燕結芽の新大陸狩猟生活 (ちいさな魔女)
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1話

オープニング:『やってみよう(WANIMA)』


燕結芽。たった十二歳でその生涯を終えた。幼い身で刀使となり、神童と呼ばれた。しかし、病に倒れ、両親とも疎遠となり、病室で孤独に苛まれている所を折神紫に救われ、ノロを注入されて生きながらえる。その後、折神家直属の親衛隊となり、同じ親衛隊の獅童真希(しどう まき)此花寿々花(これはな すずか)皐月夜見(さつき よみ)と仲良くなる。そして、結芽は自分が倒すべき相手である衛藤可奈美を見つけ、彼女の元を目指す。しかし、再発した病は彼女の体を蝕み、軈て誰一人として居ない暗い森の中で、その生涯に幕を閉じた。

 

強さにこだわるのは、人の記憶に残っていたい、両親に覚えてもらいたいという、結芽の願いからだった。

 

「なんにもいらないから………おぼえてくれれば………それでいいんだよ……………」

 

しかし、少女の運命は死した後に全てが変わる。荒魂とは比べ物にならない強大な、モンスター達の住む世界へ、ハンターとして転生した。

 

後に彼女は、ハンター史上最強の若年ハンターとして世界にその名を轟かせるのだった。此れは、燕結芽がモンスター達やハンター達、オトモアイルー、そして元気ハツラツで先走りしやすい受付嬢と繰り広げる、狩猟物語である。

 

――――――――――――――――――――――――

 

『さて、第5期調査団の諸君。そろそろ時間だ。別れの言葉は必要無いな?この船に乗ったら、もう後戻りは出来ない。もし覚悟が失われたのであれば、ここで引き返す事をすすめよう』

 

その言葉に対して、第5期調査団は沈黙で答える。全員の目には覚悟が宿っており、更には此れから始まる新大陸での大規模調査に期待を膨らませている様子が素人目にも解る。

 

『よし!それではこれより、新大陸に向けて出港する!君達に、導きの青い星が輝かんことを』

 

こうして、5期団のメンバーを乗せた船は出港した。此れから始まる新大陸調査に胸を高鳴らせ、ハンターも、パートナーの受付嬢も、オトモのアイルーも、談笑したり料理を食べたり酒やジュースを飲んだりしていた。

 

そんな中、5期団の中で最も身長が低く、しかし誰よりも軽快で楽しそうにスキップをする少女。額のゴーグルをカタカタと音を立てながら揺らし、腰に着けた導蟲の入った小物も揺らしていた。その仕草だけでも、此れから始まる新たな冒険に心を躍らせている事を周りに教えていた。

 

そして、テーブルに置いた本を読んでいる女性の居るテーブルにある席の一つに座り、アイルーにジュースを注文した。彼女は酒の味が苦手で飲めない為、()()()()のジュースを注文していた。

 

(この世界に来てから2年かぁ。途方に暮れてた所を大食いおねーさんに拾われて、ギルドでハンターになる試験に合格してハンターになって、パートナーのアイルーと共に色んな国や自然を旅して、そして新大陸に向かう5期団になるなんてねぇ。この船に乗る前に出会ったパートナーの大食いおねーさん……何処に居るんだろ?)

 

少女は周りを見渡す。すると、酒の入った木製のジョッキを手にした、赤い髪を前以外刈り上げた陽気なハンターの青年が、本を読む女性の隣に座った。

 

「よう!もうすぐ新大陸に到着だな!結芽!」

 

結芽「あっ、エイデンおにーさん!おにーさんも来てたんだね!」

 

エイデン「ああっ!君も準備完了?」

 

結芽「うん!後、オトモのイチゴや、パートナーのアリスおねーさんが居れば完璧かな」

 

エイデン「そっか。それにしても、国を出てから長い旅だったよな。君、緊張してる?いや、聞くまでもないか」

 

結芽「当たり前だよ。此れから行く大陸がどんな所か、楽しみなんだよ!ワクワクしてるよ!シャルルおにーさんは?あっ、狩人決定戦の筆頭ルーキーさんって言った方が良い?」

 

結芽は目を輝かせる。シャルルは結芽の問いに苦笑いして照れくさくなりながら、少し考えた後に答えた。

 

エイデン「ハハハッ。よせよ、照れ臭いぜ。でも俺か?そうだなぁ………少し怖いけど、楽しみだな」

 

すると、エイデンが肩から手で押されて少しよろける。そのせいで本に酒が掛かり、隣の女性は本を持って退席した。退席した女性に少し同情する結芽であった。

 

エイデンの肩を押したのは、カチューシャに緑の服を身に着けた女性であった。女性は結芽に話し掛ける。

 

「ねえ結芽。貴女、推薦組でしょ?貴女の実力なら、絶対そうなる筈よ」

 

結芽「勿論!」

 

エイデン「へぇ奇遇!俺達もなんだ!」

 

結芽「エイデンおにーさんにアリサおねーさんも!?スゴーイ!」

 

そして、アリサと呼ばれた緑の服を着た女性がジョッキを結芽に渡す。中には結芽が注文した、オレンジジュースが入っていた。

 

そして、結芽の隣に二足歩行の猫が現れた。ゴーグルと特徴的な帽子を被ったアイルーだ。柄は嘗て結芽が持ってたイチゴ大福の猫と似ており、尻尾が太くなっている。表情豊かで、結芽が笑うとアイルーも微笑んだ。このアイルーの名はイチゴ。結芽が大好物であったイチゴ大福から取っており、更にその時の猫のストラップと似た柄をしていた為、その名を名付けた。

 

結芽「イチゴちゃん!一緒に頑張ろうね!」

 

イチゴ「ニャッ!」

 

アリサ「ふふっ。本当に仲が良いのね」

 

エイデン「それじゃあ推薦組同士、頑張ろうぜ!」

 

そして、全員でジョッキをぶつけ合い、それぞれ飲み始める。結芽もジョッキのオレンジジュースを飲み干し、口元を袖で拭う。

 

エイデン「結芽、この調査がどういうものか分かるよな?」

 

結芽「古龍渡り。古龍が新大陸に渡る出来事。調査団は新大陸に古龍が向かって行く原因を調査して、突き止める事。調査は四十年も続いていて、私達がギルドの調査で派遣される第5期調査団。そうだよね?」

 

エイデン「さっすが!最年少の天才ハンター!」

 

アリサ「実力、頭脳共に優秀な人材と呼ばれる訳ね。若さもあって伸び代もある。流石ね」

 

すると、結芽は隣のテーブルで沢山の料理を食べる黄色い服を着た編纂者の女性を見つける。それは、推薦組における結芽のパートナーであるアリスであった。彼女もまた、推薦組の一人であり、結芽のパートナーである。

 

アリサ「そういえば、推薦組は二人一組が決まりだそうよ。貴女、パートナーとはもう会った?」

 

結芽「うん。今彼処でご飯食べてるおねーさんがそうだよ」

 

すると、料理を食べていたアリスが立ち上がり、船の窓に近付いてゴーグルを降ろす。そして、片方の三点の双眼鏡によって海を観測し始める。

 

結芽「アリスおねーさん!」

 

立ち上がった結芽がアリスの背後に立ち、アリスを呼んだ。アリスは結芽呼ばれた後、ゴーグルを額に上げた後に振り向いた。結芽と再会したアリスは、結芽に挨拶をする。

 

アリス「結芽!お久しぶりです!」

 

結芽「さっき料理の数見たけど、相変わらず大食いだね」

 

アリス「えへへっ。それが私の取り柄ですから」

 

結芽「だよね〜」

 

アリス「それに、イチゴちゃんも!久し振り!」

 

イチゴ「ニャアッ!」

 

イチゴも手を振って答える。

 

アリス「それより、結芽は分かりましたか?さっき、波の音が変わったんです。陸が近いからかな?」

 

アリスは窓から見える海の景色を指差しながら、結芽に問い掛ける。

 

結芽「でも見る限りだと、陸なんて見えないよね」

 

アリス「そうなんです。それに先程から鳥や翼竜の気配も無くなっています。それが何を意味するか、分かりますか?」

 

結芽「………まさか!」

 

アリス「はい!結芽が予想してる通りです!この近くに―」

 

その瞬間、船全体が大きく揺れた。アリスが先陣を切って走り出し、結芽とイチゴが遅れて走り出す。目指すは甲板。船内を飛び出した三人が見たのは、海から現れた巨大な何かに座礁する船の船首であった。軈て船は大きく傾き始めて、立位を保つ事が難しくなり始めた。

 

結芽「あれは、火山!?もしかして、私達の船が乗ってる場所って!?」

 

アリス「はい!相棒の考えている通りです!此処は――」

 

その瞬間、船全体に強い衝撃が走って揺れる。揺れによって結芽とアリスは火山の表面に投げ出され、イチゴは船が傾いた事で船尾へ吹き飛ばされてしまう。

 

結芽「イチゴちゃーん!!」

 

イチゴ「ご主人様ァァーーッ!!」

 

二人は落下しながら手を伸ばすが、最早届く筈も無く、結芽は硬い火山の床に頭から叩き付けられてそのまま意識を失った。

 

――――――――――――――――――――――――

 

『……お腹、空いたな』

 

結芽は、夢を見ていた。夢で見ていたのは、始めてこの世界に訪れて森を彷徨っていた光景である。

 

『真希おねーさん………寿々花おねーさん………夜見おねーさん………千鳥のおねーさん………紫様………寂しいよ。私、何でこんな森の中に居るの?また……独りになるのは嫌だよ……………』

 

結芽は森の中を2週間も彷徨った。此れまで森の水を飲んだり、変なキノコや薬草を食べて飢えを凌いだが、もう限界だ。空腹が満たせず、体も痩せていた。親衛隊の制服もボロボロになり、大事な部分は見えていない。

 

結芽『あっ。これおいしそう………』

 

結芽は紫色のキノコを見つける。それを手にした後、直ぐに食べようとした。

 

しかし、それは突然現れた女性によって、キノコを持つ手を掴まれる形で止められた。それが、アリスであった。彼女は森で山菜やキノコ、食べられる木の実を集めていたのだ。

 

アリス『待ってください!それは食べてはいけません!!』

 

結芽『えっ?おねーさん、だれ?』

 

アリス『そういう貴女は、碌なものを食べてませんね?此方へ!今、美味しい物を用意しますよ!』

 

結芽『………おいしいもの、食べたい!』

 

アリス『待っててください!すぐに用意します!』

 

そして、アリスのキャンプへ連れてこられた結芽は、アリスが用意した手羽先や食べられるキノコ、山菜に魚の丸焼きをご馳走される。

 

結芽は沢山の料理を見た瞬間、すぐにがっつき始めた。あまりにも豪快な食べっぷりに、アリスは逆に感心した。そして、結芽が此れほどまでに飢えていた事を改めて知るアリスであった。

