ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか~金ぴかと白兎~ (kejan)
しおりを挟む

プロローグ

ダンまちのベルとFateのギルガメッシュが出会ったらという妄想です。
ギルガメッシュ視点です。


頬に感じる風。わずかに感じる太陽の光。遠くから聞こえてくる人々の喧騒。

ゆっくりと目を開ける。

 

上空には青空が広がっているが、建物の影だからか薄暗い。どこかの路地裏なのだろう。

 

なぜ自分がこんなところにいるのかは思い出せない。また、英霊の座から召喚されたされたのかと考えたが、マスターらしき人物は見当たらない。

 

そして、何よりも不思議なことに受肉している。

 

寝起きだからか思考がまとまらない。

 

「ツッッ・・・!」

 

いろいろ考えようとした矢先、眉間に痛みが走る。

 

今の痛みで少しだけ思い出した。冬木の地で行われた第五次聖杯戦争。

 

『武器の貯蔵は十分か、英雄王』

 

忌まわしき正義の味方を語る偽善者と赤い外套をはためかせる贋作者の姿が思い出される。

 

確かにあの時、眉間を撃ち抜かれ我ーギルガメッシュは死んだはずだった。

 

改めて自分の体を見まわす。

 

切断されたはずの右腕はしっかりとついている。全身には傷どころか汚れすらついていない。

 

ん?何か足りないような、そう考えた瞬間だった。

 

「大丈夫ですか?」

 

いつの間に近寄ってきたのか白髪に赤い目をした少年がそばに立っていた。どうやら、路地裏で立ち尽くす我に気づき近づいてきたようである。

 

ひとまず少年と正対し答える。

 

「なに、少し考え事をしていただけだ。問題ない。」

 

そう伝えたのに対し少年は、目を見開き何かとんでもないものを見てしまったかのような表情をしている。

 

「なんで裸なんですかーーーー!?」

 

少年の絶叫が路地裏に響き渡る。

 

そうか、足りないのは服か。幾分開放的だと思ったわ。

 

「少し、待て。」

 

王の財宝を起動する。起動できたことにわずかに安堵する。何もない空間が歪み、中から服が現れる。

白いシャツと黒のライダースーツに着替える。

 

少年の様子を確認するが、驚いた顔をしている。構うことなく我は少年に問いを投げかける。

 

「貴様、名は何という?」

 

「ぼ、僕はベル、ベル・クラネルです。と、というか今何が起こって・・」

 

「では、ベル、ここはいったいどこだ?」

 

「どこといわれましても、ギルド近くの路地裏としか・・」

 

「たわけ。そういうことを聞いているのではない。国、もしくは都市の名を聞いている。」

 

「ここはオラリオです。迷宮都市オラリオ。」

 

聞いたことのない地名である。何はともあれ情報を集める必要がある。

 

「ベルよ、貴様にこの街を案内する権利をくれてやる。悦べ、クハハハハ!」

 

これが英雄王ギルガメッシュと冒険者ベル・クラネルの出会いだった。




読んでくださりありがとうございました。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

出会い

ベルクラネル視点

ギルガメッシュと出会ったとき


白髪の少年は歩いていた。

 

ここは迷宮都市オラリオ、ダンジョンを中心に栄える街である。この街には数多の冒険者が富や名声を求めて集まっている。

 

この街の冒険者は神の眷属となり恩恵(ファルナ)をいただいている。恩恵を授かった冒険者のはステイタスが発現し、様々な経験値(エクセリア)を得ることで強くなれる。

 

僕は、ベル・クラネル。ヘスティアファミリアの眷属だ。

 

今は、担当アドバイザーであるエイナ・チュールに呼び出されたためギルドに向かっている。

まだ、冒険者になったばかりの僕のことを心配してくれているのだろう。

 

ふと、路地裏に目を向けると。人が立っているのが見える。

 

暗闇でもよくわかる金色の髪、無駄のない引き締まった体の男性だ。そして何より、よくわからないが神様のような雰囲気があり、目が離せない。

 

気になってしまった以上、話しかけてみようと思った。

 

僕は男性に向かってゆっくりと歩を進めた。

 

「大丈夫ですか?」

 

赤い瞳が僕を見つめる。睨まれているわけでもないのに威圧感を感じる。

 

「なに、少し考え事をしていただけだ。問題ない。」

 

男性はこちらに向き直り答える。遠くから見て思った通り無駄のない引き締まった体をしている。

 

ただ、違和感を感じる。まるであるはずのものがないかのようなそんな雰囲気。

 

あれ、なんか肌色が多いような。

 

気づいた時には思わず叫んでしまっていた。

 

「なんで裸なんですかーーーー!?」

 

僕が混乱しているのにもかかわらず男性は、何か納得がいったかのように落ち着いている。

 

「少し、待て。」

 

男性はそう告げると、何もない空間にゆがみが生じる。歪みの中から服が現れた。僕には、何が起きているのかわからないが男性のスキルなのだろうか。

 

着替えを終えた男性は、見慣れない恰好をしていた。少なくともオラリオでは見たことがない。先ほどのスキルのようなものや、見慣れぬ格好に驚いていると男性が質問してきた。

 

「貴様、名は何という?」

 

貴様!?なんだか圧を感じるなと思いながらも素直に答える。

 

「ぼ、僕はベル、ベル・クラネルです。と、というか今何が起こって・・」

 

せっかく、会話になりそうなのでこちらからも質問をしようと思った。しかし、

 

「では、ベル、ここはいったいどこだ?」

 

普通に遮られた。

 

「どこといわれましても、ギルド近くの路地裏としか・・」

 

「たわけ。そういうことを聞いているのではない。国、もしくは都市の名を聞いている。」

 

「ここはオラリオです。迷宮都市オラリオ。」

 

なんか、軽く怒られた。さっきのは質問が悪い気がする。ちょっと納得いかないなと考えていると目の前の男性がとんでもないことを言い出した。

 

「ベルよ、貴様にこの街を案内する権利をくれてやる。悦べ、クハハハハ!」

 

どうしてこうなった。

 




読んでいただきありがとうございます。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ギルドへ

基本的にはベル視点で進めます。

街案内をする(させられる)ことになったベルは当初の予定通りギルドに向かうことにした。


「街案内ですか!?」

 

「そうだ、我を案内できるなどそうそうないことだ、誇るがよい。」

 

無茶苦茶だ。それよりも大事なことを思い出した。今日は、アドバイザーであるエイナさんに呼び出しを受けているんだった。

 

あっ、ギルド職員のエイナさんならこの街のことにも詳しい。少し、申し訳ないけどエイナさんにも協力してもらおう。

 

「あ、あのでしたらこれから会う約束をしている方が、この街にとても詳しいのでついてきていただけませんか?」

 

目の前の男性に提案してみる。お、怒られないよね・・。

 

「まぁ、良かろう。案内するがよい。」

 

良かった。納得してくれた。ひとまずギルドに向かって歩き出す。

 

「あの、まだ名前を伺っていなかったのですがなんと及びすればよろしいでしょうか?」

 

名前を聞いていなかったことを思い出し、聞いてみた。

 

「そうか、名か。我のことは王と呼ぶがいい。」

 

「お、王!?どこかの王様なんですか?」

 

確かに王様なら、この傲慢さも威圧感も納得できてしまう。あれ?本名は教えてもらえないのかな。王族だから名を隠しているんだろうと勝手に納得する。

 

「まあ、そんなところだ。それでベルよ、あとどのくらいだ?」

 

「もう到着しますよ。あっ、あの建物です。」

 

指をさしながら答える。ギルド本部はクエストの受注や魔石・ドロップアイテムの換金できる場所ということもあり大勢の冒険者であふれかえっていた。

 

ギルド本部の中に入り受付へ向かう。いつも通り受付嬢として働いている方に声をかける。

 

「エイナさん!」

 

「ベル君。来てくれたんだね。あれ、その後ろの方はどなた?」

 

いつも一人で来る僕に連れがいることが珍しかったのか、尋ねてくる。

 

「こちらの方は、さっき出会ったばかりなんですけど、王様です。」

 

「王様!?えっと、いろいろ聞きたいことはあるけど、奥の部屋に行こっか。王様?もよろしいですか?」

 

王様は無言でうなづき、奥の応接室に入りソファに座る。あの王様、ソファの中央に足を広げて座られると僕が座れないのですが・・。

 

ひとまず、ソファの後ろに立ちエイナさんに声をかけようとすると

 

「では、エイナとやら、このオラリオという街について教えてもらおう。」

 

王様がエイナさんに質問、いや指示をした。

 

エイナさんはいつも受付で見せている笑顔で王様にこの街のことを教えている。いや、若干、額に青筋が見えるような・・。気のせいということにしておこう。

 

一通りこの街の仕組みについて聞き終えたのか、王様は僕に問いかけてきた。

 

「ベルよ、貴様も冒険者なのか?」

 

「はい!といっても一週間前に冒険者になったばかりの駆け出しなんですけど。」

 

王様の目が僕を見据える。まるで、品定めをするかのような目だ。それに、何か自分の本質を見極められている気さえする。満足したのか、ソファーから立ち上がると

 

「冒険者ということは、どこぞの神の眷属なのだろう。案内しろ。」

 

「わかりました。では僕の拠点に案内します。エイナさん、ありがとうございました。」

 

「ベル君、くれぐれも迷宮に入るときは一層で冒険すること!約束だからね!」

 

拠点に王様を連れていくためにギルドから出る。日はだいぶ傾き、夕焼けが広がっていた。

 

拠点に向けて歩きだそうとしたところで、背後の王様から声をかけられる。

 

「ベルよ、雑事を思い出した。しばし待て。」

 

そういうと王様はギルドの中へ戻っていった。

 

数分後、用事を済ませた王様が戻ってくる。途中、ギルドの中で悲鳴のようなものが聞こえた気がしたが関係はないだろう。

 

僕と王様は拠点に向けて歩き始めた。




読んでくださりありがとうございました。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ヘスティアファミリア

ベルの主神に興味を示したギルガメッシュがヘスティアと対面します。
ファミリアに入ってくれるかな?


