器用貧乏な麦わらの一味 (millseross)
しおりを挟む

イーストブルー編
ヤツが来た!


設定集は考えまくってる。...が、出すのは先になりそう。続くかも不明。楽しみます!


今日も習慣である日誌を書くために筆を執る。今までも何度となく、僕は俺であった頃のことをこの日誌に書いたことがあった筈だ。こうして定期的に記しておかなければ、僕と俺の記憶の境界線が曖昧になり、いつしか俺の事を忘れてしまうかもしれないという恐怖があった。

 

産まれる前の俺は、■■■■という名前をもって現代社会を生きていた。え?名前が見えないって?問題ない、見えないってことは大して重要じゃないってことだからな(震え)。

 

幼なじみで同級生の角が生えた女の子なんて居るはずもなく、遊園地に一緒に行くような彼女もいなかった。

 

いつものように疲れた身体で会社から帰っていた俺は、犬と散歩をしていた小さな女の子をなんとなしに見て癒されていた。これだけ言うとなんか危ないヤツだな。

 

で、女の子に向かってフラフラと近づいてくる黒いコートを着た男が見えたもんで、あーこりゃコートの下はバカには見えない服を着たド変態野郎とかいうオチかと思って警戒した。

 

流石に小学生になるかならないかくらいのいたいけな女の子に、そんな超ド級のトラウマを植え付ける訳にはいかない。(俺も出来れば見たくないが。)

 

自然体を装いつつ女の子を追い越して、黒コート野郎が女の子の視界に入らないようにしつつ通り過ぎようとした。女の子はキョトンと不思議そうな顔をしたが、俺は笑って誤魔化した。

 

勘違いならそれでいいと、むしろ勘違いであってくれと内心ドキドキしながら歩いてたんだが。やはりと言うべきか、そいつはキチガイ野郎だった。誤算だったのは、コートの下に裸体を隠しているのではなく、包丁という本来は食材を切るための刃を隠していたことだった。

 

咄嗟に女の子に覆いかぶさった俺を滅多刺しにした男は、女の子が連れていた犬(シベリアンハスキー的なめっちゃかっこいい系の犬)が吠えて噛み付いて追い払ってくれた。ありがとう、犬。俺の血がついて綺麗な毛並みが赤く染ったのは正直ごめんと思う。後で家族と一緒にお風呂に入って元のフサフサを取り戻してくれ。

 

女の子がわんわん泣いて、犬もワンワン鳴いて、俺もわんわん泣きたい程痛くて熱くて、でもそんな元気もなくて。そのなき声に気づいた人達が集まってきたのを視認し、大人が集まってきて安心したのかわからんが、そこで俺の意識は途切れた。

 

で、気がついたら、体が縮んでしまっていた。齢3歳のアルビノ美少年に乗り移った俺は、そこから波乱万丈と言う一言では些か足りない気もしないでもないが、まぁ紆余曲折な16年の人生を経て。

 

今、日誌を書くに至る。という訳だ。

 

え?波乱万丈とはなんぞや?紆余曲折を詳しくって?ははは、聞いてもあまり面白くないと思うが、まぁ機会があればいつかは話そう。そりゃもう、語るも涙なカタルシス、聞くも涙なキクルシスな物語だ。キクルシスってなんだ。

 

さて、前置きが長くなった。流石に名前がないってのは不便だから、この世界での僕の名前を紹介しておこう。白に近いプラチナブロンドの艶やかな髪をもつこの色白美青少年の名前はソラという。美しき母親に与えられた名である。一人称も肉体に合うように僕へと変えた。もう15年以上も寄り添ってる肉体と名前だ。流石に慣れた。

 

現代で死んだ俺の肉体はそのままに、魂魄だけが当時3歳だったこの身体に乗り移った。まじで寝て起きたら身体縮んでてやばたにえん。ってなった。一周まわって落ち着いたもん。

 

俺の意識では16年間この身体を使ってソラと名乗っているのだが、俺の意識のない僕が3歳までに培った知識や経験もちゃんと残ってるらしかった。英語なのにちゃんと文字が読めたのはその為だ。閑話休題。

 

そんなこんなで、今日も1日むさ苦しい野郎どもばかりの戦場へと身を投じるのである。それに、今日は月に一度のスイーツデー。即ち、シェフパティシエである僕が厨房のメインを務める日である。

 

ドンドンドン!とノックと言うには些か強すぎる音が鳴る。ドアを壊す気か。え、蹴ってるんじゃないよね?やめて?戦闘じゃないんだから。

 

「おいソラ!クソジジイがブチ切れ寸前だ早くしろ!」

 

「はいはーい、今行くからそんなに怒鳴るなって。」

 

ったく、そんなに急がなくたって客は逃げないってのに。

 

コック帽をかぶり、身だしなみを整え自室を出る。目の前には兄弟子とも義兄弟とも呼べる相手、サンジが呆れたような顔で立っていた。

 

「何してたんだよこんなギリギリまで。」

 

「日誌書いてた。」

 

「普通そういうのって一日の終わりに書くもんじゃねえか?」

 

「いいのいいの、ただの趣味だから。書きたいと思った時に書くから質のいい日誌になるんだよ。」

 

「質のいい日誌ってなんだよ...、まぁとにかく急げ!今日のメインはソラなんだから!」

 

厨房に足を踏み入れた瞬間に怒号を浴びせられる。このSS物語の主役たる僕に怒鳴り散らすとはなにごとだ。

 

「いつまでチンタラやってやがんだソラぁ!今日はてめぇがメインシェフの日だろうが!」

 

人間らしさを主張する機能美を兼ね備えた義足と三つ編み髭、高すぎて逆にバカっぽいコック帽。この口の悪い爺さんこそが僕の雇い主、オーナーシェフである。

 

サンジと同じこと言ってるよ。仲良いよね、実は。喧嘩するほどってやつ。

 

「まぁまぁ爺さんも落ち着きなよ。そんなに慌てなくても、予定通りの時間なんだからさ。」

 

「こんなにギリギリに来るやつがあるかっ!」

 

5分前行動とか無理なんだよね。料理する時は秒刻みでスケジュール管理してるから、1分でも前後しちゃうと全ての味が崩れちゃう。スイーツ作りは特にそれが顕著なんだ。

 

「みんな集まってるねー。じゃ、やろうか。」

 

調理道具を手に取った瞬間に、身に纏う空気が変化する。それが伝播するように、ここにいる全員の、そして厨房の空気がピリついていく。今からここは、戦場と化す。

 

 

&&&

 

 

「ミルフィーユ完成。誤差1秒未満、完璧だ。4番テーブルまで持ってって。5番のタルトも9割終わってるね、アントルメンティエ、出番だよ。」

 

「はいっす、ソラさん!流石っすね、こんなに手早く1人で1品作り上げるなんて!」

 

「4番テーブルの客はちょっと特別っぽいからね。8番テーブルのパフェはまだ?」

 

「生クリームがまだですっ。」

 

「28秒遅れてるからセカンドグラシエがアシストついてやって。...おいちょっと待てこのラテアート作ったの誰。泡立ち悪くて何描いてるかわかんない。なにこれ、ポメラニアンを描こうとしてティンダロスでも召喚したの?冒涜的だな、やり直し。」

 

「ごめんソラちゃんそれ描いたの俺っ!」

 

「パティかよ。なんでそもそも絵心ないやつが率先してラテアートなんて作ってんのバカなの。余計な仕事増やしてんなよ。サンジに描かせたらいいじゃん。」

 

「あいつ今ホールで美女口説いてるからぁ!」

 

「諸悪の根源かよ。」

 

この忙しい時によくそんなこと出来るな。普通に余裕ないってのに。

 

「つか爺さんは?どこいったの?」

 

「甘い匂いが堪えたそうです!2階の自室で休憩してます!」

 

「クソジジイがよぉ。トップ2人がマイペース過ぎんだろ。だれかこの失敗したラテアート爺さんに持ってってやって。」

 

(((スイーツ作ってる時のソラさん怖ぇぇ!でも優しい!そしてマイペースなのはトップ3人です!!)))

 

喋りながらもみんな手は動かしてる。感心感心、スパルタ教育の賜物だな。最初の頃は使えなさすぎてストレス溜まりまくってたけど。

 

ボカァァァーーーンッ!!!

 

キャァァー!!

 

「...あ?何今の砲弾みたいな音。ホールから悲鳴も聞こえたし。爆発音は2階からか?」

 

ちょっと待った。2階から爆発音?ってことはまさか、ついに原作来ちゃった感じ?

 

「ちょっと厨房任せるよ。ホールがザワついてるから宥めてくる。今入ってる客と今日これから入る客全員に、お詫びとして1品ずつサービスするからそのつもりで。手休めんなよ。」

 

「「「了解です!!」」」

 

いい返事。さて、ホールは〜っと。ザワザワ...ザワザワ...。ここはいつから賭博場になったのかな。

 

サンジまで驚いた顔でフリーズしてるし。あ、なんか客ともめ始めた。うわボッコボコに蹴りまくってんじゃん。あれ海軍の人だよね。やばくね?てか副料理長なんだから、売られた喧嘩を買うんじゃなくて、まず客を落ち着かせろよ。

 

「ご来賓頂きました紳士淑女の皆様方、お騒がせして大変申し訳ございません。現在騒ぎの原因を調査中でございますので、どうぞお気になさらず、当店自慢のスイーツをご堪能くださいませ。」

 

ホールに入ってきた僕を見た客が、ほっとした様な顔をする。そして僕の顔を見た女性のほとんどが、ぽっと頬を赤らめ顔を背ける。

 

わかるー。この顔、いいよねぇ。まぁ眼帯してるんだけど。それでも分かる顔の良さ、そこにシビれるあこがれるぅ!色白美形はどの世界でも重宝されるからありがてぇ。。

 

ちなみにこの身体、見た目もいいし手先も器用でスペックめちゃくちゃ高いんだよなぁ。身長が小さいのが難点だけど。サンジと20cmくらい差があるんだよ、身体は同い年のはずなのに。

 

え?自己自慢よりもボッコボコにされた海軍の介抱をしろって?見えない見えない。僕には何も見えてないのです。てかこいつそこそこの下っ端じゃなかったっけ?確かフルボディ大尉、とかなんとか。大尉って偉いんだっけ?

 

「ソラ、何があった?」

 

「さぁね。とりあえず原因の特定より、お客様を落ち着かせることを優先すべきだろ?どっかの誰かさんがホールでサボってなきゃ僕が出張る必要もなかったんだけど。」

 

「ぐっ、、悪かったって。」

 

「ごめんくださーい、砲弾ぶち込んだのは俺です!」

 

おぉ、やっぱり来た。つか普通バカ正直に言うかね。確か海軍が打ってきた砲弾を弾き返したんじゃなかったっけ?まぁ海賊捕まえるのが海軍の仕事だから、その行動は間違ってない。間違っているのは仕事中にサボってうちの店に来ることだ。客として来るんなら拒む理由もないけど。

 

「あぁ!?テメェが砲弾をぶち込んだだぁ!?うちの店に手ぇ出してタダですむと思ってんのか!!」

 

輩じゃん。こわぁ、目イッちゃってるよ。まぁ何も知らない状態で、自分の宝ぶっ壊されちゃそりゃ怒るけどなー。

 

「はいはい、とりあえず君の処遇はうちのオーナーが決めるから。一緒に来てもらうよ。」

 

「...ん?お前が店長じゃねぇのか?」

 

「なんでそう思ったのかは知らないけど、僕のお店の立場は上から3番目だよ。ま、どうでもいいから早くきなよ。」

 

「おう!わかった!」

 

「じゃ、サンジ。こいつ爺さんとこ連れてくから、店はよろしく。」

 

「おーおー、殺されないよう祈っとけ、クソ麦わら野郎。」

 

「はっはっは、死んでたまるか!」

 

わざとじゃないとは言え、ちょっとは反省しろっての。はぁーあ、分かっちゃいたけど。これが船長か。

 

まったくもって、面白くなりそうだ。この麦わら帽子の少年に会う為に、遠路はるばるイーストブルーまで来たんだから。随分と時間がかかったけど。

 

ホールを出る際、客に一礼を忘れずに。左手を胸に、右手を腰に隠すように。随分とこの所作にも慣れたもんだな。見てみ?流麗な礼にみんな見とれてるぜ。中身が僕じゃなかったら最高なんだけどなー。

 

あ、ついでにラテアートと救急箱も持ってこ。

 

爺さんの部屋の扉をノックする。返事がない、ただの屍のようだ。もう一度ノックし、ガチャりと扉を開ける。

 

「爺さ〜ん、生きてる〜?え、ちょっと大丈夫?」

 

椅子から派手に落ちた状態の爺さんが居た。所々裂傷や擦り傷が出来てて痛そう。部屋も結構吹き飛んでるし。まぁでも生きててよかった。とりあえず机にカップ置いて、肩を貸して座らせてやらないと。

 

「...それで?こいつはなんだ。」

 

僕に手当されながら、カップを手に取りラテを微妙な顔でじっと見つめ、そのまま啜る爺さん。髭に泡ついてら。はいハンカチ。てかそれ飲むの手当て終わってからにしてくんない?微妙にやりずらいんだけど。

 

「俺はルフィ!海賊王になる男だ!」

 

おぉ!生で聴きたいセリフ上位がこんなところで聴けるとは!うへへ、幸せ〜。表情には出さないけど。

 

「海賊王だぁ?おいソラ、なんだってこんな奴を俺の部屋に連れてきやがったんだ。こっちは休憩中に砲弾くらってそれどころじゃねぇんだよ。いっつ、おいもうちっと優しくしねぇか。」

 

「うるさい、そもそも勝手に休憩なんてしなきゃ怪我もしなかったんだよ。ったく、明日っからどうすんのさ。それと、このルフィ?が砲弾ぶち込んだ犯人なんだって。さっき自首してきた。」

 

「...そうかテメェが「ぎぃゃぁあ〜!!脚がぶっ飛んでるぅぅー!!?」...やかましいわ!!」

 

あー爺さん片方義足だから。まぁ原作みたいな木の棒で作った簡易義足なんかじゃなく、僕が設計した高性能義足なんだけどね!耐寒性、耐熱性、対腐食性、耐衝撃性、防錆性を有した超硬義足だ。ちゃんと人の足を模してあるけど、さすがに肌の質感とか色とかは素材の関係上表現出来なかった。それでも、パッと見は義足に見えない様な材質を使ってるんだけどな。よく気づいたなぁルフィ。

 

ちなみにこの義足、いつもお世話になってるからって誕生日にプレゼントしたら、ちょっと泣きそうな顔してたんだよね。サンジがそれを指摘して半殺しにされてたんだっけ。うける。

 

「いや、その足は前からだから。ルフィが原因じゃないよ。そこは気にしなくていい。」

 

「なぁーんだ!あっはっは、よかった!」

 

「「よくねぇよ。」」

 

「大人気海上レストランバラティエのオーナーシェフに怪我をさせたことへの医療費。破壊された船の修繕費。本日いらっしゃったお客様へ不安を抱かせたことのメンタルヘルスケア費用に、お詫びとして1人1品ずつサービスしたスイーツの料金。〆て...」

 

「1年の、雑用タダ働き。それで手を打ってやる。」

 

うわぁ、輩がここにも居たぁ。まぁ元海賊だし間違いじゃないけど、ふっかけるなぁ。んでも、1年間もルフィに雑用されちゃ多分この店崩壊するわ。ちゃんと原作通りに最弱の海での最強(笑)が来てくれないと困るな〜。まぁ来るんだろうけど。よし、手当終わり!

 

「1年!?バカじゃねぇの、おっさん。」

 

「バカとは何事だぁ!!料理長ハイパー義足キィーーック!!!」

 

「ぎゃぁあああ!!!」

 

「何バカやってんの。」

 

 

&&&

 

 

「1週間にまけてくれ。」

 

「おい舐めんなよ、さっきのソラの話を聞いてなかったとは言わせねぇぞ。てめぇごときが1週間タダ働きしたくれぇで、雀の涙ほどの落とし前もつくめぇよ。」

 

いや、むしろ1週間もいてもらっちゃ困るのはこっちなんだけど。3日間でも大損失だと予想してる。

 

「いやだ!!1年も冒険出来ないなんて耐えられるわけがねぇ!よし、決めたっ。1週間で許してもらうと俺が決めた!!」

 

「決めたじゃねぇんだよボケナスがァ!!料理長ハイパー義足かかと落としぃぃーーー!!」

 

「ぐぇーーっ!?」

 

とりあえずゴタゴタが落ち着くまでは置物に徹しておこう。巻き込み事故、ダメ、ゼッタイ。

 

にしてもよくもまぁこんなコントみたいなことを素で出るよね。2人のテンションが高すぎてついていけないよ。精神年齢はいい歳だからねぇ、僕。あれ、それでも爺さんより下だ。なにやってんの、爺さん。

 

あ、待ってなんか床がミシミシ言ってる。これ、やばくない?下はホールに直結してるんだけど。

 

「ねぇ、ちょっとお二人さん。その辺りで...。」

 

「料理長ハイパードロップキィーーック!!!」

 

「ぎゃーー!!!」

 

あ、床抜けた。

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

キルシュトルテはランチの後で

「いててて...。」

 

「つぅ、クソったれがぁ。おいソラ、無事か。あーあーなんてこった、俺の店の天井が。」

 

「.......。」

 

いてぇ。こうなることを知っててちょっと離れたところに立ってたのに。びっくりしたからなのかなんなのか知らないけど、わざわざ腕伸ばして僕の美脚を掴んできやがったぞ、このゴム人間。ありえないんだけど。もぅまぢ無理マリカしょ。。。

 

「とりあえず、僕の脚から手を離して。」

 

「あ、わりぃ。咄嗟に掴んじまった。」

 

ったくもー、どうすんだよこれ。見栄え最悪超目立つし。一流レストランの天井に穴が空いてるなんて。客の心象も悪くなっちゃうよ。信頼ガタ落ち〜。

 

「てめぇのせいだ小僧!!」

 

「おっさんが悪いんだろ!?」

 

「そんなことよりオーナー!ソラさん!サンジの奴を止めてください!」

 

うわ、その件は僕に振らないで欲しい。せっかく知らないフリしてたのに。見えてなかったのに。というか、そんなことよりってなんだ。店の天井より大事なことなんてそうそうないぞ(いっぱいある)。

 

「おいサンジ、てめぇまた店で暴れてやがんのか...!」

 

「うるせぇなクソジジイ。こいつがボロ雑巾みてぇに床に倒れてんのは、こいつの自業自得だ。俺がどれだけ偉いだの、この店を潰すだの...。しまいにゃ出した皿にケチつけやがった。」

 

「黙りやがれっ!俺のレストランを潰す気かぁ!!」

 

「ぐっ!!」

 

あーあー。また傷こさえてら、サンジのやつ。毎日毎日蹴り合いとあっちゃ、生傷が絶えるはずも無いけど。誰が手当すると思ってんのかねぇ。

 

「誰が出した皿にケチつけようがてめぇの勝手だがな、勘違い野郎...!今日この日、てめぇに出した皿だけは!!堕とされるのは我慢ならねぇんだよ!!」

 

「...4番テーブル。チッ!テメェもさっさと出ていかねぇかっ!!!」

 

「ぎゃあっっ!!」

 

見てない見てない。なんにも見てない。オーナーシェフが客の海軍に脚を上げたなんて僕は知らない。見えてない。

 

「なーなー。あの大砲男、なんであんなに血塗れなんだ?それに、アイツらなんであんなに怒ってんだろうなー?」

 

「血塗れなのは、サンジがボコボコにしちゃったからだよ。さっき会ったでしょ、あの金髪の。サンジと爺さんが怒ってる理由は、僕らが作った料理にケチをつけられたからだよ。」

 

プロってのはどんな職種であれ、自分の仕事に誇りと責任を持っている。常に自分に厳しく、常に上を目指す生き物だ。だからこそ、自分か認めたモノにケチつけられるのは我慢ならないんだろう。ケチをつけた相手が素人なら尚更さ。

 

「ふーん。そんなに美味ぇのか?ここの料理。」

 

「あぁ、美味いよ。」

 

海上レストランバラティエは、爺さんとサンジと僕が作り上げた一流の店だ。美味いかと問われたら、10人中10人が美味いと即答するレベル。

 

でも一流レストランで料理の質がいいのなんて当たり前。だから、目を掛けるべきは料理以外の部分。それは従業員の質であったり(間違っても客に暴力をふるってはいけない)、店の外観や内装であったり(天井ぇぇ...)など、料理以外のサービスや対応の質を重視する。

 

「うんめへへへへー...。なんだこれゲロうま!もっと食いてぇ!なんて言うケーキだ!?」

 

「それミルフィーユって言うんだよ。ん?え、それそっちの海軍さんに出したヤツじゃ...。」

 

「「てめぇは何勝手に店の料理に口つけてんだぁぁー!!!!」」

 

「ぶへぇぇーー!」

 

またコントやってるよ。赫足と黒足(未来)のダブルキックなんてそうそうお目にかかれないぞ。すんごい貴重なシーンだ。脳内永久保存決定だな。

 

「たっ大変です!フルボディ大尉!!」

 

なんか外に死にそうな気配の人間が居るなぁ。しかも銃持ってるし。撃ちそうだし。

 

「申し訳ありません...船の檻から逃げられました!!海賊クリークの手下を!!!」

 

「ばかなっ!どこにそんな体力がある!?捕まえた3日前には既に餓死寸前だった!以降何も食わせちゃいねぇんだぞ!!」

 

うへぇ、終わりのない飢餓状態なんて、想像したくもないね。酷いことをするなぁ。海賊の末路なんてそんなもんだって言われたら何も言えないんだけど。

 

パァンっ!

 

「がっ...!」

 

キャーーー!!!

 

あぁ、今日は厄日だ。店に砲弾はぶち込まれ、爺さんは怪我をして、天井に穴が空き、海軍の人の血が流れる。床に血が着いちゃうよぉ...血って落ちにくいんだよな...。

 

「お客様、1名入りやしたァ。」

 

お前はもっとテンション上げて接客しろパティ。まだ客じゃないと決まったわけじゃないだろ。

 

「また俺の店で暴れようって輩じゃねぇだろうな。」

 

そう言わなかったらワンチャンあったかもしれないねー。いや、ねぇな。ルフィがいる所には厄介事が舞い降りるんだ。某死神メガネ小僧のように。

 

「ふぅーー。」

 

タバコっておいしいの?

 

コッコッコッ。

 

「なんでもいい。飯を持ってこい。ここは...レストランだろう!」

 

「いらっしゃいませ、イカ野郎。」

 

笑顔下手か。どっちかと言うとパティの方がイカっぽい顔してる気がする。気のせいかな?

 

「もう一度だけ言ってやる。よく聞け。俺は客だ、料理を持ってこい!」

 

人の頭に銃口を突きつけながら客だなんて。やれやれ、物騒だな(某病弱死神風に)。

 

「代金はお持ちで?」

 

「鉛でいいか?あぁ!?」

 

「金はなぃんですね?」

 

あ、殴った。椅子も砕けた。爺さんが唸ってる。うける。さぁパティ選手の猛攻が止まりません!うずくまった痩せ身の男に、ガタイのいいイカ顔が襲いかかる!イカ臭くなってしまいそうだ!!えーんがちょ。

 

パティによって追い出されたクリークの手下、まぁギンなんだけど。サンジが追ってったし、何か食べさせてあげるんだろうな。

 

でも今日さ、スイーツデーなんだよ。いつも出してる料理全く作ってないんだけど、大丈夫そ?

 

...まっ、いっか!なんでもいいって言ってたし!サンジが何を持ってくかは知らないけど、僕もカロリー爆上げ生クリームマシマシのシュバルツベルダーキルシュトルテでも作って持っていってあげよ〜!餓死寸前の顔色悪いおっさんがケーキ爆食いしてるのちょっとみたい、なんて思ってないよホントだよ。

 

 

&&&

 

 

「ほらよ、食え。今日はろくな材料残ってなくてな、簡単なチャーハンくらいしか作れなかったけど。」

 

「...ごきゅっ。んぐっ、んぐっ!...ううぅ、面目ねぇ、面目ねぇ...!!こんなにうまい飯、俺ぁ初めて食った...!!死ぬかと思った、もう、もうダメかと!」

 

「クソうめぇだろ。」

 

「やっほー。食後に紅茶と甘いものは如何かな、海賊くん?」

 

「「っ!!」」

 

おや、なんでそんなにびっくりしてるのかな。ま、いいや。とりまゆっくり食べなよ〜。

 

「あ、あんた誰だ...?」

 

「え?あぁ、マント着てるから分かんないのか。僕だよ、君の生き別れた弟さ!」

 

「は?」

 

「嘘ついてんじゃねぇよソラ。」

 

ばれちった。僕ってアルビノだから直射日光にめっぽう弱くて、外で歩く時は絶対に外套必須なんだよね。買い物とかする時は日除け傘も使ってるんだ〜。この黒い外套はお気に入り。裏地は紅でリバーシブルなんだ。

 

「ソッコーでばらすじゃん。いいけど。ほら、チャーハンだけじゃ喉に詰まらせるかもしれないし、かと言って今からスープを作ろうにもねぇ、ってことで紅茶とケーキ持ってきたよ。」

 

食べる?あ、食べるんだ、良かった良かった。なんか上からめっちゃ視線感じるけど。これは君に作ったわけじゃないから上げられなーい。

 

「ソラ、なんでここに。」

 

「なんでって。サンジならきっとこうするんだろうなーって思ったから。せっかく食べて貰うなら、少しでも満足して欲しいじゃん?まぁドリンクも無しとは思わなかったけど。まだまだ詰めが甘いよね。」

 

「仕方ねぇだろ、ろくな材料が残ってなかったんだから。つか、なんで紅茶なんだ?コーヒーもあったろ。」

 

そりゃーもちろん。

 

「このキルシュトルテには紅茶の方が合うから。」

 

に決まってるじゃん。え?チャーハンのことを考えろ?チャーハンにコーヒーも合わないだろいい加減にしろ。食後のドリンクなんだからいいじゃん、お口直しにさ(良くねぇ)。

 

「で、どうどう?美味しい?」

 

「...あぁ。凄く美味い。こんなに美味い飯も、ケーキも、食ったことがねぇ。ありがとう、ありがとう、お二人さん。」

 

「そ、良かった。」

 

「俺らの料理が美味ぇのは当然だ。」

 

あ、なんか上からロックオンされた。いいコック見つけた、とでも言ってるんだろうなぁ。サンジ、頑張れ。無駄な抵抗だろうけど。

 

「...っ!?な、なんだ?なんか悪寒が。」

 

「誰かに噂でもされてるんじゃない?」

 

「うわさぁ?はっ!そうか!さっき店に来てた麗しのレディが俺を呼んでるってことか!!」

 

麗しのレディから噂されて悪寒感じてるのやばくない?恋はいつでもハリケーン、だったっけ。盲目ハリケーンだね、分かるとも。

 

「良かったなぁーー!お前っ!飯食わせてもらえてよ!!死ぬとこだったもんなーあっはっは。おいそこのコック2人!!俺の仲間になれよ、海賊船のコックに!」

 

...あれ、なんか僕まで勧誘されてる。え、待ってめっちゃ嬉しい。え?(困惑)嬉しい(確定)。でもなんで?

 

「「あぁ!?」」

 

いや君らガラ悪いなほんとに。うける。

 

「へぇ、お前海賊なのか。なんだってこの店に大砲撃ったりしたんだよ。」

 

「あぁあれはな、事故なんだ。正当防衛の流れ弾ってやつだ。」

 

「まぁ正当防衛だろうが不当防衛だろうが損害を被ったことに変わりはないからね。ちゃんと費用請求させてもらうけど。」

 

「えーーっ。」

 

えーじゃねぇ。まぁ多分ルフィにこんなこと言っても意味ないんだろうけど。

 

「なんにせよ、この店に妙な真似はしねぇこった。ここのオーナーは元々名のある海賊団の船長であり、コックを務めてたのさ。」

 

「そーそー。赫足、って呼ばれてたんだよ。」

 

「あのおっさん海賊だったのか。道理で蹴りがすげえ筈だ。」

 

あー、ボロくそ蹴られてたもんね。そのせいで天井も壊れたし。

 

「そのクソジジイにとってこのレストランは宝みてぇなもんだ。」

 

爺さんにとってもだけど、サンジにとってもだよなぁ。ジジイと一緒に海上レストランを作るんだって嬉しそうに話してたの、今でもハッキリ覚えてる。あの頃のサンジはそりゃもう可愛かった。純粋無垢って感じで。

 

「この店の従業員もイカつい顔した連中ばっかりでしょ?爺さんに憧れて頼み込んで雇ってもらってるヤツらばかりなんだよ。だからみーんな腕っ節には自信があるみたいだよ。」

 

「へぇー。んじゃ、お前らもか?」

 

「僕らは、まぁそこそこ。あの爺さんが親代わりだし。」

 

サンジは特に、爺さんと毎日やり合ってるからなぁ。あの足技を身体で覚えて鍛えてるんだから、そりゃ強くもなるよね。

 

ちなみに僕もそこそこやるけど、爺さんから教わった(見て盗んだとも言う)技は少ないかなぁ。

 

「暴力沙汰なんて日常以外の何でもねぇ。根性無しどもはすぐに辞めていきやがる。まぁ、誰かさんのお陰で最近辞めるやつはめっきり減ったがな。」

 

いやぁ、一般人にこの環境は相当無理あるって。流石に。マジでアフターフォロー全開でいかないとバイトいなくなっちゃうから。本当に感謝してほしい。

 

「いやー、俺も1年雑用しろって言われて困ってんだよな。なっはっは。ま、いいや。なぁ仲間になってくれよ、お前ら。」

 

「それは断る。俺はこの店で働かなきゃならねぇ理由があるんだ。」

 

「いやだ!!!断る!!!」

 

「...な、何がだ。」

 

「お前が断ることを俺が断る!!お前はいいコックだから、一緒に海賊やろう!!」

 

草生える。無表情で耐えてるけど腹筋ネジ切れそう。理不尽の権化極まれりだな。

 

「おめぇは?一緒にやろう、海賊!楽しいぞ、なんてったって海賊は歌うんだ!」

 

歌。海賊じゃなくてもそれは出来る。って言う正論は効果なし。知ってる。

 

「僕も爺さんのことが心配だし、サンジが断るなら行かないよ。」

 

「えーっなんでだよ!!あのおっさん強いんだろ?」

 

「うん、強いよ。でも定期的に足のメンテナンスしなきゃだし。あの義足作ったの僕だから。」

 

「ぶーぶー。」

 

口でぶーぶー言うやつ初めて見た。まぁあの義足の設計図とメンテナンスの手順書は爺さんに渡してあるから、僕がやることなんて無いんだけど。

 

「話しわってすまねぇ。おれはクリーク海賊団のギンって者なんだが。あんた、海賊なんだろう?目的はあんのかい?」

 

「俺はワンピースを目指してる!グランドラインに入るんだ!!」

 

太陽を連想とする笑顔でそう言い放つルフィ。直射日光は苦手なのに、この無垢な笑顔の直射日光を浴びてしまった。感無量でござる。

 

「...コックを探してるくらいだ。人数はあんまり揃っちゃいねぇんだろ?」

 

「今こいつらで5,6人目だ!」

 

「「いや、やらねぇって。」」

 

ハモった。

 

「忠告しとく...。グランドラインだけは、やめときな。」

 

あぁ、そっか。クリーク海賊団は一応グランドラインに入ってたんだっけ。

 

「グランドラインについて何か知ってるのか?」

 

「いや知らねぇ、何もわからねぇ...!だからこそ怖いんだ!」

 

50隻の船群をたった1人に斬られておめおめと逃げ帰ってきたグランドラインの落ち武者か。まぁ世界最強と謳われるあの人に相対して生きて帰れるだけ儲けものだと思うんだけど。

 

ま、情報収集不足と運の悪さが露呈した結果だな。どんまい!

 

「あのクリークの手下ともあろう者が随分な弱気だな。」

 

「クリークって?」

 

...、情報ぇぇぇ。

 

なんやかんや話してたら、ギンが自分の船に戻るって言い出した。優しいサンジは船を用意してあげて(船代はサンジの給料から引いといていいのかな?)ギンはそれに感謝しながら帰って行く。

 

「それじゃあな、サンジさん。ソラさんも。あんたらは俺の命の恩人だ、本当にありがとう。飯、最高に美味かったよ。...また、食いに来てもいいか?」

 

うんうん、少しは元気が出たみたいで良かったね。やっぱり美味しい料理は人を笑顔にすることが出来るんだ。食べてもらって美味しいって笑って貰えたら、料理人にとってこれ以上の幸せはないよ。

 

「いつでも来いよ。」

 

「今度は仲間と一緒に来なよ、歓迎するから。但しその時はしっかり代金を支払ってもらうけど。」

 

「ははは、肝に銘じとくよ。」

 

あ、2階から爺さんが出てきた。

 

「おいコラ雑用小僧ここに居たのか!!雑用の分際でサボるとは何事だ!!!」

 

「げぇっ!おっさん!」

 

爺さんが置いてある皿を見て色々と察したらしい。でも何も言わない。優しいよね、素直じゃないけど。

 

「悪ぃな、あんたら。怒られるんだろう。」

 

おっと、このままだとサンジが食器を海に捨てちゃうな。ただでさえ備品はよく壊されて出費が痛いんだ。一芝居打とう。

 

「じゃーね〜、海賊のお兄さーん!つぎ目の前で美味しそうに飯食われたくなかったら、ちゃんと金持って客として来なよ〜!」

 

「...何っちゅう性格悪い設定だよ、それ。空腹のやつ目の前にして自分だけ飯食うなんざ鬼か。」

 

「いーのいーの。」

 

食器の為なら僕の犠牲も厭わない。一流レストランは食器さえも一流なのだ。高いんだぞ。

 

あれ、なんかみんな微妙な顔してる?ギンも想像したのかな。ばっかでー、ホントにするわけないじゃんそんなの。うける。

 

「ふんっ。サンジ!雑用!!テメェらさっさと働かねぇかっ!!ソラ!!テメェがメインだって何度言わせる気ださっさと来い!!」

 

「はーい。そんなに怒鳴ると血圧上がっちゃうよ?大丈夫そ?」

 

「誰のせいだっ!!」

 

サンジとルフィのせい。

 

「「おめーもだよ。」」



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ヤツらが来た!

「...おい、なぁ。さっきから言っとったろうもん。聞いとらんかったんけ?この耳、飾りか?んん?飾りっちゅーんなら要らんやろ。削ごか?」

 

「ぎいでまじだ、ごべんなざい。」

 

厨房には入れたくなかったんだ。だって絶対向いてないから。そもそも労働という概念の外側にいるようなやつだから。だから、せめてホールでサンジに押し付けたかったのに。

 

案の定皿は割り、客に提供するはずのスイーツを勝手につまみ食いし蕩け顔作り(その反応は素直に嬉しい)、フライパンで火傷してドリンクこぼしてクリームぶちまけるetc...ストレス値マッハなんだけど。イライラしすぎて前世で慣れ親しんだ方言まで出ちゃったよ。びーくーる。

 

「厨房には入ってくるな。ホールに行って、丁寧に、丁重に、お客様のご注文を聞いてくること。間違ってもルフィ、お前の食べたい物をオーダーするな。よかな?」

 

「むぁい。」

 

「よし、行け。」

 

(((やっぱこえぇぇぇ!!!)))

 

なんかホールがまた騒がしい。まぁ原因はルフィだろうけど、厨房を追い出してまだ30分も経ってないぞ。あ、そっか。麦わらの一味が勢揃いしてるんだっけ。ゾロとナミとウソップ。みたいなぁ〜。よし、行こ。

 

「ホール行ってくる。皆時間ずらしつつ適当に休憩とっといて。」

 

「「「了解です!」」」

 

ホールについてまず目に入ったのは、爺さんの胸ぐらを掴むサンジだ。あ、一本背負いされた。は?ちょっと待ってよ、テーブルぶっ壊れたんだけど。

 

麦わら一味が座ってたテーブルだから良かったものの(良くない)、他の客ならシャレにならんかった。どんだけ詫びなきゃいけなかったのやら。

 

マジでいっぺん説教要るよね。なんで上2人の喧嘩のせいで僕の仕事が増えるの?おかしくない?自分で壊した備品の損失計算とか発注とか自分でやってくれないかな。あと仲裁するのめんどくさいんだけど。無視してたらソラさん止めて下さいよって誰かしらに言われるし。知らねぇよこっちは厨房仕切んので手一杯なんだよ。

 

「お客様。大変ご迷惑をお掛けいたしました。どうぞあちらの席にご移動頂き、引き続き憩いのひと時をご堪能ください。」

 

喧嘩を傍観していた3人を視界におさめ内心興奮し、されど表情にはおくびにも出さないよう努めつつ、あくまでお客様として接する僕を誰か褒めた方がいい。ミーハーで悪いか。

 

「あら、貴方気が利くわね。迷惑ついでに無料にしてくれると嬉しいんだけど?」

 

「おいここはレストランなんだろ?飯と酒はねぇのか。さっきから甘ぇもんばっかり出てきやがる。」

 

「良いじゃねぇかたまには!俺は好きだぜ、このケーキなんて最っ高!そしてお前ぇはここぞとばかりに無料で食おうとするなよナミ!」

 

3人は僕を見て、それぞれ手(1人は頭にものっけてる)に持っていた料理と一緒に席を移動していく。

 

「お褒め頂き恐縮でございます、お嬢様。本日、すべてのお客様には1品無料で品物をご提供させて頂いております...が、お客様方には特にご迷惑をかけたご様子。お支払いにつきましては、私のできる範囲で対応させて頂きます。どうぞ、他のお客様にはご内密に。」

 

パチンっ、とウインクひとつ飛ばして、人差し指でしぃーっと。接客は笑顔で愛想良く、基本中の基本だ。間違ってもパティみたいなイカ顔でやっちゃダメ。

 

一筋縄じゃ行かない客には、貴方にだけとか、内緒で、とかそういった特別な対応をすれば割と簡単に方が着く。

 

「貴方最高!綺麗な顔してるし!分かってるじゃない、言ってみるもんね!」

 

よし、1人目はクリア。

 

「剣士様、ご期待に添えず大変申し訳ございません。本日はスイーツデーとなっております故、多種多様のスイーツをご提供させて頂く日でございます。もし宜しければ、お客様のお望みの品を今からお作りいたしましょうか?少々お時間を頂くことになりますが、如何なさいましょう。」

 

「へぇ、良いのか?んじゃあ、テキトーに酒とつまみを頼むぜ。」

 

「かしこまりました。」

 

はい2人目もクリア。シェフのおまかせ気まぐれおつまみセットね、了解了解。ゾロって甘いもの苦手なんだっけ?塩系スイーツは食べれんのかな?

 

「長鼻様、実はその品は私が作らせて頂いております。お客様にご満足頂けたようで、私も大変嬉しく思います。」

 

「へぇー!お前が作ったのか〜すんげぇなぁ〜。ってぅおい!!誰が長鼻様だよ!?シタテに出りゃいいってもんじゃねぇだろがっ!」

 

えー、だってその格好じゃ狙撃手なんてわかんないし。せめてパチンコ持っててよ。

 

「失礼いたしました。お客様に置かれましては、なんとお呼びすればよろしいでしょうか?」

 

「よぅしよく聞けぇ!俺こそは狙撃の達人、キャプテーン ンゥウソップ様だ!!さっきも俺の船に砲弾を打ち込んできたバカがいたが、俺様が撃った砲弾で相殺したのさ!」

 

やってないんだろうけど、実際できるから凄いんだよなぁ。

 

「それはそれは、お見逸れいたしました。それではウソップ様とお呼びいたします。」

 

「あ、私のこともナミでいいわよ!」

 

「ゾロだ。」

 

「かしこまりました。ご挨拶が遅れてしまい、大変申し訳ございません。私、ソラと申します。以後、お見知り置きを。」

 

恭しく一礼をば。

 

さて、あとは身内の問題だな。クルりとターンし、爺さんとサンジを見据える。

 

「壊した分のテーブル費用、お客様にこ迷惑をかけた分のお詫びのスイーツ1品ずつと、その他お支払いにおける店側の負担額。それぞれ爺さんとサンジの給料から引いておくからそのつもりで。」

 

「は、おい待てよっ!俺は投げられた被害者だろうが!ソラだって見てたろ!?」

 

「まてっ!オーナーである俺の給料をお前が決めるのか!?」

 

「うるさい。じゃれ合いの原因を挙げたらキリないけど、喧嘩両成敗だから。自分がやった事の責任を取るなんて、今どき子どもでも出来ることだよ。それとも、いい年した大人が子どもにできるような事さえ出来ないと言うのであるならば、考えてあげなくもないけれど?」

 

「「.........。」」

 

よし、大人しくなったな。こんだけ言われりゃ少しは懲りるだろ。これで僕の仕事も減る。喧嘩の仲裁とか備品の注文とか、現代社会じゃそうそう必要ない業務だし。

 

「なぁなぁ、あいつ。ソラだっけ?子どもなのにすげぇ肝座ってるよな。イカつい顔の年上相手に啖呵切ってるぜ。菓子もうめぇしよぉ。」

 

「えぇ、相手はオーナーと副料理長なのに。2人はあの子の尻に敷かれてるのね。それとアレをじゃれ合いって言えるの凄いわ。」

 

「今日のメインシェフはアイツらしい、菓子作りが得意なんだろ。まぁ俺は酒が飲めりゃ何だっていい。」

 

そういうのはさ、本人のいない所で言うんだよ、普通はね。あと身長のせいで子どもと思われてるよ。時と場合によってはこの見た目も利用するけど、今後のためにも早めに誤解を解いた方がいいなー。

 

「恐縮でございます。...が、私はこれでも19ですよ?」

 

「「えっ!!年上!?!?」」

 

「...マジか、タメかよ。見えねぇ。」

 

めっちゃ驚いてる。そんなにビックリすることかな。失礼しちゃうっ、プンプンっ!やめよ、自分で言うと気持ち悪いや。くっ、せめて鏡があれば...(リアルナルシスト)。

 

「それではゾロ様、ナミ様、ウソップ様。私は厨房に戻らせて頂きます。御用がございましたらベルでお呼びください。ゾロ様、お食事に関しましては、お出しするまで少々お時間を頂きます。ドリンクは白ワインをご用意する予定ですが、直ぐにお持ちいたしますか?お食事と併せてお持ちいたしますか?」

 

「飯と一緒でいいぜ。テキトーに果物つまんでるからよ。」

 

「かしこまりました。」

 

一礼し、厨房へ。四方八方から熱い視線を向けられる。流し目で見て、ニコリと微笑む。あ、撃ち抜かれた人が多数。胸を抑えたり鼻血出したり。それ、床に垂らさないでね?

 

「魔性ね、彼。」

 

「「おめぇもな。」」

 

 

&&&

 

 

「んんっ、コホン。先程は失礼。お詫びにフルーツのマチェドニアを召し上がれ。ご一緒にグランマニエもどうぞ、お姫様。」

 

「わあっ!ありがとう!優しいのね?」

 

「そんな。」

 

受け取ったオーダーを少しでも早く提供できるように。何か問題が起きた場合、直ぐに対応できるように。という建前の理由から、厨房に最も近い席に移動させた麦わらの一味。

 

え?建前じゃない本当の理由?そりゃあ少しでも近くに彼らの存在を感じていたいからだよ!!原作だよ?ワンシーンたりとも見逃したくないよ!!当たり前だろいい加減にしろ!!

 

ミーハー根性逞しい?そんなに興奮して厨房で仕事なんて出来るのか?

 

問題ない、プロだから。伊達に長年バラティエでNo.3やってないんだよ。こうしてる間にもシェフたちに指示を出しつつ、僕は僕でゾロに出す品を作っているのだ。

 

このお店を開いてから今まで原作キャラは結構な数、来賓したからな。割と慣れてる。まぁ主人公メンバーたちだから、今までで1番嬉しいんだけどね!

 

ところであのマチェドニアってバラティエ負担なの?サンジのポケットマネーから出てんの?まぁいいや、少なくとも僕に影響はないはず。

 

「おいっ!俺たちにはなんの詫びもなしか!男女差別だ訴えるぞこのラブコック!!」

 

「てめぇらにゃ粗茶を出して1品無料でサービスしてやってんだろうが。十分すぎる詫びだぜタコ野郎。むしろ礼を言うべきだろうが!」

 

「お!?なんだやんのかコラ。手加減しねぇぞ、やっちまえゾロ。」

 

「てめぇでやれよ...。」

 

ウソップ の 攻撃 ! 僕 の 腹筋 に 大ダメージ!

 

ウソップのこのキャラやばいよね。何がやばいって、顔芸も言葉のチョイスも三下感も全部やばい。愛されるバカってこんなキャラを言うんだろうね。でも血筋的には戦闘的潜在能力が高杉問題。

 

「お待たせいたしました。ゾロ様にはこちら、''海老とホタテのカルトッチョ 魚卵ソース仕立て''をご用意させて頂きました。白ワインと一緒にお召し上がりください。」

 

「へぇ、こりゃあいい!美味そうだな。」

 

「ウソップ様には僭越ながら''スフレパンケーキ 王乳クリームを添えて''をご用意させて頂きました。こちらはアッサムティーをベースにしたミルクティーと一緒にお召し上がりください。」

 

「うぉぉまじか、サンキューソラ!!ラブコックとはえれぇ違いだな!!」

 

あー、まぁサンジは美人な女性に弱いから。あの年頃だから仕方ないっちゃ仕方ないんだけどね。行き過ぎてるとは思うけど、まぁサンジだし。なんなら今もナミに手玉に取られてるし。ナミの分は無料じゃないよ、サンジが払うだけで。

 

あとさっきからルフィが席についてお茶飲んでるのは何?こんなに堂々としたサボりってあるの?かかと落とし食らってるし。うける。

 

 

&&&

 

 

数日たったある日の昼時。客の出入りも激しくなり、忙しさもピークに差し迫る時間帯。そんな中、何やらホールが騒がしい。なんか半死人の大男をギンが持ってきた。あれ?ホールが騒がしいってココ最近で何回思った?つか、騒がしくない時、あったっけ?あれれー?おかしいぞぉ〜?

 

と、某眼鏡死神少年の真似をしてみたものの。事件は過ぎ去ってくれない訳で。どうせ最弱の海の覇者さん(笑)だろ?ギンに連れてこいって言ったもんねー。律儀にちゃんと約束守ってくれるところ、良い奴だよなギンって。

 

さて手を洗って、ある程度拭ったら、食事を持ってホールへ向かいましょ。

 

「おねがいじまず...!残飯でも、なんでもいいですから...!!」

 

「いらっしゃいませ、お客様。こちら、''カルボナーラ風ホワイトソース&チーズリゾット''でございます。赤ワインと一緒にお召し上がりください。熱いので十分にお気を付けて。」

 

「「「...な!!?」」」

 

「...すまんっ!!」

 

「何やってるんですかっ、ソラさん!!」

 

「今すぐに飯を取り上げねぇとっ!」

 

「いやっ、その前にソラちゃんを厨房に戻さねぇと!ここにいちゃ不味い、狙われちまうっ!」

 

おうおう、なんだいなんだい。皆して。金を持って、腹を空かせてやって来た。つまりは客だろ?そいつがどんな人間だろうと、例え人間じゃなかろうと。僕が客と認めたんだ。客に料理を振る舞うのは当たり前だ。

 

あ、なんか腕伸ばされてる。やっべ死ぬかも。ちょっと後悔〜。

 

「うぐぅ...!」

 

僕氏、現在進行形でゴリラに首を掴まれてるの巻。次回!ソラ、死す!デュエルスタンバイっ!じゃねぇんだわ。いやちょ、待って。まじ苦しいんだけど、そろそろ離して?長くない?手洗うんじゃなかったよぉ。目ぇイっちゃってるってこいつ。やばいよ、こいつさっきリゾット手づかみで食べてたやん。あっ、意識したら首がちょっと変な感触してる気がする。もーいや。

 

「「「あぁっ!ソラさん!」」」

 

「てめぇっ!!その手を離しやがれクソゴリラァ!!!」

 

向かってくるサンジに向かって僕を投げつけるクソゴリラクリーク。こいつ、僕の首の外周丸々掴んでやがったぞ。やばたにえん。もう捕まらんとこ。きちゃないし。

 

「おいソラっ、無事か!?」

 

「けほっ、けほ。んんっ、うん。割と平気。」

 

首んとこ跡残るかもしれへん。やんだぁ、爺さんに心配かけちゃう。心配ってか殺気立ってるんだけど。やば、ちょ、一旦落ちケツ。いや落ち着け。

 

「話が違うぞドン・クリークっ!!この店には手を出さないって条件であんたをここへ案内したんだ!!!あの人は俺たちの命の恩人なんだぞ!!!」

 

「あぁ、美味かったよ。生き返った気分だぜ。」

 

「ギャァァぁーー!!」

 

「ギンっ!!手ぇ離せお前ぇ!!」

 

おぉ、ルフィが吠えた。友達とか仲間に優しいもんね、ルフィは。あれ?僕への心配は???あ、なんか目から汗が。おかしいな。

 

「いいレストランだ、この船を貰う。ついでだ、お前も俺のコックにしてやる。喜べ。」

 

「...え?」

 

え?



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

シリアスって何?おいしいの?

割と主人公がふざけまくってます。が、顔面の皮がくそ厚なので誰の目にも無表情に映ってます。雰囲気でサンジと爺さんは何となく分かってるかも。


大勢の人が叫び惑い、いち早く逃げ出そうと出口に向かっている。まぁ相手は海賊、平均懸賞金額300万のイーストブルーでは破格と言っていい1700万の賞金首だ。怖いのは当然。

 

本来なら全員食い逃げ未遂でとっ捕まえる所だが、まぁ料金は後払いでもOKだ。いつかきっと返しに来い、立派な客になってな(イケボ)。

 

「まずは、俺の船に乗ってるやつらに与える飯を用意してもらう。100食分だ。既に餓死者も出ている。早急に出せ。」

 

「船を襲うとわかってて、俺たちが飯を用意すると思ってるのか!?断る!!!」

 

カルネが叫ぶ。ん?お前割と初めてのセリフじゃね?とか言ってる場合でもないでも無い。

 

「断るだと?勘違いはするな、俺は注文やお願いしてる訳じゃねぇ。これは命令だ!!!誰も俺に逆らうな!!!」

 

くそぉ...ちきしょおっ...!!なんて事だ。なんでこんな目に...っ!

 

あと数日前に来ていたら...!スイーツデーだったのに!!生クリーム増し増しの超ホップホイップレインボー10段ケーキ(3色足りない)を用意して「はい、100食分。残したら殺すぞ?♡」って渡したかったのに!!!

 

「...!!すまねぇ、すまねぇソラさん、サンジさんっ!俺ぁ、こんなつもりじゃあ...!」

 

「逃げてください、ソラさんっ。」

 

え?逃げる?バカ言っちゃいけねぇ。1度向き合ったら僕は!!!(原作から)逃げない!!!

 

「逃げろだと?頭の足りんやつらだ。言ったはずだぜ、そいつはもう俺のコックだ。俺の船に乗り!!生涯を賭して俺に腕をふるい続ける!!逃がすわけねぇだろう!」

 

や、それムリ。生理的に無理。顔と性格が。あと1700万程度でいきがんなよ。なんなら1700万って別にイーストブルー最高額でもないし。そんなんだからグランドラインに入って1週間で逃げ帰ることになるんだよ。

 

「何言ってんだ!!ソラは俺と一緒に冒険するんだ!!」

 

それまだ言ってたの。個人的には行きたいんだけどねー。いやまぁ最後はYESって言うんだけど。サンジ次第だよね。

 

などど。内心をおくびにも出さずに爺さんと一緒に厨房へ。わっ、肩に手まわされた。ごめんね、心配かけ...ひぇ、こあいよぉ(爺さんが)。こあい顔だよぉ(爺さんが)。ごめんて、今度はちゃんと避けるから。

 

「おい待てサンジ、てめぇどこに行く!!」

 

おやサンジも食事の準備かな。やっぱ似てるよな!!この2人!!

 

「厨房さ。あと100人分の飯を用意しなきゃならねぇ。」

 

「「「「!?!?」」」」

 

「ほう、お前は少しは利口のようだな。それでいい。」

 

その瞬間、従業員の皆が一斉にサンジに銃口を向ける。お前ら打ち合わせでもしたのか。

 

「食いてぇやつには食わせてやる!コックってのは、それでいいんじゃねぇのか!!」

 

それな。あっ、パティが殴った。

 

なんかごちゃごちゃ言い合ってるけど、ぶっちゃけもう爺さんと用意しちゃったよ、テヘペロ。はっ!?従業員満足度が下がる!?まぁこの店に労組なんて無いし、爺さんと一緒に働きたいやつだけついてきたら良いか。ドライに行こう、そうしよう。

 

は?ちょ、嘘だろ天井の次は扉かよ。ふざけんなよパティ!!(激怒)店を守るためのちいせぇ被害?誰が小さいだよ!!(錯乱)

 

「クソまずいデザート出しやがって。最低のレストランだぜ。」

 

は?だってお前客じゃねぇもん(ガチギレ)。てかキンピラ眩しっ。噛んだ、キンピカ眩しっ!お前ごときで眩しいんなら、かのAUOはどれほどなんだよ!

 

「鋼の鎧だと!?小細工を...畳み掛けろぉ!」

 

「鬱陶しいわぁ!!!!!」

 

身体中から弾丸。ゴ、ゴールデン...ボンバー、だと...?

 

「虫けら共がこの俺に逆らうな!俺は最強だ!誰よりも強い鋼の腕!!誰よりも硬いウーツ鋼の身体!全てを破壊するダイヤの拳!全身に仕込んだあらゆる武器!50隻の大艦隊に5千の兵力!」

 

「俺が食事を用意しろと言ったら黙ってその通りにすればいいんだ!!誰も俺に!!逆らうな!!!」

 

...、演説終わり?はい、じゃあ評価伝えますね。ガキ臭いです。小物臭いです。いえ、もはや臭いです。

 

自慢するところ、そこ?って感じだし。鋼の装備とか沢山の武器とか人手とか船とか、頑張って集めたんだね〜とは思うけど。イコールお前自身が凄いって言われても、そうか??ってなるわ。

 

「これで100食分はあるだろう。さっさと船に運んでやれ。」

 

「「「オーナー・ゼフ!!!?」」」

 

「ぜ、ゼフだと...!?」

 

あれ、オーナーが誰か知らずにここに来てたの?情報ェェェ。そんなんだからグランドラインに入って1週間で(ry。

 

「どういうおつもりですかオーナー!!」

 

「船にいる奴らに食事を与えたら、この船が乗っ取られます!」

 

「それだけの戦意があればな。なぁ、グランドラインの落ち武者よ。」

 

「「「...え!?」」」

 

だから情ほ(ry。

 

まぁ普段料理と喧嘩ばっかりのやつらだし、海賊の情報に疎いのは仕方ないか。ココ最近の話だしなー、こいつらが帰ってきたの。むしろ爺さんはどうやって仕入れてるんやろ?あれ、僕が教えたんだっけ?

 

「まさか貴様...赫足のゼフ...!」

 

戦闘において、一切手を使うこと無く勝利する蹴り技の達人。一蹴りで岩盤を砕き、鋼鉄にさえ跡を残す。蹴り倒した敵の血を浴び赫く染まった靴の様子から付けられた2つ名。それが赫足。

 

超かっけぇ。

 

「しかしどうやら、貴様は既に生命線を失っているらしい。片足を失うということが、貴様にとっては戦闘不能を意味するということは想像にかたくない。」

 

「「...それはどうかな?」」

 

「!?なんだと!」

 

え、なんでみんなこっち見るの。僕が説明するの??

 

「爺さんの義足は、この世界における技術の最先端を独走してる。特殊素材を使ったその義足はあらゆる耐久性を備え、より人体構造に近い稼働域を誇る。爺さんが現役の頃にその義足を得ていたならば、2つ名は赫足じゃなかったかもね。だって、爺さんの足より高性能だし。」

 

「舐めんじゃねぇソラ。たしかにテメェの義足はすげぇが俺の足にゃ適わねぇよ。」

 

「まぁメンテナンスの手間があるからね。」

 

「そういうこと言ってんじゃねぇ。性能の話だ。」

 

えー。そうかなぁ。ってなんか皆びっくりしてる。どしたん、ハトがアハトアハト喰らったような顔して。(ダジャレじゃないよ)

 

「テメェの義足、ってのはどういうことですか?オーナー。」

 

「あん?あぁ、この義足はソラが作ったもんだ。なんだ、言ってなかったか?」

 

「「「えぇぇーーー!!!」」」

 

...あれ?マジで知らんかったん?え、だって爺さんの誕生日に盛大にお祝いして、皆が居る中でプレゼントしたよね。小さい頃の話だけど。

 

あ、そっか。プレゼントはしたけど、自分で作ったものとは思われてなかったのか。まぁ作ったって言うより、設計図を書いて材料提供しただけなんだけど。僕、理解・分解はできるけど再構築は出来ないんだよね〜。どこのスカーだよ!!いいだろスカー格好良いだろ!!

 

「ハハハハハ!!つまりお前を手に入れることで、俺は料理人と技術者を同時に得るって訳だ!!こりゃ良い!!」

 

こっち見んな。きも。誰がお前なんかの船に乗るかよ。将来性ないし。...ないよね?

 

「だからお前ぇ!何度言ったらわかるんだ!ソラは俺の船に乗るんだ!!」

 

全力で話ややこしくするの何なの?べ、別にっ!誘われて嬉しいなんて思ってないんだからねっ!うそです。ちょーうれぴっぴのひこよちゃん。

 

でもとりあえず爺さんの傍に寄っとこ。クソゴリラに求愛(誰もそんなことは言ってない)されても迷惑だし。助けてじぃじ〜。

 

1年間グランドラインを無傷で生き抜いた男の航海日誌をよこせ〜って言ってる。わざわざ相手にお伺いを立ててるの草。奪えばいいじゃん、海賊なんだから。お前らどうせモーガニアだろ?

 

まぁ奪えるのならの話だけど。

 

「ゼフの航海日誌を手に入れ、俺は再び海賊船隊を組み!ワンピースを掴みこの海賊時代の頂点に立つのだ!!」

 

「ちょっと待て!海賊王になるのはおれだ!」

 

「なっ...引っ込んでろ雑用っ!殺されちまうぞ!」

 

どっちが?

 

「ひけないね。ここだけは!!」

 

おおおぉ!!ここ!!このセリフも好き!!!かっこいいよな。

 

「...さっきからコバエが鬱陶しいな。聞き流してやっても良いんだが。」

 

煽りだ〜。どこのアンチだ、てめぇ?

 

「良いよ聞き流さなくて。おれは事実を言ったんだ。」

 

煽り返しだ〜(無自覚)。なんだコイツらネット民か?

 

「遊びじゃねぇんだぞ。」

 

おまいう〜。

 

「当たり前だ。」

 

煽りの応酬が続く中、ふと聞こえた面白会話が。僕こっちのギスギスやだ〜。そっち混ざりたーい。

 

「おい、聞いてたろ?あのクリークが渡れなかったんだぞ!な、悪いことは言わねぇ。やめとこうぜグランドラインなんて。」

 

「うるせぇなぁ、お前は黙ってろ。戦闘かよルフィ、手ぇ貸そうか。」

 

どどん!とくらぁ。ゾロはともかく、あんなに情けない発言してたウソップまでキメ顔してるし。うける。

 

「ゾロ、ウソップ。居たのかお前ら。いいよ座ってて。」

 

いや仲間にまで煽り〜。しかも無自覚。ルフィって時々煽りスキル高くなるよね。そして煽られた敵は簡単にピキるって言う。

 

「ハッハッハ!そいつらはお前の仲間か!随分ささやかなメンバーだな!」

 

いや、戦闘力1が5千人集まったってねぇ。麦わら(こっち)は戦闘力1000が4人だぞ!(足りない)

 

「何言ってんだ!あと3人いる!!」

 

「おい、お前それ俺を入れただろ。」

 

「僕も入ってる。」

 

あ、爺さんにルフィからも隠された。ひとつの身体で2つの視線をブロック!流石はかの赫足だな(関係ない)。

 

なんか怒気を感じる。あ、叫びそう。()ゴリラだ。

 

「舐めるな小僧っ!!!情報こそなかったにせよ、兵力5千の艦隊がたった7日で壊滅に帰す魔海だぞ!!!」

 

めっちゃどうでもいいけど、壊滅にKissってフレーズが浮かんだ。

 

さっきから頭の中が一生シリアスにならない。仕方ないじゃん。新世界以降に出てくるキャラの戦力を知ってたら誰だってこうなるでしょ。なんだよ10億とか20億とか。トータルバウンティじゃないんだぜ?馬鹿かよ。

 

ザワザワ...ザワザワ...(カイジ)

そのザワザワがモブたる所以だ!(ヒロアカ)

 

この2つの組み合わせ強くね?

 

「いいか貴様ら。俺は今からこの食料を部下共に食わせ、ここへ戻る。死にたくねぇやつはその間に逃げるといい。俺の目的は航海日誌とこの船、そしてお前だけだ。」

 

だけって言う割に結構持ってくな。つか僕、逃げたらいいんじゃ?絶対に捕まらない自信あるよ、マジで。

 

はっ。死にたくないやつは逃げろ=死ぬわけないと思ってる僕は逃げられない。なんだこれ、あのゴリラ逆に頭良い!?(良くない)

 

「すまねぇ...ソラさん、サンジさん!俺ぁまさか、こんなことになるなんて...!!」

 

「おい下っ端。テメェに謝られる義理はねぇぞ。この店のコックがそれぞれ自分の思うままに動いた結果だ。」

 

それなー。僕はちょっと後悔してるけど。割と長い間、不細工ゴリラに見つめられたらそりゃあSAN値減るでしょ。

 

「オーナー!!あんたサンジの肩を持つなんて何事ですかっ!!オーナーの大切なこの店を、あいつは潰す気なんですよ!?」

 

「なぁサンジ!これを機に店を乗っ取ろうとしてやがんのか、とうとう頭いっちまったかどっちだ!?」

 

「黙れボケナス共!!テメェら1度でも死に狂う程の空腹を味わったことがあんのか。広すぎるこの海の上、食料や水を失うことの恐怖、後悔、絶望を知っているか!?」

 

重みのある言葉だ。過去にあんな経験をしてるんだから、そりゃ説得力が違うよな。金はあるのに、食えない、飲めない。なんて皮肉なものだろう。

 

「ふんっ。過ぎたことをグチグチ掘り返す暇があるのなら、さっさと裏口から逃げやがれ。」

 

爺さんはやっぱり優しいな。大切な自分の宝を奪われる可能性を上げてまで、従業員の命を考えてくれてる。

 

でも、爺さんに憧れてここで働いてるやつらだ。今更逃げる、なんてねぇ?

 

「おれは残って戦うぜ...!やられっぱなしじゃ気がすまねぇんだ。」

 

「おれもだ。ここは俺の働く場所だ。」

 

「どーせ他に行く場所もねぇ!」

 

そしてこいつらを知らないギンには、さぞ理解できない言動に映ったことだろう。

 

「なっ、何言ってるんだあんたら!!首領の力は見たはずだ!逃げた方がいい!!」

 

「おいギン。言っとくが、腹を空かせたやつにメシを食わせるまではコックとしての俺の正義。だがこれから来るやつらはただの略奪者。そいつらを俺がぶっ殺そうが文句は言わせねぇ。それが例えてめぇでも容赦なく殺すぞ。」

 

おおぉーサンジもかっけぇ。この師弟は格好良さも伝授してるのか。...僕は?

 

「...ソラさん、あなたは逃げた方がいい!クリークに捕まったら、もうこの店に居られない!」

 

「そうですソラさん!今ならまだ何とかなるかもしれない、裏口から早く!」

 

「え、嫌だけど。」 「「必要ねぇ。」」

 

あ、爺さんとサンジと被っちゃった。まぁでも全然無理な相談だな、それは。だってルフィの戦闘とか見たいし。

 

「こいつはテメェらが心配する様な相手じゃねぇんだよ。」

 

やめて爺さん、髪崩れるから。ぐしゃぐしゃしないで。

 

「グランドラインの落ち武者に、グランドラインからはるばるイーストブルーまでやって来たソラを捕まえられる訳ねぇだろ。」

 

おぉ〜サンジもよく覚えてるね。出会った当初に1回言っただけなのに。爺さんには色々説明したけど。説明して、厄介者だって知ってるのに傍に置いてくれてる。

 

「「「えぇっ!?!?」」」

 

うん。これは言ってない。出来ればサンジにも言って欲しくなかった。

 

「えぇーー!!ソラ、お前グランドラインに居たのかぁ!」

 

「居たねぇ。でも今は何も教えてあげないよ?」

 

なんでも知ってるわけじゃないし、ここで教えたらつまんない。

 

「いいさ!自分で見て冒険するから楽しいんだ!」

 

「分かってんじゃん。」

 

そう言うと思ったけどね。

 

「...ソラさん、あんたはあんな理不尽な場所に居たってのか...!50隻の艦隊をたった1人で殲滅するようなやつが居る海に!!」

 

「「「ばっ、ばかな!!!」」」

 

「たっ、たった1人に海賊艦隊が潰されたァ!?」

 

さっきからよくハモるね。仲良しかよお前ら。そのハモリがモブたる所以だ!(パクリ)

 

そして正確には潰されたじゃなくて斬られただね。

 

「訳が分からねぇ...夢か現実かも判断がつかねぇんだ。人を睨んだだけで殺せるかと思うような、鷹のように鋭い目をした男だった...あんたなら、何かわかるかい?」

 

「そうだねぇ。グランドラインに入ったばかりのルーキー船を、1人で潰すことが出来るやつらは結構いると思うけど。鷹のような目という条件が着くのなら、僕は1人しか知らない。」

 

「世界一の剣豪と謳われる、鷹の目 ジュラキュール・ミホークだ。」

 

「「「た、鷹の目!?」」」

 

「って、誰だそりゃ。」

 

「さぁー誰だろうな。」

 

うん。お前らはそうだと思った。仮にもグランドラインに入るって言うんなら、海軍将校とか七武海とか四皇は抑えておいて欲しいけどな。

 

「そ。剣士であれば誰でもその人を目指し自分を鍛える。剣豪の頂点に君臨する男だよ。そうですよね、ゾロ様?」

 

「...もう様なんて要らねぇよ。ソラの言う通り、俺が探してる男がそいつだ。」

 

様付けしなくていいんだって。客じゃない宣言なのか、身内と思われたのか。どっちや。

 

「艦隊を相手にするくらいだ。お前らに深い恨みでもあったんだろ。」

 

「いやいやサンジ、そんな大層な理由なんてないと思うよ。さっきも言ったけど、いくら数が多かろうとルーキーを下すなんて訳ないさ。かの大剣豪ならね。」

 

「昼寝の邪魔でもしたとかな。」

 

「...マジかよ。」

 

ギンが吠えるが、まぁそんなもんだよ。獅子はウサギを狩るのに全力は出さない。コスパ悪いから。

 

「これで俺の目的は完全にグランドラインに絞られたな。あの男がそこに居るんだ。」

 

「馬鹿じゃねぇのか。お前ら真っ先に死ぬタイプだな。」

 

でもサンジも、グランドラインに行ったらオールブルーを確実に見れるって言われたら楽しんでいくと思うけど。結局は同じ穴の貉だよね。

 

「馬鹿は余計だ。剣士として最強を目指すと決めた時から命なんてとうに捨ててる。この俺を馬鹿と呼んでいいのは、それを決めた俺だけだ。」

 

やばいゾクゾクする。なんなのここ、かっこいいのオンパレード?バーゲンセール?なんでそんなにポンポン名言が出てくるの?こんなに安売りしていい訳?いいんだよ!!!(急に)

 

「あっ、おれもおれも!」

 

「勿論、おれも男として当然だ。」

 

「おめぇは嘘だろ。」

 

柄で殴った。ゴッって言ったよ。うける。

 

「けっ、バカバカしい。」

 

秒で馬鹿って言ってんじゃん。カタカナ表記ならいいと思ってんのか?頭いいなサンジ!!(良くない)

 

なんか雄叫びが聞こえる。クリーク海賊団が復活したぞ。まぁ数だけ数だけ。モーマンタイ。てかその奥からやばい気配がががが。

 

あ、ガレオン船が真っ二つにされた。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ついに戦闘!!

なんか筆が進むので連続投稿です。すげぇ。そして早くもお気に入りして下さった方々。感謝感激雨嵐。


うーん、半端ねぇ。さすがは剣豪の頂きに君臨すると言われるだけはある。強すぎる気配がビシビシ伝わってくる。

 

「終わりだ...ちきしょうっ。なんの恨みがあって俺たちを付け狙うんだテメェっ!!」

 

「ヒマつぶし。」

 

ひつまぶしかぁ。美味しいよね。とかふざけてる場合じゃない。今はクリーク海賊団に目がいってるけど、こっちに向かってきたらマジでシャレにならん。

 

モブが銃を撃つが1発たりともあたらない。背負った大剣をかざしただけで簡単に弾をそらす技術。

 

「えっなっ、外れた!?」

 

「外したのさ。何発打ったって同じだ。切っ先を添えて弾道を逸らしたのさ。あんな優しい剣は見たことがねぇ。」

 

「柔なき剣に強さなどない。」

 

剣には大きく分けて''柔''・''剛''・''疾''の3つの種類がある。ほとんどの剣士や技はこのどれかに分類することが出来る。鷹の目が見せた今の技術は柔の基本にして極地と言ってもいいレベルなんだよ。

 

凡人があの域に達するために、一生涯を費やしてもおかしくはない。

 

「その剣でこの船も割ったのかい。」

 

「いかにも。」

 

「なるほど、最強だ。」

 

なんか想像してたよりもスムーズに会話が進んでる。もっとこう、、気難しい感じだと勝手に思ってた。あ、暇だからか。暇すぎてどうでもいい会話さえも貴重に感じてるのか。

 

さて、ゾロの戦いが始まる前に僕も武器を持って来とかないと。実は今、僕は自室にいるのだ。いや、僕直射日光浴びれないから。アルビノって不便。まじで肌がヒリヒリしてくるから。だから頭まですっぽりと覆う黒いマントで全身から日光遮断。

 

あ、やべ、始まっちゃった。いそげー。見なきゃ損損。獅子歌歌。

 

うわぁ、マジであのオモチャ剣でゾロの猛攻をいなしてる。ヤバいやつじゃん。

 

「鬼...斬り!!!!...うっ。」

 

いや、いなすのはまだ分かる。かろうじてまだ人間業だから。でも受け止めるのは違うじゃん?無理なんだもん、普通に。バカ強いわ。ゾロだって相当筋肉ゴリラなのに。

 

「ぅう...うぉぉおおおおおああ!!!」

 

「なんと狂暴な剣か。」

 

ギアを上げたと言うよりも、ひたすらに、我武者羅に剣を振り回してるな。あれは最早、剣術でさえない。分かっちゃいたけど、無理だな。今はまだ。

 

「何を望む、弱き者よ。」

 

その言葉を聞いていたヨサクとジョニーが激高するが、ルフィによって止められる。ルフィも頭の血管ブチ切れそうだけど。偉いね、ちゃんと自制ができて。

 

「虎...狩り!!!...がふっ!」

 

胸筋と肋骨で護られてはいるが、あのまま押し込まれたらやばいな。...どうする。原作通りに進むとも限らない。ここでゾロを失ったら?今後助かる命も助からなくなってしまうかもしれない。

 

助けるか...?くそっ、こういう時、例えIFの未来を知っていてもどうすべきかが分からん。

 

いや...手は、出さない。ゾロは勝てない。誰の目にも明らかだ。でもここで手を出したら、アイツのプライドは。気持ちは、意思は。何よりも、船長であるルフィがゾロを信じてるんだ。外野がどうこうしていい問題じゃない。

 

「名乗ってみよ、小僧。」

 

「ロロノア・ゾロ。いずれテメェに勝つ男の名だ。」

 

「...フッ。覚えておく、久しく見ぬ強き者よ。剣士たる礼儀を持って、世界最強のこの黒刀で沈めてやる。」

 

抜いたな、黒刀 夜。船も、大地も、海でさえも割る頂きの剣。

 

「三刀流奥義 三千世界!!!」

 

僕はお前を誇りに思うよ、ロロノア・ゾロ。未熟なれど、1人の剣士として。心の底から尊敬する。

 

「背中の傷は剣士の恥だ。」

 

「見事!!」

 

「ゾロおぉぉーー!!!!うわぁぁあああーーー!!!!!」

 

「「アニギィィィーー!!!!」」

 

終わった。世界最強を夢見た剣士が、世界最強の手で沈められた。

 

ルフィもよく耐えたよ。こいつら、ほんとにすごすぎる。

 

「...なんでだよ!!簡単だろ!!野望捨てるくらい!!!!」

 

サンジはリアリストだからなぁ。夢やぶれて死ぬなんて想像もつかないのかもしれない。でも最強を目指すヤツらってのは、みんなこんな感じなんだろう。

 

「我が名は、ジュラキュール・ミホーク。己を知り、世界を知り。強くなれロロノア!俺は先幾年月でもこの最強の座にてお前を待つ!!この俺を超えてみよ!!ロロノア!!!」

 

「鷹の目にここまで言わせる男か。」

 

「お前には、あいつの気持ちが分かるのか?ソラ...。」

 

「分かる、と言うよりも知っていると言った方が正しいかな。そういう人種もいる。理解できなくても、それくらいの認識で居たらいいと思うよ。」

 

ゾロが誓う。未来の海賊王に向かって。

 

「俺が...世界一の剣豪にくらいならねぇと。おま、えが...困るんだよな...!」

 

「俺はもう!二度と負けねぇから!!あいつに勝って、大剣豪になるその日まで!!絶対に!!!文句あるか、海賊王!!!」

 

「ししししっ!ない!!」

 

「いいチームだ。また会いたいものだな、お前たちとは。」

 

すごいなぁ、純粋な強さで七武海に君臨し続ける鷹の目 ミホークに認められる強さ、将来性。見れてよかった。

 

「おぅ鷹の目よ。てめぇは俺の首を取りに来たんじゃねぇのか。このイーストブルーの覇者である首領・クリークの首をよぉ!」

 

「そのつもりではあったがな、既に貴様への興味はない。良き出会いがあった。このイーストブルーで、2つもだ。1人は未来あるその未熟さに。もう1人は、既にこちらに片足を踏み入れている。」

 

「...あん?」

 

「小僧、名乗るがいい。」

 

うそだろこっち見てんよ。何となくさっきからチラチラ視線感じるなぁとは思ってたんだよ。くっそ、何とかして避けられないか爺さんの後ろに隠れて見てたのに。

 

ゾロは...よし、もう船でアーロンパークに向かったな。気絶もしてるっぽかったし。

 

「...ソラ、です。」

 

「そうか。我が名はジュラキュール・ミホーク。」

 

知ってるよ。色んな意味で、結構前から。

 

「抜け。試してやる。」

 

はぁ、やっぱりか。仕方ない、とりあえずやって、満足して貰えたら終わるはずだ。もうゾロで結構満腹だと思うし。

 

「なっ、嘘だろ!?なんであの剣を抜いてやがるんだ、鷹の目は!!」

 

「アイツにそれほどの実力があるってことか?つーかあんなやつ居たか?だれだ!?」

 

「...ソラ。」

 

うん、大丈夫だよ爺さん。あーみんな驚いてるよ。そりゃそうだわ。あの三刀流の剣士がやられたのに、何処の馬の骨ともわからんやつに何ができるんだって思われてんだろきっと。

 

そもそも今真っ黒コート着てるしフードで顔隠してるから。隠してなくても眼帯だし。だれおま状態だ。

 

シュルり、と傘から剣を引き抜く。そう、僕の武器はこの仕込み日除け傘。通称、傘刀銃(さんとうじゅう)。先には銃口、核には刀。この傘自体も超頑丈。銀魂に出てきたよなぁ、こういうの。色も黒紫だし。

 

「いざ、尋常に。」「どうぞお手柔らかに。」

 

「「勝負。」」

 

()っ!!」

 

瞬きの間に一、二、三合。突風が弾け、波が立ち、船が大きく揺れる。スピード重視で刀を振るっているせいか、どれも簡単に弾かれる。壁を相手に斬ってるみたいだ。

 

「迅いな。だが軽い。」

 

「僕、剣士じゃないので。」

 

そんな片眉を上げて、解せぬ。みたいな顔しないで。マジで剣士じゃない。ただ、剣も使えるってだけで。

 

剛!!!