 

アリス『それで、お名前は?私はアリスです。様々な美食を探求する者です!』

 

結芽『結芽だよ。燕結芽』

 

アリス『名前が下……ユクモ村やカムラの里の出身でしょうか?』

 

結芽『なにそれ?此処は日本じゃないの?』

 

アリス『えっ?』

 

結芽『ん?』

 

結芽は自分の事を、そしてアリスはこの世界の事を説明した。その説明を受けた結芽は、モンスターに襲われる事なく野宿していた事を知り、自分の運の良さに感謝した。

 

アリス『所で、結芽はこの先どうやって生きていくか、決めてますか?』

 

結芽『ハンターだね。この世界で生きていくなら、私もハンターになるよ』

 

アリス『分かりました!私がギルドに案内します!このご飯を食べ終わったら、私がギルドまで案内します。私の推薦があれば、貴女は間違い無く合格する筈ですから』

 

結芽『ありがとう。アリスおねーさん』

 

こうして、この世界での結芽のハンター生活が始まった。此れが、結芽とアリスの初めての出会いである。

 

――――――――――――――――――――――――

 

結芽「はっ!今の……アリスおねーさんとの出会いか」

 

結芽は目を覚ますと、其処は火山の表面の床であった。

 

起き上がった結芽は歩き出すと、アリスが手を振って結芽を誘う。

 

アリス「相棒!此方です!」

 

結芽「うん!」

 

二人は走り出した。その時に、自分達が乗ってきた船が火山の隙間に挟まっているのを見つけた。そして、火山が再び揺れ始めた後に、隙間に挟まっていた船が海に向かって落ちていった。

 

結芽「この山、生きてる!?やっぱりこの山は、ただの山じゃなかった!」

 

アリス「はい!此処は、熔山龍ゾラ・マグダラオスの火山です!」

 

二人は壁の岩盤にしがみつきながら登り始めた。ロッククライミングの要領で登る二人は、そのままマグダラオスの背中の火山を登り始める。

 

そして、二人は頂上らしき場所まで辿り着き、軈てマグダラオスの頭の角に繋がるルートを見つける。

 

アリス「あれが見えますか?あの角に向かって、全速力で走ってください!翼竜を使って移動します!」

 

結芽「よし!おりゃああーっ!!」

 

結芽は走り出して、スライディングしてマグダラオスの頭を滑りながら進む。軈てマグダラオスの角から滑り出す形で飛び出し、結芽は近くの翼竜に左手の甲に装着したスリンガーからワイヤーを翼竜の足に絡ませて自身の落下を防ぐ。

 

アリス「うわああああっ!!」

 

結芽「アリスおねーさん!」

 

結芽はアリスに向かって手を伸ばし、二人は手を握り合った。軈て二人がワイヤーで掴まった翼竜はマグダラオスから離れていき、離れた事で二人はマグダラオスの全体の姿を目撃した。ヒゲのような物を顎から生やし、背中に火山を背負った巨大なマグダラオスが、二足歩行となって陸に上がった。

 

そして、二人は新大陸の方向を向いた瞬間、言葉を失った。

 

アリス「わぁ………//////」

 

結芽「……………凄い/////」

 

結芽はその言葉しか振り絞れなかった。

 

二人の視界に広がったのは、巨大な大木を中心に広がった美しい森や草原、岩場で構成された大自然であった。

 

それは、この新大陸の力強さを物語っており、水辺では草食モンスターのアプトノスが親子や群れの仲間と共に水を飲んでいた。

 

ここから始まるのだ。燕結芽とオトモのイチゴ、そして優秀であるが問題児な受付嬢アリスの、新大陸の壮大な調査が。

 

翼竜が暴れだした。

 

 

結芽「あ、あれ!?どうしたの!?」

 

アリス「うわああー!!」

 

結芽「ひゃああああっ!!」

 

翼竜から落ちた二人は、林の中を木々の枝にぶつかりながら進み、勢いが無くなった状態となって着地したのだった。




エンディング:『世界がひとつになるまで(忍たま乱太郎ED)』

モンハン側の人物の名前は、私が勝手に付けました。


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2話

結芽「痛いなぁもう。ここ、何処?」

 

アリス「此処は……あっ!キャンプがありました!」

 

二人は地面に降り立った後に立ち上がり、近くに立ててあるキャンプ場にやって来た。

 

アリス「結芽、地図を持ってますね?」

 

結芽「あるよ。此れだよね?」

 

結芽は懐から一冊の本を取り出し、地図のページを開いた。2ページ分の表紙で表示される地図には、結芽の居るキャンプ状のエリアが書き記されている。そして、其処にある石や草木も、その在り処が事細かに記されている。

 

アリス「私達はこのキャンプ場に居ます。調査拠点に通じる道があるのが、このエリアですね。私達が本来船で到着する筈だった場所ですね」

 

結芽「なら、一緒に行こう。早く皆と合流しないと」

 

アリス「ええっ。此方から迎えます。着いてきてください」

 

結芽とアリスは木々の中に出来た通路を潜っていき、軈て川が流れる広い場所に出た。所々に巨大な大木の根らしき木の根っこが張っており、エリアを定めるように囲っていた。

 

結芽「凄ーい!ひろーい!」

 

アリス「あっ!アプトノスが居ますよ!」

 

結芽「本当だアプトノスだー!すご~い!この大陸にも生息してたんだ!あっ!」

 

結芽は小さなアプトノスを見つけると、小さなアプトノスに向かって走り出した。そして、子供アプトノスの頭に抱き着いて頭を撫で始める。

 

結芽「可愛い〜♥子供のアプトノス〜♥お持ち帰りしたいぃ〜♥」

 

子供アプトノス「ッォォオオオッ!」

 

子供アプトノスは結芽に抱き着かれて驚いてしまい、それを見た周りの親アプトノスが結芽に襲いかかる。

 

親アプトノス「ォォォオオオオオオオッ!!」

 

結芽「ご、こめんなさ〜い!此れ上げるから!」

 

結芽は近くにあった薬草を千切った後に投げ付けて、アプトノスの気をそらそうとした。すると、薬草を見つけたアプトノスはそれを口にし始める。子供アプトノスは結芽を見て、何か寂しそうな鳴き声を上げた。

 

結芽「また会おうね。私達、急いでるんだよ。また来たら、宜しくね」

 

子供「ォオオッ」

 

結芽「うん。またね」

 

こうして、結芽とアリスは森の奥へ進んでいく。ツタを掻き分けながら進んでいくと、何時しか巨木と草原がある場所にやって来た。

 

木々の葉っぱが空を多い、木漏れ日が葉っぱの隙間から出て神秘的な雰囲気を醸し出す。

 

結芽「待って!何か来る!隠れよう!」

 

アリス「は、はい!」

 

結芽はアリスの手を握って、近くの叢に隠れた。人間二人が余裕で隠れられそうな大きさと広さのある叢に隠れた二人は、この大陸にきてアプトノス以外のモンスターを目撃する。

 

それは、四足歩行でトカゲのような小型モンスターであった。歯の形状や腹の形を見る限り、肉食モンスターだと理解出来る。

 

アリス「凄い!ジャグラスです!」

 

結芽「確か、新大陸から送られてきた現在の調査状況を記した資料にあった小型モンスターだよね?牙竜種のモンスターで、群れで草食モンスターのアプトノスを狩るという」

 

二人は声をあまり立てずに話をしていた。音を立てたり、大声を出せば位置を気付かれて襲われてしまう。結芽はいざとなれば腰の剥ぎ取り用ナイフで戦えるが、アリスを護りながらとなると話は別だ。もしちゃんとした武器があればアリスを守りながら戦えたのだが、今はマトモな武器が無い。

 

その場合なら、敢えて闘わずやり過ごすのが一番だ。

 

そして、ジャグラスは獲物が居なくなったと知った後、それぞれ元の巣穴へ戻り始める。

 

結芽「行こう。次が来ない内に」

 

アリス「はい!それにしても、今の気配が分かったんですね?トジ、でしたか?その経験から来てるんですか?」

 

結芽「それもあるけどさ。森の中で長く暮らしたり、長く旅をしたりしたおかげで培った感覚だよ」

 

アリス「そういえば、ギルドでハンターになってから色んな所を旅してきたと聞きましたよ」

 

結芽はアリスと共に、ツタを掻き分けて、更に結芽やアリスが下に居れば見上げれそうな6メートル程の崖がある。植物が無数に貼り巡った崖だが、結芽は其処から飛び降りた。

 

結芽は地面に両足で降り立つと、そのまま立ち上がる。今まで色んな高い場所から飛び降りたりする内に、最早どんな高さから落ちようとも耐えられるようになった。但し、痛い事に変わりはない。

 

結芽「アリスー!早く早く!」

 

アリス「今行きますよ!」

 

アリスは植物に掴まりながら崖を降りてきた。再び二人で新大陸の景色を見ながら歩いていると、二人はある足跡を見つける。

 

それは、モンスターの足跡らしき痕跡であった。それは斜めになって海岸に通じる道に存在しており、奥には何かが引きずったような痕跡もある。腰の小さな籠に居る導蟲が痕跡を示しているのだ。

 

アリス「この痕跡は……」

 

結芽「導蟲が反応してるって事は、此れがモンスターの痕跡を示してるね。さっきみたいなツユクサや薬草、石ころと違って、この痕跡に反応してるって事はモンスターの痕跡で間違い無いよ」

 

すると、結芽は全身に寒気が走る。何者かの視線を感じたからだ。獲物を狙う肉食モンスターの視線だ。

 

結芽「アリス!こっち!」

 

アリス「ひゃっ!?ゆ、結芽!?」

 

結芽はアリスの手を引っ張る。その瞬間、近くの草木から潜んでいた大型モンスターが姿を現した。それはジャグラスに似ているが、更に大きく成長している。恐らくジャグラスのボスと呼ぶべき存在だろう。

 

結芽「あれ、絶対ジャグラスのボスだよ!武器も無いから戦えない!」

 

アリス「急ぎましょう!」

 

二人は手を繋ぎながら走り続けるが、調査拠点に通じる道が大木で塞がれている。

 

結芽「うっそー!?どうすんのこれ!?」

 

アリス「っ!イチかバチか、あのモンスターを激突させてみては如何でしょう!?近くに石ころがありますよね?それでクラッチクローを成功させれば!」

 

結芽「よし!」

 

結芽はアリスの提案を飲むことにした。

 

クラッチクロー。左手のスリンガーから爪を放ってモンスターに掴まり、武器で傷を付けて肉質を柔らかくしたり、スリンガーの弾を全弾放ってモンスターを吹き飛ばしたりする事が出来る機能だ。それを使ってドスジャグラスを吹き飛ばし、道を塞ぐ大木を吹き飛ばすという提案だ。

