことないんだよなぁ。

 

 

「そ、そうかい?まぁいつでもおいでよ。ボクがいる時はボクが作るしね。アイズ君がそう言ってくれるならボクも自信が持てちゃうよ!」

 

 

コクコク頷き、商品を渡すとすぐに食べ始め、とても美味しそうにたべてくれる。剣姫と呼ばれ、レベル6の第一級冒険者と言えどボク達神々からすれば可愛い女の子だ。

 

それからロキファミリアのティオナ君、ティオネ君、レフィーヤ君など主力メンバーが来て買っていってくれる。そのおかげでこの屋台のじゃが丸君を食べるとランクアップするなどと噂されているらしい。

 

挙げ句の果てにフレイヤファミリアのヘディン君やヘグニ君も買いに来てくれる。この2人はじゃが丸君と言うよりフレイヤが迷惑をかけてって感じだけどね。

 

 

「そういえばヘディン君、ヘグニ君。ベル君はどうだい?ギル君はボクの眷族になってくれた時点で強かったしアルフィア君は、ほら、ヘラのとこだったから今のオラリオのファミリアとはちょっと違うんだろ?

 

ボクも最近下界に降りたから普通がわかんなくてさ。フレイヤに聞きたくてもすぐに酔っちゃうからさ。」

 

 

「本当に申し訳ありません女神ヘスティア。他の神々と争うことはあっても仲良くすることがあまり無かったようで。

 

そうですね。御子息は英雄足る人物であるのは間違いありません。有象無象の冒険者とは一線を画しています。」

 

 

「えと、えと、ベル君はそのぅ、成長が早いのはもちろんですけど、技術が普通じゃないです。」

 

 

「あはは。ボクも美の女神と2人で飲んだりするとは天界の時には思っても無かったよ。

 

うーーん。やっぱりベル君はすごいなぁ。ただ純粋すぎて騙されたりしないかなーとか女の子に対して免疫無さすぎじゃ無いかなーとか思っちゃうんだよね。

 

ボクもだけどギル君もアルフィア君もあの子には甘々なんだよね。」

 

 

 

苦笑しながら思わずずっと思っていたことを口にしてしまう。

 

 

 

「……申し訳ありませんが正直私もそこに対しての懸念はあります。」

 

 

 

「うん。ベル君すごく優しくて純粋だと思う。でも俺も人苦手だし…」

 

 

 

実際のところ悪意という悪意に相対した時、ベル君はどうなってしまうんだろう。下界は決して光の部分だけではない。

 

これがギル君やアルフィア君ならわかるだろうから心配していない。でもベル君はどうなんだろう。

 

 

うんうん唸っているとヘディン君が何か考え、メガネを直して口を開く。

 

 

「私がギルガメッシュ様とアルフィア王妃に進言してみましょう。御子息については私もヘグニも、そしてフレイヤ様も認めております。

 

だからこそ甘やかすだけではいけません。厳しくすべきところがあるのは間違いありません。」

 

 

「うーん。で、でもギル様とアルフィア様が、問題をそのままにしておくかなぁ??」

 

 

「ならばその理由を聞けば良い。ギルガメッシュ様とアルフィア王妃も下界の子。王と王妃といえど間違うことがあるかもしれない。

 

ならば配下である我々が進言しなければなるまい。王が道を作ってくれ、その後ろを何も考えずに歩くなど配下ではなく有象無象だ。

 

我々はそうなりたくないだろう?」

 

 

なんだか壮大な話になってきたぞ!?この2人は敬いすぎなんだよな。ギル君なんて悪戯好きの王様だよ??

 

この前なんてボクに風呂を薦めてくれて嬉しくって浴槽に飛び込んだらドライアイスの浮かんだ冷水だったんだぞ!?

 

悲鳴あげてたら大爆笑してるんだからなっ!!すぐにベル君がファイアボルトで熱湯にしてくれたけど。

 

 

とりあえずヘディン君とヘグニ君に任せよ。この子等もベル君のことすごく大切にしてくれてるしね!

 

 

店仕舞いを始めるとデメテルとペルセフォネ君がやってきた。どうも野菜のお裾分けに来てくれたみたいだ。

 

 

「デメテルじゃないか!ペルセフォネ君も!うわぁ!デメテルのとこの野菜本当に美味しいからボク大好きなんだ!ありがとう!!」

 

 

「うふふ。いいのよ。いつも王様にはお世話になってるもの。それに私もヘスティアのこと大好きだしね。」

 

 

「そうですよヘスティア様!私達はみんなギル様もアルフィア様もベル君ももちろんヘスティア様も大好きですもん!」

 

 

「いやぁ!そんな熱烈な告白されるとドキドキしちゃうよ!もうそろそろギル君が迎えに来てくれるから一緒にご飯でもどうだい??」

 

 

「あら?良いのかしら?私はとっても嬉しいけれど他のファミリアよ?」

 

 

「今更だよ。それにギル君にはこの前デメテルも呼びたいって言ったらオッケーもらったし!そうだ!ヘファイストスとミアハも呼ぼっと!」

 

 

それからギル君が迎えに来てくれてオッケーをくれたのでベル君がミアハとナーザ君を、ギル君がヘファイストスと椿君を呼んで来てくれた。

 

ギルの嫁の私以外キッチンには立たせんと言うアルフィア君がみんなの分のご飯を作ってくれる。どうも一度こっそりとザルド君を呼び出してご飯を作らせて覚えたらしい。

 

一回見れば覚えられるってなんだよ。才能の権化とか言われてたみたいだけどその通りすぎないかい??

 

 

眷族達は眷族達で楽しそうにしており、ボク達神々はいつもの部屋に行く。プレートに【老人ホーム】と書かれているのはもう何も言わない。

 

デメテル、ヘファイストスは顔を引き攣らせていたけどね。ミアハは大笑いしてたけど。

 

 

「そりゃ、あの子らからしたら私達は老人になるんでしょうけどこれは無いわよ…」

 

 

「うふふ。王様とアルフィアくらいよね。私達にこういう悪戯できるの。」

 

 

「うむ。だが事実だからな。それに私はギルに頭が上がらない。借金を肩代わりしてくれ、ナーザの腕を治してくれたのだからな。」

 

 

「あー。ディアンケヒトが大声で喋っててベル君が気づいてアルフィア君が五月蝿いって魔法ぶっ放したんだよね?」

 

 

そう。ベル君はミアハのとこのポーションを使っており、アルフィア君もナーザ君とだけはよく話をしていた。

 

理由は簡単でミアハは駆け出しのベル君に対して無料でポーションを渡しており、ベル君はベル君で貰ったならお返しするのが当たり前だとその日ダンジョンで無事だったからとお菓子やじゃが丸君を持ってお礼を言いに行ったそうだ。

 

それからナーザ君がベルはいい子だから居なくなっちゃダメだよ?とダンジョンの情報やポーションを持っておく必要性をアルフィア君より先に教えていた。

 

その結果可愛い息子を大切にしてくれてる奴らというポジションになったみたいでアルフィア君もナーザ君を可愛がるようになった。

 

 

 

そこにディアンケヒトが馬鹿みたいな大声で喋っていたから魔法で吹き飛ばされる事件が起こった。アミッド君とは別件で知り合っていたみたいでベル君が止め、ディアンケヒトは泣きながら帰った。

 

 

それからベル君に聞いたギル君が息子が世話になったと借金を肩代わりし、冒険者としての先達が隻腕になっても他を助けている。ならば両腕があれば倍助けられるだろう。

 

よって王が褒美を取らす。といって何か波紋の中から出した物で腕を治したらしい。訳がわからない。

 

それを聞いた時は誇らしいと共に胃痛も連れてきた。

 

 

 

「うふふ。王様は本当に王様よね。私もね?探索系じゃないからペルセフォネ達がちょっと気後れしてたのよ。

 

でもあの王様が私も一緒に掬い上げてくれたのよ。デメテルファミリアはオラリオどころか王様の統治する下界全てに必要だって。」

 

 

「そうねぇ。私のとこも椿の腕が一段階どころか二段、三段と上がってるのよね。ギルが持ってる武器を見せて作らせて、それを椿自身の作品とすべく技術として落とし込めってね?