 

鷹の目の無表情が少しの驚きに変わる。疾の剣から剛の剣にモードちぇ〜んじ★したからな。つーか今まで無表情同士で斬りあってたのか。だから僕の顔は見えてないんだって!!

 

「ッ!」

 

あっ、やば。フード斬られた。ちょっと顔見れるようになったから、後からあれ僕なんだよ〜って説明は要らなくなったけど。直射日光はダメなんだよ!!!

 

顔を日光から隠すように、状態を前傾にして地面を舐めるように移動する。下から突き、払い、いなし、振り下ろす。

 

金属同士がぶつかり合う特有の高音が、何度も何度も鳴り響く。そろそろ耳がおかしくなっちゃいそう。

 

「...、まだ続けます?」

 

「当然だ。黒刀 夜の前で出し惜しみをする輩を、俺が逃がすと思うか?」

 

あっちゃぁ、バレてるよ。なんか適当にやれば満足するでしょって思ってたのに。なんだよ!!ゾロはどうしたよ!!!秒で浮気してんなよクソが!!!

 

「その黒刀、名は夜と言うんですね。僕の武器は、傘刀銃(さんとうじゅう) 覇霄(はしょう)と言います。覇霄とは、大空を司るという意味らしいですよ。」

 

「大層な名だな。」

 

「僕も、そう思いますっ。」

 

喋りながら全力で斬りあわなあかんの、何なん?つらたん。マジ無理、やめたい。雑魚相手に無双してたい。こんな強い人と二度と戦いたくないと思って幾数年。またこうなる訳か。呪いか?

 

「...なんだよ、あれ。何なんだよ。」

 

「次元が、違う...。」

 

「斬りあってる筈だ..なのに、見えない!!音だけが響いて...!」

 

なんか外野が湧いてるぞ。ふざけんなよ!!見せもんじゃねぇぞ!!!見えないんだっけ!?!?なんでもいいや!変われ!!!

 

「考え事か、余裕だな?」

 

「...っ余裕なんてある訳ないでしょ!''刃技(じんぎ) (あま)霞牙(かすみは)''。」

 

「ほう、やるな。」

 

なんで見切るの、初見なのに。振ったり払ったりとかそういう純粋な剣術じゃないの。技を!!使ったの!!!

 

「な、なんだ今の。刀身が増え...?」

 

天の霞牙は名の通り、刀身が霞がかったように錯覚させる騙し討ちのようなもの。刀身が3本ある様に見えていたはずだ。にも関わらず、正確に合わせてきた。萎える。

 

「''刃技(じんぎ) (あま)霹靂(かみとき)''!」

 

轟雷が鳴り響く。晴天の霹靂(へきれき)(物理)とはこの事だ。雷鳴嘶く剣先は、肉を焼き骨を絶ち焦がす。

 

...はず、なのになぁ。

 

「ふむ、良いな。だがやはり惜しい。全力の貴様と合間みえたかったぞ。」

 

「結構本気なんですけど。」

 

「剣技はな。だが貴様は剣士では無い。つまり本来、その刀以外にも使うのだろう。それ程の体幹ならば体術も相応に鍛えている筈だ。」

 

そうだねぇ、使うねぇ。傘で殴ったり、銃撃ったり。普通に拳で殴ったり。拳で!!!割と雑食だな。これだから器用貧乏は。

 

「俺が最も惜しいと思っているのはその眼だ。貴様、見ていない(・・・・・・)な?」

 

「...。」

 

声を落とし、周りに聞こえないように言葉を投げかける鷹の目。何かがあると察してくれている用で何よりだ。そのまま黙っていてほしかった。

 

見えていない、ではなく、見ていないと仰いますか。バレてんじゃん。

 

「その眼帯の下に正常に見えている眼(・・・・・・・・・)があるだろう。なぜ隠す?その眼も。義眼のみを晒しているのにも関わらず、俺とこれだけ斬り合えるその実力も。」

 

「はぁ...。確かに、僕は僕の意思で目を閉じています。でも別に、それについては手を抜いてるとかそういう理由じゃない。実力については、まぁ確かに隠してるけど。それは今だけです。」

 

鷹の目 ミホーク。他人に見せている方が義眼だってことに気づくし、眼帯の下に正常に見える眼があるってことにも気づく。鬼強いし。なんでやねん。ほんま意味わからんわぁ。

 

「前半の海にこれだけの実力者が居ようとはな。既に見聞色は会得済みか。」

 

「ですねー、武装色はまだ出来ませんが。」

 

「ほう、知っているか。」

 

「師が良いので。」

 

なんとなしに会話が続いているが、こうやっている間にも剣戟の応酬は続いているのだ。そしていつの間にか、ルフィとゴリラの戦闘も始まっていアイぇぇぇぇ!?エェエナンデェェェ!?始まってるんだけど!!!?

 

ふぁっ!?サンジは!?!?えっ、なんかいつの間にかボロボロぇっ、ウッソだろお前。もう終わったの???ま?それ、ま??

 

ふざけんなよ!!なんで見せてくれないんだよ!!!恥ずかしがり屋さんかよ!!!

 

「おい、よそ見をするな。赫足が剣を教えたのか?」

 

「あ、すみません。いえ爺さんからは戦闘はあまり。料理は仕込まれましたけど。」

 

「そうか。貴様の剣の師にも興味が湧いた。...が、そろそろ潮時だな。仮にも剣を扱い戦うのにも関わらず、俺より優先するものがあるか。」

 

やっべバレてた。ごめんて。でもルフィの戦闘見たいじゃん?サンジはいつの間にか勝ってるし。誘っちゃおうかな。

 

「あっちの方の、あれ。ルフィと、ゴリ..あっ間違った、クリーク?の戦闘見たいんですけど...一緒に見ません?」

 

きゃっ!言っちゃったっ!

 

「俺は武術にはさほど興味が無い。」

 

「えぇー。」

 

なんだよ!!勇気出して誘ってみたのに!!!部長を個人的な飲みに誘う平社員並に緊張したんだぞ!!!嘘だけど!!!

 

「では、次で終まおう。全力を賭して斬ってこい。」

 

はぁーい。ほんじゃまぁ、全力で。

 

「シィィーー...''刃技(じんぎ) 居合い'' 。」

 

刀身から身体中にほとばしる紫の稲妻。肉体の限界を優に超え、筋肉の悲鳴を無視し腕を振るう。その切先は、音をも切り裂く神速の零。

 

「''紫電一閃(しでんいっせん)''。」

 

「フッ...。見事なり、強き者よ。貴様との出会いに感謝と敬意を示そう。名は覚えたぞ、ソラよ。」

 

「...かはっ。こちら、こそ...。」

 

あー、くっそやば。いつ斬られたんだよ。身体が痛みを感じてようやく斬られた事を知ったわ。予備のコートで良かったぁ、こんちくしょうめ。

 

ルフィの戦闘、見れなそう...。

 

つかこの傷、ゾロとおソロじゃね?ゾロだけに?

 

気に入った獲物に同じ傷をつけるのか...?なんだよそれ、どこの第四十刃のウルさんだよ...。




んんー、設定集に書いてた技をいくつか出せたので行幸。でも戦闘シーンはマジ無理。かけぬぇぇ。。未だに主人公 ソラくんのキャラが掴めてません。まじで。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

3人の出会い

前半はめっちゃシリアスです。原作通りなので。後半からいつものやつ(笑)
結構長めです。


9年前。

 

ある日の出来事。とある海のとある船が、観客ごと嵐に飲まれ沈没した。無情にも平等に、襲いかかる波に為す術なく。

 

略奪を行っていた海賊船の船長と、船のコック見習いの少年だけが一命を取り留めた。打ち上げられた岩場には、動物も、魚も、木の実も。世に存在する食料のどれひとつとして、ひとかけら程もありはしなかった。

 

地獄が始まった。

 

「こいつがお前の取り分だ。打ち上げられた食料、普通に食えば5日分って所か。せいぜい頭使って食うんだな。」

 

「はっ!?待てよ!!お前の方が全然多いじゃないかっ!3倍はある!!」

 

「当たり前だ、俺は大人なんだから。胃袋のデカさがちがう。」

 

元々、略奪する側とされる側。最悪と言える関係の中、食糧配分は死活問題である。少しでも自分の取り分を多くしたい。そう思うのは当然のこと。

 

「こんな状況なんだ、助け合って生きていこうじゃあねぇかよ。なぁ、クソガキ。」

 

「クソジジイ...!!」

 

「分けてやってるんだ、有難いと思うべきだろ?」

 

少年は目の前の男を射殺さんとばかりに睨みつける。自分は無力で、例えここで暴れた所でこの男に殺されるだけ。少年には戦うだけの力はなかったが、考える頭を持っていた。

 

だからこそ、心底悔しかった。自身の頭を踏みつけながら、横暴を働くこの男に一矢報いることさえ出来ない自分の無力さが、心の底から腹立たしく思った。

 

2人は別れ、それぞれの方角を見張り、船が来るのを待つこととなった。

 

幸運を祈る。大嫌いな男から投げかけられたその言葉が、いつまで経っても頭から離れなかった。

 

数時間が経ち、悪夢の始まりである1日が終わりを迎えようとしている。水平線の彼方までひと目で見渡せるのにも関わらず、1隻の小舟の影さえない。

 

少年の腹の音が鳴る。目の前に食料がある。決して多くはないが、あるのだ。

 

食べたい、食べたい、食べたい!!...でも。

 

少年は考える頭を持っていた。

 

そして同時刻。

 

男は覚悟を決める。誇り、プライド、夢、過去。男を男たらしめる全てを、自らの手で捨ててでも生き残る覚悟を。赫足と謳い恐れられたその右足に、終止符を打つ覚悟を。

 

 

2日目。

 

「あのクソジジイ、船見つけたって絶対教えてやるもんかっ!さっさとくたばっちまえばいいんだ。」

 

「おれは、1人で生き残るんだ。」

 

「5日分の食料を20日に分けて食べよう!1日1食以下になるけど、20日も生きてりゃ必ず船は通るんだ!簡単だ。」

 

少年は自分に言い聞かせるかのように、気丈に言葉を発する。絶望的な状況である。そう理解しているからこそ、あえて言葉を口に出すことでその思いを払拭するかのように振る舞う。

 

育ち盛りの少年にとって、1日1食にも満たない食事生活というのは耐え難い苦行であった。そしてそれは、少年自信が決めたものであるからこそ、決意が揺らぐ。

 

「も、もう少しだけ...食べようかな?」

 

目の前に、食料はあるのだ。食べられる、食べてもいい。少年が自分の意思さえ曲げてしまえば、この耐え難い空腹を満たすことが出来る。

 

「...っ!だめだっ、だめだ、だめだ!!み、水を飲むんだ。そしたら空腹だって、少しは!」

 

岩の窪みに出来た水たまりに頭を丸々突っ込んで食料から目を離す。5日分、という少しの余裕があるからこそ、決意がぶれる。

 

食べられない、と、食べないは違う。自分の意思が、思考が介在する余地があるか、ないか。

 

少年には理性があり、考える頭を持っていた。

 

 

5日目。

 

雨の降る日。雲と雨、雷が走り抜ける。悪天候の中で、少年は奇跡的に船を発見した。

 

「あっ!!船だ!!!おーーい!!おーーい!!」

 

雨と雷の音にかき消され、無情にも声は届かない。火を起こそうにも、雨に濡れて火種もつかずどんどん焦りが生まれてくる。

 

「くそっ、木がしめって火がつかねぇ...!!」

 

ここで少年が、対岸にいる男を呼び協力していたのであれば、あるいは助かっていたのかもしれない。

 

「まって...!行かないでくれ...!!おれがここに居るんだ!!ここに人がいるんだよぉぉぉーーー!!!おぉーーーーいっ!!!」

 

「助けてくれぇぇぇ!!!!うわああああぁーー!!!!」

 

少年は叫び続けた。喉が焼ききれても良い、声が出なくなったって構わない。今ここで助かることが出来たなら、それ以上の喜びはないのだから。

 

船は去る。少年に気づくことなく。

 

 

25日目。

 

「最後のパン...カビ生えてら。」

 

少年は思い出していた。つい1か月前までは、いつ通りの平和な日常の中にいたことを。自分はコック見習いとして、厨房で仲間と共に料理の腕を磨いていたのだ。

 

作ることが楽しい。客に料理を提供し、美味しいと笑ってもらえることが嬉しい。料理人としての幸せを感じる日々を送っていたのだ。

 

大切なものは、失って初めて大切だと知ることが出来る。それはかけがえのないものであり、この広い海の中、奇跡に等しいバランスの上で成り立っていたものであるということ。

 

料理人は食料が無ければ何も出来ない。目の前にある食材を、調理し提供する。食材そのものを生み出すことは出来ないのだ。

 

涙が溢れ、こぼれ落ちる。当たり前の日常を思い返してしまったが故に、気丈にピンと張っていた糸が緩みはじめる。

 

ポロポロ、ぽろぽろ。

 

何故こんな目にあっているのか。ただ、料理をしていただけ。いつもの通り、厨房で仲間たちと楽しく語り合いながら。

 

海賊が来て、襲われ、奪われ。嵐に飲まれ、船は沈み。そして。

 

あぁ、そうだ。オールブルー。

 

イーストブルー、ウエストブルー、ノースブルー、サウスブルー。全ての海に住まう魚たちが一堂に会する伝説の海。全ての料理人たちの楽園であり、夢。

 

「しんで、たまるか。」

 

少年には夢があった。

 

恐怖の対象でしかなかった海賊に立ち向かってでも、足に噛み付いてでも必ず生きて見つけたいと思うほどの夢。つよい、つよい夢があった。

 

 

70日目。

 

「あのクソジジイは、もう死んだかな。」

 

少年は、ふと男の存在を思い出す。窪んだ眼孔、カサついた肌、痩せこけた頬、浮き彫りになったあばら骨、細く萎びた手足。

 

限界などとうの昔に過ぎていた。にも関わらず、自分にこれほど動く体力が残っていたのかと、少年自身が驚いたほどだった。

 

「あいつまだ生きてる...、え、食料があんなに!あんなに、食べるものがある...!!」

 

男の傍には大きな麻袋が転がっていた。それは少年にも見覚えのあるものだった。食料だ。男の取り分だと言って、男が持っていったもの。自分に渡されたそれより、ずっとずっと大きな袋。

 

「もともとあのクソジジイが悪いんだ。全部あいつのせいでこんな事に...!殺したって奪ってやる。おれは...生きたい!!絶対に生き残るんだ!!」

 

少年は男に近づく。

 

「何しに来たチビナス。船が...見えたのか?」

 

違う、と少年は言った。

 

「お前の食料を奪いにきたんだ...!殺せるもんなら殺してみろよ...どうせ、おれはもうこれ以上食えなきゃ死んじまうんだ。」

 

手に持っていた包丁で、大きな麻袋を切る。

 

「...は?」

 

ガシャり、と。金銀財宝がこぼれ落ちる。財宝?なぜ?ここには食料が入っているはずだ。いや、違う、そうじゃない。入っていなければならない。

 

「なん、で?ぜんぶ、宝だ...。おい、袋いっぱい全部、宝だぞ...、?」

 

「...金はあるのに食えねぇってのは、滑稽な話だな。」

 

男の言っている意味がわからない。少年には、もうほとんど考える力さえ無くなりつつあった。

 

「しょく...りょうは、!?お前、今までどうやって生きてきたんだよ!!!俺より胃袋でかいんじゃなかったのか!?」

 

少年は男に掴みかかる。自分と同じ、痩せ細った身体。淀んだ瞳、ボサ着いた髪の毛。これがあのおっかない海賊なのか。自分を蹴り飛ばし、踏みつけた足さえもやせ細って。

 

やせ細って...、?

 

「なん...だよ、その、足。おまえ''...っ、自分の足!!食ったのか!!!?」

 

「...そうだ。」

 

少年がいくら叫ぼうとも、男は目を合わせなかった。まるで、まずいものが見つかったとでも言っているかのような。

 

「食料はっ!おれに、くれたのが全部だったのか!!?」

 

「...そうだ。」

 

「その足っ!!無かったらお前もう...海賊出来ないじゃないかっ!!!」

 

「...そうだな。」

 

「っよけいなことすんなよ!!おれはお前のこと殺す気だったのに!!お前にっ...優しくされる覚えなんかない!!なんでだよぉ!!」

 

男は静かに言った。

 

「おまえがおれと、同じ夢を持っていたからだ。」

 

「...!!オール、ブルー?でも、お前の仲間だってそんなのないって!」

 

男は断言した。必ずある、と。1年の航海でこそ見つけることは出来なかったが、その可能性を掴むことは出来た。

 

「海は広くて、残酷だなぁ。長い海賊人生、ものを食えねぇこういう危機に何度も陥ってきたが、その度に思う。」

 

「海のど真ん中にレストランでもありゃ、飢えて死ぬやつらも減るだろう。」

 

「レストラン...!」

 

「あぁ、そうだ。この岩の島から生きて出られたなら、俺ァ最後の生きがいに、そいつをどーんとぶっ建てようと思った。」

 

海賊時代に抱いていた自分の夢は絶たれてしまった。これはもう、仕方の無いこと。あの日、覚悟は決めたから。今更ぐちぐち言うつもりもない。

 

今後また動けるようになったとしても、それは身体の話。あの仲間たちがいない以上、もう一度海賊をやりたいとも思わない。

 

だから、新たな夢を持つ。海上に揺蕩うレストランだ。

 

「...よ、よし!俺もそれ、手伝うよ!!だから、まだ死ぬなよジジイ!!」

 

男が倒れ、今にも死にそうなほど衰弱している。自分よりも、ずっと。

 

少年は声をかけ続ける。共にその夢を叶えようと。

 

「っは!てめぇみてぇな貧弱なチビナスにゃ無理な話だ。」

 

「強くだってなってやるさ!!!だから、なぁおい、死ぬな!!!」

 

そんな時、少年と男は、耳慣れない音が近づいてきていることに気づいた。

 

なにかの唸り声のような、雄叫びのような。

 

ヴォンヴォンヴォォォオオーーーーン。

 

それは奇跡(運命)駆動音(あしおと)だった。

 

 

&&&

 

 

「うーみーはーひろいーなーおおきーぃーなー。しーまぁーのーひとつーもー、みえやーしーなーーーぃ、とくらぁ。」

 

マジで。こんな綺麗な海は前前前世含めて今まで見たことないよな。海って偉大だなぁ。偉大だなも!(たぬき)まぁ僕の記憶は前世までしか無いんだけどね。

 

いやー、それにしてもこの船ほんとに気に入ったわ。作って貰えて良かった良かった。熱エネルギーと光エネルギーを使って動かしてるから、ほぼほぼ僕専用だけど。速度もめっちゃ速いし、見た目も要望通りスマートだ。1人用にしちゃ船内も広い、総合的に大・満・足!4~5人は乗れそう?それだとちょっと狭いかな?

 

まぁ設計図渡した時は、御三方も相当興奮してたし。1人は声が出ないほど爆笑してたからな。過呼吸になるんじゃない?って結構心配したわ。あぁいう笑い方なのね。そもそもこの世界って笑い方独特なやつ多いよなー。キャラ付けか?読者に覚えてもらおうと必死なんだな。

 

「...ん?なんだろ、あんな何もなさそうな岩場に人が。えぇぇ?なんでぇぇ?どうやって登ったのぉ?」

 

そういえば前世のどっかの企業は、新入社員研修に1週間くらい無人島でサバイバルさせるみたいな企画を立てていたような。そういうあれか?飯だけやるから生き延びてみせろ、的な?そんな企画は絶対無理。超ド級Z世代代表だぞ舐めんなよ!!!

 

よく見たらなんか違くね?ガチヤバいやつじゃね?爺さんと少年がいるぞ。家族か?少年って言っちゃったよ。肉体年齢的に僕と同じくらいだけど。まぁ少年が少年を少年って言っても少年は少年であることに変わりないから少年であるわけであばばばばばば。

 

...え、つかなんか見たことある希ガス。あれ、サンジとゼフじゃね。

 

...っ!?やばいやばいやばいやばい!!

 

これはマジで気が狂う程ヤバいやつじゃん!シャレになってない。急いで助けんと手遅れになるかもしらん!テンパり過ぎて方言出た!とか言ってる場合じゃねぇんだわ!!

 

航海用の調理器具1式、食料も大丈夫。いや、固形物よりもまずはスープとか流動食の方がいいな!やせ細って筋肉なんて見えやしない。骨と皮だけだ。顎動かすのだって辛いはず。

 

よし、卵ベースのスープは完成した。あとは少しの米を入れて、9:1くらいの超水っぽいお粥の出来上がり!温度は保証してやる!もちろん味も!!保証期間は2秒だけな!!

 

兎に角いそげいそげっ!!

 

 

&&&

 

 

「っは!てめぇみてぇな貧弱なチビナスにゃ無理な話だ。」

 

「強くだってなってやるさ!!!だから、なぁおい、死ぬな!!!」

 

喋ってるってことはギリギリセーフだな。これ、原作だと助かる直前くらいだろ。あっぶねぇ、見つけられてよかった。めっちゃ偶然だけど。

 

「もし。そこの御二方。」

 

「...え、?」 「...なん、だ?」

 

有り得ないものを見るかのような目で僕を見る2人。まぁ黒コートで全身隠れてる眼帯付きの傘さした得体が知れない美少年(見えてない)だ。属性盛り杉子さんかよ。いやだれ意味不〜ってなるのは分かる。

 

「こ、こども...?なんでこんな所に...!」

 

子どもて。お前もじゃろ。少年が(ry。

 

「積もる話は後にしましょう。まずはこれを。固形物は体が受け付けないでしょうから、お粥を作りました。食べてください。」

 

食べて?飲んで?まぁいいやどっちでも。さぁ、温かいスープをどうぞ?味は割と自信あるよ。料理については数年間学んでたし。今世で。

 

あっ、でもこの2人どっちもプロのコックだったわ。神の舌レベルでダメ出しされたら立ち直れない。もぅマヂムリおぅちかぇろ...。僕おうち無いけど。

 

サンジは恐る恐ると言った感じでスープに口を付ける。直後、涙を流しながら一心不乱に飲み始めた。そんなに急いで飲んだりしたらゲロりんちょしない?大丈夫そ?

 

ゼフは体を起こすのも無理そうだな。...老人介護って思ってるのバレたら蹴り殺されそう。そういえばゼフって懸賞金いくら位なん?知らんのやが。

 

「失礼、頭を抱えますね。力を抜いてください。大丈夫、大丈夫です。貴方がたはもう、助かりましたから。よく頑張りましたね。」

 

ゼフの頭を抱えて胸(というか腹?)で支えつつ、スープを口まで運ぶ。こくり、こくり。ゆっくりと少しずつではあるが、確実に喉を通っていく。

 

抱えた頭が震えている。支えた僕の手に滴る透明な水。僕は何も見てない、何も見えてない。

 

それからしばらくは、スープを飲む音と嗚咽が響いていた。

 

 

&&&

 

 

さて、飲み終わってほっと一息。因みにホットスープとかけた訳では無い。あれ、これ言わなきゃ誰も気づかなかったんじゃね?はい墓穴〜。そしてそこに入る僕〜。穴があったら入りたい?甘ったれんな!!てめぇで掘っててめぇで入るんだよ!!!

 

とりあえず2人を船内に運んで、簡易ベッドに転がす。ありえないほど軽かったぞ...、運んでる時どれだけ怖かったことか。まぁそこそこ重い傘を常時持ってるから割と鍛えられてる方だけど。それにしても...ねぇ。ほんとに辛かったろうな。

 

予備のベッドがこんなに早く役立つとは思わなかった。オプション付けてて良かったわ。設計図渡した時に、要らないだろって特徴的な青年2人に突っ込まれたが。こういうこともあろうかと、というやつだよ。

 

こんだけ衰弱してるのに、1人はソファで寝てね♡なんて言えるわけないし。かと言って添い寝も嫌だろうし。...嫌だよな?

 

とりあえず近くの島を探そう。ゼフの足も心配だし。一応簡単に応急手当はしたけど。僕、応急手当技能は65くらいしか振ってないんだ、ごめんよ?(イア!イア!)

 

「なぁ...、助けてくれて、ありがとう。お前は命の恩人だ。」

 

「...俺からも、礼を言う。助かった。」

 

ええよ。

 

「困った時はお互い様と言いますからね。貴方がたが助かって良かったです。」

 

ほんまに。

 

「おれ、サンジ!お前の名前は?」

 

「僕の名前はソラと言います。」

 

「...ソ、ラ?お前、ソラって言うのか!?」

 

え?うん。そう言うたやん。え?なんかめっちゃ嬉しそう、なんで?(困惑)大丈夫か、つか寝なくて平気なん?

 

「え、えぇ。そうですけど。」

 

「そっかぁ...ソラ。ソラかぁ。良い名前だなっ!」

 

「はぁ、どうも?」

 

ありがとう...?なんだろ、よく分からんけど。同い年くらいだし、歳近いから嬉しいんかな。で、爺さんの名前は?(圧)まぁしってるけど。

 

「おいジジイ!お前も名前言えよ!」

 

それnあっあっあっ、止めたげてぇ!!身体ゆするのらめえぇぇ!!老体だから!!(煽り)痩っぽちなんだから!!(煽り)掴んでる腕見てみろよぉ!ポッキーだぞ!?(違う)

 

「触んじゃねぇボケナスが。チッ、ゼフだ。」

 

「なんだよその態度!」

 

「うるせぇチビナス。」

 

んん、絶賛警戒中って感じかな。手負いの獣を連想させる。まぁその反応は正しい。だってどこからどう見ても、主観的に見ても客観的に見ても怪しいもん。僕。

 

日差し確認、良し。大丈夫、フードとって顔見せても問題ないな。

 

「そうですか。ゼフさんと、サンジさんですね。よろしくお願いします。」

 

フードを取りつつ、にこりと微笑む。あ、サンジがフリーズした。

 

「...てんし?」

 

「いや違いますね。」

 

気持ちは分かる。かわいいよな、僕。僕っていうかこの顔。いやまぁ僕なんだけど。(どっちだよ)

 

「テメェは俺のことを知らねぇのか。」

 

「はい?」

 

俺のこと?なに、なにが?ゼフについて知ってること。ってどれのこと?えぇ、なんかジーッと見られてる。止めてよあんまり凝視されると照れる。凝視っていうか睨まれてる?目つきが悪いのは生まれつきなんか?顔がいいから許されるんだぞ!!覚えとけよっ!!

 

あ、なんだっけ知ってることだっけ?とりあえず爺さんについて知ってること全部言うかな。どれが当たるやろ。なんのこっちゃ分からんし。

 

「栄養失調、筋肉量の低下、脱水症、熱中症、患部(あし)の炎症、発熱、発汗、意識レベルの微低下に...。」

 

「そういうこと言ってんじゃねぇ。」

 

なんなんだよ!!!そういうことだろ!?!?違うのか!?んんと、じゃあ。

 

「赫足のゼフ。クック海賊団船長にして、コックを務める海賊。戦闘において一切手を使わずに勝利を収める足技の達人。つい最近グランドラインの航海を経て、イーストブルーに帰還した。」

 

「...知ってんじゃねぇか。じゃあ何故助けた。」

 

えぇ、どういうこと。これは誘導尋問だ!!無効だ!!!(なにが?)

 

「何故、って。助けなきゃ、貴方が死んでしまいます。」

 

「俺ァ海賊だぞ。無法者だ。」

 

「そうですね。」

 

「「...。」」

 

やべぇ、何が言いたいのかマジでわからん。どういうこと?僕、察しは良い方なのに。なんなん?はっきり言えやおらぁっ!?難聴系主人公に!!ぼくはなるっ!!!いや別に目指してないけどね。

 

「ソラ、ジジイは海賊で、無法者で、今までたくさんの人から金品を略奪してきたヤツなんだ。」

 

おんおん、それで?

 

「なんで怖がらないんだ?一般人を不幸にさせてきたヤツで、人殺しだってしてるかもしれないだろ?」

 

はぁ、せやね。

 

「だからさ、そんな海賊をなんで助けたのかってことを聞いてるんだよ。ジジイは。」

 

ほーん、なるほど。完全に理解した。(わかってない)

 

チラリ、と爺さんを見ると、探るような目で僕を見ていた。サンジが言ったことの答えが知りたいっぽい。

 

「僕も、海賊に色んなものを奪われました。小さい頃、目の前で母さんを殺されて、住んでいた家を燃やされました。その時に、僕の片目も抉り取られました。」

 

「「!!!」」

 

「一時期は海賊に捕まってて、確かに憎いと思ってたこともあります。今でも、もしかしたら心の奥底にそういう感情があるのかも。」

 

「「....。」」

 

「でも、親と離れ離れになってしまった僕を、拾って育てて、強くしてくれた人たちがいました。その人たちも、元は海賊だったそうです。」

 

ちなみにその元海賊だった彼らとは少し前まで一緒にいた。この傘もその人たちから貰った。あっ、なんか思い出したら寒気が。

 

「だから僕にとっては、海賊だから助けないとか、一般人だから助けるとか。そういう考えは持ってないんですよ。海賊の中にも善人悪人はいて、海賊じゃなくても善人悪人はいます。」

 

「だから、そういうのを全部とっぱらって考えて。目の前に助けを求めている人がいる。僕に助ける力がある。」

 

ーーほらね、助けない理由がないでしょう?

 

フリーーーーズ。なんか2人とも目見開いてびっくり顔晒してる。多分珍しい表情だと思うから、脳内永久保存しとこ。んで暇な時に絵描こう。僕、イラスト描くのしゅきぃ。

 

てかレスポンスは?良いこと言うた気がしてたんは僕だけかいな?ワンピース史に残る名言として扱ってくれてもええんやで?ん?んん??

 

「なぁソラっ!!ソラには夢、あるか!?」

 

え、どしたん急に閑話休題みたいに路線変更して。誰の話が閑話やねん!閑古鳥なんて煮て焼いて食ってやるどぉー!

 

「夢ですか。んー、とりあえずイーストブルーで気ままに旅をしようと思ってました。会いたい人が2人いるんです。1人は父親で、イーストにはいないんですけど。もう1人はこっちにいるので。」

 

夢ではないが。目的ではあるな。まぁルフィのことなんだけど。

 

「じゃあ、じゃあさ!一緒にコックやろう!!」

 

「んえ?コックですか?」

 

あ、やべ。変な声出た。いや大丈夫気づかれてない。

 

「あぁ!ジジイと一緒にこの海の上でレストランを開くんだ!!そうだろ、ジジイ!」

 

「勝手に話を進めてんじゃねぇ。...だが、テメェのスープは、美味かった。」

 

「おれ、今まで食べた飯の中で、ソラのスープが1番美味しかったんだ!!ソラと一緒に料理したいんだ!だから一緒にコックやろう!」

 

くぅ、...眩しい。純粋な瞳が眩しすぎるぜ。直射日光はダメだっていったろ?あ、言ってなかったわ。

 

「にしし、ありがとうございます。バーで働いていたので、料理はそこそこ出来ますよ。カクテルとかも作れます。」

 

仕込まれたからなぁ。でも覚えがいいって褒められたし。この身体、リアルにスペック高いから。本格的な料理人としてもやって行けると思うわ。

 

いんじゃね?バラティエに居たらそのうちルフィ来るだろうし。誘って貰えて素直に嬉しい。

 

「じゃ、オーナーのお許しが出たら、是非一緒に働かせてくださいな。」

 

「!!ジジイ!」

 

「...フンっ。テメェら俺の店で働くからにゃ、こき使ってやるからな。覚悟しろよ...サンジ、ソラ。」

 

「「!」」

 

でちゃった。言い方めっちゃひねくれてて素直じゃないけど、OKってことだよね。これ。わぁ、サンジ嬉しそう〜。その表情、撮ります。心のカメラで。

 

「ところで海上レストランってことは、そこそこ大きな船が要りますよね?あてはあるんですか?船大工とか。」

 

「「金ならある。」」

 

なんでそんな2人してドヤってんのか知らんけど、金しかないって解釈でおk?

 

よっしゃ原作知識を総動員だ!バラティエ設計は任せろおぉいっ!但し設計だけな!!

 

やっべ、年甲斐もなくテンション上がってきたわ。マジかバラティエ設計できるんだ。う〜れ〜C〜〜。




サンジの母親と主人公の名前が同じとご報告頂きました。
普通に知らんかったです(笑)
ただ、ここから名前変えるのはなぁ、と思ったので
このまま進めました。

母親とおなじ名前を持った同い年くらいの子に助けられて
サンジは懐くと思います。そこから信頼関係を築くはず。
お粥も美味かったし。

ゼフは今まで持っていた考えや自分の価値観をぶっ壊す様な
思考を持つソラに興味と感謝を抱きます。
その考えを気に入って、どんなやつだろうと食いたいやつには
食わせてやるという考えをもつようになります。
サンジもその考えに影響を受けてあぁなります。

ソラはゼフが言ってたことがほんとに分かってませんでした。
海賊だから何?って考えは、原作知識として海賊にはいい人も
悪い人もいると知っていたから。
プラス、過去に海賊に助けられた経験と、現代社会で生きてきた
際に培った考えも持っているので。助けられるんなら助けるでしょ。
って感じの考えでした。

これが3人の出会いであり原点です。たのしかった!!!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

涙の別れと新たな出発

順調に筆が進んでおるぞよ。


パリィーンパリンパリンパリンっ!!

 

「んあ、あー。寝てた。」

 

正確には寝てたんじゃなくて気絶してたんだけどな。うへぇ、縫ってあるよ。また傷が増えたなぁ。全身くまなく傷だらけだよぉ。もうお嫁に行けないっ!

 

鷹の目ぇ...手加減しろよ!!手加減してこれなんだよ!!!クソザコナメクジでごめんなさい!!!ネガティブホロウっ!!

 

まぁ傷については男だしあんまり気にしてないんだけど。その代わり顔はダメだ。顔だけは。数少ない財産だから。顔面国宝(自称)なんだから。いやマジのすけ。

 

そういえば、なんかさっき皿割れまくる音しなかった?...はっ!?えっ、うっそもうここなの!?マジで全くルフィの戦闘見れなかったし!!うわ萎えるわー。この後のアーロンパークもどうせ見れないしさぁ。いつ見れるんだよ!!

 

とりあえず僕もスープも〜らお。あ、なんか爺さんが喋ってる。でもとりあえずルフィ以外は全員説教な。どんな理由があろうと、飯を粗末にしてんだから。当然だよなぁ?

 

「なぁ小僧。あのチビナスを、一緒に...。」

 

「今しがた大きな音が聞こえたが、誰か説明してもらおうか?(進撃のハゲ)」

 

「「「っ!!?」」」」

 

「ソ、ソラさん!良かった、目が覚めたんですね!」

 

「お...おぉ〜ソラちゃん!怪我は大丈夫かっ!?」

 

「.......。」

 

おい、なに1人だけ目逸らしてんだジジイこっち見ろや。それとお前ら全員なんでそんなに汗かいてんの?暑いんなら空調の温度調整しろや。この世界に空調なんてねぇけどな。

 

「で、何事かな?なんでこんな事になってるのかな?かな?(ひぐらし)教えてくれないと分かんないよ。ねぇ、爺さん???」

 

「...お、おいまて。落ち着きやがれ、ソラ。これぁ、アレだ。あー、なんだ。その、波に揺られて、皿が落ちちまってよ...。」

 

「嘘だっっっっ!!!!!!!!!(某症候群)」

 

(((ビクッ!!)))

 

この身体でこんなに大きな声出したの、生まれて初めてかもしれない。意外と出るもんだなぁ。ルフィとか結構叫んでるよな。やっぱり海賊たるもの、咄嗟に大きな声で呼びかけとかしなきゃいけない時が来るよね。船長なら尚更指示出したりとか。

 

「...はぁ、まったく。どうせサンジが意地張って素直にルフィと一緒に行くって言わないから、爺さんからルフィに頼むつもりだったんでしょ。無理やりでも連れてってくれってさ。」

 

「「「!!!」」」

 

すぐ外にサンジもいるから聞こえてるだろうし、どうせバレるんだから僕から言っちゃっても良いでしょ。

 

「爺さん。分かってるとは思うけど、サンジはもう子どもじゃない。自分がやりたいことくらい分かってるはずだし、そのためにどんな選択をすべきかも分かってる。わざわざ爺さんがそこまでしてやらなくても良いと思う。しかもその手段が、よりにもよって、これ。」

 

発案した爺さんも爺さんだけど、乗っかった従業員全員ため息しか出ない。1人くらい、素直になれって言うやつ居なかった訳?

 

もうちょっと言いたいけど、もうやっちゃったもんは仕方ないし。こうでもしないと、サンジが葛藤から抜け出せないって思ったからこその行動だろうからなぁ。あんまり強くも言えないんだよ。

 

反省もしてるみたいだし。もういいか、これくらいで。こんなことするのはもう、これっきりでしょ。

 

「はい、説教終わり。そんで、僕から皆に報告があります。僕、ここを出てルフィに着いてくから。」

 

「えーー!!ホントかぁ!!!」

 

うん。ほんとほんと。ずっとそのつもりではあったからね。

 

「...なっ!?なにぃーーー!?」

 

「うそだろ、ソラさん...!」

 

爺さんと目が合う。場が、シンっと静まり返る。あーなんか懐かしいな、この感じ。初めてあった時もこんな感じで、不機嫌そうな目で睨んで来てたっけ。

 

「会いたいやつが、イーストブルーに居ると。そう言っていた筈だが?」

 

「そうだね。彼が、その会いたいやつだよ。」

 

ルフィに視線を向ける。不思議そうに首を傾げながら、自分を指さしている。

 

「ソラ、俺に会いたかったのか?なんでだ?どっかで会ったっけ?」

 

「いや、会ったことは無いね。でも話には聞いていたから。ずっと興味があったんだ。」

 

前前前世から興味があったんだよ!ミィーーハァーーー!!!(オカマ風)

 

「ふーん。まっいいや!仲間になってくれるんだろ!?ぃやったぁー!!!」

 

「うん、よろしく。という訳だから、僕はルフィと一緒に行くよ。みんな、今までありがとう。」

 

「「「そっ、そんなアッサリと!!?」」」

 

うん、あっさりと。バラティエには思い出が多すぎるんだよ。10年近くここに居た。この船の設計をしたもの僕だし。しっかり別れの挨拶とかしちゃったらさ、泣かないとか無理だから。あっさり、サラっとサラサラヘアー。流れるように別れたかったから、いい機会だった。

 

「んじゃ、僕部屋に戻って荷物の整理するから。みんなはちゃんと床掃除するんだよ〜。」

 

「「「え、えぇ〜...。」」」

 

なんだ、えぇーって。汚したんだから掃除すんのは当たり前だろ。早くしないと、シミになるぞ。あ、結局スープ飲んでないじゃん。いいや、どうせ船でサンジが何か作るでしょ。

 

え?自分で作んないのかって?僕、スイーツ以外はサポート特化なんだよね。スイーツ作りは一流だけど、それ以外を作る場合は二流。まぁそれでも全然美味しいレベルなんだけど。自分で作るよりサンジの作った料理の方が美味しいんだよなー。

 

さて、と。自室に戻っては来たものの、そんなに荷物は多くない。調理道具、服、マント、傘、日誌。それと母親の形見であるペンダントロケット。その他サイフとか船の鍵とかの小物類に手配書の束。リュックにまとめて、かんせーーい。

 

コンコンっ。

 

ん、なんじゃあ?こんな時に、誰じゃらほい?って全然わかってるんだけど。見えてないのに分かるって今更だけど変な感じ。

 

で〜も〜?姿かたちが問題じゃねぇ、問題なのは魂だ!!!(魂喰い)

 

「どうぞ。入っていいよ、爺さん。」

 

なんだろ、さっきから不機嫌というか。テンション低いよね。心なしかコック帽がしゅん...ってなってる気が。いつ見ても馬鹿みたいな帽子だよね。

 

「どこ見てやがる。」

 

馬鹿だよ。間違った、帽子だよ。

 

「んーん。で、どうしたの?」

 

「どうしたもこうしたもねぇんだよ。サンジはともかく、てめぇまでたぁ予想外だぜ。まさかあんな爆弾を落として行きやがるとはなぁ。」

 

爆弾なんて落としたつもりねぇよ。いつかはそうなるって分かってただろ。今日とは言ってなかったけど。それがいつかなんて僕も知らなかったし。

 

「はぁ...お前は昔っから、しっかりしてると思いきや、全くの頓珍漢なことを平気で考えてたりするからなぁ。」

 

「急に失礼だな。そんな事ないでしょ。」

 

少なくとも外面はちゃんとしてるだろ。外見に合わせた言動を心がけてるよ。内心は別人だから外と内の不一致というか、乖離性がミリオンアーサーしてるけど。こういう所だよ!!

 

「あるんだよ。おめェ、今あっちの部屋がどうなってるか知ってるか?」

 

しらん。あ、いや、なんかまたザワザワ...ザワザワ...してる。究極的にはどこでも賭博場になるよね。しかもここには調理用の熱々鉄板もあるし。土下座し放題だぜ!(やらない)

 

「死屍累々、阿鼻叫喚。どんな言葉で表しゃいいんだか。ったく、おめぇはちったぁ自分の影響力ってのを自覚しろ。」

 

影響力ぅ??僕にはルフィみたいなカリスマ性は無いよ。覇王色だって使えないし。

 

「知っての通り、ここの従業員共はみんな俺の噂を聞きつけてやってきやがる馬鹿共だ。」

 

うん、馬鹿なのは知ってる。みんな爺さんに憧れて、他に行くところがないからここで働かせてくれ〜って頭下げて頼んできたやつらだもんね。

 

「俺ぁ去る者は追わねぇ主義だ。俺のしごきに着いてこれねぇ様な軟弱野郎共が泣こうが喚こうが部屋に引きこもろうが、俺の知ったことじゃねぇ。」

 

それも知ってる。みんな新人の頃は爺さんとサンジに蹴られて吹き飛ばされてはっ倒されて投げられて。まー見てるこっちがドン引きするレベル。改めて見るとやべぇな。くそブラックじゃん。パワハラのオンパレードだわ。暴力なんてサイテー。

 

「だが辞めるやつぁ極端に少ねぇ。ゴロツキ上がりは雑草根性で説明が着く。なのに一般募集のやつらでさえ、不思議なまでに食らいついてきやがる。おかげで今や、こんなにデケェ店になっちまった。そりゃ、なんでだ?」

 

全員クソドMだったんじゃね?

 

「ソラ、おめぇが従業員ひとり一人を気にかけてたからだ。つまづいてる奴にはアドバイスして、分からねぇと嘆いてる奴には、腕引っ掴んで横に立たせて手本を見せる。落ち込んでるやつ見つけりゃ、夜中だろうが関係なしに話聞いてやって、ちっぽけな悩みだと、なんてこたぁねぇと励ましてやってたからだろうが。」

 

「どこの店でも、あんなに優しくされたこたァ無かったと。この店に来て、お前に出会えてよかったと口を揃えて言いやがるんだ、アイツらは。一体誰の店だと思ってやがる。ったくよぉ。」

 

...あぁ、あったなぁ。そんなこと。懐かしい。でも僕がやった事なんて、夜中にこっそり泣いてるアイツらがあまりに惨めで可哀想だったから、適当に話聞いて甘くて暖かい飲み物出してあげただけだ。とりま疲れたら甘いものだよな。

 

爺さんやサンジみたいに、料理のスキルについて指導したことなんてほとんどない。グチグチ言ってる暇があるのなら見て盗めって叱ったことはある。働く姿勢を教育したこともあったけど。お客様は神様だとか、一流たる自覚を持てとか。そんな、ごくごく当たり前のこと。

 

「おめぇは自分のした事が何でもねぇ事だと思ってる節がある。だがな、そりゃ大きな間違いだぜ。おめぇにとって当たり前だと思ってることが、どれだけ貴重かしらねぇだろう。」

 

そんなの、知らないよ。だって当たり前なんだから。

 

「ソラよぉ。さっきも言ったがな。俺ぁ去る者は追わねぇ。...もう、決めちまったのか?」

 

...。

 

「うん。決めてる。ずっと前から。今、この瞬間にここを出なかったら、僕はたぶん一生バラティエで過ごすことになる。」

 

「ここで働くのは、イヤか。」

 

「ううん、逆だよ爺さん。爺さんが、バラティエが、ここに居る皆が大好きだから。これ以上居たら、離れられなくなっちゃうから。」

 

目的が、果たせなくなるから。

 

「だから今、このタイミングしかないんだ。」

 

「......そうか。じゃあ、俺から言うことはひとつだけだ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「今までありがとうよ、ソラ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

...っ、あー、もう。さいあく。ずるいんだよ。だから嫌だって言ったんだ。あぁいや、言ってないのか...。

 

「ぅ、ぐぅ...。じ、いさん。じい、さん。ぼくが、僕の方こそ...!いっぱい、いっぱい...色んなこと、教えてっ、くれて。」

 

「...っ。」

 

視界がぼやける。声が震える。言葉が胸につっかえて、上手くまとまらない。言いたいことが、多すぎて。伝えたいことが、次から次に溢れてくる。

 

涙が、止まらない。

 

「僕、あの時爺さんとサンジに会えてなかったら。きっと今も、ひろい海のなかで、ずっとひとりっきり...っ、」

 

「サンジが一緒にコックやろうって、誘ってくれて...!爺さんが、それを受け入れてくれたから、僕は...。」

 

「ずっと、言いたかったんだ。でもさ、やっぱ恥ずかしいじゃんか。こういうのって。」

 

「爺さんと、サンジと、一緒に居られてっ...幸せ、でした...!!ありがとう!!!」

 

かお、ぐっしゃぐしゃ。顔だけはダメだって言ったじゃん。ぜんぶ爺さんのせいだ。

 

「バカヤロウ、男が簡単に泣くんじゃねぇよ...。」

 

「...爺さんだって、人のこと言えないでしょ。」

 

「うるせぇなぁ。」

 

不意に頭を撫でられる。これ、好きだよな、爺さん。頭撫でるの。

 

「馬鹿言ってんじゃねぇ。俺が好きなんじゃねえよ。こうすっと、普段表情を見せねぇお前が、ほんの少しだけ笑うんだ。」

 

「は、そんなわけないじゃん。」

 

だって僕の表情筋死んでるし。

 

「あるんだよ。良いから、大人しくしてろ。これで最後なんだからよ。」

 

あぁ、そうか。最後だもんなぁ。次会えるのなんて、世界を一周した後だもん。気軽に会いに来れないなんて、なんて不便な世界なんだ。

 

もう少しだけ、このままで。

 

あとその泣き顔、永久保存。

 

 

&&&

 

 

ヴォンヴォンヴォーーーーーン

 

バイタルクリア。メインエンジンシステム良好。忘れ物なーし。オールグリーン。

 

惜しむらくはこの日差し。くそぅ...日光さえ。陽の光さえなければ、ドア越しじゃないサンジと爺さんのやり取りを見れるはずだったのに...。どっちにしろ船の準備があるから直接は見れなかったけど。

 

まぁ窓は開けてるから声は聞こえるし、いっか。みんな号泣してる〜。うける。男は黙って別れるもんだよなぁ!?(ブーメラン)

 

「よぉーしっ!!しゅっっこうだぁーー!!!」

 

はーい。行きまーす。じゃあね、爺さん。じゃあね、バラティエのみんな。そいぎ!したっけ!

 

窓から傘刀銃の銃口を出し、大空に向かって少し大きめの炎弾を打ち上げる。行ってきますの花火的な。火の玉が爆発するだけだから、あんなに綺麗じゃないけどね。

 

イカつい野郎共の泣き声叫び声を餞に、麦わらの一味(プラス1人)は旅立つのだった。

 

完。

 

完、じゃねぇよ。これからだよ。俺たちの冒険はこれからだっ!!!

 

完。

 

いやだから完じゃねぇって。

 

「いやー、にしてもこの船はすっげぇなぁ!速ぇー速ぇ!いけー!ランゴレス号!!」

 

「ラーキレス号な。」

 

僕がツッコミにまわる...だと...!?流石は未来の海賊王。こいつ...できる!!

 

「サンジの船は持ってこなくて良かったの?」

 

「2隻あったって邪魔だろ。良いんだよ、ギンに買い出し用の船をやったんだ。俺の船は店に置いてくさ。」

 

ふーん。買い出し用の船ってあんまり大きくなかったよな。あれに何十人乗っけてったんだろ。ちょっと見たかったな。

 

まぁ1番見たかったのはサンジとルフィの戦闘シーンだけどな!!結局ルフィの身体が伸びるところ、まだ見てないし。

 

ちょっとほっぺた引っ張ってみよ。なんかヨサクが2人に常識を知らなすぎるとか説教してるけどどうでもいいや。どうせ世界勢力のこととか話してるんだろ。僕は世界勢力よりお前のことを知らんのじゃが。

 

「そりゃーすげぇー!!さっきみてぇなやつがあと7人もいるのかよ!!7ふはいっへふへぇーっ...って何してんだお前ぇっ!?!?」

 

「いやほんとに伸びるのかなって思って...。伸びたわ。なんか思ってたより、ちょっと、気持ち悪い。」

 

うへぇ、ばっちぃ。あ、バチンって言った。めんごめんご。

 

「どんだけ自分本位だお前は。」

 

いや、悪魔の実ってさ。一応前半の海では海の秘宝とか伝説とかそういう扱いじゃん?やっぱ見てみたいじゃん。好奇心で。ロギアはもう見ても大して面白くないけど、パラミシアとゾオンは興味あったんだよ。1番はゾオンが好きなんだ〜。大体可愛いから。え?チョッパー?ウェへへへへ(ねっとり)。いかんヨダレが。

 

「ソラの兄貴...いまあっしが魚人海賊団の説明しようと...。」

 

ん、おぉ、すまんな。あんまりその話したくなかったからつい。どうぞ続けて。

 

え、待って今兄貴って言った?この顔に兄貴??いや男だけど。でも兄貴って顔やないで。めちゃくちゃ違和感ありまくりのあーゆーおーけー?状態なんだが。

 

「あっしらが今向かっているのはアーロンパーク!!かつて、七武海の1人であるジンベエと肩を並べた魚人の海賊、アーロンの支配する土地です!!個人の実力ならクリークをも凌ぎます!!!」

 

魚人って種族的に人間の10倍の力とかだったよなぁ。筋トレしたら人間の10倍の効果があるって考え方でおk?いいなぁ。まぁ迫害とか奴隷とか、境遇を考えたら全然羨ましがれないけど。胸糞だよなまじで。クソ天竜人がよぉ。

 

それとアーロンはジンベエの事をアニキって言ってたから、肩を並べてたかと言われるとちょっと微妙かも?立ち位置的にはちょっと下くらいじゃない?まぁそれでも1部の奴らには慕われてたけど。

 

「最後まで見てねぇんだろ?同じ方角の別の場所かも知れねぇ。なんでナミさんがそこに行くって分かるんだ?」

 

「あっしとジョニーに心当たりがありやして。思い返してみると、ナミの姉貴は手配書をじーっと見てたんですよ。それがアーロンの手配書だったんです。それともう1人...''紅衣の王''。」

 

「「コウイのおう?」」

 

くぁwせdrftgyふじこlp...!その名を呼ぶなぁァァァ!!??あぁっ、頭が...i...a...いあ!いあ!いあ!!はすたー!!!

 

まぁ冗談はさておき。

 

「紅に衣で紅衣だよ。王は王様って意味。」

 

黄色じゃない。良かったぁ。あなた、名前を呼んだのでSAN値チェックです。ふぁっ!?呼んでないのに!?100面ダイスがなんぼのもんじゃーい!

 

「流石はソラの兄貴!兄貴はちゃんと知ってるんすね!」

 

クトゥルフのこと?そりゃ...当たり前だよなぁ!?

 

「それで?そいつがアーロンとなんの関係がある?」

 

「アーロンと、というよりも魚人と関係の深い人物だよ。名前の通り、外見は紅い外套を身にまとい、顔を隠してどこからともなく現れるんだって。」

 

「その通りっす。紅衣の王は魚人の味方で、魚人たちからは英雄とも言われてるんっすよ!」

 

「英雄〜〜?ヒーローなのか、そいつは!」

 

「忘れもしねぇ...数年前に起きた、マリージョア襲撃事件!天竜人によって人生を狂わされた魚人や人魚を始めとする数多くの奴隷たちを、たった2人(・・)で解放した奴らが居たんす!」

 

その内の1人が、紅衣の王と呼ばれる人物。もう1人はフィッシャー・タイガーっていうタイの魚人だったから、紅衣の王も魚人じゃないかって噂されてる。が、その正体は誰も知らないらしい。手配書もおどろおどろしい感じで、紅いマントを被った怪しい風貌ってしか分からないし。

 

「魚人や奴隷たちからは英雄と呼ばれ、一方で貴族や天竜人なんかの権力者たちからは恐怖の対象として畏怖される存在だよ。ある人は子どもだったと言い、またある人は老婆と言ったり。実は神様だって噂もあったね。」

 

「ふーん。」

 

我らが船長には微塵の興味も湧かないか。

 

「ねぇサンジ、お腹すいた。」

 

「ん?あぁそうだな、なんか作るか。何が食いたい?」

 

「骨の付いた肉のやつ!!!」

 

「あんたらもっと興味持ったらどうですか!!!?」

 

いや、だってお腹すいたし。まぁそんなに気にしなくていいと思うけどね〜。新世界にいるようなやつじゃん。

 

「あぁっ!?あっしも食べやす!もやし炒め!!」

 

「僕はなんかテキトーに、軽めでいいや。スープとか。」

 

「はいよ。」



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

アーロンパークに到着!

深夜投稿!!


「ねぇ、なんか出てきたんだけど。」

 

「なんだこいつ。」

 

牛、いや、魚?わかんないけど。でもちょっと、かわいい。かも?鼻ヒクヒクさせてる。なんか見た事ある気がするけど、ダメだ思い出せない。

 

最近前世で見た記憶なのか今世で見た記憶なのか、だんだん分かんなくなってきたんだよな。

 

でもとりあえずかわいい。かわいいは正義だ。

 

「牛だー!でぇっけぇーなー!」

 

「牛か?泳ぐか普通?カバだろ。」

 

「なななななんでこんな生物がイーストブルーにぃ!?こりゃグランドラインの生物っすよ!!」

 

へー。そうなんだ。どこの生物とかってどうやって見分けてんの?大きさ?

 

「狙いは飯だ!!渡してくださいはやく!!船をひっくり返されちまう!!」

 

いやそれは無い。その前に逃げ切る自信がある。ラーキレス号のスピードを舐めるな。

 

「ゴムゴムの銃!!!おれの飯に手ぇだすな!!」

 

嘘だろこいつまじか。こんなつぶらな瞳の牛を殴ったぞ。どんな野生児だよ。

 

「馬鹿野郎がァ!!腹好かせたやつを無闇にぶっ飛ばしてんじゃねぇ!!!...ったく。こいつはきっと怪我でもして、自分で餌をとれなくて困ってんだよ。」

 

「ほら、食え。」

 

それは違うよっ!!!(論破)見聞色で察した感じ、そういう感じではなさそうなんだよな。普通に腹減ってるだけだと思う。

 

「死ねコラァァァ!!!!!!!」

 

「ぬぁにやってんすかあんたぁぁぁ!?」

 

うっっそだろこいつらまじか。動物愛護って言葉知らないの?愛鳥週間で鳥の絵描いたことねぇのか!!!?ねぇわな。

 

「モ''ォォオオオオオオ!!」

 

「お前ら退いてろ、トドメ刺してやる。首肉...シュートぉ!!!」

 

うわぁ。やっちゃったよ、ドン引き。。。可愛かったのに。安心しろよヨサク、僕もそっち側だから。(ちがう)

 

え?エンジン切るの?あ、その子に引かせるのね。

 

 

&&&

 

 

「見えてきたよ、アーロンパーク。」

 

やっぱり自力で運転した方が速いな。まー、たまにはいっか。のんびりした船旅も悪いもんじゃない。曇りなら文句はなかったぜ。

 

「こら!疲れるな、カバ!!」

 

馬車馬の如く働かせるよね。牛なのに。そういえば牛の車って書いて牛車(ぎっしゃ)って読むの知ってた?(無関係)

 

「おい、左だ左!あの建物なんだぞ!?」

 

...、あれなんか嫌な予感がががが。

 

 

ドゴォォオオオオオオン!!!

 

 

わぁ、

 

「うっひょー!まるで空を飛んでる見てぇだ。」

 

「ぶっ飛んでんだよこのバカ!!!おいソラっ、何とかならねぇのか!?」

 

「うん。普通に無理。」

 

クードヴァンなんて搭載してねぇよ。あんなイカれた船がイーストブルーにあってたまるか。

 

「林に突っ込むぞぉー!!」

 

「うわぁぁああああ!!!」

 

うっ、Gが...。ゴキじゃねぇぞ、重力の方な。あ、なんかいい感じに木がクッションになってくれた。良かった〜ぶっ壊れなくて。これもう10年くらい使ってるお気に入りなんだよ。オーダーメイドの1品物だぜ。

 

「うぉっ、止まらねぇぇ!」

 

「進行方向に人影(君に決めたっ!)発見。衝突まで3秒、2秒、1秒。」

 

「冷静にカウントダウンすなっ!!」

 

「おぉゾロ!!」 「アニギィー!!」

 

「...ル、フィ!?」

 

ドッタンバッタンドンガラほいっと。おーいてぇ。いってぇなー。嘘だけど。

 

「テメェら一体何やってんだっ!!!」

 

開口一番(二番かも)に鋭いツッコミ。ツッコミさえも大業物級か?未来の大剣豪にはそういうスキルも必要なんだな。あれ、鷹の目は?

 

「ナミを連れ戻しにきたに決まってんだろー?そういや、ウソップとジョニーは?」

 

「ウソップ!そうだ、こんな所で油売ってる場合じゃねぇ!野郎、今アーロンに捕まってやがんだ!早く行かねぇと殺され...。」

 

「殺されやしたっ!!!もう...手遅れですっ!!!」

 

噂をすれば影がさす。あれがヨサクの相棒、ジョニーか。初めて見た。で、なんで君そんなにはぁはぁ言ってるん?ちょっと怖い。色んな意味で。こっち見んといて?

 

「ウソップの兄貴はもう...殺されやしたっ!!!ナミの姉貴に!!!!」

 

フリーーーーーズ。

 

「お前もういっぺん言ってみろ!!!!ぶっ飛ばしてやるからな!!!!デタラメ言いやがって!!!」

 

ぶっ飛ばすのにもういっぺん言わせるの?鬼の所業だぜ...!

 

「止めろルフィ!ジョニーにゃ関係ねぇだろうが!!」

 

「ナミがウソップを殺すわけねぇだろうが!!!仲間だぞ!!!!」

 

「誰が仲間だって?ルフィ。あんたら何しに来たの?」

 

噂をすれば影。二度目だな。そして、二度あることはサンドパン。早くも野生のポケモンが2匹出てきた。誰かモンスターボール買って?

 

「ナミ!迎えに来たに決まってるだろ!お前はおれの仲間なんだから。」

 

「大迷惑。仲間?笑わせないで。くだらない助け合いの集まりでしょ?」

 

クールビューティだなー。んでも、ちゃんと分かってるじゃん。助け合いの集まり、だ。だからここに居るんだろ。くだらないかどうかは人それぞれだけど。

 

「ナナナミさぁ〜ん!!俺だよ覚えてるっ?一緒に航海しようぜ〜!!」

 

ぶれねぇな、サンジ。僕なんてさっきから空気との同化率を上げるために頑張ってんのに。俺自身が...空気になる事だ。(死神代行)

 

それにしてもナを3つ重ねてやがる。ナミだけに。サンジ...どんどん腕を上げていくな。負けられねぇなぁおい!!

 

「テメェはすっこんでろ!話ややこしくなるだろうがっ!あっちの奴を見習えっ。つかありゃあ誰だよっ!!」

 

「あ''ぁん?んだコラ。恋はいつでもハリケーンなんだよ!!てめぇはわざわざてめぇの為に料理作ったやつを忘れんのか!ありゃあソラだ!」

 

「ソラかよ!?分かるかあんな布まみれで!!」

 

草。アホみたいな会話の中で生まれる名言があるって初めて知った。

 

すまんなゾロ。僕、直射日光ダメだから。とりあえず手ぇ振っとこ。

 

「ここに来たって何もかもムダよ。人間が魚人に勝てるわけ無いもの。いくらあんた達の化け物じみた強さでもね、本物の化け物には敵わないわ。アイツらに逆らった奴らは皆、死んだ方がマシと思うような拷問(・・)を受けるのよ。」

 

「御託はいい。ウソップはどうした。」

 

「海の底。」

 

「テメェ...いい加減にしろっ!」

 

あー、なんかごちゃごちゃしてきた。あんまり話聞いてなかったわ、なになにどう言う状況?こうもんが何?

 

「いい加減にするのはてめぇだクソ野郎!!」

 

こうもんがクソ?なんなの?急に下ネタなの?ちょ、やめなよ男子ぃ〜。こっち女子いるんだからさぁ〜。

 

つかなんでゾロとサンジで喧嘩してるの?バタフライエフェクト?エフェクト起こる場所近いなおい。もっとバタフライしろよ。無限大に歌えやおらぁっ!!!(オケハラ)

 

「剣士ってのはレディにも手をあげんのか?ロロノア・ゾロ。」

 

「なんの事情も知らねぇてめぇが出しゃばってんじゃねぇよ!!」

 

「はっ、屈辱の敗戦の後とあっちゃ気が立つのは当然か?慰めてやろうか?」

 

「おい口の利き方には気をつけろ。その首飛ばすぞ。」

 

なんで仲間同士でちちくりあってんのかねぇ。どーしよ。あー、ったく。お前ら...いい加減にしろよ!!!同い年なんだから仲良くしろ!!!ついでに僕とも仲良くしろください!!!同い年なんだからな!!!(精神年齢詐称)

 

「ねぇ、少し落ち着いたら?2人ともだよ。今は言い争ってる時間はない。でしょ?」

 

「「!」」

 

とかなんとか分かってる風に言ってみたけどマジでなんも分かっとらんのよ。

 

ということで、さぁて。ここからは!ずっと!俺の!!タァァーーーン!!!!山札が無くなるまでずっと俺のターンが続くぜ!山札が無くなったぜ!!(遊戯キング)

 

「そういうこと。まとめ役が居て助かるわ。」

 

あっ、ちょっ、まっ、えっ、え?僕のターン、、、。

 

「余所者がこれ以上この土地の事に首突っ込まないで!まだわかんないの?私があんた達に近づいたのはお金のため!!1文無しのあんたらになんてなんの魅力も価値もないわ!!」

 

きゅぅーーん。しょぼんぬ。まぁ表情筋は微動だにしないんだけど。つか誰が一文無しやねん。ちゃんとお財布持ってるもん。アルゼンチンペソ入ってるしぃ。(嘘)

 

「船なら返す。さっさと航海士見つけてひとつなぎの大秘宝でも何でも探しに行けば!?さっさと出ていけ!!目障りなのよ!!」

 

ふーん、なるほどね。オーケー、大体理解した。

 

つまり助けて欲しいってことでおk?

 

「ねる。」

 

ふぁっ!?いやお前...お前!!自由か!!!

 

「寝るぅ!?この事態に!?道の真ん中で!?」

 

「島を出る気はねぇし、この島で何が起きてるのかも興味ねぇし。ちょっと眠いし。ねる。」

 

ねる...ねる...ねるねるねるね!あれ、食べたことないんよ。美味いん?

 

「...勝手にしろ!!!!死んじまえ!!!!」

 

あー、帰っちゃった。お?なんだ、おまいら2人も帰んの?そっかぁ。またなー。

 

とりあえず木陰...木陰に座りたい。ちょっと立っとくの疲れた。日傘さしてるけど。

 

「...おい。」

 

「あァ?」

 

「ナミさんは本当にあの長っ鼻を殺してねぇんだな?」

 

「さぁな。俺が''小物''って発破かけてやったから、もしかしたら殺してるかもしれねぇな。」

 

「小物ぉ...!?」

 

何ピキっとんサンジ。ん、ウソップが近づいてくる。なんか嬉しそう。どしたん?何かいい事でもあったのかい?(アロハ)あれ、これやばない?直撃コースだわ。

 

「ナミさんの胸のどこが小物だぁ!!!うおっ!?」

 

「なっ!?」

 

「ぎゃー!あぶねぇっ!?」

 

それな。よかったね、蹴りと鞘に挟まれなくて。

 

「てめぇ...今の、どうやって!?」

 

「どう、?え、流しただけだけど。」

 

ウソップに当たらないように、ゾロの鞘を掌で押えて動かないようにした。サンジの蹴りは勢いをそのままに流して投げた。おわり。QED.

 

「うぉぉおおお、助かった...ありがとな!って誰だ?」

 

「僕だよ!君の生き別れの双子の弟さ!」

 

「は?」

 

「だからそれやめろって。毎度毎度ツッコませんなよ。」

 

誰か初見で乗ってきてくれる奴いねぇかな。

 

「あーっ!ウソップ!」

 

「おぉ、ルフィ来てたのか。」

 

「あ、俺も来たぜ。よろしくな。」

 

「てめぇはよろしくする前にまず謝れ!!ソラ、お前は恩人だ!よろしくなっ!」

 

最もな意見だと思うでやんす。おんおん、よろしくな。常識人がもっと増えてくれ。この世界は民度が低いんや。

 

「俺はナミに命を救われた!!アイツが魚人海賊団にいることには、訳があると俺は見てる。」

 

あー、訂正しとくと魚人海賊団ではないね。正確には、アーロン一味だ。

 

また人が増えたな。ナミのお姉さんの、ノジコさんね。なんかナミの過去話してくれるんだって。ルフィは散歩。まじで自由だな。誰か首輪繋いどけよ。ゾロは話聞くって言った直後に寝てる。おまえらマジでいい加減にしろよ!!

 

「僕、ラーキレス号を海に戻してくるね。」

 

「いやおめぇもかよっ!って、そんな船どうやって運ぶんだ!?」

 

「、? 持って。」

 

「...は?」

 

持って。

 

あ、そうだ。一応サンジに伝えとこう。あのね、かくかくしかじかだと思うんだ。でももしごにょごにょのごにょだったら、その時は僕のこと呼んでね。かくかくしかじかの方だったら呼ばなくていいや、適当に時間潰してるから。え?いやポニョじゃねぇよごにょだよ。あんなに足の指器用じゃないから。ちな、ラーメンは普通に好き。

 

え?んー、どこ...どこに居るんだろう。何処にでも居て、何処にも居ない。そう、それが僕。あ、うそ。多分船に居るわ。それか適当に徘徊してる。そんじゃ、よろピクミン。

 

 

&&&

 

 

ざっぶーん、とくらぁ。僕、ゴリマッチョって訳じゃないのに、何故か力は強いんだよな。魚人並みにあるとは言わないんだけど、普通の人の5倍以上はあるんじゃなかろうか。

 

母親がなんかそういう家系なんだろうな。知らんけど。

 

そんな訳で、ラーキレス号を持つことだって出来るのだ。むっちゃ腕プルプルしてたけどな。いや、別にぃ?本気を出せばぁ?もっといけるしぃ?全然余裕のよしきくんだしぃ?みたいな?

 

てかメリー。初めて見たよメリー。かわいいなメリー。私メリーさん。いま、あなたの目の前にいるの。

 

ちょっと船内見てもいいかなー?いいよね、だって僕ももう麦わらの一味なんだし。てか思ったんだけどさ、普通船番1人くらい置いとかない?しょうがないなぁ、僕が見ててやるよ!但し飽きるまでな!!!

 

ほーん、なるほど。普通に広くね?快適じゃん。ラーキレス号も収納できるわ。神かよ。うんしょ、うんしょ。ジャストじゃ。いつでも出港できるぞよ?船首もかわえぇんじゃあ。いーぃねぇー。テンション上がる。この芸術的な曲線、材質の手触り、落ち着く木の匂い、甲板を踏んだ時の音。うんうん、良い船だな。

 

サラサラサラ〜っと。ほい、こんな感じか?何かの役に立つかもしれないし、一応メリー号の設計図もあって困るこたァないだろう。保管しとこーっと。

 

さて。ほんじゃま、徘徊しますか。なーにーがーっ。あーるのっかなー?

 

早速だが、すれ違った人がみかん持ってたから買っちった。ちょー美味ぇ。なんぞこれ、この島の特産品か何か?バラティエで扱いたいくらいなんだけど。

 

みかんかぁ、柑橘系のフルーツはスイーツの王道だし、ジャムとの相性も抜群で汎用性高いんだよな。純粋にソースとかも作れるし。うわ、作りたい。今度またみかん持ってる人がいたらいっぱい売ってもらお。

 

あと、島の代表さんはいずこ??バラティエに定期的にみかんおろす気ない?って交渉しなきゃ。位置関係も割と近いし、中々の優良物件じゃね。

 

あそこなんか人がいっぱい居る。しかもみかん畑ある。行ってみようそうしよう。ん?なんか近くにルフィいるわ。ってことは厄介事か?どないしたんやろ?



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

それぞれのやるべき事

とーこー!!


ルフィは割と近くに居るけど、散歩中かな。あの集団と一緒にいる訳じゃなさそう。んで、あれは...海軍?なんぞ?海軍に向かってナミが怒ってるっぽい。あとなんか知らん人、が...風車、だと...!?

 

なんだあれ、やべぇこの人絶対面白い人やんけ。ねぇちょっとおじさんどこ住み〜?LI〇E交換しなーい?とか言っちゃって。よく見たらこの人めっちゃ縫い傷ある。僕の身体もそんな感じ〜、オソロオソロ。ゾロともオソロ。

 

あ、なんか海軍が民家に入ろうとしてる。ナミの家っぽいし、とりあえず止めるか。

 

「こんにちは、海軍さん。何かあったんですか?」

 

ほんまに。まぁ何があったにせよ、ナミが悲しんでるからお前らの味方はしないんだけどな。とりあえず状況確認?

 

聞いた上でどう対処すべきか考える時間が欲しいので、良いと言うまで大人しくしておいて下さい!!!ハウスっ!!!あっこいつ犬じゃなくてネズミっぽい!!!

 

「んん?なんだね君は。こんな晴れた日にマントと傘など、怪しい風貌だな。我々はここに海賊専門の泥棒が居ると通報を受けて来たのだ。盗品は全て、我々政府が預かり受ける決まりだからね。」

 

おいまてお前もフード被ってんじゃねぇか。あんまり人の事言えねぇだろ。海賊から盗った物は海軍に渡すって、それま?え、渡したことないんだけど。

 

「...っ勝手なこと言わないで!!私が今までどんな思いで...。」

 

「ナミ、落ち着いて。感情の昂りは思考を鈍らせる。」

 

まぁまぁもちつけ。間違った落ち着け。とりあえず、話してる最中はみんな動かないっぽいからこのまま話を続けてみよう。RPGみてぇだな。動かぬなら 続けてみよう ホトトギス。ホーホケキョっ!(それはウグイス)

 

「泥棒ですか、それは大変ですね。しかし海賊専門であれば、貴方がたが率先して動く事でも無いのでは?」

 

「通報を受けたからには動かぬ訳には行くまい。通報者は困っており、助けて欲しくて我々に縋ったのだ。」

 

「海賊専門の泥棒が居て困るのは海賊だけですよ。つまり貴方が行うべきは、通報者の情報を収集し事前準備をしっかりと行った上で、通報者であるその海賊を捕らえるために尽力することです。明らかに優先順位が違う。」

 

「「「!!!」」」

 

お、みんな心当たりある感じ?ぼきゅもあるぅ〜。だってこの島海賊いるんでしょ?犯人は...この(島の)中にいるっ!!!!

 

「貴様...部外者の分際で口を挟むな!!構わん、お前たち早く1億ベリーを探し出せ!!」

 

はい、自供。これは誘導尋問じゃない!!!だって僕何も言ってないもん!!!こいつが勝手に口を滑らせただけ。

 

「1億ベリーなんですか?その情報はどこから得たのでしょう。当時の通報のやり取りを書き起こして頂ければ、僕も何かお役に立てるかもしれませんよ。」

 

海賊捕まえるのに協力しちゃるよ。一般人(嘘)の僕が。ええんやで...困った時はお互い様や。最終的に僕が捕まりそうなんじゃが。

 

「アーロン...!あいつっ、絶対許さない!!」

 

悔しいよな、8年間も苦汁を飲まされ続けてきたんだ。ようやく解放されると思った矢先にこの仕打ちか。これはちょっと、きついなぁ。アーロン性格悪っ!ま、魚人を相手にする事は出来ないけど、こいつらは別だ。きっちり対応させて頂きますよ、えぇ。

 

海賊と海軍の癒着なんて本来はありえない。例外として四皇とか七武海がいるけど、そいつらも他の海賊の抑止力として存在してる。ということで仕事しろよお前ら...イーストブルーだからって手ぇ抜いて良い理由にならねぇんだかんな!!!

 

「家の中に入るなっ!怪我人が寝てるんだから!!」

 

うん。ずっと思ってたけど、2階に衰弱した気配があるね。大丈夫そ?まぁいいや、とりあえず動こう。

 

「それが貴方がたの正義ですか?上の命令にはどんな内容であろうと従うと?何のために海軍に入ったんですか。悪から、一般人を守るためではないのですか。」

 

それが本当に己の正義であると思う者のみかかってきなさいやみんな来るんかーーーい。クソが!!!縦社会がよぉ!!!風通しのいい組織にしろよもっと!!!何人いるんだよ馬鹿かよ!!!

 

あーもう。恨まないでぇぇ...。

 

「''■■■■・人技(じんぎ) 閃貫手(せんぬきて) ''。」

 

「''■■■■・人技(じんぎ) 柳凪(やなぎなぎ)''。」

 

「「「がっ...、」」」

 

徒手空拳で大人数相手に立ち回るって結構難しいんよ。しかも今回は吹き飛ばしたり投げ飛ばしたりしたら、家とかみかん畑傷ついちゃうし。飛ばすなら方向に気をつけなきゃ。気ぃ使うわぁ。まぁ地面に叩きつければ良いんやけど。

 

「うそ、一瞬で...。」

 

「つ、強い。何者だあの男。お前の仲間か、ナミ。」

 

「...。」

 

えっ。え?ナマカ...だよね?いやナマコ...?いや仲間。あっ、自己紹介してないから?ここに来てからまだ名前言い合ってないです〜まだ友達じゃありません〜とかそういう感じ?

 

「ソラです。」

 

「名前を聞いたんじゃない。」

 

えぇ...、何なんだよ!!何者だ言うたやんけ!!何が知りたいん!?あ、LI〇E? なんだー、それならそうと早く言ってよ。ID教えようか?前世のだけど。

 

「きっ、きさま!私は海軍第16支部大佐 ネズミだぞ!!私への攻撃は軍への攻撃だ!!わかっているのか!!」

 

あ、どうもご丁寧に。別にお前に名乗ったわけじゃ無いけどな。どうせお前あれだろ?合コンとかでも相手の反応とか関係なしに自分語りするタイプじゃろ。え?合コン行ったことない?...、ごめんて。元気出せよ。

 

つかそもそもお前には攻撃してねぇけどな。あ、予防線張ったってこと?だから攻撃しないでくださいって?でも諸悪の根源お前じゃん。(キルシュタイン?)

 

「一旦引いては如何です?戦況を見極め判断を下すのは上の務めでしょう。」

 

「...っ!!チィっ!行くぞお前たち!さっさと立て!!」

 

うん、手加減しといたからすぐに立てると思う。うわ、あいつ腹いせに部下のこと蹴りやがったぞ。ドン引き...。まぁ僕には関係ないけど。

 

ぁこれにてぇぃいっけん落着ぅう!(ガマ仙人風)

 

べべんっ!

 

とはならんのよ、流石に。

 

「よぉソラ、ナミ!何かあったのか?」

 

何もなかったよ。

 

「あんた...まだここに居たの。さっさと出ていきなさいよ!!あんたもよ!!関係ないでしょ!!!」

 

泣いていいかな。

 

僕はただ...みかんが欲しかっただけなのに...。

 

あー、走ってっちゃった。アーロンのとこに行ったんだろうな。ついでに風車のおじさんもどっか行っちゃった。

 

「なーんだよぉ、あいつ。」

 

「ルフィ。」

 

「ん?どうした、ソラ。」

 

「風車のおじさんに着いて行って。そんで風車1本貰ってきて。」

 

「おぉ!おれもあれイカスと思ってたんだよなぁー!あっはっは!よっしゃ、行ってくる!」

 

ばいちゃー!

