寄生虫ですが、何か? (マジカル☆ボッチ)
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人生の終了、そして憑依へ

 初投稿のため荒が目立つかもしれません。すいませぬ。


 

その日は本当に何でもない、3日もすればどのように過ごしていたのか忘れてしまうようなそんな平凡な一日だった。

 

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 今日は、何が特売日だったっけ……

 古文の授業中、岡崎 香奈美(オカザキ カナミ)先生--通称岡先生--の妙に間延びした声をBGMに窓の外を眺めながらぼんやりと考える

 

「それではぁー、次のページを陽一さん読んでくださいぃー」

 

自分、佐藤 陽一(サトウ ヨウイチ)の名前を呼ばれ、笑顔を作りながら黒板の前に立つ、街中で会えば中学生にしか見えない岡先生の方へと顔を向ける。

 

「あっ、すいません。何ページでしたっけ?」

「もぉー、外ばかり見てないでぇー、ちゃんと先生の話を聞かなければだめですよぉー。48ページから読んでくださいねぇー」

「もぉ、陽一真面目に授業受けなきゃ夏休み補修だよぉ?」

 

 クラスのムードメーカーの漆原 美麗(シノハラ ミレイ)が茶化すような声を上げるとクラス全体が笑いに包まる。

 

「はいはいぃー、皆さん静かにしてくださいぃー、今は授業中ですよぉー。それから机の下で形態をいじってる夏目君もちゃんと授業を聞いてくださいねぇー」

 

その言葉を聞いた、夏目 健吾(ナツメ ケンゴ)は肩をビクリと震わせ頭をかく。

そのしぐさに教室中から先程より大きな笑いが出るのを眺めながら、ちらりと黒板の上、天井の隅の方にある岡先生が保護した蜘蛛の方を見ながら、お前は気楽そうで羨ましいなとどうでも良いことを思いながら、ようやく笑いが収まり48ページを読み上げようとページを見る。

 

 その瞬間、教室の電気が消えたかのように一瞬暗くなった後、人生で味わったこともないような激痛を味わいながら意識がフェードアウトしていった。

 

 

 

 

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 ぐうぅっ…何だったんださっきの体が砕けるような痛みは?

どうやら、自分の体は横に倒れているらしい。

かなり長い時間倒れていたのか、体の節々が少し痛く、鼻で呼吸をすれば何故か錆びた鉄のようなにおいがする。

 

「うぅ…、いったい何が……っ!?」

 

無意識のうちに自分の口から出た声に、思わず体がビクリと反応してしまう。

 

……は?女の声?

 

「あーあーあー、アメンボ赤いなあいうえお」

 

……自分の声をもう一度聞き、明らかに普段の地声よりも高く女性らしい声があたりに響く。

 

大慌てで横になっている自分の体を起こそうとするが、どこかぎこちなく何とか体を起こしあたりを確認する。

 

……どこだよここ……。

 

あたりを確認すると、どうやら自分は暗い洞窟のような場所におり、目の前には鋭利な刃物で切られた、三匹のトカゲらしきものがある。

 

「……え?何が起きてるん?」

 

あまりにもあまりな現状に、口調までおかしくなる始末。

 

 無意識のうちに左手で顎下をを触り、最近生え始めた髭の感触がないことに違和感を覚えながら、右手で自分の胸を触る。

 

…レザーアーマーみたいなものを着てるせいか感触までは分からないが間違いなく女の体だ…

 

……まてっまてまてまてっ!何が起きてるんだ!?

 思い出せ!混乱するのは良いが最後の記憶を思い出すんだ!

確か…確か…そう!確か古文の授業を受けていたんだった!

それで、岡先生に当てられて、答えようとして……そっから思い出せない…

 そっそうだ!この体が身に着けてるものを見れば、何かわかるかもしれない。

 

 とりあえず、体中をまさぐり持っていたものを全部土の上に置き整理を始める。

まず初めに目についたのは腰にある剣だ。

明らかに街中で持ち歩けば警察に捕まるであろう危険物だ。

 

…ちらりと先ほどの三匹のトカゲらしきものを見る。

 

もしかしなくても、この女性が殺したんだよな…?

 

落ち着いてトカゲを見ればかなり大きいことが分かる。

立たせて見れば女性と同じぐらいの大きさだと思う。

 

もしかして…異世界?…いやっ!まずは持ち物の確認からだ!

 

 ほとんど現実逃避気味に体を弄ると腰の後ろには、革で作られたであろう飲みかけの水袋と、小物入れのバック、それから左腕の皮の防具のところには隠しナイフのようなものがあった。

 小物入れのバックの中にはお金らしき硬貨と未知の言語で書かれたカードが入っていた。

 

……え?これだけ?

 

いくら体中を探しても食料は出てこないし、情報源も一切なし。

 

ど…どないせっちゅうねん…

 

あまりにもあんまりな現実に頭を抱えること20秒。

 

「あぁ…そういうことか」

 

唐突なひらめきに思わず声が漏れる。

 きっとこの女性は殿で、トカゲが死んでる逆方向、つまり女性の後ろ側を歩いていけば誰かに出会えるのでは?

 

その事実に行きつき、大慌てで地面に置いた道具を戻し走ろうとする。

しかし、二歩目で後ろをちらりと振り返る。

 

……一応、保険をかけとくか……

 

そうして、自分は洞窟を早歩きで進んでいく……雑に切り取ったトカゲの右足(非常食)を肩に担ぎながら。



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現実と言う名の地獄へようこそ

 早歩きで歩くこと約2時間弱、今まで2回ほどの分かれ道を歩いているが両方とも右を選択している…早くも後悔しかけているが。

 

 どうもこの洞窟、無駄に広大というかずっと歩いてるのに何も変わりない土の壁のせいで実はグルグル同じ道を回ってるんじゃないかと不安になってくる。

 

こうも歩くことに集中していると、いろいろなことに思考が割かれていく。

 

 例えば、この女性の体。

弄ってる途中で何となく気づいたんだが、この女性、耳が普通の人と比べると長いのだ。

 

「エルフなのかぁ?」

 

ついつい気が抜けて独り言が零れる。

 

認めたくはないがどうも今の状況を考えると、異世界の女性の体に憑依してしまったらしい…

 

「ハアァァ…」

 

ついついデカイため息が漏れる。

 

……結局、実践せずに息子は旅立ってしまったか…

 

…やめだやめ。こんなネガティブなことを考えてると後に何かあったらきつくなる。

 

 きつくなるで思い出したが、父親の方は大丈夫だろうか?

中学校時代にある家庭内事件をきっかけにほとんど家に帰ってこなくなってしまったが、息子が死んだと分かれば流石に泣いてはくれるか?

 

「ふぅーー」

 

 ダメだな。どうしても思考がネガティブな方に行ってしまう。

…状況が状況だから仕方ないか。

 

 とりあえず、当面の目標を考えよう。

今の所、この辛気臭い洞窟からの脱出を最優先事項にしていこう。

 

 目標さえあれば、何とか元気にやっていける…ハズだ!

 

「えい!えい!おー!」

 

 ほとんど空元気で声を上げる。

とりあえず、今後の事は外に出てから考えよう。

 

…あぁ、そうだ、周りには誰もいないし今のうちに確認しておかないといけない事があるんだった。

 

「ステータス」

 

小声で呟いてみるも………特に何も出ないな。

ならば

 

「ステータスオープン」

 

……うん。何も起きないな!

 

 こんな事をしているのもちゃんとした理由がある。

どうもこの体、身体能力や目が異常なほど良いのだ。

 

 試しに本気で走ってみたところ、100mを5秒で走り抜けて見せたのだ。

もちろん、ちゃんとした計測器を使って測ったという訳でもないからどこかで狂いはあるだろうが、こんな細身の女性の体のどこに、ウサイン・ボルトも真っ青な俊足の足があるんだろうか?

 

 それに目の方も異常だ。

度々言ってはいるが、ここは洞窟の中だ。

光源なんて近くに無いのに足元や、遠くの土の壁もはっきりと認識することができる。

夜目が利くだとか、体の持ち主が慣れてるだとかそういう話ではなく、まるで晴れの日みたいに遠くまで見えるのだ。

 それに、目に捉えるのが難しいハエの動きを視界の中央に捉え続けるといった芸当も出来てしまったのだ。

・・・トカゲの肉にハエが集って来ているのもいち早く気づけてしまった。

 

 そう考えれば、自然と異世界なんだしステータスがあってもおかしくないだろ、て思ったんだけどなぁ…

どうも当てが外れてしまったらしい。いや、もしかしたらやり方が違うとかか?

 

 まぁ、他の人間に出会えれば教えてもらえるかもしれないし今分からなくても良いか。

 

 

 

 

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 そんなことを考えながら一時間程歩いていると洞窟の奥の方が、若干だが明るくなっていることに気づく。

 

「…ん?もしかして焚火か?」

 

 一瞬こんな洞窟の中で焚火なんて正気か⁉

なんて考えたがよくよく考えたらこの洞窟は馬鹿みたいにデカいから酸欠とか問題ないのかもしれないと気付く。

 

そして、焚火をするという事は自分みたいに夜目が利くという訳ではないという事か。

 

……やっぱりこの体のスペックが異常なのかもしれないな…

 

そんなことを考えながら歩いてると焚火を囲みながら休んでる集団をはっきりと目視で確認できるほどに近づいた。

向こうは夜目が利かないせいか未だにこちらに気づいてないようだ。

 

ザ・冒険者って感じの見た目だな……

 

パーティーは男三人女一人という集まりみたいで、一人目の男は爽やかな青年で腰に剣と小さめの盾をすぐに取れるような位置に置いている。ただよく見ると、右足の骨でも折っているのか、添え木のようなものを括り付けている。

二人目の男は、かなりの巨体な体で両手で持ち歩くような巨大な盾をすぐ近くの地面に突き刺している。男の背後を見ると、かなり大きめのバックがある事から荷物持ちも兼任しているらしい。かなりの力持ちなのが伺える。

三人目の男は、特に何も持っていないように見える。

 

そして、特に特徴的なのが女性だ。

 

……魔法、使いか?

 

そう、女の右手には、シンプルな杖を持っており、杖の先端には、宝石のような物が三つ付いているのが見える。

 

…あぁ、なるほどなぁ

 

この冒険者らしきパーティー見た感じは、男一が近接、女が遠距離から魔法で支援、男二が魔法使いを守るという役割分担をしているらしい。

男三は、よく見ると他の冒険者から少し離れている事から護衛役の男と予想できる。

 

……それにしても、あれは一体何なんだ?

 

 冒険者の方を見ていると、どういう訳か青紫色に発光しているように見える。

…ちらりと自分の体を見るが特に発光しているようには見えない。

試しに腹に力を込めてみるが、そんなことをしても発光はしない

 ただ武器を持っていない、護衛役の男だけが橙色に発光している。

 

よく見ると、一人目の青年が一番強く青紫色に光っているように見える。

 

……まさかとは思うが、この世界の人間は発光して本人確認するなんてことはないよな…

 

 最悪の可能性に備えて、左腕に隠してあったナイフを抜刀し、肩に担いでいたトカゲの右足を左脇の間に挟み、脇とトカゲのの間にナイフを隠し持つ。

 

ちょうど準備が終わったタイミングで、向こうの冒険者もこちらに気づいたのか護衛役の男がこちらに向きながら大きめの声で話してくる。

 

 

「*********!?」

 

・・・何故護衛役が真っ先に気づいたんだ?

ただの偶然か?もしかして、護衛役という認識が間違ってるのか?

 

……そう言えば、言葉が通じない可能性については一切考えてなかったな?

 

冒険者たちは一斉に立ち上がり、武器を構えだした。

 

冒険者達が、立ち上がるとほぼ同時に青紫色に変化が現れ今では、全員橙色に変わっていた。

 

緊張のあまり、喉の渇きを感じながら笑顔を浮かべながら、姿を見せるように焚火に近づく。

 

こちらの顔を向こうが認識した瞬間、全員が濃い緑色になっている。

 

……近くで見ると青と黄色が混じったような感じだな…どういう意味合いがあるんだ?

 

その中で最も強く、濃い緑色をしていた爽やかな青年が痛いであろう右足を引きずりながら剣と盾を放り投げこちらに走り寄ってきて、そのまま抱きしめられた。

 

……へぁ⁉

 

こちとら男に抱きしめられて喜ぶような性癖は持ち合わせてないんだよ、離せぇ!!