 

あの子の持ってる武器って竜殺しや冒険譚に出てくるような魔剣や神殺しの武器まであるのよね。」

 

 

そんな話をしているとドアがノックされ、フレイヤが入ってきた。

 

 

「「「フレイヤっ!?」」」

 

 

 

「ヘスティアー!ワイン持ってきた……。ひ、ひどいわよヘスティア!デメテル達も呼んでるならもっと早く呼んでくれてもいいじゃない!」

 

 

 

「あー。忘れてたや!」

 

 

フレイヤを含む全員がずっこけた。フレイヤとはいつもこの部屋で飲んでることをみんなに教えて、デメテルはフレイヤに友達ができたことを喜んでいた。

 

 

「そ、それでね!デメテル!兎さんとっても可愛いのにカッコいいのよ!そしたらヘスティアがいっつも呼んでくれるの!」

 

 

 

「うふふ。私もフレイヤが楽しそうで嬉しいわよ?ヘスティアじゃないとフレイヤのこの笑顔引き出せないのは前からの友達としては悔しいけどね?」

 

 

「あんたフレイヤまで落としたわけ?私もあんたに落とされたみたいなもんなんだけど?」

 

 

「え?え?ぼ、ボクかい!?そ、そりゃ、ヘファイストスは天界の時から大好きな大神友だけどさ。それにヘファイストスはアフロディーテと「それ以上言わないで。」あ、ご、ごめん。」

 

 

「うむ。ヘスティアは本当に尊敬する女神だ。私もフレイヤは美しいと思っていたが今のフレイヤは可愛いが似合うかもしれぬな。」

 

 

「そもそもミアハ。あんた女神ばかりのとこに男神1人で堂々とできるのすごいわね。それもフレイヤとデメテルが同席してるのに。」

 

 

「はっはっは。ヘファイストス。君も含めて皆美しいが私は何より神友のヘスティアがどんな種類でもオラリオトップと呼ばれるファミリアの主神に認められているのが嬉しくてな。

 

ヘスティアがどれ程1人で辛い思いをしてようやくベルという素晴らしい眷族と暮らせるようになったかを知っている。

 

ギルやアルフィアがヘスティアを気にしているのは分かっていたが新婚生活の中にヘスティアを入れるというのもおかしな話であろう?

 

 

だがこうして認められていつもの笑顔で過ごせている。それを特等席で見られる私はとても運が良い。」

 

 

嬉しい!嬉しい嬉しい!!ミアハもヘファイストスもデメテルもフレイヤもみーーんな大好きだぜっ!

 

 

「ミアハがモテる理由分かったわ。私はお断りだけど。」

 

 

「うふふ。やっぱりミアハは素敵ね。私もお断りしちゃうけれど。」

 

 

「ミアハ?今夜一緒に……いや私それよりここで飲む方がいいわ。」

 

 

「ミアハはモテるけど天然だからなぁ。それにナーザ君を大切にしないとボクも怒るぜ?」

 

 

なぜが肩身が狭くなるミアハ。む?と首を傾げ、目を逸らしてゆっくりとグラスを煽る。

 

それを見て女神4人は大笑いしながらまた飲み始める。天界にいた時は自分の領地からほぼ出ない引きこもりだったが、大切で大好きな眷族ができた。

 

そしてその眷族達のおかげでこんなに大好きな神友が増えて、天界にいた時より遥かに楽しく過ごせる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ボクの眷族はオラリオトップの可愛い子達さ!!

 




なんかヘスティア様書きたくなった。

次は続き書きます!


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ベル・クラネルの冒険

新年になり、もう1ヶ月ですね。

遅くなり、申し訳ありません。更新は不定期ですがちまちま書いているので出来上がり次第投稿していこうと思います。

待ってくださった方には謝罪を。

それではどうぞ。


暴走状態のアイナから逃げることができるわけもなく、嬉しそうに笑いながら走ってきて引き摺られてロキファミリアの門番のところに連れて行かれる。

 

我王だぞ!?不敬にも程がある。そんなことを思いながら門番とアイナを見ると門番は顔を真っ青にしている。

 

 

「ぎ、ギルガメッシュ様…。その、そちらの方は高貴なるお方でしょうか…?」

 

「…。違う、が、この阿呆は面倒なことに姉上の友だ。迷惑をかける。此奴は一応ヘスティアファミリアなのだ。」

 

「阿呆ってなんですかぁ!!このこの!!」

 

 

我の頬を抱きついてツンツンするな!!これがエイナの母か…。エイナが似てなくて本当に良かった。

 

暴れる阿呆を連れて姉上のとこに案内しろと伝えて逃げようとするが逃がさないとばかりに後ろから抱きついて離れない。

 

「ええい!鬱陶しい!!我に抱きついて良い異性はアルフィアだけだ!!離れよ!!」

 

「あ!アルフィアちゃんとこの前一緒にお買い物いったんですよぉ!そういえばアルフィアちゃんが娘みたいに可愛がってる子がいるんでしょ!?

 

エイナもとっても可愛いけどちっちゃい頃はもっと可愛かったんですよぉ!!ギル様!私にも娘さん紹介してくださいよ!」

 

「な・ぜ!我の話を無視して己の欲望ばかり言ってくる!!不敬だぞアイナ!!」

 

 

「リヴェリアと私は大親友ですよー?ギル様がこーんなにちっちゃい時から私は一緒に遊んでるんですからギル様は私の弟ですっ!」

 

 

赤ん坊の時からこいつは面倒を見てくれていたのは認めるが何故我が弟になるのだ。

 

アイナの性格はエルフ族にはほぼいないと言ってもおかしくないくらい希少性の高いものだ。

 

王族としてではなく1人のエルフとして接してくれていたからこそ我も懐いてしまったが……

 

失敗だったような気がしてならん。

 

 

アイナを連れて姉上のところに行き、アイナが姉上に抱きついたのを見て即座に離脱した。姉上。後は任せた。情報の擦り合わせに来たのだが逃げるのを優先したのに気づいたのはホームに着いてからだった。

 

 

 

その日、とても嬉しそうな王族妖精がいたが夜にはやつれていたそうな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アルフィアがリリルカをここぞとばかりに可愛がり、ベルもベルでにこにこしながら楽しそうにご飯を食べている。

 

 

「あーアルフィア君。あんまりリリ君に構い過ぎるのは良くないよ?リリ君も疲れちゃうよ。」

 

 

「うるさい。私の娘だ。可愛いのだから良いだろう。」

 

 

「……あ、あの、アルフィア様?」

 

 

「リリ。アルフィアお義母さんだ。」

 

 

「あ、アルフィアお義母さん?その、リリもすごく嬉しいのですが、ベル様やヘスティア様にも失礼になります。

 

それにリリは強くなりたいです…。アルフィアお義母さんみたいに。」

 

 

なんて可愛いことを言うんだ!私の娘は!しかし怪我をするところなど見たくはない。私が鍛える?いや、怪我をさせてしまうなど論外だ。

 

くっどうする。私はどうすれば良い!?ヘラファミリアの時は……ダメだ。アイツらとの思い出はなんの役にも立たん。

 

ゼウスファミリアの塵共も役に立たんな。使えん奴らめ。メーテリア。どうすれば良い……

 

 

「お義母さん!僕がリリと冒険する!それでリリと一緒に強くなるよ。リリが強くなりたいって気持ちをヘスティアファミリアで一番わかるのは僕だから。

 

お義母さんやお義父さん。それにザルド叔父さんに追いつきたくてしょうがなかった小さい時の気持ちはそのままリリの今の気持ちだと思うから。」

 

 

そうか。ベルはそこまで気づいていたのか。ふふ。私の息子はとても素晴らしい。自慢の息子だな。

 

「そうか。ならばベルに任せよう。私の息子は英雄だ。リリ。お前はベルについていくと良い。何かあればお義母さんに言いにこい。

 

有象無象の塵共など皆殺しにしてやる。」

 

 

「…は、はい。(皆殺し??)ありがとうございます。その、お、お義母さん。」

 

膝の上でリリを抱きしめるお義母さんはとっても可愛いなぁ。ヘスティア様は呆れちゃってるけど。

 

 

 

 

今日の夜は出掛けると言い、我は大量の食糧を王の宝物庫に入れて久しい友のホームの門を叩いた。

 