僕と王様は拠点に向けて歩いている。

 

「拠点はもう少しです。多分この時間なら神様も仕事を終えて帰ってきてると思います。」

 

「ベル、貴様の主神は働いているのか?」

 

王様は少し驚いた様子で僕に尋ねてくる。

 

「はい。まだファミリアの団員は僕しかいないので収入が・・。」

 

情けないことに駆け出し冒険者の僕の収入では生計が成り立たないのだ。早く一人前の冒険者のなって神様に楽をさせてあげなきゃなんて考えていたら拠点が見えてきた。

 

「王様、此処が僕の所属するヘスティアファミリアの拠点です。」

 

「・・・・・」

 

王様から返事が来ない。どうしたのかなと思っていると

 

「ベルよ、我の目には廃墟しか見えないのだが。」

 

言いたいことはわかる。確かに見た目は寂れていて、拠点というには心もとない。そもそも教会ですし。

 

「今からでもほかの主神の眷属なったほうが良いのではないか?」

 

あの傲慢な王様から同情されている。

 

「大丈夫ですよ!拠点はこんなですが神様はとても素晴らしいお方です。さぁ中に入りましょう!」

 

半ば無理やり王様を拠点の中に連れ込む。

 

「神様!ただいま戻りました。」

 

「おかえりー!ベルくーん!」

 

神様の元気な声が返ってくる。

 

「・・・こいつが貴様の主神なのか?」

 

そういう反応になるとは思っていた。神様は、黒髪のツインテール、140㎝ほどの伸長なのに巨乳、さらには白いワンピースに紐と特徴的だが神様っぽくないと思う。

 

「なんだい、なんだい君はいきなり!神に対して少し失礼じゃないか!」

 

神様が王様に食って掛かる。が、王様は無視して拠点唯一のソファに腰掛ける。そして僕の目を見て告げる。

 

「我は少し貴様に興味がわいた。よってしばらくは貴様とともに行動する。」

 

『ええーーー!!!!?』

 

僕と神様の絶叫が拠点に響いた。

 

「それはファミリアの団員になってくれるってことですか!?」

 

「僕は認めないぞ、君みたいな無礼な子の入団は!」

 

王様は神様の言葉を無視して続ける。

 

「まずは、今日の案内の褒美をくれてやる受け取れ」

 

王様はどこから取り出したのか小袋をを投げてくる。小袋は見た目以上に重い。そして、袋の中身を見て僕は絶句した。大量の金貨だった。

 

「こ、これいくらあるんですか!?こんなに受け取れませんよ!」

 

「たかが、一万ヴァリスだ。気にするな。我には使い切れぬほどの財があるからな、クハハハ‼」

 

こんな大金をポンと出せるなんて王様はほんとにどこかの王様なのかもしれない。さっきまで反対してた神様も

 

「王様君、ようこそ僕のファミリアへ。僕は君を歓迎するよ!」

 

手のひらを返していた。すいません神様、なんだか今の神様は尊敬できません。

 

こうして僕のファミリアに団員が一人増えた。

 




読んでいただきありがとうございます。

そろそろバトルが始まりますが、どこまで表現できるのか全く自信がありません。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

迷宮へ

ついに迷宮に入ります。
ギルガメッシュは戦うのだろうか。



僕と王様は迷宮に来ている。

 

王様は迷宮の中が気になるようだったし、僕もファミリアのために稼がないといけない。ただ問題が山積みなんだよな。

 

「王様、本当に恩恵をもらわなくてよかったんですか?」

 

一つ目。王様は恩恵をもらっていないのだ。本来、恩恵を持たない王様は迷宮に入ることができない。それは、昨日エイナさんの説明で知っていたようだけど

 

『人の定めた法など知ったことか。我が法だ。ハッハッハ!』

 

なんて言って迷宮に入ってきてしまった。

 

「くどいぞベル。あんなもの必要ない。己の身ぐらい自分で守れる。貴様は我のことなど気にせず冒険に励め。」

 

そうはいっても、王様は武器はおろか防具すら身に着けていない。

 

「・・わかりました。油断しないでくださいね。」

 

「何を言う、慢心なくして何が王か。」

 

大丈夫かなぁ。とはいえ、僕も冒険者になりたてで、人の心配ばかりしていられない。

 

「それで、今日はどこまで行くつもりだベル。」

 

エイナさんからは1層で活動するように言われている。ただ、1階層は比較的安全だがその分稼ぎや得られる経験値も少ない。危険ではあるが、下の階層に挑戦するほうが冒険者としてはメリットが大きい。

 

「今日は5階層まで行ってみようと思います。」

 

エイナさんごめんなさい。

 

~5階層~

 

5階層までの道のりは意外なほど順調だった。

 

「ハアッ‼」

 

ナイフの一撃でモンスターが塵と化す。落ちた魔石の回収も忘れない。いつもよりも深く潜っただけあって魔石もたくさん回収できた。

 

もう少しだけ魔石を回収できたら帰ろうかななんて考えていた時だった。

 

通路の奥から足音が聞こえる。ほかの冒険者かなと思ったがそれにしては音が大きい。

 

そのモンスターはゆっくりとした足取りで姿を現した。2mはある巨大な体、隆々とした筋肉、頭には2本の立派な角。ミノタウロスだ。

 

「ほう、今までの雑種よりは幾分かはマシだな。」

 

冷静な王様に対し僕はパニックだった。本来5階層に出現するモンスターではない。

 

「王様、逃げましょう!」

 

「逃げるだと?たわけ、王たる我が逃げるなどありえぬわ!」

 

そういうと王様の背後が歪み、一振りの剣が現れる。すると、目にも止まらぬ速さで剣が射出された。

 

剣はミノタウロスの足元に突き刺さる。

 

「貴様ごときの血で汚せる財はない。疾く失せよ雑種!」

 

王様の威圧感にミノタウロスが一歩後ずさる。このまま逃げてくれるかと安堵したとき、ミノタウロスと目があってしまった。

 

「ゴオオガアアア!!」

 

咆哮とともにミノタウロスが突撃してくる。

戦って勝てる相手ではないと本能的に察したのか、僕は絶叫とともに走り出していた。




次回はベルにとってのあこがれの人が出てきます。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ダンジョンには出会いがありました

ミノタウロスに遭遇。逃走。そして・・


走れ、走れ、走れ

 

ただひたすらに走っている。いや、逃げていた。振り向かなくてもわかる。真後ろから感じるプレッシャー。ミノタウロスが追ってきている。

 

どれだけ走ったかわからない。ここがどこかもわからない。ただ一つ分かる。行き止まりだ。振り返る。改めてミノタウロスと向き合う。あっ、死んだ。

 

ごめんなさい神様、ごめんなさい王様、そして、ごめんなさいおじいちゃん。

 

完全にあきらめて懺悔していた。その瞬間、ミノタウロスの巨体が裂けた。目の前の巨体から血が吹き出す。大量の血が降りかかってきた。思わず目をつぶる。目を開けるとミノタウロスが塵と魔石になり彼女が現れた。

 

「あの、大丈夫ですか?」

 

美しい金色の長髪、整った顔立ち、心配して小首をかしげる動作。心臓の高鳴りが止まらない。この日僕はダンジョンで『剣姫』アイズ・ヴァレンシュタインと出会った。

 

 

 

一方、ギルガメッシュは一人で立っていた。ベルがそこそこの速さで逃げ出し、それを追いかけるのは億劫だったからである。

 

とはいえ、ベルを置いて帰るわけにもいかず、迎えに行くかと思ったとき、一筋の風が横を通り抜けた。いや、長い金色の長髪をたなびかせた少女がそれなりの速度で駆け抜けていった。

 

金髪か。

 

一人の女を思い出す。青を基調とした甲冑に金髪を後ろで結った、見目麗しい少女。我の求婚を断った生意気な女。

 

ひとまず、頭を切り替えベルを迎えに行くことにする。合流した瞬間、血まみれのベルを見たギルガメッシュは大爆笑した。

 

 

 

迷宮から帰還した僕はアイズさんの情報を教えてもらうべくギルドに向けて走り出した。

 

「王様、僕はギルドに行ってきます!先に拠点に戻っていてください。」

 

いうや否や駆け出していた。

 

しばらく走り続けると、ギルドが見えてきた。ちょうど、ギルドから目的の人が出てきたところだった。

 

「エイナさーん!」

 

「ベル君!・・・ぎゃあああー!」

 

忘れてた。自分が血まみれなこと。

 

その後、エイナさんにギルドのお風呂を借り、さっぱりした僕はロビーのソファに腰掛けていた。

 

「駄目じゃない、血まみれで街を走り回っちゃ。」

 

めちゃくちゃ怒られた。血まみれになった理由を説明し、アイズさんの情報を教えてもらった。

 

アイズ・ヴァレンシュタイン

二つ名は剣の姫で『剣姫』

ロキファミリア所属のレベル5

 

僕としては好きな食べ物とか、特定の相手がいるのかだけどまあいっか。」

 

ひとまず、冒険で手に入れた魔石を換金し、ギルドを出ていこうとしたら、エイナさんから声をかけられた。

 

「あのね、女性はやっぱり強くて頼りがいのある男の人に魅力を感じるから、めげずに頑張っていればヴァレンシュタイン氏も強くなったベル君になら振り向いてくれるかもよ。」

 

「はい!ありがとうございます。エイナさん大好き!」

 

僕は意気揚々と拠点へ帰りだした。

 

 




後半は原作準拠です。すいません。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

情景一途

「神様今帰りました。」

 

「おかえり、ベル君!」

 

神様がすごい勢いでタックルしてきた。なぜか半泣きだ。

 

「王様君が僕をいじめるんだ!」

 

「黙れ、駄女神!貴様も神というならばこの現状をどうにかしろ!」

 

王様、確かに拠点は惨憺たるものですが駄女神は言い過ぎだと思います。

 

