日向如く (尾田栄~郎)
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第一話 うるせえ!日向は木の葉にて最強なんだよ!

初投稿です。


 どうやら俺は死んだらしい。

 どこかで読んだ事ある風景……の中に、仙人みたいな爺さんが一人。

 

 なんだよ、駄女神じゃないのかよ。

 チェンジだチェンジ。話が違う。

 俺が生前求めてたのは可愛い女神様であって、見るからに神って感じの老いぼれじゃない。

 昔から女に縁がない人生を送ってきたし、死んだ後に女神様に会える権利くらいはあってほしい物だ。

 

 

「貴様に相手がいなかったのは自業自得だと思うが?」

 

 

 軽く青筋をたててる神様。

 思ったより創作物は神の本質に近かったらしい。

 

「ちなみに転生とかできる感じですか?」

「少しは立場をわきまえろよ小僧。確かに儂の力が暴発し……」

「ナルトの世界が良いです」

「わかった、もうそれでいい。はよう転生しろ。どっか行け」

「転生特典を要求する」

「なんじゃ。シスイの目か?塵遁か?もうなんでも良いぞ。次貴様が言った物を特典としてすぐにでも向こうへ飛ばしてやる。そして二度と迂闊に転生なぞやらん」

「白眼だ」

「……は?」

「白眼をくれ」

「正気か?……あれだぞ、さっきはケチってシスイの目とか言ったが、大筒木の血、全身柱間細胞、血継限界全部乗せとかもできるんじゃぞ?」

「何度も言わせるな。白眼だ」

「貴様、さてはナルト読んだ事ないな?白眼というのは写輪眼、輪廻眼と共に三大瞳術などと並び称されておきながら、幻術も忍術もさして強くはならず、ただちょっと周りが見えて視力が良いだけのハズレ瞳術の事じゃぞ?全方位が見えるとか言っておきながら死角がある景品表示法違反の眼じゃぞ?」

「俺は白眼が好きだ。何が好きかで自分を語れよ!」

「もうワンピースの世界行けよ」

「うるせえ行こう!」

「じゃから!」

「良いか?日向は木の葉にて最強!なんだよ……それ以外に言葉がいるか?」

「もはやバキの勢いすらあるが……まあ良かろう。どうやら儂は貴様を見くびっていた様じゃの」

 

 老人が静かにそう言うと、同時にゆっくりと意識が遠のく。

 転生か。住人として見るナルトの世界、楽しみだ。

 

 

 

 

 

 とは言ったものの。

 人生、転生してもなかなか上手くいかない物だ。

 

 俺がナルト世界に来て初めて見た光景は、父の顔。

 実物は初めて見る白眼に、額には卍。

 

 ハズレを引いた。

 

 俺の名はネジ。後に木の葉で最強とうたわれる天才児である。

 

 神と俺との間に認識の違いがあった。

 最強とは言ったけれども、最強に産まれたかった訳じゃない。

 

 日向は木の葉にて最強。そしてその日向始まって以来と言われる程の才能を持つ男、それがネジ。

 たしかに名実ともに最強と呼ばれるに相応しい男ではある。しかし、作中での扱いは悲惨も悲惨。

 

 初登場から嫌な奴感満載で、落ちこぼれ忍者のナルトに負け、サスケ奪還編ではそれまでブイブイ言わせてた白眼に弱点がある事が発覚し、終始ペインとは戦わず、最期は十尾が乱射した木片に体を穿たれ絶命。

  

 なんて見事な転落人生。

 おお神よ、嫌がらせが過ぎるのではないでしょうか。

 日向ネジ生存ルート開拓の始まりである。

 

 日向分家の朝は早い。

 宗家の為、子供時代から柔拳の英才教育の日々である。

 俺が三歳になった頃のタイミングで、掌を交互に打ち出す柔拳特有の練習が始まった。

 柔拳修行の片手間で、日々チャクラコントロールの練習も欠かさない。

 

 いくらネジが天才だからと言って中身の俺はチャクラなんて使ったこともない一般人。

 日常的にチャクラを使う感覚を体に叩き込んでおかないと、いざという時に不安が残る。

 まあ単純に手を使わない木登りとかやってみたかったのもある。

 幸い名家だけあって修行場所には困らなかった。

 水の上を走るのは……まあクーラーの代わりになったと思えば良いか。

 

 そうして三か月ほど経過したある日、俺はある事を思い出した。

 

「親父、死ぬやんけ!」

「……何の事だ?どうした、ネジよ」

 

 思い出したのが柔拳の修行中だったのは誤算だった。

 ざわめく日向分家の皆様。

 おっと。ネタバレしてしまったかな?

 

「申し訳ありません。お父様。寝ておりました」

「私と拳を交わしながらか……!?」

「はい。父様の洗練された拳に見とれ、あまりの美しさに安らぎを覚え、つい……」

「そ、そうか……」

 

 ちょいと奇異の眼で見られたがまあ良いだろう。

 俺ぁ天才なんだ。天才にちょっとアレな所はつきものだろう。

 

 父親が死ぬ。これは由々しき事態だ。

 なにがかって言えば、俺が日向宗家との間に軋轢を生みたくないからだ。

 

 昔から思っていた。日向ヒナタの性格が内気で引っ込み事案なのは闇落ち日向ネジの存在が大きいのではないか、と。

 俺はヒナタが好きだ。しかし、従兄との仲はギスギスで父親からは冷遇された末にあの性格が成り立ったと考えると、不憫でならないのだ。だから俺はヒナタの頼れる兄貴、日向ネジでありたいのだ。

 しかしここで父ヒザシに死なれてしまうと、父親を殺されながらヒナタに接近する日向ネジが出来上がってしまう。

 まずい。怪しすぎる。宗家に「警戒してください」と言ってるような物だ。

 

 ヒザシの間接的な死因にあたる雲隠れが来るのはヒナタ様の3歳の誕生日の後。あと一年と少しといった所だ。

 

 あの時木の葉は雲隠れと停戦交渉を結んだ後の筈。事態を大きくすると原作通り戦争回避の為に日向一族が差し出されかねない。

 

 つまり、秘密裏に、そして殺さないように雲の忍を撃退する事が必要。

 目立つ外傷もなく、忍術や体術を無効化……柔拳しかない。

 

 少なくとも点穴を突く瞳術と技術が必要になる。あと一年で。

 

 時間は限られている。思い立ったら即行動だ。

 その日の修行を終えた後、俺は修行場へと向かった。

 

 まずは簡単なチャクラコントロールの練習として木登り。もうすっかり慣れた。

 水走りはやらない。というかあれ以降やりたくない。

 簡単に瞑想をして、静かにチャクラを練りこむ。

 練って溜めたチャクラを両目に集約させ、印。

 

「"白眼"!」

 

 ダメだ。両目に熱を感じるだけで視界に変化はない。

 もう一度。

 

「"白眼"!」

 

 やっぱりだめだ。もっとチャクラを練った方が良いのか?

「"白眼"!」「"白眼"!」「"白眼"!」「"白眼"!」「"白眼"!」「"白眼"!」「"白眼"!」「"白眼"!」「"白眼"!」「"白眼"!」「"白眼"!」「"白眼"!」「"白眼"!」「"白眼"!」……。

 

 あれから何時間経っただろう。

 もうすっかり日が落ちて辺りを月が照らしている。

 分家の他の者は俺が修行を邪魔されると怒るのを知って、もう迎えに来なくなって久しい。

 

「"白眼"!……っ痛ってえ!」

 

 何回も眼にチャクラを集中させるうち、俺の眼を通る経絡系は強く痛む様になっていた。

 なにもしていなくても焦げ付く様な痛みが顔中を襲い、特にチャクラを流すと経絡系を電気で焼き切られていると錯覚するほどだ。

 

 しかし、この痛みは俺にある事を気づかせた。

 

 白眼を開眼させたとき、術者の目の周りには必ず経絡系が浮かび上がっていた。

 

「そうだ。痛む場所に沿ってチャクラを流せば良いんだ……!」

 

 今度こそ。いや体力的に見ても次が最後だ。

 

 もう一度、瞑想し、チャクラを練る。経絡系が痛む。痛みの流れを一本一本確かめるように精神を集中させて、集中が最大に高まった時、印!

 

「"白眼"!」

 

 視界が開けていく。前方、周囲から後頭部へと広がる視界。チャクラの点がみえる。虫だ、秋虫が鳴いている。もっと遠くの屋敷では、分家の人間が皆床についている。一人だけ、父様だけは寝ずに俺をまっていた。

 二人目の父親ではあるが、それでも父親なんだよな。

 

 帰ろう。家へ。

 

 こうして俺は、白眼を手に入れた。

 

「柔拳の修行を始めて三か月。柔拳の肝である白眼を独学で開眼するとは!ネジ、お前は天才だ!」

 

 翌日、朝起きてみれば家中がお祭り状態だった。

 三食お赤飯が炊かれそうな勢い。

 ヒザシ、お前そんな子供思いだったのか……。確かに描写はあったけども、ここまでだったとは。

 

 いや?それとも俺が天才なのか?

 これは胸張っちゃって良いのか?

 

 なんてな、油断は禁物。これではまだ雲の忍には勝てない。

 天才伝説が立つとしても、それはもっと先、堅実に生きた結果の方が箔がある。

 

「お父様の教えの賜物です」

「そういってくれるか!ネジよ、ああネジよ!」

 

 ……本当にこんなキャラだっけ?

 それともなんだろう、俺が天才過ぎて原作から軌道がそれていっているのか?

 だとすればよい兆候だ。俺が原作通りのミスター名前負けにならずに済むかもしれない。

 

 その日から俺の新しい日常が始まった。

 

 午前中はヒザシと一緒に柔拳の修行。

 いつもの内容に、実際にチャクラを流す柔拳の訓練が加わった。

 昼は休んで、午後からは白眼の修行。

 とにかく長時間、高精度な視界を保てるようになりたい。

 

 そして気づいたのだが、白眼は使えば使うほど瞳術が強まる物らしい。

 白眼の修行として、自身の背後にいる鳥の個体数を数えるネジお決まりの奴をやっているのだが、最初は5分も続かなかった白眼が、日に日に5分、10分と継続できるようになっていき、より遠くまで視野が広がってより多くの鳥を見つけられるようになっていくのを感じる。

 

 あれからまた2か月。ヒナタ様が2歳の誕生日を迎えられる頃には、俺はもう二時間以上白眼を継続できるようになっていた。

 

 柔拳の修行中のほとんどの間は白眼を継続する事。ヒザシからはそんな注文を受けた。

 白眼を開いている間は目元にチャクラが流れっぱなしなので、四肢にチャクラを流すだけでかなり精神力と体力を消費する。

 このころになると基本的にチャクラを伴った突きを主体として修行メニューが組まれていたので、午前中だけでほとんど全力を使い果たしてしまい、そのまま倒れこむように入眠という事がよくあった。

 

 それでもなんと3か月もたてば、午後の修行を再開できるくらいになった。

 

 期限まで残り9か月。

 9か月で柔拳を形にしないと、ヒザシは死ぬ。

  

 最後に考え付いた修行は、ただ走るという物だった。

 

 白眼を維持したまま、木登りの要領で里中の構造物を全力疾走。

 体力が尽きるまで、である。

 

 精神力と体力を極限まで追い詰め、精神エネルギーと身体エネルギー両方の底上げを行う。

 今できる精一杯を形にした修行方法。これでダメなら、もう後がない。

 

「"白眼"!」

 

 俺は走り出した。

 

「うぉぁっ!なんだあいつは!」

「目がやばいぞ!」

「ぎゃあああ!バケモノ!」

「早い!早いぞ!忍か?」

「いや、子供の様に見えたが……」

 

 なんだろう。ひとたび街に出ると、必ず悲鳴が聞こえる。

 なんでも、白目をむいた顔がバキバキのちっちゃい何かが町中を走り回っているらしい。

 いやー、なんか怖そうっすね。うん。幻術ですかね。

 

 午前中には柔拳、午後には百鬼夜行な修行を、九か月。

 

 そしてついに、雲隠れの里との停戦の日、ヒナタ様の3歳の誕生日がやってきた。



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第二話 柔拳浮気丸

 その時、木の葉の里は熱狂に包まれていた。

 

 長きにわたる雷の国との戦争の終結。講和条約の締結。

 そして雷の国の使節団が木の葉の里へ入国。

 歓迎のパレードが開かれていた。

 

 うん、よくある父親の死亡フラグだ。

 

 そして、九か月にもわたって里の住人を恐怖に陥れた、子供の皮を被った妖怪が忽然と姿を消したこともまた住人を喜ばせた。

 ナルトの世界には妖怪がいたらしい。いやあ、転生してみなければ分からんこともある。

 

 俺は早朝に分家を抜け出し、二代目様の火影岩の上に座るという大それた目線で使節団の到着を見ていた。

 使節団。その先頭に立って入ってきた偉そうな男がおそらくヒナタ様誘拐の主犯格。

 あいつが来るかは判らんが、マークしておいて損はないだろう。

 ふと、そいつと目が合いそうになった気がしてその場を後にした。

 

「ふむ……?」

 

 雷の国使節団。それをまとめる名もなき忍は不思議そうに火影岩を見上げた。

 こちらを見る人の気配を感じたのだ。

 

「いかがなさいましたかの?」

 

 使節団に対し、温厚そうな微笑を浮かべ応対するのは三代目火影。

 四代目の死後、再び里を収める任についた老人である。

 

「いいや。里の護衛が多く感じましてな。それほど丁重に扱われるとは、こちらとしても喜ばしい限りです」

 

 この発言は、彼がこれから行う日向誘拐作戦の動向を心配しての事だったが、悟られぬように細心の注意をはらった抑揚を付け加えられた発言であった。

 

「はっはっは。やはり里の重要な客人を迎え入れるのですからな」

 

 その意向を知ってか知らずか、三代目は朗らかに返すのみである。

 

 狸だとすれば、上手い。これからの作戦に不安を残しつつ、雲の使節団は入国したのだった。

 

「これ、ネジ。どこへ行っていた。今日が一族にとってどれだけ大切な日か解っておろうな?」

「申し訳ありません、お父様。祭り、という物を見てみたかったのです」

「まあ、しかたあるまい……身支度を整えよ。出発まで時間がない」

 

 今日は日向にとっても大切な日。宗家のご息女、日向ヒナタ様の3歳の誕生日である。

 

 俺は今日初めてヒナタ様に会い、そして籠の鳥となる。

 それは分家と宗家、二つの家の関係性を明らかにするという意味でも重要な日だった。

 

 遠くでパレードの音がする中、俺は宗家の門の前で、初めてヒナタ様を見た。

 

 なんというか、やっぱ可愛い。

 これまで一族の年の離れた女しか見てこなかった俺だけに、年の近い女の子ってだけで可愛く感じる。

 ちなみに俺はロリコンじゃない。俺今4歳だぜ?

 

 ああ、そうだ。あれ言っとかないと。

 ヒザシの服の袖をちょいと引っ張る。

 

「結構可愛い子ですね、父様」

 

 よし、言えた。

 原作ネジと俺の共通見解。ヒナタは可愛い。

 何やらヒザシが悲し気な顔してるが、まあ良いだろう。

 

 宗家のお座敷に上げてもらって、一度ヒナタ様と手合わせすることになった。

 

 横にはヒアシ様とヒザシ。目の前にはヒザシでなく可愛い従妹。

 なんともやり難い。

 

「はじめ!」

 ヒザシ様の号令がかかる。

 

 ……。

 …………。

 ………………。

 

「貴様ら、ふざけているのか?」

 

 ちょいおこなヒアシ様。

 それもその筈。試合開始の号令があってからしばらく、全くの膠着状態である。

 だって、ヒナタ様仕掛けてこないんだもん。

 なんか、眼をしどろもどろに動かして、指一つ動かさない。

 向こうが仕掛けてこないのだ。

 ヒナタ様に押していくのは逆効果。原作を読んでわかった知恵だ。

 

「ヒナタ!」

「は、はい!」

 

 ヒアシ様の声にびくっと反応して、やっと攻撃をしかけるヒナタ様。

 軽く受け流して、反撃。……ってこれどうすればいいんだ?

 胸はダメ。腹はダメージが大きい。顔は論外。

 俺はこんな所で嫌われたくない。ヒナタ様と仲良くするルートで行くんだ。

 反撃の為に出した手を引っ込める訳にもいかないし、ええい左肩!

