気づいたら殲滅者 (天魔のウサギ)
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おもに練習として書いていくので、読みづらいと思います


雲が空を覆い尽くしていた。

雨が降ってくる、しかし、それは普通の雨ではなく、赤い色をしている。

その中、大きな木の下で少年が雨を凌いでいた。

 

「・・・いる?美耶子」

 

少年が名前を呼ぶ。しかし少年の傍には誰もいない。

少しの間が開き、少年は満足そうな顔をした。

 

「俺は、もうダメかもしれない」

 

誰かに伝えるように話す少年。

 

「だけど、それでも、約束は守るから・・・」

 

少年は笑顔を浮かべ、そして倒れた。

 

 

==========

 

目を開けるとそこは奇妙な森だった。

起き上がり、辺りを見回す。初めて来たはずなのに、この森には何故か見覚えがあった。

 

「ん~どこだここ?」

 

俺は散策をすることにした。

そして歩き回っているうちに、自分の異様さに気付いた。

まずは服装、緑のジャケットにジーンズというどこにでもありそうな格好だが、血がベットリ付いていた。

そして持ち物、左手に人形、右手に刀、両肩から下がっている猟銃、そして腰にある戦極ドライバー・・・。

 

「ああ、ここヘルヘイムの森か!!」

 

戦極ドライバーを見て、やっと自分がヘルヘイムの森にいることに気付いた。

そして俺はもう一度装備を見て、また気づいた。

 

「あれ、これって宇理炎じゃね?」

 

刀の刀身を見る、するとそこに映っていたのは紛れもないsirenの須田 恭也。

血の気が引いた。これは夢か? そう思い木に頭を打ち付ける。

うん、痛い。どうやら夢じゃないみたいだ。

 

「なぜこうなったし・・・」

 

そういって頭を捻る。それから三時間後、やっと思い出した。

 

「そういえば、転生したんだった」

 

女神に間違えられ殺され、転生。よく二次創作であるやつを体験した。

そのときいくつか特典をもらった。戦極ドライバーはそのうちの一つ。

でもこれは転生じゃなくて、憑依じゃないか?・・・・・ああ、また間違えたのか。

 

「さて、ここから出るか!」

 

全部思いだしたため、もうここに用はない。ここから出るため俺は変身した。

 

――オレンジッ!――

 

――オレンジアームズ! 花道 オンステージ!――

 

「よし! 何があるかわからんもんな」

 

ロックビークルを出す。生身でもよかったんだが、何があるかわからないため変身した。

ロックビークルに乗る。俺は発進した直後から全開で走る。

すると瞬く間にクラックが出現。そして俺はヘルヘイムから消えた。

 

 

 

 

クラックを抜けた先、そこは大きな屋敷の広間みたいなところだった。

俺はビークルから降りて急いで出口を探す。長居しすぎると不法侵入者といわれそうだ。

 

「とりあえず奥に行くか」

 

ずいぶんと進んだ先、そこは行き止まりだった。

一人の少女が椅子に座り眠っているだけ。

それを見て俺は思う。起こして出口を聞くべきか、否か。

 

「う~ん、どうしよう。よく見るとなんかグッスリ眠ってるし・・・」

 

などとしているうち、少女のとなりには少女によく似た女の子が立っていた。

 

「貴様・・・何者だ?」

 

あっ・・・・・これ詰んだわ。




どうでしたか?


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「貴様・・・何者だ?」

 

黒髪の美少女がそんなことを聞いてくる。それに俺はどうしようか迷う、だって今の状況は少女に鎧を付けた武者が対峙しているようにも見えるっていうかそれしにしか見えない。

下手すりゃこのまま牢獄送り、それだけは絶対に避けなきゃならない。

だから!

 

 

 

 

「えっと・・・すみませんでしたあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 

 

 

とりあえず、謝る!!