 

「はい。タケミカヅチファミリアですが……!!!ぎ、ギル様!?」

 

 

「む。命か。大きくなったな。先日にタケに会ってな。オラリオに来ているのを知った。邪魔をする。」

 

 

「は、はいっ!!ギル様!こちらへどうぞ!!」

 

 

命の案内で居間に連れられる。すると懐かしい顔の面々がおり、固まっている。

 

タケが満面の笑みで迎え入れてくれ、我も宝物庫から食糧や酒をどんどん出していく。そこで命と千草がご飯を作ってくれるようなので宴会となった。

 

 

「いやーギルが来てくれるとはな!すまないな!俺らはいつも通り貧困でなぁ。余裕が全くない!」

 

あっはっはと笑いながら酒を飲むタケと苦笑いしている桜花達。

 

「構わん。タケは友で桜花達は我の庇護下の可愛い子らよ。神だが我にとって唯一の友と呼べるのはタケ。貴様だけよ。」

 

「はは。そう言ってくれると俺も嬉しい。そういえば巷の噂を命が聞きつけてきてな?ギル。お前婚姻したのか?」

 

「ああ。我の特別な宝ができた。それに義理ではあるがとても大切で可愛く、必ず英雄に至るであろう息子もな。」

 

「ほう!!ギルがそこまで言うのか。そうだそうだ。命!あれ、持ってきてくれるか?」

 

命は嬉しそうに何か包みを持ってきた。

 

「ギル様!婚姻おめでとうございます!その、遅くなりましたが、自分達がダンジョンに潜り、貯めたお金で買った祝いの品です。

 

よろしければ、お受け取りください。」

 

命達に聞いてから中身を見ると綺麗な羽織りが2枚入っていた。

 

「奥方と対になる羽織りだ。ツクヨミやアマテラスも協力してくれてな。良かったら使ってくれ。」

 

「なんと。感謝する。我の宝物庫の宝にも勝るとも劣らない宝よ。」

 

 

桜花と命はレベル2。他はレベル1とのことなので、今度ベルとリリを紹介しようと考えているとタケにファミリアはどこに入ったかを聞かれたのでヘスティアファミリアだと答えた。

 

 

「ヘスティアか!ヘスティアは神々の中でも善神中の善神だ。俺も友神でな。これは良いな!喜ばしいことだ!」

 

暇な時にはウチに遊びに来ると良いと家の場所を教えて、命達の頭を撫でてから家に帰る。

 

アルフィアにそのことを話し、羽織りを着てみるとベルとリリはキラキラした目で似合っていると大興奮していた。

 

ふむ。ならば家族ということでベルとリリ、それにヘスティアの分も頼むかといえば大喜びするベル。アルフィアがリリと一緒にベルも抱きしめて団子になっていた。

 

 

 

「…何?」

 

朝からヘディンとヘグニが真っ青になって頭を下げにきた。

 

話を聞くと、フレイヤがベルの魂の輝きがとか、ベルについて阿呆のように言い続けており、フレイヤファミリアの団長のオッタルとやらがミノタウロスをベルにぶつけようとしているらしい。

 

 

「なるほどな。構わん。確かにフレイヤも他の神々も暇であろうよ。我々長寿のエルフ族以上の神々を殺すのは暇と変わり映えのない日々よ。

 

我らの英雄足るベル・クラネルがミノタウロス如きにやられる筈があるまい。ふふふ。楽しみになってきたな。」

 

ヘディンとヘグニに実行する日時を把握して、その時は家にフレイヤを連れてきて神の鏡を使わせて鑑賞することを約束させた。

 

ベルはアルフィア、ヘディン、ヘグニに鍛えられ、技術、戦術という面はもちろんだが、ステイタスも軒並み上限突破している。そして恒例になっているヘスティア飲み会にてフレイヤが動くことを伝えてきた。

 

「オッタルに任せたからミノタウロスが普通よりも少し強くなってるかもしれないわ。ベルは大丈夫かしら?」

 

そわそわするフレイヤに呆れてしまう。

 

「…お言葉ですがフレイヤ様。御子息はそこいらの有象無象とは一線を画しています。」

 

「み、ミノタウロスの強化種ですよね?べ、ベル君の相手になるかなあ?」

 

「ふむ。ベルは一度オラリオに来てミノタウロスに敗走している。あいつは我より負けず嫌いでな。おそらく楽しい戦いになるだろうよ。」

 

デメテルから貰ったワインとアルフィアの用意したつまみを机の上に置いて白黒エルフも座らせてフレイヤの出した神の鏡を見る。

 

ヘスティアは半泣きになりながら危なかったらどうするんだ!と言うがダンジョンに潜っている以上危ないのは当たり前だと伝えると大人しくなった。

 

ヘスティアの善神ぷりは素晴らしいが慌てすぎだ。我の息子は英雄。ならばこんな試練なんぞ突破して当たり前だ。

 

 

しかしフレイヤファミリアは大丈夫なのか?昼間だぞ?主神とレベル7が3人いないのは問題ではないのか?

 

そう思ったがヘディンがここに居る時点で問題は無いのであろう。我の配下は誰もが素晴らしいものよ。ふははは!

 

「我が王。ロキファミリアの遠征と被っています。脳筋猪がロキファミリアの邪魔を許さなければ良いのですが。」

 

「あ。そ、そうだ。うう。ベル君の冒険見たい…。」

 

「くくく。安心しろ。ヘディン。ヘグニ。ロキファミリアには姉上とベートが居る。それにアイズもな。奴らは心配はするだろうがベルの冒険を横から邪魔するような奴らではない。

 

我を差し置いて王を名乗る不届者とロキファミリアの戦闘も見たいところだがやはり我とアルフィアの最優先は息子のベルよ。」

 

「かしこまりました。後、我が王。一つ訂正を。脳筋猪の猛者は王ではなく、猛る者で猛者です。あのような脳筋が王な訳がありません。

 

王は唯一無二。ギルガメッシュ・リヨス・アールヴ様のみ。」

 

「そそそうです!ギル様以外の王なんて必要ありません!オッタルなんか俺が倒してやりますです!!」

 

「くはは!そうであったか。ふむ。我が過ちを正してくれたこと。感謝しよう。そしてヘグニ。貴様の忠義も心地よい。流石は我が選んだ配下よ。褒美だ。貴様等も我が宝物庫の酒を飲むと良い。」

 

黄金の波紋から出てくる酒を注いでやると二人はひざまづいて受け取る。

 

アルフィアが座っている逆側に座らせて全員で飲む。フレイヤは嬉しそうに同じく飲んでおり、ヘスティアは心配そうに酒をちびちび飲んで神の鏡を見ている。

 

しばらくするとリリとベルがキョロキョロしており、そこからミノタウロスの強化種がのしのしと現れた。大剣を持っているな。

 

全員が鏡を見る。ヘスティアは心底心配そうにしており、フレイヤは魂を見たのか眩しそうに目を細める。

 

ヘディンは眼鏡の位置を直してベルを見据え、ヘグニはキラキラした目でベルを見ていた。

 

『…リリ。落ち着いて?深呼吸しよう。ミノタウロスがなんでここに居るかなんてのはどうでも良い。

 

これ以上進ませると他の冒険者が被害に遭うかもしれない。それはお義父さんの民を傷つける行為だ。今は民を護るって言うお義父さんは居ない。なら息子の僕が。

 

英雄になると決めた僕が父を助けて、みんなを護るよ。』

 

リリはその言葉で落ち着いたのか深呼吸をしてリトルバリスタを構えて後ろに下がる。

 

『ベル様。リリが危ないと思ったら援護して絶対にベル様を生きてアルフィアお義母さんの元に帰らせます。

 

………だから誰にも邪魔はさせません。リリは指示もしません。だって。ベル様はリリの英雄だから。必ず勝ってください。』

 

ベルはにっこり笑って武器を構える。

 

「あ、嗚呼!!眩しい!なんて眩しいの!?ベルも!リリルカも!!すごい!すごいわ!!」

 

「…ほう。あの小人族。ロキファミリアの小人族よりも勇者であったか。」

 

「…すごい、ね。ベル君との信頼関係っていうのかな。」

 

「ふん。当たり前だ。ベルもリリも私の子だぞ。」

 