 

……と、心の中で暴れるがもしかしてだが、今の自分の体の本来の持ち主とこの青年は恋人同士だったのでは?

 なんて言うか、抱きしめるまでの動作が違和感なくスムーズに動いていたし周りにいる冒険者は特に何とも思っていないって顔をしている。

 

 普段から、こんな風に抱きしめあってたのか?

……っちリア充め!

 

心の中では複雑な感情が暴れているが、必死に表情筋を動かさずにとりあえず青年を抱きしめ返す。

 

すると、青年の発光の色が濃い黄緑色へと変化していった。

 

それとは、別に周りの冒険者の色は橙色へと変わっていき女の魔法使いに関しては若干こっちを睨んでるように見える。

 

……もしかして、三角関係的な状態なのか?

よくそれで、今まで関係性持ちこたえたな。

 

そんなくだらないことを考えてると、やっと満足してくれたのか青年が離れようとするので、背中から手を放しそのまま開放する。

 

「******?**********?」

 

青年が何かこちらの目を覗き込み心配しているかの様な声色で話してくるので、目を合わせて首を縦に振っておく。

すると、選択肢を間違えたのか少年の顔が怪訝そうになった。

 

 正直、言葉が通じなかったのが予想外過ぎてここからどうすれば良いのか分からない…

というか多分、すぐにバレそうだ。

 

「***************?*********?」

 

かなり濃い橙色にまで、変化していた大男がこちらに話しかけてきたので、どうか正解であってくれと願いながら、首を横に振る。

 

「…*****」

「…っく⁉」

 

 今まで黙っていた女の魔法使いが何かを呟いた瞬間、体の中を無遠慮にねっとり見られるかのようなものすごい不快な感覚が走った。

 

 あ、今のもしかして魔法か⁉

くそ、何の魔法が使われたのか全く予測できない⁉

しかもあんな一単語程の言葉を呟くだけで発動できるなんて反則だ⁉

 

「*****!*******!********⁉」

「*****⁉*******!!」

 

 女魔法使いがいきなり悲鳴の様な切羽詰まった声をあげたかと思うと、護衛役の男が即座に指示を出すかのような大声で返事をする。

 

 その声に反応するように大男の濃い橙色が、ほとんど黒に近い赤紫色に変わり憤怒の表情で、デカイ盾を片手にこちらに走ってくる。

 

……っあこれヤバい奴だ……

 

 早く逃げなきければ、このままだと死んでしまう未来が簡単に予測できてしまう。

大男はその巨体ののおかげか、動きが鈍くこちらに到着するまで後10秒ほどは時間はあるのだが初めて向けられる濃厚なまでに殺気、その巨体の威圧感に完全に体が強張りうまく動く事が出来なくなっていた。

 

 

 

死んでしまう死んでしまう死んでしまう死んでしまう死んでしまう死んでしまう

死んでしまう死んでしまう死んでしまう死んでしまう死んでしまう死んでしまう

死んでしまう死んでしまう死んでしまう死んでしまう死んでしまう死んでしまう

死んでしまう死んでしまう死んでしまう死んでしまう死んでしまう死んでしまう

死んでしまう死んでしまう死んでしまう死んでしまう死んでしまう死んでしまう

死んでしまう死んでしまう死んでしまう死んでしまう死んでしまう死んでしまう

死んでしまう死んでしまう死んでしまう死んでしまう死んでしまう死んでしまう

死んでしまう死んでしまう死んでしまう死んでしまう死んでしまう死んでしまう

死んでしまう死んでしまう死んでしまう死んでしまう死んでしまう死んでしまう

死んでしまう死んでしまう死んでしまう死んでしまう死んでしまう死んでしまう

死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死

死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死

死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死

死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死

死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死……………

 

……時間にしてみれば、約三秒その間ずっと走馬灯のように自分の前世の記憶がリプレイされ続けていた……

 

 

 

《熟練度が一定に達しました。スキル『恐怖耐性VL1』を獲得しました》

《熟練度が一定に達しました。スキル『恐怖耐性LV1』が『恐怖耐性VL2』になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル『恐怖耐性LV2』が『恐怖耐性VL3』になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル『恐怖耐性LV3』が『恐怖耐性VL4』になりました》

 

《熟練度が一定に達しました。スキル『集中VL1』を獲得しました》

 

 

 

突如として、頭の中に響いた女性の声に急激に思考が現実へと戻ってくる。

 

……目の端に大男が振り上げたデカイ盾の先端がゆっくりと頭に振り落とされそうになるのが見える。

目の前にはいまだ状況が分からないのか呆然とした顔の少年が見える。

 

「…⁉」

 

 ほとんど反射的に体をブリッジさせるように曲げ、頭に直撃コースだった盾を大げさに回避しそのまま流れるような動作で大男から距離をとるために反対方向に転がり立ち上がる。

 

 女の方をちらりと視界の隅に見ると、空中に魔法陣のようなものが浮かび女の前には護衛役と思わしき男が、青年が落とした剣と盾を構え守りの姿勢で立っていた。

 

…あの魔方陣はやばい!まず女の方を潰さなくてはっ!!

 

左腕に隠していた、ナイフを女の方に全力で投擲をし、腰の剣を抜き未だに心ここにあらずな少年に向かって投げつける!!

 

ナイフと剣がどうなったかなんて確認もせずに、後ろを向き全速力で元来た道を走り逃走し始める!!

 

…4体1なんて勝てるわけねぇだろうが!!

 

ほとんど4足歩行のような汚い走り方で走り続ける。

 

…ちらりと後ろを振り返ってみれば

女の方は、護衛役の男に守られるも集中が途切れたのか魔方陣が霧散し、青年の方は大男に守られるという形で防ぎ、すぐに追いかけるような姿勢を見せる

 

「*******!!**********!!」

 

女魔法使いが何かを叫んだ後大男は渋々といった感じでその場で青年の守りに入り、また女魔法使いのすぐ近くに魔方陣が浮かび上がっていく。

 

クソっ!!まだ諦めないのかよ!!

 

心の中で罵詈雑言を吐きながら、頭のどこか冷静な部分でまっすぐ走るのはまずいと判断しジグザグに走り、脇に抱えたままだったトカゲの右足を背中に回し盾のようにする。

 

走り続けていると、すぐ横を見えない何かが通ったかと思うと刃物で切られたかのような跡が土の壁にできる。

 

……風魔法か⁉そんなものまであんのかよ⁉

 

《熟練度が一定に達しました。スキル『接続LV1』が『接続VL2』になりました》

 

「…ぐぉっ⁉」

 

 唐突に頭の中に女の声が響きその瞬間、体の動きに違和感が沸き少しぎこちない動きへとなってしまいその隙に風魔法が背中に着弾する。

 トカゲの右足が盾となってくれたのか感じたのは衝撃だけで転がりながらもなんとか次弾が着弾する前に立ち上がり逃走を再開する。

 

 流石の冒険者たちも焚火からかなり離れ、暗い洞窟の中でおいかけっこする勇気がないらしく魔法の攻撃はもう来なくなっていた。

 

 

 

 

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「フゥ……ハァ……。ここまで来れば、もう大丈夫だよな…?」

 

走ってきた方向を見て、確認し息を止め足音が聞こえないのを確認する。

 

「……ふぅぅぅ…」

 

足音は聞こえてこず。安心のあまり体から力が抜け壁に背中を預けながら体育座りになり休む。

 

…座った瞬間お尻のあたりからグヂュリという水気のある音がし、慌てて立ち上がりお尻のあたりを触ると転んだ拍子に破けたのか水が入っていない革袋あった……

 

……クソッ!!水も無くなっちまったっ!!

 

これからどうすれば良いのか、暗雲たる気持ちで頭を抱えようとして手を見る。

 

…初めての戦闘だったからか、両手が若干震えてるのが分かる

 

……彼らについて行ってこの洞窟を脱出するという希望が潰えてしまった……

 

ちらりとすぐ横に置いてあるトカゲの右足(命の恩人)を見る。

 どうやら風の魔法らしきものは、ふくらはぎの所に当たったらしくそこから血の匂いとかなり深くまで肉が覗いているのが分かる。

ギリギリ皮一枚で耐えてるらしく、ちょっとでも振り回せば簡単に引きちぎれそうだ。

 

……もしもあの時魔法の威力が少しでも高かったら、もしもあの時顔のすぐ横を通った魔法がぶつかっていたら……ゾッとする。

 

「それにしても何でバレたんだ?」

 

 確かに喋らなかったから違和感みたいなのはあったのかもしれないが、殺しに来るほどの違和感だったか?

 

 もしかして攻撃される前に感じた、あの不快な感覚が理由か?

精神攻撃の類の魔法だと勘違いしたが、何かの確認の魔法だったのか?

 

「……もしかして、鑑定?」

 

だとしたら、あの不快な感覚は自分のステータスを確認したから?

それで本人じゃないと気付けたのか。

 

「羨ましい…」

 

鑑定があれば、自分の今の状態も事細かに分かるだろうし冒険者達と戦闘(逃走劇)をせずに済んだかもしれないのに。

 

…あぁ、()()()()()()()()()()

 

《現在所持スキルポイントは30000です。

 スキル『鑑定VL1』をスキルポイント1000使用して取得可能です。

 取得しますか?》

 

「うぉ⁉…いってぇ⁉」

 

いきなり頭の中に女の声が聞こえ、ビックリしすぎて背中を預けていた土の壁に頭をぶつけて悶絶してしまう。

 

なんだ⁉いきなり頭の中に声が⁉

 

…………あなたは、誰ですか…?

 

………………え?無視?

 

心の中で質問するも一切返事は返ってこない。

 

…あぁ、()()()()()()()()()()

 

《現在所持スキルポイントは30000です。

 スキル『鑑定VL1』をスキルポイント1000使用して取得可能です。

 取得しますか?》

 

「おぉ。」

 

謎の感動が胸の中に広がる。

 

実に約5時間ぶりにまともに日本語をしゃべる相手を見つけたからかなり嬉しい。

例えそれが機械っぽい抑揚を一切付けない平坦な声でも嬉しいもんは嬉しい。

 

 それにしてスキルポイントとはなんだ?

この世界にはスキルなんてものがあるのか?

 

疑問は色々と付いてくるが、そんなもん鑑定を取れば分かるはず。

 

ほとんど藁にも縋る様な思いで鑑定を取ることにした。

 

……YES。

 

《『鑑定LV1』を取得しました。残りスキルポイント29000です》

 

では早速

壁を指差しながら

 

「鑑定」

 

『壁』

 

「へ?」

 

…間抜けな声が漏れてしまうのもしょうがないだろう。

なにせ壁と分かってる物を鑑定したら壁と返ってきたんだから。

 

試し石を指差しながら

 

「鑑定」

 

『石』

 

……いや、まだだ。これはLV1だからだ。

レベルというのは基本上げれば性能が上がると相場が決まっているもんだ。

 

コール!神様!鑑定が欲しいです!!

 

神様という日本語を話す存在に出会えたからなのか妙に高いテンションで願い始める。

 

《現在所持スキルポイントは29000です。

 スキル『鑑定VL1』をスキルポイント1000使用して取得可能です。

 取得しますか?》

 

YES!!!

 

《『鑑定LV1』を取得しました。残りスキルポイント28000です》

《熟練度が一定に達しました。スキル『鑑定LV1』が『鑑定VL2』になりました》

 

 とりあえずこれを切りの良い鑑定10まで繰り返す。

情報の対価だと思えば、10000ポイントぐらい安いもんだ。

多分、きっと、恐らく後で手に入る可能性はある……はずだ。

 

 

 

 

-------------------------------------------------------------------------------------

 

 

 

 

《『鑑定LV1』を取得しました。残りスキルポイント20000です》

《熟練度が一定に達しました。スキル『鑑定LV9』が『鑑定VL10』になりました》

 

…やっと終わった。

神様!!ありがとうございました!!