 

結芽「よし!やってみる!アリス手伝って!」

 

アリス「はい!」

 

二人はそれぞれドスジャグラスの目を欺く為に左右へ分かれる。ドスジャグラスは二人が分かれた事でどちらを狙うか一瞬迷う。しかし、アリスへ狙いを定めて走り出し始めた。アリスはその場で前に飛んで、ドスジャグラスの振り下ろした脚を避ける。その瞬間に、アリスは近くに落ちていた石ころを一つ拾ってスリンガーに装着し、ドスジャグラスの目に向けて放つ。目に当たったドスジャグラスは、その激痛によって片方の目を閉じながら怯んだ。

 

怯んだ隙きを突いて結芽が大量の石ころを拾い上げてスリンガーに装着した後、ドスジャグラスの頭に向けてクラッチクローを放つ。ドスジャグラスの頭部に命中した後、ワイヤーを引いてドスジャグラスの頭部に飛び乗る結芽。ドスジャグラスは振り解こうとするが、結芽がクローでドスジャグラスの頭を攻撃し、道を塞ぐ大木に向きを変更する。

 

結芽「くらえ!!」

 

結芽がスリンガーの弾にした石ころを全て発射し、ドスジャグラスの頭部に直撃させた。その反動て結芽は吹き飛んだが、ドスジャグラスも向いていた方向へ向かってぶっ飛ばされる。そして、大木にドスジャグラスが頭から直撃し、道を塞いでいた大木もへし折れた。

 

結芽「よし!行こうアリス!」

 

アリス「はい!」

 

こうして二人は、開いた事で通れるようになった道を進み始める。背後からは怒ったドスジャグラスが咆哮を上げて、二人を追い掛けてきた。

 

そして、二人が向かっている門の方から大剣を背負う一人の青年が現れ、門へ誘うように手を大きく振りながら声を上げる。

 

???「早く!こっちだ!」

 

二人はお互いに抱き合いながら走る。それぞれの腕力で押し合いながら走り、より走る速さを上げたのだ。ドスジャグラスは怒りながら二人に迫り、二人が門の前に到達した時に口を大きく開いて飛び掛かった。二人はお互いに抱き締め合いながら、門に向かって跳んだ。

 

ドスジャグラスの噛み付きは、空振りに終わる。その原因は唯一つ。ドスジャグラスの口が届きそうになった瞬間、横から現れたティラノサウルスのようなモンスターが、ドスジャグラスの頭部に噛み付いて持ち上げたからだ。お陰で結芽とアリスは門を潜り、青年が縄を斬って門を閉じる事が出来た。

 

???「大丈夫か?」

 

アリス「は、はい」

 

結芽「いやぁ危なかったぁ………間に合わなかったらどうなるかと思ったよ」

 

???「そうだな。それにしても、さっきの二人の連携は凄く良かったぞ。良いコンビじゃないか」

 

結芽「見てたのなら助けてくれれば良かったのに。でも、さっきの提案をしたのはアリスおねーさんだよ。アリスおねーさんが提案してくれたから、こうして辿り着けた訳だし」

 

アリス「結芽が私の案に乗ってくれたからです。私も安心して指示を出せました」

 

???「危なくなったら俺が手を出す所だったさ。まあそれは良い。君達を調査拠点へ案内しよう。俺は指南役のアーサーだ。宜しくな」

 

結芽「結芽だよ。宜しく」

 

アリス「アリスです。宜しくお願いします」

 

アーサー「んじゃあ、早速拠点へ向かおう。君のオトモも、きっと来てる筈だ」

 

こうして、アーサーに案内されて道なりに進む二人。此れから始まる調査に、二人は心を躍らせるのだった。



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3話

アーサー「さて、此処が調査拠点アステラだ。この天然の門構えを潜った先にある、俺達の拠点だ」

 

アーサーに案内された結芽達は、巨大なトゲの門の間を通って橋を渡った。その先にある木製であるが大規模な拠点が建てられていた。特に結芽が惹かれたのは、天辺に存在する船だ。あれも一つの拠点として存在している事に、結芽は感心を抱く。そして港には5期団の船が到着しており、ハンターや編纂者、そしてアステラの流通エリアから歩いてきた男達が物資を運び出している。

 

アーサー「5期団は全員到着した。お前達が最後だ」

 

結芽「エイデンおにーさんにアリサおねーさん、大丈夫かなぁ?怪我してないと良いけど」

 

アーサー「心配するな。5期団の皆は無事だ。怪我人は居るが、大した怪我じゃない」

 

そして、三人が流通エリアに着くと、「おおーい!」と聞き慣れた声がした。結芽とアリスが声のした方を向くと、エイデンとアリサが此方に手を振っていた。

 

エイデン「結芽!無事で良かった!」

 

結芽「エイデンおにーさん!怪我が無くて良かったね。流石推薦組!」

 

エイデン「おうよ!俺だって立派なハンターだからな!」

 

アリサ「良かった。探しに行こうかって話してたのよ」

 

アリス「なんてこと無かったです」

 

結芽「モンスターに襲われたけど、二人で乗り越えたよ」

 

エイデン「やるぅ!さっすが天才ハンター!」

 

すると、5期団の一人が手を振ってエイデンやアリサを呼んだ。

 

「おーい!こっち手伝ってくれ!」

 

エイデン「おっと。それじゃ、後でな?」

 

アリサ「また後で話の続きを聞くわ」

 

こうして、エイデンとアリサは怪我人の手当てを手伝いに向かい、結芽とアリスは手を振って見送った。

 

そして、アーサーの案内で流通エリアを見た二人は、人や物が入り乱れているのを見て、活気に満ちた拠点であると理解する。

 

調査するハンター。研究をする研究者。編纂をする編纂者。ありとあらゆる人が集まっている。アーサーはそう説明した。

 

アーサー「ちょっと待ってろ。今、この調査団の総司令を呼んでくる」

 

結芽「総司令?」

 

アーサー「俺のじいちゃんで、この調査団の総司令さ。待ってろよ」

 

アーサーは走り出した。結芽はアーサーが総司令の孫である事に驚くが、此れから出会う総司令がどんな人物か興味が湧いた。

 

そして、アーサーが連れてきた白髪に焼けたような肌黒の男と出会った時、結芽は思った。

 

結芽(紫様みたい。でも、紫様より威厳がありそう)

 

そして、総司令の男が結芽に挨拶をする。

 

総司令「ようこそ。君達の事は聞いている。船から投げ出されたそうだな」

 

結芽「ゾラ・マグダラオスだったかな?あのモンスターの火山登って翼竜に乗って、それで森に入ってモンスターに襲われたんだよ」

 

総司令「そのようだな。武器無しでも切り抜けたと孫のアーサーから聞いている。その場を利用し、更に実装されたばかりのクラッチクローも使いこなした。流石推薦組と呼ばれるだけはある。自己紹介が遅れたな。改めてようこそ、新大陸調査団の調査拠点『アステラ』へ。私が調査団の指揮をしている『ジェド』という者だ」

 

結芽「結芽だよ。宜しく」

 

アリス「アリスです。結芽の相棒を務めさせて頂いています」

 

ジェドと名乗ったその男は、早速結芽とアリスに拠点を回るよう指示する。

 

ジェド「色々と話したい事もあるだろうが、落ち着いた後に作戦会議を開こう。今から孫のアーサーと共に、アステラを見て回ると良い」

 

結芽「ありがとう。総司令のおじーちゃん」

 

ジェド「ふふっ。そう呼んでくれる者はそういない。だからこそ期待出来る。そして会議には、君達も参加してくれ。なにしろ君達は、ギルドが決めた相棒同士だろう?それに、先程も言ったようにアーサーから聴いた事を踏まえると、君達は実に良いコンビだ」

 

アリス「ありがとうございます!でもあの状況を切り抜けられたのは、相棒のお陰です」

 

結芽「アリスおねーさんが提案してくれたお陰だよ」

 

ジェド「ふっ。良いコンビだ。そうそう、結芽と言ったか?つい先程、君のオトモが到着していた。君を探して回っていたぞ?」

 

結芽「イチゴちゃん!」

 

ジェド「良い名だ。では、時間になったら合図を鳴らす。それまで自由にしていてくれ」

 

こうして、アーサー案内の元、アステラを回る事になった結芽とアリス。流通エリアの市場を見て回ると、様々な食材が売られており、他にも武器や道具の材料になる物も売っていた。

 

そして、船を使った階段を登る間にアーサーは語る。

 

アーサー「調査団の派遣は、お前達で5回目なんだろ?俺のじいちゃんは1期団だ。1期団はスゲェ昔に来たらしい」

 

結芽「アーサーおにーさんは?」

 

アーサー「俺か?俺は何期団でもないよ。此処の産まれだからな。まあ、調査班リーダーとして4期団のシンボルを着けてるけどな」

 

そして、アリスは結芽にある事を訊いた。

 

アリス「結芽、一つ良いですか?」

 

結芽「どうしたの?」

 

アリス「此処に来る前に、私の事をたまに呼び捨てしてましたね?」

 

結芽「えっ?あっ、そうだったかな?ごめん。おねーさんって呼んだ方が良い?」

 

アリス「いいえ。お姉さんでも良いんですが、これからは呼び捨てで構いません。私達は今、相棒同士ですから!」

 

結芽「………うん!分かったよ、アリス!////」

 

結芽は少し恥ずかしくなったが、アリスとまた深い絆を結べた事を強く実感した。

 

そして、二階に上がった三人は加工屋の前に辿り着く。

 

アーサー「此処が加工屋だ。武器や防具を造るのに役立つ。覚えておけよ」

 

結芽「加工屋かぁ。入って良い?」

 

アーサー「構わないぞ」

 

アリス「私も行きます!」

 

二人は加工屋に入る。加工屋の奥にある炉から放たれる強い熱気に、二人は目を輝かせる。特に結芽は、今まで見た中で一番大きな鍛冶屋を見て興奮しており、アリス以上に目を輝かせている。

 

結芽「凄い熱気!おじさん達の熱い想いが籠もってるのが伝わるよ!」

 

???「ガハハハッ!!そうだろう?俺達の自慢の工房だからな!」

 

カウンターに立つ眼帯を着けたおじさんが高らかに笑う。

 

???「嬢ちゃん達が遅れてきたっていう5期団のメンバーか!5期団の中で一番危なかったそうじゃねえか!」

 

結芽「でも、二人で乗り越えられたんだよ。あっ、私は結芽だよ!」

 

アリス「アリスです。宜しくお願いします」

 

???「自己紹介ありがとよ。俺はトレバーだ。第2期調査団のリーダーだ。お前達が此れから世話になる加工屋を運営してんだ。宜しく頼むぜ。アッチの女は武具屋のアンだ」

 