全員が黙るとベルとミノタウロスの戦いが始まった。

 

ベルはミノタウロスの肉が断ちにくいのを理解しており、ヒットアンドウェイを何度も繰り返す。

 

 

 

やっぱり。僕の方が敏捷と器用は高い。耐久と力は向こうが上。魔法は無いと思うけどどんなイレギュラーがあるかわからないから適切な距離を保つ。

 

うん。ヘスティアナイフなら肉は斬れる。短刀は薄皮くらいか。次は魔法を試す。僕の魔法の優位性は速度。問題は火力不足。魔法の師匠(ヘディンさん)に教わった。

 

『ファイアボルト!!!』

 

轟音と共にミノタウロスに炎雷が着弾するがブルルと首を振って煙を晴らす。

 

 

なるほど。効きはしてないけど目隠しや牽制には使える。よし。

 

安全マージンを測って確実に仕留める為に脳をフル回転させる。攻撃を組み立てて致命傷を負わせる。それができなければ負けて死ぬだけだ。

 

 

ベルの戦いを絶対に邪魔させないとリリはその攻防を見ながら周りに気を回す。他のモンスター、冒険者はリリが絶対に倒してでも邪魔はさせないと決意していつも以上に警戒していた。

 

 

「ほぉ。ベルのやつ。頭は冷静に、心は熱くか。くはは。」

 

機嫌がかなり良いギルはアルフィアの頭を撫でながら言葉を紡ぐ。

 

「見よ貴様ら。あれが我とアルフィアの自慢だ。ベルとリリ。あのような冒険者がオラリオにいるか?くははは!!」

 

「…我が王。御子息と御息女は英雄足る器です。他の有象無象と比べることすら失礼に当たります。」

 

「む。そうであるか。しかしヘディン。ヘグニ。貴様らの指導は確実にベルの血肉となっておるなぁ。」

 

「ははい!ベル君、魔法の可能性まで視野に入れて、ます!ミノタウロスが魔法なんて馬鹿だと言う奴らはいます。で、でも、ここで負けちゃダメって時に、あそこまで考えて、絶対に不利にならないように立ち回るのは、えと、第一級冒険者でもできませんっ!」

 

「…ああ。そうだなヘグニ。我が王。御子息の戦い方は確実に敵を屠る為の戦い方です。あそこまで徹底できるのは素晴らしい。」

 

話をしながら見ているとロキファミリアの面々がルームに入ってきた。その瞬間にリリが走ってリトルバリスタを構えながら前に立つ。

 

『え?えっと、誰??』

 

ティオナが訊ね、ティオネは睨み、ベートとアイズはリリのしようとしていることがわかったのか肩の力を抜いて薄く笑う。

 

『リリはヘスティアファミリアのベル様とパーティーを組んでいます。ベル様は今己を賭して英雄になる為の冒険をしています。

 

リリはベル様と約束しました。誰にも邪魔はさせないって。助けようとすることすら邪魔です。ここは通しませんっ!!』

 

『はぁ?ベルが強いのはわかってんのよ。でもあれはミノタウロスの強化種。レベル1が勝てる訳ないでしょ。どきなさい。』

 

『退きません。リリは絶対に通さない!!ベル様と約束した!!小人族だからって舐めるなっ!!レベル5がなんだ!ロキファミリアがなんだ!!殺されても絶対に通さないっ!!』

 

リリの気迫にティオナとティオネは何故か戦闘態勢を取ってしまう。レベル1の、小人族の気迫にレベル5の自分達が戦闘態勢に入る程にのまれた?

 

ゴクリと思わず喉を鳴らしてしまう。

 

『…ティオナ。ティオネ。ここは待機だ。勇敢な同胞。君の勇気に敬意を表するよ。僕達は決して手出ししない。』

 

『…感謝します。小人族の希望の勇者様。』

 

それだけ伝えてリリはまた周囲のモンスターを警戒し始める。

 

ベルはその声まで聞こえており、にっこりと笑い、ミノタウロスに集中する。大剣が厄介ではあるが全て見切れる。

 

大剣を使う時の僅かな癖も把握した。あとは詰めるだけだ。決着の時は刻一刻と近づいていた。

 

 

ベートとアイズは一緒に壁にもたれながらベルの戦いを見ており、時折見せる技と駆け引きについて会話をする。

 

ティオナとティオネはウズウズしていた。ベルの圧倒的な技術と見ているだけで熱くなるような闘争に。

 

フィンはベルの戦いもそうだがリリの見せた気迫と勇気に感動しており、リヴェリアは最愛の弟とママ友のアルフィアの息子であり、自分の甥となるベルの実力が前に見た時より上がっている。いや、飛躍と言ってもおかしくない向上に口角を上げてしまう。

 

そしてベルがミノタウロスに襲われていると聞いていても立ってもいられなかった、姉と慕われているレフィーヤはベルの実力を目の当たりにして興奮していた。私ももっと強くなりたいと。

 

 

 

ベルは一つギアを上げた。速度が上がったのだ。それはスキルのおかげでは無い。安全マージンを取りながらもスピードは全力ではなかった。長く戦えるようにするのはもちろんだが、これも駆け引き。

 

ミノタウロスはベルの速度が急に上がって驚愕する。慌てて大剣を横薙にするがベルを捉えることはできない。

 

ラビットラッシュ。二刀流で超高速のラッシュを敢行する。一瞬にして切り傷だらけになるミノタウロス。しかし傷は浅い。

 

咆哮を上げて振り下ろしては捉えられないと思い、大剣をまた横薙ぐが、手応えがない。ベルは右側から来る大剣の側面を蹴り上げ、軌道をずらして右手のハゼラードで斜めに受けて綺麗に受け流す。

 

そのまま足に力を入れて一歩でミノタウロスの胴体と大剣の間に入って両腕の肘の内側の腱をヘスティアナイフで切り刻む。

 

ミノタウロスは手に力が入らず、振り切った体制で大剣を投げ捨ててしまう。

 

「う、うまいっ!!」

 

「なんて技術と胆力だ。ふふ。流石私の甥っ子だ。」

 

フィンが思わず叫び、リヴェリアは甥の成長を喜ぶ。

 

ベルはそのままでは終わらず、しゃがんでジャンプしながらベート直伝の蹴りを顎に喰らわせる。下からの蹴り上げにミノタウロスはふらついて後ろに下がるが動かない腕を遠心力を使って振り回す。

 

ベルは蹴りを入れた瞬間にバックステップをして当たらない位置にいた。そして短刀をミノタウロスの目の前にふわっと投げる。

 

ミノタウロスはその短刀を見てしまい、慌ててベルの姿を探すが見当たらない。そう、ミノタウロスにあった思考の中に空白の時間を作った。

 

固まるミノタウロス。ベルはミノタウロスの斜め下から高速で懐に入る。そして脇腹にヘスティアナイフを刺す。

 

ーーー御子息。このナイフはミスリルで出来ています。ミスリルは魔力の伝導がダントツで高い。魔法を使うこととナイフを使うことは別々ではありません。よく覚えておいてください。

 

師匠の言葉が頭に浮かんでくる。

 

『ファイアボルト。』

 

ドゴンっ!と音がしてミノタウロスは苦しむ。

 

『ファイアボルト。』

 

ミノタウロスの口から血と共に炎が出る。

 

『ファイア…ボルトォォォォォォ!!!』

 

ついにミノタウロスは爆散した。灰になるミノタウロスを見てそっと呟く。

 

『…僕の、勝ちだ。出来ることなら、また貴方とは戦いたいな。』

 

ベルは魔石とドロップアイテムの角を拾ってからリリの方を見るとロキファミリアのみんなもそこにいて満面の笑みを浮かべて走る。

 

『リリー!レフィ姉!ベートさん!アイズさん!ティオナさん!ティオネさんっ!リヴェリア伯母さん!!フィンさんまで!勝ちました!ミノタウロスにリベンジできましたー!!』

 

やれやれと肩をすくめるフィンとやっぱりベルはベルだなぁと笑う全員。その姿が神の鏡にも映されていた。

 

「ふははは!!見たか!?ヘスティア!フレイヤ!我とアルフィアの息子を!娘を!!」

 