 

よし、これでナミとエンカウントする筈だ。そのままアーロンパークに乗り込むだろ。お、ノジコさんが来た。

 

「あんた、なんでここに?」

 

「先程、海軍の方々がいらっしゃいまして。ナミの貯めたお金は盗んだものだから、海軍に提出する義務があるのだと。」

 

「はぁ!?なにそれ、ふざけんじゃないわよ!!」

 

「えぇ。僕もそう思いましたので、丁重におもてなしさせて頂きました。」

 

お・も・て・な・し★

 

やっぱりナミに似てるな。人のために怒ってくれる、行動してくれる。優しい人だ。

 

「追っ払ったって訳ね。やるじゃん、あんた。」

 

それほどでも。

 

「少しお話させて頂いても?」

 

「いいわ、中に入って。お茶くらい出すから。」

 

ま?うれぴー、あざまる水産。

 

「それで、話って?」

 

うんうん、あのさ。2階で寝てる人の事なんだけどさ。

 

「あぁ。ベルメールさん(・・・・・・・)って言ってね。あたしとナミの母親なんだ。8年前から、寝たっきり。アイツらに...アーロンにね、やられちゃって。」

 

どうしようもなかったのだと。ふーん。

 

「お見舞いしても?」

 

「構わないよ。意識はないから、反応はかえってこないけど。」

 

ええで。みるだけだし。

 

「彼女の、足は。」

 

「...、見ての通りだよ。アーロンにズタズタにされて、引っ付いてるだけの、使い物にならなくなったから。」

 

切断した方が良かったから処置したってことね。ふーん。で、当人はそれも知ることなく眠り続けてると。

 

「この村に、義足や義手の職人は居ないんですね。」

 

「医者なら居るけど、そういうことができる人は。」

 

なるほど。ふむ、ふむふむ。うん、おっけー。

 

「僕に、作らせて頂いてもよろしいですか?」

 

「え、あんた...まさか、作れるの!?」

 

うん。設計図は今から書くから、材料と道具を持ってきて貰えたら。実績もあるよ!少ないけどな!!

 

さてと、まずは測定からかな。ついでに車椅子とかも作れるか?何とかなるだろ、木はいっぱいあるんだから。

 

 

&&&

 

 

よしかんせーい。あとはパーツを組み立ててっと。チャラララッララーン♪ ソラ印の義足ぅ〜。あと車椅子も。

 

「終わったのか。」

 

「ゾロ。うん、これで完成。」

 

ノジコさんは材料置いてどっか行ったし。まぁ代わりって訳じゃないけど、少し行った先にゾロが吹っ飛んできた。仕方ないからここまで運んだんだけど。ルフィにゴムゴムの入れ替えされたんだって。テラワロス。

 

あーあぁ、見たかった。でもしょうがないよな、これは何よりも優先しなきゃいけないことだから。命があるだけ儲けもの、なんて口が裂けても言えないよなぁ。はぁ、ったくなんでこんなことしてんだか。

 

「へぇ...こんな滑らかになるもんなのか。おいおい、爪まで作られてるぜ。すげぇな。...あっ、やべっ。外れちまった。」

 

研磨しまくったからなー。腱鞘炎になるかと思った。途中でゾロも手伝ってくれたけど。優しい。爪についてはまぁ無くても良いんだけど。でもさ、女性が使うんなら、やっぱ爪って重要じゃん?それ付け外し出来るから、壊したわけじゃないから慌てなさんな。つけ爪とかと同じ感覚なんだよね。ペディキュアだって使えちゃうぞ!(凝り性)

 

「傷は平気なの?」

 

「問題ねぇよ、血も止めて貰ったしな。お前、飯も作れて工作も出来て、怪我の手当ても出来んのか。そういや戦闘も出来るんだっけか。何でも出来んじゃねぇか、貴重な人材だぜ。」

 

「何でもは出来ないよ、出来ることだけ。(バサバサさん風)何か一つを極めてる訳でもないし。平均的に何でもそこそこより、ゾロみたいにひとつの事を極めてる人を尊敬する。」

 

「はーん、そんなもんか。ま、隣の芝はなんとやら、って言うしな。」

 

そんなもんやで。ゾロみたいに、迷子スキルにスキルポイント極振りしてる人、尊敬する。謎すぎて。ちなみに芝なら青で花なら赤やで。

 

よーし、もうここでやることは無いな。設計図も置いてるし、メンテナンスの手順書も書いた。あとは色々、材料があればこんなのも作れるよ〜オプション付くよ〜ってメモも。これを商船にでも渡せばいつでもアップーデートできるじゃろ。

 

ほんじゃま、あっちに向かうか。

 

「そろそろルフィの方も終わると思うから、移動しようと思うんだけど。」

 

「あぁ、いいぜ。」

 

よっしゃ行くで〜。おんぶしよか?あ、要らない?はーい。改めて見ると、まじで傷一緒やな。やーん、目が覚めたら鷹の目から痕つけられてたぁ〜。(刀傷)メンヘラかよ。

 

 

&&&

 

 

「そこまでだ貴様らぁ!!!チッチッチッチ!!全員武器を捨てろ!!ここにある全ての金品は、このネズミ大佐が貰ったァ!!!」

 

お?またなんか面白いこと言ってるよあいつ、懲りないねぇ。海軍のセリフとは思えねぇぞ!!(正論)

 

「こんにちは、随分楽しそうですね。何かあったんですか?(すっとぼけー)」

 

「げぇぇっ!!お、お前はっ!?」

 

げぇぇって言われたの初めてなんだけど。おいお前、お前ぇ!!僕の顔が見えないからそういう反応出来るんだぞ!!お前なんかこの美顔の前ではバルス食らった某大佐と同じ末路を辿ることになるんだからな!!えっ、こいつも大佐?...本人ってこと?

 

「ぅぅううぉおまえら!!こいつを片付けろ!!!さっきの倍以上の人数が居るんだ、負けるはずがない!!」

 

いや私怨〜。そして銃口を向けられる〜。なして〜?

 

「何やったんだよお前ぇは。」

 

「人助け?」

 

ほんまに。んー、こんなに早く同じ行動を取るんなら、ちょっとキツめのお灸が必要かな。

 

しゅるり、と。

 

「''■■■■・人技(じんぎ) 無刀取(むとうど)り''。」

 

「「「...はっ!?!?」」」

 

うんうん、フシギダネぇ。(君に決めたっ!)手に持ってた銃がいつの間にか相手の手に渡ってたらそりゃそうなるわな。はい、こんなばっちいのはポイッと。

 

「''刃技(じんぎ) (あま)綴雪(つづりせ)''。」

 

はい、みんなの腕、氷っちゃってぇー?寒いねぇ、ちべたいねぇ。でもあんまり動くと割れちゃうかも?表面だけね!ちょびっとだけだから!!

 

「ソラ、お前刀も使えたのか。」

 

「ん、割と得意...かも?」

 

「へぇ、今度手合わせしようぜ。」

 

ハイタッチのこと?ええよ。おててのシワとシワ、合わせてシワシワ〜。(幼女VC)

 

とかなんとか言ってたらナミがネズミをボッコボコにしてて草。でもスッキリした顔してる。良い顔になったねぇ。

 

「貴様らおぼえでろ!!麦わらの男!!貴様が船長だな!!?復讐してやる!!傘のお前もだ!!!」

 

あれ、賞金首フラグじゃん。やんだぁ、困るわ。ルフィだけでええやん。みんなと同じタイミングでお尋ね者になりたいんじゃが。

 

ん、なになに?そんなことより宴会?いーいねぇ〜。スイーツあるかなぁ?なかったら作ろ。

 

さて、みんな準備してるなー。楽しみ楽しみ♪っと、その前にちょっと用事がありましてん。あいつに用事がありましてん。どーこーだーー??

 

あ、このガレキの下だ。うんしょっと。

 

「や、久しいね(・・・・)。アーロン。」

 

「......て、めぇ。は、ソ、ら...か。」

 

うん、そうだよー。おひさひさ。やっはろー?元気してる??ボロボロだけど。おもいでボロボロ。

 

「お、い...おれを、たす...けろ...!」

 

「そりゃ無理だ。」

 

なんでやねん。

 

「なんで、だよ、てめぇ...!盟約だろ...!誓ったはずだ、魚人島(・・・)で、!てめぇの、その、ペンダントに...誓ったはずだ!」

 

なんでお前がなんで言うねん。こっちのセリフや。

 

「違うよ、アーロン。あれは盟約じゃない。誓約だ。''僕は生涯、絶対に魚人に手を挙げない。攻撃を加えない。''それこそが、僕がこのペンダントに立てた誓いだ。ボロボロの君を助けるのとは話が違う。」

 

「ころ、して、ねぇだろうが!誰ひとり、どんなにいけ好かねぇ人間だろうが、おれァ殺してねぇぞ...!1人もだ!」

 

「だから約束を守れって?''人を殺すな。この約束を守るなら、できる限り力を貸そう。''確かに僕はかの王と、そう約束を交わした。」

 

「でもね、アーロン。殺さなければ何をしても良いとは言ってない。」

 

「!!」

 

「僕ね、ルフィの仲間になったんだよ。」

 

「なっ、なんだと...!?」

 

「つまりお前は、僕の仲間を傷つけて。仲間の家族の足を切り落とし、育ててくれた村を支配したんだ。」

 

端的に言えば、やり過ぎだ。僕の許容限界を超えてる。

 

「僕はお前を、助けない。...ごめんね。」

 

「く、そ...。ニンゲンが...。」

 

気失っちゃった。おやすみー、アーロン。目が覚めたら体が縮んでしまっているかもしれないぞ。気をつけろよ!(嘘)

 

さ、言いたいこと言えたし。うったーげ♪うったーげ♪っとくらぁ。




主人公は一体何者なのか...!?
だれなんだ!おまえは!!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

宴の裏で暗躍する!

誤字報告を多数頂いております。
本当に本当にありがとうございます。
これからもよろしくお願いします!!!(反省しろ)


泣いて笑って歌って踊って。みーーんな、嬉しそう。8年夢見た自由な夜だ。酒池肉林たァこのことよ。

 

「こんばんは。少しお時間よろしいですか?」

 

「む?君は...。」

 

喧騒から少し離れたところに風車のおじさんが居た。チャーンス。

 

「自己紹介がまだ...では無いですね。そういえばもう名乗りました。」

 

「あぁ、そうだったな。私はゲンゾウという。この島の駐在で、ナミの...。」

 

傘を閉じて、フードを外す。夜だからな、天敵である日光は無いのだ。さぁ、月明かりに照らされる美貌に酔いしれるが良い。

 

「ナミの、ちちおや、代わりだ!!!!ナミは渡さん!!!!ぜっっったいにだ!!!」

 

何言うとんねんこいつ。ちょ、予想してた反応と違いすぎて。

 

「はぁ、、?そうですか、よろしくお願いします、ゲンゾウさん。」

 

「よろしくもしてやらん!!!!」

 

いやなんなん。

 

「...なんだ。ナミの彼氏じゃなかったか。私に''娘さんを僕にください。''などと戯言を言いに来たのかと。」

 

「違いますね。」

 

そもそもおっさんがナミの父親代わりとか知らんかったし。まぁナミは綺麗だけど。僕も負けてないがな!!

 

ま、いいや。とりあえずさー、聞いて?

 

「む、あぁ、そうだったな。それで、話とは?」

 

おじさん、バラティエって知ってる?知ってるかな?知ってるよねぇ??(圧)

 

「あ、あぁ、聞いたことがある。確か、イーストブルーのどこかにある一流レストランの名前だったな。海上レストランとかなんとか。」

 

せやねん。よかった、知っててくれて。OHANASHIしなくて済むわ。

 

「そうです。実は僕、つい先日までそこのNo.3でして。ちなみにNo.2は一緒に居た金髪グル眉です。」

 

「ほう!そうだったのか、だからあんなに美味いものを。いやぁ、この島のみかんがあれほど多種多様なお菓子に化けるとは驚いた。なるほど、納得だ。」

 

そーそー。結局スイーツはなかったから、材料だけ貰って自分で作ったんだよな。そしたら意外と子ども達とか島の女性陣とかルフィとかウソップとか、甘いもの好きな人結構居たから。めっちゃ作って振舞ってやったぜ!!おっさんも食べたんか、見かけによらず(関係ない)甘いもの好きなんやな。嬉しい限りで。

 

閑話休題(それはともかく)

 

「この島のみかんだからこそですよ。とても美味しくて驚きました。そこで相談なのですが、ここのみかんをバラティエで使わせて頂けませんか?」

 

「な、なに?この島のみかんをバラティエで、か?」

 

え、うん。なんでそんなに驚いてんの?そんなにおかしいこと言ったっけ。美味しいから使わせてって言っただけなんじゃが。はっきりせぇやぁ!?おぉん???

 

まぁ、これは双方にメリットのある話だ。バラティエ側としては単純に、品質の良いみかんを定期的に仕入れる事が出来る。時々この島にやってくる商船に卸しているんだろうが、多分そこまで儲かってる訳じゃ無いはずだ。島の生活水準がそこまで高くないから。

 

でもバラティエに直で卸してくれたら、商船よりも良い値段で買う。なんなら専属契約でも結べば、店も結構な額を出すんじゃなかろうか。柑橘系ってレパートリー豊富だし、店としても全然あり。あり寄りのあり。まぁ価格交渉とかの話はオーナーの爺さんとやってくれ。前は僕がやってたけど。

 

んで島側のメリットとしては、店側よりももっとある。まず第一に、儲かる。今よりもずっと。第二に、バラティエが使ってるみかんってことを近辺に宣伝できたら、この島を実際に訪れて、現地で直接採れたてのみかんを食べたいって人も出てくるだろう。何なら果物狩りとかそういう体験もさせたら良い。

 

そうやって島の活性化に繋がる。人が来たらものの流通も盛んになる。この島じゃ取れないような食材や、嗜好品なんかも往来するだろう。つまり島全体の生活水準が向上する。

 

今までアーロンに搾取され続けてきた島民は、じゃあこれからどうやって島を発展させていくかを考える必要が出てくるだろう。その足がかりとして、バラティエを使うというひとつの選択肢を提示する。

 

「確かに...。こちらとしては、願ってもない話だ。だが本当にそんなことが可能なのか?君はもう店の者では無いのだろう?」

 

全然可能。従業員じゃないけど、この位はモーマンタイ。

 

「懸念点としては、バラティエに定期的に納められるだけの収穫量を確保出来るのか、という点が1つ。それと安全な航海路の確保。この2点です。」

 

「収穫量は問題ない筈だ。この島でみかん農家をやっている者は沢山いる。足りなければ、島の皆で畑を増やせば良い。労働力がちと課題だが、まぁ...そこはおいおい考える。だが、航海路は...。」

 

「私が何とかするわ。」

 

「!!な、ナミ?」

 

おーす、お疲れナミ。

 

「面白い話してるじゃない?私も混ぜなさいよ。」

 

ええで。で、何とかするって、具体的には?

 

「8年間、測量士として海図を書き続けてきたのよ?この島の周りはもちろん、バラティエだってこの前行ってきたし、場所は把握してる。この島とバラティエ間の海図を書いて、安全な航海路を示しておけば...私の海図を使えば、安全に航海することが出来る!そうでしょ?」

 

ほう。

 

「だが、ナミ!お前は海図を書きたくて書いていた訳じゃ無いだろう!お前がやりたくないことをさせる訳には...!」

 

「ゲンさん、私の夢忘れちゃったの?世界中の海図を書くことよ!私が嫌だったのは、アーロンの下で無理やり海図を書かされること!」

 

「今までずっとしてきた努力を、この島のために発揮出来るなんて!こんなに嬉しいことって無いわよ!」

 

強いなぁ、ナミ。辛かった筈だ。長年、ずっと。1人で戦い続けてきたんだから。それなのにこんなに前向きに、明るく笑って島のためだと言えるのか。すっげぇな。

 

「...ぐぅっ。お前は、本当に...!」

 

「ちょ!?泣かないでったら、もう!」

 

うんうん。良いねぇ、ハッピーエンドや。だが商品の運輸について、問題がもうひとつある。

 

「海路の問題がもうひとつ。運搬中にどこぞの海賊に襲われる可能性があること。」

 

「「!」」

 

どうするかねぇ。イーストブルーとは言え、海賊に変わりは無いし。民間人に戦闘させるのは無理だろうし。あ、そうだ。

 

「私の経験から、あまり海賊船が通らない道を割り出すことは出来る。けど...。」

 

「それも絶対とは言い難い、か。ううむ、どうしたものか。護衛でも付けられれば良いのだが。」

 

「そうですね、ではこうしましょう。バラティエの従業員に運搬してもらう。但し、島側はその分料金を割引きして商品を提供する。」

 

どや?これなら安全じゃろ。

 

「む?いや、それだと根本的な解決にはならないだろう。我々の人的被害は無くなるかもしれんが、レストラン側はどうなる。」

 

「あー、それなら問題ないわね。あのレストラン、海賊とか海軍も結構利用するみたいなの。だから従業員みーんな戦えるのよ。」

 

「そうなのか?」

 

せやで。戦う海のコックさんなんや。

 

よし、これで運搬の問題は解決やな。一筆したためて、バラティエ側にも不満の無いように計らっておこう。

 

「よし、これで問題解決ね!忙しくなるわね、ゲンさん?」

 

「はっはっは、なんの!島の皆で協力するさ!」

 

あ、ねぇあともう1個あるんだけど。ごめんて、そんな睨まんといて?ここで終わっとけよ、みたいな。しょうがないじゃろ、これも大事なことなんやで。

 

「「島の人たちの...義肢ぃ!?」」

 

せやせや。

 

「宴にいた人たちの中に、多数見受けられましたよね。四肢が欠損した方々。アーロンの仕業でしょうけど。」

 

「っ、えぇ。そうよ、反乱の意思があると見なされた人は、捕まって拷問されて、腕か足を...。」

 

なるほどね。殺すのでは無く、そういう方法を取ったわけだ。残酷だな。

 

「ナミは知ってると思うけど、爺さん、バラティエのオーナーは義足だ。あれは僕が設計したものなんだよ。だから、汎用性の高い義肢の設計図をいくつか書いて、ゲンゾウさんに渡すから。」

 

流石に全員の身体計測を行ってオーダーメイドで1品1品...とは出来ない。時間的にも労力的にも。だから、汎用型義肢の設計図だけを渡す。あとは島の外から職人を呼ぶなり何なりすればどうとでもなる筈だ。

 

「じゃあ、もしかして、歩けるようになるってこと...?ベルメールさん...!」

 

「!!! で、出来るのかっ!?ベルメールの目が覚めた時に、また、アイツの歩く姿を見られるのかっ!?どうなんだっ、ソラ!!」

 

「できますよ。まぁ、そのベルメールさんの努力次第ですけどね。リハビリは必要なので。」

 

もしリハビリが難しいようでも、車椅子があれば生活はできるし。ひとりじゃ厳しいけど、この島の人達はみんな優しい。誰かしら手を貸してくれるだろう。あ、ついでに車椅子の設計図も渡しとこ。

 

「よかった...、良かった。ベルメールさんっ!」

 

「...うっ、うぅ...。」

 

泣かない泣かない。

 

「これで、先程言っていた労働力の件も解決ですね。反乱の意思があると判断された者たち。どれくらいの人数が被害に遭ったのか、正確には分かりませんが。少なくはない筈です。」

 

その人たちだって、今後生きていかなければならない。生きるには希望が必要だ。今まではアーロンへの恐怖でそんな事を考える余裕も無く、ただ毎日を必死に生きて来たのだろう。

 

だがこれからは、生活に余裕が生まれる。つまり自分の今後を、先の未来を考えるようになる。そんな時、ふと自分の欠けた部位を見て何を思う?

 

少なからず、気が滅入るだろう。不安になる。不満になる。絶望を感じる。自分はこうなのに、何故ほかの奴らには手足があるのだと。

 

僕がそうだったから。伽藍堂の瞳を鏡で見る度に、この目を呪った。なぜ、なぜと自分を責めた。

 

その気持ちは、絶たねばならない。絶対に。

 

「その人たちの為に、新たな手と足を贈ります。まずは日常生活が出来るようになるまでしっかりとリハビリを。それだけで陰鬱な気持ちも無くなって、考えが前向きになる筈です。そして少しずつ、労働が出来るようになっていければ。自分に価値を見出すことが出来る。」

 

自分は人の役に立てているのだと自覚することが出来る。

 

「あぁ...それは、なんと素晴らしいことだろう。ありがたく受け取ることにする。それで、その設計図はいくらだ?」

 

「はい?」

 

「...?だから、その義肢の設計図をいくらで譲ってくれるのかと聞いているのだ。」

 

...、、、!!!!!

 

これ!!!金取れんの!?!?

 

まじか、あー、そう。そういう感じ?ほんほん?はーん。理解理解。

 

いや、知ってたけどね?今まで善意でやってただけだし??趣味と特技の産物を渡してるだけだから金儲けなんて考えたこと無かったとかそういうあれじゃないし。違うし。

 

でもまぁ今回は...。

 

「...ソラ!それ、私が買う!今まで貯めた1億ベリーで払うから。いくら?ちょっと位はまけなさいよね、仲間なんだから!」

 

「なっ、何を言う!それはお前が命をかけて稼いだ金だろう!!自分のために使いなさい!」

 

ギャーギャー言い争ってる。ほんとに親子みたいだなぁ、仲良しやで。

 

てか仲間って言ってくれた!!!仲間って!!聞き間違いじゃないよな?ナマコじゃないよね?ナマコ価格ってなんだよ。

 

「あ、お金は要らない。」

 

「「!?」」

 

「え!いいのー!?♡ やっぱあんた、話がわかるわね!」

 

「まてまてまてまて待ちなさい!どういう事だ!?こういう事はしっかりせにゃならん。」

 

いやぁ、そうなんだけどさぁ。趣味なんだもん。元々爺さんの為に始めたことで、それが得意って分かったからずっと続けてるってだけなんだわ。

 

しかも、ねぇ?

 

「にしし、お金なんてとる訳無いじゃん。仲間なんだから。」

 

「「...!(綺麗)」」

 

ん?なんぞ、フリーズして。はっ!後ろになにか!?いや、居ないわ。僕の見聞色は最強なんだっ!!僕から見聞色をとったら、顔とか顔とか顔しか残らないじゃないか!(ナルシ)あとは少しの戦闘力。

 

「いや、だがな。流石にタダというのは...。」

 

「なによ、良いじゃない!あげるって言ってるんだから、素直に貰っとけば!」

 

だから云々。されど云々。うーん、平行線。いや、水平線と言っておこう。そっちの方がなんかオシャレじゃね?

 

「そうですね。今後お店に商品を卸して頂ける件について、前向きにご検討頂くために。というのが僕としての考えなのですが。それでご納得頂けないと言うのでしたら、是非バラティエでお食事をお召し上がりになって頂ければ幸いです。」

 

「あ、それ良いわね!何かのお祝いとかで行ってみたら?すっごく美味しかったから!」

 

お褒め頂き。

 

「そう、か。ふむ...よし、分かった。必ず行こう。」

 

あー良かった。納得してもらって。そもそもこれは、罪滅ぼしだ。お金なんて取れる訳が無いのだから。

 

いちばん辛い時に助けてあげられなくて、ごめんなさい。

 

ごめんなさいと、伝えることが出来なくて。

 

ごめんなさい。

 

卑怯な僕を、どうか赦さないで。

 

 

&&&

 

 

「船を出してっ!!!!」

 

んお、おし。出す出す。ん?何、ウトウトしてた。あれ、みんな甲板に居るの?呼んでよ...。仲間はずれ、いくない。

 

「しゅっこーーーーう!!!」

 

あ、出たわ。あー、そっかナミの大ジャンプのシーンか。よっしゃ見とこ。

 

「おい、良いのか?こんな別れさせて。」

 

「あいつの別れ方くらい、あいつが決めりゃ良いじゃん。」

 

核心突くよね、唐突に。

 

「「「ナッちゃん!!」」 「「ナミ!!」」

 

ぉぉおおおおおお!!!とっ、跳んだぁああああ!!!!ナミって普通に身体能力高いな、すげえ。

 

なんかめっちゃ財布持ってるやん。草。みんな焦ってる。早すぎる手刀(違う)、俺でなきゃ見逃しちゃうね。(狩人)

 

「みんな、元気でね♡」

 

「「「こ、こんガキャーーー!!!!」」」

 

うける。

 

「おい変わってねぇぞこいつ。」

 

「またいつ裏切ることやら。」

 

「んナミさん、グー!」

 

「賑やかだね、この島。」

 

「だっはっはっは!!」

 

まだ叫んでるよ。あ、でもなんかいつでも帰ってこいって聞こえる。にしし、やっぱみんな優しいな。

 

「小僧!!!約束を忘れるなよ!!!それと、ソラ!!感謝する!!!」

 

はにゃ?おんおん、気にせんといて。目覚めるとええな、ベルメールさん。貰った風車を掲げて手を振る。これ、今まで頭に刺してたやつじゃないよね?大丈夫だよね??

 

「じゃあね、みんな!!!行ってくる!!!」

 

いい笑顔だなぁ。

 

さ、日向ぼっこは終わりだ。船内に戻ろ。(早い)




今回の話はずっと書きたかったところなので
楽しかったです!!笑笑
普段より悩むことなく、サクサクかけました。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ローグタウンでの恐怖体験

ねむい。。。


非常に良く晴れたある日。甲板に居るはずのルフィの笑い声が船内まで届いてくる。

 

「なっはっはっは!!おれ達はお尋ね者になったぞ!!3千万ベリーだってよ〜!あ!ソラ、見てみろこれを!3千万ベリーだぞ!」

 

「聞こえてたよ。」

 

初頭手配額がイーストブルー平均額の10倍。狂気の沙汰だな。どうやったら最弱の海でルフィみたいなのが生まれるんだが。時々いるよね、こういう突然変異。

 

ウソップが後頭部映ってるってサンジに自慢してる。しかもサンジ悔しがってるし。うける。なんの自慢にもならねぇだろ。べっ、別に悔しくねぇし!!!負け惜しみとかそんなんじゃねぇから!!!

 

「そういや、ソラもあのネズミ野郎に恨み買ってたよな。」

 

「そうね。でも手配書はルフィのだけみたい。」

 

ほーん。なんでやろ?めっちゃ叫んでた割に大したこと出来てなくて草。(煽り)まぁ戦闘実績が(見られたのは)海軍とのいざこざだけだし。それじゃ賞金首にするには足りないと思われたんやろな。知らんけど。

 

「おい、島に着いたぞ。」

 

「もう着いたのね。ここには有名な街があるのよ。''ローグタウン''、別名''始まりと終わりの街''。」

 

海賊王 ゴール・D・ロジャーが生まれ、処刑された街。その代名詞につられてか、割と多くの海賊が訪れる街なのだが。騒ぎを起こす輩は不思議なほど少ないらしい。ワンピースに有るまじき民度の高さ。ここだけ異世界か?そんなこたァない。この世界まるっと異世界だぜ。

 

治安の良さは全て海軍のおかげなのだ。ふははははは。かの有名なアイスズボン大佐。海軍本部所属 白猟のスモーカー。うへぇ、おっかねぇ。でも見たい!!!もちろん見るよなぁ!?当たり前だよなぁ!?

 

「よし、俺は死刑台を見てくる。」

 

お。

 

「おれは装備を集めにいくか!」

 

あっ。

 

「俺も買いてぇもんがある。」

 

あっあっ。

 

「貸すわよ?利子3倍で。」

 

...。

 

「ここはいい食材が手に入りそうだな。」

 

で、出遅れた...だと...!?どどどどどどどうしよう。つかこんな個性的なメンバーの中で自分を出して目立つとか無理だからぁ!!(泣)海賊王のクルーはみんな特徴的なんだな。むしろ、個性限界突破の奴らの中に1人だけ普通()が居たら逆に目立つんじゃね?

 

普通王に!!僕はなるっ!!!語呂悪いな、やめとこ。

 

「何してんだソラ、さっさと行くぞ。」

 

ふぁっ!?(驚愕)えっ?(困惑)えっ!?(理解)えっ!!(歓喜)僕も一緒に行ってええのん??うへへへへへ、さすがサンジ、ぼっちを見捨てない男。やさぴっぴのうれぴっぴ。飴ちゃんくれるんならホイホイ着いてきゅ〜。

 

「うっほ〜〜〜!!すっげー美女!!♡やっぱでかい街は違うなぁ!!」

 

せやな。てか、この人混みの中で美女を察知するその慧眼に感服するわ。見えねぇって。どこやねん。僕にも見せろや!!

 

「何買うの?」

 

「一通りは揃えるつもりだが、とりあえずは肉だな。船長があれだから。あと魚と、野菜と、酒と調味料と...。」

 

全部やんけ。これ、別れた方が効率良くね?なんで一緒に歩いとるんや。(恩を仇で返すスタイル)

 

「へぃらっしゃいらっしゃい!兄ちゃんら見てって寄ってってー!」

 

「ん?おおっ!?おいおい何だこのファンキーな魚はよぉ!」

 

エレファント本マグロやんけ。デカイなー、切り身じゃないのは久々に見た。え、これ一本釣りしたの?おっさん何者?おっさんもすげえけどこいつの引きに耐える竿もパネェな。

 

「切るかい?」

 

「いや、丸ごと貰う!ソラ、持てるか?」

 

「え?いやいや金髪の兄ちゃん。そりゃあ流石に...。」

 

「ん。(ひょい)」

 

「「「!?!?」」」

 

僕はソラ、19歳!身長162cm、握力594kg!(嘘)全身黒コーデの日傘をさした眼帯色白白金髪の器用貧乏な男の子!よろしくね!★

 

てかこの魚、全長が僕の3倍くらいあって持ちずらいな。なんで今買ってん。取り置きしてもらって最後に買えよ。持ち歩くと邪魔だし周りにも迷惑やろがい。それ持ってここ歩く気?迷惑〜って感じで見られてる気がする。この視線に耐えられるのは未来の海賊王かそのクルーだけだ!!!僕じゃん。

 

「僕、一旦船に戻るね。これ降ろしてくる。」

 

「あぁ、悪ぃな。お前も何か買いたいもんあれば買っとけよ。材料切らしてたろ。」

 

「うん。予想以上に売れちゃった。」

 

「そんだけ美味かったってことだ。良かったじゃねぇか。」

 

それな。何度か甘いものを作って振舞ったが、ルフィにもウソップにもナミにも好評だった。ゾロは何も言わなかったが、黙々と食べておかわりしてた様子を見るにまぁ気に入ってくれたのだろう。たぶん。きっと。めいびー。パティシエ冥利に尽きるぜ。

 

ただちょっと食いっぷりが良すぎて、材料の消費が激しかった。ローグタウンに着く直前なんかは、ほんとに簡単なパンケーキとかプリンとかしか作ってあげられなかったからなー。それでも美味しいって言ってくれたけど。世界は優しさで出来ている。

 

てかこれまじデケぇな。街中通るよりも建物の屋根伝ってった方が楽そう。めっちゃ見られてるし。そんな心配せんでも、周りの迷惑は考えまっせ。え?ほんとに海賊か、だって?僕は良識のある海賊なのだ。ピースメイン代表。

 

ん...なんか、空が。いや、晴れてんだけど。雨、降りそうだな。伝えとくか。

 

「サンジ。僕、このまま屋根伝ってくから。荷物多いようならビニール袋貰った方が良さそうだよ。」

 

「ん?そうか、分かった。気ぃつけろよ。」

 

うい。よっこい、ぴょーんと。

 

 

&&&

 

 

さて、マグロも置いたし材料も買った。残念ながらゾロの妖刀ぶん投げチキンレースは見れなかったが、そんなこたァどうでもいいと思えるくらいにはさっさとここからおさらばしたい。

 

なぜか。

 

この街にやばい気配がある。まじで意味わかんなくらい存在感が強すぎてやばい。なんで今まで気づかなかったのか不思議なくらいにやばい。不思議ってか不自然?何がやばいって、鷹の目と相対した時もそうだったけど。実力に差がありすぎる。情報もないし。つまり敵対したら勝てる見込みゼロってこと。

 

そして僕が気づいてるってことは、向こうも僕に気づいてると思った方が良いだろう。つまりどういうことかと言うと、少しでも機嫌を損ねたら小指でちょん(殺)されるってこと。ガクブルだわド畜生め。

 

なんなん、まじなんなん。怖いんやが。誰だよ、なんでこんな街に居るの?ふざけんなよ!!こんなRPGで言うところの始まりの街に居ていい様なやつじゃないだろ!!!RPGじゃなくてもここは始まりの街だったわ!!えっ、始まりと終わりの街ってそういう意味?終わっちゃうの...?無理無理無理無理。

 

とりあえず、そいつがルフィ達を狙うようなら全力で足止めして先に逃がすしかない。そんで頃合いを見て僕も逃げる。逃げられるかわかんないけど。最悪マジで死ぬかもしれんが、さすがにこんな民衆の前でドンパチやらんやろっていう一般常識に賭けるしかない。祈るわ全力で。それか命乞いでもするか。

 

とか思ってる時期が僕にもありました。

 

「まさかこんな所でお目にかかれるとは思わなかったぞ。紅衣の王よ。」

 

「...初めまして、?紅衣の王、ですか?人違いでは。」

 

やんだァもう何この人ずっとついてくるぅ。目付き怖い。顔に刺青あるし。フード被ってるから怪しいし!!!(おまいう)

 

「すみません、先を急いでいますので。この辺りで。」

 

「待て。」

 

いや無理。一昨日来やがれ。ひぇっ、腕掴まれた。あっあっ、暗がりに連れ込まれるぅ...!路地裏の世界にぃ...!やだやだ、明るい所が良い!!お天道様の元で生きたいよぉ!!あっ、お天道様も敵だったわ。生きる場所なくて草も生えない。世界はもっと僕に優しくすべき。

 

「少しで良い、話がしたいのだ。」

 

「はぁ...なんなんですか。人違いですと言ったでしょう。」

 

「革命家ドラゴン。この名に聞き覚えは?」

 

そりゃあ知ってますとも。世界最悪の犯罪者とも称される、世界転覆を目論む革命軍のトップだろぉ!?そんな世界の常識とも言える名前を知らない奴なんて居ねぇから!!まぁ名前くらいしか知らんけどな!!!

 

で、なんな訳?普通こういう時ってまず自分の名前言わない?なんでわざわざ革命家ドラゴンなんて仰天ワードがでて、きて...。

 

「...まさか、貴方が?」

 

頷いた。ゴシゴシ、目がおかしいのか。目見えてないけど。もう一度聞くぞ?...頷いてる。ゴシゴシ。ゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシg

 

「おい、目が腫れてしまうぞ。」

 

うるせぇぇぇぇええええ!!!!!心配してんなよ!!!!優しいかよ!!!!ふざけんなよ何でこんな所に居るんだよぉ...。怖いよぉ、助けてサンジぃ...。

 

「もう一度問う。紅衣の王で相違無いな?」

 

あります。違います。無理です。ちょ、とりま手ぇ離さん?さっきから、絶対逃がさないマンになってるやん。一旦、一旦はなそ?マジで振り解けねぇぞ、どないなっとんねん。こういう時の力つよつよ設定やろがい。

 

「ではこんな話を知っているか?かつてマリージョアに囚われていた多くの奴隷を、たった2人で助け出した者たちがいた。1人はタイの魚人 フィッシャー・タイガー。そしてもう1人は、子どもの姿をしていたらしい。」

 

いや、離して。まじで。

 

「紅い外套を身に纏い、魚人の背に捕まりマリージョアへと乗り込んだ子ども。かつて、天竜人の奴隷だった者はこう言っていた。」

 

「地獄の底で神を見た、と。」

 

「!!」

 

まずいっ、まずいまずいまずい!!逃げないとっ。

 

「知らないです。いい加減に...!」

 

「あくまでもシラを切るか。仕方がない。少し手荒になるが、赦せよ。」

 

既に手荒な件。

 

悲報:初対面の相手の腕を掴み路地裏に連れ込むのは手荒でも何でもないらしい。(彼社比)

 

つらたん。

 

瞬間、見えない刃に身体中を切り裂かれる。しかし、本来なら出来るはずの傷は無い。代わりに、身体が赤く、燃えて。

 

「ぐ、ぅう...!?」

 

「やはりお前は紅衣の王だ。あの...。」

 

「ぁぁぁぁあああああ''あ''あ''っっっ!!!!い、ぎぃ、、あ、つい...!あついあついあついあついあついあついあついぃぃいいいいい''い''!!!」

 

「!?」

 

ペン...ダント!!ペンダントペンダントペンダントペンダントペンダントペンダントペンダントペンダントペンダントっ!!!!

 

「ぐ、ぁあ、は、ぁ、はぁっ、はぁっ...!」

 

「どういう...ことだ...。熱い(・・)、だと?っ!!その肌、その眼...。まさか...!」

 

あ、やば、フードと眼帯が...外れ...。

 

 

&&&

 

 

男は歓喜した。長年探し続けてきた人物が、ついに見つかった、と。しかし、喜びのあまり事を急いてしまったことを後悔することになる。

 

病的なまでに白い肌。白金色の髪。そしてほんの一瞬ではあったが、男は確かに見た。眼帯の下に隠された、アメジストの様な紫の瞳。光に照らされたその瞳は、伝承通り赤にも藍にも見えるのだろう。それは、紛うことなき。

 

気絶した小さな身体の青年を抱きかかえ、悲痛な面持ちで独りごちる。

 

「よもや...この実を食べた(・・・・・・・)お前が、夜に生きる種族とは...。運命はなんと残酷だろう。」

 

「だが、お前には我々の象徴となってもらわねばならんのだ。その運命に屈さぬよう、俺が鍛えてやる。共に世界を変えよう。」

 

青年を丁寧に抱え直した男は、空が雨雲に覆われ雨が降ってきたことを確認し、ある場所へ向かう。

 

そこには、海軍と戦闘する息子の姿があった。

 

「悪運尽きたな、麦わらのルフィ!」

 

「そうでも無さそうだが?」

 

「!?政府はテメェの首を欲しがってるぜ...!」

 

海軍の男は驚愕する。ここに居るはずの無い人物が居ることに。

 

「なんだ!?誰だ!?誰だ!?」

 

「世界は我々の答えを待っている!!」

 

突風が吹き荒れ、息子の身体を攫っていく。上手く仲間と合流できたらしい。船へ走り去る背を見送り激励を飛ばす。

 

「フフ...行ってこい!!それがお前のやり方ならな!!」

 

「何故あの男に手を貸す!?ドラゴン!!!」

 

「男の船出を邪魔する理由がどこにある。」

 

己の声が届いたのか、息子が振り返る。そして、その顔色が驚きに染まる。

 

「ソラぁあ!!!!!!!」

 

「!?まさか!」

 

ピクリ、と。両手に抱える青年が動き、そして。その眼が開かれる。

 

「っ! ?''■■空■・人技(じんぎ) 掌底波状槌(しょうていはじょうつい)''!!」

 

「ぐっぉお!?」

 

 

&&&

 

 

「...っ!?」

 

なんでこいつの顔がこんなに近くにあるんだよっ!?っとか言ってる場合じゃねぇ!!とりあえず、吹き飛べ!!!

 

「''■■空■・人技(じんぎ) 掌底波状槌(しょうていはじょうつい)''!!」

 

「ぐっぉお!?」

 

よっし、不意打ち成功!!みぞおちにぶちかましてやったぜ!!ざまぁ!!さぁ逃げろっ。あっ、ルフィが居た!!りょーかいそっちな!!!

 

「はぁっ!?!?おい、待ちやがれテメェ!!」

 

は!?あっ!?スモーカーじゃん!!わーハンサム!!でもすまん!!今は無理!!!

 

「待てっつってんだろうがァ!''ホワイト・アウト''!!」

 

うっわ煙じゃん!だる!!でも割と遅いな、何とかなりそ!!

 

「''刃技(じんぎ) (あま)霧染(きりそめ)''。」

 

「なんだと!?」

 

目くらまし完了、辺り一面は霧の海だ。見聞色でもない限りは察知不可能だろう。そしてこの霧はただの霧じゃない。重い(・・)のだ。つまり足止めに最適。風の能力でもない限り、そう簡単には...。

 

ビュォオオオオオオン!!!

 

「...は!?」

 

ちょ、ま、は!?!?いや、は!?!?!?秒で消えたんやが!!!(激怒)あ、でもなんか知らんけどスモーカーも飛んでった。

 

ひぇっ、フード野郎と目合った。ブルブルブルブル。

 

「フフ...!なるほど、ルフィの船に乗っているのか。血は争えんな。」

 

こわ。なんか笑ってる。

 

「行け!!!次に会った時は、お前を攫うぞ!海賊とは奪うものだろう?つまり、奪われるのもまた海賊という訳だ!」

 

言ってることあたおか過ぎてやばたにえん。何でも良いけどもうこの人と関わりたくない。こわい。さよなら!!!

 

いつの間にか雨降ってるしぃ!!!最高かよ。ぅぅうなれ僕のアキレス腱んんんん!!!!




この話は、まっっったく考えてなかった内容です。
まじで、書きながら、考えました。
思いつくままに。さぁどうなる事やら。。。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

アラバスタ編
はらんなか!


現在、リヴァースマウンテンの海路(山)を下り急加速中。目の前に、山。ではなく、クジラ。クジラ。クジラぇぇぇ。これアイランドクジラやろ。クソデカナメクジかよ。クジラだっつってんだろ。

 

ブォオオオオオオオオオ!!!

 

「ここまで近づくとただの壁だな!まず目はどこだよ!?」

 

「あっ、そっか!向こうが私たちに気づいているとは限らない!」

 

「まだ気づかれてないよ。意識はレッドラインに向いてるみたい。」

 

「左に抜けられる!取り舵だ!!」

 

おっけー、取り舵。進みまーす。え、ちょ、水圧に負けて舵が...!ふんぬぅぅうおおおおお!!!!

 

「そうだ!!良いこと考えた!!」

 

良いこと。(警戒)まってやめて!今やってるってば!!

 

ドゥウウン!!

 

嘘だろ!?だから今やってるってユッケジャン!!(パクリ)噛んだ、言ったじゃん!!言ってないけど!!(ボロボロやな)あれ、でも気づかれてない。いや、なんか当たったなー位には思われてそうだけど。奇跡か?

 

ばきん。と嫌な音。

 

めっ!?メリーーーぃぃいい!?!?!?うぉぉぉおおおおおい!?く、首ぃぃいい!?

 

お前の犠牲は無駄にはしない!(最低)

 

よし、よしよしよし!抜けそう!いけるいける、このまま!!このまま!!(大事なことだから2回言った)

 

「オレノ...特等席...!お前ぇえ、おれの特等席に何してくれてんだぁぁあああ!!!」

 

「「「「アホーーー!!!!」」」」

 

眼球を殴る。パワーワード。しかも効いてねぇし。あ、こっち見た。え?ちょ、ちょっと可愛いじゃん?まん丸おめめが素敵ですね。(イケボ)

 

「かかってこいこの野郎ぉ!!」

 

「「てめぇもう黙れ!!!」」

 

こんな時にコントやめてぇ。吸い込まれてるってやばいやばい。呑まれた、終わった。最悪ゾロと2人で中から斬りまくって風穴空けるしか。可愛いからそんな事しないけど。

 

とか思ったら空が見える。てかいつの間にかルフィ居ねぇ。1人だけ呑まれるの回避したん?ずるくね?

 

「こりゃ、夢か?」

 

そうかも。クジラの腹に大空を見た!!(髑髏の右目に黄金を見た風に)まぁ偽物の空だけど。

 

「この空、絵だよ。本物じゃない。」

 

「絵ぇ?これがぁ?なんでわかるんだよォそんなこと〜。」

 

テンション低いなウソップ。いつもの陽気なキャラに戻っておくれ。

 

「太陽がないのに空が青い。雲が動いてない。肌がヒリヒリしない。」

 

ほれ、手出してもなんとも無い。人生で初めてこの体質が役に立ったな。皆も納得してる。せやろがい。なんか水の中から近づいてくるぞ。

 

「で、あの島と家はなんなの?」

 

「幻だろ。」

 

「じゃ、これは?」

 

「「...ダイオウイカだ!?」」

 

出現と同時に刈り取られたイカ。イカって...美味いよなぁ。あれ潜って拾い上げてくれないかな、サンジ。イカ食べたい。あ、浮かんできた。ラッキー。

 

「人が居るらしい。」

 

「人だと良いな。」

 

「そこは保証する。まぁどんな人かは知らないけど。」

 

出てきた。...ん、?あれ、あの特徴的な頭は見覚えが。

 

「花だ!いや、違う!花頭の人だ。」

 

わぁー、懐かしい。何年ぶりだろう。

 

「何もんだあの爺さん。ダイオウイカを一撃で仕留めやがった。」

 

めっちゃサンジと睨み合ってる。ポッキーゲーム方式な!!目逸らした方が負け!!

 

あ、新聞読み始めた。はい、クロッカスさんの負け〜!!(煽り)

 

「なんか言えよてめぇ!!?」

 

今日もツッコミが鋭いね。そういや、なんであんなムスッとしてんだろ。便秘か?もういい歳だからなぁ。元気なジジイなんていっぱいいるけどな。

 

「や、やるなら戦るぞ、この野郎!!こっちにゃ大砲があるんだっ!」

 

ほ?珍しく交戦的じゃん。大砲ごときでどうにかなるような相手じゃないけどな〜。

 

「止めておけ、死人が出るぞ。」

 

「へぇ、誰が死ぬって?」

 

「私だ。」

 

「お前ぇかよ!!!!!!」

 

コントかよ。おもろ。

 

ゾロがなんか質問してる。人に名を尋ねる時はまず自分からだってクロッカスさんに説教されてるわ。そりゃそうだわ、ナイスブシドー。

 

「私の名前はクロッカス。歳は71歳。双子座AB型だ。」

 

「アイツ斬っていいか!?!?」

 

知り合いだからダメ。

 

「で?そんな所で何をしているんだ、お前は。」

 

「「「「...!?」」」」

 

やーん、みんな一斉に僕を見てる。照れるわァ。そんなにこの顔が(ry。

 

「久しいね、クロッカスさん。」

 

「ソラ、あんた知り合いなの?」

 

うん。顔見知り程度には。応急手当のやり方とかはこの人に教わったんだよ。教え方が丁寧で凄くいい先生だった。

 

「まぁアレに比べたらな。」

 

「その話はしたくない。」

 

何わろてんねん。こっちは毎度毎度死にかけたんや。怪我してもあんたが治すから、また直ぐに修行という名の拷問が始まったんだよ。負のスパイラル。

 

「ってことは、医者か?」

 

せやな。ハイパーウルトラグレートデリシャスワンダフル凄腕の医者。

 

「いやどんだけだよ。」

 

マジなんだよなぁ。

 

「うぉっ!?なんだ、急に動き始めやがったぞ!!」

 

「溶ける前に出ちまおうぜ!出口はあっちらしい!」

 

なんで出口あるの?ん、てかそもそもクロッカスさんは何故ここに??

 

やばい情報過多すぎて処理が追いつかねぇ。しかもなんか、人の気配が。

 

お?ルフィと、知らん2人が吹っ飛んできた。こいつらか。胃酸の海に落ちたけど。ほっときゃ死ぬなぁ。助けるのは良いんじゃが、いかんせんカナヅチなもので。

 

おまいらメリーに土足で上がるとは良い度胸じゃん?

 

「私の目が黒い内は!!ラブーンに指一本触れさせん!!!」

 

「「我々はもう腹の中!この胃袋に風穴を開けることだって出来る!!」」

 

え、僕と同じこと言ってるじゃん。冗談のセンスが似てんのかな。は?何バズーカほんとに撃ってんの?冗談じゃなかったの?クロッカスさんも庇おうとしてるし。いやいや、普通に無理なんだけど。全く許容できない。治せるから傷つけて良いとでも思ってんのか??そういう謎理論で武装して弱いものいじめする人苦手〜。

 

「''刃技(じんぎ) (あま)綴雪(つづりせ)(ごう)''。」

 

「「はっ!?!?」」 「むっ!?」

 

斬撃が胃酸の海を突き進み、砲弾とクロッカスさんの間に雪の壁を作り上げる。それがクッションとなり、誰も砲弾の被害に遭わなかった。クロッカスさんも、アイランドクジラも。

 

結果論だけど。

 

「きっさまぁ〜!邪魔だてするとタダじゃ...ぎゃぁ!?」

 

なに?こいつら。普通に意味不なんだけど。なんでお前がキレてんの。顔見えてない筈なのになんか怯えてるし。認証バグか?

 

「とりあえず凍っといてよ。邪魔だから。」

 

 

&&&

 

 

このクジラがラブーンという名前であること。50年もの間、いずれまたここに来るであろうかつての仲間を思い続けていること。レッドラインに、頭をぶつけ続けていること。

 

クロッカスさんから話を聞く限り、その仲間たちは恐らく死んでる。でも、ラブーンは生きてると信じて、1人で吠え続けているらしい。

 

50年かぁ、壮大な話だな。前世と合わせてもそんなに生きてないし。想像もつかねぇ。パないの!(吸血鬼)

 

うわ、外に出ちゃった。しっかりフード被っとこ。今までも被ってたけど。あと傘も忘れずに。

 

不審者2人も海に蹴落としたらなんか言いながら泳いで消えた。バイバイベイビー。

 

「しっかし随分待たせるもんだなぁ、その海賊は。」

 

「アホか、ここはグランドラインだぞ?2,3年で戻るつって50年戻らねぇんだ。死んでんだよ、答えは出てる。」

 

同意見。まぁ死んでると見限るのか、生きていると信じて待ち続けるのかは当人(当クジラ)次第だから、外野がごちゃごちゃ口出しする話でもないけど。

 

「てめぇは何でそう夢のねぇことを言うんだよ!わっかんねぇだろうが!美しい話じゃねぇかよ、仲間との約束を信じ続けるクジラなんて!」

 

夢のないことととるのか。なるほどねー、僕はすごく現実的だと思ったけど。

 

「だがその仲間達は逃げ出した。季節、天候、海流、風向き。その全てが常識におさまるものではない。自身の持つ常識その全てが通じぬ海で航海し続けられるのは、確かな心の強さを持つものだけだ。」

 

まぁ生きてるにせよ、死んでるにせよ。もうラブーンがその仲間たちと生きて会える日が来るとは思えないな。

 

ラブーンはきっと、クロッカスさんの話を理解してる。その上でなお信じ続けてる。僅かだけど、また会えるという可能性は確かにあるから。

 

僕なら無理。そんな心の強さは持ってない。だから、ラブーンを心の底から尊敬する。すげぇや。

 

「ぅぉおおおおおおお!!!」

 

めずらしくしんみりした空気出してたのに1人平常運転な奴がいるな。ほぼ垂直なクジラの身体を登ってんだが。なんだあれ、どこの船長だ?(すっとぼけー)つか手に持ってるそれ、メインマストって言わない??

 

「ゴムゴムのぉぉおお!!生け花っっ!!!」

 

ルフィ生け花って概念知ってるの?まずそこに驚き。そんな教養高いように見えないけど。(超失礼)

 

「ブ、ブォオオオオオオオオオ!!!?」

 

「「「「何やっとんじゃお前ぇええ!!」」」」

 

超ハモってんな。

 

「ソラ!!!何とかしろお前の船長だろうが!!!」

 

「いや無理。」

 

何とか出来た試しがない。うーわぁ、アイランドクジラと喧嘩する人間を初めて見た。あれを人間とカウントして良いのか疑問だな。頑張れラブーン!!お前なら勝つる!!(おい)

 

「引き分けだっ!!!!」

 

引き分けかぁ。そういうシステムね。言ったもん勝ち、的な。

 

「俺とお前の勝負はまだついてないから、俺たちはまた戦わなきゃならないんだ!お前の仲間は死んだけど、俺とお前はライバルだから!!」

 

「俺たちがグランドラインを一周したら!!また!!もう1回喧嘩しよう!!!」

 

クジラと人間の友情が芽生えた瞬間に立ち会えたことは、多分人生の宝になるはずだ。

 

こういう時、あぁルフィに着いてきて良かったなぁって思える。器がでかいと言うか、なんというか。豪快だよな。知ってたけど。

 

ちなみにラブーンの額に描いた絵は爆笑しすぎて腹筋崩壊した。崩壊したのは腹筋であって表情筋では無い。

 

さて、アフターケアが必要だな。なんのって?もちろん、メリーのメインマストと船首だよ。(ブルブル)おい、昼寝をするな寝太郎剣士。手伝え緑ゴリラ。

 

「ウソップ釘打ちお願い。」

 

「おうよ!ってうぉお!?すげぇ!?段面が綺麗になってる!?あんなにバッキバキだったのに!」

 

「頑張った。」

 

超削った。かんなとヤスリで。でも途中で気づいたんだ。これ、刀で斬った方が早くね?って。ゾロに任せれば良かったんだよ!!これも修行だろ?え?出来ないの?(笑)未来の大剣豪ともあろう者が?(煽り)って。一生寝てやがるんだこいつ。アロンアルファで口を接着してやりてぇ...。

 

「あーーーーっ!?!?コンパスが、壊れちゃった...!!」

 

「おい、お前たち。ソラに何も聞いとらんのか?呆れたもんだ、死にに行くのと変わらんぞ。」

 

「どういうこと?」

 

「グランドラインに浮かぶ島々は、それぞれが磁気を帯びている。通常のコンパスなど何の役にも立たん。」

 

「し、知らなかった...。あんた知ってたのね!?教えなさいよそういうことは!!あらやだ、スベスベ。」

 

「きかれへなひもん。」

 

いひゃいいひゃい、やめ、ちょ、や、やめろよ!!!!頬をつねるな!!!顔はダメって言ってるだろ!!!!そういうのはルフィにやれよ!!!面白いから!!!

 

「船長を売るんじゃねぇよ。」

 

船員に売るならセーフじゃね?

 

なんやかんやあって、クロッカスさんからログポースを貰い(僕も持ってるけど)、これまたなんやかんやあってあの怪しい2人が交渉しに来てる。船に乗せて欲しいんだと。

 

「ウイスキーピーク?何だそれ?」

 

「我々の住む町の名だ...です。」

 

「ふぅん?クジラを殺そうとしてソラに邪魔されて、悪態付きながら逃げた挙句、船がなくなったら掌返してそこへ連れてけって?すこーしムシが良すぎるんじゃない?」

 

「そもそもお前ら何者なんだよ?」

 

「王様です。」

 

「へぇ...?どこの?なんて言う所?人口の数は?土地面積は?その土地の特産物は?気候状態は?植生は?何が有名?そもそも君らの名前も知らないね??」

 

「「ひぇっ...。」」

 

「落ち着けバカ。」

 

至近距離で詰問してたらゾロに襟首を掴まれた。バカにバカって言う方がバカなんですぅ〜!あれ?今認めなかった?

 

つぅかー?王(笑)がこんなところで何やってんだよ。僕の知ってる王族なんて、城下に降りただけで臣下たちが大騒ぎするぞ。

 

「「言えません!!しかし町に帰りたいのです!!受けたご恩は必ずお返しいたします!!」」

 

...ふーん。なんだ、ふざけた態度じゃなくって、(おまいう〜〜〜)ちゃんと頭下げられるんじゃん。ちょっと見直した。

 

「いいぞ、乗っても。」

 

言うと思った。僕も最初よりは嫌悪感薄まったな...かな?やっぱり人間、正直が1番だよなぁ?面の皮厚あつ選手権なら負けねぇけど!!!

 

ん?なんかあっちでクロッカスさんが呼んでる。なんじゃらほい。

 

「ソラ、義眼の調子はどうだ。」

 

「特に問題ないよ。でも、やっぱりバレる人にはバレる。」

 

「ほう?気づいたやつが居るのか。誰だ?」

 

「鷹の目。」

 

「鷹の目ぇ?わはははは、なんだ。目をつけられたのか?まぁ、お前はこんな入り口に居るような実力じゃないことは確かだな。」

 

しらん。稽古みたいなことされた。ちなみに拒否権は無かった。うぇぇえーん、鷹の目に傷物にされたよぉ〜。もうお婿にいけなーい。じいじ〜。(ぴえん)

 

「それで?情報は集まったか。」

 

「ぜーんぜん。最近は特に動いてないし。この船乗ってると、そんな時間無いから。」

 

「わはは、随分気に入ったらしい。」

 

「ま、ね。シャンクスのお気に入りなだけあって、面白いよ。ルフィは。」

 

帽子と左腕を賭けるくらいだからなぁ。相当入れ込んでたんだろ。

 

「だろうな。さぁ、呼ばれているぞ。ログが溜まったらしい。もう行きなさい。」

 

うん。それじゃあね、クロッカスさん。またいつか。

 

「あぁ、いつか。...ソラ!」

 

どしたん。

 

「たまには、連絡の1本でも入れてやれ。声を聞いたら、安心するだろう。お互いにな。」

 

「あー、まぁ、機会があれば。」

 

「なんだその腑抜けた返事は。なんなら儂から一報を...。」

 

「ぜっっっっったいやめて。」

 

「わははは。」

 

笑い事ちゃうねん。死活問題やぞ。どんだけ虐められたと思ってんだよ。...まぁ感謝もしてるけど。

 

それじゃ、クロッカスさん。行ってきます。

 

「あぁ、果てまで行ってこい!」



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

良い夜

ウイスキーピークに到着した。怪しい2人は結局なにも明かすことなく消えていった。この流れだと、また会いそうだけどな。

 

ここに着くまでに、早くもグランドラインの洗礼を受けてしまった。僕は割と慣れてたと言うか知っていたので、まぁそんなに焦りはなかったが。そんな僕よりも大物であった緑芝寝太郎19歳。ナミにキレられ3段アイス(笑)を頭にこさえていた。

 

そして港には現在大勢の人々が溢れかえっている。めっちゃ歓迎してるんだけど。こわぁ。え、なんかの宗教か?関わらんとこ。

 

「ようこそ、歓迎の街 ウイスキーピークへー!!」

 

「海賊バンザーイ!!」

 

「海の勇者御一行だ〜!!」

 

勇者て。蛮族の間違いやがな。僕らは違うけど。いや、怪しいやん。海賊じゃなくても普通こんなに歓迎はしないだろ。ちょっと、サンジに警戒を促して...。

 

「うっほぉーーー!かんわいい子がぃいっぱい!!♡」

 

あ、やめよ。こいつはダメだ。置いてった方が船のためサンジのためかもしれない。ルフィは言わずもがな、ウソップも警戒心が強い割にはお調子者だからなぁ。

 

とか思ってたら、ナミと目が合う。こくり。よし通じあった。どんなもんよ???ん???アーロンパークの時に比べたら、もう僕らは阿吽の呼吸。真の英雄は目で語る。(殺さない)

 

「ゾロ、ちょっと。」

 

「あん?」

 

一応、ゾロにも伝えとこう。いざとなったら頼りになるんだ、うちの剣士は。まぁもちろん皆頼りになるんだけど。時と場合によるよね!!

 

「いら''...ごほんっ。まーまーまー♪いらっしゃい、私の名はイガラッポイ。ここは酒造と音楽の盛んな町 ウイスキーピーク。もてなしはわが町の誇りです。」

 

(喉が)イガラッポイさんね。覚えやすい。音楽やってそうな髪だなぁ。足首細いし。(関係ない)

 

「是非、宴の席を設けさせていただげ...ごほん。まーまーまーまー♪ 頂けませんか?」

 

「「「喜んでーー!!!」」」

 

うぇーい。とりあえずタダ飯食えるなら行くわ。もちろんデザートはあるんだろうなぁ?おぉん?え?あるの?いくーーー!!!!

 

夜。酒と肉と歌と踊りと音楽と。楽しげな笑い声が行き交う盛大な宴。から、少し離れたところに居ます。こういう時、ぼっちは率先して怪しいヤツが居ないかチェックしなきゃならんのだ。それがぼっちの運命であり宿命。

 

ルフィは飯を食いまくり。ウソップは嘘をつきまくり。サンジは女性を口説きまくり。

 

まぁここまでは良いさ。予想通りだ。た、だ、な!!!ナミもゾロも酒呑みまくってはめ外してやがるんだよ!!!なんな訳!?目、あっっったよね!?僕らの友情は!?絆は!?そんなものだっっったのかぁぁーぃ!!!!ゾロに至っては直接言ったじゃろが!!!(激おこ)

 

「...良い風が吹く。」

 

とか言ってみる。詩人か〜?星が綺麗ですね、とか言っちゃう?相手いないけど!!(発狂)

 

これさぁ、ワンチャンみんな騒ぎ過ぎて僕が抜けたこと気づいてないよね。べっっつに!イイケド!!一味に1人はこういう役目も必要だもん。信じてるもん。(僕を)

 

なんか下に集まってんな。

 

「さっ、3千万ベリー!?」

 

「あいつらが!?」

 

「船にある金品を全て押収し奴らを縛りあげろ。殺すと3割も値が下がる。政府は公開処刑を望んでいる。」

 

だろうねぇ。そっちの方が政府としても威厳を保てて、強さを見せつけることが出来るしなぁ。

 

「なぁ悪ぃんだが、あいつら寝かしといてやってくれるか。昼間の航海で疲れてんだわ。」

 

いやおったんかーい。いや!信じてた!!僕は信じてたよ、ゾロ!!(リバーシブル掌)

 

「み、ミスター8!ミス・マンデー!いつの間にか、部屋から抜け出している者がっ。」

 

「貴様...完全に酔いつぶれた筈では!!」

 

「剣士たる者如何なる時も、酒に呑まれるようなバカな真似はやらねぇもんさ。お前もだろ、ソラ!」

 

「僕は剣士じゃないんだけど。」

 

「「!! い、いつの間にっ!?」」

 

こやつ。マジで気づいてなかったんか。ゆるさん...許さんぞ貴様らっ!!(宇宙の帝王風)おいおい、賞金首狩り集団が油断しすぎなんでねぇのけ?そんなんで稼ぎあんのか??時給換算でいくらなん?ちょっとお兄さんに教えてみ?

 

「賞金稼ぎ、ざっと100人ってところか。相手になるぜ。バロックワークス。」

 

...、バロックワークス?とは?知らん単語が出てきたぞ。

 

「なっ!?なぜ我社の名前を!?」

 

え、しかもなんか重要な情報みたいなんだけど。嘘だろこいつ...真剣に警戒してた僕より有能じゃん。はぁ?やめよ。(何を)

 

何スカウトされたの?へぇー。招待制なんだ。僕には来てないけど。つまりそういう事ね?ふぅん、警戒心強いだけの無能より、昼は寝て大酒飲みだけどいざと言う時は頼りになる緑頭の剣士の方が欲しかったって訳。はぁーん。

 

「...バカのくせに。(ボソッ)」

 

「なんか言ったかテメェっ!?!?」

 

「何も。」

 

さっさと片付けろよっおらっ!こういう時の戦闘員だろぉ!?!?ほら、なんか煽られてんぞ。墓標に刻むんだって。バカって。

 

「ちっ。まぁ良い、いっちょ勝負と行こうぜ、ソラ。どっちが多く倒せるか。」

 

...ほう?良いのかね、そんなことを言って。何を隠そう、今は。

 

「夜だけど。」

 

「はっ!望む所だ。」

 

「手加減する?」

 

「バーカ、こっちのセリフだっての。」

 

この芝、生意気。このしばふいき!!

 

そんじゃ、

 

「「Ready...Go!!!」」

 

お互いが背中合わせになり、それぞれの方向へ走り出す。約100人らしいから、大体50人越えたらほぼ勝ち確ってことでしょ?まぁ少し多めに60人目処で。

 

とでも言うと思いましたぁ?????

 

雑魚無双は専売特許なんですぅ〜。なんなら雑魚以外相手にしたくありませーーーん。

 

大事なことだからもう一度言おう。夜ぞ???これっっっだけお日様お天道様に嫌われてるんやから、お月様お陰様に好かれるのは自明の理じゃね??当然じゃね??バランス考えよ???(お陰様とは)

 

まぁ加減はしてやる。死なない程度にな。月に代わってお仕置きよっ!

 

「「「おぉおおおお!!!」」」

 

刀に短剣、太刀に薙刀。トンファーに銃に弓に鎖鎌か、あれ。それとレイピアにククリ刀、槍に銃剣、ハルバード?すんげえ、展覧会かよ。コレクターには最高の鴨だなこいつら。

 

「''刃技(じんぎ) 鵺哭(やこく)''。」

 

突如として月明かりが遮られ、辺り一面に雷雲が立ち込める。暗く、黒く、重く、厳かに。雷轟が犇めき合い、ひとつの形を象っていく。

 

それは、異質。異端。異怪。一言で言い表すのなら、それらの言葉が相応しく、そしてなお足りぬだろう。

 

猿の頭、狸の胴、虎の手足に尾は蛇。伝承は、それを(ぬえ)と称す。帯電する身体で縦横無尽にかけ走り、腕を薙ぎ払い、踏みしめ、噛みつき、放電する。

 

「「「うっ、うわぁぁぁあああああ!!!」」」

 

「「「ぎぃゃぁあああああ!!!!」」」

 

............、あれ、ちょっと。なんか、やりすぎたかしら?すまんぬ。

 

ま、まぁ!誰も死んでないし!60はいったっしょ!気ぃ取り直して、ゾロの獲物を横取りしよー!そうしよー!!

 

「ひぃっ、神の御加護をっ..!神の御加護目潰しっ!」

 

「そういう姑息な手は、もっと心の綺麗なやつに使うんだな。峰打ちだ、勘弁しろよ。」

 

心が綺麗?僕みたいなね!!僕みたいな子に使うんだよ!!!ね!!!

 

「手刀で気絶させたら良いのに。かーわいそ。」

 

「、はぁ!?おんまえどっから!?何でこっちに来てんだよっ!向こう担当だろうが!」

 

「もう終わったもん。打ち漏らしは居るかもしれないけど、もう戦意は喪失してる。」

 

「!?!?」

 

なんならまだ鵺はぐるぐる言いながら歩き回ってるぞ。そろそろ消えるけど。だから言ったじゃん。夜だよ?って。やー、ほんとはゾロの獲物も横取りするつもりだったんだけど。

 

「なるほど、新刃(しんじん)の試し斬りって訳か。んじゃ、邪魔は出来ないね。」

 

「あーあーそうかよ、畜生め。隣で大人しくしてろ。」

 

はーい。...え、着いてこいってこと?うわ、ちょ、思ったより早くて。軽口言ってる暇も無いかも。

 

自分だけ登ってハシゴ落としたんだけど。畜生はどっちだよ。ハシゴ使わなくて良かった。あっ、そっちの建物飛び移るのね。まってよー。

 

「二刀流 鷹波!!」

 

へぇ、斬撃を伸ばしてる。あれやられると、間合い取るの面倒くさそう。通常の斬撃と混ぜて使えば効果てきめんだろうなー。

 

ねぇ地面切ったら落とし穴作れるのってま?それはやった事ないわ。今度やってみよ。

 

おぉ!すんごいパワー持ってる女の人!幹部っぽい!さっきのハシゴ振りかぶってる〜。おっと危ない。

 

「あっぶねぇ、かすった!」

 

しゃがんだ僕を見て、また何やってんだこいつは?みたいな顔したの絶対許さないから。またって思ったな!?またって!!

 

「カイリキ・メリケン!!!」

 

あっ、入った。うわぁ、痛そう。(助けろ)いや、助けるか迷ったよ??でも手出ししたら怒られそうだし。死なないかなって思って。ほら。

 

「ぎぃゃあああああ!!」

 

「どうした力自慢。力比べがしたかったんだろ?」

 

「が、ぁあ...。」

 

ぉおおおお。おっほほ、つぇえつぇえ。観てて気持ちが良いな。なんかこう、アトラクション映画っぽいハラハラドキドキ感がある。

 

「ねぇ。幹部っぽい人、僕の方に居なかったんだけど。」

 

「...ちっ、しょうがねぇな。」

 

「イガラッパ!!!」

 

おっとっと。(お菓子)よし、君に決めたっ!(死刑宣告)

 

「ほう、私の真正面に立つとは。余程死にたいらしいな。」

 

えっ、殺さんって言うたやん。心変わり早ない?

 

ゾロに良いもん見せてもらったし、ちょっとだけお披露目しよう。

 

「砲撃よーぅい!!!イガラッパッパ!!!」

 

沢山巻いてある髪が銃口になるのか。すげぇな、それ空港行ってもバレない?ビーッ!って言わない?探知機で一生足止め喰らいそう。カツラ取るしかねぇな!

 

「''刃技(じんぎ) 龖月(たつき)''。」

 

1匹目の龍が散弾を相殺し、残るもう1匹目の龍がイガラッポイを捉える。

 

「ぐぉおおおおおおお!!!」

 

噛み付いた龍はそのままイガラッポイを壁に激突させる。あれ、イガラムだったっけ。

 

「...!へぇ、飛ぶ斬撃か。」

 

斬撃と言うか、突きだけどな。ゾロにもできるよ。

 

待ってあいつ船長の腹を踏み台にしたんだけど。草しか生えない。トランポリンかよ。ハランポリンか。あ、ルフィ起きた。あ、また寝た。自由やな。

 

「うっし、終わり。」

 

「お疲れ様。」

 

「おう。しっかしこりゃ大量だな。まぁ良い、飲み直すか。付き合えよソラ。」

 

いいよ〜僕飲まないけど。お酌くらいなら。少ししたら、また戦闘になりそうだけどね。ちょっとだけ上のやつらが出てきたみたい。

 

ところであのカルガモ可愛かったな。大っきいしふわふわ。目もくりくりしてた。やる気が空回りしてる感も良い。でもどっかで見たことがあるような、ないような、、?

 

「ねぇ、お酒って美味しい?」

 

「あん?なんだ、飲んだことねぇのかよ?」

 

あるけど美味しくなかったんだよ。

 

「はーん、まだまだお子様だな。」

 

「同い年。お酒、最後に飲んだの10年以上前だし。」

 

「何やってんだテメェ!?」

 

そんまそれ。未成年飲酒、ダメ、ゼッタイ。この世界に成年とか言う概念があるのかは分からないけど。

 

「飲みてぇのか?」

 

要らない。

 

「ねぇ誤魔化そうとしてない?」

 

「?何をだよ。」

 

「勝負。僕の勝ちでしょ。」

 

「...。」

 

ドヤ。ドヤ。ドヤドヤ。

 

「...数は変わんねぇだろ。」

 

...。

 

.......。

 

..............。

 

「...。(ジー)」

 

「だぁぁあああ!!!鬱陶しい!!!!わぁーったよテメェの勝ちだ!!これで良いんだろが!!」

 

「よし。」

 

それで良いのだ。いぇーい、ゾロに勝った。何してもらおうかな。

 

「なんで何かさせる気満々なんだよ。」

 

そりゃ勝ったんだもん。1つくらいお願い聞いて貰ったってバチは当たらないでしょ。

 

「はぁ。ったく、で?何すりゃ良いんだ。」

 

「んー...。特に思いつかない。保留で。」

 

「なんだそりゃ。」

 

貸しひとつ。いつか返してもーらお。

 

「そういや、気になってたんだが。」

 

?なんぞ。

 

「その眼。」

 

おぉ、ついに気づいたんか。記念すべき1人目かな。サンジは除いて。

 

「うん、義眼だよ。」

 

「はーん。見えてんのか?」

 

「見えてないね。でも感じる。だから、見えないけど解るって言う表現が正しい。」

 

「第3の眼ってやつか。」

 

ちがうね。

 

「心眼。」

 

それも違う。

 

「第六感。」

 

「No。だけど前2つよりは近いかも?よく分かってないんだよね。原理が。」

 

存在は知ってる。けどなんで出来るかはしらん。気づいたらできるようになっとったんよ。

 

「いつから一眼なんだ?」

 

一眼レフだって?一眼レフ・ライノール(運命)的な?カメラでも72柱の悪魔でもねぇから。

 

ゾロ、今日はよく喋るな。お酒飲めて機嫌が良いのか?

 

「2歳...いや、3歳?その辺。海賊に抉られた。」

 

「なのに海賊を?」

 

うん。

 

「ほっとけないじゃん、ルフィ。」

 

「...はっ。違ぇねぇ。」

 

頑張ったご褒美に、良いものを見せてあげよう。光栄に思うが良いぞ。ほれ。

 

「...!へぇ、なるほど。それで狙われたってことか。」

 

「そゆこと。綺麗でしょ。」

 

「月みてぇ。」

 

紫なのに月?面白い表現だなー。初めて言われた。

 

「そうかよ。久々に、静かな良い夜だ。」

 

「だね。」

 

今日は本当に良い夜だな。今だけでも、月の眼で夜風を感じていたい。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

僕がやる

「ねぇ、あれ大丈夫なの。」

 

「いや、まずいだろ。敵挟んで寝ちまってんだから。」

 

「だよね。」

 

左側に男女4人組。右側に新たな男女2人組。その間に挟まれる、腹を風船のように膨らませた我らが船長、ルフィ。

 

あれ、仲間割れか??攻撃しだしたぞ。ルフィに当たらないよね?あぁ、ゴムだから銃は効かないのか。えっ、ちょまっ、銃じゃねぇんだけど。爆発したんだけど!?

 

「罪人の名は、アラバスタ王国 護衛隊長イガラム。そして、アラバスタ王国 王女 ネフェルタリ・ビビ!!」

 

...ふぁっ!?え、あっ、あっ、あぁーー!?!?ビビってビビ!?!?えっ、お前ビビやったんかーーーい!!そういえば髪が水色!!(気づけ)カルガモ!!(気づけ)カルガモ可愛い!!(今じゃない)

 

はっ!?鼻くそ爆発したァぁあーーー!!!さっきの爆発これかよ!!!やばぁ、ばっちぃ。えんがちょ!

 

あれ?ゾロがいつの間にか戦闘の渦中に。

 

「お願いしますどうか!!!たすけてください!!!王女をアラバスタ王国まで送り届けて下されば!!莫大な恩賞を必ず貴方がたに!!!」

 

「その話、乗った♡10億ベリーでいかが?」

 

ナミだ〜。起きてた。つか自分を10億で売り込むって相当な自信家だな。すげぇぞ。めっちゃ驚かれてる。そりゃそうだわ。一家臣が即決で判断できるような内容じゃない。が、そうも言っていられない状況なのも確か。つまりどういうことかと言うと。

 

「どうするの?10億の恩賞を約束するのなら助けてあげる。そうしないと、王女様、死ぬわよ?(にっこり)」

 

こわい。究極の二択過ぎて。まぁ僕ならとりあえずOK出しといて、王女が助かった後で上に投げるかな。まずは何にせよ、王女の命を最優先に考える。

 

「わ、私のような一兵隊にそんな大金の約束は...っ!」

 

「なに?まさかとは思うけど、自分の仕える王女の価値がそれ以下だって言うのかしら?」

 

「イイから出せ♡」

 

「脅迫じゃねぇか。」

 

悪魔的だぁ。(賭博)吹っかけるにしてももっと希望を持たせてあげて。

 

「...!!王女に直接交渉して頂ければ確実です!!」

 

「ふぅん。まずは助けろって訳ね。」

 

「今!こうしている間にも王女の命が!!!」

 

「はぁ、分かったわ。さぁ!!!行くのよゾロ!!ソラ!!」

 

いや草。10億で売り込んだのは自分じゃなくて仲間かぁ。信頼されてるのか利用されてるのか分からんな。

 

「行くかアホがっ!!!」

 

「あーもーバカねー。私のお金は私のものだけど、私の契約はあんたら全員の契約なのよ!」

 

「どこのガキ大将の理屈だそりゃ!!!」

 

おぅーまえのものは、オレのものぅ!オーレのものも、オレのものぅ!!っとくらぁ。

 

ちょっと斬って来ればいい。アホコックと違って使われるのが嫌い。勝てないの。んだとこらぁ。

 

わちゃわちゃしてんなよ!!!

 

「先、行くから。」

 

「えぇよろしくっ!気をつけなさいよソラ!」

 

「てめっ、マジで行く気かよ!?」

 

きぃつける。つか、ゾロがナミに口で勝てるわけないんだから、遅かれ早かれ行くことになるんだよ。別に僕、人助け嫌いじゃないし。

 

 

&&&

 

 

走る、奔る、疾る。

 

爆発男の後ろ姿が見えた。怪力な女性が倒れてる。ビビが傍で狼狽えてる。このままだとビビもやられそう。間に合え間に合え間に合えっ!!