トレバーが指差した方向には、リストを見つめる女性が居た。武具屋。つまり最初に扱う装備を売ってくれる店だ。この加工屋には、これからもお世話になる事だろう。

 

結芽「じゃーねーおじさん」

 

アリス「ありがとうございました」

 

トレバー「おうよ」

 

加工屋を出た二人は、アーサーの案内で再び移動した。次に訪れたのは、石や網で構成された巨大な食事場であった。網には無数の食材が吊るされている。

 

アーサー「此処が食事場だ。お前のオトモも、きっと此処だろう」

 

アリス「あっ!あそこに!」

 

アリスが指を差した先に、結芽のオトモであるイチゴの姿があった。

 

結芽「イチゴちゃーん!!」

 

イチゴ「ニャッ!?ご主人様の声が!ニャアアッ!!」

 

高い鳴き声を上げながら、イチゴは四つん這いになって駆け出した。そして、結芽が腕を広げて待ち構える。

 

イチゴ「アリスゥ!」

 

結芽「浮気者〜!!」

 

イチゴ、アリスの方へ抱き着く。アリスもイチゴを抱き締める。

 

アリス「無事で良かったね」

 

結芽「酷ーい!イチゴちゃんアリスの所に行くなんて――」

 

イチゴ「ご主人様ー!」

 

その後、結芽に抱き着いたイチゴ。結芽は涙目になりながらも、自身の平坦な胸に顔を寄せるイチゴを抱き締めて頭を撫でる。

 

結芽「浮気者」

 

イチゴ「ご主人様とアリスが大好きだニャ〜♥」

 

結芽「むぅぅぅ!可愛いから許す〜♥」

 

結芽はイチゴを抱き締める。イチゴが他の女に抱き着くのはよくあるのだが、結芽はイチゴの可愛さによってつい甘やかしてしまう。危険な事に首を突っ込めば流石に怒るが、それでもなんだかんだで共に居る。おマセなアイルーではあるが、結芽はそんなイチゴが好きなのである。

 

すると、会議の始まりを知らせる笛の音が響く。アステラ全体に響くその音色は、此れから大事な事を始めるという意味が込められているのを結芽は感じていた。

 

アーサー「此れから作戦会議だ。お前達も来てくれ」

 

そして、四人は会議の場である四角の大きなテーブルがある流通エリアに向かって移動した。




名前決めは特に理由はありません。適当です。


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4話

ジェド「一同、揃っているな?此れより作戦会議を開始する。海を渡るゾラ・マグダラオスを船で追い、遂に5期団が新大陸に到着した。大きな戦力だ。この長きに渡る調査の決着が期待出来る。そして、5期団の代表として彼等に出席してもらっている。結芽、アリス、自己紹介を」

 

総司令ジェドを筆頭に、調査団のメンバーの中で重要人物達が集まっていた。ジェドの背後の椅子に、全身鎧の男が座っており、その横には彼の背丈程の長さのある太刀が納刀状態のまま置いてあった。

 

結芽「どもども〜。5期団の結芽で〜す。この子はオトモのイチゴちゃんです。宜しくね〜」

 

アリス「5期団のアリスです。結芽のパートナーを務めさせて頂いています」

 

ジェド「自己紹介ありがとう。そして此処に居る者達は全員、調査団の要の連中だ。よく覚えておいてくれ」

 

モニク「宜しく。物資班リーダーのモニクよ。白髭の男が技術班リーダーのジョージで、一番左の男が研究班リーダーのミーシャ。宜しくね」

 

黒人の女性が挨拶をする。にこやかで明るく、優しげな女性らしさが漂っていた。そして、他の班のリーダーの紹介も行った。

 

ボボゥ「このアステラの料理長ボボゥだ。飯なら任せときな」

 

右目に傷がある隻眼の巨大なアイルーがそう言い放つ。

 

ニック「生態研究所の所長ニックや。宜しく頼むで」

 

本を開く眼鏡を掛けた老人は、結芽達に見向きもしないまま本を読みながら挨拶をした。

 

ジェド「では本題に入ろう。今回渡りを行ったのはゾラ・マグダラオス。火山を背負う巨大な古龍だ」

 

結芽「船が持ち上げられたんだもん。まるで火山だよ」

 

ジェド「その報告は5期団のエイデンやアリサより受けている。そして我々調査団の最大の目的は、この『古龍渡りの解明』にある」

 

ニック「おおよそ十年に一度、新大陸を目指して海を渡る古龍達……。通りすがるだけで生態系を変え、地形を変え、災害を引き起こし、そして国さえも滅ぼせてしまう、遥か昔から、古龍とは、そういうものとしてあるんや」

 

イチゴ「不思議だニャ〜」

 

結芽「ニックおじーちゃん。古龍が新大陸に渡る訳、おじーちゃんなりに推測出来る?」

 

ニック「んー。まだ理解出来ぬ点があるから、何とも言えんなぁ。推測としては、この新大陸が古龍にとっては最高の楽園、という感じやな」

 

ジェド「奴等が何のために新大陸に渡りに来るのか、今こそ我々の手で解明しよう!」

 

そして、ジェドはハンター達にこれからの調査を提示した。

 

ジェド「今後しばらくは、ハンター達に小型モンスターの調査と調査拠点の安全確保を頼む。先ずは、ジャグラスの生態調査だ。状況によっては討伐も検討してくれ」

 

アリス「はい!結芽、頑張りましょうね!」

 

結芽「良いね!ワクワクしてきたよ!早くモンスターと戦いたいなぁ!」

 

ジェド「良いな。活躍に期待するぞ。他の皆はいつも通りだ。ハンター達を手厚く補佐してやってくれ」

 

ボボゥ「任せときな」

 

トレバー「腕が鳴るぜ!」

 

ジェド「此方のやり方に慣れるのを第一の目標に、しばらくは指南役を頼るといいだろう。アーサー、頼めるか?」

 

アーサー「良いぜ、じいちゃん。じゃあ結芽にアリス、一緒に行こう」

 

結芽「はーい」

 

こうして、作戦会議は終了し、各々がそれぞれの役目を果たす為に歩き出した。そんな時、結芽とイチゴ、そしてアリスはある場所へ案内される。木造の部屋で、たくさんのベッドが置いてあり、結芽が使うであろうベッドの横に、アイテム等を入れる宝箱が置いてあった。

 

アーサー「此処がお前達の使う二等マイハウスだ。此処で暫くは寝泊まりする事になる。自分の個室を得るまでは、5期団の仲間達とここを共有してくれ。武器はそのアイテムボックスに入っている。好きなものを選ぶんだ。武器は色んな物があるから、どれが自分に合うか、トレーニングルームで試してみてくれ」

 

アーサーが見守る中、結芽はアイテムボックスの中にある武器を選んでいた。大剣、太刀、双剣、片手剣、ハンマー、狩猟笛、ランス、ガンランス、スラッシュアックス、チャージアックス、操虫棍、弓、ライトボウガン、ヘビィボウガンだ。

 

結芽「トレーニングルームに行って色々試すよ」

 

アーサー「分かった。其処にルームサービスのアイルーが居るだろう?そいつに話し掛ければ、トレーニングルームへ迎える」

 

結芽はルームサービスのアイルーに話し掛ける。ルームサービスに案内された結芽は、複数の柱や箱がある広場へやって来た。

 

早速結芽が手にしたのは、大剣であった。大剣は巨大な刀身を有する斬撃はいずれも高い威力と広い攻撃範囲を持ち、いざとなればガードも可能。大剣を振り回すが、こんなに大きな物を振り回すのは結芽に合わず、ボツにした。

 

続いて太刀。結芽は刀使としての経験上、太刀はかなり使いこなせていた。鋭い切れ味に加えて獲物を斬る度に溜まる練気ゲージを使えば、高威力の気刃斬りが出せるようになる。相手の動きを見切って反撃するテクニカルな攻撃も、元々刀を扱う結芽のスタイルに合った為、採用する事に。

 

双剣。二刀流による圧倒的な手数と怒涛の連続攻撃が可能で、疲れやすくなるが鬼人化を行えば立ち回る速度が更に上昇し舞うような攻撃が可能。二刀流は初めてであるが、結芽の小柄な体格に加えて素早い動きに似合う為、採用。

 

片手剣。ガードしながら立ち回り、アイテムも使える。しかし、盾を扱うのは結芽の性格上合わなかった為、ボツ。

 

ランス。論外。ガンランスも同じ。

 

ハンマーはスタイル状合わない為、ボツ。

 

狩猟笛は奏でる事も得意な結芽に合うのだが、よくよく考えれば狩猟中に演奏するスタイルは自分に合わなかった。とはいえ演奏は楽しかった為、探索する時に暇を見つけて演奏を楽しもうと思っている為、一応採用。

 

スラッシュアックス。機動力があって威力が重い斧モードと、攻撃速度の速い剣モードのニ種類がある。剣モードで繰り出される必殺技は威力が高いが、自動で斧モードに戻る。そして、剣の攻撃で覚醒させたビンの効果は斧モードでも発揮される。結芽は使うかどうか悩んだが、採用することにした。

 

チャージアックス。剣と斧の2つの形態を持つ武器。強力な武器ではあるが、スラッシュアックスで充分。とはいえとても強い武器の為、一応採用。

 

操虫棍。猟虫という虫を自在に操り、獲物からエキスを吸い取って自らを強化出来る。空へ跳躍し、獲物を蹴り、地に降りることなく攻める縦横無尽の攻撃が繰り出せる。かなり楽しかった為、採用。

 

弓。力を溜めて、様々な射撃が可能な中距離攻撃武器。竜の一矢は貫通力に加えて高威力だ。立ち回り、接近戦も少しは出来る上に、弱点を突いた射撃も可能。弓を初めて扱った結芽は弓も悪くないと思い、採用した。

 

ライト及びヘビィボウガンは、結芽に合わず、不採用。

 

全ての武器を試した結芽。

 

採用したのは、太刀、双剣、狩猟笛、スラッシュアックス、チャージアックス、操虫棍、弓の7つである。大剣、ライトボウガン、ヘビィボウガン、ランス、ガンランス、片手剣、ハンマーの7つは要らない為、ルームサービスに頼んで売り払ってもらうことにした。

 

アーサー「取り敢えず、今はどの武器で行くか決めたか?」

 

結芽「先ずは太刀だね。使い方は分かったし、長く使ってないから実戦でちょっとしたブランクを取り戻すよ」

 

アーサー「採用した武器の中で、お前は太刀を使いこなしていたな。俺から見ても、上位ハンターに並ぶ腕前だった」

 

結芽「じゃあ、早速行くかな」

 

すると、何処からともなくアリスの声が響く。どうやって声を届けているのか、それは彼等にしか解らない。

 

アリス『相棒!私は食事場に居ます!此処で受付を行っていますので、是非訪れてください!』

 