「…見たよ。すごいね、ベル君。フレイヤもありがとう。神の鏡使ってまで見せてくれて。でもボクの心臓は破裂しそうだったよ!!」

 

「ええ!ええ!見たわ!ベルは素敵よ!」

 

「ベル君すごい!うー。身体動かしたい。へ、ヘディン…。」

 

「わかっている。私も同じ気持ちだ。御子息の冒険に揺さぶられた。我が王。こうしてはおれません。私達もダンジョンに向かい、鍛錬させてもらってもよろしいでしょうか?」

 

「構わん。フレイヤは見ておいてやる。明日の時間がある時にでも取りに来い。貴様等のその向上心が心地よい。行け。」

 

ヘディンとヘグニはすぐにダンジョンに向かった。フレイヤは大興奮して嬉しそうにヘスティアに話しかけていて、ヘスティアはしょうがないなぁとフレイヤの対応をしていた。

 

ロキファミリアの面々が嬉しそうにベルに話かけている。ベルも楽しそうに話をしていた。

 

ベルの戦いは正に英雄譚のような戦い。リリもそうだ。英雄を支える勇気ある行動。息子娘の成長がこの目で見られて喜ばしい。

 

 

ベルとリリが帰ってくる前に食事の用意でもするかとアルフィアと手を繋いで買い物に出かける。

 

 

嗚呼。なんて良い日だろう。

 

 

 

 

 

ちなみに録画もできるようでフレイヤが録画していたものをヘルメスに頼んでゼウスとザルド、それにヘラがいる家に送ってやった。

 

 

 

「うおっ!?べ、ベルか!?なんつー速度で強くなってんだ。ジジイ。こりゃ半端じゃねぇぞ。俺らの英雄は。」

 

「ぬう。マキシムのレベル1の時より遥かに強くね?」

 

「私の孫だぞ。強いに決まってる。貴方。ベルはいつ帰ってくるのかしら?早く会いたい。」

 

「い、いや、マジ?ベル君もそうだけどこのリリちゃんだっけ?すごくね??」

 

「ベル・クラネル。流石アルフィアさんとギルガメッシュ様の御子息ですね。リリルカ・アーデですね。アルフィアさんが娘にしたと仰っていました。心が何よりも強い。」

 

一緒に見たヘルメスとアスフィも驚愕していた。オラリオは変わる。王と王妃、そして英雄と英雄を支える勇気ある仲間。

 

ここから王を中心に物語は加速していく。



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人(神)は見かけによらない

週一くらいなら更新できそうです。また頻度を上げれるように頑張ります。

少し短いですがどうぞ!


ベルがミノタウロスに勝利し、ランクアップした。そのお祝いにアルフィアがやる気を出してエイナとアイナを連れて来て料理をしていた。アイナは連れてくるな。

 

 

マリアも呼びたいとの事だったのでベルとリリと一緒に孤児院に行ってからホームに向かうよう伝え、我とベル、リリは3人で子供達と遊ぶことにした。

 

 

「ほう?ライは野菜が苦手なのか?」

 

「うっ。うん。ギル様みたいに食べたいけど苦いから嫌い!」

 

他の子供達も同じように言うので笑って外に遊びに行く用意をしろ!と伝えるとみんな嬉しそうに走っていった。

 

赤ん坊の二人は我とリリが抱っこしてベルが他の子供達を引率する。商店街の子供達もキラキラした目で見てくるので連れて行くことにした。

 

 

「ふはは!デメテル!ペルセフォネ!いるか!」

 

おっとりとした女神のデメテルがやってきてたくさんの子供達に目をパチパチさせる。

 

「今日は社会見学だ!ライ!こっちに来い!」

 

ライは返事をして小走りで我のローブの裾を掴みながらデメテルを見る。

 

「このライはやんちゃだが孤児院の子供達をとても大切にしている我の宝よ。どうも野菜が苦いのがダメらしくてな。どうやって野菜や果物が作られているかを勉強させに来た。

 

ペルセフォネ。他のやつも呼んで子供達について教えてやれ。ここの野菜の美味しさをな!」

 

「はいっ!ギル様!!はーい!みんなこっちにおいでー。おっきな畑もあるからみんなで収穫しよー!」

 

「「「「「はーーい!!」」」」」

 

ベルまで手を挙げて返事をしており、リリはしょうがない人だなぁと笑っている。うむ。やはり我の息子は可愛い!

 

 

子供達が楽しそうに泥だらけになりながら芋を掘っているのを見てデメテルと紅茶を飲む。

 

 

「そうだ。デメテル。貴様、ディオニュソスを知っているな?」

 

「ええ。ディオニュソスがどうかしたの?」

 

「これはロキに言うのを忘れていたのだが奴は気配が反転しておる。ヘスティアにも聞いたのだがな、十二神に選ばれる前まで、狂気を孕んでいたようだ。それが下界に来て治ったのかなぁと言っていたが反転して善神の振りをしている。

 

どういう意味かわかるな?」

 

ハッとしたデメテルは何かを考えている。

 

「やつはワインが好みらしい。そしてこのオラリオで葡萄を作っているのはデメテル。貴様のところだ。気をつけろ。一応何も無いのであればそれで良いが何かあってからでは遅い。

 

我も気にはかけるが王としてやる事は一つではない。仮に我が居ない時に何かされたのならばすぐに伝えよ。」

 

波紋の中からネックレスを取り出す。それをポイと投げる。

 

「全員にそのネックレスを触れるように伝えろ。こちらのネックレスと対になっている物でな。一方通行だが我の持っているネックレスで触った奴の場所がわかる。

 

連れ去られたならば目も当てられん。」

 

「わ、わかったわ。王様。私はどうすれば良いのかしら?」

 

「貴様がすべき事は子を天界に送られないように交渉することだ。上手くやれるだろう。貴様がいないオラリオなんぞ食事がつまらんようになるからな。」

 

そう言って足を組んで紅茶を飲む王様。王様の言う事ならば十中八九現実になると思った方が良い。デメテルはそう思って頷き、策を考えるようにした。

 

子供たちは楽しかったのかお礼を言ってまた連れてきて!と王様にお願いしていた。

 

 

 

 

その日からデメテルは毎日仕事終わりにヘスティアファミリアに向かい、ディオニュソスにバレないようにフレイヤとヘスティア、そしてヘファイストスとロキを含めた5神で話をするようにした。

 

フレイヤファミリアから何人か見張りを置いてくれるみたいで少しホッとした。

 

「デメテルは私の神友だもの。ロキのところは闇派閥を追ってるみたいだから戦力を割けないでしょう?ヘファイストスはバベルにいるしヘスティアにはギルガメッシュとアルフィアがいるのだし。

 

デメテル。絶対に送還されちゃダメよ?それは子供達も同じ。ギルガメッシュの宝だし、私もそう思ってるんだから。」

 

「ちっ。あんのクソボケが。ウチのファミリア来たんも探りっちゅーわけか。今は泳がせるけどなぁ、ウチに舐めた事しくさったの後悔させたるわ。」

 

「…そうか。だからギル君はボクに聞きにきたのか。同じオリュンポスとして恥ずかしいよ。

 

ヘラが心底嫌っていた理由がようやくわかったよ。」

 

女神達は全員が難しい顔をしながら話し合う。

 

「あんたがめんどくさがらないで十二神になってれば良かったのに引きこもりたいからって渡したからでしょ。

 

いえ。違うわね。アンタがそうしたからあいつは天界で暴れなかった。というかヘラが嫌ってたの?」

 

ヘスティアと同じオリュンポス出身のヘファイストス。天界で根っからの引きこもりであり、出会えるとレアキャラとなっていたヘスティアと唯一と言える程仲の良かった彼女がオリュンポスの内情を話しつつ知らないことを聞く。

 

「うん。ボクの神殿に来てずーっとゼウスとディオニュソスの愚痴を言ってたよ?あの子も可愛いんだよねー。

 

特にゼウスについて愚痴を言う時は絶対に泊まってボクに抱きついて寝るんだからね。頭撫でてあげたもんだよ。」

 

「「「「あのヘラが!?!?」」」」

 

他の女神が驚いてセリフが被る。ヘスティアは気にせずにアルフィアの用意したツマミを食べながら頷く。

 

「うん。ボクって本当に自分の神殿から外に出ないからなぁ。あの子とヘファイストス、アテナとアルテミス、それにアストレアくらいだよ?遊びに来てくれるの。

 

結界張ってるから邪な想いがあれば一歩も中に入れないってのもあるんだけどね。

 

話を戻すけど、あの子って怒りっぽいけどあれはゼウスの馬鹿の責任だしね。だから結婚する時に言ったんだよ。あれは下半神だから何かあればすぐにボクの所においでって。

 

あまりにも酷かったから一回だけあの馬鹿を神殿に閉じ込めてアルテミスに矢を放ってもらってウェスタで燃やしたんだよ。」

 

「あ、あったわ。あのスケベジジイが何をしても動けないくらいの神威でブチ切れてたわよね??」

 

恐る恐る言うヘファイストスに、え?という表情のロキとフレイヤ、そしてその当時を知っているデメテルは顔を青くして喉を鳴らす。

 

この善神中の善神のヘスティアがブチギレた??嘘でしょ!?