 

「爆ぜろ、ネフェルタリ・ビビ!!...あぁ!?なんだこれ、傘!?なんで壊れねぇ、破れねぇ!?」

 

あっっっぶな。さすがに今のは冷や汗かいたわ。折角の良い夜なのになぁ。結局こうなるんだ、海賊って。

 

「あっ、あんたさっきの!くっ、こんな時に!!」

 

変な刃物を振り回して近づいてくる王女こわ。咄嗟に腕掴んじゃった、不敬罪とか言わないで?てか爆発防いだんだから護りに来たって察してよ。無理か。さっきまでバチバチやり合ってたんだから。僕が相手したのはモーツァルトモドキだけど。

 

「御無礼をお許し下さい、アラバスタ王国 王女 ネフェルタリ・ビビ様。貴女様を無事祖国へ送り届ける依頼を引き受けさせて頂きます、麦わらの一味が1人、ソラと申します。」

 

お見知り置きを。

 

依頼を引き受けたからには、これは仕事。礼に始まり礼に終わる。これ、大事。必殺仕事人は所作も一流なのだ。

 

「まずは目先の火の粉を振り払います。僕の後ろに居て下さいね。」

 

「!」

 

問題無い。この立ち位置なら、あとから来るだろうゾロと挟撃に持ち込める。2vs2になろうが1vs1になろうが、どっちにしろ負けるとは思えない。

 

ボカァァアアアアンっ!!

 

え、なんか向こうでエグい音した。建物が崩れるような。なんなの、新手?ゾロはそっちに対応してんのか?1vs2だとちょっと面倒くさいぞ。救いなのはどっちも武器を所持してないってこと。つまり徒手空拳か、能力者か。はたまたどちらもか。男の方は能力者であることはほぼ確だけど。接近戦も得意ならやりずらいぞぉ。どうしよ。

 

「お前1人か、傘野郎。お仲間も居るようだが、見捨てられたか?」

 

「きゃははは!かわいそー!」

 

いや、それは無い...と思いたい。たぶん。ナミなら有り得る。

 

「君ら2人だけ?」

 

「あぁ、お前ごときを殺すなんざ、俺たち2人で十分お釣りが来る。」

 

ふーん。素朴な疑問なんだけど、明らかに向こうで戦ってる気配の方が強そうなんだよね。君ら下っ端だから知らされてないだけなんじゃないの?ほんとに強いの来てない?大丈夫そ?(下心なし)

 

「「...、!(ピキっ)」」

 

「ちょ、挑発しちゃダメ!そいつらはMr.5とミス・バレンタイン!!エージェントの中でも指折りの強さで上から5番目なの!!オフィサー・エージェントの一角よ!!」

 

上から5番...ほぇぇ〜。それ凄いん?ごめ、組織の規模が分かんないから何とも言えないんだけど...。エージェントって何人?男女合わせて6人くらい?

 

「「(ブチッ)」」

 

「だから挑発しないでって言ってるでしょ!!」

 

いや、素朴な疑問言うたやん...。ピキんなよ、煽り耐性ZEROか?

 

「どうやら自殺志願者らしい...良いだろうそこまで望むのならァ...!俺のこのボムボムの実の能力で殺してやる!!」

 

「きゃははは!!Mr.5がお前を爆破した瞬間に、私のキロキロの実の力で上から押し潰してあげる!!」

 

なんだ煽り返しか?ぼっちにその程度の煽りは効かねぇぜ!!

 

ボムボムってことは起爆人間って訳ね。強くね?そういやボムってパラミシアなん?ロギア??まぁ攻撃すりゃ分かるか。

 

んで、キロキロの実。ふわふわ浮いてるところを見るに、体重操作人間って訳か。強くね?(デジャヴ)おまいらこんな所に居て良い強さなん?(ブーメラン)

 

いやまぁ、能力は強いけど使い手はそうでも無い、のか?さっきも言ったけど、向こうの気配の方が強いし。少なくとも頭は悪そう。だってわざわざ攻撃方法教えるくらいだし。ボムで爆破した後にボディプレスね。おっけー把握。

 

さっきから向こうでバッチバチにやり合ってる奴らさぁ、片方はゾロなんだろうけど。こんだけ破壊音続くってなんなの。どんな戦闘だよ。

 

久々の良い夜に響く音が風の音とか鈴虫の鳴き声じゃなくて破壊音と爆発音とか。さっきの晩酌のひとときとギャップが有りすぎてお腹いっぱいです。

 

「何ボーっとしてやがんだテメェ!!舐めやがって!!鼻空想砲!!!」

 

あー、これ避けたら後ろに被害が出るな。避けるの禁止とかどんな縛りプレイ?とりあえず傘広げて防ぐけど。

 

ボカァァアアン!

 

「ちぃっ!どうなってやがんだあの傘は!!」

 

どうなってるんだろうねぇ。(哲学)

 

魚人がぶん回しても壊れないんだってよ。ホントかどうかは知らないけど。ちなみに僕は信じてる。

 

「魚人だぁ...?んなもん俺の爆発でやれねぇわけねぇだろうがっ!!おらぁっ!!」

 

「あたしを持ち上げられる魚人なんて居ないし!!」

 

おっ、爆発男が接近戦に持ち込んできた。うーん、こっちの方が厄介かな。中距離爆撃は別に悪魔の実じゃなくても再現出来る。でも近距離爆撃かつ自分への被ダメージは0ってなったら、近づいたらほぼ勝ち確だもんな。威力によるけど、この爆発普通に強いし煩い。しかも全身起爆とは。1級品と言っていい能力だ。

 

でも。

 

「もったいないな。」

 

「あぁ!?」

 

「接近戦を挑んできた割に、全く武術の心得がないらしい。」

 

「...っちぃ!」

 

手のひらや拳、ラリアットを仕掛けてくるが全て大振り。当たれば衝撃と同時に爆発が起き、2重のダメージを喰らう。当たれば、だ。

 

攻撃の尽くを傘で防ぎ、爆風も爆炎も全く寄せ付けない。爆煙が立ち込め辺りに充満する前に、傘を一振りし煙を散らす。

 

こうでもしなきゃ、一酸化炭素中毒にでもなったら大変だからな。

 

ところで、何だろう、この。めっちゃ美味しそうな見た目のスイーツなのに、食べてみたら悪い方に期待を裏切ってきた感。マジカルホップキューティーマカロン★って感じなのに、味と食感はよもぎ餅、みたいな。いや、よもぎ餅好きだけどさ?

 

「足はどうした、動いてないよ。全身起爆できるんなら、頭突きに足裏、肘や膝でも攻撃すりゃ良い。こんな風、にっ!」

 

「ごはぁっっ!!」

 

膝蹴りで吹き飛ぶのか、思ったより軽いな。さっきの怪力さんくらい鍛えてて、多少なりとも武術をおさめていたのなら。相当苦戦を強いられた筈だ。見れば筋肉の付いてない細めの体付き、踏ん張りも効いてない。身体の使い方がなってない。だからこんなに簡単に吹っ飛ぶ。

 

「もったいないねぇ、君。」

 

「1万キロプレス!!!っあーもー!よけるなあたんないでしょ!!」

 

ひょいっ、と。本来なら爆煙に紛れて空を飛び、敵の油断した所にって連携なんだろうな。でも残念、煙は吹き飛ばした。まぁあったとしても眼で見てる訳じゃないから僕に意味ないんだけどね!

 

「うーん。君も、惜しいなぁ。」

 

「っきゃぁあ!!」

 

体重を軽くした瞬間を狙って、ボム目掛けて蹴り飛ばす。ほっとんど重さを感じなかったぞ、すげぇな。ダメージもあまり入ってない筈だ。抵抗力がほぼ零だったし。

 

別に高く飛ぶ必要ないよな、この能力。狙撃されたら終わるし。1万キロなんてそうそう持ち上げられるやつ居ないだろ。(前半では)体の一部に触れた状態で1万キロにしたら、ごっそり肉持っていけそうだよな。頭に手を置いて加重したらもげるんじゃない?首がレってなるんじゃない?グロ。

 

もしくは体重を極端に軽くして高速移動で敵を翻弄し、強制的に隙を作り出した後に必殺の一撃をぶち込む、とか?

 

つまり2人とも課題は似てる。いかに相手に近づき自分の制空権を押し付けるか。これに尽きる、気がする。僕も免許皆伝とかじゃないから詳しいとこは分かんないけど。

 

んで、それをやるからには少なからず武術の心得が必要だ。つまり、師が要る。ちなみに武術を習うなら、オススメの師匠は魚人です。

 

にもかかわらず、この2人はまっっっったくダメ。ほんっとうにもったいない。

 

「なってないよ、君ら。出直しておいで。」

 

「''■人空■・人技(じんぎ) 掌底波状槌(しょうていはじょうつい) 蓮華(れんげ)''」

 

「「ぎぃゃああああああああ!!!!」」

 

はぁ、なーんかテンション上がんなかったな。まぁ戦闘を楽しむタイプでも無いからね、僕って。戦わなくて良いならそうするし。

 

「うそ、でしょ...!あの2人が、まるで子ども扱い...。なんでこんな強い人が、こんな入り口に。」

 

子供ねぇ、まぁ似たようなもんだよ。チカラに溺れて努力を怠る能力者なんて、存外あっさり負けるもんさ。なんでここに、の答えについては、故あって逆走したからね。

 

「お怪我はありませんか?ビビ王女。」

 

カルーも。じー。かわいい。かぁいい、かぁいいよぉ!おっもち帰りー!!(鉈女風)

 

「ぇ、えぇ。私とカルーは平気。」

 

とりあえず怪力さんについては、壁に体を預ける形で。火傷も顔に受けたっぽいけどあまり酷くない。日頃鍛えてたのが役に立ったんだな。

 

「なぜ私を助けてくれたの?」

 

「僕の仲間が貴女様の護衛の方と取り引きを行いました。成功報酬10億ベリーを条件に、貴女を助け祖国アラバスタへと無事に送り届けると。」

 

別に僕は10億ベリーが目的じゃなかったけど。

 

「なっ、それは...。」

 

「ソラー!ここに居たのかぁー!なっはっは、良かったぁ見つかって!」

 

「よぉ。」

 

「王女は無事みたいね!良かったわ、さすがソラ!バカ2人とは違うわ!」

 

「「...。」」

 

なんだなんだ、どういう事や。ゾロがボロボロ、ルフィもボロボロ。そして2人とも頭にアイスクリーム乗っけてる。ひぃふぅみーよー5段だな。次は5段を買っちゃったのか、ゾロ。痛そー(笑)

 

「テメェ明らかに楽しんでんじゃねぇか!!」

 

そりゃそうでしょ。面白いもん。バカ2人がバカやって拳骨されたんでしょ、どうせ。

 

「なっはっは、そーなんだよ。おれはてっきり、好物食えなくてゾロが拗ねて斬っちまったのかと思ったんだよなー。」

 

あ、なんかこれゾロ悪くない気がしてきたぞ。慰めた方が良さそ?

 

「いるかっ!!!」

 

「それで、ソラ。どこまで話したの?」

 

ん、とりあえず契約内容だけ。敵を倒した後、割と直ぐに3人が来たからな〜。何も話せてねぇや。

 

「そ、なら早速続きを話しましょ。」

 

はいな。

 

 

&&&

 

 

アラバスタの状況を聞き、全ての黒幕は王下七武海の1人であるクロコダイルであることが判明。うん、クロコダイルが敵ってことはなんとなーく知ってる。ほんとにぼんやりと。で、それを知っちゃったルフィ達は顔が割れてしまい、クロコダイル率いるバロックワークスその全てに命を狙われることになった。

 

ちゃんちゃん。

 

って感じで人生終わりそうなんだが。助けた見返りに刺客を寄越すのか、この王女は。ヤベェやつや。

 

そしたら臣下のイガラム(やっと名前覚えた)が、女装した状態で登場。ビビに扮しているとのこと。ドン引きだよ。僕みたいにマントでも被ってりゃええやん。アホの子なの?ご丁寧に口紅までさしてさぁ。

 

ふむふむ、あーなるほど、囮ね。ふぅん、この人自分の命を犠牲にして王女が生き延びる可能性を少しでも上げようとしてるのか。

 

なんだかなぁ。なんだろ、気に入らない。その考え、嫌いだな。

 

「死にたいの、君。」

 

「なん、ですと?私はビビ王女に仕える身です。例え私の命であろうと、私自身が勝手に落として良い訳がありません。」

 

「でも囮やるんでしょ?矛盾してるね。たぶん死んじゃうと思うんだけど。君、そんなに強くないし。自分でもそう思ってるんじゃない?」

 

「ちょっ、ちょっと貴方!そんな言い方っ!イガラムは死にに行くんじゃないわ!!私の身を案じてっ、」

 

いや、うん。それは分かるんだけど。でも敵の数も不明、強さも不明、手段も何もかも分からない状態で、なんで比較的弱い君が囮をやるの?殿を務めるのって、普通いちばん強い人じゃない?だってそうじゃないと、結局やられて終わっちゃうよね。不確定情報が多いのなら尚更、より多くの時間を稼ぐために、強いやつが残るべきだ。

 

「それ、僕がやるから。アラバスタへのエターナルポース、僕にちょうだい。」

 

「「なっ!?!?」」

 

「何を仰る!!出会ったばかりの貴方に向かって死んでくれと頼む訳にはっ!」

 

なんだ、やっぱり死ぬ気だったの。んじゃ余計にダメだな、許容出来ない。

 

「囮とか、殿ってさ。ほんの一欠片でも、死ぬかもしれないって思っちゃう人は、やっちゃダメなんだよ。だって、じゃないと、絶対に勝てない状況に陥った時。勝てるビジョンが浮かばない相手を目の前にした時。心がさ、折れちゃうから。」

 

「「!!」」

 

大切な人のために命を懸けて、大切な人のために身体を張って。それで自分が死ぬかもしれないと思ったら、大切だった人を死ぬ間際に恨んでしまう。なんでこんな目に、なんで自分がこんなことをって。呪いながら死んでしまう。

 

だから。

 

「絶対に死なない。必ず生きて、また会うんだ。そう思える人がやるべきだと思うな。」

 

「...それ、は。」 「で、でもっ!」

 

ルフィ。

 

「おう、良いぞ。」

 

うん、ありがとう。ごめんね皆。少しの間、船を離れるから。後のこと、よろしく。

 

「しっしっし!気にすんな!」

 

「また後で会うんだろ。」

 

「全くもう。意外と頑固よね、あんたって!良いわ、あとの2人には私から言っとくから。気張りなさいよ!」

 

そりゃあ助かる。特にサンジには、良い感じに伝えといて。

 

「イガラムさん。ちょーだい、それ。」

 

「...いいえ、渡せませんっ。」

 

えぇ、、だから君じゃ無理なんだってば。諦めなよ、これが一番合理的だつってんの。

 

「私も、貴方と共に参ります!!」

 

はにゃ。いや、それは、どうなの。

 

「確かにエターナルポースがあればアラバスタへ辿り着くことは出来るでしょう。貴方の強さも身をもって理解しております!しかし!!アラバスタへ着いたその後は?土地勘がお有りなのですか?」

 

...おぉ、盲点。たしかぁーに。そりゃ無いわ。砂漠ってことしか知らん。そして今、思ったことがある。そう、砂漠。

 

「ねぇ、イガラムさん。」

 

「はい。」

 

「君を吹っ飛ばしたの、僕なんだけど。僕の命令、聞けるわけ?」

 

「それでビビ様の命を、お守り出来るのなら。」

 

...。

 

よし、乗った。君は僕が守ろう。全力で。

 

「んじゃ、行こっか。」

 

「...はい!」

 

ビビがイガラムさんを呼び止める。そりゃ、助けられたとは言え、さっきまで敵対してたやつと自分を慕う家臣を2人で行動させたくはないわな。でもそこはどうしようもねぇ、信じてもらうしか。

 

「僕を信じる必要はありませんよ、ビビ王女。」

 

「えっ?」

 

「今ここで僕が、必ずイガラムさんを守りきり、アラバスタへ連れて行くと言ったとしても。貴女には信じられないでしょうから。」

 

じっと僕の目を見つめてる。多分フードに隠れて見えてないけど、見定めようとしてるのかな。フード、取るか。クロコダイルに顔バレるかもしれないけど。うん、それでも良いや。ここは、ちゃんと誠実に話したい。

 

「だから。貴女様がルフィ達と旅をする間に、ルフィ達を信じても良いと判断したのなら、その時は信じてあげてください。そしたら、」

 

ルフィ達が信じる僕を、少しは信じられるかも。

 

「!!...ありがとう。」

 

いいえー、とんでもない。

 

さーてとっ!久々のラーキレス号、出動だ〜!えい、えい、おー!!



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

アラバスタへ!

ヴォンヴォンヴォーーーーーーン

 

大草原は不可避だが、大爆発は可避である。ふははははは。とまぁそういう訳で、現在イガラムさんと2人で航海中なのだ。

 

そう言えば、巨大な亀に乗ってロビンがやってきた。今はミス・オールサンデーだったっけ。僕の顔は知らないみたい。良かった。ちなみにイガラムさんは超警戒してたわ。そりゃそうだよな、クロコダイルの相方やってんだから。

 

とりあえず爆発は演出だけで、実際に爆発する気はなかったとの事。それがホントか嘘かは分からんが。まぁどちらにせよ問題なく対処出来たからぶっちゃけどっちでも〜って感じ。あねあねリョーかいって言っといた。

 

貴方の船長にちょっかい出すけど許してね的なことを言われたが、全然いいよ〜楽しんでねって返したら意味深な微笑みを寄越して去っていった。何だったんや。ミステリアスぇぇ。

 

そして今は一刻も早くアラバスタへ辿り着くため爆走してる只中である。朝も昼も夜も関係ねぇ!!直進あるのみだぜぇ!!

 

毎回思うけど速い。まぁこのラーキレス号。名前の由来はアキレウスが関係してるから、速いのは当然なのだが。

 

もちろんイガラムさんにはちゃんと食事と睡眠をとってもらってる。ベッドもメインの方を使わせてるし。依頼人だからな、もてなさねば。ちなみにイガラムさんは僕が5徹してることは知らない。夜遅くに寝て、朝早くに起きてると思ってる。多分。

 

でも流石に5徹はきついぜ眠いぜ。そろそろ一旦補給もしたいし、どっか島ねぇかな〜。エターナルポースを使う航海って、確かに最速で目的地まで辿り着くんだけど。指針上に補給地点が有るかは割と運要素高めだから、普通は逆算してちゃんと物資を集めて出発するもんなんだ。

 

我々にそんな時間なかったがな!!!なんなら急いだ割に、バロックワークスの平社員共に追いつかれたし。追いつかれたというか、待ち伏せされてた感じ。まぁ本来そいつらを引きつけるために囮やってるんだ、引っかかってよかったと思うべき。当然、切り伏せた。

 

「ソッ、ソラ殿!このぎじ...まーまーまーまー♪この記事を読んで頂きたい!」

 

ん、なんぞ。ほんほんほん、ほー、なるほど。国王軍30万人が、反乱軍へ寝返ったねぇ。クソやばワロチ。まじのすけ?

 

「均衡が崩れる、よね?」

 

「あぁ、元々国王軍が60万に対し、反乱軍は40万の制圧戦でした!しかしこれでは、戦力が逆転してしまう!!」

 

いや半分も寝返ってんじゃんやばぁ。逆に何があったのか聞きたい。問。制圧戦、ほぼ確で勝てるのにわざわざ寝返るメリットを答えよ。情報工作でもされたんか?おまいらそれでも国王兵かぁぁ!!

 

 

30万vs70万か。1人頭2.5人やっちまえば良いって考えたら、そんなに難しい話でもないような気がしてきたな。あれれ〜、おかしいぞぉ〜?(謎推理)

 

「なりません!反乱軍であろうともアラバスタの民であることに変わりはないのです。国王様もビビ様も、国民全員を愛しておられる!民が傷つくことを望む王などおりませぬ!」

 

あぁ、そうか。反乱軍の人達は敵じゃないんだった。疑心暗鬼になり国王のことを信じたくても信じられなくなった人たちの集まりだった。国の内乱は対応が難しいなぁ。

 

まぁ今回は敵がはっきりしてるからやりやすいっちゃやりやすいか。

 

「なんにせよ、バロックワークスを潰せば良い話。急ごう。」

 

これまでのエンカウント数は大体500人くらい。全員沈めたけど、まだまだ居るんだろうなぁ。エージェントっぽいやつも居なかったし、アラバスタに集結してるって考えた方が良いか。

 

「えぇ...しかし、その前にどこかで補給を。たしかこの先には島があったはずです。無人で森しかない閑散としてる島ですが、補給はできるでしょう。」

 

「そ。」

 

んじゃ、行きますかね。いや待って、もう見えてね??あれじゃろ、森島。フォレス島と名付けよう。(思いつき)

 

「おかしい...ここは、こんなにも暑いはずがない。炎が見える訳でもない、何故こんなに気温が高いのだ。」

 

「ここ、なんか不思議な感じ。身体はここを拒絶してるのに、心は、魂は引き寄せられている、みたいな。」

 

「どういう事ですかな?」

 

さぁ??なんだここ。へんなの〜。まぁいいや、とりあえず物資調達。

 

「「ギャォォオオオオオ!」」

 

「イガラッパ!!」

 

はいズバん、と。ふーむ、動物も多い、木の実や果物、きのこ類。山の幸も豊富だ。植生的にも比較的温暖な島のハズなんじゃが。

 

島の中央に、何か有るんだよな。意味わからん気配が。生き物じゃない、んだけど。なんか濃密というか。密度高ーい、みたいな。

 

魂が震えてくらぁ!!!そして若干肌もピリついてくらぁ!!!

 

「この暑さは、確かに炎じゃない。ただの炎なら僕には効かない。肌がピリつくこの感じ...間違いない。日光だ。」

 

「日光ですか?陽の光は変わらず有りますが、特別何かがある様には見えません。」

 

そうなんだけど、んー、何だろう。変なんだよ、傘とマントはいつも通り完全防備なんだが、いつも通りで居られるような場所じゃ無いはずなんだよなぁ。こうやって中央の気配に近づけば近づくほど、この暑さは強くなる。

 

「ぐっ、はぁ、はぁ。ソラ殿、申し訳ない。私には、これ以上進めそうにありません。」

 

なぜ先に根を上げておるのか。

 

「そっか。僕、ちょっと奥まで行ってみる。先に船に戻ってて。これ、使っていいから。傘にも武器にも盾にもなる。」

 

人の気配は無いし、野獣の強さもそこまでじゃないからイガラムさん1人でも対応できると思うけど。一応傘を渡しておく。

 

「しかしそれではソラ殿が。」

 

問題ない。傘は無くてもフード被れば何とかなる。

 

「見て。地面に黒い粉みたいなもので線が書かれてる。ここら一帯をぐるっと囲んでるみたい。」

 

「これは...灰、のようですな。数年前、この島に来たことがありますが、こんなものは無かった筈。」

 

「つまり人工物。誰かが意図的にこの円を書いた。まるで、ここから先は禁踏区域(テリトリー)とでも言うように。」

 

「!!! 何者かが、この奥に?」

 

いや、それは無いと思う。人の気配は感じないから。

 

「人じゃないナニカなら、居るかもしれないね。」

 

「...ゴクっ。」

 

まぁ、とにかく僕だけ先に進むから。本来なら護衛しなきゃいけない立場なんだけど、この島には危険もあまり感じないし。何より、この先にあるナニカに興味が有る。

 

という事で、船でお昼寝でもしてて。じゃ。

 

線の内側に足を踏み入れる。その瞬間、線から空に向かってドーム状に半透明のオレンジ色の壁が突き上がる。きれー、結界みたい。ROOM!シャンブルス!!(笑)

 

でもこれ、何の意味が?特に何も無さそうなんじゃが。

 

あーるーこ〜♪あーるーこ〜♪わたっしはー原キー♪原キーでうーたーおーー♪

 

お、なんか建物がある。小屋みたいな。もちろん入るよなぁ!?当たり前だるぉぉおお!?!?

 

「おしゃまんべ。(意訳:お邪魔します)」

 

ふーむ、ベッドに机、椅子。そして。

 

「日誌、か。」

 

うわ、なんか汚ぇ。埃、じゃないやこれも灰か?黒灰だ。火山でも噴火したんけ?

 

まぁ汚れてるのは表面だけみたいだし。とりま手がかり(何の)はこれだけだ。すまんな、読むぞ。誰のか知らんけど。

 

【この日誌が読まれている時、私は既に死んでいるだろう。】

 

うむ。ありきたりな1文から始まったぞ。つか遺書かよこれ。

 

【私は転生者だ。ここはワンピースの世界であり、世界の狭間で出会った神に願い、私が望んでここに来たことを、まず初めに記しておこうと思う。】

 

いや、急に。しかも転生者ってコイツ立場同じ〜。同郷だし。ねぇ君どこ住み〜?地球〜。ま?僕もー。

 

【原作クラッシャーとしてNAISEIしたり俺TUEEEEしたり。そんな大きな希望と期待と好奇心を胸にこの世界へ舞い降り数百年が経った。転生してからずっと、私はいっっっっこうに原作キャラに会わなかった。何故だと思って調べてみると、なんとここはワンピースの過去の世界。ふざけろ神。あの芋ジャージぜってぇ許さねぇ。いつか焼き殺す。】

 

【海賊もまぁ居るには居るが、少ねぇから俺TUEEEEしても大して面白くない。NAISEIはそもそもの地頭が足りない。芋ジャージの神は私を見捨てた。手違いで殺し、手違いで転生とは。呪われたいのかあの芋ァ...!まぁ有名所は結構回ったが。

 

転生して悠久の時が経ち、ゴール・D・ロジャーが処刑され、海賊の時代の幕開けとなった。さぁやっと原作(それでも過去)が始まるぞと思ったその時には、すでに私の寿命は尽きかけていた。】

 

【私は死ぬ。じきに死ぬ。だが、こんな何も出来ないまま、なんの軌跡も残せないままでワンピースの世界から旅立っても良いものなのか。いいや、良い訳がない。(反語)私は、私の能力と私の残りの生命その全てを賭して、ここに創ろうと思う。】

 

【永劫輝く太陽を!】

 

【ここに来ることが出来るのは、私と同じ者だけだ。つまり、私の後に地球からやってきた転生者で、かつこの実の能力者となった者のみがこの部屋に来ることが出来る。】

 

【この実は特別であることを、既に感じ取っているかもしれない。そしてそれは正しい。悪魔の実は不滅。能力者が死んだ場合、その実はどこか別の場所でまた実る。しかし、次に能力者になった者はその能力をLv.1の状態から使用することになる。】

 

【だがこの実は違う。これは、人間の手によって作られたものでも、自然によって作られたものでも、悪魔によって作られたものでもない。芋ジャージクソ引きニートとは言え、正しく神に作られた実。】

 

【''ギラギラの実''とは、神造(じんぞう)の実である!】

 

【太陽は有り続ける。大空に、天空に、宇宙に。高く大きく偉大なその存在を、人は時として神と崇める。】

 

【私以外にも、この世界に転生を望み、最強の能力を欲する者は多く居たらしい。その全ての者に、あの芋ジャージはギラギラの実を与えたと言っていた。転生者は2人同時に存在することは無いということだ。】

 

【これを読んでいる君と話すことは出来ない。だが、君に残すことは出来る。私には辿り着くことが出来なかった。世界中の海を探し回ったが、一体どこにあるのやら。君がその場所を見つけてくれることを祈るとしよう。】

 

【餞別だ。君に力を授けよう。数百年を共にした私の力、きっと役に立つはずだ。どうせ、君も大冒険を繰り広げることになるのだから。】

 

【さぁ、掴むが良い!その掌に太陽を!!】

 

部屋の中に異変が起こる。

 

赤い、紅い、朱い。光と炎を凝集し濃縮し、爆発と破壊と再生を繰り広げているそれは。

 

小さな太陽が顕現した。

 

「ぐ、ぅぅううううう...!!!!い、ぎっ、あ、つ、いた、いっ...!!!」

 

左手を伸ばす。本来なら、普通であれば、サラッと掴む所なんだろうが。こちとら死活問題なんだよ。火傷した端から治っての繰り返しなんだクソ暑いわボケ。

 

「う、が、ぁぁあああああ!!!」

 

太陽に触れた、その瞬間。その莫大なエネルギーが掌から吸収されるのを感じる。エネルギーはそのまま肩口までを侵食し、手が、腕が。

 

「はぁっ...!はぁ、はぁっ!これは、太陽の...左腕。」

 

あかい、あかい腕。明らか人間のモノとは違う。人差し指を立てると、炎の玉が現れる。これも、極小の太陽だ。なんだこれ、マジか。

 

見た目、変えれる、、?あっ、できた。普通っぽい!

 

「チートじゃん...。僕芋ジャージとなんて会ってねぇんだけど。」

 

今まで、この体質でギラギラの実の能力は使えなかった。子どもの頃はこの体質もこんなに酷くなかったから使えてたんだが。体が成長すると共に、この体質もより一層厄介なものになっていったんだ。

 

能力が使えなくなるかもしれないと分かったから、あんなに地獄的修行の日々を過ごすことになったのだが。まぁ今はその話は良いだろう。つか一生話したくない。

 

とにかく、この左腕は太陽と同化したと考えて良いのだろう。日に当たっても痛くない。なぜって太陽そのものだから。つまり、この腕があればまた。あの時みたいに戦える...!!

 

「良い拾い物をした。感謝するよ、同郷さん。」

 

【P.S. 因みにこの技を''永久恒星''と名付けたのだが、どうだろうか?】

 

知らんわ。もう無くなっちゃったぞ、その永久恒星。

 

 

&&&

 

 

つ、ついたぁーーーーー。そして。

 

「無理。普通に無理。暑すぎて。」

 

「命令ってこれの事ですかソラ殿っ!?!?」

 

うん。イガラム特急、城までおぶってもらうんだ。あ、あそこなんかいっぱい人居るけど。海兵もいるね。

 

「あれは...どこぞの海賊ではっ!?いかん、民衆が人質に!!」

 

君が行ったらバレるでしょ。特徴的すぎるんだから。

 

「しかし、あれを放っておく訳には!」

 

「ほら、来た。」

 

「なっ、あいつはっ!!」

 

王下七武海の1人 サー・クロコダイル。アラバスタの英雄と呼ばれてるらしい。ヒーローねぇ。SMASH!!!ってか?どうみたってヒーローの顔じゃねぇけどな。

 

「騒ぐんじゃねぇ愚民どもが!!俺はお前らの命に興味はねぇ。ただ、そこの海賊共を狩りに来ただけだ。」

 

愚民て。クロコダイルって、こんなキャラなの?ツンデレなの?あ、民衆を騙してるんだった。騙すためにツンデレを演じてるの?なんでそのキャラチョイスしたんや。あの顔でツンデレは狙いすぎでしょ〜。ちょっとねぇ、あざといわよねぇ〜。

 

嘘だろ民衆クロコダイルのこと好きすぎかよ。みんなツンデレに飢えてんだな。僕もやってみるか、ツンデレ。

 

「くっ、皆騙されているというのにっ。」

 

「ちょっと、殺気抑えなよ。バレたら終わりだと思って。」

 

一応マントで顔は隠してるけどな。それでもイガラムさんの顔は割れてるから、慎重に行かなきゃまじで詰む。

 

とか言ってたら秒で終わったぞ。砂の能力者か、ロギアぁぁ。ロギアは全員後半の海に行ってくれない??前半でわちゃわちゃしてんなよ。懸賞金8100万とか嘘だろ。そんなレベルじゃねぇからこいつ。

 

例えば僕が1vs1であのクロコダイルと戦るとして、どうするか。見聞色は使えるけど武装色は使えない。砂の弱点をつくしかねぇ。水だな。砂漠で?水を使って戦うの???無理ぽ〜。霧でいいかな?湿気とか?

 

相手の攻撃も当たらないけど、こっちの攻撃も当たらない。硬直状態だな。なんなら僕は一撃でも喰らえばマントが破れて日光に焼かれて終わる。もしくは体の水分...は、大丈夫か。太陽だし。なんなら能力的にはこっちのが上だわ。溶かせるのか、砂?

 

「クハハハハハ。海賊としての格が違ぇんだよ。」

 

だろうな。この辺じゃ強すぎるよ君。

 

「失礼しました、そろそろ移動しましょう。王へ謁見しなければ。」

 

せやな。でもその前に一旦お店寄っていい?お腹空いた。

 

「ではあの店に入りましょう。」

 

おけ。何食べよ〜。

 

カランカラァーン

 

「まいど、何にします?」

 

いや、ちょ、早い。商売根性たくましいかよ。まだ席にもついてねぇぞ。答えるけどな!

 

「チャーハンください。サラダセットで。」

 

「ソラ殿、バランスよく食べなくては。お肉もありますよ、どうですか?」

 

んぇえ、そんなに入んない...。半分食べてくれるなら。

 

「ではこの肉を。」

 

「まいど。」

 

カランカラァーン

 

...、おや。なんぞそこそこ強いやつが。誰じゃこれ、オフィサー・エージェントってやつかな。

 

「水と肉を。」

 

「まいど。」

 

この店員さん、さっきからまいどしか言ってないけど仕事できる感ビンビンなんだよな。バラティエに来てくれないかな。無理か、遠すぎて。さてはこやつ...必殺仕事人だな?わかるよ、僕もそうだからね!スパイダーセンスで1発さ!(嘘)

 

「必ずこの国に来る筈だ。俺に見つかった時がテメェの最後だぜ...麦わらァ...!」

 

おっと〜?スモやんじゃありませんか。ローグタウンぶり〜。顔バレしてないし、大丈夫だろ。こういう時は堂々としてないとね。まぁこんな所でエンカウントするなんて思ってなかったけど、料理注文したしなー。無駄にはできん。

 

ちょいとイガラムさんや、その冷や汗どうにかならんのかね。ホントに潜入捜査してたん??ってくらい正直なんやが。身体は正直ってか?誰得だよ。あ、ちょっとこの傘、イガラムさんの身体で隠しといて。見つかったらめんどくさいから。

 

「こんにちは、お仕事ですか?大変ですね。」

 

「あ?あぁ、まぁな。テメェはここに住んでんのか、ガキ。」

 

ガキ。餓鬼。ガッキー?

 

「いいえ、旅の者ですよ。観光に立ち寄ったんです。僕の生まれ故郷はとても寒い冬島だったので、砂漠や熱風が新鮮です。」

 

「そうかよ、わざわざご苦労なこった。1人で旅してんのか。」

 

目付き鋭い〜。顔バレてなくてよかったわ。声で気づかれるかな?大丈夫か。知らんけど。

 

「えぇ、そうです。今は隣のこの人に、この辺りを案内してもらっているんですよ。」

 

あ、ご飯来た。いただきまーす。

 

「てことは、見た目ほどガキじゃねぇってこったな。」

 

見えてねぇだろマント被ってんだから。

 

「えぇ、19です。そういえば、ここアラバスタにはクロコダイルという海賊が居るって聞きました。その海賊を捕まえにいらしたんですか?もぐもぐ。」

 

「...違ぇ。そいつは王下七武海。つまり俺達海軍直属の海賊だ。腹立つことに、捕まえるこたァ出来ねぇんだよ。」

 

「へぇ、そうなんですね?それって、例えばその王下七武海が悪事を働いていたとしてもぐもぐ、ですか?」

 

だからこっち見んなしイガラムバカヤロウ。そんなもうやめてほっといてご飯食べてさっさと逃げましょうみたいな顔して。護衛隊長なんだから、君は別に逃げる必要なくね?あ、僕のためか。うへへ、ありがと。

 

「...そりゃまた話が別だ。軍直属である以上、一般人に被害を出した時点で権利は剥奪。俺も引っ捕らえることが出来る。おい、食ってる時に喋ってんじゃねぇ。ったく。」

 

「コク、ン。なるほどなるほど。もう1つ質問です。貴方は、強い海兵さんですか?」

 

「...さぁな。何が言いてぇ。」

 

おや、はぐらかされた。発破をかけてやろう。こいつを味方に出来たら、民衆の流れる血の量が減る。

 

「んー、海兵さん、強そうなので。内緒のお話です。さっき、こんな噂を耳にしたんです。今この国で起きているクーデター。国家乗っ取りを目論むサー・クロコダイルの仕業だと。」

 

「!?」

 

はい、食いついた。

 

「皆さん、旅人である僕に色んなことを教えてくれるんです。どこの香水の出来が良いとか、どこの砂漠には危ない植物があるとか。そんな中、気になったのがこの噂。」

 

「その話、信憑性は。」

 

「さぁ、あくまで世間話として話した程度ですし。すぐにこの国を去るであろう旅人にする話ですから。ですが、火の無いところに...。」

 

「煙は立たねぇってか、なるほど...。奴のこたァ前から気に食わなかったんだ。詳しく調べる必要がありそうだな。」

 

モクモクの実を食べたスモーカーだからそこは言いたかったんだな。めっちゃ被せてきたぞ。笑かすなし。

 

「ふん。情報提供、感謝する。じゃあな。店主、つりは要らねぇ。」

 

「あれ、お肉食べて行かないんですか?美味しいのに。」

 

「そいつはテメェが食え。情報料だ。ガキはもっと食ってデカくなれ。」

 

余計なお世話だぞおい。19だっつってんだろ。

 

「あ、海兵さん。お名前教えて下さいな。」

 

「スモーカーだ。お前は。」

 

「ソラです。また、機会があれば。」

 

「あぁ...次会った時も小せぇままだったら、また肉を食わせるからな。」

 

それは困るわ。もうこれ以上おっきくならねぇのに。それに、案外早くまた会うかもよ。




ついに出せました、実の名前。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

作戦会議!

アラバスタの首都アルバーナヘ辿り着くことが出来た。本当に本当にお疲れ様でしたイガラムさん。

 

アラバスタに到着してから、日が出ている間に自分の足で歩いた記憶がねぇぞ。暑い中僕を運んでくれたイガラムさんが居なかったら、ここに来るまでもっと時間がかかっていた。

 

良かったぁ、一緒に来て。エターナルポースを渡さなかったあの時のイガラムさん、まじでナイス。

 

日中はイガラムさんが僕を背負って移動して、夜は眠る。逆に、僕は日中に体力を回復し、夜は寝ているイガラムさんを担いで爆走。二人三脚の精神で、ノンストップでここまで来たのだ。

 

途中でカトレアという町に寄り、反乱軍の情報を収集したため少々遅くなったかもしれんが。まぁ概ね予定通りだ。

 

「なんという...ことだ...!黒幕はクロコダイルだと...!?海賊とはいえ王下七武海、政府側の人間が、この国を乗っ取ろうとしているとはっ!!なんという悪い冗談だ...。」

 

そうなんだよ。ビビとイガラムさんが命をかけて集めてくれた情報だ。つか2人がバロックワークスへの潜入捜査を国王に知らせてなかったとは。驚き桃の木山椒の木。報連相って大事。

 

「イガラムよ、礼を言うぞ。敵組織に潜入し情報を得てくれたこと。そしてその情報を、よくぞ持ち帰ってくれた。ありがとう。」

 

「なっ、頭をおあげ下さい国王様!!私一人では到底何も、何も出来ませんでした...っ。ビビ様をお守りする事さえ!ソラ殿を始めとした麦わらの一味の皆様にお力をお貸し頂けたからこそ、ここまで来ることが出来たのです!」

 

「そうだったな。君にも心からの感謝を。ありがとう、ソラくん。」

 

「問題ありません。では、今後のことを話し合いましょう。」

 

「あぁ、そうだな。事態は一刻を争う。」

 

それじゃまずは、持っている情報の整理をしよう。アラバスタの地図と、なにか書くものあるかな〜。あ、ありがとうイガラムさん。

 

コブラ王と、イガラムさんと、イガラムさんの同僚であるチャカさんとペルさん。そして僕の5人が頭を突っつき合わせ、以下のことを書き出した。

 

【国王軍】

・アラバスタ国 国王 ネフェルタリ・コブラ様の存在

・戦力的にイガラムさん、チャカさん、ペルさんが三強

→チャカさん:イヌイヌの実 モデルジャッカル

→ペルさん:トリトリの実 モデルファルコン(1人を乗せて飛行可能)

・国王軍 兵力30万

・首都アルバーナを拠点としている

→地図上では北側に位置している

 

勝利条件:BWの消滅並びに反乱軍への説得(又は鎮圧?)

 

【反乱軍】

・リーダーであるコーザの存在

・反乱軍 兵力70万

・カトレアを拠点としている

→地図上では、アルバーナから大陸続きに南下した場所に位置している

・2日前に立ち寄った際、武器が集まり次第アルバーナへ総攻撃を仕掛けると話していた

→ソラの暗躍により武器庫を襲撃済み

→国王軍が武器商人、武器屋を統制している

→武器が集まるまで暫くの猶予あり?

 

勝利条件:コブラ王並びに国王軍の制圧

 

【BW】

・王下七武海 サー・クロコダイルの存在

→スナスナの実のロギア系能力者

→アラバスタ国民からの支持があつい

→ツンデレ

・ミスオールサンデーの存在

→ハナハナの実の能力者(ソラのみ把握)

・オフィサー・エージェントの存在

→No.1ペア、No.2(オカマ)、No.3ペア、No.4ペア

→能力者多数(正確な数、能力不明)

・BW社員約1000人

→内、7割以上を鎮圧済み

・レインベースを拠点としている

→地図上では、川を挟んでアルバーナの東側に位置する

 

勝利条件:国王軍と反乱軍の衝突による国の滅亡

 

【麦わらの一味】

・一味各位

・アラバスタ国 王女 ネフェルタリ・ビビ様の存在

 

勝利条件:BWの殲滅並びに反乱軍の説得

 

【不確定】

・白猟のスモーカー率いる海軍の存在

→クロコダイルが怪しいと情報を与えたため、調査に動いている最中

 

以上

 

と、こんなもんかな。さ、意見のある人手ぇあげて〜。しーん。え、ちょ、主体性は?積極的にヨロ。

 

「改めて見てみると、これは...。」

 

「普通に無謀ですね。」

 

「黙りやがりなさいソラ殿くらぁっ!」

 

イガラムさんはツッコミキャラ、と。メモメモ。あぁーん、ペン返してよ〜。

 

「とりあえず、BWについての対応は考えなくて結構です。我々が考えるべきは反乱軍をどうするか。それとビビ王女の保護、この2点のみです。」

 

「BWは考えない?それはどういうことだ、ソラくん。」

 

まぁ突っ込むよね。

 

「今、ビビ王女を連れて僕の仲間が、ここアラバスタへ向かっています。BWは彼らが対処しますので問題ありません。」

 

異議あり!!とのこと。発言を認めます。(裁判長)

 

「し、しかし...!ここに書いてある通りなら、BWには相当の戦力が集っておりますぞ!?そもそも、我々は貴方様のお仲間を存じ上げませぬ!数も、強さもです!」

 

「チャカの言う通りです。クロコダイルだけでも厄介であるのに、配下さえも能力者が多数とは。ソラ殿のお仲間が奴らを下せる根拠を、どうかご教示頂きたい。」

 

しかしイガラムさんから反論。彼らの強さは信頼出来ると。されど云々、しかし云々。わちゃわちゃしてんなぁ。えぇい黙りおろう!わし、裁判長ぞ!(違う)

 

「えーっと、すみません。ちょっと伝え方が悪かったかも、です。正確に言いますね。」

 

「「「?」」」

 

そもそも論だ。

 

「麦わらの一味がBWを殲滅できなかった場合、残る対抗手段が存在しません。国王軍が戦ってどうにかなるレベルでは無いので、考えるだけ無駄という意味です。」

 

「なっ、」

 

「...。」

 

コブラ王が目を閉じて腕を組んでいる。思考中、思考中。

 

まぁ、正確に言うと僕というジョーカーが残ってるんだが。クロコダイルに顔は割れてないだろうし、戦闘力も未知数だ。そもそも、ロビンが僕の存在を報告していない可能性も微レ存。

 

でも、僕がクロコダイルと戦うのは本当に最後の手段だ。なぜか、クロコダイル率いるBWの動きが読めない以上、どうしたって後手に回ることになる。そうなった時、僕が国王軍から離れていたら、彼らを守ることが出来ないからだ。

 

「よし、分かった。では反乱軍への対応策を考えよう。誰か意見がある者は居るか?」

 

「反乱軍はつい先日、武器を見張っていた国王軍の者達を襲っています。我々は現状、後手に回っている状態なのです。」

 

「次はこちらから打って出る、というのも手では無いでしょうか。」

 

え、やっちゃっていいの?それなら話は簡単なんだけど。僕がもう1回カトレアに行けば済む話だよ。

 

「ならん!やられたからやり返すなぞ、子どもの喧嘩では無いんだぞ!!」

 

「し、しかし国王様。このままでは国の存亡に関わります!現に元々60万だった国王軍も、その半数が寝返っており...!」

 

「だからどうした!反乱軍であろうとこの国の民であることに変わりは無いのだぞ!」

 

あーだよね、やっぱりそうだよね。なるほど、コブラ王とイガラムさんは穏健派。チャカさんとペルさんは割と過激派って感じか。んでも、コブラ王の事を心から慕っているから、そのご意向に背くことは無い、と。理解理解。

 

「私に不満があるが故の行動なのだ。全ては王として至らぬ私が原因...!国とは、人なのだ!!民を傷つける王が何処にいる!!!」

 

めっちゃかっけぇやんけ。すんげぇなぁ、この人。でもちょっと間違い。

 

「後半の意見には賛成ですが、前半は反対です。貴方様は民を思い、今まさに行動しておられます。こうなった原因は貴方様にあるのでは無く、クロコダイルにあります。貴方様の部下も、民も、貴方様のことを心から信じておられますよ。」

 

そうですよね、御三方。

 

「「「無論!!!」」」

 

「...!」

 

即答。はい、上司と部下の絆レベルアップ。とかやってる場合じゃねぇんだわな、これが。

 

さて、参ったことに解決策が思い付かん。そもそも戦力で負けているのに対して、敵を攻撃せず説得する必要があるという点が無謀に過ぎる。説得って、ある程度の抑圧できる力があって、始めて成り立つものだと思うんだよ。はっきり言って、手段を選べる様な状況じゃないんだよなぁ。

 

ってことで、提案出来るのは2つだ。

 

「ぱっと思いつく限りでは、2つですかね。いずれも良い案とは言えませんけど。」

 

「おぉ...!何か考えがあるのだな、聞かせて欲しい。」

 

はいな。

 

「まず1つ目は、比較的現実的な方法です。優先順位を決めます。」

 

「優先順位?」

 

そう。守るために必要な、とても残酷な優先順位。

 

「国王軍側の核は、コブラ王並びにビビ王女です。なので、僕が貴方がた御二人を連れてアラバスタから逃亡若しくは国内で匿います。ほとぼりが冷めるまで。」

 

「「「!?!?」」」

 

「それ、は...!」

 

「なるほど、一理ありますね。確かにコブラ王とビビ王女さえご存命であれば、国の復興は可能です。」

 

「ならん!!!!」

 

はい、次。え、早いって?もっと粘れって?いやぁ、この王なら拒否るだろうなーとは思ってたし。これ採用するってことは、2人に仕える全ての部下を見捨てて逃げるって事だから。

 

そもそも、これは国王軍の中でも臣下側の意向に沿った策であって、王の意向には沿ってないからな。さっき言ってたしな、コブラ王。国は人だって。これを国王が言えるってのがすげぇんだ。尊敬する。

 

つまりコブラ王は、自分やビビが生きてさえいれば国が蘇るとは考えてない。国民が死ねば、国は滅ぶとそう考えている。そしてその考えは正しい。

 

では、どうするか。

 

「では2つ目です。これはあまり現実的とは言えませんが...。」

 

「言ってくれ。」

 

「では、反乱軍とBWの勝利条件を見てください。」

 

メモした文章を指さしつつ。ここな、ここ。おぉ、皆じーっと見てる。ちょっと面白い。

 

【反乱軍】

勝利条件:コブラ王並びに国王軍の制圧

 

【BW】

勝利条件:国王軍と反乱軍の衝突による国の滅亡

 

「それがどうかしたのですか?」

 

うむ、良い質問だなチャカくん。

 

「2つの勢力の最終的な目的は異なりますが、目下の目的は同じと言えます。」

 

「...なるほど、国王軍と反乱軍が相対することか。」

 

「仰る通りです、コブラ王。」

 

つまりその点さえ回避出来れば、この2つの勢力の目的が達成出来なくなる。

 

「しかし、我々の拠点がここアルバーナである以上、それは時間の問題かと思われます。」

 

うむ。その通りだな、ペルくん。

 

「その点も、仰る通りです。ところでコブラ王、ひとつ質問が。」

 

「ん?どうした、ソラくん。」

 

ーーーこのお城に、未練はお有りですか?

 

「「「..........。」」」

 

「わっはっはっはっは!なるほど、城を捨て全軍で逃げ切り勝負か!!大胆なことを考えるものだな!!海賊とはかくもこうなのか?」

 

それは知らん。でもこれも却下なら、もう何も考えつかんぞ。嫌ならなんか案出して。

 

「行けると、思うか?ペル。」

 

「正直、分からない。物資の問題もある。城を捨て30万の兵士と共に砂漠を移動など、1度たりとも経験が無い。」

 

「しかし、確かにこれ以外は。」

 

お、なんや意外と好感触。割と無謀だと思うけど。

 

「コブラ王!!!皆様!!!カルーが、帰って参りました〜!!!」

 

カルー...。カルー!ここへ来い!!(某大佐風)この空間に癒しが欲しい!!!オッサンとお兄さんしか居ないぞよ!!!割と頭使ってそろそろ疲れた休憩したい!!!!

 

「...うむ、間違いなくビビの筆跡だ。イガラムとソラくんの報告通りだな。やはり元凶はクロコダイル、やつだ。」

 

「む、左手を怪我しているのか?見せてみろ、カルー。」

 

「クエッ、クエーっ!!」

 

はたかれてる。ウケる。つかそれ仲間の印じゃね?あれ、僕そういえばこの印付けてねぇな。え、大丈夫そ?そう言えばこの印ってなんの為に付けてたんだっけ。あーーーー、いかん忘れた。

 

とりあえず撫でてよろし?あ、良いの。ありがとう〜。可愛ええんじゃあ〜。ええのぉええのぉ。ん、ここか。ここが好きなんか?うへへへ、顎の毛と胸の毛フワフワ〜。フワッフワッしたいならどうぞ〜♪っとくらぁ。

 

わ、わ、わー。やめれフードはダメだってば。うへへ、くすぐったい。あ、フード取れちゃった。まぁ室内だからいっか。

 

「「「...はっ?」」」

 

「え?」

 

え、何ぞ。どしたん皆めっちゃこっち見て。カルーも目飛び出てんぞ、それ大丈夫か?あんまその顔するなよ、ぶちゃいくだから。でも可愛い。ぎゅー。

 

「ソラ殿、は、男だろう?そうだよな?」

 

「え?はい、そうですけど。」

 

今更???なんだめっちゃこっち見てくるぞ。超真剣じゃん、こわい。ちょ、やっぱりフードかぶっとこ。

 

「うむ。会議中はフードを取っていたらどうだ?ここは私の寝室だからな、他人が入ってくることなぞほとんど無い。それに、室内とは言えその格好では暑いだろう?ん?」

 

「え、いや大丈夫です。」

 

こわいし。さっきカルー帰ってきたって言いに人来たやん。信ぴょう性ゼロかよ。

 

「王の命令で...。」

 

「止めなさい国王コノヤロウ。」

 

「...で、あるか。」

 

であります。(蛙軍曹)

 

「そう言えばソラ殿、髪の色がひと房違っていますが...?」

 

んえ。髪の色?なになにどゆこと?

 

「あぁ、綺麗な白金色の中に少しだけ紅い髪が混ざっているな。絹のような美しさとは、このような髪を言うのだろう。」

 

ほーん、あ、鏡さんすく。わーほんとだ、全然知らんかった。心当たりはもちろんある。左手の件だろ、どうせ。でもまぁ、見た感じ似合ってるしいっか。白金に彩やかな赤メッシュとか。オサレ。

 

さて、そんじゃそろそろ続きといきましょ。詰めるだけ詰めて、できるだけ早く実行しないとだしな。




コブラ王、好きです。賢王って感じで。遊び心も持ってて素敵。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

砂刃VS天刃

ねます。おやすみなさい。


現在、国王軍30万の兵士を引き連れ、河に沿って大移動中。水場の近くを移動することで最低限の水は確保可能であるから、とのこと。この河の水、飲めるの?ろ過する手段があるのかな?

 

ビビについては、ペルさんとカルーが探してくれている。見つけ次第こっちに連れてきてくれる手筈だ。

 

30万の兵士を半分に分け、少しでも城で抵抗の意志を見せる事で、こちらの作戦を敵に悟らせないようにするという意見が上がった。が、これまたコブラ王が却下した。ならん!が口癖になってないと良いけどな。

 

では、どうするのか。城がもぬけの殻と知ったら、反乱軍もクロコダイルも移動の軌跡を追ってやってくるだろう。基本的に、大規模移動は数の少ない方が速いのだ。

 

つまり、反乱軍が国王軍に追いつくことはほぼ無いと考えて良いだろう。城で足止めしてるし。こちらが逃げの一手を取り続け、できるだけ多くの時間を稼ぐ。ルフィ達が必ずBWを倒してくれると信じて。

 

問題は、単独もしくは少人数でこちらを殲滅し得る存在。つまりはクロコダイル他数名に、この作戦が知られた時。その時は、覚悟を決めるしか。

 

「クエーっ!!」

 

「ビビ!!」 「パパ!!良かった、会えた!!」

 

よし、ビビが合流した。ペルーさんも一緒に帰ってきたし、今のところは順調。このまま何事も無ければ良いんだが。

 

「ソラさん!作戦は聞いたわ。ありがとう、イガラムをここまで連れてきてくれて。ありがとう、パパを、国王軍を守ってくれて。」

 

「お礼は全てが片付いた後で受け取らせて頂きます、王女様。」

 

「わかった、全部が終わった後で改めて言わせてもらうわ!私、もう信じてるから!!ルフィさん達も、ソラさんのことも!だから...。」

 

ふむ、なるほど。

 

「にしし、うん。なら、僕の方こそ。信じてくれてありがとう。」

 

「っううん!仲間だから!!」

 

嬉しいねぇ。仲間の印は持ってないけど!ま、しょーがないよね。後でこっそり付けとこうかな。

 

「でも、皆が私の代わりに囮になってくれているの!私が城へ入れるように、別々の方向へ逃げてくれたんだけど。ごめんなさい、私たち、国王軍が城を離れてるって知らなかったから...!あれ、ちょっと待って。どういうこと...?」

 

「城門は入れないように内側から施錠してる。城壁ごと壊されない限り大丈夫だと思う。だから多分、みんな城の外で戦ってるだろうね。」

 

「そう、いえ、そうじゃない!だって、国王軍は全てここに居る筈でしょう!?なら、一体誰が...誰が城で反乱軍と闘っているの(・・・・・・・・・・・・・・)!?」

 

「僕の、悪魔の実の能力だよ。」

 

「えっ!?ソラさん、悪魔の実の能力者だったの!?」

 

そう。サンジ以外は知らないんだよね、僕が能力者だってこと。能力を使えない能力者なんだ〜なんてぶっちゃけったって、ねぇ。今は左腕だけ使えるけどな。弱体化してるけど。

 

反乱軍はたった今、人ならざる者達と闘っている。僕の左腕が生み出した、炎の鎧を身に纏う戦女神たちだ。

 

黒灰円陣(ヒュペリオ・サークル)

城を囲むように地面に浮かぶ灰の円陣。この円内部に足を踏み入れた全ての存在を知覚する。

 

半球黄陽結界(アグニスフィア)

城を囲む円陣から空に向かって半球状に生成された結界。結界内にある全ての存在を知覚する。

 

炎鎧の戦女神(シヴァルキュリア・シュバリエ)

円陣・結界内で知覚した敵対存在を迎撃する自動戦闘型戦女神。今回は防御に主軸を置いてるため、迎撃と言うより妨害に近い。

 

ただ、この技を使ってる間、左腕でギラギラの実の能力を使えない。向こうの状況が分からない以上、解除も出来ない。暫くは、左腕は使い物にならないと考えた方が良い。

 

「す、すごい...。これなら、ルフィさん達がアイツらに勝つまで時間を稼ぐことが...!」

 

「砂嵐だァぁぁぁああああ!!!!!」

 

「「「!?」」」

 

このタイミングでかよっ。

 

「狼狽えるなっ!風向きを読むのだ!全軍、風上へ移動しろっ!!急げ!!!」

 

いや、ちょっと待て。これは...!

 

「国王様!!ビビ王女!!不可能です、これは...風向きなど関係なく我々に向かってきています!!しかも大きい!!」

 

「なんだと!?!?」 「そんなっ!?」

 

自然発生?国王軍の居るこの時、場所で?ありえないだろう、偶然にしちゃ出来過ぎなんじゃが。とにかくこの砂嵐を消すしかない。

 

「''刃技(じんぎ) 蓬雷風烈(ほうらいふうれつ)''。」

 

飛び上がって抜刀し、X字に振り下ろす。飛来する雷撃と風撃の合わせ技。霧散しろおらぁああっ!!!

 

「「「すっ、砂嵐を...斬ったァぁあ!?」」」

 

うん。斬った。まぁこれくらいは誰でも出来る。本来なら剣圧ひとつで吹き飛ばしたいところなんだがな。実力不足と日光のせい。ちな、日光要因9割。誰だいま嘘つけって言ったやつ。後で校舎裏な?

 

「''砂嵐(サーブルス)''。」

 

「くっ(そがふざけんなよ2つ同時とか無理ゲー過ぎ)!!」

 

「なっ、また!?しかも、今度は...1つじゃない!!前後に2つっ!?かっ、囲まれています!!!」

 

なんでバレてんだよクソがぁぁあ!!早すぎんだろまじで!!!

 

「河に向かって下さいっ!!!」

 

「!!全軍っ、荷物を捨てて河へ!!逃げろぉおおお!!!」

 

「ソラさんっ!!!」

 

「行って、ビビ!!''刃技(じんぎ) 蓬雷轟風烈(ほうらいごうふうれつ)''!!」

 

X字の雷風撃を3つ同時に放つ。砂嵐2つが消滅し、残るひとつは。

 

「ほう、中々頑張るじゃないか。...で、お前は誰だ?」

 

攻撃をくらったのにも関わらず、サラサラと砂から人へ変化するこいつの名はサー・クロコダイル。諸悪の根源。絶対悪の人類悪。登場が早いんだよ畜生が。

 

ヒーローは遅れて登場するもんだろうが!!アラバスタの英雄(ヒーロー)さんよぉ!?

 

何者、何者と問うか。

 

「ソラ。」

 

「...質問を変えよう。お前は麦わらの一味か?」

 

あ、それはそうだわ。頷いとこ。

 

「はぁ〜...、何故こうも計画が狂う。俺の計画は完璧だった筈だ。任務を遂行する側の問題だな。麦わらの一味は4人という報告だったが、Mr.プリンスを名乗る男が数名。ここから全てが崩れたんだ。お前もそのうちの1人か?」

 

何だ急に語り出したぞ。とりあえず時間が稼げるなら良いや、話に乗っとこ。で、謎のプリンスが何だって?セクタムセンプラっとけば良いの?

 

「いや全然知らない。それと僕は無関係。」

 

「あくまでもシラを切るのか。」

 

知らねぇってガチのやつだよコレ。なんで疑われてるんだよ!お前が僕の何を知ってるの!?まぁそんな名前を名乗りそうな女好きに心当たりはあるけどな!!

 

「Mr.4とミス・メリークリスマスに指令を出してたんだぜ、俺ァ。ネフェルタリ・コブラを攫い、拘束しろとなぁ。なのにいざ攫おうって時にゃ城はもぬけの殻。ただの1人も居やしねぇ。」

 

「誰かが裏で糸引いてやがる。初めっから、誰かが俺の邪魔をしてやがった。表に顔を出すことなく、だ。全部テメェの仕業だな?」

 

お前が言うなよ。自分がされて嫌なこと、他人にすんなって教訓だろ。

 

「そうだね。初めまして、サー・クロコダイル。待っていたよ。いやはや、よくここまで辿り着けたものだ。素直に感心する。褒めてあげよう。」

 

挑発しろ。

 

「君のお粗末な計画については、早い段階で気づいてた。反乱軍と国王軍の衝突を避ければ、君の計画が頓挫することは容易に想像が付く。」

 

挑発しろ。

 

「だから国王軍全員で城を捨てる選択をした。形だけの城さ、今やあの城には何も残っちゃいない。君にお似合いだと思ったから手放したんだ。僕らが使い捨てた城に住みたいと言うのなら、どうぞご自由に。海賊の格、とか言ってたっけ。君の持つ海賊の格って言うのは、空き巣と同レベルなんだね。」

 

「...。(ブチッ)」

 

俯いて震えてる。もう一押しか?意地でも河に意識を向けさせないようにしないと。

 

「...クハハハハ、よく口が回るじゃねぇか。健気なモンだぜ。なるほど確かに、お前が麦わらの一味のブレインであることは認めてやろう。だがな、お前が必死に守ってるあの国王軍の中に、一体何人俺の部下が居ると思う?」

 

別にブレインじゃねぇよ。つかそういうことか。内部の裏切り者の可能性、なんでそれを考えなかった。反乱軍に30万も寝返ってんだぞ!何かあるってわかってただろうが!!

 

「バカが、王族2人だけを連れて逃げるべきだったな。そうすりゃ、今よりもっとマシな結果になってただろうに。まぁ、どちらにせよ見つけて殺すがな。」

 

「バカはお前だ、クロコダイル。僕がその選択肢を思いつかないとでも思ったのか?その選択を取り得た上で、なお国王軍全員で城を捨てる覚悟を決めたんだよ。」

 

胸張れ前見ろ眼ぇ逸らすな堂々としろ。

 

「コブラ王が、''国とは人だ''と言ったからだ。30万の兵士を疑い疑心暗鬼になることで兵の戦意を自ら削ぐくらいなら、敵ごと抱え込んで逃げる方が得策だと判断した。」

 

ハッタリだ。

 

「だからそれがバカだって話だろうが。国は人だと?そんな戯言をのたまうから反乱なんざ起きる。教えてやろう。国とは、力だ。軍事力こそがものを言う。弱ぇってのは、それだけで罪だぜ?」

 

「...はっ、何か勘違いしてるみたいだから教えてやるよ。別に、お前にコブラ王みたいな考えを持って行動しろなんて誰も思ってない。それは土台無理な話だからな。」

 

「アラバスタという大国を、民に寄り添い、民と共に築いてきたネフェルタリ・コブラこそが賢王だ。お前程度の器じゃ、到底彼には敵うまいよ。国とは力だって?ガキくさい考え持ってるから、海賊のくせに何ひとつとして欲しいものを奪えない。」

 

「僕がなぜ、お前を待っていたか教えてやろうか?」

 

「この事実を伝えた時の、お前の顔が見たかったからだよ。ばーか。」

 

にっこり。

 

「...!!(ブチィっっっ)」

 

「お前は...嬲り殺しだ。楽に死ねると思うなよ。」

 

「やってみろよ、クソ野郎。ここでお前を、倒して終わりだ。」

 

''砂漠の宝刀(デザート・スパーダ)''

''(あま)霞牙(かすみは)''

 

''砂漠の金剛宝刀(デザート・ラ・スパーダ)''

''(あま)綴雪(つづりせ)''

 

''砂漠の大剣(デザート・グランデ・エスパーダ)''

''居合い 紫電一閃(しでんいっせん)''

 

砂の刃を刃技で相殺、相殺、相殺する。お互いに決定打が無い。予想してた通りの膠着状態が続く。雨でも降らせる力が有れば良かったんだが、そんな都合の良い技は無い。すぐそこに河はあるものの、国王軍が避難してるから近づきたくない。むしろ遠ざけたい。

 

こりゃ、長引けば負けるのは僕の方だな。イガラムさんを預かってからここまで一睡もしてない。不眠不休による体力の限界と乾燥と陽射しで頭がフラフラする。思考が鈍る。見聞色の精度も落ちてる気がする。どうするか。

 

「''砂漠の向日葵(デザート・ジラソーレ)''!」

 

はぁっ!?なんだこれっ、流砂...アリジゴクか!!足をとられるっ!?範囲デカすぎだろうが!!!

 

「''(あま)霹靂(かみとき)''・''疾風迅雷(しっぷうじんらい)''。」

 

地面に向けて雷を叩き込み、砂が吹き飛び流れが止まった瞬間に疾風迅雷で身体を超強化し脱出。はは、笑えるほどアホみてぇな難易度。今のコンディションで何度も出来るもんじゃねぇぞ。

 

「おいおいテメェ、自分より弱いやつの下についてんのか。クハハ、滑稽だな。なんの冗談だ。」

 

何だ急に。

 

「器の問題だ。ルフィは、海賊王になる男だから。それに、僕の仲間はこれからどんどん強くなる。お前と違ってな。」

 

「クハハハハ!海賊王だと!?笑わせるな、新世界を見た事もねぇルーキーがご大層な夢を語りやがる!!ひとつ、良いことを教えてやろう。テメェの船長は、もう死んでる。」

 

...あ?

 

「死んでる?ルフィが?」

 

「あぁ、クックク。今の技で流砂に飲まれて生き埋めだ。どうやら海賊王の器じゃ無かったらしい。」

 

なんだ、生き埋めってことは死体を確認した訳じゃないのか。なら問題ないな。ルフィのしぶとさ、舐めちゃいけない。

 

「その程度の技で、ルフィが死んだと思ってるのか?詰めが甘いな、クロコダイル。」

 

「そりゃこっちのセリフだ阿呆が。''砂嵐重(サーブルスペサード)''。」

 

「なっ、しまっ!?」

 

まずいっ!国王軍の方に!!くっっそ、間に合えっ!!!

 

「''疾風迅雷(しっぷうじんらい)''・''蓬雷風烈(ほうらいふうれつ)''!」

 

一瞬で国王軍の前に立ちはだかり、雷風撃で砂嵐を吹き飛ばす。衝撃でフードが取れないよう抑えつつ、後ろの無事を確認。良かった、無事だな。

 

「避けて!!ソラさん!!!」

 

「''三日月形砂丘(バルハン)''!!!」

 

「っがぁぁああ!?」

 

まずっ、右腕が!マントがやぶれ、ぁ、あ、ぁあついあついあついあついあついあつい!!!!

 

「ぐぅぅうううっ...、はぁっ、はぁっ。」

 

マント、運良く近くに落ちてて良かった...!左腕に受けてたら無傷だったのにっ!

 

「そりゃ、一体どういう行動だ?おい。マントを必死に掴んで...テメェ、日差しが弱点か?クハハ、まさかとは思うが、この砂漠の大地に!!煌々と太陽が輝くこの国に!!夜の種族が居やがるのか!!なんて滑稽な話だ!!あぁ!?」

 

バレた、まずいな。本格的に負け濃厚なんだが。1vs1なら速攻逃げるのになぁ。せめて夜であれよ。

 

「まさか...夜の種族だと。」

 

チラリ、とコブラ王を見る。驚いてるみたい。僕より僕のこと知ってる人多すぎじゃね。なんなの夜の種族って、知らないんだけど。初めましての単語だわ。

 

っ!?まずい!!!

 

パァーーーンパァーーーンっ!

 

「っぐぅううう、あつっ...!」

 

「なっ!?」 「えっ!?」

 

銃口をコブラ王とビビに向けてるアホがいると思ったら...BWか!

 

「ペル、さん!!」

 

「っ承知!!」

 

だがこれで内部工作員の存在が明らかになった。ペルさんもイガラムさんもチャカさんもいる。2人のことは任せよう!今はそれよりもっ。

 

「おいおい、余所見かよ。余裕だなァ?''砂嵐(サーブルス)''。」

 

「くっそ、がっ、お前またっ!!''蓬雷風烈(ほうらいふうれつ)''!!!」

 

後ろばっかり狙いやがって!!

 

「ご、がはっ...!ぁ、ああああああああああ!!!あつ、いっ!あついいいぃぁああああ!!!!」

 

「クハハハハハハハ!!!これで確定したなァお前が夜の種族だと!!!おーおー、足でまといが多いと大変そうじゃねぇか。今が夜で、ここに俺とお前の2人であったなら、少しくらいは可能性があったかもしれねぇのによぉ。」

 

「愚王の戯言に耳を貸し、情に絆された結果がこれだ。くく、俺とお前のどっちがバカだ?」

 

どうでもいいから喋る前に首から手ぇ離せや。

 

「お''ま''え''...。」

 

「(ビキッ)」

 

「ぐ、が、ぁああああああああ!!!!!!」

 

「やめてクロコダイル!!!!」

 

あぁ、まじやばい。これ死ぬマジ死ぬホントに死ぬ。暑すぎて感覚が無くなってきた。フードもマントも何も無い。耳も遠くなってきてる気がする。叫び声が聞こえるな。多分ビビだ、女の子の声だから。

 

あぁ、でも。なんか、近づいてくる気配が、2つ。誰か知らないけど...もう、誰でも良いや。国王軍を守ってくれるなら、それで。

 

「冥土の土産に教えてやろう、ソラ君。」

 

ぁ、ま''の、きりそめ。

 

「大勢の反乱軍が城に居るが、そいつらは全員...残り30分の命だ。おいおい、剣士が刀を落としちゃあダメだろう。クハハ。」

 

...。

 

「半径5kmが更地と化す特殊砲弾をぶち込む。お前は30万の国王軍も守れず、70万の反乱軍さえ1人残らず死ぬことになる。」

 

「分かるか?皮膚を太陽の業火に焼かれ、発狂する程の痛みを感じてまでやった事が全て、無駄だってことだ。お前には誰一人として守れやしねぇ。クハハハ。...あ?なんだこりゃ、霧?」

 

霧、が、見えるのか。そうか、良かった。もう、技が発動したかどうかも、分からなかったから。なにも見えないし。

 

刀を振るう力も、握る力も、もう無い。

 

でも。

 

拳を振るう力くらい、死ぬ気で絞り出せ!!!1発で良い!!!ビビを、仲間を傷つけたこいつを!!!ぶん殴ってやりたい!!!!

 

「ぐぅ...!''魚人空手(ぎょじんからて)人技(じんぎ) 閂正拳(かんぬきせいけん)''!!!」

「''ゴムッゴムのぉ...ブレッッットォオオ''!!!」

「''ホワイト・ブロー''!!!」

 

「なに...!?ぐはぁああっっ!?!?」

 

あぁ、なるほどね。この2人か。はは、心強いな。

 

「ぁ、と...よろし、く。英雄(ヒーロー)。」

 

「「まかせろ。」」

 

息ぴったりかよ...ウケる。

 

「ソラさんっ!!」

 

「急いでマントで覆え!!日光から肌を隠さなければ!!」

 

「ぁ...ビ、ビ?城へ、向かって...ほうげき、止め、なきゃ...。」

 

やば、意識が、もう。

 

「私が止める!!!必ず止めるから!!!」

 

そ、か。そりゃ、安心だ...。




初期から考えてた技を沢山出せたので
嬉しかったです。まる。
クロコダイルのことを主人公はめっちゃ
煽ってますが、作者はクロコダイル好きです。
性格じゃなくて、顔と技が。

つか主人公とクロコダイルの体格差約100cm。。。
ぱないの!(吸血鬼風)


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

良い夜の出来事

10,000文字超えた。すげぇ。


「うっほほほほほ、そう来る、そう来る〜!?そうなっちゃう訳〜!?まさかのルフィとスモーカーの共闘とかテンション上がりまくりなんですけどっ!!海賊と海軍の共闘...!敵対組織が手を取り合うエンターテインメント!胸アツ展開ktkr!いやぁ〜スモーカーと接触してるなぁとは思ったけど、まさかこうなるとは。」

 

目が覚めたら芋ジャージが居た件。

 

「そもそもソラくんが尊すぎる。美少年、低身長、色白、プラチナブロンドの髪、隻眼、紫の瞳、眼帯、夜の種族、パティシエ、設計士、仲間思い、動物好き。属性盛りすぎ大好き。あと個人的には悲劇的過去持ちって言う設定もGOOD。GOD的にGOOD。GG。」

 

「そして今回ネフェルタリ・コブラを褒めまくったせいか、コブラと臣下数名からの信頼が上限を超えてきてる。そりゃそうだろあんなこと言ったらさぁ!''アラバスタという大国を、民に寄り添い、民と共に築いてきたネフェルタリ・コブラこそが賢王だ。(ソラくんVC)''なーんちゃってなんちゃって!!うっはぁー、狙ってんのか!?いや狙われたいのか!?私はどちらでもウェルコメだぞうへへへへじゅるり。おっといかん、ヨダレが。」

 

「戦闘スキルも高いんだよなぁ。まぁ師があいつだから当然っちゃ当然か。クロコダイルのカタカナ技とソラくんの漢字技のぶつかり合いは正直興奮した。ソラくん割とブチ切れてたしな。寝不足で機嫌悪かったって考えたら萌えだけど。素が出たら割と口悪いのって、育った環境によるもの?サンジと似ててクソ野郎とか言ってたよね。その共通点すこ。」

 

「それでもソラくんが負けた時は嘘だろ何でだよって思ったけど。まぁ炎天下だし、ここ最近全くと言っていいほど寝てなかったし、何よりギラギラの実の封じられてたし。しゃーないかぁ。あれ、それにしては奮闘してたよ?クロコダイルが国王軍狙わなきゃ硬直状態だったし。...え、強くね?」

 

「ふふふふ、でも今後強さがどんどんインフレしてくからねぇ。もっともっと強くなってもらわないと。あの体質が厄介なんだよなぁ。まぁ限定状況下に置いて激強ってのも凝ってて好きだけどさ。何とかしなきゃな。」

 

こちらに背を向けて何やらテンションが上がったり下がったりしている。やばくね、これ全部1人で喋ってんだぜ。

 

「ってか前から思ってたんだけど、ソラくんって孫スキル高めなの?オジキラー?ジジキラーなの?なんかおっさんキャラとか爺さんキャラとの接点多くない?今回もスモーカーに餌付けされてたし。絶対お姉様キャラにも可愛がられるタイプ〜。顔が良いと得ですなぁ?基本見えてないけど。」

 

「あと動物好きとか何それあざと可愛い。それなのにまだチョッパーと会えてないのは草だけど。カルーとの絡みは最の高。ペルーとかチャカに変身して〜とかお願いしてたりして。動物好き美少年とゾオン系能力者の絡み...ぐへへ私得ですが何か?」

 

そろそろ気持ち悪いな。なんでこんなに1人で永遠と喋れるんだ。てかこの部屋めっちゃきたねぇし缶ビール片手にテレビに映るルフィ&スモーカーVSクロコダイル観戦してるし。

 

「あのー。」

 

転生者の日誌に出てきた芋ジャージの神ってこいつだろ。ってことはここは世界の狭間?でも1DKくらいの少し手狭だけど一般的な部屋なんだが。地球なんじゃねぇの?薄暗いし汚い。空き缶とかツマミのゴミが入ったゴミ袋が多数。さすがにハエは集ってないか。それにしたって衛生観念どうなってんだ、こいつ。

 

「えっえっ、空中戦!?!?クロコダイルとスモーカーの下半身が砂と煙になってバッチバチに戦り合い始めたと思ったら、ルフィがスモーカーの背中に乗って戦闘始めてるんだけどwwwこれ絶対スモーカー了承してないwwwピキってるもんプゲラwww」

 

何やってんだルフィ。つーかいい加減気づけよ。

 

「あの、ちょっと。」

 

「あーもうはいはい!今ちょっと取り込み中だからまた後にし...て...、?」

 

グリンっ!って首回ったぞ大丈夫かこいつ。うわ瓶底メガネ。すげぇ、初めて見た。

 

「....お、」

 

「お?」

 

「おんっっぎゃぁぁぁああああああああ!!!!!!くぁwせdrftgyふじこlp。」

 

 

&&&

 

 

「いもがみ!!」

 

ん、あれ?ここはどこだ。目が覚めたら1DKの汚部屋で、またまた目が覚めたら次は豪華な寝室。何が夢で何が現実なのか。これはどっち?

 

辺りは真っ暗で、窓の外を見ると雨が降っていた。アラバスタ国民全員が心から待ち望んだ雨が、こんなに沢山降っている。良かった、無事に終わったみたいだな。これが現実なら。(震え)

 

あ、皆寝てる〜。わぁ、数日会ってないだけでなんでこんなに懐かしく思うんだろ。濃密だったからに決まってんだろ!!あと単純に体感時間が長げぇ長げぇ。警戒して永遠に起きてたからな。

 

あれからどれくらい経ったんだろ...っ!

 

「っっ!!!」

 

ちょっっっっぱぁぁぁあああ!!!!トニィィィイイイイーーーー!!!!(ダンディ鉄男じゃないよ。)

 

うわぁ小さい!僕より!可愛い!撫でたい!抱っこ!鼻ちょうちん!わたあめ!語彙力!