 

さてさっそく壁に向かって指を差しながら

 

「鑑定」

 

『エルロー大迷宮上層の土の壁』

 

「おぉ……ぉお??」

 

鑑定のおかげで自分のいる場所は分かったが、同時に絶望に襲われることになった。

 

エルロー大…迷宮…です、か…

 

大迷宮なんて言う御大層な名前を使っている時点で2日~3日で出られるという希望も消されてしまった…

 

あぁ、これは最悪出るまでに5週間は掛かるぐらいに考えておかないと絶望のあまり足が止まりそうだな

 

頭の中がナイーブになり先ほどまでのハイテンションも無くなり、どうせエルフだろと思いながらも鑑定を取った大本命として自分の頭を指差しながら

 

「鑑定」

 

『パラサイト LV1 (名前なし(佐藤 陽一))

ステータス

HP : 78/78(緑)

MP : 56/56(青)

SP : 47/47(黄)

: 47/47(赤)

 

平均攻撃能力:346

平均防御能力:243

平均魔法能力:136

平均抵抗能力:73

平均速度能力:0

 

スキル

「接続LV2」「擬態VL5」「暗視VL7」「観察眼」「集中VL1」「鑑定VL10」

「恐怖耐性VL4」「n%I=W」

 

スキルポイント:20000』

 

「……………………………は?」

 

あまりにもあんまりな現実(地獄)に思考が停止してしまうのであった。




 初の戦闘シーン(戦うとは言っていない)……疎い部分や誤字脱字があるかもしれませぬ。
ミスがあったら教えてくれると助かります。

投稿してから自分の痛恨のミスに気づく間抜け←

思考加速→集中に書き換えました。すいませぬ


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幕間:我が子よ、母を超えていけ

注意:今回の話には体を売る話があります。
かなりマイルドに済ませたから大丈夫かと思いますが一応。


 

 あれは今から1ヶ月ほど前の事だった。

 

私達はその日、いつものように三人で依頼表を見ていた。

 

「なぁミラ、いつもの魔物討伐の依頼で良いんじゃないか?」

「だめだよロス、常備型の魔物討伐依頼ばかりやってるとすぐにお金がなくなっちゃうし、それに魔物が狩れる量が少ないとサイフに響くんだよ。」

「つってもなぁミラ、俺たちのパーティーだと薬草探しとか無理じゃねぇか?」

「それは…そう、だけど」

 

私たちの冒険者パーティーは魔法使い(ミラ)タンク(ロス)剣士(ヒラ)という完全攻撃型のパーティーだ。

 

そのせいもあってか、ほとんどの依頼は魔物討伐系、おかげで未だにシルバーよりも上に行けない始末だ。

 

まだ共有資金は余裕はあるが早めに対策を考えなければ。

 

「なぁヒラ、やっぱりもう一人盗賊とか、経験豊富な冒険者を募集したほうが良いんじゃないか?」

「それ私も賛成」

「……はぁ、分かったよ。じゃあ、募集するか。」

 

このパーティーが始まった時、決めたルールとして多数決で物事を決めるというものだ。

 

少し前のブロンズのままだった時似たような採決があったがその時は、依頼が安定しないし良くヒラとロスがケガをしたりと、お金が集まりにくい状況だった事もあって私とヒラが反対して否決になった。

 

だけど私達は既にシルバーだ。

あと一人くらい仲間を増やしても余裕はある。

 

そんな他愛もない話をしている時である、彼女との出会いは

 

「ねぇ君たちパーティー募集するの?」

 

後ろから声に反応して私達は振り返るとそこには耳が長い種族、エルフがいた。

 

その瞬間、私達の顔は不機嫌なものになり睨みつけるかの様にその女性を見る。

 

「俺達は確かにパーティーに人を募集しようと思ったが耳長族(エルフ)に頼るほど切羽詰まってないんでね、あっちに行ってくれないか?」

 

 少し酷いように見えるがヒラが言っている事はもっともな話である。

冒険者界隈で有名な格言として「耳長族(エルフ)より前に出るな」と言うものがある。

昔いた冒険者がエルフとパーティーを組み、魔物討伐中に危機に陥った時に後ろにいたエルフから攻撃され囮にされたと言う話がある。

 

実際本当かどうかまでかは分からないが、エルフならやりそうな話だ。

 

 だからなのか、冒険者ギルドに行くと周りでたむろしている先輩冒険者に新米冒険者が絡まれ「耳長族(エルフ)だけは仲間にするな」と口を揃えて言われるのは日常風景である。

 

 この話はかなり昔からあるらしくそれなのに未だに語り継がれ、その認識が消えていない時点でお察しである。

 

 ちなみに耳長族と言う呼び名はエルフ達へと送られた蔑称である。

 

「あはは、ごめんね。私、ハーフエルフなんだ。」

「っえ⁉っあ!す、すいませんでした!!」

 

 ハーフエルフと言う言葉を聞いたヒラが即座に頭を下げる。

エルフとハーフエルフを見間違えてしまった…

 

「いやいや、大丈夫だよ。ハーフエルフとエルフの外見的違いなんて分からないもんね。」

「あははは…、そう言って貰えると助かります…」

 

見分ける事は出来ないとは言え、見間違えで敵意を向けてしまったのだ。

彼らの顔は若干青くなっているだろう。

 

 だがそれも仕方ないのかもしれない。

なにせ、ハーフエルフはかなり珍しい存在だ。

エルフと人間が子供を作ることによって生まれるのがハーフエルフだ。

()()傲慢なエルフが人間と子供を作るのだ。

 私達もハーフエルフなんて存在最初の頃は夢物語の一つだろうと思っていたが、アナレイト王国の王家がハーフエルフを雇っているという話を聞いた時は、ものすごい衝撃を受けたしハーフエルフという種族について散々情報収集したもんだ。

 

 なぜこんなに簡単に彼女がハーフエルフである事を信用できるのかと言うと、エルフ以外を見下す自尊心の塊のエルフは絶対に「自分はハーフエルフだ」なんて拷問にかけても言わないからだ。

 

「とりあえず、席に座って話さない?」

「そうですね、ミラもロスもそれで良いか?」

「私は良いよ」

「俺もそれで構わない」

 

 そうして私達は、冒険者ギルドの二階にある酒場へと行き全員が席につく。

 改めて目の前のハーフエルフを見る。

顔はエルフ達のように美形で長い耳が見える。

髪の毛は金髪で、だけど動きやすいようにかポニーテールになっている。

服装は、防具は自作品なのか少し荒い作りのレザーアーマーと腕当てを装備している。

下は膝当てを装備しているだけの様だ。

 

そして、最も特徴的なのが剣を装備していて杖などの装備は持っていない事だ。

エルフやハーフエルフなどの寿命が長い種族は魔法に固執しがちで剣を持たない物がほとんどだ。

どうやら彼女は近接戦闘ができるらしい。

 

 みんなが座ったのを確認した後、ハーフエルフが喋りだす。

「それじゃあ改めて!初めまして、私はハーフエルフのサルンって言います。

冒険者のランクはゴールドです」

「初めまして、俺はヒラで、魔法使いの方はミラ、背がデカい男はロスだ。

冒険者ランクは全員シルバーだ」

「初めまして」

「よろしく」

 

ヒラが私達の紹介をして、私、ロスと言う順番に挨拶をする。

 ちなみにこの挨拶の仕方はみんなで決めたものだ。

どうも私とロスは口下手らしいので、こういう交渉事などはこの中では話し上手のヒラに全部任せようと言うのが、私達の中にある暗黙の了解だ。

 

「それで、サルンさんはどのくらい強いんだ?」

「んー?どのくらいかぁ、じゃあ冒険者カード見る?」

 

そう言うとサルンさんは、腰の後ろにある小袋入れから冒険者カードを取り出した。

 

 冒険者カードはいわゆる身分証明書の様なもので街の門を通る時とかに見せると半額になったり、宿で見せると食事が半額になったりする物だ。

 

 なら皆冒険者になれば良いじゃないかと考えるだろうが、それは無理な話だ。

 

理由は冒険者にはノルマが設定されているのだ。

ブロンズなら一週間に10体、シルバーなら一週間に20体と言った感じにノルマが設定されている。

 

 このノルマが曲者で、ブロンズとシルバーは街から出られなくなっているのだ。

なにせ、隣街の冒険者ギルドまでどれだけ急いでも一週間は掛かり、一回でもノルマを過ぎた時点で冒険者カードは没収され二度と作ることはできなくなってしまうからだ。

 

 ただし、ゴールドからは別だ。

ゴールドになれば、街から出て隣街まで行くことができるようになるからだ。

ある意味で、ブロンズとシルバーの冒険者からは羨望の対象だ。

 

 それに偽造ができないように冒険者ギルド専用の魔道具が使われており、一定時間がたつと色が変わるようになっている。

 

 そして、冒険者カードには依頼達成回数や、魔物討伐回数などが記載されている。

その回数を見れば、相手のある程度の強さや知識の多さなどが分かるようになっているため、冒険者は自慢話をする時に相手に見せたりするのだ。

 

「おぉ!……え゛?」

 

ヒラの驚愕の反応が気になり、私達も冒険者カードを覗き見る。

 

 サルンさんの冒険者カードの依頼達成回数や魔物討伐回数は明らかにゴールドのものではなくプラチナを一つ越え、ミスリルにも引けを取らない物だった。

 

 怪しく感じてしまいついつい冒険者カードをじっと眺め、色が変わったのを確認し驚愕で目を見開いてしまう。

 

「ど、どうしてゴールドのままなんですか?」

 

自分たちの目の前にいるのが思ってた以上の強者だったせいか、ヒラの声が若干震えているように感じるがそれもしょうがない。

 

「ほら、私ってこんな見た目だからさ、貴族サマからの冒険者の評価が下がるからってゴールド止まりなんだよね」

 

「あ…あぁなるほど…」

 

 ゴールドから上のランク、ミスリルは貴族からの依頼が入ったりするからどうしてもエルフに見えてしまうハーフエルフはミスリルには上げられないとギルド側が制限をかけているのか…

 

「私はこれでも30年間冒険者として生活してるからね、薬草の知識も魔物の弱点の知識もその辺のプラチナよりも豊富だよ」

 

 ちらりと、冒険者カードの発行日の日付を見ると確かに今から30年前、王国歴810年となっている。

 

「なるほど……少し仲間と相談するから待ってて貰っていいですか?」

「分かった」

 

その言葉を聞き私達は席から離れ、エルフの耳にも聞こえない所まで移動し相談を始める。

 

「なぁ、お前らはどう思う?」

「どうって、仲間にすれば良いじゃないか。冒険者として経験豊富で薬草の知識を持っている俺たちに必要な人材じゃないか」

「ロス、そんな単純な話じゃない。私達は彼女がハーフエルフだって知っているけど、他の人が見たらエルフを仲間にしていると思われる。きっと冒険者の評判は悪くなる。今後の生活にも影響があるだろうし、昇格にも影響が出るかもしれない」

「むぅ……」

 

 きっと、ロスとセラはサロンさんの知識に目が向いているんだろうが、サルンさんはかなりの実績を持っておりきっとギルドからも睨みが利いている。

つまりサルンさんを味方にすれば私達も注目される。

少しでも違法行為をすれば、通報されるかもしれない。

 

 冒険者は多かれ少なかれ依頼によっては違法行為を犯す時もある。それで、弱みを知られてしまえばシルバーの私達は今後の活動がきつくなる。

 

その可能性が高いから私は懇切丁寧に説明したのだが…

 

「それでも俺は彼女を仲間にするのは賛成だな。デメリットよりもメリットの方が大きいように見えるし」

「俺も賛成」

「…はぁ、分かった」

 

ヒラとロスが賛成して、私だけが反対だったため彼女が仲間になるのが決定してしまった。

 

「まぁ、難しい所は俺にはよく分からないが、ギルドから目を付けられても違法行為をしないように気を付けてれば大丈夫だろ!」

 

「…楽観的過ぎ…」

 

「あははは、俺達の頭脳担当は現実的過ぎるなロス!」

「それは言えてるな、俺達は冒険者なんだからもっと気楽に生きればいいのにな」

「私は、そんなにロマンチストにはなれないから…」

 

「まぁ、もしかしたらサルンさんと友達になって楽しく冒険できるかもしれないぞ?」

「……あまり期待しないでおいとく」

 

 自分でも分かってはいるのだ、私に冒険者が向いていない事くらい。

周りの冒険者達はみんな、夢を見ながら冒険者をやっている。

誰も見た事がない未知を探し、既知にしようとしている。

 

だけど私にはそんな夢がない。

 

親に売られそうになり大急ぎで逃げ出しこの地に落ち着いた。

ただそれだけだ。

 

別に体を売るのが嫌だという訳じゃない。

実際私は体を売り、情報収集をすることも多々あるからだ。

 

ただ一度堕ちると這い上がるのに時間が掛かり、効率が悪かった。

 

だから私は逃げた。

 

 

 

 

……………………妹を親の元に見捨てて…………………

 

 

 

 

妹は今頃、親達に売られ売春婦として働いてる事だろう。

もしかしたら奴隷にまで堕ちてるかもしれない。

いや、もしかしたらもう死んでるかもしれない。

 

別に私は自分が悪いとは1mも思っちゃいない。

 

 妹は情報収集を怠った。

情報を得るための武器()を持っていたのにそれを有効活用できなかった。

妹は私との情報戦で負けた。ただそれだけだ。

 

 私は、自分が売られる五日前に親の様子が余所余所しくなったのを感じ情報収集のためにご近所に住むおじさんの所に深夜会いに行って、親達が何をしようとしているのかを知った。

 

そのおかげで親達のお金の隠し場所を探す時間ができ、妹に

 

「ねぇ、お姉ちゃん。お母さん達最近様子おかしいよね?」

「…あぁ、もうすぐ領主様が来るからじゃない?」

 

と、嘘の情報を流し妹の逃げる可能性を潰すことに成功したのだ。

 

……いや。嘘という訳ではなかったな。

 

実際、私達を売れる場所は親達のコネだと精々領主様が限界だろうから。

 

……別に妹を見捨てた事には後悔はないのだ。

 

ただ、周りにいる冒険者を見るとふと思う時がある。

 

……私は本当に人間なんだろうか、っと。

 

周りにいる冒険者達は仲間とお酒を飲みふざけあい、笑っている。

 

私が最後に笑ったのは何時だろうか?