結芽「うん!今行く!」

 

アーサー「序でに食事も楽しんでいくといい。クエストを受ける前か、受けた後にしっかりと腹ごしらえをするんだ」

 

結芽「うん!」

 

そして、トレーニングルームを出てマイハウスに戻った結芽。そして、マイハウスを出た結芽は、食事場に向かって歩き始めるのだった。



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5話

結芽はイチゴと共に食事場へやって来た。食事場には、先程の会議に参加していた料理長の大型アイルー『ボボゥ』が、料理をしていた。アリスはテーブルにある食べ物を食べ始めている。

 

アリス「あっ!結芽!」

 

結芽「アリス!」

 

アリス「クエストを用意しています。もし受けたいのであれば、私に声を掛けてください」

 

結芽「うん。あっ、その前にご飯にしたいな」

 

アリス「はい。お待ちしてますね」

 

結芽はアリスにそう告げた後、ボボゥと向き合う位置にあるテーブルに膝を付き、椅子に腰掛ける。

 

ボボゥ「よう。結芽だったな?これから飯か?」

 

結芽「うん。でも、私は来たばかりだから、オススメ料理でお願い」

 

結芽はお金で支払う。新大陸に来る前に稼いだお金は3000G。250Gも支払い、結芽はご飯を食べ始める。すると、ボボゥの背後から料理人のアイルーが姿を現した。そして、魚を石に乗せて焼いた後、塩と胡椒で味付けした。そして、料理酒を掛けた後に料理に被せる覆い『クローシュ』を魚に被せた。そして、クローシュを取った後、魚の芳ばしい香りが結芽の鼻を刺激して、イチゴもその美味しそうな香りにニヤけ顔になる。

 

ボボゥ「悪いが、俺は認めたハンターにしか料理は振るわねぇ。だから暫くは弟子のアイルー達がお前に料理を振る舞うぜ」

 

結芽「じゃあ認められる位にならないとね。ボボゥの料理、食べてみたいなぁ」

 

イチゴ「僕も食べてみたいニャ!」

 

ボボゥ「おうよ。お前等が強くなったらな」

 

そして、結芽とイチゴの前に料理が運び込まれる。飲み物も提供されたが、飲み物は結芽の好きなオレンジジュースである。

 

そして、魚をフォークで取って食べ始める結芽。結芽は焼き魚の身を口にした時、その美味しさと芳ばしさに夢中になる。

 

結芽「美味しい!弟子達も良い腕してるね!」

 

弟子「ニャアンっ!」

 

ボボゥ「当たり前だろう?俺の弟子だからな!」

 

こうして、食事を終えた結芽とイチゴ。ボボゥと別れた二人はアリスの元にやって来た。

 

アリス「ではこれより、ジャグラスの生態調査に入ります!そういえば、結芽はどうして新大陸に来たのですか?」

 

結芽「私?未知の強いモンスターと戦えると思ったからだよ。どんなモンスターが居るのか解らないけど、だからこそ面白いし、強いモンスターと戦ったら自分の強さを皆に証明出来るからね」

 

アリス「本当に結芽は闘うのが好きなんですね。それなら、この生態調査は主に討伐が目的です。でも、記録を見る限りだと結芽の記録は……捕獲が多いんですね。小型モンスターの討伐数も平均以下。古龍の討伐はまだのようですが、それでも素晴らしい成果ですよ!」

 

アリスは本を開いて、結芽の狩猟記録を見た。推薦組の編纂者はパートナーの狩猟記録をギルドより手渡されて、それによりパートナーがどんなハンターなのか把握する必要がある。

 

結芽「………私は殺しがしたい訳じゃないからね。小型モンスターは捕獲出来ないから、必要以上に討伐しないと決めてるの。イチゴちゃんも分かってるよ」

 

イチゴ「ご主人様は命に優しいんだニャ。討伐数は少なくても、強くて優しいご主人様だニャ」

 

結芽「えへへっ。じゃあアリス。クエストを」

 

アリス「はい!」

 

こうして、新大陸での結芽とイチゴの初仕事が始まった。

 

――――――――――――――――――――――――

 

結芽は翼竜にワイヤーでぶら下がり、最初に新大陸へ来た時に訪れたキャンプ場に辿り着いた。丁度同じ頃に、指南役のアーサーと、結芽のパートナーであるアリスと合流する。

 

アーサー「よし。先ずはジャグラスの討伐だ。お前達は奴等の縄張りに入ったが、見つかる前に隠れてやり過ごしたと聞いている。見事な判断だ」

 

結芽「大丈夫だよ。今度は武器もあるから、負ける気はしない」

 

結芽は背中の長い鞘から太刀を抜いて、両手で持った。両手で太刀を構えた後、虚空を何度も斬り続ける。その巧みな腕前に、アーサーとアリスは拍手を結芽に贈った。

 

アーサー「凄いな……推薦組と聞いていたが、此処まで剣の腕前が良いとは……」

 

アリス「相棒の剣術は、“天然理心流”と呼ばれる構えだそうです。護身術から派生した実戦的な剣術だそうで、その剣術を身に付けた結芽の腕前は、国の第一部隊の大隊長をも超えるそうです」

 

アーサー「納得だ。此れならジャグラスの調査もすぐに終わるだろう」

 

そして結芽は鞘に太刀を収めて、アーサーに続いて自分達が以前に訪れたジャグラスの縄張りに向かって歩き始めた。

 

途中で薬草を見つけた結芽はイチゴと共に薬草を広い、その場で回復薬を調合。あっという間に3本も調合に成功した。

 

更に蜂の巣を見つけた結芽は、蜂の巣から零れ落ちるハチミツを汲み取って、回復薬と混ぜ合わせた。そのまま調合して回復薬グレートを完成させる。

 

そして結芽はイチゴと共にジャグラスの縄張りへ辿り着く。

 

結芽「……行くよ。イチゴちゃん」

 

イチゴ「ニャアッ!」

 

結芽は太刀を抜いた。イチゴも小さな刃を抜いて構え始める。すると、木々を這って四足歩行のトカゲのような小型モンスターの群れが現れ、結芽達を取り囲んだ。ジャグラスの群れだ。

 

ジャグラスの群れは結芽とイチゴを取り囲むが、結芽は天然理心流の構えを解かず、イチゴもやる気満々だ。

 

ジャグラス「ガアアッ!!」

 

ジャグラスが吠える。その瞬間、群れが一斉に結芽の元へ襲い掛かる。結芽は最初に向かってきたジャグラス一匹の頭を縦に斬りつけて、続いて二匹目の目を下に降ろすように斬りつけた。更に背後から近付いてくるジャグラス二匹を、刀を回して奴等の首を斬った。

 

斬られたジャグラス達はその場で倒れてしまい、そのまま絶命した。残ったジャグラス達は一斉に逃走を開始する。

 

アーサー「逃がすな!残りは後二匹だ!」

 

結芽「りょーかい」

 

イチゴ「あの洞窟に逃げたニャ!」

 

イチゴがジャグラスの群れが逃げた先を指差した。その時、結芽は倒したジャグラスに乗っかり、腰に着けたナイフを取ってジャグラスから剥ぎ取りを行う。モンスターから取れる素材は、次の狩りに役立てるからだ。強い装備も作れるようになるので、採っておくのに越した事は無い。

 

こうして、洞窟に入った結芽は残りの二匹も倒した。その時、ジャグラスの残った群れが寄ってきたが、結芽とイチゴを襲う事はしなかった。怯えて近寄れない様子だ。

 

イチゴ「やったニャ!」

 

結芽「アンタはなんにもしてないじゃん。ん?それって鉄鉱石?」

 

イチゴ「ニャ!」

 

結芽「全く………でもありがとうイチゴちゃん。鉱石ってかなり重要だし、採ってきてくれるのは嬉しいよ」

 

イチゴ「ニャ!」

 

イチゴは結芽に頭を撫でられて笑った。そして、結芽はジャグラスの方を向いて告げる。

 

結芽「大丈夫だよ。これ以上無駄に殺したりしないから。お前達の生活を脅かしてゴメンね」

 

イチゴ「ご主人様、帰るニャ」

 

結芽「うん」

 

こうして、結芽とイチゴはジャグラスの巣から歩いて去り、翼竜を呼んで再びぶら下がり、アステラに向かって飛んで行った。




私のオリジナル設定組んでます。


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6話

結芽はアステラに戻ってきた。流通エリアに到着した彼女は流通エリアである程度物を買っていくと、其処で一匹の豚を見つける。

 

結芽「ん?この子、どうしたの?」

 

すると、近くに居た漁師の男が豚について説明した。

 

漁師の男「ん?ああっ、この子はプーギーだよ」

 

結芽「プーギー。ホントに何処にでも居るね。あっ、この子飼っていい?」

 

漁師の男「まっ、俺達にも懐くが、こいつはお前さんに懐いてるようだしな」

 

実際、結芽の足元へ寄り添ってきた。プーギーは「ブヒー」と泣きながら結芽の足元に寄り添って来ており、尻尾を振っている。

 

結芽「プーギー。貴方に新しく名前つけてあげる。うーん何が良いかな……じゃあシズカ。シズカって名付けるね」

 

シズカ「ブヒッ!」

 

シズカと名付けられたプーギーは嬉しそうに鳴いた。

 

そして、結芽と二匹は総司令のジェドの元へ戻ってきた。アーサーは既に戻ってきており、祖父に報告を入れていた。

 

そして、結芽とアーサーの報告を聞いたジェドは、先程新大陸に渡ってきたゾラ・マグダラオスによる影響が少なからず出てる事を理解する。

 

ジェド「ジャグラスの生態調査、ご苦労だった。なるほど。生息域に大きな変化は見られなかいが、数自体は増えていたと」

 

アーサー「ああっ。危険なのはジャグラスだけじゃない。ここのところ、草食竜のケストドンもえらく気が立ってるという報告があるんだ」

 

結芽「ケストドン?ああっ、あの二足の草食モンスターだね。彼奴等は縄張りを侵さない限り大人しい性格してる筈だけど、それもマグダラオスの影響かな」

 

アーサー「だろうな」

 

ジェド「よし。5期団の次の任務はケストドンの生息域調査と討伐だ」

 

アーサー「俺も一緒に行くよ。心配無いとは思うが、念の為だ」

 

結芽「うん。でもその前に、少し聞いていい?この流通エリアって、トラップツールとか売ってるかな?」

 

結芽の問いにジェドが答える。

 

ジェド「ん?ああっ、君は確か捕獲メインのハンターだったな。ああっ、売ってるぞ。だが金はかなりするし、罠は自分で材料を集めて造る必要がある」

 

結芽「うん。任務の次いでに集めるから平気」

 

イチゴ「僕も手伝うニャ!」

 

こうして、結芽の次の任務が始まった。トラップツールを買った結芽は、相棒のアリスの元で任務を受けた。

 