 

お持ち帰りしてぇ...が。今はぐっすり寝てるから起こさないようにそーっと、そーっと。

 

よし、寝室脱出完了。ミッションインポッシボー。

 

さて、ここは恐らく宮殿だろうから、ちょっと探検しよう。ふははははは、夜は僕の時間なのだ。誰にも邪魔はさせないぞ。ちなみに今、真夜中。深夜。こんな時間に起きてる人は居まい。知らんけど。

 

僕が倒れてどれくらい経ったのだろう。状況的にクロコダイルを倒して一件落着?今は後日談、エピローグと言ったところか。とりあえずお腹がすいた。何か食べたい。厨房はいずこ?

 

あれ、フードがねぇ。つまりマントがねぇ。眼帯もねぇ。素顔じゃねぇか。ついでに厨房もねぇ。無い無い尽くしだぜ。まぁ室内だからフードとマントは要らないんだけど。眼帯はしていたいが。

 

ここ、すんごい広い。歩いても歩いても廊下ばっかり。扉もいっぱいあるけど全部閉まってて部屋の中が見えない。当たり前か。でもこれだけ廊下と部屋が続くと、だんだん現実味が薄れていくなぁ。ビビはこんな広い家で育ったのか。強かだけど、王女だもんね。

 

扉...開けて良いかな?流石にダメやろな。いいや、見てるだけでも楽しいし。装飾が綺麗。ちゅーぼーちゅーぼー。てか目で見るの久々〜。色つきの世界ってやっぱ良いよ。視界の鮮度が違うから。知覚範囲は極小だけど。鼻歌歌うくらいには上機嫌だぞ、僕は。

 

「〜〜♪」

 

「ほう、上手いものだな。流石は海賊、歌はお手の物と言ったところか。」

 

「(ビクッ)...こん、ばんは。コブラ王。」

 

見聞色をOFFにしていたツケがァァ!!久々の視界に浮かれていた...ああぁぁ恥ずかしい恥ずかしい。てかなんで起きてるんだこの人。どっから現れたんだ。

 

「ははは、恥ずかしがることは無いだろう。海賊とは歌うものだと聞いた。こんなに雨の降る良い夜は久方ぶりだからな。歌いたくなる気持ちも分かると言うもの。」

 

海賊とは歌うもの?その情報、ソースはルフィだったりしない?

 

とりあえず深呼吸して落ち着こ。すぅー、はぁー。

 

「随分と長い間、雨を奪われていたと聞きました。僕には想像もつかない程に、アラバスタの方々はこの雨を渇望していたのでしょうね。」

 

「そうだな。...少し話そう。食堂はこちらだ、着いてきなさい。」

 

おぉ、なぜ分かったのだ。僕がお腹を空かせていると。

 

なんだ、案外近いところにあったんだな。まぁそれでも結構歩いてたから相当広いんだが。

 

「厨房をお借りしてもよろしいですか?」

 

「あぁ、もちろんだ。だが、あまり音は立てないようにな。小声でなら歌っても構わんが。」

 

にやにやするな。

 

「いえ結構です。」

 

残念そうな顔もするな。

 

ふむむむむ、流石にこんな真夜中にマシュマロホイップ★キラデコ★スイーツを作るなどという冒涜的行動に出ようとは思わない。そんな深淵は覗かない。あんまり時間をかけたくもないしな。

 

ってことでササッと、時短時短。少しだけ蜂蜜を混ぜたアップルティを2人分。お湯を沸かしている間に、厨房にあったいくつかのフルーツを拝借する。カットした後、お皿に盛り合わせる。新鮮かつカラフルな見た目で食欲をそそるな!フルーツの乗ったお皿とティーセットを持ってテーブルへ。

 

「お待たせいたしました。アラバスタ特製(多分)フルーツの盛り合わせでございます。ご一緒にアップルティをどうぞ。」

 

「おや、私の分まで用意してくれたのか。では一緒に頂くとしよう。」

 

当たり前だろう。なぜ一国の王は何も飲まず食わずなのに、海賊の僕だけが我が物顔でフルーツを貪るのだ。シュール以前に不敬過ぎんだろ。

 

「んっ、んん、おいしい。瑞々しくて果汁がこんなに...!素晴らしい鮮度ですね。」

 

「そうだな。ほぅ、アップルティか。良い香りだ。...うむ、心安らぐ。美味いな。」

 

お褒めに預かり光栄の至り。

 

「君は2日間眠り続けていたよ、ソラくん。随分と、無茶を強いてしまったようだ。他の皆は順調に回復している。後は彼だけだ。」

 

ルフィか。まぁそりゃそうだ、クロコダイルをぶっ飛ばしたんだから。相当消耗してるはず。結局僕は1発しか入れてないから、大して消耗させてた訳じゃないしな。

 

「我々国王軍を指揮すると同時に裏で海軍に情報を流すことで、君が戦況をコントロールしていた様だな。そして遠く離れたあの場所から、この城をも護ってくれた。何よりあの時。ビビと私を、身を呈して庇ってくれた。」

 

「大恩ある君に、心からの感謝を。ありがとう、ソラくん。」

 

「よろしいのですか、その様な真似を。海賊に頭を下げるなど、一国の王がすべき行動では無いと存じます。」

 

「命の恩人に下げられぬ頭など、あっても仕方なかろう。今ここで下げずにいつ下げるというのだ。」

 

この人やっぱりすげぇなぁ。流石はビビの父さんだ。

 

「にしし、では受け取っておきます。どういたしまして。でも、あまりお気になさらないで下さいね。好きでやったことですから。」

 

「自分たちの思うまま望むまま恣に、やりたいようにやる。それが海賊です。ビビが...仲間が涙を流していた。何を相手どろうとも、戦う理由には十分過ぎます。」

 

「ははは、なるほど。覚えておこう。」

 

「ところで、君は自分のことについてしっかりと理解しているのか?その陽の光に蝕まれる肌や、君の生まれについてを。」

 

あぁ、そう言えばコブラ王はなにか知ってる風だったな。ちょうど良いから聞いてみよ。

 

「実は...僕は幼い頃に母を亡くしています。父には1度も会ったことが無く。恐らく生きている、というかこの人だろうという心当たりは有るのですが。今はまだ会うことが出来ないのです。」

 

だからほとんど、自分のことを何も知らない。この身体のことを、何も。

 

「そう、か。私も詳しくは無いのだがな。昔、文献を目にしたことがある。」

 

''夜の種族。異怪の血流れるその身体は、陽の光が毒となり皮膚を焦がし焼き尽くす。月の光に照らされて、夜の風が息吹くことでまた蘇る。夜の種族の長たるは、一眼一足の姿なり。その瞳、(よい)紫宝(しほう)なり。''

 

「不躾ながら、眼帯の下に隠された瞳を見せて貰った。目を奪われるとは、あの事を言うのだろうな。これこそが宵の紫宝なのだと確信したよ。」

 

僕が寝てる間にまぶたペローンってしたって事?それ、なかなか恥ずかしいぞ。あと普通に怖い。絶対に許さんぞ!!!(宇宙の帝王風)僕だって同じことしてやるからな!!!?

 

「何が言いたいか、わかるかね。」

 

「瞳が綺麗だった?」

 

「うむ、それは勿論そうなのだが、そういうことでは無く。」

 

なんじゃい。

 

「文献が正しければ、宵の紫宝を有している君こそが一族の長という事になる。」

 

せやな。

 

「夜の種族の長であるならば、宵の紫宝をもっており、そして...一眼一足である、ということなのだ。」

 

「僕、足はちゃんとあります。2本。」

 

「あぁ、知っている。つまりだ、君は将来、片足を失う可能性があるという事を伝えたかったんだよ。」

 

...あー、逆説的に?コペルニクス的転回みたいな?ニワトリが先か卵が先か理論と似た感じね。夜の種族の長だから一眼一足で紫の眼を持っているという可能性もあれば、一眼一足で紫の眼を持っている者が夜の種族の長になるという可能性もある、と。ふーん、って感じ。

 

「そうなんですね。」

 

「...そ、それだけか?もっとこう、無いのか?足を失ってしまうかもしれんのだぞ?あぁいや、怖がらせたい訳では無いのだ。ただ、もっと注意をだな?」

 

いやぁ、うん。コブラ王の言いたいことは、多分めっちゃ伝わってる。心配してくれてるってことでしょ、要するに。

 

ありがたいねぇ、海賊に向かって心配してくれるなんて。普通これだけクロコダイルみたいなやつに自国をボロボロにされたら、海賊=完全悪って考えを少なからず持ちそうなんじゃが。そしてその考えは全然間違っていない。完全悪を勧善懲悪!みたいな。

 

「お心遣い痛み入ります、コブラ王。御心配をお掛けしているようで申し訳ございません。ですが、大丈夫ですよ。僕こう見えて、ここらの海ではそこそこ強いので。」

 

「それも知っておる。」

 

いやぁ照れる。ま、誰かに奪われるようなことにはならないと思う。(フラグか?)それにもし失ったとしても、新たな足を造れば良い。

 

「この広い海には、例え義足でも達人級の蹴りを放つ老人が居たりします。にしし、信じられますか?65歳のおじいちゃんがですよ?」

 

「義肢で生活している人々が大勢居る島もあったりします。それでも彼らは挫けることなく、前を向いて生きています。その島のみかんは最高です。」

 

「...はは、それは凄いな。」

 

ほんっとうに凄い爺さんと、心の強さを持って助け合える優しい島民達だ。尊敬してる。爺さんは僕の料理のお師匠でもある。

 

「例え隻眼であろうとも、例え一足になろうとも。僕が僕であることに変わりはありません。麦わらの一味の一員として、僕はルフィを王にします。だから、大丈夫です。」

 

「...なるほど。あいわかった、これ以上は野暮というものだな。さて、良い時間だ。私はそろそろ自室に戻るが、ソラくんはどうする?」

 

「あ、僕ちょっと、外に出てきます。」

 

「なに、今からか?もう少しくらい休んだ方が良い。部屋まで送っていくぞ?」

 

うむ、ぶっちゃけ帰り道はマジでわからんが。ちょっと野暮用が〜。

 

「少し夜の空気を吸いたくて。この雨を、近くで感じていたいのです。」

 

「そうか、分かった。ではな。」

 

「はい、おやすみなさい。」

 

「あぁ、おやすみ。」

 

 

&&&

 

 

雨が降っている。傘に雨粒が落ちてくる度に、パラパラと軽やかにメロディを奏でる。瞳を閉じて息を吸えば、胸いっぱいに雨の匂いが染み渡る。

 

「良い夜だと、そう思いませんか?」

 

「...。」

 

あらら、睨まれちゃってる。怖いなぁ、悪かったよ。そんな怒るなって、血圧上がっちゃうぞ?

 

「すみません。」

 

「そりゃ何についての謝罪だ?」

 

「んー、色々です。お店で正体を隠してたこととか、貴方を利用したこととか。あと、お肉食べちゃったことも。」

 

「...ッチ!肉はやるっつっただろうが。」

 

あれ、そうだったっけ。あーうん、言われたな。まぁあれ結局イガラムさんが食べたんだけど。僕お腹いっぱいだったからさ。せっかくくれたのにすまんな、スモやん。

 

「スモーカーさん。ありがとうございました。この国のために、戦ってくれて。ルフィを助けてくれて。僕を、助けてくれて。」

 

「海軍に頭下げる海賊が何処にいやがる。」

 

感謝の気持ちを伝えてるだけだよ。

 

「テメェの話を聞いてなけりゃ、海軍の対応は遅れ、反乱軍に潜入していたBWの野郎どもに良いように踊らされていた。オフィサー・エージェントを人知れず倒したのも、クロコダイルにトドメさしたのも。全てお前ら麦わらの一味だ。」

 

「この国を救ったのは、俺たち海軍じゃねぇ。テメェら海賊だ。」

 

なるほど、元凶であるクロコダイルを2人がかりで倒したとは言え、それでも海軍がアラバスタを救ったとは言い難い、と。

 

真面目に生真面目かいぐんスモやん!だなぁ。ゾロに名前が似てるどこかのキツネとは大違いだぜ!!

 

「俺は今回お前らを捕えねぇ。それが俺なりのケジメの付け方だ。」

 

「それはありがたいですね。でもその言い方だと、僕たち麦わらの一味はいつでも捕えることが出来ると言われているみたいで心外です。」

 

「そう言ってるんだ。」

 

うへへ、こわいこわい。でもそれはどうだろうなー?みんな今回の1件でまた強くなったし。敵は大勢、生きるか死ぬかの世界に居るんだから、強くなる以外に生き残る道はないからね。

 

「では、次に会う時は敵同士ということですか。」

 

「当然だ。国を救ったとは言え、海賊はどこまで行っても海賊なんだ。」

 

「なるほど、ではその時は貴方の正義を貫いてください。僕は僕のやりたいようにやります。そうやってお互いが対立することになったなら、その時は...。」

 

「「ぶっ潰す。」」

 

いいねぇ、やっぱり好きだな。スモーカー大佐。

 

「あばよ。せいぜい逃げ続けろ。」

 

「良い夜を、スモーカーさん。」

 

約束は果たされそうにないなぁ。ちょっぴり楽しみにしてたのに、ざんねーん。

 

 

&&&

 

 

「いやぁ〜〜〜っ!よっく寝たァーー!!!あっ!?帽子は!?腹減った!!朝飯と帽子は!!?」

 

「...ん。朝からうるさい、まだ寝させて。」

 

「あぁ〜!!ルフィとソラが起きたぁ!!」

 

起きてない。眠い。明るい。眩しい。うるさい。

 

「起きて早々うるせぇなテメェは。朝じゃねぇ、今は夕方だ。ソラ、お前はもう起きろ。充分寝ただろうが。ったく、放っとくと月が出るまで寝やがって。吸血鬼かっての。」

 

似たようなもんだよ。夜に生きるって点では。詳しくは知らないけど。

 

「帽子はそこにあるぞ、ルフィ。兵士が見つけといてくれたんだ。ソラ、おめェ頑張ったらしいなぁ!すげぇじゃねぇか、クロコダイルと一騎打ちなんてよぉ!さすが俺の弟子だ、わはは!!」

 

眠い...弟子?なんの弟子。デレシっ!あぁ〜、無意識に手が伸びていく。

 

「うわっ!?むぎゅう...。」

 

「ルフィさん、ソラさん!よかった、元気になって。」

 

「元気?おれはずっと元気だぞ!」

 

「おい、寝ぼけんなソラ。離してやれ、チョッパーが苦しそうだ。」

 

チョッパー。あーこれチョッパーだったんだ。ふわふわモコモコむぎゅむぎゅ可愛い。あったかい。すぅーーーーっ。はぁーーーーーあ。

 

「うわぁぁああああ!!やめろぉぉおおお吸うなぁー!!!」

 

「「「やめい!」」」

 

あぁ〜チョッパーがァー。僕の癒しが。

 

「んな事よりソラ、てめぇ俺に一言も無く勝手に囮なんぞやりやがって。んビビちゅわんの気ぃ引こうったってそうはいかねぇぞ!?」

 

はにゃ。

 

「あはは...、」

 

王女を困らせるなよ。

 

「んっ...ん〜!ふぁああ。( ¯꒳¯ )ᐝzzzz。」

 

「「「いや起きろよ!!」」」

 

うるさいなぁ。寝起きに総ツッコミ止めやぁ?

 

「一言も無く...女の子侍らせてお酒飲んで潰れてた癖に良く言うね、サンジ。ウイスキーピークで役に立ったことあったっけ?あったら教えて欲しいな、僕知らないから。」

 

「ギクッ。てっ、てめぇだって似たようなもんだろうが!?苦手なくせに酒飲んでたじゃねぇか!」

 

「僕が飲んでたのお茶だから。それに、皆が寝てる間にゾロと一緒にBW社員を100人近く沈めてる。そうだよね、ゾロ。」

 

文句言われる筋合いは無ぇな!お??(煽り)

 

「...あぁ。(ニヤり)どこぞのアホコックは酔っ払って爆睡してやがったぜ。わざわざ船長が船まで運んだんだ。」

 

「ァア!?足掴んで引き摺ってきたの間違いだろうが!たかが雑魚100人斬ったぐれぇで何をえらっそうに。数稼げて嬉しいのか?マリモくん。こちとらMr.2を蹴り倒してんだよ。一緒にすんじゃねぇ。」

 

「俺ァMr.1を斬った。奴は全身が鉄刃野郎だった。」

 

「あああああああ''!?!?全身鉄がなんだコラ!?こちとら全身オカマだ!!!」

 

「関係ねぇだろオカマがどうした!!!?」

 

「君らどんぐりの背比べって知ってる?僕なんて七武海でロギアだし。」

 

「「負けてんじゃねぇか!!」」

 

ぷっちーーん。ほー?ふぅん、そういうこと言うんだ、へぇー?

 

ゴゴゴゴゴゴゴゴっ...。

 

「「表出ろやゴラァ!」」

「2人同時にかかってきなよ潰してあげるから。」

 

あ、チョッパーが涙目で震えてる。かわいい。

 

「止めんかバカどもっ!!」

 

「ぶっ!?」 「おっと。」 「あぁっ!♡」

 

「なっはっは、お前らばかだなー。」

 

ルフィにだけは言われたくない。つーか、怪我人にも容赦なしに殴りかかってきたぞ、ナミ。やべぇよ。避けたけど。

 

あ、テラコッタさんだ。やっはろー。昨日ちょっとだけ果物もらったわ、ごめんね。あれ、また果物がたくさん。あ、消えた。草。

 

「ソラさん。」

 

「ん。」

 

どしたん、ビビ。

 

「改めて、お礼を言わせて。この国を、父を、私を救ってくれて...ありがとう。」

 

おぉ〜綺麗なお辞儀。美しい所作だな。さすがは王女様。

 

「うん。どういたしまして。やっぱり親子だね、言動がそっくり。」

 

「お父様ともお話を?いつのまに...。」

 

「僕、昨日の夜中に1度起きてる。宮殿を探検してたら、コブラ王に会ったんだ。食堂で一緒にお茶した時に同じことを言われた。」

 

「そうだったのね。...ねぇ、ソラさん、後で私とも...!」

 

「皆様、お食事の準備が整いましてございます。」

 

お、食事の準備が出来たって。行こ行こ。

 

「今、何か言いかけた?」

 

「いっ、いいえ!なにも!行きましょ!」

 

ん?うん。

 

 

&&&

 

 

もりもりガシガシガヤガヤパクパクムシャムシャ。

 

「ん!んんー、ん、んん。んん!」

 

すんごい食べっぷりだな。皆取られないように必死になってる。あ、ウソップのタバスコトラップに引っかかった。まだまだだね。(庭球王子)見聞色を鍛えないからそうなるんだ。油断して歌を聞かれた僕が言えたことじゃないけど。

 

ちなみに僕の席はルフィと結構離れてるから、あんまり被害は無い。というか、僕のお皿からは取らせない。この果物は僕のものだ!!誰にも渡さん!!!

 

「チョッパー、これ美味しいよ。食べる?(誰にも渡さんとは。)」

 

ばぁ(あぁ)はびばぼう(ありがとう)ぼら(ソラ)!」

 

はい可愛い。(確定)頬袋いっぱいに詰めて、リスなの?そんなに詰めてるのにまだ食べようとしてる。あんまり詰め込みすぎると気道詰まって死んじゃうぞ?ほら言わんこっちゃない。お水はどこだ〜。

 

はは、みーんな笑顔。楽しそう。こんなに楽しそうな笑顔が見れたんなら、やっぱり手貸して良かったなぁ。

 

「ソラ様、こちらを。」

 

「ん?何これ...お肉?」

 

「左様でございます。ティアティマ牛のステーキでございます。アラバスタでは滅多にお目にかかれない高級食材となっております。誠に勝手ながら、燻製にしてシャリアピンステーキ風に調理させて頂きました。ソラ様へお出しするよう仰せつかっております。」

 

「僕に?...ふーん。ありがとう、頂きます。」

 

わざわざ届けてくれるなんて、律儀だねぇ。あんなこと言った割に、案外嫌われてないのかな?にしし、ありがたく頂いとこ。あー、ん。んむむむむふふ、うんまぃ。

 

「はいチョッパー、これも美味しいよ。ビビも一緒に食べない?」

 

「え?でも、それソラさんが貰ったものでしょう?誰から貰ったのか気になるけど。」

 

それは秘密。言ったらめんどくさいことになりそうだから。

 

「良いんだよ、ひとりで食べるより、誰かと一緒に食べたい。サンジ、これ作れる?」

 

「ん?どれどれ...へぇ、こりゃ美味いな。」

 

「だよね。でも味付け自体は割とシンプルだから、特別な調理法とかじゃなさそう。」

 

「だな。材料と、ソースのレシピがありゃいけるだろ。ティアティマ牛って言ってたな。レシピは後で聞きに行こう。」

 

オッケー。

 

「おい、貰うぞ。」

 

あ。ゾロも食べたかったんだ。僕ももう1切れ貰っとこ。

 

「ばうむぐ!」

 

ありゃりゃ、ルフィ...。そんなにガチで取りに来るなよ。流石に避けたら危ないわ。あーあ、ビビの分が。あ、ここにあるじゃん。

 

「はい、ビビ。」

 

「へっ!?」

 

え?いや、だって一緒に食べようって言ったのにあげられなかったから。流石に自分から誘っておいて無くなりましたじゃカッコつかないだろ。

 

「ほら、早く早く。ソース垂れちゃう。あーん。」

 

「...っ!!あっ、あーん!パクっ。」

 

うんうん、美味いよねー。分かる分かる。

 

なんかめっちゃ対角線上から視線を感じるぞ。そっちを見なくてもわかる。どこぞの王様だ。無視無視、サンジと違って不純な下心なんて持ってまーせん。

 

王様から目逸らしてたらナミとばっちり目が合った。ため息つかれた!?なんで!!!欲しかったのか?そんなこともあろうかと、ちゃんとサンジにもあげたから。船で作って貰えるよ、モーマンタイ!とか思ってサムズアップしたらまたため息つかれた。なんなん!?!?

 

うわっ、ちょっと!?急にテーブルの上で踊り出すなし!お前ら1枚でも皿割ったら説教コースってこと忘れんなよ、まじで。




芋ジャージチョロっと出てきました。
あれ、作者の代弁者です。(笑)

スモーカー好きだからちょくちょく絡ませたーい。

19歳つよつよトリオ、おバカやったらいつまでも
終わらなさそう(笑)
ナミが首輪繋いでくれてます。

おや、ビビの様子が...?


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

お茶会での決意

最後まで迷いました。今回の話は色んなIFがあり、
そのどれもを選んでいた可能性がありました。


カポーーーーン。

 

「ァァああああああ''あ''あ''...。」

 

「おめェはおっさんかよ。なっ!?おい、その刀傷...!」

 

「えっ!?ソラ、怪我してるのか?......!?!?!?ぎゃぁああああああ!!!?医者ァあああああ!!!おれだあああああ!!!」

 

ん?あぁ、これゾロには見せたこと無かったっけか。よしよし、チョッパーは少し落ち着こ。目んたま飛び出てるぞ。なでりこなでりこ。

 

「バラティエで鷹の目にやられた。ゾロとオソロい。」

 

「はぁ。何が揃いだ...ったく。あのコックは知ってんのか。つか、やっぱお前でも鷹の目にゃ敵わねぇんだな。」

 

良いなぁ、ゾロ。チョッパーにシャンプーしてる。たわし痛くない?あ、気持ちいいんだ。良かったねぇ。泡立ち最高じゃんか、お風呂上がりに抱っこさせて?

 

「ん、サンジは知ってる。それにあの時は純粋な剣術勝負だった。普通にボロ負け。何でもありの勝負で戦闘条件が揃ってるなら、もっと良い線いく。」

 

「はーん...ま、夜じゃなかったしな。」

 

それな。負け惜しみとかじゃ無くて。ちがうし!!ぜんっぜん!!これっっっぽっちも本気じゃなかったし!!!究極体の僕なら鷹の目なんて...嘘ですごめんなさい。謝るからもう一生関わらないでください。

 

「夜だとどうなるんだ??」

 

「テンションが上がる。」 「強くなる。」

 

「へー!スゲーなぁー!おれも暑いのダメだから、ソラと一緒だ!」

 

ばちこーーーんっ。っとくらぁ。ハートに来たぜぇ、今のスマイルは。

 

「うん、チョッパーともお揃い。にしし。」

 

ホンワカ世界を築いていたら、サンジのあほ発言が聞こえてきた。覗こうとすんなし。

 

「あの壁の向こうだ!」

 

「国王コノヤロー!!!」

 

おいちょっと待てあんたの娘も一緒に入ってんだぞホントに良いのか。

 

「おめぇも行こうぜ、ソラ!そんなナリしてても男だもんなぁ。見たいだろ??」

 

ゲス顔で近づいてくるウソップ。狙撃されちまえイカ野郎。このゲソ野郎っ!

 

「遠慮しとく。いってら。」

 

「なんでぇ、ノリ悪ぃな。」

 

ブーブー言うな。こんな大浴場で身体を休められるなんて中々ない機会なんだから、堪能したいんだよ。あ、チョッパー連れてかれた。

 

「おい止めろよ。おめぇが止めねぇと歯止め効かねぇぞあいつら。」

 

知らんがな。別に良いんじゃない?ナミもビビも強かだから、アホどもなんて簡単に手玉に取るでしょ。

 

「「「ぐはぁっ!?♡」」」

 

「何やってんだ...。」

 

今夜は良い夢見れそうだね、あいつら。

 

「...、ありがとう。」

 

「「「エロオヤジ。」」」

 

「そっちじゃないわっ!!!」

 

草。一国の王に向かって。コブラ王もツッコミスキル高いな。ウソップといい勝負か?

 

おやおや、また頭下げてるよ。そんなに何度も海賊相手に下げれるもんかねぇ。

 

「大事件ですぞ、コブラ様。王が人に頭を下げるなどと。確かに大恩ある身ではございますが!」

 

「イガラムよ。権威とは衣の上から着るものだ。裸の王など居るものか。私は1人の父として、アラバスタに住まう1人の民として、心より君たちに礼を言いたい。」

 

「どうも、ありがとう。」

 

うーむ、流石だ。こういう所、尊敬するよな。

 

まぁ、裸の王様って童話はあるんじゃが。アンデルセンだっけ。アンデルセンの作品って、皮肉的だったり悲劇的なストーリーが多い気がする。マッチ売りの少女とか人魚姫とか。趣味なんかな。超脱線したったわ、めんごめんご。

 

「...私が間違っておりましたな。国を救って頂いたこと、コブラ様とビビ様をお守り頂いたこと。一介の臣下である私さえ、ここアラバスタに送り届けて頂いたこと。心より、御礼申し上げます。」

 

「ししし!良いよ!」

 

手を振って返礼。どいたまー。このお風呂に入れることが幸せすぎてもう何でも良いや。宴も開いて貰ったし、こうしてお風呂も入らせて貰えた。充分お返しは貰ってるよ。

 

 

&&&

 

 

こんこん。

 

「はい、どなた?」

 

「ソラだよ。」

 

「えっ!?ソラさんっ!?」

 

お、開いた。おーす、ビビ。

 

「なんで食堂に。あ、食べ足りなかった?厨房に行けば何かあると思うわ、こっちよ。」

 

うんうん、僕そんな食いしん坊キャラに見えてたかな。どっちかと言うと少食なんじゃが。ま、いいや。

 

「今夜、ここを発つだろうから。挨拶ついでにさっきの約束を果たそうと思って。」

 

「やっぱりもう行っちゃうのね、ナミさんも言ってた。でも、約束って?」

 

「後でビビともお茶しようってやつ。」

 

「きっ、聞こえてたの!?」

 

聞こえてたな。ぶっちゃけあんまり時間ないから、また簡単なものになると思うけど。それでも良いなら、是非。

 

「っうん!」

 

いい笑顔。よーし、少々お待ちを。

 

さて厨房を拝借。とりあえずお茶したいってことだから、ドリンクと...せっかくだから何かスイーツでも作ろう。ビビに披露したこと無かったもんなー。僕のパティシエスキルを堪能するが良い。まぁシンプルな速攻で出来るやつだけど。

 

薄力粉、ベーキングパウダー、グラニュー糖をバターと牛乳で混ぜ合わせ固める。今回はプレーンとドライフルーツの2種にしよう。厚みを均等にし、人形型、魚型、星型に悪魔の実型など、好きな形に切り分け表面にさっとバターを塗り込む。

 

そしてオーブンへ。

 

と言いたいところだが、今回は急ぎだ。ふはははは。左腕(チート)を使おう。ギラギラのぉ...オーブン!!みたいな?

 

生地と同時に水も温めて適温に。ドリンクはピーチティをご用意しました。(急に)

 

さて、サクサクふっくらスコーンの出来上がり。バターとミルクの良い匂い。素晴らしいな、この時短術。経過時間、なんと3分ジャスト。ラーメンかよ。皆も時間が無い時は左腕で燃やそう!(無理)

 

2人分だけお皿に移し、後は保温して置いておく。食べるでしょ。

 

「お待たせいたしました、食後のドリンクにピーチティをどうぞ。こちらのスコーンとご一緒にお召し上がりください、お嬢様。」

 

「まぁ、ふふふ。とても美味しそう。ソラさんも一緒に食べましょう!」

 

おけー。

 

「わぁっ、おいしい!どうやってこんなに短時間で作ったの?」

 

「もぐもぐ。僕の悪魔の実、炎系。料理とかにも使えちゃう。」

 

「能力を使ったの?便利ね。」

 

「海に嫌われる覚悟があるのなら、食べてみるのも一興だと思う。海賊としてこの弱点は致命的だけどね。どんな能力なのかも、調べてみないと分からないし。」

 

まぁ僕の場合は海プラス日光もだからなー。ぶっちゃけ海に嫌われる程度はそんなにでかいデメリットとは思えない。どっちか弱点消せるなら、僕は迷わず日光を消す。まじで。

 

おや、どうしたんやろ。急に表情が暗くなったぞ。大丈夫かー?

 

「本当に、もう行ってしまうの?」

 

「そだね。」

 

だってもうここに居る理由が無いから。クロコダイルとBWを潰し、国を救いビビを助けた。当初の目的は達成してる。沢山感謝されたし、充分だろ。

 

「僕らは海賊だ。本来なら、王族とか国なんかに関わる立場じゃないし、関わるべきじゃないと思ってる。今回が特別ってだけ。仲間の敵が、たまたま国を盗ろうとしていた。だから潰した。結果、国を救った。それだけだよ。」

 

「...!そう、よね。」

 

心の準備が必要なんだろうなぁ。お別れするにしたって急すぎたと思うのは分かる。でも、そろそろ海軍が動いてる頃だろう。スモーカーは捕まえないって言ってたけど、ここは本来スモーカーの担当区域じゃない筈だから。ローグタウンの猟犬だもんなぁ。わんわんっ。

 

「ねぇ、ソラさん。ソラさんに、夢はある?」

 

なんか聞いたフレーズだな。

 

「ん。それ、時々聞かれる。毎回迷うんだ。自分の夢って言って良いのか分からない...けど、今はそうだね。」

 

ルフィ(・・・)を海賊王にする。それが一番しっくりくる、僕の夢かなぁ。あ、あと父親(・・)に会うこと。これは夢じゃなくて目的だけど。」

 

「そう...そうなのね。」

 

少し俯き、何かを考えているビビ。

 

「ビビの夢は?」

 

「私の、夢は。...うん、決めた。私、ここに残ることにする!アラバスタに残って、立派な王女をやり遂げてみせるわ!!それを私の夢にするの!!」

 

...ん?ここに残る?え、あ、お?あー、そういう感じ?あ、なるほど。海賊になるかこのままで居るかの2択で迷ってたってこと??

 

おっほーん。お別れ言えないかもって不安に思ってた訳じゃねぇんかい。

 

そんなにルフィたちを気に入ってくれたのか。...やべぇ、めちゃくちゃ嬉しいかも。そっかぁ、あんなに敵対して警戒してたビビが。

 

んでも結局残ると。まぁそりゃそうだ。一般人ならどっちを選択しても良いけど、王族となれば話は全然変わってくる。言動と、一挙手一投足に対する責任の重みが違うのだ。

 

「だから、これは私の短い海賊人生最後のワガママ!ソラさん、私のことを、ずっとずっと仲間として(・・・・・)...思っていてくれる?」

 

なんか外野の気配がうるさいな。過保護かよあんたら。まぁいいや。

 

ペンないかな。あ、あったわ。いや何であるねん。ここ食堂ちゃうんか。まーいいや。キュッキュッっとくらぁ。

 

「はい、これ。仲間の証なんでしょ?左腕の‪✕‬印。」

 

「!!」

 

えへへー。これで僕ともズッ友(なかま)だ。いえーい。

 

「ごめんね。思い出にあげられるものが何かひとつでもあれば良かったんだけど。今持ってるの、ペンダントと眼帯くらいしか無いから。」

 

ペンダントはあげられないしなぁ。かと言って眼帯って...さすがに。おいおい、泣くなよごめんて。いくら見聞色使えてもこんな先の未来までは見通せないぜ。堪忍して。うわ、扉の外から殺気!?怒気!?こわわわ。

 

「ぐすっ。...じゃあ、それ。眼帯、ちょうだい。」

 

「え、コレで良いの?ほんとに?」

 

「えぇ、それが良いの。」

 

ほぁー、変わってんなぁ。まぁ良いけど。はい。

 

「ありがとう...!うふふ、どうかしら?海賊みたい?似合ってる?」

 

うん、すごく似合ってる。んでも。

 

「海賊みたい...?ビビは海賊だよ?だって、さっき言ってた。短い海賊人生って。短くってもビビは麦わらの一味で、ルフィが船長だ。ルフィにちゃんと挨拶するまでは、ビビは海賊。それが海賊として筋を通すってこと。」

 

「それに、例え船を降りて離れ離れになったとしても、ずっと仲間であることに変わりはないよ。その為の‪この印。でしょ?」

 

「...っ、。」

 

おおぉ、めっちゃ頷いてる。また泣いてるのか、よしよし。いい加減泣き止め〜、目が腫れちゃうぜ。そろそろ過保護パッパの気配がやばたにえん。娘を泣かせやがって〜って感じ。ごめんて。泣かせたい訳じゃないねん、僕も。

 

お茶会を終了し食器を洗い皆の元へ戻ると、そろそろ此処を発つべきだという意見がチラホラ。だろうね、さんせー。

 

「よし、んじゃもう1回アラバスタ料理食ったら行こう!」

 

いや今すぐだろ。もう海軍動いてるんだって。手遅れ感あるけど。

 

「あれ?ソラ、あんた眼帯は?」

 

「ビビにあげた。欲しいって。」

 

「へぇ、そう。そういう選択をしたのね、あの子。」

 

「うん。」

 

僕らとは離れ離れになっちゃうな。ま、それもビビの選択だから。僕らはビビの意見を尊重しなきゃならない。

 

「...はぁ。あんたって何も分かってないわね。まぁ良いわ。それも含めて、あの子の決断でしょうから。」

 

「そういやソラ、おめぇの眼って紫色なんだな!珍しいよな〜。」

 

おや、目閉じてるのに。ウソップも見ちゃったのか?てっきりコブラ王とドクターだけだと思ってたんだが。

 

「おれも見たぞ!綺麗だった!」

 

おやおや、チョッパーも。ってことはナミも?

 

「えぇ、見たわ。ついでにあんたが普段見せてる方が義眼だってことも知った。普段どうやって生活してんのか謎だわ。」

 

おぉ〜、んじゃもうバレちゃってる訳か。

 

「ん?そうなのか?」

 

あぁ、僕より遅く起きたルフィは知らないのね。そりゃそうだな。まぁ機会があれば見せたげる。

 

「そっか〜。ま、いいや!」

 

それな。

 

意外とみんな普通の反応だな。もっとグイグイ来るかと思った。気ぃつかってんのか?

 

 

&&&

 

 

超カルガモ部隊は超早い。砂漠とは思えない程の走りを見せている。初めて乗せてもらった。フワフワしてる。すげぇ。フワフワしたいならどうぞ〜♪ってか。はい喜んでぇ〜!!!

 

「ナミ、どうしたんだ?体調が悪いのか?」

 

僕の前に座ってるチョッパー。今、僕は、禁断の、ダブルモフモフを堪能している。くぅー、悪魔的だァ〜!!!(賭博)

 

「ナミ、肉いるか?1個だけだぞ?」

 

ルフィも心配してる。珍しく自分の肉をあげようもするなんて。天変地異の前触れか。

 

皆も憐憫の眼差しを向けて...いや、ゾロはそんなにだけど。

 

まぁ雰囲気的にそんなに重要じゃないっぽいから、心配無用だと思うがな。

 

「私...やっぱり諦める。ビビの為だもんね。」

 

「10億ベリー。」

 

「「「当たり前だテメェ!!金のことかァァ!!?」」」

 

いや草。そういやそんな話だったな。すっかり忘れてたわ。待ってウソップ落ちたんだけど。顔から逝ったわ。鼻死んだんじゃね。アーロン並に頑丈だったら突き刺さるけど。

 

「ほっときなさいよ、バカね。」

 

「「おめぇの所為だろうが!!」」

 

「そんなナミさんも素敵だァ〜♡」

 

カオスやな。やっぱ個性的すぎるわ、この一味。

 

さて、そろそろ見えてきたな。

 

港に到着し、メリーとラーキレス号の無事を確認できてホッとため息。そして船の上にいるオカマが1人。恐らくその部下であろう海賊たちが岩場の影に隠れてる。

 

「ん待っってたわよぅ!!おしさしぶりねぃ!!」

 

おひさしぶり、だ。僕は初めましてだけどな。こいつもキャラ濃いよぉぉ。電話があったから知ってたけど。顔も濃いとは思わんかった。

 

「さ、荷物を降ろそう。」

 

「4時間かー、案外あっという間だったなぁ。」

 

ありがとう、超カルガモ部隊。わわわ、うははは頭擦り付けてきた。可愛いのぅ、可愛いのぅ〜。モフモフに囲まれた〜!!シヤワセ...シヤワセだよぅ。やっぱり皆顎がええんか?ええんやろ??んん〜?うへへへへへ。

 

「優しく撫でてくれるからソラのこと好きって皆言ってるぞ!」

 

うれしい。僕も大好き。チョッパーも好き。みんな好き。平和な世界だ。

 

じゃあね、名残惜しいけど。本当に本当に名残惜しいけど。元気でね。ばいばい。

 

「なぁーーーーに感傷に浸ってんのよぅ!!?あちしそういうのぉ...好きぃ〜〜!!!」

 

なんかヤバい奴居る。こわわ、近寄らんとこ。たっけてサンジ〜。あ、これ運べば良いの?オッケー。

 

「イィい!?あちしがこの船に乗ってなかったら、この船はドゥーなってたと思う!?」

 

「海軍に奪われてたかもね。」

 

せやな、全然有り得た未来だ。ラーキレス号は僕以外使えない仕様だけど、割とオーバーテクだからなぁ。分解されてエンジン部とかの構造パクられてたらと思うと。まぁ感謝してやらんでもない。(何様)

 

「今この島がドゥー言う状況か分かる!?完全包囲よ!!逃げらんないのよぅ!!かもじゃなくて、確実に海軍にやられてたわよぅ!!」

 

「じゃあお前ぇ、海軍からメリーを守ってくれてたのか!なんでだ?」

 

「友達、だからよぅ...!」

 

よくそんなに意のままに涙を流せるな。素直に感心するわ。

 

おーおー、純粋3人組がドツボにハマってら。騙されないか心配だなぁ。つかそもそも僕はコイツとは初対面なんじゃが。どういう知り合い?敵だったんじゃないの?

 

「「「ジョーダンじゃなーいわよぅ〜!」」」

 

僕、どっちかと言うと静かな夜が好きなんだよな。まぁ楽しそうだから良いんだけど。

 

あ、荷物はこれで最後だよ。忘れ物なーし。

 

「つまり、海軍の包囲網を抜けられねぇから味方を増やそうと考えた訳だ。」

 

それな。

 

「僕その人のこと知らないんだけど。味方を増やそうと考えてるのか、身代わりとして海軍を押し付けようとしてるのか分かんない。」

 

「ギクゥッ!?!?あ、初めまして。あちしMr.2 ボン・クレー。よろしくぅー?」

 

「誤魔化そうとしてる?ソラです、どうぞよしなに。」

 

あ、握手は要らないや。敵か味方か分かんないし。何ショック受けてんの?当たり前でしょ。

 

で、何?はーん、共同戦線って訳。後ろから刺されなきゃ良いけどね。

 

「「「よろしくお願いしまーす。」」」

 

「居たのかよ三下共っ!!!」

 

うん、居た。ゾロの見聞色はまだ先かな〜?まだまだやな!!(煽り)

 




こーの鈍感がァ〜っ。
まぁ仕方ない。主人公はぶっちゃけそんなに
ビビと一緒にいた時間が無かった...。
気づかないのも...無理は...っ。
でもどっちの話も面白そうなんですよね。
ビビと一緒に航海ルートも最高。

ビビから夢を聞かれた時に、一言でもビビと一緒に
航海出来たら楽しそう、的なことを言っていたら
それが決め手となっていたことでしょう。
でも、出てきた名前はルフィと父親。
ビビは自分には脈が無いと判断したのかも...。
でも、この決断を微塵も後悔していない自分もいて、
複雑ながら前を向いていこうと強く思うビビなのでした。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

いつの日か

現在、海の上。軍艦に囲まれておりまする。東西南北にそれぞれ2隻ずつ配備されているな。軍艦までの距離は数百メートル。砲弾で集中砲火って魂胆か。さーてと、どうするか。

 

ドドドドドドンっっ!!!

 

おっとやばいな。とりあえず斬るしかねぇけど、...!?

 

「なっ、なんだぁこの弾はぁ!?」

 

「槍か!?槍を撃ってきやがった!!」

 

やべ、何本か斬ったけど船底にぶっ刺さってる。ひぃーふぅーみーよー、4本か。1回の攻撃でこれかよ。四方から攻められるのはちょっと洒落にならんぞ。しかもメリーばっかり狙われてるし。なんでやぁっ!!?なんでメリーはんを見殺しにしたんやっ!!(トゲオウ風)

 

ん、でもよくよく考えてみると、あんだけ大量に撃ってきた割に4本だけ?僕とゾロが弾いたの含めると、船体に被害を与える可能性があったのは10本くらい?

 

ドドドドドドドドンっ!!!

 

「まずいっ!!!」

 

「また撃ってきたぁ!!」

 

「くっそぉっ!!!砲弾で来いっ!!跳ね返してやるのにぃー!!」

 

あ、無理。これは全部ぶっ刺さるわ。なるほど、1回目は調整してたって訳か。っクソ、しゃーないな。僕が居るところで使いたくねぇんだが。1回だけ、1回だけなら何とか。が、ま、んーー!!(アホ牛風)

 

はい、お巫山戯はこんくらいにしとこ。普通に時間ねぇしメリーにこれ以上の風穴を開けたくない。

 

左腕を前に突き出す。

 

「''神技(じんぎ) 半球黄陽結界(アグニスフィア)・''神技(じんぎ) 炎鎧の戦女神(シヴァルキュリア・シュバリエ)''。」

 

ブォオオオオンっ!

 

と音を立てながら、船の周りに半透明のオレンジ色の結界が展開される。

 

「「「!?」」」

 

降ってきた槍が結界に触れた瞬間、炎の戦女神たちが現れ、盾で防ぎ剣で弾き飛ばす。1本たりともメリーを貫かせない。全方位を守る絶対防御だ。死角は無い。

 

接触する寸前の一瞬だけ展開してすぐに切ったけどな!!

 

「「「すっ、すんげぇ〜!!!」」」

 

「今のって、ソラ、あんたが...?っ!!ちょっと、大丈夫なの!?」

 

「ぐっぅぅううううっ...あ、つ、、いっ。っはぁ、はぁっ。」

 

ナミに心配されてるけど、今はそれどころじゃねぇんだよなぁ!!!くっそあついけど!!!この1回こっきりなんだから我慢しろ!!!そんで次はどうする!?

 

「ちょーっとちょっとぅ!?なぁーんで今の止めちゃうわけー!?1本も通さなかったわよぅ!!すんごいじゃなーーい!あら?大丈夫?」

 

うるせぇよ大丈夫じゃねぇけどそんなこと言ってられねぇだろうが!!!

 

「バカ野郎がっ!てめぇソラ!!1人で無茶してんじゃねぇぞ!!こんなもん一瞬でも使いやがったらお前...っ!」

 

分かってるよっ!もうしないから!!つかこれ以上は無理!!!とりあえず今考えてるから黙っててサンジっ!!

 

まず、これは槍じゃない。檻だな。オリオリの実の能力者、海軍本部所属 ヒナ大佐か。相対するのは初めてだけど、中々えげつない戦法をとる。海上戦じゃ普通に厄介。船の基本性能が勝ってたらゴリ押しで逃げられるけど、メリーじゃ普通にやっても軍艦に遅れをとる。それでも今まで海軍から逃げてこられたのは、一重に運と、ナミの航海士としての実力が半端ないからだ。

 

じゃ、今回もナミに頼って逃げれば良いんだが、そうはいかない。ビビの別れの挨拶がまだなんだ。ルフィたちはビビが来るって信じてるけど、僕とナミは答えを知ってる。それでもここに留まる理由は、ビビの筋を通させるためだ。ぜっっったいに、逃げられない。

 

考えろ考えろ考えろ!!思考を止めるな!!!

 

今回の攻撃で防いだ檻は全部で32本。東西南北それぞれに2隻ずつ配置されてる。つまり1隻あたり4本の装射が可能。悪魔の実の能力による弾の補充ってことは、ヒナ大佐が乗ってる1隻だけはほぼ無限に射撃できるってことか。クソだりぃな!!!(激怒)

 

ぶっちゃけ船を沈めるのが1番早いんだが、スモーカーの温情ありきでこれだからなぁ。情けかけられてこっちは容赦無しってのも、負けた気がするし。よし、部下の船は沈めよう。でもヒナ大佐が乗ってる船は、僕は攻撃しない。僕はな!!他の誰かが潰すのは知らん!!!

 

「ルフィ、サンジ。砲撃を点じゃなく線で捉えて。飛んでくる切っ先を叩くんじゃない、胴部を殴るなり蹴るなりすれば弾くなり逸らすことが出来る。ルフィは東側1面を、サンジは甲板に飛んでくる檻全てを対処して!」

 

「よっしゃ、殴ったらぶっ飛ばせるって事だな!」

 

「なるほど...、まかせろ。蹴り飛ばしてやる!」

 

「あちしも甲板担当するわねーぃっ!!オカマ拳法見せてやるわごらぁっ!!!」

 

ありがてぇな、ありえないほど人手が足りないんだわ。船底ももちろん大事だが、メインマストや帆に掠りでもしたら、いざって時に逃げられねぇ。

 

「ゾロ、さっき僕が弾いた檻を使うなり、刀で斬撃を飛ばすなりして北側の船底を守るんだ。出来ないとは言わせないよ。北ってどっちかわかる?」

 

「分かるに決まってんだろうがこっちだ!!」

 

「いや違ぇよゾロ!!北はこっちだ!!?」

 

遊んでんなよマジで!!!(憤怒)

 

「ウソップは攻撃の要だよ。次の砲撃を凌いだ後、海軍が檻を装填してる隙を狙って砲弾をぶち込んで。全艦8隻、1度に撃ち込まれる檻は計32本。1隻落とせば飛んでくる檻は4本減る。2隻落とせば、この包囲網が崩れ去る!ウソップ次第で皆の負担が一気に減るんだ。狙撃手の腕の見せどころだよ!」

 

「ぉ、おおおおおおおうよ!!よぉおーし、キャプテーン・ウソップ様にまっかせろぉおー!!」

 

うん、任せた。頼りにしてるよ、そげキング。

 

「ソラ!おれは!?船底に刺さってるヤツを抜いてくるか!?」

 

「いや、刺さった檻が同時に栓の役割を果たしてるから、今のところ水漏れは少ない。抜くのは後で良い!チョッパーは舵を取るんだ。僕らが生き抜くための生命線だよ!大丈夫、ひとりじゃない。ナミ!」

 

「えぇ、分かってる!チョッパー、私が指示する方向に舵をきって!!」

 

「あぁ、分かった!!」

 

よし、とりあえずこんなもんだろ。

 

「よぉーし!やるぞお前らぁ!!」

 

「「「おう!!!」」」

 

ドドドドドドドドンっ!!!

 

「ってちょっと待てソラ!?このままじゃ、西と南の船底がぁぁああああ!!!」

 

集中しなよウソップ。

 

「問題ない。そっちは」

 

ーーー僕が対処する。

 

「''刃技(じんぎ) (あま)綴雪(つづりせ)(ごう)''。」

 

海水を巻き上げ雪と化し、その豪雪によって檻は飲み込まれ停止する。この檻の欠点は、螺旋状に回転することなく真っ直ぐに飛んでくることだ。だからこそ、素手や蹴りでの対応が可能となる。檻の胴部分に衝撃を加えてやれば、途端にその威力が激減し射線を逸らすことが出来る。

 

「「「よっしゃぁ!!!」」」

 

よし、船への被害無し。後はビビが来るまで凌ぐだけだ!あんまり時間はかからないと思うけど、出来れば急いで来て欲しいな〜なんて!!

 

「「やれ!ウソップ!!」」 「今だよウソップ。」

 

「わかってらぁ!!!必殺っ!大・鉛星っ!!!」

 

ドォォォオオオンッ!

 

うっはぁ、マジで当てたよ1発で。初めて見たけど、これすんげぇな。ありえない才能を目の前で見た。トリハダ〜。ウチの狙撃手が有能すぎる件。しかも隣の船まで巻き添えくってて草。1発の砲弾で2隻沈めるって何なの?神なの?ゴッド・ウソップなの?プレッシャーかけすぎたかなって思ったけど、やる時はやる男なんだぞ!!ウソップは!!!

 

「よっしゃあ!当たった!!」

 

「すげぇよウソップ!!」

 

「おぉよ!俺様にかかればこんなもんだ!」

 

マジですげぇ。語彙力低下するレベルで。助かるわ〜。

 

ん、Mr.2の部下がなんか言ってる。黒檻のヒナ。うん、それは知ってるわ。こんな特徴的な砲撃してくるやつがそう何人も居てたまるかい。

 

「んぬぁにぃーー!!?今すぐにトンズラこくわようあんた達!」

 

気づいてなかったんかい。あ、やばい。

 

「全方位警戒!第4波が来るっ!」

 

「「「!!!」」」

 

ドドドドドドドドンっ!!!

 

「''ゴムゴムのぉっ!銃乱打(ガトリング)''!!!」

 

「''腹肉(フランシェ)シュートぉお''!!」

 

「''白鳥アラベスク''!!」

 

「''三十六煩悩鳳(ポンドほう)''!!」

 

拳で殴り飛ばし、足技で蹴り飛ばし、斬撃で弾き、雪で覆う。

 

もう慣れたな!皆やるぅ〜!強くなってやんの。ってか割と冗談で言ったんだけど、ゾロはもう斬撃を飛ばせるようになったのね。ウイスキーピークの時は使えなかったはず。全身鉄野郎を斬ったとか言ってたけど、成長率パネェ。

 

防がれたのに同じ攻撃を繰り返すってことは、これ以上の策は無いって判断して良さそうだな。この辺が海軍本部大佐レベルって訳ね、理解理解。さて、持久戦だ〜。締まっていこうぜ〜。(緩い)

 

「ほら見なさいよーぅ!!このまま進めばいつかヤラれるわよう!!今すぐ逃げないとっ!」

 

「行きたきゃいけよ。俺たちはダメだ。約束があるからな!」

 

「やくそくぅ!?!?バカバカしいっ!宝でも探してるの!?命より大事な宝なんてないのよーぅ!!」

 

そりゃ、そうだ。形あるものの価値なんてたかが知れてる。命より優先順位が高くなることなんてそうそうない。少なくとも僕にとっては。

 

「仲間を迎えに行くんだ!」

 

「...っ!!!」

 

でも今回は、宝じゃない。絆だ。

 

「ッムゥウウウン!!!」

 

お、なんだなんだ。急にやる気出したなこいつ。どこにやる気スイッチあったん?連打しちゃるで。

 

「「「ぼっ、ボン・クレー様!?」」」

 

「ここで逃げるはオカマに非ず!!!命賭けて仲間(ダチ)を迎えに行く仲間(ダチ)を!!見捨てておめぇら、明日食うメシが美味ぇかよ!!!」

 

「2手に別れましょ!!あちしがアイツらを引き付けるっ!アンタらは3分待機した後に動きなサイ!!」

 

ほう?ちょっと、好感度上がった。身代わり押し付けるとか、背中から刺されるかもとか疑って悪かったよ、ボン・クレー。

 

マネマネの実の能力でルフィに化けたボン・クレーを追って海軍が動く。

 

「...3分経ったわ!行くわよ、皆!!」

 

りょーかい。

 

「ボンぢゃん〜〜っ!!俺たち、お前のこと!!!忘れねぇからなぁあーー!!!!」

 

でもここで終わるのは少しだけ、夢見が悪いな。

 

「餞だよ、ボン・クレー。せめてもの詫びと礼節を以て、仁義を貫く君に尽くそう。」

 

ーーー''神技(じんぎ) 白炎瀧(はくえんろう)''。

 

突き出した左腕から白い炎の塊が飛び出る。浮遊するそれは拡大し、二分され、太陽の光を受け白く輝きながら天から降り注ぐ。豪炎は壁となり、軍艦と白鳥の船を分断する。白い、白い2つの炎瀧(えんろう)によって作られる、遥か先へと続く白炎と青海の道。

 

くっそあついな...!傘もマントもあんのによぉ!!だがまぁ、これで貸し借りは無しだろ。お互いに振り返るのも無しだ。やりたいようにやる。それが海賊だから。

 

「オイめちゃくちゃ号泣しながらお前のこと見てんぞ。」

 

「どんだけ通じ合ってねぇんだおめぇら。」

 

「...。」

 

台無しじゃねぇかさっさと逃げろよ。くそ恥ずいなぁおい!!!

 

「みんなぁっ!!!」 「クェェエエ!!!」

 

あ、ビビだ。カルーも。手ぇ降ってる。はい?オカマ?知らんな、そんなん居たっけ?なんか後ろで叫んでるって?聞こえませんなぁ、記憶にございませんなぁ?(ゲス顔)

 

「きたぁ!」

 

「船を寄せよう!」

 

息が乱れている。急いでここに来たんだろう。チャンスはこの1度きりだから。

 

「お別れを!!言いに来たの!!!」

 

「「「!?」」」

 

驚きの表情で固まるルフィたち。そりゃそうだ。迎え入れる気満々だったんだから。僕から伝える事も出来たけど、それじゃ意味ないし。

 

あぁ、空があおいなぁ。

 

「私...一緒には行けません!!今まで、本当にありがとう!!冒険はまだしたいけど!!貴方たちと一緒に、海で生きていたいけど!!私は、やっぱりこの国を...!」

 

「愛しているから!!!!」

 

大きく息を吐く。

 

「私は...っ!ここに残るけど!!いつかまた会うことが出来たなら!!もう一度っ!!!」

 

「仲間と呼んでくれますかっ!!!」

 

いつでも、いつまでも。君がこの船を降りて、立派な王女になったとしても。

 

「いつでもなばっ...!?」

 

「ばかっ!返事しちゃダメよ!海軍がビビに気づいてる。海賊と繋がりがあるって知られたら、ビビが罪人になる!このまま、黙って別れなきゃいけないの。」

 

高く、高く。あのあおい大空に届くように。

 

左腕を掲げる。

 

この左腕のバツ印が、仲間の証だから。

 

ビビの髪の色にそっくりだなぁ、アラバスタの空は。良い色、良い空だ。

 

アラバスタ。ギラギラと太陽が燃える美しく力強い国。あのあおい空と大地を照りつける太陽は、まるで。

 

掲げた拳を開き、掌を頭上へ向ける。熱と光の奔流が収束し、拳大の大きさへ圧縮される。それは高濃度、高密度の純粋な炎。エネルギーの塊。煌々と輝き、轟々と燃え盛る眩い恒星。極小の、太陽そのもの。

 

(''神技(じんぎ) 掌天昇(しょうてんしょう)''。)

 

左腕から打ち上げられた太陽は、寄り添うように大空へ浮かび上がる。

 

「...っ! だいすき、でした。」

 

乾いた風に吹かれながら、一筋の雨が片頬を撫で落ちてゆく。

 

前を向かなければ。顔を上げなければ。新たな島が待っているのだから。新たな冒険が始まるのだから。

 

「出航だぁーーー!!!!」

 

ありがとうビビ。いつか必ず、君に。

 

 

&&&

 

 

ふぅ、やー。こういう時ってフード便利だよな。見られないから。ふはははは。

 

つかみんなやる気無さすぎ問題。敵が来たらどうすんだこれ。だらけきってるなぁ。気持ちはわかるけどね。

 

「「「さみしーーーーー。」」」

 

言っちゃってるよ。わかるー。

 

「メソメソすんな!そんなに別れたくなきゃ力ずくで連れてくりゃ良かったんだ!」

 

まぁ海賊だからねぇ、攫ってくるって手も勿論あったけど。それじゃビビの決意が無駄になる。こういうことを考えるのは、一般的な海賊とはかけ離れてそうだな。一般的な海賊ってワードに違和感がない時点で相当やばいと思う。

 

「うわぁ、野蛮。」

 

「最低。」

 

「マリモ。」

 

「芝生。」

 

「三刀流。」

 

「いや待てルフィ、三刀流は悪口じゃねぇだろ。」

 

「四刀流。」

 

「増えてどうするっ!?」

 

なんだ、割といつも通りだな。さーてと、快晴なり海清なり。

 

「うるせぇっ!!...で?お前はもう良いのか。」

 

なんだ?泣いたことはバレてないはず。はっ!?いや、泣いてねぇし!!良い歳した僕が泣く訳ねぇし!!!寂しいけどな!!!

 

「へーき。切り替え大事。」

 

「そうかよ。」

 

なんだ頭に手を置くな。腕置きに丁度いいだぁ?このスカタンがぁ!!置いてるのは手だろうがぁ!!(そこじゃない)

 

「やっと島を出たみたいね。ご苦労さま。」

 

「あぁ。...!?」

 

やっと船室から出てきたみたいね、ご苦労さま。

 

「「「なっ!?」」」

 

うおぉお、一気に戦闘態勢に!...と思ったらゾロとナミの2人だけだったわ。ルフィとチョッパーは困惑してるし、ウソップは拡張器使いながらマストに隠れるし、サンジはメロリンだし。何だこの一味大丈夫そ?ちなみに僕は自然体です。(おい)だって知ってたもん居るってこと。

 

「そういう物騒なものを私に向けないでって、前にも言ったわよね?」

 

そうなん?知らんぞ。あ、僕居なかったのか。

 

「あんたいつからこの船に!?」

 

「ずっと前から。下の部屋で読書したりシャワー浴びたり。そういえば、コーヒーが用意してあったわ。美味しかった、ありがとう。」

 

あぁ、空いた時間見つけて用意したな。そういえば。気に入ったのなら良かったよ。

 

「ちょっとソラ!!知ってた訳!!?」

 

うん、知ってた。つかロビンがあまりに自然体で居たもんだから、みんな知ってるんだろうなとさえ思ってた。いやぁー、スワンスワン。はっ!?いまオカマが居なかったか!?!?

 

「言いなさいよ!!!」

 

「いひゃい、いひゃい。やめふぇ。」

 

知らないってことを知らなかったんだよぅ。そんなに怒んなよぅ。

 

「モンキー・D・ルフィ。私は貴方に耐え難い仕打ちを受けました。責任...とってね。」

 

なん...だと...!?え、なに、何の話?マジで知らねぇ話だな。どんどん進んでくぞ。

 

「どうしろって言うんだよ。」

 

「私を、仲間に入れて。」

 

「「「...はっ!?」」」

 

ん...あれ、まだ仲間じゃなかったんだっけ?ここで加入するの?へぇー、知らんかった。

 

「死を望む私を貴方が生かした。それが貴方の罪。私、行くところも帰るところもないの。だからこの船に置いて?」

 

「なんだ、それじゃあしょうがねぇな。良いぞ。」

 

「「「ルフィ!!!」」」

 

軽いな、ノリが。僕も賛成だけどね。ってことで船室に潜るわ〜。ちょっと日差しが。

 

「...。」

 

ん?なんで皆こっち見とるんやろ。ロビンも。まぁ良いや。

 

さーてと。コーヒーは美味しかったって言ってたな。甘いものより、甘さ控えめ大人っぽい感じの味付けが好みって訳か。OK把握。歓迎のスイーツを振舞おう。ついでに皆の分も作るかね。

 

「ソラ。何作るんだ?」

 

「あれ、サンジ。良いの?甲板居なくて。」

 

「なぁに言ってんだよ。んお姉ぃ様とナミすぁんにスイーツ&ドリンクをお出ししなきゃならねぇだろうが。」

 

あ、はい。目がハートやぞ、大丈夫か。腰の間接もゴムみたいになってるし。

 

「コーヒーが好きみたいだよ。あまり甘すぎるのは食べれないかもしれないから、ビターチョコとナミのみかんを使おうと思ってたところ。」

 

「ってことはオランジェットとシトロネットか、なるほどな。チョコレートもビターとミルクで分けりゃ誰でも食べられると。よっし、やるか。」

 

うい。やる気が違ぇなぁ。サンジと料理する時って、お互いにイメージを共有出来るというか。100の事を伝えるために100言う必要が無いから、随分楽なんだよな。ロビンとナミにって言ってた癖に、ちゃんと全員分の材料用意する辺りも、素直じゃないよね。

 

並行してドリンクも作らなきゃな。紅茶とコーヒーでいっか。海賊とは思えねぇティータイムだなぁおい。何が悪い!!!(急に)

 

 

&&&

 

 

「漂う恋よ、僕はただ漆黒に焦げた体をその流れに横たえる流木♡ 雷という貴女の美貌に打たれ、激流へと崩れ落ちる僕は流木♡ おやつです♡」

 

「あら、ありがとう。」

 

意味わかんねぇポエム言われてるのにガン無視してるロビンつよつよのつよ。クールやな。

 

「ナミ、みかん使った。どうぞ、ミルクチョコレートオランジェットとシトロネットです。ご一緒に紅茶も如何でしょう。」

 

「そう、良いわよ別に。...うん、おいしい!このクオリティのスイーツがいつでも食べられるって、やっぱ最高ね!」

 

ありがと。サンジと一緒に作ったから、サンジも褒めてあげて。喜ぶから。

 

「「「ぎゃっはっはっはっは!!!」」」

 

で、あれは何をしてるんだ。めっちゃ笑い転げてるな。楽しそうで何よりだ。

 

「おい、俺のは。」

 

「ゾロのはこっち。」

 

「ん。」

 

ゾロのはビターチョコレート。甘いより苦い方が好きらしい。酒も辛口が好きだからなぁ。じゃあスイーツ食べなきゃ良いじゃんって思うけど、それは違うらしい。まぁ作ったものを食べてもらうのは嬉しいから良いんだけどね。

 

スイーツの味付け的にはロビンとゾロが似た感じだから、これから甘さ控えめな皿を2人分用意するってことを注意しとかなきゃなー。

 

「良いわね、いつもこんなに賑やかなの?」

 

「...あん?あぁ、こんなもんだ。」

 

「そ。」

 

輩みたいな口調で凄んでる癖にスイーツ食べてるのシュール過ぎて笑えてくるんだけど。止めてくんない?不意打ちで腹筋攻撃するの。簡単に崩壊するから。

 

「貴方も一緒に作ってくれたのね。ありがとう。」

 

「気にしないで、ウェルカムスイーツだから。」

 

あとドリンク。

 

「あら、歓迎してくれるのね。てっきり警戒されてるのかと思っていたわ。剣士さんと同じように。」

 

「!」

 

「警戒?なんで?」

 

ゾロは警戒してんのか。ロビンが敵対組織に居たからかな。まぁ良いんじゃね、警戒しててもしてなくても。好きなようにやれば。

 

「何故って...。」

 

「お前は良いのかよ。何とも思わねぇのか。」

 

何とも、何ともねぇ。

 

多分、ビビやアラバスタに敵対する組織の副社長を務めてた事とか、クロコダイルに付いていた事とかを言ってるんだろうけど。僕にとってはどっちも身内って認識だからなぁ。身内同士、仲間同士のいざこざがあって、それももう解決してる。ぶっちゃけ、どうのこうの思うことは無いな。

 

それに何より。

 

「ルフィが良いって言ったんでしょ?それなら大丈夫だよ。」

 

「「!」」

 

船長だからなー。ルフィが良いって言えば、イヤイヤ言ってても皆着いて行くんだ。にしし。

 

「初めて会った時に言ったと思うけど。楽しんでねって。この船に居たら退屈しないよ。いっぱい楽しめると思う。ほら。」

 

あっちはあんなに楽しそうだしな。

 

「...そうね。私も、楽しもうかしら。ありがとう、副船長さん。」

 

ニッコリ微笑まれた。うんうん、良いと思う〜。

 

......副船長って??????

 

ゾロを見ても、片眉を上げられるだけだった。それは何?どういう意味なの??時々通じ合えないよなぁ僕ら!!!!絆レベルが足りてねぇのか!?!?(FGO)




終わっちゃいましたねアラバスタ編。
楽しかったぁ。。。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

空島編
空島?そんなことよりたこ焼き食べたい


空島どうしよう。。。
何もプロット考えてねぇ。。。(いつものこと)
エネルとソラってどっちが強いの???
エネルかなぁー??わかんねぇ。


人が空想できる全ての出来事は、起こりうる現実であるらしい。この世界におけるあらゆる事象・現象・万象その全てが神の御業によって現実と化している。起こり得ない物事を人が空想又は想像出来るということは、人はイメージする力という1点において、神をも超える能力を有するということである。しかしそれは有り得ない。人は神を、超越することは出来ないのだから。

 

例えその神が、引きこもりニート系美少年好き芋ジャージだったとしても。

 

さて、ここはグランドライン。本日の天気。

 

晴れ、時々、ガレオン船。

 

多分さァ、この世界のガレオン船って割とそう言う運命にあるんだよな。そういう星の元に生まれてんだよ。鷹の目に真っ二つにされるわ、ボロボロのバラバラになって空から降ってくるわ。メリーの何十倍あるんやこれ。わけわかめ。

 

いやぁ、仁王立ちして呆然としてるけど。だって何にもできないじゃん?波に揉まれて舵きかないし。あー、ガレオン船が落ちてくる範囲全部雪にすりゃ良かったのか。いや無理ぃ。そんな咄嗟の判断無理ぃ〜。

 

わっ、なんかウソップに骸骨投げられた。何だやんのか?枕投げ方式な。ただしお前がまくらだおらぁ!!!

 

あ、落ち着いてきた。

 

「なんで空から船が!?」

 

「空にゃ何もねぇぞー?」

 

多分前世の物理学に精通する頭の良い人とかならさ、今の衝撃とかガレオン船の体積とか質量を計算して、上空どのくらいの高さから落ちてきたって分かるのかも知れないけど。

 

分かるわけねぇよなぁ!?僕は一般社畜だった訳だからよォ!!まぁ分かったところで、って感じだけどな。

 

「あっ!?記録指針が、壊れちゃった!!上を向いて動かないの!!」

 

「いいえ、それは違うわ航海士さん。より強い磁力を持つ島によって、記録を書き換えられたの。空に指針が向いているということは...。」

 

「あー、空島かぁ。」

 

あ、やべ、言っちゃった。めんごめんご。

 

「空島って何よ!?空に島が浮いてるっての!?あんたまた何か隠してる訳!?」

 

えぇ...?隠してねぇよぅ。前世知識が少しと、ちょっとした文献を読んだ事があるだけで。まぁ根も葉もない噂レベルの内容だったけどな!!インターネットが無い世界なんて!!!現代社会人に調べ物をするなと言ってるようなものだろうが!!!ググググの実とかねぇかな。たっけてぐー○るてんてー。

 

「浮いているのは海。水の海では無く雲の海が、遥か上空に浮いてるんだって。詳しくは知らないけど。」

 

「海が、浮いてる?」

 

「ますます分かんねぇな。」

 

うん、原理は僕も知らないけど。そう書いてあったんだから仕方ない。まぁソースがその文献くらいだったから、信憑性あるかって言われたら無いよりの無いレベルじゃが。でも夢はあるよね。夢だけね。

 

「空に海が浮いてて島があんだな!?よし、行こう!すぐ行こう!!野郎ども、上に舵をとれー!!」

 

「上舵いっぱーい!!」

 

元気やな、おまいら。ついさっきまでガレオン船の雨にビビってたのに。現金なヤツらだ。空島、空島ねぇ。なんだっけなんか、大冒険してた気がするけど。

 

あれ、そういやあの絵本どうしたんだっけ。バラティエに置いてきたんだっけ?僕の荷物ん中あったっけか。

 

「正直、私も空島について知っていることはほとんど無いわ。見たことがある訳でも無いし。」

 

「そうでしょ!?有り得ないわ、島や海が浮かんでるなんて!ソラ、あんたも詳しい訳じゃ無いんでしょ?」

 

うん、全然詳しくない。

 

「ある絵本があって、その絵本を研究して分かったことや考察なんかを記録した文献みたいなのを読んだことがあるってだけ。その中に空島存在説ってのがあった。信じるか信じないかはあなた次第です。(パクリ)」

 

「絵本〜?信じられる訳ないでしょ!!」

 

そんな真正面からバッサリ切るんじゃテレビ出らんねぇぞ!!!良いのか!?良いんだな!?良いか。しゃーないやん、そう書いてあったんやで。

 

「おれは信じるぞー!!」

 

「俺もだ!!」

 

「おれもー!!」

 

はい、はい、はい。あっち行って遊んでてな。今ちょっと大事な話してるから。あれ、でもルフィが行きたいって言ってんだから、どんなに信じられなくても行ける方法探すしかなくね?はい、方針決まり〜。

 

「やっぱ記録指針が壊れてんのね!」

 

「航海士さん。今考えるべきは記録指針の故障箇所では無く、空への行き方よ。」

 

「とりあえずルフィが行きたがってる。空島が有るにせよ無いにせよ、それを調べるくらいはするさ。」

 

「!」

 

で、ルフィとウソップは何してんの。あ、探検。そー、へぇー。危ないから早めに戻りなね。

 

「グランドラインで疑うのは寧ろ私たちの持つ常識の方。記録指針だけは疑ってはいけない。指針が指す先には、必ず島が有るわ。」

 

「ナミ。クロッカスさんの言葉、覚えてる?''季節・天候・海流・風向き、その全てが常識で収まるものでは無い''。」

 

「''自身の持つ常識その全てが通じぬ海で航海し続けられるのは、確かな心の強さを持つものだけ''。...はぁ〜、そう、そういう事ね。」

 

はは、覚悟が決まったみたいだな。そういう切り替え、大事だいじ。ナミは強いから大丈夫。

 

棺桶を漁ってるなう。ロビンが。頭蓋骨にあった医療痕1つでその人の出自と風土、経過年数、船の特定を終えてる。パなくね?探偵かよ。バリツ!!

 

ロビンからも色々教えてもーらおっと。現在、僕はウソップから狙撃のコツを、チョッパーからは医療知識を、ナミからは海流の読み方なんかを教えて貰っていたりする。

 

グランドラインを旅してたから、少しは知ってるんだけどね。航海に必要なことは、最低限だが一通り叩き込まれた。一点特化じゃない分、幅広さで補わなきゃいけないのだ。だんだんサポート特化になってきている希ガス。まぁええわ、必要やから。

 

あ、溺れかけてたルフィが帰ってきた。なんか宝の地図見つけたんやって。それ、ソースは?スカイピア、ほんほん、空島の宝の地図ね。行くっきゃねぇなぁ野郎どもぉお!!おおん!?

 

「やったぁー!!夢の島に行けるぞぉお!!ウソップ!チョッパー!ソラ!」

 

「夢の島ぁ!?」

 

「うっひょー!!」

 

おー。グッドラック。

 

思ったんだけど、これから暫くは空島空島言われるんだよな。僕の名前を呼ばれてるみたいでビビるわ。勘違いして恥ずかしい思いしそうでやんだぁ。

 

「ちょっと待って!偽物の宝の地図なんて腐るほどあるし、そもそも空島だって本当に有るのか無いのかをこれから...あっ、ごめんっ、いや、ちが、あるある、あるんっ、だけど...。」

 

草。ナミを戸惑わせる程の好奇心とは。

 

「行き方がわかんないって話してんのよっ!!!」

 

「航海士だろっ!!何とかしろ!!!」

 

「何とかしろって、あんたねぇ!?」

 

「空に行くんだっ!!!」

 

無茶苦茶やな。

 

「ソラ!なんか良い案ねぇかっ!?空島行きてぇよ、おれ!!」

 

良い案、良い案ねぇ。

 

「まずは情報収集。近くの島に行って聞きこみ調査...の前に、目の前の情報源から出来る限り、空島の情報を抜き取るべき。」

 

「そっか、サルベージね!よし、引き上げなさいあんたら!」

 

「できるかァっ!!!」

 

うん、サルベージは無理だな。だからこっちから潜るしかねぇ。つうことで潜水服や。ウソップ、これ設計図だからこの通りに作って〜。

 

「うっほぉーー!すんげぇなこれ!!」

 

「樽でも使うのかと思いきや、こりゃかなり動きやすいな。ナミさん♡ 俺が必ず空への手がかり見つけてくるぜ!」

 

「おい、なんで俺まで。」

 

「4人分の材料があったから。」

 

外装には義肢によく使用する耐水・耐衝撃性の素材を用い、全身甲冑(プレートアーマー)を作成。関節部にはゴム素材を組み込んでる。これで水圧の変化や外敵からの攻撃にも対応出来るはず。

 

その内側に、水に浮く耐水性布素材とビニールを利用した簡易潜水服を着込む。海の中でも比較的自由に手足が動かせるから、戦闘だってできる。不測の事態に陥り外装が壊れたとしても、内装が生きていたら浮上くらいは容易だ。リスクの分散、大事。

 

おもりを持った状態で沈んでいき、浮上する時はおもりを捨てればスイスイ上がっていくって寸法よ。顔部分のガラスにはくもり防止コーティングも施した逸品だ。

 

ちなみに船と安全紐も繋いでいるし、空気を送り込むホースも取り付けてる。糸電話の原理を利用した通信手段も確保。今ある材料の中で完璧な出来だな。

 

これ、売れるんじゃね??1着 1,000万ベリーからどうぞ。これが高いのか安いのかはわからん。

 

「ところでこれ、僕じゃなくてウソップの方が良くない?僕、泳げないんだけど。」

 

「だいじょーーぶ!!お前の設計とおれの腕を信じろ!!おれは信じてる!!!」

 

いや、もしもの話で、え、あの、ちょ。

 

「お前だけ逃げようったってそうはいかねぇぞ。おら、行くぞソラ。」

 

うわ掴むな腕を掴むな。止めろよ四刀流!!

 

「はぁ、3人とも。この下結構な大型生物がうようよいるから。気をつけて。」

 

ま、この3人に限って心配要らないかな。さてと、情報収集〜っと。

 

ボチャン

 

ふむ、着心地は悪くない。思った以上に水平移動が楽だ。おもりがある分、重心を保つのがめんどいがこれはしゃーなし。上との通信状態も良好。海の中だ〜!久々に見た!!おもろ!!

 

んでもやっぱ無茶苦茶居るなぁ。これ海蛇か?ちょーでけぇ。海蛇って美味いんじゃろか?サンジにかかれば何でも美味しくなるか。

 

あれ、誰か来た。あ、ルフィが殴った。草。誰か分からんのに、なんでとりあえず殴ったの?性能を確かめたかったの?それならしょうがない。(しょうがなくない)

 

敵襲ならもっとウソップが騒いでるはずだから、あんまり心配しなくても良いのかな。

 

着いた着いた。さぁ物色だ〜。宝探しみたいでちょっとワクワク〜。この部屋は...航海士の私室か?

 

当たり前だが経年劣化が激しいな。ほとんどがボロボロ。サビの具合から見ても相当古い。船も、備品も。骨もか。

 

本は水で濡れてて中身は読めないけど、表紙は確認できる。海流について、天候について、空、雲、太陽、月、夜、空気、グランドライン、海の生物。絵本、文献...。この文献って。まさかこの船に乗ってた誰かが書いていた?200年前、まぁ有り得なくは無い話だ。

 

航海日誌や海図が見当たらないな。まぁインクが滲んで読めないからあっても意味ねぇけど。とりあえず表紙が読めるやつは持ってくか。

 

いや待って、君らなにしてんの。防具とか刀とか食器とか要らねぇから。それで何がわかるんだよ。ゾロの頭についてるタコはなんなの?オシャレさんなの?あ、た空箱はっけん。そうだよ中身は何もねぇよ。

 

人骨に武器が貫通してる。争った形跡か?ほとんどがそんな感じだな。空島、空島...空島の情報はァ〜?