「王様、神様も頑張ってくれているんです。ほら、食料の確保とか。」

 

「たわけ、そんなこと神でなくてもできるわ。」

 

「しょうがないだろう。神の力は下界では使えないんだから。」

 

そんな言い合いが続いたがひとまず夕ご飯にすることになった。

最近の食事は、少し豪華だ。これまでは、神様のバイト先の残り物が多かったけど、この前王様からもらったお金のおかげだ。

 

「さあ、今後のためにステイタスを更新しようじゃないか。」

 

「貴様にそんなことができるのか?」

 

「できるやい。」

 

もっと尊敬しましょうよ、王様・・

 

背中を出し、ステイタスの更新を行う。王様も興味があるのか、後ろからのぞいている。

 

ステイタスの更新が終わり転記された紙を見る。敏捷がいつもより伸びてる。ミノタウロスに追い掛け回されたからかな。

あれ、スキルの欄にうっすら文字があるような。

 

「神様、このスキルの欄なんですけど。」

 

「ごめん、手が滑ったんだ。いつも通り空欄だよ。」

 

ですよね。とりあえず、歯を磨いてもう寝よう。明日は、早朝から迷宮だ。

 

 

ベルが洗面台に向かった後の部屋

 

「良いのか?伝えなくて。」

 

「君、読めるのかい?」

 

読めてしまった。これも我が体に宿る神の力のせいか。

 

情景一途(リアリスフレーゼ)

早熟する。

思いが続くする限り効果は持続し、思いの丈で効果は向上する。

 

「知らないほうがいいと思ってね。あと、知らない女に変えられたのが悔しくてね。」

 

「貴様は・・だが、我も伝えないのは正解だと思うぞ。」

 

「君が僕に賛同するなんて意外だよ。」

 

「なに、そのほうがおもしろくなりそうだからな。」

 

笑いながら寝床へ向かう。

 

 

早朝

 

目を覚ます。あれ、毛布の中に誰かいるような。何だろう、やわらかい・・・って神様!?寝ぼけちゃったのかな。起こさないようにそっと起き上がる。

手早く身支度を整える。

 

「行ってきます、神様」

 

静かに戸を閉め迷宮に向かう。

 

ベルがダンジョンへ向かうのを感じたギルガメッシュは体を起こす。さて、今日は何で暇つぶしをしようか。

 

「ベル君のあほー・・zzz」

 

全くこの駄目神は。こんなものが神だと、笑わせる。

ひとまず、まだ早い。もうひと眠りするか。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

急成長

ベルとギルガメッシュは別行動



ベル・クラネル

 

僕は、迷宮へ向かって走っていた。突然、誰かの視線を感じ背筋に冷たいものが走る。

あたりを見回すが早朝ということもあり人影はない。

気のせいかと思い、歩き始めると後ろから声をかけられた。

 

「あの、落としましたよ。」

 

給仕服を着た女性だ。そこの酒場の店員さんかな。

魔石を手渡してくる。あれ、昨日千部換金したはずだけど。

 

「ありがとうございます。」

 

「こんな早くから冒険ですか?」

 

「ええ、まあ。」

 

答えた瞬間、おなかがなってしまった。そういえばまだ何も食べていなかった。

 

「良かったらこれどうぞ。」

 

店員さんは、お弁当箱を渡してくる。

 

「そんな悪いですよ、見ず知らずの方に。」

 

「代わりといっては何ですが、今夜の夕食はぜひ当店で。駄目ですか?」

 

イタズラっぽく微笑まれる。かわいい。

 

「わ、わかりました。」

 

店員さんと約束を交わし、迷宮に向かう。

 

迷宮内

 

いつも通り、上層でモンスターを狩っていた。

あの人に追いつきたい。そんな思いから、いつも以上に気合を入れて頑張っている。

 

 

ギルガメッシュ

 

二度寝から目を覚ます。

もう日は完全に昇っており、昼手前ぐらいだろう。

すでにヘスティアも仕事に行っているのか、拠点にはいない。

今日は行きたいところがある。

歓楽街だ。

別に女に飢えているわけではない。

歓楽街を支配しているファミリアの主神が気になるのだ。

イシュタル

我が生前、ウルクを支配していたころにちょっかいをかけてきた女神と同じ名だ。

求婚を断った腹いせにと天の牡牛を地上に放ってきたり、わが友、エルキドゥを・・・

まあ良い。ひとまずは敵情視察兼暇つぶしというやつだな。

 

歓楽街

 

さすが昼間の歓楽街に人はいないか。

まあ、興味もないが。

あの奥の一際大きな建物がイシュタルファミリアの拠点か。

さすがに、あそこに正面から突入するのは戦闘になりそうで面倒だ。

やはり感じないな、おそらくイシュタルめも神の力を封じられているのだろう。

さて、街をぶらつき時間をつぶすか。

 

 

ベルクラネル

 

夕方

僕は迷宮から帰還しステイタス更新を行っている。

神様からステイタスの写しをもらい、内容を見て驚愕する。

 

「熟練度上昇トータル160オーバー!?」

 

僕が喜んでいるのに反して神様は不機嫌そうな顔をしている。

神様は、「バイト先の慰労会に行ってくる!」と飛び出して行ってしまった。

 

どうしよう。この後朝の約束があるから、お店に一緒に行こうと思っていたのに。

しょうがない。

神様はまた今度ということにして王様と二人で行ってこよう。




次回はロキファミリアが登場。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

遭遇

ベルとギルガメッシュは豊穣の女主人に行きます。
原作通り、酒場にはロキファミリアがいて・・・


ベルクラネル

 

僕は王様ととある酒場に向かっていた。

豊穣の女主人

すでに日も沈んでいるということもあり店内は、人でにぎわっているようだった。

入り口で中で様子をうかがっていると

 

「冒険者さん!来てくれたんですね。」

 

朝、出会った店員さんが声をかけてくれた。

 

「そういえば自己紹介がまだでしたね、シル・フローヴァと申します。」

 

シルさんは僕達をカウンター席に案内してくれた。

とりあえず注文を済ませる。

 

山盛りの料理が運ばれてきた。

 

「あんた達がシルの知り合いかい?金髪のあんたはまあまあの体つきだけど、白髪のあんたはかわいい顔してるね。」

 

「ほっといてください・・」

 

気にしてることを言われたのでぶっきらぼうに返事をしてしまった。

それよりも

 

「これが800ヴァリス、で飲み物が・・・」

 

最近少し裕福になったとはいえ無駄使いができる余裕はない。

 

「ベル、食事中に金勘定とは情けないぞ。好きなものを好きなだけ食べる、それが食事だ。」

 

王様の前にはいつの間に頼んだのかたくさんのお皿が並んでいた。

支払いのことや、食べきれるのかを考えていたときだった。

 

「ご予約のお客様ご来店にゃ!」

 

猫人の元気な声が店内に響く。

入ってきたグループに店内の客の注目が集まる。

一番最後に入ってきた人に僕の目は奪われる。

アイズさんだ。

 

後ろの席でロキファミリアの打ち上げが始まった。

 

「ロキファミリアはうちのお得意様なんです。」

 

シルさんが教えてくれる。

じゃあこの店に来ればまた会えるのかな。

 

しばらくして、少し酔いの回った狼人が声を上げる。

 

「じゃあ、アイズおまえが5階層で始末したミノタウロスがいたろ。んで、その時いたトマト野郎の話をよ。」

 

僕の話だ。顔が引きつり、動悸が激しくなる。

 

「うちのお姫様は助けた相手に逃げられてやんの、ダハハハハ!ほんと情けねえ!」

馬鹿にされている。

 

「雑魚じゃアイズ・ヴァレンシュタインには釣り合わねえんだよ。」

 

その言葉を聞いた僕は、たまらず店を飛び出していた。

 

 

ギルガメッシュ

 

「すまんな店主、これは詫びだ。」

小袋を店主に渡す。

 

中を確認した店主が少し驚きながら答える。

 

「いくらなんでも多すぎだよ、受け取れないね。」

 

「我もあげたものを返されても受け取れん。それにそれはこれからの迷惑料も込みだからな。」

 

店主はあきれながら小袋を受け取った。

 

「店を壊すんじゃないよ。」

 

我は酒の入ったグラスを持ち、先ほどまで騒いでいた狼人の後ろに行く。

そして、狼人の頭に中身をぶちまけた。




読んでくれてありがとうございます。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

衝突

ギルガメッシュ対ベートです。



ギルガメッシュ

 

「なにしやがる!」

 

頭に酒をかけられた狼人が立ち上がり睨んでくる。

 

「なに、少し酔いが回ってそうだったからな。頭を冷やしてやろうと思っただけだ。」

 

空になったグラスをテーブルに置きながら答える。

 

「テメェ・・」

 

狼人は怒りに体を震わせながらこちらを睨んでくる。

 

「ちょっとベート落ち着きなさい。あなたも早く謝りなさい。ケガだけじゃすまないわよ。」

 

アマゾネスが忠告してくる。

 

「なぜ我が謝らなければいけない。むしろそこの駄犬の鳴き声で食事がまずくなったことに謝罪がほしいくらいなんだがな。」

 

「駄犬だとォ‼テメェ、誰にケンカ売ってんのかわかってんのか?」

 

「そう吠えるな駄犬。いや、すまない、駄犬だから吠えるしか能がないのか。それに・・・」

 

「あん?」

 

「弱い犬ほどよく吠えるというしな。」

 

ブチっと何かが切れる音がした。

 

「ぶっ殺す!!」

 

狼人がこちらに突撃してくる。

さすがの速さだ。大きな口をたたくだけのことはある。

狼人の拳が眼前に迫り

 

止まった。

 

「なにっ!?」

 

狼人が動揺して声を上げる。

いつの間にか全身に鎖が巻き付いていたのである。

 

天の鎖

 

我のお気に入りの宝具である。

そして、予想通り冒険者にはよく効くようであった。

この宝具は神性が高いほど硬度が高まる。

神から恩恵を与えられている冒険者、それも高レベルであればよく効くだろうと思っていた。

 