 

「がふっ!?」

 ぶっ飛ぶヒナタ様。

「けほっ!?」

 壁にぶつかるヒナタ様。

「ふっぅ……」

 意識を失うヒナタ様。

 

「……」

「……あれ、僕またなんかやっちゃいました?」

「ネジィィィィああああああああ!!!!!!??」

 

 豆知識、娘を心配した親の絶叫は凄まじい。今日知った。

 

 やっちまったのは俺でした。

 

「ヒザシ!?何故ネジは白眼を使いこなせている!?チャクラコントロールができている!?八卦空掌の如くチャクラが出ている!?」

 

 真面目にやってきたからですかねぇ。

 あかん。真面目にやりすぎた。

 

「いや、どうしてもチャクラを掌から出す制御が苦手なのか、あの威力になってしまいまして……」

「ネジは黙っていろ!なぜ白眼を前提としたチャクラを使った柔拳にまで修行が飛んでいるのだ!?ネジはまだ4歳だと聞いていたが!?」

「ネジは日向始まって以来の天才なのかもしれん……」

「そんな理由で娘が吹き飛んでたまるか!」

 

 娘を案じる親の心配は深いようで、俺はもはや安全の為と言われそうな剣幕で卍の呪印を施されたのだった。

 あとで知ったのだが、ヒナタ様との手合せにおいて俺が白眼やチャクラを使う事はヒザシにしても完全に予想外だったらしい。

 つまりは俺がいつものノリで軽くやったら完全にフルスイングで、肩を壊したのはヒナタ様と。

 何を言ってるかわからねーと思うが、そういうのは本人が最もわかりたくない物だ。

 

 無事事故は起こって、その夜。

 原作にはヒナタ様の誕生日と日向への襲撃の時間差がどれほどの物かは書いていなかったはずだが、幸いなことにヒナタ様は意識を失っておいでなので、それはそれは厳重に看病されている。俺が面会できないほどに。俺がそんなに怖いか、ヒアシよ。

 

 ということで、宗家の屋根に陣取ってる分家の厄介者がこちらとなります。

 

 敵を感知する為に白眼を使っているが、夜通し持つわけもないので特に周りが暗くなった時に使用を制限している。

「と……さっそくお出ましか」

 8時の方向。おそらくは上忍クラスだろう。

 しかし隠密行動が敵の忍術を制限してくれる。それなら白眼を持つこちらが五分まで持っていける。

 顔には朝お祭りで買ったお面。俺が何者かは判らない。

 多分。

 足取りを見るに、相手はこっちが気づいてないと思っている。

 イージーウィンのチャンスは一回。相手の不意打ちに柔拳を合わせる。

 雲流・表切り!

 そんな声が聞こえてきそうな無駄のない太刀筋。

「八卦空掌!」

 屋根に向けた全力の八卦空掌。瓦は凄まじい速度で忍へ飛ぶ。

「!!」

 忍びは刀を捨て、空中で反転。無数の瓦は刀を粉々にした。

「八卦空"連"掌」

 追撃の八卦空連掌。この朝孔雀を元にした技は、数多に分岐し放散する八卦空掌。

 さっきよりも的が広がった。

「ふっ!」

 やはり身を翻すが、十発はあたりだ。

 バランスを崩した相手の着地を狙って決めに行く。

「残念だったな!」

 忍の手に光ったのはもう一本の刀。

「雲流・表切り!」

 その刃は確かに俺を捉えた。が。

 ぼふん。

「残念だったな」

 忍は背後から聞こえた敵対者の声にぎょっとする。それ以上に目の前で消えたさっきの者は何だったのか判別もついていない様子だ。

「八卦掌!」

 こんどは外さなかった。

 

 ほどなく、力なく倒れる忍。

 内臓疲労はどんな忍に対しても有効。当然と言えば当然か。

 

「仮面の少年……お前は日向ではないのか?」

「なぜそう思う?」

 答えはしない。

「この内臓を締め付けるような痛み……これは噂に聞く日向の柔拳だろう」

「否。これは南斗八卦掌という」

「……なんだ、それは」

「内部から全てを破壊するのが北斗なら、外部から剛拳主体で経絡系に負担をかけるのが南斗だ。北斗と南斗は表裏一体なのだ……」

「日向の拳はいずこへ」

 

 まあ方便だ。あの期間で点穴まで見切る事が出来なかった俺は、点穴をねらうのではなくチャクラを多段ヒットさせる事で内臓への負担を優先した柔拳を編み出した。

 またより多くの拳をあてるため、拳技を打ち込む隙を作る為アカデミーへと潜入し影分身の術を習得した。結果、今の木の葉の警備は厳重になった。

 そして南斗や影分身の習得に時間を費やした分、件の妖怪は出なくなったというわけだ。

 

「外傷もなく、俺が誰かも判らん。雲の忍、お前と俺が戦ったという証拠はない。これ以上騒ぎを起こせば外交問題になりうる……あとは解るな?」

「ああ。ここまで消耗していて、まだやろうとは思わん。お前も我々の目的が解っている筈だ。もう二度と日向に手は出さん」

「もちろんだ。俺の眼の白いうちはな」

「……」

 

 ほどなくして、雲の使節団は去っていった。

 この事件が表面化しなかった裏に、三代目の尽力があったかは謎のままである。

 

 ちなみにこの2日後の昼にヒナタ様は目覚められた。

「ヒナタ様?大丈夫でしたか?ひどくうなされていたような……なにか怖い夢でも見られたのですか?」

「……」

「あの、その目止めてもらえます?」

 余談だが、ヒナタ様はこの時初めて白眼を開眼なさった。




 あとがき
 ヒザシとヒアシが逆だったかもしれねェ等、誤字脱字があるかもです。
 見つけ次第連絡いただけると助かります。
 かしこ


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第三話 お友達錬金術師

 日向分家の朝は早い。

 

「影分身の術!」

 

 早朝。他の皆が起き出す前に影分身。

 ボン!と音。白煙が立つ。

 まもなくもう一人の俺ができあがった。

 

 目の前に自分が居るのは不思議な感覚だな。

 鏡ともちょっと違う感じ。

 影分身に少し興味が湧いた。軽く実験してみよう。

 

 まず手始めに分身の頬をつねってみる。

「痛い」

 言ったのは分身。

 細かな感覚のフィードバックはないのか。

 

 次は左手を挙げろと念じてみる。

「……?」

 分身はあまりピンときてないご様子。

 こっちの意志で動いてる訳じゃないのか。

 なるほど。

 

 おもむろに柔拳をくらわしてみる。

「くらえ柔拳!」

「ちょ!おい待てなんだなんだ!」

 

 避けられた。分身の癖に生意気!

 ピリつく空気。二人の俺の視線が交錯する。

 

 一拍おいて分身、「ホワァイ?」とジェスチャー。

 俺、アンサー。

 

「出たな妖怪ドッペルゲンガー!退治してやる!」

「お前が出したんだろうが!」

 

 俺だった。

 

「だいたい分身を化け物扱いするなよ。俺はお前だぞ」

 

 俺だった。

 しかし俺は食い下がる。

 

「キャラ付けだよ。キャラ付け。個人が二人もいたら混乱するだろ?だから俺が奇才で、お前が奇」

「もはや暴言だろ、奇キャラ。せめて鬼才と鬼にしろ」

「ぜいたくな子だね!」

「働きたくないなあその職場」

「お前の名前はネジ乙だ!」

「甲乙でコンビにするな。俺だけ罰ゲームになる」

「ナット!」

「セットだけども。凸凹コンビの様だけども。大体俺達だと凸凹コンビにならんだろ。凸凸だよ、ゴテゴテしてるよ」

「お前はボコボコだけどな」

「お前のせいだよ!」

 

 一人芝居(?)はともかく本題。

 この前、雲の忍との交戦で相手の点穴を見切る事ができなかった俺は、妥協案として影分身に頼った。        

 が、俺は日向。

 柔拳を極めずして最強とは言えないものだ。

 

 ネジは原作だと中忍試験以前から点穴を見切っていた。

 それまでのネジの成長物語がどんな物だったか知らないが、おそらく俺の方が順調だろう。

 ただし、その後のネジを考えるにそれは絶対条件。

 ネジ生存ルート、つらいぜ。

 

 でもそんなつらさも今日からは半分!

 俺は一人じゃないからね!

 

 いや、本当に半分なのだ。

 俺はこれまで、午前中は父ヒザシのもと柔拳の修行を行い、午後は木の葉を駆ける白眼の妖精になるという日々をおくっていた。

 しかし影分身がある今、俺は父の教えを請いながらシャバに繰り出す事が可能である。

 そうして貯まった経験値は、術を解いた瞬間本体に蓄積されるのだ。

 

 つまり修行の時間が倍!効率も倍!経験値も倍!もちろん住民への迷惑も倍!

 伸び率も倍くらいにならないかなあ……?

 

 

 

 

「まあつまり、俺2号はさっさとどっか行けって話だろ?」

 本体の話があまりに長くなりそうだったので、分身体にあたる俺2号は話を切り上げて行く事にした。

 

「自分で勝手に呼び名を変えたな!?名前はお前を作った人からの一番最初で一番大切なプレゼントなんだぞ!」

「毒親じゃん」

「行けば!?私なんてどうでも良くなったんでしょ!」

「そうだな。分身がお前の方だったらぶん殴ってる」

「いってらー」

「急に冷めるじゃん。じゃあな」

 

 切り替えの早さだけは一流なんだよな、俺。まあ2号もだが。

 そうそう。散々俺を化け物呼ばわりしていた町人の皆様だが、9ヶ月も経てば里の心霊ゴシップ界隈での俺の人気も落ち着いた。

 じゃあ今ではどう反応されるのか、飽きられた怪談の末路をお見せしよう。

 

 まず町人A。

「朝からか。珍しいな……初めてじゃないか?」

 次、町人B。

「チッ。まったく何なんだあれは。いいかげん目障りだぜ」

 続けて町人C。

「そんなこと言ったら祟られるわよ。なんでも、あれはあの子供の生き霊なんですって」

 再度登場、町人B。

「なに、あのガキか!……まったく忌々しいぜ、あの化け物……」

 

 今ではこんな有様である。

 落ち着いたというか、飽きられた?

 毎日見るというだけで結構な扱いの差だ。

 祟っちゃおうかな。

 全員に柔拳を叩き込むとかかな。

 

 というか今とんでもない流言を聞いた気がする。

 化け物、ガキ……どうしよう、嫌な予感が……。

 

 と、思っていたら。

 

 いた。

 

 家を出てから数時間。

 冬の昼頃特有の軽い空気の中、そいつの居る場所だけは様子が違っていた。

 男の子が暇そうにブランコにまたがっている。

 それだけ。たったそれだけの光景なのに、そいつの周囲には言葉以上に感情を感じさせる邪気が漂っていた。

 憎悪、羨望、孤独感……とにかく、俺の本能がやばいと告げているこの男の子こそナルトだった。

 

 どうしよっかなあ……?

 原作ネジの死因は、ナルトの仲間じゃなかった事。

 つまり俺の人生において、ナルトの友人としての地位は必要不可欠である。

 でもなんだろう。

 心なしか恨みを買っている気がする。

 

 いや、腐っててもしょうがない。

 一か八か、やってみるか。

 

 ケーススタディ、落ちこぼれ君と友達になる。

 

「どぅわぁあああ!!」

「!」

 

 元いた家の屋根からブランコの前へ勢いよく落下する。

 ポイントは受け身を取らない事。

 バカっぽく、極めて無能になりきる。

 

「失敗した!落ちてしまった!俺はダメダメだァァァ」

 

 そして同族アピール。敵意がないことも強調する。

 

「……?」

 

 地面でバタバタする俺をじっと見つめるナルト。

 

「うおおおお!またやっちまった!俺はなんて上手くできない奴なんだぁぁうおうおうおいおいおい……」

 

 ……どうだ!?

 

「……!」

 俺の様子に得心した風のナルト。

「ああー!!お前ってばそこら中走り回ってる変態!」

 

 恨んではないらしい。

 色々言いたい事もあるけどまあ及第。

 

「そういうお前は?」

「俺ってばナルト。うずまきナルトだってばよ!」

「ナルトか……良い名前だな」

 

 意味は無い。なんとなく好感度あがるかなってだけ。

 

「?」

 

 なるほど。思ったより頭良いなこいつ。

 その時、ナルトの注意が俺から別の方へ向いた。

 咄嗟に俺もその方を見る。

 

 そこには遠目から俺達の事を話している人だかりがあった。

 話の内容はだいたい以下の通り。

 

「ああ!おい見ろ、化け物とガキが一緒に居るぞ……」

「じゃああの妖怪は……ただの子供?子供だよねあれ」

「なんだよ、生き霊ってのはガセかよ」

「あの二人はどういう関係なのかしら?」

 

 俺としては見慣れた光景だが、ナルトにとっては何か感じる物があったらしい。

 ナルトはひょいとブランコから飛び降りると、人混みの方へ数歩駆けていき、言った。

 

「へへーん!わっかりやすい嘘に騙されてやんの!お前らさ!お前らさ!バーカ!」

 

 笑うナルト。

 人だかりは各々バツが悪そうに散っていった。

 

 作品が始まる前から主人公は主人公なのだ。

 なんというか、俺とは格が違った。

 

「なあナルト。腹が空かないか?」

 

 この言葉は本心からの言葉だ。

 生きる為にナルトを絆しに来てみれば、絆されたのは俺の方だったらしい。

 

「腹は空いたけど……なに?」

「勘が悪いな。メシだよメシ。一緒に食いに行こうぜ。俺達、友達だろ?」

「友達……!」

 

 ナルトは目を輝かせた。

 

「俺さ!俺さ!ラーメン好き!お湯注いでからの三分間は嫌いだけど、めっちゃうまいカップラーメンがあるんだ!」

「一楽じゃないのか?」

「いちらくぅ?なに、それ」

「一楽はまだ知らないのか。よし、ついてこい。どんなカップ麺も目じゃない、この里で最高のラーメンを食わしてやる」

「最高のラーメン!?」

「ああ」

 

 よだれを垂らしながらついてくるナルト。

 まだ見ぬラーメンへの期待でいっぱいの様だ。

 

「そういやさ、お前ってばなんていうの?」

「日向ネジだ、ネジで良い」

「ネジ!俺ってばお前のこと好きだってばよ!」

「そういって貰えると助かるよ」

「へへへ……!最高のラーメンかぁ……!」

 

 9ヶ月間の木の葉一周弾丸ツアーは、俺にこの里の地理を叩き込んだ。

 今の俺は火影よりも里の地理に詳しい自身がある。

 ここから一楽なんて余裕だぜ。

 

 しばらく歩いて行くとおなじみの「ラーメン一楽」という暖簾が見えてきた。

 

 店に入ると、優しげなおっちゃんが毎度!と一言。

 

「あ、でも俺、あんましお金持ってない……」

「いいよ、奢るし」

「えーと。それじゃあ俺は……うーんと……」

 

 注文を決めかねているナルトを軽く止める。

 

「オススメがあるんだ」

「うーん……じゃあそれで!」

 

 まあ俺は初めて来たんだけどね。

 気付いているのは頭を掻いてるおっちゃんくらい。

 たしかナルトの味覚は……。

 

「おっちゃん。豚骨味噌チャーシュー麺、二つ」

「あいよ!」

 

 調理しだすおっちゃんをわくわく顔で眺めるナルト。

 まあそうか。

 忌み子であるナルトを食わせてくれるラーメン店なんて、今の時期だとここしかない。

 だからこそナルトはラーメン一楽の熱烈なファンに成長するし、ラーメンが人の手で作られるのを見るのは初めてだろう。

 

「はい!豚骨味噌チャーシュー麺一丁!」

 

 ナルトと俺の前に丼が並べられる。

 

「うぉぉぉ……!」

「うぉぉぉ……!」

 

 ラーメンにわかの俺でもわかる。

 これは、旨い……!