 

ここは船長室か?お、永久指針はっけーん。ガラス割れてるけどな!!!ジャヤ、か。どこやねん。こっから近いんか?一応持ってっとこ。

 

なにこのカラフルな貝殻は。なんか上の突起部分押せるわ。んー、わからん。いいや、分からんやつは持ってこ。ロビンが何か知ってるかもだし。

 

ドゴォオオオオン!!

 

え、なに、何したの君ら。あ、違うの?うわなんか空気送り込まれてきた。すげぇなこれ何事?おおぉ、船体が浮いたぞ。持ち上げてんの?ガレオン船を?パネェな。(発想が)

 

また誰か来たぞ。海賊やな。ってことはお宝奪いに来た系男子?ふーん、宝なんてねぇけど。とりあえず魚人空手の餌食な。

 

「ほら見ろ!脱いでも平気だった!ソラも脱げよ、平気だって!」

 

「こんだけ空気がありゃな。」

 

「さっきから上と通信繋がんねぇぞ!ナミさんとロビンちゃんに何かあったんじゃ...?」

 

「なんか来てるから一応着とく。この空気もいつ漏れるか分かんないし。」

 

「「「!?」」」

 

ちっちゃい気配とおっきい気配が1つずつ。

 

「何処の誰だぁああ!!オレの縄張を荒らす奴ァ!!」

 

うわ、ゴリラだ。いや、猿か?

 

「あ、さるだ。」

 

「え?オレってそんなにさるあがりか?」

 

「あぁ、さるまがいだな。」

 

君ら初対面だよね?初対面でなんでそんなに話弾んでんの?内容が一切無い会話だし。どういうこと?さるあがりって何?なんでちょっと嬉しそうなの?つかお前誰。

 

「うおっ、なんだその潜水服は!!イカすなぁおい!!どうなってやがんだ!?」

 

「お目が高いですね、ご説明させて頂きます。まずこの外装は耐水性・耐衝撃性を兼ね備えた全身甲冑(プレートアーマー)となっており、関節部分も流麗に稼働することができますこの様に。甲冑とは言いますが、金属は利用していないのでとても軽く、しかし丈夫です。更に内側には耐水性の布とビニール素材で作った...。」

 

「おいやめろ、長くなんだろそれ。」

 

なんだよう、説明させろよぅ。買ってくれるかもしれんのやで。

 

「あ?お前ら、その袋...まさか!!!やっぱりオレの縄張を荒らしてんじゃねぇかぁああ!!!」

 

「うおっ!?」 「っぶねぇな!!」

 

おっと、なんだコイツ情緒不安定かよ。

 

「ねぇ、すぐ側にえげつないくらいデカい生物が居るんだけど。こっち向かってる。さっきの海蛇の比じゃないくらい。さっさと逃げないと死ぬかも。」

 

「「「!?!?」」」

 

バキッバキバキバキバキバキぃっ!!!

 

やっべ、終わったかも。僕だけでも逃げよ。おもりを外して、さぁ行こう。スイスイスイーっとくらぁ。お、みんな着いてきた。ルフィ気絶してるわ、ウケる。重そうだねぇゾロ。十中八九、袋の中のゴミのせいだろうけど。

 

海面到着〜。

 

ザバァアアアアンッ

 

「ルフィ!!」

 

気絶してるから起こしてあげて〜。

 

「ソラ!ゾロ!サンジ!良かったお前ら無事でぇ!」

 

「オイどうなってやがる!蛇だのサルだの巨大生物だの!!」

 

「何ひとりで逃げようとしてんだソラてめぇっ!?」

 

忠告したやん。ちなみにデカイのはカメらしいよ。ウミガメ。まじ超デケェ。あんなのに食われそうになったのか、あっぶなー。あ、ルフィ起きた。さて船を動かさなきゃな。

 

「んまてぇええお前らぁ!!このマシラ様の縄張りで!!財宝盗んで生きて帰れると思うなぁ!!!」

 

財宝なんて無かったがな。あったのはよく分からんやつばっかりだ。貝とか。

 

つか空暗くね?(遅い)え、待って。あれ...何?羽根突きクソデカ人間の、影?は????

 

「「「かっ...怪物だぁああああああ!!!!」」」

 

 

&&&

 

 

「今日は何かがおかしいぜ。」

 

たしかに。

 

「巨大ガレオン船が降ってきたと思ったら。」

 

おん。

 

「指針を空に奪われて。」

 

おんおん。

 

「妙な猿が現れて船を引き上げる。」

 

お...?

 

「でも船ごと食っちゃうでっけーカメに遭って。」

 

あっ、

 

「夜が来て。」

 

あっあっあっ、

 

「最後は巨人の何倍もある大怪物!」

 

口を、挟めねぇ...だと...!?いや!まだ!いける!!

 

「たこ焼き食べたい。」

 

よし、これで僕も発言した。空気じゃねぇし〜!うぇーい!(ウザイ)

 

「さすがにあれにはビビったね、どーも。たこ焼き、オレにもくれるか?」

 

「「「...出てけぇえええ!!!!」」」

 

うわ容赦ねぇ〜。

 

「で、あんたらちゃんと情報得られたんでしょうね!?あと財宝は??」

 

だから財宝は無いんだってば。

 

「...何これ。」

 

防具と、剣と、食器でしょ。あとタコ。だから言ったじゃん、要らないって。え?言ってない?察しろよ。

 

「要らないのよこんなガラクタっ!必要なのは日誌とか!!海図とか!!そういうの!!!」

 

「「ああああっ!?」」

 

踏みつけてて草。気持ちは分かる。

 

「それ何ルフィ?」

 

「ヨロイだ!っぎゃーー!!!」

 

「うおっ、鎧が砕けたっ!」

 

錆びてるからな。

 

「ソラ!あんたが手網握っとかないとダメでしょうが!!って、あら?そう言えばあんたは何を持って帰ってきた訳?」

 

「ん。」

 

本、本、本。

 

「航海士の私室にあったのは、航海に必要となる知識を得ることが出来る本。海水でダメになってるから内容は分からないけど、表紙でだいたい予想は着く。気になったのは、海に関する本よりも空に関する本の方が多かったこと。ちなみに航海日誌と海図は見当たらなかった。」

 

天候はまぁ分かるけど、太陽とか月とか雲とか夜の知識は航海に必須って訳じゃねぇし。まぁ何があるか分からないグランドラインだし、若しくはそういう趣味って言われたらそれまでだけど。空から降ってきたことを考えると、空へ行くための手段を調べてたって考える方が無難だろ。

 

「船長室には何に使うのか分からない貝殻と、ジャヤって場所への永久指針の残骸があった。僕にはよく分からなくても、誰か知ってるかもと思って持ってきた。収穫はそれくらい。空島が存在するっていう確固たる証拠を得ることは出来なかったな。」

 

「真面目に探してたのはあんただけよっ。」

 

「みんな真面目に探してたよ。結果が奮わなかっただけで。」

 

「「「おいおい。」」」

 

ホントのことやろ。

 

「ジャヤの永久指針の残骸かぁ。あーもうっ!これさえ生きてたら何とかなったかもしれないのに!」

 

それなー。それにしてもあの貝殻はなんぞ。

 

「有るわよ。はい、航海士さん。さっきのおサルさんたちの船から盗っといたの。一応ね。」

 

「「...。(ひしっ)」」

 

ロビン姉さんは頼りになるんだぁぁあああ。うわぁーーーん!

 

「私の味方はあなた達だけっ。」

 

「2人とも、相当苦労してるのね。」

 

うん。でも楽しいから良いの。いざって時は頼りになるんだ。普段ポンコツなのは仕方ない。

 

「ジャヤ?そこに行くのか!よぉーし、ジャヤ舵いっぱぁーーいっ!」

 

ジャヤ舵。あっ、たこ焼き食べてる!いいなぁー、1個ちょうだい?わ、ありがとルフィ。うんま!うまうま!サンジ作ってくれたんだ〜。やさしー。

 

ガレオン船からはろくな情報を得られなかったからなぁ。ジャヤって島で頑張るしかねぇなぁ。あむあむ、はふはふ。うめへへへ。




たこ焼き食べたい。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

栗のおっさんとサシ飲み!

皆さま、いつも誤字報告をありがとうございます。
感想もたくさん、ありがとうございます。


ジャヤの西側、嘲りの街モックタウンに到着した。酷い名前だな、海賊めっちゃ居るし。ワンピースを代表するレベルで民度が低い街だ。治安も悪い。

 

こんな街で情報が集まるのか?まともに会話出来るやつが居るのかどうかも怪しいんじゃが。少し見渡すだけでも、喧嘩とか殺しとかナンパとか。まぁナンパはウチにもやる奴居るけど。

 

相当強い奴が何人か居るな。うーむ、エンカウントしたくねぇ。でも情報は必要だし。船に居たら安全って訳でもねぇし。行くかぁ。

 

なんかナミが2人に誓いを立てさせてる。

 

「ワタクシはこの街では決して、喧嘩しないと誓います。」

 

「よし、絶対だからね?2人ともよ!」

 

「「あーーーー。」」

 

ウケる。超嘘っぽいな。だるそー。

 

「ソラは喧嘩しても良いのか?」

 

「バカね、あんたらと違ってソラは自分から喧嘩ふっかけたりしないのよ。」

 

「目的は情報収集。」

 

「ほらね。」

 

うん、僕いい子。喧嘩なんてしない、自分からは。なんだぁゾロ、その胡散臭そうな眼は?おおん?やんのか??(早い)

 

「じゃ、僕あっち行くから。」

 

「あ?おい。」

 

「なに、あんた1人で行く気?」

 

え、だって別れた方が効率ええやん。4人で一緒に行動する理由も無いし。ロビンも1人で行っちゃったし。良いよね、ルフィ。

 

「いいぞ。」

 

ほら。そんじゃ、また後で〜っと。なんかあってもロビンと電伝虫で連絡取れるし、大丈夫だろ。

 

にしてもまぁ、ホントに治安悪いなここ。でも見てみると喧嘩や諍いは海賊同士がやってることであって、街への人的被害はゼロみたい。そりゃそうだわな、じゃなきゃ自分たちがここで補給出来ないし、遊べなくなっちゃう。

 

「おいガキ、こんな所で1人彷徨くなんざ感心しねぇなぁ?パパやママは何処にいるんだぁ?へっへっへ。」

 

「さぁ。」

 

マッマはもうおらんで。パッパは今探しとるんよ。まぁ大体の居場所の目安はついてるが。

 

「そうか、見当たらねぇのか。そんなら、売り飛ばされても文句は言えねぇよなぁ!!?」

 

全然言えるやろ。

 

こいつは僕をどういう立場の人間だと思ってるのかにゃー。街の住人と思ってるのなら普通は危害を加えないだろ、さっきも言ったけど。じゃ、海賊見習いと思われてる?こんな堂々と往来のど真ん中で他所の海賊団のクルーを攫うって、報復とか考えとらんのけ?どんだけ自分の腕に自信があるんや。いや、バカなだけか。

 

「おっと。」

 

「!?っちぃ!」

 

よっ、ほっ、たっ、とっ。よっこい、ごろりんでんぐりっと。はーい、がんばってぇ〜。鬼さんこちら、手の鳴る方へ。あ、やっぱり頑張らないでぇ〜。さっさとどっかに行って〜。

 

「はぁっ、はぁっ、ぜぇっ。てっ、てめぇ...!!逃げんなごるぁあ!!」

 

いや、アボガド。間違った、アホかと。逃げてやってんだよ、さっさと諦めろ。

 

「死ねよぉおおらぁ!!!」

 

死ね言うてますやん。目的変わってまんがな。剣持ってるし。はい、魚人空手・人技 無刀取りっと。なんだろこれ、変なカタチの剣だな?あれ、なんか打ちひしがれてる。リアルorzや。大丈夫そ?強く生きろよ。(リゼロ)

 

やっぱ情報が集まる場所と言ったら酒場だよなぁ〜RPG的に考えて。お酒飲まないけどな。カランカラーンっと。

 

うわめっちゃ見るやん。超シーンってなってるわ。そんなに注目しちゃいやん。見られて困るもんなんて無ぇけど、あからさまに見られたいとも思わん。

 

あ、フードの下が気になるって?はっはっは、それはしょうがない。見せないけど、魅せることは出来るんだぜ?見せないけど。ほら、顔は良いからさ。攫われそうじゃん?この街、何人かヤバいの居るから。あんまり騒ぎ起こしたくないんよな。

 

「こんにちは。ちょっと聞きたいことが有るんですけど。」

 

「...どっかの海賊の見習いか?悪いことは言わねぇから、けぇんな坊や。ここは子どもの来るところじゃあねぇんだ。」

 

あぁ、やっぱり海賊見習いに見られてるのか。何でも良いや、情報くれくれクレオパトラ。

 

「空島についての情報が欲しいんです。」

 

「「「...ぶっ!ぎゃっはっはっはっはっは!!!」」」

 

おっ、どうしたどうした。なんかあったん?ワライダケでも食ったんか。オヤジ、客に毒を盛っちゃいかんよ。

 

「おいおいガキぃ!空島なんか信じてんのかぁ!?流石はお子ちゃま、夢を見るねぇ〜!」

 

「ぎゃっはっは!空島はな、お空に浮かんでんのよ!お星様と同じだぞー?」

 

「ぶふーーっ!うっはっはっは!!ダメだ、腹が捩れて!!どうしても行きたきゃ空でも飛ぶんだなぁ!!」

 

あ、そうそう。その空への飛び方を探してるんだわ。なんか良い方法あるかね?

 

「「「......っ!!ぎゃーーーっはっはっはっはっは!!!!」」」

 

めっちゃ笑うやん。やめてぇ、笑いって伝染するんよ。こっちまでおかしくなってくるわ。うへへへへ。

 

「...ノックアップストリーム。そう呼ばれる海流がある。船で空を飛ぶんなら、それを使うしかねぇな。詳しいことはモンブラン・クリケットに聞きやがれ。この島の東外れに居る。」

 

お、やっぱり酒場のオヤジは情報を持ってんだよ〜!来て良かった。このオヤジピクリとも笑ってないぞ。こやつ...できるっ!?

 

ん、モンブラン?ちょっと詳しく聞きたいが、むりそー。

 

「情報ありがとうございます。チップ置いときますね。」

 

「ガキにタカる訳ねぇだろうが。さっさと出てけ、バカヤロウ。」

 

おや、何も頼んでないのにチップも要らないのか?慈善家かこのオヤジは。もうちょっと聞きたいことあるんじゃが、周りがうるさいな。別で聞くか。

 

「そですか、ありがとうございました。随分賑やかなんですね、この店。静かになったらまた来ます。」

 

「もう来んな。」

 

そりゃわからんな。

 

「へっへっへ、おいおい待てよ。何帰ろうとしてんだテメェ。俺たちがうるさいって、そう言ってんのか?ガキ。」

 

「悲しいねぇ、こりゃ、大人の俺たちが教育してやらねぇとなぁ?」

 

えぇ、ちょ、怖い。やめて。無理無理、普通に多いしお店の中で暴れるのも無理。せっかくの親切なオヤジのお店なのに。

 

よし、逃げるか。ぴょーーーんっとな。

 

「「「は?」」」

 

ふははははは、身体能力が高いって便利ぃ〜。カウンターから入口までひとっ飛びだぜぃ!

 

「さよなら、オヤジさん。」

 

お、手ぇ振ってくれた。いや、払ったのか?まぁいいや。さ、にーげろーー。

 

「「「待てやゴラァァァ!!!」」」

 

やだよ。いたいけな美少年を追いかける海賊たち。まぁ追いかけるもなにも、屋根に飛び乗って秒で撒いたんだけどな。基本性能が違いすぎて遊びにもならん。さて次々〜。

 

とりまロビンと情報共有する。ロビンも同じこと言われたらしい。モンブラン・クリケットに会えって。ついでに地図も貰ったって。さすが〜。

 

え?もう船出しちゃったの?なして??え、イジメなの?何があっても大丈夫だろうから?いや、そういう問題か??ルフィとゾロがボロボロ。ベラミーってのにやられたんだと。誰それ。懸賞金5,500万?へー、やられる要素無くない?あ、無抵抗だったの。うん、なんで??よく分からん。

 

おけ、もうちょっと情報集めたらそっち行くわ。だいじょぶだいじょぶ、陸続きなら僕の方が速いから。え?続いてるけど遠回り?...、なんか適当に船乗っけてもらうわ。うぃ、はいな。

 

さて、なんか賑やかな店の前に出たぞ。うるさいの苦手なんだってのに、入りたくねぇ。。海賊だからなぁ、基本はうるさいか。

 

あれ、これ別に入んなくても話し聞こえるじゃん、うるさいから。壁越しに聞こ。

 

おやおや?良いこと話してる奴らが居るな。絵本の内容の話。ファンか?あ、違いそう、めっちゃ貶してるわ。ノースブルーでこの童話を知らない奴は居ない。それなー。有名だもんな、嘘つきノーランド。

 

へぇ、ジャヤがあのストーリーの舞台だったのか。そりゃ知らんかった。ってことは、いよいよあの絵本は信ぴょう性を帯びてきたってことだな。必然的に、あの文献の考察も。よし、こんくらいでいっか。さて、モンブラン・クリケットのところに行こう。子孫なんだって、サイン貰えるかな。

 

 

&&&

 

 

くそがぁああああ!!!ぜんっっぜん船捕まらねぇから自力で走ったわ!!遠いわァァァァァァああ!!!馬鹿じゃねぇの!?誰だよ陸続きなら僕のが早い(キメ顔)とか言ったやつ!!僕だよ!!!!もう夜だわ!!!!ざけんな!!!

 

「こんばんは、モンブラン・クリケットさんですか?」

 

九割九分九厘九毛くらいの確率で合ってそうなんじゃが!だって頭に栗乗ってるもん。どうなってんの?それ。でもなんか、ちょっとかわいい?かも。

 

「あん?なんだ、お前。」

 

「お初にお目にかかります、ソラと申します。ルフィ達からお話は?」

 

ロビン辺りが言ってくれてると信じてる。

 

「あぁ、そういやもう1人居るっつってたな。背のちっこい黒ずくめの。お前さんのことか。」

 

そうそう。でもお酒のコードネームとかは持ってないぞ。飲まねぇし。

 

「ところで、皆は何処に?」

 

「南の森に行かせた。サウスバードっちゅう鳥を捕まえなきゃならねぇ。そうしねぇと、ノックアップストリームまで辿り着けねぇからな。お前さんも行ってきたらどうだ?」

 

はーん、なるほ。森ね。

 

「いや行かないです。疲れたし。虫もいそうだし。」

 

「...。」

 

そんな目で見るなって。しょうがないだろ、走ってきたんやで?港挟んでるから直線的に行けなかったんだよ。島をU字に爆走したわ、端から端まで。ちな、疲れたのは身体じゃなくて心の方。途中で夜になったから良かったものの、何度泣きそうになったことか。絶てぇ許さねぇわアイツら。(誰も悪くない)

 

「ここまで走って来ただって?お前さん馬鹿じゃねぇのか。はぁ、さっきまでアイツらと飲み食いしてたんだ。なんか残ってんだろ、それ食ってろ。」

 

マジか、いえーい。おっさんやさしー。あ、ほんとだ散らかってる。散らかりすぎじゃね?片付けよ。おっそうじおっそうじ洗いもの〜♪

 

あれ、ご飯1人分ちゃんと残ってるぞ。サンジが残しててくれたんかな?流石、気配りできる男は違いますなぁ。ありがたく、頂きまーす。むむむ、うまいうまい。夜だしフードも取っちゃえ。

 

「おい飯は残ってたか?うおっ、お前さんそんな顔してたのか!?なんで隠してやがるんだ、勿体ねぇ。」

 

勿体ないとは。日光苦手やねん、色々事情がありまんねん。

 

「あれ、また飲むんですか?さっきまで飲んでたのでは?」

 

「かてぇこと言うなよ。おら、こっちに座れ。」

 

良いけど。あ、やっぱ無理。ちょっとめんどくさいことになりそうだ。なんか来たわ。

 

「クリケットさん、もぐもぐ。ちょっと外うるさくなりますけど、許してくださいねぐもぐ。んくっ。ご馳走様でした。」

 

「外?あ、おい。ちょっと待てよ。」

 

待たぬ。なんかゾロゾロ来てるんだよ。いやゾロじゃなくて。仲間じゃないんでしょ?これ。あ、フードフード。

 

「おうおうニーチャン。あんまりオレを怒らせるなよ。」

 

「夜分にいきなり来て黄金よこせはねぇだろうチビ共。ウッキッキ、帰んな。」

 

おお。こっから見ると、人類VS猿人類って感じやな。

 

「「誰が猿人類だっ!!?」」

 

あ、ごめん、続けて続けて。

 

ん?待って黄金があるの?マジか見たい!何処にあるの??見たーい。

 

「おい、アイツらその黄金を奪いに来たって言ってんだが。」

 

「奪われちゃったら僕見れないです。」

 

「そうだな。お前さん、仲間が帰ってくるまで時間稼ぎ出来そうか?俺たちと一緒に。」

 

時間稼ぎ?倒すんじゃなくて時間稼ぎが良いの?適当にやってれば出来ると思うけど。コスパ悪いよ。まぁ良いけど。

 

「ぎゃはははっ!おいおい、用心棒は猿共とそのガキかぁ!?人間様にゃちょーっと勝てねぇんじゃねぇか?」

 

「...人が俺をなんて呼ぶか教えてやろうか?ハイエナだ!!ハハハ!!おいガキだからって容赦しねぇ、殺すぞ?」

 

「はぁ、そうですか。御三方は下がっていてくださいな。」

 

ハイエナって、自慢できる呼び名か?ちょっとよく分からんな、その感性。

 

あれ、こいつらさっきのお店にいた奴らじゃね?なんとなーく見覚えが。ちらっと見えたんだよな、金髪ヤンキーみたいな奴。

 

...乗せてもらえば良かったんじゃ?ってふと思ったけどダメだわ。そうしたら僕までこいつらの仲間と思われちゃう。走ってきて良かった。

 

わ、部下たちがいっぱい来たぞ。どうしよ、時間稼ぎって具体的に何すればええのん?傷つけないようにしろってこと?夜なんだけど。ただでさえ手加減難しいのに、夜なんだけど。どうしろと?あ、ちょうどいい技があった!これで勝つるっ。

 

「''刃技(じんぎ) 餓鬼宴獄(がきえんごく)''。」

 

辺りが薄暗くなり、おどろおどろしい空気が立ちこめる。ポツン、ポツンと増えていく、ボゥと揺蕩う青白い光。その光が段々と、人の様な形を象っていく。子どもに似た小さな影もあれば、大人と同じ程の筋骨隆々な影も。共通している点は、目はギョロりと大きく、牙が生えていること。そして、数は違えど額には大きな角が突き出ていることだ。

 

鬼の戯れ、ここに幕開け。

 

「遊んでおやり、餓鬼ども。」

 

「「「うっ、うわぁぁぁああああ!!?」」」

 

わっはっはっは、鬼と人の宴じゃ!!盛ってるのは酒じゃなくて海賊の涙だがな!!あれ?猿と栗は混ざんないの?あ、そう。

 

「...てめぇ、気味悪りぃ技使いやがって!!調子乗ってんじゃねぇぞオラァああ!!''スプリングスナイプ''!!!」

 

「おっと。」

 

ひょいっとな。なんでぇ、一緒に遊んでりゃ良いのに。ほら、あんなに楽しそうじゃん。泣くほど。

 

「ビビって泣いてんだろありゃ。」

 

そうかなぁ?

 

「悪魔の実の能力者なんだ、君。」

 

「はっ!見るのは初めてかぁ!?マグレで避けたくらいで良い気になるなよクソガキぃ!!俺はバネバネの実を食ったバネ人間!!!てめぇみてぇなガキが敵う相手じゃ...ねぇんだよ!!!」

 

お、パンチングと見せかけてのラリアットだ。粋なことするねぇ。でも遅いな。納刀。

 

「かっとーばせー、ぼーくっ♪」

 

ブォン!!!!

 

「グボァア!?!?」

 

「あ。」

 

ちょ、ミスっっったぁあ!!!時間稼ぎって言われてたのに!!!ストライクゾーンに良い球(顔)が飛んできたからつい...!!

 

おや?鬼共の中から1人抜けてきたぞ。誰やねん水刺す奴は。せっかくの宴だぞもっと楽しめよォ!?

 

おい猿2人!!ボーッとしてないでクリケットさん守れや!!働け!!!おまいらそれでも用心棒か!?違うか。

 

「''魚人柔術(ぎょじんじゅうじゅつ)人技(じんぎ) 柳凪(やなぎなぎ)''。」

 

「死ねぇぁああ!!...うぉおおお!?」

 

ぽーんと飛んでくなぁ。ちゃんと重心落とさないとダメやで。あ、さっきの奴んとこ投げちゃった。

 

「ソラ、つったか。お前さん強かったんだな。ヤツら相当のやり手だぞ。」

 

「いえ、それ程でも。約束守れなくてすみません。時間稼ぎしろって言われたのに、ちょっと加減が難しくて。」

 

「あん?...わっはっはっは!!倒せるんなら倒してくれた方がありがてぇに決まってんだろ!!こいつめ、生意気なガキだ!!くっくっく!」

 

はにゃ。なんだ倒してよかったん?ほんじゃ鬼さんらやっちゃって〜。パチンっ、とな。ちょ、僕の頭を撫でるんなら、僕にもその栗触らせてよ。

 

「「「ぎぃゃぁぁあああああああ!!!」」」

 

悲鳴とか恐怖って、鬼とか妖怪の好物なんだって。知ってた?

 

「くそ、ガキがァ...!この俺をベラミー海賊団船長!!ハイエナのベラミーと知ってて楯突いてんだろうなぁ!!あぁ!?」

 

「おれは副船長、ビッグナイフ・サーキース!懸賞金3,800万ベリーだぞ!!ベラミーに至っちゃ5,500万ベリーだ!!何処の海賊団だてめぇ!!?」

 

えっ。あ、こいつがベラミーなの?ルフィが無抵抗でボコられたって奴??マジでわからん、やられる要素が無さすぎて。

 

「君ら、麦わら帽子被った奴と刀三本持った頭が緑色の剣士、見たでしょ?あれ、ウチの船長と戦闘員なんだけど。」

 

「「...ぎゃっはっはっはっ!」」

 

「懸賞金3,000万の、あの雑魚野郎の手下かよ!!それならやっぱりさっきのはマグレだなぁ!?」

 

「おい、今なら許してやるぜ。土下座して頼むんなら、手下に加えてやるよ!!」

 

あー、やっぱりこいつらなんだ。ふぅーん。まぁなんだ、ルフィとゾロにもなにか理由というか考えがあったんだろうけど。僕は知らないから、別にイイよね。

 

(ひと)つ。友達の宝物(きんかい)を奪おうとしたこと。」

 

(ふた)つ。月が美しく輝く良い夜に、下衆な笑い声を響かせたこと。」

 

なんかごちゃごちゃ言ってるな。なんて言ってるか分からんけど。

 

「''スプリングスナイプ''!!!」

 

(みっ)つ。僕の仲間を、ルフィとゾロを笑ったこと。仏の顔は三度までだが、僕は仏じゃないからさ。バイバイ、ハイエナくん。」

 

ーーー''刃技(じんぎ) 龍月(たつき)''

 

「ごっ...はぁああああああ!!!!」

 

「おい嘘だろっ!?べっ、ベラミー!?ひっひぃぃいいいいいいいっっ!!!?」

 

ほー、船長を連れて逃げるくらいは出来るのか。ま、そこだけは評価して追わないでおいてやろう。

 

さぁー終わった終わった。つまらん戦いだったな。

 

「おいおいおい、ホントに勝っちまいやがった。1つの海賊団を相手に。」

 

「お前の技怖ぇえよ!!?なんだよあの鬼!?龍はカッコよかった!!」

 

「ホントだよ!!ちっとチビっちまったよ!!龍はカッコよかった!!」

 

うるさいよ。え?チビったの??ちょ、近寄らないで。アンモニア臭いから。えーんがちょ!

 

「そんなことより金塊見たいです。」

 

「くっくっく、海賊団を潰したことがそんなことか。大物だな、こりゃ。ほらこっちだ、見せてやる。おめぇらは手筈通り船を強化してやれ。」

 

「「アイアイサー!」」

 

船の強化ってなんぞ?あ、空飛ぶために必要なん。ほー、そんなことしてくれるんだ。ありがてぇ。え、羽付けるの?(メリー)に?草。

 

「おぉ〜。これが金塊、インゴット。初めて見た。」

 

「珍しいだろう。俺が長年海に潜って、やっと見つけたのがこんだけだ。」

 

ほぇー、すごい。そりゃ盗まれたくないわ。おっさんの努力の結晶だもんなぁ。でもあんまり潜りすぎるとよろしくないよな。

 

「潜水病は?」

 

「...んなもん気にしてられるかよ。こいつァ俺の人生をかけた闘いだ。クソッタレの先祖と俺の一騎打ちなんだよ。」

 

いや気にしろよ。死にたいのかおっさん。

 

「クリケットさんは、ルフィ達と宴をしたんですよね。」

 

「なんだ、急に。そりゃあしたが。」

 

「僕とも、こうして座って、今飲んでますよね。」

 

「あぁ。お前さんは飲んでないが。」

 

そこは触れてくれるな。まぁまぁ、1杯。ほら乾杯。僕お茶だけど。グイッと。おぉ、良い呑みっぷりで。かっくい〜。

 

「一緒にお酒飲んだりご飯食べて話したら、それはもうお友達ですよね。」

 

「まぁ。そう、だな...?」

 

よし。

 

「じゃ、友達の言うこと、ひとつ聞いてください。」

 

「...いくらオメェから頼まれたってなぁ。こいつは俺の金塊だぞ。そう簡単にゃ、やれねぇよ。」

 

いや、それは要らん。

 

「今度から海に潜る時は、僕の設計した潜水服を着てくださいな。つい最近僕も使ってるので、性能は保証出来ます。ウソップに頼んでクリケットさんの身体のサイズに合わせたものに作り直してもらいますから、それを使ってください。良いですね?」

 

「あ、あぁ?おい待て、そりゃどう言う...金塊が欲しいんじゃないのか。」

 

「いえ金塊は見たかっただけです。もう充分堪能しました。満足です。」

 

だから要らんて。なんでそんなに推してくるん。友達の宝物欲しがる訳ねぇだろ。

 

「これからも変わらず海に潜るんですよね?なら、身体は大事にしないと。貴方が倒れたら悲しむ人が居ることを、どうか忘れないで。」

 

お猿さん2人が悲しむだろ。もちろん僕も、ルフィ達だって悲しむはずだ。出会って数時間とか関係ない。

 

潜水服着たからって病気が治る訳じゃないけど、悪化はしなくなる。そのくらいしたって罰当たらんやろ。

 

「...、あんがとよ。」

 

おぉ、良かった頷いてくれた。丁度みんな戻ってきたみたい。ウソップ〜、また作って〜。

 

あ、お願いもういっこあったわ。サインくれ。




主人公の頭撫でられ率が上がってきている気がする。
ええ子ええ子。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

目が覚めたら...既に入国していた!!

ちょい暗めの会話有り。


めっちゃ大渦に巻き込まれてるなう。いや、巻き込まれてると言うか、自分たちから巻き込まれに行ってると言うか。あ、海王類が飲み込まれた。やばたにえん。草も生えない。

 

ウソップとナミとチョッパーの反応が超オモロい。めっちゃ泣き叫んでる。お猿さん達に恨み辛みを言ってる。まぁまぁ、落ち着くなり諦めるなり。僕も皆とこの状況を楽しみたいんだが、今はちょっとそんな余裕が無い。

 

あいつら。モックタウンに居た時から気配は感じてた。相当強い奴らが何人か。それがあいつらだわ。距離はある、筈なのに、まるですぐ傍に立って上から睨みつけられてるみたいな。そんな存在感が重圧となって降り注ぐ。

 

「...。(ニタァ)」

 

「ひっ...!?」

 

あいつ、あいつあいつあいつあいつあいつは。あの顔は。あの気持ちの悪い笑みは。あの、人を人として見てない淀み濁った眼は。

 

「...ソラ?ソラ!おいしっかりしろどうした!?」

 

「なんだ!?ソラどうしたんだ、こんなに震えて!?顔が真っ青だぞ!?」

 

「にげ、ろ...!」

 

「は?逃げろって、何から...?」

 

何でもいいから早くここからアイツらからあいつから逃げろって!!!!!!!

 

「待ぁてぇええええ!!!ゼハハハハハ!!!追いついたぜ麦わらのルフィ!!!テメェの1億の首を貰いに来た!!観念しろやァ!!!」

 

「1億〜??何の話だぁ!!」

 

あの視線から、逃れたい。マント越しであっても目が合うこの感覚を払拭したい。

 

「テメェの首にゃ1億ベリーの懸賞金がかかってんだよォ!!海賊狩りのゾロには6,000万!!そしてぇ!!」

 

気持ち、悪い。

 

「そぉ〜〜〜らぁ〜〜〜〜〜?私のカワイイカワイイお人形ちゃぁあ〜〜〜〜〜ん!!やぁああああっっっっと!!みぃ〜〜〜〜つ〜〜〜けたぁあ〜〜〜〜!!!!」

 

「「「!?!?」」」

 

気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い。

 

「ソラ!あいつのこと知ってるの!?ちょっと!しっかりしなさい、ソラ!!」

 

「なんだ、あの女...!?人形って、どういう??」

 

黒紫傘(こくしがさ)のソラァ!!お前は5,900万ベリーだぜぇえ!!ゼハハハハハ!!まぁお前は懸賞金が懸かっていようがいまいが関係無さそうだがなぁ!!」

 

「そ〜〜〜らぁ〜〜〜〜〜〜?返事が聞こえないわよォおお〜〜〜〜??いひひひひひひひぃっ!!また躾が必要かしらぁ〜〜?」

 

あ、やばい。

 

「...っ!...っ!?が、ぁ、はっ、はっ、はっ、かはっ!?」

 

「ソラ!!」

 

「まずいっ、過呼吸だ!アイツが原因なのかっ!?ソラを医務室に!!アイツをソラに見せちゃダメだ!!!少しでも遠ざけないと!!」

 

息が、出来ない。

 

「くっそ、息しろソラ!!おい、落ち着いて息を!!!」

 

 

&&&

 

 

「ん。」

 

「あら、目が覚めた?」

 

ロビン。と、電伝虫?誰かと電話?あ、何でもないのね、おk。

 

あー?あー、うん。なんだっけ、どうなったんだっけ。えーーーっと。

 

あぁ、そうだ。思い出した。あいつが居たんだった。

 

「空島は?」

 

「もう着いてるわ。皆は一足先に上陸してる。副船長さんの容態も落ち着いてたから。」

 

「そう、ありがとう。僕は副船長じゃないけどね。」

 

「うふふ、そう思ってるのは貴方だけみたい。でも、そうね。...ソラくん。これで良い?」

 

副船長要素どこにあるねん。こちとら器用貧乏なだけで特別に何か出来る訳じゃないんやで。ぜひ名前でよろしく。

 

「聞いても良いかしら。貴方と彼女の関係について。」

 

うへぇ、やっぱり気になるよなぁ。

 

「それを聞くためにロビンだけが残ったんだね。ま、いいや。いずれ知られるだろうから。ロビンなら知ってるかな?あいつのこと。」

 

「そうね。あの5人の中で、唯一彼女だけは知っているわ。船長さんや他の皆は知らないみたいだけど。」

 

そりゃそうだ、ルフィが知ってる訳ない。麦わらの一味は割と、他の海賊や海軍の情報には疎いからな。

 

「''蒐眼(しゅうがん)のメシア''。懸賞金4億9,000万ベリー。僕はあいつにとって、人形だった。僕はね、あいつの所有物だったんだよ。」

 

「!?」

 

あぁ、言い間違いとかじゃない。この世界の、この身体に憑依転生してすぐの話だ。

 

「僕の住んでいた島が、あいつの海賊団に襲われた。海賊に襲われるなんて、そんなに珍しい話でもないけど。島民は僕以外みんな殺されて、僕は、僕だけは殺されなかった。あいつが僕の容姿と眼を、珍しいからと欲しがったからだ。」

 

「ここ、腰んとこ。皮膚が引きつってるでしょ?身体中にこんなにたくさん傷がある中で、これだけさ、戦闘とか修行でできた傷じゃ無いんだ。あいつから付けられた所有物としての烙印を消すために、自分で焼いた時にできた傷。」

 

「っ!...人形、というのは?」

 

「...それ、は。僕はあいつに人形って呼ばれてたんだよ。ほら、僕、キレイな顔してるでしょ。キレイすぎて、人間味が無いって。人の形をした別のナニカ、人形みたいだって。それだけだよ。」

 

「そう。今はこれ以上は聞かないことにするわ。でも...いつか、貴方の心の内を知ることが出来たら嬉しい。ソラくん。」

 

「そ、だね。お互いにね。」

 

「えぇ...お互いに。」

 

しんみりしちゃったなぁ、せっかくの空島なのにな。さて、ロビンと話して少し気も紛れたし、行こっか。皆もう行ってるんでしょ?倒れた仲間を置いて新大陸に上陸なんて薄情すぎじゃね??どれだけ僕を蔑ろにしたら気が済む訳??

 

「うふふ、私じゃご不満みたいね。」

 

「そんな事ないよ。ロビンとこうして2人で話すのは初めてだったから、嬉しかった。でもどうせなら、コーヒーでも飲んで穏やかにお喋りしたかったかな。何でもないような話をさ。」

 

これはマジで。間違ってもこんな話がしたかった訳じゃねぇんだわ。

 

「ソラくん、コーヒー飲めたかしら。」

 

「僕は紅茶を嗜む。それと甘いものも。」

 

「ふふふ。えぇ、そうね。その時を楽しみにしておくわ。」

 

せやな。今度やろ!夜番の時とか、眠くならずに済みそうだ。よしゃ、一個楽しみが増えたわ。

 

「もう一つだけ良いかしら?これは質問では無くて確認なのだけど。」

 

「?いいよ。」

 

なんじゃらほい。

 

「その眼帯の下に隠された瞳について。もしかして、紫色だったりしないかしら。」

 

おやおや、よく分かったなぁ。さすがの慧眼恐れ入るね。

 

「せーかい。ほら、こんなん。」

 

「!!...ありがとう、綺麗ね。」

 

「そかな。ロビンも綺麗だよ。」

 

「あら、お上手。つまり、ソラくんはあの種族ってことになるのね。だから日光を避ける為にフードを被り傘をさしている。」

 

「そだよ。」

 

お世辞じゃないんだよなぁ〜。つか僕、プライベートでお世辞は言わない派。仕事上、仕方なく言ったりはするけど。まぁ何はともあれ、納得したみたいで良かった。知的好奇心が強いんだな、ロビンは。僕もその気はあるから分かるわ。

 

あれ...?なんだ、何か違和感がある。何か引っかかる。なんだろう、このモヤモヤする感じは。

 

あ。

 

「あ、れ?あいつ、眼帯してた?それにフードなんて、何を企んでるんだろう。前はナミみたいに、見られてなんぼって水着じみた格好してたのに。実際そんなことも言ってたし。」

 

「え?...えぇ、そうね。眼帯を付けていたわ。そう言えば、手配書の写真は両目とも見えている状態だったわね。服装も、ソラくんの言った通り。」

 

だよな。イメチェン?もしくは何かしらの暗躍中?眼は無くしたんか?だとしたら笑える。ざーまぁwwって感じ。眼を蒐集するって言うクソみたいな趣味のあいつが、自分の眼を無くしてるんなら滑稽だわ。次に会ったらボロクソに馬鹿にしてやろう。今回は不意打ちで気絶したけど、次からは大丈夫。むしろ見つけ次第ぶち○そう。汚物は消毒☆だゾ!

 

よし、そんじゃあ行こか。いや、ICOCAじゃ無くて。

 

ぉぉおおおおおおお!!!うっほぉーー!!!ここが空島すんげぇな!!!なんじゃこら雲が海やで!!!いや海が雲なんか!!!おっほほほほほ!!!やべぇー!!!

 

「起きたのか。」

 

「ゾロ。待っててくれたの?」

 

「違ぇよ、よく見ろ。錨下ろしてんだろうが。おい、テメェ何笑ってやがる。」

 

「ごめんなさい、何でもないの。」

 

舌打ちしなさんな。ねぇここ錨下ろせるの?あぁ、場所によって雲の質が違うんだ。下のは水っぽくてそっちのは密度が高いからちょっと硬め。土みたい。へぇ、面白いな。

 

「あれ、誰だろう?ルフィ達と一緒に居る2人。」

 

「ありゃなんの乗り物だ?」

 

「みんなの元へ行きましょうか。ソラくん、足元気をつけて。剣士さんも。」

 

大丈夫だよー、お気遣いどーも。よっ、と。おぉ、うはは。すんげぇ、ほんとに雲かよコレ。水っぽいけど、すごく軽い。おもろー!!

 

「ゾロ、何やってんの?」

 

「何でもねぇよ。」

 

「いまコケて「こけてねぇ。」...あ、そう。」

 

頭も服も超濡れてるが。転けてないのか、そうかそうか。ふーん、まぁいいや。

 

「あっ、ソラーーー!!良かった、目覚ましたのか!!いきなり倒れるから、おれビックリしたぞ!でも何ともないみたいで安心した、良かったな!」

 

「チョッパーが介抱してくれたんでしょ?ありがとうね、ドクター。」

 

「...どっ、!?ドクターなんて言われたってぇ!!嬉しくねぇぞっ、こんにゃろめ〜!♪」

 

うんうん、かわいいかわいい。みんなも心配かけちゃってごめんね、もう大丈夫だから。で、今どういう状況?

 

「空島料理!食べさせてもらうんだァ!!楽しみだな〜ソラ!!飯食ったら元気いっぱいになるだろ?」

 

「うん、僕もここの料理に興味ある。食べてみたい。」

 

「では、皆さんこちらへどうぞ。我が家へご案内いたします!」

 

いいねぇ〜楽しみやな!ところでおじさん、その乗り物は?あ、ウェイバーって言うのね。ベルベット?イスカンダル?(FGO)あ、違うの。ごめん、忘れて。

 

はーん、風がなくても進む舟ねぇ。乗りこなすには海を熟知している必要あり、と。大体10年かかるん?そりゃだるいわ。でも何となく僕なら乗れそう。どっからこの自信がって思うけど、何となくね。ほら、器用貧乏は伊達じゃないんよ。

 

とか言ってたらナミ乗ってるやん。そうそう、あんな感じに。でも、えー、すご。楽しそう。ちょ、僕にも貸して〜?それか後ろ乗っけてくんないかな。僕の身体なら割といけそうじゃね。ルフィめっちゃ僻んでて草。ぶっ飛んだ挙句に溺れてたもんな。あ、ナミ1人で乗ってっちゃった。しょぼんぬ。

 

そしてこっちは急に小難しい話をしだしたな。海楼石に含まれる成分パイロブロイン。角質の粒子。火山によって空に運ばれ、その際含む水分の密度によって雲の種類が異なる。ほぇぇ〜。密度が高けりゃ島雲(乗れるやつ)に、低けりゃ海雲(水っぽいやつ)になると。ふーんなるほど。

 

「それって、任意で密度を変えたり出来るんですか?例えば島雲の密度を低くして海雲に、海雲の密度をずっと高くして、鉄みたいに硬くしたりとか。」

 

鉄があるかは知らんけど。

 

「えぇ、出来ますよ。おっしゃる通り、密度を高くした雲である鉄雲という種類もあります。様々な種類の雲を使い分けることによって、我々は豊かな生活を築いているのです。」

 

「「分かったのかソラ!?すんげ〜〜!?」」

 

分からんかったから質問したんやで。ほんほんほん、にゃーるほど。それって一瞬で密度変えたり出来んのかな?青海でも使えるのか??詳しく知りてぇが、先に飯だァー!と思ったらダイアルの説明っぽい。つかその貝、ダイヤルって言うのか。空島特有のものらしい。不思議貝やな。

 

ほー、トーンダイヤルは録音・再生。ブレスダイヤルは風の収集・放出。ランプダイヤルは光。フレイムダイヤルは炎、フレイバーダイヤルは香り、ビジョンダイヤルは映像。

 

ほーーーー。ダイヤルは空島にとって欠かせない生活基盤、必需品になってるのか。進化の方向がすんげぇなー。

 

サンジの叫び声が聞こえる。厨房楽しそうだなぁおい。僕もね、食材かダイヤルか迷ったんだ...。ダイヤルを取ってしまった。まぁ良いけど。収穫あったし、あのガレオン船で拾った貝の正体も分かったし。

 

「さぁ出来たぞ!!空島特産フルーツ添え スカイシーフード満腹コースだ!!!」

 

「「「んまほぉ〜〜〜!!」」」

 

フルコースや!エビのグラタン美味しそう〜!チャーハンも良い匂い。うんま。うんまうま。最高やで。ところで空島特産フルーツについて詳しく。

 

コトり、と目の前に電伝虫とスープが置かれる。スープからは湯気がたちのぼっていてとても美味しそう。香ばしい。んでもなんぞ、これ。なんで電伝虫とスープ?え、電伝虫のスープ?ってこと??え???(パニック)

 

「お前んのだ。倒れた時に落ちたんだろ、拾っといた。スープは余った食材使って1人分作れただけだ。お前が味見して、問題ないようなら次はアイツらにも振る舞う。」

 

「ふーん?なんだろ、気遣いの味。いや心遣いの味?ま、どっちにしても美味しいよ。」

 

何その呆れた目。え?どんな味だって?知らないよしょうがないだろ、そう感じたんだからさぁ!温かくて暖かくて落ち着く味だよバッケロー!!(完全に褒め言葉)

 

「そうかい、そりゃ良かったな。ん、?おいナミさんが見当たらねぇ!」

 

ナミが居ない?...あぁ、確かにちょっと遠くに居るみたいだな。視認できる範囲じゃねぇわ。んでも、止まってんな。なんかあったんか?

 

「まさか、神の住む土地に向かったんじゃ。」

 

ん、神つった?芋ジャージのこと知ってんの?え、あいつ空島に住んでるの?あの1DKの部屋で空島に??うそだぁー。日本じゃねぇのあれ。

 

「アッパーヤードと呼ばれています。絶対に足を踏み入れてはいけない、聖域なんです。」

 

「神がいるのかっ?絶対入っちゃいけない場所に!?へぇーー、そっかぁ〜。絶対入っちゃいけないんだなぁ〜〜。へぇーー!なるほどぉ。」

 

草。わざとらしすぐる。嬉しそうに言いやがるぜ。でも別に入っても面白くないぞ、あの部屋。汚いし暗いし狭いし芋いし。一生モニター見てられるなら全然良いと思うけど。でも芋ジャージは独り言うるっさいしなぁ。一緒にいるとストレス値半端なさそうだぞ。

 

「おい何ぼーっとしてんだソラ!早くナミさん探しに行かねぇと危ない目に遭ってるかもしれねぇだろうが!」

 

「今のところ大丈夫だけど、早く合流した方が良いのは確かだね。空島のこと、まだ全然知らないし。」

 

 

&&&

 

 

メリーに乗って準備してたら変なやつらが来た。不法入国者だのなんだの言ってる。何の話だ。

 

「入国料を支払っていないものね。」

 

「いやでもよ、あのばぁさん通って良いって...!」

 

「???」

 

いやマジでなんの話。みんな一応心当たりあるらしいけど。

 

「お前は寝てたからな。」

 

ほ?ほんほん、ふーん。なるほど?入国する時にスカイピアへようこその門的なものを通ったと。んで、そこに居た梅干しばぁさんに入国料を提示されたけど支払わず、でも通ることは出来た。それでこの仕打ちかよ、って訳ね。

 

OK理解。

 

でもそれ、僕関係あるか??顔バレしてないやろ。船室で寝てたし。

 

「むっ!?そこのフードを被った少年!君は...写真は無いが、怪しい子どもだ。君も不法入国者かね!?」

 

「僕、子どもだから、よくわかんない。不法入国ってなぁに?難しいよ。」

 

「違うのか...。いや、それならば良いのだ。しかし、であればなぜその船に?まさか、誘拐かっ!?」

 

「「「いやいやいやいや。」」」

 

「否定するか!誘拐をした罪、虚偽を申し立てた罪!あの少年がフードを被っているのが何よりの証拠だろう!顔を隠し何処から拐ってきたのか分からなくさせるためだ!!」

 

「「「ちがうちがう。」」」

 

計画通り。(ゲス顔)いやぁこんなに上手くいくとは。あのおっさんは自己完結型の極地やな。こんな上司は嫌だランキングでトップ5に居そうな性格や。話聞かねぇし自分の間違い認めねぇしよくわからん方向に突っ走るし。まぁ今その性格を利用してる僕が言えたギリじゃねぇけどな!!

 

とりあえず誤解を解いたは良いが、(誘拐じゃない事だけ)すると次は入国料を支払えときた。罰金含む、通常の10倍の額。換算すると700万ベリー。ベリ高やな。1ベリー1万エクストルって。経済格差。700万かぁ。賞金首としてみたら安いけど、支払いってなったらめっちゃ高いな。ウチにそんなお金はありません。ビンボー海賊なんだから。ピースメインだししゃーなし。いつかどんでん返しが来るはず。もしくは鶴の恩返し。

 

不法入国した罪、ウェイバーを壊した罪、ウェイバーを盗んだ罪、誘拐した罪(違う言うたやん)、嘘をついた罪(これも無くなるんじゃね)などなど段々と膨れ上がる罰金に対してルフィのイライラも膨れ上がる。ウケる。

 

そもそも海賊に対して法を強制するってどうなんだ。根本的に間違ってる気がする。法に縛られないから賊なんやで。罰金とかそういうのは法のもとに生きる人達でやってちょ。それでも支払わせたいんなら、潰し合いしかないよなぁ!?おぉん??

 

「逆らっちゃ駄目よルフィ!!」

 

ナミだ。ちゃんと帰ってこれて安心した。無事なことだけしか分からなかったから、ちょっと心配してたんだよな。

 

「良かった、まだ罰金で済むのね。700万ベリーか。...高すぎんのよっ!!」

 

轢き飛ばしたんやが。うわぁ、頬に逝ったわ。これは痛い。理不尽な多額請求には理不尽な暴力をってか。目には目をでさえない理論。ナミにしか出来ねぇな。しかも気にせずウェイバー楽しかったとか言ってるし。切り替え早。

 

お、逃げるのか。海賊って逃げるもんだよな。とんずらとんずら!スタコラサッサ!

 

「まぁてぇぇええぃいいっ!!!今のは完全に公務執行妨害!!!第5級犯罪に該当する!!即ち!!!」

 

「神・エネルの御名において!!お前たちを!!雲流しに処す!!!」

 

...。

 

あの芋ジャージって、エネルって名前だったの??とか言ってみる。雷だろ、なんかうっっっすらと記憶がある。

 

お、戦闘だ。僕は何もしないけどな。バレちゃうから。

 

おおおぉ!!?雲の道ができた!!なんだこれ楽しそうだな!!ウェイバーでスイスイ行ける感じか?おおー、小舟型じゃなくてボード型ね。

 

「ゴムゴムのっ!花火!!」

 

いや秒殺ぅ〜。面白技術をもうちょっと見たかったなぁ。引っ張れよ戦闘を!!尺を延ばせよぉ!!!この素人がぁ!!!(なんの)おっとゾロもサンジも終わってるし。こいつら強ぇえな。

 

「で、今の船の経済状況は?」

 

ゾロから経済なんて言葉が出るとは...!!そんな高度な文明の知識を身に付けていたなんて!!(失礼)

 

「残金5万ベリーよ。ほんとに切羽つまってんの!持ってあと1日2日ね。」

 

「5万!?おいおい、そんなにねぇのか。」

 

「なんでそんなにビンボーなんだ!?!?船長として言わせてもらうけどなおめぇら、ちょっとは金の使い方を考えて...。」

 

「「「お前の食費だよっ!!!」」」

 

いつでもどこでもコントになるのって才能だと思うの。腹痛てぇわ。

 

まぁ確かに一味のお財布は萎んでるなぁ。でも多分ナミとかロビンは別で持ってる気がする。僕もそうだけど。こういう時のためにな!!まぁ出す気は無いけど。

 

「ふ、ふふ。バカどもめ、これでお前たちは第2級犯罪者。泣こうが喚こうが!アッパーヤードの神官たちの手によって、お前たちは裁かれるのだ!!へそ!!」

 

へそ。挨拶と思ってたけど、そういう訳でも無いのか?汎用性高いなら頻使しようかな?

 

「ビビってんのか?おい。」 「へそ。」

「ぶっ殺すぞてめぇ!!」 「へそ。」

「そんなんで煽ってるつもり?」 「へそ。」

 

強いなこれ。ワンピ世界は煽り耐性低いやつ多いから、絶対ピキるやろ。今度誰かに使ってみよ。




オリキャラが出ましたね。
また名前被ったりしてないかな?とか思ってます。
笑えねぇ...。こあい。こあいよお。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

太陽VS熱の槍!

お腹すいた。


寝て起きたら祭壇に祀り上げられていたぜ。ついに?ついに僕の顔がふつくし過ぎて?神に贄にされる程に??美しいならぬ、ふつくしいのだ。

 

閑話休題。まったくお前はいつもいつもすぐ脱線するよな!!!(1人ツッコミ)

 

日差しにやられて船室に入って。それからそんなに時間は経ってない筈なのに。場面が切り替わり過ぎなんだよ!どこだよここ!!説明求む。

 

「あれ、チョッパー。どうしたの、大口開けて。目もまた飛び出てるよ。みんなは?」

 

「はっ!?そうだ、ソラが居たんだった!おれ、1人じゃなかった!」

 

なになにどゆこと?

 

「大きなエビみたいなやつに、ここまで連れて来られたんだよ!ゾロとナミとロビンは探索に行って、おれは船の修理を任されたんだ!」

 

あー、何となく分かった。ルフィとサンジとウソップは船に乗ってない状態で、僕らは連れ去られてここに来た。探索組はゾロが居るから平気だろうけど、チョッパーは1人だから危険なのは船番の自分だと思った訳ね。なるほ。

 

「ん、その笛なぁに。」

 

「え?これは空の騎士の...あっそうか!あの時もソラは寝てたもんな!この笛を吹くと、空の騎士が来ておれ達を助けてくれるんだ。でも1回きりだから、大事に使わないと。」

 

「空の騎士。その人何者?」

 

僕に仕える騎士が僕の知らないところに居た件。

 

「分からねぇ!ペガサスに乗ってる変な騎士だ!でも助けてくれたから良い奴だと思うぞ!」

 

ペガサス...ふーん。べっ、別に??別に全然ペガサスとか気になってませんけど?ペガサス見たさにその笛吹きたいとか、これっぽっちも?思ってませんよ。じぃーーーーーー。

 

あ、モコモコ小さな身体で隠された。ま、いいや。んでもホントに良い奴なら何度でも笛使ってよさそうだけど。なんで1回だけなんやろ?

 

あー、早速使うことになるかもなぁ。

 

「チョッパー。その笛、一応準備しといた方が良さそう。」

 

「え?」

 

敵が来たから。

 

「おいおいなんだよ。殺して良い生贄はガキとたぬき1匹ずつか?つまんねぇなぁ。」

 

「!?」

 

「つまんないなら見逃してくれるかな。」

 

たぬきじゃねぇけど。トナカイだけど。

 

「そいつァ無理な相談だな。ま、神に逆らうお前らが悪りぃ。諦めろ。」

 

「芋ジャージ?」

 

「は?」

 

いや、何でもねぇわ。

 

「チョッパーは船の守りを。あの鳥が攻撃してきたら、迎撃するなり説得するなりよろしくね。」

 

「わ、分かった!」

 

ん、良い返事や。じゃ向こうでやろっかね。ここだと船が危ないし。ただでさえ壊れてんのに、これ以上壊されちゃ堪んないぜ!

 

「あん?馬鹿かよ、どっちにしろお前らはここで死ぬ。この船を燃やそうが壊そうが関係ねぇだろ。」

 

燃やす?なんで燃やす?燃やす手段があるって事か?フレイムダイヤル的なあれか。うーむ、それは困ったぞ。尚更ここで戦う訳にゃいかねぇな。

 

「死んどけ。」

 

おっと。むっ...なんか熱気が...蹴っとこ。バチコーンっと。ふぁっ!?槍から火炎が!?フレイムダイヤルちゃうやんけ!!詐欺やぞ!?

 

「うぉっ!?チィっ!運が良いなガキ。この熱の槍(ヒートジャベリン)を避けるか。だが次はねぇ。オラァ!」

 

薙ぎ払い。ちょっとここで長引くとマジで船が危ないので、一旦森にぶっ飛ばそう。傘のスイングで相殺し、そのまま回し蹴りって、あら?

 

「回し蹴り。効くかそんなもん!!」

 

「なるほど、ちょっと厄介。」

 

見聞色の覇気持ってんのかぁ。ったりぃなぁおい。なんで前半の海に覇気使いおるねん。

 

「''刃技(じんぎ) 紫電一閃(しでんいっせん)''。」

 

「なっ!?ぐっ...ぅうおぉおお!?」

 

おいまじか、これも防ぐのか。防ぐのでギリギリっぽいけど、割と速度重視の技使ったんやが。まぁ良い、とりあえず吹っ飛んだから目的は達成した。

 

「じゃあ、チョッパー。メリーよろしく。」

 

「あぁ、分かってる!ソラも気をつけろよ!」

 

はいな。まぁ負けはしないんだけど、どうやって勝つかだよなぁ。見聞色は便利だけど、その分相手も使ってたらめんどくさいんだよ。対処法はいくつか有るけど。

 

「ぐ、てめぇ。ただのガキじゃねぇな。俺の心綱(マントラ)を振り切りやがった。」

 

「マントラ?って何。」

 

「ソイツをお前が知る必要はねぇよ!!」

 

なんで言うたんや、気になるやろ。とりあえずその火炎槍は危ないからしまって欲しい。

 

ボォォオオオオオ!!

 

「槍の突き、払い、鳥の口から火炎放射に突進、くちばしの噛みつきっと、危ないな。」

 

''疾風迅雷(しっぷうじんらい)''・''蓬雷風烈(ほうらいふうれつ)'''

 

「ごはぁっ!?!?てめ、ぇ!どうやって!?」

 

「君も見聞色の覇気を使えるらしいね。もしかしてさっきのマントラって見聞色の事?同じ覇気の使い手同士が戦った場合、勝つのはより強い覇気を扱う方だ。」

 

「僕の攻撃が当たるってことは、君より僕の見聞色の覇気の方が練度が高いってことでしょ。それと単純に速度の問題だよ。反応できてなかったでしょ、さっき。」

 

知らんけど。

 

「...はぁ、はぁ!てめぇが俺より強いだと!?俺より速いだとぉ!?ガキが調子乗ってんじゃねぇぞ!!森に誘い込んだのは失敗だったなァ!!ここは今から紐の試練!!生存率3%、お前ごときにクリア出来るか!!?」

 

紐の試練とは。わ、なんかいっぱい紐が張り巡らされてるな。ワイヤートラップ的な。そして自分は鳥に乗って飛んで攻撃するから特に影響は無い、と。なるほど。

 

でもこれあんまり意味無くね?特に刃物使うやつには。

 

「''刃技(じんぎ) 蓬雷轟風烈(ほうらいごうふうれつ)''。」

 

「はっ!バカがどこ狙ってやがる!」

 

お前じゃねぇことは確かだな。自分を中心として3方向に斬撃を放つ。木々は倒れ見晴らしが良くなり、1本残らず紐は断ち切った。これで動けるようにはなったんだが。

 

問題は相手が空を飛んでるということだ。確かに僕も跳べる。が、長時間の滞空は望めないんだよなぁ。木も斬っちゃったしな。

 

「てめぇ気づいてやがったのか、紐の試練の罠に。」

 

「え?あ、うん。なんかいっぱい紐撒かれてたね。おっと、僕に飛ばすの止めて。」

 

「ちっ!心綱(マントラ)を使えるのは本当らしい。だが、お前は俺に攻撃を当てることはできねぇ!いくらお前が斬撃を飛ばそうと、この距離なら避けるのは容易い!己が剣士であることを恨め!!」

 

「そだね、っと。返事してる時に炎飛ばすのも止めて。」

 

まぁ斬撃は避けられるだろうな。一直線にしか飛ばないから、僕が攻撃モーションに入った瞬間に見聞色全開で回避したら良いんだし。

 

でもちょっと舐め過ぎだなぁ、それは。

 

「僕、剣士なんて言ったっけ。」

 

「はぁ?剣使ってんだから剣士だろうが。」

 

何その何言ってんだコイツ、みたいな顔。失礼しちゃうぜ。

 

「刀使いではあるね。正確には、刀も使うってだけだけど。」

 

さて、久々の銃撃戦と行こうじゃないか。但し一方的な蹂躙だろうがな!!

 

納刀。そして傘を左手に持ち替える。

 

「はっ!諦めてりゃ世話ねぇな!!」

 

また鳥の火炎放射か。もうそれ、見飽きたんじゃが。

 

「''白炎瀧(はくえんろう)''・''紅炎弾(こうえんだん)''。」

 

ゴォォオオッッッッ!!!

ドドドドドドドドドドッ!!!

 

「なっ、なにィ!?お前も炎を使いやがるのか!!しかも銃弾だとっ!?剣士の筈だろう!!?」

 

だから剣士ちゃうねん。刀も使うし傘も使うし銃も使うし体術も使うんよ。見聞色付きで。え?そんなのどうやって勝つのかって?そりゃ器用貧乏なんだから、全てエキスパートって訳じゃない。圧倒的な一には適わないさ。...やめてね、強いひと来るの。マジ無理だから。

 

それと銃弾じゃなくて炎弾な。(どっちでもいい)

 

轟々と燃える白い炎。飲み込まれたかな?そう言えば名前も知らないや。別に良いけど。敵だし。

 

シュルルルルルルルルルルっ

 

「はい?」

 

え、なに。は?消えたんだけど、炎。なんか炎の中から出ていらしたわ。鳥も一緒に焦げ焦げだけど大丈夫そ?焼き鳥か?

 

「俺に...炎は、効かねぇよ...っ!ふぅっ、はぁっ。」

 

「効いてるやん。」

 

おっと、いかん口調が。つい突っ込んでしまった。だって焦げてる癖に強がってるんだもん。それにしてもあの槍、まじで火炎特化型やな。

 

「炎を吸収・放射できる槍ね。」

 

「よく、、、気づいたじゃねぇか、はぁっ。どんな気分だ?唯一俺に届き得る炎が奪われた気分はよぉ!?てめぇの炎に焼かれて消えろ!!貰うぜてめぇの技!!''白炎瀧(はくえんろう)''!!!」

 

白炎瀧(はくえんろう)は防御の技であって攻撃用の技じゃないんじゃが。あーーーーくっそ暑いな。マント燃えないと良いけど。

 

左手を突き出す。

 

シュルルルルルルルルルルっ

 

「...は?」

 

「俺に炎は効かねぇよ、だっけ。」

 

「...は、なっ、はっ!?!?」

 

はな?めっちゃ驚くやん。顎外れてないかい、それ。目も飛び出てる。その顔芸ってみんな出来るんかな。僕できないんだけどな。やろうとも思わんけど。

 

「ギラギラの実の能力者。全ての炎は僕のものだ。覇気も、炎も、僕の方が上らしいよ。残念だったね、紐の試練の神官さん。」

 

「なっ、ちょ、待てっ!?お前、どういう...なん、ロギアか!?!?」

 

「太陽の化身、とかじゃないかな。左腕だけだけど。」

 

''神技(じんぎ) 掌天昇(しょうてんしょう)''。

 

「まっ、待て!!ひっ、ぎぃいゃああああああああああ!?!?!?」

 

いくら炎を吸収できるって言っても、流石に太陽そのものは無理だろう。掌サイズだとしても。

 

さー、終わった終わった。見聞色使いだからめんどくさいと思ったけど、能力的に僕の下位互換みたいな奴だったから良かったわ。特に苦労も無し。マント燃やされてたら終わってたけど。あ、斬っちゃった木は持っていこう。メリーの修理に使えるだろうから。

 

 

&&&

 

 

「あれ、いつの間にかみんな揃ってる。」

 

「あっ!!ソラぁ〜〜!!!無事だったぁ!!良かった、俺心配でっ!!」

 

およ、可愛い突進だ。受け止めますぜもちろんぐへへじゅるり。おっと危ない、ヨダレが。

 

「だから言ったろチョッパー。心配するだけ無駄なんだよ。」

 

「すげぇなぁ〜、ホントにサンジの言う通りだったよ!」

 

待て待て、流石に敵と戦闘してるのに何も心配いらないは悲しいやろ。普通に心配して欲しい人。はーい!!

 

○時だよ!全員集合シチューパーティ〜!!という事で、夜に行うキャンプの準備をしているらしい。良いね、キャンプ。あ、シチューもあるの?食べる〜!!あ、そんなにいっぱいはちょっと。

 

サンジ特製空島シチューを食べつつ、ナミの講義を聞いている。若干1名は食ってるだけだが。まぁしょうがない。

 

「ノーランドの日誌に書かれてた黄金について思い出してみて!」

 

なにそれ。そんなの見てない読んでないです。またこのパターンンンン〜?なんかさ、1人行動は割と好きでやってるんだけどさ。こう、みんなが持ってる情報と僕の情報に差があるのはどうかと思う訳よ。疎外感がさぁ?

 

「そこんとこどう思う、ゾロ。」

 

「知るかよ、単独行動が多いてめぇの自業自得だろ。今聞きゃ良いじゃねぇか。」

 

やってるしぃ。現在進行形で脳内情報のアップデートしてるしぃ。

 

「安心しろソラ。お前よりもゾロの方が分かってねぇぞ、アホだから。」

 

「叩っ斬られてぇのかてめぇっ!?」

 

「おーおー、やってみろよおバカマリモくん。」

 

「ぅるさいってのアンタら!!!」

 

ウケる。怒られてやんの。は?僕のせいじゃなくない??なくなくなくなくなくなくない?(どっち)

 

ほーん、髑髏の右目に黄金を見た、ねぇ。なるほど、地図上で見た時の位置がそういう風に見えたって訳か。

 

何でも良いけどナミの眼鏡姿初めて見たわ。ヘアゴムも。ん?うん、似合ってる似合ってる。

 

「コホン。そういう訳で、明日は2手に別れましょ!船を守るチームと黄金探索チームよ!」

 

「お宝〜〜!!!」

 

黄金かあ、海賊らしくなってきたな。こりゃ明日が楽しみだ。ま、楽しみはこの後もそうなんだけどっ!

 

「夜も更けたわ、用のない火は消さなくちゃ。むやみに火を焚くと、敵に位置を知らせてしまうから。」

 

「バカなことを...おいおい、聞いたかウソップ。ロビンがあんなことを言ってるぞ。」

 

「仕方ねぇよルフィ。ロビンは闇に生きてきた女だ。知らねぇだけさ。」

 

「どういうこと?」

 

困惑してるぞ。ロビンを動揺させるバカ2人。知的キャラに勝てるのはいつだってバカだけなんだ。ロビンにバカって言えるバカを心から尊敬するわ。(バカ)

 

「「するだろうがよォキャンプファイヤーをよぉ!!?」」

 

「バカはあんたらでしょうが。」

 

正論パンチ。

 

「この森がどれだけ危険かわかってないみたいだから教えてあげるわもう一度ね!!神官にゲリラだってウヨウヨ居んのよ!!それ以前に夜の森ってだけで危険なのよ!!猛獣だって化け物だって怪物だって居るかもしれないんだから!!」

 

理論武装。そして微塵も間違ってない。

 

「しらん。」

 

草。

 

「〜〜〜っ!!言ってやりなさい、ソラ!!」

 

いや飛び火〜。はぁ、まったく仕方が無いな。ここはガツンと言ってやらないと。

 

「ルフィ。」

 

「...。(ゴクっ)」

 

「火は任せて。」

 

「「「ぃよっっしゃぁあ〜〜!!」」」

 

「ちょっと!!?」

 

うははは、だってキャンプファイヤーしたいもん。楽しそうだし。いひゃいいひゃい、やめれほっぺが伸びる。

 

「「組木は出来たぞ!」」

 

ノリ良すぎかよ。おいおい大丈夫かこの一味、誰か止めろ〜。(思ってない)はい点火〜。もう逃げられねぇぜ!!ふははははははは!!

 

「まぁまぁ。明日死ぬかもしれないんだし、今を全力で楽しまなきゃね。」

 

「物騒なこと言ってんじゃないわよ!!」

 

涙目ウケる。お、なんかいっぱい野生動物が。オオカミか?良いねぇ、無礼講じゃ!飲めや歌えや食え踊れ〜!

 

ドンドットット ドンドットット!!

ドンドットット ドンドットット!!

 

「「「あっはっはっは!!!」」」

 

「「「ゥウォウォウォーーーン!!」」」

 

やっぱり海賊と言ったら宴だよな。みんな笑顔で楽しそうだ。あんなに反対してたナミも、ロビンもみんな良い表情。よかったよかった。

 

、?誰か来るな。今のところ敵意は無いから、宴を邪魔するやつじゃないっぽいけど。空から来るってのが問題だ。敵になり得るなら潰しとくか。

 

「ゾロ、ロビン。」

 

「あん?なんだ。」

 

「どうしたの?」

 

「空から誰か来るよ。1人と1匹。」

 

2人は目を凝らし夜空を見上げる。煙に邪魔されて見えずらいみたいだが、誰かは分かったらしい。

 

「変な騎士だな。」 「空の騎士ね。」

 

それは、噂の。あの伝説の、笛の。伝説の、ペガサスの。

 

「「それは期待しない方が。」」

 

え?

 

「むむっ。お主らであったか。アッパーヤードが燃えておるから何事かと。エネルの居る土地でここまで馬鹿騒ぎする者なぞ他におらぬぞ。全くもって度胸があるな。」

 

おや、案外おじいさんなんだな。さて、ちょっと眼帯外してペガサスを...ペガサスを...ペガ...サ...ス...。

 

そっと、眼帯を着けた。

 

「はぁ。」

 

「だから言ったろうが。」

 

知らない方が良いことって、あるよね。

 

「始めて見る顔だな。お主も仲間か?」

 

顔は見せてないけどな。

 

「そうです。」

 

「我輩、空の騎士 ガン・フォールと言う。よろしく頼む。」

 

「ソラです。よろしくお願いします。」

 

これいつも思うんだけどさ、自己紹介の時のよろしくって、一体何をどこまでよろしくして、されてるんだろう。毎回不思議に思うわ。

 

「ほう、お主の名前はソラと言うのか。良き名だ。空島にぴったりの名であるな。」

 

それな。全然空島生まれとかじゃねぇけど。でも僕はこのおじいさん気に入ったんだ。名前を褒めてくれたから。ペガサスには騙されたけど、まぁ許してやろう。(何様)

 

「お主らにとってこの地面は、あって当然の物なのだろうな。」

 

「「「...?」」」

 

せやね。空島と違って、青海の島は土でできてるから。

 

「空にこれは元々存在しないものなのだ。島雲は植物を育てるが、生むことは無い。緑も土も、本来空には無いものだ。」

 

「我々はこれを、''大地(ヴァース)''とそう呼ぶ。空に生きる者たちにとって、永遠の憧れそのもの。」

 

なるほどね。大地に住まう者たちが、大空を飛ぶ鳥に憧れるように。空に住まう彼らにとっては、この土や緑が憧れなんだな。無い物ねだりだよなぁ。気軽に行き来できる訳でも無いから、余計にその思いは膨らむんだろう。

 

「ところでおじいさん。」

 

「む?我輩、名をガン・フォー...。」

 

「お腹の辺り、怪我してますね。大丈夫ですか?」

 

「!?お主、なぜ。」

 

気配や。なんか痛そうな気配したんやで。

 

「手当てをしましょう。こちらに。」

 

そんなに酷くは無いみたいだけど、一応な。バイ菌入ると怖いし。

 

「チョッパー呼ぶか?」

 

「いや、いいよ。あんなに楽しそうにしてるし。僕でも処置はできるレベルだから。」

 

「、かたじけない。」

 

構わんよ、このくらい。名前を褒めてくれたお礼だ。まぁ?そこまで言うなら仕方ない、1ホイッスルプラスで貰っとこうかな。(吹きたいだけ)

 




今回の戦闘は難しかった...。
何故って、原作読んでも相手の技名とか書いてないから。
いつも、戦闘シーンは適当に技名叫んでなんか雰囲気で
乗り切ってるのに、今回その手は使えず。

いや無理ぃ。普通に無理ぃ。とか思いながら描きました。
完全上位互換のソラくん。どんまい、名も知らぬ神官よ。

原作ではワイパーがリジェクトしてたけど、この世界線
ではソラくんにあしらわれました。
びっくり顔はエネル参照で。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

雷神VS太陽神

ねます。


朝が来て。

 

ナミによるチーム編成が完了した。結果は以下の通りとなった。

 

黄金探索チー厶 : 5人

ルフィ、ゾロ、チョッパー、ロビン、僕

 

メリー運搬チーム : 3人(+α)

サンジ、ナミ、ウソップ(+ガン・フォール、ピエール)

 

人数に偏りがあると意義を申し立てたところ、船に乗って移動するだけだからそんなに人数は要らない、変な騎士も居るから大丈夫、そんなことより黄金持ってきてと言われた。そんなこととは。おじいさん渋ってるのわかってて言ってるよね。生活がどうのとか言ってるんだけど。

 

まぁ良いや。(逆らえない)サンジも居るし大丈夫だろ。掌くるっくるだなぁおい!?

 

探索チームは現在地より南へ真っ直ぐ行った所にある遺跡に行き、黄金を盗って東の海岸へ。

 

メリーチームは雲の道(ミルキーロード)を辿って島を出た後、島の海岸沿いをぐるっと回って東の海岸へ。

 

といった流れである。おk把握。時間とか決めとかなくてええのん?とは思うが、できるだけ早めが良いって感じやろな。理解。

 

「んじゃ、東の海岸で落ち合おうぜ!」

 

「よーし、そんじゃあ行くかぁ!!!」

 

「「「おおっ!!!」」」

 

えい、えい、おー。

 

「おいどこ行くんだゾロ!そっちは逆だ、西はこっちだぞ!まったく、お前の方向音痴にはホトホト呆れるなぁ。」

 

「お前はなんでそう人の話を聞いてねぇんだルフィ!髑髏の右目なんだから右だろうが!バカかてめぇっ!!」

 

バカ同士がバカにしあってるぞ。もう何も喋らず後ろを着いてきて欲しい。(切実)

 

「お二人さん、僕らは南を目指してるんだよ。君らが向かってるのは西と東ね。ちなみにルフィが向かってる方が東。西じゃない。」

 

「なっはっは、そっかぁー。南か、それを早く言えよ〜。」

 

ルフィは基本的にナミの話を聞かないよね。反抗期か何かかな。

 

「ルフィ、それ良い雰囲気の棒だなぁ〜!」

 

「なははは!だろ、やらねぇぞ!自分で見つけろ!」

 

「あぁ〜、棒、棒...。」

 

棒が欲しいのか。棒ってか枝じゃね?冒険家とか探検家みたいで雰囲気出るからかな。よく分かんねぇ。

 

「でも俺、この森はもっと怖いと思ってたのにな!案外大したこと無いんだな〜!がはは!」

 

「なんだ?今日は強気なんだな!」

 

「でもまぁ確かに拍子抜けではあるな。お前の気持ちも分かるぜ、チョッパー。」

 

「だろ!?がはは!」

 

チョッパーは強気の時には笑い方が「がはは」になる。脳内メモっと。よし、永久保存完了。

 

「クス、おかしな人達。そんなにアクシデントが起こって欲しいの?」

 

既に起こってるけどなぁ、アクシデント。

 

「チョッパー、残念だったね。」

 

「え?何が残念なんだ?」

 

「上、見てみな。」

 

「うえ、?...っぎぃぃいやぁあああーーー!!!だっ、大蛇ぁぁああああ!?!?」

 

「「「!?」」」

 

だからその顔やめなさいってば。変なシワ付いちゃうよー?

 

「ジュラララララ。」

 

うーむ、超デケェな。有り得ねぇほどでかい。全長が分からないくらいにはでかい。空島の環境は植物だけじゃなくて、野生生物にも何らかの影響を与えるのか?