俺は土下座をした。それから少し遅れて少女が声を漏らす。

 

 

「・・・はっ?」

 

「すみませんすみません、悪気はなかったんです。たまたまここにクラックが繋がっただけなんです」

 

そういって何度も頭を打ち付けるように謝る。そのたびにガツンッ!という音がして、振動で脳が揺れまくりで気持ち悪くなりそうだった。

 

「おっ、おい・・・私は怒ってなどいない! だから顔を上げて、私の質問に答えろ!」

 

 

俺の奇行とも呼べる行動に目を丸くする少女。

そんなこと言われてしまっては仕方ない、俺は顔を上げた。

少しグワングワンする頭を我慢して俺は答える。

 

「はい!質問ってなんですか?」

 

その際少女の顔が引きつったように見えたが気にしないことにする。

 

「まずはその・・・鎧か? それをどうにかできんのか?」

 

「あっ、はい、それじゃ・・・」

 

そういって俺は変身を解いた。その際、少女の目が見開かれ唖然とした様子で俺を見つめてくる。

それが凄く可愛らしくて、思わず携帯でパシャリした俺は悪くないはず。

 

「ハッ、貴様!何を撮っている!」

 

「いえ、何も?」

 

「いま、シャッターの音が聞こえたぞ!」

 

「そんなことより鎧、脱ぎましたけど。どうするんですか?」

 

「・・・・・分かった、これから言う私の質問に答えろ。いいな?」

 

「はい、わかりました」

 

それから俺は少女にいろいろな質問をされた。

さすがに転生しました、なんて言っても信じてくれないので適当に返しているうちに記憶喪失という面倒な設定で決着が付いてしまい。

生徒手帳の開示を要求され見せたところ、途端に彼女の顔が驚きで染まったため何事かと聞いてみて自分のミスに気付いたが、彼女の慈悲深さのおかげで彼女に保護されることになった。

その際、彼女――南宮 那月の実年齢を聞いて「合法ロリ・・・」と呟いてしまい、彼女の魔法で縛られたのは良い思い出だと思いたい。

 

 

「それで俺は、これからどうなるんですか?」

 

俺がそう言うと彼女は何かを企んでそうな笑みを浮かべて言った。

 

「貴様にはこれから、私の勤める私立彩海学園高等部1年B組に転入してもらう!」

 

「え?ええええええええええええええええええええええええっ!?」

 



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あれから一か月たった夏の日のこと。

南宮 那月 彼女に保護されることになった恭也。

彼は彼女のおかげで彩海学園高等部1年B組に編入という形で入ることになり現在、彼女が担任を請け負うクラスで自己紹介の真っ最中であった。

 

「じゃ、このバカに何か質問とかあるヤツいるか?」

 

那月がもはやテンプレになった言葉を言う。

しかし生徒からはだれひとりとして手を上げる者はいなかった。

それに対し引き攣った笑みを浮かべる那月。するとどうだろう、今まで上がらなかった手が次々に上がってくるではないか。

それを見て恭也は内心引いていた。

 

「ぜんぜん嬉しくねー」

 

「んっ?何か言ったか?」

 

「いえ?なにも・・・」

 

そういうと一言「そうか」といって続ける那月。彼女は大勢の生徒の中一人の生徒に狙いを付けた。

それはこそこそと身を低くして一つの空いている席へと向かう遅刻者。

あれで行けると思ってんのかな?―――恭也はそう思いながら不思議そうにそれを見つめていた。

那月がその遅刻者の名前を呼ぶ。

 

「暁古城!」

 

「はっ、はい!!」

 

勢いよく立ち上がる古城。そんな古城に対して那月は笑みを浮かべる。

 

「コイツへの質問を許可する、なんでもいいぞ?」

 

「はい! って、えぇぇぇぇ!?」

 

驚く古城を尻目に恭也は那月の方を向く、その顔は恭也からは笑っているというよりも嘲笑っているという方が正しいと感じられた。

ああ、可哀相に―――恭也はそう思うことしかできず、ただ犠牲者に冥福的なものを送るだけであった。

 

 

==========

 

 

一方指名された犠牲者、暁古城はただ困惑していた。それもそのはず、古城はなにも手すら上げていなかったのに指名されたのだ。

しかし時間は待ってくれない。心なしか早くしろよという視線での訴えが突き刺さってくる感覚を古城は感じた。

次第に焦り始める古城。

 

 

やばいやばいやばいやばいやばいっ!? 何か言わなきゃペナルティが!? ――――――

 

 

そう思っても、いや思ったからこそなかなか出てこないのがオチである。古城は那月に視線を向ける、そして背筋を凍らせた。

なぜなら彼女はいま、完全にこの場を楽しんでいるからであると分かる程の笑みを浮かべていたからである。

とりあえずテンプレートでもいいから言おう。そう思い古城は恭也に質問をなげかけた。

 

「えっと、彼女にするならどんな子がいいですか!」

 

「黒髪ロングの子がいいです」

 