 

 こうして俺はナルトと友達になった。

 ファーストコンタクトは大成功。

 俺はナルトの人生で最初の友人になったのだ。

 

 

 この間、俺の本体はヒナタ様と会っていたのだが、それはまた別のお話。




 ※注意、途中で視点が分身の方へ変わってます


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第四話 白眼は決して気持ち悪くない

「私!強くなりたいんです!」

 

 それは唐突に告げられた。

 

 不意打ち。まさに不意打ちだった。

 どうしてこうなったかと言えば思い当たる節がないわけでもない。

 でも、いやどうしてと思わずにはいられない。

 

 少なくとも俺は、今朝の段階ですらこのフラグを予期できていなかったのだ。

 

 今朝。

 分身と別れ、朝の身支度を整え、簡単な朝食をとっていた時に来客があった。

 まだ一般的な朝食の時間に差し掛かってもない時分に妙を感じたが、名家の客人がたかが四歳の子供に用があるとも思えず、朝食を優先した。

 しかしそこにやってきたヒザシは、客人は俺に用があるのだと言う。

 後の修業に不都合だからと修行着のまま食事をしていた俺だが、客人に修行着のまま出るのが適当でないと思う礼節は心得ていた。

 一応俺も名家(分家)の跡取りだからね。さすがにそれくらいは気にしたい。

 しかしヒザシは首を横に振った。その方が逆に都合が良いというのだ。

 話が見えぬまま俺は客室に連れていかれる――と思いきや、父に案内されたのはいつもの修行場だった。

 そこに品よく座っていた相手が開口一番言い放った言葉がさっきの物だ。

 

 前置が長くなったが、この時の俺の不可思議な状況は全て次の言葉に集約される。

 

「どうしちゃったんですか、ヒナタ様……?」

 

 そう。久しぶりというかご無沙汰というか、ぶっ飛ばして寝込ませたぶりのヒナタ様。

 彼女はバトル漫画的バイタリティと共に再登場してきたのだ。

 

「どうしちゃった、と言われれば……そうですね、このままではいけない様な気がして」

「まじかよ」

「はい?いえ、あの……私はネジさんに一撃でやられました。肩の傷は癒えましたが、今回の事は日向本家の名に大きな傷を与えた気がするのです。

 いえ、それを責める気はありません。

 私はこれまで、対面の人を傷つける事を気にして試合をおろそかにしては、お父様に叱られていました。 

 しかし気付いたのです。私は来年、姉になります。このまま、私が弱いままでいると、その重荷を妹にまで負わせる事にもなりかねない。それではこれから生まれてくる妹に申し訳がたちません。

 だから私は父様ではなく、私の眼を覚ましてくれたネジさん自身に教えを乞いたいのです。

 私に、なぜそんなに強くなれたのか教えて下さい。お願いです」

 

 言い終わると、ヒナタ様は綺麗に座礼なさった。

 

 ……頭でも打ちました?

 え、3歳だよね?

 バックボーンが成長しすぎだろ、誰だよ。怖いよ。

 知らん。俺知らんぞこんな武士みたいなヒナタ様。

 ていうか、頭下げられてるんだけど。

 断る選択肢、もしかして無い?

 

「ちょっと待ってください。話が急すぎます。こう……ヒアシ様ではダメなのでしょうか?自分には宗家の方の修業がどこまで進んでいるかも分かりませんし。何より、荷が重たいです」

「お父様の許可はとってきました」

「うっそぉ」

「本当です。昨日お父様に『すぐにでもネジさんの様に強くなる方法はないか』と聞いた所、『無理だ。お前にはまだ早い……というより、儂にもあれの成長速度は謎だ。お前がそれで納得できないというのであれば、さしあたって明日あたりあれの修業を見に行け。儂の話に納得できたなら帰って来ても良いぞ』と言われました」

「許可取ってないよね?」

「見て盗め、と受け取りました」

「受け取っちゃったかー」

 

 闇落ち前のネジに会って気弱になるくせに、俺がのしたらこうなるのかよ。

 でもヒアシ様、ナイスファインプレーだ。

 俺がこのバイタリティ溢れるsssレアヒナタ様の眼を覚まさせてやるぜ。

 

「それでしたらヒナタ様、まずはヒアシ様のお言葉通り、俺の修業を見てみてください」

 

 数分後、修行場には俺とヒザシ、そしてヒナタ様を含む大勢の見物人が集まった。

 見物人はヒナタ様以外、全員分家の門下生。

 門下生が一堂に会するその異様な光景に、ヒナタ様も多少面食らった様子である。

 

「ネジ、そろそろ良いか?」

 

 ヒザシの言葉に向き直る。

 これから始まるのは、ヒザシと俺の一対一の手合わせ。

 準備運動などはない。実戦に準備などないからだ。

 

「はい!」

「よし。では行くぞ!」

 

 瞬間、重なる掌底。

 そこからの攻防に、ヒナタは思わず絶句した。

 周囲の門下生たちも食い入るように見つめている。

 見て盗め、と言われているからだ。

 

 掌底。チャクラで受け止め、反撃。今度は受け流す。

 流されては流す。はじいては押す。引いては打つ。

 一手一手が次の手を決め、それが永遠と繰り返される。

 その数多の手の流れが、まるで二人が舞を踊っているかの如く現出される。

 

 こんな事は実戦では起こりえない。

 地形、忍具、忍術。

 そういった不純物が入り混じる戦場では、拳技など喧嘩殺法に等しい。

 

 だからこの現象は、ある程度拳法を極めた二人が、平地、体術のみを条件に戦う事で発生する。

 一族の門下生の中でこれができるのは、上忍を除き俺一人。

 武道ならぬ舞踏。俺の柔拳はその域にまで達していたのだ。

 

「ふぐっ!」

 

 一時間後。姿勢を崩した俺を咎めた鋭い掌底に、俺は倒れた。

 チャクラを乗せた柔拳での試合は内臓にも負担がかかる。しばらくはまともに動けない。

 

「まだまだ踏み込みが甘いな、ネジよ。だから次第に呼吸が合わず、隙が大きくなっていく」

 

 父の助言を聞き、門下生たちは一礼して退出していった。

 これからは各々、俺の拳と父の言葉を反芻して煮詰めていく時間だ。

 

 体の疲労に唸っているとヒナタ様が寄ってきた。

 どうでしょうか、ヒナタ様。

 俺の実力はヒザシに劣る。

 宗家であるヒアシ様に教えを乞うことが一番の近道。

 気づいてもらえましたか?

 

「……すごかったですネジさん!私、やっぱりあなたと修行をしてもっと強くなりたい!」

 

 そうですか、もう知らん。

 俺の知ってるヒナタ様はもうこの世にはいない。

 解釈違いだ、こんなに変わるなんて……。

 

 

 

 その夜、俺は頭を抱えていた。

 隣には一族に混ざって雑魚寝するヒナタ様。

 ヒナタ様は「納得するまで帰るなと言われた」と意地を張って分家の家へ泊ると言い出した。あまり急だから部屋も用意しておらず、ヒアシ様とヒザシの間で半ば喧嘩じみた言い合いの結果、ヒナタ様の意志を尊重するという事で決着した。

 もちろん喧嘩の争点になったのは俺の存在。

 ヒアシ様の中で俺はなかなかの危険人物らしい。

 そんなに俺が怖いか、ヒアシよ。

 

 それよりも俺を悩ませるのは……ナルト。

 分身が今日一緒にラーメンを食べてきたこの作品の主人公である。

 

 なに楽しんじゃってんの?こっちはバリバリ修行中だったよ?

 

 とにかく、熱血ヒナタ様とナルト。

 この二人の要人との出会いがバッティングしたのはなかなかにバッドでハード。

 

 午前中は自分の修行、午後はヒナタ様の修業を行わなければならなくなった今、同時に分身体がナルトと会うのは至難の業である。

 しかし、両方と接点を持たなければ俺の将来に不安が残るのは確か。

 

「ぐぐ……俺は、いったい俺はどっちの裏切り者になれば良いんだぁ……?」

 

 悩む俺だった。

 

 

 

 翌朝。俺はナルトの家の戸を叩いた。

 

「んん……誰だってばよ……?」

 

 今起きたばかりのナルト。

 寝巻に眼をこすりながら出てきた。

 

「あ!お前ってばネジ!」

「よっ。ナルト。遊びに行こうぜ」

 

 目を輝かせるナルト。

 音をたてて扉を閉じると、一分もしないうちに出てきた。

 やっぱり、どっちを取るべきかは明白だったな。

 

「なあなあ、どこ行くんだってばよ?」

「うーん。ちょっと近所の公園まで、かな?」

 

 ナルトの家を出て、商店街へ抜ける。

 生花、食品、焼き肉、駄菓子屋、色々な店が並ぶ中、誰一人として俺たちを客としてみていない。

 厄介者が来たぞと言わんばかりの白い目。なかなか良い白眼をしている。

 お前も日向にならないか?

 ナルトは少々俯き、俺の三歩後をついてくる。

 

「なあナルト、腹がすいたな。なんか買っていこう」

「ネジ……!?」

 

 俺は近くにあった八百屋に向かう。

 目が合ったのは店番のおっちゃん。

 

「おい!お前何してる!?」

 

 案の定、おっちゃんは声を荒らげた。

 何もしていないというのにカンカンだ。

 

「何って……ちょっと小腹が空いたもんで、何か買おうかと」

「あーあー。迷惑だ。この疫病神が!これ持っててさっさと出てけ!」

 

 投げつけられたリンゴを手で受け止める。

 

「まいど!」

「フン!さっさとどっかに行っちまえ!」

「へいへい」

 

 リンゴを齧る。

 うまいのに勿体ない。

 

 ナルトはやはり下を向いたまま、三歩後をついてくる。

 商店街を越えてから公園に着くまで、ずっとナルトは黙っていた。

 

 公園には先客がいた。

 この近所の子供たちは毎朝、今ぐらいの時間にここで集まって遊んでいる。

 

「なんだよ、先客か」

 

 俺の言葉に、談笑していた子供たちは一斉にこちらを向く。

 なかには怪訝そうな顔もちらほら。

 

「なんだよ、ここは俺達の場所だぞ」

 

 最初に口を開いたのはグループのボス格。

 周りの取り巻きも続く。

 

「そうだそうだ!パパが言ってたぞ、お前らとは口をきくなって。ばけものだからって!」

「どっか行け!」

「ばけもの!あっち行け!」

 

 石でも投げてきそうな勢いだな。

 ちらりとナルトを見ると、ふるふると震えている。

 今にも途切れそうな小さな声でナルトは言った。

 

「ネジ……もう良い、行こうってばよ……」

「嫌だ」

「ネジ……!?」

「おいクソガキ。化け物だと?化け物見せてやろうかこら!ぁあん!?」

 

 ヤンキーだったかもしれねえ。

 ツカツカ近づく俺にクソガキも黙ってはいない。

 

「なんだよ!文句あるか!?」

「お前、やんのか!?一人で勝てるわけねえだろ!」

「勝てるわけないだと?影分身の術!」

 

 ボン。これで俺は二人。

 ガキ共がどよめく。

 

「は!?増えたぞこいつ!なんだ!?」

「白眼!」

「うわ!?目が変わったぞ!?」

「気持ち悪っ!」

「やばい、こいつマジでばけものだ!逃げろ!」

「我が柔拳の味を知れ!逃げるな!逃げるな卑怯者!」

 

 ガキ共はきゃあきゃあ騒いで公園を出て行く。

 ナルトはただ呆然とその様子を見ていた。

 

「けっ。口ほどにもねー」

「なあ、ネジ」

 

 呆然としたままナルトが尋ねる。

 

「お前ってば、なんでそんなに強いんだ?……商店街でも、さっきも、なんでお前はそんなに、平気な顔が出来るんだってばよ?」

 

 ……計画通り……っ!

 商店街、公園。全ては9ヶ月間の修行時代のリサーチに基づき綿密に練った計画の上、ガキもおっちゃんもナルトも俺の掌の上!

 この時、この言葉の為に!

 

「ナルト。お前、夢はあるか……?」

「夢?」

「俺はな、ナルト。火影になりたいんだ」

「……!」

 

 やはり。まだナルトに夢はない。

 一楽すら知らないナルト。賭けてみる価値はあった。

 

「火影はな、ナルト。みんなに愛されて、みんなを導く偉大な人のことだ。俺は火影になって、この目を気持ち悪いという奴全員を見返してやるんだ……白眼で。そして俺はそのために強くなりたい。だから修行をして、日々成長をし続けている!」

「……さっき増えたのも修行をしたからなのか?」

「そうだ」

「そうか、なら……俺も!俺は、この里のどんな火影をも超える!もちろんお前も超えて、そんでもって、里のみんなに俺の事、認めさせてやるんだってばよ!」

 

 ナルトは胸をはった。

 

「ナルト。その夢、もし本気なら、昼に日向の分家まで来い。お前とは別だが、俺と一緒に夢を追いかけてる奴がもう一人いる。俺達三人で修行をしよう」

「良いのか?」

「友達だからな」

 

 友達だもんね?そうだよね?

 お願い頷いて!

 

 俺は家までの簡単な地図をナルトに渡した。

 さて。後は影分身を解いて、来るのを待つだけ。

 

「じゃあな。ナルト」

 

 ボンと白煙。俺は消えた。

 そう。朝からナルトに会いに来ていた俺は2号。

 本体は柔拳の修行中。

 

 ヒナタ様とナルト、どっちも同時に修行をつける。

 これが俺の回答だ。

 

 昼下がり。

 日向分家の裏庭に、三人の子供の姿があった。

 

 一人は日向の天才。一人は熱血お嬢様。そして一人は化け物。

 三者三様、抱える物も掲げた目標も違うこの三人。

 

 はてさて、これから一体どうなることやら。




 急に伸びててびっくりしました。
 暇つぶしに書いてる小説なのに、大勢の方に見て貰えてとても嬉しく思います。
 今後ともどうぞよろしくお願いします。

※ここすき、感想、高評価をして頂けると一生ニヤニヤ出来るので助かります。


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第五話 正直、原作とか忘れてきてる

 その日、猿飛ヒルゼンは気分が良かった。

 今日はアカデミーの入学式。

 里の者たちを誰より愛する彼にとって、また里を治める三代目火影として、これから芽吹く忍たちが一堂に会す今日はその年で最も喜ばしい日。年中行事といえども毎年今日の感動は色あせる事はなく、むしろ年々強まるばかり。

 

 そして今日もまたアカデミーに併設された火影執務室からアカデミーへ列をなす新入生達を眺めていた。

 

 犬を連れているのは犬塚一族の子供、油女一族の子供は一人で歩いている。

 仲良く三人で歩いてくるのは猪鹿蝶の子供達だろう。

 

 今年の新入生は出来が良さそうだ。

 きっとあと二十年もすれば、皆上忍上位クラスへと成長している事だろう。

 

 そんな穏やかな想像も騒々しく扉を叩く音でかき消された。ただならぬ雰囲気。

 音の主はヒルゼンの許可も得ぬまま執務室の扉を開け、荒い呼吸でこう言った。

 

「火影様!火影岩が……また!」

 

 そういえば彼もこの世代だった。まったく末恐ろしい世代である。

 

「またナルトか!」

 

 

 

「やーい!やーい!お前らこんな事出来ねえだろ!バーカ!」

 

 四代目火影の顔岩の上でナルトは吠える。

 横に並ぶのは、化粧をした初代、白眼を開眼した二代目、モザイク加工してある三代目の顔岩。

 

「美術センス高くね?」

「うわ、ネジ!?」

「感心してる場合じゃないですって、ネジさん」

「ヒナタ!?」

 

 ナルトを挟むように立つ俺とヒナタ。

 その里中の反感を買う立地と作風……ナルトの犯行と踏んで駆け付けたが、時すでに遅し。

 ヒナタも同様らしいが、三つ並んだ悲惨な顔岩に制止する気力を失った様だ。

 

「里を巡回中の中忍二人を気絶させて火影岩にラクガキ……最近のナルトはやんちゃすぎ」

 

 言ったのはヒナタ。ナルトにはタメ口である。

 もう「ナルト君……」とか呼ぶ奴はいない。

 

「ナルトの悪戯がどれだけネジさんに迷惑かけてると思ってるの?」

「う……でも!でも!」

 

 どことなくナルトの声が沈む。

 

 原作で先にナルトの心情を明かされている俺からすれば当然の反応。

 修行生活で勘違いしていたが、確かにこいつはあのうずまきナルトなのだ。

 

 小言も消え失せていた時、白眼の端に大勢の忍を捉えた。

 ナルトとヒナタも察知して黙る。

 

「おい、そこで何をしている!お前等……」

「影分身の術!」「影分身の術!」「影分身の術!」

 

 即時逃げの体制をとる。

 情状酌量の余地はなさそうだし、なんなら現行犯だし。

 相手は十人だが、影分身の白煙が目くらましの代わりだ。

 

「影分身だ、逃げられるぞ!」「取り囲んで押さえろ!」

 

 駆け付けた中忍達が包囲陣形を固める前に、ナルトが白煙から飛び出した。

 総勢50人。

 

 ナルト達の攻撃はデタラメだが、中忍一人に対してナルト5人という人数差が何人かの逃亡を許した。

 

 それと同時に5人のヒナタが包囲網を抜ける。

 中忍達は動けない。残った分身ナルトに羽交い絞めにされている。

 

「ぐっ……くそ!」

 

 無論クナイ等を突き立てて脱出する事は可能だろう。

 しかしあの天才ネジですら本体を見破れない影分身、一介の中忍が見破れる訳もなければ、ナルトに手傷を負わせる危険性も判っている筈だ。

 

 だって九尾だぜ?子供だぜ?六歳だぜ?

