ユグドラシル最終日、余所のギルド拠点で談笑中、現実世界の方で寝落ちしてしまいました (挫梛道)
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【キャラクター紹介】


 
オバロwikiのキャラ紹介な感じで。
今後のネタバレや伏線も有ったりするので、気を付けて下さい。
 
今後の展開により、一部 追記されたり修正されたりもします。
御了承下さい。 
 
 
 


【まろんデータ】

  

『結婚して下さい。』

 

【挿絵表示】

 

【メインデータ】

名前:まろん

種族:異形種(アンデッド)

分類:プレイヤー

異名:黄金闘衣の悪人系美形(ゴールドワルメン)

役職:ヴァーリ・トゥードの一員

住居:ナザリック地下大墳墓

    ↓

   白い匣(ホワイトホーム)

    ↓

   エ・ランテル

属性:中立~微善(カルマ値15)

種族レベル:動死体(ゾンビ) 1.Lv

      首無し騎士(デュラハン) 1.Lv

      首無し騎士王(デュラハン・ロード) 10.Lv

      ほか 残り 18.Lv

職業レベル:グラップラー 10.Lv

      ウィザード 5.Lv

      サイキッカー 3.Lv

      幻術師 2.Lv

      魔拳士 10.Lv

      ハウスハズバンド 2.Lv

      ほか 残り 38.Lv

合計:種族30.v 職業70.Lv 合計100.Lv

 

【サブデータ】

誕生日:5月30日

年齢:?

身長:188㌢

性別:♂

趣味:料理

製作NPC:イスキオス

声優:曽我部和恭氏

備考:非童貞

  

 

【概要】

本名(リアルネーム)瑳峨(さが)久利(ひさとし)

ユグドラシル最終日、フレンドであるモモンガが居るナザリック地下大墳墓を訪ねたが、その後、現実(リアル)の方で寝落ちした為、ナザリックの転移に巻き込まれてしまう。

以後、モモンガ達と行動を共にする事に。

 

【外見】

長い黒髪に紅い瞳。

整った顔立ちだが、血走った様な眼の お陰で周囲からは悪人系美形(ワルメン)と呼ばれていた。

纏っているのは一見、どう見ても鎧にしか見えないが、実はユグドラシルの稀少金属・鉱石を糸状に加工し、黄金色に着色した後に編み上げた()である。

 

【性格】

一応、『悪人じゃない』程度な善寄りの中立。

目の前の困っている人に対して、見て見ぬ振りが出来ない程度の甘さを持っている。

但し、敵や悪人に対しての慈悲は、完全に喪せている模様。

 

【人間・瑳峨久利】

現実(リアル)では貧困層の中では比較的 恵まれた家庭の出身で、中学校まで進学するが、在学中に父親の過労死が理由で中退。

後に、鈴木悟(モモンガ)やヘロヘロ達との程度の比較は不明だが、かなりブラックな職場に就職。

社会に出て、富裕層の"腐敗"を目の当たりにし、元より父親の死亡に対する社会的補償の軽視、税金を貪るだけの政治家や公務員、権力者に尋常で無い嫌悪感・不信感を抱く様になる。(但し、2人程 例外認定している者が居る)

その不快な思いを紛らす為に、それまでは軽い息抜きでプレイしていたユグドラシルに、ずっしりと沈む様になる。

同時期に母親も病に罹り死別。

転移後、自分が肉体だけでなく、精神も異形側に…特に他者の生命の価値観が異形寄りになっている事を自覚すると同時、それを危険視。

それ故に、それが事務的機械的、自己満足であろうと人寄りの行動を取る事で、人間(ヒト)精神(ココロ)を保とうとしている。

自分と同様、身心共に異形化しようとしているモモンガに対しても、それを友として止めようと考えている。

 

【装備】

・黄金闘衣:双児宮(ジェミニ)

・旅人の服DX

・超・貴族服

 

【関連項目】

・モモンガ

ギルマス、がんばれーww

 

・ペロロンチーノ

エロ談義友達。但し、性癖は ほぼ対極。

 

・ぶくぶく茶釜

茶釜ちゃま。

ナザリックを訪れる度に、ペロロンチーノとのトークが原因で説教されてた。

風っち。()()()()()()()()()()()では、凄く ()()()になっていた。

 

・やまいこ

義母様

 

・アルベド

モモンガさんの嫁w

 

・ユリ・アルファ

ユリたーん♡! 愛してるよ~っ♡!

 

・アインズ・ウール・ゴウン(ギルド)

過去に1度、加入を申し出たが、当時は まだ学生という理由で断られた。

 

・ヴァーリ・トゥード

AOG(アインズ・ウール・ゴウン)にフラれた後、加入したギルド。

 

真里(マサト)

ヴァーリ・トゥードのギルマス

キレると超恐い。最恐最狂最凶。

 

・ポチョムキン4世

ヴァーリ・トゥードの機織り職人

黄金闘衣を編んだ。

 




 
追記や設定変更等が有った場合、最新話の後書きで報告します。
 


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ユグドラシル最終日、余所のギルド拠点で談笑中、現実世界の方で寝落ちしてしまいました 
ユグドラシル最終日


 
第1話です。よろしくっス。
 


 

◆???side◆

ユグドラシル。

凄まじい程の自由な…自由過ぎる設定で爆発的な人気を博したVRMMO・RPG。

しかし それも時の流れか、その人気も次第に衰退していき、今日を以て、その12年に渡るサービスを終了する。

 

「…………………………。」

現在の時刻は06:55。

この日…この日の為に、この日に照準を絞り、正しく働いて働いて働いて、働き通し、有休をもぎ取った俺は、その久し振りな休日の朝、自室のパソコンを起動させ、()()()()()()()()()()()、ユグドラシルにログイン。

意識を その仮想空間にダイブした。

そして俺は その中で、ブラック企業の社畜・鈴木悟から、死の支配者(オーバーロード)・モモンガとなる。

 

≫≫≫

「【(^o^)ノ】どうも、モモンガさん。」

「【( ゚∀゚)】ヘロヘロさん!来てくれたのですね!」

 

ナザリック地下大墳墓。

ユグドラシルにて俺がマスターを務めるギルド、『アインズ・ウール・ゴウン』の拠点(ホーム)

嘗ては41人のメンバーを擁していた このギルドも、気付けば訪れるのはギルマスの俺だけになっていた。

しかし、今日は違っていた。

その下層に在る、ギルドメンバーが集う円卓の間に無言で1人佇んでいた時、暗紫の粘体(スライム)が巨大な円卓の自分の席に、姿を現した。

ギルメンのヘロヘロさんだ。

今日はユグドラシルの配信サービス最終日。

俺は数日前から、ギルメン全員に『最後はギルドに集合して、語りませんか?』とメールしていた。

しかし朝から ずっと待機していたが、誰も来ず。

訪れるのは、別にギルメンに限らなくても良かったんだ。

余所のプレイヤーが、()()()みたいに最後の最後、積年の怨みとばかりに乗り込んできても、そっちは そっちで、オ・モ・テ・ナ・シ♡の用意は万全だった。

しかし、そっち方面でも誰も来ず。

ナノマシン切れによる強制ログアウト→速注入(チャージ)からの再ログインを繰り返し、時間だけが無駄に過ぎていく。

孤独(ぼっち)の放置プレイ。

本当に精神的にヤバイと感じていた22時を過ぎて漸く…それでも、俺の呼び掛けに応えてくれたのだ。

 

「【(・∀・)】どうも、モモンガさん。お邪魔しま~す。」

「【(⌒∇⌒)】ああ、よく来てくれました!」

そして、その少し後に もう1人。

身を包む装備は、眩く煌めく黄金。

所々、癖の様に跳ねた長い髪は、光を否定する如くかの漆黒。

精悍に整った顔だが、鋭い瞳は鮮血に染まった様な紅…所謂 悪人系イケメン、即ちワルメンな表現が相応しい顔付きな男。

ユグドラシルにて、その所業故にDQNギルド認定されているAOG(ウチ)と友好関係を結んでくれている数少ないギルドの1つ、『ヴァーリ・トゥード』所属の まろんサンだ。

ギルド間だけで無く、プレイヤー個人としてもフレンド登録している彼は、自分のギルドに一度 顔を出した後、此方にも最後の挨拶に来てくれたのだ。

 

≫≫≫ 

「zzzzzzzzzzzzz…」

「【(;¬_¬)】……………………。

えーと…ま、まろんサ~ン?」

「【(―_―;)】い、いや、さっきまでは普通に話してましたよね?

もしかして、現実(あっち)で寝落ちしちゃった?」

色々と話していると、急に まろんサンの動きが止まった。

ヘロヘロさんの言う通り、現実(リアル)の方で寝てしまった様だ。

ゲーム内の状態異常(スリープ)で無く、現実(リアル)で眠っているらしく、目は開いているのに…パソコンのマイクが拾っているのだろう…静かな寝息を立てているという、かなり異様な雰囲気を醸し出している。

本当に つい先程まで、普通に話していたのに…だ。

 

「【(´・ω・`)】まあ、まろんサンも以前から、仕事が『くっ殺レベルに忙しい』とか、言ってましたからね。

此方に顔を出してくれているだけ、有り難いですよ。…で、どうしましょう?」

「【(T∀T)】此方で叩いたりしても、起きないでしょうからね~?

起きるのが先か、ナノマシン切れのログアウトが先か…」

結果、とりあえず向こうのギルマスさんには《伝言(メッセージ)》で事情を知らせた上で、放置に決めた。

 

≫≫≫

 

「巫山戯んなよっ!!」

 

時刻は22:55。

この時間でヘロヘロさんも、「明日も早いので、そろそろ…」とログアウトしていった。

ヘロヘロさんの勤め先のブラック振りは、昔から聞かされていた。

だから あと約1時間、「どうせなら最後まで…」…引き留めの為に、その言葉を言う事も出来なかった。

結局、今日この場に来てくれたのは、ギルメンではヘロヘロさんだけ。

多分、もう誰も、此処には来ないだろう。

ヘロヘロさんが来てくれただけで、感謝すべきだ。

ユグドラシルは所詮はゲーム。

そりゃあ、ゲームよりも現実(リアル)を優先させるのは当然だし、それは理解は出来ている心算だ。

…しかし!

それでも納得の行かない感情が、俺の頭の中を支配する。

 

 

それじゃあモモンガさん、何時か何処かで、また会いましょう。

 

はい、ヘロヘロさん。また何時か…

 

 

 

………………………………………。

 

 

 

 

 

『何時か』『何処か』って、何時だよ?何処だよ?!

今迄、皆で この規模(レベル)に迄 築き上げたナザリックは…AOG(アインズ・ウール・ゴウン)とは一体、何だったんだよ!?

この最後の時に、せめて何か少しだけでも…何も…本当に何も思う事も無いのか?

所詮は、その程度な代物だったのか?…という想いが。

 

「zzzzz…」

「こ、この人は…」

しかし そんな時、変わらず眼を開けた儘で寝ているという、リアルなら奇妙で器用な危ない人認定間違い無しな まろんサンが目に映り、少しだけ気持ちが和らぎ、落ち着いた。

少しだけ、冷静になれた。

…そうだ。

このユグドラシルは、あくまでもゲーム。

普通に比べたなら、現実の生活の方が大切に決まってる。

これは養うべき家族も居なければ親しい友人、恋人も居ない、仕事、食事、睡眠…それ以外はコレしかやっていない、コレだけしかない、俺だからこそのエゴなんだ。

 

≫≫≫

「ハァ…」

その後、部屋の隅に控えていたNPC達を引き連れ、俺はナザリック最深部・王の間に。

最後の刻は、この部屋で迎えると、前々から考えていたのだ。

日付が変わる、ユグドラシル終了の その刻その瞬間に、皆で ()()()()を唱え、それで締めようと。

 

「…それも、叶わず、か。」

疲れた様に、どさっと座った玉座の脇には、黒翼・白い衣装の美女が立っている。

アルベド。

穏やかな笑顔で佇んでいる彼女はナザリック地下大墳墓の、最上位NPCに設定されている存在だ。

 

「……………………。

どんな設定なのかな?」

自分が創ったキャラじゃないから、今迄その設定(なかみ)を見た事は無かったが、ふと好奇心が沸き…どうせ今日が最後だと、メニューを彼女に合わせ、その設定画面(ステータス)を開いてみる。

ゲームのキャラとは云え、女性の内面を覗くのはセクハラかも知れないと、少しだけ罪悪感。

 

「ぅゎ なっが…」

そして、その設定説明文の永さに唖然。

 

「そう言えばタブラさんて、設定厨だったよね…」

ギルメンの1人である彼女の創造者は、何事に対しても設定には かなりの拘りを見せる人物だと言う事を思い出したり。

 

「ぃゃ…これは無い…無いですよ、タブラさん…」

そして その彼女の説明…戦力(ゲームキャラ)としても女性としても、あらゆる面で優れている事を語られているであろう解説文…その読む気を喪失させる程な長文の最後の行…目に付いた その最後の一文の()()に苦笑したり。

 

「あ…そうだ この人、ギャップ萌えだった。」

そして、別の拘りを思い出したり。

 

「いや、でも やっぱり、コレは無いですよ、タブラさん…」

そして、それを改めて見た俺は…

 

≫≫≫

「こうやって見ると、凄い光景だな。」

…あの後、玉座の間に他のNPCも数体、呼び寄せた。

ナザリックにて、『守護者』という役職・設定で創られた、強力なキャラクター達だ。

そんな中には、俺が創ったキャラクターも1体。

 

「………………………………。」

改めて見ると、コイツは やっぱり…

いや、今更に悔いても仕形が無い。

兎に角それ等 皆が今、片膝を着いて、俺を見据えているのだ。

 

そして時刻は いよいよ23:59。

60秒を割った。

……………………………………。

玉座に座る俺の前、アルベドを筆頭に畏まるNPC達を見ながら、頭の中で台詞の長さを計算して、タイミングを合わせる。

……………………………。

そして いよいよ その瞬間、日付が変わる、ユグドラシルがシャットダウンする瞬間を狙って、

 

ガタッ…

 

俺は立ち上がり、派手なアクションと共に盛大に叫んだ。

 

「アインズ・ウール・ゴウンに栄光在れ!!」

………………………………………。

うっわ、恥ずかし!カッコ悪っ!…とか、誰も見てなくて良かった~(汗)とか、全っ然、思ってないぞ!

やらなきゃよかった(泣)的な、後悔も反省も、微塵も無いんだからね!

まあ、良いんだ。これで、終わるんだ。

Good-bye,YGGDRASILL.

Good-bye & Thank you…AINZ・OOAL・GWOn 

『『『『『『『『『『アインズ・ウール・ゴウンに栄光在れ!!』』』』』』』』』』

 

 

………………………………………。

え…えぇえ゙―――――――――っ??!

 




 


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想定外の事態

 
第2話です。
 



 

『『『『『『『『『『アインズ・ウール・ゴウンに栄光在れ!!』』』』』』』』』』

 

◆モモンガside◆

…………………………………………。

今、起きている事を簡潔に言ってみると、『ワケワカメ』。

だって、仕方無いじゃないか?

ゲーム内、視界の隅の日付と時計が、いよいよユグドラシル最後の刻を示した時、一瞬 目の前が ()()()()()って歪んだと思えば、その日付表示等が…ついでにステータスや現在座標等のウィンドゥも消え、心なしか部屋の画質が高く…より一層にリアルになっている気がする。

…って、先ず、ログアウトしてないのが可笑しいだろ?

ステータスウィンドゥとか開かないし?

何故かログアウト出来ないし?

不具合か何か?

クソ運営、最後の最期で、また やっちまったか?

そんな訳で、GMコールをしようとしても、繋がらない。…だと?

 

「モモンガ様、如何なされたのです?」

「モモンガ様、大丈夫ですか?」

「モモンガ様、何事か有ったでありんすか?」

「「「「「「モモンガ様?」」」」」」

「Vater?!」

そして極めつけはコレ!

玉座の間に集めたNPC達が、勝手に動き、喋りだした!

しかも、その中の1人の言葉が、更なる精神的追い討ちを!

 

「モモンガ様?モモンガ様??」

そして その先頭に居た美女…アルベドが、恐らくは動揺丸分かりな俺を見て、心配そうな不安そうな泣きそうな顔で、俺に迫る…って、近い近い近い!

美女の弩アップは、20後半のDT男には色々な意味でキツいから!

そう、NPCが表情豊かに、しかも喋ると同時、口も それに合わせて自然に動くのだ!

ついでに体の動きに合わせて、たわわな お胸(推定G)が ぷるるんと!

そう、まるで本当に、生きているかの様に。

美女の胸の弩アップは、20後半のDT男には、本当に色々な意味で危ないから!

更に、このアルベドの体から 仄かに感じさせる心地好い香り。

恐らくは香水だろうか、『匂い』を感じるのだ。

ユグドラシルの様な精神ダイブなバーチャル系ゲームは五感…特に味覚、そして嗅覚に対する法律的な規制が厳しい。

…にも拘わらず、匂いを感じるとは、只事じゃない。

まるでゲームの世界が、現実になったかの様な…ハハハ…まさかな。

ゲームのやり過ぎは自覚有るが…とは云え、そんな事が有る訳が無いじゃないか!

 

「落ち着け!」

「「「「「「!!?」」」」」」

そんな中、とりあえずは俺以上に狼狽えている感じな…原因はテンパっている俺だろうが…NPC達を静かにさせてみる。

…同時に俺自身にも、言い聞かせているのだが。

落ち着け。落ち着くんだ、俺。

早く この状況…現状を分析するんだ。

俺への対応からして、このNPC…彼・彼女達は製作設定に従い、俺達ギルメンに対する忠誠はカンストを越えて天元突破しているのだろう。

『落ち着け』…この一言で静まり、

「申し訳ありません、モモンガ様…」

皆が一斉に膝を着き、アルベドが代表するかの様に、俺に謝罪を。

 

「ふむ…」

よし、もう どうにでもなれだ!

魔王ロールが有効な様だから、この儘『非公式ラスボスor裏ボス』のキャラで行ってやるよ!

何か不味い事が起きても、その時は その時だ!

 

「いや、私の方こそ、すまなかった。

お前達が取り乱すのも解る。

ナザリックを束ねる者として、相応しくない振舞いだったな。」

「そ、その様な事は…」

「いや、先ずは私の話を聞いてくれ。」

俺の謝罪をフォローしようとするアルベドの声を遮り、話を続ける。

 

「今、このナザリック地下大墳墓にて、()()が起きている。

しかし、具体的に それが()()()()は、まだ私にも判らぬ。

…だが、『何かが異変が起きている』のは、紛れも無い事実だ。」

 

ざわ…ざわ…

 

「粛に!まだモモンガ様が話されている途中よ!」

「「「「!!」」」」

俺の話に その場の者達が ざわめき、アルベドが それを鎮める。

凄い、凄く有能だよ、この女の人。

守護者統括の設定は伊達じゃないぞ?

 

「さぁ、モモンガ様。」

「…うむ。」

アルベドの有能さに、思わず呑まれそうなるのを堪え、話を続ける。

 

 

「…その様な訳だ。

故に各階層、並びに領域守護者に命ず!

自身が管理するエリアにて、何か変わった事が無いか、僅かな違和でも良い…異変が無いか、シモベを動員して徹底的に調査せよ!

何も無ければ、それで良し。

そして2時間後、また この場に集合。

各々の結果を報告せよ!」

「「「「「「はっ!」」」」」」

有能か?

この場に集まった守護者達が、俺の命令に従い、迅速に行動を開始する。

この部屋に残ったのはアルベド。

 

「「「「「「「………。」」」」」」」

そして6人のメイドな美女美少女と、眼光鋭い老執事風な男が1人。

 

「…セバスよ。」

「はい、モモンガ様。」

この老執事…セバス・チャンに、俺は別の指示を。

 

「お前はナザリックの外を出て その周辺、何か変わった事が無いかを調べてくれ。

そして他の者と一緒に、報告を頼む。」

「畏まりました、モモンガ様。」

俺の言葉に頷き一礼して、この老執事も部屋を出ていく。

 

「それでは、私達は如何しましょうか?モモンガ様。」

これで、アルベド以外で この場に残ったのは、『戦えるメイドさん姉妹』の設定で創造された、戦闘メイド集団のプレアデス。

その長女のユリ・アルファが俺に尋ねてきた。

…そうだな。

 

「それではプレアデスには…あっ?!」

「「「「も、モモンガ様?!」」」」

 

≫≫≫

しまった…。余りにも予想外な展開の連続で、まろんサンの事を、完全にド忘れしていた。

ユグドラシルにログイン中、現実(リアル)の方で寝落ち?…円卓の間に放置した儘だったのを思い出し、プレアデスに様子を見に行って貰う事にした。

 

「…ふぅ。」

「大丈夫ですか?モモンガ様。」

「ああ。もう大丈夫だ。」

実際は、全然 大丈夫じゃないけど。

どっと疲れた様な溜め息を溢し、玉座に腰を落とす。

 

「一体…何が…起きているのだ…?」

「モモンガ様?」

頭を抱えて考え込む俺の この様を見て、アルベドが不安そうな顔を浮かべ近付く。

その彼女の体から薫る、心地好い香りが鼻を掠める。

いや、それだけじゃない。

玉座の座り心地。

石の床を踏み締める感覚。

玉座の間という広大且つ荘厳な空間に漂う、静寂の雰囲気。

ゲームでは感じる事の無かった その全てが、まさかの仮説が正解だと認識させる。

そう、此処はユグドラシルの…ゲームの外だと。

時が経つ程、普通なら絶対に有り得ない()()が、真実(こたえ)だと解らされる。

 

「…………………………。」

そして俺自身にも、異変が現れているのを自覚。

これ程の異常な事態にも拘わらず、確かに一瞬はテンパったりするが、何故だか知らないが、直ぐに落ち着いてしまうのだ。

それは まるで、何かのチカラに無理矢理に、精神を安定させられる感覚だ。

尤も それでも また直ぐに慌てふためき、また直ぐに鎮静化するのだが、その繰り返し。

これは もしかして、今の俺が不死属(アンデッド)だから…その種族特性の1つの"精神異常効果無効"が働いているのかも知れない。

 

「モモンガ様…」

そんな俺に、アルベドが また歩み寄る。

その表情は、慈母の微笑みという表情が相応し…

「ぅぷっ?!」

「モモンガ様…無知な私達には、モモンガ様の仰有られる異変というのが何なのか、理解に及びません。

…でも、だからと言って、1人で背負われないで下さい。

私達シモベが皆、モモンガ様の手足となり、支えますので…」

それは正しく、不安丸出し、泣きそうな子供を包み込む母親の如し…俺を正面から優しく抱擁してくれ…

うわ、凄い良い匂い!凄い柔らかい!兎に角、凄く気持ち良い!…じゃなくて、ヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイ!

彼女自身は、純粋に俺を案じているだけだろうが、美女(しかも巨乳)の顔面圧迫(ぱふぱふ)はヤバイから!

DT的にも!そしてゲーム的にも!

垢BANされちゃう垢BANされちゃう垢BANされちゃうぅ!?

 

…………………………………………。

…って、垢BANされない、だと?

やはり既に、此処はユグドラシルの外、クソ運営の管理下じゃないのか?

いや、まだだ!

こういうのは キチンと確認しておく必要が有る!

 

「あ、アルベド!」

「はい、モモンガ様?」

「む、むむむ、胸を触っても、良ろしゅいでしゃぅか?」

「は…はい?」

はい、ハラスメントは自覚してます!

しかし、これ位は しないと、確信出来ませんから!

そう、例え今後アルベドから、汚物みたいに見られようとも!

…とりあえずは後で、全力の土下座だ!

 

「は、はい!どうぞ、モモンガ様♡」

 

ス…

 

「くふぅ…っ、今日 私は此処で、モモンガ様に初めてを捧げ、結ばれるのですね♡!」

え… うわ、女の人の生おっぱい、初めて見たよ! いや、違うから!脱がなくて良いから!

あくまで確認の意味で、服の上から少しだけ、触るだけな心算だったから!

だから その、艶っぽい表情で迫ったりしないで!

 

 

◆モモンガside・了◆

 

≫≫≫

 

◆ユリside◆

「このヒト…っスか?」

「zzz…」

モモンガ様に命じられ、円卓の間にて待機しているというお客様…至高の御方の御友人を迎えに行ってみると、其処にはモモンガ様の言われた通り、黄金の鎧を着た長い黒髪の男性が、静かに寝息を立てていた。

 

「でも、普っ通~に寝てるっスねぇ?」

モモンガ様が言うには、『もしかしたら まろんサン、器用に眼を見開いた状態で寝てるかも知れないが、そこは引いたりせず、スルーして欲しい』だったのだが、その眼は普通に閉じられている。

…に、しても、

「………………………………………。」

「…ユリ姉様?」

「え…あ、ぃゃ…」

気付けば この お客様…まろん様の寝顔に何故だか引き寄せられていた?

 

「ん?んんん~?

ユリ姉、もしかして このイケメンに見とれていたっスか?

もしかして一目惚れっスか~?…(バシッ!)ふぎゃっ?!」

ち、違うわよ!

ほんの少し、ほんの少しだけ、かっこいいかも?…って思っただけで、べべべ別に、そういうのじゃないから!

このヒトを小馬鹿にした様な発言をする、(ルプスレギナ)の脳天にチョップを落としたボクは悪くない。

 

「でも確かに この方の顔立ちは凛々しいですから、」

「ユリ姉様が惹かれるのも、不思議じゃないですわ。」

違うの、だから違うの!

ナーベラルもソリュシャンも、何を言ってるの?!

この方はモモンガ様…至高の御方の御友人なのよ!

そんな感情を持つなんて、不敬でしょ!

と、兎に角、起こして玉座の間に お連れしないと!

 

「あ…あの…まろん…様?」

そういう訳で、寝ている まろん様に、静かに声を掛けてみる。

 

「ん…んうん~?」

その声に反応して目を覚まし、目を開ける まろん様。

…!

その瞳は、燃える様な…いや、鮮血の如しな紅!

 

「ふぁ…あ?あー、俺、寝落ちしてた?」

まだ完全に目を覚ましていないのか、寝ぼけ眼で…恐らくはモモンガ様を探しているのか、周囲を見渡し、

「………あ?」

「え?」

ボクと目が合い…漸くボク達に気付いた様だ。

 

「まろん様ですね?

モモンガ様が お待ちしております。

玉座の間に案内しまs…」

 

ガシッ…

 

「え?」

「…………………………………。」

そして言い終わる前に まろん様はボクの右手を両手で握り締めると、ボクの顔をじっと見つめ、

「結婚して下さい。」

…………………………………………。

え?

えっえぇえ゙―――――――――っ??!

 




 
2話連続で『えーっ?!』で終わり。
次話から、話が動きます?
感想、評価よろしくです。
  


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異形の心理

 
原作 パロ オマージュ、どんどん入れていきます。
 


「まーろーんーサーンー!?」

  

どんっ!

 

「ぁ…どん…」

 

◆モモンガside◆

「アナタは何を、しているのですか?」

「いや、普通、目を覚ました時に いきなり目の前に美人さんが居たら、プロポーズするでしょ?…ってモモンガさん、近い、近いよ?」

…しませんよ!どんな普通ですか?!

プレアデスが まろんサンを玉座の間に連れてきた。…は、良いんだ。

しかし、彼方で何かが有ったのか、ユリの様子が かなり変。

どんな風に変だと言えば、

「ユリ姉~、今、どんな気持ちっスか?

初対面のイケメンに いきなりプロポーズされて、今どんな気持ちっスか~?w」

「は…ぅ…ゎ…」

顔を真っ赤にして頭から湯気を出しての、はわわ状態なのだ。

何が有ったのか聞いてみれば、ユリを弄っているルプスレギナの台詞そのまんまな展開が起きたらしい。

…そんな訳で現在、まろんサンを問い詰め中。

 

「ユリ姉様は綺麗ですから、初対面の殿方に いきなり求婚されても、別に可笑しな話ではないですわ。」

「お似合いです。」

「美男美女カップルぅ~。」

「…よくある話。」

いや、その考え方も可笑しいと思うぞ?

 

「…で、モモンガさん?

ユリさんとの挙式の話は後として、現状(これ)って一体、何なの?」

…で、もうユリとの結婚は確定事項みたいな言い方で、この異常事態…ゲームが終わってなかったりログアウト出来なかったり運営に連絡繋がらなかったりNPCが勝手に動いてる事について、まろんサンが聞いてくる。

 

「それが、俺にも分からないんですよ。」

 

 

◆モモンガside・了◆

 

≫≫≫

 

◆アルベドside◆

まろん殿。

モモンガ様、並びに至高の御方々の御友人(フレンド)…らしい。

見た目は人型(ヒューマン)だが、人間種と見るには違和感が。

恐らくはスキルかアイテムで、種族を認識させない様にしているのだろう。

そしてモモンガ様は あの方に、ユリの件で尋問?しているが、本当に怒っている気配は感じない。 壁ドンは羨ましい!

その会話は まるで、ペロロンチーノ様や るし☆ふぁー様達との やり取りを思い出させる。

そう、モモンガ様も楽しんでおられる…そんな感じです。

聞けば、今回もモモンガ様が言われる()()の前までは、共に語らっていたとか。

その途中で寝落ち…モモンガ様との会話の最中に眠りこけてしまうとは、何て無礼な輩だと思いましたが、『そんな事は言うな。多忙な中、それこそ寝る間も惜しんで、訪ねてきてくれたのだぞ。』の言葉に、考え方を改め。

言われてみれば、その通りです。

ナザリックを去っていった()()()と比べてみても、遥かに尊敬に値します。

その後の私の謝罪に、モモンガ様は特に罰する事無く、許して下さりました。

私は死断を覚悟していたのに…嗚呼、何と慈悲深き御方!

 

「失礼します。…おや?そちらの方は?」

そんな中、玉座の間に入ってきたのは第7階層守護者、デミウルゴス。

自身の管理する階層の異変調査を終え、報告に来たのね。

そう…もう そんな時間。

あれから、モモンガ様の言われた2時間が経とうとしているのね。

 

「失礼します、モモンガ様!…って?」

「し、知らないヒトが居ますぅ?」

「な、何者でありんすか?」

そしてデミウルゴスに続き、別の守護者達も次々と集まってきた。

 

「ああ、このヒトは まろんサンと言って、私の友人でな…」

「「そしてユリ姉様の婚約者です。」」

「おっおぉ~、何!で!すと!」

「ソレハ、目出度イ事ダ。」

「おめでとうございます。…わん。」

「ち、ちちち、違います!

大体、初対面の第一声が『結婚して下さい』って、有り得ないじゃないですか?

普通は、お友達とか恋人からスタートとかじゃ、ありませんか?!」

モモンガ様、そしてナーベラル達による まろん殿の紹介で、また顔を真っ赤にするユリ。

…って、その否定の仕方、まろん殿自体を拒否してる訳では無い? 実は満更でもない? 脈アリ?

へぇ?…成る程、そういう事ね。

 

≫≫≫

「…その様な訳で、幸いにも…と、言うべきですか?

第7階層でも、異常らしき事態は確認出来ませんでした。」

各階層・領域守護者が再度集まり、モモンガ様の御命令…各自が管理しているエリアに、何らかの異変の有無の調査の報告が始まった。

結果からすれば、ナザリック地下大墳墓内部には、異変は確認出来なかった。

…しかし、

「既にモモンガ様には外に出た時、直ぐに《伝言(メッセージ)》で御知らせしておりますが…」

ナザリックの外側の調査に出たセバスから、驚くべき言葉が。

曰く、ナザリックの周囲を囲んでいた毒沼は消え去り、数㌔に渡り草原が広がっているとの事。

 

「…その先に、人間達が築いた集落を確認しましたが、まだ接触は しておりません。」

「…成る程な。

………………………………………。」

一通りの報告を聞き、何やら考え込むモモンガ様。

 

「まろんサンは、どう思います?」

そして、この報告の場に同席していた まろん殿にも、意見を聞いてきた。

 

「…そうだな。モモンガさんも既に薄々気付いてると思うが…

…失礼!」

 

ボォッ!

 

「「「「!!?」」」」

そう言いながら、左手を天井に掲げると、その手から魔法か?…巨大な炎を出す まろん殿。

よく見れば、5本の指先から それぞれ、炎の球を出している。

黄金の鎧から見て戦士系職と思っていたけど、モモンガ様と同じ、魔法詠唱者(マジック・キャスター)

この突然な攻撃的行動に、この場の者の全てが まろん殿に対して戦闘の構えを取るが、

「大丈夫だ!」

「「「「「「…?!」」」」」」

それはモモンガ様の一喝で、鎮まってしまう。

 

「成る程…ね…」

 

シュゥ…

 

数秒間、左手に纏わる炎を確認、納得するかの様に見つめた後に それを消し、

「すまない。驚かせたな。

…モモンガさん、どうやら俺達はユグドラシルの能力(キャラクター)その儘で、ナザリック毎、現実(リアル)とは別の、所謂異世界(リアル)に転移したと思って良いだろう。」

「やはり…そうなりますか…。

もしかして…とは思っていましたが、もう、本当に認めるしかないんですね。

ならば とりあえず、この地が如何なる地なのか、知る…調べる必要が有ります。」

「それだけじゃない。

ゲーム(ユグドラシル)の仕様が、どの位この世界で適用、再現されているかの、細かい確認も。」

「そうですね。それから…」

まろん殿が話す仮説に、モモンガ様も同じ事を考えていたのか、それに同調。

その後も一部、この2人にしか解らない単語を織り混ぜながら色々と話されていたが、私達がナザリック毎、別世界に転移した…それは、理解出来ました。

そして これから、我々が この地にて、どの様に動いていくかの話し合いが為された。

さしあたりナザリック地下大墳墓は、外壁を土と草でコーティング、上空はモモンガ様自らが幻術を施して丘を偽装。

更に違和感の無い様に、周囲にも同規模の丘を多数 作り、その姿を隠す事に。

 

「今の私達に最も必要なのは、この世界に関する、ありとあらゆる情報だ。」

そしてセバスが見付けた集落に、隠密活動に特化したシモベを送り込み、情報の収集。

これは主に、兵力・戦力を含む文化・生活の水準(レベル)の調査ですね。

 

≫≫≫

「いやいやいや、タダ飯食らいとかヒモとかは、嫌だから。

何でも用事、言ってくれよ。」

そして まろん殿。

御自身も所属ギルドのメンバーに向けて《伝言(メッセージ)》を送ってみたが、この地に来ていないのか、或いは範囲外なのか繋がらずらしい。

行く当ても無く…と言ってモモンガ様の御友人という事もあり、外に放る事が出来る訳も無く。

とりあえずは食客としてナザリックに腰を据えて貰う事に。

当人は何もしないのは申し訳無いと、雑用でも何でもこなすと…『俺、一応は家事スキル持ちだぜ』とか言っておられるが、そんな事を頼める筈も無い。

ただ、御方々に代わり、モモンガ様の傍に居て…御友人として普段の話し相手になって貰えたら、それで善いのです。

それは私達…今の私では、決して務まらない役目なのですから。

いえ…それも違う。

私達は どう足掻いても、御方の代わりには成り得ない。

ならば! 御方達とは別の方面、同志や友人とは違う立ち位置で、モモンガ様を支えれば善いのです!

そう!例えばモモンガ様の恋人とか愛人とか情婦とか妻とか嫁とか妻とか妃とか妻とか奥様とか妻とか!

ええ!元より()()()()な上、既に私は、モモンガ様に生の胸を揉み解された身、十分にアリだわ!

ぅふっふっふ!ど~うだシャルティア!…ついでにアウラ!

モモンガ様の正妻レース、少なく見積もっても私が10000歩は、リードしてるわよぉ?!

 

 

◆アルベドside・了◆

 

≫≫≫

 

◆モモンガside◆

カルネ村。

転移初日に、ナザリックの外に調査に出たセバスが、見つけた開拓村だ。

この世界を知る足掛かりとして、先ずはフウマやハンゾウ等の隠密・諜報活動に特化した、『ニンジャ』型のシモベ数体を村に潜らせ、様子を探らせていた。

 

「この村…と言いますか、このナザリック地下大墳墓周辺は、リ・エスティーゼ王国なる国の領地の様です。

そして この村の、生活水準ですが…」

それから数日。

今は そのシモベからの報告を、資料として纏めたデミウルゴスが読み上げているが、どうやら この世界の文化レベルは、所謂 王道な中世RPGの世界の其れらしい。

村は基本的には自給自足。

そして その獲れた作物と、村の近くの森林で取れる薬草…一応、高級品らしい…を特産品として、エ・ランテルという都市に卸し、その際に不足物資を仕入れる事で、生計を立てているらしい。

また、一番知りたかった情報…戦力的なレベルは、この村には『護り手』の様な存在が居ない為、まだ未知数…しかし、文化レベルからして、決して高くないと思われる…とか。

 

「ならば、次は そのエ・ランテルとやらに、シモベを忍ばせ、情報を集めるか…って、えぇっ?!」

そう言いながら、遠視のアイテム、遠隔視の鏡(ミラー・オブ・リモート・ビューイング)で村の様子を窺っていた時に事は起きた。

平和な田舎の風景…に、突如、武装した集団が襲撃してきたのだ。

そして其れは山賊等の、野盗の類じゃない。

揃いの立派な装飾の鎧は、明らかに国か或いは其れなりの組織に属している。

 

「奪うで無く犯すで無く、只、殺すだけですか…」  

「…………………………………。」

食糧等の略奪が目的で無く、本当に単なる殺戮が繰り広げられる場面。

それは現実(リアル)の、鈴木悟なら卒倒必至な光景だった。

この数日で分かった事だが、ゲームのキャラ…本当に この身がアンデッドとなった事が原因なのか、喜怒哀楽の感情の昂りは、直ぐに抑制される様になっていた。

だからこそ、この悲惨な光景も、客観的に観る事が出来ている。

 

「モモンガ様、如何いたしましょう?」

「…如何とは、どういい意味だ?」

同時に、異形種であるが故か、人間種に対する情も失せているのも自覚していた。

 

「助ける義理も義務も無い。

滅ぶなら それが運命で、それが彼等の寿命なのだろう。」

それ故に『救う』という考え、発想には至る事も無く。

 

「いや、モモンガさん!それは不味いだろ!?」

しかし、此処で まろんサンが、それに物申してきた。

 

「分かるぜ? あれを見ても、何も感じていないんだろ?

それは俺も、同じだから分かるさ。

…でも、気付いてないのかよ?

()()()()()()()()()()()()()()()()()って事を?!」

………………………!!?

 

「結果的に救えなかったら、それは それで仕方無いさ。

…でも、だからこそ、機械的、事務的でも何でも良い、今 動かなかったら…此処で彼等を見捨てたら、もう本当に戻れないぜ?

それでも良いのかよ?!」

「………………………………。」

アルベド達NPCの前だからか、まろんサンが意図的に()()を省いているのは理解出来た。

そして人間種に対する情の喪失…

それが身体だけで無く、精神さえも()()で無く異形の其れと化そうとしている…その意味に、漸く気付いた。

 

「俺は…」

  




 
アルベドさん、モモンガさんに きっちり魔改造されております。(笑)
 


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魔拳士まろん

 
原作キャラ登場?
 


◆モモンガside◆

「大丈夫だ。お前達も、あの映像を見ただろう?

あの剣の振りの()()、大したレベルでは無い。

不覚を取る筈が無い。」

「シ、シカシ、モモンガ様…!」

カルネ村の襲撃を見て、確かに最初は我関せずだった。

しかし その、何も感じなかった事をまろんサンに指摘され、自分が本当に人間を()めようとしていたのに気付く。

そして その現場に…村人達を助けに向かう事を決意するが、今度は それをシモベ達に止められた。

 

「仮に あの者共を救うとしても、モモンガ様自らが出向く必要は無いでありんす!」

「そうですよモモンガ様!

あんな連中、私がパパパって…」

「そ、そうですぅ!」

「Gefährlich!Sehr Gefährli~ch!」

ぐっはぁっ?!

シモベ達は、何故 俺が そういった行動に出ようとしたのかも理解の外だろう。

そして心配症というか、過保護過ぎ?

それからドイツ語はマジ止めろ!

 

「いや、これは、私が行くからこそ、意味が有るのだ。」

これは好い機会だ。

自分と現地人の強さを比べる…ね。

これを切っ掛けに、現地人との繋がりを持つのも、悪い話じゃないだろう。

それに、これ等をこのNPC達に任せたら、余計に混乱を招く気がするんだよな。

悪役ギルドなスタイルのAOG(ウチ)のNPCは、人間なんてゴミとか虫けらとしか見てないだろうからさ。

村人に余計な恐怖やトラウマ与えるのが、普通に頭に浮かぶよ。

 

「モモンガ様…どうあっても、その考えは…」

「曲げる心算は微塵も無い。

大丈夫だ。まろんサンも一緒だ。…ですよね?」

「そりゃあ、勿論♪」

俺の振りに、軽く笑いながら、まろんサンは応える。

 

「あれだけ焚き付けて、『行ってら~♡』ってハンカチ振りながら見送るなんて、有り得ないでしょ?」

「「「「「………………っ!」」」」」

しかし、それでも納得の往かない顔なデミウルゴス他数名。

俺が外に出ようとする事。

そして それに まろんサンが同行するのに、不満そうな顔だ。

 

「で、ですが…

それならば、1人でもシモベを連れt

「ならば、私が共に、参りましょう!」

「「「「????!」」」」

そう言って間に入ってきたのは、黒の全身鎧を着込んだ…女。

 

「アルベド…」

そう、フル装備に換装したアルベドが、自身も同行を名乗り出てきた。

此方から何も言う前のフル装備…行く気満々だな。

 

「…デミウルゴス?

それにシャルティア達もだけど、貴方達は そんなに まろん殿が信用出来ないのかしら?

いえ…それは、理解出来なくもないわ。

私達からすれば数日前、あの()()と共に、姿を見せた…謂わばポッと出な人物なのですから。」

「「「「………………………。」」」」

「しかし、モモンガ様は まろん殿を、御自身の、そして御方達の御友人として紹介された。

そんな方を信用しないと言うのは、不敬でなくて?」

「………………………っ!

分かりました、認めますよ。

しかし、モモンガ様の身に、何か有った時は…!」

「大丈夫。何も起きないわ。

その為に、私が行くのだから。」

「…………………ッ!

そ、そうですか…」

この一連の やり取り、最後は仮面(フルフェイス)越しのアルベドの迫力に、デミウルゴス達が折れた感じだ。

 

「ふむ。決まったな。

それでは頼むぞ、アルベド。」

「は、はぁぃい~っ!モモンガ様♡」

………………………………………。

何だかアルベドの鎧の隙間から、ピンク色のオーラが漏れている気がするが、気のせいだと思いたい。

 

「…何だかモモンガさんの体全身から一瞬、緑のオーラが放出された気がするが、気のせいだよな?」

 

 

◆モモンガside・了◆

 

≫≫≫

 

◆アルベドside◆

 

ガィィンッ…

 

「「「…??!」」」

「ふぅ~、間一髪セーフ…って、感じだな?」

カルネ村には既に、転移魔法《(ゲート)》の転移先登録(マーキング)が為されている。

その(ゲート)を潜り、私達の視界に最初に映ったのは2人の人間…恐らくは姉妹と思われる村人が、襲撃者に斬られようとした場面だった。

妹を庇う様に抱く姉の背を、鎧を着た男が手にした剣で斬ろうとした時、まろん殿が その間に入り、その黄金の鎧を纏った腕で剣を受け止める。

…が、

「み、見えなかった?!」

私には、その まろん殿の動きが全く見えなかった。

それ程の超スピードだった。

 

「な…何だ、お前は?!」

いきなり現れた まろん殿に、賊の男は驚いた表情で剣を構えるが、

 

ボゥ…

 

「サラマンダー・クロウーォッ!!」

 

斬!

 

「ぎゃぁぁっ?!」

…………………?!!!

次の瞬間、まろん殿は自身の右手…正確には その5本の指先に《火炎球(ファイヤー・ボール)》を、しかも完全無詠唱で発動させ、その燃える爪での斬撃を賊に浴びせる。

そして この一撃。敵の命を終わらせるには、十分だった。

 

「は、速い!それに、今のは…」

「ふっ…アルベドは魔剣士という(クラス)は知っているな?」

「モモンガ様?」

魔剣士…それは戦士職の派生で、自身の武器に、魔力属性を付加(チャージ)して戦闘をこなす(クラス)

それは勿論、知っている。

 

「まろんサンの(クラス)は、その武闘家版…()、なのだよ。」

魔拳士…!それは、初めて知りました。 

 

「そして!あの まろんサンの黄金色の鎧!

あれはアポイタカラやヒヒイロカネ等の超々希少鉱石を糸状に加工して、編み上げた物!

だから実はアレは正確には鎧で無く、()と言う方が正しい。

硬質且つ見た目以上に柔軟、伸縮性に富んだ作りで、武闘家としての動きを阻害する事も無い。

そもそも先に言った様に、まろんサンは武闘家だから、鎧は装備出来ないしな!」

 

  

◆アルベドside・了◆

 

≫≫≫

 

◆まろんside◆

殺った…のか?

人を殺したってのに…いや、まさか あんな初歩技(サラマンダー・クロウ)で死ぬとは思わなかったし!

どれだけ弱いんだよ、この世界の人間?!

…じゃなくて! 人を殺したにも拘わらず、全然それに動じてない自分が恐ろしく感じる。

本当に人間・瑳峨久利が、異形・まろんになろうとしている?

 

ドサッ…

 

「……………………成程…な。」

そしてモモンガさんの前で、もう1人の賊が倒れ崩れる。

モモンガさん、心臓を握り潰したな?

そして俺同様、人殺しに動揺ていない自分に動揺している…って感じか?

 

「まろんサン…俺、本当にヤバイかも知れません。」

「それが自覚出来てるだけ、まだマシですよ。」

 

≫≫≫

「…中位アンデッド作成…デスナイト!」

その後、モモンガさんは俺達が殺った人間を媒体にして、下僕アンデッドを作り、

「デスナイト!この村を襲っている者共を蹴散らし、村人を守れ!」

賊の撃退を指示。

 

どどどど…!

 

すると このデスナイトx2、村の中央?に向かって走って行った。

 

「さて、危なかったな?怪我は無いな?」

「は…はい、助けてくれて、ありがとうございます!」

「ぁ…ありがとうございます!」

かなりショッキングな光景の連続だったと思うが、助けに来た俺達に きちんと礼を言う2人の少女。

それじゃ この第1、第2村人…村娘A・Bに何が有ったのか、聴いてみますか。

 

 

◆まろんside・了◆

 

≫≫≫

 

◆村娘Aside◆

ダメかと思った…

本当に もう、ダメかと思った…

何の前触れも無く、いきなり村を襲ってきた騎馬集団。

逃げ惑う中、父さん…母さんも…殺…され…それでも泣き叫ぶ(ネム)の手を引き必死に逃げるけど、大人の…男の人の足には敵わず、遂に追い付かれてしまう。

相手は剣を振り上げ、それを見た私は咄嗟にネムを庇う様に抱き締める。

無駄な抵抗なのは、解っていた。

どうせ私が殺された後、ネムも同じ結末を迎える事は、理解出来ていた。

 

それでも…!!

 

そう思っていた時に、後ろから聞こえたのは、金属が ぶつかり合う様な、甲高い音。

そして、

「ふぅ~、間一髪セーフ…って、感じだな?」

聞き慣れない、男の人の声。

 

「????????」

何が有ったのか、恐る恐る振り返ってみると、金色の鎧を着た男の人が、その腕で山賊?の剣を受け止めていた。

 

≫≫≫

「さて、危なかったな?怪我は無いな?」

「は…はい、助けてくれて、ありがとうございます!」

「ぁ…ありがとうございます!」

その後、私達を襲ってきた人達は逆に この人…そして その仲間の人に殺され、モンスターになって走って行った。

 

「…さて、分かってる限りで良いから、何が有ったかを話して貰えるか?」

そして、魔法使いの様な黒いローブに変な お面を被った人が、質問してきた。

…と言っても、私達からしても いきなり襲われたとしか、言い様が無く…

 

「まあ、そんな気は、してたな。

それでは直接、連中に聴きますか。」

「そうですね。」

「…………。」

金色鎧の人の言葉に、黒ローブの仮面の人、そして、黒い鎧の…胸元の形状からして、多分 女性の人が頷き、

「お前達は事態が収まる迄、この場から下手に動かない方が良いな。」

そう言って黒ローブの人が私達に防護魔法壁を…それだけで無く、ゴブリンを召喚、使役出来るという(アイテム)を…それも2つも!…譲ってくださり、この場を去って行ったのでした。

 

 

アインズ・ウール・ゴウンと名乗って…

 

 

◆村人娘Aside・了◆

 

≫≫≫

 

◆モモンガside◆

「wwwwwwwwwwwwwwwwww~!

モモンガさん、無い…無いでしょ?」

「ちょ…笑い過ぎじゃないですか?」 

「いや、何を勝手にギルド名、自分の名前にしてるんですか?

その仮面(しっとマスク)だけじゃ飽き足らず、本当に俺を(笑い)殺す気ですか?www」

だって仕方無いじゃないですか!?

『骸骨まんまで登場したら、余計にパニックになるぞ?』って言ったのは、まろんサンじゃないですか?

それで、顔を隠せるアイテムが、手持ちでコレしか無かったんですから!

それに、AOG(アインズ・ウール・ゴウン)を名乗ったのにも、きちんと考えが有るんですからね!

…そんな風に話しながら、村の中央広場みたいな場所に足を運んでみると、

「お金…おっ金ゅゃ~~~~~?!」

 

ドスッ!…ドスドスドスドスドスッ!

 

………………………………。

何?その断末魔?突っ込まないとダメ?

其処は文字通りに死屍累々な状況。

鎧の賊達は、2体のデスナイトに蹂躙され、屍の山が築かれていた。

俺は『蹴散らせ』と命令した…『殺せ』なんて一言も言ってないのに、この有り様だ。

どうやらデスナイトは、加減という言葉を知らなかった様だ。

 

「いや、デスナイトが無双するって、本当に雑魚過ぎだろ?

…って、モモンガさん? 皆殺し…全滅になる前に、止めないと。」

あ、そうでしたね。

最低1人は生かしておいて、色々と質さないとイケませんからね。

 

「其処までだ、デスナイトよ!」

『『………………!』』

 

ぴた…

 

「ヒッ…」

あと1秒、言うのが遅かったら、また首ちょんぱな死体が増える処だったな。

 

ざわ…ざゎ…

 

いきなり登場した俺達を見て、生き残りの村人や賊が ざわめくが無視。

とりあえず、腰を抜かして動けなくなった賊を縛り上げ、

「この村の代表者は居るか?」

「は、はい…私ですが…」

村長を探し出して、改めて この村に何が有ったのかを含め、この世界について、色々と尋ねてみる事に。

…尚、まろんサンの索敵系スキルで、この村に新たに約50の騎馬隊が近付いているのを確認しているが、それは今は敢えて黙っておく事にした。

 




 
①4話にして漸く、語りが入った まろんサン。
 
②アルベドはモモンガと まろんの…ユリへのプロポーズの件の…漫才の様な やり取りを見て、それを嘗てのギルメン同士の会話と重ね合わせ、まろんはギルメンと同格、即ち信頼出来る人物という認識になっています。
 
③村娘A…何処の将軍閣下でしょうか?w
 
④カルネ村でのデスナイト無双、『あの台詞(笑)』は必須でしょ?
 
⑤まろんの本名(リアル ネーム)瑳峨(さが)久利(ひさとし)
 
⑥次回、本格的に戦闘(バトル)回です(多分 )。
 


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どうやら まろんサンは税金から給料を貰ってる人が嫌いな様です。byモモンガ

 
今更ですが、まろんサンの容姿イメージは、黒サガ(聖闘士星矢:原作版)で お願いします。
 


◆アルベドside◆

あの後、私達は村長の自宅に。

モモンガ様は辺境住まいで世情に疎い魔法詠唱者(マジック・キャスター)

偶々に訪れた この村の侵略劇に、つい力を貸したという()()で、今回の経緯を、ついでに村に忍ばせているシモベでも調べきれなかった、この世界の情報を得る。

それが当面の目的だ。

 

「あの、ゴウン様…何か、飲み物は…」

「いや、気遣いは結構。

私は理由有って、人前で この仮面を外せないのでね。

それより村長殿。一体、何が有ったのだ?」

「それなのですが…」

AOG(アインズ・ウール・ゴウン)

モモンガ様は この村で、ギルドの銘を自分の名として名乗った。

私は その理由が思い浮かばないが、まろん殿は その苦笑している様子から、何やら心当たりが有るみたいだ。

私達シモベでは考えが及ばぬ程の、崇高な考えが有るのだろう。

だから私は、それについては何も聞かない。聞く必要も無い。

必要ならば…時が来たら その時は、モモンガ様自らが お話ししてくれるだろうから。

そして村長と対話したが、先程の小娘同様、襲撃者の具体的な心当たりは無いらしい。

只…揃いの装備だが、この地を治める王国兵の それでは無いらしく、この周辺には、これ程の統合力を持った野盗の話も聞いた事が無いと言う。

 

「mアインズ。あれだけ立派な装飾の鎧だ。

これは近隣国の兵と見るのが、妥当と思うが?」

「成る程…それならば…」

まろん殿の言葉に村長は、テーブルの上に、大きな地図を広げた。

 

 

◆アルベドside・了◆

 

≫≫≫

 

◆モモンガside◆

スレイン法国。

バハルス帝国。

これ等が、現在地のリ・エスティーゼ王国と隣接している国家だ。

カルネ村は、その帝国との国境側に位置しており、攻め込まれるとしたら、容易い場所と言っても良い。

…と、なると、今回の襲撃者は帝国兵と考えるのが自然か?

しかし、王国と帝国は、毎年の様に決められた時期・場所で、短期の合戦を行っているらしく、この時期、しかも こんな小さな村への侵攻は不自然だとか。

 

「ふむ…」

つまり、今回の襲撃は、単なる毎度の争いの延長じゃない?

帝国や法国という情報を得たのは大きいが、厄介事に足を踏み入れた感も否めない。

 

「…近いぜ?」

そんな風に考えている時、隣に座っていた まろんサンが小さく呟く。

 

バタン!

 

「失礼します村長!

この村に また、馬に乗った集団が近付いています!」

「な…!?」

村人(モブ)が勢い良く扉を開けて登場したのは、その直後だった。

 

「な?言ったろ?」

 

≫≫≫

「まだ、下等生物(ニンゲン)と関わるのですか?」

「…乗りかかった舟。折角 繋がりを持てた者達だ。

此処で無責任に『じゃ、サヨナラ』で済ませるのも、勿体無いと思わないか?」

…何だかアルベドの『人間』の発音に違和感がするが、今は無視。

村長を先頭に、村の男衆達と一緒に、村の正面門にて ()()()を待ち構え。

 

カパッカパッカパッカパッ…

 

暫くすると、報告通りな騎馬の一団が見えてきた。

先の奴等とは違う、揃いの装備…先頭は隊長格か?少しだけ鎧の装飾が増々…の集団だ。

 

「「「………!」」」

それを見た村人達の顔に、緊張感が走る。

 

「馬上より失礼。

私はリ・エスティーゼ王国 王国戦士長、ガゼフ・ストロノーフ。

この近隣を荒し回っているという帝国騎士を討伐する為、王の御命令を受け、村々を巡回している。」

「王国…戦士長?」

 

ざゎ…ざゎ…

 

そして王国戦士長を名乗る男の登場。

有名人なのか、村長をはじめ、村人達が何やら ごそごそ呟き始める。

 

「む?其方の者達は?」

そして戦士長とやらは、村長の隣に居た俺達に怪しい目を向ける。

…ですよねー。

奇妙な仮面の魔法詠唱者(マジック・キャスター)

黒い全身甲冑(フルアーマー)

そしてド派手な金ぴか鎧の紅眼な悪人顔!

怪しむなと言うのが間違っている!

 

「成る程。帝国騎士を討伐、ですか。

これは これは戦士長様、()()() ()()()()。」

「むむっ?!」

これに対して、悪人顔(まろんサン)が皮肉めいた一言を。

いやアンタ、何ガソリンぶち撒けてんの?!

 

≫≫≫

結論。この戦士長、凄く良い人。

あの後、この村で何が有ったのかを話すと…手口は話さず…このガゼフという男は馬から降りて、『本来ならば、我々が為すべき事を(以下略)』と、俺達に頭を下げて礼を言った。

その後、確認の意味で、先程のデスナイト無双から生き延びた帝国騎士?を縛り、放置していた中央広場に。

逃亡阻止の為の監視役の5体のデスナイト…新たに騎士の屍から3体追加で作った…に どん引きながらも、

「この者達…確かに この鎧は、帝国の騎士!」

…と、今回の襲撃者が、バハルス帝国の騎士だと確認。

しかし、その後が大変だった。

まろんサンの『俺達が居なかったら、この村はアンタ達が到着した頃には既に滅んでいた』『役人は経緯も重視されるが、評価されるのは結局 結果のみ』『あれ?でも それだと俺達が村を救った事で、結果的には任務達成か?w』等の毒言にも何の言い訳もせず、それを真摯に受け止めている。

 

「「「「「……………っ!」」」」」

後ろに控えている戦士達も、自分の上役が何も言い返さないからか、ずっと黙っている。

…と言うか、まろんサンの言葉が、あらゆる反論を想定、それを先に封鎖させる言い種なのだ。

 

「重ね重ね、申し訳無い。

ゴウン殿達の事は国王に報告して、相当の謝礼を…」

「要らないね。そんな無駄金が有るなら、この村の補填に当てるのが先だろ。」

「…まろんサン、もう良いでしょう。」

本当、もう止めたげて!

戦士長のHP(メンタル)は、もう0よ!

人間に情は確かに湧かなくなったが、それでも まろんサンの言い方には流石に同情してしまい、話を終わらせる。

 

「そして戦士長殿。まろんサンの言う通り、私達は報酬を目当てに行動した訳じゃない。

この村…そして あの帝国騎士が襲ったという近隣の村の復興を優先すべきです。」

「…本当に、申し訳無い…」

「戦士長!」

そして戦士長が改めて頭を下げようとした時、平の戦士が走り込んできた。

 

魔法詠唱者(マジック・キャスター)と思わしき集団が、この村を等間隔で包囲しています!」

「何っ!?」

はい。その新手も、私達は まろんサンのスキルで既に知ってました。

 

 

◆モモンガside・了◆

 

≫≫≫

 

◆まろんside◆

「確かにアレは、魔法詠唱者(マジック・キャスター)だな。」

村の櫓から遠眼鏡で見た其れは、如何にも…な法衣を着た集団だった。

 

「いや…それよりも…!」

モモンガさんも驚いているが、問題なのは そいつ等の後ろに控えている存在だ。

アレはユグドラシルの下級天使(モンスター)

 

「馬鹿な…アレは…?!」

そしてガゼフ・ストロノーフも、それを見て驚いているが…

「あれは帝国では無い…

スレイン法国の特殊部隊…陽光聖典!」

…だ、そうだ。

つまり この村は偶然にも同時期に、帝国と法国とやらから攻められた、と。

いや、そんな偶然は絶対とは言わないが、考えられないよな。

 

「それじゃ直接、聞いてみますか?」

 

≫≫≫

「さて、お前等が何者なのか、質問させて貰うぜ。

…お前の耳で無く、脳味噌に直接な!」

「ひっ?!」

俺達は再び、広場に移動。

 

su…

 

縛られた騎士…1番偉そうな奴の前に立つと、人差し指に混乱(コンフュージョン)、中指に魅了(チャーム)の魔法を展開し、

「幻夢虚朧拳!」

 

ビシッ…

 

それ等をブレンドした魔力を纏ったニ指を、この騎士のコメカミに掠める様に放つ。

 

「がっ…?!…あ…ぁあ………」

お、効いた効いた。

これにより、この騎士は催眠状態になり、此方の質問には知っている限り、正直に答えるだけの人形となった。

 

「な…それは、武技なのか?」

「「「ぶぎ??」」」

それを見た王国戦士が聞き慣れない単語を口にしたが、それは後で尋ねる事にしよう。

さあ、質問タイムだ。

 

 

Q.1:お前の所属している国は?

A:スレイン法国…です。

 

Q.2:何故、帝国騎士を装い、王国の村を襲った?

A:ガゼフ・ストロノーフ…リ・エスティーゼ王国 王国戦士長…ガゼフ・ストロノーフ暗殺の…為…

帝国騎士として略奪行為する事で、王国最強戦士ガゼフ・ストロノーフを誘き出し、それを陽光聖典が討つ…

 

Q.3:事前に最強戦力を消した上で、王国に攻め入る心算だったのか?

A:違う…ストロノーフさえ居なくなれば、王国はバハルス帝国の前に簡単に墜ちる。

王国さえ滅びれば…それで…良い…

…………………………………………。

…ぐふぉあっ!??

 

「「「……………??!」」」

何?!

幾つか質問している途中、この帝国…改め法国の騎士は、口だけじゃない、両の目、鼻、耳…七孔噴血して絶命した?!

コイツって確か、デスナイトに首ちょんされる寸前、モモンガさんの制止でギリ助かったヤツだよな。

結局 死亡かよ。

 

「ふむ…《解析(アナライズ)》。

……………………。…ふん、成る程な。

まろんサン、この者共 恐らくは全員、何らかの『呪』が施されています。」

それを見たモモンガさんが直ぐ、別の騎士に状態確認系の魔法を使って調べてみたら、そういう結果が。

成る程、口封じ…ね。

 

「アインズ様、まろん殿?」

アルベドが俺達にどうするかと尋ねてきたが、 

「「決まってるだろ!」」

俺とモモンガさんの声が、見事にハモる。

 

「…気に入らねぇ。

民から税を取るだけ搾って、全っ然 仕事してねえ役立たず公務員も気に入らねぇが、他人の看板(かお)で悪さする様なクズは、もっと気に入らねぇ!」

「え?そっち? ユグドラシルのモンスターを使役してるから、捕まえて その辺を尋問するとかじゃなくて?!」

どうやら考えいてた事は違っていたが、

「「兎に角 奴等は私達が始末する!」

         俺達が叩き潰す!」

どうやら考えている事は同じな様だ。

 

「待て!奴等の狙いは この私なのだろう?

それならば、これ以上 無関係な貴殿達の手を煩わせる訳には…」

…そんな訳で、俺達が討って出ようとした時、ガゼフ・ストロノーフが止めに入った。

 

「五月蝿え。」

「……………?!」

…が、俺は それを、最高に悪人顔な一言で一蹴。

 

「敵は魔法詠唱者(マジック・キャスター)です。

失礼だが戦士長殿。貴方達では剣の間合いに入る前に格好の的、蜂の巣にされるだけです。

奴等の相手は私達が。

貴方達は、村人の護衛を宜しく頼みます。」

そしてモモンガさんもソフトな?言い方で、戦士団に対して邪魔だから引っ込んでいる様に促す。

 

「ぐ…承知した…。」

ふん、素直で良ろしい。

それじゃ、行ってきますか。

 

 

◆まろんside・了◆

 

≫≫≫

 

◆アルベドside◆

私達が村の正門から出てみると、スレイン法国?とやらの魔法詠唱者(マジック・キャスター)の一団が、隊列を組んで待ち構えていた。

 

「まろんサン、奴等も『口封じの呪』を仕込まれている可能性が高い。

天使(モンスター)は構いませんが、人間は可能な限り生け捕り、殺さない方向でお願いします。」

「情報源は多い程に良いですからね。

了解ですよ。」

…そういう事ですか。

ならば私も、殺り過ぎない様にしないと…ですね。

 

『ん~? ガゼフ・ストロノーフは、出てこないのか?

逃~げ~た~の~か~?』

「「「?」」」

そうした中、敵の指揮官らしき人物が…アレは、マジック・アイテム?…遠方にも声が届く様な道具を使って此方に声を掛けてきた。

 

『いーや、彼等は戦る気だけは満々だったのだが、如何せん実力不足だから、退場して貰ったよ。』

それに対して、まろん殿も同じ様な器具を取り出して応える。

 

「大丈夫だ。殺さない様に、努力は…する!」

 

ダダッ…!

 

そしてアイテムを放り投げると、両手に雷を纏わせながら、まろん殿は敵に突進。

 

「ライトニング・ブロウ!」

 

ベキバシュィッ!…シュゥゥ…

 

「成る程。強さ(レベル)はユグドラシルと、変わらないみたいだな。」

前衛に位置していた天使に肉薄すると、左右の雷光の拳の連打を叩き込み、一瞬にして消滅させた。

 

「ふむ。倒された敵の消え方も、ユグドラシルと同じか?」

それをモモンガ様も、興味深く観察。

 

「な、何~~~~~~ぃい?!」

それを見た指揮官の男は、間抜け面で間抜けな声を上げる。

 

「あ、アイツだ!あの金色の鎧の男に、全ての天使を突撃させろ!」

「「「「「は…ハッ!」」」」」

しかし、直ぐに冷静になったか、手下達に指示を出す。

この場に召喚されていた、全ての天使が まろん殿に全方向から光の剣を構えて襲い掛かり、

「でぃやっ!」

 

バギッ!

 

悉く、魔力の宿った拳や脚で、迎撃されていく。

 

斬…!

 

「え…?」

えぇええ゙ーーーーーーーーーっ??!

し、しかし?背後に回り込んだ天使の光剣の一閃が まろん殿の首を両断、その首が宙に高く飛び上がったぁああ?!

 




 
主人公、死す?
次回、最終回???
 


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まろんの正体!


タイトルの『(仮)』、外しました。
 


◆アルベドside◆

えぇええ゙ーーーーーーーーーっ??!

ま、まろん殿が、首を斬られたあ?!

スレイン法国の魔法詠唱者(マジック・キャスター)が操る天使の一撃で、まろん殿の首が天に高く、高く舞う。

 

「く、くくく…っ!」

しかし、それを見たモモンガ様は、取り乱す素振りを見せず、余裕そうに笑っている。

 

「ふ、ふははははは! 不様だな!

多少、腕に覚えが有っても、やはり数には勝てないか?

そも、我等陽光聖典に、たった3人で立ち向かうのが間違ってるのだ、ヴァカめ!」

一方の敵の指揮官の男は、勝ち誇った様に高笑いを。

 

「さあ、次は彼方の2人だ!

1人は魔法詠唱者(マジック・キャスター)の様だから、注意を怠るなよ?」

「ちぃっ!」

そして次は此方に攻撃指示をしてきたので、モモンガ様を護るべく前に立ち、戦斧(バルディッシュ)を構え、迎え撃つ姿勢を。

あの程度のモンスター、如何に数が揃っていようが、所詮は私の敵じゃない。

………………………………。

()()()()()()()()()()

いや、可笑しい!?

まろん殿の戦闘力は今日 初めて、少し見ただけだが、少なくとも あの様な下級モンスターに不覚を取るレベルじゃない!

防御力的に考えても、あんなに簡単に首を落とされるなんて、不可解だ!

………………………………………??

()()()()()()()

 

「アルベドよ。漸く気付いたか?」

「モモンガ様?」

「くっくく…私は最初からネタバレしているから、驚く事は無いが、まろんサンの首…

高く跳ね上がり過ぎてないか?

そして、何時になったら落ちてくるのかな?」

そうだ。まろん殿の首は、一向に落ちてこない。

いや、それだけじゃない!

残された体。

あれだけ派手に首を斬られたにも拘わらず、血が噴き出ていない?

そして未だ倒れる事無くの仁王立ち!

 

「ふははははははっ!」

「!!?」

そうした中、上空から聞こえてきたのは、大きな笑い声。

 

「何?」

それを聞いた敵も上を見上げ、

「な…」

「馬鹿な…?」

「ヤツは…」

その視線の向こう…空の先には

「ふっ、首を飛ばした位で安心したか?」

凄く()い笑みを浮かべた まろん殿の首が、宙に浮いていた。

 

「「「「は…はぁぁぁあ??!」」」」

それを見て、下等生物共が間抜けな声を上げる。

 

「あ、あれは…まさか、まろん殿は…」

「ふっ、アルベドよ。その通り、まろんサンは…」

「バラ〇ラの実の、能力者…」

「いーや、違うからな!

確かに そうも見えなくもないけど、どうして そっちに持って行くかな?」

え?違うのですか?…という事は、もしかして…

 

スゥ…

 

そして まろん殿の首は、静かに本体(からだ)の元に降り、脇に抱えられる。

 

「「「な、ななな…?」」」

それを見て、スレインの者達は、驚きを隠せない。

そう、まろん殿の種族は、人間種で無く異形種…

 

「デュ…首無し騎士(デュラハン)?!」

「その通り、しかも まろんサンは その上位種、首無し騎士王(デュラハン・ロード)だ!」

そうか…。人間種では無い…異形種と思ってはいたが、まさか、不死属(アンデッド)だったとは。

しかもユリと同属の、首無し騎士(デュラハン)!…って、まさか?

 

「ふむ。互いに具体的に同属とは気付かなかったが、何かしら、感ずる物が有ったのだろう。」

確かに …いきなり最初の一言が求婚だったらしい まろん殿もだが、それを完全に拒否するでなく、然るべき()()を求めたユリ。

確かに いきなり結婚は唐突過ぎるが、交際ならば寧ろ満更で無い、好い仲になる事自体は吝かで無いかの様な反応…

もしかして これって…?

 

「うむ!正しく両方一目惚れ(ビンゴ)ってヤツだな!」

 

 

◆アルベドside・了◆

 

≫≫≫

 

◆モモンガside◆

「や、殺れ!あのアンデッドを殺せ!」

「はっ!《火炎球(ファイヤー・ボール)》」

「《金剛石弾(ダイヤ・ミサイル)》!」

「《風刃(ウインド・カッター)》!」

「《魔氷槍(アイス・ジャベリン)》!」

「《雷撃(ライトニング)》!」

敵指揮官は、正体を見せた まろんサンに対して総攻撃を指示。

ヤツの後ろに控えているのを除く、天使全てが突撃する同時、部下の魔法詠唱者(マジック・キャスター)も魔法での攻撃を集中させてきた。

…が、やはり、ユグドラシルの魔法か…

誰から教えて貰ったか、いや…誰が広めたか、調べる必要が有るな。

 

「…笑止!」

まろんサンの方は、全くの余裕。

上位の物理や魔法の無効スキルを備えているので、あの程度の攻撃では、何のダメージも受けていない。

 

ぽーぃ…

 

そして抱えていた頭を、再び天高く、勢い良く投げ上げた。

 

「あれは、ユリの?…いや、違う!?」

 

ヒュンッ!

 

アルベドが驚く中、まろんサンの体も、それを追う様に飛翔…からの、

ダイビング・頭スパイク!

 

バシィッ!…ドッゴォォン!!

 

そこから繰り出されたのは、自分の頭をバレーボールに見立てた様な叩き付け。

天使の群れの中心に急降下した(まろんサン)は その威力で一度に数体の敵を撃破。

一見、ユリの必殺技(フェバリット)に似てなくもないが、まろんサンの それは数多い持ち技の1つに過ぎなく、そしてユリの それよりも遥かに威力の有る技だ。

 

「…シュッ!」

 

バシッ!ガィン!ドガッ!

 

更には其処に()()も駆け付け、燃える拳や蹴りで残りの天使も片付けた。

 

「ば、馬鹿な?!あ、有り得ん!有り得ん有り得ん有り得ん有り得ん有り得ん有り得んん!?」

これを見た敵指揮官は、間抜け面を晒して『有り得ない』を連呼しているが、残念ながら これが現実だ。

 

「天使だ!ててて天使を追加召喚しろ!

同時に、魔法攻撃だ!」

指揮官が手下に命令を下しているが…まろんサンには そのレベルの天使では、どうする事も出来ないのを、理解出来てないのか?

 

ダッ…!

 

その まろんサンは、雑魚天使が再召喚されるのを、素直に待つ事も無く。

敵ボス目掛けて一直線。

 

「ひぃっ?!」

その迫力に圧されてか、一瞬 情けない顔、そして声を出すが、傍らに控えさせていた…あれは確か、中級の天使だったな?…を前に出して、

「ふ…ふははははははっ!

コイツは下級の天使とは、レベルが違うぞ!

殺ってしまえ!監視の権天使(プリンシパリティ・オブザベーション,)!!」

前衛に据えた天使に絶対の自信を持っての高笑い。

この天使は聖棍(メイス)を両手持ちで、突進してくる まろんサンを迎撃する構えを見せる。

 

ボゥ…

 

しかし まろんサンは突進を緩めず、己の右手に闇属性魔法…黒炎を宿らせ、

地獄爪殺法!」

 

斬!

 

「なな、何とおーーーーーーっ??!」

またも間抜けな雄叫びが、場に響き渡る。

天使は構えた武器を振る事無く、地獄の炎によって身を斬り裂かれ、そして焼き尽くされ、消滅した。

 

ベキッ!

 

「ぎゃんっ?!」

そして その儘、まろんサンは()()の左拳を、指揮官の顔面に叩き込む。

数㍍吹き飛ばされ、転がされた男は起き上がると怒りの形相で、

「オ、オノレェエ…!」

 

ゴソ…

 

まろんサンを睨みながら、懐から水晶の様な物を取り出した。

あれは…確か…

 

「ならば!最高位の天使を召喚する!」

やはり、そうか!

輝きからして、第10位階までの魔法なら封印可能な魔封じの水晶。

ユグドラシルのアイテムも、所持してる訳か…って、ヤバイ!

如何に まろんサンでも、最上位天使相手は流石に相性が少しだけ悪いぞ?!

 

 

◆モモンガside・了◆

 

≫≫≫

 

◆まろんside◆

「最高位天使…だと?」

「ふははははははっ!そうだ!

貴様には、コレを使う価値が有ると、判断させて貰った!」

顔面殴られ鼻血ぶーな男が、どや顔で言い放つが、種族(アンデッド)的に、上位天使は少しだけ分が悪い。

俺は戦闘時、敵が変身とかパワーアップとかしてるのを、素直に待つ思考は持っておらず、即座に潰そうと思ったが、

「ちぃっ!ウゼェ!」

下級天使が数・数・数で迫ってきて、

「さあ、神の化身たる姿をその眼に焼き付けるが良い!

そして死ね!」

結果的、天使召喚を許してしまう。

 

「出よ!威光の主天使(ドミニオン・オーソリティ)!!」

 

カッ!

 

水晶が眩い光を放つ。

そして この場に現れたのは、無数の白い翼の集合体に腕が生えたかの様な、謂わば異形の天使。…って?

 

「それが…最高位天使…だと?」

「そうだ!この神々しさに恐れ戦いたか?

しかし、今更 命乞いは赦さんぞ?

貴様を殺し!後ろの2人を殺し!

そしてガゼフ・ストロノーフを殺し!

ついでに村人共も皆殺しにしてやるわ!」

…いえ、自信満々に言ってるけど、別に恐れ戦いてなんていませんから。

最高位天使とか言うから、最大限に警戒していたのに、そんな()()()な天使を出されて拍子抜けしただけですから。

と、言うか、折角の上級アイテムに、そんな中途半端なの封じてるなよ。

何という無駄無駄無駄無駄無駄使い!

其処は熾天使(セラフ)だろ?

 

「最早、面倒!」

警戒の必要が無くなり、一気に片付ける事にした。

ついでにユグドラシルで無く、現実(リアル)でも()()()が使えるかどうかの実験だ。

ゲームでは即死技扱いだったが…

 

「殺れ!総攻撃だ!」

敵ボスの指令の下、雑魚天使が突撃してきて、最上位天使(笑)も魔法で攻撃。

しかし それも、少しだけ痛い程度。

鬼畜ギルマスの()()に比べたら、全然大した事も無く…あら?何か、涙が出てきた…

 

シュゥ…

 

そう思いながら、発動させるのは転移系魔法。

普通なら戦闘時は、逃亡・離脱以外に使う事は無いが、コレは魔拳士の(クラス)を得た、(多分)俺だけのオリジナル。

 

ゴゴゴゴ…

 

転移系魔力が宿った両掌を前に突き出すと、目の前の空間が歪み、横一直線に裂かれた。

 

「ひっ?!」「何だ?アレは?!」

スレインの魔法詠唱者(マジック・キャスター)達が、その裂けた奥に広がる黒い空間を見て慌てふためくが、もう遅い!

 

「さあ、異次元の彼方に飛んで逝け!

異次元転葬(アナザー・ディメイション)!!

 

ゴォォォオオオッ!

 

「ぎゃぁゎっ!?」「ヒェッ?!」

天使の集団は全て、この時空の狭間に吸い込まれた。

ついでに巻き添えで、敵兵も何人か消えていったが…この後 直ぐ、この時空の裂け目は何事も無かった様に静かに閉じられる。

とりあえず、この技も此方の世界で使えるって認識で良いかな?

 

「ひぃえええっ???!」

そして今日、最大最高な間抜け面&大声な敵ボス。

 

「もう、終わりか?

それとも、まだ何か有るか?」

「ま、待て!…っ下さい!

言い値で金を出す!…ますから!

どうか私達…いや、私の命だけは!」

ゆっくり歩み寄る俺に、この指揮官は完全に戦意喪失しての命乞い。

しかし、却下だ。

…………………………………………。

不味いな。本当に殺ろうと考えている。

さっき異次元に送り込んだヤツも そうだったが、如何に敵…此方を殺しにきた者とは言え、本当に殺しに躊躇が無くなっているか…

 

≫≫≫

「すまなかったな、モモンガさん。

何だか全部、持ってっちゃって…」

「いえ、気にしてませんよ。」

「お見事な戦い振りでした。」

…この後、指揮官含む残りの敵は、麻痺させた状態でナザリックに転送させた。

俺の正体を知ったヤツを、王国戦士団に引き渡したり、野放しにしたりは出来ないからな。

村で拘束していた偽帝国騎士は、1人だけ こっそり逃がして残りはガゼフ・ストロノーフに押し付けた。

どんなに役立たずでも、少しは働いてもらわないとな。

 

「さて…調べるべき事が、沢山 出てきましたね。」

「…ですね。」

因みに逃がしたスレイン騎士や、王国戦士達には、モモンガさんが各々に数体のシャドウ・デーモンを憑けていた。

これで王国王都や法国の情報収集や転移登録(マーキング)が可能になった。

 

 

 

 

 

『…んちゃ~ん?まろんちゃん、聞っこえてる~?

聞こえてるなら、返事してよ~?♪』

 

 

 

…って、《伝言(メッセージ)》?ギルマス?

 




 
結局、指揮官の名前、出なかった。(笑)
 
次回『尋問』(予定)
乞う御期待!
 


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尋問

 
ぶっちゃけ、読み飛ばしても殆んどOKな伏線回です。(笑)
 


◆まろんside◆

まさか、あのタイミングでギルマスから《伝言(メッセージ)》が来るとは思わなかった。

どうやら我等が【ヴァーリ・トゥード】も、ギルド拠点毎、この世界に転移してきた様だ。

しかも たった今、転移したばかりだとか。

つまり俺達とは、数日のズレが有った訳だ。

…で、向こうの転移先は、竜王国なる国。

地理的に、直ぐに合流出来る場所で無く、向こうは向こうで、 チュートリアルみたいな 騒動に巻き込まれているとか。

その後、ギルマスはモモンガさんとも話したりで、とりあえずは互いの周りを一段落させてから、落ち合いましょうって事になった。

それまで俺は、AOG(アインズ・ウール・ゴウン)に仮所属な形だ。

 

≫≫≫

そして、ナザリックに帰還。

 

「「「「「「「モモンガ様、まろん殿、お疲れ様で御座います。」」」」」」」

玉座の間にて、守護者とプレアデスの皆さんが出迎えてくれた。

其処でモモンガさんが、一連の報告を。

守護者達も、最初の村の中の様子は遠視のアイテムで見ていたらしいが、その後の村の外の戦闘。

アレは連中と対峙した瞬間、空の上から()()()()を感じたので、モモンガさんが即座に認識疎外のスキルを発動させて、外部からの観察を遮断。

そのお陰で、ナザリックの皆さんも、俺無双は観る事が出来なかったそうだ。…ちょっと残念。

 

「確かに 相手は取るに足らぬ雑魚でしたが、それでも まろん殿の強さ…それは正しく、モモンガ様はじめ、至高の御方の友を名乗るに相応しい凄まじさを感じさせました。

それは守護者統括の席に誓い、断言します。」

その戦闘内容を、アルベドが解説してくれたり。

 

「最後に言っておく事が有る。」

そして最後に、モモンガさんが重大発表。

今後、モモンガさんは自らを正式に、アインズ・ウール・ゴウンを名乗ると宣言した。

この世界、もしかしたら別のルートで来ているかもしれないギルメンに、自分の存在を知らしめる為だとか。

『それならモモンガで良いじゃん?』て聞いてみたら、『いや、同名な人が沢山居て、俺だと分からないかもしれないじゃないですか?その点、アインズ・ウール・ゴウンの様な長い名前なら、大丈夫でしょ?』…だとか。

『絶対にモモンガで大丈夫ですよ。そんなネーミング・センス(以下略)』…とか言わなかった俺は、まだ人間(ヒト)としての(こころ)を持っていると思いたい。

因みに俺だけは、変わらず『モモンガ』と呼んで欲しいとか。

 

≫≫≫

「「「「「「ひぃえええっ?!」」」」」」

…さて、現在 俺達は、ナザリックの一室に居る。

拉致った陽光聖典の連中から、色々と情報を吐いて貰う為の尋問スタートだ。

しっとマスクを外したモモンガさんやコキュートス、蛙魔モードのデミウルゴス他、人間要素ゼロな異形100パーなシモベの皆さんを見て、完全に畏縮している。

 

「コレは掃除するメイドには、何か特別な手当が必要だな。」

余りにビビり過ぎた結果、派手に汚れた床を見て、モモンガさんが ぽつり。

いや、モモンガさんや、()()女性(メイドさん)に片付けさせるのはセクハラですよ?可哀想ですよ?下手すりゃパワハラですよ?

あのペン太郎&覆面ズに やらせりゃ良いでしょう。

 

「ぅゎらばっ!?」 

「あらあら?ま~たまた死んじゃったのぉ?」

そして陽光聖典だが、やはり囚われた時を想定しているのか、数回 質問に応えると死ぬ様な『呪い』の類が仕込まれている様だ。

具体的には3回目の質問に応じると、七孔噴血して死亡する仕様。

それに気付いたのは、3人目が死んだ時。

 

「ひぃぃいいっ?!」

「い、いやだぁあっ!?」

「うわぁああああ!」

「煩いですよ? 黙りたまえ!

「「「「「「………??!」」」」」」

そしてコレは当人達は知らなかった様だが、流石に5人連続で同じ様に死なれたら、自分も同じ仕込みが施されているのに気付くよな。

イコール、自分も同じ運命を辿るのを悟ったのだろう。

阿鼻叫喚となるが、それをデミウルゴスがスキルを使って、無理矢理に静かにさせる。

心配しなくても、お前等 皆、後でアンデッドだよ。

 

「参りましたね。如何に消耗品とは云え、少し勿体無いですね。」

「確かにな。」

「ならば!パンドラズ・アクターよ!」

「Ja!」

モモンガさんの呼び掛けに、軍服を着た埴輪顔…ドッペルゲンガーが一歩前に出た。

 

「此奴等の()()()()()() ()()()()()()()。」

「承知・致し・ま・した!」

一瞬 緑に光った?モモンガさんの言葉に、このパンドラズ・アクターはオーバーアクションで応え、 ぅゎあ… ドッペル能力で身体を変化させる。

 

「「タブラさん?」

     ・スマラグディナ様?」

その姿に俺とアルベドの声が被る。

蛸頭の異形(ブレイン・イーター)AOG(アインズ・ウール・ゴウン)のメンバーの1人、タブラさんに変化したパンドラズ・アクターは、次の尋問対象の眉間…脳味噌に触指(ゆび)を突き刺した。

成る程。()()()()()() ()()とは、そういう事か。

 

「~~~~~~~????!」 

「それでは…次は何を問い質しましょうか? ん~ァインズ様?」

 

≫≫≫

結果からすれば、『直接 脳味噌に質問する』は、正解だった。

これは『3回 質問に答えたら死ぬ』の縛りの外だったらしく、色々…本当に色々と、興味深い情報を得る事が出来た。

同時にスレイン法国と王国王都に放ったシャドウ・デーモンからの情報を照らし合わせる事により、より確実な情報となる。

 

武技

タレント

冒険者

ワーカー

ぷれいやー

従属神

揺り返し

六大神

八欲王

十三英雄

神人

竜王

…etc

 

色々と、気になる単語(ワード)も出てきたり。

そして、王国と法国の歴史。

特に、法国は大昔に転移してたユグドラシルのプレイヤーが築き上げた?と云う伝承。

更には そのプレイヤーは、100年周期で この世界に転移してきていると云う事。

他にも色々と…中には興味深いでは済まされない様な、爆弾染みた情報も有ったりしたが。

 

 

◆まろんside・了◆

 

≫≫≫

 

◆モモンガside◆

「まさか、スルシャーナ(スルちゃん)が大昔にスレインに来てたなんてな~?」

陽光聖典からの情報だと、法国は600年前に この世界に転移してきた…今は六大神と呼ばれる6人のプレイヤーか作った国だとか。

その内の1人…スルちゃん(スルシャーナ)は俺と同じ死の支配者(オーバーロード)で、まろんサンとは少しばかり、交流が有ったそうだ。

 

「…って、『不死属(アンデッド)で集まって親交深めようぜ!』って集会、モモンガさん来なかったじゃないですか?

誘い着てたでしょ?」

「アレは俺も行きたかったんですけど、丁度『1500人大侵攻』とタイミングが重なって、そっち優先しなきゃいけなかったんですよ!ギルマス的に!!

知ってたでしょ?」

「まぁね。」

「ハァ…で、因みに その集会、どんなメンバーだったんです?」

「俺、スルちゃん、アークさん、ベルディア、キールさん、ウィズさん、キン骨マン、ホラーマン、ブルック、里香ちゃん、ザベル、レイレイちゃん、ダイ・アモン、ルイゼンバーン、八雲君、ドクロノキシ、ゾンビマン、スミス、バルトスさん、モカちゃん…えーと、それから…」

「錚々たるメンバーですね?!」

「だから、モモンガさんも来れば良かったのに。」

「ぅう…」

…と、話が逸れた。

いや、何なの?スレイン法国??

傾城傾国?ロンギヌス?

何? 判ってるだけで何ヶ、世界級(ワールド)アイテム所有してる訳?

 

「しかも、そのドラゴンチャイナ着てるのがバ〇アって、どんな罰ゲームだ?

着る方も、それ見せられる方も?」

いや、其処じゃない!

…後、"隊長"とか"番外席次"とかな強キャラが居るらしいが、コイツ等の"強い"は当てにならない。

…が、一応は用心しておこう。

この世の中、どんなイレギュラーが居るか、分からないからな!

 

「それから、スルちゃん神様扱いなのに、『アンデッド殺すべし!』って変だと思いませんか?」

確かに。スルシャーナを神と崇めるにも拘わらず、その実 完全人間至上主義で(人間()に非ず)、亜人や異形を殲滅、人間だけの世界を謳うのは、矛盾してるな。

何れにしても、その様なスタイルな国家なら、我々との衝突は避けられないだろう。

まろんサンも、他者を名乗っての暴虐が、気に入ってないみたいだし。

 

≫≫≫

…で、次にリ・エスティーゼ王国。

このナザリック地下大墳墓も、今は この国の領地に在るのだが、この国が また最悪過ぎた。

貴族と呼ばれる連中が、現在 戦敵国であるバハルス帝国と内通してたり、国内でも、ヤ〇ザかマフィアの様な犯罪組織と裏で繋がってたり。

そして、国のトップな筈の国王は、それに対して、何ら対策を打てていない…少なくとも、末端関係者の捕縛すら出来ていない無能。

尤も、これは捕まえたとしても、息の掛かった貴族が秘密裏に逃がしていると考えるのが自然だろうが。

ついでに この国の貴族は絵に書いた様な『貴族EREEEEE!』を、傍若無人に実践…具体例を挙げれば、平民の若い娘さんを無理矢理に手籠めにして、飽きたらポイ捨てしてるとか。

更に ついでに、今回の帝国騎士(偽)の襲撃で対応が後手後手だったのも、貴族と、そして王族の派閥・覇権争いが根底の、足の引っ張り合いが原因だったとか。

手段はアレだが、法国が世界の癌として、滅ぼそうとしたのは理解出来た。

 

「ん。王族貴族、滅ぼそう。」

いや、ステイステイ!

まろんサン、以前から政治家とか公務員とか、『使えねえ』ってボロクソにディスってたからな~。

一般人から散々税金むしり盗るだけで、全然一般人に役に立ってない人種は嫌いなんでしょうねぇ?

 

 

◆モモンガside・了◆

 

≫≫≫

 

◆まろんside◆

「これは実際に、自分の目で見てみたいですね。」

「そうですね。」

次に話したのは、『武技』『タレント』について。

これは、ユグドラシルには無い、この世界特有のスキルの様な物。

武技は修行・鍛練で身に付ける、戦闘技術らしいが、タレントの方が曲者だ。

此方は一部の人間が、生来から持ち合わせる物で、その能力も千差万別。

中には、戦闘等と無関係な能力も有ったりとか。

実は陽光聖典の指揮官も、『召喚したモンスターを、少しだけパワーアップさせる』というタレントを持っていたそうだ。

元が弱過ぎて、全く気付かなかったがな。

 

「危険です!」

「考えをお改め下さい!」

それで そのタレントの話だが、城塞都市エ・ランテルに、結構 有名なタレント持ちが住んでいるらしい。

モモンガさんと一緒に、実際に この目で見てみたいとか行ってみると言ったら、守護者の皆さんが止める止める。

本当、過保護か?

 

≫≫≫

「アルベド。私達が留守の間、ナザリックを頼んだぞ。」

「はい♡モモンガ様♡お任せを♡」

「ぁ…はい。」

…その後、説得により、シモベを1人同行させるのを条件に、俺とモモンガさんのエ・ランテル入りを認めてもらった。

これは、思った以上にハードル低い条件で少し安心。

 

「まろん殿。モモンガ様を、モモンガ様をよろしくお願いします。」

「了解。」

…………………………………………。

 

≫≫≫

「あのさ、モモンガさん?」

「はい?」

一通りの話し合いが終わった後、モモンガさんと2人で話す事にした。

大した事は無い話だが、確認しておきたかった事が有ったのだ。

 

「前にタブラさんから聞いてたんだけど、アルベドって、ビッチ設定だった筈だけど?

でも全然、そんな感じ無いよね?…て言うか、」

「んがぅう??」

あ、何かテンパったぞ?この骨。

 

「やはりか?! さてはアルベドの設定、書き換えたな?

何となくは分かるが、どんな風に変更した!?

さあ吐け!この骨々ロック!」

「ひぇええ~っ?!」

さあ、尋問の時間だ。www

 




 
今回 出たアンデッドの皆さんの名前、全部 元ネタが分かった人は偉い(笑)。
 
次回『3人の冒険者(予定)』
乞う御期待!
 


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モモンとナーベとマカロン

 



「全く…物事、限度というのが有るだろう…」

「「お、仰有る通りに御座います…」」

 

◆まろんside◆

現在の状況を有りの儘を話すと、俺、モモンガさん、そしてプレアデスの1人、ナーベラル、他数名は今、エ・ランテルの冒険者組合、その一室にて、組合長に説教されている。…全員正座して。

俺達3人は情報収集の手段の1つに冒険者として、エ・ランテルにて活動する事にしたのだが、組合の受付で その登録をした早々、新人(ルーキー)の洗礼?…みたいな感じに先輩冒険者さんが手を…正確には俺達の通る前に足を出して、如何にも「通さねえよw」みたいな嫌がらせ。

連れらしい2人も、ニヤニヤして様子を見ている。

しかし、相手が悪かった!

 

ガシィッ!

 

「痛ってーーーーーーーっ?!」

先頭の、黒の全身鎧なモモンガさんは何の躊躇も無く、その足を思いっきり踏みつけて通り過ぎようとしたもんだから、

「何しやがんだ、銅級(カッパー)!?」

「舐めてんのか?!」

はい、乱闘勃発。

しかし、相手が悪かった!(2回目)

最初に ちょっかいを掛けてきたモブ①は、モモンガさんが頭を鷲掴み(アイアンクロー)で持ち上げたと思えば、豪快に床に叩き落とし、それを見て殴り掛かってきたモブ②は、俺がジャーマンで投げ飛ばし、

「て、テメェ!」

それを見て、ナイフを抜いて襲ってきたモブ③の前にナーベラルが出てきて、カウンターのグーパンチ!

…から、裏拳x1、首相撲→チャランポx多、そして、

 

キーン!

 

あ…ぁぁぁ…

うゎぁ…そして、前蹴りx1…

お、お前は何という、恐ろしい技を…

殺り過ぎだよぉ!?

 

『(」゚O゚L)………………?!』

ほら、周りの男衆、皆 顔を青くしてるぞ!

 

「ちょっとぉ!アンタ、何してくれてんのよぉ??!」

「はひ?」

そして其処に、別の冒険者な お姉さんが涙目で俺に詰め寄り、

「な、何の騒ぎだね?」

更にはヒゲの おっさんが、駆け付けてきた。

 

≫≫≫

「全く…物事、限度というのが有るだろう…」

「「お、仰有る通りに御座います…」」

そして、今現在に至る。

このヒゲの おっさんこそ、エ・ランテル冒険者組合の長、プルトン・アインザックさんで、騒ぎを起こした俺達に、説教している訳だ。

事の顛末を話し、原因はバカx3に有るのを理解した上で、それでも殺り過ぎと、俺達を窘める組合長。

 

「ぅ…何で私も…」

説教された中には、俺達に絡んできたモブは勿論だが、最後に俺に詰めてきた女の人も。

俺に因縁付けてるのを見られて、当事者の1人と思われたみたいだな。

 

≫≫≫

「やれやれ、でしたね。」

その後、俺達3人と女冒険者…ブリタさんは解放された。

因みに原因を作ったバカ①②③は、まだ組合長から怒られている。

これは、単に切っ掛けだけで無く、あの場で刃物(ナイフ)を出したのが、完全にアウトだったらしい。ざまあw

…さて、このブリタさんだが、何故 俺に絡んできたかと言えば、俺が投げ飛ばしたモブ②が、彼女が座っていたテーブル席に直撃!

そのテーブルに置いていた、ポーションが壊れてしまったらしい。

ポーション如きで?…と最初は思ったが、どうやら この世界ではポーションは高級品と即座に推察。

 

「仕方無いな。ならば、これで勘弁して貰えないだろうか。」

 

ス…

 

ここでモモンガさんが、手持ちのポーション(赤)を差し出して、話を収めた。

 

「あ…うん…はい…」

普通(あお)じゃない色のポーションに、少し戸惑うブリタさんだが、最後は納得してくれた感じだった。

 

≫≫≫

「やれやれ、初日から散々だったな。」

「いきなり問題児認定ですね。」

この日は街の拠点に決めたボロ宿に戻り、明日以降の打ち合わせ。

…と、言っても、さしあたっては組合の依頼掲示板に貼られた仕事(クエスト)をこなすだけだがな。

 

「…と、言っても、今回の(ペナルティ)として、3日間は仕事、受け付けて貰えませんけどね!」

…よし。あのモブ①②③、今度会ったら もう1回〆る。

 

 

◆まろんside・了◆

 

≫≫≫

 

◆モモンガside◆

仮面の魔法詠唱者(マジック・キャスター)アインズ・ウール・ゴウンと金色鎧の男まろんの存在は、既に王国戦士を通じて、国王や貴族…ついでにスレイン法国には、それなりに伝わっているだろう。

だからこそ、俺達はエ・ランテルで活動するに当たり、その身を偽る事に。

俺は、魔法で創った漆黒の装備に身を包んだ戦士()()()

まろんサンは黄金闘衣を脱ぎ、旅人の服…とデザインが同じな超防具『旅人の服DX』を着て、武闘家()()()()を名乗る。

そして、俺達と同行する事となったナーベラル・ガンマもメイド服から軽装スタイルで魔法詠唱者(マジック・キャスター)()()()と名乗る事に。

何故 彼女が選ばれたかと言うと、戦士(オレ)武闘家(まろんサン)と既に前衛が2人も揃っているので、先ずは同じ前衛職のユリが、候補から外された。 まろんサンがorzったw

そして僧侶(クレリック)(クラス)を持つルプスレギナは既に、カルネ村の護衛兼監視の任務を与えている。

そんな訳で、後衛…魔法職を持つナーベラルの出番となったのだ。

 

≫≫≫

さて、3日後。

罰が解け、晴れて冒険者デビュー!…と意気揚々に組合に仕事を求めて顔を出すと、

「あ、モモンさん!」

受付の女性が、声を掛けてきた。

 

「指名…ですか?」

話を聞けば、俺達御指名の、依頼が届いているとか。

いや、可笑しくない?

俺達、つい3日前に冒険者登録した銅級(ぺーぺー)だよ?

何の実積処か、無名だよ?

 

「この前の立ち回りが、もう評判になったとか?」

これをまろんサン…マカロンが冷静に分析。

 

「で、何の実積も無い、ルーキーを雇おうなんて、何処の酔狂な御人ですか?」

「そ、それが…」

「「!!?」」

その名前を聞き、俺とマカロンは、兎に角 吃驚した。

 

 

◆モモンガside・了◆

 

≫≫≫

 

◆まろんside◆

「ンフィーレア・バレアレです。よろしく お願いします。」

「…モモンです。」

俺達のチームを指名依頼したのは、まさかの有名人だった。

ンフィーレア・バレアレ。

事前調査で、街で一番と評判の薬師。

そして、『如何なるマジック・アイテムをも使用出来るタレント持ち』として、要注意(マーク)していた人物。

彼が名乗った瞬間、ナーベが斬り付けようとしたのを、

 

ごんっ!

 

xきゃんっ?!」

「早まった真似は するな!」

彼女の頭に拳骨を炸裂させる事で、モモンが止める。

…って、そうじゃなくて、ヤバいな。

やっぱりナザリックのシモベは、他者の命なんか、どうとも思ってない。

それ以前、白昼 大勢の人前で、平気で殺りにイケるのが大問題だ。

今回ラッキーだったのは、ンフィーレア少年に その殺意とかを全く悟られなかった事だ。

 

「す…すいません…モモンンさm…ん…」

未だ、モモン呼びに馴染めないナーベが、頭を抑えながら泣きそうな顔で謝る。

 

「それで、ンフィーレアさん。何故…私達なのですか?」

 

≫≫≫

「さ、流石はモモンg…さ…んです!

まさか、この展開、ここまで見越していたとは!」

「は…はい…」

ナーベが目を輝かせて、モモンに話す。

いや、本当に偶然だろ?

ンフィーレアの依頼内容は、あのカルネ村…の近くの森林で採れる、薬草採集のアシストと、その道中の護衛。

まあ、銅級(カッパー)相応な仕事だ。

それで、何故に俺達を指名したかと言えば…

 

 

3日前の夜、1人の お客様がウチの店に、薬の鑑定に来られました。

 ↓

その薬とは、今まで見た事も無い、赤いポーションでした。

 ↓

鑑定結果…超々高品質!

 ↓

「これ、どーしたんですか?

何処で、誰から貰ったんですか??!」

「ひぇっ?!バ…バレアレさん、近い、近いです?!

これは、今日の昼間…」

 

 

…で、それで、俺達の事を知ったらしい。

 

「ふっ、その通りだ、ナーベよ!

普通、弁償の品とは云えど、あの様な知らない…怪しい色の藥、易々と使用する筈も無い。

ならば、どうする?…そう、知識有る専門家に尋ねてみるのが最適解だ!

そして彼女は私の狙い通り、この街 最高の薬師に鑑定を求めた。」

「…其処で、その…あの薬師は、ポーションを手にした経緯。

つまり、我々の事を知り…

さ、流石はモモンさんです!

全てを計算しての、行動だったのですね!」

「あ…ぅん、その通りなのだよ!」

嘘つけ!全部 無計画、偶然の結果オーライだろうが!

 

「因みに…モモンさん達の事は、あの薬で興味を持っただけじゃなく、新人さんなら、安く雇えるかな~と。

例のケンk…騒動からして、強さも信用出来そうですしね。」

ん。正直なのは、好感持てるよ。

 

「それじゃ、出発しますか。」

 

≫≫≫

また、カルネ村に行く事になるとはね。

ンフィーレアが荷馬車を駆り、俺達は歩き。

街から村は、街道沿いに進めば良いが、何時 脇からモンスターが襲ってくるかの注意は怠れない。

…って!

 

「モモン!ナーベ!」

「む!」「む?」「はい?」

ンフィーレアは まだ遠くて見えないみたいだが、少し先、道の直ぐ側で、モンスターの集団と戦っている冒険者チームが。

別に、苦戦している訳でも無いのだが…

 

「通り道だし、無視する訳にも往くまい!

ナーベ、お前はンフィーレアさんの傍に!

マカロン、行くぞ!」

「了解!」 

 




 
次回『冒険者達』(予定)
 


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笑えば良いと思うよ byモモン

 
原作キャラ、続々登場
 


◆モモンガside◆

「すいません。余計な世話でしたね。」

「いや、とんでもない!助かりましたよ。」

「ありがとうございます。」

「感謝するのである。」

エ・ランテルからカルネ村へ向かう、薬師の護衛の仕事の途中、その道沿いでモンスターと戦っている冒険者チームと遭遇した。

彼等からすれば、それが仕事なので勝手に手を出すのは不味いかも知れない。

…が、その場のモンスターを彼等に任せて、自分達は素通りするのは もっと違うと思い、まろんサン…マカロンと一緒に参戦。

護衛対象(ンフィーレア)そっちのけで駆け込むのも問題な気もするが、この儘 進んでいたら、あのモンスター共から此方にも襲い掛かってきてくれるから、事前行動という事にして欲しい。

そして戦闘は彼等自身、そんなに苦戦していた訳じゃないが、其処に俺達が加わった事で、あっさりと勝利する事が出来た。

その後、このチームに勝手に戦闘参加した事を詫びるが、彼等から逆に お礼の言葉を言われた。

………………………………………。 

 

 

『ごめんね~♡ 余計な真似だったかな~?』

『いえ、そんな事 無いですよ!』

『純粋に感謝しますよ。ありがとうございます。』

 

 

 

……………………………………。

 

「今、懐かしいとか思ってるだろ?

因みに俺は、思っている。」

此処で まろんサンが悪戯っぽい笑みを浮かべて、話し掛けてきた。

確かに懐かしい。

俺と…俺達と まろんサンが所属していたギルド、【ヴァーリ・トゥード】との出逢いも、戦闘の助太刀だったからなあ。

あの日、俺達AOG(アインズ・ウール・ゴウン)は何時もの様に、異形種狩り()()をしていた。

その時 其処に乱入してきたのが まろんサン達ヴァーリ・トゥードだった。

見た目は まろんサンを含め、全員が人型(ヒューマン)だったから、最初は てっきり、(あちらさん)の助っ人かと思っていた。

しかし彼等が攻撃を仕掛けたのは、俺達が相手にしていた連中。

ヴァーリ・トゥードは、その名の如く、本当に何でもアリなギルド。

メンバーも人間種から異形種まで、多種多様。

彼等は俺達を手助けをしてくれた訳では無く、最初から今回のプレイヤーを標的として探していたとか。

連中に狩られた、異形種ギルメンの敵討ちとして…ね。

これが縁で、ヴァーリ・トゥードの皆さんとは互いにフレンド登録したんだよな。閑話休題。

 

 

ザク…

 

倒したモンスターの耳をナイフで切り取ったりの作業をする、チーム『漆黒の剣』の面々。

これがモンスター討伐の証となり、その数により、組合から報酬を貰えるとか。

倒したモンスターの体内から、クリスタルが出たり、アイテムをドロップしたりは、しないんだな。

また この世界について少し、知る事が出来たよ。

 

「モモンさん達は、耳を取らないんですか?」

チーム最年少に見える少年が尋ねるが、

「いえ、我々が手を出さずとも、これ等のモンスターは、アナタ達に倒されていた。

何だか横取りみたいな感じがするので、今回は遠慮しておきますよ。」

「そ、そうですか?」

俺の返しに、少年は『其処まで考える必要は無いのに…』な顔をする。

 

「…………………。

マーレの逆パターンか…」

「え?」

「いや、何でもないよ。」

まろんサン…今、何か言った?

 

「モモンさーん、マカロンさーん!」

そうしている内に、後方からナーベ、そして今回の俺達の依頼主であるンフィーレアが追い付いてきた。

 

「仲間の方ですか?」

「はい。私達の仲間と、今回の依頼主さんですよ。」

 

≫≫≫

「惚れました!一目惚れです!お付き合いして下さい!」

「黙れゾウリムシ。初対面の異性に対する最初の一言に、その様な言葉を放つ無恥・非常識な下郎に、女が靡くとでも思っていr…ぁ…ち、違います、違うのです、マカロンさん!

けけけ、決して そういう意味では…」

「………………………orz」

その後、漆黒の剣のメンバーの1人、如何にも少し軽薄そうな青年が、ナーベを一目見ると開口一番、オーバーアクションで口説きに掛かるが、それに対するナーベラルの痛烈なカウンターが、彼だけで無く…彼以上に まろんサンに突き刺さった。

 

「だ、大丈夫です! マカロンさんの場合はユリ姉も一目惚れでしたから! アリです! 普通にセーフです!」

両膝両掌を地面に着け項垂れている まろんサンに対して、必死に取り繕うとするナーベラル。

 

「どうしてくれるのだ、この尺取り虫が!

貴様の お陰で、マカロンさんがorzってしまわれたじゃないか!?」

「ちょ…それ、俺のせい?!」

ん。確かに直接 地雷を踏んだのはナーベラルだが、その地雷を仕組んだのは、彼…と言って良いかな?

 

≫≫≫

「ほ、報告は受けております!

も…モモン様と お呼びすれば良ろしいでしょうか?」

「ふっ…、私は『様』で呼ばれる程、偉くないが?」

その後 漆黒の剣の皆さんとは別れ、キャンプで一晩明かした翌日の昼前、俺達はカルネ村に到着。

少し前に訪れた時とは違い、村周囲全体に それなりに堅固な柵が張られていて、正面門には武装したゴブリンの集団が出迎えてきた。

 

「そ…それでは、モモン…~さんで?」

「ああ…それで構わない。」

これ等は以前 この村を救済した時、1人の村娘に渡したアイテムで召喚された物だな。

有効活用している様で何よりだ。

 

「モモンさ~ん、カルネ村に、ようこそっス~♪」

「ようこそカルネ村へ。

アナタが まろんサンの…」

そして、この村の警護の任を与えているルプスレギナと、この前の村娘Aも やってきた。

 

「ああ。まろんの兄の、マカロンだ。よろしく。」

ンフィーレアの依頼でカルネ村に向かうと聞き、俺達は事前に仮面の魔法詠唱者(マジック・キャスター)アインズ・ウール・ゴウンの知り合い…マカロンは まろんサンの双子の兄という()()を作り、それを《伝言(メッセージ)》でルプスレギナに伝えていた。

ゴブリン達も俺がナザリックの支配者云々は知らず、村の恩人の友人として接している。

因みにゴブリン達は、自分達を召喚した娘を主としており、元のアイテムの持ち主である俺との関係は、既に無い。

そして村に入った俺達は、空き家に荷物を降ろし、少し休憩した後、目的である村の側の森…トブの大森林に薬草採取に向かう事に。

 

 

◆モモンガside・了◆

 

≫≫≫

 

◆まろんside◆

このヘタレ!

仮の拠点となる空き家に荷物を降ろした後、食事等、少しの休憩。

ンフィーレアは村娘A…エンリと2人で彼女の家に向かったので、俺とルプスレギナは どんな話をするのか興味が湧き(下衆顔)、ナーベラルに《兎の耳(ラビッツ・イヤー)》で2人の会話を盗聴もらい、オウム返しみたいに復唱実況させたのだが、その結果が、

このヘタレっ!!(2回目)…だ。

とりあえず このンフィーレアが、凄い分かり易いw

しかし それ以上に、エンリが超級に鈍いwww

てゆーか これ当人以外、村人全員知ってるだろ。

ンフィーレア君や。折角2人っきりってのに、テンパって挙動ってじゃ、ダメダメじゃないの。

悪いが、エンリはマジ何も気付いてないぞ?

もっとグイグイと、見せてみろ。

『結婚しよう』位、スパッと言え。スパッと。

 

「自分を基準にしないでくださいね?」

「ん~、思春期っスね~♪

よーし、此処は お姉さんが一肌脱いで、くっつけちゃうっスか?」

「いや、余計な真似は するな。

アレは下手に手を出さず、遠くから成り行きを黙って見守るのが、一番美味しいパターンだ。」

「(≧∀≦)ゞ 了解(らじゃ)っス!」

…………………。

コイツに任せたら、散々と引っ掻き回して混沌(カオス)って修羅場って、全部ぶっ壊れる光景しか見えないんだよな?

 

≫≫≫

「森の賢王…ですか?」

休憩も終え、トブの大森林に。

そのカルネ村側の地域(エリア)は、"森の賢王"なる強力なモンスターの縄張りで、コイツが居るから他のモンスターが入り込まない、その お陰で村がモンスターに襲われる事も無い…らしい。

 

「だから、仮に森の賢王と遭遇しても、追い払うだけで絶対に殺したりしないで下さい。」

「「努力しましょう。」

    しよう。」

薬草採取の際、ンフィーレアから そう言われた。

普通なら、直ぐに逃げるのを推す程な強力なモンスターなのだが、俺達なら殺りかねないだとか。

漆黒の剣と別れた後、村に着く前に もう1回モンスターとの戦闘となり、その時 無双したのを見て、そう思ったらしい。

 

「ボソ…しかし、中級雑魚を沢山 殺するよりも、大物1匹倒した方が、冒険者として箔が付きますよね?」

モモンガさんがボソッと呟く。

それは否定しないが、その賢王とやらの縄張りも、かなり広い範囲だから そう都合良く、簡単に遭遇する訳…?!

 

「モモン!ンフィーレアさん!

何か、デカいのが近付いてきている!」

まじ? 件の森の賢王とやらか どうかは分からないが、兎に角1体、デカブツが森の奥側から此方に凄いスピードで近付いてきているのを感じた。

自分の縄張りに入ってきた侵入者を、排除しに来たか?

 

「…ならば!」

 

ダッ…

 

「「「モモン!」

      さん?!」

      さぁ…ん?」

それを聞いて、モモンガさんが俺が指差した先、森の奥にダッシュ。

…殺しちゃダメだよ?

 

 

 

 

≫≫≫

「えーと…コイツの種族は、ジャンガリアンハムスター…で、良いのかな?」

「それは殿にも聞かれたで御座るよ~。」

暫くして、モモンガさんが1匹の大きな獣を連れて、戻ってきた。

蛇の様な鱗に被われた長い尻尾…そして特大な体のサイズを除けば、それは どう見てもハムスターだった。

モモンガさんは勿論だが、この魔獣も傷を負ってない処を見ると、精神系の魔法かスキルか…それか殺気全開か何かで野生の本能に働きかけ、戦意喪失させたか?

 

「す、凄い!此れ程迄の魔獣を従わせるとは!」

それを見て、ンフィーレアが驚いているが、其れ程迄なのか?

確かに、野良のオーガなんかよりかは かなり強そうだが…

 

「ナーベ…お前は あの魔獣、どう思う?」

「力は判りませんが、あの瞳には力強い意思を感じますね。」

あ、はい…そ、そうですか…

 

「拙者、殿に忠義を誓ったで御座るよ。

殿に着いていくで御座る!」

「え?それじゃあ、村は…」

巨大ハムスターがモモンガさんを主として、着いていく発言に、ンフィーレアが村の心配をするが、其処はモモンガさんが心配無用と説明。

前回のスレイン法国の襲撃で、脅威はモンスターだけでは無いと自覚した村人達は、ゴブリン指導の下に、自衛の訓練をしている。

今は まだ実戦足るレベルでは無いが、森の賢王というモンスター任せで無く、自身の手で村を守ろうとする気構えが芽生えたのは大きいと。

そして何よりカルネ村には今、()()()()の遣いとしてルプスレギナが居る。

確かに少し?………少し、ポンコツ気味な部分も有るが、モモンガさんから与えられた任務は、着実に遂行するだろう。…多分。

 

≫≫≫

この後、森の賢王の目利き鼻利きで、高品質な薬草を大量に入手する事が出来、カルネ村に戻ったのだが…

「な、何という立派な魔獣だ!」

「強靭な四肢に鋭い眼光!」

「これが噂に聞く、森の賢王…!」

「凄ーい!凄い凄い凄ぉーおい!」

巨大ハムスターを見た、村人の反応が凄い。

 

「ふふん!♪」

その反応に、どや顔なハムスター。

 

「この世界の、『強そう』の感覚が解らない…」

俺も同意だよ。

サイズ以外は『強い系』じゃなくて、どちらかと言えば『癒し系』なんだけどな?

 

≫≫≫

「それじゃあンフィーレア、また来てよね。」

「ぅぅうぅん、また絶対にく、来りゅから!」

「モモンさんマカロンさんナーベさん、ンフィーレアを宜しくお願いします。」 

「任せて下さい。」

やるべき事も終え、エ・ランテルに戻る際、ンフィーレアがエンリに別れの挨拶を。

顔を赤くしてガッチガチ、噛み噛みな少年に、少女は微笑みかける。

 

wwwwwwwwwwww。

 

それを、彼女の妹を筆頭に、村人達は暖かい笑みを浮かべて…ん。完全に当人以外はバレテーラw

そんな緩んだ空気を背に、俺達はカルネ村を後にした。

 

「さあ殿!殿は某の背に乗るで御座るよ!

「…………………………。え?」

 

≫≫≫

「凄い魔獣だ…」

「並みの冒険者なら、一溜まりも無いぞ?」

「あの冒険者…何者だ?

認識証(プレート)こそ銅級(カッパー)だが、実力はミスリル…いや、アダマンタイトに匹敵するぞ?」

そしてエ・ランテルに到着。

森の賢王に乗ったモモンガさんを見て、街の住民は、驚きと尊敬の眼差しを送っている。

特に俺達は先日 冒険者デビューして、初仕事を終えたばかりな無名だから…しかもモモンの黒鎧が派手過ぎて、尚更 注目を浴びていた。

 

「モモン、気にするな。

この世界の人間と俺達とは感覚が違うんだ。

この魔獣は、強く勇ましい風貌だ。

ドラゴンかグリフォンを駆っているかの様に、堂々としてろ。」

「はい。凄く凛々しいです、モモンさん。」

「いや、無理!」

…だろうなーw

ナーベラルも真剣に尊敬な目で見てるが、どうみてもメリーゴーランドに乗ってるオッサンにしか見えない。

きっとモモンガさんも、同じ思いだろうww

絶対に『どんな罰ゲーム、羞恥プレイですか?!』…とか思ってるに違いない。

 

「すまないモモン…

俺は こういう時、どういう顔で どういう風に声を掛けたら良いかが、思い浮かばな…ぅぷぷw」

「笑えば良いんですよ!

寧ろ笑え!…というか もう、笑っているじゃないですか!?」

そんな会話をしながら、俺とナーベラルはンフィーレアの自宅に、モモンガさんは冒険者組合に。

この森の賢王を、使役魔獣として登録する為だ。

そうなると、名前を付けないといけなくなるが…

よし、ハムスケと名付けるに、ビール10本!

 

≫≫≫

「ただいま~。

あれ?お婆ちゃん、出掛けてるのかな?」

ンフィーレア自宅に到着。

1階は薬品店舗になっていて、荷馬車に沢山積んだ薬草等を創庫に降ろせば、依頼は完了。

報酬を貰えるのだが…

 

「マカロンさん!」

「ああ、分かっている。

ナーベ、お前はンフィーレアさんを守れ。」

「はい。」

「え?」

店内に漂う異様な…隠す素振りも感じさせない、馬鹿正直な殺気。

素人なンフィーレアは、何が起きてるか分からないだろうが、俺達は誤魔化せない。

依頼達成(ミッション コンプリート)の前に、最終厄介(ラスト イベント)来たか?

まさか この世界も、実はクソ運営が関与してるとかじゃないだろうな?

 

「…居るんだろ? 隠れてないで出てこい。」

「あら~?バレちゃってた~?♪

お兄さん、なかなかヤるじゃなぁい~?♪」

 

ス…

 

俺も負けずと殺気解放、目を向けた薬品棚の陰から出てきたのは、不気味な笑みを浮かべる、金髪の女だった。

 




 
①"漆黒の剣"の皆さん、死亡回避?
 
②事前に()()を作っていた為、ンフィーレアはアインズ=モモンと気付いていません。
 
次回予告(ネタバレ)
『(゚Д゚ ≡ ゚Д゚)ク〇〇〇〇〇〇ヌの ぽろりの会場は、此処で良かったですか?(予定)』
乞う御期待!
 


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Cの災難(笑)

 
御待たせしました?
 
 


◆モモンガside◆

「これは、どういう事ですか?」

 

冒険者組合で、森の賢王を使役魔獣ハムスケとして登録した後、まろんサン達と合流しようとンフィーレアの実家に向かう途中、彼の祖母を名乗る婆さんに呼び止められた。

少しの会話を…『孫が世話になった』『何と立派な魔獣ぢゃ!?』…等な会話の後、一緒にバレアレ家に向かう事に。

 

「やあ、モモン。お疲れ。」

「…これは、どういう事ですか?」

そして、冒頭の台詞に至る。

バレアレ家1階、薬品店舗のフロアで、まろんサン、ナーベラル、ンフィーレアが待っていたのだが、其処には更に もう2人。

 

「「……………………!???」」

1人は病人…いや、死人みたいに顔色の悪い、ハゲのオッサン。

そして もう1人は痴女…もとい、ビキニアーマーを着た若い金髪の女だ。

2人共に、何かに驚いたかの様に顔は引き攣らせた表情を固定された儘、体全身硬直している。

どうやら まろんサンの五感剥奪技により、触覚と味覚を封じられた様で、動けない喋れないな状態だ。

 

「……………………。」

「………♪」

「……………………………………。」

そんな中、まろんサンとナーベラルは普通に寛いでいて、ンフィーレアはリアクションに困った様な表情で、立ち尽くしている。

 

「これは、どういう事ですか?」

もう1回、同じ質問をした俺は、悪くないと思う。

 

「簡単に言えば、ンフィーレアさんを拉致りに来たみたいだったから…」

…だ、そうだ。

 

「と、兎に角、孫を救ってくれて、ありがとう…?」

ンフィーレア祖母、ディジー・バレアレが、疑問形で お礼の言葉を言い、

「…では、此奴等は衛兵を呼んで、」

「それは、ちょっと待った。」

この賊を王国兵に突き出すと言おうとした処を、まろんサンが その台詞を遮った。

 

「どうやら コイツ等は(この世界では)、かなりな大物の様だ。

クソ役人に引き渡した処で、扱いに困るだろうさ。

公にせず、コイツ等だけ密かに処分してりゃ、『良くできました、はなまる』、だよ。」

………………………。

相変わらず、口が お悪い。

 

「大物…じゃと…?」

「ああ。コッチの頭悪そうな女が此方は何も聞いてないのに、勝手にペラペラ喋ってな。

先ずンフィーレアさんを拐おうとしたのが、身代金目的で無く、彼のタレント能力目当てだ、そうだ。

かなり使い手が限られているマジック・アイテムを無理矢理に発動させて、この街に何か大事を起こそうとか何とか?」

「マカロン、KWSK。」

「…すまない。その辺りは喋り方ウザいし興味が無かったから、余り聞いてなかった。」

「申し訳御座いません。」

ナーベラル、お前もか!?

まあ、お前は まろんサン以上に他人に興味nothingだから、分かっていたけど!

 

「兎に角、そんな大層な企みを、其処等の雑魚が企んだりすると思うか?」

「それに、です…!」

 

ベリィイッッ!

 

「「「!??????」」」

えぇえーーーーーっ!???(精神鎮静)

ナーベラル、いきなり この女のビキニアーマーの(ブラ)、剥ぎ取った?!

そして俺の眼に飛び込んで来たのは正に大物!

細身な体とは裏腹に たわわに実った(推定E)…且つ、遊びまくってそうな顔にしては、先端は淡い桜色の…って!いや、違う!そうじゃ無くって!

ナーベラル!お前も何やってんの?!

お前も女だろ?

いくら『人間』と書いて『ゴミ』と読むような存在相手でも、せめて女としての情けとかは持てない?

 

「~~~~~~~~っ!!!!!?」

ほら、この女、目に涙を浮かべて、何か訴えそうな感じになってるじゃないか!

べ、別に『(*^ー゚)b ナイス!』とか『m(_ _)m ありがとうございます!』なんて、少ししか思ってないんだからな?!

 

「ンフィーレア!お前はアッチ向いてな!」

「は…はぃぃっ!」

因みに顔を真っ赤にしたンフィーレアは、祖母に強制的に回れ右させられている。

ついでに因みに まろんサンは、まるで動揺してない。

 

「見てください。この胸当てに戦利者賞(ハンティング トロフィー)の様に貼られた、冒険者認識証(プレート)を。」

そう言ってナーベラルが差し出された胸当て(ブラジャー)には、確かに鱗鎧(スケイル)の様に、認識証(プレート)が取り付けられている。

しかも その中には、ミスリル級やオリハルコン級の認識証(プレート)も混じっていた。

確かに この女、()()()()基準で考えたら、かなりな強者の様だ。

…となると、此方のハゲも、同等と見るべきなのか?

 

≫≫≫

「ひぃぃいっ!?」

「い、やぁあああっ?!」

…さて、まろんサンは『こんな奴等、王国兵に引き渡すのは無駄』とか言っていたが、放置する訳にも往かず。

結局は衛兵に突き出す()()をして、ナザリック地下大墳墓に持ち帰り。

現在は俺含み、異形の面々で取り囲んでいる。

 

「いや、俺は感謝してるぞ?

お陰で結構な額の追加報酬(ボーナス)、貰えたからな。」

「ぃひゃぁあつ?」

まろんサンも()()()()事で正体をバラし、その首を近付けて お礼の言葉?を言っている。

 

「さて、色々と質問に答えて頂きますよ。

あぁ、喋る必要は無いですから、御心配無く。

脳味噌から直接、情報を吸い出させて戴くだけですから。」

「「ひぇえっ!??」」

そして何時ぞやの様に、脳喰い(ブレイン・イーター)…タブラさんに変化したパンドラが、色々と聞き出す事に。 

結果…まろんサンが予想していた通り、この世界からすれば、結構な大物だった?

 

ハゲ…本名カジット・デイル・バダンテール

裏組織ズーラーノーンの幹部。

約5年前から、エ・ランテルの共同墓地の地下に、居拠(アジト)を構えていた。

 

おっぱい 女…本名クレマンティーヌ・ユゥキ・クィンティア

元スレイン法国特殊部隊・漆黒聖典所属。

法国の秘宝(マジック・アイテム)を盗んで出奔。

ズーラーノーンと繋がっており、同組織の幹部の1人。

 

 

「クソ役人が!何年も犯罪者の隠れ家に全然 気付かないなんて、いよいよ以て、マジ無能だな!」

まろんサンは、少し黙ってて!

そしてメインな入手情報だが、簡単に言えば盗んだ秘宝…叡者の額冠なるアイテムをンフィーレアに使わせて、墓地から無数の不死系怪物(アンデッド)を召喚。

その不死の軍勢でエ・ランテルを壊滅させて、"負"のエネルギーを大量に取り入れようとしていたらしい。

 

≫≫≫

「成る程。これは、好機(チャンス)ですね!」

 

キラーン!

 

誘拐犯(未遂)の計画を聞き、デミウルゴスの眼鏡が、そして その奥の宝石の瞳が、キラーンと光を放つ。

絶対に何か、悪い事を考えている顔だ。

 

「これは、アインズ様達の冒険者としての名声を、一気に押し上げるチャンスです。」

「何となくな想像は付くが、極力 無駄な人死には避けろよ?

屍の山の上で勝ち名乗るだけなら、どんな無能(バカ)でも出来るぞ?」

「ははは…これは、手厳しい。」

デミウルゴスの言葉に、まろんサンがケチ…とは違うか、注文を付けた。

 

「まあ、信じてるぜ?

オマエで無く、ウルベルトがオマエに託した『悪』…をな。」

「………………………。」

 

 

◆モモンガside・了◆

 

≫≫≫

 

◆まろんside◆

デミウルゴスの立案計画は間違い無く、ズーラーノーンの代わりに自分達がアンデッドを喚び出して街を襲わせ、それを(マカロン)達に退治させて冒険者としての評判を高める…っていうマッチポンプだろう。

マッチポンプ自体に文句は無いが、それで無関係な者まで被害を受けるのは、俺的には許容出来ない。

せいぜい、墓地の警備兵に多少のダメージを負わせる程度。

モンスターは墓地から外に出さずに終わらせる…これが合格ラインだな。

既に墓地内のアジトは判明してる…シモベ、マジ有能だな!…みたいだから、最後に此処を叩く脚本(シナリオ)で。

カジットの部下達が此処に潜んでいるらしいが、社会に害為すだけの裏組織(テロリスト)なんざ、幾ら死のうが一向に構わない。

だが、デミウルゴス。

(あく)』と『(ワル)』、『害悪』と『必要悪』を…ウルベルトが何故、自らを『悪』としたかを、アイツが掲げた、アイツが目指した『悪』を、見誤り、履き違えるなよ?

 

◆まろんside・了◆

 

≫≫≫

 

◆デミウルゴスside◆

まろん殿の仰有られた、ウルベルト・アレイン・オードル様の『悪』。

確かに私は、あの方より『悪で在れ』の存在意義の下に創られた。

しかし、今の私の『悪』が、我が創造主が望んだ『悪』なのか?…と謂われると、絶対たる断言は出来ない。

…いや、出来なくなってしまった。

まろん殿の言葉に、今まで疑問すらしなかった事に疑問し、迷いが生じたのだ。

冷酷残酷残虐卑劣非道。

それが間違っているとは思わないが、もっと根本、『悪とは何か?』…それから考え直す必要が、有るのかも知れませんね。

 

≫≫≫

「「「「~~~~~~っ!??」」」」

…さて、今は捕虜の証言に有った墓場の地下ですが、成る程成る程。

低級な魔法儀式を行うとするなら、中々に凝った造りですね。

あの人間の配下と思しき者達は、既に支配の呪言で行動を封じています。 

 

「「「「「~~~~~っ?!」」」」」

いや、そんな顔は止めて下さい。

心配しなくとも、アナタ達が計画していた、アンデッド大量召喚は、今から私が代わりに実行してさしあげますから。

全ては、アインズ様の為に。

そしてアナタ達も、アインズ様…冒険者モモン達が名声を得る為の糧となって、頂きますよ?

 

 

◆デミウルゴスside・了◆

 

 

▼▼▼

 

~エ・ランテル共同墓地~

 

◆モブ見張り兵士side◆

な、何なんだよ、アレは?

最近は何も無い、静かな夜だと思っていたのに、いきなりスケルトンやゾンビ…アンデッドが大群で現れた…だと?!

 

「衛兵駐屯地に報せろ!

救援が来るまで、何としても持ち堪えるんだ!」

「こんなのが街に入られたら、街は壊滅するぞ!」

「こ…こんなのは、初めてだぜ!…クソっ!」

塀を登り、越えようとするアンデッドを、上から叩き落とすの繰り返し。

しかし、それで倒せてる訳じゃないから、キリが無い。

落としても落としても、また壁をよじ登ってきやがる!

 

≫≫≫

「た、退避ーーーーーっ!!」

兎に角、此処を越えさせる訳には…の一心で、迫るアンデッドを押し退けている中、漸く兵士や冒険者達が、援軍として やって来た。 

「よし!これで勝てる!」…とか思っていたら、アンデッド共、互いの体を組体操みたいに重ねていき、1体の…超巨大な人型になりやがった?!

それを見て、隊長が撤退を指示。

それは、間違ってない判断だ。

助っ人として来たばかりの兵士や冒険者も、ソレを見て我先にと逃げ出していく。

当然 俺も逃げようとした中、全く動てじないヤツが居る。

冒険者だ。

1人は後衛風な軽装の女。

1人は派手な金色の鎧を纏った男。

そして、もう1人…

見るからに強力そうな魔獣の背に乗った、漆黒の全身鎧(フルプレート)の男だった…!

 




 
お気に入り100越えてました。
ありがとうございます。

クレマンティーヌのフルネームは、小説オリジナル。
 
≫≫≫
「ナーベさん何やってんですか、ナーベさん。…ありがとうございます! m(_ _)m 」…と思った方、感想、並びに高評価よろしくです。
  


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Black & Gold

【前回の あらすじ】
巨大アンデッドが現れた!
警備兵達は逃げ出した!
 


◆まろんside◆

「か、銅級(カッパー)

おい、悪い事は言わん!アンタ達も逃げろ!」

共同墓地に来た早々、俺達の認識証(プレート)を見た警備兵が逃げろと促すが、

「逃げる…だと? それでは私達が何の為に この場に来たか、分からんではないか。」

 

ザッ…

 

「はぁ?!」

「お、おい、聞いてんのか?!」

「あれは、並の化け物じゃないぞ!?」

モモンガさんは それを、ガン無視で前に進む。

 

「並の化け物じゃない…?

オマエ達螻蛄(ケラ)からすれば そうかも知れぬが、私達を同じ尺で計らないで貰おうか。」

認識証(いろ)だけで、人の実力を判断するなという事だ。」

「…で、御座るよ。」

「しゃ、喋った?…ぃゃ、じゃなくて おい、話聞けよっ!?」

そして それに俺達も続く。

 

『ガァァッ!』

「「ひぃぃえっ?!」」

そんな やり取りをしてる間も、超巨大合体スカルゾンビ…とでも命名すべきか。

そんな巨大アンデッドが、墓地の外壁を破壊して外に出ようとするが、

「ふんっ!」

 

ぶぅんっ!

 

それに対してモモンガさん…モモンが背負っていた大剣(グレート ソード)の1本を、敵に投擲。

 

どっすん…

 

それは見事に命中。

頭部に剣をぶち込まれたアンデッドは、後方に倒れ込む。

 

「どうせ、危険だからと正面扉は開けてくれないのだろ?

ならば上から行くぞ!マカロン!ナーベ!ハムスケ!」

「応!」

「はい!」

「承知で御座る!」

 

タタタタ…

 

唖然とした兵士の前を通り過ぎ、壁脇の外階段を駆け上がるモモンの後を追い、俺達も走る。

 

「我々は…伝説の始まりを見ているのかもな…」

「黒と、金の戦士…」

呆然な間抜け面を晒しているであろう、番兵達の呟きを背で受け止めながら。

 

 

 

≫≫≫ 

「でぇい!」

 

斬!

 

「哈っ!」

 

バキッ!

 

「《雷撃(ライトニング)》!」

 

カッ!

 

防壁の天辺から飛び降り、アンデッドの群れに飛び込んだ俺達は、迫る亡者を…さっきのモモンガさんの一撃で、合体アンデッドが またバラバラの個体に分離して、"数"で迫ってきているのを蹴散らしていく。

 

「行くぜ!」

  

バチ…バチ……シュタッ!

 

右脚に、雷撃属性の魔力を付加(チャージ)させて!…か~ら~のぉ、

稲妻キィーーーーーーックゥ!!

 

ドゴォン!

 

急降下の蹴り技!!

胸元直撃のスケルトンは この一撃で粉々に、更には その余波で、周囲に直径約5㍍のクレーターが出来上がり、その範囲内に居たアンデッドも全て吹き飛ばされ、再び物言わぬ屍となった。

しかし俺の攻撃は、それで終わらないい!

 

「…もう、番兵なんかも全部 逃げ出して、街の人間は居ないな?」

 

かぱ…

 

 

  

◆まろんside・了◆

 

≫≫≫

 

◆モモンガside◆

まろんサンが自分の頭を両手で持ち上げ、身体から首を取り外した。

まろんサンは首無し騎士王(デュラハン・ロード)だから、それは別に珍しくない。

 

「ひ、ひぇえ~っ!?く、首が、もげたで御座るよ~?!」

まあ、知らない者からすれば、ホラー案件に違いないだろうけどな!

これはユグドラシルでの戦闘時、まろんサンが本気を出す時の儀式(ルーティン)みたいな物だ。

曰く、『何だかパワーアップする気がする』だとか。

実際には、そんな事は無いけどな!

 

「一気に片付けてやるぜ!」

ガクブルとなったハムスケを無視して、肩の高さで浮遊している(まろんサン)が、大技宣言。

 

ス…

 

未だ帯電している足下に、まろんサンの頭が静かに降りる。

 

「吹き飛べっ!」

そして、まろんサン…だけで無く、俺達の無双の表現が相応しい攻めを見ても、恐怖と言う概念の無い、押し寄せるアンデッドの集団に狙いを定めると、紫電を纏う黄金の右脚を大きく振り上げ、

「ライトニング・タイガー・ショット!!」

 

ゴォオオオッ!!

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()!!

その際、脚に残っていた雷撃の魔力は全て頭部に移行(チャージ)され、雷電弾となった(まろんサン)は、その軌道に居るアンデッドを全て破壊しながら突き進む。

 

「「ええぇえ゙ーーーーーっ??!」」

まさかの己の頭を蹴り飛ばす攻撃に、大声を上げて驚くハムスケ、そしてナーベラル。

まあ、普通は驚くよな。

俺も まろんサンの今の技、初めて見た時は凄く驚いたし。

 

「あ…アレはマカロン殿は…自分は痛くないので御座るか?」

…知らん。

 

≫≫≫

「此処か…」

…先に行っておくが、アンデッドの大群を蹴散らしてたのは、まろんサンだけじゃないぞ?

俺やナーベラルも、きちんと仕事、していたからな!

そして墓地の最奥の霊廟に辿り着いた俺達は、ハゲと おっぱい 痴女から聞いた情報に従い、隠し階段から地下へと降りる。

この先が悪の秘密結社(笑)ズーラーノーンのアジトか。

尚、ナーベラルとハムスケは、外で待機だ。

   

「む?あ、あやしいやつ!なにものなのですかー、おまえたちはっ?」

「「…………………………。」」

その先の、『如何にも怪しい儀式します』って感じの部屋。

其処には、10人位かな? フード付きローブを着た人間達が、床に蹲っていた。

そして もう1人。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()が。

ご機嫌そうに尻尾を振り振りさせながら、何故か無感情な棒読み口調で、俺達に話し掛けてきた。

 

「くそー、もしかしたら こいつらの なかまですかー?

これは、かてそうにありませんねー。

あなたたちから かんじる つよさは、じんじょーじゃーありません。

そんなわけで、わたしは かえらせていただきます。

転移門(ゲート)》…あ。そうそう、そのまえに。

自由にして良し…それでは、失礼!」

 

ス…

 

「「…………………………。」」

そう言うと デミウルゴス 謎の男は、転移魔法で此の場を去って行った。

 

「アイツ…もしかして俺達が来るの、待っていたのか?」

「…多分?」

少しだけ、唖然としたが、直ぐに気持ちを切り替え、

「「「「ぅ…」」」」

呪言の縛りが解けた、ズーラーノーンの面々に目を向けると、まだ恐怖が抜けてないのか、強張った表情の儘、起き上がってきた。

 

「な…何だ、お前達は?」

「冒険者か?」

そして俺達を見ると、自分達を捕らえにきた冒険者だと思ったか、身構えてきた。

まあ、正解だけどな。

 

「な…何だ、冒険者と言っても銅級(カッパー)じゃないか!」

「驚かせやがって!」

しかし、俺達の認識証(プレート)を確認した途端、安心したかの様な笑みを浮かべてきた。

ん。舐められてるな。

コイツ等も他人の力量を、外見でしか測れないバカ達か。

 

≫≫≫

「「「「「んんんん~~~~??!」」」」」

結果からすると、こんな連中に俺と まろんサンが梃子摺る訳も無く、あっさりと全員捕縛した。

しかし、この世界の人間は、本当に他者を外見でしか判断しない者が多いな。

身なり服装で、その人物の品性を窺うのは問題無いが、危険の中の活動を生業とする者が、認識証(こんなの)でしか判別出来ないのは、他人事ながら、戴けない。

 

「本当に早い内、昇格する様な大手柄を立てないと いけませんね。

何時までも、認識証(プレート)だけで判断されるのは…

せめて、ミスリル位には、上がりたいですね。」

「…ですね。でも、そんな上手い話、そうそうと有ったりしませんよね。」

「ですよねー。」

 

尚、この後、改めて衛兵が大勢が駆け付けてきたが、遅いっての。

もう、全部 終わらせたよ。

また まろんサンが心の中で絶対、『無能』『役立たず』『税金泥』とか思ってるよ。

ただ、あのアンデッドの大群だけで無く、ズーラーノーンのアジトを暴き、その構成員を俺達3人+1匹が捕らえたと話すと、それを聞いた連中は盛大に驚いていた。

街中から離れているから良いが、今は まだ、真夜中だからな?

とりあえず、ズーラーノーンは兵士達に引き渡し、一応、この場から逃げていった()()()()()の事も、教えておいた。

あの自らの登場…本当に、何を考えている?

今回は俺達に、悪の軍団を抑えさせ、実績を作らせるのが目的じゃなかったのか?

まあ、ナザリック随一の知恵者の行動だから、後々に意味が出てきそうだけど?

 

 

 

 

≫≫≫

 

カラン…

 

「お…」

「あれは…」

「アイツ…いゃ、あの人達が…」

数日後、冒険者組合の扉を開け、中に入ってきた俺達に注目が集まる。

 

「漆黒の剣士モモン!」

金色(こんじき)の闘士マカロン!…そして、美姫ナーベ!」

「あれが、ミスリル級冒険者チーム…」

「【ブラック&ゴールド】…!!」

そう、俺達は あの騒ぎ…大量アンデッド撃破とズーラーノーン拠点壊滅の功績により、銅級(カッパー)から一気にミスリル級にまで昇格(ランクアップ)してしまったのだ。

俺達は全く そうは感じなかったが、実は あのズーラーノーンという組織は王国だけで無く、近隣諸国からしても、かなりな規模、要注意な犯罪組織だったらしい。

ついでに言えば、あの大量アンデッドも、ズーラーノーンの仕業として片付けられている。

当然、捕まった末端構成員は、否定しているが。

しかし此れ等も全て、デミウルゴスの脚本(シナリオ)通りなんだろうなぁ…

兎に角、それを踏まえての超飛び級だ。

 

≫≫≫

「それでは、ブラック&ゴールド…マカロン様、宜しく お願いします。」

「ええ、此方こそ。」

「…高い報酬を払ったのですから、その分きっちりと働いて欲しいですわ。」

そして俺達は、また()()()()()に就いた。

貴族商人の娘と その御付きの執事の、エ・ランテルから王都への移動。

その護衛の仕事だ。

道中はモンスターは勿論、野盗山賊が頻繁に出没するとの事で、俺達ブラック&ゴールドに お呼びが掛かったのだ。

…と、言っても彼女達と同行するのは、まろんサンだけだが。

 

「………………………。」

高飛車我儘風令嬢の顔が、幾分か強張っている。

 

「大丈夫です。例え山賊や野盗が襲ってきても、必ずや御守りしますよ、()()()()()()御嬢様。」

いや、()()がビビっているのは、山賊とかじゃないから。

()()とは云え、まろんサンに対して上等な態度を演じてるのに、テンパっているのだから。

…そして当人は、それに気付いていない!

本当に、貴族令嬢が野盗に対する不安な様を演じている様に思っている!

 

「それじゃ、行ってくるぜ。

御者さんも、ヨロシクな。」

「……………。」

そうして まろんサンは、俺達と…何だか暗そうな雰囲気の御者に挨拶すると、馬車に乗り込んだ。

あ~ぁ、()()()()()()()()()()()()()()()()、無事に終われば良いけどなぁ?

 




 
次回『武技の使い手』(予定)
乞う御期待!
 


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突撃!死を撒く剣団!!

注意: m(_ _)m 先に謝っときます。
今回は前書きが、凄く長いです。
 
 
◆モモンガside◆
前回までの あらすじ&補則説明!
俺と まろんサン、ナーベラルは、エ・ランテル共同墓地に潜んでいた秘密結社ズーラーノーンを叩き潰し、その戦果でミスリル級冒険者チーム【ブラック&ゴールド】を名乗る事に。
元を辿れば、その組織の幹部が、俺達 冒険者としての最初の依頼主を誘拐しようとしたのが、始まりだったけどな。
誘拐犯2人にとって不運だったのは、その現場に まろんサン(…とナーベラル)が居た事だ。
あっさりと撃退され、逆にナザリックに拉致られ、尋問の末に自分達の企みを吐く結果に。
その企み。
それは如何なるマジック・アイテムも扱える事も出来るというタレント持ち…今回の依頼主だった少年ンフィーレアに、自我を喪う代わりに強力な魔力を放出させるアイテムを発動させ、墓地よりアンデッドを大量召喚。
それを その儘エ・ランテル市街に突入させ、街を滅ぼさせ、其処から生じる"負"のエネルギーを搾取する事だった。
それを聞いたデミウルゴスが、冒険者モモン達の功績に これを利用する事を提案。
墓地の奥からアンデッドを誘導し、その場に駆け付けた冒険者である(モモン)達と戦闘する様に仕向けたのだ。
責任は、全てズーラーノーンに押し付ける形で。
はい、完全なマッチポンプです!
最終的には墓地に隠れていた組織構成員は皆 王国兵に捕らえられ、墓地に出現したアンデッドは自分達とは無関係、全ては いきなり現れた謎の悪魔の仕業と主張するが、取り合って貰えなかった様だ。(シャドウデーモン情報)
一応、謎の悪魔(笑)については、俺達も目撃したと兵士には伝えたんだがな。
尚、このズーラーノーンの者達は、翌日には何故か全員、兵士詰所の牢の中で息絶えていたとか。(これは俺達じゃないからな!)
そして俺達は、見事にミスリル級に昇格!
ある程度の飛び級は期待していたが、銅級(カッパー)から まさかの4階級アップには、驚かされた。
 
「これで もう1、2回、何か大きな実績を得たならば、最上級のアダマンタイトも夢では ありませんね。」
…また、マッチポンプするの?
 
≫≫≫
俺達が次に目を向けたのは『武技』。
この世界特有の、スキルの様な技能の検証だ。
捕らえていたズーラーノーンの1人…痴女の方が、それなりに武技が使えていた様だが、それは身体能力向上系な物ばかり。
もっと別な系統は無いのか?
何処かに、誘拐しても 〇しても問題の無い、武技の使い手は居ないのか?
…そう思い、俺達は餌を撒く事に。
先に情報収集を目的にエ・ランテル入りしていたセバスとソリュシャン。
貴族子女と その執事の設定な2人の護衛をまろんサン(冒険者マカロン)に頼み、王都に向かって貰ったが…
貴族を狙う野盗…上手い具合に釣れたら良いなぁ。
尤も、態々 結構 有名な無法者集団と繋がりの有る人間を御者として雇ったし、良い結果が出るだろ?
 
…長くなって、すまない。では此処から先が、本編だ!
 
◆モモンガside・了◆
 


◆まろんside◆

「まろん様、先程は申し訳ありませんでした。」

馬車の中、プレアデスが1人、ソリュシャン・イプシロンが俺に頭を下げてきた。

 

「気にするな。それが今の お前の、与えられた役割だ。

謝る必要は何処にも無い。」

何が有ったと言うと、プレアデスの纏め役セバス・チャンと共に、エ・ランテルにて様々な情報を集めていた中、冒険者である(マカロン)は合流する事になった。

貴族令嬢の我儘お嬢様な設定(キャラ)を与えられた彼女と、その護衛役な、冒険者の俺。

大衆の前で、横柄な態度を取った事に対して、謝罪してきたという訳だ。

しかし、俺は全然 気にしていない。

 

「だからシャルティアも、その殺気を鎮めろ。スティスティ…な?」

「し、承知したでありんす…」

そして、俺の代わりに?キレまくりなNPC、シャルティア・ブラッドフォールンに、落ち着く様に促す。

AOG(アインズ・ウール・ゴウン)随一のエロ鳥が創った彼女。

創造主(おや)の友人、即ち至高の御方(AOGギルメン)と同等認定な俺に無礼を働いたという事で、それこそ殺しそうな程に怒り天突だったのだ。

改めてだが、コイツ等のモモンガさんや他ギルメンに対する忠誠、それに連動する俺への敬い…マジだ。

俺に対しては、最初はアルベド以外は まだ不審者を見るような目をする者も居たが、彼女やモモンガさんの、更には前の戦闘で俺の実力(…の一端)を見たナーベラルの呼び掛け。

ついでにモモンガさんとの会話…絡み やり取りを、嘗てのギルメン達との それと重ねたのだろう、気が付けばナザリックのVIP客な扱いとなっていた。

…かと言って、ヒモなポジションは嫌。

そんな訳で、モモンガさんが情報集めの為の冒険者活動をしようとした時に、便乗したんだよな。 

 

≫≫≫

「…声を与える事で、命を吹き込む。

つまり、ぶくぶく茶釜様が就いていらした『セイユー』とは、生命創造系の職だという事でありんす。」

「おお、何と尊き仕事なのでしょう。」

「素晴らしい話ですわ。」

馬車の中は、何とか落ち着いたシャルティアが、御機嫌そうにギルメン達の話をしていた。

茶釜ちゃまの現実(リアル)の仕事だった声優。

シャルティアの説明は かなりズレている気もするが、セバス、ソリュシャンも感動して聞き入っているので、敢えて何も言わない。

そも、アニメとか説明するのが面倒い。

 

「まろん様は、その辺の話を聞かれた事は、無いのですか?」

…って、俺に話、振ってきたぁ?!

 

 

 

 

※※※

  

『【(TДT)】メインのヒロインの声、姉ちゃんだった…orz』

『【( ̄▽ ̄)】あちゃ~…、お姉さんじゃ、スル気になれませんよねぇ…(笑)』

『【(*・∀・*)】いやいや、あれ、パッケージの絵を見て、「あ、このキャラの中の人、絶対に"風っち"だぜ♡」とか思わなかった?

参考迄に、天然ツンデレ妹系幼馴染みは正に正義降臨!たっち・みーサンだったぞ!』

『【(T△T)】ぐぬぬぬ…期待の新作だったのに…』

『【(*^ー゚)b 】どんまい!』

 

※※※ 

 

 

 

「そ、そうだなぁ…

茶釜ちゃま、シャルティアとかアウラやマーレみたいな ロリ 小さな娘を専門としてたかな。

それでいて時々、大人(アダルティ)な女性も…

本当に清楚から元気系に天然、ツンデレから甘えん坊まで幅広く?」

「おぉ…」

「「まぁ♡」」

はい…本当に凄く、御世話になっていました…

………………??!

 

「…おい、駄弁りは御仕舞いだ。

獲物が(俺達)に、喰い付いた様だぞ。」

「「「!!?」」」

 

 

◆まろんside・了◆

 

≫≫≫

 

◆セバスside◆

馬車の中、至高の御方の話に花を咲かせていた時、まろん様の索敵スキルに反応が有った模様。

 

「「………………!!」」

至高の御方達の昔話…楽しい談笑の時間を途切れさせたとして、シャルティア様とソリュシャンの顔が、一気に不機嫌全開となりました。

馬車の前窓から前方を除くと、確かに多数の松明の灯りが、此方に近付いている様ですね。

 

「それではソリュシャン様、シャルティア様。御下がり下さい。」

「「はい。」…でありんす。」

まろん様…失礼、マカロン氏が馬車の後扉側に立ち、何時でも迎撃出来る姿勢を構える。

参考迄に、今のマカロン氏の出で立ちは、黄金闘衣で無く、旅人の服DXです。

 

≫≫≫

 

バタ…

 

「は~ぃ、良い夜だな♪」

「本当に、ΧΧΧするには、絶好な夜と思わないか?グヘヘヘ…」

暫くして、馬車は武装した賊に囲まれ、扉を開けた2人の男が、目の前の私とマカロン氏を無視して、その奥のシャルティア様とソリュシャンを見て、下品な嗤い声を吐く。

 

バキィッ!x2

 

「うぎゃ?!」「ほんげ!?」

しかし、その次の瞬間、マカロン氏の左右の拳が、この2人の顔面に炸裂。

 

ベキッ!ボゴッ!ガンッ!ドガッ!

 

「あじゃぱー!」

「ぎゃぴりーん!」

「ぬわーっ!」

「うぐぺぺぺーっ!」

「あいとゎーっ!」

「ぐばびぶべぼほわーっ!」

そして直ぐに馬車から降りて、残りの賊にもマカロン無双ほゎっちゃー。

内通していた御者にも、きっつい一撃喰らわせています。

 

「チッ、どうやらハズレだな。

この中に武技の使い手は、居ないみたいだ」

マカロン氏が残念そうに呟く。

 

「ま…~カロンさん?この者達は、どうするでありんすか?」

一網打尽に縛られた野盗を見て、シャルティア様が尋ねると、

「放置で良いだろ。

運が良けりゃ、お仲間が回収してくれるさ。」

…今から その お仲間の隠れ家に、突入するんですよね?

これは、良くて他の冒険者に捕まるか、運が悪い場合、野良のモンスターの餌になりますね?

 

「お前達のアジトは、何処に在りなんし?」

「…この先…20㌔の山林の中…洞窟…」

シャルティア様が、魅了(チャーム)で、縛った賊の1人に質問を始めました。

 

「お前達の仲間に、武技の使い手は、居ないでありんすか?」

「…居る…1人…つい最近…雇った…用心棒の…男…」

「ほう?…して、その者の名は?」

 

 

◆セバスside・了◆

 

≫≫≫

 

◆まろんside◆ 

 

バキィッ!ズンッ!

 

「ぎゃん?!」「ぐわっ!?」

セバスが御者を務めて馬車を走らせ、賊のアジトに到着。

門番らしい2人を、速攻で黙らせて、

 

どんっ!

 

「「な…?!」」

「邪魔、するぜ?」

洞窟の入り口に、上手い具合に取り付けてある扉を蹴り壊して、正面から入場だ。

 

「て、テメェ等、此処が何処か、分かってるのか?」

「"死を撒く剣団"の、アジトだぞ!?」

「はい、知ってますよ?」

 

ドガベキッ!

 

「「ちぃばぁっ?!」」

奥から出てきた2人に、セバスの連続蹴りが炸裂した。

 

「…殺さないのなら、縛らなくて良いのですか?

あれでは回復した後、また後方から襲ってくるのでは?」

少し不安そうに、ソリュシャンが尋ねてくる。

 

「大丈夫。()()()()()だよ。」

「?」

それに対して俺は、問題無いと返すのだった。

そう、コイツ等は まだ、利用価値が有るからな。

 

 

≪≪≪

 

「…というのが、デミウルゴスとアルベドの案なのですが。

本当に まろんサンも、それで良いのですか?」

「大丈夫だよモモンガさん。そういう屑に対する情は、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()から。」

 

 

≫≫≫

 

 

 

あぁ…何の問題も無い。…って?

 

「居たぞ!」

「アイツ等だ!」

「たった3人で攻めてくるなんて、良い度胸だ!」

「殺っちまえ!」

「おい、あの女、結構な上物じゃねぇか?」

「ケケケ…犯っちまえ♡…ってか?」

…どうやら新手の登場な様だな。

 

 

◆まろんside・了◆

 

≫≫≫

 

◆???side◆

………………………?

何やら洞窟の中が、騒がしい。

此処の連中に宛がわれた部屋で1人、酒を飲んでいると、

「おい、侵入者だ!」

野盗の下っ端が駆け込んできた。

 

「何だ?王国の戦士団でも、雪崩れ込んで来たのか?」

「いや…ジジイと若い男、それから女の3人だが、コイツ等が凄く強いんだ!」

それはソイツ等が強いで無く、お前達が弱いんだろ?…と思ったが、決して口には出さない。

 

「兎に角、アンタも出張ってくれよ!

その為の用心棒なんだろ?」

「ふん…仕方無いか。

まあ、少しは楽しめるか?」

如何に此処の奴等が雑魚ばかりとは云え、たった3人で乗り込んできて圧倒してるとなれば、興味が湧かないと言えば嘘になる。

王国戦士団…()()()じゃないってのは少し残念だが、まぁ良いさ。これも、仕事だ。

貰ってる金だけの仕事は、きっちりと こなしてやるさ。

 

≫≫≫

 

ドタドタドタドタ…

 

「ん?」

部屋から出ると、此方に必死な顔で、逃げる様に走ってくる男が1人。

 

「おい、頭目?」

「あ、お前は?!」

それは、此処の大ボスだった。

 

「おお、良い所に!

聞いているだろ? 侵入者は、この先だ!

俺は やられる訳には行かんので、先に避難させて貰う!」

おいおい…『逃げる』の間違いだろ?

そう思いながらも、俺は隠し通路へと走り去るボスを見届けると、その逆方向、何やら派手な打撃音と断末魔が聞こえる先へと歩を進めるのだった。

 

 

◆???side・了◆

 

≫≫≫

 

◆シャルティアside◆

「漸く やって来たでありんすか?」

「な…お前は…?!」

洞窟突入前、先に我が眷属である蝙蝠を偵察に放ち、この洞窟の構造は把握済み。

即ち、抜け道なんかも全て、お見通しでありんす。

まろん殿達が正面突入して暴れる中、私は この裏口で待機。

此処から逃げてくる者を始末する役割を、まろん殿から与えられてありんした。

そして今、実際に逃げてきた者が1人。

 

「ケッ! 何だ、ガキかよ?」

この、『シオ何とか』の一員と思われる男。

その格好からして、あの武技の使い手とは別物でありんすね?

だったら別に、殺しても問題無いでありんす。

 

「まさか、奴等に もう1人、仲間が居たとはな。

抜け穴も抑えていたのは誉めてやるが、流石に女…しかもガキ1人とは、舐め過ぎじゃないか?」

私を見て、女1人と安心したか、この男は安堵な顔で剣を抜き、その切っ先を此方に向けてきた。

 

「おいガキ! 悪い事言わないから、素直に其処、通せや!

痛い思い、したくないだろ?」

「………………………………。」

この男は一体、何を言ってるでありんしょうか?

通す? 我々の事を知られ、みすみす逃す筈も無いでありんしょう?

 

「…って、ガキぃ、よく見たら お前、中々な上物じゃねぇか?

特に、ガキとは思えない程な、見事な その むm(斬ッ!)…えぇえっ?!」

…コイツ! 急にヒトを見て下卑な顔になったと思えば、私の胸に手を伸ばしてきたでありんす!

当然、この様な下等な輩に触るのを赦す胸なんて持ち合わせてない故、即座に その腕、肘から斬り落としてあげたでありんす!…ええ、小指の爪で。

 

「うっぎゃぁぁあっ!? うっでぇ? 俺の、俺の腕ぇえ?!」

醜く情け無く、斬られた傷口を押さえ、のたうち回る男。

 

ズゥ…

 

「ひっ…?!」

そんな憐れな男に種明かし。

斬り落とした腕、そして押さえている傷口から流れ出る血を魔力操作、空中に真紅の球体(ボール)を作り出す。

 

「ひぇっ!? 吸血鬼(ヴァンパイア)?!」

それを見て、漸く私の正体を分かった男。

 

「た…助けて!お宝も渡すし、何でも言う事聞くから…」

そして自分の運命を悟ったか、必死に赦しを乞うが、そんなのは聞く道理も無く、

 

ベシィッ!

 

「ぎょぶゃっ?!」

とりあえずは その顔その顎先を蹴り上げる。

 

「ば…化け物…?」

「そうでありんす。 私は残酷で冷酷で非道で、そいで可憐な ば・け・も・の♪…で、ありんす♡」

 

 

◆シャルティアside・了◆

 

≫≫≫

 

◆まろんside◆

「おいおい…何だか知らんが、余所ん()で随分と好き勝手…派手に暴れているみたいだな?」

「…………………?」

俺とセバスが雑魚共を〆ている中(ソリュシャンは見学)、奥の通路から また1人、今度は…この世界じゃ珍しくないか?…日本刀(カタナ)を携えた男が現れた。

しかし、この男の容姿…ワカメみたいな青い髪。

もしかしてコイツが、例の用心棒…武技の使い手か?

 

「一応 聞いておくぜ。お前…名前は?」

 




 
改めて、前書きが長くなって、すいません。
前話を読み直してみると、結構 端折って説明不足と思ったので。
m(_ _)m
 
次回『マカロンvs青ワカメ』(予定)
乞う御期待!
 


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剣士vs魔拳士

 
バトル回です。
 


◆セバスside◆

他人(ひと)の名前を聞く時ゃ、先に自分が名乗るもんだって、教えられなかったか?」

まろん様…失礼、マカロン氏の『名前は?』の問い掛けに、『それなら先に名乗れ』と言わんばかりな男。

その容姿は、馬車を襲った男達からシャルティア様が魅了(チャーム)で聞き出した それその物。

どうやら この男が、この野盗団・死を撒く剣団の用心棒…武技の使い手な様です。 

 

「そりゃ ごもっとも。マカロンだ。」

「…ブレイン・アングラウスだ。」

マカロン氏が名乗ると、この男もアングラウスと自身の名を名乗りました。

これも、シャルティア様が聞き出した名前。

この男が武技使いで決定ですね。

 

「アンタ達、強いんだってな?

細かい事は無しだ。さあ、()ろうぜ?

どっちだ? そっちの兄ちゃんか?それとも爺さんか?

何なら両方纏めてでも構わんぜ?」

(カタナ)を抜き、その切っ先を我々に向けるアングラウス。

侵入者と用心棒ですから、戦闘不可避は当然。

この剣士が私とマカロン氏、どちらが相手となるかを聞いてきます。

ソリュシャンは戦力と見てないか、それとも女性は斬らない流儀か…最初から相手として数えてない様です。

 

「俺が出るよ。

セバス、ソリュシャン、それで良いな?」

そして前に出たのはマカロン氏。

 

「了解致しました。…それでは!」

 

シュシュシュッ!

 

「「「ぎょえぃっ?!」」」

「周囲の露払いは、お任せを!」

ソリュシャンが背後から襲ってきた敵の眉間を、ナイフで射ち抜いて答えます。

 

「ヒュー♪」

それを見たアングラウスが、称賛するかの口笛。

 

「な…?」

「この女も…」

先程から、痛め付けて動けなくしていた野盗共も次第に回復したのか、此方に集まってきました。

尤も、洞窟入り口は既に術式結界を施し、脱出不可能ですから、奥側(こちら)に進むしか道は無いのですがね。

そして この者達、ソリュシャンを見て、彼女も戦闘要員だった事に驚いています。

貴族令嬢なドレス姿。

そして洞窟突入から今迄、一切 戦闘に参加してなかったから、それは無理も無いですか?

そして…

 

「…武器は持ってないのか?

まさか丸腰で、(コイツ)と戦り会う心算か?」

「俺は武闘家だ。この拳や脚が、武器なんだよ。

それとも何か?

馴れない剣か何かを持っての、弱体化のハンデを求めているのか?」

「ハッ!上等だ!」

あの御二方も、戦闘開始の模様。

間合いは あの刀の、半歩外ですか。

ならば、 

「ふん!」

 

バキッ!ガンッ!グシャッ!

 

「うの?」「どす!」「とれす!?」

私とソリュシャンは、その邪魔となる者達の、排除と参りましょう。

 

 

◆セバスside・了◆

 

≫≫≫

 

◆まろんside◆

「キェェイッ!」

 

斬!

 

ブレイン・アングラウスが気合いの雄叫びと共に、速く鋭い踏み込みからの斬撃を繰り出すが、俺は それをギリギリのタイミングで躱し、

 

バスッ!ビシッ!

 

「…ぐっ!」

更に此方から踏み入り、下段蹴りと肘打ちで迎え撃つ。

刀の様なリーチの有る武器に対して、俺は その内側…近過ぎて逆に刃が届かない位置からの、振りの小さい攻撃だ。

…速く鋭い踏み込みと言ったが、それも あくまで、最近 解ってきた現地基準の話だ。

確かに この世界に来てからは、それなりな攻撃だったが、それでもユグドラシルのカンストがデフォな俺には緩過ぎる。

舐めプな心算は無いが、一応 武技の使い手らしいし、それが使()()()()かどうかを判断する迄は殺すのは無しの方向だ。

 

「聞いてるぜ? 武技の使い手なんだろ?

見せてみろよ、武技。」

 

チョイョイ…

 

「テメェ…!」

指先で『掛かってこい』の煽りアピールに、アングラウスは怒りの形相を浮かべる。

あら?失敗した?

 

「がぁっ!」

キレるのは絶対に悪いとは言わんが、それで動きが雑になったら意味が無いz

「死ね固羅ァァアッ!!」

 

ぶぅんっ!ぶんっ!

 

やはり!感情な儘の、単なる大振りしか しなくなった?

 

「てぃっ!」

 

どんっ!

 

「が…が…?!」

そんな技巧も何も無い力任せ、一刀両断の大振りを避けると背後に回ってのジャーマンスープレックス!

 

「「「おぉっ!」」でありんす!」

セバスとソリュシャン、そして何時の間にか観戦に加わっているシャルティアが、感嘆の声を上げる。

周りを見れば、既に その他の雑魚は皆、纏めて綺麗に縛られていた。

ヘロヘロさん創造…だったよな?…のメイド、ソリュシャンもだが、セバスは たっちサンが戦える(Battle)執事(Butler)の設定で創ったNPC、仕事が早く丁寧だ。

そしてシャルティアの仕事だろう、1体だけミイラみたいに 干枯らびて死んでるのが居るが、これも特に問題は無い。

 

「ハァ…もう良いや。

おいセバス。コイツ、もう殺して良いだろ?

武技の使い手だか何だか知らんが、元々が雑魚だ。

その武技とやらも、どうせ大した事無いぜ?」

一応、武技の使い手は その検証としてナザリック連れて帰る予定だった。

 

「モモンガさんには俺の責任で、『殺っちまったぜ★』って謝るからさ。」

しかし、俺が興味を無くし、その価値無しと判断させて貰った。

 

「誰が…誰が雑魚だと?!

巫山戯んな! そんなに武技が見たいなら見せてやるよ!そして死ね!」

おや?目付きが変わった?

別に発破を掛けた訳じゃ無い…本当に見切りを付けた心算だったが、雑魚扱いが余程 琴線に触れたらしい。

力量は ともあれ その瞳は怒りは鎮まらねど、落ち着きは取り戻し…そんな表情だ。

 

ザッ…

 

バックステップで俺と間合いを空けると刀を鞘に納め、片膝を折った中腰で、居合いの構えを見せる。

 

「篤と見やがれ!

これが俺の武技…領域!」

 

ブォッ…!

 

それはアングラウスの周囲、直径約6㍍に張り巡らされた、剣氣の結界!

成る程…不用意に その中に足を踏み入れようなら、それが例え何処等の方向からでも、超反応から神速の抜刀でスバァッ!…って感じか?

これは正直 驚いた。

これは相当な技術だぜ?

まさか、これ程の技量を精度は兎も角、実際に体現するとは…『大した事無い発言』は、取り消さないと いけないな。

尤も それ…ケンちゃんの流水制空圏の()()()()()なんだけどな!

 

 

◆まろんside・了◆

 

≫≫≫

 

◆ソリュシャンside◆

「…つまり、魔法や弓、極端に言えば石礫等、あの外からの攻撃には意味を成さないですがね。

…いえ、石や矢程度なら、超反応で打ち落としますか。」

セバス様が言うには、あの武技使いが放った ()()は、対人…しかも近接戦闘を専門にした者に対して特化した物だと云います。

しかしながら まろん様は魔拳士の(クラス)を所得する為の条件として、ウィザードの(クラス)も得ています。

つまり、離れて魔法で攻撃すれば、何の問題も有りません。

 

「しかし、ま~ぁカロンさんの性格からして、『これはカモでありんす♪』と、外から攻撃していくには思えないでありんし?」

はい。同感です。

寧ろ、興味深々に踏み込んで行きs…ってますね。

 

「馬鹿が…

秘剣・虎落笛!!」

 

斬!

 

そして まろん様が その領域とやらに足を1歩踏み入れた瞬間、居合い斬りの一閃!

まともに其れを受けた まろん様の首が、胴体から切り離されました。

…勿論 私達は誰1人、何の心配も しておりませんわ。

 

「成る程…なかなか、良い攻撃だ。

並の人間なら、脅える間も無く、終わっていただろう。

良い速さ、良い太刀筋だ。」

は…はぁぁああ゙??!

何と無礼な。

まろん様が貴様如きの技を称賛されておられるのに、間抜け顔で間抜けな悲鳴を上げるとは。

 

「で…首無し騎士(デュラハン)?」

宙を浮く まろん様の首を見て、その真実(こたえ)に気付きましたか?

 

「ま…まさか?!」

「その通り。其方のマカロン氏だけで無く、我々は皆、貴方達 人間から見れば、異形と呼ばれる存在で御座います。」

「な…っ」

尋ねる様に此方を睨む人間に、セバス様が それに応えます。

 

「混乱してる処 悪いが、勝負は決めさせて貰うぞ?」

「ひ…く、来るな?!」

 

カィィンッッ!

 

不死属(アンデッド)と対峙するのは初めてなのでしょうか?

首を脇に抱えた まろん様が人間に歩み寄ると、この男は慌てた様に刀を凪ぎ払うが、その刀身は腕での防御(ブロック)で、へし折られてしまいました。

 

「な…何…だと…?!」

その事実に、信じられない様な顔で驚く人間。

あの武器も この世界では其れなりに業物な様ですが、まろん様の着ておられる服の防御力(かたさ)の方が勝っていた様です。

 

「次は、俺の番だな!」

「!?」

そして、まろん様のターン。

アレは肉体防御力上昇の魔力ですか?

それを頭に挿充(チャージ)しています。

身に着ける装備で無く、肉体その物を強化する魔法。

それは武闘家等、己の肉体を武器とする(クラス)の場合、防御力だけで無く、攻撃力もアップ。

つまり、今の まろん様の頭は、強化された凶器に等しく。

その御自身の頭を鷲掴みで持つと、大きく高く、力強く飛翔。

 

「ぁ…」

そして急降下の勢いを乗せ、得物を喪い、茫然と立ち尽くすだけとなった人間の脳天目掛け、

「スラム・ダンク!!」

 

ごんっ!!!!

 

豪快な頭突き(ダンクシュート)を叩き込みました!

 

あ…あぁ…

 

パタ…

 

そして この男は白目を剥いて、その場で倒れ崩れたのでした。

 

 

◆ソリュシャンside・了◆

 

≫≫≫

 

数日後。

 

◆モモンガside◆

俺は冒険者モモンとして、冒険者組合に呼び出された。

 

「失礼する。」

「おお、モモン君。よく来てくれた。」「「「「……………。」」」」

組合長室に入ると、其処には組合長アインザックの他に、数人の冒険者が。

エ・ランテル在中のゴールド、そしてミスリル級冒険者チームのリーダー達だ。

 

≫≫≫

「さて、君達に集まって貰ったのは…」

俺の後から、更に2人の冒険者が顔を出し、慎重な顔付きのアインザックが話し始めた。

 

「…死を撒く剣団。君達も その悪名は説明不用だろう。

このエ・ランテルから少し離れた場所で、奴等のアジトの洞窟が発見された。」

はい、知っています。

匿名で情報リークしたのは、俺達ナザリックです。

 

「それで、王国の戦士団が其の場に赴いてみたら、団員全員が死亡していたらしいのだ。」

「「「「…………!!?」」」」

はい、それも知っています。

 

「しかも、その死因が、何者かに…恐らくは吸血鬼(ヴァンパイア)に体中の血を全て吸い尽くされて…でだ!

エ・ランテルから王都へ続く街道近くでも、同様な死体が見つかったという報告も届いている。」

「「「…………。」」」

はい、それも全て、俺が創ったアンデッドの仕業です!

 

「冒険者組合長として、諸君達、ゴールド、ミスリル級の各冒険者チームに依頼したい。

この犯人と思われる吸血鬼(ヴァンパイア)の、調査、捜索、そして討伐を要請する!」

 




 
今回の脳天ダンクは、まろんのデュラハン設定が出来た時に、真っ先に思い付いたネタ。
その栄え有る?餌食はブレイン君でした。
すいません。作者は『ネタに走らずにいられない病』なんです。
 
感想よろしくです。
 


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嗤う金毛(スマイル・ゴールド) ~Cの災難リターンズ~

 
先ずは、『アレからブレイン君、どうなった?』…から
 
原作キャラ、原作初登場時期より前倒しで登場。
 
そして、朝にアップした活動報告を見ていた人、お待たせしました?
 
 


◆ブレインside◆

「よぉ~、(あん)ちゃん、生きてっかぁ?」

「大丈夫で御座るよ、ブレイン君。

痛いのは死んでない証拠で御座る。」

「…………………………。」

あのアンデッドのマカロン…まろん様との戦い。

ハハハ…いや、ありゃ戦いなんて高尚な代物じゃないわな。

兎に角その最中に意識を失った俺は その儘、あの方達の拠点に 拉致 連れていかれた。

俺以外の死を撒く剣団の連中は、皆殺しにされたらしい。

俺が生き残れたのは、俺が武技を持っていたから。

俺のオリジナル武技・領域。

まろん様が言うには これは、あの方の友人が使うスキルの劣化版らしい。

しかし人間である俺が、下位だろうが その系統の技術を身に付けたのは、興味深いそうだ。

…あの時アレを見せてなきゃ、俺も殺されていたんだよな。

それで今の俺は、あの方達の拠点、ナザリック地下大墳墓。

その一室で、このナザリックのトップ、アインズ様(俺は まだ目通りされてない)のペットらしい魔獣や、配下の蜥蜴人(リザードマン)、そして全身黒のアンデッドの騎士と、本当に死ねる程な鍛練の毎日に明け暮れている。

これは武技の検証がメイン。

このナザリックの…異形の方々からすれば、武技は珍しい技術らしいのだ。

 

≫≫≫

あの時、俺が目を覚ました後に少し…それが正装なのだろう…金色の鎧を着た まろん様と少し会話。

俺が強さに執着する話をした時、『その事自体は、決して悪くない』と言って貰えた。

…が、最終目的を王国戦士長ガゼフ・ストロノーフに勝つ事だと話したら、『ハードル低っ!』『あんな役立たずな無能に勝って嬉しい?』『そこは せめて、俺にリベンジだろ?』…とか、散々と言われてしまった。

俺は…と言うより、恐らくはストロノーフとも面識が、そしてヤツを弱者認定…かなりディスってる事に少し思う事が有ったが、それは上には上が居るという事で納得した。

その後、『強さを求めるなら』と、やはり人外…ナザリックにて守護者と呼ばれる1人、蟲人のコキュートス様の下で修行する事を許され、今日に至るのだ。

 

≫≫≫

ナザリック地下大墳墓…って言う位だから、地下施設なんだよな?

どう見ても森、屋外みたいな区域(エリア)も有るんですけど?

俺の そんな魔境での生活。

動き回れる範囲は限定されているが、修行時以外は その中での行動は割かしフリーとなっていた。

森の中に結構な専用の小屋も建てて貰え、衣食住は安定している。

折られた刀も その代わりだと、前よりも上な業物を授けられたりと、思った以上に至れり尽くせり。

日々、充足している自覚が有る。

修行漬けな毎日だが、それは悪くない。

強さ…については、修行を見てくれているコキュートス様や規格外過ぎて いまいち実感が湧かないが、アレだけ毎日 死ぬ思いしてるんだ、強くなってない訳が無い!…と思いたい。

それには何の、不満も無い。

本当に死にそうになった時の為、回復魔法が使える犬のメイドさんが常時スタンバってくれているのも…此処のヒト達なりの良心だと思いたい。

ただ1つ…

もう外の世界に出るのは…ストロノーフに借りを返すのは絶望的だが…

 

 

◆ブレインside・了◆

 

≫≫≫

 

◆モモンガside◆

野盗団を滅ぼしたとされる吸血鬼(ヴァンパイア)についての話し合いは、グダグダの一語だった。

ナントカっていうミスリル冒険者が、やたらと仕切りたがり、俺に対しても、『つい最近 冒険者になったばかりのヤツが いきなりミスリルなんて、認めねえ』と、まあ、コレに関しては地道な経験を積み重ね叩き上げな人からすれば、御尤も意見だが…

それには俺も敢えて喰い付かず、無難に流していた心算だったのだが、それが逆に『テメェ、舐めてんのか?!』みたいな感じに…面倒臭ぇ…

幸いにも、他の冒険者達が常識人で その場を宥め、『分かった分かった。それならリーダーお前やれ。』みたいな感じで収めてくれたのだった。

その後、エ・ランテルの宿で この事をマカロン(まろんサン)ナーベ(ナーベラル)に話すと、

「ははは…良かったじゃないか。

リーダーとか責任者とか、そういう面倒いのは、やりたいヤツが居るならソイツに丸投げすれば良いさ。」

「…その蛞蝓、今から殺してきます。」

…と、各々が予想通りな反応を。

勿論、ナーベラルは全力で止めたぞ?

 

≫≫≫

数日後。

王都にて、吸血鬼(ヴァンパイア)の目撃情報が有ったらしい。

被害者は、王都に根を下ろす犯罪組織の末端の人物。

死を撒く剣団を滅ぼした吸血鬼(ヴァンパイア)との関連は現在は不明だが、短期間に複数の個体が出没するのは不自然という見解を、王国の警備部が示したとか。

人が住む都市に現れ、また忽然と姿を消したという この情報は、それまで混乱を抑える為に詳細を明かされていなかった一般の者にも瞬く間に知れ渡り、王国全体の警戒と注目を集める事になった。

…同時に、その目撃者の証言から、この吸血鬼(ヴァンパイア)の俗称も決まったそうだ。

 

嗤う金毛(スマイル・ゴールド)

 

どういう意味かとアインザック組合長に尋ねてみると、組合長は少し気不味そうな顔をしながらも、その由来を教えてくれた。

…って、デミウルゴスぅっ?!

おま、何を考えてんの?

確かに ()()()をアンデッドにして騒ぎを起こすのは了承したぞ?

でも、『固まった様な不気味な嗤い顔の全裸マントの女吸血鬼』…真裸(まっぱ)にする意味って何?

マントは もしかして、欠片な良心?

逆に変態度増々じゃないか?

確かに元から、ビキニアーマーとか着てた痴女だったけど?

…ってゆうか目撃者!

何処の誰かは知らんが、お前も一体 ()()()()()()()?!

そして何故、態々()()を語る?!

()じゃなくて金()って、そーゆー意味かよ?!

それ聞いて、あんな俗称を付けるヤツも付けるヤツだけど!?

 

「…でも、それをマメに報告するって処に、何だか強者感を感じませんか?」

感じませんよ!どんな強者感ですか!?

そんなの討伐したら、下手すりゃ俺達も変態認定ですよ!

 

 

◆モモンガside・了◆

 

≫≫≫

 

◆まろんside◆

「ハァ…orz」

「まあ、あんまり引きずるなよ。

モモンガさんだって最後は、これから気を付けたら それで良いって言ってただろ?」

…あの後、デミウルゴスはモモンガさんから あの全裸マント女吸血鬼の件で、散々とOHANASHIされてしまい、現在絶賛orzっている。

しかも『自害で責任取るの禁止!』と、先手を打たれているので、orzっ振りがパねぇ。

それを慰める意味で、今はナザリックのBARで2人で飲んでいるのだ。

 

「私は、あれ位の印象(インパクト)の有る獲物を狩った方が、アインズ様…冒険者モモンの名声も響き易しと思っていたのですが…

まろん殿…私は何を…いえ、何処から間違っていたのでしょうか?」

「そうだな。はっきり言うと、人間を下等生物と見下す余り、人間の事を全く…その考え方、価値観倫理観を知ろう、学ぼうとしなかった…此処からだな。」

確かに凄いインパクトだけどな。(笑)

 

「『敵を知り、己を知れば、何とやら』…ぷにっと萌えさんも言ってたんだろ?

それを実行出来なかった、お前のミスだな。」

「ぅ…ならば、一体どうすれば…

仮に()()を一時回収して、それらしい衣装を着せたとしても…」

「あぁ…今更 違和感だよな。」

 

 

◆まろんside・了◆

 

≫≫≫

 

◆???side◆

「チィッ!」

まさか、このタイミングで最近 噂の有名人(ヴァンパイア)に出会すとはな!

本当に全裸マントだと?!

しかし本当に…嗤う金毛(スマイル・ゴールド)とは、よく言った物だ!

しかも…!

 

「こんなの聞いてない。」

「詐欺。」

「文句言ってる場合じゃないでしょ!?」

確かに、吸血鬼(ヴァンパイア)の手下に死者の大魔法使い(エルダーリッチ)が居たなんて、聞いてないぞ!それも2体も!

更にはコイツ等、只の死の大魔法使い(エルダーリッチ)なんかじゃねえ!強化種ってヤツか?

よりによって、()()()が居ない時に遭遇するなんて、俺達も運が悪いぜ。

 

「おい童貞! お前は姫さんから離れんなよ!」

「は…はい!」

「…って、姫さんも童貞の目なんか塞いでる場合じゃねえだろうが?!」

「え~? だってぇ…」 

と、兎に角…だ!兎に角、この場をどうにかして、切り抜けないとな!

 

「皆 退がって!

超技!暗黒刃超弩級衝撃波(ダークブレード メガインパクト)ぉおっ!!

 

 

◆???side・了◆

 

≫≫≫

 

◆モモンガside◆

先日、王都にて、また嗤う金毛(スマイル・ゴールド)が現れた。

今度は王国の姫君が、とある貴族に招かれた社交会からの帰城中に襲われたそうだ。

幸いにも その護衛に就いていたアダマンタイト級冒険者の働きによって、倒せずとも撃退には成功。

王女に怪我は無かったそうだ。

そして此れと交戦した冒険者の証言により、件の吸血鬼(ヴァンパイア)死者の大魔法使い(エルダーリッチ)を2体、引き連れているという新事実が判明。

この新たに存在が明らかになったアンデッドは、その外見特徴から各々、疵面(スカーフェイス)骸頭(スカルヘッド)と呼ぶ事となった…らしい。

 

「どうですか、アインズ様。

()()の他に、新たに個性的なアンデッドを加える事で、アレの印象(インパクト)を薄める事に成功しました!

更にはアダマンタイト級冒険者ですら、討ち取れなかったという事例で、コレを討伐した時のアインズ様まろん殿の名声は確固たる物となる事でしょう!」

う…うん、そうかな…?

 

「大丈夫だよモモンガさん。

仕留める時にセクハラ技とか使わなかったら、問題無いさ。」

 




 
【注意!】疵面(スカーフェイス)…顔面(てゆーか身体中)疵だらけな眼鏡で白スーツの巨漢893屋さんじゃ、断じてないです。
 
感想よろしくです。
 

 m(_ _)m
誰にとは言わないが、スマンwww
 


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問題や課題、厄介事は、それが片付く前に次が やってくる

 
【前回のあらすじ】
 
?「作者は私に、何か怨みでも有るのかあ?!」
 
 
▼▼▼
今後の伏線回。
及び、前回迄の補足説明回です。
 

 


◆まろんside◆

この世界に転移した早々、悶着起こしたスレイン法国特殊部隊の隊長格と、前の依頼主を拉致ろうとした女とハゲ。

この3人の死体を不死属怪物(アンデッド モンスター)として再利用、俺達の冒険者としての名声を上げるマッチポンプ計画(笑)が、本格的に始動した。

…最初は、女を吸血鬼(ヴァンパイア)にするだけな予定だったが、智将デミウルゴスの まさかの想定外(うっかり)で、残りの2体も活用する運びに。

…結果、女吸血鬼(全裸マント)と2体の死者の大魔法使い(エルダーリッチ)(魔改造)の徒党は、王国全体で要注意モンスター認定された。

 

「…この度は私の認識不足で、アインズ様と まろん殿に、多大な御迷惑をお掛けしました。

そして それを踏まえての、この先の計画ですが…」

デミウルゴス案は、とりあえず 此処で、空白期間を設けるとの事。

冒険者や貴族・役人だけで無く、一般人にも その存在を晒した事で、あの3体は敢えて暫く直接の活動を控えさせるそうだ。

その代わり、死を撒く剣団のアジト跡他、王国領に点在する洞窟等に、多量の低~中級アンデッドを定期的に出現させる…そんな小細工をしていくらしい。

 

「…成る程、そういう事か。」

「おお、流石は まろん殿。

この私めの小賢しい策等、全て お見通しですか。」

「そりゃ…な、モモンガさん?」

「そ、そうだな!

しかし、デミウルゴスよ。

此の場の皆が全て、理解している訳では無さそうだ。」

「承知致しました。それでは皆さんにも、説明させて頂きましょう。」

モモンガさん、絶対に解ってないな。

 

 

◆まろんside・了◆

 

≫≫≫

 

◆モモンガside◆

デミウルゴスの計画は、聞いてみたら、至極単純な策だった。

一定の間隔でエ・ランテル共同墓地、死を撒く剣団アジト跡、そしてトブの大森林や近辺洞窟等にアンデッドを出没させ、冒険者や王国兵に、アンデッド討伐の特別チームの当番制(シフト)を編成させる。

上位アンデッドの吸血鬼(ヴァンパイア)である嗤う金毛(スマイル・ゴールド)が身を隠したと同時の、複数箇所でのアンデッド大量出現。

勘の良い者なら…いや、余程 鈍いヤツで無い限り、関連を疑うだろう。

 

「成る程! それで、雑魚アンデッドばかり倒していて、誰もが全裸マントの事を忘れかけた頃に、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()…なんですね!」

「す、少し間を空けるのは、いきなり遭遇するみたいな不自然さを出さない為なんですね!」

「ソシテ ソレヲ倒ス事デ…」

「アインズ様…いえ、冒険者チーム【ブラック&ゴールド】の名声を高める…で、ありんすね?」

はい、マッチポンプ、キマシター!

 

 

◆モモンガside・了◆

 

≫≫≫

 

◆まろんside◆

「「ぉおらぁっ!」」

 

キィンッ!

 

氷の刃と太刀が交差する。

今日のブレインの鍛練は、蜥蜴人(リザードマン)との、実戦さながらの模擬戦(タイマン)

場所も普段の鍛練場で無く、第6階層の闘技場(コロシアム)を借りてと本格的だ。

 

蜥蜴人(リザードマン)

トブの大森林の中の巨大湖周辺にて、集落を築いている種族。

時期的には俺達が冒険者として活動を始めたと同じ頃、モモンガさんは守護者の1人、コキュートスに彼等と友好関係を作り上げる様に指示を出していた。

 

但し、

 

 

恐怖による隷属強要など、誰にでも出来る。

しかし それは、無能の者の所業だ。

 

  

このモモンガさんの言葉に従い、コキュートスは本来なら専門外の対話交渉に挑んだが…

 

 

 

「ウゥ…アインズ様ニ、会ワセル顔ガ無イ…」

「いや、良くやったと思うぜ?

モモンガさんも誉めてただろ?」

その結果に自身が納得往かず、ナザリック帰還直後は、それこそ この前のデミウルゴスみたいに、盛大に凹んでいたのだった。

事前に言霊邪魂(メッセンジャー)を使い、複数在るリザードマン各部族に来訪を伝えていたコキュートス。

これはリアルにて、外回り営業だったモモンガさんの、『アポ無し凸は厳禁』の教えに沿った物。

それで1つの集落に、各部族代表者が集まってのOHANASHI…もとい、話し合いが始まると思われたが…

尚、この辺りはコキュートスと同行していた戦闘メイド、エントマや配下に落ち着いたリザードマン達から聞いた話だ。

 

 

≪≪≪

「我等を従わせたいなら、それだけの力を示してみろ。」

いきなりの脳筋発言。

とりあえず彼等は、ナザリックが従属を求めてきたと勘違いしたらしい。

先に言っておくとモモンガさんは そんなは考えは持っておらず、あくまで彼等とは同じ異形種同士(正確には彼等は亜人に分類される)、対等な友好を…と、思っただけだ。

しかしリザードマン達はナザリック地下大墳墓を、『森林の近くに いきなり出現した怪しい遺跡』として既に知っていたらしく、其処からの来訪者に警戒心全開だった訳だ。

これがモモンガさんなら、ブラック企業の営業で培った話術で何とか やり込めただろうが、今回 現地派遣されたのはコキュートス。

そんな高尚な物なんて、備えている筈も無く。

そんな経緯で、本人からすれば仕方無く…本っ当に仕方無~く、リザードマンの中でも上位実力者とされる、氷の魔剣の使い手と模擬戦から一蹴。

…が、

「よし、次は俺だ。」

「いや、俺だ。」

「我。」

「んにゃ、儂。」

その強さに畏怖される処か興味を抱かれ、次々と挑戦者が名乗り出たのだ。

既に敵対心や猜疑心は持っておらず、純粋に強者との戦闘欲。

お前等 一体、何処のバトル野郎だ?

シャババさんやキャロット君とも仲良くなれそうだ。

 

≫≫≫

「それで、俺達を軽く〆たコキュートス様の上には、更にアインズ様って弩偉い御方が控えてるってなったらなぁ…ですよ。」

…これが、リザードマンの一族がナザリックの傘下入りした全て。

コキュートスは、結局は力がパワーみたいな方法で終わらせてしまい凹んでるが、モモンガさんは これを力による恐怖で無く、心酔による服従という事で、一応の合格点を出している。

結果、多少の怪我人は出したが、死人は出さずなのだから。

そして実は このリザードマンとの接触、モモンガさんは『NPC(シモベ)が如何に自分で考えて動くかの実験(テスト)』を兼ねていたらしい。

そりゃそうだ。

普通に外交を結びたいなら、アルベドやデミウルゴスみたいな知性派を送った方が、スムーズに事が運んだだろう。

…尤もアイツ等だと、その前にブチ切れの果てに瞬殺絶滅の可能性も有っただろうが。

いや、寧ろ高い。

これはコキュートスを選んだ、モモンガさんのグッジョブだ。

そして結果的に、モモンガさんは大満足していたのだった。

 

「まあ、それに、種族間でも悪い事じゃなかったですぜ。…例えば、」

俺の隣で模擬戦を観戦していた、リザードマンの中でも巨漢だが、右腕だけが更にマッソォーな男が、ブレインと戦っているリザードマンを指差す。

 

「俺達リザードマンは、今迄は他部族との絡みは殆んど無かったんですがね、今回の件で横の繋がりも結構 出来てきて、アイツは余所の部族から嫁さん貰ったんですよ。新婚ですよ。

本当、リア充爆死ね!…ってヤツですよ。」

…その言葉広めたの、絶対に過去のプレイヤーだろ?

 

「しかも、ですよ?

あの野郎、初対面な雌に一目惚れして、最初の一声が『結婚してくれ』…だそうで。

笑えますよね? 有り得ないっすよね?

そんなヤツ、居ないっすよね?www

いくら何でも、もう少し順序ってのg

スラム・ダンク!

 

ごんっ!

 

「ぁ痛゙ぇぁあ??!」

…悪かったな。

 

  

◆まろんside・了◆

 

≫≫≫

 

◆モモンガside◆

「《雷撃(ライトニング)》!」

 

バシュッ!

 

ナーベラル…ナーベの手から迸る雷撃が、動屍犬(ゾンビ ドッグ)を貫いた。

 

「一段落、着いたか?」

今はトブの大森林で、アンデッド狩りをしていた処だ。

 

「…みたいだな。皆さん、今日は そろそろ引き上げますか?」

「「「「は…はい…」」」」

周辺のアンデッドは一掃。

日も落ちてきたので、今回 俺達と行動を共にしている白金(プラチナ)級冒険者のチームに撤収を呼び掛けると、彼等は何だか萎縮した感じで応える。

 

「2刀流グレートソードぶん回して無双してたら、それゃあ誰だって引くさ。」

ぶん殴った動屍(ゾンビ)骸骨(スケルトン)を大炎上させたり氷漬け→粉砕してた、アナタが言いますか?

 

≫≫≫

「また、世話になりますよ。」

「いえ、ゆっくりしていって下さい!」

今夜は またカルネ村に、空き家を借りる事に。

 

カチャ…

 

「失礼します、モモンさん。」

其処にやってきたのは、カルネ村の警護を命じているルプスレギナだ。

 

 

「…以上が、最近の主だった報告になります。」

カルネ村や その周辺の出来事を話すルプスレギナ。

村の中は、特に変わった事は起きてないが、すぐ側の大森林…さっきまで俺達が"狩り"をしていた場所で、少し動きが有ったらしい。

森林南部。

森の賢王…ハムスケが縄張りとしていた地域(エリア)だが、そのハムスケが俺、即ち冒険者モモンの騎獣となり森を離れた事で主が不在。

それに乗じて、森林の東西其々を縄張りにしているモンスターが、侵攻を始めたらしい。

 

「村人は『三竦み』と言っていました。」

「そうなので御座るか?知らなかったで御座る~。」

「…自覚、無かったのか。」

しかし、俺達の名声を上げる目的で放った、ナザリック産アンデッドが足止めをしている形で 、今は膠着状態だとか。

因みに このアンデッドは、それこそハムスケの縄張りだったエリアを徘徊する様に設定していたが、それが間接的というか結果的に、カルネ村を守る事に繋がった様だ。

 

「東の巨人に、西の魔蛇か…」

そして、大森林の東と西を支配しているモンスター。

此奴等はリザードマンとは違い、かなり交戦的…そして支配欲に駆られた者らしい。

しかも、ハムスケと三竦みとして並べられるのなら、知能も高くなさそうだ。

更にはコイツ等はハムスケの様な一匹倉鼠で無く、それなりな数の手下を従えてるとか。

放置しておけば今のアンデッド騒ぎが落ち着いた後に、村を襲う可能性も充分に有る。

よし。事前策として、次はアウラとマーレ、そしてシャルティアに、交渉に出向いて貰うか。

アウラのコミュ力と話術は、かなり高い。

マーレも おどおど口調だが、そういう設定(by茶釜さん)なだけで決してコミュ症な訳じゃなく、普通に会話は出来る。

故に この2人は、大した心配はしていない。

しかし、シャルティアの方は…

相手の出方次第では即ブチギレで皆殺し、良くて半殺し(半分は生き残る)な光景しか浮かばないなあ…

 

≫≫≫

翌朝。

カルネ村を発ち、1日のキャンプを挟んで、エ・ランテルに到着。

冒険者組合で一連の報告と、今後の討伐日程の確認をした後に…

来週は この前の…漆黒の剣の面々とコンビか…ってナーベ、そんな あからさまに嫌そうな顔をしない。

で、次が…ゲッ?!()()()()()と一緒かよ?