 

私には笑った記憶がない。

 

 

 

私達の相談も終わり、席に待っているサルンさんに承諾を伝えるために戻る事にした。

 

 

 

 

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 サルンが仲間になってから一週間、私達はようやくゴールドに上がることができた。

 

「いやぁ、サルンさんのおかげでゴールドまで上がることが出来たよ!」

「あははは、皆の呑み込みが早くて教えがいがあったよ」

「そう言って貰うとおんぶにだっこの俺らは助かるな」

「…ありがとう」

 

彼らが調子の良い声を上げ彼女を持ち上げるのを私は白けた目で見つめながら、感謝を口に出す。

 

 それはそうだろう彼らがこんな短時間で覚えられたのは、私が書いたメモのおかげだからだ。

彼らはサロンさんに薬草探しの知識を右耳で聞き左耳から出した後、宿で私の部屋に来て必死になって私のメモの内容を丸暗記しているからだ。

 

実際にこの中で本気で彼女に感謝しているのは私だけだろう。

 

 彼女の知識は相当なものだった。

薬草の知識、魔物の足跡の見つけ方、魔物の皮の綺麗な剥ぎ方、色々な知識をタダで披露してくれた。

 

ただそんな彼女にも欠点があった。

教え方が下手すぎるのだ。

 

魔物の剥ぎ方は「ここがこうでぇ」とか「この足跡はカエルだね」とか魔物の名前を正確に伝わらずミスを犯しそうになった事もあったし、魔物の皮の剥ぎ取り方は直感的な言い回しで彼女の手の動きをよく見なくては理解が難しかった。

 

そんな状態だったから私が質問をしながら彼らに理解できるようにメモを取り、彼らがメモを見ながら必死に自分の技術にしようと丸暗記をしたりと一週間は大忙しだった。

 

 もちろん、彼女を持ち上げるのには理由がある。

さらなる情報を得ようという考えからだ。

 

 サルンが男なら話は簡単だった。

私がただ夜に彼女が泊まっている宿に行けば良い話だからだ。

 

 だが、彼女は女だ。

そのために彼らに協力をしてもらった。

 

出来る限り持ち上げて上機嫌にしてほしいと。

 

……まぁ、多分彼らは素で彼女の事を持ち上げているようだが。

 

この一週間一緒に行動をしているがどうもセラは、サルンに惚れているように見える。

 

ロスは少し頭が弱い所があるから普通に、彼女の事を尊敬しているようだ。

 

「よし!これでようやく俺達もこの街から出る事ができるな!」

「そうだな!ようやくこの街ともおさらばできる!」

 

ロスとヒラはこの街にずっと閉じこめられる事を不満そうにしていたからか、テンションがだいぶ高くなっている。

 

「じゃあ、前々から予定してたエルロー大迷宮に行く準備をしよっか」

 

「おっ!ミラよく覚えてたな!」

「まぁ、チームを立ち上げた時の約束だしね」

「ここまで長かったな!」

「え?何の話?エルロー大迷宮に行くの?」

 

……そう言えば彼女には話していなかったな。

 

「そう言えば話忘れてましたね。私達ゴールドになったらエルロー大迷宮に行くって予定なんです。」

「へぇ~そうなんだ。ねぇ!私もついて行っていい?」

「おう!仲間なんだから一緒に行くに決まってんだろ!」

「‼うん!」

 

……セラは調子良い事言ってるが、夜な夜な私の部屋に勉強するために来た時、早く誘え早く誘えと何度も言ってるのに一切動かず、ようやく今私に便乗するという方法でいう事が出来たのだ。

 

ようするに、彼は物凄いヘタレなのだ。

 

「じゃあ私達女性陣は一緒に、買い出しとかしようかな‼」

「そうですね、オウツ国までは結構離れてますから多めに買い集めなきゃですし。」

 

「じゃあ、俺とロスはオウツ国までの護衛依頼とかないか探してくる」

「では行くか」

 

そうして私達はエルロー大迷宮の入り口、オウツ国へと向けた準備を完了し出発するのだった。

 

 

 

 

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旅の途中夜の見張りがサルンと同じになった時の事だ。

 

彼女はどうも私の事を妹の様に思ってるらしく、そのように扱う事が多々ある。

そのおかげで彼女が持っているコネを使って集めた、珍しい情報なんかを面白おかしく話してくれる。

 

だから私も情報を得るという意味で、甘んじて妹という茶番の役者に付き合うことにしている

 

「今日は何の話をしようかぁ?あ、あの話が良いかな?」

「今夜は何の話を聞かせてくれるんですか?」

 

「ふっふっふっ!じゃあ今日は連続殺人事件の話をしようか。

あれは今から10年程前の出来事。

レグサンド帝国で突如として起こった出来事で、一夜にして70人もの人間が殺された話だよ」

 

「あ、その話は噂で聞いた事があります。」

「えぇ…。…ちなみにどういう風に聞いたの?」

「確か…犯人は『隠密』スキル持ちの冒険者って聞きました。」

 

私がそう答えると意地の悪そうな、エロ親父()がよくするニヤニヤした顔で指を左右に振る。

……その顔をセラが見れば一気に恋心が覚めそうだな……

 

「チッチッチ。それは帝国が出した欺瞞情報だよ。」

「え?そうなんですか?」

「もちろんだよ。当時私は帝国にいて、緊急依頼として私も動いたからね!」

 

ほとんどない胸を張りながら彼女は自信満々でドヤ顔をする。

 

きっと、今から彼女が喋ろうとしているのは箝口令が敷かれてるような情報だ。

こういった話を簡単に話すからこそ彼女には利用価値があるのだ。

 

「じゃあ、なんで帝国が欺瞞情報なんて出したんですか?」

「それはね、犯人が魔物だったからさ」

「……つまり、帝国のメンツに関わる情報だから冒険者のせいにしたんですか?」

 

「まぁ、そういうのもあるんだろうけど、今回暴れた魔物っていうのが市民に

バレると不味いらしくて欺瞞情報を流したんだよ」

「どんな魔物だったんですか?」

 

「人に化ける魔物だったんだ!」

「?????人に化ける魔物、ですか?」

 

「そうさ!いや、私も聞いた時には驚いたね。

なにせそいつは何食わぬ顔で事件発生前日に街中で買い物してたって話だからね。」

「……つまり今も市民の中にそういった魔物がいるかもしれないから欺瞞情報ですか」

 

「いや、私は確実にいると思うね。

どんな生き物でも、それが魔物でも子供を作らなくちゃ増えやしない。

つまりあの魔物にも親がいるはずだ。

ま、帝国もその事に気づいてるから探そうとしてたんだろうけど見つからなかったんだろうねぇ」

 

「ちなみにその魔物はどういった見た目だったんですか?」

「どうもその魔物の見た目は、首から下が普通の人間で首から上は二本の触手のような物が生えていてその先端を刃物に変えて人を切りつけていたらしい。」

 

らしい?

 

「……ん?見てなかったんですか?」

「…っぷ…アハハハハハ!一介の冒険者がこんなに細かい情報知ってると思ってたの?

一部は当時現場にいた同業者から聞いた話さ。

ミラはどうも計算とか考える事とかは上手いが、情報を簡単に鵜吞みにしすぎだね!」

 

これだ。たまに彼女は私の事を子ども扱いして揶揄う時があるのだ。

…まぁ、彼女と比べればほとんどの人間は子供だが。

 

「むぅぅぅ。」

「アハハハハハ!!そんなに拗ねないで。

だけど人に化ける魔物の情報は本当だよ?

もしかしたらミラの近くにいる人も魔物かもしれないよ?」

 

「………気をつけておきます。」

「…そこはミラの良い所だね。

年長者からの注意にはちゃんと敬意を払う。

大人でも簡単にできる事じゃないよ。」

 

そう言って彼女は、私の頭を撫でる。

……いつぶりだろうか。他者に性欲がなく、慈愛で頭を撫でられるのは。

すべてを委ねたくなるような不思議な感覚にされる…

 

だけどサルン、きっとその人に化ける魔物の可能性が高いのは……

 

「……ミラ」

「何ですか?」

 

急に名前を呼ばれ思考を中断される。

 

サルンは急に真面目な、どこか深刻そうな顔をし始める。

 

「もう体を売って情報収集なんて止めな。」

「⁉………………気づいてたんですか。」

「……そりゃあね。

深夜に宿を出ていく所を見かけてね。」

 

私はゴールドになってからも変わらない。

情報を手に入れるために街や村にに着く度に情報収集(売春)をしている。

 

「………それは無理ですよ。

私みたいな冒険者は、情報は命の次に重要なんです。

生き残るためには必要な行為なんです。」

 

「情報が必要なら私を頼りな。

私のコネを使えば情報屋なんかにも顔合わせさせる事もできる」

「……分かりました。サルンさんのお世話になります。」

 

 

 

 

 

 

 

 

彼女(サルン)は気づいていない。

ミラがワザと気づかれるよう『隠密』スキルを切っていた事実に。

彼女(サルン)は気づけていない。

その優しさで彼女自身の利用価値が消える事実に。

 

 

 

 

-------------------------------------------------------------------------------------

 

 

 

 

………私は、常々考えていた。自分が何者でどこから来たのか。

私は、本当に人間なのかを。

 

サルン、彼女には感謝しかない。

彼女の教えてくれた情報屋のおかげで私は、自分の事を知ることが出来た。

 

今まで体で集めていた情報がゴミであるかのように、大量の情報を仕入れることに成功した。

その中に最も欲しかった情報があった。

 

「ついに手に入れた……『鑑定石VL2』。」

 

彼ら(人間)は間抜けだ。

「情報が大切」と常々言う割にその情報が簡単に手に入る『鑑定』というスキルを蔑ろにする。

 

この鑑定石は今まで情報収集とは別に夜を売って稼いだ金で、オウツ国の裏市場に売られていた物を買い取った物だ。

 

「………鑑定」

 

≪パラサイト LV20 名前 ミラ》

 

「あぁ………そうか」

 

ようやく納得が出来た。

やっぱり私は人間ではなかったらしい。

 

では私が欲しいスキルを手に入るか調べてみよう。

 

どういった名前のスキルかまでは把握できていないが、何とかする手段は思いついてる。

 

繁殖スキルが欲しい。

 

違うか。

 

増殖スキルが欲しい。

 

これも違う。

 

分裂スキルが欲しい。

 

これも違う。

 

分身スキルが欲しい。

 

これも違う。

 

()()()()()()()()()()

 

《現在所持スキルポイントは2120です。

 スキル『産卵』をスキルポイント2000使用して取得可能です。

 取得しますか?》

 

よし!