 

 だがその子供、中忍如きにロックが解かれる様には仕込んでいない。

 

「詰みだ。諦めて見逃せ」

 

 俺10人、中忍それぞれの前に立つ。

 震える声で答えたのは中忍のリーダー。

 

「日向ネジ……一族異端の変態……っ!」

 

 どんな呼び方だよ。俺七歳よ?精神構造に問題が起きるよ?

 それはともかく。

 

「ふぅん。見逃してはくれないという事か」

 

 中忍は青ざめる。

 

「い、いや……そうは言っていない。なに、ここ子供のした事だ、なあ?俺達もこんな状態なんだ、もう身動きもとれない。完敗だよ……?だからほら、今回は……」

「思ったより軽いなお前。まあ一族異端の変態のした事だ。問答無用だ、大目に見ろ」

「ちょ――」

 

 叩き込むのは、十連一極集中のオリジナル技――!

 

「八卦掌"九曜"回天!」

 

 瞬間!炸裂する10の回天!中央の大回天と周囲九つの衛星回天が生じる遊星歯車的破壊現象!絶対防御は戦術的脅威へと昇華する――!

 

「次は11人で来るんだな……!」

 

 

 

――――――――卍――――――――

 

 

 

「いやー逃げた逃げた!ちょっぴりやばかったってばよ!」

「ナルトぉぉ~っ!ちょっぴりじゃないよ!私達まで共犯扱いになったじゃない!」

「いやいや。やばかったのは入学式の空気だろ。あの後みんな騒動に気づいてたし、平然と出席したお前らにお通夜みたいな雰囲気だったからな、マジで」

 

 アカデミーの入学式も終わり、打ち上げのラーメン一楽。

 

「はい、豚骨味噌チャーシュー、一丁!お嬢ちゃんは替え玉いるかい?」

「ありがとってばよ!」

「いえ、まだ大丈夫です」

「いやーいつもすみません本当に」

 

 食うのはナルトとヒナタ、俺はイルカポジション。いつもの光景だ。

 だってこいつらめっちゃ食うんだもん。

 特にヒナタ。あれだけ食べて太らないのは人体の神秘である。

 

「んめえ~!うまいってばよ!」

「おいしいです!」

「へっ!そう言ってくれると嬉しいね!」

「本当にいつもありがとうございます。今日だって火影岩にあんなことをしていたのに」

「良いんだよそれくらい。どんな事してたって腹すかした客には飯をだす!それが飯屋ってもんよ。それにあんたらのおかげでうちの知名度も上がってるしな!」

「知名度……?俺達のおかげ、ですか?」

「おうよ。なぁに、知らねえって事もねえだろ?あんたらが"三妖"なんて呼ばれて有名なのは」

「……」

 

 知らんが?いや知らんが?

 三妖なんてあったっけ?原作を読んだのも随分前だからな、忘れてるかもしれん。

 

「すみませんが、その三妖というのは?」

「……?なんだボウズ、謙遜なんかする年じゃねえや。"黒髪の妖姫"、"橙赤の鬼子"、"大妖怪卍白影"とくりゃあ"木の葉の三妖"よ」

「一人だけテイストが違う」

 

 ていうか全員ナルトっぽくない。

 解釈違いだ……おい神よ、これなんて二次創作?

 俺が絡むと原作からずれていく呪いでもかかっているのだろうか。

 俺は生き残れればそれで良いのだが……。

 

「なんでも、子供にしちゃあ戦闘能力が高いって評判でな……数年前木の葉にいたっていう、子供の皮を剥いで化けの皮にする白い妖怪とごっちゃになって、三人ともども妖怪扱いさ。おたくらの知名度もあって、うちは商売繁盛って事よ!」

「それ悪評では」

「いやいや、とくにお前さんなんかは『今木の葉で最も火影に近い子供』なんて言われて、二つ名に影が入ってるくらいだからな」

「そこ以外全部蔑称でしたよ?」

「まあ細かい事はいいじゃねえか」

 

 豪快に笑うおっちゃん。

 

「まあまあ!俺達も認められてきたって事だってばよ!」

「火影に近いなんて言われるのは良い事だと思いますよ?」

「悪名過ぎるけどな……あれ?もしかしてお前等知ってた?」

「そ、それは――」

 

 全力で目をそらす二人。

 あれ?知らなかったの俺だけ?諸悪の根源が仲間外れなんだけど?

 

「おっちゃん。お勘定して」

「ネジ!?」

「ネジさん!?」

 

 爆笑するおっちゃんだった。

 

 

 

 その夜、一人の少年は今日見た光景を思い出していた。

 

 自分と年の変わらない少年達が火影岩にあんなラクガキをして、集まってきた中忍を一網打尽にして逃げていった。しかも、そのまま何食わぬ顔でアカデミーの入学式に出た。

 衝撃。あんな子供がいる事は衝撃的だった。

 

 あいつらの名前は……確か、うずまきナルト、日向ヒナタ。

 

 夕食の席で父さんに聞いたら、片方は日向家の子供で、もう片方ははぐらかして教えてくれなかった。

 名門の子供、そして謎の子供……どっちにしろ父さんはあいつらの事を知っていた。

 

 どんな奴なんだろう。

 

 日頃の父さんは兄さんの話ばかりで、他は一族とか任務とか小難しい話ばかり。

 僕の事だって気にも留めないのに……それなのに、あいつらの事は知ってそうだった。

 

 特に、うずまきナルト。あいつは名門でもないくせに、どうして父さんは……。

 

 いいや、そんなの決まってる。強いからだ。優秀なんだ。たぶん、僕よりずっと。

 

 父さんは兄さんだけじゃなくて、優秀な忍に興味があるんだ。

 僕は、優秀じゃないと思われてるのかな……。

 

 いいや、そんなのおかしいじゃないか。

 僕だって父さんの子供なんだ、絶対に、あんな奴より劣ってるわけない!

 

 よし、明日……!

 

 

 

 その夜、別の少年もまた、今朝の事を思い返していた。

 

 突然ネジ君が飛び出して行って、そしたら火影岩の上であんな騒動が……。

 やはりあれはネジ君が起こした騒動なのでしょうか。

 

 確かにネジ君には黒い噂があります……妖怪だとか、妖怪を一匹飼っているとか、巷では色々言われています。三妖なんて呼ばれて、実力もあるのでしょう。

 

 いいえ、いいえいけません!根も葉もない噂を信じて同級生を疑うのは悪い事です!

 ネジ君は同級生全員に一目置かれ、クラスの友人にも評判が良い、優しくて良い人です!

 それだけは間違いありません!

 

 しかし……しかし本当に中忍を倒せる程実力があるかもしれないのは事実です。

 

 あの騒動には三妖の新入生が絡んでいるとも聞きますし……彼が絡んでいようといまいと、僕の実力が彼に負けているのも事実。

 

 やはり僕の忍道には、ネジ君、そして彼が率いる三妖を打倒することは必須です!

 

 そうと決まれば迷っている暇はありません。思い立ったら即・行・動!

 

 さしあたって明日……!今は勝てなくとも、実力を見極めてやります!

 

 

 

 次の日。

 

 俺の前にある少年が立ちふさがった。

 

「お前は……リー?」

「ネジ君!僕は君をライバルにすると決めました……!ライバルであるからには言葉は要りません。今すぐに、最初の決闘を申し込みます!」

 

 同刻、ナルトの前にも。

 

「お前ってば、誰だってばよ?急に果たし状なんか送ってきて、何がしたいんだってばよ?」

「そこに書いた通りだ。……うずまきナルト、僕と戦え!僕の名は、うちはサスケ!」

 

 二人の挑戦者の声が重なる。

 

「いざ尋常に勝負!」

 

 開幕のコングは今鳴った。

 

 

 

――――――――卍――――――――

 

 

 

「どうしてこうなった!?」

「こっちが聞きたいわ!解る様に説明しろ、ネジ!」

 

 怒鳴るヒアシ様。俺とヒナタ様は正座。

 久々の日向本家である。

 

「いやだから、リーに勝負を挑まれまして」

「ああ、それで?」

「気付いたら意識と体が飛んでました。リーの」

「三年前と全く同じではないか!バカかお前は!」

「すみません」

「そしてヒナタ!」

 

 ヒアシ様はヒナタ様を睨む。

 

「言え!お前は何をした!」

「はい……ええと、ナルトがサスケさんに勝負を挑まれまして」

「それで?」

「サスケさんを応援した他の女子と私とで口論になって、サスケさんが飛んだ事が原因で喧嘩に……」

「それで?」

「気付いたら何人か飛んでいました」

 

 やだ!この子達血の気が多いわ!

 

 てかサスケかよ!出てくんのはえーよ、台本読め!

 絶対飛んだ女子ってサクラとイノだし!

 

 ヒナタ様もなんで平然とぶっ飛ばしてんのかね。

 しつけがなってないよ、しつけが!

 

「どういう事だネジこら!!!」

「え俺すか!?」

「どう考えてもお前が原因だ!昔のヒナタはそんな子じゃなかったし、話の内容が生き写しすぎるわ!」

「そんな事は」

「あるだろ!どう聞いても!」

「生き写しなのは産まれつきです!」

「実父の知らん産まれつきがあるか!」

「待ってください!俺は修行しただけで、気性まで魔改造したつもりはありません!」

「魔改造という言葉が出てくるだけの事はしてるじゃないか!」

「しかし性格までは……!」

「本当に、心からそう言えるか?今のヒナタはお前の影響を受けていないと?」

「……」

 

 違ったかもしれねえ……。

 

 というか原作の姿は見る陰もないな。

 よし、ごまかしスマイル。

 

「へへっ!」

「呪印!」

「ダメだったングガアアア!!」

 

 俺の体は跳ねまわり、意識が朦朧とする。

 言語化できない頭痛に全身が支配される様だ。

 

「父様、ネジさんに何を!?」

「黙って見ていろ!これも分家の宿命……!」

「ネジさん!?気をしっかり、大丈夫ですか!?」

「ウゴゴ……きれいなお花畑が見える……ヒ、ヒザシが川の向こうから俺を呼んで……」

「気をしっかり!まだ生きてますその人!」

「湯気の向こうにヒナタ様の……おっほほ」

「何のイメージですか!?父様止めて!ネジさんがおかしくなっちゃう!」

「儂には結構大丈夫そうに見えるが……?」

「ネジさんに変な物見せないで!」

「儂のせいではないわ!」

 

 ふっと頭が軽くなる。ヒアシ様が印を解いたのだ。

 息も絶え絶え、起き上がる。

 

「呪印によって脳細胞が破壊される感覚……あぶない、どこかへトリップする所だった」

「既に怪しかったですよ!?」

「おかしい、他の者はあんな反応にならんのだが……」

 

 

 

「というわけで、本当すみませんでした!」

 

 半刻後、俺、ナルト、ヒザシの三人はサスケの家で頭を下げていた。

 ヒナタはヒアシ様と一緒にぶっ飛ばした女子の家を回っている。

 

 サスケの父――対面のうちはフガクは頭を掻いた。

 

「どうぞ頭を上げてください。子供のやった事ですし、うちの子から勝負を挑んだともなれば一方的に謝られるのも居心地が……。いやいや、こちらこそ申し訳ないです」

 

 フガクは頭を下げる。

 腰が低いというか、見かけによらず温厚な印象。

 一族のメンツの為か、それとも水面下のあの動きを隠すためか?

 邪推はよそう。せっかくの白眼が腹黒く染まっちまう。

 

「どうぞこれからも息子と仲良くしてやって下さい」

「どうもご迷惑をおかけしました。ネジにはきつく言っておきますので」

 

 親同士はそんな所で了解した。

 菓子折りも渡し、サスケの家を出た所でナルトを呼ぶ声に引き留められた。

 見ると家路とは反対方向の通りにボロボロのサスケが立っている。家の中で姿を見なかったので今日は会えない物と思っていたが、実情は違うらしい。

 ヒザシは気を利かせて俺達と別れ、俺とナルトはサスケの無言の案内に従って、着いたのはうちは一族の演習場だった。

 演習場の前でサスケが放ったのは意外な一言。

 

「ナルト……お前に修行をつけたのはネジだと聞いた。本当か?」

「ああ。そうだってばよ……?」

「ネジ、ナルトにした修行、この演習場でもできるか?」

 

 なるほどな。

 あの事件の前の純粋なサスケ。既に落ちていたか。

 

「うちはの演習場は広い。ナルトにした以上の修行ができる」

「だったらネジ、僕にも修業をつけてくれ!僕は……っ」

「わかってる。お兄さんみたくなりたいんだろ?」

「な、なんでそれを……?」

「昔里中をパトロールした事があってな……大抵の事は見てきたつもりだ」

「日向でそんな事……もしかして、ネジって三妖の!」

「そんな有名なのか、それ……」

 

 なんか複雑だな。お前も入れて四妖にしてやろうか。

 

「まあとにかく!今日からお前も俺たちの仲間だ。二人は兄弟弟子、これからは共に夢を抱く兄弟としてお互いを高めあう事!」

「おう!よろしくってばよ、サスケ!」

「ああ、ナルト!」

 

 二人は固く握手をした。

 この光景、原作でも見たかったな。

 

「さて!そうと決まれば行くってばよ!一楽!」

「おいナルト、何を勝手に……!」

「一楽ってなに?」

「おう!一楽ってのは、それはそれは旨いラーメン屋で……」

 

 ダメだ。こうなったらナルトは止められない。

 食費が増えるのか。子供が貰える小遣いなんてたかが知れてるんですが。

 働くかー。影分身使ってアルバイトとかか?子供にそんな事やらせてくれる店あるか?

 ネジ生存ルート、楽じゃない。

 

 

 

「うおお!ネジ君!僕のライバル!いつか君を超えて見せます――!」

 

 その頃。存在を忘れられていた挑戦者もまた夢を胸に決起したのだが、まあ何だ……スマン!



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第六話 獣より団子

「いいえ、結構です!」

「…………」

 

 後日。いつもの様にリーを修行仲間に誘った俺に突き付けられたのは、意外にも拒否の一言だった。

 

 なんで!?こいつが一番ちょろいと思ってたのに!

 とかが本来の俺のリアクションなのだろうが、今回ばかりはそうもいかない。

 

 いや、ごめんね。

 意外でもなんでもないわ。

 一週間も放置したもん。そりゃそうだよね。

 

 先日の一件で、サスケは俺の弟子となり、俺の弟子は三人となった。

 サスケ、ヒナタ、ナルト。このじゃじゃ馬妖怪3人に並行して修行をつける事が一体どれだけの苦労になるか、当時の俺は完全に読み違えていた。

 

 実はナメてた。どうせ一人増えるだけだし?俺天才だし?とか思ってた。

 

 だが蓋を開けてみるとどうだ。

 

 向上心余りあるサスケはすぐナルトに勝負挑むし、ナルトはバカだから勢いでボコボコにしちゃうし、ヒナタ様は窘める感じで柔拳ぶっぱなしてナルト沈むし、修行は止まるし、俺の胃は痛むし、食費は馬鹿にならんし、分身が一楽でバイトして稼いだ金はすぐ消えるし、そんな分身作ったせいでチャクラが足りないし、おっちゃんは人使い荒いし、娘さんは可愛いし、美人だし……。

 

 違う違う。

 

 やっぱ兄貴顔して最初に奢ったのが間違いだったか。

 ナルトが毎回奢られる雰囲気なのが伝播して断れなくなっちゃったんだよな。

 

 だから違う違う。

 

 とにかく、控えめに言ってバケモン級のキャラの濃さ三人を相手にするのは骨が折れた。

 

 折れまくって一週間が過ぎ、今日リーを発見。

 発見と言ったのは、一週間ぶりの登校だったからだ。

 リーは一週間も休んでいた。さっき気付いた。

 

 ……やっちまったよね。内臓疲労で一週間ぐったりだってさ。

 はは。どうすんだこれ?

 

「待て!待てリーよ。この前お前を吹っ飛ばしてしまった事なら謝る!すまん!この通りだ」

 

 全力で頭を下げる事にした。

 

 それ以外に思いつかなかった。

 長い事人生歩んできたけど、今日のリーより不憫な奴は見たことがない。

 

 廊下で展開される珍事に、取り巻きの生徒達はざわつく。

 

 周囲からの非難の圧力。

 まだ謝ってなかったのかという視線が痛い。

 

 やめて!悪気はなかったんです!

 それが一番問題だけど!