キリッという効果音でも付きそうなぐらいのドヤ顔で、キッパリと言い放った恭也。

その瞬間クラスの反応は二つに分かれた。一つはドン引きしている者、そしてもう一つは担任、南宮那月に対する心配、この二つに分かれていた。

 

「あっ、そうっすか・・・ありがとうございます」

 

そんな古城も自分から質問しておいてなんだが少し引いていた。

 

==========

あのあと那月により制裁を喰らった恭也は一人、制裁を受けた理由が解らず唸っていた。

それに気を取られる間に一時限目が終わり、彼は現在質問をしてきた古城から説得を受けていた。

 

「おい、マジで那月ちゃんは止めとけよ。命がいくつあっても足りないからな!」

 

「いや、さすがに合法ロリは入れてないから大丈夫だって」

 

その場に本人がいたら制裁どころか、マジで殺しに掛かれそうな内容を平然と話す二人。

その二人を見て呆れながら一人の女子が注意してくる。、彼女は金髪にピアスなどという不良ぽい格好だったが、どこか大人しめの印象を与える。

 

「こら、そんな話してたらまた那月ちゃんから制裁喰らうわよ?」

 

「おお、浅葱か。そんな怖いこと言うなよ」

 

その女子の名前を呼ぶ古城、そして二人で話を始める。彼女か?―――――恭也はそんな二人に加われずに一人誰だろう、いやどうせ彼女かと考えていた。

そこでボッチになっている恭也を見かねたのか、一人の男子が横やりを入れた。

 

「おーい、そこまでにしとけよバカップル。転校生が困ってるぞー」

 

いうやいなや突然少女が固まる。そして頬を赤く染めながら叫んだ。

 

「だ、誰がカップルよ! 誰が!」

 

「えっ、違うの?」

 

「いや、恭也ちがうからな!?」

 

恭也に向かって焦りながら言う古城。恭也はそんな古城を半目で見て笑う。

ああ、そういうことね。あの子も可哀相に―――――恭也の目線にには明らかにショックを受けている女子の顔。それだけ見れば恭也にも解った、この子は古城のことが好きなのだと、そして古城はそんな女の子の気持ちに気付かない程の俗に言う唐変木なのだということが。

 

「よし、俺らの紹介がまだだったよな。俺は矢瀬 基樹、よろしくな!」

 

自分から振っておいて話を遮り自己紹介をし始めた男子、基樹。その顔は笑っていたが、いかにもやっちまったから話題を無理矢理変えたという心境が読み取れた。

そんな基樹のことも知ってか知らずか浅葱と呼ばれた女子も続くように自己紹介をする。

 

「あっ、私は相羽 浅葱。よろしくね恭也」

 

「俺はさっき那月ちゃんが言ったからわかると思うけど暁 古城だ。よろしくな」

 

「おう、よろしく頼むよ」

 

そうして夏休みまで特に何もない普通の日々が続く。

 




暑くてパソコンしてるとふらふらするこの頃・・・


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4

どうも4話だけに、4年ぶりです(激寒)
ぶっちゃけると手詰まりで投げて忘れてました。(見切り発車の末路)

若干期待してくれた方々ごめんなさい。(見てくれる人いないと思うけど)

*念のため【気まぐれ更新】を付けときます


午後二時、お昼時が過ぎたファミレスの中は学生たちの割合が多くなっていた。

恭也たちもその中の一つだった。現在、恭也の隣でせっせと追試に追われている親友、古城の手助けする代わりにファミレスでなんか奢るといことで恭也たち三人は集まったのである。

 

「今、何時だ?」

 

ふと古城からそんな呟きが漏れた。ぐでっとテーブルに突っ伏している古城、それに恭也は呆れながら言葉を紡いだ。

 

「・・・そんなこと言う暇あったら手、動かせ・・・」

 

「うぐっ・・・」

 

言い返せないのかうめき声を上げる。だが、実際問題どうこうしている暇など古城には残されていないのが現実。本日ファミレスに集まったのもそれが理由だった。明日、ここで必死にノートを書いている彼は追試という宣告を教師陣から受けている。なのに何一つ対策を立てていない彼を不埒に思った友人達が彼のために集まったというのがことの次第。

 

あれ? 言葉を選んだつもりなんだけどな?―――――

 