 

「モモン君。そんな見るからに凄く嫌っそ~な顔をしないでくれないか?」

…討伐日程の確認をした後に、ナザリックに帰還。

すると…

 

シュタッ!…くるん…

 

「アインズ様、誠に申し訳御座いません~~っ!!」

 

えっえぇぇえ~~~~~~~っ?!!

 

その早々、セバスが華麗な月面宙返(ムーンサルト)り土下座をしてきたんですけどっ!?

 




 
次回『東の巨人と西の魔蛇』(予定)
感想よろしくです。
 


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(イベント)は同時に進行します。
 


◆モモンガside◆

「アインズ様、誠に申し訳御座いません~~っ!!」

 

セバスの華麗なる月面宙返(ムーンサルト)り土下座。

何事かと言えば、王都での情報収集の途中、少女を1人、拾った…って、セバス?

そんな犬猫を拾ったみたいに言われても…

 

「軽率な行動だったのは、自覚しております。…しかし!」

簡単に説明すれば、この少女は娼婦。

但し、王国では非合法な奴隷の表現の方が正しい。

かーなーり、()()()()()の客に差し出された挙げ句、商品として価値が無くなり、()()()()されそうになった処を、偶然その場に居合わせたセバスが保護した…そうだ。

そりゃ麻袋に詰めて、路上に投げ捨ての放置は…たっちさんの性格を強く受け継いでるセバスからすれば、スルーは出来ないか。

うん…鈴木悟的には、強く言えないんだよ…

 

「確かに()()()()()()、軽はずみだったな。

だが、さしあたっての問題は今後、その娘をどのように扱うか…違うか?」

「はっ!」

まあ、怪我を完治させた後は、カルネ村に預ければ問題無い。

スレイン法国の襲撃で、あの村は今、男女共に働き手が足りていない。

仮面の魔法詠唱者(アインズ・ウール・ゴウン)からの頼みとすれば、無条件で受け入れてくれるだろう。

それに、件の娼館の背後(バック)は、王国で暗躍している巨大犯罪組織らしいじゃないか。

バハルス帝国貴族の家の者(…の設定)のセバスが、商品である娘を勝手に持ち去ったとなれば、例え其れが既に価値無き物としても、組織の面子とかで奪還に、しかも強引な手段で来るだろう。

 

「…しかも、近日中にな。」

「ぅ…」

「勘違いするな、セバスよ。

それは寧ろ、好都合だったかも知れないからな。

奴等と関わりが出来る訳だからな。

後は、連中をどう扱うべきか…

そうだろ?デミウルゴスよ。」

セバスの娼婦保護の報告に同席していたデミウルゴスに、話を振ってみた。

 

「はい、アインズ様。しかしながら件の者共、利用する価値も御座いません。

寧ろ、害にしか、成り得ません。

その娘を捕らえにきた者を締め上げ、拠点等の情報を聞き出す。

そして即座、此方から精鋭を送り、壊滅させる事を提案させて頂きます。」

 

 

◆モモンガside・了◆

 

≫≫≫

 

◆デミウルゴスside◆

八本指。

王国で暗躍する、巨大犯罪組織。

セバスの情報で、要人の暗殺から人身売買、更には麻薬の流通拡散まで、分野も規模も、幅広く活動している組織として認識している。

アインズ様は、私が この者達を無価値とした事に、少し意外な反応を見せられたが、同時に御理解もされた様だ。

ウルベルト・アレイン・オードル様は、『悪で在れ』を存在意義として、私を創造なされた。

しかし、私に課せられた…ウルベルト様が掲げた『悪』とは、あの様な愚物共が繰り広げている、犯罪行為等では断じて無い!

奴等の行いは『悪』で無く只の『害悪』。

そして それは、ウルベルト様が最も…偽善以上に忌み嫌う行為だ。

その様な存在を、私は決して認めない。

ですからセバス。此の度の君の行為は、確かに ややスタンドプレイ気味だったかも知れませんが、最終的にアインズ様が許可をしたのですから、私は特に何も言いません。

寧ろ、奴等を引き寄せる為の()を入手したと、今回は感謝してあげましょう。

そして その餌に喰い付いた者…経緯は どうあれ、あの娘は一時的とは云え、少なくとも現在はアインズ様の比護下に入った者。

その者に害為すならば、その運命は決まったも同じですがね?

 

 

◆デミウルゴスside・了◆

 

 

≫≫≫

 

◆ブレインside◆

今日も普段と同じく、コキュートス様の指導の下、リザードマン達やハムスケと戦闘訓練に勤しんでいた時、

「初めましてだな?ブレイン・アングラウス。」

「………………!!?」

セバス様と共に現れたのは、黒のローブを身に纏った

即座に理解したね。

此の御方こそ此の墳墓の主、アインズ・ウール・ゴウン様だと。

100万年 修行しようが、絶対に辿り着けない次元に座す存在だと。

 

「殿おっ♪」

ハムスケが嬉しそうに蛇尾を振り、反射的にリザードマン達と一緒に平伏する中、アインズ様は

「四六時中 地下に籠っていたら、気も滅入るだろう。

偶には外の空気を吸ってみないか?」

…と、聞いてこられた。

勿論、単なる気分転換の勧めなんかじゃ無く、何かしらの仕事…しかも其れなりにヤバイ任務を与えようとしているのは理解した。

そして転移で連れて来られた屋敷。

其処で俺は病人か?… 顔色が悪いと言うか暗いと言うか…

兎に角、このベッドの上で半身を起こしている、虚ろな表情をしている幸薄そうな嬢ちゃんを浚いに来る輩が近い内に現れるから、其れから守れと。

その際、賊は絶対に逃がさず可能な限り殺さず、取り抑えろと。

…多分 此れは、俺が使える人材かどうかの試験(テスト)も兼ねていたのだと思う。

しかし まさか、『近い内に』が護衛を言い渡された その日の夜だったのには、少しだけ苦笑だったよ。

 

≫≫≫

「お見事です…と、言ってあげましょう、ブレイン・アングラウス。」

「…申し訳有りません。1人、加減を誤ってしまいました。」

「いえ、上出来ですわ。」

結果、5人の襲撃者の内1人だけ殺っちまって、残りは何とかフルボッコで動けないに留めるに成功した。

それに対して、色っぽいと言うか何かエロっぽい改造メイド服の女…ソリュシャン・イプシロン様が、俺に労いの言葉を…しかし其れは本心で無く、単なる形だけな…感情の無い死人の様な眼を向けて掛けてくる。

悔しいが この女も、俺なんかより遥かに強いのが判る。

 

「此等はナザリックに持ち帰り、色々と問い質します。

しかし、ブレイン・アングラウス。

これで終わりでは無いわ。

此等が失敗したとしれば、次は この様な末端の者で無く もっと強力な…

そう、"六腕"とか言いましたか?

そう呼ばれる者が、来る可能性も有るります。

その者なら、もっと有益な情報を持っているでしょう。

その時は、今度は殺す事無く、確実に捕らえなさい。」

「…承知!」

…もしかして八本指、終わった?

 

 

◆ブレインside・了◆

 

≫≫≫

 

◆ユリside◆

「こうやって皆が揃うのも、何だか久し振りね。」

「っスね~?」

「お久し振りぃ~。」

ナザリックの外での任務に就いていたルプー、ナーベラル、ソリュシャンが一時的に戻ってきた。

プレアデス全員集合だ。

このタイミングは単なる偶然だが、折角だからと皆で お茶会をする事に。

 

「セバス様が私に仕える形となっていましたから、常に内心では恐縮・緊張してたわ。」

「アインズ様と まろん様の『様』呼び禁止は、正直かなりキツいです。

それから、街の蛆虫共が すれ違う度に気安く話し掛けてきて…あの御二方との同行で無ければ、消し炭にしていた処です。」

「まーまー。ナーちゃんは美人さんだから、しゃーないっスよ。

私の担当の村は、大した厄介事(イベント)も無くって、平和その物っスよね~。

滅びる要素、まるで無しっス!」

「…何で悔しそう?」

先ずは外に出ていた3人の近況。

皆が愚痴っているけど、ルプスレギナ、アナタのは間違っている!

 

ポリ…

 

その後も茶請けのスナックを摘まみながら、和気藹々と話す。

 

「処で、ユリ姉さんと まろん様は、どうなんですか?」

「ぶーーーーーーーっ?!…ケホッケホッ…」

そんな時、ソリュシャンが いきなり とんでもない事を聞いてきた!

しかも、紅茶を口に含んだ瞬間!

絶対に狙ってたでしょ!わざとですよね?

 

「ああ、それは私も気になっていました。

まろん様はエ・ランテルから度々、転移で帰還していましたし。」

「同じく!…で、実際どうなんスか?もう やっちゃったスか?

そのメロン…いやスイカをもみもみの ちゅうちゅうの ぱふぱふの ずりずりっスk(バシッ!)うゎらばっス!?」

このバカ狼のド頭に、チョップを落としたボクは悪くない。

 

「馬鹿な事を言わないの!

まろん様とは、健全な お付き合いをさせて頂いてるわ!」

「おおっ!とりあえずは くっついていたっスか!」

「まろん様の毎日の猛烈情熱アタック~?」

「…で、ユリ姉様陥落。

でも、姉様も実は満更じゃない。」

「「「おぉ~~~~~~~♪」」」

シズもエントマも、余計な事を言わないの!

 

「…で、それじゃ何処までイッたんすか?

流石に ちゅーは済ませてるっスよね?

勿論べろちゅー。」

「お馬鹿っ! まだ(おでこ)に軽くしか、されてないわよ!」

「小学生っスか!?

いーや、小学生でも今日日、進んでるガキんちょは最後まで【自主規制(どっかーん!)】っスよ!

も、もしかして まろん様って、ヘタr(ガンっ!)あじゃぱーっス?!」

…後頭部に掌低を撃ち込んだボクは、絶対に悪くない。

 

「あ痛たた…非道いっスよ、ユリ姉ぇ…

でも、それでアレっすか?

そんな日は悶々して、一晩中、朝までオ〇〇ー(ぴー)を…ストップ!タンマ!ちょい待ちっス!

私が悪かったっスから、デンプ〇ー・ロールは止めてっス!」

「ルプーも学習能力、無さ過ぎ。」

…全く!一晩中って、そんな訳無いでしょ!

寝る前に5回位しか、してないわよ!

 

「…でも、ユリ姉様と まろん様、何度か2人きりでBARに飲みに行っている。」

「「まっ♪」」

「何と?」

「ちょ…シズ? 何故アナタが それ知ってるの? 誰?副料理長(ピッキー)?」

「ぅぅん、エクレア。」

ファーーーーッ〇!!

あのペンギン、今度 会ったら、とりあえず ぶん殴る!

 

「おおっ!2人っきりで飲みに行くなんて、中々に大人な付き合いじゃないっスか?

まさか?! まろん様がユリ姉を酔い潰して、その儘お持ち帰りとか?

…いや、待てよ?

もしかしてユリ姉が まろん様を潰して お持ち帰r

「まろん様直伝!スラム・ダンク!!」

 

ごんっ!

 

「ぬわーーーーーーーーーっス!?」

「成る程。まろん様から あの技を教わる程には、進んでいるのですね。」

 

 

◆ユリside・了◆

 

≫≫≫

 

◆アウラside◆

アインズ様の指示で、トブの大森林西部を支配しているという、西の魔蛇なるモンスターと接触する事となった、私とマーレ。

其れらしい簡素な建物に、その魔蛇(ナーガ)は居た。

アインズ様が言うには、リザードマンと違って知能は低い可能性大だから、会話が成り立たない場合は殺しても構わないと言われたけど、コイツは意外と其れなりに脳味噌を持つ慎重派だった。

私達を警戒してか、最初は不可視化の魔法で、身を隠していたしね。

私には通じなかったけど。

 

≫≫≫

「それじゃ、お主達の王様とやらに、会わせて貰おうかの?」

話し合いは、スムーズに進んでいった。

実力的には、本当にハムスケと互角かなぁ…つまり私達よりかは断然弱いけど、一応、平和的に話を進められるなら その方向でって、アインズ様にも言われてるからね。

このナーガも多分、既に私やマーレとの力量差を見抜き、且つ、私達の来訪目的を理解してるから、敢えて対等に接してる感じ?

内心、ガクブル?

兎に角この西の魔蛇…リュラリュース・スペニア・アイ・インダルンという少し名前の長いナーガを、ナザリック地下大墳墓に案内する事になった。

 

 

◆アウラside・了◆

 

≫≫≫

 

◆シャルティアside◆

「此処で、ありんすね。」

アインズ様の命により、東の巨人を名乗る者との接触・交渉に、トブの大森林東側に赴いた私。

その住み家らしい洞窟を見つけ、同行していた2人の吸血鬼の花嫁(ヴァンパイア・ブライド)と共に、その中へと入って行くのでありんした。

 




①何時の間にか、それなりに進展していた まろんxユリ。

②ユリ姉様は原作内でもトップクラスな お胸様の持ち主だそうです。
 
③まろんサンは、決してヘタレなんかじゃないです。
現実(リアル)の方で()()()()()()ですから、焦らずガッつかずな余裕有る紳士対応が出来るだけです。
 
▼▼▼
次回予告『禁句』(予定)
乞う御期待!感想よろしくです。


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東の巨人と西の魔蛇

 
アウラ&マーレが、西の魔蛇と接触していた頃…
 


◆シャルティアside◆

ぅ…や、やってしまったでありんす…

アインズ様の命により、東の巨人を名乗る者との同盟交渉に赴いたは良かったでありんすが、それらしき洞窟に入った後…

 

≪≪≪

「うが…ニンゲン…?」

「いや、チガウ…」 

洞窟の中、其処に居たのはトロールが数匹。

成る程。どうやら東の巨人とやらは、トロール種の様でありんすね。

アインズ様は『恐らく東の巨人とは、オーガかトロールであろう』と言われていたでありんすが、流石はアインズ様。

真、その通りだったでありんす。

 

「オマエ達、何者?何ヲシニキタ?」

 

≫≫≫

「ウ…」

「ガ…」

「さあ、お前達のボス、東の巨人とやらの処に、案内するでありんす。」

「ゴ…ゥ…」

せ、正当防衛!正当防衛でありんすよ?

アインズ様は極力 平和的に話を進めろと言われましたが、これは いきなり向こう側から問答無用で襲ってきたのだから、致し方無い…ノーカンでありんす!

殺してないし、少しだけ…ほんの少し痛め付けただけだから、セーフでありんす!(必死)

 

 

≫≫≫ 

〆たトロールに案内して貰った洞窟の最奥。

其処には、沢山のトロールが。

そして その中に、一際 体が大きなトロールが1体。

他のトロール共は腰巻き1つだけな格好の中、皮製の胸当てやら大剣やらを装備している此奴こそが、東の巨人と見て間違い無いでありんしょう。

 

「ンア? 何ダ、オマエハ?

コノ様ニ、一体 何ノ用ダ?」

「ぐ?」

私達に気付いた、このトロールが話し掛けてきんした。

ぐ。何と言いんしょうか…凄く、個性的な名前でありんすね?

良く言えばシンプルな名前でありんすが、少しシンプル過ぎな気がしんす。

しかし以前、名前で差別するのは駄目だと、アインズ様も仰有っていたでありんす。

此処は、触れずに流すのが、ベストでありんしょう。

 

「初めまして、東の巨人、ぐ殿。

私はナザリック地下大墳墓が主、アインズ・ウール・ゴウン様の遣いで参った、シャルティア・ブラッドフォールンと申しんす。」

「「「「「ゲヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャ!!」」」」」

はい? 何か私、面白い事を言いんした?

 

 

◆シャルティアside・了◆

 

≫≫≫

 

◆モモンガside◆

えーと…状況を解り易く説明すると、土下座。

玉座の間にて、アルベドを筆頭に階層守護者達が、俺に乞う垂れているのだ。

 

「アインズ様。この度のシャルティアの失態、取り下げる事は出来ないでしょうか。」

「私も、シャルティアと同じ立場だったら、同じ事になっていました!」

「ぁの…ぇと…ぼ、僕も、同じです。」

「コレハ シャルティアノ忠義ノ証シニ、他ナリマセヌ。。」

「アインズ様…何卒、今回ばかりは御慈悲を。」

「み、皆、頭を上げてくなさんし!

理由は どうであれ、失態は失態でありんす!」

一体 何事かと言えば、シャルティアに命じていた、トブの大森林東部を支配している東の巨人との同盟交渉。

それは その東の巨人…とか言うトロール以下、その手下を皆殺し。

交渉不成立に終わったのだ。

何故、そうなった…

それには先ず、トロールの価値観を知っておく必要が有る。

彼等は名前が短ければ短い程、勇敢な名前とされる。

逆に長い名前は、臆病者の証しとしているのだ。

そう…シャルティアは、その『ぐ』と比べると結構長い自分の名前を嗤われた…で無く、俺の名前(アインズ・ウール・ゴウン)を臆病者の名として集団で嘲笑された事に壮絶激昂(ブチキレ)

同行していた吸血鬼の花嫁(ヴァンパイア・ブライド)共々に、その場のトロール全てを瞬殺惨殺皆殺しにしたと言うのだ。

そして その経緯を知った守護者達が揃って俺に平伏、シャルティアに対する恩情を求めてきたのだ。

 

「ふむ。シャルティア、そして皆の考えは理解出来た。

シャルティアには…そうだな。

後日、改めて沙汰を言い渡そう。

とりあえず…気持ちを切り替え、今回の件を引き摺る事を、一切禁じる。…以上だ。」

恩赦を求める守護者と、裁きを求めるシャルティア。

俺的には全然 無問題。

寧ろ、理由は(アインズ様)至上主義だろうが、それでも守護者達の優しさや一体感を見る事が出来て、大満足。

だけどシャルティアも、何も無しじゃ、納得いかないのだろうな。

何でも…本当に少し軽めで良いから、何か罰を与えた方が良い?

 

「皆の前で椅子にして、モモンガさんが座るとか。」

いや、それってシャルティア的には寧ろ、御褒美じゃいですか?

それに何だかアルベドがキレそうだし?

てゆーか もしかしなくても、俺が罰ゲームでしょ?

 

 

◆モモンガside・了◆

 

≫≫≫

 

◆アウラside◆

「…借りとくでありんすよ。」

シャルティアは私達に そう言うと、玉座の間を出て行った。

本当、今回に限っては別に気にしなくても良いのにね。

 

「それでは次は、アウラとマーレの報告だな。」

「「はい、アインズ様。」」

そしてシャルティアの次は、私達が担当した、西の魔蛇について話す事に。

西の魔蛇リュラリュース・スペニア・アイ・インダルンは今、第6階層の闘技場で待機させている。

謁見の為、アインズに態々その場に足を運ばせるのと、この者を玉座の間に招き入れる…どちらがベターかと悩み迷った。

だからデミウルゴスに相談、 

「…そうですね。玉座の間に入るには、最低限の品格が要求されます。

その意味では、あの西の魔蛇を名乗るナーガ、身なりが些か貧相過ぎますね。

大丈夫。アインズ様なら、御理解して下さいますよ。」

そのアドバイスに従い、前者を選んだんだ。

 

≫≫≫

「ははーーーーーーーっ!

このリュラリュース・スペニア・アイ・インダルン、アインズ・ウール・ゴウン様に忠誠を誓わせて貰いますぞ!」

「「「え?」」」

そして闘技場。

其処で待っていたリュラルュースは、やって来た私達…で無くて、アインズ様の御姿を見た瞬間、いきなりの平伏。

 

「ぁ…ウラ殿、マーレ殿! 御主達は儂を、何という御方と引き合わせようとしたのぢゃ?!」

更には半泣きで、私達にクレーム。

え?何? 私達、何か やっちゃいました?(©孫)

 

≫≫≫

「…それではアインズ・ウール・ゴウン様!

今後とも、宜しくお願い致しますじゃ!」

「ぇーと、あ、はい…」

アインズ様は最初、力量(レベル)に関係無く、西の魔蛇とは対等な同盟関係を結ぼうと思っていた。

流石はアインズ様、懐が大きい!

リュラルュース以下略も、自分が私達より既に弱い…アインズ様が自分より遥かに強いのを理解していながら相手(アインズ様)が その様な お考えならば断るのは却って不敬だと、敢えて それに合わせる心算でいたらしい。

しかし、いざアインズ様と顔を会わせてみると、その想定外過ぎる、圧倒的過ぎるレベル差に愕然。

横に並ぶなんて畏れ多いと、自ら下、従属を申し出たのだ。

まあ、それが普通なんだけどね。

…で、私達には

「あれ程 強大な…偉大過ぎる御方とは、聞いておらなんだぞ!」

…と、どうして最初にアインズ様の素晴らしさをきちんと伝えなかったと、文句たらったら。

ん~、ゴメンナサイ?

兎に角こうして、西の魔蛇、並びに その手下達は、アインズ様の配下に加わったのでした、まる

 

 

◆アウラside・了◆

 

≫≫≫

 

◆まろんside◆

「まろん様、せバス様。どうやら大物が、釣れたみたいですね。」

せバスが保護した娼婦の少女、ツアレ二ーニャ。

元々 違法な娼館の出身の彼女から、()()と情報が漏れる…最終的には、その大元に繋がると危惧した犯罪組織・八本指は、即座に彼女奪還を目論んだが、それは彼女の護衛の任務に就いていたブレインが一蹴。

しかしソイツ等は雑魚で、ナザリックに送って色々と聞き出そうとしたが所詮は末端、大した情報は得られなかったそうだ。

その辺りは八本指が知る由も無いが、今度は奴等さんも絶対の成功を必須として、それ専門分野…しかも最大戦力を差し向けると予測。

ならば此方も、如何にナザリックでの鍛練で飛躍的に成長(レベルアップ)したとは云え、只の人間であるブレイン1人では少し不安だと、護衛としてミスリル級冒険者チーム ブラック&ゴールドのメンバーの1人、()()()()を雇ったのだが…

 

「成る程。彼等が、『六腕』と呼ばれる者ですか。」

「3人しか居ないぜ?」

ブレインが言うには、八本指の中でも特に荒事に長けた…通称・六腕と呼ばれる、一応は()()らしい。

フード付きのマントを羽織った、軽装の男。

モモン(モモンガさん)以上の重装な黒鎧。

そして筋肉(ハゲ)

 

「まさか、貴様が雇われていたとはな、ブレイン・アングラウス。

そして そっちの紅い眼。

最近、何かと評判なミスリル級冒険者マカロン…だな?

成る程。雑魚じゃ相手にならなかった訳だ。」

「そりゃ、どーも。

しかし俺も、まさか お前さんが出張って来るとは思いもしなかったよ、ゼロ。」

悪い笑みを溢しながらの禿…ゼロに、ブレインも苦笑しながら受け応える。

 

「前に此処を襲ってきた奴等は どうした?

役人に突き出した訳じゃ、無さそうだが?」

「さあ?何処かで死んでるんじゃないか?」

実際、尋問の果てに死んでしまったので、その死体はアンデッドやら その他マジックアイテムの素材として、有効活用しているそうだ。

 

「テメェ…!ふん、まあ良いさ。素直に女、連れてこい。

そっちも面倒事は避けたいだろ?

そうすりゃ俺達も、荒事無しで帰ってやる。」

俺の少し小馬鹿にした言い種に、少し苛つきながらも、ゼロは自分達の要求をストレートに言い放つ。

 

「仮に『御断りします』と言ったら、どうなりますか?」

「その時ゃテメェ等 皆殺し。

この屋敷の貴族の嬢さんも、一緒に連れ出すだけだ。」

続くセバスの問いに、下卑た笑いを溢すゼロ。

逆らうなら、ソリュシャンも一緒に お持ち帰りすると…そう言ってきた。

 

「成る程。ならばツアレーニャを差し出せば、貴方々は本当に、私達に危害を加えず立ち去ると、そう仰有られるのですか?」

「ああ。勿論だぜ。」

せバスの質問に肯で答えるゼロ。

 

「「だが断る。」

     ります。」

「何だと!?」

しかし俺達は それに、否で応える。

 

「き、貴っ様!」

「巫山戯ているのか?!」

「舐めやがって…!」

すると、ゼロの後ろ、ずっと黙りだった2人が声を荒げ、ゼロも今迄の余裕の笑みから一変、怒り全開な表情に。

 

「もう良い!

そんなに死にたいなら、望み通り地獄に送ってやる!

サキュロント!お前は爺を、ペシュリアンはブレイン・アングラウスを殺れ!

俺は あの、マカロンをぶっ殺す!」

そして殺気を露な抹殺宣言。

 

「…ゼロよ。俺は お前が、ブレイン・アングラウスの相手をすると思ってたのだがな。

まあ、俺は どっちでも構わんが?」

「ふん…奴は武闘家と聞いたのでな。

少し興味が湧いただけだ。

今回は譲ってやる。剣士同士、仲良く戦れや。」

 




 
次回『vs闘鬼』(予定)
感想よろしくです。
 


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シャーマニック・アデプト

 
前回ラストの続き、六腕との戦闘は中頃にて。
…先ずは、
 
 
▼▼▼
 
『ぷれぷれぷれあですっス!』
 
▼▼▼
 



◆ユリside◆

「ん~、こんなもんっスかね?」

「ええ。問題無いかと。」

「………………。」

「ユリ姉様、カッコい~ぃ♪」

「そこに痺れる、憧れるー。」

まろん様は今、冒険者マカロンとして、セバス様とソリュシャンのアシストという任務…というか仕事をされている。

これが一段落着いたら、リ・エスティーゼ王都で でで、デート…する予定だったのですが、何処で情報を仕入れたのか、一番ダメなヤツ(ルプスレギナ)に知られていました。

 

「エクレアからっスよ。

ユリ姉~、BARでアイツが居る時に、そーゆー約束の話とかしちゃダメダメっスよ。」

…あのペンギン、今度 顔を会わせたら やっぱり ぶん殴る。

それで色々と…主に服装について、頼んでもないのに勝手にアドバイス…と言うか、着せ替え人形にされていたのでした。

まろん様からは、『スカートは止めとけ』と言われていたので、その辺りを踏まえてルプーに色々と着せられ、最終的には…ん、これは、悪くないですね。

 

「次は、髪型っスね。」

え? そう言うとルプーはボクの夜会巻きを解くと、

「先ずは、後ろで2本に束ねて それを交差させて…」

何をしようとしてるの?少し不安。

 

「それを更に頭の上でクロスさせて、前側に垂らして…」

…これって、もしかして?

 

「ヘアバンドで固めて…はい、夜会巻きをヨルさん髪にしてみたっス!」

「「「おお~♪」」」

遊んでない?遊んでないよね?!

…でも、これは、良いかも?

 

「それじゃ、次。とりあえず眼鏡(ほんたい)外して…」

本体言うな!ボクの身体は附属品(オプション)か?!

 

「はい、これで外面は、完成っス!」

「外って…まだ何か有るの?」

「ちっちっち、ユリ姉…解ってないっスね~?

寧ろ これからが本番!

勝負下着のコーデっスよ!」 

は…はあぁあ~~~~~~~ぁっ??!

 

「大体ユリ姉、下着って色気も何も無い、弩ノーマルな白しか持ってないじゃないっスか!?

それじゃ まろん様に失礼極まりないっスよ!」

「だ、だから、私と まろん様は、まだ そんな関係じゃないから!

健全な!清らかな関係よっ!」

「ハァ…それじゃ何時そーゆー関係になるんスか?

こーゆー時こそが、チャーッンス!…じゃ、ないっスか?

そ・れ・で!いざ その時に飾りも何も無い、極々普通な白ブラ白パンだったりした日にゃ、まろん様も萎え萎えっスよ!」

「ユリ姉、確かに普通な白は、無いと思いますよ?」

な、ナーベラル、貴女も?!

 

「じゃーん! そんな訳で、この せっくすぃーな逸品!

これをユリ姉が身に着ければ、まろん様も そりゃもう、びんびんっスよ!」

  

 

◆ユリside・了◆

 

≫≫≫

 

◆ブレインside◆

 

ぐしゃぁっ!

 

「ぁ…ぁあ…?」

せ…セバス様、エグ過ぎる…

セバス様の放った強烈な…突き上げる様な前蹴りが、六腕の1人サキュロントの股間にマトモに直撃!

此方からすれば、生け捕り前提な戦闘。

確かに死んでないだろうけど、あれは()としては死んだも同然…絶対に再起不能だぞ?

 

「本来なら彼処から更に、踵落としに繋げるのですがね。」

鬼かっ?!…ですよ!

 

「ぅ…これ程…とは…!?」

そして俺も、六腕の1人、ペシュリアンを片付けている。

噂に聞いた、糸の様な変幻自在な刃を操る男。

自分に自信を持っていたのだろう、一方的と言うか、一撃で身動き出来なくなった事に かなりのショックを受けている様だ。

これは俺も驚いている。

ナザリックでの鍛練で、以前と比べて かなりレベルアップしている自覚は有ったが、まさか六腕の一角を此処まで圧倒出来るとは思わなかった。

 

「運が悪かったな、修行環境の差だ。」

「……………………っ!」

俺の台詞に何か言いた気に反応するが、黒鎧の男は この後 何も声に出せず、意識を失った。

さて…後は六腕のリーダー、ゼロと まろん様だが…

 

「クソが! 巫山戯けやがって!!」

  

ぶん!…ぶぅん!

 

ゼロの繰り出す拳や蹴りを、まろん様は全て最低限の動きで躱している。

煽ったり余裕な表情を見せたりで無く、無言無表情でだ。

しかし それが却って余裕な態度に感じたのか、頭に血が昇り、冷静さを欠いたゼロの攻撃は徐々に破壊力重視な大振りに。

普通の相手なら掠るだけで致命傷になりそうな一撃だが、それは尚更に避け易く、まろん様には届かない。

 

「チィイッ!」

逆に完全に余裕を無くしていたが、1周回って落ち着きを取り戻したのか、ゼロが1度バックステップで距離を空け、息を整え始める。

 

「これなら、どうだ!」

 

轟ォっ!

 

そして繰り出したのは、拳圧の衝撃波…所謂 飛び道具、飛ぶ拳撃だ。

 

バスゥッ!

 

「な…?!」

「…その程度か?」

しかし まろん様は、この不可視の攻撃を見切り、今度は躱す事無く正面から胸元で受け止めた!

当然だが身体は微動だにしない。

 

「テメェ…本当にミスリルか?」

此処で漸く、ゼロが まろん様…マカロンの冒険者認識証(プレート)について問い質す。

いや、今更だろ?

そんな認識証(いろ)なんかで実力決め付けてるなよ。

 

「クソが…ぶっ殺してやる!」

怒りに顔を歪め、独特な構えを取るゼロ。

 

(パンサー)(ファルコン)(ライノセラス)!」

あれは確か、シャーマニック・アデプト…だったか?

アイツの身体中に刻まれた動物を象った刺青、その獣の精霊を呼び出し憑依させ、その象徴(シンボル)に応じた肉体強化を図るスキル。

 

猛牛(バッファロー)獅子(ライオン)!」

合計5体の精霊を呼び出し、腕力(パワー)敏捷性(スピード)身の硬さ(ディフェンス)精神力(メンタル)が格段にアップしたゼロ。

 

「グハハハ…これで貴様も、終わりだ…!」

余裕を取り戻したドヤ顔決めてるが…

俺は この前 模擬戦(スパーリング)で見せて貰ったから知ってるが それ、まろん様も似た様なの使えるからな?

 

「スレイプニール!シームルグ!ハンババ!」

「な…?」

「ベヒーモス!ドラゴン!キリン!アスラ!ディデァーラボッチ!メタリックゲル・アローン!」

「…にぃい~ぃ??!」

しかも このヒトが喚ぶの、動物霊じゃなくて魔獣とか神獣とか魔神だから。

…にしても、同系統?の技で対抗するなんて、まろん様って意外と負けず嫌いですか?

 

ゴゴゴゴ…

 

「ヒッ…」

自分の切り札の まさかの上位互換、その桁違いな威圧感に、たじろぐゼロ。

先程の自信に満ちていた顔が、今度は恐怖に引き攣る。

 

「う…うがァぁあっ!!」

それでも逃亡の選択肢は無いのか、半ばヤケクソ気味に強化された豪拳を振るうが、

爆燃拳(バーン ナックル)

 

バゴォッ!

 

「ぎ…ぃゃぁぁあああ~~~っ!??」

まろん様は それに合わせる様にカウンター。

爆発系魔法?を纏った拳を放つ。

両者の右拳が衝突し、結果、ゼロの拳が…いや、右腕が肩から下、肉と骨と血が爆散した!

 

「腕え? 俺の、俺の腕ぇぇえ?!」

普通の人間でもそうだが、修道僧(モンク)にとって腕…しかも利き腕の喪失は致命的らしく、『闘鬼』の二つ名を持つ大男が、血が吹き出る肩口を押さえながら泣き狼狽える。

しかし それを憐れむ程、まろん様は甘くない。

 

ガシッ…

 

ゼロの背後(バック)に廻ると(ボディ)をガッチリと捕らえ、

 

ぶんっ!…ダダンッ!

 

「素晴らしい…見事なブリッジです。」

セバス様も絶賛。綺麗な弧を描いて後方に投げ付ける…まろん様の大技、じゃーまんすーぷれっくすほーるどが炸裂!

 

「~~~~~~~…」

脳天をまともに床に痛打したゼロは、白目を剥いて気を失う。

 

「とりあえず、終わりですか?」

「…だと、良いがな。」

…まろん様?

 

≫≫≫

「これ…は?」

「そんな気は、していたさ。」

俺達は その後、ツアレ二ーニャの様子を見に行ったが、

「まろん様セバス様。其方も片付いたみたいですね。」

「はい。お互い様にね。」

ツアレ二ーニャの部屋。

其処には、ベッドの上で静かに寝息を立てているツアレ二ーニャ。

そして、貴族御用達なドレス姿のソリュシャン様。

 

「「…………………っ!?」」

そして身体が麻痺してるのか、床で踞っている2人の男女と、

「…此方は?」

「申し訳有りません。

此の者、どうしても看過出来ぬ言葉を発しましたので…」

そしてそして、首無し死体が1つ。

 

「やはり あのハゲ、此方の部屋にも刺客を向けていたか。」 

あー、そーゆー事か。 

彼女を渡せば何もせずに帰るって、大嘘だった訳だ。

流石は八本指だ。

 

「この者達も、六腕と名乗っておりました。」

それで、此方はソリュシャン様1人で片付けたのですね。…って、六腕全滅?

 

「それでは この者共…私達が片付けた者達と纏めて、ナザリックに連れて帰りましょう。

今回は幹部クラスな様ですから、前回より大きな情報を得られる筈です。

まろん様とブレインさんは、この儘ツアレニーニャの護衛を宜しくお願いします。」

「了解したよ。」

「承知致しました。」

そう言うとセバス様とソリュシャン様は、この場に転がる死体含めた3人、そして俺達が倒した3人を肩で担ぐと、転移門(ゲート)を潜ってナザリックに帰還していった。

 

 

◆ブレインside・了◆

 

≫≫≫

 

◆ユリside◆

「これで まろん様攻略も、バッチシっス!」

う…ルプーに無理矢理に下着渡されたけど、こんなの絶対に無理!

こんな、黒くて紫で面積少なくて透け透けで後ろが紐だけな ぱんつなんて、履ける訳が無いじゃない!

こんな明らかに えっちいの、逆に まろん様が引いたりしたら どーするのよ?

 

「それならナーちゃんみたいなウサギさんが良っスか~?

それともシズちゃんの迷彩柄?エンちゃんの牛さんぱんつ?」

「お肉の ぱんつ~♪」

全部 却下よ!

と言いますか、どうして貴女達は、そちら方面に話を持っていこうとするのですか?

  

「そりゃ 面白いからに決まってるっス! 2人には早くゴールインして、ユリ姉に幸せになって欲しいからに決まってるっスよ。

だからこその、既成事実成立っス!」

…何だか凄く、台詞に違和を感じるのですが?

 

「ユリ姉が真面目なのは解るわ。

でもガードが固過ぎだと、それだと まろん様が離れていく可能性が…」

うぅ…た、確かに!でも、でも…!

 

 

ユリ。今、大丈夫か?

え? まろん様?

この時、まろん様からの伝言(メッセージ)が着て、ルプー達との会話は中断。

え? 多分、明日の夜には戻れる?

え? デートは その翌日?

え? お、お、お、お泊まりぃ?!

日帰りじゃなかったのですか?

はい? アインズ様には既に、許可を貰ってるぅ?!

え? ちょ…ちょっと待…

 

≫≫≫

「成る程。それで、私に相談を、と。」

「はい。どうしても妹達に聞くのはアカン気がしまして…駄目でしょうか?」

「とんでも無いわ。まろん殿は御方と同格な、アインズ様の大切な御友人。

その様な方に御奉仕するとなれば、不作法…失敗は許されない事よ。

だから寧ろ、よくぞ この私に教えを乞いに来た!…と言ってあげるわよ。」

「ご…ほ…

ぃぇ、そういう訳では…」

「大丈夫。私もアインズ様と最後まで至した訳では無いから、経験者として語れる事は無いけど、種族(サキュバス)としての知識…

そう! こんなプレイや そんなプレイに あんなプレイ、教えられる全てをユリ、貴女に教えてあげるわ!

ええ!お薦めな下着も込みで!」

ど…どんなプレイなのですか?!

 

「嗚呼、ユリは まろん殿からの御寵愛を賜るのね!羨ましいわ!

私も早く、アインズ様から…くふぅ!♡」

ちょ、戻ってきて下さい、アルベド様?

  




 
次回『王都デート』(予定)
感想よろしくです。
 


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風になれ!

皆さん お待ちかね?…の、アイツが登場。
そして終盤は この小説では初めて?の3人称視点で語ります。
 


◆ユリside◆

 

ドッドッドッドッドッドッ…

 

「どーよ?」

「………………か、格好いい、です?」

まろん様とのデート。

ナザリック地下大墳墓本霊廟前に まろん様が持ち出してきたのは、所謂自動2輪(オートバイ)

ボクはバイクの知識は全く持っていませんが、そんな素人でも一目で分かる、重厚感溢れるパワー系な鈍銀色の機体です。

成る程。スカートは止めておけと言うのは、そういう事でしたか。

 

「燃料は魔力な、環境に優しいマジックアイテムだ。

因みに このどどど音も、雰囲気を出す為の擬似音(フェイク)(音量控えめ)な。」

…らしいです。

 

「ほい。」

まろん様がボクにヘルメットを渡す。

あ、こういう意味でも、夜会巻きをヨルさん髪にしておいたのは正解でしたね。

ルプー、ナイスです!

 

「よし、それじゃ行きますかね。」

「…はい!」

そして後部座席に跨がり、やはりフルフェイスのヘルメットを被った まろん様の背中に ぴったりと身を寄せて、

 

ブォォオッ!

 

「しっかり掴まってろよ!」

「はぃいっ?!」

ボク達は出発するのでした。…って、速い速い速いぃっ!?

 

 

◆ユリside・了◆

 

▼▼▼

 

◆まろんside◆

 

ドッドッドッドッドッドッ…

 

「大丈夫か? スピード、落とすか?」

「いえ、慣れてきたから大丈夫です。

風、気持ち良いです。」

草原を軽快に飛ばす俺達。

初めてのバイクだからか、最初は及び腰だったユリも、慣れてきたら この通り。

ふっ…何人たりとも、この疾風(かぜ)の爽快感には抗えないのさ。

 

ギュゥ…ずっしり…

 

………………………………。

…てゆーか、俺も凄く気持ち良い。

今はユリが ぴったりと後ろから抱き着いている形なのだが、その立派な御胸様が ぴったり、俺の背中に張り着いているのだ!

その重量感たっぷりも柔らかくな感触に ついつい、全ての感覚を背中に集中させてしまう。

嗚呼、出来る事なら この儘 背中になってしまいたい!

 

「…………………………。」

「まろん様?」

「…いや、何でもないよ。」

…それにしても、想定してたけど…解らなくは無いが、それでも少しだけ不快だよ、モモンガさん?

 

「まあ、それでも甘いよ、モモンガさん…

転移門(ゲート)》!」

 

 

◆まろんside・了◆

 

▼▼▼

 

◆モモンガside◆

バイクを駆るまろんサンの前の空間に、突如 現れた黒い"穴"。

そして その穴…転移門(ゲート)に、バイク毎 突っ込む まろんサンとユリ。

 

「…って、気付かれた?逃げられた?」

「上空からの"視線"に、気付かれたのでしょうな。」

「あらあら?」

「バレバレ~?」

セバスの言う通り、遠隔視の鏡(ミラー・オブ・リモート・ビューイング)で覗いていたのがバレた?

それで、転移で逃げたという訳ですが…

 

「ふむ。鏡に気付かれるとは、流石はアインズ様…至高の御方々の御友人(フレンド)ですね。」

いや、言ってる場合じゃないからな?

2人の様子を覗いていたのがバレたんだ、まろんサンが帰ってきたら、絶対にOHANASHIが始まるぞ?

その時は当然、今この部屋に居る全員、道連れだからな?

 

「え゙ぇっ?!誰っスか?

2人のイチャコラムフフを皆で覗こうなんて、興味深々で言い出したのは?!」

…確か、お前(ルプスレギナ)じゃなかったかな?

 

「うぐぐ…で、でも、まだ終わりじゃないスよ!…ですよね、セバス様?」

「はい、今回のデート。まろん様は王都にて美味しい料理や品質の良い貴金属を扱う店、そして綺麗な夜景を眺められる場所に高級な宿…その他諸々を、王都で情報収集している私に その下調べを依頼されました。

故に、この先まろん様の向かわれる場所は、ある程度は予測が出来ます。」

その通りだ!

どうせOHANASHI確定なら、2人の一部始終、最後まで見届けてやりますよ!

知らないのですか? 非公式ラスボス大魔王からは、逃げられませんよ!

 

「私達の今後の、参考とさせて戴きましょう。

そうですよね?アインズ様♡?」

 

くねくねパタパタパタ…

 

あ…は、はい…そうですね。

…って無論、夜の情事なんかは観たりしないぞ?

 

  

◆モモンガside・了◆

 

▼▼▼

 

◆まろんside◆

 

~って、モモンガさんは考えてるんだろうが、甘い!

多分は今頃、遠隔視の鏡(ミラー・オブ・リモート・ビューイング)の視点を王都に移し、俺達を探しているだろう。

…だがしかし!

 

「まろん様?此処は?」

「バハルス帝国の帝都、アーウィンタールだ。

それから この先は、俺の事はマカロンと呼んでくれ。

あ、何なら"まーくん♡"でも良いぜ?ユリたん♡」

 

≫≫≫

帝都はエ・ランテル以上の賑わいを見せている。

バイクをアイテムボックスに収納して、その街並みを2人で歩いてると、巡回警備の帝国兵に呼び止められ…

 

「王国の冒険者か。

てっきり、南方人かと思っていたが…

まあ どちらにしても あまり、騒ぎは起こさんでくれよ?」

「了~解。別に、ケンカしに来た訳じゃないさ。

単なる観光。デートだよ、で・え・と♡」

「爆死ね!」

俺やユリたんみたいな黒い髪は、この世界では『南方』と言われる地域の人間の、最たる特徴。

そして その南方とやらは、王国や帝国とは殆んど交流が無く、情報が無い故に何やら野蛮人の国みたいなイメージが根付いているらしい。

そんな訳で俺達も、その南方の人間と思われ、所謂 職質みたいなのを受けた訳だが、入国審査証明書(偽造)や王国の冒険者プレートを見せて、その身を明かしたり。

 

「…それなら この先、巨大な鷲獅獣像(グリフォン)が有る交差点を左に曲がった少し先の…」

ついでに この都市の、良い店なんかを教えて貰ったり。

 

「ああ、それから今日は、闘技場(コロシアム)で"武王"の王座戦(タイトルマッチ)が行われるんだ。

折角 帝国に遊びに来たなら、見に行って損は無いと思うぞ?」

 

≫≫≫

「…ふん、()()()は私が金で買った奴隷です。

それをどの様に扱おうが、私の勝手…況してや見ず知らずな者に、どうこう言われたくは無いのですが?」

「…だとしても、せめて日中の往来では、控えて欲しいモノだな。

見ていて不快だ。」

…何事かと言えば、先程の兵士に教えられた、グリフォン像の有る交差点…この街では待ち合わせの定番な場所らしい…に行ってみると、性格の悪そうな顔の男が、みすぼらしい…と言うか、襤褸を纏った3人の女性を、足蹴虐待している場面に出会したのだ。

その光景、周りの人間もドン引きして見ているが、誰も止めに入ろうとする様子も無く。

仮にコレが あの覗き骸骨なら冷たくスルーしていた処だろうが、残念ながら俺には まだ、それを見て見ぬが振り出来ない甘さ(ヒトのココロ)が残っていた様だ。

 

「それに、奴隷だろうが…ついでにエルフだろうが何だろうが、女性には紳士的に接する物じゃないのか?

あ、それが出来ないから、普通に相手が見付からず、奴隷なんか買って()()してるんだよな?www(プークスクス)

「な…?!」

そんな訳で其処に介入、この性格ワル男と口論勃発。

…尚、たっちサンだったら多分、いきなり飛び蹴り(ライ〇ーキック)が炸裂してたと思う…兎に角、それ程に酷い場面だったのだ。

 

「き、貴様!王国の冒険者…しかも、ミスリル風情が大きな口を利くのが、余程 不快なのですが?!」

そして、本当に普通の異性には全く相手にされないのが大当たりだったか、顔を真っ赤にして声を荒げてきた。

 

「そもそもキミは、私を誰だと思っているのだね?」

知らん。

 

「貴様も王国の冒険者なら王国最強戦士、ガゼフ・ストロノーフは知っているだろう!

私は そのガゼフに匹敵…『帝国のガゼフ・ストロノーフ』と謂われる、"天武"エルヤー・ウズルスだぞ!」

…知らん。てゆーかガゼフストロノーフって、カルネ村の時のアレの事で良いんだよな?

あの無能(役立たず)に匹敵って、それ即ち雑魚じゃないのか?

ブレインもアレを目標にしていたが、アレが『〇〇(どこどこ)XX(だれだれ)』な強者扱いって、この世界、本当にレベルが低い、低過ぎるぞ?!

大体、この冒険者の認識標(プレート)でしか相手の強さを判断、実力を計れない時点でコイツも雑魚確定なのだけどな。

 

≫≫≫

「お前は さっき、ケンカをしに帝国に来た訳じゃ無いとか言ってなかったか?」

「…成り行き?」

その後の一触即発な空気の中、騒ぎを聞き付け駆け付けたのは、先程 俺達に職質してきた兵士だった。

ジト目で睨まれるが、勿論 俺も、デートの最中に路上戦闘(ストリート・ファイト)なんて心算は更々無く。

しかし このエルヤー何とかの方は、自分にケチを付けられたと戦る気、否、殺る気満々。

 

「私闘は法で禁じられているだろうが!」

「チィ、仕方無いですね…!」

しかししかし、この兵士の一喝に、エルヤーは渋々と その怒気殺気を鎮める…

「私闘で無いなら、問題無しですよね?

場所を変えましょう。」

…等という事は無く、どうしても俺を痛い目に遭わせたいらしく、何処ぞへと誘い出した。

尤も俺は、別に どうでも良い話。

多少主義が違うだけで、殺り合う心算も無い。

というか、これ以上コイツと関わりたくない。

 

「…それとも、逃げますか?」

安い挑発だな。乗らないよ。

そんな事より俺は早く、ユリたん♡とイチャコラなデート、再開したいんだよ。

分かった分かった、俺の不戦敗で構わないよ。

 

「…それなら、こういうのは どうですか?

アナタが勝てば、この奴隷(エルフ)共は解放しましょう。

その代わり、私が勝った場合、一晩で良いですよ?

そちらの美しい お嬢さんを、私に差し出しt

「あ゙ぁッ??!」

 

…ブチッ!

 

 

≫≫≫

「《伝言(メッセージ)》。

糞覗き骸骨(モモンガさん)、聞こえてますね?」

『は、はい!ななな、何でしょうか?』

 

 

◆まろんside・了◆

 

 

 

▼▼▼

 

ワーワーワーワーワー…!!

 

帝国が誇る巨大闘技場(コロシアム)に、歓声が鳴り響く。

 

「いや…確かに後で足を運ぶ予定だったけど、あくまでも それは、観客としてだったんですけど?」

武舞台に姿を見せた自分達に向けられる歓声に、まろんは自虐的な笑みを浮かべる。

 

『さあ、いよいよ本日のメインイベント、武王のタイトルマッチ!…の前に、急遽 飛び込みで組まれた特別試合だ!』

そんな中、場内には次の試合を知らせるアナウンスが響き渡り、観客が声援で応えた。

 

『出場するのは、帝国屈指のワーカーチーム、『天武』のエルヤー・ウズルス!

それに対するは、リ・エスティーゼ王国所属のミスリル冒険者チーム『ブラック&ゴールド』メンバーが1人…金色(こんじき)の闘士、マカロン~~~~ッ!!』

 

「ふん…私を虚仮にした その罪、その命で清算して貰いますよ?…そして、ふっふっふ…」

 




 
①まろんのバイクはSR"天羽"スペシャル(特効の拓)をダブルシート仕様したイメージで
 
②ユリたん? 彼女なら今頃、客席でポップコーン食べてるんじゃないですか?
 
 
次回『死闘!マカロンvsエルヤー!!』
乞う御期待!感想よろしくです。
 


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死闘!まろん(マカロン)vsエルヤー!!(仮)

 
エルヤー!がんばれーっ!!(笑)
 


▼▼▼

 

ワーワーワーワーワー…!!

 

「はぁ…」

歓声が止まぬ闘技場観客席。

その様子を、要人用の観覧席で見ていた男が、小さく溜め息を溢す。

 

 

いや、幾ら何でも、唐突過ぎだろう?

武王登場の大会だぞ?

『メインで試合(カード)を組め』だと?

そんなの無理に、決まっているだろうが!?

 

 

 

「はあぁ~~~~~~~~~~…」

…かと思えば、次の瞬間には盛大な溜め息を。

彼はバハルス闘技場興行主(プロモーター)の1人、オルク。

何事かと言えば、本日の自身が催す興行、闘技場に客入れを始めた頃のタイミングで、帝国ワーカーのエルヤー・ウズルスが主催者室に姿を見せ、一緒に連れてきた男との試合を組めと言ってきたのだ。

しかも、『今日』。更にはメインイベントで、と。

しかし この日の組合せ(カード)は全て、事前に公表されている。

そして その締め(メイン)は、この闘技場最強闘士・武王の王座戦(タイトルマッチ)だ。

エルヤーは『この私に あの、醜いトロールの前座で戦えと言うのですか?』と訴えるが、如何に この闘技場にて無敗を誇る この男でも、武王のネームバリューには敵わないとして、その申し出は却下。

急遽、観客にはサプライズ的な発表で、セミ・ファイナルとして試合を組んだのだ。

  

「はぁ…」

先程からの大小の溜め息は、このエルヤーの無茶振りから来る物に他ならない。

 

「………………………。」

「…何?」

そしてオルクは、VIP室からエルヤーと対峙している()()()()()()()()()を一目見た後、同室に控えさせていたウサ耳の…いや、兎人のメイドに、何か意見を求める様な顔を向ける。

 

「あのエルヤーが連れてきた男、どう思う?」

オルクの この質問に対して、

「強さの事?

エルヤー・ウズルスは兎も角、()()ならメインでも問題無い。」

「ほう? お前が それ程迄に言うか?」

「アレは…

(@(Д)@)最超級にヤヴェえ。

()は、この様に答えるのだった。

 

『それでは試合、始め!』

 

ゴォォン…!

 

そして そんな会話の中、戦いを告げる銅鑼(ゴング)の音が鳴り響く。

 

▼▼▼

 

≫≫≫

 

◆エルヤーside◆

ふん、ミスリル級の分際で、随分と派手な鎧を着込んでますね。

そんな大きな鎧を、一体 何処から持ち出したのか…普段は小型化させている、マジックアイテムの類ですか?

まあ、どうでも良い事ですよ。

このエルヤー・ウズルスを小馬鹿にした報い、この大観衆の前で受けて貰います。

瞬殺で無く、嬲り殺してやりますよ。

アナタの恋人の前で酷たらしく惨めに、ね!

先ずは…そうですねぇ、利き腕を斬り落としてあげましょうかね!

 

斬っ!

 

はっはっはっは!

どうですか? 利き腕を喪った感想は?

余りな出来事に、声は愚か、驚きの顔を浮かべる事も出来ませんか?

格闘家が方腕を喪えば、もう お仕舞いですね?

…尤も、方腕だけで終わらせる心算は、全く無いですがね!

そら、次は、もう片側の腕を頂きますよ!

 

斬ッ!

 

 

≫≫≫

ふっふっふ…両腕を喪い、両の足も立つのが やっとなズタズタ状態でも、苦しみの表情1つ見せず、呻き声1つ上げず、そして倒れないとは、見上げたモノです。

その点だけは、認めてあげましょう。

もっと惨めに、自分の命や恋人の身の安全を乞うかと思っていましたが…もっと絶望に打ち拉がれる様を見たかったのですが、どうやら それは期待出来ない様ですね。

良いでしょう。

最後は その首、斬り落としてあげましょう!

 

 

斬ッ!!

 

はっはっはっはっはっはっはっは!

最後まで仁王立ちですか!

実力は兎も角、最後まで敗けを認めない その根性だけは、誉めてあげますよ!

しかし それも、首を撥ね落とされたら、何の意味も有りませんよ!

さあ審判(アナウンス)、何を黙っているのです?

早く私の勝利を、高らかと宣言しなさい!…って、え?!

 

スゥ…

 

何?斬り落とした、ヤツの腕が宙に浮かび…?

 

ゴオッ!

 

……っ?!

ゃ、ヤツの拳が巨大化して?!

が、防御(ガード)を…

 

ボギィッ!

 

ぅぎゃぁぁあああっ??!

腕が、腕が吹き飛ばされたァッ!?

 

ドゴッ! バギッ! ベキッ!

 

ヒィィッ?!

腕が、足が、足がぁッ??!

な…?こ、これは、一体?!

 

 

 

 

グジャァアッッ!!!!

 

 

か、きゃらだガァ…ハ…ハハハハハ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆エルヤーside・了◆

 

≫≫≫

 

◆まろんside◆

あぁ…ぁ…

『おぉっと?! どうしたエルヤー?

試合開始早々に顔面蒼白、まるで蛇に睨まれた蛙の様に動かないぞぉ?

武器を地面に落とし、立ち尽くした儘だぁ?!

一体、何が起こったのだあ?』

さて?四肢を砕き飛ばされ、身体が爆散スプラッター!残ったのは頭だけ…な幻覚でも見てるんじゃないのか?

そう、この男の精神は再起不可レベルに破壊した。

もう一生、心臓が動いてるだけ…只、()()()()()()()()()()()な状態だよ。

しかし、闘技場での試合的には、これで終わらせる訳にも行かないよな。

ついでに言えば、帝国でも冒険者としての名前を広める、良いチャンスだ。

 

ぐぃ…

 

『んん?マカロン、エルヤーの頭を脇で捕らえ、縦向きに持ち上げたぞ?

な、何だ?あの技は?』

「そんな訳で逝くぜっ!

垂直落下式ブレーンバスター(イヌガミケ・ドライバー)!!

 

どすんっ!!

 

 

◆まろんside・了◆

 

≫≫≫

 

◆ユリside◆

「ちょっとアナタ、大丈夫?

鼻血、出てるわよ?」

「え゙?」

あら?ボクとした事が、はしたない。

でもでもでも、仕方無いでしょ?

まーく…申し訳ありません、やっぱり この呼び方は無理です。

まろん様が、まろん様が余りにも素敵過ぎるのだから、これは仕方無いのです。

しかし、それに自分で気付けなかったのは、少しマイナスですね。

隣に座っていたエルフ?ハーフエルフ?…の女性から心配そうに、ハンカチを差し出されましたが、

「あ、すいません…」

それには及ばずと、自分のハンカチで鼻を拭き拭き。

 

「バカヤロー、エルヤー!金、返しやがれ!…ざまあwww」

「ちょ、落ち着きなさい!…ざまあw」

そして彼女の連れらしき男性が、上半身を地中に埋め、足をピクピクと痙攣させている あの愚か者に、罵声を浴びせている。

あの者に、お金を賭けていたのですね?

…しかし同時に、あの者を嫌っている、と。

 

「エルヤーざまあw…金返せ!」

「金返せ!ざまあwww」

更には周囲からも、同じ様な声が飛び交う。

つまりは あの男、普段の闘技場レベルからすれば、信頼度抜群な実力ですが、あのド葛な人間性も広く知れ渡っておる。

賭けに於いては鉄板な存在だが、同時に凄く嫌われていると。

 

「金色、グッジョブだ!ちくしょー!こんな事なら、お前に賭けてりゃ良かったぜ!」

「そんなに強いなら強いって、最初から言えー!…でも、良くやった!」

「次は お前に賭けて、今回の負け、取り戻してやる!」

同時に まろん様に対する称賛?…で、良いのでしょうね。

この者達、『損はしたが、良い物を見れた』と言いた気な、そんな顔をしています。

まあ、お金に関しては、まろん様の方に賭けなかった自業自得です。

尚、当然な話ですが(まろん様の指示でもありますが)ボクは出せる お金全て、まろん様に賭けていました。

大穴狙いの者も多少は居るでしょうから、1人勝ちには ならないでしょうが、それでも かなりな儲けになっている筈です。

 

≫≫≫

…と、思いましたが、配当金は想定よりは、かなり少ない金額でした。

それでも、凄い大金には違いないですが。

スタッフの人に尋ねてみると、ボクの他に もう1人、マカロン様に大金を賭けた者が居たとか。

それは…なかなか目の利く人物の様ですね。

マカロン様…まろん様の実力を見極める事が出来る人物、素晴らしく思います。

 

 

◆ユリside・了◆

 

≫≫≫

 

◆まろんside◆

殺り過ぎ?

いや、殺ってないし。

そも、この闘技場バトルが元々、人死に前提で開催されてるし。

どうなろうと それは、自己責任だ。

それにヤツの方が、完全に殺る気満々だったし。

更に言えば、あのヤロー、ユリたんに対して、卑猥な考えを抱いた、その時点で有罪(ギルティ)だ。

殺してないだけ、有り難いと思って欲しいね。

それから…今回のファイトマネーだが、これも事前にエルヤーとの話し合いで『Winer take it all(勝者 全部獲り)』が決まっていて、多量の金を入手する事が出来た。

賭けで儲けた分も合わせて、ウハウハだぜ♪

 

≫≫≫

「しかし、この様なパターンは初めてだ。

どう処理すれば…」

完全精神崩壊したエルヤーの後片付けに、困った顔を浮かべるのは、プロモーターのオッサンだ。

死んでなく、かと言って健常・尋常で無い状態の それに、どの様に対処すれば良いのか判らないらしい。

オッサン…オルク氏からすれば、『いっそ殺してくれていた方が…』と目で訴えている。

とりあえずは、コイツの住家に運んで、後は放置で良いのでは?

尤もコイツに暮らしの面倒を見る家族とかが居るとは思えないから(使用人とか居るかも?)、後は餓死孤独死確定だろうがな。

尚、コイツの奴隷だったエルフ3人は、俺が勝った場合、その所有権が俺に譲渡される…俺が身請けする(俺が負けた場合、ユリをエルヤーに差し出す)事が、闘技場運営サイド承認の下に公式発表はされていないが、正式に決まっていた。

 

「まr…カロン様、も、もしかして今夜は ご、ご、ご、5Pですか?」

「「「ごp…(//∀//)」」」

いや、そんな訳無いから!

彼女達をそーゆーふーにしよーなんて、欠片も考えてないぞ!

俺はユリたん一筋♡だから!

だからキミ達! キミ達も そんな、何かを期待している様な顔をしない!

因みに彼女達の事は既に、モモンガさんに伝えていて、今後は俺の監督責任…シモベとして、ナザリックで働いて貰う事になっている。

具体的には、第6階層の農園の仕事が…アウラとマーレのアシストがメインだな。

アウラ達は頭にダークが付くが、それでも大元は同じエルフ同士、仲良くやって欲しい。

それから、見た目は美少女~美女な彼女達だが、実の年齢は遥かにイッている。

 

「わ、私は人間年齢に直すと、まだ20前半です!」

「わ、私は10代後半です!」

「同じく!」

「まろん様…流石に それは、セクハラだと思われます。」

…すいません。 でも、余裕で3ケタイッテますよね?

と、兎に角だ、そういう意味では この世界の歴史とかにも それなりに詳しいだろうから、その辺りを教えてもらったら、非常に有り難い。

 

≫≫≫

「それでは この者達、確かにナザリック迄 連れて帰るでありんす。」

「ああ。頼んだぞ、シャルティア。」

そして彼女達は、御迎えとして呼び出したシャルティアと一緒に一足先、ナザリックに行ってもらう事に。

 

「怖がる必要は無いでありんすよ?

アインズ様は、慈悲深き方。

そして御主達は、まろん殿…アインズ様の御友人(フレンド)のシモベでありんす故に、無体な扱いをする事は無いでありんす。」

まだ少し怯えているエルフ達に、心配は無用と話すシャルティア。

少しは その優しさ、普通の人間にも向けて良いんじゃね?

 

ヴォン…

 

「さあ、行くでありんす。…あ、そうそう…の前に、ユリ?」

「は、はい?」

そして転移門(ゲート)を開いての去り際、シャルティアはユリに声を掛ける。

 

「(¬∀¬)b ♪ファ~イト!♪…で、ありんすよ♡」

「しゃ、しゃ、しゃ…シャルティア様ぁ~?!」

 

 

◆まろんside・了◆

 

≫≫≫

 

◆???side◆

圧倒的だった。

会場の誰もが、あの人がエルヤー・ウズルスをいきなり地面に頭を突き刺した大技一撃で決めたと思っているだろう。

…違う。

あの人は その前…試合開始直後に、精神攻撃系の魔法を、エルヤーに向けて放ったのだ。

どんな効果は分からないが、それだけでエルヤーは既に戦闘不能状態。

あの人の身体から溢れ出ていた魔力。

アレは、老師(センセイ)と同等な、強大なチカラだった。

あれ程のチカラを持ちながら、全然 噂にならなかったなんて…

王国の冒険者らしいけど、目立つのを避けていたのかしら?

尤も、アレに気付くのは、私と老師(センセイ)位だろう。 老師(センセイ)が気付いた時は、カオス必至だわ。

兎に角、アレを()()迷わず、私は手持ちの お金を全部、彼に賭けた。

結果、見た事も無い様な大金を手にする事に。

……………………………………。

これだけの お金なら、とりあえずは妹達と一緒に家を出て、姉妹だけで暮らす事が出来る。

それでも、先は少し不安だから、まだまだワーカーの仕事は止められないけどね?

 




 
m(_ _)m
今回の まろんvsエルヤーは、とある鳳凰さんと狼さんのバトルの パクり オマージュです。(笑)
エルヤー、物語離脱(リタイア)(多分)。
良かったねエルヤー、殺されずに済んだよ?
 
 
 
▼▼▼
【オマージュ】
元ネタに対して尊敬・賞賛の念を込め、元ネタが在るのを認めた上で、アレンジして表現している。
元ネタを知っていると、更に面白い?
 
【パロディ】
元ネタがバレているのを前提で表現。
元ネタが分からない場合は「???」となってしまうので、寧ろ分かって!突っ込んで!
オマージュとの違いは、込められているのが尊敬だけで無く、揶揄な場合も有ったりする処か。
 
【パクリ】
様々な他者の創作物等を「俺のオリジナル!」と、盗用している。
元ネタがバレると困る。
てゆーか、大抵がバレバレ。
しかしバレても「俺の方が起源!」と、開き直りで言い張る強者(笑)も多数。
 
 
…つーか、二次創作って時点で…ね(笑)。
 


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Morning Chirping

 
まろんとユリの帝国デート、〆回です。
今回は大して話が進みません?(ある意味 大進展)
 



◆まろんside◆

「あー!アンタ達!」

「ん?」

「あ、貴女は…」

闘技場を出た後、その臨時収入で懐が かなり潤った俺達は、その後も帝都の街を適当に彷徨いてきた。

そして小洒落た料理屋、カウンター席で食事をしていた時、見知らぬ男女…女の方はエルフか?…に、声を掛けられた。

ユリの方は、誰だか知っている感じだが…

 

≫≫≫

「きゃははは! つまりアンタは あの時、そっちの彼氏無双が素敵♡過ぎて、鼻血たら~だった訳d

「わーっ!ゎわーっ!?」

「んがぐぐ?!」

俺達の隣に座ったヘッケランとイミーナ。

この2人は闘技場では偶々、ユリの隣に座っていたそうだ。

そして この店でユリを、更には闘技場バトルに出ていた俺を見て、声を掛けてきたとか。

冒険者とワーカー等、互いの事を色々と話している内に、話は闘技場でのユリの様子の事に。

ユリにとっては触れられたくない話題だったのか、イミーナの口を塞ごうとするが…

ふむ。つまりユリたんは、俺が あのヤローを地獄に堕とした時に、()()()()()、と。

…で、このハーフエルフさんは鼻血たら~になったユリたんを心配して、ハンカチを差し出してくれた、と。ありがとう。

 

「いや、マジに あんな技、見た事も無いぜ。

お陰でコッチは大損だぜ!…ナイス!」

続いてヘッケランの、この発言。

ブレインや この前の筋肉(ハゲ)の反応と言い、やはり この世界はプロレス技…特に投げ技と関節技は、余り広まっていない、知られてない様だ。

そして、賭け(ギャンブル)には負けたが、それ以上にエルヤーが潰れたのが凄く嬉しそうな言い種から、あの男を如何に嫌っていたのかも分かる。

尤も それは、決着後の観客席の反応からして察しだったが。

 

≫≫≫

その後。

帝国では それなりに名前が売れているというワーカーチームの2人とも別れて、恐らくはユグドラシルのプレイヤーが伝えたと思われる、『雪の王女姉妹な舞台劇』を観賞。

帝国では闘技場バトルと この大劇場での役者による芝居や吟遊詩人の公演が、大衆娯楽なようだ。

そして先程とは違う店で酒を軽く嗜んだ後、帝都では 高級とされている宿に向かうのだった。

あ、本当に酒は、嗜んだだけだぞ?

俺もユリも不死属(デュラハン種)だから、基本アルコールに対しては完全耐性だからな?(スキルで強~弱耐性の調整は出来るが)

ユリを酔い潰して宿に連れ込んで、その儘に無抵抗な処を無理矢理にXXXなんて事は無いからな?

正々堂々と行く!

 

 

◆まろんside・了◆

 

▼▼▼

 

◆モモンガside◆

まろんサンから『エルフを3人、引き取る事に なったから(予定)』と、伝言(メッセージ)が届いた時は本当にビックリした。

てっきり、2人の様子を遠隔視の鏡(ミラー・オブ・リモート・ビューイング)で覗いていたのがバレた件で、文句を言われるかと思ったからな~。

そしてエルフの件もだが、それ以上に、バハルス帝国に飛んでいた事に、驚きだ。

通りで鏡で王都の何処を探しても、見付からなかった筈だ。

…で、その帝国で奴隷エルフ引き取りとか、アナタは一体 何をやっていたのですか?

 

≫≫≫

「キミ達の持つ知識を、私達の為に役立ててくれ。」

「「「は…はい…」」」

そして、そのエルフ達と御対面。

長寿エルフが持つ この世界の情報は、俺達にとっては非常に有用となるだろう。

…に、しても、

「……………………………。」

「「「あ、あの?」」」

「あ、いや、すまない。気にしないでくれ。」

聞けば、彼女達は最初、襤褸々々な衣に身を通していて、この玉座の間に…俺に謁見するのに相応しくと着替えさせたらしいが、誰だよ?

セーラー服とか白衣(ナース)とかマク〇ナル〇とか選んで着せたのは?

シャルティアか? まさか、一般メイドじゃないよな?!

てゆーか誰だよ?ナザリックに そんな衣装…しかも客人用として、持ち込んでいたのは?!

ペロロンチーノか? るし☆ふぁーか?

 

 

◆モモンガside・了◆

 

▼▼▼

 

◆ユリside◆

 

パタン…

 

宿に到着。

宛がわれた部屋に入ったと同時、まろん様は いきなりボクを…等という事は無く、魔法術式を展開。

この部屋に多重結界を張り巡らせた。

 

「これで、どんなに大声出しても大丈夫だぜ♡ ついでに あの骨の覗きも完全遮断(シャットダウン)

そんな風に言ってきた。

や、や、やややや、やっぱり今夜、ボクと まろん様、最後までシちゃうのですね?!

ちょ…そんな、ボク、ま、まだ心の準備ががががが…!?

 

 

 

『何 今更 言っちゃってるんスかユリ姉~? 一緒に部屋に入ってる時点で、もうOKしちゃってるも同じっスよ~?www』

 

『まろん様の御寵愛、羨ましいです。』

 

『此処まで来てヘタレるなんて、流石に有り得ない話ですわ。』

 

『無い無ぁ~い~♪』

 

『ぅゎあ…』

 

 

えぇいっ!幻聴しゃぁらっぷ!

 

「ユリ…」

「ぁ…」

脳内で囃す妹達をシバいている中、まろん様が私を背中越しに抱き締めてきた!

 

ス…

 

そして、数秒?数分?…沈黙な抱擁の後、まろん様はハアバンドを外す。

これで変則ツインなヨルさん髪が解かれ、ストレートロングに。

 

くる…

 

続いてボクの体を正面に向かせ…って?

ま…ろん様?近い、近いでs…ん?んんんん~~~~~~~~~~~??!

ぷはァッ!

 

ま、まろん様…ボk、わた、私…

「あー、ユリ? ルプスレギナから聞いて知ってるから、『ボク』で構わないぞ?」

………………………!!?

ぼ、ボクっ娘バレてるぅ???

いや、いきなりキスされて(額や頬は兎も角、唇を重ねたのは しかもベロちゅーは 初めてです!)テンパってるのを落ち着かせようとしてるのは分かりますが、もっと他に、言う台詞も無いですか?

…それと、ルプーは帰ったら脳天ダンク!

 

「ユリ…」

そして まろん様は、ボクの脳内処理が追い付かない儘に、言葉を続けていく。

 

「覚えているか?

初対面の時、俺が お前に言った台詞。」

はい、アレはインパクト有り過ぎて、忘れようが有りません。

 

「あの時の台詞、もう1回言うぜ?」

え?ぇえ゙?? ま、ま゙ろん様゙???

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

≫≫≫

 

ん~…まろん様ぁ…好ゅきぃ…

 

ん?んん~?

カーテンの隙間、木漏れ日の様に差し込む陽の光と、鳥の囀ずりでボクは目を覚ました。

……………………………………………。

そうだった…昨夜、ボクは まろん様と初めて、最後迄()()(しかも、10回も。)

いえ、お泊まりデートですから、こうなるのは分かってましたが、それでも中々に覚悟が決まらなかった時の まろん様の言葉…

それを聞き、それを秒で受け入れた後は、迷い無く事が進んだ。

勿論、後悔等は有りません。

確かに初めては痛い…それは知識として知っていて、その想像をも上回る痛みでしたが、それでも 凄く気持ち良かった♡ 好きな男性…お慕いする殿方と結ばれたのです、嬉しくない筈も無く。

まろん様は それなりに経験が有った様で、初めてなボクにも優しくして下さりました。

ボクを優しく抱き抱え、静かにベッドに寝かせ…服を脱がす途中で、身に付けていた下着も、『綺麗で可愛い』と言って下さりました。

アルベド様には感謝です。

そして本当に まろん様、凄く(やさ)しかった♡ですし。

 

「よぉ、目が覚めたか?」

……………………………!!?

そんな風に浸っていた時、不意に横から声を掛けられた。

声の主は勿論…既に起きていたのですね…ボクの隣で横になっていた まろん様。

 

「ぁ…お…はようございます、まろん様。」

「ああ、おはよう、ユリ。」

んん!?

そして ある意味 様式美?所謂『おはようのキス』をしてくる まろん様。

 

もぞ…

 

…って、ちょ、まろん様?

唇を離したと思えば、今度は顔を、ボクの胸に?

 

「ま、まろん様?」

「ん?大丈夫。『おはようの ぱふぱふ』だから。」

いえ?! そーゆーの、聞いた事無いですよ?! 

 

 

≫≫≫

「ふー♡」

「ぢゃ、ないです…!」

それから…『おはようの ぱふぱふ』だけでは終わらず1回だけですが、『おはようの えっち』…だから そんなの、聞いた事無いです!…に発展。

 

「さて・と…」

そして まろん様は起き上がると、ベッドの下に無造作に脱ぎ捨てていた服に袖を通し、

「また()()()も、片付けとかないとな。」

昨夜、寝る前にボクの破瓜(初めて)の血や(ぴー)液で大変な事になっているシーツを清浄(クリーン)の魔法系スキルで使用前同様な状態にしたのですが、それと同じスキルをまた行使するのでした。

 

≫≫≫

「痛い…」

そしてボク。

何処とは言いませんが、凄く痛くて とてもじゃないが、まともに歩けない。

 

「あー、女の人は初めての時って、そうなんだったよな?」

そんなボクを見て、まろん様は「そー言えば」と、思い出したかの様に笑いながら言いますが、これはズルくないですか?

男性は平気なんですよね?

宿を出た後も まともに歩けず、痛みを散らすアイテム等も持っていなかった為、ずっと まろん様の腕に しがみつき、引っ張って貰うように街中を歩くのでした。

朝から腕組みして街を歩く…

うぅ…少し、恥ずかしいです…

 

 

◆ユリside・了◆

 

≫≫≫

 

◆まろんside◆

嗚呼、出来る事なら腕になりたい!(2回目)

これは女性にしか解らないと言われるが、兎に角 凄まじい激痛により まともに歩けないユリたんは今、俺の腕に組ついて歩いてる訳だが、その腕がユリたんの御胸様(Hカップ確認)にガッツリ埋まっている状態なんですけど?!

 

「「「「「「……!!(怒)」」」」」」

そんな様子に、街の男共から嫉妬な睨みを浴びせられているが、それは無視。

ふっ!羨ましいか?

何なら嫉妬マスク、プレゼントしてやろうか?ハッ!

いや、朝から見せ付けている点は、申し訳無い。…フッ!

尚、帰りはユリが まともにバイクに跨げない状態だったので(ですよねーw)、《転移門(ゲート)》でナザリック直帰…な事は無く、四輪(クルマ)で…バイクと同じく、魔力燃料なマジックアイテム、モデル【クンタッシ-LP400】で帝国→王国間を疾走(ドライブ)するのだった。

 

 

 

がんっ!

 

「ぷぎゃーーーーーーーっ!?」

…途中、オーガやオークを数匹、撥ね飛ばした(轢き逃げ)のは御愛嬌。

 

 

◆まろんside・了◆

 

▼▼▼

 

◆モモンガside◆

まろんサンから、今日の昼過ぎには戻ると《伝言(メッセージ)》が届いた。

『戻ったらOHANASHIだ』の一言も添えて。

やっべー!やっぱり最初に鏡で覗いてたの、怒ってるよ!?

そ、それも問題だが、その少し後にアウラから届いた《伝言(メッセージ)》。

その対処の方が、今は問題だな。

 

『アインズ様。西の魔蛇(リュラリュース)からの報告ですが、トブの大森林北東部に、スレイン法国の者と思わしき侵入者が現れました。』

 




まろんとユリのXXXシーンは、キング・クリムゾン!(笑)
 
次回『嗤う金毛(スマイル・ゴールド)、再び!』
乞う御期待!
 


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漆黒聖典 ~嗤う金毛(スマイル・ゴールド)リターンズ~

 
サブタイの通り、アイツ等が登場!
 

 


◆ルプスレギナside◆

痛ひ…っス…(T_T)

 

「当然でしょ!」

まろん様とのデート(お泊まり)から帰ってきたユリ姉に、「どーだったかっスか~? 夕べは お楽しみだったっスか~? 朝ちゅんっスか~?」って聞いてきた答えは、外した頭を鈍器に見立てての、頭突き(ダンクシュート)だったっス。

これは、ユリ姉が実はボクっ娘ってのを まろん様にバラした&、昨日のデートの覗き見を提案したのも、実は私と判明した故の制裁だとか。(因みに実行犯のアインズ様も、まろん様から凄絶なOHANASHIされてたっス)

…で、此方の質問にはユリ姉、ノーコメントを貫いたスけど、私には無駄っスよ~?

ユリ姉の お股から、○液(オトコ)の薫りが ぷんぷん匂うスよ~?(ついでに胸元辺りからも)

まろん様に お初、貫かれたっスか~?

ついでに そのスイカで挟んで ずりずりしたっスか~?

…等とは、またスラムダンク追加されるから、頭で思っても口には出さないっス。

 

 

◆ルプスレギナside・了◆

 

▼▼▼

 

◆???side◆

「クソッ!どういう事だ!?」

 

世界を終焉に導くと云われる、"滅びの竜王(カタストロフ・ドラゴンロード)"。

そう遠くない将来、それが このトブの大森林にて復活するという預言を元に、その封印されている正確な場所の確認…可能ならば、その場で精神支配して御す。

それにより、我がスレイン法国の世界的立ち位置は、絶対的な物となる。

…その為に私達スレイン法国最強特殊部隊【漆黒聖典】は、隊長を筆頭に1人を覗き全員で、この地に赴いた筈だったのが…

 

「隊長ぉっ!」

「僕は大丈夫です!そ、それより、皆でカイレ様を御守りしろ!」

「応!」「はいっ!」「承知!」

森に入り暫く。

それなりに奥に進んだと思った時、周囲に違和を感じた。

それは私だけでない。

同行していた皆が、それを感じとったのだ。

空気の質が、変わるという感覚。

恐らくは魔力結界の類いと思われたが、その力自体は微弱な物で、我々ならば何時でも突破は出来る程度な物。

一応の警戒をしておく…というのが皆の共通の認識だった。

 

…しかし!

 

「ちぃっ!」

少し前、王国で騒ぎを起こしたという女吸血鬼(ヴァンパイア)死者の大魔法使い(エルダー・リッチ)の3体組。

それは情報として、我々の耳にも入っていた。

それと思われるアンデッドが、更に森の奥に進んだ先で突然 我々の前に姿を見せ、襲ってきたのだ!

いや、モンスターの急襲自体は、この際 大した問題じゃない。

…が、その内の2体が、()()()()()()だったのは、想定の遥か外だぞ!?

その辺の有象無象じゃない。

()()()()がアンデッドと化しただけで脅威。

だが もっと重要なのは、何処の何者かは知らないが、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()という事だ!

これは本国への、絶対報告案件だ。

しかし まさか、噂のアンデッドの正体が、行方不明となっていた あの2人だったとは…

嗤う金毛(スマイル・ゴールド)は兎も角、疵面(スカー・フェイス)の方は今から思えば、その渾名を聞いた時に、僅かでも その可能性を疑うべきだった!

 

「くっ、本当に全裸マント…しかも本当に金色ですか?!」

「隊長お~? 何処~ガン見し~て~、言ってるんですかあ~?」

「言ってやるな"無限魔力"! 隊長は童貞だから、あーゆーのには慣れてないんだ!」

「ど、どど、童貞違わい!」

……………………………………。

皆さん、余裕ですね?!

それと、確かに隊長、普段から無限魔力の格好なんかも、まともに見れてないですよね? チラ見は していますが

 

「チィッッ!私達を守れ!」

『『シャァァアッ!』』

召喚した2体のギガント・バジリスクを壁役(タンク)として前に出し、隊長の指示通り、今回の破滅の龍王(カタストロフ・ドラゴンロード)対策の要であるカイレ様を後方に退げて、迎撃の構えを取る。

 

ぼゎぁっ!…カァアッ!

 

『『グシャァヮァッ?!』』

しかし、死者の大魔法使い(エルダー・リッチ)の放つ魔法で、

「しゅ…瞬殺だとぉ?!」

「嘘っ?!」

強力な筈の魔獣が、瞬く間に斃されてしまう。

…いや、火焔球(ファイヤーボール)は兎も角、アンデッドが聖光弾(ライトボール)を撃つなんて、間違ってるだろう?!

アレか?人間の時に修得していた魔法は、アンデッド化しても使えるのか?

属性的な自滅ダメージ等も無いとでも言うのか?

 

ニタァ…

 

「ひっ?!」

そして それに動揺した僅かな隙を突き、女吸血鬼(ヴァンパイア)嗤う金毛(スマイル・ゴールド)が その異名に相応しい張り付けた様な薄い笑みを浮かべ、此方の1人…"人間最強"に急接近してきた!

元々にスピード特化だった この女に対し、漆黒聖典随一の巨体な彼は反応が遅れ…一応、見てくれ()()は良い女がマントの下は全裸な姿で迫ってきたというのも要因だろうが…簡単に捕えられ抱き着かれ、

「んん~~~っ?!」

「へ?」

「え?」

「は?」

「な?」

「ま゙♡?!」

せ、接吻だとぉ?

クソが!コイツ、漆黒聖典在籍の時から痴女みたいな格好だったが(それはコイツだけに限らずだが)、アンデッドとなり、更に そちら側に磨きを掛けたか?

普段の言動から最悪だった上に、法国の秘宝を奪って出奔だけでは飽き足らず…お前は我が家名を、何処まで汚せば気が済むのだ!?

 

んぁ…

「「「「「「…!!!?」」」」」」

そう思っていた刹那、人間最強の全身筋肉な体が、一瞬でミイラの様に萎み干涸びた、だと?!

 

パタン…

 

そして その死の抱擁から解放された人間最強は、力無く倒れ、その衝撃で、枯れ木の如くと化した身体の、首と片手が脆くも砕け折れた。

 

生命力吸収(エナジードレイン)…!」

「ヴ、吸血鬼(ヴァンパイア)が!」

「ちょっと1人師団! アレ、アンタの妹でしょ?何とかなんないの?!」

「知るか?!…ですよ!

元よりアレとは既に絶縁しています!」

痴女2号 無限魔力が普段の間抜けな延び延び口調を止め、早口で私にアレをどうにかしろと言ってきますが、出来る物なら、既にやっています!

 

「クソッ! 撤退…も、難しいか!」

隊長が死者の大魔法使い(エルダー・リッチ)の魔法弾連打を弾きながら、呟く。

素体が陽光聖典の隊長だったアンデッドが強力なのは分かるが、もう1体も元々は かなり強力な術者から造られたのが分かる。

 

「ちぃ、こうなったら…」

「隊長! ()()はダメだ!」

「早まるな!」

「ストーップ!」

「…っ!」

此方は1人が殺されたが、まだ、この場を切り抜ける手段が有るには有る。

しかし、今それを実行するのはイコール、本国より言い渡された任務の失敗を意味する事になる。

敵は3体。

その内の1体に、カイレ様の装備している神具『ケイ・セケ・コゥク』の能力(チカラ)を解放すれば、アレを支配下に治める事は容易い。

しかし今、コイツに其れを使えば、今回の本命である破滅の竜王(カタストロフ・ドラゴンロード)には使えなくなる。

そして1体は隊長の持つ()を使えば…しかし、これも本当に…本当に最後の手段だ。

確かに其れ等を実行した後ならば、残る1体は我々だけで対処が不可能では無い筈。

しかし、それは代償が大き過ぎる!

実際、隊長は余程テンパっていたのか、咄嗟に其れを行使しようとした様だが、仲間が止めに入った。

 

ぐにゃぁ…

 

「「「「「…???!」」」」」

そうして敵の攻撃を避け反撃しながら、どう動くべきかを模索していた時、突然 周囲の景色…空間が歪みだした?

 

「此処は…?」

「な、何なのだ?!」

「転移…魔法か…!」

そして一瞬、目の前が闇に覆われたと思えば、景色は一変。

私達は森の中に居た筈が、洞窟の中?に立っていた。

地面や壁に点々と埋まっている、水晶の様な鉱石が淡い光を放ち、全く周囲が見えない訳では無く。

 

「ぜ…全員、飛ばされたのか?」

「いや、隊長とカイレ様が居ないぞ?!」

「もぉ~、一体、何なのですか~?」

「へぇ~? 2人、捕まらなかったか~?」

「「「「「????!!」」」」」

そんな中、不意に話し掛けてくる声。

 

「つまり あの婆さんの他に もう1人、世界級(ワールド)アイテムを持ってる奴が居たって訳だ。」

………………………………………。

声の方向に顔を向けると、

「ぶぃっ!♪」

小柄な闇妖精(ダークエルフ)の少年…いや、少女が1人、其処に居た。

  

  

◆???改め、1人師団side・了◆

 

▼▼▼

 

◆モモンガside◆

「上手くいった様だな…」

 

遠隔視の鏡(ミラー・オブ・リモート・ビューイング)(カメラ)をアウラからの報告に有った場所に飛ばすと、其処には紛れも無く、スレイン法国の者と思しき一団が。

そして彼らに護られる様に中央を歩く老婆が着込んでいるのは どう見ても傾城傾国だった。

いや、だから本当、年寄に あんなエグいスリットなチャイナ、着させるなよ!?

ババアの太もも全開って、誰得?

見てる 此方が罰ゲームだからな?!

 

「ん。分かる、解るぜ、モモンガさん。

あーゆーのは やっぱ、ユリたん♡とかアルベドだよな?」

しゃあらっぷ!

…てゆーか、他人の心の声(モノローグ)に応えたりしないでくれませんか?

 

「あら♡ アインズ様は、あの様な衣装が お好みなのですか?

それでしたら、私めに一言 言ってくだされば…くふぅ♡」

「…………………………。」

と、兎に角、世界級(ワールド)アイテム持ちの集団。

此奴等、何をしに来たのかは分からないが…どうせ、碌な事じゃないだろうが…よりによって嗤う金毛(スマイル・ゴールド)等を待機させていたエリアから森に入ってきた。

結果、その気配に釣られて、其れ等は奴等の前に現れ、戦闘突入。

1人程 殺られたタイミングで、俺が遣わせたアウラとマーレが到着。

アウラに貸した世界級(ワールド)アイテム、山河社稷図の能力で、あの老婆以外を異空間に隔離。

そして残った老婆…というか傾城傾国を、ナザリックに持ち帰るな心算だったのだが、リーダー格な雰囲気の青年も、その場に残っていた。

どうやら この男も、世界級(ワールド)アイテムを所持していた様だ。

…って、スレイン法国が所持しているっていう世界級(ワールド)アイテムって確か、傾城傾国とロンギヌスだったよな?!

あの安っぽい見た目の槍が、もしかして そうなのか?

 

「少しだけ、予定が狂ったが…」

まあ、マーレなら大丈夫か!

 

 

◆モモンガside・了◆

 

▼▼▼

 

◆1人師団side◆

「お前は…?」

私達を大森林から、この何処とも分からぬ洞窟へと転移させたのは、間違い無く このダークエルフだろう。

 

「「「「………………。」」」」

私だけで無く、この場の皆が、このダークエルフに最大級の警戒を発する。

このダークエルフの少女は、非常に危険だと。

 

『『『……………っ!!?』』』

その根拠は、先程まで我々が手に負えなかった…一緒に転移してきたアンデッド3体を、容易く鞭で縛り上げ、完全に動きを封じているのだ。

それだけで、その実力が窺える

 

「この転移は…アナタのチカラによる物なの?」

「…だとしたら?」

ダークエルフに尋ねるのは、"占星千里"。

しかし、このダークエルフは、それに まともに答えようとしない。

 

「巫山戯るなよ、このガキがっ!」

 

バシュッ!

 

「「「「!!!!??」」」」

その舐めた様な態度に、"巨盾万壁"が怒り顔で飛び出そうとするが、その最初の1歩目の次の瞬間…2歩目が地面を踏む前に、この漆黒聖典随一の怪力の持ち主の頭が爆発したかの様に飛び散った。

 

「あ・の・さ~? コッチは なるべく殺さない様にしろって言われてんの!

頼むから、大人しくしていてくれないかな~?」

「「「「「………………。」」」」」

何処から取り出したのか、大弓を構えた少女は、呆れ顔で そう言うのでした。

幼い容姿での その何の惑いも無い言動に、私達は ますます戦慄。

 

ひっ、ヒィィイッ! ち、違うのです、スルシャーナ様!

どうか、御慈悲をぉ!!?

そして直後、占星千里が異能(タレント)、【未来視】を発動させた?

いえ、それよりも『スルシャーナ様』って、貴女は一体、何を視たと云うのですか?

 




次回『マーレvs隊長&カイレ』
乞う御期待!
感想よろしくです。
 
※最尾話にしていた【まろんデータ】を第1話に置き換えました。
  


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漆黒聖典②

 
な、なにをする きさまー?!
 


◆隊長side◆

クレマンティーヌとニグンさん、そして もう1体、出所不明のアンデッドと僕達漆黒聖典の戦闘途中、いきなり空間が歪んだかと思えば、その皆が消えた。

まるで『カミクキュシ』とかいうヤツになったかの様に、姿を消したのだ。

 

「これは一体、どういう事かの?」

この場に残ったのは、僕とカイレ様の2人だけ。

 

「ぁ…あの…」

そして消えた彼等の代わりなのか、小柄なダークエルフの少女が、この場に姿を現した。

一見 華奢な見た目だが、僕の本能が、『最凶にヤバイ』と警告している。

あの オセロ髪女 彼女と同等…な、そんな感覚。

戦闘後にフルボッコ状態で「詐欺だ!」と泣きながら訴えたくなる程な、見た目で騙される典型だ。

 

「ダークエルフの嬢ちゃんや、これは、嬢ちゃんの仕業かの?」

その少女に、カイレ様が問い掛け。

 

「ち、違います!コレは、アインズ様から お借りしたアイテムを、お姉ちゃんが使ったからですぅ!

それと僕、男です!」

…………………………!!!

この少女…改め少年の言葉に驚きを隠せない。

先ずは『アインズ様』と呼ばれる、この少年より上位の者が存在しているという事。

クレマンティーヌとニグンさんをアンデッドにしたのも、このアインズという人物の可能性が高いと推察。

そして もう1人。

皆を何処かに連れ去った…少年と同格者と思われる、姉とやらも この場に来ている事。

そして何より、まさかの男の娘!!

…いや、絶対に詐欺だろ!

 

「キ、キミの…キミ達の目的は、一体 何なのだい?」

…って、落ち着け僕!

内心は かなり取り乱しているが平静を装い、このダークエルフに改めて質問する。

 

「ぇと…そ、そっちの お婆さんが着ている衣装(アイテム)の、回収に来ました!」

「「…!!」」

僕の質問に、素直に答えてくれるダークエルフ。

 

「そ、それから、ついでにアナタの その槍も、一緒に持ち帰れと、たった今アインズ様から言われました。」

…!!

神噐なのを見抜いていましたか!

それと今、『たった今』と言いましたね?

伝言(メッセージ)でも使いましたか?

つまり、アインズ様とやらは今、遠視系のスキルかアイテムかで僕達のやり取りを視ている。

本命はカイレ様のケイ・セケ・コゥクでしたが、僕のロンギヌスにも気付いた…と。

 

「も、勿論、代わりの服は、用意していますから!」

 

ス…

 

そう言って このダークエルフは、極々普通なローブをカイレ様に差し出すが、

「それは、出来ぬ相談じゃの?」

…ですよねー。

そんな、『はい、そーですか』と簡単に渡せる代物なんかじゃ有りませんよねー。

 

「そ、そうですか…

だったら、仕方無いです…

殺してでも奪い取ります!

弱々しい表情は その儘で、とんでもない発言と同時に殺気を全開して、杖を構えるダークエルフ。

 

「止むを得ません! カイレ様! 使()()()()()()!」

「うむ!」

もう、出し惜しみ等している場合じゃないです。

既に他の皆と散り散りにされた時点で、今回の任務は失敗したと言って良い。

彼方も只で済んでいる筈も無いでしょうしね。

向こうは向こうで、上手い具合に行ってもらうのを願うだけです。

ならば せめて、無事に帰還して、この一連の報告だけでも!

また あの白黒女 彼女に散々と嫌味を言われそうですが、それは小さき事!

このダークエルフを()()()()連れ帰れば、莫大な情報を得られる可能性は大!

それでチャラにしてもらいましょう!

 

「ハァアッ…!」

カイレ様が魔力を解放。

それにより、彼女の衣装(ケイ・セケ・コゥク)に描かれている(ドラゴン)の模様が光を放ち、光の龍として具現化。

何者も絶対に抗えない、洗脳支配の能力(チカラ)を持つドラゴンが、ダークエルフに向かって行く!

 

バシュッウ…!

 

「何…じゃと…!?」

「え?え゙?!」

しかし、そのドラゴンはダークエルフの体を捕らえる寸前で消滅した?

 

「す、すいません…ぼ、僕には それ、効きませんから…」

ば、馬鹿な?!

ケイ・セケ・コゥクに対抗手段が有るなんて、聞いた事も無いぞ?

絶対必中じゃなかったのか?

いや待て…ケイ・セケ・コゥクと分かっていて此方に接触してきたのだから、何らかの対策をしいるのは逆に当然か?

もしかして、僕のロンギヌスも通用しないって事も無いよn

 

グシャァッ!

 

「な…? か、カイレ様?!」

「ごめんなさぃい…『抵抗するなら、殺しても構わん』と言われていましたから…」

気弱な外見はブラフか?!

行動と全然、伴っていない!

『効かない』とか言った直後、カイレ様に距離を詰めると、手にしていた杖で強烈な殴打を頭に ぶちかましやがった!

その素早い動きにカイレ様は反応出来ず、横殴り(フルスゥイング)をまともに受け、()()()()()()()()()()()()()()、ドクドクと血を垂れ流しながら、カイレ様は その場に倒れ込んだ。…即死だ。

 

「…わ、分かった。降参だ。

僕の槍と、カイレ様の装備は、キミに あげよう。

だから、見逃してくれないかな?」

駄目だ…僕では勝てない。

マジにコイツ、あの女と同じ領域だ。

この状況でロンギヌスを使った処で、既に意味が無いし、何よりケイ・セケ・コゥクと同じく不発に終われば、それこそ無駄死にだ。

ならば、本当に今 為すべきは、どんなに不様でも良い…兎に角 無事に本国に戻り、全てを報告する事! 後は神官長や あの女に丸投げだ!

その為なら靴だって舐めるし、何なら小便で顔でも洗ってやるさ!

え?プライド?何それ?美味しいの?

 

 

 

 

≫≫≫

 

…な、筈だったのに…

 

「隊長…御無事で…」

「う…うん…」

結局は逃げる事も出来ず…逃げ出した瞬間、足を()られた…結局は このダークエルフの拠点と思われる場所に連れられてきた。

当然、(ロンギヌス)は没収。

カイレ様のケイ・セケ・コゥクも剥ぎ取られ、下着姿の儘で、その遺体は森の奥に放置されている。

 

「な…?カイレ様が…?!」

「そ、そんな事…!?」

その石牢の様な部屋には、離れ離れとなっていた、他の漆黒聖典の面々が。

曰く、彼等は あのダークエルフの姉とやらに、この場に拉致られたそうだ。

カイレ様が殺害されたと聞き、ショックを隠せない。

 

「そうか…巨盾万壁も殺られたのか…」

しかも、向こうは向こうで、その姉との問答の際、1人殺されたそうだ。

 

「隊長! 逆らっては駄目です!

あのコ達の主は、スルシャーナ様です!」

そして、占星千里が怯える様に体を震わせ、僕に話してくる。

スルシャーナ様だと?

馬鹿な? 奴等の主は、アインズという人物じゃなかったのか?

しかし、彼女が それをタレントで視たと言うなら、必ずしも嘘とは思えない。

仮にアインズ=スルシャーナ様とする…

しかし、それならば何故、スルシャーナ様が僕達 漆黒聖典に この様な真似を?

 

「はいは~い♪ アインズ様との謁見の準備が出来たよ~♪」

「あの…つ、着いてきて下さい。」

「……………………………。」

そんな風に考えている中、ダークエルフの兄妹…もとい、姉弟、そしてメイドさんが1人、やってきた。

どうやらアインズ…スルシャーナ様?との面会の時間な様だ。

 

「…此方(こっち)。」

「一応 言っとくけど、逃げようとしたら…分かってるよね~?♪」

 

 

≫≫≫

「漆黒聖典の諸君…ナザリック地下大墳墓に ようこそ!

私は君達を歓迎しよう。」

………………………………………。

本国の大聖堂並みの…いや、それ以上に荘厳な雰囲気を醸している大広間。

その奥の玉座に、()()は居た。

まるで喜怒哀楽の感情を一度に表現したかの様な、奇妙な仮面を被った、黒ローブの人物だ。

その両脇には、白いドレスの美女(あくま)と、黄金の鎧を着た黒髪紅眼の男が固めている。

 

「私が このナザリックの主、アインズ・ウール・ゴウンである。」

 

ス…

 

「「「「「「!????」」」」」」

そして そのアインズと名乗る人物が、仮面を外す。

その下の素顔は、紛れも無く…!!

 

ザザザッ…!

 

次の瞬間、僕達は皆、誰と示し合わせた訳も無いのに、目の前の人物に同時に平伏していた。

 

  

◆隊長side・了◆

 

▼▼▼ 

 

◆モモンガside◆

「「「「ス…スルシャーナ様…!」」」」

「いや、私はアインズ・ウール・ゴウンと言った筈だ。

お前達の言うスルシャーナとやらは、同郷同族なだけで、何の繋がりも無い別人だ。」

うわぁ~…

まろんサンの言った通りだったよ…

 

 

 

モモンガさんの容姿見たら、奴等スルちゃんと勘違いして、絶対に その場で跪くぜw

 

 

 

そんなに似ています?

尤も、死の支配者(オーバーロード)なんて、見た目は骨だから、区別が付かないだけでしょうけど!

因みに嫉妬マスクを使った演出も、まろんサンの仕込み(アイデア)です。

 

「そ…そんな…」

俺の『スルシャーナじゃない』発言に、漆黒聖典の1人…メガネ・サンとでも仮名しておくか。

その彼女が、一生分の絶望に浸ったかの様な顔をする。

そんなにスルシャーナで無くて、残念だった?

 

「私が お前達に問うのは1つ。

何が目的で、トブの大森林に、足を踏み入れた?」 

実際に()()質問したのは、この1つだけ。

続きは、ニューロニストやパンドラ(タブラさんに変化)が、直接 脳味噌に色々と問い質すだけ。

また『3つの質問縛り』で無駄に死なせる事を避ける為にもね。

因みに、質問官は まろんサンとデミウルゴスの予定です。

 

≫≫≫

「…どう思いますか?」

破滅の竜王(カタストロフ・ドラゴンロード)…ねぇ?

一応、スルー出来る案件じゃないと思いますが?」

一通りの尋問が終わった後、それについて まろんサンと話す。

漆黒聖典がトブの大森林にやってきた理由は、世界を終焉に導くとされる怪物、破滅の竜王(カタストロフ・ドラゴンロード)の調査、並びに見つけたら その儘 精神支配して法国の戦力にするという事だった。

南の魔獣(ハムスケ)や東の巨人、西の魔蛇の他にも、そんな存在が居たのに驚きだ。

尤もハムスケは、『かたすとろふどらごんろーど? 申し訳無いで御座る殿、拙者、聞いた事無いで御座るよ~…』…だ、そうだ。

 

「それとなく噂を流し、冒険者組合に話が届く様に仕込みます?

ついでに帝国の方にも。」

そうですね。それで王国と帝国の冒険者(ワーカー、並びにB&G(オレたち)含む)に調査させて、詳細を得る…と。

帝国が何処まで興味を持つかは分からないが、組合長(アインザックさん)は こういう未知の探求なんかは直ぐに食い付くだろうけど…

 

「…けど?」

「あの組合に、そういうので冒険者を雇う程に、 お金に余裕が有るとは思えないんですよね。」

「あー…」

 

 

◆モモンガside・了◆

 

▼▼▼

 

◆メガネ・サン(仮名)side◆

この世の地獄だった。

タコ頭の異形が触手(ゆび)を私の頭に刺す。

痛みは感じなかったが、それが逆に恐怖だった。

そして金色鎧の男の人(イケメン!)の質問に、直接 私の脳味噌に答えさせる。

それにより、私が知っている法国の情報の全てを吐き出す事に。

クレマンティーヌやニグン殿も、同じ事をされたと思うと、恐ろしさ倍増だ。

 

「微妙な能力だな。

しかし それで、アインズとの邂逅を視てた訳だ。」

質問の中には、タレントに関する事も有った。

それで私が、"未来視"のタレントを持っている事も知られてしまうが、それを『微妙な能力』と言われた時は、内心 少しだけ凹んだ。

いえ?! 確かに任意な予知は、出来ませんけど?!

突然、閃いた様に、その場面が頭に浮かぶだけですけど?!

それでも私、その能力を買われて、漆黒聖典入り出来たんですけど?!

 

≫≫≫

「報告は聞いた。

まろんサンは『微妙w』とか言っていたそうだが、私は そうは思わないぞ?

スルシャーナの信仰まで棄てろとは言わん。

しかし その異能(タレント)、今後はスレイン法国で無く、ナザリックの…私の為に役立てては、くれないか?」

そして再び、アインズ…様と謁見。

はい、引き抜きの持ち掛けですよね!

しかも これ、断ったら()()()()()()()()()()()()()()辿()()の決定ですよね!

ええ!()()()()()()()()()

 

「は…はい! 今後はナザリック…アインズ・ウール・ゴウン様に、絶対の忠誠を誓わせて頂きます!」

ええ!アンデッドの素材とか、異種族配合の実験体になんて、なりたくないわ!

隊長なんて、トロールの牝…オークやオーガじゃなくて、トロールよ!

それ相手に、筆下ろしさせられてんのよ!

流石に非道過ぎですよ?!

無限魔力も、黄色いタコの無数の触手で あんな事や そんな事され、ア〇顔になるまで弄ばれていたし!

あんな目に遭うのを避けるなら、法国への忠誠なんて、普通に棄ててやるわよ!

 

「賢い選択です。

今後、未来永劫、その生が尽きるまで、アインズ様に尽くしなさい。」

「は…はい!」

アインズ様の側近?もしかして奥様?…の巨乳美女な悪魔さんに そう言われ、メイドさんに これから先、私が暮らしていく区域に案内された。

森の中の、大きなログハウスだった。

先にハウスに住んでいた、3人のエルフからは、暖かく迎え入れられた。

彼女達は元は帝国奴隷だったが、金色鎧の人…まろん様に助けられたそうだ。

 

「ハァ…」

自室として宛がわれた個室。

緊張が解けた様に、安堵でベッドに倒れ込む。

何とか死亡フラグは回避出来たけど、もうコレ、余程な事が無い限りは、このナザリック地下大墳墓(一見 屋外みたいだけど、実は地下施設!)の外には出る事は無いのね…

いや、それってヤバくない?!

もう、彼氏とか作るチャンスが無いって事じゃない?

実は私も、彼氏居ない歴=年齢なんですけど?!

流石に私、それでもゴブリンなんかの亜人と御相手するのは、勘弁願いたいのですが!?

こうなると、現状では まろん様しか…

ええ!まろん様が御相手なら、別に彼女とかで無くても、性奴隷でも構わn…

いえ、止めておきましょう。

何だか まろん様を誘おうとした時に、巨乳美人な眼鏡のメイドさんに殴られる未来が視えてしまったわ。

 




①マーレも勿論、傾国傾城(ワールドアイテム)対策として、強欲と無欲(ワールドアイテム)を持っていました。
 
②デミウルゴス&ニーロニストの尋問は、余りにもエグいので全カットしました。(笑)
 
③漆黒聖典、事実上壊滅!
残る戦力は実質1人だけ?
 
 
感想よろしくです。
 


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復活! 破滅の竜王(カタストロフドラゴンロード)ザイトルクワエ

 
【前回の あらすじ】
 
隊長「くっ殺ーーーーーーーーっ!!」
 
 
 
▽▽▽
ネタ、入りまーす(笑)
 


◆まろんside◆

破滅の竜王(カタストロフ・ドラゴンロード)

漆黒聖典から得た その情報は、また冒険者モモンとマカロン(&ナーベ)の名声(マッチポンプ)のネタにしようと考えていたが、

「…でも、よく考えてみると、その破滅の竜王(カタストロフ・ドラゴンロード)って、この世界でも最強戦力(笑)である漆黒聖典総動員して、どうにかしようとしてたんですよね?

其処等の冒険者が複数チーム組んで、何とかなる物でしょうか?何か怪しまれません?」

…と言ってきたモモンガさん。

言われてみれば、確かに。

…で、捕らえた漆黒聖典で唯一、タレント持ちという理由で無体な処置から逃れられたメガネ・サン…ごめんね、モモンガさんのネーミングのセンス、マイナス側に天突なんだ…改め、占星千里に その辺りを尋ねてみたら、

『どんなに徒党を組もうが、一介の冒険者チームが対処出来る様な存在じゃないです!』

…と言われてしまった。

  

≫≫≫

「あっら~… 本当、見事に…」

「枯れ果てちゃってますぅ?」

「娘…コノ先ナノカ?」

「は、はい…」

そんな訳で、破滅の竜王(カタストロフ・ドラゴンロード)とやらは、ナザリックで処理していく方向で決まった。

利用価値無しなら、もう無関係の放置でも構わない…な意見も有ったが、世界を滅ぼす脅威(笑)とやらには、少しだけ興味が有ったのも本音。

冒険者として、な。

それが例え、切り札として傾城傾国を用いるとは言え、()()()()()()()()()()()()()()()()()()だとしてもだ。

占星千里が言うには、破滅の竜王(カタストロフ・ドラゴンロード)は砂漠の様な中から、姿を見せたとか。

森の中に砂漠?…と思ったが、実際にトブの大森林の東側には、そんな地帯(エリア)が在るらしい。

そんな現地に赴いたのは、俺、アウラ、マーレ、コキュートスに、案内役として占星千里。

そして彼女の護衛役に、ハムスケとブレイン。

因みにモモンガさんとナーベラルは、冒険者組合から仕事の話が有るとかで、そっちに行って貰っている。

 

≫≫≫

「まるで この辺り一帯の生命力が、吸い尽くされている感じで御座るなぁ?」

「ああ…全くだぜ。」

現地と思わしき場所に到着。

其処は本当に痩せ渇いた地…砂地とは少し違うが…に、枯れ朽ちた木々が点々と残っているという、死んでいる景色。

見方を変えれば、木々枝葉が日の光を遮る事が無い、『陽の当たる、開かれた明るい場所』だ。

 

「ねぇ…本当に大丈夫かい?

む、無理なんかしないでさ、引き返すなら今の内だよ?」

そして、同行者が途中で もう1人増えた。

まだ鬱蒼と木々が生い茂っている中を進んでいる途中、俺達に声を掛けてきた、森精霊(ドライアード)のピニスン…なんとか・カントカだ。

いや、名前長いっての…

 

 

◆まろんside・了◆

 

≫≫≫

 

◆ピニスンside◆

ああ、不安だ…。

滅びの森の方に歩いていく、数人の人影が見えたから、()()()() ()()()()が漸く やって来たと思い話し掛けたけど、全然の別人だった。

それは正直、残念だった。

…けど、よりによって あの"滅びの魔樹"が眠っている場所に向かっているのを放って…黙って見ておく訳には行かないから、『そっちは危険が危なくて険しいよ!』って注意したら、『その言い回し教えたの、絶対にプレイヤーだろ?!』って言われてしまった。

…ぷれいやーって何?

それで話を聞くと、この人達も、この先に潜むという強大なモンスターに用が有るとか?

この人達は それを『かたすとろふどらごんろーど』とか言っていたけど、それって多分、魔樹の事だよね?

そうだよね? 単に呼び名が違ってるだけだよね?

この付近に魔樹の他に強力なモンスターが居るなんて聞いた事も無いし、そんなモンスターが彼方此方、ぽんぽんと居てたまるもんか!

それに、この人達…虫の人は結構強そうだけど、ダークエルフの2人は まだ子供だし、魔獣も何だか微妙。

残る3人の人間は、大した強さは感じないし。

はぁ~、あの時の7人組…一体 何時になったら、また来てくれるんだよぉ…

 

「いや…その7人組とやら、多分もう死んでると思うぞ? 寿命で。」

…え?

 

 

 

 

 

 

 

 

  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

えぇぇぇえ゙~~~~っ??!

 

  

◆ピニスンside・了◆

 

≫≫≫

 

◆アウラside◆

「うっわーーーーーーっ!!?

もう終わりだ!魔樹が復活する!復活したら、もう この世界の終わりだぁっ~~~~~!!」

あー、うっさい。

このピニスン・ポール・ペルリアというドライアードが言うには、昔々に この付近に根を下ろしていた、魔樹というモンスターを、人間数人とドワーフ、そして翼のある人…恐らくは悪魔種か有翼人種(イカロス)?のパーティーが封印したんだとか。

それで、彼等は今度来た時は、その魔樹を確実に倒すと言ってたそうだけど、まろんサンの『多分もう死んでる』の言葉に大パニック。

 

「ちょっと落ち着きなって。

…で、その魔樹…ザイトルクワエ?

具体的には何時位に復活するかとか、判らないの?」

「ん~…、分からないよぉ…

でも、地中から出てる触腕(えだ)が、活発に動いているから、本当に近い内に…

それこそ、明日かも知れないし、明日の明日…もしかしたら、そのまた明日かm

「或いは、1秒後だったりしてな(笑)」

 

ッドッドッドッドッドッ…!!

 

『グブォォオオオッ~~~~~っ!!』

「え?」

「え゙?」

「へ?」

あー、本当に復活したね~?

いきなりの地響きと共に、突然 地面から巨木が姿を見せてきた。

なるほど。これは確かに、『滅び』は兎も角、『魔樹』と言われても不思議じゃない大きさ。

超巨大な化物樹木(トレント)だわ。

 

「ナント巨大ナ…!」

「が、ガルガンチュアよりも大きいですぅ!」

「…で、御座るな。」

推定…全高約100㍍。

6本の触枝(うで)の長さ、其々が約300㍍。

魔力は全くな0じゃないけど、基本は物理攻撃特化なのだろう。

レベルは…80半ばかな?

少なくとも私達からすれば、大した敵じゃない。

但し…生命力(ヒットポイント)だけは、測定不可能!

そして… 

 

「うわわゎ~~~~~~っ??!

魔樹が、魔樹が本当に復活しちゃったよぉっ!

キミ!キミが、余計な事を言ったりしたから!

これは全部、キミのせいだからね!」

「え?俺??」

「ブレイン…後でOHANASHIだ。」

「何でだよっ!?…ですかっ?」

まろんサン…お手伝いします♪

 

「そ、そんな…あれが…滅びの竜王(カタストロフ・ドラゴンロード)…だと言うの??」

その滅びの竜王(カタストロフ・ドラゴンロード)…ピニスン曰く、ザイトロクワエ…を見て、占星千里が呆然。

その通り名からして、てっきりドラゴン型のモンスターだと思っていたんだろうね?

しかし実際は、その場に根を張り、基本的には移動の出来ない、植物型モンスター。

仮に傾国傾城(ワールドアイテム)で その精神を支配したとしても、動けないんじゃ対他国なんかの武器(おどし)には使えないよね~?

 

「…で、アウラ? 魔獣コレクター的には、アレは お持ち帰りコースか?」

「…あんなの要らないです。」

まろんサンが聞いてきたが、アレは無理。

仮に、第6階層の森の中に移したとしたら、アレが周りの植物の養分を全部吸っちゃって、それこそ1週間で この周辺みたいな枯れ地になっちゃいますよ!

そうなったら、ブループラネット様に申し訳無いです!

 

「ぁゎゎ…うわぁあああぁぁぁ~っ!!

お、大きい!幾らなんでも大き過ぎるだろ、アレ?!

あんなの誰も、勝てる訳が無い!勝てっこないよおっ!

もう終わりだぁ!この世界の終わりだああっ!」

「てい。」

 

びしっ!

 

「ぁ痛あ~ぁいっ?!」

「落ち着けっての。」

そしてザイトルクワエを見て、完全にテンパりパニクっているピニスンの頭に、まろんサンが手刀を落とす。

  

「痛たた…ひ、酷いよぉ…」

「さしずめHP特化なレイドボスって感じだな?」

涙目ジト目でまろんサンを睨むピニスン。

そのまろんサンは巨木を見据えながら呟く。

 

「それじゃ、伐採の時間だ。

行くぜ、コキュートス、アウラ、マーレ!

ハムスケとブレインは、占星千里とピニスンを護れ!」

「「はい!」」

「承知!」

「合点で御座る!」

「…はい。」

そして戦闘開始の宣言。

戦力扱いされなかったのか、ブレインが何だか不満そうだけど、まあ、仕方無いよね!

 

ブォッ!

 

「「「「?!!!」」」」

此方の戦意を感じ取ったのか、ザイトルクワエが先制とばかり、口から種を無数に吐き出してきた。

私達の頭と同じ位な大きさの弾丸だ。

 

「フンッ!」

「せいっ!」

 

バチィッ!ズガァッ!

 

しかし それは、前側に立っていた まろんサンとコキュートスが、燃える拳と冷気を纏わせた太刀で全て迎撃。

 

「え?え?え~~~~~~~~っ?!

ま、魔樹の吐き出した種を、殴り落としたぁ~??!」

あー、うっさい。

 

 

◆アウラside・了◆

 

≫≫≫

  

◆ハムスケside◆

「え?え?え~~~~~~~~っ?!

ま、魔樹の吐き出した種を、殴り落としたぁ~??!」

いや、あの程度、まろん殿やコキュートス殿なら、普通にこなすで御座るよ?

だからピニスン殿?興奮して某の髭を引っ張るのは止めて欲しいで御座る。

 

『『『『くきゃきゃきゃ!!』』』』

おお?

今度は魔樹の頭?にアオリンゴの様な実が成り、

『『『『くきゃきゃきゃ!!』』』』

おお?

それ等は小さな1つ目と大きな口を開いて、

『『『『くきゃきゃきゃ!!』』』』

おお?

此方に集団で飛んできたで御座る!

 

「何だか美味しそうで御座る~♪」

「「「何で、そうなるんだ!?

           だよ?!」

           ですか?!」

え?何か違ってるで御座るか?

 

「クソが!

武技・領域…秘剣、虎落笛!!」

 

斬々々々々々々々々々!!

 

ブレイン君が突っ込みながら剣氣の結界を張り、その中に入ってきたリンゴを超反応で次々と切っていくで御座る。

食べやすいサイズにスライスされて…え?食べちゃダメで御座るか?

兎に角、此方は一段落で御座るな。

 

「よし!アウラ!マーレ!コキュートス!()()をやるぞ!」

「えっ?」

「ム?」

「ぇえ~!?ほ、本当にやるんですか~?」

一方の まろん殿達。

何やら まろん殿が連携技をやろうとしてる感じだが、アウラ殿達は、躊躇している様で御座る。

 

「フム。アウラ、マーレヨ。

コノ場合、躊躇ウ方ガ、不敬トイウモノダゾ?」

「そ、そりゃコキュートスは()()()()()()()()じゃないから、普通に言えるだろうけどさあ?」

「う…うぅ…ま、まろんサン…あ、後で怒ったりしないで下さいよぉ?」

しかし、話は纏まったみたいで御座るな。

 

「フンッ!」

お?先ずはコキュートス殿が地に仰向けとなり、両足を…膝をやや曲げた状態で、上方に向けたで御座る。

 

「「とうっ!」」

 

ひょんっ…

 

む?そしてアウラ殿マーレ殿が、大きくジャンプして、各々がコキュートス殿の左右の足に飛び乗ったで御座る。

 

「「「ハァッ!」」」

 

ババッ!

 

おお!そのタイミングでコキュートス殿が曲げていた足を真っ直ぐに伸ばし、その反動でアウラ殿マーレ殿が天高く飛翔、

 

スポ…

 

「そら!受け取れ!」

そして それに合わせて まろん殿が、自身の頭を御2人に投擲(パス)したで御座る!

 

「「ええ゙ぇえ~~~~~!?

く、首が、外れたあ~~~っ??!」」

いや、占星千里殿ピニスン殿?

まろん殿は首無し騎士(デュラハン)なのだから、普通で御座るよ?

 

「いや、予備知識無しな初見なら、普通は驚くっての…」

あー、ピニスン殿は兎も角、占星千里殿も知らなかったで御座ったか?

…それとピニスン殿 占星千里殿?

驚くのは良いが、某の髭や頬を引っ張るのは止めるで御座る。

 

「「まろんサンごめんなさいごめんなさいごめんなさい!…い、いっけーーーーーーーっ!」」

 

バッシィッ!!

 

そしてアウラ殿マーレ殿は まろん殿に謝りながら、その まろん殿の後頭部(あたま)に強烈な同時蹴り(ツインシュート)を撃ち放ったで御座る!

流石は双子、息ぴったりで御座る!

 

「ふはははははは!」

 

ゴォォォッ…!

 

そして魔弾と化した(まろん殿)は一直線。

笑い声(雄叫び)を上げ、魔樹に特攻していったで御座る!!

 




 
次回、ザイトルクワエ編決着!(予定)
 
今年の投稿は終わりです。
良い年末年始を。
 


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ザイトルクワエ② ~必殺技炸裂!!~

 
※重要な御知らせ※
小説タイトル、変更しました。
よろしくお願いします。
 
 
【前回の あらすじ】
 
「「「「スカ〇ラブ・ツ〇ンシュート!!」」」」
 
 


◆ハムスケside◆

「ふはははははは!」

 

ゴォォォッ…!

 

まろん殿コキュートス殿アウラ殿マーレ殿の連携技。

それにより、魔弾と化した まろん殿の頭が滅びの魔樹…ザイトルクワエに一直線、

 

ドッゴォオオンッ!!

 

その巨大な幹の大きく開けた口の上、ヒトの顔に置き換えるなら、鼻の辺りに直撃、大爆発で御座る!

 

「見事ッ!」

「「やったぁっ!」」

それを見て、コキュートス殿アウラ殿マーレ殿は必殺を確信したのか、喜びの表情を浮かべるが、

「いや、まだまだだ!」

戻ってきた まろん殿は自身の頭を首の上に戻し、未だ敵は倒れてないと発するで御座る。

 

「確かに かなり削った手応えは有るが、元々がHP特化の化物だ。

あれで終わりな筈も無いだろ?」

「「「…!!」」」

その言葉に、御3方は再び その顔を緊張感有る其に切り換える。

 

「「(゚д゚)ぽかーん…」」

そして占星千里殿ピニスン殿は、何故か口を大きく開けての呆然とした表情。

 

「いや、アレ見て普通な俺達の方が、もう普通じゃないと思うぞ?」

…で御座るか?

 

ダダダッ…

 

不動明王撃(アチャラナータ)・倶利伽羅剣~!!」

銀河火弾拳(ギャラクティカ・マグナム)!!」

 

バギッィィィィイッ!x2

 

…とか、言っている間に、コキュートス殿 まろん殿が、追撃で御座る。

一気に近接にまで距離を詰めると、大太刀の一振りから生る、衝撃波を纏った超弩級の豪の刃と、まるで火山を横向きにしたが如く…燃える溶岩弾を飛ばしながらの凄まじい右拳(ストレート)、大技が連続で炸裂したで御座る!

 

「ヒュー♪ やっぱマジ パねぇぜ!」

「…で、御座る~♪」

ブレイン君と某が、それを見て感心し、

「「(;゚Д゚)あんぐり…」」

占星千里殿とピニスン殿は、また口を大きく開けて唖然としてるで御座るよ。

 

『ゴラァァアアッ!!』

しかし、それでもザイトルクワエは まだ倒れない。

あれだけな巨体。それに見合った…いや、それ以上な体力を持ち合わせているで御座るよ。

 

『ドラァァァアッ!!』

 

ビシバシベシッ!

 

「うおっ?!」

「おろっ!?」

「「ぁゎゎゎわ?!」」

そして怒りの咆哮?と共に、6本の触枝(うで)を鞭の様に うねらせ、獲物の有無関係無しに、周囲の地面を叩き付けてきたで御座る!

それは某達の居る場所までは、まだ届かないで御座ったが、

『『『『ぐぺぺぺぺーっ!』』』』

「「む?」」

「「(」゚o゚L)ひえぇっ?!」」

代わりに今度は青リンゴで無く、パイナップルみたいな果実(モンスター)を実らせて、此方に飛ばしてきたで御座る!

 

「微塵斬り!」

「武技・斬撃で御座る!」

 

斬々々々!!

 

しかし それは、某とブレイン君で迎撃。

 

「《地母神の盾壁(ガイア・ウォール)》!!」

 

バチィッ!

 

そして触枝(うで)の届く範囲に居る まろん殿達は、マーレ殿が防御系魔法を繰り出し それで弾き返して凌いでいるで御座る。

 

「嘘ぉっ?!ま、魔樹の攻撃を、跳ね返したぁ?!

何?何なの?あの男の子、小さいのに凄く強いじゃん?」

「あー、あれ位、マーレ殿なら、普通で御座るよ。」

自分の常識で物事を考えるのは、止めるで御座る。

だから、興奮して某の髭を引っ張るのも、止めるで御座る。

 

「それに、まろん殿も まだ本気を出してないで御座るし、某達の拠点(ホーム)には もう1人、まろん殿と同格の、とてつもない実力を持つ御方が居らっしゃるで御座る。」

「…マジ?」

「マジで御座るよ?」

 

タタタタ…

 

そんな風に話していたら、今度はアウラ殿がザイトルクワエに突進、その巨大な幹を掛け登っていくで御座る。

 

「ぇぇい、邪魔っ!」

 

バシゥッ!

 

途中、寄生というか、護衛として飼っていたというで御座るか?

魔樹に巣を作っていた、蜂型のモンスターを鞭で捌きながら、どんどん上へと上がって行き、

 

ぶち…

 

「げとぉ~♪」

生い茂る緑の葉の中から…実は某も、この魔樹が姿を現した時から気になっていたで御座るが…天辺付近で1枚だけ、異様に目立っていた赤金色の葉っぱを引き抜いたで御座る!

もしかしなくても、レアな薬草で御座るな?

 

 

◆ハムスケside・了◆

 

≫≫≫ 

 

◆まろんside◆

「まろんサン! 漸く分かりました!

現在の敵のHP、99,999,971です!」

アウラが超薬草(仮称)をゲットした後も、俺達はザイトルクワエの攻撃を往なしつつ、連携技、或いは個人技での攻撃を続けていた。

如何にバカみたいなHPだろうが、元よりレベル90未満のモンスターだ。

レベル100(カンスト)の俺達の敵じゃなく、苦戦という苦戦は していない。

確かに、計測可能な迄にHPを削る作業は骨だったけどな!

しかし それも、やっと…それでも巫山戯た数値だが、漸く終わりが見えてきた。

…HP無限設定とかで無くて、良かったぜ。

そして、終わりが見えたなら、それに乗じた戦い方が出来る!まだ先は永いけどな!

 

「よし、この先は出し惜しみは無しだ! 一気に行くぜ!

…ライトニング・タイガー・ショット!!」

 

 

◆まろんside・了◆

 

≫≫≫

 

◆ピニスンside◆

う、うわぁぁあっ?!

こ、今度は あの まろんとかいうヒトが、また頭を体から離すと地面に置いて、自分の頭を思いっきり蹴り飛ばしたあっ?!

その頭は雷を纏ってザイトルクワエに特攻。

大爆発・再びだよお!?

 

「だから、何なの、アレ?

威力が有るのは分かるけどさ、アレって自分は痛くないの?!」

「ん~、実際 大丈夫だから、行っているので御座ろう?」

「…あのヒトの ()()()()の技は、突っ込んだら負けだぞ?」

「早く慣れるで御座るよ。」

いや、慣れるって何?慣れるって?!

 

「「(¬_¬)…………………。」」

いや、だから2人して、何 遠い目をしてんの?!

 

ドッゴォオオォォオンッ

 

……!?

…とか、言っている最中に、あの虫のヒトが、4本腕で持った4つの武器それぞれでの技を、1度に繰り出した!

それにより、ザイトルクワエの6本の触枝(うで)が、全部吹き飛んだ!

 

シュゥ…

 

そして それは、確かに再生しようとしてるけど、

「今の攻撃、全てが冷属性ね。

見て。斬り落とされた枝の断面全部が、凍っている。

あれじゃ、直ぐに元には戻らないわ。」

眼鏡の女の人が、冷静に分析(かいせつ)

 

『ぐぉぉ…』

そしてザイトルクワエは、さっき迄の恐ろしい雄叫びが一変、力弱き物に。

 

ぶんぶぅん…

 

宿主の命の終わりを感じたのか、魔樹に憑いていた、虫系モンスターも、逃げる様に、四方に飛び散るけど、 

「《悪食花(グルメプランター)》!」

ダークエルフの男の子の方が、食虫…肉食…いや、雑食だろうね?!…な巨大な花を無数に喚び寄せ、その全てを逃がさない。

 

「そろそろ、良いだろう!

一気に終わらせてやる!」

そして、このメンバーのリーダーなのだろう、金色の鎧の男のヒト…まろんサンが改めて前に出た。

 

「こ、この魔力…爆裂系?…を拳に溜めている?

そんな?!こんな凄い魔力なんて…!?」

両脇に拳を構えた まろんサンを見て、眼鏡さんが驚いている。

ん、確かに、凄い魔力だ。アア、スゴイナー。 

そして その体勢の儘に再び、近接距離に飛び込み、

「「ええええぇ~~~~っ??!」」

ザイトルクワエの、大きく開けた口の中に飛び込み…あ、手前で停止した。…ですよねー。

 

「見るが良い! 銀河を破壊する一撃を!」

そして、爆裂の魔力が籠った拳を自分の頭上で交差(クロス)させて、

銀河爆砕(ギャラクシアン・エクスプロージョン)!!!!」

 

弩ッ轟嗚々々々々々~ッ!!

 

その魔力を一気に解放(スパーク)させ、大爆発…の表現すら安い程の、兎にっ角 凄い爆発を引き起こした!

結果、ザイトルクワエは口の部分から上が砕け散り、きれいさっぱり喪われてしまい…きゅ~…

 

パタン…x2

 

「ピニスン殿? いきなり倒れて、どうしたで御座るか、ピニスン殿ぉ?!」

「おい占星千里、大丈夫か? しっかりしろ占星千里!?」

 

 

◆ピニスンside・了◆

 

≫≫≫

 

◆ハムスケside◆

「「ご…御迷惑を御掛けしました…」」

「いや~、アレは、確かに凄かったのは凄かったから…ねぇ?」

「是非モ無シ。」

数分後。気絶から戻ったピニスン殿と占星千里殿が、心配を掛けたと まろん殿達に頭を下げたで御座るが、当人達は然程、気には してない様子で御座る。

 

「は…ハムスケさん達は、まろんサンの技、知ってたの?」

「いや…アレは、見たのは初めてだな。」

「ええぇえ~?! だったら!何故!平気なんだよ?

流石にアレは、驚くでしょ?たじろぐでしょ?!」

「いや…だって…なあ?ハムスケ?」

「そうで御座る~。」

確かに今回の まろん殿の技は初めて見たで御座るが、ブレイン君共々まろん殿からは時折、手解きを受けていて、その 鬼畜振り 実力は承知で御座るからな。

()()()()は普通に出来るなんて、想定済みで御座るよ。

 

「はは…あはひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!!」

へ?どうしたで御座るか、ピニスン殿?

落ち着くで御座るよ?

とりあえずは深呼吸、ひっひっふー?

 

「何々?何なのさ?このインフレ?」

「「「「いんふれ?」」」」

「ああ、それも多分、プレイヤーが教えた言葉だな。意味は…」

 

≫≫≫

「はぁ…つまり、アナタ達からすれば、あの魔樹すら雑魚に過ぎなかったと…そういう事、ですか…」

「確かにHPは、それなりだったけどな。」

「そうですか…あんな魔樹如きを世界最強だの最悪だの最凶だの思っていたなんて…

ハァ…あんなのより強い存在って、世界を滅ぼせる存在なんて探そうと思えば、其処等彼処(そこらかしこ)に居たんですね…

ハムスケさん…私が間違っていました。

私は、井の中の蛙でした…」

ん~、イノナカノカワズとは どういう意味かは分からんで御座るが、ピニスン殿?

そなたも漸く分かってきたで御座るな~?

ついでに、占星千里殿も。

 

 

◆ハムスケside・了◆

 

≫≫≫

 

◆モモンガside◆

『…まあ、概ね こんな感じですか?』

「了解です。お疲れ様でした。」

まろんサンから、"破滅の竜王"改め、滅びの魔樹ザイトルクワエ討伐の報告が《伝言(メッセージ)》で届いた。

様子見で終わらせるか、その場で処理するか…或いは傾城傾国で精神支配して取り込むか(ナザリックの中ではマーレとユリに適性が有った)…は現場での判断に委ねていたが、結局は『使えねー』だったらしい。

そして、その際に現地で知り合った樹の精霊(ドライアード)を1体、ナザリックに加入させたいとか。 

これはドライアードの地系魔法が第6階層の農場の土壌操作に使えると言う、アウラとマーレの推しも有り、ナザリックに有益となるならば、それを断ずる事も無いだろうとして認める事に。

 

≫≫≫

「冒険者組合での話、しましょうか?」

「確か、組合長(アインザックさん)から直々の依頼でしたね?」

ナザリックに帰還した まろんサンと、今度は冒険者としての仕事の話。

 

「はい。まろんサンからすれば、また大森林(あっち)に足を運ぶ事になりますが…

大森林東部に、凄く稀少な、凄い効能を秘めた薬草が有るらしくて、それの捜索の依頼を受けたんですよ。」

「え?それって、もしかして…」

「はい?」

   




 
次回より新展開!
今年も よろしくです。
 


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嗤う金毛(スマイル・ゴールド)


 
和訳は大体合っている筈。(多分)
 


 

「姉さん!」

「セリーシア!」

 

◆モモンガside◆

世の中とは、意外と狭い物だ。

何の話かと言うと、俺、まろんサン、ナーベラルは冒険者B&G(ブラック アンド ゴールド)として、カルネ村に訪れていた。

仕事内容はトブの大森林の、アンデッド他、モンスターの調査、並びに駆逐…マッチポンプとも言ふが…その中継拠点としての訪問だ。

そして俺達とは別件で、カルネ村に仕事が有るとして同行していた冒険者チーム"漆黒の剣"。

そのメンバーの1人のニニャ。

この彼…で無くて この男装少女と、以前、セバスが保護した元娼婦の少女ツアレ二ーニャが、実は生き別れの姉妹だった…という事だ。

保護した…は良いが、只の人間のツアレ二ーニャをナザリック地下大墳墓に置く訳には往かず。

だから俺は、ツアレ二ーニャの背後のゴタゴタが片付いた後…少し前にカルネ村に魔法詠唱者(マジック・キャスター)アインズとして、彼女の受け入れをお願いしたのだ。

何故か村娘(エンリ・エモット)が村長になっていたのには驚かされたが、村の恩人(アインズ・ウール・ゴウン)の頼みという事も有り、快く受け入れてくれた。

当然、訳有りなのも隠さず説明しているぞ?

そのツアレ二ーニャとニニャ…本名セシーリア。

当人同士からしても、予想外な偶然の再会。

そして互いに姉妹と気付くと、その場で泣きながら抱き締め合ったのだ。

しかしツアレ二ーニャからも貴族によって引き離された妹が居るのは聞かされていたが、それが まさか知っている人間だったとは。

本当に、世の中は狭い物だな。

 

「良かったですね、ニニャ。」

「ああ、良かった。」

「全くである。」

そして その様子に…事情を知っていた彼女の仲間達も、それを我が事の様に喜んでいる。…が、

 

「俺はチャラ男が、ツアレを見てナンパしなかったのに驚きなのだが。」

「ちょ…どーゆー意味ですか?!」

ん、それな!

 

「マカロンさんは俺の事、絶対に勘違いしてるって!」

「黙れサザムワーム。

ま…っカロンさんが言う事に、間違えが有る筈も無かろう。

ほら、あの娘にも声を掛けたらどうだ?

以前 私にそうしたように。

軽薄に。恥も外聞も無く。身の程も知らずに。」

「な…ナーベちゃん~?

いやいやいや!俺だって、流石に空気読めるからさ!」

 

≫≫≫

「すいません…何と言いますか…」

「悪ぃ…知ってた。」

「…である。」

「えぇえ゙ぇ~っ??!」

その流れで、ニニャが今まで自分が『女』というのを隠してきた事を仲間や俺達に謝罪するが、ペテル達は それを責める事は無く、既に知っていて、それを承知で同行していたのを逆に打ち明ける。

 

「いや、こっちはコッチで、何時()()()()()()()()()かってヒヤヒヤだったぜ?www」

「…であった。」

「そうですね。」

「うう…ごめんなさい…」

特に咎める事も無いと笑って受け流し、互いに謝るペテル達。

改めて、良いチームだな。

 

「何だ、アレは男装の心算だったのですか?」

「え?」

「「な、ナ~ぁベぇ~~~~っ!?」」

しかし、そんな良い空気を破壊しようとする女が、約1名。

いや、悪気は無いんだよな?

ただ、空気を読めないだけだよな?

頼むから『そうです。』と言ってくれ!

 

「ま、まあ、女性からすりゃ、丸分かりだったんだろう?

ぶっちゃけ、俺も初見で見抜いていたし?

何か事情が有ると思い、触れなかったけどな。」

…え?まろんサンも知っていてのですか?

まさか、ニニャが女だったの、今 初めて知ったのって俺だけ?

 

≫≫≫  

「オラッ!何チンタラやってんだ?!

さっさと行くぞ!」

「遅れてきた癖に、偉っそうに…」

「あ゙?!何か言ったか、テメー?!」

俺達がカルネ村に着いたのは昼飯時の少し前だったが、それから少し経ち、俺達と一緒に森の探索をする冒険者チームが2組、村にやってきた。

一応、今回の仕事(ミッション)のリーダーとなっている、イグヴァルジ率いる【クラルグラ】と、俺達と同じく、ミスリル級冒険者チームの【フォーライヴ】だ。

 

「2人共、止めないか!」

「イグヴァルジ、落ち着けっての!」

「そっちの お姉さんも、その殺気、仕舞いましょう!」

「そうだぞナーベ、スティスティ。」

「最初から そんな雰囲気で、どうするんだよ?!」

メンバーが揃った処で、いざ出発!…な時に、いきなりイグヴァルジと まろんサン…マカロンが やってくれました。

やたらと仕切りたがるイグヴァルジに、ボソッと一言呟いただけなのに、無駄に耳が良いのか、その台詞を拾ってマカロンに突っ掛かってきたのだ。

俺を含めて他の面々(ナーベラル以外)が中に入り、その場を収めたけどな。

 

「スカラベが…殺す!」

いや…だからスティスティ。

 

≫≫≫

 

♪~♪♪♪~♪~♪♪~♪

 

森の中、竪琴の音が響く。

筋肉なモヒカンで強面の巨漢…見た目、どうみても武闘家(プロレスラー)な吟遊詩人の男が奏でる魔除けの音色により、雑魚モンスターとの遭遇(エンカウント)を避けつつ森の奧に進んでいく。

 

「シーゲル、そろそろ竪琴も良いだろう。」

「む?そうか?」

紫のダーバンを巻いた男…フォーライヴのリーダー、ヒトシ・コノミの言葉に、同じくフォーライヴのメンバーであるシーゲル・イヅミーヤは頷くと、その演奏を止めた。

 

「つまり この先は、モンスターが現れるで御座るか?

よーし、ゲレゲレ殿、気を引き締めていくで御座るよ!」

「がぅ!」

そう、この先は、モンスターが現れる。

特に…俺達、というか、デミウルゴスが放った…不死属(アンデッド)が。

パーティーの先頭を進んでいたハムスケの台詞に、その隣を歩いていた、剣牙豹(キラーパンサー)が応える。

魔獣使い(ヒトシ・コノミ)の使役している この魔獣は、かなりな高レベル(今のハムスケより少し弱い程度)で、本来なら彼のレベル程度では御せない…が、彼のタレントで、それを可能にしているそうだ。

 

ザザザッ…

 

「「「「「!!!!?」」」」」

そして その後、そう歩きもしない内、モンスターが現れた。

…と言っても、アンデッドじゃない。

 

『『『『ぐるるる…』』』』

魔力が通う鎖を纏った狼、バーゲストだ。

それが、4体の群で現れた。

 

「マジか? バーゲストが群れるなんて…?!」

「もしかして これも、アンデッドの大量発生と関係有るのですか?」

クラルグラやフォーライヴの連中が驚いているが、確かに。

バーゲストは基本、単独で活動するモンスターだ。

フォーライヴの神官…ヨースィー・イノーエ…だったかな?の言う通り、デミウルゴスが森に放ったアンデッドの影響と思われる。

アレ等は森から出る事は無いが、逆に言えば森の中なら人間だろうが現地の野生の動物やモンスター、無差別に襲う様に設定したらしいからな。

防衛本能みたいな物が働き、自然に群を為す様になったのだろう。

…これって或る意味、生態破壊?

 

「落ち着け!高がバーゲストだ!

チーム毎に前・後衛の陣形を組んで、各個撃破だ!」

此処で、一応はリーダーのイグヴァルジが指示を飛ばす。

 

「くっ…何故、虫けらの命令に…」

良いから! 間違った指示じゃないから!

 

「先手必勝!行くで御座るよ、ゲレゲレ殿!」

「がうっ!」

そして最初に飛び出したのは、ハムスケとキラーパンサーのゲレゲレ。

初手で既に、チーム毎 関係無い。

 

ズガァッ!

 

『ギャヮゥッ!?』

鋭く長い爪と牙の連携(コンビネーション)で、瞬時に1体を行動不能にした。

初対面な筈だが其処はケモノ同士、互いに何か通ずる物が有ったのか?

 

「ふんっ!」

「てゃっ!」

 

斬!ガンッ!

 

『キュヮォンッ!』

そして俺とマカロンも、1体を仕留める。

 

「お見事です!」

後衛のナーベの出番は無かった。

 

♪そう今こそ我等 狂気に至る時♪

♪踊れ舞え♪踊り狂え♪狂い舞え♪

♪Is it Illusion? or Hell?♪

♪それが嘆きの中でも突き進め!♪

「「「おおぉおっ!!」」」

そしてフォーライヴ。

吟遊詩人の詩…その外見からは想像出来ない綺麗な歌で、攻撃力アップ…バフ効果の掛かった他の3人が、また別の1体に集中攻撃を仕掛ける。

歌詞的にだけど、多分 狂戦士(バーサク)化してる?

 

「オッラァッ!」

 

斬!

 

止めは戦士職、タクロゥ・ジョースダーの一撃が決まる。

更にはクラルグラの連中も、担当した個体を倒し、この戦闘は終了した。

 

「くぅ…」「痛ゥ…」

「皆さん、大丈夫ですか?」

但し、無傷という訳じゃない。

俺達とハムスケ達以外は、それなりなダメージも受けていて、ヨースィー・イノーエが回復魔法で皆を癒す。

 

「ふん。アレ如きに手傷を負うとは。

大したリーダー様だな。」

「んだと、テメェ!」

そして この時、またもや要らぬ一言を飛ばす人物が約1名。

 

「止めろリーダー(笑)。

ナーベ、お前もだ。世の中には頭で思っても口に出してはダメな事が、沢山 有るんだぞ?」

「申し訳有りません、マカロンさん。」

「ああ゙?!つまりテメーも、そう思っているって事か、固羅ァッ!?」

撤回。2名。

但しリーダー(爆)、お前も煽り耐性が低過ぎるぞ。

尤も、『俺達だから』という部分も有るだろうがな。

このイグヴァルジ、ポッと出で いきなりミスリルに昇格した俺達の事を気に入らないと言うか、かーなーり好く思っていないらしい。

狭量過ぎないか?

【漆黒の剣】の皆さんは「凄いですね!」「あの強さなら、当然なのである。」「流石です。」「ナーベちゃん♡」と、銀級(シルバー)の自分達を一気に追い抜いたにも拘わらず、普通に称賛、祝ってくれたぞ?

ナーベラルの蔑視は設定(てんねん)だから仕方無い部分も有るが、まろんサンは それに気付いているから、余計に面白がっての言動だから、質が悪い。

 

「テメェッ!ケンカ売ってんのか?!」

「「イグヴァルジ!」」

「止めろって!」

イグヴァルジが まろんサンにキレて掛かるが、大元は お前が俺達に敵意剥き出しな睨みを向けてきたのが原因だぞ?

ヤツの仲間が慌てて間に入り、この場を何とか収めたか、英断だ。

まろんサンは こういう場合、自分から手を出したりはしないが(口は出す)、身に掛かる火の粉は…

 

 

振り払った程度じゃ、また舞い戻る可能性が大でしょ?

だからこそ、また戻ってくる事の無い様に遥か彼方まで吹き飛ばすか、2度と舞わない様に その場で()()()()()()()()

 

 

…こういうタイプだからなあ。

 

「…ふっ!」

 

シュシュシュシュ…

 

…だからアンタも、ヒットマン・スタイルで煽るのは止めなさいって。

 

『ゴァァアッ!!』

「「「「「!!!!!?」」」」」

そんな険悪な雰囲気の中、新手が現れた。

 

「トロール!」

「…の、ゾンビだとぉ?!」

通常より、2回り程度デカいトロール。

しかし、眼からは光が消え、血の気の失せた身体の一部から骨や臓物が剥き出しており、死臭を撒き散らした それは、ゾンビ化しているに他ならない。

 

「チィッ! テメー、話は後だ!

囲め、散開だ! 全方位から集中攻撃だ!」

一応は、ミスリル級冒険者のイグヴァルジ。

不測の事態に於いての感情の on/offの切り替えは、出来る様だ。

そして やはり一応、リーダーを自ら名乗り出るだけの判断力指示力も、それなりに持っている。

単なる仕切りたがりな無能じゃない訳だ。

 

「「「「「応!!」」」」」

その指示には、まろんサンも素直に従って動く。

緊急時に和を乱す事は、流石にしないよな!

だからナーベラル、お前も顔芸レベルなキレ顔してないで、きちんと動け!

 

≫≫≫

「ふぅ…」

「危なかったぁ…」

「御座るぅ~…」

少し前まで、トブの大森林にて、東の巨人と呼ばれていたトロールを素材(ベース)にしたゾンビは、それなりの強さを持っていた。

()()()ミスリル級冒険者なら、かなりの苦戦を強いられるレベルだ。

デミウルゴスの強さのバランス調整は素晴らしいな。

俺達も、()()()()()()()()()()()()()()、このトロール・ゾンビはチームプレイ(笑)で倒す事が出来た。

…が、本番は これからだ。

今回の仕事(ミッション)…アンデッドの調査・討伐は、冒険者組合からの依頼で、定期的に複数の冒険者チームが1つのパーティーを組んで、活動していた。

そして今回、それに俺達の出番が回ってきた事で、前々から予定されていたデミウルゴス考案の脚本が始動する。

そう、俺達ブラック&ゴールドの名を高める為、王国でも有名になったアンデッド、嗤う金毛(スマイル・ゴールド)を俺達に ぶつけるという、完璧なマッチポンプだ!

クラルグラとフォーライヴは、その立会い、証人みたいな物だ。

そしてデミウルゴスからは、嗤う金毛(スマイル・ゴールド)を仕向ける前に、前座としてトロール・ゾンビを先に送り付けると教えられていた。

 

「つまり、そろそろって訳だ。」

 

コクン…

 

まろんサンの呟きに、俺とナーベラルが小さく頷く。

 

≫≫≫

「で、出たァッ?!」

「マジに全裸マントかよ?」

「しかも本当に金毛!」

あれから野良のモンスターとの戦闘を2回こなした後、遂に今回のボスキャラと言うか、本命と遭遇(エンカウント)

マントの下は全裸の女吸血鬼(ヴァンパイア)嗤う金毛(スマイル・ゴールド)と その手下とされている、死者の大魔法使い(エルダー・リッチ)が2体だ。

 

ボゥッ!

 

「「「「「!!!?」」」」」

しかし、その出現に此方の反応は遅れてしまう。

全裸マント。

嗤う金毛(スマイル・ゴールド)の その容姿に一瞬、固まってしまい…それは下心なガン見だったり、単なるドン引きだったり様々だが…兎に角その隙を突かれ、死者の大魔法使い(エルダー・リッチ)の1体、通称:疵面(スカーフェイス)が《聖光球(ライトボール)》を撃ち放ってきた!

 




「何だ、アレは男装の心算だったのですか?」
因みに作者、小説は未読。
アニメの初見で、ニニャは普通に女の子だと…ルクルットの『男女パーティーは面倒』の発言まで、アレが男装だったとは思っていませんでした。
 
 
【今回登場のフォーライヴ】 
ヒトシ・コノミ…ドラクエⅤ主人公
シーゲル・イヅミーヤ…ハッサン(DQⅥ)
ヨースィー・イノーエ…クリフト(DQⅣ)
タクロゥ・ジョースダー…種泥棒(DQⅦ)
…のイメージで。
 


★次回予告★
  
◆まろんside◆
遂に始まったボス戦!
魔弾が飛び交う中、嗤う金毛(スマイル・ゴールド)に、モモンガさんの超必殺・キン肉ド〇イバーが炸裂する!
 
「いえ、しませんからね!
いくらアンデッドでも、全裸女性に その技はアウトですよ!?
てゆーか、普通に出来ませんからね、そんな大技!」
 
 
次回、『嗤う金毛(スマイル・ゴールド)④』
乞う御期待!
 
 
※誤字報告、どうもです。
完全に記憶違いでした!
 


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嗤う金毛(スマイル・ゴールド)

 
改めて、冒険者チーム【フォーライヴ】の紹介
 
ヒトシ・コノミ:魔獣使い…ドラクエⅤ主人公
シーゲル・イヅミーヤ:吟遊詩人…ハッサン(DQⅥ)
ヨースィー・イノーエ:神官…クリフト(DQⅣ)
タクロゥ・ジョースダー:戦士…キーファ(DQⅦ)
 
…のイメージで。
 



◆ナーベラルside◆

( )

ワラジムシが…!!

( )

どうして私達が…いや、私は この際どうでも良い。

何故、モモンさん(アインズ様)マカロンさん(まろん義兄様)が、あの様な愚物(ムシケラ)の指示に従わないとならないのだ?!

あの先制攻撃とばかりに死者の大魔法使い(エルダー・リッチ)の放った魔法を、私の魔法で相殺した後、私達【ブラック&ゴールド】はアンデッド共のボス格である女吸血鬼に攻撃を仕掛けようとしたが、

新人(ルーキー)は引っ込んでろ!」

「コイツは、俺達が倒すんだよ!

お前等はアッチの相手でも、してやがれ!」

…と、自称リーダーの男と そのチームが、私達を押し退ける様に前に飛び出し、吸血鬼と戦闘を開始。

 

 

ボォッ!

 

そして その台詞を推す様に、死者の大魔法使い(エルダー・リッチ)の1体が、私達に《火炎球(ファイヤーボール)》を撃ってきた!

 

「チィッ!」

 

バヂィッ!

 

その攻撃は、まろん義兄様が燃える拳で迎撃。

もう1体の死者の大魔法使い(エルダー・リッチ)も、別の冒険者チームと戦闘を始めている。

必然的に、私達の相手も決まった形だ。

チィッ…結果的とは云え、あんな人間(ゴミ)の言いなりになってしまうとは…!

 

 

◆ナーベラルside・了◆

 

≫≫≫

 

◆まろんside◆

( )

…とか、ナーベラルは思っているだろうが、それは小さい事だ。

どうせ大手柄目当てだろうが、イグヴァルジ程度じゃ、あの嗤う金毛(スマイル・ゴールド)は倒せなく、ついでに言えばフォーライヴの方も、そのレベルじゃない。

あの2体、何しろ六色なんたらとか言う、人類最強(笑)の戦闘部隊に所属していた人間を、元にしているんだぞ?

最後には俺達に出番が回ってくる。

その前に負傷したり死んだとなったら、それは自己責任って事で。

尤も、俺達以外が全滅したら、誰が俺達の活躍を伝えるんだ?

自分から『俺達ブラック&ゴールドが全部、倒しました!どやぁっ!』とか言う?…無えよ!って話になるから、心配しなくても、なるべく死なせない様に努力してやるさ。

同行者を死なせたとなると、それは それで、俺達の悪評価に繋がりかねないからな(自意識過剰w) 。

 

「…さて、とりあえずは我々も、担当した敵を片付けるか。」

「はっ!」

「承知に御座る!」

「了っ!」

そしてモモンガさんの言葉で、

 

ボッ!

 

フードを被らず、スキンヘッド剥き出しな死者の大魔法使い(エルダー・リッチ)蓋頭(スカルヘッド)の魔法攻撃を捌きながら、さぁ、俺達も戦闘開始だ。

 

 

◆まろんside・了◆

 

≫≫≫

 

◆ハムスケside◆

♪Can someone give me the A~N~SWE~~R

♪To my Que~~~stion.

♪Where's my soul?

同行していた詩人殿が竪琴を脇に携え、背負っていたリュートを手にすると それを奏で、また盛大に熱唱で御座る!

おぉを?! それを聴いてると、何だか力が溢れるというか、テンション上がってきたで御座るよ!

今なら(スーパー)ハムスケになれそうで御座る!

 

「これは…!

マカロン! ナーベ! ハムスケ!」

それは殿も同じらしく、某達に短期決戦を呼び掛ける。

 

「応!」「はい!」「御座る!」

そして それに応える某達。

 

ズシャッ!バジュッ!ベキッ!

 

尻尾による刺突、雷撃、拳打のコンビネーションから、

「…大鋏!」

 

斬ッ!

 

続いて殿が、2本の大剣を交差させる横凪ぎの一閃!

殿、凄いで御座る!初めて見る技で御座る!

これにより、敵の体が上半身と下半身に斬り断ったで御座る!

 

「サラマンダー・クロッーオ!…ッラァッ!」

 

ボォッ!

 

そしてトドメとばかり、まろん殿が燃える爪で このアンデッドの首を撥ね、更には その頭を引き裂き、燃やし尽くす…一丁上がりで御座る!

 

「よし、別れるぞ!」

その後の殿の言葉で、殿と某、まろん殿とナーベラル殿の組に別れ、他の冒険者チームに助っ人合流で御座るよ!

 

 

◆ハムスケside・了◆

 

 

≫≫≫

 

◆モモンガside◆

大鋏。

我ながら、これは良いネーミングだと思うぞ?

何と表現するか…そう!不意に頭の上に『ピコーン!』と白色電球が灯ったかの様に、閃いたのだ!

技自体も結構 派手にカッコ良かったと思うし。

これで決まれば、更にカッコ良かったのだが、最後は まろんサンに持っていかれてしまった。

まあ、それは細かい事だから、気にしてないけどな!

 

「加勢するぞ!」

「おお!モモン氏!」

そしてハムスケと共に、フォーライヴに助太刀。

敵は疵面(スカーフェイス)

嘗てカルネ村を襲ったスレイン法国特殊部隊の隊長格の人間を素体(ベース)に作った、死者の大魔法使い(エルダー・リッチ)だ。

本来なら、フォーライヴのレベルでは まともに勝負にならない強さだが、このチームの吟遊詩人の唄によるバフ効果と、リーダーの男が使役する魔獣(キラーパンサー)の強さで、大苦戦する程度に収まっていた。

 

「ふんっ!」

 

斬!

 

それでも決して、苦戦しながらも勝てるレベルという訳ではない。

単に圧倒的に殺られる事が無いだけ。

しかし、それでも あの唄の効果は絶大と言って良いだろう。

俺達が加勢する迄、持ち堪える事が出来たのだからな!

 

≫≫≫

「でやぁっ!」

 

斬!

 

フォーライヴの戦士職の男が…あの剣は、マジックアイテムか?…刃に宿る炎を纏わせた斬撃を繰り出す。

 

「はァッ!」

 

カァッ!

 

同じく神官の男が、十字架を思わせる形状の剣からアンデッド特効の聖光を放ち、 

「《回復(ホイミ)》!」

同時に回復魔法でダメージを負った仲間を癒す。

 

「がるるる!」

「…で、御座る!」

 

斬々!

 

そしてキラーパンサーとハムスケが、牙と爪での連携を見せ、

 

「《真空刃(バギュム)》!」

 

ブォッゥ!

 

更にはリーダーの魔獣使いが…彼は魔法詠唱者(マジック・キャスター)でもあったのか?…真空系魔法で、死者の大魔法使い(エルダー・リッチ)を斬り刻んだ。

 

「おぉぉっ!」

 

斬ッ!

 

そこに俺が、グレートソード二刀流で追い撃ち。

 

「これで終わらせます!…ハァァッ…!」

そして勝負処と判断した神官が前面に、それをフォローするかの様に、戦士が その前に出てきた。

神官は大技を出そうとしているのだろう、精神と魔力を集中、高めていく。

 

「…行きます!」

溜め(チャージ)が終わり、そこから繰り出すのは先程の十字架剣に込められている聖光に、自身の持つ、破邪系魔法を上乗せした、上級の聖属性攻撃…

 

「セイクリッド・ハイネス・エクソシズム!!」

 

スォオオッ!

 

…………!??

十字架剣を両手持ち、一刀両断な振りから放たれたのは、超特大の聖光。

その前までの攻撃によるダメージ、そして今尚 吟遊詩人が唱っている事によるバフ効果。

これ等の要因も有ってか、その直撃を受けた疵面(スカーフェイス)は、その場から完全に浄化(しょうめつ)した。

いや…本当に凄まじい威力だった。

少しだけ…本っ当の本当に少しだけだけど、技の余波で俺も巻き添えダメージ受けてしまったからな!

兎に角、残るは全裸マンt…ゲフンゲフン、嗤う金毛(スマイル・ゴールド)のみだが…

 

うぎゃぁあああぁっ!??

 

…え?

 

 

◆モモンガside・了◆

 

≫≫≫

 

◆まろんside◆

うぎゃぁあああぁっ!??

う、腕?俺の腕えぇ?!

ナーベラルと共に、嗤う金毛(スマイル・ゴールド)と戦っているクラルグラと合流したは良いが、そのリーダーであり、今回のチームのリーダー(笑)のイグヴァルジが、また暴走した。

俺達に見せ場を盗られるのが気に入らないとばかり、自分の仲間の戦士の男すら押し退け、前に出張ったのだ。

コイツの(クラス)野伏(レンジャー)

本来なら中衛~後衛の立ち位置なヤツが、前衛に出てどうするよ?…って話だ。

そして短剣で斬り掛かるも、それは あっさりと躱され、その腕を掴まれる。

そこからの生命力吸収(エナジードレイン)

今までは戦士が壁役(タンク)となり、持っていた大盾で この吸血鬼の攻撃を凌ぎながら、その隙を突いての遠距離攻撃を…この場合は最適解な戦法をしていたのに、変な功名心からの愚策。

そんなにポッと出な俺達が活躍するのが、気に食わないか?

即座に戦士が大盾を使った体当たり(ぶちかまし)で全裸マント痴女を吹き飛ばし、イグヴァルジは右腕が枯れ木の様に萎んだだけ…全身ミイラは免れた。

命に別状は無いが、これは片腕を失ったも同然。

冒険者としては、完全に致命的だ。

あれは治癒魔法でも治せないだろう。

もう別の、一般的な職に就くしか無いな。

それでも片腕となると、その選択肢は かなり限られてしまうが。

…って、ナーベラル?

気持ちは解る。解るから その、『プークスクス、( ゚艸゚ )カマドウマ、ざまあwww』な表情は、隠しておけ。

 

「マカロン!」

「マカロン氏!」

このタイミングで、モモンガさんとフォーライヴが、此方に合流してきた。

 

「どうやらコイツは魔法等の()()()()は持ってない様だ!

先ずは前衛がヤツの攻撃を受け止め、後衛(うしろ)が攻撃を!」

「「応!」」

「「「はい!」」」

「承知で御座る!」

俺の呼び掛けに、モモンガさん達が応えてくれる…って?

 

「「「ぁ…ぁあぁ…」」」

クラルグラの連中が全員、ビビって戦意喪失している…だと?

いくらイグヴァルジが ()()()()()からって、少しメンタルが弱過ぎじゃないか?

一応はミスリルだろ?

 

 

◆まろんside・了◆

 

≫≫≫

 

◆ハムスケside◆

「絶対にヤツに捕まるな!あのバカ(イグヴァルジ)みたいに干涸びてしまうぞ!」

「うむ!」

「応!」

「御座る!」

「がるる!」

ふーむ。りーだー冒険者チームの面々は どうやら、完全に敵に恐れを為し、実質リタイアで御座るな。

殿、まろん殿、某、そしてフォーライヴの戦士殿とゲレゲレ殿が、吸血鬼に対して囲んでからの接近戦を仕掛け、

「《放電撃(プラズマ)》!」

「《真空刃(バギュム)》!」

「《聖光弾(ホーリーボール)》!」

後ろからナーベラル殿達が魔法で攻撃。

 

♪Grab onto me and Dance now endlessly.

Chase after HOLLOW HUNGER even when we're on ou~r knee~s!

♪Roll the Dice,We'll take a chance and live out through this Dance.

Stuck in this endless Nightmare Madness keeps us in a trance.

♪Give into all Your Sins and Dance the night awa~y.

Even in our emptiness our pride will stary…

そして その間も、詩人殿は詩での支援をしているで御座るよ。

しかし、敵も はやりボス。

大して効いていないのか、その表情(わらいがお)を全く崩さずで御座る。

 

≫≫≫

「モモン!皆! ()()くれ!」

「了解した!」

「「「???」」」

決定打を出せない状況に、まろん殿が某達に声を。

7秒? 某や他の面々は何の事か分からぬが、殿だけは、それを理解している様子。

ならば間違っていない筈!その7秒、全力で稼ぐで御座るよ!

 

スゥ…

 

むむ? まろん殿が右手を空に掲げると、まろん殿の頭上に黒い()が空いたで御座る。

おお! その穴から、まるで2人の人物が背中合わせしたかの様な、金色に光る置物?が出てきたで御座る!

ほぇ? その置物、下の部分から まるで糸が解れる様に形を崩していき、その糸は まろん殿の体を包み被い…

うおぉおぉぅっ!!?

まろん殿が あっと言う間に、その身に金色の鎧を着込んだで御座る!

糸が鎧になったで御座る!

その間7秒。

なるほど、『7秒くれ』とは、そーゆー事で御座ったか!(©デミウルゴス殿で御座る)

 

 




 
…一応、歌詞コード張っておく
 


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嗤う金毛(スマイル・ゴールド)⑤ ~まろんの黄金闘衣!~

 
改めてですが、まろんの容姿モデルは黒サガ(聖闘士星矢:原作版)です。
 


◆モモンガside◆

まろんサンがマジ装備になった。

 

「あれが噂の黄金の鎧…マジックアイテムなのか?」

「成る程。【ブラック&ゴールド】の『ゴールド』、ですか…」 

フォーライヴの皆さんが、それを見て驚いているが、正確に言えばアレ、鎧で無くて糸状の稀少金属を編んで作った()なんだよな。

銘も黄金闘衣だし。

【ブラック&ゴールド】を結成する時、俺達は幾つかの『設定』を作った。

例えば、ナーベラル(ナーベ)()()()()()()()()()()()使()()()()とか。

その1つが、まろんサン…マカロンの黄金闘衣だ。

(モモン)漆黒の鎧(フルプレート)は、戦士職の設定とアンデッドの姿を隠す為の擬装だが、まろんサンの黄金闘衣は、本来は正装。

しかし、2人してド派手な鎧を着ているとなると、本当に必要以上に目立ち過ぎる。

だからこそ、首が外れたりする以外は、紅眼が少しだけ異様だが普通の人間と変わらない外見な まろんサンは、冒険者…武闘家マカロンとしては、普段は旅人の服(DX)を。

尤も、俺達(ブラック&ゴールド)のメジャーの切っ掛けとなった共同墓地での戦闘にて、まろんサンは最初から黄金闘衣を着込んでの登場だったから、その存在は直接に見ていた現場衛兵の報告により、それなりに知れ渡っていた。

…ので、この黄金闘衣は装着すると、パワーアップの代償に、魔力と体力を消費するという()()にして、ここ一番の切り札なマジックアイテムとして使用する事にしたのだ。

勿論、本当に消耗したりする事は無い。

ついでに言えば、置物形態(オブジェ)が糸が解れるに形を崩し、その糸が まろんサンの体を包む様に闘衣を纏うのも、そして それに7秒という時間を要するのも、実は只の演出。

実際は置物形態(オブジェ)(ヘッド)身体(ボディ)、そして左右の(ショルダー)(アーム)(レッグ)の其々のパーツに分離して、光の速さでカシャーン!と装着させるのも可能なのだ。

更に ついでに言えば、(ヘッド)のパーツは まろんサン的に造型(デザイン)が好みでないらしく、装着する事無く収納(キャビネット)行きとなったりしていた。

 

「待たせたな!」

そしてフル装備となった まろんサンが前に()び出し、

「稲妻・キィーック!」

 

ドォッ!

 

雷撃魔法を帯びた急降下の蹴りを、マントの下は全裸の吸血鬼(ヴァンパイア)嗤う金毛(スマイル・ゴールド)に炸裂させた。

 

『……………………。』

頭部に直撃。…したにも拘わらず、嗤う金毛(スマイル・ゴールド)は その不気味な笑顔を崩さない。

 

「まだ、笑ってるだと?」

「アレも効いていないと言うのですか?」

吹き飛ばされ、ゆっくりと起き上がるも、何事も無かったかの様に嗤っている吸血鬼に、フォーライヴが戦慄するが、違います。

アレは、あの表情で()()()()()()()んです。

あの女を吸血鬼(ヴァンパイア)化させる際の『常に笑顔を浮かべている』という、デミウルゴスが作った設定なんです。

そうした中、次の まろんサンの攻撃は、オレンジの炎を脚に纏わせて、 

「ディアブル・ジャンプ!」

 

ベギィッ!

 

強烈な飛び回し蹴りがレッグラリアート気味に喉元に食い込み、またも敵を吹き飛ばす。

 

「シャァアッ!」

 

打々々々々々々々々々々ッ!

 

そして続くは、一撃入れると瞬時に敵の死角に回り込み、また一撃を繰り返す、上・中・下の蹴りの連撃(コンビネーション)

 

「凄い…私達の出番、もう無いですか?」

「下手に加勢しようとしても、今は邪魔になるだけだろ?」

「とりあえず…《速度増加(ピオリム)》!

ついでに《守備力増加(スクルト)》!《守備力激減(ルカニ)》!《速度鈍化(ボミオス)》!《攻撃力倍増(バイキルト)》!」

この まろんサンのラッシュを邪魔しない様に、補助系魔法を神官が連続で唱える。

…それにしても、今回の まろんサン、蹴り技を多用してるなあ?

 

 

◇モモンガside・一時中断◇

 

 

◆まろんside◆

…って感じでモモンガさんに見られてる気がするが、下手なボディタッチは、セクハラ扱いされかれないからだよ!

アンデッドとは云え、女相手には迂闊な技は出せないからな。

どうせコレ今、ナザリックじゃ皆が遠隔視の鏡(ミラー・オブ・リモート・ビューイング)で観てるんだろ?

下手に手を出したりして、それが胸とかに当たったりとか押し倒したり…いや、それは、どーでも良いんだ。

しかし、それをユリたん♡が見ていたら、どーするって話だよ?

 

「違う!コレは違うんだふじこふじこ」

…な展開になったら、どうするんだよ?

だから俺は、足は出すけど手は出しません!

え?鯖折り?

するか!?

てゆーか女相手に そんなのする奴って居るのか、居るのか? 居やしないよな?!

もし そんな奴が居たなら、ホースでカレーうどん、啜ってやるよ!

 

  

◆まろんside・了◆

 

 

◇モモンガside・再開◇

 

ガシッ!

 

「あっ!?」

「不味いです?!」

ん。流石に蹴りだけじゃ、その内に読まれもする。

まろんサンの攻撃。

側頭部狙いの上段の回し蹴りは、ガッシリと足首を掴まれ阻まれてしまった。

恐らく嗤う金毛(スマイル・ゴールド)は、さっきのイグヴァルジ同様に生命力吸収(エナジードレイン)してくるのだろうが、

「残念っ!」

 

ベギッ!

 

まろんサンは構わず、その捕まれた脚を軸にしての回転蹴りを、今度こそとばかり、側頭部に放つ。

 

「マカロンさんは大丈夫なのですか?」

生命力吸収(エナジードレイン)されていない?」

フォーライヴのリーダーの魔獣使いと神官が、心配そうに呟くので、

「心配は無用ですよ。

あの金色の鎧は、あらゆる攻撃に強い耐性を備えたアイテムですから。」

…と、説明すると、

「凄いアイテムですね!」

「素晴らしいですね!」

…と、納得してくれた。

嘘です。

まろんサンは実は首無し騎士王(デュラハン・ロード)

不死属(アンデッド)ですから、()()()()の攻撃は、普通に効かないだけなのです。

しかし、最初の装着シーンを見ていたからか、アレは かなり特殊なマジックアイテムだと、そういうのもアリなのだと認識してくれた様だ。

 

「でやっ!」

「ふんっ!」

「がるるる!」

「…で、御座る!」

そして何時までも、まろんサン1人に任せておく訳にも往かない。

俺達近接戦闘班が、

「《火炎球(ファイア・ボール)》!」

「《真空刃(バギュム)》!」

「《聖光球(ライトボール)》!」

そして魔法班がタイミングを見計らって、其々が攻撃を。

この連続攻撃で、かなりな強さ設定で作られた吸血鬼(ヴァンパイア)も、HPの終わりが見えてきたか、バフ・デバフ効果を差し引いても、動きが明らかに鈍くなっていた。

 

「地獄爪殺法!」

「…特に技名は、無い!」

 

斬!!x2

 

それを見逃さない筈も無く。

まろんサンの黒炎の爪と、俺のグレートソードの一閃。

 

「《山彦式雷電雷撃(サンダーボルト・エコー)》!!」

 

ゴゴォオンッ!

 

そして最後はナーベラル…『冒険者ナーベ』として使用を許している、最大威力の攻撃魔法。

これにより、嗤う金毛(スマイル・ゴールド)は、完全消滅したのだった。

 

♪どんちゅーぎみよーらびんぱっしょん?

♪あいのぅぼーだーしゅびっれっご~!♪

…ふぅ~…」

…と同時、吟遊詩人も その詩を吟い終えた。

そう、この戦闘の間、彼は ずっと歌っていて、俺達にバフ効果を与えていたのだ。お疲れ様で御座います。

 

 

◆モモンガside・了◆

 

▼▼▼

1週間後

 

 

◆まろんside◆

「お…」

「おお…!」

冒険者組合に顔を出した俺達に、他の冒険者が注目する。

そう、先日の戦闘を報告した事により、俺達【ブラック&ゴールド】は目出度く、昨日 正式にアダマンタイト級冒険者に認定されたのだ。

ぶっちゃけ、完全にマッチポンプだった訳だから、少しだけ申し訳無い気持ちも有ったりするが。

 

「…んん?」

「「「「ヒェッ!?」」」」

此方を見ていた冒険者チームの1つに顔を向けると、そいつ等は怯えた様に、顔を背けた。

あー、思い出した。

コイツ等、俺達が冒険者登録した初日に、下らん真似をしてきたから、壁や床に埋めた奴等じゃないか。

 

 

【凶報】駆け出しの新人と思って舐めた態度で接した冒険者が、あっと言う間にアダマンタイト級になってしまった件 ((( ;゚Д゚)))

 

 

連中からすれば、こんな感じか?

心配しなくても、そっちから吹っ掛けない限りは、いぢめたりなんかは しないよ。

そんな訳だからナーベラル?

その「ふん…フナムシが!」とばかりな、見下す様な どや顔は止めてあげなさい。 

オマケで言えば、俺達と同行していたフォーライヴも、ミスリルからオリハルコン級に昇格。

そして我等がリーダー(笑)、イグヴァルジ率いるクラルグラ。

コイツ等も見事、鉄級(アイアン)に格下げとなった。

理由としては、先ず1番に、イグヴァルジの冒険者引退だ。

やはり、実質片腕と変わらなくなった事で、冒険者としての活動は無理だと、流石に当人も そう判断したのだろう。

しかも その経緯を、俺達とフォーライヴの皆さんが正直に…嗤う金毛(スマイル・ゴールド)以前の雑魚モンスターとの戦闘の時からチームプレイ無視、『俺が俺が』なスタンドプレイの結果だと、組合に報告した。

更に言えば、実はクラルグラは以前から、他の冒険者達からも問題行動を色々と組合に相談されていた様で…

イグヴァルジは人格は兎も角、冒険者としてはミスリル級相応な有能者。

そんな人物が抜けたのだから、チームとしてのレベル低下は否めない。

それ等を踏まえ、組合長が罰則(ペナルティ)の意味を込めて、チーム降格としたのだ。

尚、吸血鬼(ヴァンパイア)討伐の報酬は別問題として、きちんと支払われている。

 

≫≫≫

「申し訳ありません…

今は、モモンさん達に お任せ出来るような依頼は…」

「そうですか、それでは また伺いますよ。」

組合の受付嬢に、アダマンタイト相当な仕事(クエスト)を尋ねてみると、今は簡単な依頼しか来ていないと。

最高位(アダマンタイト)が簡単な仕事を請け負い、 何処かのイグヴァルジの様に 他の低位の冒険者の食い扶持を奪う訳にも往かないから、それは難癖無く受け入れる。

 

「いえ、そ、それで、仕事とは違うのですが、実は…」

「「はい?」」

 

≫≫≫

さて、王国の吸血鬼騒動も片付き一段落。

俺達の冒険者としての立ち位置も確立した。

 

『ん、それじゃ まろんちゃん、待ってるからね~♪

モモンガさんにも、よろしく言っといてね~♡』

…そんな訳で、俺達…と言うかナザリックより少しだけ遅れて この世界に転移してきた、俺が本来 所属しているギルド、【ヴァーリ・トゥード】に向かう事にした。

ギルド拠点が転移した位置は、カッツェ平野より南東に位置している竜王国領内。

伝言(メッセージ)》で話してみたら、向こうは向こうで、丁度 現地の厄介事(イベント)を終わらせたそうで、タイミングが良いとの事。

 

「楽しみですね。」

モモンガさんも、ウチのギルマスに会うのを待ち遠しい感じだ。

 

≫≫≫

「それでは、留守は任せたぞ。

何か有ったら、直ぐに《伝言(メッセージ)》で知らせてくれ。」

「承知致しんした。」

「行ってらっしゃいませ。アインズ様。」

「うむ。」

モモンガさんがシャルティア達に出発の挨拶を済ませ、大型馬車に乗り込む。

竜王国には転移門(ゲート)の登録をしていないから、とりあえず最初だけは普通に陸路移動、カッツェ平野を横断することになる。

因みに竜王国に向かう面々は…

俺、モモンガさん、アルベド、コキュートス、ユリ…の5人だ。

 




イグヴァルジ、物語離脱(リタイア)
但し、死亡は回避。


m(_ _)m そしてクレマンティーヌさん、マジに すいませんした。
 
 
 
お気に入りは少しずつ増えていますが…
モチベ維持の意味を込めて、感想と評価(高いヤツ)も宜しくお願いします。
 
 
次回『【ヴァーリ・トゥード】(予定)』
 


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ヴァーリ・トゥード

 
新キャラ オリキャラ?登場!
 
 


 

▼▼▼

王国リ・エステーゼ。

その王都王城の1室で、『彼女』はメイドの注いだ紅茶を啜りながら、思案していた。

 

 

◆???side◆

以前、私達を襲った吸血鬼が討伐された…らしい。

あの時は、友人のアダマンタイト級冒険者を護衛に付けていて、その彼女達ですら…"彼女"が不在だったとは云え…追い払うのが精一杯だった、あの強力な吸血鬼を、だ。

【ブラック&ゴールド】。

聞く話によれば、本当に少し前に、エ・ランテルにて、新人冒険者として現れ、それから僅か半年足らずの間に、その実績から最上級のアダマンタイトの位を手に入れた3人の冒険者チーム。

…何者なのでしょうか?

少なくとも、王国出身の民では無いわね。

帝国か法国から流れてきた者でしょうか。

まさか、間者(スパイ)…は、違うでしょうね。

それとしては、行動が目立ち過ぎている。

しかし あの吸血鬼を斃せる実力を持ちながら、今まで噂にも上らなかったなんて、それは逆に別の意味で怪し過ぎる。

本当に、何者?

それと…怪しいと言えば、あの吸血鬼にも不可解な…気になる部分が有る。

私達を襲った時の被害は、護衛役の彼女達が、多少の手傷を負った程度。

しかし、他の被害者が…

王都を基として王国各地、アレ等は虐殺行為を重ねたが、その報告されている犠牲者…

その殆んど全てが、野盗の巣窟を襲って全滅させたりだったり、私が摘発を考えていた犯罪者組織の拠点を襲撃して壊滅させたりだったり。

都市間を行商する者が襲われたという報告も有るが、それは その全てが軽傷。

死亡者は全て、所謂 悪人だけ。

これは偶然?

まさか、あの吸血鬼、実はブラック&ゴールドが自身の名声の為に野に放っていた存在だったとか?

一応の良心か、殺害対象(ターゲット)は悪人だけに限定していたとか?

…いえ、流石に考え過ぎね。

それに彼等は、あの忌々しい吸血鬼を滅してくださったのだから、感謝しないと。

そう、あの女吸血鬼は正しく万死に値する…私の人生に於ける計画の1つを、完全に潰してくれた。

大体、本当に何だったのですか、あの女吸血鬼。

確かに同じ女の私から見ましても、顔は無論の事、身体も裸体を晒すのも惑わずな位に整っていたのは否みませんが、それでも…

  

クライムが初めて見る女性の裸は…いえ、クライムが見る女性の裸は、生涯をして私だけの筈だったのに…!

 

 

 

◆???side・了◆

 

▼▼▼

 

◆アルベドside◆

現在、まろん殿の所属しているギルド、【ヴァーリ・トゥード】の拠点が在る竜王国を目指し、カッツェ平野を馬車で走っている。

当然 馬は、御者要らずの特別製のゴーレム。

馬車本体も、優美且つ頑丈な外装と、豪華絢爛な内装。

懸架装置(サスペンション)強化により、どんな悪路でも揺れ無く平然と超スピードで走れる仕上がりだ。

最初は現地に向かう皆で その馬車に乗っていた 。

しかし途中、まろん殿はアイテムボックスから取り出した自動2輪(バイク)でユリと2人乗り、馬車と並走している。

まろん殿、実は最初から、その心算だったみたい。

ええ。そんな気は、してましたわ。

何しろ出発時からユリが、普段の夜会巻きをヘルメットを被っても大丈夫な、変則ツインテ(ヨルさん髪)にしていましたから!

因みにメイド服は、バイクに跨がる際に上は普段通りですが、下はスカートで無く、違和感の無いズボンに換装している。

 

「アインズ様…ヨロシイノデスカ?」

「ああ。問題は無い。」

それをコキュートスが是非を問うが、アインズ様は「問題無い」の答え。

…ってコキュートス?

貴方も遠慮せずに…いえ、空気を察して、馬車の外、御者席に行っても良いのですよ?

そうすれば、この空間は私とアインズ様の2人だけの世界に!

そして私とアインズ様は、この場で…くふぅ♡

…って、は、初めてを車中で至すのですか?

やはり、私も初めては、カーテンから差す陽の光&朝チュンに憧れているのですが?

…いえいえ、アインズ様とならば、場所は選びません!

そう!例え それが車中であろうと、草原であろうと、洞窟の中だろうと!

はん♡はん♡あはん♡(腰クネクネ翼パタパタ)

 

 

「ア…ルベド?どうかしたのか?大丈夫か?」

「え゙?!…な、何でもありませんわ、アインズ様!」

え?もしかして、()()()していて意識を飛ばしていた?

アインズ様が心配そうに、私に声を掛けてくださった!

あら、私とした事が、何て はしたない…

そしてコキュートス、貴方まだ居たの?

 

 

◆アルベドside・了◆

 

≫≫≫ 

 

◆モモンガside◆

「おらおら どけどけどけ!

轢き殺すぞ、固羅ァッ!!」

 

ドガァッ!

 

そう言って霧の中、湧き出てくるアンデッドをバイクで跳ね飛ばしながら疾走する まろんサン。

キャラ、変わってないですか?

 

「風、凄く気持ちいいです♡」

…って、ユリ??!

お前は その光景見て、ドン引いたりしないの?

 

バキュィッ!

 

尚、此方に向かってくる…且つ進路上のスケルトンやゾンビを跳ね飛ばしているのは、此方の馬車も同様だったりする。

…だって、邪魔だったから…

 

≫≫≫

カッツェ平野を抜け、竜王国領に入った。

伝言(メッセージ)で聞いた処、ヴァーリ・トゥードの拠点である"白い匣(ホワイトホーム)"は、領土の東側、ビーストマンなる亜人種が形成していた国家との、国境付近だと言う。

つまり殆んど、領土の端から端への移動だ。

如何に超スピードで走っていると言え、国1つ横断するのは1日で済む事でも無く。

 

「それでは今日は此処で、キャンプをするか。

居住空間創造(クリエイト・リビングスペース)》!」

すっかり日が落ちた所で、草原が広がる中、魔法による仮の宿を作製。

当然、周囲に防御結界を敷く事も忘れない。

その気になれば、城みたいな巨大な建造物も作れるが、今回は5人しか居なく、少しばかり大きめな、ログハウスにしておいた。

 

「俺とユリたん♡は同室な♪」

…とか まろんサンが言っていたのは、最早 様式美。

  

≫≫≫

「アインズ様?アインズ様~??」

……………………………。

部屋の外で、アルベドの声が聞こえる。

間違い無く、俺の この部屋に凸しようと、探してるんだろう。

知ってた。そんな気は、してた。

だから今は この部屋、魔法で扉を(はず)しているんだよなぁ。

つまり、この部屋に外から入る事…見付ける事は不可能!

ゆっくりと安心して休めそうだ。

…明日、また まろんサンから『ヘタレ!』とか言われそうだが、気にしない!

 

 

◆モモンガside・了◆

 

≫≫≫

 

◆ユリside◆

「ん…」

朝…? カーテンから差す陽の光を感じ、目を覚ました。

周りは草原なのか、小鳥の囀ずりは聞こえません。

 

「zzz…」

隣の まろん様は まだ、寝ておられる。…全裸で。

まろん様は基本…少なくとも、ボクが知っている限りは、寝る時には何も身に着けない。

ボクは()が終われば、寝る前には きちんと下着は勿論、寝間着(パジャマ)を着るのに…

 

「zzz…ん~…」

!!!!!!!!!!??

そんな風に考えていたら、まろん様の まろん様が、いきなり(スーパー)まろん様に!

これって、前にナーベラルとソリュシャンに話してみたら(ルプーには話さない)、やっぱり かなり大きいらしい。

ソルシャンは『ま゙♡』と嬉しそうに顔を赤らめ、ナーベラルは『ゆ、ユリ姉さんは、そんなのを受け入れているのですか?』と、顔を青くしていた。

後日、「まろん様は通常でマッターホルンなのが、本気出したらチョモランマになるって本当っスか?羨ましいっsぬわらばっ!?」…とか言ってきた駄犬に頭突き(スラム・ダンク)を御見舞い、更にコイツに話したであろう2人にOHANASHIしたのは、別の話。閑話休題。

 

「ん~…ユリたん♡の おっぱい~♡…zzz…」

…って、一体どんな夢、見てるんですか?!

 

≫≫≫

竜王国都市部を進むのは避け、馬車とバイクは時折、野良のモンスターを轢き跳ねながら、目的地を目指して走る。

 

「あれが…」

「そう、あれが俺達ヴァーリ・トゥードの拠点、白い匣(ホワイトホーム)だ。」

そして暫く…荒野の果てに見えてきたのは、巨大な純白の立方体。

近付くにつれて、それは より一層、その存在感を示してくる。

鉱石なのか金属なのか判らない、巨大な物質(カタマリ)

表面は綺麗に磨かれているかの如く、日の光を受けて光っている、入り口も窓も確認出来ない、巨大な…建物?

 

「さあ、到着だ。」

 

シュィィン…

 

この建物の袂に着いた時、不意に その一部が切り開かれた様に四角の穴…入り口が出てきた。

 

「お帰り…と言うべきかな?」

「「「!!?」」」

そこから現れ、ボク達を迎えたのは、1人の男性。

その姿を見て、アルベド様、コキュートス様、そしてボクは一瞬だが驚いてしまった。

白金の髪に蒼の瞳だが、その顔付きは、まろん様その物なのだ。

身に着けている鎧も色こそ漆黒だが、その造型は まろん様の黄金闘衣と殆んど一緒。

まろん様の黄金闘衣が曲線的な滑らかなフォルムに対して、このヒトの それは、直線的鋭角的…そんなイメージだ。

アインズ様は驚いた様子は見られないから、この人物を知っている感じです。

 

「まろん殿、此方の方は?」

「ああ、俺が創ったNPC(シモベ)、イスキオスだ。

よろしくしてやってくれ。」

アルベド様の質問に、まろん様が答える。

まろん様の創造されたシモベ!

 

「…コッチだ。ギルマスが待ってる。」

そう言って、イスキオス…さんで良いのでしょうか?…は、ボク達を建物の中に入る様に言ってきた。

そういう風に創られたのでしょう、敬語を殆んど使わない口調。

それに一瞬、アルベド様とコキュートス様が殺気を放ちますが、アインズ様の『構わぬ』の言葉に事無きで済みました。

 

≫≫≫

「まろん様、戻られたのですね!」

「お帰りなさいませ!」

建物の中を進むと、すれ違うヒト達が皆、まろん様に声を掛けてくる。

彼、彼女達も、ボク達と同じシモベなのだろう。

 

「よう、寝落ち男。漸く戻ってきたか、この地獄にな。」

そして それなりに建物内部に進んだ時、壁に背を預けて腕組みして立っていたのは、大柄な男性。

上半身は(きんにく)まろん様の体を見慣れてなければ、倒れていたかも知れません

革ズボンをサスペンダーで吊り、大きな肩当て(ショルダーパッド)

髪型はモヒカンの…失礼な表現だが…髭面強面の男性だ。

 

「応。帰ってきたぜ。」

 

パチィッ!

 

まろん様も彼の言葉に応え、軽いタッチを交わす。

その雰囲気からして解る。

このヒトはアインズ様や まろん様と同じ、プレイヤーだ。

 

「ああ、彼はポチョムキン4世。

このギルドの機織り職人で、まろんサンの黄金闘衣を編んだのも、このヒトだよ。」

「応、骨の大将も、久し振りだな!」

「ははは…ポムチョキンさんも、相変わらずですね。」

そしてアインズ様とも挨拶を交わす、ポチョムキン4世さん。

…って、機織り職人ん?!

その風貌、どう見ても戦士職ですよね?!

 

「………………………。」

アルベド様もボクと同じ感想なのか、突っ込みたいのを我慢している…そんな表情です。

 

≫≫≫

その後も、何人かのプレイヤーと挨拶をして、

「ギルマスは この先だ。」

イスキオスさんが案内してくれた先は、王の間…とは とても呼べない部屋。

金属と(オイル)の匂いが発ち籠める、倉庫の様な飾り気の無い広い一室。

 

ガチャガチャ…

 

その奥に、あれは まろん様の それとは少し型が違いますが、バイクを整備している人物が。

 

「…!あ、まろんちゃん、お帰り~!

それと、モモンガさんも いらっしゃい、久し振り~♡」

ボク達に気付いたのか、振り返ったのは小柄な…一瞬、女の子と見間違えるかの童顔な、金髪の少年。

彼が、ヴァーリ・トゥードのギルドマスターなのですか? 

久し振りの対面が嬉しかったのか、このヒトは工具を手にした儘、笑顔を向けてボク達の方に駆け寄ると、

 

ガィンッ!!

 

「あじゃぱーっ!」

「「「「ええぇえ゙ーーっ?!!」」」」

その爽やか満面な笑顔な儘、持っていた凶器(スパナ)で、まろん様の頭を殴打したあ?!

 

「ダメじゃないの、まろんちゃん~?

他所様のギルドで、寝落ちなんかしたら、さぁ~~~~?♡」

 

ガン!ガン!…ガンッ!!

 

「痛い痛い!?

真里、悪かったから!話せば分かる!」

 




  
まろん設定、追記しました。
 
次回『ヴァーリ・トゥード②(予定)』
乞う御期待!
 


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ヴァーリ・トゥード②

 
まろんと愉快な仲間達(笑)
 


◆モモンガside◆

「痛ひ…(T_T)」

「まあ、その程度で済んだだけで…」

真里(マサト)さん、相変わらず怖いな~(笑)

フルボッコ涙目な まろんサンをフォローする俺。

再会早々に、笑いながらガンガンと、スパナや一斗缶(中身入り)で まろんサンをシバいていたマサトさん。

何事かと言えば、あのユグドラシル最後の日、ヴァーリ・トゥードはインしてたメンバーで、最後の瞬間を迎える予定だったが、何処かの誰かさんは『まだ時間に余裕が有るから』と、他所のギルドに遊びに行ってた時、現実(リアル)の方で寝落ち。

結果、自分のギルド拠点での最後を過ごす事が無かった訳だ。

しかし、あの時にインしていたプレイヤーが、時間差で異世界にゲームキャラその儘で転移したのは、はたして幸か不幸か…

兎に角そういう理由での、OSHIOKIが執行されてた訳だ。

 

「ふん…まぁ、自業自得だろう。」

「酷くない?!」

冷めた発言をしているのは、まろんサンの創ったNPC、イスキオス。

まろんサンが そう設定したのか、ナザリックのシモベと違って忠誠天突している様子は無く、突っ込むべきは突っ込むな性格な様だ。

尚、俺が止めに入らなかったのは、あくまでも他所のギルドの話で、外様が介入すべきで無いと思ったからだ。

マサトさんが怖かったなんて、これっぽっちしか思ってない。

いや、普通の工具やらを凶器にしてただけ、有情だよ?

マジなら普通に武器、使って殺ってるからね?

マサトさん、本当にキレたら、マジ怖いから…

 

「「「………………………。」」」

だからアルベド、コキュートス、ユリ。

この程度でドン引いたりしない。

 

≫≫≫

場所を移動(先程の場所は、普通に整備工房だったらしい)。

ナザリックの円卓の間と似た様な作りの部屋。

 

「シャババババ!兎に角、改めて『お帰り』ってヤツだ!」

 

バンバン!

 

「痛ぇーよ!」

独特且つ豪快な笑い方で まろんサンの背を叩きながら話し掛けるのは、岩石の様な肌に篦鹿の様な角を持った一眼巨人種(サイクロプス)眼魔(ガンマ)さん。

 

「ふっ…まさか、本当に生きて還ってきやがるとはな…

やはり お前は…いや、考え過ぎか…」

「その含み有りそうで、実は何の意味も無い喋り、止めような?」

見た目は完全に世紀末モヒカンなポチョムキン4世さん。

 

「…と言うますか まろん?

アナタ、モモさん処で、問題とか起こしてない?」

「無ぇよ!」

頭に鋭い2本角、背には純白の翼を生やした妖精属(ピクシー)(亜種)のカスミさん。

 

「ふん、本当は どうなんだか?

始めまして、だな、モモンガ君…で良いのかな?

ウチの愚か者が迷惑を掛けて、すまなかったな。」

「だ・か・ら! 何で、やらかし決定なんだよ?!」

そして…人間種の女性。

このヒトは初対面で、面識無いんだよな。

この4人に、マサトさん まろんサンを加えた計6人が、ユグドラシル最後の時間にインしていた、ヴァーリ・トゥードのメンバーだ。

6人か…べ、別に、羨ましいとか思っていないんだからね!

 

 

◆モモンガside・了◆

 

≫≫≫

 

◆アルベドside◆

まろん殿とヴァーリ・トゥードの皆様との会話。

まろん殿が少し弄られている感もするが、

 

 

 

『【(#`Δ´ )】愚弟、正座』

『【(」゚o゚L)】ひぇ? 姉ちゃん、勘弁!?』

『【(#`Δ´ )】ほら、タケと まろんとモモンガさんも正座。』

『【(;-_-)】うぐぐ…』

『【(;゚Д゚)】え? まろんサンは兎も角、俺は関係無…』

『【(#`Δ´ )】正座。』

『【(ToT)】…は、はい』

『【 m(_ _)m 】 茶釜ちゃま、優しく お願いします。』

 

 

 

…その光景は、嘗てのナザリックでの御方達の語らいを思い出させる…って?

頭に浮かんだ回想に、まろん殿が居られる?

本当に、まろん殿は御方達と親好が有った様ですね…と言いますか、正座して、ぶくぶく茶釜さまから何やら説教を受けていた、ペロロンチーノ様、武人建御雷様、まろん殿、そしてアインズ様。

…アインズ様は どうやら巻き添えの様ですが、一体、何をされたのですか?

  

「まーまー、お喋りしたい事は沢山有るだろうけど、とりあえずは お互いの近況を話そうよ♡」

…等と嘗ての御方達の やり取りを思い出していた中、ヴァーリ・トゥードのトップ、マサト…殿の この言葉に、皆が円卓の席に着く。

私達は、アインズ様の後ろに。

 

「アナタ達も、空いてる席に座ったら?

席、余ってるんだからさ?」

ピクシー種の女性が私達にも着席を促すが、我々シモベがプレイヤーの為に作られた席に座すとは畏れ多い!

それは例え、他所のギルドであってもな話…だ。

そもそも、まろん殿が創造したイスキオス氏(そう呼ばせて貰うわ)も、まろん殿の後ろに立っているじゃない。

 

ポンポン…

 

…って、まろん殿?

御自身の膝を叩いて、ユリを其処に座らせようとするのは、少なくとも この様な場では控えた方が…

 

「~~~~~~??!」

ほら、ユリも顔を赤くして、どうしたら良いのか分からなくて、困っているじゃないですか。

バカップルですか?