 

 しかしリーは周囲に気付かない風で、力強く首を振る。

 

「いいえ!謝罪なんて願い下げです。あれは僕の力不足、君が侘びる非なんてこれっぽっちもありません!」

「いいや侘びさせてくれ!本当に済まなかった!俺は人として気遣いが足りていなかった、マジで!なんでもするから、俺に罪滅ぼしをさせてくれ!」

 

 食い下がる俺。

 本心からの絶叫だった。

 キャラ崩壊だった。

 

 一瞬の沈黙の後、再度リーは首を振る。

 

「なるほど、理解しました。しかしお断りさせて頂きます」

「どうして」

「卑怯だからです!」

「ぐ……たしかに、俺の言動は謝罪の押し付け、卑怯だったかもしれない。だが……」

「そうではありません!全然違います!」

「……ん?」

「同期で一番の実力者である君に修行をつけてもらうのは、確かに魅力的です。しかし、それは一方的に君の扱う戦術の種明かしをされているに等しい。それでは次手合わせしたとき、フェアな戦闘になりません!僕と君とはライバルです!僕は僕のやり方で君を超えます!」

 

 ビシ!っと親指を立てるリー。

 

「……」

「……」 

 

 え、なんなんこいつ。

 

 忍の世界にはバトル漫画的人間しかおらんの?

 人間関係の広がり方、雨降って地固まる以外のバリエーションを見たことがないんだが?

 

 周りの人間は……いやでも呆気にとられている。

 こいつがやばいのか?

 それとも俺が関わると全員こうなるのか?

 

 そんな事ある?

 

 いやいや、ないない。

 

 高校までの俺なら、俺の影響力、高すぎ……!?みたいな勘違いで、また恥をさらしていた所だ。

 しかし俺も成長した。

 高すぎない高すぎない、俺はモブ。日向ネジ。

 原作にない物があるわけない。

 

 力は封印されてないし、堕天してない。

 

 俺が選ばれし者でない以上……選ばれ死者である以上、俺の主人公補正は死ぬ事であり、原作以上に俺が影響力を持つ事があればそれはきっと俺をここへ送ったあの爺神のせいである。

 

 ネジそこまで影響力ないからね、悪いけど。

 つまり俺は悪くない。

 

 畜生あの爺神野郎……ヒナタ様に始まりリーまでも、俺の人生をめちゃくちゃにしやがって。

 おかげで体の良い言い訳を見つけたぜ。

 

 ちなみにここでいう爺神は誤用だが、俺の人生に二度もバッドエンドを突き付けたあのジジイは御用になるべきなので問題ない。

 

 ってか、そんな事は問題じゃない。

 

 リーがグー!ってなポーズをとったまま場が凍結している。

 胃袋的死活問題を感じた俺はとりあえず返す事にした。

 

「リーよ……本当に怒ってないんだよな?」

 

 とりあえず小物だった。

 

 

 

 それからの掛け合いは俺の沽券に関わるので割愛。放課後。

 摂氏500度くらいの熱血を浴びてあんまりな気分だが、今日も今日とて修行である。

 

 俺も無為に骨を折っていたわけじゃない。

 この一週間、俺含め全員が修行できる様に策を練っていたのだ。

 

 その結論がこれである。

 

 ヒナタ様とナルトはうちは演習場にある大池で体術修行。

 

 ヒナタ様には俺が柔拳の特別メニューを、そしてナルトには影分身同士で組み手をさせている。

 もちろん両者、水面に立った状態でだ。

 

 影分身の数は経験値の倍率。

 影分身の組手は単純な戦闘経験値になるだけではなく、自身の立ち回りの弱点や課題を爆速で発見し修正できる利点がある。

 

 そしてもう一つ重要なのは、ナルトの戦闘スタイルの改善だ。

 ナルトは無鉄砲すぎて、相手の攻撃を受けてでも反撃を繰り出す事がままある。

 毒や忍術など一撃もらったらアウトな場面が多い実戦でそれは自殺行為に等しい。

 だからこその影分身である。

 外傷一発で消える影分身体は、必然相手の攻撃を食らわない努力が求められる。

 その経験値は自然と本体に蓄えられ、ナルトの拳技は洗練されていく。

 

 影分身の数を増やすことも検討中だし、拡張性の高い修行方法は良いね。匠の技が感じられるよ。

 

 一方ヒナタ様の方は、ナルトの本体と戦わせている。

 

 ヒナタ様の性格は異常な進化を遂げたが、根本の「敵を傷つけたくない志向性」は残っている。

 悪事を働いた、気が置けない仲のナルトに使う柔拳はともかく、それ以外に積極して柔拳を使うのは抵抗がある様だ。

 

 前回のサスケファン達においては自衛の為に剛拳で説き伏せた(物理)というのだから恐ろしい。

 ……どうも俺とのファーストコンタクト(物理)が原因っぽいのだが、何の事やら。

 

 そうして出来上がった今の彼女の柔拳は攻撃の意思が乏しい。

 それを打開すべく思いついたのが、柔拳による"絶対反射"である。

 

 柔拳は経絡系に負担をかける拳、こちらから攻撃せずとも敵の攻撃を受け流しチャクラを流すことで、簡単に戦術勝利をもぎ取れるのだ。

 攻撃が反転して自壊を呼ぶ、これが"絶対反射"の柔拳である。

 

 そこでナルトとの組手だ。

 ナルトには「攻撃の手を緩めるな」と言い、ヒナタ様には「全て受け流せ」と伝えてある。

 足場が不安定な中受け流す事に注力するのは相当な精神力がいる。

 今のナルトの連撃は俺ですら白眼をフルで活用しなければ見切れない。

 ヒナタには十分すぎる修行だ。

 一応ナルトの体力を考えて柔拳は使うなと言ってあるが、この様子ではそんな余裕はなさそうだ。

 

 ちなみになぜナルトの本体を使っているのかというと、ナルトの阿呆は自身の修行の意味を考えず影分身をすぐにぶっ飛ばすからだ。

 戦闘スタイル変わらんっちゅーの。

 

 サスケは森林スペースで三年前のナルト達と同じ修行をしている。

 言葉じゃ何も理解できないナルトは勿論、ヒナタ様よりも習得スピードが速い。

 この分だとアカデミーの卒業を待たず、成長したナルト達の横に立てるだろう。

 うちはの血ってやっぱすげえ。

 俺もうちはに生んでもらった方が良かったかも……いやあのクソジジイの事だ、イタチとかにされてたかもしれない。やはり日向は転生においても最強か。

 

 そして俺。

 ここが一番重要である。

 こいつらに修行をつけつつ俺も成長する方法。

 それは、ただ修行を眺める事だった。

 

 驚くなかれ、詐欺じゃないよ。

 長い事生きていて確信を持ったのだが、白眼という目は使う程強化される。

 全力だしてやっと見切れるナルトの体術、それを受け流すヒナタ様、急成長するサスケ。

 そのそれぞれに配置した影分身体が、各人のチャクラの流れを細部まで注視する。

 俺の眼に足りなかったのは、はっきり言って"見る"事自体だったのだ。

 日のチャクラ消費量はえぐいが、これは俺の白眼スペックを劇的に跳ね上げる。絶対に。

 

 俺は忍として実戦に投入される前に、点穴を見切りたい理由がある。

 

 

 

――――――――卍――――――――

 

 

 

 そしてその日は唐突にやってきた。

 サスケに、ナルトに、ヒナタ様に……全身に小さなチャクラの水玉が見える。

 チャクラの淀みの様でもあるし、経絡系の交点や分岐点の様でもある。

 ただ一つ解ったことは、体を流れるチャクラはその水玉を基点に増減し、循環しているという事。

 有体に言って結構キモいね。

 体内にびっしり経絡系と点穴。人間の見方が変わるねこりゃ。

 

 新しい見地にガッツポーズ。ポジティブは大事。

 

 あれから一年。

 俺は修行を見ていただけだが、やはり俺の眼に狂いはなかった。

 副次的にチャクラ量も上がったのは僥倖だったね。

 連日チャクラ切れすれすれの感覚、この世界の住人じゃないと伝わらんだろうな。

 精神と身体を同時に消耗するのはかなり辛かったが、それも報われて弥栄弥栄。

 

 ナルトとヒナタ様に一言断り、俺は一人うちは演習場を抜けた。

 

 点穴を見切ったら行きたかった場所がある。

 なに、ちょっとしたお使いだ。

 

 里の穴場的忍具店。お値段はちょっと張るが、良質な忍具、コア層向けの忍具を取り扱っている。

 

 長物から暗器まで、多種多様な武具がジャンクヤードを彷彿とさせる店内に取り揃えてある。

 男のロマンって感じ。

 

 ジャンクヤードの奥、コア向けのブースにそれはあった。

 

 手に取ってみると、金属とも何かの結晶ともつかない透明感のある肌触りに、広げた掌よりも長い刃渡り?をしている。

 一朝一夕では武器として扱えなさそうな、しかし柔拳との相性は最高級の忍具――千本である。

 

「へーえ。千本ね、アンタなかなか渋い趣味してるわね」

 

 横やりを入れてきたのは聞きなれない女の声。

 そこに居たのは。

 

「テンテン?どうしてここに」

 

 チャイナ服とお団子頭の似合う女、テンテンである。

 

「どうして、って……ここはあたしの行きつけの店だし」

「そうだ武器オタクだった」

「武器オタ……って失礼でしょ!確かにそうだけど!」

「へへ」

「ごまかすな!初対面の癖に内輪ノリっぽくするな!」

 

 そういえば初対面……ってか二年同級生やってて初対面!?

 

「え、俺いじめられてる?」

「なんでそうなるのよ……まあ確かに、とっつきにくいわよねアンタ」

「いじめられてるやつだ。婉曲的に伝えてるやつだ……」

「だからなんでそうなるのよ」

「でもなければ二年一緒で初対面はありえないでしょ。どうかひと思いに言ってくれ……!」

「ちょ、ちょっとストップ!なに?アンタ、オフの時はそんな感じ?」

「そんなって何が」

「はあ……もういい、なんとなく解ったわ」

 

 軽く頭を抱えるテンテン。

 

「アンタね、とっつきにくいのよ。成績はとびぬけて優秀。いつもやつれた目してるし、つきあい悪いでしょ?修行があるとか言って、後輩ばっか可愛がって。この学年でアンタと交友関係あるのリーだけよ、気づいてた?それがどんな堅物かと思ったら……アカデミーでもその調子なら、とっくに人気者になってるわよ……」

「やつれてたのは修行のせいだな……そんな所に弊害があったとは」

「修行の弊害って……休養もまた修行の内よ?」

「アカデミーとか休養でしょ」

「急にとっつきにくくなったわね……それで、そんな天才様がどうして千本なんか?アンタならそんな物いらない気もするけど?あ、もしかしてアンタも物好き?」

「それだけはない」

「……」

「ちょっとガッカリするな。千本は戦闘用というよりは、医療用に使いたいんだ」

「医療?って、鍼灸なんかに興味あるの?」

「半分違う。日向一族に伝わる柔拳は知っているよな?俺は弟子と一緒に、数々の人達をボコしてきたわけだが……一年ほど前、俺達がリーや下級生をボコした事件の時、俺が少しでも医療を齧っていたらって思ったんだ。そうすればリーは一週間も寝込むことはなかったし、下級生たちの回復も手助けしてやれたんじゃないかとな。だが俺に医療忍術の心得はないし、得意は柔拳くらいしかない。だから、鍼灸を応用した柔拳で直接チャクラ系をいじる回復忍術の研究をしたいんだ」

「ふーん。まあ確かに、チャクラの流れをいじれば回復だってできなくはないだろうけど、正気?鍼灸って結構難しいのよ?」

「いや、いじるのは点穴そのものだから、鍼灸の基礎さえわかれば柔拳の応用でなんとかなると思うんだが……その口調、もしかして有識者?」

「え、ええ……あたし時空間忍術くらいしか取り柄ないし、忍具の扱いは一通り学んだけど?」

「そうか。頼む、俺に鍼灸を教えてくれ」

「え?ああたし!?」

「基礎だけで良い。後は俺一人でやる。お前しかいないんだ」

「急に馴れ馴れしい……まあ、良いけど」

 

 いよっ!良い女!

 

 

 

――――――――卍――――――――

 

 

 

「という訳で、だ。サスケ君?」

「はい。な、なに?」

 

 テンテンに鍼灸を習ってから数日。

 修行終わり、へとへとになった実験体一号に早速声をかけてみた。

 ナルトは九尾チャクラとかいう爆弾抱えてるし、ヒナタ様は女で手が出しづらい。

 何よりヒアシ様に呪印呪印ネジィされてしまう。

 

 ただの俺考案疲労回復のツボも劇薬になりかねないという事だ。

 

「ちょ~っとリラックスしてそこに寝そべって?」

「え、な、なに?」

「リラ~ックスしてくれるだけで良いから。疲れが消えるマッサージみたいな物だよ?」

「その喋り方は何?手に持ってるの針だよね?ちょ、ちょっと、やだ!」

「大丈夫。俺は天才だァ~!」

「なに!?ちょ、ちょ、うわああああああ!!――――あ?」

 

 千本を指すと、しばらく絶叫したサスケは妙な声を出した。

 

 ん!?間違ったかな……。

 ふむ、この秘孔ではないらしい。捨ててこい。

 

 ……サスケは何も言わない。

 あれ、これどっちだ!?だんだん焦ってきた、どうしよう失敗してたら。うちは一族なんですけど、愛を失った親族が俺を殺しに来るかもなんですけど!?

 死にたくない!こんな理由で死にたくない!!

 

「い…いやだ たすけてくれえ!な…なぜ俺がこんな目に!!!天才のこの俺がなぜぇ~!!」

 

 俺の慟哭にむくりと起き上がるサスケ。

 

「だからなんなのその喋り方?」

「生きとったんかお前ェ!?」

「死ぬかもしれなかったの!?」

「い、いやそんな事はないが……」

 

 っぶねー。天才リスペクト失敗かと思った。

 あいつ別に成功してないけど。

 

「気分はどうだ?」

「なんか……最初は変な感じだったけど、じんじんしてきて、疲れが取れてきた」

「俺は天才だ!!」

「本当に急にどうしたの!?」

「今夜はパーティーだ!無礼講だ!一楽で好きなだけ食らうが良い!」

「やったー!」

 

 

 

「おいしかったー!」

「うまかったってばよ!」

「ありがとうございます。親父さん」

「あいよ!まいど!もうじき暗くなるから気ぃつけて帰んな!」

「なんでお前等まで……くそ!」

 

 無礼講と聞いたナルトとヒナタ様は凄かった。

 ほんと、お前らの為じゃないのに凄かった。

 

 ナルトとは先に別れ、サスケの帰りが遅くなってしまったので送っていくと言ってヒナタ様とも別れる。

 ヒアシ様はそういう所気にするからね。修行が終わったら即帰って来いってさ。

 そんなに俺が……これは蛇足か。

 むしろヒザシが放任過ぎるくらいだ。俺は楽で良いけど。

 

「なんか……おかしいな」

 

 サスケが不意に呟く。

 確かに。うちは一族が住む地区に入ったのだが様子がおかしい。

 暗くなってきたとはいえ、人気が無さすぎる。

 まるで――

 

「そうか!サスケ、待て!」

 

 あれは今日か!?まずい!!忘れて――

 

「サスケ!?」

 

 走り出したサスケ。

 不安に駆られてか、俺の言葉は耳に入っていない。

 

 くそっ!!失態だ!

 人生一の大ポカをやらかした!

 咄嗟にサスケの家へ急ぐ。

 

 瞬間、響き渡るサスケの絶叫。

 走力がつきすぎている。修行が全部裏目に出た!

 

「くっそ!くそ!くそ!――」

 

 なんでこうなった。俺が――俺はこんな事の為に……!

 

 サスケ一家の門前につくなり出てきたのはイタチ。

 イタチは目を――万華鏡を見開く。

 

「君は、サスケの――」

 

 殺気。

 こいつ、動揺から間髪入れず決断しやがった。

 俺を、殺すと。

 初めて感じる強大な殺気に身がすくむ。

 全身が硬直して、胃が痙攣しても嘔吐ができない。

 

 イタチは背中に台頭した刀を抜くと、

 

「に――兄さん!!」

 

 ……遠くでサスケの声がする。

 あれ?おかしいな、そんなに距離はない筈だが?

 

 肩口が、熱い。それなのに、すごく寒い。

 

 意識が遠のく。

 

 なんだろう。この感覚、前にも味わった気がする。

 

 どこでだっけ?

 

 わからない。おもいだせない。

 

 おれのいしきは、しずかに、やみのなかへ――。



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第七話 原作開始!俺はモブじゃねえ!

 見知らぬ、天井。

 いやなんとなく解る。木ノ葉病院だ。

 ここ以外に病院知らないし。

 

 あのクソ(ジジイ)――いや、認めよう俺の非だ。

 俺は修行にかまけて、イタチの起こす虐殺事件の日付を忘れていた。

 大好きな作品に転生しておいてとんだ失態だ。

 NARUTO転生なんて夢にまで見ていたのに、実際俺をどれだけ強化しようが、モブはモブという事か?