 

「にーげろーー!!!だっはっはっは!!!ウワバミだぁーー!!!」

 

たんのしそうに言いやがって。おっ、と。攻撃範囲広いなぁ。危ない危ない。チョッパー以外は割と冷静だな。

 

「でっけぇ野郎だな!ぶった斬ってやる!!」

 

「ルフィ!チョッパー!噛みつきが来るよ!」

 

「よし来た!うっはぁ!」 「ギャー!!!」

 

デカいくせに速いな。森の中だから木が邪魔して思うように動けてない。不幸中の幸いだ。しっぽにまで気を使わなくていいからな。

 

じゅわぁぁああああ。

 

ふぁっ!?いや毒。まじ毒。やばい毒。噛まれたら詰むな。かみつみ。

 

「こりゃ、逃げた方が良さそうだな。」

 

「確かに...。」

 

「みんな、逸れたら南の遺跡に向かうこと!そこで落ち合おう!森に結構な数の人間が居るから気をつけて!!」

 

「「「了解!」」」

 

さて、と。これで一応逸れても問題無い...ハズ。いや、問題だらけだなぁ。南っつってもわかんないだろうし。まぁ良いや、多分遺跡で戦闘することになるだろう。音の鳴ってる方に行くだろ、みんな戦闘民族だから。(野菜人)

 

「とりあえず凍ってな。''刃技(じんぎ) (あま)綴雪(つづりせ)''。」

 

「ジュラララララ!」

 

うわ1部分だけ凍らせても全然意味ねぇわ。野生って怖い。何食ったらこんなにでかくなるんだろ。ありゃ、みんなバラバラに逃げちゃった。よし、僕も遺跡を目指してれっつらごー。

 

さぁ、楽しい楽しいサバイバルの開演だ。

 

今この国に居る奴らの中で、戦闘能力を有してるのは相当な数居るんだが。その中で勝てそうにない奴は、1人かなぁ。

 

はぁ、1人居るんかい。前半の海やぞ、どういう事だよ。やってらんねー。俺TUEEEEしてる奴多くない??鷹の目とかクロコダイルとかさぁ。

 

なんなん?そんな異世界転生系主人公みたいな考えのやつ、僕だけでええんよ。まじやめて、さっさと後半に帰るなり進むなりして。ほんとに迷惑。メロス並みに激怒するぞ?お??

 

まぁ十中八九、そいつが神だろ。エネルだっけ。ほんとに芋ジャージじゃないよね?

 

とりあえずそいつは僕が抑えて、みんな黄金持って船に乗ったタイミングで離脱が理想系かな。そいつがどんな戦闘スタイルか分からんから相性とか何も情報無いけど、純粋な戦闘力って意味では僕が抑えるのが1番可能性高いし。

 

マントしっかり着とこ。あーぁあ、夜だったらなぁ。昨日の夜、皆が寝静まった後に1人でそいつをやっとくんだった。失敗したわぁ。

 

「メーーーー!!!」

 

「''魚人柔術・人技(じんぎ) 柳凪(やなぎなぎ)''。」

 

「ぎゃああああ!!!」

 

あれ、でも待てよ。確かそいつって雷のロギアだったよな?え、無理じゃね。普通に勝てなくね。出来て時間稼ぎか?いや、短時間しか雷速に付いていけないからそれも難しいぞ。詰みじゃん。草。いや、草ってる場合じゃねぇんだわ。

 

「メーーーー!!!」

「メーーーー!!覚悟しろ海賊ぅ!!!」

 

うるせぇな。なんだよさっきからメーメーメーメー言いやがって。羊はメリー以外認めねぇよ。キャラヴェル船に生まれ変わって出直してこい。

 

「''魚人空手・人技(じんぎ) 閃貫手(せんぬきて)''。」

 

「「ぎゃーーー!!」」

 

多いな、やっぱ。でもどんどん数が減っていってる。マジもんのサバイバルやでぇ。サバイバルっていうか、バトルロイヤル?いや、バトルロワイヤル?グロ注意〜つって。グロくないけど。

 

よし、ちょっと気配を消してみよう。やったことないけどな!気分は絶だ!(狩人)今日から君も、念能力者だぜ!

 

「っメェーーー!神・エネルの(メー)により、アッパーヤードを一掃するメーー!!子供であっても容赦なし!!」

 

はい秒バレ。くそがよォ!!違うって!!今から、今からやろうとしたの!!絶したかったの!!まだやってない!!つもり!!!

 

「どうぞお構いなく。」

 

「あ、これはどうもご丁寧に。...ってそんな訳にいくかぁっ!?海賊メー!観念するのだぁ!!」

 

なんだよう、見逃せよぅ。

 

「この斬撃貝(アックスダイヤル)の餌食となるが良いメー!!はぁあっ!!」

 

「はぁ。''刃技(じんぎ) (あま)霞牙(かすみは)''。」

 

「っが、はっ!?」

 

さ、もう1回絶を...っ?

 

「は?」

 

なん、だ、?今の。サンジがやられるビジョンが、見えた?何だこれ、何だこれ!?

 

まて、待て待て落ち着け。深呼吸、深呼吸。一旦落ち着いて、意識を集中させろ。

 

「...嘘、だろ。サンジが負けた?」

 

この一瞬で?だって、さっきまで普通に。

 

「っ、ウソ、ップ?。あぁ、そうかお前か。お前がエネルか。」

 

見えない。観えない。視えない、が。気配は覚えた。今からメリーに戻る訳には行かない。じゃあどうするか。

 

集中、集中...。

 

このアッパーヤードに居る奴ら全ての動きを読む。おおよそ、遺跡方面に向かう奴らと遺跡方面からこちら側に向かってくる奴らの2パターンが存在する。他は動いていないか、よく分からん動きをしてるのが3人、か?

 

つまりエネルの拠点は遺跡付近にあって、そこに向かってゲリラ共は進行を開始してるんだろう。そしてゲリラを迎え撃つ神官たちって構図だな。それ以外は今は考えない。

 

「拠点を潰せば嫌でも来るはず。」

 

「チャンスだメェー!!!ごっふぁあっっ!?!?」

 

急ごう、これ以上好きにさせないために。

 

バリッ...バリバリッ...!

 

はぁ?おい冗談だろ、コイツ。見聞色の覇気とかそういうの、意味ないレベルでくそ早いんだが。

 

「ヤハ。私が、神だ。」

 

「...へぇ、そう。」

 

奇抜な自己紹介だな。本物の神にも言われたことねぇぞ、そんなこと。

 

「お前が空島に来た時から、私はお前を感じていたぞ。このアッパーヤードにいる者共の中で、唯一私に届き得る。わざわざこうして私自ら足を運んでやったのだ、有難く思うが良い。」

 

知るかよ。

 

「サンジ...金髪のグル眉。それとウソップ、鼻の長いの。やったのお前だろ。」

 

「...聞こえなかったのか、子ども。私は神だぞ。お前だと?口の利き方には...。」

 

「おまえだろ。」

 

ゾクッ

 

「!?...ヤハ。やはり、楽しめそうではないか。そら、防いでみろ。」

 

''2000万V放電(ヴァーリー)''

''刃技(じんぎ) (あま)霹靂(かみとき)''

 

雷と雷の衝突。それによって生まれる爆音と衝撃が、辺り一面を吹き飛ばす。お互い小手調べ。にも関わらず、地形が変わる程の力と力のぶつかり合い。

 

「おい、お前は誰の許可を得て雷を使っている?それは神が使ってこその力だ。身の程を知れ。」

 

''5000万V放電(ヴァーリー)''

''刃技(じんぎ) 蓬雷轟風烈(ほうらいごうふうれつ)(かさね)''

 

「っなんだと!?」

 

本来3方向に向けて放つ雷を風撃を、1方向に連続で放つ。威力、速度、範囲その全てを足し合わせるのでは無く掛け合わせる。

 

ゴロゴロの実の能力者の一撃を二連の雷で消し飛ばし、三連目の雷で、エネル本体の身体を穿ち貫いた。

 

自分の技を打ち破る程の雷を僕が放ったことによる驚愕。神(笑)の言葉を無視して性懲りも無く雷を使うことに対する不快感。やはり自分を楽しませる程度の実力はあるという歓喜。そして、自分の身体に届いて尚ダメージを与える事が出来ない事を確信した愉悦。

 

感情変化が著しいなぁ、自称神。全部真っ当な感情だ。人として真っ当だよ、うん。

 

もし眼が見えていたならば、白光色の光に視界を奪われていた事だろう。

 

大地は抉れ、木々は焼かれ燃え上がる。天災と災厄の衝突と言っても過言ではない戦いが、瞬きをする間に繰り広げられる。千の鳥の鳴き声が、森にこだまする。

 

エネルの身体が音を立てて雷へと変質する。少し掠っただけで全身が痺れ、行動不能になるであろうと瞬時に理解出来る。

 

触れるだけで勝てるとかクソゲーかよ。

 

「ヤハハ、踊れ踊れ!」

 

「チッ。」

 

手刀、貫手、正拳突き、薙ぎ、掌底、肘鉄、足刀、前蹴り、膝蹴り、回し蹴り、踵落とし。

 

全てを見切り、避けて、避けて避けまくる。

 

「''稲妻(サンゴ)''。」

 

エネルの腕から放射状に広がる蜘蛛の巣のような稲妻。瞬時に傘を広げ、感電を防ぐ。

 

「''紅炎弾(こうえんだん)''。」

 

「ぐっ!?」

 

本来なら避けられたであろう攻撃を敢えて避けず、僕に絶望を与えようとしたんだろう。

 

ざまぁ!!

 

ギラギラの実の方が攻撃力は上だったなぁ?予想はしてたがな!!肩から脇腹にかけて数発ぶち抜いてやったぜ!!!

 

まぁ、これが最初で最後のチャンスだろうけどな。本来なら雷速に叶う訳ねぇし。

 

「っ、貴様の攻撃は効かない筈...その炎、少し厄介だな。」

 

「少し厄介、ねぇ。」

 

雷を焼き焦がす程の熱エネルギー。だが、あのスピードに勝てる技なんてねぇ。当たらなきゃ意味ねぇんだよ、いくら強くても。

 

''電光(カリ)''

''炎膜(コロナ)''

 

眩い光と共に発せられる電光熱を、炎熱の膜で防ぎ。

 

''6000万V雷龍(ジャムブウル)''

''緋龍(フレア)''

 

蒼雷の龍と緋炎の龍が激突し、噛み付き、喰らい合う。

 

お互い似たような技を持ってんだな。相殺の連続。炎雷の嵐だ。まぁ向こうは余裕ありそうだけど。僕?くっそ全力。暑すぎてそろそろぶっ飛びそう。(意識が)

 

「はぁ、はぁ...。」

 

「辛そうだな。これで終わりか、子ども。であれば少し拍子抜けだぞ?もっと私を楽しませてみせろ。」

 

暇な時に、ねぇなんか面白い話してよ?って無茶振りしてくる奴が頭をよぎった。こいつもそのパターンか?鏡眺めながらてめぇで勝手にくっちゃべってろよダァホ。

 

つか傷口抑えながら強がっても滑稽なだけだぞ、自称神。自分の身体に幾つ穴が空いてるか、数えてご覧なさいな?(煽り)

 

「ふん、これ程強力な炎を使うのだ。体力を消耗するのは当然だろうな。」

 

体力の問題じゃねぇ、日差しの問題だ。馬鹿野郎。

 

「''火熾光穿(かしこうせん)''っ。」

 

バリバリバリッ!!

 

「不意打ちとは必死じゃないか。だが幾ら強い炎を発しようとも、私には当たらん。何故なら私は雷であり、神であるからだ。ヤハハ、絶望的だなぁ?」

 

「お前は神じゃない。」

 

「なに?」

 

眉を寄せて不愉快、不可解といった顔をする自称・神。ほら、そういう所が神っぽくないんだっての。ほんとに神ならキョトンとした顔で、「じゃあ私は一体誰ぞや?」とか言いそうなんだよな。あの芋ジャージのことなんて全く知らないけど。

 

少なくとも自称神って所を否定された時に不快さを感じるんなら、自分は神を自称しているマガイモノ、贋作だと言う証明だ。なにか思うところがあるって事だろつまりは。

 

「お前は神じゃない。お前のその雷の能力も、確かに強力だが、神が創ったものじゃない。この世界に自然に生まれたものだ。」

 

「ヤハ。なんだ、まるで本物を知ってるかのような口ぶりじゃあないか。お前が一体何を知っているというのだ?」

 

「知ってるさ。」

 

会ってんだから。実際に神を見て、先人の残した日誌を読んで、神の作った実を喰って、その力の一端を知っている。そして幸運なことに、その力を示すことの出来る左腕を持っている。

 

気合い入れろ、僕。こんな時くらい根性見せろよ。仲間やられてんだ、落とし前付けさせねぇと気がすまねぇだろ。ドちくしょうめ。

 

「神を自称し人を支配せんとするお前に、運命(さだめ)られた神力、その一端を見せてやろう。」

 

「...?」

 

左腕を天に掲げる。少しづつ、莫大な光熱のエネルギーが頭上に集束し、塊となっていく。

 

「刮目しろ。これこそが、人が神と崇め奉る光と熱の恒星(ほし)にして、破壊と創造の象徴なり!太陽は!!ここに顕現せり!!!」

 

「なん、だ...これは!?赤い雷迎(らいごう)だと!?くっ!!?」

 

''1億V天翼兵(ガルーダ)''

''赫灼極天煌星(かくしゃくきょくてんこうせい)''

 

「墜ちろ!!そして焼き尽くせ!!!」

 

極大の赫い太陽に向かい、翼を広げ飛んで行く人型の雷。それはまるで、イカロスの神話を体現するかの様な神秘的とも言える一瞬であった。

 

 

ドォオオオオオオオンッッッ!!!!

 

 

「ぅ、ぐぅうう、暑っついな...流石に。このレベルの技は覚悟して使わないと、周囲への被害も自分へのダメージも半端じゃない。」

 

はは、大地(ヴァース)が融けてらぁ。二度と使いたくねぇ。マントとか傘とかほとんど意味ないわ。くっそ、意識レベルが低下してきた。ギラギラの実の能力を使いすぎた。リハビリが必要だな、こりゃ。

 

ふぅ、疲れた。座りてぇ。視界も見えねぇ、音も聞こえねぇ、見聞色は辛うじてって感じだな。誰かに拾って貰えたら助かるんじゃが。さすがにこの状態で知らん森を歩くのは気が引ける。というかしたくない。何も分からないから怖い。

 

バリバリッ!

 

「''9000万V不滅の絶剣(デュランダル)''!!」

 

「...ごっ、はっぁ!?ぃ、ぎ、ぐぅぅうううううっっぅ!?!?あ、つっっ!?」

 

やば、は、なんで。これ、土、地面か?なんで僕が倒れてんだよ。はは、意味わかんねぇ。

 

「ど、やって...。」

 

「ぐ、ぅ。はぁ、はぁっ。まさか、巨翼兵(ガルーダ)をぶつけてもなおっ、消し飛ばせんとはなっ...。驚い、たぞ、子ども。この私が、敵を前に背を向けてまで逃げることになろうとは。神に、雷に風穴を開けただけに飽き足らず、火傷を負わせるなど...!お前は、なんだ?その能力(ちから)はなんだ?お前は一体何者だ?」

 

何者か、だって?こっちのセリフだわ、くそったれ。お前なんなんだよ。くそチートが。太陽を墜とされて、なんで生きてんだ。なんで全身火傷程度で済んでんだよ。融けろよバカよぉ。バグか?いや、爆か。

 

「ご、ぁっ、手ぇ...離せや、クソ人間。」

 

首締まってんだよのっぽ野郎。ただでさえ身長差ハンパねぇんだぞ、足なんて着く訳ねぇだろ。あーーーなんかこの体勢デジャブ。

 

「ヤハハ、面白いな。お前に興味が湧いたぞ、子ども。時間もない、このまま連れて行ってやろう。共に旅立とうじゃないか、夢の世界へ。」

 

「っざ、けんな。自惚れてんじゃ、ねぇよ...!お前を倒す、方法なんて...幾らでもある。僕の力は、その内のひとつって、だけだ、ばーか。」

 

ギラギラの実、海、海楼石。そして。

 

「ふん。その口の悪さは頂けんな。しばしの間、目と口を閉じていろ。次にお前が起きた時、既に我らは空飛ぶ船の中だ。''神の裁き(エル・トール)''。」

 

「っかは、ぁ...。」

 

ごめ...ん、ね。サンジ、ウソップ。

 




勝手にエネルの技作っちゃった(笑)
テキトーに想像してください〜

個人的には蒼龍と緋龍の激突はアツいと思いました。
(自画自賛)


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

男の決意

今回はゾロ回な気がします。


鉄雲によって神官、ゲリラ、そしてゾロの身動きが取れなくなっている現在。ここは生存率0%と謳われる鉄の試練、白茨デスマッチの会場だった。有刺鉄線並みの硬度を持つ鉄雲によって形成された檻の中で、それぞれが戦闘を余儀なくされていた。

 

そこに、一人の女戦士がやってくる。ゲリラの一員であり、ワイパーの仲間であるラキだ。ラキはエネルの能力、ゴロゴロの実の存在をワイパーに伝えに来たのだった。

 

「ワイパーっ!話を聞いて!エネルには勝てない!あいつは雷なんだ、ゴロゴロの実の能力者なんだ!!カマキリがっ!手も足も出ずにやられた!!逃げて、ワイパー!!あいつに!!攻撃は効かないっ!!!」

 

「っ!?来るなぁーっ!!!ここを離れろ!!やめろぉぉおお!!!」

 

ワイパーは必死に叫ぶ。手が傷つこうと構わずに、破れるはずもない白茨の檻を掴みかかる。

 

ラキは一瞬、何を言われたのか分からなかった。なぜなら、自分が伝えたかった言葉をそのまま言われた気分だったから。しかし、その理由はすぐに理解した。

 

バリッ…バリバリッ!

 

「私を、呼んだか?」

 

「っ!?」

 

ワイパーは叫ぶ。喉がやられそうになる。それでも構わない、仲間が助かるのなら喉が裂けるくらい安いものだと。

 

「そいつはっ!ラキは戦いを放棄したんだ!!手を出すな!!!逃げろラキィィイイイ!!!」

 

ラキが銃を撃っても、エネルは1歩も動かない。眉ひとつ、表情ひとつも動かすことはない。なぜなら知っているからだ。この攻撃では、自分は傷を負うことはないということを。

 

一筋の雷がラキを焼き焦がす。瞬く間に倒れたラキに唖然とするワイパー。ラキの命を懸けた叫びを、たった今目の当たりにした。攻撃の効かない、雷そのもの。

 

 

そして同時に、ゾロもまた驚きに顔を染めていた。なぜなら、目の前に敵の親玉が現れたから、ではない。一瞬で現れたその能力に、一瞬でラキの意識を刈り取ったそのスピードに驚愕した訳でもない。

 

「ソラァァアっっっ!?!?」

 

ゾロとワイパーは同じ立場であった。白茨の檻によって身動きが取れない状況で、仲間の命が敵の掌の上にある。到底、平常心ではいられない。

 

それは当然の反応とも言えた。なぜならゾロは、これまでソラが戦闘によって倒されている姿を実際に見たことが無かったからだ。

 

確かにソラがクロコダイルに負けたことは知っていた。王宮で治療を施されて寝ている姿を見て、当時の状況をビビやコブラから聞いていたからだ。そしてその後の大浴場で湯船に浸かっていたソラから、鷹の目の一刀の下に倒れたことも聞いた。思わず眉を顰めてしまう様な、自分と同じ刀傷が、その小さな身体に大きく深く刻まれていた。

 

しかしそれは、全て終わった後で見て、聞いたこと。実際に負ける瞬間を、戦っている場面を見たわけではなかった。心のどこかで、本当に負けたのか?と疑ってさえいたほどだった。

 

なぜなら。なぜなら、ゾロは知っていたからだ。ソラが強いということを。鷹の目に負けて、クロコダイルに負けたソラが、自分よりもずっと高みに立っていることを知っていた。

 

ウイスキーピークで勝負を仕掛け、いつの間にか負けていたこともそう。Mr.1という全身鉄刃の殺し屋を斬り倒したというのに、船の上での試合では良いようにあしらわれ続けていることも、実力の底知れなさを助長させていた。ソラはじゃれ合い程度に思っているようだが、ゾロはその中でも必死に強さを盗もうとしていた。

 

ソラは強い。自分よりも。直接対決を見たことはないが、ルフィよりも。麦わらの一味の中で誰よりも強いことを知っていた。剣の腕を始めとして、徒手空拳や炎の能力という幅広い戦闘技術。料理や菓子作りの技術、義肢の設計や船の修繕などの自分には真似ることができない、大勢から必要とされるスキル。そして最近は他の仲間から航海術や医療なども学んでいることも知っていた。

 

決して口には出さない。これからも、出すつもりはない。だが、自分と同じ歳の日の光が苦手な小さな仲間に対し、どこか尊敬のような情を抱いていたのだろう。すげぇやつだ、と思っていた。認めていた。

 

そのソラが、今、目の前で意識を失っている。パッと見ただけで解る程に、ゴミのようにボロボロになっている。いや、ボロボロにされている。いつもの黒いマントは焼け焦げ、かろうじて原型を留めている程度だった。

 

自分を神と呼ぶふざけた男に左腕を掴まれ、ぐったりとその身を引きずられている光景を見て、脳が、腸が煮え滾るような熱を感じた。

 

「てめぇ…その手を放しやがれ!!そいつは俺の仲間だ!!!」

 

「ほぅ?なるほど、そうだったか。ではお前は聞く権利があるな。私はこの子どもの持つ能力に興味がある。故に、コレは私と共に夢の世界に旅立つのだ。喜ぶが良い。」

 

何を言われているのか、一瞬理解できなかった。夢の世界?旅立つ?コレ、と称した際に掴んでいたソラの腕を引き上げたのだから、ソラのことを言っているのだけは理解できた。

 

つまりこいつは、自分の仲間を。

 

「奪おうってんだな…俺から。海賊から、仲間を奪おうって?覚悟できてんだろうな、おい。」

 

「ヤハハ、凄んだところでその中から出られぬようではな。シャンディアの戦士も、海賊も、思ったより甘いのだな。女だろうと子どもだろうと、挑んでくる者を私は差別しない。精々死なぬよう気をつけることだ。ヤハハハハハ。」

 

「そりゃこっちのセリフだ、馬鹿が。」

 

「なんだと?」

 

ゾロの一言に、エネルは眉を顰める。神である自分を貶しめる発言だ。そんな言葉を今まで自分に吐いてくるような輩は居なかった。この子どもと言い、海賊とはこうも卑しい存在なのか。

 

「死なねぇように気をつけろだと?はっ!身体を見てみろよ。随分ボロボロじゃねぇか。火傷に、なんだそりゃ銃痕か?どうしたよ、おい。雷じゃなかったのか?」

 

「「「!?」」」

 

この場にいる全員の表情が驚愕に染まる。言われてみれば、確かにそうだ。自分の身体がボロボロだったから、目の前のエネルを見ても何の違和感も無かった。だが、おかしい。神を、雷をただの人間である自分と同じように考えることがそもそも間違っているのだ。

 

なぜ、雷に風穴があいている?なぜ火傷を負っている?

 

「随分こっぴどくやられたらしいな、その子どもに。」

 

「っ。貴様…!」

 

またも驚愕。エネルにやられたであろう気を失っている子どもが、雷に手傷を負わせたというのか。いや、手傷どころの話ではない。よく見てみれば、ボロボロと言っても良いほどの傷を負っているではないか。

 

「さっきの女の言葉は覆ったな。勝てない、攻撃は効かないだったか。どうやらお前に勝てる方法はあるらしい。」

 

「ふん、それはどうだろうな。先ほども見ていたろうが、私に攻撃は効かん。だからこそこの子どもに興味を抱いたのだ。それに、コレが勝てなかった私に、お前が勝てるとは思えんが?ヤハハ。」

 

「試してみるか?」

 

「そこから出られたら、試させてやるぞ。」

 

白茨の檻に斬りかかろうと刀を構えたゾロは、目を見開いて動きを止める。ソラが、動いていたからだ。左腕を溶岩のように赤く染めたソラが、自分の腕を掴んでいたエネルの腕を逆に掴み返す。

 

「ぐぅぅぅぅううっ!?はっ、離せっっ!!?」

 

「ソラっ!!」

 

投げ飛ばされるソラ。ただでさえボロボロの身体なのだ、これ以上の傷は命に関わる可能性もあった。起き上がる様子がない。立ち上がろうとしていない。もしや、意識が無いのでは。気を失ってなお、エネルに一矢報いようとしているのではないのか。

 

ゾロは目の前の鉄雲を通してエネルを睨みつける。この檻さえなければ、あいつを斬り伏せることができると言わんばかりに。

 

「このっ…気を失っている癖に、まだ私に歯向かうのか!身の程を知れと言った筈だ!!」

 

''1億V放電(ヴァーリー)''

 

うつ伏せに倒れたソラに雷を浴びせるエネル。何度も、何度も。撃ち抜かれる度にソラの身体はビクつき痙攣している。気を失っているのにも関わらず、苛立ちをぶつける子どものようにそれは続いた。

 

「やめろぉぉぉぉおおおおおっっ!!!?」

 

このままでは、本当に死んでしまう。自分の目の前で、仲間が死んでしまう。絶対にダメだ、それだけは。

 

砕けるほど歯を食いしばるゾロ。何のために鍛えた?何のために刀を振るう?己が世界一の剣豪になるためだ。仲間を守るためだ。失わないためだろうが!

 

自己嫌悪に陥りそうになったゾロの目に映ったのは、痙攣し震えながらも右手を上げるソラの姿だった。

 

「何をするつもりだ?もうお前は意識もなく、動くこともできんはずだ。なぜ動く、なぜ歯向かう。無駄だというのがなぜわからん!?」

 

エネルは目の前の子どもに少しの恐怖を抱いた。いや、それを恐怖と感じたか否かは定かではない。その感情を知らないからだ。だが、気持ちの良いものではないことだけは確かだった。

 

ソラには届いていない。気絶しているから当然だ。にも関わらず動いている。だからこそ、誰をも理解ができないのだ。

 

ゾロはソラを見ていた。ソラの行動には何か理由があるように感じたからだ。確信は無い。右手をあげていた。ソラは左腕で炎を出す。それを知っていたが故に、炎による攻撃を行おうとしてるのでは無いことだけは解った。

 

―――。

 

ソラが何かを呟いた。ゾロにも、最も近くにいたエネルにもその言葉は聞き取ることはできなかった。だが、ソラが何をしたかったのかは明らかだった。そしてそれが成功したことも。

 

ソラが掲げた右手。その人差し指から、一筋の光が発せられる。青白いようにも見えるし、黄色のようにも見える不思議な色をした光だった。一見するとエネルの雷の色と似ていたが、攻撃的な印象を与えることは無い。むしろ、見る者の心を癒すような輝きであった。

 

その光はまっすぐに進み、白茨の檻を突き抜け、ウワバミの腹へと導かれる。それまで好きなように暴れていたウワバミが、嘘のように静かになる。自身もびっくりしているようだった。目をパチクリと瞬きしている。そして。

 

「「「うわぁぁぁぁあああ!!!」」」

 

ウワバミは先ほど飲み込んだナミと、ゲリラの子どもであるアイシャ、そしてガン・フォールを吐き出した。ついでになぜか一緒にルフィも。

 

「ルフィ!?ナミ!!」

 

「アイシャ!!」

 

何が起きたのか、誰にもわからない。それをやった本人であるソラに聞こうにも、気絶していて応えられない。いや、例え意識があったとしても解らないかもしれない。今まで一度だって、こんな能力を見たことは無かったからだ。

 

だが、ソラの思いはしっかりとゾロに伝わった。意識を失い、雷に何度も撃たれながらもやり遂げたかったことは、船長であるルフィをこの場に連れてくること。実力ではソラに劣るはずのルフィを、それでもこうして助け出す必要があったということ。

 

つまり、ルフィならエネルに勝つことができる。そうソラは確信しているということに他ならない。

 

ならば己は、ルフィとエネルを向かい合わせる。その為に、できることを。やらなければならないことは一つ。この鉄雲の檻をぶった斬ることのみ。

 

ゾロの渾身の一撃は、奇しくも同じタイミングでバズーカを放ったワイパーの一撃と同じ場所に放たれた。アラバスタで鉄をも斬った一撃と、強力な熱エネルギーの攻撃。それが同じタイミングで、同じ場所に叩き込まれたことで相乗効果を生み。鉄雲が、はじけ飛ぶ。

 

「俺はこの鉄雲野郎をやる。てめぇの相手はあいつだ、ルフィ!!」

 

「おうっ!!''ゴムゴムのぉ!!バズーカァァアアっっ!!!”」

 

「なっ!?ぐはぁああっ!?!?」

 

完璧に状況を理解してはいないだろうルフィは、それでも自分が何をすべきかを瞬時に理解する。敵をぶん殴る。仲間を傷つけた奴をぶっ飛ばす。

 

つまり、いつも通りである。

 

 

&&&

 

 

いつも通りだよなぁ?敵の親玉と何故かエンカウントして、そのまま直接対決して、負けて、気絶して。そんで気づいたら全部ルフィが締めて終わってるなんてこともいつも通りだよなぁ???

 

なんだこれ、何なんだこれ。そういう物語ですかぁ??

 

なんか寝てる時に夢の中で綺麗な鐘の音が聞こえた気がするがそんなこたァどうでも良い。(良くない)

 

今は全身バッキバキに痛いしなんかヒリヒリする肌も放っておいて、このキャンプファイヤーに全力を投じることが最優先事項だろう!?

 

「「「ぎゃっはっはっはっは!!!」」」

 

「これ貰うね。」

 

「おう、どんどん食え!飲め!踊れぇえ!!」

 

うんうん、楽しそうで何より。あ、このパンめっちゃフワフワしてて美味すぎ。雲食べてるみてぇだな。まふまふしてる。幸せ〜。

 

「「「って起きてるぅぅううう!?!?」」」

 

え、何。起きてちゃ悪いのか。ハブか?またハブするつもりだったのか?いや、宴してる会場で寝かせておいてハブは流石に...はっ!?まさかこいつら僕に料理の匂いを嗅がせるだけ嗅がせておいて、お前はこっちのお粥な、とかそういう事する計画だったのかっ!?

 

なんて卑劣!!なんて外道!!それが功労者に対する仕打ちかっ!?あれ?これってバラティエでギンに対して演じた設定じゃね?デジャブ〜。まぁもうパンは食ったがな!!お腹すいてんねん。

 

うわなんかめっちゃ構い倒されてる。こわぁ。何なになんなの?はぁ、エネルに手傷を負わせたすごい?神官を倒しまくったすごい?俺はあんたに救われたありがとう?

 

はぁ、知らんけど。良かったね?とりあえずスープ飲ませろください。おい子ども(見た目)に酒を飲ませようとするな。しかも怪我人だぞふざけんな。紅茶リキュールなら飲んでやっても良い。出直してこい。

 

「ソラ!起きたのか、良かったぁ!あっ、スープは良いけど酒はダメだぞ!怪我人なんだからなっ!」

 

了解ドクター。元々飲む気は無いから平気。ゾロの前に置いとこ。

 

「みんなボロボロだねぇ。」

 

「ほら、お前今夜はもっと食っとけよ。体力消耗してんだから。」

 

「サンジも。これ、全部サンジが作ったの?手伝わなくて悪いね。」

 

「ばーかそんなもん気にしてんじゃねぇよ。コニスちゃんと一緒に作ったからなぁ、俺ぁ幸せだ〜♡お前なんぞ要らん、好きなだけ寝てろ。」

 

「ウケる。」

 

女好きも、不器用な心配の仕方も、怪我以外はいつも通りだな。安心した。

 

大人も、子どもも、海賊も、神官も、ゲリラも、蛇も何も関係なく。ただ、今この瞬間を噛み締めて全力で喜び楽しみ合う。海賊って感じがするなぁ。

 

「全員お前ほど怪我してねぇよ。あんだけ雷に撃たれてピンピンしてるなんざ、お前も大概化け物だな。」

 

そんなに撃たれたっけ?覚えてねぇ。ってかゾロに見られてたの??見聞色の覇気、相当精度が落ちてたんだな。気づかなかった。

 

「まぁロギアだし。それに、今日は割と調子が良いんだよね。あぁ、満月だからかな。」

 

狼男にでもなるんか?もしくはいぬや(ry。

 

「夜なら勝てたと思うか?あいつに。」

 

ほ?何だこの質問、なんか珍しい気がする。そんな仮定の話をゾロがやるなんて。

 

んー、難しい質問だな。確かに夜なら身体能力もテンションも上がる。日中よりは比べ物にならない位のコンディションで戦り合える。でも、その代わりギラギラの実は使わない筈だ。なぜなら、ギラギラの実を使えば日中と変わらない戦闘環境になるからな。

 

つまりギラギラの実の能力を使わずに、夜のステータスで雷に打ち勝てるかどうか。今回手傷を負わせたのは全て太陽の力だった。それが無くなると、純粋に攻撃が効かない。スピードでも勝てない。

 

通用するのは、辺り一面の水を制圧することが出来る魚人空手。まぁ僕が使ってる魚人空手・人技は廉価版みたいなものだから、本場の魚人空手と同じように水を操る事なんて出来ないんだけどな。出来るのは触れた相手の体内の水分を利用して攻撃することくらいだ。

 

それと夜にしか使えない幾つかの剣技も効くだろうが。攻撃範囲の狭い人技と刃技を使い、どう戦闘を組み立てて、如何にして雷速で移動する相手に当てるかを考え実行することが出来たなら。

 

「少ないけれど可能性はあるかな?言えるとしたらそのくらい。」

 

「そうかよ。」

 

「何故?」

 

おーおー、考えてる。眉間に皺が寄ってるぜ。大丈夫かぁ、無い頭でそんなに考えたって良い考えなんて出ないぞ?(失礼)思ったこと言えよ、ちゃんと汲み取るからさ。

 

「俺にはあいつを斬ることが出来なかった。どうやってもだ。」

 

挑んだんかい。すげぇことするなぁ、ゾロは。普通、雷に喧嘩売る人間がいるか?ヤベェやつだわやっぱり。ルフィが勝ったのは実力と言うより完全に相性だからな。雷特攻だったから。

 

「お前には、勝てる可能性が有った。だが俺には無ぇ。それが今の俺とお前の差だろう、ソラ。」

 

「...まぁ、そうだね、?」

 

いや、ぶっちゃけ僕も勝てるか知らんけど。まじで可能性はあるくらいにしか言えんから、そんなに重く受け止めんでもええで。

 

「未来の海賊王のクルーだ。世界一の大剣豪になる。その夢を叶えるために、もう負けられねぇ。」

 

「ここからだ。俺は、ここから強くなる...!無様に倒れたりしねぇ。お前に護られっぱなしも締まらねぇ。お前が対等だと思えるくらい、背中任せても良いと思えるくらい。強くなってやる。」

 

...すげぇ。なんかもう、それしか思いつかん。気迫が、決意が、ただただ凄い。こういう所だよな、海賊王の右腕ってのは。こうじゃなきゃ。

 

空気がピリつく。

 

「そか。んじゃ、抜かされない様に僕も頑張んなきゃね。」

 

聞き耳立ててるサンジからも、ゾロと同じ雰囲気を感じる。負けると悔しいよな。全員、同じ相手にやられてんだ。気持ちは一緒。強くなりたい。

 

伸び代は、強くなれる兆しはあるんだ。後は適切な修行を行うことだけ。本格的に始めてみるか、武装色の覇気の修行。やり方知らんけど。

 

それと、能力も。ギラギラの実の能力を充分に使えてない。この体質をどうにかしたい。その為には、知らなきゃならない。自分のこと、種族のことを。

 

やること山積みだな、こりゃ。




みんな強くなれー!
まけるなぁー!!

ということで空島での戦いは終幕です。
お付き合い頂きありがとうございました。

ジャンプ+読みながらこの小説を書いているのですが
いつの間にか空島編の無料期間が終わっててふぁっ!?
ってなりました。
コイン使っちゃった笑笑

今はW7編が無料ですが、それも10/13日まで。
つまり、この小説には締切がある...?
あばばばばばばば。無理ぽ。どしよ、そんなに書けない。
と戦々恐々としております作者です。
誰か助けて。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

デービーバックファイト編
第1回戦


大量の黄金を盗んでスタコラサッサと空島をおさらばした我々麦わらの一味。なんか空島の人達みんな親切心で呼び止めてた感じだけど、勘違いしたルフィ達は追われていると思い逃走。無事(?)に空島から脱出(落下)出来たのでした。まる。

 

そして現在。珍しく、本当に珍しく、平和という言葉が似合いそうな島に到着した。ルフィとウソップ、チョッパーは見渡す限りの大草原(ネトスラじゃないよ)に興奮し早速冒険へ出かけた模様。

 

人が数人と、いくつかの動物が居るらしい。1人は空中にいるんじゃが、能力者かなんかかな?飛行能力、良いよなぁ。かっけぇよな。便利だし。

 

とか何とか考えつつ錨を下ろしていたら、でかい船がメリーを逃がさんと言わんばかりに船を着けてきやがった。

 

メリーが...ウチの可愛い子羊ちゃんがブサキツネにあすなろ抱きされてるんだが。燃やして良いかな、この不届キツネ。誰だよ。

 

「なんだコイツら?さっさと降りてこい!相手になるぜ!!」

 

喧嘩っ早くて草。どっからでも掛かってこい、ボッコボコにしてやんよ。(喧嘩っ早い)

 

「我々はフォクシー海賊団。早まるな、我らの望みは決闘だ!!!」

 

「俺たちはお前ら麦わらの一味に、デービーバックファイトを申し込む!!」

 

「デービーバックファイト?って何よ。」

 

ほー。久々に聞いたなぁ、デービーバックファイトなんて。懐かしい。でもそうか、この島に来る途中で見かけた海賊は、こいつらにゲームで負けたから連携もくそもなかったんだな。納得。

 

「一言で言うなら、何を賭けても良い海賊特有のゲームだよ。」

 

「何をかけても良い?おいおいそりゃ、命もか?」

 

「そ。命というか、人員を賭けるのが一般的だね。ゲームで勝った方は、敵船から望む奴を奪い取る。そうやって自分の仲間を手っ取り早く増やして、戦力増強なり人員確保なりで仲間を充実させる。」

 

んでもって、負けた方は。まぁお察しだよね。

 

「因みに、人以外にも食料や財宝、船や海賊旗なんかも賭けの対象になるわ。望む人員がいない場合、そういった物資を要求することも出来るというわけ。」

 

「その通りっ!俺たちが挑むのは3コインゲーム!3本勝負のゲームだぜ!!」

 

ふーん。まぁ良いんじゃない?負ける可能性の方が低いよ。食料と財宝とあとなんかテキトーに貰ってさっさと行こ。

 

「ちょっと待ってよ!そんなの受けるわけ無いじゃない!負けたら仲間を失うのよっ!?あの船みたいに!!」

 

「そだね。でもそれを決めるのは僕らクルーじゃない。船長のルフィだ。それと、往々にしてこのゲームを仕掛ける奴ってのは、狡猾さが売りだったりする。つまり。」

 

「どうやってもルフィじゃ、受けないなんて答えが出るわけがねぇってこったな。」

 

ざっつらいと。

 

「知らないわよそんなの!拒否権くらいあるでしょ!」

 

「逃げだせば、この海賊の世界では大恥を晒すことになるんだ、ナミさん。」

 

「別にいいじゃない!恥かくくらい!」

 

恥をかく、くらい...かぁ。そりゃあダメだ。ダメだよナミ。

 

「生き恥を晒すくらいなら死ぬほうがマシだ。」

 

「右に同じく。」

 

「諦めなさい、男ってこう言う生き物よ。」

 

「何よそれっ!ソラ、あんたも同じなのっ!?」

 

せやな。いや、死ぬほうがマシとまでは思ってないけど。死ぬくらいなら恥に塗れて生きるけど。

 

「一般人なら、逃げたって良いと思うけどね。でも僕らは海賊だ。それもただの海賊じゃない。未来の海賊王の一味だよ。恥やメンツって言うのは、そこいらの奴らよりずっと重くのしかかる。」

 

約束や契約を守らないような奴を信用出来ないのと同じだよなぁ。

 

「大丈夫だよ、ナミ。僕らが負けるなんてこと、天地がひっくり返っても有り得ないから。タダで食料や財宝をくれる憐れなカモ達、とでも思っておけば良いんじゃない?」

 

「タダで、財宝...それもそうねっ!よし、あんたら負けたら絶対許さないわよ!!何がなんでも勝ちなさい!!良いわね!!」

 

「「「はーい。」」」

 

タイミングよく、2発の銃声が鳴る。

 

「さ、ゲームの始まりだ。」

 

「やっぱ受けやがったな、ルフィのやつ。」

 

「望むところだ。」

 

「面白そうね。」

 

「やってやろうじゃない!」

 

良いねぇ、みんなやる気満々じゃんか。面白くなってきたな。

 

「「「ゲームを受諾したぁああ!!!」」」

 

「ぎゃっはっはっは!!」

 

「祭りだァ!!!」

 

祭りか?まぁ似たようなもんか。お、なんか屋台とか準備してるわ。用意良すぎかおまいら。ってか参加人数はさすがに絞るよな?

 

この人数を全員相手だと大乱闘になっちゃうぞ。なんでも僕と同じ名前のキャラが居るらしい...が、そんなキャラには目もくれず僕はゲッコウガ一択や!!スピード特化はこれだからよぉ!!!

 

脱線したわ。とりまルールとしては、3ゲームで7人以下の出場らしい。1人1回までの出場で、1度決めたメンバーは変更不可とのこと。レース、球技、戦闘の3回戦。オーソドックスルールって訳ね。

 

7人かぁ、1人あぶれるね。誰が何に出る?

 

「僕、見てようか?みんな出たいでしょ?」

 

「「ふざけんな!!」」

 

「えっ、」

 

え?え、なに?なんで怒られたの。怖いんだけど。みんなゲームしたいんじゃないのか。

 

「8人いるなら私出なくても良いわね!!」

 

「いやいや俺だ!!俺出なくて良いだろ!!俺なんて何も出来ねぇから!!!」

 

はい??いや、ナミもウソップも必須人員でしょ。出ないなんて有り得ないから。

 

「「なんでっ!!?」」

 

「だってレースがあるんだよ?与えられた材料で船を作って、島の周りを1周とかそういう内容の筈だよね。であれば、この船唯一の航海士であり、グランドラインでもトップレベルの航海士としての才能を持つナミは絶対に必要だ。」

 

「それに、少ない資材を無駄なく有効活用して素晴らしいアイディアを盛り込んだ作品を作ることが出来るウソップも必須人員だよ。僕も設計はできるけど、創作に関しては現状ウソップの右に出るやつなんて居ないし。2人が抜けた状態でレースに勝つなんて、出来る訳ないじゃん。」

 

何言ってんのかねぇ、この2人は。思わず首を傾げて肩をすくめちまうぜ。

 

「「えへへへへ、いやいやいやそんなぁ。」」

 

「乗せられまくってんじゃねぇか。」

 

めっちゃ照れとるな。手と首振って一応否定してるけど、デレッデレで満更でも無い様子。

 

「ってことであと一人はロビンかな。」

 

「あら、どうして?」

 

「見ての通り2人は割とお調子者って感じだから。いつでも冷静な判断ができるロビンが居てくれたら心強いよ。」

 

「そう。でも、それならソラくんでも良いと思うわ。」

 

「それも思ったけど、僕はどっちかと言うと戦闘方面で役に立てると思うから。フィジカルが必要な球技か戦闘にでも参加するよ。別に出なくても良いけど。」

 

「そういうことなら、分かったわ。」

 

ありがとロビン。さて後は。

 

「おい戦闘には俺が出るぞ。」

 

「何ーーっ!?俺がやりてぇよ!!」

 

「俺に任せろ、足がウズウズしてんだ。」

 

ちょっとルールを拝見。ふむふむ、なるほど、第1、第2回戦は3人で、最後の戦闘だけが1人なのか。

 

「戦闘はルフィが出るべきだね。参加人数1人ってことは、向こうも船長が出てくるだろうし。このゲームを受けたのはルフィだから、ちゃんと勝って締めること。OK?」

 

「分かった!!よっしゃーー!!」

 

「「ちっ。」」

 

反応同じとか仲良いかよ。喧嘩するほどって言うしなぁ。これ言ったら絶対キレてくるから言わんけど。

 

「んで、球技はっと。ゾロとサンジは立候補してるから確定として、チョッパーはどうする?出たい?ぶっちゃけ僕どっちでも良いから、チョッパーに任せるよ。」

 

「俺はシェリーのことが心配だから、怪我の具合を見てるよ!だからソラが出てくれ!」

 

「そか、わかった。」

 

遠慮したのか本心なのか。どっちもかな?まぁいいや、チョッパーが出ても僕が出ても勝つことに変わりないんだし。

 

あの綺麗なお馬さんはシェリーって言うんだね。足の怪我は銃で撃たれたみたいだけど。ふぅん、そう。そういう事ね。

 

「じゃ、これで決まり。」

 

「選考は終わったかしら?提出してくるわね。」

 

ほいな。

 

「おい、ソラはあぁ言ったがよぉ。もし仮に、万が一、負けたらどうする?きっとアイツらが欲しいのはこのキャプテンウソップ様だ。」

 

「いいえ、私よきっと。かわいいから。真っ先に取られるんだわ。」

 

自信が無いのか有るのか分かんねぇな、この2人。まぁいいや、面白いから。

 

大丈夫大丈夫、負けないからさ。気張っていこうぜ。

 

第1回戦【チキンレース】

参加者:ナミ、ウソップ、ロビン

 

第2回戦【グロッキーリング】

ゾロ、サンジ、僕

 

第3回戦【コンバット】

ルフィ

 

ということで決まり。まずは第1回戦のレースからだ。船大工の腕の見せどころらしいが、ウチに船大工は居ない。ウソップ頼りだ。

 

ロープとか釘とか細々した部品は追加で使っても良いらしい。これは確認したから間違いない。その時に併せて、僕も一緒に船作りお手伝いしても良い?(フードずらして上目遣い+涙目きゅるん)とお願いした。子どもだしかわいいからって理由で余裕のOKが出た。やりぃ。子ども好きな審判で良かったわ。ちなみに一連のやり取りは全てトーンダイヤルで録音もしてるので言質はとってる。計画通り。(ゲス顔)

 

その辺も踏まえた上で、ウソップには設計図を渡し一緒に制作。樽を半分に割って6つのパーツをただ繋ぎ合わせるのでは無い。3人しか乗らないんだから、乗るスペースは樽1.5個で十分だ。みんな軽いから沈む心配も無い。

 

余った残り半分の木板を使い帆&盾の役割を果たすパーツを作成。そして繋ぎ止める鉄の部分を左腕で溶かし、船の前方へ三角形を整えながら溶接することで波避けの役目を果たす船頭部分を形成。ロープは一応少し多めに積んで、あとはオールで頑張ってくれ。

 

「うぉおおお、すげぇっ!この材料でこのクオリティはそうそう出せねぇぞ、ソラ!流石だなっ。」

 

「無茶な設計を叶えるウソップが凄いんだよ。レース頑張ってね。」

 

「おうよ!まっかせとけ!!」

 

うん、任せた。

 

両チームがスタート地点へ並ぶ。お互いバチバチと視線を飛ばし合っている。火花散ってんなぁ。そんくらいじゃなきゃな!

 

コースは島の外周を一周、とのこと。なお、武器はなんでも使用可能と言われた。ウソップ有利じゃん、狙撃手だし。やったれー!!

 

わはは、応援とヤジが飛んでいる。こんな盛大にゲームするのは初めてだから、ちょっと面白いな。新鮮だ。

 

「位置について!!用意...スターーートぉおおお!!!」

 

と当時に、一斉にフォクシー海賊団が銃やら大砲を撃ちまくる、が。

 

「「「なっ!?鉛が...溶けたぁああっ!?!?」」」

 

小さく前に左腕をかざし、バレないように能力を使う。全ての鉛は溶け、勢いを無くして海へと落ちて行く。これぞホントのデービーバックだぜ。融けた鉛なんて要らないって言われそうだけどな。アイツらは僕の仕業って分かってないみたいで良かった。

 

お、ウソップとナミとロビンがこっち向いてる。手ぇ振っとこ〜。頑張れ〜。おぉ、みんなやる気出して良い感じじゃん!こっちもこっちでヤっとくから、安心しな。

 

「んんんナミさんとロビンちゃんが怪我でもしたらどうするってんだぉおおらぁああっっ!!頭蓋骨粉砕すんぞクソどもがァっ!!!」

 

ラブハリケーンが暴走してるわ。ま、このゲームにおける参加者の行動なんて予想済み。場外乱闘有りの方がこっちとしてもありがてぇ。腕の立つ奴らしか居ないからな。数に物言わせるだけの小物共とは質が違うんよ。

 

おぉ、なんだ怪力でもいるのか。でっけぇ岩が飛んできたぞ。ウソップめっちゃ叫んでる。

 

「''一刀流 三十六煩悩鳳(ポンドほう)''!」

 

「「「おっ、大岩を...斬ったァァあああ!?!?」」」

 

うはは、たっのもしー。そんなに差も開いてない。場外乱闘への対応はするけど、レーサー同士のいざこざは頑張れって感じ。

 

お、魚人が居る。知らない顔だな?海面割りの規模そこそこデケェ。やるやん。まぁ船頭を鉄でコーティングしてるからほぼ意味ないんだけど。

 

ロビンが関節技キメたわ。痛そー。横並びとは言えないが、まぁほぼ変わらんくらいだ。まだ始まったばかりだし、幾らでもオセロできるぜ。

 

なんか向こうの船長、オヤビンって呼ばれてるからそれで良いや。オヤビンがコソコソ移動してる。一応、刃技の射程圏内におさめときたい。こっそり着いてくか。

 

こうして見てるとやっぱり面白そうだよなぁ、レースも。ちょっと出たかったかも。まぁ良いんだけどね、全部出るなんて出来ないし。

 

おぉっ!!インパクトダイヤルで一気にぶっちぎったぞ!!すごい、あんな使い方もあるのか。

 

ん、インパクトダイヤルって盾に付けるのが良い気がしてきた。敵からの衝撃を吸収する絶対防御と、その衝撃をそのまま跳ね返すシールドバッシュ的な。攻防一体の盾かぁ。時間ある時に設計してみよっかな。

 

おぉ、ロビンは頭良いなー。手でしっかり相手の船を掴んでる。あ、バレた。そしてロビンの腕を殴ろうとした魚人が海に落ちた。草。

 

お次は奥の渦とサンゴ礁の森によって独特な海流が発生している迷路地帯。相手チームは何度突撃するも逆戻りしてる。しかし我らがナミには完全に攻略できている模様。オヤビンが煙幕を発生させ視界を奪うも、楽々突破。さっすが〜。やっぱりこのメンバーで良かった。

 

さて、次の大渦をどうするのか...ふぁっ!?とっ、飛んだァァァーー!!ウソップのインパクトダイヤルで空を飛ぶ樽船。船頭の鋭角鉄板がいい感じに風を切り裂いてぐんぐん飛距離を伸ばしてる。岬も楽々越えてったぞ、すげぇな。でもウソップの腕が死んだわ。どんまい。リジェクトだったら終わってたな。

 

右へと書かれた看板と、死にかけのばぁさんの演技と、偽のゴールを全てぶち破る。ナミのツッコミスキルがどんどん上がってくぞ。

 

信じる心ってなんですか?って言う疑問に対してキレ散らかしてるの面白すぎて。まさに外道。ゲスの極み乙女。(パクリ)

 

偽ゴールに敵が引っかかっている件。ギャグかよ。ギャグだったわ。なんかいつの間にかサメと魚人が合体してる。あのスタイル見たことある〜。具体的にはバラティエで。流行ってんのか?

 

さて、ラストスパートだ。と言ってもさっきのサンゴ迷宮で圧倒的な差を付けてるから、このまま行けばウソップたちの勝ち確。ルフィやサンジも喜んでる。

 

ただ、ずっと尾行していたオヤビンの言動と、部下たちの表情が腑に落ちない。相手の船も猛追してるし、ちょっと心もとないかも。ってことで保険かけとくか。

 

''刃技(じんぎ) (あま)叢雲(むらくも)''

''刃技(じんぎ) (あま)霞牙(かすみは)''

 

ウソップ達に被害が出ないよう、相手チームを覆い隠す様に雲を発生させる。そして小さな斬撃をひとつ。

 

「うぉおおお!!こんな雲なんざ気にしてられるか!!追いつけ追いつけぇえええ!!」

 

「きゃっ!?えっ、ちょ、待ちなさい!?」

 

オヤビンが腕を前に突き出し叫んだ。

 

「''ノロノロビーム''っ!!」

 

「「「!?」」」

 

直後、ゴール直前にまで雲が達する。しかしおかしい。僕らはみんな困惑してる。相手チームは突然雲が発生した事に。僕らは、ほんの数メートル先がゴールだと言うのに、一向に3人の乗った船が雲の中から出てこないことに。

 

雲に飲み込まれたまま、バシャバシャと波打つひとつの音のみが響いている。その音を聞いた瞬間に、相手チームの奴らはみんなにやけた顔になっていた。勝利を確信したのだろう。

 

こっちは混乱の真っ只中だ。なんだ、ノロノロ?ビーム?オヤビンの掌から出た謎気配に照射されたウソップ、ナミ、ロビン、そして3人を乗せた船や、船を運ぶ波までもが動きを無くす。いや、無くしてるんじゃない。極端に遅くなっているんだ。文字通り、ノロくなってる。

 

つまりオヤビンは、パラミシアの能力者ってことか。厄介だな。

 

「ぅおおおおお!!!よっしゃぁあああ!!!見たか野郎どもぉおおお!!!」

 

「ゴーーーーールッ!!!勝者!!!キューティーワゴン号〜〜〜!!!!」

 

「「「いやったァあああ!!!」」」

 

敵チームは大喜び。対してルフィたちは呆然と、状況が理解出来ていない様子だ。

 

そしてウソップとナミとロビンが雲から突き出てゴールした。3人とも困惑している。そりゃそうだ、当事者が1番訳分からないだろうな。ゴール直前で全ての速度を奪われたんだから。

 

「はぁっ、はぁっ。」

 

「どういう、こと?」

 

「なんか動きが、?」

 

答え合わせをするように、オヤビンがわざわざ説明してくれた。掌から照射されたノロマ粒子に触れた全ての物は、30秒の間ノロくなるらしい。大砲を使って実践してくれた。爆発してたけど。ちゃんと数えとけよ。

 

「フェーッフェッフェッフェ!!さぁ、差し出してもらうぞお前たちの仲間を!!!まず1人目に欲しいのは...お前!!」

 

「船医!!トニートニー・チョッパー!!!」

 

...ふーん、なるほどね。狙いはチョッパーか。さて能力も目的も知れたことだし。

 

腕をがっしり捕まれて連れて行かれそうになるチョッパー。小さな身体で抵抗してる。大きくならないのは、心が納得できないまでも頭で理解しているからか。

 

みんな悔しそうにしている。負けを認めているらしい。それでも諦めきれないと、チョッパーを悲しい表情で見ている。

 

「みんなぁぁああーーー!!!おで、おれ嫌だぁああああ!!!おれはっ!!お前たちだから海に出たんだっ!!!ルフィが誘ってくれたからおれ、海に出たんだよ!!!嫌だよおれぇえ!!!」

 

その言葉を聞いて、ウソップ、ナミ、ロビンはより一層悲痛な面持ちになる。

 

「ガタガタ抜かすなチョッパー!!!見苦しいぞ!!!」

 

「「「!?」」」

 

「お前が海に出たのはお前の責任!お前がどこでどうくたばろうとお前の責任!誰にも非は無ぇ!!ウソップたちは全力でやったろう!!海賊の世界でその涙に誰が同情する!?」

 

ま、ゲームを受けた時点で自己責任だもんなぁ。これはゾロが正しいね。

 

「男なら...!フンドシ締めて勝負を黙って見届けろ!!!」

 

「...っ!!あぁ、わがっだっ!!!」

 

おぉー偉い!!よく泣き止んだね、チョッパー。でも変なの。僕らは負けてない(・・・・・)のに、まるで負けたみたいな言い草だな。

 

「それでは第1回戦、決着がつき...!」

 

「異議あり!!!(逆転風)」

 

「「「!?!?!?」」」

 

突然左手をピンと空高く伸ばし大声を出した僕に向かって、大勢の視線が突き刺さる。わはは、こんなに注目されてるよ。やっぱり顔見せてなくても、ふつくしさはオーラで分かるもんなのかな?(うざい)

 

「なんだぁ、ガキ?デービーバックファイトにおける決着にケチつける気かぁ!?海賊の恥を晒すのかぁっ?」

 

「そーだそーだ!感動的な場面だったのに!」

 

「子どもは口を出すなっ!」

 

なんかめっちゃ不評なんやけど。こんないたいけな子ども(見た目)に寄って集って大勢で責め立てるなんて恥ずかしくないのかっ!?お前ら人間じゃねぇっ!!(ジムリーダー)

 

「「...。」」

 

うわ緑髪と金髪が睨み効かせてる。全員一瞬で黙った。シーンとしてるわ。お前らどんだけビビってんねん。あぁ、さっきボコられたからか。

 

「ソラ、どうした。」

 

お、ルフィも気になるんやな。ま、ちゃんと見てみなさいよ。

 

「あれ。」

 

と、人差し指である1点を指さす。みんな僕の指と同じ方向に視線を向ける。なんだこれ面白いぞ。こいつら全員猫にならねぇかな。全力で可愛がるのに。

 

「「「んん〜〜?...あっ!?」」」

 

「...グズっ、ひぐっ。ぅぅぅう〜〜っ。」

 

雲が晴れたそこには、1人の女海賊が船と共にぽつんと漂っていた。涙を流しながら。確かポルチェって呼ばれてたな。

 

「どっ、どういう事だぁ!?なぜキューティーワゴン号とポルチェちゃんがあんな所に!?ゴールにも辿り着いてねぇじゃねぇか!?!?」

 

にやり。

 

「ご覧の通り、君たちは現時点で未だゴール出来ていない。対して、こっちは3人全員が既にゴールしている。どちらが勝ちかは明白だよね?」

 

「なっ、なっ!?」

 

「種明かしをしようか。ゴールを目前にリードされて焦っている君らに向けて雲を発生させ、視界を奪う。その際に斬撃を飛ばし、サメ&魚人と船を繋いでいたロープを切断。置いてけぼりの船と仲間の1人に気づくことなくゴールしはしゃぎまくって今に至る、という訳だ。可哀想にね、彼女泣いてるよ。」

 

奴さん方みんな揃ってオロオロしてんぞ。ウケる。まぁ今の今まで気づかなかった自分たちの愚かさを恨め。

 

オヤビンは怒り心頭。対してこちらは、チョッパーが連れていかれないことを理解した満面の笑み。

 

「ふっ、ふざけんなっ!!いいか!?こっちは先にゴールしてるんだよ!!審判だってもう勝利宣言を終えてる!!つまり、勝者は俺たちだっ!!」

 

お、裁判ごっこか?とことんやってやるぜ?デービーバックファイトにおける論戦で僕に勝てるとでも思ってるの??

 

「泣いている彼女は無視してゴールしてるって言うつもり?じゃ、あの子は仲間じゃないんだ。それに勝利宣言?審判は勝者にキューティーワゴン号の名前を宣言した。でも実際には、船はゴールを抜けてない。つまりその宣言は間違いであり、無効となるはずだよ。」

 

「ポルチェちゃんはフォクシー海賊団の仲間に決まってんだろ!!お前ら迎えに行ってやれ!!それとぉ!!!勝者はフォクシー海賊団だとそう言った!!だろう、審判!?」

 

「その通りです!フォクシー海賊団が勝利だと宣言しました!!」

 

ほう、そんなこと言っちゃうんだ。ふーん?

 

「おい待てよ、俺ぁ聞いてたぜ。テメェは船の名前を宣言しただろうが!」

 

サンジが詰め寄る。みんなも抗議してる。結構聞いてたんだな、偉い。

 

まぁ向こうは認めないよね、そりゃ当然だ。でも残念、ちゃんと録音してある。

 

「ごちゃごちゃ言う前に証拠を持ってきたらどうなんだぁ!?フェッフェッフェ!!」

 

はい、ポチッとな。

 

【ゴーーーーールッ!!!勝者!!!キューティーワゴン号〜〜〜!!!!】

 

【どっ、どういう事だぁ!?なぜキューティーワゴン号とポルチェちゃんがあんな所に!?ゴールにも辿り着いてねぇじゃねぇか!?!?】

 

審判の勝利宣言と、それを完全否定するオヤビンの声。トーンダイヤルが物語っているっ!

 

「なっなんじゃそりゃぁああっ!?おっおれの声ぇええ!?...はっ!?」

 

またまた、にやり。

 

「はい、QED。自己論破お疲れさま。ということで、僕ら麦わらの一味の勝ちだね。審判の勝利宣言を、オヤビン自身が否定してる。そしてこの録音が自身の声だと認めた。同時に、そっちのチームと審判の癒着も露呈したね。まぁフォクシー海賊団から選出されてるんだから、当たり前っちゃ当たり前なんだけど。」

 

「ぐっ、ぐぅうううう〜〜〜っっ!!無効だっ!!ゴール手前で妨害を行って良いというルールはねぇっ!!」

 

「「「お前が言うなっ!!!」」」

 

「しちゃダメってルールも無いでしょ。審判。これ以上議論の余地は無い。さっきの虚偽申告は見逃してやるから、代わりに再度勝利宣言をよろしく。誰にだって間違いはあるさ、問題はそれをどうリカバリーするかだよ。ちなみに。」

 

この要求を飲めない場合、こちらも然るべき処置を執り行う。これはデービーバックファイト。海賊の、ゲームだよ。

 

ルフィがポキポキと指の骨を鳴らし。ゾロが柄に手を添えて。サンジがタバコを吹かし睨みつける。

 

こいつら輩かよ。怖ぇ。

 

「ひいっ!?し、しししょうしゃひょう勝者!!!麦わらの!!!一味ぃぃいいい〜〜〜っ!!!!」

 

「くっ、くっっそぉおおおお!!!」

 

勢いよくホイッスルが鳴る。よく出来ました。表彰者って聞こえたけど、まぁ良いや。

 

手を取り合い抱きつき合って喜ぶウソップとナミとロビン。チョッパーも嬉しそうにはしゃいでこっちに向かってきてる。よしよし、良かったねぇ。僕もハイタッチいえーい。うれぴっぴのヒヨコちゃん。

 

はぁ、次は警戒されそうだな。まぁ望むところなんだけど。

 

「さて、皆どうする?」

 

「まずは人を選ぶか、モノを選ぶかだな。」

 

(((ま、まさか俺を??)))

 

「財宝で!!♡」

 

「いや早ぇよ!?もうちっと考えようぜ!」

 

「何よ、良いじゃない。どうせ全部勝つんだから何選んだって一緒でしょ!」

 

「そりゃそうだけどよぉ。」

 

そだね。そもそも人を選ぶって言ったって、誰一人情報を持ってない。何が出来るのかも知らないし、別に要らないかな。

 

「良いぞ、財宝で。お前らが出たんだからな。」

 

と、ルフィの鶴の一言で決まった。

 

「財宝か...何割持ってく気だ?」

 

「何割?何言ってんの、全部に決まってるじゃない。」

 

草。血も涙もねぇ。向こうもギャーギャー言い出した。やれ航海ができないだの、買い物ができないだの無一文になるだの。

 

「うるさいっての。負け犬が何か言う権利ある訳?」

 

しーーーん。

 

ナミって実は覇気使いだったりする??覇王色の。

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第2回戦

間があきましたね。ストック自体はあるんですけどね~。
筆が遅すぎて申し訳ない(笑)


さぁ、第2回戦のお時間だ。早くやりたくてうずうずしているよ、こんな運動会みたいな内容は初めてだ。楽しみ楽しみ!

 

フィールドに立つと、既に2人が喧嘩してた。

 

「足引っ張る前に出とけ。」

 

「てめぇにだけは言われたくねぇな。」

 

はいはい、おちけつおちけつ。ルール説明始まるよ。ちゃんと聞いときなね。

 

「第2回戦はグロッキーリング!フィールドにはゴールが2つ!球をゴールにぶち込めば勝ちだ!ただし球はボールじゃなくて~?人間~~~!!!つーわけで、両チームそれぞれ球になる人間を決めてくれ!!」

 

これはジャンケンかな。誰がなっても恨みっこ無しってことで。

 

「お前ら誰が球やるんだ?」

 

「ん。」

 

「ほい、球印な!」

 

「…は?」

 

やばいこの一連の流れが美しすぎて腹筋崩壊しそう。事前に打ち合わせたんかお前ら。

 

「ざけんじゃねぇぞクソマリモっ!?球はてめぇだろコラ!!!」

 

はしゃぐサンジを2人してスルーしていたら、どこからともなく音楽が。まぁまぁ、もう決まったことだししょうがないって。僕もやりたくなかったし、どんまい。(最低)

 

「グロッキーリング無敗の精鋭!!その名もグロッキーモンスターズ!!今、フィールドに…登場~~~~~!!!」

 

うわぁ、でっか。え、てかあのでかいの魚人じゃね。背ビレあるんじゃが。でも知らん顔やな。魚人島にはいなかったと思うけど。

 

「先頭は四足の奇人 ハンバーグ!続いてタックルマシーン ピクルス!そして最後には魚人と巨人のハーフ!!魚巨人(ウォータン)のビッグパン!!モンスター共の行進だぁぁぁあああ!!!」

 

ボールマンはビッグパンがやるのね、把握。

 

「不足は?」

 

「ねぇな。」

 

「オッケー、楽しもっか。」

 

お、こっちの紹介が始まる。僕に対して結構ヤジが飛んでるな。さっきので恨みを買ったのか?論破された後でごちゃごちゃ言ってんじゃねぇよ。

 

「さぁ、麦わらチームのメンバー紹介だ!まずは第1回戦でお邪魔軍団を蹴散らした暴力コックのサンジ!!!」

 

「一流コックと言え。」

 

お邪魔軍団って言っちゃってるんだが。サンジがコックって情報はどっから漏れたし。

 

「そして6,000万の賞金首である海賊狩り!!ロロノア・ゾロ!!!麦わらの一味の中では3番目に高い額だ!!油断ならねぇぜー!?」

 

「ちっ、俺はその賞金額に納得いってねぇんだよ。」

 

ジトリ、とこちらを睨んでくる芝生頭。なんだよ、言いたいことがあるならはっきり言ったらどうなんだ?おぉん??(なぜ喧嘩腰)

 

「そして最後に!第1回戦における影の功労者!!オヤビンと審判を正論という言葉の刃でズタボロに切りつけた黒マントの子ども!懸賞金5,900万!!黒紫傘(こくしがさ)のソラぁ!!!ゾロとは僅差で4番手だぁ!!!」

 

「「「ブーブー!」」」

 

口で言うなよ、ブーブー。

 

あ、ゾロは僕のほうが低いから不服なの?まぁ目立たないようにしてるし、別にええやん。皆そのうち高くなるんだからさ。はいそこ、舌打ちしなーい。

 

「なお、あのフードの下には天使と見紛う程の美しい貌が隠れているとかいないとか…!見せろーー!!」

 

「「「うぉおおお!!!見せろ―――!!!」

 

氏ね。あ、間違った。〇ね。あれ、おかしいな。伏せないようにしている筈なのに。この〇〇〇〇野郎どもが!!!

 

「おいさっさと位置につけよボールマン。」

 

「てめぇが勝手に決めただけだろうが!俺ぁ認めてねんぇんだよ!!!」

 

「ごちゃごちゃ言うな。お、ボール似合ってんぞ?」

 

「乗るかボケェ!?」

 

ちょっと、いつまで遊んでんの。あー、もう。ったく。

 

ナミとロビンにアイコンタクト。2人もなんとなく察したらしい。

 

「サンジ。ナミとロビンが似合ってるってよ。」

 

「え?」

 

2人はにっこりと微笑み、控えめに手を振っている。

 

「ぐはぁっっ!?ナミさんとロビンちゃんが俺に向かってエンジェルスマイルをっ!?」

 

いや、どちらかと言うとアルカイックスマイルかな。

 

あれ?なんだあの人。さっきの、誰だっけ。名前忘れた。えーっと、あ、そうそう。ポルチェさんだっけか。車みたいな名前だな。なんかこっち見て赤くなってる。はっはーん?

 

「サンジ、モテモテじゃんか。あっち見てみなよ。」

 

「ん?ごはぁっっ!?頬を染めてラブリースマイルをっ!?まさか俺のボールマン姿に…!やるぞボールマン!俺にこそふさわしい!!」

 

「ほんとによく似合うぜ。まるで王子様のようだ。アホ王国の。」

 

「「うるぁああ!!!」」

 

だから遊ぶなっての。

 

「おいお前たち!武器は駄目だぜ反則だ!!これは球技なんだからな!!」

 

「そう!!これは球技、武器を持っちゃゲームにならない!!ゲーム中は没収だぜー!」

 

ふーん?ゾロと顔を見合わせる。

 

「まぁ、別に。」

 

「どっちでも構わねぇが。」

 

まじでそれに尽きる。刀3本と傘1本をウソップに押し付ける。

 

「いやなんで俺だよっ!?」

 

なんとなく。信用してるってことだよ。

 

「おい大丈夫か。剣士が刀を失うってことは。」

 

「なんだ。」

 

「へなちょこの出来上がりだな。」

 

「「ぉおおらぁあああ!!」」

 

おいそろそろいい加減にしろよお前ら。こっちのチームは喧嘩ばっかりで向こうのチームは訳わかんないまま笑ってばかりだ。カオスかよ。

 

「キリがないな。審判、はじめてよ。」

 

「よっしゃあ!!時間は無制限1発勝負!!それでは第2回戦!!始めーーっ!!ピィーーーっ!!!」

 

やっとか。あ、てか作戦も何も決められなかったわ。アホ2人のせいで。

 

「作戦なんざ要らねぇよ。俺が1人で決めて終わりだ。」

 

なんか突っ走って行くサンジ。お得意のスーパージャンプを見せ相手のボールマンに蹴りを入れようとするも、相手チームは3人ともサンジをスルー。

 

ありゃ?なんかこっちに来るぞ。

 

「ぷぷぷっ!オヤビンにお前を痛めつけてやれって言われてるっ。」

 

「コケにされちまったからな!!チビでガキで武器もないお前は1番弱っちいだろうから、真っ先に潰してやろうって作戦だ!!覚悟しろっ!!」

 

「ぶししっ!」

 

おやおや、僕をご指名ですか。そうですか。ふーん?

 

「武器ねぇ。まぁ、別に武器なんて無くても良いんだけど。」

 

にしても相手チームで1番小さいはずのハンバーグだけで僕の何倍のでかさなんだよってくらいあるんじゃが。端から見たら絶望的って感じなんだろうなぁ。

 

「ぷぷぷっ!轢き飛ばしてやる!!」

 

四足歩行で突撃してくるハンバーグ。リーダーが先鋒って大丈夫か?何がリーダーなのか知らんけど。

 

左手を無造作に突き出し、その巨体の突撃からくる衝撃を押し留める。それだけで、まるでノロノロビームを打たれたかのように、ハンバーグの勢いが止まる。

 

「ぷぷ…ぷ、?う、うう、え??な、なんで?」

 

いや、何もしてないよ。ただ頭突きしてきた額に手を突き出してるだけ。単純に力と力の勝負だ。ま、僕も日々修行して腕力強化してるからなぁ。これくらいは出来て当然だ。

 

「なぁーーっ!?ど、どんなトリックだこれはぁあっ!?体格差は歴然!!誰がどう見てもハンバーグが圧倒的にデカい!!なのに!!!腕1本で受け止めたぁぁあああ!?!?」

 

「「「うぉおおおおーー!?」」」

 

「''魚人空手・人技 閂正拳(かんぬきせいけん)''。」

 

「ごっ、ふ...ブクブクブク...。」

 

「げっ、ゲンコツで泡吹いて気絶したァーー!!!??」

 

ふはは、仕留めた。さて皆さん質問です。武器使いの武器が無くて困った時、果たしてどうすれば良いのか。それは…。

 

「お前が武器になるんだよっ。」

 

拳を受けて目を回しているハンバーグの足首を引っ付かみ、棍棒のように振り回す。そしてハンマー投げの要領で相手チームに向かってぶん投げる!!ふははははははは!!!避けるなり受け止めるなりかんばれ!!!お、受け止めた。やさしー。

 

「「「なっなにぃーーー!?!?」」」

 

「どこにそんな力があるというのかぁあっ!?フードの下に隠れているのは天使ではなくゴリラだったのかぁあっ!?!?」

 

おいぶっ飛ばされたいのか実況。やっちまうぞてめぇ?

 

「おいソラ!お前ひとりで楽しんでんじゃねぇよ!俺に任せろ!!」

 

さっきの続きだとサンジが2度目の特攻をしかける。...が、ビッグパンの腕の上で滑って遊びはじめた。いいなー、あれ楽しそう。

 

「うおーー!?うおー!?あぶっあぶねぇ!?」

 

「てめぇ何バカやってやがんだっ!!」

 

「''パンクパス''っ!!!」

 

うわ、サンジぶっ飛ばされた。痛そう。(他人事)あのままだとゴール行きじゃね。

 

あれ、ってか僕を狙うって当初の作戦はどこに行ったん。もう諦めたんか。諦めたらそこで試合(ry。

 

着地地点であるゴール付近に回り込んでいたゾロだったが、どっからか湧いてきたピクルスにタックルされて吹っ飛ばされていった。

 

えぇ、これヤバない?とりまキーパーしとくか。ゴール前に居よう。

 

うわ、サンジが空中でキャッチアンドリリースされて一直線にこっちに飛んでくるぞ。

 

あー、でピクルスが受け取ってそのままアリウープって訳か。なるほど?

 

「待てコラぁ!!っぐぁ!?」

 

「ぐっ、なんだぁ!?ごはっ!?」

 

ゾロがまたピクルスに吹っ飛ばされた。そしてついでにサンジも真上に吹っ飛ばされた。なにやってんの2人とも何回も吹っ飛ばされて。そういう遊びじゃないでしょ?

 

とりあえずこのままゴールはダメだから、先にサンジを回収するか。

 

「さぁ敵陣上空ハンバーグ、サンジを捉えた!!そのままゴールなるかぁ!?」

 

「ぷぷぷぷっ!ぷっ!?ぐへぁあ!?!?」

 

「ぐわぁっ!?!?」

 

やべ、勢い余ってライダーキック顔面直撃コースだわ。すまんな、ひき肉。思ったより跳んじゃった。ひき肉を轢きに行く、なんちてー。(うざい)ついでにピクルスに激突させちゃったし。悪かった、わざとじゃないよホントだよ。

 

「ゾロ、サンジ。一旦体勢立て直すよ。」

 

「っちぃ!」

 

「あーったく、ボカスカやりやがってあいつら。」

 

「「「うぉおおおおおお!!!あのガキすげぇ!!?」」」

 

おいちゃんと選手紹介あっただろ。お前ら全員僕のことは尊敬と畏怖を込めてソラ様と呼べ。(呼ばない)

 

「ノーーゴーールッ!!!なんとまさか、グロッキーモンスターズの最強コンボをたった1人がぶち破ったぁぁああ!!!流石と言うべきか懸賞金5,900万は伊達じゃない!!!」

 

盛り上がってきたな。ヤジも少しずつ声援に変わってきてるみたいだ。わはは、アガるなぁおい。

 

よし、そんじゃ早速動きたいんじゃが。あれ、なんか向こうの2人気絶してね?起きてこないんだけど。そしてこっちの2人は相変わらず喧嘩してるし。あ、やばビッグパンこっち来たわ。退いとこ。

 

「ちょい、2人とも。そこ危ないよ。」

 

「「は?」」

 

ズドン!ズドンズドンズドンズドン!!

 

「「ぅおおおおおおい!?!?」」

 

いや2人揃って一緒の方向に逃げるなし。分散してよ、相手の意識を削ぐために。つかあいつ足裏に刃物仕込んでるんだが。サンジが抗議してるけど、まぁ無意味なんだろうなぁ。

 

「っ!?おいソラそっち行ったぞ!!」

 

分かってるよ。

 

「''魚人柔術・人技 柳凪(やなぎなぎ)''。」

 

「ぶししっ、ぶっしっし!!ぶ...、!?」

 

ドォォオオオオオオオオンッ!!!