「店で暴れては店主に迷惑であろう。」

 

天の鎖で狼人を締め上げる。

そして、狼人の骨から嫌な音がした。

 

「グアアアアアアァァ!!・・・・・・。」

 

意識を失ったのか静かになった。

 

「ふむ、こんなものか。店主よ迷惑をかけた。また来るぞ。」

 

店主に声をかけベルを探すために店を出ようとする。

 

「ちょっと待たんかい!」

 

つり目に赤髪の少女が声をかけてくる。

 

「確かにうちの眷属も悪かったが、やりすぎとちゃうか?」

 

その口ぶりから、ファミリアの主神ロキであることを察する。

 

「躾がなっていなかったのでな、代わりに躾けておいたぞ。」

 

「そうかい。自分どこのファミリアや?」

 

鋭い目つきで睨んでくる。

いや、睨んではいるものの心の中を見る、そんな感じの目だ。

神の力はなくても神というわけか。

 

「どこのファミリアにも属しておらぬわ。我は冒険者ではないからな。」

 

問答にも飽きてきた。

後ろから声は聞こえていたが無視して店を出る。

 

オラリオの最大派閥であるロキファミリア

多少の興味はあったのだがな。

ベルのように我の興味を惹くようなやつはいなかった。

 

さて、我を置いて行った馬鹿者を探しに行くか。




読んでくださりありがとうございました。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

困惑

ギルガメッシュが立ち去った後の豊穣の女主人です。


ロキ

 

ギルガメッシュが立ち去った後の豊穣の女主人では異様な雰囲気に包まれていた。それもそのはずである。

いくら酒に酔っていたとはいえロキファミリアの幹部でレベル5の冒険者であるベート・ローガ(二つ名=凶狼(ヴァナルガンド))が手も足も出ず、一方的に敗北したからだ。

 

「良いのか?追いかけなくて。」

 

ファミリアの幹部でドワーフのガレス・ランドロック(二つ名=重傑(エルガルム))が効いてくる。

 

「かまわへん。それより、ベートの容体はどない感じや?」

 

「なに、命に別状はないわい。回復薬をかけておけばすぐ目を覚ますじゃろうて。」

 

ガレスが答える。

 

とはいえ、今は迷宮攻略ではなく宴に来ているわけで、誰も回復薬など持ってきていない。

 

「じゃあ、あたし拠点に戻って回復薬取ってくるよ。」

 

アマゾネスの少女ティオナ・ヒリュテ(二つ名=大切断(アマゾン))が言うとすぐに店を出ていった。

 

「しかし、先ほどの金髪は何者だ。」

 

ファミリアの副団長でエルフのリヴェリア・リヨス・アールヴ(二つ名=九魔姫(ナインヘル))が困惑した様子でつぶやく。

 

「あんな奴見たいことないわ。それにしても団長がいないときなんてタイミング最悪ね。」

 

アマゾネスでティオナの姉ティオネ・ヒリュテ(二つ名=怒蛇))が文句を言う。

 

「さっきの奴、冒険者じゃないと言っとたな。どうじゃロキ嘘をついていた感じはしたか?」

 

ガレスが尋ねてくる。

 

「いや、嘘をついてるとは思わへん。ただ・・・」

 

「なんじゃ、はっきりせんな。神は嘘を見抜けるんじゃないのか?」

 

「せや、神に嘘はつけん。ただ、さっきのは正直分からんかった。まるで、同じ神と対峙しとるときみたいやった。」

 

ファミリアに動揺が走る。

 

「ならば、先ほどの金髪は神だとでもいうのか?」

 

「いや、それはありえん。あんな奴見たことない。」

 

リヴェリアの問いに返答する。

 

そう、神ではない。ただ神に近い何か、そんな感じがした。

 

「ひとまず、ティオナが戻ってくるのを待とうや。」

 

 

しばらくして、ティオナが回復薬を持って戻ってきた。回復薬のふたを開け、床に寝ているベートにかける。すると、ベートは目を覚まし体を起こす。

 

「あのくそ野郎はドコだァ!!!」

 

目を覚ましたばかりなのに絶叫する。

 

「全く、貴様というやつは。起きた途端に騒がしいのう。」

 

「うるせぇ、くそジジイ!」

 

ベートがガレスに食って掛かるが一撃で静かにさせられる。せっかく起こしたのにな。

 

「じゃあ、ベートも起きたし帰るで~。ミア母ちゃん、また来るわー。」

 

さてさて、さっきのことの奴は適当に探りを入れとくか。




読んでくださりありがとうございました。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

渇望

豊穣の女主人を飛び出したベル。
彼が向かったのは。 


ベル

 

気が付いたら店を飛び出していた。

 

人通りの少なくなった夜の大通りを駆け抜ける。

 

『雑魚じゃアイズ・ヴァレンシュタインには釣り合わねえんだよ。』

 

あの人の言葉が脳裏によみがえる。

 

その通りだと思った。

 

あの人の隣に立つには、強くなくちゃいけないんだ。

 

気が付いた時には迷宮に足を踏み入れていた。

 

 

がむしゃらにナイフを振るう。

 

普段なら、安全に考慮してペース配分して戦闘するがそんなことを考えられるほど冷静ではなかった。

 

ナイフを振る。ナイフを振る。攻撃が来ても構わずナイフを振る。

 

気が付けば、体は傷だらけになっていた。

 

不思議と痛みは感じなかった。

 

それ以上に自分の弱さが悔しかった。

 

迷宮から出ると、ちょうど朝日が差し込んできていた。

 

「気は済んだか?」

 

迷宮の入り口の陰から王様が現れ声をかけてきた。

 

「王様、僕、強くなりたいです。」

 

心から出た僕の願望に王様はいつもより優しく、そして諭すように告げてくる。

 

「凡俗なら数をこなせ、才能がないなら自信をつけろ。それだけが貴様の願望をかなえるものだ。」

 

王様の言葉は僕の中にすっと入ってきた。

 

ひとまずホームに帰って休もう。そして、また迷宮に行く。それの繰り返ししかない。

 

 

拠点に帰ると神様が出迎えてくれた。

 

「おかえりベル君、王様君!遅かったじゃないかって、ボロボロじゃないか!?大丈夫かい。」

 

「はい、ちょっと一晩中迷宮にいたので。」

 

「えぇ!無茶したら駄目じゃないか!なんだって急に・・」

 

「とりあえず疲れたので寝ますね。おやすみなさい。」

 

「ベル君!?ちょっと冷たくないかい!?」

 

ごめんなさい神様。夜通し迷宮で戦っていたのでさすがに疲れています。

 

「うるさいぞ、駄女神。」

 

「王様君、ベル君どうしちゃったんだい?」

 

「なに、強くなるためにがむしゃらに努力しているのだろう。貴様もベルの主神というのなら少しは役に立て。」

 

「ひどい!?なんだい、なんだい!ちゃんと恩恵を授けたじゃないか。ってふたりとも?おーい。」

 

体力の限界だったのか、ソファーに倒れこむとすぐに睡魔が襲ってきた。

 

 

ギルガメッシュ

 

ベッドに横になり先ほどの光景を思い出す。

 

『王様、僕、強くなりたいです。』

 

強い意志を宿した少年が立っていた。

 

発現したスキルも相まってこれからの成長速度は段違いになるな。

 

このまま英雄に向かって進んでいくのか、はたまた途中で挫折しただの雑種になり下がるかいずれにしても退屈しなさそうだな。

 

そうして、我は瞼を閉じた。




見てくださりありがとうございました。

これでアニメ1話分くらいと考えると、作家ってすごいなって思います。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

神々の宴

豊穣の女主人で騒動があった次の日


ベル

 

「すいませんでした!」

 

早朝から、僕は豊穣の女主人を訪ねていた。

 

理由は簡単。僕は昨日、食い逃げをした。

 

「これ昨日のお勘定です。」

 

「金はいいよ。連れのほうが置いて行ったからね。」

 

王様払ってくれていたんだ。後でお礼を言わないと。

 

「坊主、冒険者なんてかっこつけるだけ無駄さ。今は、生きることに必死になりな。どんなに未熟でも生きてたもんが勝ち組さ。」

 

その言葉には、重みがあった。

 

「あたしにここまで言わせたんだ。すぐに死ぬんじゃないよ。」

 

背中を物理的にも精神的にも押される。

 

カウンターの奥から出てきたシルさんにお弁当をもらい僕は迷宮に向かっていた。

 

 

ヘスティア

 

今日はガネーシャ主催のパーティーに来ている。

 

正直こういう集まりは好きではないが、参加しなさすぎると文句を言われてしまう。

 

来たからには元を取らないとということで、用意されている豪華な食事の手を伸ばす。

 

また一部は持参した容器に詰めていく。

 

そんな状態で後ろから声をかけられたものだからとても驚いてしまった。

 

「こんばんは。ヘスティア。」

 

純白の胸元が大きくあいたドレスを身にまとったフレイヤが声をかけてきた。

 

「ぼく、君のこと苦手なんだよ。まあ、君はまだましなほうだけど。」

 

「おーい、フレイヤ―、ドチビー!」

 

ロキが遠くから走り寄ってきた。

 

「ロキ、君も来てたのか。」

 

「なんや、来たらあかんのか?」

 

聞きたかったことがあるからロキが来たのはちょうどよかった。」

 

「君のところのヴァレン何某君には決まった相手とかいるのかい?」

 

瞬間ロキの額に青筋が浮き出る。

 

「あの子はうちのお気に入りや。手を出そうとするやつは血祭りにあげたる。」

 

ちっ、いれば問題解決だったのに。

 

「あなたたち仲いいわね。そういえばロキ聞いたわよ。」

 

フレイヤ割って入ってくる。

 

「あなたのとこの冒険者が酒場で派手に負けたって。」

 

「うぐっ、さすがに噂は広がっとるか。」

 

「なんだい、そんな命知らずな冒険者が現れたのかい?」

 

ロキファミリアは都市最大派閥だ。そんなところにケンカを吹っ掛けるなんて命知らずでしかない。

 