不思議そうに見つめる恭也、しかし直ぐに目線は目の前の料理へ変わる。そう、これが追試を受けた古城が集まった彼らへ支払った対価。

恭也が頼んだのは普段なら人目を気にして手が出せない【スイーツ】の注文。そして今目の前にあるのはこの店では最高値の【特上パフェ】

スイーツを前にいつもとは違う子供っぽい恭也を恨めしそうに古城は言った。

 

「恭也、今何皿目だ?」

 

「うーん・・・15?」

 

積み重ねられた皿を見て言う恭也。

 

「食い過ぎじゃね?」

 

「大丈夫だ、これは出すから」

 

キッパリと言い放つ恭也に恨めしそうな顔をする古城。

 

「なら、今回の金出してくんね?」

 

ダメ元で恭也に言う古城。

彼は今、金欠だった。それは今回の出費を考えるとこの先、もう次の小遣い日までに生きていけるかも心配であるレベルだ。

 

「やだ」

 

やっぱり駄目だったか・・・落胆する古城。そこへ

 

「なーに恭也に乞おうとしてるのよあんたは」

 

「そうだぜ古城。ずりーぞ」

 

セルフコーナーから戻ってきた二人の言葉が突き刺さる。

 

「…今、言葉がどれだけ人を傷つけるというのか身をもって知ったぜ……」

 

「だったらキチンと夜に勉強しろな」

 

「ぐはっ………!」

 

遂に古城は倒れ込んだ。

 

「お前らッ!そんなに俺を傷つけて楽しいかっ!!」

 

「「「え?うん!」」」

 

「チッキショオォォォォォ!!お前らなんか友達じゃねぇ!」

 

笑顔で言葉を揃える俺らに、古城は泣き叫びながら何処かへ駆ける。

トイレか?そう思うも食べながら手だけを振る浅葱が目に入り、不思議に思いよく目を凝らす。

そして気づく、浅葱と古城のコップが無くなっている。

―――――ああ、ドリンクコーナーか。

しかしやり取りも無しにそういうことが出来る古城たちはもう以心伝心。本当に付き合ってはいないのかと首を傾げるのであった。

 

「あ、そろそろバイトだわ。それじゃ私もう行くね!」

 

古城が離れてから数秒遅れて浅葱が携帯を取り出して、目を見開く。

そう言葉にしたのと同時に準備を始める彼女。どうやら少し急いでいるらしい。

そんな彼女のことを気にせずに少しおちゃらけたように基樹が声をかける。

 

「ん?古城を待ってなくて良いの?」

 

「別にいーのよあんなバカ。私は彼奴にキチンと教えてやったから、後は彼奴次第。そしてこれはその報酬なの。それじゃ!」

 

そうして浅葱は去っていった。残ったのは彼女が食した物が乗っていた大量の皿。

 

 

―――――これ、どれくらいになるのだろう?

 

 

古城に待ち受ける悲劇に恭也はただそんな感想を思うしかなかった。

 

古城が戻ってきたのはそれから数分後のことだった。手元には先ほどまで飲んでいたジュースが再び注がれ、先ほどまで持っていなかったスープともう1つのグラスに入れられた飲み物を器用に持っていた。

 

「片手にグラスとスープ……熱くないのか?」

 

「はっはっはー!……そろそろヤバイ」

 

「バカじゃねぇのお前?」

 

「さすがの俺でもそこまで言われれば傷つくぞ!?……………ってあれ?浅葱は?」

 

「帰った」

 

「帰ったぞ」

 

「帰ったあぁ!?えっ、アイツのジュース入れてきたのにどうすんだよ!」

 

「…自分で飲めば?」

 

「それもそうだな」

 

素直に納得した古城は先程まで浅葱が飲んでいたであろう飲み物から手を付ける。

恭也と基樹はそれを見て一瞬驚くもそれはすぐにニヤケ顔に変わった。

 

「ん?なんだよ、そんな顔して」

 

「別にー?」

 

「なー?」

 

「なんなんだよったく」

 

2人は内心、間接キスという言葉を思い浮かべていた。

後で浅葱にこの事を言ったら、いったい彼女はどんな反応を示すのか。

考えただけで笑いが込み上げ、手で口を隠す。

女心に鈍感な古城は絶対に気付くはずもなく、ただ勿体ないという精神での行いだろう。しかし、彼女からしたらそれは特別な意味を持つ。しかも意中の男が行ったことだとすれば尚更である。

 