――――――――――――――――――――――――

 

古代樹の森へやって来た結芽。今回使う武器はジャグラスの住処にある鉱石から作った双剣だ。更に、ジャグラスの素材から作ったハンター装備に着替えて準備万端である。

 

アーサーは、準備を終えた結芽やイチゴと共に、古代樹の森に住むケストドンが居る浜辺へやって来た。

 

すると、結芽はドスジャグラスに出会った場所で一匹の子犬を見つける。

 

結芽「ん?この子犬……可愛い♥」

 

アーサー「ソイツは、ガルグだな。カムラの里周辺でしか見掛けないガルグが、この新大陸に居るなんてな」

 

結芽「ねえアーサーおにーさん!私、この子飼いたい!」

 

アーサー「そうか。なら、暫く俺に預けてくれないか?俺が教育すれば、お前のオトモとなってイチゴと共に活躍するかもしれない」

 

結芽「うん!じゃあ宜しくね!“大福”!」

 

結芽はガルグに大福と名付けた。大福と名付けられたガルグは、アーサーに預けられた。アーサーは大福を抱えたまま、縄で翼竜に掴まって空を飛んで行った。

 

アーサー「ケストドンの討伐、頑張れよ!」

 

空を飛び去っていくアーサーを見送りながら、結芽はイチゴと共にケストドンの元へ歩み始める。すると、ケストドンは怒り狂っている為か、結芽を見るなり襲い掛かってきた。結芽は背中の双剣を抜いて、ケストドンに向かっていく。体格の小さいケストドンが走って、硬い頭を結芽に向けながら突撃してきた。結芽は跳んでケストドンの突進を避けると、両手の剣を体ごと回転しながらケストドンを斬る。空中を8回転もしながら斬る事で、全身を斬られたケストドンは突進しながら倒れて絶命した。

 

結芽「よし!確か鬼神化もあったけど、今は止めとこう。さあ行くよ」

 

結芽は残りのケストドンを狩りに行く。先程より一回り大きいケストドンの横に回り込み、その胴体を多彩な連続攻撃で切り裂いた。ケストドンは再びその場に倒れて絶命。

 

そして、イチゴが剣を取り出してケストドンに斬り掛かる。ケストドンはイチゴに狙いを定めるが、イチゴはケストドンの突進を受ける前にその首元に剣を突き付けた。

 

結芽「イチゴちゃん!最後の一匹だよ!」

 

イチゴ「任せるニャ!」

 

そして、指定数討伐を果たした結芽。取るに足らない雑魚ではある為、討伐は難なく終わった。結芽はイチゴと共にケストドンの剥ぎ取りを始めようとした。

 

すると、結芽の元にアリスが翼竜に掴まって飛んできた。そして、地面に降り立ったアリスは二人に報告をする。

 

アリス「結芽!イチゴちゃん!先程、森でドスジャグラスを見かけました!かなり気が立ってましたよ!」

 

結芽「ドスジャグラスか………拠点の安全確保を目指してたのに、ドスジャグラスが居たら難しくなるね。分かったよ」

 

アリス「一度拠点に帰りますか?一度帰って任務として受ける事も可能ですし、このままドスジャグラスの討伐に向かう事も可能です。どうしますか?」

 

結芽「うーん………まだ討伐しに行かないよ。クモの巣とかツタの葉、雷光虫を探し出さないとね。それに、ネムリ草とかマヒダケとかも探さないとね」

 

アリス「流石は捕獲メインのハンター!私も一緒に探しますよ!」

 

イチゴ「アリスはどうやって闘うニャ?もし戦闘になったら、アリスはどうするニャ?」

 

イチゴの問いに、アリスは背中に背負う物を見せてきた。それは、鉄鉱石を用いて作られた弓であった。

 

アリス「大丈夫です!私も一応推薦組ですから!」

 

結芽「弓か。中距離からの援護は助かるよ」

 

アリス「はい!」

 

こうして、二人は捕獲の為の素材集めに向かった。




アリスが弓を扱うというのは、私が以前に弓オンリーで戦ってた頃を参考にして作ったオリジナル設定です。


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7話

古代樹の森を巡り巡って、捕獲用の素材に加えてある程度のモンスターを狩って素材を集めた結芽とアリス、イチゴの三人はアステラへ戻ってきた。二等マイハウスにて、アイテムを調合する結芽にアリスが声を掛ける。

 

アリス「さて、次回はドスジャグラスの狩猟ですね。ドスジャグラスは貴女と私でふっ飛ばしたジャグラスのボスです」

 

結芽「そうだね。でも今の私ならドスジャグラスを難なく倒せる気がするよ」

 

イチゴ「そうだニャ!ご主人様ならやり遂げるニャ!」

 

イチゴが結芽の足に抱き着く。イチゴの頭を撫でながら、アイテムの調合を終えた。

 

結芽「よし。シビレ罠に落とし穴、捕獲用麻酔玉にけむり玉、モドリ玉に閃光弾、回復薬グレートに解毒薬。さて準備完了。後は加工屋で武器を強化するだけだね」

 

結芽はトレバーの元に赴き、武器を強化してもらう。

 

トレバー「ほれ。今ある素材で強化してやったぜ」

 

結芽「うん。ありがとう」

 

トレバー「結芽だったな。お前はどうやら刃系の武器の中で太刀が得意なようだな。お前の腕前に期待して、色んな武器も使ってみてはどうだ?戦略の幅が広がるぜ」

 

結芽「うーん。ハンマーや大剣はあまり私に合わなかったし、片手剣も何か違うんだよねぇ。ガンランスとかランスとかも。ボウガンだって私の求める武器じゃないしー」

 

トレバー「ハハッ。典型的な剣士の発想だな。だが、もし気が変わったら俺かアンに言ってくれ。俺は武器を生産するし、アンは基本的な武器を売ってくれるぞ」

 

結芽「ありがとう。じゃ、私は行くね」

 

結芽は背中に背負うスラッシュアックスを背負い、加工屋を後にする。イチゴも結芽について行き、アリスの待つ食事場へ向かった。すると、結芽は料理長のボボゥからある事を頼み込まれる。

 

ボボゥ「なあお前さん、食材を増やして見る気はねぇか?もし必要になれば、受付嬢にクエストを申請してあるから其処から受注してくれ。もし任務の最中に全部集めたら、俺の所に持って来てくれ。新しい料理が出来るかもな」

 

結芽「うん。森の恵みを美味しく料理してね」

 

ボボゥ「おう。任せたぜ」

 

こうして、結芽とイチゴは食材の依頼を引き受けた後、ボボゥの弟子達の肉と野菜のバランスの良い料理を味わうことにした。そして、アリスの元でドスジャグラスの討伐を受けた二人は、早速古代樹の森に向かって翼竜にぶら下がりながら向かった。

 

――――――――――――――――――――――――

 

結芽とイチゴは森の中を散策する。ドスジャグラスがどこに居るのかは大体見当が付いており、今は余裕があるので特産品であるキノコの採取に専念した。

 

結芽「キノコみっけ!ホントに美味しそう♥」

 

イチゴ「ニャア!」

 

二人は森を駆け回り、特産品のキノコを次々と採取していく。

 

結芽「さて。厳選キノコも集まったし、特産キノコも必要な分採れたね。それじゃ、ドスジャグラスの元へ向かうよ」

 

イチゴ「おおー!ご主人様の新大陸初の狩猟だニャ!」

 

結芽「うん。さあ、行くよ」

 

そして、アプトノスが水を飲む岩場にやって来た二人。其処で二人は、ドスジャグラスが獲物のアプトノスを丸呑みにしてる光景を目の当たりにする。

 

結芽「うわぁ。丸呑みだよ。あんな呑み込み方したら器官が詰まりそうなのにねぇ。蛇みたいに頑丈な器官でもあるのかな?」

 

そして、結芽はお腹を膨らませているドスジャグラスの前に立つ。

 

ドスジャグラスは結芽を見た瞬間、強く吠えた。

 

ドスジャグラス『ガアアアァァァッ!!』

 

結芽「やっぱり貴方は、あの時私が道を開く時にぶっ飛ばしたドスジャグラスか。久しいね」

 

結芽は背中のスラッシュアックスを片手に持ち、両手で持って構えた。

 

イチゴも武器を構える。

 

ドスジャグラスは四足歩行で結芽に迫り、彼女に向かって大きくなったお腹を剥き出しにして、押し潰そうとする。

 

結芽は後ろへ跳び、イチゴはドスジャグラスの真横へ走る。

 

そして、結芽は斧モードのアックスを振り下ろし、ドスジャグラスの頭を攻撃する。ドスジャグラスは結芽の振り下ろした斧で顔を傷付けられて、痛みに悶える。

 

ドスジャグラスは前脚の爪で結芽を裂きに来るが、結芽は横へ転がって爪の攻撃を避ける。そして、結芽は横振りを行ってドスジャグラスの脚を攻撃。∞を描くように攻撃を繰り出した。しかし、ドスジャグラスはそのまま体を横へ回転させる。回転して大きなお腹で結芽を押し潰そうとする。

 

しかし、結芽は武器を構えたまま近くの木に向かってクラッチクローを放ち、引っ掛けた後にロープを引いた。その瞬間、結芽はクラッチクローによって引っ張られ、クラッチクローを離した後に地面へ着地する。

 

結芽はスラッシュアックスの形を変えて、剣モードへ変形させる。剣モードでは全ての攻撃に、武器ごとに設定されたビンの効果がつく。しかし、攻撃時にビンの薬液の充填量を示す「スラッシュゲージ」を消費し、充填にはある程度の時間が必要となる。

 

斧モードでの攻撃により、ある程度ビンにスラッシュゲージが溜まったので、剣モードに変えたのだ。ゲージが0になれば強制的に斧モードに変わる為、考えて使う必要がある。ゲージが一定量を下回る時に剣モードに変形しようとするとリロード動作が入りこれまた大きな隙が生じる。即ち、スラッシュアックスはゲージ管理が非常に重要な武器であり、常にゲージ残量に気を配れるようになることがスラッシュアックス初心者卒業の第一歩となるのだ。

 

結芽は太刀のようにスラッシュアックスを振り回し、華麗な太刀筋でドスジャグラスを切り裂いていく。

 

ドスジャグラスは口から説明し難い吐瀉物を吐き出し、結芽に被せようとしてくる。結芽は横へ横転して避けるが、吐瀉物が一部脚に掛かってしまう。消化液が混ざってるせいで、衣類が若干溶けてしまった。

 

結芽「うわぁ、ゲロで攻撃とか引くわー。折角素材集めて作った装備も台無しにして……仮は返さないとね!」

 