 

 

◆アルベドside・了◆

 

≫≫≫

 

◆まろんside◆

「それ、どう考えてもマッチポンプじゃんw」

「うるせー、自覚してるよ!」

結局ユリたん♡は、俺の膝の上に座る事無く、モモンガさんの後ろに立っている。

そんな中、先ずは俺達側からの、この転移後に何が起きたかな話。

カルネ村での戦闘、情報収集の為の冒険者としての活動。

そして嗤う金毛(スマイル・ゴールド)を倒す事で、最上級冒険者となった事を話すと、予想していた通り、『マッチポンプ』を連呼された。

それから今後の事として、王国の屑・無能な貴族王族共の中でも、一部の有能認定した者と、近日中に接触する予定だとモモンガさんが話す。

王都や各都市にシャドウデーモン、そしてフウマ、ハンゾウ等のニンジャ系モンスターを忍ばせ、現在進行形で情報収集しているのは知っているが…有能、居たのか?

因みにだが、国のトップの王様は無能オブ無能、国の後継候補筆頭の第1王子は脳筋(バカ)…完全にアウト判定だとか。

 

「それじゃ、次は俺達だね。」

モモンガさんが一通り話した後、今度はギスマス…マサトが転移後に竜王国で何が有ったのかを話し出した。

 

≫≫≫

「その様な事が…」

要約すると、転移直後、いきなり白い匣(ホワイトホーム)にビーストマンなる連中が攻めてきたらしい。

この拠点が転移した場所は、竜王国とビーストマンの国との国境付近。

そして両国が戦争真っ只中だった その場所は、正しく最前線。

そうした中、竜王国側に こんな巨大な建物が突然に現れたりしたら、とりあえずは怪しむ。それは、解る。

しかし、いきなり攻勢に出たビーストマンは…所詮はケモノ脳だったからだろう。

結局は、シャババさん無双で簡単に返り討ちだったらしいが。

そして それが、連中の不幸の始まりだった。

何しろビーストマンという"種"として、ヴァーリ・トゥードから敵認定されたんだからな。

 

「その最中に、竜王国側の兵士も駆け付け来てね~♪」

マサト達は その後に、竜王国と接触(コンタクト)

この国を治めている女王は、ユグドラシルのプレイヤーの事は知識としてだが知っており、シャババさんやカスミな異形種も込みで、ヴァーリ・トゥードの存在を認めて貰えたらしい。

そしてヴァーリ・トゥードは竜王国側として、戦闘系NPCも導入して戦争に参加。

 

「一応、女王(ドラちゃん)達から引かれない程度な、力加減はしてたよ?

敵の数が多かったから、少し時間が掛かっちゃったけどね~?」

「充分、ドン引きだったけどね。」

ビーストマンを殲滅掃討しての戦争終結。

"種"として、完全に絶滅させたそうだ。

応…あの改造バイク(ブラスト・ボーイ)で戦場を疾走してたんだよな、分かるよ。

 

≫≫≫

「…因みに、モモンガさんの奥さんです。」

「はい♡」

「へぇ~?そうなんだ~♡」

「ちょ…ま、まろんザン?!

な、何を言ってるんですか!??」

互いの近況を話した後、改めてモモンガさんの付き添いだったアルベド達を紹介。

コキュートスはナザリックの守護者の1人で今回の一応の護衛役、アルベドはナザリックNo.2、並びにギルマス夫人として紹介したら、モモンガさん、緑色に光って俺に言い詰める。

いやアンタ、あの異変の直前、アルベドの設定を

 

 

モモンガとは相思相愛の恋仲である

 

 

…って書き換えたって言ってたじゃない。

しかも、生乳もみもみちゅーちゅーしたんでしょ?

 

(ちゅーちゅーは、していません!)(それにアレは、)(この世界がクソ運営の監理下かどうかを)(確認する為だったんですよ!)

小声を震わせながら、必死に言い訳するモモンガさん。

 

パタパタパタパタ…♡

 

でも見なさいよ、アルベドの嬉しそうな あの反応。

大体、あんな設定変更しといて何も手を出さないなんて あ、生おっぱいは揉んでいたか 、アルベドにも失礼だろ?

ヘタレか? ンフィーレアか?

もう今夜にでも、覚悟を決めて、ヤっちゃいなさいよ!

人化の指輪、持ってるんでしょ?

 

「そして、こっちのメイドさんですが…」

そしてアルベドの後、最後にユリたん♡を紹介。

 

「ユリ・アルファ。俺の婚約者(およめさん)、だ♡」

「(//▽//)ユ、ユリ・アルファと申します。

よろしくお願いします…♡」

「「「「「な、何だってーーーーーーーっ?!!」」」」」

その紹介に、嬉しそうに顔を赤くするユリたん♡と、揃って驚くマサト達。

 

「ちょ…アナタ、正気? 考え直すなら、今の内よ?」

「もしかして、何か弱みでも握られて脅されてるの?

だったら私達が、ガツンと〆て殺るわよ?

嫌なのはイヤだと、はっきり言わなきゃ!」

「え…?ぇぇ…?」

いい加減にしろ!!

そして失礼な女共が信じられないとばかり、無理強いされてると思い込んで、ユリに言い寄る。

んな訳 有るか!互いに一目惚れだ!

 

「まろんサン、転移した初日、初対面で いきなりプロポーズしたらしいです。

尤も、正式に婚約したのは最近の話ですがね。」

「「へぇ~?そーなんだー?」」

モモンガさんの説明も、信じてない様子。

お前等マジ、いい加減にしろ!

俺を何だと思っているのだ?!

 

「…少し おちょくっただけで、『コイツで口を塞がれたいのか!?』とか言う、沸点低々暴力男。」

「しかも そういう時は普通、握り拳を突き出すのに、自分の ちん〇(ぴーっ!)を指差して発言する、クソ外道鬼畜セクハラ男。」

「しかも それ言った直後、運営から警告メール貰ったマヌケ男。」

「それから…」

m(_ _)m スイマセン、それ以上は止めろ下さい。

 

「(¬_¬)………………………。」

ち、違う、コレは違うんだユリたん ふじこふじこ!

ほ、ほら見ろ!ユリたんが疑惑な眼差しで、コッチ見てるだろうが!

だから お願い、本当にマジ止めて。

 

 

◆まろんside・了◆

 

≫≫≫

 

◆ユリside◆

べ、別にボクは、気にしてなんか、いませんよ?

カスミ様達との間に何が有ったのかは存じませんが(知りたくも無いですが)、それは あくまでも、まろん様がボクと出会う前の話ですよね?

それを浮気としてカウントする様な、面倒臭い女じゃないですよ?

 

「いや、本当にアイツ等とは何も無いから!

信じてユリたん、ふじこふじこ!」

 

≫≫≫

…さて、その後もアインズ様とマサト様を中心として、色々と話されていき、次の御題はボクと まろん様の話に。

婚約を認めないとかで無く、今後の互いの所属の話です。

アインズ様は、ボクの考えを尊重すると言いつつ、出来ればヴァーリ・トゥードへの移籍は思い止まって欲しい御様子。

ボク自身、移籍という考えは持っていませんでした。

まろん様も、AOG(アインズ・ウール・ゴウン)への移籍は考えていないとの事。

しかし、自身が所属するギルドと合流出来た今、もうナザリックに腰を据える訳にも往かないと言われます。

…という事は、え?別居ですか?

婚約して、正式に式を挙げてないのに?

 

「いや、きちんと考えているから。」

…まろん様?

 

「これを其々、白い匣(ホワイトホーム)の俺の部屋とナザリックのユリの部屋に置けば、全てが解決だろ?」

まろん様が取り出したのは2枚1組の姿見(かがみ)型のマジックアイテム、『転移の鏡(ミラー・オブ・ゲート)』。

この2枚の鏡面は空間を超えて繋がっており、如何に離れた場所でも、その鏡を通じて行き来が出来る…らしいです。

た、確かに、それならば…!

 

「そうだね。ただ、それでもハッキリさせなきゃダメな部分も、まだ有るよね?」

「ええ。そうですね。」

その後の話し合いで、転移の鏡(ミラー・オブ・ゲート)の使用は認められました。

…と言っても、ボクとまろん様が互いの部屋を行き来するのは自由ですが、ボクが まろん様の部屋の外…つまり、白い匣(ホワイトホーム)の中を、1人勝手に歩き回るのは不可。

但し、まろん様と御一緒ならは問題無いとして貰えました。

 

「これは…所謂『通い妻』ってヤツかしら?」

…言わないで下さい。

ボクも それ、少し頭に過ったのですから。

尚、まろん様のナザリック内の行動は、アインズ様の「今更だよな」の一言で、以前と殆ど変わらず。

但し、今まで まろん様が使用されていた客室は、使わない事となりました。

…でも その部屋、少し前から全く使っていないのですよね。

まろん様、最近は ずっとボクの部屋で休まれていますから。…ポッ♡

 




 
ヴァーリ・トゥード関係者ですが、
 
真里(マサト)…鮎川真里(ぶっ拓)
ポチョムキン4世…荒くれ男(このすば!)
眼魔…ガンマン(キン肉マン)
カスミ…カスミ(モンスターファーム2)
イスキオス…冥衣(サープリス)装着サガ(聖闘士星矢)
 
…のイメージで。
『人間種の女性』は、まだ具体的なキャラが決まっていません(笑)。
 
≫≫≫
まろんは眼魔を『シャババさん』と呼んでいます。
 
 
【次回予告】
 
ひぃいぇぇぇぇえっっ!!?
絹を引き裂いた様な少女の悲鳴!
恐怖に顔を歪ませる少女…
一体、何が起きたのか?!
 
次回『直球(予定)』
乞う御期待!
 


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直球

 
ギャグ回?
 


◆まろんside◆

俺の今後の立ち位置。

マサトやモモンガさんと話し合った結果、所属はヴァーリ・トゥードだが、そのメインの活動は、王国で今までと変わらず、冒険者として情報収集する事に決まった。

白い匣(ホワイトホーム)からエ・ランテルへ転移して、モモンガさんナーベラルと現地合流する形だ。

これは俺とモモンガさんの強い推しも有ってだが、折角アダマンタイト級に昇格しているのだから…という考えが強い。

それと冒険者を続ける理由として もう1つ。

アダマンタイト級冒険者マカロン…ブラック&ゴールドの名は既に、エ・ランテルは勿論、王都、そしてバハルス帝国の一部でも それなりに知られている。

そんな人物が いきなり姿を消したとすれば、怪しむ人物が出てくる…らしい。

あれか? シャドウデーモン達の調査で有能認定したという、貴族か王族とやらの事か?

 

≫≫≫

「それじゃ、今日の処は この位にしておこうか♪」

一通り、話すべき事を話し終えた。

そして明日は…これはマサトが言い出したのだが、俺とモモンガさんはユグドラシルのプレイヤーとして、竜王国のトップ…女王の"ドラちゃん"なる人物と、顔を会わせる事に。

俺達が此方に赴く事になった時点で、その女王様には話を通していたらしい。

そんな訳で、本日は御開き。

モモンガさん達は、転移でナザリックへと戻っていった。

此処にも客室とかは有るから、泊まっていけば良いと思ったが、

「いえ、白い匣(ホワイトホーム)は転移先登録させて貰いましたから。

それに、数日も向こうを開けていますからね。」

…ギルマスとしては、シモベを信じていない訳じゃないが、それでも少し不安らしい。

ちぃっ! 折角モモンガさんとアルベドを、同室に押し込めて、翌朝「夕べは お楽しみでしたねwww」と言ってやろうと思ってたのに!

…因みにだが、ユリたんは俺がモモンガさんに頼み込んで、残って貰っている。

さあ、今夜 は お楽しみだ!

  

 

ガシッ!

 

「さて、貴女は…」

「まろんとは何が有ったのか、全~部、話してもらうわよぉ~?♡」

「は、はい? え?ぇぇえ?!」

「女子会です!女子トークです!」

「今夜は眠らせませんわ♡」

 

ピューーーーーーーーーッ!!

 

「ま、まろん様ぁ~~~~~っ!?」

「ゆ、ユリぃーーーっ?!(たん)?」

…とか、思っていたら、ちょ…ちょっと待てい!

バカ女2人を筆頭に、女子型NPC達がユリたんを拉致って行った?!

 

 

◆まろんside・了◆

 

≫≫≫

 

◆ユリside◆

「さあ、まろんとは どの程度まで進んでるか、その馴れ初めも含めて、全て吐きなさい!」

ヴァーリ・トゥードの女性プレイヤーの方々他、女性のシモベの皆さんによって連れ去られたボク。

ボクと まろん様の関係…婚約している事を知り、()()()に興味深々なのでしょう。

これがルプーなら、躊躇無くスラムダンクぶちかましてますが、流石に余所のギルドのヒトに、それは駄目でしょう。

ついでに言えば、これは元々まろん様の技ですから、この場で それを披露したら、更なる追及へと繋がるでしょうし。

 

「とりあえずはモモさんも言ってたけど、初顔合わせで いきなりプロポーズされたって、本当?」

「もうクソ運営の垢BANとかの心配は無いからアイツ、毎晩 鬼畜プレイとかしてきてるんじゃないの?」

「…やっぱり、御主人様&メイドプレイとかしてるのですか?」

「とりあえず まろん様の〇〇〇って、どれ位のサイズなの?」

「さあ、正直に言うのです!」

「え…そ、その…」

…スイマセン、まろん様。

コレは もう、逃げられないヤツです。

全部 惚けるのは無理として、何処迄なら話しても大丈夫でしょうか?

ΧΧΧΧや■■■、並びに☆☆☆☆を※※※で★★★★★★するのを話すのはアウトとして、◎◎◎している時に、まろん様が自身の首を外して ぱふぱふするのは、話してもセーフ…ですか?

 

「…で、結局は あの男、どうなのよ?」

「夜な夜なマニアックな変態鬼畜プレイ、強要してんじゃないの?」

「ぃぇ…その…ま、まろん様は何時も、(やさ)しくしてくれています…って、ひゃぁあ??!」

ちょ…いきなり、何を…?!

 

「うりうりうり♡

さあ、もっと具体的に言いなさい!

…さもないと、うりうりうりうり~♡」

い、ぃやぁ…そ、そこ? そこは、らめぇ~…

 

  

◆ユリside・了◆

 

≫≫≫

 

◆まろんside◆

「マジに一晩中、捕まえてるし…」

…結局 昨夜は、ユリが俺の部屋に来る事は無かった。

この女共、マジにユリと夜通し話していやがった。

お陰様で俺は、久し振りに1人で夜を過ごす事になったよ!

 

「あはは…つい、お話に盛り上がっちゃって…

ごめんね、悪かったわよ。キョニュウ★スキーwww」

「何なのだ、その呼び名わっ?!」

ユリたーーーーーーーんっ!!

キミは昨夜、コイツ等に何を話したのだ?!

 

「彼女を責めるのは止めてあげなさいよ?

悪いのは問い詰めた私達だからね? ぱふぱふ☆ダイスキー。」

「毎晩、メイドさんと変態鬼畜御主人様プレイしてるんですよね?」

敢えて否定は しないが、その呼び名は止めろ貰えないか?!

それから、()()は、やってないからな!

…というか お前等、ユリたんから何処まで聞いた?

凄く気になるんだが?!

てゆーか ユリたん、何だか凄く ぐったりしてるし、お前等 一体ユリたんに何をしたんだ?

凄く気になるんだが?!

 

超弩変態(まろん)様は、ユリさんのHカップでHな事をするのが大好きだと。pksks…」

スイマセン、マジ、堪忍して下さい。

…って、今の俺の呼び方、何か違和感マシマシだったぞ?!

ヴァーリ・トゥードのシモベはAOG(どこか)のシモベと違い、忠誠は それなりに高いが決して天突してないフレンドリー設定だけど、だからこそ容赦無いな!

 

「そして鬼畜獸(まろん)様の御立派(まろん)様は、世界級(ワールド)凶器(アイテム)だと♡♡♡」

ゆ、ユ~リい~~ぃっ!!?…たん?!

 

「も、申し訳ありません、まろん様!

あの拷問(くすぐり)には耐えられなかったのです!

こ…今夜は まろん様が以前から希望(リクエスト)していた、前戯無しで いきなり凸凹X、しかも●●●プレイで御奉仕致しますから、それで お許しを!」

……………許す。絶対に絶対だからな!

 

 

◆まろんside・了◆

 

≫≫≫

 

◆モモンガside◆

う~む、ユリがナザリックに戻ってきたが、何だか凄く、ぐったりしている。

…まろんサン、ハッスルし過ぎじゃないですか?

 

「大丈夫か、ユリ?

敢えて具体的には聞かないが、何となくは解る。

解るから、無理は しなくて良いぞ?」

「い、いえ、大丈夫です、アインズ様!

御気遣い、有難う御座います。」

う~ん、社畜だなぁ…

どうせ、疲労無効化(キャンセル)系のアイテムを使うのだろうけど、ナザリックの皆さんは働き過ぎ。

ブラックofブラック、ヘロヘロさんもビックリだ。

やはり、ナザリック全体、労働状況というか労働意識を改善しないと駄目だなぁ…でも、それを呼び掛けると、逆に『パワハラ』とか言われそうで…

いや、本当に「ゆっくり休め」でパワハラって何?

シモベの皆さん、社畜マジ社畜だよ!?

俺は そういうの、望んでないっての!

 

「アインズ様、此方の準備は整いました。」

「う…うむ。」

…とか考えながら、アルベドと共に、再びヴァーリ・トゥードの拠点、白い匣(ホワイトホーム)を目指す。

尤も今回は、直通の転移門(ゲート)を通るだけだが。

 

≫≫≫

「やあ、モモンガさん、おっはよ~♪」

「おはようございます、マサトさん。」

「おぃっす、モモンガさん。

アルベドも、おはようさん。」

「おはようございます、マサト殿、まろん殿。」

「それじゃ、早速 行こうか。」

白い匣(ホワイトホーム)に着くと、マサトさんとまろんサンが出迎えてくれた。

そして挨拶も そこそこに、今回の目的である竜王国の首都へと、また転移門(ゲート)を潜るのだった。

 

「「~~~~~~~~~www」」

「……………………。」

因みにだが、俺は今、ローブの胸元は きっちりと締め、手には魔法の籠手(マジックガントレット)を、そして顔も仮面で隠している。

マサトさん曰く、今から会う竜王国女王には、俺がアンデッドというのは事前に伝えているが、それでも その儘な姿は直に見るとショックが強いだろう…との事。

それは俺も納得したのだが…

 

「いや、モモンガさん、それでも…www」

「そのマスクは、無いかな~?♪」

しっとマスクの、何が悪いんですか?!

 

≫≫≫

竜王国首都の王城前に到着。

 

「おおマサト殿。ようこそ おいで下さいました。」

「女王陛下も お待ちしております。

どうぞ、此方へ。」

城門の警備兵にも、今日の俺達の訪城は報らされていた様だ。

ん、ん。報連相が出来ているのは、俺的に好印象。

ついでに言えば、マサトさんの事は、城の関係者に広く認知されているみたいだ。

尤もビーストマンとの戦争、その勝利を呼び込んだ立役者なのだから、当然と言えば、当然かな?

 

≫≫≫

「この扉の先が、謁見の間に御座います。」

近衛兵長の様な男に連れられ、城の中を進み、ナザリックの内装と比べると質素だが、そんな中でも立派と思える扉の前。

 

ギギィ…

 

「おお、よくぞ来られたマサト殿!

そして、ぷれいやー殿!」

扉が開かれ、その奧の玉座から立ち上がったのは、やや丈の短いドレスを着ている(しかも生足)…見た感じはシャルティアと同じか少し下かな?…な少女だった。

その隣に立っている男は、宰相か?

 

「妾が この竜王国が女王、ドr

「ドラちゃんです♡」

「これ、マサト殿!

愛称で呼ぶのは構わんが、せめて最初は、きちんと名乗らせてくれ!

オホン、…妾は竜王国女王、ドラウディロン…」

そう言いながら、改めて名乗る女王。

彼女が竜王国のトップである、ドラウディロン・オーリウクルス女王陛下…通称ドラちゃん…らしい。

 

「初めてまして…ですね、ドラウディロン女王。

マサトさんから、ある程度は聞かされていると思いますが、私は貴女方の言う処の、"プレイヤー"と呼ばれる存在…

少し前にリ・エステーゼ王国領に転移したナザリック地下大墳墓が主、今は…アインズ・ウール・ゴウンと名乗らせて貰っている。

アインズ…と呼んで下さい。

此方は我がシモベ、ナザリックNo.2のアルベドです。」

「アルベドと申します。」

 

ペコリ…

 

紹介され、頭を下げるアルベド。

事前に『決して圧を掛ける事無く、あくまでも対等に接する』と言い聞かせていただけあり、無難な対応を見せてくれる。

 

「…ふむ。思っていた以上に雄弁…いや、すまない。

マサト殿からはアンデッドだと、聞かされていたからな。

まさか、其程に話せるとは思わなんだ。」

「…マサトさん?

俺の種族とかは、言ってなかったんですか?」

女王の言葉を聞き、マサトさんに尋ねると、

「ん~、その方が面白いかな~?…って♡」

この人は!?

 

スゥ…

 

「「ひぇっ?!」」

そうなると、直に見て貰う方が早い。

籠手を外し、骨その儘な腕を見せる。

ん、普通は驚くよな。

大臣と一緒に女王、一瞬だが顔を引き吊らせた。

 

「この腕で察せると思うが、私はスケルトン種…正確には死の支配者(オーバーロード)だ。

…この仮面も、外した方が良いかな?」

「い、いやいやいやいや、けけけ、結構じゃ!

気遣い、感謝するぞ、アインズ殿?」

全力で、仮面を外すのを止めに入る女王。

まあ、それが普通だよな、普通。

 

「そ、それで、其方の金色の鎧の御人は…」

そして次に女王は、まろんサンに話を振る。

 

「初めまして、ドラウディロン女王陛下。

俺は まろん。プレイヤーだ。

今までは理由(わけ)有ってモモンガさん…アインズと一緒に行動していたが、所属はマサトが率いるヴァーリ・トゥードだ。」

理由(わけ)…寝落ちですよね?

 

「そして、マサトからは聞いてるかな?

俺もアンデッド…首無し騎士王(デュラハン・ロード)だ。」

 

ぽんっ!

 

「「ほんぎゃぁ~~っ???!!」」 

その光景に、恐怖の表情に硬直させ、抱き合って凄絶な悲鳴を上げる、女王と宰相。

 

「あははははははは!」

そして腹を抱えて七転八倒、笑い悶えるマサトさん。

 

「ま、まろんサン!アナタは何を、やってるんですか!?」

「…挨拶?」

一体どんな挨拶ですか?!

いや、確かに分りやすいですけど!

だからって、いきなり首を外すな!持ち上げるな!

直球(ストレート)過ぎるでしょうに!?

 




 
次回『直球②(予定)』
乞う御期待!
 


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直球②

 



◆ドラウディロンside◆

びびび…びっくりしたぁ~!(」゚O゚L)

いきなり頭ぽーん!だぞ、頭ぽーん!

お陰で思わず宰相と、抱き合ってしまったではないか! (ついでに少しだけ、ちびってしまったわ!)

…兎に角!あの まろんとかいう首無し騎士(デュラハン)

マサトが自分の仲間と言っていた時から、絶対に碌な者でないとは思っておったが、想像の遥か上じゃったわい!

そも、アインズ殿は兎も角、彼奴がアンデッドとは、聞いておらなんだぞ!

それに引き換え、アインズ殿は本当に…とてもアンデッドとは思えぬ程に、理性的な御人じゃな。

マサトの友人(フレンド)とは思えぬ程にな。

今思えば、少しでも あの頭ぽーんの耐性を得る意味でも、手だけで無く、仮面の下の素顔…恐らくは普通な髑髏じゃろうが…を見ておくべきだったやも知れぬな。

  

「アレは私とて、非常に不本意でした。

全く…何が哀しくて、比喩で無くリアルに小便臭い小娘(似非)と抱き合わにゃならんのですか?

私にロリコン疑惑が向けられたら、どうする心算なのですか?」

ええい、しゃあらっぷ!

貴様は頭の中の声(モノローグ)に対応するでないわ!

それと、小b…臭いとか言うな!

 

≫≫≫

その後、アインズ殿に、色々と尋ねてみる。

聞けばマサト達より少し前に、やはり原因不明で『ゆぐどらしる』なる世界より、自分達の拠点毎に、この世界に転移してきたとか。

その辺りは、マサトと同じじゃな。

伝承に残る、六大神や八欲王等も、同様なのかのう?

 

「ほう…で、王国の者との接触等は、如何程に?」

「一都市にて、冒険者の真似事をしておりますが、貴族王族との絡みは、まだ無いですね。」

「ふむ…で、其方達は、この世界に何を望む?」

「「はい?」」

妾の問いにアインズ殿と まろんは、少し間の抜けた返事を。

 

「言葉が足りなかったか?

遥か昔、六大神は国を興し、八欲王は混乱を招いた。

ぷれいやーは この世界に現れる度に、この地の者に善し悪し問わずに影響を与えてきたのだ。

マサト殿、其方もだ。御主達は この世界を、どうしようと思っているのじゃ?」

「ふむ…そういう事か。

………何をすると聞かれれば、私達は」

改めての問い掛けに、アインズ殿は少しの沈黙の後、己の考えを述べようとした時、

「アインズ、ちょっとストップだ。」

まろんが その発言を止めに入った。

 

()が来る。

アルベド、直ぐにフル装備だ。」

「「「「まろんサン?」

       ちゃん?」

       殿?」」

客? 誰の事だ?

今日はアインズ殿以外とは、謁見等の予定は組んでおらぬぞ?

 

「…アルベド。まろんサンの言う通りに。」

「承知致しました、アインズ様。」

 

ス…

 

しかしアインズ殿は その意味を察したのか、自分の御付だった悪魔に指示し、彼女も即座に それに従い、瞬時に黒の全身鎧に換装。

翼も隠し、外観からは悪魔と分からなくなった。

 

バタンッ!

 

「し、失礼します、女王陛下!」

そして謁見の間の扉が外から開かれたのは、それから 直ぐ後の事だった。

 

「失礼しますよ。ドラウディロン女王。」

「む? 連絡も寄越さず いきなり訪れるとは、如何に其の方で在ろうが、些か礼が足りぬのではないか?

…何の用じゃ? 陽光聖典?」

 

 

◆ドラウディロンside・了◆

 

≫≫≫

 

◆モモンガside◆

…少しだけ、不愉快だな。

慌てた様子な兵士と共に、入ってきた男。

黒のローブを着た、見るからに魔法詠唱者(マジック・キャスター)風な人物だ。

後、白ローブの男が数名。

何者かは知らぬが、仮にも一国の主相手に、アポ無し訪問は確かに無礼だろう。

社会人として、絶対にダメなヤツだ。

 

「おっと? これは これは、来客中でしたかな?…って、お、お前達は?!」

そして不尊な…完全にドラウディロンを見下したかの様な顔。

来客(われわれ)の事も、兵士から先に聞かされていた筈だが そんなの お構い無し、無遠慮で自分の用件を進めようとする雰囲気だったが、俺達を見た途端に、その自信に満ちていた顔を驚きに歪める。

 

「ほう? 私達と、何処かで出逢ったかな?」

正直、心当たりが無い。

まろんサンに顔を向けると、

「?????」

どうやら まろんサンも、この男が誰だか分かっていない様だ。

しかしドラウディロンは先程、この人物に対して、『陽光聖典』と言ったな?

陽光聖典陽光聖典陽光聖典…何だったっけ?

何処かで聞いた事が、有る様な無いような…?

 

「…成る程。帝国の回し者か。」

え?まろんサン? 何か気付きました? 

 

「ん?まろん殿? いや、彼はバハルス帝国で無く、スレイン法国、陽光聖典隊長のシィマ・キュー殿じゃが?」

「そうですか、これは失礼。」

まろんサンの『帝国の者』発言を訂正するドラウディロン女王。

それに対して、()()()()()な笑みを浮かべる まろんサン。

あ、思い出した。陽光聖典って、()()()の法国の特殊部隊だ!

 

「いえ、我々を見て驚いたのですから、つい…

その様な心当たり、帝国の者にしか無かった物ですから。」

お~ぅ…まろんサン、芝居入ってるなぁ。

成る程!そういう事ですか!(©デミウルゴス)

了解です。そういう茶番、俺も大好きです!

 

「………………。」

「♪♪♡」

ドラウディロン女王とマサトさんも、何事かは解らないが、とりあえず余計な口は出さない方向で行ってくれる様だ。ありがとう。

 

「女王。俺達は大丈夫だ。

先に このシマキュー氏との話を、片付けて構わない。」

シィマ・キューですよ、まろんサン。

 

「………………………………。

そ、それは、有り難い。

で、では、マロン殿…でしたか?

申し訳無いが、貴公達は、この部屋から…」

「いや、それには及ばぬ。

陽光聖典の用件とは、どうせビーストマン絡みの事であろう?

それならば、彼等も関係者じゃ。

一緒に聞いて貰った方が、話が早い。」

「くっ…」

 

 

◆モモンガside・了◆

 

≫≫≫

 

◆まろんside◆

 

 

な、何故だ?!

何故コイツ等が、竜王国の女王と一緒に居るのだ!?

この者共、一体 何者だ?!

 

 

…とか、言いたそうな顔をしているな。

まあ、無理も無いか?

あの時、カルネ村を襲った帝国兵に偽装した法国兵の約半数以上が俺とモモンガさん、ついでに死体リサイクルのデスナイト達に殺され、残りは王国戦士団へと引き渡された。

但し その時、こっそりと1人だけ、法国へと逃がしたんだよな。

ソイツの報告で、仮面の魔法詠唱者(マジック・キャスター)(モモンガさん)と金色の鎧の黒髪赤眼男(俺)、そして黒の全身鎧の女(アルベド)の存在は要注意人物として、法国の上層部にも伝わっている筈。

そして後詰めに出向いていた…恐らくは行方不明扱いの…陽光聖典とも関わり有りとしているだろう。

このシマキューは陽光聖典の隊長とか言っていたが、それって確か、ナザリックに連れて帰ってアンデッドにしたヤツだったよな?

…で、最後は俺達に斃された。

つまりコイツは、繰り上げで隊長になった訳だ。

馬鹿なヤツだ。簡単に言葉や顔に出したりしたら、ダメダメだろう。

漸く見付けた()()()()に、怪しんでるのがバレたら、元も子も無いぜ?

尤も此方は、バレてるのに気付いてない方向で行かせて貰うがな。

…そうだろ?モモンガさん?

おれたちは すれいんほうこくとは、なんのかかわりもないですよねー?

 

「ん、ん!…それで、シィマ・キュー殿?

此度は どういう用件じゃ?

見ての通り、客人も居るので、手短に頼むぞ?」

「そ、それでは、率直に言わせて頂きましょう。

我が国が貴国への、対ビーストマンの報酬。

此れからは今までの額の5割増しと、させていt

「ああ、それならば、もう良いわ。

我が竜王国は今後、ビーストマンに対しては法国を頼らぬと決めたからの。」

「はぁあ?!」

「今後は此方のマサト殿の率いる()()に、任せて貰う事にしたのだよ。」

「どうも~♪マッサトでぇ~す♡」

『部隊』…ね。

まさか人間種異形種入り雑じった、異世界集団と紹介する訳には往かないから、傭兵団とでも思わせる感じか?

そしてマサトも、その()()で挨拶。

それよりも!大体ビーストマンって、既に全滅というか、絶滅させたって言ってたよな?

まあ、それを素直に言えば、逆に色々と疑われるだろうから、黙っておくのは正しいか。

 

「其方達 法国は、膨大な金を我等から貪っても、寄越すのは僅かな兵。

そして一時的に、前線を押し返したら、さっさと帰っていくの繰り返し。

しかも この数ヶ月、幾度もの我等の救援要請には何の返事もせず、久方振りに顔を見せたと思えば、いきなり割増要求か?

無論、今までの働きには感謝している。

…が、申し訳無いが、もう法国は信用出来ん。

…残念だが、此迄だ。」

「ぐぐ…あ、後で後悔しても、知りませんぞ!」

 

バタンッ!

 

女王の言葉に、シマキュー他数名は怒り顔で、入ってきた扉から出て行った。

いや、沸点低くない?

 

「済まぬな。」

「いえ、お気になさらずに。」

その後 直ぐに、女王は俺達に頭を下げようとするが、モモンガさんが それを制す。

 

「法国が この数ヶ月 救援を寄越さず、そして急な報酬の吊り上げをしたのは、もしかすると私達が原因かも知れませんからね。」

「???」

あー、言ってみれば、確かに。

俺達が陽光聖典の推定半数を潰したから、向こうは人手不足。

他国の危機の為に人員を割く余裕は無いだろう。

更には それ等を補う為の経費もバカには ならないだろうからな。

ついでに言えば、法国最強(笑)の部隊も、殆んど壊滅状態。

星占千里情報だと、今 自分を除いて生き残っているのは、その中でも最強格の たった1人だけだとか。

 

 

◆まろんside・了◆

 

≫≫≫

 

◆モモンガside◆

「ふん、『人類の守護者』が、聞いて呆れる!」

カルネ村での一件をその儘に話すと、女王は不満全快。

 

「王国が世界の癌という考えは、理解出来る。

しかし、それで帝国を偽り、罪無き民を虐殺するだと?

巫山戯るな! 堂々と法国を名乗り、王都を侵攻、制圧すれば良い話ではないか!」

そう、それな。

まろんサンも似た様な事を言っていたが、他人に罪を擦り付け、自分は黒幕気取りなのは、俺も気に入らなかった。

アンデッドとなり、誰かが他者の命を奪う点については正直、然程 思う事も無くなったが、それでも法国の やり方は、個人的に気に入らない。

 

「ん…それは、アウトかも、ね…?」

「!!?」

そしてマサトさん。

人間種…というも有るけど、元より卑怯卑劣な真似が嫌いな このヒトは(残虐残忍残酷はアリ)尚更に、スレイン法国の執った行動は容認出来ないみたいだ。

普段の笑顔は消え、(はくりょく)の有る怒り顔。

マサトさんは課金エフェクトは持ってない筈なのに、今の このヒトの背中には、黒いオーラとゴゴゴ文字が幻視出来る。

 

「…と、法国の話は、とりあえずは もう良いだろう。

話を戻すが、マサト殿、そしてアインズ殿。

其方達は ぷれいやーとして、この世界をどうする心算だ?」

あの陽光聖典が場に乱入する前にしてきた質問を、女王は再びしてきた。

 

「別に~♪ ドラちゃん、心配しなくても良いよ。

俺達は俺達の存在を認めて貰えて、普通に生活出来たら、それで良いから。」

「私も同じだな。

ドラウディロン殿は杞憂している様だが、安心してくれ。

私は世界を支配する等の考えは、持っていない。

敵対者には容赦はしないが、自分から多方面に敵を作る様な真似は、極力しない心算だ。」

「極力かよ?」

俺の答えに、まろんサンから笑いながらの突っ込みが入る。

しかしスレイン法国は、完全に人間()()の至上主義国家なのでしょう?

だとしたら、(アンデッド)を筆頭とした異形種の集団と、馴染み合うのは難しいだろう。

それは例え俺が、プレイヤーだとしても…ですよ。

法国に対しては、此方も散々と ()()()()()し。

何よりも俺が、連中とは仲良くしようとは思わない。

 

「ええ。私達もマサトさんと竜王国の様に、ナザリックの存在を王国に認めて貰い、シモベ達と静かに暮らす事が出来れば、それで良いですよ。」

「ふむ…しかしアインズ殿。

王国で それは、少しばかり厳しいやも知れぬぞ?」

俺の考えに、懐疑的な意見なドラウディロン女王。

え?どういう意味ですか?

 

「リ・エスティーゼ王国は、ぷれいやー関連には疎い感が有るからの。

アインズ殿が自身の存在を明かした処で、ナザリック地下大墳墓か?

其れもアンデッド…モンスターの巣窟程度としか認識せず、討伐軍を結成させて攻め寄せる可能性の方が高いぞ?」

「あー…」

その言葉に、ついつい納得。

あの国の王族貴族、一部を除いて、馬鹿ばっからしいからなー。

何だか財宝目当てに そっち方面で動き出す光景が、頭に浮かんだよ。

 

「ナザリックは、王国領でも帝国にも近いのだろう?

ぷれいやーとして接触するならば、バハルス帝国の方を勧めるぞ?

彼処の皇帝なら、賢明な応対をしてくれるだろう。」

成る程。

それならば、どうやって その皇帝と接触しましょうか?

 

「アインズ。この場合は敢えて直球(ストレート)の方が、逆に説得力有るんじゃないか?」

え?まろんサン?

 

 

◆モモンガside・了◆

 

▼▼▼

 

 

◆???side◆

「陛下! 直ぐ後ろの窓から逃げて下さい!」

「正気か? 此処は4階だぞ!?」

「運が良ければ、大怪我で済みます!

この場に留まっていれば、間違い無く死ねますよ?」

「運か!?」

 

チィッ…!

マジにヤバイな。

空間に いきなり黒い穴が空いたと思ったら、其処から出てきたのは、2体の悪魔を従えたアンデッド。

如何にも魔法詠唱者(マジック・キャスター)な風貌だが、魔法には からっきしな俺でも解る。

アレは明らかに死者の大魔法使い(エルダー・リッチ)なんかよりも、遥かに上位のモンスターだ!

 

「あ…ぁあ…」

文官さんも完全にビビって動けないし、陛下も窓から飛び降りるのに戸惑っている。

まあ、4階だしな。

陛下を護るべくに前に出て剣を構えるが、全然 勝てる気がしねー。

せめて 誰か もう1人…

いや、仮に4騎士全員の一斉攻撃でも勝てないか。

こりゃ、覚悟を決めるしかないってか?

陛下…殉職手当ては、期待してますよ?

 

「そんなに警戒する必要は無いぞ、騎士殿。

その剣は、下げて貰えないか?」

いや、そりゃ無理ってモンだろ!

…って、アンデッドが喋った? 知性持ちかよ?!

 

「突然の来訪は詫びよう、バハルス帝国皇帝ジルクニフ・ルーン・ファーロード・エル=ニクス殿。

私はアインズ・ウール・ゴウン。

率直に尋ねるが、貴殿はプレイヤーなる存在を、知っているかな?」

 




 
会話ではマサトと まろんを殿呼び、頭の中では呼び捨てしているドラちゃん。
まろん…は しょうがないとして(笑)、マサト、お前も何をした?
 
≫≫≫
シィマ・キュー…アビゲイル(BASTARD!!)のイメージで
 
≫≫≫
 
【次回予告!】
◆モモンガside◆
アポ無し訪問は感心出来ないと言っておきながら、自分で それをやってしまうとはな…
いや、本当に申し訳無い。
とりあえずは謝罪の品を、受け取って欲しい。
 
( ▼皿▼)つ{養毛剤}
( 〇ω〇)つ[育毛剤]
( ゚∀゚ )つ(発毛剤)
( ●()●)つ[アデ〇ンス]
 
「それは一体、どういう意味だ!?」
 
 
次回『バハルス皇帝!ジルクニフ!!(予定)』
乞う御期待!


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皇帝

 
【前回の あらすじ】
 
モモンガさんはバハルス帝国の皇帝、ジルクニフ・ルーン・ファーロード・エル=ニクスに会いに行きました。
 
「手土産とか必要ですよね?」
「毛生え薬?それと胃薬。」
「Perücke!」
「…私は断じて、禿げていない!」
 


◆ジルクニフside◆

ぷれいやー。

それは英雄、逸脱者と呼ばれる者すら歯牙にも掛けぬ、更に超越した"神"と思しき存在。

過去の伝承に在る、六大神や八欲王が、其だと云われている。

突如、目の前に現れたアンデッドは、確かに その言葉を発した。

 

「アインズ・ウール・ゴウン…殿…と、言ったか?

貴殿は自分達が その、ぷれいやーだと言うのか?」

「噂に違わず聡いな。

如何にも。但し、此方の2人はプレイヤーで無く、私の友が創った存在だが。

それと、私の事は、アインズで構わない。」

「「……………………。」」

ぷれいやーと その従属神!

しかも、このアンデッドの言葉が真実(まこと)なら、他にも ぷれいやーが居るという事になる。

 

「何が目的で、私の前に姿を見せた?

私の(いのち)を望むか? 違うな。

それならば、今も こうして言葉を交わしている筈も無い。

…バジウッド、下がれ。」

「陛下?」

「大丈夫だ。少なくとも、此方が明確に敵意を示さぬ限りは、私達は無事で済みそうだ。

そうなのだろう、アインズ殿?

話す事が有るならば、そちらのテーブルで話しましょう。

…何か、飲み物でも?」

侵入者に向けて剣を構える護衛の騎士を退かせ、対話を持ち掛ける。

実際に何が目的で、私の前に現れたのか、話してみないと分からない。

幸いにも?疎通は出来そうなので、それを確認…いや、知る為にも、執務室の一角の応接席に着く様に促してみる。

 

「ふっ…心遣い、感謝する。

しかし、飲食物は不要だよ。

見ての通り、私はアンデッドだからな。」

…この言葉の後、アインズ殿は椅子(ソファ)に腰を降ろす。

複数が座れる大きな造りだが、従属神の2人は、その後ろに立ち控える。

これは主と同じ位置に居るのを善しとせずな、彼等の流儀(スタイル)なのだろう。

私も倣い、バジウッドとロウネを後ろに並ばせ、会談が始まった。

 

≫≫≫

「ん、んんんんっーーーーー!??」

「何と…その様な事が…??!」

ふっふっふっ…

ふっふふふふ…

あっーはっはっはっはっ!!

アインズ殿の話は、実に興味深い話だった。

先ずは、ぷれいやーの話。

彼等は、『彼等の世界』から同刻、此方の世界には時間差で流れて来ているらしい。

そして それは、この先にも起こると思われ、その原因は、彼等も解っていないとか。

…つまりは この先も、ぷれいやーは現れるというのか?

そしてアインズ殿は、自分達は"神"でも何でも無く…種族としては多種多様だが、それでも只人だと言い張る。

我々が ぷれいやーを"神"として見ているのは、単に能力差故に過ぎないらしい。

 

「んーっ!?んんっー?!」

…その『差』が、大問題なのだが。

そして私的に今回の最たる問題は、アインズ殿からすれば、正に未知だった この世界との最初の関わりだった。

偶々に目にした、とある村への襲撃。

スレイン法国が帝国兵に扮し、リ・エスティーゼ王国の開拓村を襲撃、幾つもの村を滅ぼしていた…だと?

何故…と云えば、その過程で王都から王国最強、ガゼフ・ストロノーフを誘き出して殺害。

その終なる目的が、我々帝国に、王国を支配させる事、だと?

ふっふっふっ…

ふっふふふふ…

あっーはっはっはっはっは!!

面白い! 実に、実に面白い話じゃないか!

結果、ストロノーフ殺害は未遂に終わり、その帝国兵(偽)の大半は、王国が引き連れたと言っているが、その様な報告は、私の耳に届いていない。

 

「……………。」

「……………………………。」

「んん!んんんっん?!!」

秘書官(ロウネ)に顔を向けると、やはり初耳だった様で、無言で首を横に振る。

無論、彼の話を全て信じる心算は無い。

…が、逆に これが真実だとして、しかし その全てを語らず、一部を伏せて話している可能性の方が高い…と、私は見ている。

当然これは、調査する必要が有る。

王国側にも、そして法国側にもな。

特に法国。我が帝国に『虐殺者』の汚名を被せ、更には『駒』扱いしてくれるとは、随分と良い度胸をしているじゃあないか。

場合によれば、先に攻め入るのは法国になるぞ?

 

「んん!んんん!んんんん!ん!」

「…それでアインズ殿?

私を訪ねてきた、本命の目的は一体、何なのかな?」

そうだ。ぷれいやーが何故、私の前に姿を見せたのか、今までの話には、必要性も必然性も まるで無い。

 

「ああ…その前に…」

私が今回の核心を尋ねると…髑髏な面でも解る。

アインズ殿は今、物凄く突っ込みたい表情をしているのが、凄く解る。

しかし…!

 

「大丈夫だ。気にしないでくれ…頼む!」

「あ…は、はい…」

「んーーーっ?!んんーーーーん!!」

そう…この場に簀巻き&猿轡で床に転がっている妖怪爺なんて、居ない。

もしも そんな気がしても、それは気のせい。

そんなのが見えていたとしても、それは目の錯覚なんだ!

 

≫≫≫

「成る程。」

アインズ…殿の目的は、あくまでも自分達の存在を認める事。

其処に征服等の野心は無いと、そう言っている。

聞けば、あの若作りババアの国にも、彼の友人が その拠点毎に流れ着き、ビーストマン問題の解決を対価に、それを認められたとか。

…然気に竜王国が ぷれいやーを擁したという爆弾を落とされた気もするが、それは後で考えよう。

彼が王国領に居を構える事になりながら、我々帝国に安寧を訴えるのも納得だ。

彼等…少なくともアインズ殿は本当に極力、平和的に事を収めたいのだろう。

ランポッサで無く私に会う様に助言したのも、あの若作りババアだろう。

そうで無いなら、疾うに王国は滅んでいる。

 

「…協力してくれると、解釈して良いのだな?」

「ああ、勿論だ。ジルクニフ皇帝。」

「…ジル、だ。」

 

 

◆ジルクニフside・了◆

 

≫≫≫

 

◆モモンガside◆

ジルクニフ皇帝…ジルとは、互いに愛称、呼び捨てで呼び合う間となった。

 

「「…………!!」」

同行しているアルベドとデミウルゴスが、凄く不快全開で殺気立っているが、まぁ大丈夫だろう。

 

「それでは…今回、我等ナザリックの存在、自治を帝国公認とさせて戴くに辺り、私達が提案する脚本(シナリオ)に御座います。」

 

パサ…

 

「こ、これ…は…紙なのか?」

さて、ナザリックが この世界で平和に生き抜く計画。

デミウルゴスが企画書を渡すと、ジルは先ず その内容で無く、その紙その物に驚く。

羊皮紙で無く、PPC(コピー)用紙は やはり、この世界の人間からすれば、珍し過ぎた様だ。

 

「これは…?」

「喜劇なのは、充分に自覚しています。

しかし皇帝陛下には それを承知で、便乗して頂きたく存じます。」

そして企画書の内容を見て、ジルは再度、驚いた顔を見せる。

 

「ふっふふ…成る程…そう来るか…!」

そして満足気に笑みを溢し、頷いた。

 

 

◆モモンガside・了◆

 

▼▼▼

 

◆バジウッドside◆

「えぇいジい~ルぅ~!お主は儂に、何か怨みでも有るのか??!」

「黙れ。貴様の所業で、国が1つ滅びたやも知れなかったのだぞ?!」

何が有ったかと言えば、あの ぷれいやー…アインズ・ウール・ゴウン殿が去った後、床に転がっている宮廷魔術師殿の拘束を解くと、この魔術師…フールーダ・パラダイン殿は、号泣&怒り顔で、陛下に詰め寄ってきたのだ。

…いや、ありゃ当然だろ。

ぷれいやーの魔力でも感じたのか、この爺さんは いきなり執務室に飛び込んできたと思ったら、

「おおっ!貴方様こそ、正しく至高の存在!

この私を弟子にして下され!

見返りに、儂の持ち得る全てを捧げますぞ!

深淵を…魔力の深淵を、この儂にぃいーっ!」

「えーっ?!」

…と、多分、困惑しているアインズ殿に迫り寄った。

その後は眼鏡の悪魔が「落ち着きたまえ!」と、恐らくだが操作系のスキルで黙らせ、「死なす!」と息巻く巨乳美女な悪魔をアインズ殿が「スティ!スティ!」と抑えている隙に、俺が この魔法狂いを縛り付けたんだがな。

 

「あの御方は我が師と成り得る、偉大なる御方だったのじゃz

「バジウッド!コイツをもう1回、縛り上げろ!」

 

≫≫≫

「…で、陛下?

どうする心算なんですかい?」

改めてフールーダ殿を落ち着かせた後、この先の あのアンデッド…いや、ぷれいやーとの関係を尋ねてみると、

「ふっ…快諾だろうが苦渋だろうが、結局の処、選択肢は1つしか無いのは理解出来るだろう?」

…ですよねー?

 

「それに彼は ぷれいやー。

単なるアンデッド…モンスターとは違う。

どちらかと言えば、人間に近い。

恐らくだが、アインズは ぷれいやーの中では変わり者な類いなのだろう。

あれ程な力を持ちながら、我々の様な矮小な人間如きと、対等な関係を築こうとしているのだから。

それは幸いな話だろ?

ならば彼とは互いに承知の上で、利用しあい協力しあう…そんな関係がベストなのさ。」

「んーっ!んんー!!ふがふがふが…」

 

  

◆バジウッドside・了◆

 

▼▼▼

 

◆アルベドside◆

アインズ様が何故、帝国に対して従属隷属等では無く敢えて横、対等な繋がりを結んだのかは、私…私達には理解しかねる。

 

「リザードマンや西の魔蛇の時も、そうだっただろ?

力と恐怖による支配なら、どんな無能でも出来る。

モモンガさんは屍と瓦礫の山の頂に玉座を敷く様な、そんな趣味は持ってないだけさ。」

偶々?ナザリックのBARに居た まろん殿なら何かを知っていると思い、その旨を尋ねてみたが、このヒトも それに理解納得を示しているだけで、具体的には何も話して下さらない。

 

「俺は外様だからな、余計な事は言えないさ。

モモンガさんが何を考え、何を望んでいるかはアルベド、キミ達ナザリックのシモベだけで、その正解を導き出すべきだ。

ナザリックと帝国の関係。

俺が此処で必要以上に口を出すのは、モモンガさんだけで無く、キミ達に対しても失礼な話だ。」

 

カラン…

 

そしてグラスを鳴らしながらの、この正論。

 

「まあ、1つだけ言うなら…」

しかし その後、まろん殿は思い付いた様に言葉を続けた。

 

「アルベド達は『何故、モモンガさんは人間如きと?』…とか思ってるかも知れないが、それは俺も そうだが、モモンガさんは"アンデッド"だからだよ。

それでは、"アンデッド"とは何か?

…ユリたん♡やシャルティア、それに他のシモベや迷宮エリアのPOP湧きのモンスターみたいに その様に創られたで無く、そもそものアンデッドとは何か?

それを考える処から、始めるべきだな。」

「……………………。」

助言、有り難く存じます。

後でデミウルゴス、そしてパンドラズ・アクターと その辺り、考察する事にしましょう。

 

「…じゃ、そろそろ戻ろうか、ユリたん♡」

「はい♡まろん様♡♡」

「マスター、御馳走さん。また来るよ。」

「はい、またの御越しを。」

そして まろん殿は、ユリと一緒に店を出ていく。

  

「「♡♡♡♡♡♡♡♡」」

…手を繋いで。

 

「アルベド様? 今、『爆〇ね!』…とか思ってらっしゃいますね?

因みに私は、思っています。

えぇ!心の底から、そう思っていますとも!」

ええぃ!〇ァッキンペンギン、しゃぁらっぷ!!

 




 
次回『王国(仮)』
乞う御期待!
 


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喜劇(ファルス)

 


◆まろんside◆

「丁重に お断りさせて頂きます。」

モモンガさんが帝国皇帝と色々と話した数日後。

冒険者組合から仕事の依頼をされたが、それをチームの総意として、モモン(モモンガさん)が組合長に その辞退を申し入れた。

 

「そうか…強要は出来ないから、仕方無い、か…」

組合長(アインザックさん)が残念そうに洩らすが、俺達の中では最初から、その依頼は受けない事に決めていた。

 

 

【トブの大森林の近くで発見された、遺跡の調査】

 

 

はい、ナザリック地下大墳墓です。

ナザリック(モモンガさん)が堂々と表に出る為の仕込み。

その工程の1つとして、わざと その存在を王国の貴族にリークさせる事で、冒険者組合に その調査依頼が来る様に小細工していたのだ。

今まで確認されなかった、未知の遺跡。

しかも、大規模な墳墓(おはか)

少し前まで王国では、強大な不死属(アンデッド)が世間を賑わせていた(笑)ので、その関連を疑う者が出てくるのは必然。

故に そのアンデッドを討伐したアダマンタイト級冒険者チーム、ブラック&ゴールドに半ば指名、その話が振られるのも、また必然。

 

「…アインザックさん。その依頼、王国、若しくは貴族からですよね?」

「!!?」

此処で俺が、質問を投げ掛ける。

それに反応した表情が、「yes」と言っているも同じだった。

実は これも、承知の上での問い掛け。

そのナザリックの情報を得た貴族とやらは、貴族派閥筆頭と呼ばれる貴族が擁する下っ端。

デミウルゴスが今回の為に選んだ、低級貴族だ。

コイツが自分のボスである貴族に伝え、ソイツが更に国王に伝えたか、それとも個人的に動いたかは知らないが、その経緯で冒険者組合に依頼が来た訳だ。

 

「申し訳無いが、我々は必要以上に『国』との関わりは、持ちたくない。

ブラック&ゴールド、いや冒険者は決して、国仕えでは無いからな。

嗤う金毛(スマイル・ゴールド)の時は、一般民にも危害が及ぶ話だったから、協力したまでです。」

「う~む…」

「それと これは俺の勘だが、その遺跡。

下手な好奇心や物欲だけで考え無し、安易に踏み入れるのは止せと…俺の勘が そう訴えている。」

「マカロンさんの勘は、よく当たります。

私達は それに、何度も助けられました。」

ナーベラル! お前、アドリブのスキル、上がったな?!

モモンガさんの断りに続く俺の台詞に、上手く繋いだとは?!

絶対にモモンガさんも驚いてるに、違いない!

 

「わ、分かった…依頼主には、そう伝えておこう。」

兎に角これで、組合長は納得してくれた様だ。

俺達が辞退した事で、他の冒険者にも話をする事も無くなったかな?

 

 

◆まろんside・了◆

 

▼▼▼

 

◆モモンガside◆

俺達ナザリックが表に堂々と出る為の仕込みの、第1段階は終了。

次は その貴族の遣いが、ナザリックに訪れるのを待つ事になるが…

 

「アインズ様。件の貴族ですが、予想通りに調査兵団をナザリック地下大墳墓に向ける準備をしていると、シャドウデーモンから報告が有りました。

尚、国には『遺跡を見付けた』等の報告はしておらず、この貴族の個人行動との事です。」

…らしい。

 

「ふむ、調査兵団…か。」

「ええ。大層な肩書きですが、所詮は墓荒しに他なりませんわ。」

「ふっ…しかし何れにせよ、久し振りの客だ。

しかも、この世界に置いては初めての来客。

ならば盛大に…私自らが歓迎してやるべきだ。

…そうだろう、アルベド?」

「全ては、アインズ様の御心の儘に。」

…と言うか、そういう筋書き(デミウルゴス監修)なんだけどな。

彼等が どの様に我々に接するかで、その歓迎内容も変わってくる。

場合によっては、お土産も渡さないとだな?

とりあえずはジルとドラウ、そしてマサトさんに報告だ。

 

 

◆モモンガside・了◆

 

▼▼▼

 

◆アルベドside◆

アインズ様が自身の、そしてナザリックの存在を世に知らしめる為の、行動に出られた。

だが、その やり方は、不敬ながら少し まだるっこしい気もする。

強者が弱者を虐げる。

それが世の理だと、私は思っている。

態々 ニンゲンを誘き寄せて御自身の存在を教えたりせずとも、我々シモベが主要都市に出向き、その力で制圧。

その上でナザリックをアピールすれば、それで良い話では?

…しかし、 

 

 

間違っているとは言わないが、それだけが絶対とも言えないな。

それに私は、王国を侵略するとは、一言も言っていないぞ?

 

 

アインズ様は そう仰有られる。

下等生物(ニンゲン)

敵対者には微塵も見せないが、そうで無い者にも あの御方が見せる情が、私には理解出来ない。

それは不忠に他ならない。

 

 

俺も そうだが、モモンガさんは"アンデッド"だからだよ

 

 

似た様な考えを持つ、まろん殿の言葉。

アインズ様が不死属(アンデッド)

それは解っている。

しかし それが どういう意味で言っているのか、それは当然過ぎる事だからか、逆に解らない。

 

「な…成る程!そういう事でしたか!!」

「な、何か解ったの?!」

だから、デミウルゴス、そしてパンドラズ・アクターを呼び出し、その事を話してみたら、

「た、確かに…初めから それを、承知するべきだったのを…何と愚かしい事だ…!」

デミウルゴスは何かに気付いたのか、わなわなと震え始めた。

 

「万死!恐らくはナザリックの者の全てが、その真実に気付いていない!

そう、甘さに定評なセバスやペストーニャ。

そしてアインズ様から創られたパンドラ、キミでさえもだ!!

アインズ様の御心を理解する事が出来なかった…その無知は、正に万死に値する!」

「ちょっと、驚いたり震えたり怒ったりしないで、何か解ったのなら、説明しなさい!」

「デミウルゴス殿、落ち着くべきですぞ?」

それは余程な事だったのか、少し錯乱気味なデミウルゴスを、パンドラズ・アクターと共に宥め、説明を促せた。

 

「…し、失礼しました。

まだ仮説の域ですが、今から話すのは、当然過ぎた故に、逆に気付かなかった事です。

私は勿論、アルベド、パンドラ。キミ達でさえもね。

…尤も それも、言い訳に過ぎませんが。」

そう言いながら、眼鏡のズレを直し、デミウルゴスは話し始める。

 

「先ず、不死属(アンデッド)とは?

…此処から考え始める必要が有ります。

それは細かくすれば切りが無いですが、大きく別けて、2種。

あぁ、シャルティアやユリの様に、その様に創られた者や、ナザリックのシステムで無限湧きするPOPモンスターやカキンモンスターは除きますよ。

それを踏まえて、1つは例えば吸血鬼(ヴァンパイア)の様な、産まれながらに その様な特性を持つ種族。

そして もう1つが、アインズ様や まろん殿の様な、甦った死者。

…此処までは、分かっていますね?」

「JA!」

「馬鹿にしているのかしら?」

その勿体付ける言い草に、少し苛つくが、デミウルゴスは それも察しているが敢えて流す様に、言葉を続けた。

 

「…では、死者とは?」

そんなの、分かりきった事じゃないの。

死者とは文字通り、死んだ…者の…事??!

 

「ま、まさか…そんな!?」

「ま、正しく盲点でした。」

デミウルゴスの言葉に、1つの答え…今まで、考えもしなかった、或いは無意識に避けていた、まさかの答えが導き出される。

 

「気付きましたか?

そう、アインズ様、そして まろん殿も、元々は生者…即ち()()()()()()()()()()()のですよ!」

な、何ですってーーーーっ!!!!

アインズ様…ついでに まろん殿も、元は、人間?

確かに、言われてみれば…アインズ様や まろん殿の種族を鑑みれば、それは当然な事だった。

そして だとしたら、あの御方達の人間に対する情も、理解が出来る。

いえ、それ以前にアインズ様は偉大且つ慈悲深き御方。

その御方からすれば人間や異形種等は、所詮 塵芥な違いに過ぎない。

見るべきは『敵か否か』。

だからこそアインズ様や まろん殿は、敵で無くば、例え味方で無くとも威圧する事は無かったのですね。

 

≫≫≫

「さて、と…」

アインズ様はアンデッド。

まろん殿の謎掛け…それが正解かは まだ はっきりしていないが、一応の答えが出た後、次に私達は今後の事…近く此処に訪れるであろう、人間の事をメインに話を進めた。

 

「…まろん殿やマサト殿も、そうなのでしょう。

あの方々は、()を重んじる御方なのですよ。

竜王女との会談でも、『必要以上に敵は作りたくない』と言われていましたよね?

しかし、それは裏を返せば、『必要最小限の敵は作る』と同意なのですよ。」

「スレイン法国…そして、この先の展開次第でリ・エスティーゼ王国ですか。」

「スレイン法国は、完全に敵認定よ。

あの国は純粋な人間以外…特に異形種、その中でもアンデッドは絶対に認めないらしいから、仮に此方に その気が無くても、向こうから勝手に敵対してくれるわ。」

しかも それ以前に、あの開拓村の行為が…殺戮その物で無く、それを他国の仕業と見せようとした事が、アインズ様、そして まろん殿からすれば不快だったみたいだから。

そして王国。

今回は『国』としてで無く、1貴族の個人的な接触となるみたいだけど…

 

「その貴族当人が このナザリックに足を運ぶか遣いの者で済ませるかは判りませんが、その時 その者の伺い方次第で、王国に対する我々のスタンスが決まりますが…」

「セバス殿やシャドウデーモン達の調べによる評判からして、荒れ事必至でしょうな。」

「そうですね。()()も、その様になるだろうと言っていました。

さあ、喜劇(ファルス)の始まりです!」

喜劇(ファルス)…ね。

ふふ…今回の観客達は、何て幸運なのかしら。

アインズ様が直々に主演を務める、盛大なエンターテインメントを目にする事が出来るのだから。

 

 

◆アルベドside・了◆

 

▼▼▼

 

◆とあるモブside◆

…だる。

遺跡の調査なんて、兵士の仕事じゃないだろ?

冒険者にでも やらせりゃ良いんだよ。

 

「どうも噂じゃ、その冒険者が誰も受けなかったらしい。」

それで俺達の出番かよ?

主様に言われる儘に、30人の私兵が、最近 新たに発見されたっていう墓に向かってる訳だが…

 

「調査とは名ばかり、墓泥棒だよな。」

それな!

団長が言うには今回の遺跡の事、ウチの主様は城…王様達には伝えてないらしい。

つまりは盗った お宝、全部獲りの1人占めか?

…当然 俺等にも、分け前貰えるだろうね?

 

「無い無い。()()は決められた報酬以外は、絶対に払わない。」

ん。知ってる。…だとしたら、決められた仕事以外は押し付けないで欲しいんだがね、あのケチ主様。

 

「…あれ、か?」

そんな風に話している中、先頭を進んでいた団長が、彼方の方に聳える、それらしい遺跡を見付けた。

此処までは大したモンスターも出てないで、殆んど消耗していない。

後は あの墓を調べて、お宝持って帰って終わりだ。

そも、俺は今回は非番だったんだ。

戻ったら きっちりと休ませて貰うからな。

 

「あれだけ巨大な墓だ。

アンデッドが わんさかかも知れないな。」

ふらぐ…って言ったか?

そんな発言は止めろ!

俺は安全に帰りたいんだよ!

んで、彼女とイチャつきたいんだよ!

 

≫≫≫

「ようこそ侵入者諸君。

私は このナザリック地下大墳墓の主、アインズ・ウール・ゴウン。

アインズ…と、呼んでくれて結構。

キミ達を客人として、歓迎しよう。」

で、で、で、出たぁーーーーーっ!!?

 




  
アルベド、デミえもん、パンドラ…
作者の脳味噌レベルで、このナザリック3大叡智の会話は無謀過ぎた…orz
 
次回『喜劇(ファルス)②』
乞う御期待!
 


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喜劇(ファルス)

 


「ようこそ侵入者諸君。

私は このナザリック地下大墳墓の主、アインズ・ウール・ゴウン。

アインズ…と、呼んでくれて結構。

キミ達を客人として、歓迎しよう。」

 

◆とあるモブ兵士side◆

で、で、で、出たぁーーーーーっ?!

件の遺跡…巨大な墓?に、俺達全員が その敷地に足を踏み入れた瞬間、出入口に雷撃魔法による柵?の様な物が張り巡らされ、脱出不能、閉じ込められる形となってしまった。

…同時に現れたのが、黒ローブの骸骨(スケルトン)

見るからに魔法詠唱者(マジック・キャスター)風だが、死者の大魔法使い(エルダー・リッチ)とは全く違う!

明らかに それよりも格上な、超絶にヤバいヤツだ!

 

「「「ヒッ!!?」」」

アレを見てビビってるのは、俺だけじゃない。

いや、アレを見てビビってないヤツなんて、此の場には誰1人として居ない!

 

「お、お前が、この墓の主…だと?」

そんな中、俺達の仕切り役の団長が、身体ブルブル膝ガクガクしながらも、剣を構えながら目の前のアンデッドに問い掛ける。

 

「如何にも。…と、言うか、その剣を降ろしたまえ。

キミ達は、私の敵なのか?

私は先程、キミ達を客人として歓迎すると言ったが、そうでは無く…

敵ならば敵として、相応の歓迎をする事になる。」

 

ス…

 

「「「「「!!????」」」」」

あのアインズ…だったか?…が、そう言いながら静かに右手を前に翳すと、次の瞬間、俺達の周りに大量のアンデッドが音も無く現れた!

武装した骸骨兵。

単なる骸骨(スケルトン)じゃない。

淡い光を放つ金色の武具は、魔法の装備。

そんなのを身に着けている、見るからに上級のモンスターだ。

そして その後方には やはり見た事も無い、漆黒の鎧に大剣、大盾を持った、巨大なアンデッドの騎士が数体。

只でさえ出口(にげみち)を塞がれている中で、絶対に勝てないと分かる化物集団に囲まれている。

あー、オワタ。\(^o^)/

 

 

◆とあるモブ兵士side・了◆

 

≫≫≫

 

◆モモンガside◆

「ま、待ってくr…さい!

我々は決して、貴方の敵では無い!」

 

カラン…

 

侵入者のリーダーらしき男が、手にした剣を捨て、両掌を此方に向けて、敵意が無いのをアピール。

 

「ほう?…それでは問おう。

キミ達は この、ナザリック地下大墳墓に、何用で訪れたのかな?」

「そ…それは…」

俺の質問に、必死に頭の中で言葉を選んでいるな。

尤も此方は、貴様の主たる貴族より、この墳墓に眠る財宝全てを持ち帰る様に言われているのは既に承知だけどな。

知っているのか? 墓泥棒の末路は その墓の主による呪いでの死が、定番なのだぞ?

 

「わ、我々は この地に、新たに発見された遺跡…あ、アインズ…殿、ナザリック地下大墳墓と申されたか?

この墳墓の調査に赴いたのd…す!」

「む…『新たに』…だと?」

良し! その言葉を待っていた!

コレでデミウルゴス企画(プロデュース)の、茶番劇が本格的に始まりだ。

主演は俺。

キミ達は観客であると同時に、道化の役だ。

 

「ほう?これは また、異な事を言うな。

このナザリックは遥か昔より、この魔導国の地に、存在していたのだが?」

「ま、魔導…国?」

「そう、アインズ・ウール・ゴウン魔導国。

そして私こそが この城…ナザリック地下大墳墓の主にして魔導国の王、アインズ・ウール・ゴウン、その人である!」

 

バサッ!

 

………………………………。

ローブの裾を翻し、両手を広げてのオーバーアクションな決めポーズ、恥ずかしー!

台本読んでた時は そこまで感じなかったけど、実際にやってみると、結構クるぞ!?

絶対にコレ、マサトさんと まろんサンは腹を抱えて『www~!』とばかりに悶絶してる!

ジルやドラウも、必死に笑いを堪えながら肩を揺らしているに違いない!

 

 

◆モモンガside・了◆

 

▼▼▼

 

◆まろんside◆

「デミウルゴス。」

「はい?」

「お前の血は、何色だ?」

「蒼色に御座います、まろん殿。」

「…デミウルゴス。」

「…はい?」

「(`∀´ )b ナイスだ!」

「恐縮に御座います、まろん殿。」

デミウルゴス、お前は俺を、嗤い死なす心算か?(誉めてる)

思いっきりポーズ決めてるモモンガさんを見て、腹筋が崩壊寸前だ。

 

「「…www!?」」

ドラちゃんとジルクニフ君も、大爆笑を必死に我慢している様子。

 

「あははははははは!!」

そんな中、容赦無く笑っているのが約1名。

現在、ナザリックのニンジャ系のシモベ数体にカメラを持たせ、モモンガさんと侵入者の やり取りを中継。

その茶番劇と言うか喜劇笑劇を、その為にナザリックに招待したマサトにドラちゃん、ジルクニフ君達…当然、VIPには御付きや護衛同行…と一緒にライヴで観ているのだが、デミウルゴス考案の演出が非道過ぎるw(誉めてる:2回目)

今頃モモンガさん、絶対に恥ずかしさで死にそうになってるだろうな~?

直ぐに精神安定するだろうけど。

 

「素敵…♡」

「…で、ありんす♡」

「格好良い~♪」

「そ、そうだね、お姉ちゃん。」

「素晴ラシイ。」

「Glänzend!」

そして守護者の皆さんは、平常だ。

 

『ま、魔導国だと? そんなのは、聞いた事も無い!

此処は、リ・エスティーゼ王国の領地なのだが?』

『む?リ・エスティーゼ王国…だと?

申し訳無いが、私も その様な国、聞いた事も無いが?』

『な…?』

侵入者に話すモモンガさん。

実際は その通りなのだが、ナザリックが いきなり この場に現れた様に言う侵入者に対して、このギルド拠点が如何にも昔から在ったかの様に語る。

その様は、無理矢理に"白を黒"と押し通すかなブラック上司。

(ぺーぺー)だったモモンガさん、大出世www

 

「これは…酷いな…w」

「あぁ、全くだw」

お前等、全然そう思ってないだろ?

笑いを堪えられない皇帝と竜女王に内心で突っ込み。

 

「…………………………。」

そして此処には、来賓(ゲスト)が もう1人。

(ドラゴン)をイメージさせる装飾の、白い全身鎧(フルプレート)

やはりプレイヤーという存在を知る、ドラちゃんが連れてきた人物?だ。

 

「………………。」

その人物が、無言で映像(スクリーン)を注視している。

俺やマサトに対してもだが、モモンガさんという人格(キャラ)を見極めるかの如く、だ。

 

『ふむ? 些か眠りが、永過ぎたか?』

一方、画面の向こう側では、何かに気付いた…そんな()()を見せるモモンガさん。

その自然体、練習の成果が出てるよ(笑)。

 

「…さて、今のアインズ様の御言葉で、1人でも察する事が出来るか…ですが…」

それを見て、デミウルゴスが眼鏡を光らせクイクイ…よく眼鏡キャラが悪い事を企んでいる時の仕種を見せる。

この『眼鏡キラーン!』は、キャラ製作時、ウルベルトが課金しての仕込み(エフェクト)だそうだ。

今回のデミウルゴスの脚本(シナリオ)

とりあえずプレイヤー云々は話さないとして、六大や八欲の時代より遥か昔から、ナザリック…延いては魔導国は存在していたと捏造(でっちあげ)

ついでにカッツェ平野に埋もれている遺跡も、自分達の時代の物と設定(おおうそ)

モモンガさん(アインズ・ウール・ゴウン)は不死者の王として、この地を治めていた。

そして より強大な力を得る為に、一時的な眠りに着いた。

その間に、後から人間が上書きするかの様に魔導国の地に王国を築き上げ…からの『おはようございます』が、今回の喜劇(ファルス)の大まかな粗筋だ。

 

≫≫≫

『…永きに渡り、放置していた私達にも、当然 落ち度は有る。

だから、魔導国だった領地全てを還せとは言わない。…が、このナザリック周辺の地は、私達の物だと認めて欲しい。

私達の望みは1つ、静かに時を過ごしたい…それだけなのだよ。』

モモンガさんと侵入者達は、嗤い顔の黒仮面を着したプレアデス()人が用意した即席の茶席で、話し合いが始まっている。

 

『あ…ィンズ殿、其方の言い分は理解した。

しかし、それは私達が直ぐに「はい、解りました」と言える問題で無いのも、解って欲しい。』

あの侵入者側の代表は、既にモモンガさんやアンデッド軍団のレベルは理解出来ているか、少なくとも戦闘は回避したいみたいだ。

 

『そうだろう。それは私も、理解しているさ。

それ故にキミ達は、無事に主の元に帰還して全てを報告。

それを介して、その後に居るであろう国王に判断を仰いで貰えたら、それで良いさ。』

『…そう言って貰えると、我々も助かる。』

プレアデスが注いだ紅茶を飲みながら、リーダーっぽい男が話す。

30人相手に給仕するプレアデス、お疲れだな。

 

「まろん様は紅茶の お代わりは、大丈夫ですか?」

「ああ、ユリたん♡ よろしく頼むよ♡」

「はい♡」

「え~と、ユリ? 済まないが私には、ブラックコーヒーお願い出来るかな?」

「私も それ、お願いね。」

「以下同文でありんす。」

「…てゆうか、まろん以外の全員分じゃな。」

「畏まりました。」

 

≫≫≫

『それでは、良い返事を期待している。

…帰り道、我が配下を護衛に着けなくて、大丈夫かな?』

『い、いや、それには及ばない。』

その後の話し合いも、ナザリック側の『自分達は静かに平和に過ごしたい』のスタンス推しで進められ、お開きに。

 

『それでは、キミ達の主殿にも、手土産を用意しないとな。…セバス。』

『は…アインズ様。』

モモンガさんの呼び出しで、セバス登場。

その両手には、大きな鞄を持っており、

 

カパ…

 

『『『はぁあっ??!』』』

それを開けて出てきた中身に、驚愕する侵入者の皆さん。

鞄の中にはオリハルコンにミスリル、アダマンタイトの鋳塊(インゴット)が、隙間無く詰められていたのだ。

 

『友好関係を望む、私なりの誠意だが…まだ量が不足だろうか?』

『い、いやいやいや! コレ程の物を…!

アインズ殿。この品、確かに我が主に、そして国王に届けると約束させて貰う!

そして後日、次は我々で無く城就きの者となるであろうが、互いに善いであろう返事をする為に再び この地に訪れる事を、誓おう!』

大興奮(ハイテンション)なリーダーが、モモンガさんに力強く応える。

 

≫≫≫

「はぁ~…疲れましたよ。」

「モモンガさん、乙♡」

「乙www」

「お疲れ様です、アインズ様。」

「まろんサン マサトさん、笑うの我慢していませんか?」

「「していない。」」

「いや、支配者然な、見事な立ち振舞いだったぞ?」

「うむ。その辺りは、流石は ぷれいやーじゃな?」

そして彼等を見送って少しした後、モモンガさんも此方の上映会場だった客室に顔を見せ、 おちょくり 労いの言葉を掛けたり。

 

「あれ? あの鎧のヒト…は…?」

「ぅむ…ヤツなら先に、帰ったわ…」

そして客の1人であるドラゴン鎧の不在に気付き、それを尋ねると、ドラちゃんが少しバツが悪そうに受け答え。

 

「「「「「(怒)(怒)(怒)(怒)…!」」」」」

因みに守護者の皆さんは、モモンガさんに挨拶の1つもせずに帰った事で、凄く(おこ)

それを察したモモンガさんが、柔んわりとフォローしたり。

   

「とりあえずは、直ぐに世界を滅ぼそうとする輩とは、認識しなかった様だぞ?」

「…だと、良いですがね。

この先、予測される展開も伝えたんですよね?」

「うむ。()()については管轄の外らしいから、敢えて口を出さぬと言っていたわ。」

自称『世界の守護者』様からは、今回は その様に見られたらしい。

 

「全く…何様なのでしょうか?

あの者、此方が用意した御茶や茶請けにも一切、口にせず…!」

「それ以前、我々に素顔を見せないなんて、礼に欠けりにも程が有り過ぎるでありんす!」

「え?」

「お前達、気付いてなかったのか?」

「「「え?」」」

「「「はい?」」」

 

≫≫≫

「さてと、第2幕は、どうなりますか…」

「展開次第ではジルクニフ皇帝。協力をお願いますよ?」

「ああ。それは元より、互いに頼り、利用し合う事になっていた筈。

違いますかな?デミウルゴス殿。」

「「あ、あの…?」」

その後も色々と話していると、今回、ジルクニフ君の護衛役の騎士2人が、申し訳無さそうに俺達に声を掛けてきた。

イケメンな若い兄ちゃんと、片目を髪で隠した美人さんだ。

何を言いたいかは、大体 分かるけど。

 

「ん~!んんん~っ?!!」

しかし妖怪爺(それ)の拘束を解くのは、帝国に戻ってからにして下さい。

 

「ジル。悪いがフールーダ殿は、今後ナザリック出禁な。」

「いや、マジに爺が申し訳無い。」

「ん!?んっんんん~~っ??!」

 

 




 
【補足】
①ドラウやジルクニフは、冒険者モモンやマカロンの正体も、既に承知。
 
「まさか、少し前に闘技場を賑わせた男が、ぷれいやーだったとはな…」
「他言は無用な。」
それを踏まえての、上映会でした。
 
②ドラウの御付きには、宰相さんが居ましたが、今回はドラちゃんが我儘言わなかったので出番(セリフ)が有りませんでした。
 
次回『フラグ(仮)』
乞う御期待!
  


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喜劇(ファルス)

 
(●()●)「Wie geplant!」
 


◆ジルクニフside◆

いきなり『面白い物が観られる』と半ば強制的に連れ去られたが、 いきなり転移で私室に現れるのは、止めろくれないか? いやいや、喜劇(ファルス)とは よくも言った物だ。

確かに良い見世物だった。

あのアインズの何か言う度のオーバーアクションは、笑うのを堪えるのに大変だったぞ?

当人は苦笑しながら「勘弁してくれ」で済むだろうが、シモベ達は そうは往かないだろうからな。

あの若作り婆も、きっと同じ心境だっただろう。

あれ程の殺気は、初めてだった。

まろんとマサト…

アインズの友人の ぷれいやーが間に居なかったらと思うと、ぞっとする。

只でさえ爺が、また やらかしてくれたし。

そして、アインズという存在を知った後の王国の対応が如何なるか、それも見物だな。

ランポッサ…お前は、どう動く?

 

「さて、王国と言えば…ロウネ?」

「はい。王国からは、未だ…」

王国と言えば、アインズから聞かされた、開拓村の襲撃の件。

傍目には帝国騎士の仕業とされているが、ガゼフ・ストロノーフを通じて実はスレイン法国の所業と知っている筈。

それ故に、敢えて何も触れずの方針か?

また ()()()()に、話を振ってみるか?

アレは勝手に、色々と話してくれるからな。

そして法国。

彼方には『法国兵が帝国の騎士に擬装し、王国領の村で略奪行為を働いた…そう言う噂を聞いたのだが? 法国は王国に対して、帝国は蛮虐の民という印象でも与えたいのか?』…な旨の書状を送り付けたのだが、コレにも何の返答も無し。 

 

私を舐めているのか?

 

せめて、その内容を否定する文書を、届けるだろう?

この場合の沈黙は、肯定と捉えるぞ?

陽光聖典(ニグン・グリッド・ルーイン)が出向いていた等の、具体的な内容を記した手紙を、もう1度送ってやろうか?

 

 

◆ジルクニフside・了◆

 

▼▼▼

 

◆デミウルゴスside◆

先日、ナザリックに訪れた墓泥棒(未遂)との やり取り。

先の為の伏線とは云え、それ其の物は茶番劇に過ぎず。

それ故に彼等の相手は、初めはアインズ様に変化したパンドラズ・アクターを起用する予定だったのですが…まさか、アインズ様御自らが進んで協力を名乗り出てくださるとは、改めて感謝以外の何物でも有りません。

そして侵入者達はアインズ様の偉大さを直に感じ ひれ伏したか、盗掘行為等をする事も無く、無事に自分達の主の元に帰還した様ですね。

その際 彼等の影には、シャドウデーモンを潜らせていたので、その先も全て お見通しです。

アインズ様に言われたが儘、己が主である貴族に土産と共に、アインズ様の偉大さ強大さ素晴らしさを伝えた…迄は良いですが、その貴族の男が、私の見込み通りの愚物でした。

ええ。結果的に、自身より また上位の貴族を通じて国のトップである王なる者にナザリックの存在を知らしめました。

此処までは計画通り。

…でしたが、その王が愚かな貴族に誑かされたか唆されたで、ナザリックへの挙兵を決定したのです。

土産として渡した(この世界では)レア素材の鋳塊を見て、ナザリックには まだまだ財宝が残っている…それを我が物にしたいという、俗欲に囚われた訳ですね。

…尤も此方も、それを見越して用意した土産。

正に計画通りなのですが、こうも簡単に釣れるとは…もしや彼等が私の及ばぬ策でも持ち合わせているかと、逆に疑ってしまいます。

少しは もっと慎重に、悩み迷いからの決断をして貰いたかったですね。

ナザリックの戦力も僅か一端に過ぎませんが、教えられたのでしょう?

仮にオールドガーダーやデスナイトが最高戦力だとしても、其れ等を只の人間如きが対応出来ると思ったのですか?

欲の前に文字通りに目が眩み、それすら判断出来なくなりましたか?

それとも やはり、単にアンデッド…異形の存在は認めない故の行動ですか?

 

『あの墳墓、まだまだ宝が残っている筈ですぞ!

あの様な場所に眠らせた儘なんて、とんでもない!』

 

『強力なモンスターと云え、此方が兵の数を揃えれば、如何様にも対応出来るでしょう。』

 

『アンデッドの巣窟を、放置する訳にも往くまい。』

 

『国王、御決断を!』

 

『………………………………。』

 

 

…その、全てですよね?

アナタ達の会話は、全て筒抜けですよ?

何れにしても、短絡過ぎます。

バハルスの皇帝もリ・エスティーゼの王は無能と吐き捨てていましたが、本当に事実の様です。

欲望に塗れる…それは然程、罪では有りません。

しかしナザリックに、アインズ様に矛を向ける…それは絶対に赦されざる罪です。

アインズ様まろん殿が偶々に例外だっただけで、人間の多くは弱く汚く醜い存在だと、改めて認識せざるを得ません。

やはり例外であろう()()も あの様な者が父親とは、同情してやるべきでしょうか?

『家族がバカで、申し訳ありません』と、本気で謝っていましたし。

当然、オ・モ・テ・ナ・シ…の準備は万端に整えていますよ。

…尚、現在 先日の兵の一団が一足先、此方に…すぐ側まで近付いている様ですね。

ええ、先頭の者が、大きな白旗を掲げて。

これは計画、予想の外ですね。

 

≫≫≫

顔を上げ、立ち上がりたまえ!

「「「「「…!???」」」」」

アインズ様の命で、彼等の応対は、私とコキュートスが受け持つ事になりました。

ナザリックの表門を潜り、私達の姿を見た彼等は即座、「此度は申し訳無い!」の台詞と同時の平伏…土下座ですね。

心情は理解出来ますが、今更 謝罪を受ける心算は有りません。

話が進まなさそうなので、()()()()()()()()()、何用かを窺うとしましょう。

…まあ、凡そは、見当が付きますけどね。

 

≫≫≫

アインズ様ノ誠意ヲ、ソノ様ナ応エデ返ストハ、万死ッ!!

「「「「ひぃぇっ?!!」」」」

その後の彼等の説明(いいわけ)

彼等はナザリックの…アインズ様の恐ろしさを直に見た訳ですから、その辺りも含めて、自分達の主の貴族の反応…そして その後の展開の全てを報告。

そして自分達は主に思い止まる様にと進言したが、全く受け入れられなかった…と。

ええ。その辺りはシャドゥデーモンを通じて、全て承知しております。

それを聞いたコキュートスは激怒。

因みに この件を知っていたのは、アインズ様、アルベド、パンドラ、そして私のみ。

初耳だったコキュートスの この反応は、台本・演技等では無く、素…本気の怒りです。

息を荒げ、周囲の温度が一気に冷め、その迫力、怒気・殺気に この来訪者達は恐れ戦きます。

 

「コキュートス、落ち着きたまえ。」

「シカシ、デミウルゴス!」

そんなコキュートスを宥める私。

 

「良いのですよ。

アインズ様は この成り行きも、可能性の1つとしていました。」

「ナ…ニ…?」

「アナタ達も報告、御苦労様です。

この件はアインズ様に、確と報せます。…アナタ達の事も含めてね。

だから、安心しなさい。

…《獅子の如き心(ライオンズ・ハート)》!」

「「「?!!!!」」」

憤怒するコキュートスを鎮め、恐慌状態な客人も、魔法で無理矢理に冷静にさせた後に退場して頂いた。

アインズ様が言われるには、あの者達は約束通り、自分の上に位置する者に、全てを報せた。

それ故に咎める様な事は何も無い。

…という裁量を示されております。

何より、逃げ出したりせず…それこそ殺される可能性すら有ったのに、今回の件を其れを伝えに来たという責任感と覚悟は…例え そうする事で、自分達だけでも助かろうとした打算を差し引いても、称賛に値するとの事なので。

私としては特に何も感じませんでしたが、アインズ様…死の支配者(オーバーロード)と成られる前の元・生者(ニンゲン)として、何か琴線に触れたのやもしれませんね。

アインズ様は私達を、自分を凌駕する完璧な知恵者と讃えて下さりますが、とんでもない!

主の心根を理解、擦る事も出来ぬ、至らぬ不忠な未熟者に御座います。

いえ、勿論、精進する心算では有りますが。

…兎に角その様な訳なので、彼等への それ以上の追及は無しとします。

えぇ…()()は、ね。

 

「…しかし、」

予想通りとは云え、ある意味、儘なりませんね。

王国として、ナザリックの存在…自治を認めてさえいれば、全てが終わっていたのですが。

予想と云うか予定通り、喜劇(ファルス)第2幕の始まりです。

ジルクニフ皇帝にも、()()()()をしないといけませんね。

 

 

◆デミウルゴスside・了◆

 

▼▼▼

 

◆ジルクニフside◆

「やはり…そうなったか…」

『うむ。そういう訳だ、ジル。』

「分かっている、そういう約束だ。

その代わり、改めてだが…期待しているぞ?アインズ?」

『ふ…そういう約束だからな。』

アインズから連絡が届いた。

一番最初の邂逅の時に渡された、掌サイズの表面にガラスの様な加工が為された薄い板状のマジックアイテム。

この『すまほ』なる連絡系アイテムでアインズから聞かされたのは、王国がナザリックに進軍の準備をしているという内容だった。

ん、知ってた。

あの王国の馬鹿貴族に、あの様なレアな金属を見せたりしたら、その様な展開になるのは明らかだ。

そも、あの眼鏡の悪魔殿は それを見越して、あれだけの品を土産として持たせたのだろ?

王国貴族は殆んどが馬鹿ばかりだからな。

一部の常識派では、ストッパーの意味を成さないだろう。

王族も然り。

国王は決断力皆無…特に冷徹な判断は お人好しなのか優柔不断なのか或いは臆病なのか、決して下す事が出来ない無能。

第1王子は脳筋(バカ)

まともなのは第3王女くら…いーや、アレも決して まともじゃない!

…話が反れた。

問題は、王国が その進軍とやらを何時の時期に行うかだが…

帝国(ウチ)との合戦も、目前に控えているのだぞ?

 

 

◆ジルクニフside・了◆

 

≫≫≫

 

▼▼▼

「な…?!ば、馬鹿な…!?」

「ひぃぃえっ?!」

 

…その貴族2人。

1人は目の前の光景に唖然とし、また1人は、恐怖に顔を引き攣された。

 

≪≪≪

時は少しだけ、巻き戻る。

彼等がリ・エスティーゼ国王から借り受けた兵士、総勢3000。

其を率いてナザリック地下大墳墓に押し寄せた時、彼等を出迎えたのは黒いローブを纏った骸骨だった。

 

死者の大魔法使い(エルダー・リッチ)か?」

「黒いローブのアンデッド。報告通りだな!」

彼等は分かっていない。

自分達の目の前に現れたのは、決して死者の大魔法使い(エルダー・リッチ)等では無い。

彼等は知らない。

不死属(アンデッド)の最高種の1つ、死の支配者(オーバーロード)という存在を。

 

「ふん!部下から聞いているぞ、死者の大魔法使い(エルダー・リッチ)

アンデッドの分際で魔導王…『王』等と、大層な名乗りをしているそうじゃないか!」

「我々はリ・エスティーゼ国王、ランポッサⅢ世より命を受け、この地に潜む醜悪なアンデッド…即ち貴様を討伐に来た!

ついでに この遺跡に眠る、莫大な財宝も回収してやろう。」

そして、彼等は知らない。

自身の無知を。

 

「……………………………。」

その貴族達に対して、黒ローブのアンデッドは無言で右掌を彼等の前に翳す。

 

ボォォォオッ!!

 

「「「「「ぎゃぁああ~っ!!?」」」」」

「「?!」」

その次の瞬間、地面から巨大な爆炎の壁が噴き上がり、貴族の後ろに控えていた兵士達全てを呑み込んだ。

 

「「あ…な…なな…??」」

結果、死屍累々。

このアンデッドが無詠唱での魔法1つで、この2人を除く…この貴族に率いられていた兵士達が皆、命を落としてしまったのだ。

 

≫≫≫

「な…?!ば、馬鹿な…!?」

「ひぃぃえっ?!」

そして、時は再び現在(いま)に。

3000人の兵士を葬ったアンデッドに対し、それが一瞬の出来事だった故か、混乱、或いは恐怖により、平静を保てない貴族2人。

 

「お前達は私を殺すとか言ったな?

陳腐な台詞だが…他者を殺して良いのは、自分も他者に殺される覚悟が有る者だけだ。

貴様達には それが有るのか?…私には、有る。」 

 

カッ…!

 

「「ひえっ!?」」

眼窩に瞳の如く紅い光が灯り、そんな生き残った侵入者2人を睨むかの様に見据えるアンデッド。

それを見た2人は更なる恐怖に狩られ、

「な、貴様!儂より前に出るか!?」

「言ってる場合じゃないですぞ!」

先に斃れた兵の屍を踏みつけながら、我先と逃げ出した。

  

ガシィッ…

 

「「???!」」

しかし それは赦さぬと何者かが この貴族達の足を掴む。

 

「う…うわあぉあゎあっ?!」

「ひ…ひぃぃえぇぬぇっ!?」

それは、死んだ筈の兵達。

這いつくばった儘に、上げた顔。

その業火で焼けただれた顔は表情が読めないが、それが逆に怨念を感じさせている。

 

ムク…ムクムク…

 

そんな兵達が無言で ゆっくりと、次々に起き上がり、そして()()は絶対に逃がさぬとばかりに、貴族の周りを取り囲んだ。

 

ズん…!

 

そして その屍の兵士(ゾンビ)の1体が手にしていた槍で、貴族の1人の胸元を正面から貫く。

 

ドスン…

 

「ひ…ぇぇええ~っ?!」

その悲鳴は刺された者で無く、残された もう1人の方の物。

 

「あ…ぁぁ…」

断末魔も無く、呆けた表情の儘に倒れた自分の上役を見て、細身小柄、一番最初に私兵をナザリックに向けた貴族が またも戦慄く。

 

「ま、待って下さい!魔導王…様!」

剣先矛先を向けるゾンビ兵に囲まれ、鎧の中、又の間を汚物で汚す矮小な男が目の前のアンデッドに話し掛ける。

 

「わ、私は この侵攻は必死に止めたのです!

しかし、この男や国王が…」

「下らぬ。止めたのは、貴様の配下の兵。

寧ろ貴様が、一番最初に我がナザリックに攻め入る様に進言したのでは、なかったか?」

「…!」

そして必死に取り繕うと(でまかせ)を並べるが、それは無駄な足掻きだった。

 

「ふん。安心しろ。貴様は まだ殺さぬよ。

その代わり、お前の言う国王とやらに伝えて貰おう。

この度の愚行、我がアインズ・ウール・ゴウン魔導国は、リ・エスティーゼ王国を正式に敵と認定した!

この報いは必ずや、受けて貰う…とな。」

「そ、そんな…」

喜劇(ファルス)は最終幕に入る。

しかし それも、悲劇惨劇へと繋がる序章に過ぎない。

 

「目障りだ!もう、貴様と この場で話す事は何1つ無い!

Geh weg schnell(早々に消え去れぃ)!!

 




 
( ゚▽゚)つ【辞書】
 
次回『開戦(予定)』
乞う御期待!
 


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喜劇(ファルス)/終幕 ~更なる悪手~

 
前回の後半部、少し修正しています。
 


▼▼▼

 

パ・ン・ド・ラ~あっ!!

 

ドンッ!!

 

 

◆パンドラズ・アクターside◆ 

ぁ…どん…

ナザリックに押し寄せた賊の大軍を相手取り、予定通りに主謀の貴族1人以外は皆殺し。

その貴族も、恐怖と絶望と後悔を手土産にして帰って頂きました。

そして その直後、アインズ様から《伝言(メッセージ)》で呼び出しが。

凄く急がれている様でしたので何事かと思い、アインズ様の私室へ入ったら その直後、いきなりの壁どん。

 

「パンドラ~…お前、さっきの()()なぁ…」

え? 私、何かやっちゃいましたか?

デミウルゴス殿のシナリオ通りに命じられた役割、正しく役者(アクター)の名に違わぬ程にPrfekt(完璧)…に、果たした心算でしたが?

Warum(何故に)

 

独語(そ・れ)・だ・よっ!!」

はい?

 

「良~ぃかぁ? お前にはドイツ語は止めろって言ってたよなぁ?

しかし それは お前の個性(キャラ)だから、完全に止められないのは理解している、仕方無い。

でもな?

私に変化している時にドイツ語喋るのだけは、マジに止めろくれるか?

…確かに。ドイツ語は私の個性。

アインズ様の姿をしている時に それを話すという事は、変化しているのが相手にバレてしまう可能性が有りましたね。

失礼しました。これは反省です。

 

「…少し違うのだが、まぁ良い。

大体、デミウルゴスの書いた台本には、あんなの無かったのだろ?」

「アレはアドリブに御座います!(~ん)アインズ様!」

「いや!お前も役者(アクター)なら、台本には忠実に動けよ!?」

「nein! 単に台本通りに動き話すだけなら、それは誰でも出来る事、3流の役者です。

台本以上に魅せてこそ、真の役者(アクター)!」

 

≫≫≫

「…と、いう訳です、デミウルゴス殿。」

…あの後、またアインズ様より散々と説教されてしまいました。

 

「成る程…ねぇ。私個人としては、アレは見事な演技(アドリブ)だと思ったのだが、そう言われるとアインズ様の仰有られる通りだね。

やはり私達は未だ、主の意図を汲めない不忠の未熟者だよ。」

そして今はBARにて反省会という名目で、デミウルゴス殿とグラスを交わしながら語っている訳ですが、本当にダメダメです。

途中、セバス殿も会話に加わりましたが、話せば話す程に、至らぬ点が出てくる出てくる。

 

「アドリブそれ自体が駄目だという事は無いから、ねぇ?

セバス、君は どう思う?」

「そうですね。

私も所謂、『いいぞ、もっとやれ!』派ですね。

私めが知る処では、台本には その者が話す台詞の部分は大きな余白に『〇〇さん、よろしく お願いします(笑)』の一言だけ書き添えられていた。

つまりは脚本家も演じ手に丸投げ…尤も、それだけの力量と信頼が有ればこその話ですがね。

…その様な人物も居たそうです。」

まるで他人事では無いかの様に、具体的に話すセバス殿。

その後も時折、少しばかり主題が脱線しながらも、反省会は続くのでした。

 

 

◆パンドラside・了◆

 

▼▼▼

 

◆ジルクニフside◆

王国から…ランポッサⅢ世から手紙が届いた。

内容は先に控えた戦争の延期要求。

そして、王国領に突如出現した遺跡、それに潜む邪悪なモンスターの討伐の協力要請だ。

 

「…下らぬ。」

既にアインズから、王国兵が攻めてきた話は聞いている。

邪悪なモンスター?

笑わせる。私が知っている異界の ぷれいやーは、見た目こそ確かに人外だが、下手な人間より余程 人間らしいぞ? 従属神殿は確かに怖いが

邪悪なのは、お前達の物欲だろう?

 

「一応 返事は、書かねばな。」

これは眼鏡の悪魔殿…デミウルゴス氏に頼まれていた話でもある。

 

 

◆ジルクニフside・了◆

 

 

 

▼▼▼

 

~~~~

 

結論から先に述べるが、我が帝国は、戦争の延期も貴国の言う処の邪悪なモンスター討伐協力も、応じる心算は無い。

既にバハルス帝国は、アインズ・ウール・ゴウン魔導国と同盟関係を結んでおり、魔導国と王国間で何が有ったかも聞き及んでいる。

 

 

 …中略…

 

 

アインズ・ウール・ゴウン魔導国は、遥か昔…そう、バハルス帝国とリ・エステーゼ王国が まだ1つの国だった時代よりも以前に、確かに存在していた。

よって、魔導王アインズ・ウール・ゴウン氏が統治していた領地の一部、現在の王国領…魔導王の居城であるナザリック地下大墳墓が位置するトブの大森林周辺地域の返還要請は正当な主張であると、バハルス帝国は この皇帝、ジルクニフ・ルーン・ファーロード・エル=ニクスの名の元に、宣言させて頂く物とする。

…と言っても、既に遅い話。

貴国は最初に魔導国に対して、件の地の割譲を認めるべきだった。

貴国の無礼な振る舞いに、魔導王の憤りが尋常で無いのは想像に難しくは無いだろう。

それ故か?

次の戦には、魔導王は自国兵を我が帝国側にて参戦させると言っている事を、伝えておく。

 

 

バハルス帝国 皇帝

ジルクニフ・ルーン・ファーロード・エル=ニクス

 

~~~~

 

 

▼▼▼

「何と言う事だ…」

「あの若僧、アンデッドと手を結んだと言うのか?」

「臆したか?!

人間(ヒト)の誇りは無いのか?」

リ・エステーゼ王城。

ジルクニフからの返信に、王国貴族達は憤慨していた。

無論、自分達の要求とは、真反対の応えに対してだ。

 

「くっ…どうして この様な…」

最初にナザリック攻めを推した貴族の考え。

多少、強力なモンスターでも、数を揃えれば如何様にも出来る。

それで得た財で、国力も増大させ、対帝国戦の戦力を増大させる。

そうした計画が、一気に崩れた形である。

だから次は、帝国にナザリックを世界の敵として、一時休戦での共闘を呼び掛けるも、一蹴されてしまう。

何もかもが、予定通りに進まず。

特に、帝国が魔導国と既に繋がっていたのは想定外過ぎた。

 

「元はと言えば国王が、件の化け物の巣窟に、出兵を決めたから…では?」

「何を言うか! 貴公も それを奨めていたではないか!?」

「己の暴走を棚に上げ、それを止められなかったのが悪いと言うのか?!」

「だ、黙れ!そもそもだな…」

そして次は、その責任の擦り漬け合い。

 

「皆さん、少しは落ち着いたら どうですかな?」

「「「「…!!」」」」

そんな罵り合いを止める一声。

金髪を短く整えた、大柄な男だ。

 

「バルブロ王子…」

王国第1王子、バルブロ・アンドレアン・イエルド・ライル・ヴァイセルフ。

 

「考えてみろ。先ずは男爵の報告。

その全てが真実だという証拠が、何処にも無い。」

「ぉ…王子?!」

その発言に、今回の話し合いの発端となった男爵と呼ばれた男が、信じられない様な表情を浮かべた。

 

「アンデッド1体の魔法1つで、3000の兵が一瞬で焼き殺された。

そんな魔法が先ず、信じられない。

帝国最高魔法詠唱者とらやでも、その様な芸当、怪しい物では?」

「う、確かに…」

「言われてみれば…」

「チエネイコ男爵?」

「ま、待って下さい!私は嘘等…!」

バルブロの言葉に、その場の全員が、ナザリック侵攻の唯一の生き残りに視線を向ける。

 

「確かに義父殿は残念な事となったが、それを貴公に責めるのは、少し違うだろう。

しかし、自身の責任を和らげる為の、誇張な報告は如何な物かな?」

「そ…その様な事は…」

バルブロは この報告者の事を全く信じておらず。

少なくとも、魔導王なるアンデッド1人が兵を全滅させたという話は信じていない。

精々、モンスターの集団が、当初の予想を少しだけ越えて強かったとしか見ていない。

それ故の敗走としか考えていなかった。

それはバルブロだけで無く、その場の全員が その様に思っていた。

 

「3000の兵を以ても攻略出来なかったのは、確かに想定外だっただろう。

次は それ以上の兵を使えば良いだけの話。

その魔導王は次の戦では帝国側に就く?

ならば、その時に此方も数を揃えれば良いだけの話。

今年は徴兵の数を、倍に増やしましょう。

戦いは数ですよ!」

「待てバルブロ! その様な事をしたら、民が…」

「父上。戦に勝ち、帝国から不足した分の民を引き抜けば良いのです。

その勝利の為の徴兵。

王国の為ならば、喜んで志願するのが王国の民では?

仮に逆らう者が居たとしても、その場で数人斬り棄てれば、残りは黙って従うでしょう。」

「バルブロ!!」

その さながら暴君な発言に、思わず声を荒げる国王。

 

「甘いですな、国王(ちちうえ)

勝利の為の対価なら、民の命等、安い物では?」

しかし第1王子は、それを聞き入れる様子は無く。

 

「そうですな。あの墳墓に近い開拓村から、特に重点的に人を集めますか?

そのアンデッドが欲している土地の人間。

アンデッドが自らの民としようとしている人間を、兵として かき集める…我ながら面白い話だ!

もしや化け物が意味不明な情でも出し、此方に手心を加えるやも知れんぞ!」

「おお、それは良い考えですな、王子。

ならば兵となる男だけで無く、若い女も慰安婦として連れて行くのは どうでしょう?」

「はっはっは! 採用だ!」

「お待ち下さい王子!

それは横暴が過ぎますぞ!

それに、魔導王なる者、アインズ・ウール・ゴウンと名乗ったのでしょう!

もしや その者はカルn

「黙れガゼフ! 如何に国王の護衛と云えど、平民風情が この場で口を挟む権利等無いぞ!」

「…()!」

 

 

 

≫≫≫ 

 

 

「…全部、聞いているぞ?」

同刻、王城から遥か遠い地。

その地に在る墳墓の地下深い一室。

其処に置かれてある鏡に映る、この王族貴族の一連の会話・やり取りを見ていた…その話の中心となっていた人物が、静かに呟いた。

 

▼▼▼

 

◆モモンガside◆

不愉快だな。

経緯は どう在れ、カルネ村は私と まろんサンが態々出向き、助けた村だ。

その村に手を出すだと?

それは、私達の行動を無駄にするという風に解釈して良いのだな?

…ふん、まあ良い。

既に この国は、敵認定している。

戦に関係の無い民ならば兎も角、それに携わる者なら事前に始末しても構わんだろう。

 

 

◆モモンガside・了◆

 

≫≫≫

 

▼▼▼

数日後。

バルブロは1000の王国兵を率いて、カルネ村に向かっていた。

先の話し合いの中で出た、追加の徴兵を獲る為である。

王族たる自身が出向く事が、件のアンデッド(アインズ・ウール・ゴウン)にとっての嫌がらせとなるとの思考からだ。

因みに徴兵追加の際に出た、慰安婦云々の件はランポッサから認められず、厳重に止められている。

しかしバルブロが それに素直に応じるかは、別の話。

目に止まる女が居れば、自分が懇意にしている娼館にでも秘密裏に受け渡す心算でいた。

…しかし、カルネ村まで約10㌔の地点で、この一団は急襲を受ける。

 

「な…」

「何だ、一体?!」

バルブロ、そして同行していたチエネイコの両隣の兵士の首が、突如 撥ね跳んだのだ。

 

「はいは~い♪ 此処(こっ)から先は、通行止めっスよ~?♪」

「な…」

「何なのだ、お前…達は?!」

そして現れたのは、赤髪褐色肌のメイド服の女。

更には その彼女に付き従う、武装したゴブリンの集団。

1000の軍勢には数で劣るが、それを逃がさぬかの様に、完全包囲していた。

 

「女! 貴様一体、何者だ!?」

平静を取り戻したバルブロが、メイドに問い掛ける。

 

「私スか? 私はアインズ様の遣いで来た、ルプスレギナ・ベータっスよ。」

それに答えるメイド…ルプスレギナ。

 

「お前達はアインズ様に『殺れ』と言われたから、殺りに来たっス。」

「「はぁあっ?!」」

 

≫≫≫

「ば…馬鹿な…そんな事…」

「だ、だから私は言ったじゃないですか、バルブロ王子!

あの墳墓の奴等、正しく化け物だと!」 

…その後は一方的な蹂躙劇だった。

 

「あちゃ~…

分かってはいたっスけど、本当に弱過ぎるっスよ。」

ルプスレギナが率いるゴブリンの戦闘力は、バルブロの兵とは比べ物とならず…特に大鎌を肩に担いだゴブリンの それは、圧倒し過ぎていた。

瞬く間、1000の兵士は1000の屍となる。

意図的に残されたのか、その場に生きているのは、バルブロとチエネイコだけとなっていた。

その戦力差に初めて、愕然とするバルブロに、自分の報告が正しかったと詰め寄るチエネイコ。

しかし今は、そんな主張をしている場合ではない。 

尤も彼等も、この場での襲撃は予想外、完全なイレギュラーだったろうが。

 

「…至高の御方が1人、ぷにっと萌え様は、こう言われていたっス。

 

【戦いは、始まる前に終わっている】 

 

…と。」

しかし それは、王国側の都合。

先に侵攻を受けた側からすれば知った話では無く、寧ろ報復…何時何時(いつなんどき)攻撃を受ける準備を怠っていた方に問題が有ると言うだろう。

 

「ねぇ、今、どんな気持ちっスか?

『俺様THUEEEE!EREEEE!』なプライドを美少女に潰されて、嬲り殺される…

今、どんな気持ちっスか?www」

「ひっ?!」

そして煽るかの様な口調で、ルプスレギナはバルブロに近付き、

 

バギィッ!

 

「ぐわっ?!」

「きゃはははははは!

ウケるっス!鼻血ぶーっス!!」

明るい笑みを浮かべての巨大聖杖のフルスイングを、バルブロの顔面に直撃させる。

しかし一応は手加減しているのか、頭部が爆散する事は無く。

死ぬる程の痛みに、夥しく流血する潰された鼻を押さえながら、悶え苦しむ程度で済んでいた。

ルプスレギナは それを見て、涙を流しながらの大爆笑。

 

…今更 言うのもアレっスけど、命乞いなんて通用しないっスよ~?♪

「「………っ?!!」」

そして その笑みが豹変。

普段から場を明るく取り持つ元気系キャラの面影は消え、冷酷残酷な微笑と変わるのだった。 

 




 
ま「何か俺の出番、少なくね?」
モ「今は魔導国と王国との問題ですからね~?
既にヴァーリ・トゥードの拠点(ホーム)に戻ってる まろんサンは外様ですから…」
 
 
次回『カッツエ平野にて(予定)』
乞う御期待! 感想よろしくです。
 


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冒険者組合にて

 
まろん「久し振り!」
  


◆とあるモブ兵士(元)side◆

知り合いの城勤めの兵士から聞いた話だが、バルブロ王子が行方不明になっているらしい。

ついでに俺の元・主様(笑)の 知恵無い子 チエネイコも、だそうだ。

何でも、例の遺跡から近い開拓村から、徴兵の追加をしようと大勢の兵士を率いて出た矢先…って話だ。

大勢って…無理矢理に連れ去る気満々だったろ。

…ってか、あ~ぁ…こりゃ、死んでるな。

あの骸骨様か、その部下さんに殺られちまってるな。

…でも、下手すりゃ俺も、その行方不明の仲間入りしてた可能性が大だった訳で。

俺達が あれだけ『あの遺跡ヤヴェエ』って言ったにも拘わらず、あのバカ主(元)、再度、その遺跡に今度は自分の親分貴族と一緒に攻め込むとか言いやがったからな。

あの金塊見て、それで満足せずに親分共々『もっと欲しい』『もっと寄越せ』になったんですね。解ります。

…で、俺や その他、あの遺跡の恐ろしさを知っている連中は その侵攻を辞退すると言ったら あのバカ、躊躇無く俺達を即クビにしやがった。

ま、結果的に正解だった訳だけどな。

屋敷の執事長さんは良識人で、あのバカには内緒で退職金を払ってくれたし。

そして今は次の働き口を探す繋ぎで、冒険者組合に通っているが、やっぱり戦士系職のソロじゃ、まともな仕事は紹介して貰えねぇ。

一応、あのバカに仕える前は銀級(シルバー)の階級を持ってたんだけどなぁ?

流石に掲示板のド真ん中にデカデカと貼ってある、()()を受ける気には ならないしな。

あ~ぁ、誰か俺とパーティーを組んでくれる、神官や野伏って居ませんか?

魔法詠唱者(マジック・キャスター)

そりゃ、出来たら その方が有り難いが、流石に高望みが過ぎるだろ?

何処かに仲間募集している魔法詠唱者(マジック・キャスター)って居ないかなぁ?

それが巨乳な美少女ちゃんなら尚良し!

 

 

ざわ…ざわざわざわざわ…

 

 

ん? 何だか周りが ざわつき始めた?

誰か有名人でも…って!

も、もしかして あれって噂のアダマンタイト、ブラック&ゴールドか?!

うっゎ…強者オーラ、マジ パねぇ!

ついでに あのポニテちゃん、少し性格キツそうだけど、マジ美人!

あの3人、依頼が貼ってある掲示板には目もくれず、2階に上がって行った。

組合長に何か用事か?

 

 

◆とあるモブ兵士(元)side・了◆

 

▼▼▼

 

◆モモンガside◆

「組合長。申し訳無いが、私達は冒険者。

決して傭兵なんかじゃない。

敵国兵士やモンスターが街に攻めてきたとか言うなら兎も角、戦場に出向くのは遠慮願いたい。」

「そ、そうか。ん、知ってたよ。

モモン君なら、そう言うと思っていた。

…他の皆は、どうなんだ?」

アインザック組合長から呼び出しを受け、何事かと思えば、王国から冒険者にも次の帝国との戦争に参加させて欲しいと、王国各都市の冒険者組合に要請が有ったそうだ。

いよいよ、人材不足な様子だな。

先ず、俺達が それなりな理由を出して断ると、一緒に呼ばれていた他の冒険者チームも揃って首を横に振る。

どうやら報酬が、割りに合わないらしい。

…と言うか その戦争、俺は帝国(あっち)側で参加するんですけどね!

 

「そうか。いや、そうなるのは私も分かっていたさ。

諸君、態々呼び出して すまなかったね。

一応、確認する必要は有ったのだよ。」

申し訳無さそうに頭を下げる組合長。

オシゴト、タイヘンダネー。

 

≫≫≫

「エ・ランテルからは、誰も出ないですか。」

「他の街の冒険者は どうなんだろうな?」

「"朱"とか"蒼"とか…ですか?」

組合長室を解散した後は下のフロアで、他の冒険者と その続きを話す。

 

「正直な話、金額が残念過ぎます。」

何処かの愚か者は、欲に走って命を落としたが、此方の冒険者は欲張った故に命を拾ったという感じだ。

この冒険者の戦争参加の件は、仕事依頼の掲示板にも募集の紙を貼ってあるが、誰も それを受ける様子は無く。

先程 組合長に呼ばれたのは、金級(ゴールド)以上のチームだったりした。

 

「正直な話、金額が残念過ぎます。」

…2回言わなくても良いぞ?

 

 

◆モモンガside・了◆

 

▼▼▼

 

◆まろんside◆ 

バハルス帝国の帝都アーウィンタール。

現在、その皇城にて、会議(ミーティング)が行われている。

主な出席者は帝都からはジルクニフ君と その護衛の四騎士に妖怪爺(フールーダ)

それから軍部の責任者や貴族の皆さん。

魔導国…モモンガさんは正式にナザリックをアインズ・ウール・ゴウン魔導国と名乗る事にしたらしい…からはモモンガさんとアルベドが。

モモンガさんは既に、この場の者には異形(プレイヤー)だと知らされているが、それでも精神衛生上の配慮か、ローブの胸元を締めて腕にはガントレット、そして嫉妬マスクを着けている。

因みにアルベドは、角も翼も隠していない。

これは骨と美女の差か?

俺は竜王国からの…今回の戦争、帝国側の立ち合い役として招かれた形だ。

竜王国も人材不足なのは分かるが、何で俺なんだ?

ドラちゃん…正気か?

大体、立ち合いって何?

モモンガさん(プレイヤー)が介入しているから、その辺の関係か?

…だとしても、それなら当日現場に顔を出せば、それで済む気がするが。

この会議に参加しなければならない、その意味が解らない。

 

≫≫≫

「…そんな訳だから、初手は魔導王殿に…

かなり派手で それなりの破壊力殺傷力が有り、且つ此方側の兵が どん引かない様な魔法をお願いしたいのだが?」

「フッ…随分と我儘な注文だな、ジルクニフ皇帝?」

「ん?無いのか?有るのだろう?」

「はっはっはっ! そんな風に言われたら、やらぬ訳には往かないじゃないか!」

そして話し合いの中、はじめの一撃はモモンガさんの大技に決まったり。

ジルクニフ君の冗談めいた煽りに、モモンガさんもノリノリ。

開幕オーバーキル確定。

これは王国の奴等に同情するぜ。

 

「………………………。」

そしてアルベド、落ち着け。

気持ちは分からんでもないが、お前も察してるだろう?

モモンガさんが今、この やり取りを純粋に楽しんでいるのは。

 

≫≫≫

「♪♪♪~♡」

アルベド上機嫌。

理由は会議も終わり、その場は お開きになった時に此方に話し掛けてきた、1人の貴族の一言だ。

参加していた帝国の偉い人達も、緊張を解いた表情で軽く雑談をしていたり。

そんな中、魔導王(モモンガさん)にも「お疲れ様でしたな」と声を掛けてきた この男。

気安く(フレンドリーに)話してきた男と、それに気軽に応えるモモンガさん。

会議中も そうだったが、アルベドは最初は「ムシケラ如きがアインズ様に気安く…!」な感じで殺気全開となるが、

「…処で、此方の お美しいレディは、魔導王殿の妃様ですかな?」

「そうです。」

「ま゙…ろんざんん?!!」

そのタイミングでの この一言。

即座に俺が、モモンガさんが何か言う前に肯定するとアルベドさん、

「【妃(きさき)】…王の妻の事。

それ即ち、魔導王アインズ様の妻…

そう!『正妻』と書いて、つ・ま!!

くっふーーーーっ♡

…な、具合だ。

さっきまでのイライラ全吹っ飛び、腰くねくねの翼パタパタ。

ついでに髪の触角?でハートの形、作ってる。

見知らぬモブ貴族さん、ナイス!

 

≫≫≫

「ま、ままま、まろんサン!

アナタは何を、言っちゃってくれやがってるんですか!??」

「あー、もう壁ドンは良いから?

そーゆーのはアルベドに やってやりなって。

体くねらせれて悦ぶぜ?」

「しゃあらっぷ!」

そしてナザリックに戻った後、その事でモモンガさんに言い詰められているが、大体"王"を名乗るなら、傍に控える妃は必須だろう?

それなら今のナザリックの面々じゃ、"正室"ならばアルベド一択でしょうが。

シャルティアには悪いけど?

言い機会じゃないか。

彼女の設定、『モモンガと相思相愛』と書き換えた責任、取っちゃいなさいよ?

 

「う…そ、それは…」

「彼女の生乳(おっぱい)、吸った揉んだしたんでしょ?」

吸っては いません!

触っただけです!

それに、転移した時の1回だけですよ!?

それだって、ペロロンチーノさんみたいな変な考えは持ってなくて、本当にゲームか現実(リアル)かを確認…(以下略)」

必死に弁明するが、それは それで酷いと言うか、アルベドが可哀想だぞ。

ヘタレか? ンフィーレアか?

 

「"人化"系のアイテムなら、いっぱい持ってるでしょうが。

さっさと決めちゃいなさいよ、このDT。

大丈夫。アルベドなら土下座なんてしなくても、迎えてくれますよ。

何なら俺が彼女、焚き付けましょうか?」

「絶対に止めろ下さいよね!」

 

 

◆まろんside・了◆

 

▼▼▼

 

◆モモンガside◆

翌日。

冒険者組合の方に、ブラック&ゴールド宛てに手紙が届いたそうだ。

手紙は2通。

1通は、まろんサン…マカロン個人宛て。

 

「またかよ…

あのオッサンも いい加減、諦めが悪い。」

差出人は、バハルス帝国の興行主。

以前、帝国の闘技場でのマカロンの闘いを見て、それから幾度となく、出場の呼び掛けをしているのだ。

しかし まろんサンは、

(マカロン)は闘士じゃないからな。」

という、『冒険者は傭兵じゃないから戦争には出ない』と同じ様な理由で、ずっと断り続けていた。

1回位、出てやったら どうですか?

そして、もう1通。

この差出人が、結構な大物だった。

王都を拠点に活動している、アダマンタイト級冒険者チーム【蒼の薔薇】からだったのだ。

…その内容は、『近日中に会って話をしたい』との事。

しかも その手紙の締めは

 

 

この手紙が届く頃には、私達は仕事でエ・ランテルを訪れていると思います。

宜しければ、その時にでも…

 

 

…と綴られていた。

 

「最初から、その心算な様ですね。

チィッ…私達を呼び寄せるで無く、蛞蝓が自ら此方に来る気構えだけは、評価してやらなくもないですが…」

ナーベラルが毒づいているが、一体 俺達に何の話だ?

単に同じアダマンタイト級という事で、冒険者として少し話したい…とは違う気がするが。

 

カラン…

 

「お~ぅ、邪魔するぜぇ?」

 

ざわ…ざわざわざわざわ…!

 

扉の開く音と野太い声。

同時に場に、普段から俺達が組合に顔を出した時に起こる様な ざわめきが。

見れば、5人?…5人の女性?…女性だな、が。

格好からして冒険者なのは分かるが、エ・ランテルの者じゃないな。

 

「……………。」

キョロキョロと周りを見渡し、俺達の方向で その視線を止めると、揃って此方の方に向かってきた。

ん。コレは、アレだ。

噂をすれば…ってヤツだ。

 

「…失礼? アダマンタイト級冒険者チーム…ブラック&ゴールドの方々ですね?」

そして その先頭、リーダーっぽい女が、話し掛けてきた。

 

「…その通りだが。

一応、尋ねさせて貰おう。貴女方は?」

「…手紙は読んでもらえたみたいですね。

初めまして。私達は冒険者チーム蒼の薔薇。

そして私はリーダーのラキュース・アルベイン・デイル・アインドラです。」

 




 
【次回予告】
 
◆ナーベラルside◆
アインズ様と まろん義兄様を訪ねてきた、冒険者チーム【蒼の薔薇】。
ふん…確かに其処等のミジンコとは違う感じだが…
一体、何の用事なのだ?
 
次回『虻と蝿x2と藪蚊と甲虫(♀)』
期待しなさぃ…って、えぇい!? 何なのだ お前は? あ、足に しがみつくな!
 


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蒼の薔薇

 
戦の前の、色々ですね。
 


 

「初めまして。私達は冒険者チーム蒼の薔薇。

そして私はリーダーのラキュース・アルベイン・デイル・アインドラです。」

 

◆まろんside◆

「お姉様と呼んでも、良いですか?♡」

「黙れ団子虫。何故 私が、お前の様な虫ケラに姉呼ばわりされないとならないのだ?」

多分、モモン(モモンガさん)の黒の鎧で俺達をブラック&ゴールドだと当たりを付け、話し掛けてきたアダマンタイト級冒険者チーム【蒼の薔薇】。

 

「む、虫ケラ…ハァハァ(//▽//)」

「ヤバい。ティアの歪んだ性癖が、更に別のヤバい方向へと歪んでしまった。」

その内の1人…双子の片割れが、ナーベラルに惚けた表情で言い寄ったり、もう一方が呆れていたり。

それに対しての『殺っても善いですか?善いですよね?』なアイコンタクトに、『ダメ!絶対!』で返したり。

 

「失礼ですが、マカロンさんとナーベさんの髪からして、貴方達は…」

「ああ。そう思ってくれて、構いませんよ?」

そんな2人は放置で…ナーベラル、俺達を恨めしそうに見るな…蒼の薔薇と会話する、俺とモモンガさん。

リーダーのラキュースという娘が、俺やナーベラルを見て、言葉を濁しながら『南方の出身か?』…みたいに聞いてきたので、此方も肯定も否定もしない、濁した言葉で応えたり。

 

「……………………。」

「…何か?」

「いや、何でもない。」

…というか、さっきからコイツ等、やたらと俺達の出身やら経歴やらを質問してくる。

もしかしてエ・ランテルでの仕事とは、誰からの依頼かは分からんが、俺達(ブラック&ゴールド)の身辺調査で、現在進行形じゃないだろうな?

 

「…余りに過ぎた、他者の詮索は感心出来ないな。」

「こ、これは、失礼しました!…スイマセン。」

だが それはモモンガさんも気付いていたのか、この話は此迄と、釘を刺す様に話を打ち切った。

…どうせ、別方面から探りを入れてくるだろうが。

尤も それは、無駄な事だけどな。

何しろ冒険者としての俺達は、組合(ギルド)に冒険者登録する以前は存在しなかったのだから。

 

「…それでは、話は変えさせて貰いますが、」

そう言って、次に話題としたのは、王国帝国の戦争についてだった。

先ずは自分達は…俺達と似たような理由で、戦争には参加する予定は無いと話す。

特にリーダーの女は実家から、『貴族子女が戦場に立つなんて とんでもない!』と、止められているそうだ。

 

「…情報元は明かせないが、今回バハルス帝国は、外からの協力者を得ている…強大な力を持ったな。」

次に仮面の魔法詠唱者(マジック・キャスター)が、思わせ振りに話すが、知ってるよ。

それ、アインズ・ウール・ゴウン魔導国って言うんだろ?

 

「帝国は この戦争にて、エ・ランテル周辺の割譲を求めています。

この儘では、エ・ランテルは帝国領に…」

ラキュースが続けるが、それも知ってる。

でも、アンタ達は知らないだろ?

更には帝国は其の地を、魔導国に譲渡しようとしている事を。

 

「…それで、だ。

お前さん達は、国が変わる、領主が変わるのに、抵抗が無いのかい?」

「「別に。」」

「「「「!!!?」」」」

既に俺達も冒険者として、戦争には関わる気が無い事は知っているのだろう、大柄な女…女だよな?…の問い掛けに、事無気に答えると、揃って驚く反応を見せる、蒼の薔薇の面々。

 

「…意外って顔をしているな?

分かってるんだろ? 俺達は元々、王国民じゃないんだ。

住んでいる地が他国に、領主が他国の者に変わろうが、それ程の思い入れなんて無い。」

「し、しかし、お前よぉ…」

「それに、だ。」

その理由に対して、何か物申すかの大柄女に対して、言葉を続ける。

 

「今の王国の腐れクソ貴族より、帝国からの新しい領主様が治める方が、この都市も より善い方向に進むとは思わないか?

寧ろ王国全土を帝国が乗っ取りクソな貴族を粛清。

鮮血帝が認めた者に領地運営を任せた方が、国民も今より幸せになr

「それ以上は言わないで!」

「…それだ。自分達に都合の悪い話になると、そうやって無理に話を遮ろうとする処を、俺は貴族はクソだと言っているんだ。

分かってるのか、アインドラ・サン?」

 

 

◆まろんside・了◆

 

≫≫≫

 

◆モモンガside◆

まろんサン、相変わらず貴族とか公務員とか、民からの税で収入を得ている者には厳しい。

 

「マジ、王国貴族なんて一部を除いて滅んでくれた方が世の為 人の為だろう?

アンタ等も知ってるだろう?

ちょっと目に止まった女を無理矢理に手籠にして飽きたらポイ棄てするわ、裏で犯罪組織と繋がり、麻薬や奴隷等の違法売買を横行させてるわ、その他その他…」

さて、こうなったら まろんサンは簡単には黙ってくれないぞ?

 

「し、しかし それは一部の…」

「その一部とやらが、どれだけ国を腐敗させている?

アンタは一部一部と言ってるが…存在を否定しないのは大した物だが、その一部とやらが居る時点で、民からすればアウト、なんだよ。

しかも他からの注意が効かない程な、上の地位の者なのだろう?

それに仮にクズ共が全体の1/10程度だとしても、その1人1人が一騎当千なクズっぷり見せてくれるから、結果クズ100倍だ。」

「「「「………………………。」」」」

相手が次に出す台詞を予め想定していたかの、言葉のカウンターを即連打で返す まろんサン。

 

「大体、アインドラ家も()()()()じゃないのか?」

「それは違う! ウチは そんな事は、していないわ!」

「…だとしても、クソの横暴を止めるには至っていない、無能貴族だ。」

「…っ!」

「お前、少し言い過ぎじゃねえか?」

完全に発言を封じられる蒼の薔薇のリーダー。

その内に『次の お前の台詞は…』とか言い出しかねない まろんサンに、大女が口を挟んできた。

 

「だとしたら具体的、どの様に言えば良いのだ?

そんなに『貴族様EREEEE!』を謳いたいなら、その権利を主張する前、それに伴う義務を先に果たすべきだろう?

あ、リーダーが貴族様だから察しか。

つまり蒼の薔薇は、貴族王族の犬って訳だ。」

しかし まろんサンの連鎖する指摘は止まらない。

…既に戦争の話は、何処かに消えた感じだ。

 

「き、貴様ァッ!?」

「止めなさいイビルアイ!」

「お前、何考えてるんだよ?!」

「チィッ!」

そして余程その発言に腹を拗えかねたか、今度は仮面の女…イビルアイという名か…が殺気、そして魔力を全開しようとする処を、ラキュースと大女が慌てて制止。

 

「「「「???!」」」」

さっきから何気に俺達の やり取りをチラ見していた連中も、これには吃驚。

この女、仲間が止めかなかったら、この場で それなりな魔法を本気で撃っていたぞ?

しかし それは、

「ふっ…何も言い返せないとなると、今度は力ずく(ムリヤリ)で黙らせるか?」

「…マカロン、お前も その位にしておけ。」

ますます まろんサンの掌だ。

流石に終わりが見えなくなったので、俺も止めに入るが。

 

「ラキュース…サン。

この場は もう、解散としませんか?

これ以上は互いの為に、ならないでしょう。」

 

ざわざわざわざわ…

 

周りも かなり、注目しているしな。

アダマンタイト級同士が意見の食い違いによる衝突…そんな話が出回るなんて、双方デメリットしか無い。

 

「そ…そうね。」

俺の申し立てに、ラキュースも場の空気を読んだのか、それを承諾。

 

「さあティア、アナタも何時までも…」

「鬼ボス、今まで世話になった。

私はブラック&ゴールドに移籍する。

お姉様と ずっと一緒♡」

「「「はぁぁぁあ??!」」」

そして両者退散の流れに落ち着いたと思っていたら、オチが残っていた。

 

「いいから いい加減に離れろォッ!!」

 

≫≫≫

「おい、仮面。」

「そんな呼び方は止めろ!

私の名は、イビルアイだ!」

そして改めて この場を去ろうとした時、まろんサンがイビルアイを呼び止める。

 

「それは失礼したな。

それじゃイビルアイ。沸点が低そうなアンタに1つ、助言をしておく。」

「な…何だ?」

「アンタは もっと、牛乳を沢山 飲むべk

「貴ィッ様ァッ! それは一体、どーゆー意味だ? 胸か? 私の胸が小さいとでも、そう言いたいのか? もし そうだとしても胸が今、何の関係が有るとゆーんだ?!」

あ、違う違う。

まろんサンは多分、カルシウムが不足しているって言いたいんだ。

そして まろんサン。この世界は多分、カルシウムとイライラの因果は知られてないと思いますよ?

大体、カルシウムとか そういうのが、この世間に知られているかが怪しい。

 

ダダダダダダッ…

 

「な、何の騒ぎだい、一体?」

そしてアインザック組合長が、慌てた様子で2階から降りてきた。

イビルアイの魔力…は感じなかったとしても、尋常じゃない張り詰めた空気…何らかの異変は感じたのだろう。

後、イビルアイの大音量な怒鳴り声。

 

「も、モモン君? また、君達かい?」

え?ちょ…あながち間違ってませんけど?!

というか、『また』って何ですか?

 

「あ~ぁ、こりゃあ また、OHANASHIかな?」

アナタも何を、他人事の様に言ってるんですか?!

 

 

◆モモンガside・了◆

 

≫≫≫

 

◆まろんside◆

「やれやれだな。」

「わ、私は、悪くないぞ!?」

その後、結局 俺達は蒼の薔薇共々に、組合長から盛大にOHANASHIされた。

特に俺と仮面の魔法幼女(イビルアイ)が。

解せん。

 

「お、お前! 私に対して、何か失礼な事を、思ってないか?」

意外に鋭いな、この女!(笑)

 

「次に会う時は、もっと穏便な形で会いたいですね。」

「ああ、全くだ。」

さて、本当に改めて、蒼の薔薇と別れようとした時。

 

「嗚呼、お姉様、行ってしまわれるのですね?シクシクシク…」

「だから その呼び方は止めろ!」

双子の片割れとナーベラルが、また百合百合な やり取りも終わった時だ。

 

「ああ、最後に ちょっと良いかい?」

今度はガガーラン…だったか?

大柄女が俺達を呼び止めた。

 

「…何か?」

「モモン…アンタって もしかして、

ガガーラン! アンタ何、失礼な事 聞こうとしてるのよ!??

そしてモモンガさんに何か聞こうとした処を、ラキュースが必死で妨害してきた。

ど…『ど』って、何を言おうとした?

やっぱり()()か?()()なのか?

もしかしなくても この女、綺麗な身体の少年を汚し、一生モノのトラウマ与えてるヤツか?!

 

「…………………………………。」

そしてモモンガさん。

モモンガさんも察してしまったのか、絶対に鎧の下、緑の光を連続で発して、無理矢理に精神安定させてるな。

…って、だから この前に言ったじゃないか、このDT!

さっさと人化して、アルベドに(お願い)しろって!

 




【次回予告(ネタバレ)
◆ユリside◆
今は まろん様♡とのデート♡で、またバハルス帝国の闘技場(コロシアム)に来ています。
まろん様が また、闘技場舞台に立つ…という訳では無く、
「ポップコーン美味い。」
「そうですね♡」
今回は普通に観戦です。
 
わー、わー…!
 
そして大観衆が歓声を飛ばす中、舞台に現れたのは、1体の巨大で強力な(現地基準)獣系モンスター。
それに相対するは、前のデートで知り合った帝国ワーカー、フォーサイト!
 
 
次回『フラグの行方(仮)』
御期待下さい!
そして感想も、よろしくお願いします。
 


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MARON-san,Sit on Your knees.

 
【今回の予習(ネタバレ)
(祝)フォーサイト、死亡ルート回避!
 
▼▼▼
戦の前の色々②です。
 


◆ユリside◆

「全く…何をやっているんですか、まろんサン…」

「スイマセン…ぃゃ、聞いてくれよ、モモンガさん!

アレは俺じゃなくて…」

時刻は深夜。

アインズ様の執務室で、まろん様が正座しています。

事の起こりは、ボクと まろん様でスパリゾート・ナザリックに…混浴なんて当然無いですから、誰も居ない この時間帯に2人で女湯に入ると…

  

「まさか、ライオンが襲ってくるなんて、誰も想像しないだろう?」

「黙れ。このバカっプル。」

「いや~♪(≧∀≦)ゞ」

「誉めてねぇよ!!」

 

…そうなのです。

2人で浴室に入ると、其処に設置してあった彫像(ライオン)が、いきなり襲ってきたのです。

 

…以下、回想。

 

 

≪≪≪

 

誰も居ない浴室。

密林の奥に湧く秘湯をイメージしたかの様な広い浴場に、ボクと まろん様は やって参りました。

既に脱衣場には念の為に、

 

【注意:現在 女湯に殿方が居ます】

 

…と書いた立て札を設置しています。

これで間違い、事故は防げるでしょう…多分。

ナザリックの浴場は、男女が完全に別けられていて、所謂 混浴という物は、有りません。

そう。ボク達…というか まろん様は今、女湯の方に居るのです。

以前、まろん様はアインズ様他男性陣とスパリゾート(男湯)に赴き、

 

「こんな立派な大浴場! 何故に混浴が無いのですか?」

「ギルド全体が垢BANされるからですよ!」

 

…その時に そんな やり取りが、有ったとか無かったとか。

確かに白い匣(ホワイト・ホーム)には、まろん様の私室内に、それなりな広さの浴室(浴槽も2人でも余裕でした♡)。

一応、ギルドメンバーとシモベの皆さんの共用の大浴場(やはり男女は別れています)も有るそうですが、ナザリックの様な凝った作りでは無いみたいですね。

 

「そんな訳だからユリたん♡ 一緒に露天風呂入ろう♡

大丈夫。モモンガさんには、俺から言っておくから。」

…どんな訳かは、敢えて聞きません。

兎に角、そんな訳です。

まろん様と お風呂デートです♡

 

≫≫≫

「………………………………。」

「ん?ユリたん?」

さて、改めて浴場にやってきましたが…

 

「さっきから黙ってるけど、どうかしたのか?」

…いえ、確かに お風呂は裸が普通ですけど!

確かに もう、見慣れていますけど!

それでも!せめて最初は、下にタオル、巻いて貰えますか?

因みに ボクは きちんと、バスタオル巻いています。

 

「いや、()()()()でタオル巻いてた日にゃ、余計に酷い絵になるぜ?」

うぅ…言われてみれば、そうかも知れませんが…って、ぁひゃあっ?!♡

 

『マナー知らずして風呂に入る資格無し!

これは、誅殺である!!』

…と、その時です!

何処からともなく声がしたかと思えば、すぐ傍に置かれてあったライオン像が突然 動き出し、ボク達に襲い掛かってきたのです!…というか、今の声は…

「「るし★ふぁー?」

        様?」

やはり!

まろん様も、今のはナザリック至高の御方41人が1人、るし★ふぁー様の声だと確信した模様。

 

「いや、マナー知らずって、何だよ?」

…背後からボクの おっぱいを両手で鷲掴みにして、お尻にアレを押し当ててる事を言っているのでは?

 

『裁きを受けよ!』

 

ボヮッ!

 

兎に角、戦闘開始。

口から雷光の吐息(ブレス)を吐き出すライオン像。

 

「ちぃ!」

それを避ける まろん様。

その際、まろん様の まろん様が、振り子の様に ぶらぶらと揺れt…って、それをガン見している場合では有りません!

少しだけ、不味いです。

あのライオンの戦闘力(レベル)、恐らくは守護者の皆様やアインズ様まろん様と同等…少しだけ下と云った具合でしょうか?

しかし…此処は お風呂場。

そう、今は決してフル装備…処か、防御面に関しては、全くの無防備状態!

まろん様は正しく丸 出し 腰、ボクも気持ち程度の冷気耐性だけの、『コットンのバスタオル(防御力2)』を身に着けているだけ。

その状態で、守護者級、御方級の敵と戦わないといけない状況なのです!

そして あのライオン、雷光球を飛ばすだけで無く、爪や牙での近接距離からの攻撃も繰り出してきます。

しかし私達も、大人しく殺られる訳にも参りません。

 

「フライング・頭アタック!」

「ライトニング・タイガー・ショット!」

『死ね!リア充!! 天誅!』

頭と頭と雷光が飛び交い、

 

 

「「スラム・ダンク!!」」

 

ドゴォッ!

 

『テン…ッチュ…ゥ…』

そして最後は連繋合体技(ツープラトン)で、何とか このライオン像の破壊に成功したのでした。

しかし この戦闘により、周りはボロボロ。

完全に破壊されてしまい、もう入浴処では無くなってしまいました。

 

「何でありんすか? 今の轟音は?」

「何なの? 何が有ったの?」

「…って、ユリ?…と、ま、ろん…さ…?!…ぅ…う~ん…」

 

パタン…

 

「あ、アウラ様?!」

「うほ♡ でけーっ!! 眼福っス!♡」

そして この騒ぎは、皆を呼び寄せるには充分。しかし場所が場所ですから、駆け付けてきたのは女性だけですが…って、アーちゃんん?!

 

「きゃはははは! おチビには まだ少し早いというか、刺激が強過ぎた様でありんすね~?♪」

シャルティア様…貴女は平気なのですね…

 

≫≫≫

「まろんサン、正座。」

「…はい。」

…そして、現在に至ります。

 

「この修理費用は、ヴァーリ・トゥードに請求しますから。ええ、きっちりと。」

「ちょ…待ってくれ、モモンガさん!

そうなると、またマサトに〆られる!」

「はい。それで思いっっっきり、反省して下さい。」

「鬼か!?」

「いえ、死の支配者(オーバーロード)です。」

尚、アインズ様は『まろんサンが全~部悪い』との裁量を見せて下さり、ボクには何の お咎めも有りませんでした。

 

 

◆ユリside・了◆

 

▼▼▼

 

◆ジルクニフside◆

「そうか…また虫が餌に、食い付いたか…

久方振りだな。」

王国との戦争の準備。

それは単に戦地に出向く、騎士達の装備や宿営の事だけでは無い。

その合戦の前後の為の、国内外の仕込みも重要だ。

そうした内務処理をしている中、ある報告が届いた。

 

 

…私が皇帝に即位した際に、無能害悪な貴族や皇族(かぞく)を、次々と排除していった。

そうした中、誰が付けたか、鮮血帝。

ふっ…その程度の悪名で、国が善くなるなら安い物だ。

それに、残念だったな。

その名称、私は それ程に悪くは思っていない…寧ろ、気に入っているぞ?

…話が反れたな。

兎に角、そうして残った有能とされる者から、特に有能と思われる者の何人かに、特別な役割を与えた。

 

~無能を偽り演じろ~

 

…と言っても、本当な無能という訳で無く、不可は無いが可も無くと云った、民からの支持はギリギリ不支持を上回る感じな領地運営を指示していたのだ。

これは本当に、有能者にしか出来ない仕事。

当然、この者の()()は、国が全面的に援助する形で現地の不満を抑えていた。

そして これの成果は、即位から1年足らずで現れた。

私が皇帝とするを善しとせぬ、陰に忍んでいた者達が、『この者ならば言い寄り易し付け入り易し取り込み易し』と、接触を試みてきたのだ。

隠れた不安分子の炙り出しに成功。

其れ等を完全に粛清する事で、このジルクニフの体制を盤石にする事が出来たのだった。

 

 

…それから幾年。

また、似た考えを持ち、件の貴族なら話し易しと近付いてきた者が。

尤も、今回は帝国の者では無い。

王国の…但し、貴族でも無い。

 

「八本指…か。」

それは王国を裏から表から牛耳る、大規模な犯罪組織。

その影響力は帝国にも少からず及び、我が国に麻薬なる不純物を持ち込んだ元凶。

ふん。此度の戦争、王国が惨敗の末、帝国から不利不等な条約を叩き付けられる等々…そんな情報でも掴んだか?

そして それを聞き、もう、王国には魅力…いや、価値を感じなくなったか?

それで次は、我が帝国を新しい餌場(カモ)として選んだと?

ふん…全く そんな噂話、一体 何処の誰が流したんだ?

なぁ、そうは思わないか、アインズ?

何にせよだ、八本指。

つまり貴様達は、自分達の手で この帝国を王国同様、腐敗に充ちた国にしようとしているのだな?

はっはっはっ! 良い度胸だ!

良いだろう! その喧嘩、このジルクニフが買ってやろう!

…但し、私は直接に手は、下さないがな?

 

「ロウネ、デアルーカ侯に伝えろ。

()()()()で、具体的に話をしたい。場所、日時は其方に一任する』と返事を出せとな。」

「はい、畏まりました。」

 

ЯЯЯЯЯЯЯЯЯЯ…

 

そう指示を出した時、机の上に置いていた『すまほ』から着信音が。

その硝子面に表示された名前は…

 

『あ、もしもし、ジルクニフ君?

俺、俺々々々々。』

「…詐欺なら間に合ってるぞ?」

『違うって!www』

 

≫≫≫

「お前も、中々に律儀だな。

態々それを、言ってくるか。」

『俺達は報連相を大事にしてるんだよ。

モモンガさんだって、そうだろう?』

「確かにな。…で、明日の昼過ぎだったか?

構わんよ。城の者には伝えておこう。

ああ、そうだ。それと ついでに今、お前にも話しておこう。

後でアインズにも話す事だが…

 

 

◆ジルクニフside・了◆

 

▼▼▼

 

◆まろんside◆

「どうも、まろん殿。」

「ニンブル君! よ、良かった~!

出迎えてくれたのがニンブル君で!

この前の盾の父っつぁん、全然喋ってくれないから。

何なの、あの人?

……(てんてんてん)』で言葉が通じると思ってるの?『……(てんてんてん)』で。コミュ症?」

「ははは…多分、違うかと。」

今日はユリたんとデートでバハルス帝国に、やって来た。

但し、入国診査が面倒いので、昨日、ジルクニフ君に『城内に転移して良~い?』と確認(おねがい)しての帝国入りだ。

モモンガさん同様、既に(まろん)もプレイヤーとして、城の一部には認知されている。

だから、事前に その時その場所、予め転移門(ゲート)を開く事を伝えてさえいれば、事情を知る者が立ち会ってくれる事になっているのだ。

それで、今回の その役目はジルクニフ君直属の帝国四騎士の1人、苦労人系イケメンで ついでに(多分)DTのニンブル君。

彼に先導される形で城を出て、その際に通行証を貰い、ユリたんと2人で帝都に繰り出すのだった。

 

「あ、帰る時は適当な路地裏に隠れて転移するから、お構い無く。」

「爆死んで下さい。」

 

 

◆まろんside・了◆

 

≫≫≫

 

◆ユリside◆

まろん様と今、帝都の街を歩いています。

何を買う訳で無く、露店を眺めながら、到着したのは闘技場(コロシアム)

 

「よし、万馬券キター!」

対人の一騎打ちや、単騎、或いは数人チームでモンスターとの戦闘が。

レベルは…まあ、それなり、ですか?

そして まろん様は、その全ての試合、配当金(オッズ)が高い方に賭けています。

…5試合目にして、漸く当てたみたいですね。

そんな中、次に登場してきたのは、

 

『ぐぉおお…!』

 

巨大な河馬型のモンスター。

この世界基準の強者と呼ばれる者では、1人で倒すのは難しいレベルですね。

そしてに対して現れたのは、あら? 彼等は?

知っている人ですね。

 

「よーし、殺れ!殺ってしまえ、ヘッケラン!

俺は お前に全賭けしてるんだからな!!」

あらあらあらあら…

  

≫≫≫

「全く…アンタ達、いい加減にしなさいよね…!」

「「仰有る通りに御座います…」」

闘技場(コロシアム)の全ての戦闘が終わった後、私達は それに出ていたヘッケラン達に声を掛けて合流。

今は帝都の酒場兼宿『歌う林檎亭』に来ています。

其処で彼等の祝勝会を上げていたのですが…

彼等も多額なファイトマネーを得ているので、まろん様が彼等に賭けて大儲けしているのは内緒です。

 

ヘッケランがリーダーを務めるワーカーチーム『フォーサイト』。

彼と半妖精(ハーフエルフ)のイミーナさんは面識が有りましたが、他の2人は初対面。

その内の1人、魔法詠唱者(マジック・キャスター)のアルシェさん。

彼女の実家は かなり面倒な事情が有ったらしく(個人の話ですから、詳しくは聞きません)、今は その家から幼い妹2人を引き連れて、自立しているそうです。

さて、そのアルシェさんですが、

うぇ…ほ…ほんどぅにずびばぜむ…

「大丈夫、気になさらずに。」

彼女は実は、今日 初めて お酒を飲んだそうです。

飲んでいたのは、お酒に不慣れな方でも大丈夫そうな、舌触りの優しい果実酒。

…が、

 

「おっ♪ アルシェ、良い飲みっ振りだな?」

「さあさあ、もう一杯。」

「あ、ありがとう…」

その余りに気持良さ気な飲み方に、ヘッケランと まろん様が次々と、彼女のグラスに酒を注いでいき…

 

「んぷぷっ?!…おろおろおろおろ~~…」

 

………………………………。

同じ女子として、具体的には言いませんが…まあ、そういう訳です。

青い顔をした彼女の口から、キラキラの画像処理(エフェクト)が施された()()が、大量に溢れ落ち。

そして今は私が、彼女の背を擦って介抱しているのです。

そして その元凶となった2人は、イミーナさんから説教されています。

ええ、お店の床に正座して。

え? ヘッケランは兎も角、まろん様をフォローしなくて良いのかと?

この場合…ええ、確かに まろん様は お慕い申しております、愛して♡おりますが、やはり此処は、女の子の味方になるべきでしょう!

…因みにアルシェさん、最終的にはフォーサイト4人目の神官の男性の魔法で、無事に快復しました。

 

≫≫≫

…さて、打ち上げも解散。

ボクと まろん様は この儘、この『歌う林檎亭』で お泊まりです♡ 

 




 
①まろん正座ネタ2連発www
 
②【今回の復習(おさらい)
(祝)フォーサイト、死亡ルート回避!
…但し、アルシェは〇ロインルートからは、逃げられない!www
 
 
次回、『戦の前の色々③(予定)』
乞う御期待!感想・評価(高いヤツ)、よろしくです。
 


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八本指幹部の話(仮)

 
戦の前の色々③
 
サブタイが浮かばない…orz
 
 


▼▼▼

 

◆ラキュースside◆

全く…ラナー王女の情報力には、本当に驚かされるわね。

 

 

『帝国貴族が八本指幹部と、王国領で密談をするそうよ?』

 

 

本当に何処から…誰から そんな情報、仕入れてくるのかしら?

しかし、これは色んな意味で、チャンスね。

帝国貴族が八本指と密談。

何を話すかは知らないけど、どうせ碌な事じゃないのは確かよ。

…というか どうせ、犯罪絡みな事でしょ?

王国を蝕む犯罪組織に一打を与えられるだけでなく、帝国の貴族を抑える事が出来たら、それを戦争の出汁に使えるかも知れない。

彼女の前の依頼…

結局、【ブラック&ゴールド】については、大した情報を得る事が出来なかった。

てゆーか、エ・ランテルで冒険者登録する以前の足取りが、全然掴めなかった!

 

・冒険者登録初日に、組合酒場で大乱闘大無双

・トブの大森林の大魔獣"森の賢王"の使役に成功

・エ・ランテル共同墓地の大量アンデッド発生事件の解決

・その騒ぎの黒幕と思しき、王国に隠れ潜んでいた犯罪組織(ズーラーノーン)構成員の捕縛

・凶悪吸血鬼(ヴァンパイア)嗤う金毛(スマイル・ゴールド)を討伐!

 

特に、あの嗤う金毛(スマイル・ゴールド)を倒したっていうのが凄過ぎる。

私達が対峙した時…あの時はイビルアイが居なかったとは云え、追い払うのが精一杯だった。

これ程な実績を叩き出した人物だから、それなりに有名な実力者が素性を隠して、モモン、マカロンを名乗る。

その線も考えて探ってみたけど、それでも該当する者なんて見つからなかったし。

何より、此方が確認出来たのは、彼等が南方出身だけだという事。

でも、南方出身者ってだけで、その南方という地域について、殆んど何の情報も無いのだから、仕方無いでしょ!

…だから、今回、新たにラナー王女が持ってきた情報。

これを有効に活かして結果を出して、汚名挽回してやるわ!

 

「汚名返上…な。」

う、うっさい! 伝われば、それで良いでしょ!?

さあ、日時も分かってるし、現場カチコミの準備をするわよ!

 

 

◆ラキュースside・了◆

 

▼▼▼

 

◆???side◆

バハルス帝国貴族、デアルーカ侯。

噂通りな、()()()な人物の様ね。

まさか あんな少量の麻薬(クスリ)

それを添えた、そのクスリや奴隷に その他諸々、私達の営む()()による経済効果?を手紙で少し説明しただけで、こんなに簡単に返事が貰えるなんて、予想以上にチョロい。

まあ、所詮は貴族なんて、少し甘い餌を見せたらホイホイ釣れる馬鹿ばっかよね。

それは王国帝国、何処でも一緒なんでしょうね。

…次の戦争、実は もう王国は本当にヤバいらしい。

だから さっさと王国には見切りを付け、次は本格的に帝国で活動していくに先駆け、この(まぬけ)の領地に拠点を移す計画。

それなりに お金と時間が掛かるでしょうけど、滅びる国に もう用は無いわ。

次は帝国で、稼がせて貰うわよ!

…滅びの要因に自分達の組織が多いに関わっていたなんて事は、言いっこ無しよん♪

さて、そんな訳で私達も、エ・ランテルに向かう準備をしないと。

不安なのは、少し前に警備部門、そのトップの六腕が揃って行方不明になってる事。

王都にて、八本指(ウチ)に舐めた真似をしたっていう帝国貴族に灸を据えに…って話だったけど、それから先が…なのよね。

まさか、あの戦闘しか取り柄の無い連中が、返り討ちに遇ったとも思えないし、その貴族も、それから直ぐに王国から去ったみたいで、その先は分からないし。

本当、どうなってるのかしら?

かなりな()()になるから、それなりの護衛も欲しいんですけど?

 

「ああ、それなら大丈夫よ。」

そんな風に考えていた処に、問題無しと言ってきたのは同僚の女。

 

「かなりな お金は掛かったけど、最上位…アダマンタイト冒険者が、護衛に就く事になったから。」

「アダマンタイト…って、まさか、あの小娘共じゃないわよね?」

「ははは! 心配しなくても、違うわよ!

雇ったのは"蒼"でも"朱"でも無い…

知ってるでしょ? "黒と金"。

やっぱり冒険者って言っても人間。

裏から接触して、相場の10倍の お金を払うって言ったら二つ返事、簡単に引き受けてくれたわよ~♪」

それって、ブラック&ゴールド!?

あの、私達の拠点の1つを襲い潰してくれた吸血鬼(ヴァンパイア)を倒したっていう、あの?

 

「そう。()()、ブラック&ゴールドよ。」

 

≫≫≫

エ・ランテルに到着。

待ち合わせの高級宿には、これまた豪華な馬車が停まっていた。

もう、例の貴族(きゃく)は到着してるのかしら?

 

「えーと、コックローチさんと、ヒルマさん…だな?」

コッコドールよ!!

理由は解らないけど、何だか無性に腹が立つ間違い方ね!

真っ昼間の往来、大声で自分(犯罪組織幹部)の名を叫ばなかったのを、自分で褒めたいわよ!

私達に声を掛けてきたのは、白金髪に蒼眼の男。

言動はアレだけど、若いし中々にイイ男だわ♡

 

「私達を知っているという事は、貴方が…」

「如何にも。俺が…アナタ達の雇った護衛役だよ。」

私が色んな意味で少し冷静を欠いてるのを察したのか、私の前に出て、ヒルマが話を進めていく。

 

「とりあえずは、此方の馬車に。

説明は その中でしますよ。」

 

≫≫≫

「例の客人は、其方に場所等を決めさせておいて、申し訳無いと言っているそうだ。」

「いえ、良い判断だと思いますわ。」

先程の馬車の中。

この護衛役の男が言うには、向かっているのは とある開拓村。

さっき迄はマジックアイテムでも使っていたのか、金髪蒼眼を、噂通りな黒髪紅眼に変化…いえ、元の姿に戻したの方が正しいのでしょうね。

このマカロン…だったわよね?

コイツも普段の格好で八本指と接触しない辺りは、流石は顔も名前も売れてる、アダマンタイトと言った処かしら。

そして今回の相手の帝国貴族。

成る程。確かに ()()()()、街中よりも辺境のド田舎での方が、此方も何かと都合が良い。

一応は相手が貴族だから…って理由で、流石に王都では厄介な連中に見つかるリスクを考え、中央から少し離れた都市での お話を考えていたのだけどね。

向こうの方から、更に場所の移動を申し出るなんて…八本指幹部の私達を振り回すってのは、少し思う部分も有るけど、ある程度のオツムは持っている様で、逆に信用信頼も出来るわ。

ヒルマに同意よ。

 

 

◆???改め、コッコドールside・了◆

 

≫≫≫

 

◆まろんside◆

さて、今回の護衛な仕事。

本当の依頼主は八本指で無く、説明要るかな?…ジルクニフ君だ。

ジルクニフ君配下の貴族に、商談(非合法)を持ち掛けてきた八本指。

そりゃ自分の国が犯罪組織に…しかも将来的には王国レベル荒らされるとなれば、キレるのも仕方無い。

 

 

 

「確かに他国の犯罪組織を潰す…のは過度な干渉かも知れん。

しかし、未来(さき)を見越せば、必要事案だ。」

 

 

 

もう直ぐ始まる戦争で、王国がフルボッコになれば、奴等の後ろ楯の腐れ貴族共とも、その関係が続くか危うい。

貴族が八本指を見放し、ついでに過去の繋がりが無かったかの様に処理しようとするか、八本指が貴族を見限るか…どちらかなのかは、分からないが。

そう考えての帝国との接触なのだろうが、残念。

表向きの評判で、『コイツなら話に乗ってくれる』と思い、声を掛けた帝国の貴族さん、実はジルクニフ君の忠臣の中でも、特に優秀な1人だった訳だ。

 

≫≫≫

「そろそろ、カルネ村に着く。

…が、先に言っておくが、慌てる必要は無いから。」

「「「「…???」」」」

馬車の窓から、村の塞壁が見えてきた時。

ヒルマとコッコドール、そして八本指からの護衛役?…軽装戦士風な2人が俺の台詞に不思議そうな顔をするが、

「それは、どういう…?」

「着けば、分かる。」

「アナタ、実は悪戯者…いえ、問題児?」

「…フッ。よく言われる…かな?」

否定は しないし、敢えて詳しくは、教えないよ。

 

 

◆まろんside・了◆

 

≫≫≫

 

◆コッコドールside◆

「ひっぇ?!」

まるで砦の様な村の門が開き、其処で私達が最初に見たのは、

「ご、ゴブリン?!」

「何をしているの、護衛役!

早く奴等を蹴散らして、私達を守りなさい!」

武装したゴブリン数匹だった。

亜人が村を襲っている?

直ぐにマカロンに処理するように命令したけど、 

「必要無い。通るぞ?」

「へぃ、マカロンの旦那。

報せは聞いてますぜ。さあ、どうぞ。」

「「はぁ?!」」

しかしコイツ等、マカロンと面識が有るかの様に、軽く会話しながら私達が乗った馬車を村の中に入れる。

 

「慌てる必要は無いって、こういう意味だったのね…」

「ゴブリンと…共存してるの?この村。」

「ああ。重装歩兵団やら聖騎士隊やら魔法部隊やら猟兵隊やら暗殺師団、その他その他。

ついでに鼓笛隊に諸葛亮なゴブリンの大軍団。

それと、オーガも何体か居るぜ。

ついでに駄犬も居るぜ。

「「は…はあぁあっ??!」」

…コイツ! ヒルマの言う通り、相等なヤツね!

私達が驚いたのを見て、本当に楽しそうに肩を揺らして笑っている!

…てゆーか、何なのよ、この村!

それと、ショカツリョーって何?

 

「そういうサプライズは好きじゃないわ。今後は控えて頂戴!」

「失礼。了解した。」

 

≫≫≫

「…この先だよ。」

そして案内されたのは、村の中程の、やや大きな小屋…形容詞が重複相殺してるとか言わないの…の、地下室。

私達が取引相手に選んだのは、かなり用心深い人物の様ね。

地元民の評価は微妙だそうだけど、私達の様な"裏"の関係を持つのに必要最低限な技量は、持ち合わせているみたい。

 

カチャ…

 

「…お待ちしておりました。」

そして階段を降りた先の部屋。

扉の向こう側でメイド1人、が茶の用意をして控えていた。

 

「…(チッ)

え? このメイド今、小さく舌打ちしなかった?

見た目は上玉だけど、目付きが少し悪過ぎない?

  

「ソレデハ ダンナサマヲ、ヨンデマイリマス。」

紅茶を差し出し、そして三文芝居の様な…いえ、それ以下な片言口調で話すメイド。

漸く"客"と対面ね。

ギリギリまで姿を見せようとしないなんて、本当に大した人物だわ。

 

「いや、必要無い。…来るぞ。」

 

ドドドドド…

 

「「????」」

そしてマカロンの台詞と同時、複数人が階段を駆け降りてくる大音が。

 

バタンッ!

 

「蒼の薔薇だ! 八本指、お前等全員、動くな!!」

え゙? 蒼の薔薇ですって!?

勢い良く開いた扉から姿を見せたのは、紛れもなく蒼の薔薇の面々。

な、何故、アダマンタイト級冒険者が?!

…って、驚いてる場合じゃないわ!

 

「まっマカロン! 早くコイツ等を何とかして!」

「え?! マカロン?? 何故 貴方が、こんな場所に?」

「ナーベお姉様♡ 嗚呼、メイド服姿も凄く素敵♡」

「その呼び方は止めろォッ!」

小娘達も、この場に別のアダマンタイト級が居るのに驚いてるけど、兎に角 今は、この状況を何とかする事!

 

「さあ、何やってんのよマカロン!

高い金 払ってやってんだから、コイツ等をどうにかしなさい!」 

「きゃん!?」

 

バタッ…

 

え?…マカロンを仕掛けようとした時、後ろの方から小さな悲鳴?が。

振り向いてみたら、其処には体を痙攣させて、床に伏せているヒルマが。

そして その側にはメイド。

冷たく無愛想な表情の女の指先で、アレは魔法?…小さく雷が迸っていた。

 

「え?…え?え?え?」

「フッ!」

それに驚いていると、今度はマカロンが、此方に殴り掛かってきた?!

…って違うでしょ!?

アンタが相手するのは、私じゃなくt

 

 

◆コッコドールside・了◆

 

≫≫≫

 

◆まろんside◆

「…つまり、貴方達は、帝国からの依頼で、動いていたって訳?」

「そういう事だ。

件の貴族さんも、王国には来ていない。」

八本指のエロっぽい おばちゃんはナーベラルのスタンガン的魔法(ビリビリ)で。

オカマの方は、俺が腹パン1発。

残りの護衛役も、瞬殺で仕留め、全員縛り上げた。

そして今は、現場凸してきた蒼の薔薇に説明。

 

「バハルスの皇帝曰く、帝国には何処かの国みたいに犯罪組織と協力関係を持とうとする様な、愚かな貴族は居ないそうだ。

何処かの王国みたいに。」

「………………………。」

しかし、モモンガさんから聞いていたけど、本当に乗り込んでくるとはね。

だが、その やり方は、とてもじゃないが、誉められないな。

いきなり現場凸…もう少し、スマートに出来ない物かね?

お陰で もう少し 遊び 引っ張りたかったのに、直ぐに行動に移らなければならなくなったじゃないか。

 

「それでは俺達は、コイツ等を参考人として、帝国に連れて行くから。」

本当に連れて行くのは、ナザリック地下大墳墓にだけどな。

此れも既に、モモンガさんがジルクニフ君から了承を得ている。

 

「え?ちょっと待ってよ!」

そして俺の言葉に、蒼の薔薇リーダーが『待った』を掛けるが、

「もしかして、『コイツ等は王国で裁くから、自分達に引き渡せ』とでも言いたいのか?

それは無理が有るだろ?

王国に突き出した処で、八本指と繋がりを持つ貴族が無理矢理に逃がすのが、目に浮かぶぜ?

ああ、やっぱりアインドラ家も、()()()()だったk

「違うっ!!」

当然、その訴えは跳ね退ける。

 

「あー、はいはい。

どっちでも良いが、納得しただろ?

それとも此処で、戦るとでも言うのか?

俺達は2対5でも、一向に構わない…そうだろ、ナーベ?」

「はい、マカロンさん。」

「違う。3対4だ。」

「「「「ティア??」」」」

 

≫≫≫

「…ところで、だ。」

結局、蒼の薔薇との戦闘は起こらず。

あっちのリーダーが、最後は折れた感じだ。

そして互いが村を去ろうとした最後、大柄女…ガガーランだったよな?…が尋ねてきた。

 

「今回は、モモンは来ていないんだな?」

…お前が理由だよ。

モモンガさん、お前の童貞喰い(チェリー・イーター)の特性は見抜いてるから、今回はビビって お休みなんだよ!

しかし、今後も こういう事が続くのは冒険者的に好ましくないな。

やっぱり無理矢理にでも人化させて、アルベドと一緒に密室にでも閉じ込めるべきか?

  




①何が有ったかは作者も分からないが(笑)、何時の間にか大将軍に召喚されていたゴブリン軍団。
 
②今回のナーベラルのメイド服は、プレアデス正装で無くて、一般メイドの服。
1期2話…だったかな?…に着ていたヤツです。
 
③コッコドールの語りは、書いてて意外と楽しかった(笑)。
しかし もう、出番無いだろうなあ…
 
次回、いよいよ帝国vs王国、開戦!
乞う御期待!感想よろしくです。
 


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仕込み

 
戦の前の、伏線回。
今回は短いです。m(_ _)m
 


◆デミウルゴスside◆

まろん殿が持ってきた、2人の人間。

『八本指』という、リ・エスティーゼ王国を実質 裏から支配しているとされる大規模な犯罪組織に籍を置く幹部。

以前、まろん殿とセバスが持って帰ってきた同組織の幹部とやらは、所詮は単なる始末屋だった様で、大した情報は持っていませんでした。

あの者達、最期はアンデッドの実験素材になったり、シャルティアの玩具になったり…まだ、生きているのでしょうか?…していましたが。

今回も それぞれ、ニューロニストと恐怖公の元に送り、色々と喋って貰いましょう。

今回の者達…組織の大元の拠点や、他の主要人物の所在地、そして関係を持つとされる貴族等、有益な情報を持っていてくれれば良いのですがね?

それはアインズ様が参加される、遊戯(せんそう)の仕込みに必要な要素らしいので。

 

 

◆デミウルゴスside・了◆

 

▼▼▼

 

◆とあるシャドウデーモンside◆

まろん様が連れてきた人間。

その者達を、ニューロニスト殿や恐怖公氏が問い質して得た情報を元に、デミウルゴス様が作成された資料。

そして、我々が王国軍部に潜入して、纏めた資料。

それ等を手にして、我々シャドウデーモンやフウマ、ハンゾウと云った隠密に長けたシモベ達は現在、王国の各地に散らばっている。

因みに我は今、王国が戦争に備えて呼び寄せた、徴兵が集まる施設の1つに居る。

正規兵の様な人間の指示の下、多数の民兵らしき者達が揃って槍を突き出す様な訓練をしているが…アレに一体 何の意味が有るのだ?

付け焼き刃以下の動き、実戦で役に立つとは思えないのだが?

まあ、良い。それよりも任務だ。

渡された資料(データ)と照らし合わせながら、それに記載(チェック)されている者に、魔法認証印を刻む(マーキングする)のが、今回の我々の任務。

他のシモベも各地にて、同じ作業をしているらしいが…

 

 

◆とあるシャドウデーモンside・了◆

 

▼▼▼

 

◆デミウルゴスside◆

今回の八本指幹部から得た情報は、それなりに有益でした。

しかし、只、それだけ。

彼等は もう、用済みです。

ええ、()()()()()()()()()()が、ね。

アインズ様からの許可は戴きました。

まろん殿は『善いぞ!もっと殺れ!』と、言ってくださりました。

とりあえずは あの2人、早々に処理です。

実験材料?…既に その価値すら、有りませんよ。

元より あの様な俗物が、世間から『悪』と呼ばれるのが気に入らない。

アレは、『悪』等では無く、単なる害悪。

『悪』とはウルベルト・アレイン・オードル様の様な、崇高な理念に基づく…(以下略)

 

 

◆デミウルゴスside・了◆

 

≫≫≫ 

 

▼▼▼

「ま…またかよ?」

リ・エステーゼ王都では最近、猟奇的な殺人事件が連続で起きていた。

被害者は老若男女様々。

貴族では無いが、それなりに財富を持つ名士が目立っている。

其等が次々と殺害され、その亡骸は冒険者組合事務所や兵士詰所、或いは街の中央通りの真ん中…果ては王城の正面門の前に見つかり易い様に、そして()()()()()()棄てられているのだ。

その場に死体を棄てるのは勿論、周囲で それらしき物を持ち歩いていたという目撃情報は皆無。

 

「また…八本指なのか?」

そして、それ等の死体の共通点。

両目は くり貫かれ、両耳、鼻は削ぎ落とされ。

更には左胸…大きく切り裂かれ、心臓を抉り獲られるという、無惨な物だった。

しかし、それを見た衛兵達が最も特徴的としたのは、被害者の手。

その両手の指10本の内、残っているのは2本のみ。

残された指は親指~小指様々だが、どの遺体も()()()()が切断されていたのだ。

 

「クソ! もう直ぐ戦争が始まるってのに、要らぬ仕事を増やしてくれる!」

それを見た兵士達は、少し安直とは思いながらも、今回一連の事件の下手人を予測していた。

 

 

 

 

 

「おやおや…八本指の関係者だと、分かり易くした心算でしたが…

そちら側に予測してしまいましたか?」

 

 

≫≫≫

 

▼▼▼

リ・エステーゼ王城。

 

「そ、それは幾ら何でも、人の道に反します!

それに彼等は…」

「黙れ。平民如きが、我等の決め事に口を挟むな。」

「奴等の見え見えな戯言を、信じるのか?」

「…っ!」

その一室での軍議の中、提案された策の1つに、王国戦士長ガゼフ・ストロノーフが異を唱えるも、平民出身の彼の申し出は貴族の前に一蹴されていた。

その後も この話し合いで、『勝つ為に手段選ばず』な策が多数に提案、採用されていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

『フッ…全て、聞いているぞ?』

 

▼▼▼

 

◆まろんside◆

帝国と王国の戦争開始が、目前に迫った。

その舞台はカッツェ平野。

1年の殆どが深い霧に包まれ、無数のアンデッドが徘徊する荒れた土地。

しかし年に1度、決まったタイミングで、その霧とアンデッドが消える時期が有る。

その時期を狙って毎年、リ・エスティーゼ王国とバハルス帝国の戦争が この地で行われているそうだ。

作物収穫期でも有る、今の時期に王国全土…特に農地から徴兵させる事で、王国の生産力を少しずつ弱めていた帝国。

ジルクニフ君的には もう数年掛けて、完全に王国が弱体化した処で、一気に軍勢を進攻させて決着させる考えだったそうだ。

しかし、魔導国という強力な助っ人を得た事で、今までの様な小競り合い・小細工で無く、今年で一気に勝負を決める心算で居るそうだ。

既に両国が 各々に陣を作り、後は合戦の合図を…一応、戦敵国同士間で決められる、最低限のマナーらしい…待つのみとなっていた。

 

「ふん…数だけは揃えている様だが…」

ジルクニフ君が、遠眼鏡越しに王国陣営を見て呟く。

王国約30万の兵に対して、帝国側は約5万。

更に、今は隠しているが、モモンガさんの兵…デスナイトを中心としたアンデッド兵が約500。

確かに数では圧倒的に劣るが、一般の民から かき集めた者も混ぜ合わさった王国に対し、帝国側は全てが軍属の騎士、職業兵だ。

一兵一兵の練度と精度。

その圧倒的な『質』は『量』という劣勢を補うには過ぎ、総合戦力は逆に完全に帝国が上回っている。

加えて、戦争への気構え、覚悟も違い過ぎる。

更には両陣営施設。

帝国側は この毎年の戦争の為に、何年も前から強固な砦を築いてるのに対して、彼方は精々が大きなテントを多数張ってるに過ぎない。

この準備の差で、既に勝敗は決した様な物な気がするが…

というかジルクニフ君や。何故こんな連中を平伏させるのに、何年も掛けてる?

 

≫≫≫

「前に言った通り、開幕は任せるぞ、アインズ?」

「ふっ…期待してくれ、ジル。

既に()()()は、終わっているさ。」

「ぼ、僕も期待してます!アインズ様!」

「ああ、マーレ。楽しみにしていてくれ。」

「は…はい!」

ジルクニフ君の言葉にモモンガさんは自信満々に返す。

そして今回、モモンガさんの付き添い(護衛?)として参加しているマーレも、本当に楽しそうに顔を赤らめ微笑えむ。

因みにだが、帝国の人間でマーレが()()()と気付いているのは、四騎士のレイナースさんだけ。

女性だからこその、何かを感じたのかな?

ジルクニフ君やフールーダですら気付いていない。

勿論、面白いから黙っておくが。

さて、ジルクニフ君はモモンガさんには開幕一番、『派手な魔法を見せてくれ』とリクエストしていたが…

 

 




次回、いよいよ開戦!
乞う御期待!感想よろしくです。
 


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開戦 ~小虐殺(?)~

 
ついに開戦!
 


◆まろんside◆

太陽が最も高い位置に達した時、戦の始まりを告げる空砲が この平野に鳴り響くらしい。

つまり、大凡そ2時間後…位か?

 

「「「「「……………。」」」」」

緊張か、はたまた余裕か。

ジルクニフ君達は、その どちらとも取れる表情で待機している。

そして、敵さんの方は…ん?

…ジルクニフ君、モモンガさん、あっちあっち。

そうそう、そっちの方向。

ほら、マーレも。

  

◆まろんside・了◆

 

▼▼▼

王国陣営、国王ランポッサⅢ世が陣取るテント。

1人の貴族が、ランポッサの隣で帝国側の様子を遠眼鏡で窺っていたが…

 

「こ、国王!」

「な、何事じゃ?!」

「こ、此れを!」

その貴族は慌てた様子で、その遠眼鏡をランポッサに手渡す。

 

「?」

何か、異変でも起きたか?…そう思いながら、受け取った遠眼鏡を覗き込むランポッサ。

周りの貴族、そして戦士長ガゼフ・ストロノーフも、手持ちの遠眼鏡で、帝国側に目を向ける。

 

「これは…」

「な、何だ、あれは?!」

「巫山戯るな!」

その眼に映ったのは、遠眼鏡越しの自分達に、満面な笑顔で手を振る帝国皇帝。

そして、表情は判らないが、やはり挨拶するかの様に手を振る、黒ローブに奇妙な仮面を被った人物。

その傍の()()も、恥ずかしそうに、無理に作ったのか、少し引き攣った感じな硬い笑い顔で手を振っている。

更に もう1人。

『見てるの見えてるぞ?』…と言いた気な不敵な笑みを浮かべ、自分達に向けて人差し指を差す、金色の鎧を着た黒髪紅眼の男。

 

「クソ!完全に舐めている!」

「若僧共が!」

その立ち振舞いは、貴族達の頭に血を登らせるのが目的だとすれば、効果覿面だった。

 

「ゴウン殿…魔導王アインズ・ウール・ゴウンとは、やはり貴方だったか…

そして、まろん殿…か…?」

その余裕全開な態度に、怒り全開な貴族達の横で、ジルクニフの横に立つ人物の姿を見て、魔導王アインズとは、以前カルネ村で会った人物だと、改めて確信するガゼフ。

 

「報告によれば、魔導王はアンデッドだと聞いたが…

ゴウン殿…そして まろん殿。

貴方々は一体、何者だったのだ…?!」

怒り収まらぬ儘、自身が指揮する陣の元に戻る貴族達を見ながら、王国戦士長は呟いた。

 

▼▼▼

  

◆まろんside◆

「伝令! 王国軍、中央左翼右翼より、前衛陣が進攻を開始しました!」

「ふっ、まさか、本当に来るってか?!」

「呆れますね。」

ジルクニフ君の元に届いた、王国軍進軍の報せ。

まだ、太陽が最も高い位置に達するには、少し間が有るにも…だ。

…しかし、

「ああ、()()()()()

備えは、出来ているのだろう?」

「はっ!」

既に帝国軍側は、王国がフライング…謂うならばゴング前に奇襲を仕掛ける可能性は、想定していた。

正確には、王国側の軍議を遠隔視の鏡(ミラー・オブ・リモート・ビューイング)で覗いていたモモンガさんにより、バレバレだったのだ。

尤も、一般兵には『その可能性も有る』程度にしか、伝えていなかったみたいだが。

しかし その甲斐有ってか、帝国軍は慌てる事も無く、迎え撃つ構えを見せている。

…しかし、マジに仕掛けてきたか?

戦争ってのは、現場で武器を振り回したり指揮する者だけが、全てじゃない。

両軍に"記録係"という者が居る筈だ。

当然、帝国側にも それは何人も居り、今も離れた場所から この様子を窺っている。

過去の歴史に残る戦で、『〇〇〇がΧΧΧを討ち取った』等の記述は、この様な者達による働きが有ればこそ。

当然だが、こうした者に手を出すのは、戦に置いて最大の禁忌(タブー)というのが、暗黙の了解である。

そうした者が見ている中、この様な後の歴史に永久に残る行為に走るとは…本当マジか?

 

「ハァ…それではアインズ、頼んで良いか?」

「ああ、任せてくれ、ジル。」

そして、予定通りだったか…本当に予定通りだった事に、少し呆れているジルクニフ君のリクエスト…

 

 

帝国側の初撃は、モモンガさんのド派手な、且つ、帝国兵が どん引かないレベルの それなりに破壊力を持った魔法を使って欲しい

 

 

…それに応えるべく、モモンガさんが1歩、前に出る。

  

「先ずは、見栄えをより良くする為の、下拵えだ。

…《昼夜反転(ラナルータ)》!」

そして唱えたのは、昼夜反転の魔法。

これにより戦場は瞬時、太陽照らす昼から星光る夜に変化する。

本来は この魔法、昼と夜をひっくり返す事で、例えば吸血鬼等、夜行性属性を持つキャラクター(プレイヤー、NPC、敵モンスター問わず)を強化や弱体化させたりするのが目的の魔法だ。

あくまで戦闘魔法で、街中等の非戦闘空間では使えない。

尚、モモンガさんや俺も不死属(アンデッド)だから、この魔法の影響は受けたりする。

 

「おおおぉーーーーーっ!!!?

な、何と素晴らしい魔法ぢゃ!!」

あー、おじーちゃん、うっさい。

しかし、モモンガさんの魔法演出は、これで終わりじゃない。

 

「な、何とおぉぉぉーーーー???!」

あー、だから じじぃ、うっさい。

突然 音も無く、オレンジに煌めく巨大な炎の壁が地面から噴き上げ、王国側帝国側…戦場全体を包み囲んだのだ。

但し、実は この炎、幻術の類で、触っても全然 熱くない。

ダメージもデバフも何も無い、単なるハッタリだ。

しかし 此だけの見た目の炎、好き好んで触れに行くヤツなんて居ないだろうから、それがバレる事も無い。

突撃していた王国軍は完全に動きを止めて、あたふた大パニックだ。

当然、まだ後方で控えていた者達も然り。

 

「さあ、下地は整えた。

此れからが、本番だ!」

モモンガさん、再び魔力集中。

 

ヴォン…

 

それにより、特大サイズの立体多重魔方陣が出来上がる。

しかし、此処迄しておいて敵側に何の妨害的行為も無しとは、改めて王国には、ユグドラシル関係者は居ない事が確認出来る。

 

ボォ…

 

そしてモモンガさんの頭上高い位置に、2つの魔法光の球が現れる。

成る程。モモンガさん、()()をやる気か。

確かにアレは、明るい時より暗い方が栄えるよな。

 

 

◆まろんside・了◆

 

≫≫≫

 

◆モモンガside◆

表情から察するに、まろんサンは今から俺が使う魔法の当たりは着けているだろう。

 

「《的狙撃(シューティング・)星屑光弾雨(スターダスト・レイン)》!!」

 

轟々々々々々々々々ッ!!!

 

…そう思いながら、魔法を発動させる。

既に、ユグドラシルのプレイヤーは向こうには居ないと確信しているので、時短系アイテムの類は使わない。

そして2つの光の球は天高く昇り、爆散。

散り散りとなった光の欠片は幾千幾万の弾丸の雨となり、突撃してきた兵士団、そして後方待機している王国軍陣営に、流星の如く降り注ぐ。

 

「「「「「「ぎゃああああっ!??」」」」」」

「「「「「「うわぁあああっ?!!」」」」」」

「「「「「「あじゃぱーーっ!?!」」」」」」

「「「「「「ぬわーーーーっ!!!」」」」」」

「「「「「「ちぃぶゎぁーっ??!」」」」」」

それにより広がる、断末魔の大合唱。

 

「綺麗…」

「ほ、本当に、綺麗ですぅ!」

その光景を見た女騎士さんとマーレが、うっとりした表情をしてるが、一応はコレ、大量殺戮場面だからな?

 

…さて、一応この、《的狙撃(シューティング・)星屑光弾雨(スターダスト・レイン)》について、説明しておこう。

この魔法は事前に、その攻撃対象を設定しておく必要が有る。

その設定とは?

それは術者が…今回の場合、俺が事前に魔力で創った"魔法刻印(マーキング)"を、その標的に埋め込む作業だ。

此の度は、俺が大量に創った其れを、シャドウデーモンやフウマ、ハンゾウ達に王国中の標的認定した者に刻むと云った作業をして貰ったのだ。

これは数が数な為、労いの言葉を贈ろうと思ったが、『勿体無き事です!』『アインズ様からの任を完遂する事こそ、我等が喜び!』と返されてしまった。

いやいやいや、無自覚ブラック社畜過ぎるだろ?!

俺は そーゆーの、望んでないっての!

せめて、良い仕事した後は誉めさせて!

…魔法の説明に戻ろう。

"魔法刻印(マーキング)"だが、実は2種類有る。

1つは、その対象(ターゲット)を光弾が確実に貫き葬る『死の刻印(デス・マーク)』。

もう1つは その真逆、対象は絶対に光弾に当たる事は無い『生の刻印(ライブ・マーク)』。

共に、有効範囲は術者中心に半径100㌔。

有効期限は魔法を発動させるか、マーキングから100日経過の何れか。

当然だが、其れを刻まれた者に、その自覚は無い。

つまり、事前に有能・無能や他の要因で、この魔法によって此の場で殺す者、殺さない者の選別は終わっていた訳だ。

因み両方のマーキングを受けてない者で、この攻撃範囲に居た者は…言うなら、運が良けりゃ…な!

そして それで死んだ者は、まぁ、アレだ…どんまい!

 

 

◆モモンガside・了◆

 

≫≫≫

 

◆ジルクニフside◆

は…はははは…

はぁーーーーっはっはっはっはァッ!!

素晴らしい!

まさか、まさか これ程の魔法が存在するとは、思いもよらなかったぞ!?

レイナースとダークエルフの少女も言っているが、美しくも凶々しく!

 

「ぉ…おぉぉぉぉ…?!」

爺が…あの爺が、その光景に超興奮(ひゃっはー)する事も無く、感涙しながら固まっている程だ。

今回はロープは必要無いか?

 

「うわっ…パねぇ!」

「凄い…」

「………………。」

バジウッド達も予想以上の魔法に、驚きを隠せていない。

 

「凄い…」

「これが…魔法…」

「魔導王…殿…?」

そしてアレを真近、前線で見ていた騎士達も、やや興奮気味だ。

事前に『王国が奇襲を仕掛けてくるだろうが、それは魔導王が対処する』とは伝えていたのだが…いや、伝えていたからこそ、この程度の ざわつきで済んでいるのだろう。

 

「ふっ…どうだったかな、ジル?」

「ああ、見事としか言い様が無い。

本当に、私の期待を遥かに超えていたぞ、アインズ。」

そして一仕事終えて此方に戻ってきたアインズに、労いの言葉を。

 

「そう言って貰えると、嬉しいよ。」

「…本音は?」

「全く、無茶振りをする友人を持つと、本当に苦労する。…って、まろんサン?」

「はっはっは!」

アインズの話だと、今の魔法は、最初から後ろに控える指揮官を中心に狙った攻撃だったとか。

確かに あの光の雨は、遥か後方まで降っていたな。

 

「…もしかして、ランポッサも殺ったのか?」

「いや、あの王は、此の場で討っても意味が無い。…そうなのだろう?」

「…ふっ」

流石は ぷれいやー…なのか?

よく解っている。

…さて、今の魔法で王国側は完全に固まってるが、此方も少し、落ち着きが無くなってるな?

とりあえず、鎮めておくか。

 

「讃えよ!」

「「「「「「…!!!!?」」」」」」

いきなりの私の声に、帝国騎士達は姿勢を正し、此方を刮目する。

 

「魔導王アインズ・ウール・ゴウンの至高なる魔力、至高なるチカラ!

…そして我が盟友(とも)アインズを、讃えよ!!」

「「「「「「……………。」」」」」」

 

 

パチ…パチ…

 

 

パチパチパチパチパチパチ…!

 

 

「「「「「「うぉおおぉおーーーーーーっ!!!!」」」」」」

 

約5万の拍手喝采と大歓声。

開戦、アインズの一撃で、王国は全体の約1/5を失った。

しかも、指揮官である王国貴族の殆どは、既に死亡。

反対に帝国の被害は、当然だがゼロ。

そして私の一声により、士気も最高潮。

全ては此方の脚本通り。

 

≫≫≫

「おーし次! 狩猟兵団、前に出ろ!」

空も夜から昼に戻った。

バジウッドが指揮を執り、次の王国の進軍に備える。

さあ、次に繰り出す王国の()も、アインズ情報で知っているぞ?

…でも それ、全く意味無いからな?

 




【次回予告】
 
◆モモンガside◆
「おおーっ! 師よ! やはり貴方様は至高の存在!
やはり儂を、貴方様の弟子にしてくだされぃ!
その対価として、儂の全てを捧げますぞ!
そう! 師が望むならば、風呂だろうがトイレだろうがベッドの中だろうが お供致しますぞ!」
だ、誰か この爺さんを黙らせてくれ!
…と、王国側に新たな動きが。
前に出てきたのは、荷台部が格子籠の馬車が数台。
その中に入れられているのは…
 
次回、『王国の逆襲(仮)』
乞う御期待!感想も、宜しく!
 


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策(笑)

 
最初は前回の場面を、別視点で。
 


◆ガゼフ・ストロノーフside◆

「な…何なのだ…これは…?!」

それは、余りにも突然過ぎた。

先功隊が突撃…これも、予め両者取り決めの合戦の時刻を無視しての、戦に於ける、最低限の儀礼を破る恥知らずな行為!…を仕掛けたと思えば、突然 周囲が暗く…夜となり、戦場外周を巨大な炎の壁が被い尽くす。

それは魔法による物だとは、即座に理解出来た。

この様な魔法の存在は知らないが、他に解答が浮かばないというのが、正しかった。

 

「これも、魔法の力だと云うのか…?」

俺の旁で、陛下も驚く中、帝国砦の門が開き、何者かが1人、姿を見せる。

その風貌は魔法詠唱者(マジック・キャスター)

しかし それは、彼の逸脱者、フールーダ・パラダインでは無い。

 

「アインズ・ウール・ゴウン…殿?」

その姿は紛れも無く、あのカルネ村で出逢った…そして今は、魔導王を名乗る御仁だった。

  

「これは、ゴウン殿の魔法なのか…」

これ程の魔法…魔法の知識は殆んど皆無だが、今起きている現象が、とてつも無く凄まじいレベルな魔法による物なのは、嫌でも理解出来る。

そしてゴウン殿も、()()()()に立つ者だと。

しかし、ゴウン殿の魔法は、これで終わりでは無かった。

いや、寧ろ これからが本番だった!

ゴウン殿を包む様に現れた、巨大な立体の魔法陣。

其処から現れた2つの光の球が、天高く昇り、弾ける様に無数に飛び散る。

そして散り散りとなった小さな光の球が、突撃を仕掛けた王国兵に、そして後陣に控えていた、此方側にも矢の雨の様に降り注いできたのだ!

 

「な…何と…何という事だ…!」

結果、無数の屍が、戦場に横たわる。

その全てが、王国側の兵だ!

開戦早々、一瞬にして、幾万もの王国兵が戦死してしまったのだ!

幸いにも俺が…陛下が居たテントは、その直撃を受ける事は無かった。

 

「私は今、悪夢でも見ているのか…?」

しかし、その光景を見た陛下も茫然とする他に無く、目に映る景色を現実と受け入れる事が出来ない様子だ。

これが、魔法の力…

 

「陛下!」

「陛下!御無事ですか?」

そうした中、やはり直撃を避ける事が出来た兵士や貴族達が、此方に集まってきた。

 

「陛下!おお、戦士長殿も御無事で!」

「おお、レエブン侯、貴公も無事だったか!」

その中には今回の戦の総指揮を任されている、レエブン侯も居た。

 

「アレは、凄まじい等の表現で済む様なレベルでは、有りません。

どうやら我々は魔法という物を、軽視し過ぎていた様です。」

歯痒そうに、声を絞り出すレエブン侯。

 

「陛下…降伏すべきです。」

「レエブン…侯?」

そして次に出たのは、この言葉。

 

「ガゼフ殿…すまなかった。

我々は もっと、貴殿の声に、耳を傾けるべきだった。」

「レエブン侯…」

更には俺にも謝罪してきた。

『今更…』とは思わない。

仮に、貴族達が私のゴウン殿への注意を聞き入れていたとしても、これ程の魔法の威力は俺としても想定外。

この結果は、大して変わらなかっただろうから。

 

「陛下、降伏を! 陛下も もう、理解されているでしょう!

アレは決して、人間(ヒト)では勝てない!」

そして再度、陛下に降伏を促すレエブン侯。

これも、間違った選択とは誰も思わないだろう。

この広範囲の無差別攻撃で、各部隊を率いる指揮官(きぞく)も多数死んでいるだろう。

指揮系統も乱れ、統率の取れない集団。

如何に現状、数の面では確かに未だ有利だが、既に それだけで勝てる状況では無いのだ。

 

「陛下…御決断を…!」

「陛下…!」

「………………。」

俺もレエブン侯と共に その命令を待つが、陛下は惑いの表情を隠さず、沈黙の儘だ。

 

王足る者、何時如何なる時も、平静を保ち適切な判断を下すべき。

…そうは、思わないか?

「「「??!」」」

何処からか、声が聞こえたのは、そんな時。

 

ヴォ…

 

「「「!!!!?」」」

その場の全員が、キョロキョロと、その声の元を窺っている時、空間に突然、黒い穴が開いた。

その中から出てきたのは、黒ローブを纏い、仮面で顔を隠した人物と、あれは、ダークエルフか?…の小柄な少女。

 

「ゴウン…殿…」

「久しいな、ガゼフ・ストロノーフ戦士長。

カルネ村以来か。」

 

ザザッ…!

 

ゴウン殿を見た兵士達が、陛下を護る為に前に立ち、武器を構える。

 

「止めておけ。お前達では、私を殺す事は出来ない。

折角 助かった命、無駄に捨てる事も無いだろう。

戦士長、アナタもだ。

その物騒な剣は、仕舞いたまえ。」

「…………!」

それに対してゴウン殿は、戦う意志は無いのか、兵士達に…そして俺に、武器を収める様に言う。

 

「仮面の魔法詠唱者(マジック・キャスター)よ、儂の首を獲りに来たのか?」

「ふっ…それは少し違うな。」

陛下の言葉に、否で応えるゴウン殿。

 

「今の私は、ジルクニフの遣いとして、此の場に馳せ参じたのだよ。

何しろ敵陣の最奥だ。

騎士殿に馬を走らせるより、転移をした方が速いからね。

…リ・エスティーゼ王国国王、ランポッサⅢ世。

私のチカラは、もう理解出来たろう。

そちらの貴族殿の言われる通り、直ぐに白旗を上げて帝国軍に降伏するのを奨める…が…え?えええ??」

そして、陛下に降伏勧告しようとした時、何かに気付き、驚いた様な反応を見せた。

 

「あ、あの旗は…リットン伯の…?」

遠眼鏡を覗いたレエブン候の呟き。

俺も同じ方向に遠眼鏡を向けると…

 

「な…何だと?!」

目に止まったのは、確かにリットン伯の旗を掲げた部隊。

彼等が、護送馬車に乗せて引き連れてきた…以前、カルネ村で捕虜として捕らえた、()()()()()()()()()共々に、帝国側から放たれた、今度は文字通りの矢の雨(アローレイン)に射ち抜かれる光景だった。

 

「戦士長…1つ、質問して良いかな?」

それを見たゴウン殿が、呆れた様な口調で、俺に話し掛けてきた。

 

 

◆ガゼフside・了◆

 

≫≫≫

 

◆モモンガside◆

「あの時、カルネ村で捕らえた者達…

アレは帝国騎士の鎧を着ていたが、実の正体はスレイン法国の兵だと、貴殿より上の立ち位置の者に、報告していないのか?

…どうなのだ?ランポッサⅢ世。

そして、エリアス・ブラント・デイル・レエブン候、だったかな?

ストロノーフ戦士長から その様な報告は、受けていないのか?」

「そ…それは…」

尤も、答えは知っているけど。

この男は確かに、其処の王や貴族達に、有りの侭を伝えたが、『法国が帝国を偽る理由が分からん!』…と、最初から戦士長(へいみん)の言葉には、耳を傾けなかったんだよな?

ついでに言えば、仮面の魔法詠唱者(アインズ・ウール・ゴウン)という存在も、戯言だと信じて貰えなかった…と。

 

「それに…捕らえた者達は皆、何を聴いても黙りだったらしくてな。

帝国騎士ともスレイン兵とも、何も答えなかったそうだ…

だとすれば、着ていた鎧から、判断する他に有るまい。」

力弱く、言い訳する様に喋るランポッサ。

あ、『3つの質問の呪縛』か!

そうだそうだ、思い出した。。

そう言えば奴等、()()()()()()()()()()()って呪いを埋められてたんだったよな。

カルネ村での俺と まろんサンによる尋問で それを知ったから、何を問われても無言となるのも解る。

そういう事なら、帝国騎士の鎧で判断されても、それも仕方無いか。

王国が どの様な戦術戦略を仕掛けてくるか…それを話し合う軍義は全部、遠隔視の鏡(ミラー・オブ・リモート・ビューイング)で お見通しだった。

当然だがジルには、王国が仕掛けて来るであろう謀り事は、全て伝えている。

この人質(笑)作戦も然り。

そんな訳で、帝国捕虜(笑)を盾にして、何やら交渉に出た貴族率いる兵団は、その人質諸共に帝国狩猟兵団の弓の的にされた訳だ。

帝国騎士では無いと最初から分かっているからこそ、狩猟兵団も躊躇無く、弓を射る事が出来たのだ。

カンニング? 自覚は有る。

しかし こんな卑劣な真似をしてくる相手には、何の問題も無いだろう?

ついでに言えば…

この作戦の指揮役の貴族と その配下の兵、並びに人質達だが、予定通りに人員漏れ無く作戦決行出来る様に、最初の《的射撃(シューティング・)星屑光弾雨(スターダスト・レイン)》の仕込み(マーキング)は、『死なない側』に設定しておいた。

…が、まさか本当に、この策を実行してくるとは思わなかったぞ。

それで結局、全員死んだけどな!