「いや、本人は冒険者やないっちゅうとったで。」

 

「どういうことだい?」

 

「知らんわ。見たことない顔やったし、名前もわからん。わかっとるんはくそ生意気な金髪の男ってことくらいや。」

 

瞬間顔が引きつる。

 

強いかどうかはわからないが最近僕のファミリアに住み着いている傲岸不遜な金髪が頭をよぎる。

 

「へー、そんな子がいるんだね。じゃあ僕はこれで!」

 

嫌な予感がしたので颯爽とロキとフレイヤから立ち去る。

 

「あら、ヘスティアじゃない?」

 

ロキたちから離れたところで眼帯をした赤紙の女神が声をかけてきた。

 

僕がここに来た理由である女神ヘファイストスだった。




更新遅くてすいません。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

怪獣祭

神々の宴でヘファイストスと遭遇したヘスティア。
ベルの武器を作ってもらおうとするも・・・


ヘスティア

 

「いつまでそうしているつもりなの?」

 

僕は今地面に頭をこすりつけている。神友であるタケミカズチが教えてくれた、謝罪とお願い事をするときの最上級の姿勢である『土下座』というらしい。

 

「君がベル君の武器を作ってくれるまで。」

 

ヘファイストスはため息をつくと僕に尋ねてきた。

 

「どうしてそこまでするの?」

 

「ベル君の力になりたいんだ。今、うちのファミリアの正式な団員はベル君一人だ。ダンジョンでの稼ぎはほとんどファミリアのために使ってくれている。だから、武器や防具にお金をかけられていない。だからベル君に武器をあげたいんだ。」

 

正直に僕の気持ちを伝えた。

 

「わかったわ。けど、あなたも手伝いなさいよ。」

 

「ありがとう、ヘファイストス―!」

 

瞬間、僕はヘファイストスに抱き着いていた。

 

「ただし、代金はちゃんといただくわよ。何百年かかろうともね。」

 

「もちろんさ!!」

 

 

ベル

 

神々の宴から数日が経過した。

 

今日は怪物祭であり、人通りが多い。

 

そんな中僕は王様と闘技場へ向かう途中、豊穣の女主人を通り過ぎようとした時だった。

 

「白髪頭ー!ちょっと待つニャー」

 

味噌の従業員である猫人のアーニャさんが声をかけてきた。

 

「これをシルに渡してほしいニャー。」

 

財布を手渡された。そして内容が省かれすぎていて訳が分からなかった。

店の奥からエルフの店員が現れた。

 

「それでは省略しすぎです、アーニャ。クラネルさんが混乱してしまう。」

 

「怪物祭に行ったシルが財布を忘れたから届けてほしいなんて言わなくても伝わるはずにゃ。」

 

「だそうです。」

 

「了解しました。じゃあ僕はシルさんを探しますけど王様はどうしますか?」

 

シルさんを探すのに王様をつき合わせるのは申し訳ない。

 

「ならば我は一人でぶらつく。また拠点でな。」

 

そういって王様は一人で歩いて行った。

 

「じゃあ僕ももう行きますね。」

 

アーニャさんたちに別れの挨拶を済ませシルさんを探しに向かう。

 

数分後、僕は後悔していた。

 

通りには怪物祭を目指す人が多すぎてシルさんを探すのは難しい。

 

どうしようか悩んでいた時だった。

 

「ベルくーん!」

 

神様が走ってきた。

 

「神様どうしてここに?」

 

「デートしようぜベル君。」

 

神様に押し切られてしまった。

 

 

ギルガメッシュ

 

怪物祭

 

迷宮で捕まえたモンスターを闘技場で見世物にする。

 

人というものはやはり傲慢な生き物だと思い知らされるな。

 

とりあえず、祭りなのだから出店などもあるだろう。

 

退屈するまでぶらつくか。




読んでいただきありがとうございました。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

急襲

ヘスティアとベルは怪物祭を楽しんでいると・・・


フレイヤ

 

「今度は何しでかすつもりや、この色ボケ女神。」

 

テーブルの対面に座っているロキが尋ねてくる。

質問に答える軽く笑って流す。

 

「それでどんな子供なんや?」

 

「きれいだった、今まで見たことのない色をしていた。見つけたのは偶然だった。」

 

窓から通りを眺めながら答える。通りは人でごった返していたが白髪の少年が走っているのが見えた。

 

見た瞬間、好奇心がわいてしまった。

 

「ごめんなさい、急用ができたわ。」

 

そういって席を立つ。

 

今日は怪物祭である。どうやって遊ぼうかしら。

 

 

闘技場地下

 

門兵たちを魅了で無力化する。

 

どの子にしようかと迷っていると大きな銀色のサルが目に入る。

 

「あなたがいいわ。小さな私を追いかけて。」

 

モンスターに魅了をかけ同じ神の気配を持つ小さな少女を追いかけさせる。

 

すべての檻が解放されモンスターが地上に向かって走り出した。

 

 

ベル

 

「ベル君、あーん。」

 

神様はクレープをこちらに向けて差し出してくる。

 

「食べられませんよ!?」

 

恥ずかしさから神様の申し出を断ってしまった。

 

屋台を転々としながら祭りを楽しんでいた時だった。

 

「モンスターだー!!」

 

路地から絶叫とともに銀色の大きなサル型モンスターが飛び出してきた。

 

サル型モンスターは僕たちを見つけると近づいてきた。

 

目線から狙われているのは神様だと判断できた。

 

「神様、逃げますよ!」

 

僕は神様を抱えて走り出した。

 

 

ギルガメッシュ

 

ベルとヘスティアがモンスターと遭遇したころ、ギルガメッシュがいるエリアでもパニックが発生していた。

 

近くから戦闘が行われている音が聞こえてきた。

 

興味本位で様子を見に行く。

 

気持ちの悪い植物型モンスターと数人の冒険者が戦っていた。

 

戦っている冒険者に見覚えがあった。

 

ロキファミリアのアマゾネス2人とアイズとかいう女だった。

 

「ちょっとあなた危ないから近寄らないで!」

 

我に気付いたギルドの受付嬢であるエイナが声をかけてきた。

 

どうやらけが人の手当てを行っているようである。

 

「貴様、受付から衛生兵にでも職を変えたのか?」

 

「これもギルドの仕事なんです!」

 

周囲を見回すとエイナと同じ制服を着たものが数人立っており、避難誘導やけが人の手当てを行っていた。

 

戦闘に目を戻すとどうやら苦戦しているようだった。

 

風をまとったアイズの剣が折れてしまった。

 

どうやら植物型のくせに外皮は硬いようである。

 

「あ、やばい!」

 

アマゾネスの片方がモンスターをこちらに弾き飛ばしてきた。

 

こちらにはけが人や手当を行っているギルド職員がいる。

 

そして何よりこちらに向かってくるモンスターが気色悪すぎる。

 

王の財宝を起動する。射出した剣がモンスターを貫き塵となった。

 

「なんだ思ったより柔らかいではないか。」

 

手こずっていたからどれほどのものかと思えば、弱すぎて拍子抜けだ。

 

「あ、あの時の金髪。」

 

「こっちを気にする暇があるのなら早く片をつけろ。できないのなら我が変わってやってもよいのだぞ?」

 

少し煽ると3人の動きが変わった。数的優位になったこともあり一瞬で片が付いた。

 

「やればできるではないか。」

 

戦闘が終了したことからその場の緊張感が解かれる。

 

「エイナ・チュール、モンスターはこれで終わりか?」

 

「まだ向こうのエリアに数匹ってあなたさっきのは何?冒険者ではないんでしょ!?」

 

「そうか。では我はもう行くぞ。」

 

「ちょっと!?」

 

何かわめいているが無視して残りのモンスターのほうに向かう。

 

我の勘がおもしろいものが見れると告げている。

 

何が見られるのか楽しみだ。




読んでいただきありがとうございます。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

神様の刃(ヘスティアナイフ)

アイズ達ロキファミリアが植物型モンスターを戦闘を行っていたころ、ベルとヘスティアは・・


ベル

 

僕は神様を抱えて背後から迫るモンスターから逃げるように走っていた。

 

「神様、なんであのモンスターに目羅われてるんですか?!知り合いですか?」

 

「初対面だよ‼」

 

路地から少し開けた場所に出る。

 

「ここはダイダロス通り。」

 

ダイダロス通りはとても複雑な構造をしており、地元の人間でなければ一度入ったら最後なかなか外に出るのが難しいといわれている。

 

背後を振り返るとモンスターが迫ってきているのが見える。

 

「迷っている場合じゃない。行きます、神様!」

 

ダイダロス通りに突入する。

 

細い路地を右へ左へ駆け抜ける。

 

路地を抜けた時だった。

 

上空からモンスターが飛来する。

 

着地の余波で吹き飛ばされてしまう。

 

サル型のモンスターがこちらを向く。

 

モンスターは僕を一瞥し、倒れている神様に向き直る。

 

怖い。

 

恐怖で体が硬直する。

 

モンスターの手が神様に伸びる。

 

怖い。

 

怖いけど僕は男だ。

 

女の子を置いて逃げるな!