結芽は隙を突いて、そのまま剣モードのスラッシュアックスをドスジャグラスの腹に突き刺した。その瞬間、剣先から赤い閃光が輝き、ドスジャグラスの膨らんだ腹を焼き続けたかと思えば、次の瞬間に大爆発を起こした。ドスジャグラスは爆発によって腹の中の獲物を吐き出してしまい、お腹が元に戻ってしまう。結芽も後方へ吹き飛び、更に剣モードから斧モードに戻った。

 

結芽「良いねえ!この武器はあまり好まないけど、たまには良いかも!」

 

結芽は斧を構える。すると、突然隣にイチゴが現れて側に緑色の膨らんだお腹を持つ蟲を、結芽の右隣に配置した。

 

イチゴ「回復ミノムシ設置したニャ!此れで回復するニャ!」

 

結芽「おっ!ラッキー!」

 

結芽は回復ミノムシを攻撃した。するとミノムシの腹が破けて、中から緑色のミツが飛び散って霧状に拡散した。

 

結芽「ん〜♪気持ち良い!さあ、まだまだ行くよ!」

 

結芽は攻撃を始める。ドスジャグラスの腹には大きな傷が出来ており、更に追撃を掛けるように前脚へスラッシュアックスを振り下ろす。スラッシュアックスによって、前脚の皮膚も傷付けられた事でドスジャグラスは怯んだ。そして、振り上げたアックスで顎も傷付けられたドスジャグラスは、悲鳴を上げた後に涎を垂らしながら息切れを起こす。

 

そして、暫く戦った後にイチゴがドスジャグラスの様子を見て告げる。

 

イチゴ「ご主人様!獲物が弱ってるニャ!捕獲するなら今がチャンスニャ!」

 

結芽「よおし!怯んだ今がチャンス!」

 

イチゴは目利きが良いオトモだ。捕獲出来るモンスターの状態を見抜いてくれる為、結芽だけでは見抜きにくい捕獲のタイミングを知る事が出来る。

 

結芽「せっかくだから落ちろぉ!」

 

結芽はドスジャグラスの足元に落とし穴を配置する。装置が地面の中へ入り、無数の葉を纏った網を地面の中へ仕掛ける、瞬間にドスジャグラスは穴へ落ちてしまう。

 

結芽「まっ、戦って面白かったとはいえ、散々傷付けてゴメンね。暫く眠っててね」

 

結芽は捕獲用麻酔玉を二つ同時にドスジャグラスの頭に投げ付けて、ピンク色の煙がドスジャグラスの頭を覆う。麻酔を吸ったドスジャグラスは落とし穴にハマったままその場で倒れ込み、眠りに入った。

 

結芽「よし。捕獲完了!」

 

イチゴ「流石はご主人様だニャ!見事な捕獲の腕前だニャ!」

 

結芽「イチゴちゃんもサポートありがとね!」

 

結芽とイチゴはハイタッチをして、クエストを終えてその場で寛ぎ始める。ソーセージをイチゴに与え、結芽は水筒の回復薬を飲んでその場で座る。

 

その時だった。

 

結芽「ん?えっ?」

 

結芽は見た。

 

木々の間を移動する、紫色の鬼火を。それが結芽とイチゴを見るかのように揺れた後、森の奥へと消えていくのを。

 

結芽「………今のは何だろう?ま、今は帰るか」

 

結芽は肩にイチゴを抱えながら、翼竜にワイヤーで掴まって空へ飛び上がり、アステラへ帰っていく。

 

――――――――――――――――――――――――

 

ゾラ・マグダラオスが新大陸に来てから、各地のモンスターが動き出す。中には、他の大陸でしか見かけないようなモンスターも現れ始める。

 

喉を膨らませて嘴の先で様々な声を真似る彩鳥。オレンジ色の群れる小さな牙竜種モンスターと、紫色の牙竜種モンスターを滑る襟巻きを付けた狗竜。大型の熊のような青熊獣。いずれも古代樹の森に出現した。

 

泡を纏う美しき泡狐竜。緑色の外殻と全身に生えた硬く鋭く赤い棘、そして鼻先に角のようにそびえる特に大きな棘を持つ棘竜。光る提灯を持つ大型の海竜種である灯魚竜。珊瑚が陸で生きる未知の生態系に現れる。

 

更に、この世界の生き物ではない未知のモンスターも現れ始める。太古のエネルギーを放つ火山に現れた、炎を放つ巨大なカブトムシと全身が溶岩のような体となっている鹿のようなモンスター。命を蝕む瘴気に覆われし谷に住み着く緑色の翼無き四足歩行の竜。

 

そして、数多の古龍も新大陸に向けて接近していた。

 

台風を思わせる嵐を纏って空を飛ぶ嵐龍。音速を超えて夜空を飛行する赤い彗星穫呼ばれし天彗龍。体に金属を纏い、光りながら夜空を飛ぶ司銀龍。

 

ゾラ・マグダラオスが齎す変化が、新大陸に新たな命を呼び込み、新大陸に眠る命を目覚めさせる。

 

そして、この新大陸における結芽のライバルとなるモンスターも活動を始めた。

 

それは、鬼火を纏い、口に先程結芽が捕獲したドスジャグラスとは違う別個体のドスジャグラスを口に咥えて、古代樹の森を歩いていた。

 

怨虎龍マガイマガド。その前に、泡を纏う泡狐竜タマミツネが現れる。

 

二体は一度は睨み合うが、今は目的が違う為か鉢合わせても攻撃し合う事は無かった。二体はそれぞれ擦れ違った後、それぞれの住処へ帰って行った。




ゲームと違って、必ずクエストの方でやれば良い訳ではなく、任務や探索で必要な材料や特産品を集めればクエスト完了出来る事にしました。それと、ゲームでは出来なかった事を出来るようにしてます。

それと、木にクラッチクロー出来た理由は、モンスターに掛けられるなら木々にも掛けられる事とライズの翔蟲を合わせた私のオリジナル戦法です。

ゲームの時より厳しくなりそうな新大陸。此れ、結芽、死ぬかもしれない…………。


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8話

結芽がイチゴとアステラに戻ってきた。その時、プーギーのシズカと話をしているのか、ケストドンの依頼中に見つけたガルクの大福がシズカと見つめ合っていた。

 

シズカ「ブヒッ!ブー!!」

 

大福「キャンキャン!」

 

シズカと大福が結芽に寄り添ってきた。

 

結芽「可愛い♥よしよし〜♥」

 

シズカ「ブヒッ!ブヒブヒッ〜♥」

 

シズカが跳び上がり、結芽に益々寄り添った。

 

大福「アゥーン♥」

 

大福も尻尾を振って、結芽の頬を舐める。

 

アーサー「お帰り結芽。大福はどうやらシズカを気に入ったみたいだな。シズカも大福と友達だ。大福、行け!」

 

大福「アンッ!アンッ!」

 

大福は台に向かって走り、飛び乗ろうと台の上にしがみ付く。しかし、中々上がれずに苦戦している。

 

アーサー「まだまだか。結芽、この子はいずれお前の役に立つ。それまでに鍛え上げてみせるさ。大福、来い!」

 

大福「キャンッ!」

 

大福はアーサーに付いて行く。大福の頑張る姿に結芽は頬を赤く染めながら、デレデレした顔でニヤけている。

 

結芽「ウェへへへ〜可愛いなぁ♥イチゴちゃんと同じ位可愛い♥」

 

イチゴ「ニャ〜!僕はご主人様の相棒だニャ!ご主人様の裸も全部見てるから僕がご主人様を一番好きニャ!」

 

イチゴが結芽の背中に跳び乗って抱き着く。

 

結芽「アリスに抱き着いて嬉しくなる浮気者猫ちゃんにそんな事を言われてもな〜」

 

イチゴ「うわーん悪かったニャ〜!」

 

イチゴが泣きだそうとしている。

 

結芽「誠意が足りないねぇ?」

 

イチゴ「えぇ〜っ!?」

 

結芽「アハハハッ!冗談だよ!イチゴちゃんののことも大好きだよ!」

 

イチゴ「酷いニャ〜!あれ?そんな事を言ったら、現大陸でも可愛い動物飼いまくってるご主人様も浮気者だニャ」

 

ピシッと結芽から何かが響く。

 

結芽「それが、何か!?」

 

イチゴ「ムキになってどうするのニャ……」

 

結芽「アハハッ!でもイチゴちゃんが一番だよ!だってアリスとはまた別のパートナーだもん!」

 

イチゴ「嬉しいニャ♥なら僕も浮気を許しちゃうニャ♥」

 

こうして笑い合う二人。しかし、その顔は再び真剣な顔になる。

 

結芽「それにしても、あんなに大きな痕跡を見たの初めてだったね」

 

イチゴ「そうだニャ。それに、プケプケを見てご主人様がメロメロになってたニャ」

 

結芽「だって、あんなに可愛いのに……やっぱりプケプケ可愛いなぁ♥でも、アオアシラが乱入してくるなんて思ってなかったけど」

 

結芽はそう語る。それは、ドスジャグラスを捕獲してアステラに戻る一時間前に遡る。

 

――――――――――――――――――――――――

 

夕焼け頃、結芽とイチゴはアリスやアーサーと共に森の中を歩いていた。ゾラ・マグダラオスの影響が出ていないかを探る為だ。 

 

アーサー「ん?導蟲が反応しているぞ」

 

導蟲が反応した物。それは、木の根や苔で覆われた地面に落ちている、数枚の緑色の羽根だった。

 

アーサー「此れは……」

 

アリス「彼処にもあります!」

 

木と、木に生えている足場になりそうなキノコの上にぶち撒けられた、半透明の液体。此れも導蟲が反応している。 

 

結芽「……アリス、イチゴちゃん、アーサーおにーさん。なにか来るよ」

 

結芽は刀使だった頃の感覚と、この世界で鍛え上げた気配感知力と直感で、森の奥から迫る大型モンスターの気配に気付く。

 

アリス「っ!」

 

アリスは結芽の言葉を聴いた瞬間、背中に折り畳んで背負う弓を手に持ち、弓の形にして構えた。

 

アーサー「ああっ、奴だ」 

 

4人は木陰に隠れる。その奥からは、カメレオンのような頭部に首から無数に生えた羽根、そして縞模様の尻尾を持ち、両腕が二対四つの丸い突起物がある翼を持つモンスターが現れた。

 

アーサー「プケプケだ」

 

4人は武器を構えたまま身構えているが、プケプケのつぶらな瞳を見た結芽は、“萌え”を感じていた。

 

結芽「萌えちゃううう♥可愛いなぁ♥」

 

アリス「ゆ、結芽?今はそんな事をしてる暇はありません!」

 

結芽を引っ張るアリス。幸いにも音を立てなかった為、プケプケには気付かれなかった。

 

首元が揺れて羽根が何枚か落ちる。

 