 

 

◆モモンガside・了◆

 

▼▼▼

 

◆ジルクニフside◆

結果から言えば、アインズに『派手、且つ()()()()()()魔法』と注文付けしていたのは、大正解だったらしい。

まろんが言うには、

 

「単に、破壊力や殺傷力だけを求めていたなら、モモンガさんだったら、多分…」

 

…まろんが言うには、恐らくアインズは先ず、広範囲の即死系魔法を唱え、それで突撃を仕掛けてきた兵士を瞬時に全滅させる。

そして それを媒体(イケニエ)にして、巨大・強力・凶悪なモンスターを何体も召喚。

それで戦場を大荒らししていただろう…らしい。

 

「それは正に、阿鼻叫喚のカオスだ。」

「「「かおす?」」」

「ほほう!? それは それで、見たかったですな。」

興奮し過ぎて1周したのか、逆に冷静になっていたフールーダが、それを聞いて また()()()()()いる。

 

「見ているだけの帝国(こちち)側も、PTSD(トラウマ)必至だな。」

「悪魔か?!」

「モモンガさんはアンデッドだぞ?」

そうした中、これもアインズが言った通り、帝国騎士の捕虜(笑)を盾に、何やら言ってきた者が居た様だな。

即座に対処したが。 

そして そのアインズだが、今は直接にランポッサの元に赴き、降伏勧告をしている。

しかし、あの甘さと優柔不断には定評の有る無能王だ。

この惨状を見ても、それでも即決するとは思えない。

アインズ…どう出る?

 

 

◆ジルクニフside・了◆

 

▼▼▼

 

◆ガゼフside◆

「さて…改めて返答を聞かせて貰おうか?…ランポッサⅢ世よ。」

「…………………………。」

 

シュゥ…

 

「「「「…???!!」」」」

ゴウン殿が陛下に降伏を迫る。

しかし、沈黙を貫く陛下に最後の警告なのか、両手を掲げると、その腕に着けていた籠手を消した。

其処から出てきたのは生身で無く、白骨の腕!

 

ガバッ…

 

更にはローブの胸元を大きく開くと、やはり生身の肉体では無く、肋骨が露に。

 

ス…

 

「ひっ?!」

「な…!?」

「ぁ…ぁあ…」

そして最後、その喜怒哀楽の全てを一度に表現したかの造型(デザイン)の仮面を外すと、その下の素顔は、血の如くな赤い瞳を持つ髑髏だった!

 

「私も決して…気が長い方では、無いのだがな。」

何時までも決断出来ない陛下に対して、自身が異形…しかもアンデッドである事を明かし、生命に何の価値観も持っていないというメッセージに受け取れる。

 

「魔導王…本当に、アンデッドだったと言うのか?」

「陛下!レエブン候!下がって下さい!」

「コレは…本当にヤバい!!」

その姿に、完全に心身を恐怖に支配されたのか、動く事が出来ない陛下や一般兵の前に、レエブン候の護衛の者達が出てきた。

 

「ストロノーフ戦士長!」

「応!」

そして彼等の声に、俺もゴウン殿…目の前の異形(てき)の前に立ち、剣を構える。

 

「ふっ、私と戦う気か…止めておけ。」

自惚れている心算は無いが、それでも王国最強と呼ばれる程の力は持っている自信は有る。

レエブン候の私兵達も、元はオリハルコン級冒険者の強者達だ。

しかし そんな俺達を前にしても、魔導王は余裕の態度を崩さない。

それも当然だろう。

あれだけの魔法を放った者だ、俺達等、敵と思ってないのだろう。

しかし、勝算が全く無い訳でも無い!

先程、魔導王は確かに言った…

 

 

その()()()()は、仕舞いたまえ

 

 

それは俺が持つ剣…リ・エスティーゼ王国至宝の1つ、剃刀(レイザー・エッジ)を、魔導王は脅威と見ている事を意味する。

これならば、ゴウン殿にもダメージが届く!

 

「それにだ、ガゼフ・ストロノーフ。

お前の相手は、私では無い。」

「何?」

「お前と、戦いたがっている者が居るのだよ。」

「…もしや、まろん殿か?」

しかし魔導王は、俺達…俺と戦う意思を見せないでいた。

…俺と戦いたいという者。

真っ先に思い付いたのはカルネ村、ゴウン殿と一緒に居た、金色の鎧の男…まろん殿。

彼は王族貴族、そして国仕えの者達に かなりの不信感を持っていたのが窺えていた。

特に、権威を振り翳し威張り散らすだけの者や、民から税を貪るだけで、全く民の役に立たない者。

例えば、スレイン法国の襲撃に対して、結果 何の働きも出来なかった俺とか…な。

そして その彼も今、帝国皇帝と一緒に居るのは知っている。

 

「ああ、まろんサンも この戦場に居るのは知っていたか。

しかし、違う。まろんサンは今回は戦争には手を出さない。

まろんサンは、竜王国からの見届け人として この場に居るだけだからな。」

「見届け人…だと?」

まろん殿が竜王国の人間、そして帝国が竜王国の者を、その様な立場で招いている関係になっている事に驚いた。

 

「それでは…誰が…」

「ふっ…」

それでは一体 誰が?…そんな風に考えていると、ゴウン殿は右手を大きく掲げる。

 

ヴォ…

 

すると、先程と同じ様な黒い穴が また、空間に開き、 

「失礼するでありんす、アインズ様。」

「御苦労だったな、シャルティア。」

その中から現れたのは、白いドレス、そして白い仮面で顔を隠した、金髪の女。

 

「言われた通りに この者、連れてきたでありんす。」

そして穴から出てきたのは、もう1人。

 

「久し振りだな、ガゼフ・ストロノーフ。…覚えているか?」

「お前…! ブレイン…アングラウス…か?!」

 




お気に入り500突破、有り難う御座います!

 
 
【次回予告】
 
◆ユリside◆
シャルティア様に連れられて、アインズ様の元に現れたブレイン・アングラウス。
ガゼフ・ストロノーフとの因縁に、決着を着ける事が出来るのか?
 
「あの役立たず役人(ガゼフ・ストロノーフ)に負けたとしたら、それは俺やコキュートス達の指導が至らなかった…と、いう事になる。」
「正シク。アングラウスガ敗レタナラバ、ソレハ、我等ノ責任。
ソノ責任、謝罪ヲ込メテ、次コソハ勝テル様、鍛エ直シテヤル必要ガ有ル。」
「え゙????!」
あの…まろん様?コキュートス様?
余りプレッシャーは、与えない方が…
 
次回、『ブレインvsガゼフ(予定)』
御期待下さい。
並びに、感想も宜しくお願い致します。
 


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勝鬨を上げろ!

 
【勝鬨(かちどき)】…戦場で勝利した時に一斉に上げる雄叫び
 


◆ブレインside◆

「ガゼフ、(そと)に出ろ。一騎打ち(タイマン)だ。」

「……………。」

まろん様からは「ハードル(ひっく)!」と言われたが、それでも今の俺からすれば、越えなければ先に進めない、高い山だ。

ガゼフ・ストロノーフ。

ガキの頃から剣に於いて『天才』『神童』と呼ばれ続けてきた俺の自尊心を、打ち砕いた男。

…それ以来、ヤツに勝つ為だけに、俺は更に強さを求めた。

手段は選ばなかった。

実戦経験を積むため、傭兵擬きの野盗集団に身を投じもした。

…結果論だが、だからこそ、今の俺が居る。

 

 

≫≫≫

「見事な勝利だったぞ、ブレインよ。」

「申し訳御座いません、アインズ様。

折角 授かった剣を、折ってしまいました。」

「良い。 本当に気にしなくても良いから!それ、ユグドラシルの外れガチャのアイテムだし!

この勝利、これでブレイン・アングラウスよ、お前は更なる強さの領域に踏み出せるのだろう?

それはナザリック…魔導国にも大きな益となる。

それならば剣の1本2本、安い出費だ。

褒美として、更なる業物を与えよう。

期待して、良いぞ?」

「は…ははーっ!」

…そして俺は、ガゼフに勝った。 

 

 

◆ブレインside・了◆

 

≫≫≫

 

◆まろんside◆

「何だ…今のは…?」

剣氣斬(オーラ・ブレード)だな。」

「「いや、だから何、それ?!」」

ブレインvsガゼフ・ストロノーフ。

結果はブレインの完勝、圧勝と終わった。

そりゃそうだ。

日頃、城で それなりな鍛練しかしてない雑魚と、普段からコキュートスやセバス、そして偶に俺も修行を見てやったブレインとは、既に勝負の次元が違い過ぎる。

以下、回想実況(ダイジェスト)

 

≪≪≪

国宝級の装備…ユグドラシル基準ではゴミ装備…で、身を固めているガゼフ。

フルアーマー(笑)・ガゼフとでも言うべきか?

しかし、ブレインも負けてはいない。

モモンガさんが この世界の基準に合わせた、『ラスダンに挑める(笑)最強武具』を与えているのだ。

俺の見立てでは、剣が ほぼ互角。

防具の面では、ブレインの装備の方が上…既に装備の時点で、ブレインの勝ち確だった。

 

「「………………。」」

そして、対峙する2人。

 

「は、始め!」

 

カラーン…

 

モモンガさんに半ば無理矢理、審判役を押し付けられた貴族のオッサンが、ハンドベルを鳴らして、いざ開戦。

 

「哈ッ!」

「…っ?!」

同時、ブレインいきなり全開。

ブレインのオリジナル武技『領域』は、自分を中心に拡げる剣氣の結界。

そして その内に踏み入れた者に、瞬閃の居合い斬りを放つのが、必勝パターンだった。

しかし それは、あくまでもカウンター…『待ち』の構えだ。

結界その物は、それなりの技量と見ても良いが、それでも俺からすれば、ギルメンの1人の下位互換技に過ぎなかった。

だから、「こんな技も有るぜ?」と言ってみたら、ブレインのヤロー、それを口伝だけで体現しやがった!

一体、どんな努力だ?

『領域』よりも範囲こそ狭まるが、円周(サークル)で無く球形(ドーム)状の結界。

それを維持しながら動く事が出来る、新たな戦闘スタイルだ。

まあ、ギルメン…ケンちゃんの ()()には その先に もう1段階、進化形が有るのだが、そいつは俺には教えられない。

何しろ俺もイマイチ、その仕組みが理解出来てないからな。

口先だけで教えるには、限界が有る。閑話休題。

 

「…行くぜっ!!」

 

ダダダダッ!

 

ブレインが先手必勝とばかりに突進。

結界維持の状態、(カタナ)を鞘に納めた儘、ガゼフ・ストロノーフとの距離を詰める。

 

「疾ッ!!」

「????!」

そして自身の間合いに入ったブレインが、神速の居合い斬りを放つ。

しかしガゼフも、反応向上系の武技を発動させていたのか?

それに対して、青い刃の大剣でブレインの一閃を受け止めた。

 

ベキッ!

 

「な…」「に…?!」

その1合は、両者の刃を砕く事に。

ブレインも そうだが、ガゼフは より信じられないと云った表情に。

傍目には互いに武器を失った形となった。

しかし、ガゼフは どうだか知らんが、ブレインには まだ、攻撃の選択肢が残っている。

…それも、大きく別けて、2つも。

1つは俺やセバスが教え込んだ、近接格闘術。

正しく今の状態の様な、得物を失った時の為の切り札、奥の手だ。

しかし、今回ブレインが選んだのは、もう1つの方。

 

「でぇぇいやっ!!」

 

斬ッ!!

 

「な…バカ…な…?!」

俺達から改めて『氣』の概念を教わったブレインは、訓練時は常に、剣氣を己の刃に纏わせて(コーティングして)いた。

氣の扱いは、元から『領域』等で要領は会得していたから、そう難しくは無かったそうだ。

そう、今のブレインの剣技は、決して鋼の刃だけで斬るに非ず。

真髄は、刀身に宿る剣氣による斬撃。

例え刀身が折れたとしても、剣氣が残っていれば その剣は、まだ死んでいないのだ。

しかしガゼフには その"氣"という発想は無かったのか、瞬時に繰り出したブレインの弐の太刀には反応出来ず、その強烈な一撃をまともに浴びてしまい、『何故、斬れるのだ??!』…と言いた気な表情を浮かべて、その場に倒れ込む。

勝負の分かれ目は、"氣"という存在を知っているかというのも有る。

しかし それ以上に、互いの剣が折れた後の動揺…ブレインの それは僅か一瞬、即座に切り替える事が出来、次の行動に移せたが、ガゼフには それが出来なかった。

その違いが、明暗となった。

  

「しょ、勝負有りッ!其処迄です!」

此処で審判役の貴族のオッサンが、決着を宣言。

俺としては、最後は俺やセバスが教えた格闘系で締めて欲しかったが、このガゼフに対しては、あくまでも剣士として勝負したかったのだろう…ああ、解ってるよ。

其処はジャーマンだろ?フランケンだろ?教えたろ?…とかは、少ししか思ってないぞ。

 

≫≫≫

「何だ…今のは…?」

剣氣斬(オーラ・ブレード)だな。」

「「いや、だから何、それ?!」」

そして、現在。

ジルクニフ君達も、折れた刀で どうやって斬ったのかは解らなかった様で…バジウッドも解ってなかったのは少し意外…それを説明、解説している。

 

 

◆まろんside・了◆

 

▼▼▼

 

◆モモンガside◆

「さて…ガゼフ・ストロノーフも倒れたが、どうする?」

「……………………。」

1つの戦いが終わり、改めてランポッサに降伏を迫る。

死ぬ事は無かったが、それでも個としての王国最強戦力が戦線離脱したのだ、既に王国としての優位は全体の数のみ。

確かに、蟻も群がれば竜をも斃すやも知れない。

しかし、今の王国を蟻と例えるのは、蟻に失礼な話だ。

 

「イライラするでありんすね。

さっさと敗けを認めるなんし?」

しかし、優柔不断、此処に極まれり。

煮え切らない態度に、ブレインを此の場に連れてくるだけの役目だったシャルティアも、口を出してきた。

 

「アインズ様。この者、もう殺した方が良いのでは ありんせんか?」

「確かに大将首を獲るのが速いが、今回は その大将に、敗けを宣言させる必要が有るのだよ。

フッ…仕方無い。最初に私が放った魔法。

アレをもう4~5発、王国兵の集まりの中心に放てb

「ま、待て、待ってくれ!」

 

バガッ!

 

「ぐゎぁッ?!」

「おい、『待って下さい』だろうが…殺すぞ?」

えーと、シャルティア?

相手は御高齢だぞ?

甚振るで無くて、労るな?

…兎に角、俺の脅しが効いたのか、ランポッサは漸く、此方の要求に応じる気になった様だ。

 

 

◆モモンガside・了◆

 

▼▼▼

 

◆とある王国兵(モブ)side◆

 

くきゃきゃくきゃくきゃくきゃ!!

 

「……………………!????」

()()()は、いきなり戦場の空に、集団で現れた。

黒い霧の中に浮かぶ、無数の顔の集合体と言った感じな、不気味なモンスターだ。

  

 

王国兵共よ!

貴様達の王、ランポッサⅢ世は先程、アインズ・ウール・ゴウン魔導王様に、降伏の意を示した!

従って、この場での争いも不要となった。

さあ、早々に立ち退くが好かろう!!

 

 

「ま…マジか…?」

唐突な展開に、つい口に出して驚いてしまう。 

 

くきゃきゃくきゃくきゃくきゃ!!

その後、不気味且つ独特な嗤い声を発しながら、そのモンスターは煙の様に姿を消した。

いや、それは どうでも良い事だ。

国王が、降伏しただと?

…って、アインズ…(えーっと、何て言ったっけ?)…魔導王って誰?

俺達は帝国と、戦争していたんじゃないのか?

 

「「「「…………………。」」」」

俺の周り、他の兵士達も同じ考えか、茫然としている。 

兎に角、王国が戦争に負けたのは理解した。

いや、当たり前だろ?!

あんな非常識過ぎる魔法ぶっ()する相手、勝てる訳が無い!

寧ろ、アレの後に直ぐ、敗けを宣言しない方が可笑しい!

何なの、王様? アレでも勝てる気で居たの?!

 

≫≫≫

あの後、あのモンスターは あんな風に言ってたが、実際は どの様に動けば良いか分からない俺達の部隊の所にも、後ろ側に控えていた偉い人からの遣いがやって来て、正式に退却命令が出された。

マジに王様、帝国に降ったみたいだ。

負け。

余りにも短い戦いだ。

王国の被害は、最初の あの洒落にならない様な魔法と、その後の弓矢による攻撃による物だけとなった。

多分、帝国側は、一切の被害は無いだろう。

戦争に負けた事で、これから王国が どうなるか、これからの俺達の生活が どうなるかは不安だが、今は生きて帰れる事を、素直に喜ぼう。

もう、徴兵なんて真っ平御免だ!

そうだ、俺は生きているんだ!

エ・ランテルに戻ったら直ぐ、彼女にプロポーズするんだ!

 

 

◆とある王国兵(モブ)side・了◆

 

▼▼▼

 

◆まろんside◆

「そんな訳で、とりあえず連れて来たが?」

「ああ、御苦労さん。」

「お、お疲れ様です、アインズ様!」

モモンガさんが、帝国側本陣に戻ってきた。

ブレインとシャルティア…そして王様と一緒にだ。

 

「心配するな、ランポッサよ。

無体な真似をする心算は無い…縄を解いてやれ。」

抵抗は無いと判断したか、王様を縛っているロープを解く様に、騎士に命令するジルクニフ君。

 

「…無体な真似は しないが、暫くは帝国(こちら)側に居て貰うぞ?」

「……………………………………。」

但し、解放する心算も無い様で。

戦後処理…人質として、交渉材料に使う気は満々だな。

 

≫≫≫

「帝国軍諸君! ついに王国は、我々に降伏した!

我が軍の勝利だ!!」

 

おうぅぉおおぅぉおーーーーっ!!!!

 

ジルクニフ君の勝利宣言に沸き立つ帝国軍。

 

「それでは、アインズ。」

「ん?」

「今回の勝利の立役者であるキミに、勝鬨を頼めるか?」

「え?」

まあ、文句無しのMVPだしな。当然な話だ。

…しかし、

「いや、此処は、マーレだろ?」

「え?えぇえ?!」

突然な俺の振りに、驚く男の娘。

 

「で、でも、ぼばぼ僕、何もやっていませんよお??」

「いや、マーレみたいな存在は、其処に居るだけで士気が上がるってヤツだ。

竜王国でもビーストマンとの最終決戦、最後は何もやっていないドラちゃんが其の場で締めて、大盛り上がりだったらしいぜ?」

「…まろん。頼むから、我が帝国をあのロリコン国家と一緒にしないでくれるか?」

「えっ?でもドラちゃんて、見た目こそ幼女だけど、実年齢っtんがぐぐ!?」

「よーし、まろんサン! それから先は、黙ってような?…な?」

「ストレートすぎるぞ?」

 

 

◆まろんside・一時中断◆

 

▼▼▼

 

◆その頃のドラちゃんside◆

むう?な、何だか何処かの誰かが、私に対して凄く御無礼な発言をしている気がするぞ?

 

「心配なさらずに。

どうせ、帝国皇帝殿や まろん氏辺りが、貴女を幼女王扱いしているだけでしょうから。」

「するわ!!」

 

 

◆その頃のドラちゃんside・了◆

 

▼▼▼

 

◆まろんside・再開◆

「み、皆さん、僕達、アインズ・ウールゴウン魔導国と、バハルス帝国の連合軍の勝利です!」

 

ざわざわ…がやがや…

 

照れ臭いのか面倒臭いのか、結局はモモンガさんも、勝鬨の呼び掛けはマーレに丸投げにした。

因みに、見た目 は美少女の登場に、騎士や兵士の皆さんの反応は上々だ。

 

「頼むから、彼等の性癖を、変な方向に歪めないでくれよ?」

「ジル。それなら心配要らないぞ?」

「ああ、マーレ、男の娘だからな。」

「ま゙ぢ?」

「え゙?!」

「……………!!?」

「何ですとォ?」

「尚更に悪いわ!!」

 

≫≫≫

「そ、それじゃあ皆さん、い、行きます!」

帝国軍の皆さんに色んな意味で注目され、緊張しまくりなマーレきゅん。

 

「(スゥゥー…」

それでも意を決したか、小さく深呼吸を一息、握り締めた右手を天高く突き上げ、声高らかに叫ぶのだった。

 

 

えいえい、おーっ!

『『『『『えいえい、おーっ!!』』』』』

 

 




 
①ガゼフ、此の場は死亡ルートを回避。しかし…
②クライム君は この戦争、参加していませんでした。
③山羊さんの出番は無かったので、死者数は原作より遥かに少なくなりました。

 
④勝鬨…まろんがマーレに話を振った時点で、今回のオチが読めた人は、上級読者。
更に、前書きで察せた人が居たなら、その人は超上級読者www
 
 
【次回予告】
 
◆ルプスレギナside◆
王国の惨敗に終わった戦争。
お城では、敗北の責任を押し付け合ってるっス!
もう、今まで偉そうに大口を叩いていた貴族は殆んどがアインズ様に殺されちゃったっスから、それまで大した発言が出来なかった弱小貴族が此処ぞとばかりに態度・大っス!
王様は帝国の捕虜になってるスから、臨時の纏め役になってる ぽっちゃり王子、心労で げっそり王子になっちゃう日も遠くないっス、ビクトリーっ!
そうした中、遂に、遂にアインズ様が…!!
 
次回『建国宣言!アインズ・ウール・ゴウン魔導国!!(予定)』
乞う御期待! 感想も、ヨロシクっス!


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式典の異変

 
サブタイトルが前回の【次回予告】と異なるのは、よく有る事です。
 


▼▼▼

リ・エスティーゼ王国とバハルス帝国の戦争。

毎年、少しばかりの小競り合いで終わっていた それだが、今年は違う終わりとなった。

モモンガが魔導国魔導王アインズを名乗り、バハルス帝国に加担。

その圧倒的な魔法で戦場を掻き乱し、更には直接、敵陣最奥に居るリ・エスティーゼ国王ランポッサⅢ世の前に赴き、直接に降伏を促す。

最終的にランポッサは それに従い、その証しとして帝国に囚われる事に。

そして その数日後、リ・エスティーゼ王城では…

 

「何を偉そうに!

貴殿等は戦場に居なかったから、その様に言えるのだ!」

戦場であるカッツェ平野から無事に生還出来た貴族は直ぐ、戦争に参加しなかった貴族達を呼び寄せ、これから先についての、緊急の話し合いを始める。

この時 既に…帝国から文書が届いていた。

その主な内容は、捕虜にしている国王、ランポッサの解放の条件。

 

「これは…」

「しかし…」

()()()()で、陛下が お戻りになられるのならば…」

「いや、それでも…!」

「貴様! ()()を、その程度と言うのか!?」

「いや、そういう心算では…」

それは、城塞都市エ・ランテル、並びに それより帝国方面に続く領土の割譲、そして…

 

≫≫≫

「そもそも、あの平民(ガゼフ)が無様に敗れたりするから…」

「…しかも、王国の至宝の武具を、悉く破壊されたそうだな?!」

「はん!とんだ王国最強だな!」

そして話し合いが進む中、今度は敗戦の責任を、個人に集中し始める。

 

「…黙れ。」

「「「…………??!」」」

そうした雑言を一喝する一声。

声の主は、頬や腹回りを膨らませている金髪の青年。

 

「ザナック王…?」

「まだ、王では無いぞ?」

リ・エスティーゼ王国第2王子、ザナック・ヴァルレオン・イガナ・ライル・ヴァイセルフ。

貴族の1人が『王』と呼んだのは、ランポッサの返還条件の1つに、『ランポッサには王位を辞任させ、次代に後継させる事』と有ったからだ。

自国王を見捨てる事は、体面的に不可能。

継承の権利で言えば第1王子が最優先だが、その第1王子バルブロは行方不明…実は既に死亡している…の為、他にも候補者が居るには居るが、ザナックが王となるのは殆んど決定も同然だった。

 

「まあ、良い…ならば、王として問おう。

貴殿達は、どの様な答えが最適解だと言うのだ?

此の度の戦。

私は戦場に出向いておらず、レエブン候から顛末を聞いただけに過ぎないが、戦士長を一瞬にして斬り伏せた男。

それ以前、我々の常識、知識の外の強大な魔法を扱ったという人物に対して、如何な対応をすれば良かったと…どうすれば勝てたと、言うのか?」

「「「「……………………。」」」」

ザナックの言葉に、先程迄は元気に発言していた貴族達は、急に黙り混んでしまう。

具体案は浮かばないからだ。

 

「結果が出た後で、それを踏まえた理想的な ()()()()を言うのは、誰にでも出来るぞ?」

「「「「……………………。」」」」

「どうした? 誰も、何も、答えられないのか?」

更に続く発言に、更に沈黙する貴族達。

 

「…それが、現実、真実なのだろう?

惨敗の末に、国王(ちちうえ)を囚われた。

遺憾だが、帝国の申し出、全て呑むしか道は無い様だな。」

「殿下!?」「ザナック様?!」

「具体的な代案が有るなら、聞くぞ?

…無いならば、解散だ。

これから帝国への返答の書面を書かねばならないのでな。」

 

≫≫≫

「私は…弱腰な王として、歴史に残るのだろうな…」

会議室で、ザナックが自虐気味に呟く。

 

「いえ。最適解を即決だと思います。」

会議終了、貴族達が立ち去った中、唯一その場に残っていたレエブン候が、それを否定。

魔導王の強大さを、直接に目の当たりにしていた彼は、決してザナックを責める事は無かった。

 

「それに歴史と言うなら、既に此の度の戦、王国は ()()()()()います。」

両国が定めた開戦時刻前の奇襲や、人質を盾にしようとした行為等、確かに王国は不文律を破り過ぎている。

帝国と同盟を結んでいるとは云え、戦争に関しては中立の立場の竜王国の遣いも、それを見ていたのだ。

これ等は永久、歴史に刻まれるだろう。

だからこそ、ランポッサ、そしてバルブロ以上に王の資質を持っているであろうザナックに、レエブン候は今後の王国の建て直し、先の期待を寄せていた。

 

「レエブン候よ。

帝国からは、実は もう1つ、父上を帰す条件が記された書面が有ってな…」

「はい?」

そう言いながらザナックは、懐から封筒を取り出し、レエブン候に見せる。

 

「………………!!? これは…?!」

「私に『王足る覚悟を見せろ』と言っているのだろうよ、あの鮮血帝は、な。」

「しかし これは…事実ならば、私以上の()()ですな。」

「何を言うか、貴殿の蝙蝠は、あくまでも王国の為だったのだろう?」

それを見たレエブン候は最初は驚くも、直ぐに苦笑、それにザナックも含みの有る笑みを見せる。

 

「さて、帝国への返事も大切だが、先にラナーへの説得だな。

レエブン候、付き合って…いや、手伝ってくれるか?」

「承知致しました。

しかし、大丈夫ですよ。聡明な姫様ならば、理解して下さるでしょう。」

そして2人も、会議室を後にした。

 

 

▼▼▼

「~~~♪♪♪♪♪♪♪」

王城の一室。

その部屋の主である少女は、至福の笑みを浮かべ、回る様に踊る、踊る、踊る。

リ・エスティーゼ王国第3王女、ラナー・ティエール・シャルドロン・ライル・ヴァイセルフ。

部屋を訪れた兄のザナックから聞かされた話は、ランポッサ解放の条件の1つに、自身の関わる案件が有るとの事だった。

それは、ランポッサの代わりに人身御供となるも同然な内容。

しかし彼女は、それを王家に生まれし者の務めとして、嫌な顔1つせずに、受け入れた。

申し訳無さ、そして不安と安堵が混ざった様な顔をしたザナックとレエブン候が退室した後。

事前に御付きの侍女や護衛役の従者も席払いさせていた、誰も居ない部屋で1人…彼女は神妙な表情を一変させる。

 

「~~~♪♪♪♪♪♪♪♡」

そして長い黄金の髪を靡かせ、狂喜を孕んだ笑みを浮かべ、少女は回る様に踊る、踊る、踊る。

 

「全てはデミウルゴス様…そして その後ろに居られると言う、偉大なる御方の計画通り、なのですね。

そして それは、私の…」

 

 

▼▼▼

 

◆とある冒険者(モブ)side◆

王国はバハルス帝国に敗れた。

それにより、此処エ・ランテル、並びに周辺の町や村は、帝国領となった…らしい。

事実、王国警備兵の代わり、帝国騎士の鎧を着込んだ連中が、街中を巡回している。

つまりは俺も、バハルス帝国民になったって訳だ?

いや、それって考えてみたら、王国国民よりも()()かも知れないぞ?

クソみたいなクソ貴族…何処かの知恵無い子みたいなクソの下よりも、余程 良い生活が出来るんじゃね?

まさか、植民地隷属支配みたいな真似は、しないよな?

…そして近日、この周辺が王国領から帝国領に変わる事による、正式な式典行事みたいのが、有るとか無いとか。

バハルスの皇帝様が出張って、挨拶でもするのかね?

 

≫≫≫

 

ざわざわざわざわ…

 

あれから2週間が経過。

今日の正午頃、街の中央通り(メイン・ストリート)にて、本当に新しい主様を迎える御披露目の式典行進(パレード)が始まるらしい。

 

 

ざわざわざわざわ…ギギィィッ!

 

 

「「「「!!!!!!」」」」

そして人集りも最高に達した時、城塞都市の正面門が開いた。

そこから現れたのは、大きな帝国旗を掲げた帝国騎士を先頭に、綺麗に整列して行進する大勢の騎士達。

その後方に、2頭の8足馬(スレイプニール)が引く、巨大且つ豪華な装飾の馬車が!

屋根の無い、解放型の座席の中央に座っている若い男。

黒い鎧の4人の騎士に護られている人物こそが、噂のバハルス皇帝…鮮血帝なのだろう。

道に並ぶ市民(オレタチ)に、にこやかな顔を向けて手を振っている。

…って、この人達、もしかして時間まで街の外で ずっと、待機し(スタンバっ)ていたのですか?

 

≫≫≫

「初めましてだな、リ・エステーゼ市民の諸君。

バハルス帝国皇帝、ジルクニフ・ルーン・ファーロード・エル=ニクスである。」

市民に挨拶する皇帝。

 

「…先ず、最初に言っておくが、私は この街、そして近隣地域を治める事は無い。」

 

ざわ…ざわざわざわざわ…?!

 

はい?何を言ってんの、この人?

戦争で勝って、奪ったんですよね?

ほら、周りの人達も、どう反応すれば良いか、分からない状態になってますよ?

 

「無論、リ・エスティーゼから割譲されるだけで、放置する事も無い。

この地を、本来の持ち主に譲渡…いや、還すだけだ。」

本来の持ち主…ですか?

 

「…遥か昔。帝国と王国が2つに別れる前、まだ1つの国だった時代より遥か以前に、その強大な力で此の地を治めていた者が居た。」

…それ、何だか少し前に、聞いた気がするんですけど?

 

「私はバハルス皇帝の名の下、その者に此の地を返還する!

そして彼には、その権利が有る!

何しろ此の度の戦争、彼と彼の配下だけで終わらせたも同然だからな!」

ちょっと? ちょっとちょっとちょっとおっ??!

それって、ましゃか…?

 

「今から その彼を紹介するが…先に言っておく。

彼は、我々の常識からすれば、かなり個性的な姿をしている。

しかし、それを見ても決して、驚いたり怖がったりしないで欲しい。」

はい、もう誰だか分かりました。確定です。

 

「君達の主となる者…アインズ・ウール・ゴウン魔導国が王、魔導王アインズ・ウール・ゴウン!」

でっすよねーっ!

皇帝の呼び出しに応えるかの様に、正面門方向(むこうがわ)から歩いてきたのは、見覚えの有る、金色装備の骸骨兵(スケルトン)…&、真っ黒装備の巨大アンデッド騎士の集団!

帝国に倣ってか、先頭のスケルトンは魔導国の?旗を掲げての登場だ。

 

「「「「「!??????」」」」」

初見の一般市民の皆さんは、ドン引き&黙り。

いや、それは、仕方無い。

2度目の俺も、固まっているんだから。

叫ばないので無く、余りの未知の体験に、叫ぶ事も出来ないのだろう。

そのアンデッド達が、先程の帝国騎士同様、乱れぬ隊列で行進。

その後列には、前回にも お逢いした、赤橙のスーツを着た眼鏡の悪魔の姿が。

その隣にはエロっぽい白ドレスの、巨乳美女な…アレも悪魔…か?

 

「「「「「!??????」」」」」

更に後ろ。

 

ざわ…ざわざわざわざわ…

 

男女の悪魔の後ろを歩く2人を確認して、市民は再び ざわめき出す。

 

「何だ?」

「何故、あの2人がアンデッド達と?」

「嘘でしょ?」

それも、当然な反応。

エ・ランテルが誇るアダマンタイト級冒険者【ブラック&ゴールド】の、漆黒のモモンと金色のマカロンが、この異形の集団と共に歩いているのだ!

驚くなと言うのが、無理な話だ。

…因みに、ナーベさん♡の姿は見えない。

 

「「「…ひっ!?」」」

そして最後尾、その姿を見て、初めて小さくだが、悲鳴を上げる者も出始めた。

それは4体の漆黒の死の騎士が担いだ玉座台に座る、黒いローブ…で無く、金と赤…派手な色彩のローブを身に纏った骸骨様…魔導王だった!

 

≫≫≫

「「「「「…………………。」」」」」

魔導王率いる軍勢が、帝国騎士団の元に到着。

 

ふゎ…

 

そして魔導王は座台から ふわりと飛び降り、皇帝の傍まで歩み寄ると、

 

ガシッ!

 

「…ふっ」

「くくっ…!」

互いに笑みを浮かべ、ガッシリと握手した!?

 




モモンガさんの衣装は、4期1話のメイドさんチョイスのヤツです。
 
次回『建国宣言! アインズ・ウール・ゴウン魔導国!!(今度こそ)』
乞う御期待!感想も宜しくです。
 


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建国宣言!アインズ・ウール・ゴウン魔導国!!

 
【訂正と お詫び】
ザイトルクワエの話で、漆黒聖典・星占千里の本名を書いていましたが、それは公式で無く、別のオバロ二次のオリジナル設定だと知ったので、修正しておきました。
件の二次の作者様、すみませんでした。
 


◆モモンガside◆

 

 

『アインズ、お前は既に、見た目が ()()なんだ。

必要以上、恐怖をバラ撒かない方が良い。』

 

 

式典前、街の外で待機している時に言われた言葉だ。

ふっ、鮮血帝の言葉とは、とても思えないぞ?

ジルは本当に、ムチャ振りの達人だな。

アンデッドである俺に、そんなのを要求してくれるなよ。

…と言うか、『見た目が ()()』って、酷くない?!

 

≫≫≫

「…初めまして、だな。エ・ランテルの諸君。

我が友、皇帝ジルクニフから紹介されたが、私はアインズ。

嘗て此の地に、アインズ・ウール・ゴウン魔導国を築いていた魔導王…アインズ・ウール・ゴウン、その人である!」

 

ざわ…ざわざわざわざわ??!!!

 

ジルとガッシリと握手…からの俺の自己紹介に、市民が ざわつき始めた。

まあ、当然だ。寧ろ、いきなりのアンデッドの軍勢の登場にパニックにならなかった、今までの状況の方が異常だったんだ。

 

「粛に!

魔導王様が話されておられるのだ!

静かにしたまえ!』」

『『『『『『『…??!』』』』』』』

此処でデミウルゴスが、スキルで民衆を無理矢理に黙らせる。

 

「…失礼。いきなりの横暴は謝罪しますよ。

しかし、先も言いましたが、魔導王様…アインズ様が話されるのです。

今から ()()は解除しますが、その後は改めて、魔導王様の御言葉を静聴する様、願います。

で、無いと その時は…解りますね?」

『『『『『『『!!!?』』』』』』』

「…では、『自由にして良し』」

『『『『『『『………。』』』』』』』

その後の、理性的な言葉使い。そして軽い()()を添えて、デミウルゴスがスキル解除。

すると民衆は、黙って俺に注目した。

ジル…これは、セーフだよな?

 

「…それでは、アインズ様。」

「うむ。」

さて、王としての、所信表明ってヤツ?を、始めますか。

 

「一番最初に統治者として言っておくが、私は君達を、恐怖で縛る心算は全く無い。

…かと言って、欲望の儘に振る舞うのを推める訳でも無い。」

『『『『『『『………。』』』』』』』

俺の話を黙って聞く、エ・ランテル市民。

デミウルゴスの暗の、『騒げば●す』が効き過ぎている。

ついでに言えば、此の場から去ろうとすると、それは それで、即●されるとか思っているのだろう。

 

「………………。(¬_¬)」

止めてくれ、ジル。

そんな目で俺を、見ないでくれ。

これは俺は悪くない…これは全部、デミウルゴスの所為なんだ。

 

 

◆モモンガside・了◆

 

≫≫≫

 

◆とある冒険者(モブ)side◆

「…私は見ての通り、アンデッドだ。

故に、人間が持つ様な物欲、特に金銭欲や色欲肉欲は持ち合わせていない。

必要以上の重税を課したり、偶々に目に付いた娘を無理矢理に連れ去り、己が欲望の捌け口に…そして それに飽きたら棄てるという事も無い。

そして勿論、犯罪組織と手を結ぶ等も無い。

…何処かの国の貴族の様に、な。

これは魔導王…『王』を名乗る者の矜持に掛けて誓おう。」

やだー、魔導王様。そんなクソみたいな貴族、居る訳ないじゃないですかー。

それ、何処の王国の貴族ですか?

自身の、王としての これからの国の在り方を語る骸骨の王様。

既に過去、2度程 会っている事も有り、恐ろしさだけで無く、敵で無い者への友好的な部分は分かっていたからか、全く…とは言わないが疑い無く聞き入れている俺が居る。

 

≫≫≫

「アンデッドの治める国が、死の都になると思うか?

私は、思わない。

これは常々、シモベ達にも言っている事だが、瓦礫・屍の山の上に置く玉座程、虚しい物は無い。

確かに知性理性無き亡者は、生有る者を怨み妬み、襲い掛かるだろう。

しかし、私は違う。

生きる者、今この時その時を活きる者を愛おしく思う。

1度は死んだ この身だからこそ、生の素晴らしさを理解している心算だ。

だからこそ、私は生きていない… ()()()()()()()()()()()()()で無く、人間だろうが異形…それがアンデッドだろうが、()()()()()()を作りたい。」

その後も演説の中、節々で自分がアンデッドである事を強調しながら話す骸骨様。

活きる…ね。

確かに この魔導王からは、見た目以外は死人の要素は見られないかも知れない。

 

人間(ヒト)と異形の共存は不可能だと思うか?

私は、そうは思わない。

事実、私はジルクニフ皇帝、そして竜王国ドラウディロン女王とも、『公』だけで無く『私』に於いても懇意とさせて貰っている。

そして この中にも知っている者も居るだろう、既に亜人との共存を成している、開拓村の事を。

私からすれば種族の違い等、所詮は塵芥に過ぎないのだよ。」

うっゎ、凄ぇー説得力!

確かに このヒトからすれば、本当に大した違いは無いのだろうね!

 

≫≫≫ 

「…尚、法律については、現状の王国法を少し改正する程度で終わると思う。

後日、具体的に公式の発表をするだろうが、生活面に於いては、其程に弄る部分は無いだろう。

但し、貴族にとって都合良く進む事柄には、大きく修正が入るがな。

平民であろうが貴族であろうが、罪を犯した者 は、その重さに従って平等に裁くべきだと、私は考えている。

それは私のシモベ達…そして私自身も、決して例外では無い。」

『『『『………!!?』』』』

お~ぉ? 何だか、声無き絶叫が聞こえたのは、気のせいか?

視界の中、クソ貴族が数名、青い顔をしてるぞ?

もしかして『貴族EREEEE!』したかったですか?残念!

本当に この骸骨様、もしかして名君ですか?

 

 

◆とある冒険者(モブ)side・了◆

 

≫≫≫

 

◆まろんside◆

「そして…今、此の場の皆が、最も問いたいであろう事に説明しよう。

私の後ろに控える、アダマンタイト級冒険者、漆黒のモモンと金色のマカロン。

この2人には戦争の後、直ぐに接触して、私の考えを述べたのだ。

彼等は、私と同じタイプのアンデッドと過去に会った事が有るそうで、会話がスムーズに進んだのは幸いだった。」

貴族だろうが身内だろうが、罪人は容赦無く平等に処す発言の次。

モモンガさん(モモン)(マカロン)の事について、捏造込み…それは既に俺達の事だけじゃないが…で話し出した。

因みにだが、俺の隣に居るモモンは、パンドラが化けた物だ。

要約すれば、俺達は魔導王の理念に同意。

特に俺が、まろんで無くマカロンとしても、貴族やら偉い人を凄く嫌っているのは、一部には知れ渡っている。

モモンは兎も角、そんな俺が『王』の下に就いたのだから、市民の驚き具合は相当な物だ。

 

「…そして この2人は魔導国内の重罪人、及び国に対して反逆行為を働いた者の処刑執行人となった!」

『『『『………!!?』』』』

今日 何度目かの、声にならない どよめき。

 

「だからこそ…諸君には彼等の手を、血に染める事が無い様に願いたい。」

『『『『………………。』』』』

これは多少 卑怯だが、有効なカード。

自分で言うのもアレだが、俺達(ブラック&ゴールド)は その実績等から、エ・ランテル市民からの支持・信用は、かなり高い。

その俺達を処刑執行役に据える事で、治安維持…犯罪行為を起こせない様にした訳だ。

俺達に汚れ役をさせる訳には行かない…住民に、そう考えさせる。

魔導王の為で無く、俺達の為に…新しい国の生活に従う。

それが魔導王…正確には、デミウルゴスの狙い。

デミウルゴス…多分だがジルクニフ君、『恐怖はダメだが罪悪感で縛るのは おけ』とも考えていないと思うぞ?

 

「そして、彼等2人との約束。

もしも私が暴君と化したらなら、その時は彼等が私を滅ぼす。

それが、私の下に就いた条件だ。

これは、彼等にしか出来ない事だからな。」

『『『『………。』』』』

然気にモモンガさん、『此の2人なら自分を斃せる』とか言ってるが、これもクソ貴族の前で それを言う事で、裏から 俺達に接触、魔導王暗殺を謀ろうとする反逆者予備軍の炙り出しの伏線だ。

 

≫≫≫

「そして最後、此処まで聞いて、それでも私の治める国には住めないと言う物が居るなら、私は止めないし、責め咎める事も無い。

リ・エスティーゼ王国にでも流れるなり、好きにすれば良いだろう。

その辺りは王国にも、諸君等を受け入れて貰える様に、話は着けてある。」

その後も色々と話し、最後にと言った この発言。

『去る者 追わず』は良い。

…しかし、王国という受け皿を用意していると言っているが(モモンガさんとジルクニフ君が、事前に王国に お願い(OHANASHI♡)していたw)、只でさえ戦後処理に追われる敗戦国。

領地が狭まった処に、難民を受け入れる体制が、今の王国に整っている筈が無い。

実際、モモンガさん達は逃げ込んだ者の受け入れを頼んだだけで、その後の待遇については、何の要求もしていない。

国を出た後のアフターケア迄、面倒を見てやる事は無いのだ。

更に言えば、この戦争で かなりの数が死んでいるが、クソ貴族が領地運営している国に逃げるのが良いとする者が多いとは思えない。

更に ついで、モモンガさんは今までの演説で、如何に王国貴族がクソか、そして魔導国に於いては その様な横暴は許さないと説いていた。

それ等を踏まえて、民衆が如何なる判断をするか…

 

 

◆まろんside・了◆

 

≫≫≫

 

◆モモンガside◆

「話したい事は全て話した…次が、最後の言葉だ。」

そして、演説も締めに入る。

建国に際して、民衆から恐怖されるのは、仕方無い言葉だ。

見た目、『それ』だしな!(泣)

しかし、恨まれる事は無い様に、仕込みは しておいた。

あの戦争での最初の魔法、《的狙撃(シューティング・)星屑光弾雨(スターダスト・レイン)》の標的設定(マーキング)

エ・ランテルは勿論、魔導国領となる町や村から徴兵された者は皆、『死なない設定』にしておいたからな。

だから恐れられこそすれ、恨まれる事は無い…筈!多分!

さあ、最後、締めの言葉だ!

 

「「wwwwwwwwwwww~www」」

…って、其処の2人!その悪い笑顔、止めなさい!

ハァ…それじゃ、締めるぞ!

 

「それではエ・ランテルの市民諸君!

この日、この時、この場所にて、私はアインズ・ウール・ゴウンの名の下に、魔導国…

アインズ・ウール・ゴウン魔導国建国を、宣言する!!

 




準レギュラー?なモブ冒険者君。
但し、多分もう、出番は無いよ?
 
【次回予告】
 
◆まろんside◆
(コホン)…アインズ・ウール・ゴウン魔導国建国を、宣言する!
モモンガさん、カッケーっ!(笑)
良かったな。練習の成果、バッチリだ!
緑の発光もしなかったし、よくできました、はなまる!
 
「お陰で私と まろんの腹筋は、限界突破だ!」
「…止めてくれないか?」
しかし魔導国建国は良いが、新しい何かを作るのは、問題が山積みされていくのが常だ。
次々に提案される無茶振り新法。
その内容に、新米王様モモンガさんの胃は限界突破だ!
 
「胃、無いけどね!」 
「アインズ、頑張れーっ!!www」
「ぃゃ…本当に、止めろくれないか?!」
そうした中、王国の方も大きな動きが、有るらしい?
 
「その件は、私も出向く事になっている。」
「同じくだ。」
え? モモンガさんとジルクニフ君も、王国に出張る?
 
次回『ザナックの決断(予定)』
乞う御期待!感想も宜しく!
 


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王の覚悟

 
【前回の あらすじ】
 
「アインズ・ウール・ゴウン魔導国建国を、宣言する!!」
 


◆まろんside◆

モモンガさんの魔導国建国宣言は、予想以上に民衆から歓声を受けた。

デミウルゴスによる脅しとは違う、明らかに歓迎の拍手だ。

王国貴族より、アンデッドの施政の方がマシと思われた…と解釈して良いのだろう。

…って、王国貴族、マジに どんだけなのだ?!

 

≫≫≫

「ほ…本当に だ、だだだだ、大丈夫なのでしょうか、まろん殿?」

「ああ。心配するな。

少なくとも俺とデミウルゴス、コキュートスは、アルベドの味方だ。」

「な…何だか その笑みに邪な物が宿っている様に見えるのは、気のせいですか?」

失礼な。そんなのは これっぽっちしか考えていないぞ?

本当に、モモンガさん…とアルベドの事を思っての事だ。

『面白そうだからw』みたいな考えは、少ししか持っていない。

…何の話かと言うと、『王様が独り身って可笑しいよな?』って話だ。

そう、仮にも魔導()と名乗るからには、妃なる存在は必須。

せめて、ジルクニフ君みたいに正妻を娶る事無くも、側室ハーレムを作る…いや、アレはアレで、問題が有り過ぎな気がするが。

そして その御相手は、今のナザリックから考えると、アルベド以外に居ないだろう。

転移前、モモンガさんがアルベドの設定を『モモンガと相思相愛』と書き換えた件。

これがモモンガさんの仕業だというのはバレていないが、その影響でモモxアルは、ナザリック内では公認カップルとされている。

しかし、その後の進展の無さに『早く くっつくべきです。』『揃ってヘタレっスか?』『うわぁ』『えっちは…凄く気持ち良いですよ♡』とか思っているシモベも、実は かなり多い。

世継ぎ推進のデミウルゴスや、それによる()()ポジションを狙ってるコキュートス。

更には正妻の座は諦めたとして、愛人・妾の立ち位置を目論むシャルティアは、その最たる存在だ。

そんな訳で、最初はストレートに、モモンガさんにアルベドとの 既成事実成立 結婚話を振ったら この骸骨、あたふたテンパって緑の光を連続発光。

精神安定が追い付かなくなってしまった。

ダメだ、このヘタレDT…早く何とかしないと!

 

「…もしかして お前も、ヘタレてるのか?」

…だから、今度はアルベドの方に話を振ってみたのだが、

「(゜д゜)は…はぃぃい?!

べ、別にヘタレてなんか、いませんし?

どちらかと言えば私、肉食系を自負しておりますし?

そもそも、ヘタレなサキュパスなんて、聞いた事も有りませんしぃいっ?!

だ、大体、アインズ様が望まれるならば、何時でも捧げる所存ですし?

し、しかし、女である私の方から求め迫る様な、そそそ、そんな はしたない真似、ふじこふじこ!」

「…………………………………。」

成る程。モモンガさんが未だDTを守ってこれたのは、アルベドの方にも問題が有った訳だ。

…って、仮にビッチ設定キャンセルしたとしても、サキュパスって普通(デフォ)でビッチじゃないのか?

 

≫≫≫

「ま、まろんサン、やっぱりマズイですって!

こういうのは、もっと段階を重ねて…」

「黙れヘタレDT。

最後まで…じゃないにしろ、もうアルベドに手、出してんだろ?

友達として言うぞ。さっさと責任取れ。ケジメ付けろ。色んな意味でな。」

「ぅう…っ!」

はい。だから、強行手段に出ましょうね。

スィートルームにリフォームした監禁部屋(趣味:大工仕事のデミえもんが2時間で改装してくれました)に、モモンガさんとアルベドを閉じ込める。

人化のアイテムと、ンフィーレア特製の精力剤(ポーション)を添えるのも忘れない。

 

「モモンガさん…これは王様が独身云々関係無くて、マジに覚悟決めるべきだからさ、アルベドの為にも。

漢、魅せてみろ!」

「まろんサン…」

「明日の朝には、メイドが部屋を開けに来る様になってるから。

…で、朝まで何も無かったら、その時は、分かってるよな?

「ひっ?!」

「それじゃ、ごゆっくり♡」

 

ガチャンッ…!

 

「ちょ…おま…

ま、まろんサン?まろ゙んザン~っ!?」

 

 

◆まろんside・了◆

 

▼▼▼

 

◆とある王国貴族side◆

エ・ランテルで魔導国なる国の立ち上げが宣言されてから5日。

ザナック王子…いや、ザナック王に呼び出しを受けた。

自身が正式に即位する前に、新体制について話し合いたいとの事だ。

当然、私だけで無く、他の貴族も招集しているそうだ。

ふふん。この戦争で、かなりの貴族も死んでしまったが、幸いと言うべきか?…その殆んどが、貴族派閥に属していた者達だ。

貴族派の中で、最も厄介な人物…レエブン候が生き残っているのは思う部分も有るが、今後は我々 王族派に有利な体制が作られるのは、間違い無いだろうな。

 

≫≫≫

「さて…どの様な話を為されるのか。」

「いや、全く。」

話し合いが行われるという部屋…普段、会議に使うのとは別の部屋に案内されると、既に爵位様々、10数人の貴族が その場に居た。

…しかし、これからの王国の事を話し合うとすると、その数は少ない。少な過ぎる。

何よりも、レエブン候、ペスペア侯、ウロヴァーナ辺境伯の姿が見えない。

大貴族と呼ばれるのは、私だけだ。

他は下級から中級の貴族ばかり。

この面子では、話も何も無いぞ?

まさか、彼等がザナック新王の呼び掛けを無視するとも思えない。

 

「皆、多忙な中、今日は御苦労だな。」

「ザナック王j…王?」

その後も何人か、下~中級の貴族が顔を見せて暫くすると、ザナック様が多数の兵を引き連れ、我々の前に現れる。

護衛としては、些か多過ぎないか?…と思える程の人数だ

 

「まだ、レエブン候達が、到着しておりませぬが?」

「ああ、問題無い。

今回 私が呼び出した者は皆、もう揃っている。」

「「「「????!」」」」

私の言葉に、普段から平和ボk…コホン…野心の欠片も見せた事の無かった人物が、黒い表情を浮かべた。

 

ザザザザザッ…!

 

「「「「!!!!?」」」」

同時、王の護衛兵が、我々を囲む様に槍と剣を構える。

出入り口も、完全に抑えた形だ。

 

「王!これは一体、何の冗談ですかな?」

これに、下級子爵がザナック様に問い質す。

 

「冗談? はっはっは!

決まっている…分かっているだろう?

今 此の部屋に居る、殆んどの者が、八本指と繋がりを持っていたのが判明したから…その裁きを下すのだよ!」

何? 八本指だと?!

いや、私は奴等とは、全く関わりを持っていないぞ?!

この者達が本当に、裏で八本指と繋がっていたなら、それでは処されても仕方無い…寧ろ『もっと殺れ!』だが、私まで間違いで処分されるのは納得往かないぞ!?

 

「ザナック様! 八本指と係わる等、それは何かの間違いでs

「証拠なら、有るぞ?

ついでに、お前達が その証拠…繋がりを消そうとした痕跡も、新たな証拠としてな。

(ラナー)の友人の冒険者は、本当に有能な様だ。」

「??!」

 

パサ…

 

「「「「「…ッ?!!!」」」」」

下級貴族が物申す途中、それを遮り、八本指と貴族が繋がっている証拠とやらが記されている、多量の羊皮紙を見せるザナック王。

それには確かに、誰が如何様に八本指と関わっていたか、詳細に記されている様だった。

 

「そして残念な事だが、それの中には、ボウロロープ侯や兄上…バルブロの名も入っていた。

ボウロロープは既に魔導国領の遺跡に攻め入った際に死亡しているが、バルブロ。

…現在は行方不明で捜索している此についても、改めて犯罪者として、捜索をする事になるだろう。」

まさかの事実。よもや、大貴族や王位継承の筆頭となる者が、巨大犯罪組織と裏で繋がっていたとは!

そして それを…身内すら裁かねばならぬ重責からか、悲痛な表情を浮かべるザナック様。

 

「ま、待って下さい、ザナック様!」

「「「「王!」」」」

「どうか、考え直しを!」

「こ、今後は、この様な事は!」

確たる証拠に言い逃れが出来ぬと思ったか、そして、この新しい王は先代(ランポッサ様)と違って甘くないと理解したか、慌てて赦しを嘆願する貴族達。

 

「…………………。」

 

ス…

 

しかし それを跳ね除ける様に、ザナック様が無言無表情で右手を上方に掲げると、

 

斬!斬々々々々々々々々々々!!

 

「「「「「ぎゃぁぁああっ?!!」」」」」

「「「「「うあぁぁぁあっ?!!」」」」」

「「「「「ぐぺぺぺーーっ!!?」」」」」

兵達が一斉に動き出し、その迷い無き槍と剣が、貴族という身で在りながら、犯罪組織と繋がっていた愚か者達を貫き斬り棄てる。

 

「…………………………。」

結果、新しい王に召集された者で、この場で生きているのは私だけとなった。

当然だ。私は八本指とは、何の関わりも持っていないんだ。

処断される謂れは、何も無いぞ!

 

「…さて、ブルムラシュー侯。」

「はっ!」

此処で、ザナック様が私に話し掛ける。

 

「何故、貴殿が今 生きているか、分かるか?」

「はい!それは、私が犯罪組織とは、何の繋がりも持っていなかったからです!」

ザナック様の問いに、惑い無く堂々と答える。

 

「ふむ。…では、この日 何故、この者共と一緒に招集した理由も、もう解るな?」

「は・い…?」

「しらを切るのか、まさか本当に心当り…いや、自覚が無いのか…?」

続く質問に対する反応に、ザナック様は少し呆れた様な表情を見せる。

 

「この者共は、寧ろ ついで。

本命は貴殿だったのだよ、プルムラシュー候。」

「は…?」

「もう、良い。

…おい、()()()()を呼んできてくれ。」

「はっ!」

そして兵士の1人に、何者かをこの場に連れてくる様に命じるザナック様。

この断罪劇の本命が私だと?!

一体、何の事だ?

 

「実は帝国から、国王…父上の身柄返還の条件は領土割譲に魔導国の認知、ラナーの差し渡しの他にも、幾つか出されていてな。

その1つに、()()()()()()()()()()()()()と言うのが有った。」

成る程…それで、この断罪…大量粛清か。

国を蝕む原因を消してみせろ…という意味か。

ふん、あの鮮血帝らしい注文だな。

 

≫≫≫

 

カチャ…

 

「失礼します、よ、と。」

「…………………。」

そうした やり取りの途中、開いた扉から顔を見せたのは、黒い鎧で身を固めた大柄な男が2人。

 

「…こうして直に顔を合わせるのは、初めてだな? プルムラシュー候。」

続いて、高貴そうな装束の若い金髪の男。

私を知っているだと? 誰奴なのだ?

 

「バハルス帝国皇帝、ジルクニフ・ルーン・ファーロード・エル=ニクスである。」

…………??!

そんな不信感が(かお)に出ていたのか、名乗りを上げる若い男。

いや…皇帝だと!? 何故、バハルスの皇帝が こんな処に?!

 

「…失礼する。」

……??????!!!!!!

そして、皇帝の後から入ってきた人物。

いや…アレはヒトと言って良いのか?

それは派手な衣装を纏った、髑髏(アンデッド)だった。

ま、まさかコイツが、噂の魔導王か?

 

「バハルス皇帝の登場で、理解出来ただろう?

…もう、全て知っているのだよ、プルムラシュー。」

…………………っ!!?

  




①まろんは純粋に友人として、モモンガさんの()()を願っています。
「面白いからw」…みたいな考えは、本当に少ししか持ち合わせていません。
…で、モモンガxアルベド、結局どうなった?…は、次話以降で書きます。
 
②ラストのモモンガさんの コスプレ 衣装は、魔導師ハイン(FFシリーズ)をイメージしてみて下さい。


 
【次回予告】
 
◆ジルクニフside◆
ザナックよ、貴様の王としての裁量と覚悟、この目で直に拝ませて貰うぞ。
今後の王国と帝国、魔導国との関係が如何なるかは、全て貴様の決断次第だ。
…に、しても、
 
「アインズ…その格好、前回にも増して、派手だなぁ…w」
「待ってくれ! 前回も そうだが、これは別に私が自分で選んだ訳では無いぞ?!
これ等は全部、メイドが、だな…」
「いや、似合ってるよ、モモンガさん♪
アルベド達の評判も良かったじゃない。」
「顔が笑ってますけどっ?!」
「因みに その付髪(ウィッグ)は、俺のアイデアだ。
ジルクニフ君も どうだい?」
「…私には その様な物、必要無い。」
「…………………(今は、な。)
何か、言ったか?!
 
次回『王の覚悟②』
乞う、御期待だ。
…私は断じて、禿げていない!!
  


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王の覚悟②

 
前回から引き続き、王国貴族sideから
 


◆プルムラシューside◆

な…何故バハルスの皇帝が、此の場に居る?

もしや、私が此処に呼び出された理由とは?

まさか此奴、この私を()()()心算か?!

 

「プルムラシュー、貴様は以前からバハルス皇帝に、我が王国の情報を流してくれていたらしいな?

このジルクニフ殿が証人だ。

誤魔化しは利かないぞ。」

「そういう事だよ、プルムラシュー殿。」

「…くっ!」

…やはり!

えぇい、この若僧が!

恩を仇で返すとは、この事か!

今まで私が、どれ程 帝国に有益な情報を、くれてやったと思っているのだ?!

 

「先にザナック王に誤解されない様に言っておくが、私は…我々帝国の方から、この者に情報を求めた事は、只の1度も無い。

この男が頼みもしないのに勝手に、色々と流してくれただけだ。」

な、何を今更…『悪くない情報だ』とか、言っていたでは無いか!?

 

「しかも その情報も、帝国から間者を忍ばせれば、結局は簡単に入手出来そうな物ばかりだったからな。

そういう意味ではザナック王よ、この者を責めるのは止めてやってくれないか。

何れにせよ、知り得た事だったのでな。」

「いや、普通に間者を…とか言うのは、出来れば止めて頂きたいのだが…」

何…だと? それじゃあ何か?

私が今まで、帝国にしてきた事は、全て無駄な話だったとでも、そう言いたいのか?!

 

「まあ、一応は謝礼の意味で、その間者を送り込むのに必要な経費の、半分位を渡してやっていたが。」

「ジル…それがダメダメだったのだと思うぞ?

一番最初の それで味を占め、次々と続いたのでは?」

皇帝の言葉に、アンデッド…魔導王?が溜め息口調で駄目出しをしてきた。

 

「…兎に角、そういう事だ、プルムラシュー。

非常に残念だ。まさか、王族派の お前が、陰で帝国と繋がっていたとはな。」

「お待ち下さい、ザナック王!

私が その様な事をする筈が!?

こ、これは、帝国の策謀ですぞ!

この私を、陥れr

「見苦しいぞ! マネイカ・ネイゴン・プルムラシュー!!」

…????!

 

 

◆プルムラシューside・了◆

 

≫≫≫

 

◆ジルクニフside◆

…さて、この新しい国王の裁量、直と拝ませて貰うぞ。

戦勝国として、敗国である王国に、捕虜とした国王(ランポッサ)の返還に課した条件。

 

 

・城塞都市エ・ランテル並び、トブの大森林周辺の王国領の割譲

・アインズ・ウール・ゴウン魔導国の認知

・上記割譲領土の魔導国への譲渡の承認

・ランポッサⅢ世の王位退役

・ランポッサの代わりに、ラナー王女を帝国に呈出

・その他

  

 

…その他については、貿易関係事が主だった内容だが、実は それとは別に、もう1つ。

新王ザナックに、この貴族(プルムラシュー)の事を教えた上での一言。

 

 

王としての器量と覚悟を示せ

 

 

…コレについては、良い意味で私の予想の斜め上な応えを、この新王は見せてくれた。

前座とでも言うか、まさか八本指と関係を持っていた貴族に対しても、()()を見せてくれるとはな。

少しばかり評価を、上方に修正しなくては。

 

「先に処分した者達は、単に犯罪組織と結び付いていた…まだ単に犯罪者として処す事が出来た。

本来ならば、これ等も公に審議した上で、処分しなければならない処だが、それをやろうとすると、また有耶無耶にされたり、最悪 逃げ出される可能性も有ったからな。」

確かに。貴族を罪人として裁くならば、それなりの手順が在るのは当然。

しかし それは、逃げ道を作る時間を与えるのと同じ。

 

「…しかし、貴様は只の犯罪者で済ませる問題では無い。

何しろ我が国の情報を他国に、しかも抗戦中の国に漏らしていたのだからな。

立派な反逆行為だ。

()()()と違い、貴様個人だけを裁くには足らぬレベルだ。」

「…っ!」

床に転がる無数の屍に目を向けながら、話を続けるザナック。

それに対してプルムラシューは もう誤魔化しが効かないと開き直ったか、己の主を敵の様に睨み付ける。

 

「貴様の処刑は当然として、御家の方も資産全て没収の上での爵位を剥奪させて貰うぞ。」

「そ、そんな…?!

じ、ジルクニフ様!」

「む?」

此処で最終宣告されたプルムラシューが、今度は私に声を掛けてきた。

 

「問いたい! この状況、如何に、自身でも掴めた情報だったとは云え、それを教えてきた私に対して、何か助け船を出される心算は無いのか?」

「…は?」

おっと、いかんいかん。

余りの質問に、間抜けな声を出してしまった。

と言うか、この男は、一体 何を言っているのだ?

 

「………………………。

何を言っているのか、よく解らんが。

情報の見返りなら その都度、金を送り渡していた筈だが?」

「し、しかし!」

「もしかして、アレを手土産に帝国に鞍替えしようとでも、そう思っていたのか?

冗談にしては面白くないぞ?

他国に自国の情報を売り渡す。

そんな人間を、私が…帝国が受け入れる筈も無いだろう?」

「な…!?」

帝国の情報を、今度はスレイン法国辺りに流されでもしたら、堪った物では無いからな。

 

≫≫≫

「んぐぁぐーっ!??」

…その後、あの裏切り貴族は、目隠し猿轡付きで拘束されて、兵士達に何処かに…恐らくは地下牢だろうが…連れて行かれた。

後日、断頭台…だ、そうだ。

 

「見事な裁量だった…と、言わせて貰うぞ、ザナック王。」

「ありがとう…と言うべきか?

私の覚悟は、御眼鏡に適いましたかな?」

「ああ。実際に あの男の首を、跳ね落としたならば、その時はランポッサ殿を王国に帰す事を約束しよう。

…と、その前に、」

「ラナー…か。

アレとは決して良い仲だったとは言えぬが、嫌い合っていた訳でも無い。

母親が違うと云えど、妹なのは変わりない。

王では無く兄として言わせて貰うが、好くしてやって欲しい。」

話は今後の事に。

とりあえずは、公にはランポッサの代わりに人身御供となる、ラナー王女の件だが…

 

「ああ、それば私にでは無く、此方の魔導王殿に言ってくれるか?」

「な…?!」

「彼女の"才"を、アインズは高く評価していてな。」

「そういう事だ。

今後 彼女は、我が魔導国の政の一角を担って貰う事になる。

私がジルクニフ皇帝と共に、此の場に参じたのは、それを伝える為だ。」

「な…」

いきなりの行き先変更の報せに、しかも単なる人質(おきゃくさま)扱いで無く、国営に携わせるの発言に、新王は目を大きく見開く。

 

「ラナー王女が只単に、『御優しい お姫様』だけで無い事に気付いているのが、貴殿だけだと思っていたか?」

「何処から、どうやって其れを…

アレの()()に気付いているのは、私とレエブン候だけだと思っていたが…つくづく恐ろしい御人だな、貴方は…いや、貴方達は。

私は単純に、ラナーの輿入れとばかり思っていた…」

「はっはっはっ…っ!」

確かに そういう風に受け取るのが、大衆的に見ても、自然な話だが…

あの女を妻として迎える、だと…?

()

冗談では無いぞ!誰が、あんな女を?!

 

「あぁ、念の為に言っておくが、私も彼女を、そういう風には考えてないからな?

安心して良いぞ?」

知ってるよ。何しろ、新婚さんだからな~?w

 

  

◆ジルクニフside・了◆

 

▼▼▼

 

同じ頃…

 

「バハルスの皇帝と魔導王が今、この城に来られているそうです。」

「………!!」

リ・エスティーゼ城の一室にて、黄金の形容が相応しい髪の少女…リ・エスティーゼ第3王女ラナーが、従者の少年・クライムと話していた。

 

「私を、お父様の身代わりとして魔導国に招き入れる為、迎えに来たのでしょう。」

「…な?! あ、あの、アンデッドの王の元です…と??!

ラナー様は、バハルス帝国に行かれる筈では…?」

 

≫≫≫

 

◆ラナーside◆

ふふふ…クライム、驚いているわね。

それも仕方無き事。

表向きには、私は帝国に囚われの身となった国王の代わりに差し出される、悲劇の お姫様…という事になっているのだから。

それが まさか、実はアンデッド…魔導王陛下の下に就くなんて、誰にも想像出来ないでしょう。

しかし それも、全てが戦争が始まる前に決まっていた事。

そう…あの戦場で お父様が()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()のも、全ては私が魔導国に入る為の仕込み。

それも全ては、クライムの為。

あの日の夜、デミウルゴス様が私を訪ねて来た時に、全ての筋書きが、決まったのですよ?

 

「クライム…私は魔導国に入ったら、もう2度と王国の地を踏む事は無いでしょう。」

「………………………………。」

「それは王国が魔導国、帝国に対する敵対行動を取らせない為の人質。

聞く処によれば、魔導王様は『王』を名乗られると同時、お妃様を娶られたばかりだとか。

そして魔導王様は、男女の間には ヘタレ 奥手 誠実な御方と聞いています。

無体な事は されないでしょうけど、それでも一生、お人形さんの様に飾られた儘な お客様で終わるやも知れません。」

「姫…様…」

嗚呼、クライム!

そんな泣きそうな顔をして!

私を可哀想だと思ってくれているのね!

可愛い!その顔、凄く可愛い!

 

「クライム、魔導国…魔導王様は、私の魔導国入りに際して、1人だけ、御付きを認めて下さっています。」

「…………………。」

「魔導国に入れば、王国王女の肩書きも、只の飾りに過ぎない…

ヴァイセルフでも何でも無い、只のラナーになるでしょう。

…それでも良いのなら、私に付いてきてくれませんか?」

「…………………………………。

私は…私が忠誠を誓ったのは、王国の王女様では御座いません。

私の忠誠は、()()()()に在るのです!

例え貴女様が王女で無くなったとしても、それは揺るぎ無き事。

…どうか、御命じ下さい。」

「…ありがとう、クライム。」

ええ、分かっていたとしても、こんなにも想定通りに話が進むなんて、また嬉しくて踊ってしまいそう♪

ああ、そうだわ。

パンドラズ・アクター様が仰有っていました。

この様な時は、『Wie geplant!』…でしたわね。

 

 

◆ラナーside・了◆

 

▼▼▼

それから2週間後。

 

「父上…少し太りましたか?

帝国の食事は、余程 口に合った様で…」

「…お前は少し、痩せたみたいだな。」

バハルス帝国に囚われていたリ・エスティーゼ国王ランポッサⅢ世が王国に帰還。

王の座を改めて正式に、王国第2王子ザナックに継承させた。

 




【次回予告】
 
◆デミウルゴスside◆
アインズ様が魔導国…魔導王を名乗られた事による、周辺国家の反応は様々。
各国家が様々な思惑を浮かべ、表から裏から動き出したみたいです。
当然、我が魔導国としても、新興国家として、他国には挨拶に伺うべきでしょう。
まあ、本音は『貴方達が此方に挨拶に来なさい』ですがね。
しかしアインズ様は、その様な傲慢な振る舞いを好まれないので、私達シモベも それに従う迄です。
その様な訳で この先、帝国や竜王国、ついでに王国以外の国とも関わる事になるでしょうが… 
友好を築こうとするならば、其れは善し。
従属を誓うなら、尚の事 善し。
無関係を貫こうならば、其れは其れで、まぁ良し。
しかし、敵対を示すならば、その時は…
 
 
次回『アインズ・ウール・ゴウン魔導国(予定)』
どうぞ、御期待下さい。感想も、よろしくお願いします。
 


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Raised a Flag of Death!

 
1日に複数話UPしたのは久し振りだ…
  
≫≫≫
 
皆様、長らく御待たせしました。
()()()()()の登場、DEATH!
 



▼▼▼

モモンガがアインズ・ウール・ゴウン魔導王を名乗り、その名を冠した国を建国した事で、その周辺国家は様々な反応を見せていた。

 

≫≫≫

「アンデッドが王様、悪魔共が その手下だと?! 巫山戯るな!」

「姉さん、落ち着いて!」

「その通りです。

魔導王なる人物、只のアンデッドでは無いでしょう。…これを。」

「………?」

「それ…は?」

「魔導国からの書状です。

内容は、貿易関係を中心に、国交を結びたいとの事。」

「ふん、信用出来るか!

我が国の財を貪ろうとしてるだけでは無いのか?」

「姉さん!」

「確かに、全てを信用する事は出来ませんが、この様な礼に通じた対応が出来る国で有り、人物です。

これで此方が何の返事も出さないとなれば、我が国が ()()()()()だと逆に判断されるでしょう。

一度、魔導王当人、或いは使者を招待して会談する旨の返信をしようと思っています。」

「はぁあ!? 化物の国の者を、国に招くと言うのか?!」

「…ならば、私共が魔導国に出向きますか?

その時は当然、貴女にも護衛として付いて貰いますが。」

「…ぐ、ぬぬぬっ!」

 

 

▼▼▼

『前に私が見た処では、確かに強大な力を持ってはいるが、必要以上に世界に干渉する心算は無いように思えたぞ。

竜王国に現れた ぷれいやーも然り、だ。』

『しかし、楽観視は出来まい?』

『当然。監視は必要なのは、違いない。

だからこそ、改めて接触しようと思っている。

今度は正式に、国の代表としてな。』

『既に七彩(へんたい)の曾孫や鮮血帝の国とも、同盟を結んでいるらしい。

そういう意味では、国として近付くのは容易いか。』

『それならば、変態の曾孫娘に仲介して貰うか?』

『そうだな。ドラウディロン女王には、私から話ておこう。』

『問題は、その後…だな。』

『アレが また、()()と同格の者ならば、厄介極まり無いな。』

『全くだ。ぷれいやーは毎度毎回、色々と やらかしてくれたが、今回も他聞に漏れず…だな。』

『『『ハァ…』』』

『ちょっと待て。先程から変態変態と、誰の事を言っている?』

 

 

▼▼▼

「アンデッドが国を興した?」

「確かに前代未聞だが、其処まで珍しく見る事でも有るまい。」

「うだうだ言ってるのは、人間オンリーの国だけだろ?」

 

▼▼▼

「アンデッドが支配する国等、悪夢以外の何物でも無いぞ!」

「我々の大きな障害になるのは、間違い無い。」

「その通りだ。あの様な物、認める訳には往かん。」

「…その、魔導国から、質問状が届いている。」

「何?」

「内容は、過去に()()()()の民を、帝国騎士を偽り襲撃からの虐殺、数々の開拓村を滅ぼした件について…だ。」

「な、何が魔導国領だ!?

ふん、そんなの無視していれば良い!」

「…帝国からも、同様の書状が、また届いているが?

しかも今度は、陽光聖典も刺客として送り出した事についても問われている。

更には、トブの大森林に送った、漆黒聖典についても追求してきた!」

「「「「何いっ?!!」」」」

「…此方は、無視する訳にも往かんだろう。」

「ば、馬鹿な!? 帝国…一体 何処まで知っているのだ?」

「もしや、陽光聖典や漆黒聖典の失踪についても、何か知っている…と?」

「その全て…やも知れぬな。」

「どう、説明すべきか…」

「これは魔導国とやらも、承知なのだろうか?」

「いや、魔導国が関与している可能性の方が、寧ろ高いぞ!」

「くっ…! 全て知っている上での、敢えての問い質しと言うのか!?」

「それ以前! 帝国も…そして竜王国も、一体 何を考えているのだ?!

アンデッドの国等と、同盟関係を結ぶとは!?」

へぇ~え? それって、ニグンや隊長達を倒したかも知れないヤツが、その魔導国に居る…つまりは、そう言う事かしら?

「「「「「「!????」」」」」」

うふふ…♪ 中々、面白そうな話じゃない♡

居るかな? 私に敗北を教えてくれる、ヒ・ト♡♪

 

 

≫≫≫

…各国は、様々な反応をしていた。

 

 

▼▼▼

 

◆まろんside◆

近況。

冒険者ブラック&ゴールドは、半ば引退(リタイア)

魔導王直属の処刑人となったモモンとマカロンは、エ・ランテルに在る元・貴族の屋敷に各々 居を構える事になった。

元・貴族…その貴族が今は どうなっているかは、察しの方向で(笑)。

尚、ナーベ(ナーベラル)は実家に帰った設定にした。

モモン…今はパンドラが化けている その屋敷には、ペット枠でハムスケ…と、何故かデスナイトが1体、獣舎で食っちゃ寝生活をしている。

そして(マカロン)に宛てられた屋敷も そうだが、その中には転移の鏡(ミラー・オブ・ゲート)を設置して、ナザリックや白い匣(ホワイト・ホーム)の行き来を自在にしている。

これは、最初は屋敷に缶詰状態だったパンドラが、

 

「~んアインズ様! 私の『マジックアイテムを愛でないと発狂してしまう病』も、そろそろ限界に御座います!

この儘では大衆の前、モモンの姿で『LOS!LOS!LOS!(…知らない人は、動画検索!)』の全ドイツ語verを熱ッ!唱ォッ!してしまうかも知れまs

「わ、分かった!何とかする!

何とかするから、それだけは止めろくれ!な?なな?!」

 

…と、モモンガさんに直訴した結果だ。

LOS!LOS!LOS!…か。

懐かしい。谷屋が よく、カラオケで歌っていたなぁ。

そして両屋敷には、ナザリックから一般メイドが数人ずつ派遣され、1週間シフトの住み込みでの家事仕事をする事に。

俺は自分の屋敷のメイド長にはユリたん♡を指名したのだが、流石に『ユリには きちんと別の仕事が有りますから!』と却下された。

 

「だから毎夜毎晩、通い妻しています♡…ぽっ♡」

 

≫≫≫

魔導国の政治絡みには、基本 俺は一切 口を出さない。

所詮は外様だからな。

尤もモモンガさんも、デミウルゴスや、宰相兼王妃のアルベドに丸投げな感じだが。

 

「何だか、『王妃』の部分に やたらチカラ、込めてませんか?」

…込めていない。

 

≫≫≫

「それでは、今後とも宜しくお願いしますぞ、魔導王陛下!」

「うむ。此方こそな。」

そして今は、モモンガさんと一緒に冒険者組合に。

モモンガさんが自ら、王として掲げた目標は、完全安全な治安維持。

その第1歩として、各都市内や、魔導国領の主要な町や村を繋ぐ街道に警備ゴーレムを配した結果、行商人がモンスターに襲われる心配は殆ど無くなった。

しかし それに伴い、モンスター退治を生業としていた者…冒険者の生計が立たなくなるという弊害が。

この儘では彼等が野盗に転職してしまい、治安悪化になりかねない。

それこそ、何時か俺達が潰した、大規模な傭兵崩れな集団が現れかねない。

ナザリックのシモベ…仮に守護者級を現場に向かわせたら即座解決するかもだが、その様な事態が発生する時点で施政者失格と考えているモモンガさん。

だからこその、これからの冒険者の活動についての話し合いをする為に、組合に顔を出した訳だ。

因みに俺は、魔導王の護衛兼監視の役割。

ついでに冒険者としての意見も聞きたい…としての同行だ。

その結果、冒険者達には大きく分けて、2つの道筋を。

1つは文字通りの冒険者…モンハンで無く、未開の地を冒険・探索する事で、未知を既知に。

その報告で、組合や魔導国から報酬が出されるシステムを提案すると、組合長のアインザックさん、本人も昔は冒険者で(ミスリル級だったらしい)、そういうのには憧れていたらしく、野心家の様な笑みを浮かべ、ノリノリで承諾。

今まで通り、行商人の護衛や特定の賞金首(モンスター)討伐の仕事と同時進行で進める事になった。

そして もう1つの案は、単純に各都市の警備。

王国所属の兵士団は皆、クビにして王国に送り帰しているから、その後詰め。

魔導国警備兵士団の結成だ。

これも魔導国建国当初から、人員の募集呼び掛けをしており、志願者も決して少なくは無い。

そして兵士団との銘だが、職種は問わず。

戦士系職は勿論、神官や魔法詠唱者(マジック・キャスター)、野伏系職の者も受け入れる形式だ。

コキュートスを総責任者。

そしてブレイン、後々はクライムも隊長格とした部隊編成も既に、モモンガさんの頭の中では完成しているらしい。

 

 

◆まろんside・了◆

 

▼▼▼

 

◆モモンガside◆

「ゼィ…ゼィ…す、少し休憩を…」

「ハァ…ハァ…あ、アインズ様ぁ…私…私…」

「ボ()…私も もう、らめぇ…」

「ラナー様…私も…限界で…s…」

「あらあら皆様、まだまだ これからですわ♡」

「全くだ。この程度で へばるなんて、情けないぞ?

特にモモンガさんと、クライム。

こういうのは、男が きちんと女性をリードしないとダメだろう?

如何に経験が少ないとしても、男の方が先に果てるなんて、ダメ過ぎるぞ。」

「「ぅぐぐ…」」

俺、アルベド、ユリ、クライムが汗だくだく満身創痍グッタリな中、まろんサンとラナーだけは、全然 疲れている様子が無い。

 

「「さあ、もう1ラウンドだ。」

            ですわ♡」

「「「「~~~~~っ??!」」」」

そして、鬼の様な この一言。

…何の話と云うと、

「はい、ワン・ツー、ワン・ツー、ワン・ツー…か~ら~の、ターン!」

ラナー主導の下、ダンスの特訓(レッスン)中なのだ。

 

「乱〇ぱーりーだと思ったか? 残念!www」

まろんサン…アナタは誰に、何を言っているのですか?

…何故、ダンスの特訓だと言うと、近日にエ・ランテル他、魔導国領に残った王国の元・貴族や、王国からも魔導国寄りの領地を治める貴族を呼んでの社交パーティーを開く事となったのだ。

これは…今回は特に裏は無く単に、顔を広める知らしめるのが目的だと言う、デミウルゴスの提案。

それ自体は悪くなく、反対する理由も無い。

新しく国を興したばかりだから、その挨拶も兼ねると言うなら尚更だ。

確かに そういうのは必要だからな。

しかし、問題が1つ。

その様な場では、ダンスの作法が必須…らしい。

しかし王の俺、そして王妃のアルベドも、それ系の技能やスキルは全く持っていない!

王が踊れない…それは この様な社会では、かなりヤバイ事らしい!

…そんな訳で俺とアルベドは、その方面の嗜みは抜群なラナーに、教えを乞う事にしたのだ。

クライムはラナーの相手役として同行。

ついでに それを聞き付けた まろんサンも、ユリと一緒に参加する事になったのだ。

因みにユリも、ダンスの経験も知識も無し。

まろんサンも実際経験は無いが、現実世界(リアル)にて雑学レベルだが、多少なりの知識は持っていたそうだ。

…その差なのか?

ただ、ラナーにはマジ感謝。

彼女が居なかったら、ナザリックで唯一のダンス系スキルの持ち主…恐怖公から御教授する事になっていたのだからな!

((( ;゚Д゚)))

 

 

◆モモンガside・了◆

 

▼▼▼

 

◆まろんside◆

「これは また、珍しい着こなしで。」

「しかし、場での違和感は まるで無いですな。」

「どうも。一応は私の地元での、正装ですからね。」

はい、パーティー当日。

立食会形式の このパーティー、主賓のモモンガさんとアルベドは、最初に招待客に挨拶をした後、一時退場。

俺は一応は、有能認定している王国の貴族達との、久し振りの談話。

因みに俺の今の服装は、黒のカッター、白のネクタイに白スーツ。

ついでに靴も白のエナメル製。

正装…には違いないが、私的には ぶっちゃけ893のイメージのが強い。

しかし このオッサンも言う通り、場の違和感は無いから問題無い…筈。

 

「時に…マカロン殿、今宵は、どなたかと御一緒に?

もしもダンスの相手が決まっていないなら、宜しければウチの娘と…」

「いえ、気遣い無用。

私の婚約者も、この会場に居りますから。

今は姉妹が久し振りに揃ったので、そちらで盛り上がっていますよ。」

「ははは…これは、失敬。

その様な御相手が居たとは、初耳でしたな。」

そりゃ、言った事無いからな。

そして言葉の通り、ユリたん♡は今、他のプレアデスと揃って動いている。

接客は一般メイドの仕事。彼女達は会場警備を兼ねた来賓ポジションで、普段の改造メイド服で無く、パーティードレスに身を包んでいたりする。

尚、ユリたん♡とは、ダンス時に合流予定。

ついでに言えば、ラナーは表向きはバハルス帝国に行った事になっているので、今回は欠席だ。

 

 

◆まろんside・了◆

 

≫≫≫

 

◆???side◆

領主の親父に連れられ、アンデッド主催のパーティーにやって来た。

前の戦争や病気やらで兄貴達が死んで、繰り上げで家の次期当主が俺と決まったからと、少しでも貴族社会に馴染ませる為に…だ、そうだが…

ハッ! それで こんなアンデッドの国のパーティーに、出る価値なんて有るのかね?

まあ、豪華な会場に、地元じゃ口に出来ない様な美味い食い物や酒を味わえるから、来た甲斐は有ったと言って良いが?

大体、貴族社会に馴染むって、俺には必要無い事なんだよ!

既に俺が領主になった後の、政策案は幾つも考えている!

それを実践出来たら、我が領土は一気に発展する。

尤も、それは俺からすれば『何故、誰も思い付かなかった?』…なレベルの簡単な話だが。

親父も兄貴達も、其れ程に無能だった訳だ。…って?

 

「「「「「「~~~~♪」」」」」」

…………………………………。

あそこで何やら菓子を食べながら、話している6人の女。

何処かの貴族の娘…姉妹か?

ほぅ? 全員、上物揃いじゃないか。

特に あの長女か?…の、夜会巻きの眼鏡の女

中々に、良い(モノ)を持っているじゃないか。

くっくく…アレ程なイイ女、これは貴族として、声を掛けないと失礼ってヤツだろう?

そして その儘…♡ 




【次回予告!】
 
◆シズside◆
うわぁ…(白目&遠い目)
 
次回『傲m
「ちょ~っと待つっスよ、シズちゃん!」
「………………。ルプー、何?」
「…ぢゃ、ないっスよ!
折角の語り、超短過ぎっスよ!!」
「大丈夫。あの『うわぁ…』に、全てが詰められている。」
「いや、それも解るっスけど…」
…改めて。
 
次回『傲慢な火花(Let's 英訳→画像検索.)』
…乞う御期待。
 
「感想よろしくっス。ついでに評価(高いヤツ)も、よろしくっス!」
 


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Recovered a Flag of Death!

 
【前回の あらすじ】
死亡フラグが立ちました!
 
 
▼▼▼
 
「「「「「「ぷれぷれぷれあです!」」」」」」
 


◆シズside◆

うわぁ…

姉妹で楽しくスィーツ三昧していた時、1人の男が私達に話し掛けてきた。

ヘラヘラとしたニヤケ顔で、自分はナントカ家の次期当主だとか、誇らし気に言ってる。

有力な貴族の名は、情報として記憶しているけど、知らない名前。初めて聞いた名だ。

 

『つまりは、3流モブ貴族っスね?』

『雑魚雑魚ぉ?』

そうとも言う。…というか、ヒトの心の呟き(モノローグ)に入り込まない。

 

「どうですか? お美しい人。

菓子も良いですが、彼方に美味なワインが有ります。

宜しければ、私と御一緒に…」

「「「「「「……………。」」」」」」

そして どうやら この人間、ユリ姉様が お目当てな様だ。

…というか この人間、最初に声を掛けてきた時から ずっと…今もユリ姉様のスイカップを下卑た目でガン見している。

世の男性に言っておくが、女性は胸元への視線は超・敏感。

例え それが、自分への物で無いとしても・だ。

 

「……………。」

当然 姉様も それには気付いており、然り気無く…胸を庇う様に腕組みする。…って、コイツも気付かれているのに気付いてないの?

尤も これは、姉様が谷間をこれでもかと強調したドレスを着ているのにも、問題が有ると言えなくも無いが。尚、それに関してはソリュシャンも同じく。

 

「「「「「「……………。」」」」」」

兎に角 私達は既に、コレを汚物と認定。

 

「失礼ですが、ユリ姉様には既に婚約者が居られ、その方も此の場に来られています。

在らぬ誤解を招きかねませんので、此処は お退き戴けますか?」

「お誘いは光栄ですが、その様な訳ですので。

それに私達姉妹は今日 久し振りに、全員が顔を揃える事が出来、今の時を楽しんでおりますので…」

そしてユリ姉様には、まろん義兄様が居らっしゃる。

その辺りを、ソリュシャンと姉様本人が話し、穏便に追い払おうとする。

 

「成る程、これは失礼。

しかーし その者、同じ男として、感心出来ませんな~?

貴女の様な美しい婚約者を放って、その辺りを彷徨いているのですかな?」

「「「「「「…!!!?」」」」」」

…が、コレは その意図を察してないのか、この場を去る素振りを見せない。

それ処か、義兄様を()()()()()扱いだ。

これには私達が瞬時、殺気を全開してしまうが、コレは それにも気付かない。

 

「おぃカマドウマ、お前はヒトの話を聞いていなかったのか?

ま…っカロン義兄様は今、私達姉妹に気を使ってくださっているのだ。

今の会話から、それすらも理解出来ない程な、残念脳なのか?」

「か…ざ…?!」

ナーベラル、確かに その通りだけど、ストレート過ぎ。

 

「ちょ…ナーちゃん? 世の中、幾ら頭に思っても、絶対に口に出しちゃいけない事って、沢山 有るっスよ!?

言うにしても、もっとオブラート、オブラートっス!」

「な…!?」

ルプー、それは貴女も言ってるも同じ。

 

「そ、その言い方は、少し失礼過ぎじゃないか?!」

否定出来なくも無いが、場の空気を察せない方が悪いと思う。

兎に角このナーベラルとルプーの発言に、顔を赤くして激昂絶叫する男に、

 

ざわ…ざわざわ…

 

当然な如く、周囲も注目してくる。

 

「これは、何事かな?」

「失礼…彼女達が、如何なされたかな?」

「「「「「「あ…」」」」」」

そして、現れたのは まろん義兄様。

 

「マカロン…様…?」

いえ、この場では冒険者改め、魔導国処刑人マカロン…の方が正しい。

その ま…カロン義兄様…面倒い、この先は全部、まろん義兄様で行く。

…その まろん義兄様が、騒ぎを聞いたのか、王国の貴族2人と一緒に此方に やって来たのだ。

 

「マカロン…だと?」

その名を聞いた男が、まろん義兄様を睨み付ける。

 

「はっ! 誰かと思えば、只の冒険者ではないか!

そんな奴が婚約者?

…という事は お前達も、立派に着飾っているが平民か?

一体どうやって、この会場に入ったのだ?」

相手が()()()()()()()だと知り、急に横柄な態度を取り始めた男。

つまりは この男、義兄様が未だ、単なる冒険者だと勘違いしている様だ。

因みにマカロンとモモンは、魔導国建国、そして処刑人就任に際して、アインズ様から形だけだが公爵位を授けられている(領地経営は していない)。

 

『情弱っスね。』

『情弱!情弱ゥ!』

ん、それ。…って、だからヒトのモノローグに入ってこない。

 

「「…??!」」

そして それを見て、義兄様と同行していた貴族達は、信じられない様な驚きの顔を浮かべ、

「き、貴様、何を言っt…マカロン殿?!」

その1人が この情弱男を咎め問い詰めようとするが、まろん義兄様が それを制する様に手を横に差し出す。

 

「ふ…ん…、初めましてか?マカロン殿?

アナタは自分の婚約者や その妹達に対する、教えが出来てない様ですな?」

「ほぅ?」

そして この情弱貴族は、マカロン()()に対して偉そうに絡み詰め寄る。

 

「…ユリ、何が有ったのだ?」

「その…じ、実は…」

それに対して、普段の『ユリたん♡』でも『ユリたそー♡』でも無く、『ユリ』と呼び、ユリ姉様に事の起こりを尋ねる まろん義兄様。

 

「(#^ω^#)…………(ニコニコピキピキ)」

うわぁ…

ユリ姉様…やルプーの説明に、一見にこやかな表情だが、顔中に…いや多分 体中に、血管(あおすじ)を浮かばせている義兄様。

 

「そ…それは失礼だが、貴殿の方に、問題が有るのでは?

少なくとも、相手側に恋人や婚約者が居ると知れば、直ぐに退散すべき。違いますか?」

それでも、手を出す事無く、穏便に事を済ませようとするが、

「あ゙?! 高が冒険者風情が、偉そうに貴族に口出しする気か!?」

 

どんっ!

 

「「「「「「「「!?」」」」」」」」

未だ、まろん義兄様の立ち位置に気付けない男は在ろう事か、義兄様の胸元を突き飛ばす様に叩き付けた!

当然 周囲…義兄様が魔導国公爵なのを知っている者は、その行動に身を硬直させてしまう。

場の空気が凍った感覚だ。

 

「殺す!」

「殺るっスよ!」

「殺されたいのか?!」

「殺して良いわよね?」

「殺すべき。」

「殺しましょ~!」

尤もと言うか当然だが、まろん義兄様は微動だにしなかったが、それでも私達姉妹は怒りのゲージが天元突破。

 

「…っ!!」

「「「「「「!!?」」」」」」

そして瞬時に場に放たれる、強力凶悪な殺気。

それは この愚か者に向けてで無く、私達に向けた物。

まろん義兄様の『お前達は手を出すな』というメッセージだ。

それにより、殺る気全開だった私達は、クールダウンする事が出来た…けど、

 

「ぅあっちゃ~…、こりゃ、死んだっスね?」

「ちーん。」

(ー人ー)南無南無南無南無。

 

 

◆シズside・了◆

 

▼▼▼

 

◆モモンガside◆

「「???!」」

パーティーの開始時、来賓に挨拶をした後に一時退場していた俺とアルベド。

何をしていたかと言えば、控え室にて後々に始まるダンスの時間に備え、2人で最後の練習をしていたのだ。

そんな時、いきなりパーティー会場の方から迸る、凶悪な殺気。

 

「モモンガ様?!」

「うむ!」

何が起きたかは分からないが、兎に角 只事じゃない。

此所迄の殺気を放てる心当たりなんて、1人しか居ないから尚の事だ。

 

「全く…アナタは何をやってるんですか?!」

そう思いながらに即座、練習着から本番服に換装して、俺達はパーティー会場へと走るのだった。

 

≫≫≫

 

ガギィッ!!

 

ぎゃぁぁあっ!!

「「………………………。」」

そして、会場に着いた時に視界に入ったのは、まろんサンが何処かの貴族?の男に…アレは、何と表現すれば良い?

…見た儘で言えば、相手の両腕を頭の後ろでクロスさせて極めて、更には同時に首を右足、左足を左足で固めるという難度SSSな関節技?を決めていたのだ。

…ホールの天井の高さ位置で。

 

クィ…

 

そして空中で その技を解くと体勢を変えて、今度は相手の首筋に左脛を当て、更には それに重みを上乗せするかの様、左膝に右足を乗せて、その右膝には右肘を重ねて…

 

ガガァンッ!!

 

その儘で床に落下、激突!!

それは正しく、()()

 

あ…ぁぁ…

「ルプスレギナ!」

「は、はいっス!」

そして半死半生となった この男に対して(アレで よく死ななかったよな?!)まろんサン、ルプスレギナに回復を命令。

 

「…何が有った?」

「あ、アインズ様! 実は…斯々然々。」

ナーベラルに事情を聞いてみると、成る程成る程、丸々隈々。

 

「つまりは あの蛆虫に全て原因が有り、ま…っカロン義兄様の正当防衛です。」

いや、何処がだよ?!

どう見ても過剰防衛だよ!

 

「いえ、アインズ様。この場合、魔導国法では正当防衛が適用されます。」

まじ? 誰だよ、その基準作ったの?

 

≫≫≫

「申し訳御座いませんでした~~~~~~~っ!!!!」

その後、あの男の父親と名乗る貴族が、俺と まろんサンに土下座。

曰く、最初は家督も何も関係無い三男坊だったが、長男次男が先の戦争と病気で相次いで死んで、繰り上げ相続が決まったばかりで増長、『貴族様EREEEE!』を勘違いで発動させてしまったとか。

一応は普段から、その辺りは言い聞かせていたと言うが。

とりあえず、全然 言い聞かせてない!

 

「(怒)ほ(怒)う(怒)?(怒)…(怒)そ(怒)れ(怒)で(怒)?(怒)」

「…………!!?」

そして その言い訳は、俺は兎も角、まろんサン相手にはアウト過ぎた。

寧ろ、一番アウトな言い訳だ。

下手したら あの三男とやら、この場でユリ相手、嘗てツアレニーニャを浚った王国貴族の様な真似をしかねかなったのだ。

但し その時は本当に、まろんサンやプレアデス達に殺されていただろうけど。

 

「貴族は権利の前に、義務が生じる事を、アレには教えていなかったのか?

これは、俺が只の冒険者、平民だった頃から…平民でも知っている事だと思うが?」

「お、仰有る通りで!」

「ふん…兎に角だ。

アレは…今回の件は、魔導国内で起きた事だ。

そちらが王国の貴族だろうが何だろうが、関係無い。

魔導国の法律で、裁かせて貰うぞ。

…魔導王も、それで文句は無いな?」

「…うむ。」

いやいやいや! あれだけ痛め付けておいて、更に法の裁きまで下すの?

もう流石に勘弁してやったら?…とは、立場上 言えないんだよなぁ。

しかも、今回はアッチに非が有るってのは、沢山の証人も居るし。

 

「いや、結果的、良い見せしめになったじゃない。

偶には そういうのも、必要だろ?

…折角 ()()()()は、最大限に活用させて貰うぜ?」

「…………………………。」

そう、来たか。

基本、貴族大っ嫌いな まろんサン。

マカロンに爵位を与えるのにも、最初は凄く嫌な顔をしていたし。

今後のマカロンの立場として、一応の必要性を理解していたからか、反対しなかっただけだからな。

 

≫≫≫

「ひぃぃいっ?!」

「オラッ、キリキリ歩け!」

結局、あの貴族三男は衛兵に連れて行かれ、この会場からは退場となった。

 

「さて、モチャラス男爵。」

「は、はい!」

「魔導国として、貴方の御家をどうこうする心算は無いし、その辺りを王国に働き掛ける心算も無い。

しかし、貴方の子息は魔導国内にて、魔導国公爵に手を上げたのだ。

相手が上位の貴族とは知らなかったでは済まされないし、例えマカロンが平民だったとしても、それに手を上げたなら、それは貴族だろうが立派な傷害罪…罪人として裁く事となる。

…王国は どうだか知らぬがな。

残念だが、()()()()()()だけは、しておいてくれ。

もしも異議申し立てが有るなら、それもザナック王を介して正式にリ・エスティーゼ王国として魔導国に、抗議文書等送るなりで訴える形にしてくれないか?」

「……………………。」

 

 

◆モモンガside・了◆

 

▼▼▼

 

◆ソリュシャンside◆

あれから…

アインズ様はパーティーにて、一応の荒事が起きるのは想定されていた様で(それでも身内(まろん義兄様)が それを起こすのは想定外だったそうです)、予め控えさせていた、演芸に特化したシモベ共を呼び寄せ、少し殺伐とした場を和ませ落ち着かせ。

 

「素敵ですわね。」

「パねぇっス!」

「格好良~い?」

その後のダンスの方も、特訓の成果をまろん義兄様ユリ姉様のペア共々、招待した貴族達に遺憾無く見せ付け。

因みに私達残った姉妹は、スィーツ三昧しながら見学していました。

何人かの貴族の男に踊りをと誘われましたが、それは私やルプーが やんわりと お断り。

ええ、ナーベラルには勿論、黙っていて貰いましたよ?

そして、パーティーは最終的には無事に終了。

魔導王としての器を示すのに、成功と言って良い終わり方でした。

しかし、それも ()()()()が有ったから、必ずしも完璧とは言えません。

…そう、全ては あの愚か者の所為で。

アインズ様催しの…しかも初の社交の場に泥を塗りケチを付けた、あの男だけは赦せません。

これは、ナザリック全ての者の考えです。

 

≫≫≫

「ひぃえぇっ?!は、化け物!?」

「何を今更。異形の王の配下も また異形なのは、至極当然でしょう。」

そして あの愚か者は今、エ・ランテルの収容施設から、ナザリックの とある一室に連れ出しています。

 

「さあ、宜しく頼みますよ、ニューロニスト。

ああ、一応は あくまでも、公正にね。」

「了解しましてよん♡ デミウルゴス様♪」

魔導国としての罪人の前に、ナザリックの者に対しての罪を問う審査。

正確には私達…更に正確にはユリ姉様への態度が怪し過ぎたからの、それに対する尋問です。

 

「あー、大丈夫大丈夫、痛くない痛くないからん?」

「ひぃえぇいぃっ??!」

尋問官は、ナザリック五大最悪が1人、脳喰(ブレイン・イーター)のニューロニスト・ペインキル様。

彼…女の蝕指(ゆび)を脳に突き刺す事で、質問に対する真実(こたえ)を直接に聞き出す。

故に、虚偽・誤魔化しは効きません。

 

≫≫≫

「は~い、有罪(ギルティ)ん♪」

結果、ユリ姉様に対して、邪で俗な考え…そして貴族という立場から、平民の(…と勘違いしていた)ユリ姉様と、無理矢理に事に及ぼう等と考えていた事が、明らかに。

ニューロニスト様の言われる通りに有罪、即ち死刑決定です。

それも魔導国に於ける罪人で無く、ナザリックの者に害そうとした愚か者として…ですね。

 

「やはり…でしたか?

アインズ様には、私から報告しておきましょう。

()()()()()は予定通りにソリュシャン、貴女に お任せしますよ?」

「承知致しました、デミウルゴス様。」

ふふふ…先ずは、別の部屋に移動しましょう。

 

≫≫≫

「ソリュシャンだけ、ず~る~い~?」

「あら?」

そして別室。

愚か者の()()を行おうとした時に、エントマが やってきました。

 

「あら?エントマも手伝いたいの?」

 

コクン…

 

私の問い掛けに、無言で首を縦に振る妹。

 

「ふふ…それじゃ一緒に、()()する?」

「ん!」

 

カラン…

 

「ひ…えぇぇえっ?!! た、助けt」

そして元気な返事と同時、普段の人形(ヒトガタ)の仮面を外して この愚か者に歩み寄るのでした。

 

「おっ肉♪おっ肉ぅ♡」

う…わぁあぁぁあア――ッ!!???

 

 




(祝)!王国滅亡ルート、完全回避?
 
次回『First Contact(予定)』
乞う御期待!感想ヨロシクです。
 


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【閑話】First Contact

 
魔導国外交篇(仮)の前に、【閑話】を。
 
≫≫≫
前回の話、最初のUP(2023/06/04/22:01)から、多少 加筆修正しています。
 


▼▼▼

ユグドラシル。

凄まじい程の自由過ぎる設定で爆発的な人気を博したVRMMO・RPG。

サービス開始から それなりに時が流れ、カンスト・プレイヤー、所謂"ガチ勢" "廃人"等と呼ばれるプレイヤーも珍しくなくなってきた頃。

 

 

≫≫≫

 

バンッ! バンバンバンッ!!

 

「報復だーっ! 絶対に報復以外、有り得ーん!!」

「シャババさん、落ち着け!」 

白い匣(ホワイト・ホーム)

ユグドラシル9葉の1つ、ミズガルズの砂漠エリアに聳える、巨大な白い立方体の建造物。

ギルド"ヴァーリ・トゥード"の拠点である。 

その内部、会議室の様な部屋で、一ツ眼巨人(サイクロプス)が1人、円卓を壊す程に派手な勢いで叩きながら声を荒げ、それを2つ隣に座っていた男が、宥める様に話し掛けていた。

 

「まろんちゃんの言う通りだよ、眼魔ちゃん。

誰も何もしないなんて、言ってないじゃん?」

その台詞に続けるのは、小柄・童顔な金髪の少年。

この少年の名は真里(マサト)

ヴァーリ・トゥードのギルドマスターである。

ヴァーリ・トゥードは その"何でもアリ(Vale Tudo)"の銘に相応しく、現在約60人から成るギルドメンバーも、人間種から異形種まで多種多様。

彼等がゲーム内に於いて参加するイベントも、戦闘から探索にスポーツ他、殺伐系から まったり系まで多岐に及んでいた。

そんな彼等が今、話している議題は『異形種狩り』。

その儘の意味で、人間型プレイヤーが異形種プレイヤーを狩る、PK(Player killer)行為の事を指している。

イベントに於ける、必然的戦闘でも無ければ、そのプレイヤーが所持しているアイテム狙いでも無く。

勿論、純粋に同意での手合わせな、(Player) (versus ) (Player)でも無い。

単純に人間種、特に純・人間型プレイヤーが異形種プレイヤーをモンスターに見立て、多くの場合は、単独、或いは少数の者を多勢で狩りに出るPKである。

…その異形種狩りに、ヴァーリ・トゥードのメンバーの1人が遭った件について、話し合っていたのだ。

 

「ふっ、結局は殺るんだろ?

まあ、当然な話だがな。」

「教えてやろうよ。『狩って良いのは、狩られる覚悟が有るヤツだけ』ってのをね。」

強面なモヒカン男が、済まし口調で話し、妖精種(ピクシー)の少女も、それに続く。

 

「何処の何奴かは、既に知れているんです。」

「そういう事ね。

ついでに言えば、奴等、次は何時 何処で行動するかも、凡その調べは付いてるわ。」

続く面々も、消極的意見は出さず、報復の方向で話は進んでいく。

 

「ね? 眼魔ちゃん。心配しなくても、皆、殺る気なんだからさ♡」

「ふ…ん!」

マサトの悪戯っぽい言葉の投げ掛けに、サイクロプスの眼魔(ガンマ)(愛称:シャババさん)は不機嫌そうに…しかし一応の納得は、した様に頷く。

 

「それじゃ、誰が出張るかだけど、先ずは当然、俺ね。

それから、ケンちゃん。」

「はい!」

マサトの指名に、格闘胴着を着た少年が、力強く応える。

 

「せーこちゃん。」

「了解です。」

そして次は、眼鏡に黒のスーツにネクタイ。

ガッシリした体格を除けば、どう見ても普通のサラリーマンにしか見えない中年風な男が。

その後も次々とヴァーリ・トゥードの面々が報復というか、御礼参りに参加する様に呼び掛けられ、その全員が嫌な反応をする事無く、それに応じていく。 

 

…中略

 

「ビュウ君。」

「任せろ。」

左右の腰に各々、長剣を携えた金髪の青年が。

  

「それから、谷屋ちゃん。…って? あれ? 谷屋ちゃんは?」

「アイツも昨日、別件でデスペナ食らったばかりだから、今日は来てないぞ?」

「互いの個人所有のアイテムを賭けた、普通のPVPだ。

…で、見事に負けてやんのw」

「同意のバトルだそうだから、コッチはギルドで どうこう、動く話じゃねぇ。」

「そうなの?…それなら、りえりん。」

「ふっふっふ…何だか谷屋の代わりみたいな指名は、少し気に入りませんが、良いでしょう!

我が魔力の真髄、特と見せて…いえ、魅せてあげましょう!」

大きな三角帽子に黒のマント。

如何にも魔法詠唱者(マジック・キャスター)な格好の小柄な少女が、マサトの呼び出しに応える。

 

「…以上、このメンバーで。」

「「「いや、巫山戯んなよ!?」」」

「オラ、プンプンすっぞ!」

しかし、そのマサトの報復部隊選抜メンバー発表に、再び眼魔、そして最初に眼魔に冷静になるように宥めていた、黄金の鎧…の様な()を纏った首無し騎士(デュラハン)、まろんを筆頭に、名前を呼ばれなかった数名が怒声を上げた。

 

▼▼▼

 

◆まろんside◆

「「「「どーゆー心算だ?!」」」」

俺にシャババさん、キャロット君他、御礼参りチームとして名前を呼ばれなかった異形種のメンバーが、マサトに詰め寄る。

 

「まぁまぁ、気持ちは解るよ。…でもね、」

マサトは穏やかな口調で、それに応じる。

 

「今回は単なる異形種狩りの報復じゃない。

ヴァーリ・トゥードのメンバーに手を上げた事での報復だよ。

解るかい? これは、ギルドとしての復讐だよ。

人間種だろうが異形種だろうが、俺達(ヴァーリ・トゥード)に手を出したら どうなるか?

それを解らせる為…だから今回は敢えて、異形種メンバーは外して、人間種だけで人選したんだ。」

成る程。理解は、した。

 

「しかーし、それで納得すると思うか?」

シャババさんの言う通り。

特に俺は、今回の異形種狩り、その被害に遭ったスラ吉とは それこそ今日、卓球(ダブルス)のイベントに出場する予定だったのだ。

イベント管理している運営に問い合わせてみたが、事前登録していた出場者の変更は認められないとか。

それなら それで…それだけなら、仕方無いで納得してやった。

だが、あのクソ運営、出場手数料代わり、先に出したアイテムの返還にも、応じやがらねぇ!

不戦敗扱いと、来やがった!

 

「…ざっけんなよ! 俺もスラ吉も、得点(ポイント)した時の雄叫びの練習とか、散々したんだからな!」

「いや、卓球の練習しろよ。」

「何だか怒りの矛先が、運営になってる気がするんですが?」

「そ、そんな事は無いぞ?

…と、マサト、お前の考えも解る。

しかし、それでも異形種代表として1人位、メンバーに入れても良いのじゃないか?

さしあたっては、見た目は人型な俺とか。」

「あっー!汚いぞ、まろん!」

「オメー、抜け駆けすっ気か?」

「「「「ぶーっ!ぶーっ!」」」」

「いや、見た目 人型に拘るなら、シャババさんは もう100(パー)アウトだし?

キャロット君は尻尾、コカビーは羽、鬼ぃさんは角、生えてるし。」

その点 俺なら、首を外さない限りは大丈夫じゃないか?

 

…ぽんっ!

 

「「「「「態々、外さなくていいっ!」」」」」

「「「「「恐いわっ!!」」」」」

 

 

◆まろんside・了◆

 

 

▼▼▼

『タィガーニーッ!』

『ぎゃぁあぁ~っ!?…』 

…巨大な寝釈迦像の傍らで、眼帯をしたスキンヘッドの大男の飛び膝蹴りが、セーラー服の少女を吹き飛ばした。

 

 

「な…んだとォ??! お、俺の、俺の さ〇らが!?」

「どうだ、コカビー! 俺の勝ち!!」

…あの後、異形種も一応は1人だけ参加OKとして、それを誰かにする話し合いが行われるが、癖と我の強い面々が、平和的に他者に譲る事も無く。

最終的には 殴り合いに発展する前に、 20世紀末から21世紀初頭に掛けて人気を博していた、格闘系テレビゲームでのトーナメントで決める事に。

結果、その決勝にて まろんが天使種の男を下し、異形種枠とでも言うべきか?…報復チームに入り込んだ。

 

「よし、それじゃ皆、行こうか。

異形種狩り狩りの時間だ。

待ってろ…“ひき肉”にしてやんよぉッ!!

 

▼▼▼

 

◆まろんside◆

【地球防衛軍】。

それが今回、スラ吉を襲ったギルドだ。

このギルド、普段から異形種狩り其れ自体を、ギルドのメインのスタイルとしているらしい。

そして奴等…その中心となるメンバーが今、何処に居るかも調査済み。

因みに その情報を持ってきたヤツに『どうやって知ったんだ?』と尋ねると、『世の中、知らない方が良い事って有るわよ?』と切り返された。

何か恐いわ!

…そんな訳で俺達は今、奴等を追ってニヴルヘイムの氷樹森林地帯にやって来た。

地球防衛軍の奴等、今日は この森林に自生する、レアな薬草を採りに来ているらしいが…

 

「はい?」

「え?」

「あら?」

「ぬ?」

「へ?」

…確かに、連中は見付けた。

しかし奴等、現在絶賛戦闘中。

それも異形種の集団と、だ!

 

「あ、アイツは!?」

「え? ビュウ君、あのヒト達を知ってるの?」

「ああ、あの白い鎧…アイツは、ワールド・チャンピオンの たっち・みーだ!」

マサトの問い掛けに、そう答えるビュウ。

…って、ワールド・チャンピオンだと?!

それってユグドラシルの戦士系じゃ、最上位の(クラス)じゃないか!

 

斬ッ!

 

「ぎゃぁっ!?」

確かに、あの剣技は凄まじい。

あ、そうか。ビュウも以前、ワールド・チャンピオン所得しようとして、優勝者に その資格(…の1片)が与えられるトーナメントに出たんだったよな。

…で、見事に1回戦負けだったと。

 

「そ、その相手が、アイツだったんだよ!」

必死に言い訳するビュウだが、それよりも あの異形種軍団、強いのは そのワールド・チャンピオンだけじゃない。

鬼火力な魔法を連続で繰り出す山羊頭悪魔(バフォメット)、雷光の矢を連射する金色鎧の鳥人間(バードマン)

それから見た目がTHE・侍とTHE・忍者に、その巨体にすら不釣り合いな、馬鹿でかい鉄甲拳(ガントレット)を振り回す…巨人?

そして派手な飾りが施された黒ローブを着た、骸骨(スケルトン)魔法詠唱者(マジック・キャスター)

更には その他その他。

あの異形種、全員が各々に強い!

 

「…って、マサトさん、どうするんですか?」

「そりゃあ、決まってるでしょ?

とりあえず、『敵の敵は味方』って事で…

行くよ!!

「「「「「応っ!!」」」」」

確かに、此処まで来て、追っていた獲物が他者に奪われるのは間抜けな話だ。

異形種軍団と共闘するのも…向こう側が それを拒んだりしない限りは、決して悪手じゃない。

その結論の元、俺達も あの大乱闘に乱入するのだった。

 

 

◆まろんside・了◆

 

≫≫≫

 

◆???side◆

地球防衛軍。

異種狩りを主要目的(メイン・テーマ)と公言している このギルド。

もしかしたら、ギルド…いや、クランを立ち上げる前、俺もコイツ等に殺られた事が有ったのかも知れないな。

まあ、それは もう どうでも良い話だ。

現状で異形種狩りな輩なのだから、俺達からしたら、敵以外の何者でも無い。

今回は奴等が、この森林に足を運ぶと云う情報を得た俺達は、奇襲に成功した。

しかしコイツ等も、決して弱者では無い。

俺達が劣勢になる事は無いが、決定打となる一撃を撃ち込める隙も無く、泥試合な展開に入ろうとしていた。

 

「ねぇ~、そのケンカ、俺達も混ぜてよぉ~♡」

「「「「「「「!??」」」」」」」

そんな時、緊張感の無い台詞と一緒に、人間種の集団が、この戦闘の場に雪崩れ込んできた!

ま、不味い、新手か?

あれだけの人数が敵に加わったら、一気に形勢逆転されてしまう…!?

 

バキィッ!

 

「ぐわぎょっ?!」

…って、え?

しかし、この乱入者、先頭で自動2輪(バイク)に載って飛び込んできた少年?は俺達では無く、俺と対峙していた地球防衛軍の男を鉄パイプみたいな武器で、殴り飛ばした?!

 

「ワールド・チャンピオン! そして異形の集団よ!

我等ヴァーリ・トゥード、故有って この戦闘(バトル)、押し掛け助っ人で参加させて貰うぞ!」

 

斬々ッ!

 

「ギャーッス!?」

更には その言葉と同時、火焔飛竜を駆る2刀流剣士の炎の斬撃が、

 

「礼には及びませんよ? 私達も確とした理由で、コイツ等を追ってきたのですから!」

 

どっかぁ~~~~~~~んっ!!!!

 

「「「「「ぬわーーっ!??」」」」」

そして如何にも魔女っ娘の爆裂系魔法が、地球防衛軍の面々に炸裂した!

…って、魔女っ娘も倒れた?

 

「モモンガさん、彼等が何者かは、後回しだ!」

「兎に角チャンスだ、一気に決めてしまいましょう!」

()()は俺達が、作りますよ?」

そ…そうですね!

  




名前が出たヴァーリ・トゥードの面々(以前から、名前だけ登場してたキャラも居ましたが)。
モデル・元ネタが全て分かった人は、上級読者(笑)
 
次回『First Contact②』
乞う御期待! 感想もヨロシクです。
 


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【閑話】First Contact②

 



▼▼▼

「ごめんね~♡ 余計な真似だったかな~?」

「いえ、そんな事 無いですよ!」

「純粋に感謝しますよ。ありがとうございます。」

 

◆まろんside◆

ギルドメンバーの異形種狩りの御礼参り。

最終的には俺達の前、先に()()と戦闘をしていた異形種集団のリーダー格の骸骨種(スケルトン)が放った、広範囲の強力魔法で終わった。

その後、ウチの代表であるマサトが、改めて無理矢理に乱入した事を謝罪すると、彼方さんも逆に お礼を言ってくれたり。

そして互いにギルドを名乗ったりしたのだが…

 

「まさか、『アインズ・ウール・ゴウン』だったとはな…」

アインズ・ウール・ゴウン。

異形種だけで結成され、異形種狩りからの救済を掲げ、逆に ()()()()()()()()()にガンガンPKを仕掛けていると云う、どちらかと言えば武闘派系ギルド。

 

「もしかしたら そうじゃないかと、最初に思うべきでしたね。」

ん、それな。

そして過去に1度、俺も入団を申し出たギルドでもある。

尤も その時は まだ俺は学生だった為、入団条件の『社会人』に該当していなかったので、断られたのだが。

…てゆーか、ギルマスのモモンガさん…でしたっけ?

アナタ、何時の間に、そんなド派手なローブ、身に着けているんだ?

昔は もっと、弩ノーマルな地味ローブだったじゃないか!

それが、俺的に気付けなかった理由だな。

 

 

◆まろんside・了◆

 

≫≫≫

 

◆モモンガside◆

ヴァーリ・トゥード。

常にランキングにて、俺達アインズ・ウール・ゴウンの1つ2つ上に居たり下に居たりなギルドだから、自然に名前だけは記憶していた。

しかも、そのランキングも同じ順位帯に停滞していた訳で無く、上位に昇格していたのだ。

つまりは俺達と同じレベルで進化しているギルド。

そんな、気持ち程度だが意識しているギルドと御対面。

理由は、異形種狩り。

俺達は単に、そういう輩を逆に狩るのを目的としていたが、彼等は その異形種狩りに遇ったギルメンの報復として、俺達の狩りの場に現れたのだ。

俺達からすれば、獲物を横取りされて云々な考えは持っていない。

最初は いきなりの介入だったから、その辺りの事情は分からないが、協力者を拒む事も無く。

即座に『連繋』。

その後は、今回の獲物(ターゲット)だった、地球防衛軍をフクロに。

人数的に圧倒優位に立てた事で出来た時間の余裕から、広範囲の強力魔法を放ち、その場を終わらせる事に成功した。

無論、先に『連繋』の設定をした事により、ヴァーリ・トゥードの皆さんに巻き添えの誤爆(フレンドリー・ファイア)が及ぶ事も無く。

 

「いや、マジ感謝っすよ?

コッチが殺られる事は無いとして、も少し時間掛かるかなって、思ってましたからね~?」

「全くだ。」

「本当、ありがとう。」

ウチのメンバーも、純粋に有り難いと思ったのか、彼等に お礼を言っている。

 

「まあ、想定は出来ていましたけどね。」

「え?」

そんな中、AOG(アインズ・ウール・ゴウン)の諸葛亮孔明こと、ぷにっと萌えさんが呟いた。

曰く、少し前に、地球防衛軍の主要メンバーが、今日の この時間、この場に訪れるという情報を、多方面に流していたらしい。

普段からの異形種狩りで、それなりに名の知れたギルドだから、複数の…最低でもギルド1つ位は、それに反応する確信を持っていたとか。

 

「そして結果は、この通り…ですよ。

勿論、私達だけでも殺る事は出来たでしょうが、あくまでも保険、でしたがね。」

その保険で、より安全に、終わらせる事が出来ました!

 

 

「あの爆裂魔法(エクスプロージョン)は、確かに見事だったが…

キミは もう少し、消費魔力の調整をした方が良いと思うよ?

一発撃っただけで、後は今みたいに同僚に背負われて何も出来ないでは、ネタにしかならない。」

「ふっ…何を言っているです。

全てを対価にしての強大な破壊力こそが、爆裂魔法の醍醐味!

そうは思わないのですか?」

「…何となくは解るが、それでも それを実践するのは、頭がオカシイとしか思えないのだが?」

「何おーーーーーーーっ?!!」

 

「…久し振りだな、ワールド・チャンピオン。覚えているか?」

「ああ。何時かのトーナメント、初戦で戦った双剣士だな。

あの大会、最初のキミが1番の難敵だったから、覚えているさ。」

「ふっ!どーだ、聞いたか!

1回戦負けと言っても、決して俺が弱かった訳じゃ

「え゙ぇっ??! マジ?

茶釜さんて あの、風っちなんスか?

えーっと、サイン…て、色紙無いか。

とりあえず握手、良いですか?」

「はいは~い♪」

「いや、聞けよっ!?」

 

「ヴァーリ・トゥード!

…てゆー事は、谷屋ちゃんは? 谷屋ちゃんは、来てないのですか?」

「谷屋さんはデスペナ中で、今回は お休みですよ。」

「……………………orz」

「凹み過ぎじゃないですか?」

 

そして気付けば、両メンバー同士が『お疲れ様』的な感じで、何やら語り合っていた。

そして とりあえず、あの金色鎧の人はリアルでの茶釜さんのファン。

それから『谷屋ちゃん』と言うのが、ロリ系キャラなのは、察する事が出来た。

 

「何だか打ち解けてますね~?」

そんな中、俺に話し掛けてきたのは、ヴァーリ・トゥードのギルマスのマサトさん。

 

「くっくく…今回は敢えて、そちらの蒔いた餌に釣られてやったが、如何だったかな?」

そして もう1人、蒼のローブに黒羽扇を持った人物。

見るからに悪人顔(失礼!)な、魔法詠唱者(マジック・キャスター)風な男だ。

 

「餌…と言うと?」

その台詞に反応したのは、ぷにっと萌えさんだ。

 

「知れた事よ。

今回、地球防衛軍メンバーが この地に現れると云う情報。

その、最初の出処は何処だ?誰だ? 何故、その様な情報が出回っている?…と考えれば、自ずと答えは限られてくる。

あの異形種狩りの集団を快く思ってない者か、或いは その様な者を誘き寄せる罠か…の、な。」

「え? そうだったの? 仲達ちゃん?」

「下手に喋れば…と思ってな。」

それに対して、自己の分析を話す(結果は正解)、仲達なる人物。

どうやら彼は、ヴァーリ・トゥードに於ける、軍師(ぷにっと萌えさん)的なポジションな様だ。

 

「成る程…単に()()に乗ったで無く、其処まで考えて…でしたか。

ふふふ…その様なヒトが居たとは、それは私も、想定外でしたね。」

「くっくく…!」

何やら互いに納得した様に、笑う2人。

 

「ん~、何となく、『混ぜるな危険』な感じがするのは、気のせいかな?」

奇遇ですね、俺も同じ事を思っていました。

 

≫≫≫

「…ところ、で。」

ギルマス同士、マサトさんと色々と話していると、

「モモンガさん、実は俺達、この儘 地球防衛軍の拠点に殴り込み仕掛けるんだけど、一緒に来る?」

急に話題を変えて、とんでもない事を言ってきました。

ヴァーリ・トゥード的には、地球防衛軍の件、この場だけで終わらせる気は無かったとか。

相手のギルマス他、主力を潰した上で、次は この場には居ない、異形種を中心としたギルメンと一緒にカチコミ。

ギルドとして、完全に壊滅させる心算らしい。

 

「奴等、誰に手を出したのか、きっちりと教えてやらないとね♡」

因みに拠点襲撃予定のメンバーは、既に奴等のアジト付近で待機中だとか。

 

 

「面白そうじゃないですか、モモンガさん。」

「行こ行こ~♪」

それを聞いたウチのギルメンは、行く気満々。

尤も ぷにっと萌えさんは、ヴァーリ・トゥードの戦力に興味が有るからこそな、言葉だろうなあ。

 

「え?奴等のアジトにも、攻撃仕掛ける予定だったの?」

「…知らなかった。」

「司馬仲テメー、秘密主義が過ぎるぞ!?」

「報連相って知ってます?」

そして その事は、マサトさん以外のギルメンにも知らせていなかった様だ。

 

≫≫≫

 

わしゃわしゃわしゃ…

ドゴゴゴゴ…ッ!!

  

「おお~♪流石、長曽我部博士のゴーレムは、パねぇなぁ。」

……………………。

あれから俺達は、ヴァーリ・トゥードの皆さんと一緒に《合流転移門(リンク・ゲート)》で、現場待機しているヴァーリ・トゥードのギルメンさんの元に向かったのだが、其処では既に、超々巨大な蜘蛛型ゴーレムが、地球防衛軍の拠点である古城型の建造物を破壊していた。

待機していた…筈なヴァーリ・トゥードの異形種プレイヤーも暴れまくっていた。

 

「シャババババ!!」

独特な笑い声の1つ目巨人(サイクロプス)が、豪快な体当りで

 

「ふははははは!死ぃねェエッ!!」

凶悪犯罪者面な(マジに失礼!)黒翼の天使が、巨大な光の槍を投げ放ち

 

「そぉ~…れぃっ!」

かなり胸を主張している妖精種(ピクシー)が、拡散光弾を撃ち

 

「やややややややッ!!」

金髪の猿人種が、拳の連打を繰り出し…そして その他の面々も、城から慌てて飛び出してきた人間種のプレイヤーを悉く蹂躙。

 

「すげぇー!」

「カッケーッ!」

「胸が揺れてるぜ!」

……………………………………………。

ウチのギルメンが騒いでいるが、どうやら彼等は向こうの襲撃成功の報せを受けて直ぐに、勝手に行動に移ったらしい。

 

「まあ、そんな気は、していたよ♡」

「1番最初に動いたのは絶対、シャババさんだな!」

しかしマサトさん達は、本来は作戦無視な筈なのに…それも予測していたかの様に笑っている。

 

わしゃわしゃわしゃ…

 

「何と…素晴らしい!

どれだけ課金して作ったのですか、アレ?」

そしてゴーレムを見て、AOG(ウチ)のゴーレム製作担当が、食い付く様に興味を示し…対抗するのは構わないが、勝手にギルド共有の資金や素材を使ったりするなよ?

 

「「「「……………………。」」」」

「ん~、これは…」

「俺達の出番…もう、無いなwww」

その一方的圧倒的な光景に俺達が呆然としてる中、マサトさんと金色鎧の人は、まるで他人事の様に呟いている。

 

「ふむ…成る程、成る程。」

そして ぷにっと萌えさんは、何やら分析。

そうしている内に城内部に彼等は突入。

『出番が無い』とか言っていたマサトさん達と一緒に、我々も見学者として それに同行。

その後も敵プレイヤーや、守備型NPC達を蹴散らしながら、城内中枢に到着。

 

「オラァッ!」

 

グジャァアッ!!

 

そして其処に安置されていた、ギルド武器(重武装パワードスーツ型でした)を破壊。

これにより、ギルド【地球防衛軍】は、ユグドラシルに登録されているギルドリストから抹消された筈。

完全に壊滅・消滅した訳だ。

 

 

◆モモンガside・了◆

 

▼▼▼

 

◆???side◆

あれから…ボク達アインズ・ウール・ゴウンとヴァーリ・トゥードは、ギルド間で友好を結んだ。

これにより、多方面からDQNギルド認定されて、今までは単独ギルドでしか こなせるレベルのイベントしか挑めなかったが、ギルド同士で協力出来る様になり、クリア出来るイベントの幅も広がった。

彼等には本当に感謝ね。

そして一部ギルメン同士でも、フレンド登録をしたりして、互いにギルドを遊びに往き来する間柄となった。

 

「たっちー、勝負だー!PVPだー!出て来ーい!!」

「たっちサン、今日は娘さんの授業参観で、まだ来てないよ。」

「何…だと…?」

…あんな風に。

 

「ハァ…これだから、ちっぱいの素晴らしさが理解出来てない者は…」

「ハッ! 何言ってやがる。

如何にレアでステータスでジャスティスかは知らんが、所詮は少数派だろ。

結局 膨大な きょぬーの質量の前には、全て呑み込まれてしまうんだよ。」

「チッチッチ…過ぎたるは及ばざるが如し、という言葉が有ってだな。

最終的には可も無く不可も無くな、普乳やや増しが、真理なのだよ。」

……………………………………………。

そして、1番頻繁にウチに遊びに来ているのが、首無し騎士(デュラハン)の まろん君。

アンデッドという事で、モモンガさんとも仲が良いけど、性格(キャラ)的には あの連中と1番ウマが合っているのよね。

 

「何ですと?」

「あ゙?!」

「戦んのか、ゴラァ!?」

今も女性の(バスト)について、各々の持論を熱く語り合ってるけど…

 

「愚弟、正座」

「ひぇ? 姉ちゃん、勘弁!?」

「ほら、タケと まろんとモモンガさんも正座。」

「うぐぐ…」

「え? まろんサンは兎も角、俺は関係無…」

「正座。」

「…は、はい」

「茶釜ちゃま、優しく お願いします。」

ほ~ら♪ リアルでは ()()()()()()してるのに、何故だか ()()()()()()が赦せない彼女から、またOHANASHIされてる。

何故か巻き添えで、モモンガさんも一緒に(笑)。

……………………………………。

…っにしても、まろん君の あの性格(キャラ)、何年か前の教え子に凄く似ているのよね。

卒業前に、お馬鹿な告白してきた男の子。

 

 

 

舞子ちゃん。今、俺と お付き合いしてくたら特典として、俺のDTが付いてきまs(ごんっ!)ぁ痛あっ?!

 

 

 

…まさか彼、久利君じゃ、ないわよね?

   




次回から本編再開です。
 


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魔導国の外交

 
本編再開!
 


◆モモンガside◆

「何だ、結局は殺ったんだ?

俺は あの場、モモンガさんの顔を立てて、絶妙な加減で生かしてやってたのに。

そんな事なら もう、俺が逝かしてやったって良かったじゃない?」

パーティー翌日。

例の貴族の男の事をまろんサンに話すと、思った通り、散々に言われ始めた。

 

「いや、俺は別に、胸ドンされた位で殺る程にキレたりしないよ。

どんだけ沸点低いんだ?…って話ですよ。

…でもな、解るか?

ユリたん♡の胸を視姦した罪は、デストロイヤー(※)より重いんだよ。

本当なら殺すマジ殺す絶対殺す死ぬまで殺す死んでも殺す…だったのを、あの場で殺らなかった俺を、誉めてくれ。

てゆーかマジ、こんな事なら俺が殺っときゃ良かったぜ。」

まろんサン、本当、ユリ大好き過ぎでしょ。

気付いてます? ユリの事になると、口調が少し変わってますよ?

 

「いえいえ、同じ殺すにしても、私闘で殺すのと公式な制裁で殺すのとは、

「いやいやいや、どう考えても私情での非公式措置だったでしょ、それ。

…で、どうするの? 流石に骨すら残さなかったのは不味かったって。

アレの実家から、『せめて遺体だけでも返して欲しい』とか申し出が有ったら どうするの?

ソリュシャンとエントマが、大変 美味しく戴いちゃいました♡…って、正直に言う訳?」

その時は、無視します!(キッパリ)

 

「うわぁ…(©シズ)」

 

 

◆モモンガside・了◆

 

▼▼▼

 

◆デミウルゴスside◆

【外交(がいこう)】…自国と他国との交渉、交際の事。

1つの国…魔導国として、近隣・周辺国家と関係を持とうとするのは必然で有り、必須な事です。

既に、バハルス帝国と竜王国は、同盟を結び。

リ・エスティーゼ王国は半ば、帝国と共有する属国の様な物。

これは相手は敗戦国ですから、それは それで良しでしょう。

それからスレイン法国…は、彼方の国家思想、そしてカルネ村襲撃の件も有り、敵国認定が ほぼ決定しています。

当時は王国領でしたが今は魔導国領…そのカルネ村及び近辺の開拓村に対しての、帝国騎士に擬装しての襲撃についての問い質しの書状を既に何通も送っているにも拘わらず、未だ何の返答も無し。

如何に人間至上主義で在り、此方が その敵対対象の異形の集団だとしても、この対応は国として問題だと思いますが?

そして これは、帝国も然り。

此方と同様な質問状を…法国の特殊部隊導入の件等、かなり核心部分を突いた内容の手紙を幾度も出しているが、それでも返事は来ずとか。

無言は『黒』と言うも、そう解釈しても良いと同然…実際に黒ですがね。

 

 

アインズ。ケンカするなら手伝うから、絶対に一声掛けろよ。

いいか、絶対だぞ!?

「ぁ…は、はい。」

 

 

…アインズ様に対する、その言葉使いには思う処も有りますが、アインズ様当人が『何の問題も無い』と仰有られているので、まぁ善しとしましょう。

皇帝として取り繕った言葉で無く、所謂『素』の言葉でアインズ様に言っている辺り、本気なのが窺えます。

…話を戻しましょう。

外交の件ですが、複数の国に『対談望む』の旨を書き記し送った書状。

それに1番最初に対応してきたのは、アーグランド評議国でした。

…と言いますか、タイミング的に手紙を発送から それが先方に届くであろう前に、竜王国のドラウディロン女王を通じて…評議国の政治の中心者の中に、彼女の血縁筋の者が居るそうです…彼方の方から対談の申し込みを受けました。

以前、その国で やはり政治の中心となる存在の1人…1体ですか?…が、仮初めの体でナザリックを訪れた事が有りましたが、その者が話をしたいとの事。

事情が有り、その者は自身が座す場所から動く事が出来ない為、我々が評議国の彼の前に足を運ぶか、また前回同様に仮の体を魔導国に遣わせるとか。

尚、評議国は我々をユグドラシルからの来訪者というのを既に知っており、その対談には まろん殿や真里殿達にも参加して欲しいと、お願い(リクエスト)が有ったとか。 

 

 

◆デミウルゴスside・了◆

 

▼▼▼

 

◆モモンガside◆

エ・ランテルの魔導王邸。

現在、その応接室に居るのはナザリック、魔導国関係者として俺、アルベド、セバス。

ついでに言えば、メイドが5人(今日のアインズ様当番含む)。

 

「ドラちゃんから言われたから、来たけど…」

「魔導国と評議国の、外交の話じゃなかったのか?」

ヴァーリ・トゥードからは、マサトさんと まろんサン。

 

「そう言うな。プレイヤーを知る者の話、興味深いじゃないか。」

そして もう1人、人間種の谷屋さん。

 

「先ずは本来ならば我々の方から出向くべきなのを、御足労願った事に礼と謝罪を述べよう。」

『いや、私こそ ()()()()()でしか訪れる事が出来ない事を、詫びさせてくれないか。』

最後に今回の主賓と言うべきか、竜をモチーフにしたかの造型な、全身鎧の人物が1人。 

正確には、竜をモチーフにしたかの造型な、全身鎧が1つ…だ。

ツァインドルクス=ヴァイシオン。

アーグランド評議国のトップの一角の、白金の竜王(プラチナム・ドラゴンロード)

彼が彼方から、鎧を己の身体の様に操っているのだ。

以前、王国貴族がナザリック地下大墳墓に攻め入った茶番劇の時にも、ドラゥの仲介で この形でナザリックに訪れた人物だ。

まあ、確かに巨大なドラゴンその儘で来られても色んな意味で大変な事になるだろうから、その辺りは何も言わない。

尚、当人(当竜?)は自身を「ツアーと呼んでくれ」との事なので、そうさせて貰う。

このメンバーでの、魔導国と評議国との…いや、ユグドラシルのプレイヤーと、自称:世界の管理者・竜王との会談が始まった。

 

「最初に言っておくが、我々は ぷれいやーに対しては かーなーり、神経質になっている。

これからの会話の中、何やら不快に思う事も有るかもしれないが、それは全部、八欲王が悪いから。

文句は八欲王に言ってくれ。」

 

 

◆モモンガside・了◆

 

≫≫≫

 

◆ツアーside◆

ヤバイ!…ヤバイヤバイヤバイヤバイ!!

何なのだ? この ぷれいやー達は?

いや、ぷれいやーの前に其処の従属神2人が既に、八欲王と同等に強そうなのだが?

特にアインズ・ウール・ゴウン…魔導王を名乗る、スルシャーナと同族と思われる骸骨(スケルトン)が、最高にヤバ過ぎる。

鎧を操って、彼等の元に出張ったのは正解だった。

彼等を本体(わたし)の下に呼び寄せる? 冗談じゃない!

聞けば、此の場に来てない…恐らくは彼等と同格な ぷれいやーが、竜王国に まだ3人も残っているだと?!

冗談じゃない!!(2回目)

 

「それな。ロクとかハチとかジュウサンとか、一体 何なんだ?」

「ああ。私達は其等の事を…まろんサンがスルシャーナと少しだけ面識が有る程度で、この地の伝承でしか知らないからな。

彼等のした事…実際に見てきたであろう貴殿から、話してくれないか?」

「特に、八欲王とかの やらかし辺りを詳しくね~?」

最初の一言。ぷれいやーにとって、失言に成りかねない発言の責任を、先に八欲王に押し付ける様に伝えると、それに食い付いてきた。

 

≫≫≫

「話からして、八欲王とやらは ()()()()と思って、間違いないでしょうね。」

「ああ。空の城って時点で、もう確定だろう。」

「ん。モモンガちゃん達は確かにゲーマーとしてDQNだっただけだけど、アイツ等は普通にヒトとしてDQNだったからね~?」

「全くだ。其処迄に、ゲームとリアルと区別が出来てなかったとは…」

「あの…DQNとか言うの、止めてくれます?!」

私の説明に、ぷれいやー4人は揃って『はぁ~…』と溜め息を溢す。

 

「何と言うべきか…同じプレイヤーとして、すまなかった?」

「ツアー、奴等が特別に酷過ぎるのだ。

頼むから、アレがプレイヤーのデフォだとか、決して思わないでくれ。」

どうやら八欲王は、ユグドラシルでも…ぷれいやーの間でも、問題視されていた集団らしい。

 

 

◆ツアーside・了◆

 

≫≫≫

 

◆モモンガside◆

とりあえず、ツアー…というかアーグランド評議国、延いては竜王達が、プレイヤーを過剰な迄に危険視しているのは凄く納得・理解出来た。

全ては八欲王が悪い。

ドラゴン様が集団で問答無用、ナザリックや白い匣(ホワイト・ホーム)に攻め込まないだけ有情だ。

そうなると例え、生き死にの戦闘(ケンカ)では負けないとしても、拠点(ナザリック)は放棄必至な程に壊滅するのは間違い無いだろうからな。

 

『それで、だ。キミ達ぷれいやーに問おう。

キミ達は、この世界を、どうしたいのだ?

特にアインズ。国を建ち上げて、その先は、何を目指している?』

そして漸くと言うか、ツアーから本題となる質問。

その応えは以前、同じ問い掛けをドラゥにされた時と同じ。

 

 

平和に静かに暮らしたい

 

 

魔導国建国も、ジルからの勧めが切っ掛けだが、必要以上に敵を作りたくない、不要な争い事は避けたいという考えから至った事だ。

その過程、『この世界基準での圧倒的戦闘力を示す』というのが脳筋発想なのは、否定しない。

しかし、八欲王の話を…アレ程な話を聞かされたら後付けになるが、もう1つ理由が出来たな。

 

「ツアー、評議国は これから先も、100年単位でユグドラシルのプレイヤーが この世界に流れてくると見ているのだな?」

『ああ、その通りだ。』

「ならば、魔導国が その牽制となろう。

転移してきたプレイヤーが、己の強さ…いや、この世界の弱さに過信して、傍若無人に暴れ回らない為のな。」

 

 

◆モモンガside・了◆

 

▼▼▼

 

◆まろんside◆

ツアーと俺達プレイヤーの話し合い。

最後はモモンガさんが魔導王としての発言で、この竜王を一応は納得させる事が出来た。

とりあえずは()()()()()()()()()()、傍観の構えを取るとか。

戦闘…いや、戦争回避。

後日、改めて国同士の話し合いを…今度は其方側、政治面の専門家を遣わせるという事で、話は落ち着いた。

 

≫≫≫

「…美味そうだな。」

「ひぃぃいいっ?!」

そして その後も、魔導国の王様として動いていたモモンガさん。

ジルクニフ君との他愛の無い会話でドワーフの国に興味を持つと、事前連絡が取れないからと飛び込み営業の如く、シャルティアとアウラを御供に出向いたり。

結果、ドワーフの国と国交を結ぶのに成功。

ルーン技術者を魔導国に招待客として連れて帰ったり。

そのオマケ?に、グアゴアとか言う土竜獣人みたいな種族と霜の竜(フロスト・ドラゴン)を支配下に収めたとか。

しかもアウラのペットとして霜降脂竜(デヴゴン)を1匹、連れて帰ったり。

  

「ドラゴンの長を名乗る者を即座に殺した事で、他のドラゴンやグアゴア供はアインズ様の偉大さに心酔、その場で隷属を誓ったでありんす。」

「へー、そーなんだー。」 

しかもシャルティアから聞いた限りでは、此方は力技で(多分、心臓掌握(グラブスハート))。

何やってるんですか、モモンガさん?

恐怖による支配はダメだって、普段から言ってたじゃない。

向こうで何が有っt…まあ、ドラゴンが大柄な態度取って、アウラとシャルティアがブチギレ。

収拾が付かなくなったって処?

 

「聖王国、大丈夫? アソコ、アンデッドには厳しそうな宗教国家ぽいけど?」

「で、出来れば まろんサンも、マカロンとして同行して欲しいです…」

  




①デストロイヤー…前話に登場した巨大ゴーレム(前話では名前は出ていない)。
わしゃわしゃ動いて全てを蹂躙、子供に妙に人気が有るらしい。
詳しくは、前話をもう1度読み直そう。
 
②少し前から名前だけは出ていた谷屋、ヴァーリ・トゥードの最後の6人目として登場。
モデル・容姿は…また先の話で。
決めてない訳じゃないよ!
一応、伏線(ヒント)(笑)は出してるよ!
 
③ドワーフ王国編は全カット。
シャルティアによるグアゴア大虐殺が無い以外は、原作と ほぼ同じ流れと思って大丈夫です。
後にペ・リユロは多分、ザナックと仲好くなる(笑)。
 
 
次回『ローブル聖王国(仮)』
乞う御期待!感想もヨロシクです。
 


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infrastructure

 
聖王国編の前に…
前半はストックしていたネタの消化、並びに今後の伏線回。
今回は普段に増して、短いです。
 


◆デミウルゴスside◆

アインズ様より様々な命令を降されていますが、その中の1つ、異種族配合実験。

これは、中々に芳しい結果が得られておりません。

以前に捕らえた、漆黒聖典なる人間共と、オークやオーガでの掛け合わせを試みましたが、女2人は流石に()()()()()()()()()()()()()か、直ぐに使()()()()()()()()()()()しまいました。

一応、人間としては高い魔力持ちだったので、パワー系な亜人とのハーフの能力には、それなりに興味が有ったのですがね。

残る男共も同様、オークやオーガの牝と 無理矢理に 交わらせてみましたが、此方も子を宿す事は無く。

最後は皆、搾られ枯れ果て、死んでしまいました。

 

「デミウルゴス…お前の血は、何色だ?

ペロロンチーノも言ってなかったか?

(ヤロー)の『くっ殺』は、マジ止めろって。」

…以前も同じ質問に答えた記憶が有りますが、蒼色に御座います、まろん殿。

そして、ペロロンチーノ様の件ですが、確かに その様な会話を御方々とされていた気もしますが、それ以上にウルベルト様の『男に対する拷問としては、最高に面白くね?w』の御言葉の方を優先させて頂きました。

…と、言いますか、ペロロンチーノ様達が その様な会話をされた時は必ず、後から ぶくぶく茶釜様から御説教を…

む? 私の記憶の中、まろん殿も一緒に正座して お叱りを受けている場面が浮かびまs…

はい? m(_ _)m それ以上言うのは止めろくれさい?

…承知しました、話を戻しましょう。

その後の死体ですが、只 廃棄処理するのは勿体無いので、男女共にマジックアイテムの素材等として有効活用ですね。

結果、実験は失敗…ですが、アインズ様には『これは決して、失敗では無い。ヒト種とオークやオーガ等との交配が不可能という結果・結論が出ただけ。気に病む事は無い。』と言って頂けました。

我が主は本当に、慈悲深き御方です。

 

それから、交配実験とは違います…その様な目で見るのは不敬ですが…

 

【まろん殿xユリ】

最早ナザリックとヴァーリ・トゥードの繋がりの要と言っても過言で無いカップルですが、この2人は共に首無し騎士(デュラハン)種、不死属(アンデッド)だからか、所謂 ()()()()()を宿す事は不可能な様で。

 

「何時も思いっきし中〇し、してるんだけどなぁ?」

 

【アインズ様xアルベド】

魔導国王と王妃として、正式に婚姻されたアインズ様とアルベド。

ナザリックの者(ブレイン・アングラウスや占星千里含む)に、外からはバハルス皇帝と竜王国女王、それからヴァーリ・トゥードの皆様だけを招いた、控えめな式(当社比)でした。

まろん殿や真里殿が、我々の知らないアインズ様の逸話を話そうとして、それをアインズ様が必死に止めようとしたりな波乱?も有ったりな、楽しい時を過ごせました。

 

「2人の誓いの口付けの場面は俺とジルクニフ君とドラちゃんが、すまほでバッチリ撮ってるぜ!」

そんな御2人、当然、夜の営みが無い訳が無く。

アイテムにより人化、生身の肉体を得たアインズ様と行為を重ねているアルベドですが…この辺り、まろん殿が大きく関わっているらしいですが…現在 懐妊の報せは有りません。

 

「モモンガさん、アルベドから腕や脚だけで無く、翼も使われてガッチリ拘束されて、完全に逃げられなかったらしいぜ。

大好ゅきホールド with ブラックウィング!www」

……………………。

まろん殿とユリも そうですが、もしかしたらプレイヤーと それにより創られた者との間には、子供が出来ないのかも知れませんね。

爺やに憧れている、コキュートスが知れば落胆必至な仮説ですが、突き詰める必要は有ります。

問題は如何にして そうするか?…ですが。

まさか、アインズ様やまろん殿に、他の女性型のシモベを宛がう訳にも行きませんし。

 

「それ、下手しなくてもセクハラだからな?

それと俺は、ユリたん♡一筋だぜ?」

…知っています。

一応、シャルティアがアインズ様の側室候補ですが、彼女も吸血鬼(アンデッド)という点を踏まえると、やはり子供が出来る可能性は低い。

これは別の誰かでの検証の機会が訪れるのを、待つしか無いですね。

プレイヤーと現地人の間に、子供が出来るのは確認していますが…

 

 

◆デミウルゴスside・了◆ 

 

▼▼▼

 

◆モモンガside◆

会談を求める旨を記した書状の返事が、ローブル聖王国から届いた。

『この手紙が届く頃には、何時でも、迎え入れる用意を整えています』との内容だ。

それならば、直ぐにでも出発するのが道理という物。

どうせ国営の殆んどは、アルベドとデミウルゴス(時々パンドラ)に丸投げ。

飾りな王様同然な俺には『絶対に』という予定は無いから、何の問題も無い。

今回の同行者は そのデミウルゴスにシズ、それからブレインと()()()()()()

まろんサンには人間として同行願った形だ。

人間であるブレイン…そしてマカロンを抜擢したのは、相手側が異形種には余り良い感情を抱いてないのを踏まえての人選だ。

 

≫≫≫

「本当に全然、揺れませんね。」

魔導国からローブル聖王国には、リ・エステーゼ王国を突き抜ける事になる。

先ずは その王国に向かう馬車の中、ブレインが呟いた。

 

「当たり前です。

魔導国のインフラストラクチャーを、王国基準で考えてもらっては困りますよ。」

「いんふら…何ですか?」

「そもそも、国なる物を築くに至り…(中略)…当然、街道だけに終わらず…(中略)…」

「……………………………?」

それに対して、デミウルゴスが説明を始めた。

ブレイン的には、真っ平らに整地された石煉瓦舗装により、馬車が高速で走っているのに全く揺れてない感想を漏らしただけなのに…馬車のサスペンションが高性能なのも要因だが…それからデミウルゴス先生の生活基盤に関する講義(レクチャー)が始まるとは、予想外だっただろう。

俺も予想外だったし。

 

「……! ……………っ!!?」

「…………………。」

「…………www」

ブレインが俺や まろんサンに、「止めさせて下さい」と目で訴えてるが、これはデミウルゴスやアルベドの暴走(かんがえ)を知っておく良い機会だ。

悪いが その儘、俺も聞かせて貰おう。

とりあえず、インフラとはインフラストラクチャーの略だったのを初めて知ったのは、内緒だ。

 

「最終的には国内の街道全てを、アスファルト舗装する予定です。」

 

 

◆モモンガside・了◆

 

▼▼▼

 

◆ジルクニフside◆

アインズがドワーフ王国とも、国交を結んだらしい。

聞けば、ドワーフの国はグアゴアなる亜人に攻め入られていたそうだ。

近年、ドワーフの商人が帝国に行商に来なかったのは、そういう訳だったのか。

ドワーフの国と帝国は、軍事協定は結んでいなかったので、その辺りの情報は全くだったからな。

兎に角その いざこざを解決したのが切っ掛けで、ドワーフと関係を持つ事が出来たとか。

少し前、アインズと すまほを通してルーン技術について話したのは、タイミングが良かったとしか言えないな。

『持っている』とか言うヤツか?

亜人は兎も角、その背後(バック)に居たというドラゴンをも配下に収めるとは、流石は ぷれいやーと言う処か。

そして、その様な者と良い関係を築けた私も、『持っている』のだろうな。

さ・て、聞いた話では、次はローブル聖王国に向けて出発するそうだが…

アインズよ、あの国もスレイン程では無い…いや、ある意味スレイン法国以上に、アンデッドを厭忌する宗教国家だぞ?

いや…心配は無用か。

確かにアインズはアンデッドとは思えない位に馬鹿正直な面も有るが、同時に腹黒い面も持ち合わせているキレ者だ。

ついでに今回は、アインズ以上に腹黒でキレ者な まろん…そして眼鏡の悪魔(デミウルゴス)も、同行するらしいからな。

あの脳味噌お花畑女王相手なら、軽く言い込める事も出来そうな気がしてきたぞ。

…だとすれば寧ろ問題は、()()()だな。

下手をすれば、あの女が原因で国が滅びるやも知れぬぞ?

カルカ女王。手綱は確と、握っておけよ?

 




①因みに漆黒聖典・占星千里は、予知視(タレント)の お陰でナザリックに迎えられて無事。
綺麗な身体です。(スレイン在籍時やナザリック移籍後に誰ともΧХХしてなかったらね)
 
②止めろくれさい…一応、「止めろください」をアレンジした、作者オリジナルの心算だったけど試しに検索してみたら、既にネット上に存在していた件。
危ねー、「俺が考えた!」とか公言して『大好ゅきホールド』みたいに荒れる処だったぜ。
 
③【祝】モモンガさん、卒業。
ガガーランの魔手から無事に逃れる!(笑)
 
次回『Sacred Club(予定?)』
乞う御期待! 感想ヨロシクです。
 


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ローブル聖王国

 
すいません…前回の次回予告の()()ですが、もう少し先になりそうです…
 
独自設定・解釈入ります。
 


◆モモンガside◆

「大丈夫かぁ~?ww」

「まろん様…全っ然、心配してないですよね?!」

デミウルゴスのインフラについての説明が終わり、疲れ果てた表情なブレインに まろんサンが、凄い()い笑顔で話し掛けている。

 

「………………………。」

デミウルゴスのインフラ講義だが、実は俺も、途中で もう何が何だか訳解んなくなっていた。 

いや、最初は分かっていたぞ!本当だぞ!

 

≫≫≫

聖王国を目指して進む馬車。

車窓から外を見てみると、道沿いには街道警備に設置したゴーレム(ミスリル製)が。

最初はデスナイトを配置しようと考えていたのだが、

「アンデッドはイメージ悪いって!

旅人や行商人が、普通にビビるから!」

…と、何処ぞの首無し騎士(アンデッド)が言ってきたので、ゴーレムにしたのだ。

 

シュタッ!

 

……………??!

そのゴーレム、魔導王(オレ)に気付いたのか、馬車に向けて敬礼してきた。

両足をピシッと揃えた直立の姿勢で右手をピンと張り、一旦 左胸の位置で水平に構えてから、掌を下に向けた状態で腕を斜め上に突き出すポーズな敬礼だ。

 

「「「()ゎあ…」」」

それを見て、まろんサン、シズ、ブレインが声を重ねる。

いや、気持ちは解るよ? 俺も精神鎮静化してるよ!

しかもゴーレムらしからぬ、無駄に滑らかで優雅な動きだから、尚更だよな?

 

「ふむ…」

此処でデミウルゴスも口を開く。

 

「アインズ様。あのゴーレムの敬礼、まろん殿達の反応からして、どうやら好みが別れる様です。」

いや、好みが別れるで無くて、もう皆アウト判定してるだろ?

もしかしてデミウルゴス…お前的にはアレ、アリなのか?

 

「どうでしょう?

全ての者から支持を得るのは無理だとしても、7:3…いえ、8:2程度には、支持を得られる動きに修正してみては?」

はい、その提案採用!

動きのモデルは…そうだな、セバスに頼もう。

…と言うか! そもそも警備ゴーレムに そんな敬礼みたいな機能なんて、要らないんだけどな?!

本当に誰だよ? あんなの仕込んだ(インプットした)ヤツは?←1人しか心当たりが無いけど!

 

 

◆モモンガside・了◆

 

▼▼▼

 

◆ブレインside◆

 

ガタッ…ゴトッ…

 

成る程、そういう事ですか!

いんふらって大切なんですね、デミウルゴス様。

魔導国領から王国領に入った途端(関所は魔導王(アインズ様)相手だからか、面倒い手続きも無く顔パスだった。さすアイ!)、馬車が揺れだした。

そう、道が悪過ぎるのだ。

スピードも魔導国領内と比べて かなり落として走っているし、これで馬車に さすぺんしょん機能とやらが無かったら、もっと酷く揺れてるらしい。

もっと道路整備しろよ、王国!

 

≫≫≫

「どうします? コイツ等?」

現在。ローブル聖王国を目指し、王国都市は無視して野道を突っ走っていた時、えーと、此処は…

「…はい、地図。この辺り。」

シズ様、ありがとうございます。…と、王国と聖王国の国境から、100㌔辺りの山道で、賊の集団に襲われた。

豪華な馬車だから、連中からすればカモにしか見えなかったのだろう。

治安悪いねー。

しかし残念! お前達が襲ったのは、魔導王様御一行でした!

 

「「「「「ぐぐぐ…」」」」」

当然、即座に俺が返り討ち、縛り付けたけどな。

 

「王国に突き出して報告するのも、面倒でしょう。」

「そうだな。無駄に時間を掛け、聖王国女王を待たせる訳にも往くまい。」

「…放置で良いと思います。」

「この国には こんなのが未だ、蔓延っているとはな…王国役人、本当に使えないな。

仕事しろって話だ。そもそも…(以下略)」

はい、つまり要約すると、『野盗なんて死んだ処で誰も困らないから、●して野良モンスターの餌にでもしてしまえ』…ですね。

承知しました。

 

≫≫≫

 

「おお、魔導王殿、お待ちしておりました。」

…あの後は大した出来事(イベント)も無く、無事に聖王国に到着した。

事前にアインズ様が鳩みたいな使い魔?を王宮に飛ばしていたので、彼方さんも何時頃に着くかは分かっていた様で、城からの遣いの者が関所でスタンバっていた。

聖王国の紋が刻まれた、黒革の鎧を着込んだ男と、

「……………………。」

 

ペコリ…

 

騎士っぽい礼服の、見た目はシズ様と変わらない年代な少女。

多分…いや、間違い無く父娘だ。

そうじゃ無きゃ、歳が離れた兄妹。

 

「これより都市を3つ経由、明後日には聖都に到着しますよ。」

 

 

◆ブレインside・了◆

 

▼▼▼

ローブル聖王国。

リ・エスティーゼ王国の南西に位置する国。

スレイン法国の六大神信仰の解釈を狭めた四大神を信仰する宗教国家で、一部の亜人種との外交関係は持っているが、アンデッドや悪魔に対する禁忌、嫌悪は法国と同様。

その地形から、北部聖王国・南部聖王国と呼ぶ者も居り、その両側の対立から先の未来、本当に南北に国が分裂する可能性も少なくは無い。

差し当たっての一番の要因は、現在 国を治めているカルカ・ベサーラス。

聖女王と呼ばれる彼女だが、国史初めての女子の即位に、南部側貴族が猛反発。

別に男子即位絶対が国法で定められている訳では無いが、兄王子を押し退けての即位(当人は不安は有るが不満は無い)に、異議を申し立てているのだ。

本音は単に、国政の主導を常に北部側が握っている事を不服としているだけで、文句が言えるなら理由は何でも良い訳だが。

只、カルカの施政は『有能か?』の問い掛けには確かに疑問符が付くのも事実。

しかし彼女の右腕・左腕の存在が それをお釣りが来る程に補う事により、結果的に決して無能とも言えず。

その一方で、某・皇帝曰く、『甘々理想な脳味噌お花畑のバカ女』と揶揄する程に、理想を優先する余り、民の生活に負担が生じる強気な政策を執れず、それが逆に民に負担を強いる事が有り、民に多少なりの不満を持たれるのも、また事実。

過去に その辺りを突いた、渡を過ぎた反発により粛清された貴族も…何処かの皇帝の それの様に、血が流れた事は無いが…少なくは無かった。

…そうした火種が燻る中、聖女王と魔導王(アンデッド)との会談が、近日に控えていた。

 

≫≫≫

 

ガンッ!

 

「クソが! 一体 何を考えているのだ、あの女は?!」

そんな、南部側の都市に在る、とある大屋敷の一室。

その屋敷の主である、少しばかり太り気味な中年男が、空のグラスをテーブルの上、割るかの様に乱暴に置き、声を荒げた。

 

「グフハハード、落ち着け。」

「些か見苦しいですぞ?」

その貴族らしからぬ振る舞いに、小柄な初老の男と、長身の若い男が宥め諫める。

 

「落ち着け…だと?

貴殿達はアレを聞いて、何も思わぬ、感じぬと云うのか?!」

しかし その言葉は、炎に揮発油を投げ入れたも同然な様で、グフハハードと呼ばれた男は、更に声を大きくした。

この男の憤りの理由は、自国のトップである聖女王が、魔導王…アンデッドと対話の場を設けた事に有る。

 

「大体、あの腹黒やゴリラも、何故 女王を止めなかったのだ?

如何に会談を求められたとしても、『アンデッドと話す事は何も無い』とでも返信すれば、それで良かっただけの話だろうが!」

「…それで相手が狭量ならば、戦争待った無しですぞ?」

「そ、それなら、全くの無視でもしておけば、一向に構わなかった!」

「それで、我が国が他国の王の呼び掛けに応じぬ…『否』の姿勢すら示さぬ、無礼者非礼者と公言されては?」

「な…? フンスヌン! まさか貴様、あの女の肩を持つのか?」

「まっ・さっ・かっ!」

顔を赤くして怒り収まらぬ貴族、グフハハードが、この場では最年少の男の、恰も聖女王の行動を支持するかの発言に、更に顔を赤くして問い質すと、この若き貴族…フンスヌンは それを否定。

心外とばかりに両手を胸元で交差、大きな(バツ)を作る。

 

「あの女が どの様な決断を下しても、何かしらのケチを付けてますよ。

貴方達と同じく…ね。」

「…確かに、の。

まあ良いわい。どちらにしろ、忌まわしい他国のアンデッドの王が我が国の地を踏む、それを聖女王が認めた…それだけで あの女を糾弾する口実になるわい。」

政界に於いて、主流派の発言・行動に対して反主流派が異を唱える…それが、如何に良策・善策だとしても、『主流派の考えだから、兎に角 認めず否定する』の構えは、何時の世も何処の世も一緒。

澄まし顔で小笑いするフンスヌンに、初老の貴族が同意。

 

「そうなのデス!

その(とぅお)ぉーーーりぃ!なの、デス!!

「「「??!」」」

そんな会話の中、突然に知らない声が、室内に響く。

3人の貴族が驚きながら、声の聞こえた先…部屋の扉の方に目を向けると、其処には

「初めましてなのデス。

グフハハード侯爵、ウェッヘン侯爵、フンスヌン伯爵。」

闇紫色の聖職者のローブを纏い、病的な青白い肌に眼を大きく見開いた、長身猫背の男が立っていた。

 

「お…お前は…」

「一体どうやって、この部屋に入ってきた?」

正体不明の不法侵入者に問う貴族達。

 

「は~い、私、ス…いやいやいや、私の素性等、どうでも良い事なのデス。

大事なのは、あの忌々しい憎々しい(くっさ)れアンデッドを早々に始末しないとダメな事なの…デス!

「「「…………………………。」」」

 

≫≫≫

 

コトッ…

 

「…司教殿? これは?」

…その後、3人の貴族は"司教"を名乗る謎の男を怪しみながらも、話を聞く。

それなりに厳重な警備が為された屋敷の中、この部屋に入ってきた時点で只者では無いと理解出来ていたからだ。

そして やや独特な口調な男の口から出る、『この聖なる国に、アンデッドが足を踏み入れるのが許されるのか?』『それを招いた聖女王を赦すのか?』という主旨の話術に興味を囚われる。

そして会話が進み、貴族の1人が『確かに行動に出るべき』な台詞を発した時、司教は『その台詞を待っていたのデス』とばかりに眼をギラつかせ、懐から3ヶの水晶の塊を取り出し、彼等の前に置いて見せた。

 

「はぃ~。これは、最上級の天使が封印された、魔水晶なのデス。

如何に強大な力を持つアンデッドと謂えど、所詮はアンデッド。

上級の天使の聖なる攻撃の前には、イチコロなのデス。

手下さんに魔法詠唱者(マジック・キャスター)は居るでしょう?

そのヒトにコレを、使わせたら良いのデス。」

「「「……………………………。」」」

 

≫≫≫

「…どう思う?」

「どうも何も、我々を都合良く利用しようとしているとしか、思えませんが?

あの"司教"なる男、間違い無くスレイン法国の者でしょう。

それも恐らく、六色聖典に属する…ね。」

"司教"が去った後、テーブルの上に置かれた儘の魔水晶を見ながら、ウェッヘンが険しい顔で呟くと、フンスヌンが涼しい顔で切り返す。

 

「…ならば! ヤツの思惑通りに、コレをあのアンデッドに刺し向けるのか?」

「ふふ…あの司教は、言ったではないですか。

『コレは自由に使って構わない』…と。

…つまり、」

そしてグフハハードの問い掛けにも、不敵な笑みを浮かべて話を続ける。

 

「自由。それは、あのアンデッドを斃すのに使うのも自由。

使う事無く、部屋の飾りに置くのも自由。

…そして、コレを()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()使()()のも、また自由。」

「………………!!

成る程、そういう事か!」

「ええ、そういう事ですよ。」

「????」

フンスヌンの言葉に、ウェッヘンが その裏側に含まれた意味を悟り、それを察したフンスヌンも、満足気に笑みを溢す。

しかし、彼等は未だ、気付いていない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…成る程、そういう事ですか。」

「どうかしたのか?」

「ええ。詳しくは今夜にでも お話しますよ、アインズ様。」

…モモンガが魔導王として、ローブル聖王国に会談を望む親書を送った頃と同時期から、自分達の影の中に忍び潜んでいる、異形の者の存在に。

 




①カルカ兄王子は、原作にて出落ち死に落ちのドッペルさんじゃないです。
きちんと生きています。
 
②聖王国南部貴族は、特にモデルは無し。
適当にデブ、チビ、ノッポを想像して下さい。
 
③謎の司教、一体 何者なんデスかね?(笑)
フィリップと絡ませたかったけど、ネタが浮かんだのがフィリップ殺した後だった…デス!
 
 
次回『聖王国②(予定)』
乞う御期待!
感想もヨロシク…DEATH!!
 


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少女2人(仮)

 
サブタイが浮かばない…! orz
 


◆まろんside◆

ローブル聖王国に入国。

国境関所にて待機していたパベル・バラハなるオッサンと その娘さんの案内で、先ずは最初の宿泊予定だった小都市に到着したが、

(アンデッド)が街に居合わせるのも、色々と問題が有るだろう。」

…というモモンガさんの考えで、街は素通り。

日が落ちるまで馬車を走らせ、その日は野営。

モモンガさんが魔法で作り出した屋敷で、宿泊となった。

 

≫≫≫

「成る程…ねぇ?」

食事の後、デミウルゴスから報せる事が有ると言うので、モモンガさんの部屋に。

ブレインにシズ、バラハ親子は、各々に宛がった部屋で休んでいる。

そして聞かされた話とは、聖王国の南部貴族が、何やら企んでいるとの事。

聖王国の事は、親書を出す時点で色々と調べていたデミウルゴス。

北と南、双方の有力貴族の元にシャドウデーモンを送っていたらしいが、その南部貴族にスレイン法国の者が接触、魔導王(モモンガさん)暗殺計画を唆してきたと言うのだ。

シャドウデーモンを付けてる時点で もうバレバレ、プライバシーも何も無いな。

 

「しかし相変わらず、恥ずかしがり屋さんな国だなあ。」

「ふふ…しかし、これで改めて、敵認定ですよ。」

カルネ村の時も そうだったが、絶対に表には法国の顔を出さない その やり口に皮肉を込めると、モモンガさんも同調。

魔導国が聖王国と、最終的に どういった関係を持つかは分からないが、次に()()()()()国は決まったも同然だ。

 

「…それで、デミウルゴス。

それに対して、どの様に対応するのだ?

お前の事だ。既に幾通りもの、策を考じているのだろう?」

「はい。やはり、お見通しでしたか。

流石はアインズ様に御座います。」

いやいや、流石なのは お前だよ。さすデミ!

 

  

◆まろんside・了◆

 

▼▼▼

 

◆パベル・バラハside◆

本当にアンデッドか?…と思える程の気遣いだ。

魔導王は、予定していた街での宿泊を、『必要以上に民に動揺を与えるべきでは無いだろう』と拒否。 

日没ギリギリまで馬車を走らせ…その馬車も凄い。

それを引くのは巨大な2頭の馬。

御者要らずのゴーレムらしく、実際に御者らしき者は居ない。

荷屋も俺達の馬も余裕で乗る程な、巨大サイズ。

そんな馬車に、俺も(ネイア)と一緒に乗車していた。

一応は俺達、馬車を先導する案内役だったのだけどな?

そんな馬車が、俺の常識を越えるスピードで走るのだ。

内側も、20人以上が ゆったり出来そうな広さの、豪華な内装。

高級感溢れる皮張りの椅子やテーブルが置かれていたり。

…と言うより、どう見ても、外より内のが大きい(ひろい)だろ?

そんな風に考えていたら、それが顔に出ていたのか、ブレイン・アングラウス…この男も魔導王の下に就いていたのか…が『空間魔法ってヤツらしい。考えるな、考えたら負けだ。』と教えてくれた。

魔導王には「楽にしてくれ」とか言われたが、無理だろ!

娘と同年代と思える、メイドの眼帯少女に果物や紅茶を出されたりしたが、落ち着けねぇ!

ブレインとマカロン殿が時折、軽く話し掛けてくれていたが、それでも親子で車内の隅、小さく縮こまっていたよ!

更には夜、平地に『今夜は此処でキャンプだ』と、魔法で大きな屋敷を作った魔導王。

ぃゃ、それキャンプの建物じゃないから!

魔法、何でもアリだな?!

ケラルト様でも、こんなの無理だろ?

こりゃ どんな話し合いになるかは分からないが、戦争(ケンカ)だけは絶対に避けないとな。

頼むから何時もの如く何の考えも無く、余計な一言二言とか言ってくれるなよ…

本っ当、マジに頼むぞ…分かってんのか、お前に言ってるんだよ、脳筋!

そしてメイドに案内された部屋も、当初 泊まる予定だった宿よりも遥かに上等な部屋。

 

「うわぁ~♡」

ネイアも それを見て…初めて目にしただろう豪華な部屋、そして出された豪華な食事に眼を ギラつかせて 輝かせていた。

 

≫≫≫

「応、邪魔するぜ?」

「「??!」」

食事の後、風呂に…これもマジック・アイテムなのか? いきなり お湯が出る管に驚いたり…入り、漸く落ち着けたと思えた時、部屋にやって来たのはブレイン氏とマカロン魔導国公爵殿。

ブレインとマカロン殿は両手に…あれは、酒か?を持っている。

 

「……………。」

メイドのシズ嬢も、沢山の酒やツマミを乗せたカートを押しての登場だ。

 

「アンタ、イケる口かい?」

酒瓶を差し出してのブレイン氏の問いに、肯で応えると、

「ほいよ。」

…と、マカロン殿から…これも初めて見る…緑色の(ポーション)?を渡された。

 

「飲んどけ。悪酔いを防ぐポーションだ。」

…らしい。

 

「…マカロン様、それでは私は失礼します。」

「ああ、お疲れさん。」

「…アナタはコッチ。

行こ。お菓子とか沢山、用意してる。」

「え?…え?え?」

そしてシズ嬢はネイアの腕を引っ張りながら、部屋を出て行った。

てっきり彼女は給仕役と思っていたが…まあ、オッサン達の酒盛りに、若い娘さんを付き合わせるのもアレだしな。

アッチはアッチで、仲良くしたら良いさ。

娘に友達が出来るのも、大歓迎だ。

 

 

◆パベル・バラハside・了◆

 

▼▼▼

 

◆ネイア・バラハside◆

「……………………………。」

「………………………………………。」

か、会話が無い…。

マカロン公爵とブレインさんが、お酒を持って部屋にやって来た時、お父さんは凄く嬉しそうな顔をしていた。 

(ウチ)は決して貧乏じゃないが、お母さんが倹約家で、お酒なんて家じゃ余程の祝い事でもないと飲めたりしない(お父さんは お酒大好き)。

だからこそ分かる…この先この部屋は、酔っ払い共のカオスとなる!

…だから、そうなる前に私を部屋から連れ出してくれたメイドさん…シズさん(美少女!)には とても感謝。  

 

「……………………………。」

「………………………………………。」

しかし、会話が無い!

2人して黙って、お菓子…初めて見たけど、『ちょこれーと』『ぽてち』『ぽん〇りんぐ』という お菓子は凄く美味しい…を食べてるだけ!

こんな時、どんな事を喋れば良いのか、全然 分かんないよぉ!

うぅ… 友達が居ない 友達が少ないのが、災いしてる!

 

「あ…あの…」

「ん?」

そ、そーよ! 女の子同士、こーゆー時は男の子の話とかすれば、盛り上がる…筈?

 

「え、えぇとですね…」

…って、私、お父さん以外の男の人と、仕事以外で喋った事が無い!

同期生の男子でカッコいいと思える子は皆、売約済だし(カノジョいるし)

だ、誰か、居ない? カッコいい男の人…って、あっ!!

 

「あ、あの、ま…マカロン様…って、カッコいいですよね?」

「…………………。

あー、そゆ事。無理。マカロン様には、婚約者が居らっしゃる。」

…でっすよねー!

アレだけカッコいいですもん、 赤い眼が少し怖いけど やっぱり御相手さんとか居て当然ですよねー?

…って、違いますから!そんな心算で言った訳じゃないですから!

 

≫≫≫

マカロン様の事で、少し誤解をされたけど、それから色々と会話が続いていった。

 

「私達姉妹は元々、至高の御方に仕える為だけの存在。」

しかし男の話…で無く、かなり重い方向に。

『家族』とかで無く『姉妹』という言い方。

何となく地雷な予感がして…例えば御両親は既に他界してたりとか…怖くて詳しくて聞けなかったが、どうやらシズさんの家庭は、魔導王絡みな特殊な一族の様だ。

その途中でシズさんが7人姉妹の5番目とかも聞かされたり。

私は1人っ子だから、姉妹が居るのは正直 羨ましい。

そして彼女の主である、魔導王の話も聞かされた。

アインズ・ウール・ゴウン魔導王。

バハルス帝国とリ・エスティーゼ王国との戦争に、帝国側として介入。

開戦早々、圧倒的なチカラで数万の王国兵を瞬時に虐殺したという、邪悪なアンデッド。

…それが、聖王国の人間が持つ、魔導王のイメージだった。

しかし、シズさんは そうじゃないと言う。

強大な力を持っているからこそ、それだけによる支配が如何に愚かしいか、アンデッドだからこそ、屍の山の上の玉座が如何に虚しいか…そんな考えを持っている。

そして魔導国という国を建てる為の戦争も、元々は自身の拠点、そして仲間(かぞく)を王国という墓荒しから守る為だったとか。

 

「…アインズ様は本当に、凄く優しい御方。」

それは私…聖王国の者が持つ、『アンデッドは理性無き邪悪な存在』のイメージを大きく覆す物だった。

その流れで、冒険者だったマカロン様が貴族位を与えられ、魔導王の下に付いた経緯も教えられた。

民を守る為、もしも魔導王が暴君となった時は、それを伐つ剣となる為…か、カッコいい!!

 

「…だからマカロン様には、スイカップの婚約者が居る。

アナタの平乳(ぺったん)じゃ、勝てない。どんまい。」

す、スィk…?! だ、だから、そーゆーのじゃ無いですってば?!…って、胸の事は、放っておいて下さい!

大体シズさんだって、私と大して変わらないじゃないですか?!

まだまだ これからです!

 

≫≫≫

「ん…」

それから…向こうの宴会は終わる気配が無かったので、シズさんの部屋で寝る事に(廊下で寝ますと言ったが部屋から出して貰えなかった)。

2人位なら平気で寝られそうな、大きなベッドの端を借りて(床で寝ると言ったらベッドに放り込まれた)。

 

「…起きた?」

そして朝。目を覚ますと、もうパジャマからメイド服に着替えていたシズさんが居た。

 

「マカロン様達を起こしてくる。その後に、朝食。」

「は…はい。」

 

 

◆ネイア・バラハside・了◆

 

▼▼▼

 

◆まろんside◆

聖王国側の予定では、俺達は明日の夕方頃に聖都に到着。

宿で一泊した翌日、王城で聖女王との会談だったのだが、今日 昼過ぎに、その聖都ホバンスの王城に着いてしまった。

やはり初日に宿泊する筈だった都市を通り過ぎ、今日も馬車を暴走させていたのは、大きいな。

パベル・バラハが城の番兵に俺達が着いたのを話すと、少しの後、城門を通された。

バラハ親子とは、此処で お別れだ。

 

「それじゃ先輩、お元気で。」

「ん、後輩。」

驚いたのは、シズがバラハ娘と仲良くなっていた?事だ。

よく見たら、あの子の服の胸元に、シズお気に入りの証しの『1円シール』が貼ってあるし。

…って、先輩後輩?

 

「うん、うん♪…チッ!」

それを見ていたモモンガさんも、嬉しそうに…あ、感情抑制されて舌打ちしてる。

そして城内の案内役に連れられた部屋には、3人の女…と、護衛兵が幾人か。

成る程、彼女等が…

 

聖王国女王カルカ・べサーレス

聖王国神官団長ケラルト・カストディオ

聖王国騎士団長レメディオス・カストディオ

 

…………………………。

ジルクニフ君から事前に、お花畑、腹黒、脳筋と聞かされていたが、とりあえず脳筋だけは、直ぐに分かった。

悪い意味で頭が 悪そうな 硬そうな、そんな雰囲気をしている。

 

「ローブル聖王国に、ようこそ。

お待ちしておりました、アインズ・ウール・ゴウン魔導王殿。」

真ん中(センター)に位置していた聖女王と思しき女が、微笑を浮かべ声を掛け、

「いやいや。此方こそ結果、急な訪問となり、申し訳無い。」

普段の黒ローブで無くて赤と金のローブ着用のモモンガさんも、それに合わせて対応。

 

「気にする必要は無い。

イヤな事は、早く済むに越した事は無いからな。」

「「「…!!」」」

「レメディオス!」

「姉さん!」

しかし、社交辞令という言葉を知らなさそうなのが、約1名。

聖女王の左腕とされている、聖騎士団長殿だ。

まさか、此れ程とは…

ジルクニフ君やパベル・バラハからの前情報で、かなりのバカとは聞かされていたが、此方の想定を遥かに上回る大バカだった。

下手したら 瞬時に国を滅ぼせる そのバカっ振り、この前の貴族と良い勝負だ。

 

「「し、失礼しました、魔導王殿!」」

「いや、大丈夫だ。」

慌てて聖女王と神官長は頭を下げるが、モモンガさんは気にしてない模様。

()()()()()()()

また緑の発光してたが、あれは怒りで無くて呆れからの精神安定だろう。

 

「……!!!!!!!!」

「………む。」

しかし当たり前な話か、デミウルゴスとシズが殺気全開だ。

予めモモンガさんが「手出しダメ!絶対に厳禁!」とか言ってなかったら、少なくとも あのバカ女の首が飛ぶ(物理)のは確実、下手したら兵士含む、この場の全員が惨殺死体となっていた。

いや、主の命に背く事に、死を以ての償いすら辞さずとばかりにデミウルゴスが動かなかったのが、本当に奇跡と言って良いと思う。

どんな意味が有ったかは知らないが、その嗤顔の仮面の着用は正解だ。

今頃は仮面の裏、盛大に血管(あおすじ)浮かべて歪ませているぞ?

…あ、もしかしたら この為か?

この展開を予想していたか?

少なくとも誰かさんの嫉妬マスクよりかは断然 趣味が良いし、単なる お洒落かと思っていたぞ?

    

 




【次回予告】
 
◆デミウルゴスside◆
あの女…!
事前に この様な流れを予想していたのか、アインズ様から止められていなければ、即座 八つ裂きにしていた処です。
…そうした中、我等が魔導国と聖王国との、今後に於ける話し合いが。
さて、どうなる事か…
とりあえずは女、それ以上の無礼は控える様に。
然もなくば…!
 
 
次回『GO!GO!レメディオス!!(予定)』
御期待下さい。
感想も、よろしくお願いたします。
 


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肉体言語

 
GO!GO!レメディオス!!
 


◆モモンガside◆

ローブル聖王国の女王との会談は、向こうさんの側近の先制攻撃(ひとこと)で、何とも重苦しく、それでいて僅かながら此方に優位性(アドバンテージ)が有る雰囲気で始まった。

 

「で、でゎ…改めて…」

声、上擦ってるぞ?(気持ちは解る)

女王の右隣の女性が、自分達…女王、神官長、騎士団長を紹介。

この女…ジルからは『聖王国の神官長は腹黒』と聞かされていたが、そんな風には見えないな。

芯の強い、出来る女性という印象を察する事は出来る。

一方で女王は何となくな雰囲気だが、聞いた通りな『お花畑』なイメージだ。

いや、人を外見だけで判断、善くも悪くも決めつけるのは良くないな。

民の上に立つ『王』を名乗る者としては、尚更な事だ。

 

「御丁寧な紹介、有り難う御座います。

ならば此方も…」

そしてそれに応じる様に、デミウルゴスが此方の面々を紹介していく。

因みに まろんサンはマカロン公爵として、()()としての紹介だ。

…え? 向こうの聖騎士団長の印象?

印象も何も、あれは もう、聞いた通りな脳筋(バカ)決定でしょう?

 

「そして私…アインズ様の側近が1人、デミウルゴスと申します。お見知り置きを。

覚えにくければ、"仮面の悪魔"でも構いませんよ?」

「ふん…この様な場所に、メイドを連れてくるとはな…

趣味を疑う。」

「レメディオス!」

「姉さん!!」

ほ、ほら…ね?(精神安定)

 

「た…度々申し訳ありません、魔導王殿!」

「いや、気にしてない。…が、1つ言わせてくれ。

確かにシズは今回、我々の世話役として同行しているが、同時に私の護衛も兼ねている。

事実、彼女は戦闘者としても、騎士団長殿、貴女よりも遥かに強いと思うが?」

「は? 私より、強い…だと?!」

レベルが違うからな。

仮に両者が対峙したら、一瞬で魔導銃(アサルトライフル)での蜂の巣。

もし、シズが舐めプでもして、剣が届く位置まで間合いが詰まったとしても、聖剣の一撃を防御(ブロック)した後にライフルの全力横殴り(フルスゥイング)顔面直撃 による頭部爆散 で決着…と言った処だろう。

 

「いい加減にしなさい!

貴女は今 此の場、私の護衛として居るのですよ!

不必要な発言は控えなさい!」

そして聖女王様、顔を赤くしてキレッキレ。

どうでも良いが、そろそろ お話、始めません?

 

 

◆モモンガside・了◆

 

≫≫≫

 

◆まろんside◆

 

「(怒)(怒)(怒)(怒)(怒)(怒)(怒)…」

 

脳筋の所業が原因か、デミえもんの背後から、黒オーラと『ゴゴゴ』の文字が視えてる件(笑)。

我慢の限界も近いって感じだな。

聖女王さんも その尋常で無い殺気を感じたのか、気不味そうな顔で話し始めた。

 

「親書の発送からの御足労…その誠意、真摯に受け入れます。

しかしながら…」

非常に申し訳無さそうな聖女王。

 

「ローブル聖王国とアインズ・ウール・ゴウン魔導国との関わりは、とりあえずは この会談を最後にする…

それが、私と神官長ケラルトが相談した上で出した結論に御座います。」

「承知の通り、我が国は四大神信仰を柱とした宗教国家。

魔導王殿…アンデッドが統治する国との国交を、国民が理解・支持するのは難しいと、そう判断させて頂きました。」

ん、知ってる。

デミウルゴスの放ったシャドウデーモンは、この場の女王達3人にも憑けていたので、そういう話し合いが行われていたのも、事前に報告されていた。

ついでに この3人…整った容姿ながら、男の気配が揃って皆無、且つ共に居る事が多い処から、聖王国内では3人は百合疑惑…ユリたん♡に非ず…が一部の間にて密かに浮かんでいるらしいが、

 

『シャドウデーモンからは その様な情事を重ねているという報告は受けておりませんので、それは全くのデマだと思われます。

特に女王は「イケメンの彼氏欲しいよぉ(泣)」と、夜な夜な自(以下規制)』

 

マジにプライバシーも何も無いよな!?

しかもデミウルゴスの質が悪いのは、それには下心も何も無い、純粋な情報収集。

仮に それが事実だったとしても、それを交渉材料に使うという考えを持っていない事だ。閑話休題!

 

「…ふむ。いやいや、国民の心情を優先させた決断、間違っていないと思う。

そしてそれを文書を送る等で無く直接…誠に言い辛いであろう事を口にして…言葉で伝えてくれた事は、感謝と評価に値する。」

そしてモモンガさんは、この返事。

多分、モモンガさんからすれば、これは本音だろう。

事実、互いの お国柄を考えてみたら、間違っているとは思えない、良い判断だと思う。

 

「その心配り、有り難く存じます…」

しかし はっきり言って此方からすれば、相手の出方が判っていた為、会話を誘導していたも同然な、所謂 出来レースだ。

ともあれ、魔導国と聖王国の関係は、現状は両者不干渉という事で落ち着いた。

話し合いは終了だ。

 

「…ちょっと待って貰えないか?」

しかし、簡単に終わらせてくれない、空気が読めない脳筋が、約1名。

 

「ブレイン・アングラウス。

どうだ? 国を去る前に1度、手合わせしてみないか?」

「「「「………………………。」」」」

 

≫≫≫

「あの…本当に、申し訳ありません…」

「いえ、気になさらずに。

私も2人の手合わせには、興味が有りますから。」

女王と神官長がモモンガさんに、本当に申し訳無さそうに頭を下げる。

結果から言えば、あの脳筋聖騎士団長の手合わせの申し出は、ブレインが受け入れ、モモンガさんも認めた事で、実際に行われる事になった。

ブレインは元から剣士として有名だったが、先の戦争で王国戦士長ガゼフ・ストロノーフに勝利したという事で、更に名が上がった様だった。

また脳筋女…レメディオスも、聖王国最強として、ガゼフや帝国四騎士と同等に名を列ねており、元よりブレインも それなりに興味を持っていたらしい。

…そうした訳で、城内の鍛練場へと移動。

非公式と言う事で、その場で訓練をしていた兵士や騎士達を立ち退かせた後、

「良いですか、ブレイン・アングラウス。

向こうの神官長が、殺さない限りは、多少の負傷は魔法で治癒するそうです。

遠慮は無用。手足や首の100本200本、斬り落としてしまいなさい。

勿論、事故に見せかけて殺ってしまっても、一向に構いませんよ?」

「は…はぁ…」

やはり あの脳筋女には色々と思う物が有ったのか、デミウルゴスがブレインのセコンドに付いてアドバイスを。

 

「あの…先輩? これは見学者無しの非公式試合なんじゃ…」

「…後輩の特権。観るのも修業の内。黙って観ておく。」

「は…はぁ…」

そしてシズの隣には、鍛練場から出ようとした時にシズに腕を掴まれ引き止められた、後輩ちゃんが。

 

「よし、死合…始め!」

「何だか字が違わくないか?!」

そんな面々の中、審判役の俺の掛け声で戦闘開始(バトルスタート)

参考までに、両者の今の装備だが、聖騎士団長は女王の護衛として会談の場に居合わせていたので、有事に備えてのガチ装備。

ブレインの方も、ガゼフに勝利した褒美として…ユグドラシルではゴミ装備だが…現地基準では超一級装備で固めている。

つまり、装備の面では互角…で無く、ブレインが圧倒的有利。

…しかし、

「き、貴様!何だ、その態度は?

私を舐めているのか?!」

聖剣ナントカカントカを両手持ちで構える脳筋に対して、ブレインは腰の刀を抜かない。

居合いの構えすら取っていない。

…と言っても決して無防備な訳でも無く、制空圏を発動させた状態で、左右の手を上下に広げた独特の構え。

俺とセバスが教えた格闘の構えをミックスさせた感じの、ブレインのオリジナルだ?

 

「武器を手にしない…イコール舐めプとしか解釈出来ない時点で、既にアンタの敗けだ。」

「な…っ?」

その構えを崩さず、不敵に挑発するブレインに、

「…っ…めるなぁぁあっ!!」

煽り耐性が無いのか、一刀両断の構えで特攻する脳筋さん。

 

ぶぅん!

 

フェイントも何も無い、馬鹿正直な脳天狙いの唐竹の一閃。

しかし それは、ブレインの右掌で、簡単に止められた。

 

「な…?」

真剣を()()で防がれた事に驚きを隠せない様だが、種明かしは簡単。

ブレインは確かに武器こそ持っていないが、その手には"剣氣"…この場合は単なる"氣"か?…を纏わせていたからこその芸当だ。

そして氣を纏っているのは、右手だけじゃない。

 

斬ッ!

 

「…にぃい~っ!???」

氣を帯びた左手から、即座に繰り出したのは、正に手"刀"。

その一撃は聖剣で防御されたが、代わりに その刀身を断ち斬った。

 

「~~~っ?!!!」

武器を破壊された事で、動揺を隠せない聖騎士様(笑)だが、ブレインのターンは まだ終わっていない。

 

どんっ!

 

「ぐっ?!」

胸元に掌打を浴びせ、

「うわぁ…セクハラ…」

「……………。」

いやいやシズさんや、アレは甲冑越しだから、勘弁してやりなさい。

後輩ちゃんも、そんな視るだけで人を殺せる様な眼で見たりしない。 

 

どどんっ!

 

「ぐゎっ!」

そして間髪入れず、俺直伝・フランケンシュタイナー!!

…か~・ら~・のぉっ!

 

ガキィィッ!

 

腕ひしぎ逆十字固め!

 

「ぅんぎゃあぁぁぁ~~あ゙っ?!!」

この世界の人間からすれば知識の外の技…プロレス技2連発。

知識の無い技だからこそ、受け身の取り方も分からず、石の床に脳天をまともに痛打。

立て続けに伸ばされた腕を完璧に極められ、凡そ女性が出しては駄目な叫び声を上げる聖騎士様。

 

「おら、さっさと参った(ギブアップ)と言え!」

「だ、誰がぐゎぁぁあ゙~~っ!」

「構いません! 折れ! 折ってしまいなさい、ブレイン・アングラウス!

そして右腕の次は、左腕です!さぁ、ハリーハリー!」

デミウルゴス…お前、本当に凄く嬉しそうだな?

 

「マカロンもブレインがプロレス技連発した時、凄く嬉しそうだったぞ?」

 

ドッゴォーンッ!!

 

「「「「「「「!!!?」」」」」」」

…そんな、決着したも同然な時、いきなり この部屋の壁の一面が爆破、破壊された。

 

「な…?」

「ど、どうして…?!」

「ば、馬鹿な?!」

そして 其処から姿を見せたのは、ユグドラシルの天使型モンスター。

威光の主天使(ドミニオン・オーソリティ)が1体と、2体の安寧の権天使(プリンシパリティ・ピース)

 

ドッガァーンッ!!

 

「「「「「「「???!」」」」」」」

天使の急襲に聖女王達が驚きの声を発した次の瞬間、今度は反対側の壁が破壊され、

「な…」

「…ん」

「だっ…」

「…てー」

其処から飛び出してきたのは、炎の上位天使(アークエンジェル・フレイム)の集団と、恒星天の熾天使(セラフ・エイススフィア)が1体だった。

  




【次回予告!】
お待たせしましたぁ?
次回、原作の聖王国編の最大の見せ場?の二次アレンジ!
 
次回『Sacred Club(今度こそ!)』
乞う御期待!感想よろしくです!
 


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Sacred Club

 
さあ、サブタイの和訳は出来たかな?(ネタバレw)
 


◆???side◆

な…何なのだ、あの天使?…は?

あんな天使、私は知らないぞ?!

アレ等は、()()()()()()のだ?

私が召喚したのは、主天使(ドミニオン)権天使(プリンシパリティ)の3体だけだ。

上位天使(アークエンジェル)や、あの高位?天使?なんて知らない!

 

 

◆???side・了◆

 

▼▼▼

 

◆モモンガside◆

ブレインと脳k…聖王国聖騎士団長殿の手合わせ、それが決着すると思われた時に、突然に現れた天使型モンスターの集団。

 

ボォオッ!

 

2体の権天使(プリンシパリティ)が雷撃弾、7体の上位天使(アークエンジェル)が火炎弾を、連発で此方に向けて放ってきた。

 

「ふんっ!」

 

バシュッ!

 

しかし それは、デミウルゴスが張った魔法障壁(シールド)で防がれる。

 

「…カルカ殿? これは一体、どういう事かな?

天使の集団…まさか、我々を会談で誘き寄せて始末しようとか、その様に考えていたのかな?」

「如何に貴女方が、私達異形を忌み嫌っているのは解りますが、これは立派な国際問題ですよ?」

「ち、違います! 私は…何も知らない!」

俺とデミウルゴスの問い掛けに、聖女王は慌てふためきながらに否定。

直ぐに隣の神官長に、確認するかの様に顔を向けるが、

「わ、私も知りません!」

彼女も必死な表情で、首を横に振っている。

 

分かってま~~~~~す。

 

種明かしすれば、聖王国南部貴族の手の者が、天使召喚…主天使(ドミニオン)権天使(プリンシパリティ)の3体で、()()()()()()のは知っていた。

そう、俺達の方が、事の()()()なのだ。

だからこそ、我々も それに()()形で、より上級の天使が同じタイミングで登場する様に、仕込んでいたのだ。

そういう意味では、騎士団長がブレインに手合わせを申し込んできたのは、戦い易い場所に移動するの意味で都合が良かった。

ふっふっふ…天使召喚の術者も今頃、この予定外の展開に聖女王と同じ位に驚いているだろうな。

女王が統べる北部は兎も角、南部側は既に、魔導国(オレ)に攻撃したとして有罪判決を出している。

…だからこそ聖女王よ。

南部、そして その背後に居るであろう法国に対しての大義名分をより確固とする為に、この茶番劇(マッチポンプ)に付き合って貰うぞ?

 

「出よ! 双児宮(ジェミニ)!!

 

ヴォン…カシャァッ!