恭也はふと、基樹の方を見る。手をテーブルの下に隠してはいるが何かをしているということが丸分かりな動作で、恐らくは浅葱にこの事を報告しているのだろう。

南無、と恭也は古城に手を合わせ拝んだ。

古城は恭也のそれに怪訝な目をするも、テストの事と勘違いしたのか「うっせ!」と投げ捨てた。

 

 

▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲

 

それからまた時間が経ち、基樹が別れ、そろそろ出ようかという話になり、会計時に古城の目が死んでいくのを見届けながら恭也と古城は店を出た。

 

「うおぉぉぉぉ!ほんとにすまん!必ず後で返すから!」

 

「別にいいよ。後で那月ちゃんから鉄槌が下されるだけだから、古城が」

 

「ああー!なんて奴から金を借りてしまったんだ俺はー!!」

 

戸籍も金もない恭也がどうしてファミレスなんかへ行けていたのか。それは南宮 那月からの援助があったからこそだった。

援助というよりも無利子で金を借りているという表現が正しいが、それは彼女の仕事を手伝うことと学校へ通うという約束で実質はタダになっていたりする。

そんな彼から金を借りるということは那月から借りるといってもよいことで、古城は次の再テストのときに何を言われるか不安になり頭を抱える。

しかし恭也も恭也で本当にそれだけで良いのかと、まるで高利子の奨学金を借りているようで将来への不安に襲われていたりしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そのとき2人がイメージしたのは蔑んだ目でニヤリッと笑う幼女の姿。

 

ふと、2人は蔑んだ目でニヤリッと笑う幼女の姿をイメージしてしまい肩を落とす。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

互いに那月という教師に不安を憶えながらも、それらを気にしない。いや、触れないように違う話題で盛り上がりながら家路に着く2人。

恭也の家は古城と同じマンションの古城の隣の部屋。最初は住むところを与えると聞いて、てっきりボロアパートかと思っていた恭也だったが実際に与えられたのはいかにも高そうなマンションの一室。

那月に聞いても理由はあそこがこの島でまあまあ安いという理由だったのだが、本当かどうかはともかく恭也は素直に従うことにしたという背景がある。

 

途中、クソが付きそうなほど熱い日差しでもパーカーを羽織っていた古城がフードまで被り

 

「まるでポロボクサーが必死に身体づくりのトレーニングしているようだなー」

 

「その発想はなかった」

 

などとネタ染みた会話をしていると違和感に気が付く。

恭也たちの前方と背後に先程から一定の間隔を保ちながらいる2人少女。最初は偶然か、そうも思っていたがここまでの十数分まったく同じ進路で同じ距離ということは流石に可笑しいと、そういった知識も無い恭也でもわかる。

 

「……恭也」

 

「ああ、古城もやっぱり気づいてたか。どうする?」

 

「どうするってお前……いったん別れるか…?」

 

「賛成。じゃあ俺は普通に帰るから古城はゲーセンでも寄ってってよ」

 

「えっ!?ちょっ、おまッ!?」

 

狼狽える古城を尻目に先程よりも早いテンポで歩みをすすめる恭也。これで少女がいなくなれば狙いは古城だと分かり、逆に2人とも来ていれば狙いは自分だと分かる。

それさえ分かれば後は頼れる担任教師の出番。だが実際のところは

 

(えっ!?1人になった!?)

 

狙いはどちらもだった。

恭也は自身が悪手を取ったことに気がつく。もし古城だけなら自分が相手を個別に奇襲をかけられたかもしれないし、挟み撃ちという形に持っていけたかもしれない。

だが、狙いが両方なら特にこれといって武術の習い等を受けてこなかった二人を個別に襲う事など造作もないことだった。

 

 

(いや、待て、なんでそっちの黒い方向で考えてるんだ俺!もしかしたら一目惚れした女の子が跡をつけて……………な訳ねぇよなあ!)

 

 

ちょっとした希望に掛けてみようと思い立ち止まろうとして、止まることを止めた。追ってきた少女の走り方が完全に普通の女の子とはかけ離れたものだったからだ。

重心を低く風の抵抗をなるべく受けないよう走る様は選手も驚く本格的なもの。そんなものを普通の女子生徒が学ぶだろうか。

仮に学ぶとしてもまずこんなところに来るかという話である。あり得るとしたら何かやらかしてしょうがなく転校してきたというものだ。

そこで恭也は結論に至る。つまり狙われてる。

 

(思い当たることばっかりぃで嫌になるうぅ!