スキルを知らないならそれっぽい名前を適当に思い続ければ良い。

 

真言教はこの声を神だとか言っているが私から言わせて貰えば、決められた事を言い続ける道具でしかない。

 

はい。

 

《『産卵』を取得しました。残りスキルポイント120です》

 

これで私も子が産めるようになったわけだ。

 

今まで私は数多の男を相手に夜を売ったががすべて、避妊具なんてものは付けなかった。

なのに何故か子は宿らなかった。

もちろん、危険日を避けたとかそんな事はしていない。

 

それなのに子を宿さないのはおかしい。

 

多分だがそれは私が魔物だったからだ。

異種族の間では子が宿せないらしい。

だが同族を探すなんて効率が悪いことをしている暇はない。

 

だから、産卵スキルだ。

きっとこのスキルは、神話級の魔物『クイーンタラテクト』も持っているんだろう。

あんなにデカいのにどうやって繁殖行為をしているのかは謎だったがスキルの力のおかげか。

 

では早速、『産卵』

 

お?おぉ??

 

身体から生まれるのかと思ったが、どうやら私の頭からだった。

 

頭から触手が伸び触手の先端が蜂の針のように細くなる。

そこから卵のような物が出てきた。

 

「ちっさ」

 

ついつい言葉が漏れてしまうほど小さい卵が床にある。

…これが、私に?

 

色々と検証(人体実験)をして、ようやく『産卵』の正しい使い方が分かった。

これは、そのまま産むのではなく針を対象の首筋に差しそこに産み付けるみたいだ。

 

サルンさん(本命)の寝込みに部屋に侵入し、試したら上手くできた。

 

後は成長を待つだけだな。

 

 

 

 

-------------------------------------------------------------------------------------

 

 

 

 

それは、エルロー大迷宮へ入り4日目になって引き返そうとしている時に起こった。

 

エルローランダネルという三匹いつもまとまって動いてる魔物がいる。

普段の私達ならそこまで苦戦はしない。

だが、初めての迷宮で連戦続きのセラとロスの疲労。

セラの右足の脱臼。

さらに私の魔力不足。

 

 

色々な偶然が折り重なり、私達の中で動けるのはサルンと迷宮案内人だけになってしまった。

 

「ここは私が引き受ける!先に行ってて!!」

「だっだけどサルン!無茶だ!」

「私の事心配するなら早く行って!!」

 

サルンとセラの掛け合いを横目に私はロスに目で合図を送る。

ロスはそれだけで把握したのか、セラを無理やり抱き上げ迷宮の出口へ向かう方向へと走り出す。

 

「は、離せロス!!サルンが‼」

「静かにして!!心配なのは分かるけど他の魔物を呼び寄せて、彼女の危険をさらに上げる気⁉」

「だ、だけどサルあがっ……」

 

彼は最後まで話さず、ロスによる頭突きにより気を失いった。

 

「ありがとうロス。」

「これぐらい良いさ。この中で一番心配してるのはミラだろ?」

「いや私は別に」

「ミラ隠さなくても良い。サルンとは本当の姉妹のように仲良くしてたもんな。」

 

…どうやらロスからはそのように見えていたらしい。

私が彼女の近くにいたのは卵の成長具合が気になったからだ。

 

なにせ初めて生んだ卵だ。

一体どうやって誕生するのか気になってしまう。

 

まぁ、結局無駄に終わりそうだと暗雲たる気持ちにされる。

 

それから、4時間ほど進んだ所の開けた所でセラを寝かせ彼女が来るまで待つ事にした。

 

「なぁミラ。彼女は無事だと思うか?」

「何?ロス彼女が死んだと言いたいの?」

 

「いや別にそういう訳じゃない。

彼女の強さならきっと大丈夫だろう。

だがどのくらいここで待てばいいんだ?」

「…すまないが、残り食料から見て一日ここで待つのは無理だぞ」

 

案内人が横から口を出し始める。

 

「……つまり」

「まぁ、待てても後3時間程か」

「分かりました。

ロス、サルンを信じて待ちましょう。」

「…分かった。」

 

ロスは何か言いたそうな顔をしたが、大迷宮に潜る前に念押ししたことが利いてるようだ。

 

案内人に逆らい、迷宮の中に放置されてるなんて私はごめんだ。

 

それから、二時間ほどでセラの意識が回復し残り一時間となり全員が意気消沈していると

 

「そこにいるのは誰だ⁉」

 

急に案内人が叫び私達の体が迅速に反応し、案内人が見ている方向に武器を向ける。

 

すると影の中から顔を出したのはエルローランダネルの右足を脇に持ったサルンだった。

 

()()()()()()()

 

彼女だ。確かに見た目は彼女だ。

だが私の勘が言っている。本当に彼女か?

 

セラが喜びのあまり痛めている右足を引きずりながらサルンに抱き着く。

すると彼女は一瞬戸惑ったが、そのままセラを抱きしめ返す。

 

………おかしい。

 

彼女は私達の事をどこか子ども扱いをしてる節がある。

いつもの彼女なら抱きしめた彼を引きはがし、場の空気を和らげるために頭を撫でるくらいはやる。

 

私と同じ心境なのか、ロスも若干眉間に皺が寄っている。

 

セラは気づいてないようで、体を話した後目線を合わせながら話始める。

 

「ケガはないか?体の調子は?」

 

すると彼女は、笑顔で頷く。

 

…………なぜ喋らない?

……もしかして言葉が通じてないのか?

 

その様子に不審に思ったのかロスが話始める。

 

「どうして喋らないんだ?喉の調子が悪いのか?」

 

今度は彼女は笑顔で首を横に振る。

 

…私は、その怪しさから鑑定を使う事にした。

最近、スキルにまでなった鑑定を使う事にする。

 

「…鑑定します」

 

《パラサイト LV1 (名前なし)》

 

その瞬間、ニヤけそうなのを隠し悲壮感あふれる声で叫ぶ。

 

「魔物!パラサイト!案内人弱点は⁉」

「パラサイト!弱点は心臓と頭!!」

 

私が鑑定を使ったのを感じたのか、突然魔物(我が子)は慌てだす。

 

ごめんね?だけど大迷宮内で生き残れば強くなれるでしょう?

 

声を聴いた瞬間、ロスが憤怒の表情で盾を片手に走り出す。

 

ほら、早く逃げないと死んじゃうよ?

 

私も魔物(我が子)を殺すつもりで炎魔法を構築し始める。

私の前には案内人が来てセラの武器を持ち守り(肉壁)になりに来る。

 

魔物(我が子)は突然の出来事で理解できてないのか、呆然としロスの盾がぶつかる直前に後ろに倒れるように回避し、そのまま出口のほうに転がり立ち上がる。

 

……肉体(サルン)の身体能力を引き継いでるのか動きが良いな。

 

魔物(我が子)はこちらが魔法構築してるのを脇目で見たのかナイフをこっちに投げ、ロスを動けないようにするためか剣をまだ事態が呑み込めていないセラの方に投げ飛ばしそのまま脇目も降らずに走って逃げだす。

 

だがナイフは私達の上を通り、剣に至っては投げれておらず地面に突き刺さってる。

 

……まぁ、魔法が危険な物と分かったご褒美をやるぐらいは良いか。

 

私はいかにも動揺で魔法を霧散させた風を装う。

 

そして、即座に頭を切り替える。

 

「風魔法を撃ちます!!ロスはミラを守ってて‼」

 

そして風魔法の魔法を構築し始める。

 

ロスは自分の足では追いつけないのを分かったのか、ミラの前に立ち守りの姿勢を見せる。

 

そして魔物(我が子)はこちらの声に気づいたのか後ろを振り向き魔法構築が目に入って左右にジグザクに走り始める。

 

かなり頭が良いな。流石我が子だ!!

 

別に当てる必要はない。

ただ魔法が怖く恐ろしい物だと教え込み自分の武器にしようと頑張って欲しい、いわば母の愛の鞭なのだ。

 

魔法をワザと魔物(我が子)の横をスレスレに通るように打ち続ける。

 

何発か外していると、急に魔物(我が子)の動きが鈍くなり、魔法が当たる。

 

……っあ

 

魔物(我が子)は転びながらも四足歩行のような走り方で暗闇へ逃げてしまった。

 

……ふむ、エルローランダネルの右足で防いだか。

我が子は悪運が強いらしい。

 

頭の中では、狂喜乱舞しながらも悔しそうな顔をしながらロスの方に歩み寄る。

 

「……すいませんでした。彼女の仇を取れませんでした。」

「…………ミラ。パラサイトという魔物は初めて聞いた。どういう魔物なんだ?」

 

……チラリと案内人を見て説明を促す。

 

「パラサイトはいわば寄生する魔物だな。

個体差がデカくて人間に寄生したならば弱いが竜種に寄生したならば、神話級にも届きうる個体になる。

今回は人間種だったからランクDだ。

何、この迷宮内なら三日もすれば勝手に死ぬはずだ。」

 

「……いや、その前に俺が見つけて必ず殺す。」

「サルンさんの仇、俺達が必ず取ってやる!!」

 

……とりあえず迷宮から出たら、ロスとセラには消えて(死んで)もらうとしましょう。

 

我が子を傷つけるのは許しません。それをして良いのは私だけです。

 

 

 

 

 

 

目を瞑り胸の前に手を当てる。

 

…………あぁ、感じる。あの子の魂の絆が。

……大丈夫。魂の繋がりを使えば洗脳なんて簡単ですが()はそんな事しません。

 

大丈夫。

 

あなたの事は迷宮の外で待っています。

()という障壁を超える日を待ちながら。

だってほら、子は()を超えていくべきでしょう?

 

だから私は、強くなります。

 

《熟練度が一定に達しました。スキル『欲求VL1』を獲得しました》

 

だから私は、強くなりたい。

 

《熟練度が一定に達しました。スキル『欲求VL1』が『欲求VL2』を獲得しました》

 

強くなって、あの子と殺し愛たい!!

 

 

《熟練度が一定に達しました。スキル『欲求VL2』が『欲求VL3』を獲得しました》

 

……………あぁ、これが夢を持つというものですか…………

 

存外、私もロマンチストだったという事ですか。

 

あぁ、欲望が止まらない………

 

強くなりたい

 

《熟練度が一定に達しました。スキル『欲求VL3』が『欲求VL4』を獲得しました》

 

もっと、強く!

 

《熟練度が一定に達しました。スキル『欲求VL9』が『渇望VL1』を獲得しました》

 

もっと、もっとぉ強くぅぅぅぅぅうぅぅぅうっぅぅぅぅ!!!!!!!!

 

《熟練度が一定に達しました。スキル『渇望VL8』が『渇望VL9』を獲得しました》

 

 

私は強くなって我が子に殺されたい………………!!!!!!!!!!

 

《熟練度が一定に達しました。スキル『渇望LV9』が『強欲』になりました》

 

《条件を満たしました。称号『強欲の支配者』を獲得しました》

 

《称号『強欲の支配者』により、スキル『征服』を獲得されました。》

 

《熟練度が一定に達しました。スキル『禁忌VL1』を獲得しました》

 

………………あぁ、分かるこのスキルは私のこの体中が滾る様な思いに答えてるれる!!!

 

私は、ちらりと我が子が走り抜けた洞窟の方を見る。

 

大丈夫。

お母さんはあなたよりも強くなって、あなたを食い殺して永遠に私の中で飼ってあげる。

 

あぁ、考えただけでもゾクゾクする。

顔が知らずに火照ってくる。

 

…………精々私の前に来るまで我が子を守ってよ。サルン。

 

そう、心の中で呟き、セラとロンそれから迷宮案内人がいるほうに歩いていく。

殺す(強くなる)ために。

 

 

その日、私は初めて心の底から笑うことが出来た。




めちゃくちゃに話が長くなってもうた……
しょうがないんや!主人公誕生の前後の話が書きたかったんや!!
この手が悪いんや!!
ちなみに冒険者のランクはオバロをリスペクトしています


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殺し合い初心者の戦い方

話が進むごとにもっと汚く、グロくリアルに書きたい。
そんな感情が芽生えてくる。
………もしかして、これが『恋』?