 

まろんサンが本気な戦闘の()()をする為、黄金闘衣を喚び出して装着。

何時かの様な、像形態(オブジェ)から糸が解ける様に…そして その糸が まろんサンの体全身を纏わり包む演出で無く、身体の各部位毎に分解され、直接 体を覆うパターン。

尚、相変わらず(ヘッドパーツ)は収納だ。

 

「サラマンダー・クローオッ!」

 

バシュゥッ!

 

そして炎の拳で、権天使(プリンシパリティ)の1体を即座撃破。

 

「哈ァアッ…Nine Heads=Dragon!!

 

斬々々々々々々々々!

 

ブレインも先程の手合わせでは使わなかった太刀を抜き、もう1体の権天使(プリンシパリティ)に突進。

新たに得た武技…神速の9連斬撃で、瞬時に斬り捨てた。

 

ゴォオッ!

 

そして今度は、()()()()()熾天使(セラフ)が聖光を放つ。

 

「「きゃぁあっ?!!」」

それは曲面の光の壁の形を成し、床を抉りながら猛スピードで津波の様に、聖女王と神官長目掛けて押し寄せる。

 

「ふん!」

 

バシュィッ!

 

「…大丈夫か?」

「「ぁ…は…はい…」」

…が、その攻撃は直撃寸前で俺が彼女達の前に立ち、So(スタッフ・オブ・)AOG(アインズ・ウール・ゴウン)(レプリカ)に魔力を込めて弾き飛ばし、消滅させた。

 

「…詫びさせて貰おう。

どうやら、この天使共の本命はカルカ殿、貴女だったみたいだな。

…疑って、すまなかった。」

「「………………………。」」

俺の謝罪(台本通り)に、無言で頷く女性2人。

 

「し、しかし、どうなっているのです?」

「これ程の騒ぎに、誰も兵が来ないなんて…?」

疑問に思うのは、ごもっとも。

その答えは まろんサンが誰も此処に やってこれない様に、迷宮結界を張っているからです!

今頃は兵士の皆さん、彼等も『何故、辿り着けない?』と焦りながら、部屋の外の廊下をグルグル、行ったり来たりしていると思います!

 

「さて、アインズ様…如何なされますか?

この天使…そして此れを操る者の狙いは、聖女王。

同盟を結んだらならば兎も角、既に国同士で不干渉を取り決めた後です。

もう我々には関係無き事で、面倒事になる前に転移で…

…失礼しました。流石に後味が悪いですね。

何より、これに逃げたと思われる訳には、参りませんか。」

「その通りだ、デミウルゴス。

それ以前、コレ等は最初、私に向けても攻撃を仕掛けてきたのだ。

その様な者に、何をする事無く去る訳にも行かぬだろう?」

  

 

◆モモンガside・了◆

 

≫≫≫

 

◆まろんside◆

「良いか! カルカ殿とは、また後で話し合う必要が出来た。

女王達を護りつつ、敵を討て!」

「御意!」「了解だ。」

モモンガさんが、俺達に指示を出す。

 

「そんな訳で、失礼!」

「緊急時なのでな!」

 

ひょい…

 

「きゃあ!?」

「ひぇえ?!」

ブレインが神官長をお姫様抱っこ、俺が聖女王をお米様抱っこで抱え上げ、デミウルゴスの所まで持っていく。

 

「デミウルゴス!」

「承知しました、マカロン殿。

魔法の甲羅(マジック シェル)》!」

 

ファァ…

 

そして防護結界で2人を包み、

「ブレイン・アングラウス。

上位天使(アークエンジェル)は兎も角、残る主天使(ドミニオン)熾天使(セラフ)は、お前の手に余るでしょう。

アレ等は私とマカロン殿が対処しますので、此方の2人を護っていなさい。」

「…承知致しました。」

ブレインに指示を出すデミウルゴス。

それに少しだけ不満そうに、ブレインが頷く。

いや、ブレイン君や。察する事は出来るが、最初から そういう脚本(シナリオ)だっただろう?

しかし実際、今のブレインのレベルでは熾天使(セラフ)は勿論 主天使(ドミニオン)の相手もキツい。

特に熾天使(セラフ)は、本当に敵として現れたなら、俺やモモンガさんでも、少しばかりマジにならないといけないレベルだ。

 

「それでは参りますか、マカr…?!」

 

ガキィ!

 

デミウルゴスが話している途中で、主天使(ドミニオン)の方が俺に鎚矛(メイス)で殴り掛かってきた。

それを片手で受け止め、カウンターの前蹴りを腹部に当てて、吹き飛ばす。

  

「…デミウルゴス、どうやらコイツは俺を御指名らしい。

お前はアッチは頼むぞ。」

「了解に御座います。」

最初の予定では、主天使(コイツ)はデミウルゴスに任せる予定だったのだが…

 

「クソがァッッ!」

 

バキィッ!

 

デミウルゴスはアッチ側、予備の剣も折れてしまい、今は素手で上位天使(アークエンジェル)を殴っている、脳筋聖騎士団長殿の加勢に行って貰うとしよう。

 

 

◆まろんside・了◆

 

≫≫≫

 

◆デミウルゴスside◆

「はぁ…ハァ…」

 

聖騎士団長は息絶え絶え。

武闘家や修道僧(モンク)でも無いのに、素手で天使と相手するのは、些か無理が有り過ぎます。

ブレインとの模擬戦で聖剣とやらをへし折られ、予備の剣も折れた今、如何に体力が有るとしても、徒手の心得が無ければ、既に戦えないも同然。

それでも そうなる前に、上位天使(アークエンジェル)を4体倒した事は…まぁ人間としては お見事と言ってあげますよ。

 

「御苦労様です、聖騎士団長殿。

残りは私が、引き受けましょう。

さあ、お退き下さい。」

「ハァ!? 巫山戯るな、誰が悪魔なんk

黙りたまえ。(怒)」

「……………??!」

全く…ノウキン極まれり…というヤツですか?

如何に異形種からの手助けは御免と言えど、その様な事に拘っている場合では無いでしょう。

とりあえずは無理矢理に黙って貰い、

「《超硬化完全防御(アストロン)》!」

『…………………………………?』

更には完全に、動けなくなって貰いましょう。

戦いの最中、急に飛び出されても困り物ですからね。

 

さて、この《超硬化完全防御(アストロン)》ですが これは対象の身動きを完全に封じてしまう代わりに、身体と装備品の両方を超々硬質化。

更には あらゆる攻撃…物理攻撃は勿論、魔法や各種属性スキル、精神系や弱体化(デバフ)攻撃その他諸々の干渉を完全に拒絶。

魔法発動中は行動不能、回復系や強化(バフ)も受け付けないという欠点も有りますが、特定の対象を護るという点に関しては、これ以上の魔法・スキルは存在しないでしょう。

一定時間経過するか、解呪(ディスペル)系の魔法やスキルを使用するしか、元に戻す方法が無いのですから。

 

そんな訳ですので…

「《冥獄蒼炎(ブルー・フレイム)》!」

 

ボォゥワッ!

 

先ずは、上位天使(アークエンジェル)共を一掃。

 

『………………!!!?』

…はて? 一緒に蒼き炎に包まれている聖騎士団長殿が

『貴様ぁ! 何を考えているのだ!? やはり私も一緒に殺す心算なのだな?!』

…等と訴えている様な、そんな気配がしますが、気のせいでしょう。

それに、心配無用ですよ。

何しろ其れは、ウルベルト様の大災厄(グランド カタストロフ)や たっち・みー様の次元切断(ワールドブレイク)すら無効にしてしまう防御力ですから。(愚かにも過去、ナザリック地下大墳墓に攻め入ってきた者を捕まえて、御方達が検証されていました。)

 

そして、このイベントのボスキャラ…ですか?

熾天使(セラフ)と対峙。

 

カァァアッ!

 

先制攻撃とばかりに聖なる閃光(ホーリー・レイ)を放つ天使。

無数の光の帯が、逃がさぬとばかり広範囲で、此方に向かってきます。

 

『~~~~~~~~~っ?!!!』

何やら また、聖騎士団長殿が喚いている気がしますが、気のせいでしょう。

私も お返しとばかりに、

「《爆炎障壁(ウォールズ・オブ・フレイム)》!!」

 

ボッボォオッ!

 

『~っ!~~っ!~~~っ!!!?』

広範囲の炎で反撃に移りますが、見た処、効果は薄い様ですね。

流石は上級の天使、魔法に対する耐性や防御力は、かなりな物です。

 

「…ならば! 悪魔の諸相:鋭利な断爪!」

 

キィィンッ!

 

「………っ!!」

魔法がダメなら、接近戦…そう思っての爪剣での攻撃でしたが、それは熾天使(セラフ)が持つ剣で止められ、防がれてしまう。

そして今の撃ち合いで解りましたが、少しばかり厄介ですね。

あの剣…そして恐らくは(ボディ)も そうなのでしょう、かなりな硬度を有している様です。

あと数度 撃ち合えば、私の爪の方が先に折れてしまいそうです。

爪は幾らでも再生は出来ますが、それでも若干 分と言いますか、相性が悪いですね。

 

クォォオ…ッ!

 

そう考えている間に、あの天使は距離を空けての魔法攻撃。

今度は聖光と氷結の魔力を融合させた物。

 

『~~~~~~~????!!』

極光(オーロラ)が美しい…とか、そう感じている場合では無いですね。

さて、どうした物か…()ん?

おお、()()()()()()() ()()()()()()()()()()()()()じゃあないですか!

…悪魔の諸相:豪魔の巨腕!

  




【次回予告!】
 
◆モモンガside◆
うわぁ…
デミウルゴス…流石に それは、ちょっと…?
何だかんだで、天使の襲撃(笑)を退けた俺達。
しかし、直後に新たな問題が?!
 
次回『さらば、聖王国(予定)』
乞う御期待! 感想、並びに評価(高いヤツ)も、ヨロシクお願いします!!
 


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レメディオス GO FIGHT!

 
【前回の あらすじ】
 
◆デミえもんside◆
いやはや、何とも素晴らしい!
強度・硬度も然る事ながら、更には不滅の属性も備わっている!
()()は本当に…本当に、素晴らしい武器です!
 



◆モモンガside◆

 

ガンガンガンガンッ!

 

「「…………………。」」

流石に、無いな!

これは余りにも、画的に非道過ぎる。

何の話と云えば、現在のデミウルゴスの戦闘場面の話だ。

 

スーツの袖部分が破れ、マッソーな腕を露にした、嗤顔な仮面を被った悪魔が、魔法で超硬質化した聖騎士団長を鈍器の如くに振り回し、天使を(ボコ)っている図。

 

確かに あの熾天使(セラフ)は、ユグドラシルでも防御力(かたさ)に優れたモンスター。

野良のアレを倒した時は、超低確率だがレア素材をドロップ出来たらしいからな。

それに対して、設定ではユグドラシル最硬素材とされている、ロンズデーライト以上の硬さとなる《超硬質化完全防御(アストロン)》を施し、それを凶器にする戦法は…ん!やっぱり無いな!

ほら、聖女王や神官長も、ドン引きしてるじゃないか。

 

「さあ、これで最期(フィニッシュ)です!

今 必殺の…デミウルゴス・ホームラン!!」

  

≫≫≫

「き、貴様!…よくも!よくもよくもよくもよくも…!!」

「何を怒っているのです、レメディオス・カストディオ聖騎士団長殿?

貴女の お陰で、敵を斃す事が出来たのですよ?」

…結果から言えば、天使の襲撃は敵の全滅と言う形で終わらせる事が出来た。

しかし、現在その経緯と言うか戦り方で、聖騎士団長が怒り全開でデミウルゴスに詰め寄っている。

まあ、それは彼女からすれば、当たり前な話な訳だが…

質が悪いのは、デミウルゴス的には本気で、敵を倒すのに最適な方法を選択しただけで其処に悪意は無く、それ処か「彼女が居なければ、今頃は…」と、これを本当に聖騎士団長の活躍?として称えている点。

其処には先の聖女王との対話の中の、我々に対する挑発的発言に対する意趣返しな心算は、欠片も無いのだ。…多分。

それが却って、話が拗れている原因なのだが。

 

「落ち着け、のーきん団長。」

「だ、誰が、脳筋団長だっ?!

私の何処が、脳筋だと言ーんだ!?」

まろんサンが そんな、ヒートしている聖騎士団長を嗜めようとして、逆に火にガソリンぷっ()

勿論、このヒトは わざとだ。

 

「良いじゃないか、これでアンタの無礼極まりない発言連発がチャラに出来たと思えば。

どうですか? 聖女王様?」

そ、そうですね…

レメディオス。この戦果を以て、先の魔導王殿に対する態度を不問にします。…で、良いのでしょうか? 魔導王殿?」

「ああ。そもそも私は最初から、気にしていなかったからな。」

「か…カルカぁ~っ?!」

「「「「「「…………。」」」」」」

尚、戦闘終了後、まろんサンが迷宮結界を解除した事により、兵士・騎士の皆さんも女王を御護りするべく この場に雪崩れ込んできていた。

…の、だが、この一連の やり取りを見て、挙って何か言いたいのを、我慢する様していたのは余談だ。

 

 

◆モモンガside・了◆

 

≫≫≫

 

◆まろんside◆

「…アインズ様、持ってきました。」

「ひ…ひぃいっ!?」

何とか のーきん団長を落ち着かせてから少しした後、シズと後輩ちゃんが、1人の男を持っt…連れてきた。

仰向け状態で両足を持たれて引き摺られてきたのは、上等なマントを羽織った、魔法詠唱者(マジック・キャスター)風な男だ。

 

「ふむ。女王、この男の顔に、覚えは?」

「…はい。南部貴族の1人に仕えている人物です。」

モモンガさんの質問に、顔の左半分が大きく腫れ上がっている男を見て、凄く複雑そうな顔で答える聖女王。

まあ、知ってるけどね。

シズには初めから天使との戦闘が始まったと同時、それを召喚した術者を捕まえる様に指示を出していたのだ。

後輩ちゃんを一緒に連れ出したのは、この場に残すより ずっと安全だと判断したのだろう。

 

「この男、この魔水晶(アイテム)で天使を操っていました。」

「ほう? カルカ女王、この国には そんなアイテムが有るのかな?」

「い…いえ! その様なアイテムの報告、私は聞いた事も…」

「同じく…です。」

「…だとすれば、おい、魔法詠唱者(マジック・キャスター)

そのアイテム、何処で手に入れたのだ?」

シズが差し出した、天使が封印されていた魔水晶を見て、聖女王、神官長、のーきん団長が 各々な反応。

聖女王、神官長の反応からして、こういうアイテムの存在自体は、知っていた様だ。

…と、すれば、のーきん団長は どうだか判らないが、この2人は既に その出所にも見当は着けている筈。

 

「こ…これは、スレイン法国の者と思われる人物かr

()()()()とは何だ!?

貴様等は そんな…素性の判らぬ者から渡されたアイテムを、何の疑問無しに使ったと言うのか?

少しは怪しむとか、何故 考えようともしないのだ!?」

そーですねー。そのとーりですねー。

初対面、少しだけジルクニフ君から予備知識を貰っていただけだが、この台詞が彼女からすれば、如何に凄い発言なのか、凄く理解出来る。

 

「それにだ、それが本当に法国の者から渡されたとなると、スレイン法国は我等がローブル聖王国にケンカを…戦争をする心算なのか?」

それは少し違うな。

戦争する気は無いから、裏から こそこそ動いているんだろう。

  

「確かに()()を調べるのも必須だが、聖女王カルカ・ベサーレス。

今回の一件、ローブル聖王国として魔導国(われわれ)に、如何なる対応を示してくれるのかな?

流石に熾天使(セラフ)を刺客に仕向けられたとなると、此方も余興では済まされない。」

モモンガさん…主天使(ドミニオン)は余興で済ますのかよ?

確かに雑魚だったけど。

しかし、他国の王様が襲われたとなると、本当に もう互いに只事では無い。

 

「ひっ?! ま、待って下さい!

確かに権天使(プリンシパリティ)主天使(ドミニオン)を喚んだのは私ですが、あの熾天使(セラフ)?は、知らない!

ほ、本当です!」

そう、それが自作自演(マッチポンプ)だとしても、だ。

 

「そ、そうだ! アレは、スレインの者が差し向けた!

そうに決まっていまs(ボギィッ!)ぅゎらばっ!?」

「見苦しいぞ! 何故、そうやって他者に責任を押し付けるのだ?

それじゃあ何か? 貴様等が我々を襲うのと同じタイミングで、偶々スレイン法国の者が攻撃してきたとでも、そう言いたいのか?」

のーきん団長のグーパンチが、この刺客に炸裂。

彼女的には「言い訳するな!」…だろうが、実際にコイツは熾天使(セラフ)上位天使(アークエンジェル)の方は心当たりが無いのだから、仕方無い。

犯人はモモンガさん。

しかし、のーきん団長は勿論、聖女王と神官長も、アンデッドや悪魔が聖属性な天使系を喚ぶという発想は持っていない様で、此方を疑っている様子は全く無い。

のーきん団長辺りが「まさか これは、貴様等の仕業じゃないだろうな?」…等の言い掛かりを付けてこないのは幸いだ。 

 

≫≫≫

「賠償金は要らぬよ。

聖女王カルカ・ベサーレス。貴女の"王"としてのケジメを見せてくれたら、それで良い。

…私を納得させる程の、ケジメをな。」

「………………………。」

聖女王側は今回の襲撃は、術者の証言から全て一部の南部貴族の暴走として弁明。

ほぼ全部の裏の事情を知っているモモンガさんも、それで一応は納得した。

後は、ジルクニフ君曰くの、脳味噌お花畑聖女王が、件の南部貴族とやらに どういう制裁を下すかだ。

先に言っておくがモモンガさん、加担者だけを終身刑程度じゃ、納得しないぞ?

最低でも この術者は当然、関わった貴族一族皆殺し位には しなければな。

如何にマッチポンプとは云え、それでも此方が何も仕込まなかったとしても、襲撃される事には変わらなかったのだから。

 

「…私自身が、報復として南部に出向くのも、一向に構わぬがな。

但し その場合、南部の地は完全な焦土と化すだろう。

それとも、南北纏めて聖王国から攻撃されたと解釈して、この場で宣戦布告されるのを望むかな?」

「「「…………………………!!」」」

モモンガさんの言葉に黙り込む、聖女王、神官長、そして のーきん団長。

流石に彼女も、この場で何か余計な事を口に出せば、その瞬間に この城周辺が焦土と化すのは察したのだろう。

尤も、今回の襲撃は聖女王も暗殺の標的にされていた点で、政治面のトッブである神官長が断固たる措置を行うと、俺達の前で宣言。

そして黒幕である『司教』という人物については、自らが名乗った訳では無いのでスレインの人間というのも証拠も無く、現状では それも憶測に過ぎず…あんな天使を封印している魔水晶を所有している時点で、既にスレイン法国以外に考えられない気もするが…法国への問い質しは敢えて控えるとの事。

此方としては、既に その司教とやらも、スレイン法国"新生"漆黒聖典第6席の人物だという調べは付けているが、それを今 口にしたら「何故、知っている?! …さては貴様!?」…等と話が ややこしくなるのは明らかなので、モモンガさんも理解を示す応対をする。

 

 

≫≫≫

「はぁ…甘かった…ですかね?」

「別に、そうは思わなかったですよ?」

魔導国に帰還後(帰りは転移)、聖王国への対応について、モモンガさんに相談された。

その問い掛けに、少しだが違和を感じた俺は、「何か有ったんですか?」と尋ねてみると、

「実は…」

返ってきた答えは、予想の上だった。

新婚モモンガさん、アルベドとXXX(ちょめちょめ)する時はアイテムを使って人化しているのだが、その影響か、精神と言うか物事の価値観が、異形種(アンデッド)から人間寄りに引っ張られる感覚が有るそうなのだ。

そして それは、骸骨(オーバーロード)に戻っても、変化しないらしい。

 

「今迄の、敵に対しての…殺しに対する恐怖や後悔、嫌悪感や罪悪感は、まるで無いのですがね。

そしてスレイン法国に対する殺意が、失せている訳でも無いのです。

ただ、そうで無い者に対しては、普通と言いますか…」

……………………………。

ユグドラシルでは人化アイテムは、単に種族・アバターを変化させるだけな物だったが、ゲームの外の世界では更なる効果…副作用?…も付いてくるのか?

他者に対する情け。

俺の現状は、精神が異形種寄りになっているのを自身で自覚、気付けたからこそ、それを意識的、無理矢理に理性で抑えている形。

弱者を弄ぶ考えには至らないが、それでも敵や悪人に対する慈悲なんかは持ち合わせていない。

殺しに関しても、相手が敵や悪人ならば、何の躊躇も抱かない。

俺も1度 試しに、人化アイテム使ってみるか?…と思ったが、止める事にした。

何となくだが、最初に『ヤバイ』のを自覚したからか、俺には大した変化が無いという、根拠無き確信が有るのだ。

逆にアルベドやデミウルゴス、ナーベラルやソリュシャンの様な、元からカルマ極悪に使ったみたら、どうなる?

…という好奇心が少しだけ湧いたが、それもナザリックの外の俺が言う事では無いので、口には出さない事にした。

とりあえず、マサトには連絡だ。

カスミ…は多分 大丈夫だとしても、戦闘狂なシャババさんには、確認が必要な気がする。

外が異形なのは仕方無いが、精神(ココロ)人間(ヒト)で在るべき…俺自身が そう在れとするのは自由だが、それを他人にも押し付けるのは我儘か?

 

 

◆まろんside・了◆

 

▼▼▼

モモンガが聖王から魔導国に帰還後して5日後。

モモンガの元に、転移の巻物(テレポート・スクロール)が届く。

聖王国を後にする際、モモンガが聖女王カルカ・ベサーレスに渡していたマジック・アイテムだ。

それには、魔導王一行が聖王国訪国の際の襲撃事件、それに関わっていた貴族3家の一族を基、この襲撃計画に関係した全ての者の断罪の報告と共に、改めて、この書の交わしを最後、ローブル聖王国とアインズ・ウール・ゴウン魔導国との関わりを()()中断する旨の文が記されていた。

 




①のーきん団長…ヤベぇ。この言い回し、地味に気に入ってしまった。
今後、もう彼女の出番は無い予定だったのだが、準レギュラー位なら有るか?
因みに元ネタは、某作品に登場、作者お気に入り♡の慎ましい胸をした眼鏡の生徒会長の愛称。
②"新生"漆黒聖典…司教ペテ松さんを6席としましたが、残りは新しい隊長(第1席次)と もう1人(席次未定)しか、まだ考えていません。
多分、13人も揃いません(笑)。
③次回からスレイン法国編!…の前に、所謂『日常回』を挟む予定です。

 
乞う御期待!感想よろしくです。
 


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拗らせ乙女(笑)

 
日常?回。
 
「〇ョセフ・〇ョースター!
貴様!見ているなッ!」
 
 


◆まろんside◆

暇だ。

聖王国から帰ってきて、凄く暇だ。

俺は一応、魔導国公爵の肩書きを持ってはいるが、特に領地運営している訳でも無くな、"なんちゃって貴族様"だ。

一応の仕事…国内にて魔導王(モモンガさん)に楯突く者の粛清という役割が有るが、今の魔導国には その様な輩は居ない。

王国時代の統治が酷過ぎる、そして それに代わるのが、AOG(DQNギルド)のマスター、或いはユグドラシル非公式・裏ボス大魔王様の其れとは思えない様な善政。

アルベドやデミウルゴスが、モモンガさんの『恐怖(チカラ)だけによる支配なら、どんな無能でも出来る』という考えの元、厳し過ぎず甘過ぎずな絶妙なバランスの政策を執っている。

中には自分達が原因で、エ・ランテルの英雄モモン(BLACK)()マカロン(GOLD)の手を…血で汚す訳には往かないと考える者も居ると思われるが、それを含めて現在の魔導国に於けるモモンガさんの支持は高いのだ。

勿論、事件・犯罪が全く無い訳でも無いが、それも盗みやら酔っ払いの乱闘やら。

それ等の対処は、俺やパンドラ(モモン)で無く、一般の警備兵の仕事。

本来の拠点、竜王国の白い匣(ホワイト・ホーム)の方でも、ヴァーリ・トゥードのギルメンとしての絶対な役割(しごと)等は無いから、凄く暇なのだ。

 

「…そんな訳でアインザックさん、何か仕事って無いですか?

今なら格安で請け負いますよ?」

「マカロン様、貴方はアホか?!…ですか?」

 

≫≫≫

そんな、ある日。

モモンガさんから大至急、ナザリック地下大墳墓に来て欲しいと《伝言(メッセージ)》が届いた。

いよいよ以て、スレイン法国に対して何らかの行動(アクション)を…宣戦布告でもするのか?と思ったら、それも違うらしい。

何でも、デミウルゴスから重大な報告案件が出来たとかで、それに俺も聞いて欲しいとか。

 

「此方です、まろん様。」

俺がナザリックに行く場合、エ・ランテルの屋敷から、転移の鏡(ミラー・オブ・ゲート)を通って、ナザリック内のユリたん♡の私室へ。

これが今の最短最速ルート。

 

「この度は態々すみません、まろん殿。」

「いや、どうせ暇していたから、気にする必要は無いさ。」

其処から、ユリたん♡と一緒に第9階層の会議室に行ってると、其処には既に、モモンガさんにアルベドとデミウルゴス、パンドラが。

そして、もう1人。

 

「こうして お会いするのは、初めてですね、まろん様。」

「確かに。初めまして…だな。」

元・リ・エスティーゼ王国第3王女、ラナー・ティェ…

 

 (えーと…)

 

…改め、今は只の『ラナー』だ。

今は影から(…と言うか地下から)、魔導国の施政の一端を担っている彼女。

実は王国と帝国の戦争が始まるよりも前から、デミウルゴスが有能人物としてマークしていたらしい。

そして戦争前に、正式にスカウト。

この時 既に、腐敗しきった国には見切りを付けていた彼女は、デミウルゴスの その誘いに()()()()()()()()()()の快諾。

世間一般の表向きは、バハルス帝国に囚われたランポッサの身代わり…人身御供という形で帝国入りしたと思わせての、ナザリック入りだ。

 

≫≫≫

「…さて、皆様。今回は多忙な中 集まって頂き、有り難う御座います。

…と、前置きは この位で、早速 本題に入ろうかと。

この画像をご覧下さい。」

 

ウォン…

 

そう言って、デミウルゴスが円卓に置かれた やや大きめの水晶玉に手を翳すと、それに映像が映し出された。

シャドウデーモンによる記録映像。

何処かの室内。上等な家具等から察するに、何処ぞの貴族様の お部屋の様だが…って、

「「うぁおぇいっ?!!」」

思わずモモンガさんとハモってしまう。

ガチャリと扉が開いて入ってきた、この部屋の主。

それはリ・エスティーゼ王国のアダマンタイト級冒険者チーム【蒼の薔薇】のリーダー、ラキュースさんでした、有り難う御座います。 

 

「おま、これは流石にアウトだろ?!」

「この前の聖女王達も そうだったが、マジにプライバシーも何も無いな!?」

年頃の娘さんの部屋に、盗撮魔(シャドウデーモン)を送り込んだ件で、俺とモモンガさんが非難轟々。

当然な話だが、カメラには気付いていないラキュース嬢。

冒険者の仕事から帰ってきたばかりなのか、如何にも「疲れてます」な顔をして、鎧を脱ぎ始めt…って?

 

「は~い、まろん様? まさか、あの女性の着替えを見たいとか、その様な考えをお持ちじゃあ無いですよね?」

そう言って、背後から目隠ししてくるユリたん、凄く可愛い♡

心配しなくても、俺はユリたん♡以外の女の裸には、興味無いから大丈夫だよ。

 

おいデミウルゴス。あの貧相な身体の小娘の着替えに、何か意味が有るのか?

「失礼。しかし編集する間が有るなら、先にアインズ様達に報せるべきと思ったのでね。」

そして(多分)モモンガさんの目を塞いでいるアルベドが、デミウルゴスに凄んだ声を。

 

「あら♪ とても可愛らしいクマさんですね♡

私は あの様なのは持っていませんから、少し羨ましいですわ。」 

「「……………………………。」」

どうやら、クマさんらしいです。

 

≫≫≫

「…見て下さい。これが、問題の場面です。」

目隠しタイムが終わり、デミウルゴスが改めて、水晶玉(スクリーン)への注目を求める。

 

「「………………………………。」」

それを見て、俺は目が点。

モモンガさんも顎が外れた様に大きく口を開き、お馴染みの緑色の発光だ。

何事かと言えば…見た儘、有りの侭を話すと、 

 

 

『お…おのれ…この身体…貴様の好きな様にはさせぬぞ…!

 

『くっ…こ、この程度で!』

 

『わ、私は絶対に、お前…に屈したりは、しない…!!』

 

『私の中から、出ていけ!』

 

『…失せろ!闇!!』 

 

 

ラキュースが両膝を床に着いて剣を杖代わり、その剣に向かって鬼気迫る、息を荒げた苦しそうな表情で、何やら語り掛けているのだ。

 

「モモンガさん…アレ…って…?」

「言うな…言わないでくれ、まろんサン…」

俺とモモンガさん、ドン引き。

ラキュースって確か、19か20歳だったよな?

多少 大人びてるけど、実は14歳でした…なんて事は無いよな?

てゆうか彼女、こんなの俺達に見られてると知ったら、悶絶恥ずか死必至だな。

 

「どうでしょう? 御覧の通り、彼女の手にしている あの剣には、何かが憑いている模様。

一応、シャドウデーモンに探らせてみましたが、どうやら所有者以外には認識の出来ない、()()()の様なのです。」

「成る程…あの小娘如きを取り込めない程度の存在。

しかし、確かに それが()()()()は、知っておく必要が有るわね。」

「いいえ、アルベド様。

我々が知り得る事の出来ない存在…それ自体が脅威と言って、過言では無いのでは?」

「あの魔剣…ラキュースは、自分だからギリギリで抑えられていると言っていました。

でも、あんなに苦しそうだったなんて…

どうして あの剣を手放さないのでしょうか?」

「「……………………………。」」

違う!そんなんじゃないから!

ナザリックの知恵者が揃い踏みでも、彼女が厨●だという真実(オチ)には至らないみたいだ。

そもそも、この世界もだけど、ユグドラシルには(ある意味、それが標準(ふつう)だから、)●弐なんて概念が無いからか?

 

「ん?んんん~~?

(~ん)アインズ様と まろん様、何やら難しい顔を浮かべておりますが、もしや()()について、何か御心当たりでも?」

「「え゙?!」」

 

   

◆まろんside・了◆

 

≫≫≫

 

◆モモンガside◆

「と、兎に角だ!だ、大丈夫だ!」

パンドラの振りに、今の俺には これしか言える言葉が浮かばない。

まろんサンをチラと見ると、このヒトも何と説明すべきか、考えている感じだ。

 

「すまない。私には()()を、お前達に どの様に説明したら良いかが思い浮かばない。

言葉足らずな私を許してくれ。」

「それは、俺も同じくだ。しかし、モモンガさんも言っている通り、大丈夫だ。

()()は、脅威でも何でもない。

深く、考えない事だ。()()は考えたら…気にすれば気にするほど、深みに嵌まるヤバイヤツなんだ。

良いか、もう1回言うぞ。

()()は放置しても大丈夫だから、深く考えるな。触れてやるな。…な?

「「「「は…はい…」」」」

彼女が●弐を患っているのを、如何に誤魔化し、且つ如何に このナザリック叡智四天王に納得して貰うか…

結局 最後は、俺の台詞に被せる様な、まろんサンの半ば無理矢理な説明?で黙ってもらった。

但し、まろんサンは間違った事を言ってないのも、また事実。

アレは本当に、触れる事無く、暖かい目で見てやって下さい。

それから…俺や まろんサンが敢えて濁した表現をしていた『アレ』という言葉。

これについてもデミウルゴス達と俺達では認識の違いが有るのには気付いているが、敢えてスルーだ。

 

()()

デミウルゴス達…彼女が持つ魔剣の事だと思っている。

俺と まろんサン…彼女が拗らせている()()の事を言っている。

 

「…成る程、そういう事ですか。

流石はアインズ様と まろん殿。

私共には完全、発想の外に御座いました。」

何かを察し、納得したかの様なデミウルゴス。

…だが、絶対に俺達の心の訴えとは明後日の方向を見ていると思う。

 

「……?

何か解ったの?デミウルゴス?」

「ああ。君達にも後で説明するよ。

情報の共有は大事だからね。

それより先、今は…」

いや、この場で話しても良いんだよ?

情報の共有はは大事なんだろ?

水晶玉に映る画像を早送り操作しているデミウルゴスに そう思っていると、

「…最初にアインズ様と まろん殿は、この部屋からシャドウデーモンを撤退させろと仰有りましたが、実は既にさせているのです。

その理由が、コレです。」

「「??????」」

デミウルゴスの台詞に、何事かと水晶玉(モニター)を覗いてみた。

 

 

…アナタ、誰なの? 其処に居るのは分かっているのよ! 

 

 

「「…………………。」」

シャドウデーモンは、床の影に潜んでカメラを回している。

彼女は それに背を向けて、天井隅をビシッと指差しての、この発言だ。

まろんサン目が点。俺も精神安定再び。

 

「御覧の通り。正確な位置は解らずも、シャドウデーモンの気配だけは感じたのでしょう。

それ故に、完全に その存在を悟られる前に撤収させました。」

「「………………………。」」

だから、違います。

決して、シャドウデーモンに気付いた訳では無いのです。

それも彼女の"病気"なのです。

 

 

◆モモンガside・了◆

 

▼▼▼

「いやはや、正しく『さすアイ!』『さすまろ!』と讃えるべきなのだろうね。

あの御2人の未来を視る眼は、本当に計り知れないよ。」

 

カラン…

 

第9階層のBARナザリック。

そのカウンター席で、デミウルゴスはグラスの中の氷を揺らしていた。

 

「ん!んん! それで、デミウルゴス様?」

「ええ。アインズ様と まろん殿が何故、あの小娘の持つ剣…いいえ、あの、朧気ながらもシャドウデーモンに気付けた小娘を放置させて構わないと結論着けた その理由、聞かせて頂戴。」

その隣には、パンドラズ・アクターとアルベドも。

 

「……………………………。(この『すくりうどらいばー』という お酒、初めて飲んだけど凄く美味しいです。マスターが言うには、コレは凄く強くて お酒が苦手な人は、直ぐに酔い潰れてしまうらしいけど…。それなら今度はクライムを連れて来て…)」

更に その隣には、ラナーも席に着いている。

 

「ああ、勿論さ。

語らせて貰うよ。あの御2人が、如何に素晴らしい考えを御持ちかを…」

…恐らくだが それは また、大いなる勘違い。

 




「あの、まろん様…『盗撮魔』と書いて『シャドウデーモン』とルビを振るのは止めて頂けますでしょうか?
私共、別にニンゲン雌の裸体を見ても、発情したりしませんよ?
まろん様は我等の雌に発情されますか?」
「…すまない。」
 
次回『日常?②(予定)』
乞う御期待!感想よろしくです。
  
 
【補足説明】
デミウルゴスは王国・帝国の戦争前から、要注意人物と定めた貴族等の屋敷の応接間や私室に、シャドウデーモンを忍ばせていました。
ラキュースも王国屈指の冒険者チームのリーダーとして、マークされていたのです。
モモンガさんも その辺りの報告は受けていましたが、まさか若い女性の私室にも忍ばせていたのは想定外。
そして そのシャドウデーモンの前で、例の病気を拗らせたラキュース。
それを見て、慌ててデミウルゴスに報告したシャドウデーモン。
デミえもんも、それが彼女の『病気』だとは気付かず。
ガチと思い、緊急の報告説明会に至ったのでした。
後に、モモンガさんの指示で王国に散っていた隠密系のシモベは()()()()()、撤収されています。
 
 
「あの後、アインズ様から『女性の部屋に忍ばせるのはアウトだろ!』と、厳しく御叱りを受けました。」
 


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魔導国の取り組み

 
設定説明、伏線回です。
 
※前回の後書きに、補足説明を追記しました。
 
 


◆まろんside◆

魔導国で暇を持て余してる俺。 

魔導国処刑人な役職を与えられているが、そういう仕事が無いのだ。…善い事だけど。

因みにユリたん♡は今は、魔導国が開いた孤児院兼学校の教員の仕事をしている。

モモンガさんに、「体育教師でも用務員でも何でも良いから、俺も其処で働かせてくれ」と頼んだが、『学内でバカップル振り撒くのが目に見えるから、却下です』と断られた。失礼な。

それに、そうだとしても別に良いじゃないか。

売店のブラックコーヒーの売り上げ、爆上がり間違い無いですよ? 

 

「いえ、この世界の学校には、そんな売店なんかは有りません。」

…食堂は有るのに?

 

冒険者組合でも、前に組合長(アインザックさん)から『貴族様に冒険者仕事をさせるなんて、とんでもない!』みたいな事を言われて、仕事させて貰えなかったし。

ならば、【依頼のアシスト承ります】な張り紙を依頼掲示板に貼ろうとしたら職員に止められ、ならばならばと押し掛け助っ人とばかりに、仲の良かったチーム…漆黒の剣やフォーライヴの面々に声を掛けたが、此方も恐縮されながら丁重に断られた。

いやいや、貴族と言っても俺、体面だけな なんちゃって貴族だからな?

人間(今はデュラハンだけと)、本当に暇になると働いてでも、その時間を消費しようとするのだ。

 

≫≫≫

「はぁ~…」

「どうしたんだ? まるで また(肉食的に)迫る姉殿から無事に逃げ出せたかの様な、安堵な溜め息を吐いて?」

「アナタは見ていたんですか!?

いえ、誘ってくれたのは、感謝していますけど!」

そんな訳で足を運んだのは、バハルス帝都の酒場"歌う林檎亭"。

最初はフォーサイトを誘おうと思ったけど、タイミング悪く、ヘッケラン達は今、仕事で帝都から離れていたのだ。

ちぃ、またアルシェにガンガン飲ませてやろうと思っていたのに。

そして今、カウンター席で 真っ昼間から 一緒に飲んでいるのは、今日は非番の帝国騎士ニンブル君。

彼が休みで、本当に良かった。

他の騎士…女性(レイナースさん)をお酒に誘うのは色々と問題が有るだろうし(俺にはユリたん♡が居るし)、盾の人は『………(てんてんてん)』しか喋らないし、バジウッドは お姉ちゃんの店にしか行こうとしないし(だから俺には、ユリたん♡以下略)。

そんな訳で、ニンブル君が非番で、本当に良かった(2回目)。

本名、ニンブル・アーク…(えーと)…何とか君。

バジウッドの話では、彼の家は帝国でも名門の貴族。

…なのだが、この家は もう何代も前から男子が産まれず、余所の貴族家から入り婿を迎えて家を継いでいたそうだ。

そして彼の親の代で、漸く念願の長男(ニンブル君の兄)が生まれたが、それでも女系家庭の色は強く、その兄の他は姉が2人、妹が3人(内2人は双子)だとか。

それでニンブル君は、その姉や妹からモテモテ。イケメンだしねー。

偶に実家に帰った時は、妹さん(16&14x2)と、一緒に風呂に入っていr

「ちょっと待って下さい!

あ、あれは、あの子達が後から勝手に入ってくるんです! ぃぇ…本当ですって!」

いや、有罪(ギルティ)。これはユリたん♡関係無い。

たっちさん、コイツです。

それで、彼に悪い虫が憑かないかと、お姉様方が常に眼を光らせてるとか。

…もしかして彼方のテーブル席から此方(オレ)を睨んでいる、女性2人ですか?

まぁ、そんな感じでニンブル君、未だDTなのd

「ど、どど…DT違わい!!」

あー、はいはい。皆、そう言うんだよね。

 

「次の休みの時は、エ・ランテルに来なよ。

良い店、紹介してやるぜ?」

「………………………………………。

…ょ、(よろしくお願いします…。)

「あ、て言うか、今から行く?

転移で あっと言う間だぜ?

勿論、帰りも責任持って、帝都まで送るから。」

「…………………………………。」

 

 

◆まろんside・了◆

 

▼▼▼

 

◆デミウルゴスside◆

アインズ・ウール・ゴウン魔導国という国を興す際に、その前身…今までの王国には無かった取り込みを、実験も兼ねて幾つか試みております。

先ずは、医療機関の設置。

この世界は病気や怪我と云えば、信仰系魔法詠唱者(マジック・キャスター)による治癒(ヒーリング)と、薬品(ポーション)による治療が主流です。

しかし、後者は兎も角 前者は"神殿"なる勢力が世界規模で その活動権利を独占していました。

神殿勢力は一応は冒険者同様、何処の国にも属さない組織…が建て前ですが、その実 (バック)には、スレイン法国が控えており。

…で、その神殿が、我が魔導国内にて その治療の対価を他国相場の5倍以上で要求し始めました。

理由は『穢らわしいアンデッドが治める国等、これ位が適当』との事。

つまり、我々…と言いますか、アインズ様の責任として魔導国の民にアインズ様への不信感を募らせようとしたのでしょう。

そして当然、一般の民に その様な額を支払うのは、とても無理な話。

 

『神殿は私を理由として民を捨てたか。

ならば、私が民を拾えば良いだけの話。

それが"王"を名乗る者の、義務で有り責任だ。』

しかし、それを聞いたアインズ様が、それならばと代わりに冒険者としての活動が減り、収入源が少なくなった神官職等、治癒魔法やスキルを持つ者を国の新たな機関のスタッフとして迎え入れ。

更にはナザリックにて医師(ドクター)(クラス)を持つシモベを人化擬装して表に出したり。

機関の運営資金は全て国が賄い、治療を求める民に対しては、今まで神殿に支払っていた半分以下の金で治療を受けさせる事としました。

勿論、それなりに税収はしますが、ナザリックのシモベには基本、給金不要だからこそ、可能な術です。

これにより、逆に民の嫌悪感(ヘイト)は神殿に向けられ。

勿論、これには神殿側も黙っているとは思えませんが、其なら其で、何時でも対話に応じる用意は整えています。

そして仮に、武力抗議してきたならば、その時の準備も既に…ふふふ…我々は何時でも、大歓迎ですよ?

 

そしてポーションと言えば。

現在エ・ランテル在中の…アインズ様や まろん殿も その能力を認めている、薬師の少年。

王国…今は魔導国最高の薬師の彼の生産性向上の為、ポーションの主原材料である薬草が採れる、トブの大森林に近接する開拓村への移住を、アインズ様自らが当人の前に出向き提案。

それに対して、本人も何か引っ越し先に思う事が有ったのか、最終的には承諾。

カルネ村にて、住居や薬品工房等、彼と その家族を受け入れる準備が整い次第、引っ越して貰う事になりました。

今後 彼は、単なる薬屋で無く、ナザリック全面支援の下で、ユグドラシルと同等のポーションの精製に、勤しんで貰う事になります。

村の管理を任せているルプスレギナに それを報せてみると、『れ、れありぃっスかぁ?デミウルゴス様!??』…と、テンションの高い返しが。

その後、まろん殿と何やら《伝言(メッセージ)》で楽しそうに話していました。

………?

…………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………!!

成る程、そういう事ですか!

つまり、ルプスレギナと あのンフィーレア・バレアレは互いに好意を持つ関係で、その彼が自分の管理する地に腰を据える事になったのを、彼女は悦んでいる…と。

そして それは、まろん殿も存じていたと。

しかし これは…はっきり言って意外ですね。

まさか ()()ルプスレギナが人間と…同じ村で暮らす内に、情でも湧きましたか?

敢えて人間如きに…とは言いませんが。

私的には祝福も邪魔もしませんが一応、アインズ様にだけは、お伝えしておきましょう。

 

そして次は、ペストーニャとユリの提案である、孤児院や教育機関の設立について。

王国時代から街の裏通り等に屯していた、所謂浮浪孤児(ストリート・チルドレン)と呼ばれる子供達を保護。

そして教育機関…所謂 子供向けの学舎ですが、先ずはエ・ランテルに孤児院と併設。

ペストーニャを校長として、教師役にユリや、死者の大魔法使い(エルダー・リッチ)等の教養に長けたシモベ(人化擬装させています)を教師役に。

まろん殿も職員として名乗り出ておりましたが、何故かアインズ様が断っていました。

教える内容は、基本的な読み書きに数学等々。

将来的には、これに経済学や建築学。

更には音楽や絵画に彫刻等の芸術学も、授業として取り入れる予定だとか。

成る程、魔導国は芸術文化にも優れた国を目指す…これは素晴らしい考えですね。

 

「え?モデルでありんすか?

…し、下着までなら。

水着は全然、OKでありんすよ?」

「ぼ…僕は…胸までなら…」

「私も おっぱいまでなら全然 大丈夫っスよ!」

「あら? 私は全部でも構いませんが?」

「うわぁ…」

「それよりさー、皆でバンド作ろうよ!

私、ヴォーカル&ギターね!」

……………………………………。

あー、すまないが君達、別に誰も聞いていないからね?

少し、黙っていてくれないか。

…コホン、話を戻しましょう。

しかし人間に必要以上な知識を与えるのは如何な物かと思い、アインズ様に相談してましたが、

『…ふむ。デミウルゴスよ、お前の言わんとしている事は解るが、民の成長無くして、国の発展は無いぞ?

本当に知恵者なら、我々に逆らう等、考える事は有るまい。

知識を得た事を我々に感謝し、それを魔導国の発展にと役立ててくれるだろう。

それに…仮に愚かにも中途半端な知識を得た程度で自分を優れた者と勘違いして、我々に刃向かおうとする者の出現。

その様な憂いを予想している お前達ならば、そういう者は事前に察知して、それに応じた対処をする事は容易い事だろう?

どちらにせよ、国の発展に、民の成長は必須だ。』

…と、この様に返されました。

ええ。言われてみれば、その通り。

私やアルベドにパンドラズ・アクター、そしてラナーは100手200手先…その様々な展開の可能性から、最良の1つの正解を導き出して動いていますが、アインズ様は更に その先…終局を見越した上で、動いて居られる!

 

≫≫≫

「…その様な訳で御座いまして、アインズ様。

どうやら件の薬師の少年とルプスレギナが…」

「あー、うん。デミウルゴス…それ、違ってるからな?」

「…はい?」

 




ニンブルの家庭設定は、2次オリジナル。
一応、公式設定で、兄姉妹は居るみたいですが…
 
【次回予告!】
 
◆???side◆
私の可愛い可愛いニンブルちゃんが、我が家に訪れた目付き悪人の男に誘われ、街の酒場に。
何か最高に嫌な予感がしたので、妹と一緒に後を付けてみた。
…此処迄は良かったのですが、酒場を出て、路地裏に入り込んだかと思えば、もしかして転移ですか?
その先に、ニンブルちゃんと あの悪人顔の姿は無く。
あの男…ニンブルちゃんを何処に連れて行ったのですの?
 
次回『この妖艶な お店で卒業を!(予定)』
乞う御期待…出来る訳ありませんわ!
 


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この妖艶な お店で卒業を!

 
日常回…?です!
 


◆ニンブルside◆

「…………………………。」

だ、大丈夫だろうか?

まろん殿に誘われ、エ・ランテルに やってきたが、先ずは彼の屋敷で変装を施された。

ボサボサな長髪に、瓶底眼鏡。

手首が出ない程に長い袖な、ダボダボの上着。

その下のシャツには、『Don't Misunderstand!』のロゴに少しだけ怒っているかの様な少女の顔のイラストが、大きく描かれている。

下は少し色褪せシワだらけな、カーゴと呼ばれるズボンだ。

 

「これでニンブル君だって、誰も分からないさ。

それ以前、まさか"激風"が こんな変装するなんて、誰も思わないよ。」

……………………………。

凄く、凄く不安だ。確かに今から彼に連れて行かれる店は、所謂……な店で、それに帝国騎士である私が出入りしたのが世間に知られると、色々と問題が…

特に陛下に知られでもしたら、『騎士としての自覚云々…』等 と、かなりな注意を受けてしまうだろう。

や、やはり、此処までして貰ってアレだが、遠慮すべきだろうか?

 

「ああ、既にジルクニフ君には許可貰ってるから、何も心配要らないぞ。

逆に『ニンブルに足りないのは実践経験だ。是非ともアイツを、にしてやってくれw』と頼まれたから。」

外堀ぃ~っい!!?

…って、アンタ、一体 誰に教えてやがるんですか??!

 

 

◆ニンブルside・了◆

 

▼▼▼

 

◆まろんside◆

変装ニンブル君を連れて…俺も黒髪紅眼を白金髪蒼眼に擬装して…街の裏通りに、足を運ぶ。

奥まで進んだ先に在るのは、【レイの店】と看板が掻けられた、見た目は軽食店。

しかしコレ、その実態はナザリックの女淫魔(サキュバス)達(アルベド除く)が経営する、所謂『ぁ~ん♡』な お店なのだ。

 

ナザリックは風俗業にも着手しているのか?

 

…と思う者も居るかと思うが、モモンガさん曰く、これも致し方無い事情?が有るとか。

王国時代には この街にも所謂『娼館』なる その類いの店が多々有ったが、その客と云うのが、殆どがク〇貴族様で、偶に大儲けしたりや、正に その為だけに節約に節約を重ねて、金を貯めていた冒険者が…という感じだったそうだ。

しかし、その1番の金蔓な〇ソ貴族様は、前の戦争にて、何処かの骸骨さんと愉快な仲間達が その殆んどを殺害。

顧客が激減し、経営が成り立たなくなった店は、次々とエ・ランテルから王国へと移り、魔導国首都は健全?…な街に。

しかし、それは()()で解消出来ない者が増えるのも必然。

我慢すれば良い…のだが、その我慢を天元突破した者が凶行に及ぶ…な事例が複数発生した為、魔導国政府も対策に動いた…のが、このサキュバスで構成された『レイの店』なのだ。

因みに、店長格のサキュバスがレイとか言う名前の、髪の毛水色の無表情系美少女だったりな訳では無い。

元々、ナザリック内でもサキュバス種のシモベが、『もっと男の(タネ)を摂取したいですぅ!』…な要望が出ていたからという背景も有り、モモンガさんの『1人から搾り過ぎて殺してしまうのは勿論、日常に支障を来す程の過剰摂取は禁止』という条件で、実施されたのだ。

街の男共は一般娼館の料金とは思えない程の、安い金で…表向きは軽食店だから…良い思いが出来、サキュバスの方も()()が頂けるという、WinーWinの方式が出来上がり、街の女性達は知らぬ処、冒険者中心で大盛況。

…但し、基本は()()()()だけどな。

そう、夢。

この店のシステムは、客が自分の希望する場面(シチュエーション)をメモ紙に書いて渡した後、差し出された睡眠魔法が仕込まれた菓子や紅茶を食して眠りに落ちる。

其処に店員であるサキュバスが、その客の脳内に干渉して、注文(オーダー)通りの夢を見せ、その対価として(おとこ)の●液をほんの少しだけ頂きますするのが、基本的な流れだ。

しかし、この注文の幅が凄い。

これはサキュバスの能力らしいが、夢の中の御相手…そして自身の年齢や容姿、そして内容(プレイ)の設定が、正しくユグドラシル並みに何でもアリらしいのだ。

少し前…

 

≪≪≪

  

「はい♡ 普通に女性とのS〇Xは勿論、乱〇パーリー、鬼畜レ〇〇゚や逆レもOK。」

「いや、レ〇〇゚は不味いだろ?」

「いえ、大丈夫ですよ? 夢ですから♡

そして、xなプレイや自身をTSさせて、男と相手したりや百合百合プレイ。

果ては幼〇〇辱や屍〇等の、普通は犯罪→『たっち・みー様、コイツです』から逮捕待った無しなプレイも、何の問題も有りません。」

「ま?」

「はい。何しろ、全て夢の中の出来事ですから、犯罪でも何でも無いのです♡

どうですか? まろん様も1度、試されてみますか?♡」

「いや~、俺は遠慮しとk

「あらあら? 一体、何の話をされてるんですか?」

「「ゆ、ユリたん!!!!??」

      さん????!!」

 

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…

 

何の話を、されているのですか?(ニッコリ♡)

「ち、違う! これは違うんだユリたん!ふじこふじこ!」

「そ、そうですユリさん、誤解ですふじこふじこふじこ!」

 

 

≫≫≫

…な、やり取りが有ってだな。

あの時は本当に大変だった…な話は置いといてだ、兎に角、何をしようが全てが『夢』で済まされてしまう、ペロロンチーノが聞いたら感涙必至なサービス業なのだ。 

そして これは、()()()()()()()、夢の中の話。

それとは別の裏ルートとして、夢で無くて()()()()()()()()()コースも在る(但し此方は、特殊プレイに関しては それなりに制限が有るそうだ)。

因みに俺が、ニンブル君に世話してやろうと思っているのは そちら側。

 

≫≫≫

「…本当だって! 本当にニンブル君を連れて行くだけだから!

因みに…現在ユリたん♡と熟女ユリたん♡と幼女ユリたん♡との4Pは、浮気にカウントされr………でっすよね~?」

店に向かう途中、有らぬ誤解を避ける為に、一応ユリたん♡に報告…だが、その《伝言(メッセージ)》越しにも、ジト目なユリたん♡を幻視してしまう。

因みにユリたん♡曰く、店を利用するだけで、(リクエスト)の内容は どうあれ浮気と見なすらしい。

…orz

顔と背中とち〇〇゚(ピーッ!)の同時ぱふぱふは、漢の野望(ゆめ)だったのだが。

無論、実際に そんなのはアウトだから、せめて夢だけでもと思ったのだが、ダメだと言われてしまった。

正しく、『人』の『夢』と書いて、儚い。

 

「「「「「いらっしゃいませ~♡」」」」

…って、まろん様?…ですよね?」

そんな事を考えながら、レイの店に到着。

数人のサキュバス…美女美少女美幼女、選り取り見取りに艶かしい女性達が、店内に入ったと同時、出迎えてくれる。

そして一瞬で、俺の変装を見破るサキュバス達。

彼女達には、髪と眼の色を変えた程度の変装は通じなかった様だ。

…まさか此処までの行き道、一般民にはバレてないよな?

 

「ぅぷはっ!?」

「「「「あら?」」」」

「あれ?」

その彼女達の格好を見て、いきなり鼻血たら~、慌てて鼻を押さえるニンブル君。

肝心な 大事な部分はギリギリで隠しているとは云え、殆んど下着姿と変わらない、サキュバス達の際どい衣装はDT青年には目の得…もとい、毒だった様だ。

 

≫≫≫ 

「俺は、単なる付き添いだから。

此方の友達を…だな。」

復活したニンブル君を紹介した後、

「ちょっと、良いかい?」

「はい?」

店に入って最初に応対してくれたサキュバス嬢を、ニンブル君から少し離れた所まで連れて行き、

「彼、こーゆー店、初めてだから…てゆーか、DTだから。」

「ま゙♡ つまり それは…よ、宜しいのですか?」

「ああ。その心算で連れて来たんだ。

但し、変に依存やトラウマが残らない様に、加減間違わずに宜しく頼むぞ?」

「承知致しましたぁ♡ お任せ下さいぃ!!♡♡」

俺の台詞に、何処かの眼鏡スーツ悪魔の様な理解力を働かせ、瞳を輝かせるサキュバス嬢…とりあえず よだれ、拭こうな。

  

≫≫≫

「さぁ♡ どうぞ、此方へ♡」

「は…はひ…」

あの後ニンブル君は、見た目は彼と同じか少し上な、サキュバス嬢に個室に連れられて行った。

良い夢見ろよ…っと、彼は()()()()()だったか。

 

「「……………………………。」」

それから、どうでも良い話だが…例え俺は それが目的で無かったとしても…この様な場所で知り合いに会うと、互いに気不味くなるよな。

 

「ょお…」

…じゃねぇよ。

竜王国に居る お前が、何処から この店の情報、仕入れたんだ?

待合室のソファ、落ち着き無さ気に腕組みして座る、世紀末風・強面モヒカン男を見て そう思ったのは、別の話だ。

 

 

◆まろんside・了◆

 

▼▼▼

 

◆サキュバス嬢A(モブ)side◆

まろん様が連れて来られた お客様。

一見、不健康そうな男だけど、私達(サキュバス)の眼は誤魔化されない。

みすぼらしい服装の下は、絞り鍛えられた肉体(きんにく)

眼鏡と(かつら)を取ってみれば、そこから現れたのは若いイケメン!

しかも、()使()()の初物!

人間としては、最良物件!

まろん様から現実コースをお願いされ、それでは誰が相手をする?…の処で私を含む多勢が名乗り出た。

私達としては別に複数人プレイでも良かったのだが、まろん様が「彼は初めてだから、弩ノーマルで優しく犯ってくれ」と先に言われていた。

…ので、壮絶な話し合いの末に、その権利を勝ち獲ったのだ。

ふふふ…♡ 久し振りに、楽しめそうね♪

…精を貰える立場じゃないけど、最近は変な客も多かったから…

例えば…

 

≪≪≪

「普段は勝ち気で性格キツいけど、いざ その時になると素直で甘えん坊で おねだりさんになる、黒髪ポニーテールの魔法詠唱者(マジック・キャスター)冒険者との野外キャンプでのプレイって、可能ですぅ♡?

あ、『黙れナナフシ。貴様の その御粗末を伐り落とし、森の賢王の餌にしてあげましょうか?』…みたいな、ツン全開の女王様プレイも良いかも?♡」

それって もしかして…?

彼女にチクったら、本当に そうなりそうですね?…てゆーか絶対に殺されますね?

規約で、お客様の情報は外には流せませんが。

 

 

「18前後のDTをベッド上で拘束して、無理矢理に奪いたいのだが…ダメかい?」

すいません…内容的には問題有りませんが、当店は男性の精を頂くのが目的で、女性からの注文は承っておりませんので…

 

 

「何も知らない13歳位の美少年に、お姉さんが色々と教えてあげたい。」

…いえ、ですから当店は、女性の(以下略)

 

 

「私は女悪魔設定で、女騎士を討ち倒した後に、手足を拘束。

身動き出来ない体に あんな事や こんな事をして『くっ殺』と言わせてみたい。

或いは黒髪ポニーテールの魔法詠唱者(マジック・キャスター)冒険者な お姉様に、あんな事や こんな事をされてみたい。(;゚∀゚)=3 ハァハァ」

………………………………(ブチッ!)

だ・か・ら! ウチは、女の客は断ってるっ()ってんだろうが、ゴラァッ!?

 

 

≫≫≫

ハァ…ハァ…何だか思い出しただけで、少し疲れてきたわ。 

 

「あ…あの…?」

「あ、すみません、何でもないですよ?」

あら、いけない。

今は、此方の お客様に集中しないとね。

 

…じゅるり♡…&、ゴクリ♡

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

≫≫≫

 

「……………………………。」

 

御馳走様でした♡

大変 美味しゅう御座いました♡

(-人-) 

  

 

◆サキュバス嬢A(モブ)side・了◆

 

 

▼▼▼

 

 

◆まろんside◆

「…で、どうだった?」

「……………………………………。」

「そうか、それじゃ帰るか。」

「…すいません。転移は実家で無くて、自宅の方に お願い出来ますか?

今 家に帰ったら、姉さん達が怖い…」

…だ、そうだ。

尚、ニンブル君のXXX(筆下ろし)シーンは、キング・クリムゾン!

  




今回のレイの店…元ネタは説明不要ですよね?(笑)
 
 
次回『忠誠(予定)』
乞う御期待! 感想よろしくです。
 


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呪われし騎士(仮)

 
【作者の先入観と偏見に満ちたオバロ2次あるある(異論応じます)】
 
①モモンガさん、アルベド(或いは他ヒロイン)に補食されて卒業
②ニグン、クレマンティーヌ生存→味方に(しかし今作は両者死亡)
③漆黒の剣生存→ニニャとツアレ、再会
ニニャ、貴族に対して猛毒キャラに
 
あんな世の中に欠片すらも役に立たないブタなんて、本当に●ねば良いのに…
ねえ、皆も そう思いませんか? 思いますよね?
「ぉ…応…」
「落ち着いて下さい!」
「眼から光が完全に消えているのである!」
 
③フォーサイト生存
その流れでアルシェ両親に鉄槌、双子ちゃんが無事に保護される
但し、アルシェはゲ■インの宿命には抗えない(笑)
④ガゼフ生存
⑤ブレインも生存
それも大抵が原作初登場時期に…
 
オリ主にボコられる
 ↓
「俺は まだ、戦えるぞ!」
「へぇ? 見込みが有るな。」
 ↓
ナザリック入り
⑥そして、今回の様な…
 


◆アルベドside◆

「…報告は以上ですよ、アルベド。失礼、宰相殿?」

「アルベドで構わないわ。…いえ、此処は やはり王妃様。

そう!王の正妻!…の意である、王妃様!か・し・ら?…くふぅ♡

「………………………………。

それを貴女に言うと、思考が明後日の世界に向かうので、絶対に言いませんよ?」

あら、失礼ね。

…デミウルゴスから報された内容。

それは ()()魔導国内にて不法侵入者が確認出来たので、()()()()()()()との事。

それから、一応は正規のルートから入ってきたけど、身元を偽って入国してきた者も同様に処置した、と。

 

「スレイン法国では、バハルス帝国関係者に扮するのが流行っているのかしら?」

「どうなのでしょうね?」

モモンガ様からの指示で、都市内に潜んでいた その様な輩は、一般の者には知れぬ様に処理する事になっている。

クロ判定の時点で、その裏を取る事無く即座に、だ。

この事はバハルス皇帝や竜王国女王にリ・エスティーゼ王、更には評議国のドラゴン、そして一応は聖王国にも伝えているから、これ等の国々から その様な者が来る事は、先ず無いでしょうね。

故に そんな真似をする愚か者…

さしあたってはスレイン法国しか思い付かないわね。

  

「別に法国関係者を入国拒否している訳でもないのに、どうして堂々と入って来れないのかしら?」

「それは もう、疚しい心当たりが有り過ぎるのでしょう。

…まあ、実際に正規のルートでスレインの者が入国したならば、如何な者でも監視を憑けますがね。」

そして、エ・ランテル等の都市とは別。

先日、よりによって このナザリック地下大墳墓に侵入しようとした不届き者が居たので、地上部、霊廟の前で それ等を捕縛。

ニューロニストによる尋問の末、法国上層からの指示で このナザリックの偵察に来たのを自白させたのだった。

 

「只の財目当ての墓荒しでしたら…それが初犯ならば、軽くOHANASHIしただけで、逃がしてあげても良かったのですがね。

無論、このナザリックがアインズ様の墳墓(ホーム)と知らなかった場合に限りますが。」

これもモモンガ様は敢えて、()()スレイン法国に対して問い質す事をしない方針とした。

後の外交の手札(カード)にする事も無く、アンデッドやマジックアイテムの素材になってもらったわ。

そして此れ等の件…自国の者が行方知れずとなったとしても、法国は魔導国に尋ねる事なんて、普通に考えたら出来ないわね。

   

「そう。却って悪手。

此方を疑う様な問い掛けをすれば、それは自分達が先に不正不法に魔導国に入国したと言っているも同義。

逆に其を追及されても、文句は言えないのですから。」

「くす…泣き寝入りね。

その捕らえた者達…確か、法国の特殊部隊だったと聞いたけど?

法国からすれば、それなりに貴重な人材じゃなかったのかしら?

それをアインズ様は何の躊躇も無く、素材にするなんて…」

そう。既にモモンガ様は、スレイン法国との外交は考えていない。

先のローブル聖王国での襲撃事件で、完全に敵国認定。

今は建国したばかりの魔導国の、『国』としての確立を優先しているだけで、()が来たならば、宣戦布告の後、大侵攻が始まるでしょう。

恩には恩を。そして仇には仇を。

それがモモンガ様…いえ、私達の流儀なのですから。

 

「そう言えば…少し前にバハルス帝国でもスレインからの間者を多数 見付け、あの皇帝が直ぐに処断した…と、アインズ様が話されていましたね。」

 

  

 

◆アルベドside・了◆

 

▼▼▼

 

◆ジルクニフside◆

「これは…本当に宜しいのですか?」

「構わんよ。既に滅びが確定している国だ。

そんな国に、最早 外交も何も無いだろう?」

スレイン法国に宛てて書いた書状の内容に、文官(ロウネ)が不安気に尋ねてきた。

 

「もう向こうとしても、此れ位にハッキリとしてくれた方が有り難いだろう?」

「………………………。」

内容は、リ・エスティーゼ王国での…今は魔導国領となっている開拓村での、スレイン兵の襲撃について。

単なる襲撃ならば、何も言う事も無かったが、帝国騎士に扮しての それとなると話が違ってくる。

 

 

『スレイン法国はバハルス帝国を、虐殺の徒に仕立てあげようとしているのか?』

 

 

…この様な問い質し、同じ内容の書状を既に過去、何度も送っているのにも拘わらず、未だ何の返しも来ない。

それ故の、最後通告だ。

 

 

『これ以上 沈黙を返信とするならば、我々も其を此方の都合良く解釈させて貰い、相応の行動を取らせて頂く。』

 

 

もう、「それは違う」「誤解だ」等の、嘘でも何でも良いから返答が欲しいのだがな?

尤も否定するならば、アインズから教えられている証拠を新たに突き付けるだけだが。

…敢えて、先日に捕らえて処理した、間者については何も言及しないぞ?

聞けばローブル聖王国で何やらが有り、魔導国から完全に敵国認定されたそうじゃないか。

だからこそ、今更()()()()の事、改めて問い詰める必要も無いだけの話。

どうせ近い将来、滅びる国だ。

…そうなのだろう?アインズ?

 

「それ等を踏まえての、この書状だよ。

無論、向こうの上層(うえ)には、それも察して欲しいのだが…」

 

≫≫≫

…さて、間者の件だが、法国には何も言わないだけで、国内での後始末は必須だ。

 

「どうした物だかな…」

捕らえた者達を問い詰めた結果、此奴等は既に、帝国に侵入した目的の1つは終わらせていたそうだ。

騎士をその場に向かわせ確認させたが、確かに ()()()()()()と報告が返ってきた。

何故 今更に…と思ったが、連中からすれば()()も、何かしらの使い道が有るのだろう。

どうせ、碌な使い方じゃなかろうがな。

さしあたり、帝国に直接のマイナスの影響は無さそうなので、これは済んだ話としよう。

それよりも…

 

「ハァ…」

「どうしたんですかい、陛下?

まるでレイナースから、何か無茶振りされた…そんな顔してますぜ?」

「知ってて言ってるだろ?」

バジウッドが笑いながら、私に尋ねてくる。

間者捕縛の件。今回その中心で動いたのが、バジウッドと同じく帝国四騎士の1人、レイナース。

他国からの間者(しかも多人数)を捕らえるというのは、単なる帝国騎士としての働きで終わらせる訳には行かない。

褒美を尋ねると、「魔導王陛下と謁見させて欲しい」と返された。

…そう来たか!

その目的・理由は、解る。

確かにアインズなら…或いはナザリックの者の能力(チカラ)ならば、彼女の かねてからの望みが叶えられる可能性は高い。

多分だが、私がアインズと知り得た時から、その機会を窺っていたのだろう。

彼女が帝国騎士となった経緯…その契約内容からして、簡単に跳ね除ける訳にも行かないが…

 

「良んじゃないですか?

あの御骨様(ヒト)、まんま話せば普通に会ってくれそうな感じ、しますけどね?」

ん、アインズだしな。それは、否定しないが…

 

 

◆ジルクニフside・了◆

 

▼▼▼

 

◆モモンガside◆

『…すまない。私としても、その要求は予め想定しておくべきだった。

…迂闊だった。』

「いや、私としては、互いの日程の調整さえ利けば、一向に構わないが?」

ジルから『すまほ』で連絡が。

内容は、帝国内で手柄を挙げたジル直属の騎士が その褒美として、俺との面会を希望している…らしい。

 

レイナース・ロックブルズ。

帝国四騎士の紅一点、金髪のワンレン美女。…だが その髪の下、顔の右半分は過去に倒したモンスターの呪いにより、常に()が噴き出ており、ハンカチが手離せないとか。

ジルが言うには、顔を合わせれば間違い無く、その解呪を遠回しにだろうが願い出てくるだろうと。

どんなタイプの呪いかは実際に見ないと分からないが、俺的には、それは構わないのだが…

 

「アルベド。お前は、どう思う?」

「高が人間如きがモモンガ様に願い事等…な答えを、モモンガ様は望まれていないのですよね?

モモンガ様が その御心の儘、動けば良いと思います。

しかし、如何に皇帝がモモンガ様の御友人で在れ、只の馴れ合いで無く、相応の対価は要求すべきかと。

そして打算的に申し上げますと、皇帝や その女に『貸す』…その様な意味では、決して悪い事では無いと思いますわ。」 

「ふふ…外交的な答えだな。それなら、こう尋ねてみよう。

相手が人間云々で無く…

 

 

◆モモンガside・了◆

 

▼▼▼

 

◆ジルクニフside◆

「失礼します、陛下。

レイナース・ロックブルズ。お呼びにより、参りましt…?!」

執務室の扉を開けたレイナースが、部屋の中を見た瞬間に硬直した。

 

「あ…ぁぁ…」

「こうして話すのは、初めてかな? レイナース殿?」

「くっくく…どうした?

何を面喰らった様な顔をしている?」

正確には、部屋に居た黒ローブの骸骨を見て、だな。

そして今回、アインズの傍らにはダークエルフの少女(王国との大戦時の少 年の姉らしい)と犬面のメイドが同行している。

 

「ま…魔導王陛下…?!

こ、これは!?」

「これはも何もレイナース。お前が魔導王と対面したいと言っていたから、こうしてアインズに来て貰ったのではないか。」

「…!!」

「…大体の話は、ジルから聞いている。

しかし残念だが、私は呪いを解く等のスキルは持ち合わせていない。」

「……………!!?」

アインズの台詞に、レイナースの顔が青の、絶望の色に染まる。…って、アインズ?

お前も中々に良い性格をしているな?

 

「…()は、な。

このペストーニャは、高レベルの神官だ。

彼女なら、如何なる呪詛も、簡単に取り除くだろう。」

「そ、それでは…!」

アインズの紹介に、小さく お辞儀をするメイド、ペストーニャ殿。

うむ? もう少し引っ張るかと思ったが、あっさりとネタばらしに出たな?

余りのレイナースの落胆具合に、罪悪感でも沸いたか?

その甘さ、本当にアンデッドとは思えないぞ?

 

「それではアインズ様、ジルクニフ皇帝陛下。

先ずはレイナース様の呪い。その具体的な症状を確認したいのですが、女性の顔というデリケートな事ですので、隣の部屋をお借りしますわん。」

「うむ。」

「ああ、構わんよ。」

そう言うとペストーニャ殿は、ダークエルフの少女と一緒に、レイナースを連れて移動する。

 

 

◆ジルクニフside・了◆

 

≫≫≫

 

◆アウラside◆

最初、アインズ様が帝国皇帝の手下の呪いを解くと聞いて、びっくりした。

しかも態々、アインズ様が彼方側に出向くというから、尚更だ。 

高が人間の悩みなんて、放っておいても良いのに… 

そう考えていたけど…これは、一番最初にアルベドも問われたらしいけど…

 

「人間云々で無く、『女』としてならば、どう考える?」

 

アインズ様はズルい。

そんな風に聞かれたら、冷たい反応なんて出来ないじゃない。

アインズ様は本当にズルい。

そしてアインズ様は、本当に御優しい御方だ。

 

「それでは その髪の毛、少し捲らせて貰いますわん。」

「…………………。」

 

コクリ…

 

ペスの言葉に、小さく頷く皇帝手下女。

そして顔半分を隠している髪を捲り上げると、ぅゎぁ…

撤回。これは酷い。確かに これは、人間とか関係無く、女として同情に値するレベルだった。

ん、これは、治せるなら治してあげないとね!

でも この女も、この世界の生き物としては、かなりな強さなのに、それに こんな呪いを掛ける事が出来る、モンスターが居たのにも驚きだ。

 

「ふむ、成る程…」

「…………………。」

「ど、どうなの、ペス?」

顔の……な部分に掌を近付け、魔法による診断していたペスが、納得した反応を見せる。

 

「結論から言えば、この呪いは簡単に取り除くが出来ます。」

「………………!!」

この言葉に、女は驚きの表情と同時、目に涙を潤ませる。

ん、ん! 良かったねー!

 

「但し、レイナース様。

その身に別の代償を背負う事になりますが。

そもそも ()()は、正確には呪いでは無いのです。…ぁ、わん。」

「え?」「へ?」

 

≫≫≫

「何です…って…?」

ペスが言うには、彼女の今の強さは、この呪い?による身体強化が理由だと。

顔が ()()()()になったのは、その強さを得た代償(ペナルティ)

 

「つまり、それは呪いで無く、寧ろ祝福と言っt

「そんな祝福、要りませんわ!!」

ですよねー。

しかも頼んだ訳で無く、勝手に憑けられたりしたら、堪ったもんじゃないよねー。

 

「ですので、その呪いを解くとレイナース様、貴女は今の戦闘力(つよさ)を失ってしまう。

貴女は『それで呪いが解けるなら…』と御思いでしょうが、それはバハルス帝国の戦力を大きく削ぐ事と同意故に、今 此の場で私が勝手に解呪をする訳には参りません。

事情を皇帝陛下に伝えた上、それからの話になりますわん。」

 

 

◆アウラside・了◆

 

≫≫≫

 

◆モモンガside◆

「成る程…な…。」

ペストーニャの説明に、ジルが複雑な表情を浮かべる。

呪いを解けば、直属の騎士が勤まらない程に、大きく弱体化するそうだ。

 

「私は…構わんがな。」

「………………。」

それでも最後は、レイナースに『好きにしろ』な意味の言葉を放つジル。

帝国は人材が豊富だ。

仮に彼女が直属の四騎士から外されても、その穴埋めの候補となる者は沢山居るだろうから、その辺りの問題は大きくないのだろう。

 

「寧ろ問題は、アインズへの対価だな…」

「うむ。それなんだがジル、私からリクエストして良いか?」

「手柔らかにな。」

 




【前書きの続き】
⑥レイナースの呪いを解く話。
原作は次のスレイン法国との あれこれで、完結も決定してるらしいから、このエピソードが出てくるか分からなくなりましたね。
 
 
【駄文】
かなり古い話になるけど、4期1話の最初辺りの、アウラのアインズ様への抱っこアピール
アレは作者的に、自身の性癖を破壊寸前迄に追い込んだ程のヤヴァさだった(作者は基本、スイカップスキー)。
いや、あの笑顔、凄く可愛かったじゃん!
 
たっちさん、(コイツ)です。
 
 
≫≫≫
 
【次回予告】
 
◆デミウルゴスside◆
敵を知り、己を知れば、100戦危うからず。
 
ユグドラシル時代、他ギルドとの大きな戦に際し、至高の御方…特に ぷにっと萌え様が申されていた言葉です。
近い将来に為されるであろう、我等が魔導国とスレイン法国との戦も その御言葉に習い、今は法国にシモベを送り、情報収集の最中。
はい?不法侵入?
それが何か? 無論、彼等が見付かった時…彼等を失うであろう覚悟は出来ていますよ。その報復込みで。
そして、アインズ様や まろん殿も、戦前にすべき作業、その準備を、ヴァーリ・トゥードより真里殿を招いて、何やら進められております。
 
次回「死亡フラグを立てる訳には行かないからな。(予定)」
御期待下さい。感想も、よろしくお願いします。
 


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死亡フラグを回避しよう

 
先ずは、
 
レイナース、あれから どうなった?
 
…から。
 


◆レイナースside◆

「ハッハァアァッ!!」

 

ガィンッ!

 

「…っ?!」

「よし、そこ迄だ!」

アインズ様の仲介で、ナザリックの領域守護者の1人、ペストーニャ様に私に憑いていた呪いを解いて頂いた。

しかし、その呪いこそが…ペストーニャ様はアレを"祝福"と言っていたが、私は断じて認めない!…私に皇帝直属の帝国騎士としての強さを与えていたらしいのだが…

 

「ふーむ、あの新入り殿、パワーこそ頼りないが、身体の動かし方等は、なかなかに御座るなぁ。

クロキシ君が全く、反応出来なかったで御座るよ。」

呪いが解かれた今の私の力量は、その域に至っていない。

只 元より、呪いが解けた暁には、騎士団を去る心算でいたのだ、何の問題も無い。

ジルクニフ陛下も、それを前提に私を四騎士の1人に据えていたのだから、その辺りは何の問題も無い…筈だった。

しかし、

 

 

「君はジルに、きちんと返せたと、私の顔を見て堂々と言えるかな?」

 

 

アインズ様の、この言葉。

返せたも何も、最初から そういう契約だったのだ。

確かに陛下の後ろ楯で、私を捨てた実家(かぞく)婚約者(あのおとこ)の家を、潰す事も出来た。

だが、そんなのは関係無い。

そう、関係無いのだ。

…しかし、その質問には、ハッキリと答える事が出来なかった。

 

 

「恩には恩…が、私の流儀だ。

レイナース・ロックブルズ。

君には今後も変わらず…いや、今以上にバハルス帝国皇帝ジルクニフに忠誠を誓って貰う。

少なくともジルクニフから受けた恩を、堂々と返せたと言える迄な。

それが、私が君に要求する対価だ。

チカラを失ったならば、別の能力でも構わないさ、また取り戻せば良い。

その為の環境なら、私が用意してやろう。」

 

 

…そうして私は、アインズ・ウール・ゴウン魔導王の真の居城、ナザリック地下大墳墓に連れられ、鍛練の日々を過ごしている。

因みにジルクニフ陛下の方への対価だが、今回は結果的、私という戦力を帝国から奪ったという事で、とりあえずは五分(イーブン)としたらしい。

 

「…ほら、立てるか?」

「………………………。」

そして今、模擬戦(スパーリング)をしていたのは、通称・クロキシと呼ばれる者。

今は理由(わけ)有って、顔も名前も明かせないらしく、名の通り、全身を黒の装備で隠した男だ。

鎧や剣は、アインズ様より与えられた物。

英雄モモンの様な、光沢有る漆黒で無く、金属特有の光を全く発しない、言うならば暗黒の鎧と剣。

今の私は帝国騎士と同等の装備(これもアインズ様から授かった物)だが、其れより遥かに上級な物だ。

しかし当人自体は到って未熟者、並みの帝国騎士以下の強さ。

そして私は祝福(ノロイ)が取り除かれ弱体化したとは云え、それでも一般兵より強い自負は有った。

その装備の差で、本来なら私が圧倒する処を、互角やや有利に迄レベルが縮まった形で勝負を運び、最後は私がクロキシを吹き飛ばして決着したのだが…

 

「……………。」

……………………………。

何て失礼なヤツ。倒れた此奴に対して、私が こうして手を差し伸べているのに、それに応じようともしない。

 

「あ~ぁ、レイナース?

そいつは顔や名前と同じく、少し訳有りでな?

無闇矢鱈と女と話すのは勿論、身を触れたりもダメなんだ。

アインズ様とは別の、コイツの直接の主が その辺 凄く厳しくてな?

このスパーも、何とか説得の末だったらしいぜ?」

「某も まだ直接に会った事は御座らぬが、クロキシ君の主殿は、凄く怖いらしいで御座るよ?

ブレイン君は会っているので御座ろう?」

「…ノーコメント、だ。」

それに対して、ブレイン・アングラウスと森の賢王がフォローをしているが…ああ、何となくだが分かった。察した。

 

「よし、準備運動(ウァームアップ)は終わりだな。

次は…今日の締めはコキュートスやセバスで無く、俺が相手してやるよ。

お前等全員纏めて、掛かって来い!!」

「「「「!!?」」」」

そして休む間も無く、本日 本番(メイン)の相手が現れた。

金色の鎧を纏った まろん様が、自身の頭をポンポンと蹴り(りふてぃんぐ)しながら姿を見せたのだ。

 

「ふん、ホラーに遭遇したかの様な、まるで乙女が絹を引き裂いたかな悲鳴は上げなくなったか。

誉めてやるよ、レイナース。」

頭を元の位置に戻して話す まろん様。

ええ、流石に もう慣れましたから!

確かに最初は驚きましたよ!?

実は異形種とは聞かされていましたが、まさか不死属(アンデッド)首無し騎士(デュラハン)とは思っていませんでしたし!

大体、挨拶代わりとか言って、いきなり首をぽーんて外したりします?

予備知識無しの初見で驚かないのが、可笑しいですから!

そ・れ・か・ら!『まるで』で無くて、私は乙女です! 正・真・正・銘・乙・女!!

 

≫≫≫

「スラム・ダンク!…ver.河田兄!!」

 

ごんっ!

 

「御座ぁ~あ?!」

そして まろん様との実戦さながらの模擬戦。

私、ブレイン、クロキシ、森の賢王、更には一緒に訓練していた蜥蜴人(リザードマン)数人と同時に挑むも、悉く各個撃破。

しかも一撃瞬殺等で無く、思い切り手加減された攻撃により、全身ズタズタな襤褸雑巾にされ、最後まで残った森の賢王も、強烈な頭突きを貰ってダウン。

 

「よし、今日は この位にしておくか。お疲れさん。」

「「「「「「「………。」」」」」」」

ちーん…何処からか、そんな金属音が鳴ったかな死屍累々な状況に。

しかし改めてだが、成る程、だ。

この修行環境。ブレイン・アングラウスが あのガゼフ・ストロノーフに圧勝したというのも頷ける。

これならば遠くない未来、私も失ったチカラを取り戻す、それ以上のチカラを手にする事も可能だろう。

鍛練の内容は まろん様だけで無く、コキュートス様セバス様の課題も鬼畜だが。

 

「…ぅ、痛ててて…

おい、立てるか?レイナース。」

「え、えぇ…」

(カタナ)を杖代わり、体を起こしたブレインが差し出した手を取り、私も起き上がる。

 

「お疲れ様です、まろん様♡

はい、タオルとスポドリです♡」

「ああ、ありがとう、ユリたん♡」

そして まろん様には婚約者であるユリ様が駆け寄り、私達を邪悪な笑みを浮かべて痛め付けていたのと同一人物とは思えない様な優しい笑顔で、まろん様も受け応え。

 

「「♡♡♡♡♡♡♡」」

「「「…………………。」」」

それからも散っっっ々と見せ付けてくれた挙げ句、この2人は鍛練場から出ていった。

…手を繋いで。

 

「はい、皆さんも回復しますから。

心配無用。ブラックコーヒーも きちんと、用意しておりますわん。」

あ、ありがとうございます、ペストーニャ様。

 

 

◆レイナースside・了◆

 

▼▼▼

 

◆ジルクニフside◆

アインズが言うには、レイナースはナザリックにて着実に以前のチカラを取り戻しつつあるらしい。

あの呪いによる、呪われた騎士(カースドナイト)の特性は失ったが、代わりに聖戦士(クルセイダー)(クラス)を得られそうだとか。

アンデッドの巣窟で、聖なる戦士が誕生?

何だ それは? 少し面白いぞ?

 

≫≫≫

「ふっ…法国との戦争は決定事項なのだろ?

それは、余裕なのか?」

『違う違う。戦争決定だからこそ、その前に終わらせる必要が有るんだよ。』

そして今は、まろんと『すまほ』で話しているのだが、その内容は先日、ヤツから私宛に届いた書状。

まろんは いよいよ以て、婚約者殿と正式に式を挙げるそうで、その招待状が届いていたのだ。

 

「…で、同行枠が3人とは?」

『ああ。一応は、こーてーへーかだから。

護衛やら要るだろ?

それと…

 

≫≫≫

さて、戦の前に結婚式とは どういう事だ?…と思ったが、まろんやアインズ…ぷれいやーの故郷では、戦の前や最中に、その戦が終わった後、結婚の約束や予定をしようとするのは『ふらぐ』と言っていたか?…兎も角、縁起が悪いそうだ。

ふん、縁起等を気にする程に実力差戦力差が拮抗しているでも有るまいに、何を言っているのだか?

 

 

「「いや、これはマジにアカンヤツなんだよ!!」」

 

 

ん? 幻聴か?

 

≫≫≫

「さて…3人、か。」

そして その結婚式は魔導国で無く、竜王国に在る、まろんの本来の拠点にて開かれるらしい。

…で、招待状に記されていた3人の同行枠だが、とりあえずはバジウッドにナザミと、

「陛下。私は既に、まろん殿から招待状を頂いております。

勿論、出席する予定です。」

あー、ニンブルは普通に、まろんと仲が良いからな。 この前アイツに紹介された あっち方面の店で、無事にDT卒業したんだったよな?w

レイナースは魔導国側から出席するらしいから、となると もう1人は…

 

「…………………!」

目の前、無言で「儂!儂!!」と訴えている妖怪が居るが却下だ!

大体お前、前に別件で白い匣(ホワイト・ホーム)に招かれた時に盛大に やらかして、出禁喰らっているだろうが!

よし、ロクシーに声を掛けるか。

アイツはアインズ達の事を興味深そうに聞いていたし、彼女ならナザリックの皆さんを目にしても、瞬間 硬直するかも知れないが、悲鳴と共に気絶とかな心配は無いだろう。

 

「処で、私は まろんの婚約者殿には まだ会った事は無いのだが、どんな女性なのだ?

お前達は会っているのだろう?」

「知的な女性です。」

「………………………。」

「スイカップ美女でしたね。」

 

≫≫≫

『ああ、ロクシーさんか。

ん、ジルクニフ君なら、あのヒトを誘うと思ってたよ。』

そして まろんに改めて連絡したら、こんな返しが。

さては まろんめ、ニンブルは直接に、そして(フールーダ)白い匣(ホワイト・ホーム)出禁されているのを前提として、私が彼女を同伴させるのを読んでいたな?

最初から それを踏まえての3人枠か?

 

『てゆーかジルクニフ君、こんな場所にロクシーさん同伴させるって、ジルクニフ君も いよいよ?』

「愉快な勘違いだな。

私は兎も角、彼女に その気が無いのだよ。

アレは、私を継ぐ者の教育係になると言っている。

それに私自身、正式に娶るなら内で無くて、外からだと考えている。」

『…ドラちゃん?』

「愉快な勘違いだな?!

誰が あんな、若作りBBAと!?」

『いや、でもドラちゃん本当に見た目、可愛いじゃない。

ペロロンチーノ、感涙レベルだぜ?』

「…アインズも偶に その名前を出しているが、一体 誰なのだ、それは?

そも、私も決して年下は嫌いでは無いが、限度が有るだろう?」

『あ、それなら大丈夫だろ? ドラちゃんて実年齢

「まろん、私も決して年上は嫌いでは無い。

実際、ロクシーも私より2つ上だし。

しかしな?

世の中、何事にも限度という物が有るだろう?

 

  

◆ジルクニフside・了◆

 

▼▼▼

 

◆ドラちゃんside◆

「むむ? 何だか誰か、私をディスっている気がするぞ?!」

「気になさらずに。

どうせ また、ジルクニフ皇帝や まろん殿が、貴女の見た目と実年齢の件で、詐欺とか合法とか言っているのでしょう。」

「なさるわっ!!!」

「…で、まろん殿と云えば、例の招待、どうなされる心算で?

出向かれるならば、それに会わせた執務日程を組む必要が有りますが?」

「う…ん、宜しく頼む。」

 




【作者の私的死亡フラグ・10撰】
 
①蝶ネクタイの眼鏡のチビと知り合いになる
②北斗七星の脇に、小さな星が見える
③普段は極悪非道なヤ〇ザが、まるで大雨の中で捨て猫を拾う不良学生の様な優しさを見せる
④湖の畔のキャンプ場で、カップルが他のメンバーに隠れてXXXしようと、集団行動から黙って脱け出す
⑤『俺、この戦争が終わったら、故郷に帰って恋人と結婚する約束をしているんだ。』
⑥井戸から何かが這い出てくるビデオを観る
⑦『この中に殺人鬼が居るかも知れないのに、一晩も一緒の部屋に居られるか!私は自分の部屋に戻る!』(バタンッ!)
⑧弟子の悪行をその弟子を●してでも止めようとする、肺や心臓に病気を持つ師匠
⑨足下にバナナの皮
⑩皆で突入!ナザリック地下大墳墓!!
 
 
▼▼▼
次回『嗚呼 疲労宴(予定/笑)』
乞う御期待! 感想もヨロシクです。
 


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Happy Wedding

 
結婚式回です。
先に、出席者等の解説を。
 
【ナザリック】
モモンガ
アルベド
アウラ
マーレ
セバス
ペストーニャ
ルプスレギナ
ナーベラル
ソリュシャン
シズ
エントマ
 
【バハルス帝国】
ジルクニフ
バジウッド
ナザミ
ニンブル
レイナース
ロクシー
 
【竜王国】
ドラちゃん
宰相
 
【ヴァーリ・トゥード】
ついでに もう1回改めて、ヴァーリ・トゥードの関係者紹介
 
マサト…鮎川真里(ぶっ拓)
眼魔…ガンマン(キン肉マン)
ポムチョキンⅢ世…あらくれ(このすば!)
カスミ…カスミ(モンスターファーム2)
イスキオス…冥衣(サープリフ)装着サガ(聖闘士星矢)
 
…のイメージで
 
そして…
 
≫≫≫
…以上の人物は、セリフが無かったとしても、式場には居る認識で、お願いします。
  


◆アウラside◆

「ぅわぁ♡ ユリ、凄く綺麗~。」

「ぼ、僕も、そう思いますぅ。」

「ふふ…ありがとう。アーちゃん、マーレ様。」

竜王国の まろんサンの拠点、白い匣(ホワイトホーム)

その一室に今、私達は居る。

そう、今日は此処で、ユリと まろんサンの結婚式が行われるのだ。

花嫁控え室にて、純白のドレスを着たユリ。

お世辞抜き、本当に凄く綺麗だ。

きっと やまいこ様にも、見て貰いたかっただろうな~?

 

「しかし、とうとう…」

「というか、漸く…」

「…っスよね~♪ 永かったっス!」

そう笑いながら言っているのは、ソリュシャン、ナーベラル、ルプスレギナ。

私は その場に居なかったけど、ユリと まろんサン、あの()()()()に初めて顔を会わせた時、秒で まろんサンがユリの手を取り握り締めて、速攻プロポーズしたとか。

ん~、その現場、私も居たかった!

 

「…お互いに一目惚れ。」

「熱々~♪(うちわパタパタ~♪)

「その後は周知の通り、バカップルです。…ぁ、わん。」

プレアデスやぺスの言う通り…いーや、ナザリックの(ほとんど)が、『良いから早く結婚しろ!』な感情をこの2人に向けていたが(当然 私も!)、それが現実になったのだ。

   

≫≫≫

「…ええ。本当に、やまいこ様にも このドレス、見て貰いたかったわ。」

話題が再びドレスに移ると、ユリがポツリ。

 

「でも、本当に やまいこ様が この世界に居られたなら、まろんサンが やまいこ様の所に結婚の許可を頂きに訪れたりなイベントも有ったんだよね。」

…ん、そうだね。

 

 

◇◇◇

 

「やまいこさん、娘さんを、ユリさんを、俺に下さ(バキィッ!)あじゃぱーっ?!」

「…そーゆー挨拶も大事だけどさ?

その前に 私の大事な大事な娘を傷物にしてくれた、謝罪が先じゃないかしら?」

「ぁ…(スイマセン)…」

「まあ良いわ。とりあえず まろん君、1発殴らせなさい。

お話は、その後よ。」

「ちょ待っ…やまいこさん、1発なら、今もう…」

「問答無用! アンガ~ァ・ナッコォ~ッ!!」

 

ベギィッ!

 

「ぐっぷぁーっ!?」

 

 

◇◇◇

 

………………………………………。

 

「な…何だか(すんご)い光景が、頭に浮かんだっス…」

奇遇だね、私もだよ。

 

≫≫≫

「失礼します。皆様そろそろ、会場の方に。」

そうしてユリと色々と話していると、ヴァーリ・トゥードのシモベのメイドさんが、私達に式の会場への案内に。 

あ、もう そんな時間か。

 

「は~い。それじゃユリ、また後でね。」 

 

 

◆アウラside・了◆

 

▼▼▼

 

◆コキュートスside◆

「あ、コキュートス殿? 今日はブレイン君とクロキシ君が、まだ来ていないで御座るが?」

「レイナースもです。」

「…ブレイント クロキシハ今日ハ、体調不良デ、休ミダ。

レイナースハ、まろん殿ノ結婚式ニ出席シテイル。」

鍛練場。顔ヲ出シテミレバ、基礎訓練ヲシテル ハムスケト蜥蜴人(リザードマン)達カラ質問サレタ。

 

「体調不良って…よろしいのですか?」

「ウム。今回ハ仕方無イ。アインズ様モ、認メテオラレル。」

「???」

…昨日ノ夜。

私、デミウルゴス、パンドラズ・アクター、恐怖公、エクレア。ソシテ ブレイント クロキシハ、BARナザリックニテ、まろん殿ト グラスヲ酌ミ交ワシテイタ。

ナザリックノ防衛面等ノ都合デ結婚式ニ出席出来ナイ我等男衆ニ、まろん殿ガ「前会だ」ト声ヲ掛ケテ下サッタノダ。

ソシテ乾杯。コレニ、先ズハ酒ニ不慣レナ クロキシガ、アット言ウ間ニ ダウン。

ソレヲ見テ「やべー、姫さんに●される」ト言ッテイタ ブレイン…ツイデニ エクレアモ、まろん殿ト デミウルゴスニ ドンドント酒ヲ注ガレ、最終的ニ轟沈。

本来ナラバ 二日酔イ如キ、回復アイテム等デ ドウニデモナルモノダガ、アインズ様トまろん殿ガ、

『これは良い酔いだから休ませてやれ』

『悪酔いだけどなw』

『それと まろんサンは後で少し、OHANASHIです(怒)』

『…はひ(泣)』

…トノ言葉。

尤モ、コウナッタ原因ノ大半ガ、まろん殿ト デミウルゴスニ有ッタノダカラ、仕方無イノダガ。

ソウ云エバ、武人建御雷様モ仰有ラレテイタナ。

 

『上の奴に潰された時は、怒ったりせずに ゆっくり休ませてやれ!』

 

…ト。正ニ、今回ガ ソレナノダロウナ。

…サテ、ソロソロ彼方デハ、式ガ始マル頃カ?

 

 

◆コキュートスside・了◆

 

▼▼▼

 

◆モモンガside◆

今回の結婚式。

魔導国のマカロン公爵で無く、ヴァーリ・トゥードの まろんとしてだから、ユグドラシルやプレイヤーの事を承知している者だけの、細やかな人数しか居ない。

場所は、白い匣(ホワイトホーム)内の、礼拝堂の様な一室だ。

ど派手なステンドグラスに大きなパイプオルガンも置かれたりと、かなり本格的な造りだ。

 

「あの…どちら様で?w」

「皇帝!貴様っ!分かっていて言っとるじゃろっ!?」

そんな式の会場。

笑いを堪えきれない顔で話し掛けるジルに、ドラウがキレながら応える。

いや…しかし これは、ある意味 仕方が無い。

 

「…って、アインズ!マサト! 貴様等も何を笑っておる?!」

「いや…だって…ねぇ~?♡」

おっと、俺達にも飛び火してきたぞ?

 

「然も在りなんでしょう。

ジルクニフ殿もアインズ殿もマサト殿も、幼女形態の貴女しか知らないのですから。」

「形態言うなや!」

いや、宰相殿の言う通りだぞ?

俺も そちらが本来の姿なのか?…ドラウの妙齢女性verは、初めて見たからな。

 

「アインズ様、そしてジルクニフ皇帝陛下と云えど、それは女性に対して些か失礼では?」

「そ、そうじゃぞ! 此方の だんでぃー♡な殿方の、言う通りじゃ!」

「「お…応…」」

この状況にセバスが俺達を窘めると、ドラウはセバスに ぴたと寄り添い、言葉を続けてきた。

どうでも良いが、ドラウの瞳が『(はあと)』になっている。

セバスは正体…自分が竜人なのを明かしてないのだが、やはり(ドラゴン)的に、何かを感じ取ったのか?

…と言うかコレ、新しいフラグか何か?

 

「やあ、モモンガ君にジルクニフ君。この前振りだな。」

そして其処に今度は、リアル?幼女が。

 

「ああ、谷屋さん。」

「おお、谷屋殿。」

ヴァーリ・トゥードのメンバーの1人、谷屋あおいさんだ。

谷屋さんは俺と同じく、魔法詠唱者(マジック・キャスター)系の(クラス)

正確に言えば、魔導銃(谷屋さんの愛銃はマスケット型)に様々な属性の魔力を装填(チャージ)して撃ち放つ、魔銃士(マジック・ガンナー)だ。

普段は軍服姿なのだが、今日はパーティードレス着用している。

 

「…と、ジルクニフ君。今日は、あの妖怪(じいさん)は、来ていないだろうな?」

「勿論だ。(フールーダ)白い匣(ここ)を、出禁なのだからな。」

ジルの隣の女性(筆頭側室らしい)と後ろに控える四騎士、そして周囲を注意深くキョロキョロと見渡し、ジルに尋ねる谷屋さん。

何の事かと言えば、少し前、ジルと一緒に白い匣(ホワイトホーム)を訪ねていた時、同行していたフールーダが谷屋さんの姿を見た瞬間…

 

おおぉっ! 儂をアナタサマの弟子にしてくだされぃっ! 何卒、何卒ォオッ!!

ひょゎぃええっ?!

 

彼女の魔力を己の異能(タレント)で視認したフールーダが、何時かの俺の時みたく、病気を発動させたのだ。

それは正しく、鼻息荒げて目を血走らせ、幼女に押し迫る変質者の図。

その光景は、俺と まろんサンが思わず、

「「たたた…たっちさーん!!」」

…と叫んでしまった程の酷さだった。

その後は俺と まろんサンその他で この魔法狂を取り抑え…因みにマサトさんは この時、腹を押さえながら大爆笑、床を転がり回っていた…結果フールーダは目出度く、白い匣(ホワイトホーム)を出入り禁止となったのだった。

 

「情けない話だが、アレは この世界処か、ユグドラシルや現実(リアル)を通じて、最高な恐怖体験だったぞ…」

ぃぇ…気持ちは解ります。

 

「失礼します、アインズ様。」

そして花嫁(ユリ)の控え室に入り浸っていたアウラにマーレ、プレアデスの面々も、この式場に戻ってきた。

因みにだが…俺とジルも、最初は新郎…まろんサンの控え室に挨拶に行こうと思ったのだが、その扉の前で、まろんサン製作NPCのイスキオスから、「まろんは集中したいから、誰も部屋に入れるなと言われている」の一言で、通して貰えず。

 

「集中か…まろん、本当に真剣(マジ)なのか?」

「それだけ、意気込んでいるんだろう。

まろんサン、本当にユリ大好きだから。」

苦笑半分神妙半分な表情で呟くジルに、そう返して俺達は この式場に足を運んだのだった。

 

≫≫≫

 

ス…

 

「………!!」

そんな風に先程の事を思い出していたら、会場の照明が夜間灯に切り替わる。

 

「これも…ぷれいやーの世界の技法なのか?」

「ぬ? 何と、不可思議な?!」

初めて見る技術なのか、ジルやドラウ達が驚いているが、これは つまり、そろそろだと言う事なのだろう。

 

「さあ、まろんサン達が入場するぞ。お迎えの用意だ。」

 

 

◆モモンガside・了◆

 

▼▼▼

 

◆ユリside◆

 

コンコン…

 

「ユリ、入るぞ?」

「はい、まろん様。」

扉をノックすると同時に、まろん様の声が。

 

カチャ…

 

扉が開き、紅羽織白袴の まろん様が、入ってきた。

 

「…本当は こういうのって、母親(やまいこさん)の役割らしいけどな。」

 

パサ…

 

そう言って、部屋の角に置かれていたハンガーに掛けられていた半透明のシルクのヴェールを手に取ると、それをボクの頭の上に静かに被せる まろん様。

 

「それじゃ行こうか、ユリたん♡」

「はい、まろん様♡」

部屋に入ってきた時と違う、普段な口調に戻った まろん様に応え、ボク達はアインズ様達が待って居られるであろう、式の会場へ…きゃ?…ま、まろん様??!

 

 

◆ユリside・了◆

 

▼▼▼

 

◆モモンガside◆

「来場の皆様、御待たせ致しました!

さあ、新郎新婦、入場です!」

 

♪♪~♪♪♪♪~♪

 

パッ…

 

ヴァーリ・トゥードのNPC(シモベ)(モブ)のマイクコール。

室内の照明が もう1段階暗くなり、それと同時、何だか格闘技選手の入場テーマの様な派手な音楽が流れる。

 

「ROYAL=HUNTの【Martial Arts】か。」

眼魔さんは この曲を、知っているみたいだ。

そして床にCO2が低く濃く撒かれ、天井には満面な星空が映し出され、無数の7色のレーザービームが会場内を縦横無尽に駆け巡る。

 

「おおっ!?」

「これは…何と?…」

「綺麗…」

「素晴らしい…!」

「凄えーーーーッ!!」

それを見て、驚き感嘆するジル達現地民。

 

バタンッ!

 

そして開かれる、大扉。

その扉の光の向こうに2人の人影。

新郎新婦(まろんサンとユリ)の登場だ。…て?!

ははは…まろんサン、真剣とか集中、何処に行ったんですか?

まあ、それでこそ まろんサンでしょうけど。

ある意味、安心しましたよ。

 

「「「あらあらあらあら♪」」」

「「ま゙♡」」

「くっくっくっく…」

「あははははははは!」

「きゃはははははは!」

「ほほう?」

「「ぅわあ~♪」」

「…………………。」

「…ふむ。」

「ふっ、そうきたか…」

「シャババババババ!」

その登場の姿に、各々様々な反応を。

 

「ん、知ってた。」

「そんな気は、していましたぁ。」

アウラとマーレは、この展開を予想していた様だ。

俺は てっきり、また何時もの如く2人仲好くお手々繋いでの入場と思っていたが、どや顔な まろんサンと お顔真っ赤っかなユリ。

この2人、お姫さま抱っこで姿を見せやがりました!

ん~、こうやって見ると、俺とアルベドの式は、何の捻りも無い、ノーマルな式だったなぁ。

少し、攻めなさ過ぎた。

 

「…すまなかったな、アルベド。」

「…いえ、私はモモンガ様と結ばれただけで充分です♡」

 

≫≫≫

その後は、極々普通な?流れに。

神父役のシモベ進行による、「健やかなる時も病める時も…」な新郎新婦の誓いの言葉や指輪の交換等が粛々と進んでいった。

尚、誓いの口づけが少し長く感じたのは、気のせいだと思いたい。

そして、今は…

 

「…そして まろん義兄様はユリ姉の手を確と握り締め、(せーの!)

「「「「「結婚して下さい!www」」」」」

「…そして これにはユリ姉も、『えーっ?!』な絶叫と同時に はわわ状態に。」

「や、止めろー!?」

「シャバババババ! 諦めろ まろん!

こういった場では、新郎は弄られてナンボなのだからな!」

「そうだよ、まろんちゃん♡」

今は余興として、ルプスレギナ達が まろんサンとユリの初顔合わせの再現を演じていた。

 

「「「くっくっくっく…www」」」

「ぎゃははは!」

「「結婚して下さいwww」」

それを聞き、ジルやドラウ達も笑いを抑え切れてない様子。

 

「そ、そんな感じだったんだ~♪」

特にアウラ、大ウケ。

まろんサンが止めに入る処を、マサトさんと眼魔さん、そしてイスキオスが抑え付けている。

 

「イスキオス、テメーッ!

どっちの味方だーっ?!」

「此方の方が面白そうだからな。

その様な性格(キャラ)に創ったのは、アンタだ。」

「よし、ならば次は私が、まろんサンがペロロンチーノや建御雷さん達と一緒に、女性の(バスト)について語り合っていた時の再現を

「それだけは絶対に止めろお~っ!!」

 

 

◆モモンガside・了◆

 

▼▼▼

 

◆ユリside◆

賑やかな式が終わり、ヴァーリ・トゥードのシモベの皆様が後片付けした後の礼拝堂。

其処に改めて、まろん様から呼び出された。

後ろを隠れて着いてこようとしたルプスレギナ達を()()()()した後、その部屋に入ると、其処にはパイプオルガンの側、白のタキシード姿の まろん様が唯1人。

 

バタンッ…

 

念道力(サイキック)で扉を閉めると、これは…結界?

誰も この場に入れなくしたみたい。

 

ポロン…♪

 

そして、オルガンでの演奏を始める まろん様。

 

「結婚式…何時の頃からか、大勢の前での新郎の弾き語りは、最高に縁起が悪いらしくてな。

だから これは、ユリ…ユリたん♡にだけの、俺からの愛曲(メッセージ)だ。」

 




①谷屋あおい…ターニャ・デクレチャフ(幼女戦記)のイメージで。
一応、現実(リアル)でも女性だった設定で。
決して、オッサンなんかじゃありません。
 
②ロイヤル・ハントのマーシャルアーツ…多分 読者の皆様も知っている、聴いた事のある曲です。(→動画検索)
 
▼▼▼
次回より、スレイン法国編、本格的に突入予定!
乞う御期待! 感想もヨロシクです。
 


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終末の始まり(仮)

 
新展開!
 


◆一般メイドside◆

ユリさん…本当なら もう、ユリ様と お呼びすべきかも知れませんが、本人が今まで通りで良いと言われたので、そう呼ばせて頂きます。

まろん様と正式に結ばれたユリさんは、ナザリック地下大墳墓からエ・ランテルのマカロン公爵邸に お引っ越し。

そう、この御屋敷に住む事になりました。

「通い妻卒業です♡」とは、当人の弁。

現在、アインズ様から任されている孤児院と学校の お仕事も、今後は此処から向かう事に。

そして私達の屋敷での お仕事も、少しだけ変化が。

まろん様とユリさん、御2人の寝室の掃除・食事(朝食と夕食)の仕度は、ユリさんが行う事になりました。

私達の仕事が少なくなるのには思う処も有りますが、これは ある意味では必然なのでしょう。新婚さんですし。

ついでに言うなら、孤児院が休みの日は2人で、または まろん様が御1人で、調理場にて何やら料理しています。

しかも単にエプロンを纏ってで無く…ユリさんは普段から普通にメイド服ですが…揃ってガチな調理師の格好。

これでペアルックだったら完璧でしたが、ユリさんは上下 白の洋食料理人風、まろん様は頭に鉢巻き(バンダナ)を巻いての、所謂 板さんスタイルです。

先日、まろん様が私達メイドの分の食事も作って下さったので戴きましたが(その日は餡掛け焼きそばと鮭炒飯でした)、凄く美味しかったです。

聞けば まろん様は、ハウスハズバンドの(クラス)も得ておられるとか。納得です。

 

≫≫≫

「皆さん。やっぱり この御屋敷の中に限っては、私の事は『奥様』と呼んで下さい♡」

………………………………………。

あぁそうそう、ユリさん…奥様が屋敷に来られてからの変化の1つに、屋敷内での珈琲豆の消費が格段に増えた事を、加えておきます。

無糖(ブラック)って、意外と美味しいですね。

 

 

◆一般メイドside・了◆

 

▼▼▼

 

◆まろんside◆

「御待たせしました、アインズ様。」

「遅れてしまい、申し訳御座いません。」

「いや、構わない。資料作成に時間が掛かるのは、この場の皆が理解している。」

「「恐縮に御座います。」」

ナザリック第9階層の会議室。

今から、スレイン法国に仕掛ける攻撃(せんそう)についての、詰めの会議が始まる。

俺の『俺、戦争が終わったら結婚するんだ』なフラグも回避出来たので、いよいよ本格的に攻め入る事となったのだ。

スレイン法国に対しては、既にナザリックの皆が、敵認定。

聖王国でのモモンガさんへの奇襲が、決定打となっている。

因みに今回の会議出席者は、モモンガさん、俺、セバスにパンドラにアルベド。

更には各階層守護者とプレアデスの面々。

 

「わ…私が この様な場所に…」

「それは一番の関係者だからだろ?」

そして、以前にスレイン法国の特殊部隊に在籍していた、占星千里だ。

デミウルゴスとアルベドが作った、法国に関する資料を皆に配り、

「それでは僭越ながら、説明をさせて頂きます。」

デミウルゴスが その資料を元にした、対スレインの計画を話し始めた。

 

『敵を知り、己を知れば100戦危うからず』 

 

『戦いは、始まる前に終わっている』

 

ユグドラシル時代、AOG(アインズ・ウール・ゴウン)がPVPやGVGにて掲げていた決まり文句(キャッチフレーズ)

当時は主に ぷにっと萌えが主導で戦略を練っていたそうだが、今はデミウルゴスとアルベドが、その役割を担っている感じ、そのスタイルは転移後の この世界でも変わらない…か。

ヴァーリ・トゥードにも結構ガチな軍師ポジのヤツも居たは居たが…仮にAOG(アインズ・ウール・ゴウン)とウチが戦っていたら、それでも策略差で負けていたと思う。

 

 

『待て これは、ぷにっと萌えの罠だ』

…みたいな感じな。

 

「…さて、では先ずは、改めてスレイン法国が如何なる国か、ですが…」

スレイン法国。

俺達より600年に、この世界に転移してきたプレイヤー…スルシャーナ(スルちゃん)他5人が興した国…らしい。

モンスターや亜人から人類を守護する名目で作った筈が、何時の間にか人類至上思想の下、純・人間種以外の排除を掲げ進めている、宗教国家の皮を被った武闘派の軍事国家だ。

いや、そもそも宗教団体ってのが、他派を一切認めない…廃絶根絶も辞さずな、武装集団なんだよな。

それが国家規模なのだから、尚更な話なだけだ。

 

「他の5人は知らないが、友達(スルちゃん)が目指していた物から、今は大きく外れているのは間違い無いんだ。

そっちの意味でも潰すぜ。私情?自覚してるが?」

大体、ヴァーリ・トゥードの俺が、魔導国の戦争に参加しようとしてる時点で、今更だろ。

魔導国公爵としての参戦なら名分は立つ?

元より俺は、貴族なんかになる気は無かったんだ。

都合の良い時だけ、その立場を前面に出して利用する心算は無い。

単に気に入らないから、潰す。それだけだよ。

 

「しかし、少しだけ解せんでありんすね。

その、スルちゃん殿?…でありんすか?

聞けば まろん殿アインズ様と同じく、不死属(アンデッド)だとか。

その様な者を信仰神の1つとしていながら、異形、そのアンデッドすら…彼方から襲ってきた者を退けるだけなら未だしも、進んで駆逐討伐の対象にするとは、矛盾でなんし?」

「あ~、それ、私も考えてた。」

それは俺も少しだけ、気にしていた。

特に今は、アンデッドの始末を最優先させている感すら有る。

 

「はい。それですが…」

デミウルゴスが言うには、現在スレインに残る六大神の資料や記録では、()()()()()()()()()という事になっているらしい。

その上で、アンデッドは人類にとって、最たる敵というスタンスを取っているとか。

スルちゃん…キミ、何時の間にか、人間にされてるぞ?

 

「申し訳有りません。

その事実が何時の頃から歪められたかは、確たる証拠が得られませんでしたが、少なくとも300年前には、その様な教えが浸透していたと思われます。

真実を知っているのは、一部だけな様です。…ですよね?占星千里?」

「…はい。知っているのは神官長クラス。

そして、スルシャーナ様を信仰している漆黒聖典だけです。」

ほう? 信仰する神の中に異形種…アンデッドが居るのが そんなに都合が悪いですか、そうですか。

 

「ま、まろんサン?」

「ああ、心配しなくても、俺は平常心だよ。」

おっと? 抑えていた心算だったが、殺気が漏れていたかな?

 

 

◆まろんside・了◆

 

≫≫≫

 

◆モモンガside◆

デミウルゴスの解説は続く。

スレイン法国の建ち行きの歴史や その国としてのスタイルの説明の次は、現在の状況。

特に他国との関係だ。

同じく宗教国家のローブル聖王国とは決して仲が良い訳では無く、寧ろ対立している状況。

更には やはり、先日の天使襲撃の件、法国が関与したという証拠が無い上で、懐疑的になっている。

竜王国とも、竜王国を攻めていたビーストマンに対して、ぼったくりレベルな対価請求をした上で、一応は その撃退の援助をしたりな関係だったが、マサトさん達がビーストマンを絶滅させた お陰で その縁も途絶え、今は殆んど、何の関わりも無い。

元より国のトップが1/8ドラゴンであるドラウと、心底に仲良くする気も無くだろう。

バハルス帝国とリ・エスティーゼ王国には、当時 王国領だった開拓村に対して、帝国騎士に扮しての虐殺行為について問われており。

これについては、現在は我が魔導国領の話でも有るので、此方からも それに対する内容の書状を送っているが、未だ何の返事も着ていない。

何の解答も示さないのは、帝国王国に対しても同様だが、これでは戦争待った無しだぞ?

王国は どうだか知らんが、少なくとも帝国…ジルは既に、戦る気満々だぞ?

そしてツアー達ドラゴンが統べるアーグランド評議国や、亜人率が人間よりも高い都市国家連合とは やはり、最初から国交も何も無い状態。

そしてエルフ王国。

純粋な人間種以外を認めないスタンスな法国だが、意外にも約100年前迄は、協力関係を築いていたそうだ。

尤も現在は、戦争状態に在るらしいが。

 

「約100年前、当時の…今も、ですが、エルフ国の王が当時のスレインにて最強だった女性を浚ったのが、切っ掛けだそうです。」

占星千里が言うには、そのエルフ王が当時のスレイン最強の女(プレイヤーの子孫らしい)を浚い、身籠らせたとか。

成る程…そりゃ戦争にもなるわ。

  

「エルフ王は自分の血と、スレイン最強の血を交える事で、新たな強者を作ろうとしたとか。」

しかし、その腹の中の子が産まれる前に、法国は その女の奪還・救出に成功。

子供は法国で、無事に出産した…と。

 

「その通りです。そして それが現在、スレイン法国にて最強の存在とされる者。

漆黒聖典 番外席次…絶死絶命。

スレイン法国の最高機密の1つだそうですが、占星千里からの事前情報で、その確認は難しくはなかったですね。」

「"番外"席次、ねぇ。

所謂No.(ゼロ)みたいな感じか?

しかし、つまりはソレ、ハーフエルフなんだろ?

純人間至上主義、何処に行った?

強い(つかえる)なら何でも構わないか?」

そして まろんサン、辛辣。

 

「ふむ。ならば、そのエルフ王国とやらと、共闘は出来ない物なのでしょうか?」

「ああ。私も それは選択肢の1つだと思い、エルフの国についても少しばかり調べたのだがね…」

 

≫≫≫

「「ホウガン…だと?!」」

まろんサンと声が被った。

デミウルゴスの説明から出た、エルフの王、デケム・ホウガン。

デケムの名は知らないが、ホウガンという名のエルフには、心当たりが凄く有る。

 

「時期的にも、辻褄は合うな。」

「そうですね。」

六大神の次の時期に、この世界に姿を見せたと思われる8人のプレイヤー、通称・八欲王。

前にツアーから聞いた八欲王の特徴からして、俺と まろんサンは それを()()だと推測しているが、その中の1人にクロウ・ホウガンというエルフの男が居たのだ。

八欲王は最終的、その欲を冠する名に相応しく仲間同士の財を奪い合った挙げ句に共倒れの全滅したらしいが、その死ぬ前に子供を残しているというのは、別に可笑しい話じゃない。

 

≫≫≫

「…うむ。とりあえず今回はエルフ国とは、拘わらずで話を進めよう。」

「そうですね。モモンガさんなら殺りかねない。」

そして続くデミウルゴスのデケム・ホウガンなるエルフ王の説明を聞き、少なくともエルフ国とはスレイン法国との戦争が片付く迄は、関わりを持たない事にした。

このエルフ王、一言で言えば あらゆる意味でクソヤローだ。

仮にスレインへの共闘を申し出たとしても、その やり取りの最中で先にエルフ王を殺してしまう自信が出てきた。

エルフ国の民も、この王に良い感情は持っていないそうなので、それが理由でエルフ国とも戦争となる事は無い…寧ろ それは民から歓迎されると思われる…らしいが、要らぬ衝突は時間の無駄だ。

 

「何よりもプレイヤーの子供相手なら、此方も相応の準備が必要となるだろうからな。」

 

≫≫≫

「…よし、それでは その方向で、事を進めるとしよう。」

その後も色々と話し合い、先ずはスレイン法国には俺自らが其方に赴くという内容の手紙を送り、向こうの上層部が ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()流れに。

その後も如何にして国を滅ぼすかの、具体的な計画も ほぼ決まった。

予想外(イレギュラー)な展開は、その都度の判断で…という事も込みでだ。

 

「それでは最後に、何か質問は?」

「あ…あの…(すいません…)

会議を締める前のデミウルゴスの言葉に、申し訳無さそうに、マーレが手を挙げた。

 

「いや、何かの疑問を持つのは、全然 構わない事だよ、マーレ。」

「そうだな。解らない事を聞かず、解らない儘にする事の方が、余程 問題だ。

それに私は、マーレが どんな疑問を持っているかに興味が有る。」

「は…はい!」

デミウルゴスと俺の台詞に、安心した様に表情を明るくするマーレ。

 

「そ、それで質問というか思った事ですけど…何だか その…少しだけ、まわりくどいかな…と。

宣戦布告とかしないで、一気に攻めて滅ぼしてしまえば…とか思っていましたから…」

「そう言われたら確かに…でありんすねぇ?」

「あ~、それは…だね、マーレにシャルティア?

今回は あくまで、我々魔導国とスレイン法国との()()というのを、他国にも示す必要が有るからだよ。

確かに予告無し、いきなりナザリックの戦力を投入して法国を滅ぼすのは容易い。

しかし それは、規模の大小の違いだけで、法国が当時 王国領だった開拓村へ行った、虐殺行為と何ら変わらない。

魔導国を恐怖の対象と見られるなら未だしも、只の暴徒の国だと思われるのだけは、絶対に避けたいからね。」

  




【次回予告】
 
◆アルベドside◆
モモンガ様の いきなりの登場に、恐れ戦くスレインの神官達。
そんな彼等にモモンガ様から告げられたのは、慈悲無き宣戦布告だった。
 
次回『超・大虐殺(予定)』
乞う御期待よ。Kill it Kill it(殺って殺るわ)!!
 


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竜王、知る

 
サブタイが次回予告と違うのは、【この小説あるある】です。
内容変更した等で無く、単純にサブタイの場面まで、話が進まなかったのデス。

  
 


◆ジルクニフside◆

魔導国(アインズ)は正式に、近日中にスレイン法国に戦争を仕掛けるそうだ。

まろんの"死亡ふらぐ"とやらも折れたとの事で、国内の政的な片付けを一通り終えた後、本格的に動くとの事。

一応、「手助けは必要か?」と尋ねてみたが、その返事は やはりの「否」。

私としても法国には思う処が有るので、貸し借り関係無しに兵を送りたかったのだがな。

 

「いやいや、今回モモンガさん、リアルにガチにマジだから。

カッツェ平野みたいな場所で、互いに兵を集めて合戦するとかじゃなく、いきなり奇襲からの国家制圧…いや、崩壊が目的だからな。

下手に乱入とかしたら、確実に広範囲攻撃の巻き添え喰らうぞ? 絶対に死ねるぞ?」

 

スス…

 

しかし紅茶を飲みながら、まろんが それに、改めて待ったを掛ける。

…と言うか、

「「♡♡♡♡♡♡♡♡」」

「…おい まろん。それと、ユリ殿?」

「ん?」

「何か?」

「…いや、何でもない。」

「「????」」

 

≫≫≫

「それじゃジルクニフ君、お邪魔したな。」

「失礼致します。」

………………………………。

その後も少しばかり雑談して、まろんとユリ殿は、執務室(このへや)から出て行った。…手を繋いで。

しかも、互いの指を絡める感じな、見た事も無い繋ぎ方だ。

 

「陛下。よく我慢出来ましたね、突っ込みwww」

「ああ、もっと誉めてくれ。」

バジウッドが腕組みで肩を震わせながら、嗤いを堪えきれない表情で(一応、努力は している様だ)話し掛けてきた。

 

ス…

 

同時、側就きのメイドが、無言でコーヒー(ブラック)を淹れてくれる。美味い。

てゆーかっ!!

アイツは何をしに、この部屋に来たのだ?!

単に戦争の事を、伝えに来た訳じゃないよな?

その事は、既にアインズから聞いているし。

デートか?! 帝国には また、デートで来たのだろう?

この城には、城の中庭に転移先登録とやらをしているから、それで来たのだよな?

ああ、それについては昨日 知らされていたし、別に今更 文句は言わないさ!

でもな! 来たなら来たで、さっさと街に繰り出せよ!

態々 私に会いに来る?

いや、訪ねて来てくれたのは、ほんの少し嬉しくは有るが…丁度 休憩中だったしな。

 

「何も考えてない…普通に挨拶に来ただけだと思いますがね。」

ああ、私も そう思うよ。

 

「ただ、人目 気にせずにLOVEオーラ撒き散らすのは、勘弁して欲しいですけど。

しかも当人達それ、自覚無いでしょ?」

そう! それな!!

  

 

◆ジルクニフside・了◆

 

▼▼▼

 

◆ツアーside◆

「くれぐれも やり過ぎないように…アインズにも その辺り、きちんと伝えてくれよ?」

「勿論に御座います、ツァインドルクス=ヴァイシオン殿。

今回アインズ様が敵と見なしたのは、()()()()()()()()

他国への被害は当然、我々の方から()()()()()()様な真似は、有り得ません。」

ハァ…アインズの配下が私の住み処に訪ねて来たと思えば…この際、事前連絡無しの いきなり来訪や国内不正侵入、ついでに『何故に此処を知っている?』等には何も言わない。ぷれいやー関連の者だし…魔導国が法国に戦争を仕掛けるとの事。

いやいや、戦争って何事?…きちんと事の前に報告に来てくれるのは、非常に有り難いけど。

しかし その経緯(何が有ったのか)を聞いて、何も言えなくなってしまい…少なくとも私、というか評議国が簡単に話に割って入れる様な事では無いのは理解出来た。

そりゃあ、他国訪問中の王様を その国の女王と一緒に暗殺しようとしたんだから、もう完全アウトだよね!

しかも法国は魔導国や聖王国だけで無く、前々からリ・エスティーゼ王国、そして間接的?にバハルス帝国にも矛を向けていたとか。

仮にアインズが動かなかった場合、少なくとも帝国が動き、それこそ人類同士…大国同士の戦争となるとか。

その場合、双方に大きな傷痕が残るだろう。

そういう意味では、魔導国vs法国の方が、幾分マシかも知れない。

法国()()が壊滅するという意味でね。

両者の間に入る?

恐らくはブチギレ状態だろうアインズを止める自信は、はっきり言って無い。

そして法国。評議国(こちら)は兎も角、法国(あっち)は私達を勝手に敵視してるから、此方が何を言おうが聞き入れないだろうし。

もう、知ーらない。

 

「アインズには一応、『気を付けろ』と言っておく。

尤も、ぷれいやーには無用な心配だろうがな。」

「ええ。法国最強と云われる絶死絶命と云えど、我々の敵では無いのですから。」

「絶死…絶命…? 使者殿? 何なのだ、それは?」

「おや? 御存知で無かった?

ああ、そう言えば()()は法国でも機密扱いでしたか。

簡単に言えば今から100年前、プレイヤーの子供であるエルフ王が、当時の法国最強…此方もプレイヤーの子孫である女を浚い、無理矢理に産ませた存在ですよ。」

「な…!?」

な、何だってーーーーーーーっ!!!?

いや、それって初耳なんだけど?!

いやいやいやいや、マジ何なの、それ?!

…って、もしかして法国とエルフ国が戦争状態なの、それが原因かい!?

八欲王、自身だけで無くて その子供(ガキ)もマジ最悪だな!?

説明! えーと、こういう時は確か…

 

「KWSK!!」

…だったよね?

 

≫≫≫

「…それでは、私は これにて失礼します。」

「ああ、アインズにも、宜しく言っておいてくれ。」

ハァ…疲れた。

アインズの遣いの悪魔…デミウルゴスから、エルフ王や その娘の話を色々と聞かされ、精神的に疲れた。

その精神衛生上、非常に芳しくない会話も漸く終わり、伝えるべきは伝え、もう この場に用は無いと去ろうとするデミウルゴス。

 

「承知致しました。…それから、柱の裏で気配を消しているアナタ、もう出てきても大丈夫ですよ?」

「「!??」」

しかし その前に この台詞。

 

ス…

 

「やれやれ…バレバレだったみたいだねぇ?」

この言葉に、観念したのか感心したのかな顔で、デミウルゴスとの やり取りの間、実は ずっと身を潜めていた友人(デミウルゴスと話してる最中に此処に やってきた)が、柱の陰から姿を見せた。

 

「ええ。敵意は感じませんでしたし、私も貴女には用が有りませんでしたから、敢えて触れなかっただけです。

隠れていた件については…竜王殿との会話を邪魔しない為…と、受け取っておきますよ。」

「そりゃあ、有り難い。」

「それでは、改めて…」

 

フゥゥ…

 

そう言うとデミウルゴスは、姿を消し…転移で魔導国に帰っていた。

 

≫≫≫

「…リグリット、どう見る?」

「ありゃあ、駄目だね。何時ぞやの魔神なんかより、遥かに強いさね。

間違っても、敵対するもんじゃないねぇ。」

その後、友人…リグリットに彼の印象(かんそう)を尋ねてみると、予想通りな返答が。

 

「ぷれいやーが常識や規格の外なのは、今更だ。

幸いにも?此度の ぷれいやーは まだ話せる感じな分、マシだと思うがね?」

「確かに。…と言うか、魔導王とやらは やはり、ぷれいやーだったのかい?

今日は その辺りを話しに来たのだけど、タイミングが良かったのかねぇ?」

笑いながら話すリグリット。

 

「それに、面白い話も聞けたよ。

まさか法国が、エルフ王の娘を匿っていたなんてねぇ?」

それだよね! 魔導国が法国と戦争するなんて、一気に吹き飛んだよ!

エルフ王の娘は本当に、凄く気になる。

…これは他の竜王達にも報せないとダメだよね?

それを聞いたら何匹かが、『法国に凸だ!』とか言い出す光景が見えるけど、それは全力で止めるべきだろう。

今回は下手に介入しないで、傍観!

 

「こりゃ いよいよ法国も、終わったかねぇ?」

 

 

◆ツアーside・了◆

 

 

▼▼▼

スレイン法国。

その首都中心に聳える、大神殿。

その、最上階の一室、豪華な装飾が施された円卓を、7人の男女が難しい顔をして囲んでいた。

スレイン法国の六色聖典の各部隊を纏める神官長と、その上、実質、法国の最上位(トップ)である大神官だ。

 

「これを…」

この中、最高齢と思われる大神官が…この場の全員が、高齢の域だが…封筒を懐から取り出した。

上質の黒革に金糸の刺繍で飾られた、如何にも高価そうな封筒だ。

 

「それは…」

「魔導国…魔導王からの手紙だ。

朝、私の元に届いたのだよ。恐らくは転移系の魔法で直接…な。」

「「「「「「!!???」」」」」」

大神官の言葉に、神官長達の緊張感が、一気に高まる。

 

「そ、その内容は?」

今迄(いつも)のヤツと同じだ。

帝国騎士に擬装して、王国の村を襲った件について。

そして今回は、聖王国にて刺客を差し向けた件…その説明を求む文面も、加えられている。

更には近日、其等を直接に問い質す為、魔導王(あのアンデッド)自らが此方に出向くとも書かれていた。」

「「「「「「!!???」」」」」」

続く言葉に、更に驚愕する神官長達。

 

「魔導王…本当に一体、何者なのだ?」

神官長の1人が呟く。

最初に その存在を認識したのは、バハルス帝国とリ・エスティーゼ王国との戦争の事。

曰く、嘗て帝国と王国が まだ1つの国だった時代より遥かに昔、あらゆる種が共存する魔導国として その一帯を治めていた王。

次代に その地の統治を委ね、自身と直属の眷属は、一時的な眠りに着いた。

そして此度、その眠りから覚ますと 其処には自分が築いた国は既に無く…らしい。

 

「皇帝は その戯れ言を信じたらしいが…」

帝国が魔導王の存在を支持する旨の声明をした時に、法国も その確認に動いた。

結果、魔導国の存在を証明する証拠は得られず。

しかし、『魔導国なる国は存在しなかった』という確実な証拠も得る事は出来なかった。

逆に可能性を言えば、現在カッツェ平野に沈む、出時不明の遺跡が魔導国時代の其れだ等と主張されると、完全に否定出来なくなる。

 

「まさか本当に、旧時代とでも云うべきか…の支配者なのか?」

「「「「「………………。」」」」」

神官長の1人の発言に、残る者は肯定も否定もしない。出来ない。したくない。

それは自身も『もしかしたら…?』と認めたくないながら、僅かに感じていた可能性(こたえ)の1つだったから。

現在のスレイン法国…いや、この世界に残り記されている人間の歴史は、六大神が現れたのを起源とする物。

それ以前を綴る物は、御伽噺の様な物ですら存在しておらず、一切の謎なのだ。

正確には法国の…八欲王時代以降の上層部が『不都合な真実(れきし)』として禁忌と見なし、誰さえにも語る伝える記録に残すを許さずに、時が流れた。

そして国は何代も次代が継がれ、やがて誰も真相を知る者も無く、正に真実は闇の中となっていたのだ。

 

 

 

 

私の手紙は、読んで頂いた様だな…

 

 

 

「「「「「「「!!?」」」」」」」

こうして誰も言葉を発せない沈黙が続いていた中、室内に何者かの声が響く。

 

ヴォ…

 

そして戦慄する大神官達の目の前の空間に、大きな黒い()が開く。

 

ヌゥ…

 

「…………………。」「「「「「「「?!」」」」」」」

そして その中から無言で姿を見せたのは、白い外骨格の巨躯の蟲人。

 

「…(ふんっ!)

「「「「「「「!?」」」」」」」

続いて現れたのは、白のドレスを纏った、黒髪黒翼の美女(あくま)

 

「初めまして…だな。スレイン法国の御歴々。」

「「「「「「「?!!!」」」」」」」

そして最後、黒のローブに身を包んだ、その物だった。

 




【次回予告】
 
◆アルベドside◆
モモンガ様の御姿に、戸惑いを隠せないスレイン法国神官達。
色々と弁明を謀るが、モモンガ様が この場に現れた時点で既に詰んでいるのに気付いていない様ね。
 
次回『超虐殺(今度こそ)』
乞う御期待よ。Kill it Kill it(殺って殺るわ)!!
 


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超虐殺

 
【前回の あらすじ】
モモンガさんがスレイン法国に、凸しました。
 


◆まろんside◆

…さ・て、今頃モモンガさんはスレイン法国で彼方のエライヒト達と、OHANASHIかな?

 

「あの…マカロン様?」

「ん? ああ、何でもないよ。」

そんな中、俺はエ・ランテル~カルネ村の間を、トラック(4tロング)で走っている。

助手席にはユリたん♡…で無くて、ンフィーレアと その祖母リィジィ。

この2人、モモンガさんに薬師としての能力を認められ、今後は単なる薬屋さんで無く、魔導国バックアップの元、ユグドラシルのポーションの研究・開発する事になっていた。

その素材集め等の効率向上の意味で、活動の拠点をトブの大森林の すぐ近くのカルネ村に移って貰う事に。

その方が、ンフィーレアのモチベも上がるだろうしな。(笑)

但し、これも直ぐな話とは行かず。

モモンガさんが「ドタキャンは良くないな」と、現実(リアル)時代の営業気質を見せ?ンフィーレアにはエ・ランテルで残していた契約(しごと)を片付けさせていたのだ。

その間に、カルネ村側も2人の受け入れの用意を整えていたり。

それ等が全て終わり、漸く引っ越しに。

そして俺は魔導王様(笑)からの依頼で、久し振りに冒険者として、この2人の引っ越しの手伝い並びに護衛をしている。

2人の荷物は馬車で とりあえずはエ・ランテルの外…城門前まで運び、其処から俺のトラック(ユグドラシルのマジックアイテムです)に積み替え。

これには漆黒の剣とフォーライヴの皆さんにも、手伝って貰ったり(金級(ゴールド)やオリハルコンにやらせる仕事じゃねぇw)。

全員がトラックを見て、凄く驚いていたな。

 

≫≫≫ 

「しかし、何と言うか…すいません?」

ンフィーレアが改めて、引っ越しの手伝いをしている件について申し訳無さそうに話してくるが、俺(一応、魔導国公爵)は全然 気にしていない。

 

「気にする必要は無いさ。

君達は もう、あの魔導王御抱えの薬師なのだろう?

だからこその、()じゃないのかな?」

…自分で言っててアレだけどな。

 

「それに、コッチの方が、移動も護衛も楽だしな!」

 

キュルルルル…ドゴォッ!!

 

「ぎゃわら!?」

「「??!」」

「…な?」

「「………………。」」

野良のオーガが1体、此方に向かって来たので、此方も加速して轢き飛ばしての一言。

…って、何を2人して引いている?

  

≫≫≫

そうして平原をひた走る内に、カルネ村が見えてきた。

そして村の外壁の前には…おぉ、居る居る。

族長 村長のエンリと(前に『族長さん』って呼んだら、青筋全開で微笑まれた)、その配下のゴブリンズ。

村の引っ越し手伝いのスタッフの皆さん、もうスタンバっていらっしゃる。

 

「お義兄たま~♡」

…そして村の監視、守り役のルプスレギナ。

 

「その呼び方は止めろと言っているだろうが!(怒)」

 

ガシッ!

 

あ痛たただだだだ?!

到着早々、巫山戯た挨拶をしてきた駄犬に、アイアンクローからの持ち上げ。

技から逃れようと、宙に浮いた足をがに股でジタバタさせながら、必死に腕を外そうとするルプスレギナだが、残念だがレベルが違い過ぎる。

 

「うぅ…贔屓っスよ…。

シズちゃんの義兄()ぃにやエンちゃんの 義兄(にー)ちゃんには、何にも言わないのに…」

解放後、涙目ジト目で訴える様な顔を向ける駄メイド。

喧しい。アレは、アリなんだよ。

 

≫≫≫

引っ越し完了。

新しいバレアレ家は、族長さん家の隣の隣でした。

 

「ふっふっふ♪ 敢えて直ぐ隣にしないのがミソっスよ。

ついでに言えば、その隣も今は空き家っス。

つ・ま・り…♡」

つまり、夜な夜な逢い引きし放題か!

…エンリは兎も角、ンフィーレアがヘタレなければな。

 

「よし、よくやった!

お前には期待していたぞ、ルプスレギナ!」

「え~へ~へ~♪(//▽//)

それじゃ、ご褒美に頭撫で撫でして欲しいっス。」

よし、撫で撫で撫で撫で撫で撫で。

 

「それと ついでに、『お義兄たま』呼びも、アリにして欲しいっsあ痛たただだだだ?!

 

 

◆まろんside・了◆

 

▼▼▼

 

◆モモンガside◆

「さて、手紙に記した通り、伺わせて貰ったが…」

「「「「「「「!!!?」」」」」」」

俺達の姿を見て、完全に硬直(フリーズ)する、スレイン法国の重鎮達。

アポ無し凸じゃないぞ!?

遠隔視の鏡(ミラー・オブ・リモート・ビューイング)で この部屋の様子を窺わせて貰い、『近い内に俺が来る』のを知った後だから、セーフ!

『近い内に』が それを知った直後と想定しなかったのは、彼方の責任という事で(屁理屈)。

 

「す…スルシャーナ…様…?」

「ほう? 私を見てスルシャーナとは、これは また、異な事を言うな?」

そして硬直が解かれたと思ったら この台詞。

以前の漆黒聖典と云い、そんなに似てるんですか、まろんサン?

 

「スルシャーナ…確か、スレイン法国の基礎を造った六大神と呼ばれる者の1人だったな。

何故、私をそのスルシャーナと間違える?

私も眠りから醒めた後、それからの…今の世界について色々と調べさせて貰ったが、確か その者は…いや、六大神は全て、人間だったと聞いているが?」

「「「「「「「………。」」」」」」」

分かってまぁ~す。

人間様至上主義を掲げている国風の手前、国の始祖にアンデッドが居るのは、非常に都合が悪いんだよな?

だから、設定変更(ねつぞう)したのだよな?

デミウルゴスの作った魔導国・魔導王の設定(シナリオ)に添い、如何にも自分が古くに眠りに就いた存在、そして最近に目覚めた存在として立ち振舞う。

今 俺が話している台詞も全部、デミウルゴスの脚本による物だ。

 

「ふん…まあ、そんな事は どうでも良い。

人間だの亜人だの異形だの…そんな違いは塵芥に過ぎない。

私が この場に赴いた理由の1つ、それは前々から送っていた書状の答えを、直接に質しに来たのだ。

問おう。何故、貴様等スレイン法国は、バハルス帝国の兵を装い、私の民を虐殺した?

ああ、当時はリ・エスティーゼ王国の領地となっていたか?

それでも同じ事だ。

それに この件については、バハルス皇帝殿からも、同様な書状が届いている筈だが?

どちらに対してもだが、黙りは感心出来ないな。」

「……………………。」

「どうしたのだ? 何か喋ってくれないか、大神官殿?」

 

 

◆モモンガside・了◆

 

≫≫≫

 

◆大神官side◆

く…確かに このアンデッドの手紙には、近い内に訪問すると書いてあったが、まさか今日の今日と、誰が思う?!

 

「ふん…この期に及んでも、まだ沈黙で返すか…

ならば、私が お前達の代わりに、答えてやろう。

先ずは、帝国兵に擬装しての、開拓村の襲撃。

これにより、王国首都より王国最強と呼ばれる、ガゼフ・ストローフをその地に誘き寄せる為だな?

…しかも事前、王国貴族…既に私が殺しているが、その者に内通して、ストローフには出撃の際には色々とケチを付けて、完全武装させない徹底振りだ。」

「…………………………………。」

そして此方が何も話さずにいると、勝手に喋りだした。

ふん、まあ良いわ。

魔導王…だったか? 貴様が何処まで知っているか、確認させて貰うわ!

所詮はアンデッド。大した推理等、出来る筈も無かろう。

 

「そして現場にやって来たストローフを、法国御自慢の精鋭部隊…陽光聖典だったか?…に、始末させる。

違っているかな? これは、部隊長を名乗っていたニグン・ナンタラの脳味噌から、直接に聞いた事だがな?」

な…何だと?! このアンデッド、ニグンに会ったと言うのか?

あの場に送った陽光聖典が行方知れずとなっている原因は、まさかコイツか?

 

「ふっ…その表情(かお)に出ている質問に応えてやろう。

出来る事なら、きちんと口から言葉にして、尋ねて欲しい物だがな。

ああ、その通りだ。あの時、王国の開拓村を襲っていた法国兵の殆んどと、その後ろに控えていた陽光聖典とやらは全員、私と私の友とで殺した。」

何だと? 陽光聖典を全滅させただと?!

 

「ああ、先に言っておくが、先に攻撃を仕掛けたのは、奴等の方だからな?

擬装兵の一部は、後から遅れて場に駆け付けてきたストローフ…王国戦士団に引き渡したがな。

王国からは その件について、何の連絡も来てなかったかな?

まあ、無理も無い話か。

彼等は皆、自身に掛けられた『敵からの質問に3度答えると死ぬ』呪いを知ってしまったのだからな。

皆、今の貴様等同様に黙り。

自分が法国の者だと、口を割る者は居なかっただろうさ。

一応、此奴等は帝国兵で無く法国兵だと、ストローフには教えたのだがな。

因みに その者達も、帝国と王国の戦にて人質…盾の様に扱われるも、帝国には通じず、結局は全員、矢の雨に射抜かれて死んだがな。」

……………………………………。

 

「…話を戻そう。

それでは何故、その様な真似をしたのか…

それは、王国最強ストローフを屠った事を知らしめ、バハルス帝国を例年の小競り合いで無く、一気に王国に攻め入らせようとしたのだろう?

ジルクニフ皇帝…ジルも この件には帝国を喜劇の駒に仕立てようとしたとして、怒り心頭なのでは?

帝国からも、ジル直筆の手紙が届いているのだろう?」

…確信した。

このアンデッドは、全てを知っている!

アンデッドと侮り、その知能を測り違えていた。

認めたくは無いが、コレの知能は かなりな物だ…!

 

「ま…待て! 待ってくれ、魔d

「貴様! 誰ニ ドノ様ナ口ヲ聞イテイルカ!?」

「待ちなさい、コキュートス!」

 

グシャッ!

 

…!!?

それならば、王国襲撃は何故なのか…その理由・正当性を説こうとした時に、アンデッドの配下…護衛か?…の巨体の蟲が私の言葉が気に入らなかったのか、大剣を取り出して私に突進してきた。

…が、それをもう1人の配下、女悪魔が間に割って入り、その剣を右腕で弾き飛ばす。

見た目は、私が庇われた形だ。

 

ぐ…!

しかし、その腕は決して無事では無く、千切れこそしてないが、肘から手首辺りが引き裂かれ、夥しく出血している。

 

「コキュートス! 勝手に動くなと命じられていた筈よ!」

「ス…スマナイ…」

「まあ良いわ。貴方の処分は後で決めるわ。

しかし大神官殿。貴方も もう少し、口の聞き方等には注意を払うべきね。

次も止められるかは、分からないわ。」

「しょ…承知した。」

この女悪魔の方が上役なのだろう、負傷した腕に治癒魔法を掛けながら、蟲を一喝。

そして私にも、言葉使い等の注文をしてきた。

クソが! 汚らわしいアンデッドや悪魔風情が、何を偉そうに言っているのだ!?

しかし、その感情を表に出せば、今度は間違い無く、この首が跳ぶ…どうせ女悪魔も『次は止められるかは分からない』で無く、『次は止めない』なのだろう。

 

≫≫≫

「貴方、間違っている。」

「な…んですと?!」

その後、如何にリ・エスティーゼ王国が腐敗しているか、何故、王国に攻め入ったかの理由を説明したが、女悪魔には理解を得られなかった。

ちぃ、所詮は異形種の集団だ。

我々の崇高な理念等、解る訳も無いのだろう。

 

「魔導王様も最初、仰有られたわ。

目醒めの後、この世界については色々と調べたと。

その上で、リ・エスティーゼ王国の腐敗振り…少なくとも人間社会にとっては癌。

滅びも止む無しなのは、理解出来なくも無いわ。」

「な、ならば!」

「…ナラバ 何故、帝国ヲ陰カラ誘導スル様ナ、回リクドイ方法ヲ執ル?

『義は我に在り』ト、堂々ト スレイン法国ヲ名乗リ、直接ニ王国王都ヲ攻メ墜トセバ良イノデハ?

貴様等ノ戦力ナラバ、十分ニ可能ダッタ筈。

何ノ罪モ無イ村ヲ、滅ボシテ良イ理由ニハ ナラヌ。

自身ハ決シテ表ニハ出ナイ…卑怯者ノ極ミ以外ニ何モ無シ!」

ええぃ! 異形種風情が知った様な事を抜かすな!

 

「…良い。カルネ村や他の開拓村の襲撃については、理解した。」

此処でアンデッドが、蟲の暴言を止めに入ってきた。

ほう? 一応は"王"を名乗るだけあり、我々の考えには共感出来たか?

 

「…納得は全く、出来ないがな!

如何に その時は王国の領地だったかも知れぬが、元は私の、魔導国の地だ!

その地に生きる者を勝手に殺され、王として『そうだったのか、分かりました。』で済むと思うか?!」

「……………!?」

う…?!

これは、魔力の重圧(プレッシャー)か?

アンデッドの体から、凄まじい圧力が発せられる。

 

「「「「「「……っ?!」」」」」」

他の神官長達も、プレッシャーに押し潰されそうに、顔を歪めている。

 

「まあ、良い。開拓村襲撃については背景を確認出来た。

この件の問答は、とりあえずは これで終わりとしよう。

ならば次に…これも既に幾度も、質問の手紙を送っているが、私がローブル聖王国を訪れた時に、天使を刺客として送り込んだ件について、説明願えるかな?」

く…当然と言えば、当然な話だが、それについても聞いてきたか!?

いや、待て。アレについては、我々側は法国や聖典等は、一切名乗ってない筈。

何も身元が割れる証拠は残してない筈だ。

此奴等も単に襲ってきたのが"天使"というだけで、法国を疑っているのだろう。

残念だが、天使や他の魔獣を封印しているアイテムを持つのは、法国だけじゃない。

これは知らぬ存ぜぬで、押し通せる!

 

「ん? 答えられないのか?

私が聖王国を訪れる数日前、"新生"漆黒聖典の第6席"死凶怠惰"とやらが、聖王国南部の貴族を誑し、上位(笑)の天使が封じられた魔水晶を数ヶ、渡したのでは?

私とカルカ聖女王を亡き者とする為に…な。」

「な…?!」

こ…このアンデッド、本当に何処まで知っている?!

漆黒聖典に『新生』と付けて呼び、更には死凶怠惰も知っているだと?!

ま、まさか、(旧)漆黒聖典が行方不明になった原因も、コレが関係しているのか?

しかし それを問い質すと、余計に泥沼に沈む予感しかしなく、今は聞く気も起きない。

それと、聖女王を殺そうとしたのは、聖王国の貴族が勝手に暴走しただけで、我々は関係無いぞ!

 

「残念だが、言い逃れは出来ない。

全ての証拠は押さえているからな。

ああ、全ての証拠は押さえているの…DEATH!…だったかな?

この方が、より伝わり易いか?」

「……………。」

クソが! 確かに分かり易い!

信じられないが、本当に その場の やり取りを、盗み見でもしていたとしか思えない。

 

「…さて、これだけ話せば、今日 私達が この場に現れた、本命の目的も察せるだろう。」

「本命の…」

「…目的?」

…だと? ま、まさか…

 

「その通り! 此度のスレイン法国による、我が国に対する攻撃的行為の数々、既に看過出来るレベルに在らず。

故にアインズ・ウール・ゴウン魔導国はスレイン法国に対し、今 此の場 此の時を以て、宣戦布告する!」

「「「な…」」」

「「「「ん…だと…?!」」」」

やはり、そう来たか!

話の途中から、単なる問い質しで終わるとは思わなかったが…

 

「勿論、帝国と王国が毎年、広地にて互いに陣営を敷いての合戦等で無く、領地や資源を奪うでも無い。

民も軍属も無い。どちらかの国が完全に滅びるかの、殲滅掃討戦だ。」

な…正気か? いや、アンデッドに それを求めるのが、間違っているか?

 

「待っ…て下さい、魔導王殿?

兵は兎も角、民を巻き込む様な戦争が許されると お思いか?」

「ふん…先に罪無き民を虐殺した側の、口から出る言葉か?」

「ぐ…開拓村への賠償なら、する! 復興にも援助する!…だから!」

 

斬ッ!x2

 

「「「「「!!!?」」」」」

何とか戦争を回避しようと事を穏便に運ぼうとする火と風の神官長だが、次の瞬間には、その2人の首が床に落ちた。

 

「「「ひぃぃっ?!」」」

蟲と女悪魔が、それぞれ手にした大剣と戦斧で斬り落としたのだ。

誰もが、それに反応出来ない程のスピード。

恐らくは殺された当人も、自覚は無いだろう。

床に転がる首。恐怖も痛みも何も感じていない、アンデッドに譲歩を求める訴える表情の儘だ。

 

「ふっ、どうだ? 国の首脳陣が2人も殺されたのだ。

これで貴様等も、後に退けなくなっただろう?」

「「「「「…………!」」」」」

髑髏面だから表情は無いが、アンデッドの王が嗤ったかの様に言い放つ。

 

「それでは今日は、これで失礼させて頂く。

これは戦争故に、今後は そちらも我が国に攻め入っても特に問題は無いぞ?

無論、此方は民に被害が及ばぬ様、既に歓迎の準備は万全だがな。」

「……………………………。」

「それと最後に。

無辜なる民の命を不条理に奪った報い…その落とし前だけは、今日 付けさせて貰うとしよう。

貴様等が如何なる事を仕出かしたか、理解するが良い。」

「な…それは一体、どういう事だ?」

 

スゥ…

 

私の問い掛けには応えず、あのアンデッド共は この場に現れた時ど同様、空間に穴を空け、その中へと姿を消していった。

 

「「「「大神官様!」」」」

「うむ…!」

同時、残った神官長が私に詰め寄る。

 

「狼狽えるな。六色聖典の隊長格を全て、今直ぐ この部屋に呼び寄せろ。

ああ、()()()も、な…」

「は…はいっ!」

とりあえずは緊急、魔導国対策の打ち合わせだ。

しかし、今回で解ったが、奴等はスレイン領内には自由に出入り出来るのだろう。

そして逆に魔導国への出入りは厳しい。

既に密偵として あの国に何人も送り込んでいるが、その全てが連絡が着かず。

その存在に気付かれ、捕らわれた…いや、消されたと思うのが妥当だろう。

我々が出来るのは、攻めてきた者を退ける防衛戦だけ。

既に打つ手無し…か?

いや、我等は人類の守護者。

アンデッド等に屈する事は、決して許さない。

 

バタンッ!

 

「だ、大神官様!」

そう思案していた時、勢い良く扉が開かれ、1人の兵士が入ってきた。

 

「何事だ?」

「そ…外…! 外に…!」

「??????」

兎に角、完全に冷静さを失っている兵士。

魔法による精神安定を施し、何事かと神官長達と、外の様子を見るべく神殿最奥の部屋を出る。

 

≫≫≫

「な…」

「これは…」

「何という事だ…」

そして、窓の有る別室。

その窓越しに我々の眼に飛び込んできたのは…

 

め゙ぇえ~~~~っえ!!

「「「「「………!!!!」」」」」

一言で言えば邪悪醜悪。

それは黒い肉の塊に太い四肢、無数の触手を生やし無数の口を持つ、巨大な怪物(モンスター)

それが集団で、法都を破壊している光景だった。

しかし、どういう事だ?!

あれだけの化け物が暴れているのに、それに逃げ惑う民が見られず、その悲鳴さえもが全く聞こえないのは…ま、まさか?! 

 




 
今回は絶対、『め゙ぇえ~~~~っえ!!』まで書きたかったので、普段と比べて長くなりました。
 
 
【補足】
①キュートスの暴走→アルベドの制止からのダメージ。
これも『もしも相手が舐めた態度をした場合…』の時の、デミウルゴスの脚本の一部です。
マジにコキュートスがキレて暴走した訳では無いです。念の為。
②クレマンティーヌやニグンをアンデッドにした等は、話をややこしくするだけなので、モモンガさんは敢えて語らず。
漆黒聖典についても同様。
占星千里をナザリックに迎えたのも、黙っています。
 
≫≫≫
 
【次回予告】
 
◆アルベドside◆
モモンガ様が喚び出した魔獣が、スレインの都を破壊する。
しかし、スレイン法国からも、それを止めるべく、法国の守護者と呼ぶべき存在が現れた。
 
次回『怪獣大戦争(予定)』
乞う御期待よ。感想、並びに高評価も お願いするわ。
Kill it Kill it(殺って殺るわ)!!
 


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"新生"漆黒聖典

 
▼▼▼ 
 
きゃああああああぁ~~っ?!!
 
深夜、エ・ランテルの とある屋敷にて、まるで絹を引き裂いたかの様な乙女の悲鳴が木霊した。
 
「ど、どうした!? 何があった?!」
「ひぃぃえ??!」
それに対して、屋敷の主である まろんが女性を気遣う様に寄り添うが、この叫び声の主は依然として落ち着きを取り戻せない…尚更に取り乱す様子である。

すぱーん!!
 
「OUCH?!」
そして次の瞬間、まろんの後頭部に衝撃が走る。
 
「まろん様! だから部屋を出る時は何か…せめて下だけでも何か履いて下さいと、何時も言っているじゃないですか!?」
其処には張り扇を持った、怒り顔呆れ顔なユリが。
 
「さあ、部屋に戻りますよ。」
「ぅい…」
「…ごめんなさいね、フィース。」
その後、全裸男(まろん)はユリに引っ張られる様に手を取られ、すごすごと寝室に戻っていく。
 
「……………………………………。」
そして その場には、呆然とした表情で立ち尽くす様に残るメイドの少女が1人。
 
「はゎわ…お、男の人の ちΧΧ゚、初めて見てしまいました…
あんな風になっていたのですね…
…じゃなくて!
もしかして まろん様、ユリさん…奥様に敷かれていますか?」
 
▼▼▼
…というのを、今回の最初(アタマ)に持っていこうと思いましたが、よく考えてみたら まろんはアンデッドだから排泄行為(夜中にトイレに行く)とか無いよな…と気付き、ボツにしました。
 
≫≫≫
【今回の予習(ネタバレ)
"新生"漆黒聖典
隊長…フリード・セルゼン(ハイスクールDXD)
死凶怠惰…ペテルギウス・ロマネコンティ(Re:ゼロ)
…のイメージで。
 
 
それでは この先、本編DEATH!
 


◆ジルクニフside◆

ついに魔導国が…アインズが法国に宣戦布告、その勢いの儘に いきなり法都を半壊させた…そうだ。

 

「全く…その時には私にも一声、掛けてくれと言った筈だが?

冗談だと思っていたのか?

半分以上は本気だったのだぞ?」

「ぃゃ…すまない…。」

スレイン法国は帝国騎士に擬装して、虐殺行為を行ってくれたのだ。

そして それを切っ掛けに、王国との本格的な全面戦争を仕組もうとした。

王国との戦争は兎も角、黒幕気取りで我々を踊らせようとした。

これは絶対に赦されない事。

本当に帝国としても、きつい一撃をくれてやりたかったのだがな。

尤も、今回の魔導国の目的は、領土目当ての侵略戦争で無く、本当に国を滅ぼすのをメインとした物だ。

兵同士の合戦が前提じゃない。

アインズの魔法1つで、数十万の一般民が瞬時に命を落としたとか。

とんでもない話だ。

私の想像していた戦争とは、土台が違ってきているので、既に口を挟む気も無いがな。

 

「アレだよ、ジルクニフ君。

前に話したろ?

モモンガさんがマジになったら、広範囲の即死魔法を放って、それで死んだ者の魂を媒体(エサ)にして、凶悪なモンスターを呼び寄せるってヤツ。」

ああ。確かに以前、言っていたな。

 

「ふふふ…1度に13体召喚。

個人だけで無く、ユグドラシル全体でも大幅記録更新だ!」

「ふーむ。いまいち どんな光景かは想像付かんが、端から見るとドン引きするのだけは、理解出来たぞ?」

「余り目立つ様な真似は、控えて欲しいのだが…」

アインズの得意満面そうな…多分どや顔な追加の説明。

この骨に『緊急の報告』だと、私と同じく半ば無理矢理にアインズの居城に 拉致られた 招かれたドラウディロンも、複雑そうな表情を浮かべる。

それと もう1人、評議国から来たという全身鎧の人物も、(フルフェイス)の下は どん引いているに違いない。

 

「法国の戦力を計る意味でも、収穫だった。

あの"羊"達を斃せる存在も、知る事が出来たしな。」

「それは噂の、絶死絶命とやらか?」

「いや、それとは違う。

恐らく…いや、間違い無く、六大神のNPCだ。」

「「「えぬびーしー?」」」

「ああ、すまない。此方では、従属神と呼ばれているのだったな。」

「へ~? あの"羊"を斃せるって、それなりなレベルだよな。」

「少なく見積もっても、守護者級。

銀色の身体の巨大な…それこそ、"羊"と同サイズの…ユグドラシルのモンスターとは また違うタイプの、天使みたいな感じでしたね。」

「モモンガさんマジ? 何なの? もしかして、怪獣大決戦だったりした?」

「それは…確かに少し、見たかったかも知れないな。」

「男子じゃの~?」

 

≫≫≫

「…その様な訳だ。

今後は法国が、君達の国に保護や援助の要請が有るやも知れないので、報告しておいたのだが。」

「アインズ殿。追撃は、しないのかの?」

「ふっ…既に法国首都は都として機能は しないだろう。

何しろ、中心の大神殿が無事なだけで、残りは瓦礫の山だからな。

そうなった後その状況で、あの神官共が自国や他国に この事態をどの様に報せるかに、興味が沸いただけさ。」

どうせ自分達のした事には触れずに魔導国だけが悪い様に都合良く、捏造報告するのは目に見えているがな。

 

「舐めプだな。」

「違うさ まろんサン。

昨日の()()は、あくまでも今迄の報復。

自分達の過ちを自覚させ、残った民に何が起きたのかを教える暇を与える位の優しさは、見せてやっても良いでしょう?」

「「「「はいはい、舐めプ舐めプ。」」」」

 

 

◆ジルクニフside・了◆

 

▼▼▼

 

◆まろんside◆

モモンガさんの報告が一通り終わった後、ジルクニフ君とドラちゃんは行きと同様に転移門(ゲート)で各々の城まで送り届け、ツアー(鎧)は飛んで帰って行った。

 

「それでモモンガさん…次の一手は?」

「ええ。法国の神官達の影には、既にシャドウ・デーモンを何体も忍ばせていますから、何時、何をどの様に仕掛けてくるかは丸分かり。

それに合わせて、事前に その策を潰す方向で行こうと思っていますよ。」

うわぁ…それ、カンニングじゃないか…

 

「さて…それなら法国は、どう動く事やら。」

「ジル達にも話しましたが、国民の避難受け入れ要請や、物資、或いは兵の支援を求めてくるんじゃないですかね?」

でも、既に法国に対する信用ゼロなジルクニフ君は勿論の事、ドラちゃんも それ等は一切断ると、言っていたな。

一応、魔導国は同盟国だから、戦敵国の援助なんか、する訳も無しか。

 

「この場には呼びませんでしたが、聖王国にも手紙を飛ばし、事の あらましは伝えましたから。」

聖女王をジルクニフ君やドラちゃんみたいに、拉致らなかったのはナイス判断。

法国と聖王国って、宗教絡みで元から凄く仲悪いそうだから、彼方も法国に協力とかは有り得ないだろ。

…かと言って、魔導国に協力するか?…となると、それも否だろうが。

絶対に あの のーきん団長が、猛烈に反対するに決まってる。

評議国(ツアーの処)も、純・人間種以外を認めない法国が、声を掛けるとは考えにくい。

どの面下げてってヤツだ。

仮に援護等を求めてきたとしても、ツアーが絶対に拘わらない様にすると言っていた。

そして、ついでにリ・エスティーゼ王国。

この国も、まさか今更 魔導国を敵に回す様な真似は、しないだろう。

今の新しい王様は、普通に優秀(ジルクニフ君評)らしいし、その辺りの判断は大丈夫だろう…大丈夫だよな? 

そしてスレイン法国は孤立化して、何処にも助けを求める事が出来ない…と。

 

「いえ。俺が法国の立場なら、最終手段…いえ、或いは初手として、赴く国に当てが有りますよ。」

「え? そんな国 在るんですか?モモンガさん?」

「…アインズ・ウール・ゴウン魔導国。」

WHAT?

 

≫≫≫

数日後

成る程! そういう事でしたか!(©デミえもん)

シャドウ・デーモンからの報告。

スレインの神官が、"新生"漆黒聖典に命じたそうだ。

 

 

『魔導国の英雄、モモンとマカロンに接触せよ』

 

 

…と。

モモンとマカロンは、魔導国内で公爵位を与えられている、国内では最高の貴族様だが、実態は国内にて魔導王に仇為す反逆者の処刑人。

しかし冒険者時代に得た実績からの支持から、国民は『自分達の愚行で この2人の手を汚す訳には行かない』との思いから、反国レベルの大きな犯罪事件は未だ起きていない。

そして、もしも魔導王が暴君と化した時は、その魔導王を討つ剣となる。

…それを条件に、魔導王に下った事になっている。

つまりは、()()()()()()()()()として認識されているのだ。

スレイン法国は この英雄2人を上手く唆し誑かしで自分達の側に着けて、魔導王暗殺の駒にしようとしているらしい。

確かに端から見れば、魔導王を討つには最適な人材かも知れないが、それって実は片や魔導王当人(現在はパンドラが扮している)、片や俺なんだよな…

 

≫≫≫

「おお♪ まっ…カロン殿、それにユリ殿、お久し振りで御座る~♪」

そんな訳で、モモン邸に足を運ぶと、先ずはハムスケ(…&デスナイト)が出迎えてくれた。

相変わらず、獣舎の中で食っちゃ寝してる様だ。

 

「マカロン様、此方に御座います。」

そして此方のメイドさんの案内で、ユリたん♡と一緒に屋敷の応接間に向かうのだった。

 

 

◆まろんside・了◆

 

▼▼▼

 

◆パンドラズ・アクターside◆

アインズ様から指示が出ました。

スレイン法国特殊部隊、漆黒聖典。

…は既に、実質全滅しているので、"新生"漆黒聖典と私達は呼んでおりますが。

その内の2名が、バハルス帝国の貴族商人に成り済まし、魔導国公爵であるモモン、そしてマカロンに()()()()に訪れるとの事。

スレイン法国の者は本当に、帝国関係者を装うのが お好きな様で。

本来ならば魔導国内の不正・不法侵入者は その存在を確認次第、その目的や背後の存在等を問う事無く、即座に●すのが我等が流儀。今迄も何人、●してきた事やら。

…で・す・が!

今回アインズ様は、モモンとマカロンに如何様な事を話し、取り込もうとするのか興味が有るとの事。

その様な訳で、マカロン…まろん殿と一緒に、話を伺う事となった次第。

 

「マカロンも もう直ぐ来るだろう。」

「「…………………。」」

応接間。

貴族服を着た、若い男と中年男。

この2人が、"新生"漆黒聖典ですか。

先に この屋敷に訪れた2人と一緒に、マカロン…まろん殿を待っています。

因みに私も、屋敷内ではモモンの代名詞である漆黒の全身鎧(フルプレート)を着込む事は無く、普通の貴族服。

素顔はアインズ様が人間で在られた時の物を、少しだけアレンジしております。

まろん殿が、昔『おふかい』とやらで当時のアレンジ様の顔を知っておられましたので、それを聞き参考にさせて頂きました。

 

コンコン…

 

「失礼します。マカロン様が来られました。」

おや? まろん殿も到着したみたいです。

 

「うむ。お通ししろ。」

 

カチャ…

 

「やあ、モモン。久し振りだ。

それと そちらの2人は、初めまして…だな。」

まろん殿到着。

その旁には、ユリ殿が。

ええ。普段の如く、仲良く手を繋いでの登場です。

 

ス…

 

即座、メイドのシクススさんが、私と漆黒聖典の2人にコーヒーを差し出してくれました。

ええ、一応は、角砂糖とミルクも、添えてくれています。…要りませんけどね。

 

「この先、かなり重要な話となる。

すまないが、外してくれ。」

「…畏まりました。失礼させて頂きます。」

私の一声で、退室するシクススさん。

 

「ん、んん…マ、マカロン殿? そ~ちらの女性は…?」

「………………………………………。

ああ、私の妻の、ユリだ。

今日の話の内容は理解していたので、彼女も立ち会った方がベターだと思い、付き添って貰ったのだ。」

いえ…そうじゃなくて、この人は何故、貴方達がソファに座っても手を繋いだ儘なのかを、尋ねているのだと思いますが?

ああ、ブラック美味しい。

 

「話の内容…デスか?」

「……………………………。」

 

ぶゎあっ…!

 

「「……!???」」

次の瞬間、まろん殿が魔力放出。

室内が魔力で埋め尽くされた感覚です。

 

「こ…これは…?」

「一体、何なの…デスか?」

いきなりの展開に驚く2人ですが…こう言ってはアレですが、その()()()()()()()()()は、どうかと思いますがね?

自分達が、普通の人間でないのをバラしているのと同じです。

 

「……………………。

単なる商用じゃないんだろ?

安心しろよ。この結界の中の様子は、外に知られる事は無い。

例え、魔導王が相手でも例外無く…な。

尤も、()()()()()()()()()()()()()()()()()()がな。

さあ、話そうぜ…()()()()。」

「「……………………!!」」

あ、バレテーラなのバラシテーラ。

 

「何時から…なのデスか?」

「……………………………………。

最初からだよ。」

「くっくっく…流石はアダマンタイト級!

あ~の糞アンデッドを討てると言われるだけの事は、有~りむゎすぬぇ~!」

 

ヴゥン…

 

そう言うと この2人、貴族服から換装。

漆黒聖典としての正装なのでしょう、各々が白と黒、聖職者の法衣の様な装いとなりました。

白ローブの青年は、口調も変わりましたね。

 

「それずゎ、改めて!

俺ちん、漆黒聖典隊長!宜しくぅ!」

「私、漆黒聖典第6席、死凶怠惰…DEATH!」

「「…………………………………。」」

 

バギィッ!x2

 

「のわっちょ~?!」

「DEATH~?!」

え゙ぇっ?!

2人が名乗った直後、まろん殿のヤク●キックとユリ殿のコークスクリュー掌底が炸裂デスと?!

 

「「ぁ…」」

そして『殺っちまったぜ☆』と、気不味そうな顔となる、まろん殿とユリ殿。

 

「いや…すまない…」

「申し訳有りません…」

「な…何なのデスか!? 横暴デス!」

「いきなり蹴りなんて どーよ、人として?!

何か? 俺ちん達の喋り方が、気に食わなかったってか?!」

顔を押さえながら、文句を言う2人。

まあ、これは間違っていませんね。

 

「いや…何て言うか…その口調は寧ろ、俺的にはOK(アリ)だったが…」

「なら一体、何故よ?」

「「その声が、生理的にダメだった。」

           無理でした。」

「「もっと酷いぢゃねーか?!」

       デスよ!?」

…デスね!

 




【次回予告】
 
◆アルベドside◆
まろん殿(マカロン)パンドラ(モモン)をスレイン法国に引き入れようとする"新生"漆黒聖典だが、元より魔導国の側の2人が、それを受け入れる筈も無く。
必然の如く、結界が張られた中での戦闘が繰り広げられる事に。
 
「行くぜ!ユリたん♡」
「はい、まろん様♡」
 
次回『"新生"漆黒聖典②(予定)』
乞う御期待よ。Kill it Kill it(殺って殺るわ)!!
 


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Leistung von Liebe!

 
【前回、"新生"漆黒聖典として登場させようとしたけど、ボツにしたキャラ】
 
白卯脚式…白髪赤目の少年
猪突猛進…上半身裸な猪マスク男
 
『アチラ』系(笑)のキャラを出し過ぎても…と思い、前回登場した2人で止めておきました。
 
▼▼▼
 
【前回から登場の"新生"漆黒聖典(『アチラ』系(笑)のキャラ)
 
隊長…フリード・セルゼン(ハイスクールDXD)
死凶怠惰…ペテルギウス・ロマネコンティ(Re:ゼロ)
 
…のイメージで。
 


◆パンドラside◆

「全く…()で差別するのは、止めて欲しい物デス。」

「いや、本当に申し訳無い?」

「何で疑問形?」

"新生"漆黒聖典の隊長氏と死凶怠惰氏の『声』が気に入らないとして、いきなりの蹴り&掌底を放った まろん殿とユリ殿ですが、其処は流石に自分達が悪かったとして謝罪。

その後に漸く、話し合いが始まりました。

 

「先に聞いときますが、この結界、本っ当ぅお~に、あの糞アンデッドに中を覗かれたりしないっすぉね?」

「「……………………!!」」

「ああ、問題無い。だから どんなヤバい話をしようが、大丈夫だ。」

「それは、結構な事なのデス。」

この隊長氏…先程に続き、またもアインズ様をアンデッドと呼びやがりました。

これに、まろん殿は兎も角、私とユリ殿は一瞬ですが、殺気を全開。

直ぐに、クールダウンしましたがね。

この方々、非常に運が良い。

この場にアルベド殿やシャルティア殿が居たならば、即座に●されていますよ?

因みに…隊長氏が『結界』と申されましたが、実は結界なんて張っておりません。

単に まろん殿が高濃度の魔力を放出して、それが霧散する事無く、部屋の中を漂っているだけです。

勿論アインズ様も今頃は、遠隔視の鏡(ミラー・オブ・リモート・ビューイング)で この様子を窺っておりますし、仮にスレイン法国が彼等を監視しているならば、それも普通に覗かれています。

尤も外なら兎も角、()()()()()()()()()()()()()()()を、スレイン法国が持っているとは思えませんが。

この程度のハッタリも見抜けないとは、法国の最強特殊部隊とやらも、高が知れています。

 

「それでは…話させて頂くのデス。

先ずは、この国の王を名乗るアンデッドが、我等がスレイン法国に宣戦布告したのは、御存知デスか?」

「…ああ、知っているが。」

曰く、宣戦布告した魔導王(アインズ様)は直後、法国首都の民…だけでなく、その地の動植物、生きとし生ける者全てを魔法で虐殺し、更には邪悪なモンスター…黒い仔山羊の事ですね…を、大量に召喚。

それが、法都にて破壊の限りを尽くしたと。

 

「…ウチの最強守護神ちゃまが、それを迎え撃ちに出張ったは良いが、あの糞モンスター共、各々が彼方此方、バラバラに暴れまくってくれてよ。

その全部をぶっ殺した頃には、街は もう支っ茶化滅っ茶化てな訳よ。」

「最強守護神…」

六大神のNPCの事ですね。

それも既に、アインズ様から聞き及んでおりますよ。

アインズ様が言うには、その"ウルトラ天使"(アインズ様命名です)が もしも"羊"と同数程度 居り、それが各個撃破していたら、法国首都の崩壊は免れたかも知れなかったとか。

 

「すまない。此処には、法国の被害を話しに来た訳では無いだろう?…ストレートに言えよ?」

「「………………………。」」

おっと? このタイミングで まろん殿が口を開きました。

早々に本題を切り出させようとしていますね。

 

「成る程。ブラック&ゴールドの金色(こんじき)殿は、直球が お好きな様デスね。

それでは、率直に言わせて貰うのデス。

貴方々御2人で、魔導王アインズ・ウール・ゴウンを暗殺して欲しいの…DEATH!!」

「それは、無理な話だな。」

「同じく…だ。」

「な…何…DEATH…と?!」

「お、オメー等、マジで言ってるんか?!」

オーバーアクションで話す、死凶怠惰氏。

此方は最初から、彼等から何を言われるかは分かっていましたから、即答しましたが…仮に知らなくても、話を振られたら即答物な お願いですが…断られるのを想定していなかったのですかね?

この2人、思いきり、信じられない様な表情を浮かべていますよ?

 

「知らない訳では無いだろう?

我々が、魔導王の下に着いた理由を。」

「モモンの言う通りだ。

俺達が魔導王を討つのは、アレが、民を虐げる暴君となった時だ。」

「なぁああ?! あ、貴方々は、アンデッドが統治する今の国に満足していると、そう言うのデスか!?」

私達の応対に、死凶怠惰氏が血走らせた目を大きく見開き問い詰めてきますが、

「少なくとも、王国貴族時代よりは遥かにマシだとおもっているが?」

「お前達は『アンデッドが』と言っているが、逆に そのアンデッドだからこそ、魔導王は金や色に欲を見せない善政を執き、今は我々の存在も関係無く、民の支持も普通に得ている。

この屋敷に着くまでに この街の活気を見て、それに気付かなかったか?」

「それに、今 魔導王を討ち損えば、その時こそ魔導王は真に暴君と化し、この国は地獄となるだろう。

仮に見事 討ち取れたとしても、今度は残された配下の悪魔達が暴走し、同様に地獄だ。」

「そうなった時、スレイン法国は、如何にして その責任を取る心算だ?

其処迄、考えていなかったのか?」

「「…くっ!」」

私と まろん殿の返しに、何も言えなくなるスレインの2人。

 

「しかしだなぁ、あの糞アンデッドは、俺達の国をs

「責め立てた理由は何だ?

魔導国領…当時は王国領だったかもしれないが、その村を襲撃したのが原因じゃないのか?」

それでも弁明の漆黒聖典に、カウンターの一言。

手持ちの情報(カード)を切り札とする事無く、惜し気も無く切る まろん殿。

ならば、私も それに乗りましょう。

 

「或いは魔導王が聖王国に赴いた際、現地にて熾天使(セラフ)を使い、襲わせたからでは?」

「セ、セラフって何なのデスか?!

私が聖王国貴族に渡した天使は、主天使(ドミニオン)権天使(プリンシバリティ)の…ぁ…」

「あ…バカ…!」

「チョッロ…」

はい、言質、取りましたー!

 

「何れにしても、最初から お前達の要求には、応える心算は欠片も無かった。」

「わ…我々を消すのデスか?」

「最低だな! 自分達の思い通りに行かなかったら暴力(それ)かよ!?」

「何故、いきなり そうなる?

それが自分達の常套手段(あたりまえ)だからか、俺達も そういう思考とでも思っているのか?」

「我々が貴様等の要求に応じなかった場合、自分達が そういう風にしようと考えていた癖に…それ以前、罪無き者を虐殺してきた輩が、よく言えた物だ。」

「チィッ…!」

白髪の青年が顔を歪めて舌打ち。

それは私達の言葉を肯定したも同じですよ?…と同時に立ち上がると

 

ヴォ…

 

「む…?」「それは?!」

懐から取り出した筒の様な物…から放出されたのは、光の刃。

それは紛れも無く、ユグドラシルの武器(アイテム)光の剣(ビーム・セイバー)

それを見て、私達の表情が僅かに…本当に僅かにですが、強張りました。

 

「ひゃっはーっ! どーよ、驚いたか!

これが神の世界から伝わる武器よ!

今更『(≧▽≦)ゝごめんちゃい♪』とか言っても、もう遅ぇーからな!」

得意満面、どや顔全開な隊長氏。

はい。知っています。…と言っても それ、レア度は欠片程度の屑アイテムですがね。

しかし…アインズ様が言われた通り、法国には まだまだユグドラシルのアイテムがピンキリですが、秘蔵されている様です。

 

「仕方無いのデス。死んで貰うの…DEATH!!

そして もう1人、死凶怠惰氏も奇妙な構えを取る。

ふむ? 背中から…スキルかアイテムかは判りかねますが、無数の腕が生えてきてますね?

()()()()不可視の仕様な様ですが、私には…私達には()()()()()()ですよ?

 

「やれやれ…結局は、これか…」

 

ガタッ…

 

それに対して、私達も即座に立ち上がり、

 

フゥッ…

 

戦闘の構えを。

私はモモンの漆黒の鎧を。

ユリ殿も極々普通のメイド服から、普段の装甲付きメイド服に換装。

まろん殿は、元から それが、ユグドラシルのレア素材製でしたので、貴族服その儘です。

 

「クソが…此の期に及んでも、巫山戯やがって…!」

「バカにしているのデスか?」

「この貴族服(ふくそう)の事か?

心配しなくても、コレは其処等の鎧より頑丈な造りになっt

「「違ぇーよ!」

   うのデス!」

それを見て、漆黒聖典が不機嫌丸出しになりますが、端から見たら、ですよねー。

まろん殿とユリ殿、この緊迫場面でも未だ、手を繋いだ儘ですからねー。

どれだけラブラブなのですか?

 

 

◆パンドラside・一時中断◆

 

≫≫≫

 

◆ユリたん♡side◆

…と、パンドラズ・アクター様は考えておられる気がしますが、実は、違うのです。

こうしておかないと まろん様、常にボクの お尻を揉み解す様に触ってくるのです。

はい。撫で撫でで無く、揉み揉みです。

それ自体は全然、構わないのですが 夜は もっと凄い事してきますし♡ 、それでも やはり人前では恥ずかしいので自重して戴きたく、それを封じる意味も込めて、常に手を繋いでいるのです。…それでも少し、恥ずかしいですが。

それと確かに、まろん様とラヴラヴ♡なのも、理由の一因なのは否定は しませんが、それが何か?

はい? バカップル? 自覚していますよ? 常時 爆♡裂していますよ? 幸せですよ? 羨ましいですか?♡

尤も、他にも真面目な理由も有りますが…

 

 

◆ユリたん♡side・了◆

 

≫≫≫

 

◆パンドラside・再開◆

「殺す!」

「死ぬのDEATH!」

漆黒聖典の2人が殺気全開。

 

「ふっ…!」

 

ぶぉおっ!

 

それに対して、まろん殿も改めて、魔力を開放。

今度は本当に、魔力結界…確か、《双児宮迷宮(ジェミニ・ラビリンス)》でしたか?…を展開。

これで この2人、まろん殿を斃さないと、外に出られなくなってしまいました。

これは まろん殿、本気ですね。

 

「パンドラ、お前は退がっていろ。」

おお、しかも私の事をモモンで無く、パンドラで呼ぶ。

本当(ガチ)本気(マジ)です。

 

「「♡♡♡♡」」

「「「……………………。」」」

しかし、未だユリ殿の手を握った儘。

いまいち締まりません。

漆黒聖典の御2人も この件に関してだけは、既に突っ込みを諦めた様です。

 

「何時もユリたん♡と手を繋いでいるのは、単にユリたん♡大好きなだけかと思っていたか?」

そんな空気を察したか、まろん殿が この一言。

はい。思っていました…って、他に何か、意味が有るとでも?!

 

「…そんなのは、ほんの99㌫に過ぎない!」

充分です!

 

「知るか!? とりあえずテメーは、死亡確定だ!

この俺ちんが、首ちょんぱ、してやっかんよぉ~!

…で、そっちの おっぱいちゃんは殺る前に犯っちゃうってかぁ?♡」

あぁっ!??

あ、死亡確定ですね、このヒト。

というか貴方達、一応は人類の守護者を自称しているんですよね?

そんな台詞言ったりして、大丈夫なのですか?

 

「見せてやる…魅せてやるよ…俺とユリたん♡の、愛のチカラを!♡

さあ、行くぜユリたん♡!」

(は…はぃ…。あの…まろん様…)(そんなに堂々といわれると、)(少し恥ずかしい…です…ぽっ♡)

 

≫≫≫

「…デ…ス…!」

「バカか…可笑し過ぎるだろ?

そん…な巫山戯た戦り方なん…て…?!」

「ふっ…これが俺達の、だ。」

ゎ…わ…Wunderbar!

このパンドラズ・アクター、僭越ながらアルベド殿デミウルゴス殿と列び、ナザリック3大叡知の一角と呼ばれておりますが、その私ですら、この答えには至れなかった…

まさか、御2人が手を繋いでいるのに、その様な意味が有ったとは!

 

「な…何なのデスか? 戦っているのか踊っているのか、ハッキリするのデス!」

ごもっとも。

風船の様に顔を膨らみ腫らした闇紫の司教服の男性が、激昂しながら突っ込みを入れる。

しかしながら その、()()()()()()()()の前に、貴方達はフルボッコなのをお忘れ無く。

 

「クッソが! 首ちょんぱしてやる!」

顔面血塗れ、白い髪、白の法衣も半分近くを紅に染めた青年が、その顔を狂気に歪めて、それでも まろん殿に特攻。

 

斬ッ!

 

光の剣の一閃を放つ。

その一撃は見事、まろん殿の首と体を分断させますが…

 

「へっ! ざまぁっ! 首ちょんぱしてやっt…え゙…?!」

「…何か、したのか?」

「「は…はぃい~~~っ!?」」

その首を宙に浮かし、したり顔で話す まろん殿。

これには白髪青年も吃驚です。

 

「あ、マカロ…もう、まろん殿で良いですね?

まろん殿とユリ殿、首無し騎士(デュラハン)ですから、首ちょんぱは無理だと思いますが?」

「は?」

「へ?」

「ふっ…ネタばらしも終わったし、一気に終わらせてやる!

さぁ行くぜ! ユリたん♡、最後の仕上げだ!

()()をやるぞ!」

「はい♡ まろん様♡!(ちょっと恥ずかしいですが…)

そして勝負処と見た まろん殿が、〆の宣言。

それにユリ殿も、少し顔を赤らめて応える。

  

「く…この糞バカップルがっ!」

「「(≧∀≦)ゝ いや~♡♪」」

「「「誰も誉めてねぇーよ!」

        ないデスよ!」

        いませんよ!」

「「2人の未来を魔王が(いわ)う!

『爆裂しろ』と、昂り吼える!」」

 

ごごごごご… 

 

ズズズ…嗚呼、ブラックコーヒー美味しい。

私達の渾身の突っ込みを完全スルー。

繋いだ手を前に突き出し構えつつ、魔力と闘氣を増幅させながら、最後の大技の口上を唱えるバカップル。

…アインズ様、マジに この2人、呪って良いと思います。

えぇ、本当に是非とも! 盛大に! 呪ってやって下さい!!

 

「「…見よ、銀河を破壊する一撃を!

( )

銀河(ギャラクシアン・)"愛々(ラヴラヴ♡)"大爆裂(メガ・エクスプロージョン)!!」」

 

≫≫≫

「「♡♡♡♡♡♡♡♡」」

はっはっは!

これは もう、御見事としか言い様がありませんね!

これぞ正しく、Leistung von Liebe!

結果、まろん殿とユリ殿の華麗なる戦法、連携技の前、漆黒聖典の2人は完全に轟沈。

本当に私の出る幕等、全く有りませんでした。

 

「「♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡」」

…但し、この2人が常に手を繋いでいるのは やはり、バカップルだからでしょう。

本当もう、爆裂して下さい。

 

「が…」

「デ…」

そして そのダメージにより この2人、死んではいませんが起き上がる事も出来ません。

いえ、()()()()()()()を受けていながら、死ななかったのを讃えるべきと言いましょうか。

 

「ケケケ…しかし、これで終わると思うなよ~?」

しかし負け惜しみなのか、隊長氏が嫌味な笑い顔で話してきます。

 

「…こ、この国に入っているのが、俺ちん達だけと、思っていたか?」

「「「……………………。」」」

「ケケ…良いね~ぇ、その顔…

ウチの大神官(オッサン)、最初から俺ちん達が しくった時は、他の連中が動く様に命令してたんだよ…」

はい? 私達、そんな絶望っぽい顔をしていましたか?

貴方々の事を知っていたのですよ?

それ等も当然、承知な事。

既にエ・ランテルの街、そしてナザリック地下大墳墓での()()の準備に抜かりは御座いませんが。

 

「分かるか…この国の連中なんて、最初っから知った事ぢゃ無かったっつーの!バーカ!ざm」

「もう良い…お前等は もう喋るな…

もう、我慢の限界だ。」

…って、まろん殿?

 

 

◆パンドラside・了◆

 

≫≫≫

 

◆ユリside◆

 

ぐい…

 

まろん様が白髪の男の頭を掴んで無理矢理に起こし、逆羽交い締めに捕らえる。

 

ぶぅんぶぅん…ぶんっ!

 

そして その体勢で数回転から、上方へ放り投げ、まろん様自らも、それを追って飛翔。

 

ガキィッ…ガガァンッ!!

 

「ぐふぁぇええっ?!!」

そして其処から繰り出したのは、何時かの王国貴族にも放った、必()()フルコース!

しかも あの時とは違い、手加減抜きの超・本気ver!

 

「 」

それが完璧に決まり、この隊長と名乗っていた人間は、物言わぬ屍に。

 

「で、デ、DEA…」

もう1人の死凶怠惰とやらも、これを見て漸く(レベル)を理解したか、完全に戦意喪失。

それでも殺さないにしろ、逃がすという選択肢は有りません。

 

ヴォ…

 

まろん様が転移門(ゲート)を開くと、

 

ぽーい…

 

「DEA~TH~?!」

このデスデス男を、その中に放り込む。

これも最初から、決まっていた事。

2人の漆黒聖典、少なくとも1人は、生け捕りにして、ナザリック地下大墳墓に送り込むと。

死んだ あの人間は己の運を…ぃぇ、『声』を怨めと云った処でしょうか。…後、発言も。

『殺る前に犯る』は、アウト過ぎました。

ボクの身体…そう、唇も おっぱいも おへそも首筋も(…中略…)鎖骨も脇の下も太股も お尻もΧΧΧΧもΧΧΧも全て、まろん様だけの物♡ですから…ぽっ♡

そしてデスデス男が転移した先は、デミウルゴス様が控える拷問部屋。

もしかしたら、この場で まろん様に殺されていた方が、幸せだったかも知れませんね?

 




①戦闘場面後半のBGMは勿論、『明鏡止水』だ!
②必()()フルコース…52話(実質51話)参照
 
【次回予告】
 
◆アルベドside◆
まろん殿とパンドラ…英雄マカロンとモモンとの交渉の失敗を確認したスレイン法国が、次の手段に移行した。
ナザリック地下大墳墓に足を踏み入れる、愚かで憐れな侵入者共。
それを墳墓内部に侵入される前、霊廟入り口で迎え撃つのは…
 
次回『忠義の証明(予定)』
乞う御期待よ。Kill it Kill it(殺って殺るわ)!!
 


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"新生"漆黒聖典②

 


◆デミウルゴスside◆

不快ですね。

まろん殿とパンドラズ・アクターに接触してきた漆黒聖典2名。

内1人は まろん殿が殺した様ですが…聞けば、まろん殿の前でユリに対して不埒な発言をしたとか。バカですか?…残る もう1人から、改めて色々と、話を窺わせて頂きましたが…

この者共、自分達の行動の全て…私達が この世界との最初の関わりだった、カルネ村襲撃や、ローブル聖王国での急襲、そして今回、モモンとマカロン…パンドラズ・アクターと まろん殿へのアインズ様暗殺の呼び掛け…全てを"正義"の行いと主張してきました。

違う。

ウルベルト・アレイン・オードル様より"悪で在れ"の信条で創られた私だから断言出来るが、この者共、明らかに正義等では無い。

正義。それは、ウルベルト様と対極の存在で在られる たっち・みー様が掲げていた、崇高なる理念。

是非は別問題となるが、罪無き者を虐殺する正義等、在る訳が無いでしょう。

リ・エスティーゼ王国は人類種の癌で有る故に、滅ぼす。

その考えは、大いに結構だ。それを理由にするなら、すれば良い。

事実、当時の王国、王族貴族の腐敗振り。

仮に たっち・みー様が それを目の当たりにしたならば、それを正そうとする行動を起こしたに違いないでしょう。

しかし、コキュートスも言っていたが、それならば堂々とスレイン法国を名乗り、動けば良かった。

バハルス帝国に罪を被せる様な真似をする事も無く、だ。

自分の顔を汚さず、他者に血を擦り付ける正義等、在る筈も無い。

ならば、此の者共は悪か?

断じて違う。

この様な愚物が、ウルベルト様と同列な筈も無い。

ウルベルト様ならば堂々と悪を名乗り悪の旗を掲げ、自らを悪とした上で、現在の主流派(せいぎ)で在ろう王国(くに)を討ち滅ぼしただろう。

それが、ウルベルトの悪だ。

そう。スレイン法国等、嘗ての王国貴族や八本指等と、何ら変わりない害悪の集団だ。

まあ、良いでしょう。

それでも彼等が自身を"正義"と名乗るなら、私は"悪"として、貴様等の前に立ちましょう。

 

「ぅう…こ…殺すのデス…」

む? 何なのですか、コレは?

何故 私が貴様如きの願いに応えないといけないのですか?

まろん殿から送られて着た、スレイン法国"新生"漆黒聖典とやらの1人。

以前に捕らえた(殺した)同じ銘を名乗る者達と比べると、我々からすれば誤差の範疇ですが、更に貧弱な様ですね。

恐らくは体面を取り繕う意味で、本来の最強部隊とやらの強さの基準には到達せずとも…例えば他の部隊の上位者等を集めたりして、急増に結成された集団なのでしょう。

 

「こ…ろして下さ…いデ…ス…」

ふん…見苦しい。スレイン法国最強部隊とやらの誇りは何処に行ったのですか?

まあ、良いでしょう。

貴方から聴きたい事は、全て聞かせて頂きました。

望み通り貴方は、マジックアイテムやアンデッドの素材になって貰いましょう。

 

 

◆デミウルゴスside・了◆

 

▼▼▼

 

◆???side◆

「ほう? アレ…ですか?」

魔導国の英雄、モモンと…チィッ…マカロンに接触を試みた隊長と死凶怠惰からの連絡が途絶えて3日。

あの2人を取り込むのは、失敗した様ですね。

ふん…これは、願ったりですよ。

私を治し、漆黒聖典に迎えてくれた法国には感謝してやりますが、モモンとやらは兎も角、あの…チィッ…マカロンと仲良くするなんて、冗談では無いですからね。

その意味では好都合。

 

「ふん…。アナタ達も精々、私の足を引っ張らない様に、頼みますよ?」

魔導王なるアンデッドを討つ為、同じく漆黒聖典として、私と同行している禹暴筋力と捕縛桃姫に滅羅憎魔…それと、火滅聖典のモブさん達。

アンデッドの居城と思しき遺跡が視界に入ってきた時点で、彼等に注意を促す。

 

「おい、不敬天武。何を偉そうに言ってやがる?」

「私達は あくまでも同格の筈よ?」

これに不満を感じたか、禹暴筋力と捕縛桃姫が、私に物申してきました。

 

「はい? アナタ達こそ何を言っているのです。

私の方が強いのですから、当然でしょう?」

「あぁ?! なら、確かめてみるか?

奴隷の支援が無いと何も出来ない、この腰抜けがよ!」

「ちょ…アンタも止めなさいって、この脳筋!

それに それ、言っちゃダメなヤツだから!」

「…どういう意味ですか?」

それについて、簡単に教えてあげたのですが、怪力しか取り柄の無さそうな男と腹黒女は、更に失礼な言葉で返してきた。

 

「世の中、頭に思っても口にしちゃダメな事って有るという意味だけど?」

「ガハハハッ! そりゃ違いねぇぜ!

おい不敬天武。確かに今のは、俺の失言だ、すまんかった!

ガッハハハハハハハハハハハハッ!!」

 

スチャ…

 

「…死にますか? アナタ達が死んだ処で、私が3人分働けば、済む話ですから。」

「おいおい、こっちは素直に謝ってんだから、受け入れろよ。

ふん、まぁ、別に それでも構わないがな。

しかし、だったら その言葉…」

「そっくり返してあげるわよ?

自分の弱さ棚で、劣勢になったらサポート役が全部悪いみたいに奴隷に怒鳴り散らす様な情けないヤツに、私が負ける訳無いし?

てゆーか、今は そのサポート役も居ないし?

てゆーか そういう卑屈な性格だから、人間の女には誰も相手されず、奴隷で性欲処理するしか無いんだよね?