主に鎧武のこととか、鎧武のこととかさぁ!

狙われないわけないよね!知らないわけないよね!)

 

伊達にこの世界の人間はバカではない。予想はしていたもののいざこうなるとヤバいの一言に尽きた。

捕まれば良くて戦極ドライバーなどの変身システムが奪われ、最悪自分自身も解剖されてしまうだろう。

だから彼は必死に逃げる。逃げる。だが、逃げ切れない。

 

(スッゲェ!ホントに女の子かよ!?)

 

チラッと見ても分かるほど美しい女性だった。

長い黒髪を揺らし、鋭い目付きで恭也を捉えている。

 

(しょうがないここは……変身だ!)

 

恭也が思い付いた作戦。それは路地裏の人目が無いところで変身し、サクラハリケーンでヘルヘイムを介して逃げ切ろうというもの。

別にサクラハリケーンだけで良いのではないかと思うが、そこは作中にそういうシーンが無かったためであるのは気にしてはいけない。

そうと決まれば全力疾走。速度を上げた恭也に少女は目を見開いた。

変身するだけの距離は稼ごうと恭也は全力全開。十分に距離が空いたのを確認すると恭也は目についたビルとビルの間に曲がった。

 

「よし、変身!」

 

路地裏へ入ると奇跡的に誰も戯れていないことを確認し、恭也は彼女がここ来る前に変身する。

 

【オレンジ!】

 

オレンジロックシードを解錠すると、恭也の頭上の空間に穴が空き、とても大きなオレンジに似たナニカが恭也の頭の上を漂う。

恭也は気にせずそのロックシードを戦極ドライバーの窪みにセット。施錠する。

 

【ロック・オン!】

 

施錠すると軽快な音楽を他所に戦極ドライバーに付けられた刀のようなパーツ【カッティングブレード】を降ろす。

 

【オレンジアームズ!花道・オンステージ!】

 

頭上に待機していた大きなオレンジに似たナニカが、被り物のように恭也の頭を覆うと同時に恭也の姿が変わる。そして大きなオレンジに似たナニカがゆっくりと開くと、それは鎧のように恭也を包み、変身は完了した。

 

仮面ライダー鎧武 ーオレンジアームズー

 

 

(さぁ~て、それじゃ早速サクラハリケーンで……)

 

そうロックビークルを取り出そうとした瞬間のことであった。

 

「触んないでよ、このクズ!」

 

「んだとぉ!このクソアマがぁ!」

 

「ん?」

 

そういえばあの走りにしてはやけに遅いという疑問と、ここまで聞こえてきた少女の罵倒にもしかして?と引き返し、そっと曲がり角を覗きこんだ。

 

「アンタが先にぶつかって来たんでしょうが!アンタが謝りなさいよっ!」

 

「いいからさっさと来いヨ!このクソガキッ!!……………ったく、かわいいからってチョッカイかけたらとんだクソガキだぜ!」

 

「なんでわ・た・し・が!アンタらに付き合わなきゃならないわけ?最初に言いがかり吹っ掛けてきたのソッチでしょ!」

 

(うわ~チャラい男たちに絡まれてるぅ~ってか喧嘩吹っ掛けてるぅ~)

 

魔族であるチャラ男たちにチョッカイかけられ、喧嘩腰に相手をしているあの少女がいた。

人が行き交う道のど真ん中で、魔族の男たちに囲まれながら一歩も引かずに口ゲンカをする少女。見てるこっちが心配になるほどのものだった。

現に1人の通行人が心配で携帯を手に今にもかけそうである

 

「ん?……あ、アニキ!あ、あ、あれ!!あれ見てください!」

 

「なんだよいきなり!俺はこのクソアマを!」

 

「いや、ちょっと待って!待ってください!あれ、もしかして最近噂の【アーマードライダー】って奴じゃ……」

 

「はぁ~?そんなもんただの噂に決まって……………ホントにいたぁ!?」

 

「ヤバいですよ。噂じゃ攻魔官と繋がってるとか、いくつもの魔族を殺してきたとか……」

 

「最後は怪しいが、攻魔官と繋がってるってのはちょっとやべーな、ずらかるぞ」

 

急にこそこそと話始めた魔族の男たちは、話が決まると先ほどとは打って違い、何も言わずにその場を立ち去った。

いったいどうしたのか。恭也はそう疑問に思っていると背後から何者かから声をかけられる。

 