 

「うっっわ………気持ち悪………」

 

自分は顔から出てる触手に目を付けて自分の顔を確認している。

顔にある目で見ながら、触手の目で見るという何とも言えない感覚に苛まれている。

 

髪は金髪で、自然に伸ばしているのか腰まである。

 

顔は想像通りのエルフって感じの美形だ。

耳は少し上の方を向いて顔の横を反るように尖っている、いわゆるエルフ耳って感じだ。

 

ただ今は頭の頂点から触手が伸び、「の」の字に曲がり先端に目が付いている。

 

脳停止してから、多分2分ほど呆然としていたが横から感じる腐った肉の匂いで思考が再開。

とりあえず今自分に何ができるのか確認している所だ。

 

自分の頭から触手が出てる時点でキモイし、その触手を自在に動かして違和感を感じない自分の適応能力もキモイ。

 

とりあえず、また自分の体を鑑定する。

 

『パラサイト LV1 (名前なし(佐藤 陽一))

ステータス

HP : 78/78(緑)

MP : 56/56(青)

SP : 47/47(黄)

: 24/47(赤)

 

平均攻撃能力:346

平均防御能力:243

平均魔法能力:136

平均抵抗能力:73

平均速度能力:0

 

スキル

「接続LV2」「擬態VL5」「暗視VL7」「観察眼」「集中VL1」「鑑定VL10」

「恐怖耐性VL4」「n%I=W」

 

スキルポイント:20000』

 

…鑑定時に言葉を出す必要性がないという事に気づけたのは良かった。

敵と戦闘時にいちいち口に出してたらキリがない。

 

自分のHP、MP、SPが高いのかが良く分からないのでそこは放っておく。

 

SPの赤が減っているのは、走ったからか?

 

平均攻撃力とかは意外と高いんじゃないんだろうか?

……まぁ、いまだに魔物と遭遇してないから多分という話だが…

 

ただ、平均速度能力だ。

これは原因はなんとなく分かっている。

 

………自分の本体は鎖骨の所から上だからだ。

身体を触っていると、鎖骨から上が若干敏感で鎖骨から下が若干鈍いと感じる所がありそこが()()()なのだろう。

 

……つまり自分は人間の首をどこかにやり、その上に居座っているわけだ…

 

 

 

 

ど、どうしてこうなった!?!?!?!?!?

 

はっきり言ってそんな事をした記憶は一切ない!!

 

つまり自分は犯人ではない!!

 

一体誰がこんな事を⁉⁉

 

《熟練度が一定に達しました。スキル『恐怖耐性LV4』が『恐怖耐性VL5』になりました》

 

……あ、また上がった。恐怖耐性って意外と上がりやすいのか?

正直上がった通知もいきなりだから、そのせいでさらに上がりそうなんだが?

 

…ふぅ……まぁ、良い。

この際そんな事はどうでも良い。

この体の本来の持ち主には同情するが所詮赤の他人、同情するだけだ。

 

さて、気を取り直して次はスキルを見ていくとしよう。

 

実は鑑定は二重鑑定ができるみたいのだ。

 

そのおかげで分かった情報もある。

どうやらこのエルロー大迷宮はダズトルディア大陸とカサナガラ大陸を繋ぐほど巨大らしいのだ。

まぁ、ダズトルディアとかカサナガラとか聞いても「あぁ、異世界なんだな」ぐらいにしか思えないが。

 

さて、では最初のから鑑定して見よう。

 

『接続:レベルが上がれば寄生元の肉体と接続が強固になり、より精密な操作が可能となる』

 

急に動きやすさが上がり、逆に動きが鈍くなったのは『接続』スキルのせいなのか……

 

まぁ内容を見る限りパラサイト専用スキルみたいだし、全然良いんじゃないか?

レベルが上がれば、接続も強固になって首が事故で抜けるなんてのも心配しなくて済むようになるだろうしな。

 

『擬態:他の生き物へ擬態することが出来る。』

 

うん、シンプルイズベストだな。

 

だがしかし、このスキルは一見してかなり有能そうに見えるが無能スキルだ。

 

他の生き物と言っているが首から上の体でどうしろってんだ?

確かに今自分は首から上を『擬態』しているんだろうが、逆に言えばそのぐらいしか出来ていない。

 

触手に目を作ったりしてるのはパラサイトとしての基本能力なのだろう。

 

これは擬態とは言わない。増殖か、複製だ。

 

つまり『擬態』スキルは今の所、顔の色を虹色に変えて遊ぶぐらいしか使い道がない。

 

さて、次は『暗視』だが…これは見なくて良いな。

もう名前で何の効果か分かるし。

どうせ暗い所が見えやすくなるとかなんだろ。

 

『観察眼:目に捉えた対象の感情をある程度色にして見ることができる。』

 

……あぁ、冒険者たちが発光していたのはこのスキルが原因か。

もっと早く分かっていれば細かく覚えられたんだろうが、命の危機がせまり良く覚えてない。

精々、警戒が橙色で憤怒が黒に近い赤紫色ぐらいだな。

 

……魔物って感情あるよね?

迷宮内では使い物にならないスキルじゃなかったらかなりの有能スキルだ。

……ある程度だから慢心しないようにしなくては……

 

『集中:集中力が増す』

 

………このスキル必要か?

『擬態』のスキルはまだ分かる。

頭を背景と同じ色にすれば隠れるんだから。

 

だが、集中力を増すスキルってなんだ?

……今後の要検証だな。

 

『恐怖耐性:恐怖を覚えにくくなる』

 

唯一熟練度で上げてるスキルだ。

上げてるんじゃなくて勝手に上がっていくんだが……

多分今も熟練度が稼げてる。

 

まぁただの高校生が暗い迷宮の中一人きり、どんどん未知の情報が入ってきて頭がパンクしかけてる中で上がらなかったらおかしなスキルだ。

 

『n%I=W:鑑定不能』

 

………めちゃくちゃ怪しいスキルだ。

この中で唯一英語を使っているスキルだ。

 

これ、現地人にはどういう風に見えてるんだ?

謎言語で、書かれた謎スキルに見えているんだろうか?

 

……このスキル持ちがいたら話しかけてみよう。

転生者の可能性が高い。

 

どうか相手も鑑定を持っていて話が通じるほど理性がありますように…

 

……さて、そろそろ動かないと餓死してしまいそうなのだが……念のため自分が乗っている体にも鑑定をしとく。

 

『ハーフエルフの肉体』

 

エルフだと今まで勘違いをしていたが、どうやらハーフエルだったらしい。

知らんがな。非常にどうでも良い情報だ。

 

 だがここで注目すべきは、『ハーフエルフの肉体』以外の情報がない事。

つまり、この肉体はステータスとかに縛られてない。

ただただ純粋な心臓の動いてる、生きた肉体(乗り物)なのだ。

力がかなり出せる理由は脳のストッパーがなくなったせいだろう。

 

多分この世界では、かなり貴重なのではないか?

みんなステータスに縛られて生きているんだろうから。

 

だが、この肉体は生命線でもありながら同時に致命的なまでの弱点だ。

 

例えば、頭ではなく心臓を狙われたら?

例えば、ダメージが蓄積しても回復のポーションなんて効かない肉体だったら?

例えば、足を切られ身動きが取れない状態にされたら?

 

《熟練度が一定に達しました。スキル『恐怖耐性LV5』が『恐怖耐性VL6』になりました》

 

……自分は、一刻も早く『接続』のスキルを上げなければならない。

 

力で叶わないのなら技で対抗しなければ。

この動きにくい体を受け入れ、当面の間は本体(寄生体)で戦わなくてはいけない。

 

………何としても生き残ってやる…‼

それが論理感の無い、外道な行動に走る事になってもだ……‼

 

そうして、自分は歩きだす。

自分を強くするために、そしてまだ見ない外への道を求めて。

 

 

 

 

………ちなみに、トカゲの右足(腐った肉)は置いて行った。

臭すぎて敵にバレそうなんだよね。

-------------------------------------------------------------------------------------

 

 

 

 

 まず自分が歩きながら行ったのは()の改造だ。

女としては美人かもしれないが、迷宮を生きていけるかと言えばノーだ。

今は少しでも強くなりたい。

死なないためなら醜くなるのはしょうがない。

 

髪を全部回収し、頭は完全に丸坊主にした。

そうすると、頭が二回りほど大きくなった感じがしたため元の大きさに戻すために、レザーアーマーの中に触手を伸ばし心臓部分を守るようにしておく。

こうしておけば心臓に来るダメージを本体が受け止めることで即死を回避出来る…ハズだ。

 

尖っていた耳も消し、耳は完全な穴の状態にした。

綺麗な形の鼻も消し、小さな穴が残る状態にした。

 

………口もいらないな。迷宮内では喋らないだろうし。

口も歯も舌もない状態にし、空気を吸うための穴といった状態になった。

首を必要最低限の機能にするために声帯を取り除き、血液が通る道と酸素が通る道だけになった。

 

………いや、だめだな。首も短くしさらに無駄を無くそう。

首を短くした弊害で後ろを向くことが出来なくなったが、後頭部に目玉を生やす事で乗り切る。

 

無駄を省いたおかげで今の自分は、はっきり言って目の付いた埴輪(はにわ)にしか見えないだろう。

 

この形を基本形態としておこう。

最初は戻すのに時間が掛かるだろうがなれれば大丈夫だと思う。

 

そしてここからが必要な武器だ。

 

ナイフも剣も必要な事とはいえ投げ捨ててしまって武器がない。

その武器を自分の触手で作るのだ。

 

顔の右上半分、全体の4分の一を触手にし、人間の右手で持つようにする。

そして先端部分を固く圧縮、鋭利にし剣モドキの完成だ。

 

この剣モドキを動かすのは本体ではなく、人間が振るうという事だ。

 

どうも、本体と人間部分を同時に動かすというのは、かなりの高等テクニックがいるようで難しすぎる。

 

それもそのはず脳が無くなったんだから、脳がやっていた部分を自分でやらなければならない。

 

バランスの調整、手足の微細な動き、腰の動かし、そのすべてを制御しながら本体も動かすのは無理だ。

 

人間だった時の記憶のおかげで、何とか走ったりすることが出来るだけだ。

 

そんなわけで基本的戦法は人間部分を動かして自分で自分を守れ戦法だ。

 

《熟練度が一定に達しました。スキル『並列思考VL1』を獲得しました。》

 

おぉ、案外考えてるだけでも熟練度って上がるんだな。

 

 

 

 

-------------------------------------------------------------------------------------

 

 

 

 

『エルローフロッグ LV4

ステータス

HP : 94/94(緑)

MP : 52/52(青)

SP : 62/62(黄)

: 12/62(赤)

 

平均攻撃能力:72

平均防御能力:57

平均魔法能力:35

平均抵抗能力:37

平均速度能力:40

 

スキル

「毒合成VL3」「酸攻撃VL6」「射出VL6」「暗視LV10」「毒耐性LV5」「酸耐性LV4」』

 

……蛙だ。

しかもかなりデカイ。

今の体の身長が150㎝だとしたら蛙は120㎝はありそうだ。

 

ほぼ同じ身長だ。

 

思わず鑑定をしたら、一瞬だけ紫色に発光しその後薄く赤色になった。

 

今まで別の方向を向いていた蛙がゆっくりとこちら側に振り返り思わず後ずさりしてしまう。

 

いや、大丈夫なはずだ。全体的な平均能力はこっちが上だ。

攻撃を頭で防御し、体で攻撃する。

 

《熟練度が一定に達しました。スキル『恐怖耐性LV6』が『恐怖耐性VL7』になりました》

 

心を強く持て!

大丈夫勝てるはずだ!

注意すべきは、酸攻撃と毒合成とかいうスキルだ。

 

そんな事を殺し合い中に悠長に考えていたせいだろうか。

 

カエルが頬袋を膨らみ始め、いきなり口を開いたと思ったら毒々しい色の水の玉を射出してきた。

 

……っあ、やばい。

 

身体が恐怖し人間の体の動かし方をド忘れてしまい回避不可能。

ほとんど反射的に剣の形態をしていた触手を解除。

そのまま傘のように広げ、人間の肉体を守る。

 

触手の傘に水の玉が触れた瞬間、そこからジュゥッと音が鳴り一瞬遅れて激痛が走る。

 

あっ……がっがぁががあぁぁがあぁがぁあああああ⁉⁉⁉⁉⁉⁉⁉⁉⁉

 

《熟練度が一定に達しました。スキル『酸耐性VL1』を獲得しました》

 

《熟練度が一定に達しました。スキル『恐怖耐性LV7』が『恐怖耐性VL8』になりました》

 

《熟練度が一定に達しました。スキル『恐怖耐性LV8』が『恐怖耐性VL9』になりました》

 

《熟練度が一定に達しました。スキル『酸耐性VL1』が『酸耐性LV2』になりました》

 

頭の中で神の声が響きまくるがそんな事気にしてる暇なんて微塵もない。

 

あまりにも激痛が走り、本体は感情のままに勝手に動き出し、制御が不能になっている。

人間の肉体の方も制御が出来なくなり、体が陸に上がった鯉のようにビクンビクンと暴れまわる。

 

これを一人の時にやっているのならばまだ良いが今は敵の前だ。

今すぐ制御を戻さないと殺される!