( *´艸`)pksks!」

「おい、頭に思っても…じゃ、なかったのか?ww」

「…殺す!」

「ケッ!面白ぇ!」

「正当防衛だよね?」

「…止めておけ。」

「「…!?」」

余りにも無礼非礼な態度に、剣を抜いての警告も虚しく、この愚か者共は逆に抗戦の意を示す。

しかし此処で もう1人の漆黒聖典、滅羅憎魔が初めて、此等の やり取りに加わってきました。

 

「は~い、おじーちゃん♪」

「アンタが言うなら…な…」

この老人の一言に、年長者の言葉だからか、素直に応じる2人。

 

「…不敬天武よ。ヌシも もう少し、考えて発言すべきだな。

態々 言葉に刺を付ける必要は、有るまいて?」

 

ゴゴゴゴ…

 

!?????

 

「ま、まあ、気を付けましょう。」

「ガハハハ! 御老の"圧"を感じる位の地力は持っていたか?」

「先に言っとくけど、おじーちゃんには逆らわない方が良いわよ?

元・火滅の隊長さんだし、最初は"新生"漆黒の隊長を勤める予定だった強さだから。」

「くっ…! 無駄話は終わりです!

さあ、さっさと あの遺跡に向かいますよ!」

 

≫≫≫

…その後は誰も喋る事無k…いえ、脳筋男と腹黒女が、暢気に何やら時折 大笑いしながら話していましたが、無視です。

 

「ふむ。成る程 成る程…」

遺跡に到着。正面門から侵入した直後、何やら納得するかの思わせ振りな反応を見せる滅羅憎魔。

 

「御老、何か有るのか?」

「いや、立派な造りと思っての。

儂も逝った後は、此位の立派な墓の下で眠りたいと思っての~! ククククッ!」

…何かと思えば!

これだから片足 棺桶に踏み入れている老体は!

此処で死んだら、そうなるのでは?

…っと?!

  

ずずず…

 

「「「あ゙ー…」」」

「「「まー…」」」

「「「ぞー…」」」

「「「ーん…」」」

「「?!」」

「「!!」」

「どうやら、お出迎えの様ですね。」

流石は墓地と云いますか、地中から無数の動屍(ゾンビ)やら骸骨(スケルトン)やらが現れました。

 

「何をしているのです!

こんな雑魚に、私達の手を煩わせる心算ですか!?」

火滅聖典に指示を出し、迫る雑魚アンデッドを倒しながら、私達は遺跡の中枢部…魔導王が潜んでいるで在ろう、敷地中央の霊廟を目指す。

 

「ふんっ!」

「えいゃっ!」

「ふっ!」

ほう? 一応は、漆黒聖典に抜擢されただけは有りますね。

この3人、其々が拳や魔法で、アンデッドを一掃しています。

 

「ハァッ!」

 

斬ッ!

 

そして霊廟入り口を守るかの様に立っていた骸骨(スケルトン)を粉々に砕き、内部に侵出。

 

≫≫≫

「ぬ?」

「あら?」

「…ほう?」

回廊を少し進んだ先、其処に居たのは黒いドレスを着た銀髪の少女が1人。

しかし この様な場所に、普通の人間が居る筈も無い。

何より、血の気が失せた様な、冷たそうに青み懸かった肌が、それを証明している。

 

「アンデッド…ですね…」

細い通路故に、集団で掛かるのは少しだけ無理が有ります。

それ故に先頭を歩いていた私が剣を構え、 

「先手必勝!…縮地改!」

高速移動の武技で距離を縮め、剣を振り抜k…

 

ヴォン…

 

「な…?」

しかし その移動の途中、いきなり床に浮き出た魔方陣に足を捕らわれてしまう。

しまった、これは、罠…

 

「お?」

「あら?」

「む?」

そして それは私だけで無く、他の漆黒聖典の3人も同様だっ…t

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

≫≫≫

「こ…此処は…」

「転移魔法で飛ばされたみたいね。」

そんな事は分かっています!

飛ばされたのは、私達 漆黒聖典の4人だけ。

火滅聖典の者達は、また別の場所に飛ばされたか、それとも あの場に残された儘か…

 

「…壁やらの造りからして、まだ あの遺跡の中だとは思うがな。」

「兎に角、進むしか無いじゃろう。」

背後と左右の壁、そして天井と床。

全てが同じ材質の石煉瓦で囲まれた、暗く細い一本道。

前方その先に、開けた場所に出れるのか、光が見える。

…確かに進む以外の選択肢は、有りそうにないですね。 

 

 

◆???改め不敬天武side・了◆

 

▼▼▼

 

◆ブレインside◆

はい、4名様、御到着。

此方(ナザリック)側は今日、魔導国に潜んでいたスレイン法国特殊部隊が この墳墓にやって来るのは分かっていた。

俺、レイナース、クロキシは、その中から ()()()()に強いと思われる者と、この第6階層の闘技場で相手をする様に命じられていた。

任務完遂条件は敵の全滅。

戦り方や その過程は、問わないとの事。

つまり、途中で誰か敗北退場したとしても、最終的に敵を全て片付け勝てたら それで良いという、ナザリック基準では かなり緩い条件だ。

しかも、任務失敗の罰則(ペナルティ)は特に無し。

これは命令というより、俺達の今までの戦闘訓練の成果を確認するテストの意味合いが強い。

 

「「…………………………。」」

それを裏付けしているのか、この場にコキュートス様とセバス様も居られる。

あー、これ、罰則(ペナルティ)は無いけど、その代わりに明日からの訓練が真・超激難モードになるんですね。えぇ、分かりますとも。

よ…よし! レイナース、クロキシ! 気合い入れて行くぞ!

 

「む?! お、お前は、ブレイン・アングラウス?!」

お? 選手入り口から最初に姿を見せた男が、闘技場客席に居た俺を見て驚いた表情を。

 

「まさか、()()()が、漆黒聖典入りしていたとは、ね…?」

そしてレイナースも その侵入者の顔を見て、ポツリと呟く。

…が、確かに ごもっとも。

()()()って確か、まろん様に精神系攻撃を受けて、再起不能にさせられたんじゃなかったか?

まろん様がアイツを雑魚扱いして必要以上の高度な技を仕掛けなかったとしても、スレイン法国には そこそこ優秀な治癒術士が居る様だ。

 

「ふ…ふはははは! まさか貴様も、アンデッドの手下になっていたとは!

地に墜ちましたね、ブレイン・アングラウス!」

そして驚きから一変、今度は狂ったかな笑顔で俺に話し掛けてきた。

 

「良いでしょう! さあ、降りてきなさい、ブレイン・アングラウス!

貴様は この私が、相手をしてあげm」

 

斬ッ!…ポト…

  

その台詞を言い終える前、この男の首が、胴と離れ離れとなり、闘場の地に落ちる。

それは自分が斬られたのに気付いていない、自信に満ちた どや顔の儘。

地に転がり落ちた首…その顔が上方を向き俺を見て笑っている形だが、滑稽としか言い表せない。

実に…実に呆気ない最期だった。

 




"新生"漆黒聖典の不敬天武…一体 何処の何ヤーだったんだ?ww
一応、65話(実質64話)に、今回の為の伏線は張られていました。 
 
≫≫≫
 
【駄文】
何…?『ぷれぷれxかげじつ』だと?!(作者は『かげじつ』全然 知らない)
おのれ、KAD○KAWA…また何と云うコラボを作ってくれた!(注:誉めてる)
 
 
【次回予告】
 
◆アルベドside◆
ナザリック地下大墳墓に侵入してきた"新生"漆黒聖典。
この愚物とブレイン・アングラウス達との死闘が始まる。
…貴方達、分かっているわよね?
決して、ナザリックの品位を損なう事の無い様に。
然もなくば…
 
「「「((( ;゚Д゚)))Sir,Yes,Sir!!」」」
 
 
次回『肉体言語②(予定)』
乞う御期待よ。Kill it Kill it(殺って殺るわ)!!
 


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野獣式原爆固め!(笑)

 
サブタイで察した人は、期待して下さい!
…だって、前に感想で面白そうなネタ、教えて貰ったから…
 
≫≫≫
実は前回で、今回のラストまで話を進めたかったんだけど、前回はエルヤーを弄るのが楽しくなって(笑)、それだけで文字数がががが…   
 



◆ブレインside◆

アインズ様の考えられたシナリオ。

最初は侵入者を、屋外エリアで雑魚アンデッドと戦わせて、その強さ(レベル)を吟味。

『合格』した者のみ、転移(トラップ)で この闘技場まで運び、俺達と戦闘。

因みに不合格となった連中は…今頃はシャルティア様(with花嫁さんズ)に皆殺しにされているだろうなぁ。

 

「申し訳ありません…

余りにも隙だらけでしたから、つい…」

「いや、問題無い。…ですよね?」

 

コクン…

 

そして現在。

その侵入者の1人…エルヤー・ウズルスが出オチの如く、首を斬り落とされて死亡。

クロキシの遠距離攻撃…()()()()による物だ。

俺達…正確には俺に気付き、俺に対して何やら言っている最中の攻撃。

ある意味 不意打ちだが、それは敵を目の前、しかも敵地で余裕を見せている方が悪いのは間違い無く、それは卑怯でも何でも無い…筈。

恐る恐るコキュートス様とセバス様に その辺りを尋ねてみると、御二方も無言で頷いて下さった。

あー、良かった。

良かったな、クロキシ。セーフだってよ。

…さ・て、残るは3人。

そして此方も3人。

3vs3の混戦…いや、アイツ等 絶対に仲悪そうだから、必然的に1vs1が3つの図式になるか?

そうなると、あの見るからにThe・お姫様みたいな女はレイナースに任せるとして、残る2人…

あの筋肉男よりも、あっちのアインズ様に負けず劣らずな大魔王様みたいな格好の爺さんの方が、実は強い…か。

筋肉の相手はクロキシ、爺さんが俺…だな。

 

「よし、降りるぞ。」

「ええ。」「はい!」

 

 

◆ブレインside・了◆

 

▼▼▼

客席から、漆黒聖典が立つ闘場に飛び降りたブレイン達。

 

「「「…………………。」」」

「何かしら? エルヤー・ウズルスを殺った事に、何か文句が有るのですか?」

「「いや、それについては全然。」」

無言で自分達を見据える3人に、レイナースが代表して心当たりを尋ねるが、それを禹暴筋力と捕縛桃姫が声を揃えて否定。

 

「あのバカ男じゃないけど、ブレイン・アングラウス…そして貴女、帝国の"重爆"でしょ?

有名人が揃って、アンデッドの王様の手下になっていたのに、少し驚いていただけよ。

…帝国から鞍替え?」

「別に鞍替え等では無い。

魔導王陛下には この命、幾ら捧げても返しきれぬ程の恩義が有るから、今 私は此処に居る。

只それだけだ。」

更に捕縛桃姫が補足の様に説明からの問い掛けに、レイナースも今の己を答える。

 

「ふ~ん? ま、どーでもいーけど?

とりあえず、(はじ)めよーよ?」

「儂等は元より、ヌシ等には用は無い…が、ヌシ等的に、そうは往かぬのだろう?」

「…だったらよ、とりあえずはテメー等を、そしてアッチの爺さんと蟲野郎を殺して進み、最後は魔導王とやらをぶっ殺す迄だ。」

「…よく解っていらっしゃる!」 

そして戦闘の意を示す漆黒聖典に、ブレイン達も戦闘の構えで応えるのだった。

 

「…で? 3vs3の集団戦? それとも…」

「ガハハハ! そんなの、一騎討ち(タイマン)3つに、決まってるだろうが!」

 

≫≫≫

「名乗ってやるぜ、黒鎧。

俺は漆黒聖典第5席次、禹暴筋力!」

「………………………。

今は理由(わけ)有って、本名を名乗れません。

私の事は『クロキシ』と呼んで下さい。」

「…その声、まだ子供(ガキ)か?」

上半身裸、鍛え上げられた鋼の如しな筋肉を露にし、拳打の構えを取る巨漢と、全身黒の鎧を纏い、長剣を両手持ちで構える少年が対峙。

 

「ほう…儂の相手は貴様か…ブレイン・アングラウス。」

客席(うえ)の2人を除けば、一応 俺が1番強いんでな。

ま、お手柔らかに頼むぜ、爺さん。」

 

ボォッ!

 

両手に巨大な火炎球を宿らせ、その手を大きく左右に広げる滅羅憎魔。

対するブレインは納刀、身を少しだけ屈め低くした居合いの構えの状態で、制空圏を発動させる。

 

「キャハハハハ!」

「くっ…! 何なのですか!?

この巫山戯た?魔法?…は??!」

 

ヒュン…ヒュンッ!

 

姫君然なピンク色のドレスと金の冠を身に着けた金髪の女…捕縛桃姫が空中浮遊。

闘技場の地面から大根玉葱人参蕪牛蒡を召喚?して、それを投擲武器の様に撃ち放つ。

一見、ネタかギャグにしか見えない攻撃だが、実は殺傷力は十分。

それを帝国騎士の其で無く、()()鎧を着込んだレイナースが、槍で捌き墜としていく。

 

シュタタタタタタ…ッ!

 

「…くっ!」

ならばと捕縛桃姫は跳躍、更には其処から()()()()()()()()()()()()、追のジャンプ。

レイナースの頭上を取ると、踏み付けの様な連続蹴り。

 

元々に"個"の強さで抜擢、結成された、"新生"漆黒聖典。

連携戦(チームプレイ)を得意としていないのか、最初にブレインが予見した通り…本当に不仲かどうかは別として…一騎討ちが3組の様相となった。

 

≫≫≫

 

バズゥッ!

 

「「…………ッ!!」」

そうした中、1つの戦いが、決着した。

禹暴筋力の闘氣を纏った右の剛拳が、クロキシの仮面(フルフェイス)のコメカミ部分を掠める。

それにより、粉々に破壊された仮面。

そこから露となったのは、短く揃えられた金髪の少年の顔。

拳が触れた部位から やや多量の血が流れているが、その面構えは決して怯んではおらず。

覇気ある眼で剣を正眼に構え、目の前の敵を刮目している。

 

「ケッ…やるじゃねぇか!」

片や禹暴筋力。

口から血を長し、不敵な笑みを少年に向ける。

 

ずどんっ…

 

そして その一言の後、豪快に後方に倒れ込み大の字となる。

 

「 」

()()()()()()穿()()()()()()は、その後は動く事が無かった。

 

≫≫≫

「…ふむ。」

ナザリック地下大墳墓第9階層。

円卓の間にて、その様子を遠隔視の鏡(ミラー・オブ・リモート・ビューイング)で観ていたモモンガは、納得する様に頷いていた。

 

 

▼▼▼

 

◆モモンガside◆

おお、勝った!

正直言って この3つの戦闘、取り溢しが有るとしたら、あの大男とクロキシ…クライムのバトルだと思っていたんだよな。

とりあえずは、一丁上がりか。

 

「クライム!クライム!クライムーっ♡♡♡!」

一緒に この戦闘を見守っていたラナーも、安心と喜びが入り交じった表情で、自分の従者の名を連呼している。

 

「嗚呼、流石は私のクライム♡だわ!

これは今夜は御褒美…大・大サービスだわ!♡」

お…応()

 

『ブレインさん!』

『クラ()…クロキシ!』

そしてクライムは、ブレインのフォローに。

レイナースと戦っている女より、彼方の老人の方が強そうだから、ブレイン側に行った…とかじゃ無いよな。

単に、(レイナース)のアシストとかしようとした日には、自分の直接の主様に、後から何を言われるか、分かったもんじゃないからだよな?

ああ、解るよ。

 

 

◆モモンガside・了◆

 

▼▼▼

 

◆クライムside◆

「ブレインさん!」

「クラ()…クロキシ!」

な…何とか勝てた…!

ラナー様を介し、魔導王…陛下から授かった この鎧と剣が無ければ、間違い無く逆の結果になっていた。

しかし、私1人が敵1人倒しただけで、終わりな訳じゃない。

残る2人も早く倒さなければ!

休んでる暇なんて、有る筈も無い。

残る2人…レイナースさんが相手をしている女性よりも、ブレインさんと戦っている老人の方が強敵。

だから私は、ブレインさんのアシストに…

「クロキシ、お前は休んでいろ。」

は…はい?!

 

「お前、あの筋肉オバケとのバトルで、ボロボロじゃねぇか。回復が先だ。」

「し、しかし…!」

「それか、レイナースのフォローでm」

 

ボォゥワッ!

 

「「!!!?」」

しかしブレインさんは、私の助太刀を拒否。

そうした会話の中、超巨大な火炎球が此方に飛んできた。

 

「くっ…!」

「チィッ!」

それを、防御(ガード)して堪えるが、危なかった…

ラナー様を介し、魔導王陛下から授かった この鎧が(…以下略)。

 

「…ふぅ」

そしてブレインさんも、あの強烈な炎を耐えていた。

 

()()()じゃなかったら、今頃は丸焼けだったかもな…」

今、ブレインさんが着ている『カブキ・タイガー』は、まろん様が ぷれいやーの国、ユグドラシルで活動していた頃…駆け出しを漸く卒業し、中堅と呼ばれていた時期に使用していたキモノ…らしい。

 

「しかし、厄介ですね。」

「ああ…あの爺さん、さっきから連発しているが、あの《超火焔弾(メガ・ファイアボール)》は、マジにヤb

「これは、《超火焔弾(メガ・ファイアボール)》では無いぞ。

只の《火炎球(ファイアボール)》だ。」

「「巫山戯んな!」

     ないで下さい!」

しかし あの老人は、洒落にならない様な発言を。

 

「ブレインさん! やはり私も…!」

それを聞き、やはりブレインさんに共闘を申し出。

 

「ククク…儂は、どちらでも構わんぞ?」

 

ブボバヮアッ!

 

「「!!!!!??」」

「大サービスだ。特別に見せてやろう。

…これが儂の、《超火焔弾(メガ・ファイアボール)》だ。」

老人の右腕に業火が宿り、深紅に燃え盛る。

そして それは

「いや、それ、『(ボール)』じゃねーだろ!?」

…ブレインさんの言う通り。

それは巨大な炎の鳳の形を成していった。

 

「ふっ…死ねぃっ!」

 

ボォオオッ!

 

そして老人の手から放たれた火焔の鳳は一直線、私達の方向に。

 

「クソッがっ!」

「…………っ??!」

防御(ガード)を…と、守りに意識を集中させようとした その前に、ブレインさんが私の前に立ち、その儘 飛び出した。

 

Ocean Wave=Slash!

 

斬ッ!

 

そして迫り来る鳳の正面に立つと、(カタナ)を片手の逆手持ちで構え、逆袈裟の一閃。

これにより生じる真空刃…私の"翔ぶ斬撃"よりも遥かに破壊と殺傷能力に秀でたに剣氣の刃が、火焔の鳳と衝突。

結果、鳳は縦真っ二つに裂け、その儘 消滅した。

 

「な…?!」

それに驚いたのは、漆黒聖典の老人だ。

あの魔法は それなりに大技だったらしく、戸惑いを隠せない様子。

更にはアレは大技故に それなりに魔力の()()が必要らしく、連発も出来ない様だ。

そして その隙を、ブレインさんが見逃す筈も無く。

 

Nine Heads=Dragon!!

 

斬々々々々々々々々!!

 

「ぐっはぁっ?!」

突撃から撃ち放たれるのは、現在のブレインさんの最大必殺武技。

神速の9連斬撃が、見事に決まるのだった。

 

≫≫≫

そして残る敵は、レイナースさんと戦っている女性1人。

体を宙に浮かせての高速移動から野菜を召喚?して、それを(ミサイル)の様に飛ばすという、奇妙な魔法を繰り出していたが、

 

キィィンッ…!

 

「「ハァハァ…ゼィゼイ…!」」

今は魔力切れなのか、内側に網の様な物が張られた楕円の枠が先端に付いている、奇妙な短杖の様な武器で、レイナースさんの槍と撃ち合っていた。

 

「レイナース! 助けが要るか?」

「大丈夫です! この女、私1人で!」

ブレインさんの呼び掛けに、それこそ先程のブレインさんの如く、それを拒むレイナースさん。

 

「はっぁあっ!」

 

ぶんっ!

 

短杖を両手で持っての、大振りな横凪ぎをレイナースさんがスウェイバックで躱す。

大きな動き(アクション)の攻撃は、確かに当たれば大打撃となるが、外した時は、逆に隙だらけとなる。

あの女性は基本、魔法詠唱者(マジック・キャスター)なのか、武器を使っての接近戦は不慣れな様子。

 

ドゴッ!

 

「…っ?!」

そしてレイナースさんは槍を短く持つと、切っ先で無く柄尻で、女性の鳩尾を打ち抜くと同時、素早く女性の背後に回り込むと、その腹部(ボディ)をガッチリと捕縛(ロック)しての、

「てぇ~~~~ぃやっ!!」

 

どどんっ!

 

「ぎゃんっ?!」

まろん様直伝、必殺の じゃーまんすーぷれっくすほーるどが炸裂した!

女性は体が上下逆さの体勢で、脳天を痛打!

 

パラリ…

 

…って、えっ?!

その技の勢いで、女性のスカートが捲れt…

 

「おぉっ!? 意外と弩ノーマルだな?

…って、どうしたクライム?

お前も明後日の方向なんて向いてないで、見てみろよ? 白だぜ、白♡

の、ノーコメントです!

わゎわ、私は何も見ていませんし、見えてません!

 




禹暴筋力…ウヴォーギン(HUNTERxHUNTER)
滅羅憎魔…老バーン様(ダイ大)
捕縛桃姫…ピーチ姫(スーパーマリオ)
 
…のイメージで。
因みに滅羅憎魔のモデルは山じぃ(BLEACH)と どちらにするか、かなり迷っていた。
  
▼▼▼
クロキシの正体は、何とクライムだった!
な、何だってーーーーーーっ??!
    
▼▼▼
カブキ・タイガー…前田慶次郎が豊臣秀吉との謁見時に着用したとされる、髑髏紋の虎柄羽織と白袴のイメージで。
勿論 其処等のアダマン鎧よりも、耐性込みで普通に上位な防具。
袴には猿尻模様も付いています(笑)。
 
▼▼▼
改めて…サブタイで、察した人も居たでしょう?
ネタを思い付いた当初は、アルベドかルプスレギナ辺りに やらせる予定だった(当初は相手は まだ未定)。
その一方で、ルプーを被害者(笑)にするのもアリだなとも、考えたりもしていた。
その場合の技の仕掛け手は、勿論お義兄たまw
 
 
≫≫≫
 
【次回予告】
 
◆アルベドside◆
漆黒聖典がナザリックに攻め入っていたと同刻、魔導国首都エ・ランテルにもスレイン法国特殊部隊・陽光聖典が進撃を開始していた。
それに対して まろん殿が英雄・金色(こんじき)のマカロンとして迎え出る。
そして…
 
次回『エ・ランテル防衛戦(予定)』
乞う御期待よ。Kill it Kill it(殺って殺るわ)!!
 


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エ・ランテル防衛戦

◆前回の あらすじ◆
 
レイナースの必殺ケモ〇ージャーマン・スープレックス・ホールドが、漆黒聖典・捕縛桃姫に炸裂した!
 
 
「おぉっ!? 意外と弩ノーマルだな?
…って、どうしたクライム?
お前も明後日の方向なんて向いてないで、見てみろよ? 白だぜ、白♡」
 
 
◆今回の予習◆
シィマ・キュウ…アビゲイル(BASTARD!!)のイメージで
 


◆モモンガside◆

ナザリックへの侵入者は、一応 片付いたみたいだな。

クロキシ…クライムが相手した2人は死んだ様だが、残りの2人は まだ、辛うじてだが生きている様だ。

まあ、色々と情報を吐かせた後、殺してアンデッドかマジック・アイテムの素材になって貰うけどな!

 

「…………(ぶつぶつぶつぶつ…)

…って、ラナー?

 

 

クライム…? 私以外の女の下着(ぱんつ)を見るなんて一体、どーゆー事かしら? ぱんつなら…いえ、それ以上、おっぱいも お尻もXXXX(バキューン!!)も毎日、私が見せてあげてるわよね? 貴方は それをガン見しながら、『可愛いです』『綺麗です』『美しいです』と、言ってくれてるわよね? 凄く元気になっているわよね?『触って良いですか?』『吸って良いですか?』『舐めて良いですか?』と、聞いてきますよね? 勿論です! 私は それが とても嬉しくて…。だから私は、クライムのクライムーに、お口や おっぱいやXXXX(バキューン!!)XXX(ちゅどーん!)で…アルベド様にシャルティア様、ユリ様から教わった絶技妙技(てくにっく)で奉仕して…それで貴方は『凄く気持ち良いです』と言って、本当に最後まで気持ち良くなってくれたわよね? 秒で爆裂してしまうのが少しだけ不満だけど、それは私が凄く気持ち良いのだから仕方無い、としておくわ。それでも私で気持ち良くなってくれるのは、とても嬉しい事だから。 しかし、それなのに、私以外の女の ぱんつを見るなんて…

これは何時かの全裸痴女吸血鬼の時以来の裏切り?浮気? 先程の見事な敵の撃破。これは褒めてあげなければと思ったけど、それとは別、お仕置きも必要な様ね…

 

 

「あの…ら…ナー…(さ、ん)

あ、あれは どう見ても、事故だと思うのだが?」

アインズ様…何か?!

「(」゚O゚L)……………!?

ぃぇ…何でもないです…(精神鎮静)」

こ、怖ぇーっ!?

そ、そー言えば、今頃は まろんサンもエ・ランテルの方で法国の奴等と戦り合っている筈だけと、どうなってるかな…?(現実逃避)

それとクライム…南無南無南無(-人-)

 

 

◆モモンガside・了◆

 

▼▼▼

 

◆まろんside◆

「良いか! 絶対に越えさせるなよ!」

「これ等 1体でも街への侵入を赦せば、それは我々の敗北と知れ!」

『『『『『おおぉおっ!!』』』』』

現在、エ・ランテルの最外の城壁前で、スレイン法国の連中と対峙、激突秒前の睨み合いだ。

陽光聖典隊長の嶋Qが

「違うぞマカロン! 奴の名は、シィマ・キュウだ!」

あー、それ。それが率いる多量に召喚された天使の集団に、その他の魔法詠唱者(マジック・キャスター)や平の兵士。

それを俺とモモン(パンドラ)、そして久し振りにエ・ランテルに姿を見せたナーベ(ナーベラル)にゴーレムとアンデッドの部隊。

そして現役冒険者や元・冒険者が中心の魔導国警備隊で対応する形だ。

"漆黒の剣"や"フォーライヴ"も、この防衛戦に参加している。

 

「さあ、行くで御座るよ! 各々方!」

「「「「「「応よ!」」」」」」

そして何故か、その先頭にはハムスケが。

 

「ま…っカロン殿に付けられた魔獣"食っちゃ寝"の悪名、今こそ返上する時で御座る!」

応~ぅ、頑張れ~♪www

 

 

◆まろんside・了◆

 

≫≫≫

 

◆ハムスケside◆

「《五指爆裂火焔弾(フレア・フィンガー・ボムズ)》!!」

 

ゴォォオッ!

 

おおっ! まろん殿が巨大な火の玉を5発同時撃ちで御座る!

 

「…技名、特に無し!」

 

斬ッ!

 

そして殿に扮した ぱんどら殿が、大剣2刀流を豪快に振り回す大技。

次々と、天使型モンスターを蹴散らしていくで御座る。

 

『ゴァァアアアァッ!』

 

バガァッ!

 

更にはデス・ナイト君やゴーレム達も敵を吹き飛ばす。

これは拙者も、負けられないで御座る!

 

「我こそは森の賢王改め、魔導国の番倉鼠・ハムスケで御座る!

さぁ、平和な町に押し寄せる悪者達よ、いざ拙者と命の奪い合いをするで御座るよ!」

 

≫≫≫

「そぉ~らよぉっと!」

 

ズバズバズバァッ!

 

まろん殿と懇意な冒険者の…確か、ちゃらお殿…で御座ったか?…が、弓矢を高速連射で敵の兵士を倒したで御座る。

 

「《魔法の槍(マジック・ジャベリン)》!」

 

ドドォッ!

 

そして ちゃらお殿の お仲間の魔法詠唱者(マジック・キャスター)殿も、大きな魔法の槍を撃ち放ち、天使を撃破。

 

♪My everything, my everything that I had loved♪

♪Where's everything?♪ 

♪返事を聞かせてよ♪いつの間に涙さえも枯れていたわ♪

♪愛した世界が もうどこにもないから♪何も聴こえない 永遠に眠れ♪

更には以前、吸血鬼討伐時に同行していた吟遊詩人殿が、能力向上の詩で後方支援(バックアップ)

うぉを!? 某の力も漲ってきで御座るよ!

 

「が~るるる…!」

お? ゲレゲレ殿も力溢れるで御座るか?

 

「がぅ!」

「そーゆー訳で、行くで御座る!

せーの! 武技・ダブル斬撃!」

 

 

◆ハムスケside・了◆

 

≫≫≫

 

◆まろんside◆

「地獄爪殺法ーっお!」

 

斬ッ!

 

「クッソ! 次から次へと!」

雑魚には変わらないが、数が多い。

事前に得ていた情報で、ナザリック地下大墳墓(モモンガさんの処)には少数精鋭(笑)で、そして此方、エ・ランテルには数で押す計画というのは知っていたが、それでも数が多い感じだ。

 

「ぐぅう…おのれ、アンデッドに与する異教徒め!」

しかし、街への侵入は許ず、此方が優勢に事を進めている状況。

敵側の後方で、この街の攻撃部隊の責任者の黒ローブの男…シィマ・キュウが憎々しい表情を浮かべて此方…というか俺を睨み付ける。

異教徒って…あー、ヤだヤだ。

これだから宗教はキライなんだ。

自分側以外は絶対に認めない その姿勢。

カルネ村や聖王国の所業以前、宗教ってだけで、実は気に食わなかった。

同じ宗教国家でもローブル聖王国は外面は大人の対応してくれた分(のーきん団長除く)、まだ好感が持てたぞ。

 

「ふっ…! 私欲まみれな糞貴族や宗教屋の皮を被った殺戮国家より、唯単に平和で まったりな暮らしを望む、DQN骸骨様の方が数倍はマシだと思うがな。」

「はぁああ?!…ど、どきゅん?(…て、何?)

はい、だから煽りましょうね。

 

「さ、殺戮国家だと?…だ、黙れ! 我々は人類の為にだな…!」

はぁ…また()()、言うのかよ…

 

「リ・エスティーゼを人類の癌と見るのは、納得してやらないでもない。

…ならば何故 堂々と法国を名乗り、王国王都に進軍しなかった?

何の罪も無い村に襲撃して良い理由には、ならんぞ?

その時点で、スレイン法国はテロ国家だ。

しかも それを、バハルス帝国の仕業に仕立てようとする卑怯狡猾振り。

自称・人類の守護者が聞いて呆れる。」

「だ、黙れぇッ! 《天使弾(エンジェル・ミサイル)》!」

「《雷縛糸(サンダー・ネット)》!」

 

バシュッ…ゥゥ…

 

「な…?!」

俺の台詞にキレた…しかし何の反論も思い付かないか、多量の小型天使を弾にする魔法を放つ嶋Qだが、それは即座に反応したナーベラルの防御魔法で防がれる。

その蜘蛛の巣に捕らわれた羽虫の如しな光景に、それが信じられんとばかりに間抜け面を晒す敵に距離を詰めると、

「短剄!」

 

バシィッ!

 

「チィッ!」

闘氣を籠めた掌打をはなったが、これは嶋Qの傍らに立っていた硬質の能天使(メタリック・パワー)(タンク)となって立ちはだかり、己の主を守護。

ユグドラシルにて"メタリック"の銘を持つモンスターは、基本的に防御力がバカ高い。

しかも攻撃魔法やスキルは完全に遮断、物理攻撃も攻め手の攻撃力(ステータス)に関係無く、僅かなダメージしか与えられない『硬い』の特性持ち。

当然、状態異常(デバフ)系も…噂では強化(バフ)も効かない仕様だ。

元々はゲル系の雑魚(モンスター)を超強化、倒しにくくて直ぐ逃げる、しかし倒したならば経験値ウハウハのボーナス的モンスター。

倒すには逃げられる前に、地味にダメージを積み重ねるか、マグレ当たりの会心の一撃(クリティカル・ヒット)を狙うかだったのだが…何をとち狂ったかクソ運営、他の系統のモンスターにもメタリック属性を附けてきやがった。

しかも、HPや その他ステータスは通常その儘な強さ。

流石に元が物理防御特化で魔法でしか倒せない様なモンスターや、素で鬼強なドラゴン種で そういうのを作らなかったのは、良識と思いたい。

そして この能天使(パワー)も、そんな1種だ。閑話休題。

 

「ふはははは! 流石の英雄様も、この天使には、手も足も出せまい!」

得意気に嗤う嶋Qだが

「だから、先程からだが、シィマ・キュウだ。」

…黙れパンドラ。他人(ひと)脳内語り(モノローグ)に突っ込むな。

コッチの発音が、俺的には言い易いんだよ。

…得意気に嗤う嶋Qだが、メタリック系にも全く対応策が無い訳じゃない。

 

「スキル…『必中』!」

例えば、攻撃命中率を100㌫に上昇させるスキル。

それから繰り出すのは…

 

「魔神撃!!」

 

ゴギィッッ!!

 

普通に打てば、会心の一撃か大外しの、50:50(フィフティ・フィフティ)のギャンブル技。

しかし『必中』スキル補正でハズレが無くなった事により、絶対 会心となった この技により、

「ななな、なぁにぃぃい~~~!?」

メタリック天使は一撃で粉砕。

光の粒子となって消滅した。

 

「でやっ!」

 

斬ッ!

 

その間にパンドラ達も、その他の敵を撃破していく。

既にスレイン法国の軍勢は、最初の1/3以下に迄 減っていた。

 

「く、クソっ!」

 

ガサッ…

 

先程以上に怒りで顔を歪めた嶋Qが、懐から水晶の塊を取り出す。

また お馴染みの、上級天使(笑)を封じた魔水晶か?

しかし、法国所持の天使型モンスターの最上位は、主天使(ドミニオン)という事は、既に分かりきっている。

ユグドラシル全体でも中の上のランク、カンスト・プレイヤーからしたらカモすらならない雑魚だ。

 

「魔導国の愚か者共、遂に私を怒らせたな!

不幸な事よ…中途半端な強さ故、真に強き者の恐怖を目の当たりにして死ぬのだからな!

法国では私以外に扱えなかった最強天使のチカラ、特と味わうが良いわ!」

 

カァッ…!

 

そして魔力を込められ、眩い光を放つ水晶から解放された、最強天…使…?

 

「ま…マジか…?!」

「で…デケェ!?」

「嘘でしょ…?」

「ふはははは! 今更 怖じ気付いても遅いわ!」

現れたのは、ガルガンチュア並の巨大な人型。

 

「とぅっ!」

その胸元目掛けて、嶋Qは魔法で飛翔。

その身を顔だけ…上下逆さで出した状態で、身体は その巨体に埋めた形だ。

 

「さあ、この最強天使との融合!

ハイパー・シィマ・グレートの手に掛かり、あの世に逝けぃ!」

いや…それ、天使、違います。

ユグドラシルのイベント・アイテムの、パワード・スーツです。

…って、()()()()()で、どうやったら それを天使と思えるんだ?!

 

ガァン!バガァッ!

 

しかし、強力アイテムには違い無く。

その巨体から放たれる拳の、足の一撃が、城壁を破壊していく。

 

「じょ…冗談だろ?」

「セリーシア、魔法を!」

「ルクルットも、弓で攻撃である!」

「は、はい! 《金剛石弾(ダイヤモンド・ミサイル)》!」

「応よ! 喰らいやがれ!」

 

バシュッ…バシュッ!

 

「「…って、効いていない?!」」

「ふははははははは! このハイパー・シィマ・グレートに、そんな石礫が通用すると思ったか!」

「…ならば! 《拾億雷電撃(ギガディン)》!!」

 

轟ォッ!

 

「ふっ…はははは!

効かぬと言ったら効かーーーーーぬ!」

「チッ…! アースロプレウラ…!!」

その巨体に、接近戦を挑む者は居らず、魔法や弓矢等の遠距離攻撃手段を持つ者が攻撃を仕掛けるが、効果は全く無し。

アレも確か、メタリック属性持ちだったよな?

しかも、あの巨体。相応にHPも高く、大技連発しても、それなりにしか削れない。

銀河爆砕(ギャラクシアン・エクスプロージョン)…は、この場は狭過ぎる。

今 放ったら、それこそ城壁は粉々、冒険者達も巻き込んでしまう。

下手したら、後でモモンガさんから大目玉だ。

 

ガァン!

 

「「「????!!」」」

そんな時、突如 巨大な転移門(ゲート)が現れ、其処から出てきたのは金色のライオン…型のゴーレム。

 

『マカロンさん、お待たせしました!』

「な…何なのだ、コイツは?!」

そのライオンが、嶋Qグレートの肩口に噛み付いた。

 

『お…遅れて、ごめんなさいぃ~!』

 

ガァアッ!

 

続いて現れたのは、黒豹型のゴーレム。

コイツは嶋Qグレートの脇腹に体当りを食らわせ、

 

ドォン…!

 

その巨体を見事、ダウンさせた。

 

『…後は、任せる。』

 

ズドォッ!

 

「うをぉっ?!」

更にはガルガンチュアや嶋Qグレートと同レベルな、巨大象のゴーレムが!

倒れた嶋Qに超重量の踏み付けを試みるが、これはギリギリで躱された。

 

『さあ、一気に片付けるわよ!』

そして最後か?

空に浮かんだ巨大な転移門(ゲート)から姿を見せたのは、鷲型のゴーレムだった。

 




▼▼▼
ハイパー・シィマ・グレート…Ω・アビゲールⅠ世(BASTARD!!)のイメージで
 
アースロプレウラ…Wiki等で検索
 
≫≫≫
【駄文】
ドラマCD…ナザリック神話のヤツ、面白いよね。特に千葉さんセバスの神話w
 
≫≫≫
 
【次回予告】
 
◆アルベドside◆
エ・ランテルを襲撃してきたスレイン法国・陽光聖典と、其が使役する天使の軍勢。
その激戦の最中、法国は切り札とばかりに、巨大なパワード・スーツを持ち出してきた。
そして それに迎え撃つは、至高の御方が1人、るし★ふぁー様が創り残された、搭乗型ゴーレムの部隊!
行くわよ、アウラ、マーレ、シズ!
今こそナザリックが威を、示す時よ!
 
次回『愛よ Far away(予定)』
乞う御期待よ。Kill it Kill it(殺って殺るわ)!!
 


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合体! 超獣機神ダイフンボ!!

 
前回の後書き(駄文)の続きになりますが…
 
 
【作者の私的オバロ ドラマCDランキング】
 
①ナザリック神話
②ザイトルクワエのヤツ
③守護者のテーブルRPG
④ハムスケがナザリック内で迷子になるヤツ
⑤アインズ様が守護者に給金を渡すヤツ
 
…動画検索等で聴いてみようぜ!
 


◆モモンガside◆

ユグドラシル時代、ヴァーリ・トゥードのゴーレム製作担当だった、長宗我部博士さん…通称チョーさんが造った、巨大蜘蛛型ゴーレム、デストロイヤー。

その圧倒的な巨大さ(サイズ)破壊力(パワー)を見て、対抗意識を燃やしたAOG(ウチ)のゴーレム担当の るし★ふぁーさんが造ったゴーレム。

曰く、「只単にデカイだけじゃ、只の猿真似。もっと、こう…こんな感じで…」として造られたのが、ギルメンが搭乗・操縦するタイプのマシン・ゴーレムだった。

レア素材を惜し気も無く ふんだんに…俺は反対したのだが、どう根回ししたのか、ギルド内で たっちさん筆頭に賛成派が多数を占めた為に可決…使用して造られた獣型の4機のゴーレム。

 

イーグル・ウォリアー

ラージ・マンモス

シャイニング・レオ

ダークネス・パンサー

 

ユグドラシルでは結局、造っただけで使う事が無かった其れが、遂に陽の目を見る事になった。

元々は、ギルメン専用で造られた為、ナザリックNPCに操縦適性を持つ者は限られ。

結果的にアルベド、アウラ、マーレ、シズ。

シモベの中で丁度4人、操縦の適性を持っていた。

シャルティアが「何故、妾は動かせないでありんすか~?!…ょょょょ」と、凄く悔しがっていたな。

…ついでに まろんサンも、最高にorzっていたな。後、セバス。

 

 

『マカロンさん、お待たせしました!』

『お、遅れてごめんなさいぃ~!』

『…後は、任せて。』

『さあ、一気に片付けるわよ!』

本当は後日、スレイン法国本土に攻め込む時に御披露目の予定だったのだが、エ・ランテルに攻め入ってきた法国の軍勢から、まさかの ()()パワード・スーツが登場。

()()はユグドラシルにて とあるイベントでしか入手出来なかったアイテムで、正にオンリー1な1品物。

俺も運営からの公式発表を聞いて、コレクター魂全開で そのイベントに挑んだのだが、結局は勝つ事が出来なかった。

…成る程、つまりスレインが崇めている六大神の内の1人は、()()()な訳だ?

あの巨体に まろんサン達も攻め倦んでいる様なので予定変更、"超獣機神隊"(まろんサン命名)、緊急出撃。

実質 今日が初めての機動で、少しだけ調整に時間が掛かったが、エ・ランテルの戦場に姿を見せた形だ。

…それにしても、 

「………………………。」

「「…アインズ様?」」

「い、いや、何でもないぞ?」

ぁ~あ、俺も乗ってみたかったな、アレ。(…いや、確かに最初は反対してたけど。)

俺は普通に乗れるんだけど、シモベの皆から出撃を反対されたんだよな~。

 

 

◆モモンガside・了◆

 

▼▼▼

 

◆アルベドside◆

『今から愚かしくも我等が領域に攻め入って来た、スレインの殲滅作業を開始します。

魔導国の戦士達、捲き込まれたくないなら、退がっていなさい!』

  

先ずは私のイーグルとシズのマンモスで、この巨大パワード・スーツを牽制している間に、アウラのレオ、マーレのパンサーが天使を含むスレイン法国の兵を掃討していく。

魔導国側の兵は、モモン(パンドラズ・アクター)が主導で後退させていく…って、まろん殿?

 

「………………orz」

「マカロン! 気持ちは分かる! 分かるから、羨ましがるのは、orzるのは後にしろ!」

まろん殿…そんなに これ、乗りたかったのですか?

モモンガ様も「男子だから仕方無い」と、仰有っていましたが。

 

『えぇい! 忌々しい異形の遣いが!

喰らえぃ! シィマ・ビィィィィム!!』

 

ゴォォッ…!

 

パワード・スーツの口が大きく開き、其処から光属性の熱線が此方(わたし)に向けて放たれる。

 

「…それなりな攻撃力は、有るようだけど!」

しかし、当たらなければ、大した事は無い。

正面から ぶつかってくるマンモスより、距離を置いた位置から機銃を撃ってくるイーグルを鬱陶しく思い、先に墜とそうと考えたのだろうけど、この4機の中で最もスピードに特化した この機体を最初の標的にしたのは間違い。

 

「ノーズ・フェンシング…&、ビッグ・タスク!」

 

ズガァッ!x3

 

溜めの必要な大技を放つ隙、近距離からシズのマンモスが、鼻と牙を真っ直ぐに伸ばしての刺突攻撃が炸裂。

しかし、あの敵の防御力も かなりな様で、大してダメージは入ってない様子。

 

『小賢しいわ!』

 

どんっ!

 

反撃の双掌打を貰ってしまうが、4機の中でも一際 巨大なマンモス。

その分 防御力も優れていて、此方もダメージは大きくない。

 

『アルベド~!』

『こ、こっちは全部、やっつけました~!』

そうしている内に、アウラのレオとマーレのパンサーが、その他の雑魚を全て片付けてくれた。

 

『さあ! 残るのは貴様だけの様ね!』

『ほざけ! このハイパー・シィマ・グレートで貴様等を倒せば、それで良いだけの事!

そうした上で、エ・ランテルを滅ぼしてくれるわ!

この巨体、如何にエ・ランテルの英雄モモンとマカロンだろうが、手も足も出せまい!』

…言っている事は、間違っていないわ。

でもアナタ、間違っている。

まろん殿が手を出せないのは、まろん殿の手持ちで()()を屠れる程の技は、周囲の被害を顧みない超・大技しか持っていないから。

ソレを被害最小限で破壊するには、同等のサイズ、質量の存在で、圧倒的パワーをぶつけるのが最良(ベスト)と、モモンガ様が仰有られた。

だからこそ、私達の出番となったのだから。

だから…

 

『皆、行くわよ!』

『OっK~ぃ!』

『はい!』

『…了解(らじゃ)。』

 

KILL IT,KILL IT(殺って殺るわ)!!

 

「制御、固定!」

操縦盤(コントロール・パネル)を操作して、4機のゴーレム全てを一時的に、私のコントロール下に治める。

 

「pass code…

D・A・I・F・U・N・B・O…」

 

 

◆アルベドside・了◆

 

≫≫≫

 

◆まろんside◆

4機のゴーレム。

上空、アルベドのイーグルを先頭に その やや後ろ、地上ではシズのマンモス、両脇にアウラのレオ、マーレのパンサーという位置(フォーメーション)を取る。

 

ガシィンッ!

 

そして其々が可変。

シャイニング・レオとダークネス・パンサーは頭部(ヘッド)胴体(ボディ)に格納し、四肢を折り畳む。

 

ズィィ…

   

ラージ・マンモスは上体を持ち上げる様に立ち上がり、後ろ脚だけで自立。

前足の裏部分からは拳が飛び出し、首を屈め、鼻は先端部を腹部に収納。

それは まるで、首の無い巨人の様だ。

 

ガシャンッ!

 

そして先に変形を終えていた、レオとパンサーが、その後ろ足の下に潜り込む様に合体、巨人の足首の部位となる。

 

『さあ、行くわよ!』

 

グィィ…

 

最後はイーグル・ウォリアー。

翼を閉じる様に畳み、機体の腹部から白銀の人面(マスク)を出すと、

 

ガシィッ!

 

その形態で首無し巨人の頭部として、連結した。

そう…これが、るし★ふぁーがチョーさんのデストロイヤーに対抗して造った、搭乗・変型・合体ゴーレム…

 

『『『『合体! 超獣機神ダイフンボ!!』』』』

  

バァ━━━━━ンッ!!!!

 

…か、かっけぇーっ!

両腕を左右に大きく広げ、胸を張り上げるポーズを構えるダイフンボ。

クソ! やっぱり俺もアレ、別にイーグルで無くても良かったから、乗りたかった!

 

「凄い…」

「カッケー!」

「でっか!?」 

冒険者の皆さんも、男性陣を中心に…一部、戸惑っている者も居るが…拍手喝采大絶賛。

 

「やっぱり巨大ロボは、漢の浪漫だな!」

「…まろん殿(マカロン)?」

さあ、リアルで無くてスーパー系の、ロボット・プロレスの始まりだ。

   

≫≫≫

『取り敢えず、喰らいなさい!』

 

轟ッ!

 

何処に仕舞っていたのか、ダイフンボの両肩から2門の大砲が現れ、其処から放たれるのは雷撃系の魔法。

第8位階魔法の一撃が、巨大嶋Qに直撃した。

 

『ふははははは! 効かぬ!効かぬのだよ!

このハイパー・シィマ・グレート、魔法の攻撃は、一切 効かぬわ!』

しかし、それは通じない。

巨大パワード・スーツの胸元、顔面上下逆さの嶋Qが、どや顔で話す。

しかし あのパワード・スーツ、『メタリック属性』を備えている様で、確かに魔法ではダメージを与えられない。

その上、純粋な硬さもバカ防御数値。更には加えて、あのサイズ。

勿論、攻撃面の方も、数々の強力な武装を搭載している、一見、無敵に思えるマジック・アイテム。

しかし、決して無敵では無い。

もしも完全無敵なら、例え1品物としても、その存在がユグドラシルでパワー・バランス崩壊を起こしていた。

何よりも所詮はパワード・スーツ。

パワード・スーツは本来、ユグドラシル全盛期、カンスト勢が当たり前に溢れる中で、後発プレイヤーのレベル差を埋める救済を目的に作られたアイテムだ。

イベント景品、〇〇屋の うどんトッピング全部乗せみたいなバカ盛り設計と云え、弱点は普通に在る。

 

『…ならば!』

アルベドも それに気付いたか、突進。

遠距離飛び道具攻撃から、距離を詰めての接近戦に移行だ。

 

『ふん! 魔法がダメなら物理か?

確かに間違ってはないが、それでも このハイパー・シィマ・グレートの硬装甲、生半可な攻撃は通用しn

『ダイフンボ・ケンカキック!』

 

バキィッ!

 

『ふ…ふが…』

『…&、ダイフンボ・ラリアット!』

 

ボガァッ!

 

『ほげぇっ?!』

見るからに重そうな技の2連発。

それを胸部から剥き出しにされている顔面に思いきり ぶちかました。

アレが、あのスーツの弱点というか、欠点の1つ。

確かに身体はパワード・スーツに収納されているが、頭は無防備(そと)

魔法に関しては防護盾(シールド)の恩恵を受けているが、物理は別だ。

しかし その生身の所に あの蹴りとラリアット…大型車と激突した以上の衝撃に潰れず死なずにいるのだから一応、多少の保護は入ってる?

 

『ば…バカなぁあ??!』

しかも あの反応からして、当人も その仕様を知らなかった様だ。

まあ、奴等からすれば、600年前から伝えられたアイテム。

しかも恐らくは、実戦投入は初めてだったのだろう。

何よりも、アレを遺した六大神…スルちゃんその他、スレインを興したプレイヤー達も、まさか自分達以降も100年毎にユグドラシルから来訪者が現れるのは、想定外だったに違いない。

実際に使うとしても、その相手は弱々の現地人相手(異形・亜人含む)で無双確実だろうから、それ程に気にする必要も無いと考えていたのか、教え遺す事も無かったのだろう。

…って、普通、自分でも「顔面への攻撃はヤベェ」とか思ったりしないか?

どう見てもアレ、弱点だろ?

 

『グゾォが…』

逆さ顔面から血をどくどく流しながら、ダイフンボを睨む嶋Q。

 

『ゆ、赦ざんぞ…!』

 

ガパ…

 

そう言いながら左腕を前に突き出すと、前腕部装甲が開き、大口系の砲が顔を出す。

 

『ハイパー・シィマ・ディシンファクション!』

 

ぶぉおおぉっ!

 

其処から放たれたのは、ドラゴンの吐息(ブレス)を連想させるかな火炎放射だった。

 

 

◆まろんside・了◆

 

≫≫≫

 

◆アルベドside◆

火炎攻撃は、大した事は無い。

しかし、disinfection…ですって?

殺す。ダイフンボを、そして私達を汚物扱いするとは、それは もう、「どうぞ殺して下さいませ」と言ってるのも同じよね?

 

『アルベド~、どうする~?』

『処しますか?処しますか?』

『斬って撃って叩いて潰して吊るして殴って刺して蹴って嬲って殺しましょう。』

どうやらアウラ達も皆、考えは同じみたい。

 

制御(コントロール)の一部を貴女達に返すわ。

パワーの調整、頼めるわね?』

『了解!』

『はい!』

『任せて下さい。』

ええ。勿論 殺って殺るわよ。

 

『大墳剣!』

ダイフンボのメインの武器(物理)、両刃の剛刀を正眼で構える。

「何処から取り出した?」…って、野暮は無しよ。

 

『こ、虚仮脅し!』

それを見て吠える、敵の男。

そう言ってる割には、表情(かお)は必死よ?

そして この大墳剣…メタリック属性の特徴の1つ、『硬い』を打ち消す、『貫通』の特性を持っている。

つまり これから先は、純粋な攻撃力と防御力との ぶつかり合い。

 

ぶん…ガシィッ…バキィッ!

 

『ごっふ…!?』

明らかに焦り丸出しな横殴りを剣で防御して、再び、顔面狙いのケンカキックで相手を吹き飛ばす。

その合間に距離を開け、大墳剣を片手逆手に持ち直す。

 

『『『『必殺!』』』』

そこから再び間合いを詰めて、繰り出す一撃。

…ダイフンボには、るし★ふぁー様の考え(アイデア)により、至高の御方の技が劣化版だが、多数入力(プログラミング)されている。

しかし劣化版と云えど…確かに精度自体は御方に劣るが この巨体、質量から繰り出される技、その重さ、破壊力は時にして本家(オリジナル)を凌ぐ。

そして今回 使うのは、武人建御雷様が得意とされていた技。

あの御方の其れは、単なる基本の逆手持ち逆袈裟斬りだが、ダイフンボのパワーから繰り出されるソレは必殺技…まろん殿風に言うなら、()()()()()()に昇華する。

 

『『『『ダイフンボ・ストラッシュ!!』』』』

 

斬ッ!!

 

『うぐゎおぅえ~っ!?…って、え? え゙ぇ?! ちよ…待t』

この一閃で胸部の装甲を斬り裂き、指先から出した小型マニピュレーターで中の本体(にんげん)を摘まみ出し、

 

ぷち…っ

 

その儘、(ミンチに)してやった。

これで敵の殲滅掃討完遂。任務完了(ミッション・コンプリート)よ。

お前の敗因は多々有るけど、最たるは、

  

最後の手段に巨大化。()()を選んだ者は、必ず敗れる!

 

学習しておきなさい。

たっち・みー様の御言葉よ。…って、もう遅いかしら。

 

「それじゃあ、後の処理は まろん殿達に任せて、私達は撤収しましょう。」

「それは良いけど…1つ、聞いていいかな?」

「何かしら?」

「どうして最後の一撃、力加減を抑える様に私達に指示したの?」

「ダ、ダイフンボのパワーなら、胸を裂くだけでなく、簡単に真っ二つに出来ましたよね?」

「…尚且つ、周囲に被害が出ない様にも出来ました。」

「ふふ…それはね…」

モモンガ様への お土産として差し出すからに、決まってるでしょ?

モモンガ様も この戦闘は、御覧になられていた。

このパワード・スーツ、アイテム収集家でもあるモモンガ様の琴線に、間違いなく触れている筈。

その前で この珍しいアイテムを完全破壊とかしたら、先程の まろん殿以上に嘆かれるでしょ?

 




一応 念の為… 
ダイフンボ…ダ〇クーガ(獣戦機ダン〇ーガ)のイメージで
 
ついでに 
長宗我部博士…デストロイヤーを設計した人(このすば!)のイメージで
  
≫≫≫
 
【駄文】
33話(実質32話)にてアビゲイル(BASTARD!!)をモデルにしたキャラを登場させた時点で、この男のΩ・アビゲール化、それから続く巨大ロボットのバトルは決定していました。
最初は まろんとユリをK.O.G.(ナイト・オブ・ゴールド)(F.S.S)っぽいのに乗せて…とか考えていたけど、偶々スパロボの動画を見て…
因みに最初は
 
イーグル→アウラ
マンモス→マーレ
レオ→シズ
パンサー→ルプスレギナ
 
…の予定だったのだけど、これまた偶々に車内にて『L.L.L』を聴いて、「…あ、イーグルはアルベドだ!」と思ったのです(笑)
 
≫≫≫
 
次回『モモンガさん、ナザリック食堂に行く』
乞う御期待! 感想よろしくです。
 
▼▼▼
一応、歌詞コード貼っておく。
 


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モモンガさん、ナザリック食堂に行く

 
すいません…
どうしても あの台詞、言わせたかったんです…
 



▼▼▼

 

「美味い!!」

 

ナザリック地下大墳墓の第9階層。

その食堂に、響き渡る声。

 

「美味い!!」

やや長身で細身の黒髪…前髪は目元を覆う程に長いが、基本的には短髪の、人間種と思われる男が、その声の主である。

 

「美味い!!」

白米に味噌汁。それに玉子焼きと焼き鮭。そして豚しょうが焼きに筑前煮。

それ等を一口 口にする度に「美味い」を連呼して、笑みを溢す男。

 

「「「…………ニコニコ(^ω^)」」」

同じテーブル席に着いているアルベド、まろん、ユリは それを、只 微笑ましく見ていた。

 

≫≫≫

「料理長! 卵と牛乳、置いておきます!」

「御苦労!」

その食堂の舞台裏、厨房では普段以上に慌ただしく…仕事量は普段と そう変わらないが、この場を職場とする者達は、普段以上…過去最高の緊張と高揚を昂らせていた。

ナザリック食堂の領域守護者にして食堂料理長、シホウツ・トキツも それは同様だか決して それを表に出さず、普段通りに鍋を震う。

 

「………………(フッ!)

只 時折、小さく笑みを浮かべながら。

 

≫≫≫

 

◆シホウツ・トキツside◆

何故、このナザリックに人間が?

…とは思わない。

何者で在ろうが、この場に来て食を注文するならば、それに応じる迄の話。

それが我等の存在意義なのだからな。

何よりも、我等の作った料理に一口毎に「美味い」と言っているのだ。

食を職とする者として、これを不快に思う筈も無い。

それに…同席されているのがアルベド様と まろん氏。ついでに今は まろん氏の奥方であるユリ・アルファ。

…と、なると、あの人間…いや、あの御方が誰なのかは、必然に答えが導き出される。

副料理長や他の料理人(スタッフ)も、それは同様だろう。

それが この厨房を良い意味で、緊張感が支配している。

本当に あの人間が あの御方という想定で、承けた注文(メニュー)、本来のレシピより上級の食材を使ったり、量を少し多目にするかとも考えたが、本当に御方だとすれば、その様な贔屓、或いは気配りは逆に好まないだろう。

だからこそ、平常に料理を振るう迄の事。

しかし…

 

「美味い!!」

 

ふっ…ふふふふぶひっ!

あの御方が我等の料理に、あの言葉を発してくださる。

しかもアレは紛れも無く、飾り気の無い、純粋な心根からの声。

これ以上の誉れが在るか? 否、無い!

只…不敬を承知で、敢えて言わせて貰えるならば…

  

 

◆シホウツside・了◆

 

≫≫≫

 

◆まろんside◆

「美味い!!」

 

「美味い」を連呼するモモンガさん。

アルベドから聞いたのだが、モモンガさんがアイテムを使って人化するのは、"夜の営み"の時だけだとか。

生物3大欲求の、睡眠欲食欲性欲。

この内、睡眠欲と性欲は、アルベドと一緒に夜を過ごす事で消化していたが、それでも人化は "その時だけ"として、朝になれば、直ぐに(オーバーロード)に戻っていたとか。

いや、食欲は? ついでだから食事もしようぜ?

俺だって不死属(アンデッド)だけど、普通に性欲食欲睡眠欲性欲有るぜ?

…だから、食堂に行きましょうね?…って事で、アルベド共々に昼食に誘ったのだ。

勿の論、ユリたん♡も一緒だ。

現実世界(リアル)では、まともな食事…料理なんか一切 食べた事も無かったであろうモモンガさん。

メニューを見て、「これなら米肉魚野菜、まとめて食べられますね」と朝定食と豚しょうが焼き(単品)と筑前煮(単品)を注文。

〇〇味の合成チューブとかしか食べた事が無いモモンガさんにとって、本物(リアル)の食材の味に歓喜。

 

「美味い!!」

初めて食べる本物の料理、本物の味に、本当に感動しながら箸を進めていた。

アルベドやユリたん♡も それは察したのか、暖かく見守っている。

ついでに言えば、この場で食事をしていた一般メイド達も。

えーと、確か…リュミエールさんだっけ?

泣かない泣かない。

それからルプスギナ、お前は涎と鼻血を拭け。

それと…モモンガさん、今は もう、お昼過ぎっすよ?

この時間に朝定を頼むって…

いや、実質、生まれて初めての食事…外食だから、そういう『暗黙』に疎いのは解るが…

それに、注文されたからって、本当に この時間帯に それ出す食堂側も…いや、このヒトに突っ込めないのは解る!

後で俺が そーゆーの、ソフトに教えておくから、そっちもメニュー表に【AM5:00~AM10:30迄】とか書き加えとけよ。

 

「美味い!!」

 

 

◆まろんside・了◆

 

▼▼▼

 

◆ジルクニフside◆

スレイン法国から書状が届いた。

何だ? 漸く、帝国騎士に擬装しての虐殺行為についての弁明(いいわけ)か?

それとも、先日に不法入国してきた間者(スパイ)の処遇や引き渡しについてか?

いや…これについては捕らえたとか、ついでに既に処した等は、公にしていないが。

そう思い、封を開けてみると…

 

「………………………………………。」

「…陛下?」

「ボツ!」

 

♪♪♪~♪~♪~♪♪~♪

 

ロウネに その手紙を渡し、少し前にアインズから貰ったマジックアイテム、『しゅれっだー』なる箱に投入させる。

すると、明るく愉快な…の表現が相応しい音楽が流れ、手紙は細々塵々に裁断された。

 

「巫山戯ているのか? 恥を知らないのか? それとも…私を舐めているのか?」

「へ…陛下?」

手紙の内容。

それは要約すると、法国は魔導国との戦争により、各地が戦火に包まれるからと、一般民の保護・受け入れをして欲しいという内容だった。

以前から帝国(わたし)が散々と送ってきた手紙については全く触れずに、()()か?

せめて、『それ等の件とは関係無く、一考願いたい』とか、一筆添えるべきではないのか?

どちらにしても断るがな。

此方が送ってきた書状を散々と無視してくれたのだ、同じ対応をしても、文句を言われる筋合いは無かろう。

更に言えば、帝国は魔導国と同盟を結んでいるのだぞ。

そちらの面からしても、避難民受け入れ等、認める筈も無いだろう?

それに、その避難民とやらの中に また、間者等を紛れ込まされでもしたら堪った物じゃない。

恐らくは竜王国や聖王国にも、同じ様な手紙を出していると思われるが、竜王国も魔導国同盟国だ。

若作りバ〇アが それを認めたりは、しないだろう。

そして聖王国。

此方も女王暗殺(未遂)の黒幕疑惑(黒)の国の、要請に応じるとは…あの お花畑が『一般の民は別問題ですぅ』とか言いかねんが、脇を固める腹黒と脳筋が全力で断固阻止するだろう。

ククク…さて、どう出るのだ?スレイン法国よ。

純・人間種至上主義国家が、ドラゴンや亜人が中心で統治する国に助けを求めるとは、思えないが?

 

 

◆ジルクニフside・了◆

 

▼▼▼

 

◆ドラウディロンside◆

…む? 何だか、誰かが私をディスっておる気がするぞ?

 

「心配なさらず。

恐らくはジルクニフ皇帝殿か まろん殿が また、陛下を若作りバ〇アとか合法幼女とか呼んでおられるのでしょう。」

「なさるわっ!

てゆーか、心の呟きを読むな!

てゆーか宰相! コレは貴様が そっちの方が、兵や冒険者からの受けが良い、喜ぶからと言って!

…この国には、幼女嗜好家しか居らぬのか?!」

「少なくとも、その幼い容姿に『無いわぁ』と思う者は居ないかと。

良いから黙って縮んでいて下さい。」

「ぐぬぬ…本来は もっと背も高いし、ぼんきゅっぼん!じゃぞ!

それは貴様も、知っているだろうが!」

「しかし どちらにしても、見た目詐欺の〇バアは事実でs

「だから、詐欺とかババ〇言うな!

ドラゴンの血を継いでおるから、多少 成長が遅いだけじゃ!

普通の人間に換算すると、四捨五入で まだ二十歳じゃし、リアル年齢も2桁じゃ!」

「…来年も、言えますか?」

「…はぁ?!」

「来年…いえ、半年後も、同じ言葉を一言一句、違わずに言えますか?

特にリアル年齢の辺り。」

「あべしっ!」

「はいはい、爆散死は何時でも出来ますから。

それよりも、これ…法国からの手紙は、如何なさいますか?」

「ボツ!…じゃ!」

 

♪♪♪~♪~♪~♪♪~♪

 

 

◆ドラちゃんside・了◆

 

▼▼▼

 

◆モモンガside◆

「成る程…な。」

ナザリック地下大墳墓とエ・ランテルに精鋭(笑)と言って良い戦力を注ぎ込んだが、悉く撃破されてしまったスレイン法国。

その首都は中心の大神殿を残し、瓦礫の死都となっている。

そして その大神殿…その最奥の間にて、国の指令部と云える人物達が、何やら話しているな。

ふふふ…シャドウ・デーモンを通じて、全て聞かせて貰っているぞ?

 

…曰く、帝国・竜王国・聖王国に避難民の受け入れを求める書状を出したが、一向に返答が来ないだとか。

 

…曰く、自分達の身内は、"聖地"に避難させるとか。

 

…曰く、今後暫くは魔導国の侵攻に備え、都市防衛面を強固にするとか。

 

成る程、成る程。

ジルとドラウからは、避難民受け入れ要請は無視すると言われているが、聖王国も同じ対応か。

都市防衛を強固に。ふん、どんなに守りを強めようが、無駄な事だ。

墜とそうと思えば何時でも墜とせるが、攻めて来ないなら、此方も暫くは、国の運営に力を入れさせて貰うとしよう。

改めて、王様って大変だよな~? ジルやドラウをマジに尊敬するよ。

そして、"聖地"…だと?

コレは興味深い。

恐らくは六大神の誰かの、ギルド拠点の事だと思うが…

まろんサンが言うには、スルシャーナはAOG(ウチ)とは別の異形種ギルドに所属していた。

そしてスルシャーナ以外の六大神は皆、人間種。

つまり六大神は、少なくとも2つ以上のギルドのプレイヤーの集まり。

この前のパワード・スーツ登場で もう1人、六大神メンバーの心当たりが付いたが、もしかしたら()()()の拠点か?

…次に法国責めする時は、先ずは その聖地とやらだな。

敵国の中枢を担う者の身内だ。

避難とやらを終了させた後、最優先に始末させて貰うさ。

 

≫≫≫

「場所は、このナザリックの地上部分。

胸元にスレイン法国の紋章が刻まれた、黒い戦闘衣を着た黒髪の男。

手には南方刀を握っていました。」

…アルベドから、占星千里が予見したと報告が入った。

直ぐに彼女を呼び出し、守護者達…そして まろんサンも会議室に呼ぶ。

占星千里…彼女がした予見。

それは法国の者と思われる、ナザリックへの侵入者だった。

それを聞き、対策を練る事に。

 

「それで、その男は?」

「は、はい、エントマ様が それと対峙していて、瞬時に殺されました…

私が視たのは、此処迄です。」

成る程。

 

「そうか。報告、御苦労だった。

退がって良いぞ。」

「はい。失礼します。」

 

≫≫≫

「…さて、お前達は、どう思う?」

占星千里を退室させた後、守護者達に感想を聞いてみる。

 

「確かスレイン法国って、当分は自国の守りに専念するって話でありんしたよね?」

「ソレナリニ先ノ話。

再ビ、魔導国ヘノ攻撃指示ヲ出シタ時ノ光景ダッタノデハ?」

「だね~? 具体的に何時頃かとかは、分からなかった訳ですし?」

「あの…勝手に動いたりしていた…とかは?」

「そうだね。占星千里の予見曰く、他には誰も居ないそうみたいだし、独断での単独行動の可能性も、高いかも知れないね。」

「ナザリックの敷地に侵入を許し、それをエントマ殿1人が待ち構えるかの形で対応…

これはッもう! この予見を知っていた上での対処と思って良いでしょうね。」

「何だか卵が先か…みたいになっているわね。

でも ならば此処で、エントマ以外の者を向かわせるとか、下手に予見を外した行動は、避けた方が良いのでしょうね。」

「それが良ろしいかと。

どうやらエントマの勝利は、絶対の様ですからね。」

 

≫≫≫

「…という訳で、スレイン法国で、そーゆー格好のヤツ、心当たり、無いか?」

「は、はい! それは恐らく…漆黒聖典第3席次、賽肉細斬…デs(バキッ!)ぷぎょえっ!?」

「ま、まろんサン、流石に それは、理不尽ですよ?!」

「いや…この声を聞くと、どうも反射的に…

(≧▽≦)ゝ(ゴメンね?)

確認の意味で、過去に魔導国に入り込んで来た者の中で、情報元として生かしている者の1人、死凶怠惰(投獄中)に話を聞いてみると、占星千里の予見に出た出で立ちの者は、やはり法国に…"新生"漆黒聖典に居るとの事だった。

その際に「声がムカつく」という理由だけで まろんサンに殴られたのは、流石に少しだけ同情してしまう。

同時に俺にも まだ、人としての情けを僅かでも持っていたのが確認出来て、少し安心。

 

「ぐぷぬ…そ、それで、神官達が命令していないのに、勝手に行動するというのも、ヤツならば有り得る話なのデス。

アイツは昔から、出世欲が激しい人物でしたから、それも独断先行なのでしょう。」

思いきり腫れた右頬を押さえながら、涙目で話す死凶怠惰。

まあ、怨むなら とある王国貴族を怨んでくれ。

尤もソイツも もう、死んでるけどな!

 




①改めて…あの台詞を言わせたかったのです。
次は〇ル〇〇に「〇でよー?!」と言わせてみたいが、それ迄の経緯が思い付かない…
 
②「ボツ!」の時の音楽は、〇レクトリカル・〇レード(〇ィズ〇ー)を連想してみて下さい。
 
③ペテr…(ごほん、)死凶怠惰は殺さずに、生きている事にしました。
今後、他にも生きていたり蘇生してたりなキャラが出たり?
 
④賽肉細斬…この名前でモデルを察せた貴方は、上級読者(笑)
 
≫≫≫
次回『エントマ、頑張るぅ(予定)』
乞う御期待! 感想よろしくです。
 


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自滅の刃(笑)

 
前回から読んでいた読者諸氏の皆様、御待たせ致しましたあっ!
…って、活動報告でもボヤいたけど、皆、パイセン大好き過ぎるだろ…(汗&笑)
 
≫≫≫
今回、普段より短いです。
 


◆???side◆

神官の御老体達は、国の守りを指示してきたけど、それは違うだろ。

また あの法都を滅ぼした化け物を出された日にゃ、それこそ もうアウトだろ?

それが1体2体なら未しも、前みたいに馬鹿みたいな数で来られたら尚更だ。

あれは、俺や その他の聖典の奴等じゃ手に負えない。

最強守護神様や あの化け物暴力女でも、瞬時圧倒は無理な話だ。

1体 始末している隙に、別の化け物共が街を破壊、壊滅間違い無し。

だったら どうする?

守る前に…攻められる前に、攻めるだろ?

所詮はアンデッドだ。光や聖属性が弱点なのは、分かりきっている。

その点 俺の日輪刀(サンシャイン)なら、アンデッドだろうが悪魔だろうが、問題無しだ。

そして暗殺。俺のスキルなら、どんな場所だろうが誰にも気付かれずに奥まで潜り込み、どんなヤツ相手だろうが背後に回るのは容易い。

そう思い、他にも ()()()系を得意分野としているヤツを何人か、漆黒とか聖典関係無く声を掛けてみたが、奴等ヘタれたのか「勝手な行動は出来ない」とか言ってきやがった。

馬鹿か? てっとり早い出世のチャンスなのによ。

まあ、好きにするが良いさ。それなら手柄、この俺が1人占めだ。

…この、漆黒聖典第3席次、賽肉細斬がな!

 

 

◆???改め、賽肉細斬side・了◆

 

≫≫≫

 

▼▼▼

「勝手な真似を!」

 

スレイン法国法都大神殿。

その一室で、法国の事実上トップである大神官が声を荒げる。

理由は、漆黒聖典の隊員の1人の姿が、昨日から確認出来ない事に有った。

漆黒聖典第3席次、賽肉細斬。

この者は以前より、魔導国に対して自国の防衛よりも攻めの姿勢を訴えていた。

そして魔導国攻めを、他の六色の者達を誘い唆していたのも…それに応じた者はいなかったが…周知。

その者が姿を消している。

普段から、一見 思慮深そうで短絡な思考しか持ち合わさない男。

幾ら諭そうが、根拠不明の自信で、それを聞き入れない。

"強さ"を第1条件で集められる漆黒聖典は、その強さ故に、傲慢な性格の者が多い。

その様な者は先ず、修正という名目の洗礼を受け、多少は…()()()()()()()()()()()()()()()のが定番だった。

前の漆黒聖典同様、"新生"漆黒の面々も、以前から()()を知る滅羅憎魔以外は調教(OHANASHI)されている筈だったのだが、それでも この者、独断行動を自制出来る迄には至らなかった様だ。

 

カチャ…カチャ…

 

「…でもさ、コッチから攻めるってのは、間違ってるとは言えないんじゃないかな~?」

「……………………。」

そんな身勝手な行動をフォローするかのような発言。

掌大の大きさの立方体型の玩具を弄りながら話しているのは、10代前半から半ばに見える少女。

 

「事実、少し前までは、アナタ達だって そーゆー考えだったでしょ?」

「…………………………………。」

悪戯気に笑む少女に、神官長は何も言えなくなる。

 

「てゆうか あのコ、どうして私に声を掛けなかったかな~?

私なら直ぐに、乗っかってあげたのに…」

嫌われてるからだろ? ……………。」

自覚が無いのか、本気で疑問な表情を浮かべる少女に、ノーコメントな神官長。

  

ザッ…

 

「!!?」

だが不意に、そんな表情を一変、険しくすると、懐に仕舞っていた数本のナイフを取り出す少女。

 

「(はぃい?! 心を読まれた??!)

ま、待て!何をするか? 落ち着け、絶死絶命!?」

自分に その切っ先を向けられ、慌てふためく神官長に、少女…漆黒聖典番外席次・絶死絶命は冷たい顔を向けると、

 

シュタタタタッ…!

 

「ひぇっ?!」

何の躊躇無しに、そのナイフを投げ、

「…は?」

それ等は全て床に…神官長の足元の影に突き刺さった。

 

「なっ…!?」

『 』

そして その影から音も無く浮かび現れる、異形の屍。

 

「…影に潜む悪魔。

神官長。どうやら今迄のアナタ達の会話 全部、魔導国に筒抜けだったみたいね。」

「な…?!」

「巨大遺跡やエ・ランテルに攻めた時の、魔導国側の それを事前に知っており、待ち構えていたかの対応からしても、そう考えるべきでしょ?」

「…………………。」

 

カチャ…カチャ…

 

「あ、見て見て♪ 2面揃った♡」

「………………………………………。」

  

▼▼▼

 

≫≫≫

 

◆モモンガside◆

シャドウ・デーモンの存在がバレたか。

まさか、アレの存在に気付く者が居たとはな。

その容姿からして、あの娘が法国最強と云われている、番外席次という者なのは、間違い無いだろう。

それでは当初の予定通り、他にも法国に忍ばせていた、シャドウ・デーモン、フウマ、ハンゾウ達は撤収だな。

本当は もう少しだけ引っ張りたかったが、件の賽肉細斬とやらの情報を最後に得る事が出来たので、まぁ好しとするか。

 

「…そんな訳だ。

ナザリック周辺の警備をしっかりした上で、何時でも()()が出来る様に、準備をしておけ。

エントマにも そう、伝えておいてくれ。」

「畏まりました、アインズ様。」

そう言って、エントマに《伝言(メッセージ)》を飛ばすアルベド。

ああ、そうだ。デミウルゴスにも、()()()()()の指示を出しておかないとな。

 

 

◆モモンガside・了◆

 

▼▼▼

数日後。

 

♪賽を振って踊りましょ~♪

悪夢に狂わさ~れる儘に~♪

 

ガヤガヤガヤガヤガヤガヤ…

 

「ぎゃははははは!」

「良いぞー!」

「飲め飲めー!」

エ・ランテルの冒険者組合。

吟遊詩人の唄を肴として、先日の防衛戦を祝う、宴が開かれていた頃…

 

「お♪ アレ…かよ…?」

トブの大森林から東の草原地帯。視界の奥先にナザリック地下大墳墓を確認出来る位置まで、賽肉細斬は辿り着いていた。

この場に来るまで、モンスターとの戦闘は無し。

時折、少し近くに魔導王が配置したと思われるアンデッドの騎士を遠目に確認した事も有ったが、それに気付かれる前に、その守備範囲を迂回。

自身が持つ隠密スキルをフルに活用し、此処まで到達した。

…と、当人は思い込んでいるが、実は違っていた。

既に何日も前から、侵入者…特に国境付近の警戒に注視していたナザリック。

捕らえていた漆黒聖典から、この男の特性…隠密スキルに自信を持っていた事を知り、敢えてデス・ナイトやゴーレム等の警備モンスターの死角となる道を、1本だけ作っていたのだ。

それに気付かず、自分の能力と勘違いして用意された道を進み、目的地を目指す賽肉細斬。

しかし、フォローでは無いが、この男の隠密スキルも、決してレベルは低くない。

例えばだが、仮にモモンガや まろんがトブの大森林を1人彷徨っていた場合、それに気付かれる事無く、背後を取る()は出来ただろう。

恐らくナザリック勢で、彼の接近に気付けるのは索敵能力に優れるアウラだけ。

其れ程に、他者に存在を悟られない能力()()は、逸脱者の域に達しているのだ。

ついでに言えば、彼が持つ日輪刀(サンシャイン)は、アンデッドや悪魔に特効の剣。

隠密スキルをフル活用し、一言も話すで無く敵の背後から自分の間合いに入れたならば、モモンガに まろん、デミウルゴス相手でもスポンジ竹刀での渾身一撃程度のダメージなら与える事も出来、その瞬間に漸く存在を認識させる程の実力者。

…尤も、次の瞬間には屍と化すのは必至だろうが。

 

≫≫≫

「ふん…」

そして、正面の門を潜り、墳墓に入り込んだ賽肉細斬。

小社は無視して、敷地中央の霊廟を真っ直ぐに目指す。

 

「アンデッドの王の墓って位だから、入った瞬間に骸骨(スケルトン)動屍(ゾンビ)とかが大量に襲ってくると思ったが…ん?」

そんな気配は まるで無く、代わりに目指していた霊廟の入り口に、小さな人影が。

 

「何だ…子供(ガキ)…か?」

其処に立っていたのは、和風メイド服を着た小柄な少女。

 

「おいおい…墓にメイドって、似合わないぞ?

魔導王の趣味か?」

「…………………(怒)。」

ナザリック戦闘メイド・プレアデスの1人、エントマ・ヴァシリッサ・ゼータ。

彼女を見て、聞こえるかの様に言い放つ皮肉めいた台詞に、彼女は静かに殺気を迸らせる。

 

「人間じゃ、ねぇよな?」

 

シャキ…

 

腰に携えていた日輪刀(サンシャイン)を鞘から抜き、賽肉細斬はエントマに近付く。

 

「あんなガキ、誰でも殺れるぜ。」

幼さが残る少女に、この漆黒聖典第3席次は微塵も恐れる事も無く、徐々に距離を詰める。

自分の本命は あくまでも魔導王。

自分なら、誰にも気付かれずに魔導王に近付き、このアンデッド特効の刃で仕留めて全てを終わらせる自信が有った。

目の前の少女…エントマは既に、敵とは認定していない。

 

 

漆黒聖典の隊長…いや、それを飛び越えて神官に就任も有り得る。

そして最終的には、大神官も確実だろう。

給金もウハウハ…チョロい出世だぜ。

 

  

既に頭の中では、魔導王を斃した後に約束される平和な未来しか考えていない。

そうしている内に、あと一歩の踏み込みで、自分の武器がエントマに届く位置に立つ。

 

「おい、ガキ。素直に其処、通してくれるなら、殺さないでいてやるz

蜘蛛乃巣斬糸網(ブレード・ネット)ぉ。」

 

斬ッ!!

 




"新生"漆黒聖典のメンバー、一応 設定決めました。
 
第1席次:隊長・白狂神父
第2席次:滅羅憎魔
第3席次:賽肉細斬
第4席次:捕縛桃姫
第5席次:関節恐慌(NEW!)
第6席次:死凶怠惰
第7席次:鹿屍討伐(NEW!)
第8席次:戦竜王子(NEW!)
第9席次:禹暴筋力
第10席次:刃投冥土(NEW!)
第11席次:不敬天武
第12席次:黒羽蝶人(NEW!)
 
番外席次:絶死絶命
 
 
…尤も、NEWキャラは殆どが登場は未定ですし、出た処で…如何に元ネタが強キャラ、或いは作者お気に入りとしても…出オチ、噛ませポジは揺るぎませんが(笑)。
因みに…5席は忍者系、7・10席は女性キャラ…デス!
 
≫≫≫
次回『小さき大音量(予定)』
乞う御期待! 感想・評価(高いヤツ)も、ヨロシクです。
 


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小さき大音量

 
m(_ _)m
前回 紹介、忘れていました…
 
賽肉細斬… 累に刻まれた剣士(鬼滅の刃)のイメージでwww
 
≫≫≫
【注意!】
今回は結構、グロいですキモいです。
食事中、食事前の閲覧は控えるのをお勧めします。
 


◆ソリュシャンside◆

「おっ肉♪ おっ肉ぅ♪♡」

 

ジュゥゥ…

 

ナザリックの地表部。

霊廟の脇で、エントマが簡易BBQセットで3㌢角位の肉片を沢山 焼いている。

料理は まったくだと思っていたけど…誰から教わったのか、意外過ぎる手際の良さだ。

 

♪どうしたって!♪消せない夢も♪止まれない今も♪

御機嫌に口ずさみながら、塩胡椒を適度に振り、ある程度 肉に火が通った頃合いに、

 

ジャァァッ…!

 

醤油、みりん、にんにく、胡麻油をベースにしたタレを豪快に鉄板に落とし、肉に馴染ませていく。

そのタレの焦げる香りが、食欲を呼び寄せる。

 

「出っ来たよ~♪」

そうして山盛りの焼きたての肉を、私に差し出すエントマ。

 

「あ、美味しい。」

「でしょ~?」

ん。丁度 良い感じなミディアムレア。

()()()()は、本当に美味しい。

単純に養分として、生きた儘その儘を体内に取り込むのとは、また違う美味しさだわ。

 

「おっ肉♪ おっ肉ぅ♪♡」

 

 

◆ソリュシャンside・了◆

  

▼▼▼

数日後。

 

「…くっ!」

スレイン法国大神殿にて、法国のトップである大神官は今迄に無い程に、顔を歪ませていた。

 

「まさか、このタイミングで!?」

神官長に届いた報せ。

魔導国より以前から、戦争状態となっていたエルフ王国が、侵攻してきたと云うのだ。

彼等が狙い目指しているのは、廃都と化した法都の中心。

そう、今 大神官が居る大神殿だ。

 

「いえ、寧ろ、今だから…なのでは?」

「…確かに、な。

貴奴等からすれば、この機に便乗して兵を動かすのは、当然だろう。」

冷静さを欠く大神官に対して、同室の2人の男女は逆に、「然もありなん」な態度。

しかし この2人、共に人間では無い。

女は褐色の肌に短い銀髪。

露出度の やや高い黄金の鎧を纏い、背には白銀の翼を生やしている。

その気高く凛とした容姿は、正に天使…ユグドラシルの天使型モンスターに非ず…が、形容が相応しかった。

 

「…私が、排除してきましょう。

少しでも、信頼を得たいのでね。

心配は無用ですよ。あの程度、容易い。」

そして もう1人、男の方は…赤橙のスーツ、銀の装甲に包まれた尻尾、そして黒い嗤い顔の仮面を被った出で立ち。

その男が そう言って立ち上がるが、

「待て、()()()()()()。私が出よう。

貴様は信頼云々と言っているが、生憎だが私は悪魔等、信用信頼する事は絶対に無い。」

それを女が不要とばかりに制し止める。

 

「おやおや…大天使様には随分と嫌われている様で。

しかし私も貴女も、単に種族が違うだけで、大元は同列の存在ですよ?

それは理解出来てますよね? ルーファウス殿?」

「………………!」

「まあ、その様に言うので有れば、此処は貴女に お任せします。」

それに対して仮面の悪魔…ヤルダバオトは肩を竦めると『やれやれです』な反応(ポーズ)を見せて、再び座っていた椅子に腰を下ろした。

  

≫≫≫

彼女…ルーファウスと呼ばれた天使が単身でエルフの軍勢を迎え撃ち、殲滅させたのは その約10分後の話である。

 

▼▼▼

  

◆大神官side◆

ヤルダバオトという悪魔。

数日前、いきなり私の前に姿を現した この男。

最初は あの魔導王(アンデッド)の刺客か?…と思ったがが、どうやら違っていた。

 

 

『私の創造主ウルベルト・アレイン・オードル様と魔導王アインズ・ウール・ゴウン…そうですね。敢えて、"様"と呼ぶ事にしましょうか。

我が創造主ウルベルト様とアインズ様は、浅からぬ縁が有りましてね?』

 

 

『はい? ウルベルト様ですか?

……………………………………。

今は…"この地"には、居られませぬよ…』

 

 

…その言葉から察するに、そのウルベルトなる者と魔導王は敵対関係に在り、既に魔導王に討たれる…と。そういう事か?

少し、安直な気もするが…悪魔の話術故に そう思わせるのかも知れないが、コイツの言葉に、嘘は感じなかった。

 

 

『私は我が主の意思で、貴方々に協力する為に参りました。』

 

 

『先ずは…気付いていないのですか?

アインズ様の正体…あの御方は、只のアンデッドでは無いですよ。

貴方達の言葉で言えば、"ぷれいやー"と呼ばれる存在です。』

 

 

…………!!?

何…だと? あのアンデッドも、ぷれいやー…様だと言うのか?!

…と、なると、この悪魔の創造主とやらも ぷれいやー様なのだろう。

成る程…朧気ながら、解ってきたぞ。

つまり、あの魔導王…は、六大神様よりも遥か前の時代に、この世界に やってきた ぷれいやー様。

嘗て六大神様達が そうした様に、あの魔導王も自身の国を…人間種も異形も共存していたという国を興した…という事なのか?

そうして一時的な眠りに着いている間に、六大神様も この地に降臨して、その後は我々の知る歴史となった…と?

 

 

『どうしますか? アインズ様が ぷれいやーと知り、それでも魔導国との戦を続けますか?

…尤も あの御方は、貴方々を赦す心算は欠片も無いでしょうが。』

 

 

………………………………………。

失念だった。

確かに、何故 私達は、アレが ぷれいやー様という可能性を想定していなかった?

アンデッドというだけで禁忌扱いし、それ以上の思考を放棄したから…だな。

しかし この悪魔…いや、ウルベルトなる ぷれいやー様の従属神様の言う通り、今更の和解、和平は難しいだろう。

降伏を認めて貰う事すら危うい。

 

 

『…ならば、道は2つ。

素直に滅びるか、抗い、勝利して生き延びるか…です。』

 

 

確かに、既に その2極しか、術は無いかも知れない。

仮に降伏を認めて貰えば、表面は従属の顔を見せ、その裏で数世代に渡り、内部から崩壊させるという手段も有るだろうが、それも叶いそうにない。

せめて一般の民だけでも助けようと、帝国や竜王国に避難民受け入れ要請の書状を送っているが、未だに それを拒否するという返事すら来ない。

…ふっ、過去に彼方側から届く質問状を、悉く無視してきたから、同じ対応をしているのだろうが。

 

≫≫≫

「…勝てるのか?」

「はい。如何にプレイヤーと云えど、アインズ様もアンデッドには変わり在りません。

その弱点を突きさえすれば、勝利するのも夢では無いですよ。」

「…ふん!」

…ならば、選ぶ道は1つ。

600年の歴史を棄て、我がスレイン法国は悪魔と手を結ぼうじゃないか。

この従属神様(あくま)の真なる意図は図れないが、いざとなればルーファウス様が適切な処置をして下さるだろう。

私も信用は していない。

単に己の復讐の為の駒には ならんよ?

 

 

◆大神官side・了◆

 

≫≫≫

 

◆ヤルダバオトside◆

()()()()()()()エルフ王国の軍勢は、女天使が あっと言う間に処分しましたか。

一方的な展開になるのは解っていましたが、それでも予想以上な殺られ具合です。

全く、本当に使えない。

アレでは真の実力は測れませんが、シャルティアと同格以上と思った方が良いのでしょうね。

…アインズ様は仰有られました。

 

 

敵の将の首を獲るのは簡単な事だ。

しかし今、我々がやっているのは『戦争』。

戦争に正しいも何も無いだろうが、それでも他国に、自分達の正当性(言い分)は、知らしめる必要が有る。

…それと同時、スレイン法国に、己の愚かさを理解させる必要もな。

 

 

…だ、そうです。

正しく その通り。

誰に矛を向けたか、心の底から理解して貰いましょう。

そして恐怖と絶望と後悔に囚われて、死んでもらう。

この神官達は単に『個』として私達…アインズ様に牙を剥いたのとは違う。

『国』として、先に手を出してきたのです。

…ですので、この国の民共も同罪で、滅びて貰います。

まぁ…愚かな者が治める国に生まれた事だけには、同情してあげますよ。

もしもリンネテンセイなる物が本当に在るならば、次は魔導国の民として生まれて下さい。

さ・て…大した時間稼ぎにもなりませんでしたが、まろん殿達は、どうなされているか?

尤も、()()は単なる お遊びの面が強いですから(笑)、仮に失敗しても全くの影響は無いですがね。

 

 

ヤルダバオト デミウルゴスside・了 ◆

 

▼▼▼

 

◆まろんside◆

さ・て…俺は今、転移魔法でスレイン法国の地方都市…農耕が盛んな地域、その作物が蓄えられている倉庫に居り、大量の食糧に囲まれている。

…が、モモンガさん…よくも まあ、こんな発想が出来る…(笑)

確かに直接な被害は無いかも知れないが、こんなだから彼方此方でDQNギルドとか言われるんだよ(誉めてる)。

今回の件、最初はシャルティアが転移役の予定だったが、作戦の全容を聞いて「堪忍して下さいなんし」とギャン泣きしながら それを拒否。

普通ならモモンガさんの命令に従わない…それは先ず有り得ない事であり、仮に断ったならば、アルベドやデミウルゴス辺りが『不敬!』とか言ってキレて、それこそ大変な事態に。

…が、今回はアルベドも何も咎める事も無く、寧ろシャルティアのフォローに。

デミウルゴスやアウラにマーレも『仕方無い』と苦笑。

コキュートスだけは、頭の上に(はてな)を浮かべていたが。

まあ、確かに仕方無い(笑)。

そう言った背景が有り、他に転移が使える者→俺の出番となった訳だ。

そして、この食糧倉庫で何をするかと言うと…

食糧略奪?…違う。

 

「それじゃ、頼むぜ、恐怖公。」

「ふっふっふ…お任せあれ、まろん殿!」

恐怖公。ユグドラシルのNPC(シモベ)の1人。

金の冠を被り、真紅のマント纏う、体長30㌢位の…巨大なだ。

 

「それでは参りましょう!

眷属大召喚!!

その恐怖公が自らのシモベ…簡単に言えば、通常サイズのを大量に喚び出した。

 

(カサカサ…)

 

(カサカサカサ…)

 

カサカサカサカサ…

 

カサカサカサカサカサカサ…

 

1つ1つは、小さな足音。

しかし それが幾千幾万幾億となると、単純な足し算の如くな大音量に。

 

「きゃぁぁああっ?!」

「ひぇぇっ!?」

何と、タイミングの悪い。

倉庫内、何かの作業をしていた女性達が、この いきなりG大量出現に大パニック。

 

「「「いやあああぁぁっ?!!」」」

絹を裂いた様な悲鳴が響き渡る中、倉庫の食糧は、瞬く間に全て喰い尽くされ、その後は

「「「ぬわーーーーっ!?」」」

「「「ぎょえーーーっ!?」」」

その儘、倉庫の外に飛び出していくGの大集団。

すると今度は その黒光る絨毯を見て、町中がパニックに。

…そりゃこんな仕事、女性(シャルティア)は嫌がるよな。

 

「よし恐怖公。次の倉庫に移るぞ。」

「承知致しました!」 

こうして俺達は、次の食糧が保管されている倉庫に転移。

全ての倉庫を喰らい尽くせば、今度は田畑の真ん中で眷属大召喚で畑を壊滅に。

そして次の都市へ…を繰り返す、何ともエグい兵糧攻め。

誰だよ、こんなの思い付いたのは?

モモンガさんか? デミえもんか?

兎に角こうして、半日後にはスレイン法国は未曾有の食糧危機に陥るのだった?

 

「しかしコレ、魔導国との関連に気付く者が、どれだけ居るかな?」

 




ま、前書きに注意は、していたんだからね!
 
次回予告『ダイフンボ・リターンズ(予定)』
乞う御期待! 感想よろしくです。
 


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世界級(ワールド)アイテム

 



▼▼▼

「と、通せないとは、どういう事だ!?」

「いや、だから そのまんまな意味だよ、お嬢ちゃん。」

竜王国。スレイン法国との国境側の関所で、その法国から多量の空の荷馬車を率いた商団が、足止めされていた。

この商団の指揮兼護衛を務めている、白基調の軍服を着た黒髪の少女が、その対応に憤慨。

 

「大体、お前の様な子供に『お嬢ちゃん』とか言われたくは無いぞ!?」

更には その関所の代表者の明らかに自分より年下な容姿に、尚更に憤慨。

 

「いや…多分だが、私は貴殿より歳上だと思うぞ?

貴殿が私と()()とかじゃない限りはな?」

「はあ?!」

そう言っているのは深緑の軍服を着た、金髪の少女…否、幼女。

 

「法国は今、魔導国と戦争真っ只中なのだろう?

竜王国は魔導国と同盟を結んでいるのだ。

法国の者…しかも、()()()()を入国させる訳には往かないだろうに。」

彼女は谷屋あおい。

ヴァーリ・トゥード所属のプレイヤーだ。

 

「既にアインズ・ウール・ゴウン魔導王から、『スレイン法国が大量の食糧を買い求めに来るかも知れない』と連絡は受けていたからね。

しかも その際、法国の強者(笑)が来る可能性も。

()()()()()()()()()()()のだよ。」

「…………………………。」

彼女は今後の展開予測を恐怖公の所業込みでモモンガに聞かされていた、竜王国女王ドラウディロンからの要請で、この関所の守護役に就いていた。

  

「『此処を通りたくば この私を倒せ』…とは言わん。国際問題だからな。

それに どの道、法国の者に物を売る者等、今の この国には居らぬよ。

…ならば、無理矢理に強奪略奪か?

それこそ国際問題だぞ?

…だから此の場は、

素直に引き返せな?

「………………?!!」

この()の有る言葉に、"新生"漆黒聖典・鹿屍討伐は谷屋を睨み付けるも、己と相手との実力差を測れるだけの力量は持っていたのか、言われた儘にスレイン法国へと退き返すのだった。

 

≫≫≫

 

▼▼▼

「………………………………。」

「くっ!」

場所は変わり、バハルス帝国の国境関所。

此方も竜王国と同様に、空荷の荷馬車を率いる商団が訪れていたが、竜王国と同じ理由で入国拒否されていた。

竜王国同様、漆黒聖典の者を護衛に付けていたが、それは帝国も同じく。

事前に魔導国から情報を得た事により、関所警備に就いていた帝国四騎士の1人、ナザミ・エネックの無言の圧力(プレッシャー)の前に、この忍者風な青年…関節恐慌は屈してしまう。

"新生"漆黒聖典。本来の漆黒聖典が実質 壊滅した故に急遽 作られた部隊だが、その実力は本家には遠く及ばず。

英雄の域は無論、冒険者で言うアダマンタイト級にも達していない者が殆んどだった。

 

 

▼▼▼

 

◆まろんside◆

「マジか?」

「はい! マジらしいです!」

デミウルゴスからの報告。

あの『ショック(笑)』から1ヶ月が経過した。

アレ以来、侵攻みたいな事はしていないが、アレには予想以上の成果が出ているらしい。

恐怖公眷属に国内の食糧の殆んどを喰い尽くされた事での食糧難。

農作物は事実上全滅で、国内の森等で野生動物を狩ったりもするが、供給が追い付かない。

他国には食糧支援を断られる事で(魔導国の根回しw)それに拍車が掛かり、残り僅な食糧を巡っての暴動騒ぎが起こる地域も有るとか。

現状で餓死者 まだは出ていないが、それも近い内に…らしい。

 

「もう、ガタガタですね。」

「ガタガタだな。」

「ガタガタだ。」

『生活魔法』とか言う、低級の魔法で塩や砂糖を作り、それで何とか凌いでいるとか?

 

「確かに人間、塩さえ有れば何とかなると、聞いき及んでおりますが?」

それでも限度ってのが有るだろ?

因みにだが、このG大量発生を魔導国の仕業と考える者は、今のところ出てないそうだ。

余りにも下らなさ過ぎるって理由でな。

確かに普通なら、まさかGを使っての兵糧攻めなんて、思い付かないよな。

それに魔導国の戦力なら、態々そんな遠回しな事をする必要は無いと考えるのが普通。

しかし、それを本当に思い付いて普通に実行するのが、DQNギルド(アインズ・ウール・ゴウン)だ!

尚、ユグドラシルのプレイヤーなら、そういう事態なら真っ先にAOG(アインズ・ウール・ゴウン)を疑うのが普通な話だ。

更には この法国、今回の戦争の自国内への説明も出鱈目。

魔導国が突然一方的に、宣戦布告してきたとか言ってるそうだ。

カルネ村や その他開拓村の襲撃や、聖王国でのモモンガさん暗殺(失敗)には、全然触れてない。

そりゃ言えないのは解るけど、それでも きちんと言うべきは言わないと。

既に首都は壊滅状態で、国民の間でも降伏派と抗戦派とで対立が起き、或いは近隣の国へと逃げ出す者も居るとか。

当然、入国は認められずに追い返されているけど。

 

「今度は此方が、刺客を送りますよ。

但し、油断は出来ません。

何しろプレイヤーが興した国。以前から此方に来た法国の者から、既に幾つもユグドラシルのアイテムを押収しています。

その中に2つ、世界級(ワールド)アイテムも有りましたからね。」

聖者殺しの槍(ロンギヌス)と傾城傾国な。

 

「つまり、法国は他にも まだ、世界級(ワールド)アイテムを持っている可能性が有る…か。」

「そうです。だから此方も、守護者達に世界級(ワールド)アイテムを持たせて送り込みます。

既にデミウルゴスにも1つ、持たせていますしね。

…そんな訳だ。また頼むぞ、パンドラ。」

おぉ、世界級(ぅワ~~~ルド)アイテム!!

世界を変え得るぅ、強大な力!

至高の ぅ御方々の偉大さの証しぃっ!

…言い忘れていたが、俺達は今、エ・ランテルのパンドラ(モモン)邸で話をしている。

 

「「「…………………………。」」」

そのパンドラの仕草(アクション)に、邸勤めやアインズ様当番のメイドさんが、『うわぁ…』と言いたいのを我慢しているかな表情。

いいぞ、もっと やれ!止めたげて。そんな顔で、モモンガさんの黒歴史を見ないであげて。

 

「…ナザリックの最奥に眠る秘法の数々がぁ、遂に力を振るう時が来たと?

そうなのですね? ~()アインズ様!」

「………………………。(精神安定)

あ、あくまでも それを使うで無く、使われた時の予防線としてだがな。

…って、どうした、デミウルゴス?」

ん? どうやらデミウルゴスから、《伝言(メッセージ)》が届いた様だ。

また法国側に、何か動きが有ったかな? 

 

 

◆まろんside・了◆

 

≫≫≫

 

◆モモンガside◆

デミウルゴスからの報告。

スレイン法国が懲りずに また、魔導国に刺客を放ったらしい。

…正確には、デミウルゴス扮する、ヤルダバオトが けしかけたらしいが。

その今回の標的は、カルネ村。

狙いは村に住む、()()()()()()()()()()()()()()()()()使()()()()()()()()を拐い、自分達の手駒にしようとしているとか。

…………………………………………。

いやいやいや、それ教えたの、お前だろ!?

一応ンフィーレアは、魔導国御抱えの薬師だぞ?

今は俺の指示で、ユグドラシルのポーション(赤)の開発研究させてんだぞ?

何、囮や餌みたいに使ってんの?

 

「それだけ大丈夫だって、信用してくれてるって事でしょ? 魔・導・王・様?」

「………………。」

しかし それは、つまり法国には まだ、使い手が限定されるが、一発逆転を狙えるヤバいアイテムが存在する事を意味しているな。

因みに現在、カルネ村にはナザリックからは護衛・監視役としてルプスレギナが。

そして、ナザリック地下大墳墓での修行を修了したとして、同じく護衛役にブレインを就けている。

前回の漆黒聖典を退けた事で、コキュートスから一応の合格認定を受けたらしい。

これはクライムやレイナースも同様。

レイナースは既に帝国に帰還していて、クライムはラナーの旦那様(ペット)だから、その儘ナザリック住まい。閑話休題。

そして その刺客の筆頭が何と、スレイン法国六大神の1人、スルシャーナの創ったNPCだとか。

俺が法国に宣戦布告した日、法国首都にて開幕一撃として喚んだ仔羊達を撃退した、あの天使だ。

 

「ルーファウスか。」

「まろんサンは、そのルーファウスと面識は有るのですか?」

「スルちゃんの拠点(ホーム)で1度、見せてもらった事が有るだけだよ。

面識らしい面識は無い。但し、その時の事をアッチが記憶している可能性は高い。

ナザリックのシモベ達も、俺とペロロンや茶釜ちゃまとの やり取りを覚えているみたいですし。」

ペロロンチーノさんと一緒に正座して、ぶくぶく茶釜さんに何やら説教されてる場面ですね。

 

「そう。タケと、それと何故かモモンガさんも一緒に正座させられてた、アレ。」

「うが…っ?! し、しかし流石にアレは、ルプスレギナやブレインには荷が重いな。」

「判ってる中じゃ、スレイン最強戦力だからね。

法国も、今回は それだけ本気って事だ。

俺も出るぜ。族長さんを()()()にさせるのは、同じ新婚として心苦しい。」

…理由、其処ですか?

友人(スルシャーナ)のNPCが出るなら、俺が出る』とかで無くて?

 

 

◆モモンガside・了◆

 

▼▼▼

 

◆魔導国兵士(モブ)side◆

カルネ村に、スレイン法国の軍勢が攻めてくるそうだ。

その情報を事前に得た魔導王陛下は、直ぐに迎撃体勢を整えられた。

モモン様マカロン様を筆頭に、エ・ランテルで選抜された兵士や志願した冒険者を、一気に集団転移でカルネ村に飛ばしたのだ。

カルネ村は前にも1度、スレイン法国からの襲撃に遇っていたそうで、それだからか防衛面のレベルは高い。

村の族長さ…(あ、スイマセン…)、村長さん配下のゴブリン軍団に加え、オーガなんかも居るし。

更には魔導王陛下が喚び寄せた、巨大アンデッドの騎士も何体も!

確かに怖いが、これが味方だと思うと心強い!

 

『さあ、スレイン法国!

何時でも掛かってきなさい! 殺って殺るわ!』

そしてそして、前のエ・ランテル防衛戦での主役となった、超巨大ゴーレムも!

もう、これ絶対に勝つるヤツ!

噂では、アレを中で動かしているのは、魔導国の宰相だとか王妃様だとか?

ははは…まさか、ね?

 

 

◆魔導国兵士(モブ)side・了◆

 

≫≫≫

 

◆まろんside◆

村の連中は、護り手以外は安全な場所に避難してもらっている。

尚、奴等からすれば本命のンフィーレアは、既にナザリック地下大墳墓に保護。

当然、スレイン法国の者は それを知る筈も無く…つまりは奴等、マジに無駄骨な訳だ。

 

「ほっほっほ…さて、どうしますかな?」

因みにンフィーレのナザリックでの保護を提案したのは、諸葛亮ゴブリン。

 

「この明らかに迎え撃つかの軍勢。

奴等からすれば、コイツが既に、想定外だろうしな。」

デミえもん曰く、今回はルーファウス以外は皆 一般兵士。

聖典の者は居ないらしい。

何時かの様に、急襲しての混乱の隙に法国最強(ルーファウス)がンフィーレアを見つけ出し、拉致る予定だったそうだが、悪ぃ…知ってた。

それを踏まえての、過剰な お出迎え。

正直な話、法国一般兵なら、ゴブリンズだけでも十分。

これはルーファウスを牽制する為だけに、揃えた顔振れだ。

そして、今回の対・ルーファウスの要は、実はダイフンボじゃない。

 

「その時は頼むぞ、ユリたん♡」

「はい、まろん様♡」

 




谷屋あおい…ターニャ・デグレチャフ(幼女戦記)
鹿屍討伐…バンビエッタ・バスターバイン(BLEACH)
関節恐慌…音速のソニック(ワンパンマン)
…のイメージで。
 
≫≫≫
【駄文】
『1作品1キャラ』という理由で没にしたのだが、最初は"新生"漆黒聖典のメンバーの中に、『戦慄竜巻』ていうキャラを考えていた。
しかし、今回の谷屋との絡みを考えたら、採用しても良かったかなと…(笑)
いやいやいや、()()を漆黒みたいな雑魚キャラに据えるなんて、そんな勿体無い事が出来る訳が無いじゃないですか!
 
▼▼▼
次回『大天使ルーファウス!(予定)』
乞う御期待! 感想よろしくです。
 


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大天使ルーファウス

 
原作ではルーファウス(ルフス,ルーファス)はアンデッドな様ですが? 今作は天使種の方向で。
 
【今回の伏線】…26話(実質25話)。
 


◆ブレインside◆

今度はカルネ村に、スレイン法国の連中が攻めてくるらしい。

しかも、今回それを率いているのはナザリック守護者の方々と同格の強さだとか。

だとすれば、普段から この村に居る俺やルプスレギナ様では、どうしようもない。

だからこそ、パンドラズ・アクター様扮するモモンや まろん様にも出向いて頂いてる訳だが…

 

「「♡♡♡♡♡♡」」

「………………………………。」

相変わらずだな!…ですね! この御2人さん(バカップル)!!

 

「いや、俺は こうして常にユリたん♡と手を繋いでいないと、消えてしまう病なんだ。」

「ト〇イですか?」

…ええ、解ってますよ?

9割方は単なるバカップルだからですが、残りは御2人の連携技の同調率(シンクロ)を高める為ですよね?

少し前の模擬戦(スパーリング)

クライムとのコンビで まろん様とユリ様に挑んだのだが、この2人の手を繋ぎ、躍り舞うかの様な格闘術で、俺達2人は揃ってボコボコにされたのだ。

端から聞けば、ネタかギャグかにしか聞こえないが…実際 俺も、最初に話だけを聞いた時は そうだった…いざ対峙すれば、ガチな戦法だった件。

しかもコレ、舞踊としても凄まじく洗練されており、それに目を奪われて隙を作ってしまうから尚更だ。

 

「き、来ました!」

「「…!」」

そんな事を思っていると、見張り台の兵士から、まだ距離は有るが、スレインの軍勢が此方にむかっているのを確認したとの報告が。

向こうサンは、魔導国(こちら)側が既に この進軍を知っているのは知らない。

だからこそ、それを気付かれない様に、ギリギリ迄 忍んでおくのが此方の作戦。

既に魔導国兵団やゴブリン軍団はマジックアイテムによる迷彩化(カムフラージュ)しての潜伏で、スレイン側を何時でも取り囲める配置に着いている。

後は…タイミングを見計らい、まろん様達に村の正面門から出てもらうだけだ。

 

 

◆ブレインside・了◆

 

≫≫≫

 

▼▼▼

「…む?」

ルーファウス。

嘗てスレイン法国を興した六大神の1人、スルシャーナが創った天使種のNPC。

スレイン法国の軍勢を上空から率いている彼女が、カルネ村の正面門から出てくる数人の人影を確認した。

村には見張り台の様な櫓も在り、既に自分達に気付いているのは承知。

しかし、それに対して数人…総勢1500の兵に たった3人で対応しようというのは、奇妙過ぎると感じていた。

彼女は知らない。

自分達の進攻は、それが計画された時点で筒抜けだった事を。

それ故に、彼女は気付いていない。想定もしていない。

既に自分達の数を上回る兵達が伏せている事に。

 

「お~い、ルーファウス~!」

「!!!!!!??」

そうした中、不意に自分の名を呼ばれ、彼女は一瞬 動揺。

 

 

…何故、私の名を知っている?

 

 

しかし直ぐに平静を取り戻すと、その自分の名前を叫んだ、金色の鎧の人物の下に降り立つのだった。

 

≫≫≫

「よう♪」

「貴様…いや、貴方は、確か…」

「ああ、やっぱり()()()()()()か?」

「スルシャーナ様の…御友人(フレンド)…」

「御名答。」

そしてルーファウスが目にしたのはユグドラシル時代、1度だけ対面した、自身の創造主の友人(フレンド)だった。

そして、彼女は納得もする。

この人物ならば…恐らくは脇の2人も同格なだろう。

それならば、たったの3人で この数に対応しようとしているのを。

 

「一応、聞くぜ? スレイン法国の皆さんが、魔導国領の この村に一体、何の用だ?」

「……………………………………。」

想定外だった。

魔導国最強の一角とされる、『金色のマカロン』の名は、情報として記憶していた。

自分の名を呼んだ金色鎧の男が、その出で立ちから、その人物であるのも確信していた。

…しかし、それが自分の創造主の友人(フレンド)…プレイヤーだったとは、思ってもみなかったのだ。

 

「…ンフィーレア・バレアレ。

彼を、スレイン法国に迎える為に参りました。」

それでも彼女は冷静・事務的に、自分達の目的を話す。

 

「無理矢理に浚いに来たの、間違いじゃないのか?」

「…それは、あくまでも最終手段。

可能な限り、穏便に済ませたいのです。」

「でも それから先は魔導国と法国で、穏便じゃ済まされない展開になるんだよな?」

「………………………………。」

しかし当然だが、目の前の相手は、それを受け入れる事は無かった。

 

▼▼▼

 

◆まろんside◆

「出来るならばスルシャーナ様の御友人(フレンド)である貴方と、事を構えたくは無いのですが…」

「それなら、さっさと引き返せば良いだけだ。

ンフィーレアは魔導国としても重要な人材だ。

戦争真っ只中の敵国に、渡す訳には往かない。」

「…………………………。」

俺に対して どう対処すれば良いか、かなり迷ってるな。

ンフィーレアを浚って、どういう風に扱うか…どんなアイテムを使わせるか迄は、デミウルゴスも教えて貰えなかったそうだ。

それがユグドラシルのアイテムなのか、叡者の額冠みたいな現地アイテムかも不明。

それさえ…目的さえ分かっていれば、敢えてンフィーレアを差し出す策も有ったのだが。

当たり前な話だが、デミウルゴス(ヤルダバオト)も まだ、完全に信頼を得ていない様だ。

 

「如何に貴方達が強者と云え、たった3人で、この数を相手に…

いえ、ンフィーレア・バレアレを守る事が出来ると?」

「さあね?」

ンフィーレアは既に、カルネ村から移動。

ナザリックで保護されています!残念!

ついでに族長さん以下その他の村人達も、モモンガさん特製地下避難壕(シェルター)に避難。

護衛役として、ルプスレギナとハムスケも付けている!

…多分、大丈夫だ、多分…

そっちは任せたぞ、ハムスケ!

 

「そうですか…そうか、ならば、仕方有るまい!」

 

ザザザザッ…!

 

会話は無意味と悟ったか、口調を変えたルーファウスが右手を高く掲げると、それを合図としたのか、後ろに控えていたスレイン兵達が武器を手に取り、村に突入する構えを見せる。

 

ザザザザザッ…!!

 

「「「「……?!!」」」」

「「「何ぃっ!?」 」」

「「「これは…?」」」

しかし、それと同時、潜んでいた 此方側の兵達が迷彩化(カムフラージュ)を解き、瞬時にスレイン兵団を包囲。

 

『さあ、愚かにも魔導国領である この村に攻め入る…それが如何なる末路を辿る事になるか、覚悟は出来ているわね?』

「な…?!!?」

そして やはり、迷彩化(カムフラージュ)で身を隠していたダイフンボも、その巨体を露にした。

 

「「「「ひぃいっ!?」」」」

「「ふ、伏兵??!」」

「な、何だ? あのゴーレム?は?!」

殺る気満々だった筈が、自分達を上回る数の出現に、スレイン兵団は一瞬にして士気がガタ落ち。

ダイフンボの存在感だけで、ぶっちゃけオーバーキルだ。

 

「まさか、兵を隠していただ…我等の進攻を知っていただと?!」

イグザクトリー。

これにはルーファウスも、驚きを隠せていない。

 

 

『戦いは、始まる前に終わっている』

 

 

これが魔導国…ギルドAOG(アインズ・ウール・ゴウン)の流儀だぞ?

 

『さあ、殺って殺るわ!』

戦闘開始だ。

 

≫≫≫

「我等、覇王炎莉将軍閣下が配下、ゴブリン魔法兵団也!」

「将軍閣下は申された!」

「この戦、我等が軍より一切の死者を出す事無かれ…と!」

「故に!」

「我等!」

「この戦、序盤は同胞の支援役に徹する心得!」

「「「「《守備力増加(スクルト)》!」」」」

「「「「《防具強化(ブレス・アーマー)》!」」」」

「「「「《攻撃力倍増(バイキルト)》!」」」」

「「「「《武器強化(ブレス・ウェポン)》!」」」」

「「「「《速度増加(ピオリム)》!」」」」

後衛に位置していたゴブリン魔法兵団が、前衛の兵士達に、強化(バフ)…特に防御強化系の魔法を掛ける。

 

「おおりゃっ!」

 

バギィッ!

 

「ぐげぇっ!?」

それにより、パワーアップした魔導国の兵士が法国兵を討ち、

「く、クソがっ!」

 

ガンっ!

 

「…今、何かしたのか?」

「は…はぁあっ?!」

防御力…肉体と装備の両方が強化された事で、法国兵の剣は魔導国兵にダメージを与える事は ほぼ無理ゲーとなる。

今回の法国側は、一般兵士だけで魔法詠唱者(マジック・キャスター)は居ない様だから、尚更だ。

 

「《魔法の矢(マジック・アロー)》!」

 

ドシュッ!

 

「ぎゃぁっ!?」

尚、魔導国(こちら)側には魔法詠唱者(マジック・キャスター)は普通に居たりする。

 

『覚悟なさい!』

「「「ひ…ひぇ」」」

 

ぷち…

 

そして、ダイフンボ。

…というか、アルベドの容赦無きヘビー級の踏み付けで、1度に多数の法国兵が潰される。

 

「チィッ!」

そのダイフンボを見て、俺とモモン(パンドラ)と睨み合いをしていたルーファウスが、アレの撃破を優先したのか、俺達との戦闘を放棄というか放置。

ダイフンボの方に飛んで行き、 

「神の一撃!《雷霆(ゴッド・サンダー)》!!」

 

轟ッ!!

 

聖属性を付与した雷撃を放つが、生憎ダイフンボはメタル仕様。

残念だが魔法は通じない。

 

『蚊とんぼがぁっ!』

「!!」

 

ぱぁんっ!

 

『ちぃっ! ちょこまかと!』

それに対して、ダイフンボがルーファウスを叩き潰そうとするも、ルーファウスは その掌の挟み込みを回避。

 

「そらそらそらそら!」

 

斬っ!

 

因みにブレインは、最初からルーファウスとの戦闘は無理…というか邪魔だったので、一般兵士相手に無双してもらっている。

そして俺も、相手が居なくなったので、パンドラ(モモン)を指揮役として後方に控えてもらった上で、 

「ジャベリン・レイン!」

 

打々々々々!

 

「「「「ぅぎゃゎぴーっ?!」」」」

一般兵達が戦っている中に交ぜてもらう事に。

 

≫≫≫

「「「「う…」」」」

「「「「「がが…」」」」」

本来なら、もう少し数を用意するべきだった…が、今回のスレイン法国の目的は虐殺侵略等で無く、あくまでもンフィーレアを迎え入れるという名目の拉致。

しかも、秘密裏に進めていた計画なので、進攻として最小限の人員しか揃えなかったのが、連中の最大の失敗。

此方はデミウルゴスからの報せにより、それを踏まえた"歓迎準備"をしていたのだ。

しかも、覇王炎莉将軍閣下(笑)が異様に殺る気を出して…そりゃ自分の旦那(しかも新婚)が拐われるとか聞いたらキレるわなw…その結果が、この死屍累々だ。

そして魔導国兵やゴブリン軍団は、僅かに軽傷者が居る程度。

 

「くっ…我が兵達が…!」

その惨状に、顔を歪めるルーファウス。

ダイフンボの攻撃を避けながら、魔法や武器で攻撃をするが、ダメージは与えられない。

 

「…ならば!」

 

カッ…!

 

『む?』

『え?』

『あ…』

『ぅゎあ…』

此処でルーファウスが、奥の手?を披露。

しかし それはメタ的に絶対に やっちゃイケないヤツだった。

…そう、変身&巨大化だ。

サイズはダイフンボと同等。

顔や身体付きは女性の面影を残すも、金属か鉱石かを思わせる無機質な感じとなった、隻腕片翼の異形天使だ。

 

『死ね!』

 

轟ッ…ドンッ!

 

『『『『ッ!?』』』』

その変身ルーファウスが、自身の体に雷…さっきの超・雷撃を落とし、それを纏わせての体当り。

どうやら これは、『貫通』の効果が付与されていた様で、ダイフンボにも それなりにダメージが通ったみたいだ。

…が、ダメなんだよ。

 

カッ…!

 

『クゥェエ~ッ!』

『な…????!!』

ルーファウスの死角となっていた、村の正面門から飛び出してきたのは、金色の光を纏った(ドラゴン)

それがルーファウスに直撃すると、(ドラゴン)は その体内に潜るかの様に、その身を消す。

 

「…取り敢えずは、『元の姿に戻りなさい』。」

その後、(ドラゴン)が飛んできた方向から、聞こえる声。

 

『……………………。』

  

シュゥ…

 

それに従うかの様に、ルーファウスは変身を解除して、元の姿に戻り、動かなくなる。

 

「これで、落着ですね。」

そう笑顔で言ったのは、白地に金龍の刺繍が施されたチャイナドレス…世界級(ワールド)アイテム傾城傾国を着たユリたん♡だった。

  




ルーファウス…アブディエル(真メガテンⅤ)
変身ルーファウス…バアル・アバター(真メガテンⅢ)
…のイメージで。
関係無い話だが、作者はアブディエルより女禍派です。(笑)
 
≫≫≫
 
【次回予告】
 
◆まろんside◆
ん! やっぱり傾城傾国みたいなアイテムは、ユリたん♡みたいな美人さんが着るに限るな!
枯木みたいなバ〇アに着させるモンじゃ、断じて無い!
ましてや生足を曝すなんて、見せられる方が罰ゲームだ!
…因みにユリたん♡には、傾城傾国の下に きちんとタイツを着用して貰っているぞ。
…って、おい、其処のブーイングしている お前。
当ったり前だろうが!
ユリたん♡の生足(ふともも)は、俺だけのモンなんだよ!
 
 
次回『モモンガさん出陣!(予定)』
乞う御期待! 感想もヨロシクだ!
 
▼▼▼
今回が今年 最後のアップか、もう1回位アップするか…
 


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聖地

 



▼▼▼

 

ドッドォーーーーーン!!!!

 

「「「「うわぁぁーーーっ?!」」」」

「「「「きゃぁあーーーっ!?」」」」

 

スレイン法国にて、神都に次ぐ第2の都市、サイドシーソ。

神都が崩壊している今、事実上 此処が、スレイン法国の最重要都市と言って良い。

実際、生き延びた神官や六色聖典達は、現在は この都市に移っていた。

そして今、此処は数多の異形の集団に攻め入られている。

何の前触れも無く、いきなり出現した、純白の全身装甲に純白の翼…"天使"の軍勢にだ。

 

 

何故、神の遣いである天使が私達に攻撃する?

 

我々は、神の怒りを買ったのか?

 

嗚呼、神よ!

 

 

完全にパニックとなり、火の海となった街を逃げ惑うスレインの民。

 

「クソ!」

「怯むな!」

この天使達に対応しているのは、六色聖典の中で戦闘に特化している火滅聖典と陽光聖典。

 

「うーむ。やはり、陽光聖典の召喚天使とは少し、違うな…」

「そんなのを気にしている場合ではないでしょうに!」

「魔導国の不条理な侵攻を受ける この国の中、それでも未来の勝利を信じて生きる人々の、ささやかに残された平和を!

むざむざ お前達に壊されてたまるか!

来るがいい、天使共! 追い詰められた人間の力、見せてやる!!」

そして、"新生"漆黒聖典。

 

≫≫≫

「疾ィッ!」

髪の毛を白と黒、左右2色に分けた、見た目は10代前半~半ばの少女が戦場を駆ける。

漆黒聖典最強…ルーファウスを除けばスレイン法国最強とされてい漆黒聖典番外席次・絶死絶命。

 

「やぁあっ!!」

 

斬!

 

彼女の振り回す巨大な処刑鎌(デスサイズ)が、天使の首を狩り、身体を上・下半身に分断していく。

 

「ふん! 賢しい!」

そして この天使の集団と交戦している、もう1つの一団。

赤橙のスーツに銀の尻尾。黒い嗤い顔の仮面を被った悪魔。

何時の頃からか、ヤルダバオトの名で法国中枢に食客として潜っていたデミウルゴスと、その配下の悪魔の集団だ。

都市に攻めてきた天使から、悪魔が それを護る。

それは神を崇める宗教国家からすれば、この上無く異様な光景だろう。

斯くして この天使の集団は都市に大きな傷跡を残すも全滅、撃退されたのだが…

 

≫≫≫

 

◆デミウルゴスside◆

「な…何故だ? 何故、天使が この国を?!」

「ルーファウス様も行方知れずだし…」

「魔導国やエルフ共の対処にも、大変な時に!」

 

…愚かですね。

あの天使の軍勢、アインズ様の…正確には、アインズ様に変化したパンドラズ・アクターの…魔法による召喚ですが、頭の硬い神官達は未だ、それが理解出来ていない。

アンデッドが天使を使役出来る筈が無い…その根拠無き思考から、これがアインズ様による物だという事実に至れない模様。

ええ。アインズ様が疑われないのは、非常に善い事ですが。

 

「…魔導王様の言う処の、『無辜の民を虐殺した』神罰なのでは?」

「ば…馬鹿な…?!」

「何を言うか! あれは…」

「貴方々が如何に それを『正義の為』と謳おうが、神が そうだと認めなかった…からではないでしょうか?

『リ・エスティーゼ王国を滅ぼすのは、別に問題無いが…』と、魔導王様達も仰有っていたのでしょう?」

「「「「ぐ…!」」」」

尤も それでは それで、そう思って頂いた方が、好都合ですがね?

 

「…それで、どうするのです?」

「う…こ、こうなったら もう、"聖地"に…」

「我々…いえ、貴方々だけで?

一般の民を、見捨てて…ですか? やれやれ、本当に大した指導者ですね。

天使による破壊行為で、民の不安・動揺は最高点ですよ?」

「「「「「…………………。」」」」」

まあ、私は どちらでも構いませんが?

その時は この()()()()()()()()()()()()()()だけですから。

 

 

『中々に良い…面白いじゃないか。』

『最終の決戦の場は聖地。これは燃える展開ですね、モモンガさん!』

 

 

…はい? 幻聴?

 

≫≫≫ 

「…どーも♪」

「…………………………。」

神官達との会話の後、宛がわれた部屋に戻る途中。

廊下の壁に背を預けて…どうやら私を待っていた様ですね…いたのは、スレイン最強と云われる小娘。

 

「これは これは、番外席次殿。」

「アンティリーネ。私の名前はアンティリーネよ。

そう呼んで、構わないわ。」

「ふむ。それで、()()()()殿。

この私に、何か用件が?」

「…………………………………。

(まあ、良いわ。) さっきの戦闘だけど、貴方、私が思っていた以上に強かったわ。

そう、この私よりも、確実に。」

「それは、どうも。」

「そ・れ・で・どう? 私と子作り、してみない?」

「…はひ?」

…………………………………。

何故に そういう展開になるのか、訳が解らないのですが…?

 

 

『『『『たっちさん、コイツです。』』』』

『よし、逮捕だ。』

 

 

は…はいぃ? またも幻聴ですか?!

 

 

『たっちさんたっちさん。ついでにコイツも逮捕、お願いします。』

『了解しました。』

『何で?!』

 

 

………………………………………。

 

 

◆デミウルゴスside・了◆

 

▼▼▼

 

◆まろんside◆

はい! そんな訳で、聖地に到着しました!

聖地…早い話が、ユグドラシルから転移した、六大神の内の誰かのギルド拠点(ホーム)

 

「とりあえずはスルちゃんの拠点じゃ、なかったか。」

前に捕まえた漆黒聖典の奴等から、そういう場所の存在は知らされていたが、それが具体的に元々 誰の拠点だったか、何処に在るのか等は、分からずじまいだった。

尚、ユリたん♡によって、洗脳されたルーファウス。

あの傾城傾国による洗脳は『此方の命令通りに動く』事は出来ても、『此方の質問に応える』みたいな事は不可能な仕様だったみたいで、情報の収集は出来なかった。

しかも、洗脳状態ではニューロニストやタブラさんに変化したパンドラによる、()() ()()()()()()な方法も無理だった模様。 

しかし今回、法国の神官達が その場に逃げ込んだ際、同行していたデミえもんが転移の登録(マーキング)をしてくれたので、簡単に足を運ぶ事が出来たのだ。さすデミ!

 

「成る程…」

「此れが…」

水晶の繭(クリスタル・コクーン)

外装は透明度が失われる程の、厚い水晶の造り。全体から淡く白い光を放つ、ドーム状の巨大建造物。

よ~く見てみれば、(コクーン)の名の通り、水晶素材の糸を、幾重に紡いで形成されている様だ。

俺の黄金闘衣と同じ感じだな。

 

「「ぅう…」」

「「「…………………っ」」」

その入り口前で蹲っているのは、この聖地の守護の役割を与えられている、ナントカ聖典の皆さん。

…と言っても、俺達の敵では無かった訳だが。

 

「殺さなくて、良いでありんすか?」

止めを刺さない事について…それでも数人●しているが…シャルティアがモモンガさんに尋ねるが、

「どうせ、既に動けない身だ。

殺すのは何時でも出来る。残された生の時間、精々 絶望を味わって貰う…それだけの話だ。」

「成る程…! 流石は、アインズ様!」

…らしい。

この言葉に、シャルティア他、同行していたシモベ達も納得と感動。

少し前、『精神が人間寄りになったかも』とか言っていたモモンガさんだが、その根底は以前、死の支配者(オーバーロード)の儘。

人間にも情を見せるというのは、あくまでも王として…自身の民に限られた話な様だ。

 

「…それでも かなり、マシな話だけどな。」

「…?? まろんサン?」

「何でもないさ…行こう、モモンガさん。」

 

≫≫≫

「《爆裂(エクスプロージョン)》!」

 

弩っ轟ぉーーーーーーんっ!!

 

水晶の繭(クリスタル・コクーン)の扉は、硬く閉ざされていた。

魔法による施錠(マジック・ロック)だ。

それならば、解呪すれば良いのだが、モモンガさんの選んだのは無理矢理(チカラワザ)

魔法による、ど派手な扉の破壊。

もう、秘かに進入なんて考えは まるで無く、寧ろ堂々と自分達が やって来たのを伝えるかの構えだ。

この辺り、流石はDQN of DQNギルド、AOG(アインズ・ウール・ゴウン)(注:誉めてる)。

 

「さあ、(みち)は開かれた! 行くぞ!」

参考迄に、今回のメンバーは…

 

・モモンガさん

・俺

・シャルティア(with花嫁さんズ)

・コキュートス

・セバス

・ユリたん♡(with洗脳ルーファウス)

 

…の小数精鋭。

って、モモンガさん以外、前衛しか居ないじゃん。

しかもユリたん♡…と言うかルーファウスは切り札として、後方で待機。

セバスは その護衛役。

モモンガさんは大ボスだから、後ろに ずっしり控えて貰うとして、実質な攻撃役(アタッカー)は、俺とシャルティアとコキュートス。

そしてデミウルゴスも、此処一番の場面(タイミング)で正体を明かし、此方側に着いて貰う予定。

敵の懐に入るので、各自(護りの意味で)モモンガさんから渡された何かしらの世界級(ワールド)アイテムを持っている。

ユリたん♡はルーファウスを連れ出す理由から、傾城傾国を着用。

そもそも、ナザリック内で傾城傾国の適性が有ったのが、ユリたん♡とマーレだけ。

必然的に、ユリたんが これを着用している…まさかマーレにチャイナ、着させる訳には行かないよな?…需要有る?有る?

それと、多分ンフィーレアも着用(しよう)可能だと思うが コッチも…閑話休題!

因みに俺は、自前の"反世界の腕輪(ブレスレット・オブ・アンチワールド)"を装備。

これは、単に他の世界級(ワールド)アイテムの干渉を受けない…他には特殊効果は何も無い、少しだけ防御力や属性耐性が高いだけの装飾品系アイテムだ。

しかし これさえ有れば、聖者殺しの槍(ロンギヌス)の自爆特攻や傾城傾国の洗脳みたいな凶悪な効果も、完全に無効化(キャンセル)出来る。

 

「ユグドラシルのギルド拠点。良いですね。

凄い お宝が沢山 眠っている…そんな予感がしませんか?」

水晶の繭(クリスタル・コクーン)を前にして、何やら嬉しそうに話すモモンガさん。

ンフィーレアを拉致って使わせようとしたアイテムや、ギルド武器なんかも残っているだろうしね。

…って、もしかしてモモンガさん、御宝泥棒(そっち)をメインに考えてません?

 

  

◆まろんside・了◆

 

≫≫≫

 

◆モモンガside◆

「な…何なのだ?」

「今の爆発音は?!」

 

ドタドタドタドタ…

 

扉が破壊された爆音に呼応するかの様に、神官達を守るべく、この聖地に帯同していた法国の兵士達が駆け寄ってきた。

 

「な…?」

「アンデッド!?」

「まさか、アレは…魔導王か?!」

「魔導国!!」

そして俺の姿を見て、俺達が何者かを察した模様。

 

「くっ…この聖地に迄、攻めて来るとは!」

「掛かれっ!」

 

ダダッ…!

 

数の優位性か、俺達に怯む事無く突進してくるが、

「ふんっ!」

「哈ッ!」

「うるぁっ!」

「…で、ありんす!」

 

バキィッ!

 

一般のモブ兵士相手に、此方が遅れを取る筈も無く。

 

「「「「うぎゃぁあ~っ!!?」」」」

 

グシャァッ!

 

次々と天高く吹き飛ばされ、頭から地面に激突する法国兵の皆さん。

 

「「「「ぐぐ…」」」」

因みに こでの戦闘での敵死亡率は、4割程度かな?

 

「よし、片付いたな。」

「それでは、先に進むでありんs

「待て! 邪悪なるアンデッドの一団よ!

此処から先には進ませんぞ!

この漆黒聖典・戦竜王j

「アロガント(からの)神威!!(怒)」

 

ガキィッ…ダダァンッ!!

 

「 」

そして いざ、聖地内部に入ろうとした時に新手が。

しかし この男は名乗り終える前に、まろんサンの対人では最強最凶の必()()技によって瞬殺絶命。

 

「まろん様…()()()()()()()()()のですね。解ります。」

 




戦竜王j…ラーズ・ウル・メタ=リカーナ(BASTARD!!)のイメージで。
因みにラーズの声優さんは、松岡さんデス!www
 
アロガント→神威…アロガント・スパーク(天)から神威の断頭台に繋げる、超・虐殺の必殺技。
 
≫≫≫
傾城傾国による洗脳効果の範囲は、小説オリジナルで。
 
≫≫≫
今回の特別ゲスト?…たっちさんウルベルトさんエロ鳥さん
 
 
▼▼▼
次回『番外席次:絶死絶命!(予定)』
乞う御期待! 感想よろしくです。
 


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番外席次:絶死絶命!

 
【今回の予習】
刃投冥土…十六夜咲夜(東方シリーズ)
関節恐慌…音速のソニック(ワンパンマン)
…のイメージで。
 
今回は、ギャグ回?
 


◆まろんside◆

スレイン法国の上役が"聖地"と呼んでいたユグドラシルのギルド拠点は、ナザリックや白い匣(ホワイト・ホーム)同様に内部を魔改造(リフォーム)されている様子だった。

壁床天井が不気味に脈打ち蠢く、まるで生物の体内の様な肉々感溢れる迷宮層を抜けると、

「しかし、全然イメージが違いますよね。」

…それな。

出てくるモンスターは殺戮機械(キラーマシン)系ばかりだったからな。

 

「臓器や肉塊みたいなモンスターも、勘弁して欲しいですが…」

…兎に角そんな、キモい造りの迷宮を抜けると、今度は鉱石造りな城の内部の様な階層(フロア)に。

 

「遂に此処まで…来ましたか。」

その広いエントランスの様な場所で待っていたのは、銀髪のメイドさんだった。

 

「名乗らせて頂きます。

漆黒聖典・刃投冥土と申します。」

…………………………!!?

しかも このメイドさん、ユリたん♡と同等の…いや、違う…! アレは…

 

≫≫≫

 

ズパァッ!

 

「きゃぁぁあああっ!!」

 

…勝負は一瞬だった。

刃投冥土なるメイドさんが、何処に仕舞っていた?…と突っ込みたくなる程な多量のナイフを弾幕の様に投げ付けてきたが、それをシャルティア&花嫁さんズが前に出て冷静に対処、その全てを薙ぎ払った。

シャルティア、前回の恐怖公との作戦(ミッション)をギャン泣きで拒否した汚名を返上しようと今回はヤる気満々。

そして次の瞬間、一瞬にして距離を詰めたシャルティアが右の小指、その1本だけ爪を鋭く伸ばしての斬撃。

これにより胸元を斬り裂かれたメイドさん。

その斬り口からは、夥しい程の血…でなくて、

「………………………………。」

多量の詰め物(PAD)が ばら撒かれ、宙を舞う。

やはり! あのメイドの胸、巨乳でなくて虚乳だったか!

俺の目は誤魔化されないぞ!

スイカップ・スキー舐めんな!

…て、ユリたん♡?

心配しなくても、俺はユリたん♡以外の女の下着とか裸とかには、全く興味無いから。

だから目隠しするの、止めてくれるかな?

 

「「「「「…………。」」」」」

「ぇーと、ごめんなさい…で、ありんす?」

そして何とも表現し難い空気が、場を支配する。

涙目で怨めしそうに此方を睨む彼女に対して、流石にシャルティアも 気持ちは理解出来、 これは自分が悪いと思ったのか、素で謝ったり。

 

≫≫≫

あの刃投冥土は幸いと言うべきか、あのPADが結果的だが防具の役割を担っていた様で、身体には殆んどダメージを受けてない様だった。

 

「精神的にオーバーキルですけどね!」

その通り。

『止めたげて! 彼女のMP(メンタルポイント)は もう0よ!』とばかり、完全に戦意を失った彼女をスルーして、俺達は更に先…スレイン法国のトップ、大神官が居るであろう最奥を目指すのだった。

 

 

◆まろんside・了◆

 

▼▼▼

 

◆デミウルゴスside◆

「「「「………………。」」」」

水晶の繭(クリスタル・コクーン)の最奥、中枢の間。

現在 私は神官共と、この地に攻め入ってきたアインズ様達の様子を窺っています。

はい。この拠点には監視の機能は無く、スレイン法国の巫女でしたか?…の"眼"とやらも、それは神都の神殿でしか使えないとの事で。

仕方無く、私の使い魔を放ち、彼等の眼に映る光景を、魔水晶に投影するという形を取っております。

ああ、勿論アインズ様達には、了承頂いておりますよ?

そして先程迄、まろん殿と漆黒聖典・関節恐慌なる人間が、戦闘を繰り広げていたのですが、これは流石に…

まろん殿…貴方の血は、何色ですか?

 

 

◆デミウルゴスside・了◆

 

▼▼▼

 

◆モモンガside◆

シズが見ていたら、絶対に「うわぁ…」とか言っている場面だ。

この聖地の先を目指す俺達に、不意打ちで…いや、その存在は最初から気付いていたから、不意打ちとは言わないか?

兎に角、ソイツは、無数の()()()を投げてきた。

しかし そのクナイは躱したり弾いたりで、俺達の身に届く筈も無く。

武器投擲という点では、さっきのメイドの弾幕ナイフの方が凄かったしな。

そして その内の1本をキャッチしたセバスが飛んできた方向に投げ返す事で、その男…漆黒聖典・関節恐慌とやらの姿を引き摺り出す事に成功したのだ。

しかし この男…クナイの時点で まさかとは思ったが、何と『忍者』らしい。

ユグドラシルでは その(クラス)となるには、レベルや その他諸々な条件が必要だったのだが、それ等を満たしている様には見えない。

これは蒼の薔薇の忍者姉妹も同じだったが、その辺りはゲームと違い、いきなり忍者の修行をしたら…等で可能なのだろうな。

これ、弐式炎雷さんが知ったら、どんな反応するかなぁ?

あの人、忍者になるのに、結構な苦労したらしいから。

兎に角これは、戻ったら調べてみよう。

そして この男の相手をしたのが まろんサン。

まろんサンも この世界の忍者に興味を持った感じだった。

俺達に『手出し無用』と言って、戦闘が開始された訳だが、以下回想。

 

≪≪≪

「さあ、行くぞ! 金色!」

忍者を名乗るだけ有り、現地人とすれば かなりのスピードで…一応、残像が見える…まろんサンを翻弄している(つもりな)関節恐慌だが、まろんサンは冷静に その動きに合わせて、カウンターとばかりに拳を前に出した…パンチを放ったとかじゃない、相手が まろんサンの突き出した拳に、勝手に ぶつかってきたのだ。超スピード(笑)で。

 

「£☆§@◇▲〒→←⊆∀≡~?!!」

「あ…」

しかし、その拳が直撃した先が、所謂"漢"の急所だった。

もう1回言うが、決して まろんサンは狙った訳では無い。

向こうから ぶつかってきたのだ。超スピードで。

 

≫≫≫

「あのさ…お前、もう無理だろ?

先に行って良いか?」

 

そして、現在(いま)

 

ぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷる…

 

余りのダメージに、内股で全身を小刻み ぷるぷる振るわせて、半泣き顔の関節恐慌に、まろんサンが戦闘の中止を呼び掛ける。

 

「くっ…!」

関節恐慌も まろんサンを睨み付けるが、これ以上の戦闘は不能と自覚しているのか、「まだ戦れる!」とかイキる事は無い。

これで、「俺を殺さなかった事を、後で悔やむが良いわ!」とか言っていたら、期待に応えてやる処だが、そんな様子も無いので俺達は この忍者には これ以上 関わらず、先に進むのだった。

 

 

◆モモンガside・了◆

 

≫≫≫

 

▼▼▼

「まさか!? 刃投冥土に続き、関節恐慌までもが?!」

魔水晶に映るモモンガ達魔導国勢の進撃に、大神官は驚きを隠せない。

 

「クス…所詮は急造で集めた連中。

"漆黒"を名乗るには、余りにも実力が不足しているわ。」

「成る程。つまりは所謂、『漆黒聖典になれたのが不思議な位の雑魚』…そういう事ですか?」

「ええ。そうよ。」

それに対して不敵な笑みを溢し、まるで他人事の様に言っているのは漆黒聖典番外席次・絶死絶命。

ヤルダバオト(デミウルゴス)の問い掛けにも、同様に応える。

 

「な、何故お前…達は、そんなに冷静で居られるのだ?!」

「それは、最初から私の出番が来るのが、分かっているからよ。」

「私としては、あの様な未熟者達を魔導王様に各個で差し向ける事に、疑問だらけです。

せめて集団で当たらせれば、まだ勝率は上がった物を。

…本当に、数値の上での、僅かな話ですがね。」

その危機感の皆無な会話に、大神官は憤慨するが、それすら2人は平然と流すかの様な対応をするのだった。

 

▼▼▼

 

◆デミウルゴスside◆

「し、しかもだぞ!? 奴等、ルーファウス様を!?」

「どうやら、洗脳されていますか?」

「それは、分かっている!

奴等、後ろ側を歩く あの女!

アレが着ているのは、我がスレイン法国の秘宝の1つ、ケイセケコウク!

どうして奴等が、アレを…」

情けない。仮にも、国家のトップに座す者でしょう。

もう少し、堂々として欲しい物ですね。

 

「…以前、アレを所有していた者が、魔導国領域に入った事は?」

「っ………………………………。」

「成る程、そういう事ですか。

その時に、奪われたのでしょうね。」

はい、知っていますがね。

 

「さて…私も そろそろ、持ち場に行くわ。

素通りされたら、笑えないからね。」

そんな会話の中、絶死絶命が、部屋を出ようとする。

 

「待ちなさい。私1人をこの御老体の中に残しても、大丈夫なのですか?」

「ふふふ…アナタは魔導王以外には、興味が無いのでしょう?

それに、もしも私が この場で戦うとしたら おじーちゃん達、確実に巻き添えで死んじゃうから。」

私の質問に、笑って答える絶死絶命。

これは ある意味、信用されていると思って良いのでしょうね。

あの大天使様(笑)とは大違いです。

 

「クス…()()()()()()()()()のかな…♪

出来れば あの、金色鎧の人かな?

あの人も、かなり強いのが分かる。

あの人なら、私に敗北を教えてくれるかも…

もし そうなら、子供を孕んであげても良いかな?♡」

「「「「……………………。」」」」

その台詞に神官共が唖然茫然する中、絶死絶命は この部屋を出て行った。

やれやれですね。先日、私に子作り云々と言ってきて…勿論 丁重に断りましたが…と思えば、次は まろん殿ですか?

………………………………………。

たっち・みー様、このヒトです。

 

 

◆デミウルゴスside・了◆

 

▼▼▼

 

◆まろんside◆

「いやいやいやいや! 俺にはユリたん♡が居るから!」

「「「「「まろんサン?」

        様?」」

        殿?」」

「…いや、すまない。何でも無い…。」

……………………………。

何故だかは解らない。

しかし、何故か そう叫ばないといけない気がしたんだ。

いきなりの叫びに、モモンガさん達も心配そうに…特に名前を出されたユリたん♡は、何が有ったのか、解らない感じだ。

…って、

「此処で…ですか?」

モモンガさんが呟く。

肉迷宮から城みたいな階層となってからは、殆んど一本道だったのが、入った部屋の向かいの壁には4つの扉が。

部屋自体には何も無い、空っぽの空間だ。

 

「これはゲーム(ユグドラシル)的に、『其々別れて進め』ってヤツですか?」

「みたいですね。」

 

≫≫≫

4つの扉…4つの分岐に対して、此方は6人(洗脳ルーファウス数えない)。

それなら、誰か2人(ペア)が2組、1人(ソロ)が2組となり、其々の扉から先に進むのが定石な筈。

だったら、俺とユリたん♡がペアを組むのが普通だろうが!?

…それをあの骨、『いえ、今回は最初から、ユリとセバスを組ませるのが決まってましたから』とか、『敵地でバカップル・オーラ発散全開するのは流石に失礼過ぎます』とか言ってきやがった!

 

バキッ!

 

…そんな風に思いながら、コレはデミウルゴスの管轄下だな…の悪魔系モンスターを蹴散らしつつ、どんどん進んだ先には、今迄には無かった立派な装飾の大扉が。

 

ギギィ…

 

「わぁ♪…大当たりだわ♡」

「…………………………………。」

その先、其処に居たのは髪の毛白黒ハーフ&ハーフの小柄な女。

部屋に入った瞬間、俺の顔を見て、何やら嬉しそうに話す。

あの特徴過ぎる髪…どうやら この女がスレイン最強、絶死絶命か(デミえもん情報)。

 

カチャカシャ…

 

そして、何故か その手には、懐かしのルービック・キューブが。

余裕なのか、俺が敵なのを知っている上で…一応 警戒はしている様だが…玩具(キューブ)で遊ぶ女。

 

カチャカシャ…カシャ…

 

少し経つと六面体を弄っていた手が止まり、俺に どや顔で

「どう?♪」

色が2面揃った、キューブを見せてきた。

 

「……………………………………。

貸してみろよ。」

「…は~い。」 

俺の台詞に、絶死絶命が ぽーいっとキューブを投げ渡す。

それを手に取り、

 

カシャカシャカシャカシャカシャ…カシャカシャカシャカシャカシャ…

 

「どうよ?」

「………………………!!!!??」

時間にして約4分。

()()()()()()()()()キューブを見せてやると この女、目を点にしてんの。

 

「どやぁ!…するなら、これ位は やらないとな。

因みに上級者は、俺より もっと速い時間で仕上げるぜ?」

「な…?!」

ふっ!…2面揃えた程度で どやってんじゃねっての!

 

「さあ、遊びは終わりだ。

どうせ『この先に進みたいなら、この私を…』なんだろ?

…ほらよ。」

 

ぽーい…

 

そう言って、凄く恥ずかしそうな顔のオセロ髪女に、キューブを投げ返す。

 

「クス…物分かりの良い男は、嫌いじゃないわよ♡」

すると、それを受け取っての この台詞。

切り換えは早いタイプな様だな。

でも ごめん、俺にはユリたん♡が居るんだ。

 

≫≫≫

「…くっ!」

その後の戦闘。

スレイン最強と言っても、所詮は現地人。

確かに今迄の奴等とは、桁違いに強かった。

プレアデスよりはレベルが上な様だが…結果論だが、ユリたん♡と一緒しなかったのは正解だった…それでユグドラシルのガチ・カンスト勢に敵う訳が無い。

守護者でも圧倒出来るレベルだ。

但し、俺も少しだけ本気を出したけどな。

コイツが戦闘開始と同時に換装した装備…

それはユグドラシルのアイテム、風神の鎧と…って、ひょっとして()()()も六大神やったんかーい!?…そして何と、スルシャーナ(スルちゃん)が愛用していた処刑鎌!

まさかのユグドラシル・プレイヤーのガチ装備で固めて、攻撃してきたのだ。

 

「どうした? もう終わりか?」

(マスク)を割られて素顔剥き出し、両掌両膝を着いて俺を見上げる絶死絶命に、一応の問い掛け。

コイツは さっきのニンジャ(笑)と違い、絶対に敗けを認めるタイプじゃないだろうからな。

戦闘の最中、侵略者(オレ)に対しての、自国を護ろうとする気構えは、真剣その物だった。

まだ戦う気なら、その時は仕方無い。

例え女相手だろうが、敵には躊躇無く…だ。

 

「クス…クスクスクスクス…」

「…………?」

そう思い、気を緩めずに相手の出方を窺っていると、この女は不意に笑いだした。

殺気等は感じない。

 

「凄いわ!…これ程なんて、想像以上の強さ!」

…はひ?

 

「コレが…敗北という感覚…!

流石は ぷれいやー様…かしら。何て素敵!」

………………………………………。

 

「貴方との間なら、強い子供が出来るわ!

どうかしら? 私を孕ませる気は無い?

子作りの過程をきちんと こなしてくるなら、途中で何しても構わないわよ?♡

大丈夫。貴方に迷惑は掛けない。

子供の面倒は、全て私が受け持つから。」

……………………………………………………………………。

あー、成る程。そういう事ですか。

このコ、アカン方向に強さを拗らせているタイプだったか。

 

「♡♡♡♡♡」

しかも この頬を赤くしての惚けた表情…

ん、このコ、マジだ。

だが、当たり前だが それを受け入れる事は出来ないな。

「無理です」ってハッキリと言わないと。

…だから たっちさん。その手錠、仕舞って下さい(幻覚&幻聴)。

 

「誠に申し訳無いが、俺には(スイ)カップの奥さんが居るから、その話を受ける事は出来ない。

それに仮に、俺が独り身だったとしても、せめてFカップ位は…」

 

ぶちぃっ!!

 

…え? 今 何か、凄い音が聞こえた気が!?

 

…殺す!!

そして先程迄、少し色ボケしていた感の絶死絶命の表情が、夜叉の如く豹変。

え゙? 俺、何か やっちゃいました?

  

ゴォーン…

 

そして その背に金の針、金の文字が刻まれた時計盤を浮かび上がらせた!?

 




【虚乳(きょにゅう)】…虚構の乳の意。
事実では無いのに、例えばPAD等を仕込んで事実らしく作り上げた、偽物の おっぱいの事
 
 
≫≫≫
すいません、次回は真面目に戦闘します(多分)。
 
次回『絶死絶命② ~The goal of all life is death~』
乞う御期待!感想よろしくです。
 
▼▼▼
前々回の後書きで、『今年はコレで最後か もう1本かな?』みたいな事を書いてましたが、結局アレから2本もアップしてしまった件(笑)
今回で本当に、今年は最後の投稿です。
それでは良い お年を。
 


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絶死絶命② ~The goal of all life is death~

  
明けまして おめでとうございます!
 
≫≫≫
 
【今回の予習】
鹿屍討伐…バンビエッタ・バスターバイン(BLEACH)
黒羽蝶人…蝶野攻爵(武装錬金)
…のイメージで。
 
≫≫≫
オリジナル設定・解釈、入ります。
 


▼▼▼

まろんが絶死絶命と戦っていた頃…

 

◆セバスside◆

「…もう、良いでしょう?

貴女では私共を倒せませんよ?」

「…ぐぅっ!」

アインズ様達と別れて進んだ先。

途中、何体か天使型モンスターを屠りつつ、辿り着いた大部屋にて対峙したのは、漆黒聖典・鹿屍討伐と名乗る女性。

ユリが連れていた法国最強天使を見て少し驚きながらも、我々に攻撃を仕掛けてきました。

…しかし残念ながら、我々と戦えるレベルには、ほど遠かった訳ですが。

 

「畜生おぉぉぉッ!!」

ズタボロな姿で私達を怨めしそうに睨み、絶叫する鹿屍討伐。

それでも最終的には彼女も潔く敗けを認めてくれた為、不要な血を流す事も無く、先に進めたのでした。

 

 

◆セバスside・了◆

 

▼▼▼

 

◆モモンガside◆

「畜生おぉぉぉおぅッ!!!!」

「ア…アインズ様?!」

皆と別れて…俺は護衛としてコキュートスを連れた先に入った大部屋。

ユグドラシルのモンスター…恐らくは この拠点(ダンジョン)の自然沸きと思われるが、それ等を退けながら入った其処に居たのは、この拠点NPC。

黒のタキシードに白黒ハーフ&ハーフの仮面を着けた、人型の悪魔だった。

…人間至上国家も、プレイヤーのNPCなら悪魔でもアリなのか?

結局ソイツは、コキュートスが大苦戦の末に倒したが、問題は その後。

その身が消失したかと思えば、その代わりに宝箱が現れた。

戦利品(ドロップアイテム)か?…と思い、宝箱を開け…る前に、(トラップ)の有無を確認。

結果、有ったし。

戦闘中も やたらと…直接に戦っているコキュートスだけで無く、俺にも…と言うか、コキュートスには煽るネタが大して無かったのか、特に俺を煽ってきた この悪魔の性格(キャラ)…正確には、それを設定して創ったプレイヤーからして、そんな気はしていたんだ。

てゆうか! 何でユグドラシルから この世界に転移したばかりの時の、アルベドの胸を触った事をお前が知ってるんだよ!?

しかも、その際のテンパり噛みっ噛みな台詞まで一言一句、忠実に再現しやがって!

まろんサンは以前、スルシャーナは結構 軽い性格とか言っていたが、八欲王程じゃ無いにしても、六大神も意外と()い性格だったと断定。

兎に角 開けた途端、『老化』のバッドステータス附与(俺には効かない)や《爆裂(エクスプロージョン)》等が発動する(トラップ)が仕込まれており、それ等を解除して、改めて宝箱を開けてみると…

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

…中には この紙切れが、1枚だけ。

畜生おぉぉぉおぅッ!!!!

いやマジ巫山戯んなよ?!

宝箱に あれ程な(トラップ)仕掛けてるなら、中身は王道にレア物とか入れとけよ!

ゲーマーとしての最低礼儀だろ?

AOG(オレたち)ですら、それは やらなかったぞ!…『罠を解除して蓋を開けたらミミックだった件w』とか、確かに考えたりはしたけど! 特に俺とかウルベルトさんとか るし★ふぁーが! …でも、結局やらなかったし!

運営か? 実は このプレイヤー、クソ運営か?!

クソ!クソクソクソクソクソォッ!!

流石にコレは、読めなかったぞ!…後から考えたら、あの人をおちょくる様な態度からして、読むべきだったけど!

 

「ァ…インズ様…」

「す、すまない…少し取り乱し過ぎた…」

コキュートスが心配そうに此方を窺う中、ブチギレと精神鎮静を何度も繰り返し、漸く完全に落ち着きを取り戻した後、この場には もう用は無いと、先に進むのだった。

…クッソッ!

 

 

◆モモンガside・了◆

 

▼▼▼

 

◆シャルティアside◆

アインズ様達と別れた後に、程無く進んだ先の部屋。

部屋一面に舞っていたのはユグドラシルのモンスター、妖揚羽(パピヨン)の群れ。

 

「…敵と云え、中々に良いセンスでありんすね。」

「それは、どうも♡」

そして、それを操っているであろう、黒揚羽の仮面に、お洒落な衣装を纏った細身の若い人間(オトコ)でありんした。

 

「その衣装に免じて、抵抗しないなら殺さずに素通りしても良いでありんすよ?」

あの仮面…デミウルゴスからの情報によれば、この人間は漆黒聖典の1人、黒羽蝶人…の筈?

只、デミウルゴスが言うには、服装のセンスは有り得ないと言っていたから、もしかして違うでありんすか?

 

「ふん…っ!」

しかし この人間、私の情けを無視するかの様に、妖揚羽(パピヨン)を数羽、此方に飛ばしてきたでありんす。

 

パァァ…

 

黒い鱗粉を大量に ばら蒔くパピヨン。

しかし、生憎でありんすね。

私にも、吸血鬼の花嫁(ヴァンパイア・ブライド)にも、毒は効かないでありんs

 

ドッカァーーーーーーン!!

 

「「「「!!?」」」」

しかし鱗粉(どく)を振り払った瞬間、それが爆発を起こしたでありんす?

 

「はっはっは! まさか その鱗粉を、毒か何かと思っていたのか?」

いや…まさか、黒火薬とは、少し意外でありんした。

立ち込める黒煙の向こう側、恐らくは どや顔全開で笑っているであろう人間。

しかし、爆発(それ)も私達には大して効いてないでありんすよ?

確かに少し…少しだけ驚いたのは、否定しないでありんすが、それだけでありんす。

 

 

「…それで、もう終わりでありんすか?」

「な…?! ば、馬鹿な!?」

煙が晴れた後、殆んどダメージを負ってない私達を見て、先程の私以上に驚いている人間。

まさかと思うが、もしかして主の攻撃手段は妖揚羽(それ)だけでありんすか? ありんすね?

何れにしても、何時迄も この様な場所で立ち止まっている訳には行かないでありんす。

一刻でも早く、アインズ様や まろん殿と合流しなければなりんせん。

しかも この者、先程の同志と違い、情けを掛ける理由は微塵もありんせん。

衣装のセンス?

確かに人間とは思えぬ程の、良い趣味なのは認めてやるでありんすが、それだけでは生かす理由として弱過ぎでありんす。

故に、さっさと終わらせるでありんす。

 

お前は もう、用済みでありんす♡」

 

 

◆シャルティアside・了◆

 

▼▼▼ 

 

◆まろんside◆

 

ゴォーン…

 

絶死絶命の背後に出現した時計盤。

それは、スキル:The goal of all life is death(あらゆる生あるものの目指すところは死である)、通称『伊豆です』の発動の証し。

モモンガさんやスルちゃんの、切り札の1つでも有る。

…って、それを現地人が使えるのに驚きだ。

もしかして、スルちゃんの装備を持っているのに関係しているか?

そして その効果は…

 

「死ね! 《(デス)》!」

…この様な、即死系の魔法やスキルの超強化。

コイツで強化されて放たれた即死系は、耐性関係無く、確実に相手に効いてしまうのだ。

例え それが、即死系無効の完全耐性を持つ不死属(アンデッド)相手だとしても。

つまり、俺でも死ねる。

 

ゴォーン…

 

1秒毎に低く重い音を響かせる時計盤。

あの金の針が一周…12秒後に、確実な死を約束してしまう。

…かと言って、それで絶対に終わりな訳じゃない。

対処法は、幾らでも有る。

 

ゴォーン…

 

猶予は12秒。

例えば、その時間内に自動復活(リレイズ)系の魔法やスキルを、自身や他の対象に施す。

しかし俺は、そちら系の魔法やスキルは持ち合わせていない。

 

ゴォーン…

 

例えば、事前に自動蘇生系のアイテムを用意しておく。

俺も それ系のアイテムを持っていたが、今はユリたん♡に渡している。

…つまり今は、未所持だ。

これはゲーム(ユグドラシル)の仕様で、プレイヤー、NPC関係無く、1個人(キャラ)につき1つしか持てない仕組みなのだ(ギルド内での複数所持は有効)。

そりゃ1人が1度に幾つも持てたりしたら、PVPなんかでバランス・ブレイクを起こしまくりだからな。

これはクソ運営ナイス判断だ。

 

ゴォーン…

 

例えば、反射系の魔法やスキルの使用。

『伊豆です』と併せて使った魔法・スキルを反射させる事が出来れば、その効果…耐性無視の絶対死は、その儘 使用者に還ってくる。

つまり、スキル使用者の方が死ぬ。

因みに俺は、その系統の魔法・スキルは持っていない。

 

ゴォーン…

 

例えば、その魔法やスキルの効果範囲外に退避する。

しかし、『伊豆です』を繰り出せるレベルの相手に完全に逃げ切るなんて、超・スピード特化なヤツが更にスピード系バフでも盛らない限りは不可能な芸当だ。

 

ゴォーン…

 

例えば、種族、或いは(クラス)

実は、『伊豆です』でも直ぐに死ぬ事の無い種族、または(クラス)が、俺の知っている限りで1つだけ存在する。

それは死の騎士(デス・ナイト)

ユグドラシル時代にスルちゃんが検証。

その時に偶々、俺も居合わせていたのだが、一応、死の騎士(デス・ナイト)相手にも『伊豆です』併用なら、即死系攻撃は効いた。

しかし、死の騎士(デス・ナイト)は それが効いた上で、種族特性の『どんな攻撃を受けても即死する事は無く、HP1で持ち堪える』で、直ぐに死ぬ事は無かったのだ。

つまり、種族が死の騎士(デス・ナイト)だったり、その(クラス)を所得(不死属(アンデッド)種族のみ所得可能)している場合のみ、ギリギリで耐える事も可能。

しかし俺は種族は首無し騎士王(デュラハン・ロード)で、死の騎士(デス・ナイト)(クラス)も得ていない。

 

ゴォーン…

 

そして…他にも まだ在るかも知れないが、最もシンプル且つ、俺的には最後の手段。

 

 

 一 撃 必 殺

 

 

「はあ? 何なの? それ?!」

 

ゴォーン…

 

たっちさんの『正義降臨』に感動して、課金購入した効果文字(エフェクト)を背に。

 

ゴォーン…

 

それを目にして、呆気に取られた顔をした敵に急接近して繰り出すのは、

羅刹掌!

 

バギィッッ!

 

ゴォ…

  

この闘氣を纏わせた掌打で、時計盤を破壊。

そう。12秒の間に、そのスキル使用者を●すか時計盤を破壊すれば、『伊豆です』は無効化(キャンセル)されるのだ。

 

「な…?!」

「驚いている余裕が有るのか!?…雷光流転拳ッ!!

 

打々々々々ッ!

 

「きゃんっ!?」

そして その勢いで今度は闘氣に加えて、雷撃を帯びた神速の左拳打5連発。

まさか、こんな破り方が在るとは…そも攻略法の存在を知らなかったか…時計盤の破壊・消滅による動揺で、隙だらけとなっていた絶死絶命は コレをまともに受け、吹き飛んだ。

  

「…ぐっ!」

それでも この女は折れない。

撃たれた身体を無理に起こし、彼女からすれば自国を滅ぼそうとする外敵である、俺を鋭く睨み付ける。

しかし、俺のターンは まだ、終わった訳でも無い。

 

ぐにゃぁ~

 

「な…?」

次は魔力迷宮の結界を展開。

一瞬だが、目の前の景色が歪んだのに驚いているのだろうが、

「これは…結界?」

それでも、自分が結界に捕らわれた事は、即座に察した様だ。

 

「その通りだ。

安心しろ。この結界内、俺の戦闘力が倍になったり、逆に お前が弱体化する事は無い。

そして この結界は、俺自身が解除するか俺を殺すしか、脱け出す事が出来ない。」

「へぇ~?♪ そ・れ・な・ら、お前が死ね!」

そして俺の解説には、前向き(ポジティブ)な反応を。

スルちゃん愛用だった双刃の戦鎌【カロンの導き】…だったかな?…を、振り翳す。

しかしキミ、さっきから俺には全く、有効打当てられてないじゃない。

今更 接近戦なんて…

 

斬ッ!

 

…えっ?

いきなり背後から浴びせられたのは、首狙いの斬撃。

ギリギリで その気配に気付き、何とか回避する事は出来たが、伏兵?…いや、違う。アレは…

 

「まさかの、戦乙女(ヴァルキリー)だったとは…ね。」

「何だ、知ってたんだ~。…つまんないの。」

其処に居る…自信満々な顔付きの絶死絶命の傍らに立っているのは、身から装備から全身『白』な、彼女の そっくりさん。

ドッペルゲンガーじゃない。

戦乙女(ヴァルキリー)職の最上級スキル・死せる勇者の魂(エインヘリアル)で生み出された分身体。

敢えて分類するならゴーレム?…だ。

 

「死ね!」

 

斬ッ!x2

 

「おゎっと?!」

その2人掛かりで、斬り掛かってくる絶死絶命。

切り札の自信からか、2人揃っての余裕の笑みで、仕掛けてくる。

 

「え、Aが2人でAAになったぁ?」

「わゎ、私はCだぁっ!

大体、何で2人になったら更に小さくなる訳?!」

あー、はいはい。ギリギリBなんですよね。知ってます。

ユグドラシル時代より、ヴァーリ・トゥード並びAOG(アインズ・ウール・ゴウン)のギルメンから男女問わずに【測定機(スカウター)】と異名されていた、俺の目は誤魔化されない!

その俺の おちょくりに顔を赤くし、2人揃って怒りの儘の攻撃は、大振りとなり威力は増しているが、動きも大きいが為に躱すのも より容易く。

はっきり言って、余裕。

 

絶対に死なす!

しかし、ひんぬー系のキャラって、本当に この手の煽りには弱いよな。

 

 

『うわぁ…セクハラ。』

『さ、最低ですっ!』

 

 

え? シズ? 後輩ちゃん?

 

≫≫≫

「ゼィ…ゼィ…」

その後も怒濤の攻めで疲れてきたか、呼吸を乱してきた絶死ちゃん。

 

「いい加減、敗けを認めたらどうだ?

アンタなら既に、実力差も理解出来てるだろ?

そうすりゃ殺す事も無く、結界から出してやるからさ。」

俺が降参を勧めると、

「だ、誰が、貴様の様なヤツに!

ハッ…そうだ分かったぞ! 貴様、それを出汁に、私の身体を無理矢理に…」

「巫山っ戯んな、この まな板ァッ!

また、シズと後輩ちゃんが汚物を見るかの様な眼を俺に向ける、幻影&幻聴を見せる心算か?!」

「だから私は、まな板なんかじゃない!

それと ごめん。後の方は、何言ってるか分かんない。」

「喧しいわ! 大体、俺にはスイカップの嫁が居るって さっき言っただろが!

何が悲しくて、お前みたいな ぺったんk」

 

斬ッ!

 

 

◆まろんside・了◆

 

≫≫≫

 

◆絶死絶命side◆

………………………………………。

いや、少し呆気無さ過ぎない?

人に散々と煽っていながら、自分も耐性、無さ過ぎない?

このスイカップ・スキー男、あんな風に言えば絶対に怒るだろうとは思っていたけど、隙だらけになり過ぎ!

簡単に その背後から、分身体(エインヘリアル)が首を狩っちゃったじゃないの♪

クス…クスクスクスクス…

 

「きゃははははは!♪

ざまあ! 人の事、散々と貧乳扱いしてくれた報いよ!

大体あんなの、只の脂肪の塊じゃない!

邪魔! はっきり言って、寧ろ邪魔なの!

それから! 私は決して ぺったんこなんかじゃない! 少しは有る!」

床に転がり落ちてる、何が起きたのか理解出来てない様なマヌケ面に向かって、鬱憤を晴らす様に そう言い放つ。

 

「…他の連中は、どうなってるかな?」

そして、私でさえ こんなに苦戦…正直、セコい勝ちだったのだから、既に全滅かしら?…そう思いながら、他の皆の救援に向かう事にした。

 

「先ずは…」

そうね。最初から この聖地に居た、守護神様は多分 問題無いとして、残りの漆黒の中じゃ1番弱い、鹿屍(バンビ)ちゃんの処かな?

…って、コイツ殺したのに、まだ結界が解かれてないんですけど?

 

「…おい、何処に行く心算だ?」

「………!??」

部屋を出ようとしたけど、結界が解かれていない。

それを不思議に思っている時に、後ろから声が。

それは、さっきから失礼極まりない発言をしていたセクハラ男の声。

 

「…………………………?!!!」

そして その声の方向…後ろを振り向いてみると、

「…悪い。俺は首を斬られた程度じゃ、死なないんだ。」

斬り落とした筈の首が宙に浮き、悪人面な笑みを浮かべて話してきた!

 

「でゅ…首無し騎士(デュラハン)…?」

「いぐざくとりーで御座います!」

 

ス…

 

そう言いながら、首と身体をくっつける金色鎧の男。

 

「さ・て、そろそろ終わらせるぜ。」

「………………………………………。」

 

 

◆絶死絶命side・了◆

 

≫≫≫

 

◆まろんside◆

漆黒聖典番外席次・絶死絶命。

法国最強…いや、この世界最強の現地人の強さは確認出来た。

推定レベル85前後。90には至ってない。

プレアデスには勝てるが、守護者クラス相手だと『伊豆です』の使用如何で…って感じだな。

 

「教えてやるよ。この、結界の意味をな。」

「…………………………。」

魔力結界《双児宮迷宮(ジェミニ・ラビリンス)》。

タイプは対象を閉じ込める、捕縛系の結界。

発動条件は建物や洞窟等の、周囲が完全に塞がれた"屋内"である事。

最大範囲は、一般的な貴族屋敷…今 俺がエ・ランテルで住んでいる屋敷程度なら、その屋敷全体を結界としてしまえる。

そして、結界内なら、その中の『扉』同士の繋がりも、自由に細工が出来る。

所謂"無限ループ回廊"なんかも、簡単に作れてしまう。

これが、()()の名の由来。

そして、もう1つの最たる特徴。

それは結界内の壁や床、天井が破壊不可(エターナル)化する事。

どんな大技を放とうが、周辺破壊を気にする必要が無くなるのだ。

とりあえず、過去の実験ではウルベルトの《大厄災(グランド・カタストロフ)》でも全然大丈夫だった。

 

「ハァァ…!」

「…!? 何なの? その魔力?!」

そして、今から俺が繰り出す攻撃。

爆裂系の魔力を限界まで高めて、両拳に充填(チャージ)

それを同時に高めていた闘氣と融合させ、両拳を頭上でクロスする事で、一気に そのエネルギーを解き放つ!

 

「見よ! 銀河を破壊する一撃を!

銀河爆裂(ギャラクシアン・エクスプロージョン)!!

 




【駄文】
①他作品でも そうですが…作者、ひんぬーキャラを弄るのが大好きなんです。
②モモンガさんとコキュートスが対峙した悪魔…説明不要ですよね?
挿絵のオチが読めた人は、上級読者認定(笑)
最初はヴァーリ・トゥードのギルメンの1人として登場させる予定でしたが、絶対にナザリックの皆さんと殺し合いになると思い、ボツにしていました。
③結構 日が経ってるしオバロの話じゃないが、スグルの声を宮野さん(パンドラの人)が演ると聞いた時、『おぉっ!』と声を出したのは、俺だけじゃないと思いたい。
 
④黒羽蝶人の衣装について
デミえもん 「有り得ませんね。」
シャルティア「アリでありんす。」
モモ・まろ  「「た、たっちさーん!」」
 
▼▼▼
次回『ヤルダバオト(予定)』
乞う御期待! 今年もヨロシクです。
 


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絶死絶命③ ~悪夢~

 
最初はモモンガ、まろん達が、聖地に攻め入っていた頃…
  


◆ジルクニフside◆

「…ほう? 法国の神殿の者が?」

「はい。…どうします?」

帝国内の法国関係者が、私との謁見を求めてきたとか。

この時期の、いきなりの申し出。

どうせアインズ…魔導国絡みの事だろうが、さしあたり、魔導国との同盟解除の要請か?

それに応じない場合、自分達は帝国から撤退する…帝国内の病人怪我人の世話は しないとか脅しに来たか?

 

「…………………………………。」

「…陛下?」

あー、それは こまったことになったぞー。

いま ほうこくしんでんのものにさられたら このさき いったい、こくないのけがにんや びょうにんのちりょうを、だれがするというのだ?

いやいや、ほんとうに こまったこまった。

あー、アインズと まろんがいっていた。

こんなときは、『何とかしてよ~、〇〇えもん~!』…だったかな?

 

「…今は忙しい。そもそも事前の約束も無しな面会等、出来るとでも思っているのか?

そうだな。とりあえず、『法国には以前より、私直筆の質問状を何度も送っている。その対応が出来ない限りは、此方も法国関係者との やり取りには応じられない。本国にも そう伝えろ。』…とでも言っておけ。」

「了~解でさ。」

「…申し訳無い、使()()殿()。話を中断させてしまったな。」

「いえいえ、どうか気にならさずに…わん。」

 

 

◆ジルクニフside・了◆

 

▼▼▼

 

◆アルベドside◆

嗚呼、モモンガ様…愛しのモモンガ様♡は、まろん殿達と【聖地】なる場所に。

戦時と云え、国の施政を疎かに出来ない故に、今は私が その全てを取り仕切っているが デミウルゴスは帰ってきたら、とりあえず1発ぶん殴る 、今 、私の机の上に、ある意味 興味深い書状が届いている。

魔導王…モモンガ様がアンデッドなのは、既に周知。

故に、モモンガ様は勿論、私やデミウルゴスにパンドラズ・アクター、そしてラナーも何時か、()()()が何らかの形で接触してくるという予想は出来ていた。

しかし、書状とは少し、意外だったわね。

いきなり、それなりに上位の者が、私達…或いはモモンガ様の前に直接、姿を見せてくると思っていたのだけど…

尤も その時は、不法侵入者として殺していたけどね。

書状の内容も予想通り。

しかし、既にオマエ達とは魔導国…ナザリックとして、関わらない事は決定済み。

当たり前でしょ? 善政…モモンガ様が謂われる処のホワイト施政をモットーとする魔導国が、貴様等と裏から手を結ぶ等、嘗ての王国と同じ様な真似をする筈も無い。

その辺り、解っているのかしら?

連中は単に、モモンガ様がアンデッドだから接触を試みた…自分達の在り方(スタイル)も承知だからこそ、モモンガ様、魔導国も受け入れてくれると思い込んでいるみたいだけど、逆よ。

善政以前、貴様達はモモンガ様が望む()()とは真逆の存在。

書状はハッキリ言って、悪手だったわね。

コレを辿れば…ナザリックの諜報・情報力を駆使すれば、オマエ達の足元に辿り着くのは容易い事。

スレイン法国を滅ぼした後、次はオマエ達の番よ。

確かにオマエ達は まだ、モモンガ様に鉾を向けた訳では無い。

しかし、此方がオマエ達と手を結ぶのを拒むなら、敵対姿勢を取るのは目に見えている。

だから悪いけど、滅んで貰うわ。

全ては そう、モモンガ様の平穏の為に。

そして!

モモンガ様と私の、明るくてスィーツな未来の為に!

くっふー!♡

 

 

 

◆アルベドside・了◆

 

▼▼▼

 

◆まろんside◆

「ぅ…うぅ…」

「流石は、法国最強と云われるだけは、有るか。」

俺のギャラクシアン・エクスプロージョンをまともに喰らって、まだ生きている絶死絶命。

しかし もう一撃、何か大技を繰り出せば それで終わりだろう。

それでも構わないが…

 

「流石は()()()()()()()。頑丈だな。」

「…………!?」

もう少し、煽ってみる事にした。

 

「ふっ…『耳は隠しているのに、何故?』と言いた気な顔をしてるな。」

答えはデミウルゴス情報です。

 

「…何が、言いたい?」

双児宮迷宮(ジェミニ・ラビリンス)》は既に解除された中、分身体…死せる勇者の魂(エインヘリアル)は既に消え、スルちゃん愛用の鎌を杖代わり、辛うじて立っている絶死絶命が、俺を睨む。

その形相…どうやら種族関連は、体型以上に地雷だった様だ。踏むけど。

 

「いや…不思議に思っていただけさ。

純・人間種至上を掲げるスレイン法国が何故、お前の様なハーフを召し抱えるかと…な。」

「…黙れ。」

「やっぱりアレか? 半分エルフだろうが、『戦力として使えそうだから、とりあえず、飼っちゃえ☆』…みたいな感じか?」

「黙れ!」

「何しろ、エルフって言っても只のエルフじゃない、プレイヤーの直の子供の血を引いt

「黙れと言っている!!」

 

ダダダッ!

 

おお、怒りでパワーアップしたか?

死に体だった筈が、修羅な形相で飛び掛かってきた。

移動スピード、鎌の振り、明らかに鋭さが増している。

 

幻夢魔朧拳!

 

シュッ…

 

「???????!」

まあ、俺には通じないけど。

 

 

◆まろんside・了◆

 

 

 

▼▼▼

 

 

◆絶死絶命side◆

………………………………?

な…何だ…此処は…?

真っ暗な空間…

また、別の結界の中か…?

…て、アレは…?

 

 

 

「ほら! どうしたんだい?

お前は私…ついでにアイツの血を引いているんだ。

ならば此れ位、どうと言う事も無いだろう?」

 

バシッ!ビシッ!

 

「痛い痛い!止めて、お母さん!」

「…誰が母と呼ぶ事を許した?!」

 

バキッ!

 

「痛ぁい! ごめんなさい、ごめんなさい~!」

 

…何? あれ?

アレは…小さい頃の私? そして…

 

 

 

「ふん! 神官共が止めなければ、とっくに()()していたのを…

全く…エルフなんて、殺しても咎無しじゃなかったのかい?

特に()()は、()()の血を引いているのだぞ?

まあ、精々 神官達に感謝するんだね。

お前が今 生きていられるのは、あの爺さん達の お陰。

いや、憎むべきかい? お前が何時までも()()()()()()()は、連中の所為なんだからさ。」

「ひっ、ひぃいっ!?」

 

………………………止めろ。

 

 

 

 

「ひ…や、止()…」

「きゃははは♪ 何時か、こういう風になるなんて、考えた事、無かったの?

アナタが年老いて聖典を引退、同時に私がアナタ以上、圧倒的に強くなった時の事を、さ?♪」

「止めなさい! 何をしているか、解っているの?

私は お前の、母親なのよ!?」

「そう呼ぶのを禁じたのは、アナタでしょ?

…まあ、良いわ。許しが出たみたいだし、最期に言ってあげる♡」

「ひっ…!」

 

 

止めて…

 

 

「サ・ヨ・ナ・ラ・オ・カ・ア・サ・マ♡

()()()()12()()、精々反省と後悔、そして絶望と恐怖してなさい♪」

「い、いやぁ! 止めて!赦して!ごめんなさいスイマセンごめんなさい…た、助けて! 私が悪かった! 間違っていたわ! だから、アンティr

「《(デス)》。」

 

 

…もう、止めろ。

 

 

「 」

「…あら? 本当に死んじゃった? 死んじゃったの?

きゃははははははははははははは♪

流石は、スルシャーナ様の能力(チカラ)ね!」

 

 

お願い…本当に、もう止めて…

 

「…………………………。」

………??

私に気付いたのか、あの子(わたし)が私の方を振り向いた。

 

ニコッ…

 

そして無邪気そうな笑顔で、私に近付いてくる。

…いや、来ないで。アナタは私なんかじゃない!

そして私自身は逃げようにも、捕縛(バインド)麻痺(パラライズ)を受けたかの様に、体が動かない。

そうしている内に、少女(わたし)は私の手の届く位置、目の前まで笑顔の儘で やって来た。 

 

 

 

『ねぇ、アナタはどんな気分だった? 自分を愛さなかった、母親を殺した時の気分は?』 

 

 

………………!!?

 

「止めろーーーーーーーーーッ!!!!」

 

ピシッ…パリィィン!

 

「な…??!」

私が叫んだ瞬間、いきなり視界が ひび割れ、まるで鏡が砕け散るかの様に…あの子(わたし)も粉々の破片となり、黒い空間が消えていく。

その目の前には、先程迄の部屋。

 

悪夢(ユメ)は、見れたかな?」

………………………ッ!???

そして あの失礼極まりない、セクハラ・スイカップ・スキー男が澄まし顔で立っていた。

  

 

◆絶死絶命side・了◆

 

≫≫≫

 

◆まろんside◆

「今のは…お前が見せていたのか?」

睨みながら質問してくる絶死絶命。

 

「お前が視ていた悪夢(ユメ)の内容までは分からないが、お前が見た ()()は確かに、俺の技によるものだろう。」

幻夢魔朧拳。

相手の真相心理の底に沈む心の疵(トラウマ)を引き揚げ、改めて それを認識させる幻影…悪夢を見せる技。

技を受けた者が見るユメの長さは分からないが、現実での時間は1分だ。

トラウマは基本、俺の知らない情報だから、俺自身が その脚本(シナリオ)を作る事は出来ない。

勿論、それを詳しく知っている場合は、よりエグい内容に、好き勝手に作る事も可能だが。

 

「赦さん…! 絶対に、赦さない!」

そう言って怒りを露、スルちゃんの鎌を構える絶死絶命だが、

「止めろ。今は頭に血が登って自覚無いかも知れんが、既に お前の精神はボロボロだ。

そして それは、肉体にも依存している。

もう、戦える状態じゃない。」

この技は、単に幻影を見せる技じゃない。

それから、精神と肉体の両方を同時に破壊する技。

幻魔拳系列の、上位に位置する技だ。

 

「黙れぇ!…??!」

 

バタンッ!

 

しかし俺の忠告も意味を為さず…当然と言えば当然だが…俺に斬り掛かるも、その1歩目で足が縺れて転倒。

だから言ったろ?

お前は既に、マトモに動けないって。

ガタガタなんだよ。

体がorzになっているんだよ。

 

「グ…ゾ…」

「発勁!」

 

ドゴッ!

 

「?!………」

それでも闘志、いや、殺意衰えず、立ち上がろうとした処に、闘氣を込めた掌打を鳩尾に叩き込む。

その氣は鎧を素通りして体に、その内の()に衝撃を伝達。

結果、彼女は()()()

 

「悪いな。モモンガさんから、もしも絶死絶命(オマエ)と当たったとしたら、()() ()()()と言われていたんだ。」

モモンガさん曰く、プレイヤーの血筋はレアらしいから。

 

ヴォン…

 

気絶している ドラちゃんと同類? ペロロンチーノ号泣歓喜、脱法たっちさん合法ロリな ハーフエルフを転移門(ゲート)に放り投げる。

行き先は勿論、ナザリック地下大墳墓。

ぬ? 女に対する扱いが杜撰?

フッ! 俺はユリたん♡以下略!

 




絶死ちゃんが母親から虐待を受けていたのは、原作公式設定。
絶死ちゃんが母親を殺したのは、今作オリジナル? 
 
≫≫≫
次回『世界級(ワールド)アイテムの矛盾(予定)』
乞う御期待! 感想よろしくです。
 


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スレイン法国の切り札!

 


▼▼▼

スレイン法国領。

その、竜王国との国境側に面している都市。

 

「「「「「きゃぁぁあっ!?」」」」」

「「「「「「ひぃえっ?!」」」」」」

「「「うゎぁぁああぁあぁっ!?」」」

モモンガ達が法国の神官達が聖地と呼ぶ地を攻めていた頃、この都市も魔導国の軍勢により、破壊の限りを尽くされていた。

暴れているのは死の騎士(デス・ナイト)を中心とした、アンデッド系モンスターに、権天使(プリシンバリディー)を筆頭とした、天使系モンスター。

アンデッドと天使…普通の感性な人間からすれば、悪夢の共演(コラボ)だ。 

そして、其れ等を率いているのは…

 

「皆さん~、今から その建物、壊すから危ないですよ、逃げて下さい~。」

 

ドガアッ!

 

黒豹型のマシン・ゴーレムだった。

 

≫≫≫

 

◆マーレside◆

アインズ様が仰有られるには、今回の侵攻は あくまでも街の破壊が目的であり、殺戮を優先させる必要は無いと言われた。

少し前に、恐怖公さんが法国から『食』を奪った様に、今回は『住』を奪う事。

そして国境側の街を制圧、街の中や周辺にモンスターを多量に徘徊させる事で、他国に逃げる路を塞ぐ。

国の内側に逃がすのは、全然 構わない。

但し、国の外に人間を逃がすのは駄目。

魔導国側や帝国側の国境付近の街や村も、今頃は お姉ちゃんとシズちゃんが僕と同じ様に超獣機神で攻撃をしている。

そうして外堀をモンスターの大群で固めて、それ等を中央に向けて進軍させる…その時に、それ迄に逃げていた人間達も纏めて殺す。

それが、アインズ様の計画。

よーし、やるぞー!

街をガンガン壊すぞー!

えいえいおーっ!!

 

  

◆マーレside・了◆

 

▼▼▼

 

◆セバスside◆

「当たり前だが…全員、無事だったか。」

4つに分かれたルートが再び1つに纏まり、我々はアインズ様と合流。

各々の話を聞けば、私達同様に各自、所謂 中ボスの様な者と相対していたとか。

そして まろん様が相手にしたのは、あの漆黒聖典番外席次・絶死絶命だったとか。

 

「ああ。動けない状態にした上で、ナザリックに送っといたぜ。」

…との事。御苦労様に御座います。

 

「デミウルゴス様からの報告によりますと、もう この地…と言いますか、スレイン法国に戦力と呼べる者は、居ないと思われますが?」

「…その筈だがな。」

残るは この国の政を司る、神官長や大神官と呼ばれる者達。

その様な役職に就いているなら…人間レベルでは…其れなりに強いとは予想されますが、あくまでも人間レベル。

脅威になる筈も無いでしょう。

 

「ひっ?!」

「あ…ゎゎ…」

居住区と思われる区域(エリア)

恐らくは神官の身内と思われる者達が私達を見て脅えています。

 

「「「…………!!」」」

ついでに、護衛兵と思しき者達も、此方を見て槍を構えておりますが、その膝はガクガクと震えており、既に戦意は無きに等しいでしょう。

 

「殺すでありんすか?」

「…良い。元より、戦える者達では無いだろう。」

「承知でありんす。」

こうして我々は この聖地…六大神の1人のギルド拠点の中枢である、最奥を目指して進むのでした。

…に、しても、

「「♡♡♡♡♡」」

「「「「………………。」」」」

いえ…もう この御2人は、毎度の如くな平常運転。

 

全く…

 

(ぬゎに)(ぬゎん)なのアンタ等?!

合流してから ず~っと ()()かい?!

こ~んな時まで緊張感まるで無し、お手々繋いでラブラブ・オーラ全開で撒き散らすって、どんだけ好き合ってる訳?

此方とら まさか こんな処で迄…って感じで、ブラックコーヒーの用意は してないっての!

…ったく、少しは時とか場所とか周囲とかに配慮するって発想は無いってか?…あー、無いですか、そーですか、知っていました。

爆裂しやがれぃ!

くぉの、ヴヮァクヮッポゥルヮゥぐぁあっ!!

 

…とか、微塵も思ったりしておりませんよ! 本当に!

 

 

◆セバスside・了◆

 

≫≫≫

 

◆ユリside◆

…足りません。

まろん様成分♡が、圧倒的に不足しています。

 

「「♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡」」

「「「「………………。」」」」

…ですから今、それを補充中です。

 

「アインズ様アインズ様♡、私もアインズ様成分が不足してきたで、ありんす?」

「…シャルティアよ。お前は私達が、()()と同じ目で見られるのを望んでいるのか?」

「……! 失礼しましたでありんす。」

…………………………。

何だか、如何にアインズ様 ついでにシャルティア様 と云え、凄く失礼な事を言われている気が?

 

≫≫≫

「つ、ついにー、こーこまで、きましたかー、アインズ・ウール・ゴウン魔導王様!」

「「「「………………………。」」」」

そして、スレインの大神官達が潜んでいた最奥の部屋に。

其処には その大神官、神官長と思われる老人達と、仮面を被った悪魔…何故か棒読み口調なデミウルゴス様が。

 

「や、ヤルダバオト! 大丈夫なのか?」

「は、早く何とかするのだ!」

「ケイ・セケ・コォクだ!

とりあえずは、ケイ・セケ・コォクを着ている あの女を殺して、ルーファウス様をお助けしr」

 

グシャァッ!

 

「 」

「「「!!!?」」」

アインズ様より お借りしている世界級(ワールド)アイテム、傾城傾国により精神支配している天使を自分達の側に取り戻す様に神官の1人が言おうとしましたが、その台詞を喋り終える前に、その頭部が爆散。

 

誰を…殺す、だと?!

はい♡ まろん様です♡

 

「あー、先に言っておくが、まろんサンの前で、ユリを『殺る』とか『犯る』とかな発言は、禁句(アウト)だからな?」

 

 

◆ユリside・了◆

 

≫≫≫

 

◆まろんside◆

「さぁ…次に死にたいのは、どいつだ?」

「「「「…………?!」」」」

燃える拳を突き出し、神官共に尋ねてみるが、コイツ等は顔を青くして黙りに。

 

「き、金色鎧の男! まさかとは おもっていましたが、やっぱり また、アナタだったのですか?!」

そして その代わり、凄く大根な反応(リアクション)のデミえもん。

お前は1度、パンドラに演技指導して貰え。

 

「…やっぱり? また?」

「あ、ひどい! わすれているのですか?

ほら、エ・ランテルの共同墓地!

其処の地下室で、会ったじゃないですか!」

何だか必死なデミえもん。

…因みに この一連の会話も、デミウルゴスの脚本(シナリオ)である。

モモンガさんだけで無く、俺との面識を匂わせる為だとか。

 

「ああ、あの時の悪魔か…」

「そーですよ、そのときの悪魔(わたし)ですよ!♪」

俺の この思い出したかの受け応えに、嬉しそうな口調で話すデミえもん。

 

「まさか、あのときの ちょーつおいアナタが、アインズ様と ともに こうどうしていたとわっ?!」

「や…ヤルダバオト?」

「大丈夫…なのか?」

狼狽えている?デミウルゴスに、神官が不安気に話し掛けるが、

「……………………………。

誠に残念ですが、アインズ様だけなら いざ知らず、あの金色鎧のヒトも一緒ならば、勝てる見込みは もうゼロですね。

諦めて試合終了です。」

「「「はぁっ?!」」」

「それではスレイン法国…そして魔導国の皆様、そーゆー訳で、アデュー♪」

 

フッ…

 

「はぁっ!?」

「ちょ…おま…っ?!」

大根口調から一変、普段の冷静口調…そして何やら軽い口調となり、その台詞と共に、姿を台詞と共に、姿を消すのだった。

 

「「「「………………。」」」」

唖然茫然となる神官達。

そりゃ、コイツ等からすれば、次はデミウルゴスに俺達の相手をしてもらう予定だったのだろうからな。

最初は『実は私、魔導国側の者でしたー!』とネタばらしする予定だったのだが、魔導国と云うか、【モモンガさんと敵対する者】の存在は、この後も何かと使えそうなので、デミウルゴスは今回は この儘 退場。お疲れさんだ。

そして残っているのは、オーバーキル集団。

 

「心配するな。抵抗しないなら、まだ殺す様な真似は しない。

バハルス帝国皇帝や聖王国女王。そしてリ・エスティーゼの若き新王が、法廷の場で貴様等を、色々と問い質したいらしいからな。」

「「「「…………!!」」」」

モモンガさんの この発言に、安堵と更なる不安を混ぜた様な顔をする神官達。

法廷…裁判と言っても、弁護士なんて付く訳も無く。

言い逃れ不可な証拠を突き付けられて、死刑判決が下されるんだよなw

特にジルクニフ君は、OHANASHIからの殺る気、満々だぞ。

  

≫≫≫

「2着目、ゲットだぜ!」

「「「……!」」」

今、水晶の繭(クリスタル・コクーン)の宝物庫に来ているが、モモンガさん、笑顔満面(多分)。

そりゃあ そうだ。

世界級(ワールド)アイテム、傾城傾国の2着目を手に入れたのだから。

因みに2着目は、今ユリたん♡が着ている白地に金龍の刺繍で無く、蒼地に紅龍のデザイン。

しかしスレイン法国には、以前の老婆以外に、この世界級(ワールド)アイテムの適性を持つ者は居なく。

成る程。さては この神官共、これをンフィーレアに着させて、何かを操らせる心算だったな。

…って、だ・か・ら・(ンフィー)にチャイナ着せるって、需要無いだろ?!…エンリ以外には!

…そして、法国には まだ、その()()()()()()()()()()()()()()()()()…が存在する訳だ。

 

「おお、まろんサン見て下さい!

風林〇山ですよ、風林火〇!

おお、此方にはエ〇カリボルグが!」

「コレハ…ナカナカノ、業物!」

……………………………………。

あー、よかったねー。

神器級(ゴッズ)アイテムの数々に目を輝かせて(多分)嬉々しているモモンガさん(…とコキュートス)だけど、当然、気付いてるよな?

 

 

◆まろんside・了◆

 

≫≫≫

 

◆モモンガside◆

「(¬_¬)………………。」

まろんサンがジト目で俺を見ているけど、勿論、気付いていますよ?

恐らくは魔水晶か何かに封印しているのだろうけど、それを探しているのです。

他のアイテムの物色は、ついでですよ、つ・い・で…って、信じていませんね?!

ぃゃ、本当ですって!