 

「「「.........は?」」」

 

「なぁーーーーっ!?!?ななななななんと!!!にわかには信じられない!!が!!今、あの巨体を…投げたァァアアアアア!?!?」

 

「「「はぁああああああーーー!?!?!?」」」

 

ふはははははは。片足を上げたタイミングで少し力を加えてやっただけだよ。投げたように見えたのかもしれないが、実際はそっと押して重心をずらしただけ。力でやるんじゃない。一重に積み上げた技術の賜物だ。

 

ちなみに音は凄かったがかすり傷ひとつ付けてない。いくら相手が刃物を持ってたって、半分は魚人だからな。僕は魚人には手をあげないんだ。

 

え?魚人柔術ではっ倒すのは良いのかって?魚人空手と違って痛めつける目的じゃなく、無力化のための技だからね。ゲーム内のお遊びって名目だし、大丈夫大丈夫。これがガチの戦闘とかなら話は違うけどなー。屁理屈だって?海賊だからね。かの王も分かってくれるよ、きっと。

 

「へっ、そう来なくちゃ。」

 

「まぁまぁだな。」

 

「なんなの君ら、遊んでた癖して。」

 

まじで。ちゃんとやれよ!!てめぇらが遊びまくるせいで僕は全然楽しめてないんだからな!!嘘です割と楽しいです!!だってアスリートみたいなんだもん。

 

あ、ビッグパンがゾロとサンジの方に行っちゃった。相手は3人揃ってハンバーガーやな。美味しそう。

 

とか思ってたら気絶してた2人がこっちに来たわ。ごめんて、そんな怒らんといて?てか君らそれ狡くない?鉄のメリケンサックに棘付きの肩当て。でもそれ奪ったら僕が失格になりそうなんだよなぁ。

 

「頭にきたどぉリーダー!おれはこいつ許さんっ!!うらぁっ!!」

 

「ぷぷっ!!」

 

突進にスピン、左右のぶん殴り。いやまぁ全然普通に当たんないけど。

 

「''魚人空手・人技 曲点掌波(きょくてんしょうは)''。」

 

「「ぶふぅうぇええっ!?!?」」

 

ボヨヨンと丸まったお腹に掌底を突き刺してやったらゴムボールみたいに飛んでっちゃった。あっちもこっちもフライアウェイ。彼らは魚人じゃないのでぶっ飛ばしますとも。えぇ、もちろん。

 

「「ぐわぁああ~~...。」」

 

「...、? おまえらマジでいい加減にしろよ。」

 

なんだアイツらずるい僕だけハブって2人でヌルヌル3次元スケートやってる!!代わってよ!!そっちがいい!!!

 

「おっと。」

 

「ぅぉおおお!!''スライスアタック''!!!よけんなっ!!」

 

「やだよ。」

 

やだよったら、やだよ♪当たったら痛そうだし、マントも破れそうじゃんか。

 

おっとまたゾロとサンジがこっちに飛んできたぞ。君ら今日だけで何回飛んだの?1回くらい僕にもその景色、味わわせてくれたって良いんだよ?代わって?

 

あ、ゾロが地面に叩きつけられた。砂埃けむい。でも良い感じに煙幕の役割果たしてるな。今のうちにゾロ回収っと。

 

うわ人間スパイクやばたにえん。しかもメリケンサック付き。地割れ起きたんやが。まぁ割れたのは地面だけだけど。

 

さてサンジと合流出来たことだし。説教タイムだ。

 

「ねぇ君らほんとに何してんの?なんで僕も混ぜてくれないの?遊ばせてよ。こっちつまんないんだけど。」

 

「「遊んでねぇよ。」」

 

うそだっ!あんなにフワフワお空飛んで遊んでないなんて言い訳が立つと思ってんのかぁっ!!

 

あー、なんか来てるな。

 

「おおーっとモンスターズ、敵チームに向かって突撃だぁー!!まさかまさか!!3人まとめて叩くつもりかぁ!?」

 

「サイズアタック!!」

 

「S!!!」

 

「M!!!」

 

「L!!!」

 

ドガァアアアアアアアアアンッッッ!!!

 

いったぁ…。いや痛くないけど、なんか雰囲気が痛い。痛くなくても反射的に痛いって言っちゃう気持ち。わかる?ちなみにゾロとサンジは血ぃ流してるわ。カワイソス、カワウソス。

 

なんかオヤビンが叫んでる。ハンバーガーくれって。何の話?僕も欲しいんだけど。ふとっちょバーガー1つくださ~い。

 

「ちょっと、いつまで寝てんのおふたりさん。」

 

「空、青いな。」

 

「煙草がうめぇ。」

 

「いや何誤魔化そうとしてんの。自分で寝たわけじゃないよね、それ。倒されてんだよね。」

 

やっと起きた。なんか準備運動は終わりだ、みたいな雰囲気出してるけど。なんなん、こいつら。

 

つかあっちはあっちでめっちゃ武器持ってんじゃん。草。

 

「おいソラ、お前はもう手ぇ出すなよ。」

 

「そこでおとなしく見てろ。目立ち過ぎだ。」

 

はにゃ。いや待て、目立ち過ぎだと。それはこっちのセリフや。さっきから僕、みんなの視界の外でワチャワチャやってただけな気がする。君らは楽しんでたけど。観客も喜んでたし。エンターテイナーかよ。

 

まぁ別に戦力外通告を受け入れるのは一向に構わんが。

 

「早くしてね。僕、もう飽きたから。」

 

「「同感だ。」」

 

僕らの会話が聞こえていたのか、怒ったようにこちらに向かってくる。それぞれの手に武器を持って。審判は見てない。なんかブリッジしてる。なぜブリッジ?

 

だがまぁ、やる気を出したこの2人に勝てる奴なんて、前半の海にはそうそう居ないし。あとは時間の問題だな。

 

相手チームの先頭にいるハンバーグに向かって速攻を仕掛けるサンジ。急激なスピードの変化にハンバーグは狼狽える。

 

「''三級挽き肉(トロワジェムアッシ)''!!」

 

本日2回目の顔面直撃キック。まじで可哀想過ぎ。まあ1回目は僕なんだけど。

 

「''木犀型斬(ブクティエール)シュート''!!」

 

逆立ちの体勢から顎を蹴り抜き巨体を吹き飛ばす。仕返しかな。まぁあれだけ飛ばされたら仕返ししたくもなるな。

 

ぶっ飛んだハンバーグは勢い余ってビッグパンのクラッシュに巻き込まれる。業務用ハンバーグみたいにペラッペラになっちゃったよ。ハンバーグは肉厚じゃなきゃいけないのに!!!

 

怒ったピクルスがサンジに回転斬りを仕掛けるも、ゾロが相対する。チーム戦だからね、そりゃそうなるわ。んでももっと早くにして欲しかったかな。そんなんじゃ鈴取り試験も不合格だぞ!!?忍者をやめろって言われても良いのか!?(忍者じゃない)

 

「''無刀流(むとうりゅう) 龍巻(たつま)き''!!!」

 

おい待て無刀流ってなんだ。いつの間に刀使わずに刀の技を使えるようになってるんだ。もうなんでもありじゃん、そんなの。僕にも教えて?おねがい。

 

回転斬りをそのままに、ビッグパンに追突する。胸や腹を切り刻まれるビッグパン。仰向けに倒れていくが。

 

「''反行儀(アンチマナー)キックコース''!!」

 

巨大な背中を蹴りあげるサンジは、敵が倒れることを許さない。直立不動で気絶してしまった。

 

「ここは通さないぞー!」

 

ビッグパンに向かって走るゾロに通せんぼするピクルスだが、そこへサンジが駆けつける。

 

「邪魔なんだよ、お前も。審判も。」

 

「え?ぐばはぁっ!?」

 

「ぐぇえええっ!?」

 

ピクルスの横っ面を蹴り飛ばし、その直線上にいた審判さえも巻き添えに。

 

相当鬱憤が溜まってたんだなぁ。(他人事)レッドカードと笛を取り出そうとする審判だったが、全てナミの手に。いつの間にやら盗んでる。ほうほう、癖ならしょうがない。

 

サンジの足にゾロが飛び乗る。ちゃんと連携してるじゃんか!!偉い!!

 

「''空軍(アルメ・ド・レール)パワーシュート''!!!」

 

ゾロが...跳んだぁーーっ!!!すっげぇー!!そのままビッグパンの前歯を掴み!!!

 

ダンクシュートォォオオオオ!!!

 

うぉーー!!かっけぇすげぇ!!ゴールへジャストミートだ!うはははは、魅せる魅せる!!まじでエンターテイナーだなぁ!!

 

ここで審判のホイッスル。試合終了~~!おや、審判がキョトンとしてる。なんかあったか??

 

「ゴーールゴーールゴーーーール!!!試合終了のホイッスル~~!!!!勝者!!!麦わらチームーーー!!!!」

 

さー戻ろ。お腹すいたぁー。何か買おうかな、たこ焼きとかあるかな。

 

あ、報酬は食料でよろしく。え?何言ってんの、全部に決まってんじゃん。人?要らない。

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第3回戦。その後、大将と。

おひさ~でございます。


ルフィがアフロになって戦っている。いや、アフロからルフィが生えている?どっちだろう。どっちにしてもアフロの存在感スゴすぎだし、全く良さが分からない。女性陣と同じような顔になってる自信がある。超無表情。しらーって感じ。

 

観客席が上がり、甲板を一望できるようになっている。デービーバックファイトのためだけに金かけてんなぁ。自信の表れなんだろうけど。不憫だな、僕らに挑んだのが運の尽きだと思ってあきらメロンって感じ。

 

ルフィにもオヤビンにも声援が飛びかっている。

ルフィが右ストレートをかます。だが意外なほど素早いオヤビンはアクロバティックに避けて、ルフィの右ストレートにノロノロビームを当てた。ほー。

 

ゴムの性質により、伸びたら元の状態に戻る力が働く。ノロノロビームが当たった右腕は、ほぼ空間に固定された状態だ。つまり、身体が右腕に向かって戻っていってしまう。

 

ビームを仕掛けるフェイントにひっかかったルフィ。空中に避けるのは悪手だなー。あぁ、全身に浴びちゃったよ。

 

「ルフィ!!」

 

「あぁっ、もうっ!だから気をつけろって言ったのに!」

 

ナミとウソップが歯がゆいと叫びを上げる。

 

重力さえもノロノロビームの対象になるのか。強くね??

 

ボッコボコに殴られるルフィ。しかしその反動もノロい。ノロすぎる。しかもこれ、30秒だろ?30秒もあれば幾らでも斬りつけることが出来る。つまり1回ビームを当てたらほぼ確で勝ちって訳だ。なんでわざわざ拳使ってるんだろ。舐めプか?煽ってんのか?まぁ頭から草みたいな髪生やしてるし、存在自体が草みたなもんだもんな。テラワロス。

 

ルフィが向かった先に、鈍くなった矢が。なるほど、ああ言うトラップにも使えるのか。マジで汎用性高ぇな、おい。

 

うわー、ノロノロの砲弾に乗ってやがる。すげぇなぁ、普通思いついてもやらんぞ。

 

負けじとルフィも同じステージに立とうとするが、砲弾はルフィを避けるように発射される。咄嗟に手を伸ばすも、爆発。30秒きっちり管理しておかないと、ああいう事故になる訳ね。こりゃ、慣れてないうちはきついな。

 

その後も性格的な相性があってか、ルフィがいつもの力を発揮できていない。あ、でも煙幕の中で何故かパンチが当たった。やるじゃん。見聞色の片鱗か?

 

2人が船内でバカスカ殴りあってる。映像電伝虫、便利。なんかいっぱい道具使ってる。それってコンバットか?今更か。

 

でっけぇロボに乗ってパンチを繰り出すオヤビン。壁一面の鏡でノロノロビームを反射させ、ルフィを苦しめる。

 

大爆発が起きる。煙の中から立ったオヤビンと倒れたルフィが出てきた。特徴的な頭と顔で、特徴的な笑い声を響かせているオヤビン。

 

その後ろで、ゆらりと立ち上がる影。ゆっくりと、ファイティングポーズ。

 

わはは、ルフィが負けるわけねぇじゃんか。強気な目してる。

 

棘のグローブからビームソードを取り出すオヤビン。刀状のノロノロビームなんだと。いや、だから汎用性。近・中距離でノロノロ使えるってやばいだろ普通に強い。惜しむらくは使い手だな。

 

殴られても殴られても立ち上がるルフィ。見ようによっては狂気を感じるであろうその執念。ルフィが立ち上がる理由、それは。

 

「俺の仲間は...誰ひとり!!!死んでもやらん!!!!!」

 

アフロとか、正義とか、卑怯者に屈しないとか。そういう理由じゃないんだよな。

 

ひとえに、仲間のために。

 

ありがとう、ルフィ。やっぱお前についてきて良かったわ。こういうところが船長の器なんだよ。皆がルフィを支えたいと思うんだ。

 

砲弾に呑まれ、爆発に吹き飛び、棘のグローブで肌をズタズタにされでも尚立ち上がる。誰が見てもフラフラで満身創痍だ。

 

両者、ラストスパートのラッシュ対決。そして、オヤビンの動きが止まる。なるほど、鏡のかけらを手に忍ばせていたのか。

 

「''ゴムゴムのぉ!!連接鎚矛(フレイル)''!!!」

 

顔面に1発。

 

さぁ、カウントダウンだ。

 

8

 

7

 

6

 

5

 

4

 

3

 

2

 

1

 

「「「0!!!」」」

 

「ぐべばはぁぅあーーーーーっっっ!?!?」

 

「「「うわぁーー!?オヤビーーン!!?」」」

 

これにて決着。みんなよく頑張ったよ。

 

 

&&&

 

 

海賊旗を奪い、後腐れなく(?)去っていったフォクシー海賊団を見送って、小さなおじさんにお礼をさせて欲しいと言われている。

 

が、そんなことより目の前に居るこいつがやばい。立ったまま寝てる背の高い白スーツアイマスクの男。直接見たのは初めてだが、正直言ってここで一味壊滅説が濃厚なレベルで過去一やばい。

 

どうする、どうすればいい…!

 

「...はぁっ!?はぁっ!?」

 

「えっ!?ロビン!?どうしたんだ!」

 

「あららら、こりゃ良い女になったなぁ、ニコ・ロビン。」

 

「ロビンがこんなに取り乱すなんて…!?誰なのっ!?」

 

だらけた雰囲気で会話が続けられる。僕以外の戦闘員全員がそれぞれ敵意を向けているのにも関わらず、一向に警戒する素振りがない。

 

僕らが幾ら敵対しようとも、警戒するに値しないってことだ。事実、それほどの戦力差がある。一方的になぶられるほどに。

 

「彼は、海兵よ。海軍本部...大将青キジ。」

 

「「「たっ、大将!?!?」」」

 

なぜ知らないのだおまいら。海軍の、敵の最高戦力だぞ。顔と能力くらい覚えてろよ。

 

「海軍の中で、大将の肩書きを持つのは僅か3人。赤犬、青雉、黄猿。その上にはトップの元帥が存在するだけよ。」

 

予想以上の大物と知って、みんなビビってるみたいだ。そりゃそうだろ、なんでトータルバウンティ3億弱の小海賊に大将が動く。訳が分からん、って感じだよな。僕も困惑してる。

 

とか何とか言ってたらナミを口説き始めた。こいつ独特な世界観持ってんなぁ。

 

「こんなやつが大将なわけねぇよ!」

 

「おいおい、人を見かけで判断するな。俺の正義のモットーは''だらけきった正義''だ。」

 

「「見かけ通りだよ!!」」

 

最近ウソップとサンジのツッコミコンビが出来上がってる。仲良いよね、君ら2人。

 

なんかダラダラしすぎて横になって話し始めたぞ。こいつほんとに大将かよ。同じ大将でもこんなに違うのか。

 

それでも海兵としての自覚はある様で、ダラダラしながらも小さいおじさんを助けてくれるのだと。

 

おもむろに海へと近づき、手を海面へ。

 

「ッギュァアアアアッ!!」

 

「いかん!!近海のヌシだ!!!」

 

「''氷河時代(アイス・エイジ)''。」

 

次の瞬間、水平線が凍りつく。見渡す限り、氷の海。近海の主どころか、波さえも微動だにしない氷の世界が造られた。それも一瞬で。絶望しかねぇ。これが噂に聞くロギア系悪魔の実 ヒエヒエの実か。やべぇな。海に落ちたら終わりっていう能力者のディスアドバンテージを無効化する能力。しかもこの効果範囲。バカかよこんなの、笑けてくるわ。

 

「夢か、これは...?」

 

「冷えるから、暖かい格好して行きなさいや。」

 

意外と気きくよな、こいつ。敵対組織なんだけど。まぁ世間一般的に言うと僕らの方が悪なんだが。

 

おじさんが何度もお礼を言う。目尻には涙が。これでみんなの所へ行けるのだとそう言って、沢山感謝を言いながら去っていった。

 

「はーーっ、良かった良かった。わっはっは、さみぃさみぃ!」

 

何かを言いたげに青雉がルフィを見やる。

 

「なんだ?」

 

「あーー、なんと言うか。じいさんそっくりだな。モンキー・D・ルフィ。奔放というか、掴みどころがねぇというか。」

 

「じっ、じいちゃん!?」

 

あー、ルフィのおじいさん。つまりモンキー・D・ガープか。海軍本部中将にして、英雄と謳われる程の実力と実績を持つ。割と親しげってことは、青雉はガープに世話になった口か。

 

「俺がここに来たのは、ニコ・ロビンとお前を一目見るためだ。やっぱお前ら、今死んどくか。」

 

「「「っ!?」」」

 

あー、ヤバいな。やばいよこれはマジでやべぇ。何がやばいってこいつ段々やる気出てきたし、こいつを引かせるにはギラギラの実を使うしかないんだが訳あって使いたくねぇ。でも使わないと全滅確定だ。あーーーーくそマジやばどうしよふざけんな。

 

「政府はまだお前たちを軽視しているが、細かく素性を辿れば骨のある一味だ。」

 

と言って僕に視線を向ける青雉。は???って感じなんだが。なんでこっち見てんねんぶっ飛ばすぞ。(無理)

 

「少数とは言えこれだけの曲者揃い。後々面倒なことになることは容易に想像出来る。初頭手配に至る経緯、これまでの実績とその成長速度。」

 

「長く無法者共を相手にしてきたが...末恐ろしく思う…!!で、特に危険視してる原因がお前だ。ニコ・ロビン。」

 

「お前やっぱりロビンのこと狙ってんじゃねぇか!!ぶっ飛ばすぞ!!?」

 

マジやめて。(おまいう)今はほんとに刺激しないで。どう足掻いても無理だから。青雉の空気が少しずつ重くなってるんだよ!!これが大将レベルの威圧感かよ。もはや覇気だろ、これ。皆本能で感じとってるのか、警戒を強める。

 

「懸賞金の額は何もそいつの強さだけを示している訳じゃない。政府に及ぼす危険度を示す数値でもある。だからこそ、お前は8歳という幼さで賞金首になった。」

 

「まぁ、それでも上には上が居るもんだ。お前よりもずっと幼くして賞金首になった子どもも居る。世も末だな、全く。まぁそいつはおれの担当じゃねぇから、詳しくは知らねぇんだけど。」

 

あぁ、そう。そういう事か。こいつは僕の種族的な意味での出生を知ってるんだな。何をどこまで知ってるんだろう。なんなら情報提供して欲しいまである。

 

「裏切っては生き延び、取り入っては利用し。そうやって次の隠れ家に選んだのがこの一味って訳か。」

 

「てめぇっ!ロビンちゃんになんの恨みがあるってんだ!!」

 

サンジが吠える。実力差は分かりきっている筈だが、それでも仲間を貶されたことが頭にきたんだろう。それは僕も一緒だが、ここで食ってかかっても返り討ちに合うだけだ。冷静に状況を見極めなければならない。

 

「今までニコ・ロビンの関わった組織は、全て壊滅している。その女ひとりを除いてな。何故かねぇ、ニコ・ロビン。」

 

「っ…!」

 

「やめろお前ぇ!!昔は関係ねぇ!!」

 

「なるほど、上手く馴染んだらしいな。」

 

「何が言いたいの!?私を捕まえたいならそうすれば良い!!''三十輪咲き(トレインタフルール)''!!!」

 

青雉がの身体から手が生える。何でもないと言うようにしゃべっているが、ロビンはそのまま技を発動した。

 

崩れ落ちる青雉の身体。だがその身体は氷となって大地に注がれる。そして、何事も無かったかのようにまた動き出す。

 

「あーぁあ、酷いことするじゃないの。もうちょっと利口な女だと思ってたよ。''アイスサーベル''。」

 

氷の刃を創り出しロビンへ斬り掛かる。しかしゾロが刀で防ぐ。そのままサンジ、ルフィが攻撃を仕掛けるが。

 

「「「ぐっ!?ぁぁあああ!!?」」」

 

一味の戦闘員達が軒並み一瞬でやられる事態に。これは本格的にヤバい。3人とも腕か足をやられてる。

 

「良い仲間に出会ったな。だがお前はお前だ、ニコ・ロビン。」

 

「違う!私は、もう...!」

 

ロビンに抱きつこうとする青雉。くそっ、やるしかないか…!

 

「''魚人空手・人技 曲点掌波(きょくてんしょうは)''。」

 

「ぐっ、うおっ!?」

 

突然の攻撃に吹き飛ぶ青雉。僅かに凍った右の掌を左手で抑え解凍する。大丈夫、ノーダメノーダメ。

 

魚人空手の本質は、辺り一面の水の制圧。人技に格落ちした僕の魚人空手でも、相手の身体に触れることが出来ればそれは有効となる。つまり、例えロギアの能力者であっても少なからずダメージを与える事ができる、筈なんだがなぁ。なんでお前もノーダメなんだよド畜生め。

 

「おいおいおい、どういうことだこりゃ。俺にダメージを与えといて、5,900万ベリーだと?冗談はよしなさいや。」

 

「ダメージが入ったようには思えない。」

 

「いやいや、痛かったって。酷いことするねぇ、お前さん。」

 

「大切な仲間を守るためなら、神でも悪魔でも世界でも敵に回す。」

 

「へぇ、随分と仲間思いじゃねぇの。熱いねぇ。」

 

何考えてんのかわっかんねぇこいつ。とりあえず後ろ手にロビンに合図を送る。少しずつ下がって。ロビンが指示に従い、後ろに下がる気配を感じる。

 

「逃がさねぇよ。」

 

「っ!?」

 

瞬間。青雉の脚から、僕とロビンに向かって氷が広がる。拘束が目的か?

 

大丈夫だよ、ロビン。ここから後ろには通さないから。

 

「舐めんな。」

 

左腕を地面につけ、真逆の効果を持つ熱を発する。これにより、僕らの拘束は解かれ振り出しに戻る。

 

「あらら、なんとまぁ厄介な。お前さん、炎系の能力者だったのか。あーったく、相性悪ぃなぁ面倒臭ぇ。」

 

「引いてくれない?って言っても無駄なのかな。」

 

「そりゃまぁ、無理だろ。お前さんが海賊である限りはな。」

 

その言葉を聞いたゾロとサンジが、青雉を囲むように戦闘態勢をとる。でもそりゃ悪手も悪手、最悪手だぜ。今はまだ、動ける範囲でしか凍らされてないからセーフなんだ。これで複数人が全身凍らさでもしたら、誰かひとりは確実に砕かれる。

 

「待った、お前ら!!お前ら手ぇ出すなよ。一騎打ちでやりてぇ。」

 

ふむ、なるほどね。どこまで考えてその言葉なのかは分からない。もしかしたら、誰よりも深い所まで本能で理解しての発言なのかもしれない。でも、ごめんねルフィ。この状況で、''やりたい''なんてワガママを言われちゃあ、それを諌めるのが僕の役目だ。

 

「この勝負、おれとお前で「僕と、君の一騎打ちだよ。青雉。」っおい、ソラ!!」

 

ダメダメ、そんな怖い顔して睨まれたって譲ってやんないよ。だって、そうだろう。

 

「僕らは麦わらの一味だ。つまりルフィ、君が僕らの船長だ。船長は皆の前に立って、その背中を見せることで仲間を鼓舞するものだ。殿(しんがり)に立ち、仲間に危険を及ぼす敵を人知れず排除するのは。」

 

副船長(・・・)の、務め。」

 

「「「!!!」」」

 

ルフィとアイコンタクト。ここで引いてくれ。僕らより強い敵が引かないんだから、こっちが逃げるしかないんだよ。全員で戦って、勝って逃げるのはそりゃ理想だろうけど、今回は絶対に無理だから。

 

だからルフィの一騎打ちっていう判断自体は間違ってない。ただ、それをやるのはルフィより、僕の方が適任だってだけ。

 

3人ともデービーバックファイトで割と消耗してる。その点、僕は全くだし。能力の相性的にも、ここで僕が残るのが最も勝ち筋が見えている。ちなみに勝ち筋ってのは、青雉に勝つことじゃない。それは普通に無理。覇気の練度が違いすぎる。ここで捕まえるのは得策じゃないと思わせることができたのなら、僕の勝ちだ。

 

「行くぞ。ゾロ、サンジ。」

 

「…了解、船長(キャプテン)。」

 

「っ。」

 

ルフィとゾロがこの場を離れる。それに続いて、皆も船に戻っていく。逃げる準備しといてくれ。

 

サンジは僕を見てる。勝てるのか。死ぬ気じゃないだろうな。そういう心配をふんだんに詰め込んだ表情をしているのだろう。見なくてもわかる。元々見えてないけど。

 

あぁ、そっか。サンジはあの時居なかったんだ。ウイスキーピークでのイガラムさんとのやり取りの時。酔っ払って寝てたもんなぁ。わはは、懐かしい。ルフィとゾロはあの時一緒に居たからすんなり受け入れたんだろうけど。

 

「死ぬ気は無いから。」

 

「…っ、絶対ぇ戻ってこいよ。良いな、ソラ!」

 

おっけー、頑張る。

 

律儀にこっちのやり取りを待っていてくれた青雉には感謝だな。ま、これから手加減はしてくれなそうなんだが。

 

「俺としちゃ船長の首を取っておきたかったんだが。ま、お前さんでも良いか。ぶっちゃけ一味の中じゃ、実力的にもお前さんが1番上だ。」

 

せーかーい。今は、だけどね。

 

「それに、俺はニコ・ロビンを危険視していたが、最も得体の知れねぇと思ってたのはお前さんだ。そうだろ、夜の種族さん。それも隻眼と来たもんだ。まぁ黒目みたいだから…ん?まて、それは義眼か?ってことはつまり、お前さん、つまり。あー…どういうことだ?」

 

知らんがな。どんだけマイペースやねん、こいつ。

 

「見聞色。眼帯の下には、僕の秘密が隠れてる。」

 

「なるほどね。ちょいとその秘密、おじさんに見せてくれない?」

 

「やだ。」

 

「はぁ、そうかい。しょうがねぇなぁ。そんじゃあ、力ずくで見るしかないじゃないの。」

 

さっきと同じ様に、地面を氷が舐めるように広がる。凍った地面から棘のような形の氷が突き出てくる。

 

「''涙天昇(るいてんしょう)''。」

 

爪先より射出された小さな太陽が、その尽くを融かし尽くす。

 

「''アイス(ブロック)両棘矛(パルチザン)''。」

 

「''紅炎弾(こうえんだん)''。」

 

向かってくる氷の矛に対し、傘の銃口を向け、ひとつ残らず打ち砕く。さらに。

 

「''白炎瀧(はくえんろう)''。」

 

僕と青雉を取り囲むように、白い炎の壁を作る。これで氷の能力もいくらか制限されるだろうし、戻ってくるであろうサンジたちを拒絶することもできる。

 

「あらら、こんなことしてくれちゃって。能力使えないじゃないの。」

 

嘘つけよ。

 

「そういやお前さん、さっきから左腕しか使ってないみたいだが。例えばこういうことされたら、どうなる訳?」

 

「ぐっぅう!?」

 

おいこいつまじかよふざけんな!!今まで全然お遊びだったんじゃねぇかクソったれがぁ!!右腕凍らされたんだが!?!?マジで炎で囲った意味がねぇ!!

 

ギラギラの実の能力がある限り、僕は本当の意味で凍ることは無い。ただ、左腕以外で能力を使えば、肌が焼かれる。つまり。

 

「やっぱりか。左手で患部を触って解凍するってことは、お前さん、やっぱり左腕しか能力使えないんだな。」

 

「いっ…。さぁ、て。そうやって、油断させるのが目的かも。」

 

「本当にそうなら、黙っておくのが定石でしょうよ。厄介なことに、お前さんは頭も悪くないらしい。余計にだ。」

 

クソが。油断しろよ。

 

「''氷結弾(アイスバレット)''。」

 

氷の弾丸を傘で防ぐ。バッチバチに撃たれてんだが。放つと同時に弾補充してんのか?こんなの最早点の攻撃じゃ無くて、面の攻撃じゃねぇか。

 

っ!?

 

「''炎膜(コロナ)''!」

 

「あらら、気づかれちまった。」

 

そりゃ気づくわ、こんだけガサガサいっぱい寄って来てちゃあ。鳥に小動物、蝶やトカゲを象った氷が一斉に向かって来ていた。触られた瞬間にその部位は凍りつくんだな。やっばぁ、ドン引き。

 

「参ったな。お前さんを相手取るには、些か準備が足りないらしい。」

 

ノープランで僕らを捕まえるなんて思うなよ!(強がり)かんっぜんに能力の相性頼りだからな。割とこっちは消耗してるけど、それを悟らせてはいけない。

 

「ちょいと聞きたい事があるんだが。お前さん、一体なんの実を食ったんだ?」

 

「言えない。」

 

ギラギラの実って知られたら絶対に面倒くさいことになる。意地でも捕まえようとしてくるか、もしくは相性が良い誰かを呼ばれるだろう。それか、もっと最悪なあいつか。

 

「んじゃあ、フード取って顔見せてくんない?髪でも良いけど。」

 

「むり。」

 

白金色(プラチナブロンド)の髪は見せても問題はないと思う。もう夜の種族だってばれてるみたいだから。ただ、アラバスタで左腕が太陽そのものになってから、髪の色が一部分だけ変色してるんだよな。これって確証はないけど、ギラギラの実を食べた証とかそんなんだろ。つまり見られたら終わる。

 

「えー。」

 

えーじゃねぇよ。おっさんがえー言うても可愛ないで。(金髪オカッパ死神風)それを聞くってことは、答え次第では僕という存在を特定出来るってことだろうが。情報は与えないに限る。が、全ての質問を拒否してしまうと向こうも引くに引けなくなってしまう。だから。

 

「その質問には答えない代わりに、ひとつ。僕の秘密を教えてあげる。」

 

興味を引くであろう、与えても良い情報を渡すしかない。情報の優先順位ってやつだ。この選択が正解なのか、間違いなのか。未来の自分に託すしか、今は方法がないのが悔しいところだが。仕方ない。

 

「お、なになに。眼帯外してくれるの?」

 

違ぇよ。それはもう断ったろ。

 

恐らく青雉にとって衝撃の事実であろう、秘密を告げる。これは誰にも話したことの無いことだ。確定じゃないんだが、まぁ恐らく間違いではないだろう。

 

「............。」

 

フリーーーーズ。眠そうな目ぇ見開いてて草。ヒエヒエの実の能力者が固まってら。




さて、ようやくデービーバックファイトが終わりました。ようやく…?3話しか書いてないのに、ようやく…?お前が書かなかったからだろうが!!!(自己叱責)

やばいことにストックもなくなってきてるし。ストックないと不安ですよね。ゲームと同じ。(作者はゲームをしない人)


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ウォーターセブン編
水の都と職人たち


久々の投稿。しかもストック分。つまり書いてない。。。
だれかワンピースの漫画かして、、、
ネトフリでアニメを流しつつ書くしかないこの状況。
展開早くてタイプが追い付かないよぅ…(´;ω;`)


青雉が自転車に乗って凍った海を渡って行って、僕も船へ戻った。めっちゃ心配された。特にロビンには超申し訳なさそうに謝られた。いやいや全然気にせんでええよ。特になんもなかったから。ちょっと実力試しみたいな感じでやり合っただけだし。まじで実力差ありすぎ問題。あれが敵の最大戦力かァ...嫌んなるな。

 

これが比較的温厚な青雉だったから良かったものの、他2人ならどうなっていたことやら。考えたくもねぇな。まぁ最も、その2人は青雉みたいに個人で動くことなんて無いんだが。動くとしたら戦艦単位だ。つまりエンカウント=詰み。QED.

 

そんなこんなで。

 

クロールするカエルが海列車に吹き飛ばされるのを目撃し、(ルフィはあれを食おうとしていたらしい)灯台にいたおばあさんと子どもちゃんと猫ちゃんの話に乗って進路を決め、水の都 ウォーターセブンに到着した。

 

今ここ。

 

ウォーターセブンかぁ。前世の記憶ではもうこの辺りからほぼ知らないんだよな。でもルフィが船大工探してここに来てるから、ここで仲間を増やすんだろうな。(メタ読み)楽しみだ。(本心)

 

それに、久々に会いたい人たちも居るし。

 

「懐かしいな。」

 

「なんだ、来たことがあったのか?」

 

サンジ。あれ、言ってなかったっけか。

 

「僕のラーキレス号、ここの職人さんに造ってもらった。設計図渡したら、面白いって笑いながら作ってくれた。」

 

「へぇ、なるほどそりゃ良いな。あんだけ高性能な船を造れるんなら、腕だって信用出来そうだ。」

 

「うん、世界一の造船技術者の巣窟だからね。しないと思うけど、法外な値段で値切ったりとか辞めといた方が...って、あれ。ナミが居ない。」

 

1番聞いておいて欲しかったのに。人を探しに行ったの?あ、アイスバーグって名前。黄金の換金も一緒に。はー、こりゃ着いてった方が良かったかな。

 

ま、良っか。どうせ僕も降りるんだし。適当に見てまわろう。んでも入り組んでそうだよなぁ、ここ。うし、久々に屋根伝いで行こう。10年前もそうしてたし。

 

ぴょーーーんとな。

 

上からウォーターセブンを見て回って、不思議に思ったことが幾つかある。

 

ひとつは、以前と街の様相が全然違うこと。大発展、大改革って感じだな。市長の腕が半端ないらしい。ちなみにその市長、名前はアイスバーグ。市長になっとんのかーい。出世してるやん。会ったらおめでとうって言わなきゃ。そういうおめでた報告ってニュースクーとかで教えてくれても良くない?って思うけどまぁ良いや。あっ、もしかしたらもう僕のことを覚えてないのかもしれない。そんなに長い間一緒にいたわけでもないしな~。そうだったらしょうがない。

 

ふたつ目に、仮面を被った人達が沢山いること。仮装パーティーがあるらしい。ほー。まぁ僕は年中無休でマント被ってるから仮装もクソも無いんだけど。

 

そして最後に。僕を見た時の島民の反応だ。みんな最初は笑顔で手を振ったり叫んで呼びかけてくれるのだが、直後に不思議そうな顔をする。その反応の意味が全く分からぬ。なんじゃらほい、って感じ。まぁ特に害はない。ちみっ子達からのバイバイには全力で応えるさ。空中で縦横10回転とか余裕なんだぜ。ローリンローリン。傘で花火だって打てちゃう。炎色反応は子ども達の味方だ。ワーキャー喜ばれた。可愛いなぁ。前世の義務教育様々やで。

 

そんな中ふと視線を下に向けると、追われているお兄さんを見つけた。おいおいどしたい、大丈夫そ?つか、相手数人居るけど明らかにお兄さんの方が強そうなんじゃが。なんで反撃しないんだろ。訳アリか?仕方ないな。助けが要るようには見えないけど。

 

「「「待てパウリー!!!」」」

 

「うぉぉおおおお!!しつっけぇなテメェら!!!」

 

たんっ。

 

「失礼。」

 

「うぉっ!?なんっだおま、うぉおおおおおおおおういっ!?!?」

 

肩に担いで、ぴょーーんっとな。

 

黒スーツの人達が何か叫んでる。何なに、ふざけんなてめぇ金返せ?あれ、これもしかしなくても、悪いのこいつじゃね。

 

...ぼく、しーらないっ。ソラ、子どもだから、わかんないっ。

 

「いや~助かったぜ。サンキューな、ガ...坊主。」

 

屋根に跳び乗りお兄さんを降ろしてやると、戸惑いながらもお礼を言われた。助けたこと、若干後悔してるけどな。つか今ガキって言いそうになった??なったよね???突き出してやろうか。

 

「別に。何で追われてたの?」

 

「ん、あー、いや。それはほら、そのー。お、大人の事情だ!」

 

「ふーん。」

 

ゲスい事情っぽいなぁおい。まぁ僕の知り合いにも似たような人居るから、別に軽蔑とかはしないんだけどさ。ちゃんと返してやんなよね。そんなばつが悪そうな顔するんなら尚更。いやこの表情は僕(見た目小さな子ども)に対して借金してるって言えないからか。借金自体には対して何も感じてなさそうだな。

 

「つかお前、見ねぇやつだな。なんでマントなんて...、訳アリか?」

 

僕がお兄さんに思ったこと、そのまま返されたわ。まぁ訳アリっちゃ訳アリだな。

 

「僕、海賊。」

 

「海賊ぅ?お前みたいな子どもがか?はーん、色々あるんだな。」

 

「そだね。僕にもお兄さんにも、追われる相手も、その理由も、色々有るよね。」

 

「ぐっ...。そ、そういや名前は何て言うんだ?お礼になんか奢ってやるよ。ウォーターセブン名物を!なっ?」

 

めっちゃ話し逸らすやん。

 

数本道を挟んで、屋根から降りながら言葉を交わす。ここで降りて大丈夫なんか?

 

「ソラ。ねぇ、ここで良いの?さっきの場所からそんなに離れてないよ。すぐに追いつかれるんじゃない?」

 

「ソラな。俺ぁこの島を知り尽くしてる。どの道をどう行けばどこに着くのか、なんてのは全部頭ん中に入ってんだぜ。あそこからじゃどんなに頑張っても、ここに着くまでに20分はかかる。ソラと違って奴らは地上しか走れねぇからな。問題ねぇよ。」

 

へぇ、詳しいんだな。お兄さん何者?

 

「パウリーだ。お兄さんなんて柄じゃねぇから、名前で呼べよ。呼び捨てで良い。俺ぁここで船大工してるんだ。」

 

ほー、船大工なのか。そりゃあ都合が良い。

 

「僕ら、船の修理と仲間になってくれる船大工を探してここに来たんだ。良かったら、ウチの船見てくれない?」

 

「船を?あぁ、海賊つってたな。それくらいならお易い御用だぜ。なんなら俺が直してやろうか。じいさん、水水肉2つ。」

 

「おいおいパウリー。お前さんデートは良いが、金はあんのか?いっつも借金取りに追われてるだろうに。」

 

「ばっ、!ってかデートじゃねぇ!!こいつは男だっ!!」

 

あらら、借金取りって言っちゃったよ。パウリー必死にしーしーって誤魔化してる。良し、聞かなかったことにしよう。それにしても、デートねぇ。小さいから女性に見られたのかな。頭からマントかぶってるから性別なんてわからないだろうし。まぁ顔見れたとしても中世的だからワンチャン女の子って思われるけど。

 

「金くらい持ってるに決まって...あれ。ん、待て待て。あるよ、あるって...ある......。」

 

「帰れ。」

 

いや草。一刀両断してるじゃん。清々しいおじいちゃんだな。

 

パウリーの株が上がったり下がったりして安定しないぞ。仕事の付き合いなら頼りになる(たぶん)けど、プライベートはNGって感じか。金銭関係は特に。

 

「おじいちゃん、それ2つくださいな。」

 

「かーっ!子どもに払わせるなんざ甲斐性のねぇ野郎だなパウリー!ほら、サービスだよ坊や。沢山食べて大きくなりなさい。」

 

うわわわ、ちょ、こんなに要らないんだが。え、お金は?いや、要らないってそれこっちのセリフ...あっ、ちょ、マントを引っ張るなパウリー。

 

「後で、また来る、から!ちゃんと払いに!」

 

にこやかに手を振っているおじいさん。待て待て、そもそも僕は子どもじゃねぇ。19歳だぞ。

 

「お前を連れて歩いたら、色んなもんタダで食えそうだな。」

 

「やめて。」

 

割とクズい考え方だぞそれ。詐欺師かよ。海賊と五十歩百歩とか言わないで。あ、肉うま。うまうまのうまやで。

 

「よくよく考えてみたら、その身体でよく俺を担げたよな。しかもカクみてぇにぴょんぴょん跳び回りやがるしよ。お前って結構すごい奴なのか?ソラ。」

 

知らん。上には上が居るからな。僕を小指でちょんって出来るやつも居るだろうさ。まぁ下には下が居るんじゃが。それとカクって誰や。

 

「一応、懸賞金は付いてるけど。」

 

「はーん、いくらだよ?」

 

「5,900万。」

 

「...。」

 

なんだおい。こっちをじーっと見るな。まさかこいつ、僕のことを金蔓として見てないか?指折り曲げて何を数えてるんだ?

 

よしこの辺でいっちょぶっ飛ばしとくか。地の果てまでヤっちまうぞ???首、コキコキ鳴らしてやる。

 

「冗談だっての。恩人を売り飛ばすほど、俺は落ちぶれちゃ居ねぇよ。」

 

ホントだろうな。少しでも怪しかったらアイスバーグに突き出してやるぞ。

 

「で、船は何処に停めたんだ?」

 

「どこ...ここがどこだか分かんない。方角的にはあっちの港。」

 

「あー、そりゃそうだな。よし、もっかい担いで跳んでくれよ。今度は楽しみてぇ。」

 

腕を広げられても...え、何おんぶしろっての?パウリー身長幾つ?あ、195cm。約30cm差か。別に良いけど、いけるかなー??

 

「なんだお前160cmねぇのか。ちっせぇ訳だぜ。もっと食ってでっかくなれよ。」

 

「早く乗って。」

 

「おう、それじゃ安全運転でぇぇぇええええええええっ!?!?」

 

え?なんか叫んでる?聞こえないなぁ。風の音が邪魔をしている。いや?別に?ちっちゃい発言が癪に触ったとかじゃないから。事実だし。うん、全然そんなことは。ぜんぜんぜんぜん。気にしてないけどコイツには教育が必要だと思うんだ。お前らも思うよな???(同調圧力)

 

「ぅぉおおおおおおお!?いででででっいでっ、いてぇ!?!?足!足引きずってんだよちょま、一旦止まれてめぇぇえええっ!!?」

 

「えー?なぁーにぃーー?ちょっとよく聞こえない〜〜。」

 

なんか言ってるな。ん?なんだ、なんか違和感が。誰かが隣を走っているぞ。僕の他にも屋根を伝って走るやつが居るなんて、もの好きだなぁ。って鼻が長いな四角いな。なんだなんだ、ウソップと同じ種族か?いやウソップは人間だけど。

 

「む?何じゃお主、わしと並走するとはやるのう。担いどるのはパウリーじゃないか?儂の同僚じゃ、何処へ連れてく気じゃ?」

 

「かっ、カクカクカクかくぅう!!ちょ、こいつ止めてくれぇええ!!!」

 

「船を見てもらおうと思って。担いで欲しいって言ってきたのはパウリーの方。」

 

ほう、この人がカクか。しかもこの人も船大工なんだ。なるほど、この光景を見たら確かに似てると思うかも。

 

あっ!!!だから街の人は不思議な顔してたのかー!見知った顔が屋根を走ってると思ったら全然違う黒マント不審者ちみっこ野郎だったから。納得〜。今ちみっこで納得した奴校舎裏な?(急に)

 

「わはは、なるほどのう。楽しそうじゃな、パウリー。」

 

「楽しくねぇぇぇええええっ!!テメェちゃんと聞こえてんじゃねぇかソラぁっ!!足見ろってぇぇぇえ!!!」

 

うるさいなぁ。あ、足曲げてなかったの?早く言ってよ。(すっとぼけー)

 

高くジャンプし、不安定な状態のパウリーの足を引っつかみしっかり抱えて固定させる。これで文句ないだろう。全く、注文の多い。そういうのは料理店だけで結構です。何のために料理人になったと思ってるんだ?お前を調理するためだよっ。

 

「おーいててて...ちっきしょう、覚えてろよテメェら。」

 

「運んでもらってる癖に。」

 

「わしは何もしとらんぞ。」

 

運搬料を請求してやろうか。そういえばカクも走ってる方角一緒なんだが、もしかしなくてもメリー号に向かってるのかな。まぁ着いたら分かるか。てか着いたわ。

 

目的地はメリーだった。やっぱり。2人は真剣な表情で船を見ている。内緒話をしているぞ、気になるな。

 

「おい、なんだアイツら。」

 

「起きたんだ、ゾロ。あの2人は船大工だよ。メリーの具合を見てもらってる。」

 

「はーん。ウソップみてぇなやつだな。」

 

鼻だけな。

 

査定が終わったらしい。厳しい表情でこちらに近づいて来るパウリーとカク。

 

「ソラ...この船はもう、何処へも行けねぇ。」

 

「ここまでお主らを運べたのが奇跡じゃ。わしらの腕でも直すことはできん。」

 

は?えー、と。ちょっと待って。

 

「傷が深すぎるんだ。直したとしても、次の島に辿り着く前に沈む。もうその段階まで来ちまってる。」

 

「...そりゃ、事実か?」

 

「わしらはプロじゃ。仕事に嘘はつかん。」

 

でも見た目はそんなにボロボロって訳でも無いぞ。ってことは見えない部分がやられてる?まさか。

 

「竜骨、が、やられてる?」

 

「知ってるんなら話が早ぇな。その通りだ。見た目はそれほど酷くねぇ。修理箇所も見たが、どこも適切に処置してある。応急処置にしちゃ上出来だ。」

 

「じゃが船の命、土台とも言える竜骨に深刻なダメージが入っておる。ここをやられたら、どんなに他を修理してもダメじゃ。全てを支える根幹に傷が入っておるんじゃからな。」

 

すぅー、ふぅーーーーー。

 

なる...ほどね。

 

「その竜骨を変えるのは?」

 

「それは無理だよ、ゾロ。竜骨を変えるってことは、船そのものを1から造り直すってことと同義だ。新しく作られるメリーは、今までのメリーとは違う。それはもう、全く新しい別の船だ。」

 

「...。」

 

「どうする?つっても直すのは無理だから、新しい船を作るしかねぇぜ。カタログ見せてやろうか?」

 

「いや、僕ら2人で決められる案件じゃなくなった。船長に報告する。ゾロ、僕ルフィに伝えてくるから。」

 

ゾロがひとつため息を付く。そりゃそうだよなぁ。僕より長いことメリーと一緒に居るんだ。辛くない訳が無い。

 

「俺が伝える。あいつら何処に居る?」

 

「良いよ。ここ結構入り組んでるから、僕が上から行った方が早い。」

 

バツが悪そうな顔をするゾロ。

 

「悪ぃ、嫌な役目任せちまう。」

 

「別に。誰かが伝えなきゃでしょ。」

 

ルフィ達が居る方角は大体分かるから、そっちへ向かって適当に行こう。

 

「決まったか?わしが案内するぞ、ついて来い。」

 

おぉ、そりゃありがたい。遠慮なくストーカーしよ。

 

「おいカク、1番ドッグだろ?俺も連れてけ。」

 

「嫌じゃ。」

 

「なんでだよっ!」

 

「むさ苦しいからじゃ。」

 

パウリーが叫んでる。あーもうギャーギャー言わないでよ。僕が運んできたんだから最後まで面倒見るっての。

 

 

&&&

 

 

「いやはや、快適だぜ。ソラ、お前ここで運び屋でもやったら相当儲かるんじゃねぇか?乗り心地も悪くねぇし、着地の時の衝撃も苦じゃねぇ。」

 

「気を使って跳んであげてるの、感謝して。まぁでも儲かるって言うんなら運搬料くらいは貰っておこうかな。手始めにパウリーから。」

 

「げっ、冗談だろ!?言わなきゃ良かったぜ!」

 

「わはは、仲良いのうお主ら。」

 

そうか?パウリーは子どもだと思ってる僕に運ばれてる今の状況をどう思ってるんだろうか。恥ずかしさとかは微塵も無さそうだが。単純に移動費が浮いたとか思ってそうだな。出会ってからここまでの短時間で、既に当たらずしも遠からずな思考を読めている件。別に嬉しくねぇ。

 

「そろそろ着くぞ、あそこが1番ドッグじゃ。」

 

あ、ホントだ。ルフィとナミが居る。すたんっ、とな。猫みてぇ。高いところから落ちても、猫は怪我しないらしい。絶対に足から落ちるんだと。すげぇよな。

 

「ソラ!?それとさっきの人も!...と、誰?」

 

「無事にアイスバーグと会えたんだね。良かった良かった。」

 

「おいソラ。なんでアイスバーグさんのこと呼び捨てに...ってぐわぁああっ!?てめぇ何て格好してやがるんだハレンチ女!?」

 

うるさっ!耳元で騒ぐなよ。何、ハレンチ女って。ナミのこと?大体いつもこんな格好だけど。まぁ良いや、ほっとこ。

 

「おいおい...驚いたな。随分と久しぶりじゃないか?」

 

「なんだ、覚えてたんだ。ビックリさせようと思ったんだけど。と言うより、顔見えてないだろうによく分かったね。市長になったって聞いたよ。おめでとう、アイスバーグ。」

 

「忘れる訳ねぇだろ。お前の作るカクテルは最高だったぜ、ソラ。」

 

「酒かよ。」

 

こいつ...10年くらい経ってるってのに、まだ覚えてるのか。ラーキレス号を造ってくれたお礼にってことで1晩だけ付き合って振る舞っただけだぞ。どんだけ酔い痴れてんだ。

 

「トムさんのことは。」

 

「うん、知ってる。」

 

「そうか。」

 

ヒュんっ!と風を裂くような音が鳴る。

 

「無礼者っ!なっ、なぜ避けないのですか!?」

 

なんか蹴り入れられそうになったぞ。寸止めするだろうと思ってたから微動だにしなかったけど。でも、妙だな。敵意じゃなくて、殺意を感じた。にも関わらず寸止めされた。

 

なんだ、この違和感。そういえば、さっきも似たような違和感があった様な?

 

「ンマー、カリファ。良いんだ、そいつは旧友でな。昔、船を造ってやったことがある。ちゃんと乗ってるか?ラーキレス号。」

 

「相棒だよ。時間あったらメンテお願い。」

 

「あぁ、暇な時にやっとく。」

 

市長に暇な時が有るのかは知らんが、まぁよろしく。

 

ルフィもナミも、僕とアイスバーグの話を聞いて察したらしい。早速メリーの話に移る。

 

「ソラ!見てみろよこれ、大金だ!1億ベリー!!あとの2億はウソップが持ってんだ!これでメリー号も直せるぞ!!なっはっは!!」

 

っ、!

 

「その事について、伝えなきゃいけないことがある。ルフィ、ナミ、ちゃんと聞いてね。メリーは、もう直せないんだ。」

 

「「...えっ!?」」

 

「直せないってどういうことだっ!?だってよ、ここはすげぇ船大工がいっぱい居るんだろ!?」

 

「どういうこと、ソラ!?」

 

うん、ウォーターセブンの造船技術は世界一だよ。政府御用達な程に。でも腕の問題じゃないんだ。

 

「船の命と言っても過言じゃない、船首から船尾までの全てを支える竜骨って部分が損傷してる。それも深刻なダメージを負ってるらしいんだ。その竜骨を、修理することは出来ない。だから。」

 

「っでも、金は有るんだぞ!?」

 

「金の問題じゃないわい。いくら出そうとも、もうあの船は直せんのじゃ。」

 

食い下がるルフィに対し、冷静に返答するカク。冷たいようだが、これが事実なのだ。彼らは今まで何度も似たような場面を目にしてきたのだろう。故にこそ、騒ぎ立てることなく冷静で居られる。

 

ナミは竜骨の存在を知っているみたいだ。だから辛うじて納得はしている。ただ、やるせないって思うのは仕方ない。

 

でもルフィは納得も理解もしていない。きちんと分かるように説明しなければ。

 

「じゃあ、その竜骨ってのから造り直せば良いだろ!?もう一度メリー号を造ってくれよ!!」

 

「無理なんだよルフィ。設計図は確かに僕が持ってる。だから、それを元に新しいメリーを造ることは出来る。でも、それは新しいメリーであって、今までのメリーとは違う。全く別の船だ。姿形は同じでも、些細な違いを誰よりも如実に感じるのは、メリーに乗ってた僕ら自身なんだよ。」

 

「っでもよ!!」

 

埒が明かないと思ったのか、アイスバーグが割って入る。

 

「ソラの言うことは正しい。形あるものはいずれ壊れる。寿命ってことだ。良い機会じゃねぇか、新しい船を買って行けよ。金はあるんだろう?」

 

正しい選択だ。でも、メリーを仲間だと思ってる僕らにとって、それはそう簡単に取れる選択肢じゃないのも確か。考える時間が必要だろう。

 

「乗り換える気はねぇ!俺たちの船はゴーイングメリー号だ!修理すれば走れるはずだろ、ソラ!!」

 

詰め寄ってくるルフィをナミが窘める。ここで言い争っても意味は無い。事実を受け入れるしかない。時間がかかっても良い、それは必要な時間だから。

 

「ルフィ、あんたちょっと落ち着きなさい!」

 

「うるせぇ!!信じられる訳ねぇだろ!!ずっと一緒だったんだぞ!?今日だって快適に乗ってここまで来たんだろうが!!ソラは信じるのか!?今日突然もうメリーは走れねぇって言われて納得出来んのか!メリーは仲間だろ!?」

 

「副船長が、仲間を見捨てるのか!?こいつらが嘘付いてたらどうするんだっ!!!」

 

違う、見捨てるんじゃない。送り出してあげるんだよ。仲間だから、メリーを思うのなら、ここでさよならを伝えるべきなんだ。

 

そう言えたら良かったのに、言えなかった。これは、先に手を出した僕が悪い。

 

気がついたら、ルフィをぶん殴っていた。

 

「がっ!?お前ぇ...!!」

 

「ちょっ、止めなさいソラ!ルフィ!」

 

ごめん、ナミ。心配させちゃって。でも、さっきの発言は許容出来ない。

 

右拳が伸びてくる。その勢いを利用して、足払い、胸ぐらを掴みそのまま一本背負いで地面に叩きつける。

 

バゴォッッ!!!

 

地面が蜘蛛の巣状にヒビ割れる。それだけ、威力の強さを物語っていた。

 

「ぐっ、う!」

 

うつ伏せになって起き上がろうとするルフィ。再度足払いを仕掛け、立たせない。両手両足を強制的に曲げさせ、そのまま腰の辺りで重ね合わせた上で、傘の先端を突きつけ完全に拘束する。

 

「離せっ、ソラ!!!」

 

「甘いね。船長としても、戦闘員としてもそう。何よりその考え方が、甘えきってるんだ。もうすぐ前半の海も終わる。そんなんでこれからやって行けんの?」

 

「なんだと!?」

 

「嘘、付いてるって?ルフィ。」

 

首を回し、必死に僕を睨みつけている。フーフー言ってるのは、拘束を解こうとしてるからか。怒りを沈める為にか。どっちにしろ、これだけは教えておかなきゃならない。

 

「世界一の造船職人が集うこのウォーターセブンで敏腕を振るい、職長として日々研鑽を積んでいる2人だ。その2人が、修理不可能と言う結論に至ったんだ。分かるか?一流のプロが、そう判断した。その判断を信じられないが為に、お前は嘘だと否定したんだ。素人のお前がだ、ルフィ。」

 

「っ...!」

 

「例えばの話をしよう。船でコックを務め、僕らの食生活を管理するサンジが丹精込めて作った料理を、マズいと言って捨てたことがあるか?」

 

「っある訳ねぇ!!」

 

「今まで航海士としてその才能を遺憾なく発揮し、数々の危険を回避してきたナミの判断を疑ったことは?」

 

「無ぇよ!!!」

 

「どんなに大怪我した時でも、必死になって治療してくれたチョッパーの処置を否定したことは?」

 

「だから!!無ぇっつってんだろ!!!疑う訳ねぇだろうが!!!」

 

何が言いたいのかとルフィが叫ぶ。ナミはもう気づいたみたいだ。

 

「皆それぞれの分野で1流と呼ぶことが出来る程の実力と経験を持っている。ガレーラに務める船大工だって同じなんだ。何も変わらない。今まで必死に努力して、必死に修行して、世界一と呼ばれるに至ったんだ。」

 

「彼らを嘘つきだと否定するのは、世界中の1流と呼ばれる人達全ての腕と、1流になる為にその人達が賭けたそれまでの人生全てを侮辱することと同義だ...!」

 

「人の努力を!!夢を!!お前だけは否定しちゃいけないんだよルフィ!!!」

 

「!!!」

 

暴れる手足がピタりと止まる。目を見開いて、呆然としているルフィ。海賊王という途方もなく偉大な夢を追い続けるルフィだからこそ、その夢を否定されるのは許容出来ないはずだ。自分はそれと同じことをしてしまったのだと、たった今、気づいてくれたらしい。

 

怒りと戸惑いで視野が狭くなって、ついカッとなって言ってしまったんだろう。疑う気持ちも少しはあったんだろうが、決して100%嘘だと思っていた訳じゃない。でも、それでも言って良いことと悪いことがある。今回のは、悪いことだ。

 

「ガレーラカンパニーに務める皆様。この度は、私共の浅はかな発言により不快な思いをさせてしまいました事、心よりお詫び申し上げます。大変申し訳御座いませんでした。」

 

ルフィの上から退いて、深く深く頭を下げる。慌てて、ルフィも頭を下げる。ナミも一緒になって謝罪しくれた。

 

「すみませんでした!!!」

 

「ごめんなさい!!悪気は無かったんです!!」

 

それまでルフィに対して敵意を向けていたガレーラの皆の空気が和らぐ。特にカクとパウリーは、目の前で素人に嘘つき呼ばわりされたんだから。怒鳴ったり、殴ったりして当然だ。甘んじて受け入れる覚悟だったが。

 

「ルフィと言うたか。仲間に恵まれたのう。」

 

「けっ!今回限りだ、次はねぇと思えよ。」

 

「っあぁ!ありがとう!!」

 

良かったぁ。ホントに良かった、許してもらえて。これから船をどうするかって時に、職人さんの気分を害したなんてあっちゃどうにも出来ないし。

 

ルフィも反省して、自分の非を認めて謝った。こういう素直な面をカクもパウリーも汲んでくれたんだろう。

 

ありがたい。

 

「まぁ、とりあえず話は一旦終わりだな。船を買う気になったらまた来い。世話してやる。カリファ。」

 

「はい。どうぞご検討を。弊社が取り扱う船のカタログです。値段の参考に。」

 

ルフィがカタログを受け取り、僕に渡してくる。

 

あぁ、いけない。何しらっとしてんだ僕は。馬鹿かよ。

 

「ルフィ、殴ってごめん。」

 

「ん?あぁ、良いよ!俺が悪かった!ごめんな、ソラ。嫌なこと言わせた。」

 

「ううん、気にしてない。」

 

「ほんっっとに、あんたらの喧嘩なんて迷惑極まりないないんだからね!気をつけなさいよ!!」

 

「「うん、ごめん。」」

 

ほんとに。良かった、ナミもルフィも笑ってくれた。仲直り、仲直り。ひび割れた地面も見ないふり。きっと誰かが直してくれるはず。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ボコボコ、バラバラ

皆さんお元気でしょうか。僕は元気じゃなかったです。そんなこんなで最新話投稿。メリクリわっしょい!!

キャラメーカーより作成

【挿絵表示】


【挿絵表示】



走る、疾る、奔る。

 

フランキーと言うやつの子分たちに、ウソップが攫われたらしい。別に海賊なんだから、盗みや喧嘩はよくある事だ。まぁ、それが許せるかと問われたら、絶対に許さないと応えるだろうが。

 

人だかりが出来ている。その中心に、ボコボコにされて血だらけになって倒れているウソップを見つけた。

 

傘を広げ、屋根から飛び降りる。気づいた島民がどよめきながら下がって行く。

 

「ウソップ、ウソップ。聞こえる?返事して、ウソップ。」

 

「...う、ぁ?ソ、ら...?ソラ...。すまねぇ、面目ねぇ。俺が...。弱ぇもんで、大金全部...盗られちまった...!皆に合わせる顔がねぇよ!!」

 

お金は良いから、今は喋らないで。

 

「やっと、メリーを...直してやれる筈だったのによぉ。面目ねぇ...。チキショオ、クソぉ!」

 

「...っ、うん。大丈夫。大丈夫。」

 

今ここでメリーのことを言うべきじゃない。とにかく落ち着かせないと。

 

意識はハッキリとしている。喋っていることに矛盾もなく、きちんと自分の意思を伝えようとしている。虹彩の反射反応も異常なし。不幸中の幸いと言うべきか、頭を打っはいるものの、記憶の混濁等は無いらしい。ただ、とにかく出血が酷い。全身打撲、骨折数箇所、裂傷、火傷。無事なところが見当たらないくらい。酷いやられようだ。

 

現状、応急処置道具が何も無い。僕だけ船に戻って道具と一緒に戻ってくるか、この状態のウソップを連れて行く必要がある。でも、連れてくったってそう簡単じゃない。これだけボロボロにされてるんだ。動かさない方が良いのは明白。

 

外野が何か言っているがうるさい、構ってられるか。傘の銃口を空に向け、火の玉を打ち上げる。空中で爆発させ、狼煙の役割を果たす。これで誰かが来てくれるはずだ。

 

「ウソップ。直ぐに誰かがここに来るから、じっとしてるんだよ。動いちゃダメだからね。僕、船に治療道具とってくるからさ。」

 

 

ヒュォオッツ!!

 

 

全力で船に向かって跳ぶ。フードをしっかりと押さえつけながら、風を切って疾走する。普段は何も思わないが、全力で走るってなるとこのフード邪魔だ。

 

「落とし前を、付けさせなきゃな。」

 

顔も知らないヤツら相手にこんなにムカついたのは初めてだ。

 

岩場の岬に辿り着き、メリーが見えた。もう僕らを乗せて冒険することが出来ないメリーと、ズタボロにされたウソップを思うと酷く悲しく、悔しい気分になる。ムカつく。その場にいなかった自分に、意味がないと分かっていても酷く憤りを覚えてしまう。

 

沸騰しそうになる思考。頭を冷やすには、全力で走るくらいが丁度良い。

 

「っは、はぁっ...はぁ...。」

 

「おい、どうした。何をそんなに慌ててるんだ。」

 

「ソラ、何があった。」

 

「ウソップが、やられた。ボコボコにされて、傷だらけ。道端に棄てられてた。道具を取りに来た。」

 

「「「!?!?」」」

 

船にはゾロとサンジ。そしてちょうど良いことに、チョッパーが居た。

 

ルフィから預かっておいた1億ベリーが入ったトランクを甲板に放る。そしてチョッパーを右腕に抱える。救急箱はチョッパーが持ってくれた。

 

「ウソップは無事なのか!?」

 

「命に別状は無い。意識レベルも安全圏。でも急ぐに越したことはないから、チョッパーだけ連れてく。金と傘は置いてくから、よろしく。」

 

「「任せろ。」」

 

任せた。

 

「チョッパー、きついかもだけど。」

 

ごめんね。

 

「おれのことは良い!急いでくれ、ソラ!」

 

うん。分かってる。

 

来た道を戻り、ウソップが居たはずの場所へ到着した。でも誰も居ない。なんでだよ。往復で10分も経ってないだろ。なんでだよっ。

 

「ソラ、血だ!地面に血が付いてる!向こうへ移動してるみたいだ。ウソップ、1人でどこかに行ったのかな!?」

 

っ、あのバカ。

 

「ぶぇぇええっ!?」

 

「っ!」

 

空から降ってきたルフィを片手で受け止める。っぶねぇな。

 

「あっ、ソラ!チョッパーも!ウソップ居たか!?」

 

「居た。けど、多分1人で敵のアジトに向かった。血痕が続いてるから。」

 

「ルフィも一緒に行こう!!急がなきゃ!!」

 

「あぁ、分かった!」

 

 

&&&

 

 

「ルフィ!!ソラ、チョッパーも!!良かった、それ救急箱よね!?お願い、急いでウソップを手当して!!!」

 

「「「...。」」」

 

ナミが泣きそうになりながら叫んでいる。ウソップの怪我が、明らかに酷くなってる。やっぱり1人で挑んだんだな。

 

「チョッパー、息はあるか。」

 

「死んじゃいない!大丈夫、助かるよ!完全に気を失ってるけど。」

 

「私もたった今ここに来たの!それで、ウソップはもうこの状態で倒れて。とにかくお願い、急いで!」

 

ウソップがここに来て、またボコボコにされて。ナミは僕らと同じように血痕を辿って来たってことか。全ての歯車が噛み合わなかった結果だな。

 

あぁ、全く。

 

「待ってろよ、ウソップ。あのふざけた家、吹き飛ばして来るからよォ...!!!」

 

「チョッパーはウソップの治療を。ナミもここで待機。電伝虫を渡しとくから、必要なら船に連絡して。ゾロとサンジを待機させてる。」

 

「ソラ、あんた傘は!?大丈夫なの、日差しが...!」

 

マントあるから大丈夫だよ、ナミ。心配してくれてるんだろうけど。

 

「来ないでね。ちょっと今、余裕無いから。」

 

フランキーハウスと書かれた家から、楽しげな叫び声や歌い声なんかが聞こえてくる。その外観、その笑い声、その雰囲気、その気配。全てが神経を逆撫でされている気分だ。

 

「やるぞ、ソラ。」

 

「うん。」

 

「「ぶっ潰す...!」」

 

扉を開けて出てきた大男をぶん殴って吹き飛ばすルフィ。扉も壁も一緒にぶっ飛んだ。

 

「ん~誰だテメェら!!?」

 

「あれは...麦わらのルフィだ!!」

 

「ガハハハハ、たった2人で何しに来たってんだ!!こっちの人数見やがれ!!」

 

「しかも片方はガキだぜ!!こんな奴が5,900万ベリーかよ!?儲け儲け〜!!ぎゃははは!!...は?」

 

ーーー”魚人空手・人技 水面和離(みなもわり)

ーーー”ゴムゴムの攻城砲(キャノン)

 

「グボェエエエッ!?!?!?」

 

「ギャァアアアアアッ!!!?」

 

「なっ、なっ、巨大アーマーを...ぶっ壊したァァァァアッ!?!?」

 

吠えんなよクソ共。そのイラつく声をこれ以上聞きたくない。

 

「うっ、撃てぇっ!!!」

 

「イヤッホーーイ!!」

 

「”火熾光穿(かしこうせん)”。」

 

ドカァァァァァァァァン!!!

 

「ギャーーッ!?なんだ今のレーザー!?」

 

「てっ、鉄が融けてるぅぅうううっ!?!?」

 

「”ゴムゴムのぉ...花火ぃいいっ”!!!」

 

「「「うわぁぁああああっ!!!?」」」

 

何人かが裏口や窓から逃げ出そうとするが、それも無駄だ。

 

「なっ、なんだぁ!?外に人型の炎が!!?」

 

「こ、こいつら外に出たら襲ってくる!!ギャーー!!!」

 

「ぐわぁああっ!?あっ!?あちぃぃいい!!」

 

ーーー”炎鎧の戦女神(シヴァルキュリア・シュバリエ)

 

建物の中に居る奴らは僕とルフィが1人残らず潰し。外に1歩でも足を踏み出せば、戦女神(ヴァルキリー)達の一刀の下に身を焦がす。

 

「ちょっ、ちょちょちょちょっと待て待て待てよお前らっ!!!金、金だろ3億ベリーだろ!?!?あの3億ベリーは兄貴が持って出かけたんだよ!!!だからいくら此処で暴れたってもう戻ってこねゴパァッ!!!?」

 

だから、吠えるなって言ってんだろ。どうでも良いんだよ、お前らの言い分なんて。

 

「もう、そう言う話じゃねぇ。お前ら骨も残らねぇと思えよ...!!」

 

「お前たちは罪を犯した。罪には罰が必要だ。僕らと違ってお前たちは、法の下で生きてんだから。当然だ。」

 

「1人も逃す気は無ぇ...!」「逃がす訳無いだろ。」

 

惨めに這いつくばってろ蛆ども。

 

「ひっ、怯むなぁ!!相手はたったの2人だぞ!!?見せてやれ、”ナンデモ散弾砲(ショットキャノン)”!!!」

 

言葉通り、爆弾に刃物、食器や食べ物まで撃ってきやがった。あー、クソがマジで癪に障るなぁ...!!料理人に向かって食材を撃ち付けるなんて万死に値するんだって、身をもってわからせてやるよ。

 

「”白炎瀧(はくえんろう)”。」

 

「げぇえええっ!?ぜっ、全部ぅ!?融かしやがったぁぁあ!!!」

 

「くっ、来るぞぉおお!!!」

 

「”ゴムゴムのぉ...暴風雨(ストーム)”!!!」

 

「”昇天緋龍(フレアドライブ)”。」

 

「「「ギャァアアアアアッ!!!?」」」

 

上から迫る拳の雨と、下から這い昇る炎の龍での挟撃。逃げ場は作らない。

 

ぶん殴られて気絶したやつ。燃えてこんがり煤だらけになったやつ。元々あったバカみたいな建物は、見るも無惨に灰と化している。

 

外に出ると、サンジも来ていた。この場にいないのはゾロとロビンだけだ。ゾロは船番してるんだろうけど、そういや見てないなロビン。何処に居るんだろう。

 

「ったく、お前ら2人でやりやがって。来るまで待っとけっての。」

 

「悪ぃな、我慢できなかった。」

 

僕もごめん。頭に血が登っちゃってて。冷静じゃなかった。

 

「一旦船に戻ろう!ウソップを担架で運ぶから、手伝ってくれ!」

 

「俺が運ぶぞ、チョッパー。そのくらいさせろよ、何もしてねぇんだから。」

 

「あぁ、ありがとう!」

 

そうだなぁ。ここで待ってても金が戻ってくる訳じゃないし。フランキーって奴が戻ってくるまで、ここでたむろしてる訳にもいかないしな。そもそもいつ帰ってくるかも分からん。

 

「船よォ...、決めたよ。ゴーイングメリー号とは、ここで別れよう。」

 

「「「!!!」」」

 

そっ、か。良かった、決断できたんだな。悩んだだろうに、よく頑張ったよ、ルフィは。肩をポンポン、と叩いて労ってやる。

 

お疲れ様、船長。

 

 

&&&

 

 

ロビンを探すためにまた街中を飛び跳ねている。

 

もう何時間も探したのにも関わらず、見つけることが出来なかった。気配も感じとれない。なんだろう、この胸騒ぎ。何か嫌な予感がする。

 

「あれ、ウソップ?なんでこんな所に...ウソップ?」

 

「...。」

 

え、ちょ、ちょっと、何で無視するの。

 

「ウソップ、どうしたの?もうアイツらは潰したから、どこにも行く必要なんて「お前が言ったんだってな。」

 

「...、?」

 

「お前がルフィに言ったんだろ、メリーはもう直せねぇって。だからお前の言葉を信じたルフィが、メリーを棄てると言い出したんだ。」

 

あぁ、そう、そうか。聞いたんだな。皆気持ちは同じなんだ。でも必要な決断だから、堪えて前を見なきゃならない。

 

「うん。メリーとは、此処でお別れだ。もうこの先の海を一緒に冒険することは出来ないから。」

 

「っテメェ!!!」

 

「っ!?」

 

いっ、たぁ...くは無いけどびっくりした。ちょっと、退いてくれないかな。

 

「ウソップ重いよ。あと手も放して?ただでさえ怪我が酷いのに、悪化しちゃう。」

 

「よくそんなことが言えるな!!?今までずっと一緒に冒険してきた仲間を、ここで見捨てるなんてよく言える!!!所詮お前はバラティエで一味に入った身だっ!メリー号にだって、大した思い入れもねぇんだろ!!?」

 

あぁ、ウソップは誰よりもメリー号を大事にしてたから。別れたくないって思いは、人一倍強いよな。

 

「みんな悲しいよ。みんな悔しい。僕がルフィに伝えた時も、同じように怒ってた。でも、厳しいようだけど、これが現実だから。辛くても、苦しくても、受け入れなきゃならないんだ。」

 

「お前がそうだと言ったから、アイツらみんなそうだと言うんだ!お前は信用されてるもんな!信頼されてる!!金の番も出来ない俺と違って!!そりゃそうさ!!なんてったってお前は強くて!いつでも冷静で!なんでも出来る副船長で!!新世界にだって行ったことがあるんだから!!だからそれがどんなに有り得ないことだって!!歯切れの良い年寄りじみた考えだって!!ルフィも信じちまうんだよ!!!」

 

何言ってんの、?信用とか信頼とか、ウソップだってみんなから頼りにされてるよ。そこに優劣なんて無い。僕の海賊理論が年寄りじみてるのは仕方ないことだ。だって、教えてくれた人が年寄りだったんだから。

 

「メリー号は仲間なんだ...!傷ついてるんなら、治してやるのが俺たちのやることなんじゃねぇのか...!お前が一言、治そうって言や済む話だろう!?なぁ、頼むよっソラ!」

 

...。

 

「それは無理だ。これは気持ちとか、根性とか、そういった精神論じゃどうしようも無い事なんだよ。頑張ればできることならみんなそうするさ。僕だって全力で治すことに尽力しよう。でも、そういう問題じゃない。」

 

物理的に、技術的に。無理なんだ。分かって。

 

「...はっ。はははっ、あぁそうかよ。どこまでも冷静だな。そうだよなぁ、お前はそう言うやつさ...っみんなお前に騙されてるんだっ!!!そのせいでルフィと喧嘩して!!!おれはっ...おれは一味をやめたんだっ!!!!」

 

「............は?」

 

一味を、やめた?え、?なに、それ、どういう...。なんでそんな話になるの。

 

「っ...!!じゃあなっ...!おれはもう、お前の仲間じゃっ...!!もうっ、話しかけるなっ!うぅ...っ!!」

 

ちょ、っと。待ってよ。まって。そんな身体で、そんな傷で。そんな顔して、一味をやめたなんて、言わないでよ。

 

思わずウソップの手を掴む。

 

「触るなっ!!俺とお前はもうっ...もう仲間じゃない!!」

 

「っ。」

 

なんで、動かないんだよ、足。なんで動けないんだよ。手ぇ伸ばすくらいなら追いかけろよ。なんで(おまえ)が泣いてんだよ。泣いてんじゃねぇよ。ほんとに泣きたいのは、ウソップなんだから。

 

冷静になれ。冷静になれない時だからこそ、冷静にならなきゃいけないんだ。

 

引けよ、涙。

 

あぁ、だめだ。頭ごちゃごちゃして、何も分からない。

 

 

&&&

 

 

泣いて、泣いて、泣いて、泣いて。周りなんて気にしてられる訳も無くて。途中で誰かに話しかけられたり、頭を撫でられたような気もするけど。それが誰なのかも分からなくて。

 

空は白んでいるらしい。朝焼けの中。目は腫れてるだろう。喉もかれた。ガラガラだ。でも、少しだけ頭の整理が着いた。

 

「ソラ、落ち着いたか?」

 

「あ...れ、チョッパー?どうしたの、こんな所で。」

 

そりゃチョッパーのセリフだな、などと思いつつ。

 

「ウソップの怪我を治療しようと思って。でも、追い返されちゃったから戻ろうとした。それで、ソラが泣いてるの見つけて...。ウソップと、会ったのか?」

 

うん、会った。

 

「ウソップに、何か言われたのかもしれないけどっ!違うからな!?ホントはウソップ、悲しいだけなんだっ。メリー号と別れたくなくて、ついカッとなって...!」

 

「うん。うん、分かってる。分かってるよ、チョッパー。」

 

ルフィもそうだったから。今は視野が狭くなってるだけだから。

 

「ウソップ、10時に岬に来てる筈なんだ。ルフィと決闘して、勝ったらメリーを貰っていくって言ってた。」

 

「け...、っとう。10時って、昨日の晩?そんなの、もうとっくに...。」

 

こくり、と。チョッパーが頷く。過ぎてる。もう、終わってしまったんだろうか。行かなきゃ。ごめんね、チョッパー。ずっと待っててくれたんだよね。

 

チョッパーを両手で抱き抱える。ギューッと。ポンポンと、肩を叩いて慰めてくれる。優しいなぁ、チョッパーは。

 

「行こっか。」

 

「うん。」



目次 感想へのリンク しおりを挟む




評価する
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10についてはそれぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に
評価する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。