アーサー「プケプケが可愛いかはさておき、奴はある意味この森の栄養源でもあるんだ。この森の生態系の頂点に立つモンスターとハンターの激闘によって森林は広範囲が失われたが、プケプケが住み着いてからクルミの稚樹が多く確認された。お陰で古代樹の森は再生したんだ」

 

結芽「うわぁ可愛いのに森を護ってる健気な所があるなんてえぇ♥益々可愛いよぉ♥お持ち帰りしたいなぁ♥」

 

結芽は自身を抱き締める。まるでプケプケを抱き締めているかのようだ。

 

アーサー「頼むから真面目になってくれ。あのプケプケは――」

 

結芽「気が立って落ち着かない所も可愛いよぉ♥ソワソワしてて可愛いよぉ♥」

 

アーサー「分かっ……てるじゃないか………なぁ、結芽って可愛いと判断した奴には皆こうなのか?」

 

アリス「はい。でも、こう見えてきちんと周りを見てます」

 

イチゴ「流石はご主人様だニャ♥」

 

結芽は悶えながらも、プケプケの様子をよく見てる事にアーサーは結芽の優秀さを思い知る。この態度も強者の余裕というものだろう。

 

プケプケは森に落ちている大きな溶岩の小山らしき痕跡に毒を吐き出しており、そのお陰でプケプケが落ち着かない状態だと理解した4人。

 

しかし、その時だった。

 

???「グオオォォオオオオッ!!」

 

突如、プケプケに襲いかかる大きな熊のようなモンスター。

 

アリス「アオアシラです!青熊獣もこの新大陸に!?」

 

結芽「クマさんだぁ〜♥」

 

イチゴ「なんでこんな時でも萌えちゃうんだニャ!?」

 

アオアシラはプケプケに組み付き、その爪を振り下ろしてプケプケの首を斬る。プケプケの羽根が飛び散るが、プケプケは体を翼ごと体当たりしてアオアシラを吹き飛ばす。

 

アーサー「よし、帰るぞ!」

 

そして、彼等は翼竜に掴まって空を飛んだ。

 

結芽「ウワアァァンッ!もっと可愛いあの子達を見ていたいよぉ〜!」

 

結芽はそう嘯きながら、イチゴを抱えてアステラへ帰っていく。

 

―――――――――――――――――――――――――

 

ジェド「なるほど。ゾラ・マグダラオスの痕跡の傍で気が立ったプケプケとアオアシラが縄張り争いを。今すぐ学者を派遣したいが、その二体を何とかしないと痕跡回収は難しいな」

 

結芽は総司令ジェドに報告をした。

 

結芽「うん。あの可愛い二匹が争い合ってるんだよ」

 

ジェド「可愛い?かはさておき、その二匹を今度は狩猟してほしい。そのためには先ず、もう一つのキャンプ場を建てる必要がある。調査資源管理所を手伝ってほしい。頼めるか?」

 

結芽「うん♥傷付けるのは嫌だけど、捕獲しちゃえば彼処のドスジャグラスみたいに観察出来る♥」

 

ジェド「捕獲は観察もあるが、あくまで調査の為だという事を忘れるな?」

 

結芽「分かってるよ〜。行ってくるね〜!」

 

結芽は走り出す。イチゴも後に付いて行く。そして、シズカも鳴き声を上げながら二人について行った。

 

ジェド「全く……だが目は真剣だったな。強者の余裕か」

 

その後、結芽は調査資源管理所に赴いた。

 

ミーシャ「やあ結芽。君を待っていたよ」

 

結芽「うん。それで、キャンプ場を建てたいんだけど」

 

モニク「ええっ。あっ、そうだわ。次いでに貴女に頼みたい事があるのよ。もし、探索に出た時に余裕があるなら、他のエリアも探索してみてくれないかしら?入手出来る素材の位置も把握出来るし、他に建設出来るキャンプ場も見つけられるし、それに何より、新しい資源が見つかるかもしれないわ。もし探索に出るなら、お願い出来る?料理長や加工屋、それにアステラの施設を更に良くする事が出来るかもしれないわ」

 

結芽「ん?良いよ。探索に出たら、ゆっくり古代樹の森を探索してみるよ」

 

モニク「ええっ」

 

こうして、新大陸に来て初の探索に出向くことになった結芽。新大陸の奥深さを更に知る、良い機会になるのだった。

 

――――――――――――――――――――――――

 

その頃、森の中である集団がアプトノスを追い掛けていた。その集団は小さな牙竜種の群れで、首に襟巻きが付いていた雄の個体。紫色の牙竜種は襟巻きが付いた個体より一回り大きい雌の個体、アプトノスの脚に体当たりして動きを封じる。そして、アプトノスの頭に噛み付く、先程の襟巻きが付いた雄より更に巨大な牙竜種モンスター。それは、現大陸でも見かける襟巻きが特徴の牙竜種モンスター『ドスジャギィ』であった。お供に雌のジャギィノスや雄のジャギィの群れで、アプトノスを狩っていた。その時、アプトノスを横取りしようとドスジャグラスがその場に現れて、ドスジャギィに向かって吠える。その時、ジャグラスの群れも現れて交戦状態となる。ドスジャグラスはドスジャギィに噛み付いてそのまま地面に引きずり回す。

 

ドスジャギィ「ウオォォォォッ!!」

 

ドスジャギィが吠えた、その瞬間、ジャギィがジャグラスへの攻撃を止めてドスジャグラスに群がっていく。その数、なんと20体。更に森の奥から200体もの大群が現れて、尚徐々に増えていき、更にどんどん森の奥から現れて増えていく。ジャギィやジャギィノスまでもがジャグラスを無視してドスジャグラスに群がっていく。

 

ドスジャグラス「グオオオオォォッ!?ガアアアアッ!?」

 

ドスジャグラスは体中にジャギィやジャギィノスに噛み付かれた上で、体全体を覆われていく。

 

ドスジャギィ「ウォウォウォウォウォウォッ!!ウォウッ!」

 

ドスジャギィはドスジャグラスの口から離れて自由になった後に、鳴き声で指示を送る。ドスジャグラスに群がるジャギィやジャギィノス達に指示を送る。その瞬間、近くにいたジャギィ達が口に尖った石を咥えた後にドスジャグラスの頭に跳び乗り、ドスジャグラスの目に尖った石を叩き付けた。ドスジャグラスの目は潰されて、更に全身を傷付けられた事で肉質が柔らかくなり、ジャギィやジャギィノスの攻撃が通りやすくなる。

 

ドスジャギィ「グオオッ!!」

 

ドスジャギィはドスジャグラスの呼吸する鼻に噛み付いた。四肢に無数のジャギィノスが噛み付き、体中をジャギィに噛みつかれる。僅かだが肉を徐々に噛み千切られて所々から出血していく。

 

そして、血管も引き摺り出された後に内蔵も引きずり出される。

 

そして、大型モンスターとはいえ呼吸の為の鼻をドスジャギィに噛み付かれて封じられる。

 

ドスジャグラス「ゴ……ガアァ……ァ――」

 

ドスジャグラスは息絶える。流石の大型モンスターも呼吸は必要だ。呼吸が封じられれば短い時間で死に至る。

 

ドスジャギィ「ウオオォォッ!!」

 

そして、ドスジャギィは勝利の咆哮を上げる。軈て彼等は解散していき、目的のアプトノスに再び群がってドスジャギィは餌を残ったジャギィやジャギィノスに分け与えた。

 

ジャグラスの群れはその場からすぐに立ち去っていく。ドスジャギィ達の数の暴力によって自らのボスが倒された以上、自分達は生き残る事を優先しなくてはならない。なにせ、ドスジャグラスは一体だけではないのだから。




ドスジャギィを出してほしい要望が出たので、新大陸のドスジャギィは更に強化しました。

言ってしまえば、数の暴力+周りの物を利用した拘束や攻撃+連携攻撃を付け加えました。


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9話

結芽はオトモのイチゴと共に、再び古代樹の森へ探索に来た。今回装備は変更しており、捕獲して手に入れた素材とお金でドスジャグラスの装備を加工屋に造ってもらい、装備している。此れを身に纏うと、不思議と飲み物や食べ物の飲食速度が早くなり、少量でも食べれば満腹になる。更にしゃがんで移動する際の速度も上がり、オトモの身体能力も向上した気がする。最初のモンスターから造った鎧にしては、やけに便利だ。イチゴはドングリ装備のままだ。

 

結芽「んじゃあ行こう!」

 

イチゴ「目指すは以前にプケプケやアオアシラを目撃した樹海だニャ!いっくニャー!」

 

アリス「では、参りましょう!」

 

今回はアリスも同行した。結芽、アリス、イチゴの三人で古代樹の森の探索に出る。編纂者であるアリスのお陰で以前採取した場所を事細かに地図上に記録出来る為、アイテムに困った時に場所が分かって便利である。

 

アリス「あっ、そういえば獣人族学者が古代樹の森に訪れているらしいです。キャンプ場に行く前に、会いに行ってみてはどうでしょうか?」

 

結芽「獣人族学者って、確かアイルーとかメラルーみたいな獣人族の研究者だったよね?うん、この新大陸に居る獣人族に会ってみたいし、その人が何処に居るか教えてくれる?」

 

アリス「はい」

 

結芽は地図を開く。すると、アリスが結芽の地図に獣人族学者の居場所を記した。川の水が滝となって流れ落ちる崖、其処に学者が居る。

 

三人はその場所に移動する。すると、杖を使って崖からの景色を見通す高齢者の姿があった。

 

獣人族学者「おう。ハンターさん、どうかこの老いぼれの頼みを聞いて頂けますかな?」

 

結芽「うん。おじーちゃん教えて」

 

老練の獣人族学者「この新大陸にはテトルーと呼ばれる種族がおります。ですが、生憎この老体では彼等の住処を探す事が難しいのです。オマケに何処に居るのかが分からず、調査が進まないのです。ですので、ハンターさんには森に住むテトルーの住処を探し出してほしいのです。もし住処が解れば彼等と友好を結び、小型モンスターと仲良くなる方法も解る事でしょう」

 

結芽「でも、手掛かりも無かったら探し用が無いよ?」

 

老練の獣人族学者「あれを。テトルーが新大陸に残した痕跡です。落書きの形で、彼等は自身の痕跡を残します。あれを辿れば、いずれテトルーに辿り着けるかと」

 

結芽は岩の壁に描かれたアイルーの肉球に似た落書きを見つける。

 

イチゴ「ッ!テトルーの匂いがするニャ!でも匂いが弱すぎて分からないニャ。もっと痕跡を探して匂いを辿るニャ」

 

結芽「うん。でも、先にキャンプ建てに行こう。アーサーおにーさんが先に向かってるみたいだし」

 

アリス「では、行きましょう!」

 

三人は移動する。其処で彼等は、新たなモンスターと出会う事になるのであった。




今回は短いです。


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