 

 

「言い訳ばっかりしてヘラみたいな可愛い子を放って浮気するやつなんか知らないよ。だから冥界にいるハデスとポセイドン、それになんでかついて来て泣いてたエレボスとニュクスを呼び出して一緒にボコボコにしたんだよ。

 

あの時は何故かハデスとポセイドンもすぐに来てくれたなぁ。多分弟のゼウスをしっかりさせるために急いできてくれたんだろうね。いい子達だよね。

 

なんでエレボスとニュクスが来て泣いてたのかは本当にわからないけど。」

 

のほほんとするヘスティアだがロキとフレイヤは内心がくがくと震えていた。

 

怒らせると一番怖いのってヘスティアじゃないだろうかと考えが巡る。

 

 

「…デメテル?ファイたん?あのハデスとポセイドンがクソジジイの為に動くか?」

 

ロキがヘスティアに聞こえないように小声で聞いてくる。

 

「…いいえ。ヘスティアの神威が凄くて、ハデスとポセイドンもビビってたのよ。エレボスとニュクスは冥界まで揺れてたらしくて。ヘスティアの神威だって気づいたみたい。あのヘスティアがブチギレてるのよ?私はすぐに逃げたわ。」

 

「それにアルテミスもヘスティアに頼まれたから喜んじゃったのよねー。ヘスティアって本当に神殿から出てこないから。でもあの性格でしょ?だからみんなに好かれてたのよ。

 

呼ばれたりお願いされると全員が頷くくらいにね。私も神造武器持って行ったわよ。それとあの子の聖火。邪神を消滅させるくらい恐れられていたのよ?

 

ハデスとポセイドンは二度と冥界から出ないって言ったくらい怖かったみたいよ?ペルセポネが言ってたの聞いたわ。」

 

「…ウチ、めっちゃ馬鹿にしてんけど大丈夫かいな?」

 

「デ、デメテル?もしかしてヘスティアってオーディンより神格が高い?」

 

「絶対に有り得ないけど天界で殺し合いをしたらオリュンポスならヘスティアが一番よ。神威が強すぎるし神格もゼウス以上。聖域を作られたら誰も手出しできないもの。」

 

「ヘラが家出してヘスティアの神殿に隠れた時にゼウスが何をしても傷一つ作れなかったから神殿前で泣いて土下座して許してもらってたのよ?」

 

「「うわぁ……。」」

 

小声で話をしているのに気づいたヘスティアは頬を膨らませてヘファイストスに飛びついた。

 

「ずるいぞヘファイストス!ボクを除け者にするなんて!!」

 

「きゃっ!違うのよヘスティア!」

 

楽しそうにヘファイストスに抱きついているヘスティアを見ると普通の女神なのになぁ。と思う全員だった。

 

 

 

 

ベルに武器や防具を一緒に選んでほしいと言われたので久しぶりに二人で買い物に出かけることにした。

 

バベルに向かい、ヘファイストスファミリアのテナントを見て回る。ベルと一緒に見ているとベルは気になっていた防具があったのかキョロキョロと探していた。

 

「ベル。気になるものがあるのなら店員に聞いてこい。」

 

ベルは返事をして嬉しそうに店員のところにいった。

 

ふむ。やはり椿であのレベルならば早々良い武器はこのフロアでは見つからんな。

 

色々見ていると何やら騒がしくなっていた。見てみると大笑いしている赤髪の男と困った顔をしているベル。それに苦虫を噛み潰したような店員が座っている。

 

ベルは赤髪と話をしてどこかに連れて行かれていた。全く。我に一言くらい言ってから行かんか。

 

「ベル。どこかに行くならば一言くらい声をかけよ。」

 

「あ、お義父さん!ごめんなさい!」

 

「構わん。それでコイツは?」

 

ベルの紹介により、ヘファイストスファミリアの鍛治師のヴェルフ・グロッゾという事がわかった。

 

椿の言っていた魔剣鍛治師のヴェル吉とやらか。一度ヘファイストスに見せてもらったが大したことのない魔剣であったな。

 

 

「あ、ヴェルフ・クロッゾです。」

 

「うむ。我のことは椿かヘファイストスに聞いているな?」

 

「は、はい!」

 

「ならば研鑽せよ。貴様の場所はそこではない。何やら精霊の加護を感じる。それとバカな同胞が何を言って来ようと無視しろ。雑種の言葉に耳を貸すな。

 

貴様は貴様だ。我が民として己の責務を全うしろ。」

 

ベルはニコニコ笑っており、ヴェルフは愕然としていた。

 

「だ、だが、俺は……。」

 

何やら事情があるようだ。苦悩、後悔、諦念。ふむ。

 

「…ベル。ヴェルフの話を聞いてやれ。我はヘファイストスに用がある。あとで装備は見てやろう。」

 

「うん!でも僕、ヴェルフさんの防具使いたいから選ばなくて大丈夫!」

 

「む?あのライトアーマーの製作者は貴様であったか。気持ちのこもった良い出来だった。だが我が息子を任せるにはまだまだ足りん。精進せよ。」

 

それだけ言ってヘファイストスに会いに行く。

 

「あら?ギル?どうしたの?」

 

「ベルがヴェルフと話をしているから邪魔をしないようにこちらに来ただけだ。気にするな。」

 

「いや、ここ私の執務室……。」

 

無視して本を取り出して紅茶を飲みながらゆっくりする。諦めたヘファイストスは自分の仕事を続けている。

 

しばらくするとヴェルフがベルを連れてきたので話を聞くと専属契約をして一緒にダンジョンに潜るらしい。

 

少しはスッキリした顔をしている。ベルが話をちゃんと聞いたようだな。

 

 

 

 

ロキファミリアにヘルメスとアスフィが来るらしいので我も向かうことにした。奴らがゼウスの使いっ走りのようで今は重宝している。

 

「よぉ。ヘルメス。すまんな。急に呼び出して。」

 

優男は口角を少し上げて首を横に振る。

 

「構わないさ。王様もいるなら俺は来ないといけない。王様。俺の眷属を助けてくれてありがとう。」

 

「構わん。下界の子は我の民よ。それに貴様もアスフィもよく働いてくれている。」

 

話もそこそこに集まったので闇派閥。ひいてはディオニュソスについて情報の精査と擦り合わせをおこなう。

 

ロキが現状分かっていることを全て伝えていき、ヘルメスはヘルメスで裏で調べたことや分かっていることを伝えていく。

 

「…ディオニュソスがね。なるほど。ヘスティアが言うなら恐らく正しいと思うよ。それに王様が反転してるって言うんだ。間違いないと思って行動するべきだね。」

 

「んー。やっぱオリュンポス出身のアンタでも思うんか?」

 

「俺はあまり天界でディオニュソスと絡みは無かったんだけど…。でもヘスティアが言うなら間違いない。

 

彼女は神々の本質すら見抜く女神だよ。それにゼウスより強いし怖い。」

 

「…嫌っちゅー程わかったわ。ヘファイストスとデメテルに天界の話聞いたで。」

 

ロキの言葉にヘルメスは胃を抑えながら頷く。本当に怒らせたらダメなのはヘスティアらしい。見かけによらんな。

 

姉上達は現在も遠征で59階層に何かあるようで今は居ない。ヘルメスとアスフィを家に呼んで飯を食べさせ、ザルドやゼウス、そしてヘラがどうしているかを聞いていく。

 

ベルは嬉しそうに祖父母とザルドの話を聞いており、リリもほぇーと可愛い顔をしながらアルフィアに抱きしめられていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーんん!?!?あ、アルフィア!!!妊娠しておるぞ!!!