 

自分に言い聞かせてモンスターに突撃する。

 

「うわああああああ!!」

 

モンスターの体を駆け上がり頭部にめがけて短刀の刃を振り下ろす。

 

パキーン

 

モンスターに当たった刃が砕けてしまう。

 

空中で自由が利かない体にモンスターの張り手が降りかかる。

 

強烈な張り手により建物へと激突する。

 

モンスターから追撃が来ると思った矢先、どこからか剣が飛来しモンスターをかすめる。

 

驚いたモンスターが周囲を見回している隙をついて、神さまを回収し路地へと走り出した。

 

無理だ、僕の力じゃ神様を守れない。

 

路地を抜けると別の広場に出る。

 

「あれは・・・」

 

鍵のかかる路地が目に入る。

 

決めた。

 

神さまを路地へと押し込み鍵をかける。

 

「ベル君!?なにを?」

 

「ごめんなさい神様、僕がここで時間を稼ぎます。神様はこのまま逃げてください。」

 

「なにを言ってるんだベル君。今すぐここを開けるんだ。」

 

ごめんなさい神様、僕はもう家族を失いたくないです。

 

先ほどのモンスターの元へ戻るべく、後ろから僕を呼ぶ神様の声を無視して路地へ向かって走り出す。

 

モンスターとすぐに再会することができた。

 

僕には武器がない以上逃げるしかない。

 

走って、走って、ひたすら走った。

 

モンスターの攻撃に体勢を崩してしまう。

 

モンスターの顔が目の前に迫る。

 

さよなら神様。

 

さよなら、アイズさん。せめて最後に会いたかったな。

 

「ベル君!」

 

「神様!?どうして来ちゃったんですか?」

 

神様の声に反応しモンスターの目標が僕から神様に切り替わる。

 

モンスターの手が迫る神様の元へ走り、間一髪で救出する。

 

そのまま神様を抱えて路地へ走り出す。

 

「逃げてくださいってお願いしたじゃないですか!」

 

「できるわけないだろ!僕を一人ぼっちにしないでくれ!」

 

ひとまず隠れられるところを探す。

 

周囲の壁よりやや新しめの壁が見える。

 

少し押すと通路が現れた。

 

ダイダロス通りにはこのような裏道が数多くある。

 

ひとまず通路に入り一息つく。

 

「あのモンスター神様を狙っています。見つかるのも時間の問題です」

 

「ベル君、此処でステイタスを更新する。君があのモンスターを倒すんだ。」

 

「無理です。僕の力じゃ。それに・・・」

 

柄だけになった武器に目を向ける。

 

「君にこれをあげよう。」

 

「これは・・」

 

「これは君の、いや僕たちの武器だ。名付けてヘスティアナイフ!」

 

 

ステイタスを更新する。

 

同時にナイフの神聖文字が青白く発光する。

 

遠くからモンスターの足音が聞こえてくる。

 

「神様!来ます!」

 

僕の背中に頭を預けた神様がつぶやく。」

 

「僕が君を勝たせてみせる。信じてくれるね。」

 

「はい!」

 

言うや否やモンスター向かって走り出していた。

 

「信じるんだ僕を。信じるんだ自分自身を!」

 

神様が背後から励ましてくている。

 

信じるんだ。

 

モンスターの攻撃をよける。

 

弾く。

 

隙ができたところでナイフをモンスターの胸部に刺す。

 

モンスターの動きが止まり膝から崩れ落ちる。

 

「やったじゃないかベル君!」

 

背後から駆け寄ってきた神様が抱き着いてくる。

 

「やりました神様!神様?」

 

「おめで、、と、う、、、」

 

「神様ー!」

 

 

ギルガメッシュ

 

「よもや、此処までとはな。」

 

ダイダロス通りにある建物の屋根の上から見ていたが、思わず感嘆の言葉が出る。

 

最初はどうなるかと思い、救いの手を出したが最後は自分で切り抜けるとは見事である。

 

「して、我と同じ高みの見物を決め込む貴様は何者だ?」

 

「誰でもいいでしょ?あなたも私と同じあの子がお気に入りなのだから。」

 

フードを深く羽織っており顔はよく見えないが雰囲気からして神であろう。

 

「あれは我の所有物である。それを奪おうとするなら・・・・」

 

「あの子は私のものにする。邪魔をするなら・・・」

 

「容赦はせん」「容赦しないわ」

 




読んでいただきありがとうございました。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

祭りの後

モンスターの撃退に成功したベル。しかし、ヘスティアは意識を失ってしまう。さらに、屋根の上ではギルガメッシュとフレイヤが一触即発の状態で・・・


ギルガメッシュ

 

 

「それじゃあ私は帰るわ。見たいものも見れたしね。」

 

ローブを羽織った女神はそう言うと立ち去ろうとする。

 

「逃がすと思うか?」

 

背後に王の財宝を起動する。

 

「いいのかしら?確かにあなたの強さはロキから聞いたわ。私の眷属でも倒せるかわからない。でも・・」

 

女神がベルたちに目を向けながら話し始める。

 

「あの子は私の子供たちの間合いにいるわよ?」

 

確かに建物の周囲に女神の眷属と思わしき冒険者の気配を感じる。おそらく、我が女神に攻撃したならばためらいなく動くだろう。

 

「ほう?ベルを人質に取ると?それでは本末転倒ではないか。」

 

「確かにあの子は殺せない。でもね、もう一人は別でしょ?」

 

「なるほど、ヘスティアか。」

 

「ええ、主神を失うことであの子は心に大きな傷を負うかもしれない。でも、私はそんなあの子をファミリアに迎え入れて愛してあげるわ。」

 

女神の発言に狂気じみたものを感じながら一周回って清々しささえ感じた。

 

「なにがなんでも自分のものにしようとするその心意気は褒めてやろう。ただし・・」

 

言葉を続けようとした瞬間、足元の屋根が崩れ落ちた。

 

「なにっ!?」

 

「ごめんなさいね、そろそろ行かせてもらうわ。」

頭上から女神の声が聞こえた。

 

「おのれ、下から攻撃とは小癪な。」

 

瓦礫にまみれた家から外へ出る。

 

広場に集まっていた人だかりも消えていることからどうやらベルとヘスティアは移動したようだ。

 

ベルを狙う女神か。

 

厄介なものに目をつけられておるなあ奴も。

 

 

ベル

 

「神様!しっかりしてください、神様!」

 

返事はない。

 

どうするべきか考えていた時だった。

 

急に後ろのほうで建物が崩れる音がした。

 

先ほどの戦闘で方が来ていたのだろう。

 

「ベルさん!」

 

「シルさん!?」

 

豊穣の女主人の制服を着たシルさんが駆け寄ってきた。

 

「どうしたんですか?」

 

「急に神様が気を失ってしまって・・」

 

「でしたら、お店に運びましょう。二回には空いてる部屋がありますから。それに、ベルさんの拠点より近いはずですし。」

 

「ありがとうございます!」

 

僕は神様を背負うと豊穣の女主人に向けて歩き出した。

 

 

豊穣の女主人

 

此処は豊穣の女主人の二階にある一部屋だ。

 

すでに日は沈んでおり一回の酒場から、お客さんの声がかすかに聞こえてくる。

 

昼間に意識を失ってから神様はまだ目を覚まさない。

 

階段のきしむ音が聞こえる。

 

誰かが二階へ上がってきたのだろう。

 

コンコンと扉が優しくノックされる。

 

扉を開けるとシルさんが立っていた。

 

「ヘスティア様はまだ眠られてますか?」

 

「はい。すいません。こんな時間まで。」

 

神様を起こしたくないので部屋から出る。

 

「そういえばシルさんはどうしてあんな所にいたんですか?」

 

「実は、怪物祭を見に行こうとしたんですが財布を忘れているのに気づいて、お店に戻ろうとしているときに、モンスターから逃げる人波に押されて気づいたらあそこに。」

 

「そうだったんですか、それは災難でしたね。」

 

「そうですね、でも、そのおかげでベルさんの戦っている姿を見れました。」

 

シルさんは手に持っていたお盆で口元を隠しながら告げる。

 

「思わず見惚れちゃいました。」

 

そのあざといしぐさに思わずドキッとしてしまう。

 

「それじゃあ、私は仕事に戻りますね。あっ、そういえばお店に王様さん来てましたよ。」

 

王様に何も連絡していなかったからどうしてるか心配してたけどお店にいるのなら安心かな。

 

「べるくーん」

 

部屋の中から僕を呼ぶ神様の声が聞こえた。

 

「神様、大丈夫ですか?」

 

「大丈夫だよ、ちょっと疲れが出ただけさ。心配かけたね。」

 

元気そうな神様を見られて安心した。

 

その後、僕と神様は一階の王様と合流し、夕食を食べた。

 

神様は寝起きとは思えないほど食べていた。

 

また明日から、迷宮に潜って強くならないと、神様からもらったナイフを見ながらそう思った。

 




読んでいただきありがとうございました。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

買い物

日常に戻ったベルたち。

ベルの装備が薄いことを気にしたエイナは・・・


 

「7階層!?」

 

ギルド中にエイナの声が響き渡った。

 

「君はこの前5階層で死にかけったっていうのに、なんでそんな無茶をするのかなぁ?」

 

「で、でもあれから僕そこそこ強くなって、ステイタスもだいぶ上がったんですよ!」

 

怒ってくるエイナさんをなだめるべく、言い訳をしてみる。

 

「そんな急にステイタスが上がるわけないでしょ。」

 

そういうとエイナさんは僕を別室に呼び背中のステイタスを確認する。

 

「うそ・・ほんとに上がってる。」

 

エイナから驚きの声が漏れる。

 

「このステイタスなら、7階層で冒険してもいいですよね。」

 

「確かにこのステイタスなら7階層でも大丈夫だけど・・そうなると問題は」

 

そういうと僕の全身の見回す。

 

「ベル君、明日予定空いてるかな?」

 

次の日

 

僕は広場のオブジェクト前ででエイナさんを待っていた。

 

これまでの人生で女性と出かけたことなどないため緊張していたのか、予定より早く来てしまった。

 

「ベル君!待たせちゃったかな。」

 

それからしばらくして、私服姿のエイナさんがやってきた。

 

普段の制服姿ではないことと、眼鏡をしていないことから印象が違う。

 

「エイナさん!なんだか今日は印象が違いますね。」

 

「私の私服姿にドキッとしちゃった?」

 

エイナさんがいたずらっぽく微笑む。

 

その表情に思わず赤面してしまう。

 

「それで・・なんであなたがここに?」

 

エイナさんがオブジェの陰に立っていた王様に声をかける

 

王様に今日出かけることを伝えるとついてくると言うため一緒に来たのだ。

 

「どこで何をしようと我の勝手だろう。」

 

「はいはい。それじゃベル君いこっか。」

 

諦めたのかエイナさんが声をかけてくる。

 