 

「素晴ラシイ…素晴ラシイゾ…!」

…コキュートスはマジ感動ですけど。

 

「「「……………………。」」」

アイテムを吟味する度の、神官の反応(かお)を窺いながら、目に付いたのはソフトボールサイズ、赤白に色分けされた(ボール)型アイテム。

 

「……………!!」

その表情。どうやらコイツが、アタリだった様だ。

 

「ほう? 何やら封印系の様だが、何が入っているのかな?」

「や…止めr

「ハァッ!」

 

カッ…

 

「「「「「「!!!!?」」」」」」

興味深そうに それを手に取り、頭上に掲げてみる。

それを見て、神官達が慌てふためく。

勿論、その封印を解く心算は無い…軽い冗談の心算だったのだが その時、大神官が このボールに向けて魔力を放つ。

正確に言えば、ボールと対のアイテムか?…嵌めていた指輪から、魔力(ビーム)を放出したのだ。

 

ばかっ…

 

それにより、ボールは赤と白のパーツ、2つに割れ、その中から飛び出したのは肉の塊の様な異形。

 

ずずず…

 

それが、形を整えながら、巨大化していく。

 

「だ、大神官! アナタは何を?!

今それを解き放っても、誰も制御出来ませぬぞ!?」

「黙れ、レイモン。

最早 我等の未来(うんめい)は、決まったも同然。

そして それは、我等の宿願である、人類救済も叶わぬと同義。

…それならば、この様な世界、いっその事、滅んでしまった方が良いわ!」

「「「はあぁああっ??!」」」

マジか? 考えが ぶっ飛び過ぎだろう!?

ほら、他の神官達も引いてるじゃないか!

 

「何で大規模な無理心中だよ?!

裁判で問う罪状が増えたぞ!」

まろんサン…間違ってないけど、その表現は少し違う気が…

 

「クソが! 結局は、自分達が世界を掌握したかっただけだろうが!

…で、それが出来なかったなら、全部ぶっ壊すってか?! ガキか!?」

「いよいよ以て、テロ国家ですね!」

…そう、それな!

 

ずずずずずず…

 

そうしている間にも、この()()()()()()()()は その姿を本来の其れに変えてゆき…

 

ガジャァアッ!!

 

「ま、不味いでありんす?!」

今の部屋には収まりきらない程の巨大な姿へと変貌させていく。

 

「きゃっ!?」

「ユリたん!」

 

バキィッ!

 

「まろん…様…」

「大丈夫だったか?」

「は…はい…」

実際、既に巨体は天井を突き破り、その破片が崩れ落ちている。

大きな欠片がユリの頭上に落ちようとした処を、まろんサンがアッパーブロウで迎撃して庇う。

その会話も、普段のバカップル口調で無く、極々普通。

 

「脱出です! この部屋…いえ、この拠点その物が、崩壊しますぞ!」

え? ちょっと待って?

この部屋のアイテム、まだ全部、回収し終えてないんですけど?

それに、ギルド武器も…

 

「言ってる場合か!?」

  




①セバス様、1度で良いですから ぷれぷれ以外、アニメ本編でも千葉さんして下さいw
 

風〇火山…最強聖剣な凄い木刀
エスカリ〇ルグ…何でも出来ちゃうバット
 
≫≫≫
次回『スレイン法国の切り札②(予定)』
乞う御期待! 感想よろしくです。
 


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レイドボス(仮)

 


▼▼▼

「な…何なのだ…アレは…?」

「ば…化け物…!」 

月明かりに照らされる巨大な姿。

それを遠くから見て、"新生"漆黒聖典・関節恐慌と鹿屍討伐が口を漏らす。

 

「まさか、あの魔導王(アンデッド)が喚び寄せたのですか?」

それに同じく、"新生"漆黒聖典の一員の刃投冥土が言葉を続けた。

…彼等は各々がモモンガ達に敗れた後、その実力差を理解。

先に進む魔導王一行を背後から追撃急襲…な発想には至らなかった。

しかし法国の…人類の守護者を名乗る者の矜持からか、只 逃げ出す事は無く。

水晶の繭(クリスタル・コクーン)最奥にて、魔導王と対峙しているであろう大神官達は助けられないとしても、居住区に居る その身内達を引き連れ、このギルド拠点の外に出ていたのだ。

そして、その行動は結果的に正解。

離れた場所から聖地の様子を窺っていると、突如、その外観が崩壊。

その内から巨大な異形が姿を見せたのだった。

 

「な…何て恐ろしい、姿なの…」

「聖地を破壊するとは…魔導王…!!」

上半身は蒼銀の鎧武者…しかし、4本の腕に2つの頭。

その4本の腕に其々、剣、斧、槍、棍を携え。

そして下半身は狼の如くな銀毛の獣の四肢という異形。

それと、モモンガ達が対峙している。

 

「…それは、違いますよ?」

「「「!!?」」」

その光景を見据えている時に、彼等の背後から声が。

振り替えってみると、其処には

「ヤルダバオト…」

仮面の悪魔、デミウルゴス(ヤルダバオト)が立っていた。

 

「貴様! 貴様が何故、此処に居るのだ!?

貴様は あの、アンデッd…?!」

「魔導王様…ですよ。」

鹿屍討伐が『あのアンデッドと戦っていたのでは?』…と問い詰めようとした その台詞の途中、彼女の眼前に鋭利な爪が突き付けられた。

その凄まじい速度と殺気に、鹿屍討伐は声を詰まらせてしまう。

 

「…魔導王は、アナタの敵なのでは?」

「敵か否かと、尊敬しているか否かは、別でしょう。

余り私の前で、あの御方を軽く見る様な発言は控えた方が良い。

さもなくば次は…殺しますよ?

「「「……!!?」」」

刃投冥土の質問の応えは、嗤う仮面の内側から溢れる怒気と殺気。

 

「さて…あの後、何が有ったかを説明しましょうか…」

 

≫≫≫

 

◆デミウルゴスside◆

「ば…バカな!?」

「それを俺達に信じろと…言うのか?」

…要約すれば、アインズ様達に勝てないと、自棄(ヤケ)になった大神官が、制御も利かないモンスターの封印を解いた。

アインズ様からすれば、取るに足らないレベルの相手でしょうが、それでもスレイン法国…いえ、人間共からすれば、世界を滅ぼしかねない脅威なのでしょう。

…その辺りを彼等に話してみましたが、やはり受け入れる事は難しかった様で。

 

「そんな…私達は…スレイン法国は、人類の守護者だったのでは、なかったのですか?」

胸元が不自然なメイド服の女が、絶望したかの表情で呟いています。

 

「はっは! 何を今更。

所詮は、その人類の救済を建て前に、世界を征服したかった狂人の集団でしょうに。

確かに、六大神の時代は どうだったかは知りませんが、その1柱、アンデッドだったスルシャーナを人間と…そして人間に亜人…様々な種の集まりだった13英雄も、その全員を人間と捏造して広めた辺りでも、片鱗は見えているでしょう?

本当に世界を救った存在ですら、人に非ずならば その真実を己に都合好く 捻じ曲げる。

そして自分達による世界掌握が叶わぬならば、全てを巻き添えにしての破滅を目論む。

それが、今のスレイン法国です。」

「「「………………!」」」

それを後押しするかの様に、無意識に逃避していたであろう真実を突き付ける。

すると漆黒の3人、完全に言葉を失ってしまった様ですね。

 

()()は、魔導王様達が何とかするでしょう。

貴方達は邪魔にならぬ様、後ろで困り顔をしている その他大勢と一緒に、この場から立ち去った方が良い。」

尤も、今のスレインの領地に逃げる場所等、殆んど無いでしょうが。

仮に一時的に逃げ遂せても、最後は魔導国軍の侵攻により、滅びるだけですからね。

 

「アレを…あれだけの巨大な化け物を、たった あの人数だけで どうにかすると言うのか?!」

…ふむ。アインズ様と まろん殿。

それと、セバスにコキュートス、シャルティアとユリ…と、現在、ユリの支配下となっている大天使(ルーファウス)

それから吸血鬼の花嫁(ヴァンパイア・ブライド)が3人ですか。

まあ、問題は無いでしょう。

 

「さて…それでは私は、失礼させて貰いますよ。」

「何…だと…?」

「ま、待て! ヤルダバオト!

お前は魔導王達に、協力する気は無いのか?」

「私達ではチカラが違い過ぎるが、お前なら…」

「協力? これは馬鹿な事を。

私、『ヤルダバオト』は至高の御方に、()()()()()()()()()()として設定された(つくられた)存在。

協力、共闘等…有り得ませんね。

そもそも私がスレイン法国を訪れたのも、全ては その為。

しかし貴方達は予想以上に、駒として機能しなかった。

最早 この場に居る意味も無い。」

「「「………………………。」」」

多少、煽りも含めた言葉使いですが、『貴様ッ!』とか言って襲い掛ったりしない辺りは、それなりの判断力を持っている様ですね。

 

「納得して頂きましたか?

それでは皆様、御機嫌よう。」

 

 

◆デミウルゴスside・了◆

 

▼▼▼

 

◆モモンガside◆

「モモンガさん…アレ、知ってます?」

「…知らん!」

 

ドガァッ!

 

4本腕から繰り出される、連撃を躱しながらの会話。

あの巨大モンスター、まろんサンも知らない様だ。

ユグドラシルのモンスターなのは間違い無いと思うのだが、かなりの やり込み派の俺でも、全くの知識の外だ。

 

「あれだけのデカブツ。多分、イベント系だと思うが…」

それには同意。

恐らくは、ユグドラシルで一時期、レイドボス系イベントを同じ日に多くの地域で開催した事が有ったが、その時の、俺達が参加しなかったイベントのボスなのだろう。

同日多地域でのイベント開催…特に戦闘系はユーザーから不評だった為、直ぐに廃れたが。

 

「何時ぞやの滅びの魔樹(ザイトルクワエ)より、少し小さい程度か。」

「強サハ、アレト同等ト思ッテヨイデショウ。」

そして それを見て、まろんサンとコキュートスが戦闘の構えを取る。

ザイトルクワエ…前にトブの大森林の奥でまろんサン達が戦ったってヤツだな。

俺は それを直接見た訳じゃないから…だが、少なくともHPはバカ高い。

例え大技を連発しても、削りきるのは容易じゃないだろう。

 

「ソレデハ 一番槍、参r

「待て、コキュートス!」

「まろん殿?!」

コキュートスが先陣切って飛び出そうとした処を、まろんサンが制止。

 

「とりあえずはアレが、どんな能力持ちなのか、様子見だ。」

「様子見…デスカ?」

「ああ。今 此方には、丁度良い鉄炮玉が有るじゃないか。…な? ユリたん♡?」

「了解です。まろん様。」

ああ、そういう事ね。

しかし鉄炮玉って、他の表現出来ないですか。

 

「行け、ルーファウス!

あの巨大モンスターを倒しなさい!」

 

ビュンッ…!

 

ユリの言葉に、ルーファウス(洗脳)がレイドボス(仮)に向かって飛ぶ。

 

轟ッ!!

 

そして放たれたのは、超特大の雷撃。

 

『『…………ッ!?』』

喋れない仕様な様だが、その直撃の反応からして、雷撃系は特効迄は往かないが、普通に有効な様だ。

 

『…!!』

 

ぶんっ!

 

反撃とばかりに剣を薙ぎ払うが、これは大振り過ぎたか、天使は楽々と回避…

 

どごぉっ!

 

「…………?!」

しかし、その回避先を狙っていたのか、其処に棍棒の振り下ろしの一撃!

縦から横のコンボ。

超重量の一撃を背中に喰らい、地面に激突するルーファウス。

成る程。4本腕は、伊達じゃないって事か。

 

「………………………。」

よろよろと起き上がるルーファウス。

多分だが、棍の一撃よりも、その後の落下→激突のダメージの方が大きい気がする。

  

「………っ!?」

今度は其処を狙っての、斧の打ち降ろし!

アルベドの斧技・まき割りダイナミックに似た、一刀両断の一撃だ。

 

バギゥッ!

 

これもルーファウスはギリギリで躱し…地面に巨大なクレーターが出来上がった。

此処でレイドボスは装備を変更。

鋭いトゲが何本も付いた大盾を2つ、4本の腕で確と持ち、

 

グシャアッ!…ボトッ…

 

「 」

それで挟み込む様に…例えるなら、飛んでいる蚊を両手で叩き潰した…と云った感じか?

兎に角その超重圧プレスをまともに浴び、ルーファウスは血塗れの肉塊と化してしまった。

 

「やはり…か。自我の無い洗脳状態だと、動きが鈍るのか。スルちゃん…ゴメンね。

…しかし!」

『冷静かっ?!』…と突っ込みたくなる程な、まろんサンの分析。

大したダメージを与える事無く、ルーファウスは死亡(リタイア)してしまったが…それを友人(スルシャーナ)に小さく謝り…それも まろんサンの計算の内だった様で。

 

「ユリたん♡!」

「はい、まろん様!」

洗脳対象が死亡した事で、再び傾城傾国(ワールド・アイテム)の行使が可能となったユリに指示。

 

カッ…!

 

チャイナドレスに刻まれた金龍が眩い光を放ち、実体化。

 

『グェエ~ィ!』

そのドラゴンは奇妙な雄叫びと共に、レイドボスに一直線に突撃して、

 

シュゥ…

 

その体内に潜るかの様に、入り込む。

 

ガタンッ…

 

すると、4本腕の内の2本が力無くだらりと足れ下がり、大盾2つを地面に落とす。

どうやら洗脳は成功した様d…

 

斬ッ!

 

えぇええぇーーーーーーっ?!

…と思ったら、残りの2本腕が再び剣を2本装備し直して、此方に斬り掛かってきた?!

 

 

斬ッ!…どどんっ!

 

「ム!? 失敗シタノカ?」

「そんな?! 確かに、洗脳成功の手応えは、有りました!」

「ならば、どーゆー事で、ありんすか?」

「恐らくだが…!」

巨体からは想像出来ない程な、素早い斬撃と践み付けを躱しながら、まろんサンが仮説を話す。

 

「アレは頭が…つまりは脳味噌(せいしん)も2つ。

そして傾城傾国で支配出来る精神は、1つだけ。

後は…解るな?」

成る程。つまり、精神を1つだけ支配しても、もう1つの精神が無事なら、そっちが体を動かすから大して意味は無いって事か!

 

「その通り。つまりは どの道、世界級(ワールド)アイテムの使い手が1人しか居なかった法国には、アレを操るのは無理な話だったんだ。

……! 更に…だ!」

 

ぐぐぐ…

 

「え?」

しかも、精神支配が効いており、だらりと足れていた2本の腕も、再び力強く武器を構える。

 

「まさか…その残った もう1つの精神とやらが、2分されていた体、全ての支配権を得た…でありんすと?」

シャルティアでさえ至れる答え。

他に考え付かないよな!

 

「しかも…不味いな。」

アレは、時間経過に応じて、HPが回復するタイプの敵な様だ。

今のメンバーの最大火力総動員でも、全てのHPを瞬時に削れるかは怪しい。

六大神の誰かは知らないが、このレイドボスを撃破で無くて()()という形で討ったのも…それでイベントクリア扱いになったかは分からないが…それが理由なのだろう。

ボス相手に『捕獲』や『封印』が通じたのも、珍しいパターンだが。

 

「それなら、考えられる手段は限られるだろう!

…幻魔拳!」

 

シュッ…!

 

そう言って まろんサンが精神破壊の攻撃を放つが、

 

どどんっ!

 

「うおっ?! やっぱり効かないか!」

黒い仔山羊に匹敵な践み付けを必死で避ける まろんサン。

そりゃ一応は、ボス設定(多分)のキャラですから。

 

「…ならば、本当に最後の手段だな!

モモンガさん、ユリたん♡、皆!

少しの間だけ、時間を稼いでいてくれ!」

「はい?」

「へ?」

「え?」

「ム?」

 

シュゥ…

 

そう言うと まろんサンは転移門(ゲート)を開き、何処かへと行ってしまった。

 

≫≫≫

「待たせたな!」

そして数分後、まろんサンが戻ってきた。

しかも、

  

「ぁわわわゎ…」

「ム?」

「ま゙っ♡?(//∀//)」

「はい?」

「きゃ!?」

カルネ村に居る筈の、ンフィーレアも一緒に連れて来た。

そうか、まろんサンは さっき押収した傾城傾国(蒼)を、ンフィーレアに使わせて、もう1つの精神も洗脳して、完全支配する考えだったか!

まあ、何となくだけど、予想していた!

 

「いや…最初は、マーレを連れて来ようと思ってたんだが、日中の都市責めで疲れていて、ぐっすり眠っているらしく、起こすのは悪いと思ってな…」

成る程。…それで『どんなマジック・アイテムも使いこなす異能(タレント)』持ちのンフィーレアですか。

それで まろんサン…その右頬の真っ赤な手形(もみじ)は?

 

「………………………。

実はンフィーとエンリ、 合体中 お取り込み中の所を転移で凸してしまい、それで顔真っ赤にした族長様に…」

成る程!『きゃーっ!?(バチーン!)』…ですか!

ンフィーレアが素っパなのは、それが理由ですか!

まろんサン…それはアナタが100パー悪い!

如何に急いでいたとは云え、せめて下に何か1枚だけでも穿かせてあげなさい!

  




レイドボスの上半身は、ザ・ワン(キン肉マン)を2つ首4本腕にしたイメージ。
下半身は、普通に巨大な狼な感じで。
 
≫≫≫
 
【次回予告】
 
◆ンフィーレアside◆
うぅ…エンリ以外の女の人に、僕の裸…ちΧΧΧを見られてしまった…orz
…って、マカロン様?
はい?『これを着ろ』って…この服、女性用なんじゃ…(汗)
 
次回『スレイン崩国(予定)』
乞う御期待(…あんまり しないで下さい)! 感想よろしくです。
 


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ロウキュー!!

 
【前回の あらすじ】
 
◆???side◆
いや、本当にビックリしたっスよ。
エンちゃんとンフィーが夜中、ずっこんばっこん☆ギシギシあんあん♡している時に、いきなり転移門(ゲート)が開いたと思ったら、中から まろん義兄たま(本人の前で言うと、アイアン・クローされるから言わないっス)が現れて。
それでエンちゃんの「キャーっ!?」の悲鳴と同時な平手打ちが炸裂!
これは、まろん義兄たまが悪いっスよね。
その後、義兄たまは丸出し(すっぽんぽん)ンフィーを連れて、また転移門(ゲート)の中に消えて行ったっス。
…え? どうして そんなに詳しく知ってるかって?
そりゃ勿論、エンちゃんとンフィーのアレやコレやを最初から隠れて覗いて見てたからに、決まってるじゃないっスか!
 
 
◆???side・了◆
 
▼▼▼
今回は短め。日常回?です。
 


▼▼▼゚

 

◆まろんside◆

あの後…は呆気無く事は終わった。

ンフィーレアに傾城傾国を着せて…エンリとのХХХ真っ最中に連れ出され、素っパだったンフィーレアには それが女性用衣類だと拒む余裕も無く…レイドボスの残る もう1つの精神を乗っ取らせ。

 

「「己の首を、その手にした剣で跳ね落としなさい。」」

 

この一言。あのレイドボスは自害する事で、あっさりと片付いたのだ。

 

…そして、その翌日の昼過ぎ。則ち今。

 

「ンフィーレア・バレアレ。そして、エンリ・バレアレ。

この度は このマカロン公爵が、色々と迷惑を掛けた。」

「「あ…ぃぇ…その…」」

「………………………。」

俺とモモンガさんはカルネ村の族長(エンリ)宅に来ている。

ンフィーレアを半ば拉致同然に戦いの場に連れ出した事への、謝罪に赴いているのだ、

因みに俺は今、モモンガさんに正座させられている。

実行犯の俺は兎も角、魔導王直々の来訪に、ンフィーレア夫妻は恐縮MAX。

 

「そ…そんな! 私達は もう、気にしていませんから!

それに私も、マカロン様の頬を…」

「いや、それに関してはコレが一方的に悪いから、気に病む必要は全く無い。

魔導王(わたし)の名の下、咎無しを約束する。」

…これ等については、エ・ランテルに戻った後にユリたん♡からも、「流石に あれは無いです。」と言われてしまった。orz

はい、マジに反省しています。

m(_ _)m すいませんした。

…って俺を『コレ』扱いって、酷くない?

 

「黙れ。」

 

≫≫≫

 

どさ…

 

「…その様な訳で、これを受け取って欲しい。」

「「…………………??!」」

そして、テーブルの上に重量感ある音と共に置かれた革袋。

その中には大量の白金貨が。

初めて見る程の大金…多分、この2人は白金貨自体、初めてじゃないかな?…に、目が皿になるンフィー&エンリ。

 

「ま、魔導王様! 流石に これは過ぎた お金です!」

「この様な大金、受け取る訳には!」

その額に恐縮がMAXを超えて天突になる2人。

 

「…良いのだ。これは単なる迷惑料では無い。

信賞必罰。ンフィーレアの この度の働きに準じた報酬だ。

それだけの戦果を上げたのだからな。」

「「……………………………。」」

「これを君達個人の財にするか…村の為に使うかは、君達の自由だ。

受け取ってくれないか。

そうでないと今後、魔導国の為に働いた者に対して、何も褒美を与えられなくなる。」

「何よりも今後、魔導王はケチ王と呼ばれる様になr

「だから、黙れ。」

 

≫≫≫

「エンリ、エンリ。」

「…はい?」

謝罪とOHANASHIが終わった後、ンフィーレアとモモンガさんに隠れて、エンリに こっそり声を掛ける。

 

「…コレなんだが。」

「………!!!!?」

そして見せたのは、『すまほ』の画像。

それに写っているのは傾城傾国(チャイナ)を着たンフィーレアの姿。

モモンガさんに隠れて、こっそり撮っていたのだ。

 

「な…な…なななな…?!」

それを顔を真っ赤にして、ガン見する覇王将軍閣下。

 

印刷(プリント)出来るけど…要る?」

「是非とも!」

  

  

◆まろんside・了◆

 

▼▼▼

 

◆ジルクニフside◆

「成る程…な。」

魔導国から『ふぁっくす』で送られた、スレイン法国との戦争に関しての報告書。

法国上層である神官達を捕らえ(何人かは殺しているそうだが)、更には魔導国、帝国、そして竜王国の国境に面した都市を先に陥とし、其処から現在進行形で中央に向けて同時進軍中だとか。

しかも その道中で、戦力(アンデッド)を増やしながら…らしい。

更にはエルフ王国側からも、エルフが進軍しているとか。

これは記されてないが、どうせエルフの侵攻も、裏で手を回していたのだろう?

 

「うっわ…少しだけ、殺り過ぎな気も…

マジに滅亡コースじゃないですか。」

「仕方有るまい。スレインは それだけの事をしたのだ。

特に聖王国での魔導王暗殺未遂。

もう、何のフォローも出来んだろう。

…する気も無いがな!」

「ゎちゃ~、やっぱり陛下も…ぇーと、『(おこ)』ってヤツですかい?」

ああ、そうだよ! 激怒ぷんぷん丸だよ!(使い方、間違ってないよな?)

しかし それは、法国にだけじゃないぞ?!

アインズ…私は言ったよな?

法国と喧嘩する時は、帝国(わたし)にも一声掛けろと!

勝手に1人で事を進めてるなよ!

ホウレンソウ…だったか? 何処に行った?!

 

「いや…それは あの御骨様、陛下に この虐殺の片棒を担がせない配慮じゃないですかい?」

「うむ…それは解る…解ってるが、それでもだ。」

「それから この『今回の戦争に関する裁判』…ですか。

この案内は…」

「当然、出席だ。また、まろんかアインズのシモベが、転移で迎えてくれるのだろう?」

「王国に竜王国に聖王国、更には評議国にも出席を呼び掛けているそうですね?」

「ああ…。これは、荒れるぞ。」

 

 

◆ジルクニフside・了◆

 

▼▼▼

 

◆まろんside◆

裁判は各国が日程調整中。

具体的な日取りは まだ決まっていない。

だから それが決まる迄は、久し振りな平和な日常だ。

そうした中、俺は今、魔導国に於ける、新たな娯楽の取り組み(プレゼン)をしている。

リ・エスティーゼ王国には、民衆の娯楽なる物は殆んど無かった。

強いて言えば、吟遊詩人の広場での歌の披露(リサイタル)くらいだ。

そしてバハルス帝国の娯楽と云えば、真っ先に思い浮かぶのが格闘場(コロシアム)での戦闘(バトル)

それ等をその儘に真似ても良かったが、俺とモモンガさんは もっと一般民にも簡単に普及出来る何か…を考えた。

そして出した結論が、スポーツ。

野球やサッカー等は、過去のプレイヤー達が広めていたと思っていたのだが、意外と そうでも無かった。

草を纏めて丸めてボールにし、それを木の棒で打つ等の野球っぽい遊びは、確かに在る。

サッカーっぽいのも同様。

しかし、あくまでも子供の遊びの域で、本格的な それは無い。

 

ダムダムダムダム…

 

そうした中、俺が選んだ競技はバスケットボール。 

ルールを教え、広めるには実際にプレイを見せながらの方が分かりやすい。

だからこそ、野球やサッカーと比べても出場人数の少ないバスケをとりあえず選んでみた。

実は かなり前から、ブレインにクライムや漆黒の剣、そして帝国のフォーサイトの面々を巻き込んで用意していたのだ。

ナザリックに呼び出して、資料室に有った試合の動画を見せたり。

これだけで皆さん、興味を持ってくれたり。

その後も暇してる冒険者チームに声を掛けたり。

そして今日、魔導国が制定した労働休暇の日、所謂 日曜日。

コルク舗装されたコートでの3on3(フルコート)。

それなりに見物客が集まった中での、『ロウキュー』と命名しての競技御披露目、エキシビジョンが始まった。

…因みにだが、ゴールは俺とデミウルゴスが鉄を加工したりして作った。

 

≫≫≫

「マカロンさん!」

ヘッケラン、イミーナのプレスを凌いだルクルットが、俺に高いパスを出す。

 

「応よ!」

それをジャンプして受け取り、その儘アリウープに行こうとした所に、

「させるかっ!」

ブレインがブロックに飛んで来た。

この儘、ダンクを また脳天に ぶちかましても 決めても良かったが…

 

ひょぃ…

 

「な…?!」

ノールックで後方にパス。

 

「ナイスパスです!」

それを3Pラインの外に居るユリたん♡が受け取り、その儘シュート。

ボールは綺麗な放物線を描き、リングに掠る事無くゴールに吸い込まれた。

 

「「「「「ユリせんせーっ!」」」」」

それを見たチビっ子…ユリたん♡の教え子達から大歓声。

 

≫≫≫

その後もメンバーチェンジを繰り返し、ゲームは終了。

分かった事が数点。

ロバーデイクが実は かなり優秀なセンターだったり。

ニニャとアルシェは冒険者…魔法詠唱者(マジック・キャスター)としては優秀だが、スポーツに関しては全くの運痴(〇んち)だったり。

それと試合中、ユリたん♡の胸が思いきし揺れた時に、男衆(ギャラリー)から大歓声が沸き起こったが、それは一番最初の時に俺が殺気全開して黙らせた。

その後は、純粋にプレイに対する声援だから、特に何も言う事は無い。

流石に それで、●したりとか〆たりは、しないよ。

…但しルクルット。

お前は後で、STFだ。

 

≫≫≫

「思ってた以上に、ウケたかな?」

「はい。まろん殿…マカロンが最初に広めたというのを抜きとしても、成功と言って良いかと。

バスケットボールの量産と、新たなコートの設置。

アインズ様に提案してみましょう。」

人化して観衆に紛れて、様子を窺っていたデミウルゴスの感想は『アリ』だそうだ。

 

「何年か先には、プロ・リーグみたいのが出来たりしてな?」

「ははは…魔導国の名物としますか?」

そして ある程度 普及してきたら、次はサッカーの布教だ!

 




レイドボス戦は、ンフィーレアの傾城傾国使用で、もう終わったも同然。
引っ張るとしても、後は動けない相手に大技連発するしか(止めはモモンガさん)浮かばなかったので、簡単に〆ました。
 
≫≫≫
次回『裁判(予定)』
乞う御期待!感想よろしくです。
 


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【閑話】

 
今後の伏線も、入ってます?
 


【現状の復習(おさらい)~原作キャラ(他)、どうなってる?~】

 

 

・ニグン…アンデッド化(死者の大魔法使い(エルダー・リッチ)疵面(スカーフェイス))→消滅

 

・クレマンティーヌ…アンデッド化(吸血鬼(ヴァンパイア)嗤う金毛(スマイル・ゴールド))→消滅

 

・カジット…アンデッド化(死者の大魔法使い(エルダー・リッチ)頭骨(スカルヘッド))→消滅

 

ガジットの弟子達…エ・ランテルのアンデッド騒動の犯人として、モモン達によって王国兵隊に引き渡された。

多分、もう処刑されている。

 

・叡者の額冠…クレマンティーヌが持っていたが、まろんが戦闘後に強奪→モモンガの手に。

現在はレア・アイテムとして、ナザリック宝物庫に保管されている。

 

・死の宝珠…ガジットが持っていたが、以下同文。

 

・漆黒の剣の皆さん…生存。金級(ゴールド)冒険者に昇格。ニニャ、脱・男装。

 

・ツアレ…セバスに保護された後、現在はカルネ村にて一般民として生活(ΧΧΧΧとフラグが立つ予定だったが…)。ニニャと再会

 

・イクヴァルジ…右手がミイラ化してしまうが、生存。しかし冒険者は引退。他の仲間も生存だが、チームは鉄級(アイアン)に降格。

 

・フォーサイトの皆さん…生存。しかし、アルシェは●ロインの宿命からは逃げられなかったw

 

・アルシェ双子妹…実家から自立したアルシェと一緒に暮らしている。

 

・エルヤー…まろんとの闘いで精神を破壊されるが、スレイン法国神官の治癒魔法で復帰。

その後"新生"漆黒聖典・不敬天武となるが、ナザリックでの戦闘で、クロキシの『飛ぶ斬撃』により首を斬り落とされて死亡。

 

・エルヤーの奴隷エルフ達…まろんとの闘いにより、所有権が まろん…後にモモンガに。

ナザリックにて、第6階層農園の作業員及び、アウラ&マーレの世話役に。

 

「甲斐甲斐しいのは解るけどさ…」

「お、お風呂は1人で入れますからぁ! (はわゎ…お姉ちゃん以外の)(女の人の裸、見ちゃいました…)

 

・八本指の皆さん…六腕、ヒルマ、コッコドール等の主要人物、並びモブ幹部格は全員死亡。

死因は様々。ストレートに●されたり、アンデッドやマジック・アイテムの素材にされたり、異種族交配の実験体にされて壊されたり…

 

・ジルクニフ…()() ()()、頭皮や胃に深刻的ダメージは負っていない

 

・フールーダ…()() ()()、別に帝国を裏切ったりしていない

 

・レイナース…呪いが解け、一時ナザリック入りしていたが、現在は帝国騎士に復帰(ΧΧΧΧとフラグが立つ予定だったが…)

 

・ナザミ…アウラ&マーレの帝国皇城"挨拶"イベントが無かった為、生存

 

・スレイン法国…滅亡コース、一直線。

神官達も、一部は既に●されていたり。

残りの者も魔導国、帝国、ついでに聖王国や王国相手の国際裁判に掛けられ、無事では済まされないでしょう。

少なくとも、とある1国は死刑判決一択、殺る気満々です(笑)。

 

・漆黒聖典(原作オリジナル)の皆さん…占星千里、絶死絶命以外は全員死亡。

 

・占星千里…予見の異能(タレント)を買われてナザリック入り(ΧΧΧΧと以下略)

 

・絶死絶命…???

 

・ガゼフ…生存

 

・ザナック…生存。リ・エスティーゼの新王に。少し痩せたらしい。

 

・ランポッサⅢ世…生存。王位を退任して隠居。少し太ったらしい。

 

・王国五大宝物…現在も王国が所持している。

但し、ブレインvsガゼフの戦闘で、剃刀(レイザー・エッジ)守護の鎧(ガーディアン)は修復不能レベルに破壊された。

 

・ラナー…ナザリック入り。

()()()()に、()()人間は辞めていない。

 

・クライム…ラナーと共に、ナザリック入り。まだ人間は辞めていない。

世間的にはラナーの従者として帝国入りしている事になっているので、外では暗黒の鎧を身に纏って顔を隠し、クロキシを名乗る事に。

ナザリック・ブート・キャンプにより、飛躍的レベルアップ。

ラナーにDTを奪われた。

 

「そんな、奪うだなんて…(//∀//)

只、お互いの初めてを交換しただけですわ♡」

 

・ブレイン…生存。ナザリック入り。

現在はカルネ村の護り役に。

ΧΧΧ、ΧΧΧΧΧ、ΧΧΧΧとフラグが立つ予定だったが、現状では全て無かった事に されている。

 

「いや…俺は別に、ハーレム王とか目指してないから…」

 

・カルカ…生存。聖棍棒には、ならなかった。

 

・ケラルト…生存

 

・レメディオス…生存。しかし、デミえもんに聖棍棒にされました。

 

・パベル・バラハ…生存

 

・ネイア・バラハ…死にませんでした。

魔導王陛下に対しても、熱狂的信者には ならず、先輩(シズ)の主な認識で止まっています。()()は。

 

・エンリ&ンフィーレア…ナザリック招待やカルネ村トロール襲撃イベント等は無かったが、何やかんやで結婚。

ンフィーは個人使用目的で作った精力剤(ポーション)をまろんに見られてしまい、『心の友』にされてしまう。

 

「心の友よ!(だから そのポーション、俺にも頂戴♡)

 

・覇王炎莉将軍配下ゴブリン軍団…能筋王子の侵攻は無かったのに、何時の間にか召喚されていた。

カルネ村に何かが起きたのかは、不明。

 

・グアゴア族…間引きされる事無く、ほぼ無血で魔導国傘下に。

多分、ぺ・リユロはザナックと親友になる(笑)。

 

・フィリップ…お肉

 




原作と、最後が大幅に変わったキャラ等(一部、そうでもない)を纏めてみましたが、漏れは無い?
 


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ズーラーノーン

 
裁判が始まる前に。
 


▼▼▼

 

キーンコーンカーンコーン…

 

「はい。それでは今日の授業は此所迄です。」

「「「「「はーい。」」」」」

「「「「「ユリせんせー、さよーならー!」」」」」

 

ドタドタドタドタ…

 

「よし、ロウキューやろうぜ!」

「「「「「やろやろ!」」」」

「は~い はいはいはい。貴方達、廊下は走らない!」

 

エ・ランテルの孤児院兼学校。

この日の授業が終わり、子供達はボールを手にして、校庭に走っていった。

 

≫≫≫

「ふぅ…本当に、元気ですね。」

教室から、校庭に新たに作られたコートで まろんが考案した(事になっている)ロウキュー(バスケットボール)で元気に遊んでいる子供達を見て、ユリは顔を綻ばせる。

 

「もしかしたら本当に何年か後に、あの子達の中からプロの選手が生まれるかも知れませんね。」

 

キョロキョロ…

 

「……………………………。」

そんな事を考えた次の瞬間、ユリの表情は一変、 不審者の様な 慎重な面持ちとなる。

 

「……………………………………。」

そして、周囲に誰も居ないのを確認すると、教卓に置いてある まろんの写真を手にして、

「まろん様…♡( ー()ー)」

それに ゆっくりと顔を近付けるのだった。

 

≫≫≫

 

◆とある少年(モブ)side◆

今日の勉強が終わって、皆でロウキュー。

 

「あっ…」

パスを取り損なって、ボールはコートの外に。

そのボールが転がった先…そこには1人の男の人が立っていた。

何処かで見た事が有るな…と思ってたら、この人、この前のロウキューで大活躍してた人だ!

かっけー!背が高い!目が赤い!

この人って、ユリせんせーの お婿さんなんだよね。

せんせーの机の上に、この人の絵が飾ってあるもん。

それで せんせー、時々その絵にちゅーしてるんだよね。らぶらぶー。

 

「へぇ? 早速ロウキューやってるのか?

…ロウキュー、面白いか?」

「「「うん!」」」

「「「「面白いよ!」」」」

ボールを拾って、男の人が笑いながら話してきた。

ユリせんせーからは『知らない人に話し掛けられたら逃げなさい』って言われているけど、この人は知ってる人だから、大丈夫。

男の人の質問に答えると、この人は更に笑って、

「よし、俺も混ぜてくれよ。

とっておきを教えてやるよ。」

そう言って、どらいぶしながらコートに入ってきた。

 

 

◆とある少年(モブ)side・了◆

 

▼▼▼

 

◆デミウルゴスside◆

聖地なる場所で捕らえたスレイン法国の神官達ですが、現在はエ・ランテルに在る魔導王城(仮)の地下に幽閉しております。

所謂 捕虜。裁判までは、この地下牢で過ごして貰います。

敵国側の最高位の者達です。

牢と言えど、それなりに格式有る部屋を宛がう様、アインズ様より命じられました。

帝国と王国との戦争の時も、リ・エスティーゼの王ランポッサが捕虜として囚われた時も、バハルス皇帝は その実、国賓扱いしていたとか。

成る程。それが戦の理ならば、それに倣いましょう。

 

≫≫≫

「さあ、今日よりは、これ等の家具を使いなさい。」

「…………………………………。」

はい。ですから少しだけ、本気を出してみました。

神官等の部屋の椅子に卓、そして寝具。

私自ら吟味した、人間や獣の骨と皮をふんだんに使い…仮にアインズ様に御出しするとしても、恥ずかしくないレベルに作り仕上げました。

 

「…………………………。」

ん? どうしたのですか、大神官殿?

まさか、この期に及んで、悪魔(わたし)が差し出した家具等、使う気になれない…とか言う心算ですか?

 

「仕方無いですね…

『この席に着き、寛ぎなさい。』

 

 

◆デミウルゴスside・了◆

 

▼▼▼

 

◆まろんside◆

「そいっ!」

「「「わわゎっ!?」」」

ガキんちょ達のマークを躱してのレイアップ。

ダンクみたいな大技は やらないぞ?

基礎が出来てないのに変に影響受けて、そればかり真似しても仕方無いからな。

それに下手に怪我でもさせたら、ユリたん♡に怒られる。

 

「すげーっ!」

「かっけー!」

それに、バスケ初心者からすれば、基礎(レイアップ)ですら立派な大技だ。

そんなチビっ子達から拍手喝采大声援。

…何故、俺が此の場に居るかと言うと、ユリたん♡から孤児院兼学校にもバスケのコートが出来たと聞いたから、様子を見に来ただけだ。

子供達と遊んでいるのは、単なる只 何となく。

 

てんてんてん…

 

ボールがコートの外に溢れ、それを子供が取りに行った先に、

「…何故、此処に居るのですか?」

そこにはユリたん♡が。 

 

「それは勿論、ユリたん♡の顔を見に来たんだよ。」

「な…??!」

「「「「「ひゅーひゅー♡♪」」」」」

「いや~♪(≧∀≦)ゞ」

「…じゃ、ないです!」

 

≫≫≫

…例の法国の神官達の 公開処刑宣告 裁判は、ジルクニフ君ドラちゃん他、各国のトップの日程調整の折り合いで、3週間後に決まった。

因みにだが…法国領は既に、魔導国とエルフ国の軍勢によって、完全に滅んでいる。

今は もうエルフ国の兵は撤退しており、魔導国側も指揮役だったアウラ、マーレ、シズはナザリックに戻っているが、アンデッドの軍勢は未だ法国内に放置。

亡者が彷徨い暴れる、死の国と化しているのだ。

まだ隠れて生き延びている者が居るかも知れないが、それを除けば法国の生き残り…それは現在、ナザリックに捕らえられている神官達と、絶死絶命だけ。

あぁ、それから占星千里。

…"新生"漆黒のデスデス男は、既に殺している。

法国が壊滅した事は、占星千里には伝えているが、神官や絶死絶命には まだ教えていない。

この事で占星千里は最初、少しショックを受けた様だったが、

「"国"として魔導国…いえ、アインズ様に喧嘩を売ったのですから、仕方無いですね。」

…と、理解納得。そして割り切りは、した様子だった。

そして明日、その裁判前の一仕事として、魔導王から魔導国貴族への要請という形で久し振り、俺は冒険者マカロンとして、ナーベ(ナーベラル)と一緒に王国に向かう事になっている。

 

≫≫≫

「此処…か…」

「行きましょう、マカロンさん。」

そんな訳で、リ・エスティーゼ王国。

俺達は王都から少し距離を置いた海側の地方都市、とある安宿の一室の前に。

  

バタンっ…!

 

「はーい、失礼しまーす。

ルームサービス、でぇーっす!」

「……………っ?!」

その部屋に泊まっていた(おとこ)は、いきなり登場した俺達に驚いた反応を見せた。

 

「な、何なのだ、アンタ等は?

此処は、俺が泊まっていr

「黙れ、アスワンツェツェバエ。

私達は魔導王様の遣いで来たのだ。」

「…………っ!?」

 

≫≫≫

「成る程。それは本当の話だな?」

「…は、はい…。」

この男を瞬時に縛り上げ、色々と 拷問 質問。

はい、色々と…特に、一番知りたかった情報も得る事が出来ました。

 

 

◆まろんside・了◆

 

▼▼▼

 

◆モモンガside◆

カッツェ平野。

バハルス帝国とリ・エスティーゼ王国が毎年 合戦を繰り広げていた地。

そしてカッツェ平野と言えば…

スレイン法国最強と云われていた、漆黒聖典番外席次・絶死絶命。

この女が装備していたのは、ユグドラシルのアイテム【風神の鎧】。

その事から、六大神の1人は()()()だと、俺と まろんサンは推測していた。

そして それに伴い、ヤツが転移で降りた地は、此処だと予想。

何しろ『Katze』平野だもんな。

この平野、地に深く埋もれてる遺跡こそが、嘗てのギルド拠点だったのだろう。

 

「成る程…此処か…」

「確かに上手く、擬装(カムフラージュ)されておりますが…」

俺は今、まろんサンが仕入れた情報を元に、デミウルゴス、ソリュシャン、エントマ達と共に その平野に僅かに顔を出している遺跡の一角の前に来ている。

理由・目的は少し時が遡るが、俺達が法国を攻めている最中、ナザリックに宛てに1通の手紙が届いた。

差し出し先は、リ・エスティーゼの都市の1つ。

そして その手紙の内容。

それは、魔導国(われわれ)にとって、決して益には ならない…と、判断。

そこで この手紙を出した者の所に、まろんサンとナーベラルを送り出した。

 

 

「そいつ、『何故、此処が分かった?』みたいな顔をしてたぜ?w」

 

 

…とは、まろんサンの弁。

実は この者、この世界にて色々と暗躍している秘密結社・ズーラーノーンの一員だったのだ。

まろんサンが その者をその場で締め上げ、色々と問い質し。

因みに、何故この男が王国に居たかと言うと、組織拠点からは郵便物を出せないとして、先ずは王国に潜入。

其処から魔導国宛の手紙を出し、組織に戻ろうとしたタイミングで、国境関所の出入国の審査が急に厳しくなり、王国から出るに出られない…仕方無く、宿屋に籠る状況に。

それ多分、戦争が関係してるな。

そんな時に、まろんサンが押し掛けて来たという訳だ。 

…そして その上で、ズーラーノーンの一番の拠点が、実は このカッツェ平野に在る事が判ったのだ。

成る程…この平野が常に、一定時期を除けばアンデッドが大量に発生して跋扈しているのは、もしかしたら此奴等の所為かも知れないな。

 

幻術(イリュージョン)で誤魔化している様だが、私には無意味だ。」

 

スゥ…

 

一見、只の壁だが、実は崩れ落ち、空いている大穴の中、そして その先、地下へと繋がる階段に…端から見れば壁に溶け込むが如くに、俺達は進んでいく。

手紙の内容。

ふん…、何が『至高のアンデッドである貴君と、良好な関係を築きたい』だ。

『至高のアンデッド』である俺と『良好な関係』とやらを築き、貴様等は何をする? 俺に何をさせる心算だ?

ズーラーノーン…貴様等の最終目的が何かなのかに興味は無いが、過去にアンデッドを使い、幾つもの都市を滅ぼしてきた貴様等だ。

どうせ、碌な物では有るまい。

俺をトップ…もしや神として祭り上げ、世界を混沌に陥れる心算か?

俺がアンデッドだから、世界の破滅を望んでいるとでも思っているか?

逆だよ。俺は単に、仲間達と平和に静かに過ごしたいだけだ。

この世界について調べていた際に貴様等の事を知った時から、俺達にとって邪魔な存在になると思っていた。

だからこそ、手紙という形で接触を図ってきた時は、足元を掴むチャンスだと思ったよ。

前のエ・ランテルでのアンデッド騒動で捕まえた者達は下っ端だったのか、有用な情報は持っていなかったしな。

たらればな話だが、それなりに事情を知っていたであろう、あの時の幹部格2人を直ぐに殺してアンデッドにしたのは、今からすれば、正直 失敗だった。

不山戯るなよ…。

これは決して、陳腐な正義感なんかじゃない。

只、俺にとって邪魔だから、潰す。

只、それだけだ。

知らなかったのか?

俺は非常に、我儘なんだよ。

 




デミえもん作製家具…アニメ2期5話(…だったかな?)に出てきた椅子、並びにアレと同系の家具をイメージして下さい。
 
≫≫≫
 
◆パンドラside◆
皆様 御存知ですか?
『Katze』とはドイツ語で、猫の事を言うのですよ!
 
▼▼▼
次回『ズーラーノーン②(予定)』
乞う御期待! 感想よろしくです。
 
…処で、1分前にも『現状の復習』的な閑話を前話にUPしてますが、読みました?
 
 


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ズーラーノーン②

 
【前回の あらすじ】
モモンガさん一行は、カッツェ平野の遺跡に進入しました。
 



◆モモンガside◆

この遺跡、どうやら やはり、ユグドラシルの建物の様だ。

古城型の攻略拠点(ダンジョン)

 

「何と言いますか、これは…」

「…可愛~い?」

地下へと階段を降りる途中、ソリュシャンとエントマが、微妙な顔になっている。

壁には、此処を拠点にしていたプレイヤー達の趣味なのか(噂には聞いていた)、壁一面に猫猫仔猫…猫のイラストが描かれているのだ。

時々、虎やライオンの絵も。

それと、猫耳娘のイラスト。

…それから他には、『ねっこ!』とか『にゃんこ♡LOVE』等な書き込みも多々。

 

  

子子子子子子子子子子子子

 

  

ここここここここここここ?…何これ?

兎に角 改めて、此処が ()()()()()の拠点だったと確信。

 

「…だとしても、それは ()()()600年前の話な筈だ。

それにしては、この崩れ具合。そして、此処まで建物が地に埋もれるのは不自然過ぎる。」

「アインズ様。それは後から やって来たと言う、八欲王とやらの仕業の可能性は?」

「…うむ。」

あー。確かに()()()()なら、やりかねん。

AOG(オレたち)は確かに、ゲーマーとしてDQNだったが、奴等は現実世界(リアル)でも、ガチなDQNだったからなー。

此処をプレイヤーの嘗ての拠点と認識して、略奪に破壊、そして残ったNPCも皆殺しにした。

ん! 想像に難しくない!

ギルド武器は見付からなかったか、敢えて破壊はしなかったかで、辛うじて原型…名残を留めていると言った処か。

そして、その無人の廃城を偶々、ズーラーノーンが見付けて その儘 隠れ家(アジト)にした…そんな感じか?

この平野がアンデッド多発出現地域となったのは、その後の話か。

 

≫≫≫

『『『ガァアァ…』』』

「ハァッ!」

「え~い!」

 

バズッ!

 

この遺跡内も、今はアンデッドの巣窟になっており、それを先頭を進んでいたソリュシャンとエントマが蹴散らし。

その先も、幻術(イリュージョン)で隠された通路(俺達からすれば、駄々分かり)や、魔法施錠された扉をある時は魔法で解除、ある時は物理で開き、最初の入り口から最下層のフロアに。

 

「な…? 何者だ、貴様達は…ぃゃ、貴方様方は…?!」

其処には1体の死者の大魔法使い(エルダー・リッチ)他、人間が数人。

しかも、只の死者の大魔法使い(エルダー・リッチ)じゃなかった。

突然変異の強化種…いや、違う。

恐らくは術式で自らをアンデッドと化した、元・人間だ。

 

「もしや…アインズ・ウール・ゴウン魔導王様…で?」

俺達が何者かを察したのだろう、この死者の大魔法使い(エルダー・リッチ)が恐る恐る尋ねてきた。

ズーラーノーンにはトップに、正体不明の"盟主"と云われる人物。

その下に十二高弟と呼ばれる幹部格が。

そして その下に、平の下っ端という構成と聞いている。

コイツが盟主…いや、違うな。

確かに死者の大魔法使い(エルダー・リッチ)も、この世界では かなりの上位モンスターとされている。

しかし それでも所謂『強者』と呼ばれる人間が集まれば、決して討伐出来ないレベルでは無い。

その程度なレベルのモンスターがトップの組織が、過去に幾度も…大小は有っただろうが、都市を滅ぼす様な行動に至れるとは思えない。

 

「…如何にも。私こそが、アインズ・ウール・ゴウン魔導国を統べる王、アインズ・ウール・ゴウンその人である!」

とりあえずは聞かれた質問に応え、

「ズーラーノーン十二高弟だな?

さあ、お前達のトップ、盟主とやらの元に案内して貰おうか。」

「「「「「…………………。」」」」

その儘に、此方の目的を伝える事に。

 

≫≫≫

あの死者の大魔法使い(エルダー・リッチ)が居たフロアが最奥だと思っていたが、まだ その先が在った。

此奴等の案内で進んだ先。

遺跡(ダンジョン)の壁をぶち破り、更に穴を掘り抜き進んだエリア。

既にユグドラシルのダンジョンでは、無くなっている。

 

「ほう? 此処の入り口を見付け、この場まで足を踏み入れるとは、流石…と言うべきか?

よくぞ参られた、魔導王。

我は貴殿を客人として歓迎しよう。」

そして本当に最奥の部屋か?

其処にはコイツが盟主か?

死の支配者(オーバーロード)を除けば最上位の不死属(アンデッド)と言って良い存在…ナイトリッチが1体居た。

成る程。ナイトリッチなら、それなりな規模の組織の盟主と呼ぶのも、然程 抵抗も無い。

 

「「「……………。」」」

「「「……………。」」」

その他には、人間だったり、アンデッドだったりが数名。

アンデッドの方は、この部屋の案内役として連れて来た死者の大魔法使い(エルダー・リッチ)と同様な、元・人間なのだろう。

 

「勢揃い…ですね。」

デミウルゴスの言う通り。

既に殺している2人を除けば、十二高弟、そして盟主。

ズーラーノーンの主要人物と呼べる存在が、この場に揃っている。

 

「持て成しは結構だ。

私は あの手紙を読み、参じた訳だが…

率直に聞こう。お前達は一体、この世界で何を目指しているのだ?」

 

 

◆モモンガside・了◆

 

≫≫≫

 

◆デミウルゴスside◆

「ふん…下らぬ!」

「な、何だと?!」

アインズ様の言われる通り。…全く話になりません。

アインズ様の問い掛けに、ズーラーノーンの盟主を名乗るナイトリッチの答え。

それは、この世界全土をアンデッドが蔓延る、終焉の世界の創生。

普段からアインズ様が虚しいと仰有られている、瓦礫と屍の山に敷く玉座。

その様な、不毛な世界を目指しているとの事。

兎に角、この者共が目指す未来は、アインズ様が望む平和に日常を静かに過ごしたいという其とは、まるで対極な物。

そもそもアインズ様が魔導王…王を名乗り、国を興したのも、元を辿れば それが目的なのです。

これはナザリックが転移した当初、その地を治めていたリ・エスティーゼ王国が もう少し まともな対応が出来ていれば、その必要も無かったのですが。

あのナイトリッチは信じられない顔を浮かべていますが、私からすれば、アインズ様が貴様如きと同じレベルの思想を持っていると思っている事が、理解出来ません。

 

「つまり貴様達は、私が今、治めている魔導国を滅ぼす。…そう言う事だな?

更には我が友…ジルやドラウの国も滅ぼすと。 

はぁ…やれやれだ。本来こういうのは、たっちさんの仕事(やくめ)だろうに…」

 

 

◆デミウルゴスside・了◆

 

≫≫≫

 

◆モモンガside◆

別に、正義の味方を気取る心算は無いが、それでも この盟主の考え…いや、存在が既に看過出来ない。

俺の知らぬ地の中で支配者を気取るだけなら、其処まで気に止める事も無かったが、このズーラーノーンの考えは、それを越えている。

もしも この場に たっちさんが居合わせていたなら、問答無用の次元断切(ワールド・ブレイク)が炸裂しているだろう。

 

「どうした? 私も()()()()()()アンデッドだから、この世の破滅を夢描いているてのとでも、思っていたか?

嗤わせるな!!

この私を…貴様如きナイトリッチと一緒にするな!

デミウルゴス! ソリュシャン! エントマ!」

「「「はっ!」」」

さて、世界の掃除の時間だ。

 

≫≫≫

「ば…馬鹿な…っ?!

貴様達は、一体…?」

世界で暗躍する秘密結社と云えど、やはり この程度か。

盟主を除く者…人間はソリュシャンが身体一部、足元のみを粘体(ショゴス)に戻しての大津波を浴びせ、瞬時に体内に取り込み消化。

死の大魔法使い(エルダー・リッチ)他のアンデッドは、エントマが喚んだ喰屍蟲の群れに喰われた。

これで十二高弟は全滅。

残すは盟主を名乗る、ナイトリッチ1体のみ。

何かを話し合うで無く、殆んど一方的な交渉決裂と同時、不意打ちに近しい強襲で己の配下を全て斃された この盟主は、明らかに狼狽えている。

アンデッド特有の精神安定は、持ち合わせてないのか?

前から思っていたが、やはり これは、アンデッド系プレイヤーのオリジナルな様だ。

…でも、まろんサンは普通にキレた後、それを持続しているけど?

これは後日、検証すべきかも知れないな。

 

「アインズ様。残すは この、ナイトリッチだけですが、如何致しましょう?」

デミウルゴスの質問、これは『自分が殺っても良いか、それとも最後の締めは俺に任せるか』という意味だろう。

そうだな…。

 

「盟主。幾つか質問させて貰うぞ。

貴様はナイトリッチという種なだけで、固有の名は持っていないな?」

「…………。」

 

コクリ…

 

俺の問に、ナイトリッチは無言で頷く。

やはり、そうだったか。

一応は組織の頭だが、コイツの種族的立ち居地は、モブの雑魚モンスターと変わらないか。

それでは次の…最後の質問だ。

 

「私は…私の種族は、何だと思う?」

これに正解すれば、褒美に俺が直々、手を降してやろう。

 

「な…我と同じ、ナイトリッチではないのか?」

流石に この者も、俺が自分より上位の実力者なのは理解している筈。

しかし それでも、種族としては己と同じくな認識。

つまりコイツは…いや、この世界は死の支配者(オーバーロード)という種族は認識されていない?

恐らくは俺以外では、スルシャーナしか存在しなかったのか?

そして そのスルシャーナも、"死の神"という肩書きだけで、死の支配者(オーバーロード)という種族名は広まらなかったのだろう。

まあ、どちらにしても…だ。

 

「はい、0点。…デミウルゴス。」

「畏まりました、アインズ様。

…《奈落の冷炎(アビス・フレア)》!!」

 

  

◆モモンガside・了◆

 

▼▼▼

 

◆まろんside◆

「…と、まあ、こんな感じですね。」

モモンガさんがカッツェ平野から戻ってきての報告。

要約すれば、ズーラーノーンは盟主に十二高弟、そしてアジト内に居た雑魚モブは皆殺しにしたそうだ。

アジトの外に出て、何か悪さしているであろう末端も、それが潜んでいる各国に報せるとか。

ズーラーノーン、マジ壊滅の御報せですね、分かります。

しかし本当に、やはりと言うか当然と言うか…あっさりと終わったね。

尤も、モモンガさんが苦戦するなんて、想像(イメージ)出来ないけど。

組織のボスがナイトリッチ程度なら、尚更な話だ。

 

「それから、珍しい…というか、興味深いアイテムを見付けました。

このアンデッドをランダムに生産するアイテムですね。

コイツが、カッツェ平野でアンデッドが大量出現する原因だった様です。」

魔法鑑定・解析によれば、【霧の葬列(デスマーチ・イン・ミスト)】という名称らしい現地アイテム。

見た目は獣の骨の装飾がされた水晶珠(オーブ)型のアイテムで、コイツの中から多量に発生する霧より、アンデッドを生み出すか作り出すか、するらしい。

そして このアイテム、年に1度、数日程の期間 魔力充溜が必要らしく、その時はアイテムとしての機能は停止。

今までは丁度 その時期に、帝国と王国が戦争をしていた訳だ。

 

「…で、他にも何かレア・アイテムが無いかと探ってみたのですが、後は何時ぞやの死の宝珠と同等なアイテム位しか見つかりませんでしたね。

遺跡内も、ユグドラシルのアイテムは恐らくは八欲王に漁られ尽くされたか、さっぱりですよ。」

…アンタは何をしに、現場に行っていた?

実は そっちのが、メインの目的だったな?

  

 




子子子子子子子子子子子子…『ねこのこ こねこ ししのこ こじし』と読みます。
詳しくは『小野篁』『嵯峨天皇』等で検索してみよう!
 
【次回予告】
 
◆ルプスレギナside◆
ついに始まる、戦争裁判!
スレイン法国の神官達が、 ぶっ殺される 裁かれる時が来たっスよ!
エンちゃんもカルネ村の被害者代表…証人として、法廷の場に出席っス。
そして、法国側…弁護士なんか全然付かない、一方的な糾弾な予定だった筈が、弁護士として名乗り出る者が、現れた?
 
次回『匠の不死鳥 ~大逆転裁判!~(予定)』
乞う御期待っス! 感想も、よろしくっス。
 


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モモンガ様とザナック君

 
裁きの時間の前に…
 


◆モモンガside◆

法国の神官達の所業を公に裁く、裁判が いよいよ2日後と迫った。

ジルにドラウ、エンリ等は、当日に転移魔法で迎えに行く手筈。

そして裁判と言っても…当時は まだ王国領だったが…カルネ村他開拓村の襲撃や、ローブル聖王国での俺やカルカ女王の暗殺(未遂)を裏で企てていた件、モモンとマカロンに魔導王暗殺を持ち掛けた件、ナザリック並びにエ・ランテルへのカチコミ、etc etc(その他その他)を証拠付きで一方的に糾弾して死刑判決を降す予定だったのだが、

「いや、流石に弁護士は付けないとダメでしょう。

仕方無い、俺が やってやるよ。」

…と、まろんサン。

 

「はいはいは~い! 私が弁護士やるでありんす♪」

「私も やってみたいかな~?」

「あの…僕も、やりたいかも…」

「私もヤリたいっス!」

…と、他数名。

 

「お前等 単に、『異議あり!』』って言いたいだけだろ!?」

…アナタは違うのですか?

てゆーか まろんサン。アナタはマカロンとして、証人の側で出廷でしょうが。

 

≫≫≫

魔導国として、今回の裁判の出席を呼び掛けたのは、バハルス帝国、竜王国、アーグランド評議国(と言うか、ツアー個人)、ローブル聖王国、リ・エスティーゼ王国。

…そして、今回が初めての絡みとなるが、エルフ王国の計6ヶ国。

その何れもが、此方に赴く意を示してきた。

但し、転移での送り迎えに応じたのは、ジルとドラウだけ。

これは、信用の差か?

移動に費やす時間や経費を考えれば、此方のが効率的なのだが。

尤もツアーに至っては、例の鎧での参加だから、自ら それを飛ばした方が楽なのだろう。

その中、聖王国と王国から、各々のトップが魔導国入りしてきた。

 

「…あの時以来となりますね、アインズ・ウール・ゴウン魔導王殿。」

ローブルの聖女王、カルカ・べサーレス。

法国との件では、聖王国も あの襲撃事件の所為で、当事者と言っても良い。

あの頑固な宗教国家が、自身が禁忌する魔導国の呼び掛けに応じたのは、それ故にだろう。

 

「今回の呼び掛け、誠に感謝します、魔導王陛下。」

そして、リ・エスティーゼの若き新王、ザナック・ヴァルレオン・イガナ・ライル・ヴァイセルフ。

彼も また、スレイン法国がカルネ村他の開拓村を襲撃していた当事、其処は まだ王国領だったので、被害者と言って良い。

スレイン法国には思う処が多々有るだろう。

 

「「…………………………。」」

彼・彼女達の後ろには御付きと護衛が控えている。

リ・エスティーゼ騎士団長、ガゼフ・ストロノーフとローブル聖騎士団長、レメディオス・カストディオの両名。

共に無言で各々の主の後ろに立っているが、この2人、決して同じ()()では無い。

ガゼフ・ストロノーフは元より、寡黙厳格な性格で、不必要な事は喋らないと聞いているが、まろんサンの言う処の のーきん隊長

 

「……………………!」

実は彼女、既にアイテムで発言…と言うか、()を封じられているのだ。

これは、今 聖女王の傍らに居る側近でレメディオスの妹でもある、ケラルト・カストディオの考えだそうだ。

ん! 良いアイデアだ!

この女、前回の対談でも存分にやらかしてくれたからな!

 

「…………………………!!」

実際に今も、何かを凄く言いたそうな顔をしている。

てゆーか、そのアイテムの抑止が無ければ、絶対に今頃、何か爆弾を落としている!

あの時は頭に血が上っても それを瞬時に理性で抑える事が出来るデミウルゴスを同行させていたから、事無きを得ただけ。

しかし今は、それが出来そうにないアルベドやシャルティアも傍らに居る。

しかも、今回は他所(アウェイ)で無くて自国(ホーム)

不用意な発言1つで「「はぁあっ?!」」ってなって、場が血の海に成りかねん。

ケラルト女史、本当にナイス判断!

 

≫≫≫

「魔導王殿…1つ、尋ねて宜しいか?」

この夜、ザナック王がガゼフを連れて、俺の私室に訪ねてきた。

何かを聞きたい様だが…その表情は何やら決意、或いは覚悟を秘めた、そんな慎重な面持ちだ。

 

「質問にもよるが…答えられる問い掛けならば、何でも話そう。」

流石にナザリックの内部情報等は話す訳にも行かないし、ジルやラナーが『意外とキレ者』『豚の皮を被った狸』と評する人間だ。

…ってラナー! 兄だろ? その喩え、酷くない?

関係無い話だが、まろんサンがエ・ランテルの市長の事を、全く同じ表現で誉めて(?)いた。

…兎に角、そんな人物だ。

即座、自身の首を絞める様な質問をしてくる筈も無い。

逆に、どんな質問をしてくるかには興味が有る。

 

「…気分を害するやも知れないので、先に謝罪しておきましょう。

単刀直入に聞きますが…今は もう『元』が付くが、リ・エスティーゼ第1王子、バルブロ・アンドレアン・イエルド・ライル・ヴァイセルフを、貴方は殺したのか?」

…え? 誰、それ?

 

≫≫≫

「成る程…()()()の一団に、その者が居たとするならば、私の配下の者が その時に間違い無く殺害しているな。」

ザナックが言うには、そのバルブロとやらは帝国と王国の合戦前に、徴兵の追加召集の為にカルネ村に進行している最中に、行方知れずとなったとか。

あぁ、カルネ村から徴兵しようとしていた連中なら、確かに俺が殺る様に命じたんだよな。ルプスレギナに。

そして この王子様、あの戦争の後の諸々の調査で、王国の裏を支配していた犯罪組織・八本指とも繋がりが有った事が発覚。

現在は王族としてで無く、犯罪者…反逆者として捜索しているのだとか。

 

「…そ、そうか…そうでしたか…」

それを聞き、複雑な感情を込めた表情を浮かべるザナック王。

そりゃそうだ。犯罪者だろうが、自分の身内を殺したと、目の前の人物が話しているのだ。

 

「…礼を、言わねばなるまい…!」

え? 礼? 俺的には、文句の1つ、恨み節でも言われる…それを受け入れる心算で話したのだけど?

 

「やり方は兎も角、あの時に魔導王殿がアレを止めていなかったら、王国は拭い様の無い愚行をしてしまう処だった…。

それを阻止してくれたのだ。

そして、家族である私の代わりに、アレを処してくれたのだ。感謝しかない…!」

 

ペコリ…

 

「お、王?!」

綺麗に御辞儀をするザナックを見て、ガゼフが驚くが、俺も驚きだ。

確かに結果的に、身内の恥を止めた事になったのかも知れない。

身内の首を、自身の手で落とさずに済んだのかも知れない。

しかし、それでも身内の仇に頭を…しかも王族…王たる者が それをするとは…

これが、国を統べる()か…

少し前まで、小市民サラリーマンだった俺とは えらい違いだ。

 

「ザナック殿。頼むから、頭を上げてくれ。

確かに結果的に そうなっただけで、私は そんな心算で、配下に指示した訳では無い。

感謝される謂れは、何も無い。」

王族として生まれ、20年弱の そちら側の教育を受けてきた者に対して、王様歴1年未満の俺は、そう言うしかなかった。

 

「それでも…なのだよ。」

  

≫≫≫

「王とは…やはり難しいですね…」

「そりゃ、王様だから。」

…あの後、まろんサンを呼んで、その遣り取りの事を話してみた。

 

「彼からも、学べば良いじゃないですか。

手本は多いに越した事は無いでしょう?」

それを聞いた まろんサンは、笑いながら そう言う。

 

「暇さえ有れば遠隔視の鏡(ミラー・オブ・リモート・ビューイング)で、ジルクニフ君の施政の有り様、覗いてるんでしょ?

あのザナックも、多少は参考に出来るでしょ。

聞いた話だと、ジルクニフ君に影響されたか、王位に就いたと同時、使えないクソな貴族をガンガン粛清したとか。」

うーむ…

取り敢えず、ジルには黙って勝手に見ているので、そちらは黙っていて下さいよ?

 

「確かに あの者、人間としては見処が有りますわ。」

「そうでありんすか?」

そして、アルベドとシャルティア。

この2人も、ザナックと話していた時は口も手も出さなかったが(俺の指示)、一緒に居た。

何しろザナックが訪れた時は公務執務では無い、所謂 個人(プライベート)の時間。

2人からすれば俺と一緒に居られる、謂わば至福な時間に不粋に乱入してきたも同然なのだろう。

最初にメイドが「面会を求めてきた」と部屋に入ってきた時は、「「はぁあ゙ぁぁっ?!!」」って2人揃って夜叉みたいな顔になってたからな。

因みにメイドは それを見て泣き、俺も その余りの迫力に、ドン引き→精神鎮静。

 

「一応は、ラナーの兄…ですわね。

あのラナーの()()にも、気付いていたらしいですし?」

しかし、アルベドの方は、切り替えは出来る様で、感情的にで無く中立・冷静に、あの会話からザナックという人物を分析する。

魔導国宰相として、単に人間を下等生物と見る事無く、だ。

 

「ラナーの言った通りですね。

『豚の皮を被った狸』は、伊達では無いという事ですか。」

ラ、ラナーーーーーーーーーっ?!!!

おま、それ一体 何人に言ってるの?!

だから その表現は止めてやれ!

 

 

◆モモンガside・一時中断◆

 

≫≫≫

 

◆その頃のラナーside◆

「…あら? 私からすれば、純粋な誉め言葉の心算でしたのに。」

「ラナー…様?」

「いえ…何でも無いのですよ、クライム。

ただ、何だか そう言わないと、いけない気がしただけですから。」

「???」

「さぁ、そんな事より…クライム♡ クライム♡ クライムー♡!」

「あっーーーーーーーーーっ?!!」

 

 

◆その頃のラナーside・了◆

 

≫≫≫

 

◆モモンガside・再開◆

…兎に角、アルベドのザナック評は決して低くは無い。凄く高い訳でも無いが。

有象無象(クソ貴族)より頭1つ2つ、飛び抜けているという程度の認識だそうが、それでも人間に対して、そういう印象を持っているのに驚きだ。

 

「…へぇ?」

それを見て、まろんサンも少し驚き…且つ、何だか納得、感心と満足そうな表情を浮かばせる。

アルベドの この意識の変え様、まろんサンが何か関係してる?

 

≫≫≫

「此の度は宜しく お願いしますぞ、魔導王陛下。」

「うむ。」

翌日。エルフ王国の代表が魔導国入り。

しかし、プレイヤーの息子と云われる、エルフ王は やって来ず。

此方に出向いたのは、向こうの国の政を担う文官と その一応の護衛の一団だ。

 

「全く…何様の心算だろうね。

あんな下っ端を遣いに寄越すなんて。

王様自らが、アインズ様に会いにくるべきじゃないの?」

「そ、そうだよね、お姉ちゃん。」

その姿勢に、アウラとマーレは少し不満そうだが、これは逆に都合が良かったかも知れないな。

何しろ あのエルフ王は見境が無いらしいからな。

この2人を見たら魔導王(オレ)の配下とか関係無く、自分の手付きにしようとしても、可笑しくない気がする。

…尚、マーレは男の娘である。

仮に そうなったら、今度はエルフ王国と戦争だ。

最低でも、エルフ王は即座に殺すだろう。

 

「それでは、魔導王殿…」

「ああ、そうだな。」

明日の裁判の前に、エルフ王国とは少し話し合う事にしていた。

主題(テーマ)は法国侵攻の際に保護した、エルフの奴隷達。

魔導国と争う以前から、法国とエルフの国は戦争状態だった。

それに伴ってか、法国はエルフの民を多数 捕らえ、奴隷としていたのだ。

その全ての者とは言わないが、かなりな人数のエルフ奴隷を保護。

これは、エルフ達は法国民とは違うという裁量から。

その彼・彼女達を、エルフ国に引き渡す件についての お話だ。

 

「魔導王殿。同胞を救って頂き、我等が王、デケム・ホウガンに代わり、御礼申し上げます。

ありがとうございます。」

エルフの文官が頭を下げる。

 

「…しかも、奴隷の証として切り落とされた耳まで、治して戴けるとは…」

話し合いの結果、保護したエルフは、エルフ国が全て身請けする事に決まった。

その移送の負担は全て、エルフ国側が請け負う事に。

その代わり、魔導国側も、この奴隷を救った事での、過度な見返りを求めない事に。

俺としては、この件で魔導国の懐を暖めようとかは別に考えてなかったから、特に問題は無し。

アルベドやデミウルゴスも、最初からエルフ王国との接点を作るのが目的の奴隷保護だったので、今回は特に何かを言う心算は無い様だ。

それから…エルフ奴隷と言えば、まろんサンが以前 帝国にて、ナントカっていうワーカーから所有権を奪ったキャロル、アアシアン、グレシアスの3人娘。

彼女達は変わらず、ナザリックにてアウラとマーレに仕える事を希望したので、現状の儘にした。

 

≫≫≫

そして、更に その翌日。

即ち、裁判の当日…

 




①ガゼフはザナックの権限で騎士爵位を与えられました。
②ザナックは公式でも年齢不明でしたので、今作では20歳前と設定しました。
③エルフ3人娘のキャロル、アアシアン、グレシアス。
小説オリジナルの名前です。
元々のエルヤーの奴隷時代は名無しでしたが、それでは駄目だと まろんが彼女達の(バスト)を見て 各々命名。…って、おいっ!?
 
≫≫≫
次回予告『この不当な裁判に異議申し立てを!(予定)』
乞う御期待! 感想よろしくです。
 


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大逆転しない裁判

  



◆まろんside◆

遂に裁判の日がやって来た。

俺は転移魔法でカルネ村に。

 

「…宜しく お願いします。」

カルネ村は俺達が この世界に転移して数日後、この世界で最初に縁が出来た地だ。

それは、この村を襲っていた…バハルス帝国騎士に偽装していた…スレイン法国の一団を退けたという縁。

この村の族長さn

マ・カ・ロ・ン・様??!

「(」゚O゚L)……!?」

怖ぇー! 失礼 、村長であるエンリ・エモット…もとい、バレアレをカルネ村、並びに近辺開拓村の被害者・証人の代表として裁きの場に出て貰う為、迎えに来たのだ。

 

「……………………………。」

「エンリ…」

「お姉ちゃん…?」

黒基調の…まるで喪服な様なドレスを身に纏い、何やら覚悟を決めた険しい表情を見せるエンリに、旦那さん(ンフィーレア)幼女ちゃん(いもうと)も何か察したのか、心配そうな顔をしている。

 

「大丈夫だよ、ネム、ンフィー。」

エンリも それに気付いたのか、安心させる様に、2人に笑顔を見せた。

 

「ま、マカロン様! お、お姉ちゃんを、」

「エンリを、頼みます…!」

「ああ、頼まれた。

それじゃ行こうか、エンリ。」

「…はい!」

 

 

◆まろんside・了◆

 

▼▼▼

 

◆ジルクニフside◆

アインズの遣いによる転移魔法で、魔導国首都エ・ランテルの…この日の為に作ったという、裁判所の前に やって来た。

 

「法国のエライを潰す為だけに、これ程なデッカい建物を…

あの御骨様、どれだけ本気なんですかね?」

「…………………………。」

その迫力に、護衛役のバジウッドとナザミも、それに感心と呆れを合わせたかの表情を浮かべている。

確かに同意は するがな。

まぁ それ程に、本気なのだろうよ。

 

≫≫≫

「それでは皇帝陛下。此方の部屋で、暫し御待ちを。」

アインズの執事の男に、案内された控え室という大広間。

其処には、

「おお、ジルクニフ殿! 久しいのう!

まろんの結婚式以来か?」

「………………………………………。」

脱法幼女(ドラウディロン)が既に居た。

 

「む?! 貴様、また頗る失礼な事を考えていないか?」

「考えていない。」

私は只、事実を思っただけだ。

そのドラウディロンの脇には竜王国宰相と、騎士風の男。

 

「……。」

 

ペコリ…

 

無言で小さく頭を下げる男。

そうか。この男が、竜王国最強と云われるアダマンタイト冒険者チーム【クリスタル・ティア】の『閃烈』セラブレイトか。

そして部屋の隅側には…あれは、エルフか?

位の高そうな服装のエルフが数人、部屋に入ってきた私に一瞬 目を向けて苦虫を噛み潰した様な顔をしたと思えば、また顔を背け、自分達だけで何やら話し出した。

まあ我が帝国も、エルフを奴隷(しょうひん)として扱っているので、良くは思われていないのも当然か。

この件は、流通元の法国が滅んでしまったので、この先は廃れたも同然で、それを機に その在り方も改善していく予定なのだが…

 

「くくく…嫌われておるのう?」

黙れ、3桁カウントダウン突入の若作りBBAが。

 

「…………………………。」

更にはエルフ達とは反対側の部屋の隅。

見るからに上等な全身鎧を纏った人物が、その壁に背を預けて佇んでいた。

他者を寄せ付けようとしない、独特な(オーラ)を放っているのが分かる。

 

「あれは、確か…」

「あぁ、あの者は、評議国からの代表じゃよ。

今回は口を出す事無く、事の終わりを見届ける為だけに来ているそうじゃ。」

 

≫≫≫

 

カチャ…

 

「ん? 俺達が最後か?…いや、モモンが まだ来ていないみたいだな。」

その後もローブル聖王国の お花畑(with腹黒&脳筋)、そしてリ・エスティーゼ王国のザナック王(withガゼフ・ストロノーフ)とも軽く挨拶を交わしている中、扉が開き、そこから入ってきたのは まろん…今回はマカロンと呼ぶべきか。…と、若い娘だった。

…誰だ? 貴族とも違う様だが?

 

 

◆ジルクニフside・了◆

 

≫≫≫

 

◆エンリside◆

せ、世界が違う!!

マカロン様に連れられて入った部屋に居る人達、皆さん王族とか貴族じゃないですか!?

何? 平民って、私だけ?

 

「やあ、マカロン。」

「御機嫌よう、マカロン殿。」

そんな感じに あたふたしていると、その内の2人が、御付きの人を連れて、マカロン様に話し掛けてきた。

 

「やあ、ジルクニフ君にザナック王。

エンリ、此方、バハルス帝国のジルクニフ皇帝と、リ・エスティーゼ王国のザナック王だ。

此方、カルネ村代表の、エンリ・バレアレ。」

「………………?!!!」

こ、皇帝陛下と国王ぉーーーーぅ!?

マカロン様、そんな御2方とも凄く親しげに話しているし?!

 

「か、カルネ村の村長の、エンリ・バレアレと申します。」

「あぁ…」

「彼女が…か…」

マカロン様の紹介に、私も御挨拶を。

すると この御2人は、何かを納得した様な顔をされている。

え? 私、何か やっちゃってる?

 

「バハルス帝国皇帝、ジルクニフ・ルーン・ファーロード・エル=ニクスである。」

「リ・エスティーゼ王国 国王、ザナック・ヴァルレオン・イガナ・ライル・ヴァイセルフだ。

エンリ・バレアレ殿。カルネ村の件は、国として救う事が出来ず、申し訳無い。」

 

ペコ…

 

「…どうか、赦して欲しい。」

ぇ…ええ゙ぇーーーーーーーっ!??

お、王様が、平民(わたし)に頭を下げたぁ?!

た、確かに あの時の事を思えば、王国には思う事が一杯 有りますけどっ!?

 

「ザナック王。王族が、今は他国の…とは云えど、平民に頭を下げる様な真似は控えた方が良い。

それに、確かに現在の王国のトップは貴方だが、その貴方が今 頭を下げるのは、少し違うと思うが?」

此処で透かさずマカロン様がフォローを。

はい、もっと言ってあげて下さい!

この重苦しい空気を解き放って下さい!

和ませて!和ませて!

 

「当時の貴方は まだ、第2王子。

政にも軍事にも、殆んど発言権は無かった筈だ。

前の無能王の不始末(ツケ)に迄、頭を下げる必要は無い。

言うとしても、『先代が役立たずで、ごめんなさい』だろう。

…なぁ、アンタも そう思わないか? 思うだろ?」

「………………。」

い、言い方あっ!?

ザナック様には優しく?言うも、その後ろに立っている騎士様…確か、あの襲撃の時に村に来た人ですよね?…には、何か冷たくというか、キツい当たりを見せる。

マカロン様は元々は冒険者…平民だ。

今でこそ魔導国の爵位を得られているが、それでも未だに貴族嫌いを公言されている。

特に この騎士様はカルネ村の件で、完全に無能認定しているみたいで、その辺りはブレていない。

 

「「「…………………。」」」

兎に角、凄く重い空気に。もう帰りたい。

  

「マカロン、その位にしておけ。」

「…。」

此処で場を収めたのはジルクニフ様。

帝国のトップの人の言葉だからか、それでマカロン様も不機嫌オーラを消して、

「失礼。少しばかり、感情的に なり過ぎていた様だ。」

何とか場の収拾に、努めてくれたのでした。

 

 

◆エンリside・了◆

 

≫≫≫

 

◆まろんside◆

「ははは…そんな事が…」

あの後。パンドラ扮するモモンも、この控え室に到着。

黒の全身鎧は着ておらず、現実の(リアル・)鈴木悟(モモンガさん)に少し歳を重ねた様な外見だ。

先程のガゼフ・ストロノーフとの やり取りを聞き、乾いた笑いを溢している。

 

カチャ…

 

「…御待たせしました。

法廷の準備が、整いました。」

此処で、シズ登場。

 

…ガタッ

 

「おお! 美少j(ガンッ!)ぉぐわっ?!」

それを見て、ドラちゃんの護衛役…確か、ロリブレイトだったか?…が喰い着こうとするが、その仲間から突っ込み(物理)されていた。

お仲間、ナイス判断。

止めなかったら あの男、蜂の巣にされていたぞ。

その上で、ナザリックの皆から殺されていた。

 

≫≫≫

シズの案内で、俺、パンドラ(モモン)、エンリ。

そしてジルクニフ君にドラちゃんツアー、王国聖王国エルフ王国の面々が法廷に。

 

「む…」

「これは…」

「何と…」

その部屋の造りに、皆さんが微妙な顔を見せる。

馬蹄型に重ねられた卓席の最前の柵の中、4人の御老体が立っていた。

 

「皆様、本日は御多忙の中の来訪、感謝致します。

各々、名前が標されている席に御着き下さい。」

…裁判官は お前か。

何時もの赤橙のスーツで無く、黒の法服を着たデミウルゴスが、俺達に着席を呼び掛けた。

卓の上に置かれた小さな黒い三角錐。

俺の名前が書かれている、それが置かれた席に着席。

パンドラとエンリは、俺の両隣に。

それにエルフ王国の連中が続いて並ぶ。

ジルクニフ君やドラちゃん達、王国や聖王国の皆さん達、そして この部屋で待機していたモモンガさんとは反対側の席。

きちんと証人席とか分けているのか。

 

カーンッ!

 

全員が席に着いたと同時、室内に甲高い音が響く。

 

「それでは只今より…」

(ガベル)打撃板(ベース)を叩き、裁判という名目の、公開処刑宣告の開始をデミウルゴスが宣言した。

 

≫≫≫

「それでは被告達の最初の罪。

貴方達は、自国兵をバハルス帝国の騎士に擬装させ、当時リ・エスティーゼ王国領…現在はアインズ・ウール・ゴウン魔導国領のカルネ村をはじめとする開拓村を襲撃を指示。

結果、数多の虐殺の末、多数の村を滅ぼした…間違い有りませんね?」

「ま、待ってくれ! それには、理由が…」

 

カーンッ!

 

「御黙りなさい! 私は今、行いの()()を問うているのでは有りません。

()()を、質しているのです!」

「「「「……!!」」」」

問われた罪状、何やら言い訳をしようとした大神官に、デミウルゴスの真っ当な指摘。

先に言っておくが、その言い訳って多分 悪手だぞ。

それ言うと、更なる厳しい指摘や追求が始まるぞ。

特に、俺とジルクニフ君から。

 

「それでは改めて、もう1度尋ねます。

貴方達は…」

 

 

◆まろんside・了◆

 

≫≫≫

 

◆モモンガside◆

「…間違い…有りません…。」

デミウルゴスの質問に、大神官が小さく応える。

弁護人無き裁判。

少し前にジルに聞いた事だが、この世界では弁護士なる専門職は どの国も無いらしい。

帝国でも裁判の様な物は在り、その罪人の友人等が任意で名乗りを上げて、被告の無実、或いは情状酌量を呼び掛ける事が有る程度だとか。

尤も帝国の場合、事前に被告の罪や その経緯・背景を事細か徹底的に調べた上で、その事実に応じた裁きを降すそうだから、大した意味は無いらしい。

当然、

「誤審は無いぞ?」

…らしい。

竜王国も、帝国と事前調査の規模は違うが、似た感じだそうだ。

…他の国は、知らん。

只、王国は今は分からないが少し前までは、賄賂やらコネやら何やらが横行する様な、クソ裁判だったのだろうな(偏見)。

そして法国、ついでに聖王国も大して変わらないだろう。

宗教国家って1度でも異端認定したら、都合の悪い存在として碌な調べもせすに、問答無用で有罪で殺すか、地下幽閉放置なのだろう?(偏見)

 

「…宜しい。己の罪を認めましたか。

それでは、この者達に死刑を宣告致しまs

「異議あり!」

  




【次回予告】
 
◆パンドラside◆
法廷内に響く、「異議あり!」の声。
その発言の主は、まさかの人物でした!
 
「誰か、まr…カロンを止めろ!
ザナック王とガゼフのMP(メンタル)は、もうマイナスだ!」
その後も まろん殿の口撃が炸裂する中、
「…………………………………。」
とある人物が放つ どす黒い殺気が、この場を支配しつつ有った!

次回『覚悟の凶刃(予定)』
Bitte erwarten!
 
▼▼▼
m(_ _)m
誤字報告ありがとうございます。
  


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覚悟の凶刃

 


「異議あり!」

 

◆モモンガside◆

法廷内に響く声。

 

「ジ…ル…?」

その声の主は、ジルだった。

 

「……………………………orz」

そして それを見た まろんサンが、最高に凹んだ顔をしている。

そんなに あの台詞、(一番最初に)言いたかったのですか?

ええ。気合い満々で蒼のスーツ、新調していましたものね。

ユリから聞いていますよ?

決めポーズの練習も、していたんですよね?

いえいえ、別に悪いとも恥ずかしいとも思いませんよ?

俺だって未だに、『支配者らしいポーズ』の練習、隠れて していますし。

…と、話が逸れましたね。

先に言っておきますが、こういうのは一番最初だからウケるのであって、それ以降はマジ異議とかじゃない限りはウザいし寒いだけですよ?

もう、止めるのをお勧めします。

 

「異議申し立てを認めます。…ジルクニフ殿?」

「…感謝する。

最初に言っておくが、私は死刑判決その物に、異を唱える心算は無い。

…しかし!

それでも その前に、ハッキリさせておきたい事が有る!

スレイン法国神官達に問おう!

貴国は何故、リ・エスティーゼ王国の開拓村を襲う際に、自国兵を我がバハルス帝国の騎士に擬装した?

納得の往く回答を、今、此の場で示して頂きたい!」

そしてジルの異議の意味。

俺から その事を教えられ、前々から法国には質問状を何度も送っていたが、一向に返答は無かったという。

それを改めて、問い質そうとしているのだ。

あくまでも在らぬ罪を着せられそうになった、国として…だ。

 

「「「「………………………。」」」」

それに対して、神官達は変わらず、黙りの姿勢を崩さない。

どうせ殺されるのは確定済みだから、態々言う必要も義務も無いとでも考えているか?

いや、死ぬのが決まっているからこそ、全てを洗いざらい話すべきでは無いのか?

 

「どうしました? この法廷、黙秘権は認めていませんよ?」

頑なに沈黙を貫く神官達に、デミウルゴスも発言を促し、

「…どうやら貴方達は、少し勘違いをしている様だ。

仕方有りません。

先ずは それを、払拭させる必要が有りますね。

段取りが少し狂ってしまいますが…」

 

ス…

 

デミウルゴスが無言で右手を翳すと、それを合図に2人の男女が登場した。

ルプスレギナと筋骨な大男。

アイテムによる人化が施されたデミウルゴス直轄、憤怒の魔将(イビルロード・ラース)だ。

 

「な…?」

「はいは~い♪ じっとしてるっスよ~?♡」

 

カチャ…

 

「???!」

事態が飲み込めない神官の1人に、ルプスレギナが満面の笑みを浮かべ、兜を被った髑髏の装飾の黒革の首輪を取り付ける。

 

「それでは師匠(せんせー)、よろしくお願いするっス!」

 

コク…

  

…師匠呼びには、敢えて突っ込まないぞ。

ルプスレギナの呼び掛けに、魔将は小さく頷くと、

 

ボウヮッ…ガシィッ!

 

ギャァァァアッ!?

左腕に紅蓮の炎を纏わせ、その手で神官の首根を掴み、頭上高く持ち上げる(リフトアップ)

 

ガァンッ!

 

…からの、片腕式(ワンハンド・)咽輪落とし(チョーク・スラム)

 

「ぐべらっ?!」

因みにだが、この法廷の床は、本来なら この世界には存在しないコンクリート製(超硬質)だ。

炎のダメージと後頭部痛打のプロレス技。

魔将のパワーを考えれば、普通なら死ぬ程なダメージだが、この神官は まだ辛うじて生きている。

 

ボロ…

 

その代わり、最初にルプスレギナが装着させた首輪が、ボロボロとなり砕け散った。

死の騎士(デス・ナイト)の首輪

これが、このアイテムの名称。

どんな致死ダメージを受けても、HP1でギリギリ耐える事が出来る、死の騎士(デス・ナイト)の特性を持つアイテムだ。

効果発動と同時に壊れてしまう(喪われてしまう)事を踏まえても、一見 有能アイテムに見える。

…が、特殊設定により、コレを装備したら、他の装飾品系装備が一切不可になるという、実はゴミアイテムだ。

 

「はいは~い♪ それじゃ、回復するっスよ~♪」

そして、瀕死の神官を魔法回復(ヒーリング)するルプスレギナ。

 

「お解り頂けましたか?

貴方達の罪。本来ならば、()()()()()()で、終わらせる程に軽くは無いのです。

それでも早く…痛み苦しみ、恐怖に絶望も無く楽になりたいのなら、素直になるのをお勧めしますよ?

それとも…100回死にますか?」

「「「「…!!!」」」」

因みにだが、死の騎士(デス・ナイト)の首輪は手持ちは沢山…本当に沢山、有ったりする。

所詮はガチャのハズレ・アイテムだからな!

 

 

◆モモンガside・了◆

 

≫≫≫

 

◆まろんside◆

悪魔(デミウルゴス)の呼び掛けに屈したか、自称・神の信徒達は、大神官を筆頭に此方の質問にペラペラと話し出した。

帝国騎士に扮したのも、当時の帝国・王国の衝突を完璧にする為に。

開拓村を救いにきたガゼフ・ストロノーフを後詰めに控えていた、陽光聖典で抹殺しようとした事も。

帝国が王国を飲み込む形で、王国を滅ぼそうとした事等々。

 

「…成る程。理解は、した。」

それを聞いたジルクニフ君が、歪んだ顔で声を搾り出しながら、一言。

 

「しかし、それで納得するとでも思っているのか!?」

そして一変、修羅如き表情からの怒声。

 

「ああ、確かに当時のリ・エスティーゼ王国は腐りきっていた! それは解っていたさ! 王は決断力皆無な優柔不断の無能! その下の貴族共も己の利権の為だけに国益等何も考えず互いの足を引っ張り合う俗物! 犯罪組織と普通に裏で通ずるクズの極み! 敵国に平気で自国情報を流す売国奴! 果ては貴族たる義務を全うしようともせず権利を勘違いして民に理不尽・横暴な対応をする愚か者! しかし それが罪の無い民を虐殺して良い理由になるのか? あれか? 私の二つ名は鮮血帝だから多少の虐殺行為の悪名は被せても大丈夫だとでも思ったか? 帝国はテロ国家認定されても平気だとても思っているのか? 我が帝国をそんな茶番の駒に仕立てようとは帝国を…私を舐めているのか? アインズ達にも言われたのだろう? 王国を世界の癌として粛するならば堂々とスレイン法国を名乗り王国王都に進軍すれば良かったじゃないか? ああ、スレイン法国は人類の守護者(笑)だから人の都を表立って襲う事は出来ないか? 汚れ役は帝国に押し付ければ それで良いと思ったか?」

「へ、陛下?」

「…………?!」

あ~ぁ、完全にキレテーラ。

大国の施政者とは思えない、感情剥き出しの早口の言葉で捲し立てる。

普段のクールさは一体 何処へやら。

その変わりっ振りに護衛の騎士、バジウッドや盾の人も、面喰らっている。

…って、ジルクニフ君や、その辺りで勘弁してやりな。

 

「…………………………orz」

ほら、キミは そんな心算は無いのだろうけど その台詞、今の王国の王様の方が、大ダメージ負ってるから。

 

「………………………。」

そして もう1人、神官の発言を聞き、尋常じゃない殺気を放つ人物が。

 

「そんな…そんな理由で村を…父さんと母さんを…?」

エンリだ。

 

「エン…リ?」

「赦さない…絶対に、赦さない…!」

普段、俺が『族長さんw』と おちょくる時の返しとは比べ物にならない、凶悪な殺気。

俺の呼び掛けに反応しない程に、完全に周りが見えていない、殺意100㌫の危険な精神状態だ。

モモンガさん、彼女を証人として この裁判に喚び寄せたのは、どうやら失敗だったよ。

最初は村の惨状を彼女に語らせ、帝国や聖王国に法国ヘイトを上乗せさせる計画だったが、もう多分 無理。

しかし、この儘 放置も出来ないな。

此処迄に膨らんだ負の感情は、簡単に納める事は出来ない。 

当然だ。彼女からすれば、肉親を不条理極まりない理由で殺されたんだ。

まだ世間一般的に正当な理由でも在れば、納得は せずとも理解し、自身の中で無理矢理に解決したかも知れない。

しかし法国の言い分は完全にアウトだ。

もう その怨いは、直接に その対象に ぶつけなければ一生消えないだろう。

しかし それは、彼女の心に、また別の一生消える事の無い深い疵を刻む事になる。

 

「仕方無い…か。」

ンフィーや妹ちゃんに、エンリの事は『頼まれた』のだからな。

 

「ルプスレギナ。そっちの大神官(ジジイ)に、首輪付けろ。」

「はひ?…はいっス!」

俺の言う儘に、大神官の首に死の騎士(デス・ナイト)の首輪を嵌めるルプスレギナ。

 

「「マカロン…?」

      殿?」

予定(シナリオ)には無かった展開に、モモンガさんやデミウルゴスも戸惑っている様だが、モモンガさんもデミウルゴスも、アドリブ力は高いから、察して合わせてくれるだろう。

…デミえもんは深読みし過ぎての暴走が、少しだけ怖いが。

 

 

◆まろんside・了◆

 

≫≫≫

 

◆モモンガside◆

エンリ・エモット…今はバレアレだったか…の、精神状態がヤバイのは、俺でも判る。

そんな中で まろんサン…

アナタは何を、考えているのですか?

 

「裁判官。」

挙手をして、裁判官(デミウルゴス)に発言許可を求める まろんサン。

 

「どうぞ、マカロン殿。」

そして それを認めるデミウルゴス。

 

「このクズ共が

「マカロン殿? 如何に貴殿でも、この場で その様な表現は、不適切ですぞ?」

「…失礼。この…スレイン法国神官達の口から出たカルネ村での真実(こたえ)

後に続く聴取で更に併せ業が出るだろうが、どう取り繕っても、この件だけで死刑は既に免れないだろう。」

一応は中立な?立ち位置を見せるデミウルゴスの注意に、まろんサンは苦笑しながら自身の考えを述べていく。

 

「ま、待ってくれ!

確かに我々の行いは、決して許されないかも知れない。

しかし、我々は人類の為に、

「数多くの亜人や異形を討伐してきたとでも言いたいのか?

…この、アンデッド(わたし)の前で!

その正当化は、人間だけの価値観だろう!

確かに貴様等の異形討伐は、人間種からすれば称賛に値するかも知れない。

しかし それは其で、既に多くの者から讃えられたのでは?

カルネ村を基とする、開拓村での虐殺行為を無罪放免とする要素は、何一つとして無いぞ!」

「…魔導王の言う通りだ。

其所で…だ、裁判官。

この神官達の処罰、誰でも良いから1人、エンリに任せてみれば?

彼女には、その権利が有ると思うのだが?」

「ふむ…?」

…そう来たか!

スレイン神官の余りな言い様に、つい口を挟んでしまったが、まろんサンはエンリの危険な精神状態の、ガス抜きが目的か!

確かに そうでもしないと、この娘は この儘、怒り憎しみの感情に押し潰されてしまうだろう。

しかし まろんサン、それは…

 

「ふむ、エンリ・バレアレ。

マカロン殿は その様に申されていますが、貴女自身の意思は、如何程に?」

そして、それを全く止める気の無いデミウルゴス。

まあ、コイツは、そういうヤツだ。

 

「「「「………………。」」」」

「私は…」

皆が注目する中で、エンリが口を開く。

 

「私は…私個人の感情だけで言うなら、私は この人達を、絶対に赦さない!

それが許されるなら、たった1人だけだとしても、私達…いえ、私の心情をその身に理解させたい!」

それは後先も考えずな何の迷いも無い、魂からの本心。

しかし それは、彼女に人殺し(ギリ、セーフになるけど)の業を背負わせる事になる。

まろんサン、それでも良いのですか?

 

「…念の為に言っておきますが、魔導国法では、仇討ちは認められております。」

「その通りだ。このクズを殺った処で、エンリ、お前が罪に問われる事は無い。」

…ぅおいっ!?…って、そうなの?

 

「…エンリ。」

更には収納空間(アイテム・ボックス)から金色の短剣を取り出し、それをエンリに渡す まろんサン。

…って、それ!

神殺しの短剣(ゴッド・スレイヤー)じゃないですか!?

ヒヒイロカネの造りの、"神殺し"の属性を持つ、伝説級(レジェンド)アイテム!

 

「お前が本当に覚悟を決めているなら、この短剣を貸してやろう。

そして刺すのは心臓なんかじゃなくて、此処…肝臓が お勧めだ。

直ぐには死なず、長く苦しむ末に、命を落とす事になる。

真っ直ぐ水平に突き刺し、刃が奥まで刺さった後に こう…手首を捻る感じで抉るんだ。」

そしてアナタは何を渡そうとしている?

何を助言(アドバイス)している?!

自分の右脇腹を指しながら話す まろんサンに、頭の中で突っ込みが止まらない。

 

「私は…」

そして光の消えた瞳で、その短剣を受け取るエンリ。

駄目だ。まろんサンの誘導も有ってか、エンリも完全に、思考が復讐に支配されている。

 

「…待たせたな。さあ、お前の罪を数えろ。」

「ひぃっっ!?」

まろんサンが処刑対象となった神官に話し掛けると、この男は絶望に満ちた顔で声を詰まらせる。

 

「見苦しいですね…『眉1つ、動かさずに じっとして居なさい』。」

それをデミウルゴスが、【支配の呪言】で その動きを封じ込めた。

 

「さあ、エンリ。」

「はい…!」

そして、まろんサンに背を押され、日緋色の短剣を両手で確と持ち、神官に静かに近付くエンリ。

 

「…………~??!」

 

ズシャ…!

 

デミウルゴスのスキルにより、動く事は愚か声も発せない…顔を歪める事しか出来ない神官の脇腹に、その神をも殺せる刃は遂に突き刺さった…

 

「…痛って~~~~~~~っ!」

「ま、マカロン様?!!」

…事は無く、黄金闘衣を右腕のみ部分装備した、まろんサンの右手に握られ止められるのだった。

 




【次回予告】
 
◆モモンガside◆
…でっすよね~!
まあ、最後は まろんサンが止めに入ると、そう思ってましたけど!
しかし、これにより事態は よりカオスに!
 
「…待ってくれ、モモンガさん。
一言だけ、言わせて貰って良いか?」
はい? まろんサン?
 
「前回のラストの『異議あり!』を、俺の台詞だと思ってたヤツ、全員正座だ!
 
 
次回『まろんの貴族(予定)』
乞う御期待だ! 感想も、よろしくお願いだ!」
 


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まろんの貴族

 


◆モモンガside◆

大神官の脇腹を貫かんとしたエンリの短剣を、まろんサンが止めた。

あれだけ自分で唆していてソレですか?…とは言いませんよ、まろんサンですし。

 

「痛ひ…」

「ま、マカロン様?」

刃を握り締めた まろんサンの手から、血が滴り落ちる。

 

「ルプスレギナ! マカロンの手を治せ!」

「はいっ()!」

地味に どぼどぼ流血しているので、ルプスレギナに回復指示。

…にしても、凄いな、神殺しの短剣(ゴッド・スレイヤー)

まろんサンの黄金闘衣は神器級(ゴッズ)アイテムだ。

それを、伝説級(レジェンド)で その装甲を破り、まろんサンの手を直接に傷付けたのだから。

黄金闘衣は"神"属性(神聖属性に非ず)を備えていると言っていたから、その相性も関係してるだろうけどな。

 

「ふっ…マカロンめ、やってくれるな。」

「彼は もしかして、不器用な性格なのか?…あぁ、勿論、誉め言葉だが。」

「ど、とういう事じゃ?」

ジルも まろんサンの考えを…この展開を読んでいたのだろうか、この結果に苦笑。

ザナックも何やら察した模様。

しかしドラウは、いまいち状況が掴めない様だ。

 

「とりあえずは、あのエンリという娘の精神が、復讐心に縛られていたのは、解っていたな?」

「うむ。それは、のぅ。」

はい、解説スタート。

 

「アレを何もせずに放置しておくと、あの娘の心は更に病む事必至だ。」

「今でも十分に不安定だからな。」

確実に鬱りますよね。

 

「分かるか? ドラウディロン。

だからこそマカロンは、言葉巧みに あの娘の精神を敢えて、暗黒面の底辺に迄 引き堕とし、」

「その感情を爆ぜさせた上で、」

「最後は それでも彼女に殺人の業を負わせない様、あの様に止めに入ったのだよ。

全く…握るのは刃で無くとも手首で十分だっただろうに…

自身が傷付く必要が有ったか?」

「アインズ、それは あの娘をけしかけた、自分の罪への罰だとか、言いたいのじゃないか?」

「な、成る程のぅ…

最後以外は、よく分かったわ。

しかし、()() ま…ッカロンが、そんな他者に気を利かせる真似が出来るのか?」

ドラウ、辛辣!

 

 

◆モモンガside・了◆

 

≫≫≫

 

◆まろんside◆

む? 何だかドラちゃんが俺に対して、物凄く失礼な事を言ってる気がするぞ?

 

「マカロン様? マカロン様?!」

…そんな事より、今はエンリだ。

一応は短剣で肉を切った手応えを感じたのか、そして それは大神官で無く、俺の手だったって()()で、闇堕ちから正気に戻ったか?

既にルプスレギナに治して貰ってるが、今は俺の手を傷付けた事で、盛大にテンパっている。

 

「も、申し訳ありませんっ!…私、私…!?」

泣きそうな…いや、泣きながら あたふたしながら、俺に謝るエンリ。

…しかし、 

「エ~ンちゃん? エンちゃんは別に、何も悪くないと思うっスよ?

どっちかってと今のは…チラ?(¬_¬)」

「ああ。何も気にする必要は無いさ。

魔導王! 何か、問題でも有るか?」

「…………………………………。

すまない。何を以て問題だと聞いているか…先ずは それが、私には解らない。」

さすモモ! 俺の振りに、モモンガさん神対応!

ついでにルプーもナイスフォロー。

 

「…だとよ。族長さん?

「…!?」

 

ごごごごごごごごごごご…

 

マカロン…様?! (#^ω^)ニコニコピキピキ」

「「(」゚O゚L)!!?」」

あぁ、良かった。完全に正気に?戻った。

 

「エンちゃん…顔が怖いっス…」

さっき迄とはベクトルが違う…何時もより迫力増し増しだが…普段の おちょくった際の暗黒の笑顔だ。…スイマセン。

 

「と、兎に角、だ。散々と焚き付けておいてアレだが、あんなクズの為に、(おまえ)が手を血で汚す必要は無い。」

後からンフィーや妹ちゃん、それに覇王将軍配下のゴブリンズに何を言われるか、分かったもんじゃないしな。

 

「こういうのは、貴族様(笑)(このオレ)の仕事だよ。

少なくとも俺は、そういう風に思っている。」

「マカロン様…?」

「安心しろ。お前の怒り怨み憎しみ…そして この痛み(ダメージ)、俺が全責任を持って、あのクソに届けてやるさ。」

 

 

◆まろんside・了◆

 

≫≫≫

 

◆ルプスレギナside◆

「おらァ! 先ずは、エンリの分だ!」

 

ドゴォッ!

 

「ぐぇ…っ!?…げぽぁっ!」

おお! デミウルゴス様のスキルにより、身動きの取れない無抵抗状態のジジイに、まろん義兄たまのリバブローが炸裂!

その痛烈な一撃により、ジジイがリバースっス! (きったね)ぇーっ!

こーゆーのはアルシェとかだからアリなのであって、ジジイには需要無いっスよ!

後で床掃除やらされる人、ハラスメントで訴えても良いと思うっス!

  

バギゥッ!

 

「ぎゃんっ!」

更には間髪入れずに背後に回っての、ジャーマン・スープレックス・ホールド!

ブリッジが綺麗っス。

お義兄たまが手加減してるのか、あのジジイが意外と頑丈(タフ)なのか…死の騎士(デス・ナイト)の首輪は、まだ壊れないっスね。

 

ぐぃ…

 

そして ダウンしているジジイを無理矢理に起こして縦一文字、ブレーン・バスターの体勢に抱え上げる。

うほッ! コレは もしかして お義兄たまの超必殺、垂直っスか? 犬神家っスか?

 

魔将(イビル・ロード)!」

「承知…失礼!」

 

ずぃ…

 

その儘 床に埋めると思っていたら お義兄たま、憤怒の魔将(イビル・ロード・ラース)さん(人化中)を呼び寄せる。

そして魔将(イビル・ロード)さんは お義兄たまの股下に頭を潜らせると その儘、ブレーンバスター体勢維持の お義兄たまを肩車。

 

「うゎぁ…」

「おいおいおい…」

「アレは、もしかして…?」

「マジか?」

おぉっとぉ?! アインズ様その他が何だか引いてるっスけど、まさかの雪崩式っスか?

…参考迄に魔将(イビル・ロード)さんの人化ver.、身長225㌢の巨漢っス。

因みに馬〇さんは209㌢、アン〇レは224㌢っス。

大丈夫っスか? 死ぬっスよ?

 

「ッラァッ!」

そして お義兄たまが床目掛けて、勢い良く降下。…って、え?

ブレーンバスターの体勢から体を前側に降ろし、ジジイの頭を両足で挟む感じに持ち直して… 

「ニャガァーーーッ!!」

 

ズドォッ!

 

「 」

コンクリート床にパイルドライバー(しかも み〇る式!)で落としたっスぅ?!

 

ボロ…

 

これにより、漸く致死ダメージに達したか、首輪が壊れたっス。

ん~、どう見てもオーバーキルっスよね。

 

「「「「「ぅっわぁ~…」」」」」

アインズ様その他が ドン引きする中、ジジイは白目を剥いて気絶…っスよね?

死んじゃいないっスよね?

 

「ルプスレギナ!」

此処で お義兄たまが、私を呼ぶ。

 

「はいは~い。承知っス♪」

分かってるっスよ。

さあ、次の 拷問 聴取に備えて、回復回復っスよ。

 

「あ、ついでに床掃除も、(よろ)~?」

「え゙?!」

ドイヒーッ! 私スか? 訴えてやるっス!

 

 

◆ルプスレギナside・了◆

 

≫≫≫

 

◆パンドラside◆

まろん殿の行使した大神官への制裁に、此方のFräulein…エンリ・バレアレさんも憑き物が除かれた様な、穏やかな表情となりました。

そんな中で、スレイン法国の次なる罪の聴取は続きます。

 

「…さて、スレイン法国の次の赦されざる罪。

それはローブル聖王国南部貴族を唆し、同国・女王共々に、魔導王様の暗殺を企んだ件について、ですが…」

「ま、待ってくれ!…ださい!」

おやおや? 法国の神官が、慌てた口調で口を挟みますが、また何か、言い訳ですか?

往生際が悪いですね?

 

「何を待てと?

漆黒聖典の第6席次・死凶怠惰…本名ペテマツ・ロマネコンツグなる人物が、ローブル聖王国の南部貴族…サクルチビィ・ウェッヘン侯爵、スケアディヴ・クフハハード侯爵、デルタンヌップ・フンスヌン伯爵の3名と、ウェッヘン邸にて接触。

天使系モンスターが封印された魔水晶を渡し、魔導王様を殺害する様に唆したのは事実でしょう?

あぁ、『待ってくれ』とは、カルカ女王を殺害しようとした事については、その彼等が勝手に暴走しただけだから、自分達は関係無いと…そういう事ですね?」

「「「「なっ…!!!?」」」」

具体的な内容発言に、『見てたのかよ?!』と言いたい顔な神官の皆様ですが、はい その通り。

あの頃にはカルカ女王を基として、聖王国内の有力者には全て、シャドウ・デーモンが憑いていたので、その辺りは もう、本当に筒抜けでしたよ。

…今は もう、撤収させておりますが。

 

「まぁ、良いでしょう。

聖王国女王の暗殺未遂については、この場では不問にします。」

「「……………………。」」

「…………??!

………………………!!

………………………………っ!!!?」

このデミウルゴス殿の言葉に、聖王国の女王陛下と神官長殿は、複雑な顔をしていますね。

聖騎士団長殿は顔を赤らげ、何か言いたい…言おうとしてますが、彼女は神官長殿の機転によりアイテムで声を…発言を封じられていたのでしたよね。

 

「のーきん団長に何か言われてたら、今頃はカオスだぜ。」

それ程なのですか?

 

「何れにせよ、魔導王…アインズ様を、自身の手は汚さずに亡き者にしようとしたのは事実…ですよね?」

「「「「…………………。」」」」

「おや? また黙りですか?

…仕方有りませんね。憤怒の魔将(イビル・ロード・ラース)

誰でも良いから また首輪を付けて、殺してあげなs

「「「「じ、事実だ! 認める!」」」」

先程からの殺人(一歩手前)制裁2連発が効いているのか、『また殺す』な言葉に戦き、黙りから一転、即答するスレイン神官の皆様。

 

「ふむ。素直で宜しい。

それでは続けて質問しますが、()()を一番最初に考え、配下に指示したのは誰ですk

「「「大神官です!」」」

「なぁっ?!」

即答。

 

憤怒の魔将(イビル・ロード・ラース)。」

「承知!」

「な…ちょ、ちょっと待t…」

大神官殿、本日2度目の死亡(ギリ手前)決定ですか。

 

≫≫≫

その後も質問は続き、スレイン神官の皆様…最低1度は仲好く死にかけましたね。

エ・ランテルにて、(モモン)まろん殿(マカロン)の処に漆黒聖典を差し向けて、魔導王(アインズ様)の暗殺を呼び掛けた件、更にはナザリック地下大墳墓やエ・ランテル、そしてカルネ村にも刺客、或いは軍勢を仕向けた件についても、全員が処されました。

特に このカルネ村の件は、エンリさんの旦那様を拐うのが目的だというのが最初から判っていたの事なので このFräulein、当然と言えば当然な話ですが、思い出したかの様に再び闇堕ち寸前となり、まろん殿とルプスレギナ殿が また、彼女を宥めるのに必死となっていました。

流石に今度は、流血沙汰は有りませんでしたが。

  

「それでは、次が最後ですか?

これは我がアインズ・ウール・ゴウン魔導国だけで無く、世界の全てに対する罪。

嘗ての六大神の拠点の1つ…貴方々が"聖地"と呼ぶ地にて、自分達の敗戦が確定…いえ、スレイン法国による世界掌握が叶わぬからと、自分達でも御せない様な強大なモンスターを封印から解き放ち、正に自分達の道連れ…世界を滅ぼさんとした罪です!」 

そうした中の、デミウルゴス殿の言葉。

  

「な…」

「何なのだ、それは?」

「本当の事なのですか?」

「ちょっと待て、アインズ。

それは初めて聞いたし、看過出来る話じゃないよ?」

「てゆーか、世界掌握って何なのじゃ?!

スレイン法国は世界征服を目論んでいたのか?」

これには各国のトップの皆様も、驚きは隠せない様で。

特に今回は事の顛末を見届けるだけ…単なる傍観の心算でいた筈の竜王殿も、鎧の身を乗り出してきました。

 

「待ってくれ! それは本当に、大神官が勝手に暴走しただけだ!

私は それを、止めようとした!」

「レ、レイモン、貴様ッ!」

おやおや? 此処で またしても、責任の押し付け合いですか?

 

「魔導王…ッ殿! そしてマカロン殿!

あの時は貴方達も、あの場に居たから分かってるであろう!」

「そ、そうです!」

「アレは、大神官が勝手にっ!」

「レイモン…! 貴様等ぁッ!?」

レイモン氏、その他…ですか?…が、必死に自分達()()は…の無罪潔白を求め訴えます。

 

「…ふむ。どうなのですか? 魔導王様? マカロン殿?」

私は その時に現地には居りませんでしたが、この大神官の反応(リアクション)で もう、判っているも同然でしょう?

 




①みの〇式パイルドライバー…正確にはゴッチ式パイルドライバー。
②今回の裁判編の没ネタ。某・素晴らしい世界に登場した、呼び鈴型嘘発券機。
 
ま「ペロロンチーノはDT。」
ぺ「どど、DT違わい!」
 
ちりーん
 
ぺ「…………………………。」
 
③ルプスレギナの『お義兄たま』呼びは、脳内語りだけ。
 
ル「マジに口にしたら、アイアン・クローで頭ギシギシっス(泣)。」
 
 
▼▼▼
次回『有罪(ギルティ)! 審判による刑罰執行!(予定)』
乞う御期待! 感想よろしくです。
  


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最後の抵抗

 
【誤字報告?】
前回、パンドラがエンリに対してFräulein(お嬢さん)という表情をしましたが この単語、現在のドイツでは既に死語な様ですね。
まあ、パンドラは第2次大戦時のドイツ軍をモデルにした設定らしいですから、それで勘弁して下さいと言う事で…
ついでに言えば、『Fräulein』とは未婚女性の事でしたから、そちらの意味でも誤りでした(笑)。
…尚、敢えて これは、直さない方向とします。
 
 
「もしかして【異世かる】にて私が、ラム様レム様に『Maemoiseeeeelle!?』(仏語)と叫んでいたのも、それが理由なのでっしょうか?」
「マドモアゼルも、今は もうフランスでは死語じゃなかったか?」
  
 
▼▼▼
 
スレイン法国編、〆の回です!
 


◆デミウルゴスside◆

「…ふむ。どうなのですか? 魔導王様? マカロン殿?」

世界掌握…早い話、征服ですよね?

その自分達の野望が叶わぬからと、その世界を道連れな凶行に及ぼうとした大神官。

その件に関しては、自分は無関係と主張する他の神官達。

私もヤルダバオトとして、その場には途中退場の体を取っていましたが、実は姿を消しただけで その場面、一部始終を見ていました。

…が、それをこの場で言う訳には往かないので一応、その真偽をアインズ様と まろん殿に尋ねてみます。

 

「確かにアレは、この大神官だけの暴走に見えなかった事も無いな。」

「そっちのレイモン?…は、それを責めていたしな。」

成る程、成る程…。

するとアインズ様と まろん殿的には、この件についてだけは、彼等は無罪。

全ては大神官だけの責任…と、その様な見解を示します。

 

「宜しい。それでは連帯責任で、全員死刑という事で。…憤怒の魔将(イビル・ロード・ラース)。」

「承知!」

「「「ぅおぇいぃっ!?」」」

この発言に、大神官を除く神官達から突っ込み気味な悲鳴が。

私は今回、アインズ様より裁判官として、全ての裁量を任されているのですよ? 何か不満でも?

 

「「うゎぁ…」」

そしてアインズ様まろん殿からは…

私、何か引く様な事を言いましたか?

 

「「「「「「「鬼か?!」」」」」」」

更には全方位からの問い質し。

鬼とは失礼な。私は悪魔です。

 

「ふ、巫山戯るな!」

そうした中、本日5度目の死の騎士(デス・ナイト)の首輪を嵌められた大神官の怒声が響く。

いえ、怒っているのは声だけに非ず。

赤くなった顔中に、太い血管を浮かべています。

そんなに大声で喚き散らすなんて、御高齢なのですから…今から殺す者に対して言うのも変な話ですが…体に悪いですよ?

 

「クソがっ! こうなれば…!」

そして この男、右の人差し指に嵌めていた指輪に秘められた魔力(チカラ)を解放させようとする。

それは、ユグドラシルのアイテム。

六大神の時代から伝承されていたのでしょう、予め魔法を封入(チャージ)しておき、好きな時に発動させる物。

大神官の持っていたアレの中には、自爆系の魔法が封じられてありました。

正に最期とばかりな自暴自棄。

 

「おいおい、マジかよ?」

「…陛下!」

「後ろに!」

「御退がり下さい!」

「…………………………っ!!!!」

それを見て危険と思ったか、バハルス皇帝やリ・エスティーゼ国王…各国トップの護衛として同行していた者達が、各々の主を守るべく、その前に立つ。 

確かに アレには我々は兎も角、人間なら簡単に殺せる程の威力な魔法が封じられて()()()()

…が、私達が それに気付いてないとでも思っていたのですか?

最初に捕虜として魔導国に連れてきた際、全く同じアイテムと…但し、中身は空っぽの指輪と摩り替えていたのですよ?

 

「ふははははっ! 死ね! 汚らわしいアンデッドも、それに与する愚か者共も、そして裏切り者の神官共も皆、死んでしまえ!…………え?へ?あるぇ?」

「「「「「「……………。」」」」」」

その自爆魔法を発動させた心算が、何も起きない事に、間抜けな声を出す大神官。

そして私達の仕込みを察し、そんな大神官に何とも言えない顔を向ける、帝国皇帝達。

 

「巫山戯るのは お前だろうが!

そして、お前だけが死ね!」

 

ダッ…

 

此処で飛び出してきたのは…そう、まろん殿です。

 

 

◆デミウルゴスside・了◆

 

≫≫≫

 

◆ルプスレギナside◆

 

バスッ!

 

おおっ! お義兄たまがジジイの足を両足タックルみたいに捕らえると倒すで無く、法廷の天井ギリギリ迄に飛翔。

そして その位置でフロント・インディアン・デスロックで両足を極めると同時、

 

ガシィッ!

 

「うげぇっ?!」

ジジイのド頭をアイアン・クローで鷲掴み!

お義兄たまのアイアン・クローはマジに痛いっス!

頭がカチ割れるっス!

毎晩ユリ姉のスイカップ揉み揉みで鍛えている 握力パねぇっス!

…で、その体勢で急降下!

 

有罪(ギルティ)ーーーーーッ!!!」

 

グヮガァン!…ボロ…

 

「 」

異議無し!

ジジイは さっきのパイルドライバー以上に脳天を床に豪快に叩き付けられ、余りのダメージに、また白眼を剥いて気絶っス。

勿論、首輪は壊れたっスよ。

 

「「「「「うゎぁああ…」」」」」

その容赦無き裁きに、またまたアインズ様その他がドン引き。

 

「~♪♪♪」

しかしエンちゃんだけは、凄く嬉しそうな顔をしてるっス。

  

「ルプスレギナ!」

了っス。回復っスね。

 

 

◆ルプスレギナside・了◆

 

≫≫≫

 

◆モモンガside◆

「はぁ~…注意すべきは、ぷれいやーよりも法国だったのか…」

ツアーが深い溜め息を吐きながら呟く。

 

「…大体さ、その世界級(ワールド)アイテム2つで漸く動きを止められるモンスターって何なの?」

ついでに、聖地で大神官が封印を解いたレイドボスについても教えると、更にボヤくボヤく。

法国が人類救済を掲げるなら、ツアー達評議国は、世界の守護者を名乗っている。

その守護者からすれば、この大神官の暴走は、完全にアウトだった様だ。

 

「もうさ…マジに殺らね?」

そして拘束されている大神官を見て、怒りより、呆れが強そうな まろんサンが、面倒臭そうに吐き捨てる。

 

「待て、マカロン。」

「そうじゃ、マカロン。少し落ち着け。」

それを窘めるのは、ジルとドラウ。

 

「我々は兎も角、今 此の場にはエンリ嬢が居るのだぞ?」

「本当の人死に…処刑を見せるのは、どうかと思うがのう?

確かに この娘、村の襲撃とやらで多少は見慣れておるかも知れんが…

え? 止める理由、そっち?

いや、それは それで、立派な理由だけど!

 

「個人的には『アロガント⇒神威』とやらを、見てみたいぞ?」

あー、はいはい。

 

≫≫≫

「待て! 1つ、宜しいか?!」

結局は此の場で殺す様な事は無く、一通りの聴取尋問を終え、鎖で縛られてシモベに引っ張られ、退廷させられる神官達。

その1人が、最後に何か言いたい様だった。

 

「…発言を許そう。何だ?」

どうせ最期だから…と、それを許可。

恐らくは また、俺達に対する筋違いな恨み節、呪詛の1つでも出てくるのだろうが。

 

「女王ドラウディロン!」

「む?」

しかし意外?…言葉を向けられたのはドラウ。

 

「貴女に問いたい! 我々は貴方の国…竜王国をビーストマンの侵攻から守る為、精鋭を派遣してきた!

其れを踏まえての恩赦の1つでも、此の場で呼び掛けても良かったのでは?」

「「「「…は?」」」」

その台詞に反応したのは、俺、ドラウ、ジル、そして まろんサン。

何を言っているのだ この男は…

と言うか、法国は そんなのを期待していたのか?

 

「…確かに、貴国が寄越してくれた部隊で、ビーストマンの侵攻を食い止めてくれた事には、感謝しておるがな。

しかし私は此の度、魔導国と法国との戦争。

その歴史の末の見届け人…証人として、魔導国から招かれたに過ぎぬ。

故に此の場で余計な口出しをする権利は、持っておらぬのじゃよ。」

そして それに応えるドラウ。

 

「それに それには その都度、決して安くない対価を支払ってきたじゃろう?

更に言うなら、最終的にビーストマン共を滅してくれたのは、此処に居るアインズ…魔導王の友じゃしな。」

「…友?…め、滅したあ?!」

ああ、法国はマサトさん達ヴァーリ・トゥードによって、既にビーストマンは国毎に完全に滅びた事を知らなかったか。

 

「し、しかし!」

「失礼。少し宜しいか? スレインの神官よ。」

此処でジルが、会話に参加。

 

「スレイン法国は、人類救済を掲げていたのだろう?

それならば、異形や亜人を討伐する際に対価を要求する事自体が、異な事だと私は思うが?

対価を払えぬならば、滅びてしまえなスタンスか?

それでは傭兵と何ら変わらぬのでは無いか?

それとも何か? スレインは宗教国家の皮を被った傭兵…軍事国家か?

ああ、世界制服を目論む悪の殺戮国家だったよな。

えーと、タッチ・サン…だったか?…が、黙っていないぞ?

そうだろう? アインズよ。」

「「「ぐぐ…!」」」

先程のブチギレ早口で無く、皮肉を利かせた冷淡なジルの台詞に神官達は何も言い返せず、その儘 退場して行った。

そして、確かに! たっちさんなら、セバスと一緒に凸してるだろうな!

 

「魔導王! ヤルダバオトだ!

私達は…スレイン法国は、確かに終わりかも知れない!

しかし あの悪魔…ヤルダバオトが何れ貴様に、厄災を齎すだろう!」

「…………………………。」

その代わり俺に対して、全く無意味な捨て台詞を残して。

 

カーンッ!

  

「其では此れにて、閉廷!」

そして最後は、裁判官(デミウルゴス)の言葉で締められr 

「いや、ちょっと待て、アインズ。」

「あの神官が言っていたヤルダバオトとは一体、何なのじゃ?」

「KWSK!」

「え?」

ああ、全くな無意味でも無かったか。

 

 

◆モモンガside・了◆

 

≫≫≫

 

▼▼▼

法廷の隣の控え室。

 

「………………………。」

()()は其処で、自分の出番を待っていた。

 

カチャ…

 

「……!」

そして、扉が開かれる。

いよいよ、裁きの間にて自分の登場で、その呼び出しの遣いが来たかと思われたが、

「…すまない、占星千里。」

「全部、終わってしまったよ。」

「アインズ様? まろん様?」

入ってきたモモンガと まろんの台詞に、彼女…占星千里は多少、戸惑ってしまう。

 

≫≫≫

「そうだった…のですね。」

元・漆黒聖典、占星千里。

彼女は今回の裁判にて、法国の神官達が己等の所業の否認・否定を続けた時に、証人として登場して貰う予定の、謂わば此の裁判に於ける隠し玉的存在だった。

しかし、

「一番最初の()()が効いたのか、」

「連中、結構あっさりと話してくれてな。」

「そ、そうでしたか…」

「すまなかったな。折角、時間を作って此処に来て貰ったのだが…」

「い、いえ! そんな事は!」

…という事らしい。

 

「俺的には占星千里の登場で、連中が間抜け面を晒すのを見れなくて残念だったな。」

 

 

▼▼▼

それから…

 

「「「「…………………。」」」」

裁判が終わった後、スレイン法国の神官達は直ぐに処させる事は無く、転移魔法により法国の中心…今は もう、法国の象徴である大神殿以外は瓦礫だけが一面に広がる、法都シクルサンテスに連れられていた。

魔導国が最終的に下した判決は、死刑で無く放逐。

この法都に捨てる事に決まったのだ。

既に この4人…正確に言えば、大神官と3人の神官長の間の信頼は、聖地での大神官の暴走から それに関する裁判での やり取りにより、無きに等しく。

故に この4人が今後、行動を共にする事も無いだろう。

この廃都の唯一の?安心材料は、この場にはアンデッドが居ない事。

何しろ一番最初、モモンガの宣戦布告と同時に広範囲の即死魔法を受けて命を亡くした この地の民(並びに家畜等の生き物)の魂は、その儘 凶悪モンスター召喚の為の触媒(エサ)にされたのだから。

 

≫≫≫

「き、貴様…!?」

「む? どうかしたのか?

お前達からすれば、私は邪悪なアンデッドなのだろう?

そんな私に、人間(ひと)良心(こころ)を求める心算か?

寧ろ、期待に応えた行動の心算なのだが?」

「「「「……………!」」」」

神官達が、モモンガを睨む。

大神殿内にアンデッドのシモベを多数 入り込ませ、有用なアイテムの搾取物色に出たからだ。

 

「ふむ、こんな物か。」

「ナカナカノ…収穫、ナノデスカ?」

「「「「…………。」」」」

約1時間後。

押収したアイテムが山の様に積まれる。

魔導王護衛として同行しているコキュートスは、それを見て微妙な反応を見せた。

モモンガからすれば、それは其れ程のレア度も有用性も無い外れアイテムばかりだったが、それでも現地基準からすれば高価値なのは理解していたので、敢えて満足そうな反応を示す。

 

「私は少しだけ…満足したよ。」

 

ヴォ…

 

そう言って、転移門(ゲート)を開くモモンガ。

先ずはアイテムをシモベに持たせ、転移門(ゲート)を潜らせる。

そして全てのアイテムをナザリックへと運ばれたのを確認すると、

「それでは私も、失礼するとしよう。

スレイン法国の諸君、もう会う事も無いだろうが、まあ、死ぬまで この地で暮らすが良いだろう。」

…そう言って、自身も転移門(ゲート)に歩みを進めていく。

 

「「「「……………。」」」」

それを無言で見据える神官達。

内心では「早く去れ!」だろうが、当然 誰も、それを口にする事は無い。

先は不安しか無いが、とりあえずは大神殿が残っただけでも安泰。

少なくとも、寝床の確保だけは出来たのだ。

神殿内から食糧を持ち去られた様子も無かったので、当面だが餓えも凌げるだろう。

…実際は その場凌ぎだが、誰もが それを考えようとはしなかった。

 

「ああ。1つ、大事な事を忘れていた。」

「「「「…???!」」」」

そうした中、モモンガは転移門(ゲート)を潜る直前に、その歩を止める。

 

「「「「………………?」」」」

「何事だ?」と、不安視する神官達を尻目にモモンガは大神殿に眼を向けると、

「《超隕石落下(メガ・メテオ・フォール)》!」

 

ゴォオッッ!!

 

「「「「…!!!!?」」」」

魔法による、巨大な隕石を召喚。

 

ドッドッドッ…ドーンッ!!

 

「「な…?」」

「「はぁあっ!?」」

そして それは、大神殿の真上に落ちる。

この超質量の直撃を受けて、神殿は完全崩壊。

周囲に違和無く馴染む、瓦礫の一部と化した。

 

「ぁ…」

「あああ…」

その光景に、唖然とする神官達。

それは今、自分達が身に着けている以外の『衣』、そして『食』と『住』を奪われ、残された道は野垂れ死にの他に無しも同然故に当然か。

 

 

 

「だ・か・ら、DQN骸骨って言われるんだよ!(誉めてるw)」

 

 

 

その様を離れた地から、黒髪紅眼の男が遠隔視の鏡(ミラー・オブ・リモート・ビューイング)で見ながら笑う中、

「成る程…ユグドラシルでは戦闘終了と同時、隕石は消えるのだが、リアルとなれば残る儘か。

まあ、それが普通だろうがな。」

モモンガは自らが呼び寄せた隕石を眺め、納得するかの様に呟く。

 

「それでは改めて、これで失礼する。…さらばだ。」

 

スゥ…

 

「「「「………。」」」」

そして そう言い残すとモモンガはコキュートスと共に、転移門(ゲート)の彼方へと姿を消して行った。

 

「「「「………………。」」」」

それから暫く…残された者達は、誰も口を開く事無く、只、崩れ落ちた大神殿の跡を見ていた。

 

 

≫≫≫

 

「あ゙ぁぁあああぁあ゙あぁあーーーっ!!?」

 

そして、陽が西に沈み、真円の月が雲1つ無い夜空に浮かんだ頃。

それは大神官か、それとも他の神官長の誰かか…

何者かの慟哭の叫びが、瓦礫と化した神の地に響き渡るのだった。

 




【次回予告】
 
◆まろんside◆
先に読者諸氏に、誤解されない為に言っておく。
ユリたん♡の おっぱいは断じて、握力が鍛えられる程に硬く等は無い!
寧ろ、『柔らかい物→おっぱい』と連想出来る程に柔らかいからな!
低反発や羽毛の枕みたいに、顔が埋まるんだぞ!沈むんだぞ! どーだ、羨ましいか!
…それから おい、駄犬(ルプスレギナ)
お前は後で、OSHIOKIだ。
 
「ひぇ?! かかか、勘弁っス、お義兄たm(ガシィッ!)あ痛たたただ!?
 
≫≫≫
「さて、アインズよ。」
「説明して貰おうかの?」
「ハッキリさせるべきは、ハッキリさせないとね!」
「………………………。」
スレイン神官の去り際の言葉、『ヤルダバオト』についてジルクニフ君、ドラちゃん、ツアー達から説明を求められるモモンガさん。
もう、「実は それ、デミえもんです。」って、正直に言っちゃえば?
 
次回より新展開!『とばっちりや冤罪で組織壊滅させられたら堪ったもんじゃないよね!(予定)』
乞う御期待! 感想よろしく!
 


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凄く可哀想な暗殺者集団(笑)

 
新展開!
 


▼▼▼

スレイン法国神官達を法国本土に放逐するより、話は少しだけ遡る…

 

≫≫≫

 

◆まろんside◆

「さあ、アインズ。」

「ヤルダバオトとやらについて、説明して貰おうか?」

「ハッキリさせるべきはハッキリさせないとね!」

「ぁ…はい。」

裁判終了後。

出番待ちしていた占星千里に『悪ぃ。裁判、終わったわ。』と謝りに行った後、モモンガさんを待っていたのはジルクニフ君達による質問攻勢だった。

スレイン神官の1人が去り際、デミウルゴスの変装キャラ『ヤルダバオト』が、モモンガさん…と言うか魔導国に何かをやらかすみたいな事を言ってしまった為、それを気にしたジルクニフ君達がモモンガさんを質問責めしているのだ。

『実は それ、デミウルゴスの変装でした!』とか正直に言うと、それは それで ややこしくなるから、『全てを知っている訳では無い』と前置きして、仮面の悪魔・ヤルダバオトについて話すモモンガさん。

因みに聞き手はジルクニフ君、ドラちゃん、リ・エスティーゼ国王、ローブル聖王国女王の各国トップと護衛等の御付きさん。

そしてツアー。 

…以上のメンバーに加えて、俺、モモン(パンドラ)、デミウルゴスを交えての説明だ。

エルフ王国からの代表は興味無しと、裁判が終わると直ぐに魔導国から去って行った。

そして、ヤルダバオトについては…

 

・自分達と同郷で、デミウルゴスと同種族の上位悪魔

()()の創造主と自分は、浅からぬ縁が有る

・自身の主の命令により、魔導王と敵対する為に設定された存在

・その他

 

…と説明。

まあ、同種族については同一人物だから当たり前として、確かに()()()()()()()な。嘘は。

 

「…俺からも ついでに、言わせて貰おう。」

此処で、俺も会話に参加。

 

「ザナック王、エ・ランテルが魔導国領となる前に起きた、アンデッド騒動は覚えていますね?」

「それは勿論。ズーラーノーンが計画していたとされr…ま、まさか?!」

「その通り。その時、俺とモモンが捕まえた連中(ズーラーノーン)が、『仮面の悪魔』の存在を話していたと思いますが…」

「…うむ。私は その辺りは報告書でしか知らぬが…

アレに書かれていた悪魔が、そのヤルダバオトだと言うのか?」

(マカロン)モモンガさん(モモン)が解決したアンデッド騒動。

懐かしい。あの時は まだ、『ヤルダバオト』という確りした設定は出来ていなかったが、仮面を着けたデミウルゴスの暗躍から、冒険者【Black & Gold】の実績を作る為のマッチポンプ。

 

「あの頃は まだ、私は表で目立つ様な事は、していなかったのだがな…」

ソレについては、魔導王(じぶん)とは関係無いと言いたいモモンガさんだが、

「もしかしたら、行く行くの魔導王との戦いの為に、ズーラーノーンを傘下にしておきたかったとか?」

此処でパンドラが、ナイスなフォロー(笑)。

 

「…しかし そのズーラーノーンも、法国を滅ぼす前に潰したからなぁ。」

「「「はぁああ??!」」」

そして俺の一言に、皆さん驚く。

…おっと、これは言うのが早かったか?

 

「ちょっと待て、マカロン!」

「何で、そうなっているのじゃ?」

「詳しく説明して貰えないか?」

やっべー! 質問の矛先が、俺になった?!

 

「ああ、それは私が説明しよう。

スレイン法国の事を調べていた時に、偶々ズーラーノーンの本拠地の在処が判ってな。

後の憂いを除く為に、スレインより先に始末しただけだ。」

さすモモ! 向こうからの『友好を結びたい』とかの手紙の事は喋らずに…喋ったら 更に ややこしくなるから…上手く纏めた!

 

「…と、なると、次は そのヤルダバオトとやら、どう出ると思う?」

「「「うーむ…」」」

しかし、それで話は終わらなかった。

リ・エスティーゼのザナック王が、過敏に?気にしている感じなのだ。

当時は王国領だった、エ・ランテルでのアンデッド騒動の黒幕という事で、えらく神経質になっている様だ。

更にはジルクニフ君達も、一緒に考え込む。

完全にヤルダバオトを単なる魔導王の敵対者と見ず、近い未来の災厄者扱いだ。

 

「「「………………。」」」

俺、モモンガさん、パンドラ無言。

もう、マジに『実はデミえもんでしたw』とか言えない空気。

 

「ズーラーノーンにスレイン法国…ですか。」

此処で口を開いたのはデミウルゴス。

何だ? ナザリックの知恵者が何か、良い捏造案でも浮かんだか?

 

「ふむ…?」

「「「「…………………。」」」」

いや…だから その、自分だけで納得して完結させる様な真似(ふり)は、止めて貰えるかな?

ほら、皆が注目してるだろ?

 

「…そのヤルダバオトなる者、ズーラーノーンの時にしろスレイン法国の時にしろ、自分から前に出る事は無いが、かと言って姿を後ろに隠す事も無い。

()の命に従い、アインズ様の敵対位置に居るだけで、具体的に何かをした訳では無い…ですか。」

元々、デミウルゴスがヤルダバオトとして法国に出向いたのは、法国神官達に憑けていたシャドウ・デーモンの存在がバレから、その代わりの情報収集の為だからな。

それで堂々と、正面から『私は魔導王の敵です』と自分を売りに行き、後は悪魔の話術で見事、内部侵入に成功。

多少の助言なら しただろうが、本当に明らかにモモンガさんに対しての、敵対行動をする訳も無いだろう。

 

「仮説ですが、ヤルダバオトは この世界の反社会勢力…とでも言いますか?

それに接触して内側に入り、アインズ様と事を構えようとしていますね。」

「法国は反社かよ…」

「くっく…しかし今となっては、的を射ておるぞ?」

「…と、なると、次にヤルダバオトが現れ近付くとすれば…」

 

 

◆まろんside・了◆

 

≫≫≫

 

◆モモンガside◆

「アインズ! 一体、どういう事だい?!」

ヤルダバオトについての話し合いが終わった後、ジルやドラウ達は転移で各々の国に送っていったが、まだ1人、帰らずに残っている者が居た。

 

「ヤルダバオトは君達と同郷…それって つまり、ソイツもユグドラシルから来たって事だろ?」

ツアーだ。

 

「気付いたか。流石は竜王、世界の守護者を自称するだけの洞察力だ。」

「ジルクニフ皇帝やドラウディロンも気付いてたよ!」

え? マジ? いや、あの2人、何も言わなかったじゃん?

 

「あの2人、ぷれいやー関連になる事だからと、全部 私に丸投げしてきたんだよ!

君は知っているのかい? ヤルダバオトを創造したという ぷれいやーを?

…何だか えらく、恨みを買っている感じだけど?」

「…………………………。」

ああ、とりあえず、ヤルダバオトがデミウルゴスだって事は、バレてないみたいだ。

良かった良かった。

まあ、ヤルダバオト(デミウルゴス)の創造主・ウルベルトさんの事は、確かに知っているが…

「…すまない。私に恨みを持つ者には心当たりが有り過ぎて、特定が出来ない。」 

「ん! 知ってた!」

御無礼じゃない?!

  

 

◆モモンガside・了◆

 

▼▼▼

そして、時は現在。

 

「久し振りだな。

先ずは、俺の急な呼び掛けに応えてくれた事に、礼を言わせて貰うよ。」

「「「「「……………。」」」」」

リ・エスティーゼ王国は王都に在る とある酒場。

まろんは王国所属のアダマンタイト級冒険者チーム・蒼の薔薇の面々と、同じ席に着いていた。

 

「それで、マカロン殿?」

「態々 王国まで足を運び、俺達を呼び出した理由って一体、何なんだい?」

彼女達は数日前、ザナックに呼び出され、何事かと思っていたら、『近日に魔導国よりマカロン公爵が訪ねてくるから、話を聞いて欲しい』という事だったのだ。

 

「率直に言うぜ?

イジャニーヤについて、拠点の場所等、知っている事を聞かせて欲しい。」

「「「「「…!???」」」」」

この まろんの問い掛けに、蒼の薔薇5人の顔が瞬時に険しくなった。

 

≫≫≫

 

◆まろんside◆

大当たり(ビンゴ)

あの時の話し合い。最終的に、次にヤルダバオトが近付くと思われる反社会勢力として名前が挙げられたのが、暗殺者組織として名が知られてるイジャニーヤ。

ツアー曰く、元は十三英雄の1人である暗殺者(アサシン)の名前だが、その弟子達が恐らくは彼(彼女?)の没後に立ち上げた組織だとか。

…英雄の弟子が反社集団、作ってんなよ。

そして そのイジャニーヤ、現在の頭目が忍者らしく…この世界の忍者って、ユグドラシルと比べてレベルその他で色々と突っ込みたい…忍者と云えばと、蒼の薔薇のレズ&ショタなら何か知ってると思い、こうして動いたのだが…

いや、ヤルダバオトがイジャニーヤに接触するとか、そんな予定は一切無いのだから、本当は こんな必要は無いのだが、一応は調べて動いていますってのをジルクニフ君達にアピールしないとだから…

因みにだが、ジルクニフ君の部下の文官さんはイジャニーヤとの連絡方法を知っているらしいが、帝国に迷惑が掛かると いけないから、今回は魔導国として動く事にしたのだ。

 

「…イジャニーヤの事を知って、どうする気?」

「誰かの暗殺を、依頼する心算?」

「質問を質問で返すなよ。」

双子忍者の反応からして、絶対に何か知ってると確信。

さて、どうしたもんだか…

一応、ヤルダバオトの存在については秘密扱いだからなあ…

 

≫≫≫

結果。双子忍者は、イジャニーヤのアジトの場所を知っていた。

 

「知っていて聞いてきたかと思ってた。」

「いや、それは本当に偶然だ。」

てゆーか、この2人、元は組織の幹部格で、そのイジャニーヤの頭目というのが、双子改め、三つ子姉妹の長女だという。

どうした経緯で帝国に根を張る暗殺集団の一員が、王国の冒険者になったんだ?…と疑問に思ったが、それは今 聞く事では無いので、今回は流す事に。

 

「しかし、だ。知ってはいるが、教える訳には行かない。」

「情報を外に流さない事が、私達が組織を抜ける条件。

それが破られたら、大変な事になる。

具体的には、私達を始末する為だけに、王都で無関係な血が大量に流れる。」

それは御尤もで。

 

ス…

 

「…!?」

勿論、此方もタダで情報を得る心算は無かった。

当然、それなりの金銭は用意していたが、其処はアダマンタイト級冒険者。

理由が理由だけに、金で動く事が無いのは分かった。

 

「こ、これ…わっ?!」

そこで、テーブルの上に置いたのは、ナーベラルの写真。

プレアデス…で無く、普通なメイド服を着ているヤツだ。

「こんな事も有ろうかと!」…な感じで用意していたのだ。

きちんと本人の承諾を得て、撮ったヤツだぞ。

 

「ナーベお姉様の…何とリアルな…絵…!」

「「「「ティア?!」」」」

当然だが、此方の世界にはカメラ等は無く、出した写真も超リアルな肖像画としか思われていない。

忍者姉妹のレズの方が、これに超反応。

 

「巫山戯るな!

私達はアダマンタイト級冒険者だぞ!

こんな安い手で、落ちると思っているのか?!

そうだろ! ティア?」

ぉ…ぉう(っふ)

しかし仮面幼女が、怒り全開で詰め寄る。

しかしティアさん、思いきり揺らいでるじゃないの。

 

「そうか…すまなかった。」

この場を荒らす心算も無いので、此処は素直に退く事に。

アジト等の情報を知っているのが分かっただけで、結果としては大成果だ。

後は後日、モモンガさんやデミウルゴスに出張って貰って、催眠術等で聞き出せば良いだけ。

そして、事前予防とかな理由で滅ぼすか?

配下に組み入れる選択肢も有るが、その辺りはモモンガさん達に任せよう。

イジャニーヤからすれば、完全に貰い事故みたいな感じだが、所詮は八本指なんかと同じ犯罪組織…暗殺者集団だ。

善良な一般人からすれば、滅んでも全く問題無いだろう?

どちらにしても、ジルクニフ君達に報告する義務は在るから、何もしないという事は無いが。

 

≫≫≫

「今日は時間を取らせて、すまなかった。

侘びと言えばアレだが、今このテーブルに並んでる食事の代金は、俺に払わせてくれないか。」

とりあえず、蒼の薔薇との話し合いは終了した。

 

「ソイツは悪いな。チィッ、それなら もっと、上等なモンを注文しとくんだったぜ。」

「カガーラン!」

俺の言葉に大女が笑いながら応え、リーダーが それを窘める。

俺的には そういう返し、嫌いじゃないけどな。

 

「…待って。」

そして其処に、ティアが俺に話し掛けてきた。

 

「さっきのナーベお姉様の絵に…金貨100枚!」

 




…その後、イジャニーヤが どうなったかは、読者の皆さんの想像に御任せします(笑)
 
次回『モモンガさん、キレる!(予定)』
乞う御期待! 感想よろしくです。
 


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ヤっちまったヤツ等

 


◆まろんside◆

今はエ・ランテルの酒場で飲んでいる。

カウンター席の隣にはユリたん♡で無く、ブレインだ。

今、ブレインはカルネ村の護り手として村に在中だが、今回は定期報告の為にナザリックに戻ってきた処を俺が捕まえたのだ。

…いや、だってユリたん♡、学校の仕事だし。

デミウルゴス、コキュートス、パンドラ、セバスも各々の任務に就いてるし。

知り合いの冒険者達も、皆が街の外に出張ってるし、アインザックさんは俺には「畏れ多い」と仕事回してくれないし。

…そんな訳で、凄く暇なんだよ。

尚、BARナザリックじゃないのは、彼処は昼間時は営ってないからだ。

尤も、エ・ランテルでも こんな真っ昼間から開いてる酒場なんて、この冒険者組合事務所併設の酒場位だろうが。

 

「所で お前、()()()とは上手く行ってるのか?」

「え? …はい…まぁ…」

そしてブレインと云えば、以前、セバスが保護した娼婦の娘…今はカルネ村の住民のツアレニーニャ(愛称ツアレ)と見事、くっついたそうだ。

因みにだが情報源は、エンリとルプスレギナ。

まあ この2人、ブレインにはエ・ランテルにて彼女を連れ戻そうとした八本指から守らせたりと、接点と言うか伏線は有ったからな。

その関係からだろう。

 

「それなんですけど…あの…ま…っカロン様?

ツアレって娼婦…だったんですよね?」

は? 今更 何を言ってるのだ? この男は?

 

「あのさ…お前、そういう風な考えは良くないぞ?

あの娘が娼婦になった経緯は、お前にも粗方 教えてやったろ?

お前も それを承知で くっついたんだろ?

それなら其処は、触れる事無くフォローしてやれよ、男として。

それに お前も、人様に誇れる経歴なんて、持ち合わせてないだろ?」

どうなんだ? 元・傭兵崩れの野盗団所属が。

お前も武技の使い手で無かったら、あの時に●されていたんだぞ?

因みに今のカルネ村で、ブレイン以外でツアレの経緯を知っているのはエンリとルプスレギナだけである。

如何に村の恩人(モモンガさん)の紹介と云え、素性不明の者を開拓村に受け入れるのは無理な話だからな。

族長さんは その辺りは しっかりしていて、それ等を知った上で、心身のフォローを約束してくれたそうだ。

 

「因みに俺は、そういう野郎は かなり嫌いだ。

例えば…そう! 脳天にダンクぶちかましたくなる位に

「ち、違いますって! ((( ;゚Д゚)))

其処まで下種じゃないですよ!」

「じゃ、どう違うと?」

「……………………………………。

あのコ、処女だったんです…けど…(過去形)」

「……………………………………。」

WHAT?

 

「…マジ?」

「…です。」

 

≫≫≫

後日、恐らくは その辺りに関わった…当時、セバスと行動を共にしていた…ソリュシャンに それとなく聞いてみたら、あの時のツアレは全身打撲で複数ヶ所の骨折。

複数の性病に加え、まだ外見からは気付けない程に日は浅く、既に死んでいたが、胎児を孕んだ状態での正しく虫の息だったとか。

 

「セバス様は私に あの娘を『健全な状態に戻せ』と命じられましたので、その様に致したのですが…

義兄さん、何か不都合が有ったのでしょうか?」

「いや、全然。少し気になっただけさ。」

つまりは その際、処●膜も再生した…と、そういう事か。

今度ブレインに会ったら、教えといてやるか。

性病と胎児の事は伏せて。

 

≫≫≫

「この前、カルネ村に行った時の話ですけどね…」

更に後日。

漆黒の剣のペテルとルクルットに街中で会い、何気に話した時に聞いた話。

 

「ツアレさんがニニャにブレインさんを『彼氏♡』と紹介した瞬間、」

「ニニャの眼から光が消えて、いきなり《魔力の投擲槍(マジック・ジャベリン)》を連続ぷっ()ですよ…」

…らしい。

ブレインの方が遥かにレベルが上だったので、大事には至らなかったそうだが、

「あの時は本当に、止めるのが大変でしたね。」

「気持ちは解るけど…ですよ。」

まあ、ニニャ(本名:セリーシア)からすれば、自分の大好きな姉を奪った憎き男だろうから…昔にクソ貴族に拐われた過去が(魔導国側に住んでいたので、既にクソ認定で惨殺してる)フラッシュバックしたか?…だから仕方無いと言えば、仕方無い。

兎に角その後も、ブレインには塩対応だったとか。

 

「時間が解決してくれるのを祈ろう…」

「「ですねー。」」

 

 

◆まろんside・了◆

 

▼▼▼

  

◆ラナーside◆

魔導国と法国との戦争にて、私が提案した戦術・戦略も幾つかは採用させて頂き、それは十分な戦果を得られた。

 

「これからも、アインズ様に忠誠を誓い、アインズ様の為だけに生きなさい。」

「…はい。」

それが認められて、私が魔導国入りした時から求めていたアイテムを漸く、アルベド様を介してアインズ様から賜る事が出来た。

手段は選ばなかった。

このアイテムは、それが精製されるのに、幾万の人間の魂を触媒として必要だったから。

…だから、私は それに対して効率的な方法を提案しただけ。

 

「…それから、もう1つ。

貴女にアインズ様から褒美が有るわ。

謹んで御受けしなさい。」

「…はい。」

()()は、私にとっては、余り興味の無い事だった。

しかし この先、魔導国…ナザリックの一員として生きていく事を考えたら、有り難い話です。

そして何より、クライムも必然的に、ナザリックの中で それなりに上位の立場となれるのは、嬉しい事ですね。

 

≫≫≫

自室にて。

 

「ら…ラナー様?」

「ふふ…驚きましたか? クライム。」

「は…はい、それは、もぅ…」

()()()()()()()私の姿…

私の頭の上に浮く光の輪冠、そして背に生えた純白の翼を見て、驚くクライム。

 

「ま、まるで、おとぎ話に出てくる…」

それはアインズ様達の故郷、ゆぐどらしる由来の全身装甲のモンスターとは違う、天使という種族。

 

「クライム…貴方も、これで…」

「これは…?」

クライムに差し出したのは、掌サイズの白と金装飾の小箱。

それは【翔天の種子】というアイテム。

私はコレにより()()()()()()、晴れて心身共に異形の集団(ナザリック)の一員となれた。

 

「クライム…私と共に、永遠を…」

「は…はい、ラナー様!」

そしてクライムも この翔天の種子を受け入れ、私と同じ天使になってくれた。

嗚呼! なんて幸せ!

これからクライムと、永遠の天使ライフが始まるのね!

とりあえず今夜は…♡

 

≫≫≫

「「………………………。」」

翌朝。

 

「これは…」

「一体…?!」

それは、正しく異変だった。

昨夜は互いに激しく愛し合い♡、2人して その最中に果ててしまったのだが、眼を覚ますと私とクライムの光の輪冠が消えていた。

そして、それ以上に!

 

「「つ、翼が…」」

 

≫≫≫

「ふーむ…」

慌てアインズ様に謁見を求めて事情を説明。

するとアインズ様も、(恐らくだが)難しそうな顔で考えている。

 

「ユグドラシルでは、Rー18は即BANでしたからねぇ…」

「しかし、確かに現実(リアル)だと、こうなっても可笑しくない…ですか?」

偶然、アインズ様を訪ねていた まろん様も、真剣に何やら考え込んでいる。

この御二方からしても、初めての事態の様です。

 

「ラナー。」

「は、はい?」

「あくまでも、仮説な話なのだが…」

…アインズ様と まろん様が仰有られるには、私とクライムが至った天使という種族は六大神…或いは四大神信仰の天使とは全くの別物。

ゆぐどらしるとは また別世界の、『基督』という主の教えに基づく宗派の存在…

 

「…多分だが、そうなのだと思う。」

…らしい。

しかし それと、今の()()()()と何の関係が有るというのでしょうか?

 

「それで、その教えの中に『汝、姦淫するなかれ』というが有ってだな…」

…え゙?!

 

「恐らくだが、天使だから更にハードルが上がっていると思うな。」

え?…ぇえ゙??!

 

≫≫≫

『汝、姦淫するなかれ』

要約すれば、正式な夫婦でも無いのにΧΧΧするなという巫山戯た教義だとか。

何? 恋人同士はダメなのですか?

真剣に愛し合っていますよ?

まろん様とユリ様以上、ラヴラヴな自信、有りますよ?

あー、ダメなんですか、そうですか。

…とゆーか、クライムとΧΧΧしてるのバレテーラ。

その辺りは全然、話してないのですが?!

 

「私達も その宗派について、其処まで詳しくは無いのだがな…」

アインズ様と まろん様曰く、その教えに背くと それなりの罰が下されたとか。

そして、本題。

その教えの中、人間を導く立ち位置の天使が それを破るとどうなるか?

 

「堕天するんだよ。」

神の眷属の証で有る、光の輪冠は喪われ、純白の翼も漆黒に変化。

神の世界から追放、光の届く事の無い、深き地の底に落とされ、永遠に赦される事が無いのだとか。

それが堕ちた天使…堕天使という存在。

この、()()()は そういう事だったのですね。

 

「まあ、命に関わる事は無いし、種族として弱体化した訳でも無いからな。

余り、気にしなくても良いと思うぞ?」

…気にします!

折角、クライムと お揃いで天使になれたと思ったのに!

 

「堕天以後の罰則(ペナルティ)は特に無いだろうからな。

それに、悪い事ばかりじゃないぞ?

少なくとも この先、クライムとは何の気もせずヤリたい放題だ。」

………………………!!!!!!

まあ、黒い翼でも、クライムとは お揃いには違いないですから、それは それで良いのかも知れませんね♡

それに、堕天使(こちら)の方が ある意味、ナザリックらしいですか?

 

 

◆ラナーside・了◆ 

 

▼▼▼

 

◆モモンガside◆

エルフ王国から書状が届いた。

差出人はエルフ王…無く、先日の裁判で やって来た文官の様だ。

そして、その内容は…

 

「…(怒)…(精神鎮静)…(怒)…(精神鎮静)…(怒)…(精神鎮静)…(怒)…(精神鎮静)…(怒)…(精神鎮静)…(怒)…(精神鎮静)…(怒)…(精神鎮静)…(怒)…(精神鎮静)…(怒)…(精神鎮静)…(怒)…(精神鎮静)…(怒)…(精神鎮静)…(怒)…(精神鎮静)…(怒)…(精神鎮静)…(怒)…(精神鎮静)…(怒)…(精神鎮静)…(怒)…(精神鎮静)…(怒)…(怒)…(怒)…(怒)…(怒)…」

「あ…ぃンズ、様…? ((( ;゚Д゚))) 」

よし、エルフ王国、潰そう。

 




①イジャニーヤ編の続き?
アレは前回で〆たよ。
②ラナー&クライム、人間から天使→堕天使に種族変更。
 
次回『たっちさんコイツです』
乞う御期待! 感想よろしくです。


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たっちさんコイツです

 


◆まろんside◆

モモンガさんが、エルフの国に向かったらしい。

お供はシャルティア、コキュートス、ナーベラル、エントマ。そして、ハムスケ。

 

「絶対に会談目的なメンバーじゃないよな。

何が有ったんだ?」

「そ、それが…」

アルベドが言うには、エルフ王国からの手紙を読んでブチギレ。

直ぐにシャルティア達を呼び出して、出発したそうだ。

 

「何が書かれてたんだよ、その手紙?」

「それが私にも…

モモンガ様は その手紙、眼を通されたかと思えば、ビリビリに引き裂き、直ぐに魔法で灰すら残さずに…」

「…余程な事が書かれてたのは、理解出来た。」

とりあえずはケンカだよな? 戦だよな?

酷いよモモンガさん、何で俺を誘ってくれないんだよ?

凄く暇なんですけど?

 

 

◆まろんside・了◆

 

≫≫≫

 

◆シズside◆

「あれ? シズも呼ばれたの?」

「…はい。」

アルベド様から、円卓の間に来る様にと《伝言(メッセージ)》で連絡を受けた。

其処に向かう途中、同じく呼び出しを受けたアウラ様マーレ様と合流。

 

カチャ…

 

「「「失礼します。」」」

円卓の間に入ってみると、

「や♪」

「「まろんさん?」」

義兄()ぃに?」

其処にはアルベド様と一緒に、まろん義兄ぃにが居た。

 

≫≫≫

「…そういう訳で、私達もアインズ様から呼び掛けが有れば、直ぐに出向く事になるわ。

とりあえずはアインズ様が、エルフの国に入った後の話だけど、何時でも動ける様、貴女達も準備をしておきなさい。」

遠隔視の鏡(ミラー・オブ・リモート・ビューイング)には、スレイン法国…跡の廃地を疾走する、アインズ様達の乗っている馬車が。

それを見ながら、アルベド様が説明。

何が理由かは分からないけど、兎に角エルフがアインズ様を怒らせ、エルフの国を潰しに出発したのは聞いていた。

それで場合によれば、私達の出番も有るそうだ。

成る程、義兄ぃには もしかして、転移係? 

 

 

◆シズside・了◆

 

▼▼▼

 

◆モモンガside◆

法国跡を進む馬車。

悪路この上無い瓦礫の上でも、特別仕様の緩衝装置(サスペンション)の お陰で、かなりなスピードで走らせていても、揺れは全く感じない。

 

「……………………。」

そんな移動中、俺は改めて考える。

俺が望むのは、あくまでも平穏な日常(まいにち)だ。

決して殺戮でも破壊でも、況してや世界の覇権でも無い。

だから、必要以上に敵は作らない方向で居た。

…しかし、エルフ王国。

少なくとも、エルフ王だけは敵認定だ。絶対に潰す。

エルフ王がアレなのは、ツアーから聞かされて知っていたが、まさかアレ程迄に見境無しだったのは想定の外だ。外過ぎる。

こんな展開になるのが分かっていたなら、裁判の時に訪れたエルフの代表の帰り際に、シャドウ・デーモンを憑かせたのだが。

そうすれば、法国を中継とするで無く、転移先登録(マーキング)した上で、直接エルフ王国に転移が出来たのだがな。

 

「…………………(怒)(怒)(怒)!」

「「「「???!」」」」

クソ! クソクソクソクソクソクソがぁ!!

あー、クソ、思い出しただけで、また怒りが込み上げてきた!

こんな…これ程迄に、精神鎮静が追い付かない程に怒るなんて、初めてだ?

 

「ァ…アインズ様?」

「だ、大丈夫でありんすか?」

「…ぁ、ああ、すまない。」

馬車の中、俺の尋常じゃない怒気が充満したのを感じたのか、コキュートス達が不安そうに声を掛けてきた。

 

「エントマも、すまなかったな。」

エントマなんか、その怒気殺気に充てられ涙目ガクブルで、ナーベラルに しがみついていたし。

 

「ぃぇ、私も怖がって、ごめんなさい~…」

うわぁ…何?これ?

こっちで怖がらせて、それで そちらが悪いかの様に謝らせるって、どんなパワハラ?

お願いだから、そういう事で謝らないで!

本当にマジ、ゴメンナサイ。

 

「そ、それで、アインズ様?」

「コノ度、エルフ達ハ、一体 何ヲ…?」

「エルフからの手紙が、アインズ様の逆鱗に触れたというのだけは、聞いていますが?」

あ…そう言えば まだ、理由とかは全然 話していなかった!

確かに何も言わない俺も悪かったけどさ、誰か、出発前に何事か聞いて欲しかったな!

 

≫≫≫

「ナ…何ト!?」

「それは…引くでありんす…」

「ナナフシ…!」

「ぅゎあ…(©シズ)」

その後、手紙の内容を話すと、皆が引いてくれた。

 

「エルフの国に向かうのに、アウラ(おチビ)達を連れていかなかったのは、そういう事でありんしたか…」

「…後で来て貰う事に、なるかも知れんがな。」

「とりあえず、キリギリスの国は、滅ぼしましょう。」

「ウム。」

「は~い。」

そして納得も、して貰えた様だ。

 

 

◆モモンガside・了◆

 

≫≫≫

 

◆シャルティアside◆

「「「ひぃぃうっ!??」」」

「「「…………………。」」」

驚いたでありんすね。

廃都と化した法国…に、まだ生き残りが居たでありんす。

 

「ム! コノ者達…!」

おや? コキュートス? 知ってる者でありんすか?

…ほぇ? あの聖地なる場所に居た?

覚えてないでありんす。…てゆーか、そんな有象無象、最初から記憶になんて留めてないでありんすよ。

 

≫≫≫

「ふっ…御苦労な話だな。」

聞けば この者共、法国上層部…神官と呼ばれていた者の身内だとか。

あの後は、私達が慈悲を以て戦いの後も見逃してやった、シッコクセイテン(私が相手した男は殺したでありんすが)と行動を共にして…瓦礫に埋もれていた食料を掘り起こし、今日まで食い繋ぎないで此処まで やって来たとか。

そのシッコクセイテンとやらは、今は此処に居ない様でありんすね。

食料調達でありんすか?

 

「アインズ様…この蚊蜻蛉共、殺しますか?」

「「「「……………っ!?」」」」

「いや、その必要は無い。既に裁判という形で もう、魔導国と法国の戦争は終わったのだ。

…と、なると これ以上は、単なる殺戮に過ぎないからな。

…敵意が有るなら、別だが?」

「成る程。流石はアインズ様、慈悲深き御方。

何処かの法国の者とは、大違いでありんす。

…ヌシ等も そうは、思いんせん?」

「「「「…………………。」」」」

そうして この者共は放置して、私達は馬車を走らせるのでありんした。

 

 

◆シャルティアside・了◆

 

▼▼▼

「何…?! あの、アンデッドが、やってきただと…?!」

…あれから少し経ち、僅かながらの食料を持ち帰った漆黒聖典が、事の起こりを聞き、驚きの声を上げた。

 

「チィッ…!? 既に私達には興味が無いとでも、そう言いたいのか?!」

「落ち着け、鹿屍討伐。

情けない話だが、それは幸いと捉えるべきだ。」

「ええ、その通りよ。貴女だって、それは…」

「わ、分かっている! 分かっているさ!…しかし!」

生き残った漆黒聖典の3人。

その内の1人が、無事に済んだ事が逆に、戦士としての矜持を逆撫でされた様に憤るが、それを残る2人が宥める。

関節恐慌と刃刀冥土に諭される鹿屍討伐も、それには納得は往かずも理解は、している様子だった。

 

「魔導王が進んだ先…方向からして、エルフに何か用事なのでしょうか?」

「ふん、どうせならエルフ共も滅ぼしてくれたら、有り難いな。」

「それには、同意だな。」

そう言いながら、彼・彼女達が目指すのは法国の中央の法都。

魔導国との戦争で、一番最初に滅びた都市だが、法国の象徴である大神殿は無事だった。

其処ならば、有用なアイテムが残されている筈だという考えの元だ。

しかし、彼等は知らない。

その大神殿も既に、完全に破壊されている事に。

そして その内に秘蔵されているアイテムも全て、魔導国に押収されている事を知り、絶望に浸る未来を。

その後、法都跡に放逐されていた神官達と合流。

最早 恥も外聞も無く、他国に救いを…

そう思い、目指すのは竜王国。

近接している国で、過去のビーストマン関連の繋がりから、一番 今の自分達を受け入れてくれる可能性が高いとしたからの選択だ。

しかし その長い道中の末、国境に張り巡らされた、自分達の力量(レベル)では突破不可の結界障壁を目にして、更なる絶望に囚われ、その場の全員が発狂したかの嘆きの雄叫びを上げるのも、また別の話。

 

▼▼▼

 

◆モモンガside◆

別に今更、脅威には ならないさ。

あの場には居なかったが、生き残りの漆黒聖典も、高が知れている。

それに法国周囲には結界障壁を施し、国外には出られないだろうからな。

限られた食料を探し彷徨い、死ぬまでアンデッドに脅えながら生きていくが良いさ。

…そんな事を考えながら、俺達はエルフ王国側の国境を抜ける。

 

≫≫≫

「流石に この先は、馬車は無理だな。」

目の前に広がるのは、エイヴァーシャー大森林。…らしいが、俺から言わせたら これは もう、樹海だ。

トブの大森林以上に暗く鬱蒼に茂る森を、馬車を収納した後で、ハムスケを先頭にして進んで行く。

予め、フローティング・アイを飛ばした時、森の かなり奥側に、それらしい集落を見付けたので、それがエルフの国なのだろう。

…尚、森の中を進む際、ハムスケが俺に、自分の背に乗る様に勧めてきたのだが…勘弁して下さい。いや、マジで。

 

「むむ? 殿、()()前の方から、何者かが近付いてくるで御座るよ。」

そして それなりに進んだ時、ハムスケが何者かの接近を感知。

 

「今度は人型(ヒト)が、3…いや、4人で御座る。

樹の上、枝から枝に飛び移りながら、やって来てるで御座るよ。」

「フム。イヨイヨ、エルフ達ノ御出座シカ?」

「待て、コキュートス。まだだ。

向こうから仕掛けない限りは、戦闘は禁ずる。」

「ハッ!」

既に殺る気満々のコキュートスを制し、俺達は歩みを止め、接近者が此の場に来るのを待つ。

そうだ。此方から先に手を出したら、単なる殺戮者になってしまう。

国を滅ぼすとしても王だけを討つにしても、大義名分は必要なんだよ。

 

≫≫≫

「待て、其処のアンデッドの一団よ、この先は我等の領域。

一体 何の用d

『グォラァァアアアアッ!』

「「「「ひぇっ?!」」」」

現れたのは、やはりエルフだった。

軽装武装からして、森の偵察巡回、警備役な様だが、この4人は森に入って少し経過した時、()()()()()()()()()()

「クマっちょ君、ストップで御座る。

まだ食べたらダメ、『待て』で御座るよ。」

『グォ…』

森の住人で、4本腕…正確には前足か…の巨大熊のクマっちょの咆哮に畏縮。

この(クマっちょ)、最初にエンカウントした時に…彼からすれば、自分の縄張りに入ってきた侵入者を排除しようとしたのだろうが…その時はハムスケが前に出て、ケモノ同士の格の ぶつけ合い?とでも言うべきか?…で、本能的にハムスケの方が上位者と認めたのか、仰向けになっての服従ポーズを見せ、所謂『仲間に なりたそうな表情で此方を見ている』だったので、その儘 連れてきたのだが。

早速 役に立ったかな?

 

≫≫≫

「失礼しました! まさか、魔導王殿でしたとは…」

「いや、君達は君達の任を全うしようとしただけだ。」

クマっちょの お陰で戦闘は回避。

その後は俺が魔導王(アインズ)だという事を伝えると、このエルフ達は畏まり。

一応、エルフ王から魔導王(オレ)という存在は、知らされていた様だ。

 

「それでは君達の王…デケム・ホウガン殿の元に、案内して貰えるかな?」

「しょ、承知致しました。」

案内役ゲットだぜ。

 

≫≫≫

「初めまして、だな。

アインズ・ウール・ゴウン魔導王よ。」

「………………。」

その後…は、特に大きなイベントも無く、エルフ王国の中心に到着。

アンデッドである俺や蟲人のコキュートス、ついでにハムスケやクマっちょを物珍し気に、或いは恐れながら見られつつ、エルフ王国の城…と言っても、巨木をくり貫いた大きな樹の家の中、エルフ王デケム・ホウガンと対面。

ハムスケとクマっちょは、外で待機だ。

 

「「「「……………!!!!」」」」

デケムとは初対面だ。

此処はエルフの国、その城、王の間。

そしてデケムは その国を統べる王。

地元(ホーム)の優位性は解らなくもないが、俺も一応は、今は"王"を名乗らせて貰っている身だ。

流石に その如何にもな『俺様EREEEE!』な態度は不遜、傲慢過ぎないか?

そう感じるのは俺が狭量なのか?

いや、俺自身、自分が寛大とか、そういう風には思ってない心算だ。

しかし、それでも初対面だぞ?

一応は王と王の初の顔合わせだぞ?

其処は、最低限な外面な やり取りすべきじゃないのか?

俺は兎も角、後ろの4人の殺気が半端無いのは察してるよな?

 

「…此の度、私達が貴国に足を運んd

「ふむ…貴殿が我が国を訪れた理由…理解していた心算だったが…」

()()には慣れているのか、シャルティア達の殺気を興味無いが如くに流し、更には俺が喋っている最中に その言葉を遮り、話すエルフの王。

 

「「「「………………!!?」」」」

これにより、また4人の殺気が増大。

気持ちは解る。しかし、スティスティ。

本当、俺が事前に『直接攻撃をしない限りは手出しダメ! 絶対!』と釘を刺していなかったら、今頃この城は全壊してるぞ?

 

「私が部下に手紙を書かせた筈だが、それは貴殿も目を通したのだろう?

それで私の血を引いている…我が妻となる、ダークエルフの少女2人は何処に居るのかな?」

「「「「「…!!!!!!」」」」」

これだ。コレが、あの手紙を見て壮絶激昂(ブチギレ)になった理由。

始まりは あの裁判の時、エルフ王国からの遣いにアウラとマーレを、(ダーク)の違いは有るとしても、同じエルフ種として会わせた事。

それに、深い考えは無かった。

単にエルフだからという理由だけな、只 何となく…な考えだ。

しかし、それが間違い、失念だった!

俺が、この世界のエルフについて、知識が無さ過ぎた。

アウラとマーレの身体的特徴の1つ、左右の瞳の色が異なるオッドアイ。

これは、エルフからすれば、王…即ちデケムの血を引いている証しらしいのだ。

あの遣いは2人を見て、「王の子供とダークエルフとの間に生まれた子なのか?」とか尋ねてきたので、それは違うとハッキリ言った筈だが、どうやら きちんと伝わらなかった様だ。

全ては ぶくぶく茶釜さんの設定だっての。

そして、あのエルフの遣いは勘違いした儘に、自分の王にアウラとマーレの事を話したのだろう。

そして、それで勘違いしてるだけなら、それは別に大した問題じゃなかったんだ。

あの手紙…要約すると、

 

 

我が血を継いでいる子供なら、我と交わる事で更に強い子供が産まれるだろう。

魔導王よ、貴殿の配下のダークエルフの少女2人、我が妻に迎え、我が子を孕ませる栄誉を与えよう。

故に、即座、我がエルフ王国に差し出すが良い。

仮に拒むので有らば、その時は強引にでも貰い受けるとする。

 

 

…上から態度、この上無し。

しかも その表現からして、愛は勿論 性欲でも無い。

単に、強い戦力(こども)量産しよう(つくろう)としてるだけ。

そもそもスレイン法国とエルフ王国が戦争してたのも、元はと云えば、コイツが原因。

当時の法国最強女性を拐い、無理矢理に…だったよな。

この件に関しては、法国に肩入れしてやるよ。…もう滅ぼしてるけど。

兎に角だ、そんな子作りだけが目的なヤツに、茶釜さんの大事な子供を渡せるかって話だよ!

それに、今は俺の家族…子供も同然だぞ!

もっと ついでに言えば、マーレは男の娘だ!

 

「ん~? どうしたのだ?

我が子を孕むべき娘達は、何故 此の場に居らぬのだ?

此方は魔導王が訪ねてきたと聞き、それ即ち娘達も一緒だと思い、既に床の用意は出来ておるのだぞ?」

「「「「「…!!!!!!」」」」」

…って、マジに いきなり()()かい?!

ヤバイ…そろそろ俺も限界が近い。

だから、たっちさん(幻覚視)。

手錠で無くて そっち…その拳銃(ピストル)、俺に ちょっと貸してください。

 




クマっちょ…エイヴァーシャー大森林に生息する、連甲熊(アンキロウルスス)と呼ばれる巨大な4本前足(うで)の熊。
森林内では、最強の一角とされる種らしい。
ハムスケの"野生"に屈し、モモンガさんに従属。
多分、ナザリックに戻ったらアウラが調教役(コーチ)になる。
『クマっちょ』の名付けは、勿論モモンガさん。
 
▼▼▼
 
【次回予告】
 
◆セバスside◆
やはりと言うべきか、アインズ様とエルフ王は衝突。
戦いの場は城の中から外に移り、両陣営の刃と魔力が交差する中、突如 場の空間が横に大きく裂け、その内側から現れたのは、機械装甲の巨ぉ大な腕ェ!
そして そしてェ…!
 
次回『唸れ剛拳! 北●爆砕拳!(予定)』
乞ぉ~う御期待ィい! 感想、並びに評価(高いヤツ)も、よろしくお願いします。
 


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エルフ王

 
100話!…しかし実質、98話
  
 


◆モモンガside◆

ん。やっぱり このエロフ王だけは とりあえず、絶対に殺そう。

国や他の国民をどうするかは、その後の彼等の反応で考えよう。

 

「どうした魔導王よ。私の妃となる娘達は、一体どうしたというのd

鮮血錐揉襲突刺(ブラッディ・スクライド)ーッ!(…で、ありんす!)

 

ズギャァッ!

 

「げはっ!?」

…等と、俺が考えてるのを察しないエルフ王。

俺がアウラとマーレを差し出すのは、然も当然と言うか、決定事項だと信じて疑わない この男に、シャルティアのスポイド・ランスによる一撃が炸裂した。

 

おい、お前…さっきから黙っていたら良い気になりやがって…

誰に対して、どんな口の聞き方してるか、分かっているのか?! え゙ぇ!?

「ぐ…な…()だと?!」

表情(…と、喋り方)で判る。怒り全開なシャルティア。

 

「「「…………………。」」」

そして それは、コキュートス、ナーベラル、エントマも同様。

…そして、俺もな。

 

「敢えて、殺しは しんせん。

それは、私の役目では ありんせんから。」

「何…?!

ま、魔導王! 貴様の部下は、何を考えているのだ?!」

ドクドクと血が流れる左の肩口を押さえ、先程までの自信気な澄まし顔は消え、痛みに歪めた顔で俺を睨むエルフの王。

 

「……………………。」

側に居た従者に回復魔法を掛けさせながら、更に反撃の為の魔力を高めようとしたが、ナーベラルが それに対してのカウンター狙いで やはり魔力を高めているのに気付いたか、まだ手は出さない。

 

「…ふむ。質問に質問で返す形で申し訳無いが、先ずは貴様が、何を考えているのだ?」

「何?!」

シャルティアの行動を、咎める考えは微塵も無い。

彼女は俺の心情を察し、俺が動く前に代行しただけだ。(…だと思いたい。)

シャルティアが動かなかったら、俺が怒りの儘に、心臓を握り潰(グラスプ・ハート)していただろうからな。

しかし、それは まだ悪手だった。

そう、この愚か者は只では…簡単には殺さん。

何故、自分が今、こうなっているか…理解も納得も望まないが、その理由を教える必要は有るだろう。

そういう意味では簡単に殺れた筈が、急所を外して苦しめるに留めたシャルティアは、本当にファインプレーだ。

 

「先ずは勘違いしている様だが、お前の言うダークエルフの2人…アウラとマーレは貴様の血等、引いていない。

あの2人は、私の友の子供だ。

そして今は、私の子供も同然。

そんな大切な2人を、貴様の如き下郎の元に送ろうとは、欠片も考えていない。

…それなのに、何故 貴様は既に それが決定事項の様に思っているのだ?

本当に私が、あの2人を貴様に差し出す為に、このエルフの国に出向いたと思っているのか?

…そうだとしたら、教えてやろう。

私が貴様に差し出すのは、"死"だ!

そう…私達は貴様に『死』を届けに、やって来たのだ。」

「な…何…だ…と…?!」

俺の言う事に、いや、自分に対して『否』を唱えている事に、脳内での状況理解が追い付かない…そんな感じなエルフ王。

恐らく…いや間違い無く、絶対強者である自分に対して その周りには、イエスマンしか居なかったのだろう。

 

「貴様! 魔導王! お前は誰に対して その様な口の聞き方をしているか、分かっているのか?

私は偉大なるエルフの王、デケム・ホウガンだぞ!」

ほら、やっぱりな。

自国での程度は知らんが、余所の者にも『俺様EREEE!』が通用すると、思っているのか?

 

「偉大かどうかは知らんが、私からすれば、私達の平穏を脅かそうとする者。

だから、廃除に出るだけなのだよ。」

「ぐ…アンデッド如きが…!

この世で最も優れた偉大なる種、エルフ! その王たる私に意見するか? 逆らうか?!

そして私に死を…殺すと言うのか? 笑わせるな!」

うわぁ…どれだけ自分(エルフ)だけを過大評価してるの?

 

「ほう? エルフ様(笑)が其れ程の種とは、初耳だな?」

「黙れ! 貴様は知らぬだけだ!

我が偉大なる父、クロウ・ホウガンを! その偉大なる功績を!」

あー、そういう事か。

コイツ、八欲王である自分の父親の強さに心酔、そんな勘違いしてた訳か。

ついでに()()()が自分の子供に、『エルフEREEE!』とか吹き込んでいた可能性も大だな。八欲王だし。

 

「…知ってるよ。」

「何?!」

「直接の面識は無いがな。

私とクロウ・ホウガンは、同郷なのだよ。」

「………………………。」

ほぅ? 顔付きが変わったな?

俺の言葉を疑ってる…とは違うが、警戒している顔だ。

 

「確かに貴様の父親が我等が故郷にて、最強の(クラス)と呼ばれる内の1つを極めた、強者だったのは事実だ。

しかし それも、同じ(クラス)を得た()()の内の1人に過ぎない。

しかも、その内訳は、人間が7人に異形種が1人。

そして残る1人が、貴様の父親であるエルフ。

…分かるか? 貴様の父親だけが、特別だという訳では無い。

偶々、あの9人の中の1人が、エルフだった…それだけの話だ。」

ついでに言えば、その中で最強だったのは、異形種の人(たっちさん)だ!

 

「巫山戯るな…

父を…我が父を其処等の其之他大勢と一緒にするな!…《風刃(ウィンド・カッター)》!」

 

ヒュォオッ!

 

俺の台詞が容認出来なかったのか…悪いとは言わないが、コイツ父親大好き過ぎないか?…怒り全開な顔で魔法を放つエルフ王。

魔法自体は低位階の其れだが、魔力に比例したかの様な、幾重の巨大・強力な風の刃が俺達に襲い掛かるが、

「甲壁蟲~!」

「《連鎖する龍雷(チェイン・ドラゴン・ライトニング)》!」

 

バシュゥッ!…ビガァッ!

 

「ぎゃぁあっ?!」

それはエントマの喚んだ防御蟲群に阻まれ、即座にナーベラルが溜めに溜めていた魔力、魔法での反撃。

これも、自身の攻撃が防御されるのは勿論、反撃等まるで考えていなかったエルフ王は、まともに直撃を許してしまう。

大体、さっきシャルティアの一撃を貰ったばかりだろう?

普通なら その時点で、要注意認定すべきじゃないのか?

 

「ぐ…な、何をしている貴様等!

さっさと このアンデッド達を討て!」

「「「……!!」」」

 

ザザザッ…

 

しかし この攻撃で、漸く俺達を只者では無いと理解したか…完全に余裕を無くしたのか、護衛役のエルフ兵に怒りと焦りを露にした顔で命令すると、彼等は武器を構えて俺達を囲む。

兵達も、自分達の王が初めて見せるであろう表情に、やや戸惑い気味だ。

 

「ム?!」

「来るでありんすか?」

それを見て、コキュートスとシャルティアも交戦の構えを取るが、

「…絶望のオーラ・Lv.1!」

「「「「「…………???」」」」」

それには及ばぬと、俺がスキルで黙らせる。

 

「な…?!」

一応はスキルの有効範囲に、エルフ王も居たのだが、流石にコイツには通用しなかった様だ。

 

「あ…?」

「ぁ…ぁあ…?」

「さしあたり、私が用が有るのは、お前達の王だけだ。

命が惜しくば、大人しくしておけ。」

「「「「「………………。」」」」」

他の面々には効果覿面、恐慌(パニック)状態だ。

元より、ハムスケに効いたスキルだ。

ハムスケより弱い者に、効かぬ道理が有る筈も無い。

 

「こ…この、無能の役立たず共がっ!」

「…ならば その無能を束ねる王も、また無能の役立たずでは無いのか?

王が有能ならば、兵や民も、また然りの筈だ。」

「な…!?」

駄目だな。コイツは『王』と呼ぶには、相応しく無さ過ぎる。

 

「…さて、エルフの王、デケム・ホウガンよ。どうする?

最期は私も魔を導く王…同じ王として、一騎討ちに応じてやらぬ事も無いぞ?

今回は私としては、これは戦争では無い。

私に無礼を働いた者を誅しに来ただけだからな。

貴様を殺せば、それで終わりだ。」

「だ、黙れ! この薄汚い、アンデッド風情がぁ…ッ!」

「そのアンデッド足る私からすれば、人間種だろうが亜人だろうが…そして異形種だろうが、そんな違いは塵芥なのだがな?

…で、どうするのかね?

偉大なる(笑)エルフの王とやらは、この薄汚いアンデッドからの挑戦を受けるのか?

私を討つ事が出来たならば、私の配下達は潔く この国から退かせる事を約束しよう。

…別に逃げても、構わぬぞ?

その時は追い詰めた上で、殺すだけだがな。」

「き…さマァ…っ!?」

本当に今迄、好き勝手放題だったのだろうな。

自分の思い通りな展開にならなかったり、望まぬ発言を受けた時の忍耐力、そして煽りの耐性が全くと言って良い程に無い。

 

「私は、世界で最も偉大なる種であるエルフ!

その王、デケム・ホウガンだぞ!

アンデッド如きから、退くと思うかっ!」

 

ドドォッ!

 

む? これは、中々…

無詠唱から、火炎球、風刃、雷撃の3属性の魔法を同時に放ってきた。

成る程。一応は、この世界に於いては強者の域に立っているだけの事は有る。

しかし、『始め』の合図も無しに攻撃を仕掛けるのは、感心出来ないな。

 

シュッ…

 

「それで、終わりか?」

それも、俺には効かないけど。

 

「…はぁっ?!」

おぉ、初めて見せる表情だ。

鼻水を足らし、何やら信じられない光景を目の当たりにした…そんな間抜け面だ。

このエルフ王、どうやら顔芸の才能が有ったぞ。

 

「ならば、次は私のターンだな。」

 

ボォッ…!

 

身体から発するのは、金色に光る魔力。

その全身を包む光の魔力が、敵の攻撃を防ぐと同時、俺の魔力を更に増大させていく。

 

ス…

 

そうした上で、更に魔力を高めながら、両手首を重ねて、その両手を右腰の位置に構え、両掌を前に向ける。

 

「う…っがぁあっ!!」

 

ボォッ…シュ…

  

その間もデケムは連続で炎や風の魔法を放つが、効かないって言ってるだろ。

 

「な…?」

金色の障壁の前に己の放った魔法が弾かれ、間抜け面再びのデケム。

そうした内に、俺の掌の中で必要な魔力が溜まり、その両腕両掌を前に突き出す。

其処から放たれるのは、無属性の純粋な破壊の魔力。

 

「《壊鳴灰冥波(トロピカル・キング・ウェイヴ)》!!」

 

弩ッ轟々々々々々ォッ!!

 

「ぅ…ああぁ…」

直撃。よし、殺ったか?…少なくとも致命傷の手応えは、バッチリだ!

 




前回の『次回予告』迄、話が進まなかった…のは何時もの事。
今回は どうしても、この魔法(ワザ)で締めたかったのです。
 
 
 
鳥山明先生の御冥福を御祈りします。
 
 


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エルフ王②(仮)

 
いや…だってオバロwikiの魔法解説にも、そんな風に説明されてたから…
 


◆アルベドside◆

( ゚∀゚ )ぷっはーぁっ!!♡

モモンガの大魔法(ワザ)が、エルフの王に炸裂した。

 

「「あ、アルベドぉ?!」

        さん?!」

「え…?」

見れば、心配そうに、私を見ているアウラとマーレ。

 

ス…

 

「…どうぞ。」

そしてシズが、ティッシュを…って、え?

…………………………………。

まさかと思い、恐る恐る、渡されたティッシュを鼻に当ててみると…赤い

嗚呼? 何ていう事?!

いーえ、これは ある意味、仕方の無い事!

モモンガ様が超・素敵過ぎ(カッケーく)て、鼻血が出るのも当然!

寧ろ、鼻血ぶーしない貴女達の方が、不敬よ、不敬!

…拭き拭き。

 

「~~~~~~~~~~www」

…ですから、まろん殿?

肩を揺らし、お腹を押さえて笑いを堪える様な反応(アクション)は、止めろ貰えませんか?

…拭き拭き。

そ、それから この件は、モモンガ様だけで無く、他の者にも内密に。

アウラ、マーレ、シズ…分かってるわよね? 貴女達もよ!

…拭き拭き。

 

≫≫≫

…さて、現場(あちら)はと云うと、モモンガ様の魔法直撃を受け、エルフの王は吹き飛んだ勢い その儘に、壁を突き破って外に。

モモンガ様達も、それを追って外に向かわれた。

あら? 絶対に死んだと思ったエルフ王が、フラフラと立ち上がる。

あれだけの攻撃を受けて、ボロボロな状態と云えど死なずに済むなんて…意外とタフね。

或いは…

 

  

◆アルベドside・了◆

 

▼▼▼

 

◆モモンガside◆

「成る程。課金アイテムか…」

確実に、殺った手応えは、有った。

 

ざわ…ざわ…

 

屋外には、エルフ達が大勢。

一般の民から兵士らしい者までが、様子を窺っている。

 

「殿!」

『ガゥッ!』

そして その中にはハムスケとクマっちょも。

そんな中で、エルフ王は立ち上がった。

 

「…カキンアイテムというのは知らんが、我が父が遺した護りのアイテムだ。

まさか、貴様の様なアンデッド相手に使う事になるとはな…!」

「しかし、それも もう、打ち止めなのだろう?」

「…どうかな?」

はい、ハッタリ乙ー。

自信アリアリな笑みをするデケムだが、ユグドラシルの仕様で、自動復活・蘇生系のアイテムは、同時複数所持は不可なんだよ(アイテム・ボックスでの備蓄は可)。

その辺りのルールが、この世界で どの位まで適用されるかの検証は、既に済ませているぞ。

 

「もう、理解しているだろう。

お前では私は、斃せんよ。素直に殺されろ。

今なら痛みを感じる事無く、楽に死なせてやると約束しよう。」

仮に、『アウラ(とマーレ)は諦めるから…』とか言って命乞いしてきても、俺は信じない。

法国との戦争を、再現する真似に出るのは目に見えているからな。

尤も此方は、アウラとマーレを拐われる様な、そんな失態は犯さないが。

…しかし、だからこそ、この場で、確実に、殺す。

それだけは決定事項だ。

 

「な…何をしている貴様等!

早く このアンデッド共を抑えないか!」

「「「「「…………!?」」」」」

兵士だけで無く、一般民にも向けられた王の怒声にエルフ達は瞬間たじろぎ、

「《集団全種族捕縛(マス・ホールド・スピーシーズ)》!」

「ヴォオオオォォォオッ!!」

『グラァァァァアァアッ!!』

「「「「「「?????!」」」」」」

その一瞬に、シャルティアが捕縛系魔法を、そしてコキュートス…ついでにクマっちょが硬直(1回休み)の効果を及ぼす雄叫びを発し、エルフ達の動きを止めた。

 

「この、役立たず共があっ!」

あっさりと動きを封じられたエルフを見て、更なる怒声を発するデケム。

 

「おやおやぁ? 可笑しいなぁ?

兵だけで無く、民までも使おうとするとは…これは一騎打ち、じゃなかったのか?

ああ、そうか。確かに貴様は、私の一騎打ちの呼び掛けには応じてなかったな。

そうかそうか。私の一方的な勘違いだったのか。

…失礼した。」

「がぁあああァァァァアッ!」

…に、更に煽ってみると、予想通りと言うか、また期待通りな顔芸を披露してくれた。

 

「アンデッドがぁっ!…殺す!」

アンデッドですけど?(もう、死んでるけどな!)

 

ヴォ…

 

デケムが魔力を高める。

だから、お前如きのレベルの魔法では、俺には効かないって言ってるだろ?

…そう思っていたら このエルフ王、今度は地面に…アレは、召喚魔法か!… 魔法陣を作り出した。

 

 

ズズズ…

 

その中から現れたのは、牛、狼、熊、ライオン、その他、そしてドラゴンをミックスしたかの様な、そんな超巨大なモンスター。

 

『ガゥヮァアァアァァァァッ!』

「ベヒーモスか。」

咆哮を上げる巨獣。

 

ぶぅんぶん…

 

それを見て、、杖の柄尻を持って頭上で大きく2回転させて、改めて構える。

成る程。()()を召喚する事が出来るとはな。

どうやらデケムは魔法詠唱者(マジック・キャスター)には違いないが、中でも召喚術師(サモナー)がメインの(クラス)の様だ。

 

「「「「アインズ様!」」」」

「問題無い、退かれ。」

それを見て、シャルティア達も加勢しようとするが、それを制する。

 

「既に、合図(サイン)は出している。」

「「「「?…!?」」」」

俺の台詞に、最初は頭上に『(ハテナ)』を浮かべたシャルティア達だが、直後に表情が一変。

 

「…気付いたか。そういう事だ。」

それは、分かる者には判る、微妙な空気の変化。

転移門(ゲート)が現れ開く時の空気だ。

さっきの『頭の上で杖ぶんぶん』は、ナザリックで待機していたアルベド達を呼び出すサインだったのだ。

ほら、もう直ぐ その辺りに、転移門(ゲート)が開k

 

ゴゴゴゴゴゴ…

 

…え? 転移門(ゲート)は現れない。

その代わり、目の前の空間が横に広く裂け、上下に大きく口を空けた?!

 

ずぃ…

 

「「「え?」」」

そして その裂け目からは、機械装甲の巨大な手が。

 

ぐぐぐぃ…

 

更に その手が、空間の反対側から裂け目をより大きく広げていき、其処から現れたのは、

『『『『アインズ様! 御待たせいたしました!』』』』

巨大な機械魔神(マシン・ゴーレム)

 

「「「「ダイフンボ!」」」」

えっえーっ!?

いきなり それ出してくる? それで来る?

確かに、最後は魔導国の"圧"を示す予定で、あのメンバーを後詰めとして待機させていたけど!?

ダイフンボを出すなんて、まだ一言も言ってなかったし?!

 

「どうだい、モモンガさん。こーゆー事だったんだろ?」

そのダイフンボの右肩に、金色の人影が。

 

スタ…

 

「…中々の、演出だったろ?」

その人影が地に飛び降り、俺に一言。

全ては この人(まろんサン)の仕込みかーい!?

さては、待機メンバーを見て察したな?

確かに、あの巨体を普通の転移門(ゲート)で移動させるのは無理。

しかし それをまさか、まさかサンのオリジナル技、異次元転葬(アナザー・ディメイション)を転移に応用して やって来るなんて!

 

「いや、ダイフンボ登場は、早過ぎですって。」

「…不味かった?」

『ガゥヮラァァアッ!』

「…いいえ、全く。ある意味、ナイスでしたか?

アルベド! あのベヒーモスは、お前達に任せる!」

「もしかして俺、やっちゃった?」な顔の まろんサンに、巨獣(ベヒーモス)を見て「特に問題無い」と一言。

 

『はっ!』

『『はい!』』

『了解です。』

その俺の指示に、勇ましく応えるアルベド達。

そして、

「(☆∀☆)…キラキラ☆」

その展開に、眼を輝かせる まろんサン。

そんなに巨大ロボvs大怪獣のバトルが嬉しいですか?

 

「………………………っ!!」

対照的に、苦虫を噛み潰した様な表情なのはデケム。

恐らくはベヒーモスを足止めにして、自分は逃げる心算だったか?

 

「ふーん…アレが噂の、エロフ王か。」

そんなデケムを見て、まろんサンが一言。

 

「だ、誰が、エロフだ!?

貴様、初対面の者に対する、礼なる物を知らぬのか?!」

…おまゆう?

ついでに まろんサンも、おまゆう。

 

ザザザ…!