 

 ネジが主役だって良い筈なのに。

 

 はい、自己嫌悪終わり。

 

 理性的に行こう。体は無事かな?

 イタチの太刀食らって無事なわけないんだけども。

 

 とりあえず白眼は無事。

 両脚も問題ない。

 次に両腕、ここで右手側の上半身に激痛。

 

 白眼で患部を確認すると、右肩から胸にかけ、経絡系が一度引き裂かれた後溶接された様な傷痕が伸びている。

 どうやら傷から右は痛む割に動かせないらしい。

 

 右肩から袈裟切りにされ、右腕右肩がお釈迦って所かな。

 

 俺右利きなんですけど。

 

 しかもこの溶接跡――治療痕だろうが、これが治療と言えるのか?

 治療方法が忍術なのか半田ごてなのかすら怪しい。

 しかもご丁寧に上から大仰なギプスで固定されているし、お世辞にも助かったとは言えまい。

 

 また気分が沈みかけていた時、病室の扉が開いた。

 

 入って来たのはナルトとヒナタ様。

 2人揃ってお見舞いとは、ナルトも中々隅に置けない。

 なんて軽口を言う間もなく、俺の覚醒に気付いたナルトは大慌てで医者を呼びに行き、ヒナタ様はその場で泣き崩れてしまった。

 

 少々太ましい中年の医者が到着すると、父ヒザシもやってきた。

 俺は数日間寝込んでいたらしい。

 だとすると、皆の反応は少々オーバーじゃないか?

 数日寝込む位の怪我、忍にとっては日常だと思うが。

 親バカと情に厚い幼馴染みコンビとはいえ、嫌な予感がする。

 

 しばらく意識やら何やらよくわからない確認があって、俺の容体が伝えられる。

 

 曰く端的に、俺は右肺を失った。

 傷は俺が思っていたより浅く、日々の鍛錬も相まって一命はとりとめたと。

 そして、忍者は諦めた方が賢明らしい。

 

 え、そのイベント俺に来るんすか?

 俺はリーじゃないし、お前はボインじゃないぞ?

 お前はおっさんだよ?おっさんだよね?

 

「あれ?もしかしておばちゃん?」

「は……?」

「間違えました」

「え……ええ、突然の事で混乱すると思います。ゆっくりでも構いませんので、我々も今回の事を飲み込めるよう尽力いたします」

「俺の肺、治らないんですか?」

「はい……」

「つまんな」

「そういう事では!?」

 

 良い反応するなあ、おっさん。かわいくねーぞ?

 

 可愛くないのは俺の状態の方か。

 片方の肺は消え、右側の上半身も怪しい。

 今修行なんかやったら速攻体が千切れてお陀仏だし。

 傷口が観音開きで、世にも禍々しい呪物の完成だ。

 控えめに言って産廃レベルの品質。

 

「どうにかなんねーのかよ!?ネジは!ネジは!火影になるのが夢なんだぞ!?」

 

 不意に医者を怒鳴りつけたのはナルト。

 ヒザシとヒナタ様は黙っている。

 八方塞がりな状況に医者は「しかし……」と言ったきり困ってしまった。

 

 中々深刻そうだが、なんだろうなあ、実感ないんだよね。

 死亡二回目、今回は忍として死んだだけだし、ぶっちゃけ忍界大戦で出兵がなくなった分助かったまである。

 むしろこれはチャンスなんじゃないか?

 原作で死亡が確定しているなら、忍者にならない、つまり原作に関わらない今の環境は一番の生存フラグ。

 現状、最良の選択な気もする。

 

「……良いのかよ、ネジ」

 

 他と俺の温度差に気付いたのか、ナルトは怪訝な顔をする。

 意味を測りかねた俺が黙っていると、ナルトの表情は滾るような憤悶へと転じて、一気に爆発した。

 

「お前はそれで良いのかって言ってんだ!!火影になるんだろ!?それがお前の夢なんだろ!?こんな所で諦めて良いのかよ、俺達と修行したのは夢の為じゃなかったのかよ!!こんなの……こんなの俺らバカみてーじゃねーか!!」

「バカみたいって……そんな言い方はないでしょ!?ネジさんだって望んでこうなった訳じゃないのよ!?」

 

 言い足りない様子のナルトにヒナタ様は声を荒らげる。

 ナルトは声を噛み殺し、またしても室内は静寂に飲まれる。

 

 夢。

 ただナルトと交友関係を持つため、いつか自分が生き残る為に言った言葉だったがーーこいつらにはそんなに重い言葉だったのか。

 いや、あたりまえか。

 ナルトの火影に対する想いは尋常じゃない。

 それも原作で充分知っていた――つもりだった。

 

「どうしても、なんとかなりませんか」

 

 やっと口を開くヒザシの言葉は、半分の諦めと半分の期待が入り混じっていた。

 医者はヒザシとナルトを交互に見て答える。

 

「しかしその……今の彼の肺機能では激しい戦闘は厳しく、肺を再生させられる忍もおらず……治活再生の術でぎりぎり命を引き留めただけの状態ですので、忍の任務は不可能。もし手術やリハビリをしたとしても、どこまで回復するか……」

 

 今度はナルトも黙った。

 ヒザシが深く息を吐く。

 

「腕は治るのか?」

 

 訪ねたのは俺。

 

「腕は、そうですね問題なく治るかと。ですので、日常生活に問題は――」

「治るなら良い。それで俺は火影になれる」

「な……!?」

 

 ナルトに対し、火影を語ったのだ。

 ファンとして、そして師として、夢の続きを見せるのが筋。

 そしてこの日向ネジ、二度の失敗はあり得ない。

 復活劇を見せてやろう。

 

 今度は医者が声をあげる番だった。

 

「冗談じゃない!君は、ほとんど死んでいる状態でここへ運び込まれたんですよ!?」

「冗談じゃない。この眼と両手、これで充分火影に届く。日向は木の葉にて最強なのだから……!」

「ふざけないで下さい!君――」

 

 激昂しかかった医者だが、ヒザシに制止される。

 

「ネジ……儂はお前に任せる」

「そんな!?親御さんの方からも――」

 

 医者が何を言おうと、親バカ発動中のヒザシは止められない。

 俺は父の信頼に応える為にも復活を誓った。

 

 

 

――――――――卍――――――――

 

 

 

 日向分家の朝は早い。

 退院し久しぶりの実家と言えども、修行を怠ることは出来ないからだ。

 アカデミー復帰まではもう少し時間がある。

 この間に復活の糸口くらいは見つけたい。

 

「とりあえず、何でも試してみますか!」

 

 俺は拘束具の取れた右腕を回し、作業にとりかかった。

 

 ケーススタディ、影分身を使う。

 

「久々登場、俺2号!勿論右肺はないよ!」

 

 登場と同時に俺のささやかな希望は失われたよ、ありがとう。

 さすが俺だ、空気を読まない。

 

「だいたい俺の肺をお前に移植とか出来ねぇから。そもそも誰が手術すんだよ」

「そんな事は考えてないし、この里に医療忍者が何人いると思ってる。俺のアイデアを馬鹿にするな」

「2行で矛盾起こしてる奴なら馬鹿にして良い?てかメス入れただけで俺は消えるんだよバカ」

「バカはてめーだ、俺2号」

「なんで」

「俺はお前だから」

「……」

「だったら2号、肺が揃っていた頃の俺に変化とか出来ないか?」

「出来なくはないだろうが、機能は戻ってこない」

「あれ、そうなのか?」

「変化の術に機能面を上乗せする特性があるなら、とっくにナルトと自来也の子供ができてる」

「……お前の中で自来也の倫理観どうなってんの?」

「俺が聞きたいよ。本体(おまえ)に」

「……」

 

 しょうがないじゃん、自来也だし。

 素行が作中トップクラスで悪いんだよあの変態。

 

 薄々解ってはいたが、変化の術は見た目を変えるオンリーの術だな。

 忍者と言いつつ誰も忍ばないこの世界だと不意打ちにしか使えん技だ。一番忍者っぽいのに。

 

「そうだ!2号お前、犬塚家行ってこい」

「なんで」

「犬塚家秘伝の獣人分身、あれ人間が人型のまま犬の嗅覚を得てただろ?また逆も然り。つまり右肺がある状態のお前と俺が獣人分身すれば……」

「機能しない生きた右肺をもつ奇天烈人間コンビの誕生だな」

「……」

 

 ややこしくなっただけ。

 失敗。

 

 ケーススタディ、傀儡使いになってやるじゃん。

 

 傀儡使いは、戦闘専用の傀儡をチャクラ糸を用いて操り戦う。

 つまり俺が戦闘できなくても問題ないのだ。

 

 傀儡は手元にない(そもそも木の葉にあるのか?)ので、商店街で人形を買ってきた。

 

 指先から放出したチャクラを細く長く伸ばして成形する。

 これくらいのチャクラコントロールは楽勝だ。

 

 チャクラ糸の端を人形につける。

 チャクラで動かすから、つける場所は人が動く時によく使う点穴を意識する。

 

 結果、人形は問題なく動作した。

 かなり素早く、そして力強く動かす事が可能である。

 ただし指が攣った。経絡系と併せて尋常じゃない疲労感。

 マジで指一本動かせないので、この件は保留にした。

 

 ケーススタディ、パロディに頼る。

 

「俺は天才だァ~!」

「……なあ、そのノリ俺もやんなきゃダメか?」

 

 肺が半分で体が動かないなら、単純に左肺で2倍呼吸すれば良いのだ。

 そこで秘孔の出番である。

 指が動かないので、二号に千本を打ち込んでもらう。

 強心のツボ、肺機能を向上させるツボ、血流促進のツボ、とにかく現状打破に関係ありそうなツボを片っ端から探ってみる。

 血流や肺に関わる点穴も同様だ。

 

 効き目がありそうなら「俺は天才だァ~」、即効性を感じなかったら「ン!?間違ったかな……」と伝え、都度書き留めておく。即効性がなくても後々役立つかもしれないし、返答がどちらでも文字に起こす事は大切だ。

 

「結局記録をつけるなら、そんな回りくどい言い方しなくても良くないか?」

「ン!?間違ったかな……いやいや、これはン!?間違ったかな……雰囲気作りというか願掛けというか、ネジとアミバという二人の天才をン!?間違ったかな……ええと、どこまで話したっけ?」

「……天才ね、はいはい。これでツボは全部だ。しかしたった今もう一つ、効果があるかもしれないツボを思い出した、これだ……パウッ!」

 

 掛け声と共にみぞおちに差し込まれる腕。

 横隔膜の点穴に作用したのか、意に反して息が吐きだされる。

 

「そうそう、肺の中の空気を1㏄残らず絞り出せ」

 

 苦しいんですが!?

 息を吐く間は息を吸えない。呼吸が止まる。

 片肺の人間になんて拷問しやがる……!

 

WRYYYYYYYYY……(ウリィィィィィィ)

「それ呼吸音じゃなくね?」

「言っとる場合かー!殺す気か?いや死ぬ気か?手の込んだ自殺をするな、それは心中だぞ!」

「へへ」

「……」

 

 俺は意外とウザがられてるのかもしれない。

 殴りたい位には。

 

 ともかく、呼吸能力の強化においても保留。

 一朝一夕で結果が出せる分野でもない。肉体改造だからね。

 

 

 

「ネジ……お前本当にそれ食べるのか?」

 

 夕食の席でヒザシは、俺の前の膳――造血丸の山――を指してそう言った。

 

「父様、これは造血丸の山ではありません。ただ主食と副食と椀物の上に造血丸を盛っただけです。俺の食生活に口を挟まないで下さい。食材と料理人その他に対する邪知暴虐の数々は侘びますが、決して冒涜の意志はありません」

「あ、ああ……えー……食べにくかったら、上の造血丸は手掴みで食べても良いからな?」

「はい」

 

 かなり無理な食事だが、それも復活の為。

 やるだけやらなきゃこの世界、生きていけない。

 

 

 

――――――――卍――――――――

 

 

 

「えー、これから卒業試験を行う!で……卒業試験は分身の術にする。呼ばれた者は一人ずつ、隣の教室に来るように」

 

 教壇に立つうみのイルカがそう言って数時間、アカデミー前は今年の卒業生でごった返していた。

 聞こえるのは親子入り混じった歓喜の声。

 一人の少年、ナルトの周りを除いては。

 

「ねえ……あの子合格したの?」

「合格したんだって……あんなのが忍になって大丈夫かしら……だってあの子」

「しっ……禁句よ」

 

 その化け狐が一人ブランコからじっとりとにらみ倒しているというのに、木の葉の主婦層は平和な物だ。

 しかし原作と違ってナルトは一人ではない。

 

「ナルト、卒業おめでとう」

「これで俺達は忍だ。フッ……後手はとらねえぜ?」

「ナルト、卒業祝いだ!ラーメン奢ってやる!」

 

 サスケとヒナタ様はいつも通り。

 そして俺が修行をつけていない間に、先手必勝で奪われていたポジションを取り戻したのがうみのイルカ、三人の先生である。

 イルカの一声に、3人は顔をほころばせ――

 

「気になるか?ネジよ」

 

 遠目から眺めていた俺に、後ろから声がかかる……一年前に忍となった俺の直属の上司、マイトガイが不安気な目線を送っていた。

 俺は一年前、アカデミーを首席で卒業した。その後リーやテンテンと同じ班に配属されたが、不完全な俺の肉体は紙面上のナンバーワンルーキーという肩書を許しても困難な任務を許さず、天才と呼ばれた昔の姿は見る影もない。任務と言っても迷い猫探しがせいぜいであり、有体に言って班のお荷物である。

 そんな俺の心情を慮ってか、ガイ先生は俺に一緒にラーメンを食べに行ったらどうかと提案してきた。

 

 しかし俺はあの和に混ざる事は出来ない。

 ナルトへの負い目もあるし、サスケの為でもある。

 

 事件以来、サスケは俺と顔を合わせようとしない。

 そもそも事件があった事すら多くの生徒は知らない。

 事件を知っているのはサスケ、ナルト、俺、ヒナタ様。

 詳しい事件の内容まで知っているのは俺とサスケだけ。

 

 おそらくはダンゾウあたりの根回しだろうが、ナルトとヒナタ様に関してはおそらくサスケの意志だろう。

 サスケだって、俺を放ったままヒナタ様と笑い合えるクズではない。

 ヒナタ様とも色々あって、今の形に落ち着いているらしい。

 

 何の説明もないままナルト達とサスケの交友が続いているのは、逃避とも取れるサスケの行動を2人が受容している証。渦中にある俺の干渉はその均衡を崩す危険を伴う。

 俺はこの後班のメンバーと修行を控えている事を口実に、その場を去った。

 

「ネジよ……お前にはテンテンもリーも居る。気に病む事は無い、熱い友情に全力で向き合えば、それが一番だと俺は思う」

 

 修行場に向かう直前、俺の背中にガイ先生はこう語りかけたが、友情がどちらの方を指すかは判らなかった。

 

 

 

 夜、修行の帰り道にそれは起こった。

 

 暗いので白眼を使っていたのだが、視界の端に闇夜を駆けるある人物を目撃した。

 そいつの腕には一抱えある巻物が掴まれており、今日という日付に違和感を覚えた俺はアカデミーの屋上へと向かった。

 そいつを尾行しなかったのは、体力に不安があったのと()()を使うべきか迷ったからだ。

 

 アカデミーの屋上には既に、多くの里の中忍と上忍が呼び寄せられていた。

 集まった木の葉の精鋭達に対し、三代目火影が緊急の任務を言い渡す。

 

「封印の書が何者かによって盗まれた。里の忍にはその捜索と、犯人の特定を任務とする。これは緊急を要する任務である。また、犯人である可能性が高いナルトを拘束せよ、以上。散!」

 

 精鋭達は一斉に動き出す。

 俺は即座に一楽へと向かった。

 

 

 

「ダイナミック・エントリー!」

 

 お祝いムードに包まれる一楽、そこへ割って入ろうとした俺を更に割って入って来たのはマイト・ガイだった。

 

「ウゲー!めっちゃゲキマユな奴が来たってばよ!?」

「ナルト、汚い!」

「ガイさん!?それにネジ君まで、食べに来るならもうちょっと落ち着いて下さい!」

「それには及ばん、少しナルトという下忍を連れて行きたい」

 

 言うが早いか、ナルトを抱えるガイ先生。

 

 ただならぬ気配にサスケとヒナタ様が応戦に入る。

 ヒナタ様の掌底は簡単に捻って投げられ、サスケの上段蹴りは木の葉昇風をくらい反対にサスケが飛んでいく。反射で倒す、圧倒的な早業だ。

 良心的なのは、両者屋台の外に吹っ飛ばしてる所くらい。

 いつの間にかナルトの意識まで持って行ってるし、信じられない手際の良さ(えげつなさ)だ。

 

 唖然とするイルカに、ガイ先生は歯をギシャーンと輝かせて「じゃ」と一言。

 イルカが一拍遅れて弁明を求めると、彼まで小脇に抱えて去って行った。

 

 後に残ったのは、災害に巻き込まれた一楽だけである。

 

 とりあえず倒れた席を戻し、気を失った2人を介抱する。

 2人ともしっかり受け身は取れていた。取れていたのにこの有様、対応出来なかったら死まであったな。

 

 さすが上忍最高、影レベルの実力者……俺はあそこまで強くならないとナルトに嘘をついた事になるのか。

 1人恐々としていると、一楽のおっちゃんが申し訳なさそうな顔をして言った。

 

「その、お勘定……」

 

 

 

――――――――卍――――――――

 

 

 

 ナルトが目を覚ますと、そこは檻のなかだった。

 檻の外には、こっちを睨む数人の大人の姿。

 

 いつもの目だ、とナルトは呆れた。

 

 なんだって一体、俺をそんなに嫌うんだってばよ?