しかもさらっと王様を無視している。

 

「それで、今日はどこに行くんですか?」

 

「それはついてからのお楽しみ。」

 

そういって僕たちは歩きだした。

 

 

バベル

 

「ここは・・・」

 

「ヘファイストスファミリアのお店だよ。」

 

僕たちはバベルの中にある武器屋に来ていた。

 

それもオラリオでも一位二位を争うヘファイストスファミリアのお店だ。

 

ショウウインドウには手の出ない価格の武器が飾ってある。

 

「無理ですよ、こんな高いもの買うお金がありません。」

 

「大丈夫だよ、お目当てはこのお店じゃないから。」

 

目当ての店に行くため移動しようとした時だった。

 

「いらっしゃいませー!」

 

お店から店員さんが出てきた。

 

ツインテールの小柄な店員だった。

 

「か、神様!?こんなところで何を?」

 

「ベル君!?それに王様君も。」

 

「神の威厳をどこへやったのだ駄目神。」

 

「うぐう。とっところで、そこのハーフエルフ君は誰だい?」

 

王様からの指摘に涙目の神様は話題をエイナさんに逸らす。

 

「初めまして神ヘスティア。クラネル氏の迷宮探索アドバイザーのエイナ・チュールです。」

 

「そうかい。これからもよろしく頼むよ。と・こ・ろ・で、君は自分の立場を利用してベル君に色目を使ってはいないだろうね?」

 

「公私の分別はついていると思います。」

 

神様は仕事に戻り僕たちは目当ての場所に向けて歩き始めた。

 

到着したのは、かなり端にある物置のようなお店のような感じのところだった。

 

「ベル君はヘファイストスファミリアの武器は高いものと思ってるでしょ?でも、此処は駆け出しの鍛冶師が卸しているから値段もそんなに高くないの。中には掘り出し物が眠っていたりするんだよ。」

 

店に入り物色する。

 

確かに、値段は安くはないけれども手の届かないほどではない。

 

奥のほうまで物色すると、一つの胸当てを見つける。

 

裏には鍛冶師の名前であろうヴェルフ・クロッゾのサインとウサギの模様が彫られている。

 

値段は持ち金全部使うことになりそうだが足りる。

 

「ベル君、いいものあった?」

 

「はい!これにしようと思います。」

 

「君はほんとに軽装が好きだね。」

 

会計を済ませてバベルから出るとすでに日が沈み始めていた。

 

「エイナさん今日はありがとうございました。」

 

「どういたしまして。そうだ、ベル君これ。」

 

エイナさんが布に包まれた物品を受け取る。

 

中から緑色の腕あてが現れる。

 

「これは私から。使ってくれるとうれしいな。」

 

「ありがとうございます!エイナさん!」

 

防具も新調したし明日からの迷宮探索も頑張ろうと思えた。

 

 

ギルガメッシュ

 

一日様子を見ていたが不審な気配は感じなかった。

 

そろそろあの女神が何かしらの行動を起こしてくると思ったが杞憂だったか。

 

そう考えた時だった。

 

バベルの上からこちらを見る冷たい視線を感じ思わず振り返る。

 

やはり見ているか。

 

口角が思わず上がる。

 

これから何を仕掛けてくるか楽しませてもらうぞ。

 

 

フレイヤ

 

バベルの上層から地上を眺めていた時だった。

 

白髪の少年を見つけ胸が高まる。

 

いけない。

 

しばらく手を出すのはやめようと思っていたのに、我慢できないわ。

 

本棚から一冊の本を手に取る。

 

あの子の中には何が眠ってるのかしら。

 

それにしても、あの男。

 

私の視線に気づいたわね。

 

勘がいいのか、それとも・・

 

いずれにしてもしばらくは預けておくわ。

 

それでも、最後は必ず私のものにする。




読んでいただきありがとうございました。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

サポーター

新し装備を身に着けて冒険に行くベル。
そんな時、迷宮に入る直前で一人の少女に声をかけられる。


ベル

 

早朝ということもありまだ少し霧がかかっている。

 

バベルの前には、すでに多くの冒険者が集まっていた。

 

冒険者の多くはパーティーを組んでおり、中には大きなリュックを背負ったサポーターを連れている冒険者もいる。

 

サポーターがいれば自分が荷物を持つ必要がなくなり、戦闘に支障きたすこともなくなる。

 

「サポーターかぁ。」

 

思わず心の声が漏れてしまった。

 

「そこの冒険者様、サポータをお探しではありませんか?」

 

後ろから声をかけられる。

 

振り向くと大きなリュックを背負った小柄な少女が立っていた。

 

「いきなりで戸惑っているのですね。状況は簡単です。雇ってくれる冒険者を探しているサポーターが自分を売り込みに来ているのです。」

 

「どうして僕に声をかけてきたの?」

 

近くの噴水のへりに腰掛け話を聞く。

 

「見たところお一人でしたしご自身でバックパックを持たれていたので。」

 

なるほど、すごい観察眼だなと思わず感心してしまう。

 

「すいません。実はこれからもう一人来るんです。けど、サポーターは欲しいと思っていたのでそれでもいいですか?」

 

「そうなのですか?私はそれでもかまいませんが・・」

 

「待たせたな。」

 

王様がゆっくっりと歩いてこちらに近づいてきた。

 

「してベルよ。そこの少女は何者だ?」

 

「そういえば自己紹介がまだでした。僕はベル・クラネル、こちらは王様です。」

 

「王様?えっと私はリリルカ・アーデです。」

 

「こちらのりりルカさんにサポーターとして同行してもらおうと思ってるんですがよろしいですか?」

 

「構わん。パーティーのリーダーはお前だ。自分で決めろ。」

 

「わかりました。では、りりルカさんサポーターお願いします。」

 

「わかりました。よろしくお願いします。」

 

 

りりルカ

 

迷宮内

 

「ベル様、後ろから来てます。」

 

「はい!」

 

今回、ターゲットにした白髪の人間は見た目は明らかにお人良しではあるが、それなりの戦闘スキルを持っているようだ。

 

狙うは使っているナイフ。

 

かなりの業ものだろう。

 

鞘にはヘファイストスの刻印まである。

 

奪うのはたやすいだろう。

 

ただ問題があるとすれば、同行している金髪の青年だ。

 

「あの、王様は戦われないのですか?」

 

「我に働けと申すか?」

 

「い、いえ・・」

 

さっきから戦闘をするわけでも魔石を回収するわけでもなくただ立っているだけなのだ。

 

正直なところなぜ冒険についてきているのかわからない。

 

こちらの仕事をするのにも都合が悪い。

 

ひとまずはベル様の信頼を得るのが良いだろうと考え行動する。

 

 

ギルド前

 

「それじゃあ僕は換金とエイナさんに報告に行ってきます。」

 

「わかりました。リリはここで待っていますね。」

 

あの後、探索は何事もなく終了した。

 

ベル様がギルドにはいってから少ししてからだった。

 

「ところで少女よ、貴様はどこかのファミリアに入っているのか?」

 

唐突に金髪の青年が聞いてくる。

 

「私はソーマファミリアに所属しています。」

 

「そうか。」

 

その後、特に会話もなくベル様が戻ってくるのを待った。

 

「お待たせしました。」

 

しばらくして、ベル様が小袋を手に戻ってくる。

 

「報酬は貴様とそこの少女で分けるがよい。我はもう行く。」

 

「わかりました。あれ、王様もギルドに用があったのですか?」

 

「そんなところだ。また後でな。」

 

金髪の青年は手を振りながらギルドの中に入っていく。

 

「それじゃ、報酬の分配をしましょうか、りりルカさん。」

 

きた。

 

冒険者の中にはサポーターに対する報酬をけちる輩もいる。

 

この少年はどうだろう。

 

「これは今日の稼ぎの半分です。どうぞ。」

 

そういって小袋を渡してくる。

 

中を確認すると本当に入っていた。

 

「あ、ありがとうございます。」

 

本当に見た目通りの優しい人のなのかもしれないと思えた。

 

それでも、冒険者は信じられない。

 

当初の予定通り、目標のブツを手に入れるために行動を開始する。

 

「それでは、ベル様今日はお世話になりました。」

 

そういって、歩き出しわざと転ぶ。

 

「大丈夫?りりルカさん。」

 

「大丈夫です。すいません、荷物が散らばってしまったので拾うのを手伝ってもらえますか?」

 

荷物を拾っているベルの背後に立ちナイフを抜き去り懐に隠す。

 

「はい、りりルカさん。」

 

「ありがとうございます。それでは。」

 

うまくいった。

 

きっといい値になるだろう。

 

高まる気持ちを抑えながら帰路につく。

 

 

ギルガメッシュ

 

受付に目的の人物がいるのを見つける。

 

「貴様に話がある。」

 

「ちょうどよかった。私も聞きたいことがあったの。」

 

そういうと小部屋に案内された。

 

「相変わらず安っぽい椅子だな。」

 

「はいはい、それで話って何かしら?」

 

「随分態度が悪いな。それでよく受付が務まるな。まあ良い。話というのはソーマファミリアについてだ。」

 

「どうやら同じ要件のようね。新しくベル君が雇ったサポーターがソーマファミリアなのね。そっか、ソーマファミリアか。」

 

頭がいい女で助かった。

 

ただ、曇った顔からあまりいいファミリアではないことが窺える。

 

「そんなに問題のあるファミリアなのか?」

 

「うーん、少しね。常に殺気立っているというか、結構、換金所ではもめることが多いかな。」

 

「上納金でもあるのか、そのファミリアは。」

 

そういって、先ほどベルとすれ違ったときに入れ替えておいたナイフを懐から取り出す。

 

あの少女がこのナイフを注視し、我の隙を探っていたからもしやと思いすり替えておいたがさてどうなったのやら。




読んでいただきありがとうございました。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

葛藤

ベルからナイフをとったリリ。しかしそれはギルガメッシュの罠で・・・


りりルカ

 

 

「1000バリスだな。」

 