「貴方が最近噂の鎧武者……アーマードライダーですか」

 

「うぇい!?」

 

先ほどまで口ゲンカを繰り広げていたはずの少女だった。

無双セイバーに手をかける恭也。いつでも切りかかれるぞ、そんな警告の意味を意に介さず彼女は語り始めた。

 

「ああ、自己紹介が遅れました。私の名前は|姫柊神流≪ヒメラギカンナ≫と言います」

 

「あ、どうも。俺は……が、鎧武です。仮面ライダー鎧武」

 

唐突の自己紹介に律儀に答える恭也。

実際の名前ではなく、鎧武と名乗ったのはただそういう認識であっただけなのだが、少女はそうと捉えなかった。

 

「ガイム……?そう、今の貴方はそういう名前なんですね。須田恭也さん?」

 

(なんで俺の名前をっ!?……って当たり前かぁ……)

 

「あら?意外と同様しないのね、だったら……ってちょっと!?」

 

名前を知られていたことにいちいち驚くほど恭也は愚かではなかった。

彼女、ヒメラギカンナが視線をポケットに反らした隙に恭也は通りに走りだし、サクラハリケーンを解錠する。

 

「錠前がバイクになったっ!?え!えっ!?」

 

「それじゃ、俺急いでるんで!」

 

乗り込むと一気に速度を上げる。

すると空間が次第に裂けていき、恭也はその裂け目に躊躇なく入って行った。

恭也が入ると裂け目は次第に戻り、そこにはもともと何もなかったかのようにいつもの風景があるだけだった。

 

「って、今度は消えたぁ!?ど、どうなってるの……?」

 

いきなりのことに着いていけない少女が1人残された。

 

 

――――――― ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄―――――――

 

「馬鹿者」

 

「はい。すみません」

 

翌日のこと。恭也は南宮那月教諭の部屋で説教を受けていた。

 

「あれほど目立つところで変身するなと言ってただろう?」

 

「いや、あれは変身した後に……」

 

「あっ?」

 

「いえ!何でもありません!」

 

南宮那月はイラついていた。

スマートフォンを取り出すと真っ先に見えるのは「アーマードライダー」の文字。ネット上で噂じたいは流れていたのだそれがどうしようもないバカのせいでただの噂は実際のものとして世間に認知されることとなった。

「アーマードライダー」で調べれば2600件の検索結果。以前那月が見たときよりも明らかに増えている。

今のネット社会の情報の拡散スピードを身を持って実感し目頭を押さえる那月。

 

 

「しかもよりによって剣巫が二人も来るなんてな……ああ、本当に最悪な日だ」

 

「ケンナギ……?なんですかソレ?」

 

聞いたことの無い言葉が那月の口から出たのを疑問に思うと、彼女は自らが要らぬことを言ったことに気が付き不満を表す。

 

 

「いや、そんな可愛い顔で睨まれても……………」

 

 

しかし残念なことに彼の目には幼女が機嫌を損ねているようにしか映らず、真顔で返された言葉に呆れ返る。

彼と会う以前の彼女だったら手にしている扇が飛んできたであろうが、その変化に気が付く者はいない。

 

「はぁ……ど阿呆。まあいい、お前にも関わる話になりそうだからな説明してやる」

 

「え、マジ?」

 

「マジだよ、大マジだとも。剣巫、それは【剣】に【巫】と書いて剣巫と読む。奴らは【獅子王機関】という国家の特務機関に属する攻魔師でな。いわゆる商売敵ってやつさ」

 

「う~ん。とりあえず猛烈に公務員になりたくなくなる内容というのだけは理解できた」

 

「本当か?」

 

「止めてくれ。古城よりはバカじゃない」

 

「お前、嫌われるぞ。そんな事言ってたら……」

 

「古城くんはこんなことで怒らないって、僕は信じてる!」

 

「そうか。なら、とりあえず覚悟しとくんだな。奴さんはもうそこに来ているぞ?」

 

「は?来てるって……………あ」

 

ガラガラっと扉が開く音がして、恭也は振り向くとそこには昨日会った例の少女【ヒメラギカンナ】がこちらに微笑んでいた。

 

「昨日ぶりですね。須田恭也くん?」

 

「や、やぁ……昨日ぶり、元気してた……?」

 

―――――ヤッベ、オワタ

 



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