 

 てかてか、今はそんなのどうでも良い。

 ヒナタやサスケ、イルカ先生はどうなった?

 ネジは、おっちゃんは、それにここは何所だってばよ?

 どうにか聞き出して、ここを出ねーと。

 ラーメンが伸びちまう!!

 

「ナルト!目が覚めたのか!?良かった、無事で」

 

 ナルトに気付いたイルカは檻に近寄る。

 

 無事って……俺ってば、檻に入れられて全然無事に見えねーんだけど?イルカ先生そういう所あるよなー。

 

「ってかそうじゃなくて!ここは何所で、何があったんだってばよ?」

 

 檻の前で屈むイルカに教えられたのは、衝撃の事実。

 禁術を記した封印の書が盗まれ、自分が容疑者筆頭になっているという事。

 ナルトはここ数年ネジが怪我を負ってからというもの、人に修行をつけるネジと同じ立場に立ち「このままではいけない」と自分を律し、悪戯から足を洗った。

 それなのに、存在すら知らない禁術の巻物を、どうして盗むというのか。

 

 聞けば十年ほど前にも一度、巻物は盗まれたらしい。

 であれば、十年前に里の外に持ち出せなかった何者かが十年越しのリベンジに来た可能性だってある。

 十年前の犯人も見つかっていないのに、急にナルトに矛先が向くのは釈然としない。

 

「それは、ほら……意外と自明だから、十年前の犯人。お前もその真似をして、巻物を盗んだんじゃないかって話になってな?」

「なんで俺が知らねー犯人の真似事なんかしなきゃなんねーんだ!?おかしいってばよ!」

「し、知らないって言われてもなあ……」

 

 イルカは苦笑するが、ナルトには本当に心当たりがない。

 

 ナルトは悪者をイルカの後方で自分を睨む大人達だと決めつけて、睨み返す事にした。

 

 

 

 そうして半刻が過ぎようとしていた時、事態は動き出した。

 

 うたた寝していたナルトは微かな物音に起こされた。

 ナルトが目を覚ますと、檻の中を監視する部屋に見知らぬ忍が入ってきた。

 

 全身を黒い忍装束で包み、顔は狐か猫の様な仮面をして隠している。

 怪しい奴だ、直感でナルトはそう悟った。

 

 怪しい忍は、ナルトを寄越せと低い声で言う。

 忍の所属を知っているらしい見張りの忍は、どうしてとか誰の命令だとか言って、斬られた。

 

 壁に血が飛ぶ。胴体をバッサリと斬られた忍はのたうち回り、血の染みをいくつも作って絶命した。

 その間にも、応戦しようとした忍が次々に斬られていく。

 

 一通り殺し終えた怪しい忍がナルトの方へ歩いてくる。

 ナルトは恐怖に半狂乱になりながら泣き叫ぶ。

 

 怪しい忍びが檻の錠前に手をかけようとした時、血まみれのイルカが待ったをかけた。

 

「お前、暗部の忍だな……!誰の差し金だ、目的を言え!」

 

 胸を切られ、血を滴らせながら檻と暗部の忍の間に入るイルカ。

 暗部の忍は、しかしこれには答えた。

 

「誰でもない、俺個人の判断だ……そのガキは生きているだけで木の葉を危険にさらす。俺がそいつを殺すのだ」

「なんでだってばよ!」

 

 嚙みついたのはナルト。

 

「なんで……なんでお前らそんな、俺を嫌うんだってばよ!?いつも厄介者扱いして、睨んで、しかも殺そうとして!なんで皆、ネジみてーにしてくれねえ?俺が何をしたんだってばよ!?」

 

 絶叫するナルトに、冷めた口調のまま忍は笑う。

 

「後生だ、教えてやろう……十二年前、木の葉を半壊させた化け狐の事は知っているよな?その事件の後、里にはある掟が作られた……お前に教える事を禁じられた、里中でお前だけが知らない掟だ……お前の正体が化け狐なのを、お前に悟らせない掟だよ。お前は憧れの火影に封印された挙句、里の皆にずっと騙されてたんだよ!お前は確かに、悲しい、哀れな奴だ。でもしょうがないよな?どんなに悲しくても、健気でも、哀れでも……お前の本性は、化け狐なんだもんなァ!?それにイルカァ!俺は知ってるぜ……お前の父親は、十二年前、こいつに、この化け狐に殺されたんだろ?……善人ぶってないで白状しちまえよ、こいつが憎いってな!殺したいほど憎い、親の仇だってなァ!」

 

 絶句するナルトに、イルカは何も答えない。

 ナルトは心のままに、イルカの名前を呼んだ。

 

「そう……だったかもしれない。こいつが、ナルトが本当に化け狐だったらな」

 

 暗部の忍は低く唸った。

 

「俺は知ってるぞ……ナルト。努力家で、一途で、いつも修行を頑張っていたな。そんなナルトに教室の皆は引っ張られて、いつも授業が楽しかったよ。おい暗部、お前はナルトに、里の皆に騙されていたと言ったな?でもそんな事をしていたのは頭の固い大人だけだ……ナルトの周りにいる子供たちは、皆どこかでナルトを尊敬していたし、認めていた。そこに嘘なんてなかった。ナルト、お前は俺が認める立派な生徒、木の葉の里のうずまきナルトだ……!」

 

 舌打ちする暗部の忍。

 

「つまらん……どうせお前も死ぬのだ。そんな台詞、どうでも良い」

 

 刀にゆっくりと手をかける。

 振り下ろす直前、天井を突き破って降下した回天に阻まれ忍は吹っ飛んだ。

 

 即座に、降下したヒナタ様はイルカの止血にまわり、サスケは檻の錠前を外しにかかる。

 

「暗部……根の者か、どうせダンゾウ辺りに命令されたんだろ?あいつ、いつも要らん事しやがる」

「お前……何者だ!?」

 

 吹っ飛ばされた忍は俺に問う。

 

「俺か?……木の葉流忍者、日向の天才、妖怪大将、今最も火影に近い下忍……日向ネジだ!!」

 

 

 

――――――――卍――――――――

 

 

 

 時は半刻、遡る。

 

 復活したサスケとヒナタ様に、俺は全ての事情を説明した。

 

「犯人はおそらくミヅキ、アカデミーの教員だ。これから可能な限り早く捜索して、巻物を奪取、捕まったナルトを解放する。捜索に当たっては白眼を使う。影分身を用い、ヒナタ様が今できる限界の八体、俺の限界の十五体の総勢二十三体で里全体をできる限り捜索し、可能なら遊撃する。半刻後までにサスケのいる一楽前に集合して持ちよった情報を精査するが、戦闘音が聞こえたら全員でそっちに向かう、良いな」

「待って。つまり遊撃が発見の合図にもなっていますが、ネジさんは、その……」

 

 二人は苦い顔をする。

 ……しょうがない。()()を使うか。

 

「それについては問題ない。奥の手がある。……準備に三年、調整に一年費やしたが、この忍術さえあれば、俺は復活する。……忍法、白毫の術"創造再生"」

 

 三年かけて額に溜めたチャクラを全身に流す。

 繊細なチャクラコントロールで体細胞分裂を活性化させ、傷を治すのではなく"再生"させる。

 医療忍術ならぬ再生忍術。これが俺の秘策だ。

 テロメアの消費に変わりないから奥の手としてきたが、今日この瞬間を逃す気はない。

 

 肺が再生していくのを感じる。呼吸が楽になってくのを感じる。

 むしろ四年間の鍼灸と造血丸摂取によって強化された俺の呼吸機能のおかげで、昔よりも身体能力は強化されているだろう。

 

「大妖怪卍白影、復活だ!そして――散!」

 

 総勢二十三体の俺たちは闇に消えていった。

 

 木の葉広しと言えど四十六の白眼による索敵から逃れられる奴はそうそういない。

 原作で下忍相手に成敗された奴なら、なおさらだ。

 

 発見したのは俺。

 復活後の練習相手にはちょうど良いだろう。

 

「ダイナミック・エントリー!」

「!?」

 

 掛け声と共にミヅキの前に参上する。即、柔拳の構え。

 

「何かと思えば、日向ネジ、お前か……この巻物を持っている所を見られたら、生かしては置けないな?落ちこぼれの天才一人嬲るのは造作もないが……ちょっと心が痛むなあ?命乞いでもしたらどうだ?」

「お前ってそこまで小物悪役だったっけ?」

「なんだと、このクソガキ!」

 

 言葉と共に投げられたクナイを額あてで受け、懐に入り込む。

 小悪党なミヅキは俺の動きに置いてけぼりをくらっている。

 

 叩き込むのは"白毫の術"会得後にできた技。

 点穴に流れるチャクラを増減させ、あるいは止める事で相手の経絡系から破壊する柔拳の特性を"白毫の術"のチャクラで何千、何万倍にも引き上げてできる技。

 これを食らった相手は、あまりの速度に流れが圧縮された自身のチャクラに耐え切れず、経絡系が爆発的破壊現象を引き起こし、最悪内臓がミンチになって死に至る。

 その術の名は――

 

「"北斗八卦・爆殺六十四掌"!」

 

 ミンチになると言ったのは、点穴に込めるチャクラの量やついた点穴にもよる話で、今回の様に表皮の六十四の点穴を軽く突いただけなら、相手の体表がつるりと剥ける程度の威力である。

 元にした技の威力を考えれば「あべ死」しないだけ優しい……よね?

 

「ネジさん怖いです。ていうかミヅキさん生きてます?これからその人を真犯人として持って行かないとナルトの無実は証明できないんですよ?」

「俺は持って行きたくないぜ。そいつ……触りたくない」

 

 集まってきた2人もこの通り。

 うるさい。2号に持って行かせるから良いじゃん。

 なんか2号が両手でバツ作ってるけど、ちょうど白眼の盲点だから見えてない。

 

 俺2号に気を失ったミヅキを担がせ、白眼でナルトを探す。

 サスケをチラ見すると、顔には微笑を浮かべていた。

 俺が修行をつけた時の様な、少年の好奇心を感じさせる顔。

 昔の顔だ。何か吹っ切れたな。

 

 

 

 かくして、俺2号だけ深夜枠のネジ御一行様はナルトのピンチに駆けつけたという訳だ。

 

 格好良く登場した俺達に根の忍は圧倒された様子。

 主人公ムーブって奴だ。

 

「くっ……日向の変態が……!」

「自己紹介聞いてました?もしもーし……まあ良いか。お前、派手にやってくれた様だがこの後どうするつもりだ?ダンゾウに使い捨てにされる腹積もりだったのか知らないが、生憎真犯人を連れてきた。犬死にご苦労。お前は終わりだ」

「そうだな……それで良い」

 

 忍が自身の忍装束を剥ぐと、中の体に巻かれた大量の起爆札が一斉に作動した。

 

 ここまで織り込み済みだったか。

 

 

 

――――――――卍――――――――

 

 

 

「これは……生きて居るのか?」

「ピンピンしてます」

 

 多くの忍が火事の火消しに追われる中、俺は三代目にミヅキを差し出す。

 大戦を経験した火影様でも生死が判別つかない怪我人が居るらしい。

 

「今回の真犯人はこいつです。もりのイビキにでも差し出せばスッと全部吐くでしょう」

「この状態の怪我人を拷問にかけるつもりなのか?」

「その方が逆に目が覚めてちょうど良い」

「……そういえばお主、なぜ拷問尋問部隊の隊長の名を知っている?」

「そうだ、こいつを捕らえたのはナルトという事にして下さい。あいつの境遇も少しは楽にしてやりたい」

「悪名が広まりそうだが……そしてお主、儂の質問に」

「そこは情報統制しましょう。里の忍の為です。やってくれますね?」

「……ああ……その様にするが、お主」

「それでは、さよならです」

 

 俺は影分身を解き、消える。

 お得意の「実は俺2号でした」って奴だ。

 

 

 

――――――――卍――――――――

 

 

 

「それでは!イルカ先生の退院を祝して!」

「「「「「いただきまーす!」」」」」

 

 数日後、イルカは無事退院した。

 祝いの席が一楽なのはご愛敬だ。

 

 俺の奢りなのが気にくわんが、流石のナルトも退院したての先生に奢らせる事はしないらしい。

 まあ良いか、一楽でバイトしてる分身の懐は温まる。

 

 俺は久しぶりって事で、四年間の思い出話で持ちきりだ。

 イルカが主役だってのに、全く。

 

「それで、このウスラトンカチの説明が全っ然わけわかんなくてよー……ネジ?何してるんだ?」

 

 俺は造血丸をかける手を止める。

 ……あれ?



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第八話 友達の友達は兄弟になる

 

 日向分家の朝は早い。

 教え子達が手を離れ新米下忍となった今、俺は任務の合間を縫って鍼灸医療の研究に邁進していた。

 この前の動乱の後、俺には住み込みの研究室"白庵"(しろあん)が与えられた。

 俺は下忍ながら、柔拳と鍼灸の複合医療忍術の第一人者として本家に認められたのである。

 そう、体よく物置小屋へ追い出された。

 

 何が白餡だ。包み隠そうとしてんじゃねーよ。

 

 そんなこんなで、俺は今日も新発見したツボを巻物へと書き写す。

 点穴と鍼灸のツボは酷似している為、白眼と実験体さえあれば楽なお仕事である。

 難しいのは実験体の方だが、それも犬塚キバ君がいる。

 彼は先日重傷でここに運びこまれ、運んできたヒナタ様が「品性を疑う犬畜生です。叩き直して下さい」と預けていった悲しき少年である。

 キバは何をやらかしたのか。品性を疑うとは何か。俺を何だと思っているのか。

 色々言いたかったけど怖かったよね。

 俺を縛る呪印の使い方はヒナタ様に伝わっている。

 俺の処遇はヒナタ様の気分次第なのだ。

 

 本当に、そんなに俺が怖いかヒアシよ。

 俺はお前が怖い。

 

 そうしてヒナタ様とキバだけが入り浸る様になった白庵だが、今日は珍しく来客があった。

 実にミヅキの一件ぶりとなる、ナルトである。

 

 背中に布で巻かれた大きな巻物を拵えて、会っていない間に成長した様だ。

 原作の装備には無かったが、今日び興味すらわかない。

 俺も転生者として長いし、これくらいの原作改変に驚く事はない。

 キバとの挨拶もそこそこに、ナルトは申し訳なさそうに切り出した。

 

「さっきまで俺、波の国って所に行ってたんだけどよ……少し見てもらいたい奴がいて」

 

 波の国……ストーリー的に次は中忍試験か。

 俺とガイが一年間鍛えたチーム。ガイ班は不遇キャラばっかだし、中忍試験で下剋上といこう。

 弟子達にも師匠の貫禄ってのを見せておかないとな。

 

 木の葉の最強はこの俺だ。それを直々に教えてやろう。

 

 いや違うな。

 決め台詞は後で考えるとして、今はナルト。

 波の国編で診てもらいたい奴……負傷者?

 波の国の負傷者と言えば……もしやサスケか!?

 

「わかった、早く診せろ!すぐに鍼灸で治す!」

「千本はもう刺さってるんだけどよ……」

「知ってる!」

 

 マズった。今のサスケなら(ハク)の10人や20人サクッと倒せると思っていたが、過信しすぎだったか。

 

 ナルトは背負っていた巻物を置き、布を剥がし始める。

 なぜ巻物?と思ったが、よく見れば巻物は人型。

 巻物だと思っていたのは布でぐるぐる巻きのサスケか?

 管理が雑すぎるだろ。

 千本で串刺しにされた仲間になんて事をする。

 

 いや待てよ?これ本当にサスケか?