ベルから奪ったナイフを査定していた商人からの言葉に思わず驚いてしまう。

 

「それなりのナイフだな。どうする?」

 

そんなはずはない。

 

あれほどのモンスターを倒して刃こぼれ一つしないナイフが業物でないはずがない。

 

結局ナイフは売らずに返してもらった。

 

「1000バリス・・」

 

提示された額に納得いかず思わずつぶやいてしまう。

 

「ほう、思ったより安かったな。」

 

「なぜあなたがここに⁉}

 

声を掛けられたほうを振り向くと、金髪の青年が立っていた。

 

 

ギルガメッシュ

 

ギルドで少女の情報集した後、ヴィマーナを使用し上空から少女の捜索を開始した。

 

こう言う時に役に立つのがーチャーのクラススキルだ。

 

上空からでもよく見える。

 

すぐに探していた少女は見つかった。

 

こういう時自身の優秀さが恐ろしくなる。

 

少女に気取られないように気を付けながら着地する。

 

「1000バリス・・・」

 

少女のつぶやきが聞こえる。

 

ふむ、1000バリスか。

 

我が手間暇かけてヒエログリフを彫った1点ものだぞ。

 

そんなことを言っている場合ではないな。

 

「ほう、思ったより安かったな。」

 

急ぎ少女の背後から声をかける。

 

「なぜあなたがここに⁉」

 

王の財宝からヘスティアナイフを取り出す。

 

「探索中、貴様の注意はこれに寄せられていたからな。我がいなくなったら盗ると思っていたぞ。」

 

少女の顔が驚きに染まる。

 

「どうしてベル様に狙われていると教えなかったのですか?」

 

「盗むほうも悪いが盗まれるほうも悪い。特にあやつは警戒心が足りなさすぎる。これも一つ経験になったであろう。」

 

「ここに来たのはリリを始末するためですか?」

 

「それもいいが、そんなことをすればあやつが悲しむからな。故に貴様を試させて貰う。」

 

我は握っていたナイフを少女の足元に向け投げつける。

 

ナイフは地面にはじかれ少女の足元に転がる。

 

やはりベルでなければナイフの性能は発揮されんか。

 

「今頃、ナイフを探して走り回っているだろう。貴様が届けてやれ。」

 

「このナイフをリリが売るとは思わないのですか?」

 

「そんななまくらが売れると思うか?」

 

少女は何も言わず足元のナイフを拾い上げると大通りに向け歩き出した。

 

迷える民草を導くのも王の務めか、とはいえ我も甘くなったな。

 

これもベルの影響か。

 

 

リリルカ

 

金髪の青年、ベル様からは王様と言われている人物の考えていることがわからなかった。

 

確かにこのナイフは、ベル様が使っていた時とは別物のようになっている。

 

渡してどうすればいい。

 

考えのまとまらないまま、大通りに出た時だった。

 

通りを走っていた何者かとぶつかってしまった。

 

「ごめんなさい。大丈夫ですか?ってリリ!ちょうどよかった!」

 

ぶつかった相手はタイミングがいいのか悪いのかベル様だった。

 

「ベル様!ちょうどリリも用があって。」

 

「僕に用?って僕のナイフ知らない?どこかに落としちゃったみたいで!」

 

どこかに落とした、ということはリリが盗んだことには気づいてないみたいです。

 

ならばここは話を合わせよう、そう考えたとき心が少し傷んだ。

 

まだ自分に良心があることに驚いた。

 

「ちょうどナイフのことで用があって。これですよね?}

 

金髪の青年から託されたナイフを渡す。

 

「これだよ!ありがとう、リリ。拾ってくれてたんだね。」

 

笑顔でお礼を伝えてくるベル様に罪悪感が押し寄せる。

 

「じゃあ、また明日迷宮前で!」

 

そう言って去っていく背中を見つめながら思った。

 

どこで自分は間違えたのだろうと。

 




読んでいただきありがとうございました。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

暗躍

ナイフを盗んだこともばれず、ベルのサポーターを続けることになったリリルカ。
なぜそんなに金が必要なのか・・



リリルカ

 

 

ベル様のサポータになってから何日か経過した。

 

結局、金髪の青年の意図はわからないままだが次、盗みをしたら何をされるかわからないだろう。

 

それに、今のところ盗みをする必要もない。

 

ベル様は、これまでの冒険者と違いぞんざいに扱わないし、報酬も十分にくれる。

 

それなのに心の中にはこの環境が急に終わりを迎えてしまうのではないかという不安と、これまでに自分がしてきたことへの罪悪感が押し寄せてきていた。

 

そんなことを考えながら夜の路地裏を歩いていた時だった。

 

「久しぶりだなアーデ。」

 

前からソーマファミリアの冒険者が数人現れた。

 

「冒険者様・・」

 

「言いたいことはわかるだろ。」

 

懐に持っていた硬貨の入ったコブクロを差し出す。

 

冒険者は乱暴に小袋を奪い取る。

 

「結構持ってんじゃねえか。てめえみたいな役立たずがファミリアにいられるのは俺ら冒険者のおかげなんだぞ。これからも、ちゃんと兼ね集めておけよ。」

 

冒険者たちが高笑いする。

 

いつものことだ。

 

もうこういうやり取りにも慣れてしまった。

 

冒険者たちが笑いながら立ち去ろうとした時だった。

 

建物の屋根から何かが飛来し冒険者をかすめ地面に突き刺さる。

 

「なんだ⁉」

 

一斉に屋根に視線が集まる。

 

そこには月の光に金髪をきらめかせた青年が立っていた。

 

 

ギルガメッシュ

 

 

ナイフを渡してからも少女の動向を探っていた。

 

見ようによってはストーカーに見えるが我を咎めることなぞ何人にも不可能だ。

 

なぜならこの我が法だからな。

 

今日もいつも通り何事もなく終わるかと思ったが、不審な輩を見つけることができた。

 

案の定、少女から金を巻き上げ高笑いと小悪党極まりない姿に思わず笑みがこぼれる。

 

やっと退屈な作業も終わる。

 

金を奪い立ち去ろうとする冒険者に王の財宝を起動する。

 

射出した剣が地面に突き刺さる。

 

「なんだ⁉」

 

一斉に冒険者が我を仰ぎ見る。

 

これはこれで優越感に浸れる。

 

残念なのは眼下にいるのが小悪党という点だ。

 

再び王の財宝を起動し雑魚を一掃する。

 

無論殺してはいない。

 

地面に降りる。

 

冒険者の元から小袋を広い少女に投げる。

 

「なぜ、助けたのですか?」

 

「気まぐれだ。それに、用があるのはこっちの冒険者だしな。」

 

地面に寝そべる冒険者っちを一瞥する。

 

「帰り道には気をつけろ、小娘。貴様に何かあるとベルが困るであろう。」

 

「あ、ありがとうございます。」

 

そういうと少女は足早に立ち去って行った。

 

さて、これからお楽しみの尋問タイムと行こうか。




読んでいただきありがとうございました。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ファミリアの闇

ソーマファミリアの冒険者を捕まえたギルガメッシュは情報収集を開始する。


ギルガメッシュ

 

地面に転がるソーマファミリアの冒険者に向けて声をかける。

 

「さて、何故そこまで金に執着するのか聞かせてもらおうか、雑種ども。」

 

「なんで俺たちがそんなこと…」

 

反論しようとした冒険者の頬を王の財宝から射出された剣がかすめ言葉が止まる。

 

「答えなくないなら答えなくていい。面倒だがほかの冒険者に聞くとしよう。その場合貴様らには…」

 

「わ、わかったよ。酒だ、ソーマ様の酒を買うのに金が要るんだよ。」

 

「酒だと?貴様らそんなもののために躍起になっていたのか。」

 

くだらない理由にあきれていると冒険者は慌てた様子で説明し始めた。

 

「ソーマ様の酒だ。神酒だぞ。そこいらの酒とはわけが違う。あれを一度飲んだらほかの酒なんか飲めなくなっちまうんだよ。」

 

神の作る酒か。

 

少しだが興味が出た。

 

そのうち手に入れて飲んでみるか。

 

さて、これまでの話から整理すると、ソーマファミリアの冒険者は主神の作った酒を買うため金集めに躍起になっていたことになる。

 

そして、主神の作る酒にはどうやら通常の酒よりも依存性が高いようだ。

 

つまり、悪いのはソーマという神ではないか。

 

自分の眷属を追い込むとはつくづく神の考えることはわからない。

 

「もういいだろ?見逃してくれよ。」

 

冒険者が命乞いをしてくる。

 

ここで殺してしまってもいいのだが下手をしてこの街にいられなくなるようなことがあると面倒である。

 

「そうだな。今の我は寛容だからな。見逃してやる。失せるがよい。」

 

そう告げると冒険者たちは蜘蛛の子を散らすように逃げて行った。

 

現状、ソーマファミリアの問題はベルに影響を与えることはないだろう。

 

とはいえ、あの少女を雇い続けるのであれば何かしら手を打つ必要がある。

 

退屈は嫌いだがこうも面倒ごとが続くというのも嫌になるな。

 

ひとまず拠点に戻るべく歩を進めることにした。

 

 

リリルカ

 

あの金髪の青年が本当に何を考えているのかわからなかった。

 

いや、一つだけ確かなことがあった。

 

あの青年はベル様を大事にしている、それだけは間違いない。

 

今回助けてくれたのもベル様の心配事を増やさないためなのであろう。

 

こんなにも心配してくれる人がいるなんて少しベル様のことがうらやましくなった。

 

いろいろなことを考えながら歩いているといつの間にか下宿先についていた。

 

うだうだ考えていても仕方がない。

 

まずは、今後も同様の事態が起きたときに対応できるよう準備する。

 

そして、金を集めてファミリアを抜ける。

 

そのためにも明日の冒険に備え寝ることにしよう。

 

 




読んでいただきありがとうございました。

更新遅くなり申し訳ありません。


目次 感想へのリンク しおりを挟む




評価する
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10についてはそれぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に
評価する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。