 

 

ーーーほ、ほんとに!?ほんとか!?ギル!!

 

 

どうやら闇派閥なんぞよりえらいことになったようだ。




原作に沿う形にする為に妊娠からの一時的にフェードアウト



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大騒ぎのオラリオ

明日の分のストックを先に。

読んでくださりありがとうございます。

何も無ければ土日に更新します!

アンケートありがとうございます。助かります。


ー--アルフィア王妃がご懐妊なされたらしいぞ!!

 

ーーーつまりギルガメッシュ様のお子様だ!!!

 

ー--こうしてはいられん!祝儀品を選別しなければ!!

 

ー--……しかしギルガメッシュ様とアルフィア様のファミリアはどこなんだ?

 

ー--知らん!!が、あの商店街に行けばわかるだろう。

 

 

 

 

 

オラリオ中が大騒ぎになっていた。ギルガメッシュは妊娠がわかった瞬間に王とは思えないほどに狂喜乱舞してアルフィアを寝かせてからヘスティアの屋台に向かった。

 

そこでアルフィアが妊娠した!!我の子だ!!フハハハハハ!!

 

と、ヘスティアの脇に手を入れて抱き上げてクルクル回ってしまい、近くにいたエルフがそれを聞いてオラリオ中のエルフに伝えた。

 

 

すぐにフレイヤとヘディンとヘグニが駆け付け、祝辞を述べてから警護すると張り切ってしまう。

 

 

 

「ふむ。アルフィアならば問題ないと思うが?」

 

 

「いけません。我が王。僭越ながら申し上げます。母体に対する少しの異変でもお子様は敏感に反応します。

 

もちろん我が王と王妃のお子様ですので問題はないかもしれません。ですが、かもではいけないのです。

 

万全を期してことに当たります。でなければ我々配下の存在は民と変わりません。」

 

「う、うむ。どうやら我の考えが甘かったようだ。感謝しよう。貴様の忠言。心に刻もう。

 

我にも考えがある。オラリオ中のエルフはもちろんだが、我が宝、マリアや他の民も祝辞を述べると共に祝儀の品を持ってくるだろう。

 

故に姉上たちが戻って説明してから下半神のところでゆったりとさせようかと思う。

 

あそこにはザルドもいる上に結婚、産児、主婦を守護するヘラがいる。何も心配あるまい。」

 

ヘディンはメガネを直して頷き、心得たと口を開く。

 

「なるほど。では我々のすべきことはそれまでの王妃の警護ですね。

 

フレイヤ様。お聞きになられましたね?我々二人は交代しながらこの家、ひいては王妃を警護いたします。」

 

「もちろんよ。ヘスティアの眷属で、私にとっても大切だもの。蟻一匹近づけさせないで。

 

それと私もアルフィアになるべく近づかないようにするわ。私の魅了がどんな影響を及ぼすかわからないもの。」

 

「ギ、ギル様!俺、がんばります!!」

 

「よろしく頼む。ヘディン。ヘグニ。仲の良い神は入れてやれ。我の庇護下のやつらもな。それ以外は全員叩き出せ。」

 

「「御意」」

 

最強の白黒エルフによる警護が始まり、出産がかなり厳しいことしかわからない王様は珍しくテンパっていた。

 

それを見ていたヘスティアもそーなんだ。大変なんだなぁ。と、自分は経験したことがなく、処女神であり、引きこもっていた為に分からなかった故に止めることはしなかった。

 

後日、デメテルやヘファイストスにやりすぎだと笑いながら言われることになる。

 

 

 

「……ギル。私はお前と一緒に過ごせて嬉しい。もちろんベルやリリも心配してくれて嬉しい。が、ずっとベッドがら出られないのは逆にストレスが溜まる。」

 

アルフィアは妊娠が発覚してから愛する夫であるギルガメッシュがへばりついており、ベッドから起き上がることすら手伝おうとするので少しばかり呆れていた。

 

自分をここまで大切にしてくれたのは、この世に生を受けてメーテリアと共に育ち、オラリオにきてヘラファミリアに属していた時を振り返っても一度も無かった。

 

冒険者としての資質がありすぎたせいで才能の権化やら才禍の怪物などと恐れられる程の通り名がついていた。

 

故に恐れられる、畏まられることはあっても心配してくれるのは実妹のメーテリアくらいだった。もっともメーテリアの方が惰弱、病弱、貧弱の三拍子が揃っていたのでこちらが心配をしていたのだが…。

 

とても嬉しく、なんともむず痒い感覚に陥っているのだがここまでされてしまうと逆に落ち着かない。

 

ギルガメッシュの慌てている姿や大喜びする姿を見て微笑ましいと同時に自分が愛されているのはよく理解できる。

 

だが限度はあるだろう!?

 

「…ベルとリリは手洗いうがいに加えて、マキシマ・ウェスタを毎日かけてくる。可愛いから良いのだがな。

 

そのあとのギルのプロミネンス・ウェスタは要らないだろう。それとな、ギルの全知なるや全能の星でわかったのが早いだけで、まだひと月くらいだ。

 

ここまでされる意味がわからん。」

 

「だ、だが!アルフィア!貴様はもちろんだが、子供に何があるかわからん。ならば王として、そして父として夫として心配くらいするだろう!」

 

はぁ。ダメだ。どうしようもない。もしかして私がメーテリアにしていたのもメーテリア側からすればこんな感じだったのか?

 

すまないメーテリア。心配しすぎたかも知れない。

 

 

 

 

商店街の皆が健康に良い果物や野菜、それに体力の付く肉や魚を連日持ってきてくれる。サリアやライなど子供達も嬉しそうにアルフィアを見に来ては話をしていってくれる。

 

特にアイナは同じハーフエルフのエイナを産んでいるのでその時の注意事項やどうだったかを経験則から教えてくれる。

 

ううむ。こうしてみると我ら男は出産について何も知らんな。このままではいかん。王足る者が情報を知らんなど我が我を許せん。

 

思い立ったが吉日という諺が極東にはあったはずだ。よし。

 

 

「ヘディン。我は今から出産についてミアハとアミッドに聞いてくる。あとは任せる。」

 

「はっ。王もお気をつけて。」

 

頷いて即座にミアハファミリアに向かう。ドアを開けて入るとナァーザが店頭で座っていた。

 

「??ギル様?いらっしゃいませ…。」

 

「うむ。今日も自らの責務を全うしているようで何よりだ。ミアハは居ないのか?」

 

「ミアハ様なら出かけました。ギル様に教えて頂いた割引チケットを配っているかと思います。」

 

昔ナァーザにミアハのポーションを配るのをやめさせたいと言われ、働きには対価が必要だと説法したことがあった。

 

ーーーつまりミアハよ。ナァーザが作ったポーションを無料で配るのはナァーザの働きに対する対価を支払っていない。それはナァーザの働きを侮辱しているも同じだ。

 

ーーーそうで、あったか。すまないナァーザ。

 

ーーーだがミアハも神。それも善神だ。貴様の配ったポーションで生き残った民もいるだろう。そこで配るなら一回は半額になるチケットのような物を配れ。

 

ナァーザもそれならと紙に書いて作ったらしい。それはうまくいってるようで何よりだ。

 

「そうか。ナァーザよ。貴様は出産に立ち会う、又は妊婦の友が居たことはあるか?」

 

「ああ。アルフィアさんですか?私はお客さんで昔、妊婦の人は居ましたけど同じファミリアには居ませんでした。

 

それに出産も申し訳ありませんが関わったことはありません。……多分、ディアンケヒトファミリアの聖女なら。」

 

「アミッドか。ふむ。またこよう。これはその情報の褒美だ。ミアハと美味い食事でも食べるが良い。」

 

ヴァリスを入れている袋を投げ渡して次はディアンケヒトファミリアに向かう。

 

手ぶらでは王として良くないと思い、途中でケーキを買ってから向かうことにした。

 