 ナルトやサスケの実力は共に一線級。

 下忍が三人一組(スリーマンセル)を組む時は各班の力が拮抗する様に作られる筈。ナルトとサスケが同じ班なんて蛮行も良い所だ。

 という事はこれはサスケではないのか?

 じゃあ知らん奴か?

 ナルト、俺の弟子以外の扱い狂ってんのか?

 

 布の最後の一層が解かれる。

 あらわになった顔をキバが横から覗き込んだ。

 

「誰だこの綺麗なねーちゃん?」

 

 ねーちゃん?いいや、こいつは男だ。

 そうか……死んでなかったのか。

 

「こいつの名前は白。霧隠れの抜け忍だってば」

「キバ眠れ!」

 

 咄嗟の裏拳がキバをぶっ飛ばす。

 

「馬鹿野郎このナルト馬鹿野郎、もうちょっと隠せ!キバに聞かれたらどうするんだよ!?」

「キバなら大丈夫かなって」

「アウトだよ!お前と同等のド級バカだよ!吹聴して回るよ!」

「捻じ伏せられるし」

「仲間!キバ、仲間!」

 

 でもさ、とナルトが指した方にはキバが壁にめり込んでいた。

 やっべー。白毫の術を忘れてた。

 

「ま、まあキバは丈夫だからオッケー。とにかく事情を話せ。何があって、俺にどうして欲しいのか」

「ああ。出来るだけかいつまんで話すから、何かあったら質問してくれ。白の後処理も頼むってばよ」

 

 後処理と言われ白を見てみると、首に二本千本が刺さっている。仮死状態のツボだ。

 

 やっぱり狂気を感じる。

 

 

 

――――――――卍――――――――

 

 

 

 ナルトの話は大体以下の通りである。

 

 タヅナという男の護衛任務で波の国を訪れたナルト達を待ち受けていたのは、霧隠れの鬼人・桃地再不斬だった。

 

 認識外からの投擲、樹木に刺さった断刀・首切り包丁、その上から小隊を見下す大男。

 カカシも奥の手である左目の写輪眼を使うと言っているし、ナルトは彼を格上と認識した。

 

 おそらくはカカシと同等以下。ナルトにはきつい相手だが、タヅナを庇いつつ確実に仕留める為には遊撃に徹するべきである。

 そう感じたナルトは、影分身を展開し陽動に出た。

 

 って、ちょっと待て?

 

 

 

「おいナルト。間違いじゃなければ、木の葉を出た所で二人組の忍の奇襲にあったと思うんだが。ちなみに白眼だ」

「ん?ああ、霧隠れの鬼兄弟って奴等になら会ったぞ。サスケが業火球で炙って倒した」

「サスケ居るんかい。なんでサスケと同じ班なんだよ、どっちもナンバーワンルーキーだろ」

「それがさ!俺ってばサスケの為、毎日毎日アカデミー休んでまで修行をつけてたってのに、サスケもヒナタも影分身なんかでズルしやがって!まったく酷い話だってばよ」

「力量に対して要領が酷いな……続きを聞こうか」

 

 

 

 影分身を使い陽動に出たナルト。

 再不斬の動作は素早く、水遁・霧隠れの術を決められてしまった。

 ナルトが再不斬を見失った濃霧の中、サスケが火遁・業火球の術を放つ。

 照らされた再不斬の人影にナルトは担いでいた鬼兄弟を投げつけた。

 

 まだ持ってたのかよ。

 

 再不斬の戦闘術――無音殺人術(サイレントキリング)は音で相手を探知して攻撃する。

 人型が飛んでくれば反撃するのは当然。そこをカカシが捉え、ナルトとサスケも続く。

 視界不良の中、眼にも止まらぬ速度で近距離の打ち合いが続き、再不斬の捕縛に成功した。

 

 倒せてるじゃん。

 

「倒せてるじゃん!」

「いやー本当、カカシ先生とおんなじくらい強かったってばよ」

「同じくらいって……そういえばお前、カカシの鈴取り修行の時はどうしたんだよ?白眼で見たんだが」

「白眼で見てたんじゃないのかよ……。あの時はカカシ先生も本気じゃなかったし、サスケと俺で連携してたら取れたってばよ」

「取れたんだ……」

「イチャイチャパラダイス取ったら交換してくれた」

「鈴より高難易度な物取ってんじゃねえよ」

「サクラが縛り上げられそうになったから、それは無いだろって抗議したら合格って言われたってばよ」

「自来也なら亀甲縛りしてたな」

「ジライヤ……誰だってばよ?」

「お前とそりが合わなさそうなおっちゃんだよ。早く続きを聞かせろ」

 だんだん楽しみになってきた。

 

 

 再不斬は追い忍に扮した白が千本で殺した風に回収したのだが、サスケはそこに一家言あるらしい。

 

「桃地再不斬は絶対に死んでいない!千本は医療用の忍具で、抜け忍を追いかける追い忍は人体のスペシャリスト。追い忍なら千本を使って人を仮死状態にするなんて簡単に決まってる。俺は千本使いに関しては誰よりも詳しい。あいつらは全員狂ってやがるんだ。平気で仲間に人体実験をして、間違ったら死ぬ様な事もふざけ半分でやっちまう奴らだ!今度会う時にはきっと再不斬も実験体になっているはずだ!」

 

 サスケはほとんどヒステリーの有様で不穏な事ばかり言っている。

 カカシが「かもしれない」と言ったのを妄信しているのだ。

 確かに再不斬の様な抜け忍を始末する追い忍が、わざわざ捕縛された再不斬の首に千本を刺し、重い死体を持ち帰ったのは気になる。

 でもサスケがこうなるなら黙っていて欲しかった。

 カカシは写輪眼を使った反動で動けないし、タヅナもガトーから守らなくてはならないのでしばらく彼の家に厄介になっているのだが、こう毎日毎日言われると辛い物がある。

 

 まず何故千本使いに詳しいのか聞きたいが、ナルトはサクラに水面歩行の術を教えなければならない。

 次もしまたあいつらと戦闘になった時の為、サクラにはもう少し動ける様になって欲しいというカカシの指示だ。

 突貫工事の修行だが、サクラはチャクラコントロールの飲み込みが早くすぐに木登り修行が完了した。

 水面歩行もクリアすれば中忍レベルの基礎はマスター。少しは戦える様になるだろう。

 

 サクラの修行が済んだら場所を森に移してサスケとの組み手に移る。

 ナルトとサスケ、影分身体で小隊を組み団体戦だ。ネジに教わった修行法を今の彼らなりに発展させた形である。2人とも消耗が激しいので終わったらその場で眠りにつく。

 

 そんな生活をしていた時、ナルトは白と出会った。

 

 

 

 突然だが、ここでナルトの話を少々割愛させていただく。

 内容としてはほぼ原作通りだったし、男にドギマギするサスケが可愛かっただけで特に面白味もない。

 それに少年の性癖を曲げるようなやり取りを俺の口で綴るのはやりたくないのだ。

 被害者が言っているんだ。勘弁してくれ。

 

 時は、後に「なると大橋」と呼ばれる橋の上での決戦へと跳ぶ。

 

 

 

「あああ!千本!千本が体中に!千本千本せんぼんせん――」

 

 千本が体中に刺さったまま、サスケは身を屈めた。

 千本を抜こうとしているが、震える手は千本を掴む事すらできない。

 

 こうなってしまっては仕方がない。ナルトは次の攻撃に備えた。

 

 追い忍は血継限界と呼ばれる特異体質。

 血継限界――氷遁は空気中の水分を凍らせ氷を作る。

 追い忍は氷遁で作った鏡の間を光速とも思える高速で移動する忍だった。

 

 さらにここは"氷遁・氷岩堂無"(ひょうとん・ひょうがんどうむ)で作られた鏡のドーム内。

 いくら影分身してもすぐに消され、鏡を1,2枚割った所で抜け出せない。

 

 絶望とも思える状況下だが、それでもさっきまでは善戦していた。

 

 写輪眼を開眼したサスケは敵の動きをある程度見切れていたし、敵の千本でツボをついて体力を回復して「俺は天才だ」と叫んだ時には勝ちを確信するほどだった。

 しかし相手の早さに圧倒される限りは消耗戦であり、陽動のナルトのチャクラがつきた時点で負けが決まる。

 そして実際にサスケは倒されたのだ。

 

 追い忍の攻撃が来る。

 チャクラの尽きたナルトに迎撃の術はない。ナルトは終わったかに思えた。

 

「ナルトに千本を立てるなァ!」

 

 瞬間サスケが放った大出力の業火球はナルト共々"氷岩堂無"全体を吹き飛ばす。

 ナルトの意識は、一時闇に飲まれた。

 

「起きてください、ナルト君」

 

 ナルトを呼ぶ白の声に、覚醒したナルトは全てを悟った。

 追い忍は白であり、白はナルトを庇い片足を失っていた。

 

「ナルト君……僕は君達を殺したくなかった。再不斬さんに殺せと言われたのに……僕の負けです」

「そんな、白!なんでだってばよ!?再不斬は悪い奴なんだぞ!?」

「再不斬さんを悪いとは言わせない。再不斬さんは父親を殺した僕を赦し、僕を育ててくれた。道具として僕をお傍においてくれた。それがどんなに嬉しい事だったか、君に解りますか?」

 

 そんなのは間違っている、ナルトがそう言う前に白は何かを見て駆けだしてしまった。

 白が向かった方向。そこには忍犬に動きを封じられた再不斬と、右手に多量の雷チャクラを圧縮するカカシ。

 再不斬の最期の瞬間である。

 白は再不斬が殺される前に身を楯にカカシを止めようというのだ。

 ナルトは"秘術・魔鏡氷晶"(ひじゅつまきょうひょうしょう)を用い移動する白を全力で追う。ギリギリで間に合ったナルトは再不斬を庇う白を気絶させ、カカシの術を受けた。

 

 左肩に痺れる様な激痛。

 見ればナルトの肩にカカシの拳が埋まっていた。

 

「白め……使えない道具だ」

 

 再不斬が不意に漏らした言葉は、ナルトに強い怒りを感じさせた。

 途端ナルトの体表は血の様な赤いチャクラに包まれ、あまりのチャクラ圧にカカシの拳は弾かれる。

 

 赤いチャクラはナルトの左肩と白の片足をより濃く包み、患部を治癒、再生させていく。

 その光景に言葉を失った再不斬に対し、ナルトは問う。

 

「白と話して解った。白にとってのお前は、俺にとってのネジなんだ。だから俺は!白を道具としか認めねえお前が憎い!再不斬……白はお前に道具として使われる事が嬉しいと言った!お前を庇って死のうともした!お前はそんな奴見て、ただの道具だと思えるのかよ!?お前の中で、白は本当にただの道具なのかよ!?」

 

 しばしの沈黙。

 再不斬はナルトと白を交互に見て、言った。

 

「やめだ……そんなモン、お前にやるよ。小僧、カカシ……後は任せた。里には、()()()()()()()でも伝えておけ」

 

 そう言い残して、再不斬は消えた。

 波の国から金を絞っていた再不斬の雇用主、ガトーの訃報が伝えられたのはその翌日の事である。

 

 

 

――――――――卍――――――――

 

 

 

「俺は気絶した白を担いでここまで来た。里に入る時仮死状態のツボを突いたのはサスケだ。俺ってば再不斬が何を言いたかったのか解んねえ。でも白を放っとけなくて、なんとかして貰いに来た」

 

 ナルトはそんな調子で話を纏めた。

 

 ナルト。サクラが可哀想すぎるぞ。

 サクラが一人置いてけぼりくらってるのがよく解った。

 なんかナルトはサクラの事好きじゃないっぽいし。

 後々の映画で「ナルトがサクラを好いたのはサクラがサスケを好きだったから」みたいな説明されてたけど、こうなると好きであって欲しかった。

 サクラに救いが無い。

 

 血筋と良い師匠に恵まれた人柱力の天才と、それと切磋琢磨して成長したうちはの闇抱えた天才。そして無名忍者の家庭から出た女(俺ノータッチ)で班とかいじめに近い。

 

 イルカは何やってるんだってばよ!?

 まあやらかしたのは俺か。

 

 そんでまた俺に権力使わせるつもりかよ。

 俺、日向家の権力使う度扱い悪くなってるんだが?

 分家の本家を追い出された俺に、まだ我儘言えってか。

 

 今度は里から追い出されそうだ。

 

 しかも再不斬存命報告出たし。

 つまり俺がここで白を見限ったら最悪、俺の死因が無音殺人術(サイレントキリング)になる。

 

 人生色々あったけど、未だに死兆星の輝きが衰えない。

 

「そうですか。僕は再不斬さんに捨てられたのですね。もう用済みですか……再不斬さん」

 

 いつの間に起きていたのやら、白がむくりと起き上がった。

 精気が感じられない表情と、わなわなと震える体。瞳は虚空を見つめている。

 初手自害しそうな勢いだ。

 

「止めろ白ェ!お前は俺の新しい光だ!生命線なのだァ!」

「は……!?」

 

 おっとまずい。間違えた。

 

「白、違うぞ。お前は再不斬によって守られたのだ!」

「……何を言っているんですか、貴方は!?僕にとって再不斬さんは全てだった!再不斬さんだってそれを知っていた!僕も再不斬さんも知らない貴方に、何が解るというんですか!?」

「解るさ!お前が知っているのは、霧隠れの鬼人・桃地再不斬だけだ!違うか?鬼人・桃地再不斬は死んだんだ……お前を残し、俺達に頼むと言ったのは利用価値がないからじゃない。もっと純粋な感情だ」

「……何が言いたいんですか?」

「愛だよ!!」

 

 子供を抜け忍の道から遠ざけ、真っ当な道を歩むチャンスを与える。

 そんなの、純粋な親の愛情に決まってる。

 

 生き残る為とはいえ、本心だった。

 原作ですれ違った二人の関係、二周目の俺が正してやる。

 俺はやるだけやると決めたのだから。

 

 

 

日向百(ひゅうがモモ)?」

 

 俺から渡された戸籍票を見て、白――(モモ)は首を傾げる。

 百はカカシの遠縁で、日向分家の養子にした。

 はたけ家はここ二代で成り上がった家だし、白の存在は霧隠れ以外にはほぼ知られていないのでバレることは無いだろう。

 

 ダンゾウ辺りが要らん事したらやばいけど。

 

 ちなみに、俺がこんなに勝手できたのは家の親バカ親父のおかげである。俺もジュインジュインされるだけで無罪放免だった。

 

「お前の偽名だ。抜け忍の証の横一線、それと読みは桃地再不斬からとった。不満か?」

 

 なんてな。男だから一本足したなんて言えない。

 

「いえ、凄く素敵……前から聞きたかったのですが、何故僕に優しくしてくれるのですか?」

「火影が俺の夢だから。火影は皆に認められる存在。一族とか里とか、そんな物に縛られる器じゃない」

 

 ダンゾウとかね。

 百は目を潤ませ、大きく息を吸った。

 

「決めました。僕、もう一度忍者になります。そしていつか水影になります!再不斬さんが胸を張って僕の所へ帰ってきてくれるような、素敵な里にしてみせます!」

「……良い夢を持ったな」

 

 俺はナイスガイポーズで答えた。

 

 死兆星、未だ健在!

 

 

 

――――――――卍――――――――

 

 

 

 今宵は特殊な半月だ。

 上弦でもないし、下弦でもない。まるで絵にかいた様に真っ二つ。

 なんというか、デカい板で半身隠してあるだけの月の様な。

 

 というか変に輪郭が凸凹していて、板というよりは断刀・首切り包丁だ。

 

 近づいてみれば、刀の脇に男もいる。

 サンタさんかな?

 木の葉にもサンタさんっているんだなあ。

 半月の横にサンタさん……しまらねえな。

 庵に煙突は無いし、ただの不審者だろうな。

 いや、ただの不審者にしちゃあ日頃返り血で染まってそうだな。

 まさかマダラか?

 早い早い。

 疾風伝後半まで退去願おう。

 じゃあ誰かと言えば、もう百二十人は殺してそうな無音殺人術のおっさんだ。

 

「再不斬さん……何やってるんすか?」

「その……白……」

「とりあえず、屋根の上とかじゃなくて入りません?」

 

 フラグたてるのはムズいのに攻略クソ簡単なのな。

 気まずくて中に入れちゃったが、その後3時間みっちり二者面談である。

 

 

 

「そういえば、どうやってこの里に来たんすか?」

「行商の酒樽の中に入ってやりすごした」

 

 警備雑すぎるだろ。

 と思ったが、イタチと鬼鮫がお団子食べに来られるくらい手薄だったな。

 

 日向は雷の国の忍者を撃退しているというのに。

 防衛においても日向は木の葉にて最強か。

 

 しょうがない、ジュインジュインで通行証を手配してみるか。



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