 

ぢゅう゛じゅう゛、じなげれば……せ゛いぎょにじゅうじゅうを゛ぉ゛………

 

混濁し始めている意識の中、何とか集中できないか文字通り死にものぐらいで肉体を制御しようとする。

 

本体の制御はこの際どうでも良い。

人間の肉体を何とかしなければ。

 

《熟練度が一定に達しました。スキル『集中VL1』が『集中VL2』になりました》

 

《熟練度が一定に達しました。スキル『恐怖耐性LV9』が『恐怖大耐性VL1』になりました》

 

《熟練度が一定に達しました。スキル『並列思考VL1』が『並列思考VL2』になりました》

 

《熟練度が一定に達しました。スキル『集中VL2』が『集中VL3』になりました》

 

…頭からは煙のような物が上がり視界のほとんどが上手く機能せず、呼吸器系にまで酸が入り始めたのか上手く呼吸できない。

 

《熟練度が一定に達しました。スキル『接続VL2』が『接続VL3』になりました》

 

《熟練度が一定に達しました。スキル『集中VL3』が『集中VL4』になりました》

 

《熟練度が一定に達しました。スキル『恐怖大耐性LV1』が『恐怖大耐性VL2』になりました》

 

《熟練度が一定に達しました。スキル『集中VL4』が『集中VL5』になりました》

 

……だけど今は何故かほとんどの音は聞こえず蛙と自分、その二人しか認識できない。

 

その蛙がゆっくりと先ほどと同じように頬袋を膨らませ始める。

 

本体をなんとかひと塊にし、バランスを取りやすく。

もうすでに目が一つしか機能しておらず、これ以上のダメージは許容範囲外だ。

 

どうにかして人間の肉体を動かし、何とか転がり第二射を避けることに成功する。

 

づぎはう゛だぜな゛い゛ぃ!!

 

意識が混濁する中その事だけしか考えられないかのような、不思議な感覚に陥る。

自分の背中を誰かに押されたかのように急に動き出す。

 

人間の体を起こし、蛙の元に走らせる!

 

呼吸が出来ない。

持って後20秒。せめて相打ちに!!

 

蛙の体が薄い青緑色になりそのまま硬直して隙ができる。

 

い゛ま゛のぉ゛、うぢに゛ぃぃぃぃいぃぃ!!

 

人間の体を蛙の横を通るように走らせ、今出せる全力の蹴りを蛙の腹に打ち込む!!

 

「グゲェッ⁉」

 

そのまま走り蛙が転がって行った場所に追いつき起き上がる前に、かかと落としを顔面に打ち込む!!

 

「グヂュェッ!?」

 

そのまま蛙が動かなくなったのを確認しそのまま意識をゆっくり手放す。

 

 

 

……がっだぁぁぁぁぁ!!

 

 

 

-------さすが、私の可愛い子……

 

 

 

……頭の中でどこかで聞いた事のある声が聞こえた気がした。

 

 

 

 

 

《経験値が一定に達しました。個体、パラサイトがLV1からVL2に上がりました》

《各種基礎能力が上昇しました》

《スキル熟練度レベルアップボーナスを取得しました》

 

《熟練度が一定に達しました。スキル『苦痛耐性VL1』を獲得しました》

 

《熟練度が一定に達しました。『集中VL5』が『集中VL6』になりました》

 

《熟練度が一定に達しました。スキル『並列思考VL3』が『並列思考VL4』になりました》




転生者特典の観察眼の設定

黄色:平穏・喜び・恍惚
緑色:容認・信頼・敬愛・不安・恐れ・恐怖
青色:放心・驚き・驚愕・哀愁・悲しみ・悲観
紫色:うんざり・険悪・強い険悪感
赤色:苛立ち・怒り・激怒
橙色:関心・期待・警戒

←←←薄い色・濃い色→→→

複数の感情が混じる時もある。

戦ってた奴が急に梅干し頭になって殺気出しながら走り寄ってきたらそりゃあビビるよなぁ?


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自分の弱さの再確認

注意:ちょっとグロイかもです


 

……体をゆっくり起こしながら、周りの様子を確認する。

 

どうやら自分は気を失ってしまっていたらしい。

 

だが蛙の撃った2射目の酸がまだ煙を上げてるのを見るに、そこまで時間は経っていない様だ。

 

……何で本体の怪我が回復しているんだ?

 

本体の怪我は回復しているようだが、人間の肉体のかすり傷や痣などは治っていなかった。

 

やっぱりHPも共有じゃないのか……

 

とりあえず自分の今のステータスを見るか

 

『パラサイト LV2 (名前なし(佐藤 陽一))

ステータス

HP : 96/96(緑)

MP : 68/68(青)

SP : 58/58(黄)

: 6/58(赤)

 

平均攻撃能力:452

平均防御能力:345

平均魔法能力:224

平均抵抗能力:126

平均速度能力:18

 

スキル

「接続LV3」「擬態VL5」「暗視VL7」「観察眼」「集中VL6」「鑑定VL10」「並列思考VL4」

「恐怖大耐性VL2」「苦痛耐性VL1」「酸耐性LV2」「n%I=W」

 

スキルポイント:20060』

 

SPの赤色がかなり減っている。

とりあえず蛙を食べるしかないか……

 

…ただこいつ酸を吐くんだよなぁ……

酸を溜める為の袋とか無いよな?

 

………やりたくないがしょうがないかぁ……

 

心を無心にしながら本体から触手を伸ばし蛙の口の中に入れていく。

 

うぅ…ヌチャヌチャするぅ…

 

…むむ?酸を吐いたのに蛙の口の中には酸の液体が残ってない?

やっぱりスキルを使って魔法的な何かで生み出したのか?

 

 

これは生きるためには必要な事、これは生きるためには必要な事……

 

 

蛙の口の中に入れた触手を注射の針の様な形にし蛙の喉に突き刺す。

そのまま蛙の血を吸い取る。

 

ヂュ…ヂュルッ…ヂュゥ…

 

……舌が無くて良かった。

味だけは知りたくない…

 

自分がやってる事を傍目から見ればかなり異様だろう。

人間の体がぼったちのまま頭から触手を蛙の口へ伸ばし、そこから異様な音を出している。

 

……これはしょうがない事なんだ。

だって飲み水が無くなってしまったんだから…どこからか手に入れなければいけないじゃないか…

 

パラサイトの部分は渇きを感じては無い。

ただ人間の体の部分の渇きが感じないのは問題だ。

 

人間の体が水分を求めているのか良く分かってない状態だからだ。

 

だから、得られる時にこうして飲むしかない。

水が手に入るその時まで。

 

そのまま血を飲み始めて1分ほどで吸い取れるものがなくなり、そのまま触手をワームの口の様にし喉の肉から食い始める。

 

どうも蛙の肉には酸の毒があるみたいで痛みが走る。

 

血にはそんなの無かったのに…まさにファンタジーな生き物だな…

 

内心呆れながらも『酸耐性』のスキルのおかげか、少し痛みが和らいでるのを感じながら我慢して食べ始める。

 

食べながらも今回の戦闘の反省を始める。

 

まず、そもそもの原因はテンパってしまったのが問題だ。

 

いきなりの戦闘、蛙の動きをよく見ようと別の事に神経を向けてしまったミス、考えればキリがない。

 

そしてもっとも良くなかったのは、スキルを検証してなかった事だ。

 

『集中』のスキル、最初は無能かと思ったがかなり有能スキルだった。

 

どうもスキルには、オンとオフ切り替えることが出来るのがあるらしいのだ。

 

『観察眼』や『暗視』が常時オンだったから、他のスキルもそうだと思ってしまった。

 

『集中』をオンにすると一つの事に()()()に集中させてくれるのだ。

 

これのおかげで他に意識を向けずに蛙を殺すという事に意識が統一できた。

 

あれが無かったら今頃自分も蛙のようになっていただろう。

 

 

そんな事を考えていたせいか……体から力が抜け床に尻もちをついてしまう。

 

 

…そうだ…自分はさっきまで命のやり取りをしていたんだ…

それにこれは、一回で終わるような物じゃない……これから外に出るまで何十回と続けなければならない、そんなものなんだ。

 

……『恐怖大耐性』のおかげで何とか精神を壊す事なくここまで来た。

だが、これからこんな戦いを何度も…?何十回もやらなきゃならないのか…?

 

……ハァッ……ハァッ……ハァッ……!

 

だ、大丈夫だ。不安だが。不安で押し潰れてしまいそうだが。進まなくては…早く皆と合流をしなくては…

 

体を起こし食事に集中する。

 

自分はこの蛙よりも強い。この魔物が最底辺ではないならそれなりにやって行けるはずだ。

 

自信を持て自分……!

 

この世界にはステータスなんてあるんだ。

数字が力になるんだ。どんな弱者でも強くなれるチャンスがあるはずだ。

 

そのためには、スキルを取らなくては。

 

自分はスキルポイントに二重鑑定を使う。

 

そうすると今の20060ポイントで取れるスキルの一覧がずらり思考の中に並ぶ。

今自分に必要なスキルを探し始める。

 

 

そのスキル欄の中でひと際目立つ、2つのスキルを見つけた。

 

 

『怠惰:神へと至らんとするn%の力。自身を除く周辺のシステム内数値の減少量を大幅に増加させる。

また、Wのシステムを凌駕し、MA領域への干渉権を得る』

 

……意味が分からない。

もっと意味の分かる言語で教えてくれ神様。

 

だけど、自分はこれと似たような文字があるスキルを知っている。

 

『n%I=W』

 

まず間違いなく関係している。

……吉と出るか凶と出るかは分からないが取るべきだろう。

 

だがこのスキル、コストがバカ高いのだ。

 

《現在所持スキルポイントは20060です。

 スキル『怠惰』をスキルポイント15000使用して取得可能です。

 取得しますか?》

 

これだ。高すぎるのだ。

 

他が500とか高くても5000で手に入るくせにこれだけ妙に高いのだ。

 

これは考察だが、ポイントの上下は才能があるかないかで変わるんじゃないか?

 

つまり自分には才能がないのか?

 

もしかして『神へと至らん』ってマジで神にさせるスキルなのか?

 

だったらこんだけポイント持ってかれるのは納得だ。

ただの人間に神の才能があってたまるか。

 

いったん保留で二つ目の方だ。

 

『探知:感知系すべてを統合したスキル。

概要:魔力探知・術式探知・物質感知・気配探知・危険感知・物体感知・熱感知・反応感知・空間感知』

 

…チートスキルだ…

 

今まさに必要な物がこれ一つで補える。

 

自分の弱点は()()()()()()事だ。

前を目で見なくては進めない。

もしもあの時、蛙の酸で全部の目がやられたら終わりだっただろう。

 

それをこのスキル一つで目なんか必要なくなり、より高度な感知ができるようになる。

 

《現在所持スキルポイントは20060です。

 スキル『探知VL1』をスキルポイント5000使用して取得可能です。

 取得しますか?》

 

良心的なポイントだ。

9個のスキルを1纏めにしているんだからもっと取られるかと思いきや想像以上に安い。

 

はい

 

《『探知LV1』を取得しました。残りスキルポイント15060です》

 

使うのは蛙を食い終わってからにするとして、怠惰をどうするかだが…

 

悩んでてもしょうがない。取るか。

 

《現在所持スキルポイントは20060です。

 スキル『怠惰』をスキルポイント15000使用して取得可能です。

 取得しますか?》

 

……はい

 

《『怠惰』を取得しました。残りスキルポイント60です》

 

《条件を満たしました。称号『怠惰の支配者』を獲得しました》

 

《熟練度が一定に達しました。スキル『禁忌VL1』を獲得しました》

 

『禁忌:禁忌を犯した者が得るスキル。決して上げることなかれ』

 

……怠惰って取る事が罪なのか?