ディアンケヒトファミリアの店舗に着くとアミッドが都合よく店頭に座っていた。

 

「久しいな。アミッドよ。これを食べると良い。」

 

ケーキの入った箱を渡すと目をぱちくりさせながら頭を下げてくる。

 

「お久しぶりです。ギルガメッシュ様。御子息のベルにはいつも手助けしてもらい、感謝します。ケーキ?ですか。よろしければ私も休憩に入るので奥でご一緒しませんか?」

 

その言葉に頷き、アミッドと共に奥の席に行く。そこで王の財宝から紅茶を取り出して淹れてやり、共にケーキを食べる。

 

アミッドも美味しいのか少し表情が柔らかくなっていた。

 

「それでアミッド。貴様の知識を我に貸せ。貴様は聖女と呼ばれる我が民だ。出産の対応。それに妊婦の友や患者が居たならどう対応したか我に詳しく教えよ。」

 

アミッドはなるほどと頷いて断りを入れて立ち上がり、しばらくすると本や紙の束を持って戻ってきた。

 

「噂には聞いていました。アルフィアさんが懐妊されたと。これは私が対応した患者さんの途中経過を記したカルテになります。

 

注意すべき点などを週別で産まれるまでを書き記しておりますのでお役立てください。」

 

その紙を軽く読むと本当に事細かに記されていた。

 

「ふははは。さすがは我が民よ。感謝しよう。これは対価だ。貴様の知識を借りる為のな。そしてこっちは我が民の素晴らしさに対する報酬だ。取っておけ。」

 

二つヴァリスの入っている袋を机に置く。最初はずっと断っていたアミッドだが毎回褒美を取らせる働きをしており、何度も続いたので諦めて受け取るようになった。

 

「ありがとうございます。私もアルフィアさんとお子様が健やかにお過ごしできるのを望んでおりますので。ギルガメッシュ様。どうかよろしくお願いします。」

 

「うむ。貴様の金言、心に刻んでおこう。産まれたら貴様も見に来い。」

 

「その時は是非。」

 

珍しくニッコリと笑うアミッドを見た。やはり我が民は笑顔で過ごすのが一番良い。

 

紙の束を王の財宝に収納して妊婦に良い食事や運動を軽く聞いてホームに戻ることにした。

 

 

エルフ達が押しかけて来ないのはヘディン、ヘグニの睨みはもちろんだが、商店街の連中やヘスティアが聞かれても答えられないと伝えているからのようだ。

 

なので商店街の連中、ヘスティアに祝儀を渡して届けるようにしているらしい。なんとも有難い配慮である。

 

それにミア達、豊穣の女主人の連中が食事を作って持ってきてくれるのもかなり有難い。どうもフレイヤがアルフィアがキッチンに立たないのならと気を回してくれたようだ。

 

ロキに関してはロキファミリアの残っているエルフを抑えるのに必死らしいがな。

 

 

 

 

 

「貴様は……。祝辞に来てくれたのか。」

 

「……私のような穢れた存在が。とは思いましたが、その、」

 

あの時に感じた、全知なるや全能の星でわかった怪人になっているであろう同胞が俯きながら、そして震えながら何かを持ってきた。

 

それを素直に受け取ると中身は押し花の栞だった。

 

「ほう。良い品だ。同胞。貴様の手作りか?」

 

「…はい。申し訳ありません。」

 

「ふはは。何を謝ることがある?同胞の、我が民のフィルヴィス・シャリア渾身の品だ。我とアルフィアの宝にさせてもらおう。」

 

同胞はえ?と呟いてずっと俯いていた顔をこちらに向けた。

 

「同胞。貴様の状態は理解している。我のスキルでな。だがな、我の民にそんなことをした元凶は必ず報いを受けさせる。そして貴様は未だに同胞にして我が民だ。

 

今はまだ迷い子で良い。だがこちらに戻るならば手を自ら伸ばせ。ならば必ず我が王として掴み、引き戻してやろう。」

 

「…え、あっ。」

 

「同胞。悩め。そして誰の意志でも無い。フィルヴィス・シャリアの意志で決めよ。これはこの素晴らしい品を作った貴様への褒美だ。」

 

黄金の波紋からある液体の入った杯を出す。

 

「これは貴様を元に戻す薬のようなものだ。あんな己の格すら理解できん愚神の操り人形になどなるな。貴様は我が民なのだから。

 

飲むか飲まぬかは貴様が悩んで決めろ。過去の出来事なんぞ我は知らん。王が許しを与えてやる。貴様は過去を見ずに未来を見よ。」

 

同胞は涙を流しながら杯を受け取って、頭を下げて帰って行った。

 

迷い子を帰らせる灯火とならば良い。ならなければ己の意志でそちらに着いたとみなす。

 

敵となるならばもう民ではない。殲滅対象だ。願わくば誇り高い同胞となれ。そう思って空を見る。

 

こんな雄大な空のような、包み込むような王とならねばならんな。

 

 

 

ヘディンとヘグニに家の空いている一室を貸し出し、泊まらせながら交代で警備させているのだが、ベルは家族が増えたみたいで嬉しい!と二人に懐いて朝の鍛錬を受けていた。

 

それを横目にアルフィアとリリ、それにヘスティアと4人で紅茶を飲みながらその日の予定を話し合う。

 

「お義母さん。体調に変わりはありませんか?」

 

「ああ。大丈夫だ。リリはあのゴミ屑ファミリアの雑音共に何もされていないな?」

 

「はい!全然何もされてません!あ、それでですね、今日はベル様とヴェルフ様と一緒に11階層に向かうつもりです。

 

それと桜花様や命様、千草様も今度一緒に潜ってくれるそうです!」

 

「そうか。サラマンダーウールを着ていけ。あれがあると無いでは違うはずだ。ギル。」

 

アルフィアに呼ばれ、何をしてほしいのかわかったのでヴァリスの入った袋をリリに手渡す。

 

リリは首を傾げてこちらを覗き込んでくる。

 

「サラマンダーウールの購入代金だ。使え。息子と娘のパーティだからな。ヴェルフにもくれてやれ。

 

ああ。祝儀を持って来ておったな。我が極東に居た時の宝よ。仲良くしてやってくれ。」

 

「は、はい!ありがとうございます!リリはレベル1ですが、今のうちに色々経験して、必ずヘスティアファミリアに改宗して胸を張って家族になれるように強くなります!」

 

アルフィアはリリを膝の上に乗せて頭を撫でている。なんともまぁ満足そうな顔をしているな。

 

ヘスティアは難しい顔をしていた。

 

「どうした。ヘスティア。」

 

「うん。ソーマのやつ、趣味神だけどここまで酷いと思わなかったんだ。ボクは孤児や竈、炉の神だ。家を守護するのが本質だからさ、リリ君みたいな子を生み出す神は少し許せない。」

 

ヘスティアから神威が漏れているな。頭にチョップをくらわせる。

 

「ふぎゅっ!?!?な、何をするんだい!!ギル君!」

 

「戯け。ヘスティア。貴様の良さは誰もを包み込んでホッとさせる癒しであろう。貴様が怒る気持ちはわかる。だがその辺の愚神と同じようになるな。ヘスティアはヘスティアだろう。

 

司るものがあるのは理解するがそれでもヘスティアはこのファミリアの眷属が笑って帰って来れる場所を守護しておけ。」

 

「そうだぞ。ヘスティア。貴様は家を守護。殲滅は私やギルの仕事だ。」

 

頭を抑えて転がっていたヘスティアはポカンとしたが理解したのかベルに良く似た笑顔で頷いた。

 

「わかったよ!ごめんね!ボクらしくなかったや。よーし!この家の竈使って擬似神殿にして結界張ってやるぞぅ!」

 

「「「やめんか(やめてください)!!」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーー何?ベルとリリが帰って来ていないだと?

 

ーーーう、うん。タケの所もらしいんだ。

 

ーーー…アルフィアには言うな。ヘスティア。タケを教会に呼べ。ヘグニ、ヘディン。ここは任せるぞ。

 

ーーーかしこまりました。我々の力が必要とあればいつでも。

 

ーーーわ、わかりました!がんばります!!

 

 

 

何が起こった?ベルとリリが居て死ぬようなことは無いと思うが…。



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