 

「…?!」

そんなコントをしている間に、シャルティア達がデケムを囲む。

 

「さぁ、ボウフラ。」

「そろそろ、死ぬ~?」

「見逃ガシハ、セン!」

「観念するでありんすぇ?」

「俺は別に、ハーレム願望等は持っていない…何故なら俺は、ユリたん♡一筋だからだ!…だが それでも 其れは其れ、此れは此れ、だ。

貴様は羨ま赦さんむっ殺死なす。」

何か1人だけ、私情だだ漏れ!

 

「お前の死因は只1つだ。

…貴様は私を、怒らせた。」

ん~、まろんサンはデケムについて、少し勘違いしている様だ。

尤も俺も ついさっき迄、同じ勘違いしてたけど。

まあ、その辺りの説明は、ヤツを殺した後で良いか…そんな風に考えながら、前に出る。

 

「巫山戯るな、アンデッドが!

広域暴風雨(ラージフィールド・テンペスト)》!」

 

ザ…ザザッサァァアッ…ブゥォオッ!

 

う…うぉ?!

此処でデケムが繰り出したのは、《暴風雨(テンペスト)》の上位魔法!

コレは雨風のダメージより、視界を奪い動きを封じるのが本命な魔法。

それにより、この場一帯が暴風域と化し、

「「「ぬわぁあぁっ?!」」」

「「「きゃぁああっ!?」」」

「「「ヒィィイイッ!?」」」

それは俺達だけで無く、周りに居たエルフの民達迄もが被害に及んでしまう。

 

「ヌゥッ!? 己ノ民ヲ捲キ込ムトハ、貴様、ソレデモ王カ?」

それを見て、コキュートスが憤慨。

 

「知った事か❗ 我が民ならば、王の役に立てて光栄だろうよ!」

しかしデケムは悪びれも無く そう言いながら、腰に携えていた細剣を抜いて突進。

魔法だけかと思っていたが、八欲王…ワールド・チャンピオンの直系だ、近接戦も、決して不得手な訳では無い?

そして その先には、

 

ガシッ…!

 

「貴様…!」

「女…しかも、こんな小っちゃいの狙うとは、王のプライドも何も無いな。」

「お…お義兄(にー)ちゃん…?」

エントマと、その細剣の切っ先を握り止める まろんサンが。

成る程。やはりデケムは、この《暴風雨(テンペスト)》に紛れて逃げようとしていたか。

俺達の中では一番弱そうなエントマを、その突破口として選んだが、まろんサンには お見通し、通じなかった…と。 

 

「テメェ…俺の可愛い義妹(いもうと)に手ェ出そうとしたんだ、覚悟は出来ているな?」

「お義兄ちゃん…♡」

そして まろんサン、その やり方にキレテーラ。

 

バキィッ!

 

「ふげっ?!」

はい、怒りの顔面グーパンチ、炸裂しました。

 

「喜べ! 明日からお前のアダ名は、ブラック〇ールだ!」

更に追撃。鼻血どくどくな顔面に、めり込み その儘 貫かんとする凶悪な拳がデケムに迫る。

…ブラッ〇ホールって、何?

 

ガシィッ…どん!

 

「ぉわっ!?」

しかし、その顔面狙い見え見えの攻撃は、両腕クロス・ガードでブロックされてしまう。

しかし それでもパワー負けして、吹き飛ばされるが。

そして まろんサンのターンは、まだ終わっていない。

 

()()で、終わらせてやるよ。」

 

ボォオ…

 

両拳に魔力を溜める まろんサン。

しかも アレは、 

『ダイフンボ・ハリケーン!!』

 

ずどんっ!!…シュゥゥ…

 

「「「「「「「!???」」」」」」」

…って、このタイミングで、ダイフンボとベヒーモスのバトルが決着。

ダイフンボの変則的な背負い投げ?…で、ベヒーモスは その巨体を勢い良く地面に叩き付けられ、ダメージがHPの限界値に達したのだろう、その儘 消滅した。

その技の反動で、瞬間的に周囲が かなり揺れ(推定 震度5)、それにエルフ達は慌てふためき、俺達も少しだけ驚いた。

 

「な…今のは何で御座るかぁ~?

じ、地面が揺れた?で御座るぅ~?」

『グギュゥウン?!』

…どうやら この世界には、『地震』なる物が存在しない様だ?

 

「くっ…! ドイツもコイツも、役立たずばかり!」

それを見て、更なるキレ顔芸を披露するデケム。

そして まろんサンの方に話を戻すが、まろんサンが繰り出している魔法は《内部爆散(インプロージョン)》。

本来それは、まろんサン得ているがソーサラーのレベルだと、使えない高位の魔法。

しかし、それでも魔拳士の魔法拳としてなら、使える()だ。

 

「爆死ね! 北●神拳(ノーザンライト・ゴッド・ハンド)!!

 

ボゴォッ!x2

 

「ぐべじんっ!?」

魔力を帯びた、撃ち下ろしの右と突き上げの左。

2つの拳が側頭部と顎、同じタイミングで直撃、デケムは地面にキスをした。

 

「がっは…そ、その程度…か?」

しかし効いていない素振りでデケムは起き上がる…が、お前 今、鼻血と言わずに顔面血塗れだからな。

 

「アンデッド!…そして金色!

お前達だけは、殺す!」

俺と まろんサンを標的(ターゲット)に絞ったか?

また魔力を高め始めたが、それって無駄だよ。

…何故なら、

()()()()()()()()()()()

 

「…が!?」

デケムの動きが止まる。

 

ボコ…ゴボ…

 

「ぴ…?!」

そしてデケムの頭は内側から風船を複数 膨らましているかの様に、ボコボコと膨らんでいき…

 

「ぐ…ばびぶべぼほわーッ!!!」

 

ぼんっ!

 

最後は限界まで大きく真ん丸に膨れ上がり、大爆発スプラッター!

周囲に対して血と頭蓋の破片、脳漿と肉片を盛大に ぶち撒けて絶命するのだった。

 

「ふん、所詮はカメムシ。汚い花火ですね。」

 




①前回の後書きで触れた(削除済み)、デケム父の名前ですが、オバロwikiのデケムのページに記載されていましたが、本当にクロウ・ホウガンが有力みたいです(公式では無い)。
関連部分を修正しておきました。
②ベヒーモス…原作登場の土の精霊で無いです。
イメージはFFシリーズで。
③今更だけど、ぶっちゃけモモンガさん達、無敵(チート)過ぎるでしょ。
苦戦させる展開が思い付かない…
 
【次回予告】
 
◆アルベドside◆
殺って殺ったわ!
しかし あの魔獣(ベヒーモス)、それなりな強さだったのは、認めてあげるわ。
…エルフの王を見事 斃した まろん殿。
それに対してエルフの民が取った行動は…
 
次回『エルフの国(予定)』
乞う御期待よ。感想も、宜しくね。
 


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砂漠へ行こう!

 
実質100話!
 
先ずは、エルフ王国編の締め。
…からの、新展開!
  


◆まろんside◆

あれから…

エロフ王を殺った後、エルフの兵士や一般民から「王の仇」とばかりに攻撃を受けると思ったが、そんな事は全く無く。

寧ろエルフの皆さん、盛大に喜んでいましたね。

そんなに人望無かったのか?…何となく解るけど。

後からモモンガさんに聞いたが あのエロフ、聞けば聞く程、とんでもないヤローだった。

手当たり次第に女性に手を出していたのも、別にハーレムとかじゃなくて、自分のDNAを継いだ強い子による軍団を作り、エルフという種族が世界で最強なのを証明したい為だったとか。

あの 絶乳ちゃん 絶死ちゃんの『強い男との子作り願望』は、絶対にエロフの血だぜ。

…それで、初潮を迎えた女の子エルフは、直ぐにエロフに差し出され、孕まされていたとか。…って、たっちさーん!

そして生まれた子供が、強者認定されなかったら、直ぐにポイ捨ての犯り逃げ。

いや、それならハーレム作ってるのが まだマシだろ?!

つまりは あの国の女性は全て、エロフの御手付きなのだ。

そりゃ殺されて国民が喜ぶ訳だ。

尚、あのエロフは処女散らしには別に拘らなかったらしく、エルフ社会では何時の頃からか、エルフの女の子は初潮を迎える前に想いを寄せている異性や、或いは父親や兄等と、()を済ませる事も…って、たっちさーん!?

兎に角、俺達は そんなクソを始末した事で今、特に直接に殺った俺は、救世主やら英雄やらな扱いなのだ。

あのエロフに代わって国を治めてくれとか言われたが、丁重に断った。

それと…前回、裁判の時に魔導国に来たエルフの代表は、モモンガさんに『おい固羅…余計な事、しかもデタラメ言ってんなよ、な?!』って感じに、軽く〆られてた(殺されてはいない)。

…尚、モモンガさんがエロフ城に保管されていた、珍しいアイテムを御持ち帰りしていたのは(きちんと許可を得ていた)、仕様です。

 

 

◆まろんside・了◆

 

▼▼▼

 

◆モモンガside◆

あれから…

エルフ王国での一件が片付いた後、ついでとばかりに その隣…と言うか、やはり あの森林の中に築いていた、ダークエルフの国というか村にも足を運んでみた。

エルフの国に向かう途中、その存在は確認していたが、その時は別に用が無かったので通り抜けていたんだよな。

因みにメンバーは、俺、アウラ、マーレ、コキュートス、ハムスケ、クマっちょ。

残りの面々は、魔導国に帰っていった。

目的は、魔導国として関係を作る…というのは建て前で、アウラとマーレに、友達を作れないかな…とか思ってみたのだ。

殆んどのシモベが完成された成人として創られている中、アウラとマーレは、心身まだ子供だ。

如何に能力的に強者と云え、精神面は未成熟。

同年代・同族との触れ合いなんかは必須だろう。

情操教育だよ。

しかし結果は…

 

「成る程。それでも、その同年代は2人に比べたら お子様過ぎ…いや、アウラ達が大人だった訳だ。」

その通りで御座います。

 

「それは、仕方無いですよ。

本当に年相応に遊んでいる子供達に対して、2人は普段から色々と『仕事』してるんだから。

幼い子供を酷使させるブラック国家、アインズ・ウール・ゴウン魔導国!」

言い方あぁっ!?

 

「しかもアウラに至っては、これまた たっちさんを呼ぶ自体になりかけた、と。」

はい。…しかし、それについては、()も彼で、「俺って童女趣味だったのか?…orz」と真剣に悩むというか凹んでいたので、偶々に好意を抱いた異性が、まだ幼かった…という事に、しておいてあげて下さい。

 

「…しかも、そのアウラはアウラで ()()に全っ然 気付かなくて、結果 轟沈…と。」

…そっとしといてあげて下さい。

 

「まぁ、良かったじゃないですか。

結局は2人が()()()()()して子供に合わせて、村の子供達とは それなりに仲好くなれたんでしょ?

特にマーレきゅんは、男女からモテモテ(笑)。」

そうだけど…確かに そうだけど、俺が思っていたのとは、少し違うんだよなぁ…

まあ、これが伏線にでもなってくれて、数十年後位に2人の御相手が見つかりでもしたら…

そうですよね、茶釜さん!

 

「…後に、ダークエルフ社会に、『男の娘』文化が浸透していくのだった、まる」

いや、それは無いぞ!(…多分。)

 

 

◆モモンガside・了◆

 

▼▼▼

 

◆ジルクニフside◆

「…そう言う訳なのだが?」

アインズと まろんが執務室に現れたと思ったら、エルフ王国での出来事を話してくれた。

 

「…どうでも良いが、とりあえず いきなり この部屋に転移で現れるのは、控えて貰えるか?」

我が帝国とエルフの()とは、何の繋がりも無い。

しかし、スレイン法国からは、エルフを奴隷として買い取ってたりしていた。

法国は既に滅んでいるから、新たに奴隷(エルフ)を仕入れる事は無い。 

そしてアインズが言うには、今のエルフの王が死に、それまで閉鎖的だった国自体が、徐々に外と交流していく可能性も有る、か。

成る程。場合によっては、国内のエルフに対する扱いを改変させる必要も、出てくる…と。

 

「…分かった、考えておくよ。

教えてくれた事には、感謝する。

それで、エルフの王を殺したって、そのエルフ王は一体、お前達に何をしたのだ?」

「「それは…」」

…ぅゎあ。

 

 

◆ジルクニフside・了◆

 

▼▼▼

 

◆デミウルゴスside◆

「はいはーい! 巨大テーマパークを作ったら良いと思いまーす!

名前は勿論、【アインズ様ランド】!」

「ぼ、僕も、それが良いと思います。」

現在、アインズ様以下、守護者にプレアデス、そして まろん殿達と、話し合っている最中。

御題は『廃都と化したスレイン法国の地を、何か有効活用出来ないか?』です。

それに真っ先に意見を出したのが、アウラとマーレ。

 

「ゴルフ場。」

「ほう。」

「良いですな!」

そして まろん殿の提案に、セバスとパンドラも賛同してきました。

密かに私も同意です。

但し、私は今回、議長役ですので中立。

1つの案を個人的趣味で推したりは しませんが。

尤も、法国跡の広大な敷地ですから、余程 無理の無い限り、建設的意見は基本採用なんですよね。

 

「エ・ランテルに設置した校門を転移門(ゲート)で繋げた、」

「巨大な学園都市設立を提案致しますわん。」

 

 

◆デミウルゴスside・了◆

 

▼▼▼

 

◆モモンガside◆

「南方…ですか。」

今、まろんサンと一緒に、冒険者組合に来ている。

目的は、南方と呼ばれる、スレイン法国(跡)より南の領域…砂漠地帯の調査の依頼だ。

俺的には、この世界の南方とは極東、つまり『日本』…と言うより、未踏の地・ジパング的なイメージが強い。

偶に魔導国に訪れる南方人は、黒髪黒瞳。

だからこそ、モモン、マカロン、ナーベは南方出身の()()にしている。

ブレインが最初に持っていたカタナも、南方の拵えだったそうだし。

  

「以前、魔導王様が申されていた、『冒険者なる者、只の "もんはん"で無く、未知を既知とするべし』…ですか。」

「その通りだ。」

組合長のアインザックが、興味深そうに話す。

…何故 今回、組合に この様な話を持ち掛けたかというと、まろんサンが魔導国に訪れた南方人から、興味深い話を聞いたからだ。

 

 

南方の中央に在る、現在は滅び廃れた曾ての都。

その上空には浮遊する大陸が在り、更に上には巨大な城が在ると云う。

 

 

それ、もしかして『天空城』ですか?

八欲王の伝承が、南方起源というのは知っていた。

だから、奴等の拠点であった、天空城が南方砂漠に有ったのも、別に可笑しな話じゃない。

しかし、その八欲王が滅んだ後も、天空城が まだ存在するとなれば、調べる必要が有る。

珍しいアイテム等が、有るかも知れないしな!

 

「今回は俺も、()()()として同行するぜ。

それと、魔導国の外にも、何人か声を掛けてみる。」

そして今回、何故 冒険者組合に話をしたかと言うと、魔導国だけで無く、帝国や王国も、南方については詳しくないという事実。

魔導国はモモン達の設定が有ってか、徐々に和らいでいるが実質、南方…南方人は野蛮人というイメージが固まっているのだ。

まろんサンがマカロンとして、実際に南方人と話してみたが、少なくとも その人間に対しては、そんなイメージは無かったと言う。

他の国は兎も角、魔導国内で そんな偏見や差別によるトラブルは好まないからな。

だからこそ、実際に現地に人を送り、確認させて事実を広める。

その為の、冒険者起用だ。

その結果、野蛮人が事実だとしたら、それは仕方無い話。

そして もう1つ、天空城の下調べ。

これが もし、本当に八欲王の拠点だったなら、現地人のレベルでは どうしようもない。

とりあえずは、本当に天空城の有無の確認だ。

実際に現存していたなら、次は魔導国本隊…俺達ナザリック勢の出番となる。

 

 

◆モモンガside・了◆

 

▼▼▼

 

◆まろんside◆

アインザックさんに南方調査を持ち掛けて2週間、エ・ランテルの中央広場に今回の調査メンバーが集まった。

先ずは、俺とナーベラル。

マカロンとモモンは一応、魔導王暴走の抑止となっている為、2人一緒に街を離れる訳には往かないので、モモン(パンドラ)は お休み。

 

「ナーベちゃ~ん♡ 久し振り~♡」

「黙れ、ウスバカゲロウ。

その舌と喉元、切り裂かれたいのですか?」

「「「すいません、ウチのバカが、本当に すいません!」」」

そして、漆黒の剣の皆さん。

 

「おお、これは美しい お嬢様方。

初めまして。私、漆黒の剣のルクルッt

「黙れ、オッサン。お前は年を、取り過ぎている。」

「DTじゃないしな。」

「オッ…?! それと、そっちのオバハンには、声掛けてないから!

「そんな事より、そっちの お嬢ちゃん、お姉さんと少し お話、しない? (;゚∀゚)=3 ハァハァ」

「ひぇっ?!」

「こ、こらーーーーーーーーーっ!?」

「…ウチのバカ共が、すまない。」

王国からは、国とか関係無く、冒険者として声を掛けてみたら、参加を即答した蒼の薔薇が。

 

「お嬢さん、初めまして。

私、漆黒の剣のルクルッt(ぐぃ)のわっ!?」

「どけ、チャラ男。ねぇ、お嬢ちゃん。お姉さんと ちょっと、良い事してみない? (;゚∀゚)=3ハァハァ」

「ひぃぇっ?!」

「「「「だから、いい加減にしろ!」」」」

 

ごんっ!

 

「「ぐぇっ!?」」

「ねぇ、マカロン…様?」

「大丈夫なのか…ですか? アレ等?」

「凄く、不安です。」

「すまない…俺も不安になってきた…」

そしてそして、帝国からはフォーサイトが。

 

「………………………………。」

「何だ? お前も声を掛けて欲しかったのか?」

「そんな訳が有るか!?

只、他の女には あれだけ露骨なのに、私には軽く挨拶するだけとは、失礼だと思わないか?」

「うわ…面倒くさ…」

そして最後に竜王国…というか、八欲王絡みならばと、ヴァーリ・トゥードから俺達と同じく、ユグドラシル・プレイヤーの谷屋あおい。

このメンバーが第1陣の調査隊だ。

ん。出発前から このコント…

何か すっげぇ不安だ… 




ルクルット君、谷屋ちゃんとイビルアイたんには、無難に会釈しただけです。
 
「「解せん。」」
「うわ…本当に面倒くさ…」
 
次回『エリュエンティウ(予定)』
乞う御期待! 感想よろしくです。
 


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バスの旅は、快適です?

 



◆まろんside◆

「これは…」

「何と言うべきか…」

「情けも容赦も無いですね…」

南方調査メンバー。

とりあえずは、転移門(ゲート)で法国(跡)の中央部まで移動。

その見渡す限り、瓦礫な光景に、皆が唖然茫然としてしまう。

 

「此処迄…する必要が、本当に有ったの?」

「さあな。しかし、魔導王は個人としてで無く、スレイン法国という『国』から、『王』としての自分に売られたケンカを買っただけだ。

その場には、俺も居合わせていたしな。

悪いが俺に、甘ちゃんな台詞を期待するなよ?

ついでに言うと残念だが、この俺自身も、法国から直接にケンカを売られた身なんでな。

だから別に、何も思わないよ。」

「「「「……………………。」」」」

その悲惨な光景に、蒼薔薇リーダーが俺に意見を…具体的には、魔導王(モモンガさん)に対して「やり過ぎだ」とか、非難するような言葉を求めている様だったが、それを一蹴。

 

「実際にエ・ランテルにも軍勢率いて攻めて来ましたし。」

「貴女達も、知っている筈ですよね?

他にもスレイン法国は、幾つもの村を襲って滅ぼしているんですよ!?」

「しかも当時は、王国直轄だった村な。

その辺り、王国貴族として どう思ってんの、ラキュースちゃん?…いや、アインドラ・サマ?」

「ついでに言うと、その時って その行いを帝国の仕業にしようとしてたんだよな? 態々 帝国騎士に化けて。」

「卑怯者よね。」

「悪辣としか、表現が出来ないのです。」

「正直、自業自得だと思っています。」

「滅ぼそうとした…実際に滅ぼしたならば、逆に滅ぼされても文句は言えないのである。」

「…………………。」

更には漆黒の剣とフォーサイトが、魔導国側の擁護と言うか、俺の台詞の補足をしてきて、この厨弐さんは何も言い返せなくなる。

 

「確かに、間違った事を言ってはいない。」

「イビルアイ!?」

「少し歯車が狂っていたら、彼等の住む地が、この様になっていた可能性も有ったんだ。

私達外様が、あれこれ言える立場じゃない。」

「……………。」

更に更に、仲間の筈の仮面幼女も此方側の発言をしてきて、ますます無言になる、"内面に暗黒を宿す(笑)"厨弐姫様。

 

「おいおい、皆、その辺にしとけ。

ラキュース、俺達は冒険者だ。

国からの指図を受けない代わりに…しかも他国同士の戦争には、何も文句は言えないぞ。」

「わ…分かってるわよ!」

そして最後に、大女の一言。

これに納得はしていないが、冒険者として的外れな発言だったのは、漸く理解出来た様だ。

 

「それで、マカロン様?

此処から先は、歩きですか?」

「馬車って…無理ですよね?」

「この瓦礫の上を歩き続けるのは、かなりキツい。」

「そうなったら、鬼2号と呼ぶ。」

「ああ、それなら問題無い。

それから…『様』は、止めろ。

俺は そんなに、偉くない。」

 

 

◆まろんside・了◆

 

≫≫≫

 

◆ニニャside◆

 

ずずず…

 

「「「お…おお~!」」」

マカロンさm…んが、"きゃびねっと"?…空間系魔法というらしいです…から出したのは、大きく長い、緑色の箱。

その前後には計4つ、車輪が付いている。

確か、『くんたっし』だったかな?

前に一度だけ見せて貰った、マカロンさんが奥様(ユリさん)とデートする時に乗っていた、黒い乗り物。

それと同系のマジック・アイテムだと思うけど…

 

「バスって言うんだ。」

「「「「バスト?!」」」」

ルクルット…違うから。

それと、イミーナさん、ティアさん、イビルアイさんも。

そして このバス…『くんたっし』は2人乗りだったけど、これは20人位は普通に乗れそう。

 

「うおっ!」

「広ぇっ!」

「凄ぇ!」

「素晴らしいですね!」

「…のである!」

バス本体側面の収納庫に荷物を入れ込んだ後、実際に中に入ってみると、本当に椅子が沢山、並んでいたし。

何故だか男の人達、大はしゃぎ。

 

「早速 出発するぞ。

皆、適当な席に座ってくれ。」

 

 

◆ニニャside・了◆

 

≫≫≫

 

◆ティアside◆

くすん…

このバスという乗り物、最初はナーベお姉様の隣に座ろうとしたのだが、お姉様はマカロンの真後ろ、マカロンの友人だという、タニヤとかいう幼女の隣の席に。

 

「む? カナブンよ、どうかしたのだ?

私で無くて ほれ、お前が新たに目を着けた小娘共の隣に座れば良いでないか。」

カ、カナ…(//∀//)…じゃなくて、違うのです、ナーベお姉様!

別に、そういう訳では!

単に、ニニャちゃんアルシェたんを攻めながら、同時に お姉様に責められる…そんな攻め受け同時を堪能出来るな、ウ・スイホ・ン(※:後書き参照)みたいな展開に憧れるだけで…決して、お姉様に興味が無くなった訳では ふじこふじこ!

…それならと、ニニャちゃんアルシェたん どちらかの隣にと思ったが、あの子達、先に仲良く隣同士で座ってしまう。

鬼ボスの隣にはガガーランが座っているし、ハーフエルフも、恋人っぽい男が隣に。

しかし私は所謂"えぬてーあぁる"な趣味は持ち合わせていないので、そっちは どうでも良い。

ついでに誤解されない様に言っておく。

私は確かに百合だが、ロリでは断じて無い!

 

「どんまい。それと、力説乙w」

「…うっさい。」

イビルアイは1人掛けの席に着いていて、仕方無く、私はティナの隣に座るのだった。

 

「おや? 此処はルクルット、アナタが彼女に優しく声を掛けてみると思ったのですが?」

「珍しいのである。」

「いや。彼女は真性だから、俺には無理だ。」

「それは…神に仕える者として、正しき道を、諭すべきなのでしょうか?」

おい、聞こえているからな?

それから、正しき道だと…?

笑止! これこそが私の正道…否、王道だ!

 

 

◆ティアside・了◆

 

≫≫≫

 

◆アルシェside◆

あの双子のティアさん…凄く、よく分からないけど、あの人からは兎に角 危険な雰囲気を感じたので、バスの中に入ると私とニニャさんは直ぐ、席を共にした。

ニニャさんも あの人から、私が感じた()()を感じ取ったみたい。

前の席にはナーベさんとタニヤさんが居るし、多分安全だ。

このバスというのは、一言で言えば、馬の無い巨大な馬車。

…馬が居ない時点で、馬車という表現は少し変だけど。

その御者席?に着いたマカロンさんが、少し大きな(リング)を握ると、バスが動き出した。

 

「「「「「おおぉっ!」」」」」

…男性陣、少し騒ぎ過ぎ。

 

≫≫≫

瓦礫の上を、信じられない速さで走るバス。

この悪路なのに、全く揺れを感じさせない。

 

「速ぇーっ!」

「ひゃっはーっ!」

「パねぇーっ!」

「…である!」

…ヘッケラン達は単に、窓からの景色が凄い速さで流れるのに興奮してるみたいだけど、これが本当に凄い事だって、気付いてないのかな?

そう思いながら、私も硝子窓から外を見てみると、沢山の骸骨(スケルトン)やゴーレムが瓦礫を片付けていて、その部分は綺麗な更地になっていた。

 

「ああ、アレは今度、魔導国が この荒れ地に色々と施設を作る事になったらしいな。」

教えてくれたのは、タニヤさん。

 

「………………………………。」

タニヤさんはマカロンさんの御友人で、その幼い見た目からは想像が出来ない程な、強力な魔法詠唱者(マジック・キャスター)だそうだ。

マカロンさんの友達というだけで、単なる子供じゃないのは解る。

……………………………………………。

どれ位…強力な魔力を秘めているのかな?

フールーダ老師(センセイ)と同じ位?

少しだけ…確かめても良いよね?

 

 

◆アルシェside・了◆

 

≫≫≫

 

◆まろんside◆

「マカロンさん! アルシェさんが! アルシェさんがっ!?」

……?!

いきなり運転席の後ろから、ニニャの絶叫が。

 

キキィッ!

 

「ん? どうかしたのか?!」

慌てて車を止めて、後ろを見てみると、

「お、おい、小娘、大丈夫か?

このバス、窓は開かないのか?!

と、とりあえず この、ビニール袋に!」

「ぅ…ぅうう…」

………………………………………。

何だか凄い青い顔をしたアルシェが、谷屋とニニャに、介抱されていた。

 

「…………!!? ぅんぷぷぷっ?!」

あ、アルシェの頬が、カエルの様に膨らんで…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

≫≫≫

「ご…ごめんなざいぃ~!」

「…すまない。気配りが足りてなかった。」

そう言いながら、アルシェに酔い醒ましの(ポーション)を渡す。

バスは揺れを感じさせないからと、軽くみていた。

やはり、車に弱いとかの体質って有るよな。

この世界、こんなバスなんて無い…馬車で こんな瓦礫を進むなんて絶対に無いだろうから、自覚が無いのも無理は無い。

 

「ゔ(ゔ)…本゙当゙に゙、ずびばぜん゙…」

「いや、俺のミスだから、気にするな。

本当に、すまなかった。」

「ぅ…ううぅ…」

今にも泣き出しそうな顔で、如何にも自分が悪かった様に俺に謝るアルシェだが、年頃の女の子に それなりな人数の前、しかも男も多数居る中で、あんな恥ずかしい思いをさせたんだ。

谷屋が渡したビニール袋の お陰で、最悪な大惨事だけは どうにか免れたが、これは誰が どう考えても俺が100パー悪い。

 

「…………………!!?」

だからナーベラル。そんな「この鈴虫の分際で、まろんお義兄さまの手を煩わせて…万死!」…みたいなキレ顔芸は、辞めてやれ。

 

「他の皆は、どうだ? 大丈夫か?

今からでも酔い止め、飲んどくか?」

 

 

◆まろんside・了◆

 

▼▼▼

 

◆ラキュースside◆

今回の調査の為の遠征初日、私達の常識では信じられない位な距離を進んでしまった。

このバスというマジック・アイテム、どうやって入手したのかマカロンさんに聞いてみたけど、『それは教えられない。それに、仮に手に入れたとしても、コイツを動かすには、免許が必要だ』と言われて、結局は教えて貰えなかった。

…『メンキョ』って何?

 

「よし、今日は此処でキャンプだ。」

法国都市跡の瓦礫地帯を越えて、平野を走る様になって数刻。

日も すっかり暮れた時に マカロンさんは そう言って、また"きゃびねっと"からアイテムを取り出す。

それは掌サイズのカプセルだけど、それを地面に軽く放り投げると、それは

 

ぽんっ!

 

…と小さな爆発音と共に、白くて濃い煙を吹き出し、周囲は真っ白な空間に。

その煙が消えた時、其処には

「「「おぉっ?!」」」

「「わぁ~♪」」

「「ほぅ?」」

「へぇ…?」

半球型の大きな小屋が目の前に出来ていた。

大きな小屋…形容詞が相殺してるとか、そういう指摘は拒否するわよ。

 

≫≫≫

「…もうちょっと部屋の振り分けは、捻って欲しかった。」

「いや、妥当だろ?」

「お前は何を、言っているのだ…」

各自に割り当てられた部屋に入ると、ティアが早速ぶーたれる。

因みに部屋割りは…

 

・私達、蒼の薔薇の5人

・タニヤさんナーベさんイミーナさんアルシェさんニニャさんの5人

・マカロンさん含む、残りの男性達

 

…だ。

部屋自体は結構 広いから、5人一緒でも狭くは感じない。

ティアは単に、ナーベさん達と同部屋じゃないのが不満なだけ。

お馬鹿には付き合ってられないから、今夜は もう寝るわ。

 

 

◆ラキュースside・了◆

 

≫≫≫

 

◆イビルアイside◆

正直、今回の遠征は このバスの お陰で今の処、かなり楽と言って良いだろう。

 

ドガアッ!

 

『ぎゃんっ!?』

都市跡を抜け、野良のモンスターが徘徊する地域(エリア)

モンスターと遭遇したとしても、今みたいにバスの超スピードからの体当たりで、事無きを得ているのだ。

モンスターとの戦闘が無いだけで、旅の安全性は跳ね上がりだ。

尚、その直撃を受けたオーガは、見ない事にしておく。

そうしている内に、スレインの国境を越え、バスは砂漠地帯に入る。

瓦礫の上とは別の意味で、進むのが困難な筈の砂地も、平然と進むバス。

しかし、その快適な旅も、終わろうとしていた。

 

「最初の目的地の町も近い。

このバスは悪目立ちするからな。

この先は、馬車だ。」

そう言うとマカロンはバスを"きゃびねっと"に収めると…本当に便利な魔法だな!?…代わりに大型の馬車を4台、出してきた。

馬は勿論、御者要らずのゴーレム製だ。

 

≫≫≫

「ほう? 砂漠を越えてきたのか? ようこそ客人。」

その後も、大した厄介事も無く町の関所に。

マカロンが魔導国の冒険者認識証(プレート)を見せると、意外にも あっさりと通る事が出来た。

王国の入国審査とは、エラい違いだ。

 

「う、わぁ~…」

「こ、これは…」

「…おい、余り周囲をキョロキョロ見回すな。」

「わ、悪ぃ…」

「ごめんなさい…」

全く、余所者丸出しな真似は、勘弁して欲しいな。

 

「しかし…」

「思ったよりも…」

「…普通?」

だから、回りをキョロ見するのは止めろと言っているだろうが!

…って、ラキュース! お前もか?!

確かに、南方について何の知識も無い、歪曲した噂しか知らない者からすれば、意外だろうがな。

黒髪黒目と、砂漠地域だからこその、少しだけ日焼けした肌。

服装は男女共に、暑い地域だからか肌の露出が多いが、決して卑猥な訳では無い。

小さな子供(♂)なんて、上は何も着ていn

「尊い。(*゚∀゚)=3 ハァハァ♡」

ぉ、おい、早くティナを縛れぇっ!?

 

「ん~?んんんっん!?」

…町並みも土壁の建物が目立つが、煉瓦造りの建物が無い訳ででも無い。

それ等を踏まえても、王国と然程な変わりは無いからな。

 

「ん! んんんん~んっ!!」

 

≫≫≫

「へぇ? 浮遊大陸(エリュエンティウ)…ねぇ?」

「そうだ。些細な事でも良い。

何か、知らないか?」

そして情報集め。

町の冒険者組合の様な場所を教えてもらい、其処の組合長(マスター)を訪ねると、

「教えてやっても良いが…」

何だか勿体振った、嫌味染みたニヤケ顔で話してきた。

 

「何だ? 金が欲しいのか?」

「違うよ、お嬢ちゃん。」

タニヤが幼女とは思えない、鋭い顔付きで問うが、このオッサンは更にニヤケ度を増し、

「俺が原因(教えた事)で人死にが出たら、寝付きが悪くなるだろう?」

そして、この台詞。

 

「成る程。つまりは実力を示せ…そう言いたいのか?」

「おっと? そっちの兄さんは、話が早いねぇ。」

続けてのマカロンの言葉には、不敵な笑みで返してきた。

 

「それで? 何をすれば良い?

此処等近辺を荒らしている、盗賊団でも捕まえろとでも言うのか?」

「いやいや、もっとシンプルだよ。…スパイク!」

「ぐぅごぉおっ!!」

…………………!?

組合長の呼び掛けで、雄叫びと共に姿を見せたのは身長2㍍超えの巨漢!

筋骨隆々が丸分かりな、ビチビチな黒のボディスーツを着て…って、それ、ビチビチ過ぎるだろ!?

ちん〇゚の大きさ形も、丸分かりだぞ?!

 

「「「う…ぅ~ん…」」」

 

パタン…x3

 

「ら、ラキュース?」

「ニニャ?」

「アルシェ~~っえ!?」

ほ、ほら見ろ!? 耐性の無いのが 挙って気を失ったじゃないか?!

 

「成る程。確かに分かり易い(シンプルだ)。」

 

ピキパキ…

 

そんな中、拳を鳴らしながら、マカロンが前に出る。

しかし確かに、分かり易いのは分かり易い。

あのオヤジ、『浮遊大陸について知りたいなら、せめてコイツを倒せる位の強さが必要』って言いたいのだろう。

 

「マカロン、任せて良いのだな?」

「勿の論だ。」

私の振りに、余裕な どや顔で応えるマカロン。

 

「そんな訳で、決め技(フィニッシュ)は何が良いかな?」

「フランケン!」

「垂直ブレーンバスター!」

「いやいや、此処は やっぱりジャーマンでしょう!」

「私は、北●神拳(ほ●とのけん)だな。」

「アロガント⇒神威を見たいです。」

何だ? 知らない技名ばかりなのだが?

まあ、不安は欠片も無いのだが。

…とりあえず、殺すなよ?

 




 
①ウ・スイホ・ン…昔に転移してきたプレイヤーが世に伝え広めたとされる、男性専用の娯楽誌。
しかし女性には、その存在は知られてない筈なのだが…?
 
②死亡ルートは回避したけど、やっぱり宿命には抗えないアルシェたんwww
 
③スパイク…尖角様(るろ剣)のイメージで
 
≫≫≫
 
◆次回予告◆
 
◆まろんside◆
南方の町に、到着した俺達。
その町の冒険者組合にて、『浮遊大陸・エリュエンティウの情報を得たいなら、それに見合う最低限の実力を見せろ』と言われてしまった。
そのテストとして組合が出してきたのは、スパイクという大男。
そして それと対するのは…俺!
 
次回『スピード・スター☆スパイク!(予定)』
乞う御期待! 掛かってこいや! この とん〇りコーン!
 


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エリュエンティウ

 
キング・クリムゾン!
 


◆イビルアイside◆

バスは砂漠を進む。

 

「オラッ!」

 

グシャアッ!

 

『ぐきゃぉわっ!?』 

…時折、襲ってきたモンスターにヒキニゲ・アタックをぶちかましながら、バスは砂漠の ど真ん中を目指し、ひたすら進んで行く。

それなりに強力なモンスター。

成る程。冒険者組合のオヤジが浮遊都市への道筋を教えるのを渋っていたのも納得だ。

しかし、バスの巨体、それに伴う超重量。

それが猛スピードで突進するのだ。

 

ドガァッ!

 

『キュェエーッ?!』

多少なり強めのモンスターでも、瞬時にバラバラ、肉塊だ。

 

≫≫≫

そして辿り着いたのは、遥か過去に繁栄していたであろう…今は崩れ落ち、砂に埋もれた廃墟。

その上空には、巨大な浮遊都市エリュエンティウが浮かんでいた。

 

「「「「「「「「……………。」」」」」」」」

それを見上げた私を除く全員が、言葉を失ってしまう。

まあ、無理も無い。

初見からすれば、それだけ壮大な光景だろうからな。

事実、私もアレを初めて見た時は、あんな感じだったからな。

 

「「「………………。」」」

意外なのは、マカロン、ナーベ、タニヤ。

最も動じそうにない この3人が、アレを見て感動しているのか?…体をふるふると震わせているのだ。

 

「「「こ…」」」

…こ?

 

「「「これが…ラピュ〇…」」」

「…ぢゃ、ねえよ。」

…この3人の、声を揃えての呟きに つい、ツッコミを入れてしまった。

謎の使命感とでも言うのか?

理由は解らないが、兎に角その発言に対して、そう言わないとイケない…そんな気がしたのだ。

とりあえず、ラピ〇タって、何なのだ?

 

「いや、すまない。

何故だか知らんが、アレを見た瞬間に、そう口ずさまないとイケない…そんな気がしたんだ。」

「私も同じくだ。」

「みー、とぅ。」

「……………………。」

もう、良い…

 

≫≫≫ 

「…………………………。」

「イビルアイ、どうかしたのか?」

「いや、何でも無い。」

「??」

ふっ…らしくないな。

約200年振りか。アレを見ている内に、余りの懐かしさからか、ついつい ()()()を、思い出してしまった。

  

「…で、どうするんだ?

一応は、アレの実在の有無の確認だったのだろ?

だとしたら、今回の調査は、これで終わりな筈だが。」

「いや、更に ()()()が有るか…

それが、最終だ。」

「成る程な。それじゃあ、誰が行くのだ?」

「とりあえず、《飛行(フライ)》が使えるヤツ、挙手。」

 

≫≫≫

「強力な結界だな。」

「破れませんか?」

「いや…恐らくは、アレは無理だな。」

「ああ。それに それこそ、今回の俺達の仕事じゃない。」

「………………。」

エリュエンティウ迄 飛んだのは、私と先程に意味不明なボケをかました3人。

しかし、結局は都市への上陸は叶わなかった。

浮遊都市は超強力な結界で、全体が覆われていたのだ。

…知っていたけどな。

ナーベが「結界を破れないか?」とか言ってきた事に対して、マカロンとタニヤが消極的だったのは幸いだ。

あの結界…あれを抜けられるのは、()()()だけだった。

…理由は結局、分からない儘だったがな。

そして仮に、本当に結界を破ったりしたら どうなるか…

下手をすれば、()()()()()()()()()()()が…

…そんな最悪な展開だけは、回避出来たと言って良いだろう。

私が余計な口出しをする必要が無かったのが、特に良かった。

下手に喋って、『何で お前が そんなの知ってんだ?』な展開にならずにな。

 

「どうする? もう帰るか?」

正直な話、ボロを出す前に此処からは早く おさらばしたい。早く帰りたい。早く帰ろう。はりーはりー。

 

「もう少し、都市の上側の情報も欲しいのだけどな。」

「浮遊都市の更に上に浮かぶと言われている、城の事ですね。」

「天空城。…寧ろ、その存在の確認こそが、今回の遠征の本命だろう。」

まだ、調べるんかい!?

それも確かに存在してるよ!(…言わないけどな!)

しかし我々の《飛行(フライ)》では、この高さが限界だろう?

  

「それなら もっと、上に上がれば良いじゃないか。」

え゙?! タニヤ…お前、更に上に飛べるのか?

 

「それじゃ ちょっと、行ってくる。」

「お気を付けて。」

「行ってら~♪」

  

ヒューン…

 

…………………………………。

 

 

 

◆イビルアイside・了◆

 

▼▼▼

 

◆まろんside◆

「まろんサン、谷屋さん、お疲れ様です。」

南方の調査は終了。

帰りは その場で転移門(ゲート)を開いてエ・ランテルに直帰だ。

先ずは、冒険者組合(アインザックさん)に詳細を説明。

蒼の薔薇、漆黒の剣、フォーサイトに其々 報酬を渡し、今は谷屋と一緒に、モモンガさんに現地での報告をしていた。

 

「…成る程、結界ですか。」

「ああ。無理矢理に壊したりは控えたが。」

「それは賢明でしたよ、谷屋さん。

アレの中に どんな存在が居るのか、まだ分かった物じゃないですからね。」

「居るとしたら、八欲王のNPC…だな。」

「下手に結界を破ったら、其等が外に出て騒ぎを起こす可能性…」

「はい、そうです。」

確かに八欲王のシモベだ。

DQNプレイヤーの創ったNPCなら、やはりDQNの可能性は凄く高い。

 

「…それを踏まえた上で、これからは どうする心算なんだい? モモンガ君。」

「そうですね…」 

その後も3人…と、アルベド、デミウルゴスも呼んで一緒に話し合い、その結果、八欲王絡みなら その辺りに詳しい現地民…八欲王とは浅からぬ因縁の持ち主、ツアーなら色々と知っているかも?…という事で、アーグランド評議国に引き籠っている竜王に聞いてみる事にした。

 

 

◆まろんside・了◆

 

▼▼▼

 

◆ツアーside◆

アインズから"すまほ"で連絡を受けた。

曰く、エリュエンティウについて、色々と聞きたい事が有るそうだ。

また、えらく急だなぁ。何が有った?

そういう訳で また、仮初めの身体として、竜鎧を魔導国に向かわせる事に。

 

≫≫≫

アインズに、『エリュエンティウ関連なら もう1人、連れてきて良いか?』と尋ねると、問題無いと言われたので、そっち系の事情に詳しい知り合いにも、魔導国に付いて来てもらった。

首都エ・ランテルの中心部に聳え立つ魔導王城。

出迎えてくれた執事さん(絶対に凄い強い)に案内され、()()と一緒に会議室の様な部屋に。

其処にはアインズの他に まろんと…幼女?

しかし、その小さな体から感じられる力は只者じゃないのが解る。

間違い無く、この子も ぷれいやーだ。

それと、アインズのシモベの女悪魔。

 

「おや? ツアー氏の お連れとは、やはり貴女でしたか。」

「ああ、アンタとは この前振りだねぇ。」

そして、もう1人。やはりアインズのシモベの、眼鏡の悪魔が。

彼と彼女は1度、私の住み家で顔を会わせているので話が早い。

 

「そちらの悪魔さん以外は、初めましてだね。

名乗らせて貰うよ。私はリグリット・ベルスー・カウラウ。

昔々、十三英雄と呼ばれた事もある。

…それは この中身からっぽ鎧(すっからかん)も、だがな。」

「「「「「……!!」」」」」

"十三英雄"という言葉に、皆が鋭い眼で此方を見てきた。

…って、言い方ぁっ!?

リグリット、お前は まだ、根に持っているのか?

本当に いい加減、勘弁してくれよ…orz

 

 

◆ツアーside・了◆

 

≫≫≫

 

◆リグリットside◆

「ほう…結界を壊さなかったのは、正解だったね。

エリュエンティウには、八欲王の従属神が まだ住んでいるんだよ。…魔神化してね。」

「「「……!?」」」

ふむ。『魔神』の言葉に、この場の者の目付きが変わったか。

 

「魔神とは、アレの事だな。六大神のNPC。」

「主である六大神が死に、それに絶望して自我を捨てて、モンスターの様に世界を荒らし回ったと云う…」

「そう、十三英雄(わたしたち)の伝承に有る、()()さね。

そしてエリュエンティウにも、八欲王の えぬぴーしー?…従属神の事で良いんじゃよな?

連中が恐らくは同じ様な理由で、魔神化してるんじゃよ。

そうさね。数にして約30…位かねぇ。

幸いなのは、浮遊都市の結界の お陰で、奴等も外に出れない事だね。

…でなきゃ、この世界は疾うの昔に滅んでいるよ。」

「…えらく、詳しいな。」

「如何にアナタが、十三英雄の1人だったとしても…だ。」

「…まるで結界をすり抜けて、中の様子を見た事が有る様な、そんな口振りですね?」

「どういう事かしら?」

「………………………………。」

ほう? 中々に鋭いね。

黒髪赤眼の男…コイツが最近 何かと有名な、マカロン・シング・サガだね?

それに金髪の嬢ちゃん、そして眼鏡の悪魔に女悪魔が、私がエリュエンティウについて少し話すと、それを()()()()()()()()()()方に喰い付いてきた。

骸骨(アンデッド)…魔導王は何も言わず、か。

 

「ああ。アンタの言う通りさ。

仲間の1人に、結界の一部に、一時的に穴を空ける事が出来たヤツが居てね。

それで何度か、エリュエンティウに入っては、有用なアイテムを拝借してたんだよ。」

 

ガタッ!

 

「何?! 八欲王のアイテムだと!?」

あ、魔導王が喰い付いた。

 

 

◆リグリットside・了◆

 

≫≫≫

 

◆デミウルゴスside◆ 

…ふむ。

とりあえずはアインズ様が望んでいらっしゃる、静かな日常の為には、その八欲王の魔神(シモベ)とやらは、排除が必須。

今は結界の中に閉じ込められているとしても、それが何時迄も…という確証は無いですからね。

そして それは、浮遊都市の結界の中で完遂する必要が有る。

その為には、結界を壊すでなく、このリグリットやツアーが…正確には、当時の仲間とやらが そうした様に、先ずは結界を通り抜けなければならない…と。

 

「リグリット、ツアー。

アナタ達は、結界を通り抜けという者のチカラについて、心当たりは無いのですか?」

「うむ。例えば()()()が ぷれいやーだったとかなら、直ぐに納得も往ったのだがねぇ。」

「リーダー、普通に両親が居たからな。」

ほう? リーダー…ですか。

 

「アナタ達を纏めていたのです。

余程の実力者だったのでしょうね。」

「そうだねぇ。確かに、アイツは強かった…強くなった。」

「最初は我等の中で誰よりも弱かったのに、驚異的なスピードで成長して、何時の間にか誰よりも強くなっていた。

気付けば、我等の先頭に立っていた。」

私はアナタ達の昔話には興味有りませんが…それでも今の台詞の中、興味深い言葉が有りましたね。

…成る程、そういう事ですか?

まだ、仮説の域を越えていませんがね。

 

≫≫≫

「…と、いうのが、私めの考えに御座います。」

「成る程。確かに それなら結界を越えたり、中のシモベが襲ってこないのも、辻褄が合う。」

「実際、それが正解じゃないか?」

アインズ様、まろん殿、谷屋殿は、私が説く仮説に納得、賛同して下さりました。

件のリーダーなる人間…その者は、八欲王の血を継ぐ者。

それが、私の仮説。

八欲王の血が、浮遊都市の結界をすり抜け、中のシモベ達も それに気付いたからこそ、己の主の血筋に攻撃する事も無い。

仕舞われている稀少アイテムの持ち出しにも、何の文句も言わない。

 

「確かに。その発想は、無かったねぇ。」

「言われてみれば…だな。

私達は単に、タレントで片付けていたからな。」

竜王とリグリットなる人間も、私の説を推してくれるみたいですね。

 

「しかし それじゃ、もう手詰まりだね。

既に八欲王は滅び、今は その血も途絶えている。

…そうだよな、ツアー?」

「……………………………………。」

何か、含み有る発言ですが、今は関係無いですね。

 

「いや、八欲王の血なら、まだ残っている。

しかも2親等(マゴ)と云う、かなり濃い血筋がな。」

「「あ…」」

「それじゃ、第5階層(コキュートスん処)に行くか。」

さすアイ! さすまろ!

初めの少しを話しただけで、全てを理解…いえ、私が頭に描いている、更に先を見据えておられる!

ツアーとリグリットも、以前に少し話をした、()()の存在を思い出したみたいですね。

 

「…の、その前にツアー、1つ、聞いて良いか?」

「…何かな?」

…その様な訳で、第5階層へと足を運ぼうとした時に、まろん殿が竜王を呼び止めます。

  

「お前…以前にロクとかハチとかジュウサンとか話した時に、自分が十三英雄の1人だったとか、言わなかったな?

…それは、何故だ?」

「うっ!?」

「ついでに、コッチの婆さん…他にも まだ、十三英雄の生き残りが居るとかもな…!」

「ぅううっ?!」

「もっと ついでに言えば、その時に八欲絡みで浮遊都市…結界とか魔神とかの事も詳しく話してくれていたら、今回の調査は ぶっちゃけ必要無し。

いきなり本番(ガチ)なメンバー編成で、終らせていたかも知れないんだぞ?」

「確かに、まろんサンの言う通りかもな。」

「うっうっうっ?!!」

まろん殿の問い詰めに、アインズ様も同調。

完全に竜王は言葉に詰まっています。

 

「さぁ、どういう事か、説明して貰おうか。

場合によっては本体(オマエ)の所にモモンガさんと、ついでに谷屋、更にはマサトやシャババさんも一緒に凸する事になる。」

「………………!!!!?」

 

ガバッ…!

 

「待って下さい!

話を聞いて下さぁーい!!」

 




え? まろんvsスパイクは、どうなったと?
そんなの勿論、キンクリですよ(笑)。
決着? スパイクのモデルは尖角(るろ剣)。
つまり、床に突き刺さり易い骨格(あたま)してますから…まぁ、察して下さいw
 
≫≫≫
然り気に公表、マカロンの(現地)フルネーム。
因みにユリは、ユリ・アルファ・サガ。
元は まろんの本名(リアル・ネーム)瑳峨(さが)久利(ひさとし)から。
 
≫≫≫
十三英雄のリーダーは、ブレイヤー説が一般的ですが、この小説では八欲王の子孫という設定にしていきます。
考察では蘇生復活(…に伴いレベルダウン)&改心した、八欲王本人説とかも有りましたが…
  
≫≫≫
 
【前話の補足】
谷屋ちゃんの魔力は、モモンガさんと同等。
ついでに まろんの魔力は、フールーダと同等やや上と思って下さい。
つまり、アルシェちゃんは まろんの魔力を視ても、「凄っ!?何これ?(すっご)?!」…な程度で済んでいたのです。
 
 
ま「さあ、そういう訳で、このビニール袋(真空パック処理)に入ったアルシェの■■、銀貨10枚からスタートだ!」
谷「…お前は何をやっているのだ?」
 
 
▼▼▼
 
【次回予告】
 
◆???side◆
あら~…モモンガさんと まろん、マジに怒ってるな~。
まぁ、それも仕方無いかな?
この2人、普段から報連相を大切にしていたからね、解ります。
さ・て、それで、ツアーだったっけ?…どうする?
こうなったら姉ちゃん位にしか、あの2人は鎮められないぞ?
…って、え?
『あの部屋』、使うんですか?
確かに そっちの世界、クソ運営の管轄からは外れてるだろうけど、マジ?
あの部屋を創った俺が言うのもアレだけど、アナタ達の血は、何色ですか?
 
次回『ツアー、竜生(じんせい)最大の危機!(予定)』
乞う御期待! ツアー…どんまい!
それから…アルシェちゃんの■■に、白金貨300枚!
 


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ツアー、竜生(じんせい)最大の危機!

 



 

「待って下さい!

話を聞いて下さぁーい!!」

 

◆リグリットside◆

くっくく…

長生きは、してみるもんだねぇ。

まさかツアーの、全身全霊全力の土下座を見る事が出来るなんてね。

 

「よし、分かった。

それじゃ、OHANASHIするか。」

「字っ! 何か、字が違うっ!?」

凄く悪い顔をしたマカロン…魔導王からは『まろん』と言われていたが、そっちが本名かねぇ?

魔導王も確か、アインズという名はツアーや配下の悪魔は その名で呼んでいたが、マカロンや そっちの嬢ちゃんは『モモンガ』…。

余程、親しい者だけが許された…所謂"真名"みたいなもんかい?

だったら私は、普通に知れた方の名で呼ぶ方が、無難だろうね。

 

≫≫≫

「何と言うか…十三英雄を名乗って、『俺EREEE!』してやがるとか思われるのが、嫌でした…」

正座して…目の錯覚かい?…何だか鎧が少し縮んでる感じなツアーが、力弱く小さな声で話す。

 

「どちらにしても…この世界を調べていく内に、判る真実だったと思うがな。」

「ハィ…スイマセン…」

「全く…お前が最初に きちんと話していたら、アルシェが大変な事にならずに済んだし、ナントカって野郎の ちん〇(タイツ越し)を見て、アルシェ、ニニャ、蒼薔薇リーダーが ぶっ倒れる事も無かったし、

「スパイクな。」

「そう、そのスパイクが犬神家になったりとか、無駄な被害者犠牲者が出る事も無かったんだ。」

「犬神家にしたのは、お前だけどな。」

犬神家…意味は解らんが、兎に角 大事だったんだろうねぇ。

そしてラキュース…お前さん、まだ おぼ〇なのかい?

インベルンの嬢ちゃんは、平気だったのかねえ?

 

「そして、何より!」

まだ、何か有るのかい?

 

「お陰で俺は2日間、ユリたん♡と離れ離れになったんだからな!

どうしてくれるんだ?! この罪、ダイフンボよりも重いぞ!」

…いや、それは私情だろ。

 

「いや、それって私は

あ゙!?

「す、すいません…(何でもないです(泣))

「まろんサン、とりあえずは その辺で。

先に第5階層に行きましょう。」

「分かりました。…仕方無い、続きは後だ。」

「まだ続くのかい?!」

 

 

◆リグリットside・了◆

 

≫≫≫

 

◆モモンガside◆

「アインズ様まろん殿谷屋殿…ト、客人。ヨウコソ、我ガ第5階層ヘ。」

第5階層に到着。

見渡す限り白銀の、凍てつく氷河。

吹き荒ぶ吹雪が壁の如く、迷路を作っているかの階層。

上位レベルの者は関係無く直線突破が出来るが、レベルの低い者だと、その風の隙間の安全な道を通らないと、進む事は まず不可能。

それでも その場に居るだけで、冷属性ダメージを普通に負ってしまう領域(エリア)だ。

あの老婆…リグリットには少しキツいと判断して、彼女は弟6階層で待機して貰う事に。

今頃は、元奴隷のエルフ3人娘に接待されているだろう。

そして俺、まろんサン、谷屋さん、そしてツアーはコキュートスに案内され、氷結牢獄の一室に。

 

≫≫≫

「…あら? 何しに来たのかしら?

もしかして奥さんに飽きて、私で性欲処理に?

ふふ…子作りの過程をちゃんとしてくれれば、途中だろうが後だろうが、好きにして構わないわよ?」

「…モモンガさん、殺して善いな?」

「ま、まろんサン、ストップ、ストォーップ!」

其処に居たのは、スレイン法国の生き残り、漆黒聖典番外席次…通称・絶死絶命。

スレイン法国の聖地にて、まろんサンと対峙。

戦闘の末に半殺しとなった彼女は、『何か使い道が有るかも知れない』として殺す事無く、この牢獄に閉じ込めていたのだ。

彼女も俺達との実力差は理解したらしく、逆らう気配はなかったので、氷漬けにする事無く、普通に投獄しただけだった。

余談だが、最初に此処に連れてきた時は、コキュートスにも子作りを迫ったりしたとか。

いや、もう強ければ種族とか、何でも良い訳?

そして今は、また まろんサンに言い寄り。

しかし、その誘い文句は余りにもアウト過ぎた。

ユリ一筋な まろんサンが ぶちギレ、両拳に《内部爆散(インプロージョン)》の魔力を溜め始めた!

 

「どいてくれモモンガさん! そいつ殺せない!」

「落ち着いて下さい!

コキュートス! まろんサンを押さえろ!

ツアー!…谷屋さんも笑ってないで、止めるの手伝って下さいよ!」

アナタは父娘共々に、北●神拳(あべし たわば ひでぶ)する気ですか?!

 

≫≫≫

「痛ひ…(TДT)」

拳骨1発(それくらい)で済んで、有り難いと思え!

この絶死絶命を凹ませ、漸く本題に。

 

「へぇ?…つまりは、私に流れる糞親父…いや、糞爺の血を欲してる訳なんだ?」

隠す事無く、ストレートに事情を話す。

八欲王の血筋の この娘が居たら、浮遊都市の結界も抜けられると考えたのだ。

 

「…別に、良いけど?」

それに対して、この絶死絶命は意外にも?浮遊都市への同行に応じてくれた。

 

「それは、助かる。

それでは その対価として、我々に仇成す行動を取らないと誓うならば、この牢から出し、今後は自由の身とする事を約束しよう。」

とりあえず、エルフの国にでも紹介するか?

あのデケム(エロフ)の娘な上に、元・法国所属というのが少し気になるが、まぁ為る様に成るだろう。

 

「それも良いけど…それとは別に…♡」

「娘! アインズ様ノ情ケニ、更ナル対価ヲ求メルト言ウカ!?」

「待て、コキュートス。」

しかし、これに追加の報酬を求めてきた絶死絶命にコキュートスが憤慨するが、まろんサンが これを制止。

 

「おい、ギリギリBカップ。お前が何を要求してくるかは、大方は読める。」

「だ、誰が、ギリギリBだ!?」

まろんサンの眼は、純正で胸囲計測機(スカウター)完備です。

因みに俺も、ナニを望んでいるかの想像は付いている。

 

「俺は、ユリたん♡がいるから応えられないが、良いぜ。最強に強いヤツ、紹介してやるよ。」

「本当か?」

やっぱりね…って、まろんサン、本当ですか?

…って誰を? ま、まさか、マーレはダメですよ!?

 

 

◆モモンガside・了◆

 

▼▼▼

 

◆まろんside◆

「そんな訳で本体(ツアー)、ちょっとナザリックまで来いや。」

「私かい!?」

そんな訳で、評議国の地下神殿に居るツアー本体の処に、助っ人数人と一緒に押し掛けてみた。

あの絶乳(ぜっち)絶乳(ぜつにゅう)のリクエストは、『強者との子作り』。

ですよねー。知ってました。

そういう訳で その御相手として、この竜王を抜擢してみたのだ。

実力的に、彼女も不満は無い筈だ。

これで十三英雄の事を黙っていたのは、チャラにしてやるよ。

 

「私が不満だらけだよ!

私をあの七彩(へんたい)と、同類にさせる心算か!?」

「ドラちゃん(の先祖)の例も有るし、ドラゴンと人間種での交配が可能なのは証明済みだ。何の問題も無い。

大丈夫。たっちさんには、俺とモモンガさんが説得する。」

「いや、聞けよ! 有り過ぎるわ! それと、誰だよ?!」

「…喧しいDTドラゴンだな。」

「ど、どどど、DT違うし!?」

はいはい。皆、そう言うんだよね。

ニンブル君も、そうだったよ。

 

「私としては、素直に付いて来て貰った方が、嬉しいのだが。

さもないと、まろんサンが狂行に走る事になる。」

「…!?」

助っ人その①、モモンガさん。

 

「あ、あの…僕も、大人しく付いて来た方が、良いと、思います。」

「……………っ?!」

助っ人その②、マーレ(傾城傾国:蒼地紅龍ver.装備)。

 

「シャバババ! 竜王よ、私も素直に応じるのを勧めるぞ?」

「俺も、そう思うな~?♡」

「竜王…諦めろ。」

「…!」

助っ人その③④⑤、シャババさんとマサトと谷屋。

 

「さあ、どうする?

幾ら お前でも、プレイヤー…しかも戦闘に特化した5人を一度に相手にするのは無理だろう?」

更にはマーレの強制洗脳も有るぜ?

 

「鬼! 悪魔! ぷれいやー!!」

 

≫≫≫

はい、ナザリックに戻って来ました。

現在は、第2階層に在る転移罠(トラップ)部屋の1つ、『ΧΧΧしないと出られない部屋』に来ている。

ああ、出入口(とびら)は まだ、開けてるぞ。

 

「しかし、よく こんな部屋、クソ運営のチェックに引っ掛からなかったな。

誰が創ったんだ? ペロロンチーノか? るし★ふぁーか?」

「その2人の共同製作です。

それと この部屋、『設定』と言うか、作るだけならセーフだった様ですね。」

成る程ね。因みに この部屋、一応は複数の抜け道が有るらしいが。

例えば、

 

・同性だけなら、3時間後には自動解放される(ナザリックからは出られない)

・実は、この部屋からのログアウトは可能(再ログインは自身の拠点(ホーム)や転移登録をしている場所等を選択出来る)

・閉じ込められた者同士、その場でPVP(●し合い)して、敗者のみ強制ログアウト(デスペナは付与される)、勝者は同性だけの時と同じく、3時間後に解放される

 

…等々。

 

「因みに、脱出する為に、本当にΧΧΧしようとした男女(プレイヤー)が、過去に1組だけ居ましてね。」

「…一応 聞くが、どうなった?」

「始めようとした直後、運営にBANされましたか? 部屋から消えちゃいましたね。」

そんな気は していたよ!

AOG(アインズ・ウール・ゴウン)、本当にDQN(最低最悪)ギルドだな!

…兎に角、そういう部屋だ。

既に この世界はゲーム(ユグドラシル)の外。

クソ運営の介入も無ければ、当然ログアウトなんかも不可能。

●し合いは別として、閉じ込められたら本当にΧΧΧするしか、脱出 出来ない仕様になっている。

…って、こんな部屋が有るなら、モモンガさんとアルベドの初めての時、この部屋に ぶち込めば良かったじゃない。

 

「うぅ…(T_T)」

「♪♪♪♡」

そして、この部屋の主役となる2人、ツアーと絶死ちゃん。

人間形態が蒼い長髪なイケメン少年なツアー(ん100年生きている竜王も、人間基準なら まだまだ若い様だ)に、絶死ちゃん御機嫌。

勿論 彼女には、ツアーの素性は教えている。

まあ、ツアーも良かったじゃないか。

絶死ちゃん、普通に美少女にカテゴリされてるぜ? 胸は無いけど

そんな娘相手に筆下ろし出来るんだから、お前も幸せ、Win-Winじゃん?

 

「ちょっと待て、考え直しては くれないか?」

「大丈夫。お前の塒に保管されている八欲王のギルド武器なら、今はシャババさんが護っているから安心しろ。」

「違う! そうじゃない!…そっちも心配だけど!」

「大丈夫。絶死ちゃんも実践経験は無いけど、ウ・スイホ・ンとかで、知識の方はバッチシらしいから。

彼女に全部 任せて、お前は天井の染みでも数えてろって。」

「♪♪♪♡」

「いや、聞けよ!?

マジ、私が悪かった! 十三英雄だったり、エリュエンテゥの事を黙ってたのは謝るから!

アインズ! 君からも、何とか言ってくれないk

「すまない…まろんサン、怖いから。」

「ですよねー! 知ってた!」

それじゃ、ごゆっくり…♡

 

「ちょ…待…?」

 

パタン…

  




ツアー人間形態…真・メガ転Ⅴの主人公のイメージで
 
≫≫≫
 
【次回予告】
 
◆谷屋side◆
エリュエンテゥ再び。
結界を抜け、浮遊都市に降りた私達の目の前に、八欲王のNPC(シモベ)が現れた。
()()が同行しているからか、私達を敵とは認識していない様だが…
 
次回『エリュエンテゥ②(予定)』
乞う御期待だ!…モモンガ君、アイテム漁りは後にしような?
 


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ヤっちまったヤツ等②

 


◆まろんside◆

 

カチャリ…

 

ツアーと絶死絶命を閉じ込めた、『XXXしないと出られない部屋』の扉の鍵が解かれた音がした。

つまり2人は、致したという事だ。

時間にして約20分。

まぁ、ヤるだけなら20分も有りゃ十分な話。

だから俺達(俺、モモンガさん、セバス、ルプスレギナ、ソリュシャン)は扉が開かれ、見事カップリング成立?した2人が出てくるのを待っているのだが…

 

≫≫≫

「…………………………。

出て、来ないっスね?」

「どういう事なのでしょうか?」

…しかし、どういう訳か、何時まで経ってもツアー達は部屋から出てこない。

因みに この部屋、例え解錠しているとしても、内側からしか扉は開けないという良心設定だ。

 

「ん、これは多分アレだ…つまり、」

「「「「つまり?」」」」

何かに気付いたモモンガさんに、皆が注目する。

 

「2人共にか、片方だけかは判らんが、1度だけじゃ飽き足らず、未だ盛っているという訳だ。」

「「「「あー…」」」」

モモンガさん、正解(多分)。

恐らくは絶死絶命。

あの娘の目的は、あくまで孕む事だ。

それが1回ヤっただけでHitするとは限らない。

それこそ自分が納得する迄、ツアーから搾り尽くそうとしているんだろう。

ツアー、合掌。(-人-)南無南無南無。

 

「しかし、そんな何時 出てこられるか分からないとなると…」

「残念ですが、解散ですわね。」

「…スね~?」

ちぃ、折角モモンガさんが宝物殿で見付けたっていうクラッカーを皆で持って、スタンバっていたのに!

2人が出てきた瞬間、

 

 

 

「「「「「おめでとー!」

         う御座います。」」

         う。」

         っス!」

 

パンパンパパパン!パパパパンパパン!

 

 

 

…って、盛大に 弄って 祝ってやろうと思っていたのに!

しかし何時 出てくるかも分からないのをずっと待ち続けられる程、皆 ヒマじゃない。

この人数、20分も待機出来るメンバーが揃ったのが奇跡なのだ。

しかし今の状況、恐らくは覚えたての お猿さんとなった2人による、24時間耐久S●Xなんかに突入しかねない。

残念だがソリュシャンの言う通り、此の場は解散となった。

 

「それでは そのクラッカーは また、宝物殿に仕舞っておこう。」

 

 

◆まろんside・了◆

 

≫≫≫

 

◆モモンガside◆

浮遊都市エリュエンテゥの魔神(NPC)

杞憂かも知れないが、もしも浮遊都市の結界が解かれ、それ等が30体も世界に放たれたら、世は大混乱必至だ。

世界に愛着が有る訳では無いが…俺が治める事になった この魔導国や、ジルやドラウ、友人達の国が滅ぶのは勿論、ダメージを負ったりするのは、思う部分が有るな…それは俺が望んでいる、平和な日常からは かけ離れるからな。

対処出来るなら可能な限り、早急に対処しておく必要は有る。

 

「モモンガさんて、アレだよね。

7月31日には宿題 全部、終わらせてるタイプ。

楽をする為なら、どんな苦労も厭わない。」

まろんサンは8月29日頃に、机の上の山積みの問題集(しゅくだい)の前に、頭を抱え込むタイプです。

…話を戻す。

兎に角、何の用意も策も無く、敵地に攻め入るのは愚の骨頂。

敵を知り、己を知れば、ナントヤラ…それがAOG(アインズ・ウール・ゴウン)流だ。

ツアーやリグリットも、浮遊都市の全てを歩き尽くしている訳では無く、全ての情報を得るのは不可能。

そして何より、その都市の魔神…

八欲王のNPCが、どの位のレベルか…だ。

200年前、ツアー達が十三英雄として倒した魔神は、その話を聞く限りでは、大した強さでは無い。

十三英雄はリグリットを参考基準として、平均レベルが高く見積もっても約40位。

ツアーが100で? リーダーとやらは推定でレベル50程度。

そんな十三英雄が、大苦戦の末に倒せたというレベルだ(ツアーは多分 舐めプ)。

恐らくだが、その時の魔神のレベルは60前後。

仮にレベル100…カンストしていたなら、ツアー以外は全滅していただろう。

そのレベルも、魔神化に伴い、戦闘面等がアップしているのか、それとも単に自我を無くて暴走しただけ、レベルは据え置きなのか…

先ずは、素のレベルの話。

NPC(シモベ)にガチな強さを設定して創ったのは、知っている限りではAOG(ウチ)と、後は一部の拘りギルドやプレイヤー位。

少なくとも六大神は、まろんサンの友人(フレンド)のスルシャーナが創ったという あの天使、それと俺が聖地で対峙した悪魔(コキュートスが倒した)以外は、其処迄チカラを入れて製作していたとは思えない。

だから、八欲王のNPCも、十三英雄が倒せる程度なレベルなら…いや、そんな御都合主義な緩い展開を考えるな。

もしかして あの【1500人大進攻】で返り討ちにされた、或いは その動画に映ったナザリックのシモベ達の影響を受け、ガチなNPCを創ったプレイヤーが居ても不思議じゃない。

事実、AOG(オレたち)憎しとは別腹で、シャルティアにアウラ、マーレには非公式のファンクラブが出来た位だからな。

尤も それは、ペロロンチーノさんと ぶくぶく茶釜さん(…&たっちさん)によって、悉く潰されたが。

そして、魔神化の きっかけ。

自分達の主の全てが死んだ事からの絶望感からとされているが、他の要因も有ると考えるべきだ。

元のレベルか? 種族か? 忠誠値か? カルマ値か?

あの天使や悪魔が偶々 正気を保てた例外なんて、安直な考えは無し。

事態は常に最悪、その斜め上を想定しなければ。

 

 

◆モモンガside・了◆

  

≫≫≫

 

◆モモンガside(再び)◆

やった! やりやがった!

まろんサンが、やりやがった!

正確には やらかしたのは、リ・エスティーゼ王国の貴族だが。

王国に文官補助としてレンタル派遣していた死者の大魔法使い(エルダー・リッチ)を介して、ザナック王から連絡が有ったのだ。

 

アインズ様…まろん様が、王国貴族を1人、半殺し(フルボッコ)にされました。

 

王国王都に お忍びデートしていた まろんサンとユリ。

魔導国公爵夫妻と思わせない、凄く普通な一般ピープル、平民な服装だった2人。

そんなユリを見て、王国のバカ貴族が『貴族様EREEEEE!』をやりやがったのだ。

はい。まろんサンに、『その女 気に入った。儂の妾にしてやるから寄越せ』みたいな事を言ってきたらしいのだ。

王国…まだ そんなバカ貴族が居たのか…

まろんサンは勿論ブチギレ。

その場、大勢の観衆の前での大立回り。

その貴族の護衛共々に、フクロにしてしまったのだ。

 

 

『排球拳、イクわよー! はぁ~ぃ!♡

 

 

…ん、その光景が、普通に想像出来る。

まぁ、北斗●拳やアロガント⇒神威やらで、殺らなかっただけ有情だ。

そして その騒ぎを聞き付け、駆け付けてきた兵士に対しては特に逆らう事も無く、大人しく兵士詰所に移動。

其処での問い詰めの結果、騒ぎの主が魔導国のマカロン公爵と知り、その兵士達、そして連絡を受けたザナック王(…ついでにバカ貴族)は、顔を青くして、俺に報せてきた訳だ。

 

さー、たいへんだー。

おうこくきぞくが まどうこくこうしゃくに、とくだいの ぶれいをはたらいたぞー。

おれ しーらない。

 

まろんサン…エリュエンテゥの件が後に控えてるんですから、余り話を拗らせないで下さいね?

 

 

◆モモンガside・了◆

 

▼▼▼

 

◆ザナックside◆

バカか? バカなのか?! いや、疑う迄も無くバカだろう このバカ!!

我が国の貴族(バカ)が選りにも選って、魔導国のマカロン公爵に対して、特大の無礼をしでかした!

マカロン殿は此の度、奥方と お忍びで王国に観光に訪れていたそうだが、その公爵夫人を見初め、貴族としての強権を振るって手籠めにしようとしたバカが出たのだ!

それを聞いた私は、それまで やっていた書類仕事を放り投げ、騎士団長ガゼフと共に、マカロン殿が居るという兵士詰所に馬車を走らせた。

 

≫≫≫

「此の度は、我が国の愚か者が、本当に申し訳無い事をした!」

 

ガバッ…!

 

「「「「「お、王??!」」」」」

「…………………………………。」

土下座。とりあえず、土下座だ。

マカロン殿と顔を会わせると同時、両膝両掌そして顔面を床に着け、誠心誠意の謝罪。

その様に、ガゼフや兵達が驚きの声を出す。

当然だ。本来なら、王族のする行為等では無い。

しかし今回は、そんな事を言っている場合でも無い!

相手が最悪過ぎる!

王国ではガゼフは一騎当千の戦士と言われているが、この目の前の男は、そのガゼフが1000人居ても、太刀打ち出来ないチカラを持つと言われている。

あの裁判の時に見せた、魔導王に対する『下に就けども従わず』な振る舞いからして、過言では無いのだろう。

そう、この男1人で、我が国を滅ぼせるのだ。

だからこそ、今は精一杯の謝罪を見せた上で、この男の器量(うつわ)に賭けるしか無い。

 

「ザナック王。顔を上げてくれないか。

一国の王が、他国の者にする行為では無い。」

賭けには…勝ったのか?

マカロン殿に言われる儘、立ち上がり、

「…すまない。」

 

ペコリ…

 

もう1度、改めて小さく頭を下げる。

 

「既に魔導王にも伝えているが、俺は この件を国同士の大きな問題にしようとは思っていない。」

「そ…それは、我々からすれば、非常に有り難い話なのだが…

何か、その為の条件が有るのだろう?」

都合の良い話だ。だからこそ、その裏に有る何かを尋ねてみる。

 

「バハルス皇帝からリ・エスティーゼの新しい王は、普通に優秀と聞かされていたが、嘘でも無い様だ。

…俺が要求するのは、()()だよ。」

クィ…と、振り向く事無く、右親指を後ろに指す。

 

「へ…陛下ぁ…」

その先には、私以上に体を丸々と肥らせた男が、椅子に縛られていた。

報告は受けていたが、相当に殴られ蹴られたのだろう。

風船の様に腫れ上がった顔は、目元は殆んど塞がれている。

 

「この、馬鹿者が…貴様は何を、やっているのだ…」

「も、申し訳有りません、まさか、此方の御方が、魔導国の公爵様だったとは思わz

「そういう問題では無いっ!

我が国では例え貴族で在ろうと、理由も無く民に横暴、無体な真似を取るのは禁じた筈だ!!」

「ヒィッ?!」

他国から、『世界の癌』と謂わしめた、腐敗体制。

私の政権の下、先代(ちちうえ)が執っていた、その生温い体制は打ち壊した心算だった。

新しい国を作る為、恥を忍び、魔導王やバハルス皇帝にも、国政に対する助言を求めた。

そして先ずは、貴族の勘違いしたかの横暴を律する様にしていたが、未だ、この様な愚行に走る馬鹿者が居たとは。

そして この馬鹿は言い訳をするが、その論点が、そもそも違う。

私は『誰に』で無く、『何を』したのかと聞いていたのだ。

ついでに言えば『誰に』の面でも、相手が如何に身分を隠していたとは云え、『魔導国公爵だとは思わなかった、知らなかった』が通用する筈も無い。

……………………………………。

どうせ、このマカロン殿の奥方の容姿…その顔立ちや西瓜…コホン、胸元等を見て、善からぬ事を思い付いき、そして それを貴族(じぶん)の権威でゴリ押そうとしたのだろう。

それが、今回は その権威が通じない相手だった…と。

 

「貴様、今回が初めてでは無いな?…ガゼフ!」

「はっ! 直ちに この者の身辺調査を開始します!」

「待てよ、無能(ガゼフ・ストノローフ)。そんな面倒な事をせずも、今この場で直接 聞けば早いだろう?

何、4~5000発もボコれば、正直に全て吐き出すだろうさ。…今なら無償で手伝うぜ?」

「ヒェッ!?」

「「……………………………。」」

 

 

◆ザナックside・了◆

 

≫≫≫

 

◆まろんside◆

俺の威しが効いたか、このクズは あっさりと色々と話してくれた。

少なくともポッチャリ王子(アレでも痩せたらしい)が王の座に就いた後も数件、今回の様な事をしでかしていた様だ。

 

「リ・エスティーゼ王。俺としては、このクズの首を此処で斬り落とせばば それで良いと思っていたが、そんな簡単な話には ならなくなったな。」

「理解が早いのは助かる。…そして、重ね重ね すまない。」

俺的には、本当に このクズを直ぐに殺せば それで良い心算だった。

別に御家取り潰しは勿論、王国相手に戦争(ケンカ)等は考えていなかった。

…が、やはり王としては、それでは済まないのだろう。

被害者となった娘さんの身の確保や、その家に対する賠償等をしなくては。

それ等は このクズの財産から埋め合わせすれば、それで良いだけだが。

 

「私も まだ、随分と舐められている様だ。

この者だけでは無い。他の貴族達も、表から裏から、調べていく必要が有るな。

マカロン公爵。この愚か者の首を落とすのは、今しばらく待って貰えないか?

近日に、必ず咎人として、処すのを王として約束する。」

仕方無いな。王様は大変だ。

本当は俺自身の手で殺したかったが、今回は理解・納得するよ。

 

 

◆まろんside・了◆

 

▼▼▼

 

◆モモンガside◆

王国での騒ぎは、まろんサンとザナックの間で落ち着いたそうだ。

ザナックの魔導国の者だろうが遠慮無しな、毅然な対応、それに対して まろんサンも傲慢増長する事無しな、大人の受け応えで事は終わったとか。

これで中途半端に話を引き摺る事無く、エリュエンテゥの件に、話を持っていける。 

 

 

 

 

 

≫≫≫

だがしかし…!

 

 

◆モモンガside・了◆

 

▼▼▼

 

◆まろんside◆

「まだ…なんですか?」

「…です。」

例の部屋に閉じ込めていた、絶死絶命とツアー。

ヤるべき事はヤったので、既に扉の鍵は解除され、何時でも外に出られる状態だ。

だがしかし!…2人は何時まで経っても出てくる気配が無い。

因みに今、この場に居るのは俺とモモンガさんだけだ。

も1つ因みに、今回は この前のクラッカーは用意していない。

2人でパンパンしても、イマイチ盛り上がらないでしょ?

せめて、賑やか担当(ルプスレギナ)が居たら また、話は変わるだろうけど、アイツは今、カルネ村に行ってるからなぁ。

 

「…出てきませんね。」

「…ですね。」

そして今。未だに扉は開かれず。

前回の時、モモンガさんが予想していたが、もしかして まだ、盛っているのか?

あれから もう、3日経っているんですけど!?

…ツアー、大丈夫か? 干からびてないか?!

モモンガさんが言うには、この部屋はベッドは当然として、バス・トイレ・空調完備。

ついでに多量の食料品も勿論の事、御丁寧にオール電化キッチンも備えているとか。

つまりは居ようと思えば、結構な日数 お泊まり出来る。

更に ついでに、室内にて様々なプレイ…ある程度はマニアックなプレイも対応出来る様に、色々な小道具や媚薬(ポーション)も置いている。

流石はエロの権化ペロロンチーノ、その辺りの拘りはバッチリだ。

…但し、コンビニやドラッグストアの商品棚にて、絆創膏が置かれている その隣に、目立たない様に然り気に置いてある…こういう施設には必ず常備されている…アレは、用意していないらしい。

まあ、ユグドラシルに於いてはゲームの中の話だから、ハッキリ言って意味は無いよな。

しかも今回は仮に有ったとしても、絶死絶命の目的からすれば、絶対に使う事は無いだろうが。

そして部屋内は完全防音仕様。しかも遠隔視の鏡(ミラー・オブ・リモート・ビューイング)も遮断してしまい、中の様子を探る事は不可能。

これは あくまでも、罠に引っ掛けた者にХХХさせるのが目的で有り、()()を覗くのが目的では無いという、るし★ふぁーの拘りだそうだ。

あのDQN天使、大浴場の監視役(ゴーレム)と云い、妙な部分で真面目だからなぁ。

…でも この部屋、ヤろうとした瞬間に、クソ運営にBANされるのは、想定外だったんだよな?

 

「……………………い…」

…って、モモンガさん?

 

ブチィッ!

 

「何時までヤってたら、気が済むんだ固羅ァッ!?

いい加減 出てこいや、ワぁレェっ!!」

 

どっかぁーーーーーーっん!!!!

 

余りの盛りっ振り?に、モモンガさんがキレた?!

扉…の直ぐ脇の壁に、《大爆裂(メガ・エクスプロージョン)》を炸裂させたぁ!?

いや、コレは仕方無いか?

確かに初日は、()()して、その余りの未経験な気持ち良さに お猿さんになるのは解る。

俺も現実世界(リアル)では、似た様なもんだった。

2日目も、『まぁ…ね。』で済ましていた。

しかし、流石に3日目となると、モモンガさんもキレる!

そして破壊された壁…開かれた大穴を潜り、俺達が目にした光景は…

 

「「うわぁ…」」

 




【今回のオマケ】
 
…とある、ユグドラシルでの会話。
 
▼▼▼
『え? アレって、コンビニにも置いてあるんですか?』
『薬局しかないイメージが…』
『それか通販。』
『ドラッグストアと同じく、絆創膏の隣辺りに普通にと言うか、然り気に置かれてますよ。』
『へー』
『そうなんですか。』
『知らなかった。』
『でも、建御雷さんは兎も角、モモンガさんとペロロン、関係無いでしょう。使う相手いないですし。』
『ほっとけ!』
『別に、いいじゃいですかっ!?
こ、今後の為ですよ!
そりゃ たっちさんは、奥さんいますし…』
『私、嫁には使いませんよ?』
『ちくしょーっ!』
『爆死ね! リア充!!』
『…………………。『嫁』、『には』?』
『いやいやいや、そういう意味じゃない!』
『ふん、どうだかな…』
『貴様ッ…!』
『…それでな、その時にレジにいたのが彼女の母親で、「あら?〇〇(本名)君?」ってなってな…』
『www』
『草www』
『父親じゃないから、良かったじゃない。』
『父親だったら その場で流血沙汰だな。』
『それな。』
『…で、まろんサン?
結局それ、その場で買ったの?』
『彼女母親にレジ打ちしてもらって。』
『モチのロンよ。その日の夜に、1箱全部(12ヶ)、使ったぜ♡』
『よし。愚弟、まろん、タケ、たっち、ウルベルト、モモンガさん、全員正座な。』
『OHANASHIの時間ですね。』
『全く…男って…』
『ふけつー』
『ひぇっ?!姉ちゃん?』
『やまいこさん??!』
『餡ころもっちもちさん?』
『あけみちゃん?』
『ちょっと待って下さいよ?!』
『これがアウトって酷くない?』
『クソ運営からの警告メールも着てないぞ?!』
『『『『黙れ』』』』
 
 
▼▼▼

 
≫≫≫ 
 
次回『エリュエンテゥ②(予定)』
乞う御期待! そして御期待と云えば、劇場版公開は秋!
そしてそして、聖 棍棒 女王は沙織さん♡だ!
 


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エリュエンテゥ②

 
【今回の予習】
マサト…鮎川真里(ぶっ拓)
眼魔(通称・シャババさん)…ガンマン(キン肉マン)
谷屋あおい…ターニャ・デグレチャフ(幼女戦記)
カスミ…カスミ(モンスターファーム2)
ポチョムキン4世…荒くれ男(このすば!)
イスキオス…冥衣(サープリフ)装着サガ(聖闘士星矢)
  
…のイメージで。
 


◆モモンガside◆

前回、まろんサンが転移先登録(マーキング)していたから、今回の移動は あっと言う間。

 

「「「「「これが…ラピュ〇…」」」」」

「「「〇ピュタは本当に在ったんだね!」」」

「…違うと思うがの?」

南方砂漠。天に浮かぶ浮遊都市を見て、俺を含む、初見の者達が驚きと感動の声を漏らし、それにリグリットが突っ込みを入れる。

 

「ぷれいやーと言うか、ユグドラシルからの者達は皆、そんな感じなのかい?」

「いや…普通、アレを見たら そう言うだろう?」

 

コクコク…

 

ほら見ろ! まろんサン達も、頷いてるじゃないか!

それで今回、浮遊都市エリュエンテゥに居るとされる、魔神討伐に参加しているメンバーだが、

 

・俺

・まろんサン

・シャルティア

・コキュートス

・アウラ

・マーレ

・セバス

・エントマ

 

そしてヴァーリ・トゥードから(本来は まろんサンも此方側)

 

・マサトさん

・谷屋さん

・眼魔さん

・カスミさん

・ポチョムキン4世さん

…と、まろんサン製作NPCのイスキオスと、他にもNPCが数人。

ヴァーリ・トゥード、戦える人、総出だな?

マサトさんに八欲王のNPCの事を話したら、「それって、他人事じゃないよね~?」…と、協力してくれる事になったのだ。

マサトさん達も『のほほんと暮らしたい』派だから、ある意味 当たり前? 本当に有り難い。

 

更にはエリュエンテゥの案内役として

 

・ツアー(鎧)

・リグリット

 

それから最後、今回の要とでも云う人物が…

 

「♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡」

「……………。」

御機嫌、艶っ々な笑顔で、ツアー(鎧)の腕に組み付いている…元、と言うべきか?…漆黒聖典番外席次・絶死絶命。

…以上が今回、エリュエンテゥに乗り込むメンバーだ。

過剰戦力?…未知の地に乗り込むんだ、その位が丁度 良いんだよ。

それに俺は、これでも まだ足りないと思っている。

 

 

◆モモンガside・了◆

 

▼▼▼

 

◆まろんside◆

何なの? バカか? バカップルか?

ツアーと絶死絶命、真っ昼間から腕組み付きって、見せ付け過ぎってか、いちゃつき過ぎじゃないか?

 

「でもぉ、まろんお義兄(にー)ちゃんとユリ姉様も、あ~んな感じ~。」

「はぁっ?」

ば、馬鹿な!? そ、そんな事は無いと思うぞ?

 

「そうですよね、モモンガさん!」

「「「「「………。( ¬_¬) 」」」」」

おい、何故にモモンガさんだけで無く、皆が目を逸らす?

 

「あ…あの、アン? 人前で こういうのは、ちょっと控えた方が良いと思うのだ…けど?」

「え~? 別に良いじゃん♪ ツアツア~♡」

そしてコイツ等…アン? ツアツア?…だと?

 

「ああ、絶死絶命、本名はアンティリーネと云うらしいからねぇ。」

違う、そういう事じゃない!

いや、それも有るけど! (本名初めて知った!)

俺が言ってるのは、あんな風に呼び合ってるって事だよ!

アレか? 長年、DTや処女を拗らせていた奴が目出度く卒業したら、その相手に依存するってヤツか?

…で、この2人、互いに初めてだったから、「「そーゆー訳で、マジに くっいちゃいました♡」」…ってヤツか?

何となくだがツアー、白金の鎧が赤味掛かってないか?

 

「あ、あのね、アン。気持ちは本当に凄く嬉しいけど、これって まろん達と、類友だと思わr

「ごめん、気を付ける。」

 

サッ…

 

うぉおぅいっ!??

どーゆー意味だ?!!

あのオセロ髪女、ツアーの一言で、腕を解きやがった!

何て御無礼な貧乳なんだ!?

大体、類友って何だ? 類友って!?

 

「ふっ…、人目憚らず、いちゃつくバカップルという意味だと思うが?…違うのか?」

ボチョムキン~っ?!

 

 

◆まろんside・了◆

 

≫≫≫

 

◆セバスside◆

これは凄い…としか、言い様が有りませんな。

各々が《飛行(フライ)》の魔法や その他の飛行手段を用い、浮遊都市に接近します。

因みに私はアウラ様マーレ様と共に、マーレ様のドラゴンの背に乗っての移動。

 

「…本当に、通れるの?」

浮遊都市全体を囲み包むかの、光の壁の様な結界に近付き、絶死絶命が呟く。

 

「多分、大丈夫…だよ?」

「…何で疑問形?」

成る程。確かに、強力な結界。

しかし、デミウルゴス様の仮説が正しければ、八欲王の血を継ぐ彼女なら、嘗ての十三英雄のリーダーと同じく、それを潜る事が出来る。

 

「はーい。それじゃ絶死絶命、行っきまーす♪」

 

ス…

 

そう言って、結界に向けて飛ぶ絶死絶命。

本当に直ぐ光の壁の直前に迄 近付き、手を延ばし、壁に触れる。

 

ホヮァ…

 

「「「「「「!!!?」」」」」」

すると、何という事でしょう。

その部分を中心に、円状に壁が取り払われたでは有りませんか!

私達全員が一度に通り抜けられる程の、巨大な穴が空く。

結界を出入り出来る鍵。どうやら それは本当に、八欲王の血だった様ですね。 

 

「きゃーっ☆! やったわ!ツアツアー!♡」

 

ガバッ!

 

「ん、よくやったよ、アン。

でも、嬉しいのは分かるけどさ。

その…抱き付いたりするのは帰ってからに、して貰えるかい?」

「あ、ごめん。やっぱり鎧より、生身の方が良いよね?♡」

「「「「「「……………。」」」」」」

さ・て…手持ちのアイテムの中に、無糖珈琲は有りましたでしょうか?

皆様にも配らねば。…まろん様以外に。

 

「をゐ、どーゆー意味だ!?」

「アレは2代目まろユリだから、お前には不要という意味だろう?」

「谷屋、テメーッ!?」

 

  

◆セバスside・了◆

 

≫≫≫

 

◆モモンガside◆

コントの後、俺達はエリュエンテゥに上陸。

 

「それで、ツアー、リグリットよ。アイテム庫は何処に有るのだ?」

「モモンガさん、いきなり それ?…っ!?」 

「シャババババ!早速、御出座しな様だな!」

その俺達の侵入に気付いたのか、彼方から数人の人影が此方に向かってくるのか確認出来、 

「…歩いてるって事は、飛行能力は持ってないのかしら?」

「どうだかな…!」

眼魔さんが、カスミさんが、まろんサンが…前衛組が前側に出て身構える。

 

『『『『……………。』』』』

そして俺達の前に現れたのは、ユグドラシルの装備…恐らくは伝説(レジェンド)神具(ゴッズ)級の全身装備(フルアーマー)が4人。

一応は人型だが、兜で頭も全て覆っているので種族は分からない。

 

『『『『……………。』』』』

「「「「「「「………。」」」」」」」

腰の剣を抜くで無く、俺達を観察するかの様に、此方を見据える4人のNPC(多分)。

 

ザッ…

 

「「「「「「「え?」」」」」」」

そして その数秒後、俺達…正確には絶死絶命にだろう、揃って跪く。

どうやら彼女を八欲王…自分達の主の血筋と気付き、敵では無いと判断した様だ。

それでも話し掛けてこないのは、元より そう創られたのか、それとも魔神化した事で、自我を失っているからか…

 

「さて、モモンガ君。コレ等は、どうする気だい?」

「そうですね。此処で攻撃を仕掛けたら、それこそ敵認定されて、浮遊都市の全ての魔神からの総攻撃を受けかねない。

先ずは八欲王のアイテムを、全て頂戴しましょう。

ツアー、リグリット。案内を頼むぞ。」

「モモンガさん…此処に来た目的…」

 

 

◆モモンガside・了◆

 

≫≫≫

 

◆まろんside◆

何だかモモンガさんだけは、このエリュエンテゥに来た最大の目的が違ってる気がする。

いや、確かに八欲王が自分達の拠点に残したアイテムって興味アリアリだけど?

一応は、世界の脅威に成り得るだろう、魔神(NPC)の廃除に来たんだからね?

まったり生活目指してるんだろ?

 

「…その辺り、シモベとして どーよ?」

「アインズ様ノ御言葉ハ、全テニ優先サレマス。」

何処の大魔王様だよ!?…って、モモンガさん、非公式ラスボス或いは裏ボス大魔王だった!

 

≫≫≫

「ほう…コレは、中々…」

「アインズ、ちょっと待て!」

「え?」

 

シャキンッ!x2

 

「「「「「!!!!?」」」」」

そしてツアーの案内で、モモンガさんのリクエスト先の宝物庫へ。

この部屋にも2体、全身鎧のNPCが居たが、とりあえずは襲ってくる気配は無かった。

…が、モモンガさんが壁に飾られてあった派手な装飾の盾に触れようとした瞬間、そのNPCが剣を抜く。

 

「どうやら私以外は、触るのNGみたいだね~?♪」

ツアーの制止も有り、モモンガさんがギリギリで手を引っ込めたので、それから攻撃される事は無かったが、絶死絶命の言う通り、此処のアイテムは八欲王関係者しか手にする事は、出来ないらしい。

 

「全く…いきなり手を出すとは思わなかった。」

「私等の時も、アイテムに触れて大丈夫だったのは、リーダーだけだったからねぇ。」

「いや、そういうのは、事前に教えてくれないか?」

「確かに予め伝えないのもダメだけど、やっぱり余所様の所持品を勝手に触ろうとした、モモンガちゃんの方が悪いと思うな~?」

「ま、マサトさん?!」

ん。俺も、そう思うぞ。

 

「仕方無い…」

 

ス…

 

そう言ってモモンガさんはアイテム保管空間(ボックス)を開くと、

「頼むぞ。」

「はいは~い♪」

 

ポイポイポイ…

 

その開いた空間(あな)の中、絶死絶命に手当たり次第、アイテムを投げ入れさせる。

 

『『…………………。』』

その様子、NPC達も黙って見ている事から、この行動はセーフな様だ。

 

「心配しなくても、後で皆さんで分けますよ。」

当たり前だ。

 

≫≫≫

『…随分と、好きにしてくれているな?』

『流石に其程迄だと、看過は出来ぬぞ?』

「「「「「「「??!」」」」」」」

そんな時、部屋の外から声が。

その方向に目を向ければ、其処には3体目と4体目が立っていた。

 

「喋れるタイプも居たでありんすか?」

「それとも、正気を保ってるのかな?」

見た目は同じくな全身鎧だが、喋れるというだけで、雰囲気が変わってくる。

さて、コイツ等は どっちだ?

シャルティアの言った喋れるタイプか、アウラが言う通り、魔神化してないのか…

 

『我が主の宝を盗むハイエナ共!』

『如何に主の系譜と云えど、その行き過ぎた真似は赦す事は出来ぬ!』

「「「「「「「「!!」」」」」」」」

どちらにしても、もう戦闘は避けられない。

最初に部屋に居た2体を含む計4体のNPCが各々、剣や槍を手に取り、俺達に襲い掛かってきた!

しかし、気持ちは解る。

モモンガさん、そして ひんぬー! お前等 本当に盗り過ぎだ!

 

 

「フッ!」

 

バシュッ!

 

『何?』

『…だと?!』

4体の同時攻撃。

しかしコレは、ポチョムキンが瞬時に編み上げた衣の壁によって防がれる。

 

「それで終わりじゃないぞ?」

 

スパ…クィッ!

 

『『…?!』』

更には その衣を4分割、帯状にして、敵4体を各々同時に縛り上げる。

見た目は どう見ても前衛な世紀末モヒカンだが、コイツの真骨頂は糸状に加工されたレア素材をその場に応じた形状に織り成し活用する職人芸だ。

 

大爆勁(ビッグバン)!」

 

ドゴォッ!

 

『 』

このヒヒイロカネ製の拘束は、簡単に解かれる事は無く、1体は無抵抗状態の儘、カスミの爆裂系魔法を宿した双掌打をまともに喰らい、斃される。

 

「シャババババ!」

 

ガキィッ!

 

『 』

そして別の1体は、やはり身動きの出来ない儘、シャババさんに捕まると強烈な背骨折り(アルゼンチン)で、真っ二つに。

これの何が恐ろしいと言うと、シャババさん、ヒヒイロカネの帯も一緒に引き裂いているのだ。

 

「死ねっ…!」

 

ドッドッド…ッ!

 

『な…』

更には谷屋。

手にしたマスケット型ライフルから撃ち放たれたのは上位の火炎系魔法、《皇鳳焔(カイザー・フェニックス)》…の3連弾!

この攻撃を全身に まともに受けた、喋るタイプその①は、跡形も無く消滅した。

 

「セィッ!」

 

バキゥッ!

 

『ガハァッ?!』

そして最後の1体と対峙したのは、俺の創ったNPCのイスキオス。

喋れるヤツ②の拘束を解くと、背後に回り、背中合わせの姿勢で両腕両足を極めるOLAP(オリジナル・パロ・スペシャル)

…から、技を解かず、その状態の儘で翔んだと思えば、

 

グシャアッ!

 

『クホェッ!?』

空中で1回転させて落下、相手の頭部を床に叩き付ける!

下手すれば、自分の頭も地面に打ち付ける危険な技。

人型故に、そのダメージは脳天と首に集約され、そして人型故に、それは致命傷となり…ついでに落下の衝撃で両腕両足も完全に破壊され、その身は物言わぬ動けぬ屍となった。

…って、誰だよ?! あんなエグい技、設定した(仕込んだ)ヤツは?←俺

 

「何とか、片付きましたね…」

結果、暫定的だが、エリュエンテゥのNPCは大した事無い判定。

推定レベルは50~60程度とアタリを付けてみた。

 

「他の奴等も、この程度なら安心だけど…」

…それ、フラグ(言ったらダメなヤツ)だぞ?

 

 

◆まろんside・了◆

 

≫≫≫

 

◆マーレside◆

「ひぃい~っ?!」

「いやぁ~っ!?」

「眼魔の お馬鹿! アンタのせいでっ!」

「言ってる場合じゃない!」

 

ダダダダダダダ…

 

い、今 僕達は、巨大な…ダイフンボと同じ位な大きさの、全身鎧さんに追いかけられています。

さっきのアイテム部屋の戦闘で、眼魔さんが相手したのは実は雀蜂人(マン・ホーネット)種で、自分が倒されたと同時、敵襲来を報せる匂い(フェロモン)を浮遊都市全体に撒いたらしいのです。

そして それを嗅ぎ付け、現れたのが あの巨大全身鎧さん。

僕達は あの巨体だからと、狭い道を選んで逃げているのに、全身鎧さんは建物を破壊しながら、どんどん僕達を追い掛けます。

最初、僕が地割れを起こして地面に埋めようと提案しましたが、それは…と言うか『地』系の攻撃は、この浮遊都市が崩壊する可能性が有るとして止められました。

 

ドシュッ…!

 

「チィッ!」

谷屋さんが走りながら、魔法の銃を撃ちますが、どうやら あの全身鎧さんはメタル属性を持っているみたいで、魔法が効きません。

 

「皆、あの開けた所まで走ろう!」

そう言ったのは、真里(マサト)さん。

目の前には、建物が並ぶ街道から、広場の様な大きく開かれた空間が。

 

「あれだけの場所(ひろさ)なら、俺も本気、出せるよ~?♡」

き、期待して、良いんですよね?

 




【ヴァーリ・トゥードの皆さんの(クラス)
マサト…???
眼魔…格闘家(レスラー)
カスミ…魔法拳士(注:魔拳士では無い)
ポチョムキン4世…織物師
谷屋…魔銃士(マジック・ガンナー)
イスキオス…グラップラー
 
≫≫≫
谷屋のマスケット型ライフル…予め、魔法を装填(チャージ)して撃つ事が出来る、魔銃士(マジック・ガンナー)専用のマジック・アイテム。
一度に複数、数種類の魔法を込めるのも可能で、撃ち出しには魔力を消費しない(装填時に消費する)。
彼女の魔法銃は実弾の装填も可能で、更に その弾丸に魔法属性を付加して撃つ事も可能。

 
▼▼▼
オバロの話じゃないけど、ミート君の声、すみぺサンだと…?!
動画見たけど、アリでありんす!
宮野氏(スグル役)に続いてビックリしたぜ!
 
≫≫≫
 
【次回予告】
 
◆モモンガside◆
あの巨大魔神を前に、マサトさんが前に立った。
 
「マサトさん、此処は皆で…」
「いやいや、カスミちゃん達も頑張ったんだ、俺にも魅せ場、頂戴よ~?♪」
まあ、マサトさんが そう言うなら、俺は何も言いませんが?
まろんサン達も、それで良いですよね?
 
次回『エリュエンテゥ③(予定)』
乞う御期待! ヴァーリ・トゥードのギルマスの実力が、明らかに!
 


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マサト、特攻(ぶっこむ)

 


 

ドッドッドッドッドッドッ…

 

◆まろんside◆

マサトの"本気出す宣言"。

その言葉通り、あの巨大な全身鎧の魔神を都市の中央広場とでも言うべきか?…な開けた場所に誘い出すと、アイテム・ボックスから取り出したのは、真紅のボディの自動二輪(オートバイ)

俺のバイク、悪魔の鉄槌(ルシファーズ・ハンマー)は純粋な移動用…ヒキニゲ・アタック位しか出来ない…だが、このマサトの愛車、ブラスト・ボーイは完全な戦闘仕様だ。

 

鉄馬騎士(ライダー)】。

それが、マサトが所得しているメインの(クラス)

バイク系のアイテムを駆り、それで戦闘する(クラス)だ。

 

ガパッ…

 

そのバイクの両脇の装甲(カバー)が開き、中から多数の武器が顔を出す。

 

「…ん、やっぱりコレだよね。」

木刀、鉄パイプ、釘バット…様々な形状の武器の中からマサトが得物として選んだのは、ツルハシ。

勿論、只のツルハシじゃない。

ユグドラシルの世界にて、鉱山に埋まるレア素材を掘り出す為の物。…それを武器として使うのは、コイツ位だ。

 

ガガガガ…

 

 

そのアポイタカラ製の切り先で地面を削り、一本線(ライン)を描きながら、ブラスト・ボーイを疾走させるマサト。

 

『……………………。』

自分に猛スピードで近付くマサトに、巨大な全身鎧も当面の敵と認識したか、手にしていた巨大な六角棍を両手持ち、叩き潰さんとばかりに大きく振りかぶる。

 

ドンッ!

 

そして、真っ直ぐ振り下ろされる棍棒。

叩き付けられた地面に巨大なクレーターが出来上がるが、

「…甘ぇーよ。」

マサト…ブラスト・ボーイのスピードにより、それを回避。

 

ドドドドドド…ッ!!

 

そして そのバイクから、機関弾やら魔力弾やらミサイルが一斉に撃ち放たれる。

 

「見た目はバイクですが、武装的には完全にパワード・スーツですよね、アレ。」

モモンガさん、正解。

その弾丸は巨大全身鎧の頭部に集中砲火され、巨人の胸元から上が濃い爆煙に包まれた。

 

「そ~ぉれっ!」

 

ぶんっ!

 

そしてマサトが、煙に被われた頭を狙い、持っていたツルハシをぶん投げた!

 

ヒュンヒュン…ベギィッ!

 

回転しながら飛んだ それは、煙が目眩ましの役割をしていた事も有り、見事、全身鎧の頭に命中した様だ。

 

どすんっ…!

 

真っ二つに割れて、落ちてきた(フルフェイス)

そして煙が消えて、露となった その素顔は

「「「「氷…?」」」」

この巨大全身鎧の正体(なかみ)は、超巨大サイズの霜の巨人(フロスト・ジャイアント)だった。

 

『……………ッ!』

 

ドンッ!

 

その巨人がマサトを狙い、またも棍棒の叩き付け。

しかしマサトは それを躱すと、その棍棒を坂路に見立て、ブラスト・ボーイで登って行き、

「行っくよ~!♪」

バイクに内蔵された武器の中から、今度は木刀を取り出す。 

勿論これも、観光地の土産物屋に置いてある様な、単なる木刀じゃない。

ユグドラシルの9葉世界の1つ、アースガルズに生えている神の樹…世界樹(ユグドラシル)の幹から造られた、神具級(ゴッズ)アイテムだ。

 

ドドドドドド…ブォゥォッ!

 

棍棒から腕に路を変え、肩まで登ると其処からジャンプ、巨人の頭の位置まで到達した処で

 

ブロロッ…ベキィッ!

 

先ずはバイク前輪での体当たりからの、木刀の一撃。

 

『……………っ?!』

アレだけの攻撃を受けて、苦痛に顔は歪めているが何の痛みの声も発しないとは、今更だがアレは、喋らないタイプの様だ。

…と言うか、さっきの喋る2人は きっと、魔神化してなかったのだろう。

自我を失ってる様には見えなかったしな。

昔々、十三英雄が此処からアイテムを拝借したのは やはり、主の子孫と その仲間という事での許容の範囲。

やっぱり さっきのアレは盗り過ぎだったんだよ、モモンガさん!

 

 

◆まろんside・了◆

 

≫≫≫

 

◆モモンガside◆

 

ブォオオォォオッ!…ブロロッ!

 

霜の巨人(特大)が、吹雪の吐息(ブレス)を吐くが、マサトさんはバイクを操り、余裕の笑みを浮かべて躱す。

 

「おぉ~♪ 速い速い。」

……………………………………。

 

バガアッ!…ドゴォッ!

 

ならばと巨人は、またも棍棒の振り落とし…を避けられると、次は巨大な足での踏みつけ。

一撃一撃が其処にクレーターを作る程の破壊力だが、マサトさんは それも尽く躱していく。

 

「図体がデカイ、イコール振りも大きい、それ即ち、」

「攻撃の軌道も まる分かり、という事ね。」

「只でさえ、ブラスト・ボーイに乗ったマサトに攻撃を当てるのは、容易では無い。」

「それに対して、あれだけの巨体。

此方の攻撃は、当て放題という訳か。」

「フッ、最初から勝負は着いていた…というヤツか。」

……………………………………。

その様子を、ヴァーリ・トゥードの皆さんが、やはり余裕の表情で眺めているが…いや、それは どうでも良いんだ。

 

「皆さんは何を…されているんですか?」

「ん?」

「何をって…」

「「「観戦?」」」

いやいやいやいや! だから、それは良いんですよ!

俺が聞いているのは、何 レジャーシート敷いて、お弁当食べながら観ているのか…ですよ!

 

「シャバババ! まろんの嫁が、作ってくれたそうだ。」

いや!聞いてないから!

そして弁当用意してたのは、まろんサンかい!?

 

「おかか、美味しいですぅ。」

しかもエントマも、ちゃっかり まろんサンの膝の上に ちょこんと座って、おにぎり食べてるし!

…って まろんサン、何も言わないの?

 

「良いんだよ、義妹の特権だ。」

…………………………………………。 

 

「ん、美味いのう。」

「く…、あの おっぱい眼鏡…これ程の腕前だとは…?!」

「どうだ、ギリギリB(ほとんどA)

ユリたん♡は、料理も完璧なんだよ。」

「だ、黙れ! あ、あんなの、脂肪の塊だ!

ツアツアは、『綺麗だよ』『可愛いよ』って言ってくれるんだぞ!」

「『小っちゃい(かわいい)』?」

「うがーっ!?」

更にはリグリットと絶死絶命も、普通に その和に馴染んでいるし!

…って、まろんサン…(汗)

 

「大丈夫だよ、モモンガ君。

()()に乗った時の、マサトは無敵だ。

あの巨人。しぶとさは体の大きさに比例するだろうから、それなりに手間は掛かりそうだが、苦戦する事は無いさ。

だから ほら? キミ達も此方に来て、一緒に食べないか?」

「「「「「…………………。」」」」」

そう言って、谷屋さんが既に和んでいるエントマを除く、ナザリック勢も誘う。

 

「「「…………………。」」」

「ああ、お前達も行って良いぞ。」

「「「は、はい!」」

       でありんす!」

数名、あの中に加わりたそうな顔をしている者が居たので俺が許可を出すと、シャルティア、アウラ、マーレが、嬉々として あの輪の中に加わっていった。

 

「…お前達も、良いのだぞ?」

「イエ、我々ハ…」

「ツアー氏と共に、場の警戒を。」

「…私は この(からだ)では、食事なんて出来ないからな。」

コキュートス、セバス、そしてツアーは、周囲の警戒を続けると言う。

此の場に新手が現れないなんて、保証は無いからな。

 

斬ッ!

 

そう話してる中、マサトさんは地上に。

武器を木刀から斧に持ち換える。

アルベドの3Fと同じく、バルディッシュと呼ばれるタイプの斧だ。

その鋭い刃が、巨人の右足首を斬り付ける!

 

『~~~~~??!』

激痛に顔を歪ませ、声無き悲鳴を上げる巨人。

あの鎧も、魔法により強化されていると思うが、マサトさんの斧による一撃は、その装甲を砕き、足の健を斬り裂いたのだ。

激痛からか、巨人は片膝を着き、その斬られた部分を押さえている。

 

「成る程。痛覚は、失ってるって訳じゃ無しか。(…モグモグ)

アキレスを斬られたんだ。あのデカブツ、もう動けないだろう。(…ムシャムシャ)

唐揚げと伊達巻きを食べながら、まろんサンが分析。

 

「よ~し。それじゃ そろそろ、決めるよ~!♪」

 

ブルォォオッ…!

 

此処でマサトさんが勝利宣言。

バイクに仕込まれている《飛行(フライ)》を発動させると再び、跪いている巨人の頭の高さに。

 

ガパッ…バババ…ッ!

 

バイクの武器庫(カバー)が開かれ、その中の武器…木刀、鉄パイプ、ツルハシ、釘バット、バール、そして紅く光る大剣が飛び出した。

 

『…………?』

それ等の武器は、六方等間隔で、巨人を取り囲む。

 

「行っくよっ! 六芒爆音撃(ヘキサグラム・ブラスター)!!

 

ブォオオォォオッ…バキィッ!

 

マサトさんが巨人に向かって突進。

手にしていた斧で側頭部に一撃を加えると、その儘 通り過ぎ、宙に浮く木刀の処まで走ると それと持ち換えると反転、再び突進しての一撃。

その勢いの儘、今度はツルハシに向かって宙を翔る

 

バキッ!ドガッ!ゴボッ!

 

その後も続く、空中に赤い六芒星の軌跡を描きながら、武器を持ち換えての攻撃。

 

ガシッ…!

 

そして最後に握ったのは、紅の大剣…からの特攻!

 

「うぉるらぁぁあっ!!」

 

斬ッ!!

 

その両手持ち、一刀両断の斬撃と同時、赤の六芒星が完成し、

 

ドゴォオオオォオオオォォッ!!

 

その中心で、魔力と闘氣が暴走した大爆発が起き、巨人の頭部は完全に消滅した。

 

ずしん…っ

 

そして、頭を喪った巨人は その場で崩れ落ちる様に倒れ、その後は動く事は無かった。

マサトさんの、完勝だ!

 

 

◆モモンガside◆

 

≫≫≫

 

◆アウラside◆

「…来た、みたいだね。」

「丁度良いタイミングでありんす?」

マサトさんが あの巨人をやっつけたと同時、私達も お弁当を殆んど食べ終えていた(やっぱりユリの料理は美味しい!)。

そして それと同時、遠くの方から、また全身鎧の集団が私達に向かって近付いてきた。

もう、巨人型は居なく、鎧の中身…種族は分からないけど、標準的な人間サイズ。

 

「ぁゎわ…一杯 来てますぅ?!」

数にして、20と少々。

この浮遊都市の魔神は全部で30らしいから、今まで倒したヤツ等と合わせて、残り全部が やって来た感じかな?

 

「シャバババ! 面白い! 食後の運動だ!」

眼魔さん(まろんサンはシャババさんと呼んでいる)が、嬉しそうに闘いの構えを取り、

「御待ち下さい、眼魔様。」

「む…?」

その前、それを制する様にセバスが立った。

 

「眼魔様達は先程、既に一度 戦闘をこなして御座います。

ならば次は私達、魔導国…ナザリックの者達の番で御座いましょう?」

そうそう♪

此処で何もしないとなると、私達 本当に何しに来たの?…ってなるよ?

だ~か~ら、ほら、マーレも!

何時迄もオドオドしてないで、さっさと準備しなさい!

 

 

◆アウラside・了◆

 

≫≫≫

 

◆まろんside◆

「殺っちゃえ~!」

 

ぶぅぅん…

 

エントマが召喚・使役する殺人蜜蜂(キラー・ハニー)の集団が、全身鎧の1体を獲り囲む。

この殺人蜜蜂(キラー・ハニー)というモンスターは、1匹1匹だとハッキリ言って雑魚雑魚だが、それが集団となると、危険度は一気に増す。

 

ボゥヮッ!

 

『……??!』

炎殺蜂球(バーニング・スフィア)

これが、殺人蜜蜂(キラー・ハニー)の集団連携スキル。

集団で敵に球を型どる様に纏わり憑き、超高温の体温を浴びせ、それにより発火する炎で焼き尽くす技だ。

上位の魔法に匹敵する その火力で、この魔神は消し炭となった。

そして…

 

「クソ! どうやら大当たり、みたいだな!」

シャルティア、アウラにマーレ、コキュートス、セバスも各個撃破していく中、俺が担当した敵は、推定レベル100…カンストだった。

 

「シャバババ! 大丈夫か、まろ~ん?www」

他の魔神が推定レベル50前後、マサトが相手したデカブツが推定70位の中、俺の相手が100だと?

巫山戯んな!

 

「ほら、手助けが必要なら、『お願いします、助けて下さい、麗しきカスミ様』と言ってみなさい?…ほれほれw」

「しゃあらっぷ!!」

誰が助けを求めるか!?

絶対に俺1人で、ぶっ斃す!

 

「そんな訳で、喰らえ!

ダイビング・頭・スパイク!!」

 

 

◆まろんside・了◆

 

≫≫≫

 

◆モモンガside◆

「ゼィ…ゼィ…」

「だ、大丈夫ですか…?」

「だ、大丈夫に見えるなら…眼科に行くのを勧めるぜ?」

…あの後、まろんサンは結局、単身で恐らくは浮遊都市最強の魔神を屠った。

しかし、カンスト同士の激突、決して まろんサンも無事では済まず。

 

「無理するから~♪www」

「シャババババババ!」

「テメー等、後で…〆る!」

ヴァーリ・トゥードの皆さんが、笑いながら まろんサンを弄り倒す。

その やり取りは、嘗てのギルドでの会話を思い出させるなぁ。

 

「さて、まろんちゃんは放っておいて、いよいよ本命の場所に向かうか。」

「酷くない?!」

そう言うのはマサトさん。

本命の場所…そう、俺達の今回の最大の目的は、この浮遊都市エリュエンテゥに居るとされていた魔神の排除では無い。

…ついでに、八欲王のアイテムの物色でも、断じて違う!…本当だぞ?

そもそも このエリュエンテゥは、ユグドラシルの街では無い。

八欲王が この世界で、恐らく…間違い無くだが、"新地創造(マイン●ラフト)"系のアイテムを使って創った都市。

八欲王のユグドラシル時代の拠点等では無いのだ。

それならば、八欲王の拠点は?

答えは この浮遊都市の、更に上空。

 

「おお~?!」

()()を初めて見た絶死絶命が、感嘆の声を上げる。

それは俺達AOG(アインズ・ウール・ゴウン)のナザリック地下大墳墓と対極と謂われた、拠点型攻略ダンジョン…天空城!!

 




ブラスト・ボーイ…FFⅦACのクラウドのバイクを赤くしたイメージで。
本当はCB400SF(フォア)にしたかったけど、武器内蔵設定に無理が有りすぎたから…(笑)
他にも没案で、金田(AKIRA)のバイクとか考えていた。
 
≫≫≫
【次回予告】
『天空城の秘密!(予定)』
乞う御期待! 感想よろしくです。


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天空城の あれら

 
オリ設定、入ります。
 


◆ツアーside◆

懐かしいな。

エリュエンテゥの更に上空に浮かぶ、天空城。

嘗て、八欲王が拠点としていた城。

 

「私も この中に入るのは、初めてだねぇ。」

リグリットが興味深そうに、呟いた。

確かに今のメンバーでは、この城に入った事が有るのは、私だけだ。

 

「そういう訳で、案内は頼むぞ、ツアツア。」

「…私も、この中の全てを知っている訳では、無いのだぞ?」

「何を言っているのだ、ツアツア。お前は最奥まで行った事が有るのだろう?」

アインズ達は そう言っているが、私も其処まで詳しい訳では無い。

それから! その呼び方、止めて貰えます?

私の事をそう呼んで良いのは、アンだけだから!

ついでに言うと、彼女を『アン』と呼んで良いのも、私だけだからね!

…と、言うか! キミ達、少し冷静過ぎじゃないかい?!

 

「アインズ様~!」

「片付け、終わりました~!」

………………………。

現在は城の正面玄関の大広間なのだが、此処で いきなり、下級~中級の天使型モンスターの大群による()()()()()()()()のだ!(過去形!)

アインズが言うには、あれ等は"えぬぴーしー"で無く自然沸き(ポップ)モンスターらしいが、それは どうでも良い事だ。

問題なのは、私達が襲われたという事。

つまり、既に私達は この天空城から敵認定されているのだ。

八欲王の血筋…アンが居ても、それは関係無いとばかりにな。

 

「まぁ、浮遊都市(下の方)で あれだけ派手に暴れてたら、ね~?♪」

一番 派手に暴れたのはマサト、キミだよね?! 次点で まろん。

しかし、その天使の大群も、アインズとマサトのシモベ達で一蹴された訳だけど。

やっぱり このシモベ達も、ヤバイだろ?

戦い方が地味で目立たないけど、マサトが連れてきたシモベ達も、かなり強かったし!?

今回の ぷれいやー…揺り返しは、本当に とんでもないな!

過去、最凶最悪じゃないか?!

救いは、世界を支配しようとかの野心を持たず、話が通じる事だな…

 

「…で、冷静が、どうかしたのか?」

「ぃゃ…何でもないです。」

…兎に角、この場での戦闘を終わらせた私達は、先に進むのだった。

 

 

◆ツアーside・了◆

 

≫≫≫

 

◆まろんside◆

…モモンガさん達は、ナザリック地下大墳墓を初見攻略したそうだ。

だからこそ、その際にクリア・ボーナスとして大量のギルドポイントを所得して、レベル100の守護者達を始め、高レベルのNPC(シモベ)を多数創る事が出来た。

俺達の白い匣(ホワイト・ホーム)も そうだったが、この天空城も八欲王…いや、常にユグドラシルのギルド・ランキングにて2位か3位に位置していたギルド【ケイオス・オブ・コスモス】も、この天空城は数回に渡る進攻で漸く制圧(クリア)したのだろう、高レベルのシモベは数える程しか創れなかった…俺とマサトが倒したヤツで打ち止め…だと思う。思いたい。

 

「…来たぞ。」

そう思っていると、新手の大軍が。

NPCじゃない、モンスターだ。

今度は天使系で無く、戦士系…いや、違う。

 

「アレは…」

「彷徨う鎧ですね。」

さっきの天使然り、その前のNPC然り、そして この彷徨う鎧。

CoC(ケイオス・オブ・コスモス)の趣味か? 拘りか?

連中は どうやら、シモベ等を種族は兎も角、外見は全身装甲で固めたタイプで統一しているみたいだな。

 

「シャバババ! 今更 彷徨う鎧等、我等の敵では無ーい!」

「御待ち下さい、眼魔様!」

「此処は我等に!」

「お任せを!」

クレリィ。オリア。セイジ。

俺達に付いてきた、ヴァーリ・トゥードのNPC(シモベ)が、突撃しようとしたシャババさんに待ったを掛ける。

 

「ふ…ん…! 好きにしろ。」

「「「はっ!」」」

本当は自分が特攻(ぶっこ)みたいのだろうが、見た目と裏腹、意外と良識(オトナ)なシャババさんは、彼等に出番を譲る。

 

「よし、お前達も行け! 彼等に遅れを取るな!」

「承知ッ!」

「はっ!」

「「「「はいっ!」」」

       でありんす!」

そしてモモンガさんも、自分のシモベに号令を。

 

「…ならば俺も出る流れだな?」

当たり前だ、イスキオス。お前も さっさと出張れ。

 

≫≫≫

「何気に、戦闘してないの、モモンガさんだけな件。」

「ぅうっ!?」

彷徨う鎧の軍団はシモベの皆さんで退け、ツアーの案内で城の中枢、玉座の間に向かう途中、またも敵と遭遇。

ブルーの装甲、右手に曲刀、左手にボウガン。

赤く光る単眼に4本の足。

今度の相手は、今迄とは少し方向性(タイプ)が違う?…確かに鎧系と言えば鎧系と言えなくもない…の、キラー・マシン。

しかも強化種。

多分だが、課金ガチャで引いたモンスターだ。(引き運、強いな!)

キラー・マシンは、普通なら中級天使や彷徨う鎧と比べて、少し強い程度のモンスター。

しかし強化種となると、通常型より遥かに…いや、ガチ強い部類だ。

下手をしたら熾天使(セラフ)より強い。

そんな訳で、俺とシャババさん、コキュートスの3人掛かりで迎撃。

今回、ツアーとリグリットは案内役。

絶死絶命は結界の解除の為に同行していたのだから、戦闘役の数には入れない。

こうしてみると、モモンガさんだけ、まだ1度も戦闘(バトル)してないんだよな。

半分は冗談で、そんな風に話を振ってみると、 

「いや、違いますよ!

俺が戦闘参加しようとする前に、皆さん張り切って終わらせてるんですよ!

或いは誰かさんみたいに、共闘を拒否したり!」

…ほう。まあ、良いや。そういう事に しておいてあげましょう。

 

 

◆まろんside・了◆

 

≫≫≫

 

◆モモンガside◆

いや、本当に、そうなんです。

俺が前に出ようとしても、ウチのシモベ達が「アインズ様は、御下がり下さい!」とばかりに先に前に出るんです。

俺も、少しばかり気にしていたんです。

…そんな風に思いながら、俺達は天空城の中を進んで行く。

 

≫≫≫

「《風刃(ウィンド・カッター)》!」

 

ボワッ!

 

主力のNPCは、エリュエンテゥで戦ったのが全部なのか?…と思える位に、POPモンスターとしか出会さない。

ウチで言えば、守護者的なヤツが出てくると思ったのだけど…

強いて言うなら、さっきのキラー・マシンの強化種だ。

今も俺が(漸く戦闘に参加出来て)倒したのは、やはり中身は空の甲冑の兵士と天使型。

 

「ツアー、本当に、要所を守る様なヤツは居ないのか?」

「私が知る限りは、玉座の間まで、その場を動かずに守護していた様な者は居なかったな。」

「…そうか。」

…好し!!

それなら この城の御宝、貰い放題だな!…好しっ!

 

「モモンガ君、何を考えている?…いや、分かっているが。」

「コレクターだなぁ…」

良いじゃないですか!

どうせ、この城の最大の御宝…玉座の間の奥に保管されていたギルド武器は、既にツアーが持ち出している。

だから今更、それよりランクの低いアイテムを頂戴しても、問題は無いでしょ?

もう実質、無人の城なんだし。

 

「「「いや、その理屈は おかしい。」」」

え?! ダメですか?

死蔵なんかしてないで、有効活用しないと!

 

 

◆モモンガside・了◆

 

≫≫≫

 

◆ツアーside◆

ん、これは、アレだ。

本当に私達は、敵認定されている。

アインズ達の様な ぷれいやーや その従属神みたいな鬼レベルの者は出てこないが、それでも鎧を着込んだ様なモンスターは、進む先々で次から次へと襲ってくる。

 

「「「「「…!!!?」」」」」

そんな時、広い回廊を歩く途中で、その身が奇妙な違和感に包まれた。

 

「気付いたか?」

「ええ、勿論。」

まろん達も同様に、()()を感じた様だ。

 

「どうやら結界を張られた様ね。」

その通り。どんな効果が有るかは まだ分からないが、我々は結界の中に閉じ込められたみたいだ。

 

「…弱体化は、していないみたいね。」

「魔力も普通に、使える様だが?」

とりあえず、直接に我々に何かしらの影響を与える類いな物では、無いらしい。

 

「とりあえず、進むしかないよね。」

「そうね。立ち留まるのは愚策。

これを仕込んだ術者が居るのか、元から この城に組み込まれていた(トラップ)なのか…

それも、確認しないと。」

「ふっ…、鬼が出るか、蛇が出るか…

何れにしても、とんでもない事には、違いないな。」

 

≫≫≫

「「「「「……………。」」」」」

とりあえず、この結界は回廊を繋げた無限ループ型なのだけは、理解出来た。

その証拠に、 

「見ろよ。」

 

 

ユリたーん♡! 愛してるよー♡!

 

刃亜厘鬪弩、推参!

 

人間に価値等 無い。価値無き者同士の戦いに、命の徒花を咲かせてみせろ!

 

あなたに私は倒せない

 

私は変身など しなーい!

 

 

 

…………………………………………。

壁には さっき、まろん達が書いた落書きが。

少し前…途中から、そんな気は していたのだが、この まろんの書き込みを見て、それは確信に変わった。

 

「コイツは俺の迷宮結界と、似たような感じか?」

(タイプ)が分かったんだ。

まろんサン、対処は出来ますか?」

まろんも同じ様な魔法?を持っているらしく、アインズが どうにか出来るかと質問。

 

()()()()()とかは無理…だが、()()()は、出来る…《双児宮迷宮(ジェミニ・ラビリンス)》!」

………………!!?

この感覚!

どうやら まろんも、同系列の結界を展開したみたいだ。

しかも、今、我々が閉じ込められている結界を、内側から破って覆った様な感覚だ。

つまり我々は今 、まろんが作り出した結界の中に、捕らえられていると言っても良いだろう。

 

「…出て来いよ。この迷宮結界、俺が解除するか殺られる迄、出る事は出来ないぜ?」

その まろんが、挑発的な台詞を放つ。

 

ス…

 

『……………………。』

それに反応したのか、通路壁際の彫像の裏から、鎧で無くローブ…魔法詠唱者(マジック・キャスター)風の人物が1人、姿を見せた。

青い肌の不気味な薄嗤いを浮かべる面長の男。

今は私も似たような?存在だから解るが、ローブの内側は がらんどう。

実体は、頭部と袖から出ている手首だけだ。

 

『……。私の結界を破るとは…貴方、何者ですか?』

「其処等辺にゴロゴロ居る、お前より優れた空間術の使い手の1人だよ。」

『……………!』

まろんの台詞に、不快を隠さない術者。

…って、ん? これって もしかして今、まろんが結界を解除したら私達は普通に結界外に出られるんだよな?

尤も、敵を確認したなら、それは倒さないとダメだろうけど。

 

 

◆ツアーside・了◆

 

≫≫≫

 

◆まろんside◆

「「ぇ~いっ!」」

 

ビシュッ…バギャァッ!

 

『…っ?!』

うわぁ…

アウラが鞭で身を拘束し、其処にマーレが頭部目掛けて杖のフルスィング。

この双子のコンビネーションで、この術者は肉片や頭蓋や脳漿を爆散させて退場した。

麻痺効果の吐息(ブレス)を吐いたり、上級、特大の《火球(ファイア・ボール)》を繰り出したりしていたが、それでも結局はレベル60前後。

この2人の敵じゃなかった。

 

「…次にNPCの敵と遭遇した時は、なるべく最初は殺さない様にしていこう。」

「情報、欲しいですからね。」

「「す、すいません…」」

モモンガさんの台詞に、少しシュンとなるアウラとマーレ。

いや、気にする事は無いぞ。

最初に手加減の指示を出さなかった、モモンガさんが全~部 悪いから。

モモンガさん…。ナザリックのシモベは基本、特に指示してない場合、敵と会ったら即殺りなのは解っていたでしょ? セバス以外。

 

「「…って?」」

此処で、何かを見付けた?双子。

 

「「アインズ様! まろんさん!」」

「ん?」「はい?」

アウラとマーレが指差したのは、戦いの途中、破壊してしまった石像。…の下に隠されていた階段。

 

「おお、隠し階段!」

「これはツアーも、知らなかったヤツだな?」

「うむ。私は玉座の間への、直線ルートしか知らないからな。」

ツアーが この天空城に来たのは、八欲王が全員滅んだ後、この城に遺されたギルド武器の回収しに来た時だけ。

その時も、そのギルド武器以外には興味を示さず、その本命を入手した後は録に探索もしないで早々に城から去ったそうだ。

…ドラゴンって、御宝大好きじゃなかったのか?

もっと彼方此方、物色詮索してるかと思っていたが。

 

「それじゃ折角だから、この下、降りてみるか。」

「ああ。こんな分かりにくく隠していたんだ。

この先には結構なアイテムが、仕舞われているに違いない。」

「まろん…お前もモモンガ君の事、どうこう言えなくないか?」

うっさい。

 

≫≫≫

空間魔法処理が施されていると思われる、照明も何も無い、狭く暗い階段。

挟撃とかされたら一溜まりも無いので、先頭にセバス、殿にシャババさんの配置で、降っていく。

 

「まだ、下に続くでありんすか?」

シャルティアの言葉通り、かなり下まで降りた筈だが、未だに下のフロアに辿り着かない。

 

「マサカ、コノ階段モ、無限ループ等ノ結界ガ仕組マレテイルトカ?」

いや、それは無い。それなら俺が、既に気付いている筈だ。

単にコレは、創造系アイテム(マイン〇クラ〇ト)等の空間操作で作られた、凄く長い階段なだけだ。

その証拠に、ほら…

 

「む? 扉が、見えますな。」

ランタンを持ったセバスが呟く。

 

カチャ…

 

そして、その扉を開けた先…

 

「「「おぉ~…」」」

「「「わぁ~♪」」」

「ふっ…!」

それは先程迄の狭く暗い階段道から一転、壁・床・天井の全てが淡い光を放つ水晶で出来た、広大な部屋。

そして その部屋一面に、多量のユグドラシル金貨や聖遺物級(レリック)伝説級(レジェンド)神話級(ゴッズ)のアイテムが、一見無造作に…しかし よく見れば、見栄え良く置かれてあった。

 

「素晴らしい! 素晴らしいですね、皆さん!」

「ああ…全くだ。」

「「御宝♪御宝♪♡」」

これに、モモンガさんのテンションが天限突破。

マサトやカスミだけでなく、最初は「お前達は何をしに此処に来たのだ?」という突っ込みを入れていた谷屋も、眼を輝かせている。

 

「よし、皆さん、とりあえずは回収です! 戻った後で、公平に山分けしましょう!」

モモンガさん、完全に御機嫌。

 

バタンッ!

 

「「「「「!!!??」」」」」

…と、その時、この宝物庫?の扉が、勢い良く閉じられた。

 

ガチャ…ガチャ…!

 

「な?…開かないだと?!」

シャババさんが扉を開けようとするが、鍵でも掛けられたのか、壊す(ひらく)事が出来ない。

 

「まろんちゃん!」

「…無理。」

マサトに言われる前、勿論 俺も、転移魔法を試してみたが、それは封じられている。

 

「この部屋の宝が欲しくば、そして この部屋から出たいならば、我々を倒していくのだな!!」

「「「「「!!!??」」」」」

そして室内に響く、低く重い声。

 

ヴォォ…

 

「「「「「……………!!」」」」」

其処に現れたのは、8体の異形。

鈍色のボディ。

右手に巨大な鋼鎚、左手に片刃の大剣。

ボウガン型の尻尾の付いた球形の下半身に脚は無く、恐らくだが魔法の力で浮遊している。

2本角の頭に紅く光る単眼(モノアイ)は、キラー・マシン系に見えなくも無いが、見た事も無い…知らないモンスターだ。

 

「こ…コイツ等、HPが計測不能です!」

多分…間違い無く、八欲王が創った、オリジナルのモンスター。

どうやら少なくとも、アウラですら測りかねない、HP特化。

しかし…となると()()()()が、態々こんな場所に置く為に創ったであろうNPCが、それだけとは思えない。

少なくとも、その外見に見会う、攻撃力と防御力にも特化していると考えるべきだ。

 

「レイドボス級かよ!?」

「まさか…ナザリック第8階層の、()()()に近い存在とでも云うのか?」

モモンガさんも驚愕している中、

 

「この部屋の宝が欲しくば、そして この部屋から出たいならば、我々を倒していくのだな!!」

 

ゴォォッ…!

 

「「「「「……?!!」」」」」

その8体が同時、超スピードで俺達に突進してきた…!?

 




クレリィ…僧侶・♀(ドラクエⅢ)
オリア……戦士・♀(ドラクエⅢ)
セイジ……賢者・♂(ドラクエⅢ)
 
…のイメージで。
 
≫≫≫
 
【次回予告】
 
◆まろんside◆
ある意味 自己責任…だが、兎に角 戦闘に突入した俺達。
しかし、この天空城の ()()()(モモンガさん命名)は、俺達の想像を絶する強さだった…!
 
次回『おい、クソ運営! ありゃチートじゃ…不正じゃねぇのかよ?!(予定)』
乞う御期待! まさか、全滅とかしないよな?
 
 
▼▼▼
ちょっとネタが浮かんだので、オバロの短編(掲示板形式)、チラシの裏にアップしています。
宜しければ そちらも どうぞ。
  


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天空城の あれら②

 
天空城編、締めです。
 


◆モモンガside◆

天空城の宝物庫の様な部屋にて、突如 襲ってきたキラー・マシン系の様なモンスターの集団。

俺の知っている限り、ユグドラシルには あんなモンスターは存在していない。

つまりは、八欲王が創り出したオリジナル。

 

「この部屋の宝が欲しくば、そして この部屋から出たいならば、我々を倒していくのだな!!」

 

ズガァァンッ!!

 

「「「おわぁっ!?」」」

床を破壊せんとばかりに、両手に持った武器で叩き付けてくる宝物庫の守護者。

 

「チィッ…!」

 

ガィンッ…!

 

「硬イ…!」

これに対してコキュートスが、反撃のカウンターの突きを繰り出すが、有効なダメージは与えられなかった様だ。

アウラの索敵能力でも測りきれないHPに、見た目通りな攻撃力と防御力。

ついでにスピードにも特化している。

その戦闘力は守護者級…いや、完全にレイドボス。

ナザリックで云えば、第8階層の あれらに該当する存在と思って良いだろう。

…尤もウチの あれらは あんなメカメカで無くて、魔力生命体だけど。

 

「ちぃっ! 喰らえっ!!」

 

ダシュゥッ!

 

この敵の攻撃を躱しながら、谷屋さんが魔導銃から撃ち放ったのは、《連鎖する龍雷(チェイン・ドラゴン・ライトニング)》。

見るからに機械系だ、雷撃は有効な筈。

 

キィィィンッ!

 

「何…ぅわぁっ?!」

しかし、あの あれらには魔法反射が施されていたのか、その雷撃の龍は跳ね返り、逆に谷屋さんに襲い掛り、直撃した!

 

「た、谷屋様!」

それに透かさず、ヴァーリ・トゥードのNPC…見るからに信仰系な女が回復魔法を。

 

「この部屋の宝が欲しくば、そして この部屋から出たいならば、我々を倒していくのだな!!」

 

ドガァァアッ!!

 

「「「ひぃえぇっ!?」」」

そして、猛攻再び。

先程から同じ台詞しか喋らないのは、そういう設定なのだろう。

この部屋の守護者として、侵入者を排除するためだけに配置されたキャラ。

 

「ちょっと! これってアリなの?!」

「おい、クソ運営! 不正だ!チートだ!」

…この世界にクソ運営は居りません(多分)。

 

「1500人大進攻の時の連中も、こんな気持ちだったんだろうな!

ん~、あの時は、すまなかった!」

「言ってる場合じゃないから!」

「冷静か!?」

 

 

◆モモンガside・了◆

 

≫≫≫

 

◆まろんside◆

「仕方無い! マーレ!」

「は、はいっ!」

モモンガさんの短い台詞に、マーレが それだけで全てを理解したかの様に応え、

「ゃ、やぁっ!」

 

しゅぅ…

 

藍鱗鎧に白のベストとミニスカートという衣装から、蒼地に紅龍が描かれたチャイナドレスに換装。

傾城傾国。

あらゆる者を耐性無視で精神支配する、世界級(ワールド)アイテムだ。

 

「行っけぇ!」

 

カァッ…!

 

このチャイナに描かれた龍が具現化して、あれらの1体に飛び込む。

 

「この部屋の宝が欲しk…」

 

その龍は標的とした あれらの体内に潜るかの様に中に入ると、その あれらは動きを止めて、

 

ガシィッ!

 

直ぐ旁に居た、別の1体に攻撃を仕掛けた!

その儘、その2体は1vs1の形となり戦闘を開始した。

これで とりあえず、対処すべきは6体となる。

 

「体勢を整えるぞ!」

「「「応!」」」

「「「はいっ!」」」 

あの敵…確かに1体1体は、俺達個々よりも強いかも知れない。

しかし、それでも此方には、それを補える"数"が有る。

とりあえずは戦況、戦力の整理だ。

先ずは、クレリィ、オリヤ、セージ。それとエントマ。

この4人は、レベル100(推定)の相手は とても務まらない。

クレリィとセージは後方から回復や強化魔法(バフ)等の支援が出来るとしても、基本、後方待機。

リグリットは勿論、絶死絶命も、アレの相手は少しキツいだろう。

この2人も後ろに。

マーレは傾城傾国で あれらの1体を支配、操っているので、やっぱり後ろ。

そして、谷屋。後、モモンガさん。

魔法が効かないとなると、この2人も殆んど戦力外だ。

いざとなれば、モモンガさんは《完璧なる戦士(パーフェクト・ウォーリア)》で前衛も こなせるが、基本、魔法詠唱者(マシック・キャスター)の2人も以下同文。

 

「フゥンッ!」

 

ゴォォッ!

 

しかし此処で、コキュートスが凍てつく波動を放つ!

 

「よくやったぞ、コキュートス!」

これにより、あれらに施されていた魔法反射が消え(…た筈)、モモンガさんと谷屋も、普通に戦列加入。

 

「それじゃ行くよ、モモンガちゃん!」

「了解ですよ、マサトさん!」

そして、此方の組み合わせも決まる。

先ずはモモンガさんとマサトの、大将(ギルマス)コンビ。

 

「おチビ、足を引っ張るでないでありんすよ!」

「はぁ~? 誰に、言ってる訳ぇ?!」

続いて、大丈夫か?…の、シャルティアとアウラ。

 

「行くぞ、セバス!」

「承知致しました。」

更にはコキュートスとセバス。

 

「こんにちは♪」

「…そして、さようならだ!」

カスミと谷屋。

 

「シャババババ!」

「ふっ、八欲王の遺物…面白い!」

シャババさんとポチョムキン。

 

「「行くぜ!」」

そして最後に、俺とイスキオス。

この、1vs2の組み合わせが6つ。

 

「とりあえずは、各個撃破。」

「そして その都度 状況判断で、他のチームのフォローに回る!」

「「はい!」

    でありんす!」

「ハッ!」

「「承知!」

    しました。」

「「「「「了解!」」

       した。」

       だ!」」

…尚、ツアーは、後方待機組の護衛役だ。

 

 

◆まろんside・了◆

 

≫≫≫

 

◆ツアーside◆

どうやら あの あれら(仮名)は、特別な攻撃は持ち合わせていない様だ。

両手の武器と尻尾のボウガン。

これだけの、シンプルな攻撃。

 

ドゴァァンッ!!

 

「「ぬわぁーっ!?」」

しかし、それが厄介なんだけど。

アインズは ある程度のレベルの物理攻撃は無効らしいけど、アレは その、『ある程度』を超える威力の様だ。

 

「くっ! 出し惜しみは、無しでありんす!」

アインズのシモベの吸血鬼が、真紅の鎧を着込んだと思うと、真っ白な分身体を作り出す。

これでダークエルフの少女と合わせて、1vs3の形を作り出した。

 

「フンッ!」

「哈っ!」

蟲人と執事のコンビは片や正面から、片や それにより出来る死角からの攻撃を繰り返し、

 

「でぇい!」

「てやっ!」

黒髪と白金髪、紅眼と蒼眼、そして黄金に対して漆黒の鎧と、色合いこそ対極だが顔立ちや鎧の造形は ほぼ同一な、まろんと その そっくりさんも、近接で合わせ鏡の如くな連続攻撃を繰り出している。

 

「唸れ、轟雷!」

「《拾億雷電撃(ギガデイン)》!」

金髪幼女と妖精属の少女が、強烈な雷撃を放ち、

「シャババババ! 私達も負けられぬぞ!」

「ふっ…これは後に、伝説として語られる戦いになるのかもな…」

モヒカン男が先程と同じ様に、特殊素材で編み上げた幕衣(カーテン)で あれら(仮名)の攻撃を防ぎ、単眼の巨人(サイクロプス)が…変身?

爬虫類の様な凶悪な目は ぱっちりとした 真ん丸お目眼に、顎は大きく しゃくれ、鋭い牙は平らな歯並びに。

ゴツゴツとした岩の様な肌は つるつるすべすべな お肌となり、強靭な蹄の足は普通の裸足に。

強化(パワーアップ)なのだろうけど、端から見れば どうしても、弱体化(パワーダウン)にしか見えない。

…本当に大丈夫なのか?

 

 

◆ツアーside・了◆

 

≫≫≫

 

◆モモンガside◆

眼魔さんが、本気を出した。

以前、『あの形態は、間抜けっぽいから本当は好かぬのだがな…』と言っていたが、そんな拘りに構っている場合じゃないのは理解している様だ。

一見 脳筋一辺倒に見える眼魔さんだが、実は かなりの頭脳派だ。

そもそも、ユグドラシルではサイクロプスという種族が、単なるパワーだけの種族じゃない。

種族特性で近未来予知の能力と、ついでに鍛冶スキルも持っているのだ。

 

「奥義! エレクホルン・テンペストーッ!!」

  

ギョゥゥッ…ドガアッ!

 

その眼魔さんが、頭の独特な形状の2本角を高速回転させながらの体当たり。

衝突と斬撃の2つの属性が合わさった この攻撃は、天空城のあれら(仮名)を完全破壊した。

これで、先ずは1体。

 

「《獄雷閃光(ジゴ・スパーク)》!」

「…か~ら~の~!!」

 

 

ドゴォォオンッ…斬ッ!!

 

続いて、俺の超・雷撃からマサトさんの木刀(神器級(ゴッズ)アイテム)での一刀両断。

2体目。

 

「ヤツの攻撃は、俺が受け止めてやる。

お前達は、ガンガンやれ!」

「は、はい!」

「感謝するでありんす!」

そして自分が請け負った相手を片付けたポチョムキン4世さんが、アウラとシャルティアの加勢に。

 

「シャババババ! 攻撃の手を緩めるな!」

「承知!」

「了解しました。」

眼魔さんは、コキュートスとセバスの助太刀に。

 

「喰らえっ!」

「ギガ・レイ!」

 

ドオォッ…!

 

ビガアッ…!

 

そして俺とマサトさんが戦闘に加わる前、谷屋さんの魔導銃から撃たれた《光の牙(コァンヤ)》とカスミさんが繰り出した閃光連弾の前に撃沈。

  

ど…どん…

 

更にはマーレが操っていた個体が、相手取っていた個体と引き分けて斃れる。

それと同じタイミングで、アウラとシャルティア、コキュートスとセバスもポチョムキンさん眼魔さんのアシストを得ての撃墜に成功。

これで、残りは1体。

 

「まろんサン、今 行きまs

「大丈夫だモモンガさん! コイツは俺達が殺る!」

…ですよねー。知っていました!

この状況で、まろんサンが手助けに応じる筈も無い。

まろんサンは、地味に?負けず嫌いだ。

 

「この部屋の宝が欲しくば、そして この部屋から出たいならば、我々を倒していくのだな!!」

 

そして、まろんサンが担当した相手は、所謂()()()

他の個体と比べて、声の質が違うし、恐らくは ()()()の中の強化種。

 

「まろんちゃ~ん、無理しなくても、良いんだよ~?」

「シャババババ! 意地を張る必要は無いぞ!」

「ほら、素直に助けを求めたらどうだ?

このスイカップ・スキー。」

「黙れ、大平原!」

「だ、誰が大平原だ!

少しは有るって言ってるでしょ!?」

「アン、落ち着いて?!」

マサトさん達が半分煽る様に協力を申し出るが、まろんサンは尚更に、これには応じない。

…と言うか、それを分かって言ってますよね?

 

「くそ、こうなったら…

双児宮迷宮(ジェミニ・ラビリンス)》!」

迷宮結界を張る まろんサン。

成る程。まろんサンの結界内は、壁床天井が、完全破壊不可に強化される。

つまりは、其れ程の大技を繰り出す心算だ。

銀河爆砕(ギャラクシアン・エクスプロージョン)か?

…って、え? まさか、アレを2人掛かりで?!

 

「捲き込まれるぞ! 此方も防御だ!」

ユグドラシル…ゲームじゃないから、攻撃効果範囲内に居たら、普通に巻き添え誤爆(フレンドリー・ファイア)は受ける。 

 

「任せろ!」

「は、はい!」

「「了解しました!」」

俺の台詞に、マーレ、ヴァーリ・トゥードのNPC、そしてポチョムキンさん…防御スキルを持つ者達が、

「《緑の盾(グリーン・シールド)》!」

「「《魔法障壁(マジック・バリア)》!」」

「…特に名は、付けていない!」

各々そのスキルを発動、展開させる(ポチョムキンさんは超硬質の巨大防護幕衣を瞬時に編み上げた)。

 

「ふっ…」

それを確認して、まろんサン達が動き出す。

 

分身(アバター)!」

 

ヴン…

 

先ずはイスキオスが、己そっくりな分身体を作り、それと一緒に まろんサンの両隣に立ち、  

「「「はぁあ…!」」」

そして、3人?揃って闘氣を高め(まろんサンは魔力も)、俺の《壊鳴灰冥波(トロピカル・キング・ウェイヴ)》に似た構えを取る。

…って、3人掛かりの大技ぁっ?!

 

「「「戦女神感嘆爆裂覇(アテナ・エクスクラメーション)!!」」」

 

弩ッ轟々々々々々々々々ッ!!!

 

うわぁ…

3人掛かりで放たれた それは、途轍も無く凄まじい大爆発。

 

「「「「「「「「「………………………。」」」」」」」」」

その直撃を受けた あれらは、欠片も残さずに消滅しており、これには俺だけで無く、他の皆さん…マサトさん谷屋さん眼魔さんですら、言葉を失っている。

 

「いや、自分で言うのもアレだが、パねぇなあ。」

そして その威力には まろんサンですら、驚いている様だ。

  

「見ろよ。あれだけの大爆発なのに、壁床天井、全くキズが付いてないぜ。

俺の《双児宮迷宮(ジェミニ・ラビリンス)》、マジパねぇ。」

「ああ、全くだ。」

違う! そっちじゃない!!

 

≫≫≫

…その後。

宝物庫の守護者と思しき あれら(仮名)を全て倒した後は、部屋から無事に出る事も出来た。

それから玉座の間までも、大した敵は出現せず。

普通のモンスター(鎧系)と、偶に遭遇しただけ。

但し、それからは宝をゲットする事も無く…

 

「だから200年前、ツアー達が漁り過ぎたんじゃないのか?」

「何? その言い掛かり?!」

「ハッ! 骨の大将は、完全に目的が違ってるな…」

「モモンガ君…

我々は、魔神化した八欲王のNPCの対処に来たのだぞ?」

…………………………………………。

 




天空城の あれら(仮)…キラーマジンガ様(ドラクエⅥ)
変身(パワーアップ)眼魔…ガンマン(キン肉マン)の初登場ver.
…のイメージで
 
マーレの普段着→傾城傾国の換装は、FF-X-2のドレスチェンジのイメージで。
 
≫≫
次回『竜王の苦悩(予定)』
乞う御期待! 感想よろしくです。
 


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ヤっちまったヤツ等③(仮)

 
新展開!
サブタイトルが浮かばない…
 
 ( ー_ー)つ[辞書]
 


◆ツアーside◆

スレイン法国漆黒聖典番外席次・絶死絶命…本名:アンティリーネ・ヘラン・フーシェ。

先代の漆黒聖典最強と云われた人間(おんな)とエルフ王デケム・ホゥガンとの間に生まれたハーフ・エルフ。

我々アーグランド評議国からすれば、其れだけで要監視の存在だった。

しかし、父親…デケム・ホゥガンが あの、八欲王の1人の実子となると、只 其れだけでは済まされない。

八欲王の孫だ。普通に考えれば、即・抹殺の対象だ。

しかし その存在を私達が知ったのは、魔導国と法国が戦争状態の最中。

しかも その存在を教えてくれたのは、魔導王のシモベ。

だからこそ、その時は評議国としては下手に介入する事無く、とりあえず様子見に留めていた。

…のだが、

 

「♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡」

「……………………。」

何故、私(現在・人間形態)は、そのアンティリーネ…アンと一緒に風呂に入っているのだ?

はい。それは、彼女と(ふうふ)になったからです。

アインズの居城で、その…何と言うべきか()()()()()、その結果、そうなったのだ。

これは流石に報告案件なので、アインズ達とエリュエンテゥに行く前に、評議国で その辺りを報せる事に。

自分自身、『やっちまったなぁ!』という自覚は有り、それ故に他の竜王達から『お前は何をやっているのだ』と問い詰められ、かなりな罵声を浴びる覚悟は していたのだが…

 

 

≪≪≪

 

『…うむ。とりあえず その八欲王の孫とやらは、変態2号の傍に置いていたら問題無いか。』

『そうだな。変態Mk.Ⅱに任せよう。』

『変態第2章と番になったのなら、監視も容易い。』

『一応は、評議国所属という事か。

続・変態はグッジョブとでも言うべk

『いやいやいや! さっきから黙っていたけど その呼び方、いい加減に止めて貰えるか?!』

『それと、如何にも"1号"やら"初代"が居る様な言い方もな!…誰の事を言っている?!』

『『『『七彩(オマエ)www』』』』

『…(ブチィッ!) …上等だ、テメェー等! 表ぇ出ろ!!』

『お、落ち着け! 七彩(ブライトネス)!』

 

 

 

他の竜王達曰く、確かに他国に ぷれいやーの血筋が居るのは警戒していたが、自国に属するとなると、また考えは変わってくるとか。

八欲王の子孫という点も、子々孫々に怨み辛みをぶつける程に、狭量じゃないらしい。

…な具合に、思っていた以上に、事は あっさりと?片付いたのだ。

その経緯は、七彩(ブライトネス)共々に不本意だが。

 

≫≫≫ 

「んしょ♡、んしょ♡」

「……………………。」

そして現在(いま)

石鹸を自分の胸元で泡立て、それを私の背中に押し付けて洗ってくれているアン。

 

「あ、あの…アン?

それって、どうやって知ったの?」

「あの鬼畜弩外道スイカップ☆スキー男の嫁の、おっぱい眼鏡から教えて貰ったんだけど…

え? もしかして こーゆーの、ツアツア嫌だった?」

いえいえいえ! 凄く柔くて滅っ茶 気持ち良いです! ありがとうございます!(それから…アンにコレを教えてくれた、)(まろんの奥さんにも、ありがとう…)

 

 

◆ツアーside・了◆

 

▼▼▼

 

◆モモンガside◆

反主流と云うのは何時の時代も、主流に噛み付かないと気が済まない様だ。

何の話かと言うと、ローブル聖王国。

この国内で また、北部と南部の諍いが起きているらしい。

普通なら我関せずなのだが、今回の発端と言うか南部側の口実が、前回の裁判。

聖女王が、禁忌すべきアンデッドの国に足を運んだ件で、言い掛かりを付けているそうだ。

…って、知らんがな。

あの戦争は紐解けば、聖女王の暗殺(未遂)事件にも繋がりが出来るから、聖王国の人間が裁判に参加するのも当然だろうに。

いや、関係無いのだろうな。

連中からすれば、経緯・理由で無く、魔導国に赴いたという事実・結果が有れば、それで良いのだろう。

アンデッドを禁忌する宗教国家としては、それだけでアウト…それが南部側の主張らしい。

聖女王が言うには、今回の南部貴族は現在の王権の引き摺り降ろしは、かなりマジらしく。

前の聖王国来訪の時の、俺と聖女王暗殺未遂の件で、かなり肩身が狭くなっている南部側からすれば、これは絶好の口実らしいのだ。

 

「それで…カルカ聖女王よ。

貴女は私に どうして欲しいのだね?

貴女の片腕の 脳筋 聖騎士団長殿が居れば、そんな内輪揉めなんて片手間なのでは?」

『はい…そうなのですが…』

前の裁判の時に、『使う事は無いだろうが…』という前提の下、一応は緊急連絡の意味で『すまほ』を聖女王に渡していたのは正解だった様だ。

彼女が言うには、以前から南部貴族が北部側に潜らせていた、間者(スパイ)の様な存在が『アンデッド殺すべし! 魔導王シバくべし!』『その様な者と関わりを持つ聖女王も下すべし!』と吹聴・煽動し、北部側でも聖女王を咎人として糾弾する予定だった…のだが、その煽りによる矛先が、俺にも向けられたらしい。

聖女王支持の北部側も、アンデッド憎しの思想は変わらない。

ハァ…コレだから、宗教国家は…

そして その煽動者とやらに乗せられた、一部の民衆や貴族、兵達が、『元凶は あの魔導王(アンデッド)だ』と、此方にも 其なりの軍勢で進攻を始めたそうで、国内の混乱を抑えるのに精一杯で、その事に気付いた頃には、其方には手が回せない状態だったとか。

件の煽動者とやらは既に捕らえたそうだが、ソイツも曰く、『魔導国に進軍するのは想定外だった』らしい。

…やれやれだ。

思考の誘導というのは…自分で言ってて耳が痛いが…あらゆる暴走の可能性を想定しないとダメだぞ。凄く痛い目を見る事になるぞ。

想定外の行動、事態…はっきり言って、それは予測出来なかった方が、悪いと思うぞ。

てゆーか、今回の それは、簡単に想定出来ただろうに。

俺でも予想出来たわ!

というか…その、此方に向かっている連中って、魔導国(オレたち)が短期間でスレイン法国という大国を…しかも かなりエグい手段で滅ぼしたのを、知らないのですかね?

ついでに言えば、魔導国への進攻は奇襲な心算だろうけど、この『すまほ』の やり取りで、既にバレバレという事も。

 

≫≫≫

『魔導王陛下。ローブル聖王国神官長、ケラルト・カストディオです。』

その進軍している者達の対処に、煮え切らない…甘々な措置の要望を発している聖女王を見かねて『すまほ』をぶんどったのだろう、彼女の もう一方の片腕とされる…ジル曰く、『腹黒』の…聖王国神官長が話し掛けてきた。

 

『今回の件、誠に申し訳御座いません。

率直に申し上げます。件の者共、魔導国領内にて何が起きようとも、貴国への追及は一切致しません。』

「…つまりは()()()()()()()、構わないと?」

『はい。』

『ちょ…ケラルト?!』

『ヘタレな決断しか出来ない処女は、黙っていて下さい。』

『ハァ?! あ、アナタだって、処女じゃn

『残念。私には既に、私の事を想って下さっている殿方が居られますー。

そうじゃ無くなるのも、時間の問題ですー。』

…………………………………。

どうやら神官長は、腹黒というよりはストレートな性格の様だ。

此方に向かっているという者達は、完全に切り捨てる考えだな。

まぁ、そちらの方が、此方としても簡単で助かるが。

…尚、途中の漫才は、聞かなかった事にしておく。

 

「了解した。ならば正体不明の不法侵入の賊として、相応の対応をしよう。

無論、()()()()()()故に、魔導国が聖王国に説明を求めるも無い。

…それで、良いのだな?」

『ありがとうございます。』

「ああ、そうだ。その代わり…と言うのも何だが、1つ2つ、良いかな?」

 

 

◆モモンガside・了◆

 

≫≫≫

 

◆デミウルゴスside◆

ローブル聖王国の愚か者が、更なる愚か者を導いた様ですね。

しかし、我々も甘く見られた物です。

現在、魔導国に向かっている一団、その戦力だけで どうこう出来る筈も無いのは、当人達も理解しているでしょう。

…ならば、彼等の目的は?

それは、恐らくは火種。

今回の者共は、魔導国の街にて、後には退けぬ程な、それなりに大きな騒動を起こした後、即座撤退する心算なのでしょう。

魔導国と聖王国との衝突を、不可避とする為に。

自分達の その発破で、聖女王が重い腰を上げざるを得ない状況に持っていく為。

そして行く行くは、レメディオス・カストディオ率いる聖騎士団本隊を魔導国にぶつける事で、()()()()()()()()()()()()を討伐…ですか?

我々も随分と甘く見られた物ですね!

聖騎士の軍団如きで、アインズ様率いる魔導国を、滅ぼすと言いますか?

戦争? それは それで、大いに結構!

しかし、件の愚か者の書いた脚本(シナリオ)通りに踊らされるのは、不本意極まり無く。

アインズ様は この一件、私に好きな様に片を付けろと、そう謂われました。

そう、好きな様に…と。

ならば この私が書きましょう! 最高の脚本(シナリオ)を!

さあ、喜劇(ファルス)新章の幕開けです!

アインズ・ウール・ゴウン魔導国…魔導王アインズ様の名声を盤石とする、この茶番劇(ファルス)の主役は、今回の一団を率いる貴族…貴方々ですよ!

アインズ様自体は、この配下の愚行暴走について、聖王国女王に兎や角言う事は無いそうです。

アインズ様は本当に慈悲深き御方。

同じ支配者として、何か思う事でも有ったのでしょうか?

…しかし それはつまり、情けない話ですが、今の我々シモベが、未だアインズ様の至高なる考えに至っていない証拠でも有ります。

もしかして『え? 私達、また何か やっちゃいました?』なのでしょうか?

うぁ…ああああああーーーーーっ!??

何と不甲斐無い! 万死!…それ以外に言葉が浮かびません!

しかし、それを理由の自害を、アインズ様は絶対に赦されない。

死しての逃げを決して認めない。

早急にアルベド、そしてパンドラズ・アクターを呼び出し、『何が間違っているか』を話し合う必要が有ります。

…兎に角です。少なくとも今は、聖王国と本気で構える考えは御持ちにならない御様子。

後々の聖王国との繋がりを考え、絶対に無血とは言いませんが、それでも最小限の殺害に留める方向です。

それでは早速、その準備に取り掛かるとしましょう。

とりあえずは…

 

 

◆デミウルゴスside・了◆

 

▼▼▼

ローブル聖王国。

その聖都ホバンス聖王城の一角の、兵達の鍛練場。

 

「………………………。」

 

グィ…

 

少女は限界迄、弓を引き絞る。

眼光鋭き眼は彼方の的を見据え、その弦から手を放し、

 

ドスッ!

 

射たれた矢は、見事 的の弩真ん中に命中した。

 

グィ…ドスッ!

 

続く第2射。

今度は鏑が先に刺さっていた矢尻を弾き、またも的の真ん中を射る。

 

「見事だ、ネイア。」

「……。ありがとう、ございます。」

少女の射術に、この訓練に立ち会っていた上官らしき男が、少女と同類な眼…視るだけで人を●せそうな…鋭き眼を緩ませ、称賛。

これに少女は少しだけ複雑な表情を浮かべて、頷いた。

 

パチパチパチパチ…

 

「いやいや、本当に、お見事だ。」

「ナイス。」 

「「!??」」

其処に、柏手と共に、やはり少女を称える声。

不意に投げ掛けられた言葉に、少女と男が その方向に顔を向けると其処には、

「や、後輩。久し振り。」

「せ、先輩? 」

「マカロン殿?!」

迷彩柄のメイド服を着た小柄な眼帯少女と、黒髪紅眼の長身の男が立っていた。 

予定、或いは予想の外の来訪。

少女と上官の男…ネイア・バラハとパベル・バラハの父娘、特に娘のネイアの方は、この突然の再会に驚きの顔を隠せなかった。

 

≫≫≫

 

◆ネイアside◆

び、びっくりしたぁ~っ!?

シズ先輩とマカロン様が聖王国に訪れた理由は、分かっている。

魔導国へ向けて挙兵した、第4聖騎士団の件に決まっている。

 

「カルカ女王には既に、話を通している。」

「後輩、アナタは連中が如何なる最期を迎えるかを見届け、この国の女王に報告する役目に任命された。」

「え゙?」

「そーゆー訳で後輩、さっさと用意する。

さぁ、はりーはりー。」

「え゙? え゙ぇ?!」

ちょ…急過ぎませんか?!

 

≫≫≫

「しかし、騎士団の1つ丸々、よく動かせた物だな。」

「第4聖騎士団リーダーのガラハンド男爵の妻が、今回の騒ぎの大元であるメッツァー伯爵の娘でな…」

「成る程。理解した。養子かマスオさんなのだな?」

「うむ。『マスオサン』という言葉は知らんが、多分それで合っていると思うぞ。

兎に角そんな訳で、男爵は伯爵には逆らえないのだよ。」

聖王国弓兵隊の正装に着替え、鍛練場に戻ってみると、マカロン様とお父さんが、国内の事を話していた。

 

「ふん…あらゆる意味で、情けない男だ。

…む? ネイア、遅いぞ!」

…って、何でレメディオス様も此処に居るのですか?

 

「あー、後輩ちゃん。何故かは知らんが、この のーきん隊長も一緒になったから。」

「だ、誰が脳筋だ!?」

「…………………………………。」

聞いてみれば、レメディオス様自らが、女王様に魔導国行きを志願したらしい。

聖騎士筆頭である自分が魔導国の側に立つ事で、相手側に自分達が間違っている事を知らしめるのが狙いだとか。

 

「今回、此方はアンタの妹から『好きにしろ』と言われているんだ。

同行、立ち合いは構わんが、此方の殺り方に文句は勿論、邪魔立ては、するなよ?」

「…そんな事、貴様に言われずとも解っているわ!」

な…何だか凄く、不安なんですけどぉっ?!

 

≫≫≫

マカロン様の転移魔法で、魔導国首都エ・ランテルに移動。

今回の迎撃の責任者(リーダー)を務める、魔導国にてマカロン様と共に英雄と呼ばれている、もう1人の魔導国公爵・漆黒のモモン様の御屋敷に着きました。

 

「おお、御客様で御座るか!

いらっしゃいませで御座る!

ほらほら、デスナイト君も挨拶するで御座るよ!」

『……………………。(ペコリ)』

最初に出迎えてくれたのは、強そうな魔獣と凶悪そうなアンデッド。

しかも魔獣は喋ってるし?!

こんな とんでもないモンスターをペット?にして飼っているなんて、モモンという人物も、マカロン様と同等な強者なのだと解る。

 

≫≫≫

「初めまして…ですね。聖王国の方々。」

メイドさんに案内された屋敷の応接間には…この人がモモン公爵かな?…優しそうな顔をした黒髪の男の人が。

 

「………………………………。」

そして、何か不機嫌そうな?性格が少しキツそうな顔立ちの、同じく黒髪の女性(美女!)が。

 

「さて、それでは早速、今回の打ち合わせに入りましょう。」

そしてそして この前、魔導王やマカロン様と共に聖王国に訪れていた、仮面の…今は素顔の…悪魔が。

 

「………………!!!!!!」

うわぁ…(©先輩)

この悪魔さんを見て、レメディオス様が黒髪女性以上の不機嫌顔を隠す気も無く全開させた。

気持ちは理解出来ますが、せめて…せめて その殺気だけは、仕舞って下さい。

 

「先ずは前提として、件の賊共の駆逐は、魔導国内に入ってからとなっております…」

 

≫≫≫

魔導国に襲撃を仕掛けようと進軍中の、メッツァー伯爵とガラハンド男爵の一団。

此等が魔導国領内に入るのは、まだ先の話だと言うので…既に使い魔を見張りに憑けて、魔導国入りは直ぐに分かる様になっているらしいです…それ迄は待機。

 

「良いな! また当日には、絶対に迎えに来いよ!」

「…はいはい。」

レメディオス様は我が儘を言って、聖王国に戻られました。

魔導王(アンデッド)の国に泊まりたくないのは解りますが、もう少し言い方が…

マカロン様なんかは気にしてない様子でしたが、下手しなくても その態度、国際問題ですよ!?

 

≫≫≫

「いらっしゃい。話は聞いています。

貴女がシズの友達ですね。」

「よょ、よろしくお願いします。」

そして私は街の宿屋…で無く、マカロン様の御屋敷に。

()()()が来る迄、此処に御世話になる事になったのです。

マカロン様の奥様…先輩の お姉さんが出迎えてくれましたけど、凄く綺麗な人!

先輩から聞いていたけど、本当に おっぱい大っきい!メロン?スイカ?

 

≫≫≫

「おお! アンタがシズちゃんの後輩っスか?

ネイアちゃん…ネイちゃんて呼んで、良っスか?良っスね?」

「………………………。」

「初めましてですね。」

「お肉、食べるぅ?」

その日の夜。

御屋敷に先輩の他の姉妹の皆さんも やって来ました。

昼間の打ち合わせで同席していた女性も、先輩の お姉さんだったみたいです。

先輩が言うには この場には居ないが もう1人、末妹さんが居らっしゃるとか。

 

「はいはいはい、ネイアさんは お客様なのですから、余り騒がしくしないの。特にルプー。」

「その通り。あんまり恥ずかしい真似は、しない。特にルプー。」

「ど、ドイヒー!?」

凄く、仲が良さそうな姉妹です。

私は1人っ子だから、こういう賑やかなのには憧れますね。

 

≫≫≫

「…黙れ、妹。」

「違ぁあう! 私が、お姉ちゃん!」

「ちょちょ、シズちゃんもエンちゃんも、お客様の前っスよ~?www」

「「うがーーーーーーーーーっ!!」」

「ちょ…先輩?エントマさん?」

「大丈夫よ。何時もの事だから。」

………………………………………。

本当に、仲が良さそうです。

私は1人っ子だから、こういう姉妹ケンカも、少しだけ羨ましく思えますね。

 

≫≫≫

そして、それから10日が過ぎ。

メッツァー伯爵・ガラハンド男爵の率いる軍は、リ・エスティーゼ王国を大きく迂回して(王国を通り抜けるのは無理だった様です)、魔導国内に浸入してきたとの報せが来たそうです。

因みに昨日迄は先輩に連れられ、エ・ランテルを中心に魔導国の 観光 視察をしていました。

魔導国の街の雰囲気、発展具合…聖王国も見習うべき部分が幾つも有りました。

少なくとも あいすくりーむ、くれーぷ等、すぃーつの お店は、聖王国でも取り入れてオープンさせるべきです!

 

「おお、見えてきた見えてきた♪

あれは確かに、聖王国の旗だ。」

メッツァー伯爵の一団が、近付いてきたみたいです。

エ・ランテル城門前でマカロン様が遠眼鏡を覗き、状況を解説。

それを討つべく待ち構えているのは、マカロン様、モモン様にナーベラルさん、デミウルゴスさん、それから先輩。

 

「ふふん。殿に仇為す者共…覚悟するで御座るよ!」

そしてハムスケちゃんに、アンデッドの騎士と、見るからに頑丈そうなゴーレムの大軍。

 

「ふん…恥晒しが!」

そしてそして、苦虫を噛み潰した様な顔の、レメディオス様。 

これに私を加えたのが、魔導国側の顔触れです。

 

「カルカの顔に泥を塗った痴れ者共…絶対に赦さぬ!」

あの、レメディオス様?

今回の私達は、あくまでも見届け役で、手出しは無用なのですよ…と言っても、この 脳筋 ヒトは、絶対に突撃するのでしょうが。

 

「…モモン、だったか?

本当に、手助けは不要か?

ガラハンドの持つ剣は冷属性を持つ、それなりに強力なマジック・アイテムだ。

お前も立派な大剣を持っているが、大丈夫か?」

レメディオス様…そんなに戦闘に加わりたいのですか?

尤も、身内の不始末は、自分で片付けたいのは理解出来ますが。

一応 私も、弓兵の装備で身を固めていますし。

 

「ふっ…」

しかし、漆黒の全身鎧を纏っているモモン様は、余裕な様子。

 

「Ich brauche keine runterdrücken von Furz!」

「「うわあ…」」

そして この台詞。思わず先輩とハモってしまう。

何を言っているのかは分かりませんが、兎に角 凄い自信です?

 




 
 ( ー_ー)つ[辞書(独)]
  
今回のラストは、モモン(パンドラ)の台詞で締めると決めていたので、普段と比べて結構 長くなってしまいました。
 
≫≫≫
 
【次回予告】
 
◆まろんside◆
魔導国に攻めてきた、聖王国の一団。
はっきり言って、俺達の敵じゃないが、向こうさんのリーダー格が持っている大剣だけは、其れなりに厄介な代物。
氷の様な刀身から、吹雪系魔法(ブリザード)みたいな攻撃を繰り出してきた!
ユグドラシルじゃない、現地産レア・アイテムだ。
こういうのが大好きな骸骨さんを、俺は1人、知っているのだが…
 
『まろんサン、ちょっと良いですか?』
ん? 噂をすれば、《伝言(メッセージ)》?
 
次回『●してでも奪い盗れ(予定)』
乞う御期待! うわっ? 何をする貴様等ー?!
   


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Sacred Club②

 
最初は前回から続き、ネイアちゃん視点で
 



◆ネイアside◆

「ふっ、堂々と聖王国の旗を掲げての御出座しか。」

魔導国に攻め入ろうとしている、聖王国の一団。

遠眼鏡で それを見たマカロン様は、何やら感心している様子。

 

「何処とは言わないが、他国なりすましで虐殺行為してる国が()()()()(過去形)(カッコカコケイ)

まあ、敵対するなら どちらにしても、殺すがな。」

「………………………………。」

しかし、自国に危害を加えようとする者には、容赦は無いみたいです。

 

「それではモモン氏。手筈通り、先ずは私が。」

「うむ。任せたぞ。」

 

バサ…

 

先日の打ち合わせ(ミーティング)で決まった通り、先鋒役の悪魔(デミウルゴスさん)が翼を広げ、先陣を馬で疾走する一団の元に飛んで行きました。

…って、そのデミウルゴスさんに向けて、大量の矢が放たれた?…悉く弾かれてますけど。

…って、その矢を射った弓兵団が、青い爆炎に包まれた?

 

「うわぁ…これは、死んだ。」

冷静ですか、先輩!?

最初の予定では、あくまでも平和的に…

デミウルゴスさんがメッツァー伯爵に撤退勧告をして、それに応じてくれれば それで終わっていたのに!

勧告する前に これじゃ、もう戦闘待った無しじゃないですか!

 

「そりゃ、悪魔が飛んできたら、普通は攻撃するだろう?…ローブル聖王国だぞ?」

ですよねー!…って、レメディオス様?

そう思っていたなら、ミーティングの時に それ言って下さいよ!

ひょっとしなくても、あわよくば『それで殺られてしまえ!』とか、考えていましたよね?!

 

「…後輩ちゃん、もしかしてツッコミの才能が有ったりする?」

「流石は後輩。味が有る。」

いえ、別に嬉しくないですから!

と言うか! 他人(ひと)の心の声に、応えなくても良いですから!

 

「「やっぱり才能だ。」」

息ピッタリですね、この義兄妹!(…もう、良いです。)

 

 

◆ネイアside・了◆

 

≫≫≫

 

◆デミウルゴスside◆

先ずは、予定通り計画通り…ですか。

彼方が先に、攻撃してくる事も含めて。

私の攻撃を合図に、パンドラズ・アクター…いえ、モモン達も突撃を開始してきました。

この程度の人間の集団、私1人 一撃で全滅させる事も可能でしたが、折角 聖王国から客人を招いているのです。

簡単に終わらせるのは、勿体無い。

とりあえず この先は、モモン達に任せましょう。

…が、くれぐれも、殺り過ぎないようにして下さいよ?

 

≫≫≫

「只今、戻りました。」

「お疲れさん。」

此方の本陣と言うべきでしょうか?

エ・ランテル城門前に帰還すると、まろん殿から労いの言葉を掛けて頂きました。

勿体無き事です。

 

「………………………………!!!」

此の場には今、まろん殿の他には聖騎士団長と、シズの後輩なる少女が。

まろん殿は今回、()()は この2人の護衛役となっているのですが…その、聖騎士団長の方が、私を何やら仇の様に睨み付けています。

如何に聖王国の人間としても…私が悪魔という事を差し引いても、この憎悪溢れる視線は尋常じゃありません。

私、貴女に何かしましたか?

 

≫≫≫

「始まったな…」

「…ですね。」

「な…何が どうなっているのだ?!」

遠眼鏡を覗く まろん殿の呟きに、相槌。

モモン、ナーベラル、シズ、ハムスケ。

そしてデスナイトとゴーレムの軍勢と聖王国の一団が衝突。

一方的な蹂躙劇が繰り広げられる中、敵方の大将と思われる人物が、モモンに対して一騎討ちを申し込んできた様です。

想定通り。

恐らく向こう側からすれば、その勝利を条件に撤退を認めさせる…と言った処でしょうか。

まさか、奇襲の心算が、まさか迎撃準備万端で待ち構えていたのが、予定の外斜め上でしょう。

勿論、此方は それすら、計算に入れていました。

向こうから攻めてきてきたのですから、本来ならば その様な要求、飲む必要も義理も無いのですが、そうなった場合、敢えて受ける様に、パンドラズ・アクターには指示を出しています。

 

「クソ…! 恥知らずが!」

まろん殿の《兎の耳(ラビッツ・イヤー)》で彼方側の やり取りを聞いての説明に、聖騎士団長が更に顔を歪めて吐き捨てます。

  

「メッツァーもガラハンドもバカなのか?

仮に 其処で勝利した処で、本国に戻れば処罰止む無しだと理解出来ないのか?」

全くですね。

そして この乱戦の様子は、アインズ様も遠隔視の鏡(ミラー・オブ・リモート・ビューイング)で御覧なられている。

つまり、今から一騎討ちが行われるのも承知。

…だとすれば、今頃は既にパンドラズ・アクターに《伝言(メッセージ)》で()()を出しているでしょうね?

 

 

◆デミウルゴスside・了◆

 

≫≫≫

 

◆まろんside◆

さて、PVPの始まりだ。

対峙するモモン(パンドラ)と敵さん隊長。

のーきん団長の情報通りに、アイスソードとでも言うべきか?

ザリュースが持っている氷の剣と同系統っぽい大剣で、ゴーレム相手に無双していたが、それは目立ち過ぎだ。

絶対にコレクターのモモンガさん、パンドラにPVPの戦利品要求する様に命令出してるぜ。

…っと、パンドラのグレート・ソードの間合いの外から、《絶対零度(アブソリュート・ゼロ)》みたいな魔法?攻撃みたいなのを放ってきた。

 

「や、ヤバイぞ!」

遠眼鏡(俺の予備)で彼方を覗いている のーきん団長が叫んでいるが、俺達は全く心配していない。

当然、パンドラはダメージを負った素振りは見せず。

 

「ば、バカな…?!」

それを見て、驚く のーきん団長。

のーきん団長曰く、あのガラハンドなる男は、自分より少しだけ弱い程度の強者だそうだが、それも所詮、聖王国基準だろうに。

 

「大丈夫だ。モモンは のーきん団長に圧勝した、ブレインよりも遥かに強い。

まあ、俺よりかは弱いけどな。」

「な…?!って、その呼び方は止せと言っているだろうがっ!」

 

 

◆まろんside・了◆

 

≫≫≫

 

◆パンドラside◆

「ば、バカな…?!

今の攻撃を受けて、全く平気だと…」

聖騎士団部隊長を名乗る男が、信じられない様な顔になっています。

Aber!これが現実ぅ!…なのです!

その程度の攻撃、この私には全く効きません!

 

「…ならば!」

そう言って、また精神を集中させている敵隊長。

はっきり言って、隙だらけです。

私、基本的に殺生は好みませんが、ナザリック…()アインズ様に刃を向けるならば、話は別。

微塵の躊躇も有りませんよ?

しかし、このタイミングで攻撃を仕掛けると また まろん殿から『お前はプロレスを分かっていない』とか言われるのは必至。…『ぷろれす』って何なのですか?

 

「…行くぞ!」

そう思案している間に、次の攻撃に必要な()()は充ちた様ですね。

 

エターナル・フォース・ブリザード!!

 

ヴォォオォッ!

 

先程と同じく、刀身から氷属性魔法の様な攻撃。

成る程…これは中々の攻撃。

此方の世界のヒトからすれば、耐え得るのは極々限られた者に…大抵の相手なら、死ぬでしょう。

…私には、効きませんけどね!

 

「今のが暴威の吹雪(フォース・ブリザード)とは、大層な名前だな。

まるで、そよ風だ。」

「ば…馬鹿な!?」

信じられない様な顔、再び。

最高に狼狽える敵隊長ですが、これが現実です(2回目)。

もう、良いでしょう?

余りの舐めプは、負けフラグ…でしたな?まろん殿?

 

「…では、次は私の(ターン)だな。」

はい、せめてもの情けです。

サクッと殺して その氷の大剣、貰い受けるとしましょう。

ええ。彼が勝てば、その他の者の撤退を認める代わり、私が勝ったなら、その剣、頂くのは事前に約束しましたからね!

 

 

◆パンドラside・了◆

 

≫≫≫

 

◆まろんside◆

相手の大技(笑)を凌いだモモンの、グレート・ソード二刀流。

鋭い振りで、刀身を左右に交差させての斬撃。

ネーミングセンス残念MAXなモモンガさんの数少ない、()()判定な(ネーム)、『大鋏』だ。

これによって、ガラハンドだったか…は、上半身と下半身が完全分離。即死だ。

その結果に、残りの敵さんが逃げるかの様に四散するが、パンドラ達が それを認める筈も無い。

ナーベラル、シズ、ハムスケ。

そしてデスナイトとゴーレム軍団、更には この逃亡阻止の意味で伏せていた上位ゴーレム(ユグドラシルでは中位)、アマダンタンクの大群が姿を現し連中を囲み、その逃げ道を塞ぐ。

 

「…………………………。」

「何か?」

「な、何でも無いっ!」

のーきん団長が如何にも何か言いた気な、そんな顔をしていたので尋ねてみると、この返し。

パンドラが繰り出した惨殺に物申したいが、それも戦場の理として理解、そして無理矢理に納得しようとしているのだろう。

さて、これで一応は決着した様な物だが、のーきん団長と後輩ちゃんには伝えていない、これからの展開…

本番は寧ろ、これからなんだよなあ? 

 

 

◆まろんside・了◆

 

▼▼▼

 

 

思った以上に、使えない者でしたね…

 

 

「「「「「!?????」」」」」

聖騎士ガラハンドの屍から、その声は発せられた。

その不気味な声に、聖王国からの一団は戸惑いを隠せず。

 

「何者だ! 隠れてないで姿を見せろ!」

それに対してネタバレしているモモン(パンドラズ・アクター)は威風堂々。

その姿を消してているナニカに向かって、声を轟かせた。

 

 

ふふふ…良いでしょう。

モモン…そしてマカロン。魔導王陛下が認めている、この国の最大戦力!

 

 

すると今度は、モモンとガラハンドの一騎討ちの前、ゴーレムに踏み潰された死体から声が。

  

「な…何が どうなっているんだよ?!」

自身の常識の外の展開に、聖王国の兵士達は慌てふためく。

 

 

この2人を纏めて屠る機会、度々と訪れる事も無し。

 

 

そして次は、その場に茫然と立っている、聖王国側の兵士の口から声が。

聖騎士で無く、極々一般の青銅・鉄製装備の兵士だ。

 

「…え? 俺…?!」

しかし その兵士も何故、己の口から その様な声が…

自身の意思で喋った訳でも無しな理解不能な状況に、その表情は戸惑い、動揺を隠せない。

   

 

ならば此の場にて、滅する事に しましょう!

  

 

「…………………?!っうっぁあああ!?」

謎の声が収まると同時、その兵士が、苦し気な呻き声を上げる。

 

「おい? どうした!? 大丈夫か?!」

その普通で無い苦しみ具合に、その隣に立っていた兵士が心配そうに声を掛けるが、

「ぐ…ぐわがああぁぁあーっ!!

 

バリッ…ブシャァアッ!!

 

人が出す声とは思えぬ雄叫びの後、この兵士の体が鮮血を散らしながら、縦真っ二つに裂けた。

 

「「「「「う…ぁわぁぁぁあっ!!?」」」」」

その周囲に居た兵士達が、夥しい血飛沫を全身に浴びると同時、その凄惨な光景に腰を抜かして倒れ込んでしまう。

 

「ふぅ…狭かったですね。」

「「「「「…???!」」」」」

そして その裂けた兵士の中から姿を見せたのは、赤橙の背広(スーツ)に銀の装甲が為された尻尾、そして嗤い顔を浮かべた造型の黒い仮面で顔を隠した…

 

「ああぁ…く…ぅっ?!」

…悪魔、だった。

 

「その姿…! そうか、貴様が…」

「漆黒の英雄モモン…

貴方とは、初めまして…ですね。

そう! この私こそが!」

「ヤルダバオト…!!」

「…御名答。」

 

 

≫≫≫

 

◆デミウルゴスside◆

はい、種明かし・ネタばらしの時間です。

先ず、あのヤルダバオトは、ナザリックのガチャ・モンスターのドッペルゲンガーを私に化けさせた偽者(コピー)

それを、聖王国兵士…時期としては、彼等が聖王国を出て、リ・エスティーゼ王国領を進んでいた時に、雑兵の中からランダムに1人選び、憑依させていたのです。

折角 魔導国に攻め入ろうとする愚か者が居たのです、有効に活用せねば。

ああ、その者は、ヤルダバオト(偽)登場と同時、普通に死にましたよ。

体が縦に裂けたのです。それで生きているなら、それこそ化け物ですよ。

 

「…何ぃっ?!」

そして、兵に憑いていたのは、ヤルダバオト(偽)だけに非ず。

指揮官格を除いたランダムですが、数にして約500。

一般兵にヤルダバオトの配下という設定の悪魔を憑依させておりました。

ヤルダバオトの演出同様、正体を見せると同時、死ぬ仕様です。

その演出は、様々。

ある者は、身体の皮が裏返り反転しての変化。

また ある者は、口の中から吐き出す様に姿を見せ。

また ある者は突然 体を燃え上がらせ、その炎の中から その身を現し。

 

「あぁあ、悪魔ァッ!」

「…デミウルゴスです。」

 

グィッ…!

 

その光景を遠眼鏡で見ていた聖騎士団長が、いきなり私の胸元を掴み上げてきました。

人間如きが この様な行為…本来なら即 殺す処ですが、今回は何を考えているかは察しているので、一応 話を聞いてみましょう。

 

「な、何なのだ、あの悪魔は?!

貴様と全く同じ姿ではないか!?」

「先日の裁判の後、アインズ様達が説明したでは有りませんか。

アレこそがアインズ様に敵対する悪魔、ヤルダバオト。

私としても誠に不快ですが、私と同郷同族な存在なのですよ。」

「クソッ…!」 

 

ダダダッ!

 

「…何処へ?」

「決まっているだろう! あの悪魔を、討つ!」

私から手を離し、魔導国、聖王国、そしてヤルダバオト率いる軍勢が入り乱れる戦場に走ろうとする、聖騎士団長。

 

「待ちなさい。此度の戦闘、貴女達は単なる見届け役の筈。

手出しは無用の約束でs

「言ってる場合か! 既に無関係な悪魔の横槍が、入っているのだぞ?!」

成る程、そう来ましたか。それならば、ごもっとも。

 

「あの悪魔はアインズ様に仇為す存在。

私としても、放置は出来ませんね。

聖騎士団長殿、御一緒致しましょう。」

「ふん、共闘は せんぞ! 生憎 私は悪魔に預ける背中等、持ち合わせてないのでな!…マカロン!」

「何だ? のーきん団長?」

「ネイアを…頼む。」

「…了解。頼まれた。」

シズの後輩の少女…ネイア嬢は この戦闘は荷が重いとしたか、まろん殿に その儘 護衛を頼み、まろん殿も それを承諾。

 

≫≫≫

「ヤルダ…バオトぉおっ!!」

雑魚の悪魔を蹴散らしながら、モモンと戦っているヤルダバオトの元に馳せ参じた聖騎士団長と私。

そして聖騎士団長が、ヤルダバオトの名を絶叫。

 

「答えろ! 貴様…貴様が、我が国の民を陰で惑わし、この騒ぎを起こしたのだな?」

成る程。聖騎士団長殿は、ヤルダバオトが今回の黒幕と判断しましたか。

 

「それは誤解ですよ、聖王国の騎士殿。

私は只、貴女の国の民が起こした進攻に、便乗させて貰っただけです。

しかし まさか、街の外で魔導国の皆様が既に待ち受けていたとは…」

「何だと?」

しかし残念ながら、聖女王…そして魔導王(アインズ様)憎しとして事を起こしたのは、本当に聖王国の所謂 過激派と呼ばれる民なのですよね。

私は、それを利用させて貰っただけです。

 

「全く使えない! 何が聖王国聖騎士団ですか!?

私としては、この者達が魔導国首都に侵入、ある程度の破壊殺戮の末に正体を明かし、魔導王様の城を襲撃する予定だったのですが…

まさか街の外で足止めを喰らい、その後は情けなく逃げ出そうとするとは…」

「何だと!…貴様ァッ!?」

「下がっていて…落ち着いて下さい、聖騎士団長殿。

相手は悪魔。冷静さを失えば、それこそ相手の思う壺ですよ?」

「…っ!…(チィッ!)

…女性の舌打ちは、はしたないですよ?

身内を蔑まれ、頭に血が上っている聖騎士団長を後ろに退げます。

 

「ヤルダバオト! 貴様、何を考えている? 何が、目的だ?!」

その代わりに、前に出るのはモモン。

 

「目的? 何を今更? 私の存在意義は、魔導王陛下…アインズ様に仇為す事…私は その様に創られたと云うのは、既に承知でしょう!

まあ…今日の事を具体的に言うならば…

私は この魔導国を楽園に変える為に、やって参りました!

「楽園…だと?」

「その通り。

絶叫が! 呪詛が! 慟哭が!

それ等が永遠に木霊し響き渡る様な、そんな楽しい国に、私は したいのです。」

「「巫山戯るな!!」」

 

ダダッ!

 

そのモモンの問い質しに対するヤルダバオトの応えに、モモン、そして聖騎士団長が怒声と共に突撃。

しかし、ヤルダバオトの今の台詞。

台本には無かったのですが、流石は私の複製(コピー)

見事なアドリブのスキルです。

 

「おっと? 危ない危ない?」

「くっ…!」

そしてモモン達の攻撃は、簡単に躱します。

 

「ヤルダバオト、率直に申し上げます。

貴方がアインズ様に刃向かう行為は無論の事、私と丸被りな その姿 そして その声、非常に不愉快です。

…故に、死んで戴きます。」

そして、私の出番。

これは同じ場所に何時までも、同じ姿格好の者が居るのは何かと ややこしく紛らわしい事を考慮しての()()

 

「いきなり、失礼な物言いですね。

しかし、確かに丸被りな容姿は紛らわしいのも また事実。

良いでしょう。私の真の姿…見せて差し上げましょう!」

その振りに乗る、ヤルダバオト。

 

ずずず…

 

ヤルダバオトの姿が、人型の悪魔から獣の様な異形に変化していく。

 

「貴様…その、姿?」

「ゲゲゲ…どうよ?」

以前の原型を留めぬ姿に、聖騎士団長も驚愕。

その姿は深紫の体毛、背に蝙蝠の様な翼を生やした大猿の様な異形。

更には口調、人格(キャラクター)も変わっています。

 

「ふん…私には、弱体化した様に見えるがな。」

そう言って、モモンが前に出る。

最初の予定では、此処で私とモモンが、この変身ヤルダバオトと ある程度の戦闘をこなし、次の段階(ステージ)に話を進める事になっていましたが、此の場に聖騎士団長も居るのは予定外。

はっきり言って邪魔、足手まといです。

私は勿論の事、仮にモモンが「危険だから下がれ」と言った処で、素直に聞き入れる人物では無いですよね。

…かと言って、一緒に戦う中で死なせてしまえば…一応 彼女は今、魔導国(こちら)側の、しかも客人としての位置に居るのですから…それはアインズ様の名に傷を付けるも同意。

しかし、彼女を気遣い、互いに(ヤルダバオト共々)威力を抑えた遠慮した戦闘をする訳にも往かず。

それこそ本当に、茶番劇です。

 

「…………………?!」

それはヤルダバオトも理解している様で、『デミウルゴス様、一体どうすりゃ良いんですかい?!』…と、目で訴え掛けています。

 

「仕方、有りませんね。

…《超硬化完全防御(アストロン)》。」

「な…キサm」

ならば、この聖騎士団長は安全的に強制退場して貰いましょう。

これなら、物理に魔法…如何なる攻撃も(ついでに回復や支援(バフ)も)無効化されますからね。解呪(ディスペル)系以外。

そしてヤルダバオトには、ソチラ系のスキルは持たせておりませんので、御安心を。

 

ぶぉおわぁっ!

 

ヤルダバオトも それを見て安心したか、迷い無く闇炎吐息(ダーク・ブレス)を吐いてきました。

この世界基準で言えば、"英雄級"と呼ばれる者ですら、瞬殺出来る威力です。

 

「………!?………………!!!!」

何やら また、聖騎士団長が騒いでる気がしますが、今の貴女は《超硬化完全防御(アストロン)》状態ですから、全くの無問題ですよ。

そして これは、私とモモン(パンドラズ・アクター)にも、大したダメージは受けません(多少は受けます)。

 

「でぇぃやっ!」

 

斬ッ!

 

「ぐおっ?!」

これに対して お返しとばかり、モモンがグレート・ソードの一閃。

 

「喰らいなさい!」

 

ボォゥワッ!

     

更には私が、《冥獄蒼炎(ブルー・フレイム)》で追い打ち。

 

「………!!!!!!!!!」

聖騎士団長が また何が 言っている気がしますが、気のせいでしょう。

 

「ちぃっ、おのれ…!」

そしてヤルダバオトは配下の悪魔…特に防御に優れた者達を、己の盾とするべく呼び寄せましたか。

メタル・イビル…攻撃は大した事は無いですが、最上位の無属性以外の全ての魔法系スキルを無効化、物理防御にも優れ、生半可な攻撃は通用しません。

そしてHPも それなり…

誰ですか? こんな面倒臭いモンスターを今回の計画に組み入れたのは?!←私でしたね。

さて、どうした物だか…ん? ()ん?

おお、()()()()()()() ()()()()()()()()()()()()()じゃあないですか!

…悪魔の諸相:豪魔の巨腕!

    




ガラハンド…ガラハド(ロマンシング・サガ/PS2版)
変身ヤルダバオト…バズズ(ドラクエ2)
…のイメージで
憤怒の魔将(イビルロード・ラース)じゃないです。
 
≫≫≫
今回はサブタイトルで、オチを察してしまったかな~?(笑)
 
次回『白銀の矢!(予定)』
 


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