 

…まぁ、生き物を殺す事を罪としてない時点で、人間視点の罪ではないだろ。

神様視点の罪か?

そんなの分かるわけない。

……しょうがないか。取ったら取った時に考えよう。

 

…やっと蛙を食べきる事が出来た。

食べきったけど腹は出ていない。

一体何処にあのデカイ蛙は消えたんだ?

 

では早速探知を使ってみますか!

 

オン

 

…グウゥゥゥゥゥウゥゥウゥゥゥ⁉⁉⁉

 

《熟練度が一定に達しました。スキル『探知LV1』が『探知LV2』になりました》

 

《熟練度が一定に達しました。スキル『並列思考VL4』が『並列思考VL5』になりました》

 

《熟練度が一定に達しました。スキル『演算処理LV1』を獲得しました》

 

《熟練度が一定に達しました。スキル『気絶耐性VL1』を獲得しました》

 

《熟練度が一定に達しました。スキル『外道耐性VL1』を獲得しました》

 

オ、オフ!!

 

な、なんだこのスキル…情報量が多すぎる…

切り替えとかできずに、同時に強制的に情報を頭に叩きつけられるんだが…

 

これは、ポイントをドブに捨ててしまったか……のか?

 

『外道耐性:魂を直接犯す効果に対しての防御能力が増加する』

 

魂を直接?

え?ていうか魂なんて実在するのか。

 

って事は魂を攻撃する手段があるのか…

 

『演算処理:思考の演算能力を強化する』

 

探知で手に入ったって事はこのスキルが必要って事だよな…

 

『気絶耐性:気絶しにくくなる』

 

そのままだな。

 

はぁ、5000ポイント無駄にしてしまった……

まぁ、ズルして強くなるなって神様からのお告げかもしれないな…

 

地道に戦って強くなるしかないか…

 

そんな事を考えながら迷宮内を壁伝いに歩き始める。



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後ろ向きに前を進もう

 

壁沿いを歩いているが周囲は耳が痛いほどの静寂で、ただ自分の足音だけが聞こえる。

 

今まで通ってきた道で曲がり角があったらそのほとんどを右に通って来ていたが、ここに来て今までの通路よりもかなり広い通路に出てきた。

 

通路の大きさは今まで通ってきた道の5倍ほどの大きさがある。

天井も相応の高さがあり、少なくともビルの4階ほどはあるように見える。

 

通路は広いが特に何があるわけじゃなくそのまま迷宮の壁沿いに進んでいく。

 

 

 

5分を程歩いてると後ろの道から不規則にガシャンガシャンという音が聞こえてくるのを感じる。

 

…鉄の音?もしかして人でもいるのか?

 

まっすぐこちらに近づいてくるのか少しづつ大きくなっていくのを感じる。

 

……とりあえず隠れるか…

 

『恐怖大耐性』のおかげか心はそこまで動揺せずに隠れることを選択できた。

 

触手を広げ、傘の様にして表面の部分に目を付け擬態を発動させて隠れる。

 

走ってきたのは男で、見た所は冒険者のように見える。

 

見た目は、鉄の鎧と同じく鉄の兜を被っていて、腰には短めの剣を装備している。

…食料は何も持ってはいないように見える。

 

全身火傷と血で疲弊しており隠れてる自分にも気づかず、フラフラになりながらも走り去っていく。

 

その様子を見て、後ろの道を警戒してどう動くべきか考える。

 

…火傷に血、何か魔物にでも追われているのか…?

 

男が目の前を走って行ってから30秒ほど数えたが一向に魔物は現れず、とりあえず男の後を追ってみる。

 

この男を追えば外に出られる……んだろうけど怪我のせいで注意散漫になっていてガシャガシャ音をまき散らしながら走ってるから、すぐに魔物にやられそうなんだよなぁ。

 

……助けるべきか?

 

だけど今の自分の状態だと助けても精々介錯して楽にしてやるくらいしか思いつかない。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 

 

 

…………………っ⁉⁉

 

 

 

…待て、待てよ。

魔物をおびき寄せて戦い方を観戦する?

つまり目の前の男が死んでいくのを観戦するって事か?

 

 

 

 

…………それは本当に日本という平和ボケした国で育った高校生がする考え方か…?

 

 

 

 

……そんな……まさか、精神が肉体に引っ張られてるのか……?

 

……それなら…『人間』の自分は何時まで持つんだ…?

 

《熟練度が一定に達しました。スキル『恐怖大耐性LV3』が『恐怖大耐性VL4』になりました》

 

…足元が揺れてるような錯覚がする。

人間として生きてきた自分が全て否定されるかのような、心から今自分は一人なんだと理解させられた様に感じる。

 

 

 

……『恐怖大耐性』を上げるのも問題なのかもしれない。

自分が人間以外のパラサイト(化け物)に変わっていく事に恐怖を少ししか感じない。

 

いや、一瞬だけ物凄い恐怖に襲われるが即座に精神が落ち着きを取り戻される。

 

今は、良い。

 

この暗い迷宮内で生きて行くのなら『恐怖大耐性』は必要だ。

…だけどそのうちこのスキルのせいで恐怖を感じない身になりそうで、それが怖いはずなのに怖くない。それでも何とかなると考えてる自分すらいるほどだ。

 

…自分はこの死地から脱出してクラスメイトと再会した時、嬉しさで泣く事が出来るんだろうか……

 

少なくとも今は、孤独感で震える今は、涙なんて一切出てこない………

 

 

 

 

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……冒険者の男は、そのまま行かせて自分は狭い道へ戻る事にした。

 

今はとにかく独りになって無心で歩き続けたい気持ちにさせられてるから……

 

…それに目の前で死なれても何も感じないかもしれない自分の感情を知りたくなかったから…

 

……だけど、世界は自分に戦いを望んでいるらしい……

 

『エルローランダネル LV2

ステータス

HP:145/145(緑)

MP:45/45(青)

SP:145/145(黄)

:40/105(赤)

平均攻撃能力;95

平均防御能力:76

平均魔法能力:54

平均抵抗能力:43

平均速度能力:90

スキル

「毒牙LV4」「毒爪LV4」「連携LV9」「暗視LV8」「毒耐性LV5」』

 

『エルローランダネル LV1

ステータス

HP:136/136(緑)

MP:28/28(青)

SP:132/132(黄)

:76/105(赤)

平均攻撃能力;87

平均防御能力:68

平均魔法能力:27

平均抵抗能力:38

平均速度能力:72

スキル

「毒牙LV3」「毒爪LV5」「連携LV7」「暗視LV6」「毒耐性LV4」』

 

『エルローランダネル LV1

ステータス

HP:125/125(緑)

MP:25/25(青)

SP:125/125(黄)

:28/105(赤)

平均攻撃能力;78

平均防御能力:65

平均魔法能力:22

平均抵抗能力:34

平均速度能力:77

スキル

「毒牙LV3」「毒爪LV3」「連携LV7」「暗視LV6」「毒耐性LV3」』

 

目の前には昨日見た3匹の死体が生きてる状態でいた。

 

鑑定で見た所、連携を得意とする魔物の様で全員『連携』スキルを持っているのが分かる。

 

…毒で攻撃して少しずつ獲物を追い込んでいく戦い方って事か……

 

3匹のトカゲもこちらを認識し、橙色に発光しながら包囲するように動き出そうしている。

 

ステータスが低く、包囲が完成する前に一番レベルが高いトカゲの心臓部に触手で作った槍を打ち抜く。

 

その攻撃は予想できなかったのかそのまま崩れ落ち、トカゲに二匹は一瞬呆然となり背後を振り返って逃げようとしたので、そのまま首を切り付けて絶命させる。

 

 

 

《経験値が一定に達しました。個体、パラサイトがLV2からVL3に上がりました》

《各種基礎能力が上昇しました》

《スキル熟練度レベルアップボーナスを取得しました》

 

《熟練度が一定に達しました。スキル『予測VL1』を獲得しました》

 

《熟練度が一定に達しました。『並列思考VL5』が『並列思考VL6』になりました》

 

《熟練度が一定に達しました。スキル『演算処理VL1』が『演算処理VL2』になりました》

 

《熟練度が一定に達しました。スキル『気絶耐性VL1』が『気絶耐性VL2』になりました》

 

《スキルポイントを獲得しました。》

 

レベルが上がった瞬間本体から青い光が発光し、HPが全回復するのを肌で感じる。

 

……これのお陰で蛙との戦いは生き残ったのか……

 

そのまま機械的に三匹に向かって触手を伸ばし、血を啜り、肉を食べ始める。

 

《熟練度が一定に達しました。スキル『毒耐性VL1』を獲得しました》

 

その光景を自分がしてる筈なのに、心には何も響かず。

まだ二回目なのに、もう日常に風景の様に感じさせられる。

 

……肉を食べ血を啜り、だけども()()()()に心を動かすのは無駄のように感じる。

 

自分の心が疲弊していて感じないのか…それともパラサイトになって感じなくなっているのか今の自分には良く分からない……

 

食事をしながら自分に鑑定してステータスを確認する

 

『パラサイト LV3 (名前なし(佐藤 陽一))

ステータス

HP : 112/112(緑)

MP : 85/85(青)

SP : 78/78(黄)

: 78/78(赤)+23

 

平均攻撃能力:463

平均防御能力:359

平均魔法能力:245

平均抵抗能力:153

平均速度能力:35

 

スキル

「接続LV3」「擬態VL5」「暗視VL7」「観察眼」「集中VL6」「鑑定VL10」「並列思考VL6」

「恐怖大耐性VL4」「苦痛耐性VL1」「酸耐性LV2」「気絶耐性VL2」「外道耐性VL1」

「毒耐性VL2」「腐食耐性VL1」「怠惰」「探知VL2」「演算処理VL2」「予測VL1」「過食VL1」「禁忌VL1」「n%I=W」

 

称号

「悪食」「怠惰の支配者」

 

スキルポイント:120』

 

『称号:特定の条件を満たすことによって得られる強化コード。

入手時にスキルを2つ取得することができる。

称号の中には特殊な効果を持つものや、ステータスを上げる効果があるものも存在する』

 

『悪食:取得スキル「毒耐性LV1」「腐蝕耐性LV1」

取得条件:一定期間毒物やそれに準ずるものを大量に摂取する

効果:胃腸が強くなる

説明:毒すらも食物とするものに贈られる称号』

 

『怠惰の支配者

取得スキル:「怠惰」

取得条件:「怠惰」の獲得

効果:対象範囲内に存在する相手のSP/MP/HPの消費量を大幅に上げる。

支配者階級特権を獲得

説明:怠惰を支配せしものに贈られる称号』

 

『過食:食事を限界を超えて摂取可能になる。

また、その分のスタミナを余剰分としてストックすることができる。

ただし、その分太る。

レベルの上昇によってストックできる量が増える』

 

自分の知らない称号やスキルの情報を見る。

 

『悪食』の称号は魔物を食らって得た称号だ。

一定期間っていうのが曖昧な表記である所から称号を得るタイミングは個体差があるのが分かる。

 

『怠惰の支配者』は『怠惰』をスキルポイントで手に入れた時に手に入れたものだ。

 

効果や説明はなんとなく分かるが支配者階級特権が理解できない…

 

《怠惰の支配者より特権の行使要請を受けました。現在怠惰の支配者が行使可能な権限はありません》

 

…⁉

 

急に神様がいつもと違う言葉を話して驚きで呼吸が一瞬止まる。

 

特権の行使要請…?

 

どこに要請したんだ…?

 

権限って言う事は他にも似たような支配者がいるって事か…

 

今は何もできないならそこまで意味はないな…

 

そして『過食』スキルだが……今はレベルが低くてそこまでストックできないがレベルが上がればもっとストックできるはず…

 

 

 

……食事も終わり歩き始める……

 

頭の中では寝なきゃいけないと思っているがどうしても眠れる気がしない。

 

…周囲の安全が確保されてないっていうのもあるが、眠ると悪夢を見そうで寝たくない…

 

もしかしたら、自分が気づいてないだけで、自分は既に何処かおかしいのかもしれないな…

 

 

 

 

……進み続けなくては……

人間(化け物)として…じゃないと自分の心はもう…耐えきれない…




オリ主の心情を書くのが難しすぎる……
書き直しまくってるうちにめちゃくちゃ時間かかってた


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